衆議院

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第17号 令和6年4月12日(金曜日)

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令和六年四月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    木原 誠二君

      岸 信千世君    佐々木 紀君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      田畑 裕明君    中曽根康隆君

      中山 展宏君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    古川 禎久君

      宮下 一郎君    宗清 皇一君

      簗  和生君    柳本  顕君

      山田 美樹君    若林 健太君

      江田 憲司君    階   猛君

      末松 義規君    野田 佳彦君

      馬場 雄基君    原口 一博君

      沢田  良君    藤巻 健太君

      掘井 健智君    竹内  譲君

      中川 宏昌君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   経済産業副大臣      岩田 和親君

   内閣府大臣政務官     神田 潤一君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  須藤 明夫君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 鈴木  清君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    江島 一彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西村 秀隆君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     中曽根康隆君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     柳本  顕君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     簗  和生君

同日

 辞任         補欠選任

  簗  和生君     佐々木 紀君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     田畑 裕明君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

四月十一日

 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官須藤明夫君、金融庁総合政策局政策立案総括審議官堀本善雄君、監督局長伊藤豊君、総務省大臣官房審議官鈴木清君、財務省主税局長青木孝徳君、関税局長江島一彦君、国税庁次長星屋和彦君、経済産業省大臣官房審議官西村秀隆君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊東信久君。

伊東(信)委員 皆さん、おはようございます。日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久でございます。

 トップバッターですので、元気に参ります。

 早速なんですけれども、資料の一を見ていただきたいと思います。

 これは報道ベースなんですけれども、左が、ヘッドラインに、株式分割、株高を支える、二三年度六割増し、売買活発にとありまするように、二〇二三年度の株式分割の発表社数は前年度比で六割増しと。例えば、富士通も今年四月一日に一株を十株に分割を行いまして、富士通の例では、今年三月二十七日の最低投資額二百四十八万円から、二十五万円に下がりました。

 この相次ぐ株式分割によって最低の投資金額が当然ながら下がるわけですけれども、東京証券取引所のプライム市場に上場している会社の最低投資額も平均約三十万円になっています。これは左の報道にも書いてあるわけなんですけれども。株式分割を行った効果で企業の株式の売買高が上がっている、そういったデータもあります。この株式分割が株高を下支えしている可能性もあります。

 一方で、この資料にはNISAという言葉がたくさん出ていますし、右にはNISAの記事もありますけれども、今年一月に新NISAの制度が始まりまして、この制度では非課税投資額の上限が拡充されました。新NISA制度の利用も順調に広まって、前の制度に比べると、口座開設のペースは二倍、購入額は三倍と好調となっております。

 やはりこの背景を考えますと、今申し上げました、株式分割による最低投資額の引下げがあるんじゃないかと考えております。新NISAの利用者も、最低投資額が下がり、より多くの銘柄への投資がしやすくなっているのではないか。新NISAを利用しているのも四十代以下の若年層や初心者の投資の方が多いため、企業側からしたら、若い世代に株主層が広がり、個人である安定株主の確保も期待できるということで、なかなか双方にメリットがあるんじゃないかと思います。

 一方で、懸念されるというか、投資が海外に大きく流れているということも報じられていますけれども、逆に、一方で、国内においても、新NISAが株式分割を後押しして、それが結果的に現在の株高を下支えをしている、そういったことを指摘する方もおられます。

 さて、金融担当大臣、鈴木大臣としましては、この現状と今後の展開についてどのような御認識でしょうか。

鈴木国務大臣 株式分割によりまして個人投資家が投資しやすい株式銘柄が増加したこと、これが足下の株高を下支えしているという指摘をする声があること、これは承知をいたしております。しかし、株価は、こうした株式市場の需給関係だけではなくて、経済状況や個別の企業活動など様々な要因によって市場において決まるものであるため、その要因について一概に申し述べることは難しいと考えております。

 その上で申し上げますと、本年一月の新しいNISAの開始以降、NISA口座の新規開設数が前年よりも大きく増加しているなど、資産形成に向けた国民の皆さんの関心が更に高まっていると実感しておりまして、金融庁としては、投資単位の引下げを含め、引き続き、個人投資家が投資しやすい環境の整備に取り組んでまいりたいと思ってございます。

 新NISAのスタートも含め、様々な要因が今の株高に結びついているのではないか、そのように考えます。

伊東(信)委員 そういった考えもあって、大臣自体もある程度そのことの御認識があるという答弁だとは思うんです。

 今、海外への流出の話もしましたけれども、国内において、NTTも一株を二十五株に分割しましたところ、最低投資額が一万円台に下がりました。NTTの島田社長も、若い個人投資家に投資してもらうためだとはっきりとおっしゃっているわけなんですけれども、アマゾンや、アルファベット、グーグルのことなんですけれども、米国株と同じような環境整備をしていく必要があるとおっしゃっています。

 ここで資料二を見ていただきますと、左のところに、望ましい投資単位は五万円から五十万円と書いてありますし、資料二の右のところなんですけれども、プライム市場会社の九割近くはこれを満たしていまして、先ほど述べたとおり平均三十万円となっています。水準は下がっていますけれども、やはり海外と比べるとまだ高いという指摘もあります。

 今申し上げましたように、NTTの島田社長がおっしゃっているように若い層に投資を広げて、分割投資を促すためには、海外と比較して最低投資額の水準をもっと下げるべきだという、こんな指摘もあるんですけれども、鈴木大臣はどのようにお考えですか。

鈴木国務大臣 個人投資家が投資しやすい環境を整備するためには、上場株式の投資単位を引き下げていくこと、これは重要であると思います。

 そして、先生の資料でもお示しをいただいたわけでありますけれども、東証では、上場会社の投資単位を株式分割を通じまして五十万円未満に引き下げるよう求めておりまして、こうした結果、現在では九割を超える上場会社が五十万円未満の水準に収まっていると承知をいたしております。

 東証としては、引き続き、個人投資家が投資しやすい環境の整備に向けて、投資単位が五十万円を超えている上場会社に継続的に働きかけを行っていくとともに、投資単位の更なる引下げに向けた方策や課題について市場関係者と検討していく方針であると伺っているところであります。

 金融庁といたしましても、こうした東証の取組を後押ししてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 後押しをしていただけるということで。

 国内の市場を活発化させるというところで、投資家のお話を今して、その裾野を広げていく話をしましたけれども、じゃ、投資先の企業も、やはり日本の企業はどうなのかというところで、今ちょっと話題になっていますラピダスについてお尋ねしたいと思います。

 経産省は、今月二日に、ラピダスに対して最大五千九百億円の支援を決定して、累計で九千二百億円の政府補助が決定しています。ラピダスは、二〇二七年に、二ナノメートルという最先端の半導体の量産を目指しております。

 経済安全保障の面についてちょっとお尋ねしたいので、本日は、経産省より岩田和親副大臣にお越しいただいていますので、多額の国費を投じて行われるラピダスに対する支援がどのような経済安全保障に寄与するか、教えてください。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 ラピダス社が二〇二〇年代後半には量産化を目指す二ナノの次世代半導体は、デバイス化、脱炭素化を進めていく上でのキーデバイスだと位置づけております。また、生成AIや自動運転だけでなく、先端医療など次世代の産業においても最も重要な技術の一つでありまして、日本の将来、産業競争力を左右するものだと考えております。

 こうした次世代半導体について、その供給を海外に依存するということは、経済安全保障上大きな問題であると考えております。ラピダスプロジェクトは、まさにその解となるものとして取り組んでいるところです。このため、これまで経済産業省としても、その開発費に対して、総額九千二百億円を上限として、その支援を決定しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 その必要性に対してお話しいただきましたし、はっきりとはおっしゃらなかったけれども、例えば、有事の際とか、国内で生産できるようにという、そういった観点があるとは思うんです。

 では、最先端である二ナノメートルの半導体を量産するためには、逆に、リスクとしてどのような課題があったりとか、そういったところは政府はちゃんと把握していて、どのような政策をしているかということをお聞きしたいのと、二五年の試作ライン稼働までに二兆円、二七年度までには五兆円が必要で、実際そうなると四兆円不足するんですけれども、この資金を調達するためにラピダスがどのように調達するかということも含めて経産省が把握しているか、この二点、三点について、続けて副大臣にお尋ねいたします。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 まず、次世代半導体の量産に向けての課題ということでございます。

 ラピダスの人的体制の構築を支援するために、例えば、国内の半導体人材の育成、確保に取り組む必要がある、このように認識をしております。そこで、経済産業省では、地域の産学官、関係機関をメンバーとする地域人材育成コンソーシアムを立ち上げて半導体人材育成に取り組んでおりまして、北海道でも既に活動を開始しておるところでございます。今後とも、ラピダスプロジェクトの成功や、我が国半導体産業の復活、半導体サプライチェーンの強靱化のために、こういった課題に一つ一つ丁寧に対応してまいりたいと考えております。

 そして、量産までの資金の確保についてでございます。

 次世代半導体の量産技術開発をこなすラピダスのプロジェクトに関しましては、先ほどもお答えしましたように、開発費に対して、総額九千二百億円を上限として、その支援を決定しております。これらのラピダスへの研究開発の支援は、毎年度、外部有識者の審査を通じまして、進捗状況やプロジェクトに必要な費用を精査し、決定してまいりました。今後とも、研究開発プロジェクトの進捗等を精査した上で、必要な場合には支援を検討してまいりたいと考えております。

 その上で、量産体制に移行していくためには、しかるべきタイミングで民間から追加の資金調達を行い、投資を行っていく必要がある、このように認識をしております。民間からの資金調達に向けた具体的な課題そしてまた対応方法につきましては、既にラピダスにおいて検討が進められていると承知をしておりますが、経済産業省としても、本件が最重要のプロジェクトであるということを踏まえて、対応の要否も含めて検討してまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 半導体の技術に関しては、本当に当初は日本の中でもできてきたわけですけれども、やはり海外に立ち遅れている現状もありますので、しっかりと下支えをしていただければと思います。

 一世代、二世代前の半導体になるんですけれども、実は、私は医療をやっていまして、ヘルニアのレーザー治療をやっているんですけれども、レーザー光線の発振も、二年前から半導体レーザーというのを使い始めまして、そこから発振されるレーザー光線の波がナノメートルという単位なんですよね。

 本当にそれ自体が半導体になるということは、半導体から発振されているレーザー光線がナノメートルという単位で、そのまたナノメートルの半導体を作るというのはかなりの技術を要すると思いますので、しっかりとその辺りは注視、下支えをしていただければと思います。

 ちょっと個人的な興味の話をさせていただいたんですけれども、医療といえば、もう一方、社会保障なんですけれども、内閣府による社会保障と財政状況への試算公表に関して、あと一分ですので、さっと質問して終わりたいとは思うんですけれども。

 二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化目標について、財政健全化目標についてお尋ねしたいんです。二〇二五年にPBを黒字化する目標を掲げております。資料四にありますように、二〇二五年に目標達成が視野に入るということなんですけれども、これに関しての大臣の見解をお尋ねしたいんです。

 やはりどうしても、一・二%の実質成長率が続いた場合でも、社会保障の増加により、これは資料五を見ていただければ分かるんですけれども、プライマリーバランスの黒字化が社会保障の増加によって縮小する場合があります、赤字となる可能性があるんです。そのためには、社会保障の給付と負担の改革がやはり望ましいとは思いますけれども、大事なところは、このプライマリーバランスの黒字化を前提に無理な緊縮財政を行うことによって、デフレの逆戻りを起こしてはならないということでございます。

 十分と市場と対話をしながら、二五年度の後も中期的にわたりプライマリーバランスの黒字化目標をしていただきたい。つまりは、私は、急にやらずに、無理をするな、ゆっくりとそういったところをしっかりとやっていただきたいと思いますけれども、もう時間が来ていますので、最後、鈴木大臣、御所見をお伺いします。

津島委員長 鈴木財務大臣、申合せの時間を経過しておりますので。

鈴木国務大臣 御指摘のとおりに、政府としては、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化を目指して、そして、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目標としているところでございます。これを着実に進めてまいるわけでありますが、その際には、経済あっての財政との方針の下で、現下の政策課題に的確に対応していくために必要な予算についてはしっかりと措置していくことも重要であると考えております。

 社会保障の件でいえば、必要な社会保障サービスの質を確保しつつ、同時に、負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合うことで、将来世代も含めて安心してサービスを享受できる全世代型社会保障制度の構築に取り組んでまいりたい、そのように考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、PB黒字化というものにつきましては、今与えられております財政健全化に向けての大きな目標でありますので、その達成はなかなか容易ではないということは認識しておりますが、それに向けてしっかりと前に進めてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 よろしくお願いします。

 時間なので終わります。ありがとうございます。

津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の埼玉の沢田良です。

 本日は、ここ最近で気になったトピックを中心に議論を深めさせていただければというふうに考えております。

 改めまして、津島委員長を始め、理事、委員の皆様、鈴木大臣、関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日も朝から、よろしくお願いいたします。

 まず一番目は、経済産業省の方で、二十九日に、四月末を期限としていたガソリン価格の高騰を抑えるための激変緩和措置、いわゆるガソリン補助金を延長するということを発表されました。延長は七回目で、累計六・二兆円という大変大きな規模の財源にもなっています。

 大臣所信も、大臣の方で、予備費の話で、一兆円でしたっけ、あるという話もあったところは分かるんですけれども、当時も同じような質問をさせていただきましたが、期間として激変緩和措置がそもそもなぜあるかといえば、余りにも急激に変更したところに、国民の皆様そして私たちの実社会が追いつかないところを、どうやって国の方でソフトランディングさせていくかというところに一番の目的がある。

 そして、今まさに政府はGX、カーボンの方にどうやってしっかりと経済社会を追いつかせるかというところを考えていかなきゃいけない、ある種、化石燃料に頼らないようにやらなきゃいけない。総理も、当然経産大臣もこの答弁はずっと続けられておりまして、右手では、GX債なんというものがあって、新たな投資をしっかりとやっていこう、そして、左では、化石燃料が使われてしまう理由にもなってしまうようなところがある。

 では、国民生活全体でいうと、どうしても、インフレの部分で低所得者の人をサポートしようと考えたときに、例えば六・二兆円あれば、軽減税率で食品の消費税をゼロにするなんということも実はできるようなレベルのお金になってきているということを考えたときに、私はやはり、政府としての方向性、経済産業省としての方向性、そして、もちろん、予備として見ているということのあった大臣所信も分かるんですけれども、改めて、この延長に対して大臣としてお言葉をいただきたいなというふうに思っているんですね。

 アメリカでは九か月で同じような措置をやめた。フランスも九か月、イタリアは十か月、ドイツはかなり早く、三か月でやめているというところがあります。財政という面でも、先ほどうちの伊東委員からもありましたが、プライマリーバランスの黒字化を含めて、かなり財務省の方では、しっかりと、どうやって財政の持続可能性であったり健全性を高めていくかということをやっていただいているというふうに思います。

 私はやはり、こういったところで、勇気を持って、財務大臣から、延長したということにおいて強い発言をいただければなというふうに思うんですけれども、どうでしょうか、大臣。

鈴木国務大臣 燃料油の激変緩和措置でございますが、これは中東情勢の緊迫化などを背景とした価格高騰リスクや様々な経済情勢を見極めるために、令和六年四月末までとしていた措置を一定期間延長しているところであります。

 この事業につきましては、国際的な原油価格の急騰による国民生活等への影響を緩和する観点から、令和四年一月に一時的な緊急避難措置として開始したものでありますが、これまでに総額約六・四兆円という巨額の予算を計上していること、我が国の財政が累次の補正予算の編成等によって一層厳しさを増していること、これも事実であると認識をいたしております。

 こうした問題意識や、脱炭素に向けた国際的な潮流も踏まえれば、この事業はいつまでも続けるべきものではない、そのように考えておりまして、中東情勢の緊迫化を背景とした価格高騰リスクや賃金動向等も含めた様々な経済情勢を見極めながら、先生御指摘のとおり、しっかりと出口戦略を描くことが重要であると考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 まさに財務省の方でしっかりと財政の方を握っていただくという形の中で、厳しい姿勢を示していくというのは、当事者である、このガソリン補助金で恩恵を受けている方、またこれから冬も近づいて、灯油を含めて怖いというふうに考えている方もいらっしゃる現状で、どうしても厳しい判断を政府としても取れないタイミング、いろいろなことがあるというのは分かっているんですけれども、やはりこれから、日本銀行もそうですし、我々財務委員会も、どうやって確たる強い日本の経済を好循環に回していくかを考えたときに、厳しい判断も是非大臣の方からしていただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 続きまして、日産自動車が、エンジン部品などを製造する下請メーカー三十六社に対し、納入時に支払う代金、合わせて約三十億円を一方的に引き下げていたことが下請法に違反するとして、三月、公正取引委員会から勧告を受けました。問題を受けて、賃上げを行った企業を対象に法人税の負担を軽減する賃上げ促進税制の優遇措置を利用する資格を失ったということが、これは報道がなされました。

 この優遇措置を大企業、いわゆる資本金十億円以上、従業員数千人以上の法人が利用するには、取引先への配慮などに関する経営方針を公表し、適正な取引価格の実現を、パートナーシップ構築宣言、こういう専用サイトがあるんですけれども、この専用サイトで表明する必要があります。三月にこのサイトから日産の掲載が削除されました。一年間は再び掲載することができず、税制の優遇を受けることができなくなります。要は、三十億円を下請に無理をしてもらって、結果として日産はかなり多くの税制優遇を手放すということになったということで。

 私は賃上げ税制自体を過去にも何度も取り上げさせていただいていて、どちらかというと懐疑的だったところも多くありました。例えば、私も、自分が会社をやってきたときに、税金を安くするから賃金を上げてというのに会社のサービスの収益の体質とか構造が耐えられるかというと、ちょっとやはり違うところがあるなと。

 ただ、収益があるにもかかわらずちゃんと賃上げさせていない企業にはある一定の効果があるんじゃないかなと。ある種、内部留保がよくたまっている、そういったものにおいても現金化しやすいものであったり、現金であったりとか、そういう内部留保のある企業さんにとっては一部効果があるというふうに思っていたんです。

 私、今回の一例はとてもいい一例だと思っていて、日産自体がやったことは決していいことではないと思います。ただ、事例として、こうやってパートナーシップ構築宣言をした世界に名だたる大企業が、しっかりとした下請に対するおつき合いをしないと、賃上げ税制、いわゆるこういったインセンティブが利かなくなるよということが一つ効果として出たというのは、私は賃上げ税制の大きい効果の一つだと思うんですね。

 ただ、報道を見ると、複雑な仕組みがやはり難しいのか、解説しないようなメディアがあったり、あとは、解説があっても、私の地元でも同じことを言われたのは、よく仕組みが分からない、賃上げ税制でどれぐらい日産は損をするんだろうという話を聞いたり、そういうことを聞くと、正直、今回の具体例ということではなくて、事例だけでも周知広報していくことで、少しでも多くの大企業が、もちろん賃上げにも動いていただく、そして下請とのつき合いもしっかり頑張っていく、そういうことになっていくのではないのかなというふうに思うんですね。

 今、経産省さんの方で下請Gメンという仕組みで頑張っていただいていることは、私も、現場現場の企業さん、特に中小企業なんかで話を聞くと、意外に効果があると。声をかけていただいているところで声を上げやすくというよりも、そういった雰囲気が少しずつ高まっている。ただし、やはり人海戦術的なところもあって、全ての産業や全ての業界に下請Gメンのある種勢いというか管理が届くかというと、これまた難しい問題もあるので。

 私は、今回の賃上げ税制のいい意味での効果の部分は、やはり大きな意味で周知広報というところを財務省さんの方に頑張っていただくことができないのかなというふうに思います。財務大臣、どうですかね。

鈴木国務大臣 賃上げ促進税制につきましては、沢田先生から今御説明もあったわけでありますが、一定規模以上の大企業に対して、下請企業との適正な取引の実施を含めましたパートナーシップ構築宣言の公表というものを適用要件と定めているために、仮に下請法に基づく公正取引委員会の勧告が行われた場合には、この宣言の掲載が取りやめとなり、その事業年度には賃上げ促進税制の適用が受けられないこととなります。こうしたことを広く知っていただくということ、これは御指摘のとおり大切なことだと思います。

 こうした点も含めまして、賃上げ促進税制の仕組みにつきましては、これまでも、経済産業省を中心に、ガイドブックやQアンドA集を作成し、ホームページで広報した上で広く配布しているほか、パートナーシップ構築宣言を公表している企業へメールにより周知するなど、周知広報に努めているものと承知をしております。

 今後とも、経済産業省等の関係省庁と連携をしながら、下請事業者との関係を含め、賃上げ促進税制の仕組みについて周知広報に努めてまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 是非、もうちょっと踏み込んでいただいて、前にデジタル庁さんなんかは「スパイファミリー」なんという漫画を使って広報するなんということをやったんですけれども、多分財務省さんの広報全体は奇をてらったようなものは余りないと思うんですけれども、是非、大臣の感覚的なものを飛び越えて、どうやって周知広報をさせていくかということは攻めていただければというふうに思っております。

 ちょっと一言添えさせていただくと、先ほどのガソリンの補助金と一緒で、賃上げ税制も大分長くやっているものとなっておりますので、是非、大臣、ある種出口戦略というところを、今まさに上がっているタイミングでは言えないと思うので、そこもしっかり考えて今後動いていただければというふうに思っております。

 次の質問に入らせていただきます。

 財務省、金融庁が所管する会議等において中国など他国の影響を受けた者がいないかということを確認したいんですけれども。

 今、再生可能エネルギーの規制改革の内閣府のタスクフォースで、資料の一部に中国企業のロゴマークの透かしが入っていたということが起こりました。単なる事務的なミスとも言われているんですけれども、これは、はいそうですかというところに、私はやはり危機感を持って対応しなければいけないというふうに思っております。

 世界的な半導体不足から始まった経済安全保障という言葉が市民権を得て、この安全保障という言葉、やはり多くの方が当たり前のように耳に聞くようになったんじゃないかなというふうに思っております。大国による侵略や予想される台湾有事、世界が宇宙の覇権を争い、中国は当たり前に日本の領海を侵犯し続け、今このタイミングにも、もちろん、公的な機関も民間の機関もサイバー攻撃がどこかで行われている、これがまさに今の日本の現実です。

 防衛費の増額や、先日衆議院本会議でも賛成多数となったセキュリティークリアランスの法案など、今の日本は危機感というものを、現実的にどう向き合っていくのかという段階に国会は来ているというふうに考えております。岸田総理が進める今のこの流れと私の問題意識は全く一緒です。

 特に、エネルギー自給率の低い我が国にとって、エネルギー戦略という国家の根幹に関わることに中国の影響が及んでいた可能性が排除できません。本件は、現在、内閣府において調査中とのことですが、徹底的な調査をしていただきたいと考えております。

 もちろん、財務金融委員会の中で、財政と金融というものは、やはり我々国家のまさに根幹に関わるところでもございます。改めて、財務省、金融庁が所管する会議等において中国など他国の影響を受けた者がいないか、政策の意思決定に他国の影響が及んだ事案がないかの調査をするというふうな意思があるのか。

 また、今の、いろいろな、安全保障の関係も含めて、財務大臣はかなり、一番長く岸田政権の中で大臣をやられていると思います、そういった中で、安全保障に関わる、財務省、金融庁の管轄の中での強い意気込み等があったら教えてください。

鈴木国務大臣 沢田先生御指摘の点につきまして、まずは、現在、内閣府を中心に行っております御指摘の個別案件に係る調査を踏まえて、その上で、財務省、金融庁としてどう対応したらいいのか、そうしたことを適切に考え、対応したいと思っております。

 いずれにいたしましても、複雑な安全保障環境の中において、我が国の施策が他国から不当な影響を受けること、これはあってはならないことだ、そのように認識をしておりまして、引き続き、透明性、公平性の確保に努めながら、そうした観点を踏まえて施策を進めてまいりたいと考えます。

沢田委員 ありがとうございます。

 是非、全ての分野において、いま一度、平和と水がただだったという日本の危機感の薄さから、しっかりと、まず我々から、どんなところからも国民の生命や財産を守っていくんだという強い意思が出ればというふうに思っております。

 続きまして、日銀が金融緩和の正常化を進める中、まだ政府の方からはデフレ脱却宣言が出ていないという状況が続いております。

 日本で消費者物価の上昇が始まったのが二〇二二年の四月からということで、今から二年前のことなんですね。米欧で二〇二一年の春から始まっていたインフレがコストプッシュ型で、エネルギーを含めていろいろなものが上がって、もちろん、自国でのインフレということではなく、巻き込まれた形のインフレであるというようなところであったんですけれども。

 直近では、日本銀行の方が、政策決定会合において、やはり前向きに、どうやって今の日本の現状、それから、これからについても物価安定目標二%を確度を持っていける、こういうふうなところも踏みつつ、正常化に動いております。

 個人的な疑問でもあるんですけれども、ここまでいろいろな事実が積み上がってきている中、なぜそもそもデフレ脱却宣言が出ないのか。大臣、どう思われますか。

鈴木国務大臣 日銀の先般の金融政策決定会合では、マイナス金利の解除を含めました大規模緩和策の修正を行うとともに、当面は緩和的な金融環境を継続することなどについて決定がなされたと理解をしております。

 その上で、政府としては、物価が持続的に下落する状況を脱して、再びそうした状況に戻る見込みがないことをもってデフレ脱却である、そのように考えておりまして、マイナス金利解除など日銀の金融政策が変更されたことをもって直ちにデフレから脱却したと判断するのではなく、物価の基調や背景を総合的に考慮した上でデフレ脱却の判断をしていきたいと思っております。

沢田委員 是非、一日でも早く上げていただきたいなというのも、やはり雰囲気の醸成というのは私はすごく大切だなと思っていて、私自身、いろいろな理由で、デフレが続いてきた理由というものは研究はされていると思うんですけれども、一番はやはり政治の責任だなというところを感じていて、それが、いろいろな理由が少子高齢化も含めてずっと続いている、こういったものを国民の皆様にずっと押しつけてきた経緯があるというふうに思うんですね。

 私が駅で挨拶をしていると、税金が上がってもいいんだよ、上がってもいいからちゃんとやってくれ、実はこの声が一番大きいんですね。国民の皆様は、税金が上がるというようなことを受け入れている状態なんですね。これから下がっていくだろうとか世の中がよくなるだろうというよりも、これから負担が上がっていくということを受け入れてなお、今何とか目の前で動いていかなきゃいけないという状況をつくり出してしまったことが、一番お金を使わなくする、お金をため込む、それから後人のためにお金を取っておく、そういうことで家計の資産が動かなくなった理由だというふうに私は考えております。

 だからこそ、やはり雰囲気が大事というときに、まさに春闘も含めて賃金の上昇が見えてきた、そして経済の動向も少しずつ見えてきた、こんなときに、政府全体で、デフレ脱却だ、次に向かって、経済構造と、あと、皆さん、お金をどんどん使ってくださいというメッセージを出すいいタイミングではないのかなというふうに思いますので、是非、総理に対しても、大臣の方から、そろそろ出しましょうということを一言いただければというふうに思います。

 続きまして、日銀の審議委員の選定に際し、新しい視点を取り入れる必要性についてお伺いさせていただきます。

 今、日本銀行は、政策決定会合では、総裁、副総裁を合わせて九名の委員による合議でいろいろな物事を決めているということになるんですけれども、この日本銀行の審議委員の任命、これは、日銀法の第二十三条第二項、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他学識経験のある者のうち、両議院の同意をもって内閣が任命するというふうになっているんですね。

 過去から、枠があるんじゃないかという話があったり、いろいろなことがあったんですけれども、私が今回問題意識を持った一番は、日本銀行がリークをしているんじゃないのか、政策決定会合について。これは多くの方が言っていたことで、ただし、日銀としてはリークはしていないと言うわけですね。

 ただ、リークはしていないけれども情報は出しているということを考えたときに、本来、政策決定会合というものは、決まったことを粛々とやるものではなくて、ある程度識見の高い方々が議論をして、まさか事前の打合せよりも大分話が変わったということが起こるぐらいの、けんけんがくがくな最先端の議論をしていただくような場であるということを含めて、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他学識経験のある者という方が入っているんだと私は認識しているんです。

 そうでないとなると、要は、決まった流れのまましか決定をしないというふうになれば、事前の情報をつなぎ合わせると答えにたどり着いてしまう。又は、じゃ、本当にその九名は必要なのかどうかという議論になってしまうところを考えたときに、やはり、決められた中でやっていることよりも、もうちょっと踏み込んだ概念が必要なんじゃないかな。

 例えば、いろいろなジェンダーの問題があり、女性の枠が必要だよねということがあって、女性が一人必ず入るようになったとか、学者枠であったり、当然、企業を含めて金融業界の人材を入れていかなきゃいけないというような、いろいろなことが慣例的にずっと継続されていることで選ばれているんですけれども、気づいたら、そういった今までの業界の方々がある程度実績を出すには年齢が必要になってくるんですね。そうすると、今、実は日銀の審議委員の平均年齢は六十五歳にまでなってきちゃっているということで、ちょうどこの前、日銀報告のときに植田総裁とちょっとお話をさせてもらったら、総裁はもう七十を超えているということでちょっと恐縮されていたんですけれども。

 今、金融業界というものは大変すばらしい進化を遂げているというところで、そのときにも紹介させてもらった例で、コンサルティング会社のアクセンチュアという会社の新たな分析の結論が報道されて、銀行業界はほかのどの業界よりもAIの恩恵を受ける潜在的な可能性があり、行員が現在費やす勤務時間のうちAIの影響を受けにくい業務の時間は二七%しかないというふうに試算しているんですよね。

 これを考えると、もしかすると、日本も、銀行というのは大変大きな力を持っていますけれども、要は七三%の環境が激変するということも、これからの人口減少、働き手不足の中で、先進的に金融業界がどんどん進んでいけば、全く私たちが思ってもみないような環境、もちろん収益性が上がったりすることも含めて、見えない景色というものが生まれていくということはもう想定していかなきゃいけないと思うんですね。

 なので、今の銀行で又は今の証券会社で実績を上げてきた方がぽんぽんと入るよりかは、例えば台湾のオードリー・タンさんなんかは結構有名になりましたけれども、ああいった若くてもしっかりと学術的研究を行っていたり実績のある方、こういった方をどんどん登用するような入口を、内閣府の方では考えていただければなというふうに思っているんですね。

 なので、特に、やはり若い方への期待値というのも、世界でも大統領が三十代でなるということも実例が出たり、女性が活躍できる社会ということは結構長きに言われているんですけれども、若者が活躍できる公的機関や若者が活躍できる社会というのはメッセージ性がちょっと少ないと思うんですね。そういったところも含めて是非考えていただければと思うんですけれども、御意見があったらお願いします。

須藤政府参考人 お答えいたします。

 日本銀行の審議委員につきましては、先生からもお話がありましたとおり、内閣が任命することとされておりまして、内閣として、人物本位で、経済、金融分野で高い識見を有する方を選定しているところでございます。

 具体的な人事のプロセスにつきましてはお答えは差し控えさせていただきますけれども、必要となる情報を収集した上で、内閣としての最終的な人選がなされているものと承知をしているところでございます。

沢田委員 今説明をいただいたんですけれども、是非そこに、要は、新たにそういった方々も選任していただけるようにしていただければ。

 我々が同意人事で、衆議院、参議院の方でさせていただくんですけれども、その前にまた議運に情報が来てという流れがあるんですけれども、本当に多くの国会議員の方は、一体この人たちがどう選ばれたのかということが全く知らない状態でも、本会議で同意人事がなされるということがあるというふうに思っています。

 なので、選任の時点で是非御配慮をいただいて、特に、やはり若い世代への期待、特に人口減少、少子高齢化の中です。私、頑張らなきゃいけないのは、自分も含めて若い世代は頑張らなきゃいけないと思うと、そういった方が一人審議委員に選ばれるだけで、全く違ったメッセージを出せるというふうに思うんですね。

 内閣で大臣を三十代にする、四十代にすることはとても難しいことだと思いますけれども、日銀の審議委員が三十代、四十代の、今まさに新進気鋭の学者であったりとか研究者が出てくるようなことがあれば、いろいろな意味での雰囲気づくりになるとも思っていますので、是非考えていただければというふうに思います。

 続きまして、昨今の政治と金の問題に関わる国税当局の対応についてです。

 私も、日本維新の会という政党にあって、今までいろいろな答弁を見させていただきました。当然、今ここに委員にいらっしゃる方々の本当に鋭い御指摘、私は、一般国民として見ると、委員の皆さんが指摘する方が正しい、けれども、個別事案だから答えられないということであったり、やったかやらないかも答えられないというようなことになっていて、見えないということに対して、正直じくじたる思いはあります。

 あるんですけれども、ただし、公務員の皆さん方の仕事であったり、業務に対して影響が出てしまうほど今いろいろなことが起こっているとしたら、それも我々委員として知らなきゃいけないかなというふうに思っています。

 今、確定申告が終わったんですけれども、今回の国税庁の対応、いろいろなものに関して、確定申告の時期や今に至るところまでで、トラブルであったりクレームであったり、そういったものが積み上がっているようなお話があったら教えてください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 確定申告への対応に当たりまして、税務署におきましては、例年、納税者の方々から様々な意見をいただいているところでございます。

 令和五年分の確定申告におきましても様々な御意見をいただいておりましたが、確定申告の受付やあるいは相談対応等は着実に実施をされ、事務運営上、特段の支障が生じることなく対応を終えることができたところでございます。

 今後とも、国税当局といたしましては、納税者の方々からの相談等について適切に対応してまいりたいと考えてございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 特段何か報告はなかったんですけれども、元々、国税といえば「マルサの女」という、私、昔、伊丹十三さんの映画を見て、本当に何かすごい現場だなと思いつつ、また、嫌われてしまうというか、大変な、しんどいところだなと。いろいろと国税の方にお話を聞いたら、殺してやるなんということを恨まれて言われるなんということもある現場であるということを考えると、もしかしたら、国税庁の皆さんは、ほかの省庁の方よりは、メンタルという部分では、ある程度いろいろなことを言われるということは慣れていると思うんですけれども。

 私、三日前です、ちょっと怖いことがあったのは、帰りに電車で帰るときに、横に座られていたおじいちゃんが、スマートフォンで最近の動画を見ているんですね。そうしたら、ちょっと個人名を出して申し訳ないです、星屋次長が出てきて、そこに対して、ずっとおじいちゃんは大きい声で電車の中で文句を言うというのを見たときに、私は結構怖いなと思ったんですね。

 当然、公務員の皆様方にもプライバシーがあって、役職というものに対しては、当然ここに出るという立場があるとは思うんですけれども、もう個人名まで出て、こういうふうな形で指摘を受けることが個人の方々にまで浸透していってしまっている。

 当然、我々野党としても、行政の監視というところで指摘をしていかなきゃいけないことは多々あるんですけれども、じゃ、例えば次長個人に対してそういった怒りであったり感情というものが向かった場合に、これは本当に、我々、そこを誘導していっていいのかというところを思うんですね。

 一応確認なんですけれども、次長、個人として、最近本当にテレビでもいろいろなところでも出られていると思うんですけれども、何か自分の中でちょっとなというふうに思うようなことを言われたとか、そういうことはありませんか。

星屋政府参考人 御心配いただきましたが、委員御指摘のようなことは特段なかったかと思います。

沢田委員 よかったです。

 ただ、よかったんですけれども、その後、私、心配になって調べたら、やはり次長はいろいろな結構厳しい答弁をされている役割になるので、インボイスの件であったり、いろいろなところで、星屋次長の名前で検索できるぐらいにもうなっちゃっているという状況があるんですね。

 昨今、ユーチューブなんかがすごく伸びて、職務質問した警察官の方をずっと撮り続けて嫌がらせをし続けるようなことがあって、これも警察の方と一度お話をさせてもらったとき、本当に困っていますという話を聞いたんですね。

 これもオンラインでやっているので、もう次長の話も出ちゃいますし、公に出ているものではあるんですけれども、やはり私は、公務員の皆さんのプライバシーの件に関しては今後丁寧に議論していかなきゃいけないのと同時に、しっかりと守っていかなければいけないなというふうに考えております。安倍元総理があのような銃撃に遭うようなほど、私たちが当たり前に思っていた暮らしは、ちょっと変わった方向に行っているものもこれから出てくるというふうに私は思っております。

 そういった犠牲に、公務員の皆さんが毎日御自身の役割を御尽力いただいていることに敬意を持つと同時に、我々の方で守るための仕組みづくりということも今後考えていきたいというふうに思いますので、是非御協力いただければと思います。

 次長、改めてですけれども、本当に大変なお仕事、いつもありがとうございます。

 時間となりまして、以上となりますが、あと一分ありますね。もう少し時間があるので、もう一問させていただきます。

 今、社会保障の件について財務省の方で建議というものを上げているんですけれども、この内容、何か大変すばらしいなというふうに私は思っていて、時間がないので紹介はできないんですけれども、大臣、見られていたら、それに対する所感というか所見をいただければと思います。

鈴木国務大臣 昨年十一月の財政制度等審議会で取りまとめられました建議におきまして、特に全世代型社会保障に向けた改革につきましては、医療提供体制、保険給付範囲の在り方、能力に応じた負担の観点から検討が必要、そういう提言が示されております。

 建議で示されました考え方は、昨年末に閣議決定されました全世代型社会保障に係る改革工程にも通ずるものでありまして、負担能力に応じて全ての世代が公平に支え合うことで、将来世代も含めて安心してサービスを享受できる全世代型社会保障の構築に向けて、この改革工程に盛り込まれた取組について関係省庁と連携をして着実に進めていくことが重要である、そのように考えているところです。

沢田委員 私はこの建議の存在を同僚の仲間から聞いて、財務省の取りまとめがかなり攻め込んでいるということで、私はすごくいい取組だなというふうに思っております。

 一つ紹介すると、金融所得、金融資産を勘案して、公平な負担をどういうふうに考えられるかなんという問題提起もあるところがございました。是非こういった部分も、今後時間のあるときにまた深めさせていただければというふうに思っております。

 今日もありがとうございました。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子俊平君。

金子(俊)委員 おはようございます。自由民主党の金子でございます。

 質問の機会をいただきまして、皆様方に感謝をしつつ、質問をさせていただきたいと思います。

 税関行政に関しまして、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 大臣政務官をやらせていただいておりましたけれども、あちこち視察をさせていただきましたけれども、最近の税関業務は主たるものがだんだん変わってきたのかなというふうに思います。今までは、どちらかというと入国のときにしっかりと見るというものがメインの仕事だったんだろうというふうに思いますけれども、コロナ禍で急増する貨物需要、また、入国時も、特に金なんかが有名ですけれども、非常に手口が悪質化、巧妙化してきているのかな、そして、出国時の検査もまた重要性が求められてきているんだろうというふうに思います。

 なかなか知られていないことなんですけれども、税関で人事院総裁賞というのを受賞されているはずでございます。門司税関厳原税関支署でありますけれども、これはどのような事案なのか、お答えください。

江島政府参考人 お答え申し上げます。

 門司税関厳原税関支署は、国境の離島である長崎県対馬に設置された税関官署でございまして、限られた人員で外国人旅客の旅具通関業務に従事するなど、離島の地において国民の安全、安心な社会の実現のため、日々厳格な取締りに取り組んでいるところでございます。

 ただいま御指摘ございました人事院総裁賞を受賞した事案でございますけれども、この厳原税関支署職員が、平成二十六年十一月、盗難被害に遭った市の指定有形文化財である仏像等を出国時の手荷物検査で発見、摘発し、文化財の国外流出阻止に貢献したものでございます。先ほど申し上げた税関支署職員による日々の取組が摘発という形で実を結んだものと考えております。

 今後とも、離島の地における取締りを含め、安全、安心な社会の実現を果たせるよう、水際取締りに万全を期してまいります。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 よくニュースでもいっとき流れていましたけれども、国外に流出してしまった我が国の重要文化財を返すとか返さないとか、何か裁判しているとか、そんなニュースが流れていましたけれども、一旦国外に重要文化財を含めて大事なものが流出してしまったら、取り戻すのに手間がかかる、時間がかかる。本当にそういう部分では画期的な事案だったんだろうというふうに思いますし、また、この模範行為を是非全国で広めていっていただきたいな、また、職員の皆様方にも改めて敬意を表させていただきたいというふうに思います。

 そういう中で、コロナが明けまして、我が国もインバウンドが物すごい増えてきたんだろうというふうに思います。私の地元の飛騨地方にも、コロナ禍では信じられないぐらいの観光客が日々戻ってきておりますし、全国各地を見れば、もうオーバーツーリズムになっているところもあるんだろうというふうに思います。そういう中で、ありがたい話ではありますけれども、観光客の皆さん方がお金を落としていっていただける。タックスフリーを掲げる小売店というのも、地方部にも最近増えてきたんだろうなというふうに思います。

 この外国人旅行者向けの免税制度というものは、本来、その外国人が国外に持ち帰る目的で購入する物品に関しましては対象になっている。現行制度上も、出国時に免税購入品を国外に持ち出すことを証明することが必要とされているんだろうというふうに思いますけれども、お伺いさせていただきます。旅行者などの免税品購入者が出国する際、税関ではどのような対応をされておりますでしょうか。

江島政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年十月の免税販売手続の完全電子化により、税関において免税購入者の購入記録情報の把握が可能となり、免税購入者が出国する際に旅券提示を行うことで免税購入情報と免税購入品が一致しているかどうかの確認を行っております。

 税関においては、空港等において免税購入者が免税購入品を輸出しないことを確認した場合、消費税法の規定に基づき、その免除された消費税相当額の賦課決定を行っております。

 引き続き、国税当局とも緊密に連携しながら、制度の適正な運用に努めてまいります。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 入国、出国でそれぞれ人員が限られている税関ですから、それなりに取締りは厳しいんだろうというふうに思います。

 免税品を購入した方が出国するときに購入した免税品を持っていなくて、今おっしゃったように、税関において消費税の賦課決定を行った実績及び税関で賦課決定を行った者、若しくは免税品購入者が納税せずに滞納となってそのまま海外に帰っちゃったとか、いろいろなことがあると思いますけれども、その辺の実績を教えていただきたいと思います。また、特に悪質な事例があったら、可能な限りで結構ですので教えていただきたいと思います。

江島政府参考人 お答えいたします。

 令和四年度に税関において消費税の賦課決定を行った実績は三百六十七件、約二十二億円となっておりまして、そのうち滞納となっているものは百五十三件、約二十一・三億円となっております。

 これらの実績のうち、一億円以上の免税購入者に対する消費税の賦課決定は五十六件ございまして、そのような高額購入者の中には、長期間にわたってブランド品のバッグや高級腕時計、化粧品等多量の免税品を購入している者もおりまして、転売が疑われるような悪質な事案が確認をされております。

 税関といたしましては、輸出物品販売場制度を悪用しようとする事案につきましては引き続き厳正に対応するとともに、滞納となった事案について再入国時に納付の慫慂を行うなど、国税当局等とも緊密に連携しながら対応してまいります。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 転売が濃厚というような言い方を今していただいたと思いますが、基本的にそれは間違いなく転売なんだろうなともう断定しちゃってもいいんだろうというふうに思います。

 特に、今二十億円という数字をおっしゃっていたと思いますけれども、本当にこれは驚くべきことであろうかというふうに思います。一人がそもそも何億円も買物して、まあ、ちゃんと持ち帰っていただければいいんだろうと思いますけれども、それを我が国で流通をさせる。しっかりとまた取り締まっていただきたいと思いますし、今捕捉されているその二十億円というのも、ある意味、氷山の一角なんだろうなと。全てを把握することは、今のところ不可能なんだろうというふうに思います。

 国税の方に教えていただきたいと思います。

 制度を悪用した不正事案に関しまして、現在国税の方ではどのように御対応をしていただいているのか。また、併せて、消費税の賦課決定を行った実績も含めて御指導を賜ればと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税当局といたしましては、輸出物品販売場制度を悪用した不正事案につきましては特に厳正な対応が必要と考えておりまして、電子化された購入記録情報を含めまして、様々な資料情報の収集、分析等を行い、課税上問題があると認められる場合には税務調査を実施するなどいたしまして、不適正な免税販売の是正に努めてきたところでございます。

 調査の結果、不適正な免税販売を把握した輸出物品販売場につきましては、追徴課税や許可の取消しを行っております。

 また、輸出物品販売場で免税購入した物品を国内転売するような事案につきましては、直近の令和二事務年度から四事務年度の三年間で合計五十件の税務調査を実施しておりまして、購入者に対しまして消費税を賦課決定するなどの取組を行っておりまして、この三年間で合計十六億円を賦課決定しております。

 引き続き、制度を悪用した不正事案に対しましては、税関当局とも緊密に連携し、厳正に対応してまいりたいと考えてございます。

金子(俊)委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いをいたします。

 ただいま、関税と国税、それぞれ当局から御説明を賜りました。今の現行制度の中で本当に最大限頑張っていただいているというのは御説明の中で重々分かってきましたけれども、やはりどこかで限界が出てくるんだろうというふうに思います。特に、免税店で一〇%消費税部分を減らして販売をするという今のやり方。

 一方で、世界に目を向けてみますと、特にEUなんかは一番有名でありますけれども、販売時においてはしっかりと消費税を課税する、出国するときにリファンドというやり方で返金をするというやり方をしている地域もあるというふうに考えております。

 やはりそろそろ我が国も、やり方を根本的に考えていかなければいけないんだろうなと私は思っております。この免税販売制度の不正利用を踏まえて、令和六年度の税制改正大綱の、制度の見直しが決まったというふうに承知しておりますけれども、現時点での政府の検討状況というのを教えていただきたいと思います。

青木政府参考人 お答えします。

 先ほど答弁がありましたけれども、外国人旅行者向けの免税制度の不正利用の状況が明らかになってきておりまして、こうした状況に対応するために、昨年末に閣議決定をされました令和六年度税制改正の大綱におきまして、出国時に税関において免税購入物品の持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度へと見直しをして、令和七年度税制改正において制度の詳細について結論を得ることとしております。

 こうした制度の導入に当たりましては、大綱に基づきまして、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分に配慮しつつ、空港などでの混雑防止の確保を前提とする必要があるというふうに考えておりまして、今後、関係省庁や関係団体とよく連携して、制度の詳細を検討してまいりたいというふうに考えております。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 今、令和七年の税制大綱で、このリファンド方式というものをある程度方向性を明示していただけるんだろうというふうに理解をさせていただきましたけれども、不正に消費税を免れて利益を得るということをなくすという意味合いでも、しっかりとまたやっていただきたいというふうに思います。

 一方で、これは人員の問題でどこまで、税関の職員の皆様方は限られた人員ですから、これをカバーできるのか、また、その仕組みづくりという部分でも是非関税と国税としっかりと連携して、新たな制度というものを導入に向けてお示しを今後賜ればなというふうに思います。

 最後に、新制度の下で免税購入者が消費税の還付を受けるためには、税関における国外への持ち出しの確認が必須になってくるんだろうというふうに思います。

 何度も申し上げましたけれども、出国検査のウェートが非常に増えている中で、税関の役割というのはますます重要になってくるんだろうと。しっかりと、この税関の職員の定員増加というものに関しても、また財務省で関係各所に強く働きかけていただくことをお願い申し上げまして、時間になりましたので、終わらせていただきます。

 大変お世話になりました。ありがとうございました。

津島委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 早速質問に入ります。

 まず初めは、賃上げに取り組む中小企業に対する金融支援の強化についてということでお伺いしたいと思います。

 日本の経済がデフレから脱却するために、持続的な賃上げ、所得向上、これによって家計を潤していくということが最も重要だというふうに認識しています。したがって、この賃上げの流れが大企業のみならず中小・小規模事業者にも広がっていけるかどうか、ここが鍵だと思っております。

 我が党、公明党においては、昨年の十月に、中小企業等の賃上げ応援トータルプランとして二十の具体策を提言しました。このうち、中小企業の賃上げに金融面からの支援が強化されたという認識に立って質問していきたいと思います。

 今年の二月十六日に賃上げ貸付利率特例制度が創設をされ、運用開始になりました。日本政策金融公庫の各種の融資制度においても、二・五%以上の賃上げを行う見込みの中小企業については金利を二年間〇・五%低減するものでございまして、経営環境が厳しい中小企業の皆様の賃上げを応援する強力な支援になる、このように私は期待をしておりますが、この特例制度の趣旨とともに、どのような方が対象で、どのようにすれば支援が受けられるのか、御説明いただきたいと思います。

赤澤副大臣 稲津委員と、中小企業に賃上げの動きが広まることの決定的重要性についての認識は、もう完全に共有をしているものでございます。

 今御指摘の日本公庫等の賃上げ貸付利率特例制度については、中小企業者の賃上げの取組を促進するため、従業員の賃上げを実施する中小企業者の金利負担を軽減するというものでありまして、御指摘のとおり、昨年十一月に閣議決定した総合経済対策を踏まえて、本年二月より取扱いを開始していると承知をしております。

 この制度においては、従業員に対して支払う賃金等の雇用者給与等支給額が二・五%以上増加する見込みのある事業者を対象に、日本公庫等の各融資制度にて定められている利率から融資後の当初二年間の金利を〇・五%引き下げることとしております。

稲津委員 そこで、この制度は、今御答弁がありましたように、二月の中旬に始まったばかりということですから、それほどまだ数は上がっていないのかなというふうに思いますが、中小企業、小規模事業者を含めて、現状の申込みの状況について伺っておきたいと思います。

 もう一つは、対象となる企業への周知のことなんですね。この中小企業向けの賃上げ促進税制も含めて、いろいろな支援策とセットで周知をしていくことで活用の促進が図られる、このようにも考えております。

 我が党としては、地方版の政労使会議を始め、あらゆる機会を通じて支援策の周知、活用促進を図るべき、このように訴えております。この周知の進捗状況についても併せてお伺いさせてもらいます。

赤澤副大臣 日本公庫等における賃上げ貸付利率特例制度の活用実績についてのお尋ねでございます。

 制度が開始した本年二月十六日から三月末までで、件数は約千六百件、金額は約四百四十億円となっていると承知をしております。二月十六日からということで、半月ということを差し引いても、二月から三月にかけてかなり大幅に増えているところがございます。

 この制度については、政府から日本公庫等に対して活用を促進するよう要請しているところであります。こうした要請も踏まえ、日本公庫等において、ホームページや貸付制度のパンフレットを活用し、事業者の方々や認定支援機関などに対して制度の周知を実施しているほか、融資相談の中でも、事業者の状況等を丁寧に把握をして、必要に応じて同制度の利用に向けた提案を行うことでその活用を促していると承知をしております。

 中小企業や小規模事業者における賃上げを促進していくため、様々な機会を通じて各施策を周知していくことが重要であると認識しており、政府としても、引き続き、本制度が幅広く活用されるよう周知等を徹底してまいります。

稲津委員 千六百件、そして四百四十億円ですか。二月ですから、スタートは上々なのかなと思います。

 いずれにしても、私が先ほど申し上げましたように、支援策とセットで周知していくということが活用を促進することになると思っていますので、引き続き取り組んでいただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 次は、新NISAについて、まず普及状況から伺っていきたいと思います。

 一月から新NISAがスタートをして、国民の皆さんの資産形成に大きく貢献していく、このように思っています。貯蓄から投資を促すことによって、経済の好循環が加速される、これも大変期待をしているところでございます。

 そこで、まず、新制度になって以降の新NISAの普及状況についてお伺いしたいと思います。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 NISAの本年一月以降の普及状況でございますけれども、日本証券業協会が大手証券十社について速報値を発表しております。これによりますと、口座数については、本年二月の新規開設口座は一か月で五十三万件でございまして、昨年の一―三月の月平均は十八万件でございますけれども、これと比較いたしまして二・九倍増加をしております。

 それから、買い付け額についてでございますが、本年一―二月の買い付け額の一か月当たりの平均を昨年一―三月の平均と比較いたしますと、つみたて投資枠で約三・〇倍、成長投資枠で約三・三倍に増加しております。

稲津委員 これも非常にいい傾向で進んでいるのかなと思っています。これは更に是非進めていかなければいけないと思っていますが、問題は、資産形成できない人にどうしていくかということも一つのポイントだと思っているんです。

 ある民間調査によりますと、十年以上投資をしている世帯の平均年収は八百九十四万円に対し、投資をしていない世帯の平均年収は五百七十万円だったそうでございます。厚生労働省の発表の平均世帯年収、これは五百四十五万七千円、中央値でいくと四百二十三万円なので、中間層の多くの方はお金を投資に回す余裕がなかなかないんだろう、始めたいけれどもためらっている、そういう現状がここで見られるのではないかな、このように思っております。

 また、同じ調査で、厚生年金等の公的年金を信用していますか、こういう問いに対して、投資をしている人よりも投資をしていない人の方が公的年金を信用していないという、こんなアンケートの結果も出ているわけで、年収に余裕がないために、投資等によって金融資産を形成することがなかなかできないでいる、さらに、公的年金も信用することができない。こういう人にとっては、将来に対する不安は大変大きいものなんだろう、こう思うわけであります。

 こういった現状について率直にどのように考えるか、見解を伺いたいと思います。

井林副大臣 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在、収入が十分でないために資産形成に取り組めていない方がいらっしゃるということは承知をしてございます。

 まず、資産運用立国実現プランにおきましては、家計における貯蓄から投資の促進に加えまして、コーポレートガバナンス改革の実質化、又は資産運用業やアセットオーナーの運用の高度化に向けた施策が盛り込まれておりまして、こうした施策の実現を通じて、投資の果実が、御指摘いただきました、年金等の受益者、加入者に還元されることも目指しております。

 また、他方で、金融庁といたしましては、それぞれの方が置かれていらっしゃる状況を踏まえつつ、将来的に少額からでも安定的な資産形成に取り組めるよう、家計管理や金銭トラブルへの対応方法といった知識の習得を後押ししていくことが重要であると考えております。

 今月、四月五日には金融経済教育推進機構が設立をされたところでございます。国民の皆様お一人お一人が経済的に自立し、よりよい暮らしを実現できるよう、この機構を通じて、家計管理や生活設計、資産形成の考え方、金融トラブルの未然防止と対応策など、幅広い分野の教育を国民に広く提供していきたいと考えております。

稲津委員 そういうことなんですね。だから、少額からでも投資できる流れを大きくつくっていくためには、今私がお話ししたことと、とりわけ若い世代、それから可処分所得が少ない方の利用を後押しする仕組みが必要じゃないかと思っています。

 既に企業の中では職場つみたてNISA奨励金を使っているところもありまして、我が党も、昨年八月に、大臣に対して提言をさせていただきました。

 ある報道では、自動車向けの部品などを手がけている東京青梅市の金属加工メーカーが、昨年四月から、NISAで積立投資を行う社員に対して毎月五千円の奨励金を出す仕組みを始めた、昨年十一月の時点で、百五十人いる従業員の七割以上が加入した。こういうことで、資産形成を支援する、そして、人材の定着、確保にもつなげていきたい、こういう企業の思いもある。

 たとえ少額でも、後押しがあれば、実際に始めるきっかけになる。したがって、このつみたてNISA奨励金の活用促進を含めて、可処分所得の少ない方への利用を後押しする取組を一層推進すべき、このように思いますが、見解をお伺いします。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 NISAは、幅広い層の国民による安定的な資産形成を支援するための制度であり、委員御指摘のとおり、可処分所得の少ない方が少額からでも利用できるよう、必要な取組を推進していく必要があると考えております。

 この観点から、勤労者が職場という身近な場所を利用して資産形成ができるよう、金融庁では、企業による職場つみたてNISA奨励金が賃上げ促進税制の対象となる旨の明確化を要望し、昨年三月に明確化されたところでございます。

 これを踏まえまして、昨年十一月には、業界団体と連携し、中小企業を含めた様々な企業が職場つみたてNISA奨励金をより少ない事務負担で導入できるよう、事業主と従業員等の間の利用規約のひな形に奨励金の付与に関する規定を充実させる改定を行いました。

 引き続き、職場つみたてNISA奨励金の実施促進に向けて、業界団体とも連携するなど、NISAが国民の皆様の資産形成に利用されるよう、必要な取組を進めてまいります。

稲津委員 ありがとうございました。

 是非、この取組を強力に進めていただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

 それで、続けて質問したかったんですけれども、ほぼ時間が参りましたので、この辺でやめておきますが、金融経済教育についても、今日は本当は、時間があれば少し詰めた質問をさせていただきたいというふうに思いました。

 特に、この職場つみたてNISAについて、金融経済教育を社員の方にもしっかりと認識していただくのが大事だと思っていますし、あと、投資詐欺の対応についても別な機会にお伺いしたいと思っていますけれども、これも少しずつ増えてきているという認識に立っています。だから、こうした新NISAですとかいうことを若い人たちに広めていく、もう一方でちゃんと教育していく、こんなことも仕組みとしては必要だと思っていますので、別な機会にまた質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 今日は質問の機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 今、岸田総理が訪米されて、国賓として、晩さん会から始まって、バイデン大統領との会談とか、さらには米国議会でスピーチをされたということで、岸田総理にとってはよい思いをされているんだろうと思うんですけれども、一方、国民にとっては、防衛負担から始まって非常に大きな負担がのしかかって、ツケを回されているんじゃないかと思っているわけです。米国のバイデン大統領にとっては、防衛費増ということで岸田総理を三回説得して成功したということで、御褒美という感じの訪問かなという感じが私はしているわけでございます。

 さらに、財務省にとっても、四十三兆円という防衛費増はかなり負担で、いろいろなところから財源を集めていっているということですし、増税といってもまだ増税の時期も決まっていない、そういう状況であるし、一方では、子供、子育てサポートへの対応として三・六兆円、そういった事業をやるためのお金を防衛増税の負担とは別に様々につくっていかなきゃいけないということで、これは大変な状況なのかなと私も個人的には大臣に同情申し上げるんですけれども、これは質問にはなかったんですけれども、大臣の正直な御感想を賜ればと思っております。

鈴木国務大臣 日本の財政というものを考えてみますと、今、債務残高も大変大きいわけでございまして、ある意味、世界で最悪の状況にある、こういうふうに思っております。そのため、財政再建を進めなければならないわけでございますが、財政再建を進めるとともに、必要なものについては予算措置をしていかなければならないと思っております。

 今お話がございました防衛費の抜本拡充と少子化対策でありますが、いずれも我が国の存立に関わるような重要な課題であると思いまして、それに係る財源の手当ては必要なものである、そういうふうに認識しております。

 一方におきまして、財政再建への取組ということも併せ、しっかりやっていかなければいけない、そのように感じております。

末松委員 防衛関係で状況が緊迫している、いつも、日本を含め、アメリカからもそういうメッセージが告げられるんですけれども、これは別の情報ということで認識していただきたいのは、去年の十二月に私は台湾を訪問しまして、台湾で、国民党さんや民進党さんの関係者を含めて、レベルの高い方も含めてお会いさせていただいたんです。

 そのときに、ある方から言われたのは、台湾危機とか台湾有事とよく言われるけれども、台湾の国民において非常な危機感でおびえていて大変だと思っている人は一人もいません、私たちは中国政府といつもいろんなパイプを通じていろんな交渉はやってきているんだ、だから、それなりに私たちは中国との関係はしっかりと持っていると考えているし、中国も台湾を焼け野原にしてそこで支配するようなことは考えていない。ただ、気をつけていかなきゃいけないのは、アメリカの軍需産業を中心に、商売というかビジネス関係で、武器をもっともっと需要を高める意味で、日本とか、韓国とか、台湾とか、フィリピンとか、こういう国々を含めて様々な国に武器の購入を働きかけている勢力がいるので、日本もその尻馬に乗るようなことは避けてほしいということを言われました。

 これは政府が進めようとしている防衛の論議とは全く逆方向の話かもしれませんけれども、そういうことも私は聞いていて、なるほどなと思ったわけですが、大臣はそれについてどう思われますか。

鈴木国務大臣 両岸問題は、日本だけでなく、地域にとっても大変重要なことだと思います。

 末松先生は外交官でいらっしゃいましたので、そうした外交のいろいろな分析は私などよりずっと高いレベルで分析をされていると思いますが、様々な意見があるということはしっかりお聞きをすることが大切だと思います。

末松委員 防衛増税四十三兆円とか、そういったことで様々なしわ寄せが起きているというのは先ほど申し上げましたけれども、私も、選挙区を中心にいろいろなお宅を訪問したりしていると、年金が非常に低年金で困っていらっしゃる高齢女性の方からたくさん話を聞いて、その高齢女性の方は、今の年金の仕組みのマクロ経済スライドでだんだん年金が下がってきている、さらに、家は持っているんだけれども、御主人が亡くなって、年金額がもらっていた額の五割から六割ぐらいに減額されてしまったとか、家を売ればいいんだけれども、売ると自分が住むところがない、何とか年金額を増やしてくれないかということをさんざん聞いてきたんです。

 そういうふうな地元の体験から、日銀の総裁も呼んで、日銀の含み資産が三十四兆円ぐらいあるんですか、何とかそこを財源にしてやっていけないかということで日銀の方に聞いたんですけれども、日銀は、政策決定会合でそういった含み資産とか配当金について決定はするけれども、その内容については、当然、政府の意向があるということになったわけであります。これは当然の話です。

 そういった意味で、私は、日銀の含み資産あるいは配当金を含めて何とか使えないか、年金の額をキープ、あるいは、できれば上げられないかということをずっと考え続けたわけでございます。

 本来であれば、アベノミクスの時代に同じように株に投入されたGPIFというのがあって、これが国民年金基金をどんどん投入して、その上がりというんですか、もうけが今百三十二兆円という莫大な含み資産があるということを聞いて、何とかそこを使って年金の上げをできないかといろいろ考えたんですけれども、厚労省に聞くと、七月に総合的な年金計算をやり直して、そして、将来、百年たっても年金が枯渇しないような仕組みを再計算するんだということを聞いて、これであれば今何を言ってもなかなか難しいかなと判断しまして、それで日銀のETFの配当金に着目したんです。

 そこで、資料の一を開けていただきたいんですけれども、ここで、ETFの分配金、つまり配当金ですね、これが一・一兆円あるわけです。もちろん、当期の剰余金は二・一兆円あって、これはそのまま国庫納付という形にすればいいんでしょうけれども、配当金については、毎年そういった配当金が出るわけですから、ここを当てにして、ETFの分配金一・一兆円を年金受給者に還元できないかということで書いたのが資料一でございます。

 具体的に言うと、マクロ経済スライドの実質目減り分が〇・四%マイナスでありますから、そこを補填するということで、これはモデル世帯で考えているんですけれども、給付金を二千億円使って、そうなると、計算によると、世帯当たり、国民年金は月に三百円、厚生年金は月に九百五十円増加することができる。

 一方、私がメインに考えていた、国民年金あるいは基礎年金の一階部分だけしか受給されていない方、これが今六百九十六万人いますけれども、この方々は、元々、月に満額で大体六・六万円ぐらいいただいているわけですけれども、それではなかなか生活ができない。その方々に、低所得の高齢者の方々に九千億円を使うと、個人個人で月で定額一万円増加することができるというふうに計算をいたしました。

 そういう判断は政権ごとに判断するんでしょうけれども、もし、私の属している立憲民主党を含めて、私は個人的にも、そういったことを何とか実現して、低年金の方に安心と、さらに生活の安全を守っていきたいと思います。

 これを提案したいと思うんですけれども、大臣の感想をおっしゃっていただければと思っています。

鈴木国務大臣 末松先生の御提案は、日銀が保有しているETFの分配金の活用によって今の低年金者に対する年金の上乗せをしたらいいのではないか、こういう御提案であったと思います。

 現状におきまして、日銀が保有するETFの分配金収入は、一旦日銀の収入となった上で、法律上の納付義務規定に基づき、日銀から国への国庫納付金の一部として一般会計に計上されておりまして、国の一般財源として活用されております。

 この国の一般財源を年金の上乗せに使うかどうかということ、これは政策判断によるものだと思いますけれども、仮にこうした先生御提案の給付を行うのであれば、今まで一般財源としてほかに使っていたものがその分使えなくなるわけでありますから、新たに安定的な財源が必要になるわけでありまして、国債に頼る可能性も出てくるわけでありまして、慎重な検討を要すると考えております。

末松委員 その御答弁は私も予想していたんですけれども、結局、政策判断ですから、今の与党が何を中心に政策を判断するかということで、例えば、先ほどの防衛費負担の増大についても、私から見たら、米国の要求に屈した感じで、毎年毎年防衛費も五兆円ほど増大していく。これを政策判断した。そして、ほかの社会保障とかそういった費用がどんどん厳しくなって、そして、国債もまた使っていかなきゃいけない。そういう判断。

 これは結局、次回の総選挙で国民がどうそれを判断していくかということであるとは思うんですけれども、私は外交官出身なので防衛の重要性もよく分かっているんですけれども、そういった中で、アメリカのそういった防衛負担を丸々のむかということについて我々は別の判断をしておりますので、また別の議論が必要かと思います。

 この関係で、外為特会の話。

 今、令和五年三月末の外貨資産が大体百六十九・七兆円。このうち、今と同じような文脈ですけれども、一兆円でも年金のサポートに回せば、先ほど資料一でやられた年金の支援が倍額の支援になるということで、こういうことも重要だと思っていますし、まさしく政府としても、外為特会にはなかなか慎重で、なかなか利用しない。でも、さきの国会論議の中で、政府としても、平成から大体五十兆円ぐらいは時々の政策課題に使用してきたということだと思います。

 外為特会についても、国民の老後の安定とか子供、子育てのサポートとか、外為特会の若干の部分を活用していくというようなお考えはいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 外為特会が保有する外貨資産は、外国為替相場の安定を目的として、将来の為替介入などに備えて保有しているものでありますが、為替市場の取引高等に照らして考えてみますと、我が国の外貨準備は決して過大とは言えない水準であります。

 また、地政学上の問題とか金融資本市場の変動などのリスクが指摘されています昨今におきましては、たとえ一部であっても、財源確保のために外貨準備を取り崩すことは適当ではないと考えております。

 また、財源確保のために準備しております外貨を円貨に替えるのは、実質的に外貨売り・円買いの為替行為そのものでありまして、為替介入は、G7等での国際的な合意において、過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われることとされておりまして、この面から見ても、財源確保のために外貨準備を取り崩すことは適当ではないと考えております。

 なお、債券利息等の運用収入等から生じます決算剰余金につきましては、これまでも外為特会の財務状況でありますとか一般会計の財政状況を勘案しながら一般会計への繰入れを行ってきたところでありまして、今後も適切に対応してまいりたいと思います。

末松委員 この前、防衛費負担の増で一・九兆円をたしか外為特会を使ったと思うんですけれども、それは剰余金から使った、こういう位置づけでしたか。

鈴木国務大臣 そのとおりでございます。剰余金から使ったということです。

末松委員 私が言いたいのは、政権として、そういう剰余金を含めて、今の与党の政策の順番に従って使っているんでしょうけれども、防衛費に使ったというのは私は過去に聞いたことがないんです。だから、そういうことについても結構柔軟に、今私が申し上げたのは剰余金だけですけれども、百六十九・九兆円程度の外貨準備の若干部分を取り崩せば、予算的にはかなり楽になるんじゃないかと思うわけでございます。

 先ほど大臣の方で、日本の外貨準備はそんなに大きくないと言っていますけれども、資料三を見ると、一・二五兆ドルということは、ほかのG7の国の外貨準備について、突出しているんじゃないですか。

鈴木国務大臣 生の数字だけで比べるというよりも、為替市場の取引高などに照らして考えますと、我が国の外貨準備というものは過大とは言えない、そのように考えております。

末松委員 でも、これは突出していますよね。日本だけが特別大きな取引をしているわけじゃないと思うんです。

 それと同時に、今、米国債を売るというのは、米国との関係もあってなかなか売却しづらいという話もよくいろいろなところで聞きますし、実質的には米国の許可がないとなかなか売れないんじゃないか、こういうふうな指摘もあるんですけれども、これについてはどういうふうにお感じになられていますか。

鈴木国務大臣 外為特会が保有いたします外貨資産の運用について申し上げますと、十分な流動性を確保するとの目的に基づきつつ、将来の外国為替等の売買等に備えた運用を行っておりまして、米国との関係で売却できないといったことはないということでございます。

末松委員 大臣が明確に否定されたわけですね。でも、中国は米国債をかなり売ってきたわけですけれども、日本がほとんど売ってきていない、こういう事情はそういう裏事情もあると指摘する人が多いんですけれども、それは先ほど否定されましたけれども、その否定でよろしいわけですね。

鈴木国務大臣 あくまでこれは将来の為替介入のためのものでありますので、そのときには、G7等での考え方に基づいて、各国と連絡も取りながら売却するということでございますが、普通の段階におきまして財源を得るために売却するということをいたしますと、それはまさに為替介入そのものの行為となりますので、それはしないということを申し上げているところであります。

末松委員 米国との関係は大臣は余り付言はされていません。ただ、明確に否定されていましたので、そこは私はそういう認識でおります。

 資料四を見ていただきたいんですけれども、東洋経済の記事で「巷間ささやかれる「ドル暴落説」と円相場を考える」とあります。今はドルが非常に強いということで、円安が一番話題になっていますけれども、将来的にドル暴落という可能性が全く排除できないとすると、外貨資産の大半がドル資産だということは資産保全上極めてリスキーではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

鈴木国務大臣 外為特会が保有する外貨資産につきましては、先ほども申し上げましたけれども、その運用目的の観点から、安全性、流動性に最大限留意して行っているわけでありまして、米ドル以外も含め、必要とされる通貨ごとに運用しているところでございます。

 その上で、各通貨の構成など、運用の詳細につきましては、金融為替市場に不測の影響を与えるおそれがありますので、お答えすることは控えたいと思いますが、今でも、米ドル以外も含めて、必要とされる通貨ごとに運用しているということであります。

末松委員 詳細については一切明らかにしないという話でしたが、資料二を見ていただきたいんです。

 左側が米国債の保有者ということで、日本は非常に図抜けて米国債を持っているというのと同時に、右側が世界ベースでの外貨準備の状況でございまして、通貨建て外貨準備が十一・四兆ドルある中で、米ドル関係が六・七兆ドル、そしてユーロ関係が二・三兆ドルという話がございまして、ユーロも大体二五%ぐらいは占めているということで、ドル資産がアメリカとの関係があってなかなか売りづらいとか、あるいは、米ドルだけを持って、もし米ドルが暴落するような事態になるということも勘案して、ユーロ建ての外貨準備なども増やしていった方がいいかと私は個人的には考えているんですけれども、その点はいかがですか。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、現在も、米ドル以外も含めて、他の通貨においても運用しているところであります。

 末松先生は、その割合を安全性ということも考えながら見直したらいいのではないか、そういう御指摘でございますが、いずれにしても、我々も安全性、流動性ということを最大の着眼点にしているわけでありまして、今におきましても、安全性という観点から、米ドル以外のものにつきましても運用している、十分に安全性は確保されている、そのように考えております。

末松委員 それでは、話題を転じて、消費税還付金の是非ということで議論をしていきたいと思っています。

 資料の五を御覧ください。資料の五は、法人税収と消費税の還付金、これを並べた図でございまして、これは国税に限っております。

 これを見ていくと、令和六年度予算の関係では、法人税収が十七兆円、そして、消費税の還付金額が九・一兆円。結局、企業関係で税収があるのは、十七から九・一を引いた約八兆円しかない。ほかにも見ていくと、令和二年度の決算では、法人税収が十一・二兆円に対して消費税還付が五・九兆円で、結局、差引きすると五・四兆円しか企業関係の収入は入っていない。令和三年度の決算では、法人税収が十三・六兆円、消費税の還付金額が六・八兆円で、六・八兆円しか国庫に納められていない。令和四年もそのような形で六・九兆円しか国庫に納められていなくて、令和五年も五・七兆円しか納められていない。

 何が言いたいかというと、消費税の還付というのは莫大だなと思うわけでございます。これは、仕組みそのものが本当にこれでいいのか。一番の収入源は企業でもうけたものを税金にするというのが一番重要だと思っていますので、結局、差引き一桁の兆円ぐらいしか税収が増えていないというのはバランスが悪いなと思っているんですけれども、大臣はいかがでしょうか。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木国務大臣 末松先生御指摘のとおり、令和六年度予算においては、法人税収は約十七兆円、消費税の還付額は、国、地方を合わせて約十一・七兆円となっております。

 その上で、消費税は、売上時に受け取った消費税額から仕入れ時に支払った消費税額を差し引いた額がプラスとなっている場合にはその分を納税していただき、その額がマイナスとなっている場合にはその分が還付される、そういう仕組みになっております。したがいまして、還付につきましては、仕入れ時において負担した消費税を売上時に受け取る消費税で賄い切れない場合に行われるものでありまして、事業者の負担を追加的に軽減するものではございません。

 したがって、消費税の還付を負担軽減の仕組みとして法人税の負担と単純に比較することは適切でないものと考えております。

末松委員 そういう意味合いで見れば適切でないかもしれないんですけれども、実際に収入としてこういうふうなものにしかなっていないということが、私はこの図を見てショックを受けているわけでございます。

 というのは、多分、消費税の還付が、元々フランスの大臣が考案した歴史の長い形になっていますけれども、これは輸出奨励策ということで、輸出企業にとって非常に有利な扱いがなされていて、そういった意味で、日本企業の負担のバランスというのはちょっといびつになっているのかなと感じているわけでございます。

 私も輸出還付金の正当性について財務省からレクチャーを何回も聞いているんですけれども、こういった現状を見ると、なかなか納得し難い点がございます。

 国内企業が消費税を払うときに、消費者が消費税分を払うことによって企業負担がゼロになっていく、全部消費者が負担しているわけでございます。一方、輸出向け企業の消費税分については、還付金の発想として、外国消費者が消費税分を払ってもらえればそれはそれでいいんですけれども、そこで輸出向け企業の負担分はゼロになるんです。ですが、この還付金制度があるがために、お互いに各国で二重課税を防ごうという趣旨でやっているんですけれども、例えば、こういった円安状況において、輸出向け企業の価格設定が日本の消費税分を超えて設定されて外国消費者が消費をする、そういった場合には、何も日本政府はあえて還付する必要がないのではないかとも私は今思い始めています。

 企業のプライシング、価格設定は企業の自由ですから、政府がどうこう言うことはないんですけれども、例えば、消費税がない国から見たら、こういった輸出向けの企業に対する政府の還付金というのは、どうも政府の補助金というふうに見えるんじゃないかと思うんです。そういった批判もかなりありますけれども、その点についてはいかがですか。

鈴木国務大臣 一般的に、輸出企業は、消費税の還付があることを前提に、商品の仕入れ時に支払った消費税分は価格転嫁をしないで輸出価格を設定するのではないかと思われますが、個々の事業者による価格設定の在り方について政府として確たるお答えをすることは困難であることは、先生も今御指摘になられましたけれども、御理解をいただきたいと思います。

 その上で、我が国の消費税が免税となっている輸出売上げについては、輸出企業は商品の仕入れの際に消費税額を上乗せして支払っている一方で、輸出先に対して我が国の消費税額を上乗せして請求できないことが国際的なルールとなっているため、輸出企業が仕入れ時に支払った消費税分を還付することで、輸出企業の負担とならないようにする仕組みとなっております。

 このような仕組みは、輸出先における価格競争力に消費税が影響することを防ぐためのものでありまして、我が国の消費税に相当する仕組みを有する諸外国においても共通して導入されている仕組みでありまして、何か問題のあるものとは考えていないところであります。

末松委員 そうすると、今の法人税収と消費税の還付金の支払い、この差額が国に入ってくるということであれば、こういう企業からの収入がなかなか拡大していきにくいということを認めざるを得ないので、これは長年の慣行でエスタブリッシュされているところでありますけれども、私は、何とか政府による消費税の輸出還付金を抑えていくような仕組みを考えて、そして、国際的にも働きかけてよろしいのではないかと思うので、そのことを付言しておきます。

 それから、話題を変えて、租税回避に対する財務省の対応ですけれども、資料六を見てください。

 資料六でソフトバンクの例が載っていますけれども、ソフトバンクは、数兆円という売上げを出しながら、結局税金は五百万円しか払わなかったとか、税金が全くゼロだとかいう年も結構あると聞いています。こういうのを見ていると、税務当局がもっとしっかりと対応しなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

鈴木国務大臣 全くそのように感じます。

 一般論として申し上げますと、大企業が、複雑な取引スキームを利用することによりまして、法人税の負担を不当に減少させるケースはあり得ると考えておりまして、こうした租税回避行為は課税の公平性を損なう大きな問題であると認識いたします。

 政府といたしましては、こうした複雑な取引スキームにつながり得る措置については、より適切な仕組みとなるよう不断の見直しを行うとともに、執行面におきましても、様々な機会を捉えて、課税上有効な資料情報の収集、分析を行う中で、税負担を不当に減少させているなど課税上の問題が認められる場合には税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めているものと承知しているところであります。

末松委員 そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 私の最後の質問になるかと思いますけれども、子供、子育て対策で用いられるインボイスの課税、この額は千七百三十億円と聞いているんですけれども、それはそのとおりでよろしいんでしょうか。

鈴木国務大臣 令和六年度税収見積りにおけます国、地方の消費税収のうち、インボイス制度導入による増収額につきましては、国、地方合わせて一千七百三十億円と見込んでおります。

 この試算に当たっては、インボイス制度が始まるに当たって、令和六年度予算編成の時点で入手可能であった昨年十一月末時点でインボイス登録を行った免税事業者数、これが約百三十三万件でありましたので、それを踏まえた上で、免税事業者の課税売上高の平均額を約五百四十万円、付加価値率を約二八%として、消費税率を乗じて平年度における税収見込額を算出した上で、令和六年度における収納割合を勘案しているところであります。

末松委員 この千七百三十億円というのも、私は今インボイスに反対する議連の野党側の会長をやっていますけれども、そういった中で、インボイス導入から、本当に大変な問題があるということを様々な方から聞いております。

 特に、インボイス導入が弱い者いじめの増税だというふうに、今所得があるいはもうけが少ない企業を中心に言われていまして、特に、一千万円以下の免税企業だった方々からは、多くの方が廃業したり経営に行き詰まったり、あるいはインボイスの膨大な作業に苦しんだり、税理士さんも大変な悪影響を受けているということ、私の周りにもそういう不満が渦巻いていて、今大臣が千七百三十億だというふうに数字だけおっしゃる背後に本当に多くの国民が泣かされているということを、是非そこは知らなければいけないと思っています。この点については別途また質疑をする時間を取りたいと思っています。

 いずれにしても、多分五百万人近くいる中小の特に零細企業の方々は非常に多くの不満を抱えておりますので、これも次回の総選挙の争点になるかと思いますけれども、是非、私から申し上げれば、アメリカを余り見過ぎなくて、特に国民の皆さんの、底辺の方々、収入的に低い方々の生活苦をいかに和らげ、そしてその方々の生活レベルを引き上げていくか、そこに注力していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて末松君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今、末松委員からも指摘がありまして、これも大変傾聴に値する案だと思います。末松先生の最初の資料、日銀保有のETF分配金の活用ということで、こちらは日銀から分配金を受け取ったものを年金の方に充てるということなんですが、最近、子供の財源の方で支援金一兆円、これが制度としていかがなものかということが、我々だけではなくて有識者の方からも上がっております。

 この支援金一兆円を賄うためにETFの分配金が使えるのではないかということで、関係部門の方から問合せもあり、それで、ETF分配金の活用ということは常々財務金融部門でも考えておりましたので、その案を支援金一兆円の方に生かせないかなと思って検討してきたところ、昨日の段階でようやく党内で機関決定がなされて、国会に提出する運びとなりましたので、その御紹介から入らせていただきたいと思います。

 資料の最後です。先ほどの御議論でもあったとおり、分配金が一旦国庫納付されて一般財源となりますと、これを特定の目的、子供の財源に充てるのはなかなか難しいだろうということを我々も気づきまして、一旦特別会計に入れる。すなわち、ETFをまず政府が簿価で買い取って、特別会計をつくってそこにETFを入れた上で、入ってきた分配金をこども金庫に入れて、そして少子化対策の財源にしていくということを考えたわけです。

 このスキームで特徴的なのは政府が買い取るということなんですが、買い取るときにキャッシュで買い取るのはお金が大変なので、交付国債という民間でいえば小切手のようなもの、これで買い取ることを提案させていただいております。それをやるときに、財政法五条の問題があるのではないかということで、昨日、特別委員会で議論しまして、その点については、場合によっては特例公債法のような法律を作って対応すればいいのかなと思っていますので、ここでは時間の関係で捨象させていただきます。

 今の財政法五条の問題はクリアしたと仮定した上で、こうした特別会計でETFを簿価で買い取ります。簿価で買い取るということは、その時点で政府は三十数兆円の含み益を持つことになる。そして、分配金も、我々の試算ですと、株価が日経平均四万円のときで一・四兆円ぐらい一年間で入ってくる。仮にこの株価が三〇%ぐらい下落しても、昨年と同じ一・一兆円ぐらい入るというふうに回帰分析などをして試算しております。

 こういうスキームについて大臣としてどうお考えになるか、まずはそこから御質問したいと思います。

鈴木国務大臣 立憲民主党で考えておられます修正案につきまして、十分に詳細には把握できておりませんので、自分の理解の範囲内で申し上げますが、先ほどの末松先生の御提言は、一度国庫に入ってくるものを特定の政策目的に使ったらいいんじゃないか、こういう御提案で、今、階先生から御指摘があったのは、ETFを簿価で政府が買い取って、ETF管理特別会計に入れて、そして子供、子育てという政策目的に使ったらどうかという、そこの違いのある御提案だと思います。

 御提案のスキームについて、日銀が保有するETFは、物価安定目標を実現するための金融政策の一環として日銀の判断で保有しているものであるということをまず申し上げた上で、その売却を含めた取扱いについては日銀において検討されるべき事柄である、そのように思っております。

 そして、今御提案のスキームにつきましては、御指摘の財政法第五条の例外として整理できた場合の御提案と認識しておりますが、まずもって、交付国債という公債の日銀引受けとして、財政法第五条の趣旨に反するものではないか、また、交付国債の償還財源について裏づけがなければ、赤字国債の追加発行と同じことになるのではないか、そういう意味においては適切ではないものと考えます。

 さらに、これまで日銀は、保有するETF処分方針を定める際には、市場等の状況を勘案し、適正な対価によるとの説明をしていると承知しておりまして、政府の財源確保目的でこれらを日銀の簿価で買い取るといったことが日銀の方針に照らして許容されるのか、慎重に検討すべきであると考えます。

階委員 まず、償還財源は、先ほど言いました、含み益が三十三兆円もあるわけですね。今、政府も日銀も銀行から買い取った株を少しずつ市場で売却していますけれども、規模が物すごく大きいので、先般も野田先生がおっしゃっていたとおり、時間をかけて売却すべきだとは思っていますけれども、そういったもので償還は十分可能ではないかと思います。また、そもそも日銀が判断すべきこととおっしゃっていますけれども、政府は日銀に対して政策決定会合の議案提出権というものがあります。法律上、日銀法上それが認められているわけです。

 今回のETFの買取りというのは、実は日銀も、どこかの場面で植田総裁がおっしゃっていたとおり、これをどう処分するかは大問題だということをおっしゃったんです。なぜ大問題かというと、市場で売却すると市場に影響を与えるので、我々としては、市場外の取引。かつ、政府にとってもメリットがある。

 日銀にとっても、元々、金融政策では、ETFをなぜ買うかというと、リスクプレミアムに働きかけるために買うわけで、その働きかけることはもう必要ないということで、この間、異次元の金融緩和は終わりました。終わったということは、持ち続ける意味もないのです。持ち続ける意味がないものをいつまでも持って、含み益を死蔵、退蔵しているよりは、ちゃんと政府に移して、今、財源が大変だという子育ての方に充ててもらうことは極めて有意義であり、日銀と政府双方にとってウィン・ウィンだと思います。

 議案提出権をお出しになったらいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 いずれにいたしましても、今後、御党内で取りまとめられました修正案、これが提出されれば内閣委員会の方での今後の議論で大いに議論が深められるんだと思いますが、今の時点で政府の立場で申し上げますと、先ほど申し上げたものが今時点の政府の考えであります。

階委員 是非また議論させていただきたいと思います。

 そこで、異次元金融緩和が終了したということですが、それでもなお円安が進行しているわけです。このことは我々としても非常に憂慮すべき事態だと思っております。百五十三円台になっております。

 皆様のお手元の資料の一枚目を見ていただきたいんですが、内閣府で毎年実施している社会意識に関する世論調査から抜粋したものです。その中で、悪い方向に向かっている政策の分野というアンケートがあるんです。これを見ますと、物価と国の財政、これが昨年に続き今回も一位、二位になっているわけです。

 まさに物価も国の財政もこの財務金融委員会で取り扱う分野です。我々に課せられた任務は非常に重いなと改めて感じます。また、この数字を見ると、物価と国の財政をどうやって両立していくのか、物価高の原因となっている円安を是正しながら、なおかつ財政再建にも取り組まなくてはいけないという難しいルートを我々は歩んでいかなくてはいけないわけです。

 そこで、大臣に伺います。

 今申し上げたとおり、物価に関して、現在の物価高の大きな要因は円安です。先般、十一年続いた異次元金融緩和がようやく終了したんですけれども、むしろ円安が進行しているのはなぜなのか、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 日銀がマイナス金利の解除を含めた大規模緩和策の修正を行ったということでございますが、普通に考えれば、金利差が僅かながらでも縮まるというようなことがあれば円高の方向に振れるのではないか、そういう要因は確かにあると思いますが、為替相場については、そうした金融政策の変更に関わる要因もございますが、そのほかにも、国際収支、物価動向、地政学的リスク、そして市場参加者のセンチメントや投機的な動きなど、様々な要因によって決定されるものと考えておりまして、足下の円安の要因を一概に申し上げることは難しいということを御理解いただきたいと思います。

 いずれ、円安にはプラスとマイナス両面ありますけれども、今は何といっても国民の皆さんが物価高に苦しんでおられるということで、こうした物価に与える懸念というものは私も強く持っているところであります。

階委員 今大臣から、円安の要因には様々なものがあるという御趣旨の答弁がありました。私は、その中で実質金利に着目してみたいと思っています。

 二ページ目を御覧になってください。異次元の金融緩和はどういうメカニズムかということを示した図が二ページ目の下の方に載っています。御案内のとおり、イールドカーブコントロールやオーバーシュート型コミットメントというものを今までずっとやってきたわけですが、これが終わった。

 ただ、なぜ終えたかということですが、日銀の説明は、二%の物価安定目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況になった、これを理由にしているんです。ということは、この図でいいますと、真ん中あたりに、名目金利マイナス人々の予想物価上昇率イコール実質金利という数式があります。その中の、人々の予想物価上昇率、日銀も二%を安定的に実現していくことが見通せると言っていますし、先日の短観でも、企業の見通しもそうでした。この予想物価上昇率はもう二%ぐらいになっているんです。

 他方で、大臣がさっきおっしゃいました、異次元金融緩和が終わって少し金利が上がったとはいえ、ゼロから〇・一%が政策金利です。そうすると、単純計算しますと、名目金利引く人々の予想物価上昇率イコール実質金利で、実質金利は一・九から二・〇%のマイナスなんです。マイナス一・九から二・〇、これはどういうことかというと、私たちが銀行にお金を預けても、実質金利がマイナスだと、預ければ預けるほど損が出てしまうということになります。名目上のマイナス金利はなくなりましたけれども、実質上のマイナス金利はむしろひどくなっているかもしれません。

 その結果、今、NISAの話もありますけれども、家計の金融資産が、預貯金がどんどん海外に流出したり、あるいは、実質金利がマイナスで、日本は金利が低いからということで、円キャリートレード、安い円で調達して、円を売って外貨で運用する、こんなことも増えているんじゃないかと思っていて、それが私は円安に大きく作用しているんだと思っているんですが、この点について大臣の見解をお願いします。

鈴木国務大臣 実質金利は名目金利と期待インフレ率の差で表されるものと承知しておりますが、これらは一般的に、為替相場に影響を与えるファンダメンタルズの一つであると考えております。

 階先生が御指摘になられましたように、内外金利差を活用した取引でありますとかNISAによる海外への投資が進むなど、構造的な問題から円安が進んでいるのではないかといった見方があること、これは承知をいたしております。

 為替相場は、こうした要素のほかにも、先ほど申し上げました他国の金利や物価の動向、金融政策の動向、国際収支、地政学的リスク、市場参加者のセンチメントや投機的な動きなど、様々な要因によって決定されるものでございまして、こうした実質金利の影響というもの、その一つだけ要素を取り出して一概に申し上げることは難しいのではないかと考えます。

階委員 実質金利がマイナスになっているということはお認めになられますよね。だとしたら、それが一つの円安の要因になっているということも認められるはずだと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 実質金利が今マイナスになっているということはそのとおりだと思いますし、為替相場を決める幾つかの要因の中に当然この影響もある、そのように考えます。

階委員 そこで、私が危惧しているのは、異次元金融緩和を終了したとはいえ、日銀は同時に、当面、緩和的な金融環境が継続するということも先日発表しているわけです。となると、私はこの円安の状況がもっと進んでしまう危険があると思っています。

 選択肢としては二つあって、円安を食い止めるために、金融緩和を見直したり、あるいは為替介入ということもあるのかもしれませんけれども、どちらかこれはやるべきではないかと思うんですが、これについて大臣はどう思われますか。

鈴木国務大臣 金融緩和につきましては日銀の責任において決めていただくことである、そういうふうに思ってございます。政府としては、日銀の独立性を尊重したいと思います。

 為替介入につきましては、今の我々の立場は、今、高い緊張感を持って為替の動向、市場の動向を見ているわけでございまして、為替の動きというのは安定的に推移することが望ましい、急激な変化は望ましくないということでございまして、行き過ぎた動きがあるならば、あらゆるオプションを排除することなしに適切に対応するということに尽きるんだと思っております。

階委員 本当に緊張感を持っていただきたい。実質金利と日銀のスタンスが今の相場に非常に影響を与えていると私は思っています。

 その上で、いずれは日本銀行もこの実質金利の低過ぎる状況を放置せずに金融を引き締めて、金利が上昇してくると思うんです。そのときに財政が本当にもつのか。国民の皆さんも最初のアンケートで大変不安に思っているわけですよ。この点について、国家財政にはどういう影響を与えると考えているか、改めて大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 実質金利につきましては、金融政策の動向のほか、景気や物価の動向といった経済の状況、資金や債券の需給バランス、海外市場の動向など、様々な要素が複雑に影響し合いながら決定されることから、今後の実質金利の動向について確たることを申し上げることは難しいということ、これを御理解賜りたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、今後、影響ということでありますが、実質金利の上昇に伴い、仮に名目金利が上昇すれば、利払い費が増加する、我が国の高い債務残高対GDP比も踏まえますと、政策的経費が圧迫されるおそれがある、こういうことが影響として考えられると思います。

 今後の財政運営に当たりましては、こうしたリスクを念頭に置かなければいけないと思います。その上で、財政の持続可能性への信認が失われることがないように、適切なかじ取りをしていかなければならないと思います。引き続き、歳出構造の更なる平時化、重要政策に係る安定財源の確保、歳出改革の継続など、歳出歳入両面での改革努力を重ねていく必要があると強く感じております。

階委員 おっしゃるとおりでして、今後、金融緩和が見直されてくると財政には厳しい状況が出てくるということで、日銀が円安による物価高を是正しようとすればするほど、今度は財政が厳しくなるという二律背反の状況にあるわけです。

 大臣にこの難しいバランスをどう取るかということを聞いていきたいんですけれども、物価高の原因となっている為替相場の安定と国家財政の安定という二律背反の目標を達成する上で、望ましい物価上昇率と実質金利の水準をどう考えるべきなのか。具体的な数値を挙げるのに差し障りがあるということであれば、基本的な考え方でもお示ししていただければと思います。

鈴木国務大臣 為替相場につきましては、物価上昇率や金利のほか、金融政策の動向や国際収支も含むファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが重要であると考えております。したがいまして、為替相場の安定にとって望ましい物価上昇率や実質金利の水準について一概にお答えすることは難しいと思っております。

 また、実質金利や物価は、利払い費の増大や予算単価の上昇、税収の増減といった歳出歳入両面における様々な経路を通じて、プラス、マイナス両方の要素を伴いながら財政に影響を及ぼすことが考えられることから、国家財政の安定にとって望ましい物価上昇率と実質金利の水準につきましても一概に申し上げることは困難でありますけれども、今後の財政運営においては、物価や金利が上昇に転じる中でも財政の持続可能性に対する市場の信認を引き続き確保していくことが重要なことである、そのように考えます。

階委員 なかなか具体的なお話はできなかったと思うんですが、最後の方でおっしゃったとおり、金利が上昇しても財政の信認を得ていく、この方策を考えることが私も重要だと思っています。

 そこで、具体策をこれから議論していきたいんですが、まず三ページ目を御覧になってください。これは小黒先生という方がドーマーの命題というものを御紹介しているわけです。

 そこの箱の中に書いてあるとおり、名目GDP成長率がゼロより大きい経済では、財政赤字対GDPの比率を一定に保ちさえすれば、債務残高対GDPの比率は一定値に収束する。収束するというのは、反対語は発散ですから、要するに一定範囲に収れんしていく、こういう意味です。ということは、財政はこれ以上悪くならないということで、国民の皆さんも安心すると思うんです。収束がどこで収束するかというのをちゃんと示してあげることが私は大事だと思っています。

 そして、このドーマーの命題のみそは、金利が上がっても下がってもこの収束の値には影響しないんです。ただ、大事なことは、財政赤字の比率を一定に保つ、これが条件となっていますから、財政赤字に注目しなくてはいけない。今まではプライマリーバランスに注目してきたわけですけれども、先ほど伊東さんの質問で、資料の五であったとおり、金利が成長率を上回ってくると、PBの黒字幅が一定水準を切ると公債等残高対GDP比は上昇するということが書かれていますね。だから、PB、プライマリーバランスに注目していると、金利の動向次第では収束しないで発散してしまうんですね、債務が。

 だから、私は、もうすぐ二〇二五年度になりますけれども、プライマリーバランス黒字化目標は二〇二五年度が目標でした。これが達成すれば当然のこと、あるいは達成しなくても、次の目標をどうするかという議論になってくると思います。次の目標を定めるに当たって、これから金利のある世界になるということですから、金利が上がってくるかもしれないということですから、私はプライマリーバランスではなくて財政収支に着目すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今、足下で金利の上昇が見られるという中で、我が国の高い債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくためには、利払い費を考慮に入れて財政健全化に取り組んでいくこと、これも非常に重要であると考えております。

 二〇二六年度以降の財政運営の方針についてはまだ具体的に決まっているわけではありませんが、中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していくためには財政健全化に向けた努力が不可欠であって、その在り方については、階先生御指摘の金利の動向はもとより、今後の財政需要の動向、経済成長の見通しまで、様々な要素を総合的に踏まえつつ検討しなければならないと考えます。

階委員 さっき説明を私ははしょってしまったんですが、大臣がおっしゃったとおり、プライマリーバランスと財政収支の最大の違いは、利息の支払いを含めるかどうか。利息の支払いまで含めて財政収支を考えるとなると、金利が上がってくるとより財政収支は厳しくなってくるということなので、そこまで考えて財政運営をしなくてはいけない。

 プライマリーバランスだけだと、金利が上がるかどうかというのはプライマリーバランスには関係ないことなので、この局面では金利を考えて財政運営をする。なおかつ、そうやって財政運営をすれば、さっきのドーマーの命題に基づいてこれはちゃんと収束していくということですから、それが大事だということを改めて申し上げます。

 そこで、債務残高対GDP比をどれぐらいの値に収束させたらいいのかという議論ですが、四ページ目の図の下の方、国、地方の公債等残高対GDP比、これは一月に出た内閣府の中長期経済財政試算から抜粋したものですが、御案内のとおり、毎回ですけれども、成長実現ケースとベースラインケースで債務残高対GDP比を内閣府は示しています。

 二五年度ぐらいを見ますと、ベースラインケースだと二〇四、成長実現ケースだと二〇一・七ということで、その後、成長実現ケースだと、成長率が高いのでどんどん財政が健全化していくわけですけれども、ベースラインケースだと、むしろ悪化していく、これが続くと発散していくということなんですね。

 私は、最悪どこまで許されるかというと、債務残高対GDP比は今の二〇〇%ぐらいのところが限界なのではないかと思うんですが、大臣のお考えをお伺いします。

鈴木国務大臣 債務残高対GDP比について二〇二三年の水準を各国見てみますと、例えば、アメリカでは一二三%、イギリスでは一〇四%、イタリアでは一四四%となっている中で、日本は二五五%と世界最悪の水準にあります。こうした財政状況は、これまでの様々なコロナや物価高への対応に係る累次の補正予算の編成により、一層厳しさを増していると考えております。

 その上で、財政に対する市場の信認は特定の指標のみで評価されるものではなく、現在の経済、財政の状況に加え、GDP、金利、物価を含む経済状況の今後の見通し、人口減少、少子高齢化、気候変動といった構造的な変化の動向、これまでの財政運営に対する評価や今後の財政運営に対する政府の姿勢、これを支える制度面の枠組みなども踏まえた今後の財政運営に対する見通しなどを総合的に勘案した結果として、市場参加者から財政の持続可能性に対する評価が下されるものと考えております。このため、財政への信認を維持する上で必要な債務残高対GDP比の水準がどこまで許されるかということにつきましては、一概に申し上げることは困難であると思います。

 現在、政府としては、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化とともに、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくという目標、これしか今ないわけでございますので、これに沿って財政健全化に全力で取り組んでまいりたいと思います。

 また、二〇二五年度以降については、新しい目標がつくられていくものと承知しております。

階委員 まさに二五年度以降の目標をどうするかという議論を今させていただいているわけですけれども、さて、仮に収束値をさっき私が言った債務残高対GDP比を二〇〇%にすると仮定した上で議論を進めさせていただきたいんですが、そのときに経済成長率がどうなるかということを、さっきの三ページ目のドーマーの命題で、経済成長率が明らかになれば、達成しなくてはいけない財政収支の水準というのが分かってくるわけです。

 だから、経済成長率という要素も考えなくてはいけないんですが、この点で、最近、内閣府が初めて二〇六〇年度までの経済成長の試算というのを出しました。これもさっき伊東さんが触れた資料から私の方でも抜粋したものです。長期試算の全体像、五ページ目です。

 三つのパターンに分けていまして、現状投影シナリオ、これはさっきの内閣府の中長期試算のベースラインケースを前提としたもの、真ん中が長期安定シナリオ、3がさっきの内閣府の中長期試算の成長実現ケースを前提としたもの。これを見てみますと、試算の前提が、2と3、長期安定と成長実現ではちょっと希望的観測過ぎると思っているんです。TFP上昇率一・一とか一・四、あるいは、労働参加が大きく進展して五歳若返りとか、出生率が一・六四とか一・八とか、ちょっと現実離れしている気がするんです。これを前提にして財政の健全化目標を定めていくのは私は危険だと思います。

 そこで、私は、一番堅めの数字で見るべきだという観点からも、さっきのドーマーの命題に代入する数値としては、現状投影シナリオ、ベースラインケースを前提に考えるべきだと思います。

 そこで、大臣に伺います。六ページ目を見てください。

 ドーマーの命題で代入すべき数値というのは、五ページ目は実質成長率を見たものですが、名目成長率というのを見なくてはいけません。名目成長率の方は、下段に名目成長率のグラフがあって、その下に注書き1で、現状投影シナリオの場合は消費者物価上昇率が〇・八%、それで、そのときのGDPデフレーター上昇率はそこから〇・三ポイント引いたものだと書いていますので、要するに、実質成長率プラス〇・五で見ればいいということなんですね。

 この名目成長率を前提にして考えるべきだと思いますけれども、どういうふうに思われるか、大臣の見解をお願いします。

鈴木国務大臣 現実的に想定される経済成長率の水準につきましては、今後の労働力の動向でありますとか経済構造の変化など、様々な要因が相互かつ複雑に作用するために、幅を持って考えていく必要があると考えます。

 その上で、先日、四月二日、経済財政諮問会議で公表されました内閣府の試算では、二〇二五年度から二〇六〇年度平均の実質GDP成長率は、労働参加が一定程度進展するなどの前提の現状投影シナリオでは〇・二%程度、労働参加が大きく進展する等の前提とした成長実現シナリオでは一・七%程度と試算されていると承知しております。これは階先生からも紹介があったところでございます。

 この試算では、今後、人口減少が加速する下で長期的な経済成長を実現するため、生産性の向上でありますとか労働参加の拡大などによる供給力の強化と、成長と分配の好循環が必要であることが示されておりますが、こうした点も踏まえ、政府として、人への投資、企業の生産性向上等を促進し、民需主導の持続的な経済成長の実現に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

 経済成長率をどの程度に見るのが適切かということについては、幅を持って考えていく必要があるのではないかと思います。

階委員 ここも具体的な数字はなかなか言いにくいかもしれませんが、もう一度繰り返しますが、五ページ目の三つのシナリオのうち、現状投影シナリオでいくと、二〇二五年から六〇年度の平均で、実質成長率は〇・二%程度ということになっています。これに、GDPデフレーターが〇・五ぐらいじゃないかということが六ページに書いていますので、〇・二足す〇・五で、平均〇・七%の名目成長率で今後歩んでいくと仮定します。

 〇・七%という名目成長率、そして二〇〇%という債務残高対GDP比、ここから導き出される今許容され得る財政収支はどれぐらいかということが、七ページ目、これは非常に優秀な私の信頼する専門家に試算してもらったデータでございます。シミュレーション結果でございます。

 この左のベースラインケース、上の段に実質GDP成長率と名目GDP成長率の将来に向けての推移が書いていまして、それを前提にして、国、地方の期末公債等残高対名目GDP比、ドーマーの命題に従って財政収支が動くと、それに従ってこの数値も動いていくわけですけれども、さっき言った二〇〇%を維持していくためには、財政収支赤字一・二%、これが必要になってくるわけです。

 財政収支赤字一・二%、これがどれほどなのかということなんですが、中長期財政試算の中でも今でも財政収支の数字は出しています。それも大体、これよりちょっといいか、ちょっと悪いかぐらいな数字なので、決してそんなに現実とかけ離れた厳しい目標だということではありません。ただ、補正予算とかでばらまきをすると全然話は変わってくるんですけれども、ちゃんと本予算で財政収支をマイナス一・二%にしていくということであれば、こういう二〇〇%という最悪のときでも、債務残高対GDP比、発散しないということが達成できるわけです。

 こういうことを私の方で試算したんですが、是非、政府としても、こういうドーマーの命題など、ちゃんとした理屈に基づいて財政収支赤字はどれぐらいにするかということを議論した方がいいんじゃないでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 内閣府の試算、三つのケースがあるわけでありますが、確かに、長期安定シナリオ、成長実現シナリオ、出生率を一・六四程度と見たり、あるいは、成長実現シナリオでは一・八程度と見ておることもございまして、これは現実的になかなか厳しいものがあるという感じはいたします。

 そういう中で、むしろ、今後どういうような目標を立てていくべきかということについて申し上げますと、まずは、二〇二六年度以降、中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していかなければならないわけでありまして、財政健全化に向けた努力がまず必要でありますが、その在り方、どのような目標にするかにつきましては、階先生が御指摘になられました金利の動向はもとより、今後の財政需要の動向、経済成長の見通し、こうしたものまで様々な要素を総合的に踏まえて検討してまいりたいと考えます。

階委員 これで終わりますけれども、物価の安定を図りつつ国の財政も健全化していくという逆方向に向かっている二兎を追うのは非常に大変なことですけれども、是非、この委員会でこうした議論を積み重ねて、この国の財政をいい方向に持っていければと思います。

 終わります。

津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 所得税、個人住民税の定額減税について質問します。

 定額減税は岸田政権の鳴り物入りの経済政策でありますけれども、定額減税の対象とならない方がたくさんおられて、当事者の方から疑問そして落胆の声が上がっています。

 財務省にお伺いします。

 配偶者や子供がパートで働いている自営業者の場合、その配偶者や子供が外で得るパート収入が百三万円以下とした場合、事業主の所得税、住民税の定額減税の対象に配偶者や子供は該当するのでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 今般の定額減税に当たりましては、居住者である納税者につきまして、納税者の御本人、それから同一生計の配偶者、扶養親族一人につき、所得税については三万円の減税を納税者の税額から減税することとしております。

 委員の御指摘の個人事業者である納税者の配偶者や親族が得る給与収入が年間百三万円以下で、事業者と生計を一にする場合、その納税者の同一生計配偶者や扶養親族に該当することとなるため、居住者であれば、個人事業者の税額からの定額減税の対象となります。

田村(貴)委員 それでは、自営業者が青色申告者であるとしたら、配偶者や子供を専従者控除の対象にしていて、その家族の収入がそれぞれ百三万円以下の場合、事業主の定額減税の対象にこの配偶者、子供は該当しますか。

青木政府参考人 お答えします。

 青色申告者の専従者の配偶者、親族の場合の問いだと思います。

 先ほど申し上げましたとおり、今般の定額減税におきまして、減税額の計算の対象とする配偶者それから親族につきましては、円滑な執行の観点から、既存の所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義に依拠して行っております。

 このため、所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義に含まれない青色事業専従者である配偶者や親族につきましては、平成十年の特別減税の際と同様に、青色申告者である納税者の税額からの定額減税の対象には含まれません。

田村(貴)委員 白色申告者はどうでしょうか。白色申告者で、配偶者や子供を専従者控除の対象としている場合は、事業主の対象に、配偶者や子供は該当しますか。

青木政府参考人 お答えします。

 白色申告者の配偶者それから親族についての御質問だと思います。

 今般の定額減税におきまして、減税額の計算の対象とする配偶者や親族については、円滑な執行の観点から、既存の所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義に依拠しておるというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 このため、所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義には含まれていないいわゆる白色事業専従者である配偶者それから親族につきましては、平成十年の特別減税の際と同様に、白色申告者である納税者の税額からの定額減税の対象には含まれないこととなります。

 他方、白色事業専従者である配偶者や親族御本人が、ほかに収入があって、専従者控除額と合わせた所得により所得税額が発生するような場合には定額減税の対象となるところでございます。

田村(貴)委員 ほかに収入がある場合は一番目に聞きましたので、理解しています。

 理由がよく分からないんですよ。青色でも白色でも、自営業者の配偶者やその家族が、子供たちが専従者控除の対象であったら、なぜ定額減税を受けられないんですか。この理由が分からないんですよ。ちゃんと説明していただけますか。

青木政府参考人 お答えします。

 所得税法上、個人事業主が親族に給与等を支払うことによりまして、自身の所得を親族間で分割し、高い累進税率の適用を免れることで税負担を軽減するといった租税回避行為が考えられるわけなんですが、こういった租税回避行為を防ぐために、所得税の計算上、親族に給与を支払ったとしても必要経費に算入しないことを原則としております。

 ただ、一定の要件を満たす専従者につきましては、申告者の選択によりまして、同一生計配偶者や扶養親族としての控除の対象とせず、一方で、独立した主体として専従者控除の適用や専従者給与の経費算入を認めることとしております。

 今般の定額減税におきましては、減税額の計算の対象とする配偶者、親族につきましては、円滑な執行の観点から、所得税法上の同一生計配偶者や扶養親族の定義に依拠しておりまして、事業専従者である配偶者や親族につきましては、先ほど御説明したとおり、所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義に含まれないため、平成十年の特別減税の際と同様に、申告者の配偶者や扶養親族としての減税の対象には含まれないということとしたところでございます。

田村(貴)委員 これ、実態的には、サラリーマンの配偶者、家族はカウントされていくわけですよ。仕事があって収入を得ても、なくてもですよ。そして、外で収入を得た人の場合はカウントされていく。単に何か所得税法を見ているだけでこういうふうにしてしまうというのは納得のできない話ですよ。財務省と政府の都合というだけじゃないですか。

 閣議決定した今回の定額減税というのは、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するためのものじゃないんですか。国民の賃上げを支えるために、可処分所得を増やすために、国費をたくさんつけて、全国民に向けた制度じゃないんですか。ならば、サラリーマンも自営業者やフリーランスもひとしくちゃんと支援すべきだと考えます。

 給与所得者の家族と自営業者の家族を区別する理由は、先ほど聞きました、またこの答弁になるんでしょう。これは納得できないと思います。大臣、こういう区分けをすることは認められないと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 どうして別の扱いになるかということにつきましては、先ほど事務方から、主税局長から答弁があったとおりでございます。それ以上のことについて、私からは申し上げるところはありません。

田村(貴)委員 結局、区別しなければならない理由というのが、合理的な説明がないわけなんですよ。

 そもそも、所得税法五十六条のために、自営業者の家族は、どれだけ働いても労働の対価として控除されずに苦しみ続けてまいりました。物価高騰に追いつかない賃上げを支えるために、国の定額減税までも自営業者の家族を差別するなど、これは許されるものではありません。

 所得税法五十六条、この見直しが必要ではないのでしょうか、自営業者の家族もちゃんと支援すべきではないでしょうか、この点についてはいかがですか。

鈴木国務大臣 今般の定額減税におきまして、減税額の計算の対象とする配偶者や親族につきましては、先ほど参考人から答弁したとおり、円滑な執行の観点から、所得税法の同一生計配偶者や扶養親族の定義に依拠しているものでありまして、専従者についてはこれに該当しないため、減税の対象に含まれないこととしております。

 その上で申し上げますと、今般の定額減税は給付措置と一体として行うものであり、給付金の対象につきましては、現在、内閣官房の給付金担当部局において、こうした専従者の方々も含めまして、実務を担う自治体の執行可能性等にも十分配慮しつつ、現在検討を行っているところと承知をいたしております。

 引き続き、関係部局と丁寧に連携をしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 定額減税を受けられない前に、所得税法五十六条で、働いても働いてもその労賃が経費として認められなかったんですよ。自家労賃として認めてほしいと、全国で中小業者の方また業者婦人の方たちがずっと声を上げてまいりました。大臣の耳にも届いているはずであります。そして、多くの地方議会で、所得税法五十六条の廃止、見直し、これを求める意見書が可決されています。大臣も御存じのとおりです。

 明治時代の家父長制的世帯課税を引き継いだ所得税法五十六条は、ジェンダー差別の根幹に関わる問題でもあります。この五十六条の廃止、見直しをやはり進めてください。そして、今度の定額減税、自営業者の配偶者そしてその子らの、専従者控除としている対象者もちゃんと認めるように検討をしていただきたいと思います。答弁ありますか。

青木政府参考人 お答えします。

 専従者控除につきまして見直すべきだという御意見でございます。

 先ほども御答弁申し上げましたけれども、所得を親族間で分割することによります租税回避行為を防ぐために、所得税の計算上、親族に給与を支払ったとしても必要経費に算入しないことを原則としているところでございますが、一定の要件を満たす専従者につきましては、これは選択によりまして、専従者控除の適用や専従者給与の経費算入を認めることとしておるところでございますので、現行制度は適切なものというふうに私どもとしては考えているところでございます。

 それから、個人事業主の方は、記帳の整備によりまして青色申告となることも可能でございますので、仮に青色申告となれば専従者の給与も経費算入可能となりますので、そういった対応の方向もあり得るところでございます。

田村(貴)委員 そもそも、自営業者の専従者控除として、それを受けられている方は全国にどのぐらいおられるんでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 所得税におきまして、白色申告に係る事業専従者及び青色事業専従者の具体的な人数につきましては統計としては把握しておりませんが、国税庁の最新の統計調査の結果を踏まえて、一定の前提を置いた上で推計することは可能でございまして、そうした場合、白色申告に係る事業専従者については約七万人、青色事業専従者につきましては約五十八万人が該当するものでございます。

 ただ、この御質問の中で問題になっております課税最低限を超えて専従者御自身に所得税が発生するケースもございますので、今申し上げたのは全体の数字でございます。

田村(貴)委員 それにしても、かなりの方がこの定額減税から排除される、該当しないということになります。一生懸命働いても減税を受けられない、これはやはり制度が間違っているのではありませんか。六月の定額減税を前にして、自営業者とその家族から落胆の声が上がっています。そして、行政不信が広がっています。

 一方で、この定額減税は、個人住民税の減税において二年にわたって減税を受けられる、そういう例もあると聞いております。二〇二四年分の所得が一千万円を超えて、配偶者の年間合計所得金額が四十八万円以下とした場合、そうした例があるというふうにも聞いていますが、総務省、説明していただけますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 納税義務者本人の前年の合計所得金額が一千万円を超え、かつ生計を一にする前年の合計所得金額が四十八万円以下の配偶者に係る一万円の控除につきましては、令和七年度分の個人住民税所得割額から行うこととしております。これは、令和六年度分の個人住民税におきましては、納税義務者からの申告がない限り、こうした配偶者の情報を捕捉できず、各市町村が全ての対象者を把握して減税を行うことが実務上困難であるため、例外的に令和七年度分で対応するものでございます。

 委員御指摘のように、令和六年度と令和七年度の二回個人住民税が減税となるケースはごく限定的に生じるものと承知をしております。この例外的なケースを防ぐには、転出や転入により課税団体に変動が生じる場合なども考慮すると、前年に定額減税を受けたかどうかの情報を自治体間で網羅的に引き継ぐなどの必要があり、市区町村に膨大な事務コストが生じることを踏まえ、これを認める制度設計としているところでございます。

田村(貴)委員 いずれにしても、二回個人住民税の減税が受けられる可能性があるということですよね。

 所得が高い世帯で配偶者の減税が二回行われるケースがある一方で、比較的所得の低い自営業者などでは減税がされない。大臣、やはり、これは制度的に矛盾していると思いませんか、公平な制度となっていない、そう思いませんか。

鈴木国務大臣 先ほど来主税局長から御答弁を申し上げているとおり、減税の対象となるか、ならないかについてはきちんとした法的な解釈、枠の中で行われているものでございますので、そうした形で進めていくということだと思います。

田村(貴)委員 六月までまだ間があります。検討して、そして制度を改善してください。強く要望します。

 そして、この定額減税の事務負担も大きな問題となっています。定額減税分を社員、従業員に戻すための給与計算をする必要があります。たった一年限りのこの減税システムのために、給与計算のためのシステム改修や経理のための人件費など、事務コストの負担をしなければならない。こうした事務負担について、財務省は掌握しているでしょうか。

青木政府参考人 定額減税の事務負担でございます。

 今般の定額減税の対応につきましては、各企業におきまして、他の税制改正項目への対応でございますとか、通常の税務事務、給与事務と一体となって行われる部分がございますので、定額減税に係る部分の事務コストのみを把握することはなかなか難しい、こういうふうに考えております。

田村(貴)委員 これはもう本当、全国各地で大変な状況になっていますよ。

 今日も連絡があったんですけれども、東京のある公認会計士さんはこう語っています。年末にどうせ調整するなら、年末だけやればよくないですか、何で中途半端な時期に事務負担を増やすやり方をするんですか、扶養の範囲も違うし、確認が面倒なんです、このように怒っておられました。事務負担の影響は、少なくとも調べてもらわなければなりません。

 そして、こうした負担を生じさせている企業や事業所に対して、国は何か支援などの措置を行っていますか。

青木政府参考人 お答えします。

 今回の定額減税の実施を支援するための補助金等の支援措置というのは特段ございませんが、定額減税の実施に当たりましては、企業等の皆様に一定の事務負担をお願いすることから、まず、その制度設計に当たりまして、事務の実態等を踏まえて、企業が減税開始後に雇用した方について、前職での減税についての確認を不要とするなど、企業の事務負担にも配慮しているところでございます。

 また、企業や自治体の担当者の方々が事務を進める上でお困りになることができるだけないように、パンフレットやQアンドAなどを策定、公表して、丁寧な周知に努めているところでございます。

 引き続き、企業や自治体が事務を円滑に実施できるよう、丁寧に対応をしてまいりたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 全然丁寧じゃないから困っているんですよ。経費がかかっているんです。そして、事務が煩雑になっているんです。制度はつくったけれども、そういう仕事は自治体と事業所にもう任せっ切り、それでいいんですか。

 大臣、もう時間がないんですけれども、ある零細事業者は、給与のシステム改修や経理の人件費の増加分を含めると数十万円かかったというふうにおっしゃっていました。この定額減税というのは、働く人たちの賃上げを底上げするためにやるわけですよね。可処分所得を増やすためにやるんですよね。それが、実際、その事業所において、会社において、経費がかかってきた。そうしたら、これ、従業員の賃上げをできない阻害要因となってくるんじゃありませんか。

 だから、これだけの問題になっているんだったら、まずは、事務負担がどれだけ増えて、どんな厳しい、苦しい思いをしているのか、それに合わせて経済的な負担を解消する措置が取られてしかるべきだと思います。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 定額減税に係る事務コストの御指摘でございますが、毎年の税制改正への対応につきましては源泉徴収義務者を含めた納税者の皆様に御対応いただいており、今回の定額減税の実施に当たっても一定の事務負担をお願いさせていただいているところであります。

 その上で、定額減税の実施が決まってから、五十社を超える税務関連のソフトウェア開発会社に対してヒアリングを実施いたしましたが、その全ての会社で定額減税に対応した改修がなされると聞いております。こうしたソフトウェアを活用される場合には、事務負担を一定程度抑えられると考えております。また、現在主流となってきておりますサブスクリプション契約の場合には、利用者である源泉徴収事業者にソフトウェア改修に係る追加的な金銭コストは生じないことが一般的であると聞いているところであります。

 また、ソフトウェアを活用していない事業者の事務を支援する観点から、国税庁では、従業員ごとの減税額の管理に資するような様式や、年末調整時の税額計算を効率的に行うことができる様式などを定額減税に係る特設サイトで公表しておりまして、サイト上の解説動画や説明会においても使い方も説明をしていると承知をしております。

 引き続きまして、企業の事務の実態、実施上の課題などをできるだけ把握をして、丁寧な対応を行ってまいります。

田村(貴)委員 制度の改善を強く求めて、終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

津島委員長 次に、内閣提出、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣鈴木俊一君。

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 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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鈴木国務大臣 ただいま議題となりました金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 我が国資本市場の活性化に向けて、資産運用の高度化、多様化及び企業と投資家の対話の促進を図るとともに、市場の透明性、公正性を確保することが喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、投資運用業者から、投資運用業等に関して行う計理に関する業務及び法令遵守のための業務を受託する事業者の任意の登録制度を創設し、当該登録業者に業務を委託する投資運用業者の登録要件を緩和することといたします。

 第二に、非上場有価証券の仲介等の業務のみを行う第一種金融商品取引業者に適用される規制を緩和することといたします。

 第三に、株券等の大量保有報告制度について、保有割合の合算対象となる共同保有者の範囲の明確化を図ることといたします。

 第四に、株券等の公開買い付け制度について、市場内取引を対象に追加するほか、公開買い付けの実施が義務づけられる議決権割合を三分の一から百分の三十に引き下げることといたします。

 その他、関連する規定の整備等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

津島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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