衆議院

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第20号 令和6年5月10日(金曜日)

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令和六年五月十日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      勝目  康君    川崎ひでと君

      木原 誠二君    岸 信千世君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      中山 展宏君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    古川 禎久君

      宮下 一郎君    宗清 皇一君

      山田 美樹君    小山 展弘君

      階   猛君    末松 義規君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      原口 一博君    沢田  良君

      藤巻 健太君    掘井 健智君

      中川 宏昌君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   厚生労働大臣政務官    三浦  靖君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  油布 志行君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           増田 嗣郎君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     川崎ひでと君

  越智 隆雄君     勝目  康君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     越智 隆雄君

  川崎ひでと君     石原 正敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 事業性融資の推進等に関する法律案(内閣提出第五七号)


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、事業性融資の推進等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総合政策局長油布志行君、企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、厚生労働省大臣官房審議官増田嗣郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。馬場雄基君。

馬場(雄)委員 おはようございます。朝一番、どうぞ皆様よろしくお願い申し上げます。元気にいきたいと思います。立憲民主党、馬場雄基でございます。

 法案に入る前に、是非政府に、鈴木財務大臣にお願いを申し上げたいことがあります。

 オンライン環境なんですけれども、デジタル化や働き方改革、様々、政府は推進しておりまして、当然、私たちが受けるレク、これはリアルであったりオンラインを選択できる状況に今なっているわけですが、私自身は、御負担のない方を御選択くださいというふうに申し上げて最近行わせていただいているわけですけれども、実際にこのオンライン環境でやろうとしたときに、結構な不都合が生じています。ぶつ切りになったりとか、画面が急にショートしてしまってまた入り直すとかですね。オンライン環境を整えていくというふうに、あるいは推進するという一方で、実は、隗より始めよの私たちが実際にやってみると、かなりな不都合が生じているのもまた事実ではないかと思います。

 これは私だけであるのか、ほかの方がもし同じことをやられて懸念されているのであればなおさらなんですけれども、是非とも、政府が、国民に対してデジタル化、働き方改革、推進していくということでオンライン化が必要だというふうにおっしゃっていただけるのであれば、まずはやはり全省庁にその環境を正確に整えていくこと、あるいは、議員会館側に問題があるならば、その環境も含めてちゃんと整備していくということ、この点、改めてちょっと、今日、事前通告はしていないんですけれども、お一言いただけたら幸いなんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 デジタル化を進めていくということは、今、政府の方針でもあると思います。そのためのインフラ整備、環境整備、これは大切だと思っております。

 具体的に、どのところを、どのような課題があって、どう改善していくのかということはちょっと私は分かりませんけれども、重要なことであるという認識は先生と全く同じだと思っております。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。本当に隗より始めよだと思っておりますので、是非とも、私たちから逆に国民にその姿を示していくということ、是非とも改めてお願い申し上げたいと思います。

 さて、今回の法案は、事業性融資という新たな概念への挑戦だというふうに思っております。従来、融資をする際の担保は不動産あるいは経営者保証というものによって行っておりましたが、その会社が持つ技術力やキャッシュフローなど、事業の成長力を担保にしていくという概念だと認識しております。

 私も元々金融機関に勤めておりました。現場の方に話を伺ったところ、感想ですけれども、理想は分かる、理想はいい、ただ、実際に現場で自分が担当しようと思ったときに非常に不安だということをおっしゃっておりました。現場は不安になっているわけです。この不安をどう取り除いていけるか、金融庁の姿が今まさに試されているのだというふうに思っております。本政策が現場で取り組む皆様方の安心感に寄与できるよう、私も努力したいというふうに思っております。

 今回、事業性融資推進本部を設置するということをこの法案の中にも明記されているわけですが、まずゴールイメージを共有したいと思います。

 推進本部の目的が達成された状態、目的は事業性融資を推進していくということだと理解しておりますので、推進本部の目的が達成された状態、その世界観とはどういうものであるのか、具体的に目的達成と言われるその状態をお示しいただければと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の事業性融資推進法案におきましては、目的規定といたしまして、先生御指摘いただきましたとおり、不動産を目的とする担保又は個人を保証とする保証契約などに依存した融資慣行の是正及び会社の事業に必要な資金の調達等の円滑化を図り、これらにより会社の事業の継続及び成長発展を支え、もって国民経済の健全な発展に寄与する旨、定めてございます。

 御指摘の事業性融資推進本部につきましては、事業性融資の推進に関する基本方針の策定ですとか、関係行政機関の事務の調整などを行うことにより、こうした法案の目的を達成するために金融庁に設置するものでございます。

 現時点におきまして、法案の目的というものの達成について、事業性融資の件数や残高などについて定量的な基準を設けているわけではございません。ただ、いずれにしましても、事業性融資の一層の推進に向けて、我が国における事業性融資の実施状況ですとか、それによる資金調達の円滑化、事業の成長発展の状況については、しっかりとモニタリングを行わせていただきまして、状況把握を行ってまいりたいというふうに考えてございます。

馬場(雄)委員 井藤局長、ありがとうございます。ただ、私の質問には明確には答えられていないのではないかというふうに思うわけですが。

 新たに本部をつくられるわけです。一方で、今回、スリム化法案とかもありましたけれども、どんどんどんどん、やはりしっかりと、何のためにこの本部をつくって何のためにここで議論していくのかというところを明確にしていく、その責任は政府にあると私は当然ながら思っています。そのときに、今のお答えだと、その本部の中で何をいわゆるベンチマークにして確認をしていくのか、どういう状態になったときに目的が達成されたと表現でき得るのかということが答え切れない状態でこの法案が進んでいくことには、私は警鐘を鳴らしたいというふうに思います。

 改めて鈴木金融担当大臣にもお伺いしたいわけですが、今回のこの本部、一方でスリム化というところもあるわけですけれども、この本部が解散される、解散する、そういうふうな目的が達成されて解散しますというのをどういうふうに規定していくのか、その点を明確にお答えください。

鈴木国務大臣 先ほど井藤局長から答弁をいたしましたけれども、事業性融資推進本部につきましては、事業性融資の推進に関する基本方針、これの策定や、関係行政機関の事務の調整などを行うことによりまして、事業に必要な資金の調達等の円滑化を図り、事業の継続及び成長発展を支えるというこの法の目的を達成するために、金融庁に設置するものであります。

 まずは、事業性融資推進本部において基本方針というものの策定を行うとともに、企業価値担保権の関係者への理解促進に向けた周知など、事業性融資の推進に向けた政府全体の取組を促してまいりたいと考えております。

 そして、出口というお話でございますが、本法案は、施行後五年を経過した段階で、施行の状況等を踏まえて、必要に応じた見直しを行うこととしておりまして、この本部の在り方につきましてもこの見直しの対象に含まれております。

 一方で、現状を踏まえますと、本部として、まずは、関係行政機関が一体となって事業性融資の推進に総合的かつ集中的に取り組むという役割をしっかり果たしていくことが重要でありまして、現時点で廃止の基準を議論するというのは、今の段階ではまだ時期尚早ではないかと思っております。

 いずれにしても、施行後五年の見直し規定がございますので、この本部もその対象にして考えていきたいと思います。

馬場(雄)委員 大臣、五年後に見直しをしていくということは当然理解でき得るんですけれども、五年間、何をチェックしていくのか、どういう状態になっていくことを理想としつつ、この本部をまさに設置していくのかというところがやはり明記されていないと、単に集まって、言葉は悪いかもしれませんが、お茶飲み会議みたいな状態になってしまいかねないと思いますので、その会議の本質をしっかりと定めていくためにも、私は、ここに金融庁の責任が試されていると思いますので、是非とも定めていただくよう検討いただきたいというふうに思います。

 加えて、今回、本部の構成員として、金融担当大臣のほか、経産大臣、財務大臣、農水大臣及び法務大臣とありますが、最後、などというふうに書かれております。

 ここは井藤局長にお伺いしたいと思いますが、などということは、今後増やすということも可能性としてあり得る、そのことをお答えください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案につきましては、本部の本部員につきまして、事業性の融資を推進する観点から、金融機関、中小企業者などを所管する金融担当大臣、経産大臣、財務大臣、農水大臣及び法務大臣の五人の大臣をあらかじめ明記してございますけれども、別途、国務大臣を指定することができるというようなたてつけになってございます。

馬場(雄)委員 大臣、ここで御提案をさせていただきたいと思います。

 今回の事業性融資は、まさに企業で働く人の環境、労働と密接に関わっているわけでございます。厚生労働大臣に対して、構成員に加えていただくというお考え、それを是非とも御提案させていただきたいですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 事業性融資推進本部、先ほど答弁が井藤局長からあったわけでありますけれども、このメンバーにつきましては、金融機関、中小企業者等を所管する大臣ということをまずは念頭に置いて構成員を選んでおります。

 しかし、御指摘のように、今般の制度立ち上げ当初におきましては、企業価値担保権の活用促進に向け、労働者の保護に関して、関係者の理解促進や周知、広報が重要になる、そのように考えております。

 こうした観点から、特に、施行後の当面の間は、厚生労働大臣を本部員に指定する方向で考えております。その後も、継続的に厚生労働大臣に関与していただくことが基本になるものと考えております。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。

 是非とも厚生労働大臣を本部構成員に加えていただき、そして、労働環境等も含めて、その場で議論されていく環境を是非とも整えていただきたいというふうに思います。この場でお答えいただき、ありがとうございます。

 続いて、事業性融資制度はどんな企業に使ってほしいのか、先ほどのいわゆる目的がどういう状態であるのか、そのイメージを是非とも共有させていただきたいと思います。

 先ほど、達成したい世界観を伺った、つまり、それは具体的なアクターを示していくということだと思いますが、この事業性融資を実際に利用するアクターは一体誰と誰と誰というふうに想定をされているのか、ここは井藤局長にお願いしたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案で導入いたします企業価値担保権でございますけれども、不動産担保や経営者保証に安易に依存せず、事業者の将来キャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保の目的とする新たな担保権でございまして、先生も御指摘のとおり、事業者の実態や将来性等に着目した融資をより一層推進するため、新しい選択肢を提供していこうというものでございます。

 具体的には、典型的な活用事例といたして、競争力のある新商品を開発して今後の販路拡大のために資金需要がある、有形資産に乏しいスタートアップですとか、金融機関が事業の後継者に対して経営者保証の継続を求めるために事業承継が進んでいないという、現状そういった状況にある事業者、あるいは事業再生のため新事業に対する資金が必要であるものの、これまで事業を再構築したことで担保余力に乏しい事業者など、こうしたものが典型的に考えられますけれども、いずれにしましても、多様な活用場面があり得るというふうには考えてございます。

馬場(雄)委員 局長、ありがとうございます。

 まさにこの三つのアクター、スタートアップ、事業承継、事業再生、この三つのアクターだと思いますが、逆を言えば、先ほどの本部の目的、目標というのは、この三者に対してどういう状態になっているかということをしっかりと明記していくということだと思いますので、ここは重ねてお願い申し上げたいところではあるんですが。

 基本、皆様も、恐らくお手元の例えば新聞記事とか、様々いろいろ見られていく中で、スタートアップの支援をより強力に推進していくためにこの事業性融資を導入していこうというふうに報道されていたのをよく目にしていたというふうに思いますけれども、このスタートアップという表現をより具体化させるべきだと私は思っています。

 なぜかと申し上げれば、アメリカのシリコンバレー等で行われてきたこのスタートアップという概念ですけれども、基本的には、新しく設立されたばかりの企業、設立されたばかりの企業であり、大体創業から一年から三年ぐらいのことで、著しい成長を遂げてくる企業というふうにイメージとして思われていたものでございます。

 しかし一方、今、問題にもなってくると思いますが、企業価値担保というものをしっかりと表現していこうとすれば、当然ですけれども、キャッシュフローを確認していかなければいけません。創業当初の生まれたばかりのこのときにキャッシュフローをしっかりと捉えるというのは、正直言って無謀なことだというふうに思いますし、基本的に、物ができて、その物の生産工程がしっかりして、その上で販路が確立されて、その成功可能性が極めて高いと判断できる状態で企業価値担保がつけられると私は思っています。

 つまり、それはスタートアップの一番最初の一年とか二年でつけられるものではないというふうに思いますけれども、スタートアップの定義の部分をより具体的によろしくお願いします。

井藤政府参考人 先生の御指摘は非常にもっともなことだと思いますけれども、今般の法案で導入する企業価値担保権は、事業者の将来のキャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保の目的とする新たな担保権でございまして、繰り返しで恐縮ですけれども、不動産担保や経営者保証に安易に依存せず、事業の実態や将来性等に着目した融資を行うものであるため、有形資産に乏しいスタートアップ企業に対してもその活用が期待されてございます。

 スタートアップ、定義の問題かと思いますけれども、いろいろなステージがあろうかと思います。資金調達ニーズというのは、ステージの各段階、あるいは企業の置かれている状況において様々でありまして、この担保権を活用するスタートアップ企業について設立年数等の想定を一概に申し上げることは困難であろうかと思いますが、先生のおっしゃるような点は、重ねてですけれども、非常にもっともなことでもあろうかと思います。

 その上で、一般論として申し上げれば、企業価値担保権を活用した資金の形態はあくまでも融資でございまして、その融資判断におきましては、おっしゃられますとおり、商品の開発状況とか売上げの見込み等につきまして一定の確度を持った予測というものが必要と考えられるのが通常かと思います。したがいまして、設立後間もない草創期というよりは、キャッシュフロー等を含めたビジネスの状況がある程度確立した段階において検討することが典型的には想定されるんだというふうに考えてございます。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 資料を金融庁からいただく際に、スタートアップという言葉を見ると、大概にして有形資産に乏しいスタートアップ、今、井藤局長からも御説明がありましたが、そういうふうに表現されるわけでございます。

 ただ、どうでしょう、皆さん。スタートアップという表現を一般的に聞いた際、あるいはスタートアップ企業のまさに担い手たちがそれを期待する場合、あるいは融資を担当するバンカーの人たちが判断していく際、その言葉だけを捉えていくと、私は誤解を生じかねない表現ではないかというふうに思います。

 今、井藤局長が丁寧に御説明いただいたとおり、創業一番最初の誕生期ではなく、創業期から成長期に向けていく、このドライブをかけていくための新たな選択肢を、経営者保証とか不動産担保とかではない新たな選択肢を今回提供するというふうな表現の方が私は現場に混乱なく伝わっていくのではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。

井藤政府参考人 いずれにしましても、この法案、施行までに二年半あるということでもございますので、先生の御指摘も踏まえて、しっかりとその活用方策については、施行後、活用状況をフォローするということは当然なんですが、それ以前の段階でも更に活用のケース等を深めてまいりたい、その際には先生のおっしゃる点についても十分念頭に置いて対応してまいりたいというふうに考えてございます。

馬場(雄)委員 恐らく、この会場、そんなにかたくなにならなくてもというふうに思われた方が多いんじゃないかなと思いますが、応援いただき、ありがとうございます。

 是非、今後、この表現をするときに、是非とも、米印でもいいので、スタートアップの方々が期待してしまうと思いますし、事業を担当するバンカーの人たちもどういうふうにしていくかという具体的なイメージを持っていかなければいけないといったときに、是非ともその定義は大切にしていただきたいということを、金融庁にここは強く求めたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 そもそも事業とは何かということですが、事業は人だというふうに思っています。人をつくっていく、そして、ある意味、人をつくっていくのが事業でもあるということだと思いますが、つまり、事業と人は一体です。事業を担保にするということは、人を担保にしていくということともある程度同義になるのではないかというふうに私は思えます。その中で、運用は極めて明快かつ慎重でなくてはならないというのがこの制度を推進していく際の懸念点だというふうに改めて申し上げたいというふうに思います。

 金融庁の資料、今回お配りさせていただきましたが、事業譲渡について、下から二番目のところですかね、「借り手の権限」というふうに書いてあるところの米印のところですけれども、「事業譲渡など、事業の内容を大きく変え、担保価値の毀損につながりうる通常の事業活動の範囲外の行為には、担保権者の同意を必要とする。」というふうに書いてあるわけですが、ここをより具体的にしていかなければいけないというふうに思います。

 法案では三つ書いていますが、一つは事業譲渡、もう一つは重要な資産等々ですね、加えて、減価、安い値段で資産が売却につながってしまう行為等々書かれているわけですが、決してこの三つだけではないんじゃないかなというふうに思いまして、例えば、コアな技術者がそこにいた際に、コアな技術者が抜けてしまうとかということは間違いなくこういう事例に該当していくというふうに思いますが、法案で書かれている三つだけで具体例の例示はいいというふうにお考えでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 今般御審議をお願いしております法律案では、借り手が通常の事業活動の範囲を超える処分などをする場合は担保権者の同意が必要と定められておりまして、これに違反した場合には、その処分等は原則として無効といたしております。

 具体的には、借り手による事業譲渡、重要な財産の処分や、正当な理由のない財産の不当な廉売、廉価売却は、類型的に借り手の通常の事業活動の範囲を超える処分等と考えられるために、条文において例示をいたしております。

 先生の御指摘は、その例示として示しているものだけではなくて、例えば、高い技術力を持つ、事業にとって重要な従業員の転職というものも考えるべきではないかということでありますが、この転職は事業に影響を与え得る事象と考えられますけれども、一方、従業員の立場に立って考えてみますと、従業員の退職は、そもそも借り手たる事業者が制限することができるものではなく、また、当該従業員の職業選択の自由を保護する必要性を踏まえ、今般の法案におきましては、これを制限する規定は設けていないところであります。

 なお、事業価値を毀損するような行為については、網羅的に列挙することは困難であるため、今般の法案では、一定の幅を設けまして、具体的な事案に応じて、担保権者又は管財人等の訴えに基づき、最終的には裁判所が判断することとしております。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。

 人の転職とかの自由というのは当然あると思うんですが、だからこそ、この運用は難しいということをしっかりとこの議論で残していきたいというふうに思います。本当に、この分野、スタートアップというのはヘッドハンティングのよくある市場でもあるわけですから、そこに対して企業価値担保をつけていくことの、ある意味でいうと危険性というところは、当然残るのではないかなというふうに思います。

 一方ですけれども、昨年二月の金融審議会等では、事業を解体せず、雇用を維持しつつ継承すること、つまり、事業と雇用が一体であるということを審議会でも固く、ある意味、確認をされていたというふうに認識しておりますけれども、今回の法案では、そのことが実際は書かれていないというふうに思っています。

 レクで伺ったときには、該当箇所、百五十七条一項でしっかり書かれていますよというふうには言われたわけですけれども、実際は、審議会でお話しされていた、事業を解体せず、雇用を維持しつつ継承すること、事業と雇用が一体であるというふうなことを、その文のまま明記したわけではありません。

 逆を言えば、ここで確認したいんですけれども、大臣、百五十七条でしっかり書かれているということは、事業と雇用は一体であり、一体的事業譲渡というものをある意味原則とするということが書かれているということで理解していいでしょうか。

鈴木国務大臣 馬場先生御指摘のとおり、昨年二月の金融審議会の報告書におきましては、企業価値担保権の実行時の換価に関する方法に関して、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継することを原則とし、個別財産の換価は事業の譲渡が困難である場合における例外とするとの提言がなされました。

 今般の御審議いただいております法律案におきましては、この提言に沿いまして、換価の方法を定める第百五十七条において、第一項では、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継することを意図して、「営業又は事業の譲渡」とすることを一般原則といたしまして、第二項において、「前項の規定にかかわらず、」と規定をして、個別財産の換価が例外であるということを定めているところであります。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。しっかりとこの場の議論で確認することができました。

 一方で、その個別の換価を考えていくことのときですけれども、あくまでやはりこれは例外であるべきだというふうに思いますが、個別換価を検討していかなくてはならないというその事象について、厳格な要件をしっかり定めていくべきではないかというふうに思いますが、そのことを御検討いただけないでしょうか。大臣、お願いいたします。

鈴木国務大臣 今回の法律案では、個別財産の換価は例外として、管財人が必要があると認める場合に裁判所の許可を得て実施する旨が規定されております。

 具体的には、事業売却の相手でありますスポンサー等に対して全体としての事業譲渡が困難な場合など、管財人が必要があると認める場合に該当すると考えられ、その例外的な個別換価の必要性については、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継することを原則とする制度趣旨に照らして、個別事案ごとに裁判所において適切に判断されることとなると考えております。

 こうした制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方につきましては、法案が成立した後にガイドラインなどの形で明確化した上で公表することを検討したいと考えております。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 ガイドラインの作成、是非、私たちも注視したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 時間の関係上、最後になってしまいますが、融資担当者の教育支援について、最後、お伺いしたいと思います。

 金融担当者に求められるスキルというのを一般的に単に三つ挙げるとすれば、関係構築能力、いわゆるリレーションシップ構築能力、そして、ある意味、営業力、最後、審査能力、目利き力とも言われるものだと思いますけれども、ここ最近、やはりずっと長らく低金利の状態でありまして、銀行及び金融機関というのは、はっきり言えば、営業、営業、営業というようなところで、かなり振り切って活動してきたところは否めないのではないかというのが私自身の教育を受けてきた感想からも思うわけですけれども。

 今回、企業価値担保、事業性融資ということがあるということは、ある意味、旗がぐっと変わってくる。金融機関の文化、あるいはその情勢そのものを変えていくぐらいの機運を高めなければいけないというふうに私は思いますし、それは、営業以上に、やはり、審査能力であったり目利き能力というのが、銀行の中あるいは金融機関の中のある意味DNAにしていこうということが、本来は、金融庁がより明確に、より旗を振ってやっていっていただきたいなということを願いを込めて、最後、質問したいというふうに思うわけです。

 教育支援、融資担当者における、あるいは金融機関の新人教育かもしれませんが、あるいは中途採用のところの教育かもしれませんけれども、そういった教育支援を金融庁としてより強力に旗を振っていただきたいというふうに思いますが、大臣、お答えいただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 馬場先生はかつて銀行にお勤めでいらっしゃいましたので、現場に即した御指摘であると思って、しっかり伺わせていただいたところであります。

 先生の御指摘のとおりに、地域経済や事業者の持続的な成長を支えるためには、金融機関におきまして、事業者の実態や将来性等を的確に把握、評価できるいわゆる目利き力を養っていくことがますます重要になっていると思っております。この目利き力は、各金融機関の金融仲介機能の源泉であり、それぞれの実情に即した継続的な人材育成等に取り組むことが重要であると思います。

 この点で、金融庁では、二〇一九年の十二月に監督指針を改正をいたしまして、金融機関に対して人事ローテーションの確保を求めないことといたしました。これにより、例えば、融資担当者と顧客企業との中長期にわたる関係構築を通じて事業への理解を深める取組を行うなど、各金融機関が創意工夫を凝らして融資担当者の人材育成等に取り組むことが可能になっております。

 さらに、金融機関の人材育成等を後押しする観点から、例えば、融資先の経営改善を支援する際の着眼点を支援対象となる業種ごとに整理をした「業種別支援の着眼点」というものを作り、公表して、その研修を実施するなどの取組も行ってまいりました。

津島委員長 大臣、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 はい。

 加えて、今回の法案では、融資担当者等において、事業を適切に評価するノウハウが十分でない場合などに備えて、金融機関や事業者に対して専門的な知見の提供等の支援を行う機関の認定制度の創設も盛り込んでおります。

 引き続き、金融庁として、金融機関がそれぞれの実情に応じて必要な人材育成に取り組むように促してまいります。

馬場(雄)委員 現場のアクターの皆様、そして融資担当者の皆様が安心して体制をつくることができるよう、金融庁に最後求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて馬場君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の法案、事業性に着目をして融資をできるような仕組みということで、企業価値担保権が新たに設立をされるということでございます。やはり、地域を歩いていますと、中小企業のオーナーの方々のお話を聞くと、厳しいときは貸してくれないんだよな、いいときは借りてくれと言われるけれどもという言葉を随分と多く聞いてまいりました。そういった中で、事業を継続し得るような融資、事業性に着目をしてということは、理念としては是非進めてもらいたいということを思いを込めて、一つずつ、少し法案の中身を確認したいと思います。

 まず、目的でございますが、先ほど来ありましたように、第一条でこのようにあります、不動産を目的とする担保権又は個人を保証人とする保証契約等に依存した融資慣行の是正及び会社の事業に必要な資金の調達等の円滑化を図り、もって会社の事業の継続、そして国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると。

 そこで伺います。不動産担保、経営者保証に依拠してきた我が国の融資慣行の変化を、この法案によって変えていきたいということだと思いますが、この新法によってどの程度それを見込んでいるのか、定量的な効果の見込みを示していただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 今回の法案で導入をいたします企業価値担保権、これは、事業者の将来のキャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保の目的とする新たな担保権でありまして、御指摘のように、不動産担保や経営者保証に安易に依存せず、事業者の実態や将来性等に着目した融資をより一層推進するため、新しい選択肢を提供するものであります。

 企業価値担保権の利用件数等の定量的な見込みということでございますが、これにつきましては、事業者を取り巻く経営環境や、それに応じた資金調達ニーズの状況にもよるために、定量的な見込みをお示しすることは困難ではございますが、企業価値担保権については、例えば、有形資産に乏しいスタートアップ企業、現経営者の設定している経営者保証の後継者への引継ぎが困難であることを理由として事業承継が進んでいない事業者、そして、事業再生を通じた潜在的な回復可能性はあるものの担保余力が乏しい事業者などにおいてその活用が見込まれるのではないか、そのように考えております。

稲富委員 企業価値担保権の、先ほどおっしゃらなかったんですけれども、例えば件数とかいうことを目標に置くことはしないという御答弁だったかと思いますが、そこに関するデメリットは何かということ、これは局長さんで結構ですので、答えていただきたい。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案に盛り込まれた企業価値担保権については、あくまでも事業者のニーズに応えた適切な活用が求められるというふうに考えてございます。仮に、一律に利用件数を報告される場合には、これを金融機関側がノルマ的に受け止められた場合には、かえって件数稼ぎ的な、形式的な融資実績等をつくり上げるみたいなことも懸念されまして、事業者のニーズに応えた適切な活用の妨げとなっては、これは本末転倒だというふうに考えてございます。

 一方で、金融庁といたしましては、実態を把握することは極めて重要だというふうには考えてございます。具体的な活用事例などを含めました実態把握の方策については、今後、本制度の適切な活用の妨げにならないように適切に検討していって、十分なモニタリングですとか実態把握ができるよう、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

稲富委員 この目的には、最終的には国民経済の健全な発展という、いわばマクロの大きな目標もあるわけで、是非その実態把握とともに、何らかのやはり目的、指標というのが必要ではないかということを申し上げたいと思います。

 続きまして、先ほど馬場議員からもありました目利き力についてお伺いしたいと思います。

 これを向上させることがこの政策の成否に大きく関わるということは全くそのとおりでございまして、特にメガバンクなどは、それなりに人材がたくさんいらっしゃる、豊富にある、専門性もある。しかし一方で、地域の金融機関というのは多くの、幅広い範囲の業務を担っていただいております。しかし、他方で、その強みというものがありまして、やはり地域の経済事情に明るいということもあろうかと思います。

 そういう意味でいうと、目利き力というのは地域金融機関においても当然ながら必要だということで、これが向上していっているのか、そして、どうやってそれを向上させるのかということを改めて御答弁願いたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地域経済や事業者の持続的な成長を支えるためには、金融機関において事業者の実態や将来性等を的確に把握、評価できる目利き力を養っていくことがますます重要になっており、金融機関には、その向上に向けて、人材育成等により一層取り組んでいただく必要があるというふうに考えております。

 こうした中で、先ほどメガバンクとの比較について御質問ございましたけれども、確かに、地域金融機関におきましては、メガバンクに比べて限られた人員であらゆる業務運営を行うという中で、知見、ノウハウの蓄積に難しさを感じるという声も聞かれておりますが、他方、これも委員から御指摘のとおりでございますけれども、地域金融機関におきましては、事業者との緊密なリレーションを構築しやすいという強みがあるというふうに考えております。

 金融庁といたしましては、金融機関の人材育成等を後押しする観点から、例えば、融資先の経営改善を支援する際の着眼点を支援対象となる業種ごとに整理した「業種別支援の着眼点」を公表し、その研修を実施するなどの取組を行っているところでございます。引き続き、金融機関の目利き力向上に向けて、人材育成等の取組を後押ししていきたいと考えております。

稲富委員 是非、取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、事業性融資推進支援機関について伺います。

 第四章では、事業性融資を推進するため、金融機関と中小企業者の支援体制として事業性融資推進支援機関を政府が認定することになっております。金融機関、中小企業者への支援ということで、それぞれに対して支援をすると聞いております。

 今回の企業価値担保権は非常に多岐にわたっておりますし、当然、新しい概念の担保を設定をするということ、したがって、新たな専門家を育てていかなきゃいけないということ、また、今回、恐らく参考にしていた米国と違いまして、まだまだ事業性融資に対しては歴史が浅いということから、この支援機関が必要だということは理解はいたしますが、改めて、この役割と、そしてどういう人材で構成するかということをお伺いします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案に盛り込まれております企業価値担保制度でございますけれども、先生おっしゃるとおり、事業者の事業全体の価値が担保価値となる全く新しい担保制度でございますため、この制度が広く活用されていくためには、金融機関において事業内容や将来性等を的確に把握して、事業全体の価値を適切に評価できる必要がありますほか、事業者側におきましても、金融機関が事業の状況を適切に評価できるよう、事業計画のほか、事業の強みや弱みを金融機関に適切に伝えるようになることが必要だろうというふうに考えてございます。

 このため、この法案におきましては、御指摘のとおり、事業性融資を推進する支援機関の認定制度を盛り込んでございます。この支援機関は、金融機関や事業者に対して、例えば、経営資源や財務内容の分析を実施し、経営実態を把握する方法に関する助言ですとか、事業計画の策定に関する助言などを行うことを想定してございます。

 このような支援を行うに当たっては、支援機関を構成する人材につきましては、例えば事業性融資や中小企業に対する経営支援に知見を有する必要があるというふうに考えてございますが、今後、事業性融資において具体的に求められる支援の内容ですとか、支援のために必要な能力について検討する中で、必要となるより具体的な人材像につきましては、法案が成立いたしましたら、例えば全国銀行協会ですとか、日本商工会議所などの各種業界団体などとよく相談して検討してまいりたいというふうに考えてございます。

稲富委員 その点で二つ申し上げたいことがありまして、やはりどうしても、小さく始めるということになりますと、首都圏中心になるんじゃないかと想像します。しかし、先ほど申し上げましたように、地域金融機関でどう人材育成するかということが大事であるということからすれば、地方にはしっかりと目を向けてもらいたいということ。むしろ、スタートアップにしても、事業承継にしたって、地方にも当然あるわけでございます。

 もう一つは、本来的には、このような支援機関というのはなくなる方がいいということを思います。金融機関と中小企業者の間で関係性がしっかり構築されて融資が行われるということになれば、これはそもそも要らないわけでございますし。

 したがって、その二点について、ちょっともう一回コメントいただければと思います。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、地域におきますこうしたスタートアップを始めとした様々な事業に対する円滑な資金供給というのは極めて重要でございまして、引き続き、地域についても、私ども、しっかりと目を配って対応していきたいというふうに考えてございます。

 また、究極的には、こういった融資制度が根づけばこういう支援機関は要らなくなるということは、そのとおりだと思います。この支援機関というのは、何も新しい組織をつくるというわけではございません。あくまでも、今ある既存のいわゆる適切な団体等にお願いできないかというふうに考えているわけでございますので、しっかりとそこが根を張った段階では役割を終えていくんだろうと。ただ、それがいつかと言われますと、なかなか現時点では見通すのは難しいかなというふうに考えてございます。

稲富委員 今の二点を踏まえて、是非御対応いただきたいと思います。

 続きまして、企業価値担保権の対象となる、第七条にある会社の総財産という言葉についてです。

 今回の担保権のまさに対象は、会社の総財産という、この条文にしか書かれていないこの言葉なんですね。これがなかなかどこにも定義が非常になくて難しいところでございまして、括弧書きで、将来において会社の財産に属するものを含むとしか書かれていないということでございます。

 したがって、この会社の総財産とは何なのかということを御説明いただきたいのと、これをどう評価するのかということを併せてお答えを願いたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘ありましたとおり、今回の企業価値担保権の目的となります財産は、将来キャッシュフローなどを含む一体としての総財産でございます。この総財産の中には無形資産等の個別財産が含まれるものの、これらは事業活動の中で絶えず入れ替わるものであり、企業価値担保権の担保の目的は、あくまでも一体としての総財産としてございまして、基本的に個々の財産の評価というものを想定しているものではございません。

 また、担保価値である事業全体の価値の評価につきましては、例えば、将来キャッシュフローの見通しを基礎として割引現在価値の幅を推計する方法など様々なバリエーションが考えられますけれども、具体的な方法は、各金融機関において、個々の事案の特性等に応じて、顧客に逆に選ばれるための創意工夫、あるいは経営判断によって適切に定められるべきものと考えてございます。

 金融庁といたしましては、これらの点に関する好事例の把握、公表などを行うとともに、課題を感じる金融機関に対しては、専門的な知見の提供等の支援を行う支援機関の活用を促していくというふうに考えてございますけれども、金融機関における事業性融資に係る取組の後押しに向けて、こうした評価の点も踏まえまして、更にどのようなことができるか、金融機関等の関係者と更に丁寧に相談してまいりたいというふうに考えてございます。

稲富委員 極めてざっくりとしていまして、総財産と言われても、なかなか、それこそ地域の金融機関あるいはその事業者にとっては分かりにくいものでございますので、是非その点も踏まえて対応いただきたいと思います。

 続きまして、労働債権について幾つか伺います。

 今回、本法案により、企業価値担保権の活用によって貸し手である金融機関からタイムリーな経営改善支援が実現されるとされておりますが、一方で、借り手である企業からすれば、伴走支援を受けるということなんですけれども、倒産でないような局面においても、平時から様々な人員整理あるいは労働条件の変更などを要求される場面があるのではないかという懸念もあるわけでございます。

 伺います。そういった貸し手あるいは担保権者から、人員整理、労働条件の引下げなどといった経営関与があり得るのか、この点についてお伺いします。

井藤政府参考人 済みません、委員御指摘の担保権者や貸し手の金融機関による人員整理や労働条件の引下げなどの経営関与に関しましては、昨年二月の金融審議会の報告書におきましても、担保権者は労働条件などについて決定する等の権限を有するものではないとの提言をいただいてございます。こうした制度趣旨に関しましては、法案成立後、関連する監督指針等を改正し、関係者への周知、広報等に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 また、伴走支援による行うべきでない助言ですとか指導というものが懸念されるということに関しましては、企業価値担保権が設定されている場合に限らず、借り手に対して金融機関が取引上の優越的な地位を不当に利用し、取引の条件又は実施について不利益を与えるような行為については銀行法令等において禁止されており、金融庁としては、金融機関のこうした法令等を遵守しつつ、制度趣旨を踏まえて、経営者の自主性を尊重しつつ、事業者の状況に応じた経営改善支援等を適切に行っていくよう、しっかりとモニタリングを行ってまいりたいというふうに考えてございます。

稲富委員 大臣にちょっとお伺いします。

 これは監督指針を出されるというふうに伺っておりますので、その文書というものを例えばホームページに載せるということだけではなくて、担保権者、あるいは貸し手、借り手に周知すべきだというふうに思いますけれども、その点の扱いについて伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 こうした制度の趣旨に関しましては、法案成立後、関連する監督指針等を改正するということを考えておりますので、御指摘のとおり、関係者への周知、広報、これはしっかりと進めていきたいと思います。

稲富委員 続きまして、企業価値担保権を設定する場合の事前説明について伺います。

 本法案では、企業価値担保権の設定において、特に労働者への通知を義務化しておりません。

 労働者は、単に担保目的財産に含まれる労働契約の一方の当事者というだけでなく、事業の維持、発展を進めていく上で大切な利害関係者でもあります。事業を円滑に推進するために、使用者からの丁寧な事前説明、誠実な労使協議を行うことが欠かせない。そのために、担保権を設定する前に労働者への通知、説明が必須ではないかという声がありますが、その点について御説明をお願いします。

鈴木国務大臣 昨年二月の金融審議会の報告書におきましては、担保権設定時の労働者保護を図る観点から、本担保権の理解促進に向けて、本担保権の目的は事業成長担保権者が労働条件等に影響を及ぼすことではないこと、労働者との紛争防止の観点から、担保権の設定の際に労働組合等への説明を行うことが望ましいなどについて、政府において積極的な周知、広報を図るというような提言をいただきました。

 御指摘の担保権設定時におけます労働組合等への通知や事前協議につきましては、他の担保制度とのバランス等を踏まえ、今般の法案には義務づけの規定は盛り込んでおりませんけれども、こうした提言を踏まえまして、法案成立後、金融庁において、厚生労働省等の関係省庁とも連携をして、例えば担保設定時における労働者とのコミュニケーションの在り方など、制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方をガイドライン等の形で公表することを検討いたしております。

 それとともに、本担保権を活用した新しい融資実務への正しい理解を促す観点から、当該ガイドライン等の内容を含め、制度の内容や趣旨について、関係者への周知、広報等に取り組んでまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、使用者性について伺います。

 担保権者、貸し手、管財人が、労働組合法上の使用者に該当するかという問題でございます。そもそも使用者に該当するかということと、その使用者性について何らかの政府の考え方を示すべきではないかという、この点についてお伺いします。

鈴木国務大臣 先生の御質問のうち、企業価値担保権の実行手続におけます管財人は、これは債務者からの事業の経営をする権限を引き継いでいるために、労働組合法上の使用者に該当すると考えております。

 また、担保権者や貸し手については、担保権を設定すること又は与信を提供することのみをもって労働組合法上の使用者に該当するとは言えない一方で、基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、使用者性を有する可能性があると考えられます。

 企業価値担保権を活用した融資を行う金融機関は、労働組合法上の使用者として経営に関与することを意図するものではないと考えられることから、昨年の金融審議会の報告書におきましては、企業価値担保権に関する正しい理解を促すため、担保権者等の使用者性について、こうした考え方を周知することが提言されております。

 この提言を踏まえまして、金融庁としては、法案成立後、担保権者や貸し手が労働組合法上の使用者性を有する場合等について、関連する監督指針等を改正して明記するとともに、厚生労働省等の関係省庁とも連携をして、労働法制が守られるかどうかについて懸念を持つ借り手側の事業者、従業員などへの周知、広報等にも取り組んでまいりたいと考えております。

稲富委員 終わります。どうもありがとうございました。

津島委員長 これにて稲富君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久です。

 通告に従いまして、事業性融資推進法案について順次質問させていただきます。

 既に馬場委員、稲富理事からも質問がありまして、一部類似の質問になりますけれども、我が党の見解も含めての質問になりますので、お許しいただきたいと思います。

 最初は、金融機関の目利き力の向上と、企業側のガバナンス向上に向けた支援策について伺っていきたいと思います。

 企業価値担保権の担保目的財産は、将来キャッシュフローやノウハウ、技術といった無形資産を含む事業全体の価値を総財産として定義をしております。

 この企業価値担保権を活用する場合に、貸し手となる銀行などの金融機関は、貸出先の事業性を見極める必要が出てくるのは言うまでもありません。事業性評価のノウハウを持つ職員の育成、それからモニタリング体制の構築、そして、スタートアップ企業の将来キャッシュフローをどう見積もるのか、これがまさに金融機関の目利きであって、そこを向上させていかなければならないということだと思っております。長年の間、担保に依存した融資を行ってきた金融機関が、この新しい融資の実務にどう取り組んでいくのかということは大変重要なことだと思っています。

 一方、借り手となる企業側の方も、やはりガバナンスの向上が必須である、こう思っておりまして、企業にとっては適切な情報開示、それからその企業の透明性の確保、こういったことが大前提になるんだろうと考えます。

 金融機関との緊密なリレーションシップが前提となる制度だけに、金融機関側の信頼を得るためには、事業計画や財務状況の適切な情報提供を行う、そうした積極的な姿勢が求められるし、当然、こうしたガバナンス向上ができないような企業であれば、従来型の経営者保証制度に甘んずるということをせざるを得ないんだ、こうなってしまうと思います。

 そこで、金融機関の目利き力の向上と、企業側の事業計画それから財務状況などの情報提供に係る課題について、金融庁としてどのように取組を行おうとしているのか、これを大臣にお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 企業価値担保権の活用を含め、事業性融資を推進していくためには、まず、金融機関において、事業者の実態や将来性等を的確に把握し、事業全体の価値を適切に評価できる、そういう必要があるほか、事業者側におきましても、金融機関が事業の状況を適切に評価できるよう、具体的な事業計画の作成や、事業の強みや弱み、これを適切に伝えるようになることが必要であると考えております。

 このため、金融庁といたしましては、関係省庁と連携をして、金融機関における事業者の将来性等を適切に評価できる目利き力の向上のための方策やその体制整備、事業者による金融機関との深みのあるコミュニケーションなどの好事例を把握をして、その公表を行ってまいりたいと考えております。

 また、この法案では、企業価値担保権の活用に向け課題を感じている金融機関や事業者に対して、専門的な知見の提供等を行う支援機関の認定制度を設けることとしており、こうした支援機関の活用を促してまいりたいと考えております。

 こうした金融機関及び事業者のそれぞれに対する取組を通じまして、企業価値担保権の適切な活用を含めた事業性融資を促進してまいりたいと考えております。

稲津委員 これまでに例のない制度でもありますし、それから、これから金融の実務に大きな影響が出てくると思っていますので、金融機関の目利き力の向上、それから企業側のガバナンスの強化、これに対して是非しっかりとした御支援をいただきたいと思います。

 大臣への質問は、これで私、終わりますので、この後のことについては委員長の方でお取り計らいいただきたいと思います。

津島委員長 大臣には、参議院へどうぞお向かいください。

稲津委員 次に、信託契約について伺っていきたいと思います。

 企業価値担保権の特徴の一つ、これは信託契約を求められる点だというふうに思います。普通の抵当権などであれば不要であり、コスト要因とも思われるが、なぜ企業価値担保権の場合には必要とされるのか。

 また、本法案では、信託に関するコストを抑えるために、簡素な規制とすることに加えて、貸し手と企業価値担保権者が同一であるということを認めるようです。具体的に、貸し手と企業価値担保権者が別々になる場合や同じになる場合というのはどのような場合なのか。

 この点についてお伺いしたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案では、債権者間の公平性等を確保する観点から、商社等の一般事業会社も自身の債権に企業価値担保権の設定を受けることができる制度としておりまして、債権者には必ずしも金融庁の規制、監督が及ばない場合が存在することとなります。

 一方、企業価値担保権の場合、現在の抵当権とは大きく異なる新しい制度でありますため、一般事業会社が利用する場合も含め、借り手に対して担保設定時に適切な説明が行われることが重要であることなどを踏まえまして、今回の法案におきましては、企業価値担保権の設定は信託契約によらなければならないこととして、その信託に係る業務を金融庁の新たな免許業種とした上で、説明義務等の必要な義務を課すこととしてございます。

 そのため、例えば、信託の免許を持たない一般事業会社が貸し手である場合には、貸し手とは別の者が担保権者となりますけれども、企業価値担保権を利用する貸し手が、企業価値担保権の信託に係る業務の免許を取得した上で自ら担保権者となることも、今回の法案では可能としてございます。

 貸し手が自ら担保権者となるかどうかは、企業価値担保権の活用の頻度、様態、そのための体制整備に係る方針等を踏まえた個々の経営判断と考えられますが、例えば、地域の中小企業を主な融資先とする地域金融機関が、自ら必要な体制を整備し、企業価値担保権となることが考えられます。それで、この場合には簡素な手続で免許を取得することができる、金融機関の場合にはですね、措置をしているところでもございます。

津島委員長 稲津君、マイクの位置を確認された方がよろしいかと思います。

稲津委員 私のですか。ありがとうございます。

 次に、貸出金利と制度の普及についてお伺いをしていきたいと思いますけれども、現在、日本の中小企業金融の実態というのは、複数の金融機関が一つの企業に対して貸出しを行うことで貸出金利に低下圧力がかかっている、このように見られております。

 これに対して、企業価値担保権では、金融機関が企業の展開する事業を丁寧にモニタリングをすることになります。一方で、企業価値担保権を設定する企業の経営支援には、従来に比べれば、どうしても時間とコストがかかってしまう。そういうことから、金融機関はコストに見合った利益を得ようとする、そういうインセンティブが働くんだろうと思います。こうした場合に、貸出金利が上昇してしまえば、中小企業が果たして耐えられるのか、こういう課題も出てくるというふうに考えるわけです。

 それから、従来から、経営者保証は外す場合のコストが相当に高い、このように見られていますけれども、あくまでも企業価値という有担保融資であることも意識するなど、それに見合った金利水準に抑えるようにならないと制度の普及は進まない、このように私は考えます。

 貸出金利についての課題と制度の普及の関係についてどのように考えるのか、見解を伺います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 融資における金利水準ですけれども、一般には市場金利や信用リスク、自身のビジネスモデルなど様々な要因を勘案し、事業者と金融機関の間の交渉を通じて定められるものと承知しております。先生おっしゃるとおり、企業価値担保権を活用する場合には、金融機関が事業者の実態把握や伴走支援などを行うことに伴い、事業者にも一定の金利負担が生ずるものとは考えられます。

 他方で、この企業価値担保権の活用におきましては、無形資産を含む事業全体の価値に基づき融資が判断され、有形資産に乏しい事業者の資金調達の円滑化が図られることが期待されることですとか、事業の成長発展が担保価値の向上につながることから、金融機関によるタイムリーな経営改善支援が受けられることなどを通じて、事業者の成長につながるといったメリットもあるというふうに考えてございます。

 企業価値担保権の普及に当たりましては、事業者におかれて、もちろん納得のいくような金利であるということも大事かと思いますけれども、こうしたメリットに価値を見出してもらうことも重要だというふうに考えてございます。

 金融庁といたしましては、企業価値担保権のメリットの周知等に取り組むとともに、こうした企業価値担保権の真価が発揮されるよう、金融機関に対して、それぞれの状況に応じた必要な体制構築等を促し、適切な形で融資が行われるよう、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えてございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 時間の関係上、最後の質問に行きたいと思いますけれども、本法案と中身が少しずれますけれども、大事な問題なので、関連で一問聞いておきたいと思います。

 金融の世界では、媒介という、そういうサービスのニーズが強まってきているような実感がします。特に、小規模零細企業、事業所においてはこの傾向が強い。この金融の媒介業務を行う場合は、当然これは登録が必要なんですけれども、最近は、無登録の経営コンサルタントや融資コンサルタントなどの業者が金融機関の選定や申込書の作成の助言といった媒介行為を行って、多額の手数料を中小企業に要求する事例が散見されます。事実、融資の媒介に関する情報が少ない中で、相談をためらっている経営者もいます。

 そこで伺いますけれども、こうしたことを踏まえた上で、被害の実態をどう把握して、金融庁としてどう対策をしているのか。また、こうした被害に遭った場合に、そのコンサルタントの業者が自分の会社と金融機関の双方に介入したという事実の必要性について見解を伺っておきます。

油布政府参考人 個別の事案につきましてお答えが難しい部分もございますが、一般論としてまず申し上げますと、金銭の貸借の媒介を行う者が出資法の上限を超える手数料を受け取ることは、出資法に照らして刑事罰の対象にもなり得るものでございます。

 その上で、貸金業法上、金銭の貸借の媒介に当たるのかという点について申し上げますと、当庁に寄せられました金銭の貸借の媒介に関係する相談、苦情等を取り急ぎ点検しましたところ、その数自体は必ずしも多いという印象は持っておりませんという状況でございます。また、こうした事案が金銭の貸借の媒介、すなわち貸金業に該当するかどうかにつきましては、個別具体に判断する必要がありますので、寄せられた状況だけではなかなか難しいというところもございます。

 以上が、私どもが現在把握している状況でございます。

 次に、委員お尋ねの媒介の要件につきまして申し上げますと、一般に、金銭の貸借の媒介というのは貸し手と借り手との間に立って金銭消費貸借契約の成立に尽力する行為と考えられます。これに該当するか否かにつきましては、契約成立に向けた一連の行為の全体について総合的に判断すべきものでありまして、一概にお答えすることは困難なのでありますが、ただ、逆に申し上げれば、こうした一連の行為のうちの一部分だけを取り出して、例えば一つ一つの貸借契約の過程においては、貸し手と接触や交渉を行っていないという事実だけをもって金銭の貸借の媒介には当たらないと判断することもできないのではないかと考えております。

稲津委員 本法案の認定事業性融資推進支援機関制度ですけれども、将来的にこの認定支援機関が貸金業法における媒介行為ができるようになれば無登録コンサルト業者を減らすことにつながるんじゃないか、こういう問題意識から質問しました。

 今後、違法な媒介行為に対する被害抑止のために、金融庁から金融機関へ、融資申込人以外の代理人が仲介した際には貸金業登録や金融サービス仲介業登録の確認を徹底するような対策を求めて、質問を終わります。

津島委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤原崇君。

藤原委員 ありがとうございます。自民党の藤原です。

 私の方からも質問をさせていただきたいと思います。

 今までの質疑の中でも出ていましたが、事業性融資に関するものを推進をしていくという中で、この取組は、金融庁としては二十年以上、リレーションシップバンキングなどの名目で推進をしてきました。まずは、その現在までの取組の成果がどうなのかということについてお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、金融庁は約二十年前より金融機関に対して、不動産担保や経営者保証に過度に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すため、例えばリレーションシップバンキングの推進、金融検査マニュアルの廃止等による企業実態に即した与信管理の尊重、経営者保証改革プログラムの策定など、様々な取組を進めてきたところでございます。

 足下では、この経営者保証改革プログラムによって経営者保証に依存しない融資に一定の進展が見られておりますけれども、事業者の実態や将来性に着目した融資の浸透に向けて、より一層取り組む必要があると考えているところでございます。

 今回の法案における企業価値担保権の創設等を通じて、事業性融資の更なる推進に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 経営者保証を取らないということはある程度流れとしてできてきているんだろうとは思うんですが、やはりその一方で、今までの質疑の中でもありましたけれども、将来性というものをどういうふうに評価するのかというのは非常に難しい話でもあるんだろうというふうに思っています。そういう中で、どうしても実体があるものというものを重視する、そういう傾向はあるんだろうと思っています。

 今回、新たに企業価値担保権という新しい担保権を創設するということになりました。従来の日本の担保物権というのは、不動産が典型でありますし、人的保証ということで保証人というのもあった。あるいは債券。基本的には物がある、あるいは人的な、裏づけがあるもの、そういうものを基本的に我が国の担保物権法制の中では準備をしてきたわけでありますが、そういう中で、企業価値という見えないもの、そういうものを担保の目的にするということは、これは非常に今までの法制の中では異質なものなんですが、このような制度設計を行うに至った理由について御説明をいただきたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者の実態ですとか将来性に着目した融資をより一層推進していくためには、リレーションシップバンキングの推進ですとか金融検査マニュアルの廃止といったこれまでの取組に加えまして、更に制度的な整備を行う必要があるというふうに考えるわけに至ったわけでございますが、諸外国を見てみますと、リレーションシップバンキングやスタートアップ向け融資等の実務では、事業者の実態や将来性に着目した融資判断に加え、融資後もタイムリーな経営支援改善などが行われておりまして、こうした実務において事業全体に対する担保権が利用されているものと承知してございます。

 こうした中、我が国におきましても、こうした融資実務を参考にしつつ、事業性融資のより一層の推進に向けた制度整備を行うため、無形資産を含む事業全体を担保とする企業価値担保権の創設を定める本法案を今国会に提出したものでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 まさしく我が国の銀行と企業の在り方というものを少し変えていく、そういうようなマインドを持って二十年以上リレーションシップバンキングなどの名目でやってきたんですが、もう一段取組をしていくということでありましたが、これもそれぞれの先生方からの質疑でもありましたけれども、じゃ、企業価値というのがどれくらいあるんだ、担保価値としてどれくらいあるんだということ、これを測るというのは非常に難しいことなんだろうというふうに思っております。

 先ほど、馬場先生だったと思うんですが、人に依存する価値というのも実際あるわけでして、その人が辞めてしまえばどうなるか分からない、あるいは外的な、何か戦争とか為替の関係とか、じゃ、五年後どうなるか、三年後どうなるか、そういうような大きな社会情勢の中でそれぞれのビジネスがどう動くかというのは、非常に不確実性があるわけであります。確実にいけるというものがあるのであれば、それは、それでも担保は取ってしまうんでしょうけれども、融資はなかなかできるんですが、どれくらいと評価をするというのは極めて難しい問題でありまして、扱いが容易ではないことが率直に言って想定をされます。

 しかし、その一方で、新しい制度でありますので、使っていただかないと意味がないわけであります。いろいろな審議会とかで議論をして、法案を金融庁の皆さんでしっかり作っていただいて、これから二年以上時間をかけて準備をして始めたけれども、ちょっとやはり実体がないものだからなかなか難しいね、やはり不動産とか債券とかそういうのを担保にした方が確実だよねでは、やはりやった意味がないということですし、銀行あるいは銀行を含めた取引のマインドというのは変わっていかないわけであります。

 その一方で、非常に私、これは聞いて扱いが難しいなというふうに思っているんですが、どうやって使っていただくか、その点に対して金融庁はどのように対応を行うつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

井藤政府参考人 先生おっしゃいますとおり、この新しい制度、仮に法案が成立いたしましたら、是非とも幅広く使っていただければと願っているわけでございますけれども、おっしゃるとおり、担保評価というのは非常に難しい点であろうかというふうに思いますが、金融機関におきましては、このためには、事業者の実態や将来性等を適切に評価できる能力の向上や、そのための体制整備に加えまして、事業者との間において深度のあるコミュニケーションの実現等に向けた取組が進められる必要があるというふうに考えてございます。

 このため、金融庁といたしましては、金融機関におけます事業者の将来性等を適切に評価できる能力の向上方策ですとか、そのための体制整備等の好事例を把握し、その公表などを行ってまいりたいというふうに考えてございます。

 また、この法案では、企業価値担保権の活用に向け、課題を感じる金融機関や事業者に対して専門的な知見の提供などを行う支援機関の認定制度を設けることとしておりまして、こうした支援機関の活用を促してまいりたいというふうにも考えてございます。

 こうした取組を通じまして、企業価値担保権の適切な利用を含め、事業性融資に係る金融機関の取組を更に後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 やはり、これは非常にいい制度だということは、恐らく多くの先生に思っていただいている。ただ、逆にやはり難しい制度でもあるということも共通理解だと思いますので、是非金融庁には取組をしっかりやっていただきたいと思います。

 特に、これは質問ではないんですが、事業性融資推進本部を設置をするということであります。これについても、施行期日が来て、施行をした後に本格的に動かすということでは伺ってはいるんですけれども、ただ、二年半以内ですので、じゃ、二年半何もしないというわけでは当然ないとは思うんですけれども、前広に、この事業性融資推進本部的なもので、正式に発足する前でも、どういうところがニーズがあるのか、あるいは、どういうところが課題なのかということは、事務方だけではなく、やはり閣僚級で何かしっかりやっていくということは、物を進める大きな推進力になると思いますので、是非、二年半の間しっかり準備をしていただく中で、この普及についてもお力をいただきたいなというふうに思っております。

 そして、次の質問に行きたいと思います。

 企業価値担保権を設定をするということは、企業価値全てに網をかけて担保にするということになります。その結果として、銀行としては、しっかりモニタリングをしていって、しっかり応援をするところはしていくし、立ち直らせるところは立ち直らせていく、そういうような、まさしくリレーションシップをつくっていくきっかけにするんだということだろうと思います。

 しかし、我が国では、その一方で、複数の銀行と取引をするということも、これはないわけではないわけでして、先ほども質疑でありましたけれども、複数の銀行とお取引をする中で、やはり複数行との間でしっかり担保を出しているところもございます。仮に企業価値担保権ということで網をかけてしまいますと、ほかの銀行が融資をしようとしたときに、抵当権なり、何か債券に、定期預金みたいなものに担保をつけたとしても、これは劣後担保に、劣後するので、基本的には担保としての価値というのが落ちてしまうわけでして、なかなか複数行と取引をするという今の慣習からはちょっと離れていくのではないかというふうに思っております。

 もちろん、複数行がやっていて、ちょっと責任がないような状況になっているケースがないわけではないから、こういうようなものをやるということもあるんだと思うんですが、その一方で、今、複数行と結構お取引しているところなんかにしてみると、一行が企業価値担保権で網をかけてしまうと、なかなかそれ以外の銀行というのはお取引というのが難しい。その中で、利息のお話もございましたけれども、利息もどうなっていくかということも一つ議論としてあるんだろうなと思うんですが、結果として、複数行と取引をしている企業ではこれは使いづらいのではないかという点について思うんですが、この点について御見解をいただければというふうに思っております。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、この担保権は、事業者の無形資産を含む事業全体を担保とするものでございまして、また、他の担保権との優先劣後関係は、おっしゃるとおり、原則として登記等の対抗要件の具備の前後によるということでございます。

 したがいまして、複数行と取引している企業では使いづらいという側面を全く否定することは難しい部分もあろうかと思いますが、一方、本法案におきましては、企業価値担保権の債務者は、いつでも極度額を設定でき、また貸付金の元本を確定できるなど、債務者が希望すれば他の金融機関からの融資を受けやすくする枠組みを設けているほか、単一の企業価値担保権に対して複数の金融機関が担保権の設定を受けることも可能となってございます。

 このように、企業価値担保権は、事業者の多様な資金調達ニーズに応じた設定も可能でありまして、事業者にとって、自身の資金調達ニーズに応じた融資をこの担保権の導入によって受けづらくするものというふうには考えてございません。

藤原委員 ありがとうございます。

 まさしく、全ていいとこ取りというのはやはりできませんので、やはり、このリレーションシップというもの、こういうものを進めていく中では、ある程度、複数行との間というものが大丈夫というお話だったんですが、ある意味それはどちらを取るかという話で、今までの我が国の銀行取引の慣習を少し変えていく、そういうようなことを狙っているということで、そこはまず一つ私は非常に評価はしたいなと思っております。

 仮にこの企業価値担保権というのが普及をしていった場合、これは副大臣にお聞きをしたいと思うんですが、その企業価値担保権が実際に担保としての価値が本当にあるのかというのは、それなりにそろばんをはじいてやるわけでありますけれども、それが融資として担保価値が本当にあるのかという点は常に銀行もモニタリングはしていくわけであります。しかし、これは見解は分かれるわけであります。

 来年、このビジネスが伸びるのか、伸びないのかというのは、ある意味評価の問題でありますし、それは当然監査法人なんかが監査に入ってチェックをするわけでありますけれども、実際、蓋を開けてみたら元本割れというか全く担保価値がなかったというようなことになってはいけないわけであります。

 それは、まずは第一義的には銀行がしっかりとやっていくということになるわけですし、そこは金融庁も応援をしていくというふうに聞いております。

 その中で、やはり金融庁としても、これは検査と監督を銀行に対して担っているわけであります。金融庁と財務局においても実効性ある検査と監督が必要になると思います。そのために、非常に技術的に難しい問題でもありますので、金融庁と財務局、機構・定員についての体制強化も必要と考えますけれども、この点に対する、副大臣の方から御見解をいただきたいと思います。

津島委員長 井林内閣府副大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本制度を幅広く活用いただくためには、金融機関に対する検査監督、さらには企業価値担保信託会社の免許審査等、しっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

 金融庁としましては、これまでも効果的、効率的な検査監督に取り組んできたところではございますが、今般の法案、また法案審議におきます先生方からの御指摘をしっかり実現するために、必要な機構・定員について、引き続き金融庁及び財務局における体制の強化に努めてまいります。

藤原委員 ありがとうございます。

 終わります。

津島委員長 これにて藤原君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時八分開議

津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 今回の法案審査、新しい法律ということで、確認すべきことが盛りだくさんでございますので、早速質問に入らせていただきます。

 今回の法案によって、企業価値担保権が創設されるということでございます。企業価値の源泉の第一は、やはり人材だと思います。この点については、先ほどの質疑の中で馬場委員も指摘をしているところです。人材が流出してしまえば、要は従業員に辞められてしまえば、事業の再生もできないですし、事業の譲渡もままならないということになろうかと思います。したがいまして、当該企業で働く労働者を保護してこそ企業価値が守られるというふうに考えます。そうした観点で、本日も質問させていただきます。

 なお、先ほど、馬場委員、稲富委員からも同様の趣旨で質問されておりますが、私からは別な観点でも質問させていただきます。

 まず、この担保権の実行の手続が開始されるタイミングについてです。このときに、労働組合との関係について幾つか質問いたします。

 まず、条文を拝見いたしますと、八十九条の一項で、裁判所は、実行手続開始の決定をしたときは、次に掲げる事項、これは一号から五号のことを指していますが、を公告しなければならないと。その中で三項に、次に掲げる者には公告すべき事項を通知しなければならないというふうにありまして、三号に労働組合等というふうに入れていただいております。

 また、百二十二条一項において、管財人は、労働組合に対し、債務者の使用人その他の従業員の権利の行使に必要な情報を提供するよう努めなければならないというふうにも規定されております。

 また、百五十七条一項に、担保目的財産の換価は、裁判所の許可を得て、営業又は事業の譲渡によってするというふうに規定されている中で、四項に、裁判所は、第一項、この今申し上げたところですが、第一項の許可をする場合には、次に掲げる者の意見を聞かなければならないということで、二号で、労働組合等、こういうふうに入れていただいております。

 いろいろな場面で労働者の保護を図ろうということになっているというふうには理解をしております。

 そこで、大臣にお尋ねさせていただきます。

 それぞれの条文についてですが、まず、八十九条では労働組合に通知することにはなっていますが、ただ、これは一方的に通知するだけでなく、やはり、労働組合側としても受け取った通知の内容を確認したり、場合によっては協議が必要になる場合もあろうかと思います。協議をするよう努めなければならないというふうにどこかで規定していただきたいな、このように提案申し上げるところですが、大臣の見解はいかがでしょうかということと、まとめて聞いてもよろしいでしょうか。

 あと、百二十二条においても、労働組合に情報を提供することにはなっていますが、一方的に情報を提供するだけでなく、労働組合から要望を聞くなど協議も必要になると考えるところ、協議するよう努めなければならないという規定をこれまたどこかに入れていただきたいなというふうにも思うんですが、大臣、いかがでしょうかということ。

 あともう一点、百五十七条の、事業の譲渡の段階になって、裁判所が労働組合の意見を聞くことになっています。この段階になって初めて意見を聞くというようなことが出てきているわけなんですが、逆に、譲渡先の情報を労働組合に提供するということはちょっと見当たらなかったものですから、こういったことも併せて規定していただいて、ちゃんとコミュニケーションが取れることを担保するということが大事だと思うんですが、大臣の見解、いかがでしょうか。

 済みません、三つの条文について御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 昨年二月の金融審議会の報告書におきまして、企業価値担保権の実行時における労働者保護の観点から、労働組合等を通じて労働者の理解が得られるよう、裁判所が手続開始決定をする際に労働組合等に通知を行う手続でありますとか、裁判所が事業譲渡の許可を行うに当たっては労働組合の意見を聴取する手続のほか、管財人は、開始決定後、遅滞なく、労働組合等に対して必要な情報を提供する手続を設けることが考えられるとの提言をいただきまして、こうした内容を今回の法案に盛り込んでいるところでございます。

 具体的に、タイミング等も併せてお答えをいたしますと、労働組合等に対して、企業価値担保権の実行手続開始時に、裁判所から実行手続が開始した旨や管財人の氏名等の情報が提供され、そして実行手続開始後に、管財人から、担保権実行手続の概要や事業承継先選定に当たっての原則、それから実行後における譲渡会社での破産手続の開始の見込み、破産手続の概要等の労働者の権利の行使に必要な情報について提供されることになっているわけであります。

 条文ごとにいろいろお聞きいただきましたけれども、こうしたことについては丁寧な情報提供が必要である、そういうふうに私どもも考えているところでございます。

 タイミングも、なるべく遅滞なく情報を提供する等、真摯な対応を求めていきたいと思っております。

櫻井委員 丁寧に御答弁いただいたんですが、あわせて、八十九条とか百二十九条では、通知するとか情報提供というふうになって、労働者側からすると、一方的に通知を受ける、情報提供を受けるという状況になっているんですね。

 更に踏み込んで、分からないことがあったら聞くなり確認するなりという、何かそういう双方向のコミュニケーションを確保できるような、これは法律の条文に今から入れろと言ってもなかなか難しいかもしれませんが、例えばガイドラインなり指針なりで、そういったことをちゃんと、一方的にぱんと通知したらそれでおしまいということではなくて、ちゃんと丁寧なコミュニケーションを図ってくださいね、そういう趣旨なんですよというような解説をつけていただけるとありがたいなと思うんですが、ちょっとこの点いかがでしょうか。是非お願いいたします。

井藤政府参考人 先ほど大臣から答弁させていただきましたように、まず、実行手続の開始時の公告につきましては、実行手続を決定したことの事実を、例えば管財人の氏名、名称などを含めまして通知をする。

 その後におきましては、実際に実行手続が始まった場合には、管財人が債務者の使用人その他の従業者の権利の行使に必要な情報を提供するよう努めなければならないというふうになっているわけですけれども、当然、管財人におきましては、善管注意義務を持って、労働者のいわゆる地位も含めて関係者の最善の利益を確保しつつ、最善の形で事業譲渡するように努めていくということでございます。その中で、当然、必要なコミュニケーションというのはその必要に応じて図られていくものだというふうに考えてございます。

 ただ、これは裁判所が任命した管財人の権限行使に係るようなことでございますので、御指摘を踏まえまして、今後どのような対応ができるかについては考えていきたいというふうに考えてございます。

櫻井委員 まさに御答弁いただいたとおり、管財人には善管注意義務があるという中において、やはり丁寧なコミュニケーションがあってこそ、冒頭申し上げたように、ちゃんと人材を確保できるということにつながっていくと思いますので、是非これはコミュニケーションを丁寧にやる。一方通行で通知して終わりとか情報提供して終わり、こういう関係ではないんだ、それではなくて、ちゃんと双方向のやり取りが必要なんだということを是非どこかで盛り込んでいただくよう、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、カーブアウトの部分の割合が労働者保護に十分な水準であるかについて、特に、労働債権、給料などについてお尋ねをいたします。

 条文を拝見しますと、百二十九条で六か月分の給料は共益債権として規定されているということで、労働者を保護しようとするその趣旨はよく理解しております。ただ、退職手当についてはその限りではなく、六か月分の給料と退職手当の三分の一のどちらか多い方ということになっております。ただ、そもそも、退職手当というのは実質的には後払いの給料であります。会社の都合で退職手当がカットされるというのはいかにも理不尽だというふうに思います。

 金融機関の方は、融資の際に貸倒れリスクがあるというのは当然に想定するものなんですが、一方で、労働者の場合には、給料がまさか未払いになるとか、退職手当、これはちゃんと社内の規定で、就業規則等で、一か月働いたらこれだけ分退職手当のポイントが積み増しますよというようなことを規定されていて、そうか、今辞めればこれだけ退職金があるのかというふうに想定しながらやっているところに、いきなりある日降って湧いたような話のために退職金が三分の二、吹っ飛んでしまうということでは、これはいかにもつらいというふうに思います。働いた対価として当然に支払われるべきものだというふうに考えます。そういった観点からすると、労働債権は金融の債権よりはより優先されるべきものというふうに考えるところです。

 退職手当がきちんと支払われるかどうかは、不特定被担保債権保留額を売却代金のうちどれだけの割合で確保できるかということにもかかっています。

 ワーキンググループでの審議では、売却代金の三%から一〇%、一般債権者等への配当の原資として破産財団に組み入れられるという事例を紹介しつつ、企業価値担保の不特定被担保債権保留額の割合は、破産財団への組入れよりも限定的であるべきというような意見もあったというふうに承知をしております。

 これはどれだけ組み入れるかということが非常に重要なわけなんですが、これも大臣にお尋ねいたします。企業価値担保の不特定被担保債権留保額の算定方法について、金融庁としてはどのように考えているのか。一定の指針を示す、ちゃんと労働者の保護につながるような、こうした指針を示す必要があるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 事業全体が担保目的となります企業価値担保権の性質に鑑みまして、労働者を始めとする、広く一般債権者を一定程度保護する観点から、担保権実行手続におきまして、事業譲渡の対価のうち一定の金額をカーブアウトし、不特定被担保債権留保額として確保することとしております。

 この留保額の具体的な水準については、今般の法案では、実行手続終結後の手続を公正に実施するために必要と見込まれる額を政令で定めるということにしておりますが、先生お尋ねのその基準というのは、今後政令で定めるという中で検討をするということにしたいと思っております。

 特に、担保権実行時の労働債権の保護の在り方につきましては、別途、金融審議会の報告書において、労働債権の保護の観点から、企業価値担保権の実行手続において、労働者が有する未払い賃金債権等の取扱いは、その事業の継続に係る共益の費用としての性格に鑑み、随時、優先弁済するものと位置づけることが考えられるとの提言をいただきました。この提言を踏まえまして、今回の法案では、労働債権は実行手続において優先的に弁済することとしております。

 また、事業の継続を重視する制度の趣旨から、債務者の事業の継続等のために弁済する必要がある債権については、管財人の申立てにより、裁判所が弁済を許可できる旨を定めておりますが、労働債権もこの対象に含まれております。

 労働債権につきましては、こうした制度によって、現行の他の担保制度と比べましても適切に保護が図られるものと考えております。

櫻井委員 今大臣から御答弁いただいた中で、留保額の算定方法については、別途、後ほど、法案成立後に定めるという御答弁をいただきました。そして、その算定方法を定めるに当たっては、労働者の保護も十分図られるようにする、こういう趣旨の御答弁をいただいたということで承知をいたしましたが、よろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 具体的な留保額につきましては、まさに今後政令で定めるということにさせていただきたいと思います。全体の趣旨としては、労働債権をしっかり守っていくというこの法案の趣旨を述べさせていただきました。

櫻井委員 続きまして、法執行に関する必要な事項を政令、省令等で規定していくべきではないかということで質問させていただきます。

 この法律の準備に当たって参照された会社更生法や民事再生法でも、一定の政令や省令が定められております。今回の法律は新しい法律でございます。制度運用のための詳細なルールを定める必要があるというふうに考えます。特に、企業価値担保の適正な活用を進めていくためにも、政令、省令というのは必要だというふうに考えます。

 そこで、大臣に確認をさせていただきますが、この法案が成立した後に、全般的な内容に係る政令、指針、省令、ガイドライン、こういったものを定めていくということを提案申し上げますが、大臣の心積もりを御説明いただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 法施行に関する必要事項の下位法令等につきましてですが、これはもう非常に多岐にわたりますので、例を挙げてお話しさせていただきますと、先ほど来御質問いただいております労働者に関係する点についてお答えをさせていただきます。

 本法案においては、例えば、不特定被担保債権留保額の具体的な水準について政令に委ねられておりますが、これらの具体的な内容については、法案成立後に検討を行ってまいります。

 また、制度趣旨を踏まえた制度運用の考え方を明確化する観点から、企業価値担保権の実行手続における労働者保護に関連するものについては、金融機関等の監督に関わるものは金融庁の監督指針を改正するほか、金融機関等の監督以外のもの、例えば管財人が労働組合等に対して情報提供を行う際に参考となるポイントなど、制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方について、金融庁においてガイドラインなどの形で公表するといった対応を検討したいと考えております。

櫻井委員 今日は、厚生労働大臣政務官にも来ていただいております。今回の法案で、特に事業再編時といいますか、担保権実行のときに、じゃ、その後どうなるのかということについていろいろ規定されているわけなんですが、もう少し広げて、事業再編時の労働者保護のルールについてお尋ねをしたいと思います。

 この企業価値担保権が創設された場合、事業譲渡における労働者保護ルールの見直しを行う予定があるのかどうか、お尋ねをいたします。また、もし見直すと言っていただける場合には、労働政策審議会でこうした見直しの作業を行うのかどうか、お願いいたします。

三浦大臣政務官 お答えいたします。

 厚生労働省といたしましては、この法案が成立した暁には、事業譲渡等の円滑な実施や労働者の保護に資するよう、会社等が留意すべき事項を定めた事業譲渡等指針の改正に向けて、労働政策審議会で検討を行ってまいりたいと考えております。

櫻井委員 検討をやっていただけるということで、ありがとうございます。

 また、今回の企業価値担保権の換価は事業譲渡等によることが提案されております。これまでも事業譲渡においては、特定継承を前提として、労働契約の不継承や労働条件の不利益変更などの問題が多発しているところです。しかし、必要な労働者保護ルールが整備されていないという現状もございます。

 そこで、また厚生労働政務官にお尋ねをいたしますが、この企業価値担保権の換価だけでなく、事業譲渡全般に関して労働者保護ルールの法制化を進めていくということが必要だというふうに考えて御提案申し上げるんですが、厚生労働省としての見解、いかがでしょうか。

三浦大臣政務官 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、事業再編時の労働者の保護は大変重要な課題だと認識しております。しかしながら一方で、多種多様な形態がある事業再編について労働者保護ルールを法制化することにつきましては、将来の雇用の確保にもつながるような有用な組織再編への影響や、全体としての雇用の維持、そういった観点におきまして、慎重に検討する必要性があると考えておるところでございます。

 その上で、先ほどもお答えしましたように、この法案が成立した暁には、事業譲渡等の円滑な実施や、先生御指摘の、労働者保護に資する、会社等が留意すべき事項を定めた事業譲渡等の指針の改正、そちらに向けてしっかりと検討を行ってまいりたいと思っております。

櫻井委員 そうしましたら、取りあえず法改正まではということなんでしょうけれども、その手前として、事業譲渡等の指針については見直しの検討を進めていくということでございますので、既にある労働契約承継法ですとか、この新たに検討して作り直す指針について、是非とも、内容については周知、広く関係者に知っていただけるように努めていただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。

三浦大臣政務官 厚生労働省といたしましては、御指摘のとおり、しっかりと周知を徹底してまいりたいと思っております。

櫻井委員 あと、二〇一四年から二〇一五年にかけて、組織の変動に伴う労働関係に関する研究会というのが開催されまして、会社分割と事業譲渡に焦点を当てた議論が行われたというふうに承知をしております。この研究会の報告では、事業譲渡に対する労働契約の承継ルールの適用について、中長期的課題として引き続き議論をしていくに値する、このように記載されております。

 そこでお尋ねをしたいんですけれども、研究会の報告からもう既に十年が経過しようとしております。そういったことを踏まえて、事業譲渡における現状を改めて詳細に把握をした上で、法制化を念頭に置いた検討を労働政策審議会で行うべきというふうに考えますが、厚生労働省の見解、いかがでしょうか。

三浦大臣政務官 先ほども申し上げましたけれども、労働政策審議会での指針の改正について、検討に際し、しっかりと課題を認識しまして検討してまいりたいと思っております。

櫻井委員 つまり、取りあえず、事業譲渡等の指針の見直しを進めるということですので、それに当たって必要な現状把握はその中でしっかりやっていただける、こういうことでよろしいでしょうか。

三浦大臣政務官 御指摘のような事業再編時の労働者保護ルールの法制化が必要か否かにつきましても、論点として取り上げることを含めて、引き続き検討してまいりたいと考えております。

櫻井委員 法制化の前提として、立法事実として、現状把握も是非併せてよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、担保権者の実質的な位置づけについて、現状との比較をさせていただきたいと思います。

 今回の法律の目的は、おととい大臣が趣旨説明でおっしゃられたとおり、経営者の個人保証に頼った融資は是正していくということでございまして、この点については私も全く同感でございます。

 経営者の個人保証、これは、会社を畳むときには、会社を畳むだけでなく経営者が首をくくらなきゃいけない、こんなケース、こういう悲しいケースもあるやに承知をしております。そうすると、この会社に将来性が余りないなと分かりながらも、借金返済のために細々と経営を続けていかざるを得ない、ゾンビのごとく経営を続けるというようなこともあるやに承知をしております。

 こうしたゾンビ経営が横行するというようなことになってしまっては、日本の経済全体として生産性が上がらないという問題がございます。また一方で、ゾンビ経営を強いられる経営者御本人にとっても不本意だと思います。本来的には、一度リセットして再チャレンジできる、こういう世の中であった方が御本人にとっても幸せだというふうに私は考えます。

 そこで、大臣にお尋ねをしたいんですけれども、今回の企業価値担保権の創設で、こうした経営者の個人保証に頼った融資を是正できるのかどうなのか、また、企業価値担保権者が古きよきメインバンクのように事業者を育成する伴走者となるのか、それとも、これを悪用してハゲタカファンドのようになるリスク、こういったものを十分排除できているのかについて、改めて御説明をお願いいたします。

鈴木国務大臣 企業価値担保権を活用して融資を行う場合は、事業全体の価値が担保価値となり、融資判断やその後の伴走支援等が行われる一方、あくまで融資でありますので、貸し手は株主のような議決権を有さず、経営に参画するものではないといった特徴がございます。

 御質問いただきましたメインバンクにつきましては、必ずしも明確な定義はないものと承知しておりますが、融資や経営改善支援等について中心的な役割が期待される金融機関を指すものと考えます。

 従来の制度では、不動産担保など、事業の状況とは無関係に価値の安定した財産により貸出債権が保全されている場合には、メインバンクであっても、顧客企業の経営環境が悪化する局面で経営改善支援を行うような経済合理性が乏しいなどの問題が指摘されてきたところであります。

 企業価値担保権が設定されている場合には、事業全体の価値が担保価値となるため、事業の成長発展が担保価値の向上につながることから、金融機関によるタイムリーな経営改善支援が行われることが期待されております。

 また、出資ファンドは、株式の議決権行使等を通じて経営に参画し、一定期間後に投資分の回収を目指すものと考えておりますが、企業価値担保権に基づく融資を行う者は、自ら経営に参画するものではなく、顧客企業自らの経営判断を尊重しつつ、その経営努力を中長期的観点も踏まえて支援していく立場になるものと考えているところです。

櫻井委員 今回の法案で私が非常に懸念をしたのは、企業価値担保権者が、先ほど御説明いただいたような古きよきメインバンクのような伴走者になってくれればいいんですけれども、そうじゃなくて、ハゲタカファンドのように豹変するリスクがあるのではないのか、これがとても心配なわけです。

 法制度上、担保権者がすぐにハゲタカファンドに豹変するということは難しいとしましても、企業価値担保権者が、例えば、百五十七条の事業譲渡が行われて、その先の、事業を受け取った方が乗っ取りとかハゲタカであるリスクは残っているんじゃないかというふうに思うんですが、その懸念はどうなのかということ。

 更に申し上げれば、担保権者が譲渡先とぐるになって乗っ取りとかハゲタカ的なことをやったりすることができるんじゃないのかというふうにも心配するんですが、こういった懸念に対しては十分手当てできているんでしょうか。よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 管財人が裁判所の判断の下で適切な譲渡先を決めていくということになるんだと思っておりますので、そのような懸念はその過程の中で排除できるのではないかと考えております。

櫻井委員 済みません、今、私の発言の中で担保権者と申し上げたのは正確には被担保債権者でございましたので、ちょっと後で議事録の調整をお願いいたしたいというふうに思います。

 質問時間が終了いたしましたので、これで質問を終わらせていただきますが、くれぐれも、これによって割を食うようなこととか、かえって世の中が悪くなるようなことがないように、この手当てだけ是非お願いしたいというふうに思います。

 以上で終わります。

津島委員長 これにて櫻井君の質疑は終了いたしました。

 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の掘井健智でございます。

 不動産担保や経営者保証に適度に依存してきた従来からの融資慣行から、事業性融資という新たな融資慣行への移行をするということで、事業者、金融機関、双方にとって有用な取組となって、地域経済の活性化につながればいいなと期待しております。今回は第一歩であります。スタートアップ又は事業承継は限られた企業のみということでありますが、今後、地域経済活性化にどうつなげるかという視点が大切であると思います。

 それでは、企業価値担保権について質問します。企業価値担保権の名称についてであります。

 当初は事業成長担保権という名称でありましたけれども、法案では企業価値担保権となっております。事業成長担保権はややセンセーショナルな名称であるものの、担当者の思いが込められていたと推測をいたします。それに対して、企業価値担保権は非常に中立的な控えめな名称でありますが、これは深い意味があるのかなと想定しますけれども、名称変更の理由を教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で規定している新たな担保権につきましては、会社の有する事業ごとに設定するものではなく、会社の総財産の単位で設定するものであること、会社の将来キャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保とすることから、制度の特徴を端的に表すため、企業価値担保権との名称としたものでございます。

 これは、従前、この制度を検討するに当たりまして、私どもは事業成長担保という思いを込めた名前を使っていたわけですけれども、現行法で規定されている他の担保権の名称は制度の特徴を表す名称となっていることを踏まえまして、そうしたこととの平仄を考えて、最終的に企業価値担保権と命名したものを提案させていただいている次第でございます。

 しかしながら、この担保権の目的が、事業者の持続的な成長を促す融資慣行を形成することが目的であるということには変わりはございません。

掘井委員 いろいろな中身にも影響することかと思いますけれども、この後また質問したいと思います。

 次に、企業価値担保権の担保としての実効性について質問します。

 企業価値担保権の担保に着目すると、素朴な疑問があるんですけれども、企業価値担保権が行使される典型的な場面というのは、その企業が債務不履行に陥っているとき、つまり、その企業が収益を獲得できていないというときであります。

 とすれば、収益を獲得できていない企業に企業価値があるのか、そのような企業を事業譲渡で買い取ったところで収益を得られるはずもないために、買手はつかない、あるいは余り価値がつかないのではないか。つまり、この企業価値担保権は担保に値しないのではないかという根本的な疑問がありますけれども、いかがお考えでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案で導入する企業価値担保権は、まさに事業全体を担保とすることを目的とするものでございまして、その担保価値は事業の状態と連動するところでございます。

 通常は、伴走支援の停止によって事業が停止、清算した場合、解体価値になってしまいますけれども、その清算価値よりも事業が継続している場合の方が担保価値が高いということは想定されるんだというふうに考えてございます。

 そのため、金融機関にとっては、タイムリーな経営改善支援を行い、事業を継続、再生させ、事業価値を向上させることで、融資の弁済を得ることが経済的に合理的と考えてございますし、また、無形資産の内容は様々でございまして、企業価値担保権を実行する時点で、企業の無形資産の評価が必ずしもゼロになるということが通例だと言えるわけでもありませんで、顧客基盤等の無形資産が高く評価される可能性もあるというふうに認識してございます。

 以上におきまして、確かに、究極の場合には企業価値がかなり毀損される場合もあろうかと思いますけれども、企業価値担保権は担保としての実効性を有するものというふうに考えてございます。

掘井委員 分かりました。結果、うまくいけばいいんですけれども、うまくいかなかった場合、貸し手の金融機関が伴走をやめた、そんな途端に債権回収が不能になって、これでは自転車操業になる可能性もあるのかななんて思ったりしますけれども。

 これは、実行手続の開始後、スポンサーが見つからなければ事業譲渡はできないため、回収額がかなり小さくなってしまう懸念もあります。債務者や管財人がスポンサーを探す方策について、いかがお考えでしょうか。

井藤政府参考人 仮に企業価値担保権が実行された場合に、管財人は、裁判所の監督の下、事業の経営等をしながらスポンサーの探索を行っていくということになってございます。

 現行の実務としても、管財人の選定に当たりましては、そういった能力のある者を並行して選定していくというようなことも行われているように理解してございますが、そういった中で、適切な管財人が選定されることによって、よりよい形でスポンサー探しが行われるというふうに期待してございます。

掘井委員 いろいろこれから課題が出てくると思うんですけれども、そのことを含めて制度設計していただきたいと思います。

 次の質問です。企業価値担保権の評価についてであります。

 融資する金融機関と借り手の企業の両者によって、査定時における企業価値担保権の価値、つまり、企業価値の経済的評価はどのようになされているのかは大きな論点であります。

 この企業価値担保権の評価について、金融庁は一定のガイドラインを示すべきだと考えますが、こういったガイドラインの見通しはいかがでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 企業価値の評価ですけれども、将来キャッシュフローの見通しを基礎として、その割引現在価値の幅を推計する方法など、様々なバリエーションが考えられるというふうに理解してございます。

 ただ、具体的な方法は、各金融機関において個々の事案の特性等に応じて、顧客に選ばれるための創意工夫も含めて、経営判断によって定められるものと考えられてございます。

 企業価値担保権の活用を含めて、事業性融資を推進していくためには、先生が御指摘のとおり、金融機関において融資担当者がこうした企業価値の評価を適切に行うことができる能力を持つということが極めて大事だというふうに考えてございまして、そのための方策や体制整備が非常に重要だというふうに考えてございます。

 金融庁といたしましては、こうした点に関しまして好事例の把握、公表などを行うとともに、課題を感じる金融機関に対しましては、専門的な知見の提供等の支援を行う支援機関の活用を促していくこととしてございますけれども、金融機関における事業性融資に係る取組の後押しに向けて更にどのようなことができるか、金融機関等の関係者と丁寧に相談してまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 あのね、業の現場に任せておいたら非常に不安というか、判断しにくいことがあると思うんですね。だから、ガイドラインみたいなことできっちり設けていただいた方がいいのかなと思っておりますので、よろしくお願いします。

 次の質問です。企業価値担保権の実務上の処分方法などの確立について質問します。

 企業価値担保権の処分方法、このモニタリング方法などについて、確立された枠組みの構築が非常に大事、課題であると思っております。特に、この処分方法が確立されていない場合、評価額と実際の処分額に大きな乖離が生じていくために、企業価値担保権の制度の根底が揺らぐことにもなりかねません。

 企業価値担保権の処分方法、またモニタリング方法など、確立された枠組みの構築について、御所見を伺いたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、企業価値担保権の運用におきましては、当然、設定時にいかに企業評価するか、また、期中におきましても、当然、企業価値の評価を適切にフォローしながら、なるべく早い段階で経営関与をしていくということが必要となってくるわけでございまして、毎期というか、定期的にしっかりとした評価を金融機関の側でも行うことが必要となるというふうに考えてございます。

 そうした中で、実際に実行手続に至った場合の評価については、それは借り手も含めて、様々なそうした情報も含め、目線合わせを行っていくというふうになろうかと思いますが、いずれにせよ、企業価値の評価に関する能力の涵養ということは極めて重要だというふうに考えてございますので、先ほど申し上げましたような取組も含めまして、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 特に、処分の方法については非常に重要なので、早期に実務上の確立をお願いしたいと思います。

 次の質問、事業単位での担保権設定であります。

 先ほどから出ていましたけれども、総財産、法案では、担保目的財産は将来キャッシュフローも含めた総財産とされていますけれども、これは一部の成長性のある事業に限定して設定することができないということであります。事業ごとに資産を分割して担保目的資産を確定させることや公示方法に課題があるとされて、法案では見送られたと聞いております。

 しかし、事業に着目した融資という立法の趣旨からいいますと、総財産でなければいけないという理由はないと思うんです。また、事業者の資金調達のニーズからも、事業単位での担保権設定は認められるべきではないのかな、そんなふうに考えておりますが、事業単位での担保権の設定を可能とするための課題、また今後の方向性について、お伺いをいたします。

井藤政府参考人 委員御指摘のとおり、金融審の報告におきましては、事業ごとに資産を分類し担保目的財産を確定させることやその公示方法には課題が多いことから、この点については今後の検討課題とすることが考えられると提言されました。

 私どもも、この点については、そういった事業単位の担保設定というのが容易にできるのであれば、そういう制度化というのも一方では望ましいのではないかというふうに考えてもおりましたけれども、他方で、やはり、しっかりとした担保財産の範囲を確定して、それが関係当事者も含めて安心される、信頼性を持った形で運用されるということが極めて重要だ、そこら辺をどう乗り越えるかというのが非常に重要なポイントだというふうに考えてございます。

 したがいまして、今回の法案におきましては、まずはこういった担保権を企業全体という形で導入させていただきたいというふうに思っています。今後、施行後の実務の動向も注意しつつ、そういったことに対する対応可能性というものも含めまして、必要に応じて検討してまいれればというふうに考えてございます。

掘井委員 御答弁はよく理解しております。やはり、事業者のニーズが高くなった場合、企業価値担保権の利用しやすさに関わると思いますので、またこれから考慮をお願いいたしたいと思います。

 次の質問です。融資金利についてであります。

 企業価値担保権の評価についてのリスクが転嫁され、融資金利が高くなることが想定されます。特に、この制度発足直後は、金融機関もうまくいくか半信半疑であるために、融資金利が高く設定される場合が想定されます。リスク評価が十分に確立できていないために行き過ぎた高い金利が要求される場合は、企業にとっても企業価値担保権の利用のちゅうちょになるということも考えられます。

 企業へのリスク転嫁が行き過ぎた高い金利になるのは望ましくないと思いますが、大臣の認識を伺います。

鈴木国務大臣 その点については、先生と私は同じ思いであると思います。

 融資におけます金利水準は、一般に、市場金利や信用リスク、業務に関連する諸経費など、様々な要因を勘案をして、事業者と金融機関の間の交渉を通じて定められているものと承知をいたしております。企業価値担保権を活用する場合におきましても、こうした考え方は変わらないものと思っております。

 したがいまして、金融機関が企業価値担保権を活用した融資を行う際に、事業全体の価値の評価を適切に行うことなくいたずらに高い金利を付すこと、これは望ましくないと考えております。

 このため、金融庁といたしましては、こうした事態が生じないように、金融機関における事業者の将来性等を適切に評価できる目利き力向上の取組の支援、事業者による金融機関との深みのあるコミュニケーションなどの好事例の把握、公表、企業価値担保権の活用に必要な専門的な知見の提供等を行う支援機関の活用の促進などを通じまして、企業価値担保権の適切な活用に向けた金融機関の取組を後押ししてまいりたいと考えております。

掘井委員 総合的に、そんな考えの下、やはり金利は抑えられると思うんですけれども、金利は金融機関が決められるわけでありますから、行き過ぎないように目配りをそれこそしていただきたいなと思っております。

 次の質問です。経営者の保証についてであります。

 法案十二条では、企業価値担保権を活用する場合、債務者の粉飾等の例外を除いて、経営者保証の利用を制限しております。しかし、制限している対象は実行ということであって、経営者保証契約の締結自体は禁止されておりません。

 同条四項では、粉飾等があれば例外的に実行できるとしております。とすれば、粉飾決算等の抑止を建前にこの規定が悪用されて、経営者保証契約の締結がむしろ金融機関から強制されるのではないかと危惧もしております。確かに、経営者保証を提供することなく資金調達を受ける場合の要件等を定めたガイドライン、経営者保証ガイドラインがあるものの、強制力はないわけであります。

 そこで、粉飾決算等の抑止を理由にして、経営者保証契約の締結が事実上強制されるのではないかという危惧に対する金融庁の認識はいかがでしょうか。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、法の十二条で、粉飾等があった場合を除き、経営者保証の利用を制限してございます。

 この経営者保証なんですけれども、従来から、経営者保証に関するガイドラインで、法人個人の一体性の解消、財務基盤の強化、適切な情報開示の三要件が将来にわたって充足すると見込まれるとき、金融機関は経営者保証を求めない可能性を検討することとされておりまして、金融庁では、昨年、監督指針も改正しまして、こうした保証徴求手続の更なる厳格化を金融機関に対して求めてございます。

 こうした手続はこの担保権が導入されても変わるものではなく、経営者保証の徴求が助長されることはないと考えてございますが、金融庁といたしましては、この点につきまして、引き続き、経営者保証に依存しない融資慣行の確立については非常に重要な課題だということでございまして、従前に変わらずしっかりと取り組んでいることとしておりますし、今後、十分な実態把握もしてまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 経営者保証をなくしていくという大目的がありますから、よろしくお願いしたいと思います。

 現在、金融庁は、銀行ごとに、新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合を公表しております。そこで、新たな融資慣行の浸透や定着を企図して、金融庁が、金融機関ごとに、経営者保証を締結しない企業価値担保権の活用件数、また融資割合などを開示することが考えられると思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

井藤政府参考人 おっしゃるとおり、先生御指摘のとおり、企業価値担保権の活用については、そうした形で適切な活用が求められるというふうに考えてございます。

 経営者保証を付さないで実行した企業価値担保権の件数の把握ということでございますが、これもまた、一律に利用件数の報告を求める場合、これがノルマ的に受け取られた場合には、かえって形式的な利用等を促進するということも懸念されまして、多分にそういったことも過去には指摘されたこともございます。

 一方で、先生がおっしゃるとおり、実態の把握というのは極めて重要だというふうに考えてございますので、具体的な実態把握の方策については、本制度の適切な活用の妨げにならないように、十分に検討した上で、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 ノルマ的とありましたけれども、そんなふうにならないのかなと思いますけれども、その意見があったということで、やはり一足飛びにはいきませんけれども、精査していただきたいと思います。

 次の質問です。貸し手について質問します。

 金融機関の支援についてでありますが、先ほどもよく言われております目利き力の質問については、ほかの議員から同じ質問がありましたので重複部分は省略いたしますけれども、特に地方、地銀でありますとか信用金庫、地域の金融機関における事業評価の能力を高めるための人材育成、適切な人材の確保などの目利き力の支援については、これはまた都銀と違うと思うんですよね。

 この支援についてはどのような見通しか、教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案に盛り込まれてございます企業価値担保権を活用するには、地域金融機関も含めまして、事業者の将来性等を適切に評価できる目利き力の向上というのは極めて重要だというふうに認識してございます。

 この点、金融庁といたしましては、金融機関が貸出先の事業性を評価する能力を向上することを支援するため、例えば、融資先のモニタリングを通じて経営改善を支援する際の着眼点を支援対象となる業種ごとに整理した「業種別支援の着眼点」として公表して、その研修を実施するなどの取組をこれまでも行ってきたところでございます。

 今後、更に、こうした各金融機関における目利き力向上のための方策や、そのための体制整備などの好事例を把握するなどの取組を推進してまいりたいというふうに考えてございます。

 また、今般の法案では、金融機関に対してこうした面から専門的な知見の提供等の支援を行う機関の認定制度の創設も盛り込んでございます。

 こうした様々な知見等を活用して、金融機関が目利き力を向上できるように取り組めるよう促してまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 やはり、この目利き力が一番大事や思うんですね。日本の銀行に足らないところでありますから、これをどないして構築するかということであります。

 次の質問に移ります。利便性の改善であります。

 企業価値担保権では、従来の不動産担保等に比べて、担保価格の評価や期中管理、担保権の設定や実行の手続が煩雑になって、よりコスト増になることが想定されるほか、信託契約などで取引が非常に複雑化したことで、思うように活用されないことが懸念されます。

 そこで、この設定時の契約書類や、期中管理やリスク管理等に関する内部規定、また、担保権実行時における様々な手続について、共通のガイドライン等をあらかじめ準備しておくことが必要だと思っております。さらに、成功事例でありますとか失敗事例も含めて、実際の伴走型支援などの活用状況を横幅に横展開するということで活用イメージを醸成していくことも必要であると考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 企業価値担保権を活用した融資が現場で円滑に実行されるためには、法整備だけではなくて融資実務上の必要な環境整備も必要になると考えておりまして、金融機関からも同様の指摘を受けているところであります。

 金融庁としては、そうした指摘も踏まえまして、これまでも、例えば、米国等における全資産担保を活用した融資実務等について、調査した上で、金融機関と勉強会を開催するといった取組を行ってまいりました。

 この法案の成立後におきましても、引き続き、金融機関や事業者等の様々な関係業界団体等と連携をして、企業価値担保権の活用時の金融機関におけます内部手続を含めた実務上の課題を洗い出して、その課題の解決に向けて、金融庁と各種業界団体等で役割を分担しながら、金融機関が企業価値担保権を活用する際に円滑に実務を進めていくための環境整備をしてまいりたいと思います。

 この環境整備の中において、御指摘のひな形とかあるいはガイドラインということも、これからどう進めていくか、そういうことも含めて検討したいと思います。

掘井委員 検討していただけるということで、ありがとうございます。

 次の質問に移ります。借り手への支援についてであります。

 借り手となる中小企業にとっては、自社の企業価値に関する情報提供などに課題があります。多角的な面から将来性があるかを判断するため、提出書類が多く申込みは大変で、専門的な知識がある人のアドバイスが必要だと思いますが、この借り手への支援について、金融庁の御所見を伺います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、企業価値担保権の活用を含めて事業性融資を推進していくためには、事業者において、金融機関が事業の状況を適切に評価できるよう、具体的な事業計画の作成や事業の強みや弱みを適切に伝えるようになることが必要と考えてございます。このため、金融庁といたしましては、関係省庁とも連携しまして、事業者による金融機関との深度あるコミュニケーションなどの好事例を把握し、その公表などを行ってまいりたいと考えてございます。

 また、この法案では、企業価値担保権の活用に向け、課題を感じる事業者に対しまして、事業者の方面についても、専門的な知見の提供を行う支援機関の認定制度を活用していただけるような枠組みとなってございます。したがいまして、こうした支援機関の活用を促してまいれればというふうに考えてございます。

 金融庁といたしましては、このように、貸し手である金融機関側に加えて、借り手となる事業者に対する支援を通じて、この制度の適切な活用に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 分かりました。

 借り手の対象が会社に限られておりますけれども、医療法人などへ対象を広げるべきであると考えております。

 ワーキンググループ報告では、事業の成長可能性や喫緊のニーズの高さから、まずは、営利を目的とする法人であって、商業登記簿において公示される者に更に限定することが望ましいとされております。しかし、冒頭に担保権の名称変更の理由を尋ねましたけれども、やはり事業の成長可能性だけではなくて、より広い企業価値を対象にした担保権に変容しておると見えます。

 営利目的の法人に限定する論拠は失っているのではないかな、こんなふうに考えるわけでありますけれども、今後、ニーズがあれば医療法人などに対象を広げる可能性があるのかどうか、お伺いします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、提出させていただいております法案におきましては、金融審議会の報告書において、公示制度の観点や、事業の成長可能性や足下の喫緊のニーズの高さから、会社法上の株式会社、持分会社など、まずは、営利を目的とする法人であって、商業登記簿において公示される者に限定することが望ましいというふうに提言されておりまして、これを踏まえまして、今回、まずは営利を目的とする法人を対象とすることにして、医療法人については含まれていないということとなってございます。

 金融庁といたしましては、施行後の実務の動向を踏まえまして、借り手の範囲も含め、制度の見直しの必要性については検討してまいりたいというふうに考えてございます。

掘井委員 ありがとうございます。

 もう時間がないので、早速質問します。認定事業性融資推進支援機関について質問します。

 先ほど出ましたけれども、今回の法案の目的は事業性融資の促進にあります。そのためには、事業性評価が可能な人材の養成こそが重要でありまして、認定事業性融資推進支援機関の制度化と運用は大きな課題になると思っております。

 法律案では、企業価値担保権の活用等を支援するために、事業性融資について高度な専門的知見を有して、事業者や金融機関に対して助言、指導を行う機関の認定制度を導入することとしております。

 認定事業性融資推進支援機関として、事業者側への支援として商工会議所などが想定されると聞いておりますが、これは一体どのような支援ができるのか、認定支援機関としてはどのような規模感なのか、また、高度な専門的知見を有する人材をどのように確保するのか、最後にお聞きします。

津島委員長 鈴木大臣、申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

鈴木国務大臣 中小企業に対する支援機関の担い手については、例えば中小企業に対して経営支援等のサービスを提供している者が考えられますが、その候補については、今後、事業性融資において具体的に求められる支援の内容、支援のために必要な能力について、例えば日本商工会議所などの各種業界団体等と共通認識をつくった上で、担い手の候補となる関係者と丁寧に相談してまいりたいと考えております。

 また、支援機関においては、中小企業に対して事業計画の策定に関する助言等の専門的な知見の提供等の支援を行うことを想定しているために、例えば中小企業に対する経営支援に知見を有する人材を確保することなど、事業者に対する適切な支援を行うために十分な体制を整備することが重要であると考えております。

 この点を踏まえ、法案を成立させていただきましたならば、その後、中小企業庁や、先ほど申し上げたような日本商工会議所などの各種業界団体等と連携をしながら、支援機関が必要な体制を構築して、その能力を最大限発揮できるように、しっかりと対応したいと考えています。

掘井委員 課題が多いと思いますが、応援したいと思いますので、よろしくお願いします。

 終了します。

津島委員長 これにて掘井君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会、埼玉の沢田良です。

 本日も聞きたいことが盛りだくさんなので、早速質疑に入らせていただきます。

 津島委員長を始め理事、委員の皆様、鈴木大臣始め金融庁の皆様、委員部の皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 前半からいろいろな角度で各委員の質疑が続いておりますが、私は、これは大きな方向性としては、まず歓迎したいというふうに考えております。

 ただ、理想的な仕組みと現実的な運用という部分にはまだまだ乖離があるというところを感じると、これは、目指す結果、何とかして、いい形に持っていければなというふうには考えております。

 これは、改めてなんですけれども、今回の法案の目的について、大臣、ちょっと説明いただければと思います。

鈴木国務大臣 金融庁では、約二十年前より、二十年前、この頃は貸し渋りとか貸し剥がしとかそういう言葉もあったわけでありますが、金融機関に対して、不動産担保や経営者保証に過度に依存するのではなくて、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すために、例えば、リレーションシップバンキングの推進、金融検査マニュアルの廃止等による企業実態に即した与信管理の尊重、経営者保証改革プログラムなどの策定に、様々取組を進めてまいりました。

 足下では、金融機関において、経営者保証に依存しない融資には一定の進展が見られますものの、事業者の実態や将来性に着目した融資の浸透については、いまだ道半ばであり、一層の推進が必要であると考えております。

 こうした中、今般の法案で導入する企業価値担保権は、事業者の将来のキャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保の目的とする新たな担保権であり、スタートアップ企業のように担保となる有形資産に乏しい事業者への融資をより一層推進すべく、新しい選択肢を提供するものであります。

 同様の担保制度は、アメリカなどの諸外国では、リレーションシップバンキングやスタートアップ向け融資等の実務において活用されていると承知をしております。

 我が国におきましても、こうした諸外国の融資実務を参考にしながら、事業性融資をより一層推進するため、今般、新たな企業価値担保権の創設を含む制度整備を行うこととしたものであります。

沢田委員 ありがとうございます。

 その中でも、安全に運用していくということももちろんあるんですけれども、私はやはり、この企業価値担保権というものが創設されるに当たって、これを使ってどれだけの融資が実際に行われてきたということがこれからにおいて一番注目すべきだと特に考えているんですけれども、大臣はその部分について、いわゆる融資額が増えていくという部分の点については、大臣、重要性というのはどのように考えられていますか。

鈴木国務大臣 先ほども申し述べましたとおり、まだ実際の資産が乏しいスタートアップの方でありますとか、例えば一度行き詰まってしまったけれども新たな事業を考える方が、もう担保余力がない方とか、様々そういう方々がおられるわけで、今回の新しい担保権を設定することによって、そうした方々がまた融資を受けられる道が開かれるのではないか、そういうふうに思っております。

沢田委員 ありがとうございます。

 私はまさに、この道が開けたことをしっかりと後押しをしていただくということがやはり一番大事だなというふうに考えております。

 冒頭でも言ったんですけれども、現実的な運用の部分はやはり金融機関がメインになってきて、そしてやはり受ける側が、スタートアップがある程度ターゲットになっているという話はあるんですけれども、この法案に対する、今まで、金融機関等、やはり金融庁の方もいろいろと意見交換されてきたと思うんですけれども、どのようなことを意見交換されたり、どんな意見があったか、ちょっと御紹介いただければと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この企業価値担保権については、かなり長い間検討を進めてきてまいっていまして、その間、金融機関の方々ともいろいろ意見交換や意見聴取を行ってきたものでございます。直近では、金融審議会ワーキンググループにおきまして、全国銀行協会等の業界団体にオブザーバーとして議論に御参加いただくなど、継続的に必要なコミュニケーションを取ってきたものでございます。

 こうした中で、金融機関側からは、例えば、金融機関の資金供給手段と事業者の資金調達手段を広げる一助になり得るものとして期待の声が寄せられる一方で、他方では、企業価値の評価を客観的、安定的に行うための手法の確立等、実務レベルでは準備が必要となる、こういった認識が示されているというふうに承知してございます。

沢田委員 私もいろいろ、銀行で働く仲間がいるので、お話をさせていただいたんですね。

 やはり、立法の趣旨の中でも、元々我が国は担保制度というものがやはり不動産担保であったり経営者保証のようなもので、いわゆるそういったものをちゃんと保全していくというところがメインであった、破産時における債権の保全とか回収を目的としていたものを、これを何とか、事業者と金融機関の緊密な関係の構築であったり、金融機関に事業の実態や将来性の的確な理解を動機づけるものとしていきたいと。これは本当にいい考え方であり、私が聞いたのは、ある種、中堅ぐらいの銀行員さんに聞いたら、今でも結構忙しい、こういう状況で、今でも融資は滞りなくやれている部分もある、そういった中でどこまで広がるかというのはちょっと分からないという意見と、片や、まさに新卒で銀行で働こうという方からもちょっとお話を聞いたんですけれども、その方は、今までの何か銀行のイメージというのが、まさに今回問題提起している、そういった担保を保全していくということが目的であって、企業価値を銀行、金融機関が、いろいろな人脈であったりとか知識を使って生かしていこうとか、そこに連携をして、更に一・二倍、二倍、三倍の効果を企業に付加価値をつけて連携していくというイメージがなかった、でも、それをもしやれていけるのであれば、すごくやりがいのある仕事になるという意見もいただいたんですね。

 私、ここは結構真っ二つだなというふうに感じていて、やはり、さっきも御意見をいただいたんですけれども、審議会には、多分、これから銀行業界を、夢を見て、金融機関に対して、何かもっと新しいイノベーションを生み出していこうとか、新しいことをやはりつくり出していこうということを、ある意見というのは、私は余り出ていかないような気がしていて、ただ、見ている方向はまさに一緒なんですね。

 ただ、私たちがやはり重要視しなきゃいけないのは、今までの金融機関の当たり前に対して、今まで二十年間、金融庁もいろいろな取組をしていただいて、当然その中の意見というのもあったんですけれども、それが実際にちゃんとワークしていくかというところを見ていかなければいけないというふうに思うんですね。

 現状として、金融実務が改善していくんですけれども、改善というか変わっていくんですけれども、金融機関等にかかる負担と、逆にこれが変わることによって、インセンティブですね、ここら辺はどのように金融庁は考えているんでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、企業価値担保権を活用する場合には、金融機関においては、事業者の実態把握や伴走支援等を行うことに伴いまして、一定のモニタリングコストが発生し得るというのは事実だと思います。

 一方で、金融機関からは、企業価値担保権は、例えば、有形資産に乏しいスタートアップ企業向け融資などにおいて有用な選択肢になり得ることから、こうした取組を通じて幅広い事業者との関係構築にもつながるのではないか。あるいは、本担保権の活用において事業者の実態や将来性等を的確に把握、評価が必要となるため、そうした取組を通じて目利き力の向上や効果的な経営支援が可能となり、これが金融機関の経営力の強化にも結びついていくのではないかなど、有用な選択肢になるような担保制度であるとの声も寄せられているところでございます。

 金融機関にとって企業価値担保権の活用に向けた取組を進めていくインセンティブというのは、私どもとしても十分にあるというふうに考えてございますので、しっかりと私どもも取組を進めていきたいというふうに考えてございます。

沢田委員 私は、まさにこれからにおいて一番の壁は、当たり前をどう乗り越えていけるかというところと、そして、逆を言えば、インセンティブの一番は、これから日本の金融機関が新しい収益体制を持ってチャレンジができる、又は、そういった支援を受けて、これからの企業が、今までであったらば生き残れなかった、又は可能性を諦めていたものがもう一度前に進んでいくという両輪になっていくことが、まさに金融庁さんの発信で、金融業界も含めて、参加する方々にも夢を持って、よし、じゃ、どんどん取り組んでいこうよということが動いていけるかということが私は大事だと思っております。

 今回の法律も全般見させていただいて、当然、詰めていかなきゃいけないところは大きくあるのは分かっております。それについても各委員からもいろいろな指摘があって、今日は朝から本当に勉強になるなというように思っていました。藤原委員が言っていた意見でも、使われなきゃ意味がないというような意見もまさにありますし、やはり大事なことは、これから立法するに当たって、五年間見ていく、見直し規定を入れるという話なんですけれども、これはどういうふうにしてこの五年間をしっかり見ていくのかという具体的な部分が私は必要だと思うんですけれども、金融庁としてはどこを考えていますか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この制度の肝は、金融機関側においては、事業の実態や将来性を適切に評価できる能力の向上、体制の整備に加えまして、事業者と深度のあるコミュニケーションの実現等に向けた取組が今まで以上に更に進められるということでございます。

 金融庁といたしましては、そのための能力向上の方策や、これに向けた好事例の把握、公表などに加えまして、専門的な知見の提供を行う支援機関の活用促進など、いろいろな後押しするような取組を考えているところでございますけれども、その上で、当然、施行までに準備すべきことも多いかと思いますけれども、施行後もしっかりと状況把握に努めて、さらに、こうした担保権の活用が進むよう、取組を強化した形で進めていければというふうに考えてございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 ただ、私は、やはり大事なことは、この五年間の中でどれぐらいの件数が、また、どれぐらいの金額が実際に動いていったのか、どれだけのチャンスを今回の立法において生み出せたのかということの中が、ケースが増えないと、絶対に五年間での見る件数も当然変わらない。やはり動いていただかないと駄目だと。

 やはり、せっかくやったんだけれども結果が出るかどうか分からないということではなく、どうにかして新しい状況に結果を出すというところを考えたときに、是非、大臣にお願いなんですけれども、この五年間の期間の中で、実際のモニタリングの部分、どれぐらいの件数、そしてどれぐらいの金額が動いたのかというのを、実際に施行してから全部取っておいてほしいというふうに思うんですね。そして、それを五年間の中でどのようにして更に引き上げていくのか。そして、それをどういうふうにしてバージョンアップというか、やるのか。

 私は、やはり、自分が中小企業をやっていた人間として、物事を前に進めるためには、どうしてもあめとむちが必要になります。やはり、あめという部分であったらば、さっき私が言った若手の銀行員とかが、やってみたい、もっとそういうふうに前向きに動いていこうよということが動くためのあめであり、そして、むちというところでは、どうしても、今までのままでいいだろうと思っている方……

津島委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をよろしくお願いします。

沢田委員 はい。そこについて、やはり金融庁の方から後押しをいただければと思うんですけれども、大臣、最後に一言いただけませんか。

津島委員長 鈴木大臣、答弁は簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 この法案には五年後の見直し規定がございます。当然、何か目標を設定して、それがノルマみたいになっちゃ困りますが、五年間経過してどれぐらいこれが活用されたかというのは、様々な見直しをする上で基本的な大きな評価基準になると思いますので、そういうことも踏まえてしっかりと対応したいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 済みません、失礼します。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 事業性融資推進法案について質問します。

 金融庁は二十年ほど前に、金融再生プログラム及び作業工程表において、中小地域金融機関によるリレーションシップバンキングの機能強化に向けたアクションプログラムを策定しました。二〇〇二年から二〇〇四年を集中改善期間として、不動産担保や経営者保証に過度に依存しない融資の促進の徹底を各金融機関に要請しました。

 また、二〇〇八年九月のリーマン・ショック後の中小企業円滑法を経て、金融モニタリング基本方針の中で、事業性評価に基づく融資等として、財務データや担保、保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことを求めました。しかしながら、期待するほど事業性融資が広がらなかったために、本法案の提出に至っています。

 担保や保証に過度に依存しない事業性融資がなぜ広がらなかったんでしょうか。反省点はどこにあるんでしょうか。金融庁の分析を述べていただけますか。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、金融庁は約二十年前より、金融機関に対して、不動産担保や経営者保証に過度に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すため、様々な取組を進めてまいりました。

 足下では、そうはいっても、確かに、金融機関において経営者保証に依存しない融資には一定の進展が見られるところではございます。しかしながら、事業者の実態や将来性に着目した融資の浸透については、いまだ道半ばであり、一層の推進が必要と考えてございます。

 その背景には様々な要因が考えられまして、一概に申し上げることは困難ですけれども、例えば、この場の議論でもございますが、金融機関におきまして、不動産担保や経営者保証等を重視する保守的な融資審査が行われてきたことですとか、事業者の将来性などを評価する能力、体制が十分でなかったことなどが要因として指摘されているものと承知してございます。

 本日御審議いただく事業性融資の推進等に関する法律案に盛り込んでいる、企業価値担保権の創設や金融庁内に設置する事業性融資推進本部などを通じまして、こうした事業性融資の更なる推進に向けて、政府一丸となって取組を進めてまいれればというふうに考えている次第でございます。

田村(貴)委員 当時の金融庁の分析では、我が国におけるリレーションシップバンキングの状況を見ると、その中心的な担い手である中小地域金融機関、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合においては、審査能力等の不足、借り手企業の弱体化、地域経済の厳しい現状等を背景に、取引先や地域経済との関係の中で、リスクに見合っていない金利設定や不採算取引の継続などを余儀なくされるとしていました。

 結局、二十年が過ぎても、銀行の審査能力等の不足、いわゆる目利き能力、借り手企業の弱体化、地域経済の厳しい現状というのは改善されなかったということでしょうか。

井藤政府参考人 私どもも、取り組んできておりまして、金融機関のトップと私ども金融庁、財務局が意見交換する中でも、こういった事業性融資の重要性についての理解度というのはかなり浸透してきているというふうには感じてございますが、ただし、先ほど申し上げましたように、実際には、そういった事業者の将来性を適切に評価できる能力の向上とか体制整備については、やはりいまだ課題があるというふうに考えてございまして、そうしたところをいかに底上げし、改善していくかというのが重要だというふうに認識しているところでございます。

田村(貴)委員 担保や保証に過度に依存しない事業性融資が浸透していないといったところが、前提として考えていかなければいけません。

 本法案の企業価値担保権のポイントの一つは、銀行などが事業の実態や将来の企業価値を評価できるかということであります。しかし、銀行の審査能力等の不足、借り手企業の弱体化が改善されていないとするならば、そもそも、企業の将来価値を評価することは難しいんじゃないですか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融機関、メガと呼ばれる大手行、あるいは地域金融機関におきましても、非常に大きなところで体制整備が進んでいるところもあれば、そうでないところもあろうかというふうにございます。

 そうした中で、金融機関によっては体制整備がかなり進んできているところもありますけれども、これが全体として、では十分かといえば、そうでもない。

 したがいまして、私どもといたしましては、こういう法案の措置もそうですけれども、支援機関なども、いろいろな措置も講じているところではございますけれども、全体的な底上げを図っていきたいというふうに考えているところでございます。

田村(貴)委員 目利き能力とともに、銀行に、借り手に伴走して支援できる能力があるか、これも問われてまいります。

 今回の制度で企業価値担保権を活用して融資するのは、銀行だけですか。法律では、例えば貸金業者も対象としているんでしょうか。

井藤政府参考人 今回の担保権は、非常にある意味強力な担保権でもありますので、債権者間の公平を図るという観点から、いわゆる対象債権につきましては、金融機関のものに限ってはございませんで、例えば商社等を含めた一般事業会社の債権も対象となり得るものでございます。

田村(貴)委員 企業価値担保権を活用した融資をした銀行は、法律上、その債権をほかの銀行など、今はその他の金融機関、貸金業者も含めるということなんですけれども、その他に売ることはできるんでしょうか。これは禁じられているんでしょうか。どちらでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 民法上、債権譲渡は原則として自由とされてございます。そういったことにのっとって様々な制度がつくられていると承知していますが、本法案においても、被担保債権の譲渡を制限しているものではございません。

田村(貴)委員 金融庁がリレーションシップバンキングを推奨し始めた頃、金融機関の健全性を確保するために、中小企業向けの債権をRCC、整理回収機構や、サービサー、債権回収会社に売り渡すなど、不良債権処理を指導していました。本制度でも、融資をしている銀行が債権を貸金業者などに譲渡することも、これは当然あり得るんじゃないでしょうか。

井藤政府参考人 企業価値担保権の導入の趣旨は、繰り返しになりますけれども、金融機関が事業者の事業価値に着目して融資を行い、融資後も事業者を伴走支援することを後押しすることにありまして、金融機関が債務者の意思に反して殊更に債権を売買することを促進するようなものではありませんし、そういうことを意図するものでもございません。

 そうした点も踏まえて、金融庁といたしましては、導入後の金融機関による活用状況については実態把握をしっかりと進めて、適切なモニタリングをしていきたいというふうに考えてございます。

 また、これに加えまして、被担保債権の譲渡につきましては、例えば、債務者の意向に反する形で譲渡されることを防止するために、被担保債権の譲渡制限特約を契約にあらかじめ盛り込むことも民法上可能でございまして、これは企業価値担保権においても同様でございます。

 また、本法案では、企業価値担保権を設定する際の信託契約におきまして、被担保債権が譲渡された場合には、債務者の承諾がない場合等については、譲渡された後の債権が当該企業価値担保権によって担保されなくなることを定めることも可能としてございます。

 こうしたことを踏まえますと、委員御指摘のような、この価値担保権を導入することで銀行等が安易にサービサー等に売り渡すということを助長するというような懸念は、一概には当たらないというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 とはいえ、法律では債権譲渡を禁止されていないんですよね、いろいろおっしゃったけれども。

 だから、借り手側に対して伴走支援を行う、そういう適切な能力を有しない金融機関、その気がない融資機関、金融機関が企業価値担保権を活用した融資を行ったら、これは企業側にとって経済的不利益が生ずることは往々にしてあり得るという懸念を私は持ちます。

 次に、事業性融資における労働者の問題について質問します。

 企業価値担保権の中に労働契約上の地位も含まれると言われていますけれども、なぜ労働契約も含まれるんでしょうか。

井藤政府参考人 企業価値担保権は、事業者の事業全体の価値を担保価値といたしまして、事業の継続及び承継を目指すことを趣旨とする新たな制度でございます。

 担保権実行手続開始後も事業を継続する観点からは、総財産の管理処分権が設定者から管財人に移り、スポンサーに事業が承継された後も労働者が継続して事業に従事できる必要がございまして、こういったことを審議会からも報告を受けまして、こうした趣旨で条文作業を行いまして、結果、本制度におきましては、労働者保護に資する制度とするため、担保目的財産に労働契約上の使用者側の地位も含まれることとしているものでございます。

田村(貴)委員 井藤局長、ちょっと質問を変えますね。債務者、いわゆる金融機関にとって労働契約上の地位が企業価値担保権に入るということは、貸し手の側にとってどういうメリットがあるんですか。労働契約上の地位が入ることについて、金融機関上のメリット、それはどういう担保が引き上がるということになるんですか。

井藤政府参考人 企業価値担保権については、まさに、企業の総財産を担保とするということで、ポイントは、万が一業況が芳しくなくなった場合についても、これは、清算ベースの解体価値ではなく、ゴーイングコンサーンとしての事業の評価ですね、全体としてはかなり債務を抱えたとしても、事業としてはキャッシュフローを生み出せるような価値があれば、それなりに適正な価格というのは、その部分について評価もされる。

 ただし、事業をゴーイングコンサーンとして価値を保持するためには、やはり従業員が継続して働いていくということがなければ事業価値は維持できませんものですから、そういった観点を含めて、このような制度を提案させていただいているというところでございます。

田村(貴)委員 よく分からないんですけれども、質問を続けていきますね。

 一般的に、労働者の理解と協力なしに企業の価値は生まれません。しかしながら、労働者は物でもなく生産手段でもありません。労働契約により労働力を提供している存在です。そのような労働者を企業のもののように担保するということは、これはやはり問題ではないでしょうか。

 企業価値担保権の設定においては、少なくとも労働者と個別同意を取るべきではないでしょうか。個別同意が得られていない労働者については、その労働契約は、担保権、担保目的財産の対象外とすべきではないでしょうか。これについてはいかがですか。

井藤政府参考人 今回の担保権において、労働契約上の使用者の地位が含まれるといたしましても、事業成長担保権者は、労働条件等について決定するなどの権限を有する者ではない点や、事業成長担保権設定の目的は、事業成長担保権者が労働条件等に影響を及ぼすことではない点に留意する必要があるというふうに考えてございまして、そういうところを勘案いたしまして、このような制度として御提案申し上げているということでございます。

田村(貴)委員 つまり、労働者の同意がなくても、企業価値担保権の中に労働契約上の地位が入っていくということなんですね。

 本法案では、労働契約上の地位がその担保目的財産に含まれるにもかかわらず、担保権の設定の際に、労働者への通知を義務化していません。個別同意も取らない上に、労働契約の一方の当事者である労働者に担保権の設定の前に通知すらしないというのは、これは余りに労働者に対して不利益ではないでしょうか。設定前の通知を義務化できない理由については、どうしてですか。

井藤政府参考人 昨年、この制度について報告いただきました金融審議会の報告書におきましては、労働者から見ると、経営者から背景も含めて説明を受けた方が協力のインセンティブが強まるとの指摘がある一方、経営者と労働者間のコミュニケーションの密度やスタイルなどは様々であるため、ルールベースで特定の事項の伝達などを義務づけてしまうと、かえってコミュニケーションの質の低下につながるケースがあるとの指摘もあることから、企業の状況に応じたコミュニケーションが行われることが重要であるとの提言をいただいてございます。

 こうした提言や他の担保制度とのバランス等の観点も踏まえると、設定時に事業譲渡されるものではなく、設定時の労働者への情報提供については、法令等による義務づけにはなじまないというふうに考えた次第でございます。

 一方、担保権設定時の労働者保護の観点から、法案成立後、金融庁におきましては、厚生労働省等の関係省庁とも連携し、例えば担保権設定時における労働者とのコミュニケーションの在り方など、制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方をガイドライン等の形で公表することを検討するとともに、本担保権を活用した新しい融資実務への正しい理解を促す観点から、当該ガイドラインなどの内容を含め、制度の内容や趣旨については、関係者への周知、広報等に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 結局、働く人たち、労働者は、自らの労働契約も企業価値担保権の対象となっているにもかかわらず、知らないうちに設定されているということになります。そうすれば、労働者は、どの段階で企業価値担保権を設定したことを知ることになるんでしょうか。経営者若しくは担保権を活用して融資する銀行等が公表しなければ、労働者はずっと知らないまま過ごしていく、そういうことになるんじゃないですか。

井藤政府参考人 企業価値担保権は、商業登記簿への登記が効力発生要件とされておりまして、企業価値担保権の設定は、登記により、労働者を含め、広く周知されることとなるものでございます。

 その上で、企業価値担保権に関する経営者と労働者のコミュニケーションにつきましては、昨年の金融審議会の報告書におきまして、繰り返しになりますけれども、労働者からは、経営者から説明をちゃんと受けた方がインセンティブが強まるとの指摘がある一方、経営者と労働者の間のコミュニケーションの密度やスタイルは様々であるため、ルールベースでやるのはどうかといったようなのを含めて現在のような制度となっているわけでございますけれども、法案成立後におきましては、またこれも繰り返しとなりますけれども、担保設定時における労働者とのコミュニケーションの在り方など、制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方をガイドライン等の形で公表することを検討するとともに、当該ガイドライン等の内容を含め、制度の内容や趣旨については、関係者への周知、広報等に取り組んでまいりたいと考えてございまして、こうした取組を通じまして、経営者と労働者とのコミュニケーションにより企業価値担保の設定に関して労働者への周知が図られていくものというふうに考えてございます。

津島委員長 田村君、時間が経過しております。

田村(貴)委員 時間が来ました。

 懸念事項は、法律案ではしっかりこれは守られていないということです。

 続きは、また次回、質問をさせていただきます。終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十六分散会


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