衆議院

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第7号 令和7年3月4日(火曜日)

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令和七年三月四日(火曜日)

    午前十一時五十一分開議

 出席委員

   委員長 井林 辰憲君

   理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君

   理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 斎藤アレックス君 理事 田中  健君

      東  国幹君    石田 真敏君

      伊藤 達也君    上田 英俊君

      後藤 茂之君    鈴木 英敬君

      田中 和徳君    土田  慎君

      長島 昭久君    中西 健治君

      根本 幸典君    福原 淳嗣君

      古川 禎久君    松本 剛明君

      江田 憲司君    大西 健介君

      岡田  悟君    海江田万里君

      川内 博史君    階   猛君

      末松 義規君    原口 一博君

      水沼 秀幸君    三角 創太君

      矢崎堅太郎君    萩原  佳君

      村上 智信君    岸田 光広君

      赤羽 一嘉君    中川 宏昌君

      高井 崇志君    田村 智子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       石破  茂君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       加藤 勝信君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   財務大臣政務官      東  国幹君

   財務大臣政務官      土田  慎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 須藤 明裕君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月四日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     鈴木 英敬君

  大西 健介君     長谷川嘉一君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     上田 英俊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

井林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する階猛君外一名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 ただいま議題となっております階猛君外一名提出の修正案につきまして、提出者全員から撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井林委員長 この際、本案に対し、後藤茂之君外二名から、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案による修正案が、また、階猛君外二名から、立憲民主党・無所属及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を求めます。後藤茂之君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤(茂)委員 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

    〔委員長退席、大野委員長代理着席〕

 令和七年度税制改正法案は、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものとするとともに、我が国の経済社会の構造変化等に対応するために必要なものであり、一日でも早く成立させる必要があります。

 衆議院財務金融委員会におきましては、去る二月十四日、政府から提案理由説明を聴取し、その後、熱心な審議が行われてまいりました。

 自由民主党、公明党においては、党派を超えた合意形成を図るため、本法案の提出後も真摯に政党間の協議を行ってまいりました。今般、こうした議論の結果として、本修正案を取りまとめたところです。

 本修正案の内容は次のとおりです。

 第一に、低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設することとしております。

 具体的には、まず、給与収入二百万円相当以下の者について、恒久的な措置として三十七万円の基礎控除の上乗せを行うこととしております。また、給与収入二百万円相当超八百五十万円相当以下の者については、令和七年分及び令和八年分の二年間において、各年の所得金額に応じて基礎控除の上乗せを行うこととしております。

 第二に、政府は、物価上昇局面における税負担の調整を含め、所得税の抜本的な改革について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとしております。

 第三に、政府は、令和七年度末までに、所得税の基礎控除の特例の実施に要する財源の確保について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

    〔大野委員長代理退席、委員長着席〕

井林委員長 次に、大西健介君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

大西(健)委員 立憲民主党税制調査会長の大西健介です。

 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表し、その提案の趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 ガソリンの暫定税率については、当分の間と言いながら、五十年にわたって維持され続けている上に、二〇〇九年に一般財源化されて以降は、課税根拠を喪失しています。物価高に苦しむ国民生活を横目に、このような不合理な税負担を放置し続けることは、政治の不作為にほかならないと考えます。

 昨年十二月に、自民党、公明党、国民民主党の三党の幹事長間で交わされた合意文書では、ガソリンの暫定税率を廃止することが明記されていました。しかし、この財務金融委員会の審議においては、その自民党、公明党に所属する議員から、なぜか、暫定税率の廃止に否定的な質問が相次いでおります。

 また、石破総理は、三党で協議中であることを理由に、何度聞いても暫定税率を廃止する時期について明言されませんが、石破総理は自民党総裁でもあるわけですから、本来、リーダーシップを発揮して、協議を推し進めることができる立場にあるはずです。にもかかわらず、総理は、終始一貫して人ごとのような答弁を繰り返しています。

 こうした政府・与党の姿勢を見るに、本当に暫定税率の廃止を実行する気があるのか、甚だ疑問であり、物価高に苦しむ国民生活の実態を全く認識できていないものと断じざるを得ません。

 この状況を何とかして打開するため、私たち立憲民主党は、さきに提出をしていた修正案を取り下げ、国民民主党と共同で、このガソリンの暫定税率廃止に特化した修正案を提出する決断をした次第であります。

 次に、本修正案の概要を御説明申し上げます。

 本修正案は、ガソリンの暫定税率について、関連する規定を削除し、廃止いたします。なお、これにより、地方公共団体の財政に悪影響を及ぼすことがないよう、併せて、地方公共団体の減収を補填する措置を講じます。

 以上が、本修正案の趣旨及びその概要であります。

 少数与党の状況にあって、野党が一致団結すれば、確実にこの修正案は実現をします。物価高に苦しむ国民生活の現状に鑑み、委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。

 以上です。

井林委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井林委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官須藤明裕君、大臣官房審議官伊藤正志君、財務省主税局長青木孝徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井林委員長 これより原案及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 自民党、公明党の修正案について質問させていただきます。

 資料一には、自民党それから公明党の修正案の概要をつけております。

 そして、資料二には、議事録、先週の金曜日、この財務金融委員会で、根本議員の議事録、これをつけております。

 この中で、根本議員は非常に重要な発言をされております。これは我が党の当時の修正案に対する質問でございますが、恒久的な歳出に対してワンショットの財源で賄う案となっており、安定財源の確保の視点が欠ける、このように指摘をされています。大変鋭い指摘だと思います。

 そこで、お尋ねをいたします。

 自民党と公明党の修正案に係る減税の財源はどのように確保されるのか。そして、特に、一部、二百万円以下の部分については恒久減税というふうになっておりますが、恒久減税に対しては恒久財源が必要と考えますけれども、これは確保できているのかどうか。この点、お答えをお願いいたします。

赤羽委員 御質問どうもありがとうございました。

 まず、令和七年度の分につきましては、基礎控除の特例の創設による税収減も含めまして、一般予備費の削減、また追加的な税外収入の確保といった歳入歳出の増減の結果として確保しており、ちなみに、新規国債発行額の追加は行っておりません。

 また、令和八年度以降につきまして、その分につきましては、これは提出した法案の附則にも盛り込まれておりますが、予算編成及び税制改正において、所得税の抜本的な改革に係る検討と併せて、歳入歳出両面の取組を通じた本特例の実施に要する財源の確保について検討することとしておりまして、これは法律にのっとって責任を持って確保するということでございます。

櫻井委員 当時の立憲民主党案では、もっと具体的に、どの項目、法人税、それからそのほか金融所得課税ですとか、明確に書いていたんですね。この自民党、公明党の案は、もっとぼんやりとした内容になっていて、しかも、恒久減税に対して恒久財源が確保できていない、そのことを確認させていただきました。

 続きまして、資料三、これは財務省のホームページに載っております税の三原則というところです。これは、財務省によりますと、公平、中立、簡素というのが三原則ということでございます。

 資料一につけておりますとおり、政府原案では、年収四百万では減税額は五千円、年収二千五百万では四万円の減税というふうになっておる。八倍もの格差がある。とても公平とは言えません。修正案ではこの格差が縮小したとはいえ、二倍の格差が残っております。さらに、非課税世帯には恩恵なしということで、とても公平ではないというふうに考えます。

 また、二百万円のところで新たな段差をつくるということになってしまって、新たに働き控えを生んでしまう、そんなリスクもございます。これも中立でもないというふうに言えると思います。

 そして、基礎控除額が所得階層によって階段状に変化している。これは簡素でもありません。

 これは税の三原則に反していると考えますが、提案者の御意見をお伺いいたします。

後藤(茂)委員 今委員から御指摘のとおり、税制については公平、中立、簡素を原則といたしまして、財源の調達機能や所得再分配、また経済安定化の各機能を果たすことが求められていると考えております。

 これらの原則や機能については時にこれは相反する関係になるわけでございまして、経済社会の構造変化を踏まえつつ、適切なバランスを確保することが重要であると考えております。

 今般の与党案は税制を複雑にするものであって、特に簡素の原則に反している、その他いろいろな御指摘を今いただいたわけでございますが、物価上昇に賃金上昇が追いつかない状況の下、中所得者層を含め幅広く税負担の軽減を図る一方で、公平性の観点から、高額所得者優遇とならないように、減税額を平準化するため、所得水準に応じて基礎控除の上乗せ特例を創設することといたしております。

 現行制度でも、例えば給与所得控除は、給与収入に応じて控除額が決まる、そういう仕組みになっておりまして、全く新たな考え方を税制に持ち込むわけではないというふうにも考えておりまして、与党としては、公平、中立、簡素の原則を逸脱するものではないというふうに考えております。

櫻井委員 もう質問時間が来ましたので終わりますけれども、昨日も、石破総理も複雑だということはお認めになっていましたよ。控除でやるからこういう問題が起きるので、例えば……

井林委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

櫻井委員 給付つき税額控除ならば平等な減税が可能だというふうに申し上げて、質問を終わらせていただきます。

井林委員長 次に、萩原佳君。

萩原委員 日本維新の会、萩原佳でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 早速ですが、私の方から質疑をさせていただきます。

 今回の新たな修正案に関しては、当初案、合計所得二千四百万円以下の皆様には一律十万円の基礎控除の引上げであったものが、給与収入二百万円相当以下の所得の皆様については、基礎控除額を更に三十七万円上乗せして八十五万円に設定し、それ以上の所得の方については、最終的に給与収入八百五十万円相当以下まで段階的に基礎控除額の追加の上乗せを行って、八百五十万円超の皆様については特段上乗せを行わないというものでした。これによって、減税額の効果というのは、所得二千四百万以下の皆様には二万円から四万円程度となるということです。ただ、この年収二百万円相当以下の方への上乗せは恒久的措置、それ以外は二年間の時限的な措置とされました。

 ここでお聞きいたしますけれども、二年間に限定した趣旨、これをお聞かせください。

後藤(茂)委員 今般の与党修正案で提案している基礎控除の特例のうち、給与収入二百万円相当超八百五十万円相当以下の方を対象とする部分については、まさに委員の御指摘のとおり令和七年及び令和八年の措置としております。

 これは、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえまして、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から行うものでありまして、デフレからの脱却局面における経済対策としての位置づけであることから、期限付の措置といたしております。

萩原委員 物価上昇局面における対策ということでしたけれども、二年間で足りるのかということに関しては、また今後議論が必要かなと考えております。

 そして、昨日の自公維の幹事長間の合意文書でも確認させていただきましたけれども、百七十八万円まで壁を引き上げるということに関しては引き続き真摯に協議を行っていくということでした。

 日本維新の会は、今回、国民の皆様の手取りを増やすことを進めるために自民、公明案に賛成をしておりますけれども、二年間の時限措置については不足しているんじゃないのかなと考えております。これに関しては今後の協議に委ねられましたが、まずは、百七十八万円まで引き上げるという方向性については、大臣にまず確認させていただければと思っております。そして、協議を行って、課税最低限の引上げ、これが令和八年度から仮に実施されるとなった場合には、かかる二年間の経過措置についてはどのようになるのか。以上二点、よろしくお願いいたします。

加藤国務大臣 まず、与党、またこれからの御協議については、その御協議を踏まえて対応するということになると思いますが、その上で、与党の修正案においては、課税最低限を百六十万円まで引き上げた上で、物価上昇局面における税負担の調整について、源泉徴収義務者への影響も勘案しつつ、物価の上昇などを踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げることとし、所得税の抜本的な改革において具体案を検討すると法律の附則に明記されているものと承知をしているところでございます。

 政府としては、与党修正案についての国会での御議論を踏まえ、適切な対応を図っていきたいと考えています。

萩原委員 ありがとうございます。

 適切な対応を取っていくということですが、今回の、我々、賛成はいたしますけれども、本当にまだまだ基礎控除額の引上げも含めた壁対策というのは対応が必要だと考えておりますので、是非今後もこの話は続けさせていただければなと思っております。

 済みません、最後に一点。

 以前の三党合意に基づいて高校教育の無償化について大きく前進した今国会ですけれども、それに対して、高校教育に関しては制服代とか様々な金銭的な負担というのはこれからも生じ得ると思っております。

 そこで大臣にお伺いしますけれども、平成二十三年、二〇一一年をもって対象年齢を十九歳以上に引き上げた特定扶養親族控除、これを十六歳以上に見直されたらいかがかなというのを考えておりますが、御意見をお伺いできればと思っております。子育て世代の支援という意味では非常に有効であると考えておりますので、前向きな答弁をよろしくお願いできればと思います。

井林委員長 加藤財務大臣、申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

加藤国務大臣 委員がおっしゃっておられるのは、高校生年代の扶養控除についてということだと思います。

 令和七年度与党税制改正大綱で、児童手当を始めとする子育て関連施策との関係、所得税の所得再配分機能等の観点、また、令和六年度税制改正大綱で示した考え方などを踏まえつつ、令和八年度以降の税制改正において、各種控除の在り方の一環として検討し、結論を得るとされております。

 政府も、こうした考え方にのっとって検討していきたいと考えています。

萩原委員 是非よろしくお願いします。

 済みません、時間が経過しました。ありがとうございました。

井林委員長 次に、岸田光広君。

岸田(光)委員 国民民主党の岸田光広です。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質問に移らせていただきます。時間の関係もございますので、まとめて質疑をさせていただきます。

 基礎控除等の引上げの目的を、物価上昇局面における税負担の調整をするため、就業調整の観点から、大学生年代の子等に関する新たな控除を創設するとのことでした。

 大学生の就業調整対策については、我が党の提案を取り入れていただきました。これで親の控除から外れることを気にせず働けるようになったと、安堵の声をいただいております。一方、物価高対策の面では、まだまだ物足りません。あるシンクタンクの報告によりますと、物価高騰に伴い、一世帯当たり年間九万円の支出増が生じております。インフレ対策というものの、二万円の減税では足下の物価高に届いていないと考えますが、お考えをお聞かせください。

 次に、基礎控除の考え方について伺います。

 先日の委員会で大臣は、原則全ての納税者に適用される人的控除であるとおっしゃられておりました。当初案では、額は不足でしたが定額の控除となっており、基礎控除を一律に引き上げるものでした。

 ところが、修正案では、収入ごとに控除額が異なり、しかも、給与収入二百万円以下では政府案の十万円プラス三十七万円を恒久的措置とする、二百万円超は二年間の措置とするなど、非常に分かりづらく、新たな壁を設定しているような印象です。低所得者対策は重要だと考えますが、修正案では、全ての納税者に適用される基礎的な控除と言えないと考えます。当初案でおっしゃられていたような考え方を変えた理由について教えてください。

 最後に、財政措置についてお伺いいたします。

 大臣は、基礎控除額を、定額の百二十三万円なら特段の財政確保措置は要しないというふうにおっしゃいました。それを超える場合は恒常的な財政措置が必要と言及されました。今回の修正案の内容では恒常的な財政措置が必要なのではないでしょうか。これをこれまでの考え方と変えた理由について、併せてお答えください。

加藤国務大臣 大半は与党案についてでございますので、政府としてそれに見解を申し上げるというのはなかなか難しいところは御理解いただきたいと思います。

 その上で、与党案は、低所得者層の税負担に対する配慮、また物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点を踏まえたものと承知をしております。

 まず、物価高の関係でありますが、物価高対策としては、今回の所得税における対応のみならず、賃上げこそが成長戦略の要との認識の下、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の皆さんの所得と経済全体の生産性の向上を図るための施策等を講じることが重要と考えており、今般の予算等においても各種の措置などを講じさせていただいているところであります。

 また、控除の仕組みについては、高所得者優遇とならぬよう、政府案と修正案を併せて、それぞれの収入階層での減税額の平準化を行うという意味において、公平性の確保を図られたものと承知をしております。

 また、財源確保に関しては、令和七年度については、与党による税制修正において、一般予備費の削減や追加的な税外収入の確保などで賄い、新規国債発行額の追加は行われておられません。その上で、令和八年度予算編成及び税制改正において、歳入歳出両面の取組を通じて財源の確保について検討するとされていると承知をしております。

 政府としては、与党修正案についてのこの国会での御議論を踏まえて、適切な対応を図りたいと考えております。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 百三万円の壁が三十年ぶりに動きました。基礎控除も、物価の上昇を踏まえて適時に引き上げるとされました。しかし、物価の上昇に賃金上昇は追いついておりません。今、まさにデフレ脱却への分水嶺です。財政規律も大切ですが、直近のフレームワークにとらわれず、国民に寄り添う対策を取っていただきたいことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 れいわ新選組の高井です。

 時間がありませんので、二問通告していますが、まとめて聞きたいと思います。修正案提出者の自民党、それから立憲民主党、それから国民民主党、この三党にお聞きしますので、御質問に答えてください。

 まず、我々、この修正案に反対なんですが、そもそも、税制改正といえば、やはり消費税の廃止、少なくとも減税、これが入っていないとあり得ないと考えています。

 もう何度もこの委員会でもやりましたけれども、日本が三十年間経済成長していない最大の原因は消費税です。しかも、三十年に三回も引き上げた。一回の消費税増税でリーマン・ショックを上回る消費の落ち込みが起きている。だから、日本は三十年の間に、百年に一度のリーマン・ショックが四回起きた、そのくらいのインパクトのある消費税増税をやってきてしまった。

 それから、税金というのは、中学校の教科書に書いてありますが、景気がいいときには上げていいけれども、悪いときには下げる、上げ下げする、これをやるのが税金の根本です。しかし、それを全く無視してやってきました。

 それから、消費税というのは本当に悪税なんですね。中小企業に非常に厳しい、そして、大企業は、輸出戻し税などもあるし、大企業に優遇され、そして大企業の法人税減税のための原資となってきた。それから、賃上げに抑制的であったり、あるいは、人件費にかかりますから、派遣社員を進めていく要因にもなります。

 こういう消費税については、廃止、少なくとも減税、これをやるべきだと申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、それと裏腹ですけれども、やはり積極財政という考え方です。今の政府は緊縮財政。そして、立憲民主党も緊縮財政なんじゃないですか。もっと国債を発行して、財政出動をすべきです。

 これは、債務残高だけ見れば確かに世界の中でも悪い水準ですけれども、ほかの指標、例えば純利払い費対GDPなんかはG7の中で二位ですよ。ほかの指標でも一位か二位です。それから、国債償還費が日本しか計上していない、予算の一五%を占める国債償還費が、実は世界の中で日本だけが計上している、こういうことも判明しました。なので、日本の国債が債務不履行になる確率、これは、CDS、クレジット・デフォルト・スワップ、江田議員も何度も言っていますけれども、これは〇・二三%ですよ。G7の中でドイツに次いで低い。こういったことを考えれば、まだまだ財政出動をして積極財政をする余地があります。

 こういったことに対して、自民党それから立憲民主党、それから、国民民主党さんは特に消費税減税を公約で訴えていますよね。ほかの二党は訴えていないけれども、だけれども、自民党だって積極財政派の議員はたくさんいる。そういった中で、国民民主党さんは、消費税減税を選挙で訴えているのに、それは全く出てこないじゃないですか。そこについて、それぞれ三党からお答えをお願いします。

大野委員 お答え申し上げます。

 まず最初に、今般の与党修正案については、これまでの政党間の協議や国会の質疑を踏まえ、低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設することを提案しております。したがいまして、消費税につきましては、スコープ外ということになります。

 なおもその上で申し上げれば、消費税につきましては、少子高齢化が進む我が国において、全世代型社会保障を支える重要な財源である消費税が果たす役割は一層重要となっているという認識をしておりまして、また、消費税は社会保障給付という形で家計に還元されていることも踏まえれば、消費税を廃止することや消費税率の引下げを行うことは現時点では適当ではないと考えております。

 また、景気の上げ下げの点に御指摘をいただきましたけれども、この部分につきましては、基本的には、消費税は、不況期にこそ安定した給付が求められるという観点、社会保障給付という形で家計に還元されており、負担の面だけに注目して経済への影響を論じることは適切ではないと考えております。

 また、続きまして、財源の話もお触れいただきましたけれども、委員御指摘いただきましたまさに様々な観点は、参考として重視するというのは非常に重要なポイントではあるかと思います。

 一方で、今、現時点での経済状況を鑑みますと、まさに金利がある世界に入ってまいりますので、当然、経済成長率というのも主要な指標ということになるんだと思います。そうした様々な指標に基づいて適切に財政を運用していくべきと考えておりまして、なおもそうした観点でいえば、我が国はこれまで大量の国債を国内で低金利かつ安定的に消化してきたことの背景といたしましては、まさに財政の合理的運用に努めてきたためでありまして、市場からの信認を維持してきた面があると考えておりますので、必ずしも財政余力が十分にあるということではなくて、適切に運用することが重要かと存じております。

井林委員長 階猛君、申合せの時間が経過しておりますので、答弁は極めて簡潔にお願いいたします。

階委員 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 高井さんの御質問は、一つ目は、今回の我が方の修正案に消費税の廃止とか減税が盛り込まれていないのはなぜか、そして二つ目は、もっと国債を発行して積極財政するべきではないか、この二つだったと思います。

 まず、前段なんですが、私、今、党内のネクスト財務大臣という立場なんですが、私がその立場になった後、二三年の二月に、新しい財政政策中間取りまとめというものを発表しまして、その中では、時限的に五%減税の後、軽減税率を給付つき税額控除に改める内容を公表しています。その後、中間取りまとめの後、最終取りまとめに行く予定だったんですが、その後、議論が停滞したまま、総選挙を経て、これからまた党内で議論を活発にしていこうという中で、今回の修正案にはその内容は間に合わず、盛り込めなかったということで御理解いただければと思います。

 二つ目、国債をもっと発行すべきだということなんですが、やはりこれは程度問題なんだと思うんです。

 先ほど、御党の予算の組替え動議、これを見ましたけれども、百四十兆円以上国債を発行して、いろいろな政策に充てたり減税を行ったりということなんですが、さすがに、今、毎年、借換債を含めて百六十兆とか百七十兆とか国債を発行しておりますので、更に加えて百四十兆となると、なかなか国債を消化し切れないだろうと。もしそれを行うとすれば金利が大変なことになりますし、また、以前のように日銀が超低金利で国債を爆買いするということになりますと、これは今度、為替の信用に響いてきて、円安……

井林委員長 答弁は極めて簡潔にお願いいたします。

階委員 与党の皆さんと同じぐらいの長さになっています。

 円安になってきて、そうすると物価高にかえってつながるわけですよね。

 御党が消費税を廃止すべきというのは、物価高による消費者への影響を抑制して、なるべく消費を冷え込ませないようにしよう、そして経済を活性化しようということになると思うんですが、円安を誘引することによって、かえって物価高が進めば、御党が目指すところも達成されていかなくなると思っております。

 物価高による影響を私たちも極力なくしていきたいと思っております。目指すところは同じだと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

井林委員長 田中健君、簡潔にお願いします。

田中(健)委員 はい。

 お答えいたします。

 消費税減税については、確かに国民民主党は公約として掲げておりますので、それを目指していきたいと思いますが、今回は三党合意でガソリンの暫定税率廃止がもう決定しておりますので、まずこれを優先順位として実現していこうということで、今回、修正案を提出させていただきました。

 以上です。

高井委員 ありがとうございました。

 各党の答えを聞く機会はなかなかないので、貴重でした。是非、消費税廃止、それから積極財政、これからも議論していきたいと思います。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、田村智子君。

田村(智)委員 与党修正案についてお聞きします。

 所得税の基礎控除というのは一律の控除額です。これは、最低限の生活を維持するのに必要な費用を除いて課税するという生計費非課税の原則によるものです。ところが、与党修正案は、基礎控除の額を新たに四段階加えて、全体で五段階にするというものなんですね。一体、基礎控除の段階をつけるというこの考え方の基準は何なんでしょうか。

後藤(茂)委員 基礎控除につきましては、一定の額まで、少額の所得については負担能力を見出すに至らないと考えられることから、原則全ての納税者に適用される基礎的な人的控除の一つだというふうには考えております。

 基礎控除等から構成される所得税の課税最低限は、生計費の観点も勘案されてきましたけれども、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めて、総合的に検討して定められているものと承知をしております。

 その上で、今回の修正案については、低所得者層の税負担に対して配慮する観点から、給与収入二百万円相当以下の者に対して、基礎控除の特例として三十七万円の恒久的な上乗せを行うことといたしております。これにより課税最低限が百六十万円となりまして、最も高い東京都二十三区の生活保護基準の最低生活費を超える水準となっております。

 他方で、納税者の収入水準がまちまちな中で、所得控除は限界税率の高い高所得者ほど大きな恩恵を受けるものであることを踏まえますれば、この最低生活費という概念を全ての納税者に当てはめて所得控除を適用することが適当かどうかは、慎重な検討が必要だと考えます。

 なお、課税最低限を構成する給与所得控除は、給与収入が大きくなると増える構造でありまして、そもそも、全ての納税者に一律の所得控除が適用されるものではないというふうに考えております。

田村(智)委員 これは基準となる考え方ではないですよね。御都合主義のような答弁ですよ。

 低所得者や中所得者の税負担が重いというふうに認めるのならば、圧倒的に負担割合の大きい消費税こそ減税すべきです。物価高騰対策としても、これこそが最も有効だというのは明らかなんですね。

 結局、今の答弁にもありました、課税最低限の引上げだけでは所得の多い人により減税額が大きくなる。当初の政府案では低所得の人は年間五千円程度の減税にしかならない、こうした批判に対して小手先の修正をしたということにすぎないと思います。そのことによって、むしろ、財務省が掲げる公平、中立、簡素という税の原則からも逸脱し、基礎控除のそもそもの在り方、考え方を変えてしまうということですから、こんな短時間の議論でそれを決めてしまっていいのかということも指摘しなければなりません。

 もう一点お聞きします。

 この修正によって六千二百十億円の減収となるといいますが、その財源はどうするんでしょうか。

赤羽委員 先ほどの他の方からの御質問、同じようにありました。

 まず、令和七年度につきましては、基礎控除の特例の創設による税収減も含めまして、歳入歳出の増減の結果から財源を確保するものとしております。新規国債発行額の追加は行わないということでございます。

 また、令和八年度以降につきましては、今回提出をいたしました法案の中で、予算編成及び税制改正におきまして、所得税の抜本的な改革に係る検討と併せて、歳出歳入両面の取組を通じた本特例の実施に要する財源確保について検討することと明記しておりますので、与党として責任を持ってしっかり確保していきたい、こう考えております。

田村(智)委員 結局、恒久的な財源ということを示すこともできないわけですよね。

 私は、この国会、予算委員会そして二十五日の本委員会でも、消費税の増税を繰り返したことによって税負担の累進性も失われ、応能負担原則が崩されているということを示してきました。自民、公明政権の下で、この大きくゆがめられた税制を、生計費非課税、応能負担の原則に立って改革することこそ必要です。物価高騰から暮らしを守るためにも、このような小手先、御都合主義とも言える修正ではなくて、抜本的な改革を求めて、質問を終わります。

井林委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。福原淳嗣君。

福原委員 自由民主党の福原でございます。

 私からは、本日、二問質問させていただきます。

 まず初めに、森友学園に関する案件であります。

 皆さん御存じのとおり、七年前に亡くなられた赤木俊夫さん、非常に誠実な方で、本当に真面目に職務に当たられたと伺っております。改めまして、御冥福をお祈りいたすとともに、御家族の皆様に対してもお悔やみを申し上げたいと思います。

 そして、その御家族の方々から財務省に対しまして、財務省が任意に検察に提出した一切の書類の開示請求がなされています。政府において今検討されていると承知をしておりますが、開示する方向性について、現状の段階でお聞かせ願えればと思います。

加藤国務大臣 森友学園事案に関する開示請求について、これまで、開示の効率的な進め方を検討してまいりますということを申し上げてきました。

 対象になっている文書全体、私自身も直接、量は見させていただきました。ページ数において十七万ページ以上の紙文書と電子データがあると聞いているところでございます。これらの文書は捜査機関に任意提出したものであり、全て、情報公開法五条四号が定める不開示情報に該当するものと考えてきたところでございます。しかしながら、総理からの指示も踏まえ、情報公開法七条に基づき、公益上特に必要であると判断し、検察とのやり取りを示す文書や検察からの依頼に基づき取りまとめた文書を除き、個人の権利を害するおそれのあるものなどに最低限のマスキングなどを施した上で開示することといたしました。

 今後、開示に向けて速やかに作業を進めてまいりますが、対象文書が相当量に及ぶため、優先順位をつけて取り組んでいかなければならないと考えております。

 まず、平成三十年に、改ざん前後の決裁文書と森友学園等の交渉記録を取りまとめて公表させていただきました。まずは、この交渉記録の大宗がつづられたファイルについて、まだ公にしていない内部のやり取りなども含め、これを今後一か月程度を目途に開示していきたいと考えております。

 次に、既に開示いたしましたいわゆる赤木ファイルのほかに、赤木俊夫氏が取りまとめておられたと思われる文書、これを六月上旬を目途に開示をしたいと考えています。

 その後、職員個人の手控えと思われるものなど、その他の文書についても定期的に開示をしてまいります。

 全ての開示作業を終えるには、通常の体制であれば複数年を要する量となっておりますが、今回の開示作業のための体制強化に取り組みつつ、事案の関連が薄いものについては着手を後回しにし、主要な文書についてはこれから一年以内に、一日も早く開示するよう努力をしていきたいと考えております。

福原委員 相当な分量だというのは分かりました。加藤大臣のリーダーシップに期待したいと思います。

 それでは次に、与党の修正案について、石破総理にお聞きしたいと思います。

 私、実は、前職が、秋田犬のふるさと秋田県大館市の市長を三期しておりました。今回の修正案に関しては、まさに地方自治体の長を経験した者として、いわゆる百三万の壁でありますが、地方自治体、財政的な影響を十分配慮することが重要ではないかというふうに考えております。

 今般の見直しにおける、特に個人住民税等への影響について、是非とも地方創生二・〇を掲げる石破総理にお伺いしたいと思います。

石破内閣総理大臣 福原委員にお答えを申し上げます。

 市長さんをお務めになっておられた経験からの御質問であります。

 いわゆる百三万円の壁に関しまして、政府では、個人住民税につきましては、これが地域社会の会費的な性格を有するものであるということ、そしてまた地方税財源への影響などを総合的に勘案をいたしまして、基礎控除額を据え置くことといたしております。また、地方交付税の所要額を計上するなど、適切に地方財源を確保することといたしております。

 地方の首長の皆様方からは税収減等を懸念される声が上がっておったというふうに承知をいたしておりますが、これらの地方税財源への配慮について、地方からも一定の評価をいただいておるというふうに認識をいたしております。

 今般の与党修正案におきましても、個人住民税については政府案の見直しはなく、追加で減収などが生ずるものではないというふうに承知をいたしております。

 昨年十二月の幹事長合意を引き続き踏まえまして、三党間で真摯に協議を続けていくことになるものというふうに認識をいたしておりますが、その協議をめぐりまして、地方自治体の皆様方が、財政面での御懸念、これをお持ちになることは十分に理解をいたしておりますので、こうした御懸念には丁寧にお応えをいたしてまいりたいと思っております。

 御指摘ありがとうございました。

福原委員 石破総理におかれましては、地方の首長は令和の日本列島改造に期待しておりますので、どうかよろしくお願いします。

 以上です。終わります。

井林委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 石破総理に初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 通告した質問に入る前に、先ほどの質問について、ちょっとお尋ねをいたします。

 森友学園文書に関して、今、加藤財務大臣、一年以内に公開されるというふうに答弁されました。石破総理、そういうことでよろしいでしょうか。

石破内閣総理大臣 先ほど財務大臣からお答えをしたとおりでございますが、答弁の中にございましたように、何しろ膨大な量がございます。その中で優先順位をつけていきながら、一年以内に、これは早い方がいいにこしたことはないのですが、粗雑な作業もできませんので、誤りのないように丁寧にやりながら、なおかつなるべく早くということで、一年ということを財務大臣として申し上げたというふうに承知をいたしております。

櫻井委員 その判断は、総理のリーダーシップということでよろしいでしょうか。

石破内閣総理大臣 それは、実際に私自身、それを全て見たわけではございません。

 財務大臣にお願いをいたしておりますのは、それをなるべく、もちろん支障のあるところは除いて、マスキングを余り多くせずにというか、することなく、なおかつ、精緻な作業を行いながらもできるだけ早くということをお願いし、現場においてそういうことを勘案をしながら、先ほどの財務大臣のような時間的な感覚になったというふうに承知をいたしております。

櫻井委員 是非、石破総理大臣の今の御発言のとおりのリーダーシップを発揮していただいて、この森友学園問題に決着をつけていただきたい。お願い申し上げます。

 あともう一点、通告の前に質問させていただきます。

 昨日、アメリカ時間の昨日ですけれども、トランプ大統領の発言について確認をさせていただきたいと思います。

 トランプ大統領は、ホワイトハウスの記者会見でこのように発言をされております。日本の首脳に電話をし、自国通貨を切り下げることはできない、なぜなら私たちにとって不公平だからだ、こういう趣旨の発言をされております。

 ということは、石破総理はトランプ大統領と為替のことで電話で話をされたということでよろしいでしょうか。

石破内閣総理大臣 トランプ大統領に限りませんが、他国の発言につきましてはコメントは差し控えることといたしております。

 これは累次お答えをしておるところでございますが、日本として、いわゆる通貨政策というものを取っておらないところでございます。

 為替につきましては、先般の首脳会談後に、トランプ大統領との共同記者会見におきまして、私から、第一次トランプ政権時と同様に、専門家である日米の財務大臣の間で緊密な議論を継続させていくことといたします、このように発言をいたしておるところでございます。

 さらに、共同記者会見の後に行われました、ベッセント財務長官と面会をいたしましたが、私から同様の趣旨はベッセント長官に伝えておるところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、為替につきましては財務大臣とベッセント財務長官の間で引き続き緊密に議論していくということでございます。

櫻井委員 トランプ大統領は電話で話をしたというふうにおっしゃっているんですが、ちょっとそれは、電話で話をしたのかどうかはお答えにならなかったということでございます。

 じゃ、石破総理、お願いします。

石破内閣総理大臣 そのような報道があったことは承知をいたしております。

 トランプ大統領から私に対して電話があったのかということでございますが、そのような事実はございません。

櫻井委員 トランプ大統領の発言を見ますと、石破総理とはおっしゃっていないんですよね。中国については習主席というふうにおっしゃられているんですけれども、リーダー・オブ・ジャパンというふうにおっしゃられているので、もしかしたら前に総理と話したときのことを引用されているのかもしれないということで、その点については承知をいたしました。

 ともかく、トランプ大統領は、日本について、自国通貨の切下げがけしからぬ、不公平だ、こういうふうに言われているわけです。

 実は、この委員会でも、私、外為特会の剰余金の話をさせていただいておりまして、一般会計に繰り入れるときには、アメリカ・ドルで持っている資産について、わざわざ、それを円に素直に替えればいいものを、替えずに新たに政府短期証券を起こして、借金をして、それで一般会計に繰り入れるというような複雑なことをやっているんですけれども、そんなことをせずに、素直にアメリカ・ドルから円に転換して、そして一般会計に繰り入れたらいいじゃないですか、こういう提案をしていたんですね。

 トランプ大統領も、そうすると、そのことには賛成してくださるんではなかろうかと考えるんですが、どうですか。これはもう素直に一般会計に繰り入れるということで、石破総理、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まさに為替のことにもつながるのかもしれませんけれども、外為は、まさに今後の様々な為替相場の変動に対するためとして持っているということ、これがまず第一であります。

 それから、その上において、今お話があったように、たしか、かつてそうやったことがあったように記憶をしているんですけれども、今持っている外為のお金を仮に円転しようとすれば、それ自体が、やはり国がやっている為替、国が売るわけですから、その場合はドルを売るわけでありますから、それをどういうふうに捉えられるのかという問題が別途あるというふうに思っておりますので。

 もっとも、そもそも今の外為の基準というのは、今後の為替の変動に対する対応として今ぐらいの水準が必要だということを申し上げていることがまず大前提として、その上で、持っている外貨を政府が売るということになれば、それは、国が為替に影響を及ぼしている、こういうふうに見られるということも十分懸念をしておく必要があるんじゃないかと思っています。

櫻井委員 いやいや、だから、アメリカ・ドルについては、トランプ大統領は通貨切下げがけしからぬと言っているんですから、その反対をしようというんですから、絶対賛成してくれますよ。だから、別にそんなことを気にする必要はないじゃないですか。

 この話はまた別の機会にしっかりさせていただきたいというふうに思います。

 そうしましたら、本日の議題であります所得税法等の改正案について質問をさせていただきます。

 まず、通告している質問項目に入る前に、大原則についてお尋ねをします。

 税制改正に当たっての基本的な考え方、私は、税は国家なり、国家運営の根幹をなすものだ、こんなふうに考えておるんですけれども、石破総理のお考えをお聞かせください。

石破内閣総理大臣 それは、国家は強制力を持って税を徴収をいたしますので、そういう意味で、国家権力そのものの体現が税だと思っております。

 そういう意味で、税は国家なりという委員の御指摘は、それは一面正しいと思っております。

櫻井委員 いや、石破総理のお考えをお尋ねしたんです。それは私の考えを披露したんですけれども。

 もう一度、総理のお考え、端的にお答えいただけますでしょうか。

石破内閣総理大臣 私は、税の在り方というのは国家の運営方針そのものを体現するものだというふうに思っております。しかるに、強制力を持って徴収いたしますから、その面からいえば税は国家ということも言えますし、その国家運営の在り方、それは予算によって表れるものでございますが、それを裏打ちするのは税でございますので、そういうものだというふうに教わってまいりました。

櫻井委員 先ほどこの委員会で、総理がいらっしゃる前に与党の修正案についても質疑をさせていただきました。与党の修正案についても石破総理に質問させていただきます。

 自民、公明の修正案については、特に二百万円以下については恒久減税ということになっておりますので、私は恒久財源を確保するのが当然の責務だというふうに考えます。しかし、先ほどの質疑の中でも、恒久財源は確保できていないということを確認をいたしました。

 この恒久財源を確保していないというのは極めて無責任な話だというふうに思うんですが、総理はどのようにお考えですか。

石破内閣総理大臣 与党の修正案につきまして、政府の立場で見解を申し上げることはいたしませんが、その上で申し上げますれば、今般の与党修正案に盛り込まれた所得税基礎控除の特例措置につきましては、今御指摘がありましたように、令和七年度において恒久財源が確保された、そのような形にはなっておりません。

 与党といたしまして、令和八年度予算編成及び税制改正におきまして、歳入歳出両面の取組を通じて必要な財源の確保について検討する方針というふうに政府としては承知をいたしておるところでございまして、政府といたしましても、このような方針に沿いまして、財源について必要な検討は進めてまいります。

櫻井委員 これは今からちょうど十五年前になりますけれども、二〇一〇年三月二日、衆議院本会議、当時政調会長をされていた石破総理でいらっしゃいますけれども、このように発言されております。

 恒久政策であれば恒久財源が必要なはずであるが、それについては今後の議論と逃げてみせている。これは、選挙前に取りあえずばらまいてみせるという、国民を愚弄する姿勢にほかならない。財源の裏づけと理念は、政府の責務として国民に提示すべきだ。

 庶民には増税を押しつけ、軍事費や大企業、大資産家への優遇税制は温存、継続したままです。こうした聖域を温存した結果、巨額の公債発行と埋蔵金に依存する、その場しのぎで、全く先の見えない予算となっているのであります。

 この十五年前の石破総理の言葉を用いて申し上げれば、今の石破総理は、まさに恒久政策に恒久財源を示さず逃げてみせているのか、こんなふうに思わざるを得ませんし、国民を愚弄しているのか、こういうふうにも思わざるを得ません。

 また、国家運営の根幹がころころと変わるようでは真っ当な国家運営は無理なのではないのか。責任政党を自民党は標榜されておりますけれども、この責任は一体何なのかということになろうかと思います。野党のときに正論を言いながら、政権を取ったらできないということでは、政治不信を招いてしまうのではないでしょうか。

 石破総理、このときは本当のリアルな野党でいらっしゃった。その後も、党内野党のときにも正論をおっしゃられ、そして自民党総裁選挙のときにも正論をおっしゃられていた。でも、政権を取って総理になったらやらないというのでは、これは大変政治不信を招いてしまいますよ。

 それは、我々も今野党ですから、我々が言っていることが、将来、政権を取ったときに、近い将来政権を取れるというふうに頑張っておるんですけれども、そのときに、今言っていることと矛盾しないように、そのことは常々私は心がけておるところですが、石破総理、これは、過去の御自分の発言と照らしていかがですか。

石破内閣総理大臣 よくお調べをいただきました。

 今記憶がよみがえったところでありますが、そのように、政調会長として、党を代表して発言をしたことは確かにございました。そうあるべきだと思っております。そうあらねばならないと考えております。

 ただ、今回、私ども政府といたしまして、与党がこのような方針で臨まれるわけでございます。これは、もう恒久財源がどうでもいいんだというようなことを与党としてお考えなわけではなくて、令和八年度の予算編成、税制改正におきまして、歳入歳出両面の取組を通じて必要な財源を確保するということでございまして、選挙の前にばらまけばいい、そういうような考えではないと承知をいたしております。

 恒久的な政策には恒久的な財源という考え方は何ら変わるものではございません。

櫻井委員 理想と現実というのはあるのかもしれませんけれども、せっかく総理になったわけですから、是非理想を実現していただくようにお願い申し上げます。

 次に、賃金のことについても質問させていただきます。

 日本が抱えるいろいろな問題がございますけれども、例えば、少子化、人口減少、社会保障の綻び、こういったことは、実質賃金が上がらなかったことにも起因するものというふうに考えます。大きな原因は実質賃金がずっと低迷しているから、そうではないのかな、こんなふうに考えるんです。逆に言えば、実質賃金がしっかりと上がっていくということになれば、問題解決に向けて大きく前進するというふうにも考えます。政府におかれましても、税制等で賃上げを促進するという取組を進めてきたというふうには承知をしておりますが、残念ながら成果は上がっていないと言わざるを得ない。例えば、実質賃金三年連続マイナス、こういうことになってしまっています。

 立憲民主党は、給料を増やす、物価を抑える、実質賃金をしっかりと引き上げていく、こういう政策を推進しております。国民の暮らしを豊かにするために、前向きな議論をさせていただきたいというふうに思います。

 資料をつけております。資料四、これは毎月勤労統計、厚生労働省が発行しているものです。こちら、先ほど申し上げたとおり、三年連続マイナスというふうになっております。これは、石破総理の時代、更にその前の岸田総理の時代から、ずっとマイナスが続いているという状況です。

 さらに、もっと長い目で見ますと、資料五をつけております、これは二〇二二年三月三日の経済財政諮問会議に提出された資料でございます。これは岸田内閣が発足して間もない頃なんですけれども、岸田総理も当時、意欲的に、いろいろ課題、賃金をどうやって上げるのかということを取り組もうと思われていたんだというふうに思います。

 このグラフを見ていただいたら分かるとおり、特に右側、これが調整後ということでございますけれども、これを見ますと、二十五年間で百三十五万円も日本の中間層の手取りが減っているわけなんです。手取りが年収ベースで百三十五万円も減ってしまった、これは何でなんでしょうか。

 この大半の期間は自民党が政権を担当しています。これは自民党の責任だというふうに私は思っておるんですけれども、これを取り戻すためにどのような政策を実施するつもりなのか、お答えをお願いいたします。

石破内閣総理大臣 櫻井委員御指摘のとおりですが、この資料を拝見しまして、全世帯における再分配後の一世帯当たりの所得の中央値が、九四年の五百九万円から二〇一九年の三百七十四万に減少しているということは間違いない事実でございます。

 ここは世帯でございますので、世帯の中央値がこれだけ下がっているということは、一つは、当然高齢化が進んで所得が減ったということはございましょう。もう一つは、単身世帯、これは高齢者も含むわけでございますが、単身世帯が増加をいたしておりまして、我が国の人口構造、世帯類型の構成が大きく変化したということが挙げられるものでございます。

 国民みんなの稼ぎであります雇用者報酬は、一九九四年が二百六十二兆、二〇一九年が二百八十七兆というふうに増加はしておるのですけれども、世帯ごとに見れば下がっているということは現実として認めざるを得ない、認めなければいけないことだと思っております。その理由が、高齢者が増えたとか単身世帯が増えたとかいうこともございますが、収入自体が減ったということは事実としてございますので、一部において。そこはもうきちんと認めていかねばならないと考えております。

櫻井委員 いやいや、だから、減ったのは何でですか、その分析の結果を教えてくださいというのが質問なんですけれども、いかがですか。

石破内閣総理大臣 それは生産性を上げてこなかったからではないんでしょうか。

 つまり、雇用関係は維持する、しかし給料は上がらない。そして、下請の関係は維持するが、そんなに多くのお金は払えない。そして、新しい価値を創出するような製品、サービスに対するいわゆる設備投資が足りないということであって、GDPが付加価値の総和でございますから、それをやらなければ、当然生産性は上がらず給料も上がらないということが起こってきた。

 ですから、言うなれば、コストカット型の経営、コストカット型の経済というものを展開してくればこういうことが起こるということだと私は思っております。

櫻井委員 そういうふうに答弁されるかなと思って、資料六を用意してまいりました。労働生産性が上がらないから賃金が上がらないんだというふうに政府の方はよくおっしゃるんですけれども、エコノミストでもそういうふうにおっしゃる方は多いんですが、でも、資料六に示したとおり、労働生産性は上がっているんです。でも実質賃金は上がらない。

 このことについては、例えば、令和五年版労働経済の分析という、これは厚生労働省が発行している冊子でございますけれども、この二百二十四ページにも書いてあるんですよね。それで、これを見ますと、アメリカやフランス、ドイツは、大体労働生産性と実質賃金の上がり方が同じぐらいなんです。イギリスに至っては、労働生産性の向上よりも上回る実質賃金の上昇があるんですね。ところが、日本は労働生産性は上がっているのに実質賃金は上がらない、こんなことになってしまっているんです。

 そこでお伺いいたしますけれども、何で日本だけこんなことになっちゃっているのか。労働生産性は上がっているんですよ、厚生労働省がそう言っているんですから。何ででしょうか。

石破内閣総理大臣 それは、私は、こういう事実があることはどこかの本で読んで承知はいたしております。

 労働生産性は上がったんだけれども賃金が上がらないということは、結局、生産性が上がってもそれが賃金に反映されていない、同じことを言っているわけですけれども。そうすると、労働分配率をどう考えるか等々、そういうように、生産性が上がった分を、その果実をどのように分配していくかという企業の判断あるいは労働者の判断、賃金が、労働者と経営者の間において決まるものでございますので、いろいろな御判断がそこにあろうかと思っております。

櫻井委員 まさにおっしゃられた話は資料七につけてきておりまして、この間、労働生産性は上がっているから、経常利益も上がっているんです、増えているんです。三倍にこの三十年間で増えています。その増えた利益は一体どこに行ったのかというと、配当金が六倍に増えている、内部留保も三倍に増えている、でも給料は全然上がっていない、こういう状況になっているんです。ただ、役員報酬はちゃっかり三割ぐらい上がっているんですよね。

 こういうふうにしちゃったのは一体何なのかということなんですけれども、これはやはり、一つには、政府の政策、これまでの自民党政権の政策の結果なんじゃないですか。小泉構造改革といいながら、例えば非正規雇用をどんどん増やしていった。そのことが結局、望まない非正規を増やし、そして、例えば労働組合の組織率もどんどん低下をすることになる。そうすると、労使交渉といったって、労働組合の交渉力はどんどん弱くなっちゃうわけですよね。

 資料の十につけておりますけれども、これはアメリカの財務省がやっている資料でございます。二年ぐらい前に、アメリカは労働省ではなくて財務省がこんな調査をやっているんですけれども、アメリカの分析では、労働組合があるとないとでは給料が二〇%違うというんですよね。労働組合がある方が給料は二〇%高いということなので、これも一つ大きな要素だというふうに思います。

 ですから、ちゃんと労働組合をつくって、組織率も上げて、労使交渉で労働側がちゃんと賃上げ要求を力強くできるような環境にするであるとか、そのためには非正規雇用も減らしていくであるとか、そういったことが必要なんじゃないでしょうか。

 ですから、やはり、この間、小泉構造改革以降の自民党の政策を大転換する必要があると考えますが、総理、いかがですか。

石破内閣総理大臣 それは私がお答えするのが適当かどうか知りませんが、私は、正直言って、委員と同じ問題意識を持ってきております。

 確かに労働生産性は上がりました、内部留保は増えました、配当は増えました、ちゃっかりという言葉がいいかどうかは別として、経営者の所得というのも上がってきておるわけでございます。そこにおいて、では、労働者に正当な分配がなされなかったということは、それは、労働組合の問題について私があれこれ言う立場にはございませんが、一番ストライキが多かったというのは昭和四十七年だったと思っております。一九七二年でございましょうか。私は高校生でしたが、電車は一週間止まりましたからね、間違いなく。日本国中、止まりましたですよ。学校が休みになっちゃって、いやあ、あしたもストは続くのかななんて結構心配したりしたものでございますが。そのときと比べて、争議件数も争議に参加する方の数も、多分何百分の一に落ちているんだろうというふうに思っております。

 争議権、団結権がなぜ日本国憲法で保障されているか、これは経済環境に限るのでありまして、政治的動機のストは認められませんが、そういうものが多く国民の理解を得るということも、私は労働者の賃金が上がっていく上で必要なことだと思っております。

 もちろん、大事なのは、経営判断において、いかにして労働分配率を上げていくかということが大事であることは論をまちません。

櫻井委員 今、石破総理の御答弁の中にもありましたとおり、やはり、この間の自民党の政策がこうしたいろいろ問題を引き起こしたのではなかろうかと考えます。

 大転換をお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

井林委員長 次に、萩原佳君。

萩原委員 日本維新の会の萩原佳でございます。

 今回、初めて石破総理に質疑させていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 早速ですが、質問させていただきます。

 今回の修正予算案、我が党としては、我々の提案した教育の無償化、そして社会保険料を下げる改革を念頭に置いた予算案になっていること、そして、百三万円の壁問題に対しては、百七十八万円を目指すとした自公国の幹事長間の合意が一歩でも、少しでも前に進んだことも考慮して、賛成に回らせていただきました。

 ただ、前進したとはいえ、今回の所得税の改正法案に関しては、全てを是としているわけではなく、一定課題もあるものと考えております。その最たるものが、生活に必要最低限の収入を課税対象から外す、生活に必要最低限のお金には税金をかけないという趣旨から設けられていると理解している基礎控除の段階的引上げです。

 ここで石破総理にお伺いいたしますが、総理は、基礎控除の役割とはどのようなものと考えられておられるのか、そして、今回の基礎控除に段階を設けたことに関しては個人的にどのように考えられているのか、御見解をお示しいただければと思います。

石破内閣総理大臣 専門家である委員に私から申し上げることでもございませんが、基礎控除の趣旨は、一定の額までの少額の所得については負担能力を見出すに至らない、よって税を課さないというものだと承知をいたしております。

 基礎控除を含むものでありますが、各種の所得控除は、負担能力としての所得の大きさを調整することにより応能負担の実現に寄与している、こういうものだと理解をいたしておるところでございます。

 また、基礎控除を収入に応じて段階的に変動させる、この案についてどのように評価をするかというお尋ねでございますが、与党案について政府からあれこれ申し上げることはいたしませんが、やはり、この与党修正案につきましては、高所得者の優遇とならないように、そしてまた、政府案と修正案を併せまして、それぞれの収入階層での減税額が平準化される、そのような意味におきまして、公平性の確保を図ったというふうに理解をいたしておるところでございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 基礎控除額については、課税最低限、生活費には負担させないというところと、あと、水平的公平、これを今回、額というところで考慮されたということではありますけれども、その調整の仕方というところが基礎控除である必要がどこまであったのかなという気持ちはございます。そして、所得税の基礎控除内に段階を設ける、これに関しては、今後も見直しを含めた検討というのは引き続き必要だと考えております。

 一方、当初の百二十三万円、そこの案の基礎控除額、四十八万円から五十八万円に引き上げましょうというところのロジックに関しては、消費者物価指数をベースに二〇%引き上げるという話が最初あったかと思いますが、この話に関しては、ロジックとしては非常にきれいというか、それに関しては評価しておりますが、そもそも、ロジックとして消費者物価指数等々を考えるという意味では、そこは議論すべき話なのかなということも個人的には思っております。

 すなわち、基礎控除額の設定目的が、生活に必要最低限のお金には税金をかけないということにあるのであれば、物価が動けば、それに合わせて基礎控除額も動かすというふうにロジックを変えていけばいいんじゃないのかなと考えております。物価は動くものです。物価が動けば、それに合わせて基礎控除の額も変わっていくというふうな考えもあるのではないかと考えており、この考えは諸外国でも導入されておりますし、日本でも、基礎控除にインフレ調整をする仕組みというのをそもそも導入すればよいのではないかと考えておりますが、総理の見解をお伺いいたします。

石破内閣総理大臣 物価連動して控除額を調整する仕組み、インフレ調整制度ということでしょうか、そのような御提案でございます。

 日本におきましては、基礎控除等から構成されております所得税の課税最低限は、生計費の観点、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めまして検討して定められているものでございます。これまでも、生計費に影響を与えます物価は、控除額を決定する際の勘案要素としてまいりましたが、単純に物価のみに連動させるという考え方は取ってきておりません。総合的に判断をしておるのは、委員御案内のとおりでございます。

 与党の案につきましては政府からあれこれ申し上げませんが、先週提出されました自民党、公明党の修正案におきましては、源泉徴収義務者への影響も勘案しつつ、物価の上昇等を踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げることとし、所得税の抜本的な改革において具体案を検討する、このようにされておるわけでございます。

 私どもといたしまして、国会での御議論も踏まえまして、判断を適切にいたしてまいりたいと考えております。

萩原委員 考えを一定お示しいただきました。

 基礎控除に関して、もろもろ総合的に考えて、物価というのはその一つの要素だよということだとは思いますけれども、それをどういう設定をするのか、仕組みをどうつくっていくかというところ次第だと思っておりますので、今後、基礎控除の検討も含めて真摯に検討が続いていくものと理解しておりますので、その手法についても、基礎控除へのインフレ調整についても、一定、合理的な仕組みも構築可能だと考えておりますので、是非導入を御検討いただくことをお願いしたいと思います。

 あと、この壁の問題に関して最後の質問にはなるんですけれども、今回、百七十八万円までの引上げには結果として至りませんでした。繰り返しになりますが、日本維新の会としては、国民の皆様の手取り、これを増やすことを進めていくために、今回は自民、公明案に賛成をいたします。ただ、今回の措置で十分とは考えておらず、今後の協議で更なる引上げを図っていく必要があると考えておりますが、昨日の幹事長間の合意文書では、誠実に対応するということでしたが、総理としては、今後の方向性を再度お示しいただければと思います。よろしくお願いします。

石破内閣総理大臣 私どもといたしまして、与党の修正案が、課税最低限を百六十万円まで引き上げた上で、物価上昇局面における税負担の調整について、所得税の抜本的な改革において具体案を検討する旨、法律の附則に明記されているというふうに承知をいたしておるところでございます。

 与党といたしましては、いわゆる百三万円の壁への対応について、引き続き真摯に政党間協議を行っていくというような方針でございまして、私どもとして、三党の信頼関係というものは大事にしてまいりたいと思っております。

 今後とも、そういうような意識にそごがないように、そして、よりよい結論が得られますように、私どもとして誠実、真摯に対応させていただきます。

萩原委員 誠実に対応していただけるということで、是非よろしくお願いいたします。

 質問のもう一点、ガソリンの減税の話をさせていただきます。

 今回のガソリンの当分の間税率の廃止に関しましては、我が党としては、直近では令和四年四月に法案提出をさせていただいており、また、継続してマニフェストに、廃止の必要性、これを掲げて訴えさせていただいており、当分の間税率の廃止についてはどこよりも強い気持ちを持っております。

 ただ、今回の立憲民主党そして国民民主党さんの共同提案の中で、二〇二五年、本年四月一日から廃止するという法案については、施行日まで一か月を切ったタイミング、そして、一日も審査をせず修正案を上げるというのは現実的には対応が難しく、断腸の思いで今回は反対させていただくことになりました。

 なお、ただ、我々日本維新の会としては、ガソリン減税に関しては、令和八年度からの当分の間税率を廃止すべく、昨日、法案提出をさせていただいております。

 昨日の追加の三党合意では、口頭での合意にとどまったとは聞いておるんですけれども、自公維だけでなく、立憲民主党さん、国民民主党さんも含めて五党で是非、七年度限りでのガソリン税率の廃止について取り組んでいきたいと考えておりますが、首相の、ガソリン減税、当分の間税率廃止に関する意気込みがございましたら、お聞かせいただければと思います。

石破内閣総理大臣 これは予算委員会でもお答えをしたことでございますが、廃止ということは決まっているわけで、時期をどうするかでございます。

 ガソリン税というのは、特定財源ではございませんが、原因者負担あるいは受益者負担ということを考えましたときに、これが、インフラの整備、維持管理、こういうものを含めました歳出に係るものでありますことは多くの方がお認めをいただけることだろうというふうに思っております。そういたしますと、国、地方合わせまして一・五兆円の恒久的な税収減、これにどう対応するかということについて、いつかは見つけられるだろうみたいなことではなくて、いつということは申し上げませんが、期限というものを設けて、それまでに本当に徹底的に深い議論を行っていくということも一つのやり方だというふうに思っております。

 私どもとしても、それは減税もすべきだろう、特に地方において負担の多い、そういう方々に対する配慮は必要だということはよく承知をいたしておるところでございます。ただ、ガソリン税が持っております受益者負担、原因者負担ということをどのように考えるかということについて、更なる御議論を三党、五党、これが何党になるか私は予断を持って申し上げませんが、そこにおいて御議論を賜りたいと思っておるところでございます。

萩原委員 いろいろ課題があることは存じ上げておりますが、やはり今回、本年の四月一日からというのは無理があると考えておりますけれども、来年四月一日という意味では十分に対応可能だと考えておりますので、是非真摯に議論したいと思っておりますので、是非真摯な対応をお願いして、時間も来ておりますので、私からの質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、岸田光広君。

岸田(光)委員 国民民主党の岸田光広でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 それでは、時間も限られておりますので、早速、質問させていただきます。

 本日は、税の三原則、公平、中立、簡素の観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、公平性の観点から質疑をしたいと思います。

 政府当初の百二十三万円に引き上げるという案は、引上げ幅は百七十八万円を目指すという私ども国民民主党と自民党、公明党さんとの三党合意からはかけ離れてはいましたが、基礎控除と給与所得控除を一律に十万円上げるというものでした。

 基礎控除はそもそも、最低限の生活費には税金をかけないという考え方に基づくものだと我々は理解しております。それを所得別に四段階の差をつけて複雑化させることの目的、また年収二百万円超は恒久減税とはしない理由、これをお伺いしたいと思います。また、この恒久減税、今後動かしていくようなこと、このレンジでですね、あるのか、お聞かせいただきたいと思います。

石破内閣総理大臣 与党案について政府として見解を申し上げることはいたしませんが、その上で申し上げますと、与党案は、低所得者層の税負担に対して配慮する、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、給与収入二百万円から八百五十万円相当の中所得者層の方々を含めて税負担を軽減する、このような観点から、所得税の基礎控除の特例、これを創設するものであって、高所得者優遇とならないように、そして、政府案と修正案を併せまして、それぞれの収入階層での減税額を平準化するという意味において、冒頭御指摘になりました公平性の確保を図るということであったと承知をいたしておるところでございます。

 このうち二百万円相当超の方に対します措置につきましては、デフレからの脱却局面における経済対策としての位置づけでございますので、期限付の措置とされたものというふうに承知をしておるところでございます。

岸田(光)委員 そもそも、令和二年の申告から、所得税が、二千四百万超の所得税では段階的に基礎控除の方が減額されて、二千五百万円を超えると適用が受けられなくなったこと、これは我々国民民主党はおかしいというふうに考えております。

 先ほども基礎控除についての考え方のお話があったんですけれども、当然、先ほどおっしゃったように低所得者層への対応は必要と考えますが、基礎控除はあまねく全所得者層に適用されるものだと我々は考えておりますし、自民、公明党さんの案では、現在、物価高騰で苦しい生活を強いられている中間層、現役世代に対する減税額が足りないと考えております。

 次に、中立性についてお伺いします。

 租税は民間の経済活動をできるだけ阻害しないようにするべきだというのが税の中立性だと思いますが、税金を取り過ぎて国民の生産力、消費、貯蓄を下げてしまうような租税は好ましくないと思います。近年では、税収額が上振れする状況が続いております。二〇二三年度の税収上振れ額は二・五兆円あったと思いますが、この点についてどのように考えているのか、また、この案により、労働供給の阻害要因、これを解消できると考えているのか、その点についてお聞かせください。

石破内閣総理大臣 税収が過去最高でございますので、それを捉まえて税金取り過ぎというような御指摘があることは承知をいたしておりますが、私は、税収が最高だからといって取り過ぎだというふうには認識をいたしておりません。

 令和七年度の国の歳出は、給与改善、物価動向の反映などを行いつつでございますが、百十五・五兆というふうに過去最高になっておるわけでございます。結果といたしまして、過去最高と見込まれる税収を歳出に充てましてもなお、赤字公債を含めて二十八・六兆円という新規国債を発行しておるわけでございまして、国の債務残高は一千百二十九兆円、GDP比一七九%ということになっておるわけでございます。

 したがいまして、これは税の取り過ぎというよりも、やはり、なぜこのような債務残高が積み重なってきたのかということは、私どもとして、自分たちに対する反省も含めまして、よく分析をしていかねばならないと思っておるところでございます。

 私は、これがどんどん減りさえすればいいと考えておるわけではございませんが、危機管理という観点から考えましたときに、財政の機動力が決定的に失われるということは、決して好ましいことだと考えてはおりません。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 総理からも、今、債務残高が積み上がってきた理由についてしっかりと分析するという言葉もいただきました。

 次に、税の簡素性の観点から質問します。

 今回の修正案は、累進税率、これにまた累進構造を持たせるもので、納税者が自分の税額を容易に計算できません。税理士もこのような複雑な制度は計算にかなり手間取るというふうに聞いています。複雑な累進構造は勤労意欲また事業意欲を損ないかねないと考えますが、いかがでしょうか。また、この制度導入による過度な人的コスト、システム改修などの負担がかかるような、このような税制は導入すべきではないと思います。お考えをお聞かせください。

石破内閣総理大臣 今回の措置は、税負担軽減効果の平準化という観点で、公平性を確保する、そういう趣旨でまとめられたのではないかと思っております。

 政府としてあれこれ余り申し上げるべきではございませんが、御指摘のとおり、基礎控除を始めといたします所得税制の見直しに当たりましては、源泉徴収義務者の事務に与える影響に配慮する必要があると考えております。

 今回の修正案におきましては、できるだけ早く低所得者層、中所得者層の税負担を軽減する観点から令和七年分所得から適用することとしつつ、給与に係る源泉徴収に対して、基礎控除の特例部分には年末調整時のみの対応とすることにより、源泉徴収義務者の事務負担に配慮しているというふうに聞いておるところでございます。

 いずれにいたしましても、かなり複雑で、専門家でないと分からない、専門家でもよく分からぬというようなことは、改善の余地があれば見直していく必要があると思っております。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 このような納税における負担というのは、付加価値を生まないものでございます。私も、企業で会計に携わってまいりましたので、実際、実務を考慮していない制度に非常に困った経験も多々あります。複雑な税制は導入すべきではないということを改めて申し上げさせていただきます。

 次に、公平性の観点から首相にお伺いします。

 この委員会でも取り上げさせていただいたんですけれども、単身赴任者が自宅に帰省する交通費、これが、実費精算をしているにもかかわらず課税所得に含まれて税額が上がってしまう、その結果、手取りがマイナスになってしまうという事実があります。

 私は、この制度は合理的ではないというふうに考えて取り上げさせていただいたんですけれども、政府答弁では、対象者が少ないから公平性の観点からは課税するんだというような答弁がありました。少数であれば切り捨ててもいいのかというのは、私は公平性の観点から考え方がおかしいと思いますが、総理、どのように考えますか。

石破内閣総理大臣 単身赴任者の交通費についてでございます。

 御指摘のとおり、これは給与として課税されることになっておるわけでありますが、なぜかといえば、出張旅費や通勤手当は非課税でございますが、単身赴任者の交通費は、職務の遂行に直接必要な経費とは言えません。配偶者手当や扶養手当などと同様に、単身赴任をすることに伴う追加的な手当であって、給与の性格を有する、あくまで単身赴任者のみに支払われるものであり、通勤手当のように幅広く支給されているものではないということを踏まえておると聞いております。

 単身赴任者の交通費を非課税にすることは、公平性の観点から慎重に判断すべきというのが政府の立場でございますが、今言って、何のことだか分かる人は余りいないんだろうなというふうに思っております。

 公平性という観点の御指摘でございますから、出張旅費、通勤手当は非課税でございますが、これがなぜ違うのか……

井林委員長 答弁は極めて簡潔にお願い申し上げます。

石破内閣総理大臣 なぜ公平なのかということについては、更にお教えを賜りながら議論してまいりたいと思っております。

岸田(光)委員 総理、これは実費精算で帰省の旅費は払っているものです。公平性において、経済力が同等の人に等しい負担を求めるのを水平的公平というと思います。その観点におきましては、同じ仕事をして、給料が同じ人でも……

井林委員長 申合せの時間が来ておりますので、御協力をお願いいたします。

岸田(光)委員 所得税、社会保険料、翌年の住民税、所得制限のある制度が使えない場合があります。明らかに私はこれは水平的公平に反するということを申し上げさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。

 与党の修正案についてお伺いをさせていただきます。

 年収の壁の背景には、人口減少、少子高齢社会、人手不足時代において企業がどう存続していくのか、働き方をどう変革すべきかという根源的、構造的な問題があります。

 今回の与党修正案では、基礎控除を上乗せする形で、現下の物価高騰を踏まえ、低所得者層にとどまらず中間層まで恩恵が及ぶよう、年収制限の上限を八百五十万円まで引き上げ、控除額を上乗せいたしました。この結果、納税者の八割強が対象となり、単身給与者の減税額はほとんどの収入階層で約二万円、共働き世帯では約四万円となり、均衡が取れたものとなりました。

 残念ながら、今回は国民民主党さんとの最終的な合意には至りませんでしたが、公明党といたしましては、当初から訴えてまいりました、物価高に苦しむ幅広い所得層を対象としつつ、高所得者優遇とならないよう収入階層ごとに平準化を図るべきという思いを具体化できたと思っております。

 四月から新年度が始まる中、国民生活に直結する予算案を年度内に通すことは国会として重大な責務であります。今回の与党修正案は、こうした国民の生活に直結する国の予算や地方公共団体の影響を考えてのぎりぎりの判断だったかと思っております。

 そこで、政府案では基礎控除を二十万円引き上げて百二十三万円とした背景には物価上昇への配慮があるとされておりますが、今回、百六十万円に引き上げた理由につきまして、国民の皆様への丁寧な御説明を与党修正案提出者にお伺いをさせていただきます。

赤羽委員 まず、昨年年末の税調におきまして、一九九五年から現在に至って、食費ですとか家賃などの基礎的支出の物価指数が二〇・一%上がっているということに着目をし、課税最低限の百三万円を、給与所得控除十万円、また基礎控除十万円を引き上げて、百二十三万円とさせていただいたわけでございます。

 その後、国会におきましての質疑ですとか政党間協議などを踏まえながら、課税最低限が最低生活費のレベルに食い込んでいるのは改善すべきではないか等々、様々な御意見がありまして、今般、与党修正案といたしましては、まず、低所得者層の税負担に対しまして配慮する観点と、また、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえて中間所得層を含めて税負担を軽減する、その二つの観点から、所得税の基礎控除の特例を創設することを提案させていただいているところでございます。

 具体的には、まず、低所得者層の税負担に対して配慮するという一つ目の観点では、最低賃金の水準で暮らされている、いわゆる給与収入二百万円相当以下の者に対しましては、これは、生活保護水準で最も高い東京都二十三区の水準を超える水準として、百六十万円を課税最低限とするとしております。これは、基礎控除の特例として三十七万円を恒久的に上乗せをするということになっております。

 また、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況下の中で、物価上昇局面において幅広い収入階層の世帯についても家計負担が増加しているということに鑑み、これは二つ目の柱でございますが、給与収入二百万円相当を超えるところから八百五十万円相当以下に対しまして、令和七年及び令和八年の間、基礎控除の特例として上乗せ措置を設けることとしたものでございます。

 この八百五十万円というのは、納税者五千六百万人のうち四千六百万人、約八割強をカバーする案でございまして、これはほぼ中間層を網羅されているというふうに思いますし、他方で、所得控除制度は高所得者ほど大きな恩恵を受ける、そういう制度になっておりますので、こうした概念を、最低生活費云々という概念を全ての納税者に与えるということは、これは逆に高所得者に対する優遇措置が過ぎるのではないかという批判も考えて、こうしたものでございます。

 また、高所得者優遇とならぬように、先ほど委員の質問にもありましたが、政府案と修正案を併せて、それぞれの収入階層においての減税額が平準化されるように工夫もされているということでございます。

 以上でございます。

中川(宏)委員 中間層も含めて幅広く国民の家計を支えていく仕組みになったということは非常に大きな意味があるというふうに申し上げまして、終わりにします。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 れいわ新選組の高井崇志でございます。

 総理、お聞きします。

 今、全国各地で、財務省解体デモというのが盛んに行われています。財務省前でも千人ぐらいの人が集まって、日増しにその声は大きくなって、全国でも、大阪、愛知、福岡、香川、新潟の財務局、今度福井でもやるとちょっと小耳に挟みました。恐らく全国でどんどん広がっていくと思いますが、総理はこの動き、国民の声をどのように受け止めていますか。

石破内閣総理大臣 そのようなデモが行われていることは承知をいたしております。

 そのように、国民の皆様方の御不満、お怒りというものがそういう形で体現されているということを私どもは等閑視すべきではないのであって、御理解をいただくべく更なる努力をしていく、いかねばならないと考えております。

高井委員 この声は、本当にやはり国民生活は苦しいわけです、三十年間不況が続き、そして、コロナが来て、物価高、本当に生きていくのも大変だ、そういった中で政府はなかなか減税の話をしてくれない、してもしょぼい、そういう声。そして、むしろ増税に向かっている。そして、財務省が財政健全化ばかりを言う、緊縮財政という考えですね、積極財政にいかない、こういったところに大きな不満があるわけです。

 そして、財務省解体という、これはかなり過激な言葉でありますけれども、声を聞くと、一つは、やはり財務省の権限が強過ぎると。まずは、徴税権まで持っている、予算編成権と徴税権を同じ役所が持っている、これはやはり分離して歳入庁をつくるべきじゃないかという意見。それから、より強いのは、私はここが根幹だと思いますが、やはり予算編成権、ここが財務省に集中をしていると。

 実は、二〇〇九年、民主党政権交代のときに、私もその一員でしたけれども、当時、国家戦略局というのを首相直属でつくって、そして、官民から優秀な人材を集めて、そこが予算編成を担うと。これこそがまさに私は国民が今求めている声だと思いますけれども、総理にそのお考えはありませんか。

石破内閣総理大臣 当時、国家戦略局というのが設けられて議論されたことは、私も政調会長でございましたので。たしか玄葉さんがその担当ではなかったかなというふうに記憶をいたしております。違ったら申し訳ない。いろいろな議論がございました。

 私どもといたしましては、例えば、経済財政諮問会議というのがあって、そこには私も財務大臣も出席をし、骨太の方針というのを決めていくわけでございます。そういうのは今までになかったというか、予定されていなかったものでございますが、そこにおいて、かんかんがくがくの議論が闘わされ、方針が決まり、それを受ける形で予算編成というものを行ってまいるところでございます。今もそうでございます。そういたしますと、そのような首相直轄の組織、これをどういうふうに名前をつけるかは存じませんけれども、そういうものを設ける積極的な意義というものは、私は現時点において乏しいのではないだろうかと思っております。

 予算編成権も徴税権も持っている、確かにそうなのでございますけれども、それは財務省が恣意的に、勝手に予算をつくるということを意味をいたしているものではございませんし、国会の議論、その前に与党の議論等々ございます。そこにおいて財務省が専横を働いておるというふうには認識をしておらないところでございます。

高井委員 初代国家戦略担当大臣は菅大臣なんですね。これをやらなかったということは、私は本当に民主党政権の大失敗だと思っていますが。

 ここは、今申し上げたとおり、やはり財務省に権限が集中していると。それが、この委員会でも、私は、象徴的なんですけれども、主計局長が何とこの委員会で答弁しないんですよ、財務省だけが。事務次官は答弁しないという慣例はあるけれども、主計局長はなぜかこの委員会で答弁しない。これはもう、主計局長は事務次官級だと言っているようなものですよね。こういうこと。

 あるいは、財務省は、例えば内閣府の事務次官、それから環境省の事務次官は財務省出身者です。あるいは、前の復興庁の事務次官もそうでした。あるいは、公取の委員長、それから人事院の事務局長、こういう主要ポストは全部財務省が占めている。こういったことがやはり国民の皆さんの不満にもつながるんだろうというふうに思います。

 例えば、内閣府に、昔、経企庁がありましたよね、そういう経済学の専門家のスタッフがいるわけですから、そういったところと財務省がむしろ一緒になって、あるいは民間からも、あるいは各省庁からも広く人材を登用して予算編成をやるべきだと私は思います。

 ただ、これは財務省だけを私は責めてもいけないと思うんですね。財務省は自分たちの任務のために一生懸命やっているんですよ。彼らは、財務省設置法で、第三条で、健全な財政の確保と、真っ先に書いてあるわけですよ。予算編成において一番大事なのは日本経済の発展ですよ、あるいは国民生活の向上ですよ。こういったことは財務省設置法には書いていないです。この間、財務大臣に聞いたら、書いていなくても当然やるみたいな答弁でしたけれども、それはおかしいじゃないですか。それをみんなやっていないから設置法に書いてくれと。

 これは政治の責任なんですよ。財務省は自らの任務をやっているけれども、政治が決断をして、財務省設置法を変える、それを財務省にやらせるのが総理の仕事だと思いますが、いかがですか。

石破内閣総理大臣 デモが来たり、何か宗教の巣窟みたいに言われたり、なかなか財務省も大変なところでございますが。

 それは、設置法に、高井委員がおっしゃるように、日本経済の発展、国民生活の向上、これを加えることは別に悪いことだと思っておりませんが、それは財務大臣が多分答弁をしたんだと思いますが、そこに書いてなくても財務省はそれを目指して一生懸命やっておるということは、私は間違いのないところなんだと思っております。

 予算と税制、これは徴税というんでしょうか、これが一体である一つの省庁で行われるというのは何も日本に限ったことではございませんで、アメリカにおきましても、イギリスにおきましても、ドイツにおきましても、フランスにおきましても、予算と国税、企画立案、執行を含むものでございますが、これは一つの官庁で行われているものでございまして、日本だけが特有の運営をしているわけではございません。

高井委員 国民の思いと財務省の考えている方針が違うから、国民の皆さんは怒ってデモをやるんです。それを正すのは政治の役割だということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、田村智子君。

田村(智)委員 たばこ税、法人税の増税は、防衛予算、軍事費の増額に充てることを目的としています。我が党は、安保三文書に基づく大軍拡に反対です。

 時間がありませんので、財政上の問題に絞ってお聞きします。

 二〇二六年度からの法人税の四%付与、また、たばこ税の段階的な引上げ、これでは、二〇二七年度までの五年間で四十三兆円というこの大軍拡の財源には全く足りないものになります。

 総理、これは更なる増税が不可欠になるということではないのでしょうか。

石破内閣総理大臣 この安定財源の約四分の三は、国民の皆様方の御負担を抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保などあらゆる工夫をやってまいりますが、それでも約四分の一が足りませんので、これにつきましては、我々の、将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いしたいと考えております。法人税、たばこ税の措置、あるいは歳出改革等に加えまして、所得税につきましても、先ほど御紹介があったとおりでございます。

 現時点におきまして、四十三兆円規模の防衛力整備を確保するとしておりますのが令和九年度まででございますが、それまでに、五年度大綱等で定められたこれまでの枠組みを超える追加的な税制措置が必要だとは考えておりません。

田村(智)委員 今、二〇二七年度までについては税制上の措置は必要ではないと考えているという答弁でした。しかし、総理は、二月の日米首脳会談で、二〇二七年度の後も抜本的に防衛力を強化するということをトランプ大統領と約束をしました。

 これは予算委員会で志位議長が質問いたしましたけれども、閣議決定でもこんなことは決めていないんですね。そうすると、二七年度以降も更なる軍拡、一体どこにその財源を見出すつもりなんでしょうか。

石破内閣総理大臣 私、気をつけて物を言っているつもりでございまして、防衛力を強化するとは申し上げました。防衛費を増やすというふうには明確には申し上げておりません。そこは、国会の御審議もございます。あるいは、委員御指摘のように、閣議決定というものも民主主義的なプロセスとして経なければならないところでございます。ですから、金額について私は申し上げてはおりません。

 防衛力というものは金額だけを含むものではございませんので、法律もあれば運用もあれば編成もございますので、何も金額のことだけ申し上げているわけではございません。

田村(智)委員 これまでは、二〇二七年度までの五年間で集中的に防衛予算、軍事費を増やしていって、そこからは維持をするということがずっと説明されていたわけですよ。抜本的強化と維持というのは全く違うわけで、それを、財源の確保を全く考えないと。そして、その中身を見てみれば、長射程ミサイルですから、外国を攻撃するミサイルですから、これは憲法も財源もお構いなしというところに突き進む大軍拡になるということを指摘せざるを得ません。

 私は、トランプ大統領と約束してきてどんどんこういう大軍拡が進んでいく、これは日米同盟絶対の考え方の下で進んでいると思います。それでいいのかということをちょっと問いたいんですね。

 トランプ大統領は、ガザ地区をアメリカが所有すると言い、そして、ウクライナに関わっても、ロシアが国連憲章違反の侵略戦争を行っているという前提を欠いて、ロシアとのディール、取引で、不公平な和平をウクライナに押しつけようとしています。

 総理に端的にお聞きしたい。

 二〇二二年二月にロシアのウクライナ侵攻が始まった直後、私も岸田首相に参議院の予算委員会で質問いたしました。そのときに、ロシアの行為は国連憲章の重大な違反で侵略であると岸田首相は当然明言しました。確認します。石破総理も、ロシアが今行っている行為は国連憲章の重大な違反で侵略であると明言できますね。

石破内閣総理大臣 そのとおりでございます。

田村(智)委員 そのとおりだと言うのなら、今、ロシアを擁護しているんですよ、アメリカのトランプ大統領は。そして、ゼレンスキー大統領の方を独裁者と呼んでいるわけですよ。このトランプ大統領に対して、それは駄目だ、国連憲章違反をしているのはロシアなんだということをやはり言うべきだと思いますよ。

 そして、国連では何度も決議が上がっているんです、国連憲章違反のロシアがウクライナから撤退をすべきだと。その立場での公平な和平が必要なんだよ、こうやってトランプ大統領に私は物を言うべきだと思う。アメリカの側につくのではない、ゼレンスキーの側に立つのでもないとか、こんな言い方では駄目だと思うんですよ。いかがですか、総理。

石破内閣総理大臣 私が申し上げているのは、G7が結束しないでどうしますかということを申し上げているわけで、G7の中でばらばらに分かれてしまえば、それこそロシアを利することにほかならないということでございます。国連憲章違反の侵略的行為であるということは、かねてから申し上げているところでございます。

 今必要なことは、G7が内輪もめしている場合ではない、その中でどうして結束を図るかということにおいて、私どもは果たすべき役割を果たしたいと思っておるところでございます。

田村(智)委員 これは、外交による公平な和平は絶対必要なんですよ。私たちも、その立場で独自の野党外交もやっています。G7というのなら、ヨーロッパの国々は、ロシアが国連憲章違反を起こしているんだ、この立場で物を言っているじゃありませんか。

 私は、こんなトランプ大統領の顔色をうかがうような外交をやって、そして大軍拡、増税と突き進むような政治では駄目だ、本当に今、政治の抜本的な改革を求めたい、このことを指摘をいたしまして、質問を終わります。

井林委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 これにて原案及び両修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井林委員長 この際、後藤茂之君外二名提出及び階猛君外二名提出の両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。財務大臣加藤勝信君。

加藤国務大臣 まず、自公による税法修正案につきましては、政府としては特に異議はございません。

 また、立憲、国民による税法修正案につきましては、政府といたしましては反対であります。

    ―――――――――――――

井林委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。国光あやの君。

国光委員 私は、自民党、公明党を代表し、政府提出の所得税法等の一部を改正する法律案及び自民党、公明党提案の修正案に対し賛成の立場から、そして、立憲民主党、国民民主党提案の修正案に反対の立場から討論を行います。

 自公修正案及び政府提出法案には、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行に対応し、更に発展していくための税制改正が数多く盛り込まれております。

 第一に、自公修正案で創設される基礎控除の特例は、物価上昇に賃金上昇が追いつかない状況の中、幅広い収入階層の世帯で家計負担が増加していることに鑑みれば、まさに時宜にかなったものでございます。本特例により、納税者の八割強が対象となり、政府提出法案と併せた減税額がおおむね平準化されるよう工夫されております。

 一方で、高所得者優遇とならないような制度設計とすることで、財政規律にも一定の配慮を行っており、中低所得者の皆様方への税負担軽減の観点、公平性の観点、財政規律の観点など、バランスよく配慮したものとなっております。

 第二に、地域の活性なくして日本経済の活性化はないという考え方の下、政府提出法案には、売上高百億円超を目指す成長意欲の高い中小企業の設備投資に対する更なる税制上の措置が盛り込まれており、地域経済の好循環につながるものと強く期待されます。

 一方で、立憲民主党とそして国民民主党の修正案にございます揮発油税等の当分の間税率の廃止については、責任ある経済財政運営という観点から疑問が残るものです。

 別法案で、軽油引取税の当分の間税率の廃止も盛り込んでおられ、国、地方合わせ一・五兆円の恒久的な税収減が生じます。各自治体においては、現在、現行税率に基づく税収を前提とした予算編成、議会審議を行われており、いきなり廃止を決定すれば、地方自治体の大きな混乱は避けられません。

 以上、政府提出の所得税法等改正法案及び自民党、公明党提案の修正案に賛成する理由、並びに立憲民主党、国民民主党提案の修正案に反対する理由を申し述べました。

 議員各位の御賛同を賜りますことをお願い申し上げまして、私の討論とさせていただきます。

 以上です。(拍手)

井林委員長 次に、水沼秀幸君。

水沼委員 立憲民主党の水沼秀幸です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、政府提出の所得税法等の一部を改正する法律案並びに与党提出の修正案に反対、立憲民主党、国民民主党提案の修正案に賛成の立場から討論いたします。

 政府案並びに与党修正案には大きく三つの問題があります。

 第一に、大前提として、税という仕組みは、本来、公平、中立、簡素を旨とする、私たちが様々な立場を乗り越え、一致点を見出し、共に生きるために生み出した人類の英知です。しかし、今回の政府提出案並びに与党修正案は、自身の目先の利益のために理念なき交渉を繰り返した結果、当初の年収の壁を解消するという目的を見失ったどころか、所得税において新たな壁をつくり出すという修正案となりました。このような不公平かつ利己的で複雑怪奇な税制は、将来世代に禍根を残しかねません。撤回すべきです。

 第二に、不合理な税負担が解消されないまま放置されています。

 総額四十三兆円規模の巨額防衛費について、依然として十分な説明がなされないまま、増税が断行されています。さらには、一般財源化されて以降、課税根拠自体が失われているにもかかわらず、当分の間と言いながら五十年も維持され続けているガソリンの暫定税率。物価高に苦しむ国民生活を鑑みれば、このような不合理な税負担は一刻も早く解消すべきです。

 信じられる政治を取り戻すため、私たち立憲民主党並びに国民民主党と共同で、ガソリンの暫定税率廃止に向けた修正案を提出いたしました。財源を示し、各自治体への配慮もした内容です。

 国民の神聖なる負託を得て今日ここに集った野党委員の皆様にお伝えします。現在、少数与党と言われている状況にあって、野党が一致団結すれば、この修正案を可決することができます。この国の主権者たる国民の皆様が望んでいるのは、党としての成果ではなく、納税者としての改善実感です。与党がやらないなら、野党の力でこのガソリンの暫定税率廃止を成し遂げようではありませんか。是非聡明なる御判断を仰ぎたく存じます。

 第三に、自民党の裏金問題により失われた、税に対する信頼を取り戻すための取組が全く行われていないことです。

 石破総理は、企業・団体献金で自民党が政治をゆがめたとは思っていないと述べられていますが、そうであれば、主に企業向けの減税措置である租税特別措置、いわゆる租特が適用された企業の実名を公表すべきではないでしょうか。個別企業の情報が類推されると財務大臣、総理はおっしゃっていますが、現在、企業は、多くの財務情報を自らIR資料によって公表しています。認識をアップデートすべきです。

 また、納税者の権利利益を保護するため、民主党政権時代、自民党の反対により制定が見送られた納税者権利憲章を今こそ制定し、税務行政に対する信頼を取り戻すべきではないでしょうか。

 以上の理由により、政府案並びに与党修正案に反対します。

 引き続き、国民生活に寄り添い、よりよい税制の実現に全力を注いでいくことをお誓い申し上げ、私の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

井林委員長 次に、萩原佳君。

萩原委員 日本維新の会の萩原佳です。

 会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案及び同案に対する与党修正案について賛成の立場から討論をいたします。

 初めに、今回我々は賛成の立場ではございますが、防衛増税に関しては、日本維新の会としては従来から反対の立場であり、全ての改正項目を是とするわけではない点だけ、まずは申し上げさせていただきます。

 その上で、大きく以下五つの理由から賛成をさせていただきます。

 賛成の第一の理由は、一九九五年、平成七年より動いていなかった、いわゆる百三万円の壁を百六十万円まで引き上げ、一・二兆円の所得税減税を行うことを評価するためです。今回の改正案の引上げ幅については不十分であると言わざるを得ませんが、自公維の三党合意で引上げにつき誠実に対応するとされているため、協議をしていきます。

 第二の理由は、大学生の働き控えの解消のためです。大学生のアルバイトでは就業調整が行われていましたが、働き控えをしなくて済む、そのように対応していくとのことですので、賛成いたします。

 第三の理由は、子育て世帯に向けた減税です。住宅ローン控除、住宅リフォーム税制の拡充、生命保険料控除の拡大を行う点を評価しております。

 第四の理由は、外国人向けの免税制度の見直しのためです。外国人旅行者が免税店で商品を購入し、それを横流しするといった不正が横行しているところ、かかる不正への対応を図っていくとのことですので、この点に関しても評価いたします。

 第五の理由は、ガソリン暫定税率撤廃に向けた合意のためです。日本維新の会は、過去より何度もガソリン暫定税率の廃止の法案を提出しており、昨日、令和八年四月一日を施行日とするガソリンの暫定税率の廃止法案を提出させていただきました。立憲民主党及び国民民主党の修正案については、本年四月から一・五兆円もの財源不足が生じることとなり、混乱を来します。来年の実現に向けて、五党の協議で、共に課題と向き合い、対決よりも解決をしていきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 最後になりますが、予算が成立しなければ国民生活に多大な損害を与えるおそれがあります。予算の成立によって国民生活の安定が保たれることを確信しております。

 全ての国民が、あしたは今日よりもきっといい日になる、そう思える日本国に変えていくことをお誓いし、賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

井林委員長 次に、岸田光広君。

岸田(光)委員 国民民主党の岸田光広です。

 私は、国民民主党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案、自民党、公明党提出の修正案については反対、また、立憲民主党、国民民主党提出の修正案については賛成の立場から討論いたします。

 基礎控除は、憲法二十五条の生存権に基づき、最低限の生計費には税金をかけないことが原則だと考えます。そのことで中間層を含めた全ての人に簡素な方法で取り過ぎた税金をお返しする、消費を通じた経済の好循環を生み出し、壁をなくすことにより中立的な働き方ができる労働環境をつくり出す、これらが我が党が訴えさせていただいた百三万円の壁を撤廃しようとした本旨であります。

 政府の当初の百二十三万円に引き上げるという案は、引上げ幅百七十八万円を目指すという三党合意からかけ離れていました。修正案の、所得別引上げ幅に四段階の差をつけ複雑化させることは、壁を壊してまた新たな壁をつくるようなもので、理屈に合わない所得制限をかけることには反対します。物価高対策として、二万円の減税では全く足りません。年収二百万円超の方への減税は二年間の時限措置です。しかしながら、恒久的な見直しでこれは対応すべきことです。今やるべきは、国民の方を向いた、手取りを増やし、経済を回す政策をつくることです。

 以上の理由から、政府提出、所得税法の一部を改正する法律案、自民、公明提出の修正案に反対いたします。

 次に、我が党と立憲民主党が合同で提出した修正案について、賛成の立場から討論します。

 ガソリンの暫定税率は、できてから五十年がたち、二〇〇九年に、リーマン・ショックを受けて、当分の間ということで一般財源化されました。税は、理屈、根拠が重要で、納税者の納得感につながるものです。その意味において、ガソリンの当分の間の税率は既に課税の根拠を失っており、地方財政に影響を与えないように配慮した上で、一刻も早く廃止をすべきです。

 今、物価高で全国の皆様が困っていらっしゃいます。特に地方にお住まいの方々にとって、通勤、買物など車は生活になくてはならない必需品です。また、運送業の皆さん、タクシーの運転手の方々も、ガソリン価格の高騰に苦しんでいます。高いガソリン代が、全ての物の値段、サービスの価格に転嫁され、物価高に拍車をかけており、中小企業、小規模事業者を中心に企業経営を圧迫しています。財政規律を守ることは確かに重要であります。しかし、国民の暮らしを考えたとき、今何が最優先事項かは明白だと申し上げ、私の討論とさせていただきます。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

井林委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 れいわ新選組の高井崇志です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました閣法第一号、所得税法等の一部を改正する法律案原案、自民党、公明党提出の修正案、それから立憲民主党、国民民主党提出の修正案、全てにつきまして反対の立場から討論いたします。

 今回の改正案原案のメインは、少数勢力となった与党が予算案を通すためだけに国民民主党にすり寄り、その要望を取り入れ、いわゆる百三万円の壁を百二十三万円に引き上げようとした政局法案です。百七十八万円への引上げを求める国民民主党が納得せず、自公は、所得制限を設け、百六十万円まで引き上げる修正案を提出しましたが、結局国民民主党の賛同は得られず、高校授業料無償化などで合意した日本維新の会の協力で成立する見込みと言われています。

 失われた三十年の自民党政権による経済失政の尻拭いをこのような小手先だけのやり方でごまかそうとする国民を愚弄する法案に、賛成できるはずがありません。

 我々れいわ新選組は、結党以来、消費税廃止、少なくとも減税、あるいは抜本的な法人税制、所得税制の見直しを訴えてまいりましたが、本案にはそれらが含まれていないばかりか、防衛力強化のための増税ももってのほかです。増える手取りも微々たるもので、効果を考えれば、消費税の廃止、少なくとも減税、そして直間比率の見直しによる応能負担の強化こそが最大の対策であり、複雑な所得制限を設けたつけ焼き刃的な政局法案には断固反対いたします。

 立憲民主党、国民民主党の修正案は、ガソリン暫定税率を廃止するもので、その意味では賛同いたします。ただ、我々れいわ新選組は、ガソリン税そのものの撤廃を掲げており、暫定税率の廃止だけでは不十分と考えます。政府案を前提とする修正案という形ではなく、租税特別措置法の改正という形での暫定税率廃止であれば賛成できると立憲民主党には申し入れましたが、受け入れてもらえず、大変残念であります。

 以上で討論を終わります。

井林委員長 次に、田村智子君。

田村(智)委員 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案に対し反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、政府税調や与党税制改正大綱ですら効果に疑問を呈した大企業優遇税制や法人税減税に対して、全く改善がなされていないことです。

 連結、通算納税や研究開発減税などの大企業優遇税制を積み上げると、二三年度に過去最高の十一・一兆円の減税効果を記録しました。例えば、租税特別措置による減税額も、二三年度には一兆七千三百三十八億円と過去最高額を更新しています。最も減税額の多い研究開発減税は初めて九千億円を超え、中小企業分を除いても八千六百億円もの恩恵が大企業に集中しています。研究開発費を減らしても減税を受けられるなど、大企業へのばらまきそのものです。政府税調でさえも、租税特別措置について、廃止を含めてゼロベースで見直せと要求しましたが、本法案では全く改善されていません。与党税制改正大綱も、この間の法人税減税によって企業収益は拡大したが、国内投資の拡大や賃上げにつながらず、現預金が積み上がり続けたと指摘せざるを得なくなっています。

 大企業は、過去最高の利益を上げ、配当金や役員報酬を増やし、内部留保を積み上げています。このような不公平税制は早急に正し、大企業に応分の負担を求める税制改革が必要です。

 反対する第二の理由は、低所得、中所得層の税負担を軽減するために必要な消費税減税に踏み出していないことです。

 今国会の質疑で、収入階級別の税負担割合を推計すると、中間所得層以下の世帯では所得税よりも消費税負担が圧倒的に重く、消費税の逆進性が強いために、収入八百万円以下の世帯では税負担率の累進性が失われているという実態を明らかにしてきました。生計費に課税しない原則や応能負担原則は、もはや崩壊しています。物価高騰の下で国民生活を守るためにも、消費税減税に踏み出すべきです。

 同時に、一億円以上の収入のある富裕層の所得税負担率が軽くなる一億円の壁の問題も先送りせず、応能負担の税制を取り戻す抜本改正に取り組むことが必要です。

 第三の理由は、安保三文書に基づく五年間で四十三兆円もの大軍拡の財源確保のため、防衛法人特別税を新設し、たばこ税増税と合わせ、約一兆円の増税を盛り込んでいることです。

 憲法違反の敵基地攻撃能力を保有し、南西諸島の基地強化など、大軍拡と日米同盟の強化を進めるため国民に増税を強いるなど許されません。戦争国家づくりの軍拡増税には反対です。

 中小企業の法人税軽減税率の延長など当然の措置もありますが、以上の理由から、本案に対して反対といたします。

 なお、与党の修正案は、低所得、中所得層の減税額が少ないという批判に対する小手先の修正です。その上、収入階層ごとに基礎控除が四段階で変わる複雑な仕組みとなっています。複数の基礎控除が混じることで、控除などで積み上げた最低生活費を除いた所得に課税するという所得税の仕組みの公平性が崩れ、税制の信頼を失うことが懸念されるものであり、反対です。

 立憲民主党と国民民主党の修正案は、食品などの物価高騰の要因となっているガソリン価格を引き下げる内容であり、賛成といたします。

 以上で討論を終わります。

井林委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井林委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、階猛君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井林委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、後藤茂之君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井林委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井林委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

井林委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、大野敬太郎君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。岡田悟君。

岡田(悟)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 物価の高騰に賃金が追いつかない状況下、所得格差と資産格差も拡大しており、最低限の生活保障、税負担の公平性確保や再分配機能を強化する観点から所得税の人的控除等や課税の在り方について検討を行い、その結果をもって必要な改革を実行するよう努めること。

 二 「貯蓄から投資へ」の推進が資本逃避による円安を招くことがないよう、民間企業の賃上げや設備投資等を費用対効果にも十分配慮しながら引き続き支援し、国内企業の生産性を向上することによって企業価値を高め、投資資金が国内企業へ十分に供給されるよう努めること。

 三 揮発油税及び地方揮発油税の「当分の間税率」は廃止に向けた検討を速やかに行うとともに、その廃止に当たっては、流通への影響や関係事業者の事務負担等に配慮するとともに、国及び地方公共団体の財政に悪影響を及ぼすことがないよう、安定的な財源を確保するなど必要な措置を講ずるものとすること。

 四 輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税に関する制度については、いわゆるリファンド方式への変更の効果を見極めるとともに、免税とすることの妥当性について検討を行い、その結果に基づきその縮減その他の必要な措置を講ずるよう努めること。

 五 適格請求書等保存方式(インボイス制度)が実施されたことにより、事業者間取引において不当な扱いが生じているといった意見があることを踏まえ、中小・小規模事業者に対する不当な扱いを防止するための取引環境の整備への取組を強化すること。

 六 金融所得課税について、一定以上の高額所得を有する者の実効税率が低位である問題を解決するため、中低所得者層の金融資産形成に配慮しつつ、課税方法の変更も含めた金融所得課税の在り方について検討を進め、その結果に基づき必要な措置を講ずるよう努めること。

 七 物価上昇局面における税負担調整の一環として、食事の現物支給の場合の非課税限度額引上げに向けた検討を行い、その実現に努めること。

 八 災害による担税力の喪失を勘案し、被災者の負担軽減及び実額控除の機会を拡大する観点から、個人の有する住宅、家財等につき災害により損失が生じた場合における控除の在り方について、当該損失を当該個人の所得から人的控除の後に控除することができる、独立した所得控除の制度の創設等の対応を含め必要な検討を行い、その実現に努めること。

 九 奨学金の返済その他の教育に関する経済的負担を軽減するための税制上の施策について検討を行い、その実現に努めること。

 十 各種の企業関係租税特別措置については、企業等の行動変容を促すインセンティブ措置として機能しているか否か等の観点から、政策効果や必要性をよく見極めた上で、一部の企業等に対する過度の優遇にならないよう、各措置の適用実態のより一層の透明化に向け必要な措置を講ずるよう努めること。

 十一 給与等の支給額が増加した場合の所得税額及び法人税額の特別控除に関する制度については、その効果の検証を継続的に行い、その結果や賃金を巡る状況を踏まえ、同制度の廃止を含む見直しについて検討を進め、必要な措置を講ずるよう努めること。

 十二 相続税及び贈与税について、資産に係る格差が拡大し、固定化している現状に鑑み、再分配機能の適切な確保の観点から、税率構造、非課税措置等の見直しについて検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずるよう努めること。

 十三 税務行政において納税者の権利利益の保護を図り、税務行政に対する国民の信頼醸成や適正を確保するため、納税者権利憲章の策定を含め納税環境整備について検討を行い、その実現に努めること。

 十四 政治資金を巡る問題を踏まえ、税制は国民の理解と信頼の上に成り立っているとの認識の下、国民からの税に対する信頼を損なわないよう、課税上問題があると認められる場合には適時・適切に税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めること。

 十五 高水準で推移する申告件数及び滞納税額、経済取引のデジタル化・グローバル化に伴う調査・徴収事務等の複雑・困難化、新たな経済活動の拡大、インボイス制度の実施への対応、大阪・関西万博開催に伴うインバウンド観光客増大などに対応しての消費税の不正還付事案への厳正な対応など、社会情勢の変化による事務量が増大していることに鑑み、適正かつ公平な賦課及び徴収の実現を図り、国の財政基盤である税の歳入を確保するため、国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払い、従来にも増した税務執行体制の強化に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

井林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井林委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣加藤勝信君。

加藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

井林委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

井林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十四分散会


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