衆議院

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第12号 令和7年3月26日(水曜日)

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令和七年三月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 井林 辰憲君

   理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君

   理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 斎藤アレックス君 理事 田中  健君

      東  国幹君    石田 真敏君

      伊藤 達也君    上田 英俊君

      金子 容三君    田中 和徳君

      土田  慎君    長島 昭久君

      中西 健治君    根本 幸典君

      福原 淳嗣君    古川 禎久君

      牧島かれん君    松本 剛明君

      山本 大地君    岡田  悟君

      海江田万里君    川内 博史君

      階   猛君    末松 義規君

      堤 かなめ君    長谷川嘉一君

      原口 一博君    水沼 秀幸君

      三角 創太君    矢崎堅太郎君

      米山 隆一君    萩原  佳君

      村上 智信君    岸田 光広君

      中川 宏昌君    山口 良治君

      高井 崇志君    田村 智子君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       加藤 勝信君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   財務大臣政務官      東  国幹君

   財務大臣政務官      土田  慎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           永島 勝利君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    窪田  修君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田尻 貴裕君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    飯田 健太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           横山 征成君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   参考人

   (日本銀行理事)     加藤  毅君

   参考人

   (日本銀行理事)     中島 健至君

   参考人

   (日本銀行理事)     神山 一成君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     後藤 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 茂之君     牧島かれん君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     後藤 茂之君

  山口 良治君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 茂之君     牧島かれん君

  赤羽 一嘉君     山口 良治君

同月二十六日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     金子 容三君

  江田 憲司君     堤 かなめ君

  岡田  悟君     米山 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 容三君     山本 大地君

  堤 かなめ君     江田 憲司君

  米山 隆一君     岡田  悟君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 大地君     土田  慎君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

井林委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君、理事加藤毅君、理事中島健至君、理事神山一成君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長伊藤豊君、総務省統計局統計調査部長永島勝利君、財務省主計局次長前田努君、主税局長青木孝徳君、理財局長窪田修君、経済産業省大臣官房審議官田尻貴裕君、中小企業庁次長飯田健太君、国土交通省大臣官房審議官横山征成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井林委員長 去る令和六年六月二十八日及び十二月十三日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁植田和男君。

植田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 まず、最近の経済金融情勢について御説明いたします。

 我が国の景気ですが、一部に弱めの動きも見られますが、緩やかに回復しています。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっています。企業収益が改善傾向にある下で、設備投資は緩やかな増加傾向にあります。雇用・所得環境は緩やかに改善しています。個人消費は、物価上昇の影響などが見られるものの、緩やかな増加基調にあります。先行きは、海外経済が緩やかな成長を続ける下で、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると見ています。

 物価面を見ますと、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続く下で、政府によるエネルギー負担緩和策の縮小もあって、足下は三%程度となっています。先行きですが、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予想され、展望レポートの見通し期間後半には二%の物価安定の目標とおおむね整合的な水準で推移すると考えています。

 先行きのリスク要因を見ますと、各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済、物価動向、資源価格動向、企業の賃金、価格設定行動など、我が国経済、物価をめぐる不確実性は引き続き高い状況です。その下で、金融・為替市場の動向や、その我が国経済、物価への影響を十分注視する必要があると考えています。特に、このところ、企業の賃金、価格設定行動が積極化する下で、過去と比べて為替変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があると考えています。この間、我が国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、我が国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有していると判断しています。

 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行は、先週の金融政策決定会合において、無担保コールレートオーバーナイト物を〇・五%程度で推移するよう促すという金融市場調節方針を維持することを決定しました。先行きについては、経済、物価、金融情勢次第ですが、現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえますと、展望レポートでお示しした経済、物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。なお、国債買入れについては、現在、昨年七月に決定した減額計画に沿って、買入れ額を段階的に減額しています。

 今後とも、日本銀行は、二%の物価安定の目標の下で、その持続的、安定的な実現という観点から、経済、物価、金融情勢に応じて適切に金融政策を運営してまいります。

 ありがとうございました。

井林委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。福原淳嗣君。

福原委員 自由民主党の福原淳嗣であります。

 発言の機会をいただきましたことに、委員長、理事、そして全ての委員の皆様方に心から深く感謝を申し上げます。

 それでは、早速、通告に従いまして質問させていただきたいと思います。

 まず、植田総裁におかれましては、先週の記者会見と私、記憶しておりますが、特に物価高に対して、お米ですね、お米の物価に対して何か対応できることはありますかという記者の問いかけに対して、ありませんというやり取りがありまして、私は本当に飾らない素直な総裁なんだなというふうに思いました。でも、その後、実は金融政策的にはこういうこともできるんだけれどもそれはしませんというくだりがあって、改めて金融政策の奥の深さというものを実感をさせていただきました。

 今回、私、質問に際して、外交の勉強会で、著名な研究家の方々が、歴史は繰り返さないが韻を踏む、一九三〇年代のそれと今はすごく酷似をしている、極東アジアに国際政治上非常にインパクトがある国が出てくると、その後、西洋とはどうなるのだろうというやり取りがありまして、改めて、戦後八十年の節目の今年、我が国の経済政策を振り返る契機ではないのかなと思っています。

 これまでの八十年を日本の経済政策で見ると、私は大きく二つに分けることができるのだろうというふうに考えています。一つが前半の安定成長期、そして後半の低成長期、いわゆるデフレになります。前半の安定成長期と低成長期の間、移行期にあったのが、私は一九八五年の九月のプラザ合意、その後は瞬間ですが円高不況になりますが、日銀さんが低金利政策をすることであっという間に好景気になり、それがバブル景気につながっていく、そしてそれが崩壊をして今のデフレ、失われた三十年が続くと認識をしております。

 このプラザ合意の短い間ではあったんですが、円高不況の際、私のふるさと秋田でどういうことがあったのか。実は、鉱山が相次いで閉山をしてしまいました。非常に私たちは暗い気持ちになりました、私のふるさと大館は鉱山町でしたので。ただ、そのときに、当時の通商産業省が、リサイクル・マイン・パークで資源リサイクルの基地にしますということを言って、留飲を下げたのを昨日のことのように覚えています。

 そして、低成長期、デフレ、この三十年間、日銀、金融庁、いろいろな政策をしてきたのだというふうに私は考えています。

 実は、先月の十二日、同じこの財務金融委員会で加藤勝信財務大臣に、今の日本の国際収支と我が国の経済構造、産業構造をどう捉えておりますでしょうかという質問をした際に、加藤大臣は、投資が国外に行ってしまっている、国内ではないということをはっきりと答えてくれました。

 こういった加藤勝信大臣の見解をもって総理大臣の施政方針演説を読み解くと、実は総理は、食料自給力、エネルギー自給率が低い、なので、外的な事象に国民生活が大きく影響を受ける懸念がある、より自立した形で国民生活を守ることができるよう、より戦略的な国家運営が必要である、持続可能で自立したことを重視しなければならないというふうに総理は施政方針演説で述べられております。

 改めて、植田総裁にお聞きをしたいと思います。

 プラザ合意以降の日本の経済の流れ、それを受けてのまさに金融政策の運営とその効果について、所見をお伺いしたいと思います。

植田参考人 お答えいたします。

 ちょっと長い期間になりますが、まず、一九八五年九月のいわゆるプラザ合意以降、委員おっしゃいましたように、急速な円高の進行が我が国経済に与える影響が懸念されたわけですが、政府が内需拡大に向けた景気対策を一方で講じたこと、それから、日本銀行は、当時、政策金利でありました公定歩合を二・五%と当時としては異例の低水準まで引き下げ、この水準を一九八九年五月まで据え置いたわけでございます。こうした政策運営の下で、日本経済はバブルの生成とその崩壊という大きな振れを経験することになりました。

 その後、一九九〇年代ですが、バブル崩壊に伴い、資産価格が大幅に下落し、成長期待が下方屈折したわけでございます。これに伴いまして、企業は、過剰債務、過剰設備、過剰雇用の調整を余儀なくされ、行動を慎重化させました。九〇年代後半には、企業の慎重な行動が金融システム不安等を受けて更に強まったほか、グローバル化の進展による新興国からの輸入品との競争の激化などもありまして、我が国経済はデフレに陥ることになったと考えています。

 この中で、私ども日本銀行は、九〇年代後半にかけて利下げを行いました。九九年にはいわゆるゼロ金利政策、そして、二〇〇一年には量的金融緩和政策を導入しました。当時、こうした政策で金融機関に大量の流動性を供給したことは、金融システム不安を軽減させ、景気の更なる悪化を回避するという意味で大きな効果があったと考えております。

 ただ、その後も、二〇〇〇年代後半のグローバル金融危機や東日本大震災など厳しい環境に直面する下で、十分に経済、物価を刺激することができなかったわけでございます。

 こうした下、二〇一三年以降は、大規模な金融緩和や財政刺激策に加え、為替円高の反転といった環境の変化などから需要不足が徐々に解消に向かい、デフレではない状況が実現していったわけです。

 ただし、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方の転換に時間を要したことなどから、二〇一〇年代の物価上昇率は、私どもの目標二%を下回る状況が続きました。

 二〇二〇年代に入ってからは、人手不足感の強まりや輸入物価の大幅上昇、政府による施策もありまして、企業の賃金、価格設定行動にも積極的な動きが見られるようになり、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方も変化してきております。

 こうした中で、私ども、昨年三月に大規模な金融緩和の枠組みを見直し、その後、経済、物価動向を点検しながら、昨年七月、今年の一月と、政策金利を引き上げたところでございます。

福原委員 植田総裁、ありがとうございます。

 実は、そうした流れがあればこそ、実は今、日本というのは、十二日の加藤勝信大臣の言葉をかりれば、お金もある、技術もある、そして人材もある、私は、総理が指摘している、我が国の経済、産業構造の持っている脆弱性をより強靱化させるために、今こそ国内投資をするべきではないのかという考え方に立って、あと二問だけ質問をさせていただきたいと思います。

 安定成長期を続けていた日本と低成長期を乗り越えた日本で決定的に違うのは、貨幣換算できない新しい価値が経済活動により大きなインパクトを与えていると考えています。

 ここで、私は二つ質問しますが、まずは一つ、一点目が、脱炭素、CO2の削減であります。

 実は私、そういう意味において、昨年の年末に政府が発表しました脱炭素成長型経済構造移行推進戦略、グリーントランスフォーメーション二〇四〇ビジョン、GX二〇四〇ビジョンに非常に注目をしています。エネルギーの安定供給、電力の安定供給を通じた経済競争力の向上と併せて、脱炭素、この三本の柱を実現するという名目の下で、例えば、GX推進法改正案が今国会に提出をされています。排出量取引制度も始まろうとしています。日本を代表する三百社あるいは四百社、そういった企業が参画をする。これまでにない価値が経済を動かそうとしています。あわせて、資源有効利用促進法改正案を出されています。

 先ほど、私、冒頭なぜ地元の鉱山の話をしたかというと、あの苦しい中残った鉱山が今、世界中の鉱山とつながって、経済安全保障上非常に重要な鉱物、レアメタルを産出している、そうした中で、是非、DXを実現するためにGXは必要です。こういった流れに対し、民間企業のGX投資を後押しするという観点から政府あるいは日銀ではどのような取組を行っているのだろうかということを、是非、経産省含め日銀さんも、政府参考人の方にお伺いをしたいと思います。

加藤参考人 お答えいたします。

 日本銀行でございますけれども、日本銀行の使命は物価の安定と金融システムの安定でございますが、そうした観点からも、気候変動対応というのは非常に重要なものというふうに考えております。

 そうした意識から、我々は、気候変動対応オペというものを導入しておりまして、これで、民間金融機関が自らの判断により取り組む気候変動対応に資する投融資をバックファイナンスしているところでございまして、このオペを利用する金融機関には国際的な基準に沿った一定の開示も求めることで規律づけをしっかり図る仕組みとしております。

 これまでの利用実績を見ましても、貸付残高は増加しておりますし、貸付対象先にも着実に広がりが見られている、そういう状況でございます。

田尻政府参考人 お答え申し上げます。

 GXを進める上では、委員御指摘の産業競争力強化と脱炭素を両立するような国内投資の拡大が不可欠でございます。

 足下におきまして、政府は、二十兆円規模の先行投資支援を開始しておりまして、地域への波及効果も大きい投資を喚起をしていきたいと思っているところでございます。そのためには、設備投資などへの支援策と制度的な措置を一体に進めて、脱炭素投資の結果、生み出されるGX製品が競争力を持つGX市場の創出に取り組むことで、GX投資の収益性に関する予見性を高める必要があると考えてございます。

 御指摘がございました、先月閣議決定をしたGXの推進法及び資源有効利用促進法の改正案におきましては、国内投資を促す制度的な措置といたしまして、排出量取引制度の具体化や循環経済を進めるための再生材の利用の加速などに係る制度的措置を講じることとしてございます。

 具体的には、排出量取引制度によりカーボンプライシングを導入することで企業の脱炭素投資に向けた予見可能性を高め、また、再生材の需要を喚起する制度を導入することで再生材生産への投資が促進されるというような効果が見込まれるところでございます。

 こうした取組も通じまして、地域にも裨益するようなGXの国内投資を加速してまいりたいと考えているところでございます。

福原委員 ありがとうございました。

 最後の質問となります。

 我が国が持っている経済構造の脆弱性をより強靱化するための投資として私が今着目しているのは、防災、減災に資する投資、いわゆるレジリエンス投資であります。

 災害大国日本はマイナスのイメージを持たれがちですが、実は、災害大国だからこそ対応できることに関してしっかりと答えを持つことで、日本モデルを輸入しようという流れは出てくると私は思います。今日本に来ているブラジルのルーラ大統領も、全くそういうふうな考えを持っています。

 この点において、頻発化、激甚化する災害に対する防災庁の設置の準備が進んでいます。防災、減災に資する投資、企業や地方公共団体がこのレジリエンス投資を行う際、金融機関が投融資を通じてバックアップすることが求められていると考えています。このことに関しまして日銀あるいは金融庁としてどのようなサポートができるのか、是非教えていただきたいと思います。

神山参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、企業や地方公共団体による防災、減災に関する投資や、こうした投資に関する金融機関による資金面やコンサルティング面でのサポートは重要であり、日本銀行としては、考査やモニタリングを通じて金融機関によるサポートの状況をフォローするとともに、リスク管理体制についても確認しております。

 なお、災害発生時には、日本銀行は、金融庁、財務局と連名で、被災地の金融機関等に対し、預金通帳がなくとも払戻しに応じるような、被災者の被災状況に応じてきめ細かく弾力的、迅速な対応をするよう、金融上の措置を要請しております。

 こうした対応を通じまして、金融システム、決済システムの安定確保に万全を期してまいりたいと考えております。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、災害対応におきましては、地域銀行を始めとする金融機関が投融資を通じて企業や地方公共団体をバックアップすることが重要でございまして、幾つか既に行われている取組の例を申し上げますけれども、例えば、防災対策に必要な資金を優遇金利で融資する、取引先企業に対する業務継続計画策定のサポート、それから災害対応力の強化を目的とした自治体との支援協定の締結といった取組が行われております。

 金融庁といたしましては、引き続き、こうした地域経済、地域社会に資する地域銀行の取組をフォローし、地域銀行における一層の金融仲介機能の発揮を促してまいりたいと思います。

 また、先ほど日本銀行からも御答弁ございましたけれども、災害に当たっては、日本銀行と連携をいたしまして、民間金融機関に、預貯金の柔軟な払戻しを始め、いろいろな被災者、被災企業に寄り添った対応を要請をしているところでございます。

福原委員 ありがとうございました。

 終わります。

井林委員長 次に、海江田万里君。

海江田委員 立憲民主党・無所属の海江田万里です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、日銀総裁にお尋ねしますが、昨年末、十二月ですか、行いました金融政策の多角的レビュー、私もしっかり読ませていただきましたけれども、過去二十五年間の金融政策を検証しているということでございますが、特に、大規模な金融緩和の効果と副作用の評価ということで、概括して言えば、もちろん副作用はあったけれども全体として見ればこれは我が国経済に対してプラスの影響を与えている、こう総括しているわけでございますが、総裁の認識もこれと同じでよろしゅうございますか。

植田参考人 二〇一三年以降の大規模な金融緩和の評価でございますが、為替円高の反転といった外部環境の変化もありまして、経済、物価を一定程度押し上げ、我が国経済がデフレでない状態となることに貢献したというふうには考えてございます。

 ただし、先ほどもちょっと申し上げましたが、期待への働きかけの難しさ等から、導入当初に期待していたほどの効果、つまり、二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に目標を実現するというほどの効果は発揮されず、二〇一〇年代の物価上昇率は二%を下回る状況が続いたわけでございます。また、金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用ももたらしたと判断しています。

 以上を踏まえて評価いたしますと、大規模金融緩和は、一定の副作用はあったものの、現時点においては、全体として見れば、我が国経済に対してプラスの影響をもたらしたと考えております。

 ただし、今後、なお低下した状態にある国債市場の機能度の回復が進まなかったり、あるいは大規模な金融緩和の副作用が遅れて顕在化するなど、マイナスの影響が大きくなる可能性がある点には留意が必要と考えております。

海江田委員 ありがとうございました。

 今、総裁も、現時点においては全体的に見れば我が国経済に対してプラスの影響という。この現時点という言葉、私、本文にもありましたけれども、ひっかかりまして。

 これは政治家もよく使うんですよね。あなたはこれから参議院に立候補しませんねとか都知事に立候補しませんねと、本当はやりたい気持ちがあるんだけれども、そのとき必ず使うのは、現時点ではそんなことは全く考えていませんと。この現時点という言葉が入ったら気をつけなきゃいけないですね。本音と違うことを言っているなと。

 日本語とすれば、これは今総裁もおっしゃいましたけれども、文書で書いた言葉で、先ほど読みましたけれども、「金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用はあったものの、」ここから、「現時点においては、全体としてみれば、」これは日本語としてはおかしいんですよ。副作用はあったものの、全体として見ればと書けば、これはきれいな日本語なんです。ところが、ここで、現時点においてはと。限定が二回も入るわけですよ。

 これは、実は本心を隠して、本当は心配なんですよ、だけれども、やはりいろいろな立場上、プラスがあったとしか言い切れないから、あえて現時点という言葉を使った、私はそういうふうに解釈しているんですが、いかがですか、総裁。

植田参考人 先ほど正直に申し上げたとおりでございますが、ただ、将来起こり得ることについて注意深くいろいろな可能性を念頭に置いておこうという意味で、今後、副作用が顕現化してくる可能性もあるということを申し上げました。

海江田委員 そこで、大変、多角的レビューですから、一生懸命いろいろな角度からレビューしたということはよく分かるんですが、今日、お手元に二枚の質問資料をお配りをしてございます。それを是非御覧いただきたいんですが。

 これは、超低金利の時代が長く続いたことによって、それぞれの経済主体、とりわけ、家計、それから非金融の法人、そして金融機関、この三つに分けまして、それぞれの、本来金利がどの程度の水準という、いろいろ、二つの例をお示ししてございますが、一つは、やはり金利が高かったときと比べて、これは、よく失われた三十年間と言いますけれども、この失われた三十年に、得失利益、プラス、マイナスどっちが大きかったんだということで調べますと、家計は三百七十五兆円の大幅なマイナスなんですね。もちろん、プラスの面で、住宅ローンの金利なんかが軽くなりますから、それもございますが。それから、非金融法人、これは大幅にプラスになりまして七百十七兆円。それから、金融機関もやはり傷んだんですね。これが二百二十四兆円。こういうデータになります。

 それから、二枚目の方は、これは特にアベノミクスの十二年に限って比べてみる。それから、一番高かったときと比べるのも、それでいいんですけれども、もう少し平均的に取りまして、一九九三年から二〇一二年までの平均値を取って、その平均値と比べてどれだけそれぞれの得失があったかというデータでございますが、これでいきますと、家計がマイナスの八兆円、非金融法人はプラスの百五十七兆円、それから金融機関がマイナスの百二十九兆円。こういう数字になっておる。

 この手法、このデータというのは、これまで、私、三十年近く国会にいますけれども、最初には岩國さんがやったんです。それから、その後、比較的最近ですけれども、御行の出身者であります大塚参議院議員もやはりこの手法をやった。この手法というのは非常に分かりやすいんですよ。

 私は、ひょっとしたら、この多角的レビューの中でこういうデータの取り方をやって、まさにここに、何に問題があるかということが一目瞭然なわけですから、出てくるかなと思ったけれども、残念ながら出てこなかったので、質問主意書を出して政府からこういう数字を求めたということでございますが、この数字を御覧になって、総裁、どういう感想をお持ちでありますか。

植田参考人 委員御指摘のとおり、大規模な金融緩和、あるいはその前から続いていました低金利の環境の下で、家計がネットでは貯蓄超過の主体でございますので、預貯金からの受取利子の減少が住宅ローン等の支払い利子の減少を上回ってきて、ネットの家計の利子所得が下押しされてきたということははっきりした事実であるというふうに思っております。

 ただ、金融緩和の効果としましては、利払いのところ、あるいは受取と支払い利子だけに注目するのではなくて、金融緩和で雇用や所得環境が改善した、あるいは、その背後にある企業活動を含め経済全体に与える影響にどういう点があったかということも踏まえて、含めて評価することが大事かなと思っております。

 先ほどの繰り返しになりますが、大規模な緩和は、実質金利の低下を起点として、資金調達環境や金融資本市場の改善を通じて家計を含めて経済全体にプラスの影響を及ぼし、我が国経済がデフレでない状態になることに貢献したという一定の評価はできるものと考えております。

海江田委員 雇用の問題なども今総裁は指摘されました。私も実は、雇用というのは、雇用との関係、特に失業率等の問題とかは大事だということはかねて主張してきたところでありますが、ただ、日銀の本来の仕事というのは、これはやはり物価の番人で、人々の生活、これを安定させる、金融政策を通してということでございますので、やはり、この金利の状況、それの特質というものをしっかり見極めることが大切なんではないだろうか。

 少し、ここでの、多角的レビューの評価の中で、いろいろなアンケートも取っておられますが、効果に関する実感ということで一番多かったのは、実は、そもそもよかったことを実感していないというのが、これが五割を超えているわけですよ。副作用に関する実感ということでは、預貯金などの受取金利が低下した、これもやはり五割を超えて、ほぼ六割ぐらいあるんですね。やはりここのところはしっかりとこのデータを受け止めて、今後の金融政策に生かしていかなければならないのではないだろうかというふうに私は思っております。

 それからあと、多角的なレビューということでございましたが、私が期待しておりましたのは、実は、政治との関わりでございますね。これも後でお話をしますけれども。ただ、これは恐らく書けなかったんだろうということだろうと思いますけれども、やはりこの政治との関わりということも、多角的なということであれば、記述をしておいた方がよりこの中身が充実をしますし、今後の金融政策を行っていく上での一つの指針になるのではないだろうかと思います。ただ、これについてはお答えはきっとできないでしょうから、あえてお答えを求めることはいたしません。

 そして、もう時間もあっという間に半分過ぎてしまいましたので、先週の金融政策決定会合についてお尋ねをします。

 利上げを見送った、現行のままという判断を行ったわけでございますが、これは私は妥当な判断だと思います。それから、この後、総裁は記者会見、私もあの日銀のユーチューブ、あれは非常にいいですね、見させていただきました。一時間を超える記者会見、丁寧に記者の質問に応じていましたけれども、その中でも出たんですけれども、幾つか改めてお尋ねをしたいことがございます。

 それは、やはり物価の見通しでございますね。特にこれからの物価の見通しでございます。これは、甘いというよりも、国民が感じておる、あるいは生活者が感じています感覚との間のずれといいますか、そごといいますか、これがあると、市場との対話というのは非常に、もちろん一義的に優先させなきゃいけませんけれども、やはり市場の背景には国民がいるわけですから、その国民との間の信頼感を失することになりはしないだろうかということで。

 一番のポイントは、今日もお話、去年の暮れの報告にも書いてございますが、足下、確かに物価高が続いているが、展望レポートの見通し期間、この後半には物価安定の目標とおおむね整合的な水準で推移する、これが公式な見解でありますね。この展望レポートの見通し期間というのは二六年の後半ということだろうと思いますが、果たして本当にそうなるんだろうかということでございまして。

 日銀は、従来、基調的物価水準ということで総合物価指数を使っていますけれども、ただ、当委員会での高井さんの質問だったかな、生鮮食品なんかも入れなきゃいかぬということを言って、入れなきゃいかぬというか、もっと注意しろということを言って指摘、ごめん、櫻井さんでした、櫻井さんの質問。我が党の誇る櫻井さん、理事櫻井さんの指摘で、そういうことを答弁をされました。これは、半歩前進といいますかね、いい判断をしていただいたなということなんですが、二月のこの総合物価指数、せんだって出て、三月は二十八日ですか、出るようでございますが、今日、総務省に来ていただいていますので、二月の物価、改めてお話しください。

永島政府参考人 今御指摘の消費者物価指数、全国の数字でございますが、最新の本年二月の結果で申し上げますと、生鮮食品を除く総合指数で一年前と比べて三・〇%の上昇、それから、総合指数でございますと三・七%の上昇となってございます。

海江田委員 簡単にお答えいただきました。ありがとうございます。

 この三%という数字、あるいは三・七%という数字でございますが、これはまだ減っていないんですよ。表向き減っている数字になっていますけれども、これはガスと電気の料金の、政府の、それが前と比べると少し減少したということはありますけれども、この数字が入っていてこの程度ですから、それがもしなかったという形で、民間の機関がいろいろ計算をしますと、総合指数でも三・〇四になって、これは実は、四か月続いて前の月よりも増えている。増えているということは、物価がそれだけ上昇をしている。

 しかも、この総合物価指数を見ても、目標の二%、日銀が目標とする二%を上回っていたのは、これは二年十一か月、約三年連続なんですよ。おそらく、今度、二十八日に三月のが出れば、三年連続二%を上回っているわけですよね。

 しかも、先ほど来議論になっています円安の問題、この円安の問題というのは、決して一時的な、為替だから上がったり下がったりするという話じゃなくて、今一番問題なのは、やはり構造的な円安。先ほどの、福原さんですか、おっしゃいました、国内投資をやるべきだということですが、トランプさんの圧力に負けてアメリカへの投資をやたら言っている、どことは言いませんけれども、何人もそういうことを言っている。そうすると、よかった、トランプさんを何とかなだめてくれてよかったと言っているけれども、これは日本の国にとっては大変大きなマイナスになるんですよ、はっきり申し上げまして。もうボディーブローが始まっているので。

 そういうことに対するやはり認識なども考えますと、果たして、先ほど来おっしゃっておるような、展望レポートの見通し期間後半には物価安定の目標とおおむね整合的な水準で推移するという根拠、具体的にこういうことがありますからということで、私たちを納得させられるようなお話があれば、是非それを聞きたいと思うんですね。当てずっぽうで言っているんじゃないと思いますが、是非そこは私たちが納得できるような根拠をお示しいただきたいと思います。

植田参考人 私どもの物価見通しでございますが、委員御指摘のように、消費者物価総合、あるいは除く生鮮食品の前年比は、足下、非常に高いわけでございますが、私どもの見通しでは、例えば、除く生鮮は、二〇二五年度に二%台半ばとなった後、二六年度はおおむね二%程度になるという見通しでございます。

 この背景ですけれども、足下の高いインフレ率の大きな原因としまして、これまでの輸入物価上昇の影響がまだ少し続いていることと、最近の食料品価格の上昇の影響が大きいというふうに見ております。これが徐々に今後減衰していくというふうに見ております。

 一方、こうした一時的なコストプッシュ的な価格上昇要因を除いて見た、これを私ども基調的な物価上昇率とよく呼んでおりますが、は、人手不足感が依然として続いている、あるいは高まっている、それから、マクロ的な需給ギャップが少しずつ改善を続けている、さらに、賃金と物価の好循環が引き続き強まっていきそうであるというようなこと、それに伴って中長期的な予想物価上昇率が少しずつ更に上昇していくというようなことから、徐々に高まっていくというふうに見ております。その結果、一時的な食料品価格上昇等のインフレ要因がなくなっても、だんだん基調的な物価上昇率が上がっていって、全体として二%に今後収束していくというふうに見ておるわけでございます。

 ただし、その上で申し上げますと、冒頭でもちょっと申し上げましたが、各国の通商政策の動きやその影響を受けた海外経済、物価動向等、我が国の経済、物価をめぐる不確実性は高い。物価見通しに両サイドにリスクがあるというふうには考えております。

海江田委員 どれを聞いても物価上昇のファクターばかりで、今総裁がおっしゃったのは、輸入物価が少し落ち着いてくるだろう、それからあと食料品の価格が落ち着いていくだろう、こういう話。その意味では、価格が下がるというか落ち着く原因を挙げておりましたけれども、輸入物価というのはまさに円安の問題じゃないですか。それから、それにかてて加えて関税の問題があるじゃないですか、これは。どうして輸入物価が下がるのかということを、一向に分からない、聞いていて。

 それからあと、食料品だって、やはり米は大変大きいですよ。政府が備蓄米を出しましたけれども、これによってまだ下がっていない。来週ぐらいから下がるんじゃないかと言っているけれども、それだって以前と比べるとほぼ倍近く、高値で安定をしてしまっている。

 それから、私は農業をやったことがありませんから分からなかったんですが、農業で一番大切なのは、もみ種。種がなければ、その意味では、増産だってすぐできないんですね、これは。私は何度か田植で苗を植えたことはあるけれども、その前のもみ種がなきゃ全然これは苗もできないわけで、もみ種がちゃんと、これから慌てて増産したところでできるのは二年から先だという話になると、米の値段だって、米が本当に増産されて需給の関係でもって安くなるというのは二年から先ですよ。

 皆さん方が言っておるような展望レポートの見通し期間の後半、来年の後半から物価が下がるということには全然ならないんじゃないですか。いかがですか。

植田参考人 若干先ほどの繰り返しになりますが、まず、輸入物価については、確かに為替レートは百五十円前後で、円安の領域で推移していますが、対前年比という意味で輸入物価を見ますと、上昇率は落ち着いてきている、ゼロ近辺にあるというふうに見ております。

 それから、米を含めました食料品価格ですが、これが絶対水準としてどの程度下がるかというところは非常に不確実だと思いますけれども、上昇率としては落ち着いてくるというふうに見ております。また、生鮮食品のところは、上昇率は既に一旦ピークを打って下がり始めているというふうに見ております。

 こういうような考え方に基づきまして、今上がっているところの一部は一時的な要因であるというふうに先ほど申し上げたところでございます。

海江田委員 対前年比だということはそのとおりでありますけれども、その場合でも、やはり高値でずっと推移をするということ。

 それから、さっき、二%を超えてもう三年続いているというお話もしましたけれども、やはり、そういう中で、二%の物価目標ということが本当はもう意味をなさなくなってしまっているんじゃないだろうかということで、これはまさにアコードの問題で、二〇一三年ですから総裁はもちろん就任の前のお話でありますが、そもそも、これの共同声明のタイトルが、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府、日銀の政策連携についてというタイトルになっていまして、総裁も、もう今の状況はデフレではない、むしろインフレだということは当委員会でも何度もお話がありましたから、そういう認識だろうと思います。ただ、いつデフレになるかも分からないからまだデフレ脱却宣言はできないんだというのが政府の見解でありますけれども。

 デフレ脱却が緊急課題だ、喫緊の課題だということは、今そういう状況じゃありませんから、この二%の見直しについてはどうお考えですか、これは。そういうことを日銀が提起するということはどうですか。

植田参考人 二%の、私どもの目標の見直しの可能性やいかんという御質問だと思いますけれども、私どもは、二%を持続的、安定的に実現するという目標を掲げて政策運営をしておりますが、先ほど来申し上げておりますように、例えば一時的な食品価格上昇等の影響を除いたベースでの基調的な物価上昇率、これが中長期的な持続性のある物価の上昇率を規定していくものだと思いますが、そこはまだ少し二%を下回っているというふうに見ております。したがいまして、二%の目標を持続的、安定的に満足のいく形で実現できるというところにはまだ至っていないという認識でございます。

 そのプロセスの中で目標をもう一度見直すというのは、ちょっとやってはいけないことではないかなというふうに考えております。

海江田委員 政府と日本銀行の政策連携ということですが、項目が一、二、三、四と。前の二つが日銀がやること、後ろの二つが政府がやることですが、日銀はそれなりにやってきたと思いますが、政府は全然やっていないですよね、はっきり言って、この三、四に書いてあるようなことは。革新的研究開発への集中投資だとか、イノベーション基盤の強化だとか、大胆な規制・制度改革、税制の活用、何もやっていないですよ、悪いけれども。だから、そういうことに対してもやはりはっきり日銀は物を言って、そうでなければこのアコードはもう破棄しますよということを言ったっていいんじゃないですか。二%の数値を言い直しができないならね。

 このアコード、今の時点で、アコードというのは必要なときもあります、必要な時期もあります、だけれども、今の時点でこのアコードがなくなって何か不都合がありますか。むしろ、このアコードから、もう終わりにしましょう、一三年で、もう十何年たっているわけだから、状況も大きく変わったんだから、終わりにしましょうと言って、何か不都合がありますか。

植田参考人 私どもは、現時点で共同声明についてコメントすることは、申し訳ありませんが、差し控えさせていただけたらと思います。

 私どもとしましては、繰り返しになりますが、二%の物価安定の目標の下で、それを持続的、安定的に実現するという観点から適切に金融政策を運営してまいりたいと考えております。

海江田委員 それしかお答えできないんだろうと思いますけれども、むしろ、今の時点でアコードがなくなった方が自由に金融政策をやることができるんじゃないだろうかと私は思っています。

 それから、やはり政治との関係を、先ほど冒頭にも言いましたけれども、もう一回見直しをする必要があるのではないだろうかと思います。

 本当に利上げのタイミングそのもので、例えば去年なんかは、ちょうど自民党の総裁選挙があるから今はまずいんじゃないだろうかと、政治家の中にはそういうことを露骨に言う人もいたりして、私はかなり財務金融とか大蔵は長いですけれども、やはり、新しい日銀法を作って、そこで独立ということを。独立性をうたったときと今とは随分違っちゃっているなという思いが強いんですよ。だから、そういう意味で、本当に国民生活に、やはり金融政策を通じて物価の安定を図っていくということが日銀の大きな任務であるということであれば、もう一度原点に立ち返って、特に二十五年でレビューする機会だったんですから、そういうことをやっていただく方がいい、いただかなければいけないんじゃないだろうかと思います。

 それから、実は今日、金融庁をお招きというかお越しいただいて、そして、能登の信金、今度百億円ぐらい、これは報道ですけれども、税金の投入、これを、向こうから申請をしなきゃいけないから、申請を今待っているところだろうと思いますけれども、是非ここは、今度申請をした信金だけじゃなくて、幾つかまた、こういう中小の金融機関がありますし、それから地方銀行もありますけれども、やはり、一年たって、生業がなくなっちゃったわけですから、金融機関はやっていけないわけですよね。だから、それに対してはできるだけ丁寧に、申請制度を取っていますから申請せざるを得ないんでしょう、どうでしょうか、申請した方がいいですよとか、いろいろなアドバイスも含めて、是非そういうことをやっていただきたい。

 もし一言、金融庁、あればおっしゃってください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、先日、二十一日でございますけれども、のと共栄信用金庫が、金融機能強化法の活用、資本の件でございますけれども、検討するという旨を公表しているところでございます。

 これは、能登半島地震、奥能登豪雨といった度重なる災害によって被害を受けた地域の復旧復興と持続的な発展を金融面から支援するために、現状でも十分な自己資本、収益力を有しているけれども、資本を更に充実させて金融仲介機能の強化を図ろうという意図であるというふうに発表がされているところでございます。

 金融庁といたしましては、こうした地域経済の要である地域金融機関の取組、検討についてはしっかりとサポートをさせていただきまして、申請がありましたら真摯に検討をさせていただきたいというふうに考えております。

海江田委員 終わります。ありがとうございました。

井林委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 今ほどの海江田委員からの質問とかぶるところはあるんだと思うんですが、その中で、現時点で基調的物価上昇率が二%に達していないというお話もありましたし、また、通貨及び金融の調節に関する報告書の中でも、基調的な物価上昇率が二%に達している、達していないという議論がなされているんですが、まず私の資料を御覧になっていただきたいんですけれども、資料二のところで、今ほど海江田委員からもお話ありましたが、既に何せ二%を上回ってから三年近くたっておるわけでございます。資料一のところにある展望レポートを見ましても、二〇二五年の物価上昇率の見通しは二・四%、二〇二六年は二・〇%ですから、どこからどう見ても、合計五年間二%を上回るとみんなが予想しているわけなんです。

 これは、基調的物価上昇率、二%に達していませんか。それは改めて総裁のお考えを伺うとともに、ちょっと基調的物価上昇率の定義というものをお伺いしたい。ちょっと、日本語で言っても何か分からないので、基調的物価上昇率を、失礼ながら、英語に訳して、一体、基調って何ですか。ベースラインなのかトレンドなのか、それを併せてお伺いできればと思います。

植田参考人 まず、基調的な物価上昇率は、英語では普通、アンダーライイングインフレーションというふうに皆さん呼ばれていると思います。

 それで、それをどう捉えるかというのはなかなか容易ではないんですけれども、先ほど来ちょっと申し上げていますように、現状、消費者物価の総合は三%台でございますけれども、その中に、これも先ほど御議論がありましたが、食料品価格等、一時的に上がっている要因が含まれてインフレ率が上がっている部分がございます、というふうに我々は見ております。こういうものを、一時的な要因を、まず、抽象的な、簡単な言い方で申し上げれば、差し引いた残りの部分を基調的な物価上昇率というふうに呼んでおります。それが、現状では二%をやや下回っているというふうに見ております。

 見通しとの関連では、一時的な要因を含んだ全体は二をかなり超えているわけですが、一時的ですのでこれはだんだん下がってくる。これに対して基調的な物価上昇率は、二を下回っていますが、賃金、物価の好循環が続いていくという見通しの中で少しずつ上がっていく。見通し期間の後半には両者共に大体二%に収束していく、そういうような見通しを持っております。

米山委員 冒頭から既に矛盾していると思うんですが、アンダーライイングだというのは結構なんですけれども、ほかが一時的ですというのは、それは結構として、そうしますと、アンダーライイングが例えば一・五%で、一時的なものがいろいろ要因が変わるとしましょう。あるときは原油だ、あるときは食料だ、あるときは気候温暖、一時的なものが次々次々とつながっていって、常に、もう二年後までずっと二・五%ぐらいですよ、そういうときには、それじゃ、基調的には一・五%だけれども、かつ、いろいろな一時的なものがずっと続いていくから実は二・五%だというときは、それは、じゃ、二%を達成していないということでいいんですね。そういう見方をしているわけですね。

 というのは、何せ、日銀自体の展望レポートで、二年後まで二%に達していると言っているわけですよ。しかも三年前から続いている。にもかかわらず、これは二%じゃない、アンダーライイングが違うんだと言っているわけで。

 ここは、三年前からずっと、いや、アンダーライイングは分かりませんよ、そんなの見えないから。でも、目に見えるものとしてアンダーライイングに乗ったものはずっと二%を超えていて、しかも二年後まで二%を超えていると言っているのに、いやいや、目に見えないアンダーライイングが違うんだ、目に見えるものは二%上昇していても、それは二%じゃないんだということを今総裁はおっしゃったんですけれども、それでいいんですね。

植田参考人 難しい議論になりますが、基調的な物価が二%という状態は、やや抽象的に申し上げますと、いろいろな、一時的な食料品価格が上昇するというようなことをショックと呼んだとしますと、そういうショックがない状態で経済がずっと推移したときに、そこで実現するような物価上昇率という意味に普通考えていると思います。

米山委員 議論がかみ合わないのでそこは深入りしませんけれども、通常、それが正規分布の真ん中であるなら、トレンドであるなら、そうしたら、いろいろなショックがあったらプラスもマイナスもあるはずなんです。基調的なのが二%だったら、プラスもマイナスもあって、真ん中が大体二%というなら話は分かるんですけれども、違うんですよね。ずっと二%を上回っているのに、それは基調が違うから違うんだとずっとおっしゃられているわけなんです。それは、もはやアコードを私は逸脱していると思いますよね。アコードでおっしゃっているのは、そういう話じゃなくて、消費者物価指数が二%を超えていたら、安定的に超えていたらという話だと思うんですけれども、なぜか見えないアンダーライイングというものが政策目標になっちゃっているんだと思うんです。

 まあ分かりました。じゃ、植田総裁、日銀は見えない数字、見えないアンダーライイングというものを政策目標にしているらしいんですけれども、じゃ、二〇二二年から二〇二四年の三年間、これは過去ですからね、過去データですから、このとき、二〇二一年と比べて物価は八・七%、平均で、一年二・九%上昇し続けているわけなんですが、総裁のおっしゃるアンダーライイング、基調部分の物価上昇率は何%で、ショックによるものは何%なんですか。当然、過去のものですから、それは分析して分かっているはずだと思うんですけれども、お答えください。

加藤参考人 お答えいたします。

 今、委員が先ほどおっしゃっていただきましたように、アンダーライイングインフレーションの部分はなかなか目に見えないというような形のものもございますので、私どもとしまして、基調的な物価上昇というのは、何か一つの、単一の指標というわけではなかなかないのかなと。

 そういう意味では、様々な指標ないしは物価変動の背後にある予想物価上昇率とか賃金上昇率など、それを総合的に判断しながら基調的物価というのを今見ているところでございますが、その中で、例えば、一時的な物価変動の影響を受けにくい指標、変動が少ない品目とか、ないしはサービスのトレンドなどを見ますと、これは大体一%程度になっているというふうに考えておりますし、また、家計や企業、それからエコノミスト等の専門家の予想物価上昇率、そうしたものを合成したようなものということも、緩やかな上昇傾向はたどっているんですけれども、なお二%を下回っているというふうに判断しているところでございます。

米山委員 そうしましたら、じゃ、二〇二二年から二〇二四年の三年間というのは、基調的な物価上昇率は一%で、そのほかは、ずっと三年間、次々次々と偶然なことがあって二・九%になった、そういう趣旨でいいんですね。それはちゃんと具体的にデータをもって示せるんですね。

 今いろいろなことなんと言われましたけれども、そんなのは分からないわけですよ。一体全体、どうやってそれは計算したんですか。その一%の根拠というのを、それはここですから言える範囲というのはあると思いますけれども、それをちょっともう少し具体的に示していただけますか。

加藤参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、今申し上げた、様々な指標というふうに申し上げましたけれども、例えば、CPIの中の低変動品目、変動が少ない品目については、例えば物価を外したもの、それは、二〇二〇年の一―三月ですと〇・三%ぐらいの前年比になり、それが二〇二四年の十から十二月には一%とか、あと、サービスの中のトレンドというものについて見れば、〇・四ないしは一・二というふうな数字で、我々は試算、試算というか、それは中から、統計から出してきている数字でございます。

米山委員 では、通告してあるのでそれを教えてくれればよかったのにとは思いますけれども、詳しい資料を委員会に出していただけますかね。委員長、お取り計らいいただけますでしょうか。これは出せるはずですから。

井林委員長 後刻、理事会で協議いたします。

米山委員 そうしましたら、じゃ、もうそれでやっていけばいいんだと思うんですけれども。じゃ、だったら、その計算方法を、その予想を政策目標にしたらいいんじゃないですか。そんな訳分からないことを言うんだったら、アコードで、物価目標を二%にするんじゃなくて、そのおっしゃる計算のインデックス、要するにインデックスがあるわけですね、物価インデックスを二%にするとおっしゃればいいんだと思うんですよ。なぜそうしないのか、総裁にお伺いします。

植田参考人 基調的な物価上昇率を捉えるに当たって、私ども、様々な計算をしております。十種類、十五種類とか様々な指数をつくって、眺めて、ある種、総合判断をしております。

 ですので、一つの指標を出して、その動きをずっと追い続けて、それでもって基調が十分把握できるというものでは必ずしもない。いろいろな指標を見ていかないといけないし、どの指標にどれくらいのウェートをかけて見るかというのが、少しずつ、場合によっては変化するというような性格のものだと御理解いただけたらと思います。

米山委員 これも矛盾した話でして、常に指標を変えるんだったら、二%という数字を固定する意味はないんですよ。そうでしょう。指標が決まっているから二%という数字も固定する意味があるのであって、常に目分量で指標が変わっていきますと、大体どうなのかなと変えていくんだったら、二%も、それは事実上、二%が目分量で変わっているのと同じなんですよね。だから、日銀のやっていることは、正直、支離滅裂だと思うんです。

 二%と言ういうんだったらきちんと、それなら。だって、KPIじゃないですか。しかも、日本経済を導いていく極めて重要なKPIが、訳分からない数字なわけですよ。今ほど、何か、聞いたら、インデックスだとおっしゃられるけれども、じゃ、そのインデックスを出したらいいですと言ったら、違います、目分量ですと言う。目分量だと言うんだったら、そもそも二%の意味はないでしょうということになるわけで、それは本当に政策の方向性を全く不透明にしていると思うんです。

 是非、私、ちゃんと、真っ当にそのKPIを決めてくださいと。しかも、それは別に今更決める必要はないんです。二年間、二%の物価上昇率が見込まれる、以上ですよ。だって、アコードにそう書いてあるんですから。それが誰にとったって分かりやすいでしょう。しかも、二年間、二%が見込まれる、もう既に実現されており、日銀の展望レポートに見込まれているんです。だから、二%の安定的物価上昇はとっくに、今現在、私はもう満たされていると思います。これはこれ以上押し問答しませんけれども、次に行きますけれども。

 ちなみに、物価安定目標といった場合は、当然ながら、物価を上げる方ばかりではなくて、下げる方、上がり過ぎた物価を下げることも極めて重要だと思いますし、本来、日銀のなすべきことはこちらだと思います。

 資料四を御覧いただきますと、この物価動向を御覧いただきますと、言うまでもなく、物価は非常に上昇しているわけですよ。三%上昇しており、食品全体になりますと、二〇二〇年に比較して三八%も上昇している。安定的物価上昇って何なのという話だと思うんです。安定していないでしょう。どう見たって、安定していないわけですよ。どう見たって、二%をはるかに超えて上回っているじゃないですか。

 植田総裁は、二月十二日の財務金融委員会において、我が党の櫻井周議員の質問に対して、足下の生鮮食品を含む食料品等の値上がりが一時的なものでは必ずしもなく、人々のマインドや期待物価上昇率などに影響を与えるリスクはゼロではない、そうした観点も取り入れて、適切に政策運営していくと御答弁されております。これは、つまり、食料品等の値上がりが継続的なものであり、そのインフレ期待によって消費が低迷する可能性があり、そのような場合には利上げで適切に対処すると。

 なぜか、日銀というものは物価を上げるところになってしまって、物価を下げる方向で安定させることはすっかりお忘れのようなんですけれども、しかし、この御答弁は、ちゃんと、物価が上昇し過ぎて値上がりによって消費が低迷するなら利上げによって適切に対処するという趣旨をおっしゃってくださったんだと思いますが、それでよいのか。そしてまた、ここで懸念を示されている、食品の値上がりが継続的であるとするなら、その原因は何かについて、御見解を伺います。

植田参考人 食品等の値上がりについて、まず、金融政策運営の面からどう捉えるかということですけれども、私が申し上げましたのは、これは、一時的なもの、本当に一時的なものであれば金融政策で反応すべきではない、ただし、一部の食品価格が上がることが、関連する、例えば食料工業製品あるいは外食、そういうものにだんだん波及していく、さらに、それが続くと、ほかの物、サービスも値上げを場合によったらしやすくなるという形で、インフレが経済に広く広がっていくという可能性につながっていくような場合には、場合によっては、それは利上げで対応するということも考えないといけないのかなという趣旨でございます。

 それから、食料品価格等の上昇がなぜ発生したのかという御質問だったと思いますが、それは、最初の原因としては、天候等の外的、自然的な要因の影響が非常に大きかったというふうに思っております。

米山委員 物価上昇には利上げで対処していただくと言っていただけましたので、当たり前なんですけれども、ほっといたしました。それをお忘れなのかと思いましたので。

 食料品の値上がりについても、当初は天候と言っていただいたのも、これはほっとしました。当初は確かに天候でも、その後、インフレはインフレを呼びますので、そういう状態になり得るということも御認識というふうにお伺いさせていただきます。

 翻って、政府の経済政策について伺いたいんですが、赤澤経済財政担当大臣は、本年の一月八日の記者会見、予算委員会などで再三にわたって、日本人にはデフレマインドがしみついている、物価が上昇すると、アメリカでは買い急ぎで消費が増えるが、日本では買い控えで消費が減ると、日本が非常に特異であるというふうに主張しておられております。

 これは、私は非常に違和感を覚えるといいますか。物価が上昇したら、アメリカ人だって、それは買い控えますよ。資料五を御覧いただきますと、実際、トランプ氏の関税政策で物価が上がると予想されておりますので、消費マインドはかつてないほど減って、低下しているという記事が出ているんです。アメリカ人だって、それは、物価が上昇したら買い控えるんです。何もそんな、日本人だけが特殊なわけないんですよ。

 でも、政府は、赤澤大臣はそうおっしゃっておりますので、このある種の日本異質論といいますか、日本人だけが特別に買い控える、物価が上がると買い控えて、他の国民は物価が上がるとひたすら買い急ぐんだという御主張に対して、これは政府共通見解なのか、大臣じゃなくて副大臣でございますけれども、副大臣の御見解を伺います。

斎藤副大臣 米山委員の御質問にお答えいたします。

 赤澤大臣の御発言につきましては、これは、一般論として、日米を含む世界的な物価上昇が続いている中で、米国経済は、二〇二三年後半以降の物価上昇を上回る賃金上昇も相まって、消費を中心とした力強い経済成長が実現されてきた一方、日本経済は、長年にわたるコストカット型の行動様式から脱却し、成長型経済に移行する分岐点にいること等を念頭に、少し長いスパンで御発言されたものと認識をしております。

 政府といたしましては、日本経済の前向きな動きを確かなものとし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現が重要であると考えておりますので、そのために、省力化、デジタル化や成長分野への投資を促進すること等により生産性や付加価値を高め、安定的に賃金や所得が増えていく環境を整えることが必要であると考えておりまして、令和七年度予算案にもそのような施策を盛り込んだところでございます。

米山委員 それなら分かります。今、実は、赤澤大臣の御発言と違うことをおっしゃったんですね。アメリカは、インフレがあったけれども、それ以上に経済が成長して、それ以上に賃金が上がったから消費が上がった。それは当たり前。それはそうですよ。給料が物価より上がったら、それは消費は上がります。それは別に買い急いだんじゃないですよね。給料が増えたから買っただけですよ。何も日本とアメリカは変わらないんです。

 これは、日銀、海外での研究経験もおありの総裁にも聞こうと思いましたけれども、恐らく同じ答えなので、時間も足りないので飛ばさせていただきますけれども、要は、日本人だけ何かデフレマインドがしみついているなんということは、それはないんだと思うんですね。みんな、各国そんなに変わらぬですよ、一定違いはあるとして。

 ところで、加藤デフレ脱却担当大臣、まあ財務大臣ですけれども、国会議事録でも記者会見等でも、デフレマインドという言葉は使っていないんですけれども、やはり、三十年間、賃金や物価は上がらないとの消費者や事業者の意識が定着してしまったことにより、価格転嫁、賃金上昇が阻害され、低賃金、低物価、低成長に象徴される、いわばコストカット経済になっている、これをいかに経済成長に移行できるか、そのためにデフレ脱却ということを申し上げているとおっしゃっております。

 三月二十四日に、三月二十四日ですよ、ほんの、つい先日公表されたファイナンシャル・タイムズでも、日本は現時点でデフレを克服できていないとおっしゃられているわけなんですよ。再びデフレに逆戻りする懸念がなくなるまで克服を宣言すべきでないとおっしゃっているんですが、今般、報告書十三ページ、図表十五に示すとおり、市場参加者やエコノミスト、家計、企業が、先ほど申しましたとおり、軒並み、今後五年間の物価上昇率について一・五%以上と予想しておりまして、どこにも、デフレマインドも、賃金や物価は上がらないとの消費者や事業者に定着してしまった意識もない。

 だって、みんな、これから物価は上がると言っているのに、何で、デフレマインドがとか、意識が定着しているとおっしゃるのか、本当に理解できないんですが、政府はいまだに、国民みんながデフレマインドだ、物価は上がらないと思っていると思っていらっしゃるんですかね。確認させてください。もしそうでしたら、それは余りに国民の意識とかけ離れていると申し上げます。

斎藤副大臣 お答えいたします。

 御指摘の日銀の報告書におきまして、市場参加者等の予想物価上昇率が高まっていることは、よく承知をしております。

 今般の物価上昇は、円安等を背景とする輸入物価の上昇を起点としたものでございまして、企業間の取引における価格転嫁を進め、また、賃上げのきっかけになっているものの、物価や賃金に係る家計や企業の意識が変化し切るには至っておらず、長年にわたったコストカット型経済から脱却し、成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあると考えております。

 そのため、国民の一人一人が実際の賃金、所得の増加という形で豊かさを実感できるよう、物価上昇を上回る賃金を定着させていくことが重要であると考えておりまして、省力化、デジタル化や成長分野への投資を促進すること等により生産性や付加価値を高め、安定的に賃金や所得が増えていく環境を整えてまいることが重要と考えております。

米山委員 相変わらずそうおっしゃるんですかとびっくりしますけれども。国民みんながインフレで苦しんで、この表には国民もありますからね、家計もありますからね、国民みんなが今後ともインフレがあると思っている。それは別にコストプッシュかどうかは関係ないですよ、インフレだと思っているんですから。なのに、デフレマインドだ、物価が上がらないという意識が固着している、政府がそう言うから、真っ当な経済政策ができないんです。

 その上で、日銀総裁にもお伺いいたしますけれども、植田総裁も、今、日本国民はデフレマインドが定着していて、そして物価が上がらないと思っていると思っているのかどうか。もしそれならこの報告書に矛盾しますから、それを伺いたい。そして、あわせて、現在、実質金利は何%で、なぜそのような金利を維持しているのか、お伺いいたします。

植田参考人 賃金、物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方、これをデフレマインドと呼んだとしますと、これは変化してきているというふうに判断しております。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、ちょうど二%のところで、基調的に、賃金、物価が、継続的に、物価でいえば二%ということですが、好循環が回るようなところまでにはもう一歩届いていないというふうに判断しております。その中で、実質金利をまだ少し低めに、名目金利を低位に推移させることによって、抑えているということでございます。

 ただ、基調的物価上昇率も上がってきておりますので、この緩和度合いは何回か調整してきているところ、つまり、緩和度合いを弱めるという方向で調整してきているところではあります。

 実質金利が何%くらいかという御質問もありましたが、これはどの年限で見るかに依存しますけれども、ごく短期のところで見ますと、翌日物金利が〇・五%で、生鮮を除いたCPIの上昇率を引き算しますと、実質でマイナス二強になるかと思います。

米山委員 そうなんですよ。植田総裁は、さすがに、正しく、デフレマインドなんてものは基本的にはありませんとおっしゃってくださったと思うんですが、今お伺いしましたでしょう、このインフレの中でマイナス二パー、マイナス実質金利をしているんです、日本は。それは、物価は上がりますよ。何せ、これでしたら、お金を持っていたらどんどん損しちゃう。マイナス二パーで減っていくわけですから、それはお金を借りて物を買うわけです。時に、それがマンションの価格になる。マンションを買うわけです。だからどんどんと家賃が上がる。そして、それは分かりませんけれども、もしかしたら米を買う方にも向かっているのかもしれない。そうやって、政府、日銀が自らつくり出した物価高で国民は苦しんでいるんです。

 今やるんでしたら、何せ今インフレですので、今やるべきことは、デフレからの脱却ではなくて、真逆の高インフレからの脱却です。高インフレからいかに脱却するか、それを是非、政府の皆さんもさすがにもうちゃんと現状を認識していただいて、そして、植田総裁はどうやら認識してくださっているのをオブラートに包んで言ってくださっているんだろうと思いますが、冒頭伺ったとおり、このインフレが続き過ぎるのであれば、きちんと利上げをして、物価高、高インフレを抑える、本来の日銀の役割を果たしていただくことを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今日は日銀総裁への質問なんですが、ちょっと順番を変えまして、今、二%物価目標について議論が白熱しておりましたので、まずそのことからお聞きしたいと思います。

 私も、既に二%の目標は達成されているんじゃないかということを、二年ぐらい前からずっとこの委員会でも申し上げてきたんですね。ただ、当時は、輸入物価とか円安の影響で一時的なものだといったような理由で、持続的、安定的でないというお話でありました。そして、その後もずっと二%を超える状況が続いてきたので、さすがに持続的、安定的になっただろうと思って聞くと、今度は基調的な物価上昇率がまだ足りないみたいなことを言い出して、何というんですかね、後出しじゃんけんみたいなことで、理由が度々つけ加わってきたんですね。今の米山さんとの議論を聞いていますと、基調的な物価上昇率というのは、じゃ、何なんだと聞いても、はっきりした答えはないということで、要は、二%の物価上昇率達成をいつまでも先送りしたいための方便としか聞こえないわけですよね。

 私は、このように、二%の物価目標が達成されていないと言い続けることのリスク、これが今顕在化してきているのではないかと思っております。これは、取りも直さず円安というリスクです。二%の物価目標が達成されていないということは金融緩和がまだまだ続くんだというふうに市場関係者には理解される、その結果円が売られるということなわけですよ。

 ですから、この二%という物価目標に拘泥するリスク、これについてもちゃんと総裁は理解した上で金融政策を考えていかなくちゃいけないと思うんですが、この点どうですか。

植田参考人 もちろん、私ども、基調的物価上昇率がやや二を下回っていて、もう少し上昇していくことが望ましいと考えていますが、もちろん、今見ているペースを超えて、インフレ率あるいは基調的物価が上昇していくというリスクは常に注意して見ております。それが余り大きくならないように注意深く見通しをつくったり、あるいは分析をしたり、あるいは政策を決定しているということでございます。

 実際、昨年来、金利の調整を三回ほどして、金融緩和の度合いを弱めてきているところでございます。

階委員 いずれにしても、二%という目標にこだわる理由はもはやなくなってきているということで、我々はもう既に、二年ぐらい前から、二%の目標は変えるべきだ、むしろ、賃金が物価を上回る状況、実質賃金がプラスという状況を目指して、物価はプラス領域でいいとすべきではないかというような提案もしてきました。

 ただ、やはり、日銀の立場もあるでしょうから、急にドラスチックに変えるというのはなかなか厳しいんだと思います。だけれども、日銀総裁も、この間の金融政策決定会合の後、会見でおっしゃられていますよ。将来どこかの時点で目標を再検討するということもなきにしもあらずというようなことをおっしゃっていますよね。これはどういう趣旨ですか。いつ検討するんですか。どのように検討し、どのようなイメージを考えていらっしゃるのか、教えてください。

植田参考人 現在は、私ども、二%の物価目標を持続的、安定的に達成するということに全力を注いでいるところでございます。

 先日の記者会見で申し上げましたのは、そういう目標が達成されたということが皆様方に納得いただけるような状況になったときに、振り返ってみて、二%の目標を続けていくのがいいのかどうかという議論が起こる可能性はある、そこでもう一度改めて考えるという可能性は否定するべきではないという程度の趣旨でございます。

階委員 その趣旨だとは思い至らずでした。

 今総裁がおっしゃったのは、将来二%が達成された段階で見直すことはあり得べしという趣旨だったということなんですが、じゃ、そもそも二%が達成されるかどうかというところが、これまでの経緯を見ると、永遠に二%を達成しないかのような言いぶりもされているわけですよ。要は、二%を永遠に道半ばにして金融緩和を続けるように市場関係者には見られるわけですよ。

 私は、この二%という数値的なリジッドな目標、これを、達成することにこだわるんじゃなくて、そろそろ見直すべきではないかということを申し上げています。一番いいのは先ほど私どもが申し上げたような案なんですけれども、それになかなかすぐにはいけないということであれば、少なくとも、二%というのはめどという言い方にしたらどうかということなんですよ。

 めどという言い方、先ほど海江田委員からも、現時点ではというのはなかなかいい表現だというお話も出ていたと思うんですが、めどという表現も、これは日銀が金融政策を変えるときの常套文句なんですよ。それまでの量的緩和から、イールドカーブコントロールを導入して金利を金融政策の中心的な手段にするときも、八十兆円の国債購入をめどというふうにしました。それから、イールドカーブコントロールをどんどんどんどん続けていって、例の指し値オペで国債を爆買いして金利の上限をくぎづけにするということも、変えていくときには、〇・五%をめどにするとか一%をめどにするとかそういう言い方をして、事実上、金融政策をマイルドに変えてきたわけです。マイルドな言い方なんだけれども、実際にはドラスチックに変えてきたんだと私は考えております。

 そこで、振り返ってみますと、過去、二〇一二年、このときの日銀の物価に関する言いぶりはどうだったか。二〇一二年二月に、「「中長期的な物価安定の目途」について」ということで、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で二%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は一%をめどとする、こういう言い方をしていたわけです。これが黒田総裁になって二%という数値的なリジッドな目標に変えたということがあるわけですけれども。

 元々めどという言い方をしていたわけですし、一%がいいかどうかは別ですけれども、めどという言い方にして、金融緩和が永遠に続くような錯覚を市場に与えないようにすべきではないかと思うんですが、このめどという表現を入れることについて、総裁の見解をお願いします。

植田参考人 私どもは、二%をめどという表現なしに、目指すということを申し上げているわけですが、二%を安定的、持続的に実現するという表現ですけれども、この場合、完全にきっちり二%にならないといけないということではなくて、もちろん、ある程度の幅を持って、二%の周りにあればいいというふうに考えております。

 ただ、その幅がプラスマイナス何%かという辺りについては厳密な議論をしておりませんし、厳密に、外に公表するということもしていない。大体二%というところを目指しているということでございます。

階委員 現時点でも二%というのはリジッドな目標ではなくめどだという趣旨の御答弁だったということでよろしいですね。

植田参考人 めどということにどのような意味を込めるか次第だと思いますけれども、二・〇〇〇%を目指しているわけではないということでございます。

階委員 ですから、普通は、二%というのを幅を持った概念で捉えるということであれば、めどと言うわけですけれども、そういう幅を持った概念で捉えているということでいいですね。

植田参考人 それはもちろん、ある程度の幅を持って考えております。

階委員 そうしますと、十分に達成したと言っても過言ではないような気がするんですよね。ますます、我々はもう達成したと言っていいんじゃないかと言っているわけですけれども、達成されていないというふうにこだわる日銀の言い分の説得力が失われていると思うんですけれども、それでも、めどだという理解の下でも二%は達成されていないということになるんでしょうか。

植田参考人 微妙な話になりますが、私どもは、もちろん、基調的物価、先ほど来議論がありましたが、これは徐々に上昇してきている、したがって二%に近づいてきているというふうには考えております。だからこそ、金利を上げるという調整をしております。

 その上で、現状が二%の目標のプラスマイナスの幅のところまで来ているかという点になりますと、まだちょっと狭い幅の中には入ってきていない、もうちょっとだというふうに考えております。

階委員 何か頭脳明晰な植田総裁とは思えないような漠然としたお話になってきてしまいまして、果たして日銀の説明責任をこれで果たしたと言えるのか。もう少し解像度の高い論理的な説明をしてもらわないと、やはり市場はいつまでも金融政策が続くということで動いて、円安が続き、物価高にもつながって、国民が窮乏するということになりかねないということは指摘させていただきます。

 私が取り上げたいのは、ETFの保有継続の必要性ということです。

 異次元緩和の手段として、株式市場にも日銀は介入され、大量のETF、日本株の投資信託ですね、これを購入してきたわけです。主な中央銀行の中で、金融政策の手段として株を購入したのは日銀だけです。さらに、昨年、ちょうど一年ぐらい前にこの異次元緩和が終わりましたけれども、現在でも、簿価で三十七兆、時価で七十兆円程度のETFを日銀は保有しているわけです。

 日銀がこれだけの株を保有することで、発行会社のコーポレートガバナンス、あるいは株式市場の価格形成に悪影響を与えているという指摘もありますし、また、通貨価値の安定という中央銀行の本来の使命を果たす上で、大量のリスク性の資産を抱え込んでいるのはいかがなものかという指摘もあります。

 こうした異例、異常な姿を脱却するためにも、日銀はバランスシートからETFを速やかに手放すべきだと考えておりますけれども、このETFの保有を継続しなくてはならない特段の必要性があるのかどうか、総裁にお尋ねします。

植田参考人 私ども、ETFを現在大量に保有しておりますのは、委員に対して申し上げるまでもないとは思いますが、大規模な金融緩和時に、その緩和の一環として、物価の安定という目標を達成するために必要な政策を行った結果でございます。

 その上で、現在保有しておりますETFの処分でございますが、これは、すぐに行うということは考えてございません。いつもの申し上げ方で恐縮でありますが、処分を含めた今後の扱いについて、ある程度時間をかけて検討させていただきたいと思っております。

階委員 答えになっていません。

 金融政策の手段として購入したということは私も認めております。その上で、今なお、異次元緩和が終わった後も保有し続ける必要性があるのかということを聞いております。必要性があるのかどうか、理由とともにお答えください。

植田参考人 ETFの処分をどうするかということを考える中で、その点についても考え続けさせていただけたらと思います。

階委員 また総裁らしからぬ論理不明な答えだったと思います。

 処分するということは、必要性がないということをお認めになっているということだと思いますよ。処分することを検討する上で必要性があるかどうか検討したいというのは、これは矛盾していませんか。処分するんでしょう。ということは、必要性がないということをお認めになっているんじゃないですか。

植田参考人 処分するかどうかを含めて検討、処分することが必要かどうかも含めて検討を続けるということでございます。

階委員 びっくりしましたけれども、これは、じゃ、永久に保有し続けることも選択肢に入るんですか。

植田参考人 現時点で、そうしたオプションをあり得ないことというふうにライトオフしてしまうというところまでは考えておりません。

階委員 海江田先生が先ほど指摘した現時点ではというキーワードが出ましたので、改めてお尋ねします。

 じゃ、将来的には考える可能性はあるということですか。

植田参考人 検討を続けた結果、様々な判断に至って、現時点での判断と変わるということは十分あり得ると思います。

階委員 本当にそれでいいんですか、中央銀行として。リスク性の資産を、三十七兆円の簿価、時価で七十兆円以上、こんなことをやっている中央銀行はどこにもありませんよ。二%の物価目標については、海外の金融当局もやっているからということであくまでもこだわるくせに、このETFは、どこもやっていないことは真っ先にやろうとしているというのは矛盾していませんか。

 本当にそれでいいんですか。保有し続ける必要性があり得るということでいいんですか。

植田参考人 過去の金融政策上の必要性で購入してしまった、その上で、それをどうするかということに関しては様々な難しい問題が付随している、その上で、持ち続けるか、処分の方法を、具体的に何か適切なものがあるかどうかの検討を続けるということでございます。

階委員 私、この質問をした理由として一つあるのは、昨年の暮れだったんですけれども、衆議院の調査局というところで、黒田前総裁の論文を公表していたんですね。それを資料二ページ目に掲げておりますけれども、下線を引いたところです、黒田総裁いわく、日本銀行は三十七兆円ほどのETFを保有しており、これから得られる運用益が毎年一兆円ほどあり、日本銀行は当面ETFを売却する予定がないので、この運用益は、仮に国債保有が逆ざやになった際にも、赤字決算になることを防止するようになろう、こういうくだりがあります。

 これから金利を上げていくと、日銀も逆ざやになって赤字に陥るかもしれない、私も予算委員会で指摘しました。特に、ETFを切り離してしまうと、黒田総裁も言っているように、分配金が入らなくなりますので、余計赤字に陥りやすくなる、赤字幅が大きくなります。そこを捉まえてETFを持ち続けるとしたら、ETFを買ったのは金融政策のためじゃなくて日銀の財務体質の維持のためということになりませんか。おかしいですよね、これは。

 この考え方は取るべきではないと思いますが、総裁のお考えはいかがでしょうか。

植田参考人 ETFからの分配金収入の確保を目的として検討に時間をかけているわけではございません。

 ETFの取扱いについては、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避するということを含めて、私ども、いつも申し上げている基本方針に沿って、どのような方法が考えられるか検討しているところでございます。

階委員 分配金を赤字を埋めるために取っておこうという考えがないのであれば、余計持っている理由はないですよね。ほかに持っている理由はないじゃないですか。これは速やかに切り離す、処分するべきですよ。

 それで、市場を攪乱しないということも重視されているということが、私が質問したときにもおっしゃっていたと思います。資料一ページ目の右側の上段の方、処分を行う場合には市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避しつつということをおっしゃっていたわけですよ。

 日銀は、まさにこの市場を攪乱しないような売却の仕方、今、実行中ですよね。三ページ目に、銀行から買い取った株の売却を日銀は今やっているところです。あと一年ぐらいで全部完了する予定なんですが、過去十年にわたって、大体、一年間に簿価ベースで平均千五百億円ぐらい売っているわけですよ、千五百億円ぐらい。

 これが市場に影響を与えていないということであれば、仮にですけれども、簿価三十七兆のETFを同じペースで売ったらどれぐらいかかるか。これは、日銀総裁、計算したことはありますか。

植田参考人 百年以上かかるのだと思います。

階委員 単純計算すると二百四十六年なんですよ。市場に影響を与えないで、市場内で時価で売却するのは無理です。市場外で相対取引で処分するしかないんです。そのための方策を我々は提案しているわけです。

 四ページ目です。日本銀行が政府に設けたETF管理特別会計というところに、簿価三十七兆、売却する。対価として、政府から交付国債、これは民間でいう小切手のようなものです、交付国債を発行して、それを日銀が受け取る。交付国債ですから、いつ換金するか、これは自由なわけですけれども、もし換金する必要が生じた場合には、このETF管理特別会計に入ってくる分配金、あるいは、ETF管理特別会計でも将来的には徐々に徐々にETFを売却して得られる売却収入、こういったものを交付国債の償還に充てるということも考えつつ、大事なことは、このETF管理特別会計で入ってくる分配金あるいは売却金を何に充てるかということなんですよ。

 これも海江田先生がさっき御指摘になったように、異次元の金融緩和、あるいはその前からの長期間続いた金融緩和によって、莫大な金額、本来得られるべき利息収入が家計には入ってこなかった。そのことによって資産形成が妨げられた人は多くいるわけですけれども、特に若者世代、子育て世代、こうした方々は、統計的にも金融資産保有額が少ないわけですね。そうしたところの穴埋めにこのETFを使ったらどうかということなんですよ。ETFを政府が持つことによって得られる収入を、子供、子育て支援に資する事業に活用することによって、これまで失われてきた資産形成のロス分をこれで穴埋めしてあげるというのが我々の考え方です。一石二鳥だと思うんですね。なかなか処分できないETFを一括で処分する、他方で、そこで得られた政府の収入を次世代のために活用するという一石二鳥のやり方ですので。

 是非、日銀総裁には、処分するかどうか分からないじゃなくて、処分する前提に立った上で、しかも、現実的には市場売却は無理です、相対で市場外で取引するしかありません。こうした処分の仕方を検討していただきたいと考えておりますが、日銀総裁、いかがでしょうか。

植田参考人 まず、一般論といたしまして、仮にETFを処分するといたしまして、どういうふうにするのかということについて最終的な案が固まっていない段階で、具体的な話、途中経過等をお話しするというのは、それこそ市場に不測の影響を与えるという可能性がありますので、なかなかできないことであるという点は御理解いただけたらと思います。

 その上で、委員が今御紹介くださいました案を含めまして、様々なETFの活用あるいは処分に関する具体的な提案、議論があることは承知しております。ただ、この場で個別の御提案等に対して具体的にコメントすることは差し控えさせていただければと思います。

階委員 いつまでたっても日銀総裁の方からは具体的な処分案というのは出てこないんですよ。

 私、一ページ目にもつけておりますとおり、総裁が就任した直後にこのことを聞いているわけですよ。一ページの左側ですね、二三年四月の二十四日ですから、総裁就任直後ですよ。下線部に書いていますけれども、将来、現在の長短金利コントロールの政策から出口に至る、金融政策を本格的に正常化するという局面に至った場合に、このETFについても、購入したETFをどういうふうに処分していくのかという点は大きな課題として認識している、既に二年前からこうおっしゃっているわけですよ。今、長短金利コントロールは終わりましたよね。出口に至っていますよ。だから、もう示さなくちゃいけないときです。

 今、何もしないで放置していると何が起きているかというと、ETFの分配金は日銀に入ってきて、それが期末になると、決算になると、国庫納付金ということで政府に流れていくわけですよ。政府に流れていって一般財源になっているわけですけれども、その一般財源としてどのような使われ方をしているのかということが私は問題になってくると思います。

 一般財源として使われているもののうち、そもそも予算段階で計上されているもの、予算段階で計上されておらず、予算よりも上振れして期末の剰余金として使われるものという二つのものがあります。期末の剰余金は、これは、国債の減額であるとか、要するに借金減らしですね、借金減らしであるとか、あるいは、それでも余ったものは防衛費に回されるんですよ。

 こういう使い方が合理的なのかどうか、政府参考人、お答えください。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生の御指摘がございましたように、特に、日銀のETFの分配金収入、これが、当初予算で見込んだものより上振れをいたしまして、結果として、実際に国庫納付をされる日銀納付金の金額、これが予算計上された金額を上回った場合には決算において税外収入の上振れが生じることになり、その上で、税収等と合わせた国債以外の一般財源の上振れが更に見込まれる場合には特例公債の発行額の調整を行うということとしてございます。

 このような取扱いを行いますことは、特例公債の発行額を可能な限り抑制をするという観点から行っているということを御理解いただければと存じます。

階委員 決算剰余金の上振れ要因になるということを今お認めになったわけですよね。

 その上振れ要因となる、日銀が予算段階で納めるであろうと予測したETFの分配金と決算段階に実際に入ってきた分配金の差額、これを御紹介したいと思います。

 令和四年度は差額がプラス三千百九十億円、令和五年度はプラス四千百九十五億円、令和六年度はまだ確定していませんけれども、これまで日銀に入ってきた分配金の金額などを見ますと、プラス五千億円をはるかに上回る金額ということで、年々増えているわけですね。そして、令和七年度、現在審議中の予算で見積額は七千二百十億円。しかしながら、これが決算段階でどうなるかというと、恐らく前年の一兆二千億も上回ってくると思います。すなわち、令和六年度では五千億を上回るであろう上振れ額を更に上回る。

 このような金額は、借金減らし、あるいは、それでも余ると決算剰余金は防衛費に回すことになっていますから、そういうところに回すわけなんですよ。

 でも、元々の出どころ、このETFは、なぜ日銀にこんなに入ってくるようになったのか、分配金がこれだけ入ってくるようになったかというと、これは国民の犠牲の下なんですよ。海江田さんが指摘したとおり、利息収入を家計は犠牲にした結果、これだけの分配金が日銀に入ってきていると言えるわけですよ。だったら家計に返すのが筋ではないですか。

 借金減らしや、それは防衛費も大事ですけれども、でも、優先順位を考えたら、このETFの分配金は家計に戻す、次世代のために使う、そのためのスキームを是非日銀にも政府にも考えていただきたいということを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 日本維新の会の斎藤アレックスです。

 順次質疑をさせていただきます。

 まず、ちょっと順番を変えまして、国土交通省の方に来ていただいていますので、まず住宅ローンの点についてお伺いをしたいというふうに思います。

 住宅ローン、私も今実は住宅ローンを組もうとしていろいろ金融機関とお話をさせていただいていますけれども、やはり変動金利で借りている人も大変多いわけですから、これから金融政策の影響が、どのように金利に影響を与えるのかということは、家計の関心が高い部分だと思います。ちょっとその点について少し最初にお伺いをしたいと思いますけれども、まず、国交省の方に、国内の住宅ローン残高のうち変動金利で借入れを行っている割合、また、平均利率がどの程度なのかということを御教示をいただきたいと思います。

横山政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省が行った調査によりますと、令和四年度末のデータでございますけれども、国内の個人向け住宅ローンの貸出残高に占める変動金利型の割合は六七・七%、約七割でございます。

 お尋ねの貸出残高の平均利率に関する網羅的なデータ、これは把握してございませんけれども、独立行政法人住宅金融支援機構が昨年十月に実施した、変動金利型に限らず住宅ローンを利用した方に対する調査に基づきますと、令和六年四月から九月までに利用した住宅ローンの借入金利の水準は、金利一%以下の割合が七三・五%、やはり七割程度というふうになってございます。

 このような低い借入金利を前提に今、七割程度の方が変動金利型の住宅ローンを組まれているものと認識しているところでございます。

斎藤(ア)委員 ローンの残高というのは分かるんですか。残高は分からないですか。

横山政府参考人 令和四年度末時点の貸出残高は、百九十五兆九千六百五億円でございます。

 以上でございます。

斎藤(ア)委員 それが変動か固定かは、内訳は分からないということですよね。(横山政府参考人「はい」と呼ぶ)分かりました。二百兆円近い住宅ローン残高があって、七割程度は変動金利で借りられていると。

 今、日銀の金融政策の正常化とか利上げ、マイナス金利の解除が行われているわけですけれども、やはり、私が今住宅ローンの相談で金融機関とお話をしていると、それでも今、八割方の方は引き続き変動金利で借りられますよというお話をされて、変動金利が主流だというのは今でも変わっていないわけですね。

 当然ですけれども、金利が上がっていけば変動金利が上がっていって、まあすぐには上がらないわけです、五年ルールとかがあって一定程度猶予があるわけですけれども、間違いなく、金利の上昇というのは、変動金利の上昇として住宅ローンを借りている家計の負担になっていくわけでございますけれども。

 今後、この住宅ローンの負担、金利の負担というのが家計で上がっていく方向なんだとは思うんですけれども、その点、どのように日銀の方では、把握というか、今後政策に加味をされていくのか。大幅に金利が上がるようなことになれば、家計の負担が大変重くなってしまって、大きな混乱を及ぼす危険性もあるわけですけれども、そういったところをどのように加味をしているのか、認識をしているのか、日銀の方からよろしくお願いいたします。

植田参考人 金利上昇の住宅ローン利払いを通じた家計への影響でございますが、委員御指摘のように、足下、五年ルール等がありまして、若干の返済額の大幅な増加を抑制する仕組みがあるという点はございますが、金利引上げに伴って住宅ローン金利が上がっていくという構図は無視できない大事なところと考えております。

 ただ、その影響を考える際に、当然、私ども、金利を上げていく裏には、景気回復が続いているとか基調的なインフレ率が上昇しているということがございますので、その中で、賃金が上昇を続けるということがございます。それとの相対で、家計の利払い費の負担がどうなっていくかということを見ていかないといけないと思いますが、いずれにせよ、金利が上がるときに非常に注意して見ないといけない部分、経済の部分の一つでございますので、今後とも注視してまいりたいと思っております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 このことを踏まえて、次に、為替のこととまた物価のことをお伺いしていきたいと思うんですけれども、国交省の方は、こちらで退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

井林委員長 御退席ください。

斎藤(ア)委員 まずもって、植田日銀総裁には、大変困難な時期に総裁の職を引き受けていただいたということだと思いますので、そのことは私からも御礼を申し上げたいというか、大変ありがたいというふうに考えております。それほどに今の日銀の仕事というのは困難を極めていると思います。財務省もそうだと思いますけれども、長年の金融緩和政策の影響で手足が縛られている状況でございまして、そのことで、結果として、金利はどうせこれ以上上げられないから、もう変動金利で、みんないいだろうみたいな感じになってしまっている影響もあると思うので、ちょっとその点を何点か質問をして、問題意識を共有させていただきたいと思うんですね。

 まず、為替の方からお話をさせていただきたいと思います。

 マイナス金利が解除をされて、そして金利の引上げが行われてきたわけです。去年は、一時的に円・ドルレートが百四十円とか百三十円台になったのかな、一時期、円安が少し是正をされた夏頃の時期もありましたけれども、また円安方向に戻ってきて、今、一ドル百五十円程度ですから、マイナス金利を解除する前の状況に、言ったら、戻ってしまった形でございます。

 金融政策を正常化しているのに、日米の金利差の縮小が意識をされているのに、円安が是正されない、また円安方向に行ってしまっているという状況でございまして、円安になれば、当然、日本は様々な物資を輸入に頼っているわけですから物価高につながっていくわけですけれども、この為替レートの円安が続いていることの物価への影響についてどのように認識をされているのか。また、これは直接的には日銀の役割ではないということだと思いますけれども、為替レートが円安方向に行き過ぎると、当然、物価の安定目標というのは達成できなくなると思いますので、物価を安定させるという面で為替レートは大変重要だと思いますけれども、その点を含めて、日銀の認識であったり役割についてお答えをいただきたいと思います。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、為替と物価の関係でございますけれども、コロナ禍後の物価上昇の背景、これは様々な要因はございましたけれども、やはりそれは、為替の円安の影響を受けた輸入物価の上昇がその一因でなっているということは、もう委員御指摘のとおりでございます。ただ、こうした既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響、これは徐々に減衰していくというような方向だとは認識しているところでございます。

 それからもう一つ、金融政策、これが為替相場を直接コントロールの対象としていないというところも、委員が御指摘いただいたとおりでございます。ただ、やはり、為替は経済とか物価に影響を及ぼす重要な要因の一つでございますので、経済それから物価への影響という観点から、私どもとしても、金融・為替市場の動向は注視していく必要性があるというふうに考えているところでございます。

斎藤(ア)委員 どの程度かということはおいておいて、また変動があるんでしょうけれども、円安によって物価高が引き起こされているということは、これは共通理解だと思いますので、物価安定を実現していくためにも、為替レートをどう適正な水準に戻していくのかということは、日銀の本来の役割ではないかもしれませんけれども、日本にとっては極めて重要なことだと、国民生活にとっても極めて重要なことであります。

 最近の為替の動きを見ていても、日銀総裁、植田総裁が、利上げをこれからします、します、そういうふうに表明をしても、全然、為替が円高方向に振れない状態になってしまっていると思うんですね。何か市場が、どうせ利上げできないだろうと思われてしまっているんじゃないかなと感じるんですけれども、まず、そこはおいておいて、利上げ方向を示している、日米の金利差が縮小するというそういった方向を日銀総裁として、日銀として示しているのにもかかわらず、為替が反応しない、円安になり続けてしまっているということについて、何かこの点について日銀からコメントをいただくことはできますでしょうか。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、為替の市場でございますけれども、かなり多様な、様々な市場参加者が様々な理由で売買を行っておるところでございますけれども、その変動の要因として、ここに、今委員が御指摘いただきましたように、内外の金利差、これはもちろん一つ大きな要因でございますけれども、それ以外にも、例えば、各国間の物価動向、インフレ率の差とか、また国際収支の動向などもその要因というふうになっていると思いますので、これらの要因に様々なものが絡み合いながら変動している状態だというふうには認識しているところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 これは私の私見でもありますけれども、多くの委員の方が共有していただけると思います。さっきの、住宅ローンで変動金利を借りる人が減らないという問題にもつながっていると思うんですけれども、日銀はどうせ、これ以上、余り大幅な利上げはできないだろうと見透かされてしまっているのではないかなと私は思います。

 これだけ日銀が国債を保有していて、利上げをしてしまえば、当然、日本の財政にも致命的な悪影響を及ぼすわけでございます。一%政策金利を引き上げれば、数兆円単位で財源が必要になってしまう、国債の利払いが増えてしまうということで、なかなか利上げをすることはできないだろうと見透かされているからこそ、幾ら日銀総裁が、これから更に利上げをします、利上げをしますと記者会見で何回言っても、もう為替が円安方向から戻らなくなってしまっているということではないのかなというふうに思っています。

 それを、どうですかと聞かれても、どうもお答えしようがないのかもしれませんけれども、そもそも、手足が完全に縛られてしまっている、この状況をつくり出してしまったことを多角的レビューでは余り真正面から、私は向き合っていないのではないかなというふうに思います。

 日銀の方々、日銀の異次元の金融緩和が始まったときから総裁も替わられていますし、政策決定をされる理事の方であったり、あと職員の方も多く替わられてしまっていると思いますけれども、日銀全体としては、政治、自公政権の第二次安倍政権の圧力に負けて、セントラルバンクとしての矜持を忘れて金融緩和をずるずると続けてしまった、そのしっぺ返しを今国民生活が受けているし、これから更にその悪影響は広がるかもしれないということで、為替の話であったりとか、利上げがなかなかできなくなってしまって円安になってしまっているという話を見ても、この金融緩和政策の長期間にわたる悪影響というのは本当に恐ろしいものだなというふうに感じております。

 通告をさせていただいていますので、日銀総裁にも改めてお伺いをさせていただきたいと思うんですけれども、インフレを抑制しようとしてもなかなか利上げができない、そのことも市場に見透かされてしまっている、その中で、物価上昇を抑えるという役割を日銀が果たせなくなってしまっているのではないかと思いますけれども、その点について、総裁、いかがでしょうか。

植田参考人 私ども、申し上げるまでもなく、金融政策は物価の安定を実現する観点から実施しております。実際、先ほど来申し上げてきましたが、昨年三月に大規模金融緩和を終了し、その後、昨年の七月と今年の一月、金利を引き上げて、金融緩和度合いを調整してきております。

 今後も基調的な物価が更に二%に向けて高まっていくという見通しが実現していくとすれば、引き続き、金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく考えでおります。

斎藤(ア)委員 当然その方針は理解をしておりますけれども、あくまで物価安定のため、物価が上がり過ぎるようなことがあれば利上げをちゅうちょすることはないというお話だと思いますが、それでよかったのか、改めてお伺いしたいと思います。

植田参考人 現状、私どもの見通しは、先ほど来議論になっております、基調的な物価上昇率が見通し期間の後半にかけて二%に大体収束していくというものでございます。それに沿った金融政策の調整というものがもちろんあり得ますが、それから上振れるという場合には、更に調整度合いを強めるということになるかと思います。

斎藤(ア)委員 分かりました。ありがとうございます。

 ということですので、実際上は、これは私見ですけれども、なかなか利上げを、例えば一%の水準を超えて更に引き上げていくことというのは、現実的に、国家財政の話を考えれば、相当程度困難を伴うというか、ちゅうちょせざるを得なくなるんだろうなとは思いますけれども、政府としては、財政当局としては、当然、利上げが進んでいく、物価高を抑えるために、国民生活を守るために利上げが進んでいく、その場合には、利払い費が増えて財政的な負担が増えるという可能性をしっかりと加味をして財政運営をしていかなければならないということは、これは間違いないことだと思いますので、それは野党側の我々も肝に銘じて、自公の皆様にも肝に銘じていただいて、政権運営をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、話が大分重なってしまいますけれども、物価について、改めて何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 本日も様々な質疑がありますけれども、まず日銀にお伺いをしたいと思いますけれども、日本は物価上昇、インフレの局面であるという認識をお持ちだというふうに理解していますけれども、そのとおりでいいのか、改めて見解を伺いたいと思います。

植田参考人 私ども、足下の消費者物価が上昇しているという意味でインフレの状態にあるというふうに考えております。

斎藤(ア)委員 一方で、こちらも本日議論が繰り返されているところですけれども、加藤財務大臣は先日のフィナンシャル・タイムズのインタビューで、日本はデフレ克服していない、このような見解を示されました。

 また議論がつながるところなんですけれども、結局、これだけ物価が上昇している、インフレ局面にある、消費者物価が上がっているのに、なぜデフレ克服していないと加藤財務大臣はおっしゃっているのか、その意図をお伺いしたいと思います。

斎藤副大臣 お答えいたします。

 日本経済は輸入物価の上昇を起点とする物価上昇が続いておりまして、消費者物価が上昇しているという点では、デフレではなくインフレの状態であると私どもも考えております。

 他方で、コストカット型の行動様式が変わり、賃金上昇を通じた持続的な物価上昇へ移行する途上にあると考えております。

 デフレ脱却とは、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないことでありまして、その判断に当たりましては、物価の基調や背景を総合的に考慮して慎重に判断する必要があると考えておりまして、大臣が御発言されたように、政府としては、現時点では、再び物価が持続的に下落する状況に戻る見込みがないとの判断にまでは至っていないところです。

 政府といたしましては、デフレを脱却し、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を実現するために、物価上昇を上回る賃上げを定着させていくことが重要であると考えております。

斎藤(ア)委員 議論が繰り返されるところですけれども、物価は上がっているけれども持続的に物価が上がっていくかどうかまだ分からないということで判断を据え置いているんだということを説明されますけれども、これも質問を、できればさせていただきたいんですけれども、デフレ克服しました、デフレ脱却しました、インフレ局面に入りましたとなってしまうと、また更に日銀に対して利上げ圧力というか、利上げをしなければ物価がコントロールできていませんよね、そういった雰囲気が進んでしまえば更に財政が苦しくなるという可能性が高まるので、なかなかデフレ脱却したと言えないということではないのかなと私は勘ぐってしまうわけでございます。

 デフレ脱却しました、インフレ局面です、日銀の金融政策を更に正常化させなければならないということになれば、日銀の方も相当対応の仕方は変わってくると思いますし、しかし、そうなると、財政がもたない、財政が破綻をしてしまう、政府がもたなくなってしまうということになりますので、いつまでたってもデフレ脱却しないと言わざるを得ない状況に陥ってしまっているのではないかなと思いますけれども、何か、副大臣、そのことについてコメントいただけますでしょうか。

斎藤副大臣 政策金利はあくまでも日本銀行におかれまして御判断いただくことでありますので、そこに対して財務省としてどうこうということはございません。

 デフレ脱却につきましては、先ほど答弁しましたとおり、再び物価が持続的に下落する状況に戻る見込みがないという判断にまだ至っていないということでございますので、そこはあくまでも経済状況を財務省として注視をしてまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 金利は日銀として判断をするということでなくしてしまったというか、それを、状況を崩してしまったのは自公政権であると思います。もう既に日銀は国債の半分を保有していまして、一体となっているわけです。金利を上げれば財政にもインパクトを与えるし、引受けをやめて、それで金利が下がっていくかどうかは、政府の、日銀が一体となってこれまで運用されてきたわけですから、都合のいいときだけ、あっちは独立しているんだということでは、なかなか説明がつかないと思いますし、今後の政策運営は難しくなると思いますので、そのことは是非正直にお答えをいただきたいと思います。

 いつになったらデフレ脱却をするのか、いつになったら物価目標二%を達成できたと言えるのかどうかということは、これもまた本日の議論を聞いていても分からないわけですけれども、改めて日銀にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、二%の物価安定目標というのは、どのようになれば達成できたと言えるのか。どうなればデフレ脱却したと言えるのかというところにつながると思いますけれども、どのようにこの二%の物価安定目標の達成を判断するのかというところを改めてお伺いしたいと思います。

植田参考人 これは先ほど来申し上げていることでありますが、現在の高いインフレ率の中に、一時的な要因、過去の輸入物価上昇であったり最近の食料品価格上昇の影響が含まれております、これを除いた部分、これが大まかには基調的な物価上昇率ですが、これが今ちょっとまだ二%を下回っていると判断しております。これが二%に向けて高まっていくかどうかという点を今後注意深く見ていくということでありますが、それをもう少し分かりやすく表現できないかという御質問だと思いますが、既に私の記者会見等で何度か、いろいろなところで申し上げていることをまとめてみますと、一つ見るべきところは賃金の動きということだと思います。賃金と物価の好循環が続いていくかどうかという観点から基調的な物価の動きを判断するということでございますので。

 賃金上昇率というところを、例えば所定内給与を見てみますと、去年の暮れあるいは今年の前半、三%前後のところに来ております。今年の春闘も去年並みプラスアルファくらいに来ておりますので、そうした動きが続くというふうに期待しております。この三%の賃金上昇率というのは、生産性の上昇率が一%くらいだと考えますと、二%の物価上昇と大体整合的な水準に来ている。したがって、賃金について見る際には、今後これが定着していくかどうかという観点が非常に重要になると考えていますし、その意味では、現在春闘で出てきているような姿が幅広く経済全体に広がるかどうかというところを見ていきたいと思っております。

 それから、賃金、物価の好循環ということですので、この上がりつつある賃金が、物価、特に影響を受けやすいサービス価格に適切に反映されていくかどうかというところを引き続き見ていきたいというふうに思っております。

 さらに、基調的物価の判断というところでは、中長期的なインフレ上昇率に対する予想、期待インフレ率ですね、ここをいろいろな指標で丁寧に分析し、今まだちょっと二に届いていないと思いますが、二に近づいていくかどうかという辺りをきちんと見ていきたいというふうに考えております。

斎藤(ア)委員 丁寧に御説明をいただき、ありがとうございました。

 日本の経済の問題点というのはもう既に明らかだと思います。やはり、賃金が上がってこなかったせいで経済の好循環が生まれなかった。そして、もう一つ重要なのが、設備投資、国内投資が十分に増えていない、ほとんど増えていないというところが大きな問題だと思います。

 これまで十年間にわたって金融緩和を行って、企業の利益は上がった、業績は過去最高で、しかし、それが投資や賃金に回らず、内部留保に回ってきた。この状況を放置してきた日本の経済政策の最大の問題点をどう転換をしていくのかということが、今、日本の経済政策の焦点になっていると思います。

 我々、日本維新の会としましても、どうやって設備投資を増やしていくのか、これまでどおりのやり方では、やはり内部留保をため続ける企業の状況というのは変わらないと思いますので、その点をドラスチックにやっていくのが政治、経済政策の責任だと思いますので、これまで、日銀に金融緩和をさせて、それで経済はよくなるんだ、そういった無責任な経済財政運営を行ってきた政治の姿から転換をして、しっかりと設備投資と賃上げの好循環を生み出す経済政策を実現するために全力を尽くして政治の役割を果たしていきたいと思っておりますので、是非、皆様にも引き続き様々な議論をいただければと思います。

 本日は、総裁、ありがとうございました。

井林委員長 次に、岸田光広君。

岸田(光)委員 国民民主党の岸田光広です。

 質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 本日は、日銀の金融政策に関する報告を拝聴いたしまして、改めてその重要性を認識いたしました。国内外を問わず数多くの経済課題が浮上する中で、日本銀行が金融政策をどのように決定しているのかは、我々が経済の先行きを見通す上で極めて重要です。特に、近年の世界経済の不確実性や物価上昇への対応は、日銀にとって大きな課題となっているかと思います。ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱など、様々な要因が複雑に絡み合い、世界経済は大きく変化しております。このような状況下、日銀はインフレ抑制と経済成長のバランスをどのように考えているのか、非常に気になるところです。

 本日は、三月に政策金利を据え置いた理由、また今後の金融政策の方向性について、日銀がどのような指標を注視し、どのような判断基準で金融政策を決定していくのかについて伺っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 先日、金融政策決定会合において、短期金利の誘導目標を〇・五%に据え置く決定がなされました。会合後の記者会見で植田総裁は、国内の賃金と物価の動向についてはおおむねオントラックと発言されました。

 国土交通省が三月十八日に発表した公示地価は、全用途の全国平均が前年比で二・七%上昇し、上昇幅は全用途、住宅地、商業地のいずれも四年連続で拡大し、バブル期だった一九九一年以来の上げ幅となりました。また、ガソリンの価格は、三月二十四日、調査で一リッター当たり全国平均百八十円を超えております。米の価格は五キロで約四千円、生鮮食品を除く食料品の価格は、令和七年二月は前年同月比でプラスの三・〇%となっております。賃金につきましては、今期の春闘でも、連合の第二次集計では五・四%と高水準を維持しております。

 金融政策については、幅広く経済、物価、金融情勢を見極めて判断されると承知しております。総裁がオントラックと評価されたのは、どのような想定で、主にどのような指標からそのように評価されているのでしょうか。お答えください。

植田参考人 まず、私どもの現在における将来の経済、物価の見通しは、一月の決定会合で公表しました展望レポートというところに示してございます。

 ここでは、景気が緩やかに改善を続ける下、既に先ほど来ちょっと議論がありましたが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比が、今年度は二%台後半、来年度は二%台半ばとなった後、二六年度はおおむね二%程度となる見通しを示したところでございます。

 特に二四年度、二五年度の高めのインフレ率の中には、既往の輸入物価上昇や最近の食料品価格上昇の影響が含まれております。ただ、これが今後減衰していくというふうに見ているところであります。一方、これを控除した、これも先ほど来議論になっております基調的な物価上昇率は、人手不足感が高まる下、賃金の上昇を伴う形で二%に向けて徐々に高まっていくと考えております。

 その上で、先週の決定会合では、一月以降発表されました様々なデータや情報を精査いたしました。各種の景気指標や消費者物価指数といった統計データに加えまして、春季労使交渉の動向については、連合の集計結果や私どもが行っておりますヒアリング情報等も丁寧に確認し、この間に入りました賃金、物価に関する情報に基づきますと、賃金、物価の動向はおおむね見通しの範囲内であるというふうに評価したところでございます。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 植田総裁は二〇二五年一月に政策金利を引き上げた理由として、今述べられたように、今年の春闘でも昨年同様しっかりとした賃上げが実施される見込みであること、あと、国際金融資本市場が落ち着いていること、また、消費者物価の前年比上昇率が二%に向けて上昇しており、特に円安による輸入物価の上昇が影響しているということを挙げられました。そして、この三月、据え置いた理由ですが、これは、経済成長やインフレが今、日銀の予測どおりに推移していること、あと、トランプ政権の関税政策をめぐって金融市場の不安が増していることを挙げられましたが、その具体的な判断プロセスや影響した外的要因について、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

 具体的には、一月の金利引上げ時には、インフレ率や国際経済の動向がどのように政策決定に影響したのか、より深い説明をお願いできますでしょうか。また、三月に金利を据え置く決定をした際、短期間での経済指標の変化がどのように政策判断に影響したのか、お聞かせいただければと存じます。

植田参考人 まず、一月でございますけれども、先ほど御紹介しました展望レポートの見通しについて議論し、様々な分析を重ねた結果、我が国の経済、物価がこれまで示してきた見通しどおりおおむね推移しており、その見通しが実現する可能性、確度が高まっていると判断したところでございます。

 具体的には、委員も御指摘くださいましたが、企業から、今年もしっかりとした賃上げを行うといった声が一月の時点でも既に多く聞かれておりました。こうしたことから、先行き、賃金の上昇を伴う形で基調的な物価上昇率が二%に向けて徐々に高まっていくと考えました。海外経済については、特に米国経済について経済データが非常に堅調なものが続いていたということ、それから、一月にトランプ大統領が就任した後、政策の大きな方向性が一旦示されたと思いますが、その後も国際金融資本市場がその時点では全体として落ち着いていた、こういうことを踏まえまして、金融緩和の度合いを調整するということが適切、すなわち政策金利を引き上げるということが適切と判断したところでございます。

 これに対して、三月ですけれども、三月はまず、一月に行った政策変更、利上げの影響を含めて経済、物価、金融情勢を詳細に点検したところでございます。春季労使交渉の集計結果が一部入り始めていたわけですが、賃上げの動きが予想どおり広がっていることがうかがわれ、おおむね一月会合時点での見通しに沿ったものというふうに評価いたしました。他方で、御指摘いただいた海外情勢ですが、一月以降、各国の通商政策等の動きあるいはその影響をめぐって不確実性がかなり高まっているというふうに判断いたしました。

 これらを踏まえた上で、三月の会合では、政策金利を維持するということが適当と判断したところでございます。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 今、不確実性ということで御説明いただいたんですけれども、トランプ大統領が、就任前から、中国との貿易における不均衡の是正、これを掲げ、また、さらには、輸入品における関税の強化を提案するなど、世界経済に大きな影響を与える可能性がある方針を既に示していました。また、中国の為替操作を批判するなど、世界の為替に対する緊張も高まっていたかと思います。一月に政策金利を引き上げた際、このようなトランプ政権の関税政策によるリスクは既に顕在化していたのではないかと理解しております。しかし、三月においては、同様の外部リスクを理由に、政策金利を据え置く決定をされました。

 一月時点と三月時点での外部リスク評価を教えていただけますでしょうか。その上で、一月時点でのリスク評価が三月時点でどのように変わったのか、お聞かせください。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、一月の時点でございますけれども、このときに、先ほど、総裁と繰り返しになってしまいますけれども、海外経済の政策の点について、トランプ大統領は、就任されて、政策の大きな方向性を示されましたが、その段階では国際金融資本市場は全体として落ち着いていたというふうに判断していたところでございます。

 その後、一月以降ですけれども、やはり、今委員御指摘になったような関税政策を含めたアメリカの政権の政策運営、これはより具体的に出てきましたし、それを受けた各国の対応、この辺をめぐる不確実性というのはより高まったのかなというふうに判断したところでございますし、また、その影響を受けた海外の経済、それからあと物価動向の不確実性も高いというふうに判断したのが三月の会合でございます。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 より具体化していき、不確実性が高まったということで御説明いただきました。

 次に、先ほど触れました地価についてですが、報道でも最近よく取り上げられていますように、住宅地の地価高騰に伴ってマンションの価格が高騰し、都心では新築マンションが一億円を超えています。高年収の共働き夫婦、いわゆるパワーカップルでも購入できず、戸建て住宅にシフトするなどの動きも目立ってきているとのことです。価格上昇の要因には、建築費の高騰、人件費の上昇、あと投機目的の資金の流入が指摘されております。

 日本銀行法において、日本銀行は通貨及び金融の調節を行うことを目的としており、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念とされているかと思います。

 先ほど斎藤委員の方からもお話がありましたけれども、住宅の価格が高騰していることについて注視されるというふうに植田総裁の方から答弁がありましたけれども、住宅の価格の上昇について、これをどのように、要因も含めて捉えられているのか、受け止めの方をお聞かせください。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、住宅価格の観点でございますが、我が国の不動産価格、これは特に大都市圏を中心に上昇しているということは我々も強く認識しているところでございます。

 それで、その背景につきましては、今委員御指摘されましたとおり、資材価格の高騰、あと人手不足の影響などによって建設コストが上昇しているということは一つの大きな要因だと思いますし、また同時に、景気の緩やかな回復や都市部への人口流入なども受けまして、先行きも堅調な需要やそれから賃料の上昇が見込まれているということがあるんだと考えておるところでございます。

 私どもとして、今、資産価格の動向とか、あと金融面の不均衡、これを含めた様々なリスク要因というのは常に点検しておりまして、金融政策決定会合、一月の段階で、特にここのところは対外的に出した展望レポートでも明確に示しているところなんですけれども、不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要である、ただ、今の段階、全体として見れば資産市場に過熱感は見られていないというふうな評価をしているところではございますけれども、ただやはり、今後の動向については非常に注意して見ていかなければいけない状況だというふうには考えているところでございます。

岸田(光)委員 所得税法改正案においても、急激な住宅価格の上昇を踏まえまして、子育て世帯に対する住宅ローン控除が拡充の方向で審議されています。子育て支援の観点から、子育て世帯及び若者夫婦世帯における借入限度額の上乗せを行うものです。借入額を増やすことができるということは、住宅ローンを当然多く組むことになりますし、住宅ローンの金利は各金融機関で決められるものではありますが、変動金利によって負担が増していきますし、返済額に直結するものでありますから、この不動産価格の高騰に対しまして政府としては早急に対処していただきたいと考えております。

 次に、金利の上昇が中小企業に与える影響についてお尋ねをします。

 中小企業は、特に地方においては経営が苦しい状況です。ガソリン代が高止まりし、材料費も高騰しています。賃上げが進むのは望ましいですが、人手不足のために、利益が出ていないにもかかわらず予防的賃上げを行っている会社も多くあるのが実態です。民間金融機関の金利上昇を通じて中小企業の経営を圧迫する面もございます。

 金利の上昇が直近の中小企業の業況に与える影響についての受け止めをお聞かせください。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、金利の観点で、企業を取り巻く金融環境でございますけれども、今、金利を引き上げている状態になっておりますので、そういう意味では、企業向けの貸出金利、こちらはやはり幾分上昇しております。当然、その観点でいいますと、金利負担が高まるという方向にはなるというふうには認識しております。

 ただ、今、経済とか物価動向、これが好転する中における金利の上昇という観点でもありますので、そういう意味では、中小企業全体として見ますと、我々の短観とか各種のサーベイ調査などを見ますと、資金繰りとかそれから業況感は良好な状態が維持されているというふうにも認識しているところでございます。

 ただ、やはり、業種とか企業規模によってばらつきはございますので、金利環境の変化が中小企業を含めた企業の業況に今後更にどのような影響を及ぼしていくかについては、引き続き丁寧に点検してまいりたいと考えているところでございます。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 賃上げについてもお伺いいたします。

 今期の春闘では、大企業だけではなく、中小企業にも賃上げの広がりが見られます。連合は、三月二十一日に二回目の集計結果を発表しました。平均月額一万七千四百八十六円、賃上げ率で五・四%、組合員数が三百人未満の中小企業、こちらでも一万三千二百八十八円、四・九二%と、高水準を維持しています。

 総裁は、賃上げについて、消費の緩やかな回復を支える要因になり得るが、サービス価格への波及など、もう少しデータを見たいと発言されています。

 改めまして、このような賃上げの状況をどう捉えていらっしゃるのか、また、今後消費にどのような影響を及ぼすのか、物価の向かう方向性、これについてどのように考えられているか、お答えください。

植田参考人 委員御指摘のように、連合の集計結果を見ますと、昨年に続き高水準でありますし、その中に含まれます相対的に規模の小さい企業でも高めの賃上げ率が実現しています。これは賃上げの動きが広がっていることを示唆するものと捉えております。

 ただ、中小企業の中には、これから本格的な賃上げ交渉を行うという先も少なくないと考えておりますので、賃上げの動きの広がりについては今後も丁寧に確認していきたいと思っております。

 その上で、しっかりとした賃上げが続き、所得環境が改善していきますと、これは個人消費の緩やかな増加基調を支えていく動きになるというふうに考えております。

 そうした下で、これも委員御指摘のように、賃金上昇を反映した販売価格の引上げの動きが定着していけば、基調的な物価上昇率は二%に向けて徐々に高まっていくと考えております。

岸田(光)委員 ありがとうございます。

 以上、様々な角度から、金融政策について質問をさせていただきました。

 本日の議論を通じて、日本経済が大きな転換点にあることを改めて認識いたしました。インフレと経済成長のバランス、国際情勢の不確実性、地価上昇と住宅問題、そして中小企業の経営環境と賃金上昇、これらは互いに複雑に関連しているかと思います。

 私たち国民民主党は、経済政策において、成長と分配の好循環を重要視しております。賃金上昇が消費を促し、企業収益を向上させるという好循環が持続可能な形で実現することが重要であります。同時に、急激な金利上昇が住宅ローンや中小企業経営に与える影響にも十分配慮する必要があるかと思います。

 日本銀行におかれましては、世界経済の動向を注視しつつ、国内経済のファンダメンタルズに基づいた金融政策の運営を期待しております。特に、地域経済や中小企業、若い世代の住宅取得など、国民生活の実態に即した視点を持ち続けていただきたいと思います。

 私たちも、政策立案者として、金融政策と財政政策の最適な組合せを追求し、国民の皆様の暮らしを守る取組を進めてまいりたいと考えております。

 本日は誠にありがとうございました。

井林委員長 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。

 初めに、金融政策の運営方針についてお伺いをします。

 現在、日本を取り巻く外部環境としては、トランプ大統領の新政権が誕生し、今月十二日には鉄鋼製品、アルミニウムに二五%の関税を発動し、四月には貿易相手国と同水準の関税を課す相互関税を発表する見通しとなっております。このトランプ関税によりまして、アメリカ国内の輸入品価格が上昇し、不法移民の強制撤去に伴う労働供給の減少とも相まって、短期的にはアメリカのインフレ率を再び押し上げる可能性も指摘する声も聞かれておりまして、実際に、アメリカの金属価格は一月と三月の比較でも上昇をしております。一方、トランプ新政権の政策の不確実性が極めて高い中で、消費者や企業のマインド悪化も懸念をされ、アトランタ連邦準備銀行は、トランプ・セッションの警鐘を鳴らしております。

 今後、トランプ関税に対する各国の報復措置によって貿易摩擦が激化すれば、対米輸出減少の影響が各国に波及をし、世界経済の落ち込みに広がるリスクもあります。欧州の貿易体制の見直しに向けた動きや、中国国内経済の動向なども併せて考えれば、経済、物価の先行きはますます見通しづらくなってきている状況と言えるかと思います。

 翻って、日本では、直近二月の消費者物価指数がプラス三・〇%となり、物価上昇が続いている下で、今年の春闘が中小企業でも高い賃上げ率が実現する強めの結果となるなど、実質賃金がプラスの水準となっていき、好循環が持続していくかどうかの重要な局面を迎えております。

 今、日本の金融政策は、大規模緩和で踏み込んだアクセルを徐々に緩めていく段階にあると思いますけれども、物価高に苦しむ国民生活に配慮をしながら、回り始めた好循環を止めてしまうことがないように、微妙な調整が求められる難しい局面にあるかと思っております。

 こうした経済、金融の難局におきまして、今後、植田総裁はどのように金融政策をかじ取りしていくおつもりなのか。まず、見解をお伺いさせていただきます。

植田参考人 私ども、昨年三月に大規模な金融緩和の枠組みを終了し、見直して以降、昨年七月と今年の一月、金融緩和度合いを調整してきたところでございます。今後も基調的な物価上昇率が二%に向けて高まっていくという見通しが実現していくといたしますと、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくという考えでおります。

 この点、先ほども御議論がありましたが、連合の集計結果にも表れていましたが、賃上げの動きが広がってきていることは、家計所得を支え、基調的な物価上昇率を緩やかに押し上げる方向に作用すると考えています。

 一方で、委員御指摘の海外の通商政策等の動きや、その経済、物価への影響をめぐる不確実性は高まっていると考えております。導入が検討されています関税政策が貿易活動に及ぼす影響や、あるいは、不確実性が高いまま推移しておりますので、これがマーケットあるいは各国の企業、家計のコンフィデンスに及ぼす影響は十分注視してまいりたいと思っております。

 私どもとしましては、毎回の会合において、今申し上げましたような賃金、物価動向あるいは海外情勢を、様々なデータ、情報から丹念に点検し、見通しやリスク、見通しの実現する可能性等をアップデートしながら、適切に政策を判断してまいる所存でございます。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 今後におきましても、内外の情勢、これは丹念に調査、分析をしていただきまして、特に、今日も議論があったところなんですが、国民生活に十分配慮した政策運営をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、金利上昇に伴う影響、いわゆる金利のある世界に入っていくことで国民の生活に具体的にどのような影響が生じるかということについてお伺いをさせていただきます。

 今月日銀が発表しました資金循環統計によりますと、家計の金融資産残高は過去最高の二千二百三十兆円を記録したとのことであります。

 金利上昇の直接的な影響としては、資産の方が負債よりも大きい家計部門全体におきましては、利息収入の増加が利払い負担のそれを上回りますので、総じて見ればプラスの影響になるということだと思っております。一方で、負債を保有している世帯、先ほどもございましたが、とりわけ住宅ローンを抱える現役世代にとりましては、利払い負担が重くなりまして、消費を抑えるなどの生活への影響も懸念をされるところであります。

 これを、企業に目を転じてみますと、借入金利の上昇によりまして、特に利益に対して有利子負債の比率が相対的に高い中小企業では、負担増を受けて、設備投資や賃上げなどの前向きな企業活動にブレーキがかかってしまう懸念もあります。

 金利上昇の影響として、こうした主体ごとの濃淡を的確に把握していただき、そして適切な政策対応につなげていくことが肝要であると考えるところであります。

 この点、日本銀行として、いわゆる金利のある世界に入っていくことで、家計や企業に具体的にどのような影響を及ぼすと見ているのか、見解をお伺いさせていただきたいと思います。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、金利のある世界、金利が上がっていく世界でございますけれども、その前提としまして、やはり景気と関係なく金利が上がっていくということは抑えなくちゃいけないんだろうと思っておりまして、景気が改善し、そして賃金それから企業収益が増加している、そういう中において金利が上がる世界を実現していくということだと思いますし、また同時に、その結果として息の長い成長の実現につながっていけば、国民経済全体、マクロ全体としてよりメリットがあるというふうにもまず考えております。

 ただ、その上で、ミクロ的な観点ですね、特に政策金利の引上げについて、家計とか企業の属性、それから年齢、資産、負債構成などの違いによりまして、委員が御指摘になられたとおり、異なる影響があるというふうには認識しております。特に、市場金利、短期プライムレートの上昇で、企業の借入金利、それからあと住宅ローンの金利には当然影響しますし、一方で、預金金利などの利回りの上昇で、これは企業や家計の所得面にプラスの影響があるというところも我々としてはしっかりと分析しているところでございます。

 今後について、政策金利の今後の動向についても、企業や家計の行動、消費行動とか投資行動にどう影響をするのか、それから所得がどうなるのかということについて、個々の家計、企業について目配りしながら丁寧に考えていきたいと思っているところでございます。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 私、地方銀行の出身で、入行当時ですけれども、これは金利のある世界でありました。そこから随分と時間がたって、再びこの金利のある世界が返ってきたということであります。久方ぶりの金利上昇で経済に予期せぬひずみが生じないように、今後も丁寧な目くばせを是非ともお願いしたいと思っております。

 次に、金融システムの安定につきまして、とりわけ地域金融機関の経営に着目をしてお伺いをさせていただきます。

 先日帝国データバンクが発表しました全国企業倒産集計によりますと、企業倒産件数は二〇二二年五月から三十四か月連続で前年を上回りまして、戦後最長を更新し続けております。その背景には、金利上昇のほか、人手不足や後継者問題といった地方の構造的な要因もありまして、倒産件数の増加基調が続くとの見方も聞かれているところであります。今のところは負債額が歴史的に見て高い水準にあるわけではありませんけれども、負債額が大きくなっていけば、地域金融機関の経営の足腰に響いてくる可能性もあると考えております。

 また、信用面だけではなく、金融機関が抱える金利変動リスクを課題として指摘する声も聞かれております。金利上昇によって金融機関が保有する有価証券の評価額が下落することになりますけれども、海外では、アメリカの地方銀行でありますシリコンバレーバンクが、金利急騰による保有有価証券の評価損の拡大で取付け騒ぎが起こりまして、ごく短期間で経営破綻に追い込まれたということは記憶に新しいところであります。

 政府が地方創生二・〇を掲げる下、地方の企業の資金繰りを支える地域金融機関について、この激変する経済金融環境の中にあっても経営基盤の頑健性がしっかりと確保されていることが私は重要と考えますが、日本銀行として、地域金融機関を、我が国の金融システムの安定性をどのように評価しているのか、見解をお伺いしたいと思います。その上で、その安定性を確保していくために今後どのような対応をしていくのか、併せてお伺いをさせていただきたいと思います。

神山参考人 お答えいたします。

 我が国の金融システムの安定性の評価ですけれども、私どもでは、全体として安定性を維持していると評価しているところでございます。金融仲介活動は円滑に行われており、大きな不均衡は認められず、また、我が国の金融機関は様々なストレスに耐え得る充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有していると思います。

 有価証券投資につきましては、委員御指摘のとおり、金利リスク量が高い水準にあるほか、保有する債券は評価損の状態にあるわけでございますけれども、全体として金利上昇に耐え得る充実した資本基盤を有しているというふうに、金融機関について見ているところでございます。

 この間、倒産件数、これも委員御指摘のとおり、前年を上回る推移が続いているところでございますけれども、足下は増勢が鈍化しております。倒産企業の大半は小規模企業で、信用保証も付されているということでございますので、これまでのところ、地域金融機関を含めまして、金融機関における信用コストへの影響は限定的と見ております。

 その上で、今後の対応ということでございますけれども、日本銀行としては、引き続き、金利上昇が金融機関収益や金融システムに及ぼす影響や、信用コストの動向等について、金融機関のリスク管理の状況も含め、丁寧にモニタリングしていきたいと考えております。

中川(宏)委員 最後に、トランプ関税が及ぼす日本の中小企業への影響と支援策についてお伺いをします。

 FRBのパウエル議長は、ミシガン大学のインフレ予想に対しまして、インフレ期待は引き続き十分に安定しているとの見方を示しまして、関税がインフレ率の持続的上昇をもたらす可能性は低く、一過性であるという見解であります。しかし、トランプ・セッションには、アメリカの元財務長官は、アメリカが年内に景気後退に陥る確率は五〇%だと指摘をしております。これらの見通しは非常に厳しい状態であると思います。

 そんな中、四月から予定をされている自動車関連へのトランプ関税が行われれば、日本の自動車産業に大きな影響が出ると予想されます。日本の輸出産業約二十一兆円の三分の一は自動車部門でありまして、そのサプライチェーンの裾野は広く、輸出産業のこれからの経営見通しが悪くなれば、サプライチェーンへの影響は避けられないと考えます。ある予測では、日本の自動車の生産が約一四%減少し、実質GDPが〇・三四%減少するとしております。また、カナダやメキシコの影響も含めると、日本の主要な自動車メーカーの損失は約三兆二千億円に達するとも試算をされております。

 日本では、この四月も大幅な賃金アップが予定をされておりますけれども、経済の先行きが不確実な状況に対し、重要なことは、日本の中小企業をしっかりと守る、こうしたしっかりとした体制が必要だと思います。

 政府として、世界経済の動向を的確に押さえながら、日本の経済への影響を敏感に読み取っていただきまして、日本の企業、とりわけ中小企業への支援を機動的に行っていただきたいと思いますが、対策について中小企業庁にお伺いをさせていただきます。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、アメリカの関税措置でございますけれども、先般、大臣が御訪米いただきましたけれども、その際にも、関係閣僚との会談におきまして、我が国が措置の対象となるべきでない旨申入れを行ったところでございます。会談では、我が国の関税措置からの除外を確認するには至りませんでしたが、日米で引き続き緊密に協議をしていくということを確認しておりまして、しっかりと対応していきたいと考えております。

 その上で、仮に自動車への関税措置が発動されることになりますと、完成車メーカーだけでなく、部品メーカーを含めた広範囲なサプライチェーンに影響を及ぼすということが懸念されるとの自動車業界からの声も承知をしているところでございます。

 こうした声を受け止めまして、アメリカ側の措置がどのようなものであるかといった状況も踏まえながら、これに応じた必要な対応を、御指摘のとおり、中小企業を取り巻く環境は非常に厳しいものがございますので、機動的に検討してまいりたい、このように考えてございます。

中川(宏)委員 是非ともよろしくお願いいたします。

 時間となりました。ありがとうございました。

井林委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 れいわ新選組の高井でございます。

 今日は、植田日銀総裁、お越しいただきありがとうございます。

 実は、私は植田先生の教え子でございまして、大学のときに講義を経済学部で聞いておりました。当時まだ助教授だったんですけれども、新進気鋭の植田助教授のゼミは大人気で私は入れませんでして、もし植田ゼミに入っていたら私の人生もちょっと変わっていたかなと思いながら、今日はちょっと質問したいと思います。日銀総裁の立場ではもちろん来ていただいているんですけれども、やはり経済学の権威、大御所として、是非教え子に答えていただきたいと思います。

 まず最初にお聞きしたいのは、これはこの委員会でも何度も私は問うているんですが、この三十年間、日本は経済が成長してこなかった、これは世界中でも本当に日本ぐらいだと。その原因を聞きたいと思います。

 我々が主張しているのは、やはり、まず財政出動が全然少なかった。世界各国を見ると、財政出動を増やした国ほど経済成長、GDPの成長率は高くなるという正の相関関係がまさにあって、日本はこの間、僅か一・三七倍、一九九七年から二〇二二年までの二十五年間で僅か一・三七倍しか増やしていません。ほかの国は大体二倍、三倍、あるいはブラジルなんかは十倍以上増やしている。そういったことがまず一つ原因。

 それからもう一つは、あの三度にわたる消費税増税です。これは、一回消費税増税しただけで、百年に一度と言われたリーマン・ショックをはるかに上回る消費の落ち込みが起きている。つまり、日本は百年に一度のリーマン・ショック級の恐慌が四回起きたと同じことだと。消費税増税の影響は極めて大きいと考えていますが、日銀総裁の見解、あるいは経済学の権威である植田先生の見解をお聞きいたします。

植田参考人 恐縮ですが、本日は日銀総裁としての立場でお話しするということになりますので、財政政策、税制は、政府、国会で議論されるものと考えますので、具体的なコメントは差し控えさせていただければと思います。

 その上で申し上げますと、我が国の成長率が九〇年代以降低迷してきた大きな原因としては、理解にすぎませんが、潜在成長率の低下があると思います。そのまた要因として、少子高齢化に伴う労働投入量の減少、あるいはデフレの下で企業が積極的な行動を控えたことで資本ストックの伸び率が低下した、あるいはイノベーションが停滞して生産性の伸び率が低下したことなどもあるというふうに考えます。

 また、不良債権問題、相次ぐ自然災害、感染症といった負のショックが短期間に、二十年くらいの間ですが、相次いで発生したことも経済の下押しに作用したと考えております。

高井委員 事前に日銀から、担当者からレクチャーを受けたときも、日銀総裁、答えられないんだと。しかし、財政のことの、何か財政をどうするかという質問ではなくて、日本経済が成長しなかった原因として財政出動や増税が関係したんじゃないかというのは、これは別に日銀総裁として答えてもいいと思うんですけれどもね。

 まさに、私はよく言っているんですけれども、経済学で植田先生から教えてもらった基本は、これは中学校で習うことですけれども、景気が悪いときには減税をして市中にお金を回し、そして景気がいいときには過熱を抑えるために増税をしていく。まさに、税は財源だということばかり、皆さん、国会議員の人は多く考えるんですけれども、財源であると同時に、こういう景気の調整機能があるわけでございますから。これは答えていただいてもいいと思うんですが。

 改めて、日銀総裁としてで結構ですので、財政出動や消費税の、消費税というか、減税をしてこなかった、そういった影響がやはり一定はあるということはお認めいただけませんか。

植田参考人 一般論として、財政政策に景気調整機能があるということはおっしゃるとおりだと思いますが、具体的にどの局面でどう働いたかということに関するコメントは差し控えさせていただければと思います。

高井委員 ありがとうございます。

 一般論でも、まさに調整機能がある、景気を調整するビルトインスタビライザーという機能があるわけで、そこをやはり、もっと国会は、あるいは政府は、あるいは財務省は真剣に考えていただきたいと思います。貴重な答弁をありがとうございます。

 ただ、減税するべきだ、あるいは財政出動するべきだというときに、やはり問題になるのは、国債発行残高、日本の財政がもうこれ以上は国債発行できないんじゃないかということで、よく財務省やあるいはほかの皆さんも言われるのは、債務残高が日本は一番最悪の水準なんだと。確かにこれはG7で比較すると七位なんですね。

 しかし一方で、ほかの指標を見れば、非常に重要な政府の純利払い費のGDPの比率というのは二番目にいいんですよ。あの財政優等生のドイツよりもいいんですね。そういったほかの指標も、対外純資産対GDP比なんかは一位、それから一般政府対外債務比率も一位、こういう、G7の中でもトップクラスでいい。

 これはやはり、確かに負債は大きいけれども国の資産はある、個人金融資産だけでも二千二百兆円ある、こういったことが原因で、それが市場の評価となって、CDS、クレジット・デフォルト・スワップで算出した五年以内に日本国債がデフォルトする確率というのは僅か〇・二三%、これもドイツに次いで低いんです。ちなみにイタリアなんか二・四%ですし、トルコなんか一〇%を超えている。

 こういう状況なわけですから、私は、日銀は国債を半分引き受けている、持っているわけですから、こういった状況を加味すれば、日銀がそれだけ国債を持っていても、これは日銀にとって何の問題もないんじゃないか。こういう聞き方をすれば日銀総裁としても答えられると思うので、日銀として問題ないと思いますが、いかがですか。

植田参考人 ちょっと質問の御趣旨を理解しているかどうか。財政に問題が生じて長期金利が上がっても、日銀の財務に問題があるかどうかという御質問でしょうか。

 先ほどと同じですが、財政破綻という仮定の質問に直接お答えすることは適当ではないと思います。

 ただ、長期金利が上昇したときに国債を保有している日本銀行の財務への影響はどうかということで申し上げるといたしますと、私ども日本銀行では、保有国債の会計原則について、会計方法、評価方法につきまして、私どもの財務の特性や保有の実態等を踏まえて、いわゆる償却原価法を採用しております。このため、評価損が発生、拡大したとしても期間損益には影響しないという構造になっております。

高井委員 日銀が答えられる範囲で、日銀としてどうかという質問に限らせていただきましたので、日銀としては財務上何の問題もないという御回答でしたので、はい、それを受け止めたいと思います。

 それでは、次に、先ほどからインフレの議論がずっと続いていますけれども、私たちは、今のインフレ、物価高というのは、コストプッシュインフレだ、原材料の高騰とか資源価格、エネルギー価格の上昇によって起きているもので、これはある意味悪いインフレだと。本当のいいインフレはデマンドプルインフレ、需要が拡大して、供給を需要が上回る形で起こる。

 こういったことになっていない中で、私たちが言いたいのは、国債の発行の上限も、我々、無限に発行できるとは一言も言っていないんです。よく、言っているじゃないかとやじが飛ぶんですけれども、一言も言っていません。我々の支持者が言っているかもしれないですけれども、れいわ新選組は一言も無限に国債を発行できるとは言っていなくて、インフレ率を見ながらだと言っていますが、今のこの状況は、我々は、デマンドプルインフレではない、コストプッシュインフレなのでまだ問題ないという考えですが、コストプッシュインフレであるということを日銀総裁からお答えください。

植田参考人 現在の高いインフレ率のかなりの部分が、例えば、既往の輸入物価上昇の影響とか、あるいは食料品価格上昇といったコストプッシュの部分であるということは、おっしゃるとおりかと思います。

 ただ、最近では、あるいは最近及び今後ですけれども、こういうコストプッシュの影響が徐々に減衰してきていますし、今後減衰していくというふうに考えております。そうしまして、賃金の上昇が続く下で、基調的な物価上昇率は徐々に高まっていくというふうに判断しております。

高井委員 十分しかないので大変残念ですけれども、いい議論をありがとうございました。また是非来ていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、田村智子君。

田村(智)委員 日本共産党の田村智子です。よろしくお願いいたします。

 これまでの議論を聞いておりましても、二%の物価安定目標、基調的物価上昇率は二%にまだ達していないと。これは本当に実体経済や国民の暮らしから乖離しているなというふうに言わざるを得ないと思うんですね。

 二月の消費者物価指数、これまでも指摘がありましたけれども、二〇二〇年を一〇〇として、生鮮食料品を除いても一〇九・七、生鮮食料品を含むと一一〇・八と。ただ、一方で、植田総裁は、三月十九日の会見で、消費者物価が金融政策の物価安定の目標二%を超えていることが国民生活にマイナスの影響を与えていることは十分に認識しているということを述べておられます。

 私が本当に聞きたいのは、こういう認識がその十九日の金融政策決定会合でどういうふうに議論されたのか、物価高騰と国民生活の実態、本当に物価高騰に対する対策が必要ではないのか、こういう議論がなかったのかどうか、お答えいただきたいと思います。

植田参考人 物価上昇率が二%を大幅に上回って続いているということが国民の皆さんに大きな負担あるいはマイナスの影響を与えているということは十分認識し、申し訳ないと思っております。その上で、そうしたことも含めまして、物価動向について、毎回の決定会合においてしっかり議論しております。

 蛇足になるかもしれませんが、物価上昇の背景には様々な要因があります。コロナ禍後の物価上昇については、これまでの輸入物価の上昇に加えて、最近では米の価格等が上昇していることが強く影響しております。ただ、繰り返しですが、こうしたコストプッシュ要因が今後、物価上昇率に及ぼす影響については徐々に緩和していくというふうに見ております。

 私どもが目指していますのは、景気が改善することによって需要が増加して、賃金のしっかりした上昇を伴いつつ物価が緩やかに上昇する姿です。こうした状況を実現していくことが息の長い成長を実現していくことにつながり、国民経済全体にメリットをもたらすと考えております。

 決定会合での議論の詳細、高いインフレ率についてどういう議論があったかということにつきましては、間もなく発表されます主な意見、前回の会合に関する主な意見としてまとめたもの、あるいは議事要旨でお示しいたしますので、そちらを御覧いただければと思います。

田村(智)委員 生鮮食料品を含む消費者物価指数の年平均を見ると、二二年以降で、二・五%、三・二%、二四年は二・七%と、前年比で上昇を続けています。中でも食料は、二二年以降、四・五%、八・一%、四・三%と、本当に悲鳴が上がるほどの上昇になっているんですね。

 これまで、基調的物価ですか、これは一時的影響というのを除いてというふうに言われているんですけれども、例えば、気候変動が一時的と言えるんだろうかと。あるいは米の価格高騰も、減反、減産政策の転換が必要であって、むしろ、備蓄米放出という方が一時的手段に今やなっているわけですね。

 そうすると、私は、日銀での議論も、果たして食料品を除いたという物価の議論のままでよいのかということは問題提起をしたいと思うんですよ。そうでないと、これまでの議論を聞いていても、基調的な物価、これはまだ二%に達していないと、まるで禅問答みたいな議論に聞こえてしまうわけです。もっと実体経済を見た、現実を見た議論を行っていただきたいということをまず要望したいというふうに思うんですね。

 そして、今総裁言われたとおり、確かに、景気がよくなる、何よりも賃金が上がる、そのことによって物価が上がる、私はそれが本当に必要なことだと思います。

 しかし、やはり、アベノミクスと黒田前総裁の時代は違ったんですよ。まず株価を上げる、まず大企業の収益を上げる、これが先走ったわけですよ。そのことによって何が起きたのか。一つは円安だというふうに思います。円安によって輸入物価の上昇、これが今の物価高騰に大きな影響も与えています。

 二十五日の日経新聞で、マイナス金利解除一年という記事が載っています。その中で、日銀スタッフによると、二一年一月から二三年九月半ばにかけての約三二%の円安のうち、米国金利の要因が二四%に上ったとあります。これは米国金利と書いていますが、日米金利差ということでしょう。

 このアベノミクス、黒田総裁時代の異次元の金融緩和、これが日米の金利差の拡大をもたらし、現在の円安を誘引しているということだと思いますが、植田総裁の見解をお聞きしたいと思います。

植田参考人 為替相場の水準あるいは評価については、具体的なコメントを差し控えることとしております。

 ただし、一般論としまして、為替市場では多様な参加者が売買を行っておりまして、為替レートの変動要因として、もちろん内外金利差に加えまして、購買力平価あるいは国際収支の動きなどが指摘されているということは認識しております。

 私ども、為替動向についてはもちろん注視し、特に、それが我が国の経済、物価へどういう影響を与えるかということを注視しまして、政策運営に生かしてまいりたいと思っております。

田村(智)委員 この日経新聞が紹介したのは、二月に公表された日銀ワーキングペーパーシリーズ、宮本亘氏のレポートで、日本の為替レート動向と決定要因に関する分析、大変詳細な分析が行われているんですけれども、結論として、要因分解により、二〇二一年以降のドル高・円安の相当部分が米国の金利変化に起因している可能性が示されたと述べているんです。

 二〇二一年、金利が上がった、米国で。それから、二〇二〇年の新型コロナ危機で、世界中で消費が急激に落ち込みました。しかし、日本以外の国は、その後、経済回復をして金利も上昇した。日本は、経済回復も遅れただけでなく、異次元の金融緩和政策の出口戦略が見えず、金利を上げるに上げられないという状況に今も陥っている。

 このレポートでは、金利ショックの役割は、他の期間や他の通貨では必ずしも重要ではないことも確認されたと。つまり、円についての問題なんですね、これは。やはり、日本に対して重大な問題ということも指摘されていると思うんです。ここには、異次元の金融緩和政策がいかに劇薬であったかということが示されていると思います。

 これはなかなかお答えしにくい立場かとは思います。しかし、日本銀行としても、この異次元の金融緩和政策ということがやはり問題だった、ここから抜け出すことが必要だということを直視した議論と政策が求められているというふうに私は思います。先ほどETFの買入れの問題は指摘ありましたけれども、これもそうですよね。株価を下げないためですよ。J―REITもそうですよ。株価を下げない、金融政策によって株価を下げない。こんなことをやって、異次元の金融緩和政策を続けたことが、今、日本経済に重大な問題をもたらしている。私はこういう認識での議論が求められていると思いますが、いかがでしょうか。

植田参考人 確かに、物価、賃金がなかなか上がらないというような認識が幅広く根強く広まっていた中で、諸外国では、インフレ率が上がる中で金利を上げる動きに転じていったわけですけれども、私ども日本では、それがなかなか素早い金利の上昇の局面に移ることはできなかったということはございます。

 しかしながら、少し遅れましたが、基調的物価上昇率が徐々に上昇してきているという中で、まず昨年の三月に大規模な金融緩和を解除し、それから引き続き二度ほど金利の調整を行わせていただいたところでございますし、国債の保有についても、昨年の七月にそれを徐々に減らしていくという方針を発表し、それに沿って運営しつつあるところでございます。

田村(智)委員 今言った円安一つ取っても、中小企業では、八割を超える事業者が、円安による高騰分、これの全てを価格転嫁することができないと大変な苦境に陥っています。

 やはり、アベノミクスにまさに追随した黒田日銀前総裁の責任は極めて重いと思います。日本銀行として、負の教訓をしっかりと分析して今後の政策に臨んでいただきたい、このことを述べて質問を終わります。

     ――――◇―――――

井林委員長 次に、内閣提出、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣加藤勝信君。

    ―――――――――――――

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 国際開発協会は、世界銀行グループにおいて、低所得国向けに超長期かつ低利の融資や贈与等を行うことを、米州投資公社は、米州開発銀行グループにおいて、中南米・カリブ地域の民間企業への出融資を行うことを、それぞれ主たる業務とする国際機関であります。

 政府においては、両機関が担う業務の重要性や、日本が国際社会で果たすべき役割に鑑み、両機関の増資に係る追加出資を行うこととし、これに伴い所要の改正を行うため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国際開発協会に対し、四千六百四十一億五千七百五十万円の範囲内で、新たに出資を行うことを政府に授権する規定を追加することとしております。

 第二に、米州投資公社に対し、国債で出資することを可能とするとともに、当該国債の発行条件、償還等に関して必要な規定を追加することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

井林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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