衆議院

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第6号 平成28年11月16日(水曜日)

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平成二十八年十一月十六日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 坂本祐之輔君

   理事 長島 昭久君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      尾身 朝子君    大串 正樹君

      勝俣 孝明君    門山 宏哲君

      神山 佐市君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    佐々木 紀君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      鈴木 貴子君    田野瀬太道君

      高木 宏壽君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    馳   浩君

      鳩山 二郎君    福井  照君

      船田  元君    古田 圭一君

      松本 剛明君    小川 淳也君

      太田 和美君    高木 義明君

      初鹿 明博君    平野 博文君

      牧  義夫君    笠  浩史君

      樋口 尚也君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      伊東 信久君    吉川  元君

    …………………………………

   議員           青山 周平君

   議員           河村 建夫君

   議員           笠  浩史君

   議員           富田 茂之君

   議員           伊東 信久君

   文部科学大臣       松野 博一君

   財務副大臣        木原  稔君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   財務大臣政務官      三木  亨君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 長谷川 豊君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          有松 育子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    高橋 道和君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 青木 由行君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     鈴木 貴子君

  小林 史明君     鳩山 二郎君

  菊田真紀子君     小川 淳也君

  牧  義夫君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     木村 弥生君

  鳩山 二郎君     勝俣 孝明君

  小川 淳也君     菊田真紀子君

  初鹿 明博君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  勝俣 孝明君     高木 宏壽君

  木村 弥生君     安藤  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  高木 宏壽君     佐々木 紀君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     小林 史明君

同日

 理事菊田真紀子君同日委員辞任につき、その補欠として坂本祐之輔君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十一月十四日

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の廃案に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第四一三号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の不登校対策にかかわる部分の白紙撤回に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六三号)

 同(吉川元君紹介)(第四六四号)

 同(阿部知子君紹介)(第五一八号)

 同(真島省三君紹介)(第五二四号)

 同(宮本徹君紹介)(第五二五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(丹羽秀樹君外八名提出、第百九十回国会衆法第三四号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に坂本祐之輔君を指名いたします。

     ――――◇―――――

永岡委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官長谷川豊君、文部科学省生涯学習政策局長有松育子君、初等中等教育局長藤原誠君、高等教育局長常盤豊君、スポーツ庁次長高橋道和君及び国土交通省道路局次長青木由行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田佳隆君。

池田(佳)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の池田佳隆でございます。

 まずは、本日、このような質問の機会をいただきましたことを、関係各位の皆様方に心から感謝を申し上げたいと思います。

 私が、青年会議所時代から衆議院議員として活動する今日に至るまで一貫して追求してきたことは、独立自尊の精神と良心が織りなす心ある国日本の創造であります。私が教育政策に強い関心を持っておりますのも、このライフワークにとって最も大切なことが、志を育む教育であるからであります。

 そこで、本日は、この観点から、初等中等教育から高等教育にかけて、幾つかのポイントに絞って質疑をしたいと思っております。松野文部科学大臣、義家文部科学副大臣、そして文部科学省の関係局長、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まずは、道徳教育の充実といじめ問題についてお伺いをさせていただきます。

 平成十九年に教育再生会議が徳育の教科化を提唱してから十年、いよいよ、平成三十年度から道徳が特別の教科となります。道徳教育の充実は、青年会議所の運動においても最も重視してきたことの一つであります。今回の道徳の教科化には、非常に大きな意義を感じているところでございます。

 教育で大切なことは、日本人が長年培ってきた道徳的価値観を教えること、自立した個人として健全な自主性を育むことであります。小学校低学年から、うそをついてはいけません、人の物を盗んではいけません、他人の悪口を言ってはいけませんなどと、ならぬことはならぬとしっかり教えながら、発達の段階に応じて、道徳的価値を多面的に捉えたり、他人事ではなく自分事として道徳的な葛藤を考えたりするといった道徳教育の充実が今こそ求められていると思います。

 この道徳の教科化については、道徳を教える立場である教員の資質や教材の充実、その積極的な活用など、課題も山積です。しかし、その分、今こそ道徳教育の充実のための創意工夫のしがいがあるのではないでしょうか。例えば、いじめ問題。具体的な事例に即して、いじめをしたらどういう罰を受けるのか、いじめてはいけないという道徳的価値は理解しているのになぜ実現できないのか、友情や信頼と社会正義といった道徳的価値同士の衝突についてどう考えるのかなど、道徳を考えさせる大事な題材ではないかと思います。

 そこで、松野文部科学大臣にお尋ねをいたします。

 道徳教育において、例えばいじめ問題などの具体的な事例に即して、道徳的価値の葛藤などを自分事として考えるといった学校現場の創意工夫を引き出すことこそが、道徳を教えていく上で非常に重要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 おはようございます。

 池田先生から御指摘、御提言をいただきましたいじめの問題は、大変深刻な問題であり、私自身も胸を痛めるものであります。

 学校における子供たちは、社会における私たち大人よりも守られていません。社会においての大人は、これはもう法律があり、事案によっては警察や裁判所があり、こういった社会の中で守られているわけでありますけれども、必ずしも学校において子供たちを守るという機能が十分ではない、このことはしっかりと受けとめていかなければいけないと思います。

 その考えによって、昨年三月、道徳を特別の教科とするための学習指導要領等の一部改正を行いました。この中で、道徳教育の指導内容がいじめ防止にも資することとなるよう留意することが明記をされております。このため、いじめについては、いじめをしてはいけないということを理解させるだけにとどまらず、一人一人の児童生徒が自分のこととして考え、議論することが求められると考えております。

 こうした授業を行うためには、児童生徒の発達段階や学級の状況などに配慮しつつ、御指摘のように、いじめに関する問題について具体的な事例を題材として活用することは大変有効であると考えております。

 去る十一月二日に、いじめ防止対策協議会から、いじめの防止等の対策にかかわる提言をいただき、その中で、道徳教育の充実についても言及されたところです。こうしたことも受けて、近々、私自身が、学校の先生に向けて、道徳教育を充実するためのメッセージを発信したいと考えています。

 その中でお伝えをしたいこととしては、道徳の授業の中でいじめに関する具体的な事例を取り上げて、例えば、どのようなことがいじめになるのか、なぜいじめが起きるのか、なぜいじめをしてはいけないのか、なぜいじめはいけないとわかっていてもとめられなかったりするのか、どうすればいじめを防ぐこと、解決することができるのか、いじめにより生じた結果についてどのような責任を負わなければいけないのかといったことについて、自分のこととして考え、議論をして学ぶことが大切であること、このような取り組みを後押しするため、文部科学省としても、授業の実践事例集を提供したり、いじめの具体的な事例等をもとに考え、議論できる書き込み式の教材を作成したりするといったことを考えております。

 文科省としても、この問題には全力で対応してまいりたいと思いますので、引き続き、池田先生におかれても、御提言いただければと思います。

池田(佳)委員 大臣、ありがとうございました。ぜひ推し進めていただきたいと思います。

 続いて、主権者教育の目的と方向性について御質問させていただきたいと思います。

 昨年六月の公職選挙法改正によって、投票年齢が七十年ぶりに引き下げられ、本年七月の参議院議員通常選挙から、十八歳以上の国民が選挙権を持つことになりました。

 我が党は、この問題についていち早く議論を行い、昨年七月、「選挙権年齢の引下げに伴う学校教育の混乱を防ぐための提言」を不肖私が座長として取りまとめさせていただき、安倍内閣総理大臣に提出をいたしました。

 そして、政府は昨年末までに、副教材「私たちが拓く日本の未来」を作成、一年生から三年生の国公私立、全国全ての高校生三百七十万人に配付、機動的な対応を行いました。選挙の意義や仕組み、模擬選挙や模擬議会といった実践的な教育活動などを盛り込んだこの副教材を活用して、各高校ではさまざまな取り組みが行われているところであります。

 この教材を活用して主権者教育に取り組んだ第一期生である十八歳の若者の投票率は、五一・二八%と、二十歳から二十四歳の三三・二一%を大きく上回りました。このことは、政府・与党一体となった取り組みの成果であろうと思います。

 そういったことを前提にしつつ、我々政治家は、いま一度、主権者教育の原点に立ち返らなければならないのではないでしょうか。

 主権者教育には、狭い意味と広い意味の二つの意味があると思います。

 狭い意味での主権者教育は、子供たちが選挙の意義や投票権を行使するための知識を理解し、積極的に政治に参加しようとする意欲や態度を育む教育のことであります。

 この狭い意味での主権者教育については、今回の公職選挙法改正を契機とした迅速な対応を土台としながら、なお一層の充実が求められます。

 他方、広い意味での主権者教育とは、日本人としての自覚と責任、品格を持って生きていくこと、その生きざま自体を大人が子供たちにしっかりと伝えることにほかならないのではないでしょうか。

 この広い意味での主権者教育にとってまず大事なことは、大人として、子供たちに教えるべきことは必ず教え込むということであります。大人は、善悪の判断などの道徳的価値、母語である日本語の豊かな語彙や言葉遣い、我が国の国柄、基本的な計算力などを子供たちにしっかり教え込むことに決してちゅうちょしてはならないと思います。

 また、主権者として、我が国を治めることの難しさから決して逃げることなく、考え抜き、判断したり選択したりする自覚と責任を持たせることの重要性も言うまでもありません。権利や要望、要求を声高に主張するだけではなく、その実現のためにどのような隘路があるのかを調べ、それをどう乗り越えていくのかを考え抜き、他者を説得して一歩一歩前進しようと努力することこそが、民主政治の基本であると考えます。

 この広い意味での主権者教育は、選挙の意義や仕組みに関する学習などに限定されるものではありません。学校における全ての教科の学習を通じて、他人事ではなく自分事として、主権者として地域のあり方や我が国の未来についていかに責任を果たすかという問題意識を持つことが大切であります。

 そして、このような主権者教育にかかわる教師には、人格や力量と同時に、指導に当たっては、教育基本法にも明示してありますように、政治的に公正公平であろうとする真摯な態度が強く求められてきます。また、教科の学習だけではなく、地域学校協働本部やチーム学校を推進したり、家庭教育を振興したりして、学校、家庭、地域の連携を深める必要があると考えます。

 そこで、文部科学省において、子供たちを主権者に育むための教育、すなわち主権者教育を牽引しておられる義家文部科学副大臣にお尋ねをしたいと思います。

 幼児教育から高等教育、家庭教育や地域における教育も含めて、主権者教育を広い意味で捉え、主権者として、逃げないで、課題に取り組み、粘り強く考え抜くという知的な姿勢を育むために、政府、文部科学省がしっかりと覚悟を持ってかかわることこそが大事だと思われますが、いかがお考えでしょうか。

義家副大臣 まず、池田委員におかれましては、党内のこの主権者教育の議論において先頭となって取りまとめを行っていただいたこと、深く敬意と感謝を申し上げます。

 選挙権年齢が十八歳に引き下げられたことによりまして、これまで以上に、国家、社会の形成者としての意識、そして、自身で課題を多面的、多角的に考え、自分なりの考えを主張する力を育むことが求められていることは明らかであります。

 学校も家庭も、そして本人も意識の改革をしていかなければならないだろうなと思うのは、さまざまなヒアリングを行いましたが、ある車座トークのときに、保護者がこうおっしゃっていました。主権者教育、そして政治教育と言いながら、児童会の選挙は、先生たちが会長を調整して、選挙が行われないじゃないですかと。確かに、日本じゅうを見ると、選挙に出て、投票があって、落ちると傷つくんじゃないかみたいな配慮の中で、本来立候補したいという人が、先生から説得されて立候補できないというようなことが往々にしてあるという保護者からの声もありました。

 これもやはり、しっかりと訴えて、評価されたら喜ぶ、評価されなかったら、どこが評価されなかったのか、本人がしっかり主体的に考える、これもまた非常に重要であろうと思いますし、また、高校生になってから突然ではなく、幼児期から、自分のかかわるそれぞれの社会の中で、自分がどのように、思いを、そして責任を全うしていくのかということを導いていくことも重要であります。

 具体的には、まずは高校で、社会参画に必要な力を実践的に育む科目公共、仮称でございますが、設置等の検討を具体的に行っております。また、大学入学時におけるオリエンテーション等を通じた学生啓発活動、子供が地域に主体的にかかわる地域行事などの機会、お客様ではなく主体者として参画する機会の確保や家庭教育支援等も行ってまいります。

 また、今後も、文科省だけではなく、本プロジェクトに基づいて総務省等とも連携して、総がかりで、学校、地域、家庭で子供たちを育む体制をつくり上げてまいりたいと思っております。

池田(佳)委員 ありがとうございました。ぜひ推し進めていただきたいと思います。

 このような教育改革を全力で推進するに当たって、どうしても乗り越えなければならない課題があります。

 先日、横浜市で、前任校でも生徒にセクハラをしていた教師が、現任校の生徒十四人に対するセクハラを理由に懲戒免職されたという報道がありました。あってはならないことであります。

 前任校で懲戒免職になっていたら、この十四人はセクハラ被害を免れたわけであります。子供たちが安心して学校で学ぶことができるように、子供たちの生命や身体は、学校が、そして教師が体を張ってでも守らなければなりません。教師が生徒に対してセクハラをするなどということは万死に値する行為だと思います。

 犯罪として処罰することよりも前に、一度でもわいせつ行為等をした教師を教壇に二度と立たせないようにすることは、教育を受ける権利を有する子供たちを守る政府、文部科学省の責任であるはずであります。

 そこで、初等中等教育局長にお尋ねをいたします。

 今回の横浜市の事例において、なぜ、前任校におけるセクハラ行為を理由に教壇に二度と立たせないような処置ができなかったのでしょうか。また、生徒にセクハラ行為をしていた事実がありながら、不適格教員として認定されず、教壇から離れることもなく、なぜ別の学校に転任できたのでしょうか。今回の事例を教訓として、これらのわいせつ教師が二度と教壇に立てないような仕組みの検討を行うべきだと考えますが、お考えを具体的にお聞かせ願いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の事案につきましては、横浜市の教諭が、顧問をしています運動部の女子生徒に対してセクハラ行為や体罰等を行ったため、平成二十八年十月二十日付で懲戒免職とされた事案であるかと存じております。

 この教諭につきましては、委員御指摘のとおり、前任校においても体罰行為を行っていたにもかかわらず、当時の校長からの注意や指導にとどまっておりまして、校長から懲戒処分権者である横浜市教育委員会への報告がなされておらず、その結果、問題が発覚しなかったといった経緯がございます。

 文部科学省といたしましては、当時の校長が横浜市教育委員会に報告を本来すべきであったにもかかわらず、しなかった点については、極めて問題があったと受けとめているところでございます。

 仮にその報告があったとすれば、児童生徒へのわいせつ行為に対する懲戒処分の基準を踏まえますと、横浜市教育委員会によって、当該教員は、前任校の段階で懲戒免職処分を受けていたと考えられます。その場合、教育職員免許法第十条におきまして、その教員の免許は失効するということになっているわけでございまして、そういう意味で、二度と教壇に立たないというような形の結果ができていたはずなんですが、それができていなかったということでございます。

 文部科学省といたしましては、教員のわいせつ行為等につきましては、厳正な懲戒処分を行うように各教育委員会に指導をしておりまして、各教育委員会においては、厳正に対応していただきたいと考えております。また、各教育委員会におきましては、わいせつ行為等の事案が発生した場合には、校長が学校の中でのみ対処するのではなく、教育委員会に確実に報告をするように、管理職への指導を徹底してまいりたいと考えております。

池田(佳)委員 ありがとうございました。指導だけでは解決できない問題でもあるかと思いますので、これからじっくりと、早急に検討を進めていただきたいと思います。

 続きまして、大学教育の成果の見える化についてお尋ねをしたいと思います。

 現在、与党において給付型奨学金の議論が進んでいるところであります。大事なことは、給付型奨学金が福祉ではなく教育振興のためのお金であって、やる気のある学生の頑張りを支援し、その学生がどんどん伸びて日本社会に貢献することによって、その奨学金が生き金になることであると考えます。

 このような観点から、我が国において欠けているのは、大学教育の成果の見える化ではないかと思います。

 昔から、大学で重要なのは受験の際の学力であって、その後の大学教育には余り意味がないなどと言われてきました。しかし、これでいいとは国民は誰も思ってはおりません。今回、大学入学希望者学力評価テストや高等学校基礎学力テストが検討されております。それによって、高校教育の質的充実が期待されているわけであります。

 このように、高校教育が改善されれば、さらに強く求められるのは、大学教育の質、大学に入ってから卒業するまでに学生をどこまで伸ばしたかであります。骨太な教養や高い専門性、技術力といった大学教育の成果の見える化を進める必要があると考えます。学生に力をつけた大学を支援し、頑張った学生を応援することによって、血税による公財政投資が生き金になる仕組みが今こそ求められております。

 そこで、高等教育局長にお尋ねをいたします。

 大学教育の成果を見える化することについては、国内外の大学でさまざまな取り組みが行われているとお聞きしております。我が国の大学についても、いよいよ、その教育成果の見える化に取り組み、偏差値ではなく、学生を伸ばした大学が評価され、支援されるような仕組みを構築する必要があると思いますが、具体的なお考えをお聞かせ願えればと思います。

常盤政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の大学教育につきましては、専門分化し過ぎている、あるいはその成果も見えにくいという指摘がございます。

 このため、全学的、組織的な教育として充実をすること、教育の成果を先生御指摘のとおり見える化して、社会に対してわかりやすく示していく、このことが重要課題であると認識をしております。

 文部科学省におきましては、ことしの三月でございますが、関係の省令を改正いたしまして、各大学が組織的に教育の質向上を図るように、卒業認定、教育課程編成などに関する方針の策定、公表ということを求めますとともに、その参考となるガイドラインの提供を行ったところでございます。

 ガイドラインにおきましては、これらの方針を起点としていわゆるPDCAサイクルを回すことで学生の学習成果を向上させること、その際、学生が何を身につけたのかという観点を重視して学生の学習成果の把握、評価を行うことなどを求めております。

 これらのことを受けまして、各大学では、これらの方針の策定、公表作業を進めているところでございますが、好事例といたしましては、例えば全学統一的な考え方のもとで、全ての授業科目について、学生に求める到達水準を成績評価基準として作成して、電子シラバスで学内に示していくというような取り組みであるとか、あるいは、卒業に至る教育課程の体系を全学的に共有するための履修系統図の作成、活用ということなど、教育成果の見える化と質向上に向けた取り組みが進められているところでございます。

 こうした、個別大学ではいろいろ工夫をしていただいておりますが、これを広く推し進めていくために、認証評価制度の改善あるいは基盤的経費の配分方法の改善、こうしたことを通じまして、全学的、組織的に教育の質向上に取り組む大学への支援を進めてまいりたいと考えてございます。

池田(佳)委員 ありがとうございました。

 現在、十年に一度の学習指導要領改訂についての議論が進められているところであります。かつて、ゆとり教育の中で、教師は指導者ではなく支援者だから、教え込みはいけないといった議論が横行し、それを扇動した文部科学省の官僚もおりました。ゆとり教育は、知識を機械的に一方的に覚えさせる詰め込み教育の改善策として打ち出されたものでありましたが、知識を教えることは教育にとって必要不可欠であって、知識なくして、生きる力も英知も知恵も育むことはできません。

 そんな中で、今、重視されてきたのがアクティブラーニング、日本語でいえば、主体的、対話的で深い学び。このような教育を目指すこと自体は、主権者として我が国を治めることの難しさから逃げずに、考え抜き、判断したり選択したりする自覚と責任を持たせる観点からも、大変重要な教育だとは思います。が、しかし、ともすれば、学校現場では、議論や対話、プレゼンテーションをさせればよいという教育スタイル、型、ポーズの話になってしまうのではないかと心配をしております。

 子供たちの議論やプレゼンを大事にしましょう、教師はそれを支援するにとどめ、口を挟まずに見守りましょうなどと言っていては、また、かつて大失敗したあのゆとり教育の二の舞になりかねないと、心の底から危惧をしているところであります。

 しかし、今回の議論はそんなことではないと考えます。新しい教育方法や教育スタイルを導入しなければなどと浮き足立つ必要などは全くないと言っていいと思います。

 そこで、初等中等教育局長にお尋ねをいたします。

 この主体的、対話的で深い学び、アクティブラーニングは、義務教育、特に小学校では新しい指導方法を導入しなければならないと浮き足立つことは全くなく、目の前の子供たちに必要な学びは何かを見きわめ、語彙の定着、知識の習得、何のための学びかを実感できる授業といった、いわば当たり前のことにしっかり取り組むことこそが大切だと考えますが、いかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、次期学習指導要領に向けて議論されております主体的、対話的で深い学び、いわゆるアクティブラーニングにつきましては、特に小学校段階では、その後の学力差に大きく影響すると言われております語彙の定着や、生きて働く知識の習得など、いわば当たり前のことにしっかりと取り組むことが重要であると考えております。

 義務教育段階におきましては、従来から、学習活動にばかり目を向けると、活動あって学びなしに陥るとの指摘がなされてきております。学校の教員におかれましては、新しい指導方法だと浮き足立つことなく、委員御指摘のとおり、教えるべきことはきちんと教えるということも含めて、目の前の子供たちに力をつけるために必要な学びの実現に向けて、これまでの蓄積を生かしながら、創意工夫を重ねていただきたいと考えております。

池田(佳)委員 本日、いろいろ議論してまいりましたが、これらを通底する理念についてお尋ねをしたいと思います。

 ゆとり教育は大失敗でありました。その目的は、知識の詰め込みを減らし、その分、考える力を伸ばそうとしたことにあったのでしょうが、結果的に、成果は出ず、むしろ観察力、洞察力が低下をしてしまいました。勉強がわからない子供たちが苦しんでいるから、全体の学習量を減らし、全員が百点をとれる学校にする、まことに短絡的で理念のない教育行政と言わざるを得ません。

 大事なことは、必要な知識の量をしっかりと確保しつつ、受験にかわる学習のモチベーションを文部科学省や社会、大人がしっかり提供することであったはずです。

 また、例えば、義務教育において、親たちの所得格差、地域の経済格差などによって、教育の機会平等、質的平等が損なわれてはなりません。全ての子供に必要な教育水準を維持することは、本来、国の責任のはずです。その責任や理念が曖昧になっているのではないでしょうか。

 文部科学省は、我が国の教育行政に対して、この国の将来や世界の平和を担っていく子供たちを国家を挙げてつくり上げていくのだ、育て上げていくのだという本気の覚悟を持って取り組むべきであります。

 教育への投資は、我が国と世界の平和のための最もとうとい投資だと考えます。財源がないから教育への予算を減らすというのは、国としてあってはならないことだと考えます。

 そこで、松野文部科学大臣にお尋ねをいたします。

 初等中等教育から高等教育に至るまで、我が国を支え、世界平和に寄与し得る人をつくり上げることが教育だという理念と覚悟、それを実現する明確な戦略を積極的に発信し、社会全体で教育への投資をしっかり行おうとする大きな流れをつくっていくことこそが何より大切だと思いますが、大臣の御決意をぜひお伺いしたいと思います。

松野国務大臣 我が国が持続的に成長、発展するとともに、国際社会の平和と発展に寄与するためには、教育が重要であります。そのため、教育投資を未来への先行投資として充実させていくことが必要です。

 昨年七月に取りまとめられた教育再生実行会議第八次提言においては、教育投資の充実に必要な財源確保のために、広く国民の間で教育投資の効果や必要性について認識が共有されていることが不可欠とされています。

 本提言を踏まえ、現在、中央教育審議会において、第三期教育振興基本計画の策定に向けた審議の中で、教育投資は未来への先行投資であることについて広く国民の間で理解の醸成を図るための方策を御議論いただいているところであり、こうした議論も踏まえながら、財源を確保しつつ、教育投資の充実に努めてまいります。

池田(佳)委員 最後に一言だけ申し上げて、質問を締めくくりたいと思います。

 国立大学の施設について、今後の大きな課題は、昭和四十年代から五十年代にかけて整備された膨大な施設の老朽化対策であります。

 日本の国益に資する各大学の機能強化に対応した良質な教育研究環境とするために、我が地元である名古屋大学を筆頭に、国立大学施設の老朽化対策を強力に推し進める必要があると最後に強く強く訴えさせていただき、本日の質問を閉じさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 前回、公明党の奨学金に対する取り組みについてずっと質問させていただきましたが、その中で、ちょっと何点か残ってしまいました。きょうは、木原財務副大臣に来ていただいていますので、ちょっと通告と順番が変わりますが、副大臣に絡むところから先に質問させていただきたいというふうに思います。

 今、給付型奨学金の制度設計について、自民党、公明党で協議を進めています。また、文科省の方も財務省と財源論についていろいろ詰めていると思いますが、なかなかまだ具体像が見えてきていません。

 公明党の中で今どのように考えているかを、まずちょっと御紹介させていただきたいと思います。

 給付型奨学金の必要性及び効果については、家庭の経済事情により進学を断念せざるを得ない生徒にとっては、貸与型の奨学金のみでは進学することが困難であり、教育の機会均等を実現するため、給付型奨学金を創設することが必要であるというふうに考えております。この給付型奨学金は、長期的視点からは社会に還元される財政支出であることからも、実現すべき施策であるというふうに考えております。

 給付対象ですが、児童養護施設出身者、また、里親に育てられた方、生活保護受給世帯、非課税世帯、これらが考えられますが、これは財源との見合いになるというふうに思います。

 給付額については、学生が進学を断念せざるを得ない状況にならないような給付額を設定する必要があるというふうに考えています。

 また、成績基準についても、多様な生徒を給付の対象とできるよう、成績基準のみにより選定するのではなく、学校推薦等の活用により対象者を選定することを検討すべきである。

 また、他の制度との組み合わせも大事だというふうに考えます。給付型奨学金と、無利子奨学金の拡充や新所得連動返還型の導入を組み合わせて、教育費負担、返還負担を緩和することが大事になってくると思います。

 財源ですが、教育・研究職返還免除制度の廃止に伴い現在の免除額が将来的に縮減する分の免除枠なども検討対象とすべきだ、また基金の創設も検討すべきだというふうに公明党は考えております。

 開始時期ですが、平成三十年度からの本格的な実施を念頭に、平成二十九年度進学者から一部先行して開始することが、今、給付型奨学金に対して国民は大変期待しておりますので、先行実施をできるだけやるべきだというふうに考えております。

 こういった論点がいろいろあると思うんですけれども、これについて何点か、文科大臣そして木原財務副大臣に確認をさせていただきたいというふうに思います。

 この制度設計に当たって、ポイントは何だろうかということで、公明新聞の方で小林雅之東京大学教授にインタビューをしました。小林先生は奨学金について日本で一番詳しいと言っても過言ではないと思うんですが、先生はこのように言われておりました。

 経済的理由で進学が難しい子供の背中を押せる制度かどうかということだ、進学先の少ない地方に住む低所得世帯の子供をどう支援するかが議論の一つの出発点だ、そうした子供たちは、自宅から通えず進学費用がかさむ上に、学習環境が十分でなく、学力が低いことも多い、成績要件を高くしてしまうと進学が難しい、一方、大学側が単位認定を厳格化している中で、卒業できることも必要であり、無条件で成績要件を外すことには疑問だ、このように小林先生はおっしゃっておりました。

 我が党のPTで、十一月八日に、東京都立文京高校の久保校長先生にお話を伺いました。先生の経験から成績要件についてどう考えますかと尋ねましたら、成績基準は三年間の評定平均が三・五以上であること、三・五は高等学校評価のB段階に当たる、三年間の取り組みに問題がないことを証明している、三・五の成績をとっていれば、三年間問題行動を起こさずに一生懸命やってきたという一番の証明になるんじゃないかというふうに久保先生はおっしゃっておりました。

 一部に成績要件が四・三以上を求める考えもありますけれども、無利子奨学金のこれまでの成績要件三・五を事実上撤廃するような動きの中で、やはり無利子で出ていた成績要件三・五というのが小林先生の指摘にも見合うものと思われます。自公の協議の中で、馳先生は三・五をめどというふうな発言もされておりました。三・五で切ってしまうのはいかがなものか、三・五の周りも救うべきだというような発言もされておりました。

 この点について、文部科学大臣はどのようにお考えですか。

松野国務大臣 省内に設置した有識者も参画する給付型奨学金制度検討チームにおいて、給付型奨学金の対象者の選定については、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しする観点から家計基準を設定すること、進学に向けた学生等の努力を促すといった観点から学力要件を設定することなどについて検討を進めてきたところです。

 このうち、学力要件については、特に成績基準についてさまざまな意見があると承知をしております。このため、成績基準のあり方は、透明性を確保した上で、学校推薦等の方法を用いることについて検討課題としているところです。

 文部科学省としては、平成二十九年度予算編成過程で制度内容について結論を得るべく、さらに検討を進めてまいります。

富田委員 次に、給付額についてお尋ねしますが、小林先生は給付額についてもインタビューで答えてくださいました。給付額について、月額三万円という案が一部で報じられたが、個人的には少な過ぎると思っている、進学を後押しする額なのか疑問だ、世界の例から見ても年間五十万から六十万円というのが望ましい、このように言われております。

 資料を机上配付させていただいておりますが、資料の二を見ていただきますと、義家副大臣を中心とする文部科学省給付型奨学金制度検討チームの八月三十一日付の「これまでの議論の整理」、その中にこの資料が入っておりました。各国を見ましても、やはり五十万から六十万の給付をしているのがほぼ通例かなと。それ以上の額もありますので、このぐらいないと、やはり進学の後押しにならないんじゃないかというふうに思います。

 我が党のPTが十月十八日に行ったヒアリングにおきまして、全国専修学校各種学校総連合会の担当者も、学生にかかる年間百二十万円ぐらいの授業料等いろいろありますけれども、その半分程度の給付がないと、学生に対しインセンティブが働かないというふうに訴えておられました。

 また、十一月八日には、生活保護世帯で育って、高校を特待生で卒業されて、私立大学に通う学生さんから、生活、就学実態を伺いました。この方は、月額五万四千円の無利子奨学金、そして月額十二万円の有利子奨学金、さらに大学独自の給付型学習奨励奨学金月額五万円を借りて、さらに、大学の授業の間に、大学の方でいろいろアルバイトをさせていただいて四万円を得ている。これでも、授業料が年額百二十二万円、また寮に暮らされていますので寮費が年額六十七万円かかって、本当にぎりぎりの生活だ、遊んだり何もできない、欲しいものも買えないというふうに言われていました。でも、一生懸命勉強して世の中の役に立ちたいということで、大変立派な学生さんでした。

 このような状況を踏まえますと、やはり、今私立の自宅通学は月五万四千円支給されていますけれども、この無利子奨学金と同程度の金額が妥当ではないかというふうに考えますが、文部科学大臣、どうですか。

松野国務大臣 検討チームの「これまでの議論の整理」においては、支給額について、進学を後押しする観点から、負担感を解消するようなものとすることが適当であり、学校種別や設置主体、通学形態を踏まえ、必要とされる金額を設定することとの方向性が示されております。また、実際に進学する際には、給付型奨学金のみならず、貸与型奨学金やその他の支援制度を併用することにより、進学費用を用意することが必要と示されております。

 今後、関係者の意見も聞きながら、さらに議論を行い、家庭の経済事情によって進学を断念している者の進学を後押しできるよう、また受給した者としない者の公平性にも配慮しながら、支給額を含め制度の詳細については平成二十九年度予算編成過程の中で検討を進めてまいりたいと考えております。

富田委員 今大臣が言われたいろいろな条件はあると思いますが、やはりきちんと後押しができるような額に、ぜひ与党でも議論して進めていきたいというふうに思います。

 次に、財源についてですが、その財源論に入る前提として、ちょっと文科省の方に一つ確認をさせていただきたいんですが、日本学生支援機構、JASSOの無利子奨学金の財源の一つである政府貸付金は、JASSOが借り入れてから三十五年後に返還することとされております。しかし、JASSOが奨学生の返還を免除した場合には、その免除した同額分について国に返すことも免除、いわゆる償還免除される仕組みになっているというふうに理解しておりますが、そのような理解で間違いないですか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 日本学生支援機構の無利子奨学金事業に関しましては、委員御指摘のとおり、三十五年を償還期限とする政府貸付金を財源として学生への貸与を実施しております。

 この政府貸付金につきましては、機構が法令に基づき学生の返還を免除した場合にあっては、御指摘のとおり、政府は、当該免除した額に相当する額の貸付金の償還を免除することができるとされております。

富田委員 今のを前提にいろいろ考えて、ちょっと木原財務副大臣にお伺いしたいんですが、給付型奨学金は、ニッポン一億総活躍プラン、また、未来への投資を実現する経済対策にもしっかり記載があります。それを考えますと、政府の重要政策の一つとして実現していくべきものであって、財源は政府予算全体の中で拠出することが必要であるというふうに我々は考えていますが、財務省もこのような認識に立っているというふうに理解してよろしいでしょうか。

木原副大臣 富田委員にお答えいたします。

 御指摘のように、今回の給付型奨学金というものは、ニッポン一億総活躍プラン並びに未来への投資を実現する経済対策に記載がございます。未来への投資を実現する経済対策というものにおいて、平成二十九年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得るというふうにもされているところです。

 同時に、富田委員初め与野党を超えた文教委員の先生方で長らくこれは問題意識として持っておられて、ようやく実現の一歩手前まで来ているということも同時に言えるかというふうにも思いますので、現在、そういったさまざまな財源も含めて、予算編成過程で検討を進めているというところでございます。

富田委員 ぜひ財源の中に、先ほど申しました教育・研究職返還免除制度、これは平成十六年に廃止されましたので、そこの枠がずっと平成三十二年以降減ってきます。また、このときに一緒に大学院生の奨学金の制度ができたのもわかっておりますが、こういったこともぜひ政府全体の予算の中の一つとして考えていただきたいなというふうに思っております。

 また、文科省の方といろいろ打ち合わせをしている中で、返還金がこの七、八年大分ふえてきている。奨学金が三万、五万、十二万とか、いろいろ制度ができてきましたので、多く借りている方、また返還滞納、延滞が半分ぐらいに減ってきた、この何年間で。八パー台だったのが四パー台になってきた。そういった中で、この直近の七年間で、平均で返還金が約八十億ぐらい増加してきている。

 この返還金は、当然政府に返すものですから、そのまま使えるというわけじゃありませんけれども、返した分、今度、政府拠出金はその分出さなくていいわけですよね。そうすると、政府全体の予算の中ではそこの枠が余ってくると思いますので、そういったこともぜひ念頭に置いていただいて、木原副大臣は元自民党の文部科学部会長ですので、そういうところも、文部科学に詳しいということで、財務省の中で主張していっていただきたいというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、この奨学金の問題、木原副大臣にいていただいていますので、一点、ちょっと違った観点から御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 特別支援教育における通級指導の充実という問題について御質問いたします。

 十一月四日の日に、発達障害のお子さんを持つ保護者の方々から、いなくなっちゃいましたけれどもここにいらっしゃる宮川先生、馳先生とともに、いろいろなお話を伺う機会がありました。その中で、通級による指導の担当教員の基礎定数化を要望する三万人の署名を預かりました。

 その後、大臣のところにもお母さんたちと一緒に行かせていただきましたけれども、この通級による指導のニーズは年々高まっていますけれども、学校現場では必要な教員が足りず、通級指導教室に申し込んでもあきがなくて、相当数の待機児童が存在しているという保護者の方々の悲痛な声を伺いました。

 あるお母さんは、一年から四年まで申し込んだけれども、ずっとだめだった。五年、六年は申し込まなかった。また、ずっと申し込んでいてだめなお子さんが、学校でいじめに遭って不登校になってしまった。そういったことを話されたお母さんもいらっしゃいました。

 こういうことを考えて、どうしてそうなったのかなということを考えますと、通級による指導の担当教員は毎年予算の範囲内で加配措置されるため、通級指導教室を設置したいという自治体の全ての要望に応えられていない、ここに最大の理由があるというふうに考えられます。

 資料三をちょっとごらんいただきたいんですが、二枚目の上ですけれども、この資料三の左側の図を見ていただきたい。

 これは、四月七日開催の財政審の財政制度分科会の資料に入っていたものです。右側は、十一月四日開催の資料。これは私の事務所の方でくっつけて対比しやすくしたものですが、これを見ていただくと、左側の方に、「基礎定数化し得るもの」というのが一番下にありますね。その上に、「学校数、クラス数、児童生徒数等に連動」という枠があって、その枠の中に「外国人・特別支援」と書いてあるんですね。

 この子たちのためにやはり基礎定数化すべきだというふうに、この四月七日の財政審の分科会では、こういう資料が配られて議論されていた。これは、お母さんたちにとっては、自分たちのことを考えてくれて、これまでの加配ではなくて基礎定数化してくれるんじゃないかということで、物すごく期待が高まったようでありました。

 ところが、この資料の右側の図を見ていただきますと、特別支援教育については、外部人材の活用も含め、費用対効果を最大化するよう検証、分析する必要があるというふうな形になって、枠の中の「外国人・特別支援」が消えちゃっているんですね。(発言する者あり)いいやじが飛びました。四月の段階で議論を私は進めるべきだと思うんですが、突然、十一月四日になってこんなふうにここを変えてしまうというのは、やはり、発達障害のお子さんを初め、そういった障害を持つ子供さんたちを抱える保護者の皆さんを本当にがっくりさせてしまう。

 何で財務省は、これは考え方を変えたんでしょうか、どうしてこういうふうになったんでしょうか。

木原副大臣 まず、財務省は通級指導による指導の担当教員を基礎定数化すべきとの考え方を変えたのかという御質問ですが、変えておりません。

 御承知のとおり、近年、発達障害など通級指導の対象となる児童生徒の数は増加をしておりまして、これまでも加配定数を措置してきたところであります。また、通級指導の加配定数、定員についても基礎定数化の要求が提出されているという、先ほど紹介していただいたことも承知をしているところです。

 他方、骨太二〇一六や改革工程表においても、文教分野も予算の質の向上、重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底が求められているということ等を踏まえ、要求官庁からの十分なエビデンスの提示を条件として、費用対効果、また他の手段との比較など予算編成過程で検証しつつ、議論を進めることとしております。

 発達障害を持つ児童生徒への対応についても、通級指導教室の設置を必要とせずに、外部人材により対応している自治体もあり、また通級指導に関する教員一人当たりの児童生徒数は都道府県別に大きな開きがある、そういった実態も踏まえながら、丁寧な検証、分析を行う必要があるというふうに考えており、繰り返しますが、基本的な方針というものは変えていないということは申し上げております。

富田委員 ぜひ、副大臣には、財務省の中で今の考えをずっと主張していただきたいと思います。

 ただ、財政審に財務省が出した資料では、現在の教育環境を継続させた場合でも、今後十年間で定数は四万九千人減になるというような記述がありますよね。ここで、現在の教育環境を継続と、今、発達障害のお子さんたちは通級指導に通いたくても通えないんです。通えない状態をそのまま放置しておいていいのか、やはりそういう認識に立たないといけないと思うんですね。

 障害によってさまざまな課題に悩んでいる子供たちや保護者の皆さんにとっては、通級による指導の必要性というのは本当に待ったなしの状況だというふうに思います。通級による指導を受けたくても受けられない、いわゆる通級待機児童生徒、こんな言葉を使いたくないんですが、実際に通級待機児童生徒というのが出てきているわけですよね。ここを、このお子さんたちを抱えたお母さんたちの悲痛な声に、やはり財務省としても私は真摯に耳を傾けていただきたいというふうに思います。

 発達障害については、早期からの支援が有効であるとされており、義務教育段階からの十分な支援が必要であるというふうに思います。これらの障害のある子供たちへの支援を怠ることは、将来の社会的コスト、また本人や御家庭のさらなる御苦労を招くことになるというふうに思います。

 お母さんの中に、私たちは、親は、この子たちより先に死んでいくんだ、この子たちが将来大人になってどうなっていくかをずっと見守ることはできない、だから、できるだけ小さな段階で少しでも自立できるようにいろいろな教育を受けさせてほしいというのが、発達障害を初め障害を抱える親御さんたちの本当に共通の気持ちだと思いますので、ぜひ、特別支援教育における通級による指導については、毎年の予算の範囲内で配置される加配措置ではなくて、対象となる子供の数に応じて確実に配置される基礎定数というふうに持っていくべきだと思いますので、ここについての木原副大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。

木原副大臣 先ほども申し上げましたが、発達障害など通級指導の対象となる児童生徒数がふえているということは承知しておりまして、二十八年度の予算では、特別支援教育への加配定数を五十人増員いたしまして、全体として六千三百二十六人としたところであります。

 今委員が御指摘いただいたような点、また先般、そういった署名活動によりさまざまな要求が提出されているということを踏まえながら、今後も財務省としてもしっかりと検討していきたいと思っております。

富田委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 副大臣、これで退席していただいて結構です。ありがとうございました。

 残りの時間、ちょっとまた奨学金に戻って、文科大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 資料の一で、ちょっとお配りしたのを見ていただきたいんですが、やはり返還に困っている卒業生は大勢いらっしゃいます。ただ、この資料の一の、こういったことを知らない方がまだまだいらっしゃるんじゃないか。減額返還制度とか返還期限猶予制度、本当に大変な方にはこういう制度を利用していただければ、奨学金の返還で生活自体が成り立たないとかそういうことにはならないと思うんですが、なかなかこの制度の周知徹底がされておりません。

 この点について、文科省としては今後どのように取り組んでいかれるんでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘、資料にもございますとおり、奨学金につきましては、所得が低い場合に返還を猶予する制度、あるいは返還月額を二分の一に減額して返還するいわゆる減額返還制度というものがございます。

 こういうことの周知ということでございますけれども、私どもといたしましても、この周知の点で課題が今あるということは認識をしてございまして、例えばでございますが、平成二十九年度の概算要求では、高校の先生方向けの説明資料をつくる、あるいはウエブサイトでの対応、あるいは高校生の段階でファイナンシャルプランナーと連携した周知、広報というようなことができないかということで、財政当局とも議論させていただいているというような状況でございます。

富田委員 ぜひしっかり実現していっていただきたいというふうに思います。

 次に、新所得連動返還型の導入についてお尋ねをしたいと思います。

 平成二十九年度の進学者から、卒業後の年収が百四十四万円以下の場合、毎月の最低返還額を二千円にするという、低所得者の負担を緩和する制度が導入されますが、これに伴ってどのような効果が期待されているんでしょうか。

松野国務大臣 卒業後の所得に返還月額が連動する新たな所得連動返還型奨学金制度については、平成二十九年度進学者からの着実な実施に向けて準備を進めているところです。

 本制度は所得に連動して返還月額が決定されることとなっており、所得が低い状況でも無理なく返還することができます。例えば、私立大学自宅生では貸与月額が五万四千円になり、その場合、返還月額が一万四千四百円となりますが、卒業後の所得が百四十四万円以下の場合には二千円という返還月額となるなど、大幅に負担が軽減されます。このことにより、将来の奨学金の返還について極力不安を取り除き、意欲と能力を有する者の高等教育機関への進学機会の確保につながるものと考えております。

富田委員 今大臣のこういう効果があるというのから考えると、これはまず無利子奨学金からの導入になっていますよね。先ほどちょっと私が紹介させていただいた学生さんの例のように、無利子を借り、有利子を借り、さらに大学の奨学金も借りて一生懸命頑張っている、こういう方がやはり多いんだと思うんですね。

 そうすると、無利子だけこの新所得連動返還型を入れても、有利子の部分はやはりそのまま返還するようになっていきますので、有利子奨学金への導入の道筋をつけていくことが大事だと思うんですが、その点はいかがですか。

松野国務大臣 新たな所得連動返還型奨学金制度については、有識者会議の審議のまとめにおいて、無利子奨学金及び有利子奨学金の両方に導入することが望ましいとされているところですが、一方で、有利子奨学金については、返還期間が長期化した場合に利子負担が大きくなるといった課題があり、その導入にはより慎重な検討が必要であるため、無利子奨学金の運用状況を見つつ、将来的に導入を検討することが適当とされています。

 文部科学省としては、同審議まとめを踏まえ、まずは無利子奨学金への導入状況を見きわめながら、有利子奨学金への導入を検討してまいりたいと考えております。

富田委員 言われることはよくわかるんですけれども。

 加えて、公明党の給付型奨学金推進プロジェクトチームとしては、四月二十二日に安倍総理大臣に対して給付型奨学金の創設に向けた提言を提出させていただいた際、その中で、新所得連動返還型奨学金制度について、現在返還困難に陥っている者など、既卒者にも新制度が適用されるよう検討を行うことが必要であるというふうに提言をさせていただきました。

 まず無利子からやってみて、次、有利子に、実態を見ていくということですが、それに加えて、既卒者で本当に返還困難に陥っている方も将来的にはこの制度の枠内に入れていく必要があると思うんですけれども、そこはどうでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御指摘がございましたが、奨学金の返還に当たりましては、所得が低い場合に返還を猶予する制度、それから、返還月額を二分の一に減額して返還する制度がございます。現在、奨学金を返還中で返還困難な方について、このような制度の利用ということが考えられると思います。

 既存のこういう減額返還制度をより柔軟に活用することによりまして、さらに返還負担を軽減すべきという方向性が有識者会議でも示されているところでございます。この会議の議論を受けまして、文部科学省としても、返還が困難な方へのさらなる救済策について検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

富田委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、既卒者全員に適用すると、もともと文科省の方からレクさせていただいたら、七百五十億円ぐらい返還金が減ってしまうと。これはかなり大きな額ですので、簡単にはできないと思います。事務的なコストもかかるということです。それでも、返還困難な既卒者のために、やはりこういった枠の中に入れていくんだという方向でぜひ文科省の方でも検討していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民進党の太田和美でございます。

 本日は、教育のICT化について質疑をさせていただきたいと思います。松野大臣、同郷でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、各学校で教育のICT化が今現在進んでおりますけれども、教育においてのICTの活用がいかに有効であるかについて、教員や一部の関係者には理解が進んでいるものの、まだまだこの理解が十分に広がっていないというふうに思っています。

 教育のICT化とは、単に、黒板、教科書、ノートなどのアナログメディアを電子黒板、デジタル教材、PCなどに置きかえるだけというふうに考えていたり、少し極端ですけれども、子供をパソコンの画面の前にくぎづけにするのかとか、オタク化が進むだけだとかというような声もまだまだ聞こえてきます。そこで、教育のICT化を正しく理解してもらうために、まず、その効果について、保護者を初め社会一般に広める必要があると考えます。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、教育のICT化の効果について、大臣の御認識をお伺いさせていただきたいと思います。

松野国務大臣 ICTを活用した授業は、子供たちの学習への興味、関心を高め、わかりやすい授業や子供たちの主体的な学びを実現し、確かな学力の育成に資するものと認識をしております。

 また、個々の理解の程度に応じた指導にも有効であり、さらに、主体的、対話的で深い学び、いわゆるアクティブラーニングの視点からの授業改善においてもICTは極めて有効と考えております。

 こうしたICTを活用した教育の必要性については、次期学習指導要領に向けた中央教育審議会の議論においても指摘されており、教員や関係者の理解は広まっているものと認識をしておりますが、今後さらに理解を広めてまいりたいと考えております。

太田(和)委員 文科省にお願いをしたいんですけれども、今までこのICT化を進めてどのような効果があったのか、具体的な事例についてお伺いをさせていただきたいと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 教育におけるICT活用を推進していく上で、このICTの活用によってどのような効果があるのか、教員の教え方や子供の学び方がどのように変わるのかを把握していくということが大変重要だというふうに考えております。

 文部科学省が平成二十六年度に実施をいたしました調査研究におきましては、タブレット端末を活用した場合と活用しなかった場合で、客観テストの結果におきまして、活用した場合の方が児童生徒の成績が統計学的に有意に高いといったような事例や、児童生徒の意識調査の結果におきまして、小中学校ともにタブレット端末を活用した場合の方が、例えば、授業に集中して取り組むことができた、自分の考えや意見を友達や先生にわかりやすく説明することができたといったことについて高い評価が得られたという結果が示されているところでございます。

 このほかにも、ICTの活用に先進的に取り組んでいる自治体等におきまして結果検証の取り組みがさまざま行われておりますけれども、同様の結果が得られていると承知をしております。例えば、熊本県におきましては、タブレットPC等を活用した場合の客観テストの正答率が高いということ、あるいは、研究者による調査におきましては、実物投影機などを活用して指導した場合の得点の伸びが大きいといったような効果が認められているところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 学力の成績の効果などについては、ある意味説得力があると思います。急速に進化するICTなどの技術を使いこなすことによって、子供たちの教育は無限に広がっていくと思います。

 そこで、教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画、二期目ということで整備を進めてきたわけでございますけれども、その現在の整備状況についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 教育のIT化については、約七年前に教育の情報化ビジョンが発表され、教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画が立てられ、現在は二期目で、来年には二期目の最後の年を迎えます。

 この二期目の目標には、まず一つ目、教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数を三・六人、二つ目、電子黒板等を一クラスに一台、三つ目、高速インターネット回線または無線LANの整備率を一〇〇%にしよう、四つ目に、教員一人一台の校務用コンピューターの整備です。

 しかし、文部科学省の調べによりますと、ことしの三月の時点の整備状況は、教育用コンピューターは、目標の一台三・六人に対して、一台当たり六・二人にしか整備されておりません。電子黒板は、目標の各クラスに一台に対して、整備率が二一・九%、そして、高速インターネット回線または無線LANの整備は、順調に整備しつつあり、約九〇%弱、そして、各教員に一台の校務用コンピューターは、目標が達成されており、一一六%となっております。

 来年度は教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画の最終年度ということもあって、数値上では、特に教育用コンピューターと電子黒板等の整備率については、目標の達成は困難であるというふうに予測できます。

 そこで、大臣にお伺いさせていただきたいんですけれども、この整備加速に向けて、今後の取り組みについてどうなされるお考えを持っているか、お願いいたします。

松野国務大臣 文部科学省では、平成二十六年に教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画を策定し、計画期間である平成二十六年度から二十九年度まで、毎年千六百七十八億円の地方財政措置が講じられているところですが、教育の情報化の意義について認識が不十分であったり、ICT機器の整備に関する知見やノウハウが不足をしている地方公共団体も見られ、目標達成には取り組みの加速が必要です。

 このため、文部科学省においては、本年七月二十九日に教育の情報化加速化プランを策定するとともに、本年八月三十一日に、各都道府県・指定都市教育委員会向けに、「教育情報化の推進に対応した教育環境の整備充実について(通知)」を発出するなど、地方財政措置の執行促進に取り組んでいるところです。

 文部科学省としては、引き続き、同プランの実現に向けた取り組みを進め、地方自治体による学校ICT環境整備の加速に努めてまいります。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 諸外国の状況について申し上げますと、二〇一五年のデータでありますけれども、コンピューター一台当たりの児童生徒数は、アメリカでは三・一人に一台、韓国では四・七人に一台です。残念ながら、教育のICT化について、我が国は、数値上は諸外国におくれをとっておる、利用促進についても現状は十分ではないというふうに言わざるを得ませんので、ぜひ整備の加速に向けて御努力をいただければというふうに思います。

 そこで、学校間について、今整備率の格差が生じてしまっていると思います。そのことについてちょっとお尋ねをしたいんです。

 そもそもになるんですけれども、文科省が目標として数値、水準を示したのが、一台当たり児童生徒三・六人という目標を設定していると思いますが、この数値を達成したことで、目標は達成された、ICT化が促進されたというふうに判断するのは本当に正しいのかということです。

 数値目標というのは必要なんですけれども、現在の数値目標はあくまでも複数の学校の平均をとった数値であるため、自治体単位では目標が仮に達成されたとしても、学校としては達成されていない学校が多数あります。

 学校の規模はさまざまであります。例えば柏市なんですけれども、平成二十六年の柏市全小中学校における教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数は五・八人に一台であります。我孫子市については八・〇人に一台です。柏市については、六十二校ある小中学校別で見ると、最大で十七・八人に一台の学校が十一校あります。最小では一・三人に一台という学校が三校あります。このように、ある種の整備率の格差が一つの市の中でも生じているような現状でございます。

 もちろん、学校の規模、いわゆる児童生徒数が学校によって異なるからでありますけれども、この現象は、恐らく、柏市とかだけではなく全国においても生じていると思います。

 例えば、二期目の目標の中には、コンピューターの教室四十台という目標がまず設定されていますので、当然ながら、自治体はまず各学校に四十台のパソコン教室の整備を進めます。全児童数五十人の学校と八百人規模の学校とは、当然ながら一台当たりの児童生徒数というのは異なってきてしまいます。

 このような理由から、ICT機器の整備率については学校間の格差が生じていますけれども、学校間の格差の解消に向けて、その検討について文部科学省にお伺いをさせていただきたいと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 まずは、ICT環境整備の地域間格差も大きいわけでございますが、こうした地域間格差を解消するために、これまで文部科学省におきましては、先ほど大臣からも御答弁ございました、都道府県・指定都市教育委員会に向けました通知を発出して、学校のICT環境の充実に向けた地方財政措置の積極的な活用の促進に努めているところでございます。

 また、各自治体が学校にICT環境を整備するに当たって、さまざまなアドバイスが求められることがございます。自治体のニーズに応じまして、学校ICT環境の整備に必要な助言を行うためのICT活用教育アドバイザーの派遣をするなどして取り組みを進めているところでございます。

 また、学校で、学校の生活や授業にどのようにICTを活用していくかに当たりまして、さまざまな指針と申しますか、さまざまなアドバイスが必要だと思います。私どもは、本年十月に、学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議を設置いたしまして、検討を始めたところですけれども、そこでは、効果的なICTを活用した学習場面等について、あるいは学校におけるICT環境整備のあり方について、そして地方公共団体におけるICT環境整備計画の策定を促進するための方策についてなどの検討を始めたところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、各地域におけるICT環境整備が進むように、地方公共団体等への働きかけや、今申し上げたような支援に努めてまいりたいと思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 ICT化の整備について、なかなか進まないまず一つの理由として、財政措置の算定基準のことについて問題があるというふうに私は思っております。

 まず、大臣もおっしゃったように、今回のICT化の環境整備については、地方交付税として財政措置がなされています。例えば、六百人程度の高校では一校当たり年間四百二十四万円、十五学級程度の中学校には一校当たり五百六十三万円、十八学級程度の小学校には一校当たり五百六十四万円の交付税による財政措置がなされています。当然、この財政措置というのは、文部科学省が示した数値の目標、これを達成できる予算であると思います。

 しかし、まずお伺いしたいのは、一校当たり五百六十三万円の交付税の算定基準のその基本的な考えと、そして、教育用コンピューターを一台当たり児童生徒数三・六人で整備する際の一台に要するコストを幾らで見積もった算定なのかということを、政府参考人の方にちょっとお答えいただければと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 ICT環境整備に当たりましては、教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画におきまして、第二期教育振興基本計画に定めた目標水準を達成するために、先ほどから出ておりますように、平成二十六年度から二十九年度までの単年度で千六百七十八億円、四年間の総額ですと六千七百十二億円の地方財政措置が講じられているところでございます。

 その内容、考え方でございますが、教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数を三・六人、これは、その内訳といたしまして、コンピューター教室には四十台、各普通教室には一台、特別教室には六台、そして設置場所を限定しない可動式コンピューターを四十台、こうした考え方で整備をするということでございます。

 また、加えて、電子黒板あるいは実物投影機を一学級当たり一台、超高速インターネット接続率及び無線LANの整備率を一〇〇%、校務用のコンピューターを教員一人当たり一台、教育用ソフトやICT支援員等を配置、これらを整備するための費用が計上されているところでございます。

 教育用コンピューターについては、不足台数の新規導入と既存のものについてのリース費用が計上されておりまして、文部科学省では、適切に地方財政措置が講じられているというふうに考えております。

 なお、そのうち、教育用コンピューターでございますけれども、ただいま申し上げましたように、不足台数の新規導入と既存分に係るリース料といたしまして単価二万円が計上されているところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、各地域におけるICT環境整備が進むように、地方公共団体への働きかけや支援に努めてまいりたいと考えております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 今、コンピューターの一台当たりのリース料を単価二万円で見積もっておられる、それを積み上げていって、大体一校当たり五百六十三万円の交付税措置がなされているというふうになってきたんだと思うんですけれども、結局、整備達成が困難な一つの理由はコストのことだと思います。

 文部科学省は、まず数値目標だけは示して、リース料を単価二万円で見積もったということは各自治体にしっかり指導なされていないと思います。各学校で、まず、ICT環境整備をどのように進めていいのかよくわからないとか、また、地方自治体が教育用のICTを調達する際にどのようなスペックのICT機器を整備したらいいのかわからないというようなお声があります。学校用専門パソコンというようなものもあるわけではありませんし、そんなに容量も要らないと思いますけれども、結果的に、地方自治体としてはわからず、高コストになるケースというのがたくさんあるんだと思います。

 その中で、結局、財政措置、財政の問題もあって、地方自治体としては、地方交付税に一括してお金を入れられてしまうと、環境整備用に充てられたとしても、ICT化に向けた整備について予算をとることというのは非常に難しくなっているのではないかなというふうに思います。

 そこで、次に、これからもこのICT化を実現するためには、やはり今お話をさせていただいたような情報端末のコストの件があることは否めません。文部科学省の試算では、教育用コンピューターは全国で約百九十万台既に今整備されておりますが、例えば一台当たり三・六人にするには、あと約百四十万台整備する必要があるとしています。

 そして、将来的には一人一台を目指している中、今後さらに台数をふやしていかなければならないので、この情報端末の整備に係る費用はどんどん膨れ上がってきてしまいます。

 地方自治体としても国としても、この予算を確保していくのは非常に容易でありませんので、情報端末だけではありません、大臣、通信料のことなどについてもこれから非常に問題になってくると思います。

 この通信料についてなんですけれども、アメリカでは、通信事業者が学校用通信料を安くするという、アカデミックディスカウントというものを設けているというふうにお聞きしています。

 そこで、ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、学校教育利用という観点からも、大臣がぜひリーダーシップを発揮して、文科省を中心に、各省庁横断的にその負担の削減に向けて通信事業者と交渉するなどといった検討、取り組みを行うべきではないかなというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 今後、学校現場に教育用情報端末が普及をしていくためには、できるだけ低廉な情報端末の整備、維持等の実現が期待をされています。

 このため、教育の情報化加速化プランに基づき、本年十月に文部科学省に設置した学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議には、関係業界団体の代表者にも有識者として参画していただいており、ICT機器等の標準化を通じた教育情報端末の低廉化について御議論をいただくこととしております。

 文部科学省としては、本有識者会議での議論を踏まえ、必要に応じて関係省庁とも連携を図りながら、教育情報端末の低廉化方策について検討を進めてまいります。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 このICT化に向けた環境整備を行っていく上で、今後、情報端末、結局は誰が負担するのが正しいのかということが問題になってくるかと思います。

 二期目が今終わるということで、文部科学省でも、有識者懇談会、二〇二〇年代に向けた教育の情報化に関する懇談会の最終取りまとめというのがこの夏に発表されましたけれども、その中で情報端末について、地方自治体が負担すべきなのか、または保護者が負担するべきなのかという基本的な考え方が整理されておりました。

 まずは、教育用コンピューターの情報端末が教具なのか、それとも校具なのか、それとも学用品なのかについて整理されていたんですけれども、校具とは学習机や椅子などであり、教具は授業で使用する道具などであり、これらについては児童生徒が共有で使用することなどから、基本的には自治体が負担するというふうに整理されていました。一方、学用品とは、各児童生徒の持ち物であり、就学援助制度を利用している場合を除き、費用は原則として各家庭が負担するものとしています。

 現在、教育用コンピューターはまだ一人一台整備されていませんので、よって、児童生徒は情報端末を学校の授業においては共有で使用しており、情報端末は基本的に学校で管理されていますので、生徒が自由に持ち歩いたり、持ち帰るということは想定されていないことなどから、現時点では教具として位置づけることが妥当とされています。

 しかし、これから一人一台ということになったときに、共有物ではなくなって、児童生徒が持ち帰ることなども想定されます。そのときに学用品として位置づければ、各家庭がその費用を負担することが適当と考えられるというふうに整理されておりました。

 そこで、お尋ねしたいんですけれども、この情報端末の負担論について、教具だから自治体の負担、学用品だから家庭の負担と一概に整理していいのでしょうか。持ち帰る、持ち帰らないだけのことであれば、教科書も持ち帰ります。また、学用品とは一般的に鉛筆や筆箱、ノートのことであり、それらは数百円とか、高くても数千円のものでありますし、決して何万円もかかるものではありません。

 そこで、この情報端末の負担について、一人一台となったときに、地方自治体負担とすべきか、家庭が負担すべきか、大臣の御見解をお聞かせいただければというふうに思います。

松野国務大臣 各家庭による教育用コンピューターの費用負担に関して文部科学省が行った調査によれば、小学校及び中学校段階においては、約九四%の教育委員会関係者が否定的な回答をしています。一方で、高等学校段階においては、約二三%の教育委員会関係者が肯定的な回答をしているところであり、例えば、佐賀県の公立高校においては、教育用コンピューターの費用を各家庭でも負担し、生徒一人で一台の教育用コンピューターを使用しています。

 文部科学省としては、各家庭による教育用コンピューターの費用負担に関する調査研究に必要な予算を要求しており、学校現場の意見も十分に参考にしながら、教育用コンピューターの購入費用を各家庭において負担する際の課題等について整理することとしております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 負担論については、やはり子育て世代の実情と現在の教育費、家計負担が今非常に高いというような現状もございますので、それを踏まえて、しっかりと熟議を求めたいと思います。

 最後に、大臣の方にお伺いをさせていただきたいのが、ICTを活用したアクティブラーニングの授業やプログラミング授業といっても、なかなか具体的なイメージが湧かないと思います。

 昨日、私、地元の柏市第三小学校で行われたプログラミングの公開授業というものを見てまいりました。二〇二〇年から、小学校でプログラミング教育がこれから必修化されます。それで、全国に先立って、来年度からは柏市全小学校においてプログラミングの授業を開始することとなっています。

 プログラミング教育は必要な手順を論理的に考えるのが目的で、児童生徒は、さまざまな指示を出して、画面上のキャラクターを意図したとおりに動かしていました。プログラムの作成技術を身につけるのではなく、課題解決に向けて順序立てる、考える力をつくるのが目的だというふうにお聞きしております。

 大臣にお伺いしたいのですが、大臣は所信において、現場第一というふうに最後のところで申されました。言葉で聞く、または読むというより、こういったことはやはり見ることによって本当に理解が深まると思います。御地元が千葉県であるということもありますから、御多忙とは存じますけれども、ぜひとも柏市の取り組みを一度ごらんになっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 残念ながら、文部大臣就任後にまだそうした授業を視察しておりません。

 第四次産業革命が進み、人工知能やIoTが社会の生活を大きく変えていくと予測がなされている中において、ICTを活用したアクティブラーニングやプログラミング教育を進めていくことは重要なことと考えておりますので、機会があればぜひ行きたいと思います。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 教育のことについては、与党も野党もなく、子供たちのために私たちがしっかり頑張っていくことが求められていると思いますので、これからも大臣においては、お体に御留意されながら、しっかりと子供たちのために頑張っていただきますことをお願い申し上げて、時間でございますので、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 大臣、ありがとうございました。

永岡委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 きょうは、いつもは厚労委員会なんですが、こちらに来させていただいて、久しぶりに質問をさせていただきます。

 まずは、松野大臣、御就任おめでとうございます。きょうは、大臣と一緒に取り組んだ組み体操の問題を初めとして、学校事故の問題を中心に取り上げていきたいというふうに思います。

 その前に、ちょっと一つ、皆さんに資料をお配りしているんですが、先日、馳先生も出席されていたLGBTの議連の会議に出たときに、非常に気になる点があったので、そのことをまず最初に申し上げさせていただきたいと思います。

 今、皆さんのお手元にお配りをしておりますが、LGBTに関する教職員向けのパンフレット、文科省がつくって、こちら、配付をしていただいているようなんですね。これは非常によく頑張ってつくっていただいたなということで、このこと自体は全般的には評価をしているんです。

 ただ、一枚ページをめくっていただいて、こういう質問が来たときにどう答えるかというQアンドAのコーナーが後ろについておりまして、そこのQの十二をちょっと見ていただきたいんですけれども、「性自認や性的指向について当事者の団体から学校における講話の実施の申し出があった場合等、こうした主題に係る学校教育での扱いをどのように考えるべきですか。」という質問に対する答えで、いろいろ書いてあるんですが、「他者の痛みや感情を共感的に受容できる想像力等を育む人権教育等の一環として、性自認や性的指向について取り上げることも考えられますが、」となっていて、そこで、下から三行目から見てください、「上記の性に関する教育の基本的な考え方や教育の中立性の確保に十分な注意を払い、指導の目的や内容、取扱いの方法等を適切なものとしていくことが必要です。」と書いてあるんですね。

 私は、これを見て、やはりちょっと違和感があったんですよ。「教育の中立性の確保」と書いてあるんですが、教育の中立性というのは、この場合、何をもって中立性と言っているんでしょうか。政治的な中立性というのは、これはわかるんですよ。自民党さんがいて、我々民進党がいて、共産党さんがいて、公明党さんがいてということで、それぞれいろいろな考え方があって、特定の考え方だけを取り出してやるのは中立的ではない、こういう場合に、中立性を保つためにそれぞれみんなの意見をちゃんと教えるという、これは必要だと思います。

 でも、このLGBTに関することで中立性というのはどういうことでしょうか。中立性というからには、こちらの考え方に対して別の考え方がもう一つあって、ここが対立しているから、そちら側の一方的な考え方だけじゃない他方の考え方も配慮しなきゃいけない、そういうときに中立性の確保というのを使うと思うんですが、LGBTの性同一性障害や性的指向、性自認に関することを教えるということに対する反対の立場というのはどういう立場なんでしょうか。人権とかそういうことを考えたときに、ここは反対するものはないと思うんですよ。

 仮に、こういう性的指向や性自認についての考え方が異なるということで、そういう異なる考えのものは認めない、そういう人がいて、そこに配慮をしないといけないということになると、それはそれで私は非常に問題だと思うんです。

 ですので、私は、これはインターネットでダウンロードできるようにもなっているということですから、印刷してしまったものは仕方がないとは思いますが、ダウンロードできるものについては、この「教育の中立性の確保」というところは削除するべきじゃないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕

松野国務大臣 委員御指摘の教職員向けパンフレットの該当部分は、学校における人権教育等の一環として、性自認や性的指向について学校において扱う際の配慮事項等を記載したものです。

 ここで言う教育の中立性とは、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律において人権教育の基本理念として定められている中立性のことであり、具体的には、同法に基づき閣議決定されている人権教育・啓発に関する基本計画に記載されているように、特定の団体から不当な影響を受けることがないようにすることを意味するものであります。

初鹿委員 特定の団体に偏ってやってはいけない、そういうことだということなんでしょうか。

 でも、当事者団体とか当事者とか、それほど団体として圧力を持っていくような、そういう組織化されているようなところだとは私は認識をしておりませんので、中立性というのは余り適切ではないということを指摘させていただきます。

 では、本題の方に移っていきます。

 一枚ページをめくっていただいて、資料をつけておりますが、組み体操のことから入らせていただきます。

 松野大臣には、一緒に学校管理下における重大事故を考える議員連盟をつくって、副会長を務めていただき、本当にお世話になりまして、ありがとうございます。

 大臣のお力もありまして、組み体操について、文科省として、安全をしっかり確保する、そういう趣旨の通知を出した結果、ことし、随分と事故がなくなっているというような報道もありますし、都道府県や市町村のレベルでさまざまな安全配慮の通知を出したり、また、タワーやピラミッドについては段数制限を設けるなどの対策もとられているということであります。

 まず最初に伺いますけれども、市町村や都道府県などでいろいろな基準をつくったり段数制限などをしていると思いますが、どれぐらいの自治体がそういう基準を設けたりしているのかということをお答えいただけないでしょうか。

    〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年三月二十五日に、各都道府県教育委員会等に対し、組み体操等による事故の防止についてスポーツ庁より通知し、事故防止について万全を期すよう注意喚起を行ったところであります。

 その取り組み状況につきまして、本年九月に、四十七都道府県、二十指定都市に対してスポーツ庁で調査をした結果でございますが、所管の学校、教育委員会に対して組み体操等による事故防止対策の周知を行った、これは全ての都道府県、指定都市で行われております。また、管理職への説明会を実施したものが三十五都府県、十七指定都市、また、タワーやピラミッドの高さなど取り組みについての制限を設けたのが八都県、九指定都市、このような状況になっております。

初鹿委員 随分と広がって取り組んでいただいていることがわかったと思います。

 これは、一般市まではなかなか調べられないですよね。ぜひ、強制的ということではないですけれども、都道府県の方で一般市の状況をもし把握していたら、それも文科省の方に集約するようにしていただけるとありがたいなというふうに思います。

 この資料なんですけれども、そうはいいながらも、見ていただくとおわかりのとおり、私の東京の練馬区では、ことし、骨折ですけれども、実際に五件起こっているんですよ。この新聞の記事になっているところは、練習中にもあって、そしてまたあった。同じ学校で一つのシーズンで二回あるということなんですけれども、やはりもう少し、やるという選択をした学校もきちんと考えて、仮に事故があったときに引き戻すという選択もしてもいいのではないかなというふうに思います。

 なかなか、死亡とか障害が残るような事故でないと情報が上がらないようになっているわけですけれども、やはり骨折や打撲とか捻挫とか、そういうのも当面情報を収集して、各自治体の方にまたフィードバックをしていくようなことも考えた方がいいんじゃないかというふうに思うんですね。やはりこれだけ注目を集めて、今取り組みが進んでいるところですから、それでもやっているところがあって、そのときに、事故がやはりあったよねということを自治体の側に知らせていくということも私は必要ではないかというふうに思います。

 いかがですか。骨折とか打撲や捻挫のデータを各都道府県また市町村から集めるというのはなかなか難しいとは思いますけれども、やはり今注目をされている問題でもありますので、ぜひ、これを集めて各地方自治体の方にフィードバックをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田野瀬大臣政務官 お答え申し上げます。

 組み体操を含む体育的行事については、安全な実施に向けて全国的に取り組みが進められておるところでありますけれども、先生御指摘の、練馬区内の同一学校で連続して組み体操におけるけがが発生するなどの事案があったということはまことに遺憾である、そのように考えております。

 このような中、御指摘をいただきました、組み体操における今年度の事故事例について共有をするということにつきまして、事故再発防止の観点から非常に重要であると私どもも考えております。

 このため、日本スポーツ振興センターから公表されます災害共済給付状況、これを活用させていただきまして、分析も行いまして、そして事例の共有というものをしっかりと図っていきたい、そのように考えておるところでございます。

 加えまして、スポーツ庁におきましては、本年度末までに組み体操を含む体育的行事における事故事例について分析した事例集を作成させていただきまして、全国の教育委員会等に情報提供するなどの取り組みも進めてまいりたい、そのように考えております。

初鹿委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。

 あと、組み体操は全面的に私は否定しているものではなくて、やり方によっては安全な組み体操もあって、タワーやピラミッドをやらないでも、運動会でやって見ばえがいい、そういうものもあるんですよね。日体大の荒木先生が安全な組み体操というのを提唱しておりまして、DVDもつくっていたり、学校等で呼ばれれば研修のようなこともしているということですので、やはりこういう安全な組み体操の事例というのも少し紹介をしていくこともありなのかなというふうに思うんです。

 やはり連帯感だとかそういうことを醸成するのには確かにいい面もあると思います。全面否定をするものではないと思いますので、こういう荒木先生が取り組んでいるような安全な組み体操を広めていくということについて、大臣、いかがですか。

松野国務大臣 今後、日本スポーツ振興センターから公表される災害給付状況を活用し、分析を行い、組み体操に関する事故の事例の共有を図っていくこととあわせて、御指摘のような好事例についても収集し、都道府県に情報を提供してまいりたいと考えております。

初鹿委員 よろしくお願いします。

 次に、柔道の事故について質問をいたします。

 武道が必修化する際に、当時、民主党政権でありまして、私も一期生だったんですけれども、柔道の事故の問題を取り上げました。こちらに当時の文科大臣の平野先生がいらっしゃいますが、平野当時の大臣にも非常に御理解をいただいて、柔道については、必修化を前に、かなり具体的な事例まで入れた安全対策を求める通知が出されて、必修化してからの二〇一二年、一三年、一四年、三年間は、重大な死亡事故というのは起きていなかったんですね。

 ところが、昨年、一件発生をしてしまいました。そして、皆さんのお手元に資料を示させていただいておりますが、こちらの事故、これは群馬県の館林市の中学校、部活の最中に三年生の男子部員が急性硬膜下血腫で意識不明の重体になっている、こういう記事が出ております。

 三年間は死亡事故はなかったんですが、残念ながら少しずつまたふえてきておりまして、その前のページが死亡事故の事例です。福岡であった、中一の女子が死亡しているということです。

 もう一枚見ていただくと、死亡見舞金の給付、また障害見舞金の支給状況も配付をさせていただいておりますが、やはりまだまだ、残念ながら事故が完全になくなっているという状況ではないんですね。

 この群馬県の事故なども受けて、実は全柔連が通知を出しているんですね。既に注意喚起の文書を出しております。一枚めくっていただくと、二十八年の十月十二日ですから、つい一カ月ほど前に、「重大事故発生と事故防止の啓発活動に関するお願い(再)」ということで、全柔連が再び出しているんです。「中学生、高校生による頭部外傷、熱中症による死亡事故が二件、後遺障害が残る頭部外傷、頸髄損傷が二件、計四件の重大事故が発生いたしました。本年は高校生の頸髄損傷による死亡事故、中学三年生の頭部外傷による事故、四十五歳男性の頭部外傷による死亡事故に八月の事故を加えると五件の事故が発生しました。」「「柔道の安全は必修化以前に戻ってしまった」との声も聴かれます。」

 全柔連がこういう危機意識を持った通知を出していますので、ぜひ文科省も、学校の現場でこうやって起こっているわけですから、改めて通知を出していただきたいんです。

 その上で、ちょっともう一回群馬の方を見ていただきたいんですけれども、この事故、百六十センチ、四十八キロの生徒を、百七十五センチ、百十七キロ、体重差六十九キロもある生徒が投げて、事故になっているんですね。体格差が六十九キロもあるんですよ。

 柔道という競技は体重別になっているわけですから、そこはなぜなっているかといったら、やはり体格が大きい、体重が大きい人の方が優位だ、そういうことで多分体重別になっているんだと思うんですね。それなのに、練習で六十九キロも差のある相手と、お互いに有段者だったとしても、これで練習をやっていて、重大な事故になる可能性がやはり大きいんじゃないかと思いますので、ぜひ、注意喚起の文書を出す際に、体格差も含めて、やはりきちんとした配慮をしないといけないということを強調したような通知を出していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 学校の柔道指導においては安全確保が最も重要と考えており、文部科学省作成の指導資料において、生徒の技能や体格の差に十分な注意をすること、特に初心者に対して、練習の上で十分な配慮をし、例えば初心者には大外刈りをかけないなど、安全対策上のポイントを周知してきたところです。

 また、御指摘の事故については私も大変遺憾に思っており、文部科学省においては、ことし上半期で発生した体育活動中の事故の状況について、九月の末に、各教育委員会等に情報提供を行ったところです。

 今後とも、定期的に情報提供を行うとともに、事故防止のポイントをわかりやすく示して注意を喚起するなどにより、事故の防止を徹底してまいりたいと考えております。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いします。

 では、今までこの委員会等では取り上げたことがないプールの飛び込みの事故について質問をさせていただきます。

 また一枚資料をめくっていただいて、「水深が足りない学校プール 飛び込み事故に警鐘」という新聞の記事をつけさせていただきましたが、この問題、柔道の事故や組み体操の事故に取り組んでいる内田良名古屋大准教授が、JSCのデータを調べて、一九八三年から二〇一四年までの三十二年間でどれだけの事故があったのかということを調べたところ、小中高のプールの飛び込みで後遺症が出た事故が百七十二件、うち九割の百五十四件は頭をプールの底に打っていた、そういうデータが出てきたんですね。

 では、学校のプールの状況はどうなっているのかということを調べたデータによりますと、スタート台付近の水深が一・三メートル以下という答えをした学校が約六割、水深一・三五メートル以上は約二割で、二割は水深も知らなかったということなんです。

 当然なんですけれども、授業をやる上で、深いプールだとなかなか授業が成り立たない、また溺れる可能性もあるということで、学校のプールというのは大体一・一から一・二メートルぐらいの水深になっているわけです。そういうところで飛び込みをすることは非常に危険なわけであって、だから、小学校、中学校は禁止になってきたんだというふうに思うんです。

 まず最初に、大臣に伺いますが、今、小中学校は授業で飛び込みが禁止されていますよね。以前は、私たちが小学校、中学校のときは、プールに飛び込み台もあって、飛び込んでいたと思うんです。これが中止になった経緯、いつ、どのような理由でなったのかということをまずお答えいただけますか。

田野瀬大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘の小中学校におけるプールの飛び込みにつきましては、平成二十年三月に改訂をされました学習指導要領におきまして、事故防止という観点で、従来、スタートの指導につきましては段階的に行うとしておりましたものを、水中からのスタートにするということに変えさせていただいたということでございます。

初鹿委員 平成二十年に変わって、その前に事故が多かったということなんですよね、簡単に言うと。

 では、二十年に変わってから、それ以降事故がなかったのかというと、実はそうでもなくて、二十年以降、飛び込みによる事故の件数、把握しているところをお答えいただけないでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十年以降で、まず、水泳指導中に死亡見舞金が支払われたケースでございますが、これについては、飛び込みによる死亡事例はなしということでございます。

 それから、障害見舞金が支払われた件数ということでございますが、平成二十年から二十六年までの七カ年間では、小中高の体育の授業、部活動、その他を合わせまして二十件ということになっております。

初鹿委員 小中の授業で見舞金を払ったのは何件なんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 小学校の授業では、平成二十年から二十六年の間で四件となっております。それから、中学校の授業では八件となっております。

初鹿委員 大臣、授業で飛び込みが禁止されているのに、二件と四件でしたっけ、あるんですよね。おかしいと思いませんか、禁止しているのに。つまり、授業では飛び込んではいけないと学習指導要領には記載がきちんと書いてあるのに、そこができていないところがあるんじゃないんでしょうか。

高橋政府参考人 大変申しわけございません。ちょっと答弁を訂正させていただきます。

 先ほど私が申し上げました数字は、水泳の授業中の障害ということで、大変申しわけございませんでした。

 そのうち、体育の授業で飛び込みによる障害ということにつきましては、小学校は、平成二十年度以降はゼロ件でございます。それから中学校は、体育の授業中で四件ということになっております。

 大変失礼いたしました。

初鹿委員 中学校が四件なんですよね。つまり、授業でやはり飛び込みがまだやられている。これはもう一回徹底しないといけないと思うんです。

 それと、障害になって見舞金が払われるようなことになっていなくても、頭を打って病院に行ったりしているケースだってあるわけですよね。そこはさすがに把握をしていないので、お答えは求めませんけれども、もう一回、プールでの飛び込みは禁止だというのを徹底してもらいたいと思います。

 それと同時に、高校は授業での飛び込みが禁止されていないんですね。

 ことし、都立高校で事故がありました。皆さんのところに絵、イラストを配付しておりますが、この高校は授業中にどういうことをやっていたかというと、見てください、先生がモップを差し出して、これを飛び越して飛び込むような指導をしていたんです。モップがあると、高く一回飛び上がるから、高く行って落ちていくときに入水角度がつくんですよ。そうすると、そのまま下に落ちていって頭を打つ確率が高くなるという、水泳を教えている方々だったら絶対にやらせないようなことが今どきやられていて、事故になってしまったということなんです。

 そもそも、こういう指導自体、徹底してなくしていかなければならないと思うんですけれども、プールの水深がないところで、高校生といえども飛び込みを勧めるというのは私はやはりいかがなものかなというふうに思います。

 こちらは東京新聞の記事、シドニー・オリンピックの銅メダリストの源純夏さんも、授業での飛び込みは高校も禁止すべきだということを言っております。また、東京大学教育学部附属中学校の井口先生も、高校での授業の飛び込みは禁止するべきだと書いています、水深の浅い学校プールで飛び込みを行うのはリスクが高過ぎると。

 もう一枚めくっていただきたいんですけれども、次は、これは平成十七年に日本水泳連盟が出している、プール水深とスタート台の高さに関するガイドラインというものがあります。

 実際に競技を行っている方々からすると、競技で飛び込みをして、泳いで記録を出すということになるので、飛び込みの練習というのは必要になってくるんですけれども、それでも、やはり水泳連盟は危惧をしているんですね。スタートから六メートルまでの水深が一・三五メートル未満のプールではスタート台の設置を禁止しているんです。でも、完全に安全な水深となると水深三メートル以上にならなければならないから、非現実的だから、やむを得ずこれぐらいの水準の飛び込み台だったらいいだろうというような、そういう基準を出しているんです。

 一枚めくっていただいて、ただ、このガイドラインでもこう書いてあるんですよ。絶対安全な基準という性格ではなくて、現実的な妥協点だ、「本ガイドライン通りの設定で実施した飛び込みのスタートであっても、陸上、水中での姿勢・動作等の要因が複合すれば、プール底に頭部を強打して、飛び込み事故が起こるのも事実である。」事実であると書いてあるんですよ。

 もう一枚めくっていただいて、こちらは鈴木浩二さんという日本水泳連盟ジュニア委員長の方が日本水泳連盟の出している雑誌に書いたものですけれども、このガイドラインについての論文で、ガイドラインの目指すものということで、二枚目の結論が、「本ガイドラインどおりの設定で実施した飛び込みのスタートであっても、陸上、水中での姿勢・動作等の要因が複合すれば、プール底に頭部を強打して、飛び込み事故が起こるのも事実であると考えられます。」

 水泳を実際に行っている専門家の方々も、やはり水深の浅いところで飛び込みを行えば事故になる可能性はあるんですよということを言っているわけです。

 そういう中で、高校の授業で本当にやる必要があるのかということを考えていただきたいんです。競技をする人には必要だと思いますが、一般の人は、今どこのプールに行っても飛び込み禁止ですよね。基本的に、飛び込みをプールでする環境なんて普通の人はないんです。その人たちに、そういう生徒たちに飛び込みを教える必要性というのは全くないと思います。水深が一メートル、一・一メートルとか一・二メートルのところで、危険な状況があるかもしれないと思いながら授業で実施をし続けるというのはもはや限界じゃないかというふうに私は思うんです。

 これは、学習指導要領で小中は禁止をしたわけですから、高校も禁止するべきだと思うんですよ。今議論をしている最中だということなので、ぜひ高校での授業の禁止の検討を始めていただきたいと思います。

 それと同時に、その検討が行われている間でも事故があっては大変なことでありますので、とにかく、今は冬ですから、今やっても忘れられても困るので、来年の年度が明けたら、ぜひ、こんなモップを出して飛び越させるような指導はやるなとか、きちんと水深を考えて、水深が足りないときは部活動だとしても飛び込みは配慮をしてやらなければいけないとか、そういう踏み込んだ通知を出していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 学校の水泳指導においては安全確保が最も重要と考えており、文部科学省作成の指導資料において、水深や入水姿勢など安全については細心の配慮をして指導すること、入水の際、手首を上側に反らし、入水角度は十五から二十度以内にすること、個人の能力に応じて段階的に練習させることなど、安全対策上のポイントを周知してきたところです。

 また、御指摘の事故については、私としても大変遺憾に思っており、文部科学省においては、今年度上半期で発生した体育活動中の事故の状況について、九月末に各教育委員会等に情報提供を行ったところです。

 今後は、毎年四月ごろに発出している水泳等の事故防止についての通知において今回の不適切な指導事案を取り上げるなど、指導の徹底を図るとともに、定期的な体育活動中の事故の状況について情報提供を行い、事故防止のポイントをわかりやすく示して注意を喚起するなど、事故防止を徹底してまいりたいと考えております。

初鹿委員 済みません、学習指導要領を改訂して、高校生の授業で禁止をするということについてはいかがですか。検討を始めてもらいたいんですが。

永岡委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、手短にお願いいたします。

松野国務大臣 高等学校の学習指導要領改訂については、平成二十九年度末の告示に向け、現在、検討が進められております。

 高等学校の体育の水泳指導における飛び込みの取り扱いについては、今後、各高等学校の実施状況や課題について教育委員会から聴取をするとともに、水泳指導の有識者の意見も伺いながら検討してまいります。

初鹿委員 ぜひ検討をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

永岡委員長 午後一時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十五分開議

永岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 民進党・無所属クラブの坂本祐之輔でございます。

 我が国のスポーツのあり方について質問を申し上げさせていただきます。

 リオデジャネイロで開催をされたオリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会において、日本は、オリンピックで金十二個、銀八個、銅二十一個、合計四十一個を獲得し、パラリンピックでは銀十個、銅十四個、合計二十四個を獲得いたしました。

 二〇二〇東京大会においては、過去開催国の金メダル獲得の推移を見ても、我が国の活躍は、確実に今回にも増す実績を残すと予想されます。まさに、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントの高まりの中で、我が国のスポーツが今後百年に向けて新たな方向性を確立する大切なときを迎えていると考えております。

 日本では、明治初期から、野球、漕艇、陸上競技などの各スポーツ種目が主に大学の課外活動として積極的に取り入れられ、個別にその歴史を刻んできておりますが、一九一一年に嘉納治五郎先生を初代会長として設立された大日本体育協会は、我が国にスポーツの意義と価値をまとまった形で表明し、以後、スポーツによる人間教育、学校体育の充実、国民体育の振興、体育・スポーツによる国際交流の推進、我が国の体育・スポーツの礎を築いてまいりました。

 現代においては、平成二十三年に施行されたスポーツ基本法をもとに、平成二十四年度からスタートした第一期スポーツ基本計画がこれからの日本のスポーツのあり方を示しております。

 さらに、二〇二〇東京大会が決定され、本年、競技力向上のための今後の支援方針、鈴木プランが策定をされました。競技力の向上を目指すには裾野の広がりが必要です。小さなころから、才能あふれる子供たちを良好な環境の中で育て、練習を積み重ねていかなければなりません。したがって、ジュニア期にどのような才能を持っているのかを見きわめ、育成していくような体制が必要と考えております。

 鈴木プランでは、各都道府県体育協会が運動能力のすぐれたジュニアを発掘し、引き上げていくと示されております。私も以前、埼玉県体育協会の会長を務めておりましたが、現行の体育協会では、組織上、職員の人数等に限りがあり、難しいと考えられますが、いかがでしょうか。また、鈴木プランでは具体的にどのような体制を構築するのでしょうか。お答えください。

高橋政府参考人 我が国が東京オリンピック・パラリンピック競技大会において過去最高の金メダルを獲得するなど優秀な成績をおさめるためには、競技団体が行う、ジュニアを含めた有望アスリートの発掘を支援することが大変重要であります。

 このため、スポーツ庁が本年十月に発表した競技力強化のための今後の支援方針、鈴木プランにおいては、全国にネットワークを持つ日本体育協会がこの発掘支援に新たに参画することを打ち出しました。

 こうした取り組みは、日本体育協会が、JSC、独立行政法人日本スポーツ振興センターの支援のもとに、JOC、JPC、中体連、高体連、高野連、さらには障がい者スポーツ協会や医療機関、特別支援学校を含む諸学校とも連携して、各競技団体の発掘を支援する体制を構築して行うものでございます。

 各都道府県体育協会にも一定の役割をお願いすることになりますが、都道府県体協が単独で行うものではありませんので、過度な負担をお願いするものではないと考えております。

 スポーツ庁といたしましては、今後も関係団体と十分連携し、全ての競技団体のメダル獲得の可能性の最大化を図る取り組みをしっかりと進めてまいります。

坂本(祐)委員 体育協会だけではないということは私も十分に理解をしております。しかしながら、今までは、中央競技団体がそれぞれの地域における競技団体で発掘をされた子供たちを引き上げていくということが主でございましたので、ぜひ、その運動能力の状況に合わせて、体育協会等、そのまた市町村にも体育協会がございますので、円滑な活用をしていただきたい。そのためには、人材で足りないものがあれば積極的に財政上の支援を行っていただきたい、幅広い吸引力を持って体育協会をうまくリードしていってもらいたいというふうに考えております。

 先日、幼児期におけるスポーツの重要性について質問させていただきました。

 幼児期のスポーツの推進について、その意義は文科省が示されているとおりだと思います。しかし、その幼児期のスポーツをどのように推進していくのか、どのように効果を上げていくのかが一つの課題であると考えております。

 例えば、私は、幼稚園、保育園の運動の時間に、スポーツの専門性を有した指導者の指導を取り入れるのも一案ではないかと考えます。幼稚園、保育園、全ての園にスポーツの専門性を有した先生がいるとは限りません。むしろ、いない方が多いと思います。園によっては実践されているところもありますけれども、スポーツの時間に専門性を有した指導者に入っていただいて、基本動作やコツを教えていただくことは大変に効果的であると思います。幼児期にスポーツの楽しさや成功体験が積み上がることで、その後のスポーツに対する意識も大きく変わっていくものだと考えます。

 文科省としても、幼稚園、保育園の運動の時間に、スポーツの専門性を有した指導者の活用を積極的に取り入れるように検討なされているか、お伺いをいたします。

 また、幼児期のスポーツの推進について、前回の質問の際、その御答弁では、幼児期運動指針を示しているとのこと、来年度予算でも所要の予算措置をされているとのことでございましたけれども、来年度における予算措置では具体的にどのようなことを行おうとしているのか、お答えをいただきたいと存じます。

高橋政府参考人 幼児期から運動やスポーツに親しむことは、生涯にわたってたくましく生きるための健康や体力の基礎を培うとともに、公正さと規律をたっとぶ態度や克己心を培うなど、人間形成に重要な役割を果たすものであります。

 スポーツ庁におきましては、平成二十九年度概算要求において、幼稚園等において子供が多様な運動を身につけ、身体を動かす楽しさを体感できる環境の整備を行うことができるよう、所要の経費を計上しております。

 具体的には、例えば、教員養成系あるいは体育系大学の学生などに国が幼児期運動指針に基づいた運動、遊びプログラムの講習を行い、専門的な知識を持つインストラクターとして養成して、その方々を幼稚園へ派遣し、幼稚園教諭とチームティーチングを行うことなどを検討しております。

 スポーツ庁におきましては、今後とも、子供が幼児期から運動やスポーツに親しみ、生涯にわたりスポーツを楽しむことができる環境の整備に努めてまいります。

坂本(祐)委員 ぜひ、体育大学等で学ばれている、あるいはスポーツに熟練をしているアスリート等を派遣して、幼児期からのスポーツに親しむ活動をしっかりと支援していただきたいと思います。

 発掘したジュニアや青年たちをトップアスリートとして育成する体制も必要だと考えております。私は、五年ほど前、中国の広州にスポーツ行政の視察にお伺いをいたしました。そこでは、幼児期から才能を持った子供たちが宿舎に入って、大学まで親元を離れて生活をしておりました。小学校、中学校、高校、大学と同じ敷地内に学びやがあり、それぞれの種目に合わせた体育館やプール、そしてボート場までありました。さらに、スポーツ指導はオリンピアンが指導をされておられました。その規模を比べると、日本の支援体制は規模が小さいのではないかと考えます。

 日本においても、ナショナルトレーニングセンターがその役割を果たしておりますけれども、例えば、北海道あるいは東北地方、そして関東はナショナルトレセンがございますから、中部地方、九州地方、こういった地域の拠点施設をこれから計画して建設していただく、そのことによってより幅広く人材育成と競技力の強化に努めることができると考えますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 現在、スポーツ庁では、東京都北区西が丘のナショナルトレーニングセンターの拡充整備を進めており、JSC、JOC、JPCなどの関係機関と協議、調整を踏まえ、二〇二〇年東京大会開催の約一年前の完成を目指して計画を進めているところでございます。

 また、ナショナルトレーニングセンターのみでは強化活動が困難な屋外系競技などの強化活動拠点については、地域の既存施設を競技別強化拠点として指定し、トップアスリートが集中的、継続的にトレーニングを行う環境を整備しております。

 先生御指摘の、国として全国各地にトレーニングセンターを整備することはどうかということでございますが、現実的な財源の問題を考慮しますと、直ちにそれを実施することはなかなか困難な状況ではございますけれども、先ほど御答弁申し上げました鈴木プランに示された有望アスリートの発掘支援など、こういったことを全国展開で進めることによりまして、日本体育協会やJOC、JPC、NFなどとも十分連携して、今後とも全国における人材育成と競技力の強化に努めてまいりたいと考えております。

坂本(祐)委員 ナショナルトレセンが一つだけですと、やはり、日本各地に散在をしているアスリートの卵、小さい子供たちが、東京に来なければトレーニングを受けることができないということにもなります。

 先ほど私は中国の広州の例を申し上げましたけれども、国の歴史、文化がありますから、全国の優秀な子供たちをいたずらに東京に集めるということではなくて、その地域地域に専門的な施設があれば、あるいは、体育協会が、東北なら東北の数県の体育協会の固まりがそれを管理運営する、そういうこともできますし、地域のスポーツ施設を使っていく、こういう連携がとれると思いますので、施設はやはり予算がかかりますから、必ずしも一緒くたにできるものではありませんけれども、将来を見据えて、そういった地域でのアスリートの育成、このことにもぜひお力を注いでいただきたいと考えております。

 ここで、運動部の部活のあり方について質問をさせていただきます。

 我が国のスポーツのあり方を考えたときに、非常に大きな役割を果たしているとともに、近年そのあり方がさまざまに問われているのが、中学校あるいは高等学校における運動部活動であります。この運動部活動におきましても、その普及振興、競技力向上、教育効果、これらは、その効果や役割は文科省が示しているとおりでありまして、私もその重要性はよく理解をしております。

 しかしながら、特に我が国のスポーツの競技力向上は、中学、高校の運動部活動に依存するところが大きい。一方、部活動は、教育指導要領上、学校教育の一環とうたわれております。その中において、どこまで競技力の向上を追求できるのか、またすべきなのかは難しい線引きだと考えます。

 勝利至上主義に偏った活動、指導やそれに伴う体罰が大きな社会問題にもなっております。また、朝練習、放課後練習、土日祝日も練習と試合など、学業や生活と部活動のバランスなど、学校教育の一環を超えてしまっている部活動が行われている実態も実際には多くあるのではないでしょうか。

 また、競技レベルの高い子と低い子の問題。例えば、野球の強い学校の例でいえば、部活に入っても一年生から三年生まで球拾いで、試合にも出られない、それでこの子にとっては部活動は学校教育の一環と言えるのか。やはり、学校教育の一環としての運動部活動と競技力の向上をきわめるスポーツとは、ある一定の段階から一致するものではないと私は考えております。

 だからこそ、学校部活動のあり方、そして部活動として参加する全中やインターハイや甲子園や花園等の各種大会のあり方を検討しつつ、学校教育の一環を超えて、さらに競技力の向上を追求したい子供たちの受け皿をどうするべきか、これも検討するべきではないでしょうか。

 我が国の中学、高校期のスポーツの普及振興と競技力の向上が学校運動部活動を基盤として発展してきた経緯を考えれば、簡単に方向転換することが困難であることは理解した上で、そのあり方を見直すときであるとも考えますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 学校教育の一環として行われる運動部活動は、生徒がスポーツに親しみ、学習意欲の向上や連帯感の涵養等に資するとともに、先生御指摘のように、我が国の中学、高校期のスポーツの振興や競技力向上にも寄与してきたところでございます。一方で、これも御指摘がありましたように、部活動の行き過ぎた活動により、教員、生徒ともにさまざまな弊害が生じているとの指摘もございます。

 このため、スポーツ庁としては、平成二十九年度概算要求において、運動部活動に関する総合的な実態調査の実施、スポーツ医科学の観点も取り入れた練習時間や休養日の設定に関する調査研究の実施など、現在、所要の経費を要求しているところでございます。

 これらの調査結果も踏まえ、スポーツ庁では、中体連や高体連にも参画いただきながら、生徒の健全な成長の促進という観点から、運動部活動のあり方に関する総合的なガイドラインを現在策定することとしておりまして、これらを通じて運動部活動の適正化を図ってまいりたいと考えております。

坂本(祐)委員 日本の体育が、この百年の歴史、しっかりと着実に発展を遂げてきました。二〇二〇東京大会を迎えるに当たって、これからの百年をさらにしっかりと見据えていくべきだと思います。

 次の質問はその受け皿についてでございますけれども、ヨーロッパでは、クラブチームが中心となって地域スポーツを推進して、また、その中から国際大会等に出場するような競技チームやアスリートを輩出しています。日本では、クラブチームや地域スポーツ統括団体を今後どのように育成していくべきとお考えでしょうか。お伺いします。

高橋政府参考人 我が国の国際競技力の向上を図るためには、各競技団体が全国各地域に存在している将来有望なアスリートをきめ細かく発掘できるようにする、それを支援することが大変重要でございます。先ほど御答弁申し上げましたように、鈴木プランにおきましては、JSCの支援のもと、日本体育協会の参画を得て、各団体とも連携しながら、こういった発掘支援体制を今後構築することにしております。

 こういった取り組みを進める中で、スポーツ庁としても、関係団体と十分連携して、各地域における発掘そして育成の体制のあり方について、今後しっかりと検討、対応してまいりたいと考えております。

坂本(祐)委員 御答弁をいただきましたけれども、ヨーロッパのように、大きな地域スポーツクラブがあって、その中に、例えば日本であればJリーグに出るようなサッカーチームがあったり、プロのバスケットチームがある、あるいは子供がプールで泳いでいるスイミング教室がある、このような体系をとっているところがあります。

 日本では、ややもすると、メダリストを育成するのはスイミングスクールであって、それは、地域のいわゆるスポーツ少年団等あるいは部活ではない。部活からオリンピックに輩出をされる選手も当然おりますけれども、日本のスポーツの底上げを考えたときに、私は、今までと視点を変えてその方策を進めるのであれば、これは体育協会と断定することはできませんけれども、全国に公益財団法人として確固たる体制を持ち、その下部組織も持っている、各市町村の体育協会もしっかりと構成をされているような、そういった団体をして地域のスポーツのあり方を検討していった方がいいのではないかというふうに考えております。

 世界に名立たる中学校、高校部活動、これはとてもすばらしいものがありますけれども、その百年の歴史をこれから新たなものに変えていく、新しいページをつくっていくというその考察を、ぜひこれからも幅広い分野で多くのスポーツ関係者から意見等をお伺いしていただいて、これから百年後の日本のスポーツは、学校教育を初めとしてこういうような体系をとっているんだというものを築いていただきたい、そのことを期待させていただいております。

 それでは次に、総合型地域スポーツクラブについて質問をさせていただきたいと思います。

 近年、生活の質が求められる時代にあって、スポーツを文化として捉え、誰もが、いつでも、どこでもスポーツに親しめるような社会を実現することが重要だと考えております。

 私は、地元市の体育協会とレクリエーション協会の会長をもう既に二十数年間務めさせていただいておりますが、この間、スポーツ、レクリエーションの普及振興に努めてまいりました。

 スポーツは、文化であり、健康的なライフスタイルをつくる大きな要因となっています。そのような中で、総合型地域スポーツクラブは、生涯スポーツの実現のために重要な役割を果たすことが期待をされ、地域スポーツクラブの形態として、文部省が、一九九五年、我が国の文教施策の中で提唱してスタートをいたしました。現在は、全国で三千五百五十のクラブの設立を遂げることができました。

 ここで改めて、この総合型地域スポーツクラブの果たしてきた実績と、総合型地域スポーツクラブが今後果たすべき役割をお示しいただきたいと存じます。

高橋政府参考人 総合型地域スポーツクラブは、幅広い世代の住民が身近な場所でスポーツに親しむ機会を提供し、生涯を通じた住民のスポーツ参画の基盤として重要な役割を果たしてきたものと認識をしております。

 一方で、今後は、人口減少や少子高齢化の進展に伴い、チームスポーツ等の活動の継続が困難になることが危惧されるなど、住民が多様なスポーツに親しむことのできる環境を確保していくことが各地域において課題となっております。

 こうした中、総合型地域スポーツクラブが、多種目のスポーツクラブという理念に基づき、会員が複数のスポーツ種目に親しむ環境づくりに向けた取り組みを強化することによって多様なスポーツ種目の活動の継続に貢献していく、こういった役割はますます重要になっていくものと考えております。

 スポーツ庁といたしましては、日本体育協会や総合型クラブ全国協議会などと連携して、多様なスポーツに親しめる環境づくりに向けた総合型クラブの取り組みを支援、推進してまいりたいと考えております。

坂本(祐)委員 今までの総合型地域スポーツクラブの育成支援には、国からも温かい御支援をいただいてまいりました。JSCからいただいているわけでございますけれども、その支援をいただいてきた中で、クラブ育成アドバイザーの活用や、あるいはスポーツ指導者の充実、具体的な施策展開が示されてきたわけでございますけれども、設立をして五年が経過して、その補助、育成をしていただく支援がここで途切れてしまうということになっております。

 財源不足を初めといたしまして、ここのところ、総合型クラブの活性化が鈍くなっていると感じておりますが、いかがでしょうか。また、現在、総合型地域スポーツクラブの新設数は順調に伸びているのか。また、今後の目標設置数等があれば、お伺いをいたしたいと存じます。

高橋政府参考人 先生御指摘のように、設立後五年が経過し、スポーツ振興くじ、toto助成による支援が終わった総合型クラブにつきましては、クラブの活動を継続、発展させるための財源確保が大きな課題になっているということは認識をしております。

 一方で、設立後五年間が経過した総合型クラブの中には、スポーツを通じた高齢者の介護予防、放課後クラブ、放課後子供教室でのスポーツ機会の提供など、多様なニーズや地域課題に応える事業を新しく担うことによりまして財源を確保し、活発な事業展開を行っているクラブも生まれております。今後、このような取り組みの好事例を発信し、広げていくことが重要であると考えております。

 また、総合型クラブの新設数でございますけれども、平成二十七年七月現在で、準備中のものを含め、先ほど御指摘いただきました三千五百五十の総合型クラブが設置され、設置市区町村の割合は八〇・八%に達しております。近年、総合型クラブの増加ペースは緩やかにもなってきております。

 こういった状況を踏まえまして、現在、スポーツ審議会におきましては第二期スポーツ基本計画の審議を進めておりますが、その中で、総合型地域クラブにつきましては、従来のクラブ数の量的拡大に重点を置いた施策から、質的充実に重点を置いた施策への転換の必要性が議論をされております。

 今後、スポーツ庁といたしまして、このような議論を踏まえまして、総合型クラブの育成施策について検討してまいりたいと考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 一点だけ、確認をさせていただきたいと思います。

 この総合型地域スポーツクラブの将来像の中には、先ほど私が申し上げてまいりました、地域の拠点施設としての競技力向上を目指す、そういった役割は含まれているのか。例えば、オリンピックでのメダリストを育成する、こういった拠点の一つに総合型をお考えになるかどうか。そのお考えがあれば、お伺いをいたしたいと存じます。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 総合型スポーツクラブにつきましては、多種目、多志向に対応するということが一つの理念としてございます。必ずしも明確に競技力向上ということをうたっているかどうかは、各クラブの判断になろうかとは思います。

坂本(祐)委員 総合型地域スポーツクラブの果たす役割は、今次長がおっしゃったように、地域のスポーツ活動を活性化させ、小さい子供からお年寄りまで健康的にライフスタイルを構築する、そのために必要だと思います。さまざまなスポーツを愛好する中で、これが健康にもつながり、地域の活性化にもつながっていく、果たす役割は大変大きいものだというふうに考えております。ぜひ、今後とも総合型地域スポーツクラブの果たす役割をしっかりと捉えて、明確な方向性を示していただく中で、さらに設置数と質の向上を目指していっていただければと思います。

 それでは、最後になりますけれども、第一期スポーツ基本計画が策定をされ、間もなく五年が経過いたします。第二期基本計画を策定するに当たり、この五年間の検証と今後の策定について、大臣はどのようにお考えになられるか、お伺いをいたします。

松野国務大臣 第一期のスポーツ基本計画においては、平成二十四年からの五年間で、子供のスポーツ機会の充実、ライフステージに応じたスポーツ活動の推進、国際競技力の向上などの施策に取り組んでまいりました。

 この結果、例えば、子供の体力の低下傾向におおむね歯どめがかかるとともに、リオデジャネイロ・オリンピックにおける総メダル獲得数が過去最高となるなど、一定の成果が認められる一方で、成人の週一回以上のスポーツ実施率が四〇%にとどまるなど、課題も残しております。

 これを踏まえ、平成二十九年度から五年間の第二期スポーツ基本計画は、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等を好機として、スポーツの価値を高め、スポーツを国民の文化として一層根づかせるものにしたいと考えています。

 現在、スポーツ審議会において、例えば、スポーツ参画人口の拡大とそのための人材育成、場の充実、スポーツを通じた共生社会など社会変革の実現、クリーンでフェアなスポーツの推進によるスポーツの価値の向上、国際競技力の向上に向けた強力で持続可能な環境整備などについて、御議論いただいているところであります。

 スポーツ審議会では、年末に中間報告をまとめ、年度末に答申を得る予定であり、全ての人々がスポーツの力で輝き、活力ある社会をつくることができるよう、第二期スポーツ基本計画の策定にしっかりと取り組んでまいります。

坂本(祐)委員 今後とも、計画が示す方向性をできるだけわかりやすく簡潔に国民に示していただきたいと存じます。

 講道館柔道の創始者であり、日本人初のIOC委員でもあった嘉納治五郎先生は、国家の盛衰は国民精神の消長により、国民精神の消長は国民体力の強弱に関係すると述べられております。

 競技力の向上のみならず、幼児期からスポーツに親しみ、スポーツの楽しさを理解し、味わうことの大切さを考え、それを政策に実現していただきたいと願います。終わります。

永岡委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 冒頭、去る十一月の二日に、文部科学委員会及び理事会の御配慮によりまして、鹿児島県の種子島に水落文部副大臣とともにH2Aロケット三十一号ロケットの打ち上げの視察に行かせていただきました。貴重な経験をさせていただきましたことに感謝申し上げます。

 私が視察をさせていただいたところは、人間が入れる三キロ圏内のぎりぎりのところでして、その三キロのところから視察をさせていただきました。すごい爆音が聞こえてくるかと思いきや、まずは、いわゆるロケットの噴射とともに、まぶしいばかりの炎と光、その三キロでいわゆる音と光のリレーが、おくれがありまして、音がおくれて聞こえてくる、そういった、そこの現場ならではの体験をさせていただいたわけなんですけれども、かなりの炎でした。その炎の源となるのは液体水素と液体酸素でして、液体水素がマイナス二百度になっているので、同時にそのロケットエンジンも冷やしている、そういった説明を受けたわけなんです。

 今、十二月に、H2Bロケット、そしてイプシロンロケットの打ち上げも計画されておりまして、現地の方にお聞きしたところ、ただいま三菱重工及びJAXAの方で、今度、H3ロケットの開発もしている、今回はエンジンからの開発という言葉を聞きました。今使用のエンジンであるLE7を改良してLE9を開発中ということなんですけれども、エンジンからの開発という言葉がすごく気になったんですが、一体どのくらいの期間新しいエンジンを開発していない、それによって若手の研究者や技術者が育っていないのではないか、そういったふぐあいのことを検証しているかどうかをまずはお尋ねしたいと思います。

松野国務大臣 過去のH2Aロケットから、それぞれの段階のロケットのエンジンに関しましては、日本で生産をしております。

伊東(信)委員 済みません、いや、テクニカルなことについて深い御質問をしているわけじゃないので、次のテーマに行きたいのでさらっと行きたいんですけれども。

 要は、現場の方の声によると、二十年ほどエンジンが開発されていなくて、今回いよいよ開発することになった。ところが、その当時、大学を卒業してこのロケット業に携わった人も、もう四十を超えられて、その間のノウハウがないということです。

 つまりは、日本のロケット技術の推進に関しまして、なかなか若手の技術者が育たない一因となるところがこういう点にもあるんじゃないかということを指摘させていただきたかったわけなんですけれども、きのう通告したつもりなんですが、まあよろしいです。

 今回のメーンテーマに関して、次の質問に行かせていただきたいと思います。

 本日は、児童の学校における通学路の安全確保について御質問させていただきたいと思います。

 ことしの十月二十六日に、愛知県一宮市にて、ポケモンGOを操作しながら運転していた者が何の落ち度もない下校途中の小学校の男児をはねて死亡させるという大変残念な交通事故が発生しました。一宮市の中野市長のコメントで、情報の共有をしていれば防げていたかもしれない、そういったコメントがありました。

 さて、この事故を教訓として、文部科学省として全国の事例の情報共有ができているという観点で、何も運転中のポケモンGOの操作に限らないんですけれども、ポケモンGOが原因で児童生徒が被害を受けた事例の把握、検証をしているかということをまずは御質問させていただきます。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、ポケモンGOが原因で児童生徒が被害に遭ったということにつきまして、文部科学省として網羅的に把握しているわけではございませんが、今委員御指摘のありました、本年十月の愛知県一宮市で発生した、小学生がはねられて死亡した事故、これについては承知している次第でございます。

 また、委員御指摘の情報共有の関係でございますが、まずは、愛知県の一宮市における事故、ポケモンGOを操作中の男性が運転するトラックで小学生がはねられた、こういう事案について、この事故の教訓を踏まえて、今後同様の事故が起きないようにするということが極めて大切なものと考えている次第でございます。

 したがいまして、文部科学省といたしましては、学校安全を担当する教職員や教育委員会の職員に対する研修、それから各地の取り組みの成果を共有する場を毎年設けているわけでございまして、こういった場におきまして、今回の事故あるいはその後の対応等も含めて、通学路の安全対策に係る取り組み事例につきまして、今後とも共有を促進していきたいと考えている次第でございます。

伊東(信)委員 誤解のないように申し上げておきたいんですけれども、何もポケモンGOが全て悪いと言っているわけではないんですね。プラスの効果もあると思います。例えば宮城県では、ポケモンGOを活用した復興支援イベントを運営会社であるアメリカのナイアンティック社と協力して、一万人を超えるポケモンGOファンが集まって、非常に経済効果が上がった。また、海外の事例で、引きこもりの児童が改善されたなど、個人単位ではプラスの効果も報告されているんですけれども、一方では、このように痛ましい事故も起きている。

 文部科学省も、いわゆるスマホアプリの正しい利用方法などは指導するように通知も出されていますけれども、これは個人レベルのモラルと言っていいのか。使用方法のマナー向上のみでは防ぎようのない事故が起きてしまうんでしたら、その反省が生かされていない、そう捉えるわけです。

 さて、これをシステムで解決できる方法はないかということで、愛知県、一宮市は合同で、運営会社のナイアンティック社に運営に関する要請を行い、車両運転中にアプリが起動しない、または操作できないようにしてほしいとお願いをしたところ、ちょっと順番があれですけれども、資料の三ページ目のこのような画面が出るわけですね。今までも、一定の速度、非公表で、大体四十キロ程度でスマホの画面にこのような表示が出るそうですけれども、私は運転手ではありませんというボタンをクリックさえすれば、運転していたとしても解除できてしまい、運転しながらのゲーム利用の抑制には働いていないという実態があったわけです。それで、愛知県と一宮市からの合同要請を受けて、十一月七日に運営会社は仕様変更、つまり、ながらスマホをできなくするという形で対応しましたが、その内容、経緯については文部科学省は把握されていますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の件につきましては、文部科学省として把握をしているところでございます。

 具体的には、十一月の四日に、一宮市長から株式会社ナイアンティック、これはポケモンGOの運営会社の一つでございますが、ここに対しまして、運用の改善について要請の文書を出しているところでございます。それを受けまして、十一月の七日でございますが、ゲーム運営会社によりますれば、ポケモンGOにおいて、委員御指摘のとおり、一定の速度以上で移動中については、ゲームに必要なアイテムを入手するための操作ができなくなるように仕様を変更するなど対応しているということについて承知している次第でございます。

伊東(信)委員 実は、この国会におきましても、ポケモンGOが日本で配信されるようになった直後に、この敷地内で、ゲームで使うアイテムが入手できるポケストップが十二カ所設置されていることで話題になりました。どこか把握されている委員の方もおられるのではないかと思うんですけれども、ポケモンを目当てに参観者が急増し、歩きスマホをしないようにという看板がこの国会内にも掲示されるようになりました。衆議院の議運でもポケストップの削除要請を検討することとなりましたが、きょう現在ではまだ削除要請はしていないそうです。にもかかわらず、現在、国会の敷地内にポケストップが少なくなっていると聞きました。

 このように、ニュースなどで大きく取り上げられると運営会社が自主的に改善する場合もあるんですけれども、多くは、削除要請を受け、その後審査し、改善を要すると判断した場合は削除されるそうです。

 この運営会社のナイアンティック社は世界じゅうから申請を受け付けているため、その件数、審査に要する期間など全て非公開です。削除した場合でも、申請者には連絡しないそうです。

 私は、提案したいんですけれども、ポケストップとかジムの削除要請を都道府県教育委員会単位で、通学路のデータ等提供するなどして行うべきだ、そのように提案したいわけです。どうしてかといいますと、個人や任意の団体、PTAなどでも削除要請は可能なんですけれども、資料一を見ていただくとわかっていただけると思うんですけれども、私自身もちょっとやってみたんですけれども、やり方がすごくわかりづらいんです。

 ネット検索で「ポケスポット 削除要請」と入れましたらこの申請フォーマットにたどり着くと、日本の会社、ポケモンの担当者に説明を受けたんですけれども、メジャーな検索サイトであるヤフーとかグーグルで一ページ目に、グーグルで五位とかに出るんですけれども、最初スマホでやったんですけれども、サファリとかMSNとかインフォシークの検索ではなかなか見つけられませんでした。

 この一ページ目の公式サイトの該当ページを見つけて、中ほどにある「ポケストップやジムの削除をリクエスト」をクリックすると、二ページ目の申請フォーマット、削除要請フォーマットにつながりまして、このフォーマット自体はすごくシンプルなわけです。だから、申請しやすくはなっているんですけれども、今度は、簡単なフォーマットだからこそ莫大な要請件数になっていまして、なかなか対応ができない、そして対応してもらえない、そういった報告を受けました。

 この愛知県の事例のように行政が動かないと早急な対応はなかなかしてもらえないという現状があるんですけれども、先ほど私が提案いたしましたポケストップとかジムの削除要請、もし通学路に危険があるのであれば、都道府県教育委員会単位で、通学路のデータ等提供するなどして、こういったところで行うように指導すべきだと提案いたしたいんですけれども、大臣はどのように思われますか。

松野国務大臣 ポケモンGOの運営会社によれば、ゲームに必要なアイテムを入手できるポケストップやプレーヤー同士が対戦するジムについて削除を要請する主体に制限はなく、仕組み上は、都道府県や市町村教育委員会等で削除申請を行うことは可能だということであります。

 学校の設置者においては、通学路上の危険箇所や交通状況などについてしっかりと点検を行った上で、ポケストップ等の削除申請を行うなど適切に対応していただきたいと考えております。

伊東(信)委員 加えてですけれども、PTAの方、御父兄の方で、ポケモンGOを知らないと言うたら変ですけれども、やったことがないからどんなものであるかということもわからない。確かに歩きスマホをしながら歩いている方というのはふえたなと思われていても、これが重大な事故につながるとは思わない。だけれども、現実に悲惨な事故として起こってしまった例もあるわけですから、今回のテーマは子供たちの安全、通学路における安全の確保ということですので、ぜひともPTA単位、つまり自治体単位、学校単位で、通学路にそういったポケモンのモンスターが出るようなシステムはなくしていただけるように指導するなり、考慮していただければと思います。

 では、そもそも学校の通学路というのは安全なのかということなんですけれども、平成二十四年度に通学路の緊急合同点検というのをやりまして、その結果に基づいて、今は二十八年度ですけれども、今年度までにどの程度改善が進んでいるのか、具体的な改善内容も含めて、文部科学省にお答えいただきたいんです。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省では、国土交通省と警察庁と連携いたしまして、毎年度、委員御指摘の平成二十四年度に全国で実施いたしました通学路の緊急合同点検結果に基づく対策の実施状況についてフォローアップをしているところでございます。

 平成二十六年度末時点の実施状況につきましては、教育委員会、学校による対策箇所は約九八%、道路管理者による対策箇所は約八六%、警察による対策箇所は約九六%がそれぞれ対策済みとなっている状況でございます。

 なお、平成二十七年度時点の状況につきましては現在集計中でございまして、まだ数字が出ておりませんが、その結果を踏まえて、引き続き改善を促していきたいと思っております。

伊東(信)委員 大体役所の皆さんにお聞きすると、二十四年であれば、二十五年、二十六年度までの結果が出て二十七年度はまだということは今までもありましたから、答弁としてはそうなのかなということはわかるんですけれども、我々維新の会が求めているのは、実行力のある対策ということはどういうことかということですので、歩道がない、もしくは歩道といっても線が引いてあるだけだというような、そういった通学路を含む道路の交通安全対策として有効な施策とか対策というのは各省庁あると思うんですけれども、まずは、道路管理者の立場から国土交通省、法規制の立場から警察庁、児童生徒の安全を守る立場から文部科学省、それぞれにお答えいただければと思います。

 まずは国土交通省の方。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありました、歩道のない、あるいは極めて劣悪な環境にある通学路、これの安全を確保するための方策ということでございました。

 これにつきましては、まずはきちんと歩道を確保する、こういったことが望ましかろうというふうに考えているわけでございますけれども、こういった歩道などの整備ということになりますと、そのための空間を確保するということが必要になってまいりますと、用地買収あるいは関係者との合意形成といったことに時間を要する場合も少なくございません。

 このため、国土交通省といたしましては、先ほどお話のありました道路管理者の対策といたしまして、歩道の設置以外にも、路側帯の拡幅、それから路肩のカラー舗装によりまして歩行空間を確保すること。あるいは、ハンプといいまして、人工的に凸部をつくるというようなこと。あるいは、あえて狭くするためのポールを立てたりする、狭窄部をつくるといったことによりまして、自動車の通過交通の進入抑制、あるいはその速度の低減策。こういった即効性が高く、効果的な対策についても積極的に推進しているところでございまして、引き続き、関係省庁、現場の関係者とも連携して取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

伊東(信)委員 それでは、警察庁、よろしくお願いいたします。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁といたしましては、通学路の交通安全対策は、子供を交通事故から守る観点から非常に重要と認識してございます。

 特に、平成二十四年四月以降、登下校中の児童等が死傷する交通事故が全国で連続して発生したことなどから、学校、警察、道路管理者等による緊急合同点検を実施し、この結果に基づき、信号機ですとか横断歩道等の設置に努めているところでございますが、歩道のない道路につきましても、路側帯の拡幅ですとかその設置、あるいは通行禁止規制の実施ですとかその変更など、こういった必要な対策に取り組んできているところでございます。

 また、交通安全教育の充実を図るとともに、通学路における交通指導の取り締まりを強化するなど、ハード、ソフト両面から通学路の交通安全の確保に向けた対策を講じております。

 悲惨な交通事故が繰り返されないためにも、引き続き、文部科学省、国土交通省と連携を密にし、通学路の交通安全の確保に努めてまいる所存でございます。

伊東(信)委員 国土交通省、文部科学省と連絡を密にするということに関しては同意いたします。

 ただ、例えば道交法でも、お年寄りの方とか幼児の、幼児に関して言いますと、一旦停止もしくは徐行という規制があるんですけれども、小学生以上の児童に関してはない、これは文部科学委員会の話ではないのでこれまでにしておきますけれども、そういったような法律もあることをわかっていただきたい。

 最後に、文部科学省、生徒の安全を守る立場から、どういった対策を考えておられますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、歩道のない道路における通学時の交通安全対策につきまして、適切な通学路の設定、地域ボランティアや保護者による見守り活動、児童生徒に対する危険箇所に関する安全指導等が有効であると考えております。

 また、通学路における交通安全の確保は学校や教育委員会だけで進められるものではないということから、学校、教育委員会、道路管理者、警察が密接に連携して、地域の実情に応じた取り組みを進めることが効果的であるというふうに考えております。

伊東(信)委員 文科省の方も、密接な連携ということもおっしゃっていただきました。

 国交省の方から、カラーで歩道をわかりやすくするというお話があったんですけれども、歩道というのは、路肩のところに白線を引いてある場合が多いんです。

 資料の四ページを見ていただきたいんですけれども、これは私の地元枚方市の山之上小学校の通学路なんですが、校門を出て左に曲がって、そこから校庭沿いに左の下り坂があるわけなんですね。そこで、見ていただきたいんですけれども、このカラーを引くことによって、かえって道が狭くなっているような気がするんですね。左側の車を見てほしいんですけれども、こういった路駐をしているわけですよ。そうすると、余計狭くて歩きにくくなりますし、そのまま真っすぐ行きますと電柱がありますね、電柱があると歩道が確保できていないという状況があります。加えて、交通安全のガイドをするボランティアスタッフが、晴れている日でも、このグリーンベルトで転倒してしまったりしたことがあるんです。小学生が、これは雨のときなんですけれども、登校時に転倒することもあって、グリーンベルトが危険をふやしているという本末転倒な状況にあると思います。

 道交法上の話がありますので、本来はガードレールをするべきなんですけれども、それぞれの地域によって法律上それが可能かどうかというところもあるんですが、グリーンベルトが有効かどうかの検証をしているのか。加えて、バイク自体も、晴れている日にこのグリーンベルトでひっくり返って左手を骨折、コレス骨折というんですけれども、された方もおりますので、具体的な施工方法のアドバイスなどしているかを国交省よりお答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のありましたカラー舗装の、いわゆるグリーンベルトということでございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、歩道を設置するということに比べますと即効性がある対策ということで、主に通学路の安全対策といたしまして、有識者の議論を踏まえまして推進をさせていただいているということでございます。

 私ども、委員御指摘のように、グリーンベルトで滑って転倒したことによってかえって危険だというようなことにつきましては、事例数など、現時点では承知をしておりません。

 ただ、一般論的になりますけれども、道路管理者は常に道路を良好な状態に保つように維持管理するということは法令上の定めでございまして、いわば車であれ、もちろん歩行者であれ、きちんと安全を確保して、使いやすい環境をきちっと常に保つ、こういった責務がございます。

 国交省といたしましても、こういった地域の実情に応じまして、適切な管理が行えるように、技術的支援を引き続き行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

伊東(信)委員 済みません、一個だけ確認なんですけれども、国交省の方で、グリーンベルトの材質に関して、いろいろな塗料があると思うんですけれども、滑りにくい塗料が何であるかというのはなかなか難しいと思うんですが、そういった規制とか指導とかというのは現実問題としてあるのでしょうか。

青木政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員が御指摘になりましたような、例えば舗装の種類、それによって摩擦係数がどうだとかというところについての技術基準のようなものは定めておりませんで、現場の道路管理者の御判断にお任せをしているというのが現状でございます。

伊東(信)委員 現場の場合だったら、そういった危険な場合もあり得るということでやはり理解してしまうんですね。

 文部科学省としては、通学路の安全について、ソフト面でしか対応できないという事情はよく理解していますけれども、ハード面での安全確保もあわせていかなければやはり悲劇は防げないと思いますので、さらなる通学路の安全、整備していくために、時間が最後になりましたので、最後に大臣の御見解をお願いいたします。

松野国務大臣 先ほど局長からも答弁をさせていただきましたが、児童生徒の通学路における交通安全を確保していくためには、学校のみならず、保護者、関係機関が連携して取り組みを推進することが大変重要だと考えております。

 また、平成二十五年度から、外部アドバイザーの知見を活用して効果的な安全点検や安全教育を進める自治体を支援もしております。

 文部科学省としては、引き続き、国土交通省及び警察庁と密接に連携をしながら、児童生徒の安全な通学を確保してまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 松野大臣、ぜひとも、子供の安全のためによろしくお願いいたします。

 終わります。

永岡委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 いじめ防止対策推進法が施行されて三年がたちました。しかし、その後も、いじめを苦にした子供たちの自殺が後を絶ちません。

 ことし八月、青森市に住む中学二年生の女子生徒が列車に飛び込み亡くなるという事件がありました。前日まで、伝統芸能の津軽手踊り、この全国大会に向けた練習にも励んでいた。しかし、スマートフォンには、ストレスでもう生きていけそうにないです、もう二度といじめたりしないでくださいなどと書き残して、みずから命を絶ってしまいました。

 先日、御遺族にお会いし、お話も伺いました。お父さんは、言葉の暴力は目に見えない傷を心に負わせてしまう、言葉で人は死んでしまうし、言葉で人を殺してしまうこともある、その恐ろしさをずっと言い続けていかないといけないとおっしゃっていました。

 子供たちを取り巻くこうした苦しみや叫びに、私たちは、改めてどう向き合い、どうやってその命を守るのか、きょうは、その対策について質問をしたいと思います。

 まず、松野大臣に、いじめについての基本的な御認識をお伺いしたいと思います。

 いじめはどの学校にも、どのクラスにも、またどの子供にも起こり得るものだと考えますが、大臣の御認識を伺わせてください。

松野国務大臣 国のいじめ防止基本方針においては、いじめはどの子供にも、どの学校でも起こり得るものであるとしており、文部科学省としても、御指摘の点については認めているところであります。

 また、国立教育政策研究所の追跡調査では、小学四年生から中学校三年生までの六年間で、暴力を伴わないいじめについて、被害も加害も約九割の児童生徒が経験しているとの結果が出ており、このことからも、いじめはどの学校でも、どの子供にも起こり得るものと考えております。

大平委員 認識を共有しているなというふうに思います。

 だからこそ、まず何よりも、いじめの発見、認知が大事で、教員たちが、子供の様子を、そしてその変化をしっかり把握し、見守り、対応することが求められていると思います。

 しかし、現状はどうか。この間、いじめの認知件数はふえたという報道もありましたが、その一方で、いじめは一年間で一件もなかったと報告をされた学校が今全国にどのぐらいあるのか、昨年度の調査の数字を御紹介してください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省が把握しております、平成二十七年度の一年間で一件もいじめがなかったとしている全国の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の数は、一万四千十四校でございます。これは、学校総数に対しまして三六・九%の比率でございます。

大平委員 全国で約四割弱の学校が、一年間でいじめは一件もなかったと報告をされています。先ほど大臣が御答弁ありましたとおり、どの子にも、どのクラスにも起こり得るといういじめが、一件もなかったと報告されているわけです。

 例えば、小規模の学校で、本当に一年に一件もなかったという学校はなくはないかもしれませんが、しかし、四割のうち、少なくない学校で、いじめの認知がされておらず、また、いじめの対策のそのスタートにすら立てていないという現状だと思います。三年前の同じ調査でも、そうした学校が四二%あるとの数字でした。この間、ほとんど変わっていないのが実態であります。

 さらには、いじめを認知、発見したにもかかわらず、対応を行わなかったことが問題を大きくさせ、最悪のケースになってしまった、そういう事例も各地で起きています。

 文科省がまとめたいじめ防止対策推進法の施行状況についてでは、いじめ防止法が施行されて以降に発生した、いじめが背景にある自死事案について、具体的な学校の対応が紹介をされています。いじめの疑いを発見したときにこうした学校がどう対応したのかについて御紹介ください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 いじめ防止対策推進法施行後に発生いたしました、いじめが背景にある自殺事案につきましては、調査報告書をまとめた資料を国のいじめ防止対策協議会に文部科学省から提出をしております。

 そこでの記述でございますが、一つ目の事例といたしましては、アンケート調査を年六回実施し、いじめが疑われる記載があったが、学校では特に確認を要するものとは捉えなかった、また、その後のアンケート調査を二回連続して亡くなった生徒が提出していない状況であったが、学校は特段の対応をしなかったという記述でございます。

 また、二つ目の事例でございますが、定期的に実施していたアンケートの結果について、亡くなった生徒の回答に変化が見られたものの、十分な分析をして対応をしておらず、また、保護者からの相談等、学校として個々の事例を把握していたが、学校はいじめとして認知して対応していなかったという記述でございます。

大平委員 いじめを認知した際の対応の不十分さが、まさに先ほどあったように、取り返しのつかないところにまで問題を大きくしてしまっております。

 その点で、もう一つ看過できない事例があります。いじめを認知したが、謝罪をさせて、それで解決をした、それで支援や見守りを終了してしまうというケースです。

 文部科学省の問題行動等調査において、いじめの認知件数のうち、既に解決、解消されたとされたもの、そうでないものの内訳について御紹介ください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省が把握しております平成二十七年度のいじめの認知件数は、二十二万四千五百四十件でございます。このうち、いじめが解消しているものとされているのが十九万九千二十五件でございまして、八八・六%の比率でございます。

 なお、いじめが一定の解消が図られたが、継続支援中のものにつきましては二万六百四十三件、これは九・二%、それから、解消に向けて取り組み中のところが四千百六十三件、一・九%となっております。

大平委員 約九割のいじめが解決をしたと報告されているわけです。

 大臣、この結果についてどのように思われるでしょうか。

松野国務大臣 先ほど政府参考人が答弁したとおり、平成二十七年度に認知されたいじめのうち、大部分が解消していると報告をされています。

 しかしながら、文部科学省に設置したいじめ防止対策協議会の議論の取りまとめにおいては、「いじめが解消に至っていないにも関わらず、謝罪をもって解消とし、支援や見守りを終了するケースがある。」と指摘されており、何をもって解消とするかは慎重な見きわめが必要だと考えます。また、同じ報告書において、「学校は、いじめが解消に至るまで被害者への支援を継続すること等を徹底する。」とされています。

 いずれにしても、いじめの解消については、安易な判断を避け、解消とされたいじめが再発することがないよう、いじめの被害者を守り通すことを第一とし、細心の注意を払いながら対応する必要があると考えております。

大平委員 私も、大臣の御答弁と同じ認識を持っております。

 いじめ問題は、何よりもまず、いじめられている子供の安全を確保すること、そして、いじめ加害者のいじめ行為をやめさせなければなりません。そのためには、現場でよくやられているんですが、けんか両成敗とか握手で仲直りとか、こういう表面的な対応で解決、解消したとするのではなくて、また、いじめの加害行為のみに対して直接の指導をするというやり方ではなくて、やはり加害者に、いじめは人権侵害であり暴力であるということをしっかり理解させるとともに、加害行為をしている子供たちの背景を想像し、優しく寄り添い、共感しながら、継続した支援を行うことが不可欠だと思います。だから、実際には、解決に向けては一定の時間が当然必要になってくるというふうにも思います。

 こうしたそもそものいじめ認知の問題、そして認知をしてからの対応のまずさの問題は、いじめから子供たちの命を守るためにも、早急に改善をしていかなければならないと思います。私は、そのための対応として、二つの問題について伺いたいと思います。

 一つは、教員自身がいじめに対して誤った対応をしないように、いじめ対応のスキルを育んでいくという点です。

 残念ながら、現場では、少なくない誤った認識と、またそれに基づく対応が行われていると言わざるを得ません。先ほど紹介した例に加えて、例えば、いじめの被害者に対して、あなたにも原因がある、嫌だと言えないあなたも悪いなどのいわゆる被害者責任論と、その対応があると思います。

 いじめ自死遺族らでつくるNPO法人ジェントルハートプロジェクトがことし七月に行ったいじめに関する教員対象アンケートでは、いじめられる側にも原因があると答えた教員が、男性で三三・四%、女性で二三・八%いました。

 松野大臣にお伺いしたいと思うんですが、私は、被害者責任論は、いじめが人権侵害であり暴力であるということを見ずに、いじめ被害者を大きく傷つけ、信頼を失う重大な誤りだと思いますが、大臣の御認識を伺いたいと思います。

松野国務大臣 御指摘のような、教職員による、いじめられる側にも問題があるというような認識や発言は、いじめている児童生徒や周りで見ていたり、はやし立てたりしている児童生徒を容認するものにほかならず、いじめられている児童生徒を孤立させ、いじめを深刻化するものであり、許されないと考えております。

大平委員 こうした教員の誤った対応によって、さらに子供が傷つけられるようなことがあってはなりません。そして、いじめの解決どころか、もっと深刻化させてしまうような指導の現状は直ちに改善をしていかなければなりません。いじめ対応のスキルを教員の中に育んでいくためには、そのことに特化した研修の実施と充実改善が重要だと考えます。

 そこで、文科省に伺いますが、いじめの問題に関する校内研修を実施した学校の割合はどう推移しているでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省が実施いたしました児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査によりますと、いじめ問題に関する校内研修を実施したという項目につきましては、全学校数のうち、平成二十四年度が六八・八%、平成二十五年度が七〇・三%、平成二十六年度が七一・三%となっております。

 また、平成二十七年度につきましては、いじめの問題に関して職員会議等を通じて教職員間で共通理解を図ったり校内研修を実施したりしたという項目で調査を行いまして、全学校数のうち九五・六%の実施状況となっております。

大平委員 二十七年度になってこの数字が一気にふえているものですから、不思議だなと思って調べてみましたら、先ほど局長から御答弁あったとおり、この年から聞き方が変わっているんですね。

 二十七年度からは、これまで二つに分けていた、いじめの問題に関して職員会議等を通じて教職員間で共通理解を図ることと、そしてもう一つ、校内研修を学校で実施したという二つに分けていたものが、またはということで一つの設問になっているわけです。ですから、どちらかをやっていればカウントされるということになっているのであります。なぜこうした質問項目に変えたんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成二十六年度までの調査におきましては、項目を二つに分けて調査をしてまいりました。平成二十七年度の調査を実施するに当たりまして、調査項目全体についての見直しの検討を行いました際に、形式的な校内研修という名称のいかんにとらわれず、この二つの調査項目につきましては、いじめ問題について学校内の教職員間で共通理解を図る取り組みを実施しているという意味で実質的に同じであるというふうに判断をいたしましたので、これら二つの調査項目を統合した次第でございます。

大平委員 私、これではだめだと思うんですね。職員会議で少し話しただけでも、この数字、カウントされちゃうわけですよね。職員会議で少し話し合っただけでは、前段ずっとるる述べてきたように、教員のいじめ対応のスキルが身につくとは私は思いません。職員会議で少し話し合うということと、きっちり時間をとっていじめ問題について特化した校内研修を行うということは全く違うと私は思うんです。

 もちろん、職員会議で共通理解を図る、それもその時々大いにやったらいいわけですが、それとは別に、やはりきちんと校内研修をやるんだ、全ての学校でやるんだということを推進していかなければならないと私は思うんです。こういうふうに質問項目を変えてしまった結果、校内研修がどれほどの学校でやられているのかということがわからなくなったんですよ。

 大臣、これは、改めて研修それ自体の実施の有無、あるいはその中身、どんなふうにやられているのかという中身、それを改善していくためにも、そういうことをきちんとつかむということをやはり改めてやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 学校において教職員がいじめの問題について学ぶ機会を持っているか調査することは、法に基づくいじめ防止等の取り組み状況を把握する上で重要であると考えております。

 文部科学省としては、学校現場の現状を踏まえながら、校内研修という名前にとらわれず、学校内の教職員間におけるいじめ問題に関する共通理解を図るということについて、実施状況の把握に努めてまいりたいと考えております。

大平委員 研修かどうかという名前の問題を私は問うているわけじゃなくて、やはり目的なんですよね。教員一人一人がいじめ対応のスキルを育んでいかなければならない、そういうために行われている研修、そういう内容になっているのかということをきちんと把握していただきたいということを重ねて求めたいと思います。

 ジェントルハートプロジェクトは、年間、最低でも三時間、いじめ対策の担当教員には十時間のいじめに特化した研修を義務づけ、そのための財政支援を国がしっかりと行うこと、そして、研修の内容としては、過去の具体的事例に学ぶことが重要で、被害者遺族の話を聞くことや調査報告書を資料に使うことなどを検討するよう求めていることも大臣にお伝えしておきたいというふうに思います。

 教員のスキル向上とともに、改善すべきもう一つの点は、いじめの対応をあれこれの一つにしてほしくはないわけですが、やはりこの課題でも、教員の多忙化の問題、その解消こそが求められているというふうに思います。教職員定数を改善し、クラスサイズを小さくすることは、いじめの問題の解決、改善のためにも必要不可欠だと思います。

 しかしながら、財務省は、きょうの午前中の議論でも少しありました、今月四日の財政制度等審議会において、先十年で教員を四万九千人減らすことができると言ってきました。全く現場の実態をわかっていない許しがたい暴論であり、この点でのはっきりした松野大臣の立場と決意を示していただきたい、定数の改善をしっかりと求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 いじめや不登校を含め、学校現場における喫緊の課題に対応するためには、チーム学校の推進や学校現場の業務改善等の取り組みとあわせ、次世代の学校に必要な指導体制を構築していくことが重要だと考えております。

 学校現場の実情や、さらなる対応が必要な課題を踏まえ、平成二十九年度概算要求においては、いじめ、不登校等の未然防止、早期対応等の強化、発達障害等の児童生徒への通級による指導や外国人児童生徒等教育の充実、小学校専科指導やアクティブラーニングの視点からの授業改善、チーム学校の実現に向けた基盤整備などによる「次世代の学校・地域」創生プランの推進などに向け、「次世代の学校」指導体制実現構想を策定し、教職員定数の改善を要求しております。

 文部科学省としては、学校現場を支援し、子供たちの教育環境を充実していくため、必要な教職員定数の確保、充実についても全力で取り組んでまいります。

大平委員 教職員定数の改善、クラスサイズを小さくする、少人数学級の拡大を進めていく、ぜひともこの決意、進めていっていただきたいというふうに思います。

 次に、いじめ自死の被害者遺族の知る権利、これをどう保障するかについて伺いたいと思います。

 朝、我が子が行ってきますと家から出かけ、夕方、変わり果てた姿で帰ってくる、なぜ我が子が死ななければならなかったのか、親はそのことを強く知りたいと思います。こうした親の願いは私は当然のものだと思いますが、大臣も同じ御認識でしょうか、お伺いします。

松野国務大臣 御遺族において、かけがえのない我が子を失った悲しみから、事案の全容を知りたいという思いを持たれることは当然であると考えております。

 国のいじめ防止基本方針においては、背景調査に当たり、遺族が、当該児童生徒を最も身近に知り、また背景調査について切実な心情を持つことを認識し、その要望、意見を十分に聴取するとともに、できる限り配慮と説明を行うこと等に留意するとされています。

 文部科学省としては、学校がこのような認識のもとで調査に当たるよう、引き続き、法の趣旨の徹底に努めてまいります。

大平委員 しかし、現実はどうかを見ていきたいというふうに思うんですね。

 このいじめ防止法が施行されてもなお、隠蔽が各地で続いています。一つ具体的な事例を御紹介したいと思うんですね。

 五年前の九月一日の未明に、鹿児島県の出水市で、中学二年の女子生徒が、四メートルもの高さの金網をよじ登って、九州新幹線の線路に飛びおりて自殺をしました。

 当時、一週間後にアンケートがとられましたが、そのアンケートは開示されることなく、市の教育委員会と学校長を初めとする学校関係者を中心とする事故調査委員会、さらに学識経験者などで構成する事故調査専門委員会が出した結論は、今回の事故の直接のきっかけとなる出来事は確認できなかったというものでした。遺族はこの委員会の設置にかかわっておらず、また、メンバーの氏名の公表もされていません。

 女子生徒が亡くなった直後から、遺族のもとには、生徒や保護者からいろいろな情報が寄せられました。また、遺族も、独自に調査を行い、女子生徒が自死をしたのは学校でいじめがあったからではないかという思いを強くしました。我が子が、孫が、なぜみずから命を絶たなければならなかったのか、それを明らかにするためにもアンケートを開示してほしいと学校や市教育委員会に要請をしてきましたが、受け入れられませんでした。

 そして、事故から四年四カ月たったことしの一月八日、アンケートの結果の一部が遺族に開示されました。遺族が起こした裁判によって開示となったものです。

 今回のアンケート開示が、市の教育委員会の判断ではなく裁判によって開示されることになったこと、大臣、どのように思われるでしょうか。

松野国務大臣 本件につきましては、法施行前の個別案件であり、コメントは差し控えたいと思いますが、法施行後、平成二十五年十月に定められた国のいじめ防止基本方針においては、重大事案の調査を行うに当たり、学校の設置者また学校は、被害者に対して事実関係等その他必要な情報を提供する責任を有することを踏まえ、調査により明らかになった事実関係について、いじめを受けた児童生徒やその保護者に対して説明するものとしております。

大平委員 この事故が発生したのは法施行前ですが、これは今なお続いている問題であります。

 このアンケートの開示を受けて、遺族は再調査を求めているわけですが、市の教育委員会や市長などは拒否をし続けています。あげくの果てには、自死には家族の問題もあるようだと、ここでも被害者責任論が公然と表明されるなど、二重三重に遺族を傷つけています。

 再発防止と遺族のために行うべき調査、先ほど大臣もおっしゃいました、そのはずの調査が遺族を傷つけるようなことはあってはならないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 本件については、先ほども申し上げましたけれども、法施行前の個別の案件であって、コメントは差し控えたいと思いますが、国のいじめ防止基本方針では、背景調査においては、亡くなった児童生徒の尊厳を保持しつつ、その死に至った経過を検証し再発防止策を講ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮をしながら行うことが必要であるとされております。

 一般論として、遺族を傷つけるようなことがあってはならないと考えております。

大平委員 直ちに再調査に進むべきだということを私からもお訴えしたいと思います。

 私が重大だと思うのは、出水市の教育委員会は次のように述べているんです。国が示した通知や指針に基づき、事故調査委員会や外部委員のみで構成する事故調査専門委員会でアンケートに基づいた調査、分析を行うとともに、御遺族から申し出のあった出来事についても追加調査し、最終的に報告書をまとめられたと述べています。

 つまり、国が示した通知や指針に基づいてやっているから問題はない、そういう態度であり、国の通知やあるいは指針が、再調査をしない理由に、あるいは隠蔽の原因になっている、このことであります。

 大臣、この問題は私は決して他人事じゃないというふうに思うんですね。いじめを認めず、発見してもまともに対応せず、そしてあげくの果てには隠蔽をする、こうした一貫して事実に向き合おうとしないその姿勢は許されないと言わなければなりません。

 そのための、改めて国としての仕組みづくりが必要で、国の指針の見直しが求められていると思いますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 繰り返しになりますけれども、本件については、個別の案件であり、当該地方公共団体の長において適切に判断されるべきものであるため、見解を述べることは差し控えたいと思いますが、公立学校の場合、いじめ防止対策推進法第三十条第二項において、いじめの重大事態の調査結果の報告を受けた地方公共団体の長は、重大事態への対処または重大事態と同種の事態の発生防止のため必要があると認めるときは再調査を行うことができるとされております。

大平委員 当該の出水市の教育委員会自身が、国が示した通知や指針に基づいてやっていることだと述べているんですね。これは決して他人事ではないですし、こうした事態は決して鹿児島だけの問題ではありません。

 冒頭に紹介した青森の女子生徒のケースでも、御遺族が子供たちにとったアンケートを見せてほしいと求めたところ、全校生徒四百三十人のうち、たった二十一人分のアンケート、しかもパソコンで打ち直したものを見せられたとのことでした。その内容は、いじめについての情報は一つもなかった。遺族の皆さんがこれだけかと聞くと、これだけだ、原本は見せないと。こういうことが全国で依然行われているのであります。

 遺族の願いに応えるためにも、隠蔽のできない仕組みづくりは待ったなしの課題だと言わなければなりません。もう一度お伺いしたいと思います。

松野国務大臣 いじめ防止対策推進法第二十八条第二項においては、学校の設置者または学校は、いじめの重大事態の調査を実施したときは、いじめの被害者に対して、重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとしております。

 先般、いじめ防止対策協議会より、いじめの重大事態の調査の進め方についてガイドラインを作成するよう提言されたところであり、調査方法、アンケート結果を含む調査結果の情報提供について、被害者へ事前に説明を行うこと、被害者側への説明責任と個人情報保護の観点を踏まえ、調査結果の取り扱いについても盛り込む予定であります。

 また、教育委員会、学校等が法や基本方針等にのっとり適切に対応しているかどうか、外部からのチェックを受けるようになる必要があると考えており、保護者や地域における法の理解増進を図ってまいります。

大平委員 防止法の中身を大臣、紹介されたと思います。必要な情報を適切にというふうにあるわけですが、実態としては適切に行われていない、まさに実行力あるものに仕組みづくりを見直す必要があるということを重ねて訴えておきたいと思います。

 仕組みづくりという点で一点お伺いしたいのは、初動調査の問題です。

 いじめが疑われる子供の自死事案で、直後の子供たち自身へのアンケート調査が、何があったのか、事実を把握する上で非常に有効であることは、先ほど大臣もお認めになったかというふうに思います。

 しかしながら、実際にこの問題で文部科学省が現場に対して示しているものを見ると、例えば、子供たちへの調査をするのに保護者の承諾を得なければならない、承諾書を書いて提出してもらうようになっていたりだとか、あるいはまた、子供たちへのアンケートの案文を見ても、回答を書かせた上で、最後に記名を求めるものになっております。以前は記名はしてもしなくてもいいとなっていたのを、わざわざ記名せよというふうに変えてきているのであります。

 大臣、これは、速やかな調査、あるいはまた、ありのままの事実を子供たちが書く、そのことへの障害になるのではないでしょうか。承諾書はやめるべき、そして無記名もしくは記名選択式に改めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 自殺の背景調査は、自殺という重大な事態にかかわる調査であるため、自殺が発生した後には、周囲の児童生徒にうつ、不安などの反応があらわれることがあり、調査への参加を無理強いせず、本人の意思を尊重することが必要であることなどの理由から、背景調査の指針において、承諾書のサンプルを示しているところであります。

 また、指針において、時としてうわさや臆測、悪意のある記述等が含まれる危険性もあり、無記名式の場合、このような記述等をその後の聞き取り調査で確認できなくなるなど、調査実施上の困難が生じる可能性があるとしており、記名式とすることが望ましいと考えております。

大平委員 この調査は何のためにやるのか、一体何が大事なのかということをもう一回明らかにする必要があると思うんですね。

 私は、かけがえのない一人の子供の命がなくなった、それに対して、何があったのかをみんなで全力で明らかにする、御遺族の当たり前かつ最大の願いであり、また、再発防止にとっての必要不可欠の取り組みでもある、そして、子供たちの人生にとっても大切なことだというふうに思います。

 私は、例えば、二段階にしてもいいというふうに思います。まずは、直ちに全員に、無記名で、とにかく知っていることをありのままに書いてほしいと一斉に調査を行う、そして、その後の追加調査は必要に応じてよく検討もして、そこでは保護者の承諾やあるいは丁寧に説明する、そういう段取りを踏むということもあると思います。そんなふうに二段階でやるということも含めて、この問題を検討していただきたいというふうに思います。

 大臣、隠蔽を防ぎ、被害者遺族の尊厳を守るためにも、以下の提案をしたいと思います。

 教育委員会や学校が持つ情報を被害者遺族と共有する仕組みをつくること、調査内容、調査方法についても被害者遺族が意見を言え、尊重される仕組みをつくること、調査報告書に被害者遺族の記入欄を設けること、これらの提案について検討するよう求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 国のいじめ防止基本方針においては、自殺の背景調査の留意事項として、調査を行うに当たり、学校の設置者または学校は、調査の方法について、できる限り遺族と合意をしておく必要があるとしております。

 また、同基本方針においては、調査主体が調査結果を学校の設置者に報告する際、遺族が希望する場合には、その所見をまとめた文書の提供を受け、調査結果の報告に添えて提出するものとされているため、このような対応が徹底されるよう周知をしてまいりたいと考えております。

大平委員 よく、学校の責任が問われると裁判に訴えられる、だから隠そうということに学校あるいは教育委員会はなるわけですが、実際は、全くの逆であります。御遺族は、何よりも、何が起きたのか、その真実を知りたいだけであり、それが隠されるのが何よりの不信の原因になっている、そしてやりたくもない裁判を起こさざるを得ない、その最大の理由になっているわけです。

 大臣、このことをどう思われるでしょうか、御答弁いただきたいと思います。

松野国務大臣 いじめを原因とした子供たち、生徒児童の自死については、これは先ほど答弁をさせていただいたとおり、お亡くなりになった御本人の尊厳をしっかりと守りつつ調査が進められるべきものだと思いますし、かけがえのない我が子を失った保護者の皆さんにとっては、その事実関係を知りたいというのも当然のことであろうと思います。

 そこに至っては、先ほど申し上げましたが、保護者の皆さん方の意見もしっかりとお聞きをするということが重要でありますし、何よりも、学校や教育委員会によって事実関係が隠蔽されるようなことはあってはならないことだと考えております。

大平委員 大臣もその有効性、重要性を認めておられます初動調査、私たちは、できるだけ三日以内に行うべきだということもあわせて求めたいと思います。

 私たち日本共産党は、二〇一二年十一月に、「「いじめ」のない学校と社会を」との提言を発表しました。きょう議論してきました目の前のいじめ対策の問題に加えて、いじめ解決に取り組むための条件整備、とりわけ三十五人以下学級の推進は、この課題においても直ちに進めなければならないと思います。

 何よりも子供たちの命を守る、そのために全力を尽くす決意を重ねて申し上げまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 前々回の所信質疑だったと思いますけれども、定数改善のあり方について質問をしたばかりです。ただ、きょう、当委員会でも話題になっておりますが、その後の財政制度分科会、財務省から定数削減を促す資料が提出されたようでありますので、再びこの問題について、きょうは財務省の方にも来ていただいて、質問をさせていただきたいと思います。

 最初に財務省に伺います。

 十一月四日の財政制度分科会で、二〇二六年度までの十年間、現在の教育環境を継続した場合でも、四万九千四百人の教職員削減が可能という資料が提出をされております。財務省としては、この数に沿って減らすべきだという考えをお持ちなのでしょうか。

三木大臣政務官 吉川委員にいただきました御質問にお答えしたいと思います。

 財審の試算におきましては、文科省が概算要求において推計した今後十年間のクラス数の減少、これの見込みをもとに、現在の教育環境である十クラス当たり十八人という教職員数を維持した場合の教職員の数の計算でございます。

 教員一人当たりの生徒数や学力レベルの国際比較をした場合に、我が国は主要先進国の中でも既に遜色のない状況になっておりまして、厳しい財政状況を踏まえれば、この環境を継続していくことが原則というふうに考えております。

 他方、教職員を取り巻く環境につきましては、委員から以前から御指摘いただいておりますとおり、いじめ、不登校等、多様化、複雑化しておりまして、この水準を超えた配置について、一概に財務省として否定しているわけではございません。

 骨太の方針二〇一六や改革工程表において、文教分野も、予算の質の向上、重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底などが求められていること等を踏まえまして、要求官庁からの十分なエビデンスの提示を条件といたしまして、費用対効果、あるいは他の手段との比較などを予算編成過程で検証しつつ、これからもこれらを踏まえて議論してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 財務省の方に聞くと、いつもPDCAサイクルというお話をされます。そもそもPDCAサイクルというのはどこから出てきたか、当然御存じですよね。どういうところから出てきたと思われますか、PDCAは。

三木大臣政務官 お尋ねのエビデンスでございますけれども、我々といたしましては、教育政策につきましては、骨太の方針二〇一六等において、エビデンスに基づくPDCAサイクルを確立することというふうにいたしております。

 具体的にエビデンスといいますのは、学級規模の影響や効果の調査、あるいは加配教員、専門スタッフの配置の効果分析、あるいは高い成果を上げている地域や学校の取り組み、教育環境の分析といった実証研究に基づく教育政策の成果、費用に関する科学的根拠のことというふうに捉えております。

 こうした考え方に基づきまして、文部科学省において、二十八年度当初予算で教育政策形成に関する実証研究が進められているものと承知いたしております。

吉川(元)委員 長々と答弁されるのは結構なんですけれども、質問したことに答えてください。PDCAサイクルというのはどこから出てきた考え方なんですかと聞いているんです、PDCA、PDCAと言うから。

三木大臣政務官 御存じのとおり、日本というのは、今非常に財政状況が厳しい中でございます。こういった中で、予算の質を高めるために財政審等でこういった考え方を用いまして、より予算の質を高め、効果を高めるためにこういった考え方が出てきたというふうに承知いたしております。

吉川(元)委員 PDCAサイクルというのは、物をつくる、製品をつくる、それをどう改善していくかということから出てきた考え方ですよ。御存じないんですか、そういうこと。

三木大臣政務官 失礼いたしました。エビデンスの方についてお答えしたつもりでございました。(吉川(元)委員「質問をちゃんと聞いてくださいよ」と呼ぶ)失礼いたしました。

 先ほどお答えしたこととかぶりますけれども、我々といたしましては、予算の質を向上させるためにどういった手法が妥当であるかということを考えております。そういった中で、効率的に予算の運用、これを実現させるためにこういった考え方が出てきたというふうに考えております。

吉川(元)委員 私が言いたいのは、PDCAサイクルは結構です、ただ、教育というのは、物をつくる、商品をつくるものではないんです。橋をつくったり、道路をつくったり、あるいはダムをつくったり、そういう場合にはPDCAというのは有効かもわかりませんけれども、教育において、PDCA、物をつくるように教育をはかること、その考え方自体がおかしいと思うんですけれども、この点についてはどうお考えですか。

三木大臣政務官 確かに、橋や道路をつくるように人をつくるというわけにはまいりませんけれども、ただ、先ほどから申し上げておりますとおり、骨太の方針二〇一六や改革工程表においても、文教分野においてもやはり予算の質の向上、重点化ということ、そしてまた、こういったことに基づいてPDCAサイクルを確立、徹底していくことが必要というふうに考えております。

吉川(元)委員 もう全然答弁になっていないので、これ以上やっても時間がないのでもうやめますけれども、今言いましたとおり、PDCAというのは、それはある分野においては有効なやり方だと思います。ただ、教育というのは、そういうものとは全く異質のものなんだということを財務省にしっかり考えてもらわないと、橋や道路の予算と同じように教育予算を切っていくなんということは、私はあってはならないというふうに思います。

 次に、財務省に伺いますけれども、文部科学省は、「次世代の学校」指導体制実現構想という十カ年計画を取りまとめております。十年間での自然減四万五千四百人に対し、定数改善二万九千七百六十人を義務標準法の改正で求めております。

 教育現場、これは何度もこの文部科学委員会でも議論してきましたけれども、長時間労働と多忙化を踏まえ、さらに少人数学級を進めるべきと考えれば、定数改善の数字、これはこれでも少な過ぎるんじゃないかというふうに私自身は感じておりますが、過日の委員会で松野大臣に確認したところ、文科省としては、この十カ年計画を予算の裏づけのある教職員定数の中長期的な見通しと考えているという答弁がなされました。

 財務省としては、この十カ年計画は中長期的な見通しというふうに認めていらっしゃるんでしょうか。

三木大臣政務官 二十九年度概算要求に当たりまして、本年七月に文部科学省が「次世代の学校」指導体制実現構想を策定されたということは、承知いたしております。

 他方、昨年十二月の経済財政諮問会議にて策定された経済・財政再生計画の改革工程表におきまして、二〇一六年度に教育政策に関する実証研究を開始し、二〇一八年度末に報告、公表。そして、二〇一八年度にかけて、こうした実証研究の進展を踏まえた予算の裏づけのある教職員定数の中期見通しを策定、公表。そして、二〇一九年度以降、実証分析の進展に応じて、必要に応じて中期見通しを改定、公表するとされております。

 これを受けまして、文部科学省において、二十八年度予算において教育政策形成に関する実証研究を措置し、この六月中旬から事業が開始されたものというふうに承知いたしております。

 したがって、七月に策定された構想がこうした実証研究を踏まえているとは言いづらく、改革工程表が予定している予算の裏づけがある教職員定数の中期見通しの内容等になっているというふうには考えておりません。

 いずれにいたしましても、今後の予算編成過程におきまして、こういったことを踏まえて議論を進めてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 つまり、今のお話だと、この十カ年計画というのは関係ないというふうに認識されているということですか、財務省は。

三木大臣政務官 将来にわたって関係ないということではございませんで、今の段階では、その結果が出ていない段階でございますので、七月に策定された構想でございますので、この成果というか結果がまだまだ分析されている状況とは言えませんので、予算の裏づけのある教職員定数の中期見通しになっているというふうには考えておりません。

吉川(元)委員 実績が出ていないというのは当たり前じゃないですか、計画なんだから。今からこうやってやっていきますという話でしょう。何で実績だ云々だという話が出てくるんですか。

 今の答弁を文科省としてどう受けとめておられますか。

松野国務大臣 実績かどうかということに関しては、今委員御指摘のとおり、これからのことでありますから、実績という考え方は当たらないかと思いますが、今までの議論をお聞きしていて、PDCAに関しては、委員の御指摘のとおり、本来、もともとは製造業においての過程を効率化するための手法でありましたが、一部、今は、会社運営、組織体の効率化に向けての手法にも使われております。

 ただ、問題は、ここで言うところの教育の成果とは何かということなんだろうというふうに思います。この教育の成果というのが、単に学力だけのことを言っているのか、また対象を、きょうも御議論ありましたが、発達障害をお持ちの児童生徒に対して、どうしたらその子たちの能力、個性を最大限発揮できるようにすることができるか。教育における成果というのは極めて多面的なことであろうかと思います。

 私たちは、そういった考え方に基づいて、この「次世代の学校」指導体制実現構想というのを打ち出しておりますが、文部科学省の立場といたしましては、粘り強く、財務省を初め関係者、関係機関に対して御理解をいただけるよう説明をしっかりと進めていくということだと考えております。

吉川(元)委員 ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 財務省の資料、分科会に出された資料を読ませていただきますと、かなり、さすがにうそは書けないとは思いますけれども、都合のよい数字であるとか、あるいは言葉というのを私は抜き出しているふうに感じて仕方がありません。

 例えば、少人数学級に関して言いますと、OECDのインディケーションズでありますとかPISAの教訓、そこから取り出して、学級規模と学力の関係については言及はされております。ただ、これは、優先順位の関係から、学級規模の縮小よりも教員の質への投資を重視すべきだという意味合いだというふうに私は受けとめているわけです。

 財務省としては、ここに書いてある、いわゆるOECDのインディケーションズであるとかPISAの抜粋をしている、この考え方に立っているということですか。

三木大臣政務官 委員お尋ねの点でございますけれども、PISAであるとかあるいはOECDのインディケーションであったことの内容について、財務省がそれを資料として諮問会議を進めているという話でございました。内容として、例えば数と質の話を念頭に置いておっしゃられていることだと思っております。

 予算の質を向上するという必要性について、骨太の方針で述べられておりますとおり、厳しい財政状況を踏まえましたら、教員についても質の向上を目指すのは当然のことというふうに考えています。先ほど委員御指摘のとおり、OECDの提言でも、日本は教員の質を高めることを優先すべきというふうに財務省の方はこれを読み込んでおります。

 なお、教員の質を高めることが児童生徒への教育効果を高めるという学術的な実証分析は、多数、これ以外にも存在いたします。こうした分析の中で、教員の数の増加がない中でも質の向上が児童生徒の成果につながることが示されているというふうに考えております。

吉川(元)委員 文科省としては、もちろん、少人数学級の実現ということはこの間もお話しさせていただきました。

 これは、読んでいると、例えば、PISAの方でいいますと、日本では教育への追加投資の多くが学級規模の縮小に充てられていることが問題の本質というふうに指摘があります。これは一体どこの国の話なんですか。追加投資の多くが学級規模の縮小に今まで充てられてきたんですか。もちろん、過去はそうでしたけれども、最近に至ってそのように追加投資が、そもそも追加投資そのものが今されていないわけです。

 そういう意味でいうと、PISAなりインディケーションズ、質の向上というのは私ももちろんそうだと思います。ですから、その点についてはそうですけれども、今の日本の学校現場、教員の置かれている現状、これを十分把握した上で書かれているのかということについては、私は若干の疑問を持たざるを得ません。

 ちょっと、時間がありませんので、これも先ほどお話ありました、通級指導についてお聞きしたいと思います。

 財務省、資料を読んでいると、どういうことなのか、いま一つよくわからないんですけれども、財務省の提出資料では、盛んに外部人材の活用というのが指摘をされております。

 端的に財務省にお聞きしますけれども、通級指導についても外部人材を活用すべきだというお考えですか。

三木大臣政務官 委員の質問にお答えしたいと思います。

 通級指導教室で行われる通級指導そのものは正規の教育課程の一部とされておりまして、教員が指導することが原則となっておりますので、これは外部人材を使用することはできません。

 ただ、私どもの申し上げておりますのは、近年、発達障害など通級指導の対象となる児童生徒の数は増加しておりまして、これまでも加配の定数をしてきたところでございまして、文科省の実態調査の中では、こういった中、通級指導の教室の設置以外の手法により発達障害の児童生徒に対応している例として、外部の支援員の活用により指導、支援できているといった回答があるというふうに承知しております。

 以上でございます。

吉川(元)委員 これは、財政制度分科会の財務省が出した資料ですけれども、いわゆる特別支援教育というところで、外部人材の活用と結ばれているんですけれども、これは一体どういう意味なんですか。

三木大臣政務官 繰り返しになりますけれども、財務省としては、通級指導そのものは正規の教育課程の一部とされておりますので、こちらの方は教員が指導するというふうに考えております。

 その上で、先ほども申し上げましたように、通級指導教室の設置以外の方法によって発達障害の児童生徒にも対応できる、そういった例もあるということ……(吉川(元)委員「いや、これはどういう意味なんですかと言っているんです」と呼ぶ)

永岡委員長 指名をいたしましてから、御発言ください。

三木大臣政務官 例があるというふうに考えておりますので、基本的な考え方としては、それを区別して財務省の方では考えておりますので、決して一緒に考えておるわけではございません。

吉川(元)委員 そうしましたら、ちょっと文科省の方に聞きたいと思います。

 通級指導、学教法の施行規則百四十条に基づく、今政務官が言われたとおり、特別の教育課程で、これは、正規の授業、免許を持っている方が行うというのは当然でありますが、これは日本語の指導にも共通しますけれども、早い段階からやればやるほど、これも指摘があったと思いますが、効果が高いというふうに言われております。

 そこで、文科省にお聞きしますが、現在、特別な教育的支援を必要とし、通級指導を受けている子供たちはどの程度存在をするのか、また、その傾向といいますか、この間の推移でいうと、どういうふうになっているのか、教えていただけますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 発達障害あるいは言語障害等による困難を克服、改善するため、平成二十七年五月一日時点において、約九万人の児童生徒が小中学校において通級の指導を受けているところでございます。この数字は、この十年間で約二・三倍増加ということになっております。

 特別支援教育につきましては、その理解が進む中で、通級による指導を必要とする児童生徒が今後もますます増加すると見込まれていることから、文科省といたしましては、これに対応する通級指導教員の確保が絶対に必要だというふうに考えております。

吉川(元)委員 財務省に伺います。

 この間、通級指導を必要とする、実際に通級指導に通っている子供たち、恐らく、聞くところでは、実際に通おうと思っても、これも指摘があったと思いますけれども、通えない、そういう場がない子供たちもたくさんいます。当然、定数改善をやるということでいいんですよね。

三木大臣政務官 先ほどから幾つかお話しさせていただきましたとおり、費用対効果や他にとり得る手段の比較など、エビデンスに基づく検証により、効果的また効率的な予算にすることが我々としては必要だと考えております。

 したがって、要求官庁から十分なエビデンスを伴った増員要求がされた場合、それに基づいて予算編成過程で議論に付することになるというふうに考えております。

吉川(元)委員 ちょっと時間が来てしまいましたので、終わります。

 大体、費用対効果というのは一体どういう意味ですか、それは。本当に私は愕然といたします、そういう答弁が出てくるということは。実際に、財務省は今の環境を守ると言っているんでしょう。今から、通級指導していく子供たちはふえていくんですよ。だったら、ふやさなきゃいけないじゃないですか。

 最低でも、財務省の論理に従っても、これは定数をふやさなければいけないということを最後に指摘して、質問を終わります。

 以上です。

永岡委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

永岡委員長 速記を起こしてください。

     ――――◇―――――

永岡委員長 次に、第百九十回国会、丹羽秀樹君外八名提出、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。河村建夫君。

    ―――――――――――――

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河村議員 ただいま議題となりました義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 義務教育は、社会において自立的に生きる基礎となるものであります。しかしながら、現在、約十二万人の学齢期の児童生徒が不登校の状態にあります。また、戦後の混乱期に学校に通えなかったこと等により、夜間その他特別な時間において授業を行う、いわゆる夜間中学における教育機会の提供を希望される方も多数おられます。

 本案は、このような義務教育の段階における普通教育を十分に受けていない方の状況に鑑み、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進しようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、基本理念として、全ての児童生徒が安心して教育を受けられる学校環境の確保、不登校児童生徒に対する多様な学習活動の実情を踏まえた支援、年齢等にかかわりなく教育を受ける機会を確保することなどを定めることとしております。

 第二に、文部科学大臣は、教育機会の確保等に関する施策を推進するための基本指針を定めることとし、その際に、地方公共団体及び民間の団体等の関係者の意見を反映させるための措置を講ずることとしております。

 第三に、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等を図るため、国及び地方公共団体の措置として、全児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるようにするための学校における取り組みへの支援、関係者間の情報共有の促進、不登校特例校や教育支援センターの整備等、学校以外の場における学習活動等の継続的な把握、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえた支援等について定めることとしております。

 第四に、夜間中学における就学の機会の提供やいわゆる自主夜間中学に対する支援、それらの事務に関する関係する地方公共団体による協議会について定めることとしております。

 第五に、教育機会の確保等に関するその他の施策として、調査研究、人材の確保等、教材の提供等の学習支援、学校生活上の困難を有する児童生徒等からの相談に対応する体制の整備等を講ずることとしております。

 第六に、教育機会の確保等のために必要な経済的支援のあり方等に関する検討条項を設けることとしております。

 最後に、この法律は、夜間中学に関連する規定は公布日から、その他の規定は公布日から起算して二月を経過した日から、それぞれ施行することとしております。

 以上が、本法案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

永岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十分散会


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