衆議院

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第2号 平成30年3月28日(水曜日)

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平成三十年三月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 安藤  裕君 理事 神山 佐市君

   理事 亀岡 偉民君 理事 工藤 彰三君

   理事 鈴木 淳司君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 浮島 智子君

      池田 佳隆君    石川 昭政君

      上杉謙太郎君    尾身 朝子君

      大見  正君    金子万寿夫君

      神谷  昇君    小林 茂樹君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    高木  啓君

      根本 幸典君    馳   浩君

      船田  元君    古田 圭一君

      松本 剛明君    三浦  靖君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    櫻井  周君

      日吉 雄太君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    長島 昭久君

      西岡 秀子君    中野 洋昌君

      鰐淵 洋子君    平野 博文君

      畑野 君枝君    串田 誠一君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       林  芳正君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       鈴木 俊一君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官    宮川 典子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           可部 哲生君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   茶谷 栄治君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          高橋 道和君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       佐野  太君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯谷 桂介君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 裕紀君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吾郷 進平君

   文部科学委員会専門員   鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     三浦  靖君

  宮内 秀樹君     神谷  昇君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     金子万寿夫君

  三浦  靖君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     宮内 秀樹君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(玉城デニー君紹介)(第五二八号)

 同(長尾秀樹君紹介)(第五二九号)

 同(船橋利実君紹介)(第五三〇号)

 同(大島敦君紹介)(第五三七号)

 同(中野洋昌君紹介)(第五三八号)

 同(荒井聰君紹介)(第五三九号)

 同(生方幸夫君紹介)(第五四〇号)

 同(川内博史君紹介)(第五四一号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第五四二号)

 同(三ッ林裕巳君紹介)(第五四三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六二二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六四三号)

 同(樽床伸二君紹介)(第六六四号)

 同(吉川元君紹介)(第六六五号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善に関する請願(逢坂誠二君紹介)(第五三一号)

 同(玉城デニー君紹介)(第五三二号)

 同(阿部知子君紹介)(第五七四号)

 同(岡本あき子君紹介)(第六一一号)

 同(吉川元君紹介)(第六六六号)

 同(浅野哲君紹介)(第六七一号)

 七十万人の給付制奨学金と学費値下げに関する請願(志位和夫君紹介)(第六四二号)

 国の責任による三十五人学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第六七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。林文部科学大臣。

林国務大臣 本日は、名古屋市立の中学校において前文部科学事務次官が総合的な学習の時間の授業で講演を行った件に対する文部科学省による事実確認等について、私からその概要を御説明させていただきます。

 まず、本件の経緯について御説明をいたします。

 二月十六日金曜日に、名古屋市立の中学校において、今回の授業が実施されました。

 翌日の十七日土曜日の中日新聞にこの授業の記事が掲載され、赤池誠章参議院議員から官房長に対して、報道にあった前川氏の授業についての確認の依頼がありました。

 十九日月曜日、官房長から連絡を受けた初等中等教育局において、池田佳隆衆議院議員から当該記事の提供を受け、その内容を確認し、その後、名古屋市教育委員会に電話で事実関係を確認し、名古屋市教育委員会から関係資料の提供を受けました。

 赤池議員に対しては二月二十日火曜日に、池田議員に対しては二月二十二日木曜日に、初等中等教育局から名古屋市教育委員会に確認した内容の御説明を行っております。

 その後、三月一日木曜日、五日月曜日、六日火曜日、七日水曜日と、初等中等教育局と名古屋市教育委員会との間で、メールでの質問と回答のやりとりを二回ずつ行いました。

 なお、池田議員に対しては、三月一日木曜日に質問内容について情報提供を行い、その後、それに対するコメントをいただき、このコメントも参考に、初等中等教育局において、質問内容を一部修正しました。しかし、この修正はあくまで初等中等教育局の主体的な判断で行ったものであり、議員の指示によるものではありません。

 その後、初等中等教育局から、七日水曜日に宮川大臣政務官、八日木曜日に丹羽文部科学副大臣、そして十二日月曜日に私に報告がございました。

 次に、事実確認を行った理由について御説明をいたします。

 本件につきましては、前文部科学事務次官という文部科学行政の事務方の最高責任者としての地位にあった者が、中学校という公教育の場で授業を行ったという事例であると承知をしております。

 この授業を行った前次官は、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけでなく、本人自身の違法行為により停職相当とされた者であり、このような事例について、担当の初等中等教育局において、こうした背景も踏まえ、授業の狙いや内容、前次官を招いた理由や経緯など、今回の件が適切な教育的配慮のもとで行われたものであったかどうか等について確認する必要があると考え、初等中等教育局の判断により、教育委員会に対して質問を行ったものです。

 ただ、このような事実確認を行うに当たっては、教育現場において誤解が生じないよう十分に留意するべきことは当然であり、そのような観点からは、今回の書面についてはやや誤解を招きかねない面もあったと考えられるため、このような事実確認を行う際には表現ぶり等について十分に留意する必要がある旨、最初に報告があった三月十二日月曜日に、私から初等中等教育局長に対して注意したところでございます。

 以上が本件の概要でございます。

 文部科学省としては、今回の事案を踏まえ、教育現場に対し、より一層丁寧な対応に努めてまいる所存です。委員各位の御理解をよろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官可部哲生君、主計局次長茶谷栄治君、文部科学省初等中等教育局長高橋道和君、高等教育局長義本博司君、科学技術・学術政策局長佐野太君、研究振興局長磯谷桂介君、文化庁次長中岡司君、厚生労働省大臣官房審議官成田裕紀君及び中小企業庁事業環境部長吾郷進平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神山佐市君。

神山委員 おはようございます。自由民主党の神山佐市でございます。

 本日の質問の機会をいただきましたことに心より感謝申し上げる次第であります。

 さきの大臣の所信について幾つか質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 キッズウイークについて、有給休暇の取得率向上、観光地の混雑緩和のために学校の休業日を分離をし、そして、都道府県や市町村などの地域別に休みをつくるということの取組であります。

 まずは厚生労働省にお尋ねいたしますけれども、大人と子供が一緒にまとまった休日を過ごす機会を創出するため平成三十年から学校休業日を分散させるとのことでありますけれども、果たしてその狙いどおりにいくのか疑問に思っている部分もあるわけであります。

 幾つか問題点を提起していきたいというふうに思うんですけれども、まず、メリットとしては、大人と子供が一緒に休みをとることにより親子間の会話や時間が多くなること、そして、地域ごとに休みを分散することにより観光地や道路の混雑解消となるわけであります。観光地や地域活性化につながるということもあるわけであります。

 次に、デメリットと考える部分もあるわけでありますけれども、多くの方が懸念されるであろうことが幾つか考えられているわけであります。

 それは、雇用者の約四割を非正規雇用が占める中、有給休暇自体がない働き方をして、休んだ分の給料が減るというふうな働き方をしている方もいるわけであります。遊びに行くだけの出費を用意できない方も多いという声もあるわけであります。

 日本の法人の三百八十五万者のうち、九九%を超える中小企業があるわけであります。また、従業員が五人以下で、八〇%を超える小規模企業もあるわけであります。従業員のほとんどが有給休暇を取得すること自体が大変なので、自分だけ申請することはできないという企業で働いている方々が現状であるというふうに認識しているわけであります。

 また、子育て世帯において、有休は子供の学校授業や病気のときになるべくとっておきたいと思っているということもあるわけであります。それで有給休暇をとらないということも考えているわけであります。

 また、人手不足や周囲が休まないことを理由に日本人の有給休暇取得率は低く、有給休暇取得自体に罪悪感さえ感じている方々もおるというふうに認識しているわけであります。

 加えて、子供のいる家庭がキッズウイーク中に休みをとって、反対に、子供がいない家庭の人が休めず、休んだ人のフォローをしたり働くことになるのではないかと言われております。

 以上、問題点を指摘してまいりましたが、少しでも個々が自由に休みを設定できるような労働環境を整えるきっかけになってほしいと思っているわけであります。国民の意識改革が必要であるというふうに認識しているわけであります。

 求められるのは有休等をとりやすい制度づくりだと思うわけでありますけれども、どのような施策をお考えなのか、お伺いをいたします。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、キッズウイークに合わせて子供の保護者が気兼ねなく休暇を取得できるようにするためには、職場の理解が不可欠であると考えております。

 厚生労働省では、労働者が子供の学校休業日等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう事業主が配慮する旨を労働時間等設定改善法に基づく指針に盛り込み、企業に対して指針の周知に努めているところでございます。

 また、休暇を取得しやすい雰囲気づくりのため、十月を年次有給休暇取得促進期間とするとともに、連続した休暇を取得しやすいゴールデンウイーク、夏季及び年末年始に集中的な広報に取り組んでいるところでございます。

 今後、キッズウイークが実施される時期と地域に着目した広報活動を行うこととしており、キッズウイークを通じた年次有給休暇の取得促進に向けた周知に努めてまいりたいと考えております。

神山委員 ありがとうございました。

 次に、文科大臣にお伺いいたします。

 もともと休みがとりにくい共働きの家庭だと、夫婦が別の会社に勤務している部分もあるというふうに認識しているわけであります。子供が休みでも親は休めないということがよくあるというふうに考えているわけであります。土曜日出勤となることがある家庭においては、子供も土曜日に保育園を利用しているそうでありますけれども、実際にキッズウイークで小学校の子供だけが休みになった場合、子供が一人家に残るなどの問題も起こるのではないかというふうに考えているわけであります。

 実際にその日に休業できない家庭がかなり多いのではないかと推察するわけでありますけれども、家庭の子供たちの対応についてどのような施策をお考えなのか、大臣にお願いいたします。

林国務大臣 家庭や地域の協力によって大人と子供が触れ合いながらスポーツや文化、自然などに親しむ機会の充実を図るということは、子供たちの豊かな学びを実現して健やかな成長を促進する上で大変重要なことだ、こういうふうに考えております。

 こうした機会の充実に資するように、学校の休業日をまず分散化するということをするとともに、有給休暇取得の促進、多様な活動機会の確保等を行うことは大変有意義なことだ、こういうふうに考えております。

 官房長官が議長を務めるキッズウイークの総合推進会議というのがございますが、ここにおいては、内閣官房、総務省、厚生労働省、それから経済産業省、国土交通省、そして文部科学省、関係団体が構成員となりまして、官民一体となって取り組んでいくということが既に確認をされております。

 こうしたことを踏まえて、大前提としては、保護者がしっかりと休暇が取得できるように関係省庁及び企業、経済界、教育界が連携して対応していく、これがまず重要であるというふうに考えております。

 その上で、今お話がありましたように、保護者が休めない家庭にも配慮しつつ、子供たちが地域において大人と一緒に文化やスポーツ、自然などの多様な活動機会が得られるよう取り組んでおるところでございまして、あわせて関係団体等への協力を要請しておるところでございます。

 各地域におかれましては、社会教育やスポーツ、文化団体等の協力も得つつ、保護者が休めない家庭への配慮も含めて、全ての子供が多様な学習や体験活動の機会が得られるよう努めていただきたい、そういうふうに考えております。

神山委員 ありがとうございます。

 また、今の、夫婦が同じ職場、会社で働いていると休みがとりやすいんだというふうに思うわけでありますけれども、別の会社、事業所に勤務をしていると、なかなか夫婦がそろって休めないではないかというふうに危惧するわけであります。

 今、大臣の、関係省庁そして官民一体となって進めるということの答弁をいただいたわけでありますけれども、夫婦が別の会社で働いている部分について、こういうふうにすると取得がしやすいのではないかというふうなことがあれば教えていただきたいと思います。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な方策があるわけではございませんが、厚生労働省といたしましては、全ての企業に対して、全ての労働者の方が年休を促進していただきやすいような周知、広報を努めていきたいというふうに考えております。

神山委員 有給休暇がとれるように、そしてキッズウイークが成功するように、官民一体となって、更に取組をお願いいたします。

 次に、幼児教育の無償化についてお伺いします。

 調査によりますと、二十代や三十代の若い世代が理想の子供の数を持たない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎるというふうなこともあるようであります。最大の理由であり、教育費の支援を求める声が多く、子育てと仕事との両立や、子育て、教育にかかる費用の負担が重いことが、子育て世代への大きな負担となっている現状であるわけであります。

 我が国の少子化問題の一因ともなっているわけでありますけれども、そこで、幼児教育の無償化についてですが、二〇二〇年度を目指し、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育を無償化するとのことでありますけれども、幼児教育の重要性や意義、そしてこれまでの取組や幼児教育の投資効果について、具体的に示せるものがあれば御教授お願いいたします。

林国務大臣 幼児教育は、生涯にわたる人格の形成の基礎や、その後の義務教育、この基礎を培うものでございまして、全ての子供に質の高い幼児教育の機会を保障するということは大変重要なことであると思っております。

 海外の研究結果においては、質の高い幼児教育が将来の所得の向上や生活保護受給率の低下等に著しい効果をもたらすということも示されておるところでございます。

 また、今先生からもお話がありましたように、各種調査によりますと、二十代や三十代の若い世代が理想の子供数を持たない理由、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからというのが最大の理由とされておるわけでございまして、教育にかかる費用が少子化の要因の一つであるとされておりまして、この費用を無償化、軽減することは、子育て世代の経済的負担を軽減し、少子化対策に貢献する意義を有しておる、こういうふうに考えております。

 このため、幼児教育の無償化については、これまでも段階的に取り組んできたところではございますが、さらに、昨年の十二月に閣議決定された新しい経済政策パッケージにおいて、人づくり革命の一つとして、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化することとし、取組を一気に加速させることとしたところでございます。

 文科省としては、引き続き、関係省庁と連携しながら、しっかりと幼児教育の無償化を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

神山委員 大臣、ありがとうございました。

 次に、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックについてお尋ねいたします。

 さきの平昌オリンピック・パラリンピックにおいて、冬季オリンピックの、日本勢では史上初めてのケースとなったドーピングの違反が出たわけであります。

 スピードスケート選手が、大会前の四日に江陵選手村であった抜き打ち検査で、利尿作用があり、ドーピング隠しの目的と疑われる禁止薬物アセタゾラミドが検出されたとの報道がありました。その後の調査で、アメリカ製の使い捨てコンタクトレンズが鼻に入った場合、このように陽性反応が出る可能性があるとスポーツ連盟が発表したわけであります。

 競技力向上を目的にドーピングで使用する薬物は、決して特別な薬ではなく、病気を治すために使用される医薬品も多く含まれているようであります。例えば、市販の風邪薬や健康食品、サプリメントなどにも含まれている場合があり、これら禁止薬物を含む医薬品などを、それとは知らずに病気を治す目的で服用し、結果的にドーピング違反になってしまうことをうっかりドーピングというそうでありますけれども、残念なことに、うっかりドーピングで違反になってしまう選手が毎年数名いるのも事実であるわけであります。

 不可抗力であったにせよ、こうしたことが起こらないように、選手はもちろんのこと、コーチや関係する方々に対してのアンチドーピングに関する普及啓発活動についてお伺いいたします。

林国務大臣 今先生からお話がありましたように、今回の発表は、コンタクトレンズだった、こういうことだそうでございますし、私も毎朝ワンデーのコンタクトを入れておりますので、なるほど、そういうことがあり得るのかなと思って、びっくりして聞かせていただいたところでございます。

 今お話がありましたように、我が国におけるドーピング防止規則違反確定率というのは国際的に見て大変低い状況にあるのでございますが、毎年数件の違反事案が生じておるということで、特に、禁止物質が含まれた治療薬やサプリメントの誤った使用など、選手の意図しないドーピング行為、今委員から御指摘があったことでございますが、こういうことが発生していることが課題だというふうに認識をしております。

 文科省としては、日本アンチ・ドーピング機構や競技団体と連携をいたしまして、意図しないドーピング行為の防止を含めて、アスリート、それから指導者に対する教育、研修を実施してきたところでございます。今後、さらに、幅広いサポートスタッフに対する教育啓発活動にも取り組むとともに、来年度から新たに医療従事者に対する教育啓発活動を推進してまいりたいと思っております。

 今後とも、二〇二〇年東京大会に向けまして、フェアプレーに徹するアスリートを守れるように、ドーピング防止活動のより一層の充実に努めてまいりたいと思っております。

神山委員 また、日本は、アンチドーピング、検査員が不足しているという懸念がされているわけでありますけれども、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの検査員の確保策について、どのような取組をされているのか、お答えをお願いいたします。

林国務大臣 済みません、ちょっと通告を受けていなかったようでございますが、先ほど申し上げましたように、競技団体と連携いたしまして、この意図しないドーピング行為の防止を含めて、教育、研修を実施してきたところですし、さらに、医療従事者に対する教育啓発等を推進してまいる、こういうふうに申し上げたところでございますので、その基本的な姿勢の中でしっかりと充実を図ってまいりたいというふうに思っております。

神山委員 検査員の不足が懸念されているということでありますので、どうぞその取組をしていただきたいというふうにお願い申し上げる次第であります。

 平昌オリンピックでは、多くのボランティアの皆さんの活躍が大成功に終わったということであります。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックにおいてもボランティアの皆さんの力が大変重要と考えますが、応募条件を拝見しますと、十日以上活動できる方とあります。これはちょっとハードルが高いのではないかと正直思います。

 また、ボランティアについても、大会ボランティア、都市ボランティアとカテゴリーが分かれているそうですけれども、現時点で想定しているそれぞれの必要人員の数や、ボランティアがかかわる活動についてどのようなことがあるのか、お伺いをいたします。

鈴木国務大臣 私も平昌のオリンピック・パラリンピックに行ってまいりましたけれども、やはりボランティアの方は、大会関係者やあるいは観客、それから選手と直接かかわる機会が多いわけでありまして、まさに大会の顔である、大変重要な存在であるということを認識いたしました。

 また、私もかねてから申し上げておりますけれども、二〇二〇年東京大会の成功の鍵、これは、多くの国民の皆さんに何らかの形でかかわり意識を持ってもらう、参加意識を持ってもらう、これが重要でありまして、まさにボランティアというのは、参加意識を持ってもらうという意味でも大変重要であると思っております。

 そこで、ボランティアの要件等でありますけれども、競技会場等の大会関係施設で活動をする大会ボランティア、これは組織委員会において、それから空港や主要駅、競技会場の最寄り駅周辺等で活動をする都市ボランティア、これは東京都において、相互に連携しながら現在検討が進められております。

 ボランティアの数やかかわる活動についてでありますけれども、大会ボランティアは約八万人の規模で、会場内誘導や案内、競技の進行補助やアスリートのサポート等の大会運営を補助する活動が、そして都市ボランティアは東京都では約三万人の規模で、国内外からの旅行者に対する観光、交通案内、競技会場までの案内等の活動が計画されていると承知をしております。

 今後でありますけれども、本年七月下旬にも募集要項が発表される見込みですけれども、私といたしましては、可能な限り幅広く国民全体での参加意識が醸成されていく形で進められることが望ましいと思っております。

神山委員 ありがとうございました。ボランティアの方々が参加しやすい募集、応募ができるようなことを心がけていただければというお願いを申し上げる次第であります。

 私の選挙区川越市では、ゴルフ競技の会場になる霞ケ関カンツリー倶楽部があるわけであります。埼玉県内には、熊谷市、秩父市、さいたま市などに気象台、アメダス、気象観測所が設置されているわけでありますけれども、川越市にはそういった設備がないわけであります。つまり、川越市の気候は気象庁の観測対象外だったのであるわけでありまして、二〇〇六年から二〇一〇年までの猛暑日に、首都大学の研究チームが調査したということでありますけれども、気温の最も高かった町は川越市だったということがわかったということが調査としてあったようであります。

 暑さ対策をする必要があるということでありますけれども、真夏の開催期間ということで、かなりの暑さが予想されるわけであります。特に北欧からの観客は熱射病についての知識がないであろうというふうに想像しているわけであります。屋外競技について、夜間に行われることが可能であればリスクは軽減されると思うわけでありますけれども、残念ながらそのようにはならないと伺っております。

 そこで、選手及び観客の皆さんに対しての暑さ対策についてどのようにするのか、お願いをいたします。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおりに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会は、七月から九月という大変暑い季節に開催がされるため、アスリート、観客等が過ごしやすい環境を整備すること、これは極めて重要なことと考えております。

 これまで、内閣官房に事務局を置きます東京二〇二〇に向けたアスリート・観客の暑さ対策に関する関係府省庁等連絡会議というのを設けておりまして、ここにおきまして、関係府省庁、東京都、組織委員会が連携をいたしまして、大会に向けた暑さ対策を進めているところでございます。

 具体的には、先ほど川越市の暑さが測定されないというお話がございましたが、やはり暑さがわからなければ対策も打てません。競技会場等の暑さ指数の測定をいたします。

 そしてまた、マラソンコース等を想定いたしました道路の緑化や、路面温度の上昇を抑制する舗装等を含む総合的な道路空間の温度上昇抑制対策、それから、これも御指摘がございましたが、熱中症関連情報について英語のリーフレットやホームページ等を活用した多言語による外国人向けの情報発信、また、ICTを活用した救急通報、外国人、障害者も含めた救急医療体制の整備、競技会場における日よけテントやミストの設置、救護ボランティアによる巡回など、ハード面、ソフト面、両面からの暑さ対策について取組を進めているところでございます。

 引き続き、大会の成功に向けまして、関係機関と連携をし、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

神山委員 ありがとうございました。

 ゴルフ競技は炎天下の中で行う部分でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、学校における働き方改革についてお伺いします。

 文部科学省が発表した二〇一六年の教員勤務実態調査では、教諭の平均勤務時間が、小学校、中学校ともに一日平均十一時間を超え、過労死リスクが高まると言われている月平均八十時間以上の勤務外労働にある教諭が、中学校では約六割、小学校では約三割となっているようであります。

 こうした状況から、業務の役割分担、適正化を進めるための取組として、基本的に学校以外が行う業務、学校の業務ですが必ずしも教師が担う必要のない業務、そして教師の業務の負担軽減が可能な業務として、幾つかの業務を整理していただいているということであります。

 その結果、PTAにお願いする業務や地域ボランティアにお願いする業務が提示されておりますけれども、PTAや地域ボランティアにお願いする業務などについて受皿の整備が重要と考えますが、その取組についてお伺いをいたします。

林国務大臣 学校における働き方改革については、昨年十二月に取りまとめられました中教審の中間まとめを踏まえて、文科省として、学校や教師の業務の役割分担等を着実に実行するための方策などを盛り込んだ緊急対策を取りまとめまして、各教育委員会に対して通知を発出し、各学校や地域の実情に応じた取組を進めるよう促したところでございます。

 こうした業務の役割分担を進めるために、平成三十年度の政府予算案において、地域と学校の連携、協働を通じた取組として、登下校等の見守り活動の充実等に必要な経費を盛り込むほか、コミュニティースクールや地域学校協働活動、こういうことを推進することとしております。

 文科省としては、こうした環境整備等を通じて、今後とも、教育関係者と一丸となって学校における働き方改革についてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

冨岡委員長 神山佐市君、時間が来ておりますので、簡潔に。

神山委員 はい。時間でありますので、質問は終了いたします。

 どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

冨岡委員長 次に、安藤裕君。

安藤(裕)委員 自民党の安藤裕でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、大きく、日本の科学技術についてと、それから高大接続について御質問をしたいと思いますけれども、まず、皆様のお手元に、きょう、資料を配付しております。

 「日本の科学研究力の現状と課題」の抜粋ということで、これは文部科学省の科学技術・学術政策研究所が出しているものでございますけれども、これをぱらぱらっと見ていただくと、例えば一枚めくって、一―三のところ、「日本の論文数 伸び率の状況」というところがありますが、日本は量的指標で、二〇〇一年―二〇〇三年と二〇一一年―二〇一三年を比べて、ほぼほぼ横ばいであります。ほかの国は軒並み伸びています。中国は別格としても、ドイツにしてもイギリスにしても三〇%台で量的な数が伸びているのに、日本だけは三%である。

 次の、右上の一―四「日本の論文数、注目度の高い論文数の状況(分野別)」を見てみても、軒並み順位を下げているわけですね。かつては二位にあったわけですから、二位を一位にするというのは大変だと思いますけれども、立場をキープをしているのがなくて、軒並み順位を下げているというのが日本の科学の現状であります。

 そして、もう一枚めくってもらって、四―一あるいは四―二というところには「日本の部門別論文生産構造」というものが出ておりますけれども、これも途中まではずっと右肩上がりで上がっていきますけれども、二〇〇〇年あたりからは横ばいということになっているわけですね。

 この状況で科学技術立国としてこれからもやっていけるのかといったら、これは相当危機的な状況にある、我々は相当危機感を持たなくてはいけないというふうに思っております。

 その中で、まずお聞きをしたいのは、もう一枚おめくりをいただきまして、五―四「若手研究者の状況についての認識」というところがございます。「過去十年で、若手研究者の雇用形態が大きく変化しているとの認識が示されている。」二〇〇五年ごろと比べた若手研究者の変化についての認識でありますけれども、みんな共通をしているのでは、任期なしの若手研究者の数は減っていると皆さんが認識をしております。そして、ふえているのは、外部資金で雇用されている任期つきの若手研究者の数、これはふえているけれども、しかし、これを見ると、認識としては任期なしの若手研究者の数はもう圧倒的に減っているというふうにこの資料からは読み取れるわけですね。

 このことについての文部科学省の今の認識をお伺いしたいと思います。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、文部科学省が平成二十七年に十一の研究大学を対象といたしまして実施しました大学教員の雇用状況に関する調査というのがございます。これによりますと、平成十九年度と平成二十五年度を比較いたしまして、任期なしの四十歳未満の研究者は四千九百八十人から三千二百九人と減少しているところでございます。

 その主な理由といたしましては、一点目といたしまして、大学におけるテニュアポストの採用抑制に伴う若手研究者の任期なしポストの減少、さらには、二点目といたしまして、研究者ポストの硬直化、高齢化に伴う若手のポスト待ちの長期化、三点目といたしまして、研究人材の流動性、これは大学ですとか企業、公的研究機関のセクター間の流動性ですけれども、この流動性が低く、若手研究者の安定的な雇用環境を確保するのが難しい状況にあるというふうに考えているところでございます。

 文部科学省といたしましても、若手研究者、さまざまな、今現在、卓越研究事業でありますとか、あるいは国立大学における人事給与マネジメント改革等を通じまして、優秀な若手研究者が安定かつ自立したポストについて研究できる環境の実現のために向けて、さらなる努力を図ってまいりたいと思っているところでございます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 いずれにしろ、若手研究者の数が減少しているというのが現実だということでございますので、これは何とか、もっと拡大をできるようにお願いをしたいと思います。

 その中で一つ、私が気になっているのが大学ランキング、世界大学ランキングのランキングを、日本の大学を上げていこうということを文部科学省も目標としておりますけれども、その中の国際性の評価の中で、外国人教員の数をふやすという項目があると思うんです。これは、こうなっているかどうかわかりませんけれども、もし、この大学ランキングを上げるために外国人教員をふやさなきゃいけない、そのために日本人の研究者のポストが減っているというようなことがあったら本末転倒だと思うんですね。

 こういうことが実際に起きているのかいないのか、今の文部科学省の認識をお伺いしたいと思います。

義本政府参考人 お答えいたします。

 世界大学ランキングにつきましては、タイムズ・ハイアー社も含めて多様なものがございますが、評価指標もいろいろございまして、大学の国際競争力を高める観点から、こうした客観的な指標を通じまして、我が国の大学の課題をしっかり把握して改善に生かしていくということが重要でございます。

 主要な世界大学ランキングとしましては、タイムズ・ハイアー・エデュケーション社によります世界大学ランキングがございますが、その各指標を分析しますと、我が国の大学の主な課題としましては、先ほど先生挙げられましたように、留学生や外国人の教員の比率等、国際面の評価が低いという点もございますが、そもそも、論文の引用の低いというふうな、研究力においても大きな課題があるところでございます。

 教員の採用につきましては、大学の国際通用性の向上を見据えて、構成員の多様化を図る、確保していくという観点から、外国人教員を始め、多様な、高度な研究能力、教育能力を持った人材を確保していくということも大事でございますが、今申しましたような、論文の引用の評価が低いなど研究面においての課題がございますので、研究力、教育力を強化して大学の国際競争力を向上させる観点からすれば、若手の研究者も含めた研究者の育成、確保が非常に重要でございます。

 そういう観点からしまして、文科省におきましては、優秀な若手研究者が安定かつ自立したポストについて研究できる環境を実現するため、科研費の若手の支援の強化を図るとか、国立大学におきまして、先ほど答弁いたしましたような人事給与マネジメント改革を通じまして、若手研究者のポストの確保など、研究者の支援を図っているところでございます。

 今後とも、我が国の大学の国際競争力の強化と研究力の向上を含めた、その両立を図っていくという観点から取り組んでまいりたいと存じます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、国際性というと、外国人を入れたらとにかくポイントが上がるからという観点ではなくて、やはり、日本人の研究者を育成していくということが何よりも日本の国際的な地位を高めるということになると思いますから、決して日本人の研究者のポストを奪うことがないようにということはお願いをしておきたいというふうに思います。

 次ですけれども、同じ資料の右側、六―三「研究時間を確保するための取組みの状況」というところがあります。これの下のページですけれども、「職務活動時間の理想と現実の配分」。理想の職務時間割合の定点調査二〇一五年のところでは、研究時間に四六・九%の時間を割きたいというふうに、大学の研究者はこれを理想と考えているということですね。この一番下ですけれども、現実の職務時間割合、二〇〇二年には、ほぼほぼこの理想の職務時間割合の研究時間が確保できていたというデータがありますが、二〇一三年になると、かつては四六・五%研究時間がとれていたものが三五%に減っている。これは激減していると言っていいと思うんですね。

 これは何でこんなに研究者の研究に充てる時間は減ってしまった、なぜなのか、その認識をお伺いしたいと思います。

佐野政府参考人 先生御指摘のとおり、大学等の教員の総職務時間における研究時間割合は、二〇〇二年が四六・五%であったものに対して二〇一三年は三五%と、一一・五ポイントの減少になっているところでございます。

 本調査において、この減少の理由として考えられておりますのは、大学等に求められる役割が多様化している中で、例えば市民講座でありますとか、あるいは診療活動でありますとか、研究成果の活用に関する技術相談など、社会サービスに充てる時間の割合が、二〇〇二年の九・八%から二〇一三年の一九・一%に九・三ポイント増加していることがございます。さらには、教育時間の割合が、同じく二三・七%から二八・四%に四・七ポイント増加したことなどが原因だと考えられております。

 文部科学省といたしましても、研究者が研究に専念できる環境の整備が重要であるというふうに考えておりまして、研究支援人材の育成、確保や学内事務手続の効率化等、必要な研究支援体制の構築、整備に努めてまいりたいと思ってございます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 やはり研究者は研究に充てる時間をしっかり確保しなくてはならないと思いますし、これが論文数の減少というか、伸びないというところにもつながっていると思いますので、ぜひ大学改革、今取り組んでおられると思いますが、その中でもうまくマネジメントも改善をして、研究時間が確保できるようにお願いをしたいと思います。

 次に行きますけれども、今の資料の一番最後のページでございますが、六―四「若手・中堅研究者が独立した研究を実施する際に障害となること」というもののアンケートをとっていると思いますが、これの一番筆頭に来るのが、「短期間の成果が求められるため、自ら発案した研究テーマに挑戦することができない。」ということをまず第一番目の課題として挙げておられます。

 このことについての文部科学省の御認識をお伺いしたいと思います。

磯谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御指摘の科学技術・学術政策研究所の調査にもございますように、例えば、課題解決型の大型プロジェクト研究に参加している場合とか、あるいは当該研究者の任期が短い場合において、若手、中堅研究者が短期的な成果創出を求められ、みずから発案する高い目標の研究テーマに挑戦することが難しくなるといった側面があると認識しております。

 このため、文部科学省では、いわゆる研究者の自由な発想に基づく幅広い分野における研究を支援します科学研究費助成事業の充実や、運営費交付金等の安定的な資金の確保に取り組むとともに、今後、先生御指摘のような大学改革等を通じて、大学における若手研究者の安定かつ自立したポストの確保を図ってまいります。

 特に、科学研究費助成事業につきましては、具体的には、平成二十九年度から、研究者のキャリア形成に応じた支援を強化するため、若手研究種目の採択率向上等を図る科研費若手支援プランの実行や、論文等の実績よりもアイデアの斬新性を重視して大胆な挑戦を促す研究種目としての挑戦的研究の創設などの改革を実施しております。

 今後とも、若手研究者の安定的な研究環境の実現とともに、科学研究費助成事業において若手研究者支援の一層の重点化を図るなど、若手、中堅研究者が自由な発想に基づく研究に挑戦しやすい環境の整備に努めてまいります。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 今の答弁の中にも出てきましたけれども、資金の確保ということが出てまいりました。今の資料の六―四の二番目あるいは三番目に位置しているのは、「安定的な研究資金の確保ができず、研究を発展させることが難しい。」ということも、これも若手、中堅研究者が独立した研究を実施する際に障害になるということで述べられているわけです。これもやはり大きな理由だと思うんですね。

 このことに対する文部科学省の今の取組を具体的にお伺いをしたいと思います。

林国務大臣 大変大事な御指摘をいただいているというふうに思っております。

 今、やりとりをしていただきましたように、やはり若手がこういう状況にあるということをしっかり認識してこれに対応していく、めり張りをつけるということもありますが、イノベーションの源泉となる多様なシーズを生み出す、それから、新たな知的、文化的価値を創造して社会経済の発展に寄与していくということは、やはり安定的に研究資金を確保するということが重要であろう、こういうふうに思っております。

 平成三十年度予算案では、まず、国立大学法人の運営費交付金について、対前年度同額の一兆九百七十一億円を計上させていただきました。これはずっと減り続けておりましたのが、二十七年度一兆九百四十五億円、二十八年度同額になりましてから、二十九年度に一兆九百七十一億円ということで、底を打ったといいますか、減少がとまったということでございますので、こういうことで同額の一兆九百七十一億円を計上しておるところでございます。

 また、研究者の自由な発想に基づく、今先生からもお話がありましたように、そういった自由に発想して学術研究をしていただく、これを支援する科研費の助成事業、いわゆる科研費でございますが、これについても、若手研究者のキャリア形成に即した支援を行うための科研費若手支援プラン、これを着実に実行するため、対前年度二億円増の二千二百八十六億円を計上して充実を図ったところでございます。

 文科省としては、研究成果に応じて、めり張りづけを行いながら、今後とも継続的、安定的に研究活動を実施できるように、運営費交付金等の確保や科研費制度の着実な運営を始め、学術研究、基礎研究の振興にしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 文部科学省としては、予算の拡大には省を挙げて取り組んでいただいていると思いますが、きょう、皆様のお手元にもう一つ資料をお配りしております。国立大学協会の政策研究所の所長自主研究ということで「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」、この資料をお配りしておりますが、これは鈴鹿医療科学大学の学長の豊田先生という方の資料でございます。

 これをめくっていただくと、「高等教育機関研究従事者増加率は論文数増加率と強く相関する。」ほぼほぼ一対一で相関する、日本は先進国で一番低いとか、「高等教育機関への公的研究資金増加率は大学の研究従事者増加率と強く相関する。日本は先進国で」これも「最も低い。」あるいは、「高等教育機関への公的研究資金増加率は論文数増加率と強く相関する。日本は先進国で最も低い。」「日本の高等教育機関への公的研究資金の国際競争力が低下し始めた一九九八年に四年のタイムラグを経て、二〇〇二年から論文数の国際競争力が低下している。」このデータが正しいかどうかはぜひ検証をしていただきたいと思いますし、こういうデータがもし事実だったら、やはりもう確実に手を打てることなんだろうと思います。

 そして、まとめのところでは、「最も安定的に時系列と矛盾せずに論文数増加率と正相関が認められた指標」は、常勤教員数であり、運営費交付金収入であり、基盤的収入であると。

 総括の方を見ていくと、なかなか厳しいことがずっと書いてあります。

 総括の(2)のところには、我が国の研究力低迷の主要因として、「高等教育機関への公的研究資金が先進国中最も少なく、かつ増加していない。高等教育機関のFTE」、FTEというのはフルタイムで働く研究者ということですけれども、「研究従事者数が先進国中最も少なく、かつ増加していない。博士課程修了者数が先進国中最も少なく、増加していない。」ということですね。

 総括の(3)の二番目ですけれども、「各大学とも外部資金の獲得等に努力してきたが、運営費交付金削減の法人化による代償効果は、附属病院を除いては限界に達し、交付金削減がそのまま教育・研究機能や組織の縮小として反映されるフェーズに入っている。」

 相当これは危機感を抱いておられますね。やっとあの運営費交付金も底を打ったと先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、やはり、この予算の削減というものが日本の科学技術力の低迷に大きなポイントを占めているんではないかというふうに思います。

 それで、きょうは財務省にもお越しをいただいておりますが、皆様のお手元に、最後の資料に、財務省のホームページに載っております、外国格付会社宛ての意見書の要旨という一枚のぺら紙をお配りしております。

 これの中で、いろいろな意見が書いてありますけれども、まず財務省にお伺いをしたいのは、今、日本の財政が厳しいということが言われておりますけれども、いろいろなところで財政破綻するんじゃないかということを言われておりますが、まず、財務省が理解をしている財政破綻の定義というものを教えていただきたいと思います。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 財政破綻とは、一般に、財政状況が著しく悪化し、その運営が極めて困難となる状況をいうものと考えております。

 財政破綻に至る要因を具体的に申し上げるのは困難でございますが、何らかの理由で財政の持続可能性への信頼を損ねた場合には、金利が急激に上昇し、経済、財政、国民生活に大きな影響が及ぶことになると考えておるところでございます。

安藤(裕)委員 今のお答えでも、財政破綻とは何ぞやという答えはないわけですよね。財政、何かが起きるかもしれないから何かが怖いなという感じに聞こえるわけです。

 そして、この意見書ですけれども、まず一番目、1の(1)、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」ということを、これは財務省がホームページに載っけております。

 まず、この(1)の「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」ということについて説明をしていただきたいと思います。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の意見書は、日本国債の格下げの理由について、より客観的な説明を格付会社の方に求めたものであり、日本の財政健全化の必要性を否定したものでないことは申し上げておきます。

 その上で、日本の財政の状況について申し上げますと、この意見書が提出された当時に比べて、国及び地方の長期債務残高は更に増加しているなど、年々その厳しさは増しておるところでございます。こうした中で日本国債が円滑に購入されておりますのは、日本国債の返済能力に対する信認が前提となっているところでございます。

 このため、仮に市場の信認を失う事態が発生すれば、金利の上昇を通じて市場からの資金調達が困難となる可能性もあると考えられます。

 したがいまして、引き続き、財政に対する市場の信認を確保できるよう、経済再生と財政健全化の両立を目指していくことが重要であると考えておるところでございます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 端的に一点だけ聞きたいんですけれども、自国通貨建て国債のデフォルト、要するに債務不履行は考えられないということでよろしいんですよね。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、日本国債が円滑に購入されておりますのは、日本国債の返済能力に対する信認が前提となっております。

 したがいまして、年々厳しさを増す財政状況に鑑みますと、仮に市場の信認を失う事態が発生すれば、金利の上昇を通じて市場からの資金調達が困難となる可能性もなくはございません。

 また、中央銀行が国債を引き受けられるため、自国通貨建て国債はデフォルトしないとの趣旨もございますが、その際には急激なインフレによる事実上の破綻状態となる懸念もございます。

 いずれにしましても、大変厳しい財政状況の中、日本国債が購入されておりますのは、日本国債の返済能力に対する信認が前提となっておりますので、引き続き、この財政の持続可能性に対する国民の方々や市場の信認を確保するため、まずはプライマリーバランスの黒字化に向け、歳出改革の具体的な方策を含む実効性の高い財政健全化計画を示してまいりたいと考えているところでございます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。端的に答えていただければよかったんですけれども。

 次に、(2)のところを聞きたいと思いますが、「格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。」と。例えばということで以下の要素を書いておりますけれども、今も日本はこういう状況なのかどうかを確認したいと思います。

 マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国であり、その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化をされている状況であり、日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高とこの意見書には書いてあるわけですけれども、今、現状、日本の経済のファンダメンタルズはどうなっている状況なのか、御説明をいただきたいと思います。

可部政府参考人 お答えいたします。

 日本では、経常収支黒字を維持し、世界第一位の対外純資産、世界第二位の外貨準備高を保有していること、また、預金などの潤沢な国内の家計金融資産が存在すること、国債の約九割が国内で保有されていることなどを背景にいたしまして、安定的な国債の消化につながっていると承知をしております。

 したがいまして、委員御指摘の意見書に記載されている日本経済のファンダメンタルズは現在においても大きく変わっていないものと考えられますが、先ほどの御質疑にもございましたように、日本の財政は厳しい状況にある中、仮に市場の信認を失う事態が発生すれば、金利の上昇を通じて市場からの資金調達が困難となる可能性もあると考えられます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 要するに、日本の経済のファンダメンタルズは今でも世界最強なわけですよ、はっきり言いまして。日本は、債務国ではなくて世界最大の債権国であります。今、日本国民は多分、日本国は債務国じゃないかと思っている国民が物すごく多いんじゃないかと私は思いますけれども、日本は債権国であるということを、ぜひ財務省は国民の皆様方によくよく発信をしていただきたいと思います。日本人はもっと自信を持てということを言っていただきたいというふうに思います。

 そして、今、財政の中で、PBの黒字化、それから債務対GDP比の維持あるいは改善ということが目標になっておりますけれども、国際的な財政の目標としては、国際標準はどちらを優先するべきなんでしょうか。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 主要先進国におきましては、財政健全化目標の手法としまして、プライマリーバランスに利払い費を加えた財政収支とともに、債務残高対GDP比を用いているものと承知しております。これは毎年度の収支改善を図り、これによって債務残高GDP比の圧縮を進めていく趣旨と理解しております。

 したがいまして、財政収支と債務残高対GDP比は、どちらかを優先するといった性質のものではなく、双方に目配りをしながら財政健全化に取り組んでいくべきものと考えているところでございます。

安藤(裕)委員 ありがとうございます。

 今、日本ではPBの黒字化というのを目標にしておりますけれども、世界各国を見ると、構造的なPBの黒字化という、構造的という言葉がついていまして、景気によって税収が落ちたときには、その分は考慮して、それに伴って歳出を削減するということはなくて、景気が悪かったら、その分は考慮して、歳出は減らさないということが目標になっているわけです。

 一部の研究によっては、この構造的なPB目標においては、日本はこれを達成しているということを言っている方もおられるわけで、そうすると、今回話題にしてきたような大学の運営費交付金の削減であるとか、あるいは科学技術研究費の削減ということは、今、日本ではやる必要がないのではないかというふうに思います。

 そして、二言目には、今、日本の債務をこれだけ残していくと、次の世代へのツケ回しだということを言いますけれども、私は、こういった予算を削減して、日本の科学技術力を、国際的な地位を低下させる、このことこそが子供たちへのツケ回しだと思います。

 このような状況を改善して、日本がこれからも科学技術立国として世界に堂々と旗を掲げるために、きちんとした予算を獲得して確実に研究者を育成すること、このことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 質問に先立ちまして、先ほど林大臣から御報告ございました名古屋市立中学校に対する調査について、文科省に申し上げさせていただきたいことがございます。

 私は、政治家が地元の声を踏まえて省庁に問合せを行うことは当然あり得ることと思っております。しかし、今回、文科省が前川前次官の講演内容と録音の提出を求めたことについて、非常に違和感がございます。国は、非常に細かいところまで、学校における具体的な教育内容に口を出すのかという誤解を与えるのは当然だと思います。教育内容について何か影響を与えるような行為、疑問を持たれるような行為は慎むべきだと思います。

 国の関与は、あくまでも教育の環境をつくる、例えば、教育内容であれば指導要領で全体の方向性を示すのが国の役割であって、個別の教育内容について国が干渉するのであってはならないのが基本であると私は思っております。

 今回の件を反省して、調査のやり方や方法について、相手に誤解を生じさせることのないようにしっかりと取り組んでいただきたいということを強く申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 私は、二月の二十日に行われました衆議院の予算委員会の集中審議におきまして、安倍内閣総理大臣及び林文科大臣に対して、教員の働き方改革こそ安倍内閣が取り組む最大の教育改革、子供たちのための教育改革だと訴えさせていただきました。安倍総理からも、教員の働き方改革は教育の質の向上のために行われるものであり、引き続き指導、事務体制の効果的な強化を図りたいという力強い御答弁をいただいたところでございます。

 また、運動部活動についても、三十年度予算案に計上している部活動指導員の積極的活用とともに、スポーツ庁が今月中に策定予定のガイドラインはスポーツ医科学の観点から子供たちを守るためにつくられており、学校においてその遵守を徹底すべきであると申し上げさせていただいたところ、安倍総理からも、ガイドラインが学校において徹底されるよう取り組むとお答えをいただいたところでもございます。

 私たち公明党は、この二月に、党内にSociety5.0社会に対応した教育の在り方検討プロジェクトチームというのを立ち上げさせていただきました。週一回、有識者を招いて議論するとともに、発達障害などの困難と向き合っている子供たちを支援する学びの場にお伺いをして、新しい時代の教育の担い手となっている方々と今対話を重ねているところでございます。

 今月一日には杉並区の富士見丘中学校にお伺いし、部活動指導で外部人材を活用する取組を拝見してきたところでございます。その際、企業やNPO法人の専門指導員を中心に部活動が運営されているスポーツトレーニングクラブの練習を間近にしたり、教員から直接お話を伺ってまいりました。ある先生は、外部人材の活用により、今までより授業などに取り組めるようになったとおっしゃってもおられました。校長先生は、このような部活の大改革を、学校支援本部主体の補習体制の構築とともに、セットで保護者に説明し、理解を得るなどの工夫をした。外部人材の活用は、部活動指導の質の向上だけでなく、生徒にとって教員以外の人とつながるすばらしい機会になっていると語っておられました。まさに、部活動改革により、教員の働き方改革と部活動指導の質の向上の両立を図っている好事例と申せると私は思います。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 運動部活動については、ガイドラインの徹底的な遵守や部活動指導員の活用を図りつつ、今後、杉並区の総合型地域スポーツクラブへの移行も視野に入れた運動部活動改革を強力に推進する必要があると思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 今般策定いたしました運動部活動のガイドラインでございますが、教師の働き方改革を踏まえつつ、生徒にとって望ましいスポーツ環境の構築の観点から、地域、学校、競技種目等の状況に応じて最適に実施されることを目指すものでございます。

 具体的には、少子化が進展する中で、運動部活動を持続可能とするために、委員が今おっしゃられましたように、地域、学校の実情にそれぞれ応じて、部活動指導員の配置や、学校と地域が協働、融合した形での地域におけるスポーツ環境の整備を進めること、こういうふうにしておるところでございます。

 文科省としては、各都道府県等の関係機関において、運動部活動が本ガイドラインに即した適切なものとなるよう依頼をしたところでございまして、定期的にフォローアップを行いながら、実効性の確保に努めてまいりたいと思っております。

浮島委員 ぜひとも現場に行き渡るよう、よろしくお願いいたします。

 次に、二十日の予算委員会で質問をさせていただいたんですけれども、私が現場に行かせていただいた福井の雪の災害でございます。

 越前和紙の生産拠点が大雪によって工場また倉庫が倒壊して、物流が遮断されてしまっているということで、私も現場に入って、本当に屋根が波のようになってしまっている、倒壊している倉庫もありましたけれども、この現状を視察をさせていただいて、二十日の予算委員会で質問をさせていただきました。

 そのときにお願いをさせていただいたのは、文化庁に対しましては、この大雪で壊れた伝統工芸の製作用具の復旧などについて、国の文化財の指定になっているところはしっかりやっていただいているんです。でも、指定になっていないところ、受けていないところ、そういう場合であっても支援すべきであるということを質問させていただき、中岡次長の方からは、我が国が誇る地域の大切な宝を後世に残すため、しっかりと対応していくという御答弁をいただいたところでもございます。

 そこで、次長にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、文化庁は、この予算委員会における質疑を受けまして、いつ現地福井に行き、現状をどのように把握し、どのような対応をなさったのか、教えていただきたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先般の衆議院予算委員会におきまして、福井県で越前和紙を製作している地域が大雪によって甚大な被害が出ているとの委員からの御指摘を受け、文化庁としては、直ちに担当官を現地に派遣し、現状確認を行いました。

 現地では、重要無形文化財越前鳥の子紙に関する用具類等には被害はありませんでしたが、他の越前和紙製造業者の中には、工場の倒壊など甚大な被害を受け、数日から二週間程度の休業を余儀なくされたり、積雪が完全に解けるまで修理等への着手も困難であったりする事業者の状況を確認いたしました。

 文化庁といたしましては、このような状況を踏まえ、現地に対し、重要無形文化財のわざの伝承事業等を中心とした国庫補助や、さきの答弁でも申し上げました未指定文化財への支援スキーム等、可能な支援策を御案内したほか、その後も継続的に現地と連絡をとり続けているところでございます。

 今後とも、ニーズを伺いながら、県や市とも緊密に連携し、地域の方々の気持ちに寄り添った支援をしてまいります。

浮島委員 早速の御対応、ありがとうございます。ぜひ、日本のすばらしい伝統文化を守っていくためにも、今後とも現場の声に耳を傾け、そして寄り添っていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、同じことなんですけれども、私は同時に、世耕経済産業大臣に、自然の災害から伝統産業を守るための支援を求めたところでございます。世耕大臣からの御答弁は、被災地の声をよく聞いて、寄り添った、寄り添った対応をやってまいりたいと決意を述べられた上で、今後、伝統産業が災害に直面した場合の支援のあり方について、経産省内に指示をして、この災害に直面したときの中小企業の支援のあり方というのを根本的に考えてくれ、適切な対応をとっていくという御答弁をいただきました。私は、この世耕大臣の御答弁を聞いて、本当に心から大いに感謝をして期待をしたところでもございます。

 ところが、質問の後、十日たって、三月の二日に、その後どうなっているのかということで担当の方にお話を伺いました。担当の方にお話を伺ったところ、現地への聞き込みや視察などは何もしていないと。そして、私は、この二十日の通告の日に、うちの部屋で、撮ってきた写真を全部お見せしました。この現状を御存じですかと言ったら、いや、こんな現状は知らないというふうに、こんなふうになっているのかと驚かれていたのもそのときの状況でございましたけれども、聞き込みも行っていない、話も聞いていない。

 大臣の答弁は、現場に寄り添って、寄り添ってという御答弁をいただきましたけれども、聞き込みにも行っていない、視察もしていない。そして、私にお答えをいただいたのが、既に貸し付ける仕組みがあるのでこれを活用してほしいとの一点張りでございました。私は、驚いたのと同時に、もう怒りを通り越して、中小企業庁は本気で我が国の伝統産業を守ろうとしているのか疑問に思うと同時に、本当に心から怒りと悲しみでいっぱいになりました。

 そこで、中小企業庁にお伺いをいたしたいと思います。

 予算委員会で世耕大臣が、被災地の声をよく聞いて、寄り添った対応、寄り添った対応をやってまいりたい、伝統産業が災害に直面した場合の支援のあり方について適切な対応をとってまいりたいとおっしゃった、雪害に直面した越前和紙について、文化庁のように直ちに視察をし現状を把握したのか、それとも、いつ視察をしていただいたのか、それを踏まえて今後どのような支援策をとっていくのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり現地訪問が遅くなりまして、三月の五日の日に、中小企業庁そして近畿経済産業局の職員が、越前市の福井県和紙工業協同組合あるいは五箇製紙所等を訪問させていただきまして、被害状況の把握と中小企業関連施策の説明を行わせていただきました。その後、協同組合の方から会員企業の方に施策資料の配付を行いまして、三月の十六日の日に、近畿経済局の職員が被災中小企業二十社を戸別訪問させていただきました。そのとき御不在であった被災中小企業十三社に対しては、電話で施策説明等を行っているところでございます。

 今後につきましては、ものづくり補助金あるいは持続化補助金などの活用など、中小企業施策の利用について、中小企業庁そして近畿経済産業局に担当者を定めまして支援を行っていく所存でございます。

 それから、先ほどお尋ねの中に、抜本的に変える議論を行い適切な対応をとりたいという大臣の発言がございましたけれども、これにつきましては、中小企業の災害対策について、被災中小企業に対する適切かつ効果的な支援のあり方、そして、自然災害に対する強靱な中小企業経営を確保するための官民の取組課題について検討を行うために、昨年十二月八日に、外部有識者から成る中小企業の災害対応の強化に関する研究会を設置いたしまして、これまで四回にわたって審議を行っているところでございます。

 以上でございます。

浮島委員 言われてからの行動ではなくて、大臣の御答弁にあったように、寄り添ったと言っていただいたんですから、しっかりと自分たちみずから行動していただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、ルーブル美術館におきましては、越前和紙はルーブル美術館の文化財の修復にも使われていることでございます。本当に、経産省が提唱しているクールジャパンにも適してくると思いますので、しっかりとそういうところを踏まえながら、伝統産業を守るために尽力をしていただきたいと再度お願いをさせていただきたいと思います。

 それでは、次に、ソサエティー五・〇社会に対応した教育のあり方について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、この二月に、党内におきまして、Society5.0社会に対応した教育の在り方検討プロジェクトチームというのを立ち上げさせていただき、そこで今座長を務めさせていただいております。今、有識者からヒアリング、そして視察などを重ねて、第四次生産革命、ソサエティー五・〇と言われる時代にふさわしい教育のあり方というのを議論をしているところでございます。

 このソサエティー五・〇、人工知能、AI、飛躍的進化、ビッグデータ、IoT、次の時代を修飾する言葉はたくさんあふれております。確かに、AIは、機械学習、ディープラーニングにより飛躍的に進化し、自動の翻訳や自動運転、AI活用型の医療や農業などなど、未来は大きく変化することが見込まれています。そんな話を聞いておりますと、未来社会は全てをAIが担い、子供たちは失業するのではないか、今の学校の教育は無駄ではないかという心配の声も聞こえてくるのが今の現状でございます。

 先日、小学校二年生のお子様がおうちに帰られたときに、お父様に、パパ、きょう新しいことを学んだ、将来なくなる仕事があるんだよ。お父さんが何の仕事がなくなるのと言ったら、まず図書館でしょう、本は要らなくなるんだ、全部これで見れるから、スマホですね、こういうので見れるから要らなくなる。あともう一個、要らない職業が出てくる、お父さんがそれは何と言うと、消防士と言うそうなんですね。何で消防士なんだとそのお父さんが聞いたら、だって、火を消すだけでいいじゃない、火を消すんだったら、それに打ち込んで火を消してもらったら、もっとたくさんのロボットとかで火が消せるからいいんじゃないか、だから消防士の仕事がなくなるらしいよと帰ってきておっしゃったそうです。

 そこで、お父さんは、その話を聞いて一呼吸置いてから、そうだね、それもあるかもしれないけれども、消防士というのは火を消すだけの役割じゃないよね、もしかしたら、ここにはこういうおじいちゃん、おばあちゃんがいた、ここにはこんなちっちゃい子がいた、障害を持っている方がおられた、だから、まだ中にいるんじゃないか、消防士さんはそういうことを考えて行動できるよね、だから、やはりそういう仕事はなくならないんじゃないかなと、そのお父様は二年生の子供に申し上げたと言っていたんですけれども、こうやって子供たちがいろいろ誤解をしていってしまう。これは教育現場でもしっかりと教えていかなければいけないなと思ったところでございます。

 AIの専門家を含む有識者の方々とさまざまお話をして、対話をさせていただいてわかったのは、むしろ、AIの時代だからこそ、未来社会は人である。人がキーワードで、人が大事になる社会であるということでございます。他者とのコミュニケーションを図って合意を形成の上、人の生活や社会をよりよくするためにAIに目的を与えたり、相手と向き合って心の通ったケアをしたり、人を感動させるような芸術や美術、演劇、映画、スポーツなどを生み出して、AIの飛躍的進化は、人でなければできない強みは何かということを明らかにしたのではないでしょうかということに今議論が進んでいるところでございます。

 このソサエティー五・〇にふさわしい教育のあり方を象徴しているような場面に先日遭遇をいたしました。それは、中目黒にあります株式会社のLITALICOというところでございます。我々のプロジェクトチームは三月七日にこの株式会社LITALICOを訪問し、大変感銘を受けました。そして、そのお話をさせていただき、林大臣はその二日後に、三月九日、LITALICOを訪問くださったとお聞きしておりますが、訪問されて、大臣の率直な感想、そして思いをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 三月九日に株式会社LITALICOを訪問させていただきました。その直前に浮島先生を始めとするPTの先生方が訪れられたということもありまして、ぜひ行ってみたいなと思いまして訪問したわけでございますが、発達障害のある子供に対するソーシャルスキル、生活スキル、それから、学習そのものに関する支援や、子供たちの想像力を広げるプログラミングや、ロボットを実際につくる物づくり教室、こういうところを、何カ所かありましたけれども、視察をさせていただいたところでございます。

 非常に印象的だったのは、やはり一人一人の子供に合わせた学習方法を非常に工夫される、そういうことができるスタッフの方がいらっしゃるということだと思います。こういうことをすることによって、子供さんが楽しくやっておられる。こういうことができているということを実際に見ることができたということ。

 今申し上げましたように、単に楽しくやっているということは、ぱっと見ると、ああ、そうかなと思ってしまうんですが、いろいろ御説明を聞きますと、そのためには、専門性の非常に高いすぐれた指導員が必要になってきますので、やはり一番大事なことは、そういう指導者をどうやって育成をしていくか。また、それと同時に、独自の教材やプログラム、こういうものが相まってそういう結果ができているということを、よく御説明していただいてわかったということ。

 それから、子供を取り巻く家庭や地域、学校との連携ということで、親御さんが連れてこられて、教育を受けているときは部屋に入ってやっておられるんですが、その姿を親御さんたちが実はモニターテレビでずっと見て、それから音声もヘッドホンでじっと聞きながら、うちに帰ってから自分もこういうふうにすればいいんだなということを親御さんに学んでもらうというところまで含めて、これは非常にすぐれたシステムだなというふうに感じさせていただいたところでございます。

 各学校においても、このLITALICOのような障害児支援事業を行っている民間企業とも連携して、障害のある子供、一人一人それぞれ違いますので、この一人一人に応じたきめ細かい指導や支援を行う必要があるという思いを改めて強くしたところでございます。

浮島委員 ありがとうございます。私も、この一人一人ということがとても大切だと思っているところでございます。

 このLITALICOは、片仮名でリタリコと書きますけれども、人と社会の幸せの実現が自分たちの幸せにつながるという、利他と利己をかけている、これで片仮名でリタリコと言っていることでございますけれども、LITALICOの社長の長谷川敦弥さん、この方は、一九八五年生まれの三十三歳、ことしで創業十三年目ということで、私も従業員の方ともお話をさせていただきましたけれども、従業員の平均年齢が三十一歳から二歳ととても若く、若い会社でございます。

 会社の事業内容は、学習塾及び幼児教育の運営、障害児支援、就労支援ですけれども、LITALICOの理念は、障害のない社会をつくる。社会は多様な人がいる、社会の側に人々の多様な生き方を実現するサービスや技術があれば障害はなくしていける、障害は人ではなく社会の側にあるという観点から、学ぶことに困難がある子供向けのオーダーメードの学習教室、私も行かせていただきましたけれども、LITALICOジュニア、そして、ITと物づくりの教室、LITALICOワンダー、そして、働くことに困難のある方向けの就労支援サービス、LITALICOワークスといった事業を展開されております。いわば、発達障害といった困難さと向き合っている子供たち向けの学習塾と言えるのではないかと思います。

 長谷川社長は、社会や経済のための人ではなく、人のための社会づくりがしたい。多様な人が幸せになれる人を中心とした新しい社会をデザインしたい。そして、人々の持つ多様性を世界の力に変えていける大きな社会を築きたい。これこそ、まさに人のための社会、ソサエティー五・〇時代の教育のあり方ではないかと私は思っているところでございます。

 今回訪問して伺ったのは小学生の男の子の話なんですけれども、御両親からも、また、学校へ行ってもお兄ちゃんとずっと比べられてきた。家にいても、お兄ちゃんはできるのになぜあなたはできないのと、学校に行っても、お兄ちゃんはできたのに何でできないのというふうにずうっと言われてきた。何でできないの、何でできないのとずうっと言われて育ったもので、自分は何もできない、何もできない子だということをずうっと思って育ってしまって、学校にもなかなか行けなくなってしまった。そこで、LITALICOの学習支援を受けに来られた。

 そこで、先生方が、何が好き、どういうことをやってみたいと言っても、いや、自分には何もできない、自分にはできない。自分はできないんだ、できないんだと、それしか初めは言わなかった。でも、そのお子さんに、では何が好きなのと聞いたら、僕は飛行機が好きと言い出した。では、飛行機が好きだったら将来何の仕事がしたいと言ったら、パイロットになりたいと。でも、学校に行っていなかったのでちょっと難しいかなと思ったんですけれども、LITALICOの先生が、では一緒にパイロットになる勉強をしようと言ったら、喜んでパイロットになる勉強をし始めた。ずうっと勉強してきたんですけれども、ある日突然、勉強してきたにもかかわらず、やっぱり僕はパイロットになるのをやめると突然言い出した。

 それで、先生が、何でパイロットになるのをやめるのと聞いたら、その子は、だって、僕は飛行機が大好き。パイロットになったら飛行機の中に入らなきゃいけないから、大好きな飛行機を見ることができない。なので、飛行機がいつでも見れる整備士になりたいということに気がついて、今度は整備士になる勉強を一生懸命やって、今は立派な整備士になって、仕事をしながら大好きな飛行機を見て、幸せに仕事をしているという話もございました。

 また、別の子は、やはりLITALICOで何が好きと聞かれて、何にも好きなものがない、だけれども、バッハが好きということを言ったそうです。バッハか、では、バッハが好きだったら、まずバッハの生まれた日を調べてみようか、バッハが亡くなった日を調べてみようか、バッハは何年生きたんだろうかということを言い出したら、算数が大嫌いだったのに、数字をどんどんどんどん調べるようになって算数が大好きになった。では、その背景にある歴史を調べてみようと言ったら、うんと。自分の好きなことだから、どんどんどんどん調べるらしいんです。そして勉強が大好きになったという話も聞きました。

 また、別の子におかれましては、漫画とアニメが大好き、学校になかなかなじめない。でも漫画とアニメだったら大好きだということだったんですけれども、そこで、この自分の好きということを大事にしまして、今は、書籍の販売、レンタルショップの専門店において、漫画やアニメに関するどんな質問でも答えられる、そういうカリスマ店長として活躍をしている。もう引っ張りだこだそうです。その方がいると、誰が来ても、このアニメと言ったら全てわかる。カリスマ店長として、もう引っ張りだこで仕事をしているというお話を聞きました。

 こうして発達障害の困難さに直面している子供たちの中には、芸術やプログラミング、またアプリの製作などで突出した力を持っていることも少なくないと先生方はおっしゃっておられました。

 LITALICOは、驚いたんですけれども、現在、八千人の子供たちを支援しています。そして、それでもなお五千人の子供たちがLITALICOで学ぶための順番待ちで待機をしているとおっしゃっておりました。いかに保護者や子供たち自身からのニーズが高いのか。

 そして、先ほど大臣がちょっとおっしゃられた教員の人材育成、これもやっていかなければいけないことですけれども、どのくらいの方が来られるんですかと言ったら、年一回の募集に対して約一万五千人の方が教員になりたいと来てくださる。それも、若い方。だけれども、採れるのは数百人であると。だから、そういうニーズがたくさんあるということが今回わかりました。

 このソサエティー五・〇時代の教育については、まず何より、大人が子供たちと向き合い、軽々に、できの悪い子だとか落ちつきがない子だとかいって切り捨ててしまうのではなくて、どんなことにその子が関心があり、どんなことに興味を持っているのか、そしてどんな認知の特性があるのかということをしっかりと見きわめることが求められていると私は思っております。その土台がしっかりしていれば、子供たちは、自分なりの関心や思いに基づいて、自分なりの学びに取り組むことができると思います。

 そんな学びこそソサエティー五・〇時代を切り開く最大の武器であり、逆に、このように学びの軸がない限り、幾ら知識があってもAIに代替されてしまうのがソサエティー五・〇時代だと私は思っております。

 そこで、お伺いをさせていただきたいと思いますけれども、文科省では、これまでも、切れ目のない支援体制の構築に向けた特別支援教育の充実を図ってきました。これから必要なのは、LITALICOのような企業も含めた民間の方々との連携をして、一人一人の子供たちがどんな認知の特性があるのかをしっかりと見きわめるための体制です。その構築に向けた取組を支援する必要があると思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 バッハの話は私も聞きまして、なるほど、その前に、数学、算数が余り得意じゃないというのを聞いていて、バッハと聞いたときに、ではバッハを聞こうかではなくて、生まれた年というところに結びつけるというところがやはりスキルなんだろうなというふうに思わせていただきました。

 また、ノイズが非常に気になって敏感な子の話も聞きまして、それを親御さんがなかなか気がつかないんですね。ノイズが気になるので、実は、ノイズを極端に減らした部屋でやれば集中して勉強ができるけれども、我々がふだん暮らしているところは何らかのノイズがございますので、我々は普通そういうのは気にならないわけですが、そこに気づいてちゃんとやればしっかりできるとか、やはりいろいろな専門的な見地が必要だなと思わせていただいたところでございます。

 障害によって特別な支援を必要とする子供に対して支援を行うに当たっては、そういった意味でも教育と福祉が連携して体制を構築して支援をする必要があると考えておりまして、LITALICOのような障害児支援事業を行っている民間企業等と連携していく体制についても重要であると考えております。

 今、文科省と厚生労働省が連携しまして、家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト、これは丹羽副大臣をヘッドにやっていただいておりますが、支援が必要な子供とその保護者が地域で切れ目なく支援が受けられるように、教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策を検討しておるところでございます。

 また、文科省では、学校に例えば言語聴覚士ですとか作業療法士、理学療法士等の外部専門家の配置、それから、教育と福祉が連携して、就学前から学齢期、社会参加まで、切れ目なく支援体制を整備する自治体に対しましてその経費の一部を補助する事業、こういうことを実施をしておるところでございます。

 こうした取組を通じて、特別支援教育のさらなる充実に努めてまいりたいと思っております。

浮島委員 ありがとうございます。

 今大臣から御答弁がありました教育と福祉、これはしっかりとやっていかなければいけない。そして、切れ目のない支援、これは絶対にやっていかなければいけないと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 また、これまで、学校の方におきましては、子供たちへの教育は自分たちが全てを担い、そして、LITALICOのような外部の団体との教育課程上の連携は十分ではなかったと思います。しかし、昨年の三月、小中学校の学習指導要領におきましては、社会に開かれた教育課程を理念として真っ正面から打ち出しをされました。

 学習指導要領の前文には、「教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていく」と明記がなされています。まさに、このLITALICOのような新しい教育の担い手と学校との連携のすすめそのものだと思います。

 これからの学校は、LITALICOや地域のスポーツクラブ、またパフォーミングアーツの劇団など、プログラミング教室や大学におけるジュニアドクターなどの取組や成果もキャリアパスポートや指導要録に書き込む、そういうことにより、一人一人の子供たちが学校内外でどんな経験をし、どのような力を伸ばしているのかを共有することが求められていると私は思います。

 さらに、LITALICOのような団体が学校運営に参画したり学校を運営したりすることも、社会に開かれた教育課程の実現として有益だと考えております。

 そこで、社会に開かれた教育課程の実現の観点から、LITALICOでの学びの取組や成果もキャリアパスポートや指導要録に書き込み、学校とLITALICOのような学校外の学びの場とが連携、協働することを積極的に進めることが必要であると私は思っておりますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 社会に開かれた教育課程という理念のもとで、学校教育を学校内に閉じずに、社会との連携や協働を通じて、子供たち一人一人にこれからの、今先生からお話がありましたソサエティー五・〇、人工知能やロボット、IoT等が出てくる社会ということでございますが、これからの社会を切り開いていくために必要な資質、能力を育成するということは重要なことであると考えております。

 こうした観点から、御指摘のLITALICOも含めまして、学校外でのすぐれた学びの取組や成果を学校教育に活用するということは大切だというふうに考えております。

 今お話のありました指導要録では、学校外での取組や成果を総合所見及び指導上参考となる諸事項に記入することが可能となっておりますので、各学校の判断で、LITALICOでの学びの成果などを記入して、指導の改善に生かすことも可能になっておるところでございます。

 また、児童生徒の主体的な学びに向かう力を育てて自己のキャリア形成に生かすキャリアパスポートにつきましては、現在、新学習指導要領の全面実施に向けて調査研究を進めているところでございまして、御指摘の点も含めて検討を進めていきたいというふうに思っております。

 文科省としては、今後とも、子供たち一人一人の資質、能力の育成に向けて、学校と社会との連携、協働を通じた教育の充実に努めてまいりたいと思っております。

浮島委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。ぜひキャリアパスポートの方も進めていただけるようにお願いをさせていただきたいと思います。

 また、既に、不登校生徒の学びを支える八王子市立の高尾山学園、私も二〇一五年の十二月に視察に行かせていただいたんですけれども、自閉症の子供たちも含めたすばらしいインクルーシブ教育を行っている私立武蔵野東小学校など、特色のある学校が生まれてきております。

 これらの学校とLITALICOのような団体の連携を強化したり、現在の枠組みを利用しながら、活用しながら、LITALICOなどの知見を生かした学校運営や設置を可能にしたりということの後押しをもっと文科省としてしていただきたいと思いますけれども、この点について御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 自閉症を含めて発達障害のある子供については、教育、医療、保健、福祉等の関係機関が連携をしまして、就業前から卒業後にわたる切れ目のない支援を行うことが重要であると考えております。

 文科省としては、就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制の整備のための補助事業を平成二十九年度から実施をしておりまして、平成三十年度については、前年度から三十地域増の六十地域に拡充をしたところでございます。

 さらに、学校と放課後等デイサービス事業者等の民間の福祉機関との連携支援、支援内容の共有方法についてのモデル事業を実施しておるところでございまして、今後は、その成果を文科省として発信をしながら、学校と民間企業等の連携が一層進むように、教育と福祉に関する部局や、関係機関が同時に集まる全国規模の会議等を通じて、普及を促してまいりたいというふうに思っております。

浮島委員 これからの教育行政におきましては、今もずっとお話があります福祉の観点、すなわち、個々の子供たちの特性をきめ細かく見きわめて、一生を連続して支援していくという視点、さっきも大臣御答弁ありましたけれども、切れ目のない支援ということがこれまで以上に大事になってくると思っております。

 松野前文部科学大臣が、このような観点から、生涯学習政策局に障害者学習支援推進室というのを設置なさいました。また、現在、丹羽副大臣が中心となって、先ほどもお話がありましたけれども、文科省と厚労省の特別支援教育に関するプロジェクトチームも動いているとお聞きをしております。

 これからの学校における特別支援教育には、個々の子供たちの特性をきめ細かく見きわめて、一生を連続して支援していくといった福祉の視点、これが大変重要ではないかと思いますけれども、今、丹羽副大臣が中心となって動いている厚労省とのプロジェクトチームの取組も含めて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

丹羽副大臣 お答えをさせていただきます。

 発達障害を始め障害のある子供たちへの支援に当たっては、行政の分野を超えた連携が非常に必要不可欠だというふうに考えております。発達障害者支援法や児童福祉法に規定が置かれるなど、一層の推進が現在求められている中で、特に教育と福祉の連携につきましては、浮島先生おっしゃるように、学校と障害福祉サービス事業者との相互理解の促進や、また、保護者も含めた情報共有の必要性というのが指摘されております。

 そういった中、教育と福祉の連携のさらなる促進のために、私と厚生労働省の高木副大臣との間で、家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトを昨年十二月に両省でつくりまして、議論を進めているところでございます。この議論の最終が、いよいよあした、高木厚生労働副大臣とまとまる予定でございまして、今後、速やかにこのプロジェクトの報告を取りまとめて、その趣旨を各地方にしっかりと周知できるようにしていきたいというふうに思っております。

 例えば、この内容につきまして簡単に申し上げさせていただきますと、教育委員会や福祉部局が主導して、学校と福祉サービス事業者との関係構築の場を設置することで、教育と福祉の連携のサービスの向上、またさらには、相談窓口の整備を行ったりすることによって、保護者への支援拡充を図っていきたいというふうに考えております。

浮島委員 ありがとうございます。

 福祉の実践のよいところもしっかりと教育に取り込んでいくべきだと思いますので、また、現場レベルでしっかりと進んでいくように踏み込んだ連携が必要だと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、最後でございますけれども、SNSを活用した自殺予防についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 このLINEを使った子供のいじめをなくしていこうという取組は、私も昨年の二月から取組を始めてまいりましたけれども、公明党の働きかけによりまして、長野県がLINE株式会社と連携をしまして、昨年九月十日から二十三日まで、SNSを使ったいじめ対策というのをやってまいりました。

 長野県では、電話による子供の相談件数は年間二百五十件だったのに対し、このSNSを活用した相談では、二週間で五百四十七件という相談が寄せられました。これをどんどん進めていこうということで、今回、本年度補正予算と来年度の予算案に必要経費を盛り込んでいるところでもございます。これをしっかりと取り組み、全国ネットワークで結んでいくことが効果的だと私は思っております。

 もう一方、今回、現場のお話を聞いたんですけれども、今、厚労省の方でも、自殺対策強化月間ということで、この一カ月間、SNSを使ったということで行われておりますけれども、実は、現場からいただいているのは、私も去年十二月に質問させていただいたときに、文科省と厚労省としっかりと連携をとってやっていくようにということをお願いをさせていただきました。現場も厚労省がやっていることと文科省がやっていることがよくわからないというお話もありますので、しっかりと今後連携をもっととっていっていただきたいということ。

 あと、もう一点お話を伺ったのは、子供がいじめられているということをLINEとかで自分が告白する、それがどうも学校に漏れてしまっているのではないかという懸念の声、子供たちの心配の声が今回ありました。そこで、本当に喫緊で、すぐに伝えなければいけないということもあるかもしれません。でも、それでない場合はしっかりと子供たちの秘密は守るということを、大臣の方から明言をしていただきたいと思います。

 せっかくつくったシステムでございますけれども、子供たちが学校に言えないからLINEを使って言ったのに、それが学校に行ってしまっているということが、もし、そういうことはないんですけれども、そういうことがあるんじゃないかと思ってしまったら、それが使われなくなってしまう。救える命も救えなくなったら困りますので、どうか、そういうことはないということを明言をしていただきたいと思います。

林国務大臣 まず、両省の連携でございますが、現在、既に文部科学省のSNS等を活用した相談に関する有識者会議に厚労省も参加していただいているほか、平成三十年度も、厚生労働省において、文科省の協力を得た上で実践的な研究を行うこととしており、引き続き、知見の共有を図って、それぞれの相談窓口の役割を生かしながら効率的な執行に努めてまいりたいと思っております。

 それから、子供たちの悩み相談でございますが、やはり気軽に安心して相談できるということが不可欠である、こういうふうに思っておりまして、そういうためには相談内容の守秘は必要不可欠でございます。

 SNS等を活用した相談について議論している有識者会議の最終報告案においても、子供たちが安心して相談できるように、児童生徒の生命身体等の安全が害されるおそれがある場合等を除いては、相談内容等のプライバシーが確実に守れることを明確に示すことが必要、学校等に相談内容を伝える場合には、相談業務を行う地方公共団体は児童生徒の意向を尊重しつつ細心の注意を払うべき、こういうふうに記載されておるところでございます。

 文科省として、最終報告が取りまとまり次第、地方公共団体に対してその内容の周知を徹底いたしまして、子供たちが安心して相談できるように努めてまいりたいと思っております。

浮島委員 ありがとうございました。

 これで終わらせていただきます。

冨岡委員長 次回は、来る三十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十七分散会


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