衆議院

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第2号 平成31年3月13日(水曜日)

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平成三十一年三月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 亀岡 偉民君

   理事 神山 佐市君 理事 馳   浩君

   理事 宮川 典子君 理事 村井 英樹君

   理事 義家 弘介君 理事 菊田真紀子君

   理事 城井  崇君 理事 鰐淵 洋子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      上杉謙太郎君    小此木八郎君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    大塚  拓君

      木村 哲也君    国光あやの君

      小林 茂樹君    下村 博文君

      白須賀貴樹君    高木  啓君

      中村 裕之君    根本 幸典君

      福井  照君    福山  守君

      船田  元君    古田 圭一君

      三浦  靖君    宮内 秀樹君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      川内 博史君    中川 正春君

      初鹿 明博君    村上 史好君

      吉良 州司君    牧  義夫君

      稲津  久君    中野 洋昌君

      畑野 君枝君    杉本 和巳君

      吉川  元君    笠  浩史君

    …………………………………

   文部科学大臣       柴山 昌彦君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       櫻田 義孝君

   文部科学副大臣      浮島 智子君

   財務大臣政務官     渡辺美知太郎君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    白須賀貴樹君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤原 章夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  諸戸 修二君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         瀧本  寛君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局長)          清水  明君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          永山 賀久君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            伯井 美徳君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         白間竜一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯谷 桂介君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    今里  讓君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   文部科学委員会専門員   吉田 郁子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     小田原 潔君

  上杉謙太郎君     国光あやの君

  根本 幸典君     福山  守君

  船田  元君     三浦  靖君

  宮路 拓馬君     木村 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     青山 周平君

  木村 哲也君     宮路 拓馬君

  国光あやの君     上杉謙太郎君

  福山  守君     根本 幸典君

  三浦  靖君     船田  元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

亀岡委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤原章夫君、内閣審議官諸戸修二君、内閣府子ども・子育て本部審議官川又竹男君、文部科学省大臣官房総括審議官瀧本寛君、総合教育政策局長清水明君、初等中等教育局長永山賀久君、高等教育局長伯井美徳君、高等教育局私学部長白間竜一郎君、研究振興局長磯谷桂介君、スポーツ庁次長今里讓君及び厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長藤原朋子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

亀岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川委員 おはようございます。

 やがて桜の季節になってきますが、各学校、入学式ということで、子供たちが胸を膨らませる、あるいはまたいろいろな不安を抱えて学校生活を始めようとしています。そんな中で質問の機会をいただいて、そして、新たな教育のあり方、特に、私自身がポイントとして、あるいは課題として追いかけている、そういう問題について、きょうは質問をしていきたいというふうに思います。

 通告とちょっと順番を変えてやりたいと思うんですが、まず最初に、ことしも議員立法という形でそれぞれ課題が上がってきております。できる限りここで議論をして、そして結論を得ていくということ、これが大事だと思うんですが、そんな中で、私なりにこだわりを持ってというか、ぜひここのところの議論を進めていただきたい、そして法律として成立をさせていきたいという法案の二点について、まず質問をしていきたいと思うんです。

 一つは、ICTなんですが、これは、ICT教育も、ここ何年かの間、一つの課題として文科省も進めてきているということはわかっているんですけれども、ただ、国際的に今の現状を見ていると、どうも日本の教育現場でのICT活用というのは、世界的レベルからいくと、特に、先進国だけではなくて、今しっかり追いついてきているというか、それこそ追い抜かれている、シンガポールとか香港とか、あるいは中国、韓国等々含めて、そういう国と比較しても、日本の現状というのは非常に問題が大きいというふうに思っているので。

 これに対して、ICT教育を推進していく超党派の議連から出ている推進法というのがあります。これは、今、大臣、どのように認識されているか。日本の今の現状、それをまずお話をいただきたいというふうに思います。

柴山国務大臣 今委員より御指摘のとおり、ソサエティー五・〇の社会を迎えるに当たって、学校のICT環境整備はもう急務であるというように考えます。

 しかし、おっしゃるとおり、各自治体における学校のICT環境整備は、世界的に見て十分に進んでいない、しかも自治体間にかなり格差があるということを、私としても大変危機感を持っているところでございます。

 その要因といたしましては、地方自治体にICT活用の有効性や必要性に対する認識に差があることですとか、あるいは、職員の専門性やノウハウが不足していることなどが挙げられるというように考えております。

中川委員 そういう要因も確かにあるんだと思うんですが、もう一つ基本的な部分で、ICT関係機器というものがどこまで普及をしていて、それがどういう形で使える状況になっているか、ここも一つのポイントなんですね。

 それで、これまで、平成二十九年度までの四カ年計画で単年度千六百七十八億円の財政措置をしている、あるいは、平成三十年度以降というのは五年計画で単年度千八百五億円が措置されているということ、これは聞いているんですが、その効果が本当にあるのかどうかということになると、結論としては、ないということになる。

 なぜそうなるのかということなんです。

 これは私ももう一つ合点がいかないんですけれども、これは地方交付税の地方財政措置でとどまっていて、いわゆる政策誘導をするための補助金でもってその施策をつくっているということじゃないんですよね。よく言われる、地方財政措置でとどまるというのは、これは政策誘導としてはごまかしなんじゃないかということなんですね。

 ここは、なぜ補助金体系をつくっていくことをしないのか、あるいはそれができないのか、そこのところを大臣はどのように考えていられますか。

柴山国務大臣 全国各学校のICT環境整備につきましては、各学校の設置者が予算化をしてそれぞれの事情に応じて進めていくべきものでありまして、確かに、全国どこでも標準的な行政サービスとして必要な財源はもちろん必要であるというように考えておりますので、平成六年度から、今御紹介があった地方財政措置が講じられているところであります。

 文部科学省といたしましては、まずは、各学校の設置者がこの地財措置の積極的な活用を行うことによって、それぞれの自治体において計画的なICT環境整備が行われるべきと考えておりまして、今後とも各学校の設置者に対する働きかけを強めていきたいというように考えております。

 ただ、今御指摘のとおり、それぞれの自治体に完全にお任せをしてしまうと、さっき申し上げたように、それぞれの、例えば財政部局の理解に差があったり、あるいは調達ノウハウにでこぼこがあったりするなど、自治体に応じて差が出てきてしまうということもございます。

 そこで、昨年十一月に公表した「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて 柴山・学びの革新プラン」をキックオフといたしまして、まずは、各自治体におけるそういったでこぼこが生じている要因の調査、分析を進めさせていただいているところであります。

 その上で、それぞれの自治体でどのように整備状況が進んでいるのか、例えば、市区町村単位ごとのデータをしっかりと公表して整備状況の見える化を進める、あるいは、自治体の要請に応じたICT活用教育アドバイザーの派遣等を進めていく等の取組、これまでも実施をしてきたところでありますけれども、さらに、先ほど申し上げた調査、分析に加えて、積極的な働きかけあるいは見える化をしっかりと進めていくことによって、まずはこの地財措置がきちんとフルに活用されるように促していきたいと考えております。

中川委員 私は、大臣がそれを言ってしまったらだめだと思うんですよ。

 例えば、クーラー。これは、今、日本全国隅々まで各教室につき始めていますが、これは補助金体系としてつくって、国が率先をして、やりなさいよということだったからそういう形になった。あるいは、耐震、見てください。やはりそれなりの危機感を持ってやった。これはみんな補助体系です。補助体系だけれども、それぞれの自治体、あるいはそれぞれの施設が主体的にそれを整備していくという、その建前に立って補助金体系をつくっているんです。

 だけれども、政策誘導の強さといったら、やはり、それは補助金体系をつくって、それで文科省が強くそれを推し進めていくという意思を見せるということなので、それを、交付税措置で、皆がその気になってもらうまで待ちますよ、あるいは、自治体によっては交付税が入ってこない、あるいは交付税が必要のない自治体もあるわけで、それには全然この資金というのは行き届かない、そういう性質のものですよね、それでいいと言ってしまったら、それは文科省の怠慢だ、大臣の認識がずれているというふうに思うんです。そこのところをもう一回、基本にして政策を練り直していただきたいということ、これが一つ。

 それから、もう一つは、特にICT機器というのは、いわゆる備品として購入していくという前提ではなくて、恐らくレンタルとかあるいはリースというような形をとっていくんだろうというふうに思うんです。それに補助金体系を合わせてつくっていくというのは、なかなかこれは難しいことだと思うんですね。

 実は、きょうはちょっと財務省に来ていただいたんですが、財務省の中で、今それをやってもいいよということになっているのか、いわゆるリースやレンタルに対して国の補助金というのがしっかり入っていくという体系になっていくのか、あるいは、そうでなかったらどこにそのネックがあるのかということを、これは財務省のサイドからお話をいただきたいと思います。

渡辺大臣政務官 学校ICT化に係る経費につきましては、中川先生からありましたとおり、学校のICT化に向けた環境整備五カ年計画に基づきまして、平成三十年度から平成三十四年度までの単年度一千八百五億円の地方財政措置がなされているところであります。

 この措置につきましては、大臣からもありましたが、学校維持管理に係る経費が学校教育法により学校設置者の負担とされているところ、新学習指導要領において学校のICT化が必要となるため、全国の自治体に標準的に整備すべき性質のものであるということから、国と地方の役割分担の観点から、地方財政により自治体へ支援をすることとなっております。

 先生御指摘のICT化の整備率、そういった向上につきましては、まず地方自治体により……(中川委員「その話じゃないんです。さっき私が問いかけたことに答えてください」と呼ぶ)

 まず、認識の差があるということと、専門性やノウハウが不足しているということがありますので、まずはこの課題の解決をするのが急務だと思っております。

中川委員 ちゃんと通告しておいたんですけれどもね。しっかりバックアップ、誰か答えられる人いますか、さっきの、リースやレンタル。

渡辺大臣政務官 現時点では、地方財政措置の中に含めているということです。

中川委員 基本的には、補助金の対象となるものについては、所有権がそこにないと補助金は出しませんよということなんですよね。リースだとかレンタルというのは所有権が移っていないんですね。それがために、それがネックになって、なかなか地方自治体に対してレンタルを中心にした補助金というのはおろすことができないというふうに、私は以前、説明を聞いて、そこは時代に合っていないんじゃないか、財務省のサイドでしっかり工夫をして、それでも大丈夫だよという体系をつくらないといけないんじゃないかということを指摘したかったんですが、その話が通じなかったようですね。

 政務官、どうですか。

渡辺大臣政務官 現在、リースにつきましては、これは所有権がないものですから、補助金等には含めておりません。そのあたりについても文科省としっかり協議をしていきたいと思っております。

中川委員 これに時間をとっていたらだめですね。わかりました。

 だから、文科省だけじゃないんですよ。これは、どこの省庁も、最近の時代を考えていくとこういうケースというのは出てくるんだと思います。そのあやはいろいろあるんです。例えば、リース会社へ向いて補助金をおろして、それでコストを下げてリース契約をその対象者としていくとか、いろいろなあやはあるんだけれども。しかし、これはまともに、財務省、これに取っかかってしっかり体制をつくり直していくということ、これを指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、日本語教育についても、実は議員立法を超党派で準備をして、そして、ぜひこの国会で議論をしていただきたいということであります。

 日本語教育推進の中で、特に私が気になっているのは日本語学校なんです。これまで日本語学校というのは、法務省が留学生としてビザを発給するかしないかというときの基準をつくって、それぞれの学校にいわゆる認可してきた、そういう形態でコントロールしてきたんですけれども、これだからいろいろな問題が起こっているというふうに私は思うんです。

 この際、文科省が、教育機関としてこれをしっかり定めて、そして類型化をして、それぞれの目標あるいは目的に応じた形で整理をしていく、逆に、この日本語学校を外国人を受け入れるときのキーとして活用していく、そういう体制に持っていかなきゃいけないだろうというふうに思うんです。

 この類型化というのは、一つは、経営形態が個人から株式会社あるいは学校法人までさまざまにある、これの類型化と、それからもう一つは、同じ日本語を勉強するとしても、大学や専門学校への進学、あるいは、日本で就職したい、あるいはまた、働くための日本語、また、生活のための日本語、さまざま目的によって違うんですが、それに応じた形の類型化、いろいろ課題はあると思うんです。

 こういうことをちょっと指摘をさせていただいた上で、文科省として、これをしっかり受けとめて、そして法制化をしていく、類型化をしていくということ、それで、法律の中で、事業法みたいなものになるのかもしれませんが、体系化していくということ、これをぜひやっていく必要があると思うんですが、大臣、どうでしょうか。

柴山国務大臣 ありがとうございます。

 今、実態は委員がおっしゃるとおりでございまして、日本語教育を行っている機関は非常に多種多様なものがございます。それを、やはり文部科学省といたしましても、日本語教育の、それぞれどういう場面で求められるか、その多様性に対応して機関の類型化を行うということがまず非常に大きな重要性を持ってくるというように考えております。

 例えば、学校教育法に位置づけられ、高等教育機関として留学生の受入れを行っている大学等や専門学校、また、法務省告示に位置づけられ、留学生に対する日本語教育を行っている法務省告示の日本語教育機関、生活者としての外国人については、自治体等が設置した国際交流基金やNPO法人等が開催している日本語教室、技能実習生や研修生については、受入れ機関、企業において日本語教育を含めた研修を行っていくための取組、こういったものが現状あるというように思います。

 そういった類型化を踏まえて、それぞれにおけるしっかりとした中身の日本語教育を行っていくために、まさに今御指摘になられている、日本語教育推進議員連盟におけるさまざまな施策を推進するための法律案の検討を進められているということは大変意義深いものであるというように考えておりまして、そういった御指導もいただきながら、引き続き、この総合的な教育政策を積極的に推進していきたいと考えております。

中川委員 その上で、もう一つ確認をしていきたいんですが、これまで、日本語教育というものについての文科省の窓口というのが、文化庁の国語課で、しかも一人、二人の担当なんですよね。

 これは、去年あれだけ外国人労働者の問題が課題となって、さまざまに問題点が指摘されました。特に、日本語というのは共通インフラで一番大事なところだと思うんです。これからはトータルで進めていかなければなりませんねということであるとか、いわゆる日本語学校の問題だけじゃなくて、学校教育の中でも社会の中でも、各省庁を引っ張ってトータルで文科省が政策誘導していくというような必要に迫られているというか、そんなことが浮き彫りになったというふうに思うんです。そういう体系の中で、文化庁に任せておいていいのかということだと思うんですね。

 これは文科省トータルとして、これに対する窓口と、それから、各省庁を引っ張っていくだけの体制というのをつくらなきゃいけないと私は思うんです。そこについて、どんな構想を持っておられるか、あるいはこれから何をしていかなきゃいけないかということをお答えをいただきたいと思います。

柴山国務大臣 今お話があったとおり、昨年十二月に改正入管法が成立をいたしまして、また、それに基づく政府方針等の決定を踏まえて、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議のもと、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策が取りまとめられたところであります。

 そこで、文部科学省といたしましては、日本語教育や外国人の子供の教育の充実、そして、大学、専門学校等の留学生の就職支援等、しっかりと総合的に取り組むことによって共生社会を実現していくことが必要であるという認識のもとに、ことし一月、浮島副大臣を座長とした外国人材の受入れ・共生のための教育推進チームを省内に設置をいたしまして、関係局課、総合教育政策局も初等中等教育局も高等教育局も、あるいは今おっしゃった文化庁も、それぞれの担当局課が協力して対応していくための体制をまさに整えたところであります。

 この検討チームを活用するなど、引き続き、日本語教育を始めとする外国人材の受入れ環境の整備を総合的かつ戦略性を持って着実に実施をしていきたいと考えております。

 ありがとうございます。

中川委員 一つ指摘をしておきたいと思うんですが、さっきの、総合的な、いわゆる副大臣を中心にした委員会というのは、文科省の中をまとめていく、そういう機能を前提にしているんだと思うんですね。

 ところが、逆に私たちが期待するのは、文科省が中心になって、ほかの各省、厚生労働省から、総務省から、あるいは法務省から、これをまとめて、日本語という軸を刺して、そしてリードしていくような、あるいは、特に外国人の子供たちの教育も含めて社会でどうそれに対応していくかという、そんな観点で横軸を刺していくようなリードをしていかなければならないということだと思うんですね。そこの軸になる課というのが文化庁の国語課では、これはちょっと違うんじゃないかということだと思うんです。

 そこのところをしっかり意識をしていただいて、改めて文科省の中の体制を考えていただきたいというふうに思います。

柴山国務大臣 今おっしゃった、政府、横串を入れてということは、まさしくおっしゃるとおりでありまして、だからこそ、先ほど紹介をさせていただいたとおり、政府方針を踏まえて、官邸において外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議が設置をされ、そして、そのもとで外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策が取りまとめられたところであります。

 引き続き、外国人の受入れや共生、日本語教育等について省庁横断的に行う、あるいは、例えば、外国人が日本に来訪されたときに自動翻訳機などを使ったさまざまな案内をする、これは恐らく国土交通省、観光庁などの所管にもなりますし、総務省にもかかわってくる施策だと思いますけれども、そういったような総合的対応策が、政府一丸となって、横串を通して行うことがやはり必要だというように思っておりますし、そういう中で、当然のことながら、今おっしゃったとおり、文部科学省が果たすべき役割は、特にこの日本語教育という分野においては極めて重要であるというように考えておりますので、今委員からも御指摘があったとおり、しっかりと、文部科学省一丸となって、横串を刺した省内での検討体制をつくるとともに、政府全体の閣僚会議においても積極的に議論に加わっていきたい、このように考えております。

中川委員 実は、次のテーマにも共通するんですが、次は大学に関するテーマを持ってきたいと思うんですけれども。

 どうも大臣の頭の中に、官邸あるいは内閣府主導型のトータルな体系が前提にあって、それでその中で文科省が何をするか、そういう考え方があるようですけれども、私は、逆に、例えば日本語というテーマでいけば、そうじゃなくて、文科省が中心になって官邸も含めて各省庁をまとめる、それぐらいの気概というか、それと体制がないといけないというふうに思うんです。

 そこのところをつくるために、今の具体的な、いわゆるロジの中で国語課がやっているというだけではだめですよということを指摘をしているんです。ということで、もう一度考えていただきたいというふうに思います。

 次のテーマに進んでいきたいと思うんです。

 大学なんですが、今無償化の議論が出ていますけれども、教育の無償化というのは、最終的な着地点というのはどこにあるんですか。

柴山国務大臣 まず、教育の無償化に関する前に、今御指摘になられた、省庁横断的な政策について検討するのに、何でも官邸ではなくて、文部科学省が特に日本語教育については積極的にリードをする、事務局の体制をとってというような御指摘がありまして、実は、おっしゃるような認識はかなり共有をされてきていると思います。

 省庁横断だから全て官邸が仕切らなくちゃいけないということでは当然ありませんで、例えば、それぞれの各省庁が、事務局的な機能を担って他の役所に呼びかけてさまざまな事柄を進めていくということは、徐々にそういうような方向性に政府の体制もなってきているのかなというように思います。

 ちなみに、この日本語教育について、先ほどの浮島副大臣を座長とした検討チームでありますけれども、この検討チームの庶務については、関係局課、庁の協力をいただき、大臣官房国際課がこれを処理するという体制になっているということでございます。

 その上で、今御質問になられました教育、特に高等教育の無償化についての私どもの考え方なんですけれども、これも、今おっしゃったとおり、政府全体としての方針ではありますけれども、我々文科省としては、何をこの高等教育の無償化について考え、そして文科省としてリードしていくかという部分については、やはり文科省なりの哲学、ポリシーというものが必要だと考えております。

 これは、ここまでは閣議決定の部分なんですけれども、いわゆる骨太の方針において、真に支援が必要な、所得が低い家庭の子供たちに限り高等教育無償化を実現することとしたことに加えまして、大学改革として、各大学の役割、機能の明確化、大学教育の質の向上、大学の連携、統合等などを進める施策を講じることとされております。

 ここから先が、まさに文部科学省、私どもといたしまして、真に支援が必要な低所得者世帯の高等教育機関へのアクセス機会確保につながる、大学等における修学の支援に関する法律案、これは今度提出をさせていただく予定でございますけれども、これと、進学先である大学の教育の質保証や、教育研究基盤、ガバナンス改革などを後押しする学校教育法等の一部を改正する法律案、これをしっかりと車の両輪として進めていくという、これこそまさしく文部科学省が主導して行っていく高等教育改革であろうというように考えております。

中川委員 さっきお話に出たように、二〇一七年のパッケージの閣議決定、それから二〇一八年の骨太の方針、それに加えて、二〇一九年には大臣みずからが高等教育・研究改革イニシアティブと、順番に政策を積み重ねてここに来たということ、これはよくわかります。

 ただ、骨太にしても、あるいは二〇一七年の閣議決定にしても、経済財政運営と改革の基本方針で、いわゆる少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現というのがこれは目標になっているんですよ。基本は、少子化対策に対して何を打っていくかということ。

 だから、今財源として想定されている消費税にしても、福祉あるいは社会政策を前提にした使い方をしなさいよ、こういうふうになっている。それを使って少子化対策をするということになると、限定された所得の、なかなか難しい人たちに対して入れましょうと。これは教育政策ですか。違うんですよね。基本的には、これは社会保障政策をここへ入れようとしているんですよ。

 もう一回聞きますけれども、じゃ、最終的に無償化というのは文科省としてはどう考えているのかということは出てこない。だから、可能性としては、このままでとまってしまう可能性があるんです。

 私は、文科省の理想としては、これは国連人権規約第十三条に、高等教育は、全ての適当な方法によって、特に、無償教育の漸進的な導入によって、一般的に利用可能であり、かつ、全ての者に対して機会が与えられる。これと共通した形の、学校教育、社会教育は国が責任を持ってやっていきましょう、その環境をつくりましょう、これが文科省の政策であるはずなんです。

 そこのところを全く横に置いておいて、骨太の方針に従ってこれを入れて、それでよしとしている今の文科省の状況というのは、私はわからない。

柴山国務大臣 もちろん、消費税を、例えば少子化対策ですとか、社会保障の観点でいろいろと議論をされるということもあるんですけれども、まさしく今委員が御指摘のとおり、国際人権A規約の留保の撤回をさせていただいた趣旨というのは、これはまさしく、意欲ある若者の高等教育機関への進学機会を確保する、国立、私立ともに授業料減免への支援を更に充実させる、あるいは、給付型奨学金の創設を始め奨学金を充実させるというのは、中長期的に見て、この漸進的無償化を通じて、意欲ある若者がどうやって教育をしっかりと受けていく、全ての人たちにそういった機会を保障していくかということに資するものでありますので、少子化対策とかも、もちろん福祉の部分はあるんですけれども、やはり今委員が御指摘になった教育の機会均等、そして実質的な保障、質の確保、そういったことを見据えているということ、これは私からもしっかりと申し上げておきたいというように思います。

中川委員 ということは、幼児教育から大学教育まで、文科省としては、全て無償、それで国が責任を持って体系をつくると。

 これは、幼児教育は始まっているんですよ、実は。そんな議論なしに、すとんと幼児教育は始まっているんですよ。大学、専門学校等々を含めた高等教育も含めて、まず、授業料は無償化をしている、これは国の体系ですよね。しかし、奨学金は違うんです。これは、奨学金は違った意味で、体系をつくるんじゃなくて、個々の学生、個々の一人一人に対しての支援事業なんですよ。これは違うんです。

 だから、少なくとも、無償化をしていく対象として幼児教育から大学まで、高等教育まで全て授業料を無償化していくということでその責任を果たしていくという解釈でいいんだということを、大臣、はっきりと言わなきゃいけないと思いますよ、これが着地点として。それで、漸進的にそこへ向けて予算づけを努力しているんだ、そういう説明なら私はわかるんだけれども。そういうことなんですよね、大臣。

柴山国務大臣 まさしく、今回の幼児教育の無償化から、あるいは高校の負担軽減、そして高等教育における奨学金など、それぞれの負担軽減策、今おっしゃったような、背骨を貫くバックボーンというものがあるということは事実ですけれども、ただ、やはり、これまでの経緯等も含めて、我々、各省で連携をして現実的な取組をしているという部分もあります。

 ですので、中長期的に見て、今、国連の漸進的無償化という方向性に沿ったものとなるように、一歩一歩教育費負担の軽減に努めて、各省連携をして取り組んでいきたい、今の時点においてはこのような答弁とさせていただきます。

中川委員 だから、これは骨太がかぶっているから、それが言えないんですよ。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。

 残念ながら時間が来てしまいましたので、また続きはやらせていただきます。

亀岡委員長 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 通常国会が始まりまして、いよいよ本格的に委員会でも質疑が交わされます。先ほども教育の無償化のお話もございましたが、大学等における修学の支援に関する法律案が文科省におきましても提出されておりますし、柴山大臣を中心に、家庭環境に関係なく、誰もが安心して質の高い教育を受けていける、そういった大変に重要な環境をつくっていくということで、重要な法案も抱えておりますので、しっかりと、また大臣のもと、審議もさせていただきながら前に進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず初めに、私の方からは、児童虐待について質問させていただきたいと思います。

 本年一月、千葉県野田市で、父親の虐待で小学校四年生の女の子が亡くなるという、極めて痛ましい、また大変に悲しい事件がございました。児童相談所や学校など多くの大人たちがかかわる中で、この最悪の事態を避けることができなかった、本当に悔やまれてなりません。

 私たち公明党といたしましても、二月十九日に、再発防止に向けた緊急提言を菅官房長官の方に提出をさせていただいております。

 また、それに先立ちまして、本事案の検証と再発防止に向けた検討に当たっては、厚生労働省と文部科学省、警察庁などの関係機関の極めてしっかりとした連携が必要なことから、合同の検討チームを設けるように要請をさせていただいておりました。その結果、二月十五日に、浮島文部科学副大臣と大口厚生労働副大臣、お二人を共同議長といたします児童虐待死の再発を防止するための両省の合同プロジェクトチーム、これが立ち上がりまして、検討が進められていると承知をしております。

 児童虐待の事案につきましては、行政では、児童相談所を始めとした福祉部局での対応が主となりますが、学校現場におきましても、アンケートの実施だったり、相談体制の確立とか、子供の悩みにいち早く、また子供の変化にいち早く気づいていく、そういった意味では、児童虐待案件の早期発見というところで、学校の果たす役割も大変に大きいものがあると思っております。

 このような学校の機能を、児童虐待事案の早期発見や、また問題の解決につなげていく必要があると考えておりますが、児童虐待における学校と児童相談所との連携体制の構築のあり方について、浮島副大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

浮島副大臣 今回の野田市のような事案、このような悲劇を二度と繰り返してはならない、そういう強い決意のもと、文部科学省内の私を主査としたタスクフォース、そして今お話ございました厚労省と合同のプロジェクトチームで今検討を進めさせていただいているところでございます。

 学校における児童虐待への対応に当たりましては、今御指摘ありました早期発見そして早期対応、これが非常に重要でありまして、虐待を受けた児童生徒等の支援につきまして、児童相談所を始め警察、弁護士等関係機関としっかり連携をして、すき間なくしっかりと対応していく、これが重要であると考えております。

 こうした考えのもと、文部科学省におきましては、早期発見、早期対応がなされるよう、これまで、スクールカウンセラー等の専門家を活用した教育相談の体制の整備、またスクールソーシャルワーカー等の配置の推進及びスクールローヤーの活用に関する調査研究の実施を通じまして、関係の機関と連携の強化を図ってきたところでもございます。

 また、本年二月の二十八日付で、内閣府そして厚労省と連名で通知を発出させていただきました。要保護児童等につきましては、緊急点検でお願いしている休業日を含む十四日間よりも短い、休業日を除き引き続き七日以上欠席した場合には、理由のいかんにかかわらず、速やかに市町村又は児童相談所に情報提供するように話をさせていただいたところでもございます。

 今後、さまざまな機会を捉えまして、本通知の趣旨を周知徹底するとともに、子供たちの命を断固守る、そういう強い決意のもと、再発防止のため、しっかりと、すき間をなくし、そして、実効性のある再発防止の取組のために全力を尽くしてまいる決意でございます。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 今、副大臣の方からもすき間なくということで御答弁ございましたけれども、これまでの、こういった問題が起きたときに、今おっしゃったように、いろいろ関係機関の連携というのがやはり一つの大きな課題となっておりまして、すき間なく取り組んでいくという上で、今回、合同でしていただいているということは大変にすばらしいことだと思います。

 また、これから具体的に更に再発防止を進めていく上で、先日も分科会で質問させていただいたんですが、例えば法務省の方でも、子供たちの人権のSOSミニレター、そういったことを学校現場でしていただいたり、また、子供の人権の一一〇番、そういった相談窓口もあったり、法務省も含めていろいろなところで、こういった子供たちを守るという取組も進められております。

 そういった意味で、文科省又は厚労省のみならず、こういった関係機関、しっかりと連携をとっていただく上で、まず児童虐待を未然に防ぐということ、絶対に二度とこういった悲惨な事件を起こさないというところで、ぜひとも、また引き続きリーダーシップを発揮していただいて取り組んでいただきたいということで、重ねて要望申し上げたいと思っております。

 その上で、学校現場の対応ということでお伺いしていきたいと思いますが、こういった児童虐待の対応、学校現場でも、先生も含めてしっかりとやっていかなければいけないと思っておりますが、しかし一方で、教員の皆さんの負担を過度にふやす、そういったことになってもいけないと思っております。

 そのような観点からも、さまざまな取組を工夫をしながらやっていくことが重要であると思っておりまして、例えば、教員の皆さんがこういった事案に遭遇したときに具体的にどのような対応をすればいいのか、学校向けの、また先生方向けのマニュアル、こういったものをしっかりと作成して周知をしていく、そういったことも重要ではないかと思っております。

 具体的にこういうときはこうした方がいいという、なかなか先生たちも具体的な対応がわからない方も多いかと思いますので、そういった対応が必要ではないかと思いますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

永山政府参考人 学校におきます児童虐待への対応におきましては、その早期発見、早期対応、さらに、虐待を受けた児童生徒等への支援が大変重要でございます。

 そういったことで、文科省といたしましては、各学校における教職員に、その研修に活用していただくために、研修教材の「児童虐待防止と学校」ですとか、あるいは「養護教諭のための児童虐待対応の手引」、こういったものを作成いたしまして、全国の教育委員会、学校現場に周知をいたしております。

 また、二月八日の児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議において、緊急総合対策の更なる徹底・強化について、これが決定をされまして、その中で、学校あるいは教育委員会は、児童相談所や警察と虐待ケースの対応マニュアルを共有する、そういうことになっております。

 御指摘の学校における虐待ケース対応マニュアルにつきましては、今後、厚労省作成の「子ども虐待対応の手引き」、分厚いものがありますけれども、そのうちで、特に学校、教育委員会の関係者が留意すべき事項につきまして、厚労省と共同で抜粋し整理し、学校や教育委員会において共有することを考えております。

 文科省といたしましては、これらの取組を通じまして学校の教員の虐待対応に係る知識を高めて、もって児童虐待の早期発見あるいは児童生徒への適切な支援を進めてまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 あわせて、学校の先生方からいただいた声をちょっと紹介しながら、具体的な今後の取組ということで質問させていただきたいと思います。

 やはり学校の先生方からは、こういった児童虐待の対応ということでほとんど情報を持っていない、中には、自分たちの専門外、そういった認識を持っている人もいるのではないか、また、虐待とかいじめの対処、そういったことを相談できる窓口を教育委員会に常設してほしい、そこに弁護士などの専門家を配置してしっかりと連携をとっていきたい、相談に乗ってもらいたい、そういった体制があると助かります、そういった御意見もいただきました。

 今回、この問題につきまして教育委員会や学校側の対応に問題があったとクローズアップされているところもありますが、しかし、実際に、威圧感のある保護者、また理詰めで責めてくる保護者がいたとすれば、それだけで先生方も引いてしまいますし、どのように対応したらいいのか全くわからないというのが現状かと思っております。

 そこで、この威圧的な対応だったり、法律的な問題にも十分な対応が行えるように、スクールローヤーの活用、これをしっかりと推進していく必要があると考えております。

 実際に、教育行政に関する弁護士の活用方法といたしまして、教育委員会の職員や顧問として参画する事例だったり、また首長部局を含めた自治体の顧問として参画する事例、またスクールソーシャルワーカーとの兼務で参画するといった取組が各現場で行われているとも伺っておりますけれども、いずれにしましても、子供たちのために対応していただける、そういった相談に乗っていただける専門家が必要だと思っておりまして、その観点からも、このスクールローヤーの育成、確保、そして活用が重要になってくるかと思います。

 また、その際に、先ほども申し上げましたが、法務省だったり、また弁護士会の皆さんからの協力も必要になってまいりますし、しっかりと関係者の皆様と連携体制も構築していくことも重要でありますし、あわせて、繰り返しになりますが、このスクールローヤーの確保、育成、活用、これをしっかりと推進をしていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解と決意をお伺いをしたいと思います。

柴山国務大臣 今御指摘の、虐待あるいはいじめ等もそうなんですけれども、児童生徒を取り巻く問題について、弁護士に相談し法的なアドバイスを受けるということは非常に有効であると考えております。

 実は、専門的な知識や経験に基づいて、学校において法的側面からのいじめ予防教育を行うとともに、教員からの法的相談にも対応する体制の整備に関する先進的な取組を開発するために、いじめ防止等対策のためのスクールローヤー活用に関する調査研究というのをまさに実施をしているところであります。

 その中で、虐待やいじめ等の児童生徒を取り巻く問題への法的助言、法的側面からのいじめ予防教育、いじめ問題への法令に基づく対応状況の確認を行い、その調査研究結果の施策への反映を通じて、虐待も含めて、いじめ問題等の諸問題の効率的な解決に資することを目指すというふうにしております。ですので、この既存の枠組みを使って、どうすれば虐待対応についても弁護士を通じて対応ができるのかということもしっかりと調査をしていただくということが有効ではないかと考えております。

 また、今委員から御指摘になられているとおり、今実施している調査研究の中には、教育委員会と弁護士会が連携協力している例もあるというふうに伺っております。そういった事例も踏まえつつ、しっかりと、文部科学省として適切に対応していきたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 繰り返しになりますが、やはり学校現場の先生方の強い要望でもありまして、しっかりと関係機関、関係者の皆様と連携をとっていただいて、しっかりとした対応ができるように配置していただけるように、また、今後、予算のことも絡んできますので、しっかりと私たちも取り組ませていただきたいと思いますが、繰り返しになりますが、しっかりと活用、配置の方をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 その上で、ちょっと関連してお伺いしたいと思いますが、先ほども申し上げましたが、学校現場は児童虐待を早期発見できる場所でもあり、子供たちが、やはり先生なら話せるとか、そういった子供もいらっしゃるでしょうし、また、子供たちが急に何か元気がなくなったとか、表情が変わったとか、そういった表情を先生方が気づいてくださったりとか、そういうことから児童虐待の早期発見にもつながるかと思います。

 そういった意味でも、やはり先生方が子供たちに向き合う時間をしっかりと確保していく、改めてこの重要性を実感しておりまして、こういった、いじめもそうですし、児童虐待、さまざま問題や課題を抱える子供たちに向き合って、先生たちが一緒になって取り組んでいただけるような環境をつくっていく上でも、先生たちの働き方改革、これもしっかりと力強く進めていかなければいけないと思っております。

 関連して、働き方改革を質問させていただきたいと思いますけれども、学校におきます働き方改革につきましては、一月に中央教育審議会の答申がまとめられまして、今後の方向性が提言をされております。学校における働き方改革はこれからが本番でありまして、文部科学省が率先して、保護者やまた地域の方々と、広く社会にその理念を共有していただき、推進していく必要があると思っております。

 改めて、今回の学校における働き方改革の目指す理念と、今後の学校における働き方改革の推進に向けた大臣の御決意をお伺いをしたいと思います。

柴山国務大臣 我が国の学校教育は大きな蓄積と高い成果を上げてきましたけれども、これを持続可能なものとして、新しい学習指導要領を円滑に実施していくために、教師が教師でなければできないことに全力投球できるように、学校における働き方改革を進めていくことが必要であります。

 我が国の学校教育の蓄積と向かい合って、みずからの授業を磨くとともに、日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、先生方がみずからも人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにするということが今回の働き方改革の目的であると考えております。

 ただ、今委員が指摘をされたとおり、学校や教育委員会にお任せでは、この働き方改革というものは進まないと考えております。文部科学省が社会全体に対して何が教師本来の役割であるのかというメッセージを発信するなど、学校と社会の連携の起点、つなぎ役としての役割を前面に立ってしっかりと果たすことが大切であると考えておりまして、実は先週八日に、有識者や関係者、また、私や浮島副大臣や、中村政務官もいらっしゃいますけれども、政務三役も出演した動画メッセージを文科省のホームページに掲載をさせていただいております。実はこれは既に約一万回の視聴がされているということで、大変注目をされております。

 今後とも、学校の指導、事務体制の効果的な強化充実も含めて、学校における働き方改革を強力に推進していきたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 先ほど大臣もおっしゃっていただきましたが、やはり教員の皆さんが充実した生き方というか生活を送れることによって、またすばらしい教育、子供たちのための教育が実現できると思います。そういった意味で、今御決意を述べていただきましたが、社会の皆様の御理解もいただきながら大きく前進できるように、しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 その上で、また引き続き質問させていただきたいと思いますが、学校における働き方改革を推進するために、中央教育審議会の答申を踏まえまして文部科学省が策定した公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン、これに定めております、所定の勤務時間を超える時間は原則月四十五時間、年三百六十時間という上限を達成することが重要であると考えております。

 本ガイドラインの実効性確保のための取組をどのように進めていくのか、文科省の方に御見解をお伺いしたいと思います。

永山政府参考人 現在の教師の勤務実態を踏まえますと、御指摘のガイドラインで定めました上限の目安時間を達成するためには、さまざまな施策を総合的に取り組む必要があると思っております。

 答申におきましては、諸施策の実施による在校等時間の縮減の目安についても示されておりまして、例えば、登校時間等の見直しによる出勤時刻の適正化で年間合計約百五十時間、あるいは、中学校において、部活動ガイドラインの遵守と部活動指導員の活用で年間合計約二百八十時間、校務支援システムの導入で年間約百二十時間等の取組例も挙げられております。また、夏休み期間の高温時のプール指導ですとか、地域や保護者の期待に過度に応えることを重視した運動会等の過剰な準備等も大胆に見直し、削減することが提言されております。

 これらも参考にしながら、各教育委員会において、さまざまな施策を組み合わせて取り組んでいただくことが必要だと思っております。

 また、来年度予算案でございますけれども、小学校の英語教育のための専科教員千人を始めとする合計千四百五十六人の教職員定数の改善ですとか、教師の業務負担の軽減のための中学校における部活動指導員やスクールサポートスタッフの充実、そういったものに係る経費を計上しておりまして、これらの取組もあわせて推進してまいります。

 さらに、本ガイドラインにつきましては、答申において、その実効性を高めるために、その根拠を法令上規定するなどの工夫を図り、学校現場で確実に遵守されるよう取り組むべきと指摘をされておりまして、省内で検討を進めております。

 こうした取組とともに、勤務時間管理の徹底、学校の組織運営体制の確立などを総合的に推進し、教師や子供たち、保護者、地域の方々がその成果を実感していただけるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 今の御答弁の中にもあったんですが、例えば、教員の皆さんの負担軽減というところで、スクールサポートスタッフ、こういうものも配置するということで御紹介もありました。私も先生方から伺ったときに、仕事の負担軽減というところで具体的に要望をいただいた中で、例えば学習プリントの印刷、こういったものを誰かにやってもらいたいという声も実際にいただいておりまして、こういったスクールサポートスタッフの配置、これも大変に有効的な取組かと思っております。

 改めて、このスクールサポートスタッフの配置事業につきまして、しっかりと広く周知していただいてこれを活用していくことも重要かと思いますが、この点につきまして、今後の取組をお伺いをしたいと思います。

永山政府参考人 教師が教師でなければできないことに全力投球をできるように、学校における働き方改革を進めるためには、多様な人材との連携を進めて、チームとしての学校を実現することが必要であると考えております。

 その一環として、今おっしゃった学習プリント等の印刷などを教師にかわって行うスクールサポートスタッフの活用、これは重要でございまして、平成三十一年度政府予算案におきましても、平成三十年度の三千人分から三千六百人分に拡充をいたしております。各教育委員会においては、こうした予算を活用しながら適切な人材を確保していただく必要があると思っております。

 スクールサポートスタッフは、卒業生の保護者などの地域の人材を活用することを想定しておりますので、各教育委員会において、働き方改革の趣旨や目的とあわせて、こうした卒業生の保護者などの皆様にスクールサポートスタッフとしての協力の周知を行うことなどが考えられますので、文科省としてもこうした取組を促してまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 ぜひ、今御答弁にもありましたが、皆様の御協力をいただきながらということで、しっかりと周知もしていただき、御理解もいただき、進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 では、最後に、高等学校の改革について何点か質問させていただきたいと思います。

 今日、高等学校は、中学を卒業したほぼ全ての子供たちが進学する教育機関といたしまして、極めて重要な役割を果たしていると思っております。特に、選挙権の年齢や成人年齢が十八歳に引き下げられる等の状況を踏まえますと、高等学校の卒業時点で、自立して社会で生き抜く力を確実に身につけられる、そういった教育の充実に一層取り組んでいく必要があると思っております。

 政府におきましては、教育再生実行会議におきまして、新時代に対応した高等学校改革のあり方について検討を行っておりますけれども、この高等学校改革についてどのように取り組んでいくのか、柴山大臣の御決意、また御見解をお伺いをしたいと思います。

柴山国務大臣 今御指摘になられたように、成年年齢の引下げですとか、その一方で、今、高校生の実態等に関する調査などによると、高校生の学校生活等への満足度や学習への意欲等が中学校段階に比べて低下しているという実態が報告されるなど、高校を取り巻く環境が非常に大きく問題となっております。

 そういった状況ですから、新高等学校学習指導要領を踏まえた、主体的、対話的で深い学びの視点からの授業改善や、各教科等の学習を実社会の課題解決等と結びつける探求的な学びを実現すること、また、文系、理系の両方をバランスよく学ばせることなどを通じて、その教育を充実させていくことが必要であると考えます。

 このため、平成三十一年度予算案では、高大接続による高度かつ多様な科目内容を履修可能とするプログラムを提供する仕組みの構築ですとか、地域課題の解決等の探求的な学びを実現する取組の推進等に必要な経費を盛り込んだところであります。

 今委員の御指摘のように、教育再生実行会議において、普通科のあり方や地域との協働のあり方など、新時代に対応した高等学校改革の検討が進められているところでありまして、これらも踏まえつつ、引き続き、高等学校教育改革を推進していきたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたが、義務教育を終えて、また高校に進学をして、また、今後自分の人生をどう歩んでいくかというところで、本当に自分の人生を決定づける大事なときというか年代でもありますので、そういった意味で、一つの重要な観点といたしまして、障害の有無にかかわらず、また家庭環境にかかわらず、やはり一人一人の個性が生かせる、そういった学びの場ということで重要になってくるかと思っております。

 そういった意味で、今少しお話もあったかと思うんですが、特に、生徒の得意分野を一層伸ばしていく、そういったことも重要ですし、今申し上げましたが、障害を持つお子さんも、その状況に合った多様な学び方、これもぜひ高等学校でも進めていく必要もあるかと思っておりまして、そういった観点から、一つの道というか対応としまして、通信制高校の役割も重要になってくるのではないかと思っております。

 実際に、例えばスポーツ選手もそうですし、障害をお持ちの方もそうですし、そういった方々がこの通信制高校で学ぶ中で力を発揮している、そういった話もよく伺っておりまして、今後、この通信制高校の充実、どのように取り組んでいくのか。しっかりと対応していただきたいと思いますが、文科省の御見解をお伺いしたいと思います。

永山政府参考人 通信制高校ですけれども、日常的な通学を要さずに、学習を行う時間やあるいは方法等をみずから選択して自分のペースで学べる、そういった特徴がございます。得意分野を伸ばそうとする生徒や、特別な支援を要する生徒等への学習の機会の提供など、多様な学びのニーズへの受皿として期待されるようになってきてございます。

 こうした背景を踏まえまして、文科省では、通信制高校における多様な学習ニーズに応じた指導方法等の確立、普及に向けた調査研究にも取り組んでいるところでございます。

 一方で、一部の、特に広域通信制高校において、不適切な学校の管理運営も明らかになっておりまして、文科省では、高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインの策定や、関係省令の改正、個別の広域通信制高校に対する点検調査等にも取り組んでおります。

 文科省としては、これらの取組を通じまして、引き続き、高等学校における通信教育の充実に努めてまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 最後に、高等学校における就職指導のあり方について質問させていただきたいと思います。

 先日、障害を持つお子さんたちの学習から就労まで総合的な支援を行っている方からお話を伺いましたが、障害を持つ子供たちといっても、その障害の程度や様態はさまざまでございまして、仕事の種類や職場の理解、一人一人に合った職場環境を丁寧に分析していくことが大変に重要、そういったお話を伺いました。これは、障害の有無にかかわらず、子供たちの就職支援をしていく上で大変に重要なことであると思っております。

 しかしながら、学校現場では、就職指導における一人一社制によりまして、そのような取組が十分にできないではないか、そういった声もございまして、ただ、他方では、一人一社制があることによって、先生方、また関係者がしっかりと対応してくださるので、高校生の就職率の向上にも役に立っている、そういった指摘もございます。

 昨年、閣議決定をいたしました経済財政運営と改革の基本方針二〇一八の中で、一人一社制のあり方について検討を行うことが盛り込まれておりますが、改めて、この一人一社制、その検討状況がどのようになっているのか、お伺いをしたいと思います。

浮島副大臣 いわゆる一人一社制は、高等学校卒業段階での就職、そして採用に関しまして、法令や通知により国が定めている制度ではなく、地域ごとに、地方自治体、企業、団体、学校などの関係者により申合せを行う就職活動上の慣行でございます。

 この一人一社制につきましては、高校生の効果的、効率的な就職活動、あるいは企業の採用コストの抑制につながっていると評価をいただいている声もありますけれども、一方で、今御指摘ありましたように、共生社会や一人一人の個性を伸ばす教育を目指す中で、一人一社制はそぐわないといった意見も伺っているところでございます。

 御指摘のとおり、経済財政運営と改革の基本方針二〇一八におきましては、一人一社制のあり方について検討を行うということになっております。このため、厚生労働省における調査の結果を踏まえまして、本年一月から、文部科学省、厚生労働省が連携をいたしまして、国、経済団体、学校関係者から成る高等学校就職問題検討会議、このもとにワーキングチームを設置いたしまして、新規高卒者の就職活動の実態や課題、そして把握、分析を行いまして、よりよい仕組みにしていくということで、今、議論を始めさせていただいたところでございます。

 いずれにいたしましても、関係者や有識者の御意見を丁寧に伺いつつ、この一人一社制のあり方について、引き続きしっかりと検討してまいりたいと思っております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので終わりますが、引き続き、子供たちのための対応ということで私たちも検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 国民民主党の吉良州司でございます。

 きょうは大臣所信に対する質疑ということでありますので、先日の大臣所信に基づいて、忠実に、その中で確認したいこと、また、私の方として提案したいことを含めて、大臣にお伺いしたいと思っています。

 まず冒頭、大臣の所信の中で、このような表現がありました。

 現在、安倍内閣においては、人生百年時代やソサエティー五・〇の到来を見据えた経済社会を大胆に構想する中で、一億総活躍の旗を更に高く掲げ、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていくため、内閣一丸となって人づくり革命を断行し、生産性革命を実現することを最大の使命としています。文部科学省が担う教育再生、科学技術イノベーション、スポーツ、文化の振興は、人づくり革命や生産性革命において中核を担うものであります。

 先ほど中川先生の方からも、現在の文科行政として、内閣、官邸の意向を反映するという意向を持っているのではないかというような指摘がありましたけれども、今、私が指摘した、大臣が所信の冒頭で訴えられたこの中で、一億総活躍、そして人づくり革命、そして生産性革命という概念、政府としての基本方針が、柴山教育行政、そして現場の教育の中で、どのような形で推進されていくのか。その基本的な考え方について、大臣の御見解をお伺いします。

柴山国務大臣 今御指摘をいただいた、安倍内閣が掲げている一億総活躍や人づくり革命、生産性革命、この実現のための取組は進めているんですけれども、これらは、持続可能な経済成長というのみならず、誰もが生きがいを感じ、やりがいを持って活躍し続けられる社会をも目指したものであるという理解で我々はおります。

 具体的な施策として、先ほども紹介をさせていただいたとおり、教育の無償化やリカレント教育の充実、あるいはイノベーションの促進の施策を掲げさせていただいておりますが、もとより、教育は、人格の完成を目指し、国家社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものであります。また、科学技術は、我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与することを目的とするものでありまして、やはり国民の福祉ということがキーワードになってくるのかなというように思います。これはいずれも、教育基本法や科学技術基本法に定められた基本的な方向性であります。

 ということですので、安倍内閣の重要課題として一億総活躍や人づくり革命や生産性革命を進めていく上でも、今申し上げたような、人の福祉ですとか、あるいは生きがいということを重要な位置づけとさせていただいているという理解でおります。

吉良委員 今の説明で私も納得がいくんですけれども、正直言って、先日の、さっき私自身が読み上げたところだけでいくと、一億総活躍、生産性革命、そしてその先には、安倍内閣がアベノミクスの延長として目指している経済成長、そのための経済先兵を教育でつくるんだというようなとられ方もしかねない。

 そういう意味では、ぜひ、大臣が今おっしゃったことについて、ここにいらっしゃる方、誰も反論する内容を含んでいませんので、そういうところをもっともっと打ち出していただきたいなというふうに思っています。

 そういう答弁をいただいたので深追いをするつもりはないんですけれども、ちょっとあえて質問させていただくと、俗に、例えば、中国においてはチャイニーズドリームとかだったりチャイナドリームがあったり、我が国においてもジャパニーズドリームとジャパンドリームがあると思うんですが、このジャパニーズドリームとジャパンドリームの違いは何でしょうか。

柴山国務大臣 確かに、ジャパニーズドリームというと、やはり日本人個人個人の夢あるいは幸福ということをあらわしているものと思いますし、ジャパンドリームといいますと、経済を中心とした国家の発展ということの夢ということになろうかというように思います。

 ですので、第一次安倍内閣において教育基本法を改正した際に、第二条の教育の目標として、個人の価値を尊重し、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を培うということを新たに規定しているところでもありますので、我々といたしましては、そういった目標に基づいて、これまで各般の教育行政に取り組んできたところだというように承知をしております。

 先ほど来御紹介をいただいた、人生百年時代、ソサエティー五・〇の到来、グローバル化の進展、こういった中においても、まさしく閣議決定した教育振興基本計画においても書かれていることなんですけれども、個人が自立した人間として、新たな価値を創造する力を身につけることが、ひいては社会の持続的な成長、発展につながる。だから主客が転倒してはいけないという、恐らく委員の厳しい御指摘だと思いますけれども、そういったことをしっかりと改めて認識に据えて、生涯にわたる一人一人の可能性とチャンスの最大化ということに向けた教育環境の整備をしっかりと行っていきたいと考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 後段の大臣の答弁は、私にも非常に納得をする答弁をいただいたと思っていまして、先ほど言ったジャパニーズドリームとジャパンドリーム、ジャパンドリームというのは結果論、ジャパニーズというか一人一人の個人が、いい教育環境の中でいい育ちをして、そして幸せを追求する中で、経済活動にも従事し、社会活動にも従事し、そして、個人の幸せの結果としてそういうのが積み上がっていった結果、国全体の発展がある。ですから、安倍総理が六百兆を目指すんだとか一億総活躍社会なんだとか言うのは、今おっしゃった主客が逆転していると私は思っているんですね。

 余計な話ですけれども、今、米中の貿易摩擦等、日本もアメリカとの間で貿易摩擦をずっと経験してきました。国会での議論を聞いていても、時々疑問に思うのが、貿易赤字だ黒字だというのは結果論で、最初から何百万台売るとかいう話があるわけではなくて、いいものを日本のメーカーがつくり、そして、今であれば、外国の、例えばトヨタさんだ、日産さんだもアメリカにディーラー網を築き、そこにはアメリカ人のディーラーの経営者がいて、いろいろなキャンペーンを張ってお客を呼び込んで、その裁量の中で何千ドル値引きできるという権限があれば、何千ドルまけますから何とか買ってくれ、何千ドルまけてくれるんだったら買いましょうという中で、お互いが、ああ、いい買物ができた、いい商売ができたということで握手をして、一台の車が売れる。その積み上げが、日本から何台の車の輸出であり、何台の輸入であるということなんですよね。

 ですから、私が今、ジャパニーズドリーム、ジャパンドリームと言ったこともそのことで、今言ったディーラーの一人一人の努力というのがジャパニーズドリームに当たるものであって、今の安倍内閣が、とかく発展途上国時代のように、国全体でこういくんだぞというようなことを余りにも押し出し過ぎるので、先ほど来大臣がおっしゃっている、個人の価値を尊重するという言葉を使われていましたけれども、そこをもっともっと文科行政においては強調していただきたいと思っています。あくまでも結果論、ジャパンドリームは結果論だということをぜひ大臣から訴えていただきたいと思います。

 その意味で、これも今のと重複するんですけれども、質問通告しているので聞かせてもらいますと、アブラハム・マズローの人間の欲求五段階説というのがあります。私、このマズローの例をよく引くんですけれども、多くの方が御承知のとおり、生理的欲求があり、安全欲求があり、そして親和の欲求があり、自我の欲求があり、最後が自己実現の欲求がある。

 今、柴山教育行政が目指しているものは、このマズローの五段階説でいうと、どこを目指されているんでしょうか。

柴山国務大臣 人間の欲求には、御指摘のとおり多段階があるということだと思いますし、確かに、究極的には自己実現、先ほど来強調させていただいておりますけれども、そういった高次の欲求ということを我々はしっかりと満たしていくことを目指していくことはもちろんなんですけれども。

 ただ、今のさまざまな教育を取り巻く環境を見ると、例えば、一番基本的と言われている生理的欲求については、虐待を受けている児童生徒がいらっしゃいます。食べる、寝るといった最低限の欲求すら満たされていない。そういう事例が現実に存在をし、そういったことへの対応ですとか、あるいは、安全の欲求についても、ハード、ソフト両面から安心、安全な学校をつくっていくことが重要であるというように考えております。そういう児童生徒や学校現場の実態に応じて、他の行政分野とも適切に役割分担をしながら教育行政において対応することが重要だなというように考えております。

 ということで、今の五段階のうち、教育行政においてどの段階を志向するかということへの答えといたしましては、それぞれの段階に関して、教育行政として必要な対応をしっかり行っていくということではないのかなというように考えております。

吉良委員 今大臣御指摘あったように、虐待の問題、最近本当に目を覆うばかりの状況が続いていますけれども、この虐待、そして子供の貧困、こういうことを考えると、大臣今御指摘のとおり、第一段階、第二段階、これすらまだできていない状況もある。この御指摘も納得いきますし、それに対する対応もきちっとしていっていただきたいと思っていますけれども、同時に、先ほど来言っていますジャパニーズドリーム、個人の幸せということにとことん重きを置いて、そういう意味では、自我の欲求、自己実現の欲求、そこに重点を置いていただきたいと思っています。

 これも繰り返しになりますけれども、安倍内閣が六百兆だ、一億総何とかだと言うのは、どうも発展途上の段階、第一段階、第二段階そのものを目的としているように私には感じてしまうんですね。ですから、繰り返しますけれども、個人を重視していく教育行政においては、柴山大臣から、このマズローでいえば第四、第五段階を目指していくんだということを発信していただきたいと思います。

 続きまして、やはり大臣所信の中で、高等教育についての言及が何点かございました。

 特に、こういうくだりがありました。「高等教育については、多様な卒業者が大学等で修得した知識、技能を社会で活用できるよう、教育の質の保証と情報公表、多様で柔軟な教育体制の構築、多様な学生の受入れ促進等を通じて、教育の質を向上してまいります。」、こういう方針を打ち出されておりました。

 このことについて、昨年成立した法律、これは文科ではなくて地方創生、内閣だったと思いますけれども、文科にも大きく影響を及ぼす法律、長いですが、地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律、地方大学振興法とでも呼べると思いますけれども。この中に、特定地域、つまり東京二十三区の大学、主に私立大学を念頭に置いていると思いますけれども、そこの定員を抑制する、十年間の時限がありますけれども、そのことが含まれているんですが、今言った多様な学生の受入れ促進という大臣の方針とこの法律とは矛盾するんじゃないでしょうか。

 大臣のこの法律に対する評価、現職文科大臣ですからおかしいとは言えないと思いますけれども、大臣の言葉で、この法律、今言った首都圏、特に二十三区にある大学の定員を抑制するということについての大臣の評価を教えていただきたいと思います。

柴山国務大臣 おっしゃりたいことはよくわかります。

 私の大臣所信で、今御紹介をいただいたとおり、ソサエティー五・〇に向けた人材育成やイノベーション創出の基盤となる大学等の改革を行っていくに際して、もちろん、多様で柔軟な教育体制の構築、多様な学生の受入れ促進を行う一方で、やはり高等教育の質を向上していく。これから少子化が進む中で、そういう中で、では定員管理をどうするのかということはやはり大きく問われる一つのテーマであろうかというように思います。その一方で、他方、地方創生を担う人材の育成や地域産業の活性化という要請もあります。

 そこで、収容力が大きい東京二十三区における大学の学部の定員、これについて一定の抑制を行う。そこは地方の大学と差を設けるということも、教育の質を担保した上で地方大学の振興にも資するという観点から、このような施策が説明できるのではないかというふうに考えております。

 もちろん、そういった社会主義的な、施策によって地方創生を図る、そういう趣旨では決して、必ずしもないわけでありまして、文部科学省においては、強みや特色を生かして、地域と連携した人材育成、研究推進、地域貢献を行う国立大学や私立大学に積極的に支援するですとか、あるいは、産学官連携による教育プログラムの実施、構築や、魅力ある地方での就職先の創出ですとか、地域経済の発展に資する大学が持つ技術シーズの事業化を支援するとか、そういう、地方に魅力を積極的に創造していくということを通じて、そこに自然と人が集まって、学生が魅力を感じるということの施策に取り組んでいるところでもありまして、これがまさに重要であって、決して、定員だけを左右して何か人材を持ってこようというような、乱暴な議論をしているわけではないということは御理解いただきたいと思います。

吉良委員 現職の大臣としてはそう答えざるを得ないだろうと思っています。

 そして、政治に携わる者として常に頭を悩ませるものは、よく法律用語でも言う公共の福祉と個人の自由、このバランスですよね。

 ですから、あえて言うならば、今回の二十三区における定員抑制というのは、日本全体、特に地方の人口減少、若者減少に伴う将来的な衰退を何とか国全体で抑えていこう、そして、そのために、今大臣もおっしゃった、地方の魅力を創出していこう、ここのところはわからないではないです。

 でも、そのために、これから自分の人生を切り開いていくために、自分はこういう大学に行って、こういう勉強をして、将来こういう社会人になりたいんだというその夢を抑えつけるということが、さっき言った公共の福祉と個人の自由のバランスの中で許されることなのか、私は大いに疑問を持っています。

 私自身も、大分、地方の出身でもあり、今、選挙区を地方に、大分一区ですけれども、その私でも、やはり、大分の子供たちが東京に行きたい、東京の大学で学びたいということをあえて抑えて、大分の学校に行け、そういうことは言えない。

 一つ、私が正直言って怒りすら覚えることは、これは、もともとの発端は全国知事会から出てきたと聞いています。知事になっている方の多くが、官僚出身者も多いですけれども、東京の大学で学んで、そしてキャリアを東京で積んで、そして地方の知事なり市長なりになっていませんか。彼らが、そういう中で、いや、地方にいたら視野が広げられない、私はそんなことを言うつもりは全くないです。ただ、その人たちが十八、十九のころに、やはり東京に行って視野を一回広げたい、その中には、視野を広げて、成長して自分の故郷に戻って、自分の故郷をもっと豊かにしたいという思いも持って出ていった人も多くいると思います。

 いろいろ、町おこし、地域おこし、言われていますけれども、もちろん、ずっと地の人として頑張って成果を上げている人もたくさんいらっしゃいます。だけれども、大分あたりでも、その方々と同時に、やはり外を見たからこそ、ある意味では視野が広がって、それをふるさとの振興に生かしたいということで戻ってきて、新しい発想の中で事業を、また町おこしを成功させている人たちも数多くいらっしゃいます。

 そういう中で、今言った個人の夢を抑えつけながら、そんなことをしなくても、地方の魅力を高めればいいんですよ。おっしゃったとおり、地方の魅力を高めるということに反対する人なんか誰もいないです。それをわざわざ、二十三区の学校の定員を抑える、こんなことが許されていいと私はとても思えません。

 もう一度、大臣の思いを聞かせていただきたいと思います。

柴山国務大臣 ありがとうございます。思いは共通をしている部分があるかと思います。

 先ほど答弁をさせていただいたとおり、まず、地方における魅力をしっかりともたらす。そして、仮に東京で学んでも、しっかりと地方に帰ってもらう。そして、そこで例えば仕事をつくり、あるいは地方の教育についてもいろいろと、場合によっては力を発揮していただくという、このサイクルを推進していくということが極めて重要だというふうに思っております。

 二十三区の定員につきましては、先ほど申し上げたように、一般論として、少子化が進む中、高等教育の質を向上していくという決意のほか、やはり、今のアンバランスをそのまま進めていってしまうと、地方大学の中には経営悪化による撤退等が生じる。これも自由競争の結果といえばそれまでかもしれませんけれども、そういうことになると地域間の就学機会の格差の拡大にもつながるということもあるので、定員管理の厳格性に二十三区と地方との間で一定の差を設けるという形で地方大学の振興を図ることも、これは一つ理屈のあることなのかなというように考えております。

吉良委員 今回の私の質問で、時間があれば最後にお聞きしたいと思っていますが、高等学校ですけれども、大臣も就任早々視察されたという、あの福島県立ふたば未来学園高等学校、私はこれはすばらしい教育方針で運営されているというふうに思っているんですが。

 私も先日視察に行かせてもらいました。その中で、もちろん福島という、また原発被災地という特殊事情はありますけれども、その中で、全国の教員たちが、ぜひこの学校の教育方針に学びたいということで、勉強しに視察に来ているという話も聞きました。これにあらわれているように、地方でも魅力ある学校をつくれば、まさに全国から注目を集めて、そして全国から学生たちが集まってくる。まさにその競争をしなきゃいけないのが、私は地方の高等教育機関だと思っています。

 そういう意味で、どういう形で抑制策を、私は廃止すべきだと思っているんですけれども、きょうのこの時点では私のその問題意識を指摘させていただいて、今後、抑制することのないように、個人の自由を奪うことのないように活動していきたいというふうに思っています。

 この法案の中で幾つか例外があって救いがあるんですけれども、その中の一つが、専門職大学だとか専門職短期大学を例外扱いしているということです。これは、やはり即戦力を含めて、社会のニーズが多様化する中で、専門の教育を受けて、即戦力にもなり、かつその人たちが、俗な言葉で言えばきっちり食べていける、そういう子供たちを育てていこう、その延長で、この専門職大学、専門職短期大学は例外にしたんだというふうに思っています。この点については高く評価します。

 この専門職、職業を重視するという意味において、柴山大臣の所信の中で、リカレント教育についての言及がありました。短くはありましたけれども、「リカレント教育については、抜本的に拡充し、生涯にわたって学び続け、チャレンジし続けられる機会の確保を目指してまいります。」、このことについては全く異存はありません。

 このリカレント教育をより効果的ならしめるためには、文科行政としての職業教育のみならず、職業に直結する教育のみならず、日本全体の雇用環境が、ある意味、ジョブ型雇用環境も拡充していかなければいけないと思っています。

 そういう意味で、柴山大臣が雇用環境をどうするという立場にはないのは承知していますけれども、このリカレント教育を文科行政の中で拡充していくときには必ず、日本全体の雇用がこうなければならないという構想のもとに、厚労省と文科省でまさに連携しながら進めていかなければいけないと思っています。

 そういう意味で、責任ある立場としてでなくて結構ですが、今後の日本の雇用環境がどうあるべきかということを、このリカレント教育との関係において、大臣の方から思いを述べていただきたいと思います。

柴山国務大臣 まさに今、我が国の雇用環境、雇用形態が激変をしている最中だと思うんですね。今後、十年から二十年たったら、我が国の労働人口の相当規模がAIですとかロボットにより代替される可能性もあるという指摘もある中で、個人の仕事に求められる、まさにその人の能力やスキルというものが問われていく。そんな社会が進んでいくことが予想される中で、いわゆるメンバーシップ型の雇用から、委員御指摘のジョブ型雇用への移行、あるいは労働市場の流動化というものが進展することが予想されるかと思います。

 そういった環境の中で、先ほど来出ている人生百年時代において、誰もが幾つになっても必要な技能あるいは知識の習得、あるいは活躍できる機会の確保、そういった社会の実現に向けて、リカレント教育の抜本的な拡充というものがどんどん重要になってくるというように考えておりますし、まさしくそういう中において、転職や復職、あるいはスタートアップを円滑になし遂げられる社会を構築していく必要があるのだというように考えております。

 まさしくおっしゃるとおり、文部科学省というよりは、厚生労働省等の関係省庁とも連携をしながら、そういったリカレント教育の抜本的な拡充、さっき御指摘になられた専修学校ですとか専門職大学などにおける産学連携プログラムですとか、社会人向けの短期プログラムですとか、あるいは放送大学、さっき通信教育というお話もありましたけれども、そういったプログラムの拡充によって、誰もが幾つになっても新たなチャレンジができる環境整備をしっかりと進めていきたいと考えております。

吉良委員 誰も、誰でもがなんですけれども、私は、特に女性活躍社会、そのことについて、女性が活躍できるようにということも、誰も異論がある人はいない。ただ、子供を産めるのは女性だけだということで、その間はどうしても、職業上、さっき言った特にメンバーシップ型の中では、中断を余儀なくされる。

 それだけに、特に女性のいろいろな選択肢をふやしていく、そして、子供を産んでもう一回社会に戻る際に、それがやりやすい環境として、大臣もおっしゃったジョブ型雇用環境というものを社会全体として今後拡充していかなければいけないと思っていますし、それがあって初めてこのリカレント教育というのが私は充実してくるというふうに思っていますので、厚労省と連携しながら、ジョブ型雇用環境の拡充とあわせての文科省としてのリカレント教育について力を入れていただきたいと思っています。

 次に、昨年の臨時国会で宮川典子先生の質問を受けて、英語教育ということについて議論をさせてもらいましたけれども、今回も、所信の中で、小学校における質の高い英語教育ということがうたわれております。もう一つは、今後更に加速していくグローバル社会を見据えた外国語教育ということも所信の中で述べられております。

 そういう意味で、特に小学校における英語教育については、どういうことを目的として英語教育を考えているのか、その辺について、大臣の考え方を伺いたいと思います。

柴山国務大臣 ありがとうございます。

 まさしく前臨時国会で宮川典子議員からも御指摘があったんですけれども、これからの実践的な英語教育をどのように進めるかということを、社会のグローバル化が急速に進展する中で、しっかりと考えていかなければいけないと考えております。

 これまでのように、一部の業種や職種だけではなくて、生涯にわたるさまざまな場面で必要とされることがある程度想定をされるということになるかと思いますので、まさしく初等中等教育段階から、外国語によるコミュニケーション能力を育成することが重要になってくると考えます。

 そこで、新学習指導要領では、外国語を使って何ができるようになるかを明確にするという観点から目標を設定しておりまして、例えば、高等学校においては、情報や考え方などを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質、能力を育成するといった目標を掲げております。

 教育振興基本計画では、高等学校卒業時点で、CEFR、A2レベル、英検準二級相当以上を達成した高校生の割合を、今は大体四割程度と言われているかと思いますけれども、五割以上にするということを目指しています。このCEFR、A2レベルでは、基本的な個人情報や家族情報、買物、地元の地理、仕事など、直接関係がある領域に関してよく使われる表現が理解でき、簡単で日常的な範囲なら情報交換に応じることができるレベルとされております。

 ですので、そこからまた逆算をして、では、小学校、中学校においては何が求められるかということを考えた際に、文部科学省としては、二〇二〇年度以降の新学習指導要領の全面実施に向けて、教員の養成、採用、研修の一体的な改善、小学校においては、専科指導の充実、外国語指導助手の活用の促進、こういった必要な教育環境の整備にぜひ努めていきたいなというように考えております。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

吉良委員 今大臣が答弁されたことを否定するつもりはないですけれども、私はここで提案をしたいと思ってこの質問を出しています。

 それは、英語というのは、日本においては、明治にさかのぼれば、西洋の思想だったり科学技術だったり実務だったり考え方だったりを輸入する一つのツールとしてもともとは始まったと思うんですよね。だから、しゃべれなくても、読めて書ければいいというところから始まったというふうに思うんですが、今大臣がおっしゃったこと、特に高校以上で求めていることというのは、まさにグローバル化時代に対応して、私の言葉で言ったら、世界に打って出る人たちの英語なんですよね、世界に打って出て戦える。

 これまでは、それこそ外交官だったり、それこそ商社マンだったりメーカーだったり、いろいろな人たちが海外に出ていってやっていましたけれども、それは人口でいえば、百人中、何十年か前は三人、四人、今それが十人、二十人にふえてきている段階だと思います。残りの人たちは、英語はほとんど関係ないということで生きてきた。

 もちろん、グローバル化に伴って、その二十人を三十人、四十人、五十人にしていくことも大事かもしれませんけれども、私が指摘したいのは、外国人労働力の受入れ、そして、私は前回の臨時国会では、移民政策にかじを切るべきだということも申し上げました。そうなってくると、海外から日本にやってくるわけです。

 そして、私は、厚労省の人からいろいろな話を聞いたときにちょっと無理じゃないかと思ったのは、いろいろな場面で、アメリカであれば、南米から来る人たちというのはスペイン語かポルトガル語しかしゃべれないから、スペイン語、ポル語ができる人を用意すればいい。けれども、アジアの場合は、インドからパキスタンからミャンマーからタイからネシアから、もう大変、その専門人材を一々用意していたら、とてもじゃないけれども足りません、追いつきません。

 いつも言いますけれども、日本は世界で一番難しい言葉。その人たちに来てもらって、日本の中で、特に来てすぐの滑り出し、出だしで不自由なく生活してもらうために一番いいのは、今言った打って出る英語をぺらぺら、外国の企業とネゴシエーションをやる、そんな能力はなくてもいい、けれども、日常的に、ちょっと道を教えてあげる、駅がどこか教えてあげる、買物をどうすればいい、それは教えられるということを百人中ほぼ百人できるようにすることが大事なんじゃないか。

 そして、今は外国人労働者についても、現地で、送り出し国で日本語を勉強させています。もちろん、日本に来てもらうんだから、日本語は大事。だけれども、今言った世界で一番難しい言語。であるならば、日本に来て滑り出しのときに日常生活がきちっとうまくいくように、簡単な英語も現地で覚えてもらう。日本語を覚えるよりははるかに楽ですから。そういう観点で、特に小学校の子供たちには英語教育をしていく必要があるんじゃないでしょうか。

 その中から、興味を持って、自分は将来、世界を股にかけてという人が出てくるでしょうから、そういう人たちはいずれ自分の意思でやってくる。だけれども、百人中百人がこの英語教育に触れていくわけですから、今言った迎え入れる英語として、誰でもが簡単なことをしゃべれる、それを目標とすべきではないかと私は思っていますけれども、大臣、いかがでしょうか。

柴山国務大臣 重要な御指摘かと思います。

 実は、今文部科学省で、補助教材として、新学習指導要領に対応した教材を幾つかつくっております。

 例えば、その中で、小学校五年生の外国語新教材では、ホエア・イズ・ザ・トレジャー、位置と場所というような単元があって、例えば、道案内を聞いて、その人がどこに行くのかを考えたり目的地を探したりする活動、こういったことを、一応、具体的な教材を文科省の方でつくっているというところであります。

 小学校三年、四年の外国語活動が、まずは、外国語による、聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質、能力を育成するということなんですけれども、まさしく、今少し紹介をさせていただいたとおり、小学校五年生ですとかあるいは六年生の外国語、英語ということになりますと、やはりコミュニケーションを図る基礎となる資質、能力を育成するということで、今言ったような具体的な実例も踏まえた教育というものが、まだ実際に民間の教科書というのは出てきていませんけれども、育成するということを目指して、今御指摘のような要請にも応えられるような内容にできたらなというふうに考えております。

吉良委員 今大臣が答弁されたことに異を唱えるつもりはないですけれども、私が指摘したかったのは、打って出る英語だけではなくて、迎え入れる英語、そういう概念を持って、特に英語教育の始まりが低年齢、低学年になってきますので、そういう観点でやっていただきたいなと思っています。

 もう時間がなくなったので、宇宙開発についてお聞きをしたかったんですが、私の方からちょっと指摘をさせていただきますと、科学技術というのは、乱暴に言わせていただくと、宇宙分野、軍事分野、そして原子力、このピークが高ければ高いほど裾野が広がって、国全体の科学技術力が底上げされると私は思っています。

 ただ、我が国の場合は、軍事について、ある意味ではタブー視している、そして、原子力災害というものがあったので、原子力についても限界があるということになれば、どうしても宇宙分野をより高いピーク、頂にしていかなければいけないというふうに思っています。

 「はやぶさ」の活躍で、みんなが宇宙に興味を持っている状況であります。この「はやぶさ」計画を実際に立案できて実行できる人なんというのは、もうほんの一握りの天才の人たちですけれども、この宇宙がいいのは、子供たちも含めてみんな目を輝かせて、要は興味を持ってもらえるということだと思います。

 もう時間が来ましたので。

 宇宙週間、アメリカでは実際小学校でやられているんですけれども、スペースウイークというのがあって、その間は宇宙づけになって子供たちがのめり込むということがあります。ぜひ、多くの子供たちには、将来の夢、そして科学技術に対する期待、夢を持ってもらうためのスペースウイークを、そして、将来またノーベル賞をとれるような、また、「はやぶさ」計画を立案できるような人たちをそろえる意味でも、文科として、特に小学校のときにスペースウイーク、宇宙週間というのをぜひ設けていただきたいなということを思いますが、もう答弁すると時間がないでしょうから、そのことをお願いをしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

馳委員長代理 次に、畑野君枝さん。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 ことし一月二十四日、千葉県野田市で、児童虐待によって小学四年生の女子児童が亡くなられました。心から哀悼の意を表します。救えたはずの命がなぜ救えなかったのか、本当に胸が痛みます。

 柴山昌彦文部科学大臣と文部科学省は、今回の事件をどのように検証して対応をしていくつもりなのでしょうか。そのことについて伺います。

永山政府参考人 この野田市の事案におきましては、特に、アンケートの写しを父親に渡した野田市教育委員会の対応、これが、報道等もされていますけれども、適切ではなかった、極めて遺憾だと考えておりますし、野田市等において、この点も含めた検証を適切に行う必要があると考えております。

 それから、アンケートの写しを父親に渡す際に、児童相談所等の関係機関への事前相談等がなされていなかったこと、それから、速やかに事後報告ですとか情報共有、これもなされていなかったこと、そういった関係機関との連携の不足等についても問題があったと認識をいたしております。

 この事案を踏まえまして、平成三十一年二月の八日ですけれども、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議において決定いたしました「「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底・強化について」においては、新たなルールといたしまして、子供の安全を第一に、通告元は一切明かさない、資料は一切見せないこと、二つ目として、保護者が威圧的な要求等を行う場合には複数の機関で共同で対処すること、三つ目として、学校欠席等のリスクファクター、これを見逃さない新たな情報提供のルールを設定すること、そういったことが示されたところでありまして、これを受けまして、二月の二十八日付で、内閣府、厚労省と文科省連名で二通の通知を発出をいたしております。

 これらの通知では、学校教育委員会と児童相談所、警察等との連携に関する新たなルールということで、学校等及びその設置者においては、保護者から情報元に関する開示の求めがあった場合には、情報元を保護者に伝えないこととするとともに、児童相談所等と連携しながら対応すること、保護者から学校等及びその設置者に対して威圧的な要求や暴力の行使等が予想される場合には、速やかに市町村、児童相談所、警察等の関係機関や弁護士等の専門家と情報共有することとし、関係機関が連携して対応すること、さらに、要保護児童等が休業日を除き引き続き七日以上欠席した場合には、理由のいかんにかかわらず速やかに市町村又は児童相談所に情報提供すること等を示したところでございます。

 文科省といたしましては、学校及び教育委員会において、児童虐待の早期発見、早期対応について、市町村、児童相談所と連携した対応を図られるよう、本通知の趣旨を周知徹底するとともに、引き続き、厚生労働省等との関係機関とも連携しつつ、スクールソーシャルワーカーですとか、スクールローヤー、退職警察官の活用等を含む再発防止策を検討するなど、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

畑野委員 今お答えがありました二月二十八日付の通知について、少し伺いたいと思います。

 まず、情報元に関する開示の求めがあった場合には情報元を保護者に伝えないこととするということですが、これについては、やはり、しっかりと学校現場を支えることが大事だと思っておりまして、もちろん、憲法では、基本的人権、あるいは全ての国民は個人として尊重される、そして、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利ということも保証されているわけですから、また、子どもの権利条約も、虐待の問題を含めて言っているわけですから、ぜひ、現場が力強く対応できるようにする必要があるというふうに思っているのが一点です。

 それと、学校等に対して威圧的な要求や暴力の行使等が予想される場合には複数の教職員等で対応するということが言われているんですが、これは現場に聞きますと、もうただでさえ先生が足りない、教職員が足りない、もう職員室に行ったら空っぽ、出払っているということも聞くんですね。

 ですから、これは、やはり必要な教職員をちゃんと配置する。授業に穴があくという事態を、私、国会でも、この委員会でも質問してまいりましたけれども、やはり全体としてふやしていくということが必要じゃないかというふうに思います。もちろん、その際には、スクールソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーとか、心理のことがわかる専門的な方の配置というのも必要になってくると思います。

 それから、三つ目に、「休業日を除き引き続き七日以上欠席した場合には、定期的な情報提供の期日を待つことなく、速やかに市町村又は児童相談所に情報提供する」というふうに言っているんですが、この七日というふうにされた理由について伺いたいと思います。

 三つの点について、つけ加えておっしゃっていただくことがあれば伺います。

永山政府参考人 三点お尋ねがございました。

 まず一点目、現場を支える、これはもう当然のことでございます。私どもとしても、もちろん教育委員会としても、現場の体制をしっかり支えるということが基本であろうかと思っています。そういった姿勢でこれからも当たっていきたいと思ってございます。

 それから、複数で対応するということ、これも非常に大事なことでして、やはり一対一ですと、言った言わないの話にもなります。威圧的な対応に対して、どうしても弱い姿勢になることもある。複数で対応するというのは非常に大事ですけれども、その際に、教員の配置、正規教員もそうですけれども、それ以外の、御指摘がありました専門的なスタッフ、そういった方々の協力も得ながら、いわばチーム学校として、組織として、体制としてきちんと当たっていくといったことも大事ですし、そういったことについても、またお願いなり周知なりをしていきたいというふうに思ってございます。

 それから、七日間とした理由でございますけれども、昨年七月に通知を出しておりまして、その通知ですと、「新たな児童虐待の兆候や状況の変化等を把握したときは、定期的な情報提供の期日を待つことなく、適宜適切に市町村等に情報提供又は通告すること。」ということで、特に七日という日にちが入っていなかったんですけれども、今回の事案、野田市の事案を踏まえまして、先ほど御紹介しました二月八日の関係閣僚会議決定で新たなルールをつくるということになったということも踏まえまして、この二月二十八日の通知では、情報提供を行う場合の基準というものを新たにつくった。

 要保護児童等については緊急点検でお願いしている、緊急点検というのはまた別途今やっておりまして、この結果もまた近々まとまるわけですが、それは、十四日間登校していないという子供を対象にしているという形での緊急点検を行っておりますけれども、それよりも短い、休業日を除く引き続き七日以上欠席したという、具体的な日数を示す。

 これは絶対七日じゃないといけないということではないんですけれども、十四日よりも短い、その半分の七日ということで、明確な日数を具体的に示したということで、学校においても明確にその対応ができるようにという考え方で、七日間としたものでございます。

畑野委員 あわせて、現場の方からは、一時保護所に措置されている児童の教育権の保障についてしっかりと行うべきではないかという声も伺っております。

 措置期間中は、自分が通っていた学校へ通えない状況が続くわけです。一時保護所の不足や環境改善とあわせて、教育を受ける権利を保障するということも重要だという指摘がありますが、この点については御検討いただけますでしょうか。

永山政府参考人 一時保護所そのものについてはちょっと所管外でありますけれども、一時保護所におきましても、指導員、教員OBの方ですとかが訪問をして学習指導するといった実態もございますし、あるいは、一時保護所から学校に通うというケースもないわけではない。そういった場合、もちろん児童生徒の安全最優先ということでありますけれども、そういった形で、やはり教育権、教育を受ける権利の保障というのもきちんとやっていきたいと考えてございます。

畑野委員 柴山大臣に伺いたいんですけれども、このように、今、一時保護所の話をしましたが、一番現場から出てきているのは、学校の増員も含めてありますし、それから、児童相談所そのものの機能と職員をふやしてほしいと、それは本当に、学校現場からも、また児童相談所の関係の人からも出ているんですね。

 ぜひ、文部科学大臣として、柴山大臣、厚労省を含めてですが、各省庁とも連携して、全体として子供を、命を守る、こういう体制に向かっていただきたいと思っているんですが、この点で、大臣のお考えはいかがでしょうか。

柴山国務大臣 今、児童相談所についても御言及がありましたけれども、こういった虐待等に対する体制もそうですけれども、今、学校における教職員の抱えるさまざまな課題に対応するために、非常に教職員が今の定員では対応が難しいという悲痛な声が耳に届いております。

 この改善につきまして、これまでの第一次から第七次にわたる定数改善計画に基づく改善や、平成二十九年三月の、これは非常に大きな改正だったと思いますが、義務標準法の改正による一部の加配の基礎定数化に伴う十六年ぶりの計画的な定数改善などが実施をされているところであります。

 こういった課題に対する対応等を通じて、しっかりと強化充実に取り組んでいきたいと考えております。

畑野委員 大臣の方から、教職員の増員を含めて、ぜひ進めていただきたいというふうに私は申し上げてきたわけですが、そこに向けてどのように進めていらっしゃるのかということをもう少し伺いたいと思います。

柴山国務大臣 特に、私が今申し上げた平成二十九年三月の義務標準法の改正では、発達障害などの障害を持つ児童生徒への通級指導、外国人児童生徒に対する日本語指導教育等のための加配定数について、対象となる児童生徒数等に応じて算定される基礎定数とさせていただきました。この基礎定数化を二〇一七年度から十年間で計画的に進めることによりまして、二〇二六年度には、例えば通級指導については、対象児童生徒十六・五人に対して一名だった配置が、十三人に対して一名に改善されるなど、措置を講じていくこととなります。

 この法改正によりまして、都道府県、指定都市の教育委員会にとっては、これまでの加配定数である約六万四千人の約三割が基礎定数化されることから、教職員定数について先の見通しが立てやすくなり、安定的、計画的な採用、研修、配置が行いやすくなると考えております。

 平成三十一年度予算案におきましても、小学校の英語教育のための専科教員千人を始めとする合計千四百五十六人の定数改善を行っているところでありまして、今後とも、引き続き、学校の指導、事務体制の効果的な強化充実に取り組んでまいりたいと考えております。

畑野委員 ことし一月二十五日に中教審の働き方改革特別部会が答申を出しました。これを受けて、同日、柴山大臣は、省内に学校における働き方改革推進本部を設置して、そして二十九日には推進本部の第一回が行われております。

 一月二十五日の推進本部の設置についてでは、検討事項として挙げられた七つの内容の一つに、総合的な方策パッケージ工程表の着実な実施とそのフォローアップというものがあるんですけれども、この工程表を見ますと、勤務時間管理の徹底から環境整備、フォローアップまで、いろいろ書かれているんですが、残念ながら、教員定数の抜本改善に関する内容が見当たらないんです。

 二〇一八年版過労死白書では、教職員の一日当たりの平均勤務時間は十一時間十七分、働き過ぎ防止のためには教員の増員が必要だと、七八・五%の回答がありました。

 私もこの間、授業時数の上限規制や十年間で小中学校の教員九万人増員ということを柱にした我が党の政策提言、大臣にもお渡ししましたけれども、これを持って中央や地方の教育関係団体と懇談を重ねてまいりました。どこでも、行くごとに語られるのは、正規の教員をふやしてほしい、抜本的にふやしてほしいという声なんです。大臣にいろいろとこの間言ってまいりましたが、まだまだ足りないということだと思います。

 それで、二つ、大臣に聞いていただきたい地方からの声を御紹介させていただきます。

 一つは、昨年の八月十日付で、神奈川県教育委員会教育長名で文部科学大臣に宛てた要望書です。「働き方改革の実現に向けた教職員定数の改善に関する要望書」というものです。

 その第一に、「学級数に応じた定数の見直し」を掲げ、「小・中学校における教頭及び教諭等の数は、いわゆる義務標準法において、学校規模ごとの学級総数に一定の数を乗じた数の合計と定められているところであるが、様々な教育課程が複雑化・困難化している学校現場においては、規定の乗数では十分な教員数を配置することができず、本県の勤務実態調査の結果によれば、授業や授業準備、教材研究など児童・生徒の指導にかかわる業務だけで正規の勤務時間を超える深刻な状態となっている。」と指摘しております。

 つまり、常態化している長時間勤務を解消するため、義務標準法に規定する乗数を見直すことを要望している、というのが一つです。

 それからもう一つは、先日、川崎市議会の委員会での質疑の状況を伺ってまいりました。

 川崎市は教職員の勤務実態調査を行いまして、最終報告では、中学校で一日十一時間二十三分、小学校では十時間四十分、校内で働いている。約七割の教員が休日出勤している。また、授業の始業前それから終業後の業務内容は、小学校、中学校とも授業準備になっている。始業前は、小学校では八七・八%、中学校では八三・二%。終業後は、小学校八〇・四%、中学校四一・六%。中学校がちょっと低いんですね。なぜかと思ったら、中学校の教員の休日出勤は、月三日以上が八割で、月七日以上が二五%。中学校の業務内容というのは、部活動が六九%に次いで、授業準備が五〇・四%。つまり、休日の方でやっているということだと思うんですね。

 やはり週五日制だったもとで、今、教職員の定数の改善が必要じゃないかという我が党の市会議員の質問に、市の教育委員会は、さらなる教職員改善につきましては、義務標準法の改定を含む定数改善計画の策定、実施が重要であると考えておりますので、引き続き、指定都市教育委員会協議会、指定都市市長会等、さまざまな機会を通じて国に対し強く要望してまいりますというふうに答えていらっしゃるんです。

 私は、柴山大臣、ぜひ、こういう自治体の声をよく聞いていただいて、そして新しい教職員の定数改善、乗数含めて変えてほしい。なかなか専門的な話ですが、よくよくそれで検討していただきたいと思うんですが、いかがですか。

永山政府参考人 特に委員の方から、義務標準法における仕組み、乗数のお話がございましたので、その件から少しお話を申し上げたいと思いますが……(畑野委員「短くていいです」と呼ぶ)はい。

 教職員定数の算定に当たりましては、学級数に乗ずる数というのは、小学校の場合には学級担任制、それから中学校の場合には教科担任制が前提となっておりますので、教師の勤務実態により見直す仕組みにはなっていないということが、まず制度の前提としてあるということでございます。

 他方で、平成二十八年度に実施しました教員勤務実態調査においては、小学校教諭は、確かに一日当たり四時間二十五分、授業を担当していることを踏まえまして、先ほど御指摘のありました、学校における働き方改革に関する中央教育審議会の答申、小学校における効果的な指導と教師の一人当たりの指導時間の改善の両立が必要であると指摘をしてございます。

 具体的には、小学校の教科担任制の充実、年間授業時数や標準的な授業時間等のあり方を含む教育課程のあり方の見直し、それから、教員免許のあり方や、圏域における地方公共団体の協力関係の進展状況を踏まえた教育的観点からの小規模校のあり方の検討、そういったものが提言されておりまして、今後、一体的に検討を行ってまいりたいと思っております。

畑野委員 柴山大臣、地方の声をよく聞いていただきたいということを伺っておりますので、その点についてだけお答えください。

柴山国務大臣 今局長から答弁をさせていただいたとおり、テクニカルなお話でありますけれども、乗数と、あと授業時数の標準時間、今、非常に過大な負担を強いているというようなことについての現場の声にしっかりと耳を傾けて、その改善に向けてどのような手だてが有効かということについて、検討していきたいと考えております。

畑野委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 私は、以前から、教員定数の考え方について議論をしてまいりました。教員の定数は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律によって、学級編制の規模に応じて配置される、教職員が決まる仕組みになっておりますが、その際、教員一人当たりの指導時数、持ちこま数をどのような考え方で設定するのかが非常に重要になってまいります。

 義務標準法制定時にその制度設計を担った当時の文部省財務課長補佐佐藤三樹太郎氏が、一九五八年、「学校経営」という雑誌に書いた「新しい法律と学校経営」というタイトルの文書があります。

 この中で、佐藤氏は、法制定時における教員の授業時数の実態を踏まえ、一教員当たり標準指導時数は、一週二十四時限をもって標準とした、したがって一日平均四時限となるが、これは一日の勤務時間八時間のうち、四時間(休憩時間を含み)を正規の指導教科に当て、残り四時間を教科外指導のほか、指導のための準備整理、その他校務一般に充当するという考え方であるとしております。

 確認ですけれども、この文書については、文部科学省は御存じですね。

永山政府参考人 存じ上げております。

畑野委員 この考え方は、今日においても基本的に変わりがないということでよろしいですか。

永山政府参考人 昭和三十三年当時、この義務標準法が制定された年ですけれども、一教員当たりの指導時数を、教科指導週二十四こま、二十四時限とおっしゃいましたけれども、二十四こまと想定していた当時の考え方のことを御指摘いただいているんだろうと思います。

 ただし、これは、当時、月曜日から土曜日がございましたので、土曜日までの一日四こまとして、特に月曜日から金曜日はおおむね一日の半分程度を授業に当てる、そのことを前提としておりましたが、標準法制定当時は、小学校の場合、この二十四こまには、道徳と特別活動、学級活動が含まれていなかったので、その意味では、当時から、月曜日から金曜日の間でも二日程度、一日の半分以上は授業を負担していたということにはなります。

 一方で、平成二十八年度の学校教員統計において、公立小学校教諭一人当たりの週平均担任授業時数、授業担任ありの方のみですけれども、これが二十四・五こまでありましたので、これを踏まえますと、義務標準法制定当時の教職員定数の算定の考え方と現在の実際の教職員配置は大きく異なるものではありませんが、学校週五日制の導入によりまして、一日五こま程度の授業負担となっております。

 また、一人当たりの週平均担任授業時数、二十四・五こまと申しましたけれども、小学校では休み時間も教師は子供たちの指導に当たっていることが多いことから、平成二十八年度に実施した教員勤務実態調査においては、小学校教諭は、一日当たり四時間二十五分、授業を担当しているということになっているところでございます。

畑野委員 昨年二月十九日の予算委員会での私の質問に、当時の初等中等教育局長も、義務標準法制定当時は一教員当たりの指導時数を教科指導週二十四時間と想定しており、一日の勤務時間の約半分程度を充てることとしておりましたというふうにおっしゃっていまして、そのことはこの「学校経営」に同じように書かれておりますので、そういう考えで当時もいたし、この考え方は変わらないわけです。ただ、おっしゃったように週五日制になっておりますから、そこが変わってきているわけですね。

 そうなんですよ。つまり、そういう考え方を堅持しつつも、義務標準法制定当時からいうと、それが週五日に今なっている。ですから、その教育公務員の労働時間と総授業時数に見合うように、教員定数を改善すべきだったのではないか。しかし、そういうことがされずに今日まで続いているということではないかと思うんです。

 当時は週四十四時間勤務でしたが、今は三十八時間四十五分勤務です。学習指導要領の改訂で総授業時数が増加して、法制定時に想定していた教員一人当たり一日四こまという考え方をはるかに上回っていると、今お答えにもなりました。

 ですから、私は、教員の働き方改革というのならば、義務標準法で定める一学校当たりの授業数に応じて教員定数をふやす、こういう、乗ずる数を実態に即して見直すことや、授業時数の削減に踏み込むべきではないかと思うんですが、その点、いかがですか。

永山政府参考人 先ほどの答弁と少し繰り返しになるところもあるかもしれませんけれども、教職員定数の算定に当たりましては、やはり、学級数に乗ずる数というものは、小学校の場合には学級担任制、中学校の場合には教科担任制が前提となっている。教師の勤務実態で見直すという仕組みには、まずその制度上なっていないということを申し上げないといけないかと思っております。

 他方で、平成二十八年度の教員勤務実態調査におきまして、小学校教諭が一日当たり四時間二十五分、授業を担当しているというようなことも申し上げましたけれども、先ほどの中教審の答申におきましても、小学校における効果的な指導と教師の一人当たりの指導時間の改善の両立が必要であるというふうなことが指摘をされております。

 具体的には、小学校の教科担任制の充実ですとか、年間授業時数や標準的な授業時間等のあり方を含む教育課程のあり方の見直し、教員免許のあり方や、圏域における地方公共団体の協力関係の進展状況を踏まえた教育的観点からの小規模校のあり方の検討、こういったものが提言されてございます。

 こうした、教育制度も必要に応じて大胆に見直すことは、学校における働き方改革を、その在校等時間を縮減するという量の側面だけではなくて、教師の働き方の質の向上のために必要だと考えておりまして、文科省といたしましては、今後ともこういった事柄に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

畑野委員 時間が参りましたので、質問するものが全て終わりませんでした。また、この続きは次回にしたいと思います。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 未来日本、笠でございます。

 きょうは、大臣に幾つかお伺いしたいんですが。先ほど吉良委員の方が宇宙についての言及があって、本当に子供たちが目を輝かせながらこの夢というものを追いかけていく。私も本当にそのとおりだと思っています。

 ちょうど二月の二十二日にJAXAの小惑星の探査機「はやぶさ2」がリュウグウ、目標地点に着陸をしたということで、本当に大変うれしいニュースでございました。この小惑星のリュウグウには水や有機物を含む鉱石がたくさんあると見られるわけで、こういったことを分析していくことによって、地球やあるいは太陽系の誕生に関する謎をしっかりと解明できるんじゃないか、そういう期待感が本当に高まるわけでございます。

 こうしたことは人類にとっても非常に大きな意義を持つことだと思いますし、やはり大宇宙の姿を解明するということは、地球の科学と人類の進歩にとっても必要不可欠だという認識を、恐らく大臣も持っておられるんじゃないかと思いますし、大臣自身が、今回の所信の中でも、日本は世界で最もイノベーションに適した国を目指すんだということで、科学技術立国、これをしっかり強調されていた。

 そういった中で、まず一点、きょう確認をしたいことは、この宇宙の成り立ちを探るために、今、いわゆる国際リニアコライダー、ILCですね、これもまた、ある意味では、この「はやぶさ」の計画とはまた種類は違うわけですけれども、私は非常に重要だと思っておりまして、宇宙の始まり、いわゆるビッグバン直後の反応を再現して、宇宙の起源、宇宙の仕組みを解明しようとするこの実験施設を、日本にきちっと招致、誘致をしようじゃないかということでございます。

 三月の七日に、文部科学省は、現時点で日本誘致の表明には至らないとしましたけれども、一方で、このILCの計画に関心を持って国際的な意見交換を継続するという見解を発表されております。

 大臣は、報道ですと、国内外で議論が継続されることを期待するというようなことを記者団に述べたようですけれども、大臣自身がこのILCの日本誘致の意義についてどのようにお考えなのかを、まず伺いたいと思います。

柴山国務大臣 ILC計画が目指すヒッグス粒子の精密測定は、宇宙創成の謎の解明にもつながるということで期待をされております。ただ、一方で、ILC計画には巨額の投資が必要であることから、一国のみで実現することができず、国際協力が必要不可欠であるとともに、国民及び科学コミュニティーの理解を得ることも必要であるという認識をしております。

 こういった状況を踏まえて、これまで、文部科学省においては、本計画について、ILCに関する有識者会議での検討や日本学術会議の所見を踏まえて総合的に検討を進めてまいりましたけれども、今御指摘のとおり、先般三月七日に開催されたILC計画に関する国際会議において、文部科学省として見解をお示しさせていただいたところであります。

 この見解においては、先ほど申し上げたとおり、素粒子物理学におけるヒッグス粒子の精密測定の重要性に関する一定の学術的意義を有すると表明をさせていただいております。

 一方、日本学術会議の所見において、諸分野の学術コミュニティーとの対話の不足など、さまざまな懸念が示されていることを踏まえまして、国内では、正式な学術プロセスである日本学術会議のマスタープランでの検討、国外では、欧州のプロセスとなる次期の欧州素粒子物理戦略の議論が必要であると、見解でお示しをさせていただきました。

 ただ、この見解は、国際研究者コミュニティーとして理解するという旨の反応、御発言をいただけたということも伺っておりまして、今後は、文部科学省といたしまして、国内外の研究者コミュニティーにおける議論が継続されることを期待するとともに、政府レベルにおいてもそういった国際的な意見交換を引き続き継続させていただきたい、このように考えております。

笠委員 この巨額な予算というものを投入すると、果たしてどれぐらいの金額がかかるのか、言われているのは八千億ぐらい、大体、日本がもし誘致をしたならば、その半分ぐらい、四千億ぐらいを最低でも負担をしないといけないんじゃないかというような試算がなされているわけですけれども。

 ちょっとこれは事務方で結構なんですけれども、日本学術会議は、この誘致を支持するには至らないという見解を述べているわけだけれども、これはやはりこのお金の部分、予算の部分、巨額な予算ということが最大のネックになっているということでいいんでしょうか。

磯谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のILC計画についての国際分担の関係でございますけれども、確かに、学術会議の所見の中では、国際経費分担への見通しの懸念も、懸念の一つとして示されているところでございます。

 具体的に申し上げますけれども、ILC計画に関する国際的な動きといたしましては、今後、欧州において国際コミュニティーでの次期欧州素粒子物理戦略の議論が本格化しまして、二〇二〇年の五月に決定されると聞いております。

 このILC計画については、欧州の各国政府からの協力を得るためには、この欧州戦略に掲載されることが必要というふうに伺っております。まずは、今後のプロセスとしてその議論の進捗を見守る必要があるというのは、今大臣が御答弁されたとおりでございます。

 従来から、文科省としましては、一方で、米国エネルギー省ですとか、フランス高等教育・研究・イノベーション省、そしてドイツ連邦教育研究省との意見交換を行っております。例えば、アメリカとは、常設のディスカッショングループを設置して、ILC計画は膨大な経費がかかりますので、そのコスト削減に向けた共同研究を進めているところでございます。

 今後は、フランスやドイツにつきましても、欧州素粒子物理戦略の議論の進捗を注視しつつ、例えば政府レベルでは、米国と同様の常設のディスカッショングループの設置を提案するなど、議論を深めていきたいというふうに考えているところでございます。

笠委員 ちょっと確認ですけれども、今、もちろんこれまで米国あるいは欧州ともいろいろな形での協議というか意見交換もいろいろやってきているということで、これから欧州の中での状況等々も加味しながらということになっていくと思うんですが、やはりこの懸案の経費の分担等々についても、態度をどういうふうにするのかという決定はその後でいいんですよ、しかし、そういった、じゃ、経費の分担のあり方等々についても意見交換を重ねていくということでよろしいんでしょうか。

磯谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の国際経費分担の件でございます。これは非常に重要な課題だというふうに認識しておりますが、通常、ILC計画のような学術関連の大型プロジェクトにおきましては、国内ではマスタープランなどの審議を行うんですけれども、そうした際に、まずは研究者コミュニティーから、国際経費分担案とか、あるいは技術的な協力などの具体的な国際協力の内容についてコミュニティーの方から提案されて、学術会議で議論されるというふうに聞いております。

 ですから、今後、ILC計画につきましても、高エネルギー加速器研究機構において、いわゆるKEKと言っていますが、ワーキンググループを設置され、そのリードのもとで、国内外の研究者コミュニティーの間で、国際分担等についてまずは検討が進められることを期待しているところでございます。

笠委員 その議論の行方を見守りたいと思いますけれども、私は非常に、やはり日本もこういった科学技術分野で国際研究機構というのが、その拠点というのがないんですよね。そんな、あれもこれもできませんよ。

 しかしながら、やはりこういったことを一つ、海外の研究機関に参加することも大事だけれども、この日本に拠点をつくることでやはり世界じゅうの研究者がこの日本に、しかもこれは、今のところ有力なのが東北の北上にということですから。やはりそういったことで、ぜひ、特にこの素粒子物理の分野は日本が世界をリードできる大きな可能性を持っているし能力もある、ですから、やはりそういった分野でしっかりとこの誘致をしていただきたいと思うし、その努力を、文科省は少なくとも前向きな形で大臣が取り組んでいく。最終的にはいろいろな国民の理解や科学コミュニティーの理解というものはもちろん必要なんだけれども、少なくとも文部科学省としては、科学技術の未来を戦略的に描いていくんだというようなスタンスで大臣には頑張っていただきたいというふうに私は思っておりますけれども、改めてそれを、ちょっとこの点について伺いたいと思います。

柴山国務大臣 先ほどお話をさせていただいたとおり、学術研究においても、そして地方創生という観点から見ても、極めて意義の大きい計画であるということは私も認識をしておりますので、しっかりと関係コミュニティーとの連携をしながら、また国際状況もしっかりと見据えながら、検討を継続していきたい、このように考えております。

笠委員 大臣、前向きに答弁をいただいたというふうに理解をしたいと思います。

 私は、米国も欧州の各国も、日本に対する期待はやはり大きいんじゃないかと思っています。もし我が国が本当にこれを断念するということになったときに、やはりこれは中国なんかが乗り出してくる可能性というのは大いにあるわけです。

 ですから、やはりこれは、ぜひ日本が、我が国が国家戦略として、この誘致をできるように取り組んでいただきたいということを申し上げて、次のテーマに移りたいというふうに思います。

 きょうは、外国人児童生徒の不就学の問題について伺いたいというふうに思っているんですけれども、その前にちょっと一点、この外国人の前に、居所不明の児童、いわゆる消えた子供の問題というのがあるわけですけれども、今いろいろな、ちょっと厚労省の例の統計の問題であるとか、さまざま政府の行う調査や統計についての問題点が、これは厚労省にとどまらずいろいろな形で明らかになってきております。

 実は、二〇一一年、私が文部科学大臣政務官をやっていたときにも、一つちょっと大きなことというか、たしか元旦の産経新聞で、学校基本調査、これを、所在不明の小中学生について産経新聞が十九の政令指定都市教育委員会に聞き取り調査をして、実は、正しく回答していたのがわずか三つの市だけだったということが大々的に報道されまして、当時、ちょっと私も本当に政務官として大変ショックを受けたという記憶がかすかにございます。

 これを受けて緊急調査を行って、四月には、学校基本調査の不就学学童児童生徒調査における一年以上居所不明者数の取扱いについてという通知を発出いたしました。

 やはりどうしても、教育分野におけるいろいろな調査等々をするとき、ある意味ではちょっと教育委員会に丸投げするようなところが、これは教育委員会を通じてやるしかないので仕方がないんですけれども、やはりこれはきちんと徹底しておかなければならないなという、自分自身そういう思いがあるわけです。

 今、この居所不明の調査というのが、もうこれは一九六一年の開始以来、半世紀以上、一応、不明者の累計数というものは二万四千人になるんじゃないかということが言われておるわけですけれども。この学校基本調査では、住民票を残したまま所在が不明になっている子供が対象になっている。言いかえれば、住民票がなくなってしまった場合、これは調査の対象にならないんじゃないか。

 では、本当に、居所不明の児童というのは、実はこの調査よりも人数、実態は多いんじゃないかというような疑念を少し私は持っているんですけれども、その点について、今の調査で大丈夫なのかどうかということをちょっと教えていただきたいと思います。

清水政府参考人 お答えいたします。

 学校基本調査における、住民票のない子供、居所不明児童生徒の把握方法でございますが、まず、住民票につきましては、学校基本調査においては、各学校に在学する子供につきましては、住民票の有無にかかわらず、当該学校の児童生徒数として把握するということになっているところでございます。

 一方で、居所不明の児童生徒数につきましては、住民票があるものの居所不明の期間が一年以上となっている学齢児童生徒、これは、市町村教育委員会は別に簿冊を編製して記載するとされておりますので、学校基本調査ではその人数を一年以上居所不明者数という形で把握する、そういう形になっているところでございます。

笠委員 ということは、この一年以上居所不明数について、この局長通達というのは昭和三十二年になるのかな、ここに、学齢児童生徒の居所が一年以上不明であるときは、住民票が消除されるまでの間その旨を異動事項欄に記入し云々というくだりがあるわけですね。

 ですから、何らかの形で住民票が消除された場合、これがそこからなくなった場合、それは対象にならないんですよね、調査の。

清水政府参考人 お答えいたします。

 住民票が消去されたということですと、ほかの市町村に転居されたといったことが確認されたというような形で消去されたというふうに考えられるかと思いますので、ここで示しておりますのは、そういうことが確認できた際には居所不明の児童生徒数ということにはカウントしないということでございます。

笠委員 これは大変だと思うんです。やはり、居所不明の児童生徒を確実に把握をしていくということは文科省だけでできることじゃないので、当然ながら厚労省、あるいは法務省、特に外国人なんかが関連してくるところの法務省の分野にもなってまいりますし、あるいは警察庁。

 しかし、いずれにしても、そういった中で、今後のいろいろな調査を行う上で、しっかりとその把握の仕方というものについては、より細やかというか、改善すべき点もあろうかと思いますので、その点は引き続き検討していただきたいと思います。

 それで、外国人児童生徒の不就学問題の方に移りますけれども、今回、まず第一には、外国人の児童の不就学をなくしていくということが重要でございまして、そのために、今、文科省の方で、初めて全国での調査を今度行うという方針が出されておりますけれども、これはいつぐらいから実態調査を行うのか、あるいはどういった方法で行う予定なのか、今現状をお聞かせをいただきたいと思います。

柴山国務大臣 外国人の子供たちが日本における生活の基礎を身につけ、そしてその能力を伸ばすことができるようにするために、適切な教育の機会が確保されることが不可欠であります。共生社会の実現という観点からも重要だと考えております。

 そのため、文部科学省としては、自治体に対して就学案内を徹底するよう求めるとともに、外国人の子供たちの就学状況の調査を希望する自治体に対して補助事業による支援を実施してきたところでありますけれども、今御紹介をいただいたとおり、全国レベルでの状況の把握に向けて、今回初めて、義務教育段階の外国人児童生徒の就学状況について、自治体の御協力をいただいて全国的な調査を行うことといたしました。

 今御質問の、調査の具体的な方法やスケジュールの詳細につきましては、省内に設置した外国人材の受入れ・共生のための教育推進検討チームにおいて議論を行い、速やかに決定していきたいというように思っております。きょう午後、浮島副大臣をヘッドとしたチームでまた検討させていただきたいと思います。

 ただ、その過程においては、先ほど来御指摘があった住民基本台帳や学齢簿についての扱いも含めて、しっかりと漏れのないように検討していきたい、このように考えております。

笠委員 これも、ちょうど昨年の秋の、やはり、毎日新聞が調査をして、上位百自治体を対象にアンケートをとったところ、外国籍の七万七千五百人のうち二割ぐらいの子供たち約一万六千人が就学不明ではないかということが大々的に報じられて、ことしもその報道があるわけです。そういったことを受けて、やはり文科省としても全国実態調査を行うということになったというふうなことだと思いますけれども、私はそれは非常にいいことだと思うんです。

 それで、そのときに、これはどうしても、就学状況の把握に向けた自治体の取組、特に、やはり日本人のお子さんの場合と違って、いろいろな就学に関する案内などを出しても、例えばそれに対する返答なり反応がなかった場合に、日本人のお子さんであれば、恐らく、きちんと家庭訪問するとかいろいろな形で追いかけていくと思うんですよ、フォローを。ただ、果たして本当に、外国人のお子さんの場合にもそこまでやっているのかというと、ちょっとそこあたりは非常に疑わしい点も。自治体によって違うと思います、きちっとやっているところとそうじゃないところ。

 そういったところの実態も、どういう形で今取り組んでいるのかというあたりも、ぜひこの調査の対象にしていただきたいというふうに思っているんですが、その点はいかがでしょうか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 外国人の不就学の児童生徒の実態調査、具体的な方法やスケジュール等を現在検討しているところでございますけれども、その中で、各自治体において先進的な取組をしているところ等もございますので、そういった部分についても十分聞き取る等の調査をさせていただきまして、この実態調査と、またそれを踏まえての改善方法等を検討してまいりたいと考えているところでございます。

笠委員 もう一つ、具体的に局長に伺いたいんですけれども、今回のこの調査は恐らく義務教育段階ですよね。今、文科省の方で、在住外国人の生徒の高校の進学率というのは把握をされておりますか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 外国人児童生徒の教育の現状と課題を把握するということで、文部科学省では、隔年で日本語指導が必要な児童生徒等の受入状況等に関する調査を実施しているところでございますが、外国人の生徒の高校進学率については、これまで調査の対象とはしてこなかったところでございます。これは、今後実施する調査におきましては、調査の対象に追加する方向で考えているところでございます。

笠委員 ぜひそれをやってもらいたいんです。

 日本の子供たちは九八%、高校に進学をしていく。やはり今、外国のお子さんたちがどういう状況になっていくのか、なっているのか。これからどんどんふえていくわけですから、きちんとやはり高校の進学をさせてあげる。

 あるいは、まずは今の実態がどの程度にとどまっているのか。ある民間なんかの独自で調べたようなところのあれだと、せいぜい大体五〇%ぐらいじゃないかというようなこともありますけれども、まずはやはり実態の把握をしっかりとするということが大事なので、今回のこの調査の中でそういった点も把握ができるような形で、高校進学というものの状況をぜひ調査の対象にしていただきたいと思いますし、今、そういったことを検討するということでございますので、ぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そして、やはりこの調査で全体像というもの、今の実態というものを今度は明らかにした上で、じゃ、その上で、就学機会の確保のために何が必要なのかという対策を当然講じていかなければなりません。そのときに私自身は、やはり特に義務教育段階になってくると、外国人のお子さんについて言うと、親御さんが希望すれば当然いろいろな就学機会を与えられることになるわけですけれども、その義務は課されていないわけですよね。

 ですから、私は、そこあたりをこれからどういうふうに考えていくのかということを、大きな方向性というのをやはり議論をしていく必要があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、外国人児童の就学義務の必要性というものについて、柴山大臣がどのようにお考えなのかを伺いたいと思います。

柴山国務大臣 我が国においては、外国人児童生徒の保護者に対する就学義務はありませんけれども、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、その子を日本人児童生徒と同様に無償で受け入れているところであります。

 文部科学省といたしましては、外国人の子供の就学機会が適切に確保されるよう、自治体に対して、就学案内の徹底や就学ガイドブックの作成、配付などを行うよう求めているところでありまして、今後とも、外国人児童生徒の就学機会の適切な確保のため、まずは必要な措置を講じていきたいと考えております。

 なお、御指摘のような、外国人児童生徒の保護者に対する義務を課すことにつきましては、外国人のアイデンティティーや教育をめぐる国際的な動向なども踏まえ、さまざまな観点から慎重な検討が必要ではないかと考えております。

笠委員 今大臣がおっしゃったように、結局これは義務じゃないから、やはりどうしても自治体任せになってしまうんですよね。ですから、確かに外国人に対して義務を課すことがどうなのかということは慎重な議論は必要だというふうに思うわけですけれども、ただ、今回、この実態を把握した上で、今後の対策をきちっと抜本的に講じていくに当たっては、やはり自治体任せにせずに、国が外国人のお子さんの就学についての基本的な方針あるいは統一の指針等々を、私は責任を持って検討すべきではないかというふうに思いますけれども、その点について大臣の御所見を伺いたいと思います。

柴山国務大臣 もちろん、各自治体にお任せということであってはならないというように考えます。

 我々といたしましては、先ほど御紹介をしてくださった全国的な調査とあわせて、全国の教育委員会や学校に向けた「外国人児童生徒受入れの手引き」を作成いたしまして、これは平成二十三年に作成したんですけれども今度改定予定でございます、外国人児童生徒の就学を促すための具体的な対応について示しているほか、国の、具体的には私ども文部科学省なんですけれども、ポータルサイトを設けさせていただいて、就学に必要な書類などについて各自治体等の多言語による作成例を掲示するなど、各教育委員会における取組のバックアップ、支援を行っているところであります。

 この手引は、その内容の充実を図るために、今改定予定と申し上げましたけれども、本年度中には改定を行う予定とさせていただいております。

 今後、就学の一層の促進のために必要な方策について、私ども国としてもしっかりと検討していきたいと考えております。

笠委員 国際人権規約のA規約の十三条でも、教育については、「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」と。大臣も先ほどこのことの重さは言及をされたわけですけれども、やはりどうしても外国人の児童の就学についてはその親の意思に委ねられて、不就学になる、そういう可能性、状況が日本人のお子さんよりも非常に高いわけでございます。

 ただ、いろいろな、今、虐待等々で、学校に通っていたならばひょっとしたら守られる命が失われてしまった、奪われてしまった、そんな事件も相次いでおります。これは外国人のお子さんも私は一緒だと思いますので、しっかりとそこに対する取組、また、ちょっときょう、まだ質問できなかったことがあるので、引き続きこの問題について議論させていただきたいと思いますが、よろしくお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、まず最初に、来年度の文教関係予算について質問をしたいというふうに思います。

 毎年同じようなことを聞かなければならないというのは非常に残念といいますか、かわりばえはしないんですが、ただ、どうしても聞いておかなきゃいけないというふうに思いますので、質問いたします。

 文科省は、昨年の概算要求時点では、来年度から二〇二六年度までを対象に、新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築、こういう名前をつけて八カ年計画を策定しております。八年間で一万八千九百十人の定数改善を予定し、初年度に当たる来年度については二千六百十五人の定数増を求めておりました。しかし、出てきました予算案では、定数改善は千四百五十六人にとどまっております。

 八カ年計画、初年度から要求に千人以上届かない、こういう結果になったわけですけれども、概算要求時に策定した八カ年計画、これは今後どのように位置づけられていくのか、大臣に尋ねます。

柴山国務大臣 御紹介をいただいたんですが、平成二十八年に、文部科学省として教職員定数の今後のあり方について議論をいたしまして、学校指導体制の改善充実を図るため、当時、馳大臣のもと、文部科学省内に義家副大臣を座長とするタスクフォースを設けて、「次世代の学校指導体制の在り方について」を策定をしたところであります。

 その中では、次代を切り開くために必要な資質、能力を子供たちに育むとともに、特別支援教育の対象となる子供ですとかあるいは外国人児童生徒の増加などの課題に対応する観点からも、二〇一七年度から二〇二六年度を見通した教職員定数の改善の方向性が示されました。

 この改善の方向性を踏まえて、一昨年には、義務標準法の改正による、通級による指導や日本語指導等のための教員定数の基礎定数化に伴う十六年ぶりの計画的な定数の改善や、小学校の英語教育に関する専科指導教員の配置などの改善を行っており、二〇一九年度予算案においては、基礎定数化に伴う定員増も含めて、小学校の英語教育のための専科教員千人を始めとする、今お話があった合計千四百五十六人の定数改善に係る経費を盛り込んでおります。

 なお、一月二十五日の学校の働き方改革に関する中央教育審議会の答申においては、小学校の教科担任制の充実、年間授業時数や標準的な授業時間等のあり方を含む教育課程のあり方の見直し、教師の養成、免許、採用、研修全般にわたる改善、見直し、圏域における地方公共団体の協力関係の進展状況を踏まえた教育的観点からの小規模校のあり方について、引き続き検討を行うという旨の提言もいただいておりまして、今後、省内において検討を進めることとしております。

 したがって、文部科学省といたしましては、二〇二〇年度以降の予算編成については、改善の方向性や、今紹介させていただいた中教審の答申を受けた検討などを踏まえて、総合的な考慮の上で概算要求を行った上で、財政状況を含む、子供や学校を取り巻くさまざまな状況を踏まえた議論を政府内で重ねていきたいというように考えております。

吉川(元)委員 長々と説明いただいたんですけれども、この八カ年計画、これは一体、再来年度以降どうなるのか。これは初めての話じゃなくて、ここ数年、五カ年計画だとか十カ年計画だとかいろいろな計画を立てて、初年度、いわゆる定数の改善を要求して、それがポシャって、そうしたらまた次の年、あるいはその次の年に新たな計画を出してくる。この繰り返しをずっと続けてきたんです。

 過去をちょっと私も少し調べてみたんですけれども、概算要求で出した数字と実際に予算でとってきた数字、半分にもいっていないんですよね、毎年毎年。この八カ年計画というのは、初年度からいきなり届かなかったわけですから、そうすると、これはまた練り直しをするということになるんでしょうか。その点について答えてください。

永山政府参考人 特に現時点で練り直しを毎年するということではございませんで、ただ、二〇二〇年度以降の予算編成につきましては、その前までの、当時での状況、あるいは改善の方向性、それから、先ほど大臣の答弁にもありましたとおり、中教審答申を受けた検討、さまざまな状況を踏まえて概算要求を行って、その際考えていきたいというふうに考えてございまして、確たることは申し上げられませんけれども、引き続き、学校における指導、事務体制の効果的な充実強化にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 財務省との交渉の中でいろいろ決まっていくということで、なかなか要求どおりにいかないというのは、それは実態としてあるんだろうと思いますし、極めて非常に残念だというふうに思います。

 先ほど大臣の答弁にもありましたけれども、英語の専科教員、要求どおり千人が確保されております。ただ、一方で、これは恐らく働き方改革ということの視点からだというふうには思いますけれども、五百人要求した中学校の生徒指導専任教員がわずか五十人、それから、四百人を要求した事務職員も三十人、いずれも、要求の十分の一、あるいはそれ以下ということになっております。

 今回、新学習指導要領の円滑な実施と、あわせて学校における働き方改革、これがその大きな目的となっているわけで、率直に言って、この予算案、働き方改革という観点から見て、大臣はどのように評価されているんですか。

柴山国務大臣 おっしゃるとおり、概算要求と実際の予算との間にはどうしても査定というプロセスが加わりますので、十分我々の要求が認められないということになってしまいます。

 ただ、この概算要求について見ますと、各省庁が各年度のいわゆる骨太方針等を踏まえて必要な経費を概算要求させていただくものでありまして、この予算の編成過程では、施策の優先順位等に基づいて決定をされるものであるというように理解をしております。

 今御紹介をいただいたとおり、この働き方改革、新学習指導要領の円滑な実施とともに極めて重要と考えておりますけれども、学校の指導、事務体制の効果的な強化充実を図るためにはということで、予算案において、今御紹介をいただいたとおり、小学校の英語教育のための専科教員については、これは私どもの概算要求どおり千人丸々を確保することができましたし、合計二千八百六十一人の概算要求の中で千四百五十六人の教職員定数の改善ということになったわけであります。ということを踏まえますと、限られた予算の中で、学校における働き方改革と教育の質の向上の両立は何とか確保できているのではないかというように、私としては理解をしております。

 なお、平成三十一年度予算及び平成三十一年度予算案については、今申し上げた新学習指導要領の円滑な実施に向け、この英語教育のための専科教員についてまず重点的に改善を図ったという側面があります。

 今後とも、家庭環境ですとか地域間格差ですとか、こういった教育格差の解消ですとか、あるいは、生徒指導体制の強化も含めた学校における体制強化充実等に、引き続きしっかりと努めていきたい、このように考えております。

吉川(元)委員 英語の専科の教員、千人要求して千人とってきた、そういうふうにおっしゃられますけれども、これはもともとの計画は六千人を超えていたはずです。初年度二千二百人要求して千人しかとれなかった。その後、途中で計画を変更して、四千人で間に合うと。どういう計算をされているのか私は理解できないんですけれども。今、千人とったと言いますが、この千人を除くと、概算要求というのは、英語の専科教員を除くと千六百十五人を要求しています。実際に定数改善になったのは四百五十六人。いわゆる達成率といいますか、どういう言い方をすればいいのかわかりませんが、三割切っているんですよね。

 英語の専科教員というのは、これは、新たな新学習指導要領の円滑な実施に資するため、もちろん働き方改革も含めてあると思いますけれども、それ以外のところは、まさに学校における働き方改革のための定数改善だったはずなんですが、達成できたのが三割未満。これでは、私は、本当に働き方改革から見た予算案になっているのかと疑問に思わざるを得ませんし、先ほど政策の優先順位があるというお話がございました、だとするならば、学校現場、今大変社会的にも大きな問題になっている教員の働き方というのは、この程度の優先順位なのかと言わざるを得ません。

 そこで、今、英語の教員の話がありましたので、これに関連して少しお聞きをしたいと思います。

 中教審答申でも、教育現場の働き方改革待ったなしと記述をされております。安倍政権でも政策の目玉でありますし、長時間労働是正の柱である定数改善、これは本当に政権全体として、先ほどの優先順位の話もありましたけれども、理解が及んでいるのかな、そういうふうに疑問にも思わざるを得ません。しっかり文科省として政権内で共通認識を形成されるように、大臣を先頭にして頑張っていただきたいというふうに思います。

 英語の専科教員に関連してなんですが、二〇二〇年度から新学習指導要領の完全実施で、五年生、六年生で英語が教科化、三、四年生では外国語活動、それぞれ三、四、五、六年、週一こまずつ授業がふえるという計算になります。

 とりあえず、教科化される五年生、六年生だけを取り上げますと、これは机上の計算ではありますけれども、学校数は全国で一万九千五百九十一校あります。先ほど言いましたが、二〇二〇年度までに六千人を超える数から四千人に減っておりますけれども、仮に来年度二千人を満額とったとしても、四千人であります。その四千人、これを、一万九千五百九十一校ありますから、単純に割りますと、専科教員一人当たり五校かけ持ちをするという計算になります。五校かけ持ちというのは、これは移動時間を含めて恐らく物理的に不可能だろう。それが可能な地域というのはごくごく限られていて、全国的に言えば、ほぼこれは不可能な数だというふうに思います。

 また、小学校五年のクラス数は、全国で三万五千九百二十四、それから六年生は三万六千百七十三、合わせると七万二千九十七クラスあります。四千人の英語専科教員一人当たり十八クラスの授業を受け持つ計算になります。五年生、六年生、英語は週二こまですから、そうしますと、実際には最大で十二クラス、週二十四こまが限界だというふうに思いますので、そうすると、あとの六クラス週十二こま、これはどうするのか、教員がもうこれは完全に不足をしているんじゃないかというふうにも思います。

 もちろん、学級担任、あるいは臨時、非常勤の先生も教えるということになると思いますけれども、それにしても、英語の専科教員四千人で足りるのか。なおかつ、三年生、四年生は外国語活動というので一こまずつふえますから、そう考えますと、これで果たして足りているのか、そして、英語の専科教員は幾つの学校で、週何こま程度の授業を予定しているのかを教えてください。

永山政府参考人 まず、足りるのか、四千人では足りないのではないかという御指摘でございます。

 小学校の英語専科指導のための加配定数につきましては、少子化による学級数の減少などを踏まえまして、平成十八年度、今年度の予算編成時において、二〇一八年度から二〇二〇年度までの三年間で英語の専科教員四千人を配置して、今回の学習指導要領改訂に伴う授業時数の増などはこの英語専科教員が担当することとすれば、学級担任の教師の授業負担の増にはならないと見込んだところでございます。

 他方で、平成二十八年度に実施いたしました教員勤務実態調査におきましては、小学校教諭は一日当たり四時間二十五分、授業を担当していることとなってございまして、これを踏まえますと、学校における働き方改革に関する中教審の答申において、小学校における効果的な指導と教師の一人当たりの指導時間の改善の両立が必要である、そういった指摘もございます。

 その観点から、具体的には、小学校の教科担任制の充実ですとか、年間授業時数や標準的な授業時間等のあり方を含む教育課程のあり方の見直し、あるいは、教員免許のあり方や圏域における地方公共団体の協力関係の進展状況を踏まえた教育的観点からの小規模校のあり方等の検討の提言がなされておりまして、今後、一体的に検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、新しい指導要領の実施に伴って、何校ぐらいをかけ持ちするのかという御質問もございました。

 御指摘のとおり、二〇二〇年度から新学習指導要領が小学校で完全実施をされます。そうしますと、小学校三学年以上は週当たり一こま相当の授業が増加をするということになりますが、このため、今回の授業時数の増が教師の授業負担の増にならないような条件整備、これが必要だということでございます。

 具体的には、小学校に英語の専科教員を配置して授業時間の増となる英語教育を担当することといたしまして、先ほど来お話ありますけれども、二〇一八年度千人、二〇一九年度予算案で千人の二千人を計上している。

 この英語の専科教員の配置につきましては、各都道府県、指定都市の教育委員会において、それぞれの学校の学級規模に応じまして、例えば複数の小学校の英語教育を一人の常勤の英語専科教員が担当するケース、あるいは一人の教員定数の枠を活用して複数の英語専科の非常勤講師を配置するケース、そういった工夫をしながら活用されているということでございまして、複数の小学校の英語教育を一人の常勤の英語専科教員が担当する場合には、週当たり二十四こま程度を担当することを想定いたしております。

 それから、地域や学校の実態に応じて、学年一学級の場合には週当たり六こま程度を担当する非常勤講師を活用するなど、実際の教師の担当授業時数はさまざまでございます。

 なお、ちなみに、この三十年度、本年度、まだこれは暫定値でありますけれども、この専科教員の約四割が複数校を担当しているということで、単純に機械的に計算しますと二校弱ぐらいの兼任ということでございます。

吉川(元)委員 先ほども述べましたけれども、小学校五年生、六年生、大体三万六千クラスあるわけです。三年生、四年生もほぼ余り変わらないと思います。三万六千平均程度ある。そうすると、全体で十五万クラスを超えるクラスで週一こまずつふえる。十五万こまふえるわけです。それを四千人で割ったら二十四こまにならないじゃないですか。どう考えているんですか。どうやってやるんですか。

 それとも、あれですか、正規の教員を入れずに、非正規を正規と同じ金額だけ全体の人件費として見て、それで三人雇う、そういうことを考えていらっしゃるんですか。

永山政府参考人 配置の仕方、形態、さまざまあろうかと思いますし、常勤、非常勤、さまざまあろうかと思いますし、学校の実情、学級の実情に応じまして、さまざまな組合せで対応していくことになろうかと思ってございます。

吉川(元)委員 単純な計算なんです。電卓持っている方はたたいてもらえばわかると思います。十五万五千を二十四で割ったら幾つになるか。四千人じゃないんですよ。六千人を超えているんですよ。

 そうすると、文科省としては、四千人の予算を確保するけれども、各教育委員会、学校設置者に対しては、正規で雇うなということを推奨しているということですか。

永山政府参考人 正規の場合もありますし、非常勤の場合もありますし、あるいはほかの加配、さまざまな理由で行っております、そういった加配の活用、そういったものも考えられるかと思います。

吉川(元)委員 いわゆる英語の教科化をするために、そして、それが現場に負担をふやさないために英語の専科教員を入れる、それが当初は六千人を超えることを予定していたけれども、その後、財務省との交渉やいろいろやり直すと、四千人でいけるという話になった。

 単純なんですよ。そんな難しい話じゃないんですよ。全体でふえるこま数を四千で割ったら、二十四にはならない。だとするならば、今おっしゃっている話を聞くと、例えば、正規で週二十四こま持つ人のその人件費を使って、非正規で二十四こま持つ人を二人雇え、そういうことになってしまいますよ、これは。そういうふうに文科省は考えているんですか。

 実際に工夫するのはその現場現場だと思いますけれども、だけれども、もとの数字が全く足らないのに、その上で何とかしろといったら、今みたいな形にならざるを得ないじゃないですか。あるいは、今いる教員、今実際にいる教員、現職の教員の負担をその分ふやすということ以外にもう手がないじゃないですか。

永山政府参考人 先ほど、さまざまな工夫をというふうに申し上げました。

 その工夫の例えばの例ということでもう一つ申し上げますと、実際に、標準授業時数というもの、これは学校教育法施行規則で定めておりますけれども、それを大きく上回って教育課程を編成している学校というのもございます。そういったところにつきましては、ほかの教科も含めた全体の授業時数を見直す、そういう中で、小学校における英語教育に関する指導の分を確保する、そういった工夫も考えられるかと思います。

吉川(元)委員 標準的なこま数を超えているところがたくさんあるというのは私も知っております。

 そうすると、今おっしゃっていることはどういうことかというと、標準を超えている部分については、それを英語のこま数に振りかえる、ということは、つまり、確かに、先ほど言っていた英語の教科化に伴う円滑な実施についてはそれでできるかもわかりませんけれども、働き方改革はどうするんですか。今までのこま数のままでいくということを今おっしゃっているんですか。

永山政府参考人 働き方改革につきましては、授業時数だけではなくて、さまざまな総合的な取組の中でやっていく、行事の見直しですとか、あるいはスクールサポートスタッフ等々、それ以外のスタッフの活用ですとか、そういう中でやっていくものだろうというふうに思ってございます。その中の一環として、授業時数の見直しということもあるんだろうというふうに思ってございます。

吉川(元)委員 ちょっと余り時間がないので、また別な質問でも同じようなことを聞くことがあるかと思いますので、次に移りたいと思います。

 次に、部活動指導員について聞くんですけれども、来年度予算では、四千五百人から九千人に倍増、対象校も千五百から三千校に拡大というふうになっております。予算は、四千五百人ふえるのに対して五億円ふえるだけ。これは、単純に割りますと十一万なんですよね。これは三分の一ですから、総額で年間三十三万円。

 一方で、スポーツ庁のガイドライン、これは、平日四日で各二時間、それから、休日は一日で三時間、合わせると十一時間になります。五十二週は、さすがに冬休みとか長期間の休みのときには全く部活がないときもあるかと思いますけれども、どう考えても、これは、非常に単純に計算すると、週十一時間で五十二週掛けると五百七十二時間、三十三万円の予算しかつかない、そうすると、三十三万円を五百七十二時間で割ると、時給でいうと五百七十七円なんです。

 実際のところ、これは千六百円程度というふうに言われていますけれども、実態が余りに乖離した予算じゃないんですか。

永山政府参考人 中学校におきます部活動指導員の配置事業、この補助単価でございますけれども、先行自治体の実態等も踏まえながら、社会保険料を含む報酬、賃金等を対象に積算をいたしておりまして、御指摘のとおり、一時間当たり千六百円という設定になってございます。

 国の定める部活動ガイドラインに従って、最大、年間、例えば五百時間程度の活動を行った場合には、一人当たり年間八十万円程度というふうになります。

吉川(元)委員 いやいや、十一万でしょう、割り算すると。いやいや、十一万というか、予算五億円で十一万になるんじゃないんですか。

 ちょっと、もう時間が余りないので。

 次に、これは大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども。

 大臣は、所信で、学校における働き方改革を実現し学校現場を積極的に支援します、こういうふうに述べておられます。

 同じようなことが、昨年十二月六日の中教審働き方特別部会の会議に提出された答申の素案にも記述されておりました。この素案では、学校と社会のバッファーとしての機能を文科省に対して十分果たすことを求めたい、こういう記述があったんですけれども、実はこの特別部会の中で、このバッファーという言葉について、委員から、文科省というのは働き方改革の一方の主役ですので主体的、能動的な役割を示す言葉に変えていただきたい、こういう指摘がされております。

 大臣の所信でも、支援をしていく、これはどういう意味かというのは、なかなか一言で言えないのかもわかりませんけれども、やはり、文科省はその一方の主役なんだという、あくまで、何かあるんだったら支援しますよ、助けますよじゃなくて、文科省自身が働き方改革の主役、改革の主役としてこれから当たっていかなければいけないと考えますけれども、大臣、これはどういう意味なんでしょうか。

柴山国務大臣 その支援という文言が消極的な意味合いでしか捉えられないとすれば、それは全く本意とするところではありません。中教審の答申を踏まえ、あらゆる手だてを尽くして取り組む必要があるこの働き方改革、学校や教育委員会にお任せでは私は進まないというふうに考えております。

 私どもといたしましては、社会全体に対して何が教師本来の役割であるのかというメッセージを発信し、文部科学省が学校と社会の連携の起点、つなぎ役としての役割を、この後が大事なんですが、前面に立って果たすことが大事であると考えておりまして、先週八日に、有識者や関係者、そして私自身も出演した動画メッセージを文科省ホームページに掲載し、既に一万回視聴されているところでもあります。

 また、文部科学省においては、公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインを策定して、学校現場における勤務時間管理の徹底を図るとともに、今後、学校へ新たな業務を付加するような制度改正等を行う際には、学校の業務をふやさない、又は減らすよう、スクラップ・アンド・ビルドを原則として、学校や教師の業務量を一元的に管理する担当部署を省内に設けたところでございます。

 また、予算案につきましては先ほど来議論をされているとおりでございますし、こうした取組を総合的に推進することに加えて、教育課程や教員免許などの教育制度も必要に応じて大胆に見直しをし外部人材を登用する、そういったことも考えております。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、率先して働き方改革を推進して、教師や子供たち、保護者、地域の方々がその成果を実感していただけるようしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

吉川(元)委員 まあ、意気込みは私も理解をいたします。

 ただ、今、少し気になるのは、新たな施策を入れる場合にはスクラップ・アンド・ビルドをしていくと。では、今どうするんですか。今、非常に長時間労働で健康を害する教員がたくさんいらっしゃる、今のこの現状をまずどうするのか。それは、新たな仕事を付加するのであれば今までやってきた仕事を減らすのは当然のことですけれども、それでは今までと変わらないじゃないですか。

 そうではなくて、文科省がこの間やってきたさまざまな、これはもうきょうは時間がないので次回にまた質問したいと思いますが、いろいろなことをやってきました。例えば、夏休みの研修、これをやれ、あれをやれ、あるいは、教員の免許更新制、さらには学力テストの悉皆化、こうしたことは、文部科学省が主体となってといいますか、それをずっと続けてこられたわけです。

 その部分をそもそも変えないと、私が聞いていて感じるのは、誤解かもわかりませんけれども、文科省は働き方改革をしたい、だから現場は創意工夫してくれと。現場は、創意工夫はもう限界までやっているんです。やっていて今のこの状態なんですよ。

 だとするのなら、まず、文科省が真っ先に、これとこれとこれはやめますということを言わない限り、強いメッセージにならないと思いますけれども、この点、いかがですか。

柴山国務大臣 したがって、いろいろと今御指摘になられている、各学校に強いている負担あるいは研修等についても、その整理統合等も含めて、しっかりと検討していきたい、このように考えております。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、終わります。

 また引き続きこの問題については取り上げていきたいと思います。

亀岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

亀岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳であります。

 きょうは、ノーベル賞の本庶佑先生にお目にかかれるということで、議事進行、定刻より早く終わるぐらいの気持ちで進めますので、よろしくお願いいたします。

 先ほど吉川先生が英語教員の話をされておられて、今外されていますけれども、何か特認というのがあって、海外に留学経験が二年あると英語教員になれるということで、私も採用対象に、年齢的な問題をクリアできればなるのかなという思いがありますが。

 今、吉川先生から伺っていましたけれども、なり手がなかなかいないということを考えると、ちょっと冒頭、恐縮ですけれども、やはり英語というものが学問になってしまって、語学、いわゆるコミュニケーションツールではなくて学問になってしまって、文法だ何だという、この流れを断ち切っていかないと、英語教員というもののなり手が、そもそも、子供たちがしっかり英語を、気楽に、気軽に勉強していただくような環境をつくっていかないと、なかなかなり手不足というのが長い意味で解消しないのではないかということをちょっと感じましたので、冒頭申し上げます。

 きょうは、済みません、多分時間が足りなくなって、残余の質問は明後日の一般質疑ということになってしまうかもしれないので、官僚の皆さん、たくさん来ていただいて本当にありがたいですし、国会は本当に大切なので、重く受けとめていただいているのはありがたいんですけれども。

 私は、そういう一方で、先ほど外務委員会で質疑をさせていただいたんですけれども、英語以外の語学の人材の確保とかそういった問題を外務省に提起申し上げたんですが、ぜひ、文科省さんと外務省さんがよく連携をしてそういった人材をつくっていくというような、省をまたぐような会議だとか、あるいは海外のカウンターパートのお役所とか、あるいは産業界とか、そういったところからもよく情報をとっていただいて、コミュニケーションをとっていただいて、やはり、前に向かっている文部科学省でいていただきたい。大臣筆頭に、そういうふうな感じを、たくさん来ていただいて恐縮なんですが、あらかじめのおわびをしつつ、そう申し上げたく存じます。

 きょうは、柴山イニシアティブないし柴山・学びの革新プランというような、大臣のお名前のついたこのことについてまず質疑をさせていただき、その後の時間で、英才教育だとか、先ほど申し上げた語学のことだとか、あるいは、普遍的価値とよく総理が言われて、あるいは価値観を共有する国々とかそういう言葉があったりする中で、本当に我々はその価値観を共有する子供たちを育てていっているのかな、そういうところまで質疑ができましたら。あと、いじめ問題、教育の無償化、グローバル人材等、時間があればと思いますが、質疑を進めさせていただきます。

 ちょっと、前振りがいつも長くて恐縮なんですが、さかのぼると、先ほど畑野先生から教えていただいたんですが、遠山プランというのがあったんですけれども、二〇〇一年ごろですね、女性大臣で、小泉第一次内閣と、小泉第一次改造内閣というんですかね、そのときに大臣をされた民間大臣の遠山大臣は、いわゆる大学の統合、単科大学を総合大学に統合するとか、そういった遠山プランというのを出されておられます。それから、さかのぼって下村大臣は、この後質疑されると思いますが、高大接続の改革ということで、下村プランというプランを発表されておられると思います。そして、今筆頭をされておられる馳大臣は馳プランといった形で、やはり、地方創生に絡んでプランを発表されておられる。

 そういう中で、直近は、柴山イニシアティブと伺う高等教育・研究改革のイニシアティブ、そして昨年の秋口に柴山・学びの革新プランという、両プランを発表されておられて、私は、これはリーダーシップのあかしでもあると思いますし、一方で、逆に文科省さんのフォロワーシップの強さみたいな部分で、しっかり積み上げてこういった政策の発表に至っているかという拝察をするんですが、この中身について、大臣の思いであったり、内容の確認をさせていただく必要があると思いますので、質問をさせていただきます。

 今次、まずは高等教育・研究改革イニシアティブについて伺いたいんですけれども、ここでの大臣のリーダーシップとしての最大の思い入れはどこにあられるのか、この点を、長くても構わないんですけれども、お話しいただければと思います。

柴山国務大臣 思いをということなんですけれども、私が大臣に就任した直後の記者会見で強調させていただいたのが、教育環境の激変ということでありました。今後、より一層少子高齢化やグローバル化が進展していく、ソサエティー五・〇に向けた人材育成やイノベーション創出の基盤となる大学等の改革がやはり非常に重要だというように私は考えました。

 一方で、我が国の大学生が、例えばアメリカなどと比べて、最近は大分改善されているということなんですけれども、学習時間の短さですとか、あるいは入りにくいけれども出やすいということが問題視されているとか、こういった課題もあります。

 したがって、国の責任において、意欲ある若者の高等教育機関への進学機会を確保する一方で、高等教育、研究機関の取組、成果に応じた手厚い支援と厳格な評価、これを、やはり私は、車の両輪としてパッケージで進める必要があるということを強く感じております。

 教育、研究、ガバナンス改革をばらばらにではなく一体的に進めるための政策パッケージを、御紹介いただいた高等教育・研究改革イニシアティブ、柴山イニシアティブとして発表させていただきました。事務方の皆さんとも何度も何度も議論をさせていただいたところであります。

 この改革を実行するため、文部科学省では、今国会に、御案内のとおり、真に支援が必要な低所得世帯の高等教育機関へのアクセス機会確保につなげる、大学等における修学の支援に関する法律案と、進学先である大学の教育の質保証や教育研究基盤、ガバナンス改革等を後押しする、学校教育法等の一部を改正する法律案を提出をさせていただくとともに、永岡副大臣を座長とした研究力向上改革タスクフォースを設置して、我が国の研究人材、資金、環境の観点から具体的方策の検討を進めているところでもあります。何としてもこの一体的改革をなし遂げて、世界を牽引するトップ大学群と地域や専門分野をリードする大学群を形成するとともに、最前線で活躍する研究者や次代を担う学生の活躍を促進してまいりたい。

 思いを一つということでは、なかなか、複数のテーマがパッケージとして出されているものですから、一つに絞るという形ではなかったかもしれませんけれども、私の思いとしてはそういったところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 思いと、それから全体を、概略を御説明いただいたという理解をさせていただきます。

 側面として、今、特におっしゃっていただいたのは、学生サイドに焦点を当てて支援をしていくというのと、厳格な評価という両面を言っていただいたんですけれども。

 おっしゃっていた、世界を牽引するトップ大学に日本の大学を持っていくという思いは私も共有させていただいているんですけれども、現実は、残念ながら、ガラパゴスと言ったら大変御無礼かもしれないんですけれども、世界トップサーティーに、あるいはトゥエンティーにも入っていないというのがなかなか実情かということで。

 私が問題意識としてちょっと共有いただけないかなと思うのは、学生も、そこの、日本国民というか内側の学生さんもなんですけれども、やはりアジアの方々であったり、あるいはヨーロッパでも日本の文化や歴史に興味がある方とか、南米でもいいと思うんです、よその国々からの海外の学生さん、そういった方々にも来ていただくような大学の環境整備というのが、恐らく、議論は当然されていると思うんですけれども、そこの部分が大切ではないかというふうに思います。

 そのためには、学生さんが幾ら、日本がいい、行ってみたいと集まっても、正直、先生側のレベルというかが極めて大事ではないかということで、日本の国内で、それこそ本庶佑先生のようなすばらしい、ノーベル賞をとられるような先生も輩出している日本国でありますけれども、一方で、象牙の塔とかいう表現で、いつも同じ授業をして、あの先生をとるとAがとれるよ、優がとれるよみたいな。そういうのが、おっしゃっている、入りにくいけれども出やすいというところにつながるかもしれないんだけれども。

 先生の部分での質というか、ここも、日本人の先生というのもやはりあると思うんですけれども、海外の、ほかの国の言葉を話すけれども、なかなか日本語、だけれども今は言葉を簡単に訳せる機械も出てきましたので、そういうようないろいろな工夫の中で、海外の先生にも日本に来ていただいて教鞭をとっていただくということが大切ではないか。

 というのと、ちょっと業績評価というところで、重複するというか、意味合いは違ってしまうと思うんですけれども、エバリュエーションといって、大臣御存じだと思うんですけれども、先生を評価するという仕組みが海外の大学院なんかはあります。それで、コースが終わった後に自分も評価されて、点数が、優、良、可じゃないですけれども、A、B、Cがつく、プラス、マイナスもついたりしますけれども。一方で、先生が本当に中身のある授業をしてくれたのかどうかというのを学生側から評価させていただいて、いい先生はやはり登録すらできない、特別に聴講だけ許してもらうというような先生があられたり、一方で、去年あの先生つまらなかったなと思ったら、二年目に入ったらいなくなっていたとか、これがやはり先生方への厳しい評価でもあると思いますので。

 そういった意味で、この高等教育・研究改革、大いに進めていただきたいと思いますけれども、一方で、先生の質、あるいは内外の先生を考えていくというようなことと、先生の業績評価という点も、もう十分御案内かと思うんですが、なかなか言うはやすし行うはかたしのこの教育の世界だとも思いますので、そういった点はひとつ御認識を共有していただいて進めていただけないかということを申し上げたく存じます。

 次に、もう一つのプランの方の質問をさせていただきたいんですけれども。

 こちらの方は、ソサエティー五・〇に絡む、「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて 柴山・学びの革新プラン」というタイトルかと拝察いたしますけれども、こちらの方の大臣の強い思い、あるいは、ちょっとそれに合わせての概略というようなところを、大臣の御答弁をいただければありがたいですが。

柴山国務大臣 先ほど、私の大臣就任冒頭記者会見で、変化の激しい時代ということについて紹介をさせていただきましたけれども、それに対応する人材育成という、一言でそう申し上げることではなくて、そういったソサエティー五・〇の時代には、学校は、単に知識を伝達する場ではなくて、人と人とのかかわり合いの中で、人間としての強みを伸ばしながら、人生や社会を見据えて学び合う場となることが求められているかと思います。そのため、学校や教師の役割は、私は引き続き極めて重要であるというように考えております。

 ただ、そういう時代にあっては、当然、技術が飛躍的に進歩しているわけですから、先端技術をいかに活用するかということを正面から考えなければいけない。その役割を支援、強化し、子供の学びの質を着実に高めるツールとして活用するということが一方で期待されるわけであります。

 昨年の十一月に、教育の質の向上に向けた先端技術の活用を推進するために、御紹介をいただいた「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて 柴山・学びの革新プラン」をまとめさせていただきましたけれども、本プラン、端的に申しますと、一番目、遠隔教育の推進、特に二〇二〇年代早期にしっかりと全国の小中学校に配備をするということによって、先進的な教育を実現する。そして、もちろん先端技術の導入によって教師の授業も支援していく、教師支援という側面。それから三番目、先端技術の活用のための環境整備の三点を政策の柱というふうに打ち出しております。

 繰り返しになりますけれども、これは、先端技術をただ入れるということではなくて、これらの関連施策の具体化を進めて、子供の生きる力を最大限引き出す学びを実現する学校を目指していきたいというのが私の思いであります。

杉本委員 ありがとうございます。

 人と人とのかかわり合い、人間としての強みを伸ばすということと、ソサエティー五・〇的な、科学技術の発達ということを絡めるということで認識をさせていただきます。

 実は、私の地元の一宮市というのが、具体名を言って恐縮ですが、ソフトバンクグループのペッパー社会貢献プログラム、スクールチャレンジというので、平成二十九年の四月から、小学校十五校、中学校十二校、ペッパー君を入れていまして、私も、入学式だったか卒業式だったか別の機会だったか覚えていないんですけれども、校長先生の部屋に行かせていただいて、このペッパー君、うちの学校に配備されたものです、杉本さん、ちょっとこれ、ちゃんとうまくプログラミングできると、そのときはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」というものをペッパー君が私に踊ったんですね。それで、こういうすばらしい機械、機械というかロボットというかを入れているわけなんですけれども、びっくりしました。

 平成三十二年のプログラミング教育の必修化に向けての先駆的な導入かという理解をしてはいるんですけれども、その際伺った話が、ちょっと一方的に話をしますけれども、ペッパー君が活用されて、子供たちがうまくプログラミングを組めたりとか先生がうまくプログラミングを組めているところは、しっかりと使って動いています。しかし、どこの学校とは言えないけれども、よその学校で、倉庫に寝てしまっているものが実はありますということを伺って、それが実情かなというふうに正直思いました。

 ですから、先端技術の一つの例として、的確かどうかはわかりませんけれども、教師の授業支援というようなお言葉があったんですけれども、一方で、逆に、先生方にとって、いや、私はガラ携の携帯が好きだからという方もいらっしゃいますし、いや、ガラ携も使っているけれども、やはりいろいろ使えるんだよ、だけれどもガラ携なんだということなのかもしれないですけれども、何といいますか、いわゆる支援教材が足かせとなって先生がうまく使えないという可能性が実はあるので、こういった先生方に対して、いかにそういった事例に対してうまく使っていただくような形に持っていくのかどうか、これはやはり大事だと思うんですけれども。

 これは大臣じゃなくても結構なんですが、御答弁があれば、確認をさせていただければと思います。

永山政府参考人 柴山・学びの革新プラン、先端技術のフル活用、これを実施していく上では、もちろん、今事例をお話しいただきましたけれども、教師においても、先端技術を含むICTを活用して指導する力、指導力を身につけていただく、これが本当に重要なことでございます。不可欠なことでございます。

 このため、私どもといたしましては、例えばということですが、実践事例集の作成ですとか配付、それから校内研修リーダー養成のための手引、これも作成、配付、それから、教職員支援機構という独立行政法人がありますけれども、そこが各地域でのICT活用に関する指導者の養成研修をやっております。そういったさまざまな取組を通じまして、教師がICTを活用するための具体的な指導方法の普及啓発に取り組んでいるところでございます。

 それから、教師のICT活用をサポートするICTの支援員という方もいらっしゃいまして、そういった支援員の方も、各自治体に対しまして、地方財政措置も活用しながら必要な配置がなされるよう促しているところでございまして、こういった取組を通じて、柴山・学びの革新プランの実施を確実なものにしていきたいと考えております。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっと話がそれるかもしれないんですが、BSか何かで、ぶらり町歩きみたいな番組をやっていまして、それでコスタリカという国を紹介していたんですけれども。コスタリカという国は軍隊がない、徴兵制はあるけれども軍隊がない、警察官よりも教員が多いのがこのコスタリカ国の自慢ですという町のあんちゃん、あんちゃんと言ったら御無礼ですね、町の青年というか壮年ぐらいの方々が言っている話を聞きましたけれども。

 話は飛びますが、教員の確保というのは英語の教員を始め大変ですけれども、他国の例でいくと、そこまで教育にやはり力が入っている国が、本当にコスタリカがそうなのかどうかという議論はあると思うんですけれども、そういった形で進んでいる国もありますので、このプランを本当に、今御説明がありましたけれども、書面でなくて具体的に使い方を教える人の例示もありましたけれども、そういった方を配備して、機械に弱い先生であっても使えるというような形に持っていっていただきたいなと思っています。

 ちょっと話がまたそれるかもしれないけれども、先ほど外務委員会で質疑をさせていただきました。

 遠隔教育という切り口でいきますと、英語は本当に大事で、まずは英語だろうという議論は吉川先生が質疑されていましたけれども、そういうことかとも思うんですけれども、一方で、今、外務省の法案というか審議していることでは、子女教育の拡充という意味で、その手当を少し上げるという話を審議をしているんですけれども。

 いわゆる英語だとかドイツ語だとかフランス語、中国語、スペイン語、ロシア語とか主要語学以外で、例えば赴任した先の国の言葉というのがあって、テレというのがこんにちは、ヘアダーガ、さようなら、これはエストニア語です。それから、ヘイ、これは同じような言い方で、ヘイがこんにちは、ヘイドーがさようなら、ビーセスというのがまた会いましょう、これはスウェーデン語ですが。あるいは教育先進国フィンランドは、キートスといって、ありがとうという言葉がありますけれども。こういう言葉を使いこなせる外務省の関係のお子さんたちを育てていく必要があるのではないかという提起を申し上げました。

 一方で、ちょっと自分の話をしましたけれども、その話はちょっと捨象しまして、心ある子供たちで、中山間部に住んでいて、英語以外の勉強をしたい、NHKのラジオでもテレビでもいいんですけれども、語学講座を勉強して実力をつけて、将来は外交官、あるいは専門の調査官というんですかね、そういったポストにつきたいというようなお子さんたちをしっかり育てていくという必要もあって。

 ちょっと話がそれるかもしれないんですけれども、遠隔教育のあり方の一つとして、先進的な教育の実現という部分と違うかもしれないですが、子供たちに学びの機会を与えるという意味で、生徒は遠隔地、教員はそれこそ日本じゃなくてよくて、申し上げたエストニアの方でもいいし、スウェーデンの方でもいいしフィンランドの方でもいいし、別にアラビア語でもいいですしペルシャ語でもいいんですけれども、あるいはほかの、本当に、言葉は適切じゃないかもしれないんですが、マイナーと言ったら御無礼ですが、その言葉を使っている人口が少ないような言葉であっても、外交上は非常に、やはりその母国語を話すという人材というのは極めて我が国にとって重要だと思っております。

 そんな意味で、この遠隔地教育の推進ということを広く考えていただいて、いや、そのことは議論が十分できていないよということかとも思いますけれども、少し頭の端にでも入れていただいて、そういった外交上の人材といった意味で、大きな流れを大臣は御指摘され、教育環境の激変という中で人口減少ということは十分我々は共有していますけれども、一方で、本当に大切な人材をつくっていくということの意味からも、遠隔地教育を英語に限らず進めていっていただきたいということを申し上げたく存じます。

 この部分で、これも大臣じゃなくて結構なんですが、これの答弁で私はきょうは質問を切りたいと思いますが、御答弁いただければと思います。

永山政府参考人 文科省といたしましては、遠隔教育、これは先端技術を用いて教師によるより質の高い教育を実現するための有効な手段の一つと考えておりますが、特に、御指摘の英語もそうですし、それ以外の言語習得においても遠隔教育を活用して、例えば、外部人材としてネーティブスピーカーと会話をする機会を創出することなどによって、より教育の質を高めることが可能になると思われます。

 一つの例ですけれども、長崎県立対馬高校という高校がありまして、そこが韓国語や韓国文化を学べる国際文化交流コースというのを設置いたしまして、今年度、十月、十一月、二回にわたりまして韓国の釜山外国語大学校と遠隔授業を実施した、韓国語の発音やアクセント、表現などについて指導を受ける機会を設けたといった例もございますので、こういった例も参考にしながら、私どもとしても、今後、遠隔教育の普及に努めてまいりたいと思っております。

杉本委員 ぜひ外務省とタイアップ、会議を開いていただいて、今、韓国語の話がありましたけれども、そういった言語を学びたいという子供たちのニーズをぜひとも酌み取っていただいて、やる気というんですか、その思いを生かしていただくような文科省さんの行政をお願い申し上げて、私の質問を終わります。

亀岡委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、柴山大臣、この大臣の所信で、冒頭、児童虐待の問題を最初に掲げられて、そして今国会でも新たに法律を用意をしているということでありますが、しっかりと、児童虐待の防止について、社会そして親御さんの意識が更に大きく理解され、また、よく変わるように、先頭に立って、今までも大臣として大変フットワークが高く活躍されていますが、更に期待申し上げたいと思います。

 このことについては後で義家さんが取り上げられるというふうに思いますが、ぜひお願い申し上げたいと思います。

 私は、民主党政権は、教育問題については成果がいろいろ、高く評価できるものがあると思います。高校教育の授業料の無償化の問題とか、先ほど吉良さんが取り上げられておりましたが、二〇一二年に国際人権規約の十三条二項(b)、(c)の保留撤回を行ったということは、これは確かな見識だというふうに思いますし、本当に評価申し上げたいと思います。

 その後、民主党政権で、特に教育について力を入れていました。そして、その後の安倍政権でも、やはり教育というのは我が国における重要な政策課題であるということで、かなり力を入れてきたつもりでございますし、今国会でも、幼児教育の無償化や、真に必要な家庭における高等教育の給付型の奨学金等を含めた軽減措置を図っているわけでございます。

 ただ、それ以上に、きょうの午前中からの議論でも、それぞれの大臣始め質問の方々が言われたように、世の中はもっと激変しているということの中、確かに国連規約については撤回はしたけれども、着実に無償化に向かって進めているというのは、政府の答弁はそうかもしれないけれども、でも、世の中の流れはもっと大きく変化をしていて、ついていけなくなっている部分が逆に出ているのでないか、それを撤回して努力するからいいということでは済まない部分があるのではないかということの中で、自民党としては、思い切って、これはもう法律だけではできないだろうと。

 他党においても、いや、それは法律によって対処できるというふうな意見を持っておられる方もいるというふうには承知しておりますが、我々は、法律の基本である憲法の中で、あるべき形、この国の方向性ということを明記することが、教育立国としてよりふさわしいのではないかというふうに考えております。

 お手元に資料を配付させていただきましたが、現行憲法二十六条に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」、二項として「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」というのがあります。

 これは一九四六年のときにつくったものであるし、このときは、敗戦の、ある意味では瓦れきの国土から復旧復興するという意味で、まず教育についての権利、そして義務教育を受けさせる義務がある、また、無償とするということが、当時はこれが必要であったと思いますが、今の時代、七十三年もたって、これはもう当たり前のこととして、それ以上に、教育におけるいろいろな課題があるのではないかというふうに思います。

 その中で、きょう資料を用意させていただいて、実際、この七十三年間といいますか、このわずか二、三十年間でもいいんですが、特に教育における変化が、どれぐらい変わってきているかということについて、まず冒頭、指摘申し上げたいと思います。

 一枚目の資料の、高等教育をめぐる状況の変化ですが、昭和三十年代は高等教育の進学率は一〇%だった、今は八〇%を超えているわけでありまして、国民的教育機関に高等教育はもう既になっている。

 それから、これは昭和五十年からの高卒の就職者数の割合ですが、昭和五十年のころはまだ半分ぐらいの高校卒業生が就職していたわけですが、今はもう二〇%を切っている状況がある。

 そして、きょうもいろいろな方が触れられておりましたが、今後十年ぐらいたったとき、人工知能やロボット等によって今働いてる人の仕事が代替されてしまうだろう、日本では四九%、あと十年たったときに半分仕事がなくなる時代になるかもしれないということであります。

 そして、二ページ目でありますが、これだけ高等教育における進学率が高くなっているのにもかかわらず、授業料も相当高額になってきており、家計負担となって、逆に今、少子化の最大のネックとなっているということであります。左上のところが授業料の国際比較ですが、諸外国に比べても日本は高い。

 また、国立大学、私立大学の授業料の推移とあります。

 このデータは平成元年と平成二十六年ですが、平成五十年から現在までで一般消費者物価が一・八倍にふえているので、授業料がどれぐらいふえたのかということを、ちょっとこのデータにはないんですが、調べましたら、昭和五十年のときの国立大学の授業料が三万六千円でした。ですから、今、授業料が十五倍にふえている。それから私立大学は、昭和五十年のときの授業料が約十八・三万円です。これも四・七倍にふえている。つまり、消費者物価よりも授業料の方がはるかにふえているということです。

 その結果、右上にあるように、子供一人世帯の平均貯蓄率ですが、子供が大学に進学する際に家計の貯蓄を切り崩さなければ大学に行かせることができないということであるし、その結果、理想の子供数を持たない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎる、六〇・四%、また、子育てにかかる経済的負担が要因として、学校の教育費が高い、五五・六%とあり、さらに、右下にありますが、子供二人を大学まで卒業させるために必要な教育費、小中高は公立、幼稚園と大学は私立と一般的なパターンにした場合、二千七百万円もかかるということですから、今現在、普通の家庭の子供を私立の大学に行かせるということは大変な経済的な負担で、ほぼもう限界に来ているということだと思います。

 そして、次のページを見ていただきたいと思いますが、今現在、家庭の経済状況が教育格差、経済格差につながっていて、両親の年収が子供の進学先にも影響している、両親の年収が高いというのが子供の高校卒業後の進学率にも大きく影響しているということと、それから、最終学歴が高い方が失業や貧困のリスクが低い。また、これは厚労省の方の調査ですが、大卒と高卒の労働者とでは生涯賃金が約七千万も開きがある。

 こういうことを考えれば、できるだけ親は子供に対して進学をさせたいと思うのは、どこの家庭の親であっても当然のことだと思いますが、しかし、近年、予想以上に経済的な格差問題が深刻になっているということでございます。

 そして、民主党政権から自民党政権、安倍政権も力を入れているとはいっても、本当に漸進的な無償化に向かって進んでいるのかということを考えたとき、実はそうでない部分もあるんですね。これは自民党政権の反省でもあると思います。

 どこの政権というよりは、ずっと最近の日本における経済状況の中で、ちょっと確認したいんですが、まず一つは、二〇〇五年度から準要保護の就学支援に関する国庫補助が一般財源化されたわけですね。このことによって、それぞれ自治体が判断することになった。結果的に、これによって私は後退している自治体も相当あるんじゃないかと思いますが、ちょっと事実関係について説明していただきたいと思います。

永山政府参考人 文科省におきまして、御指摘の準要保護、一般財源化されました二〇〇五年度に、準要保護者に係る認定基準等の変更状況を調査いたしました。その結果ですけれども、当時二千九十五の市区町村がございましたけれども、そのうちで準要保護の認定基準のいわゆる引下げ等を行った市町村は百五市町村ございました。

 以上でございます。

下村委員 つまり、国民の立場から見れば、いろいろな制度変更があったかもしれないけれども、結果的にそのことによって就学支援が後退したというところが実際かなりあるということですね。

 それからもう一つは、国立大学の法人化の問題で、運営費交付金、これは文部科学委員会、与野党問わず、これについてはしっかりと予算を確保しろという立場ではあるけれども、しかし、実際に法人化になった後、運営費交付金がどのような推移になっているか、確認をしたいと思います。

伯井政府参考人 国立大学法人運営費交付金でございますが、法人化初年度の二〇〇四年、平成十六年度予算額は一兆二千四百十五億円でしたが、二〇一八年、平成三十年度予算額は一兆九百七十一億円となっており、一千四百四十五億円の減額となっております。

 なお、二〇一九年度予算案においては、前年度同額の一兆九百七十一億円を計上しているところでございます。

下村委員 二〇〇四年から、実際、毎年一%ずつ減額しているわけですね。これは、本来は法人化することによって、それぞれ大学側が自己資金等をみずから調達することによって、より法人化としての独立性を保つということがあったかもしれません。また、それに対して、必ずしも大学側が十分な努力をしていなかった部分もあるかもしれませんが。

 きのう、私、本庶佑さんのノーベル賞受賞式典というのがありまして、出席したんですが、本庶先生始め大学関係者から、これについては、つまり、基礎研究がどんどんできなくなっていると。予算がどんどん削られている対象として、基礎研究と、それから若手研究者、それは大学側のガバナンスの問題もあるんですが、しかし、間違いなく、国立大学の運営費交付金が毎年毎年減額していることによって研究が非常に厳しい環境になっているということは事実でありますし、きのうだけでもノーベル賞受賞者の方が四人ぐらいいましたが、このままではいずれ日本からノーベル賞受賞者は出なくなるのではないかというふうな、そういう危機感を持っておられました。

 それからもう一つ、私立大学等の経常費補助金、これはどのような推移なのか、お聞きしたいと思います。

白間政府参考人 お答え申し上げます。

 私立大学経常費等補助金でございますけれども、私立大学における支出との比較で見た場合に、昭和六十五年度が最も、経常的経費に占める経常費補助金の割合が約三割ということでございました。このときの経常費補助金の額は二千六百五億円でございました。

 一方、現在、平成二十九年度で申し上げますと、私立大学の支出が三兆一千八百四十九億になっているところ、私立大学等経常費補助金は三千百五十三億円ということで、その占める割合は約一割という状況になっているところでございます。

下村委員 お手元の配付資料の最初の憲法のところをごらんになっていただきたいと思いますが、八十九条に、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」、これが私学に対して、公の支配に属しない云々というところで、この八十九条、憲法違反になるのではないかというふうな憲法学者の議論もありました。

 これを受けて、昭和五十年に、議員立法で私学助成について対応できるようにすることによって、昭和五十年以降は、それでも議員立法で二分の一を上限ということでしたが、実際そこまでは届かず、三割ぐらいは公費投入ができたわけでありますが、それがどんどん減ってきて、今は一〇%ぐらいということでございます。ですから、国立大学の学生一人当たり年間約二百万ぐらいの税金が投入されているわけですが、私立大学については十六万と、同じ学生であっても、国立大学なのか私立大学なのかによってそれだけの違いが出てきているということでございます。

 ですから、これは、我が国は二〇一二年の国際人権規約の留保撤回もしているし、それから、民主党政権やあるいは自民党安倍政権のもとで、今精力的に、教育についての漸進的な負担軽減、無償化に向けた歩みを進めているといっても、一方で、財源問題等トータル的な整合性を見たときに、先ほどの表のような大きな時代の変化の中で本当に対応できているのかどうかということについては、私はもう限界があるというふうに思っております。

 その点で、憲法について、自民党は、三項ということを加憲で、お手元に資料があると思いますが、次のように加憲の案を考えました。

 「国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。」ということの中で、まず、全ての我が国に生まれた人がチャンス、可能性を教育によって更に育むような環境を、プログラム法、理念法的な部分でもありますが、憲法で明記することによって、この先の日本の未来を明確に位置づけるということが重要ではないかということ。

 それから、教育環境の整備ということで申し上げれば、やはり後退している部分があるわけですね。この部分について、着実に環境整備に努めるということを憲法で明記することによって、より望ましい未来に向けた、そして、これから大きく激変する世界情勢の中で、一人一人の国民がそのチャンス、可能性を得ることによって幸福の追求が得られるような、そのバックボーンとして教育環境の整備があるのではないかということを提案しているわけであります。

 これは本来憲法審査会で、国会議員同士で議論することではありますが、きょうは文科委員会なので、柴山大臣に、これについて、コメントというのはなかなかちょっと言いにくい立場かもしれませんが、しかし、お聞きしたいというふうに思います。

柴山国務大臣 委員においては、先輩文部科学大臣としてさまざまな場面で御指導いただき、この場をおかりして、心から御礼を申し上げます。

 その上で、今、自民党の憲法改正案について御言及をいただいた、また御説明をいただいたところでありますけれども、今少しお話をしていただいたとおり、私は今、文部科学大臣としてこの場に立っておりまして、憲法改正そのものについてお答えをすることは控えさせていただきたいというように思います。

 ただ、一般論として申し上げるとすれば、今お話があった、劇的な環境変化において、生涯にわたる一人一人の可能性とチャンスの最大化に向けた教育環境の整備を行うことがますます重要であるということは共通の認識であろうかというように思います。

 そしてまた、私学助成についてもお話をいただきましたけれども、各学校において、建学の精神に基づき、社会や時代のニーズを踏まえた個性や特色ある教育を実施しているということは事実でありますけれども、その一方で、私立学校は我が国の学校教育において極めて重要な役割を果たしておりますし、幼稚園で八割、高等学校で三割、大学等で七割を超える学生が在学をしているということに鑑みれば、やはり文部科学省としては、私学助成の安定的な確保ということも極めて重要だということは共有をできるのかなというように考えます。

下村委員 今、八十九条も触れていただきましたが、八十九条については、「公の支配に属しない」というのを、自民党は、「公の監督が及ばない」というところだけ変えました。このことによって、私学助成が憲法違反と言われることがないようにするということと、それから、今後、公私問わず、教育についてはしっかりとした支援をするということを明確にする必要があるのではないかということでございます。

 ただ、これは条文イメージ案、たたき台素案ですので、自民党だけで憲法改正できるわけではもちろんないわけですし、国会で、衆参で三分の二以上の発議をクリアしなければ、そして、その後、クリアできた後であっても、国民投票で過半数の国民の皆さんの賛同がなければ憲法改正できないわけでありますから、まずは、国会で議論するためのたたき台ということで、こういう条文イメージ案をつくりました。

 これまでの法律によって追いつかない、時代の大きな変化の中で、根本法、基本法である憲法を議論をすべきときに今来ているのではないかということで、きょうはとりあえず問題提起だけさせていただきたいと思います。

 次に、先ほどもちょっと触れていただきましたが、高大接続ですね。

 これは、今までの入学試験、暗記、記憶を中心としたマークシート方式的なものでは今後もう通用しない。それは、まさにAI、人工知能によってかえられる時代の中、真に必要な能力とは、そういう、ある意味では知識とか技能が必要な部分はあるけれども、それ以上に思考力とか判断力とか表現力とかコミュニケーション能力とか、それがこれから第四次産業革命あるいはソサエティー五・〇の時代に求められる中で、大学入試が旧態依然のままであれば、冒頭申し上げましたように、あと十年たったとき、今の職業の半分はAIや人工知能によって代替される、そのときに失業してしまうかもしれない。失業しないとしたら、新たな起業なり新たな産業の中で、そこに、能力を高めることによって社会、時代の変化に適応するような人材をつくるということで考えれば、高大接続というのは、つまり大学入学試験を変えるということは、同時に大学の教育も変える、それから高校教育も変えるということでの高大接続であるわけであります。

 その必要性、よく理解されておられるというふうに思いますが、改めて、柴山大臣の高大接続改革についての認識をお伺いしたいと思います。

柴山国務大臣 御指摘のとおり、変化の激しい予測困難な社会においては、新たな価値を創造していく力を育成することが必要であります。

 社会で自立的に活動していくために必要ないわゆる学力の三要素、知識・技能、思考力・判断力・表現力、そして主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、これらをバランスよく育むということが一層重要であります。

 このため、文部科学省においては、高等学校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜改革、この三者を一体的に行う高大接続改革を着実に推進していくことによって、社会で求められる人材の育成に取り組んでまいりたい、このように考えております。

下村委員 そのために、今のセンター試験を廃止して、これから大学入学共通テストを導入するということの中で、幾つか変更点がありますが、その中の大きなものとして、記述式を問題として導入するということにしたわけでございます。

 マークシートで四択や五択から一つ答えを選ぶというところから、記述式を導入することによって、まさに一人一人の思考力や判断力をより高めるための試験方法に変えるということでありますが、これについて、なかなかスムーズにいっていると思えないような話もよく聞くんですが、これについてはどのように今経緯としてなっているか、また、その意義について、改めてお聞きしたいと思います。

伯井政府参考人 お答えいたします。

 大学入学共通テストで最も重要な部分は、御指摘いただいた、国語と数学において記述式問題を導入するということでございます。

 この記述式問題につきましては、やはり採点の公正性の確保というのが最大の課題になっておりまして、そのため、複層的な採点体制、あるいは、更に大学入試センターでチェックをするなど、信頼感の高い運用体制を構築するということで、鋭意試行を繰り返し、取り組んでいるところでございます。

 この記述式の導入の意義でございますが、今まさに御指摘いただきましたように、知識偏重の一点刻みの選抜からの脱却を目指すということで、解答を選択肢の中から選ぶだけではなくて、みずからの力で考えをまとめたり論述する、そういうことで思考力、判断力、表現力を評価するというものでございます。

 記述式問題を導入することで、高等学校に対して、主体的、対話的で深い学びに向けた授業改善を促していく大きなメッセージになるというふうに考えております。

下村委員 アクティブラーニングを進めています。高校だけでなく、小学校、中学校でもアクティブラーニングを進め、このことによって、子供たちが、教師が板書したものをそのまま書き写して、そして暗記して、それが試験に出るというふうな旧来の形ではなくて、みずから考える、みずから判断する、また表現するということでの教科対応が大きく今現場で行われている中、この記述式問題を導入することが決まったわけです。

 確かに、採点ということであれば、マークシート方式でミスすることはあり得ないわけですね。しかし、記述式ですから、表現方法がいろいろ異なる。また、共通テストですから、採点者が本当に何千人とか、場合によっては何万人も必要かもしれないという中、そういう課題があるかもしれませんが、しかし、本来の採点の公平公正ということだけに目が行って、そして大きな時代の変化における入試改革が中途半端にならないように、あえてくぎを刺しておきたいと思います。

 同様に、英語ですね。これまで我が国は、読む、聞く、話す、書くの中で、読むということとそれから書くということについては、どちらかというと、その二技能については、それでも聞くということも入っていたのかもしれませんが、少なくとも読む、聞く、話す、書くの四技能、これを本来は外国語の学習としてバランスよく学ぶことが重要にもかかわらず、それができていなかった。ですから、例えば、中学、高校、六年間英語の勉強をしても、それが語学として役に立たないというような部分があり、大学入学試験のためだけの英語ともいう部分がありました。

 そのために、四技能をバランスよく習得するということの中で民間試験を活用することになったわけでありますが、改めて、この活用状況についてお聞きしたいと思います。

伯井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、英語においては四技能をバランスよく習得することが重要であるということで、高等学校学習指導要領でも英語四技能を総合的に育成するということが求められている中で、現行の大学入試センター試験では、読むことと、平成十八年度試験からリスニングによりまして聞く能力については評価をしているわけですが、話す、書くについては評価ができていないということの中で、約五十万人規模のスピーキングテストを同一日程、同一問題で大学入試センターにおいて実施することが困難であるということから、有識者、学校関係者等による議論を経て平成二十九年七月に策定した大学入学共通テスト実施方針におきまして、既に大学入学者選抜で活用され一定の評価が定着している民間の英語資格検定試験、七団体二十三試験の結果を大学入試センターが一元的に集約して各大学に提供するシステムを活用し、それでもって四技能評価を促進しようというふうにしているわけでございます。

下村委員 二つあって、一つは、外国語の学習において、読む、聞く、話す、書くの四技能、これを習得させることが本来の語学学習であるという視点から、入学試験の受験英語でない外国語の学習にする。そして、それは大学入試センターで独自につくるだけの人材、ノウハウがあるわけではない。一方で、いろいろな民間団体、今、七団体二十三試験と言われましたが、既に実施されているわけですから、それについては活用をすることによって、そして無駄な税金を投入することがないような、そういう形をとるべきであるということで進めたということで理解しました。

 この民間の英語試験それから検定試験の活用を通じて英語四技能を評価するということは、そういう意味では時代の要請でありますし、また、国際社会の中で、ある意味では英語教育としては当然のことだというふうに思いますが、一方で、国立大学にちょっと限定しますけれども、実際に活用をどの程度しようとしているのか。活用しない大学もあるというふうに聞いていますが、その実態についてお聞きしたいと思います。

伯井政府参考人 平成二十九年七月策定の大学入学共通テスト実施方針を踏まえまして、国立大学協会におきまして昨年三月にガイドラインを公表し、各大学、学部等の方針に基づくというものでございますが、「一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする。」、あるいは「CEFRによる対照表に基づき、新テストの英語試験の得点に加点する。」のいずれか、又は双方を組み合わせて活用することを国大協として基本としているものでございます。

 一方、各国立大学におきまして、二〇二一年度入試、これは二〇二〇年度に実施する入試の予告を策定、公表しているところでございます。現時点におきましては、大学院大学を除く全八十二国立大学中、出願資格や加点方式にかかわらず何らか活用するということを表明しているのが七十一大学、活用しないとしているのが二大学、いまだ参加態度を表明していないのが九大学という状況であります。

 なお、民間試験を活用しないとしている二大学でございますが、公平公正な受験体制の整備等に関する懸念が解消されていないことなどを理由としているものでございます。

下村委員 非常に高校現場が、指導において本当に困惑しているんですね。つまり、旧来のような英語受験もある、一方で民間英語資格検定試験も勉強しなければならないということの中で、かえって負担がふえているだけで、高校生にとっては大変な迷惑だという批判の声があります。

 そもそも、国立大学においては、四技能をマスターするということについて、これは時代の要請としても当然のことだと思うんですね。これは文科省が決めるとかいう話じゃなくて、本来だったら、英語教育の中で四技能のうち二技能だけでいい、つまり、受験勉強だけのテクニック的な英語だけでいいということはあり得ない話であって、四技能にしたというのは、国の方針というよりは、ある意味では時代の要請で、当たり前のことではないかというふうに思うわけです。

 ですから、当然、国立大学においては、全ての大学で英語の資格検定試験、これは活用すべきだというふうに思いますが、実際に活用しないというふうに表明している大学はどんな大学があるのか。また、先ほど、導入するについていろいろな困難があるということでしたが、それはクリアできることではないかと思いますが、それについては文科省としてはどのように今考えていますか。

伯井政府参考人 活用しないとしている二大学と言いましたが、東北大学と北海道大学がそういう公表をしているところでございます。

 英語認定試験については、公平公正な受験体制の整備や成績評価などに関しさまざまな懸念があるということを理由としておりますが、文部科学省といたしましては、こういう民間試験の活用に係る公正性に関しましては、各試験のスコアとCEFRとの対応関係について、専門家による検証を実施し、文部科学省の作業部会において、そのプロセスが適切であるということを確認をしております。

 また、それぞれの試験内容について、英語教育等の専門家が学習指導要領との整合性についても確認をしておりまして、文科省としては、これらの民間試験を大学入学者選抜に用いることに問題はないというふうに考えているところでございます。

 さらに、しかしながら、試験実施の公正性に関する懸念があるということでございますので、それを払拭することは重要であるというふうに考えておりまして、昨年末に、高校、大学関係者と試験実施団体を構成員とする会議を設置し、民間試験の活用に関する具体的な懸案事項につきまして率直な意見交換を行いまして、関係者の抱える課題の解消に努めつつ、四技能評価の円滑な実施に向けて全力で取り組んでいるところでございます。

下村委員 受験生といいますか、子供の視点から見たら、本来の語学としての四技能をきちっとマスターさせることによって、より成果、効果の上がる学習をさせるということは当然のことであって、今までの経緯から、それぞれの大学の判断というのは、国立大学においては、その時代の変化に合わせて、そして、いろいろなクリアすべき条件があるのであればそれは国がきちっと整備しながら、全ての国立大学で民間四技能の資格検定試験が受けられる、あるいは受ける、そういうことについてはしっかりと指導していただきたいというふうに思います。

 それから、あわせて、先ほどの、無償化に漸進的に取り組むということを進めながら、一方で、例えばこういうことを導入することによって、より経済的な負担が高まるわけですね。一つ一つは大した額ではないと言っても、受験生から見たら、この新たな受検料というのは相当高額で、回数も含めて、格差が更に生じる。家庭の経済状況によっては、経済的な理由でなかなか受けにくい、親に遠慮して、そういう受験生も出てくるかもしれません。

 そういう意味では、この民間の英語の資格検定試験の活用については、経済的な配慮を十二分にする制度設計が必要だと思いますが、これについての取組をお聞きしたいと思います。

伯井政府参考人 英語の民間試験につきましては、その受検生の負担に考慮いたしまして、「経済的に困難な受検生への検定料の配慮など、適切な検定料であることを公表していること。」などを大学入試センターが運営する英語成績提供システムへの参加要件としております。

 また、昨年八月に策定いたしました共通テスト実施方針の追加分におきまして、非課税世帯であるなど経済的な困難な状況である場合で一定の試験成績を既に有している者は、高校三年の結果にかえて高校二年時の結果を活用することを可能としております。

 さらに、今国会に法案を提出しております高等教育の修学支援措置におきまして、低所得者層に対しては、受験料も勘案した給付型奨学金によって負担軽減措置を講ずることとしているとともに、昨年、全国の高等学校に対して実施した受検ニーズ調査を踏まえ、試験実施団体に対して検定料の配慮を更に求めてまいりたいと考えております。

 引き続き、検定料負担の軽減に取り組んでまいりたいと考えます。

下村委員 ぜひ、文部科学省がリーダーシップをとって進めていただきたいと思います。

 そして、二〇二〇年度から導入されるこの大学入学共通テストですけれども、先ほど申し上げた、記述式の問題の導入とかそれから民間の英語資格検定試験の成績提供業務等によって、新たに多額の経費が発生するのではないかと思います。その財源のあり方について、今、文部科学省はどのように考えているか。それがそのまま受験生に上乗せされるようなことがあると、先ほどのようにますます負担増になるわけでありまして、受験生に上乗せされない形でぜひ対処を考えてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

伯井政府参考人 現在、大学入試センター試験は、独立行政法人大学入試センターにおいて、検定料収入等の自己収入を基本に運営しております。

 大学入学共通テストでは、御指摘のとおり、記述式問題の導入による複層的な採点体制あるいはセンターによるチェック体制の構築も含む採点経費であったり、あるいは英語の四技能評価のための英語資格検定試験の成績提供業務に係る経費等、新たな経費が相当程度発生することが見込まれております。

 文科省といたしましては、御指摘を受けた受験者の経済的負担にも十分に配慮しつつ、財源のあり方について鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。

下村委員 この高大接続改革というのは、今の大学入学試験を、暗記、記憶のマークシート方式から大きく変換をさせるということの中の一つとしてこの共通テストがあるわけですが、それ以外に、大学は、二次試験等では各大学のそれぞれの方針のもとで独自の入学試験を考えて、これからの時代に通用する、そういう学生をぜひ育んでもらいたいということの中で、大学改革の中、三つの方針というのを決めたと思うんですね。一つは卒業認定・学位授与の方針、各大学としてどのようにするか。それから、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針。

 それに基づく教学マネジメントの確立ということの中で、ディプロマポリシー、それからカリキュラムポリシー、それからアドミッションポリシー、この三つのガイドラインを明確にすることによって、そして、うちの大学はこのような学生を求めている、そのためにこのような大学入学試験をするという、時代に合った各大学の入学試験をこれからすることが時代の要請として求められるというふうに思います。

 例えば、お茶の水女子大学等では、全ての学生、受験生対象ではありませんが、図書館で入学試験をする。図書館で入学試験をするということは、つまり、図書館の情報は全部見てもいい。逆に言えば、そもそも、図書館の情報を見るような入学試験の問題は出さない。これまでの暗記、記憶を中心としたような、そういう入学試験は出さないということ等、幾つかの大学が既に行っていますが、それを行う。

 つまり、世界から見れば、学力テストを大学入学試験で課しているところというのはほとんどないわけで、高校時代の成績はもちろん評価しますが、大学入学試験そのものは、学力試験ではなくて論文試験であったり面接試験であったり、もっと違う形での、本当の思考力とか判断力とか創造力を育むような、そういう試験を課しているわけで、我が国においても、これからの時代に対応できるような、そういう取組をしていくべきだと思います。

 改めて、大学の教育改革について、今指導を進める中で、どのように大学側が取り組んでいるかについてお聞きしたいと思います。

伯井政府参考人 お答えいたします。

 高大接続改革実現のためには、大学入学者選抜と連動しつつ、学生が高等学校教育までに培った能力を更に発展向上させていくため、大学教育の質的転換に取り組む必要があります。

 そのため、今御指摘いただいた三つのポリシーを各大学で一体的に策定し、これに基づく教育を行うことが重要であるという認識で、文部科学省としては、平成二十八年に、全ての大学に三つの方針の策定、公表を義務づける省令改正を行うとともに、その運用等に関するガイドラインを参考指針として示すなど、改革の促進を図ってきたところでございます。

 各大学が策定する入学者受入れの方針につきましては、このガイドラインを踏まえまして、学力の三要素を念頭に置いて、多様な学生を評価できるような入学者選抜のあり方について検討されているものと認識しておりまして、まさに御紹介いただいたお茶の水女子大学の、これは新フンボルト入試と称しておりますが、そうしたものも含めて、近年、入学志願者の能力、意欲、適性等を多面的、総合的に評価する入試が増加してきております。アドミッションオフィス入試や推薦入試を課す大学が入試全体の約四四%を占めるということに至っております。

 また、学力の三要素を評価する特色ある選抜を行っている大学の事例につきましては、他大学の参考になるよう、我々といたしましても、入試の担当者が集まる説明会等において広く周知、横展開を図ってまいります。

下村委員 先ほど、十年後に今の職業の半分がAI、人工知能によって代替されるというのが大方の世の中の流れだということについての共通認識についてお話し申し上げましたが、さらに、二〇四五年、レイ・カーツワイルは、シンギュラリティーの時代が来ると。これは、一つのコンピューターが人類のトータル的な能力を超える時代である、そのときは、働いている人は一割ぐらいで、九割の人は働かなくてもいい時代になるというふうに言っていますが、一方で、ノア・ハラリは、「ホモ・デウス」という本の中で、働かなくてもいい人が九割というのじゃなくて、無用者階級と言っているんですね。つまり、九割の人はもう用がない時代になってくる、将来。

 そういうときに、本当に教育が求められると思います。ですから、今までの延長線上でない、新たな時代における教育ということを考えたときのこれからの国家ビジョンづくりが必要で、そのまず端緒として、高大接続改革については、これを徹底的にやり遂げるということがスタートの最低条件として必要で、現場感覚からいえば、民間の英語の活用にしても、それから記述式についても、課題はあるかもしれません。しかし、大局的に見たときに何が必要なのか、そういう視点で、ぜひ柴山大臣には頑張っていただきたいと思いますが、最後に柴山大臣からお聞きして、質問を終わりにしたいと思います。

柴山国務大臣 今るる実務的な懸念についても答弁をさせていただいたとおりでありますが、いずれにいたしましても、冒頭私から申し上げたように、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の三者を一体的に、高大接続改革の中で確実に進めていくことが極めて重要だというように考えております。

 二〇一八年三月に高等学校学習指導要領の改訂を行うとともに、基礎学力の確実な習得と学習意欲の喚起を図るため、高校生のための学びの基礎診断制度を創設し、二〇一九年度から本格的な利活用を既に開始をしているところであります。

 この三つの方針、いわゆる卒業認定・学位授与、教育課程編成・実施、入学者受入れの方針、こういった三つの方針の一体的な策定、公表の制度化を二〇一七年四月に施行し、この三つの方針等を共通評価項目として入れる認証評価を二〇一八年度から既に大学教育改革ということで開始をしているところでもあります。

 入学者選抜制度につきましても、今いろいろとお話をさせていただいたとおり、プレテストにおける採点の円滑化、本番の実施体制等の検証を進めているなど、また、英語四技能評価の活用促進のための準備を進めているなど、生徒の多様な学習や活動履歴の評価の充実等を図る個別選抜の改善に取り組んでいるところでもございます。

 極めて重要な改革であり、関係者の意見もしっかりと聞きながらではありますが、その着実な実現に向けて全力で取り組んでいく覚悟でございます。

 以上です。

下村委員 終わります。

亀岡委員長 次に、義家弘介君。

義家委員 自由民主党の義家弘介です。

 本日は、柴山文部科学大臣並びに政府参考人に対して、児童虐待、そしてその発見及び発覚後の対応について質問をさせていただきます。

 柴山大臣、大臣所信の冒頭で、日本じゅうが救ってあげることができなかったことに深い悲しみを抱いている千葉県野田市で発生した虐待死事案などを念頭に、二度と繰り返さないとして、総合的な対策を進めていく旨をお示しになりました。

 残念ながら、いつの時代にも、何の罪もない子供を虐げる、許されざる大人たちがおります。だからこそ、我々は今、救えたはずの命、それを救えなかったこと、それも重く受けとめ、未来、そして子供たちの命を守るために、社会総がかりで連携の強化を図っていく必要がございます。

 全国的にも、子供たちを虐待から守るアンテナは高くなっております。マザー・テレサは、愛情の反対は憎しみではなく、愛情の反対は無関心だという言葉を残してくれていますが、全国の児童相談所の虐待相談の対応件数が、平成二十九年の速報値で十三万三千七百七十八件と過去最高となっていることからも、やはり、虐待を許さない、そういう国民の声は大きくなっていることと思います。

 問題は、その虐待をキャッチした後、子供たちを守る仕組みを、そしてその連携をどう整備していくかということであります。

 子供たちにとって、とりわけ幼児、児童にとっては、家庭とそして教育の場という二つの世界で守られながら生活をしております。極端な話を言えば、幼い子供にとってその二つが世界の全てであります。仮に家庭で虐待を継続的に受けている場合、もう一つの世界である学校の先生等に現状をキャッチしてもらい、救いの手を差し伸べてもらえなければ、その命は常に脅かされ続けます。

 馳座長のもとで、幼児教育振興議連という超党派の議連がございまして、その中で、幼児教育、とりわけ保育教育の現場の皆様に、日々、この虐待等に係る実態等のヒアリングも、我々、党派を超えて丁寧に行いました。そのとき出てきたことと、今回の千葉県野田市の事案というのには、かなりの類似性がございます。

 というのは、ある方がこうおっしゃっていたんです。保育の場では、仮に身体的虐待があったときにはかなり気づきやすい環境にある。例えばおしめだったり、例えば着がえだったり、例えば幼児教育ではプールだったり、非常に気づきやすい場合がある。そして、気づいたときに必ず我々は児童虐待防止法に基づいて通告をします。しかし、ここからなんですと。通告をしたことがわかると、保護者は園を退所させてしまって、別のところに通わせるようになる。そして、公立の小学校であれば教育委員会同士の引継ぎもございますけれども、保育園等の場合は、例えば認可保育園から認可外保育園に移ったときの連携等々がしっかりとできるかといえば、必ずしもそうではない状況で、何園も転園するというケースもあるという、実際の現場の声も受け取りました。

 だからこそ、こういった虐待に関しての情報の共有と連携というのは、改めて、例えば幼児教育無償化がこれからスタートしますけれども、この連携というものをしっかりとしておかないと子供たちを守ることが難しくなるという教訓である、そんなふうに感じました。

 多くの目が教育の現場では子供たちに注がれます。だからこそ、我々、よりアンテナを高くして発見し、そして、その後守るための仕組みを強化していく必要があります。

 この千葉県野田市で発生した虐待死事件も、発端はもともと、糸満市で虐待そしてDVの疑いがあるということで、首長部局、社会福祉部局が対応し、児童相談所も対応した。しかし、その対応した後、今度は野田市に転居する。そして学校で、お父さんから殴られている等々の虐待がアンケートで発覚した。すると、今度は学校を転校していく。まさに、先ほど幼児教育現場の方々が言ったことと似たようなケースでありますけれども。

 この虐待死事件も、まず最初にキャッチしたのは、平成二十九年十一月六日、小学校が実施したいじめに関するアンケート調査でした。学校は即座に、虐待の可能性ありと判断。翌十一月七日には、野田市に虐待を通告。市の児童家庭課職員がすぐに小学校を訪問。児童と面談した結果、深刻な虐待が発生している可能性があると判断し、柏児童相談所に送致。同日より児童相談所が一時保護を開始しました。

 この時点で、学校並びに野田市は、児童福祉法に基づき適切な対応をしているということは事実としてあります。しかし、なぜ、その後、児童を地獄へと送る結果につながってしまったのか。

 児童相談所は、十一月から十二月にかけて保護者との累次の面談を行っております。そして、暮れも迫った十二月二十七日、児童相談所は援助方針会議を開きまして、児童は親族のもとで生活する、つまり、父親、母親のもとではなくて父親の親族のもとで生活をする、また、父親と一対一では会わせない等々の条件で、一時保護の解除と継続指導の開始が決められました。

 一月二十七日にこの判断が出たこと、これはなぜか。中でどのような話がされていたのかは定かではありませんが、暮れも迫った二十七日、仕事納めが二十八日で、もし仮に、その前にこの保護している児童に対しての方針を出そうと、仮に児童相談所が思っていたとしたら、これは大変大きな問題なんだろうと思います。もちろんそのようなことがないと私は信じたいわけでありますが、いずれにしても、二十七日、条件付で保護を解除したわけであります。

 そして、明けた一月十二日、ここから動きが出てくるわけです。児童の両親が学校を訪れて、野田市教育委員会、学校との協議をスタートさせます。

 文部科学省に質問します。

 文科省は、一月十二日の協議は何の協議を行ったと認識していますか。

永山政府参考人 一月十二日、昨年ですが、両親、学校、市教育委員会の三者会談では、本件女児の一時保護が解除されたことを受けて、今後の対応についての話合いがなされた。

 また、この協議の中では、父親は、一時保護について、親族一同大変憤慨をしており訴訟を起こす用意があると発言し、ボイスレコーダーを机の上に置いたと、市教育委員会から報告を受けております。

義家委員 ここがちょっとおかしな話なんですね。つまり、学校は、保護者に対してこういう対応をすると言って今回一時保護をしたわけではなくて、野田市に報告し、野田市から児童相談所に報告し、野田市の職員が虐待を察知し児童相談所に送致し、そして一時保護されたわけです。それが、なぜ、児童相談所や福祉部局を飛び越えて、学校にやってきて話合いが行われているのか。

 では、更問いします。

 その協議の場には、一時保護の解除と継続指導の開始を決定した児童相談所、並びに学校から虐待通告を受けて児童相談所へ送致した野田市は、同席していましたか。

新谷大臣政務官 お答え申し上げます。

 平成三十年一月十二日に実施された、委員御指摘の協議の場におきましては、児童相談所、野田市ともに同席していなかったもの、そのように承知をいたしております。

 詳細な事実関係については今後検証されるべきものと考えておりまして、いずれにしましても、保護者との協議の場に児童相談所が同席したか否かという点、これのみならず、保護した子供の保護者への対応については、まずは、学校、教育委員会、児童相談所、市町村などの関係機関が対応方針を共有するということ、そして、保護者が話合いをしたいという希望があった場合にどのような機関がどのように対応するかを協議し、それに基づき対応すること、こういったことが必要である、そのように考えております。

義家委員 ちょっとわからないんですけれども。

 別に、学校が一時保護したり、学校が保護を解除したり、学校が継続指導の開始を決定しているわけではないんですね。これは、児童相談所がその責任と権限において行っていることなわけです。しかし、その場に同席せずに、一体何が話し合われるのか。

 まさにここが分水嶺であったと思いますが、なぜ、送致、一時保護、一時保護の解除をした当事者が出席せず、虐待を発見した学校、教育委員会のみで対応することになったのか、文科省の把握状況を教えてください。

永山政府参考人 一月十二日の協議に当たりまして、学校は、柏児童相談所及び野田市児童家庭課にも出席を依頼しましたけれども、柏児童相談所は日程が合わず、野田市児童家庭課は一時保護で印象を悪くしているので同席しない方がいいとの判断で、どちらも欠席をしたと、市教育委員会から報告を受けております。

義家委員 これが事実であれば、極めて無責任な対応が行われたと言わざるを得ないわけです。

 そして、保護者はこの際、学校に、死亡した児童が虐待を訴えたいじめアンケートなどの開示を求めたという報道もありますが、この辺の事実関係は文科省はどのように認識していますか。

永山政府参考人 一月十二日の協議の際に、父親はアンケートの存在を既に把握していたようであり、その場で閲覧及び写しの提出を求められたと、市教育委員会から報告を受けております。

義家委員 ここがまさに大問題なんです。

 児童虐待防止法第七条では、児童相談所等が通告を受けた場合、通告をした者を特定する情報を保護者等には漏らさないということ、これは明記されているわけです。

 そして、繰り返しになりますが、学校は、保護者に言ったんじゃなくて、野田市に相談して、野田市が児童相談所に通告して、そしてこの児童は一時保護をされたわけでありまして、つまり、学校のアンケートが原因で虐待が発覚したということは本来わからないはずなわけです。

 つまり、野田市あるいは児童相談所がこの父親に対して、発覚したきっかけは学校のアンケートなんだと伝えている可能性、いや、それ以外考えられないわけですけれども、文科省としてどのように考えますか。

永山政府参考人 誰がアンケートの存在を父親に伝えたかについては、現時点では文科省としても承知をしておりません。

義家委員 ちょっとそれは無責任な答弁だと思いますよ、ここが問題なんですから。

 この死亡した児童が、そこからエスカレートしてまさに命も落としているんです、その児童について、なぜ学校のアンケートでそれが発覚したのかということが、誰がどのようにして保護者に伝えたのかということは、これは当然、この手続を検証していく上で最も重要なことなんですね。彼女は、もう学校にしか頼る場所がなくて、いじめのアンケートに、助けてください、守ってくださいと発信したわけですよ。その苦しい虐待の叫びを関係機関がどう扱ったのか、これによって全く結果というものは違ったものになっていくわけであります。

 例えば、千葉県の子供虐待防止マニュアルには、学校等や医療機関にはその社会的責任からみずから通報元を明らかにしてもらうこともあるが、あくまでも機関の了承が得られた場合に限ると。

 しかし、この被害に遭った児童は、児童でありまして、機関でもないし、そしてそんなことを親に言われたら自分がまた大変なことになるという苦しみを抱えている中で、保護者が学校にやってきて、そして翌日には、情報開示をするという念書を書かされて、しかし、そこには児童相談所、野田市は距離を置いている。学校、どうしたんだと一方的に責められたのかどうなのか、それを求められ、そしてその後、教育委員会がこのアンケートのコピーを保護者に渡してしまっている。ここがまさに分水嶺になっていったというふうに思います。

 きょうは、ノーベル賞の方もいらっしゃいますので時間を短縮して質問しなければなりませんが、残りは水曜日の一般質疑に行わせていただきますが、最後に、これは大臣にお願いであります。

 今回の野田市の事件を受けて最も激しい衝撃を受けているのは、今いじめられている子供、今虐待を受け虐げられている子供、大人たちの助けを必要としている子供たちです。家で居場所がなく逃げ場もなく、最後に学校に、先生に助けてと叫んだ、そのメッセージが、いろいろな機関にぐるぐると回りながら、自分を虐待している者に渡り、結果として、激しい、更に厳しい立場に家庭の中で追いやられていく。

 現場の先生からもいろいろな声が届いています。このままじゃ、いじめのアンケートで正直に先生に伝えて、必ず守るからと言っても現実に守れないんだから、どんなに苦しくても伝えようがない、そんな子供を生み出してしまうなら教育の意味はありません、そんな強い声も届いております。

 来月には新年度がスタートいたします。大臣、どうか子供たちに対して、とりわけ、今虐げられている子供たち、これからもしかしたらいじめられるかもしれないと思っている子供たちに対して、改めて、みんなを守るための体制づくりを省庁を超えて社会総がかりで整備するから怖がらずに大人たちに苦しみや悩みを伝えてほしいという大臣メッセージを出していただきたい。これは、教育現場で一生懸命頑張る先生たちのためでもあり、そして、苦しみ、思い悩む子供たちに安心を与えるためでもありますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

柴山国務大臣 今回の事案のような悲劇を二度と繰り返すことのないように、二月八日の関係閣僚会議も踏まえ、現在、政府としても、事案の検証や再発防止策の検討を行っているところであります。

 また、私といたしましても、子供たちみんなを守るために、先頭に立って全力を尽くす覚悟であり、今後、再発防止策の取りまとめ状況等も踏まえつつ、子供たちに向けたメッセージの発出も含めて前向きに検討をしてまいります。

義家委員 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 立憲民主党の初鹿明博です。

 本日最後のバッターになりますが、皆さん、最後までおつき合いいただきたいと思います。

 きょうは、大臣所信に対する質疑でありますが、きょうは櫻田オリパラ大臣にのみ絞って質問をさせていただきたいと思います。大臣、お待たせいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 今、皆さんのお手元に資料を配付させていただいております。

 資料に基づいて一つずつ質問をさせていただきたいと思いますが、まず一ページ目に、これは三月十日の新聞の記事を配付させていただきました。見出しにありますとおり、北朝鮮にIDを与えず、東京五輪組織委員会、制裁背景かという、そういうものです。

 これはどういう記事かというと、記事を少し読ませていただきますが、「二〇二〇年東京五輪・パラリンピック組織委員会が、選手団参加や入場券配分の手続きを行うために各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)が必要とするIDなどの電子情報を北朝鮮NOCにだけ提供していないことが九日、分かった。」という記事であります。

 そして、いろいろ書いてありますが、まず、「北朝鮮側は「五輪憲章の精神に反する」と反発、国際オリンピック委員会(IOC)を通して正式に抗議することも検討しているという。」と。これに対して、次も下線を引かせていただきましたが、「政府関係者は「今の日朝関係を考慮すれば、即決する話ではない」とした。」と。

 このIDというのはどういうものなのかというと、組織委員会と各国・地域NOCは、エクストラネットという専用システムで情報のやりとりをしておりまして、そのエクストラネットに入るためのIDとパスワードがこの組織委員会の側から各国のNOCに渡されるわけですが、それが北朝鮮のNOCには渡されていなくて、このエクストラネットに入ることがブロックされているという状態であったということであります。

 この件について、まず櫻田大臣は、組織委員会がこのIDの発行を北朝鮮に対してしていなかったということを、いつ知りましたか。

櫻田国務大臣 お答えさせていただきます。

 日ごろより、北朝鮮関係の種々の案件については報告を受けているところでありますが、本件につきましては、十日の報道を受けて、十一日月曜日、事務方より状況について説明を受けたところでございます。

初鹿委員 オリンピック担当の櫻田大臣も、報道が出るまで知らなかったということでありますね。これは何かいささか、そういう状態でいいのかなというのを非常に感じるところなんです。

 北朝鮮側がオリンピック憲章の精神に反するという主張をしているようですけれども、どういうことかというと、オリンピック憲章、ちょっと厚いんですけれども、ここに、オリンピズムの根本原則というのが一番最初にあって、一から七項目、箇条書きにされております。その中の六番目に、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」、こう規定されている。

 つまり、ここの根本原則に、こういう、一つの国だけを特別に扱いをするということはオリンピック憲章の精神に反するんだ、そういう指摘なわけですが、まず、櫻田大臣、この話を聞いて、オリンピック憲章との関係についてはどのようにお感じになりましたか。

櫻田国務大臣 お答えさせていただきます。

 オリンピック憲章におきましては、根本原則として、国等による差別の禁止を定め、IOCは全てのNOCに対して参加招待状を送付するとされております。組織委員会は、オリンピック憲章を遵守することとしております。東京大会への北朝鮮を含めた各国・地域の参加については、IOCが決定をし、各競技の国際団体の合意に基づく出場資格を得ることにより参加することになるものと承知しております。

 一方で、我が国では、独自の対北朝鮮措置として、北朝鮮籍者の我が国への入国は原則として認めないということとしていることなどの関係で、我が国への入国の意向が示された場合には、政府として、例外的に入国を認めるべき特別な事情があるか否かを個別に検討することになるものと承知しております。

 一般論ではございますが、オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典だけではなく世界最大の平和の祭典でもあり、できるだけ多くの参加が得られることが望ましいと考えております。

初鹿委員 できるだけ多くの国の参加が望まれることですか。

 それで、大臣はどう思ったんですか、この付与していないという事実を聞いて。

櫻田国務大臣 全ての皆さんが参加できるようになることが望ましいとは思っております。

初鹿委員 つまり、IDを付与しなかったということは、余り適切な対応ではなかった、むしろ不適切だった、そういう認識をしているということでよろしいですよね。

櫻田国務大臣 お尋ねのIDは、組織委員会が各国・地域のオリンピック委員会に対して、東京大会に関する基礎的な情報を提供する専用ウエブサイトを使うためのIDであります。当該ウエブサイトは、参加するNOCが大会に関する主な日程や宿泊施設などの情報を得るための利便を図るためのものであり、それを使えなければ大会に参加できないというものではないと承知しております。

初鹿委員 これがないと参加できないわけではないというIDだというのはわかるんですけれども、そうだとしても、特定の国だけほかの国とは違う扱いをしたということについて、それは不適切ではなかったのかということを私は聞いているので、適切だったのか不適切だったのかをお答えください。

櫻田国務大臣 北朝鮮NOCについては、技術的問題により専用ウエブサイトが使えないために、組織委員会において対応を検討していたところ、技術的問題の解消が可能になったことから、昨日、IDの付与を行ったと承知しております。

初鹿委員 現状はIDが付与されたと。

 私が月曜日の日にこの日曜日の記事を見て質問通告をしたら、その日にやりとりして、きのう、IDを付与したということですか。何かそば屋の出前みたいですよね。何なんだろうなと思うんですが。

 そこで、この記事を少し確認したいんですけれども、この四段目、一番下の欄に、関係者によると、組織委員会は、北朝鮮NOCへのIDなど付与について官邸に相談し了解を求めているが、返事が来ない状況というと書かれているわけですよ。組織委員会の関係者なのかどうかは、この関係者というのが誰なのかわかりませんけれども。ほかの記事ですと、九月ごろから官邸にどうしましょうかと聞いているんだけれども、返事が来ないから判断ができなかったということなんですが、組織委員会が官邸に相談をしていたというのは事実でしょうか。

櫻田国務大臣 北朝鮮に関する種々の案件については、日ごろより関係各方面に幅広く情報共有を図ってきたところであります。

 ただし、本件に関しては、先週末の報道を踏まえ、一昨日、いわゆる十一日の月曜日、関係各方面に情報提供を行ったところであります。本件は、事務的、手続的な事項であり、政府が判断するものではなく、了解を求められていたものではないと承知しております。

初鹿委員 もう一回確認しますけれども、じゃ、組織委員会から官邸への相談はなかったということなんでしょうか。

櫻田国務大臣 組織委員会からは、東京大会における北朝鮮の参加に関し想定される種々の案件について、出入国の問題などを含め、幅広く相談を受けていたところでございます。

 ただし、本件ID付与については、事務的、手続的な事項であり、組織委員会が判断すべきものであって、政府としては、取扱いについて相談を受けていたものではないと承知しております。

初鹿委員 では、この新聞の記事は間違いであるということでよろしいでしょうか。

藤原(章)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣から答弁いたしましたとおりでございますけれども、北朝鮮の参加に関するさまざまな種々の案件、出入国の問題などがございます。そうしたものにつきまして幅広く相談は受けていたところでございますけれども、本件は参加そのものという話ではございませんで、宿泊の関係でございますとか会場へのアクセスとか、そうした事務的な内容でございます。

 そうしたものでございますので、組織委員会が判断をすべきものでございまして、政府として、その取扱いについて相談を受け判断をするといったものではないというふうに承知しておりますので、そうしたものとして私どもとして対応してきたものでございます。

初鹿委員 では、このIDの発行云々について、連絡自体はあったんですか。

 話を聞いていると、組織委員会は相談をするつもりで情報を提供していたけれども、皆さんたちは、それは組織委員会が判断することだから相談を受けていたという認識がなかったという答えをしているように感じるんですが、このIDのことについて話があったのかなかったのかを、ちょっと答えてください。

藤原(章)政府参考人 お答えいたします。

 IDの付与に関しまして、先ほど大臣から答弁をいたしましたように、技術的な問題があって専用ウエブサイトが使えない状態にあるといったような状況につきましては、私どもとして情報提供を受けていたところでございます。

 ただ、それにつきましては、先ほども申し上げましたように、本件は事務的、手続的な事項であり、組織委員会が判断すべきものというふうに思っておりまして、相談を受けていたという種類のものではないというふうに認識をしております。

初鹿委員 では、やりとりはされていたということですよね。連絡も来て、それに対して答えもしていたということですから。

 済みません、そのやりとりの記録が多分公文書として残っていると思いますので、それを提出していただけないでしょうか。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

藤原(章)政府参考人 資料につきましては、関係各方面に関連するものでございますので、関係各方面と相談して判断していくことが必要であるものというふうに存じております。

初鹿委員 済みません、委員長にお願いですが、今私が申し上げた資料をぜひ提出するように、理事会で協議をしていただくようにお願いいたします。

馳委員長代理 後刻、理事会で取り扱います。

初鹿委員 これ以上この問題、次の問題に移りたいので終わりにしますけれども、IDは付与されたということでありますから、これは一応決着はついた。ただ、やはり、IOCから、特定の国を排除するようなことを日本がしていると思われるのは日本国として恥ずかしいことだし、国益を害することになると思いますので、やはりそこは慎重に対応していただきたいというふうに思います。

 今後、まず、選手が参加をするときに、入国をするかどうかということが出てきたり、応援団をどうするかということが出てきたり、さまざまクリアしなければいけない問題が出てくると思いますが、そこで政府の側から制限をかけるようなことはやはりやるべきじゃないんじゃないか。

 オリンピックは平和の祭典ですから、ここで政治的な背景で何らかの制限をかけるということはふさわしくないと思いますので、そういうことがないようにしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

櫻田国務大臣 北朝鮮関係者の入国に当たっては、各方面の多くの方の御理解をいただく必要があり、関係省庁と連携の上、丁寧に対応させていただきたいと思っております。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いします。今後もこのことについては注視をしていきたいというふうに思います。

 次に、大臣の所信について質問をさせていただきます。

 前回の委員会の中で所信演説されましたが、その四ページのところで、櫻田大臣がこのような発言をされております。東京大会を契機として云々かんぬんありまして、日本の魅力を発信するため、選手村等における国産食材の活用と日本食の提供に加え、多様な食文化への対応云々と書いてあって、関係大臣等と連携して取り組んでまいりますと。日本の魅力を発信するため選手村で国産食材を使っていこう、そういうことをおっしゃったわけです。

 ここで大臣にお伺いしていきたいんですけれども、本当に、じゃ、国産の食材を使うことが日本の魅力の発信になっていくのか、むしろ逆効果につながる可能性が今のままだとあるんじゃないのかな、そういう視点でお伺いをさせていただきます。

 それはどういうことかといいますと、アニマルウエルフェアについての取組であります。

 まず、大臣、アニマルウエルフェアという言葉を御存じでしたか。

櫻田国務大臣 知っております。

初鹿委員 アニマルウエルフェア、では、説明してください。

櫻田国務大臣 アニマルウエルフェアは、日本語では動物福祉や家畜福祉と訳される場合がありますが、本来の意味では、幸福やよく生きることといった考え方であると承知をしております。

 動物や家畜の快適性に配慮した飼養管理を実施するものであって、例えば、良質な飼料や水の給与、家畜の丁寧な扱い、換気を適切に行う、家畜にとって快適な温度を保つなど、家畜の健康を保つための日々の家畜の観察や記録などを行うものと承知しております。

初鹿委員 資料を一枚めくっていただいて、二ページ目にアニマルウエルフェアという資料をつけさせていただきました。これは、一九六五年に英国で提唱され、今世界じゅうで採用されるようになった考え方なんですが、そもそも、人間の健康を保っていくためには、人間が食べる動物も健康でなければならない、そのためには動物が幸せに生きていく、暮らしていくということが重要じゃないかということで、ここに掲げた五つの自由をきちんと守った取扱い、飼育、飼養の仕方をする必要があるということで、この五つの自由というものを提唱しているものであります。

 このアニマルウエルフェアについて、東京オリンピックの選手村で提供される食材も一定の記述がされるようになったことは私も評価をするところではあるんですが、この調達基準が果たしてこれでいいのかということをこれから質問をさせていただきます。

 まず、東京五輪の選手村で使用する食材についての調達基準で、アニマルウエルフェアについてはどのように定めていらっしゃるでしょうか。

櫻田国務大臣 お答えさせていただきます。

 東京大会における持続可能性に配慮した畜産物の調達基準では、畜産物の提供事業者に対して、アニマルウエルフェアの考えに対応した飼養管理指針を満たすことが求められております。この要件を満たすことを示す方法として、GAP認証等の取組が組織委員会から示されております。

 まずは、東京大会に、その調達基準を満たす畜産が十分供給されるよう努めることが大切であると考えております。

初鹿委員 三ページ目にその調達基準をつけさせていただきましたが、2の「サプライヤーは、」という項目の4に、「快適性に配慮した家畜の飼養管理のため、畜産物の生産に当たり、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に照らして適切な措置が講じられていること。」という項目がちゃんと調達基準に入っております。それは事実です。

 ところが、じゃ、この飼養管理指針というのが十分なのかということになるんですが、ここで注が幾つかあって、JGAP又はグローバルGAPの認証を受けて生産された畜産物はいいですよとか、その下に、GAP取得チャレンジシステムにのっとって生産されたものはいいですよということなんですが、実は、ちょっと一枚戻っていただいて、二ページ目の下の表というか、見ていただきたいんですが、グローバルGAPは比較的、この五つの自由の中の四つの自由までを守るような、真ん中のOIE、国際獣疫事務局のOIEコードに大体該当するような水準になっているんですが、残念ながら、日本の飼養管理指針というのはそのレベルには至っていないわけであります。ですから、JGAPやGAP取得チャレンジシステムで生産されたものでは不十分だという指摘がされているということです。

 めくっていただいて、新聞の記事、報道を二つほど載せさせていただいておりますが、まずは、「五輪の畜産物、「調達基準甘い」 メダリストら訴え」という記事を載せさせていただいております。

 もう一枚めくっていただいて、小池百合子都知事と組織委員会宛ての手紙をつけさせていただきましたが、これは、ドッチィ・バウシュさんというロンドン・オリンピックの自転車の銀メダリストの方を始めとする十人のオリンピアン、メダリストの方々が、まさに日本の選手村で提供される食べ物がこのままじゃ心配だという手紙を都知事宛てにしているんですよ。

 読ませていただきますよ。

 「オリンピックメダリストから食品の生産のために狭い場所に閉じ込められ、残酷な扱いを受けている畜産動物についてと、残酷な扱いが食品に与える影響についてご説明するお手紙が届き、驚かれていることでしょう。」というところから始まります。

 そして、「動物の扱いを懸念すると同時に、私は、人間のこと、人間の健康、栄養のことも懸念しています。アスリート人生の最高の舞台であるオリンピックには、世界からトップクラスの選手が集まるので、高品質の栄養素が求められるのは当然です。 選手の食べるものが、競技の結果に直結します。最高品質の栄養が、最高の結果をもたらします。飼育過程にストレスが含まれたグレードの低い栄養では、それなりの結果しか出せません。非常に明確です。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村で、最高品質の食材を提供することが重要となります。」。こう書かれているわけですね。

 次のパラグラフを見ますと、どういうことが書いてあるかというと、ロンドン・オリンピックやリオ・オリンピックに比べて、このままだと、日本の東京オリンピックは、このアニマルウエルフェアという考え方からすると、非常に後退をすることになるんじゃないか。

 その例として二つ挙げているんですが、一つは卵です。卵。

 今、ヨーロッパの国では、卵を産む鶏を、日本で言うバタリーケージというケージで飼うことが、二〇一二年から禁止されました。ですから、ケージで飼われていない卵、ケージフリーの卵を一〇〇%使ってくださいということを、一つ求めています。

 もう一つは、豚さんの方ですね。

 豚が妊娠をすると、妊娠ストールというものに入れられて日本では飼育がされるわけですが、これは二〇一三年からEUでは禁止をされております。この妊娠ストールも使わない豚を使ってくださいということを求めているわけです。

 この手紙、ちょっとめくっていただいて、ちょっと写真をつけさせていただきました、どういうものか。

 鶏の写真。バタリーケージ。日本では九五%が実はケージ飼育で育てられた鶏の卵なんですね。見てください。こうやって、皆さんも多分イメージが湧くと思います、ケージの方は。狭いところにたくさんずらっと並んで、顔だけ出して餌をつついて、後ろから卵を産んでいるという、日本ではこういう状態が当たり前です。

 一方、世界の潮流は、その下にあるようにケージフリーです。平飼い。ケージに入らないで放し飼いになっているか、放鳥といって屋外で育てているか。これが鶏の場合です。

 後ろ、めくっていただいて、今度、豚の場合は、妊娠ストールというのは、こういうおりのようなところに入れられるんですね。

 ウィキペディアからちょっと妊娠ストールとはというところを抜粋させていただきましたが、子取り用、子をとる用の母豚を妊娠期間中、約百十四日間に単頭飼育する個別のおりのことです。ふん尿を処理しやすいように、排せつを定位置でさせる、スペースの削減という理由から、個々の飼育スペースは母豚のサイズと同程度で転回できないようになっている。頭部に餌おけと飲水設備が設置され、尻部は、床はすのこ状になっており、ふん尿が下に落ちる仕組みになっている。EU、スイス、アメリカの九つの州、ニュージーランド、カナダは禁止をしているけれども、日本では八八%の養豚場がこれを使っているということなんですね。

 皆さん、考えてみてください。妊娠したら、百十四日間、体の向きを変えることもできない状態で、ずっと豚は、目の前にある餌を食べる以外のことをせずに、百十四日間、子供を産むまでいさせられるんですよ。

 女性の皆さん、自分が妊娠して子供を産むまでそんな状態でずっといて、生まれた子供が健康な子供になると想像できますか。恐らく、人間だったらそんなことはあり得ない。あり得ないんですけれども。健康な子供が生まれるんだろうかという疑問を持つと思いますが、残念ながら、日本の豚さんはそうやって子供が生まれて、それを我々は食しているという状態なんですよ。これはもう世界ではどんどんどんどん禁止していこうという流れになっているわけです。

 もう一枚めくっていただいて、ロンドン大会、リオ大会、東京大会で、鶏卵と豚肉がどうなったのかという資料もつけさせていただきました。

 鶏卵については、ロンドン大会では放牧や平飼い、ケージフリーのものだった。リオ大会でもケージフリーだった。バタリーケージという、日本がやっているような身動きがとれないような状態ではないということでありました。

 豚肉についても、ロンドン大会では妊娠ストールは禁止をしておりました。リオ大会では、これは禁止は明示していなかったんですが、大手企業が自主的に廃止をしていって、妊娠ストールで生まれた豚はほぼ使われていなかったということであります。

 こういう世界の状況や実態を考えたときに、今の日本のJGAPやGAP取得チャレンジシステムですか、それでいいのかということに、私は真剣に考えなきゃいけないと思うんですね。

 飼養管理指針を見てみたんですけれども、ちょっと時間がないので卵だけ紹介しますけれども、これは、これに基づいていればいいですよということなんですよ、日本の場合。

 ここに何と書いてあるかというと、卵の場合、飼養方式のところに、いろいろ書いてあるんですよね、ケージ方式、平飼い方式、放し飼い方式など選択肢があるとは書いてあるんですけれども、各飼養方式の特徴を以下に記すが、ケージ方式以外の飼養方式に関する知識が少ないこと、我が国の飼養方式は現時点ではケージ方式が主流であること等から、本指針では構造及び飼養スペースについてはケージ方式を基本に記述をするということで、ケージ方式が基本になっちゃっているんですよ。

 それで、この飼養指針に、最後にチェックリストというのがあって、しかも、びっくりするんですけれども、JGAPが認証されるのは、このチェックリストをチェックをして確認をしていれば、それがちゃんと行われているか行われていないかを問わず、チェックをしているだけで認証されるということになっているということで、これではなかなかケージフリーにはなっていかない。つまりは、アニマルウエルフェアが重視されることにはならないというふうに感じるわけです。

 そこで、大臣、まず、今私がるる述べたことを聞いて、選手村で提供される食材、今のまま、JGAPやGAP取得システムだけをクリアしていればよくて、ケージフリーの卵や妊娠ストールの禁止をするということまでする必要がないというふうに思いますか、それとも、ちょっとこれは考えた方がいいんじゃないかというふうに思いますか、どちらでしょうか。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

櫻田国務大臣 組織委員会が作成した持続可能性に配慮した畜産物の調達基準では、畜産物の提供事業者に対して、アニマルウエルフェアの考えに対応した飼養管理指針を満たすことが求められております。

 そこで、このほか、食品安全、環境保全、労働安全にかかわる要件を満たすことを示す方向として、JGAP、グローバルGAPのほかに、GAP取得チャレンジシステムが位置づけられております。

 調達基準については、組織委員会が業界団体などを含めてさまざまなステークホルダーに参加をしていただいたワーキンググループで議論されたと承知しております。

初鹿委員 用意した答弁を読まれているので仕方がないのかもしれませんけれども、私は、この飼養管理指針では不十分ですよねということを先に紹介をさせていただきました。それを聞いた上で、今、確かに、飼養管理指針、これにのっとってやっていればいいという調達基準なんですが、そしてまた、その調達基準を決めるのも組織委員会だというのもわかるんですが、大臣は所信の中で、日本の魅力を発信するために国産食材の活用をと言ったわけですから。ケージフリーじゃなくてバタリーケージの卵を提供して、ヨーロッパの国ではケージフリーが当たり前なのに、選手たちはこんな卵食べたくないよということになって、それが魅力の発信になるんですか。どう思いますか。

櫻田国務大臣 これまで、アニマルウエルフェアの取引が、ルールとしていなかったことについて、今回、東京大会の調達基準で取り入れたことは前進であると認識しております。

 今回の取組を第一歩として、生産者の取組を尊重してまいりたいと考えております。

初鹿委員 それでは伺いますけれども、ヨーロッパの国の選手や、バタリーケージがもう禁止をされている国又は妊娠ストールが禁止されている国から来た選手たちが、この肉は食べたくない、この卵は食べられない、食べたくないと言った場合は、どうされるんですか。それはもう、オリンピック期間中に卵を食べるのを諦めろと言うんですか。肉を食べるのを諦めろと言うんですか。どうするんですか。

櫻田国務大臣 畜産関係の食材の調達に当たっては、持続可能性に配慮した畜産物の調達基準に沿って必要な食材を調達することになります。

 組織委員会が策定した飲食提供に係る基本戦略では、選手に対する食品安全管理はもちろんのこと、栄養管理に配慮することや、食習慣や宗教上の制約に配慮し、多様な選択肢を用意するなど、多様性への配慮が求められているところでございます。

 参加する選手が良好なコンディションを維持できるとともに、競技において自己ベストを発揮できるよう、飲食提供を政府としても後押ししてまいりたいと考えております。

初鹿委員 多様な食材を提供して配慮をするということをおっしゃったということですが、ということは、じゃ、善意に解釈をさせていただきますが、一定の割合で、平飼いの卵又は放鳥で育てられて産まれた卵を調達をし、この卵はケージフリーの卵ですよと明示をしたものを出す、そして、豚については、妊娠ストールを使っていない、そういう豚ですよというものを明示して提供するということをちゃんとやる、やらせる、そういう理解でよろしいでしょうか。

櫻田国務大臣 畜産物の調達基準については、調達の要件を満たした上で推奨される事項として、有機畜産により生産された畜産物が推奨されているところでございます。

 例えば、有機畜産物のJAS規格では、動物の生理学的及び行動的要求に配慮して飼養することを原則として、野外への放牧など、ストレスを与えずに飼育することが要件となっております。

 有機畜産物の卵は、ケージフリーの環境で飼育されたものを言われるかと思われ、こうした卵が調達されれば、選手の方々の要望を満たす可能性があると考えられます。

 実際の調達は、組織委員会が委託した飲食提供事業者が行うことになっており、選手の皆様からの要望は伝わっていることと思います。

初鹿委員 今、るる述べましたが、結論は、選手の言った要望は多分この委託をされる業者には伝わっているから、それにのっとったものをきちんと調達することになるだろうということですか、なるだろうと。

 では、ここはちょっと、大臣、もうちょっとリーダーシップを持って、担当大臣なんですから、業者任せじゃなくて、大臣の口から、これはやはりケージフリーの卵を使ってもらわないと困りますよ、また、豚についても妊娠ストールをやめてもらわなきゃ困りますよということをはっきり言ってもらいたいなと思うんですよ。

 やはり、オリンピックとかそういう機会がないと、業界もなかなか変わっていかないんじゃないかと思うんですね。これはやはり、選手村に食材提供できたといったら、それはそれで、それぞれの生産者にとっても非常に訴えになるわけですよね。

 それだけじゃなくて、世界じゅうが今、卵でいったらケージフリーに移っているわけですよね。その中で、これからEUに輸出をしようとか言っている、その輸出をするに当たっても、今までにバタリーケージの卵じゃ輸出なんかできないんですよ。

 そういうことを考えると、このオリンピックを契機にどんどんどんどんアニマルウエルフェアについて考えて、よりよい卵、豚肉を提供しましょうということを大臣がリーダーシップを持って言っていただきたいと思うんですよ。

 最後に一枚つけさせていただいたのは、これはマリオット・インターナショナルというホテルのグループの公表した資料です。右にアニマル・ライツ・センターが訳した訳文をつけておりますが、これはマリオットホテルとかリッツ・カールトンとかいう、そういうホテルを運営しているグループですが、二〇二五年までに全ての卵をケージフリーの卵にすると言っているんですよ。

 つまり、ここのホテルグループは日本のホテルもたくさんありますよ、全てケージフリーにすると言っているときに、生産が追いつかないんじゃせっかくの機会を失うことになるので、そういうことも考えて、ぜひ、このオリンピックを契機にしっかりアニマルウエルフェアに取り組む、そういう畜産農家にしようよということを、大臣の口から言っていただけませんか。

櫻田国務大臣 調達基準を満たす畜産物の供給が我が国の畜産業におけるアニマルウエルフェアの普及、定着に資すると考えております。今後とも、関係省庁と連携してその推進に努めてまいりたいと考えております。

初鹿委員 大臣、よろしくお願いしますよ。

 ありがとうございます。

 では、終わります。

亀岡委員長 次回は、来る十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十七分散会


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