第8号 令和2年5月20日(水曜日)
令和二年五月二十日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 橘 慶一郎君
理事 池田 佳隆君 理事 白須賀貴樹君
理事 田畑 裕明君 理事 馳 浩君
理事 村井 英樹君 理事 川内 博史君
理事 城井 崇君 理事 浮島 智子君
青山 周平君 安藤 裕君
石川 昭政君 上杉謙太郎君
小此木八郎君 大串 正樹君
上川 陽子君 神山 佐市君
櫻田 義孝君 柴山 昌彦君
高木 啓君 谷川 弥一君
出畑 実君 中村 裕之君
根本 幸典君 福井 照君
福山 守君 藤井比早之君
船田 元君 古田 圭一君
本田 太郎君 宮路 拓馬君
吉良 州司君 菊田真紀子君
中川 正春君 日吉 雄太君
牧 義夫君 村上 史好君
山本和嘉子君 吉川 元君
笠 浩史君 高木 陽介君
鰐淵 洋子君 畑野 君枝君
串田 誠一君
…………………………………
文部科学大臣 萩生田光一君
文部科学大臣政務官
兼内閣府大臣政務官 青山 周平君
経済産業大臣政務官 宮本 周司君
国立国会図書館長 吉永 元信君
政府参考人
(内閣府知的財産戦略推進事務局長) 三又 裕生君
政府参考人
(文部科学省総合教育政策局長) 浅田 和伸君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 丸山 洋司君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 伯井 美徳君
政府参考人
(文化庁次長) 今里 讓君
参考人
(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事) 後藤 健郎君
参考人
(出版広報センター副センター長)
(株式会社集英社代表取締役社長) 堀内 丸恵君
参考人
(弁護士) 福井 健策君
文部科学委員会専門員 吉田 郁子君
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委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 福山 守君
宮路 拓馬君 本田 太郎君
村上 史好君 日吉 雄太君
森 夏枝君 串田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
福山 守君 藤井比早之君
本田 太郎君 宮路 拓馬君
日吉 雄太君 村上 史好君
串田 誠一君 森 夏枝君
同日
辞任 補欠選任
藤井比早之君 神山 佐市君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
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○橘委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事後藤健郎君、出版広報センター副センター長・株式会社集英社代表取締役社長堀内丸恵君及び弁護士福井健策君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。
それでは、まず後藤参考人に意見開陳をお願いいたします。
○後藤参考人 おはようございます。後藤でございます。
本日は、陳述の機会をいただきまして、厚く御礼申し上げます。
さて、私からは、一九八五年より海賊版対策に従事している私の経験を踏んまえまして、このCODAのオンライン上の海賊版対策と著作権法改正の必要性について述べさせていただきたいと思います。
おめくりいただきまして、まず、CODAでございますけれども、二〇〇二年、当時の小泉総理大臣が、施政方針演説で知財立国というのを宣言されました。その際に、経産省と文化庁の支援を受けましてCODAが設立されております。海外へのコンテンツの流通促進、そして海賊版対策でございます。
実際上、費用対効果等を含めまして、我々のメーンの仕事ということで、今、民間が一丸となって海賊版対策というのに従事をしております。
めくりまして、二ページ目、三ページ目が、我々の会員社でございます。日本のほとんどのコンテンツホルダーがお入りになっているという状況でございます。
四ページ目です。
CODAの主な事業は何かということでございますが、一番最初は侵害対策ということで、共同エンフォースメント。海外で一人の権利者が権利行使するのには費用対効果が非常によくありません。ということで、コンテンツホルダーが集まって共同で権利行使をするという方法をとっております。
そして二つ目としまして、各国の取締り機関との連携ということで、昔は非常に中国と関係が悪かったんですが、ここ最近は国家版権局等々とバイですぐにコミュニケーションがとれる状況でございます。
三つ目といたしましては、国内外の関係団体との連携ということでございまして、MPA、アメリカの映画の団体ですが、いわゆるロビーのすごい団体なんですけれども、ここともMOUを締結しまして、世界じゅうの海賊版対策について情報共有をしているというところでございます。
それと四番目として、大切なのが、やはり、一般消費者への、知的財産を保護するということが大切だということのための消費者向けの広報啓発活動を行っているというところであります。
五ページ目ですが、具体的にどういう侵害があるかということでございます。一番から七番ということでありますが、オンラインに関しては二から六ということでございます。
この五、六、オンラインストレージ、サイバーロッカーとも言います。この五、六につきましては、いわゆるダウンロード型ということで、非常に書籍等のダウンロードが多い。
それと、三、四、二ということで、海賊版サイトや今回問題になっているリーチサイト、そして、二、UGCやSNSというのは、今後主戦場になってくるというふうに思われております。
いわゆるダウンロード型も非常に多うございますので、侵害コンテンツのダウンロードの違法化というのが非常に求められているということであります。
続きまして、六ページです。オンライン環境でございますが、非常にコンテンツは脆弱であるということが言えます。
一つ目として、流通チャンネルということで、今非常に低年齢化しておりまして、スマホ、子供でも今スマホを持っている時代ということであります。
さらに、二としまして、SNSが普及しているということです。したがいまして、フェイスブックですとかツイッター、LINE等々で著作権侵害が拡散されるという状況にございます。
さらに、三としまして、5Gの時代を迎えます。非常にいい環境ではございます。ここにございますように、ハイビジョン映画が一・五秒から三秒でダウンロードできるということがございます。書籍や漫画は容量が軽いですから、これが大量にダウンロードされてしまうという環境が出てくるということでございます。
そして、厄介なのは、コンテンツの場合、七ページです、非常に匿名性や秘匿性を売りにしたサービスというのが出回っております。
一つは、一としまして、ドメイン登録ですね。ここにございますように、ドメイン登録を、完全な匿名性を売りにしているサービスがあります。Njallaといいます。これは、世界で流通したパイレート・ベイという非常に大きな海賊版組織があったんですが、その主犯が捕まりまして、その主犯が刑を終えた後につくったサービスです。したがって、秘匿性が非常に高い。
更に厄介なのは、このオフショアホスティングということで、サーバーが非常に幾層にもなっていまして、特定するのが難しい。特に、防弾サーバーと下にございます、こういうのがございまして、これの企業ポリシーも、聞くな、答えるなということでサービスを提供している。
更に厄介なのは、ここにございます国ですね。いわゆる知財に寛容な国でサーバーは設置されている。非常に厄介でございます。こういった形で複雑化している。さらに、お金もうけの広告でありますけれども、広告も多層化しておりまして、非常に厄介ということであります。
続きまして、CODAは何をやっているかということですが、こういった形で、権利者との間に自動コンテンツ監視センターというのをつくりまして、侵害サイトに対して削除要請というのを行っています。自動化で行うという形です。おかげさまで、高い削除率を誇っています。
ここに監視チームというのがありますが、CODA職員は二十二名ですが、そのうち十一名のスタッフが目視で海賊版を日夜探しているというところでございます。
近年の削除要請数としまして、三月におきましては約七万件を削除しているというところであります。
さらには、間接対策ということで、先ほど広告の話をしましたが、広告の対策ということで、広告の事業者の皆さんと会議体をつくりまして、日々協議をしております。我々がつくったブラックリストを共有しまして、そのブラックリストのアドレスには、URLの海賊版には広告を載せないでください、わかりました、そこには広告は載せませんという形で連携をとっています。さらに、コンテンツの抑止ということで、グーグルさん等の協力をいただきまして、グーグルの検索サイトから海賊版が載らないというような形をとって、させていただいています。
今回問題となっていますリーチサイトでございますが、例えば、グーグルとかそういう検索サイトで無料アニメと打ち込みます。そうすると、上位に出てくるのはこういうリーチサイトです。これはアニメNEWというサイトでありますけれども、こういった形でインデックスが非常についています。これも、広告はちょっと省略していますけれども、上や下に広告がいっぱい張ってあるということになります。こういう形で、曜日ごとに自分が見たいアニメをクリックすることができたり、非常に、言葉は悪いですけれども、見やすい、見やすいというか、海賊版サイトを見つけやすいという形です。
十二ページには、アプリということで、スマホにおいてもこのような形でリーチアプリが存在しています。
最後のページになりますが、リーチサイト運営者については、自分がなお合法だといったような解釈を勝手にとりまして営業を続けているというところであります。我々は違法はしていないんだよ、違法をしているのはリーチしている先の人間だよ、我々は大丈夫だというような形で営業をしているというところであります。
非常に彼らは確信犯でありまして、このようなリーチサイトを、いち早く法制化いただきまして、対策を今後講じてまいりたいというふうに思いますので、ぜひとも法制化に向けて皆様の御審議を賜りたいというところでございます。
早口で恐縮でございましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○橘委員長 ありがとうございました。
次に、堀内参考人にお願いいたします。
○堀内参考人 出版広報センターで副センター長を務めております、集英社の堀内でございます。
本日はこういう機会を与えていただきまして、御礼申し上げます。
本日は、インターネット上の海賊版サイトがもたらす深刻な被害実態を御説明した後、被害を防ぐための法改正が必要と考える理由などについて意見を申し上げます。
なお、申し上げる内容は、出版社と一枚岩となって海賊版に対峙してきた漫画家を含めた権利者側の総意でもございます。
まず、私ども出版社と漫画家は、海賊版対策を推し進めるため、緊密に連携をしております。具体的には、出版九団体の横断的組織である出版広報センターと、漫画家の主要団体である公益社団法人日本漫画家協会とがその連携の中心となって活動しております。ちなみに、出版広報センターの概要については、配付資料一を御参照いただければと思います。
こうした連携に基づいた具体的アクションを御紹介いたします。
出版広報センターと日本漫画家協会は、昨年九月に、海賊版対策のための侵害コンテンツのダウンロード違法化とリーチサイト対策を求める声明を共同で発表いたしました。配付資料二がこれに当たります。
この声明では、脱法行為を容易に招かず、かつ、善良なユーザーに過度な萎縮が生じない、バランスのとれた法整備を両者がそろって要望いたしました。パブリックコメントでも、この趣旨に沿って、それぞれから政府に意見をお届けしました。
さらに、法整備の具体化に向けて、昨年十一月から文化庁のもとで開催された政府有識者検討会の構成員として、私堀内が出版社を代表する形、そして、漫画家であり日本漫画家協会常務理事の赤松健さんが漫画家を代表する形で、詳細な要件設定を含む議論に参加させていただきました。
この有識者検討会の後、ことし二月には、今国会での迅速な法改正を求めて二度目の共同声明を発表しました。こちらが配付資料三でございます。
このように出版社と漫画家とが連携を続けてきた経緯を踏まえ、本日は、この後の質疑も含めて、漫画家の思いも私が代弁できればと思っております。
さて、二〇一七年秋から二〇一八年春にかけて猛威を振るった巨大海賊版サイトの漫画村は先生方も御存じかと思います。およそ三千二百億円相当の漫画がただ読みされたと試算される漫画村は、既に閉鎖され、運営者とされる人物は逮捕に至り、現在は裁判中です。
しかし、今もってなお多数の海賊版サイトがばっこし、その被害は重大かつ深刻です。出版社や漫画家だけでなく、電子取次、電子書店など、正規版コンテンツの流通にかかわる全ての当事者にとって、今や死活問題でもございます。
漫画村はもう存在しないんだから海賊版対策はそれほど必要ないというようなことは、実態に即していません。今、こうしてお話ししている瞬間にも、海賊版サイトが悪質な被害を生じさせているのが実態です。
四月末の時点のデータを御紹介しますと、出版広報センターが把握しているだけでも、重立った海賊版サイトはおよそ五百サイトございます。この五百サイトのうち、アクセス数上位の十サイト合計で、四月、延べ八千八百万近くのアクセスがございました。また、この上位十サイトのうち、月間アクセス数が延べ一千万を超えるサイトが四つございます。その四つのうち三つがダウンロード型海賊版サイトでございます。
ダウンロード型海賊版サイトとは、ユーザー自身の端末に海賊版コンテンツのダウンロードと保存をさせた上で、ユーザーに閲覧させることを目的としたサイトのことです。したがって、現在の海賊版サイトによる被害は、主にダウンロード型海賊版サイトによるものというように御理解いただければと思います。
深刻な被害を受けているのは、漫画に限りません。定期刊行されている雑誌、あるいは有名作家の文芸書、また、人気タレントの写真集ほか、最近では辞書など、多くの出版物が、特殊な方法を用いることなくダウンロードできる状況が続いております。
ダウンロード型海賊版サイトは、サイト運営者だけでなく、サイトを利用するユーザーにも都合がよいものです。ユーザーが海賊版コンテンツを一旦ダウンロードしてしまえば、そのサイトが閉鎖されても、その後も、自身の端末に保存されている海賊版コンテンツを引き続き閲覧できます。
つまり、ダウンロード型海賊版サイトを抑え込むには、サイト運営者への対策だけでは不十分で、海賊版と知りつつダウンロード行為を試みるユーザーへの対策の組合せこそ、十分な実効性が確保されます。
したがって、海賊版コンテンツをダウンロードする行為を防ぐには、そのような行為を違法とすることが欠かせません。なおかつ、海賊版サイトや海賊版コンテンツにアクセスしやすくする悪質な行為を防ぐため、リーチサイト対策も欠かせません。この二つの法整備が組み合わされることによって実効性の高い海賊版対策が進むものと確信しております。
ここで、漫画家の赤松健さんの訴えを御紹介します。赤松さんは、私とともに有識者検討会での議論に参加しましたが、御自身が漫画家である立場から、海賊版の被害をわかりやすく、繰り返し訴えられております。
すなわち、正規版コンテンツ発売開始の翌日には、早速海賊版サイトに御自身の作品がアップロードされてしまうこと、それが正規版コンテンツ並みの高画質であること、さらに、もっと重要なのは、電子版のみで活動している新人、若手漫画家が海賊版サイトによって収入源を断たれ、筆を折らざるを得ない。こういった訴えは創作者として悲痛な叫びに近いものでした。
赤松さんの訴えからわかるのは、ダウンロード型に限らず海賊版サイトというのは、今後の漫画文化それ自体を回復不能なまでに破壊するということです。これから時代や国を超えて多くのファンに愛される作品を新たに生み出す漫画家は、今の新人、若手漫画家の中にこそいるはずだからです。彼らの才能や夢が大きく花開く前に、海賊版によって根こそぎ奪われるようなことがあってはならないと思います。
また、コンテンツ産業という面から見ても、海賊版サイトが奪うのは漫画の単行本の売上げや利益だけではありません。今や漫画は、アニメ、映画、ドラマ、ゲーム、グッズ、イベント、舞台など立体的でグローバルなコンテンツ展開の基盤となっています。漫画の海賊版がはびこれば、この基盤を失い、日本のコンテンツエコシステム全体にも悪影響が及びます。
このように文化、産業の両面で海賊版が及ぼす影響が極めて深刻であることをぜひ御理解いただきたいと思います。
私ども出版社や漫画家は、海賊版撲滅のための自主的努力として、海賊版コンテンツの削除要請や国内外での訴訟提起を始め、一般ユーザーへの普及啓発活動、また、正規版コンテンツであることを示すABJマーク、オーソライズド・ブックス・ジャパンを略してABJマークというのを正規版に今つけております、の創設、運用など、さまざまな取組を重ねてまいりました。こうした取組を今後もより一層強化していく一方、海賊版に対峙する被害当事者の背中を強力に後押しする内容の法改正と、この法改正によって効果的な海賊版対策が進むことを心から希望しています。
最後に、御審議いただく著作権法改正案の内容につきましては、かねてより出版社と漫画家が一貫して求めてきた、脱法行為を容易に招かず、かつ、善良なユーザーに過度な萎縮が生じない、バランスに配慮された適切な内容と受けとめております。御審議の後、一刻も早く成立することを切望しております。
私からの陳述は以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
○橘委員長 ありがとうございました。
次に、福井参考人にお願いいたします。
○福井参考人 福井でございます。
本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
海賊版の状況につきましては、さきのお二人が十分お話しいただきましたので、私の方からは、個別の、個社の対策、その現状と課題についてまずは御紹介いたしたいというふうに思います。
確かに、この数年、海賊版に対する対策は急速に進化を遂げているということは言えようかと思います。まずは、お話にもありましたが、国内外での直接の削除通知や、あるいは弁護士名による強い警告、それでもきかない場合には、国内外で直接の法的手続、訴訟、これはかなり果断に行っていると思います。その結果、相当数の海賊版サイトは停止に追い込めているという実績もあります。
また同時に、一昨年のブロッキングと言われる論争をきっかけに、通信界や広告業界と、それから出版社、この両者の間での協力体制を築こうという機運も高まりまして、私も加わって、定期的な協議をずっとこれらの業界関係者が行っています。
その中でさまざまな協力の成果は上がってきていると思いますが、例えば、海賊版のサイトリスト、悪質と思われるものを共有化していこう、それによって通信界や広告界が早期に対策をとれるようにしようというような取組も進行中です。
そして、こうした広告の出稿の抑制や、検索結果の上位に海賊版サイトが上がってくると、ユーザーというのはまずそこで海賊版に行きますので、これを下げてやるというような取組も進んでおりますし、また、今はSNSのアカウントで、海賊版というのは短期間でわあっと広まってしまいますので、このアカウントを早期に削除するというようなことも、SNS大手の協力で随分可能になってきました。
警察との連携は既にお話しのとおり。
さらに、こうした海賊版を中継するCDNと言われる中継サーバーに対しても、大手、代表格に対して裁判を行い、では一定の手続でキャッシュを削除しましょうというような協定も結ばれています。
こんなふうに対策は進んでいるにもかかわらず、なお海賊版対策は多くの壁にぶつかっています。その最大のものは、やはり、所要時間、コスト、こうしたことです。特に、海外での法的手続、これは短期間で済むケースも中にはありますけれども、多くの場合は、やはり、数カ月の期間と、数百万円かそれ以上の経費を要します。そして、現在、産業財産権と異なりまして、こうした著作権侵害の海外での対策に対する直接の政府費用助成制度はありません。全て個社が負担して、これらを行わなければいけない。中小には不可能です。
これを、特に最近の海賊版サイトは、匿名化の技術を最大限に活用し、サーバーとかドメイン名を次々と変えていってしまいます。本当に短いときには一日単位で変わります。それに対して法的手続をやっていれば、やっている間にもう対象が変わってしまう。こういうことが起きる。
それを支えているのは、海外の、御紹介もあった悪質な事業者、アウトサイダーの活用です。オフショア、あるいは、もっとひどくて防弾ホスティングなどと言われる、削除要請を無視することを売りにしている、特定の国、地域に特に多く見られる確信犯的なサーバー事業者。
また、特にきょう御紹介したいのは、確信犯的なレジストラーです。レジストラーとは何かというと、ドメインの登録事業者。このドメインの登録事業者がドメイン名を各サイトに割り振るわけですけれども、そういう悪質な海賊版サイトに対して、本来のルールからいえば、ドメインを適宜に削除する、契約違反ですからドメインを削除するというようなことをレジストラーがやるべきなんですが、これも対応しないことを売りにしている確信犯的なレジストラーがいます。ICANNと言われる国際的なドメイン管理団体のルールに明確に違反した行為のはずなんですが、現在のところはほぼ野放しになっているような状況があります。
こうしたことの結果、海賊版対策はぎりぎりの攻防、これだけの対策を全て駆使しても横ばいというような状況が続いていると言えようかと思います。
今回の改正案についてです。
三番をごらんいただくと、リーチサイト規制、これは、従来から異論は少なく、待望論の大きい対策でした。抑止力はかなり期待できるかなと思います。御質問があれば詳しくお答えしたいと思いますが。
四番です、ダウンロードの違法化。これは一昨年の暮れから大きな論争になりました。というのは、懸念が寄せられました。例えば、スクリーンショットをする、あれもダウンロードである、そこに小さな違法アップロード物が写り込んでいて、それも違法か。あるいは、二次創作と言われるパロディー作品は、今、多く花開いているわけですけれども、形式的には違法アップロードである、原作に対するですね。それを、同時に作家は納得していても、ダウンロードすると原作に対する違法ダウンロードということになってしまうのか、ちょっと広範過ぎるんじゃないかというような指摘もありました。
今回の現行法は、それらに対する対応を試みたものと言えようと思います。
例えば、軽微性という要件が入りました。分量が少ない、画質が低いなど、鑑賞の用をなさない、そういうダウンロードは違法化の対象外にしよう、あるいは、二次創作、パロディー、これについてのダウンロードは対象外にしよう。
そして、最も大きな議論になったのが、権利者の利益を不当に害する場合、これに対象を絞るべきかどうかです。
この点では、先ほどの検討会議で私も後藤さんなどと大分やり合ったりいたしましたけれども、心配する声もある。それによって利用の萎縮が広がってしまう、適正な研究利用が阻まれてしまっては困るじゃないか。他方では、その要件を入れれば、特に悪質な人ほどこれを利用するのはもう目に見えているという、抜け穴に使われるという懸念もありました。
結果、不当に害しない特段の事情がある場合というふうに、立証責任を利用者側に寄せることで妥結が図られた。いわば、海賊版防止と利用者の需要のぎりぎりの妥協が図られた案というふうに私自身は評価しております。
あるいは、知りながら要件ですね。違法アップロードということが不明である、あるいはそれについて誤認したような場合は含まないというような、そういうセーフガードもとられている、そんな制度かなというふうに思います。
さらに、御質問があればお答えしていくことにいたしまして、その他の改正案についてもお話をいたしたいと思います。
海賊版をただ取り締まるだけでは、それは何の役にも立たないことです。それとあわせて、正規版が十分に流通し、人々に適正対価で届かなければ、本当の意味でのコンテンツ振興にはなりません。その意味でとても大きな改正が今回の著作権法案には含まれています。それはライセンシーの保護法制です。
驚くことに、これまで著作権法には利用権という概念は直接的には規定されていませんでした。しかし、実際のコンテンツビジネスは、著作権者がみずからビジネスを行うということは余りなくて、そこから利用権の許諾を受けた多くのライセンシーがビジネスを行うわけですね。映画化だろうが、商品化だろうが、全てそうです。
この利用権を設定されている存在、ライセンシーは、著作権者が例えば経済的に苦しくなって著作権を誰かに譲渡しちゃったとか、あるいは差押えを受けて著作権が流出しちゃったとか、管財人が登場したというと、実を言うと、この新所有者には利用権を対抗できない。つまり、利用権を否定されても何の文句も言えないというのが従来の通説でした。
今回、初めて、これに対して、利用権は新所有者に、新著作権者に対抗できるという制度が入りました。大変期待しているところです。
最後に、ポストコロナの著作権制度について少しだけお話をしたいと思います。
今回、コロナ禍で人々が外出できなくなったとき、例えば欧米のオペラ劇場は過去の高画質の舞台映像を無料で配信するということを直ちに始めて、出かけられない人々に力を与えました。しかし、日本のライブイベント界はそれができなかった。なぜか。権利の壁、アーカイブが進んでいなかったから、配信するコンテンツが十分なかったからです。出版界はやりました。
こうした権利の壁に阻まれることによって、過去のあるいは現在のクリエーターたちが生きたあかしである作品が人々に届かない、これは大変に悲劇的なことです。作品は人々に見られたがっています。作品が人々に見られ聞かれることで、そして適正な対価がクリエーターに還元される、それこそがポストコロナの本当の著作権制度だというふうに考えるのです。
それについても幾つかここに項目を並べましたが、これについては御質問があればお答えしていきたいというふうに思っております。
御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)
○橘委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○橘委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。馳浩君。
○馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。
本日は、こういう時節柄ではありますが、参考人の皆さんには、こうしてお出ましいただき、本当にありがとうございます。
今ほどいただきました参考人の御意見に対して、それぞれ、私の方から懸念するところを改めてお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
特に弁護士の福井健策先生は、著作権管理の問題について長年取り組んできておられますので、今のお話を伺った上でお聞きしたいと思いますが、まず一つ目は、リーチサイト規制、百十三条の二項ほかの改正案についてであります。
今回の改正案について、この制度は実効性を持って使える制度になっているとお考えでしょうか。まず、弁護士の立場からお答えいただきたいと思います。
○福井参考人 ありがとうございます。
この制度は、御存じのとおり、殊さらに侵害物に人々を誘導する、あるいは主としてそうした侵害物の公衆の利用に供されている、こうしたウエブサイトやプログラム、つまりリーチサイト、リーチアプリに対象を絞りまして、こうしたリーチサイト、アプリそのもの、あるいはそれを通じて侵害物を提供する行為、これをみなし侵害化及び刑事罰を導入するという制度であります。
従来、リンクというものは、単に相手の置き場所を示すだけであるので著作権侵害ではない、だから自由であるということが世界的な通説でした。そして、これは情報社会にとってはとても重要な自由です。この原則は守り抜かなければいけません。しかし、同時に、それを悪用するリーチサイト、リーチアプリの暗躍によって多くのクリエーターが苦しんでいるということもまた事実であります。
そこで、これを違法化しようという動きは欧米でも先行して進んでおりまして、日本でもこうした制度が導入されたことは時代のニーズに合っていると思います。深刻なリーチサイト、リーチアプリの現状に対して抑止力はかなり期待できるのではないか、抜け道というものが必ずしも見られない、それでいながら本当に悪質なリーチサイト、リーチアプリに的が絞れているのではないか、これが一般的な見方であろうと思い、私も同意するところです。
○馳委員 専門家の立場から実効性が期待できるという御指摘でしたが、むしろ逆に権利者側の方であるCODAの後藤さんと、また堀内さんの方からも、出版界からも、今回の改正案が実効性を持って対応できるという期待を持っておられるかどうか、お聞きしたいと思います。
○後藤参考人 ありがとうございます。
先ほどの資料の十一ページにも記載しておりますが、私どもCODAは、二〇一六年の二月から、政府に対しまして、リーチサイトを規制してほしいということを言っております。
ここの一例にもございますように、まとめサイトということで、いわゆる海賊版を誘導するサイトでございます。言葉は悪いですけれども、非常に簡単にアクセスすることができるということでございます。したがって、これがゲートウエーになっている可能性が非常に多うございまして、これを取り締まる法律、先ほど福井先生からもありましたけれども、白黒でいうと、グレーなんですね。今までは、わからなかった、はっきりしていなかったという部分があります。今回これを黒にしていただくことによって、我々としては非常に実効性が高まるというふうに思っております。
法が施行された暁には、もちろん、リーチサイトに対して警告をします、何回も警告します、それでもやめないものにつきましては、警察庁に御相談をさせていただきまして、摘発をしていただきたいというふうに考えている次第でございます。
以上です。
○堀内参考人 我々も、権利者側としては、今回のリーチサイト規制というのは大いに期待をしております。
冒頭のCODAの資料にもありましたように、リーチサイトの運営者は堂々と、我々は合法的なサービスだ、こういうことをうたって、我々から言っても聞く耳を持たないというのが今まででしたけれども、今回の法整備が整えば、こういうことにも有効に対抗していく強力な武器になるというふうに思って期待をしております。
以上です。
○馳委員 ここで一点、先ほども福井先生も御懸念だったと思いますが、海外サーバーにおける対応ですね。やはり手続に時間がかかってしまう。また、一人一人の権利者は、残念ながら法的な背景を持ち得ていないわけでありますから、どこにどう対応を求めていくのか。また、警察等の対応も海外との連携が求められると思っています。
ここら辺の実効性を高めるという意味で、今後どういうふうな施策が期待されると思うか、福井先生にお聞きしたいと思います。
○福井参考人 ありがとうございます。
まず考えられる施策としては、先ほどもお話をいたしましたけれども、実は、産業財産権と異なりまして、個社の対策に対して費用助成の制度がないんですね。産業財産権については、特許庁の中小企業等海外侵害対策支援事業と言われるものがございまして、個別案件も助成されている。しかし、著作権の個別の侵害案件はこの対象になっていないのですね。
確かに、CODAさんのような組織的な対応がまずは一義的に重要であることは言うまでもないわけですけれども、悪質なものになれば、個社の対応がやはり最後の生命線になってきます。こうした助成制度を取り入れていくこと、これをまずはぜひ御検討いただければというふうに思うところであります。
それから、海賊版のサイトリスト、これを国際的にも共有化するような試みは政府にもぜひ考えていただきたいと思います。つまり、国の中でここが巣窟だというところはかなりもう特定されております。先ほど名前が挙がった以外でも、具体名を挙げればベトナムとかオランダとか、ここというような常連の国というのはあるわけですね。そういう国に対して国際的な包囲網をつくっていく。これも、書かれた条約などよりも、そういう現場の情報交換が重要になることというのは多いと思います。
幾つかほかにもありますが、まずはここまでといたします。
○馳委員 次に、第三十条の一項四号、三十条の二、ダウンロードの違法化についてこの改正案で定めておりますが、この課題点を挙げるとすれば那辺にあるのか、このことについて福井参考人にお伺いしたいと思います。
○福井参考人 もちろん、これは、大変な議論の末に関係者がぎりぎりの努力で妥結に至ったものですから、利用者にとっても権利者にとっても百点ではないわけであります。しかし、一方にとって百点の制度というのは、他方にとって必ず懸念が残りますから、双方にとってぎりぎり我慢できる、それでいながら海賊版の悪質なダウンロードを抑え込めるという制度である点で、私は評価をしております。
が、一点、ずっと残っている心残りがあります。それは、余りに多くの懸念に応えようとした結果、ごらんのとおり、なかなか長い条文になってしまったということであります。これはリーチサイトもそうなのですが、著作権法は今や万人のルールですから、万人が読んですぐわかることが重要です。その点では、長いのをつくっちゃったなという思いは、かかわった多くの人に残っているかもしれません。
しかし、今回は、長くすることで人々の安心材料をふやそうとしたものですから、これはしようがなかったかなと。あとは、せめて正当な利用が萎縮しないように、人々が正しくこのルールを理解できるように十分な説明、情報発信を行っていくべきではないかなというふうに思っております。
○馳委員 三点目としての質問をいたしますが、いわゆるポストコロナ時代の著作権制度として、いわゆる正規版を今後流通促進させていくことこそが、本来、権利者や権利者団体の利益につながり、それが好循環として創作者の意欲につながっていくもの、こういうふうに考えております。
私も、この著作権法改正は、当選以来二十五年間、大体十回以上、法改正に取り組ませていただきました。なかなか、どんどん片仮名が出てくるので覚え切れませんし、条文も、片仮名を使えばいいのに日本語が多過ぎてよく理解できないところも正直ありますが。
ただ、今後、まさしく、ポストコロナということは、オンライン社会、デジタル社会に応えていくためには著作権の正当な管理が行われていかなければならないし、その上で、国立国会図書館などでも、ジャパンサーチ、このデジタルアーカイブの活用などを進めておりますが、正直言って、私たちの努力が足りず予算措置が少ないのか、なかなか進んできていないようにも、正直反省しております。
むしろ我々にハッパをかける意味で、このジャパンサーチを軸としてデジタルアーカイブをより一層推進していく社会、そのためにどういうことが必要なのか、そういった考えを福井先生の方からお伺いしたいと思います。
○福井参考人 ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおり、日本でのデジタルアーカイブの拠点はジャパンサーチであります。これは何の影響、刺激を受けたかといえば、先生方も御存じのとおり、EUの巨大電子博物館、ユーロピアーナ、これの影響を受けています。
これは、人々の生きたあかしである文化の所産、さまざまなコンテンツを人々に届ける、そのこと自体の喜びももちろんではありますが、グーグルなど巨大プラットフォームへの対抗軸という大きな経済戦略でもあるわけです。
その上では、多くのコンテンツが既に権利処理が済んで、人々が無償、あるいは場合によっては簡単な課金によってそれらのコンテンツを楽しめるようになっているわけですが、日本のジャパンサーチは、国会図書館が中心となったポータル、いわば巨大電子博物館の萌芽になり得るものですけれども、今のところは権利情報、作品情報が中心で、権利処理の済んだコンテンツが見られるという形にはまだまだなっていないのですね。
例えば、EUは、こうしたデジタルアーカイブを支えるための新著作権ルールを最近導入いたしました。そこでは、特に絶版のように市場では既に流通していない作品、これが実を言うと過去作品では大半なんですが、これについては、非営利のデジタルアーカイブでは権利処理なしに収録、公開して構わない、ただし、権利者や出版社がやめてくれと言ったときにはそれは直ちに停止するという、オプトアウトと言われる、まず載せて構わないという制度、これを取り入れた新著作権ルールです。
我が国でも、こうした、絶版資料の活用のために、オプトアウト制度を取り入れた新たな著作権ルール、これを取り入れていくことは重要かなというふうに思います。
これと関連して、権利者不明問題についての対策も必要なんですが、これについてはまた御質問があればということにいたしたいと思います。
○馳委員 そこで、その権利者不明問題でありまして、文化庁の利用裁定制度は本当に使いやすいものになっているのかどうか。制度はあるものの、使い勝手が悪ければ、権利者不明問題のところがいわゆるボトルネックになってしまいます。この辺についてのお考えや今後の課題等があれば、福井先生にお伺いしたいと思います。
○福井参考人 まさに、著作権が残っているであろうと思われる過去のあらゆる作品、資料のうちで、約半数までは、捜しても捜しても権利者が見つからない、いわゆるオーファン作品であるというのが国内外の調査結果です。
これらは、許可のとりようがない、本当に胸の痛む作品群なわけですけれども、それについては、文化庁が利用裁定というかわりの許諾を出してくれる制度があります。これは随分と制度の改善も進んでいるのですが、なお、率直に言えば、大型プロジェクト以外では使いにくい制度ということが言えようかと思います。
期間が、申請の準備、権利者を捜して捜して捜して、そのことを納得してもらってという準備も含めて、二カ月ぐらい利用開始まで恐らくかかってしまうと思うんですが、この期間も負担です。
しかし、何より今最大のボトルネックになっているのは、事前の供託制度です。つまり、将来、万一権利者があらわれたときのために、事前に利用料を今のうちから算出して、それを国に供託せよという制度なんですね。今、自治体や独法など一部だけ対象から除かれていますが、残りの民間団体はみんなこれをやらなきゃいけない。相手がいれば、連絡をとって、済みません、今回は非営利のデジタルアーカイブなので、ただにしてくださいという話もできるかもしれないけれども、相手がいないときに、一体幾らが正当な対価なのか、どう算出し、文化庁を説得するか。
しかし、そうやって納めたお金は、権利者が出現する率は一%程度ですから、ほぼそのまま埋蔵金になります。これはもう事後の請求制度に切りかえるのが正しいことではないかなというふうに思うわけです。
以上です。
○馳委員 事後の請求制度をとるとして、その事後の請求制度で全て丸くおさまると考えてよろしいんですか、福井先生。
○福井参考人 一定の利用については、もはや補償金を事後に請求したところで、余りに微々たる金額で振り込み手数料の方が高いということに間違いなくなりますので、一定の小規模、非営利利用についてはこうした利用料は不要ということも考えるべきであろうし、ただ、ほとんどあらわれませんので、事後請求にしたとしても現場にとっては大きな障害にはならないだろうと思います。
○馳委員 五点目。またコロナ問題に関連しますけれども、実は、オンライン教育の必要性が高まっておりまして、先日は、今年度の補償金をゼロとするということで、広くオンライン講義に著作物を利用できるという三十五条改正が前倒しで施行されました。この制度について御意見があれば伺いたい。福井先生に質問いたします。
○福井参考人 最後に記載いたしましたが、重要性では他の問題に全く劣るところではないと思います。
今の学生たちの苦難を思うと、教育の一端を担う者として、学校にも行けず、学費を払い、バイトもない、その学生たちをどう国が支援できるのか真剣に考えなければいけないそのときに、オンライン教育で著作物を利用することが許諾なく可能になった。それは、本来は出版社あるいはクリエーターに対する補償金を伴う制度でした。それは、出版社やクリエーターたちの権利なのです。しかし、この早期施行のために、出版社、クリエーターは今年度の補償金を不要とするという英断を下しました。
私は、そのことに敬意を表するものですが、本来は、コロナ禍で収入がなくなってしまったクリエーターに、なぜ対価を返上させているんですか、それは国が支えるべきものだった。これから先も、この補償金が払えない自治体が出てきて、じゃ、補償金が払えないからオンライン教育で資料を使うのはやめようとなったら、どうしますか、その教育格差は。
これは、国が追加の予算をもって、自治体への負担をさせるのではなく支えていくべき補償金ではないかというふうに私は思うのです。また、そこを充実させなければ、海外の教育機関に学生をとられるだけです。こんなふうに思います。
○馳委員 実は、私ども、与野党協力してGIGAスクール構想を推進してまいりましたが、教育における権利の利用に当たって、本当に今回の英断は権利者団体に心から敬意を表するものでありますが、これを放置しておいてはなりません。
改めて、ここは一つの政治課題があるということを私からも申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○橘委員長 次に、城井崇君。
○城井委員 国民民主党の城井崇です。
後藤参考人、堀内参考人、そして福井参考人、大変お忙しい中、当委員会にお越しいただきましてありがとうございます。私どもからもお礼を申し上げたいと思います。
きょういただきました意見陳述に対しまして、一つ一つお伺いをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
まず冒頭、堀内参考人に、一つ出版界の立場、そして今回は漫画家を始めとしたクリエーターの方の立場も代表してということで伺っておりますので、その点を含めてお伺いしたいと思います。
先ほどより、意見陳述などでも、今回の法律案が成立をいたしますとできる対策の効果などを含めて、これまでの期待値も含めてお話しいただいたかと思いますが、後ほどほかの方にも伺うんですが、必ずしも百点満点ということではないのではないかというふうに思っています。
お立場というところからで構わないんですが、今回の法律案による対策によって足りないところがあるとすればどこか、今後どのような追加の対策を期待したいかという点がありましたら教えてください。
○堀内参考人 今回の法改正が成立すれば相当な効果があるというように思っております。
ただ、法律だけではなく、先ほどCODAの後藤参考人から、それから私もお話ししましたけれども、私ども当事者がやらなければいけないこともたくさんございます。既に、資料にあるかと思いますけれども、さまざまな取組をやってまいりました。これを一層強化する。それから、法改正の附則にもございますように、普及啓発、教育、こういうことも、行政それから民間の我々当事者もしっかりやっていく。
こういうことをあわせて総合的な取組をやっていくことで、法改正によって全てが解決するというわけではございませんけれども、こういう法律が整えば相当な効果がある。その上で、我々も、今まででき得る限り、さらには、何か新しい取組があれば更にそれを進めていく。そういうことがあわせてあって相当な効果を生むということで、百点にそれがなるかどうかは、まずやってみてというように思っております。
○城井委員 続いて、後藤参考人にお伺いいたします。
きょうの意見陳述でも、これまでのCODAにおけるさまざまな取組について御紹介をいただきました。その中でも、例えば海賊版のサイトに対する広告出稿についての抑制の取組などの話もございましたけれども、この対策が十分かという点について、私としては問題意識を持っています。いわゆる要請、自主規制といったことでは不十分ではないか、結局抜け穴が残るのではないかということを心配しておりまして、この対策を更に強化する必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、この点について後藤参考人の御意見をお聞かせいただけますか。
○後藤参考人 御質問ありがとうございます。
広告対策でございますけれども、広告事業三団体とCODAで話合いをしておりまして、先ほども申したように、CODAは、警告してもやめない悪質なサイトをリストアップしています。これはブラックリストですね。それを共有しまして、そのURLには広告を載せないでくださいということでお願いし、三団体の方も了解をしてくれまして、加盟傘下の企業にそれを通達するということで、おかげさまで、広告が載るということは非常に低減しております。これは非常にいい例かなというふうに思っています。
ただ、御指摘のように問題もございまして、やはり、とはいえ広告が載ってしまう場合があるということでございます。さらには、三団体以外のアウトサイダーに広告が載ってしまうということがございます。
どうしても広告が載ってしまうというイタチごっこの感はありますが、アウトサイダーをどうするのかということは対応していきたいなというふうに思っておりまして、三団体の皆様とも、アウトサイダー、どこが大きいアウトサイダーなのかということも情報共有しつつ、特定企業に申入れ等をしていきたいというふうに考えている次第です。
以上です。
○城井委員 ありがとうございます。
おっしゃるとおりでして、アウトサイダーに対する対策が刺さらないと、結局、我が国で手が届くところだけで対策をしても抜け穴が残ってしまうのではないかというふうに私自身も考えています。
そこで、後藤参考人と福井参考人にそれぞれ同じ質問をしたいというふうに思いますけれども、いわゆるアウトサイダー、これは国家に限らないというふうに思いますけれども、国家ないしは企業ということかと思いますが、この法案で行う規制に対して協力的ではない国があり、そして、法律の実効性が担保されないのではないかという懸念がある。きょうのお話ですと、オフショアホスティングや防弾ホスティングもそうですし、レジストラーの問題も指摘がありましたけれども、こうした部分について懸念があるということ。
本来ですと、どういう対策をすべきか、民間の側の対策もあると思いますけれども、主には国家対国家の部分になるのではないかというふうに考えておりますが、この点、それぞれ御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
○後藤参考人 まず、御質問の一点目でありますが、先ほどブラックリストの共有ということを言いました。それは、日本国内でなくて、海外ともやっております。海外では、IWLといいます、インフリンジメント・ウエブサイト・リストということで、悪質なリストを共有しましょうということで、IWLのいわゆる地域枠組みというのがかなりできています。我々としては、香港IWLにも加盟しています。それと、台湾のIWLにも加盟しています。それで、三地域で悪質広告を載せないという形をとっています。
また、進んでいるのはイギリスでございまして、イギリスは、ロンドン市警の中に知財ユニットというのがございまして、そこが先駆的な働きをしておりまして、我々と定期協議もいつもしているところでございます。
それと、あとWIPOですね。WIPOの方でこのIWLの情報を共有しようということで、昨年からお話がございまして、現在、私どももお話合いに参加しているところであります。ただ、定義が若干違いますものですから、その辺の調整をしないといけないというふうに思っております。
それと、次に海賊版全体の話でありますが、やはり国の差というのは非常に多うございます。
おっしゃいますように、今回法律が施行されれば、まず日本国内で広報啓発をして、この法律を知ってもらう、国民に広く知ってもらう。それでもやめない場合は警告する。個々に警告をしていきます。それでもやめない場合は、警察庁にお願いして都道府県警察で事件検挙をしてもらうということになると、多分、国内ではすぐなくなると思うんです。
問題は、そうなると主戦場は海外に移ってくるということでございまして、この点をどうするか。ICPOルートでの照会、二国間共助条約での照会等々ありますが、御承知のように、著作権侵害の場合はなかなかプライオリティーが低くて、それが優先順位が上がるということはございません。今回の漫画村がフィリピンで検挙されましたけれども、これは非常にリーディングケースだと私は思っています。これを今後、広く太くしていただきたい。国際連携。
それで、先ほど福井先生のお話もありましたけれども、レベルの低い国に対してはそれなりの指導をするということも必要かと思います。CODAとしましても、文化庁からの支援を頂戴しまして、東南アジアの執行機関の皆様に、トレーニングセミナーということでオンライン侵害の対策のあり方等々をしているところでございますけれども、それをもっと各国、地域に多層的にやっていく。さらには、国、政府としても、しっかりとその辺の教育、申入れ、場合によっては厳しい申入れもしていただきたいというふうに思っている次第でございます。
以上でございます。
○福井参考人 ありがとうございました。
大きくは、今、後藤参考人のお話に同意するところであります。
それにつけ加えていくとするならば、先ほども少し御紹介させていただきましたが、民間での権利行使というのは、やはり最後はそこに尽きるわけでありますね、民間個社での権利行使。
これについて、産業財産権では、例えば、海外で冒認商標と言われる、有名な作品名やブランド名が乗っ取られてしまった商標登録に対しては、国がしっかり助成をして、その取消し、あるいは紛争の解決を支える制度は既にあるわけです。では、なぜ海賊版に対してはそれがないのか、著作権に対してはそれがないのかといえば、ただないだけなんだと思うんですね。これは早急にぜひ御検討いただけないかというふうに思うところです。
現在は、何とか、権利者の有志連合でそういう個社の対応もしていますが、中小は無理です。時々、武勇伝のようなお話がネットメディアをにぎわすようなことはありますが、ほとんどの会社は間違いなく泣き寝入り状態です。これが一点。
二点目は、サイトリストの共有化、海賊版サイトリストの国際的な共有化ということを先ほど申し上げましたが、そういうものをどんどんと輪を広げていくこと、それによって包囲網をつくっていくこと、これも重要だというふうに思います。
加えて言いますと、先ほどのレジストラーですね、悪質なレジストラー。
ICANNはドメイン名を各サイトに振り分ける団体であり、インターネットという超国家的な存在にとっては相当大きな権威なんです。ところが、このICANNルールは、要するに守られていません。少なくとも、海賊版などを支援する、違法サイトを支援する多くの事業者は、そしてそれを支えるレジストラーは、それを守っていません。これは、年次会議でICANNポリシーの見直しというのは行われていますから、政府からも後押しをして、ちゃんと守りましょうよという働きかけをしていくことは大事かなというふうに思います。
四つ目です。プロバイダー責任制限法。本当は海外の法令もあわせてと言いたいところなんですが、まずは、国内のプロバイダー責任制限法というものがあります。
いわゆるプラットフォームなどのネット上の場を提供する事業者は、いろいろなコンテンツがアップロードされてきても、どれが侵害物かわからないから、侵害物がアップロードされただけでプラットフォームまで権利侵害の責任を負わされては大変です。とてもではないけれどもIT社会はやっていけませんので、上がってきたコンテンツが侵害物だよという通知を受けたら削除すればいいよというような、プロバイダーの責任を制限する法律があります。
この中で、発信者情報の開示制度というのがあります。権利侵害情報を発信する、要するに、海賊版サイトの運営者などの身元の情報を、プライバシーを害さないように一定のセーフガード、手続で開示してもらうという手続なんですが、現状、任意での開示が非常に時間がかかるということ、消極的であるということと、もう一つは、省令で開示情報が指定されているのですが、ちょっと時代にそぐわなくなってきて、抜け道が多いということが指摘されています。
例えば、投稿時のIPアドレスは開示対象になっているんですが、投稿時のIPアドレスというのは自由に変えられるので、実はそのIPアドレスがわかってもしようがないということがあるんですね。ログイン時のIPアドレスを知りたい、ただ、それは省令で対象になっていないとか、こういう細かい点が実は積み重なって、権利者の身元を判明させるための決定打になっていきます。
ということで、プロバイダー責任制限法、現在、見直しがちょうど公開で議論され始めたところだと思いますが、プライバシーに配慮しつつも、適時な見直しは必要かなというふうに思います。
最後、さまざまな海賊版対策のノウハウが国内専門家の間で共有されておりません。よって、このセミナー、人材育成、これが非常に重要かなというふうに思います。
以上です。
○城井委員 ありがとうございます。
今の福井参考人のお話を受けて、後藤参考人に一つ確認をしたいんです。
海外でも著作権を守っていく取組を国がやらなきゃいけない部分もあると思いますが、そうしたサイトリストの公開など、仕組みとして防いでいく手だての打ち方はあると思うんですけれども、例えば、海外での著作権侵害の対策助成がないことで、自力で海賊版の対策を充実させるのが難しい中小規模の会社などに対して国がノウハウ提供や経費助成をする必要があるというふうに考えているんですが、例えば業界全体で、業界全体を守っていくために、そうした規模が限られたところについて支援をしていくということができるか、現実的かという点について御意見をいただきたいと思うんですが、お願いできますか。
○後藤参考人 あくまで私見でございますけれども、著作権侵害、非常に多岐にわたっております。それに全て対応するという形になりますと、CODAの二十二名じゃとても対応し切れません。やはりそれは、情報の出口をいかに集約して効率的に取り入れていくかという方法が必要だと思っております。これについてはCODAの課題だというふうに思っています。
経済産業省、文化庁、総務省、警察庁等々から支援をいただいているところではございますけれども、とはいえ、なかなかその辺の、全著作権侵害それぞれに対応するというところまでのマンパワー、蓄積、システムがないというのが現状でございます。
○城井委員 やはり国が中心となって取り組むべきだという点を確認させていただけたかと思います。ありがとうございます。
福井参考人にもう一点お伺いさせてください。
今回の法律案によって規制をかけるいわゆるインターネット関係の技術は海賊版の権利侵害について全て網羅ができているかという点から見ますと、例えば、ダウンロードについては対象であるけれども、そこから外れるものがあるのではないか。例えば、ストリーミング技術自体について、今回直接触れていないわけでありますが、リーチサイトを通じてストリーミングにも手をかけるという形をとっていて、ストリーミング技術そのものには言及をしていないという点ですとか、いわゆるオンラインリーディング型についての規制をどのように見るかという点も含めて、今回規制対象に入っていないのではないかとされる技術の部分について取扱いをどうすべきかという点について、御意見をいただけますでしょうか。
○福井参考人 ありがとうございます。
とても重要な質問であろうというふうに思います。すぐに十全なお答えはできませんが、二つのポイントでお答えをさせていただきます。
まず一つ目は、これが全てなわけでも、これで完全というわけではありませんが、今回の著作権法改正案の中には一部その対応がされております。それは、百十三条七項などに関連するアクセスコントロールと言われる部分ですね。
従来から、こうしたアクセス制御がされているものに対するいわば不正なアクセスは、一定の場合にはみなし侵害あるいは刑事罰というような対応がされてきたわけですけれども、今回、シリアルコードを送信するようなタイプの、従来よりもう一つ進化したような配信のサービスに対して、あるいはゲーム等のサービスに対しての不正アクセスもこうした規制の対象になるような改正が入っております。これが一点目。ただし、これは制度的にはごく一部の問題でありますので、今後も議論を続けていくということは御指摘のとおりかと思います。
それから、もう一点。非常に重要になってくるのはプラットフォームの役割です。もはや、こうしたさまざまなコンテンツの流れを権利者と、時には裁判所、警察、この力だけで抑え込むのは、スピード的にもネットの本質論からも到底不可能であります。そこではプラットフォームが大きな場としての役割も果たしているし、何かを抑え込むときに実効的な手段をとり得るのも彼らです。
よって、彼らがその力を正しく使うこと、彼らなしの社会はもう考えられないけれども、でも、その力を正しく使い、我々が巨大プラットフォームたちと幸福に共存できること、これが非常に重要です。そのために、業界でルールをつくってもらうが、政府もそれを見守らせていただく、そういう共同規制のような考え方が、今後はストリーミングサービスその他新しい著作物の流通の中にあって重要な鍵になっていくだろうというふうに思います。
以上です。
○城井委員 最後に、福井参考人にもう一問だけお伺いいたします。
新型コロナウイルスで苦しむクリエーターは大変多いわけでありますけれども、先ほど馳委員の質問でもありましたように、そんな中、オンライン教育にかかわる部分について、補償金はゼロでというような対応だった。こうした部分も含めて、やはり文化芸術全体、クリエーターなどに対しての支援を国は強めるべきだというふうに思っています。
今、公演などを休んでいるけれども、その補償が十分に行き届かないという声がたくさんございますし、そうした文化芸術の担い手、クリエーターが倒れないような支援、今やるとすれば何かという点を最後にお伺いしたいと思います。
○福井参考人 ありがとうございます。
予想していない御質問でしたが、とても大事なことを聞いていただいたと思います。
ライブイベント支援、私も取り組んでおりますが、まさに危機的な状況です。御存じのとおり、多くのライブイベントは、他の業種よりも六週間以上早く、二月二十六日、突然とも言える要請を受けて、これに全面的に協力し、全てのコンサートあるいは舞台公演等は中止をいたしました。
これらは、それまでの公演準備にかけられた全経費が一瞬にして損失に変わる瞬間です。チケット代は全て払戻しをしておりますので、全てが損失になり、最近行った緊急調査によれば、我が国を代表するような演劇団体十六団体で五月末までで延べで約三千ステージが中止され、純損失が百六十億円です。事業継続は困難などの回答が四割以上を占めました。大変な状況です。
しかし、今のところ、正面からの補償というものは行われません。政府が正面からの補償を行えないことはよく理解しました。しかし、倒産するものは倒産します。もし日本を代表するようなライブイベントの団体が潰れれば、それは必ずや、中小、フリーランス、全てに波及します。これを放置して、それをコンテンツ立国と私は呼ばないと思うんですね。
彼らには緊急の支援が必要です。今現在、潰れてしまった公演の後始末のために奔走し、資金繰りのために奔走し、秋からの再開を信じて公演準備のために奔走している彼らは、休業などできません。よって、雇用調整助成金は一銭もおりていません。その十億単位の損失は、百万、二百万の持続化給付金では残念ながら焼け石に水です。これを何とか救ってあげていただきたい。必ず、人々が立ち直って、コロナ後の社会を築いていくために必要な存在なはずです。
ありがとうございます。
○城井委員 終わります。ありがとうございました。
○橘委員長 次に、浮島智子君。
○浮島委員 公明党の浮島智子です。よろしくお願いいたします。
本日は、後藤参考人、堀内参考人、そして福井参考人におかれましては、お越しいただきましたこと、心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。大変にありがとうございます。
私の方からは、まず後藤参考人に、ここ数年で海賊版がより悪質そして巧妙化していると伺っておりますけれども、長年海賊版対策に携わってこられたお立場から、海賊版の実態、権利行使上の課題についてお聞きをさせていただきたいと思います。
また、堀内参考人には、まず、海賊版被害により出版社そして漫画家などのクリエーターにどのような悪影響が生じているのか。先ほど赤松先生のお話等もございましたけれども、より具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。
福井参考人におかれましては、海賊版サイトに対する権利行使の実務を担当されているお立場から、昨今の海賊版の実態、そして権利行使上の課題についてお伺いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○後藤参考人 CODAといたしましては、二〇〇五年一月から二〇二〇年三月までの間、海外での共同エンフォースメントといたしまして、取締りとして一万七千二百十八件、そして押収海賊版が七百万本、逮捕者が三千七百五十二名ということであります。
この中で、最初の二〇〇五年の当初は、いわゆるフィジカルパイレーツ、物の海賊版ですね、いわゆる海賊版店がいっぱいあったということで、見えました、相手が見えるんですね。それに対して共同エンフォースメントをしました。
例えば、ジブリの作品がいっぱい侵害されているということがあっても、一店舗においてはたかが知れているんですね、ジブリの作品。それが何十軒もあるわけですね。そうすると、ジブリだけじゃだめでありますから、東宝も東映もみんなで告訴しようということで、みんなが一丸になって、権利者が一丸になって共同エンフォースメントというシステムを確立したわけであります。ということで、フィジカルパイレーツにつきましては対応することがだんだん可能になってきました。
ただ、問題は、今後、オンライン状況の環境ということで、先ほどの資料の六ページにお示ししましたが、このような形で、フィジカルからデジタルネットワーク、グローバル化が非常に進行しているということがございます。したがいまして、もう国境がないというのは周知のことでございまして、さらに、今はスマホですから、侵害の主戦場が、お店から、見えないスマホに来ている、オンライン上になっているということで、非常に難しい点がございます。
それと、我々の苦労の一端としてちょっとお話をさせていただきますと、アニチューブというブラジルのオンライン海賊版サイトがありまして、ブラジルに運営者がいまして、サーバーがほかの国、ドメインもほかの国からとっているということで、国際をまたいでおります。ブラジルにおいて運営者が発見できたものですから、二〇一六年の三月に刑事告訴しました。そして、二〇一七年の一月に強制捜査をして、被疑者が十月に起訴されました。ただ、それが逃亡しちゃっているんですね。きょう現在までも犯人を起訴することができないということで、ブラジルですから、非常にお金もかかりました。そのアニチューブというすごく悪質な海賊版サイトでしたので、一生懸命やって摘発したにもかかわらず、そうやって被疑者が逃げてしまう、罰することができないというような事例もあります。
ということで、今後、海外の問題、共同エンフォースメント、非常に難しい問題が出てくると思いますけれども、先ほど来あるように、国の支援を受けながら対応をしてまいりたいというふうに思っております。
○堀内参考人 御質問は、出版社それから漫画家等への影響はどういうものかということだと思います。
まず、出版社にとっては、経営的に大きな損失をこうむって大きなダメージを受けているわけですけれども、漫画の市場ということで申し上げますと、紙の漫画雑誌、それから作品ごとにまとまった単行本、これらを合わせて昨年で年間二千五百億円ぐらいですが、ここのところ、コミックの電子配信というのがどんどんふえてきまして、これが二千五百億円ぐらい、合わせて五千億円なんです、紙とデジタルの市場。このうち、海賊版というのがデジタルの方で大きな悪影響を及ぼして、成長するものが非常に鈍化している、こういうようなことで、これは出版社にとっても漫画家にとっても大きな影響を及ぼしています。
それと、先ほどお話ししました漫画村が、非常に多くの人たちが、ユーザーが訪れているときには、電子配信だけではなくてレンタルブック市場というのがあるんですね、貸し本ですけれども、主に漫画ですけれども、レンタルブックの協会からは、漫画村が急激に伸びてきてから貸出しが二〇%ぐらい減っていると。また、書店店頭でもただで読んじゃうわけですから、紙にも影響を及ぼしているということで、事電子だけじゃなくて紙の方の市場にも大きな影響を及ぼしているということで、もちろん出版社は大きな影響を受けています。
もちろん、作家の方々にも、入るべきものが入らないで、ただで読まれていますから、大きな経済的な影響を及ぼしている。とりわけ、冒頭お話しさせていただきましたように、若い方々は、紙ではなかなか売れないけれども電子だけ出そうという人たちにとっては、もう本当に収入源が断たれるという死活問題でございます。
また、そういうことが続くと、そういう世界に若い方々、才能が集まってこなくなる。これは、今の問題と、将来そういうことが起きる。
そして、これも冒頭で申し上げましたけれども、五千億というのが大きいか小さいかはともかく、そういう漫画のコンテンツが、アニメになって、映画になって、ドラマになって、ゲームになって、グッズになってということで、まさに日本のコンテンツ産業を支えている基盤。日本のコンテンツ産業というのは十一、二兆円と言われています。漫画の五千億、ゲームの国内の一兆二千億、それからアニメ制作で二千億ぐらいで、漫画とアニメでほぼ二兆円、コンテンツ産業の十一、二兆円中の二兆円ですけれども、実はそこに音楽とか映画とかは入っていません。これも漫画由来のものはすごく多いということを考えると、実は漫画だけの問題でなく、全体に及ぼしてくる。その中でも、とりわけそれを送り出している出版社、それから若いクリエーター、若い才能に一番大きな被害をもたらしているということで、本当に深刻な、一刻も早くこれを何とかしなきゃというように思っています。
ありがとうございます。
〔委員長退席、池田(佳)委員長代理着席〕
○福井参考人 ありがとうございます。
海賊版対策の現状と課題というふうにお伺いいたしました。
先ほど来のお話で大分御紹介をさせていただきましたが、巧妙化しているというところを少し補足させていただきます。
こうした海賊版サイト対策は、随分我々もノウハウを身につけてきて高度化してきたという話をしましたが、常に、ここまでこちらが到達すると、向こうがもう一歩先に逃げる。当然だけれども、向こうは情報も持っていますし、こんなことをやってきたなということはすぐに学んでしまいますから、逃げるわけですね。
例えば、こんなことをやります。
余り詳しい話をするとちょっと海賊版側に情報を与えてしまうことになるので、ぼやかした言い方で御勘弁いただきたいんですが、海賊版サイトというのは、側という外側のサイトと、蔵置サーバーといって漫画やアニメ等のデータを置いておくものと、二つが分業で成立しているんですね。
側の方には著作物が載っていないので、側は著作権侵害と言えるか、ちょっと微妙なところがある。そうすると、側は変えずに蔵置サーバーだけどんどんどんどん変えていくわけですね。そうすると、アクセスするユーザーにとっては入り口が一緒だから、今までと変わらずアクセスできちゃうわけです。ドメインを変えるのは確かに厄介なんだけれども、ドメインを変えてくれれば、ユーザーはいっとき迷子になりますから、アクセス数は減るんですね。ところが、側は変えずに蔵置サーバーだけどんどん動かされると、ユーザーにとっては同じなんです。
こちらの手続は、置き場所が変わったから、じゃもう一度申請し直してとか、仮処分の申立てをし直してという話になっちゃうと、とてもじゃないけれども、スピード的には負けるんですね。
こんなふうに、これはもはやかなり知られた手法なのでここで公開させていただきましたが、ちょっとここでは申し上げられない随分と巧妙なものがふえてきています。それへのイタチごっこ。
先方が有利なのは、もはやゼロから漫画をスキャンして全部電子化しなければいけないというものじゃないんですね。現在恐らく、漫画でいえば十万点ものコンテンツは、電子化されたファイルは闇のウエブ上にはもう存在していて、恐らく普通にやりとりされています。そうすると、ある海賊版サイトを潰しても、その十万点もの漫画ファイルは、幾らかのお金を払った別な事業者が瞬く間に手に入れてしまって、そこに自分らも新たにスキャンしたものを例えば一万点加えれば、十一万点の海賊版サイトはあっという間にまた立ち上がるわけです。
こんなふうに、イタチごっこの中、常に対策を進化させ、また各国政府、プラットフォーム、さまざまな通信業界、広告業界、協力体制を構築しながらぎりぎりで抑え込んでいるのが現状ですし、また、当面はそれを続ける以外に打ち出の小づちはないなという感覚を持っています。
以上です。
○浮島委員 ありがとうございます。
続きまして、三人の参考人に同じ質問をさせていただきたいと思いますけれども、今回の法案をどう評価されているかということでございます。
後藤参考人におかれましては、リーチサイト運営行為が今回親告罪とされていたり、ダウンロードの違法化には新たにさまざまな要件が加わっておりますけれども、この実効性の観点からの懸念はないのかということをお伺いさせていただきたいと思います。
また、堀内参考人には、やはりどう評価されているかということでございますけれども、昨年の法案では漫画家の皆様からも慎重な意見が出されておりましたけれども、今回の法案については理解がしっかりと得られているのかということをお伺いさせていただきたいと思います。
また、福井参考人には、どう評価されているかということでございますけれども、海賊版対策といたしまして実効的なものになっているのかということと、あと、ユーザーから示されたさまざまな懸念そして不安にしっかりと対応したものになっているかということをお伺いさせていただきたいと思います。
○後藤参考人 CODAといたしましては、リーチサイト規制につきましては二〇一六年の二月から求めているものでございまして、今回法改正になれば非常に大きなツールになるというふうに思っております。
親告罪の件でございますけれども、非親告罪及び親告罪でありますが、我々権利者からすると、実際上さほど大きな問題は生じません。いわゆる侵害物であるか否か鑑定をして、それに対して、被害届じゃないですけれども、告訴をするというステップは変わりませんので、その辺は懸念はしておりません。
ということで、今回の法律が成立すれば非常に大きなツールになるというふうに思っております。
以上です。
○堀内参考人 お答えします。
まず、今回の法改正案の評価ということでございますけれども、これは先ほども申し上げましたとおり、脱法行為を容易に招かず、そして国民、ユーザーに過度な萎縮効果を生じさせない、この両方がバランスよく並び立った、よくできた法案だというように思っております。
そして、漫画家の皆さんが当初反対だったのではないかということですが、最初の一年半前の文化庁案に対して、漫画家は、ダウンロード規制あるいはリーチサイト規制に反対という趣旨ではなくて、一刻も早い海賊版対策は望んではおりましたけれども、違法コンテンツのダウンロードについて、対象範囲について国民にいろいろな懸念があるということで、もうちょっと慎重にしてもいいんじゃないかという趣旨の声明だったというように記憶しております。
その後、一年以上かけて、出版側と漫画家側が何か外から見ると足並みがそろっていないように見えたということもありましたので、いろいろな話合いをした上で、両者、二月の共同声明そして昨年九月の共同声明と、二度にわたって皆さんに連名でアピールしたのはそういうことでございます。
○福井参考人 御質問ありがとうございます。
一昨年末からのダウンロード違法化論争の中で示された各利用者や専門家の懸念というのは、極めて大きなものがありました。よって、私も、検討会議の委員をというふうに言われたときには、一度、どうか勘弁してくださいとお断りしたほど、これは難しい調整になるなというふうに感じたのでした。
申し上げたとおり、双方にとって百点満点という制度はあり得ません。しかし、その中で寄せられた多くの意見を、検討会議のいわば推進派、慎重派は辛抱強く、忍耐強く議論し、ぎりぎりの妥協点を探り得たように感じています。
こうした懸念へのもう一つの対応として、写り込み対象範囲の拡大ということがありましたので、これも御紹介をしておきましょう。
従来、写り込み許容規定というものが著作権法にはございました。三十条の二です。写真か何かを撮ったときに、後ろに、例えばディズニーランドで写真を撮ったらミッキーマウスさんが写っちゃったとか、そういうような場合にそれを許容する規定なんですが、これは録音、録画、写真撮影にほぼ限られていたわけです。スクリーンショットでウエブ上の何か情報をメモがわりにとるということを今皆さんやるわけですが、そのときそこに違法アップロードがたまたま入っていたら、これはダウンロードのうちでしょうと。こんなダウンロード違法化なんということをやられたら人々が萎縮してしまうということがとても懸念された。
そこで、こうしたスクリーンショットなども先ほどの写り込み許容規定の中でカバーしていこうということで、録音、録画以外のスクリーンショットや、あるいはみずから描くとか、録音、録画じゃなくて、ゲームをつくるから背景に何か看板を描き込むとか、そういうことも広く、軽微なものであれば許していこうじゃないかという三十条の二の改定ということも行われました。これも安心材料になり得ているかなというふうに思います。
というわけで、お答えは、ぎりぎりの妥協点として、私は評価できるように感じているところです。
○浮島委員 ありがとうございます。
最後に、堀内参考人にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、法案の附則では、関係事業者にも法の適切な運用に当たっての努力をお願いしているところでございますけれども、出版社としてどのような取組を今後進めていくのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
○堀内参考人 お答えします。
出版社、そして著者団体、それから電子配信にかかわる電子書店、電子取次、皆さんに声をかけて、先ほども御紹介しました、よく言われるのは、どれが海賊版なのか、どれが正規版なのか、若い人たちはよくわかりにくいということで、ABJマークというのを制定いたしまして、既に七百サービスぐらいにそれを付与して、どれが正規版かわかりやすくしております。
これは、日本電子出版協会とデジタルコミック協議会というところで共同で運営したんですけれども、こういう法改正の附則というのが案でありましたので、先月にABJを法人化しまして、この正規版マークを普及させると同時に、附則にあります海賊版についての普及啓発、教育活動もかかわる者全体で担っていこうということで、きちっとした団体にして、まず著者団体と出版社と電子取次、電子書店でスタートさせましたけれども、これから更にIT関連の皆さんにもお声をかけて、ここに参加していただいて、ここが海賊版についての普及啓発、教育活動をやるセンターのような役割を果たすように、そういうところに出版社としても中心となって参加をしていきたいというように思っております。
○浮島委員 ありがとうございました。
先ほど城井委員の方からも、文化芸術の件に関して福井参考人の方に御質問等があったところでございますけれども、本当に喫緊の問題だと思っております。
昨日は、自民党と公明党で、文科大臣のところに、五百億ということで支援の要望をさせていただいたところでございますけれども、まだまだそれでも足りないと思っております。しっかり皆さんと力を合わせて守っていくために尽力をしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○池田(佳)委員長代理 次に、畑野君枝君。
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
本日は、後藤健郎参考人、堀内丸恵参考人、福井健策参考人にお越しいただきました。ありがとうございます。
まず、福井参考人に伺います。
著作権は、権利の保護と著作物の利用促進のバランスを考慮することが大切だと思っております。今回の著作権法改正案の中で、いわゆるインターネット上の海賊版対策として、侵害コンテンツのダウンロードの違法化、刑罰化を伴うことが盛り込まれております。バランスを考慮するという点からどのようにお考えになっていらっしゃるか、まず伺いたいと思います。
○福井参考人 ありがとうございます。
おっしゃるとおり、著作権の生命線は、新しい作品を生み出し続ける創作者を保護すること、つまり、フリーライドから守って、収入の糧を、生活の糧を守ってやること、この保護と、それから、それを利用する人々の中には、既存の作品を利用して新たな創作を行うという我々人類がずっと行ってきた営みも含まれているわけですけれども、これも含めた利用を過度に制約しない又は萎縮させない、この利用、この両者のバランス、ここにあります。
このバランスラインが保護に寄り過ぎれば、それは新たなコンテンツの生まれない暗黒の社会になりかねませんし、また、このバランスが余りに自由利用に寄り過ぎれば、少なくとも、プロのクリエーターが生きていくことは困難な社会になってしまいます。いわゆるぱくり天国になってしまいます。だから、そのバランスラインを我々はいつも、技術やビジネスの変化の中で、ぎりぎりで探り続けなければいけないものです。
私は、例えば、権利者の方には余り評判のよろしくないフェアユースと言われる規定の推進論者、少なくとも賛成です。それから、保護期間を延長しようというときには、反対陣営の代表格というふうに恐らく見られただろうと思います。
しかし、海賊版に対してシンパシーを感じたことはただの一度もございません。これは卑劣な行為です。クリエーターの生活の糧を奪う最も簡単な方法であり、しかも、正規版を充実させるのはもちろんなんですけれども、もちろんその努力は続けなければいけないんですけれども、正規版をどんなに充実させても、理論上、海賊版との競争には勝てません。なぜならば、創作のためのコストを負担していないからです。創作のコストを負担していなくて、あと、同じようにビジネス努力をすれば、負担していない方が勝つに決まっています。だから、海賊版は抑え込まなければならない。大事な自由を守るためにも、悪質な海賊版は抑え込まなければいけない。
そのために、私的な複製という、とても大事な自由なんだけれども、我々が守り続けなければいけない自由なんだけれども、でも、悪質な海賊版アップロードと知りながらそれをダウンロードするのはさすがに難しいんじゃないか。それを規制しようというのがこのダウンロード違法化。また、リンクの自由というのは大事なんだけれども、海賊版だけを指し示して、リンクをプロで行うことによって収入を得る、これはさすがにやり過ぎじゃないか。だから、悪質なリーチサイト、リーチアプリを規制しようじゃないか、それが今回の改正法案かと思います。
そこには多くの懸念も、少なくともダウンロード違法化についてはかつてあったところですが、ぎりぎり、何とかバランスをとり、妥結点を探していったのが今回の改正法案かなというふうに感じておりますので、私は評価をしております。
この段階を過ぎて、ポストコロナのさらなる著作権の議論をぜひ進めていかなければいけないなと思っているところです。
以上です。
〔池田(佳)委員長代理退席、委員長着席〕
○畑野委員 福井参考人に引き続き伺いたいんですけれども、その議論が大事だと思うんですね、私も。
それで、侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会にもお出になられたということなので、伺いたいんですが、その議論の中で、著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定する民事、刑事の規定を条文に盛り込むことについて、意見の集約がされなかったと伺っております。
どんな議論だったのかということと、最終的に盛り込まれたのは、「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」という文言になったということです。この立証責任を誰に求めるかということの議論だったと思います。これについてはいろいろな意見があって、例えば、ユーザーに負わせるのはどうか、利用促進の視点が不十分じゃないかというような指摘もあったと思いますが、こういう議論についてどのようにお考えになりますでしょうか。また、どのように行われてきたのか伺います。
○福井参考人 おっしゃるとおり、ここは割れました。後藤参考人などとの熱い論争を思い出すわけでありますけれども。
私は、不当に害する場合という条件を含めることを意見として持っておりました。これは、一昨年の最初のダウンロード違法化論争の後、中山信弘東大名誉教授など百名以上の専門家たちが共同で発した意見の中にも、パロディー、二次創作を除くということとともに含まれていた意見でもありました。
ただ、一方で、権利者の方々には御懸念も非常に強いところでした。なぜならば、利益を不当に害する場合という条件をつけますと、その立証責任というのは権利者側に負わされることになるのですが、まあそれは何とかなる。なぜならば、このダウンロード違法化は、ありていに言えば、実際の摘発をそれほど予想している制度ではありません。前回の映像、音楽の場合も摘発例は一件もなく、つまり、教育的効果を狙った、抑止力を狙った制度ということが言えます。
そのために、その立証責任を権利者側が負うのは、まあ何とかなるのかもしれないが、これはむしろ後藤参考人にみずからお答えいただいた方がいいのかもしれませんが、私の理解では、それを、本当に悪質な存在である海賊版サイトこそ逆手にとるんじゃないかということの御心配だったような気がする。実際の摘発が必ずしも想定されない例であればこそ、それを使って変な宣伝広告をされてしまうと困る。海賊版というのはいわば試し読みでしょう、試し読みをみんなして、気に入ったら正規版を買えばいいじゃないですか、だから海賊版を試し読みするのは権利者の利益を不当に害しないよというようなことを実際にサイト上で大きくうたう海賊版サイトは確かにいましたので、そういうことを、今後、法律上もそうですよというようなうたい方をされると心配だということを恐らく御懸念された。
一方で、権利者の利益を不当に害しないケースというのは、でも、あり得るじゃないかと。例えば、研究目的で何か論文をダウンロードせざるを得ないケースがあって、ある論文を批判するために、Bという論文がこれを無断転載してネットに上げているというのは、まあまあ見られることだと思うんですけれども、それを検証するためには、両方ダウンロードしないと検証できない。これは違法アップロードだよね、知りながらダウンロードしているからダウンロード違法化の対象になるよねというようなことが懸念例として政府資料にも載っていると思いますが、確かにこういう研究目的の場合は萎縮は心配です。
そこで、かなり意見が割れた結果、では、不当に害しない特段の事情がある場合だったらまとめられるかということで、折衷案というものが出てきたんですね。立証責任を転換する。立証責任を転換するといっても、まあ摘発はそう考えられることではないので、安心材料としてはかなりきくだろう。一方で、特段の事情と書くことで、そういう居直りというのは、悪用は防げるんじゃないかという両方の期待感で折衷案が出て、何とか折衷案でまとまればよかったのですが、両論併記という形。つまり、こんなものは入れないという意見と、折衷案はセーフガードで何とか入れようじゃないかという意見の両論併記という形で結論は出ました。
その後、立法化の作業の中で、政府や与党内において、安心材料はやはり入れていこうということで、この折衷案がとられていったように理解しています。
私は、この妥協案が、まあ、ぎりぎりあり得たところかなというふうに思っているところであります。
○畑野委員 それでは、今、福井参考人から御指名のありました後藤参考人、その当時のことを思い起こしていただいて、一言伺いたいと思います。
○後藤参考人 後藤でございます。
今、福井参考人が申したとおりでございまして、いわゆる不当に害する場合ということになりますと、我々権利者が立証しなきゃいけないというのがまず一点。
それと、先生もおっしゃっていましたけれども、いわゆる逆手にとってそれを喧伝するやつら、やからというのは絶対出てきます。いわゆる抜け穴をついてくるという形です。
先ほどのリーチサイトも、こうやって巧みな言葉を使って喧伝するやからが出てきますので、そうすると、一般消費者としてはますますわからなくなってしまうということで、実効性、最終的には抑止力になりますけれども、それが損なわれるということを私は一番懸念しまして、福井先生とはちょっと話をやり合ったという背景でございます。
以上でございます。
○畑野委員 この検討会の中でも堀内参考人もお話しされたということなんですが、昨年のパブリックコメントの中で、出版広報センターとして、文化庁の当初案について違法となる対象が広いという意見を出されていたというふうに思います。当初案についてどのような懸念がおありだったのか、今回、改正案についてはどのようにお考えか、伺います。
○堀内参考人 当初案、文化庁の一年半ほど前の当初案については、海賊版対策の実効性が上がる、我々としては大変ありがたい案ではありましたけれども、一方で、我々と一緒に、パートナーであります著者の皆さん、あるいは一般ユーザーの皆さんからさまざまな心配というか懸念が起きた。これはインターネットの利用に萎縮を生じさせるんじゃないか、こういうような声も上がりました。
そういうことで、広報センターとしては、その中でもとりわけ漫画家協会、著者の方々、というのは著者なくして我々出版社の活動はありませんので、こういう方々もそういう心配を持っているということであれば、ここについてはやはり考えざるを得ないだろうと。万全な海賊版の実効性だけではなくて、そういう、著者の方を含めた、一般国民、ユーザーの人たちの懸念にも応えた形でなければ法律はきっと前へ進まないだろう、こういうことでそのようなパブリックコメントを出したというように記憶しております。
そして、今回の法律については、そういうスクリーンショットの写り込み、あるいは軽微なものを除く、二次創作、パロディーも除外する、その上で、権利者の利益を不当に害さないと認められる特別な事情がある場合と、こういうことまで加えて、皆さんの懸念を払拭して、萎縮を生じさせないような形で、なおかつ、ぎりぎりのところで海賊版対策の実効性がそれほど低下せずに両方が並び立つ、皆さんが納得できる改正案になったのではないか、こういうふうに思っております。
○畑野委員 三人の参考人の方に伺いたいと思います。
海賊版対策を行う上で、アップロード側の対策を強化する、この点でどのような課題があるのか、また、国への御要望があれば伺いたいと思います。
○後藤参考人 アップロード対策につきましては、国内においては、警察庁の御指導も受けまして、都道府県警察の方でアップローダーの検挙が進んでおりまして、今その捜査体制というか、完備はされておりますので、それが国内におれば検挙できる体制でございます。
問題はやはり海外でございまして、先ほど来申していますように、防弾サーバー等々ございますので、そのアップローダーを見つけるというのは非常にちょっと難しい問題があります。ただ、これも、オンラインプロファイリング等々、アメリカの技術がかなりそういう、ホワイトハッカーですね、そういう人たちが対策を講じている部分もございます。ただ、これには、正直申し上げて、非常にお金がかかる。
基本的なものでちょっと申しますと、日本とアメリカのコンテンツ業界が違うのは、日本はドメスティック、国内深掘りなんですね。アメリカ映画を撮れば、国内が三割、海外で七割もうけるんですね、ということで非常に大きい。あと、もう一つ例を出しますと、ディズニーがあります、アメリカの。映連四社、東宝、東映、松竹、これは四社かかっても全然、もう桁が違うんですね、売上げの桁が。ということで、海外でもうけていますから、海外での侵害も多い。そうすると、それにかける費用も莫大なんですね。
じゃ、日本のコンテンツホルダーはそれができるかということになると、とてもできない。じゃ、少ないけれども共同でやるということで対応している。更に国から支援を受けているという状況でございまして、今後とも、ますます、特にアニメですとか漫画はキラーコンテンツですから、世界で広がっています。特に海賊版も広がっています。ということで対応していくのであれば、これまで以上に政府の支援をいただければ非常にありがたいというふうに思っています。
以上でございます。
○堀内参考人 今の後藤参考人の話と重なりますけれども、国内においては、警察の捜査に協力をして摘発に努めている。ただ、漫画村は今裁判中ですけれども、これの容疑は、「キングダム」という作品と「ワンピース」、両方ともうちの雑誌に掲載している作品なんですが、もう二年以上前から、実は、出版社は告訴もせず何もしていないんじゃないかといろいろ言われていましたけれども、捜査に支障があるといけないのでずっと黙っていましたけれども、二年以上にわたって、地道な、サイバー対策室の皆さんが捜査を、なかなか証拠を押さえるのが、いろいろなところに、海外にまたがっていて、非常に困難な捜査を、二年以上にわたってやっとたどり着いたというようなことで、現行法でももちろんできるんですけれども、非常に捜査が厳しいということがあります。それでも幾つかの摘発はされております。
それから、海外については、またこれも配信中継業者、クラウドフレアというのかな、ここにアメリカで大手出版社四社で共同で提訴して、公的アクションをして、向こうで和解ということになって、実質的な効果は上がったんですけれども、これも今、後藤参考人からあったように、非常に費用もかかる、時間もかかる。大変なことですけれども、的を絞って、皆さんに声をかけて、共同で何社かで一緒にやるとか、そういうようなことをやっております。
以上です。
○福井参考人 ありがとうございます。
既に今のお二人の御指摘と多く重なると思いますけれども、私からは、先ほども御紹介した通信界や広告業界等との協力体制、これについて少し補足をさせていただきます。
こういうものは、やはり、単なる制度だけではちょっと回らないんですね。人間のネットワーク、人間のセーフガードというのがとても大事で、それが最近の即時のSNSの悪質な海賊版アカウントの削除などにも非常に役立っています。
これは完全民民の協力体制で、恐らく政府のお金を一銭も使っていないと思うんですけれども、政府から情報はいただきたいなといつも思っております。
例えば海外とのこういう情報交換のネットワークを今政府は構築しつつありますよということを、例えば意見で、どうですかということを適時に聞いていただく。こちらから逆に、今この辺が問題になっているので、この辺について政府の後押しがあるとやりやすいですというようなこと。もちろん、知財本部や文化庁さんなど、そういう取組はしていただいているところではありますけれども、更に更に官と民が連携すること、これが重要じゃないかなというふうに感じます。
以上です。
○畑野委員 ありがとうございました。
新型コロナ対策でも、本当に私たちも頑張らなくてはいけないと思います。引き続きよろしくお願いします。
ありがとうございました。
○橘委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。最後の質疑者となりました。
最近では、自粛中で、自宅でテレビを見ていますと、日本民間放送協会ですか、「それ、違法です。」ということで、違法アップロードに関してのCMがずっと流されているわけでございます。
今回、そのダウンロードというようなものに対して注目をされ、もちろんアップロードもそうなんですが、昨年非常に問題になって、話題になったわけでございます。この法案も本当は非常に重要な法案で、メディアも取り上げて、そして何がいいのか何が悪いのかというのを国民に周知していただくということが本当は大事だったんだろうなと思いましたが、ほかの法案が問題になってしまって、ちょっと陰に隠れてしまっているのではないかなと思いますけれども、十分、これからこの法案で、大事な調整ですから、権利と権利の調整ということで周知していく必要があるのかなと思います。
後藤委員からきょういただきました参考資料の七ページ、八ページを見ましても、著作権といいながら、科学技術の最先端でしのぎを削っているという、大変難しい問題を取り組んでいただいたことに対して、大変感謝をさせていただきたいと思います。
そこで、三人の参考人の方に順次お聞きをしたいと思うんですが、昨年非常に大きな問題となって、私も、院内集会などにも参加させていただいていろいろな意見をお聞きしてきたんですけれども、前回の、法案といいますか、ある程度の考え方、方針というのが示された中で、いろいろな議論がなされたわけでございますけれども、昨年と今回の法案がどこが違ったのか。参考人の立場として、一番苦心してこのようにしてきたというようなことがございましたら、順次御説明をいただければと思います。
○後藤参考人 侵害コンテンツのダウンロード違法化につきましては、先ほど来、福井先生の方のお話もございましたが、やはりバランスのとれた形ということで、そういう認識をしております。
したがいまして、法律をつくっても、その効果、抑止力というものがなければ意味がないということを常に考えておりましたので、その辺、私ども権利者からすれば、非常に納得のある法律だと思っております。
以上です。
○堀内参考人 お答えします。
前回の案については、先ほど申し上げたように、海賊版の実効性の確保ということでは、文化庁案、我々としてもありがたかったんですけれども、ただ、萎縮効果を生じさせない配慮ということで、スクリーンショットの写り込みを除く、あるいは軽微なものを除く、あるいは二次創作、パロディーを除く、そしてまた権利者の利益を不当に害さないと認められる特別の事情がある場合と、こういうようなぎりぎりのところまで、我々が、ここまでは海賊版の実効性を確保できるんだというぎりぎりのところまで、権利者としては、そこは一刻も早い、この著作権法改正案が成立するためにぎりぎりまで配慮して、そしてぎりぎりのバランスでできたということでここまで来たということで、私どもとしては、結果的には大変よい形にまとまったなというように思っております。
○福井参考人 ありがとうございます。
ダウンロード違法化については既にお話ししたところでありますけれども、自分は、実は意外と大きかったなと思うのは、レジュメでもちょっと書かせていただいた、知りながら要件と言われるところなんですね。
つまり、もともとの現行法のダウンロード違法化というのは映像、音楽が対象ですけれども、そのときに懸念されたのは、ダウンロードするのは、例えば子供だってダウンロードするわけだ、そのときに違法アップロードかどうかなんてわからない、わからない者が落としてしまって、それで違法というのは、これは危ないんじゃないかという懸念はずっと根強くあったんですね。
今回、この法案では、違法侵害物であることを知りながらという知りながら要件、これは、違法かどうかが不明であるとか違法であることを誤認した場合、これは知りながらには入らない、こういうふうに解釈されており、また、重過失によってこれを誤認した場合も対象から除かれる、これは明文があるということで、一般人にはなかなか判断がしづらいところに関しては違法化しないという、この対応をとった。
でも、明らかな海賊版は明らかなわけですから、それをダウンロードする人というのは明らかに承知で落とすわけですから、抑止したい部分は押さえられているかなという意味で、実は、ここになかなかな苦心が今回もあったかなと思う箇所であります。
ダウンロードだけお答えすれば、今回、よろしいですか。リーチサイトの方はまだ御質問じゃないですね、はい。
○串田委員 昨年は、過度に萎縮が生じるのではないかという問題がありまして、その部分で、要するに、萎縮というのは、境界線がはっきりしないので、本来なら許されることもしなくなってしまうというのが、よく表現の自由とか知る権利の中のチリングエフェクトとか言われたりするところなんです。
そのためには曖昧な要件というものをできるだけ排除しなければならないということになるのかなとは思いながらも、この著作権に関して、果たして本当に、例えばデジタルな形で数字で、五より上はだめで、五よりあれはというような、数字的な規制というような、そういうイメージがなかなかしにくい部分だと思うんですけれども、今回において、その要件というものが、過度に萎縮しなくて済むようなそういう要件にできたのかどうかということに関して、また三人の方にお聞きをしたいと思います。
○後藤参考人 具体的に法律が施行された暁には、具体的に、まず広報啓発をして、法を知ってもらうということが一番大切だと思っておりますので、広い範囲で、堀内社長のところの広報センターとも協力しながら広報活動に努めていきたいというのがまず一点でございます。
さらに、侵害が、ダウンロードですから、家庭内で行われる場合が非常に多うございまして、顕在化する可能性はない可能性があります。とはいえ、それに対しても広報啓発、さらに、もしわかれば警告をしていく、段階を追って刑事罰ということになろうかというふうに思っております。
○堀内参考人 今回の改正案のさまざまな加わった要件で、十分皆さんの不安、懸念は取り除かれて、萎縮は生じさせない形になった。その分、海賊版の実効性ということでいくと少し、この両方が並び立つということで、まずは相当配慮された、萎縮を生じさせない形になったというように思っております。
○福井参考人 これも大変よいことをお尋ねいただいたと思うんですが、例えば、まさに軽微性の要件ですよね。
著作権法の中でも、例えば美術品のサムネイル規定と言われるものなどは、はっきり政省令で画素数を指定してしまうというようなことも行うんですね、この画素数までだったらサムネイルとして出していいですよとか。
しかし、今回の場合は、軽微というものを例えば画素数で規定するようなことをすれば、そのぎりぎりをついてくる。逆に言うと、それが怖いから低目低目の数字を出すと、今度はできないことが余りに広がってしまう。
ページ割合などもそうですね。一〇%までは許すというふうに書けば、一〇%以下のものを十回連続でダウンロードさせるようなサービスが、恐らくそれは実質違法という評価を免れないと思いますけれども、でも、多分出てくるだろうということで、数値基準というものを入れるのがなかなかそぐわない、そういうものだったように思います。
そこで、軽微性というものには、判断の基準を記載するにとどめ、数値基準は入れなかったのかなというふうに理解しています。
こうしたことが人々の過度な萎縮に結びつかないための工夫としては、きょうお話に出たもののほかに、附則があろうかというふうに思います。
皆さんのお手元の附則のところをごらんいただきますと、例えば第三条、附則の三条では、権利者側は侵害防止の措置を講ずるよう努めろというふうに書いてあって、これは、先ほどのような、これは適法なコンテンツだよというマークを記載せよという意味合いだろうと思います。
また、その後の四条、五条はとても大事な規定で、リーチサイトとダウンロード違法化の双方について、インターネットを利用して行う行為が不当に制限されることがないように、情報の収集その他の行為が不当に制限されることがないように努めよというものがあります。
次の附則には、これは一年をめどにして見直しを行う、こういう規定があります。これは、ぜひ死文にせず、適正な見直しやフォローアップが行われるべきかなというふうに思っているところです。
以上となります。
○串田委員 萎縮をしないような部分という部分もあったんですが、福井参考人にちょっとお聞きをしたいんです。
先ほど、参考人のお話の中で、写し込みというのがございました。後ろにディズニーが写ったとしても、それは写り込んでいるということであるにすぎないからというような話でありましたけれども、こういうお話を聞いた国民の中で大変心配になる方もいらっしゃると思うので、ぜひ御説明をいただきたいと思うんです。
といいますのは、例えば友人を写真で撮るときに、後ろにたまたま写り込んだ、ディズニーが写り込んだ。ただ、それはいいんだという説明だけでありますと、大概、ディズニーランドに行ったときには、パレードをそのまま撮っているわけですよね、静止画で撮ったり動画で撮ったり。写り込みどころか、まさにそれを撮ろうと思って撮っているわけで、そうすると、これは写り込みじゃないから違法になっちゃうのかというような心配もあるかと思うんですが、この点について、萎縮効果との関係の中で御説明をいただきたいと思います。
○福井参考人 ありますね。ディズニーランドに行って、背景にちょっとエレクトリカルパレードという方が珍しいというか、それは真ん中で撮るだろうという気がいたしますよね。
実を言うと、今回の改正以前、さらにその前の改正以前は、この写り込み規定自体がありませんでした。よって、そのころは、真ん中に写し込むのももちろん、背景に写るものも、ある程度の鮮明度で写っていれば、ただ写すだけだったら私的複製でいいんですけれども、それをブログにアップなどをすれば、今でいえばインスタにアップなどをすれば、理論上は著作権侵害、これは実は従来からずっとそうであります。
それだとSNS社会の中で不安があるねということで、三十条の二、写り込み規定というものを新たに入れた。このときには、軽微であることと、それから分離困難であることというのが条件だったんですね。要するに、どかせることがなかなかできない。
だから、背景にぱっとミッキーマウスさんが写り込んじゃうのをどかせるのは難しいですね、しっとかいってミッキーを追い払うわけにもなかなかいかないので。どかせることがなかなか難しいもの、これが従来条件だった。
でも、これではまだまだ心配だ。よって、今回の三十条の二の改正で、分離困難性という条件はなくなっております。これをなくして、スクショや描き込むなども含め、生配信も含めて、そして、分離困難であるという条件はなくして、言ってみれば軽微であればいいと。こういうような条件が入っておりますので、従前より更に、できることというのは恐らく広がった。
例えば、絵の中に描き込むというのは従前の写り込み規定では無理でしたけれども、今は背景に描き込んでも構わない。どころか、Tシャツに何かがいても恐らく大丈夫。熊の縫いぐるみを持って写っても大丈夫というのは政府資料に書いてありますけれども、大分広がったなと。
それを超えて、著作物に当たるパレードをど真ん中で撮って配信してもオーケーという規定は今のところはなく、それは、もし入れるのであれば、国会で御議論いただいて入れるという形になるんでしょうが、まだ全面的にというのはなかなか難しいかなという気がいたします。
先ほど申し上げた、デジタルアーカイブ規定などの中で、部分的に、非営利目的のデジタルアーカイブであれば許されるというようなものが、あるいは次の検討課題としてはあり得るのかなと思ったところでした。
以上です。
○串田委員 私もちょっと正確にディズニーランドに確認したわけではないんですけれども、例えば誕生日だとか何かいったときに、肩を組んで写真を撮るのをキャラクターの方が認めているような、そんなこともありますので、そこら辺、まさに曖昧にしてしまうと国民は萎縮効果が発生してしまいますので、ぜひとも、政府も含めまして、団体等も含めまして、そこら辺を明確にしていただくということをお願いしておきたいと思うんです。
先ほど福井参考人が、ライブイベントが非常に、一番最初は二月ですか、中止になって、今大変苦しんでいるというようなことでございますけれども、この法案は、まさに、創作をした努力をそのまま奪い取るなんということは許しちゃいけないという、そういう法案であると思います。努力を評価して大切にしていく。
そういう意味で、昨今、今、自粛して家庭にいて、大変苦しい中で、その中で何とかもっているのは、そういう芸術作品、例えば映画だとか音楽だとかイベントだとか、そういったことを見ることによって何とか自粛を我慢できているんだろうな。そういう方々の努力や今までの行動を私たちは恩恵として今受けているんだ、その方々に対して恩を返さない国になっては、これはいけないなというようなことを、私、この法案を審議しながら思った次第でございます。
時間となりました。きょうは本当にどうもありがとうございました。
○橘委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時八分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○橘委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府知的財産戦略推進事務局長三又裕生君、文部科学省総合教育政策局長浅田和伸君、初等中等教育局長丸山洋司君、高等教育局長伯井美徳君及び文化庁次長今里讓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○橘委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木啓君。
○高木(啓)委員 自由民主党の高木啓でございます。
本日は、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、早速ですが、午前中の参考人の皆さんへの質疑に引き続いて、法案の質疑に入らせていただきたいと存じます。
著作権というのは、言うまでもなく、知的財産権の一種でありまして、音楽あるいは美術、文芸、学術など、作者の思想や感情が表現された著作物を対象とした権利、これは著作財産権などがそれに当たると思われますが、また、及びそれを伝達する者に付与される権利、著作隣接権とも言われますけれども、というものの総称だと思うわけであります。
これらは、当然、適切な保護の対象とならなければならないわけでありますが、しかし、著作物のデジタル化やインターネットの広範な普及に伴って、漫画、アニメ等のコンテンツの違法流通を始めとして、著作権侵害や、フェアユース、いわゆる無断利用が著作権侵害に当たらないケースなどをめぐる事案が非常に複雑化している時代の趨勢というものもあるように思うわけであります。
このような状況を踏まえて、政府は、本年三月十日、本法案を閣議決定し、国会に提出されました。そこで、まず、著作権制度に関する政府の基本的考え方及び本法改正の趣旨を、ぜひ、国民にわかりやすく、萩生田大臣から御説明をしていただきたいと思います。
○萩生田国務大臣 著作権法では、第一条で目的を規定しておりまして、著作権制度の基本的な考え方は、権利の保護と利用の円滑化を図りながら文化の発展に寄与することです。
この考え方に沿って、著作権者等には他人に著作物等を無断で利用されない権利を与える一方で、著作物等を私的に使用する場合や引用を行う場合、教育機関で利用する場合など一定の場合には、著作権者等の同意なく自由に著作物等を利用できるようにすることで、保護と利用のバランスを確保しております。
本法律案は、近年のデジタル化、ネットワーク化の進展に伴い、インターネット上において違法な著作物等の流通が広がっていることや、著作物等の利用が多様化していることを踏まえ、著作権等の適切な保護を図るとともに、著作物等の利用の円滑化を図るため、必要な措置を講ずるものであります。
具体的には、まず、インターネット上の海賊版対策を強化する観点から、著作権等の適切な保護を図るための措置として、ユーザーを侵害コンテンツに誘導するリーチサイト等の規制や、現在、音楽、映像分野に対応が限定されている侵害コンテンツのダウンロード違法化の対象範囲の拡大等を行うこととしております。また、著作物等の利用の円滑化を図るための措置として、写り込みや行政手続に係る権利制限規定の対象範囲の拡大などを行うこととしております。
これらの措置によって、著作権等の適切な保護と著作物の利用の円滑化がより適切に行われることとなり、著作権の保護の大きな目的である文化の発展に寄与することが期待されるところです。
○高木(啓)委員 ちょっとインターネットと離れるんですけれども、著作権を考える上で、昨日ニュースとなりました、オリンピックのエンブレムの、ありていに言うと改ざんというか、変えてしまって、外国特派員協会が、独自の、御自身の月刊誌の表紙にそれを掲載するということが昨日報道でありましたが、まさに著作権というのはやはりしっかりと守られなければならないものというのが一つは前提にあるんだろうと思います。
萩生田大臣も当然御案内だと思いますが、このオリンピックのエンブレムなどについては、これは完全に著作権あるいは著作物として保護されるべきものでありますし、オリンピックを適正に運営していくという意味では、IOCも非常に厳しい著作権の規制をかけておりますので、こういうことについてはぜひ御留意をしていただきたいと思いますし、組織委員会がこれはもう即時に抗議をするということも言っておりますので、ぜひこの点についてはまたお気にとめていただいて、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピックが一年延期ということに今なっておりますけれども、ぜひそうしたものについても御留意をいただきたいとこの際お願いを申し上げておきたいと思っております。
さて、大臣から、本法の目的の一つであります保護と利用のバランスが大事だということが御披瀝をされました。これが本法改正の一つのキーワードであるということがわかりました。
つまり、そのためには、創作者そして利用者の双方にとって適切な法制度が必要であるということでありまして、現状と法の間にできるだけそごを来さないように法が追いついていかなければならないということだと私は思っています。
その意味で、本法案は、昨年通常国会に提出予定であったわけでありますが、幾つかの問題が指摘をされ、見送られたという経緯がございます。特に、ますます進むデジタル社会の中で、ダウンロード違法化、あるいは二次創作者の権利保護等について広く問題提起がなされていましたが、今次提出に当たってそのような懸念はどのように改善が行われたのか、お伺いをいたします。
○今里政府参考人 お答え申し上げます。
今回の法案につきましては、今委員からも御指摘をされました昨年からの経緯を十分に踏まえまして、パブリックコメントですとか国民アンケートによりまして国民の皆様の懸念や御意見等を丁寧に把握する、それと同時に、漫画家を始めとする幅広い関係者による検討会、権利者ということにもなりますけれども、も含んだ形での幅広い関係者による検討会において制度設計の検討を行ったところでございます。
その結果、今、ダウンロードに関してでございますと、軽微なものですとか、二次創作、パロディー等、こういったもののダウンロードを違法化対象から除外するなど、さまざまな修正を行っているところでございます。
今お話のございました二次創作でございますけれども、パブリックコメントでも強い懸念が示されたことを踏まえて検討を行った結果でございまして、まず、二次創作によって原作の売上げに悪影響を与えるということは二次創作の場合には想定しづらいこと、それから、実態として二次創作は黙認されている場合が多く、新たな若手クリエーターを育てるなど、コンテンツ産業の発展に重要な機能を果たしているとも考えられることなどから、現行法上違法とはされていないダウンロード行為まであえて違法とする必要はないと判断したものでございます。
また、修正点で申しますと、本法案の附則で、国民への普及啓発、教育の充実ですとか、適法サイトへのマーク付与の推進を含む関係事業者による措置、刑事罰の運用に当たっての配慮等について規定をしてございまして、運用面からも国民の懸念、不安に対応していくということでございます。
これらの措置によりまして、海賊版対策としての実効性確保と国民の正当な情報収集等の萎縮防止のバランスがとれた内容になっているものと考えているところでございます。
○高木(啓)委員 本来あるべき法律論というのが前提にあると思っておりまして、その意味では、二次創作がいかにあるべきかとかということは、私はいろいろな解釈も含めてあると思うんですけれども、出されていた問題提起というのは、ある意味では、現場の感覚と言ったらいいんでしょうか、そういうものだったと思います。
その意味では、今回の改正案は、前回の提案内容と比べると、より多くの関係者の合意がとりやすいものになったのではないかと感じるわけであります。
一方で、一般の国民目線からすれば、著作権にかかわる諸事項というのは、非常に複雑な権利関係がありまして、理解することが困難な案件でもあると思っています。
そこで、著作物の創作者、いわゆるつくり手と、利用者と言ってもいいと思いますが、国民にとって、本法の改正によって何が変わって、あるいは何が変わらないのかというのを、ぜひわかりやすく事例を挙げて説明をしていただきたいと思います。
○今里政府参考人 本法案によりまして、つくり手、それから国民にとって何が変わるのかというお尋ねでございます。
まず、つくり手の観点からは、この法案は海賊版対策の強化でございますので、海賊版対策の強化によって著作物の違法な流通が抑止される、それで、作者の方がつくられた、創作活動、これの対価を適切に得られる環境が整うということでございます。これによりまして、安心して創作活動に取り組むことが例えば可能となるというふうに考えてございます。
このことは、国民、すなわち利用者の方から見ましても、創作者の創作活動が促進される結果として、良質な著作物、漫画でありますとか、いろいろなことがあるわけでございますけれども、こういったものを享受できるようになるというメリットがあると考えてございます。
また、国民側の観点としてもう一つ挙げられますのは、海賊版対策の強化として、侵害コンテンツを、そうと知りながら利用することが違法化される。このことによりまして、より著作権を尊重した行動をとることにつながるものと考えてございます。
一方で、軽微なものを始め、さまざまな除外規定を設けるなど、国民の正当な情報収集等が萎縮しないような措置を講じているところでございます。
なお、今回の法改正は、侵害コンテンツであっても、単に視聴、閲覧するだけの行為までは違法とするものではございません。
そのほか、写り込みや行政手続に係る権利制限規定の対象範囲の拡大、著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入といった措置によりまして、個人の日常生活や企業活動、さまざまな場面で著作物をより円滑に安心して利用できる環境が整う、このように考えているところでございます。
○高木(啓)委員 今の答弁でわかったのは、いわゆる一般的、日常的に行われている音楽の視聴とかあるいは動画の閲覧、こういうことについては本法の改正で変わることはないということで、これは確認ができたと思います。
しかし、私たちにとってこの法律が極めてわかりにくいのは、その言葉の定義がどのような範囲を指すのかということにかなり幅があるというふうに思うからであります。
例えばダウンロード違法化による、先ほど来お話があります軽微なものということに対する、その範囲、あるいは、重過失という言葉も出てきますが、重過失というのはどのレベルを言うのか、あるいはまた、継続的に又は反復してという言葉も出てくるんですが、こういうことの範囲、あるいは、そもそも海賊版と言われるものの定義の範囲というのは、条文上の言葉の定義に、先ほど言ったように、解釈の幅が相当大きくあるのではないかというふうに感ずるわけであります。
そうしたことを著作物の創作者、いわゆるつくり手と利用者、国民の双方に、常時的確に理解していただくのは困難性がちょっと高いのではないかと思われますので、私は、文化庁が中心になって、著作権の保護と、それから侵害に関する何か相談ができるような、やはりそういうセンターのようなものをつくるべきではないのかなという気もするわけであります。
特に海賊版対策においては、先ほどの参考人の先生方からのお話もありましたけれども、国際的な連携というものが非常に重要だということを言われておりましたので、我が国が、ぜひ、そういう意味では、国際的な基準、スタンダードを率先してやはりつくるべきではないかと考えますが、御所見をお伺いいたします。
○今里政府参考人 今ほど先生から御指摘ございましたように、法文上、こういったものの解釈はどのようになっているのか、あるいは、幅がどのように実際にはなるのかということについては、一般の国民の方は必ずしもその理解が容易ではないというのは御指摘のとおりかと思います。
ただ一方で、さまざまな除外規定が設けられておりますけれども、当然、国民の幅広い行動に影響するものでございますので、御指摘のように、その内容を著作物の創作者それから利用者の双方に正しく理解していただくことが重要というのは申すまでもございません。
著作権法に関しましては、従前から、私ども文化庁の著作権課におきましても、一般的な問合せや相談について対応を行っておりますけれども、それに加えまして、公益社団法人著作権情報センターにおきまして著作権テレホンガイドといったものを設けまして、専任の相談員が電話対応を行っているところでございます。
また、海賊版対策の観点からは、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構が、さまざまな著作権侵害事案について関係機関の相談等に応じているところでございます。
これらの機関とも連携しながら対応を充実させていきたいと考えておりますけれども、特に今回の法案の内容などに関して申し上げますと、具体的な法規制等の内容が明らかであることが重要でございますので、これまでの法改正時にも、わかりやすいQアンドAですとか解説、ガイドラインなどを作成、周知してきたところでございます。今回のものに関しましても、既に、閣議決定をいたしましたときに、侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQアンドAというものを公表いたしまして、基本的な考え方をお示ししています。
今後、国会での審議などを踏まえまして、より詳細な内容を整理した上で、関係機関とも連携しつつ、丁寧な周知等を進めていきたいと考えてございます。
国際的な連携につきましては、やはり、海賊版対策において、御指摘のとおり、この点が非常に重要であると認識をしてございます。
本法律案では、リーチサイトに特化した規制を設けるなど、諸外国に例のない措置も含まれておりまして、このような対策が国際的に進展するきっかけとなることも期待しているところでございます。
なお、本法案の附則第七条におきましては、違法アップロード対策をより一層充実していくことについても規定しておりますが、国際的な連携のさらなる強化に向けまして、引き続き、法務省や警察庁などの関係省庁とも連携しつつ、政府一丸となって取組を進めていきたい、このように考えてございます。
○高木(啓)委員 我が国の強みであるクールジャパン戦略の一つに、例えば漫画とかアニメとかというのがあるわけでありまして、こうした著作物を守り育てていくためには、しっかりとした保護と利用の基準を定めていくことが必要であると思います。
これからは、その基準に反するものをやはりしっかりと監視あるいは指導、そして排除していくことも重要でありまして、私は、世界の中で我が国がその中心になるべきと思っています。どうか大きな志でこの分野でのリーダーを目指していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
さて、著作物の権利保護と利用の促進というのは、バランスよく法が整備されるべきと、冒頭、大臣が御答弁をされたわけであります。
一方で、本来誰もが利用できなければならない情報やコンテンツと言えるものがあえて隠されていたというような事例もあるわけでありまして、こうしたことは、デジタル化、ネットワーク社会が進展していく中で、私は非常に憂慮すべきものではないかというふうに思っております。
一例を挙げますが、朝日新聞によるいわゆる従軍慰安婦強制連行の記事が、同新聞社が二〇一四年八月に虚偽であったとして、謝罪訂正記事を出して、謝罪会見を行ったことで、今では、いわゆる従軍慰安婦強制連行は虚偽、捏造であったことが広く国民には知られることとなりました。しかし、その訂正記事を、あえて検索エンジンにかからないように、ソースコードにいわゆるメタタグというものを埋め込んで、読まれないように隠していたという事例が二〇一八年に発覚をしたわけであります。
本法改正に当たって、趣旨の一つは、インターネットを利用して行う行為が不当に制限されることがないように配慮しなければならない、これは附則第四条、第五条関係ということになっておりますが、この趣旨に鑑みますと、こうした行為には大きな疑念と懸念が生ずるわけでありますが、このことに対する御見解をお伺いいたします。
○今里政府参考人 個別の事案についてはお答えが難しいところでございますけれども、一般論として、国民にとって信頼性のある正しい情報がインターネット上で円滑に利用できること、このことは極めて重要ということでございます。
著作権法は、冒頭大臣からも御説明申し上げましたように、著作物等の文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的としております。
これまで、権利保護のみならず、情報の適切な利活用ですとか流通を促進する、こういった観点からもさまざまな制度整備等を進めてきているところでございます。
御指摘に関連する取組につきましては、昨今、絶版等により一般的に入手が困難な資料をデジタルアーカイブという形で公的機関等が保存し、広く国民の利用に供することの重要性が高まっているものと認識しております。
文部科学省といたしましては、こうした取組のより一層の充実も含め、インターネットが国民の情報収集にとって不可欠な役割を担っている、このことを十分に踏まえながら、著作権政策のあり方を検討していきたいと考えているところでございます。
○高木(啓)委員 著作物の権利保護と利用の促進という視点で今一例を挙げたわけでありますが、個別の問題についてはというのは当然なんですけれども、一般論として、やはりこういうことはあってはいけないと私は思っておりまして、だからこそ、権利保護と利用の促進という意味での今回の法改正でもあり、また、バランスよく法が整備されるべきなんだということはぜひ押さえておいていただきたいと思うわけであります。
今後、第二のこうした事例が起こらないとは限らないと思いますし、多くの人々に共有をされるべき情報というのはやはりあるべきだし、隠されちゃいけないと思いますから、ぜひその点にも留意をしていただきたいと思うわけであります。
さて、デジタル社会というのは、できるだけ自由な空間を維持していくことが私は望ましいと思っておりますし、これは誰もがそう思っていると思います。しかし、自由だからといって、それが無法な社会であってはならないと思います。本法案の成立をぜひきっかけにして、よりよいデジタル社会の構築に向けてどのようにこれから取り組んでいくのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○萩生田国務大臣 高木委員御指摘のとおり、デジタル化、ネットワーク化が進展した社会においては、インターネット上などで広く国民が情報収集や情報発信などを行う自由を確保しつつ、海賊版の流通、利用などの悪質な行為には厳格に対応し、著作物の適切な利用を促進していくことが重要であると考えております。
本法律案におきましても、そうした観点から、冒頭お答えしましたけれども、保護と利用のバランスを確保するための措置をさまざま講じておりますが、今後も、社会状況の急速な変化に対応して、著作権制度の見直しが必要となる場面も多くあると思います。
文部科学省においては、引き続き、新たな技術やビジネスの進展などの社会実態の変化等を十分に踏まえつつ、望ましい著作権政策のあり方を検討してまいりたいと思いますし、先ほど御提案がありましたように、これは一国で解決する問題ではなくなっております。サーバーを置いてあるのが海外であったりとか、さまざま多様化しておりますので、国際社会の中でしっかり連携できる著作権の正しいあり方というものを、しっかりリーダーシップを発揮しながら、国際社会の中でも日本の思いというものをしっかり発信をしていく努力をしたいと思います。
○高木(啓)委員 大臣の決意も含めてよくわかりましたので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
私、午前中の質疑を、参考人の皆さんの御意見を拝聴して、また質疑も聞きながら、非常にこの一年間の、この法案が、本来的には昨年だったものがことしになり、その間に大変前向きな議論が行われて、そして、いろいろな立場がありながらも、海賊版対策や、あるいは不法なものを是正していこうという大きな視点での合意点を見つけて、非常にいい法案に仕上がったのではないかなというふうに思っております。
どうぞこれからも、不正なものを排除していく、そして良質なコンテンツを伸ばしていくという視点でぜひお取組をお願いしたいと思います。
以上で私の質問を終わります。
○橘委員長 次に、浮島智子君。
○浮島委員 公明党の浮島智子です。よろしくお願いいたします。
早速質問に入らせていただきたいと思います。
今回の著作権法の改正案は、漫画家などのクリエーターやコンテンツ産業を守るために必要な措置を講じるための内容となっておりますけれども、実際にインターネット上で違法にアップロードされている漫画などの海賊版による被害の実態はどうなっているのか。本日も、午前中、参考人の方々といろいろ質疑もさせていただきました。巧妙化している等々のお話もございましたけれども、実態はどうなっているのか、教えていただければと思います。
○今里政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの海賊版による被害実態につきましては、関係団体による昨年十一月時点の調査、推計によりますと、巨大海賊版サイト、漫画村では、約三千二百億円の出版物がただ読みされ、出版社の売上げが二〇%減少したという試算ですとか、日本最大級のリーチサイト、はるか夢の址では、一年間の被害額が約七百三十一億円に上るという試算が示されてございます。
これらのサイト閉鎖後も、依然として膨大な数の海賊版サイトが存在しておりまして、昨年十一月に本件制度設計の検討を行う有識者検討会で出版社から御報告いただいた時点では、出版分野の月間アクセス数上位十サイトに限っても、延べ利用者数は六千五百万人程度となっておりまして、また、その十サイトのうち七サイトがダウンロード型海賊版サイトであるという状況でございました。
さらに、直近の四月時点では、出版分野の月間アクセス数上位十サイトに限っても、延べ利用者数は八千七百万人程度と増加しておりまして、そのうち、月間アクセス数が一千万を超える大規模な四つの海賊版サイトのうち三つがダウンロード型であると出版社から聞いております。
また、漫画、雑誌のほかにも、写真集、文芸書、専門書、ビジネスソフト、ゲーム、学術論文、新聞など、著作物の分野、種類を問わず、海賊版のダウンロードなどによる被害が発生していると認識してございます。
○浮島委員 今御答弁いただいたように、これだけ大きな被害が出ているのですから、早急に海賊版対策をやっていくべきであります。
既に、著作権者の許可なく漫画などのコンテンツをネット上にアップロードすることは違法化されております。それに加えて、改正案では、違法にアップロードされた侵害コンテンツのダウンロードについても違法化の対象にすることが盛り込まれていますけれども、これによってどの程度の効果があると見込んでいるのでしょうか。
○今里政府参考人 侵害コンテンツのダウンロードに関しましては、昨年十月に行った国民アンケートにおきまして、これが違法化、刑事罰化された場合にはダウンロードをやめる、減らすと回答した方の割合が九割以上に上っております。
先ほど紹介したとおり、出版分野アクセス数上位十サイトのうち七サイトがダウンロード型であることからも、侵害コンテンツのダウンロード違法化によりまして海賊版被害の拡大防止に大きな効果が見込まれると考えてございます。
また、侵害コンテンツにアクセスしてダウンロードするユーザーが多数いることにより、アップロードした者が多額の広告収入を得られる、これと同時に、ダウンロードした者が更にアップロードして侵害コンテンツを拡散させる、こういった形の、ダウンロードがアップロードを助長している面がございます。ですので、ダウンロードの減少によってアップロード自体の減少にもつながっていくものと考えております。
○浮島委員 今回の改正案は、関係者そして国民の皆様に納得していただくことが非常に重要だと私は考えております。
その上で、侵害コンテンツのダウンロードの違法化の対象から軽微なものを除外することとしておりますけれども、軽微なものと言われても、何が軽微なものなのか、国民の皆様にはとてもわかりにくいところがあると思うんです。具体的にどのような場合が軽微なものに該当するのか、教えてください。
○今里政府参考人 軽微なものでございますが、典型的には、数十ページで構成される漫画の一こまから数こま、あるいは長文で構成される論文や新聞記事の数行、数百ページで構成される小説の数ページなど、その著作物全体の分量から見てダウンロードされる分量がごく小さい場合、これが軽微なものと認められると考えます。
一方で、漫画の一話の半分程度ですとか、論文、新聞記事や小説の半分程度、また絵画や写真のように一枚で作品全体となるもののダウンロードは軽微なものとは言えないと考えられます。
また、絵画や写真などにつきましては、量だけではございませんで、画質が低く、それ自体では鑑賞にたえないような粗い画像をダウンロードした場合、これも軽微なものと認められると考えております。
○浮島委員 ぜひとも周知の方をしていただけるようにお願いをさせていただきたいと思います。
また、本年の二月三日ですけれども、公明党の文部科学部会で、萩生田文部科学大臣に対して著作権法改正に関する提言という申入れをさせていただきました。そのときは、大きく三点について、侵害コンテンツのダウンロードの違法化の要件の追加、また附則への規定の追加、今後の著作権法改正全般に当たっての留意事項ということで申入れをさせていただいたところでございます。
その提言の中に盛り込んだ、ダウンロード違法化の対象から著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外することについて、改正案にも今回反映していただいておりますが、この規定を盛り込んだ理由と、具体的にどのような場合が該当するのか、見解を求めたいと思います。
○今里政府参考人 御指摘の、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合、これを除外することにつきましては、御党からの御提言も踏まえまして、国民の正当な情報収集等への萎縮を防止する観点から、軽微なものなどの除外とは別途、さまざまな要素に照らして違法化対象からの除外を判断できる安全弁として設けることとしたものでございます。
ただし、海賊版対策の実効性が低下することを避ける観点から、特別な事情がある場合と規定することで、これがあくまで例外的な除外規定である趣旨を明らかとして、居直り的な利用を防止する。これと同時に、特別な事情がある場合を除くと規定することで、ユーザー側が不当に害しないと認められる特別な事情があることを立証する必要があることとしているところでございます。
この要件に該当するか否かにつきましては、著作物の種類、経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、それとダウンロードの目的や必要性などを含めた態様、この二つの要素によって判断されることになります。
典型的な例を申し上げますと、例えば、詐欺集団の作成した詐欺マニュアルが被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載されている、こういった場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすることですとか、無料で提供されている論文の相当部分が他の研究者のウエブサイトに批判とともに無断転載されている場合に、それを全体として保存することなどがこれに該当するものと考えております。
○浮島委員 こうした改正案の内容についてですけれども、提言の中でも提案させていただきましたけれども、具体的な事例を示したガイドラインなどを策定することということで書かせていただいて、お渡しをさせていただいたところでございます。このように、例えばガイドラインなどで具体的な事例を明らかにすることによりまして、関係者や国民の皆様が安心して情報を収集できるとともに、不当に侵害コンテンツをダウンロードする方の居直りというのを防止するためにも有効であると考えています。
また、今回の改正の趣旨、内容などをわかりやすく周知していくことが最も大切ですし、学校現場においては、侵害コンテンツのダウンロード防止に関する教育が円滑に進められるように、わかりやすい資料を用意するなどして取り組む必要があると思いますけれども、見解をお伺いさせていただきたいと思います。
○今里政府参考人 御指摘のとおり、本法案に関しましては、国民の皆様の不安、懸念を払拭するとともに、誤った解釈に基づく居直り的な利用を防止するために、法改正の趣旨や正確な内容、具体的な事例等を丁寧に情報発信していくことが重要であると考えてございます。
文部科学省といたしましては、既に閣議決定時に侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQアンドAを公表している、そして、それによりまして本件に関する基本的な考え方をお示ししているところでございますけれども、今後、御党からいただいた提言や国会での審議などを踏まえまして、学校現場における教育にも活用できるよう、よりわかりやすいガイドラインやQアンドAなどを作成する予定でございます。
○浮島委員 ぜひともわかりやすいガイドラインの作成をしていただけるよう、重ねてお願いをさせていただきたいと思います。
また、海賊版の利用を抑止するためには、特に未成年の若者、若い人たちに対する普及啓発、教育が重要であり、多くの若い人たちが日常に利用するSNSなども活用しながら効果的な取組を行っていく必要があると考えますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○萩生田国務大臣 先生御指摘のとおり、海賊版の利用を抑止していくためには、法整備のみならず、教育、普及啓発を着実に行っていくことが重要です。
学校現場における教育、普及啓発に当たっては、著作権制度の存在意義など基本的な事項の教育と、侵害コンテンツのダウンロード防止に特化した教育の双方をしっかりと行う必要があると認識しております。
前者につきましては、これまで、教職員を対象とした講習会や、著作権教育に活用できる児童生徒向けの教材の作成、有名キャラクターを使用した普及啓発ポスターの作成、提供などを進めているところです。
今後、現場の声も聞きながら、児童生徒がクリエーターの創作物を尊重する意識を育む観点から、学校現場で最低限知っておくべき事項についてわかりやすい動画コンテンツを作成するなど、さらなる対応を考えていくこととしております。
また、侵害コンテンツのダウンロード防止に関しては、新たに法整備の内容をわかりやすく整理したガイドラインやQアンドAなどを作成した上で、教職員を対象とした講習会を始め、さまざまな機会を通じて学校現場への周知、支援を行っていく予定です。
その際には、関係省庁や関係団体とも連携をしながら、SNSなど若者、子供たちに届きやすい手段の活用を含め、効果的な対応を模索していきたいと思っておりますし、たまたま、国会審議と合わせたわけじゃないんですけれども、今、民放連のコマーシャルで、映画等のダウンロード、番組のダウンロードの違法のコマーシャルをやっているんですけれども、ここともお話をさせていただいて、今回の法改正の趣旨も追加して加えていただくような、そんな準備もしております。
○浮島委員 ぜひとも、教職員はもちろんですけれども、若い人たち、子供たちに周知をしていただくようにお願いをさせていただきたいと思います。
また、改正案の附則に規定されている違法アップロード対策につきましては党の提言を反映していただいたものと理解しておりますけれども、今後、政府全体として具体的にどのような措置を講じていくのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
○三又政府参考人 お答え申し上げます。
インターネット上の海賊版に関しましては、政府一丸となって対応していくため、昨年十月、総合的な対策メニュー及び工程表を作成し、関係閣僚間で確認を行ったところでございます。これに基づきまして、関係府省が連携して、海賊版サイトへの広告出稿の抑制や、検索サイトにおける削除、表示抑制の働きかけ、国際連携、国際執行の強化などのアップロード対策を含め、必要な取組を進めますとともに、それらの取組の進捗や効果、被害の実態などを検証しつつ、総合的な対策メニュー及び工程表を更新し、着実に対策を進めてまいりたいと考えております。
○浮島委員 また、今回、海賊版の対策として、侵害コンテンツのダウンロードの違法化を進めると同時に、ユーザーを侵害コンテンツに誘導するリーチサイトやリーチアプリの規制も必要であると思います。
改正案では、どのようなウエブサイトやアプリに規制をかけるのか、そういう想定をされているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
○今里政府参考人 今回の改正案では、インターネット上におけるリンク提供、これが情報の流通にとって極めて重要な役割を果たしている、このことを踏まえまして、一般的な掲示板やSNSなどを規制対象から除外しつつ、悪質なサイトによる脱法行為を許さない観点から、リーチサイト、リーチアプリを、まず、公衆を侵害著作物等に殊さらに誘導するものと、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの、この二つの類型に区分して規定しているところでございます。
一つ目の類型では、サイトの運営者が侵害コンテンツへの誘導のためにデザインや表示内容等をつくり込んでいるような場合を想定してございまして、二つ目の類型では、掲示板などの投稿型サイトで、ユーザーが違法リンクを多数掲載して、結果として侵害コンテンツの利用を助長しているような場合を想定してございます。
具体的なサイトやアプリがこれに該当するか否かについて争いがあった場合には、最終的には司法の場で判断されることになりますが、一般論として、例えば、リンクの数としては適法コンテンツへのリンクが多いものの、サイトの構成等からして侵害コンテンツへの誘導に使われることが明らか、こういったサイト、アプリですとか、侵害コンテンツへのリンクが半数以上を示すようなサイト、アプリなどについては規制対象となるものと考えられます。
一般的な掲示板やSNS、ブログなどが規制されることは想定されませんが、当然ながら、掲示板やSNS、ブログなどであっても、侵害コンテンツへのリンクばかり掲載しているような場合には、それがリーチサイトと評価され、規制対象となるものと考えられます。
○浮島委員 時間になりましたので、これで終わりにさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○橘委員長 次に、城井崇君。
○城井委員 国民民主党の城井崇です。
午前に引き続き、午後も質疑の機会をいただきましてありがとうございます。
著作権法等改正案につきまして、萩生田文部科学大臣、そして宮本経済産業大臣政務官に質問いたします。本日の参考人質疑も引用しながらの質疑とさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
まず、萩生田文部科学大臣に伺います。
今回の法案は、政府により一度撤回をされ、出し直されたものであります。この間、インターネット上の海賊版対策はおくれたということになります。政府としてどのように総括をしているか、教えてください。
○萩生田国務大臣 御指摘のように、本法案につきましては、昨年、国民の日常的なインターネット利用が萎縮するとの懸念が拡大し、漫画家の皆さんからも違法化の範囲が広過ぎるのではないかという御意見をいただいたことから、提出を見送った経緯がございます。
文科省としては、海賊版対策は喫緊の課題であるとの認識のもと、法案提出に向けた検討を行ってきたところですが、結果として、権利者を含め国民の御理解を得るに至らず、法案提出を見送らざるを得なかったということについては重く受けとめております。
その後、国民の皆様の声をより丁寧に伺いながら検討を重ねてまいりました。具体的には、パブリックコメントや国民アンケートにより国民の皆様の懸念や御意見等を丁寧に把握するとともに、漫画家を始めとする幅広い関係者による検討会において制度設計の検討を行い、その結果、海賊版対策としての実効性を確保しつつ、国民の懸念、不安に対応する観点から、さまざまな修正を行っています。
このように、今回、より丁寧な検討プロセスを経た結果、漫画家などの関係者の共通理解のもとで法案を作成することができたところであり、国民の皆様にも、バランスのとれた内容として御理解いただける内容になったと考えております。
また、当初想定と一年おくれではありますが、喫緊の課題である海賊版対策のためにできる限り速やかに法案の提出を行うことができたものと考えており、法案が成立した暁には、その確実な実施のため、全力を尽くしてまいりたいと思います。
○城井委員 ユーザーサイドの立場に立った見直しを行っていただけたことは評価をしたいというふうに思っています。
続いて、平成二十四年に実施された音楽及び映像の違法ダウンロードの刑事罰化の効果について、政府としてどのように評価をしているか、大臣、お願いいたします。
○萩生田国務大臣 平成二十四年の著作権法改正による音楽、映像の違法ダウンロード刑事罰化については、平成二十五年に文化庁で実施した調査研究によりますと、ファイル共有ソフトにおける有償著作物等と考えられる音楽、映像ファイルが大幅に減少したことが確認されています。また、ファイル共有ソフトを通じたダウンロードについて、音楽、映像の違法ダウンロードを刑事罰化以降にやめた、減ったと回答したユーザーの割合が約七割程度であったことも確認されています。
このように、音楽、映像の違法ダウンロードの刑事罰化については相当程度の抑止効果があったものと理解しています。
一方で、法施行後七年以上が経過していますが、当初懸念されていたような刑事当局による捜査権の濫用ですとか個人のプライバシー侵害、インターネット利用の萎縮などは生じていないものと考えております。
以上のことから、音楽、映像の違法ダウンロードの刑事罰化については、予期したとおりの効果を発揮した一方で、特段の副作用は生じておらず、政策として適切なものであったと評価しています。なお、この評価については、二〇一九年二月の文化審議会著作権分科会報告書でも確認をされているところです。
○城井委員 一定の抑止効果については、私としても、そこは効果としてぜひ認めたいというふうに思います。ただ、萎縮等を含めてのところについては、我々からも検証が必要だというふうに考えています。
続いてお伺いいたします。
本法案において、先ほど申しました、ユーザーの視点に立ったときに、本法案に対する懸念ということで幾つも御指摘があったわけでありますが、そのうちの一つ、日常的な静止画ダウンロードまで違反になりかねないとの懸念を払拭する手だてを具体的にどのように準備されたのか、わかりやすく説明いただけますでしょうか。
○萩生田国務大臣 御指摘の、日常的な静止画ダウンロードまで違法になりかねないとの懸念を払拭する手だてにつきましては、今回の法案では、まず、スクリーンショットを行う際の写り込みや、漫画の一こまから数こまの軽微なもの、二次創作やパロディー、それから著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合のダウンロードを違法化対象から除外しております。また、本法案の附則では、国民への普及啓発、教育の充実や、適法サイトへのマーク付与の推進を含む関係事業者による措置、刑事罰の運用に当たっての配慮等について規定し、運用面からも国民の懸念、不安等に対応していくこととしております。
文科省としては、これらの措置によってパブリックコメントで示された懸念は基本的に解消できているものと考えており、国民の皆様にも、バランスのとれた内容として御理解いただけるものと考えております。
○城井委員 今大臣からも言及がありましたけれども、ユーザーサイドに立った懸念というものを確認することにも役に立つことになったわけでありますが、令和元年の九月三十日から一カ月間行われた、侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントで指摘された懸念点をどのように認識し、そして政府としてどのように対応しているかを伺いたいと思います。
大臣、このパブリックコメント、今回の質疑に当たりまして改めて確認をいたしましたけれども、そもそもが、五月の十八日、昨日の時点で、文化庁のホームページの法案紹介ページにはこのパブリックコメントの結果が示されておりませんでした。更に申しますと、いわゆるe―Gov、電子政府の総合窓口で検索をしても、結果が公示されていませんでした。つまり、法案の閣議決定や趣旨説明のときに、このパブリックコメントの結果は国民に対して公示をされていなかったのであります。
そもそも、大臣、結果の公示は行政手続法の義務だというふうに私自身は考えるわけでありますが、法案審議の直前まで、意見を求められた国民の側から、このパブリックコメント、慎重派が多かったんだろうか、賛成派が多かったんだろうかということなども含めて、その結果をチェックする手段すら示されていなかったというのは、パブリックコメントの軽視であり、大問題であるというふうに考えます。
大臣、この点も含めて御意見をお聞かせいただけますか。
○萩生田国務大臣 御指摘の、侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントでは、個人や団体から合計で四千件以上の御意見をいただいており、その多くがインターネット利用への萎縮などを懸念する御意見や慎重な検討を求める御意見でした。
文科省としては、いただいた御意見を重く受けとめ、その内容を十分精査した上で、漫画家、消費者、ネットユーザーなどさまざまな関係者、有識者で構成される検討会において、パブリックコメントの結果を示しながら具体的な対応を検討してまいりました。
その結果、先ほども申し上げましたが、今回の法案では、スクリーンショットを行う際の写り込みや、漫画の一こま、数こまの軽微なもの、二次創作、パロディー、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合をダウンロード違法化対象から除外しました。また、本法案の附則では、国民への普及啓発、教育の充実や、違法サイトへの、マーク付与の推進を含む関係事業者による措置、刑事罰の運用に当たっての配慮等について規定し、運用面からも国民の懸念、不安等に対応していくこととしております。
なお、パブリックコメントでは、要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではないという御意見も多くございましたが、インターネット上の海賊版による被害がこれだけ深刻化している状況を踏まえると、国民の正当な情報収集等が過度に萎縮しないよう十分に注意しつつも、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体は行う必要があるものと考えております。
パブリックコメントは、有識者等による検討会において検討を行うに当たって実施したものでありまして、その結果については、有識者検討会の資料として、会議後速やかに文化庁ウエブサイトで公開をしておりました。
本パブリックコメントは、文化庁が行う任意のパブリックコメントとして実施されたものであり、e―Govへの掲載がなされなかったことについて、法令上の手続的瑕疵はないものの、国民の関心が高い重要事項であることから、e―Govにも掲載することが適切であったと考えております。委員から事前にいただいた御指摘を受け、より広く国民の皆様にごらんいただけるよう、先日、e―Govにも掲載させていただきました。
先生御案内のとおり、省令などの変更に伴うパブリックコメントだとすれば、これは当然公開を義務とされているんですけれども、法案審議をしていただくことになっておりましたので、手続上の瑕疵はないと思っています。ただ、せっかく多くの国民が注目していて、それぞれが利用者として、あるいは著作権者として当該者になる可能性のある法案ですから、御指摘をされれば、もう少し広く公開しておいた方がよかったなということは改めて感じているところでございますので、今後も、規則にあるからとかないからじゃなくて、国民の理解を、より広く御理解いただけるためには、できる限り開かれた手法を模索してまいりたいと思います。
○城井委員 実際に、今大臣の答弁にもありましたが、四千件という大変多くのパブリックコメントを頂戴したわけであります。慎重な意見が多かったということは、当然、今ほど大臣も言葉を選んで丁寧に説明いただいたというふうに思いますが、それだけ丁重な対応が必要な場面だというふうに思いますし、検討会で示せば済むのかという話ではない。とりわけ、意見の対立の幅が大きい分、国会審議などを含めて丁寧に対応すべきというのは当然だというふうに思いますし、何よりも、国民に対して、四千件以上の意見をいただいたというところに対して、きちんと結果の公示までするというのが筋だというふうに思いますので、改めて指摘を申し上げたいと思います。引き続き丁重な対応をお願いしたいと思います。
続きまして、海賊版が違法に広がるきっかけになっているのに今回の法改正による規制から漏れている具体的な技術があるんじゃないかと思いますが、これが何かということを伺いたいと思います。例えば、ストリーミング技術そのものでありますとかオンラインリーディングについて、取締りをしないのかというのが私の関心であります。
そうした技術への規制等の対応についてどのように考えているか、大臣、お答えください。
○萩生田国務大臣 本法案では、侵害コンテンツのダウンロード違法化によりダウンロード型の海賊版サイトの利用を抑止するとともに、リーチサイト対策ではストリーミング、オンラインリーディング型のサイトも対象としているため、技術の違いを問わず、悪質な海賊版サイトに対応することができるものと考えています。
また、御案内のとおり、無断アップロードについては、基本的に、ダウンロード型、ストリーミング型を問わず、現行法で既に違法となっておりますので、日本では諸外国と比べても厳格な法定刑が定められております。
なお、海賊版サイトには多種多様なものが存在するため、さまざまな手法を組み合わせながら総合的かつ継続的に対策を講じていくことが重要であり、今回の著作権法改正とは別途、海賊版サイトの収入源を断つための広告出稿の抑制、情報検索サービスにおいて海賊版サイトが表示されないようにする検索サイト対策など、関係省庁が密接に連携しながら実効性のある対策を総合的に講じているところでございます。
なお、侵害コンテンツのダウンロードを違法化することにとどまらず、侵害コンテンツを視聴する行為自体を規制することについては、国民の情報アクセスへの大きな制約となることから、極めて慎重な検討が必要であると考えています。
○城井委員 この取締りの対象とする技術の点について、午前中の参考人質疑でも話題に上がった点について一つ大臣にお伺いしたいと思います。
違法な侵害コンテンツをアップロードする先の一つになっているところに、プラットフォーマーが運営をするクラウドサーバーがあります。このクラウドサーバーに上がるデータなどについての規制は行わないのか、プラットフォーマーの監視責務を強化するなどを行うべきではないかというふうに考えますが、大臣、この点はいかがでしょうか。
○萩生田国務大臣 今回の法律では、クラウドサーバーについては対象外となっております。
○城井委員 実際にクラウドサーバーを運営するプラットフォーマーに監視の責務を課すとなりますと、違法なものとそうではないものと、大量のデータが上がっていて、そこの逐次のチェックというのはなかなか難しいというのが現実だというのも、本日の参考人質疑でも確認したところでありました。ただ、そのクラウドサーバー自体が違法なコンテンツの温床になり得る可能性があるというところでは、ここにかかわる法律について、きちんと抜け穴がないようにするべきだというふうに考えています。
具体的に申し上げます。
きょうも福井参考人から御指摘があったんですが、プロバイダー責任制限法という法律があります。この法律で、発信者情報の開示を行えるようになっています。サーバー管理の会社に対して開示ができるということになっています。ただ、この開示が任意なものですから、時間がかかるということ。そしてもう一つは、開示された情報は、投稿したとき、情報をアップしたときのIPアドレスしか対象にならないものですから、IPアドレスなどの偽装がありますともう追いかけられないということになりまして、つまり、抜け道が多いということになります。
ですので、今後、大臣含めて対応を検討いただくときに、このプロバイダー責任制限法である程度網はかかるということを恐らくお考えになると思うんですが、抜け道がありますので、その抜け道を塞ぐ努力をぜひしていただきたいと思いまして、この点を御検討いただけないかということをお伺いしたいと思います。
○萩生田国務大臣 冒頭申し上げたように、今回の法律は利用者とまた著作権者のバランスをとったものであって、さまざまな例外事項もつくらせてもらいました。できるだけ利用者が萎縮しないように、また著作権者の権利を守れるようにということなんですが、この法律によって、今先生御指摘のように、全ての、悪意を持ってさまざまなシステムを更に進化させて、著作権を侵害しようという意図を持って行うことに対して全て対応できるかと言われれば、これは多分、日進月歩でいろいろな技術も変わってくるので、どんどん変えていかなきゃならないと思います。
現時点でも、絶対にこの壁は越えられないんだというものができ上がっていない部分もあることは正直に認めながらも、しかし、時代の変化に合わせてできるだけいいものに改正をしていくということを前提にお認めをいただければな、そう思っているところでございます。
○城井委員 ぜひ、技術の進歩は速いということも前提にした、先ほど提案申し上げたような部分を含めて検討をお願いしたいと思います。
続きまして、アウトサイダーへの対応の件についてお伺いいたします。
今回の法改正で規制が及ばない、あるいは規制に非協力的な国は幾つあって、それはどこかということを大臣に伺いたいと思います。現時点での海外の捜査機関、通信業者との協力体制や今後の政府の方向性、具体策をどう考えるか、国際連携、国際執行の強化をどのように今後進めていくか、大臣、お答えください。
○萩生田国務大臣 今回の法案に関しては、海外のサイトから侵害コンテンツをダウンロードする行為も違法化の対象となるとともに、海外にサーバーがあるリーチサイトについても、海賊版被害が日本で生じる日本向けのものであれば日本の法に基づく権利行使が可能であり、日本国内で罰則の構成要件に該当する行為やその結果が生じた場合など、刑事上の取締りの対象にもなると考えています。
このため、法律上は海外の事案についても規制対象となり得ますが、実際に海外で権利行使、取締りを行うに当たっては、さまざまな困難が伴う場合も想定されます。
海外の捜査機関等との国際連携、国際執行については、これまでも警察庁において、ICPOを通じた国際協力や、刑事共助条約に基づく国際捜査共助の体制が構築されているものと承知しております。また、海賊版対策組織である一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構においても、各国の権利者団体や刑事当局と連携した対応に取り組まれているものと承知しております。
このほか、文部科学省においても、特に海賊版被害が懸念される国との間における連携強化について政府間協議を行ったり、海外における権利執行の方法や事例に関するハンドブックや事例集を作成し、日本の権利者への情報提供を行うなどの取組を実施しており、今後もこのような取組を継続、充実していく予定です。
昨年十月に取りまとめられたインターネット上の海賊版に対する総合対策メニュー及び工程表においても、国際連携、国際執行の強化は重要な課題として位置づけられており、今回の法案の附則第七条でも違法アップロード対策の充実について規定がされているところから、今後とも、関係省庁と連携しつつ、効果的な対応を推進してまいりたいと思います。
なお、どこの国で何国かというのは、ちょっとここで私が申し上げるとまたいろいろありますので、ぜひ、こういった課題を一つ一つ少なくしていく努力をしていくことでお許しをいただきたいと思います。
○城井委員 大臣、そこは国名含めて言っていただかないとというふうに思います。もう一回聞きましょうか。
では、違う観点から今の件について少し伺います。著作権を守っていく国際的な枠組みに入らない国が何をしているかということであります。
例えば、オフショアホスティングというふうに専門用語で言うそうでありますが、こういう権利関係に、よく言えば寛容、悪く言えば緩い国の中に置いてあるサーバーがあったり、そして、防弾ホスティングというふうに専門用語で言うそうですが、要は、国際的な枠組みから、権利侵害をしているから何とかしろと言われたときに、あえて無視をするというようなサーバー業者がいるわけであります。こういうことが許されていいのか。こういうことを許している国があるわけであります。
更に言うと、ドメインの登録業者の中にも、確信犯的な、悪質な人たちがたくさんいます。この人たちがやはり、同じような指摘を受けても無視することを売りにした営業をしている。そうした業者を守っている国があるわけであります。
ですので、これは、その国との国家間関係はあると思いますけれども、そうした、我が国にとって、我が国で権利を持っている方々にとって有害な状況をあえて生み出している、無視するなどして生み出している人たちが、国がそういうものを見逃しているということですから、こうした防弾ホスティングや確信犯的なドメイン登録業者についての取締りをきちんとやる。ここに手が届かなければ、国際連携を幾ら言ってみても、それは抜け穴が残ったままだということになります。
大臣、ここは対応いただけますか。
○萩生田国務大臣 先生の御指摘、問題意識は極めて大事でありまして、これは国内法でまず固めをしますけれども、国際協力をきちんとして国際スタンダードを高めていかないと、わかりやすく言えば、違法者がいればそこに集まって悪さをするということになってしまいます。
御案内のとおり、国連にWIPOという組織があって、これは任意加盟ですから国連加盟国が全て入っているわけではないんですけれども、今、順次加盟国がふえつつあります。著作権のあり方については、やはり国際スタンダード、ルールをきちんと守っていこうという意識は各国高まっていると思います。つい最近までとんでもなかった国が非常にマナーがよくなってきたという事例も数多くございますので、こういう中でまずレベルを上げていく。
それから、私、これは外務省や経産省や、あるいは官邸とも連携してしっかりやっていきたいと思うんですけれども、せっかく積極的な外交をやって、さまざまな二国間協定をしていますけれども、この中に必ずこの著作権のことをしっかり書き込んで、二国間でしっかりグリップができる関係というのを一つずつ一つずつふやしていくということも、ここ数年かけて頑張っていきたいなと思っています。
いずれにしましても、そういった違法な企業が存在しやすい国や都市に拠点を置いて引き続き著作権の侵害をすることをぼうっと見ているような法律であってはならないと思いますので、そこはしっかり対応することを改めて約束したいと思います。
○城井委員 東南アジアですとかヨーロッパですとか、特にひどい国はもう既に検討段階でも明らかなはずでありますので、そこは厳正な対応と、そして二国間でのそのほかの交渉もあるでしょうから、そうしたあらゆるチャンネルを通じながら改善をきちんと図っていただくということをお願いしたいと思います。
経産政務官、お待たせしました。海賊版サイトへの広告出稿の抑制の取組の進捗を確認したいと思います。どれぐらいの効果があったかということ、今後どのように対応するか、教えてください。
○宮本大臣政務官 委員の御質問にお答えをいたします。
経済産業省といたしましても、今回、インターネット上の海賊版サイトによる被害が拡大する中で、同サイトが広告収入を主な収入源としていることを踏まえまして、平成三十年の初頭より、文科省始め関係省庁とともに、広告関係団体に対して広告の出稿抑制の協力要請を行ってきたところでございます。
権利者団体また広告関係三団体が連携をいたしまして、海賊版サイトのリストを共有したり、また、定期協議、広告掲載ガイドラインの策定を行うなど、対策を講じてきていただきました。その結果、平成三十年の十月には、広告関係団体加盟者が配信する広告は一件も表示されないことを確認しておりますし、本年四月段階でも引き続きゼロ件であると承知をしております。
さらに、こうした対策を一層効果的かつ継続的に実施するために、経済産業省から働きかけをいたしまして、昨年九月に権利者団体と広告関係三団体による合同会議を設置していただきました。改めて、これまでの取組を一層強化推進していただくことと、また、業界団体非加盟の事業者に対しても働きかけを行う、こういった協力要請も行っております。
引き続き、状況を注視しながら、文科省始め関係省庁と、また関係団体と連携をし、必要な対策を実施してまいります。
○城井委員 政務官、要請によって、加盟している会社についてはということでありましたけれども、要請による自主規制に任せた場合、それでも非加盟の業者等による広告出稿はやはり出てくるのではないか、それが海賊版サイトの運営を継続する資金になってしまうのではないか。そうした部分で、仮に継続をさせてしまった場合に被害が出た場合、国はどのように対応いたしますか。
○宮本大臣政務官 お答えをいたします。
非会員に関しましては、当然、まだいろいろなルートから広告が掲載されている、これは確認をしているところでございます。ただ一方で、会員外も含む全ての広告主や広告事業者に対して取組を要請するということもなかなか容易ではありません。
そして一方で、最近、こういった広告のシステムが効率化、自動化する中で、いわゆる広告主側も意図せず違法性の高いサイトに広告が出てしまう、こういったケースもございますので、一律に広告側を規制することは難しいとは思っておりますが、今まで講じてきた取組を更に後押しするとともに、引き続き、業界団体と連携をして、更に高度化するさまざまなツール等の活用もしっかりと検討して、働きかけを行っていきたいと思っています。
○城井委員 再び大臣にお伺いしたいと思います。
きょうの参考人質疑でも、海賊版対策の実効性を高めるにはということで、課題の一つといたしまして、対策にかかる時間やコスト、ノウハウということの指摘がありました。福井参考人からは、海外での著作権侵害の対策の助成は政府から行われていないという指摘もあったところであります。
海賊版対策の実効性を高めるために、自力での対策に限界がある中小企業の海賊版対策への経費の助成やノウハウの共有を国として行うべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○萩生田国務大臣 海賊版対策については、御指摘のように、中小企業が侵害コンテンツを探索し、刑事訴訟や民事訴訟等の対応を個別に行うには、ノウハウなどの面で限界があると考えられます。
こうしたことから、文化庁では、中小企業を含めた我が国の権利者が海賊版対策を行うための権利執行の具体的な手順や必要な情報を整理したハンドブックや、ノウハウ、好事例をまとめた事例集などを作成し、海外における海賊版対策の取組を情報面で支援してきており、今後もこうした取組を充実させていく予定です。
また、コスト面において、個々の権利者が個別に海賊版対策を行うことは非効率であることから、経済産業省の予算措置も受け、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構、CODAが侵害コンテンツ自動監視削除システム等により一括して侵害コンテンツの削除要請を行ったり、窓口となって海外機関と連携した取組を行うなど、共同での権利行使による効率化を図っております。
文化庁としては、関係省庁とも連携しながら、今後とも中小企業を始めとする我が国の権利者の権利行使に資する取組を実施してまいりたいと思います。
○城井委員 最後に、大臣、通告はないんですが、参考人質疑で御意見があったので、一つお伺いしたいと思います。
参考人からもありました。著作権を守ることで守られるはずのクリエーターですとか文化芸術関係者が、新型コロナウイルスの影響で苦境にあります。支援をぜひということで、強い訴えがありました。多くの大手の劇団等も潰れる危機だという声も聞こえてきています。
大臣、守るべきクリエーター、守るべき文化芸術関係者、ぜひ第二次補正を含めて踏み込んだ支援をお願いしたいと思いますが、お答えをお願いします。
○萩生田国務大臣 与党の皆さんを含めて各方面から、文化関係団体の皆さんの救済を求める声というものは、一次補正を組むときからお話がありました。
あのときにもちょっとお話ししたんですけれども、なかなか、その労働形態というのがすごく多種多様なものですから、どこにどう手を差し伸べれば皆さんに届くのかということがすごく難しかったんですけれども、だんだんヒアリングをする中で見えてまいりました。
規模も含めて、二次補正で、しっかり皆さんが安心して、やがてこのコロナが終わった後にまたさまざまないい文化の発信ができる環境がつくれるような後押しというものを、文科省としてはしていきたいと思っております。努力をしたいと思います。
○城井委員 迅速な対応をぜひお願いします。
終わります。
○橘委員長 次に、中川正春君。
○中川委員 立国社の中川正春です。
続けて質疑をしていきたいというふうに思います。
まず初めに、コロナ対策について、著作権との関連の中で一つテーマを絞っていきたいと思うんです。
国立国会図書館のデジタルコレクション、これの公開について、コロナ対策として、ひとつ運用を見直してほしい、あるいは弾力的に考えていただきたいということを申し上げると同時に、これをきっかけにして、このデジタルコレクションの公開について、更に利便性、あるいはその範囲を広げていくような議論をしっかりやっていただいて、次の時代へ向いて準備をしていっていただきたい。その思いを持ってお話をさせていただきたいと思います。
コロナ対策で、一般の図書館だけでなくて、国立国会図書館や大学、研究所などの図書館も閉館になりました。これを実は情報基盤にして、大学や大学院あるいは研究所に所属する研究者が大きな影響を受けていて、それぞれの研究活動に今危機感を持っています。
若い研究者で図書館休館対策プロジェクトという会を立ち上げて、この窮状というのを今訴えておりまして、それは恐らく大臣にも届いているんだというふうに思います。
中身は、これまで国立国会図書館にあるデジタルコレクション、二百七十四万点ですか、というふうに、今、現時点で聞いているんですけれども、本来は、国立デジタルアーカイブ構想というのが以前からあって、ヨーロッパでよく言われる三千万に対して、日本は二百七十四万なんですが、この三千万の規模を見据えて、大きくデジタルアーカイブというのを構築していかなければならない、そんな目的を持っているんですけれども、これに対して予算づけがなかなかなされていない。これは、予算は議運ですね、議会の方で予算づけをされるものですから、なかなか一つのテーマに上がってこないということもありまして、非常にこれが今でもおくれているということ、これを一つ指摘しておきたいんです。
その中でも半分以上を占める図書館送信資料と言われる図書がデジタル送信されて、大学の図書館を含むそれぞれ指定された図書館で閲覧をできるというふうに理解をしています。
著作権との折衷的なところでこういうシステムになっているわけですが、著作権が消失したものであるとか、あるいは著作権や隣接権が確認できていないもの、いわゆる孤児著作物ですか、こういうものを中心にデジタル化されたものが図書館に送信されて、図書館に来て、図書館でのみ閲覧を可能にしているということであります。
その数というのが、博士論文などを合わせると百五十一万点近くになっているというふうに理解をしているんですが、研究者は、国立国会図書館から送られてくる資料を身近な大学や図書館に行ってネットを通じて閲覧をしていた。しかし、コロナ対策で図書館が全部閉館になってしまって、図書館にある末端が使えない状況、これがもう二カ月以上続いているわけであります。
国立国会図書館の方は、そのことに対して、閲覧は無理でも、各図書館で紙に転写した資料というのを提供するサービスがあるというふうに言っていますけれども、それぞれの図書館が閉まってしまった状況の中ではこのサービスも使えないということが問題になっています。
そもそもこの問題は、それぞれの図書館に送信して、図書館に来て閲覧してくださいよというところでとどめて、それでいいとしておく問題なのかどうかということ。これが直接それぞれの研究者からアクセスできるような部分というのを、もっと精査して、著作権を整理しながらしっかりそこまで到達ができるような議論というのを真摯にやっておかなければならなかった問題なんだろうと思います。何となく安易に各図書館に送ってそれでよしとしてしまっているところに一つは問題があるということを指摘しておきたいと思います。
その上で、二つほど具体的に要望をしていきたいと思うんですが、その措置がとれないかどうか確認をしたいと思います。
一つは、緊急措置として、デジタル受信の承認を受けた図書館だけでなくて、学術利用等に限定した形で、外部からアクセスをして、ということは、研究者が直接アクセスをしてこのサービスを利用できる形がとれないかということです。
もう一つは、国立国会図書館の館内限定利用のデータについても、館外からの利用を可能にする方法を模索すべきであって、ダウンロードやあるいはコピー等々に対して制限をかけていくということであるとか、あるいは、閲覧者のIDや閲覧目的など、これを条件にして、管理しながら、限定された形の利用を考えた上でのデータ利用を設定することで著作権と調和させることができないか。
これは最終的にポストコロナというか、ポストコロナの体制の中で更に積極的にこうした運用を私はやっていくべきだというふうに思うんですが、そのことも見越して、まず緊急的に一遍試しにやってみるというような、利用の利便性というのを緊急的にまず考えていただきたいということ、このことを要望したいと思うんですが、どうでしょうか。
○吉永国立国会図書館長 若手研究者の要望等につきましては、国会図書館の方の館長にも宛てて郵送されておりまして、要望内容については十分に承知しております。
国会図書館といたしましても、当館を含めて、先生もおっしゃられましたように、各図書館の来館利用サービスというものが利用できなくなってしまっているということで、若手研究者等の置かれた困難な状況を重く受けとめさせてもらっておりまして、真摯に対応してまいりたいというふうに考えております。
先ほど申されましたように、緊急的な臨時措置といたしまして、関係者団体との協議の上に、各図書館からの要望に応じまして、インターネット公開をしていないデジタル化資料、図書、雑誌等を、当館が一冊全てプリントアウトするということで、当該図書館の蔵書として活用いただけるように現在しております。それが一つということです。
さらに、御質問にありましたように、当館は現在、図書や雑誌、古典籍等を約二百七十四万点、デジタル化資料を提供させていただいております。そのうちの五十四万点はインターネット提供で、全ての人々が見られるような、各家庭でも見られるような形になっております。絶版等の理由で入手困難な資料約百五十一万点を国内外の図書館等にデータ送信しております。そのほか、六十九万点は国立国会図書館の館内限定で公開しております。それを、先ほど申しました図書館等への送信という、そこのところは、著作権法の第三十一条の三項に基づきまして、著作権の保護期間が満了していない著作物のデジタル化資料のうち、絶版等の理由で入手困難な資料を対象としておりまして、送信先機関も現在、規定されているということから、やはり同法の改定なしには、対象資料を、送信先の範囲を拡大することで、先生の御要望、おっしゃられましたようなことは難しいものであるというふうに現在のところは認識させてもらっております。
○中川委員 問題提起を関係者の中でしていただかないことには、そのまま法の改正もなし得ないし、私の解釈では、今の法の範疇の中でもっと工夫はできるんだというふうに私は解釈しているんですけれども、そこのところの努力が足りないということ、そこをまず指摘をしておきたいというふうに思います。
同時に、オーファンの取扱い、これについて、著作権のあるなしを早いところ確定させなきゃいけない。その部分というのが多く今あって、それが図書館の送信でとまっているということだと思うので、これを確定するために、文化庁に裁定制度を充実させるということで、その施策が続いているはずなんですけれども、なかなか実態として成果が上がっていないというか、数がこなせていないということがあるんだと思うんです。
これについてどういう問題意識を持っているか、文化庁に確認をしておきたいと思います。
○今里政府参考人 オーファンワークスについての裁定制度でございます。権利者不明の著作物、つまり、いわゆるオーファンワークスでございますが、これにつきましては、著作権法第六十七条に基づきまして、権利者を捜索しても連絡がとれない場合に、文化庁長官の裁定を受けて、補償金を供託することで適法に利用することができる、こういうこととなってございます。
この裁定制度の利用件数は、二〇〇九年に十五件でございました。これが二〇一九年に七十一件と、約十年間で四倍を超える伸びを示しておりまして、著作物の利用増加に伴い、ニーズが大きく高まっている状況にございます。
一方で、先生御指摘ございました、この課題ということでございますけれども、裁定制度の利用者からは、権利者の捜索にコストがかかるですとか、裁定を受けるまでの期間が長い、裁定にかかる費用が高いといった声が寄せられていることも事実でございます。
こういった声に対応することといたしまして、これまで、権利者捜索に係る要件の緩和ですとか、申請手数料の減額、さらに、申請中利用制度の導入、国等が利用する場合における補償金の事前供託の免除など、累次の改善を進めてきたところでございます。
今年度からは、補償金額の目安を過去の裁定実績から事前に把握できるシステムの構築を行うこととしておりまして、今後とも、本制度の利用ニーズを勘案した手続の改善など、裁定制度のさらなる利便性の向上に不断に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○中川委員 きょうも参考人から話が出ていましたが、補償金を前に積むというんじゃなくて、後で精算する形、この辺も含めて抜本的な対策の見直しというのが私は必要だというふうに思っていまして、そのことを指摘しておきたいと思います。
更に言えば、さっきの国立国会図書館の答弁で、前向きにというか、工夫できるところはしていこうじゃないかというような話もあったんですけれども、今、喫緊の緊急対策として、文化庁から見て、著作権を前提にした形で国立国会図書館がサービスができるとすれば、研究者に対してもっと利便性のあるサービスができるとすれば、どこまでいけるか。文化庁、著作権を扱う役所としてどういう見解を持っているか、確認をさせてください。
○今里政府参考人 先ほど国会図書館の方からお話がございましたように、さまざまな権利者の御理解を得た上で、今まではなかった臨時的な対応として、サービスの不参加の図書館等に限って利用可能としてきた紙媒体による対象資料の複製物の提供、これを、サービス参加図書館においても行うことができるようにしていると聞いているところでございます。このことにつきましては、文化庁としても有意義な取組であると考えているところです。
一方、これもお話がございましたように、例えば、図書館以外の個人に直接これを配信する、こういったことにつきましては、現行法のもとでは対応することは困難となっているという状況であると著作権の側からは理解をしているところでございます。
他方、今般、新型コロナウイルスの感染拡大によりまして、図書館資料の閲覧利用が困難となっている、インターネット等を通じた絶版等資料へのアクセスの運営についてニーズが高まっているというのも事実でございますので、緊急的な対応を行っていただいているところでございますけれども、これを機に制度的な対応についても検討していく必要がある、このように考えているところでございます。
○中川委員 それこそ、これを機に、新たな国立国会図書館のデジタルコレクションの活用を一緒に考えていきたいと私も思っております。そういう意味で、やはり現場から提起をしてもらわないとこの話は進まないということ、これを指摘しておきたいと思います。
それでは、今回の法案に関連した質問をしていきたいと思います。
今回の法律によって、先ほどから実態の話が出ていましたけれども、その実態の中で、違法配信がどれほど改善されるというふうに見込んでいますか。
○今里政府参考人 まず、改善の前提といたしましての違法通信の割合ということを申し上げたいと思います。
全国出版協会・出版科学研究所の発表によりますと、二〇一九年度におきまして、紙の出版物の市場規模は一兆二千三百六十億円、電子出版物の市場規模が約三千七十二億円であると示されているものと承知しております。
また、海賊版による被害といたしましては、関係団体の推計、調査によりますと、漫画村では半年間で三千二百億円の出版物がただ読み、出版社の売上げが二〇%減少したという試算がございます。また、はるか夢の址という日本最大級のリーチサイトでは、一年間の被害額が七百三十一億円に上るとの試算などが示されていると承知しております。
これらについて単純な比較を行うことができないわけでございますけれども、例えば、この額を機械的に見れば、電子出版物の正規配信の一年間の市場規模よりも、漫画村一サイトで約半年間にただ読みされた額が上回っており、正規配信を超える規模で違法配信が行われていると評価することも可能かと思います。
この違法配信が今回の法律改正によってどの程度減るかということについては、具体的な数字が今のところあるわけではございませんけれども、例えば、音楽や映像について、平成二十一年にダウンロード違法化、そして二十四年に刑事罰化されたときにも相当数の減少が見られたところでございますので、これと同等あるいはそれ以上ということが期待されるものではないか、このように考えているところでございます。
○中川委員 さっき、全体の規模の中で、今合法化されているものと同じほどの市場規模というか逸失利益がある、そういうふうな数字を出されてきましたけれども、実際、これもきょうの参考人の話に出ていましたけれども、これは抑止効果を前提にするものであって、具体的にこれで本当に減少がどれほどいくのかということについては、まだまださまざまな期待がある、いわゆる制度の仕組みを工夫していかないといけないということだと思うんですね。
そういう意味で、一つ、さっきも、午前中も話に出ていたんですけれども、広告掲載、違法なアップロードに対する。なぜ海賊版があるかといったら、広告収入が前提になってビジネスモデルが成り立って、それでその行為というのはなされるわけですね。もう一つは、広告というのが表に出るわけですから、トレースしていきやすい。誰が広告を上げているのかということも、これは確実に把握ができる。
そういう意味で、今は、自主運営といいますか、自主的にこれをコントロールしていきたいという業界の話もあるんだろうけれども、それではなくて、法的に広告掲載を禁じる手だてというのが、私は当然もう一つの選択肢としてあっていいんだろうと思うんです。
そういう議論も関係者の中ではこれまで積み重ねてきたんだろうと思うんですが、今そのことに対して、どこがネックになっているのか、なぜこれができないのかということ、どのようにそれは把握をされていますか。
〔委員長退席、池田(佳)委員長代理着席〕
○今里政府参考人 今御指摘のございました広告出稿の抑制でございます。
これは、政府全体の取組でございますインターネット上の海賊版に対する総合対策メニュー及び工程表、ここでも、関係省庁が密接に連携しながら実効性のある対策を総合的に講じていく、こういうふうにされているところでございまして、これも委員御指摘ございましたように、広告出稿の抑制につきまして経産省を中心に取組が進められておりまして、広告関連団体での自主的なガイドライン策定、公表、それからコンテンツ海外流通促進機構と広告関連三団体による合同会議が新たに設置されまして、広告出稿すべきでない海賊版サイトリストの共有が定期的に行われているほか、業界団体非加盟事業者に対する働きかけも行われているところでございます。
そして、広告出稿の禁止についてでございますけれども、まず、日本において海賊版サイトへの広告出稿の抑制を義務づけている法律というのはございません。広告出稿を法的に規制することは、広告を出稿している事業者の営業活動の自由の制約にもなり得るため、現在行われている海賊版サイトへの広告出稿の抑制は民間の自主的な取組として進められている、こういうことでございます。
なお、諸外国におきましても、海賊版サイトへの広告出稿の抑制を法律で義務づけている国はございませんで、イギリス、フランス政府においては広告業者の自主的な取組によりまして広告出稿の抑制が行われている、このように承知しているところでございます。
○中川委員 どう考えても常識的には違反行為をやっている、それを助長するような形で広告をそこに掲載する。違反行為がそこにあるということがわかっているにもかかわらず、それに金を出すということがどうして法律の規定の中でコントロールできないのかというのは私はわかりません。
そんな中で、やはりこの観点はもう少ししっかりと考えていくということによって、本来、実効性のある海賊版対策になるのではないかというふうに私は思っておりまして、更にこれは議論をやっていくべきだ。これは、業界団体、いろいろな考え方もあるんだろうと思うんですけれども、そこのところを指摘しておきたいというふうに思います。
ところで、海外なんですけれども、中国では、前々からここを何とかしたいという我々の課題もあったんですけれども、どういうふうになっていますか。
○今里政府参考人 委員御指摘のとおり、例えば、中国においては、日本の漫画やアニメ、映画等の海賊版が日本での発売や公開等の前や直後に翻訳つきで違法アップロードされるなど、日本のコンテンツに係る著作権が侵害された事案が多数発生している、このように承知しているところでございます。
これについての対応でございますけれども、日本の権利者団体や出版社におきましても、現地企業と連携をして正規版の配信を充実させる取組を行っているほか、海賊版サイトに関する削除要請の送付ですとか、日本国内の協力者の摘発、さらに、中国の捜査当局と連携した取締りの強化を行うなど、さまざまな対策を講じているものと承知してございます。
また、文化庁におきましても、例年実施をしております中国政府との二国間協議等を通じて、著作権に関するさまざまな課題の指摘や最新情報の共有を行っているほか、中国の取締り機関の職員を対象としたトレーニングセミナーの実施、日本の権利者が中国を含めた海外で権利行使を行う際の具体的な手順や情報を整理したハンドブックや事例集の作成等の施策を講じているところでございます。
○中川委員 であるけれども、成果は出ていないということだと思うんですね。
それで、一つ提案があるんですが、日本の漫画やアニメが日本で発売される前に中国語で中国でもネットに掲載されるというような、そんな現象なんですけれども、いろいろな努力を国としてやっていく、あるいは国際的な組織を通じてやっていくということはもちろんなんですが、それと同時に、正当なコンテンツが中国語で配信されること、これが海賊版以上に迅速かつ十分になされるということ、これも一つ大きな課題なんだろうと思います。
それはアニメだとか漫画ということだけじゃなくて、実は、新聞や雑誌や文芸書、技術専門書など、他のコンテンツが翻訳をされて、それで正当な形で流通していくとすれば、それは業界にとっても、市場が日本だけということではなくて、世界へ向いて広がっていく、その戦略というのを経産省がそれなりに今つくっているわけですけれども、文科省として、この日本語の壁をどう乗り越えていくかという戦略が、やはり国家戦略と位置づけられてあるべきだと私は思うんですよ。
日本語のコンテンツというのは、中国語だけじゃなくて、韓国語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、そして、特に東南アジアの国々の中で多言語化していくということがどれだけ世界に対して大きなインパクトを持っていくかということ、これは、私は、日本が日本語を限られた形で今使っていかざるを得ないという状況の中では必須の国家戦略なんだと思うんです、言葉を超えていくということが。
そういう意味で、日本語の、多言語化推進機構というかネットワークをつくって、特に国際交流基金や民間出版社やネットのプラットフォーマーや、さまざまそれに関連する人たち、そして、海外では大学や文化拠点、あるいはそれをネットワーク化していって、翻訳インフラというのをつくるための戦略機構みたいな形の組織化をしていくということ、これが必要なんだと思うんです。
実は、法律の中でもそういうことが過去ちゃんと定義をされていまして、文字と活字文化振興法の中の第九条の中に、国の文字だとか活字文化を海外へ向いて発信を促進するため、我が国においてその文化が広く知られていない外国の出版物の日本語への翻訳、あるいは日本語の出版物の外国語への翻訳、これをやっていきなさいよという法律があるんですね。
これに基づいて、過去に、現代日本文学翻訳・普及事業といって、文化庁が、この当時で七千二百万円ほど予算をつけているんです。これが今途中で消えちゃっているんですけれども、これはなぜ消えたかというと、これは、文学書を中心に、日本の古典というか、それをいろいろな言葉に翻訳したんですが、本が売れない、紙でやるから。それと同時に、国の予算一〇〇%でこれをやっているんですよ。
この発想じゃないと思う。この発想じゃなくて、それぞれの民間で、今ビジネスとして市場を広げていく人たちの中の一つのインフラをつくるという観点の中でこの翻訳というのを捉えて、新しい形を構築していくということが必要なのではないか。そういう意味で、日本語の多言語化推進機構というのを位置づけて、戦略的にやってみたらどうか、こういう構想があるんですけれども、大臣、御存じですか。
○萩生田国務大臣 多言語化推進機構の構想については、私、済みません、存じ上げませんでした。
しかしながら、今、先生るる御説明いただいたコンセプトは極めて大事で、アニメにしても何にしても、日本文化を我が国のブランド向上や経済成長につなげるものとして海外に発信していくというのは大事だと思います。
海外メディアの芸術関連フェスティバルへの出展ですとか、海外の映画祭に出品する際の字幕制作支援ですとか、翻訳者の育成を目的とした翻訳コンクールの実施など、漫画やアニメや文学などの海外発信の取組は既に行っているところでございますが、日本遺産を含む我が国の文化遺産の魅力を海外に発信すべく、外国人有識者の監修のもと作成した英語版ウエブサイトを、ことし三月に日本政府観光局ホームページ内に開設をいたしました。
ちょうど四年前のリオのオリンピックの閉会式に、私、政府の代表の一人として行ったんですけれども、あのとき、総理がスーパーマリオに扮したパフォーマンスをないしょで行うので、当日まで、これはどうなるかすごいどきどきしていて、そして、画面には日本のアニメキャラクターが順番に出てくるんですね。キティちゃんが出てきたりドラえもんが出てきたりするんですけれども、いよいよキャプテン翼が出てきたときにはもう総立ちになりまして、皆さんが大歓声を送っていただいて、もともとラテン系の国ですから、ただでさえ明るいんだと思っていたら、後で聞いたら、今出た漫画をブラジルの子供で知らない人は誰もいない、こういうふうに説明をしていただいて、私、逆にびっくりしたぐらいでございます。
直ちにプラットフォームを文科省あるいは文化庁が中心になってつくるということが果たしてできるかわかりませんけれども、先生の御趣旨は非常に大事だと思いますので、関係省庁と連携し、さまざまな形での日本文化の発信強化に取り組んでまいりたい、そう思っております。
○中川委員 これから、そうした国家としての戦略をつくるということは大事だと思うので、ひとつ一緒にやれればと思います。一緒にやっていきましょう。よろしくお願いします。
○池田(佳)委員長代理 次に、日吉雄太君。
○日吉委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。
本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、早速始めさせていただきます。
まず、法案についてお伺いをさせていただきます。
平成三十年著作権法の一部改正により、教育現場での著作物の円滑かつ適法な利活用を促進する観点から創設された授業目的公衆送信補償金、これについてお伺いいたします。
たしか附帯決議がありまして、その中で、「教育機関設置者が支払う補償金の負担が生徒等に転嫁される場合に、生徒等の負担が過度にならないよう、適切な運用に努めること。」こういった附帯決議がついておりました。
現状、この教育機関設置者が支払う補償金の負担はどのようになっておりますでしょうか。
○今里政府参考人 お答え申し上げます。
今委員から御指摘のございました授業目的公衆送信補償金制度でございますが、平成三十年の著作権法改正で創設されまして、今般の新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔授業等のニーズに対応するために、当初の予定を前倒しいたしまして、本年四月二十八日から施行されたところでございます。
学校の授業の過程における資料のインターネット送信につきましては、従来は個別の許諾が必要でございましたが、この制度の施行によりまして、許諾を得ずに、さまざまな著作物を円滑に利用できることとなったところでございます。
補償金の件でございますけれども、この制度は、学校の設置者が、各分野の権利者団体で構成される指定管理団体に一括して補償金を支払うものでございますが、当該指定管理団体の申請に基づきまして、令和二年度に限り、補償金額は特例的に無償となっているところでございます。
令和三年度以降の補償金額につきましては、来年度からの本格的な運用開始に向けまして、指定管理団体において検討、調整が行われた後に文化庁長官の認可を受けることとなりますが、本年四月二十日に政府の方で閣議決定をされました緊急経済対策におきまして、「補償金負担の軽減のための必要な支援について検討する。」とされていることも踏まえながら、本制度の円滑な運用に向けて適切な対応に努めてまいりたいと考えてございます。
○日吉委員 本年度は無償ということで、令和三年度も適切な運用を行っていただくよう、お願いいたします。
続いて、新型コロナウイルスの拡大によって、学校現場、この対応に本当に苦労していると思います。タブレット端末やパソコンを取り入れた授業、こういったものがこれまで準備が進められてきましたけれども、それが急速に求められている、こんな状況でございます。
著作権法といえば、権利者側に立った規制強化に非常に重きを置いている感じがするところがあるんですけれども、現時点で、なかなか外に出られない、資料も集められない、図書館などに通って物も調べられない、こういった状況におきまして、必然的に、ネットからダウンロードをしていろいろ調べたりする、こういったことが行われておりますが、そういったときに、この利用者の利便性、今回の法改正によりこの利用者の利便性を確保という観点からは、どのようにこの法案、取り扱っているのか、大臣、お答えいただけますでしょうか。
○萩生田国務大臣 侵害コンテンツのダウンロード違法化については、当初、インターネットを利用した情報収集活動が萎縮するなどの不安や懸念の声が寄せられておりましたが、丁寧かつ慎重な検討を行い、さまざまな除外規定を設けたことで、国民の皆様に安心していただける内容となっていると考えております。
また、今回の法案では、著作物利用の円滑化の観点から、写り込みや行政手続に係る権利制限規定の対象範囲の拡大や著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入といった措置も講ずることとしており、法案全体として保護と利用のバランスが図られているものと考えております。
お尋ねの著作物の利用については、本法案とは別途、現行の著作権法第三十五条において、一定要件のもと、権利者の許諾なく使えることと教育現場ではなっております。先ほど文化庁の次長も答弁されましたけれども、平成三十年の著作権法改正が本年四月から施行され、オンラインでの遠隔授業における著作物利用も円滑化されております。
文科省としては、引き続き、教育現場の利用を始め、著作物の公正な利用を促進する観点から、関係者の意向を踏まえつつ、さまざまな対応を行っていきたいと考えております。
○日吉委員 今御答弁いただきましたが、利用者側の利便性、こういったことも十分に検討した上で御対応いただければと思います。
そして、もう一つ、現在までに、動画や音楽のダウンロード、この違法化におきまして、違法な処理によって、逮捕者というのは出ているんでしょうか。その辺についての状況についてどのように評価されているのか、お答えいただけますでしょうか。
〔池田(佳)委員長代理退席、委員長着席〕
○今里政府参考人 音楽、映像の違法コンテンツのダウンロードの違法化につきましては、平成二十四年に、著作権法改正によりまして、この刑事罰化が行われてございます。
今のお尋ねの摘発の事例ということでございますが、摘発の事例はあるとは承知しておりません。
平成二十五年に文化庁で実施した調査研究によれば、他方、ファイル共有ソフトによる有償著作物等と考えられる音楽、映像ファイルは大幅に減少した、これが確認されているところでございます。また、ファイル共有ソフトを通じたダウンロードについて、音楽、映像の違法ダウンロード刑事罰化以降にやめた、減ったと回答したユーザーの割合が約七割程度であったことも確認されているところでございます。
したがいまして、このように、実際の摘発には至ってはおりませんけれども、音楽、映像の違法ダウンロードの刑事罰化につきましては、予期したとおりの抑止効果は発揮したものと理解してございます。この評価につきましては、二〇一九年二月の文化審議会著作権分科会報告書でも確認されているところでございます。
○日吉委員 ありがとうございます。逮捕者はいないんですけれども、抑止効果は発揮されているというふうに理解いたしました。
続きまして、以前にも、大臣にもお尋ねさせていただきましたけれども、下関市立大学の特別支援教育特別専攻科設置をめぐる教員採用の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。
下関市立大学では、この大学は経済学部の単科大学ではありますけれども、突然、特別支援教育特別専攻科を設置することになりまして、下関市長の推薦する教員三人を採用することが決まって、今年度から採用をされているということです。
この採用の過程に当たっては、教授会の意見を聞くということが学校教育法九十三条で求められておりますけれども、単科大学で、新しい専攻科の設置ということで、この教授会の意見を聞かないで専攻科設置と採用を決定してしまったという経緯があります。
また、定款で教育研究審議会の審議を経なければならないということにもなっているんですけれども、この専攻科設置に反対する教員が出席を拒否したことによって、この審議会が開催されないままに、審議会の審議を経ることなく、この専攻科設置、教員の採用が決まってしまったということで、学長が採用を判断し、理事長が決定したというような状況になっております。
これに九割方の教員の方々が反対をする、こういう署名を出したというようなことがあるんですけれども、それについて文科省さんが助言をなさっておりまして、それの中では、貴学における全学教授会、学部教授会の位置づけや権能を明確にするよう学則を見直した上で、学内規程に沿った適切な手続をとることが必要になると考えます、このような助言をされています。
質問です。この助言に対して、文科省さんは学校はどのように対応したと今認識されているのか、お答えください。
○伯井政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の昨年八月の助言につきましては、学内規程の解釈は一義的には各大学の責任と権限に委ねられているということを前提にいたしまして、教員採用手続の適切性につきまして、大学内で大学執行部と教員組織との間で対立が生じている状況を受けまして、今後同じような疑義が生じないよう学内規程を整備することを助言したものでございます。これは御指摘のとおりでございます。
その後、本年三月に、同大学から文部科学省に対しまして、教授会の権限を明確にすることを内容とする学内規程の見直しを行った、学部の教授会ということでございますが、そしてそれを本年四月から施行するとの報告を受けたところでございます。
○日吉委員 その報告を受けました、将来的に向かって規程を整備しましたということは理解しました。
その規程の内容が適切なのかどうかということを文科省さんはどう判断されているのか。また、その当時の専攻科設置の手続、そして教員採用の手続が適正だったかどうか、これは文科省さんはどのように判断されているのでしょうか。
○伯井政府参考人 教授会の権限を明確にするという意味におきましては、助言を踏まえた対応を行っていただいたものと認識をしております。
また、この助言は、今後同じような疑義が生じないよう学内規程を整備するということを助言したものでございまして、今回の教員採用手続そのものについては、違法性あるいは瑕疵を認めていたものではございませんでした。
大学におきましては、教員採用に関しては、理事会の諮問機関として置かれた教員人事評価委員会におきまして、副学長又は専任教員のうち学長が指名する委員により、専門的な見地から審議を行うことと、定款を変更してそういうふうにされたということでございまして、そういう形の中で、大学の実情ということで、教員の意見も聞きながら選考を行うというような方法をとっているというふうに承知しております。
○日吉委員 ですので、ことしの四月以降については、定款が変更されて新しい定款のもとで行われているということはわかったんですけれども、その当時の、教授会の意見を聞かなかった、設置、新設に当たる手続が適正だったかどうかについては、文科省さんはそれは判断していない、こういうことでよろしいでしょうか。
○伯井政府参考人 これは先ほど先生も御指摘されましたけれども、専攻科を設置する教員の採用ということでございますので、それは同大学において判断されるべきものであって、その説明責任も大学で果たしていただくというふうに考えております。
○日吉委員 ということは、文科省さんとしては判断していなくて、それは大学が独自で説明責任を果たしていかなければならないというふうに理解しました。
しかし、これはよく内容を見てみると、単科大学だからこそ、経済学部の教授会の意見を聞いてもしようがないといいますけれども、単科大学だから経済学部の教授会しかなくて、下関大学の教授会規程を見ますと、これは経済学部教授会とは書いていません。そして、教授会の議長を務めるのも、学部長ではなくて学長が議長を務めているわけですから、これは全学教授会というふうに通常考えられるのではないか。実際に、学長が議長を務めている、こういう運営がなされているわけです。このような状況において、やはり教授会の意見を聞かなければいけなかったのではないか、このように言われております。
また、新しい専攻科の設置であるから、今までの方法ではできないということなのかもしれませんけれども、その場合にも、人事評価委員会というのを設けた上で、そこの議決をもって採用方針を決定しなければいけないと思いますし、通常であれば、審査委員会というのを設けて、採用者と補欠採用者、こういった候補をつくった上で採用を行っていく、こういう手続が行われているんですけれども、こういったことも全部すっ飛ばされているわけなんですね。
その中で、そういった状況におきまして、今、この下関市立大学は、教職課程の申請をしようとしております。この教職課程の申請、このような、手続が妥当であったのかどうかわからない状況で、そこに大きな疑問がある中で、この教職課程の申請、これは認められるんでしょうか。
○浅田政府参考人 教員の免許状授与の所要資格を得させるための教職課程につきましては、文部科学大臣が中央教育審議会に諮問をし、その審査の結果を踏まえて認定されることになっております。
個別の申請の内容についてはその諮問の際に公表する取扱いとしておりまして、現段階では、下関市立大学が申請を行っているかどうかも含めて、コメントは控えさせていただきます。
手続については、一般論としては、夏以降、中央教育審議会の初等中等教育分科会の教員養成部会において、教育職員免許法や同部会が定めた基準に基づいて、例えば、必要な科目が開設されているか、あるいは必要な専門性を有する教員が確保されているかなどを中心に審査が行われ、その審査の結果を踏まえて年内に認定を行うこととなります。
○日吉委員 個別の事案についてはお答えできないということでありますので、一般論としてお伺いいたしますけれども、手続に不備のある学校ですといったときに、教職課程の申請、これについては申請を受けない、申請すること自体はどこもできるとは思うんですけれども、不備がある、手続に瑕疵がある、こういった場合にはその申請を認めないということも当然ある、それを審査の段階で判断していく、こういうことでよろしいですか。
○浅田政府参考人 審査につきましては、さっき申し上げましたように、教育職員免許法や部会が定めた基準に基づいて、必要な科目が開設されているかとか、必要な専門性を有する教員が確保されているかといったことを中心に審査を行うことになります。
御指摘の、例えば大学の意思決定過程のような、大学の管理運営体制等については、この教育職員免許法や部会が定める基準においては審査の対象とはされておりません。
○日吉委員 その教員に資格があるかどうか、こういったことが審査の対象になるというふうに言われておりますけれども、じゃ、今回の教員の採用、これは、資格審査はどのようにやられていたんですか。教育研究審議会の審議も経ず、教授会の意見も聞かないで、この教員三名の資格の認定。それで、この認定に当たっては承認もしているんですね。
こういった状況を誰がどのように資格承認を判断したんでしょうか。
○浅田政府参考人 まず、先ほどの繰り返しになりますが、個別の申請の内容についてはこの諮問の際に公表するという扱いでございますので、現段階で、御指摘の下関市立大学が申請を行っているかどうかも含めて、コメントすることは差し控えさせていただきますが、一般的に教員組織につきましては、必要な教員が確保されていること等、教育職員免許法、それから部会が定めている基準に沿って審査を行うということになります。
○日吉委員 教員の採用自体、その資格審査についてはお答えできないということでした。
では、ちょっと質問をかえさせていただきます。
教授会の意見を聞くに当たっては、これは学校教育法九十三条で定められていますので、法令にのっとったものでございます。法令にのっとらない場合には、所管する文科省さんは指導助言をし、場合によっては改善命令、是正措置、こういったことをとることができると思います。
一方で、規則や規程、こういったものに学校がのっとっていない場合に、文科省さんは助言なり指導、こういったものはできるという認識でよろしいでしょうか。
○伯井政府参考人 お答えいたします。
今回の教員採用につきましては、同大学の教授会で審議がなされなかったということでございます。
教授会につきましては、今御指摘いただいた学校教育法九十三条の規定によりまして、教育研究に関する重要な事項のうち、学長が決定を行うに際してあらかじめ教授会が意見を述べるということで、学長が重要な事項の判断をすることになっております。
各大学において、具体的にどのような事項を、教授会の意見を聞くことにするかは、各大学の実情を踏まえて学長が判断するというものでございますので、必ずしもこれは違法であるということは、先ほど申し上げたように断定はできないわけでございます。
ただ、こうした学内規程の解釈とか、あるいは、今回、定款変更もしていますけれども、その改正内容等につきましては、しっかり大学が説明責任を果たしていくということが重要であると考えておりますし、また、いろいろな疑義が発生するような事柄については、疑義が生じないように、あるいは大学間での意思疎通を十分しっかり果たすようにということにつきまして、我々は一般的な助言は行っておりますし、これはできると考えております。
○日吉委員 一般的な助言はできると考えておりますという御答弁でした。
今、教授会の意見を聞くというのは、下関市立大学では、規程において学長が教授会の意見を聞く事項というのを定めてありまして、そこに教員の採用に係ること、こういったことも意見を聞くことというふうに決められておりますので、教授会の意見を聞かなかったことというのは学校教育法九十三条違反になる、こういうふうに考えます。
このような状況におきまして、今回、定款が変更されまして、教授会の意見を聞かないで、理事会の下に人事評価委員会を設けて、その人事評価委員会が教員の採用を審議し、理事会で決定する、こういうふうな定款変更が行われておりますけれども、教授会の意見を聞かないで教員の採用をしてしまう、これというのは違法にはならないのでしょうか。
○伯井政府参考人 先ほど答弁申し上げましたように、学校教育法との関係で違法であるということは断定できないものでございますが、定款変更後、教員採用に関しては、教員人事評価委員会において、副学長又は専任教員のうち学長が指名する委員ということで、一応、教員に、ファカルティーの意見も聞きながら、専門的な見地から審議を行うこととされているということでございます。
○日吉委員 資格審査をどういうふうにやったかわからない、そして、教授会の意見も聞いていない、教育研究審議会の審議も経ていない、このような中で、教員九割の方が反対の署名をして、専攻科設置に反対、教員採用反対の意見を示しました、意思を示しました。
そんな中で、教職課程を今度設置していくわけなんです、申請しているわけなんですけれども、大臣、こういった状況、大臣から、これでは大学の運営が立ち行かなくなるのではないかというような総合的な観点から見て、もっと助言指導をしていくべきではないかなと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
○萩生田国務大臣 たしかこれは予算委員会のときに先生から御指摘があって、まだやっているのかなというふうに思ったんですけれども、お話を聞いて。
外形的な法令上の違法があれば、これは助言や指導を文部科学省が乗り出していって行うことは当然必要なんですけれども、今るる御説明がありました、こちら側から見ると少しイレギュラーじゃないかと思われるようなこと、あるいはこちら側から見ると手続を踏んでいることという、要するに価値観の違いから対立が起こっているんだと思います。
私、一義的にはやはり、せっかく存続する大学が新しい学部をつくるんだとすれば、既存の学部の皆さんにも御理解をいただいて祝福の上でつくられないと、入ってくる学生さんが気の毒だと思いますから、そういう努力を、やはり執行部も、あるいは教授会ですか、学校関係者の皆さんも、何か外に告げ口して、外からの圧力で何かをやってくれという次元では私はないと思いますので、しっかりテーブルを囲んで話合いをするべきじゃないかなと思います。
確かにもう定款などが変わっていますから、変わっていないとすればこれはおかしいじゃないかという指導は文部科学大臣としてできますけれども、現在の外形的なさまざまな要素を見ますと、現段階で文科省が介入して何か行うということは手だてとして考えられませんので、今後、助言が必要な事態が起これば、またお話はしたいと思います。
しかも公立の学校ですから、これは市立の学校ですから、やはり市長さんたちもしっかりやってもらわなきゃならないし、法人を認可した県の方もしっかり指導していただかなければならない。一義的には、現場に近いところでしっかり話合いをしていただいて。何かボタンのかけ違いからきっと始まったことなんだと思います。
高い理想で教育を目指す学部をつくってくれることは我々としては歓迎したいと思うんですけれども、ぜひ、その辺は、しっかり意思疎通ができる環境というのを現場の皆さんで御努力いただくことがまずは大事じゃないかなと思います。
○日吉委員 大臣の発言で、二点ちょっと質問させていただこうと思います。
一点です。
法令、法律に違反しない限りは助言できないということでありましたけれども、地方独立行政法人法の第十五条の二には、「地方独立行政法人の役員は、」これは役員の忠実義務なんですけれども、「その業務について、この法律、他の法令、設立団体の条例及び規則並びに定款、」ちょっと省略しますけれども、「地方独立行政法人が定める業務方法書その他の規則を遵守し、当該地方独立行政法人のため忠実にその職務を遂行しなければならない。」という規定があります。これは法律です。
その規定にのっとって学校の運営がなされているか、なされていないかという、これはなされていなければこの忠実義務違反に当たると思うんですけれども、これについてどのように整理されているのか、教えてください。これは忠実義務違反にならないでしょうか。これは一点目です。
○伯井政府参考人 先ほど、法令の適用について、違法とは断定できなくても疑義があるような場合とか、あるいは今先生おっしゃいましたような法律に基づく忠実義務違反の実施でどうかというようなことで、一般的な助言などは我々できるというふうに申し上げましたけれども、事実、二月の二十五日に先生から御質問があって、大臣からも、執行部と教員組織の間で十分な意思疎通を図りながら、法令の趣旨に沿って進めていくことが重要であるというようなことを御答弁させていただきまして、そのことを、三月の四日に大学関係者に来ていただいて、しっかり文部科学省としてそれを伝えて、助言をしております。
今後とも、必要に応じてそういったことはやっていかなきゃならないと考えております。
○日吉委員 必要に応じてやっていかなければならないということは、この役員の忠実義務違反、定款にのっとっているかどうか、規程等の規則にのっとっているかどうか、ここに疑義が生じているという、こういう問題が出ているので、それがちゃんと規程どおり、定款どおりに運用されているかどうか、これについてしっかりと見きわめていって、必要があれば指導なりを行っていく、こういうことでよろしいですか。
○伯井政府参考人 忠実義務違反に則してどうであるかというのは直ちにこの場では断定できないですけれども、引き続き、二月の二十五日に大臣がお答えしたような方向に沿って、しっかりと助言をしていきたいと考えております。
○日吉委員 規程違反、定款違反があればしっかりと助言していく、今これを確認いたしました。この答弁を確認させていただきました。
それと、もう一つ。
大臣は、学校、経営者サイド、教員の方々、しっかり話合いをしてということなんですけれども、そこがなかなか話合いができていないような状況なんですね。これはなかなか、行き違いがあるというようなお話がございましたけれども、これを話合いをしっかりする、経営者サイドがどういったことで採用をし、その資格があるのかどうかという、資格審査がどういうふうに行われていたか、こういったことをしっかり説明していかなければ、当然、教員の皆さんは納得しないわけです。
そういったことも含めてしっかりと話合いをするように、もう一度、下関の経営サイドにお伝えいただけないでしょうか。
○伯井政府参考人 大学の学内規程、あるいは定款等の適用、解釈については大学の判断が尊重されるわけでございますし、また、そのことはしっかりと大学の方は説明責任を果たしていくべきであろうと考えております。そのことについても助言したいと考えております。
○日吉委員 では、しっかりと規則にのっとってやっていただく、それに不備があるのであればしっかりと是正していただくように助言、そして、しっかり話合い、説明責任を大学の方で果たしていただくといったことを伝えていただくことをお願いいたしまして、時間になりましたから、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○橘委員長 次に、畑野君枝君。
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
著作権法改正案について萩生田光一文部科学大臣に伺います。
侵害コンテンツのダウンロード違法化についてきょうは伺います。
現行の著作権法は、違法にアップロードされた録音、録画について、それと知りながらダウンロードをした場合に違法とし、刑事罰も科されています。本改正案では、それとは区別して、録音、録画を除く著作物全般に違法化、刑事罰化の対象を広げるものです。
そこで、大臣に伺いますが、録音、録画と区別して今回規定する趣旨は何でしょうか。
○萩生田国務大臣 違法にアップロードされたコンテンツの録音、録画については、既に平成二十一年及び平成二十四年の改正で違法化及び刑事罰化が行われており、その後、運用上の問題などは確認されていません。そうした中で、現行の違法ダウンロードに関する規律を後退させることは適当ではなく、また、関係団体からも要件を変更することへの懸念が示されたことから、現行どおりの取扱いとすることが適当であると判断しました。
このため、今回の法案においては、録音、録画については現行の規定を残しつつ、別途、それ以外について規定を新たに設けることとしております。
今回の改正により新たに対象となる漫画や写真などのダウンロードに関しては、制度設計に先立って実施したパブリックコメントなどにおいて、インターネットによる情報収集等の萎縮を懸念する御意見を多数いただいたことから、その懸念を解消できるよう、違法化の対象から除外するさまざまな規定を設けることとしているところです。
○畑野委員 二〇一九年の文化庁の当初の案では、ダウンロード違法化、刑事罰化の対象範囲を録音、録画を含む全ての著作物に拡大するもので、これでは、海賊版のダウンロードばかりでなく、漫画の一こま、書籍のうちごく短い数行の文章の転載、一部に他人の著作物の違法な転載が含まれている著作物など、SNSやウエブサイト等を通じて国民が日常的に行っている情報収集やコミュニケーションといった活動全般に影響が及び、自由なインターネットの利用が萎縮するなどの批判が強く寄せられたわけです。午前中の参考人質疑でもお話を伺ってまいりましたが、その結果、本改正案では、録音、録画と、それを除く著作物全般とに区別をし、民事措置を定めた第三十条第一項第四号で、違法化の範囲を限定するため、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードした場合でも、違法化の対象から除外される規定が盛り込まれることになったと認識しております。
そこで、伺いますが、どのような行為が本改正案では除外されることになったのか、確認をしたいと思います。三点ありますので、一つ一つ伺おうと思うんですが、文化庁からお答えいただくので、まとめてお答えいただけますか。
第一に、「第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。」との規定はどのような懸念を考慮したものか。
第二に、「当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。」との規定はどのような懸念を考慮したものか。
第三に、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。」との規定はどのような懸念を考慮したものか。
それぞれ伺いたいと思います。
○今里政府参考人 本法案におきましては、委員御指摘のとおり、海賊版対策としての実効性を確保しつつ、国民の正当な情報収集等の萎縮を防止する観点から、さまざまな除外規定を設けているところでございます。
まず、一点目の「第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。」という規定でございますが、これは二次的著作物の利用の関係でございます。この規定につきましては、パブリックコメントでも強い懸念が示されたことを踏まえて検討を行った結果、二次創作によって原作の売上げに悪影響を与えることは想定しづらいこと、それから、実態として二次創作は黙認されている場合が多く、新たな若手クリエーターを育てるなど、コンテンツ産業の発展に重要な機能を果たしていると考えられることから、二次創作に係るダウンロード行為まではあえて違法とする必要はないと判断して設けたものでございます。
なお、一方で、「翻訳以外の方法により」という部分でございますけれども、翻訳された漫画などの海賊版による被害も大きいことから、違法に作成された翻訳物のダウンロードについては、違法化の対象に含めることとしているところでございます。
二点目の「軽微なものを除く。」という規定でございますけれども、これは、パブリックコメントにおきまして、例えば、SNSなどに掲載されている漫画の一こまをダウンロードしただけで違法となるなど、ささいな行為まで規制されることに対する懸念、これが多く示されたことなどを考慮して設けたものでございます。
三点目の「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。」の規定でございますけれども、これにつきましては、軽微なものや二次創作、パロディーの除外とは別途、国民の正当な情報収集等の萎縮を防止するため、さまざまな要素に照らし、違法化対象からの除外を柔軟に判断できる安全弁として設けたものでございます。
○畑野委員 今御説明がありましたけれども、インターネットの自由な活用を確保しつつ、悪質な海賊版のダウンロード行為に絞って違法化、刑罰化するというたてつけだというふうに思います。
違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードした場合が違法化の対象なんですが、インターネット上は、それが違法なのか適法なのか、ダウンロードする前に区別できないものもありますよね。適法だと思って違法なコンテンツをダウンロードしてしまうようなケースも避けられません。そうしたことから、重過失で違法だと知らなかった場合や、適法、違法の判断を誤った場合は違法とならないとの規定も盛り込まれていると思います。
また、刑事罰については、民事措置と同様の規定が盛り込まれ、更にダウンロードを継続、反復して行うなど、常習性のある行為を対象としているということですが、そういうことでよろしいですね。確認だけです、文化庁。
○今里政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。
○畑野委員 そこで、先ほど御説明のありました「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」との規定は、具体的にどのようなケースを想定したものなのでしょうか。
この規定ぶりだと、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があることをユーザー側が立証しなければならないというふうになります。参考人質疑でも伺いましたけれども、制度設計を議論した侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の議論のまとめでは、著作権者に立証を求める、著作権者の利益を不当に害することとなる場合に、違法化、刑事罰化する規定を求める意見もあったということで、検討会では意見の集約ができなかったと伺っております。
最終的に、どのような観点からユーザー側に立証を求める規定にしたのか。この規定ではハードルが高いとの受けとめもあると思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。
○今里政府参考人 まず、前段の、具体的にどのようなケースを想定しているかということでございますが、まず、考え方を御説明いたしますと、この著作者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に該当するか否かは、まず一つには、著作物の種類や経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、それから、もう一つは、ダウンロードの目的、必要性などを含めた態様、この二つの要素によって判断されるものでございます。
具体的な例として申し上げますと、例えば、詐欺集団の作成した詐欺マニュアルが被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること、又は、無料で提供されている論文の相当部分が他の研究者のウエブサイトに批判とともに無断転載されている場合に、それを全体として保存すること、こういったものがこれに該当するものと考えているところでございます。
そして、この規定の趣旨と考え方でございますけれども、先ほど申しましたように、この規定は、国民の正当な情報収集等の萎縮を防止する観点から、安全弁となる規定を設けるというところでございますけれども、他方、このような法文上抽象的な例外規定を置くことについては、ユーザーの居直り的な利用を招く、こういった懸念もあるところでございます。侵害コンテンツであって軽微でも二次創作でもないもの、すなわち、相当程度の分量のデッドコピーをそうと知りながら利用する以上は、ユーザー側が例外的に不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に該当するという立証を行うことが適当であって、それが居直り的な利用の防止に資するものであるとも考えているところでございます。
なお、ユーザーは、みずからのダウンロードが正当な目的によるものであることやダウンロードの必要性が高いということなどを立証すればいいため、立証に大きな困難がないのではないかというふうに考えているところでございます。
○畑野委員 今回の改正案では、著作物全てにその対象を拡大し、刑事罰を科すものでありまして、捜査権の濫用やインターネット利用の不当な制限はこれまで以上に配慮されなければならないと思います。
昨年のパブリックコメントにも、権利者により濫用的な権利行使がされる可能性や刑事罰の規定の運用が不当に拡大される可能性があると思うかという問いに対して、八百二十三件もの、そうだという懸念の声が寄せられております。
この点について、この改正法案ではどのように担保されているのでしょうか。
○今里政府参考人 本法案での担保の状況ということでございますが、本法案の附則第五条におきまして、刑事罰の運用に当たっては、インターネット利用が不当に制限されないような配慮を行うべき旨を規定しております。捜査当局におきまして、慎重な配慮のもとで適切な運用が行われることが期待されるものと考えているところでございます。
○畑野委員 著作物全てに対象を拡大するわけですから、懸念に対して、そうではないということをしっかりと行っていただきたいと思います。
萩生田大臣、そのことをきっちりやっていただきたいということ、重ねて確認しておきたいと思いますが。
○萩生田国務大臣 御心配のないようにしたいと思います。
○畑野委員 午前の参考人質疑の中でも、新型コロナウイルス感染症の影響の問題で、国の支援を求める御要望が出されました。
五月十四日、政府は、八つの特定警戒都道府県を除き、緊急事態宣言を解除いたしました。基本的対処方針では、緊急事態措置の対象とならない都道府県でも、感染リスクへの対応が整わない場合の全国的かつ大規模なイベントは中止、延期、東京などの特定警戒都道府県を始めとする相対的にリスクの高い都道府県との間の人の移動は感染拡大防止の観点から避けるように促す、これまでクラスターが発生しているような施設や三つの密のある場所への外出は避けるよう呼びかけられております。現状では、イベントの再開というのは本当に厳しいというふうに思います。
その同じ十四日に、松竹や東宝、劇団、劇場、制作会社など、国内の舞台芸術四十団体で組織する緊急事態舞台芸術ネットワークが緊急調査結果を公表されました。賛同団体含めると五十を越す皆さんだということです。実は、その調査をまとめられたのが、きょう午前中、参考人として来られた福井健策弁護士でございまして、強く参考人質疑でも訴えていただいたわけです。それによりますと、演劇十四社で一億円以上の損失だという声や、損失が三十億円以上も二社ある、もう事業継続も困難だという声が出されております。
感染症対策で、会場のキャパシティーの半分程度に入場を制限しなければならない。こういう中で、もう本当に日々、文化芸術の皆さん、スポーツもそうですけれども、やはり身体活動が必要なので、職能、技能を維持するためには、そういう発表の場、そういう場が必要なわけですね。ですから、この表現の場を確保し、提供していく支援が求められているというふうに思います。
そこで、伺いたいと思います。
ことし二月以降、五月までに予定されていた学校鑑賞教室で中止になったものが五百四件です。こうしたイベントは、本番のための経費だけでなく、数カ月前の準備段階から費用がかかります。
二〇二〇年度予算の文化芸術による子供育成総合事業や、補正予算の子供たちの文化芸術体験の創出事業などあるんですけれども、新型コロナ感染症の見通しが立たないもとで、計画自体なかなか困難ですけれども、でも、これから計画していくならば概算払いで予算を出すなど、計画したらそれに向けてもう準備を今から始めていくわけです。そういうことができないかと思いますが、いかがでしょうか。
○今里政府参考人 今委員から御指摘のございました、文化芸術による子供育成総合事業、それから補正予算の子供のための文化芸術体験機会の創出事業、これは、御案内のとおり、小中学校に、一流の文化芸術団体ですとか芸術家による質の高いさまざまな文化芸術を鑑賞、体験する機会の提供、これを目的としているものでございます。
御指摘のありました本年度予算での事業実施でございますが、現在の新型コロナウイルス感染症の状況を考慮いたしまして、例年より前倒しをして、準備費等の経費を各段階に概算払いを行う、こういったことを予定しているところでございます。
補正予算での実施につきましても同様に迅速な概算払いを行うことで、文化芸術団体が事前に準備をすることによって、子供たちに質の高い鑑賞、体験機会の提供が可能になる、このように考えているところでございます。
○畑野委員 概算払い、ぜひお願いします。
そして、補正予算に、アートキャラバンに十三億円が措置されています。しかし、今できるかというと、なかなかできない状況だ。文化芸術活動の場を提供して地域住民の活動を推進しようという趣旨だと思うんですけれども、この二月末から三カ月間近く、安倍総理を始め政府の要請に応えて公演を自粛されてきた、先頭に立って自粛をされてきた、そういう多くの文化芸術団体や実演家の皆さんが、今、日々の職能のための取組、あるいは暮らしや運営、それに本当に困窮していらっしゃる。
いろいろな支援策をおっしゃるんですけれども、しかし、劇団の方に伺うと、収入が途絶える中で、毎月七百万円から八百万円の経費がかかる、このままことしいっぱいこんな状況が続いたら二億円が消えてしまうという声です。
萩生田大臣に伺いたいんですが、日本の文化芸術の灯が消されるようなことがあってはならないとおっしゃってこられました。文化芸術推進フォーラムの皆さんも、文化芸術の灯を消さないために緊急事業継続支援策の実施を、そういうことも求めていらっしゃるわけですが、国として全体いろいろ支援するんですが、文化庁としても日々の運営や生計を支える支援策を行うべきではないかと思いますが、いかがですか。
○萩生田国務大臣 これまで、文化芸術関係のフリーランスの方々に対しては、緊急の貸付けですとか保証枠の拡充や、第一次補正予算において創設された持続化給付金により、文化芸術の特殊性も踏まえて支援を行っているところです。
また、文化庁の方で窓口をつくって、そういった文化関係者の皆さんが働き方が多様なものですから、なかなか自分がどこに当てはまってどんな支援ができるのかわからないというので、窓口をつくらせていただいて、かなりきめ細かいアドバイスをし、そういったところにタッチができた方たちもいるというふうに報告を聞いております。
また、この間、大小さまざまな芸術文化団体からのヒアリングも文化庁で行ってまいりまして、今先生がるる御説明されたような実態は十分承知しています。
それで、今何ができるか。いずれにしても、これは繰り返し申し上げているように、灯を消してはならないと思いますから、皆さんが、つらくてもこの活動を続けるんだと思っていただけるインセンティブのところまではサポートをしっかりしていかなきゃいけないと思っておりまして、二次補正にも、我々としては少し大きな金額で、後々、使い道を、こういう使い道だからこういう金額だというのが一番説得力があるんですけれども、今申し上げたように、文化事業といってもさまざまありますので、どこにどういう形で注入すれば皆さんが元気になるかというのはさまざまなものですから、できるだけ固まった金額でしっかり応援ができる体制をつくっていきたいなということで、今、最終的な交渉を頑張っているところでございますので、応援をいただければありがたいと思います。
○畑野委員 五百億円の支援をという声も出ておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思うんです。
ちょっと確認なんですが、地方創生臨時交付金なんですが、自粛要請で休業に応じて協力している劇団などへの支援金や協力金に活用できるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。二次補正に向けて、地域の文化芸術団体を支援するための地方創生臨時交付金の抜本的な増額を求めていく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○今里政府参考人 今御指摘のありました、地方の文化という観点も踏まえてということでございますけれども、我が国には、全国各地に多様で豊かな文化が息づいております。それらに対して支援をしていくことは、地域振興を図る上でも重要だ、こういうふうに考えているところでございます。
御指摘の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金、これにつきましては、感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援して地方創生を図る、このために内閣府において創設されたものでございます。
本臨時交付金は、各自治体の判断によって自由度高く使うことができる仕組みとなっております。現在、多くの自治体が、休業要請に応じた事業者に給付しようとしている協力金も含めて、文化芸術に関する取組へも活用できるようにしているものと認識をしております。
なお、地方創生臨時交付金の増額につきましては、私どもからちょっと言及することは差し控えたいと思いますが、文化の灯を絶やさないためにも、現在措置している地方創生臨時交付金について、内閣府と協力しながら広く周知しているところでございまして、必要な対策を政府全体として検討してまいりたいと考えております。
○畑野委員 前回の委員会でも取り上げられた持続化給付金の問題ですけれども、各議員の皆さんにたくさん声が来ていると思います。私のところにも寄せていただいております。フリーランスの皆さんは対象だと言われるけれども、雑所得、給与所得として申告していると今回の持続化給付金の対象にならないという問題点です。
この点、どういうふうにするのかという点について伺いたいと思います。
○今里政府参考人 文化芸術関係者を含むフリーランスの方々の中には、委員御指摘のように、事業からの収入を雑所得や給与所得のもととなる収入に計上して、結果的に、現在、持続化給付金の対象とならない方もおられると。そのとおりでございます。
私ども文化庁におきましては、現状の持続化給付金を含め、さまざまな支援制度について広く文化芸術関係者に周知を図っている。これは先ほども大臣から説明させていただいたとおりでございます。
したがいまして、これについて今後動きがあった場合、その今後の動きについて情報発信に努めるとともに、引き続きフリーランスを含む文化芸術関係者に対する支援に取り組んでまいりたい、このように考えております。
○畑野委員 この問題が指摘されたときに、文化庁としてどういう対応をしてきたんですか。
○今里政府参考人 本件は、御承知のように、持続化給付金は中小企業庁が所管しているということでございますので、私ども、文化芸術の方々が働くときのその収入の計上でありますとか、そういった声を受けとめて、その実態を中小企業庁には情報提供したり、それに向けて制度をどうするのかというようなことについて中小企業庁での検討を促しているというのは事実でございます。
○畑野委員 ぜひ取組を進めていただきたいと思います。
三月二十五日の当委員会で、私は、萩生田大臣に、アンテルミタンというフランスの芸術家専門の失業保険制度などがあるということを紹介させていただきまして、大臣も御存じであるという御答弁でした。
文化芸術にかかわるフリーランスを守るセーフティーネットの必要性について、萩生田大臣は、一番働き方がわかっている皆さん方で支え合ってもらえるような仕組みは、補正予算案を通じて提案していきたいと御答弁されましたが、その後、これはどうなっているでしょうか。
○萩生田国務大臣 一次補正では、ゴー・トゥー・キャンペーンの中に、要するに、終息後の機会をふやしていくという予算は積めたんですけれども、先ほども説明しましたような、文化芸術の皆さんは働き方が多様で収入形態がさまざまなものですから、もちろん、既存のメニューにたどり着けた人もいるし、さっきお話があったように、フリーランスの人たちがなかなか持続化給付金の申請すらできないという実態も承知をしております。
したがって、文化活動における業界の固有の課題、文化芸術にかかわる皆様の御意見を聞きながら、何としても文化芸術活動を継続していただけるように、文化芸術の支援を財政的にもしっかりしてまいりたいというふうに思っております。
第二次補正予算で改めて、少しボリューム感を持って、皆さんが明るい兆しが見られるような、そしてこれだったら頑張っていこうと思ってもらえるような、そういう支援策を講じたいと思って、今詰めを急いでいるところでございます。
○畑野委員 一回限りの支援でなく、やはり継続的な支援をぜひ、体制を含めて、進めていただきたいというふうに思います。
最後に、きょうの参考人質疑の中でも、オンライン授業での問題が取り上げられました。それで、私、学生のことについてこの間聞いてきたので。
実は、昨日、五月十九日に、学生支援緊急給付金という制度が発表されました。私、ちょっと確認なんですけれども、今、学生の皆さんから、これは自分はもらえるんですかという声があるんです。つまり、家庭から自立した学生等でと書いてあるので、これはどうなんだろう、自立とは何なんだろうと。
一応、各大学でそれは基準を決めてくださいということなんですが、私は、学びの継続の危機だと、それを支援しようというのであれは、本当に、条件も、よく大学で実態に合わせて柔軟にやっていただきたい。そして、そこから外れる学生がまだまだやはり多いんです。
ですから、きのうは、日本私立大学教職員連合組合の方も、やはり、一律学費半減、こういう方向で頑張ってほしい、私立大学についても応援してほしいという声を重ねていただいております。
九月入学の問題もありますけれども、これも、私、拙速な結論は出さないということなどもありまして、大学入試改革のことも言われてきましたけれども、この時点で、これはストップして高校生たちの声もよく聞くと。
そういうことなどを含めて、トータルで、若い人たちのこの困難のもとでの未来をどう守っていくのかという点について伺おうと思っているんですが、もう時間がありませんので、最初の、学生への支援、今、そして今後どういうふうにされていく御決意なのか、大臣に伺います。
○萩生田国務大臣 対象となる学生については、家庭から自立してアルバイト収入により学費等を賄っている学生等で、今回の新型コロナウイルスの影響でアルバイト収入の大幅な減少により大学での修学が困難になっている者を想定していますが、幾つか目安となる、こういう人、こういう人と書いてあるんですけれども、これを全部クリアしなきゃいけないということじゃなくて、大事なのは最後の一文です。最終的には、一番身近で学生等を見ている大学等において、その実情に沿って総合的に判断していただくことが大事だということなので、この項目には当たっているけれども、この項目は係っていないけれども、例えば、別に実家から通っていてもいいんですよ。だけれども、実家の収入も激減していて、家族もなかなか応援できないということを学校側がちゃんとヒアリングしてくれて、それを書き込んでもらえれば、それをもって応援をしたいと思います。
限られた予算ですから、もしかすると、それ以上の申請がある可能性もありますけれども、そこは、常々申し上げているように、学校も一緒に伴走していただいて、そして、学校が学生をしっかり守っていただく、それに対して国も学校をしっかり応援していくというこの仕組みで頑張っていきたいと思います。
○畑野委員 学ぶことが継続できるように、また、文化芸術、スポーツを始め、皆さんが生き生きと活動できるように、支援を強く求めて、質問を終わります。
○橘委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。
昨年ですか、この法案に関してのいろいろな議論がなされまして、院内集会でもかなり白熱した討論があったんですけれども、著作権者である漫画家の方々からも昨年は随分反対意見が出たと思うんですけれども、著作権者からそういったような意見が出たというのは、どういう箇所が問題であるという指摘がなされていたんでしょうか。
○今里政府参考人 本法案につきましては、今委員御指摘のとおり、昨年、国民の日常的なインターネット利用が萎縮するとの懸念が拡大して、著作権者、権利者である漫画家の方からも違法化の範囲が広過ぎるという御意見をいただいたことから、提出を見送った経緯がございます。
特に、漫画家の方々からの違法化の範囲が広過ぎるという御意見につきましては、その後、パブリックコメントを実施したり、有識者検討会で検討を重ねたところでございますけれども、特に二次創作、パロディーなどのダウンロードが違法となることに対する懸念が示されたというところが、強く漫画家の方々からの御意見というふうに認識をしてございます。
○串田委員 今答弁がありましたように、二次創作物に関してはかなり現実的な対応になったのではないかなと思いますし、他の委員からの質疑もありましたので、これについては私の方で触れないということにしたいと思うんですが、それにしても、かなりこの法案は複雑で理解しにくいというのは間違いがないと思います。
附則の二条で、啓発その他の措置を講ずると書いてありますけれども、よほど本腰を入れないと、一般的にはなかなか理解してもらえないところがあるのではないかなと思いますので、私の方でちょっと気になる条文上の文言を確認させていただきたいと思うんです。
まず、三十条なんですけれども、私自身が初めて見るような表現が法律上あって、果たしてこれはいいんだろうかというのがちょっとあるんです。それは、第三十条の第二項で、「前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。」と書いてありますよね。その前の条文を見ると、「知りながら行う場合」、第二号は「その事実を知りながら行う場合」、三号もやはり「知りながら行う場合」、第四号も「知りながら行う場合」、こうなっているんですが、「重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。」という対象が三号と四号だけで、二号が外されているわけですよ。
私の勘違いかどうか確認したいんですけれども、一般的に、知りながら行うというのは故意犯ですよね。一般的には故意又は重大な過失という言い方をしたり、一般的に刑事罰は故意犯ですよね。重大な過失の場合は、間違いなく故意犯には入っちゃいけないわけですよ。
ところが、この規定を見ると、三号、四号を、重大な過失がある場合故意犯にはしないというのは、これは当たり前のことだと思うんですが、こういう表現をすると、二号の「知りながら行う場合」というのは、重大な過失も故意犯になってしまうというふうに読んでしまうんじゃないかという私は懸念があって、こういう表現は普通しないと思うんですが、あえてこういうふうに場合分けをした理由を教えていただきたいと思います。
○今里政府参考人 委員御指摘の解してはならないという部分でございますけれども、これにつきましては、委員御指摘のとおり、確認的に規定をしているということだけでございますので、それが含まれるということではございません。
○串田委員 そうであるなら、二号も入れないとまずくないですか。三号、四号だけこれは含まれないというふうな書き方をしたら、二号は重大な過失も「知りながら」に認定するよと。刑事罰もあるんですよ。
こういう規定は初めて見ましたけれども、これは、当然「知りながら」には重大な過失はないんだから、わざと三号、四号をこうやって特記することをやめるか、あるいは二号も入れておくか、どちらかをしないとこれはおかしいと思うんですが、いかがでしょうか。
○今里政府参考人 委員御指摘の三号、四号につきましては、今回の違法コンテンツ、侵害コンテンツのダウンロードに係るものということでございます。
あえて、効果的には変わりはないものの、確認的に規定をしているという趣旨を申し上げますと、これは、やはり国民の正当な情報収集について萎縮を生じかねないという懸念があった、今回のダウンロードについて。そういうことがあったために、確認的にここの部分について規定をしているということでございます。
○串田委員 趣旨はわかります。うっかりしてダウンロードしても刑事罰になるのかという御心配だということを前からお話をされているのはわかるんですが、こういうふうに条文上文言を入れると、刑事訴訟法上はあり得ないような、故意犯に重大な過失犯も入るんじゃないかというように読めなくはない。
あえて要望しておくとすれば、この議事録で確認させていただきたいんですが、二号もまた、この「知りながら」という故意犯には、重大な過失犯がこれに入るということはあり得ない、こういうことを確認させていただいてよろしいですか。
○今里政府参考人 委員御指摘のとおり、二号、三号、四号、それについては扱いは同じでございまして、あり得ないということでございます。
○串田委員 今回は、私も初めてこういう表現というのは見たんですけれども、法文上入っているというのは。ただ、うっかりダウンロードしてしまったことに関する懸念というものを丁寧に明記したのであって、刑事訴訟法上の大原則を覆すことを二号ではしようとしているわけではないんだということは確認をさせていただきたいと思います。
それと、民事と刑事とで異なることがあるんですが、継続、反復行為というのがありますけれども、民事では、継続、反復をしなくても損害賠償は請求されるんだよ、可能性はある、しかし、刑事罰は科せられないんだ、こういうことでよろしいですか。
○今里政府参考人 お尋ねの点につきましては、民事措置の対象となるものにつきましても、刑事罰につきましては、特に悪質な行為に限定する観点から、反復、継続してダウンロードを行うということが要件となっております。
○串田委員 いや、今質問したのは、刑事罰は反復、継続と入っているんですけれども、民事の場合には、この要件がなくても民事的には違法として損害賠償の対象になるのかという質問をさせていただいているんです。
○今里政府参考人 民事的には、継続、反復でなくても対象となるということでございます。
○串田委員 ですから、単発的にダウンロードをした場合でも、民事的には損害賠償を負わされる可能性はあるんだ、しかし、刑事罰が科せられるということの要件には反復、継続が必要なんだ、こういう振り分けをしておく必要がありますよね。そうでないと、反復、継続じゃない限りは単発でダウンロードしても問題ないんだというのは勘違いということで、整理をさせていただきたいと思うんです。
もう一つ、条文上大変わかりづらい条文がありまして、百十九条なんですけれども、第五項ですか、「第三項第二号に掲げる者には、有償著作物特定侵害複製を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を」、次に、「継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。」と。これは、普通の人が読んだら、何だか普通はわからないと思うんですよ。ここをもう少し説明していただけないですか。
○今里政府参考人 本法案の改正後の形、改正法案ということで申しますと、今御指摘のとおりに、「重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。」という規定があるわけでございます。
これは、先ほど著作権を侵害するという民事上の話がございました。あそこのところで故意犯と重過失のお話がございましたけれども、あれと同様に、これは重過失ということで、知らないで行ってというものと解釈してはならない、先ほどの説明と同じということでございます。
○串田委員 先ほどの説明とはちょっと違う次元の話だと思いますよ。「重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含む」、「行つた者を」と書いてあるんですけれども、「行為を」「行つた者を含むものと解釈しては」、「者を含む」というのと「行為」というのが入っているわけですよ。これはどういうふうに解釈すればよろしいんですか。
○今里政府参考人 そこの法案の条文を申し上げますと、「第三項第二号に掲げる者には、」というところからこの文章は始まっておりますので、当然のことながら、その「掲げる者には、」「行つた者を含むものと解釈してはならない。」という形で受けるという条文の構成であるということでございます。
○串田委員 そうしますと、整理すると、「第三項第二号に掲げる者には、」「継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。」ということは、これは含まれないという解釈でよろしいんですか。
○今里政府参考人 さようでございます。
○串田委員 こうやって解釈を聞いているんですけれども、大変わかりづらい部分もあると思います。
昨年非常に問題となったのは、どの範囲が、どういう行為が許されるのか許されないのか、民事的に責任を負うのはどこまでで、刑事的にはどうなるのかというようなことも含めて大変わかりづらいという意味で、いわゆる萎縮効果、本来なら許される表現の行為や知る権利をも、要するに、周辺を拡大した部分で、やっていいこともやれなくなってしまうということは、これはやはりよくないということで、啓発行為というのは非常に重要だと思うんです。条文が括弧書きも非常に多いですし、何をやっていいかどうかというのも大変わかりづらい部分もあるので、本当に本腰を入れてここの部分は説明をしていくということが必要であると思うので、これは要望したいと思うんです。
先ほど、参考人質疑でもやりとりがあって、写り込みの問題があったんですが、きょうの委員会のほかの質問においても漫画の一こまのダウンロードというのがあったと思うんですけれども、何が今、昔と違うのかといいますと、昔は、自分で使う複製というものが公衆送信にすぐにたどり着かなかったというか、公衆送信につながらなかったというのが一番大きいんじゃないかなと思うんですね。
写真を撮るにしても何にしても、撮ること自体は、カメラが昔からありましたから、それ自体は行われていたんですけれども、今はそれが簡単にSNSでアップできる。これが著作権においては著しく実は扱いが違うわけなのに、なかなかこの違いが国民に理解されていない。自分のスマホで撮ったものをすぐにSNSに発信するという、ここが著作権上は大変違いがあるものであって、例えば漫画の場合も、全部をダウンロードするか一部をダウンロードするかというのは分けられているわけですけれども、これを公衆送信となると著しく違うんだよというふうに私は理解しているんですが、ここをちょっと簡潔に説明していただけないでしょうか。
○今里政府参考人 アップロードということになりますと、著作権者の許諾を得ないでアップロードすることは全て違法ということでございます。
また、ダウンロードということになりますと、先ほど、さまざまな制限というか、いろいろかかっておりますので、知りながらダウンロードした場合でないと違法ではないとか、軽微なものは違法ではないとか、二次創作、パロディーに関するものは違法ではない等々の部分を除外した部分についてのみ違法である、こういう違いがあるというふうに考えてございます。
○串田委員 条文を見ると、ある程度体系的にわかるんですが、三十条の標目に書いてあるのは私的使用のための複製で、これまでは私的に使用するものの複製というのは構わないんだよというのが大原則にあったんだけれども、違法にアップロードされているものをダウンロードするということ自体はやめましょう、これは禁止しましょうという規定なのであって、もともと、公衆送信するということの概念はここの中に入ってこないんだけれども、一般の人は、複製をするということと、SNSというのを公衆送信だ、自分だけが使っているものではないんだという認識が非常にまだ希薄なものだから、差がわからなくなっているというのが私は一番の問題なんじゃないかなと思うので、ここの部分の啓発活動を重点的に私はしていただきたいと思っているんですが、この認識は一致しているということでよろしいですか。
○今里政府参考人 著作権法第三十条の私的利用の権利制限でございますけれども、これはもともといろいろな条件がございまして、そういった条件を満たす場合には権利制限にならないという場合もあるわけでございます。何が何でも許されるというものではまずないわけでございます。この点は確認をさせていただきたいと思います。
その上で申し上げますと、やはり、国民のいろいろなインターネットを通じた活動、そういったものについて、法律がどのようにどの場面で適用されていくのか、これが違法になるのかならないのか、そういうことについては著作権法上は明らかになるわけでございますけれども、このことについて、一般の国民の方々あるいは若い方々に非常に強く、わかりやすく啓発普及、教育活動をしていくことは非常に重要だということは、委員と認識を全く一にするものでございます。
○串田委員 最後に一問だけ。
今、新型コロナの自粛をしておりまして、子供たちもオンライン教育ということで、PCやタブレットを配付して全ての子供にということでやっているんですが、児童相談所の一時保護の子供たちというのは、一時保護所は、虐待から保護しているといいながら、窓が十センチしかあかないとか、義務教育を受けられないとか。
そういう意味で大変苦しんでいる子供たちが多い中で、PC、タブレットをこの子たちにはちゃんと配るのかと質問したら、文科省は、それは厚労省のことだからわからないというのを前に聞いていたので、前回、党の勉強会のときに、必ずこれは、同じ子供なんだから、オンライン教育をしないと義務教育を受けられないままになるので確認してほしいというお願いをしてありますので、これの回答をいただきたいと思います。
○丸山政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの、PC、タブレットを一時保護所の子供たちにも置かれるのかどうかということですが、文科省で今、令和元年度、二年度補正予算で進めておりますGIGAスクール構想では、義務教育段階の全ての児童生徒に一人一台の端末が行き渡ることを目的といたしております。
端末の調達に関して、自治体に対しては、先月、緊急事態宣言後に着手したものについてもさかのぼって補助を可能としたところでありまして、多くの自治体において調達が開始されたところと承知をいたしております。
文部科学省としても、自治体の需要把握や供給業者への働きかけなども進め、全ての子供たちに迅速に端末が行き渡るように努めているところであります。その結果、今後随時、自治体で端末の納品、配備がなされることもあり、現在の具体的な児童生徒への配付状況について把握はいたしておりませんが、児童相談所で一時保護を受けている子供たちを始め、全ての子供に端末が確実に行き渡るように、必要に応じて厚生労働省とも連携をしながら、自治体に徹底を図ってまいりたいと考えております。
○串田委員 子供にとっては、厚労省、文科省、縦割り、関係がないので、ぜひお願いをしたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
○橘委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時七分散会