衆議院

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第4号 令和4年3月23日(水曜日)

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令和四年三月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 義家 弘介君

   理事 橘 慶一郎君 理事 根本 幸典君

   理事 宮内 秀樹君 理事 山本ともひろ君

   理事 菊田真紀子君 理事 牧  義夫君

   理事 三木 圭恵君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    石井  拓君

      石橋林太郎君    尾身 朝子君

      勝目  康君    金子 俊平君

      神田 憲次君    木原  稔君

      国光あやの君    小林 茂樹君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      谷川 弥一君    土田  慎君

      丹羽 秀樹君    船田  元君

      古川 直季君    松本 剛明君

      三谷 英弘君    山口  晋君

      荒井  優君    坂本祐之輔君

      白石 洋一君    吉川  元君

      吉田はるみ君    笠  浩史君

      早坂  敦君    掘井 健智君

      岬  麻紀君    山崎 正恭君

      鰐淵 洋子君    西岡 秀子君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣       末松 信介君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       曽根 健孝君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          伯井 美徳君

   政府参考人

   (文化庁次長)      杉浦 久弘君

   文部科学委員会専門員   但野  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     石井  拓君

  田野瀬太道君     金子 俊平君

  山口  晋君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     下村 博文君

  金子 俊平君     田野瀬太道君

  土田  慎君     山口  晋君

    ―――――――――――――

三月二十二日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四八六号)

 同(徳永久志君紹介)(第四八七号)

 同(神田潤一君紹介)(第五二五号)

 同(武村展英君紹介)(第五二六号)

 同(山田賢司君紹介)(第五二七号)

 同(柚木道義君紹介)(第五二八号)

 同(青山大人君紹介)(第五六四号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第五六五号)

 同(神谷裕君紹介)(第五六六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第五六七号)

 同(井坂信彦君紹介)(第五九五号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第五九六号)

 同(斎藤洋明君紹介)(第六一八号)

 同(金子恵美君紹介)(第六二八号)

 同(松木けんこう君紹介)(第六二九号)

 国の責任による二十人学級を展望した少人数学級の前進、教職員定数増、教育無償化、教育条件の改善に関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第四八八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四八九号)

 同(大石あきこ君紹介)(第四九〇号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第四九一号)

 同(笠井亮君紹介)(第四九二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四九三号)

 同(志位和夫君紹介)(第四九四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四九五号)

 同(田中健君紹介)(第四九六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四九七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四九八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四九九号)

 同(宮本徹君紹介)(第五〇〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第五〇一号)

 同(山崎誠君紹介)(第五〇二号)

 同(笠浩史君紹介)(第五〇三号)

 同(石川香織君紹介)(第五二九号)

 同(神谷裕君紹介)(第五六八号)

 同(新垣邦男君紹介)(第六一九号)

 同(藤岡隆雄君紹介)(第六二〇号)

 特別支援学校の実効ある設置基準策定に関する請願(重徳和彦君紹介)(第五〇四号)

 同(森田俊和君紹介)(第五三〇号)

 国の責任による二十人学級を展望した少人数学級の実施、教職員定数増、教育無償化、教育条件の改善に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第五六三号)

 学校現業職の民間委託を推進するトップランナー方式の撤回、学校現業職員の法的位置づけに関する請願(石川香織君紹介)(第五九三号)

 同(神谷裕君紹介)(第五九四号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第六二一号)

 大幅な私学助成増額に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第六二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 博物館法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

義家委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、博物館法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官曽根健孝君、文部科学省初等中等教育局長伯井美徳君、文化庁次長杉浦久弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾身朝子君。

尾身委員 自由民主党の尾身朝子です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 子供の頃から私は、美術館や博物館が大好きでした。特に小学生のときには、月に何度も足を運んでは、お気に入りの展示コーナーで時間を過ごし、ミュージアムショップでいろいろなグッズを眺めることがとても楽しみだったということを鮮明に覚えています。特に好きだったのが恐竜のコーナーで、恐竜の化石を見ながら、彼らが歩き回っていた時代を想像していました。

 今でも、出張などの折に、訪問先で時間があると、美術館や博物館を訪問するようにしています。博物館では、その土地や国の文化そのものに直接触れることができるからです。

 週末に子供連れの御家族が博物館、動物園、また美術館を訪れる。そして、私がそうだったように、本物を目にし、作者の思いに直接触れることができる。子供たちにとっては、想像力を無限に広げることができる、かけがえのない施設なのです。

 さて、本日は、博物館法の一部を改正する法律案が議題です。まだまだ戦後の混乱期だった一九五一年に本法律は制定されました。当時はまだ設置主体が国立などに限られていたため、博物館は二百館程度であり、その主たる目的も社会教育施設でした。

 それから七十年の間に社会は大きく変貌し、子供に想像力を与えるという意義は変わらないものの、取り巻く環境や求められる役割や機能が多様化、高度化されています。改めて、現状に見合った博物館の運用やデジタルアーカイブ化などを盛り込んだ法改正を行う必要性を強く感じております。

 初めに、末松文部科学大臣にお聞きします。

 今回の博物館法の一部を改正することに対する意気込みについて、是非お聞かせください。

末松国務大臣 尾身先生にお答え申し上げます。

 先生今お話ありましたけれども、私も小学校のときに、遠足で京都の国立博物館に行きましたときに、ツタンカーメン展、それと、ドラクロワ展に参りましたことがあります。非常に印象的で、心に深く刻まれています。東京に出ましてからも、根津美術館とか、漱石山房博物館でしたか、いろいろなところを訪ねておりまして、いいところがたくさんあるんだなということを感心をいたしました。

 先生今お尋ねのことであります、この博物館法、制定から約七十年が経過をする中で、博物館の数は約三十倍に増加をいたしました。地方独立行政法人立や株式会社立の博物館、美術館が設置されるなど、博物館を取り巻く状況は大きく変化してございます。

 また、近年、文化芸術基本法であるとか、あるいは文化観光推進法が新たに成立をいたしまして、博物館は文化観光や町づくり、そして国際交流、産業との関わり合いが出てまいりまして、文化施設としての役割も強く求められております。

 今回の法律案は、このような背景の下で、約七十年ぶりに法の目的や博物館の事業内容、登録制度の見直しを行うものでございます。

 博物館関係者からも早期の改正等について要望をいただいておりまして、文部科学省としましても、喫緊の課題として、博物館の振興にしっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

 文化審議会で約二年にわたって審議をいただきました。積み残しの問題もまだございます。しっかりこうしたことについても、課題にも取り組んでいきたいと思います。

尾身委員 大臣、本当に御答弁ありがとうございました。

 現在、東京の町を散策していると、多数の博物館や美術館に出会うことができ、私たちの知的好奇心を大変満足させてくれます。その中には、国立西洋美術館や国立科学博物館など、国や地方公共団体が運営する登録博物館と、先ほど大臣もおっしゃいました、企業が運営する森美術館や新江ノ島水族館、学校法人が運営する、東京中央郵便局、KITTEの中にある東京大学インターメディアテクなどのいわゆる博物館類似施設があります。博物館類似施設の方が数の上でははるかに多いのですが、博物館法で言う博物館には該当しないということを私自身知りませんでした。

 ここで伺います。今回の改正の目的は何でしょうか、また、七十年ぶりにこのタイミングでの改正となる背景は何だったのでしょうか、お聞かせください。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館法は一九五一年に成立したもので、博物館を社会教育施設として位置づけ、戦後我が国が復興する中で、全ての国民に貴重な実物に触れる機会を提供し、教育、学術及び文化の発展に寄与してきました。

 一方、法の制定から約七十年が経過し、博物館を取り巻く状況は大きく変化してございます。具体的には、二〇一七年の文化芸術基本法等を踏まえ、文化観光や町づくり、福祉、産業への貢献など、博物館に求められる役割、機能も多様化、高度化しております。

 また、博物館の数は制定当初の約二百館から約五千七百館まで増加し、博物館同士の連携協力が重要となるとともに、コロナ禍で来館が制限される中で、デジタルアーカイブ化の推進も求められております。

 さらに、地方独立行政法人立や株式会社立の博物館、美術館等が設立されるなど、地方公共団体や社団法人、財団法人等に限られている登録博物館の設置者要件が時代にそぐわなくなってきております。

 また、国の博物館行政につきましては、文部科学省と文化庁でそれぞれ担当しておりました博物館に関する事務につきまして、文化庁の機能強化を契機として、二〇一八年からは文化庁で一括して所管するとしたところでございまして、その後、文化審議会に博物館部会を設け、博物館法制度について幅広い関係者から意見を聴取して議論し、昨年末に答申がまとめられたところでございます。

 今回の法案は、博物館に求められる役割が多様化、高度化する中で、昨年末の文化審議会答申を踏まえ、博物館の設置主体の多様化に対応しつつ、その適正な運営を確保するため、法律の目的及び事業の見直し、博物館登録制度の見直し等を行うものでございます。

尾身委員 ありがとうございました。

 次に、今回の改正の大きなポイントでもあるデジタルアーカイブの規定の追加について質問いたします。

 新型コロナウイルスの影響による閉館や開館時間の短縮などで、本物が見られるという博物館本来の役割も果たしにくい状況が続いています。これを契機に要望されるようになったのが、デジタルアーカイブの更なる充実です。

 科学技術の分野の話になりますが、私は、一九九九年にサービスを開始した、学術ジャーナルのオンライン閲覧検索システムである科学技術情報発信・流通総合システム、J―STAGEの開発チームの責任者として、学術雑誌や書籍のデジタル化に携わりました。

 サービス開始当時、明治時代に発刊された化学会最古と言われる雑誌の電子アーカイブを作成したことがあります。現存するのは僅か数冊と言われており、そのうちの一冊が日本化学会の金庫内に保管されていました。学会の御理解と御協力を得て、一度だけ持ち出しを許され、私のチームがデジタル化を行いました。その結果、その電子版を多くの方が閲覧することができるようになり、研究者の方々が様々な研究を進めることが可能になったと聞いています。

 貴重な収蔵品を電子化することで、数多くの研究者に閲覧する機会が与えられ、より発展的な研究が進むことが期待されます。

 全国の博物館、美術館においても、その収蔵品をデジタルアーカイブ化して文化遺産オンラインに登録することは、海外からのアクセスや研究者への提供などの面からも重要なことです。また、カタロギングを進めることにより、共通の財産としての管理も可能になります。

 そして、多くの方々がデジタルアーカイブに触れることで、実物の色合いや質感、大きさ、輝きなどを見てみたいという思いが強くなり、実際に博物館に足を運んでみようという気持ちが必ず湧いてくることと思います。デジタル技術が大きく進むことで、博物館の持っている意義や魅力を更に大きく広げることができるのです。

 ここで伺います。今回の改定案においてデジタルアーカイブ化の規定を追加したのはなぜでしょうか、お聞かせください。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館資料をデジタル化し、インターネット等を通じて公開することは、国内外への成果の還元、文化芸術や調査研究活動の充実、文化観光や地域活性化への貢献など、様々な面から意義深く、より多くの方々がアクセスできるようになることから、その重要性はますます高まっていると認識しています。

 また、コロナ禍において、博物館の利用制限が課された際、デジタルアーカイブの必要性、有効性が関係者に改めて強く認識されたところでございます。

 全国の博物館では、例えば、浮世絵をデジタル化して、三百六十度の映像を来館者が体験できる取組ですとか、コロナ禍で開館が延期された刀剣博物館のデジタルアーカイブを様々なコンテンツと併せて紹介する取組など、それぞれ各館、様々な取組が進められていると承知しています。また、文化庁でも、国立博物館の所有する国宝等の高精度なデジタル化や、文化遺産オンライン化の公開なども進めているところでございます。

 このため、本法案では、博物館の事業に博物館資料のデジタルアーカイブ化とその公開を追加することといたしました。

 本法案の成立を契機として、博物館資料のデジタルアーカイブ化の取組に一層取り組んでまいりたいと考えております。

尾身委員 ありがとうございました。

 最後に、博物館登録制度の見直し及び博物館を利用した文化観光について伺います。

 今回の改正では、地方自治体、社団法人、財団法人などに限定していた設置者の要件を法人類型にかかわらず登録できるように改め、地方行政法人や企業が登録できるようになっています。しかしながら、実際に博物館類似施設や博物館相当施設が登録博物館になるためには、都道府県の教育委員会の審査を受ける必要性があり、また、館長や学芸員を必ず採用しなければならず、年間の開館日数にも制限を受けるなど、博物館側にとっては負担が増え、メリットばかりではないという一面もあります。

 令和三年七月に、文化審議会博物館部会より、博物館法制度の今後の在り方についてという報告が示されました。その中で、これからの博物館に求められる役割が五つの方向性としてまとめられています。それは、資料の保護と文化の保存、継承の「まもり、うけつぐ」、文化の共有の「わかちあう」、未来世代への引継ぎの「はぐくむ」、社会や地域の課題への対応の「むきあう」、そして、持続可能な経営の「いとなむ」です。経済的に自立し、存続し続けることが、今後の博物館経営にとって最重要課題なのです。

 文科省は、新たに登録博物館として承認を目指す企業などにどのようなメリットを提示し、登録の促進を図っていくのでしょうか。

 また、先ほどの質問にも申し上げましたが、デジタルアーカイブが進むことによって、博物館に足を運ぼうという機運が更に高まることが期待されます。各自治体が博物館を文化観光拠点として捉えることにより、観光客を積極的に呼び込むことも可能になります。この際、各自治体にどのような支援が提示できるでしょうか。

 企業や団体にとって、登録博物館に登録することによるメリットはどのようなものでしょうか。また、博物館を拠点として文化観光を推進しようとする自治体にどのような支援を考えているのか。それぞれ簡潔にお聞かせください。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館の設置者は、登録されることで法律上の地位が与えられ、信用や知名度の向上が期待できるとともに、税制上の優遇措置や美術品補償制度の利用などの法律上の優遇措置を受けることが可能となります。また、博物館は、地域の文化資源を有することで、その発信拠点として、国内はもちろん、インバウンド旅行者等に対しても、魅力的な情報を提供し、地域や日本文化への理解を提供する文化観光の拠点となり得ると考えております。

 このような観点から、令和二年度に成立した文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律に基づく拠点計画及び地域計画について認定を行うとともに、取組に対する支援を進めているところでございます。

 これらの認定計画においては、例えば、学芸員による特別解説の実施など、文化資源の展示解説の充実を図る取組や、地元の食材を活用したミュージアムカフェメニューの開発など、地域の飲食や宿泊と連携した取組などといった、各地の特色を生かした様々な取組が展開されているところでございます。

 今後とも、こうした取組を通じまして、地域の博物館等の支援に努めてまいります。

尾身委員 ありがとうございました。

 博物館が各地域でも活用されることを心より期待しております。

 今回の質問では触れませんでしたが、学芸員制度の元となったのが英国のキュレーター制度と言われています。英国におけるキュレーターは、博物館において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識を持って業務の管理監督を行う専門管理職です。また、施設の企画、管理を任されるために、展示品に対する高度な知識、技術が求められ、博士号を保持するなど、館内での地位が高い役職であると聞いています。

 是非、日本でも同じような役割と待遇の学芸員制度を充実させ、国民共有の財産をしっかりと管理していただくことを望みたいと思います。

 国民の大切な財産であり、子供たちの大好きな博物館がより魅力的なものとして長く存続することを目指して、私も引き続き議論に真摯に取り組んでまいります。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子です。

 本日は、博物館法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私も、これまでたくさんの博物館を視察をさせていただき、多くの現場のすばらしい取組を目の当たりにしてまいりました。日本の博物館が持つすばらしい可能性を確信をいたしているところでございます。

 これまでも支援、振興に力を入れてまいりましたけれども、特に二〇一九年の九月に開催されました国際博物館会議、ICOM京都大会は、全力で応援し、当時も私が副大臣として参加をさせていただきました。

 私が参議院議員のとき、参議院文教科学委員会で質問させていただいたのが二〇〇八年の六月のことでした。ICOMの総会は三年置きに加盟国で開催され、その当時韓国でも開催され、二年後には上海での開催が決まっておりましたけれども、日本では昭和二十七年に加盟以来、一度も開催されたことがありませんでした。そこで、是非日本でも開催すべきという質問をさせていただき、そこから約十一年がたちましたけれども、第二十五回ICOM総会として、初めて日本で二〇一九年の九月に開催が実現をいたしました。

 この二〇一九年の京都大会のときには、京都の皆様にもしっかりと知っていただきたいというお気持ちから、ポスター貼りも行ってまいりました。

 ICOM京都大会では、百二十の国と地域から、ICOMの史上最多となる四千六百人の博物館専門家、関係者が一堂に会し、九月一日から七日まで様々な議論が行われてきました。この日本のすばらしい、ICOMの会議をするのに皆さんにすばらしい体験をしてもらいたいということで、私の方から提案をさせていただき、能楽堂で能に触れていただいたり、最終日には、御希望の方には、全日本きものコンサルタント協会の御協力の下、着物を着ていただき閉会式に御参加いただくなど、参加の皆様は大変喜んでくださいました。

 そこで、このICOMの九月一日から七日まで京都大会で行われた議論はとても深く、意義深いものだと思っておりますけれども、今回の博物館法の改正にどのような影響を与え、そしてこの議論の内容は今回の法改正に反映されているのか、鰐淵政務官にお伺いさせていただきたいと思います。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今、浮島委員からも御紹介いただきました二〇一九年に開催されました国際博物館会議、ICOM京都大会につきましては、二〇〇八年に浮島委員が参議院文教科学委員会で質問されたことを承知しておりましたが、改めて議事録を読ませていただきました。その中で、浮島委員の方からも、日本に招致し開催すべきということで力強く御質問いただいております。それに対して当時の池坊副大臣からも、ICOMについて存じ上げなかった、我が国が開催した実績がないというのは寂しいかなと思いました、これから検討したいといった旨の答弁をされておりました。

 この浮島委員の御質問が契機となりまして、博物館関係者、また文化庁で招致の機運が高まりまして、我が国で初めて開催することができたと思っております。改めまして、これまでの浮島委員の博物館行政への御貢献に御礼を申し上げたいと思います。

 また、このICOM京都大会につきましては、当時、副大臣をされていたということで御紹介もしていただきましたが、海外百二十の国と地域から大会史上最多となる四千人を超える方が参加をしてくださいました。これも御紹介いただきましたが、京都を中心に関西エリアで地域の文化や歴史に触れる多彩なイベントも開催されました。私も参加をさせていただきましたが、本当に大変にすばらしい大会となりまして、大成功を収めることができております。

 特に、この大会におきましては、多様な博物館同士が互いに連携協力し、地域や社会の課題解決を図っていこうという新しいコンセプト、すなわち、文化をつなぐミュージアムの理念の徹底、これが採択をされたことは大変に意義があることと考えております。

 今回の改正法案では、この理念を踏まえまして、第三条第二項では、博物館と相互の連携協力を推進する規定とともに、第三条第三項では、地域の多様な主体との連携協力による地域の活力の向上への寄与に努める規定を新たに置いたところでございます。

 文部科学省としましては、今回の改正によりまして、これからの博物館が多様化、高度化する役割を果たしつつ、その適正な運営を確保できるよう、しっかりと支援をしてまいります。

浮島委員 ありがとうございます。

 是非、このときの議論は、とても深い、すばらしい議論だったと思いますので、しっかりと、文科省としても文化庁としても、働きかけ、これからもしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、私も地域を巡り様々な博物館の方々とお話をさせていただいておりますけれども、私が最も感銘を受けたのは、ICOM京都大会でも紹介をされました和歌山県立博物館の取組であります。

 この和歌山県立博物館では、学芸員の方と、そして工業高校の教員の指導の下で生徒さんたちが中心となって、3Dプリンターを使い、触って鑑賞できる文化財のレプリカを作製しています。

 これも一つのものでございますけれども、これは本ですけれども、触って読み解くといって、点字はありますけれども、点字だけではなくて、絵も全部触って分かるようになっているものでございます。

 こういうものを作ってやっているんですけれども、これを活用し、盲学校と連携して障害者の方々が鑑賞できる事業を展開するとともに、過疎化によって管理が困難になった仏像を置き換えることで、住民の方々の負担を軽減し、地域の文化財の防犯、防災対策にも有効な取組が行われています。

 博物館が中心となり、教育委員会、和歌山県立工業高校、盲学校、そして大学、市町村関係者と連携協力し、地域の課題の解決に取り組んでいくというすばらしい事例であります。この事例で、博物館は、和歌山博物館のように、これまで大切に引き継いできた地域の宝とも言える資料、これを最大限活用して、様々な地域の方々の声を聞き、連携することで、地域がそれぞれに抱える複雑な課題解決に貢献していくことができると私は確信をしております。

 他方で、博物館の現場では、人的にも金銭的にも資源が必ずしも十分ではなくて、このような新しい課題に取り組むだけの余力がないところがたくさんあります。たとえ現場の学芸員さんたちが熱意があっても、日々の雑務、用務に追われて、現状を変えるためには、国が最初の一歩をしっかりと支援をし、後押ししていくことが私は必要だと考えています。

 そこで大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、この和歌山県立博物館のように、地域の抱える課題、それをしっかりと解決に取り組む博物館、今後どのように支援をなさっていくのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

末松国務大臣 先生に、二〇一九年のICOM京都大会招致に大変御苦労いただきましたことに敬意を表したいと思います。

 今回の法案におきまして、博物館が、地域の教育機関や民間団体などと連携協力しつつ、地域の活力の向上に努めることを新たに規定することといたしております。

 御紹介のございました和歌山県立博物館は、地域の抱える課題の解消に取り組んでおりまして、まさに先進事例と言える存在でございます。

 文部科学省では、このような博物館を支援するため、令和四年度から新たに博物館機能強化推進事業を実施をいたしてございます。中身は、地域課題に対応するための事業、二つ目は、ネットワーク形成につながる広域的な課題に対応するための事業、三つ目は、外部資金の獲得でございます。もう先生御承知のとおりであります。

 今後とも、これらの事業を通じて、全国各地のより多くの博物館が地域社会の抱える課題の解決に取り組むことに積極的な支援を行ってまいりたいと思います。

 先生から御紹介のありました、文化財の盗難防止、それと、防災対策上、和歌山県立博物館と県立工業高校と大学とで、3Dプリンターでお身代わり仏像をお作りになって奉納されたということで、画期的な取組かなということで拝見いたしたところでございます。こういうところに意を用いたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 この和歌山県立博物館の取組というのは、日本ではもちろん、世界初という取組でございました。このような好事例、これをしっかりと支援するとともに、今大臣の方からも積極的支援というお言葉もいただきましたけれども、しっかりと支援に取り組んでいただきたいとお願いをさせていただきます。

 また、様々な地域の課題に博物館が取り組むに当たっては、地域の関係者を巻き込んでいく、今も大臣も地域との連携とおっしゃっていただきましたけれども、必要があると思います。

 博物館側も、公立博物館だけではなくて、地域の実情や課題に応じて様々な設置形態の館が生まれておりますので、このような館の活力を、取り組んでいくべきであると私は考えています。例えば、先ほど尾身委員の方からもお話ありました、森美術館もそうですし江ノ島水族館などもそうですけれども、民間の会社が設置する博物館、また、社会福祉法人が設置する博物館などでございます。

 今回の改正案では、博物館の登録制度について、法人類型による制限をなくし、どのような法人であっても登録博物館となることができるようにするということでございますけれども、これは、法制上も民間の法人が設置する博物館の活動が正当に評価されることとなり、民間の活力、博物館による地域の課題解決に取り組んでいくという観点からも効果的な手段だと期待をしております。

 一方で、この新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によりまして、博物館の利用者数がこれまでになく落ち込み、厳しい状態に置かれているのも現状でございます。

 そこで、この新型コロナウイルス感染症の感染の拡大、博物館にどのような影響があり、文化庁としてどのような支援を行っているのか、お聞かせいただきたい。

 また、新型コロナウイルス感染症に対しては一定の対策が取られてきたところではありますけれども、経済的な打撃は、特に私立の博物館においては深刻であると現場からお声をいただいております。コロナ後の社会を考えたとき、博物館が有していた貴重な博物館資料が散逸してしまうような状況も起こり得ると懸念されています。一度失ってしまったものを元に戻すのは至難の業だと私は思います。

 そこで、このコロナ後を見据えて、新たに登録の対象とする民間法人が設置する博物館について、予算措置や税制上の優遇措置など支援を今こそ拡大していくべきと考えますけれども、大臣のお考えを併せてお聞かせください。

末松国務大臣 昨年の文化庁の調査によりますと、新型コロナの感染拡大に伴いまして、九割以上の博物館が臨時休館となりました。外国人の観光客の急減と相まって、来場者が一時は五割近く減少するという事態になりました。

 このような状況を踏まえまして、文化庁では、累次の補正予算によりまして、日本博物館協会等が策定しました感染症対策ガイドラインに基づく、例えば消毒液やあるいはサーモグラフィーカメラ等の物品の整備であるとか、それと、オンラインチケットの導入等の取組であるとか、あるいは資料のデジタルアーカイブ化など、博物館の再開、再生に向けた取組を行ったり、また、感染症対策を十分に実施した上で積極的に行う展覧会等の取組、またそのキャンセルに係る費用、先生からもいろいろな御要望をいただきました、この件につきまして、などの財政支援を行ってまいりました。

 今後とも、関係者の皆様方の声に耳を傾けながらの支援を行ってまいりたいと思います。

 また、博物館は、登録博物館となることによりまして、現在、一つには、信用や知名度の向上につながるということが一番大きいことであります。二つ目は、税制上の優遇措置や予算事業に関わる支援、各種、税については優遇が受けられます。三つ目は、美術館の国家補償制度などの利用などによりまして、法律上の優遇措置などの支援を受けることが可能でございます。

 本法案によりまして新たな登録の対象となります民間の博物館につきましても、登録に伴うインセンティブをできる限り措置できるように、全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

浮島委員 ありがとうございました。

 また、博物館は、私は教育にも大きな力を持っていると思っております。

 先ほども御紹介をさせていただいた、この触って読み解く本でございますけれども、これができたきっかけというのは、盲学校の生徒さんが博物館に視察に来られたそうです。そして、学芸員の方が説明をしようと思っても、仏像はケースの中にある、触れない、そして、見れないので、何をどう説明していいか分からないで、自分が何を言ったか分からない間に視察が終わってしまったと。

 そこで、和歌山県立工業高校の生徒さんたちに相談をしたところ、簡単だよ、3Dプリンターで仏像を作ればいいと。それで、小さなミニチュア、全く本物と同じなんですけれども、作り、そして、本も、字だけではなくて絵も全部触って分かるようにしたらいいということで、発案をして作られました。そして、盲学校の生徒さんと和歌山工業高校の生徒さんが、この一冊の本を基に一緒に授業を受けることもできたそうです。

 そして、盲学校の生徒さんは、そのレプリカ、仏像ができたときに、普通であれば手とかを触ったりしますけれども、必ず皆さんはそれを胸のところに一番初めに持っていくそうです。それはなぜかというと、目で見るのではなくて心で見るということで、その仏像を心にかざしてからいろんな議論を始めたということもお伺いをしました。

 こうして、障害の有無にかかわらず、教育に関しても私は重大な場所であると思いますので、どうかしっかりとした支援をしていただきますよう、再度お願いをさせていただき、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。立憲民主党の菊田真紀子です。

 質問の機会をいただきまして、委員長を始め皆様の御配慮に感謝を申し上げます。

 今日は、文化芸術の保存、継承、創造、交流、発信を担ってきた博物館の位置づけや役割等を見直す博物館法の一部を改正する法律案を議題とした質疑ではありますが、文化振興にとって同じように非常に意義のある、また、現在大きな節目を迎えております佐渡島の金山の世界文化遺産登録の問題についてまず取り上げさせていただきます。

 佐渡島の金山は、十七世紀における世界最大の金生産地であり、西欧の進出によって世界中の鉱山で機械化が進む十六世紀から十九世紀にかけて、伝統的手工業による生産技術とそれに適した生産体制を各鉱山の特性に応じて深化、深くする意味での深化でございます、深化させた金生産システムを示す遺構であります。

 私の地元新潟県では、二十年前から佐渡島の金山の世界文化遺産登録に向けて、官民挙げて熱心な活動を続けてまいりました。私も、佐渡島の金山が顕著な普遍的価値を持つ日本が世界に誇る文化遺産であると確信をして、世界文化遺産登録に向けて取り組んでまいりました。

 今回、ユネスコへの推薦が行われ、ようやく大きな一歩を踏み出したことになりましたが、推薦される直前にユネスコへの推薦の見送りを検討する動きが政府内にあったと伺っております。

 昨年の十二月二十八日に文化審議会において、二〇二一年度推薦候補に選定されたにもかかわらず、閣議了解を決定し、ユネスコに推薦書が提出されたのが今年の二月一日、一月以上も空白期間が生じておりました。この間に推薦の見送りを検討する報道もあり、地元には大きな不安と動揺が広がり、それを受けて、安倍元総理ら国会議員各位から見送り反対の御趣旨の発言もありました。

 結局はユネスコへの推薦は行われることになったのですが、推薦に至るまで、政府部内、さらには与党の中、政治家同士のやり取り等を通じて、どのような経緯があったのか、大臣に伺いたいと思います。

末松国務大臣 菊田先生には、佐渡金山の世界文化遺産登録に向けて大変御努力いただいておりますことに感謝を申し上げたいと存じます。

 佐渡金山につきましては、昨年十二月の二十八日に文化審議会から今年度の世界文化遺産候補として選定する旨の答申がなされました。

 内容を改めて私もじっと読ませていただきました。答申は、「「佐渡島の金山」は、推薦書の提出までに、読み手にとってわかりやすい表現となるよう推薦書案の記述内容について一部修正すべきという課題はあるものの、全体として顕著な普遍的価値が認められ得ると考えられ、かつ、構成資産は十分な保護措置を受けていることから、今年度推薦することが適当と思われる世界文化遺産の候補物件として、「佐渡島の金山」を選定する。」というのが、十二月二十八日、昨年の文書でございます。

 これに沿ったものでございまして、その後、政府におきまして、総合的な検討を行い、そして、本年二月一日の閣議了解を経まして、ユネスコに推薦書を提出をしたところでございます。

 いろいろな動きがあった云々というお話がございますのですけれども、文化審議会、文化庁、文化庁の上、文科省、そういうたてつけになっておりますので、私としては、答申が出されたときには、積極的にこれを推薦したい、この案件を推薦したい、そういう形で動いておりましたけれども、最終的には、総理、御判断をされた節はあったのではないかなということを、そのように考えてございます。

菊田委員 大臣、ありがとうございます。

 しかし、一月の空白の間に具体的にどういうやり取りがあったのか、経緯をつまびらかにしていただけなかったのはちょっと残念でありますけれども、ユネスコへの推薦が行われたことは文化遺産登録に向けて大きな一歩となったことは間違いありません。また、一連の騒動を報道が大きく取り上げたことにより、逆に登録に向けて全国民に佐渡島の金山のことを知っていただく機会にもなったと思います。

 これから国際NGOのイコモスによる審査、勧告が行われた上で、ユネスコ世界遺産委員会において審議、決議が行われると承知をしています。

 しかし、韓国は、佐渡島の金山の文化遺産登録に反対する動きを見せています。これは歴史戦だなどという言葉まで用いて、対立をあおるような動きもあるようでありますが、あくまで佐渡島の金山の文化遺産としての価値や歴史的背景、事実について日本の主張を冷静に主張すべきだと考えます。残念ながら、現在、日韓関係は冷え込んでおり、歴史認識について耳を傾けようとしない韓国の姿勢からして、文化遺産登録に向けて韓国の理解と賛同を得るのは非常に難しいものがあります。

 ただ、この度、韓国の新大統領に尹錫悦氏が就任することとなりました。尹氏は未来志向の韓日関係を築いていきたいと発言をしており、この政権交代をきっかけとして、歴史問題で悪化してきた日韓関係が改善に向かうのではないかと期待する声も聞こえてまいります。

 尹氏の大統領就任によって日韓関係が健全な関係を取り戻すことができるのか、また、佐渡島の金山の文化遺産登録にどのような影響が出てくると考えるのか、そして、日本政府はどう対応していくのか、外務省に伺います。

曽根政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としましては、佐渡島の金山の文化遺産としてのすばらしい価値がユネスコにおいて評価されますよう、韓国を含む関係国と冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えであります。

 内閣官房に設置された世界遺産登録に向けたタスクフォースの下で、しっかり検討、取り組んでいきたいと思っておるところであります。

 また、韓国の尹次期政権との関係につきましても、この佐渡島の金山の問題については冷静かつ丁寧な議論を行っていきたいというふうに考えております。

菊田委員 ありがとうございました。

 先ほども申し上げましたが、今回、イコモスの審査、勧告の後にユネスコ世界遺産委員会において審議、決議が行われます。このユネスコ世界委員会は、日本を含む二十一か国が委員国となっています。韓国は委員国ではありません。また、二十一か国の中にはロシアが含まれています。

 現在、深刻な危機にあるウクライナ情勢の中で、ユネスコ世界遺産委員会の議論はどうなっていくのでしょうか。現状、日ロ関係が大きく変わってきている中、ロシアや、またほかの委員国に対して、世界遺産登録に向けて働きかけを行える状況にあると考えているのか、外務省に伺います。

曽根政府参考人 今委員お尋ねの現下のウクライナ情勢、これが佐渡島の金山の世界文化遺産登録に与える影響につきまして確たることを申し上げるということは困難であるというふうに考えておりますけれども、佐渡島の金山の文化遺産としてのすばらしい価値が評価されますよう、委員国を始め国際社会に対し冷静かつ丁寧に説明していくということが大切であり、そのように取り組んでいきたいというふうに考えております。

菊田委員 非常に困難な状況にあるということは承知しておりますが、文化遺産登録に向けて可能な限りの外交努力を積み重ねていっていただきたいと要望したいと思います。

 最後に、佐渡島の金山の世界文化遺産登録に向けて、文科省としてはこれからどのように取り組んでいくおつもりか、大臣にお伺いします。

末松国務大臣 佐渡金山の世界遺産登録に向けまして、今後、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関でございますイコモスによる審査が行われることになります。今年の夏か冬頃の間にイコモスによります審査、現地調査と書類審査がございます、このイコモスによる審査が行われることになりますが、佐渡島の金山の高い文化的価値を評価していただくことが何よりも重要であるという認識をいたしてございます。

 このため、文部科学省としては、関係自治体及び関係省庁と連携しまして、今後の審査にしっかり対応するとともに、佐渡島の金山の高い文化的価値の国内外への情報発信のために努力をいたしていきたいと思います。

 加えて、内閣官房副長官補、外政担当でありますが、の下に設置をされました世界遺産登録等に向けたタスクフォースに積極的に参画しまして、歴史的な経緯を含めた様々な議論に対応してまいりたいと思います。

 いろんな県史も今読み込んでいるところでございますが、精査をいたしてございます。まだまだハードルは高うございますけれども、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。

菊田委員 ありがとうございました。

 是非、機会がございましたら末松大臣にも直接佐渡の方に行っていただいて、視察をしていただいて、また御尽力を賜りたいというふうにお願い申し上げたいと思います。

 それでは、佐渡島の金山につきましてはここまでとさせていただきます。外務省の答弁者の方は、どうぞ御退出ください。ありがとうございました。

 ここからは、博物館法の改正について質問させていただきます。

 博物館法は、昭和二十六年、一九五一年の制定から七十年が経過しました。七十年間の長きにわたって、ほかの法律の改正に対応した改正等はありましたが、今回のような大幅な変更、言ってみれば本格的な改正は行われてきませんでした。

 なぜ、今回、このタイミングで博物館法の本格的な改正を行うこととなったのか、その理由、経緯を文科省に伺います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館法の制定から約七十年が経過し、博物館に求められる役割、機能も多様化、高度化するとともに、設置形態が多様化するなど、博物館を取り巻く状況は大きく変化しています。

 また、国の博物館に関する事務につきましては、文化庁の機能強化を契機に、二〇一八年から文化庁で一括して所管することとしたところでございまして、その後、文化審議会に博物館部会を設けまして、幅広い関係者から意見を聴取して議論し、昨年末に答申がまとめられたところでございます。

 今回の法案は、こうした答申を踏まえまして、博物館の設置主体の多様化を図りつつ、その適正な運営を確保するため、法律の目的及び博物館の事業に関する規定の見直し、博物館登録制度の見直しなどを行うものでございます。

菊田委員 文化審議会の中に博物館法部会というものが二〇一九年に設置をされて、じっくりと議論、準備をされてきたんだろうというふうに思いますが、ほぼ七十年ぶりの博物館法の本格改正でございます。残念ながら、課題として認識されていながら今回の法改正には盛り込まれていない、積み残しとなっている事項が幾つかあるように思います。

 お手元に資料を配付させていただきました。一枚目を御覧ください。

 文化審議会博物館部会の答申において、三点について、「その他の措置すべき事項と今後の課題」と表記されています。一つ目が、「国立の博物館を含む、すべての博物館の振興のための枠組み等の制度整備についても今後検討。」。二つ目は、「学芸員制度は中長期的な課題として引き続き検討。学芸員補は進学率向上等を踏まえ一部見直し。」。三つ目として、「保存・修理等の館種に応じた様々な専門的職員の養成・資質向上のための規定の整備、現職研修等の一層の充実。」。

 この三点のうち、二つ目の後半部分、「学芸員補は進学率向上等を踏まえ一部見直し。」と、三つ目の「保存・修理等の館種に応じた様々な専門的職員の養成・資質向上のための規定の整備、現職研修等の一層の充実。」、これは今回の法改正に盛り込まれました。

 しかし、国立の博物館の取扱いと学芸員制度については、今後の検討、中長期的な課題とされ、今回の法改正には間に合いませんでした。この二点、どちらも博物館制度の根幹に関わる大事な論点です。今回の法改正に向けて、時間をかけて準備をしてきたというふうに思いますけれども、盛り込まれていないことは残念に思います。

 まず、積み残しの一つ目、国立博物館等の国立館は登録対象制度の対象に含まれず、引き続き博物館相当施設として位置づけられます。やはり博物館といえば、まず想像するのは、国立科学博物館や東京国立博物館といった国立博物館になるのではないでしょうか。今回の法改正で促進されることとなる博物館同士の連携を行うネットワークの形成にも、国立の博物館が中核的な役割を果たしてこそ機能するのではないかと思います。

 なぜ、今回の法改正で、国立の博物館まで含んだ全ての博物館振興のための枠組みの制度整備まで至らなかったのか、その理由を文化庁に伺います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、これは七十年ぶりの大きな改正でございまして、いろいろな課題がありました。それについて文化審議会でもいろいろと議論を深めていただきまして、今御紹介いただいたようないろいろな課題というのが、まだ残っているものもございます。

 御案内のとおり、国立博物館のことにつきましては、その設置及び運営に関する事項は、現在、独立行政法人の個別法などにおいて定められているということでございまして、本法案では、博物館における登録制度の対象として国立は含まないということとされているところでございます。

 あと、学芸員の方の形につきましても、制度につきましても、実際にこれの、今求められている資質、能力、あるいはその養成等々につきまして、まだまだいろいろな課題がありますということで、そこについて更に深く検討していく必要があるということが文化審議会でも御議論されておりますので、私どももそれに、これからも更に、関係者の皆さんからいろいろな声、意見を聞きながら、しっかりと対応していこうというふうに考えているところでございます。

菊田委員 少しうがった表現をすれば、それぞれの省庁が所管していた施設に対して文化庁が制度整備を行うことに、縦割りの弊害から来る難しさもあるのかもしれませんが、二〇一八年の文部科学省設置法の改正で文化庁は機能強化されているのですから、是非主体的に頑張っていただきたいというふうに思います。

 次に、二つ目の積み残し、中長期的な課題とされた学芸員制度について、ここでは学芸員を含む博物館の職員に関する課題を伺いたいと思います。

 一番ガンなのは学芸員、普通の観光マインドが全くない、この連中を一掃しないと、こんなふうに発言した大臣が過去にいらっしゃいました。かなり行き過ぎた乱暴な表現ではないかと思いますが、博物館の振興、ひいては文化財の振興を図っていくのに、学芸員を中心に、学芸員補、さらには、様々な専門的職員まで含めた博物館職員に期待される役割は非常に大きいものであります。

 博物館の役割も、収集、保存、展示、教育という従来からの基本的役割に加えて、文化芸術基本法などにより、文化観光、町づくり、福祉、産業化という、こうした新たな役割も博物館に求められるようになっています。

 さらに、今回の法改正で、博物館の事業に、博物館資料のデジタルアーカイブ化を追加するとともに、他の博物館等と連携すること、及び地域の多様な主体との連携協力による文化観光その他の活動を図り、地域の活力の向上に取り組むことが努力義務となることから、職員の資質や能力の向上がより一層求められることになります。

 しかし、公益社団法人の日本博物館協会による日本の博物館総合調査報告書によると、学芸業務の担当職員を研修に派遣したり参加させたりしているのは半数の博物館にとどまっており、職員の資質や能力の向上が十分に図られていない状態が見受けられます。

 また、博物館の職員数について、この調査報告書によりますと、常勤職員が減少傾向にある中、非常勤職員は増加傾向にあり、職員不足を課題として捉えている博物館は七三・二%にも上っていて、深刻な職員不足の状況にあります。

 我が党の部会のヒアリングで有識者にお話を伺ったところ、今の学芸員や文化財関係職員の公募は、ほとんどが単年度雇用の会計年度任用職員であり、学芸員業務にそぐわない安い給料であったり、あるいは不安定雇用にあることから、職員の意欲が低下をし、有能な人材が逃げていく状態に陥っていて、研究、実践上の魅力に併せて待遇面の魅力もなければ有為な人材は集まらないという、このような御指摘がありました。

 文化審議会博物館部会の答申において、学芸員制度は中長期的な課題として引き続き検討とされていますが、それぞれの博物館にとって、職員の資質、能力向上と、職員不足、職員の確保は喫緊の課題であり、到底、中長期的な話だとのんびりと構えておられるような状況ではございません。

 文化庁として、博物館の人材確保と資質、能力向上の課題をどう認識していて、それにどう取り組んでいく考えなのか伺います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館の役割、機能は、多様化、高度化しております。

 学芸員はもとより、保存、収集、展示等の基本的な機能をそれぞれ担当する専門家ですとか、館種ごとの特殊性に対応するための専門家、さらには広報、PR、デジタル化、ファンドレーズなどの様々な人材が求められているということを強く認識しております。

 他方で、今委員から御指摘のあったとおり、様々な問題が各博物館、地域で存在しているということもまたこれは承知しております。

 こうした中で、文化庁におきましては、まずは、その学芸員を始めとする博物館の様々な職員に対する研修、これをしっかりと進めるということで、本改正の中にもその条項、努力義務を新たに設けたところでございますし、博物館同士の連携協力を通じて、しっかりと人材確保や人材交流、研修の機会を拡大していこうということで、新しくそのネットワークを促進するための事業を実施するということで、来年度から考えているところでもございます。

 また、処遇のことにつきましても、これまた大切なことでございまして、今後、博物館がこれからいろいろその役割をきちっと果たしていく中で、地域の皆様、それから博物館への信頼というのをしっかりと確保しながら、そして、学芸員の、今申し上げたような専門的な地位、立場というものをしっかりと御理解いただきながら、様々な形でその処遇の改善の機運を上げていくということも大切だ、このように認識しております。

菊田委員 文化芸術の保存、継承、創造、交流、発信を担ってきた博物館について、求められる役割が多様化、高度化していることを踏まえ、設置主体の多様化を図りつつその適正な運営を確保するという今回の法改正の趣旨は私もよく理解しております。

 しかし、じっくりと時間をかけて準備してきたにもかかわらず、国立博物館を含んだ枠組みの整備や学芸員制度といった重要な課題が積み残しになってしまっているため、博物館制度については、より難しい課題に対する更なる議論がこれから必要になってくることになります。

 文部科学大臣として、今ほど私が幾つか指摘をさせていただきましたが、積み残された課題に対してどう取り組んでいくおつもりなのか、所見を伺います。

末松国務大臣 先生から大変難しい御指摘をいただいたと思います。

 昨年、文化審議会が取りまとめました答申では、博物館の目的や事業内容、登録制度の見直し等、改正の方向性の結論を示していただきまして、本法案に反映をしているところでございます。

 その一方で、国立の博物館を含む全ての博物館振興のための枠組みや、今先生御指摘ありました学芸員制度の在り方、様々な専門的職員、例えば、修復に当たられる方であるとか、あるいは教育をしていただける方も、実際、専門的職員だと思うんです。こういった方々の養成、資質の向上につきましては、更なる議論が必要なものとして、引き続き検討しているということが提言をされております。

 学芸員制度につきましても、恐らく、間違っていたらあれですけれども、一種、二種とか階層的な問題が議論されたのかもしれません。今回はそれが入っておりません。こういったこともあって慎重に議論すべきであるというような話になっているやに伺ってございます。

 これらの問題について、今後、引き続き、文化審議会博物館部会において審議を進めまして、一定の方向性を得るべくしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 菊田先生御指摘のとおり、博物館はやはり質の向上を図っていくという、全体的に、これは職員の方も、今先生御指摘あったように非常勤の方が多い、あるいは、職員も半分程度しか派遣して研修に行かせていないというような御指摘もありましたので、こういう点はやはりしっかりと、行政側がそのことを念頭に置きながら、常に施策を見直していくということが大事かと思います。

 当然、裏づけになる財源も必要かと思います。いろいろなところでは、クラウドファンディングとかいろいろな工夫をなさっているようであります。できるだけの努力は続けたいと思います。

菊田委員 ありがとうございました。

 次に、博物館の経営状況について伺っていきたいと思います。

 日本の博物館総合調査報告書によりますと、博物館の課題として、財政面で厳しいという設問に対して、当てはまる、まあ当てはまると答えた博物館は七九%にも上ります。

 お手元の資料を御覧いただきたいと思います。

 博物館の資料を購入する予算がなかった、つまり予算がゼロだと答えた博物館は六〇・五%と、約六割の博物館が資料を購入する予算がゼロであると回答しています。実際には寄贈や寄附によって資料収集に努めておられると思いますが、六割の博物館が資料購入予算ゼロというのは、なかなか衝撃的な数字だと思います。

 回答を得られた博物館の平均値では、総収入は九千二十六万円、総支出は一億五百六十万円と、この数字を見ますとやや赤字かという印象を受けますが、この数字は平均値ですので、一部の規模の大きい博物館の数値が平均値を押し上げてしまっています。

 そこで、中央値、データを大きい順に並べたときの中央の値を見ると、平均的な規模の博物館の状況が分かると思いますので、中央値を見てみますと、総収入は千三百六十万円、総支出が二千九百六十五万円となっていて、収入が支出の半分にも満たないという状況となっています。収入で賄えない部分は、設置者等からの補填を受けているものと考えられます。

 さらに、コロナ禍において、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が繰り返し発令された際には、多くの博物館が休館されたと伺っています。オンライン環境等を利用した情報発信に新たに取り組んだ博物館もありましたが、入場料が減少した上に、感染予防対策のためのコストが増加したことで、更に経営的に打撃を受けた博物館も少なくないと思われます。

 このように、多くの博物館が厳しい財政状況に陥っていると思われますが、博物館の経営状況について、文化庁の見解を伺いたいと思います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 日本博物館協会の調査によりますと、先ほど委員から御指摘ございましたとおり、多くの博物館が財政状況に課題を感じているという厳しい状況にあるというふうに認識しております。

 また、一部の地方や一部の館では、コロナ禍で入館料収入が減る中でも、新たな課題への対応ですとか経営基盤の強化のために、クラウドファンディングなどを通じて寄附金などの自己収入を上げるなど、様々な努力を行っている博物館も見られるところでございます。

 ただしかし、全体としましては、現在、特にコロナ禍の影響によりまして、博物館の入館者数が減少しておりますので、多くの博物館において厳しい財政状況が続いている、このように認識しております。

菊田委員 先ほど申し上げましたように、博物館の資料を購入する予算がなかった、つまり、予算がゼロだと答えた博物館は六〇%ですから、もう少し深刻にこの厳しい状況を認識していただきたいというふうに思います。

 今回の法改正で、博物館の事業に博物館資料のデジタルアーカイブ化を追加するとともに、他の博物館等と連携すること、及び地域の多様な主体との連携協力による文化観光その他の活動を図り、地域の活力の向上に取り組むことを努力義務とすることとされています。

 今ほど申し上げましたように、財政状況が既に厳しい博物館では、このような事業に取り組む余裕があるのでしょうか。今回の法改正による業務の追加に博物館が対応できるとお考えなのか、文化庁に伺います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 財政状況の厳しさにつきましては、国、地域、各博物館、それぞれ抱えている課題ではございますけれども、これからの博物館が文化観光や町づくりなど地域や社会の課題に対応していくことによりまして、博物館が地域住民からの信頼、それから支援を得まして、ひいてはその活動に対する支援を充実させていくという、こういう大きな流れをつくっていくことは重要であると考えております。

 各博物館がどのような事業を行うかは設置者や各館の判断も大きいところでございますけれども、文化庁といたしましては、それぞれの博物館がその強みを生かして地域の活力向上に寄与していく取組についてしっかりと支援していくことが肝要だ、このように考えております。

菊田委員 杉浦さん、今回、博物館機能強化推進事業という新しい補助金が新設されたんですよね。

 新しい補助金を設けるということは、昨今の国の予算、大変厳しい予算折衝の状況の中で、私は、文化庁はよく頑張られたというふうに評価したいと思うんですよ。そういうことは答弁の中でアピールすればいいじゃないですか。どうぞ。

杉浦政府参考人 申し訳ございません。答弁申し上げます。

 菊田先生おっしゃるとおりでございまして、そうした新しい、努力するところに、あるいはネットワークをつくったり新しい取組をするところに予算事業を、この度、令和四年度から実施したいということで今進めているところでございます。

 文化庁としましては、こういうような形で、一生懸命頑張っているところにしっかり応援するという形を通じまして博物館を、また、この法改正を先生方に是非お認めいただきまして、これを機に博物館が更によくなっていくように頑張ってまいりたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

菊田委員 杉浦さん、謙虚過ぎますね。もう少しアピールしてください。

 しかし、今後更に多額の予算が必要となる博物館が増加していくことが予想されるんですね。なぜなら、施設の老朽化への対応に多くの博物館が迫られているからです。

 博物館が多く開館されたタイミングが、これまで二回あります。一回目が昭和四十年代、二回目が平成元年頃です。日本の博物館総合調査によりますと、昭和四十年代に全体の二一・四%、平成元年頃に一四・六%の博物館が開館しました。一回目は、昭和四十三年の明治百年記念事業が行われたことによるもので、博物館が多く開館し、このとき、国立歴史博物館も建設されました。二回目は、竹下元首相のふるさと創生事業で各市区町村に対して地域振興のために交付した一億円を活用して、博物館も多く開館することとなりました。

 明治百年から既に五十年以上が経過し、ふるさと創生事業からも三十年以上が経過したことで、当時次々に開館した博物館は老朽化が相当進んでおります。施設、建物の老朽化を課題として掲げた博物館の割合は七五・二%にも上っています。

 ただでさえ厳しい財政状況の博物館が多い中、施設の老朽化への対応は難しいものがあり、まだ割合としては多くないものの、博物館の今後の方向性として、用途の変更や廃止と回答している博物館も出てきております。

 博物館に時代に即した役割を求める今回の法改正の方向性に異論を挟むものではありませんが、既に経営が青息吐息の状況で施設の老朽化対応もままならない、そういう博物館が多い中、これからの博物館が持続的に存続できるとお考えなのか、支援の枠組みを更に拡充していく考えはあるのか、これは大臣にお伺いします。

末松国務大臣 公立の登録博物館に対します施設整備費補助金でございます、つきましては、地方分権の観点から、平成八年にて一般財源化されておりまして、交付税措置ですね、交付税で対応していく、こうしておりまして、御指摘の老朽化への支援につきましては、このような経緯を踏まえて考えていく必要があるというふうに認識をしております。

 大変ですけれども、もとより、博物館の経営とか活動をどのように維持発展させるかにつきましては、それぞれの設置者さんが、館や、あるいは館の特性であるとか地域の実情を踏まえまして創意工夫をしていくべきものであるというように認識はしております。

 文化庁として、創意工夫を生かした取組に追加的な支援を行うことが肝要であります。本法案成立後は、様々な予算事業を通じて、全国各地の博物館の更なる振興に努めてまいりたいと思います。

 先ほど先生が文化庁の次長の杉浦さんに、もっと宣伝しなさいと言った予算でも四億ちょっとでございますので、それを、全部を全国津々浦々に届けるような、そういった金額ではないと思ってございます。

 地元の私の神戸市でも、動物園と水族館を建て替えるということがあるんですけれども、まあ、千何百円がすごい金額に上がってしまうんじゃないかという話も出ておりまして、大変苦慮しながら運営をいたしてございます。

 そういった点も念頭に置いて、できる限りの支援を検討していきたいと思います。

菊田委員 大臣とそれから委員の皆様に、今、博物館が本当にこれから先も永続的に、持続的に存続していけるかどうか、実は、厳しい様々な課題、財政的にもですね、老朽化の問題も含め、職員不足の問題も含め、共有させていただきました。

 とりわけ小さな博物館はなおのこと苦しい状況にありますので、どうか是非注視をしていただき、しっかり検討していただき、持続的な博物館の存続に向けて御努力をいただきたいというふうに思っております。

 残り五分となりましたので、これから博物館の館長に関する質問をさせていただきたいと思います。

 これも資料をつけさせていただきました。三枚目を御覧ください。

 博物館の館長の職歴は、行政職員出身から、学芸系職員、大学教員や研究機関の研究者、小中高等学校の教員から民間人材まで多岐にわたっています。その中でも、行政職員出身者が三七・五%と全体の三分の一以上を占め、二七・五%の学芸系職員を超えている状況にあります。

 行政職員出身の博物館の館長の中にも、館長としてすばらしい御活躍、功績を残されている方もいらっしゃると思いますが、行政職員時代に、博物館の事業と余り関わりのない、いわば畑違いの分野で長年勤務されてきた方の場合、どうしても博物館の事業と業務に対して十分な見識、知見をお持ちでない方もいらっしゃるのではないかと思います。

 博物館を取り巻く運営環境が非常に厳しい中、求められる多様な役割を果たしていくためには、やはり館長が担うべき役割も一層重要化していることは間違いありません。我が党のヒアリングでは、博物館の館長の専門職化がいずれは望ましいのではないかと御発言された有識者もいらっしゃいました。

 館長職の専門職化を含む館長への人材登用の在り方と、館長の能力、資質向上にどう取り組んでいくのか、文科大臣に伺います。

末松国務大臣 菊田先生にお答え申し上げます。

 博物館の館長は、館の展示内容等に関する専門性への理解を有することはもちろん、館の魅力の社会への発信、地域社会との関係構築など様々な役割が求められておりまして、博物館の事業全体をマネジメントする重要な役職であるという認識をしてございます。

 一方で、具体的にどのような資質、能力を持った者を博物館の館長にするかは、館の目的や特性、地域の実情等を踏まえまして、それぞれの設置者が判断することにはなってございます。

 本改正案では、国や都道府県が館長に必要な研修を行うことを新たに定めておりまして、新任の館長への研修により、その資質の向上に一層努めてまいりたいと思います。

 先生今御指摘されました資料を拝見しまして、行政出身者が三七・五%、館長さんをやっておられる方が、その他が二七%、学芸員一三・八%でありますけれども、せんだって、私はやはりどうしても地元の方に足を運んでしまうので、兵庫陶芸美術館、古丹波、つぼなんかを焼いているところですけれども、兵庫県篠山市にあるんですが、そこに参りましたら、館長はやはり識者なんですね、和歌山から兵庫県まで通っておられます、副館長は行政職員、そういうことになっています。

 と同時に、博物館法には「館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。」ということでありますから、確かに、専門的な識見と同時に運営任務を全うする能力を発揮してほしいということは、両方書いてあるということでありますから、どちらも大事ということは認識をいたしております。

 先生の今御指摘をよく念頭に置きたいと思います。

菊田委員 時間が来ましたので私の質問をこれで終わらせていただきますが、どうぞしっかりと博物館の更なる発展、振興のために御努力いただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、荒井優君。

荒井委員 立憲民主党の荒井優でございます。

 僕は、この文科委員会にどうしても所属したくて国会議員になりました。といいますのも、今、与野党を通じて唯一の校長出身の国会議員になります。五年間、学校教育を通じて行ってきまして、日本の教育をもっとよくすることができるんじゃないか、そのためには、文科委員会に所属しながら、是非、大臣や文科省の皆さん、そして委員の皆さんといろいろな質疑を通じることで、必ずよくすることができるというふうに信じて、今回、国会議員になりましたので、大変、今日、お話しさせていただくのを楽しみにしておりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、社会教育における博物館法の改正という形になります。私がやってきていた学校というのは、これは学校教育になりますが、文科省の大変大きな役割の中には、当然、社会教育というものがございます。

 少し思い描いていただきたいんですけれども、長方形の形を思い描いていただいて、縦の短いところを〇から二十四、約二十四時間だと思っていただき、横を百、今人生百年ですから、百年だと思っていただいたときに、これが人の生きる時間の面積だというふうにしたときに、文科省の提供する学校教育を受ける時間というのは、受ける面積というのは、決してそう大きくないことがお分かりいただけるかと思います。六歳に小学校に入って大学や大学院を卒業するまで、二十二歳、二十四歳までの横幅ですし、縦も、二十四時間、学校に行っているわけではありません。

 一方、社会教育というのは、逆に言うと、それ以外全てが、まさに社会教育に値することになります。今日も、さきの先生方からも、学校教育においてもまさに博物館等を活用すると。つまり、学校教育においても社会教育との接続というのは今大変重要なことですので、実際、社会教育というのは非常に重要な政策なんだというふうに理解しております。

 実際、私が社会教育の大切さに触れたのは十一年前の東日本大震災のときでして、この東日本大震災のときにたくさんの仮設住宅ができましたけれども、その仮設住宅を、いろんな支援活動を当時やっておりました。

 民間企業に勤めていましたが、約四十億円寄附をいただきまして、復興支援のための公益財団法人を設立し、その専務理事をしていましたので、その活動を通じて様々な避難所を回る中、避難所の皆さんが集まる場所の運営というのが大変に重要なんだなということをすごく痛感しましたときに、ある方から、荒井君、それはまさに公民館そのものなんだよというふうに言われたんですね。

 その当時、公民館について僕は全く知見もありませんでしたが、そのときにいろいろ勉強させてもらったのは、公民館も、これも、今日の博物館法とは違う、社会教育にまつわる法律にはなりますが、この公民館というのも、戦後に日本の、特に当時の文部省の寺中課長が、まさにこれから日本の、民主主義を学ぶための場所が必要なんだ、そういう強い思いで公民館をつくったりしたんだというふうに伺いました。

 なるほど、今回の博物館法も、これも一九五一年に元々議員立法で始まったというふうに勉強しましたが、まさに戦後、もちろん学校教育は大切なんです、でも一方、社会教育も本当に重要なんだということを先人の人たちは大変強く思って、信じてやってきたんだな、そういうことを改めて思うわけですが。

 でも一方、戦後これだけ時間がたってくる中、今回の博物館法も七十年ぶりの改正という形になります。公民館法も、今回は議題ではありませんが、でも公民館だって非常に苦しい状況の中で続いています。日本の社会教育に関しては、先人がつくったその思いを今我々はしっかり受け止めて、運営できていないんじゃないかと。

 もちろん学校教育も非常に重要ですし、そのことを一生懸命やりたい。でも、社会教育もまさに先ほどの、描いた、この四角で考えたときに大変重要な政策でありますので、しっかりと取り組んでいきたい、そういう思いで、今日、博物館法の改正に関して質問させていただきたいというふうに思っておりました。

 博物館法についても、僕も初めて今回しっかりと勉強しました。

 先ほど菊田先生からの御質問にもありましたが、博物館法と言われて最初に思ったのは、まさに東博とか九博、東京の国立博物館とか九州の国立博物館。こういった博物館、ああ、行ったことあるな、こういうことに関わるんだな、そんなふうに思いましたけれども、よくよく知っていくと、まさに、この国立の、独立行政法人の大きな博物館に関しては、この博物館法の所管外なんだ、射程外なんだということを知って、最初、正直すごくびっくりしました。そういうたてつけなんだな、こんなにも違うんだ、私たちが知っている博物館と今回言っている博物館法というのはそこに違いがあるんだなと。

 違いでいえば、博物館というこの博物館法の中に含まれる施設のことにつきましても、動物園や水族館、先ほども、大臣も水族館のお話をされていましたが、動物園や水族館もこれは博物館法という博物館の中の施設なんだなと。もちろん行きましたけれども、博物館に行っているというイメージは私もありません。利用者にも多くないと思うんですね。ひょっとしたら、施設を運営されている方々だって、動物園や水族館の皆さんも、博物館法に基づいてということを意識されている方はどれぐらいいらっしゃるのだろうかというふうにも思います。

 まず、文化庁にお伺いしますが、そもそも、どうして、先ほど菊田先生の問いにもありましたが、改めて、この博物館法というものの中に、例えば、大きな独立行政法人が運営する博物館、国立博物館が含まれないのか、それについて教えてください。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 国立の博物館についての設置及び運営に関する事項は、現在、独立行政法人の個別法などにおいて定められているところでございます。

 博物館法においては、それら以外の公立及び私立の博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定める、このようなたてつけになっております。

 元々、委員御指摘のとおり、先ほど御紹介ありましたとおり、博物館法は、戦後すぐに作られたときからですけれども、地方の博物館の振興ということを中心にまず組み立てられておりまして、そこから始まっているということもあります。

 文化審議会の方でも、この点について今後どうするのかということでいろいろ御議論をしていただいております。

 昨年出されました文化審議会の答申では、国立の博物館については、実務上は、博物館法の登録の対象とする必要性が必ずしもないと考えられるというふうに提言されたところでございまして、この法案では、博物館法における登録制度の対象として国立は含まない、こういうような形の整理となったところでございます。

 法律としてはこのような整理とはなるんですけれども、いずれにせよ、文化庁としては、今後とも、博物館法に基づく公立及び私立の博物館の振興とともに、ナショナルセンターとしての国立の博物館の機能充実、これをしっかりと応援していきたい、図っていきたいと考えております。

荒井委員 ありがとうございます。

 いわゆる文科省における博物館に関連する予算というのはいかがなんでしょうか。これは、博物館法、独法全て含めて、イメージでは、博物館に関するものは、でも多くの予算はやはりまさに国立に使われていて、国立のためにあって、今回議論されている博物館法に所管する、その射程に入っている博物館に関しては予算が非常に少ないんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 公立及び私立の博物館の設置及び運営に係る経費は、その設置者がそれぞれ措置しているというふうなものとされておりまして、その上で、文化庁におきましては、公立及び私立の博物館の事業の振興に係る補助金、委託費等として、令和四年度予算案で約二十六億三千万円、これを計上しております。二十六億三千万円を計上しております。

 他方、国立の博物館につきましては、これは国立でございますので、設置、運営の費用等も含めまして、文化庁所管の独立行政法人の運営費交付金等という形で出されておりまして、令和四年度予算案におきましては総額で約二百三億円という形になっております。

 経費の性格はこのように異なっておりますけれども、それぞれ国から出している予算という観点で単純にこの割合を計算してみますと、国立が九割、公私立が一割というところかと考えております。

荒井委員 ありがとうございます。

 もちろん、各自治体が運営に関しましてはこの博物館法にのっとった施設に関しては行っているかと思いますので、それに関してはもっとより多くのお金が払われてはおりますが、でも、先ほど来の皆さんの質疑においても、非常に博物館の、特に働いている人たちのお金が少ないですとか、そもそも収蔵品を収納する場所がないですとか、そもそも収蔵品を買うお金がないみたいな形で、予算に関して、皆さん、各館とも苦しいというふうなことを切実に言っている現状の中で、やはり本当に、結局、国はやはりこのお金をどうやって手当てをして、何に注力していくのかということが非常に大事だというふうに思いますので、まさに社会教育における大変重要な施設としての博物館、これは国立も含めてですけれども、やはりもっともっと予算措置をしっかり取っていくことが本当に重要なんじゃないか、改めてそのように思っております。

 博物館、そもそも博物館という名前そのものも、これは明治時代につけられた名前だというふうには聞いております。福沢諭吉が関わったとも伺っておりますが、ただ、先ほど申し上げたように、動物園や水族館というものも博物館に含まれていたり、そして、美術館等は博物館と言われるとちょっと違うような気も、美術館の方々も、まあ、利用者は思うかもしれません。英語で言うと、ミュージアムという言い方をして、頭に接頭辞がついて、いろいろなミュージアムというふうに言われていますので、博物館という名前、これを変えるのは大きなことですし、変える必要があるかどうかは分かりませんが、ただ、この名前からするイメージを一新するような、やはりそういう取組を今後もしていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 続いて、今回の一番大きな登録制度について伺いたいというふうに思います。

 今回、登録施設、相当施設、類似施設を、特に類似施設から登録にするということを促す、そういうふうに伺っております。

 先ほど申し上げたように、僕も公益財団法人の、これは内閣府所管の公益財団法人でしたが、これを設立し、そして五年間、専務理事として運営してきました。

 公益法人に関しましては、元々、一般法人を設立して、そこから公益化、内閣府の公益認定等委員会に申請をして、それで認められるというプロセスがありますし、それが認められた上で、一年に一回、内閣府に報告をするという形が必要とされます。その上で、公益に資する活動に関して税の優遇などを受けることができるわけです。

 実は、実際、一般財団から公益財団化するときに非常に大変なプロセスがありまして、たくさんの資料、当然、そうですね、税金の一部を優遇するということは、公益的な活動をするわけですから、しっかりとした運営をするのかどうか。これは、会社でいうと、普通の会社が上場企業になるような、それぐらい大きな重要なプロセスだというふうに考えておりますし、それは、逆に、なってからも、しっかりと税優遇を引き続き受けるためには、まさに公益に資する、この博物館法の法の趣旨にのっとって活動しているかどうかというのを、毎年それを報告する、そういうプロセスになっていくんだろうというふうに思います。

 申し上げたいのは、非常に大変な、これは事務方含めて労力を伴うんじゃないかというふうに思っております。

 その上で、今日は資料をお渡しいたしました。文化庁さんからの説明でも、登録の博物館の数はそんなに変わらないが、この七十年の間に類似施設が随分伸びているんです、それを、民間企業や宗教法人、社会福祉法人等の類似施設が登録に変わるように、そのメリットを提供していきたい、そういうような御説明を受けました。

 なるほど、いいことだというふうに思っておりまして、私の選挙区の札幌市の、じゃ、一体札幌市にはどういう施設があるんだろうというふうに思いまして、今日、皆様方に資料でお渡ししたのが、札幌市から聞いた登録、相当、類似の施設です。

 僕は、この資料を見て、ちょっと意外だったんですけれども、今日はここの場所には札幌の方はいらっしゃらないかもしれませんが、一札幌市民からしてみると、正直言うと、この博物館の名前を見て、どれが登録で、相当で、類似かというのは、正直、ぱっと分からないというような形ほど、どれも正直言うと立派な施設ですし、特に類似に関しては、公的な、特に札幌市がやっているものが多いように思いますが、非常に公的で市民になじみのある、愛されている施設だというふうに思いますが、でも、そこが、まさに利用者からすると、登録なのか、類似なのかというのは、余りそこに差を感じないで、通ったり、見に行ったり、勉強したりしているんじゃないかというふうに思います。

 これは札幌市だけなのかなというふうに思いまして、ちょうど大臣の御地元にもなる神戸市にも伺って、二枚目の資料にございますが、こちら、神戸市の登録、相当、類似を同じように伺ったところ、このような資料が出てきました。逆に、僕は神戸市のことに関しましては余り土地カンがありませんので、これを見て、ぱっとした何か感想があるわけではありませんけれども、でも、こういうような施設、特に類似施設と言われるものがここから登録になるということを本当にするのかどうかというところが、一つ大きな今回論点になっているのではないかというふうに思います。

 先ほど申しましたように、財団法人が公益化するときには非常に大変なプロセスを経てきました。それでも、なる大きなプロセスには、そのメリットに関しましては、やはり、寄附をもらうような財団法人や社団法人といったものが公益認定を受けているというのは、非常に、寄附者からして見たときの安心性みたいな、信頼性、そして税優遇が受けられることのメリット、それがあって、非常に苦労をかけながらも、そのメリットを運営側も事務方、説明しながら、理解しながら、何度も厳しい審査をくぐり抜けていくわけですが。

 今回の、類似施設が登録にするに当たっての、その苦労をしながらわざわざ登録化する必要性とは一体何なのか。本当にそこまでしようと思って、皆さん、実際、今日もずっとお話にあったように、館を回す業務は大変なんですね。そして、コロナの前は、インバウンドの方がたくさん来るから、その方々のためのたくさんの様々な取組が行われ、そして、今コロナの時代になると、コロナ禍の中でどうやって館を回していくのかということを一生懸命されている中で、本当に更なる大きな労苦を抱えながら登録館になる、今回の法の趣旨にのっとった、そういったことにニーズがあるのかどうか、そこのところを文化庁にお伺いしたいと思います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今、博物館の中では、登録博物館、博物館相当施設、それから博物館類似施設とございます。登録博物館は、博物館の台帳に基づいて、都道府県の教育委員会等の登録を受けるという施設でございますし、相当施設は、博物館法第五章に基づいて、博物館に相当する施設として指定を受けたものでございます。他方、博物館類似施設というのは、今、文部科学省の方で実施しております社会教育調査において、博物館の事業に類する事業を行うというふうに認識されたものを施設として把握されている、こういう整理でございます。

 そういうことでございますので、博物館類似施設が登録博物館になるということに関しましては、おっしゃるとおり、現在、メリットとして、信用や知名度の向上が期待できるとか、税制上の優遇措置を受けたり、予算による支援を受けるとか、あるいは美術品の場合は、国家補償制度の利用などによって、いろいろな優遇措置を受けれますので、こういったことで美術品の企画展をやりやすくなるとか、あるいは美術品の収集がしやすくなるとか、こういったようなメリットが出てくるものでございます。

 こういったメリットを生かしていただきながら、文化庁としても、登録博物館への登録を促していきたいと思っておりますけれども、まずは、第一に、各博物館のそれぞれの運営の仕方、考え方、そして、設置者の考え方というのは大切でございますので、そういったものをしっかりと踏まえながら、その館に一番いいやり方というのを考えていくということが大切だと思います。

荒井委員 ありがとうございます。

 札幌市の担当の人とも電話でお話をしました。札幌市は北海道から、道から業務を委託を受けていて、登録業務に関しましては札幌市で行いますということでした。北海道の教育委員会の担当の方に聞いたところ、北海道全体には約七十ほどの登録館がありますので、その七十ほどの登録館に関しての再登録を行うのは自分のところでやりますということをおっしゃっていた、札幌市以外の部分ですね。それが、札幌市を抜くと約五十館というふうに聞いた気がしますけれども。しかも五年の間に五十館を再登録をしなければいけないんですよというお話でした。

 そうすると、一年に十の施設の再登録を北海道の教育委員会は受けるということですね。詳しい人数、何人でこういった登録業務をされてきたのか、詳しくは聞いていません。ただ、七十年間、余り動かなかった法律ですので、そんなに多くの人がそこにいたとは思いません。また、これから五年の間に、北海道の教育も大変厳しい財政ですので、このために人が加配されるのかどうかというのも大変不安だったりもします。

 でも、まさに、きっと日本全国で、各都道府県の教育委員会が、つまり、新たに登録をする、その登録するインセンティブをつければつけるほど、今度、審査をしなければいけないところが負荷が大変かかっていく。しかも、これは第三者委員会というか有識者の会議で、それを認めるかどうかという会議も開くことも含めて、多くの方々が関わっていくわけですが、まさに、例えば各自治体等の教育委員会に対して、何らかサポートする等、文化庁にお考えはあるのでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、これから五年以内に登録審査を受け直すという形で進めていくわけでございますけれども、改正後の登録要件というのは、現在も登録要件というのはありますけれども、それとは異なるような形となりますので、新しい登録制度に向けまして、しっかりと基準とか進め方、事務の進め方等々について準備をしっかりしていく必要がございます。

 北海道だけでなくて、いろんな地方でも同じように、やはりどういうふうにやればいいのかということで悩むと思いますので、我々もしっかり、文化庁も、各地域の声、各館の声を聞きながら、円滑な登録審査ができますように、しっかりとよく協議を重ねていきたいと思います。

 そういうことで、今回の法律の中でも、附則の方ですけれども、施行日から五年間の移行期間というのを設けまして、しっかりと準備期間は取らせていただいてはおりますけれども、しかし、これは結構大きな作業でございますので、大変、この五年間をうまく使いながらしっかりやっていく必要がある、このように認識しております。

 文化庁としても、いずれにしても、現場をしっかりと見ながら、教育委員会等ともよく連携を取りながら、しっかりとこの対応をしていきたいというふうに考えております。

荒井委員 是非、教育委員会の声を聞きながら、できるだけ、多分、五年目に一気にどんと実際は登録業務が来るんじゃないかという気がいたしますので、なるべく早くに再登録をすることをまず既存の登録館に促すこと、そして、新たに登録をしたいところに関しても早めにするインセンティブをつくること、すごく大事なのではないかというふうに思っております。

 続けて、学芸員のことにつきまして伺いたいと思います。

 先ほども、浮島先生だったと思いますけれども、学芸員のことについてお話があったかと思います。

 そもそも、学芸員という名称についても僕は個人的に疑問で、海外だとキュレーターとか、いろんな呼び方がありますが、学芸員というのは、本当にもっと、これは社会的に、地位や、そして周りからの尊敬も大変ある役職であるにもかかわらず、日本ではどうも学芸員という職業がしっかりと認知されていなさ過ぎるんじゃないかというふうに思っております。

 例えば、イギリスの大英博物館では日本人のキュレーターがお一人いらっしゃるというふうに伺っていますが、その方は大変イギリスの中でも尊敬されていて、そういう、まさに文化を象徴する人がまさにこのキュレーター、学芸員であるわけですが、日本ではいかがなんでしょうか。

 実は、学芸員の資格を持って大学を卒業される方はたくさんいるんですけれども、でも、実際、学芸員としての職に就けている方は大変少ない。多分一万人もいないはずだというふうに思いますが、実際、それは学芸員という仕事が、これは本当は、僕は、学校の先生たちよりも専門性の高い仕事ですので、しかも今は、これを教えていくとか、今回は更に観光だったり、地域のことに関してもしっかりつなげていく等の非常に重要な仕事なわけですから、まさに学芸員の皆さんの地位向上、大変重要なんじゃないかと思います。

 個人的には、同じ文科省の所管している図書館法における図書司書、海外ではライブラリアンというふうに言われているこの図書司書の皆さんも大変海外では尊敬される対象になるわけですけれども、どうも日本の、特に、なぜだか分かりません、文科省の所管の社会教育法に入っているところの大変重要なお仕事に関して、社会全体の認知が低いのではないかというふうに思っていまして、これは本当に国を挙げて、学芸員になりたい人たちというのを大変増やし、そしてその地位の向上のためにしっかりとした策を講じる必要があるというふうに思いますが、文化庁の見解を伺います。

    〔委員長退席、根本(幸)委員長代理着席〕

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、学芸員は博物館の中核的な役割を担う専門的職員でございます。資料の収集、保管、展示、教育、調査研究という専門的なことをしっかりやっていかなければなりませんし、この法律で文化施設として位置づけられれば、更に学術的、専門的な高度な判断ということもこれから求められますし、町づくりとか福祉とか、いろんなところの連携も始まりますと、地域社会とのつながりという意味で、いろんな意味の多様で高度な力が求められるというふうに認識しております。

 そのような流れの中で、さらに、学芸員の地位や処遇のことについてもどのようにしていくかということは大変重要でありまして、先ほども申し上げたとおり、学芸員のこれからの養成等の在り方については、また引き続き文化審議会の方でも御議論を更に深めていただくということで、我々も一生懸命それを頑張っていきたいと思いますけれども、取りあえず、今のその動きと同時に、文化庁の方では、学芸員の能力の底上げを図るという観点、それから、いろんな処遇の改善等にもつなげていけるようにということで、若手から中堅に至る学芸員の研修を実施したり、海外での博物館等での研修の機会を充実させるとか、そういったことをやっているところでございまして、こういったいろいろな施策を通じながら機運を醸成して処遇の改善へとつなげていきたい、このように考えております。

荒井委員 今回のこの博物館法の改正の質問をさせていただくに当たって、文化審議会の資料をいろいろと拝見いたしました。その中で一つ、大変ユニークなというか面白い、面白いというか思いのこもった資料が、小規模ミュージアムネットワーク、小さいとこネットというところの高田みちよさんが書かれた資料がありました。

 小さな博物館、本当に、全ての博物館に学芸員が一人いるかいないかというのが今現状ですが、そういった小さな博物館が、まさに小規模博物館の反乱みたいな、フラットなネットワークの博物館組織をつくったらどうか、そんな提言から始まって、日本全国の小さな博物館の主に学芸員や、ただ、文科省の方もいらっしゃったり、各自治体の方もいらっしゃったり、大学の先生もいらっしゃって、そういう方々が含まれたメーリングリストでいろんな情報交換をされていたりもいたします。

 本当に皆さんの、僕もそこに、つい先日登録をさせていただいたばかりですけれども、こうやって学芸員の皆さんが、何とか必死にいろんな情報を取りながら、そして連携をしながら、まさに民でネットワークを設立しているわけですね。

 まさに、こういう中、是非、学芸員の皆さんの思いや、そして気持ちをしっかり酌み取りながら、よりいい博物館、そして施策を、是非、文科省、文化庁、そして国全体を挙げて、社会教育の充実を図っていっていただきたいと思います。そのときの中核はやはり学芸員の皆さんになりますので、是非、この学芸員の方々の地位向上、これに関しましてはしっかりとやっていっていただきたいというふうに思っております。

 さて、残り五分になりましたので、是非、末松文科大臣に、一応、今日、博物館法についていろいろと僕も質問させていただきました。もっともっと魅力的なものになるはずなんじゃないかというふうに思っています。

 七十年間、なぜ七十年間博物館法というものが改正されてこなかったのか、いろいろといろんな方々に聞いていると、逆に言うと、なぜこのタイミングで博物館法が改正されたのかということの方が問いとしては正しいような気がしますが。

 そのうちの一つには、やはり東京オリンピックがあったんじゃないかという話をされる方がいます。東京オリンピックでたくさんの世界中から方々がいらっしゃって、当然、先ほども尾身先生のお話もありましたが、いろんな知らない土地に行ったときに、各地の博物館や美術館に行って文化や芸術を知るということがたくさん行われるわけですね。その世界中の人が来たときに、博物館、美術館を整備しておいた方がいいんじゃないか、そういう機運があったんじゃないか。

 その中に、二〇一九年のICOMの誘致も一つトリガーになって、ICOMを誘致することによって博物館そのものをよりしっかりと盛り上げていこうという機運が盛り上がったんだというふうに思います。

 今回、博物館法に関しましては、まさに、元々登録数、登録館が少なかったものをもっと横に広げよう、類似まで含めてもっと増やしていこうと。ただ、正直、今日の質疑でもありますが、深めることはまだまだ端緒に、始まったばかりなんじゃないかというふうに思わざるを得ません。

 予算の問題、学芸員の地位の向上、そして、この国立の博物館をどう射程に入れていくのか、その意味では、始まったばかりの中で、これは文化審議会の中でも議論されているんですが、やはり博物館振興法みたいなものが必要になってきているんじゃないかということが議論にあります。ただ、この振興法に関しては、博物館法が元々議員立法だったことも捉えて、やはりこれは議員立法によってやることの方が望ましいんじゃないか、そんなことも考えますが、いかがでしょうか。

 ちなみに、いろいろと調べますと、国会議員の中で校長出身は僕だけだというふうに申し上げましたが、学芸員出身の方が僕が調べる中でお一人いらっしゃいまして、堀内大臣が学芸員御出身なんですね。しかも、フジヤマミュージアムというミュージアムの館長もされていたということですね。

 こういう学芸員御出身の、しかも、オリンピックを担当されている大臣、まさにオリンピックはレガシーというものをつくっていくことが大切だと思いますが、やはり今回、東京オリンピックは終わりましたけれども、是非、今後もこの博物館を振興していく中に、例えば、そういった学芸員に関して、博物館に関して思いのある方を中心に、やはり博物館振興法みたいなことを作っていくということは一つ大事なんじゃないかというふうにも思いますが、大臣、併せてお考えを教えてください。

    〔根本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕

末松国務大臣 先生、学校長を御経験されて、YOSAKOIソーラン祭りの実行委員長もお務めになられたということで、いろんな御経歴をお持ちで、今日、国会に籍を置かれました。そういった人生観からも、先生、いろんな御質問、御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、七十年ぶりということで、この答弁書には書いていないんですけれども、オリンピックが契機というのは、私もやはり、このオリパラ、共生社会というものが一つあると思うんですね。もう一つは、やはり、デジタルによってかなり、紙でもやはり焼けてきますから、せっかくの技術が出てきましたので、それをやはりアーカイブ化するには、データとして取り込んで複製化しておくことも大事な、我々、今を生きる人間の使命だというように思っております。

 そして、先生は、博物館振興法を作ってはどうかという話がありました。

 私の知り合いも、随分、備前焼をたくさん集めたり、小さな絵画を集めていたんです、先代の社長が。しかし、それを処分もできないし、どうしようかということで、結局は美術館をつくってしまったんですけれども、そのときに、いや、学芸員も置かないかぬしなというような表現をするわけですよ。ですから、やはり、学芸員さんも、もっと来てください、喜んで籍を置かせてもらうという気持ちにならないといけないんですけれども、最低限の立場で言ってはったんだなというように思うんですね。

 あらゆる問題をやはり抱えておりますし、とても黒字経営ができているような美術館じゃございません。どうしていっていいかということについては、類似施設、特に中心に、これから大きな課題として残ったと思います。

 答弁ですけれども、国際博物館会議、ICOMの京都大会では、文化をつなぐミュージアムとして、数多くの、様々な博物館同士が互いに連携協力しまして、地域や社会の課題解決等を図っていくということが理念の根底で決議をされたものであります。

 これを踏まえまして、今回の法案では、博物館同士が連携協力するとともに、地域の教育機関や民間団体などと連携協力し、地域の活力の向上に努めることを新たに規定をすることとしております。

 また、令和四年度予算におきまして、新たに、多様な博物館同士のネットワークの形成によりまして社会的、地域的な課題解決に貢献する先進的な取組を支援することとしております。

 これらの取組を通じまして、各地の博物館相互の連携体制が構築されまして、企画への協力や資料の貸出し、職員の研修、交流など、創意工夫した取組がなされるように、これは文部科学省としても全力で取り組んでまいりたい、そのように思ってございます。

 先生、いろんな資料に目を通していただいていますけれども、やはり、つながり、地域の連携が大事なので、例えば、高知城の歴史博物館なんかは、県内の小さな博物館がありますから、そこと連携しながら、自宅を片づけるときにいろんな古文書が出てきたりしたら、それを保存して、共有していくということとか、人と自然の博物館というのは結構全国多いんですけれども、自然資料の価値というものを広く社会で共有していこうということで連携を取っております。

 価値を高めるために、いろんなまた施策を講じたいと思うんですけれども、先生からもいろんなまた御意見を頂戴できればと思ってございます。

 答弁になったかどうか分かりませんけれども、しっかりと努力をしてまいりたいと思います。

荒井委員 末松大臣、ありがとうございました。

 学校の校長をしてきましたので、卒業生が毎年出ていきます。今日も卒業生が、傍聴したいということで、今日傍聴に来ていますが、学校とか文科省というのはこういうことだと思うんですね。やはり、未来をつくっていく、未来の世代のために何をしていくかということですので、博物館を含めて、文科省の施策、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

義家委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 本日は、博物館法の一部を改正する法律案の質疑、お時間を頂戴しまして、ありがとうございます。

 さて、本日は、多くの質問がこの博物館法に寄せられまして、他党からも出ております。日本維新の会からも質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 この博物館法は、昭和二十六年に制定されました。制定された当時の博物館数は全国に二百館余りにすぎなかったと聞いております。まだまだ今から思えば大変少なかったわけですね。

 まず冒頭に、この博物館法とは、そして制定された意義について伺いたいと思います。

 というのも、この博物館というのを始めとして、含まれるものは、動物園から植物園、美術館、水族館、資料館に至るまで、いわゆる社会教育の施設として大切でございますが、私どもなかなか、この博物館法、耳にしたことも今までなく、そして多くの方に知られていないのが現実でございます。まずは、その法律案ということで、博物館法とは何なのか、意義について伺います。お願いいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館法とは何かということでございますけれども、博物館法によりますれば、まず、博物館は、社会教育施設として、資料の収集、保管、展示、教育、調査研究を行う機関として位置づけられていること、それから、博物館の基本的な役割、機能を確保するために登録、相当施設の指定を制度化されたものでございまして、これに伴いまして、様々な税制上の優遇措置ですとか補償制度が備えられている。そして、専門的な人材の養成とかも推進することというのが位置づけられたものでございまして、これらをまとめまして、博物館という形の機能する館を定義づけているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 制定された意義ということを伺ったわけですけれども、この制定から七十年が経過しております。この博物館法若しくは博物館に求められる役割ですとか機能について教えてください。大臣、お願いいたします。

末松国務大臣 博物館の機能というか、先生、今回の改正の意義というものでよろしゅうございますかね、話は。

 博物館法につきましては、今、次長が答弁したとおりなんですけれども、博物館法、制定から七十年経過しておる。博物館の数は約三十倍に増加した、二百だったのが今五千七百、ただし、登録博物館、相当施設、類似施設等も入れてですけれども。特に、地方独立行政法人や株式会社立の博物館、そして美術館が設置されるなど、博物館を取り巻く状況は大きく変化してございます。

 また、近年、文化芸術基本法であるとか文化観光推進法が新たに成立しまして、博物館に文化観光や町づくり、そして国際交流、あるいは産業、福祉との関連も出てまいりました。こういうことで、文化施設としての役割も求められてございます。

 今回の法案は、このような背景の下で、約七十年ぶりに法の目的や博物館の事業内容、登録制度の見直しを行うとするものでございまして、実は、博物館の関係者の方々からも早期の改正等について要望を頂戴をいたしておりました。文部科学省としても、喫緊の課題として博物館の振興に取り組んでいるところであります。

 文化審議会では、二年審議をいたしました。その中でいろいろな課題も残してございます。学芸員の在り方についてもいろいろな議論が出ましたけれども、今回見送ったようでございます。

 当然、博物館の質もどう上げていくか、学芸員の質もどう上げていくかといったようなこともございますので、今後とも注視しながら、まずはこの法律改正を先生方に御審議いただきたいというふうに思ってございます。

岬委員 大臣、ありがとうございます。

 今回のこの法改正の目的、近年の博物館に求められる役割が多様化、高度化しているということも踏まえまして、博物館の設置の主体の多様化を図りつつ、また、その適正な運営を確保することが必要となります。

 そこで、この博物館法、確認をしていきますと、登録博物館というものと、また博物館相当施設というもの、及びこの博物館法には位置づけられてはいない博物館類似施設という三つがございます。

 今大臣がおっしゃってくださったように、二〇一八年現在で調べてみますと、登録されているものが九百十四、そして相当というものが三百七十二、そして類似というものが四千四百五十二館となっております。この数字から見ますと、全博物館の約八割が博物館法の対象外でございます。直感的にも、随分少ないなというのが印象にございます。

 この登録要件を満たしているのに博物館類似施設にとどまっている施設、これはなぜ登録に至らないのか、その原因と理由、これを文化庁はどのように分析をされていらっしゃるのか、伺います。お願いいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 登録博物館の数がこれまで十分に増えてこなかった理由ということでございますけれども、登録の対象となる設置者の法人類型がまず限定されていたということ、それから、学芸員の設置ですとか、開館日が百五十日以上などの基準がありまして、これを満たさない館もあったということ、それから、登録のメリットが申請コストに見合わないとか、今の館それぞれのやっている事業から見ると、登録でなくても類似施設のままとか相当施設でいいやというような形のものがあるなど、いろいろ各館、様々なお考え、様々な事情があるということによるものと考えております。

 現在の登録博物館は先ほど御指摘されたとおりでございますけれども、いずれにせよ、今回こういう法改正によりまして設置主体の多様化を図ることなどによりまして、新たにこれからも登録博物館を目指すというところが出てくるのではないかと想定しているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 そもそも、これは認知度というものではどうなんでしょうか。余り知られていないのではないかと思うのですが、その辺り、確認させてください。お願いいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今の博物館登録制度といいますのは、その主な目的が、博物館の基本的な役割や公共的な機能を確保し、税制優遇等の対象範囲を明確にするという、かなり行政の手法というような形で元々認識されているところがございまして、これまでこういう認識で運用されてきたことから、広く国民に対して広報するという発想が弱かったのではないかな、このように考えております。

 このため、昨年の文化審議会答申では、登録されること自体が各館にとっての信用や認知度の向上につながるような制度を目指すというふうに提言されたところでございまして、こうしたことから、今回の法改正案では、その位置づけを改めまして、登録等に当たってはインターネット等を通じて公表することを義務づけたりしているところでございます。

 いずれにせよ、こうしたことから、法案成立後は、広く国民に対し、あらゆる機会を通じて積極的な広報活動に取り組んでまいりたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 やはり、認知度が低いというのは大変問題ではないかと思います。博物館の登録制度自体、国民に認知されていなかったという改善点があります。

 そうなると、例えば、最近ですとヤングケアラーという言葉、なかなか知られていなかった、初めて聞いたというものがあったと思いますが、随分と急激に浸透しているなと思われます。これは、令和四年度から令和六年度までの三年間を集中取組期間として、中高生の認知度五割を目指して、認知度を高めていこうということをされています。このように、博物館法の登録に関しても、文化庁としていろいろと認知を向上させるような取組があればいいのではないかなと思った次第です。

 そして、今、御答弁にありましたけれども、今回の改正法、これは第十四条第二項におきまして、都道府県の教育委員会は、博物館の登録博物館であることを国民に広く周知する観点から、登録した博物館の設置者の名称ですとか、また住所、登録した博物館の名称や所在地、登録の年月日をインターネット等で広く公表しなければならないという答弁もございました。

 例えば、自治体のホームページで積極的なPR展開をされているところもございます。それだけでは、しかし、少し弱いのではないかと思うわけですね。そうであれば、例えば、どんな展示をしているのかですとか、休館日がいつなのか、また、時間の、いろいろ、今短縮があったり変更がされておりますので、時間をしっかりと明記するですとか、博物館の概要や博物館のホームページをリンクさせるなどの工夫が必要でないかと思います。

 そういった情報発信をもっともっと、決められた、義務づけられたこと以上に工夫をしていく必要があると思いますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、都道府県等の教育委員会が、登録等に際して、博物館の基本的な情報をインターネット等を通じて公表することを義務づけております。これは、登録博物館のリスト公開につきまして、法令上ですので、法令上、最低限の義務を都道府県等の教育委員会に課したものということでございます。

 こうしたことから、今委員から御指摘、御提案がありましたとおり、各教育委員会や各館自ら、地域の状況等に応じて、これらの基本的な情報に加えて、国民や県民、市民の皆様にとって有益な様々な情報、これを提供していくことは大変望ましいことでございますし、有意義なことであると考えております。

 この改正を契機といたしまして、都道府県の教育委員会が様々な博物館に関する情報を積極的に公開していただいて、博物館をより国民、県民、市民にとって身近な存在となるように更に促してまいりたいと思います。御指摘ありがとうございます。

岬委員 ありがとうございます。

 続いて、登録に関するメリットのお話がございました。やはり、登録しようとするときに、その手間ですとか面倒、そしてコストを考えたときに、更にメリットがあるなと思わなければ、そういったことをなかなか行動として取りづらいと思います。

 登録しようとするインセンティブについても伺っていきたいと思います。この登録することによってのメリット、そして手間と考えたときに、どうするとこのメリットの方が上回っていくのではないかとお考えなんでしょうか。

 例えば、昨年の十二月、文化審議会におきまして、博物館法制度の今後の在り方について、答申においても、登録博物館となることのインセンティブ、これは予算ですとか、また予算の措置、税制の優遇なども含めて、できる限りの拡大をさせていくことが重要であると記載がございます。この登録を促すに当たって、登録のメリットをしっかりと打ち出していかなくてはいけないと思います。

 現状、具体的な検討ですとか状況、どんな状況なんでしょうか、教えてください。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館の設置者は、登録されることで法律の地位が与えられ、信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置や美術品補償制度の利用などの法律上の優遇措置を受けることが可能となります。

 今、委員御指摘のとおり、いろいろ、これからメリットをどういうふうにしていくかということは大切なことでございますし、先ほどからも諸先生方から御指摘をいろいろ頂戴していますが、やはり各博物館それぞれのやっていること、事業、それからそこにおけるメリットの感じ方、それぞれ様々でございますので、文化庁といたしましては、この法案成立、お認めいただければ、この後、この法案を契機としまして、登録のインセンティブについて更にもうちょっと深くいろいろと各館と相談したり、各地域とも相談しながら、このインセンティブをどのようにつけていくといいのかというのをまた考えてまいりたいと思いますし、また、そうしたものを更に進めながら、今ある登録のメリットを更に関係者に対して広く周知してまいりたい、このように考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 今お話しいただきましたけれども、まだまだちょっと案がなかなか出てきていないのかなというのが印象でございますが、私が思うに、登録されること自体が、各博物館にとっての信用度であったりとか、そして認知度というものにつながれば、これ自体がメリットになっていくのではないかと思います。

 そうしますと、登録制度自体がブランディングされていく必要があるのではないでしょうか。それぞれの博物館であったり美術館、また動物園は、いろいろなブランディングにも努めているとは思うんですけれども、制度自体でブランディングをしていく。登録をすることによって得られる信用度、また認知度というものがあれば、しっかりと打ち出していけるのではないかなと思います。

 こういうことが打ち出していけると、来館される方が増えていく、そうすると収益も増えていく、そうするとまた施設へ投資することもできるという、いい循環ができてくると思うんですけれども、この辺りの好循環をつくっていくということに関して、ブランディング、どのように大臣、お考えでいらっしゃいますでしょうか。

末松国務大臣 お答えは、先生、現在進行形でございます。

 今御意見をいただきました。

 御指摘のとおり、昨年の文化審議会答申では、今回の法改正を契機にしまして、登録されること自体を各館にとって、先生おっしゃったように、まさに信用そして認知度の向上、この二つにつながるような制度を目指すことが提言されております。

 例えば、フランスで、昨日もちょっと会議で話をしておりましたのですけれども、ミュゼ・ド・フランスという認証制度がございまして、約千二百軒の公立、私立の博物館が認証されておりまして、一定以上のサービスを保証するラベルとしても機能していると聞いてございます。

 添付資料も拝見しましたけれども、登録証や登録プレートの交付とか、登録博物館制度が認知されるためのキャンペーンの実施、国による積極的な広報活動を行うことにより、登録されること自体が各館にとって信用や知名度の向上につながる制度というようなことも書いてございます。

 そういうことなんですけれども、法案成立の暁には、新たな登録制度の実施を通して、各館の信用や認知度の向上につながるよう、一定の要件を満たした博物館の登録を積極的に推進していきたい、そのことを念頭に置いております。

 したがいまして、現在進行形で考えておりますので、いろいろなまた御指導をいただきますようにお願いを申し上げます。

岬委員 大臣、ありがとうございます。是非具体的に、よろしくお願い申し上げます。

 ここまでは、登録を促していく、積極的に登録をしていただく方向での御質問をさせていただきましたが、登録が増えていけば増えていくほど、その軌道から外れてしまったり、また継続が難しくなったり、そういった博物館も出てくるかと思います。

 そういったところで、登録の取消しについてもしっかりと見直していく必要があるかと思いますが、調べてみますと、現行では、登録を取り消さなくてはいけない、要件を欠くに至った場合に、取り消していかなければならないという、義務ということになっておりましたが、改正の方を見てみますと、都道府県の教育委員会の裁量に任せている、登録を取り消すことができるというような、義務からできる規定に変わっております。

 それは、柔軟に対応するという意味ではよろしいかとも思うんですけれども、調べてみますと、三年間で取消しの事例は二件ございます。この二件に関しては、後継者がいないですとか、閉館にしてしまうためにできなくなったということでございますが、ここが、都道府県の教育委員会の裁量によって取り消さないケースが出てくるとか、もっと突っ込んだ言い方をしてしまうと、教育委員会と博物館の設置者との癒着、こういったことが疑われないように、取消しに関してもしっかりと精査をして、きちんとした基準を持って進めていただきたいという要望で、ここは次に行きたいと思います。

 さて、先ほど他党からもお話が出ておりましたけれども、では、どういった方が博物館を、リーダーとなって、館長となって引っ張っていくのかといって、館長になる方を調べてみますと、私の方でも同じような懸念が出てまいりました。

 例えば、令和二年九月に、日本博物館協会の令和元年度日本の博物館総合調査報告書によりますと、館長の職歴は、行政職員出身者が全体の三分の一以上いらっしゃるということなんですね。

 また、令和二年四月十一日の美術手帖でのインタビュー記事がございました。これは、横浜美術館の蔵屋館長がお答えになっています。日本の場合、トップに立つ方は行政からの天下りや大学の先生などが多いと述べられています。

 こうしたことから、行政職員から館長になることは決して珍しくない、三分の一以上ですから、多いのではないかと思うわけです。

 また、蔵屋館長はこうもおっしゃっています。行政や大学の先生が館長になることの弊害ということで、多くの美術館の運営費は行政から出ています、そこと太いパイプがあり、かつ文化に深い理解がある人が館長になることは一方合理的と捉えることもできますが、ただ、文化に対する知識や愛情がない方も多いのではないか、ここから弊害が生じるおそれがある。一方、大学の先生は、美術の知識はあっても、美術館の運営や労務管理については知識がほとんどないことが多いと感じる。欧米の場合は、館長教育というものがあって、若いときからトップに立つビジョンを持つ訓練がされていたり、研修がされています。収支もシビアに見る目も養われています。

 これから、この時代、厳しい時代になっております。一見、お飾り的という言葉をあえて使いますが、お飾り的な館長ではやっていけないという、これは蔵屋館長の述べた言葉なんですけれども、そこから、館長に求められる質という部分にもしっかり目を向けていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、定期報告というものが義務づけられるというふうに伺っております。報告事項について、今後は各都道府県の教育委員会が定めることになりますが、報告の在り方、来場者数であるとか収入といった数字の部分だけではなくて、博物館の根本的な使命となる地道な調査の研究ですとか、また資料の保存等の状況など、取組をもっと主体的に報告していく必要があるのではないかと思います。

 さらに、課題が浮き彫りになれば、しっかりヒアリングをして、その課題の改善に向けても取組が、都道府県の教育委員会の活動としてアドバイスが必要なのではないかと思います。その辺りはどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。お願いします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で新たに定めました定期報告により、これにより得ました情報を踏まえて、都道府県等の教育委員会が域内の博物館が抱える課題等について指導助言を行う、これは重要でございます。

 こうした情報を踏まえて、さらに、次の改善をどうするかというのを各県教育委員会、各設置者が考えていくということは大変重要でして、これが今回の法律の中でも大切なポイントの一つでございます。

 文化庁としては、この法案成立後、都道府県等の教育委員会に改めてその旨をしっかり周知してまいりたいと考えています。

 また、博物館同士の連携についても本法案で努力義務と規定しているところでございますが、これに加えて、博物館同士のネットワーク化、それから外部資金獲得等の組織改革を行う事業に対しまして、令和四年度予算案において支援することを検討しておりますが、文化庁としても、今後とも、都道府県等の教育委員会と連携して、こうした博物館の適正な運営を確保していきたい、このように考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 是非、実のある報告書ということで進めていただきたいと思います。

 さて、続いて、これから時代は、コロナ禍において、博物館の役割、また、見せ方、展示の仕方というものも変わってきております。博物館におけるデジタル技術の活用について、続いて伺いたいと思います。

 このような時代を踏まえまして、バーチャル観覧というものが取組として行われております。博物館の中には、デジタル技術を活用して、様々な工夫をして、三百六十度から見られる3Dをしてみたり、いろいろな工夫で皆さん頑張っていらっしゃいます。

 文化庁から、幾つか具体的な事例を教えていただきたいと思います。お願いします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、コロナ禍を契機として、全国の博物館において、デジタル技術を活用した新たな取組が行われていると認識しております。

 例えば、ユーチューブなどを活用してオンラインで学芸員が展示資料の解説を行うギャラリーツアーの取組ですとか、博物館の展示室内の3Dモデルを作成しまして、オンラインでVR映像で展示室を鑑賞できるといったような取組、それから、Zoomなどを活用して、オンラインでワークショップですとか学習プログラムを開催する取組などなど、いろいろな工夫が行われていると承知しております。

岬委員 ありがとうございます。

 私も調べてみましたところ、全国各地で様々な試みがされております。

 例えば、神戸市の人と防災未来センターの取組、こちらも3DですとかVRを活用していらっしゃいます。また、岡山県倉敷市大原美術館、こちらも同じように、VRの技術を使ったり、オンラインツアーも行っていらっしゃいます。さらには、北海道北部の中川町エコミュージアムセンターでもバーチャルツアーが展開されています。そして、埼玉県の県立自然の博物館でも同じでございます。

 このように、創意工夫を加えて、先端技術を駆使しながら、是非ともこのコロナ禍にあっても多くの方に美術館ですとか博物館を楽しんでいただければと思っております。

 また、一番近々でございますと、おととい、三月二十一日でございます、NHKの報道におきまして、山梨県立美術館が、十九世紀の画家ミレーの作品を精巧に複製したクローン文化財、東京芸術大学との協力で作成をされまして公開したという、うれしい報告もいただいております。是非このような展開が増えていくことを望んでおります。

 しかし、ここで、やりたくてもやれないという現実もございます。ノウハウがない若しくは予算や人員が不足している、専門性ができないということで、手が届かないという博物館も多いのではないかと思いますが、こちらについてはどのようにお考えでいらっしゃるでしょうか。お願いします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、文化庁としては、コロナ禍を契機とした全国の博物館のデジタル技術を活用した新たな取組等に対して、広く支援を行ってまいりました。また、令和四年度の予算案におきましても、博物館同士でネットワークを形成しつつ、デジタル技術の活用を含む新たな課題に取り組む博物館を支援する事業を新たに計上したところでございます。

 この法案の改正を契機といたしまして、各地域、各館の課題などに耳を傾けながら、博物館におけるデジタル技術の活用を一層積極的に支援してまいりたいと思います。

岬委員 ありがとうございます。

 コロナ禍において、実際、学校では、社会科見学ですとか修学旅行、遠足なども、学校行事が中止になったり、延期、縮小になっている、これが現実でございます。このデジタル技術の活用におきまして、直接その場に行けなくてもオンラインで楽しんでもらえる、そして知識を深めていただける、また、教育の場面で活用していただけることが大変望ましいと思っております。

 とはいっても、もちろん、実際に足を運んで自分たちの目で実物を見て体験ができる、これに勝ることはないと思います。

 そこで、これからコロナ禍において、学校が、博物館やそういった施設を含めての社会見学、遠足、修学旅行など、集団で移動したり行動する際に、どうしても話題になるのがワクチン接種の問題ではないかと思います。

 ワクチン接種そのものはもちろん厚労省のことでございますけれども、五歳から十一歳のワクチン接種が今大変問題視され、話題となっております。これは、厚労省が無料で受けられる公的な予防接種に位置づけをしておりまして、今接種を進めている状況でございますが、ここでの質問です。

 学校の先生や職員について、積極的な三回目の接種が今進められております。文科省からも、令和四年二月七日におきまして、「教職員の新型コロナワクチンの追加接種について」という事務連絡が出されています。学校の現場にいる教職員の方々、児童や生徒、若しくはその保護者から、接種券が届いたけれども、ワクチン接種した方がいいのかな、どうかな、副反応がちょっと怖いというような不安の相談も受け付けることがあると思われます。そのため、学校の現場における先生や教職員の皆様方が、ワクチンに対する正確な知識、情報が必要だと考えます。

 その辺りはどのようにお考えでいらっしゃいますか。文科省として、大臣、お願いいたします。

末松国務大臣 新型コロナワクチンの予防接種の対象として、先生お話しのとおり、五歳から十一歳の子供が追加されたことを受けまして、教師がワクチンについて正しく理解しておくこと、大変重要でございます。

 このため、文部科学省では、接種対象が追加された二月の二十一日に速やかに事務連絡を発出しまして、学校で子供や保護者に対し新型コロナワクチンの正しい情報を提供できるよう、厚生労働省が作成しました情報提供資材を周知しております。

 また、文部科学省が作成する新型コロナの予防に関する教師用の指導資料を改定しまして、新型コロナワクチンに関する内容の充実を図る方向で検討しているところでございます。

 文科省として、引き続き、関係省庁とも十分な連携をして取組を行ってまいりたいと思います。

 大変な重要な問題でございますので、内容的にはこういうものが改定中でございます。三月になっていますけれども、これをやってございます。

 以上でございます。

岬委員 大臣、御丁寧にありがとうございます。

 私も、やはり五歳から十一歳の児童という、子供たちは成長段階の育ち盛りでございますので、大変心配をしているお父様、お母様のお声も多く寄せられております。是非、打つのか打たないのか以上に、それをしっかりと検討できる材料、正確な情報提供を強く望みます。

 また、ここで大事なのは、ワクチンを受けなきゃ駄目だよというような、そういった間違った強制がないように、くれぐれも通達をお願いできればと思います。

 また、教育実習に行かれる先生方も、ワクチンを打たない方は学校で受け入れられないというような事案もお聞きしておりますので、そういった偏見ですとか差別につながるようなことがないように気をつけていければと思っております。

 ワクチンを受けたかどうかは、感染するかどうか、うつるかどうかとは全く違う問題であるという認識は、改めて必要なのではないでしょうか。また、ワクチン接種によりまして、副反応又はそれ以上の後遺症につながる、日常生活に支障が出るというような事案も見受けられますので、是非丁寧に、そして慎重に御検討いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、時間も差し迫ってまいりましたので、ここで最後の質問とさせていただきます。

 先ほどお話の中にもございました、これからは、規模にかかわらず、各博物館が持つよい部分の共有、そして新たな成果が得られるように、時代を見据えた関係性をつくって、相互の連携ですとか、またネットワークの構築が不可欠であるというお言葉を頂戴しております。

 最後の質問は、二〇二〇年に文化観光推進法が成立されまして、博物館を含めた地域振興が図られています。個々の博物館それぞれの規模、また博物館の種類ですとか地域性の特徴、そして機能を効果的に発揮できるネットワークの構築、文化の継承、地域活性化、これらをいかにつなげていくかということがとても大切です。

 今回の博物館法の改正を契機に、そうした取組が一層充実し、促進されることを望みますが、これらを踏まえまして、大臣の、最後にお声をいただけますでしょうか。お願いいたします。

末松国務大臣 今回の法案では、数多くあります多様な博物館同士が連携協力するとともに、地域の教育機関や民間団体などと連携協力しまして、地域の活力の向上に努めることを博物館の役割として新たに規定をいたします。

 また、令和四年度予算におきましては、新たに博物館機能強化推進事業を実施しまして、これは四億二千万の予算でありますけれども、博物館同士のネットワークの形成によりまして社会的、地域的な課題の解決に貢献する先進的な取組を支援をすることといたしております。

 全国各地のより多くの博物館が社会の抱える課題の解決に貢献できるように、文科省としても全力で取り組んでまいりたいと思います。

 依然として、今日、全般のお話としては、やはり財源の問題、いろいろやりたいけれどもなかなかというところがありますので、館の方でも、博物館の方でもいろいろな知恵を絞っていただきたいなというのが本音でございます。クラウドファンディングの話も出ましたでしょうし、名古屋の徳川美術館でも大和ミュージアムでも、いろいろな工夫をされているやに聞いてございますので、みんなでいろいろな研究をすべきかなという、そういうときかなと思います。

岬委員 大臣、ありがとうございます。

 最後に私の選挙区でございます名古屋の徳川美術館のことも言っていただきまして、誠に感謝しております。ありがとうございます。

 今日は、多くの質問に丁寧に答えていただきまして、ありがとうございました。私からの質問、以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 大臣、若干重なる質問もあろうかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 現在、二年にわたるコロナ禍で、日本の文化芸術全般が大変深刻な影響を受けております。文化財の管理や保全にも影響が与えられているというふうに懸念をされますけれども、特に、地域の伝統、芸能、お祭り等については、二年にわたり中止となっていることで、次世代に引き継いでいくことが大変困難な状況があるということについても、私自身、大変問題意識を持っておりますので、またこのことも是非大臣にはお力をいただきたいというふうに思っております。

 このコロナ禍で、博物館についても大変大きな影響が及んでいると思っております。感染拡大が長期化することによって、休館や入場制限、またイベントの中止など、そのようなことによって入館者が大変減少して収入が減少し、財政状況が厳しい状況となっております。

 コロナ禍における博物館の現状をどのように把握し、国としてどのように支援体制を取っておられるかということにつきましてお尋ねをさせていただきます。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の文化庁調査によりますと、新型コロナの感染拡大に伴い、九割以上の博物館が臨時休館となり、外国人観光客の急減とも相まって、来場者数が一時は五割近く減少したところでございます。感染の影響が長引く中で、現場では今なお感染症対策に多くの資源を投入せざるを得ない状況が続いていると認識しております。

 このような状況を踏まえ、文化庁では、累次の補正予算によりまして、日本博物館協会等が策定した感染症対策ガイドラインに基づく消毒液やサーモグラフィーカメラ等の物品の整備、オンラインチケットの導入等の取組や資料のデジタルアーカイブ化など、博物館の再開、再生に向けた取組、感染症対策を十分に実施した上で積極的に行う展覧会等の取組やそのキャンセルに係る費用などへの財政支援を実施してまいりました。

 今後とも、関係者の方々の声に耳を傾けながら様々な支援に取り組んでまいりたいと考えております。

西岡委員 引き続きまして、是非、お取組をよろしくお願いいたします。

 続きまして、先ほど浮島先生からもお話がございました、二〇一九年に京都におきまして国際博物館会議が開かれました。三年に一度開かれるこの大会においては、ICOMにおける博物館の定義というものが、これまで、この会議におきまして、博物館の定義というものが時代の状況に沿って見直されてまいりました。このICOMによって定義をされる博物館の定義というものは、世界の博物館関係者の活動の指針となる大変重要なものであると理解をいたしております。

 現行の定義については、二〇〇七年のウィーン大会で採択をされました。博物館とは、社会とその発展に貢献するため、有形、無形の人類の遺産とその環境を、教育、研究、楽しみを目的として収集、保存、調査研究、普及、展示する公衆に開かれた非営利の常設機関であるというものです。

 時代の要請に合ったものとして、必要に応じてこれまで新しい定義が改定されてまいりましたけれども、二〇一九年の京都の会議におきましては、新しい定義案が提示されたものの、結局、採択には至らないで現在に至っております。

 今回の定義が、議決が見送られた背景も含めまして、開催地として把握をされている検討の経緯の御説明と、今後の定義がどのような方向になるかという、もし見通しについてお伺いできればというふうに思います。

 また、末松大臣が考えておられる博物館の存在意義、使命について、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

末松国務大臣 西岡先生にお答え申し上げます。

 国際博物館会議京都大会では、大きなコンセプトとして、文化をつなぐミュージアムの理念、すなわち、博物館が、文化観光や町づくりなど、地域や社会の課題に貢献していくことが決議をされました。

 こうした理念を踏まえつつ、新たな博物館の定義についても議論がなされましたが、様々な各国の事情に配慮し、定義の見直しには至らず、本年八月のプラハ大会で引き続き議論されると伺っております。

 今回の法案では、こうした議論や文化審議会の答申に基づきまして、従来の博物館の定義に加えて、博物館が関係機関と連携して、地域の活力の向上に取り組むことを新たな役割として位置づけたところでございます。

 今後、これらの役割をそれぞれの博物館としっかりと果たしていけるように、支援の更なる充実に努めてまいりたいと思います。

 今回、先生今御指摘されました定義が議論されたんですけれども、ICOMの京都大会で提案された新しい博物館の定義案、日本語訳を読みましたけれども、なかなかちょっと分かりづらい内容かなというのは、これではなかなかまとまりにくかったんだなという印象を個人的には受けてございます。

 採択されなかったのであえて申し上げることはないんですけれども、今回、プラハでまた議論が続けられるということになってございます。

 それと、博物館については、私はもう何度も参りますのですけれども、やはり心の栄養になるということと同時に、古来から受け継いできたものを現在の我々が大事にして伝えていくということ、これは、日本の歴史とかあるいは伝統というものについては、日本人、今の我々がやはりきちっと発信していくというんでしょうか、海外にも、国内外にわたって、そのことの大事さというものを感じます。

 最近、禅語なんかをよくちょっと勉強するんですけれども、やはり七走一坐、人間、忙しく走り回っていたらやはりいけない、七回走ったら一回休まないかぬ、七走一坐ということと、止まるの上に一字を書いたら正しいという字になる、一日一回止まることは、一日一止ということはやはり大事であるということで、そんな言葉を勉強しておりますけれども。

 特別、博物館と関係ない話をしてしまいましたけれども、以上でございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 また、博物館の定義については、前回、二〇〇七年から大分状況も変化をいたしておりますので、今後、各国が合意できる、博物館の振興、発展に資する定義が是非今年は明確に決定されるということを御期待を申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、今回、博物館法改正の内容につきまして質問させていただきます。

 登録博物館制度の見直しは今回盛り込まれましたけれども、一方で、博物館にとって大変重要な課題であり、これまでも様々な見直しの議論がある学芸員制度については、文化審議会においても中長期的な課題とされ、本改正案については、学芸員補の資格要件の一部を見直すということが盛り込まれるだけの結果となっております。

 答申の中身を見ますと、学芸員として採用される人員が少ないことや専門職としての位置づけが明確でないことなど課題が指摘をされ、早期の制度見直しというものが求められております。

 そういう状況にありながら、今回の改正に盛り込まれず、中長期的な課題ということになったその理由についてお伺いをしたいと思います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 学芸員制度につきましては、委員御指摘のとおり、資格取得者の数に対しまして実際に学芸員として採用される者の人数が極端に少ないということや、専門的職員としての任用、位置づけの不明確さ、あるいは館種や規模等によって求められる資質や能力が異なることなど、様々な課題が指摘されているところでございます。

 学芸員制度の今後の在り方につきましては、こうした課題を踏まえて、学芸員に求められる専門的な能力を再定義しつつ、大学の設置する養成課程の状況や博物館現場におけるニーズを総合的に検討する必要がございますことから、実態の把握を行いながら、中長期的な課題として検討していくべきであると提言されたところでございます。

 このため、今回の法案では、学芸員資格については見直す予定はありませんけれども、文化庁としましては、文化審議会博物館部会において引き続き学芸員資格制度について御審議いただくとともに、また同時に、研修等の充実などによりまして、喫緊の課題とされた現職の学芸員等の資質の向上を進めてまいりたい、このように考えております。

西岡委員 大変重要な喫緊の課題だと思っておりますので、引き続きのお取組をお願いいたします。

 続きまして、平成三十年の文部科学省の設置法改正によりまして、博物館に関する事務が文化庁に移管をされました。その際の附帯決議におきましても、博物館に対する財政支援の一層の拡充という文言が盛り込まれております。

 現在、今回の登録制度の見直しについては、登録博物館を増やしていこうという趣旨であると理解をいたしておりますけれども、現在、二割にしか満たない登録博物館を増やしていくためには、登録要件の、今回法改正の中に盛り込まれておりますような要件の緩和とともに、登録することによるメリットというものを明確にするということが大変重要だと考えております。

 登録による支援策の拡充というのも必要だと考えておりますけれども、そのメリットについて御説明をお願いいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館の設置者は、登録されることで信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置や美術品補償制度の利用など、法律上の優遇措置を受けることが可能となります。

 また、文化庁の三事業においても、登録博物館を中心に措置するなどの取組を行いまして、登録を受けることによって様々な支援が受けられるようにしてまいります。

 文化庁としては、法案成立後、本法案を契機といたしまして、登録のインセンティブについて更に検討を進めていくとともに、登録のメリットを広く関係者に対し周知していきたい、このように考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 今回の改正によりまして、博物館法の目的について、社会教育法に加えて、文化芸術基本法の精神に基づくということが定められることとなります。また、平成三十年の文化財保護法改正により、地域における文化財の保全、活用を図る拠点として、また、文化観光拠点法により、博物館は文化観光拠点施設として位置づけられるなど、関係法令により、博物館に多様な機能が求められることとなりました。

 文化観光推進法に基づき認定をされた拠点計画及び地域計画については、昨年十一月時点で四十一の計画が認定をされ、財政支援を受けることとなっております。

 一方で、同時に、文化財や博物館資料等の保存、調査研究、環境整備等の博物館の基本的機能の維持や拡充というものも極めて重要であるということは言うまでもありません。このような機能が後退することはあってはならないというふうに考えますけれども、政府としてのお考えを御確認をいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 博物館法において、資料の収集・保管、展示・教育、調査研究、この三つは博物館活動の中核を担う基本的な役割、機能として位置づけられておりまして、本改正案でもその位置づけは変わりません。

 本改正では、こうした基本的な機能、役割を確保した上で、文化観光や町づくりへの貢献など、博物館に求められる役割の多様化、高度化に対応するため、他の機関との連携や地域の活力の向上への寄与等を規定しているものでございます。

 文化庁としては、それぞれの博物館が社会から求められる役割、機能を果たしていくことで、地域住民に親しまれる存在となり、ひいては基本的な役割、機能に対する支援も充実していくような、そうした好循環の形成を目指して取り組んでまいりたい、このように考えております。

西岡委員 先ほども議論にございましたけれども、やはり、中小、小規模な博物館についても、しっかり御支援をいただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、予算も限られる中、また大変人材も不足する中で、今回の法改正によりまして、登録博物館の努力義務が増え、現場への負担とならないかという懸念がございます。特に、中小規模の博物館においては不安が大きいと聞いております。そのことに対して、どのように国として支援をされていく方針かについてお伺いをいたします。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正案では、博物館に社会や地域の様々な課題の解決に寄与することが求められている一方、社会や地域の課題に対応するためには、当該課題に主体的に取り組む機関や民間事業者との連携が欠かせないことから、多様な主体との連携により地域の活力の向上に取り組むことを努力義務としているところでございます。

 こうした規定を踏まえた事業に取り組むことによりまして、地域住民にとってより身近で欠かせない存在として認識され、ひいては博物館に対する支援が充実していくという好循環が形成される必要がある、このように考えております。

 一方、文化庁の方でも、令和四年度予算案において、新たに、このような社会的、地域的な課題に先進的に取り組む活動等を支援することとして予算、事業を組んでおるところでございますけれども、いずれにせよ、引き続き現場の声をよく伺いながら、博物館に求められる新しい役割、機能に係る取組を促してまいりたい、このように考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 時間が限られておりますので、次の二問を一緒に質問をさせていただきたいと思います。

 国立博物館につきましては、独立行政法人に係る法令に基づき運営をされ、博物館法に基づく博物館と両輪の体系と現在なっております。近年、複数の博物館又は異種、全く違う種類の博物館の連携ネットワークというものが大変重要になる中で、その中核となる国立博物館の位置づけが大変分かりにくいという現状がございます。

 今回、登録博物館の要件を拡大する改正内容とはなっておりますけれども、それ以外の博物館相当施設、博物館類似施設についても、全体の中でそれぞれどのように今後位置づけをされていく方針なのかということをお伺いいたします。

 また、登録の要件を満たさないために登録できない博物館に対して、それぞれの特性に即した支援体制が求められると思いますけれども、どのように支援をされていく方針かということをお伺いをいたします。

末松国務大臣 先生にお答え申し上げます。

 国立の博物館につきましては、先生御指摘のとおり、独立行政法人個別法で規定をされております。これまでの博物館法等の関係で、その位置づけが必ずしも明確でなかったところです。

 このため、今回の法案では、指定施設として明確に位置づけて、資料の貸出しとか、あるいは職員研修の実施など、他の博物館に協力を行うこととしたところでありまして、全国の博物館のネットワークの中核的な役割を果たしていただきたいというふうに思っております。

 また、様々な理由からこれまで登録博物館などになってこなかった地域の多様な博物館につきましては、それぞれの特性を生かしながら広く振興していくことが重要と考えておりまして、本法案でも登録制度の対象拡充を盛り込みました。

 文科省としましては、本法案成立後、ナショナルセンターとしての国立の博物館の機能の更なる充実を図るとともに、地域の多くの博物館が登録博物館となるように積極的な働きかけを行いまして、国公私立の枠を超えた連携がやはり大事である、促進したいというのが私の考えです。

 それともう一つ、先生の、登録になれない施設に対してきめ細かなという支援体制ですけれども、昨年の文化審議会の答申では、規模の大小にかかわらず、しっかりとした取組を行う博物館の底上げを行うことが今後の博物館法の目指すべき方向とされております。

 文化庁では、これから、令和四年度、新たに、先ほど申し上げた四億二千万円の予算ですけれども、博物館機能強化推進事業などを実施をしてまいりましたり、本事業におきまして、博物館の先進的な取組を支援するとともに、きめ細かな相談体制の整備を行ってまいりたいと思います。

 予算はまだまだ少額かもしれませんが、これでやっていきたいと思います。

西岡委員 時間となりました。ありがとうございます。

 これで質問を終わります。

義家委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 博物館法は一九五一年に制定され、今回の改定は、法制定以来七十年ぶりの制度見直しであります。

 博物館法は、第一条に社会教育法の精神を掲げておりますけれども、その社会教育法は、第一条の目的に、「教育基本法の精神に則り、」とございます。つまり、一九四七年の憲法と旧教育基本法制定と、それに続く一九四九年の社会教育法、そして、一九五一年、博物館法と、憲法制定からの一連の流れの中で作られたものであります。まず、その原点から確認をしたい。

 今回、法律の目的に、現行の社会教育法の精神に加えて、文化芸術基本法の精神に基づくことも取り入れることになります。しかし、この社会教育法の精神というのは非常に重いものでありまして、社会教育に携わる方々から、社会教育施設としての博物館本来の機能が後景に追いやられるのではないかという懸念が示されております。

 そこで、確認をいたしますけれども、今回の法改定で、社会教育法の精神に基づくという法制定時の原則は堅持されるということでよろしいですね、大臣。

末松国務大臣 宮本先生にお答え申し上げます。

 教育基本法では、生涯学習の理念と社会教育の振興について定められておりまして、また、社会教育法では、教育基本法の精神に基づきまして、国、地方公共団体が社会教育の振興に当たって果たすべき任務が定められてございます。

 これらの規定におきまして、一つは、国民が生涯にわたってあらゆる機会、場所で学習し、その成果を生かすことができる社会の実現を図らなければならないこと、二つ目は、博物館等の社会教育施設の設置等によって社会教育の振興に努めなければならないこと等が定められております。

 こうしたことから、本法案では、社会教育法の精神に基づくことを引き続き規定しており、今後とも、博物館は、社会教育施設としてその責務を引き続き果たしていくよう指導してまいりたいと考えております。

 先生御指摘のところで、この博物館法の一部を改正する今回の法律第一条は、「この法律は、社会教育法及び」、これをちゃんと受けて、「及び文化芸術基本法の精神に基づき、」というところで加えておりますので、先生のお考えに沿うものでございます。

宮本(岳)委員 社会教育法は、国や自治体に、全ての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境をつくる努力義務を負わせております。

 ここに新たに文化芸術基本法の精神をつけ加えるということでありますけれども、確認をいたしますが、文化芸術基本法の基本理念を定めた第二条第三項にはどのような定めがあるか、文化庁からお答えいただけますか。

義家委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

義家委員長 速記を起こしてください。

 杉浦次長。

杉浦政府参考人 文化芸術基本法の第二条第三項ということでございますけれども、ここでは、文化芸術に関する施策の推進に当たりましては、文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であるということに鑑みまして、年齢とか、障害の有無とか、経済的な状況とか、居住する環境とか、そういうのにとらわれずひとしく文化芸術を鑑賞して、参加して、創造できる、こういう環境をつくるということが言われております。

宮本(岳)委員 国民が、その年齢、障害の有無、経済的な状況、また居住する地域にかかわらずひとしくその権利が保障される、非常に大事な点なんですね。

 同時に、文化芸術をめぐっては、二〇一九年にあいちトリエンナーレでの「表現の不自由展・その後」が脅迫を受けて中止になり、大きな社会問題になりました。この事件は、公立美術館における展示規制がどのような社会的な構図の下で起きるのかということを白日の下にさらしたと思います。

 改めて、これも文化庁に確認しますが、文化芸術基本法は、第二条の一項と二項で何と定めておりますか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 文化芸術基本法の第二条の第一項では、「文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。」こと、そして第二項では、「文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに、その地位の向上が図られ、その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない。」、このように規定されているところでございます。

宮本(岳)委員 つまり、文化芸術を行う者の自主性の尊重と創造性の尊重を定めております。

 また、前文では、我が国の文化芸術の振興を図るためには、文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重することを旨とすると定めております。

 税金を出している以上、口出しするのは当然だというのは、俗受けするかもしれませんが、文化芸術基本法の精神ではありません。たとえお金を出していたとしても口出しはしないというのが、文化芸術基本法の精神であります。

 そこで、文部科学大臣にお伺いするわけですが、当然、この文化芸術活動を行う者の自主性の尊重も、今回、博物館法に新たに追加される文化芸術基本法の精神の内容に含まれますね、大臣。

末松国務大臣 お答え申し上げます。

 今回の法案によりまして、博物館が、これまでの社会教育を担う機関としての位置づけに加え、文化芸術基本法の精神に基づく文化芸術を担う施設として位置づけられてございます。

 また、先生お尋ねの文化芸術活動を行う者の自主性の尊重については、私としては、文化芸術基本法において、その文化芸術基本法の精神の内容の一つでありますから、当然のことだというふうに理解をしております。これも先生のおっしゃるとおりでございます。

宮本(岳)委員 二〇〇八年、社会教育法が改定された際の衆議院附帯決議では、「自発的意思で行われる学習に対して行政の介入とならないよう留意すること。」としております。

 また、九条俳句不掲載損害賠償等請求事件をめぐっては、二〇一八年十二月二十日、最高裁の上告が棄却され、東京高裁の判決が確定いたしました。確定判決は、社会教育法第九条の三第一項及び同法第十二条の各規定は、原告が主張するとおり、大人の学習権を保障する趣旨のものであるとして、大人の学習権を認めた画期的な判決でありました。

 社会教育法の精神に基づく博物館においても、当然、大人の学習権は保障されなくてはならないし、それを保障するためには、博物館の自由で自律的な運営が求められる。

 そこで、登録制度の見直しについて質問をいたします。

 法案は、博物館の設置主体の対象をできるだけ拡大するものでありますけれども、その審査基準は、都道府県の教育委員会が定めることとされております。

 博物館の設置主体を拡大するに当たり、公益性、公共性を保障するためにも、学芸員の配置など、基準の引下げが行われてはならないと私たちは考えますが、文化庁、これは担保されておりますか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法においては、登録要件は、年間百五十日以上開館すること、それから学芸員を置くこと等以外は、大綱的な内容のみが法に定められておりまして、その詳細は、審査を行う都道府県等の教育委員会に委ねられております。

 このため、今回の改正法案では、博物館登録の審査基準につきましては、文部科学省令で定める基準を参酌して、都道府県等の教育委員会が定めることとしておりますけれども、開館日数ですとか学芸員の配置につきましては、引き続き、法律上明記することということとされております。

宮本(岳)委員 第四条三項で、「博物館に、専門的職員として学芸員を置く。」と担保されているという答弁でありました。

 文化庁の資料でも、登録博物館九百十四館のうち、二〇一八年十月一日現在で、学芸員の配置数がゼロとなっている博物館が二百五十六館となっております。約二八%、三割が今現に学芸員を配置できていないんですね。五年間は経過措置があります。しかし、それを過ぎれば、登録博物館でなくなる可能性がある。

 もちろん、個々の博物館には、登録博物館から外れる判断もあり得るんですけれども、できれば登録博物館のままでいたいという場合に、学芸員配置のための支援も必要になると思うんですけれども、文化庁はどうお考えですか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の博物館法においても、登録博物館には学芸員が配置されることが求められておりますが、登録後の博物館の運営状況について、都道府県等の教育委員会が定期的に把握する手段が現行法上ございません。こうしたことから、現在、学芸員が配置されていない登録博物館が存在するだろうということは承知しております。

 博物館に学芸員を配置するかどうかは、確かに、それぞれの博物館の設置者が判断すべきことではございますけれども、本法案では、現在登録されている博物館については、改正法の施行後五年間は登録博物館となる経過措置を置いておりまして、文化庁としては、この本改正法を契機として、それぞれの博物館が必要な学芸員をしっかり配置して登録博物館となるよう、それから、地域からもそういう御理解をいただき、地域の首長の皆様からもそういった形でしっかりと博物館を位置づけていただけるように、様々な機会を通じて、設置者にしっかり働きかけてまいりたい、このように考えております。

宮本(岳)委員 しっかり財政的な支援をしていただかなければ、なかなか、定めるだけではいかないと思いますので、これはまさに今後の課題だと思います。

 同時に、今回の法改正で、これまでの三条二項に定められておりました、博物館は、その事業を行うに当たっては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るように留意しなければならないという規定が削られてしまったのではないかという不安の声が、私のところにも寄せられております。

 事前の説明では、この条文の趣旨は、そのまま第三条三項に含まれているという説明を受けたんですが、これは、文化庁、間違いないですね。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおり、本改正法案の第三条第三項につきましては、現行法の第三条第二項、これをしっかりと受け止めた形の、包含された形だというふうに認識しております。

宮本(岳)委員 そもそも、登録制度が導入された法制定当時、約五百館ほどしかなかった博物館を増やそうとする中で、単なる営利を目的とした遊園地的、見せ物的に運営されているものを排除するために公益性、公共性ということが掲げられた、これは極めて大事なことだと思います。

 全ての国民があらゆる機会、あらゆる場所で利用できなければならない、そういう精神に立って、博物館法第二十三条では、原則無償ということが定められております。

 今回の改正でも、この条文に変わりはございませんね。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法の二十三条、改正後は第二十六条となりますけれども、ここにおいて、公立博物館の入館料等について、原則無料である旨は引き続き規定されてございます。これは、広く国民の皆様に博物館を利用する機会を提供するためのものと認識しております。

 また、同条ではただし書の規定もございまして、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情がある場合には、必要な対価を徴収することができるとされておりますが、これはいずれにせよ、利用料の徴収については設置者の判断、このようになっております。

宮本(岳)委員 二十三条を確認をされました。

 当時の財政事情をこれは考慮したただし書、先ほど後段述べられたただし書も、当時の財政事情を考慮したものだと思います。

 十分な補助がないために料金の徴収をしなければならないということはもちろんあり得るわけですけれども、二〇一八年時点で、四千四百五十二館中三千五百四十二館が、博物館類似施設の圧倒的多数、これは公立博物館ということになっているんですね。今の二十三条は、公立博物館の利用料に当たる規定であります。

 ところが一方で、この間、本来、入場料無料を定めたこの二十三条の精神に逆行するような事態を耳にいたします。

 これは最後の質問にしたいと思うので、大臣にしっかり聞いていただいて、お答えいただきたいんですが、是非二つの事例を今日は紹介したい。

 一つは、神戸市立須磨海浜水族園であります。

 一九五七年五月十日に神戸市立須磨水族館として開園をいたしました。後に多く誕生する大型水族館の嚆矢となり、一九八七年には、年間入場者数二百四十万人という当時の日本記録を達成いたしました。スマスイの愛称で、市民や子供たちに親しまれてきた公立水族館であります。

 ところが、神戸市は、二〇一〇年度から指定管理制度を導入し、さらにその後、民営化まで決定いたしました。

 その結果、小中学生は五百円だった入館料が何と千八百円へと大幅に引き上げられることになり、市民はもちろん、神戸市議会からも懸念の声が上がっております。

 もう一つ、京都府立植物園は、一九一七年に着工し、一九二四年一月一日に大典記念京都植物園として開園した、日本で最初の公立植物園であります。

 入園料は、一般二百円、高校生百五十円、中学生以下は無料、七十歳以上の高齢者や障害者手帳をお持ちの方も無料であります。

 この植物園を含む一帯に、京都府は、一昨年十二月、北山エリア整備基本計画を策定いたしました。

 計画によりますと、園西側の賀茂川沿いにレストランやミュージアムショップを造り、北山通り沿いにも商業施設を整備する。また、植物園の周りでも、園の南側にある府立大の体育館を約一万席のアリーナを備えたものに建て替え、府立医科大、京都工芸繊維大と共同で使えるようにするほか、園の東側に劇場など芸術複合施設を造ることを検討していると報じられております。

 この計画には反対の声が相次いで、住民や全国の園芸関係者らが計画見直しを求める署名活動を展開、昨年十一月時点で約十万筆を突破し、歴代園長も反対の立場で会見を開く、異例の事態となっております。

 最後にこれは大臣に確認したいんですが、今回の改正の結果、スマスイのように、無料どころか子供たちが入れないような高い入館料になったり、京都府立植物園のように大規模開発が次々進められるようなことになったら本末転倒だと私は考えますけれども、今回の改正は、こういう方向を促進することを意図したものなのか、大臣の御見解をお伺いをして、質問を終わりたいと思います。

末松国務大臣 宮本先生にお答え申し上げます。

 公立博物館の入館料の設定を含む運営の方向性につきましては、博物館法にのっとりながら、各館の事情を踏まえて設置者が適切に判断すべき事項と考えております。

 このため、お尋ねの個別の博物館の取組につきまして、文部科学省として具体的に言及することは差し控えたいと思います。

 ただ、一般論として考えれば、それは先生、使いやすい料金が一番よろしいですね、これは。利用しやすい料金が好ましいです。

 さらに、その上で、一般論として、御指摘の本法案における他機関との連携は、文化をつなぐミュージアムの理念の下、博物館が地域の活力の向上に寄与するためには、地域の抱える課題に対応する様々な主体との連携が重要との考えから規定したものでございます。このような取組を通じて、博物館が、今後、社会教育施設と文化施設の両方の性格を持つ施設として地域住民から愛される存在となることが重要である、そういうふうに考えております。

 いずれにしましても、文部科学省としては、今回の法改正を通じまして、料金の引上げや特定の開発の方向性を殊更に推進する考えは全くありません。先生と考え方は、その辺もう少し。

宮本(岳)委員 是非、社会教育施設としての原点をお守りいただきますようにお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

義家委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

義家委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、博物館法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

義家委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本ともひろ君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。菊田真紀子君。

菊田委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明に代えさせていただきます。

    博物館法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 本法による新たな博物館登録制度が十分に活用されるよう、登録により各博物館の信用や認知度の向上につながる制度の実現に向けた施策を推進するとともに、新たな登録制度の活用状況や博物館の振興に及ぼす効果等について調査・検証を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずること。

 二 登録博物館について、その設置主体が民間の法人等に拡充されることから、登録の審査に当たっては、博物館の社会教育施設としての役割を尊重し、過度に利益を求めないという非営利性に配慮の上、公益性及び公共性の確保に十分留意すること。また、登録後の博物館の運営状況について、定期報告等を通じ、博物館が持続的に活動できるよう経営の改善・向上を継続的に図るための支援を行うこと。

 三 博物館の中核的職員である学芸員については、文化審議会の答申においても中長期的な課題とされたことから、学芸員に求められる専門的な能力を再定義するなど学芸員の在り方について制度的な検討を行い、必要な見直しを行うこと。また、学芸員をはじめ、学芸員補など様々な専門的職員の育成・配置が重要であることを踏まえ、その社会的地位の向上及び雇用の安定等の処遇改善に努めるとともに、研修及び調査研究助成等を充実させることにより、我が国の博物館の活動の基盤を担う人材の育成・確保等に努めること。

 四 博物館の活動や経営の向上においては、責任者として事業や業務に十分な見識を持つ館長の果たす役割が重要であることから、学芸員で高度かつ専門的な知見を有する者の登用や研修等の実施を通じ継続的にその専門性の向上を図るなど、館長としての職責を十分果たすことのできる環境の整備に努めること。

 五 これからの博物館には、地方公共団体や民間団体等と連携し、社会的・地域的課題の解決を図ることが期待されることから、国立博物館を中核として設置者の枠を越えた全ての博物館の連携を促進するとともに、地域の多様な主体とのネットワークの形成が円滑に実現するよう、必要な支援を行うこと。

 六 博物館については、多くの博物館が非常に厳しい財政状況にあり、施設・設備の老朽化への対応も求められる中、従来担ってきた社会教育施設としての機能に加え、文化施設としての新たな役割も担うこととなる。多様な役割を担う博物館の更なる振興を図るため、博物館に対する財政上の措置の拡充や新たな税制上の優遇策の検討などの様々な振興策を講ずるとともに、博物館の持続的経営を可能とする新たな運営指針の策定など、各博物館が長期的に安定して資金を確保し得る仕組みの構築に向けた支援を行うこと。また、博物館に対する公的支援の必要性等に関し広く国民の理解が得られるよう、博物館が担う社会的機能の重要性等について広報活動を実施すること。なお、振興策を講ずるに当たっては、社会教育法及び文化芸術基本法の精神に基づき、博物館の多様性を尊重すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

義家委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

義家委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。末松文部科学大臣。

末松国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

義家委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

義家委員長 次回は、来る三十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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