衆議院

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第11号 令和4年4月27日(水曜日)

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令和四年四月二十七日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 義家 弘介君

   理事 橘 慶一郎君 理事 根本 幸典君

   理事 宮内 秀樹君 理事 山本ともひろ君

   理事 菊田真紀子君 理事 牧  義夫君

   理事 三木 圭恵君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    石井  拓君

      石橋林太郎君    尾身 朝子君

      加藤 竜祥君    勝目  康君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      木原  稔君    国光あやの君

      小林 茂樹君    笹川 博義君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      田野瀬太道君    谷川 弥一君

      丹羽 秀樹君    船田  元君

      古川 直季君    堀井  学君

      松本 剛明君    三谷 英弘君

      山口  晋君    荒井  優君

      おおつき紅葉君    坂本祐之輔君

      白石 洋一君    吉川  元君

      吉田はるみ君    笠  浩史君

      早坂  敦君    掘井 健智君

      岬  麻紀君    山崎 正恭君

      鰐淵 洋子君    西岡 秀子君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣       末松 信介君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            合田 哲雄君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局長)          藤原 章夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            増子  宏君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       千原 由幸君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            池田 貴城君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    串田 俊巳君

   政府参考人

   (文化庁次長)      杉浦 久弘君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         田中 一成君

   文部科学委員会専門員   但野  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     堀井  学君

  尾身 朝子君     神田 潤一君

  木原  稔君     笹川 博義君

  下村 博文君     加藤 竜祥君

  山口  晋君     石井  拓君

  荒井  優君     おおつき紅葉君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     山口  晋君

  加藤 竜祥君     下村 博文君

  神田 潤一君     尾身 朝子君

  笹川 博義君     木原  稔君

  堀井  学君     青山 周平君

  おおつき紅葉君    荒井  優君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案(内閣提出第三五号)


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     ――――◇―――――

義家委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官合田哲雄君、文部科学省総合教育政策局長藤原章夫君、高等教育局長増子宏君、科学技術・学術政策局長千原由幸君、研究振興局長池田貴城君、スポーツ庁次長串田俊巳君、文化庁次長杉浦久弘君、経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官田中一成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 立憲民主党の坂本祐之輔でございます。

 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案について質問をさせていただきます。

 政府は、平成二十五年の教育再生実行会議第三次提言の中で、「世界に伍して競う大学の教育環境をつくる。」とし、今後十年間で世界大学ランキングトップ百に十校以上をランクインさせるという目標を掲げ、これまでの間、世界トップレベル研究拠点プログラムやスーパーグローバル大学創成支援事業トップ型、指定国立大学法人制度など、様々な施策を講じてきました。しかし、現在、世界大学ランキングで百位以内に入っているのは、東京大学と京都大学の二校のみとなっています。

 これまで講じてきた施策の効果についてどのように分析しているのでしょうか。また、本法律案はこれまでの施策とどう違い、どのような点が改善されているのでしょうか。末松大臣にお伺いをいたします。

末松国務大臣 おはようございます。

 坂本先生にお答えを申し上げます。

 先生御指摘の平成二十五年五月二十八日の教育再生実行会議第三次提言、これからの大学教育の在り方についても拝見をいたしました。

 文部科学省では、世界最高水準の卓越しました教育研究活動の展開であるとか、あるいは我が国の大学の国際競争力の向上を図るため、これまで様々な施策を通じて、教育研究の質の向上や国際化の推進、大学改革は進めてきたところではございます。これらによりまして、世界最高水準の研究成果の創出、あるいは研究成果の社会への還元、大学の国際化といった成果は表れてはきておりまして、これまで進めてまいりました改革は、大学の教育研究力の強化には一定の役割は果たしてきたものと考えてはおります。

 一方で、日本の大学の財政基盤は今なお脆弱でございまして、財源の一層の多様化、拡大が必要であるということ、そして学外を含めた経営を担う人材の確保や経営意識の更なる向上が求められているということ、そして、とりわけ若手研究者の安定的なポストの確保等の取組が十分でないということ、任期つきの方が多く、研究者の方とも懇談会をしますと非常にこういう声が多うございます、などが課題として挙げられるため、これらに向けた更なる取組が必要でございます。

 特に財政基盤に関しましては、もう先生御承知のとおり、欧米のトップレベルの大学では、数兆円規模の独自基金の運用を活用しまして研究基盤や若手研究者への投資を充実しており、そうした資金力の差が、我が国の大学の研究力が相対的に低下する一因となってございます。

 このため、今般、国の資金を活用しまして大学ファンドを創設し、その運用益によりまして大学の研究基盤への長期的、安定的な支援を行うものでございます。

 なお、大学ファンドからの助成の使途につきましては、可能な限り、各大学の自由裁量の下で、柔軟かつ適切に決定されることが重要と考えています。具体的には、国際的に卓越した研究環境の整備充実であるとか、若手研究者の育成、活躍促進、また、国際的に卓越した能力を有する研究者の確保など、こういったものを例示して挙げてございます。

 取りあえず、以上でございます。

坂本(祐)委員 是非、これまで講じてきた施策の効果や結果をこれからもしっかりと生かしていただきたいとお願いをいたします。

 次に、国際卓越研究大学について、「世界と伍する研究大学の在り方について」の最終まとめの中で、その目指すべき姿を定性的に示しておりますが、政府として、国際卓越研究大学が世界と伍する研究大学を実現したと言える水準を具体的な指標や目標で示しておくべきと考えますが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 世界と伍する研究大学は、世界最高水準の研究活動を通じて、国際的な頭脳循環のハブとなり、世界中から集まった優秀な人材が新たな学問分野を創出するなど、研究成果を次々と生み出すとともに、それらの人材、研究成果に基づき、地球規模の課題解決への貢献や、新たな産業、社会的価値の創出など、社会変革の駆動力となることが期待されます。

 これらを実現するためには、新たな知のイノベーションを創出する研究環境、研究活動を支える多様な財源による強固な財務基盤、大学の成長戦略を実行するガバナンス体制の三点を兼ね備えることが重要ですが、各大学が、自らの強みを踏まえ、諸外国のトップレベルの研究大学と競い合える具体的な姿を構想し、その実現のための戦略を示していただくことが重要と考えております。

 このため、世界と伍する研究大学が実現したかどうかの判断は、あらかじめ画一的な指標等を示すのではなく、大学自らが提出する将来像も含めた計画を基に、基本方針の内容も勘案しつつ、有識者の意見を踏まえながら、総合的に判断されるものと考えております。

坂本(祐)委員 御答弁いただきましたけれども、全ての大学の目標がそこにもあるというふうに考えておりますので、できるだけ分かりやすい、そして目標になるようなものをお示しをいただけるように御尽力をいただければと思います。

 今回の法案では、大学の研究力の向上のために、数校程度の大学を国際卓越研究大学として認定するとしています。しかしながら、大学関係者から聞くところによると、今日の学術研究は、その実施が特定の大学に限られることはむしろ少なく、多くは共同研究の形で、複数の大学に所属する研究者が連携して実施されているとのことであります。

 それにもかかわらず、今回の法案が、研究者個人や研究者グループではなく、大学単位で助成することとして助成対象を数校程度の大学に限ることとしているのはなぜでしょうか。研究力を向上させるという法案の狙いと、大学ファンドの運用益を数校の大学に投入するという制度設計との間にそごがあるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 研究力の強化に当たっては、これまでも、科研費等の競争的研究費を通じた支援と運営費交付金等の基盤的経費による大学の運営の支援のデュアルサポートシステムで行ってまいりました。

 一方、諸外国のトップレベルの研究大学におきましては、これらの財源に加え、外部資金の獲得や大学独自基金の造成、運用などにより財源を多様化して、大学自らが高い裁量を持って研究基盤や若手研究者への投資を実現しています。このような大学の資金力の差が、我が国の研究力の相対的な低下の一因と考えております。

 こうしたことを各大学の力のみで直ちに解消することは困難であることから、今般、大学ファンドを創設し、その運用益によって大学への長期的、安定的な支援を行うものとしたところでございます。

 諸外国と我が国の経済規模を踏まえると、我が国においては、数校程度の大学が世界と伍する研究大学となることが期待されています。

 また、大学ファンドでは、全国の優秀な博士課程学生への経済的支援を実施するとともに、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学の研究環境やマネジメント機能を強化する支援策として、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージを策定し、この充実を図ることとしております。

 これらの施策を総動員して、日本全体の大学の研究力強化に取り組んでまいります。

坂本(祐)委員 まさに、そういう点では大学単位で助成するということでありますので、大学にまたがった研究を共同で行っている方たちに対する支援もしっかりと行うような政策を進めていただければと思います。

 次に、今回は十兆円もの資金をグローバル株式、債券で運用して、その運用益を国際卓越研究大学への助成に充てるとのことですが、ロシア軍によるウクライナ侵攻など運用環境に大きな影響を与えるような事象が発生している世界経済の中で、安全に、安定的に運用していくことはできるのでしょうか。三%プラス長期物価上昇率という運用目標は妥当なのでしょうか。また、債券や株式で運用する以上、必ず運用がプラスになるとは限りません。目標としている運用益が確保できない場合、さらにはマイナスになってしまった場合には、国際卓越研究大学への助成はどうなるのでしょうか。

池田政府参考人 大学ファンドの運用に関して、三点の御質問があったかと存じます。

 まず、現在の経済情勢での運用に関する御質問についてですが、大学ファンドの運用は、市場の一時的な変動に過度にとらわれず、投資規律を遵守しつつ、グローバルな長期分散投資を行うこととしております。

 その上で、文部科学省としては、助成資金運用の基本方針におきまして、JSTが資産管理の基準として用いる基本ポートフォリオを策定する際に、国内外の経済動向や市場動向等を考慮すること、ストレステストや資産評価額の変動のモニタリングを定期的に実施することなどを定め、JSTに対して市場動向等に対応した運用を求めております。

 これを受けて、JSTにおきましても、投資機会の確保に努めつつも、現下の市場動向等の変化を注視し、平時よりは慎重な運用を行っているものと承知しております。

 このように、大学ファンドについては、基本指針に基づき、JSTにおいて、市場動向等を考慮しつつ、運用目的に沿って適切な投資行動が行われる仕組みにより運用が行われているところでございます。

 二点目の御質問でございますが、運用目標の水準に関する御質問については、大学ファンドの運用目標は、他の国内運用機関と同等の四%程度を設定しております。この運用目標は、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの下に置かれたワーキンググループで、金融や資産運用等の専門家による審議の結果を踏まえて設定したものでございます。

 このワーキンググループの議論では、海外のトップレベルの大学では、大学独自の基金の運用目標として一〇%程度を掲げているところも多いことから、海外機関と同様のグローバル運用を想定している大学ファンドにおいては、国内外の成長を取り込むことで四%程度という運用目標の達成は十分可能であるとの考えが示されております。

 これらのことから、三%プラス物価上昇率で計四%程度という運用目標は合理的な水準と考えております。

 三点目の御質問でございますが、運用益の確保に関する御懸念につきましては、大学ファンドの運用に当たりましては、グローバルな長期分散投資を行うことで、長期的、安定的に運用益を確保することとしております。また、大学への支援を安定的に行う観点から、運用益の一部から六千億円を上限に支援のためのバッファーを確保し、JSTの財務状況も勘案しつつ、これを活用することとしております。

 加えて、昨年十一月に閣議決定された経済対策を踏まえ、大学ファンドにおいて、将来的には、過去の大きな市場変動にも耐えられる水準の安定的な財務基盤の形成を目指すことともしております。

 このように、大学ファンドは、一時的な運用益が十分に出ない場合や運用で損失が出た場合であっても、このバッファーなどの財務基盤を活用して大学へ安定的に助成を行える仕組みを目指しております。

 なお、運用立ち上げ期におきましては、運用益やバッファーの構築等の状況も踏まえて、段階的に大学への支援額を拡大することを想定しております。

坂本(祐)委員 専門家による慎重な運用ということでございますけれども、今の経済状況の中では大変に厳しい、そしてまた予測のつかないこともあろうかと思います。大学に対しては、安定的な支援を確実に行うようにお願いをいたします。

 次に、国際卓越研究大学は年三%程度の事業成長を求められますが、ここで言う大学の事業とはどのようなことを想定されているのでしょうか。

 「世界と伍する研究大学の在り方について 最終まとめ」において、授業料設定の柔軟化について、「国際卓越研究大学の対象となる国立大学法人の経営的・財政的自律性を高める観点から早期に結論を得て、実行していくことが期待される。」とあります。

 授業料については、前回の委員会におきまして、政府参考人が、授業料に関しましては、教育研究内容の充実と関係なく、単に事業規模を拡大させるための授業料の値上げといったものは想定しておりませんと答弁をされておりましたが、教育研究内容の充実と関係ある授業料の引上げはあり得るのでしょうか。

 また、学生からの授業料収入を拡大させて事業収益を上げるとすれば、学生の学ぶ権利を経済的に制約することにもなりますし、ますます研究者になることを志望する学生を減らすだけになるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 国際卓越研究大学には、世界と伍する研究大学となることを目指し、研究活動の発展を支える多様な財源による強固な財務基盤を構築する観点から、御指摘のように、年間三%以上の事業成長を求めることとしております。

 具体的には、外部資金の多様化に向けて、組織単位での大規模な産学連携の推進、大学発ベンチャーの創出促進、卒業生を含む関係者からの寄附、大学独自基金の拡充など、自己財源の獲得を進めていただき、これと大学ファンドからの支援を活用して、事業規模の拡大を実現していただきたいと考えております。大学には、このように、事業規模を広げることで得られる資源を中長期的視点で人材育成や研究基盤に再投資する好循環を構築していただきたいと考えております。

 国際卓越研究大学に求める事業成長は、先ほど申し上げたような考え方で、国内外の若手研究者がここで自立して研究したいと強く思うような、魅力的な研究環境の実現につなげるためのものでございます。したがって、今御指摘いただいたように、単に事業規模を拡大させるための授業料等の値上げにより学生の経済的な負担を増加させることは想定しておりません。

 なお、単に収益を拡大することを目的とするものではなく、教育研究内容の充実を目的として追加的な費用を要する高度な教育研究プログラムを提供する場合など、合理的かつ対外的に理解を得ることができる特別な事情はあり得ると考えております。そのような場合には、各大学の判断により授業料等の値上げを行うことについてまで、一義的に否定されるものではないと考えております。

坂本(祐)委員 特別な事情を考慮する場合にはこのようなこともあるということの御指摘をいただきましたけれども、学生の方々の学問に対する研究心を損ねないよう、ましてや、学生や教員の方々が大学の事業に何らかの形で協力をするということになると、本来の研究や教育を受ける、そういった時間が割かれてしまうということになると思いますので、この点はしっかりと御留意をいただきたいと思います。

 本法案の附則第三条につきまして、検討とありますが、この検討を行う機関はどこでしょうか。また、法制上の措置とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

 この政府が行う検討及び措置は、大学における教育及び研究の特性への配慮を定めた本法案の二条並びに国立大学法人法の三条に抵触することにはならないでしょうか。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の附則第三条におけます検討規定においては、国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用のための体制強化に加えまして、大学の経営管理体制の強化の重要性に鑑みまして、重要事項の決定そして実施に多様な専門的知識を有する者の参画が得られるよう、大学のガバナンス体制や人材確保の方策等について検討することとしているところでございます。

 具体的な検討の機関につきましては、政府において行っていくこととしておりますが、特に国立大学法人においては、現状、合議体によるガバナンスを前提とした法制度となっていないことから、法制上の措置につきましては、経営管理体制の強化を図るために、合議制を導入するなどの国立大学法人法の改正が必要になるというふうに考えているところでございます。

 国立大学法人につきましては、法律によりそのガバナンスが規定されておりますが、この改正によりまして対象となる国立大学法人に合議制のガバナンスが導入された場合においても、例えば、合議体の構成員の人選等についてはあくまで各大学法人において検討いただくものと考えておりまして、大学の自治を侵害するものにはならないと考えておりますが、その検討に当たっては、大学における教育及び研究の特性への配慮を定めた、先生御指摘の本法案の第二条や国立大学法人法第三条の趣旨も十分に踏まえてまいりたいというふうに考えているところでございます。

坂本(祐)委員 十分に踏まえていくということでございますので、しっかりとお願いをいたしたいと存じます。

 続きまして、国際卓越研究大学の認定に当たっては、科学技術・学術審議会や総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの意見を聞かなければならないとされています。また、事業計画を文部科学大臣が認可するに当たっては、内閣総理大臣や財務大臣が文部科学大臣と協議を行い、CSTIの意見を聞かなければならないとされています。

 しかし、公正な研究評価には専門家の評価を尊重する必要があることから、文部科学省は、従来、重要な研究助成については、多様な専門学会との連携機能を備えた日本学術振興会に行わせてきました。ところが、今回の法案では、国際卓越研究大学の選定などに当たる文部科学省所管組織は、日本学術振興会ではなく科学技術・学術審議会となっています。

 なぜ、日本学術振興会が選定に関わるスキームから外されているのか、お答えください。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学大臣が国際卓越研究大学の認定及び研究等体制強化計画の認可等を行うに当たっては、大学の学術研究の特性や大学運営に関する状況等に関し、国内の動向のみならず国際的な動向について様々な知見を有するなど、科学技術、学術に関する高度な専門性を有する者に意見を聞く必要があります。

 このため、文部科学大臣の諮問に応じて、科学技術の総合的な振興に関する重要事項や学術の振興に関する重要事項を調査審議する役割を担っている科学技術・学術審議会の意見を聞くこととしております。

 なお、御指摘いただいた独立行政法人日本学術振興会は、競争的研究費である科研費の助成を行うことなどを任務とする独立行政法人であり、業務の実施に必要な際に研究者等による審査を行ってはおりますが、文部科学大臣の意思決定に際しての諮問機関ではないと考えております。

坂本(祐)委員 CSTIは、内閣総理大臣を議長として、六名の閣僚と総理大臣から指名された七名の有識者と日本学術会議会長の計十五人で構成されます。この人数構成では学術会議の意向が十分に反映されるとは思えませんし、まさに政治主導そのものではないかと思います。

 大学の在り方が政治によって決められてしまうことが懸念されますが、いかがでしょうか。大臣からお答えをいただきたいと存じます。

末松国務大臣 総合科学技術・イノベーション会議、CSTIは、科学技術イノベーション政策の推進のための司令塔としまして、議長であります内閣総理大臣、文部科学大臣を含む関係閣僚に加え、科学技術に関する優れた識見を有する者の参画も得まして、我が国全体の科学技術を俯瞰しまして、総合的かつ基本的な政策の企画立案、総合調整を行う組織でございます。

 本法案の目指す世界と伍する研究大学の実現は、科学技術イノベーション政策における重要事項であることから、その対象となる大学の認定に当たりまして、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの意見を聞かなければならないこととしております。

 総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの意見はこのような観点からなされるものでありますが、その際、国際卓越研究大学の研究力の強化に当たりましては、大学自らが自律的かつ創造的な研究活動を展開していくことが必要であることから、十二条で構成されるこの法律案でありますけれども、本法案第二条を踏まえまして、研究者の自主性の尊重など、大学における教育研究の特性に十分配慮して行われるものと考えてございます。

 先生の御指摘はよく念頭に置きたいと思います。

坂本(祐)委員 十分に配慮してこれを行うと大臣がおっしゃっておられますので、是非そのようにお願いをさせていただきたいと存じます。

 時間の都合で質疑を少し飛ばさせていただきますけれども、参考資料を配付をさせていただきました。

 先般、OECDにおける二〇一八年の公財政教育支出の対GDP比が公表されましたが、日本はついに、OECD三十八か国中、最下位になってしまいました。この件につきまして、いかがお考えでしょうか。

 また、初等教育、中等教育の土台があっての大学における研究力の向上であり、その先に我が国の研究力の更なる強化、底上げがあるのだと思います。数校の国際卓越研究大学の実現をもって、真に日本の研究力が強化、底上げされるのでしょうか。

 今回の法案に係る説明の中でも、比較対象としてハーバード大学やケンブリッジ大学など欧米の大学が挙げられていましたが、そうであるならば、OECDにおける公財政教育支出の対GDP比をアメリカやイギリス並みに持っていく、そこまでできないのであるならば、最低でもOECDの平均まで持っていく、そうすることが喫緊の課題であると考えますが、大臣、いかがでしょうか。

末松国務大臣 最初に、先生御指摘のように、教育あるいは科学技術の予算の充実は一番大事なことであると認識をしております。

 近年、我が国の大学の研究力が相対的に低下をしてきておりまして、その向上は喫緊の課題でございます。

 このため、今回の法案によりまして、国際卓越研究大学へ支援を行うとともに、全国の優秀な博士課程学生への支援、また、総合振興パッケージによりまして、地域の中核大学や特定分野に強みを持ちます大学の機能の強化などによりまして、我が国の研究力全体の底上げを図ることといたしております。

 一方で、坂本先生御指摘のとおり、我が国の教育に関する公財政支出の対GDP比は、OECD諸国中一位のノルウェーの七・四%、OECD諸国平均四・四%に比べて、三・〇%と大変低い水準にあることは事実でございます。

 子供は国の宝でありますし、教育は国の礎です。人への投資は、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環の流れを加速していくための鍵でもありまして、先ほど申し上げましたような高等教育段階への投資に加えまして、初等中等教育段階にもしっかり投資を行っていくことが重要でございます。この点、教育未来創造会議からも、有識者からも指摘をされております。

 こうした認識の下で、文部科学省としては、ただいまのところ、幼児教育や保育の無償化とか、高等教育の修学支援新制度などの経済的負担軽減策であるとか、GIGAスクール構想とか、三十五人学級の計画的な整備など、着実に今進めてはまいっております。加えて、今年度の予算では、小学校高学年の教科担任制を推進するため、教職員定数の改善等も図る努力をいたしているところでございます。

 文科省としては、世界と伍する研究大学の実現のため、十兆円規模の大学ファンドの創設とともに、財源を確保しながら、初等中等教育段階も含めて、基本的な教育予算を引き続き着実に確保しまして、人への投資を通じて、成長と分配の好循環を実現していきたいと思います。

 長くなりました。

坂本(祐)委員 できることをまず確実に支援をしていくと大臣もおっしゃっておられました。そのとおりだと思います。

 しかしながら、この予算に関しては、大臣の御意向だけではかなうものではないということも、私たちもよく存じ上げております。文部科学委員会委員の皆様方、私たちが協力をして関係各省庁との要望をさせていただきながら、せめて、このGDP、OECDの中では平均値に持っていけるように努力を重ねさせていただきたいと考えておりますので、大臣にも変わらぬ御尽力をいただきますようにお願いをいたします。

 今回の法案から少し離れてしまいますけれども、前回の委員会で部活動の地域移行について質問させていただきましたが、お伺いできなかったことがありましたので質問させていただきます。

 前回の質問の際に、スポーツ庁の運動部活動の地域移行に関する検討会議で、運動部活動をビジネス化しようとするようなお考えを持つ有識者を招いて説明を受けている件について大臣に質問をいたしました。

 この検討会議に経済産業省の担当者も出席されているとのことですが、一方で、経済産業省でも、「地域×スポーツクラブ産業研究会」という研究会の中で、部活動の地域移行について検討されています。

 この研究会の第一次提言を見ますと、部活動の地域移行後の受皿となる地域スポーツクラブをサービス業と捉え、ビジネス化を推進していくという方向で議論されているようですが、そのような認識でよろしいのでしょうか。お伺いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 学校部活動は、教員の休日を含め長時間勤務の要因であることや、指導経験のない教師にとって多大な負担であり、その持続可能性に関する課題が指摘されていると承知しております。こうした背景から、文部科学省におきまして、運動部活動の地域移行という大きな方向性が出されているものと認識しております。

 このため、経済産業省におきましては、この方向性を実現するための受皿として、地域のスポーツ少年団など非営利団体に加えまして、プロスポーツやフィットネス業など企業が運営するスポーツクラブも受皿の一つとなり得ると考えまして、先生御指摘の「地域×スポーツクラブ産業研究会」において、事業環境の課題を整理する議論を進めてきたところでございます。

 昨年六月に公表しました第一次提言では、地域のボランティア活動に過度に依存することなく、持続可能なサービスモデルを構築する場合に解決すべき事業環境上の課題をまとめたものでございます。

 例えば、学校部活動だけが参加できる競技大会の世代別大会への転換と民間クラブへの門戸開放、プロ傘下のスポーツ教室などが営利事業であるとして学校施設を利用できない制度の改革、家計所得によるスポーツ機会格差の是正などについて包括的に提言がなされたところでございます。

坂本(祐)委員 この研究会では、スポーツベッティング、いわゆるスポーツ賭博についても議論をされています。

 今年の一月二十一日の毎日新聞の記事でも、「スポーツ賭博と部活動 政府内で浮上する「奇妙な組み合わせ」」という記事が出ています。

 この記事によりますと、海外で広がるスポーツ賭博を国内でも普及させて収益を上げ、それを財源に部活動の指導者を雇って教員の負担軽減につなげようというのだ、IR誘致が各地の首長選などで度々争点になっているように、ギャンブル依存の問題など賭博に対する風当たりは強い、そこで持ち出した大義が、スポーツくじ拡充で増える収益金の一部を地域スポーツの中でも財源確保が課題になっている部活動に充てるというアイデアだとあります。

 そして、この記事に関して、本年二月一日の萩生田経済産業大臣の閣議後の記者会見で質問に上がっていますが、その質問に対して萩生田経済産業大臣は、そもそも学校教育の場ですから、何もその賭博で得た利益で人件費を稼ごうなんてことは、少なくとも現時点では考えておりませんと答えられています。

 そこで確認ですが、少なくとも現時点では考えておりませんというのは、全く考えていないのか、それとも、御発言のとおり現時点ではないということであって、将来的なことも含めて完全に否定しているわけではないということなのでしょうか。また、この記事について萩生田大臣は、毎日新聞の報道というのは正しくないというふうに私も思いますとありますが、そのような見解でお間違えないでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年六月に公表しました「地域×スポーツクラブ産業研究会」第一次提言におきましては、今後、学校部活動が地域の民間クラブでの活動に全面的に移行していく場合、世帯収入の格差により子供のスポーツ機会格差が生じないよう工夫が必要ではないかという問題意識をお示ししました。

 具体的には、例えば、スポーツクラブが体育施設の指定管理者としての多様な収益源を得ることで会費を抑える工夫や、社会として個人負担を軽減させる新しい資金循環づくりを考える必要性についてでございます。

 こうした問題意識から、海外の取組事例を探す中で、欧米ではスポーツベッティング市場の収益が子供の教育や福祉も直接的、間接的に支える事例もあることから第一次提言で紹介させていただきましたが、本研究会において、我が国におけるスポーツベッティングの是非についてまで検討してきたものではございません。

 また、先日の毎日新聞の報道につきまして、大臣の発言どおり、正しくないものであると認識しております。

坂本(祐)委員 ただいま部活動の地域移行について質問いたしましたけれども、国際卓越研究大学も部活動の地域移行も、同じような構図で進められているのではないかと考えています。

 大学での研究も学校部活動も、これまで市場原理の外にあったものであり、そういったものを、事業成長率を約三%に確保するとか、あるいはサービス業と捉えてビジネス化を推進するといったように、市場原理の中に組み込んでいくことが本当によいのでしょうか。国際卓越研究大学には内閣府のCSTIが、部活動の地域移行には経済産業省といった経済活動を推し進める省庁が文部科学省よりも積極的に推進しているように思えます。

 我が国の大学研究や教育、部活動には、経済的な面だけでは推し量れない、すばらしい面がたくさんあります。文部科学省には、是非、我が国の教育の在り方、大学の在り方、研究の在り方、部活動の在り方、もう一度よく考えていただき、真に子供たちのため、日本のためになるよう教育行政を推進していっていただきたいと存じますが、大臣、いかがでしょうか。

末松国務大臣 文部科学省が担います教育、研究、スポーツの行政分野は、人を教え育み、人の英知や創造力を最大限引き出すことによりまして、国民の人生を幸せで豊かなものにし、我が国の成長の源泉ともなります、極めて重要な行政分野であると認識をしてございます。

 教育につきましては、先日公表いたしました教育進化のための改革ビジョンでも、実は、誰一人取り残さず個々の可能性を最大限に引き出す教育を掲げたところでございます。経済面に着目した短期的な視点だけで考えてよいものではなく、先生御指摘のように、中長期的な視点に立ちまして、一人一人が多様な幸福を求めることができるような教育政策が重要であると考えております。

 今回も、御提案申し上げている国際卓越研究大学法案につきましても、短期的な成果を求めるのではなくて、長期的な視野に立って、我が国の大学の研究力の強化とか持続的な発展を可能とするための大学ファンドからの助成である、そういう総合的な支援を行うものと認識をしております。

 また、運動部の活動の地域移行につきましては、総合型地域スポーツクラブ、スポーツ少年団、大学など幅広い関係者の協力を得て、地域の実情に応じた、子供たちにとって望ましいスポーツ環境の構築を目指すものでありまして、民間業者に限った検討を行ってはおりません。

 元々、もう先生も十分御承知のとおり、これは、教師の働き方改革、そして少子化で中学校内でクラブ活動するための人数が集まらない、生徒数が集まらないというところからきておりますので、その辺は少し、切り離した考え方は強うございます。

 文部科学行政は、人への投資、未来への投資でございまして、中長期的な視点を持って、真に子供たちのための、日本のための教育行政を推し進めていきたいと思います。

坂本(祐)委員 昨日、中学部活、二五年までに委託と読売新聞に掲載されました。毎日新聞にも出ておりました。いろいろな問題がまだここには存在していると思います。是非、前回の質問でも申し上げましたけれども、地域の意向、保護者の意向、子供たちの意向、そして市町村の応援、こういったものを総合的に考えて、しっかりと、真に子供たちのためにある運動部活動を実現をしていただきたいと考えております。

 以上で質問を終わります。

義家委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 白石洋一です。よろしくお願いします。

 まず、文化庁の地域文化財総合活用推進事業についてお伺いします。

 二年、もう超えて、新型コロナが続いております。そのことによって、地方の行事が中止されているんですね。

 その中でも、例えば、コンサートだったり、試合だったり、こういったイベントごとは、キャンセルされたらそれなりに支援がある、そういう制度が用意されております。

 一方、お祭りについては、そういったものがこれまでなかった。

 でも、考えてみれば、地域のお祭りというのは、地域地域によってそれは濃淡がありますけれども、そのことによっていろいろな生業を営んでいる方々がいて、一番は、私の選挙区のところでいったら、屋台と言われますけれども、だんじりだったり、太鼓台だったり、その彫刻や刺しゅう、更にはちょうちんやはっぴ、あるいはそれ用に作ったタオルとか、あとは飲食店とかあるんですけれども、こういった裾野がそれなりにあって、それが、これまで二回、中止になった。大体、秋祭りですから。そのことによって、本当に困っている。それは、お祭りを楽しむ人も困りますし、そのお祭りによって生計を立てている方々も本当に困っているわけですね。

 そんな中で、この地域文化財総合活用推進事業があって、これが補正予算で三十五億ついたということです。その後、本予算、令和四年度に同様のものがあるんですけれども、これは四億。つまり、補正予算三十五億に対して本予算四億。補正予算によって相当これは助かったというところがあると思うんです。

 しかし、これは、地元の方の話を聞くと、周知の方法、こういった事業がありますよ、ふだんよりかはハードルが低いですよという周知の方法にむらがあるようなんですけれども、これは文化庁さん、どのような周知をされましたでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度補正予算事業、地域の伝統行事等のための伝承事業の公募に当たりましては、本年一月十四日に各都道府県教育委員会教育長及び各都道府県知事に対しまして文書を発出し、本事業の募集について、文化財部局及び域内の市区町村への周知を依頼したところでございます。

 あわせて、各都道府県文化財関係補助金総括担当者に対しましても、募集について事務連絡を行い、文化財関係部局や域内の市区町村への周知を依頼いたしました。

 さらに、同日、文化庁のホームページに募集案内の掲載を行うなど、本事業を多くの関係者にお知らせし、より効果的に活用していただくよう取り組んだところでございます。

白石委員 県を通じて市、町に伝えてもらった、市、町の文化財部局に伝えて、そこで任せた、あとホームページにも載せましたと。でも、これはやはりむらがあったんですけれども、ちょっと、この事業の中身について幾つか確認したいと思います。

 これは、納期というのは、三月末ということは、大体、これは補正予算も含めて来年の三月末なんですけれども、伝統工芸職人さんの仕事の長さというのは一年じゃないですね。彫刻だったり、あるいは本当に、太鼓台を覆う刺しゅうというのは数年かかるということなんですけれども、この一年の納期というのはちょっと厳しいんじゃないかと思うんですけれども、この点、文化財保護に使う事業として少し問題があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 本事業は、令和三年十二月二十日に成立した令和三年度補正予算により実施されたものでございます。このため、速やかに事業を実施する必要があるところ、準備や修理の期間を考慮し、本事業は、予算の繰越しを行うことによって、令和五年三月三十一日までを対象期間としております。さらに、十分な修理期間を確保するため、採択通知の日を令和四年四月一日とし、年度初めから事業を開始できるよう配慮したところでございます。

 なお、委員今御指摘のような、修理の内容によっては一年を超えるもの、こういうのも確かに文化財はございます。そうした場合は、通例、各申請者は、予算事業の期間を考慮していただいて、うまく年度内に収まるように、ちょっと事業計画を、事業量を分けていただくとか、適切な修理計画を立てていただいて応募いただくというのをいつもやっているところでございます。

白石委員 ちょっと確認ですけれども、それは、計画当たりというのはちょっと分かりましたけれども、この補正予算の場合は一点当たりですよね。つまり、個別個別の、刺しゅうだったり、ちょうちんだったり、それでも計画を、それに代わるもので出して、一年を超えてもよろしいんでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 この補正は特別な新しい組立てで、コロナということがありまして急遽できたものでございますので、基本的には、先ほど申し上げた、繰り越した令和五年三月三十一日までを対象でやっていただくようにうまくセットする必要がございます。

 基本はそうですが、ただ、その後まだ続くということであれば、それはまた、先ほど委員からも御紹介あったように、いつもの当初予算の方で似たようなメニューがございますので、そちらの方でまた御申請いただくとか、ちょっと別の、いろいろな支援の仕方を考えながら応援していくというやり方が必要かなと思っております。

白石委員 その辺も是非分かるようにしていただきたいんですね。これは一年以内だから駄目だと諦めてしまう、もっと簡単なもので済まそうというふうになってしまいます。

 もう一つは、この対象、上限金額、補正でいったら、修理が一千五百万円上限、一方、新調の方は百五十万円、十分の一ですね。そして、本予算の場合は、上限、修理の場合が一千万円で新調が十万円と、これはもう百分の一というふうに大きな差があるんですね。

 でも、やはり、伝統工芸を守るという意味では、修理だけじゃなくて新調も大事なんですよ。なのに、十分の一、百分の一の大きな差があるのはいかがなものかと思うんですけれども、どうでしょう。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話あった用具等の修理と新調の二つがありまして、そのところから説明させていただきたいと思います。

 この事業におきます用具等の修理というのは、用具等そのものに手を加えて維持を図るというものでして、新調は、同等のものを全く新しく作り上げるというものでございます。

 このことから、修理は、今一番まず御要望が多くなるのは、山車とかというようなものが主な対象となっていまして、新調でよく来るのは衣装、着物の方ですね、そういったものが主な対象となっていますことから、こうした実態を踏まえまして、先ほどの委員御指摘の上限額とかは、そのようなことを考慮された形でつくられたところでございます。

白石委員 もうこの際、伝統工芸を守るという意味で、新調、新しく作るということも対象に加えるということも是非検討いただきたいなというふうに思います。

 そして、この事業によって買おうと思ったものがあったとしても、日本の職人さんのところにちゃんと仕事が来るかどうか、ここの担保がちょっと弱いと思うんですね。

 この補正予算のところで、主なポイントというふうにあって、そこで、事業の採択に当たっては、地域の文化財の継承基盤の形成や関係者の育成という点に御配慮くださいと。ここで何となく、地域の職人さんに仕事が行く形でお願いしますと。でも、これは条件にはなっていないんですね。もっと厳しい形にしてもいいんじゃないでしょうか。

 さっき言った一年以内の納入ということもあって、それだったら大手にお願いして、その大手は輸入物にする、こういった形もどうしても出てきます。そんな形にならない、もっと地域の職人さんに仕事が落ちるというふうにした方がいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 この事業の実施に当たりましては、その趣旨に鑑み、今委員から御指摘、御紹介ありましたとおり、募集案内の中で、主なポイントというところで、地域の文化財の継承基盤の形成や関係者の育成という点に配慮するよう明記しているところでございます。

 このため、本事業による修理につきましては、申請者が業者等を選定する際には、この募集案内の趣旨を踏まえて、修理の内容に応じて適切な対応がなされるよう促しているところでございます。こういう形で、日本の伝統を守るのを地域でしっかりとやってほしいという趣旨を伝えているところでございます。

 あと、具体にどのような形で選定するかということになりますと、やはりそれはその地域地域ごとにいろいろな事情があろうかと思いますので、今のところ、このような形で我々の方としては各地域にお願いし、指導させていただいているところでございます。

白石委員 促すということですけれども、是非、申請の、審査のところでチェックし、そこも一つの大きなポイントと見ていただきたいんですね。でなければ、地域の人材育成、継続というのにつながらない、輸入物で済ませてしまう、こういうことになってしまうと思います。

 そして、次は大臣にお伺いしたいんですけれども、今までのやり取りで、この事業は本当にありがたい、補正予算三十五億、これで、二回お祭りが見送られた、職人さんも本当に困っている、そこに対して仕事が来る、これはありがたいんですけれども、やはり、その周知は、県に文化庁は流して、県は市、町に流して市、町にお任せ、じゃ、その市、町の部局がどういうふうに伝えるかによってむらがあるんですね。

 そんな中で、文化庁さんはホームページに入れたとかというふうに言っているんですけれども、これは相当難しいところがあって、市、町の文化財部局の情報量というか、目端が利くかどうかによって違いが出てしまっているんです。

 この辺りを、例えばメディアレクだとか、あるいはこの特出しのポイント、さっき出てきましたポイントのところでもっと強調するとか、こういったものが出たときには本当に津々浦々伝わるようにしていただきたいんですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

末松国務大臣 今回の事業、令和三年度補正予算で、六十五億ですか、ついてございました。

 お祭りなどの伝統行事は、地域の方々の心のよりどころでございまして、大切に伝承されてきたものですが、新型コロナの影響によりまして、もう全国、本当にここ二年開催されていないところが多いと思うんです。延期にもなったと思います。存続の危機に、危ぶまれる状況が生じてございます。

 このため、文化庁では、今申し上げましたように、令和三年度の補正予算において、地域の伝統行事等の伝承事業を立ち上げまして、祭りの山車や先生お話あった衣装などの用具修理につきまして、従来の事業と比べて補助金の上限を拡充するとともに、申請の簡素化等、使い勝手の向上を図ってきたところです。事業の募集に際しましても、なるべく多くの方々に活用いただけるよう周知を図ってきたところでございますが、今般の事業の実施に当たりましては、一層の効果の周知に取り組んでいきたいと思います。

 先生お話があったように、文化庁が周知を出す、県庁が受け取る、県庁は市、町に案内に行かなきゃいけないというところで、確かに、注意深い市、町は、ある面で、言葉はどうか分かりませんけれども、しっかり見ながら申請をぱっと出していくというようなところと、ゆったり見ながら出したところがなかなか処理、提出が遅れてしまったとか、いろいろなケースがあると思いますけれども、それは遅い早いという問題ではなくて、やはりきちっと公平な機会を与えてあげるということは大事だと思いますので、どういう周知の仕方がいいかということは一度ちょっと文科省内で協議をしてみたいというふうに、そのことを考えてみたいと思ってございます。

 今回の補正予算事業はあくまでコロナ禍の厳しい状況を踏まえた特別な措置でございまして、今後、用具の修理等については本予算事業で支援を行うこととなっておりますが、引き続き、先生始め皆様方の声を伺いながら取り組んでいきたいと思います。

白石委員 大臣、ありがとうございます。

 是非、文化庁内でもちょっと話し合ってください。というのは、このハードルが低いぞというところの違いは、補正予算で、ここの、主なポイントの、ここだけなんですね。ここが本予算のところと違うだけ。あとは、メディアレクで取り上げられた報道、新聞もあった、それぐらいの違いなんです。それぐらいの違いに気がつくかどうか、これは全千七百ある市、町に求めるのは難しい。

 大臣、今、報道によると、令和四年度補正予算が策定されるんじゃないかというふうにされていますけれども、是非その際にはもう一度、この地域文化財総合活用推進事業で、一点当たりのやつ、ハードルを低くしたものも是非入れていただいて、そのときには条件として、前回の、令和三年度の補正予算では採択されたところは除いて、採択されなかったところについて申請を受け付ける、こういった形で、ばらつきがあるところのむらをなくすというふうな形で、補正予算を組まれるとしたらこの事業を入れていただきたいんですけれども、大臣のお考えはいかがでしょう。

末松国務大臣 今先生お話ありました件、御意見として受け止めてまいりたいと思ってございます。受け止めます。

白石委員 是非よろしくお願いします。

 地方によっては、お祭りというのは、コンサートやイベント、試合よりももう桁違いに大きいインパクトを持っていて、そこで暮らしている人がたくさんいますので、よろしくお願いします。

 それで、次に、国際卓越研究大学についてお伺いしたいと思います。

 これで、文科省の基本計画を策定して、それに対して大学が申請をし、その申請が基本方針との整合性を求める必要性というのを条件に置いています。

 この整合性を求めないといけないんでしょうか。大学はこんなことをやりたいということを出して、それを審査すればいいのであって、文科省が、こういった基本計画があるので、これに合うようにしてくださいというふうに出す必要はどこにあるんでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘いただいた基本計画は基本方針のことかと存じますが、この法案に基づく、大学が出してくる計画の認可は、大学自身が定めるビジョンに基づき、国際卓越研究大学の設置者の申請により行うものでございまして、同時に、大学ファンドの運用益によってJSTが行う助成の前提となるものでございます。

 また、文部科学大臣が定める基本方針は、大学ファンドを活用して国際卓越研究大学における研究及び研究成果の活用のための体制の強化を推進していく上で、その際の基本的な指針となるべきものとして、国際卓越研究大学が作成する計画の認可に関する基本的な事項も含めて策定されるものでございます。

 具体的な記載内容は今後検討していきますが、世界と伍する研究大学の目指すべき姿などを踏まえ、大学の体制強化の目標の在り方、事業内容、事業計画の期間など、文部科学大臣が計画の認可をするに当たって踏まえるべき事項を記載することになると考えております。

 このため、文部科学大臣は、大学ファンドによる支援の前提として、大学のビジョンに基づき大学自らが作成した計画が、この基本方針に定める体制強化の目標や計画の認可に関する基本的な事項と適合していることを確認することとしておるところでございます。

白石委員 是非、その文科省の基本計画、細かいところまで決めるんじゃなくて、大学がよかれと思って、学者の方が進めていこうという計画、それをほぼそのまま受け入れるような形の方がいいのではないかと思います。そこに対して細かく文科省が、こういったものでなければならないと、特に、先ほどおっしゃった体制、体制という言葉がたくさん出てきましたけれども、体制というのがそれほど大事なものなのか、ちょっと私は保留したいと思いますが。

 次は、大学がいよいよ、じゃ、申請するとき、申請して認可する際には、総合科学技術・イノベーション会議、略称CSTIの意見を聞く必要があるというふうにされていますね。

 このCSTIの意見をどうして聞かないといけないんでしょうか。よく引き合いに出すハーバード大学、ケンブリッジ大学、そこにはアメリカ大統領とか、あるいはイギリスの首相は出てきません。でも、CSTIというのは日本の首相が議長ですよね。こういったところの意見を聞く理由というのはどこにあるんでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 総合科学技術・イノベーション会議、CSTIは、科学技術イノベーション政策の推進のための司令塔として、科学技術に関する優れた識見を有する者の参画も得て、我が国全体の科学技術を俯瞰し、総合的かつ基本的な政策の企画立案及び総合調整を行う組織でございます。

 世界と伍する研究大学の実現は、科学技術イノベーション政策における重要事項でもあることから、このCSTIの意見を聞かなければならないこととしております。

白石委員 このファンドをつくるところはハーバードとかを出して、いよいよ、じゃ、日本でということになると、こういった機関の意見をちゃんと聞かないといけないというふうになるところに違和感を感じるんですね。

 そのCSTIというのは、さっきおっしゃった、議長と十四人の委員と。そこの事務局って、大体何人ぐらいの体制でやるんでしょう。

合田政府参考人 お答え申し上げます。

 CSTI、総合科学技術・イノベーション会議の庶務につきましては、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局というものが担当してございます。

 今、突然のお尋ねでございますので、ちょっと正確な定員数というのは把握いたしてございませんけれども、定員数としては五十程度、それから、大学等から研修生等の形で来ていただいている方もいらっしゃいますので、総勢百人程度の組織かというふうに認識をいたしてございます。

白石委員 五十人に足し上げて、合計百人程度。いろいろ口を出してきそうな気がするんですね。加えて、このCSTIの中身は、議長が総理で、あと政治家を加えたら七人が閣僚、政治家ということで、そこのアドバイス、意見のところに政治的な偏りがあり得るんじゃないかと懸念するんですけれども、その懸念は杞憂でしょうか。いかがでしょう。

合田政府参考人 お答え申し上げます。

 総合科学技術・イノベーション会議でございますが、先生御指摘をいただきましたように、議長及び議員十四人以内をもって組織するということになってございます。このうち、科学又は技術に関して優れた識見を有する者のうちから、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命する者、いわゆる有識者議員、この数が議員の総数の十分の五未満ではあってはならないということでございまして、現在、七名の有識者議員が国会の同意を得て任命されているところでございます。

 なお、先ほどのCSTIの議論の在り方でございますけれども、CSTIの会議運営規則におきまして、議長たる内閣総理大臣は、科学技術の専門性の観点から、議事を決するに当たり、全員の同意を得るように努めなければならないと規定されているところでございます。実際に、CSTIにおける審議の過程におきましても、審議事項については、まず、原則毎週木曜日に開催されておりますCSTI有識者議員懇談会におきまして、有識者議員及び日本学術会議会長で専門的な観点から議論を行い、その上で、内閣総理大臣や関係大臣を含む本会議で決定いただくというプロセスを踏んでいるところでございます。

 なお、今般御提出を申し上げている法案におけるCSTIの意見聴取につきましては、研究者の自主性の尊重その他、大学における教育研究の特性に配慮を定める本法案第二条を踏まえ、CSTIにおいて、有識者議員においてしっかりと御議論いただくなど、丁寧な審議を経る必要があるというふうに考えているところでございます。

白石委員 政治的な偏向がやはり懸念されます。半数が政治家で、しかも、そこの政治家の下、内閣府に百人いて、そこでいろいろな書類を準備されて、会議やっています、公開しています、それでもやはりだんだん圧倒されるんじゃないかなというところが懸念されるわけです。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思います。

 この大学に認定されるためには、いろいろな計画を出して、それに対して、CSTI、政治家が中心になっている省庁の話を踏まえたりしていかないといけない、こういったことで大学の自律的な運営、大学の自治というのが危うくなるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、この点、この法律が制定されたら、どのようにこれから運営されるべきだと思いますか。大学の自治が守られるんでしょうか。

末松国務大臣 本法案に基づきます国際卓越研究大学の認定及び計画の認可は、大学自身が定めるビジョンを踏まえまして、大学の設置者による申請に基づき行うこととしております。

 この計画の審査に当たりましては、世界と伍する大学を目指す際の具体的な目標であるとか、どのように研究力を強化するかという取組を確認しますが、大学ファンドからの助成の使途については、可能な限り、各大学の自由裁量の下、柔軟かつ適切に決定されることが重要と考えております。

 また、支援開始後ですけれども、計画の実施状況につきましては、大学から定期的に報告をしていただきまして、国においてそれを確認し、必要に応じて助言を行うこととしております。

 その際、大学に対しましては、長期的、安定的な支援を行うという制度趣旨を踏まえますと、短期的な状況のみで確認するのではなく、長期的な観点から適切な助言を行っていきたいと考えております。各大学が自ら構想する世界と伍する研究大学の具体的な姿、その実現の計画をしっかりと支援をしてまいりたいと思います。

 先生御懸念のことにつきましては、省内でも話もいたしておりますけれども、大学の自治というのは全般的に大学にあるわけですけれども、自主自律ということにつきましては、やはり最大限生かされるべきだと思います。

白石委員 大学の自治、自主自律については最大限尊重されるべきという大臣のお言葉、これは本当に記録に残りますので、よろしくお願いします。

 先ほども大臣から長期的、安定的という言葉が出ましたけれども、つまり、長期的だから、短期的な浮利を追うわけじゃないと。安定的と、多少変動しても長い目で見ていくということだと思います。細かいところまで口出しされていたら、やはり萎縮すると思うんですね。その点、是非お願いします。

 一応、法案にも、第二条のところに書かれています。「大学における教育及び研究の特性への配慮」ということで、「国は、この法律の運用に当たっては、研究者の自主性の尊重」、これは学問の自由ですね、研究者は個々人ですから、「その他の大学における教育及び研究の特性に常に配慮しなければならない。」

 この後段の部分が大学の自治に相当する部分じゃないかと私は推察はするんですけれども、非常に表現が弱いですね。ほかの、大学における教育及び研究の特性に常に配慮する、特性に配慮する。大学の自治そのものの言葉は使っていなくて、特性に配慮すると。ちょっと、ぱっと頭にイメージできないような文言になっているように思います。大学の自治を侵さないように是非お願いしたいと思います。

 そして、合議体ですね。学外者を中心とする最高意思決定機関をつくってください、これが認定の条件になっている。さっき局長からもあった体制という中の一つのポイントだと思うんですけれども。

 これによって、大学の中で、経営の部門と、それから教えるという教学組織、二つの機能があると思うんですけれども、経営組織、経営機能が上位に立ってしまうことになるのではないでしょうか。いかがでしょう。

池田政府参考人 お答えいたします。

 合議体によるガバナンスは、世界と伍する研究大学の実現に向け、大学が内外の動向等を踏まえつつ自律的に成長していく戦略を策定、実行できるよう設置を求めるものでございます。

 今回の制度改正に当たり開催した有識者会議におきましても、合議体は、事業・財務戦略の策定など、大学経営に関する重要事項の決定を行い、教学事項等に関するマイクロマネジメントは行うべきではなく、個々の研究内容や講義のシラバスの内容などの教学事項については介入すべきではないとされています。

 文部科学省としては、このような考え方に基づいて、適切な制度運用を図ってまいりたいと考えております。

白石委員 マイクロマネジメントはすべきではないと。

 そのマイクロマネジメントの中に、例えば人事だとか教育研究の中身、シラバスとか、こういったものは含まれるんでしょうか。つまり、そこまで口を出さないという中に、人事だとかあるいは教育研究の中身、シラバスとかは入っているんでしょうか。

池田政府参考人 先ほどお答え申し上げたとおり、教育内容やシラバスの内容などに関しては口を出さないということになるかと思います。

 人事に関しては、学長の選考などに関しては当然関与いたしますけれども、個々の学部などの人事などに関しては、これは全体を見て判断することになると思います。マイクロマネジメントと言われるようなところまで、人事の細かいところまでは口を出さないものであると考えております。

白石委員 人事のところは全体を見てというのがちょっと微妙なところですけれども、とにかく細かいところには口を出さないというところは局長から確認されたというふうに捉えたいと思います。

 もう時間がないので、大臣、最後のところの質問にちょっと飛びますけれども、これは十兆円のファンドがあって、三%で運用して、毎年三千億円の運用益がある前提で話が全部進んでいるんですけれども、ただ、これは確定されているわけじゃないですね、うまく三%なりで運用できればということなんですけれども。

 これは、運用益が想定されたものではなかった場合、どうなるんでしょうか。ごめんね、こういうものだからなしよということで、大学では準備して、それなりに教授とか研究者とかを雇って、設備とかそれを当てにしていた、ごめんなさいになってしまうんでしょうか。どうでしょう。

末松国務大臣 大学ファンドの運用の目的は、その運用益から、世界と伍する研究大学の実現に必要な支援等のための財源を安定的に確保することでございます。そのため、運用に当たりましては、グローバルな長期分散投資を行うことで、先ほども申し上げましたように、長期的、安定的に運用益を確保することとしております。また、大学への支援を安定的に行う観点から、運用益の一部から六千億円を上限に支援のためのバッファーを確保することとしておりまして、JSTの財務状況も勘案しつつ、これを活用してまいります。

 なお、運用立ち上げ期におきましては、運用益やバッファーの構築等の状況を踏まえて、段階的に、数を一つずつ増やしていくという形になろうかと思うんですけれども、大学への支援額を拡大することといたしております。

 こうした取組を通じて、大学への継続的、安定的な支援の実現を図ってまいりたいと思います。

 四%という、三プラス物価上昇の数字を出しておりますけれども、一つの目標でございまして、しっかりと達成したいということ、今、ここでは、やはり決意表明しかできないと思います。JSTの専門家も置いておりますので、そういうことを考えていきたいと思います。

白石委員 終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党・無所属の会の吉田はるみです。

 午前最後の質問になります。大臣始め文科省の皆様、そして委員会の先生方、お疲れさまでございます。

 始まって約一時間半ぐらいたとうとしていますが、この一時間半というのは大学教員にとってみると、一こま一時間半なんですね。この一時間半を学生と向き合って、そしてこの一時間半びっちり講義をしていく。これを毎日二こまから三こまやっているわけです。非常勤の大学の講師の方は、これを週に十二こまやっている先生方もいらっしゃるというこの厳しい現実をまず最初にお伝えさせていただきたいと思います。準備にはその倍がかかります。

 では、今日、これから厳しい質問もさせていただきますが、最初に申し上げさせてください。

 私も、日本の大学の研究力を上げて、世界に伍する大学、研究機関になってほしいという強い思いを持っています。そして、本委員会にお集まりの先生方も、役所の皆様も同じ思いだと思います。ここで問いたいのは、そのやり方です。どうぞその点は誤解なきようにお願い申し上げます。

 では、まず確認します。

 この大学ファンド、十兆円ですが、このような理解でよろしいでしょうか。

 この十兆円ファンド、まずは外部の専門機関に委託をし、それを運用し、毎年約三千億円程度の運用益を見込む。それで、ある一定期間、大学に、その三千億円の中から、数校程度この卓越大学に指定をし、何年間か補助した後、その後は、そこから自分たち、大学、大きくなって、自分たちの大学でファンドを組成し、運用できるまでに成長してくださいという意図でこのファンドが組成されたという理解でよろしいでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には、今委員御指摘のとおりでございます。

 私どもは、JSTに十兆円規模のファンドを造成し、JSTがこれを運用して、この運用益を大学に支援をすると。

 大学は、この支援も受けながら、財政基盤を強固にしていただくとともに、新しい領域の研究なども展開していただいて、将来的には卒業ということも目指して、教育研究活動、事業規模の拡大をしていただくということになります。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 私も、経済界にいて、かつ大学にも籍を置いた一人として、この十兆円ファンドはとても真剣に考え、そして、ちょっと今日はいろいろ言わせていただきたいなと思っております。

 はっきり申し上げると、ということは、この運用益の恩恵にあずかれるのは僅か数校ということなんですが、こんなところでしょうか、国立大学トップ三校ぐらい、あと私立大学トップツー、合わせて五校程度ではないかと思います、三千億円を分配するというところに考えますと。それが国立大学二、私立大学三なのか分かりませんが、大体五校程度ではないかと想像します。

 その僅か数校のための大学ファンドということになりますが、具体的にお伺いします。

 この卓越大学の認定を受けるためのキー、肝が大学のガバナンス改革だというふうに理解をしています。先ほど白石先生からも御質問ありましたけれども、経営と、教える教学の分離だそうです。私立大学は元々学長、理事長とそれぞれ役割がありますので、そんなに違和感がないかもしれませんが、しかし、問題は国立大学です。

 これまで学長が運営も教学も研究もトップという位置にいたわけですが、これを分離することに国立大学からどのような反応が、反発があると思いますか。大臣、お伺いいたします。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 この大学ファンドの構想が始まりましてから、文部科学省及びCSTIは、随時国立大学協会へ説明するなど、国立大学に対しても丁寧な説明を心がけてまいりました。

 その中には、厳しい御指摘もありつつも、基本的には、日本の研究力低下の現状を踏まえ、今このような支援をする必要があるのではないかという御意見もいただいております。

 国立大学、いろいろな規模や学部構成など、いろいろな大学がありますので、いろいろな意見はあるかと思いますけれども、私どもとしては、できるだけ丁寧に説明しつつ、理解を求めるようしてきております。

吉田(は)委員 もしかしたらトップの人たちの理解は得られているのかな、どうなんでしょう。ちょっと私にはまだぴんとこないんですけれども、大学の研究に携わっている、また、講義に携わっている先生方からは、私は本当に恐怖だという声を聞いています。

 実際、合議体と呼ばれる組織がガバナンスの中に必要だということですけれども、これは先日の文科省の方とのレクで伺って、例えば株式会社を例に考えてみると、この合議体は取締役会に当たるものですねというふうに伺ったところ、そのような理解ですというふうに聞きました。取締役会ということは、学長の上に当たるものになるわけですよね。経営の指針を決めていく、株主の利益の最大のために動くわけです。

 先ほど、経営と教学は分離しているから心配ないというような御答弁があったかと思うんですが、私、やはり心配です。というのは、通常、経営をする場合、商品、サービス、それをお客様に買っていただくために、その価値を上げていきますよね。同じように、大学は何が商品であり何がサービスかといったら、教学の方だと思うんですね。ここに口出しをしないと言い切れるのかなと、私は先ほどの答弁を伺っていて思いました。

 では、はっきりと聞きます。

 こういうような経営的手法を取り入れていくことが、アカデミアの中に、アカデミズムの中に弊害を生むと私は思うんですが、不採算部門の効率化、人員整理、こういうことを誘発しないと言い切れるでしょうか。お伺いします。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の方から、取締役会のような話もございました。

 不採算部門の整理がされないと言い切れるのかということでございますが、諸外国のトップレベルの研究大学におきましては、確立された研究分野を牽引することに加えまして、新たな学問領域を生み出し、教育プログラムの革新を図るとともに、研究成果の社会実装や新産業の創出支援を担うなど幅広い役割を果たしておりまして、大学の機能を大幅に拡張しているという現状がございます。

 また、そのように機能を拡張する中で、事業の全体規模を広げることによりまして中長期的な視点での資源配分も可能となり、人文・社会科学を含め多様な学術研究、基礎研究が展開されていくものと考えております。

 国際卓越研究大学では、その使命が、最先端の知の基盤となることとともに、これからの社会変革を担うことであることを踏まえれば、産業界の要請に直接応える研究のみならず、多様な学術研究、基礎研究へ投資を行っていくことが不可欠となっているというふうに考えております。

 国際卓越研究大学におけるガバナンス改革の目的につきましては、自律的に成長していく戦略を策定、実行できるように、経営の意思決定において多様な専門的知識を生かせる体制を構築することでございまして、これにより事業成長が図られ、中長期的な視点での資源配分も可能となり、多様な学術研究、基礎研究への投資が可能となるというふうに考えているところでございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 であるとしたら、事業成長を見誤ることのないように、この合議体の中に入っていく人選というのはとても重要だと思います。経営的な観点からいったらやはり不採算部門になるものや不必要になるものや、そういうものが出てくる可能性がありますけれども、やはりアカデミズムをきちんと理解する人というのは必須だということを申し上げます。

 その中で、実際これだけ大がかりなガバナンス改革をがらっとして、国立大学にしてみると、すごいコミットメントですよね。これだけコミットメントをして、さあ、資金提供、安定的にしていただけるんでしょうか。

 この大学ファンドの運用年数は何年を想定していますか。また、一校当たり何年くらいのスパンで資金提供をしていただけるのでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 世界と伍する研究大学を実現していくためには、支援対象大学の研究基盤の抜本的強化や若手研究者への長期的、安定的支援を行っていくことが重要であるため、短期的な成果主義に流されないよう、その活動を長期的に後押しするとともに、財務基盤が十分に強化されるまでには時間がかかることから、継続的、安定的に支援を行うことが必要と考えております。こうした趣旨を踏まえれば、大学ファンドからの支援期間は一定程度の長期性を有する必要があると考えております。

 また、支援対象大学の計画の進捗状況に関しては、大学が自ら定めた研究力強化や事業成長等の目標の達成状況を客観的な指標に基づいて評価するとともに、そうした目標が一定期間連続して未達成の場合などは、長期的な視点からの評価の下で結果に応じた措置を講ずることを予定しております。

 支援対象大学から行われる進捗状況の報告内容は随時CSTIや科学技術・学術審議会にも報告し、国として必要な助言を行うことを予定しており、こうしたことを踏まえて、大学として中長期的にしっかりと取り組んでいただくことを考えております。

吉田(は)委員 具体的な年数というところでいま一つ、ちょっとぴんとこなかったんですけれども、少なくとも、一、二年で、ごめんなさい、認定から外れましたというようなことがあってはならないということを申し上げたいと思います。

 また、三%の事業成長、これが一つの目標として課されているわけですが、ちょっとお伺いしたいんですけれども、この三%の事業成長ができなかった場合、この責任は合議体にありますか、学長にありますか。

池田政府参考人 そうなった場合の責任は、各大学の設置者にあるというふうに考えております。したがって、国立大学であれば国立大学法人ですし、私立大学であれば学校法人でございます。

吉田(は)委員 法人のトップという、機構長という方になるという理解でよろしいでしょうか。

池田政府参考人 法人の長ということでございます。

吉田(は)委員 なかなか、このファンドの運営というのは厳しいですよね。十年ぐらいのスパンで安定した資金を供給していただかないと、大学としてはこれだけの大きなガバナンス改革に踏み込むわけですから、最低でもそうしていただきたいと思います。

 一つ、ちょっと可能性があるか伺いたいんですが、もしこの三%の事業成長ができない、あるいはそれ以外の、卓越大学としては不適当な状況になった場合、その一校は外されて、また新たにそのポストに新しい大学が来るという可能性はあるのでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、国際卓越研究大学の計画の進捗状況等の評価に当たりましては、短期的な視点ではなく、中長期的な視野も踏まえて評価していく必要があるかと思います。そうしたことを踏まえて、仮に、長い期間にわたって事業計画を達成できないような状況が中期的に続くとか、そうした場合には取り消すということもできるようになっております。

 また、逆に、大学の事業規模も成長して、財政基盤をしっかりと整えて、卒業するということもございますので、そうした形で卓越研究大学の認定を外れた後に、新たにポテンシャルのある大学が出てきた場合には、その申請に基づいて新たに認定、認可をするということはあり得ると考えております。

吉田(は)委員 この十兆円ファンドからの卒業、できるかどうかというところなんでしょうか。

 それでは、皆様のお手元に配らせていただきました資料、二枚目を御覧いただきたいと思います。

 こうして最初は十兆円ファンドからの運用益で助けるけれども、それを基に成長して、後は独り立ちできるような大学になってくださいねということらしいんですけれども、ハーバード大学は今、大学のファンド規模が四・五兆円、そしてケンブリッジ大学は一兆円です。それに対して、ちょっと東京大学を例に取りたいんですけれども、東京大学、百九十億円。格段の差がありますよね。ええっ、ここまで行けるのかな。ちょっとシミュレーションしてみたいと思います。

 まず、ハーバード大学は、私、比べちゃいけないと思うんですね。なぜなら、ちょっとびっくりしましたけれども、今日のドルのレートでハーバード大学の学費を計算してみました。大臣、どのぐらいか御存じですかね。もう御存じかもしれないんですが、ハーバード大学のフルタイムの学生、一年間の学費、今日のドルレート百二十七円八十七銭で計算しますと、七百三万百八十四円です、一年間。全然授業料が違いますよね。これは私立大学です、ハーバード大学。なので、ちょっとハーバード大学は外します。

 ケンブリッジ大学、これはイギリスの国立大学なので、ケンブリッジ大学をちょっと参考にしたいと思います。一兆円規模のファンドです。

 お伺いします。ケンブリッジ大学も、こうして自己ファンドをつくるまでに相当な年数を費やしたと伺っていますが、どのぐらいの年数を費やされたでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、手元に詳細な資料がございませんが、元々イギリスの大学はアメリカに比べて寄附金を集めたりするような風土が薄かったものですから、恐らく、二〇〇〇年前後ぐらいからここ二十年ぐらいで急速に自主的な基金を積み増して、財政力を強化してきたものと理解しております。

吉田(は)委員 じゃ、東京大学も仮にそこまで行こうと思ったらどのぐらいかかるのかなと思うんですが、その収入に当たるところは、いわゆる大学が出す利益、それから寄附、また、企業からの出資金ということがあると思うんですが、東京大学の直近の例で構いません、企業会計で言うところの経常利益に当たる金額がファンドに積み上げられるのではないかと思うんですが、その金額と、それから東京大学が受け取った寄附の金額、その両方を教えてください。

義家委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

義家委員長 速記を起こしてください。

 増子高等教育局長。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 東京大学の経常利益については四億円、それから寄附金については百億円というふうに承知しております。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 四億円の利益、それから百億円の寄附、これが毎年入ってきて、もちろんこれだけでは足りないですね。一兆円規模まで持っていくとしたら、単純計算で毎年五百億円ぐらい積み上げていかなければいけません。そうすると、企業側からの出資、こういうものも募っていかなければいけないと思うんですが、これは相当な企業努力が必要になってくる、企業努力というんでしょうか、経営、この合議体の努力が必要になってくるんじゃないかなと私は懸念をいたします。

 今回、このファンドで、仮に数校にこのお金が渡るとすると、一校大体五百億円ぐらいというふうに聞いたんですが、今、東京大学の運営交付金は八百億円だそうです。運営交付金八百億円、このファンドで入ってくるのが仮に少なく見積もって五百億円だとすると、相当な割合がこのファンドからの運用益を期待しているということになります。

 これは、言い方はちょっと乱暴かもしれないんですが、もう四の五の言わずに、とにかくこのファンド、卓越大学に認定してもらって、この資金をいただかないことには前に進まないという状況だとすると、ちょっと、私は、学問の自由とか、それから大学の自治というところには大きな疑問が残るのではないかということを御指摘申し上げます。

 では、事業成長の三%に関して、これは海外の大学を基準に、それを当てはめた、それを参考にしたと伺っているんですが、伺います、直近の日本のGDP成長率は何%でしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 GDP成長率は、内閣府の統計によりますと、二〇二一年の値は前年比で実質一・六%と承知しております。

吉田(は)委員 GDPがその値で、事業成長、大学には三%を望むというのは、これは厳し過ぎると思います。国もそこまで成長していないのに、大学に三%って、ちょっともう何か、大学関係者の皆さんは、何でだよという声が聞こえてきそうですけれども、ここをちょっと考え直していただきたいなと希望を申し上げます。

 そして、大臣、大臣の所信の中に、「経済事情に左右されず、誰もが質の高い教育を受けられるようにすることは大変重要です。」というふうに大臣も述べられました。

 先ほどのハーバード大学の例ではないんですけれども、授業料が高いということは、それだけ収入もあります。何だかこの影響で、事業成長三%を実現するために、収入を増やして支出を出すというところで、まず収入のところで、授業料を上げるというのは、言ってみれば簡単な収入増になるわけですけれども、大臣、国立大学では授業料を上げないと言い切っていただけないでしょうか。

末松国務大臣 今、端的に申し上げましたら、事業成長のみを拡大するために、それをもって授業料を大きな財源の一つにする、そういう考え方には立ってはございません。

吉田(は)委員 大臣、ありがとうございます。

 本当に、授業料が上がるというのは、学生にとって一番つらいところです。それも、国立大学でじわじわじわじわ、今、授業料が上がってきていますので、誰もが質の高い教育、これを本当に実現するためには、国立大学としてのこの使命を是非全うできるようにとお願い申し上げます。

 それでは、ちょっと時間も限られてきましたので、最後に一つ、御質問を申し上げます。

 これも大臣にお伺いしたいです。こうして日本の研究力が上がらないという原因はどこにあるとお考えでしょうか。

末松国務大臣 お答え申し上げます。

 我が国の研究力は、近年、世界と比べまして相対的に低下している、先生御指摘のとおりでございます。

 研究力が相対的に低下している背景には、諸外国が研究開発投資を増加させているということが一つ、一点挙げられると思います。

 それと、経済的な不安やキャリアパスの不透明さによる博士後期課程への進学者数、そして進学率の低さということが言えると思うんです。百万人いまして、先生がおられたイギリスですけれども、修士は四千二百十六人です。日本は五百八十八人です。昨日、ちょっと自分で調べてみたんです。博士は、百万人に対して、イギリスは三百七十五人、日本は百二十人なんですね。やはりそれだけ、修士から博士に上がって勉強するという方々が減ってきておる。これは企業の一つの評価の仕方もあろうかと思います。

 それと、若手や女性研究者を取り巻く不安定な研究環境、また、新たな研究分野への挑戦の不足であるとか、国際的研究ネットワークの構築の遅れが挙げられております。

 こういうことが原因として考えられると思います。

 このため、文科省としては、科学技術予算の拡充をしっかり進めるとともに、この予算を用いて、国際的に卓越した研究大学を実現するための大学ファンドの創設とか、今申し上げたように、博士課程の学生への経済的支援の抜本的拡充と、世界と戦える優秀な若手研究者の育成と、それとやはり、女性研究者の活躍に向けた環境整備、必要かなと思っております。

吉田(は)委員 大臣、ありがとうございます。本当に重要な御指摘をいただいたと思います。

 こうしてドクターに進む人が少なかったりする、その原因は仕事なんです。その後の仕事がないということ、これが一番大きいと思います。安定的な雇用がないということが、私は、今、研究者の方々が研究に没頭できない、研究に邁進できない、そういう原因があると思います。

 資料三枚目を御覧いただきたいと思います。

 六百十五校の大学を調査してみましたら、非常勤の教員の割合が六〇%以上、五〇%以上ということで、ほとんどが非常勤の先生で賄われているところです。特に首都圏はその傾向が大きいわけなんですけれども。

 大臣、もう一時間四十五分たっていますけれども、一時間半のこまを週に十二こまやって、三校、四校かけ持って、そして生計を立てていらっしゃる大学教員の方、多いんですよ。これでは、研究に力を入れるような時間はありません。学務だけでもう忙殺されてしまいます。

 こういった雇用の安定というものをとにかく一番に考えていただきたいということと、大臣が最後におっしゃってくださいました、女性の研究者の少なさです。

 これは資料の四枚目に当たりますけれども、先ほど比較したハーバード大学、アメリカでは三三・四%の女性研究者がいます。イギリスに当たっては三八・七%という女性研究者の割合。それに対して、日本は一六・二%です。女性研究者の力が存分に発揮できていない。また、結婚や出産、その間、大学を離れなければいけない、そういう方も多くいらっしゃいます。こうした女性の研究者の力が発揮ができていないということも、私は大きな原因だというふうに感じます。

 このために、大臣、具体的にできることというのは何かあるんでしょうか。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生の方から、期間つきの研究員の数が多いこと、それから女性研究者への活躍促進に対する施策について御下問をいただきました。

 まず、私どもも、先生御指摘のとおり、特に若手の大学教員が任期つきの方が増えているという現状を承知しております。このため、大学教員として安定して教育研究に専念できる環境をいかに確保するか、その成長につながるキャリアパスをどう構築して、魅力的なものとして示していくかが我が国全体の研究力向上の喫緊の課題と考えております。

 このため、文部科学省では、大学の取組を後押しすべく、各国立大学における年代構成を踏まえた持続可能な中長期的な人事計画の策定の促進、あるいは、若手研究者比率や人事給与マネジメント改革実施状況に応じた国立大学の運営費交付金の配分、あるいは、若手研究者のキャリア構築や研究環境確保、能力開発に向けた取組への支援等に取り組んできております。

 また、女性研究者の活躍促進につきましては、やはり、女性研究者の活躍が促進されることによって多様な視点あるいは優れた発想を柔軟に取り入れることにより、我が国の科学技術イノベーションを活性化していくということで、大変重要と考えております。

 まだ、一方で、先生御指摘のとおり、日本における女性研究者の割合は諸外国と比較して低いという状況です。このため、文部科学省におきまして、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業によりまして、出産、育児等のライフイベントと研究の両立ですとか、女性研究者の研究力向上、登用促進などに取り組む大学等への支援を行っております。

 こうしたメニューをそろえて、しっかり女性研究者の活躍促進を果たしてまいりたいと存じます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 ちょっと提案させてください。

 今、大学は、現場はもう、産官学連携、とても大事だと思います。私も、現場にいたとき、そのことを経験し、それは実感しています。

 ただ、大学は今、就職予備校と呼ばれるような状況になっていることも、これも現実だと思います。

 産業界の方に是非提案していただきたい。こうしたドクターを取っていらっしゃる方、マスターを取っていらっしゃる方、その方々の雇用の機会を是非増やしてください。そして、大学を支援するときには、効率化だけで測らない、目に見えない価値を大事にしていただきたいというふうに思います。産業界の方が関わっていただけるなら、そこを是非、持続可能な社会ということで推進していただきたいと思います。

 こうして、時間がもう迫ってきましたが、最後に申し上げたいと思います。

 質問をさせていただいて、再認識しました。文科省もつらいですよね、本当に。研究レベルの高い高等教育を実現するためには、お金が必要です。でも、その責任をアカデミックに押しつけてはいけないと私は思うんですよ。文科省の方々も、どうしたものかなと思っていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですね。

 資金運用はお金の専門省庁である財務省に任せて、その財務省からシンプルに予算づけをしてもらえればいいんじゃないかと思うんですが、やはりそれは難しいんでしょうか。また、財務省の方もそう言われると、自分たちの責任かというふうになってしまうかもしれないんですけれども、財務省もつらいと思います。限られた予算の中で、頭をひねって、どうするかということを考えていらっしゃる。

 つまるところ、じゃ、この問題を解く鍵はどこにあるんだろうと、大臣、思うんですね。そうすると、やはり政治なんだなと私は考えます。

 子供を大事にして、日本の未来を切り開いていく、そのために、教育や研究、これを支え、育む、その政治かどうか、それが、その本気度が問われているように、大臣、私は思うんですけれども、結局、つまるところ、政治の責任だと思いますが、最後に大臣のお考えをお聞かせください。

末松国務大臣 去年も、年末に、財務省の折衝は、小学校高学年の教科担任の先生の確保というところと、全体的には五兆二千八百十八億円の令和四年度当初予算であったと思うんですけれども、いろいろな話は、財務大臣を前にして、また関係閣僚もおられたところで話をいたしてまいりました。

 決めるところはやはり政治であるということは確かだと思うんです。ですから、野党の先生からは教育国債の話とかいろいろな話を聞かれますけれども、それって、やはり未来へ投資していかないと、特に資源も乏しい日本でありますし、やはり人へ投資をしていくしか、国がまず成長していく礎を、土台を築くことができないということの表れだと思っております。

 そういう意味において、あらゆる面において、教育予算の充実ということは常に頭に置きながら行動していきたい、そのように願ってございます。

吉田(は)委員 大臣、ありがとうございます。

 応援申し上げますので、是非、岸田総理にもお伝えくださいませ。

 ありがとうございました。

義家委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

義家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三木圭恵君。

三木委員 午後の時間になりましたが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案、もう非常に私もこれは勉強させていただきまして、まだまだ勉強が足りないんですけれども、今日は、大臣にも御所見を伺いながら、この国際卓越研究大学について議論を深められればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、世界に伍する大学というのは、一体、具体的にどういった大学なのか、海外の大学で具体的にどのような大学を世界に伍する大学と考えていらっしゃるのか、また、その大学の資金規模などをお伺いいたします。

末松国務大臣 三木先生にお答え申し上げます。

 御指摘の世界と伍する研究大学でありますが、諸外国のトップレベルの研究大学と肩を並べて、世界最高水準の研究活動を通じて、国際的な頭脳循環のハブとなりまして、世界中から集まった優秀な人材が新たな学問分野を創出するなど、研究成果を次々と生み出すとともに、それらの人材、研究成果に基づきまして、地球規模の課題解決への貢献であるとか、新たな産業であるとか、社会的価値の創出など、社会変革の駆動力となるような大学を想定しております。

 この点、モデルとなるのは、欧米のトップレベルの大学においては、数兆円規模の独自基金の運用益を活用しまして研究基盤や若手研究者への投資を充実しまして、それにより新たな学問領域とかイノベーションの創出につなげていると認識をいたしております。

 それで、このような独自基金によります資金力の差が、近年、我が国の研究力が諸外国と比較して相対的に低下しているという一因であると認識をいたしております。

 この差を各大学の力のみで直ちに解消することが大変難しくなってまいりました。今般、この資金を活用して大学ファンドを創設して、その運用益によりまして大学の研究基盤への長期的、安定的な支援を行おうとするものでございます。

 大学ファンドの支援対象となる国際卓越研究大学に対しましては、諸外国のトップレベルの研究大学との資金格差を縮めるとともに、一校当たり年間数百億円の集中的な支援を行う必要がある、そのように認識をいたしております。

 過日、神戸大学の学長とも話をしたんですけれども、別件ですけれども、やはり、大学とか研究というのは、人が集まり、そして人を魅了して、人を育成するというこの三つが大事であるというようなことのお話をお聞きしました。まさに、この卓越研究大学も同じような考え方に立ってでございます。

三木委員 それでは、具体的に海外の大学のお名前というのはちょっとお聞かせ願えなかったのですが、想像として、ハーバード大学とかスタンフォード大学とかイエール大学とか、そういうところを目標とするというか、基金の規模なんかはそういうところを目標にしてやっていくのかなというふうに私も理解をしております。

 また、今後、この研究大学に寄附金等受入額というものを増やしていかなければならないと思うんですけれども、日本が国際卓越大学に指定したところにでも、そうじゃない大学にでも、寄附金等の受入額というのは増やしていかないといけないと思うんですけれども、どのような方法があると考えていらっしゃるのでしょうか。

末松国務大臣 国際卓越研究大学では、大学固有の知的資産を生かして、産業界と連携した共同研究、受託研究の拡充であるとか寄附金の獲得など、多様な財源の確保に向けた取組を実施していくことが不可欠と考えております。

 それで、産業界との組織対組織での連携体制の構築であるとか、この前、大阪公立大学の開学式に行った帰りに大阪大学へと立ち寄りましたんですけれども、こういう感じで、これは共創の場形成プログラムですけれども、これは官民で一緒になって、これは百八人ぐらいの若手の学者が集まって、神戸大学からも来られていますから、大学横断的にお見えになっているんです。こういう形で、相当時代も変わったなという認識なんですけれども、いずれにしても、産業界と組織対組織で連携の体制を構築しています。

 そして、寄附金を集めるための専門家の確保、これはファンドレーザーと呼ばれるそうですけれども、ファンドレージングの専門家でございます。

 そして三つ目は、先生も御承知のとおり、大学発のスタートアップ創出のための支援体制の構築、それと、起業家教育で、アントレプレナーシップ教育の充実であるとか、それと五つ目は、特許戦略を構築する専門家集団の育成。これは、東京農工大に行きましたときに、スマホの関係のタッチパネルの発明をしたらしいんですけれども、結局、特許の申請をうまくしていなかったので、全く収入が入らなかったと。これは各大学に聞きましたら、特許に関係する専門家が余りにもいなくて、精通していないので、これは日本の大学においてはやはり大きな問題ではないかという認識を示されました。このための特許戦略を構築する専門家集団の育成といったことが考えられます。

 国際卓越研究大学におきましては、大学ファンドによる支援も使いながら、積極的にこうした体制を強化していきたいと考えております。

 よろしく御指導ください。

三木委員 今、大臣のお答えの中で、特許という言葉が出てまいりました。

 私は、この特許ということ、とても大事だと思っておりまして、スタンフォード大学でもこの特許を取るための部門というものがあって、その研究が特許に見合うものかどうか、これが特許を取って商品化をされて、大学に、ロイヤリティーであるとか、そういう特許の収入というものを得られるようにするという部門もございまして、非常に、この特許を取るということが、科学者にとって、商品化をして、科学技術の研究が世に出ていくための一つの方法であるというふうに考えております。

 特許については、この後の質問の中にも入ってまいりますので、是非ともよろしく御検討のほどお願いしたいと思います。

 続きまして、国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれる大学とあります。

 具体的にはどのような研究を指すのかということと、大学の研究成果の提供を受けて当該成果を実用化しようとする民間事業者との連携協力のための体制が確保されていること、ここがやはり特許とも関係してくると思うんですけれども、経済社会における活用を目的とした研究にこの国際卓越大学というのが限定されるということなんでしょうか。実際には、研究の成果が何年も後から評価されることもあり得ると考えますが、いかがでしょうか。

末松国務大臣 先生おっしゃるとおり、何年もたってから評価をされるということが多い、まさにノーベル賞もそういった方々、先生方が多いのかなということを認識をいたしておりますが、本法案に基づきます国際卓越研究大学における研究とは、特定の研究分野を想定したものではございませんで、人文・社会科学や基礎研究からAIとかバイオテクノロジーとか量子技術などの先端技術分野や新興・融合分野まで含めた幅広いものを想定しております。

 例えば、諸外国のトップレベルの研究大学におきましても、新たな学問領域の創出を含めまして、多様な学術研究、基礎研究が展開されておりまして、そうした大学における研究の対象も、当然広がりを持ったものとなると考えております。

 その上で、個々の大学における研究領域につきましては、各大学が自らの強みを踏まえまして具体的な将来像を構想し、その実現のための戦略の中で示していただくことが重要かなと思います。

 また、国際卓越研究大学におきまして、大学が持ちます、深く真理を探究して新たな知見を創造するという役割と、研究成果を広く社会に提供していって、その役割という、双方を強化していただく必要がありますから、そうしたことを確認するために、今回の提案の法律は十二条から成っていますけれども、本法案の四条の第三項におきまして、七つの認定要件を定めているところでございます。かなり細かく書いてございます。

 御指摘の民間事業者と連携協力のための体制整備というのは、要件は、あくまでその一つとなるものでございます。

 加えて、国際卓越研究大学が新たな知見の創造という役割を担うことを踏まえれば、短期的な成果主義には絶対流されないで、長期的な視点で大学の取組を評価していくことが重要というように、そういう認識でございます。

三木委員 時間が短いので、ちょっと次々と質問させていただくんですけれども、研究支援人材や技術者等の研究を支える様々な人材の育成、確保について、現行制度上の大学ファンドの助成対象の範囲の拡大を行うことが必要となってくるとあります。

 どのような人材を確保し育成していくのか、現在の状態からどのような改善が行われればそれができるのか、また、それはこのファンドで実現をするのかどうかということをお伺いしたいと思います。

末松国務大臣 三木先生御指摘のとおり、我が国全体の研究力を強化していくためには、博士課程学生を含む若手研究者や研究支援を行う技術者の人材を育成、確保することが大変重要であります。

 大学ファンドから支援を行う国際卓越研究大学には、国内外の優秀な研究者が集まる魅力的な研究環境の構築に向けて、例えば、優秀な博士課程学生を育成するための経済的支援の充実であるとか、分野を横断した教育プログラムの開発とか、若手研究者が独立して活躍できるための研究室立ち上げへの強力な支援であるとか、処遇の抜本的改善とか、URA、ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーターですけれども、そのほか、技術職員といった専門職員など、研究活動の支援に熟達した事務職員などの積極的確保等の取組を、これも国際的に見て遜色ない水準に展開することが大事であると思います。

 また、若手研究者の厚みを拡大することの重要性を踏まえて、大学ファンドからの運用益からは、全国の優秀な博士課程の学生も支援をすることといたしております。

 このような取組を通じて、この国際卓越大学をハブとしながら、我が国の人材の厚みを拡大していきたいと思います。

 なお、令和二年の補正予算で二百億円、令和三年の補正予算で四百億円、計六百億円、これは博士課程、大変勉強なさっておられるんですけれども、非常に生活が苦しゅうございますので、既に前倒しの支援を行っているところでございます。

三木委員 それが非常に大切な支援だと私も考えておりまして、海外と比べて日本の博士課程で研究をされている方の金銭面というか生活面って、非常に苦しいものになっているというふうな実情をお伺いをしております。

 また、海外では、スタートアップ資金として大学側が、例えばスタンフォード大学の応用物理工学学科では、三十歳前後の助教授クラスに一億円のスタートアップ資金を用意をしている、パッケージとして使っていいよということだと思うんですけれども、また、スイスでは、スタートアップ資金として、ドクターとかポストドクター等の人件費を含んで一億円ぐらいを御用意をされるというようなことを聞いておりますので、是非とも、こういった博士課程で研究をされている方々が十分研究ができる、また生活面も、きっちりと生活の設計が立てれるような資金の援助というのを行っていただきたいなというふうに考えております。

 それに関して、大臣、御所見いかがでしょうか。

末松国務大臣 ドイツなどは博士課程の方にも三十万円程度の給与も渡しているという、世界から見ましたら、日本というのは随分厳しいなと。ただ、前倒しで二百億、六百億と支援をいたすことになったんですけれども、しっかりと、先生の御意見を受けまして、やはり裾野を広げるためには、修士そして博士課程で学んでいただいて、日本のそういった技術を引っ張っていただく方が必要でございますので、先生の御意見、しっかりと受け止めたいと思います。

三木委員 国際卓越大学への支援と規制緩和についてお伺いをしたいと思います。

 大学から仮に提案があるとするならば、どのような規制緩和を求められると考えるか。こちらからではなく、大学側から見て、このような規制緩和があればいいな、規制緩和をしてほしいという面があるのならば教えていただきたいということと、資産運用についてなんですけれども、現在、国立大学法人が出資することが可能な事業者は幾つかあると思うんですけれども、資産運用を主目的とする子会社を設置することは認められておりません。JST法の改正なんかで、基金の運用なんかはそこら辺に任せていくというようなことも聞いてはおりますけれども、このような子会社を将来的に設置することについては、政府はどのようにお考えでしょうか。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の国際卓越研究大学の制度設計を議論するために文科省に設置いたしました有識者会議では、経営の自律性を高めるために、大学のニーズも念頭に置いて必要な措置を検討したところでございます。

 その際には、国立大学における規制緩和の適否を検討すべき事項といたしまして、まず、基金への積立てを可能とする仕組みの創設、二つ目に、長期借入れや債券の発行要件の緩和といった事項のほか、議員今御指摘のとおり、国立大学法人が業務として子会社を設置し、資産運用を可能とすることなどが挙げられてきたということでございます。

 ただ、このうち、子会社を設置し、資産運用を可能とすることにつきましては、その業務が市場では代替できず、民業を圧迫しないものである必要があるということ、それから、令和三年の法改正によりまして、国立大学単独での運用と比べまして効果的な運用が見込まれるJSTに寄託金勘定を設けたばかりであるということ、これまで国立大学による出資につきましては、事業としての成熟性と安定性が見込まれるものを対象としてきたということ、このようなものを勘案する必要がございまして、各大学のニーズも踏まえながら、引き続き具体的な制度設計を検討する必要があるというふうにされたところでございます。

 文科省といたしましては、引き続き、関係者からのヒアリングや意見交換を通じまして現場の具体的なニーズを把握しつつ、必要な対応を検討するとともに、国際卓越研究大学から規制緩和を提案する機会を設けることなども積極的に考えていきたいというふうに考えているところでございます。

三木委員 今、世界に伍する国際卓越研究大学ということで、世界に伍する、世界の大学と日本の大学が遜色のないような、基金の額であるとか、そういったものを目指していくんだということでこの十兆円のファンドができたと思うんですけれども、諸外国では、大学全体の資産を統括する資産会社に全ての基金の管理を、基金も含め、大学の敷地なんかも含め、全てを管理、任せることで大成功を収めてきたという実績がございます。

 例えばハーバード大学は、一九六五年当時は六百億円程度の資産だったのが、二〇〇二年には一兆七千億円、二〇〇八年には三兆五千億円というふうに変わってきています。スタンフォード大学は、一九六五年当時は百八十四億円しかなかったものが、二〇〇二年には七千六百億円、二〇〇八年には一兆六千億円になっております。イエール大学も、こちらは今現在、二兆二千億円ほど基金があるということで、非常にやはり、大学のアカデミアとは別に、資産運用をする会社というか、そういうことを専門にやるところというのは非常に私は大事だというふうに思っておりまして、これ、例えばリーマン・ショックのときなんかは、やはり額が減っているんですね。二〇%以上の額を減らして、大学の基金も減らしているということはあるんですけれども、こういった資産会社に全ての基金を任せて運用していくということは非常に大切なことだと思っております。

 また、大学の基金を拡充させていくために何が必要かというと、大学発ベンチャーが企業として立ち上がった場合、未公開株が生み出す利益というものが、非常に、結構大きな割合を占めているんです。大学で研究をし、研究者の中から起業をしていく、官民連携というところもあると思いますけれども、スタート企業ということで、ライセンスを受け取るよりも未公開株を取得するということが多くなっておりますし、それが大学に非常に大きな利益をもたらしているということも考えられますので。

 まだこれは先々の話だと思います。だけれども、是非とも、こういった視点も組み入れて、日本の大学が世界に負けないレベルの資金を実際に自分たちで運用していくように、政府としてその流れをつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

末松国務大臣 今先生から、私にとって大変新鮮なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。

 先生、今日、このところでは規制緩和のお話をいただいておるわけなんですけれども、文部科学省として言えることというのは、引き続き、関係者からこれからもヒアリングとか意見交換をずっと行ってまいりますので、現場の具体的なニーズをよく把握しまして必要な対応を検討するとともに、国際卓越研究大学が規制緩和を提案する機会を設けるなど、これはもう積極的に考えていきたいというふうに考えてございます。

 最初の出発は、小さな、ハーバードでそれだけの額だったということを今初めて知らされまして、恐縮いたしております。

三木委員 大分時間がなくなってきましたので、たくさん質問を用意させていただいたんですけれども、私の考えも含めて、最後に大臣の決意をお伺いしたいと思います。

 確かに、日本が今、世界に伍する大学、スタンフォード大学であるとかハーバード大学であるとか、そういったところから、基金の面からも研究力の面からも一歩後れを取っているということは事実だと思うんですね。だからこそ、先を走っている諸外国の例のよいところ、課題となっているところということを研究していくことができると思います。

 私が一番憂慮するというか、今後問題として、課題として受け止めていかなければならないなと思っているのは、スタンフォード大学で遺伝子組み換えの研究が特許を取ったとき、これは非常に大きな衝撃が科学者の中で走ったというふうに聞いております。

 それというのは、基礎科学というもの、例えばスタンフォード大学では、科学者たちが、ラボノートというものがあって、そこに出入りする人々は誰でも見ることが可能だったんですね。それができる状態にしてあって、それがスタンフォード大学を世界の最先端に押し上げた方法だったというふうに聞いているんですけれども、そのラボノートを見て、その基礎研究があって、基礎研究があった上で遺伝子組み換えの技術というものが新たに生まれた。これは二人の研究者によって生まれたものなんですけれども、この二人の研究者が特許を取った。特許を取ったことによって、この二人にその特許のロイヤリティーであるとかそういった利益が非常に集中をした。まあ、大学にもライセンスのロイヤリティーが入ったんですけれども。

 そういった基礎科学、科学者の皆さんが今までの研究の成果として積み上げてきた基礎科学というものがあって初めて遺伝子組み換えの技術が特許化され、商品となり、人々の幸福に、人々の生活に、利便性を向上したりとか生命の質を向上したり幸福度を上げるというようなことが起きてきたと私は考えております。ですから、そういったところに、基礎科学を研究していた科学者の中から批判が沸き起こったというふうに聞いております。

 だからこそ、大学というものの科学の知というものに対する概念が、これは世界のトップレベルの大学の中では変容していったというふうに考えておりますので、こういった、大学の中で基礎科学研究があって、その上で応用科学が特許を取って、基礎科学の部分が光を見ないというか、そういった部分があって、大学は基金を増やしていくということが可能になってくるところがありますので、科学者の倫理とか、そういったものも必要になってくるというふうに考えられます。

 だからこそ、政府の方も、そういう大学の研究者の中で、科学者の中で批判が巻き起こってきたときに、負けないという政府の強い意思、変革に対する強い意思が試されているというふうに書かれていると私は思っておりますので、この新しい、今まであった科学技術というものが新たに社会に出ていくときに、アカデミアの中で恐らく波紋が広がる、恐らく研究が特許を取って商品化されていくということに対する意識の変革というものが起こってくると思いますので、是非ともそこは政府としても批判に負けずに、研究が世に出ていくということに対する後押しをしていただきたいなと思っておりますが、いかがでしょうか。

末松国務大臣 今の先生のお話はしっかりと受け止めたいと思うんです。

 余り大学名を出しちゃいかぬのですけれども、視察に結構出ておりますので、大阪大学の西尾総長とも話をしたときに、民間企業から結構支援をされながら研究している分野がありまして、そのことで話をしたときに、総長の方から、企業が基礎研究というものに対する理解を示さなければ絶対にそことは組む気は全くございませんでした、それは末松さん、やはり基礎研究、これを一番基本に置いておりますと、そういうことを、最初の質問をしたときに、お答えに入っておりました。

 そういった中からいろいろなものが生まれてくるとは思いますけれども、先生が今お話があった特許のことについて、商品化されるものも出てきますし、これについていろいろな御意見がありましても、政府として、これは大学に対していろいろな助言なりは行ってまいりたいとは思いますし、支援も行ってまいりたいと思います。基本的には、基礎研究、応用研究が存在をしておりますのですけれども、そのように認識をいたしてございます。

 あと、今般、基盤的経費と競争的研究費によります大学への支援に加えまして、政府が十兆円の規模の大学ファンドを創設したというのは、これは、今の閉塞したこの状況を反転させるための前例のない措置でありまして、既成概念にとらわれないということが出発でございます。

 したがいまして、大学ファンドから支援対象となる大学には、世界と伍する大学となる使命を全うするため、例えば、トップクラスの研究者が集まって、若手研究者がやる気に満ちあふれる、活躍ができる研究環境の整備と、それと、大学独自の基金を含めた財源の多様化による強固な財務基盤の確立であるとか、国内外の最新動向を捉えまして、社会を広く見渡して、大学のビジョンを示して実行できるガバナンス体制の構築といった姿の実現に向けて、前例のない改革に取り組んでいただくことが求められると思います。

 まず、簡単には、もう海外へ行かなくても、日本で研究してもらえるという環境整備をしたいと思います。

三木委員 済みません、質疑時間が終了しておりますので。

 私は非常に、この十兆円のファンドに対して、科学者、大学、そして政府、民間の方々、いろいろな変容が、変革が起こってくると思いますが、それに大きな期待を寄せておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会の掘井健智でございます。

 早速質問に移りたいと思います。

 日本の大学の資金調達の在り方について質問をいたします。

 日本の大学は、論文の質や量の国際的な地位が落ちたり、また、雇用の不安定などで研究者の魅力が乏しいことが問題になっております。これは、大学に資金が乏しいということがその背景にあるということです。一方、世界のトップ大学は、寄附と産学連携の力で巨額の基金を持っていると伺います。

 そこで、資金調達や運用に関わる日米の比較について伺います。

 日本の大学に資金がないその要因として、海外に比べて寄附募集の文化が発達していないこと、また、優遇税制に違いがあると言われておりますけれども、日本の大学における運用の仕方が、米国のそれと比べて随分違うように思います。日本の大学に圧倒的に資金がないという現実があります。米国の大学は、集めた資金を目先の資金需要に使うのではなくて、資金計画を立ててきちっと運用するということで中長期的な資金をつくっていくということであります。

 この日米の資金調達の違いにつきまして、また、ファンドの方法の違いについてどのように分析しておるのか、お答え願えますでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、欧米の主要大学は寄附金等を原資とした数兆円規模の独自基金を保有し、その運用益を人材や研究設備に投資することで充実した研究基盤を構築しております。

 米国におきましては、例えば、二〇一九年度時点であれば、ハーバード大学は約四・五兆円、スタンフォード大学は約三・一兆円の独自基金を有していると承知しております。一方、我が国においては、例えば、同じく二〇一九年度時点では、東京大学が約百五十億円、京都大学が約二百億円の独自基金を保有し、運用している状況にございます。

 また、運用の体制につきましても、米国のトップ大学は数十名から数百名のスタッフを抱えているのに対し、日本の大学の運用スタッフはこれより大幅に少ないところが多いと承知しております。

掘井委員 こういったことを踏まえて、日本の大学がどうあるべきか、これは大臣の御所見を伺いたいと思います。

末松国務大臣 掘井先生にお答え申し上げます。

 諸外国のトップレベルの研究大学では、財源を多様化しまして、数兆円規模の独自基金の運用益なども活用することで、研究基盤や若手研究者へ投資を充実させております。我が国の大学の研究力が相対的に低下している要因の一つにこうした諸外国との資金格差が存在しておる、そういう認識に立ちます。

 我が国の大学の研究力強化のためには、このような自律的な財政基盤を確立をしまして、世界と伍する研究大学を実現していくことが重要でございます。それを目指して国際卓越研究大学制度を創設することとし、まずは大学ファンドからの支援を受けて、研究力の抜本的な強化を進めるとともに、強固な財務基盤の確立に向けた取組を推進したいと考えております。

 具体的には、財源の多様化に向けまして、まずは産業界と組織対組織での連携拡大であるということ。二つ目には、研究成果を活用した大学発のベンチャーの創出ということで、先ほど三木先生にもお話し申し上げました。大学の機能拡張に伴う幅広い関係者からの寄附金の獲得、大学独自の基金の拡充による運用益の増加など、取り組んでいくことが重要という認識です。

 その際、国内外の動向を踏まえました事業・財務戦略の策定とか、あるいは研究成果などの大学の知的財産の可視化及び価値化、また、資金運用や寄附金集めのための専門家の確保ですね、ファンドレーザー、そして、産学連携やスタートアップ創出など、知的財産戦略の組織的な推進に向けた体制整備も必要となります。

 国際卓越研究大学には、国際的に卓越した研究成果を創出しまして、その成果を生かしつつ、このような強固な財務基盤の確立に向けて先導的な役割を果たしていただきたいと願っております。

掘井委員 なるほど、分かりました。

 日本の大学における既存の慣行とか考え方もありますので、なかなか一足飛びにはできないと思いますけれども、しかし、こうやって実証を重ねていって、また次の課題にもつながって前に進んでいく、そんな期待もあるはあるということでございます。

 次の質問であります。国際卓越研究大学の資金運用の強化に期待することについて質問していきます。

 国際卓越研究大学として認定されるためには、認定基準としてガバナンス強化が求められております。特に、しっかりとした財政基盤と資金や調達計画が求められております。この度の大学ファンドの運用はJSTが行いますが、ガバナンス改革には財務担当役員の設置などもあります。

 午前中の質疑の中でも、JSTの運用からいずれ卒業するという答弁をなされましたけれども、将来、資金管理運用をやっていく体制を、そのような体制を想定したような運用機関を今の段階から期待されているんでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 国際卓越研究大学は、大学独自基金を造成するなど自律的な財政基盤を確立し、将来的には大学ファンドの支援からは卒業し、持続的に事業規模の拡大を図る大学へと成長していくことが期待されます。

 そのため、大学ファンドの支援を受けるに当たっては、大学独自基金の造成も含め、将来的な卒業も見据えた財政基盤整備について計画を提出していただくことになりますが、具体の資金運用等に関する体制につきましては、各大学のCFOを中心に御検討をいただくものと考えております。

 なお、大学ファンドの資金運用の基本指針におきまして、機構、JSTのことでございますが、JSTは、将来的には各大学が基金を保持、運用していくことを目指す観点から、助成資金運用を適切に行うことでもって各大学の基金の運用の指針となるような運用モデルを示すことが期待されている点に留意することともされております。

 将来的に、国際卓越研究大学が大学独自基金を造成し、大学ファンドの支援から卒業していく際には、JSTの大学ファンドの仕組みも参考にしていただきたいと考えております。

掘井委員 細かい通告はしていないんですけれども、関連ということで質問します。

 運用の体制をつくるということであれば、やはり運用する資金も大事なんですね。大学ファンドの資金を将来における中期的な積立金というか基金として確保していくことは、これは可能なんでしょうか。

義家委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

義家委員長 速記を起こしてください。

 池田局長。

池田政府参考人 失礼いたしました。

 お答え申し上げます。

 今回、大学ファンドの運用益により支援を受けながら、対象となる大学は、将来的に各大学独自の基金を造成していただくことになりますけれども、当面、資金を受けながら事業規模を拡大して、中長期的に独自基金を造成していただくということになろうかと思います。

掘井委員 分かりました。

 次の質問に移りますけれども、大学ファンドの仕組みについて質問します。

 資金運用管理における基本方針についてですけれども、文科省は、このファンドの運用に当たって、長期的な観点から安全かつ効率的に行われるようにする考えを基本方針に示されております。支出していくこの目標は、十兆円の原資の三%に当たる三千億円プラス長期物価上昇率以上を目指すとなっております。支出上限は三千億円までとなっておりますけれども、こういったことを確保するためのリスク管理についてお尋ねしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学ファンドの運用の目的は、その運用益から世界と伍する研究大学の実現に必要な支援等のための財源を長期的、安定的に確保することであり、必要な支援ができないことがリスクであると考えております。

 そのため、運用に当たっては、グローバルな長期分散投資を行うことで、長期的、安定的に運用益を確保することとしております。さらに、運用益が出ない場合に備え、大学への支援を安定的に行う観点から、運用益の一部から六千億円を上限に支援のためのバッファーを確保することとしており、科学技術振興機構の財務状況も勘案しつつ、これを活用することとしております。

掘井委員 バッファーもあるということでありますけれども、何しろ、今、戦争もやっておりますし、為替も変動しておりますので、非常に厳しい市場環境かなと思いますけれども、何せ初動で失敗したら計画はなかなか進まないと思いますので、頑張ってくださいということであります。

 次の質問です。資金運用管理に係る責任についてであります。

 株式や債券などを投資対象国を考えて分散投資しながら、長期的、安定的に運用していくという方針でありますけれども、資金運用管理において責任の明確化が必要です。投機市場でありますから、運用益が出ないということもあるわけであります。運用対象の承認、また運用の評価などの意思決定の責任者は誰なのか、この辺りを教えていただけますでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学ファンドの運用は、まずは科学技術振興機構において安定的に運用していただくことを期待しておりますけれども、その法的な責任ということであれば、科学技術振興機構の資金運用管理に係る責任者ということであれば、法人の長である理事長と運用業務担当の理事になります。

掘井委員 はい、分かりました。

 そうしたら、そこを監視、監督する体制というのはまた別にあるんでしょうか。

義家委員長 済みません、質問の趣旨が聞き取れなかったようなので、もう一度お願いします。

掘井委員 ごめんなさい。

 そこの機関の長が責任を取るということでありますけれども、監督、監視するその体制について、その中ですね、中の体制はどうなっておるんですかということです。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 JSTは、先ほど申し上げた理事長と運用担当の理事の下に今体制を整備しておりまして、JSTにおいて金融や資産運用等の専門家による運用・監視委員会を置いておりまして、ここで審議した上でいろいろな対策を講じていく仕組みとなっております。

掘井委員 ありがとうございます。

 次の質問です。償還の確実性について質問します。

 大学ファンドの原資の九割が財政投融資です、約九割ですね。財政投融資資金は、政策的必要性が高い事業にもちろん充てていくわけでありますけれども、本来、償還の確実性がある事業を対象としております。大学ファンド、投機市場を介在しますけれども、この償還計画はどうなっているのか、お尋ねいたします。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学ファンドについては、財政融資資金の償還確実性を担保するため、毎年度の運用益のみを大学への支援の財源とし、大学への支援のために財政融資資金を直接取り崩すことができない仕組みとしております。このため、制度上、大学への支援を財政融資資金の返済よりも優先することはございません。

 加えて、大学ファンドの運用に当たりましては、昨年十一月の閣議決定されました経済対策を踏まえ、下方リスクに備え自己資本を厚くし、償還期には過去の大きな市場変動にも耐えられる水準の安定的な財務基盤の形成を目指すとされており、財政融資資金の償還をより確たるものにしてまいります。

掘井委員 ありがとうございます。

 続いての質問です。国際卓越研究大学の経営と学術、この両立についてであります。

 大学ファンドからの支援の要件として年三%程度の事業成長を求められておりますが、大学側が事業収益を考えることにやはり関心が寄って、本来の自由な研究に支障を来すということは考えられないかということが非常に心配に上がっております。この強力な経営主導が、従来の研究者の自主性や大学の研究特性、また自由な研究風土を阻害するという心配もあるんです。経営と学術をきちんと分けることがポイントになるかもしれません。

 研究に関する業務の執行と管理運営に関する業務の執行との役割分担が第四条第三項で述べられておりますが、これはどのような基準なのかも含めて、どのように整理したらいいのか、大臣にお尋ねいたします。

末松国務大臣 諸外国のトップレベルの研究大学で、数兆円規模のファンドの運用益を活用しまして事業規模を広げる中で、研究基盤や若手研究者への投資を通じまして、年間三%以上の事業成長を実現をしております。実際、世界大学ランキングでも、上位三十校だと六%ほど達成しています。事業規模を広げることで中長期的での資源配分も可能となりまして、そうした大学では、新たな学問領域の創出も含めまして、多様な学術研究、基礎研究が展開されているものと承知をいたしております。

 今般の国際卓越研究大学制度は、そうした諸外国のトップレベルの研究大学の仕組みをモデルとしまして、大学ファンドからの支援で事業規模を拡大することによりまして、大学が持つ、深く真理を探究して新たな知見を創造するという役割と、研究成果を広く社会に提供するという役割の双方への投資を後押しすることが可能になると思います。

 また、合議体の役割は、事業・財務戦略の策定など大学の経営に関する重要事項を決定することですが、これまでの世界と伍する研究大学の在り方に関する検討におきましては、日々の具体の業務への過度な介入などマイクロマネジメントを行うべきでなく、個々の研究内容や講義のシラバスの内容など教学事項については介入すべきでないとしております。

 文科省として、これらの検討結果を踏まえて、適切な体制を構築していきたいと思います。

掘井委員 はい、分かりました。

 次に、授業料の影響についてであります。

 本日、午前中の質疑にもありましたけれども、国際比較で授業料を見ると、やはり随分差があるんだなということを知りましたけれども、今回は、ここを議論するということになりますと、高等教育の在り方の話になりますので今日はいたしませんけれども、教育行政の力で急に改革するということは、すべからくいろいろな弊害もあります。

 授業料が上がる懸念について改めて質問したいと思うんですけれども、文科省は、学生の負担を招くので、教育研究内容の充実と関係なく安易に授業料を上げることはいけませんし、そのようなことは想定しておりませんということでした。また、午前中の質疑では、大学の自治運営において授業料を上げる分には問題はないという答弁もなされておりました。

 この度のガバナンス改革についての論点整理において、授業料設定の柔軟化がもう既に題材に上がっております。そうであれば、これは想定しているのではないか、そんなふうに思ってしまうわけであります。

 今回、国際卓越研究大学は、まさに教育研究内容の充実が求められることになっておりますので、授業料を上げる理由には十分になります。年三%の事業成長、大学から見て授業料を上げるインセンティブにならないのか、また、こういったことが安易に行われないように注意する観点はないのか、お伺いしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 国際卓越研究大学においては、年三%以上の事業成長を求めることとしておりますので、その際、外部資金の多様化が必要である。これは、大規模な産学連携の推進であるとか、卒業生を含む関係者からの寄附などの自己財源の確保を進めていただき、これと大学ファンドからの支援を活用して、事業規模の拡大を実現していただきたいと考えております。

 国際卓越研究大学に求める事業成長は、こうした観点から、国内外の若手研究者がここで自立して研究をしたいと強く思うような、魅力的な研究環境の実現につなげるものでございます。したがって、午前中答弁申し上げましたように、基本は、教育内容、研究内容の充実と関係なく、ただ単に事業規模を拡大させるという趣旨での授業料の値上げ等により学生の経済的な負担を増加させることは想定しておりません。

 一方で、これも午前中答弁申し上げましたが、教育研究内容の充実を目的として、人材育成を手厚くするという観点から、追加的な費用を要する高度な教育研究プログラムを提供する場合などであって、合理的かつ対外的に理解を得ることができる特別な事情はあり得ると考えてございます。

掘井委員 ありがとうございます。

 国際卓越研究大学の博士課程学生の予算についてであります。

 国際卓越研究大学には、大学ファンドによる大学の支援の部分、それと、個人に着目した優秀な博士課程学生の支援の部分とが重複する可能性があります。しかし、この二百億円、二百億円と言われておりますけれども、この国際卓越研究大学以外の大学の支援に充てるべきであると思っておりますけれども、この点について文科省の御所見を伺います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 国際卓越研究大学では、国内外の優秀な人材が集まる魅力的な研究環境を構築するため、優秀な博士課程の学生に対する経済的支援の充実や分野を横断した教育プログラムの開発などの取組を、国際的に見て遜色ない水準で展開することが期待されております。

 これとは別途、ファンドからの支援の対象のうち、これは国際卓越研究大学に限らず、広く優秀な博士課程の学生に支援するという枠がございまして、これが現在のところ、先ほど御質問いただいたように約二百億円程度とされておりますが、今後、ファンドの運用益等を見ながら、実際に支援をするときまでに、具体的にどう配分していくのか等々、これから具体的に検討してまいりたいと思っております。

掘井委員 次の質問です。

 将来の国立大学に求める姿についてであります。

 国際卓越研究大学には、意欲的な事業と財政戦略を有するために合議体が引かれ、教学担当役員そして事業財務担当役員を置けるような改革的なガバナンス体制を求めておりますけれども、このことをきっかけとして日本の大学の改革につなげていくことが期待されておるのか、お伺いします。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 国際卓越研究大学制度におきましては、研究力を大幅に強化するため、充実した研究環境の構築、そして優れた人材の集積、研究協力の国際ネットワークの構築、研究成果の活用を支える人材や関係事業者との協力体制の構築などを目指しておりまして、それらを可能とするための自律と責任あるガバナンスや強固な財政基盤の構築を図ることとしているところでございます。

 こうして実現される大学の改革につきましては、大きな方向性としてはその他の国立大学にも共通するところがあると考えておりまして、国立大学全体の改革にもよい影響を与えるものと期待しているところでございます。

掘井委員 この後、それ以外の国立大学、八百ほどありますけれども、それを支援する質問も考えておったんですけれども、時間が来ましたので今回は断腸の思いで割愛いたしますけれども、最後に……

義家委員長 おまとめください。

掘井委員 はい。

 世界と伍する研究大学をつくることは評価しております。今回のこの仕組みが、新たな問題が出てきて、そしてまた課題となって前進していく……

義家委員長 おまとめください。

掘井委員 ということを期待しておりますが、やはり、日本の研究力が低下したのは、交付金が減ってきたということでありますので、是非このことを考えて、大学全体の施策として取り組んでいただきたいと思います。

 終わります。

義家委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 今日はよろしくお願いいたします。

 時間が限られておりますので、早速始めさせていただきます。

 国民民主党は、我が国の大学の研究力、我が国の科学技術力の低下、また国際競争力の低下の現状について強い危機感を持ち、人づくりこそ国づくりの理念の下で、現下の大変厳しい国家財政の状況を踏まえまして、教育国債を創設して、教育、科学技術力強化のための予算を倍増すべきということを公約に掲げ、昨日、教育国債を可能とする財政法の一部を改正する法律案を国会に提出をさせていただきました。

 今取り組まなければ間に合わないという強い危機感を持ち、大学における研究力の強化、科学技術力の強化に取り組む必要性について共有する立場から、懸念する点について質問させていただきます。

 これまでも、文科省は、世界のトップレベルの大学を目指すために、様々な施策などを講じてまいりました。しかし、我が国の大学の研究力、国際競争力の低下の現状はより深刻となり、諸外国との差が広がってきているのが現状でございます。

 世界大学ランキングにおいても、欧米トップの大学のみならず、中国を始めとしたアジアの大学が我が国の大学の上位に位置をしている現状がございます。

 これまでの政策の効果についてどのように検証、分析し、その上で、今回の法律によって、我が国の大学の全体の研究力が向上され、幅広く研究者を支援する体制整備が図られることになるのでしょうか。その原因に見合った対策を講じることがなければ改善することは困難だと考えますけれども、末松文部科学大臣の御見解をお伺いいたします。

末松国務大臣 先生から今御質問いただきましたけれども、欧米のトップレベルの大学はもちろんでありますが、アジアの中においても厳しい状況にあることは確認をいたしました。

 文部科学省では、世界最高水準の卓越した教育研究活動の展開であるとか、我が国の大学の国際競争力の向上を図るため、これまで、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPI、採択されましたら七億円で最長十年ですけれども、こうしたWPIを始めとした様々な施策を通じて、教育研究の質の向上や国際化の推進等、大学改革を進めてきたところでございます。

 これらによりまして、世界最高水準の研究成果の創出や研究成果の社会の還元、大学の国際化といった成果は表れてはきておりますけれども、これまで進めてきた改革は、大学の教育研究力の強化に一定の役割を果たしてきたとは思いますが、なかなか厳しい部分もございます。

 一方で、我が国の大学の財政基盤、今なお脆弱でございまして、財源の一層の多様化、拡大が必要でございます。

 学外を含めた経営を担う人材の確保であるとか、経営意識の更なる向上が求められること、また、若手研究者の安定的なポストの確保の取組が十分でないこと、任期つきの職が多いということです、などが課題として挙げられるため、これらに向けた更なる取組が必要です。

 特に財政基盤に関しましては、欧米のトップレベルの大学では、数兆円規模の独自基金の運用益を活用しまして研究基盤や若手研究者へ投資を充実いたしておりまして、そうした資金力の差が、我が国の大学の研究力が相対的に低下する一因となっております。

 このため、今般創設された大学ファンドの運用益によりまして大学の研究基盤への長期的、そして安定的な支援を行うことで、支援の枠組みを本法案に規定をしておるところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 今、大臣から述べられました、基金が不足しているということが大きな原因ではないかという言及がございましたけれども。

 様々な要因がある中で、研究資金ですとか、大学発のスタートアップ企業等の支援基金の不足というものも原因の一つであるというふうに思いますけれども、根本的な原因としては、私は、大学の運営を支える国立大学法人運営交付金ですとか、私立大学等経常費補助金などの減少によって、基礎的、長期的な研究が困難となり、また、これは文部科学省自身も研究力強化に向けた課題として示しておられるように、研究者の研究環境が劣化をし、また有期雇用の増加など雇用環境が悪化し、また博士課程への進学率の減少など、研究者の魅力そのものが失われているところに深刻な根本的な問題があると考えております。

 運営交付金については、平成十六年から昨年度にわたるまで減少しております。これは、平成十六年の国立大学の法人化に大きな原因があると私は考えますけれども、末松文部科学大臣の御見解をお伺いいたします。

末松国務大臣 国立大学法人化につきましては、いろいろな御意見、今なおございます。

 国立大学の法人化は、個性豊かな魅力のある国立大学を実現することを目的としたものでありまして、自律的な運営の確保のため、法人の裁量の拡大、あるいは規制緩和等を順次進めてまいりました。その結果、外部資金等の獲得が増加して、教育研究活動が活発化したりとか、柔軟な雇用形態、給与体制が導入されたことなど、大学独自の改革は一方で進んではおります。

 国立大学法人運営費交付金につきましては、先生今御指摘されたとおり、平成十六年度の法人化以降、予算額は減少いたしておりましたが、平成二十七年度以降は前年度同額程度を確保しておりまして、私学助成についても前年度同額程度を確保しております。

 一方で、国立大学につきましては、法人化以降の各大学の経営努力に伴う外部資金の増加に伴いまして、全体の経常収益は年々増加はしてきてございます。

 我が国が研究力を高めていくためには、人材の流動性の確保と安定的な研究環境の確保の両立を図ることが重要でございます。この点、法人化に伴いまして、大学の人材の流動性を高めることが可能となりまして、一方で、若手教員が将来の見通しを持てなくなってしまうようなことがないようにすることも重要でございます。このため、法人化以降、国として研究環境の整備充実に取り組むとともに、近年、各大学においてもテニュアポストを増やす取組が進められているところであります。

西岡委員 国立大学法人化については、様々な議論があるというふうに思います。本日、ここで議論することは時間的にちょっと無理でございますので、引き続き、また改めて議論をさせていただきたいと思います。

 続きましての質問でございます。

 本法律案の目的である大学の研究力を向上するためには、先ほども申し上げたような、基幹的な交付金ですとか補助金の増額が必要だと思いますし、人への投資こそが最重要、最優先課題であると考えます。十兆円のファンドによって、果たして、このような根本的な原因の改善が図られるのでしょうか。人への投資の方向性が見えない中で、大きな懸念がございます。根本的な原因が図られないままに、資金投入ですとか、運用益を確保する動きということが起こってきますと、問題を構造化させるリスクが生じてくると思います。

 このことについて、政府の方針、見解をお伺いしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学ファンドによる支援は、世界と伍する研究大学となるポテンシャルを有する大学に対して、諸外国のトップレベルの研究大学との資金格差を縮めるための追加的な支援を行うものでございます。大学における基盤的な経費とは全く目的が異なっており、大学自身の明確なビジョンに基づく前例のない改革を通じた研究基盤の抜本的強化を行う取組を支援することから、これまでの支援に加えて助成をする必要があると考えております。

 したがって、先ほど御指摘いただいた国立大学運営費交付金などの基盤的経費と、それから、別途、科研費などの競争的資金、これはデュアルサポートシステムとしてしっかりと支援をしながら、これに加えて今回の十兆円ファンドの運用益で大学の自主的な取組を支援するというものでございますので、その中で、各大学が人材育成や研究基盤の整備に力を入れていただければというふうに思っております。

西岡委員 やはり、人材投資、人への投資というのが大変重要だと思います。

 今御説明がありましたように、全く別の支援であるという御説明がございましたけれども、根本的な原因というものについてのしっかり解決策を同時に示していかなければ、先ほど申し上げたように、大変問題が構造化して、また新たな、様々な問題が発生してくるというふうに思いますので、しっかり基盤的な支援というのをお願いをしたいと思います。

 先ほどからも議論があっておりますけれども、国際卓越研究大学としては数校を認定する方針と聞いております。一握りの限られた大学だけが認定を受けるということになれば、その資金配分が東大を中心とした旧帝大系国立大学等に偏重する可能性が高いと想定され、ファンドの支援を受けることによって大学間の格差が今まで以上に拡大をし、特に地方大学との格差が拡大することを危惧いたします。

 地方にこそ技術革新のイノベーションの源があり、研究力、技術力向上のためには、まさに幅広い大学や学問領域への支援など、支援の裾野を広くすることが全体の底上げにつながるのではないかというふうに考えます。

 末松大臣の御見解をお伺いいたします。

末松国務大臣 大学ファンドから国際卓越研究大学への支援は、諸外国のトップレベルの研究大学との資金格差を縮めるために、一校に対して数百億円程度の規模、集中的な支援を行うことから、数校程度に限る必要があると考えるに至りました。

 一方、我が国全体の研究力強化には、トップレベルの研究大学への支援のみならず、その基盤となる優秀な人材の育成とか、地域の大学の強化が極めて大切です。

 このため、大学ファンドの運用益からは、全国の優秀な博士課程学生への支援も実施をすることといたしておりますし、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、令和二年で博士課程の方々に対して二百億、令和三年度補正でも四百億をもう既に前倒しで支援をいたしてございます。

 加えて、大学ファンドによります支援以外にも、世界トップレベル研究拠点プログラムや共創の場形成支援プログラムなど、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学への支援策を総合振興パッケージとして同時に講ずることといたしております。

 これらの支援を通じまして、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学がトップレベルの研究大学とともに互いに切磋琢磨できる関係を構築することで、多様な研究大学群を形成して、日本全体の研究力の底上げを目指したいと思います。

 いずれにしましても、地域の中核大学への支援はしっかりと行っていきたいと考えてございます。

西岡委員 今の大臣の御答弁に関連いたしますけれども、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージというものを一方で用意をされているということでございますけれども、この予算額というのは令和四年度予算として四百六十二億円ということでございまして、卓越研究大学への支援規模と比べて大変支援額が少ないというふうに考えます。

 特に、地方大学に対してもっとやはり支援の充実というのが必要ではないかと考えますけれども、また改めて末松大臣の御見解をお伺いいたします。

末松国務大臣 我が国全体の研究力強化をするためには、トップレベルの研究大学への支援のみならず、地域の大学を強化することが大変重要であると認識をいたしております。先生と同じ考えでございます。

 このため、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学の機能を強化することを目的に、本年二月に総合振興パッケージとして支援策を取りまとめまして、今年度より支援を開始しているところでございます。額は、確かに、令和四年度四百六十二億円ということでありますから、もう少し考えなきゃいかぬと思います。

 意欲のある大学がそれぞれの強みや特色を十分に発揮しまして、地域の経済社会の発展や国内外における課題の解決、特色ある研究の国際展開を図っていくことができるよう、各大学とも対話しながら、大学に寄せられた、きめ細かな支援を行っていきたいと思います。

西岡委員 今、大臣から、今後御検討いただくというお言葉をいただきました。是非支援の充実をお願いをしたいと思います。

 続いての質問は、先ほどから質疑があっておりますので、後に回させていただいて、次の質問に移ります。

 全国の地方大学においては、世界トップレベルの研究成果を上げている大学が多くございます。例えば、私の地元の長崎大学でございますけれども、実は、昭和十七年に長崎医科大学附属東亜風土病研究所というものが開設をされまして、昭和四十二年に現熱帯医学研究所となって、現在に至る長い歴史がございます。

 長い感染症研究によりまして、今、トップレベルの知見、研究成果、人材を輩出をして、まさに現下の新型コロナウイルス感染症対策の最前線で、大きく、様々な分野で御貢献をいただいております。これまでの様々な研究の中では幾度も困難があったというふうに聞いておりますけれども、息の長い地道な研究のテーマというものや取組は大変重要であるということを痛感をいたします。

 今回、卓越研究大学、このようなファンドができることによって、いわゆるもうかる研究だけが進められまして、基礎的な研究やすぐには結果の出ない長期的な研究がおろそかになるのではないかという懸念がございますし、実際にそのような方向に行かざるを得ない局面も出てくるのではないかと考えますけれども、政府の見解をお伺いをいたします。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学が中長期的に成長を遂げていくためには、人材育成や多様な学術研究、基礎研究への投資が不可欠であると考えております。先ほど御紹介いただいたように、諸外国のトップレベルの研究大学では、数兆円規模のファンドの運用益を活用しながら、基礎研究の振興や若手研究者への支援ということをきちんと進めていると承知しております。

 したがって、我が国の国際卓越研究大学においても、そうした諸外国の研究大学の仕組みもモデルとしながら、世界と伍する研究大学の実現を目指していただきたいと思います。

 その中で、事業成長ということも言っておりますけれども、やはり、新たな学問領域の創出を始めとする多様な学術研究や基礎研究をしっかりと進めていくとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造するという役割と、研究成果を広く社会に提供するという役割の双方への投資を後押しすることが可能であるというふうに考えております。

西岡委員 もう時間が限られております。最後の質問となります。

 第二条において、大学における教育及び研究の特性への配慮について規定をされております。

 大学の運営は、各大学や研究者の自主自律的なビジョンに基づいて進めることが極めて重要であり、大学ファンドの支援によって、特定の例えば研究の推進ですとか、組織の在り方を変更するということが強いられるようなことがあってはならないと考えます。このことについて見解をお伺いするとともに、配慮という言葉がございますけれども、具体的にどのような形でその遵守が担保されるのかということを末松文部大臣にお伺いをして、私の質問といたします。

末松国務大臣 お答え申し上げます。

 大学の教育及び研究は、外部から干渉を受けることなく自由に、自主的に行われることが求められているということ、大学における学術研究は大学教育と一体となって行われるとともに、長期的な視野にわたって行われる必要があるということ、それと、国境を越えた国際的な通用性を有して、大学の質の保証は国際的な視野で行う必要があるということ等の特性を有してございます。

 こうした大学の教育及び研究の特性への配慮は教育基本法等においても規定されておりまして、先生御指摘されたとおりですが、これらも参考に、本法案でも同趣旨の規定を設けたところでございます。

 このため、政府としましては、本法案の成立の暁には、その運用に当たりまして、具体的には、研究者の自由な発想に基づく研究が妨げられることがないように留意するということ、それと、長期性を有している又は不確実性が特に高い研究活動の促進を妨げるような短期的な視点で制度を運用しないようにするということ、大学における研究活動の展開等の推進に当たりまして、教育活動の展開への悪影響が生じないよう、教育、研究、社会貢献の各活動の調和を図りながら政策を推進していくということ等の配慮をしていくことを想定してございます。

西岡委員 時間となりました。

 教育現場の研究者の皆様のお声を是非大臣にもしっかり聞いていただいて進めていただくことをお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 冒頭、一点確認をいたします。

 十五日の本委員会で、増子宏高等教育局長が、フランスの無償制度については、収入が高い人も低い人も同じように無償ということで、逆進性だという批判があるというふうな話も実は出ているなどという驚くべき答弁を行いました。

 日本は、二〇一二年、国際人権A規約第十三条二項(b)、(c)の留保撤回をし、高等教育の漸進的な無償化は国際的な責務であります。

 増子局長、先日の答弁は国際人権規約に基づく漸進的無償化を否定するものではありませんね。

増子政府参考人 お答え申し上げます。

 四月十五日の当委員会における私の答弁につきましては、フランスの準無償制をめぐる意見を紹介したものでございまして、高等教育局長として国際人権規約における高等教育の漸進的無償化の流れを否定したわけではございません。

宮本(岳)委員 それは当然のことだと思います。

 改めて、大臣にも確認したい。

 我が国は国際人権A規約の十三条二項(c)の留保の撤回を行っており、高等教育無償化の漸進的な導入に向けて取り組む考えに変わりはありませんね。

末松国務大臣 お答え申し上げます。

 国際人権規約に定める高等教育の漸進的無償化の趣旨を踏まえ、今後とも、経済的理由により学生等が進学を断念することがないよう、教育費負担の軽減に努める考えです。

宮本(岳)委員 では、法案の審議に入ります。

 日本の研究論文数が低迷していることについて、文部科学省の科学技術・学術政策研究所は、日本と論文数が同程度のイギリス、ドイツと比較して日本の大学の特徴を明らかにし、現状分析をしております。配付資料一はその報告書でありますけれども、「最後に」で、日本全体の研究力を向上させるためには何が必要だと述べておりますか。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 科学技術・学術政策研究所の調査報告書によれば、「日本全体の研究力を向上させるためには、上位層の大学の研究力を活性化しながら、上位に続く層の厚みを形成するといった施策が必要であると言える。」とされております。

宮本(岳)委員 科学技術・学術政策研究所の報告書は、今お話があったとおり、上位層の大学の研究力を活性しながらも、上位に続く層の大学の研究力の厚みを形成する政策が必要だと指摘しております。

 では、聞きますけれども、本法案において、助成される国際卓越研究大学の数はどの程度を想定しておりますか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国と我が国の経済規模等を踏まえると、我が国において、数校程度の大学が世界と伍する研究大学となることが期待されております。CSTIの専門調査会において、そうした議論がなされております。

宮本(岳)委員 どの程度の大学数を想定しておりますか。

池田政府参考人 数校程度ということでございます。

宮本(岳)委員 文部省自身の研究所の結論とは真逆だと言わなければなりません。

 対象を数校に限定することの問題点について指摘する声は大変多いです。若手研究者らによって今年発足した日本版AAAS設立準備委員会、日本科学振興協会の研究環境改善ワーキンググループは、大学ファンドについての提言を今年の四月二十日に発表いたしました。

 これは、文部科学省もこの提言を承知しておりますね。

池田政府参考人 承知しております。

宮本(岳)委員 私は昨夜もそのメンバーと意見交換をいたしましたが、大学ファンドの支援対象が数校程度に限定されていることについて、選ばれた大学と漏れた大学の格差を拡大させ、地方国立大、公立大、私立大の所属の教員のみならず、そこで教育を受ける学生の研究に対する意欲、活力を一層低下させること、選ばれた大学に在籍する学生、ポスドク、教員は選ばれなかった大学への異動を敬遠するため、人材の流動性が阻害される可能性があると指摘しておられました。

 提言が指摘する意欲の低下、人材の流動性の阻害が生じるのではありませんか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の研究力向上のためには、一定の人材の流動性を確保しつつ、研究者が将来への見通しを持ち、研究に専念できる環境を整備することが重要と考えております。

 このため、本法案では、国際卓越研究大学に対して、若手研究者の育成、活躍の促進や世界トップクラスの研究者の確保に関して事業計画を策定することを求めており、そうした事業に対して長期的、安定的に支援を行うこととしております。

 具体的には、各大学において、優秀な若手研究者に対する研究室の立ち上げに向けた支援や積極的なテニュアの付与、グローバルな経験の付与などとともに、自校出身者の採用、いわゆるインブリーディングの抑制等による人事の多様性、流動性の確保を通じた、国内外の優秀な若手研究者が活躍できる環境整備などに取り組むことが期待されます。

 こうした取組により、国際卓越研究大学が国際的な頭脳循環のハブとなり、世界中から集まった優秀な人材による新たな学問分野の開拓など、研究成果を創出するとともに、人材を生み育てる拠点となることを期待しております。

 また、大学ファンドでは、国際卓越研究大学に限らず、全国の優秀な博士課程学生への経済的支援も実施することとしております。

 さらに、これらに加えて、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学への支援策を総合振興パッケージとして同時に講ずることとしており、こうした支援を通じて、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学がトップレベルの研究大学とも互いに切磋琢磨できる関係を構築することで、我が国に多様な研究大学群を形成していきたいと考えております。

 文部科学省としては、大学ファンドを始め、こうした施策を総動員して、日本の大学全体の研究力強化に取り組んでまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 だらだらと答弁しなければならないほど、格差と集中、これを進めるということですよね。

 地域中核、特色ある研究大学のパッケージ、今おっしゃいましたけれども、今年度予算でたった四百六十二億円ですよ。

 そもそも国は、大学の経営基盤を削ってまいりました。国立大学の運営費交付金は、法人化後に一二%も削減をされてきました。

 その一方、今回の法案では、数校に限定された国際卓越研究大学には約三千億円が配分され、一校当たり数百億円程度となります。数百億円という規模は、国立大学法人の中でも旧帝大など一部の大規模大学の運営費交付金に匹敵する規模であります。国際卓越研究大学とその他の大学との格差が恐ろしいほど拡大をいたします。

 では、国際卓越研究大学に認定された大学はハッピーなのか。残念ながら、そうとも言えないんですね。

 資料二は、日本学術振興会発行の「科学の健全な発展のために」の九十六ページであります。「ピア・レビューの役割」として、二つのことが述べられております。研究論文の学術誌への掲載や研究助成金の採択、科学者の採用や昇進、大学、研究機関の評価など、あらゆる場面で優れた判断を行うことができるのは科学者だけであること、そして、政治の介入は科学研究をゆがめることであります。そのためにピア、同業者がレビュー、審査することが重要であり、それを担ってきたのが日本学術振興会でありました。

 日本学術振興会は、十三万人を超える専門家の審査員のデータベースを持っており、ピアレビューの原理を尊重する審査体制となっております。これまでの科研費やグローバルCOEプログラム、WPIやスーパーグローバル大学創成支援事業などの事業の採択の審査は、日本学術振興会が行ってまいりました。これは間違いないですね。

池田政府参考人 そのとおりでございます。

宮本(岳)委員 一方、今回の国際卓越研究大学の助成すべき大学の選択の審査は、法案ではどのように進めることになっておりますか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の国際卓越研究大学の認定に当たっては、文部科学大臣の諮問機関である科学技術・学術審議会の意見を聞くとともに、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの意見等を聞いた上で、文部科学大臣が認定や認可を行うこととしております。

宮本(岳)委員 科学技術・学術審議会は、文部科学大臣の諮問機関であり、文科大臣が任命する三十名の委員で構成されており、ピアレビューを尊重し、科学者コミュニティーの自律性を確保するような審査体制ではありません。

 内閣総理大臣を議長とするCSTIの議員十四名、こちらはCSTIの方ですね、こちらCSTIの議員十四名の構成はどのようになりますか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 本来であれば内閣府から御答弁申し上げることかと存じますが、事実関係ですので、私から御説明をさせていただきます。

 CSTIは、「会議は、議長及び議員十四人以内をもって組織する。」と規定されており、議員には、内閣総理大臣のほか、内閣官房長官、科学技術政策担当大臣等の閣僚と、それから有識者として、現在七名の有識者が国会の同意を得て任命されております。このほか、日本学術会議の会長の梶田会長が入っておられます。

宮本(岳)委員 閣僚が六名、それ以外に内閣総理大臣もおりますけれども。その他の有識者議員も首相が指名するんです。

 CSTIも、到底、同業者による審査や、政治介入を排するという意味で、ピアレビューを行う組織とは言えません。

 法案第三条一項では、文部科学大臣が国際卓越研究大学の研究と研究成果の活用のための体制強化の推進に関する基本方針を定める、こうしております。

 聞きますけれども、法案第三条第三項では、この基本方針についてどう規定されておりますか。三条三項。

池田政府参考人 お答えいたします。

 基本方針は、法案の第三条第一項で文部科学大臣が定めるとされ、第二項で、基本方針には次に掲げる事項を定めるものと……(宮本(岳)委員「三項ですよ」と呼ぶ)三項ですか。失礼いたしました。

 「基本方針は、科学技術・イノベーション基本法第十二条第一項に規定する科学技術・イノベーション基本計画との調和が保たれたものでなければならない。」とされております。

宮本(岳)委員 そこなんですね。つまり、国際卓越研究大学は、ピアレビューや科学者コミュニティーの自律性ではなく、科学技術・イノベーション基本計画に沿った基本方針に基づいて、つまり政府方針に基づいて研究と研究成果を活用するために、日本学術振興会の審査を外したとしか考えられないんです。

 資料三を見ていただきたい。

 今年四月十七日に放映されたフジテレビ系列「日曜報道 THE PRIME」についての新聞報道です。番組では、河野太郎議員と橋下徹氏が、科学研究費の使途や防衛省の研究開発費について議論をいたしました。河野氏はこの中で、学術会議が防衛費での研究否定を言い続けているならば、科研費は配分だけ各省庁に任せるということをやらなければいけないだろうなどと発言したと報じられています。

 実は、私は、この番組での発言を文字に起こしたものを一通り読ませていただきました。河野氏はこう言っております。私、防衛大臣だったときに、こういう問題があったので、今文科省が出している科研費を全部文科省と防衛省の共管にしてくれと、別に防衛省は配分には口出し、口を出さないけれども、共管にしてくれ、だから、学術会議の言うとおり、防衛省の予算で研究しませんという大学は科研費全部使えないよと、自分で金集めてやってください、そういうふうにすべきじゃないかということを言って、文科省が、いやいやという感じではありましたけれども云々、こういうふうに語っておられます。番組でですよ。これは重大な発言です。

 河野氏が防衛大臣だったときに、科研費を防衛省との共管にしろという要求がありましたか。そして、それに対して文科省は、いやいやと答えたんですか。お答えください。

池田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような報道があったことは承知しておりますが、科研費担当課に確認したところ、当時の河野防衛大臣に対応した記録は確認ができませんでした。

宮本(岳)委員 当たり前でありまして、防衛省の研究費をもらわない大学の研究者には科研費を与えるなと政治的な圧力をかけるなど、許されるわけがありません。大臣まで務めた者が、放言するにもほどがあると言わなければなりません。

 配付した資料四を見ていただきたい。

 これは、文部科学教育通信のナンバー四百七十一、二〇一九年十一月十一日号に掲載された連載、異見交論の第一回、甘利明衆議院議員が登場した回のものであります。タイトルは、「国立大学は「知識産業体」の自覚を」となっております。

 甘利氏は、この中で次のように述べております。

  橋本さんがある日、私のところに当時、東大理学部長だった五神真さんを連れてきた。「この人を東大総長にしたいと思っている。本命ではないけれど、きっとさせてみせます」と。さらに「甘利大臣の大学改革にも興味を持っていると思います」とも。そこで五神さんに、「あなたが総長になったら、私についてきてくれますか」と聞くと、「その節には一緒にやります」と言ってくれた。結局、五神さんは総長になった。

  CSTI改革に不可欠の事務局長役も、橋本さんが政策研究大学院大学副学長(当時)の上山隆大さんを紹介してくれた。来てくれるかなと聞いたら、「大臣が説得したら、来てくれます」と言うので、上山さんに電話をかけた。改革に取り組んでいる、日本を変えたい、出世を諦めて私と日本を良くする方に回りませんか、と伝えたら、二つ返事でOKしてくれた。その後、上山さんと五神さん、橋本さんと一緒に話し合ってきた。文科省高等教育局長や官邸の和泉洋人補佐官たちも交えて、構想を練ってきた。

 聞きますけれども、この上山隆大という人は、現在、CSTIの常任議員ではありませんか。そして、この東大総長を務められた五神真氏は、二〇一七年から今日、今年まで、科学技術・学術審議会の委員を務め、この四月から理化学研究所の理事長に就任したのではありませんか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 上山隆大氏につきましては、これも内閣府がお答え申し上げるべきことだと思いますが、事実関係ですので、私から、そのとおりでございますと御答弁させていただきます。

 五神真氏につきましては、今御指摘いただいたとおりでございます。

宮本(岳)委員 確認されました。

 まさにCSTIの常任議員であり、そして、五神さんもこの間そういう役職にあったと。

 もう一問、つけ加えて聞きたいと思います。

 資料四で、五神さんや上山さんを連れてきたという、当時CSTIにおられた橋本和仁氏は、現在、JST、科学技術振興機構の理事長ではありませんか。

池田政府参考人 そのとおりでございます。

宮本(岳)委員 では、十兆円ファンドというのは一体どこに設置され、今回の法案で、国際卓越研究大学への助成を行うのは一体どこですか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の大学ファンドが設置されておりますのは、今御指摘の科学技術振興機構でございます。

宮本(岳)委員 助成を行うのはどこですか。

池田政府参考人 ファンドの運用益を、JSTが、ファンドの運用を行いまして、その結果を踏まえて、今回の法案に基づいて助成をすることになります。JSTが助成業務を行うことになります。

宮本(岳)委員 この橋本さんが理事長を務めるJSTが、大学ファンドを設置し、そして、その運用益を助成すると。助成する際のまさに審査、それは、従来のピアレビューという手続ではなくて、CSTI等々が関わってやるんだと。CSTIの常任議員には上山さんなどが関わっておって、自分たちで決める、こういう話なんですね。

 もう一度、資料四を見ていただきたい。その前段のところです。

 甘利さんは、橋本和仁JST理事長も、林芳正外務大臣も、岸田首相も、茂木自民党幹事長も、世耕元経産大臣も、「これはみんな「チーム甘利」だ。」と言っておりますね。この対談で述べております。

 大臣、これはもう政治家ですから、大臣に聞くしかないんです。

 これは、チーム甘利というような一部のグループが、学術の中心であるべき大学を私物化し、橋本氏のJSTに十兆円ファンドを積み上げて、閣僚や上山氏らも加わるCSTIがまさに巨額の資金を配分しよう、そういう話ではないんですか、大臣。

末松国務大臣 いや、宮本先生、お答え申し上げますけれども、こういう今、冊子につきましても、初めて拝見をいたしまして、資料で、私自身は全くこのことは承知をいたしてございません。

宮本(岳)委員 私、ここに、これは国立国会図書館から取り寄せたものですから、国会図書館にはございます、間違いなく。それは、文部科学教育通信というものでありまして、ナンバー四百七十一、二〇一九年十一月十一日ということで、自民党、当時税調会長の甘利明氏が、国立大学は知識産業体の自覚を持て、こういうふうにはっきり言う表題での、ジャーナリストとの対談企画になっております。

 この中身を、大臣、改めて確認をして、こういう事実があるのかないのか、明らかにしていただけますか。

末松国務大臣 先生、去年の一月にJST法が改正になりまして、そして今回、この国際卓越大学法案を出しておるわけなんですけれども、このことにつきましては、全く私、関係のない話でございまして、純真な目でこの国際卓越研究大学の法案を出しておるわけでありまして、先生がどのようにお思いになるのかということにつきましては、私がどうこう申し上げることではございません。

 第一、この卓越大学法案につきまして……(宮本(岳)委員「調べなきゃ、それは。調べなきゃ通らない」と呼ぶ)私自身は承知をいたしてございません。

宮本(岳)委員 いや、大臣が御存じかどうかということを聞いているんじゃないですよ。だから、調べてくれと言っているんですよ。

 しかし、大臣は純真な思いでこの法案をとおっしゃるのは分かるけれども、甘利さんはそうじゃないことを述べているから言っているんじゃないですか。もしも、こんなことが事実としてあったとすれば、チーム甘利でやったんだと、橋本さんも上山さんもやったんだとすれば、私の言ったとおりじゃないですか。これは、調査はちゃんとしていただかなければ、こんな法案をこのまま通すわけにいきません。

末松国務大臣 ちょっと、このことにつきまして、先生、大学ファンドの創設について政治主導で行われたのではないかというお話でございますけれども、政府内におきまして大学ファンドの必要性が本格的に議論をされ始めたのは、令和元年八月の内閣府の総合科学技術・イノベーション会議の議論であったと承知しています、CSTIですね。この議論の中で、諸外国のトップレベル大学の状況を踏まえ、我が国においても十兆円規模の国家基金を造成して、その運用益を活用することで、大学に対して安定的な研究基盤経費を支給する旨の提案をなされております。

 一方、同趣旨の議論は、従前より自民党の知的財産戦略調査会や科学技術・イノベーション戦略調査会、自民党及び公明党の部会等、与党においてなされておりまして、世界に見劣りしない規模のファンドの創設に関する提言をいただいたと承知をいたしております。知的財産戦略調査会は平成三十年五月十五日でございます。

 こうした議論を踏まえまして、令和二年の七月に、経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇において、世界に伍するファンドの創設が閣議決定文書において明記されまして、昨年の通常国会において成立しました国立研究開発法人、JST法の一部を改正する法律等によりまして、大学ファンドを設置することに至ったものでございます。

 長々、失礼をいたしました。

宮本(岳)委員 駄目ですよ。ちゃんと調査すると、そして、これが事実かどうか明らかにするとおっしゃっていただかなければ、到底、このまま審議を続けるわけにいきません。

義家委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

義家委員長 速記を起こしてください。

 末松文部科学大臣。

末松国務大臣 先生、御理解いただきたいのは、あくまでこれは文部科学省としてこの法案を提出をいたしておるものでございまして、これについては是非御理解をいただきたいと思ってございます。

 これは、ちょっと私は承知をいたしてございませんから。(宮本(岳)委員「できないですよ。ちょっと筆頭、お願いします」と呼ぶ)

義家委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

義家委員長 速記を起こしてください。

 この資料の件については、この委員会で大臣自身、初めて目にしていることでありまして、後刻、理事会に大臣の対応を説明していただくという形で、どうぞ宮本委員、お引き取りください。

宮本(岳)委員 是非理事会できちっと、どういうふうにするかは協議の上、進めていただきたいというふうに思います。これは、大臣にとっては、もちろん今初めて聞いたということでありましょうけれども。

 最後の資料五を見ていただきたい。

 去る四月二十日に出版されたばかりのこの岩波新書、「学問と政治」の序文であります。この本は、芦名定道、小沢隆一、宇野重規、加藤陽子、岡田正則、松宮孝明の六人の先生方が、まさに日本学術会議の会員としての任命を拒否された先生方の最新刊であります。

 「はじめに」は、この問題は現在進行形であると切り出した上で、この学術会議任命問題は私たちの社会の向かう先を占う試金石なのであると言い、岸田政権は実質的にまだ何も応えていないと告発をしています。

 十兆円もの巨額のファンドによる学術研究への不当な政治介入を直ちにやめることを強く求めて、私の質問を終わります。

義家委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

義家委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 私は、立憲民主党・無所属を代表して、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案につきまして、反対の立場から討論を行います。

 まず、我が党はファンドの運用益を活用して大学に助成を行う取組には賛同するものであり、昨年の国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律案については我が党も賛成した経緯もあります。

 しかし、今回の法律案で整備する国際卓越研究大学制度は、我が国の研究力を強化するどころか、大学間の格差を助長し、大学本来の自由な発想の下、深く真理を探究し、新たな知見を創造するという目的すらもゆがめかねない制度であると言わざるを得ないため、本法案には反対します。

 以下、本法律案に反対の理由を申し述べます。

 大学ファンドからの助成は、八百校ほどある大学のうち、国際卓越研究大学として認定された数校のみであり、その大学には年数百億円が助成される一方、その他の大学には、博士課程の学生の支援に対して僅かな額が助成されるのみです。

 我が国の研究力向上には、特定分野に強みを持つ大学、地域の中核となる多くの大学の研究力の向上は欠くことはできず、トップ大学だけでなく、これらの大学に対し、より一層の支援をする必要があります。

 また、国際卓越研究大学の認定や体制強化計画の認可には、総理大臣を議長とし、多くの閣僚が参加する総合科学技術・イノベーション会議の意見を聞くこととされていますが、これは、日本学術会議の会員任命拒否のように、政治的介入が行われる危険性を有しています。

 さらに、世界の経済成長が大幅に減速し、日本全体も成長に苦しんでいる中、国際卓越研究大学には年三%成長を課す方針とされています。このような中、大学の意思決定機関を合議体とし、その構成員の相当程度が経済界などから成る学外の人材になれば、大学が多様な研究を確保しようとしても、三%成長を達成するために、経済活動に直結する応用研究に資金と人材が集中し、研究成果までに時間のかかることが多いものの人類が新たな知識を得る観点からも大きな意義を持つ基礎研究がないがしろにされるおそれがあります。

 また、大学の財政基盤の強化を目的に、授業料などの増額につながることも懸念されます。

 このような状況で、新たなイノベーションが生まれるのでしょうか。

 我が国の研究力の強化には、多くの研究者が安定的な雇用の中、自らの好奇心や自由な発想に基づく研究を行うことができる環境を整えることが重要で、その結果として、研究人材が育成、確保され、ひいては大学が成長していくのであります。

 一部の国際卓越研究大学のみに運用益を活用するよりは、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金等の大学の基礎的経費にも配分して、任期付研究者を終身雇用へ転換することや、ピアレビューで公正に選ばれる競争的研究費にも配分して、個々の研究への支援を拡充させ、充実させ、研究力の底上げを図るべきであります。

 最後に、大学ファンドの運用益を活用して研究力を強化するという目的を達成するために、一部の大学ではなく、地方を含めた多くの大学に研究の種をまくことができるように、運用益の活用方法の見直しを強く求めたいと思います。

 以上の理由により、立憲民主党・無所属は、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案に反対することを申し上げ、討論を終わります。

 以上です。(拍手)

義家委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 冒頭、先ほどのチーム甘利をめぐる疑惑は、徹底解明を求めるものです。

 私は、日本共産党を代表して、国際卓越研究大学法案に反対の討論を行います。

 本法案は、世界と伍する大学づくりとして、国際卓越研究大学の制度を設け、国による認定の要件、事業計画の認可について定めるものであるとともに、認可を受けた大学には十兆円規模の大学ファンドの運用益による支援を行うものです。

 二〇二一年一月の大学ファンドの創設について、我が党は、高等教育機関として安定した運営が求められる大学への支援を、リスクを負う運用益で行うべきではないこと、政府の求める改革に取り組む数校への限定的支援では問題の解決にならないことを理由に反対いたしました。

 本法案は、こうしたファンドの運用益を用いて、過去に例のない巨額の支援を僅か数校のトップ大学に行い、これまでにない規模で選択と集中を進めるものとなっています。高等教育に格差と分断を生み出すものであり、賛同できません。

 また、本法案は、助成を受ける大学に対して、稼げる大学へと変質を迫り、自主性、自律性、多様性が尊重されるべき大学を、教育、研究の場から、産業イノベーション創出の場へと、大きく変える危険があります。稼げる大学を優先すれば、外部資金の更なる獲得、短期的に成果が見込まれる研究分野への過剰な偏重が進み、さらには、資金獲得の必要性から軍事研究を容認することも懸念されます。

 国際卓越研究大学は、経営と教学の分離などのガバナンス改革も要件とされています。本法案により、学内の教職員の意見を排除した経営組織によって大学全体の運営を進め、自主自律に基づく大学運営、大学自治の破壊をこれまでにない規模で進めるもので、断じて容認できません。

 今、広範な大学関係者からも、稼げる大学法案に反対との声が広がり、ネット署名は瞬く間に一万三千人に達しようとしています。

 今行うべきは、大学の選択と集中政策の失敗を反省し、高等教育全体への公的支援を抜本的に底上げすることであることを申し上げ、反対討論といたします。

義家委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

義家委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

義家委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本ともひろ君外三名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。白石洋一君。

白石委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明に代えさせていただきます。

    国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 基本方針の策定における総合科学技術・イノベーション会議等の意見聴取に当たっては、多様な分野の研究者からの意見を十分に反映するとともに議事の内容を公表するなど、透明性を確保すること。また、国際卓越研究大学の認定、計画の認可に当たっては、大学の自治を堅持するとともに、早期に研究成果の活用が見込まれやすい応用研究が優先されることがないよう、研究成果の活用までに時間のかかることが多いものの人類が新たな知識を得る観点からも大きな意義を持つ基礎研究等を含め、研究の多様性を確保すること。

 二 国際卓越研究大学が欧米主要大学の運営方法をいたずらに模倣し、教育研究内容の充実に関係なく、単に大学の財政基盤の強化を目的とする授業料等の増額等を行うことで、学生の教育機会に経済的な制限がかかるような事態を招くことがないようにすること。

 三 大学において任期を付さない、安定的な身分の研究者及び正規雇用職員を増やし、研究力の強化を図るため、大学ファンドによる支援に関わらず、人件費の基礎となる国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金等の基盤的経費を確実に措置すること。

 四 政府は、我が国の大学全体の研究力の底上げを図るため、個々の大学が、知的蓄積や地域の実情に応じた研究独自色を発揮し、研究大学として自らの強みや特色を効果的に伸ばせるよう、国際卓越研究大学以外、特に地方の大学への支援に十分配慮することとし、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの大幅拡充等により、十分な予算を確保すること。

 五 政府は、我が国の研究者全体の研究力の向上を図るため、個々の研究者がそれぞれの研究環境において多様かつ独創的な研究に継続的かつ発展的に取り組めるよう、科学研究費助成事業や特別研究員制度等の研究者に対する支援策を拡充すること。

 六 高等教育の果たす役割の重要性に鑑み、これまで措置されてきた国立大学法人運営費交付金等の基盤的経費や競争的研究費などの大学への資金が十分に確保されるよう、引き続き大学の長期的、安定的な運営及び研究基盤構築のための財政措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

義家委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

義家委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。末松文部科学大臣。

末松国務大臣 失礼いたします。

 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと存じます。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

義家委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

義家委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時一分散会


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