衆議院

メインへスキップ



第4号 令和5年3月17日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年三月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮内 秀樹君

   理事 池田 佳隆君 理事 橘 慶一郎君

   理事 中村 裕之君 理事 根本 幸典君

   理事 森山 浩行君 理事 柚木 道義君

   理事 堀場 幸子君 理事 鰐淵 洋子君

      青山 周平君    石橋林太郎君

      上杉謙太郎君    勝目  康君

      柴山 昌彦君    鈴木 貴子君

      田野瀬太道君    谷川 弥一君

      辻  清人君    中曽根康隆君

      丹羽 秀樹君    西野 太亮君

      船田  元君    古川 直季君

      穂坂  泰君    山本 左近君

      義家 弘介君    荒井  優君

      梅谷  守君    菊田真紀子君

      白石 洋一君    牧  義夫君

      吉川  元君    金村 龍那君

      高橋 英明君    早坂  敦君

      平林  晃君    山崎 正恭君

      西岡 秀子君    宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    山本 左近君

   参考人

   (全私学連合代表)

   (日本私立大学団体連合会会長)

   (日本私立大学連盟会長)

   (早稲田大学総長)    田中 愛治君

   参考人

   (学校法人ガバナンス改革会議座長)

   (公認会計士)      増田 宏一君

   参考人

   (日本私立学校振興・共済事業団理事長)      福原 紀彦君

   参考人

   (学校法人嵯峨学園嵯峨幼稚園理事長・園長)    藤本 明弘君

   文部科学委員会専門員   中村  清君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     西野 太亮君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     山口  晋君

    ―――――――――――――

三月十六日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(井坂信彦君紹介)(第三三八号)

 同(田所嘉徳君紹介)(第三三九号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第三四〇号)

 同(金子恵美君紹介)(第四五〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第四七四号)

 同(山口晋君紹介)(第四七五号)

 設置基準を生かし特別支援学校の教室不足解消を求めることに関する請願(山田勝彦君紹介)(第三四一号)

 国の責任による二十人学級を展望した少人数学級の前進、教職員定数増、教育無償化、教育条件の改善に関する請願(大西健介君紹介)(第三四二号)

 同(青山大人君紹介)(第四一一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四一二号)

 同(小熊慎司君紹介)(第四一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第四一四号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第四一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四一六号)

 同(佐藤公治君紹介)(第四一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第四一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四一九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四二一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四二二号)

 同(宮本徹君紹介)(第四二三号)

 同(本村伸子君紹介)(第四二四号)

 同(熊田裕通君紹介)(第四五一号)

 同(福島伸享君紹介)(第四五二号)

 同(山岡達丸君紹介)(第四五三号)

 同(神谷裕君紹介)(第四七七号)

 同(山崎誠君紹介)(第四七八号)

 国の責任による二十人学級を展望した少人数学級の実施、教職員定数増、教育無償化、教育条件の改善に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第四一〇号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(小宮山泰子君紹介)(第四七六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

宮内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私立学校法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、全私学連合代表、日本私立大学団体連合会会長、日本私立大学連盟会長、早稲田大学総長田中愛治さん、学校法人ガバナンス改革会議座長、公認会計士増田宏一さん、日本私立学校振興・共済事業団理事長福原紀彦さん及び学校法人嵯峨学園嵯峨幼稚園理事長・園長藤本明弘さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 ただいま御紹介いただきました、全私学連合代表の、また、早稲田大学総長を務めております田中愛治でございます。よろしくお願い申し上げます。

 今般の私学法改正でございますが、御案内のとおり、私立の学校法人の、数は少ないとはいうものの、幾つか、大変深刻な、規範を逸脱した業務執行、また会計上の不明朗な処理というようなことが世間で御指摘いただいておりまして、大きな問題となっております。それに関しまして、私立の学校法人がそのガバナンスの改革をするということは論をまたない問題だというふうに存じております。

 私立学校は、大学から幼稚園に至るまで各種の学校がございますが、それぞれ多様な教育を提供し、設置形態にかかわらず、サイズなどにかかわらず、我が国の公教育の重要な部分を担ってきたというふうに自負しております。

 だからこそ、我々私立の学校法人は自らのガバナンスをより透明性の高いものにする必要があるというふうに存じております。

 私立の学校は、建学の精神に基づきまして、個性豊かな活動を展開し、我が国の公教育の発展に寄与してきたというふうに考えております。したがいまして、社会の信頼を得て今後も発展していくために、自らのガバナンスはより高いものにしていく必要があるというふうに考えております。

 今般の私立学校法の改正についての経緯を簡単に御説明申し上げます。

 そういう昨今での事情もございまして、政府の方々からも、政治家の皆様方からも御心配いただいて、令和二年一月から令和三年三月までに学校法人のガバナンスに関する有識者会議というものが開催されて、一定の方針を出していただきました。

 その後、令和三年七月から令和三年十二月まで学校法人ガバナンス改革会議が開かれまして、この後お話しになられます増田先生を座長として、新たな、非常に改革方針の強い案を出していただきました。

 私どもも、学校法人ガバナンス改革会議の、私立の学校法人は改革が必要であるということには全く同意しておりまして、そこは論をまたないと考えております。しかしながら、多くの学校法人からは様々な懸念が寄せられておりました。

 それを受けまして、政府、文部科学省を中心に、私立学校ガバナンス改革に関する対応方針というものが令和三年十二月に、二十一日でございますが、出されました。

 それに基づきまして、昨年でございますが、令和四年一月から三月までの間に、学校法人制度改革特別委員会というものが開かれました。私もこの委員会の委員にさせていただきましたが、一月から三月までの間に六回、非常に頻度高く御相談をさせていただきました。

 それと同時に、私ども私学では、私立大学連盟、また私立大学協会、そしてそれを束ねております日本私立大学団体連合会、それを更に束ねております、大学から幼稚園までの全私学連合で、何回も議論を重ねまして、昨年の三月四日に、学校法人ガバナンス改革に関する考え方というものを全私学連合としてまとめました。

 その議論を受けて、先ほど申し上げました学校法人制度改革特別委員会では丁寧に御議論いただきました。学校法人の沿革や多様性も配慮していただき、かつ社会の要請にも応え得る、実効性のある改革を実現するため、私立学校関係団体の代表者及び有識者と協議し、丁寧な合意形成を図ったということでございます。

 それを基に、文部科学省私学部を中心に今回の改正案の骨子をおまとめいただき、本年二月の中旬に閣議決定していただき、内閣提出法案として国会の御審議に出させていただいているというふうに伺っております。誠にありがたいと思っております。

 今回の私学法改正の骨子を少し申し上げますが、それは、私どもの先ほど申し上げました学校法人制度改革特別委員会での議論と非常に一致しております。学校法人制度改革特別委員会には、私立幼稚園、小学校、それから私立の中学、高校の代表者の方、私立短期大学の代表者の方、また私立大学の代表者というふうに多くの方と、また、それ以外の、公認会計士や弁護士という有識者の方々、また企業の方も、企業のガバナンスに対応している方も御出席で、幅広い御意見の下に御議論いただきました。

 その中で、我々がなるほどという形でお話がまとまってまいりましたのは、理事会と理事、また評議員会と評議員、そして監事の役割を明確に分ける、分離もするということでございます。

 理事と理事会は、学校法人におけます教育のプログラムを立案し実行していく、また、予算を決め、予算の執行をしていくという責任を持っています。しかしながら、それだけでは牽制ができませんので、暴走が起こる場合がございますので、その暴走を止めて、コンプライアンス違反でありますとか、規範を逸脱したような執行が行われた場合に、それを止める必要がございます。

 それに関しては、監事の方の役割が非常に大きい。監事の方というのは、学校法人の外の方でいらして、学外監事として監査していただくわけでありますが、その方たちが是正勧告を出される。その是正勧告に従わない場合には、評議員会、大所高所から見る評議員会が強い権限を発揮するということができるようにするというのが今回の趣旨でございます。

 その逆もございまして、評議員会が暴走した場合には、監事の方が、おいさめして、是正勧告も出すことができ、評議員会また評議員の会長の方が暴走が止まらない場合には、理事会が、評議員、特定の評議員若しくは評議員の会長を解任することもできるという。

 これは、必ずしもお互いに牽制するばかりじゃなくて、学校法人を運営する理事会と、大所高所から、外から見ていらっしゃる評議員の方たちが、ふだんは協力して建設的な協働をするということでございます。ふだんは協力して学校法人の運営に当たりますが、片方がコンプライアンス違反でありますとか規範を逸脱した行為に走った場合には、モニターをしていて、牽制し、それをいさめる、止めることができる。いさめて止めるにおきましては、独立したお立場にある監事の方の御意見が重要になるということでございます。

 今般の私学法の改正の中では、評議員と理事を兼務することを禁じるということを御提案していただいています。これまでも、評議員の方から理事になる方もいたわけでありますが、今回の法改正に従いますと、評議員の方で理事に選ばれた方は、評議員の籍を抜いて理事になる。また、逆もあると思います。理事を務めている方が、評議員に選ばれて、理事を辞して評議員になる場合もあると思います。また、理事を辞めるとか評議員を降りたときには元に戻るということも許されると思っておりますが、そういった、利益相反がございますので、ふだんは協働しますが、お互いに牽制するという機能を持ちますから、お互いにそういう健全な形での協力、協働と牽制というのが重要だと思っております。

 これも私が学校法人制度改革特別委員会で強く申し上げたことで、評議員会と理事会はふだんは協力しますが、お互いにモニターし、牽制する必要があるということを申し上げてまいりました。

 そして、よく言われておりますのは、評議員の方々は学外の方で、ふだん児童生徒、学生に接しているわけではございませんし、教育のプログラムを動かしているわけではございませんから、評議員の方だけでちゃんと決定ができるんですかという御質問をよくいただいておりますが、私の考えでは、また卑近な例でございますが、私が属しております早稲田大学におきましては、評議員会には理事の者は全員陪席させていただいています。

 そして、評議員の方々から御質問が出ればそれにお答えする説明責任があるというふうに考えておりまして、なぜこういう教育プログラムが必要なのかと言えばその理由を御説明し、また、こういう校舎を建てるというときに、なぜこういう校舎が必要なのかということに関しても理由を御説明し、また、なぜこの業者に発注するつもりなのか、そういう大きな事案に関しては、理事会は評議員会に必ず承認を求めておりますので、評議員会が承認していただかなければ、そういう大きな、何十億というような発注はできないことになっておりますので。その場合に、理事の者どもは、私どもは、評議員の方たちに、なぜこの校舎が必要で、なぜ競争入札の結果この業者の方に発注する方向で今御提案しているかということを御説明するということがございます。

 そのようにして、評議員の方たちは、どのように学校運営がなされているかをよく御理解いただくという意味では、理事のメンバーが評議員会に陪席して御下問にお答えするということは非常に重要な役割だというふうに存じております。

 そういうような中で、今回重要なことは、設置の規模がやはり幼稚園から大学まではかなり異なるわけでありまして、その中で大きな差があることに、一つの私学法の改正で大丈夫かというような御懸念の声も伺っておりますが、今般、文部科学省、特に私学部が相当御尽力いただきまして、学校法人制度改革特別委員会で出された多くの意見を酌み上げていただきました。

 その結果、簡単に御説明申し上げますと、文部科学大臣所轄学校法人、これが大学と短大でございます。それ以外、都道府県の知事所轄の学校法人、それをその他の学校法人というふうに呼んでおりますが、大臣所轄とその他の学校法人とに分けてございまして、短大、大学の大臣所轄の場合には外部理事の方が二名以上、その他の学校法人では一名以上。

 理事の理事会への職務報告は、大学、短大では年四回以上で、その他の学校法人では年二回以上。

 内部統制は、理事会による方針決定が大臣所管の学校法人でございますが、その他の学校法人では任意となっております。

 それから、解散や合併、重要な寄附行為の変更は、理事会の決議に加えて評議員会の決議が必要というのが、短大、大学では必須となっておりますが、その他の学校法人では理事会の決議で十分というふうになっております。

 それから、評議員会構成に関する経過措置、すなわち、評議員と理事を兼務できないということが、現在の評議員で理事を兼務している方はいらっしゃるわけですので、それを解消していく経過措置も、短大、大学では一年間でございますが、その他の学校法人では二年間というふうに、猶予期間も長く取っていただいています。

 評議員による評議員会の招集請求も、規模の大きい評議員を持っている大学、短大では十分の一以上の評議員により招集が可能でございますが、規模が小さいことがありますそれ以外の学校法人では、三分の一以上の評議員によって可能となります。

 また、会計監査人は、短大、大学では設置義務がございますが、その他の学校法人では任意となっております。

 また、計算書類、財産目録の閲覧に関しましても、大学と短大ではどなたでも閲覧が可能となりますという御提案をいただいておりますが、今回の法改正の御提案では、その他の学校法人では、評議員、債権者、在学生その他利害関係者のみ閲覧可能ということになっておりまして、様々な意味で、設置の規模、またその所轄の、大臣所轄か都道府県知事の所轄かによって差がございます。

 また、情報公開も、短大、大学は公表義務がございますが、その他の学校法人では努力義務というふうになっております。

 その意味では、かなり御配慮いただいた形で今回の私学法の改正の御提案をいただいておりますので、私どもも、全私学連合としては、幼稚園から大学まで、随分議論を重ねてここまで参りましたので、今般、この国会で御審議いただき、成立していただければ大変ありがたく存じております。

 私学の学校法人のガバナンスの改革は必須の要項でありまして、待ったなしの、論をまたないことであるというふうに存じて、我々も肝に銘じて改革を進めてまいりたいと存じております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

宮内委員長 ありがとうございました。

 次に、増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 ただいま御紹介いただきました増田と申します。

 本日は、私立学校法改正案の審議に際しまして意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、ほかの参考人の方と違いまして、余り口が上手じゃないので、話ができませんので、教育をしたことは余りないので、申し訳ありませんけれども、申し述べたいことを文章に書いてきましたので、それを読み上げさせていただいてそれに代えさせていただきます。そういうことでよろしくお願いいたします。

 それでは、私は、文部科学省の学校法人ガバナンス会議の座長でございますので、同会議の提言に沿ってお話をさせていただきます。

 今回の私立学校法改正案は、現行の私立学校法より一歩前進の改革ではありますが、ガバナンス改革会議の提言から見ますと、全く不十分であるとまず申し上げたいと思います。

 その理由は、評議員会の役割を、監視、監督の機関とせず、理事会との建設的な協働機関とされ、牽制的な役割を担うことになったからであります。加えて、監視、監督される執行側が監視、監督側の評議員そのものを兼ねたり、評議員の選任、解任ができるなど、明らかに利益相反になっているということです。

 以下、三点に絞ってお話しさせていただきます。

 一点目ですが、そもそも、二〇一九年に監事の権限の強化などの改正がなされ、ガバナンス強化が図られたばかりの現行の私立学校法の改正が、なぜ今求められているのでしょうか。

 お手元資料、「私立学校法の一部を改正する法律案について」の表紙から二枚目の一、学校法人の現状と課題ですが、(1)、近年、大学を設置している学校法人の不祥事が多発しております。学問の最高学府である大学の理事長、理事などの役員による学校資金の横領や不正支出、パワハラ、セクハラなどのハラスメント、入試不正などが後を絶たない状況であります。学校法人は、公益法人の中でも特に優遇され、固定資産税等の免税などの税制上の優遇措置、いわゆる隠れた補助金に加え、御高承のとおり、国や自治体からの多額の補助金や交付金を享受しております。

 次に、(2)ですが、日本の大学の国際的評価の低下です。アジアの各国にも追いつかれ、追い越されている状況にあります。また、少子化の状況もあり、入学定員割れの大学も過半数校に及んでいると聞いております。こうした学校法人の経営環境は厳しく、学校法人の経営は健全な運営とともに大胆で機動性ある決断を求められ、経営執行体制、ガバナンス体制の強化は喫緊の課題となっております。

 また、(3)ですが、学校法人以外の公益法人、公益社団・財団法人や社会福祉法人等は、既に評議員会、理事会、監事等の執行と監視、監督の権限を明確に分離した機関設計による制度改革が行われ、さらに次の改革に向かっております。こうした点を踏まえて、与党の行政改革推進本部の公益法人等のガバナンス改革検討チームの提言取りまとめが行われたものと聞いております。

 こうして始まった学校法人ガバナンス改革議論のいきさつですが、三枚目に記載があるとおり、二、二〇一九年六月二十一日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針二〇一九、いわゆる骨太の方針二〇一九を受け、学校法人のガバナンスに関する有識者会議が二〇一九年の十二月二十日に設置され、二〇二一年三月十九日に報告、公表されましたが、改革の方向性にとどまり、更なる検討が必要とされたわけでございます。

 次に、二〇二一年六月十八日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針二〇二一、骨太の方針二〇二一において、更なる抜本改革の議論が必要とされ、文部科学大臣直属の会議として、私が座長の学校法人ガバナンス改革会議が二〇二一年六月十八日に設置され、同年十二月三日に報告、公表、同十三日に文部科学大臣に提出したわけでございますが、その後、私学関係者の強い要望で更に議論が必要とされ、学校法人制度改革特別委員会が二〇二二年一月六日に設置され、同年三月十七日に報告、公表がなされたところです。

 つまり、閣議決定されたものが二度にわたり差し戻され、約二年余りの期間がこのガバナンスの議論に費やされ、今回の改正案の提出に至ったわけであります。

 次に、四枚目の、改革会議の提言と改正案との比較は別紙のとおりでありますが、改革会議の提言のポイントについて御説明したいと思います。

 一、執行と監視、監督の役割を明確に分離した機関設計をし、その運用を行うこと、二、私立学校法を、学校法人の学生生徒数、教職員数、収支状況等の社会的影響力、重要性等、規模に応じた適用をすること、三、財務情報及び事業報告書は統一した様式に基づいて作成、開示すること、その際、評議員の構成や理事の選任方針、理事長退任者の経営への関与、内部統制システムなどのガバナンスに関する情報も積極的に開示すること等であります。

 次に、提言と改正案の比較、相違する点は別表のとおりですが、この中で重要な相違点だけを申し上げたいと思います。

 改正案では、評議員会を学校法人の意思決定のための監督、議決機関とせず、理事会を法人意思決定の議決機関とした結果、その役割も、牽制するところにとどまったわけです。

 まず第一点ですが、評議員会の承認、決議の事項が、改正案では、学校法人の基礎的変更に係る事項、任意解散、合併及び寄附行為の変更と限定されている点です。

 第二点ですが、評議員会の構成です。評議員会の選任が理事、理事会により選任される数の二分の一を超えない、あるいは教職員の数が三分の一を超えないとしていますが、監視、監督する側が選任する評議員や、監視、監督される現職の教職員が構成員になるのでは、たとえ数に上限があったとしても、利益相反であり、公正性や公平性も疑われ、牽制する機関としても、役割が果たせるか疑問を持たれるところです。理事会が選任する評議員や現職の教職員の評議員が監視、監督しているといっても、その実効性や公正性、公平性は疑われるでしょう。

 最後に申し上げておきたい点は、今回の私立学校法の改正の論議において、私学関係者の誤解に基づく点があったのではないか。

 特に、改革会議提言の監督機関である評議員会は、現行の諮問委員会的なものでなく、承認、決議する権限を持つ監督機関となるわけですが、これはあくまでも、売買取引契約などを締結する執行権限はないわけであります。つまり、法人の執行機関である理事長、理事が決めることを承認しないとしても、自ら契約等を締結することはできないわけで、評議員会の議長が暴走し、学校法人を乗っ取ることなどあり得ないわけであります。

 そして、何より、この評議員の選任は当該学校法人が行うわけで、行政その他外部の機関や人たちが行うわけではありません。学外者のみの評議員を選任するとか言われましたが、そうではなく、現職の教職員は監視、監督される立場なので、利益相反になり、選任するべきではないと申し上げているだけです。改革会議の提言では、学外者なる言葉は使用しておりません。同窓生や教職員のOB、地域コミュニティーの方など、建学の精神、学校の理念などに理解のある、その学校法人にマッチした評議員を選べばよいわけであります。

 こうした誤解に基づいて今回の私立学校法改正が行われているかに見え、委員としては誠に残念であります。こうした疑念を解消し、早期に他の公益法人並みのガバナンス体制にされることが望まれ、他の公益法人の改革とともに、随時見直しを求めるものであります。

 以上であります。ありがとうございました。(拍手)

宮内委員長 ありがとうございました。

 次に、福原参考人にお願いいたします。

福原参考人 日本私立学校振興・共済事業団の理事長を務めております福原でございます。

 今次の私立学校法改正に向けた様々な議論におきましては、大学設置・学校法人審議会の委員として学校法人分科会に所属しておりましたことから、同分科会の下に設置されました学校法人制度改革特別委員会の主査を務めさせていただきました。

 そこでは、ただいま御報告がございました増田先生がおまとめになられた貴重で豊富な御議論の成果も受けて、審議会の委員の方々と有識者、専門家の方々に、各種学校を設置する多様な学校法人の関係者の方々をお迎えをいたしまして、現場や関係者の声を丁寧にお聞きし、実効性のある法制度の構築に向けて、報告書をまとめさせていただいたところでございます。

 その際に、私自身が主査覚書として議論の手がかりを提供させていただきましたが、本日は、その主査覚書でもお示しをいたしました私見を踏まえまして、改めて、今次改正法案に関する所見の一端を申し述べたいと存じます。

 お手元にお届けしてございますレジュメの項目に沿って、総論的な部分から各論的な部分へと順次申し上げてまいりたいと存じますが、その際、意見にわたる部分、また理論的分析にわたる部分は、必ずしもその委員会や所属団体の御承認を得たものばかりではございませんで、法律学、とりわけ事業組織法の研究者としての所見が含まれておりますことをあらかじめお断りしておきたいと存じます。また、時間の関係におきまして、各論にわたる部分についてや、立法の経緯につきましては、既にお二方より御説明もあったところでございますので、その根底にある考え方というものについて御紹介を申し上げるのにとどまることも御承知おきいただきたいと存じます。

 さて、昨年、我が国で学校制度が発足して百五十周年を記念する機会がございました。我が国の近代化と現代化を支えた人材の育成におきまして、充実した学校制度、世界に誇る学校制度が果たした役割が大きいことは、御臨席を賜った陛下のお言葉、また三権の長の御挨拶、文科大臣の御挨拶に共通したお考えと御認識であったところでございます。

 我が国の学校制度の構築と発展におきまして、社会の様々なリソースを活用して各種の学校を設置、経営してきた学校法人と、多様な理念と建学の精神の下に運営されております私立学校の果たしてきた役割は、定量的な観点からも、また定性的な意義からも大いなるものがあったと言うことができます。

 そして、今日、少子化が激しく進行する中で、ソサエティー五・〇と呼ばれる近未来社会を支える人材をSDGsを認識して育成するに当たりましては、公教育を担う私立学校を設置する学校法人は、その組織を一層充実し強靱化して諸課題に取り組み、社会の持続可能性を担保する使命を今後も果たすべく、時代と社会の要請を受けた大改革に取り組んでまいらねばなりません。

 今次の私学法の改正というのは、平成二十六年と令和元年の改正に続きまして、不祥事を防止するための制度基盤を一層整えることを目的にしていることは言うまでもありませんが、今申し上げましたように、我が国の学校法人とその設置する私立学校が、時代と社会の要請を受けた大改革に果敢に取り組み、社会の負託に応えることができるための組織基盤を再構築するものであると考えております。

 そこで、本日、まず第一に確認させていただきたいことは、我が国で設けられておる学校法人というものの特殊性、独自性ということでございます。

 一九四七年の学校教育法の制定に続きまして、四九年、昭和二十四年に制定されました私立学校法によりまして、「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによつて、私立学校の健全な発達を図ることを目的」として、私立学校の公共性を高めるという観点から、その設置者を特別の法人とするという学校法人制度が誕生したわけでございます。

 この私学法制定前は、学校法人という特別の法人類型はございませんで、私立学校は原則として民法上の財団法人によって設立されておりましたが、同法の財団法人に関する規定の不備を補い、学校法人の経営主体たるにふさわしい公的性格を与え、その設置する私立学校の公共性の高揚を図るために、新たな特色ある法人類型として学校法人制度が創設されたものでございます。

 そして、令和元年の改正におきまして、度重なる改正をまとめ、「自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その設置する私立学校の教育の質の向上及びその運営の透明性の確保を図る」ということが学校法人の責務と明定され、これが今日、私学法第二十四条に述べられているところでございます。

 そして、学校法人は、他の公益性を追求する法人と比べますと、教育研究組織である学校、とりわけ大臣所轄学校法人は大学でありますが、この学校、大学を設置することを目的としている法人というところに独自性がございます。そして、教育研究機関たる学校、大学の運営につきましては、教育基本法、学校教育法により、校務をつかさどり、所属職員を統督する学長、校長を核とする教学マネジメントの規律がなされているところであります。

 その点につきましては、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する理事会というものと、学校法人を代表し、その業務を統理する理事長を核とする学校法人の機関構造から相対的に分離され、いわば二元的にガバナンス構造を有していると見ることができます。こうした相対的分離構造は、例えば医療法人と医療施設の関係などにも少し見られるところではございますけれども、一般的な法人組織には見られないものであり、先ほど申しました、我が国の学校制度が果たしている大きな役割に照らしまして、学校法人制度の特徴を成しているところであり、これらを踏まえて、機関設計とガバナンス構造の構築に際して独自性を考慮しなければならないと言うことができるわけでございます。

 そこで、学校法人の機関設計、学校法人は法人でございますから、これに権利や義務や責任が帰属する関係をどのように定めるかということにつきましては、学校を設置する法人を原則として財団法人としておりました、かつての民法上の法制に由来をいたしております。

 そして、評議員会は、原則として、私学法及び寄附行為に定める業務に関する重要事項についての、理事長が意見を聞かなければならない諮問機関とされており、寄附行為をもってそれら学校の業務に関する重要事項を議決する機関とすることもできるものとされているところであります。これは、学校法人が、制度の由来として財団法人的性格を有しつつも、教育活動へ私的財産ほか多様な資源が提供されて、創立の精神と建学の理念の下に学校を設置して管理するという特殊性を有するために、その創立の精神、建学の理念を継承する創立者、その親族関係者、特定団体関係者等を構成員とする評議員会を組織することとして、学校の業務に関する重要事項の諮問機関として原則的に位置づけられたものと見ることができます。

 また、評議員の構成員として、その他、設置学校の教職員や設置学校の卒業生、出身者等を加えて、学校法人が教育研究を行う学校を設置するという目的の下での人的集団としての社会的性格を帯びているわけであります。とりわけ、これまで理事と評議員との兼任が禁じられていなかった点には、重要事項等の諮問、議決の機関に財産拠出者や創立の理念、建学の精神の継承者を加えておきたいという考え方や、理事が評議員として評議員会に出席することがその運営を円滑にする面があるとの考えがあったわけでありますけれども、評議員会の構成員になった上で、業務執行の理事、理事長にもなるという、学校法人制度が創設されたときのプロトタイプが想定されていたものではないかと思われます。

 しかし、私学法が制定されたときより評議員が理事から区別されている以上、制度上区別して置かれている以上、原則として、理事が評議員を兼ねることは望ましくないとされていたことにも留意をしなければなりません。

 それでも、法人創設から年月を経て、学校法人の業務の規模の拡大や経営の高度化、合理化が進みますと、いわゆるプロトタイプではない評議員や理事、理事長が登場する例が多くなってまいります。設置学校の教職員や設置学校の卒業生、出身者、特定団体関係者等が評議員の多くを占め、財産拠出や創設の経緯の影響がだんだんと薄れ、学校法人が社団法人的性格を強める場合も出てまいります。

 ガバナンスの観点から考えますと、財団法人由来の学校法人の場合には、例えば株式会社の株主のように、持分権者を起点としたガバナンスというものは期待できませんので、創立の理念や建学の精神を維持する寄附行為の番人として評議員会が業務執行機関を牽制できるようにしておく構造、学校法人の伝統的ガバナンス構造を形成しておくことになります。

 さらに、設置学校の教育研究、社会連携等の活動が拡大してまいりますと、広くステークホルダー、いわゆる利害関係人と称せられる方々との対話により学校法人の業務運営を実現すること、すなわち、ステークホルダーとのエンゲージの束が形成されることで公共性を維持した業務執行機関の抑制を行うという構造、いわば学校法人の現代的なガバナンス構造が望まれるようになってきております。

 また、税制優遇や私学助成、幼児教育、高等教育の無償化等の進展によって、それにふさわしいガバナンス構造の現代化を図っていくことに対する社会的要請もますます高まっているところでございます。

 ただし、この傾向の下に、かえって、創設の理念や建学の精神という私立学校の存在意義が顧みられなくなってしまったり、特定の集団の利害関係によって、理事会を牽制するばかりか、意図的に支配する状況が生まれるなどして、理事会制度を中心とする学校法人の業務の円滑な進行が妨げられたりするという懸念、また、そういうことが不祥事の温床になるという懸念もつとに指摘されているところでございます。

 今次の改正法案は、私立学校の特性に応じまして、私立学校を設置する学校法人における機関構造の設計に当たりましては、各機関の権限分配について、法人の意思決定と業務執行の権限、業務執行に対する監督、監視の権限というものをしっかり整理して、理事、理事会、評議員会及び監事の協働と牽制による実効性あるガバナンス構造を構築するという形になっております。

 この場合、不祥事の発生の背景となるガバナンス不全の構造的問題をしっかりと理解をし、学校法人の機関設計の在り方、とりわけ評議員会の地位について、学校法人制度が由来する伝統的なガバナンス構造と、先ほど御紹介申し上げました現代的なガバナンス構造のそれぞれに潜むリスクにも留意しておかなければなりません。

 すなわち、学校法人の伝統的なガバナンス構造では、いわゆる牽制が想定されていても、それを顧みない理事長、一部理事の専制が心配されるということであり、逆にまた、理事、監事、評議員の選出を通じて理事長等の地位を差配する専横のリスクが潜んでおります。

 他方、現代的なガバナンス構造では、広くステークホルダーの意見を徴する目的で評議員会が構成され、公共性と信頼性を確保した業務執行への牽制が期待されますけれども、評議員会が一定の属性を有する集団で構成されてしまいますと、理事会の構成や理事長の選出を通じて専横のリスクが生ずるという懸念が否定できないところであります。

 いずれのタイプにおきましても、理事、評議員、監事の選出の在り方によって、それらに期待される権限や機能が形骸化することによるガバナンス不全のリスクがあるほか、それぞれのタイプ別にも、不祥事が発生する構造的なリスクが潜んでおります。

 今回の改正法案を整える議論におきましては、これらのリスクを極力低減して、ガバナンス不全となることを予防する法的措置が講じられたところでございます。

 さて、時間の都合がございます。二以降の各論につきましては、既に法案の内容を御承知の先生方にとりましては不要とは存じますが、骨格だけ御紹介を申し上げまして、審議の御参考に供したいと思います。

 以上のような認識を基に、今般の学校法人制度の現代化に向けた基本的視点としては、今申し上げましたように、意思決定権限を分配するということ、それとガバナンス構造をどのように確立するかという、この二つの適切な構築をいたさねばならないということであります。

 第二に、我が国の学校法人は、その学校種、設置する学校種によって様々であり、大臣所轄の法人から知事所轄の法人、また、都市部に所在する法人から地方に所在する法人まで、様々な特徴を有しており、それぞれがしっかりとその任務を果たさなければなりません。

 そこで、こういった実態に合わせた規制区分というのをこの機会に是非設けなければならないということが一つ。それから、自主性と自律的コントロールをやはり優先をするということからは、寄附行為による自治というものをしっかり守っておかなければならないということ。そして、大きな制度変更というものが懸念されるのであれば、しっかりと経過措置を取って、十分な対応がなされる期間を設けなければならないということであります。

 そして、ガバナンスは法令のみによって実現されるのではなく、行政、民事、刑事の規律を協働させるとともに、ハードローやソフトローの整備も促進しなければなりません。

 各論の三と四は割愛させていただきたいと思いますが、最後に五として書きましたところは、今般の法改正において頭出しがなされたと言ってもいい点でございます。

 すなわち、学校法人経営が更に多様化しております。それは、グループで学校法人を経営していくという傾向であります。これらにつきましては、子法人に対してしっかりとした監督が及ぶ仕組みをスタートさせることによって、今後の法制度の発展というものを期するところであります。

 さて、このような改正を実現されましたら、どのようなことが期待されるのかということでございますけれども、それは、学校法人において、ステークホルダーガバナンスといった観点が今後促進をし、様々な観点でのリソースの活用、そしてステークホルダーとの対話、こういったようなものによる学校法人の運営が期待できるということであります。そして、社会と時代に応える学校法人組織を充実、強靱化して、様々な課題、例えば、成長分野における人材育成を量的にも質的にも確保する、こういった役割を果たしていくこと、そして、少子化に当たって、学校法人の連携や再編時代の礎ともなる、実効性ある制度改革の第一歩を踏み出すことができるものであるというふうに考えるところでございます。

 先生方の御審議をどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

宮内委員長 ありがとうございました。

 次に、藤本参考人にお願いいたします。

藤本参考人 ありがとうございます。

 ただいま御紹介を賜りました。私は、京都の嵯峨幼稚園という幼稚園の園長をしております藤本と申します。

 本日は、このような大変貴重な機会を設けていただいたことに心より感謝を申し上げたいと存じます。

 ただいまのそうそうたる三名の先生方の後で大変恐縮ではございますが、私は、一人の園長として、現場からの思いを皆様方にお聞きいただきたい、その思いで今日は参りました。

 うちの幼稚園は、ちなみに、大正十四年に創立されておりまして、九十八年ということで、ただ、京都で九十八年というのは、そんなに古い、威張れるものではございません。しかしながら、京都でしっかりと幼児教育に取り組んでいるということでございます。

 もちろん、私は、今回の私学法の改正につきまして、若干の知識は持ち合わせておりますが、とてもではございませんが、先ほどの先生方のような専門性の高い意見を述べることはできません。何とぞ失礼をお許しいただきたいと同時に、私は何も、幼稚園団体を代表して発言をするわけでも、特定の政党に偏ってそちらから発言をするわけでもございませんが、一人の、私立幼稚園、こんなふうな、幼稚園ってこんなのだよということを御理解いただければというふうに思っております。

 そして、まず、大前提といたしまして、今回の私学法の改正、これは大変大切なことだという認識にもちろん立っております。つまり、学校法人としての先ほど来出ている公平性であったり透明性であるということは、幼稚園であろうが、小学校であろうが、大学法人であろうが、全てがやはりきちんと守っていかないといけない、これは喫緊の課題である、これが大前提ですので、不正とかあるいは一部の暴走などが断じて起こらないように、再発を防止するということが大前提ということでお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 しかしながら、先ほど来、いろいろなお話でもちらちらと出ておりましたが、大学法人と私ども幼稚園では、本当に規模が違います。もうお分かりいただけますように、何万人といらっしゃる学生さんを抱えている大学もあれば、私たち幼稚園は、京都でも、百人を切っている幼稚園がほとんどになってきました。そういう中で、本当に学生数も大きく違う、そして、それに伴う財務状況も非常に大きく、桁が二つも三つも違うような状況の中で、本当にこの私学法が全ての学校種に運用されるということがいいのかどうか、そのことに大変多くの疑問とそして不安を抱くのは決して私だけではないというふうに是非御理解いただきたいというふうに思います。皆様も容易に御想像いただけると思うんですが、大きな大きな駅前のショッピングモールと私たちのような個人商店とが同じルールで同じ方にやりなさいと言われたら、個人商店は、これはもう一目瞭然ですよね。

 ただ、そこの中でしっかりとガバナンスは高めていかないといけない、それはもう大前提です。しかしながら、制度だけを、仕組みだけをつくることが本来の目的ではないはずです。一つ一つの学校が、大学であろうが、高校であろうが、私たちの幼稚園であろうが、ガバナンスに基づいて、そして、その中で生き生きと子供たちが自主的に学ぶ、この中身があって初めて、私は大事だというふうに考えております。

 しかるに、このように非常に、大学と同じようなルールを作られると、私たちは大変、やはり、様々な面でいろいろな業務に差し障りがあるということが非常に不安でございます。それについて、先ほどもお話がありましたけれども、いわゆる大臣管轄のところと私たち幼稚園のところで若干の時間的な猶予もいただいていることも感謝を申し上げます。しかしながら、それは、一年を二年に延ばすとか、理事会の回数を減らすというだけではなかなか、やはり到底対応できない、そういう時間の猶予を持たすだけが本当に正しい配慮なのかというところも、正直、疑問に、不安に感じているところでございます。

 申し上げておきますが、何も、この私学法に、私たち幼稚園は絶対無理ですよと言っているつもりはありません。ガバナンスを守るということは大前提なんですが、やはり、余りにも大きな規模と私たちが同じように扱われるということには非常に無理があるのではないかなということを、是非皆さん方に御理解いただきたいと思っています。

 やはり、例えば私たち幼稚園では、一日が終わった後に、先生たちが子供たちと、今日一日楽しかったよね、あしたもまた来ようね、あしたも今日の続きをしようね、そんなふうに生き生きとした毎日を送ることが大事です。そんなときに私たち園長は、実は、毎日、職員室で電話を取ったり、いろいろな園児の管理をしたり、門に入ってくる人の管理をしたり、掃除をしたり、もう本当に園長自ら働くという、これは大事なことだと思っています。それが大事なことであり、その中で、もちろん、理事会も評議員会も生き生きと、しっかりと幼児教育に理解をしていただく、その両輪があって初めて本来の目的が果たせるのではないかというふうに私は思うわけです。そういう意味では、今回の改正が本当に私たちにとって、私学にとってふさわしいのかどうか。

 そしてまた、先ほど少子化ということも言いましたが、実は、京都府内の私立幼稚園に通う園児数も、十五年ほど前までは三万人を超えておりました。その中で、ここのところ二万人台になり、そしてこの五年ぐらいでがっがっがっと減って、ついに二万人を切り始めました。それは、やはり保育所にニーズが移っているという一面もございます。しかしながら、何と、最近では、京都市内の民間保育園の六割、最新のデータですが、民間保育園の六割が定員割れを起こしています。そんなふうに、幼稚園だけではなくて保育所もどんどん減ってきている。待機児童が解消していることは確かなんですが、少子化という、実は大きな大きな問題が着実にそこにあるということでございます。

 そのような中で、京都でも、実は二十人を切って私立幼稚園を運営しているような私学助成園もあります。その二十人を切っている私学助成園が理事と評議員の数を考えたときに、何かもう同じぐらいの数になってしまうみたいな、これは本当にいいのかなと、数だけでいえばですよ、そんなふうな変な話も出てきます。やはり、そこのところが一つ、私にとっては大きな疑問であり不安であるなというふうに感じております。

 しかしながら、もう一つ、私が実は皆さん方に今日申し上げたいことがございます。先ほどの、小規模である幼稚園を同列に扱うというところへの不安もありますけれども、実は、私は、やはり教育というものは自由でなければならないということを、偉そうに言いますけれども、やはり私学の人間として常々考えております。学問はやはりあらゆる権力から独立して、学は独立したものでなければいけない。

 そして、学びというものは、幼児だろうが、中学生だろうが、大学生であろうが、与えられるものではなくて、主体的に、自らが自主的に、そして対話的に行っていくものだ、その中で本当の、真の学びがあるというふうに私は常々考えています。

 常に主体的で、自主的で、対話的、これは幼稚園だけではなくて、大学もそうです。高校も、中学も、小学校も、全てにおいて、やはり教育は自由である、そして、学び手である生徒たちが主体的に、対話的に深い学びをしていく、このことが非常に大事だというふうに思っています。

 しかしながら、今回の私学法の改正というものが本当にそういうものに沿っていくんだろうかなということを、一人の園長として不安に思っています。

 といいますのは、例えばですが、今回の仕組みを見ていますと、社会福祉法人の理事会であったり監事であったり評議員会の制度に非常に似てきているなというふうに、私は個人的に感じております。社会福祉法人というのは、別に悪いわけでも何でもないんですが、やはり、保育サービスに代表されますように、行政機関の管理の下、行政機関が指導を行っていくというような、そういうような構図になっております。社福が悪いというわけでは決してありません。しかし、私の持論ですが、教育と福祉というのはやはり似て異なるものだというふうに考えております。

 教育というのは、先ほど言いましたように、自由と自主性、独自性、主体的な運営というものを重んじる、これが教育の根幹であるというふうに考えております。しかし、実は、保育所では、そのような考え方ではなくて、どの時期にどの都道府県、市町村の保育園に転園しても同じような内容が保障されていく均一性が求められる。均一性を求めるというのが福祉の大前提です。そして、保育には、残念ながら、私は個人的に、サービスという概念が入ってしまいました、保育サービスという概念、こういうような福祉の中の制度とこのいわゆる私学法というものがだんだんだんだん似通ってきてしまっている、そのことに一抹の不安というものをやはり感じてしまいます。

 以前、文部科学省で初中局の視学官でいらっしゃったと思います、そしてその後、国立の特別支援教育の研究センターの理事長をされた小田豊先生が常々、私、非常に御指導を賜っておりましたけれども、おまえは出来が悪いなと怒られながら、藤本、いいか、幼児教育というのは、みんなが同じことが平等じゃないんだぞ、幼児教育というのは、一人一人が違う、その一人一人が違うことを尊重していく、みんなが、お互いが認め合っていくことが教育の本当の意味での平等なんだ、みんなが同じことが教育ではない、そして教育というのは自由感が大事なんだということを、何度も何度も、私は、直接お叱りを受けながら言っていただいたことを、今も本当に覚えております。

 こういったような、今お話ししたようなことが、本当に、私立の学校にとって、自由を担保できる、進取の精神を重んじていくことができるのかどうか。私は法律の細かいことは分かりません。分かりませんが、それによって、本当に、教育が狭まっていく、窮屈になっていくようなことがあってはとんでもないことだというふうに思っております。

 是非、その辺のバランスを取っていただくような中身、本当に、形だけではなくて、ガバナンスを高めることによって、それぞれの私立幼稚園の建学の精神に基づいた教育が本当に実行されること、それをサポートしていくような法律を是非作っていただきたいなというふうに考えております。

 最後に、私の一つのエピソードを披露しておしまいにしたいと思います。

 実は、京都に、全国にほとんどあると思いますけれども、私学振興会という公益財団法人がございまして、幼稚園から高校までの私学が所属している団体がございます。その理事会の後、ある懇親会で、私のお隣に御高齢の先生が座られまして、お話をしていました。

 そうすると、その先生が、海原先生とおっしゃるんですが、藤本さんのところ、子供も減ってきて大変でしょう、今、少子化だから、幼稚園の経営も大変なんじゃないですか、あなたのところは認定こども園なんですかというお話をされました。いや、私のところはまだ私学助成園なんです、やはりいろいろな思いがあって、もちろん認定こども園になっている園も大事なんですけれども、私はやはり、一日標準時間、保育が十一時間というような、世界でも類いまれな保育時間を今の制度はよしとしていますので、そういう、親子が十一時間も離れて、二十四時間のうち十一時間ですよ、寝る時間とか引いたら本当に家庭で数時間しか過ごせないのが今の制度です、これは少子化になるのはもう目に見えていると思うんですけれども、そんなことも含めて、私は行けるところまで私学として頑張りたいんです、でも、やはり小さな幼稚園なので、なかなかできることには限界があると思っていますというようなことをお話ししたんですね。

 そうしたら、藤本さん、あなた何を言っているんですか、あなたの思いにちゃんと賛同してくれる保護者がいて、あなたがその子たちを大事に育てればそれでいいじゃないですか、そして、その子たちが何年かして大人になったときに、必ず皆さんにいろいろな思いを伝えてくれますよというようなことをお話しされて、私、いたく感動しまして、すごいことを言ってくださるなと思って、海原先生、失礼ですけれども御専門は何なんですかとお聞きしたら、私は教育史です、その中でも特に私立の教育についてずっと古くから研究をしている者ですというふうにおっしゃいました。国の教育機関ではなく、藩とか幕府の教育機関ではなくて、むしろ、そういういわゆる私塾ですね。

 その方が最後におっしゃったことが、私は、これはすごいなと思ったんですが、まあ、ここでこういうことを言うのはどうかなと思ったんですけれども、いいですか、藤本さん、近代の日本において様々な大きな改革を行ってきたのは、お上ではなく、官ではなくて、全部私学なんですよ、私人なんですよ、あなたも、私立幼稚園の責任者として、一人の私立の経営者として、私学人として、さっきおっしゃったようなことを是非頑張ってください、あなたがあなたの幼稚園で育てた子供が、本当に思いを持って、これからきっと、社会に出たときに、たった一人でもいいからそういう思いを社会のために使ってくれる、そんなことを頑張るのが私学人なんだよということを私に教えてくださって、本当にそのとおりだなというふうに感じた次第です。

 いろいろと偉そうなことを申しましたけれども、是非、私の思いを少しでも酌み取っていただけましたら、こんなに光栄なことはございません。

 是非、学校にとっても、子供にとっても、保護者にとってもよりよき改正をしていただきたいというふうにお願いを申し上げまして、私からの意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

宮内委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

宮内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。青山周平君。

青山(周)委員 自民党の青山周平です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 参考人の皆様方、大変お忙しい中、本当に示唆に富んだすばらしいお話をいただき、ありがとうございます。順次、時間も少ないですので、進めさせていただきたいと思います。

 まず、皆さんのお話をお伺いして、それぞれのお立場で全く意見が違う、この法案一つについて意見が違うというところは強く認識できました。

 そんな中で、例えば増田参考人は、まだ不十分だという声からスタートをしましたが、藤本参考人におかれては、ちょっと行き過ぎだという声もあって、厳しいという声もありました。まさにそれをまとめたのがこの法案なのかなということを私は感じております。

 実際に学校法人を運営していくに当たって、不正は絶対に許してはいけないけれども、協働が必要だというお話をされました。これはすごく重要なことだと思います。

 私も実は、幼稚園を経営してまいりました。十年前に退職をしているんですが、そのときに、評議員会との関係というのはまさに協働でした。うまくいっている学校法人はほとんど、評議員会と理事会が一緒になっていい学園づくりをしていく、そういう主体であるというふうに思っていますので、それが、あるときに歯車が狂い始めたときにどう止められるかというのが今回非常に重要なところで、その両方を併せていいところをつくっていかなきゃいけないというところが今回の議論なんだろうということを思っております。

 まず、田中参考人に質問させていただきますが、ガバナンス改革会議の提言、評議員会を最高監督、議決機関としており、私学団体から大きな懸念が寄せられたとのことでしたが、具体的にはどういう懸念が寄せられたのか、教えていただければと思います。

田中参考人 御質問ありがとうございます。

 ガバナンス改革会議では、評議員会が最高議決機関になるということが定められておりまして、そのことが問題になりますのは、私、政治学を学んでおりますけれども、権力を握りたい方というのは、理事長が最高議決機関でなければ評議員の会長を狙うというのは世の常なんですね。例えばプーチンは、プレジデントで足りなければツァーになりたいという人物ですから、そういう方というのは世の中にいらっしゃるわけです。それを許しておくということは非常に危険である。

 ですから、理事会では十分に学校法人の運営ができない可能性がある、暴走したときに止まらないだろうということで評議員会が最高議決機関になると、例えば、理事会が競争入札して建物を建てるときの業者を選定したとしますが、評議員会がそれを否決することはできるわけですね。そこの業者は自分は知っているけれどもよくないと思う、もっといいところを知っているから自分の親戚のところにするということを、評議員会が差し戻して、理事会にそれを決めさせることができるようになると思います。

 そうなりますと、つまり、評議員会が最高議決機関であるならば、その最高議決機関は必ず正しい、違法行為をしない、不正を行わないという保証がなければ、評議員会が最高議決機関になることの意味はないわけですが、その保証はないんですね。

 ですから、どうするかということは、やはりチェック・アンド・バランスでございます。三権分立というのが国の運営に定められているのと同じように、監事という方が中立な立場、学外の方が監事になり、その立場から中立に、コンプライアンス違反がないか、違法がないかということを御指摘いただくということで、理事会にコンプライアンス違反があるなり違法行為があれば指摘をしていただき是正勧告を出す、評議員会に行き過ぎがあればやはり是正勧告を出す、それで、どちらかが行き過ぎた場合には、互いに牽制して、その任を解くことができるようにするということでコントロールできると思うわけですね。

 もう一つ、学校法人ガバナンス改革会議のお考え自体、改革が必要だということ自体は私も全く同感でございますが、大きな違いは、評議員会を民間の企業の株主総会のようにお考えになったように思われる節がございました。

 しかしながら、民間の株式会社の場合のステークホルダーは株主というふうに定められておりますが、学校法人の最大のステークホルダーは評議員ではございません。学校法人の最大のステークホルダーは、児童生徒、学生とその保護者でございます。その方たちに最も応える、その方たちのニーズに応えるのが学校法人の役目でありまして、評議員会は生徒、学生、児童に接していない方たちなんですね。そこが最高議決機関になるということは、現場のステークホルダーの意見を御存じない方たちが最高議決機関になるということでございますので、それは、学校の運営に関しては、幼稚園もそうですが、運営に関しては非常に危険性が伴うということでございますので。

 ですから、大所高所から、この学校法人、理事会の考え方や進め方には問題があるという御指摘をいただくことはもちろん結構ですが、そこが全て分かるというふうに想定することは非常に危険であるというふうに思います。すなわち、ある機関が絶対的な権限を持つことに危険性があるということでありまして、やはり政治の世界と同じで、チェック・アンド・バランスが必要だということでございます。

 以上でございます。

青山(周)委員 どうも、本当に分かりやすく御説明いただき、ありがとうございます。

 次に、増田参考人に御質問させていただきます。

 ガバナンス会議で提言をお取りまとめをいただいて、それと比べると不十分だという声をいただきました。ただ、関係者の皆様方からいろいろな懸念があったのも事実でございまして、それを最終的に、この法案でまとまったわけでありますが、そうはいいながらも、ここは評価できるという部分はこの法案にありますでしょうか。

 この法案の中で、今までの学校法人の制度でいいますと、例えば理事会が監事を選任するだとか、普通に考えて、性善説に立ってやってこられたところがあると思うんですが、今回、法案でそこを少し厳しく、しっかりとガバナンスをつくっていくということで決まったわけですが、この法案で評価できる点があればお話しいただきたいと思います。

増田参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃられたとおりでございまして、評議員会で監事だとか監査人、会計監査人を選任することができるという点は私は評価できると思います。

 ただ、先ほどちょっとお話がございましたけれども、最高議決機関としての評議員会というのは、今回初めて出しているわけですけれども、これは国会に当たるんだと思うんですね。例えば三権分立でいくと国会に当たる。監督するだけなんですよ。執行する権限はない、元々。執行権限は理事会、理事長が持っているわけですね、やはり。これは従来と同じなんです、ここのところは。監視するところは監査人、監事だとか会計監査人ということであって、いわゆる評議員会そのものは、今申し上げたように、そこのステークホルダーが出てきて、そこで議論をするわけであって、実際に執行権限は全く持っていないわけなんですね。そこのところに誤解が出てきたんじゃないかなと思うんですね。

 それで、先ほどちょっとお話がございましたけれども、確かに、現役の教職員の方とか、そういう方は評議員になることはできませんけれども、いわゆるOBの方とか、同窓会の会長の方とか、地域の代表の方とか、そういう方はなれる、十分なれるわけですし、それから、元々、建学の精神について理解のある方が評議員になっていただくという前提なんですね。

 先ほど、いわゆる会社法の世界の話がちょっと出ましたけれども、確かに会社法というのも、これは、トヨタみたいな大きな会社から町の中小企業まで、全部会社法で決めているわけですね。ところが、大きな、上場しているような会社については、金商法だとかそういった法律がございまして、別に上場取引規則とかがございまして、そちらで縛っているわけですよね。だから、同じ会社法は、基本的なことしか決めていないんです。

 今回の考え方も、私たちの提案したのは、私立学校法の中で基本的なことだけ決めると。先ほど来あった、幼稚園まで全部適用されるんじゃないかという、基本的な考えは適用されますけれども、だけれども適用の仕方は当然変わるわけですよね。

 というのは、組織というものは、そもそもそんなに複雑でなければ牽制する必要もないわけですよ。自分で一人でやっていれば何にも問題ないわけですよね。ところが、何人か人を使うことによって不正だとか誤謬が起きてくるというのが一つの考え方でございます。

 そこから始まっているわけなので、今回も、評価される点においては、評議員会で、先ほど申し上げたように会計監査人を選任するだとか監事を選任するというのは評価されると思うんですが、問題は、評議員会そのものの選任機関というのはどういうふうに選ぶか。寄附行為で選ぶとか、そうなっているんですが、だけれども、実際にそれではどういう人たちがなっていくかという部分になると、現役の教職員の方がなるとか、一定の数の制限はありますけれども。あるいは、理事会で推薦した方、要するに、監視、監督される側の人たちが評議員という監督機関に入っていくということですよね。そうなりますと、やはりそれは、実効性といいますか、先ほどちょっと申し述べましたけれども、公平性とか公正性に疑念が出てくるんじゃないだろうかというふうに思っています。

 ですから、実際、評議員会そのものもそれほど人数は多く必要ないわけで、やはり、実際に創立者の方とかそういった方が入ると思うんです、この中には。だから、理事会が全部、全てやっているということについての牽制をするというのは、逆に監督機関があるから牽制ができるわけであって、そういう意味で申し上げたわけです。

 よろしいでしょうか。(青山(周)委員「はい」と呼ぶ)よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

青山(周)委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間がなくなってきてしまいまして、僕、どうしても藤本参考人に御質問したくて。幼稚園のお話、すごく感銘を受けました。ありがとうございました。

 実は、多分、一番今回の反発があったのは、幼稚園の法人が現実的に運営できるかという不安というのは大きかったと思うんです。といいますのも、大学法人は、たしか大学、短大、高専合わせても六百七十法人ぐらい、幼稚園は私立と幼保連携型のこども園を入れると五千ぐらいあるんですね。

 先ほどおっしゃられたとおり、小さなところもたくさんあって、そこが対応可能かというところが一番重要なところだというふうに私は思っております。

 そこで、藤本参考人にお伺いをいたします。

 法律ができたら、それぞれ学校法人を運用していかなくてはならないわけですが、先ほども少しお話をいただきましたが、具体的に、私自身はこれを見たときに、少しハードルはあるけれども、このように運用していくのは可能なんじゃないかという第一印象を受けましたが、藤本参考人は、この法案改正によって御自分の幼稚園の中で対応が可能かどうか、また、問題点があるのであれば、お話をいただきたいと思います。

藤本参考人 ありがとうございます。

 先ほど申しましたように、全くやるつもりがないし、必要がないなんということは到底思っていないわけでございます。例えば、うちの園でこれはできるかと言われましたら、それはもうやるしかないという覚悟ではおります。

 ただ、ちょっと違うかもしれませんが、幼児教育の無償化が実現したことは本当に感謝の気持ちしかございませんが、よく言われるのは、そういうようなことが達成されたからちゃんとガバナンスを守りなさいよ、今まで以上にやりなさいよと言われるのは、私はちょっと違和感がございます。

 やはり、私立といえども、どんな時代でも、どんな局面でも、しっかりと公平性や透明性を担保するというのは、無償化が実現したからやるというわけではないと思うんです。私たちの法人は、どういうときでもちゃんとそれはやっておりました。やっておりました。だから、多くの幼稚園もやっております。やっておる上に更にまたそうなることが、なぜなんだと。もちろんやっていくと思いますよ。

 しかしながら、うちは園児が少し多めですので職員も割とゆとりがありますが、ゆとりのない、高齢の園長先生がたくさんやはり全国にはいらっしゃいます。そういう先生方が、本当に二年間という中でどこまでできるのか。そしてもう一つは、それをしっかりと指導していくのは結局は都道府県、京都でいえば京都府の文教課という所轄です。その所轄の方がまた本当に二年間の中でちゃんと指導がし切れるのかなという現場のことも不安に思ったりしております。

 お答えになったか分かりませんが、そんなふうに受け止めております。

青山(周)委員 ありがとうございました。

 運用に当たっては、本当にそこを配慮しなきゃいけないということを強く感じました。

 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございました。

宮内委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党、森山浩行でございます。

 本日は、参考人の皆様、意見陳述をありがとうございました。

 今回の、ガバナンス改革ということで、理事会と、そして評議員会、監事、この役割分担、あるいは相互牽制というものをどうしていくのかというのが大きな課題ということの中での法改正なわけですけれども、私、この議論をしている中で、この間、非常に何回も出てくるのが建学の精神というやつなんですね。

 建学の精神というものがあるので、ほかの公益法人とは違うガバナンスになるのだ、学校法人は特別なんだということですけれども、一方で、合併をして新しい学校になるということもある。あるいは、私、母校は権利自由、独立自治というような建学の精神を持っておりますけれども、その下に、理念であるとか使命であるというような形で、時々によって更に新しい建学の精神的なものをつけ加えていくというようなことも理事会によって行われていくというようなことがあります。

 先ほど福原先生からも言っていただきました、いわゆる財団法人から学校法人に変わっていく、そして、学制は百五十年であるという中でありますので、百五十年前につくった学校の理念というものが連綿と続いているところもあれば、そうではないところもあるけれども、この建学の精神というものを大事にするから学校法人は特別なのだというようなことについてのお考えというか、皆さんは、これはこれでいいのだということなのか、少し違和感があるのか。

 先ほど、藤本先生の方から、学問の自由を守るためなのだというお話をいただきました。これは大変しっくりきました。それであれば、ほかとは違うんだというような話になるのかと思いますが、個々の学校による建学の精神というのを守るために、この法人全体というのが別の法律でされるということについてはどのようにお考えでしょうか。各先生方にお伺いをしたいと思います。

田中参考人 森山先生、ありがとうございます。

 建学の精神というものは、時代ごとに解釈を変える必要はあるかと存じますが、やはり根本的な考え方というものは重要であると考えております。

 例えば、卑近な例でございますが、早稲田大学の建学の精神は三つございまして、一つ目が学問の独立、二番目が学問の活用、ただ学問をするだけじゃなくて世の中のために役に立てるということで、三番目が模範国民の造就という言葉がございます。模範国民をつくるということで、今の時代には余り合わないので、我々はそれを地球市民の育成というふうに言い換えておりますが。

 なぜそう言っているかというのは、創立者であります大隈重信が模範国民の造就について述べた言葉がありまして、その中にこういうことを言っています。学生たちをこういうふうに育ててもらいたいということで、一身一家、一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負がなくてはならぬと。今から数えると大体百三十年前にできた言葉なんですが、それが、自分の身とか自分の家とか自分の国とか、また、もちろん自分の組織もですが、そこだけではなくて、世界のために貢献せよということを申しております。

 模範国民の造就という言葉では古いので、やはり地球市民の育成というふうに置き換えるべきだと存じますが、その根本精神は、本学の、早稲田大学の場合には生きていると思いますし、それは、今、世界を見渡しても非常に重要なことだと思っております。

 その意味では、やはり、各学校法人がお持ちの建学の精神というものは、それなりに時代に合わせて解釈は進めるものの、その理念というものを捨てないということは大事であろうというふうには考えております。ですから、時代の要請に応えるということも重要でございますが、やはり根本理念を忘れないということも大事だろうというふうに存じております。

 以上でございます。

増田参考人 ガバナンスを強化することによって学問の自由だとか建学の精神とかそういったものが侵されるということは全くないと思っております。なぜかといいますと、組織ガバナンスの中でガバナンスがきちっと行われるようになれば、むしろ建学の精神だとかそういったものは守られることになると思います。

 これは、企業の中で今言われている、コーポレートガバナンスと言われていますけれども、これは、社会のために役立つということがまず大きな理由ですよね。やはり、これは学校も同じだと私は思っていまして、当然、学校だとか教育だとか研究だとか、そういう社会の本当に大事なところ、国の発展のために大事なところだと思いますけれども、その業務自体を縛るんじゃなくて、むしろ、それを助けるために経営がきちっと安定していなきゃいけないということですよね。

 要するに、ガバナンスというと、英語で言っているものですからそうなっているんですけれども、業務の執行体制、経営体制の話なんですよ。経営体制をしっかりすれば、むしろ建学の精神が守られるということになるというふうに思っていますし、私も、そういう意味では、先ほど来話のあった、早稲田大学の田中先生の話がありましたけれども、それを侵すような話には全くならないと思います。むしろ逆なんじゃないか、守るためにガバナンスをきちっと強化していくということが必要なんだというふうに申し上げているわけで、営利企業でさえも、会社の持続性を保つために、今、パーパスだとか、いろいろ目的だとかをはっきり掲げて、会社の理念を出してやっているわけですよね。

 まして、教育だとか研究という社会の非常に重要な、根幹となるようなものを担っている大学教育だとか高等学校を始めとする教育機関自体がちゃんとしたガバナンスができていれば、経営執行体制ができていれば、むしろ守られていくんだというふうに考えていますので、そういうふうな懸念は全くないというふうに思っております。

 よろしくお願いします。

福原参考人 森山先生から、私立学校の本質に迫る大変立派な御質問を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 私の陳述で申し上げたところは、学校法人の他の公益法人と違う特殊性や自主性ということにつきましては、これは何よりも、学校という、人材を育成することを業務とする学校を設立しているという法人であるというところにあると申し上げました。この学校が、やはり教育、研究という人類の持続可能性を担保する大変貴重な営みを実践するものでありますから、このことに基づいて、学校法人が特徴あるガバナンス構造を備えるに至っているんだと。

 ですから、学校法人のガバナンスというものと、これが設置する学校の教育、研究におけるマネジメントというものについては、別途これは学校教育法その他においても措置されているというところがほかの法人とも違う。その中で、その学校の中で、特に私立学校というものの特徴を一言で言えば建学の精神と言われるものでありまして、私立学校の存在意義というものがそこにあるということを認識をいたしておるところでございます。

 ですから、建学の精神があるからというよりも、やはり、建学の精神は、どんな時代でも、なぜこの学校が設立されたのか、この学校によってどういう人材を育成したいのかということの、そういうことを訴えるものであろうというふうに考えております。

 私も、中央大学の学長を長らく務めさせていただきました。実地応用の素を養うという建学の精神は、今日、行動する知性という別のユニバーシティーメッセージをもっても発信されていますように、常に、建学の精神は、その時代と社会の変化を受けて再構築されていくべきでありますけれども、どんな苦難に立ち至ってもその原点というものを大切にするというのが私立学校の在り方だ、こういうふうに認識しているところでございます。

 説明になっていればよかったかと存じますが、以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

藤本参考人 失礼いたします。

 私も、私学は建学の精神があるから特別扱いをされるべきだということは到底思っておりません。むしろ、私学も、公共性をしっかりと果たし、公的な役割も果たす中で、透明性であり、しっかりとそういう辺りを行っているからこそ、建学の精神があるというふうに考えております。

 ただ、やはり、制度とか仕組みを複雑化して増やせば増やすほど、いろいろな無駄とか、人や時間がかかるというのは、私は常々感じています。ガバナンスを高めることは大事だと思うんですけれども、余りにもそのことに力を注ぎ過ぎるといいますか、それを複雑にしていけばいくほど、いろいろな無駄とか見落としがあって、そこにまたマニュアルを作らなきゃいけないみたいな、本来の業務ではないところにエネルギーが使われていくのではないかなということを危惧いたします。

 現場の話で恐縮ですが、よく、教室の担任と生徒の関係というのは職員室の校長先生と先生方の関係と本当にイコールだというふうに言われています。つまり、教室で先生と生徒が本当に信頼関係を持ちながら自主的に主体的に学ぶためには、職員室で校長先生が先生方をしっかりと信頼して、そして先生方の主体性を大事にしていくということが非常に大事なわけであります。

 それはやはり、いわゆる理事会、評議員組織と学校との関係にも私は相通じるものがあるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、この間議論になっているのが、大きな学校組織とそして小さな法人というところで同じ制度でいいのかという部分なんですね。

 これについては、郵便局を民営化をするときに、金融庁の所轄であるので、銀行の支店と同じだけのことを、郵便局、二人、三人しかいないような郵便局の窓口にも置かなきゃいけないというような話をしたときに、現場が大混乱になるというようなこともありました。

 今回の法律では、細かいところまで決めずに、二つのカテゴリーとなっていますけれども、もしかしたら、三つ、四つ、あるいは、幼稚園というような年代のところ、それに対して、大学というようなところであればNPO法人立やあるいは株式会社立というようなものも学校としても存在をしてきていますので、そういった形で、年代ごとに分けるであるとか機能ごとに分けるであるとかいうようなことも含めて、これは私立学校法一本でやるのはちょっと限界があるのではないかなというような印象も受けるわけなんですけれども。

 これは田中先生、増田先生にお聞きをしたいのですが、この部分というのは御議論はあったのか、あるいは、ここから先、理事会も間違う、評議員会も間違う、だからお互い牽制をするというような中において、大きなところと小さなところ、どのように構築をすべきかという御示唆をいただければと思います。

田中参考人 御質問ありがとうございます。

 規模によっての違いがあるということは確かにおっしゃるとおりでございますが、ただ、私学の学校法人では、幼稚園のレベルでも中学、高校レベルでも大学レベルでも不祥事は起こっておりまして、やはりそこに非常に透明性の高いガバナンスが必要だということは論をまたないと思っております。

 ですから、今回は、今後また、長い目で見ますと、中期的には、更に細かい考え方というものが必要になるかもしれませんけれども、まずは、私学のガバナンス、特に、理事会が規範を逸脱したような行動を取るとか不正な会計処理をするというようなことを防いでいくためには、ある一つの枠組みは重要であると思っておりまして、今回は非常にその意味ではよい機会といいますか、我々私学を預かる者たちが同じく反省をして、同じような危機感を持って改革をするということがまず重要であろうと思います。

 ただ、その中で、今回は、都道府県の知事の所轄とそれから文部科学大臣の所轄とに分けて、少しきめ細かい対応をしていただいておりますが、更に、今後先に、細かい運営の中では細かい微調整が必要になるということはあろうかと思いますけれども、今回は、非常にやはり、ある意味では私学の学校法人の危機でもあったと思うんですね、これだけ不祥事が出たということでございますので。そこを改めるには、一つの同じような意識を持って改革に進むということが重要であったというふうには存じております。

 以上でございます。

増田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、田中先生と同じで、現行の、今の法律以上に、やはり今回は、規模による適用を考えるべきだと思っています。基本的な考え方は、ガバナンスに対する考え方は同じだと思いますけれども、だけれども、やはり、先ほど来ありましたように、大規模の、某日大さんみたいなところと、それから幼稚園のところで全然違うと思います、ガバナンスの仕方は、あってしかるべきだと思います。その辺は法律の適用に当たって考えていただくというのがいいのかなと思います。

 実際、私学助成法というのがございますけれども、ここは、一千万円以上交付される場合は、補助金が出る場合は、会計監査人が監査に入っています。これについていろいろ話を聞いていますけれども、やはり、規模によって当然ガバナンスに差があってもしかるべきじゃないかというのは、会計士の間でも議論はしていますので、そういう意味では、是非そういった適用を考えていただくというのが一番いいのかなというふうに思います。

 以上です。

森山(浩)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

宮内委員長 次に、堀場幸子さん。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子でございます。

 本日、参考人の皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 私たちはこの文科委員会で私立学校について様々議論をさせていただいているところですけれども、私ども、党内でもこの議論をさせていただいたときに、やはり懸念点として出ているのは、先ほどから申し上げております、大学等の大きなところと小さな幼稚園等々が本当に一緒にやっていく、同じ一つの法律でやっていくことが大丈夫なのかということについての懸念というものがあったということだと思っています。

 手厚い税制優遇を受けている学校法人だから、公益法人にふさわしいガバナンスの抜本改革というものが、法制度として法制化していくことが非常に重要なんだという議論からスタートしていると承知しております。権限の分配とか建設的な協働と相互の牽制というのがポイントであるということも重々承知しているところですけれども、やはり、一部の例外を除いて、ほぼ一律で学校法人にかかってくるということについて、少し現場の意見を聞かせていただきながら、本日は御質問をさせていただきたいなというふうに思っております。

 まず最初に、藤本先生にお伺いしたいと思っています。

 このルール、組織論ですね、今回、ガバナンスですので、経営の体制であったりそういったものを法で決めることになっているんですが、ちょっと細かいかなというふうに思っている部分があります。特に人材確保という点において懸念等があれば教えていただけますでしょうか。

藤本参考人 ありがとうございます。

 やはり、全国津々浦々、様々な状況が異なると思います。同じ人数であっても、例えば、大都市であればいろいろな方に幅広く人脈を持つことも可能であるというふうに考えますが、本当に小さな町の、本当に限られた中で、幼児教育に豊かな示唆を与えていただけるような方が本当に見つかるかどうか。そういうことは、いろいろな地域を考えただけでも、なかなか現実は難しいのではないかなというふうに思います。

 そんな中でも、きっと私立幼稚園の園長先生方、理事長先生方は、走り回って何とか人材を見つけられると思いますが、やはり、その中で、大きな大学法人がそこに使うエネルギーと比べると、はるかに大きな負荷を、小さな幼稚園はずっと使い続けるということも是非御理解をいただきたいと思います。そのことをイメージした中でこういう法案を、これを作ったら地方の小さな幼稚園はどうなるんだろうということを是非想像しながら作り込んでいただきたいなというふうに思います。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 理事会が五人ということも決まっていますし、それ以上の人を評議員にということなんですけれども、この人数を考えても、さっき藤本先生がおっしゃっていた、園児がどんどん減っている中で、園児と先生の数と組織の大きさというものが見合っているのか、こういった点も注目をしなければならないですし、法を作るときに、やはりしっかりとそこの点を考慮しなければいけないのかなというふうに思っています。

 一方で、組織の透明化という議論もありました。税制優遇や公費の助成を受けているから公共性の確保のためにということもありますけれども、そもそも学校ですよね、なので、自らを律するということを多くしている学校が多いと思います、甘くていいんですよということではないと思います。そういった点から考えて、やはり自主的に様々行っているところだったのではないかというふうに思っています。

 今回、大きな大学と、それ以外の、都道府県がやっているその他の学校法人の相違点というところで、例えば計算書類、事業報告等、これが、全て誰でも閲覧ができるようにするのと、一部しかできませんというところとかで配慮をされているというふうに聞いているんですけれども、この配慮は、私は逆に、別に透明性を確保したしっかりとした経理をしているのであれば、その配慮ということよりも、やはり人の確保とかそういった点で差があってよかったんじゃないかなというふうに思っているんですが、田中先生にお伺いしたいんです。

 こういったところ、差をつけるときに、ここは情報公開なので、透明性を確保するという観点からは見られる方がいいんじゃないか、若しくは、財産目録についても、報酬の基準とかいうことであるならば、別にこれは閲覧してもよかったんじゃないかなというふうに思う一方で、さっき申し上げました人員の配置等では配慮が必要だったのではないかというふうに考えるんですが、この点について端的にお願いできますか。

田中参考人 堀場先生、ありがとうございます。

 特に書類の閲覧など、財産目録や計算書類の閲覧に関しては、規模の小さい幼稚園でありますとか私立小学校の場合ですと、非常に近い地域にライバル校というものが存在するわけですよね。その中で、誰でもその予算を見られるということはかなり厳しいというお声があったと思います。

 私は直接は、文部科学省の方の方がお詳しいと思うんですけれども、私どもの理解でも、そういう意味では、やはり非常に近接しているところにライバル校があるところ、それから大学の場合には、もちろんライバル校はあるわけですけれども、それぞれ、そういうことで揺らぐほど小さくはないということでございますから、やはり、公平性が非常に担保されるべき大学、短大においては、どなたにでもそういう書類を開示するということが必要だろうと思っておりますので、それを、やはり経営基盤が弱いわけですね、確かに、本当に百名未満、若しくは二十名ということも先ほど藤本先生がおっしゃっていましたけれども、そういったところでの経営の御苦労と、数千人若しくは何万人もいるような大学とでは、なかなか比較はできないということで、そこに関して、大学、短大の方に厳しい基準を当てはめることは妥当であると思います。

 人員に関しても、かなり猶予はしていると思います。かつては、評議員会は理事会の倍以上ということが求められていましたが、それを下げましたので、理事会よりも一人でも人数が多ければよいということで評議員会の数を定めていますから、そうしますと、理事会が少なければ評議員会のメンバーの数も少なくて済みますので、そういう意味では人員確保もちゃんと視野に入れています。

 本当に数名で評議員会、ごく数名で理事会を開くという小さな学校法人さんも、小学校、幼稚園でおありになるというふうに考えておりますので、そこで今回は一応対応できるだろうというふうに理解しております。

 もちろん、非常にきめ細かい点では今後も中長期的には更なる微調整が必要だろうと思いますが、今回はこの形が非常に、全私学が一丸となって私学のガバナンスの透明性を高めるというところで合意に達していることが非常に大きいと考えておりますが、そこは御評価いただければと存じております。

 以上でございます。ありがとうございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 この法律自体に対する評価という点でいうならば、必要だと思っています。やはりガバナンスというものは一定のルールが必要なのではないかなというふうには考えています。だけれども、これが一部上場の大きな株式会社と地域にある零細企業と同じルールでやりなさいと言われるのには無理があるんじゃないかなという点を懸念をしているということですね。

 あともう一つは、やはり、都道府県によって幼稚園とかにこれを指導していくわけですけれども、この法律が始まったときに、都道府県で指導する量がかなり多いですので、この二年という歳月が本当にふさわしいのかという点についても様々議論があるのではないかというふうに思っています。

 一方で、いろいろなことを社福に合わせていくということを念頭に置かれて作られていたというのは先ほどお話もお伺いしているんですけれども、増田先生にお伺いしたいのは、いろいろなものを寄附行為で決めるというふうになっています。これは、幼稚園とか小さな学校の方はそれでいいのかもしれないんですけれども、一方で、やはり不正が見受けられた大きな大学等で様々なことを寄附行為で決めるということ、これについての御所見を、ちょっとお時間がないので端的にお願いできればと思います。

増田参考人 御質問ありがとうございます。

 寄附行為というのは、会社ですと定款に当たるものですよね。だから、そういう意味じゃ、その中で決めるというのは、本当は定款そのものについても一定の法律で縛る必要があると私は思っていまして、今回も、新しく改正される法律案としては、その内容については我々としてはちょっと異論があるわけですけれども。

 基本的に、例えば財務情報の話が出ましたけれども、財務情報については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、私学助成法で、既に計算書類を作っていまして、それについての監査もしている部分がございまして、そうでないところもそれなりに作っているわけです。ですから、我々の提案のときは、一定の方式によって同じように公表したらどうかという提案をしています。

 先ほど来、人の問題もちょっと出ましたけれども、我々は、例えば評議員なんかは、むしろ非常に数少なくていいんじゃないかというふうに提案しています。

 今回の改正案では教職員もなれるというようなことになっていますので、全然枠が違いますよね。ですから、推薦のところは文科省さんの方に聞いていただいたらいいと思うんですけれども、そういう意味じゃ非常にフレキシブルになっているところはあると思うんです。

 ただ、ガバナンスという面では、やはりもう一歩と、不十分だというふうには言えますけれども、それなりに進んでいる部分があるというふうに思っております。

 よろしいでしょうか。

堀場委員 ありがとうございます。

 そうなんですよね。この私学の学校法の改正だけじゃなくて、私学の助成法とか、様々な法の中でガバナンスというものをつくっていくことは可能じゃないかなと思っています。

 だからこそ、この私学の、学校に関してというところでいうと、もう少し丁寧な組織論があってもいいんじゃないかなというふうに思っています。

 現場の感覚がないというのが私はちょっと重要ではないのかと思っています。評議員の方々が現場の感覚がないとは言わないですけれども、例えば、今、やはり、地域とのコミュニケーションであったりとか、地域のニーズを酌み取る、幼稚園とかは特にそういうのが多いと思うんですけれども、そういったことをスピード感を持って対応しなければならない時代だと思っています。一方で少子化が進んでいる、子供たちのことを考える、その点に関してでも、やはり、子供はすぐ大きくなってしまいますので、スピード感を持って対応するということが非常に重要になってくるんですけれども。

 藤本先生にお伺いしたいんですが、そういう十人とか十二、三人とかというところで、組織の中で評議会の人たちが、地域の人に、園長先生とかが、理事長さんとかがいろいろなところにお願いに上がって、探してきて、そしてやっていく。そして、協働と牽制だとは思うんですけれども、同じ方向を向いてやっていく人をやっと見つけることができたということになったとして、でも、やはり、藤本先生は、この間お伺いしたときも、園児一人一人のお顔も名前も分かっている。そういった方が現場でこういうことをやりたいなというふうにやっているときに、そういった地域のニーズを取り入れたり、現場の感覚を取り入れるということをこの組織の中でやっていくということに対する御所見、意見、どういうふうに思っていらっしゃるのか。

 つまり、なかなか、組織の大きさが幼稚園の大きさと見合わなかったときには、何かスピード感を持ってやっていくのが難しいのか、難しくないのか。若しくは、なかなかそれが今後難しくなっていくんじゃないかというようなことも含めて、御示唆があればお願いしたいと思います。

藤本参考人 ありがとうございます。

 一言で言うと、難しいというふうに思います。ただ、それは幼稚園に限らず、大学法人でも全部難しいのかなと。大学だから簡単に、示唆に富んだ教育を、大学運営を、経営の面でもあらゆる面でしっかりとサポートできるような方が安易に見つかるかというと、やはりそうではないと思うんですね。その上で、幼稚園となると更に難しいのかな。しかも地方となると、やはり人材も限られますし、もう少し離れたところであれば、あの人が有名だから、あの人を知っているからといっても、なかなか、交通費とか考えると、どうしても、地元の限られたエリアの中で探すということが出てくるというふうに思います。

 そういう意味では、やはり非常に難しいということには変わりがないというふうに思っております。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 やはり、この法律を考える上には、正しい配慮、先ほどおっしゃっていました正しい配慮というのはどういうものなのかということをもう少し議論しなければならないのかなというふうに思っています。

 お時間の方が余りなくて、福原先生に御質問したかったんですが、ちょっとできていないんですけれども、今、こういう議論をさせていただいてきました。やはり、小さなところであろうと、大小かかわらず、自主的にコンプライアンスを厳守するということは、自らを律するということですので、可能だというふうに思っております。

 福原先生、少しお時間がないんですけれども、最後に、今こういう、るる議論をしてきました、大小にかかわらず組織の体制をつくっていくということに関して、特にまた、寄附行為で定めるとか、そういったところに関して御意見を頂戴できればと思います。

福原参考人 貴重な、御示唆に富んだ御質問、ありがとうございます。

 まさに、この法案が成立した暁にどのように運用していくかというときにおきまして、寄附行為自治という形で委ねられた部分につきまして、まさに作成例を審議会の方でも用意をいたしますし、何よりも、先ほどお話がありましたけれども、小規模校、そういったところの制度対応コストを軽減をするという努力、また、人材の確保という意味では、現在、文科省の私学部の方におきましても様々な経営相談を実施をしておりますし、私が今所在しております事業団におきましても、全国の学校法人に向けて様々な研修また経営相談というものを行っておりますので、こういったものを一層充実していくという形を通じて、法案の無理のない実施というものに当たっていく必要があるのではないか。

 そしてまた、各学校種ごとにあるソフトローとしてのガバナンスコード、こういったようなものを再整備することによって各学校法人の負担を少なくして、そして、この法案の目的が達成できるように一丸となって、法令のみならず、様々な関係者の努力によって実現していくことが必要であろうというふうに今改めて再認識をさせていただきました。

 貴重な御質問、ありがとうございました。

 以上です。

堀場委員 お時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 本当にこの課題、いろいろなところがあるなというふうに思っておりますので、またもう一度質疑があると思いますので、先生方の御意見をしっかりと頂戴いたしまして、法案の策定に取り組んでまいりたいと思っております。

 本日はありがとうございました。

宮内委員長 次に、鰐淵洋子さん。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 本日は、参考人の皆様、お忙しいところ、国会までお越しいただきまして、また、貴重な御意見を賜り、心より感謝を申し上げます。

 また、皆様におかれましては、我が国の学校教育を支えている私学の振興にそれぞれの立場でこれまで御尽力をいただいていますことに心から敬意を表し、また感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、まず、私学が取り組むガバナンス改革について、これまでも御意見をいただいておりますが、改めて四人の参考人の皆様にお伺いをしたいと思っております。

 私学学校は、先ほどからお話がありますとおり、質また量、この両面から我が国の学校教育を支えている、また大きな役割を果たしていただいております。これからも社会のニーズに応えていただいて、何よりも学生とその保護者の期待に応えるためにも、不信感を高めるようなことがあってはならないと思っております。

 その意味でも、ガバナンス改革ということは最重要課題の一つであるかと思っております。そして、その改革に当たりましては、私学にはそれぞれ建学の精神がございますので、その精神に基づきまして、多様な個性、また豊かな活動が展開されております。そこをしっかりと重視しながら、自ら主体性を持って改革をしていくことが重要であると思っております。

 ですから、ガバナンス改革は目的ではなくて手段である、先ほどもお話がございました、一つの手段であると思っておりますけれども、そういったことから、私学が取り組むガバナンス改革について、四人の参考人の方から改めてそれぞれ御意見を頂戴したいと思います。

田中参考人 鰐淵先生、どうもありがとうございました。

 ガバナンス改革、先ほどから申し上げておりますように、私学の建学の精神というものは守り、そこに独自の教育理念というものを実現していくことが大事だと思いますが、やはりコンプライアンスですとか規範から外れることはあってはならないということで、そこについては私学全体が共通の認識を持つことも必要だと思っております。

 それで、その意味では、私学法というものが幼稚園から大学まで様々な形態の学校法人を包み込む形でございますが、そこで、共通の危機感といいますか、自己を律するという気持ちを新たにするということが重要だと思っております。

 その意味で、今回の私学法の改正は、大変我々にとってもありがたいと思います。我々自身も自らを律しなければならないと思っているところに、その共通理解をお互いに進めるということのきっかけになるというふうに感じておりますので。

 先生おっしゃるように、ガバナンス改革は手段であって目的ではない。よりよい質の教育を児童生徒、学生に提供することが我々の使命でございますので、その意味では、自らを律するためには、今回のガバナンス改革の法案、改正は非常によい機会を与えていただいたというふうに存じております。

 以上でございます。

増田参考人 どうも、御質問ありがとうございます。

 ガバナンス改革というと何か非常に分かりづらいんですけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、要するに、業務執行体制の改革ということなんですね。だから、業務そのものを変えるということじゃなくて、執行する体制を変えるということなんですね、改革していこうと。そういうことにおいて、先ほど最初に申し上げましたけれども、今回は一歩前進ではあるけれども不十分だというふうに申し上げました。

 基本的に、執行体制というのは何かといいますと、いわゆる内部統制だとか、全社的なリスクマネジメント、あるいはそれを含んだガバナンス体制という点ですけれども、そういうものを求められるわけです。

 非常に分かりやすく言いますと、一つは、不正の話をちょっとしますと、不正のトライアングルと学者の方は言われますけれども、動機があって、機会があって、正当化できるということであれば人間は悪いことをしてしまう、あるいは不正を働くようなことになってしまうんだというのがその学者の議論なんです。

 我々から見ますと、例えば、おなかがすいた状態で神社にお参りに行ったというときに、誰も見ている人はいない、その神社の方の、神様からの贈物だというふうに本人が思ってそれを食べてしまうということになりますと、動機としては、三日も食べていなかったということで、うんとおなかがすいていますから、つい食べてしまうわけですね。それは動機ですけれども。そのときに、それについて、やはりチャンスがあれば、周りに見ている人がいないし、誰にも文句を言われないという状況であれば、食べてしまうわけですね。結果として、やはりそれについて正当化するわけですよ。これは神様の贈物だというふうに正当化するわけですけれども、これについて、不正のトライアングルなんて学者の方は言われます。

 これはどういうことを言っているかというと、実際に執行する側と、それからチェックする側、それから、言ってみれば、全体について、その正当化するということについても、いいのかどうかという判断をする側ですね。

 国の権限でいえば、国会と行政と司法という三権分立になっていますね。先生方は皆さん、もちろん、そういうチェックする側が入っているんだと思うんです、私は。国民の代表として、それぞれのお立場で参加されているわけですね。

 だから、そういう意味では、私は、それは一つは評議員会だと思っているんですよ。その役割は評議員会が担うべきであって、先ほどちょっと申し上げましたけれども、その評議員というのはあくまで学校法人が選任しているわけですね。しかも、それは人数も非常に少なくていいんだと思う、逆に。今までは理事会の以上だとか倍だとかという話がありますけれども。そうでなければ、実際議論なんかできませんよね。本当に思っているのであれば、三人でも五人でもいいわけですよ。

 そういう体制がガバナンスとして求められているわけであって、執行する体制というのは、理事会、理事長以下が執行するわけですから、これは権限、万能なんです、今も。これからも万能だと思います。それをチェックする側が監事なり会計監査人だ、こういうふうなことだと思いますね。しかも、それを透明性を持って見ていくというためには、ちゃんと公表して、判断していただくというのがやはり必要なんだと思いますね。

 ガバナンスについての話は、私としてはそういうふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。

福原参考人 鰐淵先生、御質問ありがとうございます。

 ガバナンスの問題というのは、もう先生方御承知のとおり、やはり、個々人の不純な動機が組織の価値や組織の力といったものをそぐことがないように、しっかりと、組織のための目的を達成することができるような仕組みを整えておくということであろうかというふうに存じております。

 したがいまして、個々人の我欲や不純な動機によって組織の運営が左右されてしまう、それが、ましてや未来社会を支える人材を育成するという学校を経営している法人という組織がそういうことがあっては困るというのが、今回の学校法人におけるガバナンス改革の原点だったかというふうに思います。

 そして、冒頭で申し上げましたように、そういった守りの学校法人のガバナンスに加えて、今まさに、少子化、そして様々な成長分野への人材不足、こういったものを控えて、攻めのガバナンスとして学校法人たる組織がしっかりと充実する、強靱化していくということにも堪えられる、そういう法案が成立することを願っている、こういうことでございます。

 御質問ありがとうございました。

藤本参考人 ありがとうございます。

 私も、やはり私学が社会的な使命と、そして透明性をしっかりと守っていくという中が前提でありますが、やはり建学の精神、教育の自由というものがガバナンス制度の中でしっかりと守られるべきというふうに思っております。

 釈迦に説法かもしれませんが、いわゆる教育の先進国である北欧、福祉の先進国である北欧は、最初、福祉をまず優先しておりました。ケアがあって、その後にエデュケーションだという。CECEという、ケア・アンド・エデュケーション。しかしながら、いつの時代の中で、やはりまずは教育の方が優先なんだということで、多くの北欧諸国は、エデュケーション・アンド・ケアということで、ECECということをOECDを始め世界の教育先進諸国は掲げております。

 私が先ほど、今回の法案が福祉寄りになっていくのではないかという危惧を申し上げましたのは、世界の流れに逆行するのではないか。私は今回のことが全ていけないなんてとても思っておりませんが、ちっとも思っておりませんが、しっかりと、世界の潮流は教育なんだ、教育というのは自由なんだ、OECDが言っているエデュケーション二〇三〇というのは、まさしく子供の自由、学習の自由というものを非常に大事にしています。その世界の潮流に離れていくようなことがあってはいけない、そのことを意識してこれからも、ガバナンスづくりも検討していっていただきたいな、そんなふうに感じております。

 以上です。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 それでは、田中参考人と福原参考人にお伺いをしたいと思います。

 今、ガバナンス改革ということでそれぞれ貴重な御意見をいただきましたが、これを取り組むに当たりまして一つポイントとなりますのが、これも参考人からいただいておりますけれども、理事会、評議員会を始め、学校法人運営に関わる全ての方々が、学校をよりよくしていこうという共通認識の下、相互に牽制し合いながらも、対立ではなくて、協働して一体となって学校運営を行っていく、協働というお言葉を先ほどいただきましたが、これが大事になってくるかと思います。

 しかし現実は、僭越ながら、なかなか大変な、難しいことではあると思いますので、改めて、それぞれのお立場、これまで様々な御経験をされておりますと思いますので、是非、対立ではなくて、協働して一体となって学校法人運営を行っていく、その上でのアドバイスというか御指導をいただければと思います。

田中参考人 鰐淵先生、ありがとうございます。

 協働するということは非常に大事なことでありますが、ともすれば、お互いに批判をするということになりますので、そこはやはり、学校法人を運営している理事会が、どういう学校にしていくか、どういう教育を提供するかということの理念と価値観をよく共有する必要があると思うんですね。それを評議員の方々、また在校生やその保護者の方たちと共有することが重要であると思っております。

 そして、今までの中でも、今回の私学法の改正が不十分ではないかという御意見も出ているようでございますけれども、例えば理事会の暴走ということが起こることに関して、今回の改正で不十分とは思えないのは、まず、監事を理事長が決めることはできないんですね。今回は、評議員会が監事を選任することになるという御提案でございます。ですから、理事長が好き勝手な人を選んで、好き勝手なことを言っていただくということができない。監事は中立の立場から間違いがあれば指摘をするということでございます。

 それから、評議員会を国会に例えるのも難しいと思います。国会議員の方々は、いわゆる行政に関する専門家であり、立法に携わるわけでございますが、そこは立法府の、立法を預かる、官僚の方たちや大臣の方たちと同じような手腕というのをお持ちでいらっしゃいます。

 しかしながら、例えば評議員の方ですと、企業経営している方ですとか、評論している方とか、弁護士の方とか、公認会計士の方ですが、直接教育という現場若しくは学問研究というものに携わっていらっしゃらない方が、何が大事かということを、最高議決機関となることは、実は誤りを招く可能性があります。

 例えば、アメリカの場合に、トランプ大統領になったときに、CDC、疾病対策の、感染症対策の本部でございますが、そこの予算を半分にしました。半分にしたときに、COVID―19、いわゆるコロナのパンデミックが起きる。それに対して、アメリカは二百万人を超える亡くなる方が出るわけですが、対応が一番遅れた国でございます。それは、学問とか研究というものが大事だということを、大統領の考え方によって進めたからですよね。やはり、それを止めるだけの知見というものが必要である。

 それと同じようなことが大学や小中高でもあると思いますが、今こういうことを教えることが大事だ、それから、これはもう時代遅れだから要らないんだというときに、いや、これも残しておかないとまずい。今、新しい時代にはこういう教育が必要である、例えば、今、小学校ではタブレットを使うということもして、パソコンも使うということで教育を進めているわけですが、そういうものも必要だけれども、これは残しておかなければいけない、知育だけじゃなくて徳育も必要だというのは、現場でお子さんを預かっておられる方が一番よくお分かりになるわけですけれども、そこのところを、例えば、藤本先生がおっしゃっているように、現場のことを御存じない方たちが最高議決機関になるということには危険性があるということであります。

 ただ、大所高所から、理事会が外れた場合にはそれを止めるのが評議員会であると思いますし、特に、そこに関して厳しい目をお持ちなのが監事の方であります。

 ですから、今回も、理事長が理事を決めるのではなく、選任機関が理事を決めて、理事が理事長を決めるという考え方になっています。ですから、今まで、独断専行できる理事長が理事を決め、評議員を決め、監事を決めるということではない形になりますから、その意味では、今回の改革はかなり、不十分という点はちょっと私どもには考えにくいんですね。すなわち、独断専行する者がそういうことができないような仕組みを全部取り入れていると思います。

 ただ、大事なことは、やはり、ステークホルダーは児童であり、生徒であり、学生である、その保護者であるということでございます。そこに向いて教育というものを進めていくことが重要だというふうに存じております。

 以上でございます。

福原参考人 ガバナンス改革を実施していく上において、特に、理事会、評議員会等が建設的な協働と効果的な抑制、牽制をしていくという制度のたてつけにおいてどういう取組が必要かという御質問であったかと存じます。

 まさに、この建設的協働という言葉は、意思決定のレベルにおける分配において最重要な、その学校法人の在り方を決めるような基礎的な事項又はこれに準ずる寄附行為の変更といった、その学校法人の存立に関わるというようなところには、まさに全員がどうしたらいいのかということを真剣に考えていただきたいということで、そういった議題が絞られているものというふうに思います。

 そして、その他の点につきましても、やはり、評議員会が様々なステークホルダーの意見を学校法人の理事者側に伝える、そういうことを通じて、学校法人の運営が時代や社会のニーズに合致したものになるように持っていくという意味でありますので、その点では、相互の、理事や評議員の選任の過程、そして理事会や評議員会が開催されるに当たっての会議の運営の方法、こういったものがとかく議事録の作成に向けて形骸化しているという御指摘も間々あるところでございますので、そういった理事会や会議体の実質化、また、そういうことに携わる方々の研修や研さん、こういったもの、また、それをサポートする職員の方々の研修や研さん、こういったようなものを努めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 まさに、ガバナンス改革をルールとか文字の上だけのものにせず、そういった取組によって実質化していくということが大事だというふうに考えております。

 ありがとうございました。

鰐淵委員 以上で終わります。ありがとうございました。

宮内委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、田中参考人、増田参考人、福原参考人、藤本参考人様、大変お忙しい中に国会にお越しをいただきまして、これまで大変貴重な、御示唆に富んだ御意見をいただきましたことに、まず心から感謝を申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 私立学校のガバナンスを強化していくというところについては、各参考人の先生方も一致した御意見だと思いますし、私たち委員も同様の、そこには一致した意見を持っているかと思いますけれども、増田参考人を座長として開催され報告書がまとめられました改革会議におきましての議論の前提ということについては、政府が、学校法人以外の公益法人ですとか、公益社団・財団法人、また社会福祉法人と同様の機関設計、改革を適用するということが前提にあった、その中での改革会議での結論であったというふうに認識をいたしております。

 まず、田中参考人、福原参考人、藤本参考人様、それぞれ教育現場におられた先生方に、このことを私立学校に適用するということについての先生方の御見解というものをお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、中村(裕)委員長代理着席〕

田中参考人 西岡先生、どうも御質問ありがとうございます。

 まさに、おっしゃるとおりのところが非常に大きな問題というふうに私どもは認識したわけでございます。

 社会福祉法人の場合ですと、各自治体において一定の基準がございますので、どの社会福祉法人におかれても同じ基準でケアを提供するということが定められるわけですね。そこにおいては、不正とか不適切なケアがないようにということを非常にしっかりとなされるわけであります。

 先ほどから御議論いただいておりますように、各学校というものは教育の理念、特に私立学校の場合には教育の理念という建学の精神がございますので、これは、公立の小中高、また国立や公立の大学には明確な建学精神というものはございませんので、ですから、独自の教育理念というものに基づいて教育をする。そこには、学問の自由があり、教育の独立があると思っております。

 それを実現していくときに、全く一律の、社会福祉法人と同じ仕組みを入れるということには、いささかの、若干の違和感がございまして、ですから、改革をする必要があるということは全く同感でございますし、ガバナンス改革の透明性、学校法人のガバナンスの透明性を高める必要があると思いますが、一律に縛るということは問題があると思っております。

 今回の私学法の改正においては、私学の特性というものは十分尊重していただいている。建学精神を守りつつ透明性を高める、そこの価値観に関しては共通理解をし、危機感も共有していくということが特徴だと思っておりますので、その意味では、私学の多様性をお認めいただきながら、やはり危機感としては共通の危機感を持って改革するということで御提案いただいているというふうに理解しております。

 以上でございます。ありがとうございます。

福原参考人 学校法人のガバナンスの特徴ということでございますが、やはり公共性、公益性を有する組織におけるガバナンスにおいて取られている様々な措置というものを、学校法人という組織が全く違う形を取るというのは少しおかしいのではないかというのは、当然の印象かというふうに思います。

 ただ、私どもといたしましては、学校法人においても、その公益性や公共性を踏まえてガバナンスを強化しなければならないという、質的な面における同調性というか方向性というものは同じだというふうには考えておりますけれども、かといって、全て同じ形でそれを目指さなければならないかということを問い直しましたときに、やはり学校法人は、何よりも、学校というものを設置しているという点に大きな違いがあり、そして学校という機関につきましては、これは教育基本法や学校教育法といったようなものによってマネジメントがしっかりとなされているということでございますので、これをしっかりと実践する設置者としての学校法人のガバナンスをどうするか、こういった面においては、他の公益法人と全く同じ形というのではなくして、更なる自律性や自主性、そして建学の精神等を貴んだ、そういうガバナンスが必要であるということから、目指す方向性や質は同じであっても、その形というのは、今申し上げましたことから、異なっていてもいいのではないかというふうに考えております。

 そして、何よりも、学校を設置する学校法人でありますので、自律的なコントロールということ、自律的に回復をし、そして自律的に成長していくということを自ら示す、そういう組織でなければ学校を設置する資格はないというふうな信念に基づいておりますので、そういう信念に基づいたガバナンス改革の法案であるということを御理解いただければと存じます。

 ありがとうございました。

    〔中村(裕)委員長代理退席、委員長着席〕

藤本参考人 ありがとうございます。

 もう私が申し上げるまでもなく、田中先生、福原先生の御意見、そのとおりだというふうに考えておりますし、先ほど北欧の話も出させていただきましたけれども、やはり学問の独立という部分、しっかりと守っていくということは大変重要であるというふうに考えております。

 あわせて、ちょうど伊吹先生のお写真がありますけれども、平成十八年でしたか、十二月に、教育基本法が昭和二十二年以来五十九年ぶりに大改正をされて、そのときに、教育基本法の中にしっかりと私立学校というところが位置づいたわけでございます。

 そういう意味におきましても、日本の教育における私立学校ということは、しっかりとこの国が、地方公共団体が支えていくということが明記されておりますので、そのこともしっかりと、私たちもその責任も考えながらしっかりと運営してまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

西岡委員 ありがとうございます。

 今、先生方からございましたように、やはり私立学校の独自性といいますか、建学の精神を含めて、大変長い間を経た歴史ですとか伝統というものもあるかというふうに思いますけれども、公的な機関としての、しっかり説明責任や情報公開、また透明化とともに、自律的なという、先ほど参考人の先生方からもございましたけれども、このことは大変重要な視点ではないかと思っておりまして、いわゆる自浄能力といいますか、大変そういう能力は大事な部分だというふうに認識をいたしております。

 増田参考人にお尋ねをさせていただきます。

 先生は先ほど、私も申し上げました、政府の方針に沿った形での提言をされてきたわけでございますけれども、本改正案においては、先生の方からは、不十分である、また、監督される側の人間が監督する側を兼ねることによって利益相反になるという御指摘もいただきました。ただ、一歩前進というお言葉もいただいております。

 本改正案で、これまで様々不祥事、日大に見られる不祥事があったんですけれども、これを組織として防いでいくためには、これだけは盛り込まなければその不正は防げないというような課題というものがありましたら、御示唆をいただければというふうに思います。

増田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど来申し上げていますけれども、まず、ガバナンスというのは、執行、運営の仕組みの話をしているのであって、業務の内容について言っているわけじゃないんですよね。その点だけ、まず理解していただきたい。

 今回の議論で申し上げておきたいのは、まず、政府の方で頼まれて我々は委員会の報告書を出しているんですよ。これは何だと私は言いたいわけですよ。結果として、ここで新しく、最後に、先ほど福原先生が、特別委員会で意見は出されたんですけれども、私からしますと、これはガバナンスがどうなっているんでしょうかという、冗談みたいな話ですよね。これだけちょっと申し上げておきたいと思います。

 あと、基本的に、今回の話は一歩前進であると最初申し上げましたけれども、まだ、先ほど来申し上げましたように、基本的な考え方、これは、私も昨年、一昨年と孫が生まれておりまして、藤本先生じゃないけれども、やはりこれは、私個人の問題で取っても、日本の国全体の問題だと思っているんですよ。そのためには、やはり日本丸という大きな船に乗っているんですから、ここは是非、次の段階にもっと進めてもらいたいと思っています。私はもう全然、中立な立場で話をしていますので。

 申し上げたいことは、そういうことをやって、今回の改正については、もうそれ以上申し上げることはないです。よろしくお願いします。

西岡委員 ありがとうございます。

 増田参考人の思いというものが十分伝わったというふうに思いますけれども、このガバナンスの強化というのは大変重要な課題であるというふうに思いますし、田中参考人が、ちょっと記事の中で読ませていただいたんですけれども、守りのガバナンス、攻めのガバナンスというお言葉を使われておりましたけれども、いわゆる、私立学校を含めて、ガバナンスコードというものがございますけれども、このガバナンスコード改革について、先生方、どのような御見解をお持ちであるかということを、田中参考人、福原参考人、藤本参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

田中参考人 西岡先生、ありがとうございます。

 ガバナンスコードに関しては、私立大学連盟、私が会長を務めておりますが、私立大学連盟では長いことかかってガバナンスコードを整えてまいりました。かなり厳しい内容を持っております。それを加盟校に全て遵守していただくようにお願いをしてきたわけでございます。

 そこでは、本来あるべきことというのをしっかりと定めていまして、これはマストでやらなければならないことと、それから、コンプライ・オア・エクスプレーンという言葉を使っておりまして、ちゃんとコンプライアンスを守るということ、もしそれが守ることができないのならば、なぜそれができないかということを説明せよというふうに求めております。

 ですから、各学校法人の御事情もありますので、十分にそれができないという場合もあるわけですね。それについては説明を求める、その説明が不十分なら是正をまたお願いするということで、コンプライ・オア・エクスプレーンということは、非常に強い言い方なんですけれども、そのことが、各私学の学校法人の独自性を認めつつ、かつ共通の倫理観というものを持つということを進めてきているわけでございますね。そういう意味では、非常に重要だと思います。

 今回の私学法の改正でもそこのところはかなり明確にされていて、例えば、監事を、理事長の近親者を定めることはできないとか、もちろん、理事長が監事を決めることもできないというふうにしております。それから、評議員の中にも、利益が同一な方が二名以上入れることはできない、つまり、一つの会社とか一族から三名、四名という方が評議員に入ることもできないというのを今回定めていただいています。

 それが、我々私立大学連盟が定めてきたガバナンスコードと非常に近い考え方でございまして、我々もやはり、社会一般で考えられている透明性、公正性というもの、フェアネスというものは意識しておりますので、今回の私学法の改正もそこのところを非常に、失礼な言い方ですけれども、政府が御提案、内閣の閣議決定されたものは非常にそこを丁寧にお考えだと思います。我々もそれを尊重しつつ、我々のガバナンスコードを更に推進して浸透させるように努力していく所存でございます。

 以上でございます。

福原参考人 御質問ありがとうございます。

 ガバナンスコードの果たす役割というのは、今般の私学法改正がなされましたら、これに対応して、更にその役割が大きくなるものというふうに存じております。

 いわゆる法令といったハードローに対しまして、すなわち、国や地方自治体の権限や権力でもってそのルールがエンフォースされる、実行されるというルールと異なって、自分たちでこういったルールを立てて、自分たちが作ったルールだから、これに基づいて私たちはこういう行動を取るんですという宣言、これは大変重要なことでありますし、企業、社会におきましても、証券取引所の上場基準等をベースに今大変普及している手法であります。

 こういったソフトローの手法というものが学校法人ガバナンスにも取り入れられているわけですが、大学にとってみれば、これが今、私大連のものと私大協のものと大学監査協会のものと、三つ存在をいたしております。それぞれが、それぞれに加盟する大学の実態を踏まえて大変精査して作られたものでありますけれども、今後、この三つのガバナンスコードといったようなものの共通化というようなことも含めて、ガバナンスコードの新しい制定、改正というものが課題であるというふうに認識しており、今後、そのガバナンスコードを各学校法人がどのように作り、また従っていくのかということが今回のガバナンス改革においても重要であるというふうに認識しているところでございます。

 ありがとうございました。

藤本参考人 ありがとうございます。

 私たち、京都におきましても、かなり規模も違いますけれども、やはり数は結構あるわけですね。規模の小さい幼稚園も含めて言いますと百五十か園ほどあります。やはり、かなり数が多い、様々な経営状態、規模の中で、まだ、恥ずかしながら、十分徹底できているとは言い難いところはあるのかなというふうに正直思っております。

 しかしながら、今回のことに限らず、京都の方でも団体を通して、新しい取組であったり、今までを見詰め直すということについてはしっかりと、折に触れて、全体に向けてアナウンスをしてまいりますので、この取組に関しても同様に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

西岡委員 大変御示唆いただきましたので、しっかり今後の委員会質疑にも生かしてまいりたいというふうに思います。

 本日はありがとうございました。

宮内委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 四人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見をありがとうございます。私で最後ですから、もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。

 たくさんの委員の方々から御質問がありましたから、もうだんだん聞くことがなくなってくるんですけれども、私は、まず、私立学校の存在意義といいますか、そもそもの我が国における私学の価値ということをはっきり先生方から語っていただきたいと思うんですね。

 文部科学省のホームページによりますと、私立学校に在学する学生生徒などの割合は、大学、短大で約八割、高校で約三割、幼稚園でも八割、こういうふうに書かれておりまして、私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献していると。

 つまり、私立と書いていますから、私のものだみたいな語感がありますけれども、そうじゃなくて、我が国の公教育を支えていただいているわけですね。ですから、それは、そういう役割を担っていただいているわけですから、しっかりとした支援をするのは当然でありまして、また、支援する上でも、私立学校の特性、建学の精神をしっかり尊重する、これももう当然のことだと思っております。

 そういう点では、藤本参考人が、幼児教育無償化したからやれと言われるのは違和感がある、こうおっしゃったのは、まさにそのとおりであって、我々は、そういう関係にないと。まだまだ、実は、無償化施策もそうですけれども、私学助成なども足りないというふうに思っているんですね。

 本来、私学助成法ができたときに、国会は、私学助成を二分の一に引き上げるということを決議をいたしました、附帯決議で。しかし、その後の推移は御承知のとおりです。今はもう半分どころか、一割を切ろうかというところまで下がってしまった。

 そういう点では、何か交換条件じゃなくて、もっとしっかり、公教育を担っていただく上での支援は、口は出さずにお金は出すというふうにすべきだと私は思うんですね。

 この点で、私学の価値と役割という点、これは四人の参考人の先生方、順々にお答えいただきたいと思います。

田中参考人 宮本先生、どうもありがとうございます。

 私学の価値ということをお尋ねいただきまして、誠にありがとうございます。

 私学の価値というのは、やはり、学問の独立、教育の独立というものを重要視して、専門家が、教育を専門とし、また、学問という、学ぶということを専門としている者たちが、何が今後我が国の若い方たちに必要かということをよく考えるということだと思うんですね。それを個々の学校法人の建学の精神に沿って育てていくという、そこがやはり多様性を生むということになると思います。

 ですから、私学の中にも様々な学校がございまして、例えば、地域に貢献する大学もございますし、それから、世界と研究力で競おうという大学もございますし、また、ある特定の領域に非常に専門性の高い職業人を育てるというところに専門性を持つ大学もございます。今大学のお話をしていますが、それは高校でも中学でも同じように、特徴がございます。例えば私立のある小学校、中学校では、音楽ですとか芸術を非常に大事にしていて、そこの卒業生には芸術家や音楽家が多く出るというところもおありになるわけですね。

 そういう様々な特徴というものを持っている私学というものの重要性というものがございますので、そこは、公立の小中高、若しくは公国立の大学と違うところでありまして、やはり、お国のため、若しくは自治体として、どうしてもこれだけの教育をしなければならないというところと一線を画すのは、その独自の理念というものを大事にして若い方を育てるということが重要だと思っておりますので、その中でも本日御議論いただいているのは、公共性があるがゆえに、我々はガバナンスの透明性を高める必要があるということだと思っておりますので、そこのところは大事にしなければならないと思っております。

 ですから、私学の独自性が日本の教育の多様性を保障し、かつ、様々な有為な人材を育成してきた。それがあるがゆえに、公共性も大事にして、透明性も高める必要があるというふうに存じております。

 以上でございます。

増田参考人 どうも、御質問ありがとうございます。

 私も、田中先生が言われたとおり、私学の重要性というのは非常に認識しております。また、敬意を表しておりますし、日本の教育の重要な、本当に、担っているということを十分承知しております。

 その中で、私学の法人の中に、九九・九%のところは問題ないと思うんですが、やはりその中に不心得な方が出てくる。例えば、最近ですけれども、先ほど話が出ました私学助成法の補助金のカットというのがありましたけれども、一つは、不適切な役員の学校資金の流用だとか、あるいは、ハラスメントで実刑判決を受けた方がまた理事長に戻ったというようなことの理由によって補助金のカットが行われたということが出ていました。

 だから、こういったことは、先ほどのガバナンスコードじゃないかと思いますけれども、そういったところで規制できてきたのかと、現状ですね、そういったことが大きな問題だと思うんですよ。もちろん、九九・九九ぐらいは問題ないんですよ。よく分かっているんですけれども。だけれども、そこにおいて一部に不心得者が出るので、それをどう防ぐかというのが大きな理由だと思いますし、これからやはり少子化で、日本の経済が非常に厳しい状況になります。この中で、やはり対応できるような機動性のある、執行部はあってもらいたいと。

 そのためには、やはり今回のようなガバナンス改革というものは、執行体制の強化、これは執行する方が強化するとすれば、これはもうアクセルですよ。それをチェックするのは監督する体制だと思っていまして、そういう体制をきちんとつくらなきゃいけないというのが我々の主張だったわけですよ。

 それは一部取り入れていただいたので、私は、不十分だけれども是非進めていただきたい、このように思っております。よろしくお願いします。

福原参考人 宮本議員、貴重な御質問ありがとうございます。

 私学の価値というものでございますけれども、やはりこれには、質的と、私学という器的な、量的な問題とが、両面あるかと思いますけれども、まず、建学の精神というものを堅持をして、そして、これを時代や社会に合わせて実践をしていく。それの実践があるがゆえに、多様な教育機会というものを社会に提供しているということは大変大きいことかというふうに思います。

 このことは、設置者として、国や地方自治体が設置する学校では取り組むことができない、そういう社会のニーズをいち早く取り組んで教育に反映させる、また、隅々の声をこの教育という現場に反映させる、こういった役割を果たしているものというふうに思います。

 そして、私学というのは、また、器として、社会の様々なリソースを教育あるいは研究といった営みに投下するチャンネルでもございます。創立時の寄附等による基金の拠出にとどまらず、最近では、様々な社会連携によって、自治体、企業、また個々人、いろいろな方からの浄財、寄附が私学に集まることによって公教育をしっかりと支えているということもございますので、私学はそういった両面で我が国の公教育に欠かせない存在であるというふうに思います。

 そして、ややもすると、私学というものは国立、公立の役割を補完するものだというような論調に出くわすことがございますけれども、私は、決してそうではなく、国立や公立ではなし得ないような、そういった社会のニーズをいち早く感じ取ってこれを実践していくというかけがえのない存在である、そういう価値をしっかりと認識するがゆえに、その価値を発揮できるための学校法人のガバナンス改革であるというふうに考えているところでございます。

 ありがとうございました。

藤本参考人 ありがとうございます。

 三人の先生方の後に私がこんなことを答えていいのかなと思いますけれども、私は、学歴というのは、実は、最終学歴も大事ですが、最初学歴がもっと大事なのではないかなというふうに考えております。どんなところで何を学んだか。

 人生で一番最初に出会う学校が幼稚園であります。その意味で、幼稚園の中で私たち私立幼稚園は、様々な思いを持ちながら、様々な子供たち、そして保護者の皆さんと真剣に向き合っております。私たちの思いに賛同してくださるお母さん、お父さん、こんな幼稚園でうちの子供を通わせたいな、そして、こんな幼稚園で私たちは働きたいなという先生、本当にそういう、お互いが相思相愛の関係でやっていくという、それが私立幼稚園の、私学のよいところではないかなというふうに思います。

 つまり、全てが決まっている、そういう中での学校生活ではなくて、真っ白なキャンバスに、子供たちも、先生も、そして保護者の方たちも、自分が感じたり考えたことを自分で選んで、自分で行動に移して、自分たちでまたそれを評価していく、そういう主体的な営みができるのが私学のよさではないかな、それを大切にしていく使命を私たちは担っているのではないかなというふうに思います。

 子育て支援ということが非常に今重要とされております。確かにそうですが、私たちが大事にしている子育て支援は、本当は、子育ての支援、子育てをすることを支援するんだ、子育ての全部を肩代わりすることではなくて、私たちの営みに対して賛同してくださる方とタッグを組んで、子供を真ん中にしていつも頑張っていきたい、それが私学の使命だ、存在意義だというふうに考えております。

 以上です。

宮本(岳)委員 幼児教育無償化したからやれという話じゃなくて、されなくてももちろんやっているし、それとは無関係にガバナンスが必要だとおっしゃるのはそのとおりだと思うんですね。

 価値は認めつつも、ごく僅か、やはり深刻な問題が起こっている。

 実は、私の大学の恩師が、大阪のさる私立大学の理事長らによる業務上横領事件が起こった、その私立大学の今理事長として再建に当たっておりまして、相当深刻な事件が起こっていることは事実なんですね。

 いずれも、理事、評議員、監事等々を理事長が選任できる仕組みとなっていることから歯止めが利かないということですよね。それにどうガバナンスを利かせるかという議論が重ねられてきたわけです。

 私たちは、今回の改正、一定の前進、歯止めが期待されるというふうに考えておりますけれども、ただ、今回、理事選任機関というものを選んでそこで選任するというんですけれども、この理事選任機関がどのような方から構成されるか、これは寄附行為で定めるとなっていますね。寄附行為で定めたならば、理事会を理事選任機関とすることが排除されていないというふうに私たちはちょっと読めてしまうんですけれども、ここは少し問題があるんじゃないかと思うんですが、田中先生と福原先生にお伺いできますでしょうか。

田中参考人 ありがとうございます。

 理事選任機関は寄附行為で定めるというふうになっておりますが、そこは各学校法人のやはり自律的な考え方が重要だと思っております。

 理想的には、寄附行為という、いわゆる私学で言うところの校規を寄附行為と呼んでおりますけれども、その校規でどのように定めるかに関しては、寄附行為の設定例、寄附行為の改正例というものを文部科学省がお作りになるというふうに伺っておりますので、これを法案改正とともに可及的速やかにお出しいただくことがやはり一つモデルになると思うんですね。

 私どもも、今自分たちで勉強しながら考えておりますけれども、理事の選任機関というものは、外部の方も入れ、それから内部の者も入れ、そして卒業生も入れる。そういう、やはりその三種類の方たちに集まっていただいて決めていくというのが必要なことだというふうに考えております。

 そういうモデルの在り方というものは重要だと思いまして、そういうものが、私立大学連盟などで作っているガバナンスコードではまだそこまでは定めておりませんので、そういうところも、いわゆる遵守していただく規定、若しくは尊重するべきところというようなことを進めていく必要があろうかと思います。やはり、そこにも、コンプライアンス・オア・エクスプレーンになると思うんですね。

 なぜそういうふうにならないか。例えば、規模の小さい小学校さんですと、なかなか適任者がいないので、その三者を集めることができないというようなこともあろうかと思いますが、それはまさにコンプライアンス・オア・エクスプレーンだと思うんですね。

 どういうものがモデルになるかということは御議論いただけると思いますので、そこは文部科学省もお考えだというふうに伺っておりますので、そういうものをお見せいただくことが、私学全体がある程度共通の倫理観を持つことに役に立つのではないかと思っております。

 以上でございます。

福原参考人 まさに、監督、監視機能を万全に発揮させる最重要な手段というのは、業務の決定と執行を担う理事会の構成員であります理事と理事長の選任あるいは選定、解職ということでしょうか、による監督機能の強化ということでありますので、まず、今回の法案におきましては、その在り方をしっかりと、この在り方にフォーカスするということでございまして、これを具体的にどのように定めるかということは、ただいま田中総長からも御紹介ございましたけれども、様々な選任の在り方を各学校種ごとに調査をいたしましたところ、実に様々な現実が判明をいたしました。その中で、議員おっしゃるような、ある一握りの方々とか一人の方がそれを全て牛耳ってしまったがゆえに不祥事の発生の温床となってしまったという事例も散見されております。

 そういうことを踏まえまして、多様性を踏まえながら、評議員会やその他の寄附行為に定める機関を明確にするようにという法令での定めでございます。それによりまして、評議員会とすることも、また、理事会以外で、役員選考会議とか、あるいは設立団体とか選挙実施機関といったような任意の機関はこれに当たるということも考え得るわけでございます。その中で、やはり理事会というものをその選任機関というふうにしたのであれば、そのことがしっかりと社会に説明できるような、そういった体制の下で決められることが必要であろうかというふうに思われます。

 すなわち、各選任機関における選考過程の透明性を確保するということが必要でございますので、これは、寄附行為作成例や、また、先ほどの御質問にありましたガバナンスコードといったようなものでその点を規律づけて、そして、その在り方をそれぞれの学校法人が公開をして、社会的な信頼を確保するように努めていただくということになろうかというふうに思います。

 ただ、本当に小さなところでは、理事会が、その理念を引き継いでくださる方々を、次はこういう方々に引き継いでいただきたいということを実際にお決めになって円滑に継承されていくという例もございますので、そういった例を全く防いでしまうというわけにはいきませんので、そういった場合には、こういう事情によってこういうふうな選任機関で選任したということが、しっかりと透明性のある公表がなされれば十分ではないかというふうに思います。

 ただ、それが全ての大規模な大学にまで同じようなことまで許されるかというと、それは決してそうではないというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

宮本(岳)委員 時間が参りました。ありがとうございました。

 何よりも、増田参考人から笑顔が見られたことが、今日は参考人質疑をやってよかったなと私も喜んでおります。

 是非ともよいものにするために私たちも全力を挙げる決意を申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

宮内委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.