衆議院

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第2号 平成28年10月21日(金曜日)

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平成二十八年十月二十一日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    木原 誠二君

      木村 弥生君    黄川田仁志君

      熊田 裕通君    小松  裕君

      今野 智博君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    鈴木 隼人君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      中谷 真一君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      堀内 詔子君    村井 英樹君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      阿部 知子君    大西 健介君

      小宮山泰子君    玉木雄一郎君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    宮崎 岳志君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   総務副大臣        原田 憲治君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   国立国会図書館調査及び立法考査局社会労働調査室専門調査員         堀部  貢君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        中島  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     中谷 真一君

  高橋ひなこ君     熊田 裕通君

  谷川 とむ君     鈴木 隼人君

  福山  守君     山田 賢司君

  村井 英樹君     黄川田仁志君

  郡  和子君     小宮山泰子君

  中島 克仁君     玉木雄一郎君

  初鹿 明博君     宮崎 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     今野 智博君

  熊田 裕通君     高橋ひなこ君

  鈴木 隼人君     谷川 とむ君

  中谷 真一君     新谷 正義君

  山田 賢司君     福山  守君

  小宮山泰子君     郡  和子君

  玉木雄一郎君     中島 克仁君

  宮崎 岳志君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     村井 英樹君

    ―――――――――――――

十月二十一日

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

同月二十日

 さらなる患者負担増計画の中止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二三一号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第二三二号)

 同(中根康浩君紹介)(第三二五号)

 ウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援、B型肝炎ウイルス排除治療薬等の研究・開発促進、肝炎ウイルス検診の推進に関する請願(原田義昭君紹介)(第三二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府子ども・子育て本部審議官中島誠君、厚生労働省医薬・生活衛生局長武田俊彦君、労働基準局長山越敬一君、職業安定局派遣・有期労働対策部長鈴木英二郎君、雇用均等・児童家庭局長吉田学君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、保険局長鈴木康裕君、年金局長鈴木俊彦君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村(憲)委員 おはようございます。自民党の田村憲久でございます。

 きょうは、大臣への質疑、所信に対する質疑ということで、久しぶりといいますか、そちらで答弁したことはあったんですけれども、久々にこちらから御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この間、大臣所信、それに対する質疑、与野党でいろいろな形で、すんなりとはセットできなかった。それにはいろいろな事情があるわけでありますが、その中の一つに、年金の法案に関して、特に年金カット法案だというようなレッテルを野党の方々、一部でありますけれども、これを言われるんですね。それはまた後でお話しします。

 これは、こういう形、レアケースといいますか、本来想定していなかったケース、要は、名目、実質とも賃金がマイナスになるというようなことが起こった場合、こういう場合に何ら措置が今まで現行法律はされていなかったということであって、それを穴を埋めるというような、そういう今回改正をするということであると私は理解をいたしております。

 過去十年で数回そういうことがあった、年金財政を毀損させた、そういうことであるわけでありますが、アベノミクスによって賃金が上がり出してくればそういうことは当然起こらないわけでありまして、こういう想定は起こらないわけですね。でありますから、本来はこのようなことがあってはならないんですけれども、あってはならないといって、あったわけですから、その穴をちゃんと埋めるのは当然でありまして、これはまさに将来に向かってまたこのようなことが起こったときに年金財政を毀損させないための機能を強化するための法案、改正だというふうに私は思っておりますが、まず、そのような認識でいいか、お答えを局長からいただきたいと思います。

鈴木(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 御存じのように、年金は、将来年金を受給いたします現在の若い方たちが現在年金を受けておられる世代に仕送りをするという助け合いの仕組み、賦課方式でございまして、限られた財源を適切に配分する、世代間の分かち合いの仕組みでございます。

 こうしたルールのもとで、仮に、現在の若い人たちの賃金が下がって、先ほど先生がお示しのような事態が起きたような場合、現在年金を受給している方々の年金水準は維持される一方で、現在の若い人たちは、賃金も下がり、将来受け取る自分たちの年金水準も低くなる、いわば二重の苦しみになる可能性がございます。

 そこで、今回の見直しは、このような、先生がお示しのような事態が仮に起きた場合にも、現在の年金額も若い人たちの賃金の変化に合わせて改定する、こうしたことで世代間の公平を確保し、将来世代の年金水準を確保するということで、先生お示しのような概念に基づくものでございます。

田村(憲)委員 このような事態が起こったときに、今までは物価スライドで年金を動かしていたものを、賃金の方、下がった賃金の方でスライドさせる、賃スラにするということで、このような形で、今までから、そこはあいていた穴を埋めるということになったわけであります。

 これに関して民進党さんから、過去十年間、過去十年でもしこの法律が適用されて、物価、賃金ともに下がる等々を含めて、要するに、名目、実質で賃金が下がった場合、この場合に、仮に今の法案を適用していたらどんなことが現状起こっていたのか。

 そして、それに対して大臣は、将来こんなことが起こりますよというような、そういう試算を出されまして、新聞に出ました。現状で約三%ぐらい基礎年金が下がる、ただし、将来でありますが、二〇四〇年ごろに、これが七%上がる、二〇三七年でしたか、こういうような話になったわけであります。

 ただ、これはちょっと国民の皆さんが誤解しちゃうんですよ、何かこの法律が通ったら、これから年金が下がって、将来の人が上がると。そんなことはあり得ないですよね。だって、この法案は、こういう状況が起こらないとこれは発動されない、そういう話ですよね、今までと同じなんですから。

 しかも、過去十年、デフレ下において、六回という話がありましたけれども、こんなことがあったわけであって、それはもう事実として起こっている事象なんですよ。起こっている事象を、こんな仮定を置いたら今がどうで将来がどうだなんて、ちょっと誤解を招くので、本来は、このような経済状況を起こさせないというのが一番重要なところでありますから、そこは絶対に我々は忘れちゃいけないのと、国民の皆さんには、決してこの法案が通っても年金が下がるという話じゃなく、また将来上がるという話じゃなくて、不測の事態が起こったときに本来の年金の水準を維持する。もし不測の事態が、このような状況が起これば、本来、今約束されているような所得代替率が維持できませんから、それをちゃんと維持するための、あいていた穴を塞いだ、そういうような法案であるというふうに私は認識しております。

 その上で、三%下がって七%上がるのはおかしいと。つまり、十年前にこの法律が通っていれば、現状で基礎年金が三%下がって、二〇三七年には七%も上がっている、これがどうもおかしいじゃないかというようなことを言われる。数字が合わない。どう考えたって、こんな単純計算、何か、将来そんなに得するわけないじゃないか、一体これは正しい数字なのかというような御質問があったやに聞きますけれども、これに対して明確なる、なぜこのようなことが起こるのか、お答えをお願いいたしたいと思います。

鈴木(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生、言っていただいたように、今回の試算は、民進党からのお求めに応じまして、仮に今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていたとした場合の、仮定の機械的な試算を行ったものでございます。

 その上で、今回の試算で改めて確認されたことは、いわば世代間の分かち合いの仕組みが年金制度でございますので、足元の年金水準が低下すると将来の年金水準が上昇するということでございます。

 具体的には、今回の試算では、今の高齢者の年金の水準が、約十年間の経済状況の累積の影響で三%低下していたと見込まれるわけでございますけれども、一方で現役世代の将来の基礎年金の水準が七%程度上昇する、こういう結果でございます。

 なぜこういう結果になったのかということでございますけれども、これは今回の改定ルールの見直しを行った場合、見直しを行わなかった場合との間に差の部分の財源が生じます。この財源を活用して将来の年金水準の上昇につなげることができる、これが基本構造でございます。

 その上で、三%と七%の関係につきましては三つの要因がございます。

 第一に、こうした見直しを行うことによりまして、マクロ経済スライドのかかる期間、いわゆる調整期間と申しておりますけれども、これが六年間短縮することができます。

 第二に、年金受給者が将来的には減っていくということを勘定に入れなければいけないということでございます。具体的には、足元で、二〇一六年現在、年金受給者三千二百六十万人いらっしゃいますけれども、二〇四〇年代以降、人口減少に伴いまして受給者数が減少するわけでございまして、見通しとして、二一一〇年の受給者数は現在の半分程度、約千六百四十万人になります。したがいまして、見直しを行うことによって生じた財源の効果が将来の数が減る受給者に活用できますので、それだけ高い効果が得られるということでございます。

 さらに、この見直しによりまして生じました差分の財源は、年金財政上、積立金として運用収入が発生いたしますので、この分も含めて将来の給付に充てることができる。

 以上の三点の要因によりまして、三%と七%の関係が御説明できるというふうに考えてございます。

田村(憲)委員 明確だと思いますね。

 一つは特例水準というものがあったと思います。これは本来、物スラのときに、物価がマイナスになったときに年金も下げなきゃいけなかった。ところが、それをやらなかったんですね。そのたまりがあった。これも、今回の想定では、そもそもそんなものはなくなるわけですから、十年前に賃スラを入れていれば。ですから、それもない。さらには、今言った物スラと賃スラの差額分、これがなくなっちゃうわけでありまして、そういうものが積立金に積み上がるということは、これがずっと運用されるんですね、賃金プラス一・七%で。これは非常に大きいと思います。

 そして、将来の給付する人数が急速に減っていく。結果、先ほど言いましたマクロ経済スライドが終わるのが早まるんですね。ですから、当然、六年早まれば、今それだけで一%ぐらいマクロ経済スライドがかかっているはずですから、単純に見てもこれだけでも六%、これは言うなれば上がる、代替率が上がるというふうに考えればいいわけでありまして、非常に私は明確だというふうに思います。

 その上で、今回、物価スライドから賃金スライドにしたものですから、下がったときに。これで、物価が上がったときよりも賃金の上がりが少ないわけでしょう。物価が下がったとき、ごめんなさい、物価の下がりよりも、まあ、上がる場合もありますけれども、物価が上がって賃金が下がっていた場合には、これは生活が苦しくなるじゃないか、物価が上がっているのに賃金が下がったからそれに合わせたら。こういう話なんです。

 そもそも我々は物価スライドを中心にやってきた。ところが、民主党さんの実は例の最低保障年金案ですけれども、これですけれども、賃金スライドでやっているんですね、民主党さんは、もともと。ということは、我々の先取りをして、今回のようなことが起これば、民主党は、やはり物価が上がっていても賃金が下がっていれば給付が下がるんですよ。つまり、すばらしい、我々の穴をちゃんと埋めている法律を民主党は提案されていた。この部分に関しては御炯眼だったというふうに我々は思いますね。

 さらにもっと言えば、我々は、マクロ経済スライド調整率というのがここにあります。ところが、これは実は二〇四三年で終わるんですけれども、民進党さんは賃スラをかけた上に十五歳から六十四歳、生産年齢人口の減少率掛けるアルファ、これは係数です、つまり出と入りを均衡させるための係数を掛けて、それを引くんですね。つまり、賃スラ以上に下がるんです。我々は、物価がマイナスですと、これはそもそもかかりませんから、マクロ経済スライド。ここだけになっちゃうんですね。どちらが下がるかというと、実は今回のようなことが起これば民主党さんの法律の方が下がっちゃうということがこれを見ればわかるんです。

 これは明白な事実ですから、もし反論があるんならば、今は民進党さんにかわられましたけれども、御反論を後ほどしていただければ結構だというふうに思います。

 ただ、違うところがあるんです。上がるときは民進党は確かに賃金で上がります。我々は基本的に物価でしか上がりませんから、物価より賃金が上がった場合には民進党は上がる。つまり……(発言する者あり)そうなんです。そのとおりなんです。大西議員、そのとおりなんです。これは財政上、入ってくる保険料、それから税金、それと出ていく年金、この入りと出を均衡させるために、これは要するに、マクロ計算して合わせるようになっているわけで、やり方は違いますけれども、合わせるようにするためにいろいろな工夫をしている。結果的に民進党さんは延々と所得代替率は出ません、ずっと下がり続けますから。自民党はここでとまりますから、二〇四三年に。だから、一定所得層で所得代替率五〇%を約束するということができますが、民進党さんは百年間ずっと下がり続ける。五年ごとに財政検証しますから、そこからまた百年、延々と下がり続けるということなんです。

 ということで、悪いと言っているんじゃないです。これはそういう制度設計なので、制度設計の違いはありますが、お互い賃金が下がったときの対応をしておかないと将来推計した年金財政が維持できないということで、今回のようなことが起これば、同じように民進党さんも、いや、同じというよりかそれ以上下げなきゃいけませんから、年金カット法案だというふうに言われるわけでございます。

 ちなみに、民主党さんの年金案の中にはちゃんと書いてあるんです、それが。要するに、このみなし運用利回りが物価を下回ることがありますとちゃんと書いてあるんですね。ですから、御炯眼だなということを改めて私は皆様方にお伝えさせていただきたいと思います。

 大臣、今の話をお聞きになって、改めて、我々のが年金カット法案ではなくて、これは年金財政を将来に向かって確かなものにするための法案であるということに関して御発言をいただければありがたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほどからお話が出ているように、年金というのは、今の若い世代が、働いておられなくて、引退されて年金をいただいていらっしゃる方々に仕送りをするという助け合いの仕組み、これが一つですが、言ってみれば、今の世代だけではなくて、将来の年金を受け取る世代、つまり今働いている人たち、この時間的な差のある、分かち合いというか、この仕組みをやらなきゃいけない。そういうことで、マクロ経済スライドも導入されてきていることを今先生に御説明をいただきました。

 今申し上げたように、また今先生から御指摘があったように、そうはいいながら、名目でも実質でも賃金が低下した場合についてのスライド制については、言ってみれば、動かさないという形でやってまいりました。

 ここについての宿題が残っていたということは、実は、社会保障・税一体改革大綱、これは民主党政権が閣議決定されたものですけれども、そこに「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」これがまさに、未来の、将来世代への責任をどう果たしていくのかということについて民主党政権もしっかり問題意識を持っておられて、この宿題が残っていたのを、我々は粛々とこの宿題を果たすことによって、将来の世代と今の世代の年金をもらっていらっしゃる方々との間の分かち合いで将来の年金受け取りが減らないようにするということで、まさに未来への責任を果たすということで今回の法案を提出させていただいているということであります。

 もし、では、カットだということでやらないというならば、どういう代案があるのか、今まさに旧民主党の案を御説明いただきましたが、結局同じことを考えなければいけないということになるんだろうというふうに思います。

田村(憲)委員 今回の法案は、旧民主党の年金法案に、賃金スライド法案に近づけた法律だということを改めて申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 私の方からは、働き方改革につきまして御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 と申しますのも、本年、公明党の青年委員会で、特に若い世代の声をしっかり政治に届けようじゃないかということで、署名を集めさせて、政策アンケートをとらせていただきました。ボイスアクションという名前で一千万人以上署名も集めさせていただきまして、総理にも提出をさせていただきました。

 その中で大変に関心が高かった、特に声が多かった、こういうものが、働く人の処遇を改善していくことでございますし、また、働き方を改革していく、この項目でございました。ですので、今の若い世代は、働き方改革、大変に高い関心を持っている、そしてまた進めていっていただきたいと思っている、こういうことだなと改めて痛感をしております。

 こうした声を受けまして、政府におきましては、働き方改革実現本部というものも設置をしていただいておりまして、改革を進めようとされているこの姿勢、率直に評価をしたいと思います。あと、改革をしっかりと進めていく、結果を出していく、こういうことだなというふうに思っております。

 そこで質問なんですけれども、若い世代の大きな要望、何といっても、賃金の上昇ということでございます。これに伴って景気の好循環を実現させていかないといけない。本年に入って、実質賃金もプラスの傾向が続いております。しっかり賃上げもこれからさらに進めていかないといけないとも思っております。賃金を底上げしていくために最低賃金を押し上げていく、これが底上げとして大変重要だと思っております。公明党としても、早期に最低賃金千円を目指そう、こういうことも訴えております。

 しかし他方で、最低賃金を引き上げると、中小企業の皆様を初め、大変に経営が苦しくなる、こういうお声もまたあるわけでございますし、これは、生産性の向上、中小企業を中心として、こうした環境整備をあわせてしっかり行っていかないとなかなか実現をしていかない、こういう思いも強く持っております。

 そこで、厚生労働省にお伺いをしたいんですけれども、最低賃金の引き上げに向けまして、今後の御決意を、中小企業を中心として環境整備をさらに力強く行っていく、こういうことも含めて、しっかりやっていっていただきたい、このように思いますけれども、橋本副大臣から御答弁をいただきたいというふうに思います。

橋本副大臣 最低賃金の引き上げについて、そしてまた、中小企業などを中心としたその環境整備について御質問をいただきました。

 まず、最低賃金につきましてですけれども、安倍政権において四年連続で大幅に引き上げさせていただいておりまして、時給表示となってから、今年度は、過去最高となる全国加重平均二十五円の引き上げを行ったところでございます。

 ただ、もちろん、最低賃金を引き上げるということは、経営にとってそこが負担になり得るということがあるわけですから、特に中小企業の皆様を中心に、その環境を整えてほしいという御要望は、今委員御指摘のとおり、あるわけでございまして、大変大事なことだと思っております。

 この環境整備についてですけれども、特に中小企業等の生産性向上に向けた支援というのが大変重要でございますので、先般成立させていただきました平成二十八年度第二次補正予算において、業務改善助成金やキャリアアップ助成金について助成額の拡充等を行ったところでございます。

 具体的に申し上げれば、業務改善助成金について、事業場内で最も低い賃金を時給で六十円以上引き上げる場合のみをこれまでは対象としていたわけでございますが、三十円以上引き上げる場合に対象とするということで範囲を拡大いたしまして、使いやすくさせていただくことをしました。

 それから、キャリアアップ助成金については、賃金規程等を二%以上増額改定した場合に支給することとこれまでしておりますけれども、中小企業が三%以上増額改定をした場合に助成額に加算を行うということで、ことしの最低賃金の引き上げ率が三%であったということを踏まえて、そのような設定をさせていただいた次第でございます。

 いずれの場合も、生産性向上の状況を加味しながら加算を行うということにしておりまして、こうしたことを通じて、中小企業の皆様方にも、最低賃金の引き上げに応じてきちんと賃金をお支払いいただく環境を整えていくということ、今後もしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 中小企業の皆様を中心にしっかりここで働く皆様の賃金が上がっていく、これが大変に大事だというふうに思います。政府全体としてさまざまな取り組みをしておりますけれども、厚生労働省としても、しっかりとこの後押しをしていく、これを加速させていっていただきたいと改めてお願いをさせていただきます。

 非正規雇用の皆様の処遇の改善、これも大変に御要望の強い、そしてまた大事なテーマである、このように考えております。

 公明党としても、同一労働同一賃金を推進しよう、正規の職員の方と非正規の職員の方と、余りにも給与の格差があるのではないか、こういうことも訴えておりまして、欧州では正社員の八割程度の賃金が非正規の方はある、こういうデータもあるわけでございますので、しっかりと引き上げていこう、こういう御提案を党としてもさせていただきました。

 しっかりと、こうした我が党の提案も踏まえながら議論も進めていっていただきたい、このように思うんですけれども、その中から何点か指摘をさせていただきますと、例えば、典型的によく言われるのが、同一労働同一賃金を進めていくときに、企業としては人件費の総額というのがある程度決まっている。そうすると、正規と非正規の方で何かパイを奪い合うような、場合によっては、正規の方の処遇が下がって非正規の方に行くような、こういうことがあってはやはり本末転倒ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。

 あるいは、今政府としてガイドラインをつくろう、合理的な理由なく、正規と非正規、不利益な取り扱いをしてはいけない、こういうガイドラインを示していこう、こういう議論もあるわけでございますけれども、余り合理性がないのではないかという要望をいただいている項目もございます。例えば、通勤手当があったりなかったり、あるいは慶弔の休暇、安全衛生、典型的には、こういうものはなるべく差はなくしていっていただきたい、こういう御要望も強くいただいているわけでございます。

 そしてまた、このガイドラインがしっかりと、わかりやすくて実効性の高いものにしないといけないんじゃないか、こういうお声もあるわけでございます。こういうことも含めて、提言もさまざまさせていただいております。

 こうしたことも踏まえて、今後の同一労働同一賃金の進め方、私としては、しっかりとガイドラインをつくって、これが実効性の高いものとして、このガイドラインが出たから、しっかりと非正規の方の処遇が具体的に上がっていく、こういうものをぜひ進めていただきたい、このように思いますけれども、厚生労働省の御見解を伺いたいと思います。

鈴木(英)政府参考人 お答え申し上げます。

 同一労働同一賃金の実現に向けましては、不合理な待遇差の是正を図るに当たりまして、非正規雇用の方々の待遇改善が着実に図られることが必要だと考えてございます。このため、今後の検討に当たりましては、先生御指摘の点も十分に踏まえまして検討を進めてまいりたいと考えてございます。

 また、ガイドラインにつきましては、今後、総理を議長といたします働き方改革実現会議におけます議論も経まして、年内に策定を目指すということになってございます。この策定に当たりましては、御指摘の点も踏まえまして、どのような待遇差が合理的または不合理であるかということについて事例等で示しまして、わかりやすく実効性があるガイドラインになるように努めてまいりたいと考えてございます。

中野委員 ありがとうございます。

 このガイドラインがまずはどういう形で出てくるかということが非常に大きな、まず第一歩だというふうに思いますので、しっかりと進めていっていただきたいと思います。

 続きまして、長時間労働の是正について伺います。

 これも、今現在、政府においても議論が進められているところでございますけれども、ただ、先日も、大手の広告代理店で若手の社員の方が過労のために自殺をする、大変痛ましい残念な事案もございました。こうした若い人たちの可能性を摘むような、あるいは若い人たちを使い潰すような企業というのはやはり変えていかないといけない、なくしていかないといけない、こういう思いでございます。

 私自身も、今までも、過労死等防止対策推進法、こういう議員立法にも携わってまいりましたし、また、党としても、労働法令の違反が疑われる企業への監督指導の強化、こういうものも求めてまいりました。現在も、過重労働撲滅特別対策班「かとく」というふうに呼ばれておりますけれども、こうした監督の強化、こういうものは今図りつつあるところだ、このように承知はしておりますけれども、やはり、いざ何かが起こってから動く、こういうことではなくて、こうした事案を未然に防いでいくためにより積極的に動いていく必要があるのではないか。

 こういう長時間労働が常態化をしているような場所に対しては、さらに重点的に監督指導、こういうものをしっかりと強化していくべきではないか、このように思っているわけでございますけれども、これについても政府から御答弁をいただきたいと思います。

橋本副大臣 委員御指摘の企業につきまして、過去にも業務に起因する自殺事案が発生をしておりまして、今回再び自殺事案が発生したことは極めて遺憾としか言いようのないことでございます。この件に限らず、働き過ぎにより命を落とされるということは、御本人や御家族にとってもはかり知れない苦痛であるとともに、社会にとっても大きな損失であり、過労死はあってはならないものでございます。

 働き方改革の中で、長時間労働について、これを撲滅するのだということで動いておりますし、ルールについてどうするか、議論もありますが、やはり監督強化というのは大事な点でございまして、厚生労働省では、過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導はもちろんのこと、例えば、昨年五月から、複数の事業場で違法な長時間労働を行う企業を是正、指導した段階で公表する取り組みを開始するとともに、月百時間超の残業を把握した全ての事業場に対する監督指導の対象を、ことし四月から月八十時間超ということに拡大をさせていただいております。

 また、昨年四月に、お触れをいただきましたが、過重労働撲滅特別対策班「かとく」を東京労働局と大阪労働局に設置をしておりますし、また、ことし四月には本省にも「かとく」を設置するなど、法規制の執行強化を図っているところでございます。

 引き続き、これらの対策をより徹底していくということで、長時間労働を是正し、働く方が安心して活躍できる環境を整えるよう、しっかり取り組んでまいる所存でございます。

中野委員 しっかりと監督指導をお願いしたいというふうに思います。

 労基署が監督指導、先ほど、ルールそのものの見直しという議論もございました。確かに、長時間労働、法令に違反をした場合は監督指導、こういうことでございますけれども、そもそも労働時間法令の上限規制のあり方がどうなのか、こういう議論もあるわけでございます。現在、政府としても議論が行われておりますし、私個人としても、やはりこういう上限規制の設定、あるいは一定の休みを置くというインターバル規制、こういうものもしっかり促進をしていかないといけない、この議論においても実効性のある取り組みを行っていかないといけない、このように考えておる次第でございます。

 他方で、業種によって労働時間というのにはデータを見ると結構差があるわけでございまして、例えばITの業界であるとか運送業の業界であるとか、労働時間が非常に長い、こういう業界もございます。それぞれの事情がある。多重の請負構造になっているようなケースもございますし、あるいは、運送業ですと、荷主との関係で、自分の会社そのものは別にそんなに長時間の労働はしたくはなかったとしてもせざるを得ない、こういうようなさまざまな状況があるわけでございます。

 ですので、この労働時間法令のあり方、これについてもまずしっかり議論をする必要はあると思いますけれども、実効的にこの長時間労働を削減していくために、こうした関係者が一丸となって、長時間労働を少なくしていこう、是正していこう、こういう業界ごとの取り組みというのもあわせてしっかりと進めていく必要がある、このように思いますけれども、これについても政府に御答弁をいただきたいと思います。

山越政府参考人 お答えをさせていただきます。

 今御指摘をいただきましたように、長時間働く方の割合が高い業種につきまして、発注者でありますとか取引先との関係にも踏み込みました対策を講ずることが重要だというふうに考えております。

 まず、今御指摘もいただきましたが、IT産業につきましては、重層下請構造のもとで、急な仕様の変更や曖昧な発注から生じますやり直しなど、取引慣行上の問題もあるというふうに承知をしております。そうしたことから、平成二十八年度、新たに、業界団体や関係省庁が連携をして、検討委員会の設置や実態の調査等の取り組みを開始したところでございます。

 それから、トラック運送業につきましても、御指摘をいただきましたように、荷主の都合によります手待ち時間とか、運送事業者だけでは解決できない問題があるというふうに承知をしております。このため、荷主企業や経済団体の参画を得た協議会を全都道府県に設置をして、実態調査を実施した上で、取引慣行の見直しによる手待ち時間の削減に向けたモデル的取り組みを進めているところでございます。

 このように、取引環境の改善にも踏み込んだ長時間労働対策を今後ともしっかりと進めてまいる所存でございます。

中野委員 ありがとうございました。

 働き方改革は大変に大事なテーマでございまして、政府においてもこれからさらに議論が進んでいくというふうに考えております。公明党といたしましても、しっかりと党内でまた議論をして、また政府にも御提案をさせていただきたい、しっかりと前に進めていきたい、このように考えておりますので、そのように決意を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 民進党の井坂信彦です。

 この厚生労働委員会は、火曜日の理事懇、水曜日の初日の委員会、木曜日、きのうの理事懇、そして本日の委員会と、まことに遺憾ながら、四日連続で委員長職権による強行開催となっております。

 我々野党側が要求をしているのは、非常に基本的、基礎的な二点だけであります。

 一つは、今週月曜日に政府から出された年金カット法案の政府試算。これは、高齢者の年金はわずか三%減るだけで、そして将来世代は七%も年金がふえる、こういううそのような、夢のような数字が政府から発表されたわけであります。明らかにおかしいので、厚生省の年金数理の担当者と今週四時間議論した結果、幾つもからくりがあり、高齢世代のカット率はなるべく少なく見せる、そして将来世代のアップ率は倍以上に大きく見せる、こういう試算だとわかりました。

 我々の試算と、多少の前提の違いで一割、二割、双方の数字が違うのは、これは受け入れられるところでありますが、余りにおかしな前提で、いわばお花畑のような数字を出して国民を欺くのはやめていただきたい。もう少し現実的な試算を出してほしいというのが一点目の要求であります。

 二つ目は、来週にも年金カット法案の審議が始められるかもしれない、こういう状況の中で、これは今週ですけれども、塩崎厚生労働大臣も、そして安倍総理も、年金受給資格期間を二十五年から十年に短縮する法案と年金カット法案をセットで、抱き合わせで審議してほしいと再三答弁をしておられます。

 我々は、この二つの法案をとにかく分けて、そして、実際今困っておられる無年金の方々を救う年金受給資格の短縮法案を先に審議させてほしい、これをこの間ずっと要求してまいりました。

 大臣は、十月三日の私との予算委員会質疑で、こう答弁しておられます。セットで議論、早期に一括審議していただくことが我々としては大変ありがたい、このように大臣は当時答弁をしておられました。

 改めてお伺いをいたしますが、年金受給資格を二十五年から十年に短縮して無年金者を救う法案と、そして議論に非常に時間のかかる、与野党で大きく意見の割れている年金カット法案を一括審議すべきでない、無年金者を救う法案を分けて先に国会で議論すべきと考えておりますが、大臣のお考えをお伺いします。

塩崎国務大臣 まず、冒頭に申し上げなきゃいけないのは、議案の審議は、当然のことながら、私ども政府が決めることでは決してないわけでございまして、一義的には与野党の皆様方の協議で決められるものだというのが私どもの理解であり、そのような形で国会の場でお決めをいただきたいというのがまず第一点、大前提でございます。

 その上で申し上げるとするならば、先ほど田村委員からの質問に対して私からもお答え申し上げましたように、今、これは、井坂委員から予算委員会で御議論をいただいた、皆様方の言う年金カット法案と呼ばれているものは、先ほど申し上げたとおり、民主党政権時の社会保障・税一体改革大綱がございますが、そのときに既にお見通しのとおり、「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」と書いてあって、これをやらないと将来世代の年金の受取額が減ってしまうということを見通した上で、民主党政権もこれを宿題として定めていた、閣議決定までされていたわけでございます。

 同時に、もちろん、受給資格期間の短縮の問題、これも一体改革の中に入っていることで、いずれも、よりよい暮らしを実現するために、年金受給権というものをより確実にするという意味において、そして年金の機能を強化するという意味において、共通をする問題であろうというふうに思うわけでございます。

 そういう意味において、私どもは二案とも非常に関連は深いというふうには思っておりますけれども、そしてまた、全体として見れば、年金制度への国民の皆様方の信頼、そして世代間の助け合い、さらには世代間の時間軸で見た分かち合い、こういう意味での改善を図ることが年金制度そのものへの信頼を高めるということにもなろうかと思いますので、これを御一緒に御議論いただきたいという気持ちは、そういうところから総理も私も申し上げているわけで、あくまでも、どういう法案処理をされるかは、これは与野党の皆様方の御議論で決まってくる、このように理解をしております。

井坂委員 最後におっしゃったのは、提出した側としては、関連があるのでセットで審議をしてほしいというふうにこれまで言ってきたが、しかし、当たり前の話ですけれども、何をどういう順番で審議するのかは国会で決めることである、国会にお任せをするという答弁かと思います。

 ちょっと不満なので、もう一度だけお聞きしたいんですが、大臣、もうそこはこだわられなくていいと思うんです。やはり我々も、短いこの秋の臨時国会、そして、政府からしたら、どの法案も出したからには大事だ、通したい、そういうことなんでしょう。しかし、特に、受給資格を二十五年から十年に短縮をして無年金の方々を救う法案、これはやはりこの秋の国会でしっかり議論をして、結論を出してしまわないと、そして、私はこの法案はもちろん大賛成でありますから、入り口からこういう、まさに大臣が、そして総理が、セットでセットでと、こうおっしゃるところから、もう既にごたごたが始まっているわけであります。

 そもそも、そういうことをおっしゃることがおかしかったわけでありますが、改めて、それは気持ちは気持ちとしてさっきお伺いしましたが、これは、無年金者を救う法案を通すためには、もちろん必ずしもセット審議にはこだわらないと答弁していただけますか。

塩崎国務大臣 たしか民進党の綱領にも、未来への責任、改革は先送りしない、こういうふうに書いてあったように記憶をいたしますが、やはり我々政治は未来への責任を負うというのが一番大事なことだろうというふうに思います。その責任をいかに果たしていくか、そして、いかにスピーディーに、将来世代の持つであろうかもしれない不安を解消していくということが大事なんだろうというふうに思います。

 先ほど申し上げたように、これは平成二十四年の二月に閣議決定をされた民主党時代の一体改革の大綱に、いずれも関係する事項が書いてありました。つまり、二十五年を十年にするという問題と、今申し上げた、デフレ下のマクロ経済スライドの発動をしないと、将来世代の本来もらえるべき、入りと出をバランスさせるという先ほど話がありましたが、そのもらえるべき年金が少なくなってしまう。そのことを回避するために、分かち合いの精神で、このスライド制を見直す、つまり、実質そして名目でも賃金が下落をするという、今まではなかなか想定をし得なかった、そういう事態での、年金の既裁定者へのスライドのあり方というものを見直すということは、これは二十五年を十年にするという期間の見直しと同じぐらいに大事な問題だろうというふうに思いますので、私は、先ほど申し上げたとおり、年金の機能強化、そしてまた信頼回復のために必要だということを申し上げているので、ここは御一緒に議論していただきたいという気持ちは何ら変わらないわけです。

 ただ一方で、国会の中での法案の扱いについては国会がお決めになることだということはよく理解をしておりますので、そこは皆様方にお願いを申し上げたいというふうに思います。

井坂委員 続きまして、我々がこの一週間要求をしてまいりました二つ目のこと、政府試算についてお伺いをいたします。

 この政府試算にはいろいろと突っ込みどころがあるわけでありますが、本日は所信質疑でありますし、また私もこの委員会で質疑をさせていただく初日でありますので、一番わかりやすいところから数点お伺いをしたいと思います。

 政府試算では、高齢者の年金カットは三%だ、そして将来世代はそれで七%年金が上がるんだと。こう聞いたときに真っ先に思ったのは、なぜ三%という低いカット率に政府の計算ではなったんだろうということでありました。

 政府試算が発表された一時間後には、年金数理課の担当の方と議論して、いろいろお伺いして、すぐにわかりました。これは、年金カット法案とは全く関係のない可処分所得割合という別のルールがあるわけでありますが、可処分所得割合というのは、保険料が少しずつふえていることを表現するために、手取りの可処分所得がちょっとずつ減っていくことをルール上表現するために賃金改定率を毎年〇・二%ずつ減らしていく仕組み、これが可処分所得割合であります。この可処分所得割合を減らす効果は毎年累積をされますから、十年たてば、〇・二%掛ける十年で二%減る、こういうことになるわけであります。

 政府試算では、現行ルールの数字を出すときは可処分所得割合もありということで数字を出している、一方、年金カット法案の試算をするときは可処分所得割合がなし、こういう前提で数字を出して、十年で二%年金水準が上がるような計算をしているようであります。

 物価が上がっても年金が下がるという今回懸案になっている新ルール、我々が問題にしている新ルールと、可処分所得割合あるなしという二つの変化を同時につけて、そしてその結果をもって、年金カット法案の新ルールによるカット率は三%だけでした、これを言うのは、私は明らかにおかしいと思います。

 そこでお伺いいたしますが、政府試算で高齢者の年金カット率が三%となったのは、私が試算して十年で五・二%年金が減るという試算に可処分所得割合二%を上乗せしただけなのかどうか、通告どおりお伺いいたします。

塩崎国務大臣 まず第一に、年金カット法案とおつけになっていらっしゃる名称でございますが、私どもとすれば、将来年金確保法案というふうに申し上げたいというふうに思います。

 その上で、今回の試算は、民進党の井坂委員のお求めに応じて、仮に今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていた場合の仮定の試算を行ったらということで、そのようなお求めだったと思います。

 そもそも、民主党政権時代も含めて、平成二十六年度までは本来よりも高い特例水準の年金額が支給されていたわけでございまして、これを法律でもって民主党政権が廃止するということをお決めになったことは、まさに未来への責任を果たす大変立派な御決断だったというふうに私どもは思っています。

 この特例水準の解消がない限り、仮に今回の改定ルール見直しが実施されていたとしても年金額が減ることはないわけで、これは物価が下がったときは下げますが、上がったときは横ばいという、これが特例水準のあり方でございますので、そういうことではないかと思います。

 なお、今回の試算は、特例水準を解消したという前提を置いた上で機械的な試算を行う、こういうことをやらざるを得ないということで結果をお示ししているわけでございまして、政府試算は、今回の額改定のルールの見直しが行われる、今回提案しているルールは平成三十三年度から適用されるものでございます。今御指摘いただきましたが、これには可処分所得割合の減少分の影響というのは生じないということになってから実施されるものでありますので、当該影響を織り込んでおらず、結果として二%の差が生じているという形になっているわけでございます。

井坂委員 いろいろそういう操作をされた理由も含めて答弁をいただいたんですが、ちょっと端的に事実だけ確認をいたしますが、今回の試算は、年金カット法案の新ルールのあるなしだけをいじって比較したのではなくて、可処分所得割合も、もとのときは可処分所得割合があり、新ルールを計算するときは可処分所得割合がなし、そこも使い分けて試算をされた。これは事実だと思いますが、それで間違いないか、お伺いします。

塩崎国務大臣 政府が提案をしている、私どもが提案をしているルールが、もし十七年度から適用されていたらどうなのかという御質問だったわけでありますから、三十三年以降はこの可処分所得割合のマイナスの〇・二というのは当然適用にならないわけでありますので、そのルールを適用してみれば、二%分は差が出てくるというのはごくごく当然のことではなかろうかというふうに思いますので、ぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。

井坂委員 何かの効果を試算あるいは測定するときというのは、ほかの前提条件はそろえて、そして変化をつけるのはその一カ所だけ、これは実験やシミュレーションの基本中の基本だというふうに思います。

 例えば、可処分所得割合は両方ともありにする、あるいは可処分所得割合は両方ともなしにする、その上で年金カット法案があるときとないときで比較をする、これなら私まだわかるんですけれども、いわば、今政府が試算でやられたことは、何かジョギングもして、そしてサプリメントも飲んで健康になりました、だからこのサプリメントの効き目はすごいんですと。こういう、実際どっちが効いたのかがよくわからないまま、二つの効果を曖昧にして累積をしてしまう。

 実際起こっていることは、年金カット法案では五・二%の差がつきます、そして、可処分所得割合の有無で二%、そこがげたを履かされて差が縮まって、政府試算では三・一%と聞いておりますけれども、そういう数字になっている、そういうことではないかというふうに思います。

 今回の年金カット法案の政府試算について、今は、高齢者のカットが本当に三%なのかと一番最初に感じた疑問について質疑をさせていただきましたが、私が一番、この数字は幾ら何でも盛り過ぎじゃないか、やり過ぎじゃないかと思っているのが、将来世代が七%ふえるという試算結果であります。

 お配りしている資料の一番をごらんいただきたいと思いますけれども、高齢者の年金は三%減るだけですよ、将来世代の年金は七%もふえますよと。これを聞いた最初の第一印象は、そんなうまい話あるわけないだろうということでありました。

 政府の試算を簡単な図で示すと、このパネルのようになるかと思います。いろいろ大前提が、物価が一・二%、そして賃金が二・五%、利回りが四・二%、こういうすばらしい成長経済が百年間コンスタントに続く、こういうことでありますけれども、その中で、二〇〇七年から二〇四〇年までの高齢者と、それから今五十代以上の方が三%カットされる、そして、その浮いた年金財源を利回り四・二%で運用してふやす結果、二〇四〇年以降に年金をもらう将来世代は七%ふえる、こういう説明であります。

 私は、仮に物価が一・二%ずっと上がる、賃金が二・五%ずっと上がる、さらには運用利回りが四・二%、こういう経済が百年続いたとしても、この短い期間の三%カットが七十年間の七%アップにつながるのか、信じがたい思いでありますが、まず大臣にお伺いいたします。

 年金カット法案が仮に今国会あるいは次の国会ぐらいで通ると、物価が上がっても年金が下がるというこの新ルールによって、仮に高齢世代の年金が三%カットされた場合、これは二〇一四年財政検証ケースE、そちらもそういう前提でこれをされていますので、ケースEでやると、仮に高齢世代が三%カットされた場合、将来世代の年金は七%アップするんでしょうか。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 その前に、先ほど、可処分所得をどう見るかの話がございましたけれども、井坂委員が予算委員会でお示しになったパネル、今ここに、手元にありますけれども、そこには、政府提案の新ルールを過去十年間のデータに当てはめてみるととお書きになっているので、私どもはそのとおりやって、先ほどお示しをした、二%差があるということになっているわけでございます。

 今、三%カットされて将来世代の年金が七%アップするのはおかしいのではないかということでございますが、今回の試算は、繰り返し申し上げますけれども、民進党からのお求めに応じて実施をして、現実には、平成二十六年度までは本来よりも高い特例水準の年金額が支給されているわけですから、今回の改定ルール見直しによる年金額の減額というのは起こらないということであります。

 その上で申し上げれば、現行の年金制度は、いわば、先ほど来もう何度も申し上げているように、世代間の分かち合いという仕組みでありますので、マクロ経済スライドによる、おおむね百年間で出と入りがバランスする、収支が均衡するということになっているわけでありまして、足元の年金水準が低下すれば将来の年金水準が上昇するというのは、これは井坂委員もお認めになることだろうというふうに思います。

 特に、マクロ経済スライドそのものは、当時の岡田副総理も、今になって考えてみれば非常に意味のある制度だというふうにおっしゃっていた、将来への責任を果たそうというお気持ちがよくあらわれているお言葉だったと思います。

 今回の試算では、足元の低下に対して、マクロ経済スライドによる調整期間が、さっきも田村委員からも出ましたが、六年間短くなるということでお答えを申し上げておりますけれども、将来が七%になぜなるのかということでありますが、一つは、足元の給付水準が低下することにより生じた積立金には運用収入が発生をするわけでありますから、下がった分は当然将来の給付に充てられるということであります。

 もう一つ大事なことは、二〇四〇年代以降は人口の減少に伴って受給者数自体も減少するということ、これが人口問題の、裏返すと深刻なことでもあるわけですけれども、この問題をどう乗り越えるかということでマクロ経済スライドがあるわけですが、受給者の数を見通すと、二一一〇年、お示しをいただいておりますけれども、この受給者数は現在の半分程度になる。どうなるかというと、二〇一六年は三千二百六十万人、二〇四〇年度は三千六百二十万人、これは団塊の世代なんかがふえますから。ところが、二〇八〇年度になりますと二千五百二十万人にぐっと減り、さらに、二一一〇年度になりますと、今申し上げた一千六百四十万人、ここまで受給者数が減っているわけでございます。

 したがって、今お話があった七%は高過ぎないかということでありますけれども、今のお話のとおり、受給者数が半分程度にまで減るということも含めて同じ、減った分とふえる分とを比べてみれば、そういうことになるという計算でございます。

井坂委員 通告どおりお聞きしたのに、その御答弁で本当に大丈夫かなというふうに思いますけれども、政府試算が通って、三%減ったら七%ふえるというようなことが本当に起こるんですかということをお伺いしています。

 実は、これは、政府試算が二〇〇七年から二〇四〇年まで三%カットをしたらということで、今そういう御説明をいただいたんですが、一方で、この年金カット法案では実際にどうなるのかということを議論したいというふうに思います。

 資料の二をごらんいただきたいと思います。

 政府試算はあくまで、仮に二〇〇七年から年金カットルールが発動していたらという前提ですから、今から年金カット法案が成立したらどうなるかという試算とは全く異なる数字になっています。幾つも違いは生じるわけでありますが、やはり最大の違いは、年金カットの期間が非常に短くなるということであります。年金カット法案が発動するのは二〇二一年からですから、そこから最速で十年かけて高齢者の年金が三%までカットされる、こういうことになった場合でも、将来世代の年金は当然、この点線がもともとの政府試算のイメージでありますが、実際、年金カット法案成立後に起こることは、こういうことであります。これは、将来世代の年金は七%アップには遠く及ばないということになります。

 改めてお伺いをいたしますが、年金カット法案が通ると、三%高齢者が減ったら将来世代は七%ふえる、政府試算を百歩譲って是とした上でも、あるいはケースEという経済成長を是とした上でも、そういうことには私はならないと思いますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは何か自動的に、いかなる場合にも年金がカットされるかのようなおっしゃり方をされますけれども、何度も申し上げているように、今まで、実質も名目も賃金が下がるというケースについては、最大、チャラというか変わらない、そういうルールに、スライドには毎年当てはめられてきたわけでありますけれども、それは、さっきから申し上げているように、デフレ経済が続いてしまった場合、そういう場合については、民主党政権のときも、万が一のためにやはりこれは備えておかないといけないなということで宿題が書かれていたわけですね。

 したがって、そもそも、今ここにお示しをいただいている、ここのような形がずっと続くということ自体が、これは無責任な政権でない限りはあり得ないお話でございまして、いかに経済政策とセットの話かということを、この社会保障政策、なかんずく年金制度についてはお考えをいただかないと、物価と賃金が大きく影響する制度でございますので、責任ある政権は当然のことながら物価も賃金も上がり続けるようにする、そうすれば年金は下がるということはないということになるわけでありますので、いかに経済政策とセットでこの年金の制度を考えるかということが大事なんだろうというふうに思います。

 したがって、ここに今お書きをいただいている大前提として、平成三十三年度からすぐに減額するかのような前提を立てること自体が非現実であり、おかしいのではないか。

 そして、仮に平成三十三年度以降に賃金が下がるような事態が起きた場合には、今回の見直しを行っていかないと、先ほど来繰り返し申し上げているように、将来世代の代替率が予定よりもどんと下がってしまう、そして調整期間が長くなってしまうということでありますので、先ほど来申し上げているように、やはり改革は先送りをしないということで将来世代に責任を果たしていくことが大事だということに私たちは思いをいたさなければいけないのではないかというふうに思います。

井坂委員 ちょっと勘違いがあるのかもしれないですが、この三%カットというのは、私は別に、何か二〇二一年から二〇四〇年まで、ずっと三%カットの経済が続くという図では全然ないんですよ。これは、マクロ経済スライドと似たような仕組みですが、一度三%カットまで行ってしまったら、経済状態がよくなっても後はずっとその開きが続くのでこの赤い矢印が並ぶ、こういうことなんです。だから、これはもっと後になればなるほどカット総額は減りますから、当然、将来世代の矢印はもっと低くなってしまうということですよ。

 聞いたことにまず、ちょっともう一度お答えをいただきたいのが、政府試算は、これは二〇〇七年からもう既にカットが始まっています、そういう前提で試算をしておられるので、二〇〇七年から二〇四〇年までこういうカットの総額が結構な数たまって、それがケースEで複利で運用されて、人口も将来の方が少し少ないので、残りの七十年間のアップ財源になるんです、こういうことなんですけれども、それはしかし、政府試算は二〇〇七年からすごい長い間カットしてようやくそうなる話。一方で、実際、この年金カット法案でどうなるかというと、最速で二〇二一年からカットが始まったってせいぜいこの程度じゃないですかということなんです。もう一度お答えいただきたいと思います。

高鳥委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長代理 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 先ほど来申し上げているように、もともとこの試算は、井坂議員が平成十七年からルールを当てはめたらということで計算をして、そこからいけば二%差が出てきますよということを申し上げたわけですね。それに見合う将来世代の代替率のアップがどうなるのかといえば七%だということを申し上げたわけで、今御指摘の、二〇二一年、平成三十三年、このときからやったときは、調整期間が短くなるという意味において、ここの上がり幅が小さくなるということは、それはそのとおりだというふうに思います。

井坂委員 事実を端的にお答えいただいたというふうに思います。

 ですから、政府試算は、三パー減るだけ、七パーふえるのか。これはまたいろいろもっと細かい議論をしたいんですけれども、少なくとも、政府試算はあくまでも二〇〇七年からカットしていたらという試算ですから、もちろんそういうことなので、実際に、では年金カット法案で、何か三%減って将来七%ふえるということは絶対起きないんですよ、これは。それは今お答えいただいたとおりなので……(発言する者あり)いや、それは今お答えいただいたとおり、そうなんですよ。

 ですから、何か年金カット法案が通ったら俺ら七%ふえるのかと思っておられる方が物すごく多いので、これはもう全然、年金カット法案が通ったって、三%減って七%ふえるなどということはもちろんないですから。これはそれで間違いないですね。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 いささか驚いているわけでありますけれども、もともと五・二というのをおっしゃったのは井坂議員でありますので、それを、新しいルールを仮に機械的に当てはめてみたらどうだというので、平成十七年から当てはめてみて二%の差があって、五・二じゃないよ、三ですね、それに見合う、六年間短くなりはしますが、そこで、言ってみれば節約できる面積、積分した部分に見合う将来世代の代替率の回復がどれだけあるのかということを七%とお示ししているわけです。

 これは、代替率は、当然のことながら人口がどうなっていくのか、つまり受給人数がどうなるのかということが大きく影響してくることはもう御案内のとおりで、先ほどその数字を申し上げたところでありますので、三%カットというふうにまたこれはお書きになっていますけれども、こんなことが起きるなんてことは全く我々は想定もしていませんし、何度も申し上げているように、物価も賃金も上がれば年金は下がることはないということでありますので、国民の皆様方にむしろ不安を与えているのは皆さん方じゃないですか。そこのところをよく考えていただけたらというふうに思います。

井坂委員 ちょっと丁寧に議論したいと思いますが、何か、三%必ず減ると別に私もここで書いているつもりはないんです。三%必ず減るじゃなくて、私が今回問題にしているのは、政府試算では何か三%減ったらその財源で将来七%ふえるみたいなことをおっしゃっているんですが、そういう関係性は、この年金カット法案成立後も、どの時代でも起こらないんですよ。そこは本当にそうなんです。

 だから別に、必ず三%下がるとか、必ず七%上がるとか、そういう図じゃなくて、二〇二一年以降しかもちろんこういうことは起こらないわけで、仮に起こったとしたって、仮に三%下がったとしたって七%ふえるなんということは全くありませんよと。それはもう事実で、さっきも御答弁いただいたとおりですが、そういうことなんです。

 だから、おっしゃるように、どの時点でというのは死活的に大事で、しかも要は面積比較ですから、基本的には。だから、政府試算は、非常に大きな面積をとった結果ああいうことだというふうにおっしゃっているんですが、年金カット法案の将来アップを真面目にシミュレーションしようと思えば、少なくともこういうことになるわけであります。

 そこは本当に、何か後ろでもうなずいておられますけれども、要は、何か年金カット法案で、将来万が一、三%減ったときは、むしろ将来世代は七%ふえるんだみたいなのは完全な誤解を与えておりますので、そこは誤解のないようにさせていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 むしろ誤解をお与えになっているのは井坂委員の方ではないかと言いたくなるぐらい、大事な大事な年金の問題でありますので、冷静に御議論いただきたいというふうに私の方からもお願いをしたいと思います。

 言ってみれば、恒等式みたいなものであって、先ほど田村委員からもお話がありましたように、たまたま、たまたまですよ、実質賃金も名目賃金もマイナスだという事態、めったにないことではありましょうけれども、どうも平成二十一年の財政検証以降やってみると、こういうことには備えないといかぬということになって、民主党政権も一体改革の閣議決定の中で、デフレ下でどうやってこのマクロ経済スライドをうまくマネージしていけるかということを考えなければいけないという宿題を明示された。これはまさに民主党政権が、あの当時は将来世代のことを考えて、今だけではないということをおあらわしになっているんだろうなというふうに思います。

 したがって、今の三%と七%はおかしいというふうにおっしゃいますが、これはもう機械的に計算してもこうなるということを申し上げているわけで、それはさっき申し上げたように、大きなところは、これは面積同士、減る面積と上がる面積と、これは同じですから。

 それは何を意味しているかといえば、あとは、代替率が上がるか下がるかというのは受給権者がどれだけふえるか減るかということで、これは減るわけですから、二一一〇年には半分になっちゃうわけですから、当然、代替率は上がるわけで、それが三と七がバランスしないといっても、それは人口が動くという大事なファクターを加味していただければ、この問題はすっとわかることではないかというふうに思っております。

井坂委員 三と七がバランスしないというのは、年金カット法案の成立後は、もうこういういわゆる三減って七ふえるようなバランス関係では全くないですよと。そのことはさっきおっしゃったとおりだと思いますよ。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、恒等式ですから、減った面積とふえる面積は同じだと。出と入りは一緒だということを田村委員がしつこく言っていただきました。まさにそのことでありますので、三と七という組み合わせかどうかはそれは別として、今回の、万が一に備えてのことが起きたときに得られる減る面積と、将来世代が得られるふえる面積は同じだということでありますから、三と七というのにこだわる理由は全くないわけであって、どういう数字になるかは別にして、大事なことは、お互いの世代が分かち合ってこの年金制度をもつようにしよう、そのかわり低年金の方々には配慮をして、二十五年を十年に期間を短縮するということ。それから、給付金を、これは三十一年の四月から、消費税を上げたことを前提にやるわけでありますから、そういうところへも配慮し、なおかつ、介護保険とかいろいろなところでの社会保障全体で、やはり弱い立場の方々にはしっかりとサポートをしていく。

 そして、何よりも大前提は、やはり経済を強くすることによって物価も賃金も健全な形で上がり続けるようにしていくということが一番大事なので、その賃金の上昇ということを民主党さん以上に、私たち自民党や公明党で、あるいは安倍内閣で申し上げているわけでありますので、そういうトータルでやはり物を考えていただいて、御議論を深めていただければありがたいなというふうに思います。

井坂委員 最終的には、本当に面積比較で、もう一度このパネルを見ていただきたいんですけれども、要は、年金カット法案が通った後に、仮に三パーいつ減ったって七%ふえるようなことはないというのは、これは本当に事実ですから……(発言する者あり)いやいや、数理計算上やったってそうなんですよ。(発言する者あり)いやいや、それは本当に……(発言する者あり)では、答弁お願いします。

塩崎国務大臣 将来年金確保法案によれば、これは分かち合いで、今の年金をいただいていらっしゃる皆さん方に少し我慢していただくことが、将来必ず、将来年金をいただくであろう今現役で頑張っていらっしゃる方々の年金が、代替率が回復するというか上がるということは、必ずこれはセットで起きることですから、三%と七%がマイナスとプラスで起きないんだというようなことではなくて、数字はともかく、万が一のことが起きても、このルールがあれば、必ず分かち合いで、今の世代に少し我慢していただいた分は、将来の方々の年金の代替率はプラスになるということを、これは明確に申し上げておかなければいけないというふうに思います。

井坂委員 数字はともかくと繰り返しおっしゃっているのは正しい答弁だというふうに思いますけれども、要は、今回のシミュレーションは数字の話ですから、絶対三パー減るとか、私はそう言っているんじゃなくて、仮に三パー減ったって七パーふえるようなことはこの年金カット法案が成立してもないですよ、これはもう本当にそのとおりですから、それはどんな前提を置いたってそういうことはないですから、それを、数字はともかくで、あとは何か観念論だけで済まされたら、もう本当に仕方ないなという思いがあるんですけれども。それは、将来世代のためとか、経済を何かよくしたいとか、その心意気は大臣おっしゃいますけれども、しかし、シミュレーションですからね。

 結局、この年金カット法案が成立して、別に三パーでも五パーでもいいですけれども、一定のカットが生じたときに、では一体どれだけふえるのかというのは、多分政府の方はまだわからないというふうに思いますよ。(発言する者あり)

 いや、それはだって、前提の置き方、もっと言えば、マクロ経済スライドのときは、そういう真面目なシミュレーションを政府はやっているんですよ。マクロ経済スライドの、今回もう一つ入っている強化、キャリーオーバーと言われるときは、ちゃんと将来に波をつくって、経済前提を置いて、一定の前提を置いたときにはこれだけカットがあるけれども、将来これだけふえますよという試算をやっているんですよ。それは普通にできるので、それをやっていただきたいというふうに思います。

丹羽委員長 井坂委員、持ち時間を経過いたしておりますので、質疑を終局してください。

井坂委員 これはまた実際、もし法案の審議があれば、このシミュレーションの問題、それから試算の問題、しっかり詰めてやっていきたいというふうに思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございます。

丹羽委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民進党の柚木道義でございます。

 質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 ただ、冒頭、私は野党の筆頭理事という立場で、審議の段取りを与党筆頭の田村さんともこの間させていただいてきた中で、これは委員長にも改めて本当に強く抗議を申し上げなくてはなりません。

 そもそも、大臣所信前の理事懇談会からきょうのこの審議も含めて、全てが職権です。強行なんですよ。なぜこんなことになっているんですか。

 そもそも、今の議論も含めて、試算がまずなかなか出てこない。そして、出てきても、私たちが求めた前提条件とは、それぞれ、まさに減り方は過小評価、ふえ方は過大評価と受けとめざるを得ないような表現ぶりで出てきたものの、撤回と出し直し、これも出てこない。そして、きわめつけは、きょう何で一時間もおくれているんですか、皆さん。与党が職権で強行して、与党が一時間おくれさせてくれと、こんなのは前代未聞ですよ。

 まさに、私たちは、今、塩崎大臣が将来年金確保法という言い方をしましたけれども、何でそういう言い方ができるか。無年金者の救済法案が入っているからですよ。この無年金者の救済法案を、年金カット法案とは切り分けて先行審議して、一日も早く成立させることを求めて、この審議の場面に入る前に切り離していただきたいということを再三再四言ってきて、そして、野党間でもその努力を重ねてきたんですよ。そして、きょうまでに相整うべく努力をされるというから、この間の強行職権立ても、私たち、欠席もせずに出てきているんですよ。

 ところが、けさになって、理事会が始まる数分前に、突然一時間おくらせてくれと。どうしてですかと聞いたら、何と、野党の中で今本当に維新さんが努力をしていただいて、無年金者救済法案が分離して、切り離して先行審議ができるように努力をいただいているんですよ。その手続が、まさに与党さんが、十分な意思疎通ができていない中で、一時間おくらせてくれというのは、これは本当に、今TPPも、山本大臣のあの強行採決発言で大変な紛糾をしている状態。国会全体を、やはり巨大与党のおごり、緩み、私はこの厚生労働委員会にもあらわれていると言わざるを得ません。

 これはぜひ、塩崎大臣、私は、この審議の場は大事にしたいと思いますよ。しかし、こういう民主主義はプロセスが本当に生命線ですよね。巨大与党であっても、野党の意見をしっかり聞く場を確保する。

 そして、仮にですよ、仮にこの審議が進んでいけば、まさに今、野党と与党とで、場内協議で、この大臣所信の質疑の後に、では法案審議はどうしましょうか、こういうことが、当然協議が今始まっている中で、私は、本当に与党との協議を信用してこの先進めていいのかなという不安があるんです。

 ぜひ、塩崎大臣、まずお約束いただけませんか。この大臣所信の暁に法案の趣旨説明等に入っていったときに、当然のことながら、塩崎大臣も安倍総理も、今回、年金カット法案と無年金者救済法案をセットで一括審議したいと並々ならぬ意欲を予算委員会等で示してこられましたが、我々現場は、切り離して、そして無年金者救済法案を先行審議して、一日も早く成立をさせる努力をしておりますので、そのことに対してぜひ御理解をいただきたい。

 お示しいただけますか、その御見解を。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、国会のことは国会が決めるというのが大原則でございますので、私どもは国会運営について右左を言うべき立場には全くないというふうに思います。

 ただ、法案を提出している立場からすれば、先ほど申し上げたように、これは平成二十四年の一体改革の中で、いずれも年金を確保するということをどう強化していくかという機能強化のことであり、特にあらゆる事態に備えていこうということでございますので、二つの法律の中にはやはり共通項が強くあるということは、私どもは強くこれは申し上げておきたいと思っております。

 つまり、よりよい暮らし実現のために年金受給をより確実にするということにおいては、両方とも共通の要素としてあるのではないかということは思っておりますので、それをもって私ども、総理も私も、御一緒に御議論をいただくと非常に有機的に議論が進むのではないかということを申し上げてきたわけでありますが、いずれにしても、国会のことは国会でお決めをいただくということでありますので、私どもはそれに従うわけでございます。

柚木委員 これは、私は塩崎大臣にぜひお約束をいただきたいんですよ。

 我々は、年金カット法案よりも先に無年金者救済、納付期間を二十五年から十年に短縮して、六十四万人の無年金者の方を一日も早く救済させていただくこの法案を、先行審議をして成立させたい。

 その先に、では、年金カット法案が審議入りをしてきたときに、山本農水大臣は、強行採決をするのは議運委員長が決めるからこのパーティーに来ているんだというとんでもない発言をされましたが、年金カット法案はこの厚生労働委員会では絶対に強行採決しない、塩崎大臣、約束してください。

塩崎国務大臣 私は、法案審議をお願いしている立場でございますので、あとは全て皆様方にお願いを申し上げるだけで、お任せをいたしたいと思います。

柚木委員 こんなことを確認しなきゃいけないのも、山本農水大臣が、まさに国会に法案審議をお願いして、本当にこれから重要な局面を迎える中で、強行採決を決めるのは議運委員長だ、だからそのパーティーに来ているなんて言われるから、自民党、安倍政権の閣僚はみんなそういう思いでやっているのか心配になるんですよ。本気で心配しているんですよ。

 私がさらに心配なのは、野党、与党筆頭で今協議しているんですよ、無年金者救済法案を年金カット法案と分離、先行審議しようと。その今このさなかにあって、私は本当にこれは耳を疑うんですけれども、同じ与党内の中で、国会対策委員会あるいは議院運営委員会、それぞれが委員会や本会議の設定を調整、協議しているんですよ。

 私、この現場で、無年金者救済法案を年金カット法案と切り離して、先行審議、成立を一生懸命調整しているのに、同じ与党内で議会運営の方の担当の方が、いやいや、年金カット法案と無年金者救済法案を分離するのはいいけれども、年金カット法案の方を先に審議したいということを言っているんですよ。私、これはびっくりしましたよ。本当に現場で協議していて意味があるのかなと不安になっているんですよ。

 しかも、しかもですよ、皆さん、私は、これは本当に、国対、議運、安倍総理官邸と調整しながら進めているというその中で、何で議運の人が、では年金カット法案の方を先に議論しようというようなことを実際おっしゃるんですか。現場と言っていることが違うじゃないですか。

 塩崎大臣、安倍総理あるいは塩崎大臣は、政府のお立場で年金カット法案の方を先に強行審議、成立させたい、そういう議論はあるんですか。確認させてください。

塩崎国務大臣 そもそも、私どもは年金カット法案というのは出しておりませんので、何のことをしたというのはよくわかりませんが、年金に関連する法案として私どもがお出しをしている二つについては、ぜひ皆様方にはしっかりと、その連携についても、そしてまたつながりが深いということも御理解をいただいた上で御審議をいただければと思いますけれども、どういうふうに審議をされるかは、これは国会でお決めをいただくということだと思います。

柚木委員 これは何しろ、きょうも強行開会して、一時間も開会がずれるような調整をいただいているわけですから、私は、この審議が最終的にきょう終わるときに、無年金者救済法案がちゃんと年金カット法案と分離をして、本当に先行して審議をして成立をさせられる状況にあるのかどうなのか、本当に不安な思いで今この場に立っておりますので、もちろん、与党の皆さんはもとより、政府は当然官邸と調整しながら法案を出すことをやっているわけですから、私は本当に、きょう終わるときに、本当に頼みますよ、違うじゃないかと。

 頼みますよ、本当に。政府の側にも、今こういう状況があるということは認識をしていただきたいと思います。

 それで、試算のことも、井坂委員が示した試算に対して、これは最初に政府が出してきたペーパー、資料一枚目ですよね、きょう議論になっている。

 それで、私も改めて伺いますけれども、それぞれ、これは報道もつけていますよ。大体どこでも同じような報道で、わかりやすくテレビのを使いましたが、三枚目にこう書いているんですよね。年金、新ルールでの試算公表、そして、ルール、現役世代の将来の水準を現在より七%、一人当たり五千円アップと。この政府が出してきた試算ペーパーを見たら、どの社もこう書きますよ。

 それで、まさに井坂さんが先ほど議論されていた、私は、もちろん減る方も、先ほどの議論の中で、過小だと。つまり、これは可処分所得割合の〇・二%の影響を外している結果、五・二%より三%になる、そういう議論を私たちはこの間年金局とも毎日のようにさせていただいてきたんですが、私がむしろ不可思議なのは、年金カット法案で七%、一人当たり五千円アップ、年金カット法案が発動したら七%で五千円アップ、これは本当ですか。イエスかノーでお答えください。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、今回の試算は、井坂委員からのお求め、民進党からのお求めに応じて実施をしたものでございます。

 そもそも、現実には、平成二十六年度までは、さっき申し上げたとおり、特例水準というのがあって年金額が支給されていたわけでありますので、今回の改定ルール見直しによる年金額の減額というのは起きないわけであります。

 しかし、その上で、現行の年金制度は、いわば世代間の分かち合いの仕組みであって、マクロ経済スライドにより、おおむね百年で収支の均衡を図ることとしているために、年金の足元の代替率の水準が低下をすれば将来の年金水準が上昇するのは、これは当然でございますので、今回の試算で、足元の三%の低下に対して、マクロ経済スライドによる調整期間が六年短くなったことによって、将来は人口が減る、つまり年金受給者が百年近く先には半分になるわけですから、この代替率は七%上昇するということになるわけであります。これは、さっき申し上げたように、減る面積とふえる面積とが同じだということでありますから、そこのところをよくお考えいただきたいというふうに思うわけでございます。

柚木委員 大臣、試算でじゃなくて、私が聞いていることに、もう一遍、シンプルにお答えください。

 年金カット法案で、七%、五千円一人当たりアップは本当ですか、イエスかノーで。この報道は、たまたま私があるテレビ局のものを使っていますけれども、どの社も共通していますよ、同じ表現ですよ。年金カット法案、新ルール試算で、これが影響額として、現役世代の将来水準は現在より七%、一人当たり五千円アップと、どの社も共通して、まさに、政府が出されたこの試算ペーパーの丸の五つ目のところの行のとおり報道しているんですよ。

 ですから、確認したいんですよ。年金カット法案が施行した影響で、七%、五千円一人当たりアップするのはイエスかノーか。イエスかノーか答えてください。この報道が間違っているんですか。イエスかノーか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げているように、年金カット法案という法案は出しておりませんで、将来の年金を確保するための法案は出しております。そのことをよく御理解いただきたいと思います。

 そもそも、この七%、五千円というのが出てきたのは、井坂議員が、機械的に新しいルール、これは平成三十三年度から適用されますけれども、そのルールを当てはめてみろ、その数字を出してみろというのでお出しをしたということでございますので、それ以下でも以上でもないということでございます。

柚木委員 井坂さんのせいにするような発言は、本当におやめいただきたいんですよ。政府が出してきた試算で、かつ、この表現、この丸の五つ目、私は本当にこれは作為的だと思いますよ。

 これは、過去に十年、この年金カットルールが実施されたときの試算を書いて、しかも、こちらが要求もしていないのに、ラスト二行で、「一方、基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間は六年間短縮され、現役世代の将来の基礎年金の水準は七%程度(基礎年金(一人当たり)五千円)上昇する」と、こんなこと、要求もしていないのに何でこんな試算を出してくるんですか。

 大臣、この七%、五千円アップの根拠は、財政検証E、資料の二枚目につけていますよ。これは、ごらんのとおり、全要素生産性一%、物価上昇率一・二%、賃金上昇率が一・三%、つまり、未来永劫、実質賃金上昇率が物価上昇率を上回り続けていくという、はっきり言ってあり得ない財政検証ケースをもとに検証されて出てきた数字ですよ。

 塩崎大臣、この経済前提で、年金カット法案で七%、五千円年金アップがあり得るんですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、お出しをしたこの私どもの試算の、アンダーラインを先生は引いていらっしゃいますが、その手前に「一方、」とありますね。その「一方、」の前のところにも、ずっとアンダーラインを引いていただくことが大事だというふうに思うんですね。

 つまり、「今の高齢者の年金の水準は約十年間の経済状況の累積の影響で三%低下していたと見込まれる一方、基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間は六年間短縮され、現役世代の将来の基礎年金の水準は七%程度上昇するという結果になった。」これが、機械的にやれという御指示をいただいた試算の結果であるわけでございます。

 今、経済前提のお話がございました。平成二十六年財政検証における経済前提は、平成三十五年度までは、内閣府が行った中長期の経済財政に関する試算、これは平成二十六年一月二十日に出ておりますが、に準拠をして設定しております。

 そして、平成三十六年度以降は、内閣府試算を参考にしつつ、経済、金融の専門家による検討を経て八通りのケースというものを設定するということで、今お配りをいただいているケースAからケースHまであるわけでありますけれども、そういうものを設定するなど、中長期的な視点に立って置かれている前提でございます。

 これらは、社会保障審議会年金部会のもとに設置した、経済、金融の専門家で構成される専門委員会において客観的な議論を経て設定されたものでありまして、妥当な前提であると考えているところでございます。

 何よりも重要なことは、先ほど来申し上げているとおり、強い経済をつくっていくということが大事でございまして、そのため、デフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組む、そのことが、年金が今回御提起申し上げているようなケースにならないでふえていくように努力をするというのが、時の政権がいつも担っていかなきゃいけない未来への責任だというふうに思います。

柚木委員 長々と御答弁されるんですけれども、そもそも私、きのうも年金局とやりとりして、提案をしたんですよ。本当に政府が現実的で責任ある議論をするんだったら、こっちの試算に文句つける前に出してきてくださいよ、そういう財政検証に基づく試算を。

 私は提案しましたよ。そもそも、こういう財政検証、ケースE、これは資料二枚目につけていますけれども、これは、実質賃金上昇率が物価上昇率をずっと上回っていく状況で、そもそも年金カット法案、新ルール、発動しないんですから、何でこれをわざわざ、発動しないのに、一方で、一人当たり五千円、七%上がる、上昇した結果になったという、そもそもこの表現ぶり自体が私は非常にこれは確信犯じゃないかと思いますよ。

 意図的に、減少のところだけじゃなしに、基礎年金だけは上昇の金額を出して、厚生年金については米印二つ目にちっちゃく三%、七千円減、増額は書いていませんよ。わざわざ「一方、」以下で、七%、一人当たり五千円基礎年金が上がると何で書く必要があるんですか。こちらは要求もしていませんよ。

 私は、ちょっとこれは聞こえてくる話で、えっと思ったのは、当初私たちが試算要求していて、厚生労働省の方、本当に土日も徹して一生懸命試算をつくられて、そういう違うグラフも含めてしっかりと、面積の話がさっきありました、わかりやすいものをつくったら、下がる方が三%ダウン、いや、上がる方はもっと上がらなきゃやはり説明しづらいだろうと、それでこの七%という数字。えっ、三%、二千円減るけれども、将来七%、五千円もふえるのと。そうしたら、みんな、いいよねとそれは思いますよね、そういう報道が実際出ているんですから、この三枚目に。そういうような形に土日を挟んでこの提出資料が変遷をしていった、こういう話が聞こえてきて、それが本当だったら私は本当に唖然としますよ。

 何でわざわざ「一方、」以下を書く必要があるんですか。書かなくていいじゃないですか、こんなことは起こり得ないんですから、大臣。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、一つは、今回お示しをして御提案申し上げているケースというのは、実質賃金も名目賃金も下がるような、余り起きてほしくない、そしてまた、起きる可能性も頑張れば少ないはずでありますけれども、備えをしておかなきゃいけないというのは旧民主党政権時代の一体改革にも明確に示唆をされていることでありますから、私たちは粛々と未来への責任を果たすためにこれをやっているわけであります。

 この後半の部分を書くなということでありますけれども、むしろこれは、それではマクロ経済スライドというのは何なんだということになって、どっちか、減るだけ、ふえるだけをやるかといえば、そうじゃなくて、先ほど来申し上げているように恒等式でありますから、減った分の面積とふえる分の面積は同じであって、入ってくるものと出ていくものは全く同じでなければバランスしないのでありまして、そのことを考えてみれば、機械的に計算しろと言われても、やはりそれは、減った分は将来の年金に必ず反映をされていくための賃金スライドということでありますので、それは出さないというのは全くバランスがとれないお話でありますし、仕組みそのものを否定しているような話になってしまうということだと思います。

柚木委員 そこまでおっしゃるんなら、この「一方、」以下の表現、私は不要だと思いますが、書くのであれば、まさに米印で、いつも言いづらいことは米印に書きますけれども、ただし書きを書いたらいいじゃないですか。ただし、この財政検証ケースEの場合には今回の年金カット法案は発動されませんと。年金カット新ルールは発動しないとただし書きで書いてくださいよ。それで出し直してくださいよ。違うんですか。発動するんですか。ちゃんと正確に書いてください。

塩崎国務大臣 これは、また井坂委員のせいにすると言われるかもわかりませんが、井坂議員の求め、民進党の求めでもありましたが、に応じて機械的に計算をしたわけでございまして、この書いていることは、先ほど申し上げたとおり、マクロ経済スライドそのもののメカニズムを単に御説明申し上げているということでありますので、そこのところは片一方だけ書くということはあり得ない話であります。

 だからこそ、将来世代の年金を確保するために、分かち合いの精神で、今の年金をいただいていらっしゃる世代の皆様方に少し我慢していただくということをお願いする事態があった場合の備えをこういうルールとしてお示しをしているわけでありますので、そういうことにならないようにしていくのが、政権としての責任ある行動だというふうに思います。

柚木委員 いや、試算は、それは井坂さんが、一定の前提を置かなきゃつくれないでしょうということで、ある意味、助け船を出してつくった試算ですよ。

 それを、書きぶりは政府で書けるんですから、だったら、まさにただし書きに、この財政検証ケースEの場合は年金カット法案は発動しない、ただし、機械的に前提を置いた場合にはこうなると書かないと、三枚目のような報道になって、この年金カット法案が発動したら、あたかも将来、最初は三%、二千円減るけれども、将来は七%、五千円ふえるんだ、ラッキーとなっちゃうんですよ。書きぶりは政府で調整できるんですから、責任持ってちゃんとただし書きを書いて、正しい前提で議論ができるように出し直してほしい。

 それで、きのうも年金局とやりとりしたんですけれども、私は、まさに現実的な試算で、あり得ない試算じゃなくて、先ほどから与党も答弁も、あり得ない試算じゃなくて、現実的に起こり得る試算に基づいて責任ある年金の議論をしたいんですよ。

 だから、財政検証ケース、AからHまでありますけれども、私は大臣にしか聞いていませんから。いいですか、私、試算は出し直してほしいんですけれども、この十年間、六回も実際に年金カット法案が発動する経済状況が起こっていますよ。ですから、こんな実質賃金上昇率が、AからHまで、どれも物価上昇を上回るような非現実的な前提ではなくて、この新カットルールを出すのであれば、例えば実質賃金上昇率がマイナスになるような経済前提のバリエーションもケースに置いて、そしてその上でこの試算を出し直してきて、それから年金カット法案の審議入りをするべきじゃないですか。大臣、いかがですか。大臣にしか聞いていませんよ。

塩崎国務大臣 試算の三つ目に、「ただし、この措置は、セーフティネットとして低年金・低所得の方に月額最大五千円を支給する福祉的給付を実施」、これは平成三十一年の十月でありますが、「した後の、平成三十三年度から実施することとしている。したがって、過去の経済動向が今回の見直し後のルールによる額改定に反映されることはない。」ということで、これは、前提を井坂議員からいただいた上で、それを機械的に十七年度から適用するということを申し上げているわけであります。

 今回の額改定ルールの見直しは、賃金が物価よりも低下するという望ましくない経済状態となった場合でも所得代替率が上昇してしまわないように備えるということ、そのことによって将来世代の年金水準をしっかりと確保していく、そのための法案でありますから、私は何度も、将来世代年金確保法案だ、こう申し上げているわけであります。

 今回の試算の前提としております平成二十六年財政検証では、デフレから脱却をし、長期的には物価、賃金ともにプラスとなる経済前提を想定しているわけであって、今回の改正は、あらゆる事態に備えて見直しを行うものではありますけれども、安倍政権としては、何よりも重要なことは、何度も申し上げているとおり、強い経済をつくっていくということであって、そのためにデフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力を出すということで我々は取り組んでいるわけでありますので、御提案のような試算を行うことは考えてございません。

柚木委員 そもそも、財政検証前提までオーダーしていませんからね、井坂さんは。

 私は、試算も、今大臣は繰り返し、起きてほしくない、しかし、そういう経済状況が起こったときの備えだとおっしゃるんだったら、起きてほしくない場合の試算も備えたらいいじゃないですか。そういう試算も出してください、十年間のうちに六回も発動するような状況が起こっているんですから。

 では、私は、何でケースAからHまで、この経済前提が、常に賃金上昇率が物価上昇を上回ってプラスの状態で出すんですかと年金局に聞いても、納得のいく答えが出てこなくて。私は思うんですよ。実際に、実質賃金上昇率がマイナスなケースも含めて、幾つかバリエーションをつければいいと思いますよ、井坂さんのオーダーにけちつける前に。だったら、こういう前提で出したら、これがリアルにカット法案が発動された、まさに起きてほしくない備えがこういう試算の場合には起こるんだということをちゃんと示した上で、人に文句を言うべきじゃないですか。

 大臣、ちゃんと出してください、試算を。

塩崎国務大臣 先ほど来申し上げているように、年金制度も社会保障制度もそうですけれども、やはり経済政策などとセットで行われるものであって、そのどこか一部を切り取ってきて、下がる下がるとかいうことだけ言って、全体の仕組みすらも否定するようなことは、余り、これは国民に対しては不安を招くだけだろうというふうに思っているわけであります。

 先ほど田村委員からもお話があったとおり、旧民主党のときの案でも賃金スライドでありますから、皆さん方もこの検証を、ではシミュレーションをお出しいただいているかといったら、そんなものは私は見た記憶がございませんので、それは、そういうことにならないようにしていくけれども、あらゆるケースに備えるということが大事なのであって、最大限の努力をして、実質も名目も賃金が下がるようなことがないようにしていくというのが大事なことだというふうに思います。

柚木委員 ですから、ないことが起こり得るから、今回、年金カット法案を成立させようとしているんでしょう。だったら、そういう不都合な現実が起こったときの試算もちゃんと出して、その上で審議するのが筋じゃないんですか。

 それから、ちょっと時間がなくなってあれで、最後、七ページ目の資料にもつけているんですけれども、我々は、もちろん、世代間公平は重要ですから、そのことも、今まさに井坂さんがヘッドになって、我々の将来の年金制度、ビジョンを今協議しています、ちゃんとお示しをします。我々は、大前提として、最低保障機能の強化、世代間公平、そして財源も、井坂さんがヘッドになって今議論して、ちゃんとお示ししますよ。

 そして、まず、私が本当に大丈夫かなと思うのは、先ほどの試算もそうなんですけれども、ここに、現在議論されている、これは医療、介護にしましたけれども、主な負担増メニュー、これはこんなにあるんですよ。与党の皆さんも御存じですか。

 これは本当に、医療も、低所得者の方々の医療保険料の軽減特例もやめる。七十歳以上の高額療養費の負担限度額も見直す。入院時の光熱水費の相当額に係る患者負担も上がる。受診時定額負担、病院に行ったら問答無用に自己負担分、診療以外にお金が取られる。こんなことになったら病院に行けなくなりますよ。

 介護はどうなんですか、介護は。軽度者の方に対する生活援助サービスを切り捨てる。軽度者に対する福祉用具貸与のあり方、これも利用できなくなりかねない。

 そして、では、お金がある人は大丈夫かというと、そうじゃないですよ。総報酬割で負担もお願いする。ですから、今回だって、まさに厚生年金の影響額だって書くべきなんですよ、しっかりと。下がるだけだし、上がるんですか、本当にこれは。上がらないから書いていないんじゃないんですか。

 そして、高額の介護サービス制度の見直し、これも高額医療費と同時に進んでいく。利用者負担割合も二割が上がる。被保険者も、四十歳以上となっている被保険者の範囲を拡大する。

 これはお聞きしますが、こういった負担増メニューオンパレードの、こういったことが起こったときに、年金カット法案が入ったら、当然、最低保障機能が本当に揺らぎますよ、生活保護が本当にふえる。こういったものも含めた、ちゃんとした最低保障機能が担保されるような試算を示すべきだと私は思いますが、政府の中でそういう試算を検討しているんですか、大臣。

塩崎国務大臣 いろいろ御指摘を今いただきましたが、介護にしても、当然のことながらこれは、高齢者の自立を支援し、要介護度の重症化というか重度化を防ぐという介護保険の理念にのっとり、なおかつ、制度の持続性というものも大事であるわけでありまして、その上で必要な方へのサービスは提供できるようにする、こういう考え方で臨んでいかなければならないというふうに思っています。

 最低保障をどうするのか、全体として考えているのかということでありますが、答えとしてみれば、それは当然のことであって、制度の持続性を考える中にあって、先ほど申し上げたように、年金と同じように、やはり経済成長がなければ税の負担も、あるいは保険料負担も、一部自己負担もできるわけではないので、そこのところのしっかりとした支えもしていくということもトータルに考えながら、これは今、経済・財政再生計画改革工程表にあるメニューを御指摘いただいたわけであります。

 これら一つ一つについて、どのようにしていくべきなのかということを、今それぞれの審議会の部会で議論していただいておりますけれども、全体としてどういう形で進めていくのかというのは、まだこれから議論が詰まっていくことでありますので、あたかも、何か負担がどんどこふえていくようなことだけが起きるかのようなことをおっしゃっていますけれども、それならば、民進党の皆様方もぜひ、それぞれの制度についての持続性を含めた、あるいは財源も含めた、提案政党としての提案をお願いできたら、一緒にいい議論ができるのではないかなというふうに思います。

柚木委員 時間が来たので提言だけにしますけれども、我々は、財源も含めてちゃんと井坂さんをヘッドに議論していますから。当然、高年金者に対するさまざまな公的年金控除の検討、クローバック、さまざまな見直し、検討していますし……(発言する者あり)いや、だから、井坂さんはちゃんと対案を持った上で発言しているんですよ。

 それから、私、最後に言いますけれども、今や年金受給者の四人に一人は平均五万四千円、国民年金のみの暮らしですよ。高齢者世帯の六割が年金だけで暮らしているんですよ。過半数が生活保護、初めて高齢者世帯が超えたんですよ、ことし。これは、五千円で、六万円の年金生活支援給付金だけで、到底、最低保障機能を守れませんよ。

 私たちは、制度を守るためにと言われましたけれども、それをおっしゃるんだったら、今のままだと、こんな負担増メニューオンパレード、年金カット法案、これは、年金カット法案の試算の中に、ちゃんとこういうものも含めて最低保障機能を担保できる試算を出してほしいんですが、これは今のままいくと、仮に年金制度は守れても、年金生活者は守れませんよ。

丹羽委員長 柚木委員、申し合わせの時間は経過いたしておりますので、御協力お願いいたします。

柚木委員 年金制度は守れても、年金生活者は守れない。今のままだと、そういうことになるということを私は強く指摘をして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介です。

 もうお昼になってしまいましたけれども、与党の異例の申し出で一時間開会がおくれたということでありますので、お昼ですけれども、皆さん、もう少し辛抱していただきたいなというふうに思います。

 所信質疑ですから私もいろいろ大臣に聞きたいことがあるんですけれども、やはり私も年金の話を聞かなきゃいけないなというふうに思っております。

 今議論されてきている年金額の改定ルールの見直し、当然、年金部会でもいろいろな議論がありました。

 私、年金部会の議事録をちょっと読んでみたんですけれども、そうすると、その中に例えばこんな発言がありました。諸星委員の発言ですけれども、「マクロ経済スライドが私は中心なのかなと思っていたら、今回の中で急に賃金スライドが出てきて、正直なぜ今のタイミングなのかということでちょっと驚きました。 菊池先生が提出なされた資料に書いてありますように、両方あわせてやる場合について、そういった受給者世代のこと、将来の世代にそれぞれ及ぼすインパクトなど、そういうものをあわせて考えていただきたいということなので、こちらはやはり厚労省側できちんと考えていただければと思います。」と言っているんですね。

 この諸星委員が言った、菊池委員が提出した資料というのは何が書いてあるか。これにはこういうことが書いてあります。「将来世代への配慮といった観点からは、賃金連動ルールの徹底や、マクロ経済スライドのフルスライドにも、一定の合理性はあろう。ただし、両者が併せて発動される場合に受給者世代に及び得る影響の大きさや、今回改正全体が受給者世代と現役世代・将来世代それぞれに及ぼすインパクトの程度なども見極めながら検討していただきたい。」

 まさに、私、これは正論だと思うんですよ。まさに今ここで議論していることを委員の皆さんも言っている。つまり、将来世代のことを考えると、こういう年金額の改定ルールというのも一定の合理性はあるんだろうと。ただ、ただし、「両者が併せて発動される場合に受給者世代に及び得る影響の大きさ」、これをちゃんと見ないと決められませんよねということを言っているわけですよ。もっと平たく言えば、どれだけ年金が減るのかという話ですよ。それが高齢者の生活にどの程度のインパクトを与えるのか、これが検討の前提になるということを二人の委員の先生もおっしゃっているわけです。

 ですから、先ほど、井坂さんに頼まれて試算を出したという話ですけれども、そうじゃなくて、年金部会の委員の皆さんが、その理屈はわかるんだけれども、これを実際にやるかやらないかは、やった場合に、特にフルスライドと賃金スライドを両方発動したような場合に、これがどれだけ高齢者の、受給者世代の生活に影響が出るのかということがわからないと決められませんよねということを言っているわけです、既に。

 なのに、なぜ井坂さんに言われるまで試算も何もしてこなかったのか。これは私は、厚労省の怠慢だというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、一体改革を旧民主党政権が閣議決定したときに、デフレ経済下における年金スライドのあり方については、そしてまたマクロ経済スライドの最終的な発動のあり方について、議論がございました。それで、そういう宿題をどう果たすかということで、今御指摘をいただいたように、年金部会での御議論もいただき、与党でも議論をいただいた上で法律を出しているわけでございます。

 今、大西先生の御指摘の中で言っていらっしゃる、マクロ経済スライドの発動ということと賃金スライドの両方が同時に発動されるということをおっしゃいました。今回私どもが提案をしているのは、両方の発動を言っているわけではなくて、これは、マクロ経済スライドについては名目下限は守るということでありますので、フル発動ではないということで、今お取り上げをいただいた御議論とは全く違う組み合わせのことでございます。

 マクロ経済スライドについて、極力先送りをされないように工夫することが重要、その認識は共有をしながら、前年の名目額を割ってまでマクロ経済スライドをかけるか否かは、今お話があったように、意見が大分割れたんですね。部会の取りまとめでもそれらの意見が併記をされた。

 一方で、賃金の低下に合わせた年金額の改定、つまり、いわゆる賃金スライドについては、議論の中では、一人の委員から慎重に考えた方がいいのではないかという御意見がありました。しかし、部会の取りまとめ段階では、賃金に連動して改定をする考え方を徹底することが必要だということで一致をしたところでございます。

 こうした年金部会の議論を踏まえて、政府としては、マクロ経済スライドは、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置、いわゆる名目下限、これは維持をするということ、その上で、未調整分を繰り越して好況のときに調整をする仕組み、いわゆるキャリーオーバーをするということを行うとともに、賃金の低下に合わせた年金額の改定ルールについては、低所得、低年金の方に最大年六万円の福祉的給付を実施した後の平成三十三年度に導入すること、こういうふうにしたところでございます。

大西(健)委員 この両者が発動したときというのをどう捉えるかは別ですけれども、ただ、私が申し上げているのは、まさに私たちも、今回法案を見たとき、初め、これはキャリーオーバーの話だけが出てきたのかなと思っていたんですよ。そうしたら、よく見ると、そこに、物価が上がっても賃金が下がったときは賃金に合わせて下げるぞという話が書いてあって、えっというふうにびっくりしたわけですよ。

 ですから、そういう二つのことを適用していくと、場合によっては年金額がどんどん下がっていって、それが高齢者の生活に大きなインパクトを与えるんじゃないですか。

 私もさっきあえて申し上げましたけれども、確かに、理屈として、賃金が低下して現役世代の支える力が落ちたときに、それに合わせるという理屈はわかるんですよ。私は、百歩譲って理屈はわかる。ただ、それを本当にやっていった場合に、キャリーオーバーとかも含めてやっていった場合に、年金額がどんどんどんどん下がっていって、そして最後は高齢者の生活がもたなくなるんじゃないか。先ほどの柚木委員の最後の質問のとおりですよ。まさに、理屈はわかるんだけれども、これをやっていったときに、年金の財政はもつけれども、年金生活をしている人たちの暮らしが成り立たなくなるんじゃないかということを言っているんですよ。ですから、そこをちゃんと検証すべきですよねと。

 それに当たっては、井坂さんの求めに応じて出てきたもののような、さっきから言っているように、年金が下がるのを過小に評価して、そして将来世代の年金額が上がるのを過大に評価して、そういうお花畑みたいな話をするんじゃなくて、どちらかというとワーストシナリオみたいなものも織り込んで、ですから、過去六回も、起こらないということが起こっているわけですから、そんなのはわからないじゃないですか。アベノミクスがうまくいったら起こらないんだ、新ルールなんか適用されないんだと言うけれども、実際起こっているんだから。

 では、起こったときのことも踏まえて、そういうことが起こったときに本当に高齢者の生活はこれでもつんですかということを検証しないと私は意味がないというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 マクロ経済スライドと賃金スライドとの関係をお触れいただいたと思うわけでありますけれども、言うまでもなく、マクロ経済スライドは、年金額がプラスの改定のときは発動されて、年金額がマイナスの改定のときには発動しないというルールになっているわけでありまして、マクロ経済スライドが発動しないと、今の高齢者の年金が高どまりして、限られた財源を世代間で配分する現在の年金の仕組みのもとでは将来世代の年金水準が下がってしまう。したがって、マクロ経済スライドが十分に効果を発揮することが大切だということであります。

 一方で、その前提として、賃金が下がったときに賃金に見合った改定をしないとどうなるかという問題なんですね。

 足元の所得代替率が上がってしまう、つまり、賃金が下がっているのに年金額を下げないということになれば、所得代替率が上がってしまって、幾らマクロ経済スライドを発動させても調整期間は長くなる、そして、調整後の将来世代の基礎年金水準が下がってしまう、こういう問題が起きるわけで、結果として、マクロ経済スライドの効果は発揮をされないということになってしまうんです。

 ですから、マクロ経済スライドの効果を十分に発揮するために、今回の賃金を含む年金改革の改定ルールというのはいわば前提条件であって、一体改革大綱に書かれている課題を解決する上で必然的にこれは行わないといけない改正だというのが私どもの理解であり、また、このことは、平成二十四年の旧民主党政権が閣議決定された大綱の「マクロ経済スライドの検討」という中で、「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」という中に当然のことながらこの問題が含まれているというふうに考えるのがあり得べき姿ではなかろうかというふうに思っているところでございます。

 マクロ経済スライドそのものについては先生もお認めをいただいている仕組みだろうというふうに思いますが、今申し上げたとおりの理解で、今回の賃金スライドについても、いつもこれが起きるという前提では全くなく、こういうときにも備えるという一体改革のときの宿題を果たす、未来への責任を果たす一つの法案としてお出しをしているということでございます。

大西(健)委員 私は、マクロ経済スライドそのものは、確かにそういう考え方は必要だろうと思っているんです。ただ、それはやはり年金の財政をあくまでもたせる仕組みであって、それと、年金が持っている最低所得保障機能みたいなものを、ではどこまでも切り捨ててしまっていいのかという話は、これは違う話なんですよ。

 だから、そこがこの問題の私は本質だと思っていて、ですから、先ほど柚木さんの質問のところで最後にそういう話になったと思うんですけれども、私はそのことをぜひ大臣に聞きたいんです。つまり、特に、厚生年金もありますけれども、基礎年金の持っている役割を大臣がどう考えておられるのかというのをちょっと議論したいんです。

 資料をお配りしましたけれども、この資料、一枚目ですけれども、上の段、会議録の抜粋なんですけれども、これは、昨年の三月の予算委員会、大臣は覚えておられるかわかりませんけれども、前原委員と大臣が質疑をされたときに、大臣が答えられたのがここに載っているんです。

 この大臣の答弁というのは何を言っているかというと、基礎年金というのは、そもそも年金だけで生活するような、そういうものとして設定されたものじゃないんだということを言われているんですね。

 私は、ただ、そこを聞いていて、そこまではっきり言っちゃっていいのかなというちょっと疑問を持った、ひっかかったんです。つまり、国民の多くは、そうはいったって、年金というのは最低保障、最低というのがどこまでの範囲かというのは別にして、最低保障という役割を持っているんだろうと年金のことについて国民は期待しているんですよ。それをここまで言っちゃっていいのかなというふうに私は思ったんです。

 それと、そんなことを言っちゃったら、では、年金とは何なんだという話になるわけですよ。

 もう一つ、この右側の方につけている会議録ですけれども、これは昭和五十九年の十二月六日、衆議院の社会労働委員会の答弁なんですけれども、当時の政府委員がこういうふうに言っているんですよ。基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準にしようということで考えたわけですと。

 つまり、基礎年金導入時には、国民年金導入時には、ここに書いてあるように、基礎年金で老後生活の基礎的な部分を保障できるようにこれは導入されたというふうに言っているんですよ。それを大臣が勝手に、いつの間にか、基礎年金というのはそもそもそんなものじゃないんだというふうに、本当に私は、言っちゃっていいんだろうかということを思っているんです。

 改めて、大臣、基礎年金が持っている最低所得保障機能、この政府委員が言っている、老後の生活の基礎的な部分というものを保障できるものとして導入されたんですよ、そもそも。それをいつの間にか大臣が、いや、そんなものじゃないといって言い切っちゃっていいんでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、平成二十四年に、岡田副総理が当時こう予算委員会で答弁されています。このマクロ経済スライドについてでございますけれども、「なかなかきつい制度であります。きつい制度ですけれども、賦課方式の限界というものを是正するための一つの手段としては非常に意味のあるもので、ここについてもう少し高く評価すべきであったというふうに今思っているところでございます。」と。こういうことで、マクロ経済スライドそのものの仕組みについては、なかなかきつい制度だけれども意味が非常にあるということで、その際に、同時に賦課方式の限界というものについてお触れをされているわけでございます。

 基礎年金の問題でございますが、年金制度というのは、老齢あるいは障害、死亡によって生活の安定が損なわれることを防止することを主たる目的としているわけであります。

 現在の基礎年金の額について、今御提出をいただいておりますが、平成二十六年の支出は有業者も含まれているわけでありますが、いわゆる高齢無職の世帯の支出との比較で見ますと、夫婦世帯は衣食住といった基礎的な消費支出はカバーをされていて、単身世帯ではおおむねカバーをしているという格好になっております。

 ただし、年金の支給額でどこまで賄えるのかということについては、国民年金については、年金で全てを賄うことは難しく、ある程度の蓄えはお願いせざるを得ないということを考え、先ほどお話があった昨年の三月の答弁で前原委員にお答えを申し上げたところでございます。

 こういうこともあって、低所得、低年金の高齢者の生活を支援するために何をすべきなのかということが一体改革のときに議論になって、皆様方の閣議決定の中にも、そして三党合意の中にもつぶさに書かれているわけでありまして、その一つが、消費税一〇%への引き上げ時に年最大六万円の福祉的給付を行うこと、そして、基礎年金と相まって高齢者の生活を支えるということであり、もう一つは、二十五年を十年にするということで無年金者あるいは低年金者に年金がお届けできるようにするというようなこともあるわけであります。

 同時に、一体改革の際には、例えば、医療、介護の保険料負担の軽減についても消費税の引き上げと同時に御提案があったわけで、それぞれについては、当然のことながら、消費税の財源手当てをしっかりとしながら実現していくことによって低所得者に対しての対策を社会保障全体を通じて行うというのがそもそも三党合意で合意をされたことであり、それに従って、今、私どもも次々と法案を御提出申し上げているところでございます。

大西(健)委員 何度も言いますけれども、私はマクロ経済スライドを全面否定しているわけじゃありません。ただ、これをずっとやっていって、本当に、年金額がどんどんどんどん減っていく、そして、今回、物価が上がっても賃金が下がったら賃金に合わせて年金を下げるみたいなことまでやっていくと、これは、幾らマクロ経済スライドで年金の財政がもっても、年金の持っている最低保障機能というのは失われてしまうんじゃないかということを問題にしているんです。

 今、先取りをしてちょっと言っていただきましたけれども、もう一度この昭和五十九年の答弁を見ていただくと、何が書いてあるかというと、老後生活の基礎的な部分を支える水準として、昭和五十四年の全国消費実態調査の六十五歳以上の単身者の衣食住を中心とした基礎的な消費額が四万七千六百円だ、だから、その額に基づいて五万円という水準を決めたんだという説明をしているんです。実際には、この表に書いたように、五万円じゃなくて五万一千九百円で始まっているんです。つまり、この時点で比べると、四万七千六百円に対して五万一千九百円ですから、どこまでを見るかは別にして、いわゆる衣食住の基礎的な部分というのはカバーできているわけです。

 今回、私、ちょっと総務省に頼んで、では、この五十四年当時の四万七千六百円を現在で計算するとどうなるのか計算してくれと言ったら、ここに書いてあるように七万六千五百十二円になると。ところが、では、今満額もらっている人が幾らもらっているかといったら、六万四千四百円ですよ、満額でもね。その下に括弧で書いてありますけれども、受給者平均額だったらもっと下がるわけです、満額もらえていない人がいるから。五万四千四百九十七円ですよ。ですから、基礎的な衣食住だけ計算しても七万六千円のところが、満額でも六万四千四百円。さらには、平均でいうともっと低い額しかもらえていない。

 基礎年金が本当に老後の生活の基礎的な部分を支えているかというと、現状でもそれは残念ながらそうなっていない。それを、さらにマクロ経済スライドをどんどん徹底させていって、さらには、今言ったように、物価が上がって賃金が下がった場合も賃金に合わせて引き下げるみたいなことを徹底していくと、まさに、もっともっとこれはもたなくなるわけです。そして、最後に柚木さんが言ったみたいに、年金だけの問題じゃなくて、介護や医療や他の負担もふえてくる。

 ますます老後の生活はもたなくなるということじゃないんですか、大臣。いかがですか。

塩崎国務大臣 先生、先ほど来、マクロ経済スライドについては基本的に賛成だということを言っていただいています。

 今お話がありましたように、国民年金については、先ほど申し上げたとおり、全てを賄うことは難しいけれども、生活に必要な点についてはおおむねカバーをされているわけでありますけれども、しかし、同時に、これはやはりある程度の蓄えをお願いしないといけないということを申し上げたわけであります。

 マクロ経済スライドのことを今先生は評価をしておられるということでありますけれども、先ほど、岡田当時の副総理が言っておられるように、賦課方式の限界というものを是正するために行っているわけで、その是正し切れない部分についてどうするかということを一体改革の際に御熱心に三党それぞれ議論をいただいて、結果を出していただいたわけであります。

 それによって、全体として、福祉的給付はもとより、それから、先ほど申し上げた介護保険の低所得者への手当て、あるいは医療もそうですけれども、そしてまた就労機会を高齢者にどう提供していくのかということもそうでありますし、それから、公的年金においては、厚生年金の適用拡大というものも広げていこうということでこの十月一日から新たに広がってまいりましたし、今御提案申し上げている中に、これは、労使合意があれば中小企業といえども広げることができるということであります。それから、個人のいわゆる確定拠出年金、この加入範囲も拡大をした。

 そういうことと組み合わせていくということが大事であり、原則はまた、経済が活性化するという中で物価も賃金も健全な形で上がっていくということで、あらゆる世代の所得が上がっていくようにしていくということを全体としてやることが大事なのであって、どこか一部の減ったところだけを拡大鏡で見るような形で誇張するということだけでは、社会全体を、うまく皆さんに御納得いただくようにしていただくというのはなかなか難しいんじゃないかというふうに思います。

大西(健)委員 今、全体としてと言われるなら、まさに柚木委員の質問の最後のように、介護や医療も負担がふえていくことと、全体として、本当にこんな基礎年金の水準で生活が成り立つのか、もっともっと減っていくというときに成り立つのかということを考えなきゃいけないんじゃないですか。

 これは、まさに昭和五十四年のときは四万七千六百円に対して五万一千九百円で、ちゃんとオーバーしているんですよ、カバーできているんです。ところが、七万六千五百十二円に対して六万四千四百円しかもらえていないんです。

 私たちも、だから、マクロ経済スライドそのものは否定しないけれども、例えば、一部の年金部会の委員の方々にも、基礎年金にマクロ経済スライドをかけるのはやめた方がいいんじゃないかというような意見だってあるわけです。

 ただ、そこはきょうはそれ以上の話はしませんが、もう一つ、基礎年金の役割を考える上で、私は、時代の移り変わりによって受給者の実態が大きく変貌しているということを忘れてはならないというふうに思います。

 現在、基礎年金のみを受給している方、一千二十三万人もいるんですよ。そして、昔は国民年金というと自営業と考えてよかったんだと思うんですが、資料の二ページ目をごらんいただきたいですけれども、資料の二ページ目を見ていただくと、パート、アルバイトを含む、人に雇われている人が全体の四割ですよ。無職が全体の三割。つまり、自営業者というのは国民年金のごく一部なんです。ですから、昔、自営業とか農業が主体だったときは、それは定年がないので、基礎年金というのは補助的な役割でよかったんでしょう。そういう時代はあったのかもしれない。だけれども、今はそれじゃもたないんですよ。

 こういう、年金の受給者の、あるいは加入者の構成が大きく変化しているということを大臣はどう捉えられていますか。

塩崎国務大臣 御質問に答える前に、さっきの、福祉的給付は、少なくとも、基礎年金満額のみの方、この方は対象になるということであって、一体改革の際に、先生の今御指摘をいただいたような問題意識は、大前提としてそれを議論していただいたんだろうというふうに思います。その際に、福祉的給付というものをやるということは、先生が今御指摘になった、年金制度だけで低所得の方々の暮らしを守ることができるだろうかということを深く議論いただいてこの福祉的給付というものが生み出され、そして、基礎年金満額のみで暮らす方、この方は全て対象とするということになったのではないかというふうに私は理解をしているところでございます。

 今、自営業などの方々が減って、被雇用者あるいは無職、こういった方々がふえているじゃないかというお話がありました。

 非正規労働者の増加など、近年の就労状況の多様化を背景に、国民年金の被保険者のうちの約四割が被用者となっている、今お話がありました。こうした実態を踏まえれば、被用者にふさわしい保障が受けられるように、被用者保険の適用拡大、これを進めていくことがやはり重要なんだというふうに思います。

 このため、本年十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象とした適用拡大に加えて、中小企業で働く約五十万人の短時間労働者についても、労使合意に基づく適用拡大の道を開く法案を提出しておりまして、法案の早期成立にぜひとも御協力をいただきたいと思いますし、また、納付期間を二十五年から十年にするということで低年金の方々、無年金の方々を救うということと相通ずる問題としてあるわけでありますので、私は、二つの法律は非常に関係が深いということを繰り返し申し上げているわけであります。

 その上で、さらなる適用拡大は引き続き検討することとなっています。短時間労働者の就業調整を防いで労働参加を支援するとともに、所得や年金の確保を図っていかなければならないというふうに考えておるところでございます。

大西(健)委員 私は、結構、年金財政をもたせるということと年金の最低保障機能のバランスをどう考えるのかという本質的な議論をしようと思っているつもりなんですけれども、なかなかかみ合わないなというのが正直なところであります。

 要は、どんどんどんどん年金を下げていけば、これも最後に柚木さんがさっき言われたとおりですけれども、生活保護に頼らざるを得なくなるわけですよ。さっき言ったような水準と、では、生活保護でもらえる額を見た場合に、逆転しているのが残念ながら現実ですよ。そして、現在でも、さっきこれも柚木さんが示されていましたけれども、六十五歳以上の生活保護者のうち年金受給者が五割ですから。ですから、こうなっていくんです。生活保護になったら、結局そこは税金を突っ込むんでしょう。ですから、年金の最低保障機能というのを、どこまででとめるのか。もう本当に生活できないようなところになったら、結局、生活保護になるわけですよ。

 だから、そこをちゃんと議論しましょうということを言っているんですが、年金カット法案、いつ審議できるか知りませんけれども、そのときにしっかりまたやっていきたいというふうに思っています。

 きょうは、もう少し時間がありますので、テレビのワイドショーとかを見ていると、残念ながら、豊洲の話とか、あるいはボート、カヌーの競技場の移転の話とか、都政の話ばかりで、我々国政に身を置いている者としては、何か少しじくじたる思いもあるんです。

 そういう中で、第二の豊洲と呼ばれている問題があるんです。これは何かというと、広尾病院の移転という問題です。都立の広尾病院の移転について、当時の院長を初め、地元の医師会だとか関係者に全く、ほとんど事前に何の相談もなく、移転ありきで、ブラックボックスの中でこの広尾病院の移転が決まったんじゃないかという指摘があるんです。

 当初、広尾病院が外部に委託した調査で、現地で改築、改修する方がメリットがあるとされていたのが、もう移転ありきでまた何か再調査を委託して、そこでは、移転した方がいいというような、全く百八十度異なる調査結果が出てきて、なおかつ、これは土地代だけで三百七十億円、建設費を含めると九百億円という巨大なプロジェクトですけれども、都議会でもほとんど実質的な議論もなく承認をされてしまったということなんです。

 この問題について、一つの背景として、国有地のこどもの城の跡地を都に売却したかった、そういう国の意向が働いたんじゃないかということが言われていて、なおかつ、舛添知事と親しい塩崎大臣が都にこの土地売却を持ちかけたんじゃないかということが言われています。

 昨年の三月三十一日に行われたこどもの城の閉館セレモニー、その場で大臣が、公共の建物なので売却先は地方自治体に声をかけますと述べたというふうに言われているんですけれども、これは、塩崎大臣が仲のいい当時の舛添知事にこどもの城の跡地を買ってくれというふうに持ちかけたということでよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 結論的には、広尾病院とこどもの城と、何の関係があるわけではありません。

 こどもの城につきましては、平成二十四年九月に、これは民主党政権でありますが、閉館が決定をされました。その当時から、厚生労働省は東京都に対して、平成二十六年度末をめどにこどもの城を閉館し、今後土地建物を売却していくということについて、事務的に情報提供を行ってきたところでございます。

 私が発言したことについてお話がありましたが、財務省が示している、国有財産の処分に当たっては公共利用が優先するという財務省理財局長通知、平成二十三年五月二十三日付でありますが、ここにそういうルールがあります。まずは地元の自治体である東京都に、そのルールにのっとって声がけを厚生労働省がしたということであります。

 昨年四月にこどもの城の所管が厚生労働省から今はもう内閣府に移管をされておりまして、その後、本年三月に、東京都から内閣府に対して、こどもの城の土地建物を取得したいという要望が提出されたというふうに聞いているわけであります。

 私が申し上げたのは、舛添知事には、子供の遊びの機能を取り込んで再開発をするならば、あの地域の隣は東京都の土地でありますから、考えてほしいということを話したことはございます。私の子供たちがあそこで遊んでいたということもあって、子供の遊びの機能を残すということを考えていたわけで、実は、厚生労働省も、あそこはもう手放しましたが、子供の遊び開発のことにつきましては引き続き雇児局で担うということで、そういうふうな形で、引き続き子供の遊びを全国に発信できるような形になっているところでございます。

大西(健)委員 ちょっと念のために確認ですけれども、今言われたみたいに、自治体に声をかけますということを言っていて、声はかけたんですね。要は、ただ病院の用地じゃなくて、今の大臣の答弁だと、引き続き子供のことに使うんだったらいいんじゃないかということで舛添さんと話したということで間違いないですか。

 つまり、この土地について、こどもの城の跡地について舛添さんと大臣が話をされたんですか。それとも、事務方を通じた、先ほど何か、事務的な情報提供と言いつつ、後の方の答弁では、舛添さんに引き続き子供の関係で使ってくれと言って話したみたいですけれども、この土地について舛添さんと大臣は話したのか話していないのか、それを教えてください。

塩崎国務大臣 まず第一に、厚生労働省は、事務的に、ルールにのっとって、一番近い自治体である東京都にお話をしているというのが一つであります。

 私のことは、私は挨拶でこう言っています。ここの隣接地は東京都のものでありまして、舛添都知事の方には、もしこの地域を再開発するときには、ぜひ子供の遊びの機能を取り込んで再開発を考えてほしいということを舛添知事には私から直接お話をして、お願いをしているところでありまして、まだ再開発の計画が決まったわけではありませんけれども、いろいろ吟味をしているようでありますと。というのは、この再開発をどうするかというのはやっているらしいけれども、何をするのかは何もその時点では決まっていないという話でありました。

 いずれにしても、一般的な話として、子供の遊び場として非常に評価が高かったわけでありまして、多くの人たちが、あそことの別れを告げるのがつらいという方々がたくさんおられたことは事実でございます。

大西(健)委員 昼休みがなくなってしまいますので終わりますけれども、最初にも言いましたけれども、一時間開会がおくれたのは、この年金カット法案と無年金者救済法案の切り離しの話がどうなるかということでありますから、無年金者救済の法案を人質にとるようなことはやめていただいて、それはそれで、我々は大賛成ですから、しっかりやっていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 どうもお疲れさまです。民進党の初鹿明博です。

 午後のトップバッターを務めさせていただきます。

 きょうは、委員会が一時間、与党側の理由ということでおくれた結果、休み時間が三十分しかなくなって、皆さん、まだ御飯を食べられなかったという方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが、ぜひ、今後こういう委員会の運営がないように気をつけていただきたいと苦言をまず呈させていただきたいと思います。

 きょうは、午前中は年金の議論がずっと続いておりましたが、午後は、まず最初は提案型からいきたいと思いますので、ぜひ、大臣初め政務三役の皆様方、真摯な御答弁をよろしくお願いいたします。

 今、皆さんのお手元に新聞の記事をお配りさせていただいております。ぜひごらんになっていただきたいと思います。中日新聞の記事なんですけれども、九月十六日付の中日新聞です。我々民進党所属の名古屋市議会議員の日比健太郎さんについて書かれた記事です。

 日比さんは、三十五歳という若さで、ことしの五月に急性混合性白血病を発症し、現在、無菌室で闘病生活を送っております。我々民進党の若手の市議会議員、地方議員のリーダーとして本当に熱心に活動をされてきた方で、お子さんも、一歳になるかならないかぐらいの小さいお子さんを抱えている、そういう中での病気ということで、本当に我々、同志としても何かしたいという思いを持っております。

 私は今、民進党の中で青年局長を拝命しているんですが、一昨日、全国の青年委員会の役員会がありまして、その場で日比さんからのビデオメッセージをみんなで見て、そして、日比さんが、今回闘病することでさまざまな気づきがあり、それを世に問うていきたい、そういう思いを持っているということで、党としてこれをバックアップしていこうということになりまして、我々民進党として、ドナー登録をもっと進めていくようなキャンペーンを行おうということを決めました。

 まず、お伺いしますけれども、ドナーに登録するのは五十四歳以下ということになるんですが、五十四歳以下ですと、橋本副大臣、該当しますよね。ドナー登録されていますか。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 まだ登録はしておりません。

初鹿委員 樋口政務官も対象年齢に入っていますが、いかがですか。

樋口大臣政務官 失礼いたします。

 私もまだしておりません。

初鹿委員 ぜひ、対象年齢になって、健康であるという条件、また、輸血をしていないとかいろいろありますけれども、対象になる議員の方はドナー登録をしていただきたいと思います。

 私は実はドナー登録をしておりまして、二年ほど前だったと思いますが、適合したんです。それで、何度か面接をやり、健康診断もやって、何度も何度も本当に意思確認をされるんですけれども、最終の面談を待っているときにコーディネーターの方から電話がかかってきて、最終面談の日程の連絡かなと思ったら、患者さんの都合でコーディネートを中止しますという連絡で、移植には至らなかったんですね。あちら側に何らかの、健康状態が悪くなったとか、いろいろな理由があったんだと思います。その理由は教えてもらえていませんが、結局、移殖に至りませんでした。

 この日比さんの件なんですが、今回、四名の方と適合したんですね。四名もいたんですよ。ところが、結果として移植に至らなかった。この患者さんの気持ちというのはいかがなんでしょうかね。病気になり、もう治らないかもしれないと思っていたところで、骨髄バンクから、適合したドナーの方が四名いると。恐らく非常に期待を持ったんだと思います。ところが、結果としてそれがうまくいかなかったというときの落胆は、病気になったとき以上に落胆をしたんじゃないか、まあ、想像にすぎないですけれども、そういうふうに思うんです。

 ですので、できるだけやはり移植に結びついていくようにしていくことが重要で、そのためには、まずは登録するドナーの方がふえていかないとならないんだというふうに思います。

 骨髄バンクが始まってことしで二十五年なんですね。くしくも、きのう厚生労働省で記者会見をされたんですよね。おとといの日に移植が二万例を超えたということで、記者会見をされたということです。

 このように、移植は確かに着実にふえてきているんですが、二十五年たって、何となく皆さん骨髄バンクというものが当たり前のようになっていて、ドナー登録を積極的に行おう、そういう機運は何か今、滞ってしまっているんじゃないかなというふうに思います。

 一枚めくってください。

 ドナー登録の推移というグラフを皆さんにお示しをさせていただいておりますが、ごらんのとおり、二〇一一年から減少傾向になっているんですね。もうかなりの減少傾向になっているんです。順調にずっと登録者数が伸びていたんですが、かなり最近減ってきている。

 そして、もう一枚めくっていただきたいんです。問題は次のページなんですよ。ぜひこちらのページを見てください。

 年齢構成です。四十代は結構多いんですけれども、二十代、三十代が非常に少ないんです。皆さんも当然わかると思いますが、骨髄移植ですから、ドナーが、やはり若い人が健康なわけですから、移殖につながっていくわけですね。そして、五十四歳までということですから、この四十代の方々は、十年、十五年すると、みんなもう登録から外れていってしまうわけです。そうしたときに、二十代、三十代がこういう傾向のままだったら、十五年たったらかなりドナー数が減ってしまうと思いませんか。

 それを私も危機感を持っておりますし、日比さんも病床の中から、ドナー登録をやはりふやしていく、そのためには、まず若い人たちにしっかりと、骨髄移植というものがどういうものなのか、骨髄バンクというものがあるんだということだとか、あと、ドナー登録をする、そして、ドナーはどういうことがあるんだということをきちんと教えていくというか、普及していく、啓発していくということが非常に重要じゃないかなと思います。

 皆さん、もう一枚めくってください。

 参考までに、全国のデータ、都道府県別のデータをつけさせていただきました。ぜひ先生方、自分の県を見てください。大臣は愛媛県でしたね。

 これを見ていただくとわかるんですが、登録者数の少ないところは年間で二桁しか登録していないんですね。そして、右側から二番目の、対象人口当たりのドナー登録割合というデータをつけておりますが、千人当たりという数字です。全国平均が八・一〇に対して、下の方は四・幾つというふうに、非常に都道府県によるばらつきもある。

 上を見ていただきたいんですが、一番上の方を見ていただくと、沖縄が非常に高いんですよ。沖縄は三三・七九と、もう突出して高い。そして若年層でも二九・二%と、本当に、比較をしていただくと非常に突出して高いんですね。

 こういう、うまくいっている、若い人が特に登録をしているような自治体の取り組みをぜひ全国展開していくような普及啓発を行っていただきたいと思うんです。

 まず、厚生労働大臣にお伺いしますけれども、このドナー登録の推進について、厚生労働省として今後どのように取り組んでいくのか、どういう進め方をしていくのかということをお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 私はかつてたしか登録していたような気がいたしますが、仲間の小此木代議士はみずからドナーとして提供されたということを覚えております。今見て、我が愛媛県は真ん中辺かなということで、少し頑張らないかぬなということを思いました。

 現在、骨髄ドナーというのは約四十六万人の方に登録をいただいておりまして、白血球の型などを考慮しても、この人数は骨髄移植を必要としている患者の約九割でドナーが見つかる人数という水準でございます。

 また、ドナーの登録者数は毎年一万人ずつ純増して、必要なドナーについては確保できているというふうに考えてはいますが、一方で、御指摘のとおり、ドナーの平均年齢というのは上昇して、二十代、三十代の若年層のドナー、先ほどのお配りをいただいているグラフを見ても、このドナー登録を若手の方々にお願いして推進していくというのは大変大事だというふうに思います。

 厚労省として、今、日本骨髄バンクによるドナー登録を呼びかけるために、大学などにおけるドナー登録会の実施とか、あるいは日赤血液センターなどにおける献血ブースにおける呼びかけといった普及啓発に取り組んでいるわけでありますが、今御指摘をいただいたような状況で、特に若い世代の登録が余り芳しくないということを考えてみれば、私どもとしては、厚労省としても、この数をどうふやしていって、今申し上げたように、必ずしも全員あるいは余りあるぐらいのニーズを超えるドナーがいるという状況ではないという現実を考えてみれば、我々としては、さらに何ができるのか考えていかなきゃいかぬなということを今拝聴して思ったところでございます。

初鹿委員 ぜひこれは真剣に考えていただいて、どうやったら普及していくかというのを、何か答えを出していただきたいと思います。

 特に、先ほど日赤との連携ということがありましたが、私も実は、献血車が来たときに一緒に登録をされていて、そこでしたんですね。やはりこういう取り組みがもっともっと進むのがいいのかなというふうに思います。

 あと、大学とのということがありましたが、やはり学校現場できちんと理解を深めていくということと、例えば、大学の入学式のときに登録のブースをつくって、そこで来た人に呼びかけをするとか、十八歳ですから高校生も対象になりますから、高校三年生向けに何かそういうことをやるとか、そういうこともできるんじゃないかというふうに思います。

 きょうは樋口政務官にお越しいただいておりますので、ぜひ、これは厚労省だけの問題ではなくて、文部科学省も積極的にこのドナーの登録を推進していくように協力していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

樋口大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 まず、高校の現状ですけれども、高校におきましては、保健体育において我が国の保健・医療制度について学ぶこととし、その中で、我が国には人々の健康を守るための保健・医療制度が存在し、保健・医療サービスなどが提供されることを理解できるようにする、その際、介護保険、臓器移植、献血の制度があることについても適宜触れるようにするというふうに記載をしております。

 教科書には、例えば、臓器移植は病気治療のためにほかの人の臓器を移植することを言い、心臓、腎臓、肝臓、骨髄などがその対象ですという記載があり、現状では、必要に応じてこれらの制度があるということの事実を教えているということでございます。

 大学においては、例えば、構内において骨髄ドナーバンク登録を実施し、学生たちに対して啓発を促進するという取り組みが行われているところであります。

 学校における周知啓発について先生から御意見をいただきました。

 制度を所管する厚生労働省と連携をしつつ、今後どのような方法があるのか検討をしてまいりたいというふうに思います。

初鹿委員 ぜひ、体験者の話を学校で聞くような場をつくるとか、単に教科書で、臓器移植の中に、いろいろな臓器の中に骨髄というのもありますよというのではなくて、もう少し具体的に、専門的にかかわっているような人の話を聞くような機会をつくるなど、積極的な取り組みを進めていただきたいというふうに思います。

 もう一枚ページをめくっていただいて、先ほども日比議員の例を出しましたが、四人の方がドナーとして適合していたけれども移植に至らなかったというお話をしましたが、このグラフを見てください。

 上のグラフ、これは適合率なんですね。要は、患者さんが一人以上のドナーとHLAが適合した割合、九五・九%なんですよ。かなりの割合で適合したドナーさんがいるんですよ。ところが、こちらの下のグラフ、移植率が五四・六%と、四〇%ぐらいの差があるんですね。せっかく適合したドナーがいるのに移植に至らない。この差をできるだけやはり縮めていってもらいたいなと思うんですよ。

 では、何で移植に至らないかということなんですが、もう一枚めくってください。

 ここに、コーディネートが終了した理由の件数というものがあります。二万七千八百六十七件コーディネートが開始していて、初期段階で終了したのが一万三千六百八十一件、ほぼ半数が初期の段階で終わっちゃうんですね。

 その理由として、ちょっと見づらいんですけれども、こちらのグラフ、まず、健康理由というのが三四%、やはり健康理由が三四%ぐらいになるんです。若いときに登録したけれども、年が上がるにつれて病気になってしまったとか、いろいろ理由があると思いますが、三割ぐらいは健康理由です。残り六六%は健康理由以外なんですが、それを、こっちのグラフを見ていただきたいんですが、都合がつかずというのが四三%、連絡とれずが三五%ということなんですね。

 ここからわかることは、まず、連絡がとれないということは、ドナーに登録してから適合するまでに時間がかかって、その間に引っ越しをされるだとかなんとかで連絡がとれなくなっている方が三割ぐらい出ているということですので、そういう面でも、ドナーの数がある程度やはりふえていかないと三割ぐらいはこぼれちゃうんだよと思っていないといけないんじゃないかなというふうに一つ思います。

 そして、もう一つは、この四三%の都合つかずというところなんですよ。何で都合つかずということになるのかというと、何日間かやはり時間がとられるんですね。仕事を休んで検査に行く、面接に行く、そして、いざ骨髄をとるということになると数日間入院をする、その休みをなかなか仕事上とれない、そういうことで結局移植に至らないという方が非常に多いというふうに伺っております。

 これに対して、では何ができるのかということをやはりちゃんと考えていかなければいけないと思うんですね。一部の自治体では、ドナーになって休むと一日当たり幾らか助成金を出すというような自治体が今ふえてきております。埼玉は県を挙げてやっていて、全ての自治体がその対象になっているんです。

 確かに、そういう自治体が徐々に徐々にふえてきているんですけれども、今八都県でやっているということですが、ただ、住んでいるところによって、そういう制度があるからドナーになりやすい、でも、ないところは、結局、そういう制度がなくて、なかなかドナーになりづらいということで、何か当たり外れみたいなことというのは余り好ましいことじゃないと思うんですね。

 そこで、私から提案ですけれども、まず、働いている人がドナー登録をして、ドナーになるということになって仕事を休む場合、ドナー休暇制度のようなものをつくって、育児休業とかそういうのと同じように、雇用保険の方から、事業所に出すのか個人に支給するのか、そこはやり方はさまざまあると思いますが、事業所でも本人にでも何らかの支給がされて、自分の有休をあえて使わないでも安心して休めるようにする、そういう制度をつくったらいかがかなというふうに思います。

 ただ、これはサラリーマンというか雇用労働者の場合なんですね。中には、やはり経営者だったり、また若い人ということを考えると、非正規で働いていたりアルバイトで働いていたりということで、まず、日給になっているような人は働かないともろに減収になる。やはりそういう方に対しては、今自治体がやっているような補助の制度というのも一定程度必要なんじゃないかなと思います。

 恐らく、これまで、厚生労働省のスタンスからいうと、あくまでも骨髄バンクというのはボランティアで、ボランティア精神にのっとってやるんだからそこに金銭を発生させるのはどうなのかなという考えや、患者に対しての支援は行うけれども、ドナーさんは患者さんじゃないですよということで、なかなかそこに支援がしづらいというのが今までの考え方だったのではないかなというふうに思います。

 やはり、ドナーの方に対する支援は、結果として移植につながって患者さんを助けることにもつながりますので、ちょっと考え方をもう一回ここで整理していただいて、まずは、働いている人に対しては雇用保険の中で制度がつくれないのか、そして、そうじゃない方々に対しては今自治体がやっているような制度を全国的に一律の制度にできないのか、これを検討していただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 働きながらドナーになっていただける方について、移植に伴う通院、入院、これは休暇がやはり必要になってくるわけでありまして、企業がそのための配慮をしていただけるかどうかというのは大変大事な問題だと思います。

 国が直接ドナー御本人に金銭的支払いを行うことについては、今、初鹿委員からお話がありましたように、なかなかそう簡単ではない、金銭を理由に移植することを助長するというような危険性もあるということで、日本骨髄バンクにおいて、企業に対してドナーのための休暇制度を導入してもらうための普及啓発というものを行っておりまして、平成二十八年六月現在、三百二十六の企業において骨髄ドナーの特別休暇制度が設けられております。

 今御指摘のように、一部の自治体では、企業に対するドナー休業の補償措置が自主的に行われていて、厚生労働省としては、こうした取り組みを他の自治体にも情報提供するなど、企業の配慮によってドナーの休暇取得が容易になる環境づくりの支援を広めていきたいというふうに考えております。

 なお、雇用保険二事業の御指摘がございましたが、事業主の保険料のみを財源に、失業の予防とか雇用機会の増大などに資する事業のうち、事業主の共同連帯によって負担をすることが適切なものに限定をして今、二事業が実施されているところでございまして、移植推進の環境整備を行うというのは今直ちには難しいなというのが現場の声でございました。

 しかし、そうはいいながら、どういう形で、企業で働く方々が休みやすくなって、みずから赴いてドナーとなっていくことが可能となるか、そういうことができるようにするためのサポートは何ができるのかということをやはり改めて考えなきゃいけないなというふうに思ったところでございます。

初鹿委員 ぜひ、本当にこれは検討していただきたいと思います。

 特に今、ある程度雇用環境がよくなって、労働保険特会、たくさんお金がたまってきているわけですから、このままほかのところに狙われるよりかは、やはり本当に社会のためになるような使い方だと思います。

 そして、一億総活躍と言っているわけですから、患者さんもこれによって活躍することになる。これは、会社としても、こういう休暇制度をつくるというのは一つのアピールになるし、会社としてもメリットがあると思うんですよ。

 そして、ドナーになった方も、一生のうちで、自分が行ったことで人の命が救えるなんてそうそうないですよ。本当にこんな貢献というのはないと思いますよ。

 我々政治家だって、人のためにやっていると思いながらやっているけれども、何となく、本当にこの人を、命を救ったとなかなか思えない、そういう歯がゆさというのは皆さんも感じていると思いますが、ドナーになると、本当に自分が人を助けたということを実感できるわけですから、これは雇用保険の中で使ってもいいのではないかと私は思いますので、ぜひ前向きに検討をしていただきたいというふうにお願いをいたします。

 そして、もう一回このページを見てもらいたいんですけれども、移植が中断した理由の中で、家族の同意が得られないというのが一〇%ぐらいあるんですね。

 実は、骨髄移植が適合すると、本当に、家族の同意をきちんととってくださいというのを非常に念押しされるんですよ。私も、余りちゃんと真剣に考えていなかったわけではないんですけれども、このパンフレットをちゃんと家族に読んでもらってくださいねと言われたんですが、すっかり忘れて女房に読んでもらわずに次のときに行ったら、読んでもらいましたか、読んでもらっていませんと言ったら、すぐに、読んでくださいと言って、二、三日後に一応確認の電話が来るぐらい、家族の同意をきちんととる。やはり土壇場で家族がやっぱりやめようとなって移植に至らないケースがあるということで、非常に気を使っているんですね。

 一つ、その理由は何なのかなと思って、我が家の例で言うと、骨髄移植の場合、全身麻酔をするんですね。それを聞いたときに、うちの女房は、ちょっと心配だなと言ったんです。結果として、やらない方がいいということは言わなかったんですが、恐らくそういう方というのは非常に多いんじゃないかと思うんですね。

 そこで、私からさらに提案させていただきます。

 骨髄移植は、骨髄の移植だけじゃなくて、末梢血幹細胞の移植も数年前から始めていて、徐々に広がってきております。海外ではどちらかというとこっちの方が主流なんですね。

 末梢血幹細胞の移植だと、とるのに、注射で何度かとるんですが、それでとれてしまうということで、入院期間はちょっと一定程度長くなるということなんですが、全身麻酔をする必要がないということで、よりドナーの方や家族の方が移植に前向きになるのではないかと思いますので、ぜひ、この末梢血幹細胞移植の普及啓発もあわせて進めていっていただきたいと思うんです。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 末梢血幹細胞移植は、骨髄移植と同様に、白血病などに対する治療法としてあるわけでありまして、今、我が国において、平成二十三年の三月から開始をされております。平成二十八年九月末現在で二百二十五例が既に実施をされているということで、骨髄移植の実施が一万九千七百、約二万件ということでありまして、まだまだこれからということでございます。

 これは、骨髄移植と比べまして、疾患によって適応にならないケースがあること、それから、移植を受けた方に拒絶反応が起きるケースが多いなどの特徴もありますけれども、骨髄移植と異なって、今御指摘のように全身麻酔が要らない、それからドナーへの身体的な負担が軽いということから、厚労省としても、今後この普及を図っていこうというふうに考えております。

 まだ歴史が浅いということで、末梢血幹細胞移植のドナーをふやすためには、国民の方々にこの移植の特徴を十分知っていただく必要があると考えておりまして、現在、骨髄バンクのドナー登録時に末梢血幹細胞移植があることを周知するということに努めておりまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。

初鹿委員 ぜひ大臣、よろしくお願いします。また、委員の先生方も、ぜひ骨髄バンクのドナー登録を地元の支援者等に勧めていっていただきますようにお願いをいたします。

 それでは、時間が大分なくなってきてしまったので、ちょっと飛ばしまして、介護の問題に移らせていただきます。

 十月四日の日に予算委員会で、安倍総理に、要介護一、二の生活援助サービスを介護保険から外す、そういう検討が行われているのではないか、そういう質問をさせていただきました。そのときに、大臣を何で呼ばないんだというような話もありましたが、こうやって厚生労働委員会で幾らでも議論ができるので、あえて総理に聞かせていただきました。

 その結果、数日後に、今、新聞の記事を載せておりますが、「「生活援助」維持の方向」ということで、これは、介護保険から外す検討はやめたということでありまして、やはり議論の途中で質問をしておかないと、安倍総理は、今議論中で、決まったことのように言うなみたいなことを言うんですけれども、決まってから言ったら遅いので、今言ったわけですね。

 厚生労働省はわかっていたんだなと思いますよ、これで。確かに、これを財政審から言われて、それで検討しなきゃいけなかった。でも、本音はやりたくなかったんだろうなと思います。

 この結果、維持をすることになったのは、私は一定の評価をしますけれども、そうは言いながら、介護報酬は大幅に下げるような検討がされているということなんですが、それは事実ですか、大臣。

塩崎国務大臣 そもそも、この「「生活援助」維持の方向」とか、いろいろな報道が行われておりますけれども、基本的にまだ審議が続いているということでありますけれども、我々の考え方の基本は、介護保険の理念であります高齢者の自立と、そして重度化を防ぐ、そして制度をきちっと維持ができるようにする、さらに必要なサービスは提供する、この四つの連立方程式をきちっと解いて、うまく回っていくようにしていかなきゃいけないということでありますので、引き続き議論していきたいと思いますが、また先生の御意見もしっかり聞かせていただければというふうに思います。

初鹿委員 今、非常に重要なことを言っているんですよね。自立と重度化を防ぐなんですよね。これはもう安倍総理も何度も言っているんですよ。

 そこで、私は、生活援助サービスだけじゃなくて、もう一つ懸案事項になっていて、多くの方々が心配しているのは、福祉用具の貸与が全額自己負担になるんじゃないかという問題ですね。これはどうなるのかまだはっきりしていないわけですよ。生活援助は一、二は残るとなったけれども、これが全額自己負担になったら自立が進むんですか、重度化がとまるんですか。逆ですよね。逆なんですよ。

 だから、この全額自己負担なんというのは絶対にやるべきではないと私は思いますが、今の検討状況をぜひお答えください。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 福祉用具の貸与についてでございますけれども、これは、哲学は、先ほど申し上げたとおり、四つの連立方程式を解くという中で考えていくのが基本方針でございますけれども、例えば、同じ特殊寝台といいますかベッドでもいろいろ値段に幅があって、平均でこれは約八千八百円ぐらいですけれども、それに対して、一番高くて十万円というのがあって、これの一割とか、一部二割負担もありますけれども、こういうことでいいんだろうかということは考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。

 我々はやはり、さっき申し上げたとおり、自立促進、重度化防止、そして制度の維持、さらには必要なサービスは提供する、この四つだというふうに思います。

初鹿委員 はっきりと言っていただいたので、その方針だけは変えないでいただきたいと思います。

 確かに、私も、同じ役割を持っている車椅子にしてもベッドにしても、金額の幅があり過ぎる、これは上限なりは定めてもいいのではないかと思います。ただ、全額自己負担とかそういうことになったら、それは使わないという選択をする人も出てきて、結局重度化につながるので、それだけはやらないでほしいということを念押しさせていただきます。

 もう時間が来たので、あともう一点、これは確認ですけれども、前回の改定で二割負担の人が出ましたね、一部二割負担になりました。これを拡大するんじゃないか、場合によっては全額基本的に二割負担にしていくんじゃないか、そういう懸念も今出てきているわけです。二割負担にして、一割が二割ぐらいいいんじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、二割になると倍ですからね。

 この認知症の人と家族の会のアンケートによりますと、「二割負担は、これからいろいろ大変になるので、生活を切り詰めていくしかないと思う。在宅介護ができなくなった場合に、施設に入れるか不安がいっぱい。」七十代女性、要介護一の夫を自宅で介護中、それとか、「月二・五万円の負担増。増える前は年金で何とか支払っていたが、今は毎月二・五万円の持ち出しが続いている。こんな状態がいつまで続くのか、お先真っ暗だ。」八十代女性、こういう声が実際に来ているわけですね。

 ですので、二割に拡大というのも、私はここは今の時点でやるべきではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 結論的には、さっき言った四つの方程式をしっかり考えて決め込んでいくということが最後は大事なんだろうというふうに思いますが、繰り返さないのでもう申し上げませんが、やはり原点に立ち返って物事を考えるということが大事なんじゃないかなというふうに思います。

初鹿委員 時間になりましたので終わりますけれども、とにかく、自立と重度化を防ぐということ、これがやはり介護保険の理念ですからね。財政の問題も重要だと思いますが、やはりそれ以上に高齢者の生活、またそれを支える家族の生活ということも重要だと思いますので、ぜひ、財務省からのプレッシャーもあると思いますが、それをきちんとはね飛ばして、介護保険の制度をきちんと維持するように取り組んでいただきますようにお願いをして、質問を終わります。

丹羽委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民進党の長妻でございます。

 特に、大臣におかれましては、端的な答弁をお願いいたします。

 けさの質疑を聞いておりましたら、冒頭、与党の方から旧民主党の年金案について非常に批判的なお話がございましたが、私は非常に見識がある与党の議員の方だと思っていたんですが、一番肝心なことを、あえてなのか、忘れてなのか、おっしゃっていないんですね。

 旧民主党のときの年金制度の最大のポイントは、最低保障年金ということで、最低保障機能があるということなんですよ。そこを、一番肝心なところを飛ばして批判ばかりするというのはフェアじゃない。ちょっとがっかりしました。

 そしてもう一つは、塩崎大臣からちょっとお話がありましたけれども、今回のいわゆる年金カット法案、言われていますけれども、新ルール、年金を下げる新しいルールについて、何か三党合意で決められた一体改革大綱に書いてあるから民主党も言ったじゃないかというような趣旨の御答弁がありましたが、これは間違いですので、訂正を求めていきたいと思います。

 平成二十四年二月十七日に閣議決定した社会保障・税一体改革大綱では何が書いてあるかというと、「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」ということなんですね。今回の年金カット法案の新しいルールというのはマクロ経済スライドではありませんから、誤解があれば、これは訂正をしていただきたいわけであります。

 私、ちょっと役所にも、そんなことを言っているから資料を出してくれと言ったんですよ、その理屈の資料を。そうしたら、非常に時間はかかりましたけれども、この資料が出てきたんですね。その大綱にも書いてある、今回の件がと。その理由の資料を出してくれと言いましたら、そのものずばりは出てこないので、大変苦しいんですよ。社会保障・税一体改革大綱において示された検討事項の問題認識に通じるものと考えている、通じるもの、これは非常に曲解をしたようなこじつけのペーパーが出てきた。これは事実、私自身が民主党の責任者、社会保障の責任者として三党協議に実際参加しているわけですから、私が。確かに、デフレ下のマクロ経済スライドは議論しましたけれども、このケースは一切議論していないですよ。ですから、そういうことをおっしゃるのはやめていただきたいということをまず申し上げます。

 そして、るる今回出ておりますけれども、いわゆる年金カット法案の試算でありますけれども、これは私は、ちょっと子供だましの試算だと思いますよ。というのは、今後百年間、この今回出てきた年金カット法案における新ルール、年金を下げる新ルールは一度も発動しません、こういう前提で試算をつくっている。では、この法案は要らないじゃないですか。

 いや、我々が知りたいのは、国民の皆さんも知りたいのは、将来この法案が発動した場合、どのくらい年金に影響があるんだ、こういうことを知りたいのに、それは出されない。百年間、発動しません。試算の意味ないじゃないですか。

 今回の法案の影響の試算を出してくださいと言っているわけでありますから、将来そういうことが、万が一というふうに与党はおっしゃるのかもしれませんけれども、では、その万が一起こったときに、私は万が一じゃないと思いますよ、御存じですか、過去十年間で、今回の新ルールは六回、六年起こっているわけですよ、半分以上。これは、将来起こったときにはこのくらい減るんだよ、こういう試算を出していただきたいと思うんですが、いかがですか、大臣。

塩崎国務大臣 今回の額の改定ルールの見直しにつきましては、賃金が物価よりも低下するという望ましくない経済状態となった場合でも、所得代替率が上昇しないようにする、これが大事なことであって、将来世代の年金水準をしっかりと確保していくということでございます。

 先ほど、一体改革とは関係ないというお話をされておりましたが、それはそういうことではなくて、マクロ経済スライドが長期化をしないようにする、つまり、代替率が上がることによって長期化をしないようにするということが、この賃金スライドによって回避ができるということでありまして、そういう意味で、将来の年金をどう確保していくか、これが大事なことだと思います。

 今回の試算の前提としている平成二十六年の財政検証では、デフレから脱却をして、長期的には、物価、賃金ともにプラスとなる経済前提を想定しているわけであって、今回の改正はあらゆる事態に備えて見直しを行うものでありますけれども、安倍政権としては、何よりも重要なことは、何度も申し上げておりますけれども、強い経済をつくっていく、そのために、デフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組むということでありまして、それがちゃんと達成するように、今回のように御提案を申し上げて、年金も、将来世代のあるべき代替率が下がってしまわないようにするということを行うところでございます。

 どういう条件でやるかというのは、先ほど、これは井坂議員の場合には十七年から当てはめてみろということで計算をいたしましたが、私どもとしてはこういうケースを、実質、名目ともに賃金が下がるというような場合のケースに備えた手だてをお示ししたということでありますので、御理解を賜りたいと思います。

長妻委員 非常に二枚舌的なお話だと思うんですよね、これは。

 つまり、そういう経済状況は起こらない、安倍内閣としてはそういう経済を達成するんだ、こういうことでありますから、ただ、これは万が一に、与党の言葉だと万が一なんだから、そのときの実際の影響度はどうなんですか、そういうふうに質問すると、いやいや、そういう経済状況は起こらないと。でも、法案では、起こると。こういう非常に不誠実な態度だと私は思いますし、さっきの三党協議を受けた話も、これは私自身が責任者として交渉しておりますから、これは事実認識を改めていただきたい。

 そして、やはり、今回の議論が非常にちぐはぐになってきているのは、恐らく塩崎大臣は、この年金の財政あるいは今の年金制度、これを非常に考えながらの御発言だと思うんですが、塩崎大臣は大臣ですから、年金局長ではないわけですので、これは、本当に今の年金が年金の役割を果たしているのか、こういう観点からの議論を我々は求めているんですよ。

 ところが、そうでないお話ばかりが返ってくるわけで、今、年金受給者が約四千万人でありますけれども、半数近くが一人当たり一カ月十万円以下の年金額でありまして、これは本当に老後の安心を確保できるのかということなんです。

 国民年金法の目的条文を見ると、国民年金制度は、憲法二十五条二項の理念に基づいて、国民生活の安定が損なわれることを防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与すると。憲法二十五条を引き出しているんですね。つまり、最低限度の生活、これが視野に入っているのに、国民年金、厚生年金もそうですけれども、生活の下支えになっていないということなんです。

 ちょっと私、一つ問題提起をしたいと思うんですが、所得代替率というものが非常に誤解を生み始めているのではないのか、実態を示していないんじゃないのか。

 所得代替率、今のモデル世帯、これはマクロ代替率とも言いますけれども、今のモデル世帯、専業主婦を四十年間やっている奥様と四十年間正社員で働いている御主人、旦那さん、これをモデル世帯としてマクロ代替率、所得代替率を出しているわけでございますけれども、これが今現在は六二・六%だ、こういうことなんです。つまり、これは物差しとしては今使われているわけで、これは法律にも書いてありますから、こういうふうに計算するんだよと。

 しかし、この所得代替率が果たして国民の皆さんの実感、あるいは、我々政治家が議論するときの非常に誤解を与えるような数字になっているんじゃないのか。六二・六%、ああ、現役の皆さんに比べて六二%年金をもらえる、こういうような感覚を与えてしまっているのではないのか。最終的には、五〇パーを切るときには法律を改正して手当てをする。だから、ある意味では、五〇パーを切るまではしようがないですね、こういう制度なんですよ。

 これの一つ大きな問題点、先ほど柚木議員も指摘をされました。保険料がどんどん高くなる、これで、実質的な手取り年金はどんどん減っていくにもかかわらず、今の所得代替率、モデル所得代替率については、分子について、年金の受給額は名目なんですよ。つまり、保険料とか税金を引いていない手取りの分子なんですね。

 ところが、分母は現役世代の、現役世代といっても当時じゃなくて今の現役世代なんですが、その賃金なんですけれども、この分母については可処分所得なんですよ。つまり、税金と社会保険料を引いたものが分母なんですよ。

 そうすると、誰が考えてもわかるように、大きくなっちゃうんですね、数字が。だって、上は手取りなんだから、分子。失礼、額面。額面なんです。

 これはちょっと、一応、言葉が混乱しないように用語を統一したいと思うんですが、グロスと言ったときは、これは額面、つまり名目。保険料とか税金を引く前のものをグロスと呼びましょう。ネットというのは、これは税金と保険料を差っ引いたものをネットと呼ぶとすると、今ネット分のグロスなんですよ。受給額がグロス。それで、現役世代の給料はネットになっちゃっている。これはおかしいんじゃないのかということで、これは私はそろえて計算した方がいいと思うんですよね。

 これは、大臣、事前通告しておりますので、分子と分母がグロス・グロス、あるいは分子と分母がネット・ネットで合わせた場合、どのくらいの数字になるのか、このモデル世帯の代替率は。それをちょっと教えていただきたいんです。

塩崎国務大臣 今先生からお配りをいただいているモデル世帯の所得代替率という資料、これは国会図書館作成というふうになっていますが、基本的にはここで出ているものと同じでありますが、分母と分子を、今言うグロス、名目でそろえた場合の所得代替率につきましては五〇・九%、お配りのとおりでございます。一方、分母と分子を可処分所得、いわゆるネットでそろえた場合の所得代替率につきましては、仮に機械的に、議員が配付をいただいております国会図書館が作成した資料と同様に、夫が六十五歳以上、妻が六十歳以上の無職世帯、この可処分所得割合を用いると、五三・九%、こうなります。

 仮に分母の賃金を名目といたしますと、つまりグロスといたしますと、例えば、名目の賃金が変わらずに保険料負担だけが上昇して可処分所得が減少した場合、分子の年金だけがそれに応じて減少する結果、現役世代の生活レベルと比較した年金の水準は変わらないにもかかわらず所得代替率が減少するといったことが生じて、物差しとしての役割が変わってくる、場合によっては役割を果たせないということもあり得るのかなというふうに思っております。

 しかし、いずれにしても、今先生からの御提起は、やはりそれなりの意味のあるお考えをお示しいただいていると思いますが、所得代替率をどのように定義するのかということについては、今までの連続性というのもありますし、何に重きを置いてこの代替率というものを使うのかということも考えなければいけないので、さまざまな方法があることは先生おっしゃるとおりだと思いますが、こういった点については、今申し上げたようなこれまでの物差しとして使ってきた代替率と、それを年金制度の改革に使ってきた、そこへのインプリケーションであったり、それから、今後変えることで何を言うことになるのかということなども含めて、こういったことを、次期財政検証に向けて、これは引き続き議論をしていくべき課題かなというふうに思うところでございます。

長妻委員 これは恐らく、厚生労働大臣が初めてこの数字の御答弁をされたんだろうというふうに思います。

 今までは、モデルの所得代替率、現在六二・六%、こういう数字だけが聞かされていたわけでございますけれども、正直言って、私も、今回お話を聞いて、計算をいただいて、ちょっと衝撃を受けました。ショックを受けました。非常にショッキングな数字だと思います。六二・六という数字ではなくて、グロスでは五〇・九パーだ、半分だと、現役の方々の賃金の。ネットでいうと五三・九、これもほぼ半分だと。もう相当低くなる。

 では、これは、最終的に今の法律でも、よく政府も答弁しているのは、いやいや、五〇%、所得代替率が半分を切るような見込みがあればちゃんと手当てをするから大丈夫なんだ、年金制度は。こういうふうにおっしゃって、ああ、では、半分は確保できているんなら、まあ、その後手当てを考えてくれるんなら半分ぐらいまで下がってもいいのかなと思う国民の皆さんもおられるかもしれないんですが、実態は全然違うということなんですよ、実際の数字、実感は。

 これは、塩崎大臣、仮に今のモデル所得代替率六二・六%が五〇%になったときに、グロス・グロス、ネット・ネットの所得代替率は大体どのぐらいになるか、出していただけますか。

塩崎国務大臣 やや専門的なことなので、今突然のお尋ねでございますので、明確に今お答えすることはできませんが、何ができるか考えたいというふうに思います。

長妻委員 やはり、これは本当に、実感で、さっき柚木議員も出していただきましたけれども、相当いろいろな保険料が上がってくるんですね。そうしたときに、もう本当に、実際は所得代替率、何パーになるんだと、最悪、今の法律で。五〇パーというのはモデルですから、物差しで、余りというか、ほとんど意味のない、私は、物差しとしては意味があるけれども、実感としては意味のない数字だと、それは多分共有していると思うんですよね。

 ですから、そこら辺がないから、この議論は、いやいや、年金は何か危ない危ないと言っているけれども、結構いいんじゃないのという議論が数字上は続いてしまうというふうに考えています。

 ちょっと、きょう国会図書館来られておられるので。

 OECDが所得代替率を比較する、あるいは米国とかイギリスとかほかの主要国は、日本はばらばらでありまして、分母がネットで分子がグロスなんですけれども、そういうばらばらで計算している国というのはあるのか、OECDとかほかの国はどうなのか、ちょっと御説明いただけますか。

堀部国立国会図書館専門調査員 お答えいたします。

 ただいまお尋ねのありました件でございますが、主要国、アメリカ、イギリス、スウェーデンの所得代替率の算出におきまして、私どもが調査した範囲においては、いずれもネット分のネット、グロス分のグロスというふうに計算されてございます。

 それから、OECD加盟国の計算方法につきましても、これも、私どもが調査した範囲におきましては同様である、このように考えられるところでございます。

長妻委員 今聞いた限り、私が国会図書館に世界を調べていただいた限りでは、日本だけなんですよ、こういうちぐはぐなのは。何か数字を大きく見せるような感じになっているので、この実感をちゃんといただくためにも、五〇%というのは、実際はネット・ネット、グロス・グロスではどのぐらいの感覚なのかということもぜひ出していただきたい。

 そして、これに関連するんですけれども、今、年金が、あるいは老後の生活が相当疲弊をしているということで、これもショッキングな数字なんですが。

 きょうは総務省副大臣に来ていただいておりますけれども、私、配付資料の六ページに配っている、高齢世帯の赤字が急に拡大しているということなんですが、これの説明と原因をちょっとお話しいただけますですか。

原田副大臣 お答えをさせていただきます。

 総務省の家計調査によりますと、二人以上の世帯のうち世帯主が六十五歳以上の無職世帯において、二〇一三年及び二〇一四年は赤字が拡大している状況が見られます。

 この理由といたしましては、社会保障給付の減少が挙げられる。また、二〇一三年には、翌二〇一四年四月の消費税率の引き上げに先立ちまして、駆け込み需要などの影響によって消費支出が増加したことが要因と考えられます。

 なお、二〇一五年は、社会保障給付や勤め先収入の増加によりまして、赤字幅は縮小している傾向があります。

長妻委員 これは、私も改めて見てショッキングなんですが、二〇一四年、初めて高齢世帯の一カ月の赤字が六万円を超えたと。安倍内閣になって六万円近くになって、それで二〇一四年に六万円を超えて、若干は下がりましたけれども、二〇一五年も六万円を超えたまま、こういうような状況で、今お話しのとおり、一つ大きいのが、社会保険料が上がったと。これは、恐らく、後期高齢者医療制度あるいは国保等々あると思うんですけれども。

 つまり、今の所得代替率であると、分子の年金額は額面ですから、全然、保険料が上がろうが何しようが関係ないんですよ。ですから、そこが本当に実態を合わせていかないといけないし、そもそも我々が今回、いわゆる年金カット法案について取り下げて、抜本改革を議論した方がいいと申し上げているのは、今の年金が年金の役割をもう果たすことができていないんじゃないのかと。それにもかかわらず、ちまちまちまちま、どんどんどんどんカットしていって、本当にいいのだろうか、年金だけを見て物事を論じていっていいのだろうかと。

 ことし三月には、生活保護に占める高齢世帯が初めて半分を超えました。私、相当危機感を持っているんですよ、生活保護にどっと流れ込んでくるんじゃないのかと。

 しかも、これは、実は捕捉率調査というのも厚労省がいたしました。それによると、本来は、データ的にはあと三倍ぐらいの生活保護の方が申請すれば受けられる可能性があるけれども、ある意味では三分の一になっている、捕捉率。つまり、生活保護を受けずに我慢しようという方が非常に多くおられるという実態でありますから、このまま年金制度をほったらかしておくと、どっと生活保護が急増しかねないと思うんです。

 塩崎大臣、生活保護の将来予想というのはどのくらいになっているんですか。

塩崎国務大臣 盛りだくさんの御質問をいただいたので、お答えをしたいと思いますが、冒頭、所得代替率についての定義の問題提起がありました。

 それは、先ほど申し上げたとおり、次期財政検証に向けて課題の一つとして検討することだということを申し上げたわけでありますが、さっき申し上げたように、いろいろな角度で見なければいけないということであります。それは、例えば、OECDでは単身の所得代替率を見ますけれども、日本の場合には夫婦二人というのを見ていくというようなこともございます。

 平成十一年から、先ほどの、ネット分のグロスとなっている今の所得代替率をずっと使ってきた。言ってみれば先ほどの、物差しとしての役割はあったわけでありまして、この給付水準のあり方を連続性を持って見るという意味においては、これもまた意味のあることだろうというふうに思います。

 それから、先ほど総務省から答弁をもらいましたけれども、この黒字、まあ赤字というか、六十五歳以上の無職世帯の最後の三年間について、あたかもアベノミクスがこのような結果をもたらしたかのようなふうにも聞こえかねないような御表現がありましたが、これは、社会保障給付の内訳には公的年金それから生活保護などが含まれているわけで、社会保障給付が対前年で減少を続けている二〇一三、一四あたり、これに関しましては、実は、これは先ほど、私どもとしても高く評価をしている民主党政権時代の特例水準の解消というのがあって、これがちょうど一三年度から一五年度にかけて解消され、その影響が大きく出ているということがございまして、将来世代の給付水準の確保のために必要な措置として行われている、こういうことの調整を先送りしないで素早くやっていこうということが、今回の提案の、将来世代を考えた我々の手だてであるわけでございます。

 それから、生活保護の推計の話をいただきました。

 生活保護制度は、利用できる資産、能力、その他あらゆるものを活用することを要件として、また、扶養義務者による扶養、あるいはその他の制度の給付というものが優先をされることになっています。

 したがって、今後どのくらいの方が生活保護を受けることになるかについては、高齢者の世帯構成の変化とか就業の状況などの経済情勢、個人の資産の状況、あるいは扶養関係など家族の関係など、さまざまな要因、要素の影響を受けるために、正確に見通すということはなかなか難しいというふうに考えるべきかというふうに思うところでございます。

長妻委員 いや、私の懸念は、生活保護が今後、六十五歳以上の方の急増、予想を超えた急増があるのではないか、このままでいくとですね。そういう問題意識と、先ほどの赤字幅についても、七ページ目に内訳を載せておりまして、やはり、社会保険料の高騰というのが、値上がりというのが大きくきいているわけでありまして、今、一カ月六万円でありますと、例えば一千万円貯金があっても単純計算すると十四年でその貯金は枯渇してしまう、こういう計算にもなるわけで、そこで抜本改革が必要だということを我々は主張しているところであります。

 これを、三年間、安倍内閣はサボってきたというふうに私は強く考えるところで、どうしてかということなんですが、そもそも御記憶をたどっていただきますと、三党合意に基づいてこれは法律ができました。社会保障制度改革推進法案という、これはもう法律です。法律の中に「公的年金制度」という条文がありまして、今後の公的年金制度については、社会保障制度改革国民会議において議論し、結論を得ると法律に書いたんですね。

 その国民会議が平成二十五年の八月六日に報告書を出しました。これが法律に基づく報告書。これは三年前でありますけれども、そこに、「将来の制度体系については引き続き議論する」、こういうふうに報告書に書いてあります。この意味は、将来の制度体系というのは抜本改革のことで、今予定されている、私に言わせると微修正改革ではなくて、制度体系全体を見直す抜本改革については引き続き議論する、こういうことが明記されているのでありますが、この三年間、政府の中において全然議論されていない。

 議論されているのは、今回突然出てきた、年金をちまちまちまちまカットする、年金の範囲内で。そればかりの議論は先行するんですけれども、この抜本改革の議論は、この三年間、政府の中でやられていないわけでございまして、ぜひその議論をしていただきたい。

 予算委員会でも、安倍総理と質疑いたしましたら、抜本改革の議論は拒むものではないというような趣旨の御発言もされておられますので、ぜひ塩崎大臣の御決意をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほど御指摘をいただいた社会保障制度改革プログラム法、ここに、公的年金制度の検討課題というのは、四つ明確に書かれております。

 これは、国民年金法及び厚生年金保険法の調整率に基づく年金の額の改定の仕組みのあり方とか、短時間労働者に対する厚生年金のいわゆる適用拡大、それから高齢期における職業生活の多様性に応じて一人一人の状況を踏まえた年金受給のあり方、高所得者の年金給付のあり方及び公的年金等控除を含めた年金課税のあり方の見直しということであります。

 先ほど、この国民会議の報告書にもございますけれども、「年金制度については、どのような制度体系を目指そうとも必要となる課題の解決を進め、将来の制度体系については引き続き議論するという二段階のアプローチを採ることが必要である。」こういうふうになっているわけであります。

 それで、これは、例えば一体改革の議論、盛んに行われていた平成二十四年五月の当時の野田総理の答弁を見てみても、この制度が破綻している、あるいは将来破綻をするということはございません、これは、平成二十一年の財政検証でも収支の長期の見通しは立っておりますので、破綻をすることはない、こういう制度は、基本的には、これは国民の老後の根幹をなすものでございますので、しっかり守っていきたいと思います、その上で、改善をどうするかという議論を深めていきたいというふうに思いますというのが、平成二十四年五月の当時の野田総理の御発言でございました。

 したがって、抜本改正について今お話があったとおり、この国民会議の報告書でも二段階のアプローチというふうに言っているわけでございますので、総理も否定するわけでも何でもないということを申し上げているわけで、ぜひ、そういうことであれば、御党の財源を含めた抜本改革の案というものを出していただいた上で議論が行われるようにすることが、私どもとしてもありがたいところではないかというふうに思うわけでございます。

長妻委員 こういう話になると、政府は案は出さない、野党出してくれというような話に聞こえるわけでありますが。

 野田総理がおっしゃっているように、破綻ですね、私も今の年金制度が破綻するとは申し上げておりません。そうでなくて、国民生活が破綻するんじゃないか、こういうことを申し上げているところでありまして、これは、確かに二段階のアプローチとありますけれども、これは抜本改革の議論も入っているわけですからね。こっちの片方が全然やられていないわけですよ、今。それをぜひ本当にやっていただかないと、日本の老後、これは本当に大変な状況になるんじゃないかということなんです。

 そこで、年金の制度について、我々はかつて、御存じのように、最低保障年金、こういう、年金の中での抜本改革案を提出しました。これは私も当事者で、今の安倍内閣になってからも三党協議が続いて、ただ、年金の抜本改革案、特に旧民主党案は、これはもう採用しない、移行期間が長過ぎる、こういうような自民党のお話だったわけであります。

 私自身はやはり、この最低保障年金、これが最適だと思いますが、ただ、合意を得るために、ではこれにこだわらずに議論するということも私はあってもいいと今は思っているところで、例えば、最低保障年金は移行期間が長いという御指摘でありますけれども、福祉で今の最低保障の機能を確保する、こういうやり方も検討に値するんじゃないか。かつて日本には、福祉年金という、最低保障機能、掛金は出さずに、年金額が少ない方に福祉的に年金を支給する制度がありました。実は今もあります。百歳前後の方に支給されておりますけれども。

 こういう制度を見て、本当に真摯に、財源も、我々は、お金に余裕のある方々、例えば、金融所得について税率を二〇から二五パーに上げる、所得税の累進も強化する、これもこの前の参議院のマニフェストにも書きましたけれども、そして、将来の財源についても、ポスト税と社会保障の一体改革、こういうことも議論したらどうだ、こういうことも申し上げているところであります。

 この八ページをちょっと見ていただきますと、私自身も大きな問題意識がありますのは、先進国の中で日本が非常に公的扶助では珍しい形になっているんじゃないのか。つまり、問題意識は、年金の次にいきなり生活保護、フルセットの生活保護がある、日本は。その間に、防貧機能、貧困を防止する機能が年金とフルセットの生活保護の間にないんですよ、日本が。私は、日本は相当……(発言する者あり)いや、雇用保険は、だって、高齢者ですからね、高齢者。高齢者に今限定しているんですが。

 この八ページ目を見ていただきますと、これも国会図書館に世界を調べていただくと、できる限り調べていただきたいということを申し上げたわけで、主要国ですね。そうすると、全部が高齢者用の生活扶助、公的扶助のような制度があるんですよ。日本だけが、この表では若い人も高齢者も全員一緒くたの生活保護、しかもフルセットの生活保護、こういう丸抱えの生活保護、こういうことがいきなり出現していくわけです。

 生活保護の条文を読んでみました。第一条、生活保護というのが、これは、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とするというんですよ。自立の意味は、その生活保護の制度から抜け出る、その自立を助長するというのが生活保護法の第一条の目的なんですね。ところが、八十歳、九十歳の方が生活保護に入って自立を助長するといったって、生活保護制度から出られないわけですよ。仕事を探せといったって、九十、八十でなかなか仕事はできないわけでございます。

 そこで、アメリカも、高齢者、障害者向けの補足的所得補償というのがアメリカにもありますし、イギリスにはペンションクレジット、年金クレジットという制度がありまして、これは、年金という名前がついておりますけれども、高齢者版の簡易ミーンズテストのある生活保護、保険料は要りません。ことしの二月現在で合計二百四十万人の高齢者がこれを受給しています、ペンションクレジット。

 フランスには高齢者連帯手当というのがあって、これは無年金者への措置でありまして、今回も二十五年から十年の短縮、年金資格はありますけれども、それでもまだ救われない無年金者はたくさんおられます。そういう意味で、例えばフランスでは、六十五歳以上の高齢者に所得制限つきで支給される最低保障年金として、単身者で年額百二十万円、これがある。

 ドイツには、高齢者・障害者基礎保障というのがあって、これは対象は障害者及び高齢年金受給開始年齢以上の高齢者、みずからの所得、資産により必要な生計を賄うことができない場合、申請によりこれが受給できるということで、ドイツでは四十四万人が受給されておられるわけであります。

 ぜひこういう下支え機能をきちっと確保しないと、日本の生活保護を含め老後の世界が相当大変なことになる。老後は、若い人も見ていると思うんですね、現役世代の方も。自分の老後がこんな老後になるんだったら本当に意欲が出てくるのかということもよくよく考えながら、年金局なら年金局、保護課なら保護課、これが別々に議論するんじゃなくて、年金局と生活保護の部署、あるいは、さっき柚木議員が言ったように、介護保険とかほかの保険料も縦割りで、一体お年寄りがどれだけ貧困になっているのか、どういう状況になっているのか、一体幾らあれば生活できるのかがわからないんですよ、これ。

 ですから、コアの部分としては年金局と生活保護の部署が一体となって、高齢者の生活の最低限度をどうやるんだ、こういう議論をやはり始める必要があると思います。そして、年金の中の抜本改革ももちろん並行して進めていく。こういう総合的にお考えいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

塩崎国務大臣 いろいろな諸外国の制度から学ぶというのは私たちもよくやることですし、踏まえて、他の方々の知恵はおかりをするというのは大変有効だと思います。

 ただ、今御説明をいただいた諸外国の制度は、恐らく、全部について詳しく知っているわけではございませんけれども、財源がしっかりあるんだろうというふうに思います。最低保障年金の問題も、やはり財源についての御説明がもっと必要なんじゃないかという御意見をよく私も聞いたところでもございますし、今のドイツとかイギリスの制度などについても、必ずしも保険制度でやっていない、年金制度に基づくものであったり、いろいろあると思うので、そういったことではやはりトータルに考えなければいけないので、それぞれの国によって違うのではないかと思います。

 ただ、今、長妻委員おっしゃったように、生活保護は生活保護、年金は年金、そういうことではやはり、一人一人生きていらっしゃる方々をその方トータルとして見ていくという意味においては、今御指摘のような問題意識はしっかり私どもも持って、省内縦割りみたいなことをやるのではなくて、一人一人の方々の暮らしに焦点を当てながら、ケース・バイ・ケース、いろいろありますけれども、それに対応するように総合的に判断していくというのは大事な問題意識だなというふうに私も思ったところでございます。

 一方で、一体改革について振り返ってみると、今先生が御指摘をいただいたような問題意識から、あの時点としてトータルパッケージとして出てきたというものではないかというふうにも思っていますので、先ほど来何度も申し上げているように、私どもとしては、一体改革の哲学、三党合意の哲学を今一つ一つ実施に移すということが、今お話をいただいたような高齢者で低収入の方々への配慮にも行き着くところだろうというふうに思いますし、何度も申し上げているように、社会保障全体で見ていくことと、これは働くということに関してはもちろんできる範囲内ではありますけれども、そういったことも含めて考えるという総合的な見方を持っていかなければいけないのではないかというふうに思います。

長妻委員 財源についても、我々旧民主党のときに、政権のとき、最低保障年金について、消費税換算すると、三パターン出して、きちっとその財源の税率も出しております。

 やはり、塩崎大臣、ちょっとつらいとは思いますけれども、消費税一〇%の後、社会保障を本当にどうするんだというのは、これはやはり言いづらいと思うんですよ、野党も与党も。ただ、これはそろそろ議論し始めないと、財源がないないといって、ちまちまちまちま全部切っていったら、制度が破綻する前に本当に国民生活が破綻しちゃう、そういうふうになると思うんです。

 塩崎大臣、ちょっと率直に、最後、一問だけ聞きますけれども、これからも消費税率一〇%で社会保障を維持できるというふうに思われますか。

塩崎国務大臣 ちまちまやるだけではだめだということでございます。

 しかし、先ほど、当時の野田総理もおっしゃっていたように、まずは改善をして、それでツーステップでいけという国民会議の話にあるように、抜本的なことも考えるということであります。

 これから一〇%で間に合うのかという話でありますけれども、まずはその範囲内で何をやってどこまでいけるのかということを徹底的にやって、一つ一つやるべきことをやっているというのが現状でありますから、今お出しをしている二つの法案についてもぜひ有機的に結びつけて御議論をいただいて答えを出していただくとともに、やはりそこから先についても御一緒に考えて、提案型の政党に脱皮をするということであれば、また我々も勉強させていただきながら、これから高齢社会がさらに進んでいくわけでありますから、こういったことを踏まえてみればさまざまな選択肢を考えていかなきゃいけないというふうに思います。

長妻委員 非常に何か心もとない。

 本当に将来、社会保障費が二〇二五年にまず第一段階のピークを迎えるわけですよね、団塊の世代全員が七十五になって。二〇四二年には六十五歳以上の人口が最大数になる。私は、このままいくと本当に財政破綻の危機、あるいは社会保障が本当に破綻をして国民生活も破綻の危機に見舞われる可能性があるというふうに思っておりますので、そういうことについてもきちっと政府として、野党が案を出せ出せだけではなくて、政府の中も責任を持った議論をしていただきたい。

 ちまちまちまちま削るだけで、後は野となれ山となれみたいな感じをちょっと受けるわけですよ。だから、一旦こういう法案を取り下げて、全体像を、木を見て森を見ず、森を見ていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 よろしくお願いします。

丹羽委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 年金の話はよくようかんの話に例えられます。

 世代間公平の話は、これはどの党であっても非常に年金を考える際に重要かつ難しい問題だと思っております。給付を削るという話はどの政権も非常にやりにくい話ではありますが、ただ、そのことが将来世代の給付の原資になるとすれば、現役の今の高齢者の皆さんにどれだけ我慢していただくのか。これが将来の財源になるからこそ、一体幾ら減るのかという議論については、やはり新たな制度、法案をつくる際にはしっかりとした議論をしていく必要が私はあると思っています。

 今回、ちょっと整理をしたいんですが、何が新しくなるのか。大きく二つありますけれども、賃金スライド、物価スライドの新しいルールと、マクロ経済スライド自体の強化の中身、この大きな二つが柱になっています。

 その前者の方で、同僚の井坂議員が示したように幾つか、賃金と物価の関係で六パターンあるうちの、井坂議員の言葉で言うと第四と第五のケースが新たに二つ加わる。

 では、何が加わるかというと、改めて整理をしましたが、私も予算委員会で一度示しました。下に物価が上がっても年金カットというふうに書いていますが、一つわかりやすいのは、物価が上昇して賃金が下落する際にこれまでどうしてきたかというと、既裁定の人も新規裁定の人も据え置いていました。それを今度は賃金下落に合わせて既裁定の人も含めて賃金下落率まで下げるということで、新たな減額のルールが入るということですね。

 もう一つは、物価も賃金も下がるけれども物価以上に賃金が下がるというときに、これまでどうしてきたかというと、物価下落までの範囲でマイナス改定をとどめていたのを、賃金下落の範囲まで既裁定も新規裁定も下げていく。

 この二つの、ある種下げ方が強化されるパターンが新たに入ったということであります。

 ですから、この新しいルールを適用したときに、では一体どれだけ、特に既裁定の方、現に年金を受けている方も含めて高齢者の年金が減るのか、そのことがひいては将来世代の年金の確保につながっていくので、ではどれだけ減るのかなということを、法案を出す以上、きちんと示してはどうですかというのが最初でありました。

 我々も責任政党として、言うばかりではなくて、厚生労働省にいただいた資料をもとに、これぐらいになるのではないのかなということで試算したのが、過去十年もし適用したとしたら率にして五・二%追加で減る、これは井坂議員が示しました。それを、二〇一四年のモデル年金ケース、国民年金でいうと六万四千四百円、厚生年金でいうと二十二万七千円に当てはめて機械的に計算すると、それは年間四万円、月額三千三百円、厚生年金でいうと年間約十四万円、月額に直すと一万一千八百円になるということをお示ししたわけであります。

 これについてはさまざまな意見や御批判をいただいたので、では政府としてもお出しをしてはいかがですか、その中でしっかりと議論を深めていってはどうですかというのが予算委員会等を通じた我々としての提案でありました。

 そこで、お伺いいたします。

 政府からも一定の試算が出てまいりました。お手元にお配りしている資料四、一枚紙を入れております。文章がいっぱい書いてあって、真ん中にグラフがあって、最後にまたいろいろ書いてあるということでありますが、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 我々、過去十年間を振り返ってみて、これを適用した場合、現行の改定ルールと比較をして新ルールを適用した場合に、政府試算では具体的にどれだけ追加でマイナスになるのか。三%低下するというような記述がありますけれども、それでいいのかどうか、お答えください。

塩崎国務大臣 今回の試算は、民進党のお求めがございまして、仮に今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施された場合の仮定の計算ということで、試算を機械的に行ったわけでございます。

 そもそも、民主党政権時代も含めて、平成二十六年度までは、いわゆる特例水準と呼ばれる本来より高い年金額が支給されてまいりました。これが解消されていない限りは、仮に今回の改定ルール見直しが実施されたとしても改定額が減ることはないというのが今までのルールでありました、特例水準の。

 なお、今回は、特例水準は解消したという前提を置いて機械的に試算を行ったということで、先ほど来二%の問題が指摘をされておりましたけれども、そういうやり方でございますので、政府試算は、今回の額改定のルールの見直しが行われる平成三十三年度には可処分所得割合の減少分の影響はもはや生じないということを置いた上で当該影響を織り込んでおらないということでありまして、結果として二%の差が生まれてきているというのが今回の試算の結果でございます。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

玉木委員 では、もう一度シンプルに確認します。

 この厚生労働省の四の資料の一番最後の丸のところで、一行目の最後、赤線を引いています、「今回の見直しが、仮に平成十七年度から実施されていたとしたならば」、一行飛んで、「累積の影響で三%低下していた」、これは正しいですか。

塩崎国務大臣 そのとおりでございまして、三%低下していたと見込まれる一方で、七%、基礎年金の水準は、現役世代の将来の水準としては上昇するという結果がセットで起こるということを申し上げているわけであります。

玉木委員 少し議論を深めていきたいと思います。

 ちょっと細かいんですが、資料の六をごらんいただきたいと思います。

 一番上に、これは厚生労働省からいただいた資料をもとに、単に機械的に置いているだけです。平成十九年度から二十八年度の十年間の物価の改定率と賃金改定率をずっと書いております。

 その下に「現行ルール」という欄がありますけれども、これは、こうした物価と賃金のパターンがあったときに、今回の新しい法律が通れば六パターン調整の仕組みができますけれども、今は、二パターンない、先ほど示した二つを除いた四パターンの調整のルールしかありませんから、こういう場合はどうなるかというと、例えば、平成十九年度、物価が〇・三上がって賃金が〇・〇でとどまる場合は、これは低い方の賃金に合わせて〇・〇の改定になるということで、このパターンだと現行ルールそのままになるわけですね。

 ところが、わかりやすいので例えば二十二年度を見ていただきましょうか。二十二年度だと、物価もデフレで一・四%下がりますね。それ以上に賃金の方がめり込んでマイナスになって二・六下がるというパターンです。先ほど示した二番目のパターンですね。井坂さんで言う四のパターンですね。

 このパターンだと、現行ルールだと、賃金が二・六下がるんだけれども、既裁定の人も含めて一・四までしか下げないので、二・六賃金が下がっているけれどもマイナス一・四でとどめますということで、現行ルールならマイナス一・四でとどまります。ただ、これだと調整がきかないので、今回ルールを入れて、新しいルールを導入した場合は、一・四ではなくて、賃金のマイナスの方に新規裁定も既裁定も合わせて下げていきますから、二・六%と一・四、現行の一・四の差の、追加の一・二%分がさらにめり込んでマイナスになっていくということであります。

 こういうケースが、つまり、新たな二つのルールが適用されるのが過去十年何回あったかというと、先ほど長妻議員からもありましたけれども、十年のうち六回ありました。しかも、ここに、この青地のところの黄色で書いてあるところ、六つ数字が並んでおりますけれども、このうち、マイナス〇・四、マイナス一・二、マイナス一・五、マイナス一・三、マイナス〇・六は、賃金の方が物価より下がるという、井坂さんの言う第四のケースであります。

 平成二十八年度だけ、上を見ていただくとわかるんですが、物価がプラス、でも賃金がマイナスで、今までだったら既裁定も新規裁定も〇・〇に据え置くところが、新しいルールだと、賃金のマイナスに合わせて、既裁定も含めてマイナス〇・二にするという、井坂さんで言う五のケースですね、そのケースが適用される。

 過去六回新しいルールが適用されて、五回は第四のパターン、一回だけ第五のパターンということで、こういうことが追加で、新ルールでマイナスになるので、累積のマイナスを足し込むと五・二%になって、これを先ほど申し上げたような国民年金、二〇一四年のモデル年金額の六万四千四百円に当てはめると、月額三千三百円、年間四万円になるというのが、我々の示したものでありました。

 少し長くなりましたけれども、ここで、塩崎厚生労働大臣に伺います。

 政府試算において、このように新しいルールと旧ルールを比べたときに、新しいルールが新たに適用されるのは十年間のうち何年ありますか。

塩崎国務大臣 お配りをした試算、きょう今、先生がお配りをしている四でありますが、そこの下の方に、米印の一というところがあって、「可処分所得割合の減少分(マイナス〇・二%)の影響を織り込んだ井坂議員配布資料と比べて二%程度の差が生じている。」という、この〇・二の引き下げ分が三十三年度からはなくなるわけで、そのルールを適用しているということで、今の、お配りいただいている資料六の賃金改定率、それぞれ、これは本来マイナス〇・二を差っ引くということをやっているのが私どもの試算であって、それは新しいルールでも、保険料率が上がっていくことによる可処分所得が減るというその効果がもうなくなっているという前提での数字になっているわけであります。

 今、何回かということでありますけれども、五回でございます。

玉木委員 いや、五回というのは、ちょっと持ってくださいね。ちょっと質問しますね。四の資料の中のグラフがあるところの上に、「今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていたとしても、特例水準が解消されない限り、当該ルールによる年金額の減額も起こらない。」と書いてあって、これは、減額の新しいルールは特例期間中は適用しないということではないんですか。五回もないんじゃないんですか。いかがですか、政府試算上。

塩崎国務大臣 これは本来、特例水準があればこういうルールはなかなか適用できませんよということですけれども、これは、この特例水準というのはもう存在しないということを前提にしているという意味でございます。

玉木委員 いや、それは新ルールになったら、特例水準はないものとして計算していますけれども、過去を計算してさかのぼっているときは、これは特例水準があるから新しいルールは適用しないということで計算しているんではないですか。(発言する者あり)ちょっと時計をとめてください。一回整理してください。

とかしき委員長代理 では、筆記をとめてください。

    〔速記中止〕

とかしき委員長代理 筆記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 資料四の上から四つ目の丸に書いてあるのは、要は、特例水準が解消されない限り当該ルールによる年金額の減額も起こらないと言っているわけですけれども、これは機械的に起こせということでありますから、下の丸で機械的に当てはめてみて、五回のケースにおいてそういうことが起きるということで計算をして、二%の差が出てきているということでございます。

玉木委員 五回のケースは何年と何年と何年ですか。

塩崎国務大臣 二十年度、二十二年度、二十三年度、二十四年度、二十五年度、この五年度でございます。

玉木委員 私が示した年と同じなんですが、当然同じになります、ベースが同じですからね。それぞれ、新ルール適用による追加の減は、私が示した〇・二、マイナス〇・四、マイナス一・二、マイナス一・五、マイナス一・三、マイナス〇・六は、それぞれ政府試算では幾らになりますか。

塩崎国務大臣 先生がお出しになった資料六のこの黄色の部分、それが同じじゃないかというお話でありますが、御質問がちょっと今よくわからなかったんですが、この一番右のマイナスの〇・二というところは、先ほど申し上げた、可処分所得割合の減少分というのを除いて見るとここが変わってくるので、先生の場合には六年度ですけれども、私どもの場合には五年度、こういうことになって、二十八年度は当てはまらないということでございます。(発言する者あり)

とかしき委員長代理 済みません、もう一度質問の方をよろしくお願いいたします。

玉木委員 二十八年度だけ可処分所得割合の影響の話をしますけれども、それは全部に当てはまります。

 だから、そこだけ話しても、私はそういうことを聞いているのではなくて、私の資料六の、これは我々が計算したものですから、我々は間違っているかどうかわからない、ただ、信じていますけれども、この青に黄色で書いてある、新しいルールを入れることによって追加で、これは適用がある年とない年があります、先ほどのような賃金と物価のパターンによって。ただ、我々は、過去六年あって、平成二十年がマイナス〇・四、二十二年度がマイナス一・二、二十三がマイナス一・五、二十四がマイナス一・三、二十五がマイナス〇・六、二十八年度がマイナス〇・二、それぞれ追加で新ルールに基づいて減額幅が大きくなる、それを累積のマイナスで五・二になると言ったので、この黄色に当たる数字が政府試算ではそれぞれどうなっているのか。

 二十八年度については、可処分所得割合の減のことを入れれば、計算上、マイナス〇・二ですから、そこに〇・二プラスで〇・〇になるのはわかりますが、私の質問は、残りの五つのところが政府試算では具体的にどのようなマイナスになっているのか、各年の数字をお答えください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、可処分所得割合の減少分マイナス〇・二というのを除外して見るということを各年度についてやっていくということでありますから、例えば、数字を申し上げれば、十九年度はプラス〇・二、二十年度はマイナス〇・二、それから二十一年度はプラス一・一、二十二年度はマイナス二・四、それから二十三年度はマイナスの二・〇、次はマイナスの一・四、それから二十五年度がマイナスの〇・四、二十六年度がプラスの〇・五、二十七年度はプラスの一・六であります、二十八年度は〇・〇ということでございます。

玉木委員 それは新ルールによる影響ではありませんね。

 つまり、新しいルールを適用したときの追加の影響をそれぞれ聞いているので、これはある種、全ての年にひとしく、だから、分ければ、私もわかっているから書いているんです、可処分所得割合の減を入れれば、それぞれ下げていけばいいということで、それはわかっています。

 私が聞いているのは、現行ルールと、新ルールを適用したことによる、英語で言うとマージナルな、追加的な影響がどうなのかと。

 それが、私はこういうふうに書きましたけれども、もし可処分所得割合を入れろと言うのだったら、それぞれプラス〇・二を足していけば、我々のも減って、四・〇になりますから、それは我々もできます。

 聞きたいのは、その根っこになる、政府試算のもとになる、政府は追加で新しいルールを入れたら、それぞれの年でどれだけ減ったのかということを教えてもらいたいんです。可処分所得割合のことを聞いているのではありません、それは後で足せば全部計算できますから。根っこの数字を教えてください。

塩崎国務大臣 井坂試案というのが最初に出てきて、マイナスの五・二というのが出てきたわけですね。その中で、私どもは、新たに試算を出すようにということで、お出しをしました。

 これは先ほど申し上げたとおりであって、三十三年度以降には可処分所得割合の減少分の影響というのは生じないわけでありますので、井坂提案にプラス〇・二していただいて、ずっと足し上げていただければ、基本的に、申し上げている三%になるわけでございます。

玉木委員 本当ですか。

 そうすると、我々がここに計算した、可処分所得割合の話は除きますね、除いたときの、では、この青地に黄色で書いているのは、基本的に政府も同じだという理解でよろしいですか。

塩崎国務大臣 さっきお読み上げしたとおりの数字を私どもは持っているわけでありまして、必ずしも同じというわけではございません。

玉木委員 各年の六回、最後の、二十八年度も、私は入っていると思うんですけれども、なぜか入っていないということになっているんですが、過去五回の可処分所得割合の減の影響を除いた、私、ここの可処分所得割合の減の話をするのは、これは新ルールの話じゃないですから。皆さんはそれを、影響を織り込まないで〇・二%分底上げしたいというのはわかります、これは。底上げする前のデータをそれぞれ五カ年分教えてください。(発言する者あり)

とかしき委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

とかしき委員長代理 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 これは玉木委員がおつくりをいただいた新ルールと書いてあるものに数字が並んでおりますけれども、私どものさっき読み上げたのはこれにプラス〇・二したものでございますので、そういう意味では、新ルールとしてお書きをいただいている数字がそれを除いたものということであります。

玉木委員 大丈夫ですか。

 では、基本的に、まず単純に可処分所得割合の話を除けば、我々が出したこの数字は正しいということでよろしいですね。この数字自体は正しいですね。

塩崎国務大臣 今私はそのように申し上げたつもりであります。

玉木委員 ありがとうございます。明確になりました。

 可処分所得割合を、〇・二%をどう扱うかというのは、これは解釈の問題みたいなところはあると思うんですね。ただ、過去十年間に適用してみると、やはり五・二%分、国民年金でいうと月額三千三百円、年間四万円減るような規模のルールが入ってくるということであることは今厚生労働大臣から明確にお認めをいただいたということで、感謝を申し上げたいと思います。

 次の質問に移りたいと思いますが、もう一つ言うと、平成三十三年以降はそもそも、平成三十三年以降にならなくても保険料の上昇はとまりますから、可処分所得割合の話は出てこなくなるわけでありますから、その意味では、将来出てきませんから、過去のことを振り返ってやるときも、条件を同じにするんであれば、可処分所得割合はその影響を除いて計算するというのが私は正しいのかなと思いますから、その意味では、井坂議員が出したこの五・二%減、国民年金で四万円、厚生年金で十四万円、それぞれ年間で減るということを政府にもある程度お認めいただいたと思います。

 次の議論に移りたいんですが、我々は年金カット法案というふうに呼んでいますけれども、これは、単に今削るから年金カット法案と言っているんではなくて、私は、一番やはり問題が大きいなと思うのは、冒頭、ようかんの話をしました。保険料と運用利回りと国庫負担分の税金の三つの材料を使った一定の面積のようかんをどの世代がとり合うのかというのが、とるというか、給付を受けるのかというのが、この年金財政の根本的な問題だというふうに思っています。ですから、現役世代が制度が予定している以上にとり過ぎれば次の世代は制度が予定したよりももらえなくなるのでバランスをとりましょう、この話はよくわかります。

 我々が提案したいのは、そもそもこのようかんがその体積あるのかどうかということに疑念があるということです。きちんとした縦、横、長さのようかんがあれば、ちょっと今の世代が食べ過ぎたら次のが少なくなるからという話があるんですが、そもそも次の世代のようかんは、あるように見えて実は細くなっているか、ないか、エアようかんかエア年金みたいになっている可能性があるんではないのかというのが心配で、それなのに、今を削って将来のためといったら、今も削るし、では将来それでふえるのかと思ったら、もともと予定されたものがない。このことの不信感が、やはり一番大きな問題。私は、これをどう払拭するかが与野党を超えて政治家に問われていると思っております。

 そこで、申し上げます。将来の、百年安心ということでバランスをとるということにしているんですが、資料の七をごらんください。

 これは一度ぜひ聞きたいなと思っていたのは、経済が成長していく、経済成長は大事ですね、二つの意味できいてきます。一つは、まあ、三つの意味でききますけれども、まずは景気がよくなって賃金が上がれば、その賃金というのは保険料のもとですから、賃金が上昇する、保険料が入ってくる。景気がよくなれば運用もよくなって、では運用の利回りもよくなる。税金が上がれば税収も制度を変えれば上がってくるかもしれない。ですから、どういう経済成長をするかというのは、ようかんの体積を決める上で極めて大事なんですね。

 厚生労働大臣にお伺いします。

 大臣御存じのように、成長は三つの要素で成り立ちます。労働投入と資本の投入、それと生産性の向上、これは基礎的な成長の三要素でありますね。人口は、こういう日本ですから、何十年先もある程度わかっています。労働投入、女性、高齢者、外国人、この労働市場への参画があれば多少上がりますが、一定程度これは限定されています。その中で、成長を決めていく大きな要素、つまり年金財政のもととなる重要な要素は、生産性の向上です。

 これが財政計算でどのように置かれているか。七を見てください。内閣府がやっている経済再生ケースと内閣府の参考ケース、二つのケースでういんと伸びていますが、二〇二三と二〇二四で非連続な断裂があります。ずっと伸ばすんですけれども、それぞれそこから幾つかのパターンに分かれていますが、参考ケース、経済再生ケース、いずれも、そこにたどり着いたのがピークであって、後は下がる一方なんですね、どのパターンも。順調に伸びてきているのに、何で二〇二三年まで上がっているのに二〇二四年からやたらめったら下がるんですか。何か成長率がぐんと下がるようなイベントがそこにあるのか、あるいは逆に、二〇二三年までの経済の見通しが過度に楽観過ぎるのではないか。なぜ非連続が起こるのか、お答えください。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 まず、生産性の話に行く前に、先ほど、資料二の、国民年金で四万円減とか厚生年金十四・二万円減を私どもが認めたかのような表現がありましたが、これはあくまでも、私たちが三%と言っているのは、機械的にあり得ない条件ではあるけれども計算をしてみたということだけでありますし、こういう数字がひとり歩きをするようにいたずらに不安をあおるというのは責任政党としていかがなものだろうかと私は思います。

 今、平成二十六年財政検証における経済前提についての御指摘だと思いますが、これは、平成三十五年度までは、御案内のように、内閣府が行った中長期の経済財政に関する試算に準拠して設定をしておりますし、平成三十六年度以降は、今お話がありましたけれども、内閣府試算を参考にしながら、経済、金融の専門家による検討を経て、中長期的な視点に立って置かれている前提でございます。

 これはもう言うまでもなく、社会保障審議会年金部会のもとに設置した専門家によってつくられている専門委員会において客観的な議論を経て設定されたものであって、前提が非現実的ということではないということであります。

 今、生産性が何でここで不連続なんだという御指摘でありました。これは、内閣府の試算は今申し上げたとおり十年先まで行われているわけでありますので、これを基本として、しかし、私どもは八つのケースを設けていまして、例えば、一番上のケースでいけば、これはバブル期の約十年間の平均であり、それから、一・〇というところでは、バブル期プラス失われた二十年、この三十年の平均であり、失われた二十年の平均程度というのがその下のレベルでございます。

 そういうことで、いろいろなケースを想定して、それぞれどういうことになるのかということをお示ししながら、年金の運用のあり方について絶えず検証をしていくというふうになっているわけでございます。

玉木委員 全く理解できませんね。

 百年安心ですから、なだらかな生産性の向上曲線が引かれるべきであるのに、二〇二三年と四年の間でこんなに非連続になるような財政計算で本当に大丈夫なんですか、ようかんの体積は予定どおり確保されているんですかということが問題なんですね。

 ちなみに、資料の八を見ていただきたいと思いますが、これは、TFPと言われる、トータル・ファクター・プロダクティビティーという生産性上昇率の一つの指標でありますが、これをプロットしてみました。青い丸の線は過去の実績であります。経済再生ケースとベースラインケース、さっき言った参考ケースですね、内閣府に資料をいただきまして、これをプロットしてみたんです。皆さん、これは本邦初公開なんですけれども、この生産性の向上で実は全ての内閣府のマクロの計算がされていて、加えて、それに基づいて年金の財政計算も行われているんです。ちょっとこれは異常だと思いませんか。

 確かに、絶対値として二台の生産性の上昇率というのはバブル期にありました。しかし、二〇二〇年に向けて生産性が向上していくようなこの傾きは、過去一度もありません。

 これは内閣府を疑うわけではありませんが、六百兆という目標が総理から、官邸から言われたので、多分唯一いじれる、難しい言葉で言うと外生的に与えられる数字はTFPなんですよね。そうすると、六百兆になるように逆算すると、こんな無理な生産性の向上のラインを描かないと六百兆にたどり着かないんです。

 もっと罪深いのは、昔は年金は年金、内閣府は内閣府でやっていたんですが、やはりそこは整合性をとれという話もあって、数字があるうちはなまじっかこっちを使わなきゃいけないので、年金の財政検証においても内閣府の数字を使うので、特に足元、極めて過度で楽観的な経済前提において財政計算をしているのではないのか。そのことによって、賃金もすごくふえます、運用もいっぱい出ます、税収も上がりますということを前提にようかんの体積が決まっているんじゃないか。常にそれは、五年ごとの財政検証の中で、毎回毎回外していくわけですね。

 こういうことを見直さないで、単に現役世代を削ったらその分が将来世代に行くから安心ですよという議論は、趣旨はよくわかります、それは。ただ、ようかんの体積が確定していない、あるいは、少なくとも将来食べるであろうようかんがない可能性があるので、こうした過度に楽観的な経済前提において財政検証をするのは私は間違っていると思うので、もう一度財政検証をし直した上で今回のような給付抑制法案を議論すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 恐らく、玉木委員はよくわかった上でおっしゃっているんだろうと思いますが、経済前提の設定の基本的な考え方をお示しいただいていますけれども、二〇二三年までと二〇二四年から右側が何か同じぐらいのタイムスパンに見えますが、こっち側は、言ってみればあと九十年あるわけであります。

 したがって、最初は、内閣府が政府としての経済の見通しをこのような形で十年間に限って設けているわけでありますから、我々は一応それをベースにしてこの十年は考える。しかし、そこの一・八というのだけでも、今るる御指摘をいただいたように、私も日銀で設備投資とかいろいろやっていましたからよくわかりますが、一・八を達成することでもなかなか難しいということだと思うんですね。

 したがって、それを上限としてケースを八ケース設けて、下は〇・五という低い伸びの生産性を前提とした場合のシミュレーションというものをやっているわけでございますので、そういう意味で、ここから先九十年といいましょうか、トータルで約百年の見通しを毎回やっている中にあって、こういうような形でやることは、旧民主党政権時代の見直しのときも同じようにやっていたはずでございまして、今回は、政府の試算の、経済再生ケースの内閣府試算は上限とするということでやっているということで御理解をいただければ、ようかんが小さくて使えないんじゃないかみたいなことではないということは御理解いただけるんだろうというふうに思います。

玉木委員 IFIという議論が最近OECDなんかでやられていますけれども、独立財政機関といって、中立的なところがきちんと財政の見通しを、余り政府のポリティカルなプレッシャーとかあるいは希望を反映してやらないように、特に年金のような長期にわたって国民生活に影響を与えるものについてはそういったものを設けて客観的にやるべきだという議論もあります。

 ですから、私は、責めるというよりも、塩崎大臣、これは一度本当にどこかで見直した方がいいと思っているんです。

 これはまた事務方に聞いてもらったらいいと思いますが、例えば、一九八三年から一九九三年の間の平均的な生産性をとってこうですと言うんですが、同じ一九八三年から一九九三年、とる期間は同じところをとっているのに、その平均値が、実は内閣府は変えているんですよ、御存じですか。一・八から、なぜか二・二に変わったりするんです。同じ期間の平均値をとるのに、その数字がだんだんだんだん、要はきつくなるわけですよ、後始末をしなきゃいけないので、最新のものになればなるほど、なっていく。例えば、前回の財政検証のときにこれは一・八でしょう。最新の、ことしの夏かに出た後、二・二になっているんですね。

 だから、こういうことをやはり客観的にやらないと、ようかんの体積が全く信頼できないものになってしまうと私は思っております。

 最後にお伺いします。

 その意味で、今回のマクロ経済スライド、いわゆるキャリーオーバーの制度は別ですが、賃金スライドの強化については、平成三十三年、二〇二一年からの施行になっています。五年後ですね。その前にもう一回財政検証があります、二〇一九年。その財政検証を踏まえてからでも、どうせその後施行ですから、次の財政検証を踏まえた上で、賃金スライドの徹底については、より正確な最新の情報に基づいてやるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回の賃金スライドの私どもの提案につきましては、もう平成二十一年の財政検証で指摘がされていて、その後、二十六年の財政検証でもさらにそれが確認をされた。その途中に一体改革があって、先ほど申し上げたように、そのときに既にマクロ経済スライドのデフレ下での運用のあり方ということについてお話があった。

 明示的に賃金スライドという言葉が出てきていないじゃないかという御指摘に近いものが先ほどあったかと思いますけれども、それは、先ほど来申し上げているように、代替率が上がってしまうということでマクロ経済スライドが長期化をして代替率が下がる、将来の代替率が下がってしまうということを回避するということがやはり大事な問題でもありますから、当然このマクロ経済スライドの問題として踏まえていたわけでありますので、その関連するものとしての賃金スライドの今回の提案は、ぜひしっかり御議論をいただいてお通しをいただきたいというふうに思います。

玉木委員 終わりますけれども、やはりより正確な情報、これは抑制の話も、将来どれだけふえるというか、むしろ抑制が、抑えられるかという話は正確に国民に私は伝えるべきだと思います。

 最後に、ちょっと途中の議論で、少し、必ずしも明確じゃなかったので、委員長にお願いしたいのは、四の政府が出した資料の中に、「今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていたとしても、特例水準が解消されない限り、当該ルールによる年金額の減額も起こらない。」となっているんですが、実際には、減額したということで計算し、それに可処分所得の調整を加えたような計算をしたようにきょう説明をいただきましたので、ちょっとこことの整合性をきちんと統一見解を出していただきたいのと、特例水準下においても、どれだけ各年、五年間とおっしゃいましたけれども、下がるというふうに見ておられるのか、その数字を、バックデータを提出いただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 大臣、きょうは私は十五分ですので、どうか答弁は簡潔にお願いをいたします。

 十二日の予算委員会の続きをやりたいと思います。

 資料の一枚目、これは一斉配信の記事ではありますが、あえて、構成がわかりやすかったので、お地元の愛媛新聞にいたしました。「原発対応課長 過労自殺」という見出しであります。高浜原発一、二号機の再稼働と運転延長審査の対応をしていた課長、四十代の男性が四月に自殺し、敦賀労基署が労災認定していたことが十九日わかったと書いてあります。一月の残業時間最大二百時間にも及んでいたという深刻な実態が示されております。

 私は、十二日の予算委員会で、二〇一三年に労働局長通達ということで出されている、原発再稼働の審査対応業務を公益性のある業務として残業時間限度基準の除外を認めていたことを質問いたしました。同じものでありますけれども、資料の2と3、これは現物をつけてあります。それから、そのときに除外された原発が、どこの電力会社で、どこの原発の何号炉かということが3―2につけてございます。

 私はこのときに、やはり過労死ラインを超えてまで残業して再稼働審査に間に合わせることがなぜ公益かと追及をいたしました。それからわずか一週間なんです。高浜一、二号機は、この表を見ていただければわかるように、確かに除外には該当していません。ただ、三、四号機が入っております。また、当該課長は、管理監督者であるために、結局除外の対象なわけですね。再稼働のために過労死するほど働く。現実になってしまったことについて、大臣の御所見をお願いします。

塩崎国務大臣 御指摘の件につきましては、個別の労災認定にかかわることでございますので、回答は差し控えたいと思います。

 いずれにしても、働き過ぎから命を落とすということは、御本人、御家族にとって、これは大変な、はかり知れない苦痛であるとともに、社会にとっても大きな損失になるわけであります。過労死をなくしていかなきゃいけないということは我々にとっても大事な命題だというふうに思っています。

 厚労省としては、管理監督者も含めて、働く方の心身の健康確保を図るために、一定の長時間労働を行った方への医師による面接指導とか、メンタルヘルス不調の予防を目的とするストレスチェックの実施などの措置を事業者に義務づけて指導を行っているところでございます。

 また、過重な労働による過労死等に対する労災請求が行われた事業場に対しては監督指導を徹底しているということで、今後とも、働く方が安心して活躍できるように、働く方の心身の健康確保、長時間労働の是正に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 個別なので回答を避けるという型どおりの答弁がございました。

 報道でも、関電は、この方が社員であるかどうかも含めて回答を避けるという態度なんですね。当然、審査業務に当たっていた人が社員でないかもしれない、そのこと自体が信じられない話なんですけれども、きのうもレクのときに、やはり回答できないというお答えでありました。

 しかし、これはおかしいと思いませんか。報道されて、なぜ、どこから漏れたのかわからないという話なんですよ。では、どうして電通は、私は、この予算委員会のときに同じ電通の話もしましたけれども、抜き打ち検査だと言いながら、テレビカメラ、だあっと入って検査をしているんですか。関電だって明確にすればいいじゃないですか。

山越政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘をいただきました個社の労働時間の状況でございますとか労災補償の状況でございますけれども、これは個別の企業にかかわる事項でございますし、あるいは、労災については個人情報に関するものでございますので、答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論でございますけれども、過労死等の労災補償の請求があった場合には、まず迅速にその審査を行うとともに、請求内容から過重労働が疑われる事業場につきましては監督指導を行い、法違反については厳正に対処してまいる所存でございます。

高橋(千)委員 だから、何で、電通はテレビカメラまで入って抜き打ち調査、しかも子会社まで調査をしているのに、これはできないんですかと聞いています。

山越政府参考人 お答えをさせていただきます。

 御指摘の企業につきましても、立入調査の内容につきましては、個別の事案でございますので、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

高橋(千)委員 次の質問をしたいので指摘にとどめますけれども、大臣、きのう、電通のことは二〇〇〇年の最高裁の判決があったから特殊なんだと説明を受けました。だから、抜き打ち調査したとか、抜き打ちじゃないけれども、はっきり言って、みんな知っているわけですから、そういうことを子会社までやったということをおっしゃったんですよ。だったら、もっと早くやればよかったんですよ。それで、三年前にも過労死があったということが今わかったわけでしょう。

 だったら、関電だって、あるいは関電だけじゃなくて今の除外に値する原発だって、起こっていたかもしれないじゃないですか。本当に、犠牲者が何人もあってから、調査をします、強めます、わかりました、これでは済まないから指摘をさせていただいています。

 十二日の予算委員会では、同じ関電の美浜原発三号機の審査について指摘をいたしました。美浜三号機は、ことし十一月三十日に四十年を経過してしまうので、そうすると期限切れで、つまり、そこまでに審査が終わらなければ、あと延長できなくなるというので、何で規制委員会が急げ急げと言うんですかという指摘をいたしました。

 きょうは、田中委員長に来ていただいております。一時間おくれて申しわけありませんでした。

 実は、高浜原発も同じように七月七日が四十年の期限なわけですよね。それで、新規制基準の適合審査と四十年を超える運転期間の延長審査を並行して行っていたと聞いております。

 これは、次のページ、関電のホームページからとりましたけれども、新規制基準適合性審査の状況ということで、高浜一、二号機と美浜三号機、審査をまさに同時進行で、そして、期限が切れる、期限というのは、四十年たってしまう、このところに線を引きながらスケジュールを組んでいることが明らかになると思うんです。

 そして、美浜については、これは昨年の十月二十七日ですけれども、田中委員長から発言があったことも記されております。関西電力側の希望をしっかり聞いて原子力規制委員会としてしっかり取り組んでいきたい、そういうことをるるおっしゃっているわけなんですね。

 私は、本当におかしいんじゃないかなと思うんです。最初の記事の中にも書いてありますけれども、数万ページに及ぶ資料にミスが見つかるたびに、規制委員会への説明に追われていた、四月の残業も百時間前後で、また、そのときはちょうど審査のときでしたので、連泊をして、出張先のホテルで亡くなって、見つかったのは合格の当日だったというわけであります。これは、審査会合の議事録を見ましても、私にはちょっと技術的な言葉でわからないことがよくあるんですが、ただ、本当に精力的にやっていらっしゃいますよね。あしたまたやりますとかおっしゃって、次々とやっている。

 それは、規制委員会も大変な苦労をされたと思うんです。なぜなら、電力会社からも大変な圧力がありました。二〇一三年の七月に新規制基準が発表されているわけですが、それに駆け込むために電力会社が激しく早く自分のところをやってくれと言っているわけですよね。

 例えば、二〇一三年の六月六日の日経新聞、ある電力会社の幹部が、再稼働が一日おくれるごとに経営状況が悪くなる、このままでは株主代表訴訟に呼ばれるかもしれない、こういうことまで言って、早く早くと規制委員会をせかす。だから、規制委員会も大変だったとは思うんです。

 でも、やはり、電力会社の要望に合わせて審査の優先順位を変えたり、期限の四十年を無理やり合わせるために早く早くとやるのは、やはり規制委員会としてののりを越えているのではないでしょうか。

田中政府特別補佐人 原子力規制委員会の事情によって事業者に審査の対応を急がせたということはありません。

 基本的に、先生御指摘のように、多くの審査案件がありまして、日々私どももチームを編成して対応させていただいております。

 高浜発電所一、二号機については、御案内のように、運転期間が本年七月七日に満了するという法律上決められた状況がありました。それから、美浜三号機については、十一月三十日で満了になるということがあり、関西電力だけに関して言えば、そのほか大飯の三、四号機の審査も同時並行でしたので、関電の社長さんに来ていただいて、どういうふうに会社としての考えがあるのかということを確認した上で、高浜、美浜もということでありましたので、やはり期限を見ながらそれに対応できるような、私どもも対応をさせていただいたということであります。

 その分、当然、ほかの事業所の審査は少しおくれるということもありますが、そういったことについても十分に関西電力の社長にはウオーニングを出しまして、私どもとしての対応をさせていただいた、最大限の努力をさせていただいてきたということでございます。

高橋(千)委員 きょうは、これ以上は委員長にはお話ししませんけれども、先ほどの原発の一覧表をもう一度見ながら聞いていただきたいんですが、結局、順番を変えたことによって、後の方の原発もまた早く早くというふうになっちゃうわけですよね。そういう中で今の事案が出てきたのではないかと思うんです。

 予算委員会では、大臣は、この除外をするに当たって、九州電力から要望があって通達を発出したと答弁をいたしました。では、どうして九州電力だけではなく、今ここにあるほかの電力会社の原発にまで除外を認めたんでしょうか、個別審査するべきではありませんか。

塩崎国務大臣 十月十二日の衆議院の予算委員会で御答弁申し上げましたが、九州電力からの要望は、発電用原子炉が新規制基準に適合しているかの審査、これに関する業務を限度基準の適用除外としてほしいというものでございました。

 九州電力からの要望は自社の原発についてのものでございましたけれども、当時の厚生労働省労働基準局において、新規制基準に適合しているかの審査に関する業務の内容を精査した結果、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると認めて、平成二十五年時点において原子力規制委員会に申請されていたものに限定して、三六協定の限度基準告示の適用を除外することとしたものでございます。

 こうしたことは、同時期に原子力規制委員会に申請のあった他の原発にも当てはまると当時の労働基準局が判断をして、通達の発出を行ったものというふうに理解をしているところでございます。

高橋(千)委員 これは、全然おかしいと思うんですね。労働局の立ち位置がおかしいんじゃないですか。九州電力が自社のことだけ頼んだと言っているのに、何でほかの原発のことまでそんたくして、大変だろうと除外してあげるんですか。応援していることになりませんか。

 これは、結局、多分この時期に、七月八日の申請に間に合わせるために、もう既に違法状態、限度基準を超えている労働実態があったんじゃないですか。それをわかっていたから、何とかしたい、そうお願いもあったし、よそもそうだと、そういう態度をしたんじゃないですか、明らかにしてください。

山越政府参考人 お答えいたします。

 今大臣からも御答弁申し上げましたとおり、平成二十五年当時、九州電力から要望がございまして、これを受けまして、当時の厚生労働省労働基準局におきまして、新規制基準に適合しているかどうかの審査に関する業務の内容を検討いたしまして、その結果、こういった業務が公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になるということを認めて、この当時申請されていたものについて除外を認めることとしたものでございます。

高橋(千)委員 これは一言で終わります。

 最後の資料に西日本新聞をつけておいていますので、左側の記事を見ていただきたいんですね。これは私が質問した翌日の記事で、九州電力に取材をしてくださっているんですね。

 そうすると、要請した時期は二〇一三年の七月だと認めた上で、アンダーラインを引いていますが、九電が言っているのは、「法令順守の観点から、適用除外の可否を労働基準監督署に問い合わせた」と書いております。これはおかしくないですか。ルールを守るために、自分のところをルールから外してくれと言うんですよ。そうしたら、何でもありじゃないですか、外してもらったら、ルールを守れますって。こんなのを認めているのが今の厚労省だということなんです。だから働き方改革なんて言っていられないと言ってる。

 私は、大臣にあと求めて終わります。答弁は要りません、続きはまたやりますからね。公益だと言って除外をしておきながら、実際に事件が起こったら、個別だから答えられない、こんなばかな話はありません。除いた企業の労働時間の状態、労災の実態、これをきちんと調査して、この委員会に出してくださることを要求して、終わります。

丹羽委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文でございます。

 きょうは大臣所信に対する質疑ということで、一億総活躍の中でも位置づけられております保育の問題について質問をしたいと思います。

 総理は施政方針演説で、「保育の受け皿整備を加速します。」というふうに述べておられます。しかし、なお待機児童がふえ、この間、保育園を落ちたのは私だと、お父さん、お母さんたちの声や運動が一斉に広がっていきました。

 国はその世論に押されて、九月二日に、いわゆる隠れ待機児童の数を発表いたしました。それによると、ことしの四月一日現在で、待機児童は二万三千人に対して、いわゆる隠れ待機児童数はその約三倍の六万七千人もいるということがわかりました。待機児童の解消のためには、こうしたリアルな実態把握の必要性というのが改めて私は明白になったと思います。

 そういう中で、国は、保育所等利用待機児童数調査に関する検討会というのを立ち上げておられます。この検討会の目的は何なんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 待機児童数につきましては、国が定めた基準に基づきまして、保育の実施主体である市区町村が個別の状況を踏まえて把握をしているところでございます。

 このような中で、特定の保育園を希望する者などの取り扱いについて、市区町村ごとに異なるという指摘もございましたことから、学識家や自治体関係者などの参集を求めまして、本年九月から保育所等利用待機児童数調査に関する検討を始めさせていただいたところでございます。

堀内(照)委員 ばらつきがあるから、解消に向けての調査なんだと思うんですが、検討会の資料などを見ますと、入所申し込み後六カ月以上たてば、一方的に求職活動を休止しているものとみなして待機児童からは外しているという例ですとか、第二十希望まで書いて、二十希望に当たっても結局遠くて通えないと断念をしても、これも待機児童にカウントされないとか、見せかけの待機児童を減らすために、保育が必要な人がはじかれているという実態がある。そういったニーズを正確に把握しているとはとても言えないような状況が報告されております。

 しかし、この検討会で検討しても、定義自体の見直しはないわけであります。解釈を統一するためにガイドラインをつくるんだということを、きのうちょっとレクチャーで伺いました。これでは、保育所入所を求めているのに、待機児童に数えられない人がきちんとカウントされる保証はない、リアルな実態がつかめるのかと私は思うわけであります。

 きょうは、一例として、育休の問題について少しお聞きしたいと思います。育休を待機児童から外すことができるという規定ですので、数えないことから、現場では、とりわけ保護者と子供に大変な混乱と矛盾が持ち込まれています。

 最近、ネット上で話題になったブログ記事がございます。筆者は、これは記事が十月頭に書かれています、その時点で、三歳と生後三週間のお子さんを育てておられる国分寺市在住の父親です。

 突然、市から、産休中の母親が育児休業に入ると、現在保育所に通っている上の子は、この十一月で退園してもらいますと連絡があったというんです。国分寺市では、育児休業を前提にした入所申し込みをすると、育児休業期間の開始とともに、その通っている上の子が退園をさせられる、そういう運用をしております。入所する四月一日時点で下の子の妊娠の事実があると退園させられるということなんです。入所申し込み時点で妊娠がわかっていなくても、上の子が入所する四月一日時点で妊娠しているということが、これは下の子が生まれた時期でわかりますから、そうなると退園させられる。

 ブログを書いた方も、十二月三日に申し込んだんですが、下の子の妊娠がわかったのが一月末で、申し込んだときは当然わからなかったわけですよね。この方は、引き続き上の子を預かってほしければ、育休をとらずに仕事しなさいと市から言われた。

 大臣にお伺いしたいと思うんです。

 この間、育児休業の取得というのは、国は促進してきていると思います。大臣の所信の中でも、さきに改正した法律の施行で、仕事と家庭の両立支援に取り組むんだということもございました。こういうことでは、これと逆行するんじゃないか。育休を取得したら、子供の保育の必要性を認めずに、待機児童と数えなくてもいい、そういう運用をしている、扱いをしているから、こういう事態が生まれているんじゃないかと思うんです。

 育休はやはり待機児童にカウントすべきではないか、それとも、大臣も同じように、保育をしてほしければ育休をとるなという立場なのか、ぜひお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 育児休業と保育のトータルで子育てニーズをカバーするというのが前提でございまして、育児休業中の方については、保育の利用調整とか、あるいは相談対応に当たる市区町村の判断で、待機児童数に含めないことができるということに今なっているわけでございます。

 このため、結果として、育児休業中の方を待機児童数に一律に含めたり、含めなかったりという、市区町村によってその取り扱いにばらつきが生じているとの御指摘もあるところでございまして、保育の実施主体は、しかし、これは市区町村でございますので、地域の実情が異なる面もありますけれども、不合理なばらつきを是正するために、学識者あるいは自治体関係者、こういった方々にお集まりをいただいて、検討会を今開いておりまして、育児休業中の方の取り扱いを含めて御議論いただき、年度内をめどにその見直しを検討していくということとしているわけでございます。

堀内(照)委員 不合理なばらつきではなくて、不合理な事態そのものをなくすために見直す必要があると思うんですね。

 退園を避けるために仕事復帰するにしても、大体生後二カ月の子供を、この中途半端な時期から預かってくれるところがあるだろうか、このお父さんは言われております。体調も全快でない授乳真っただ中で職場復帰するというのは大変なことだ、育休をとって退園をさせられれば、今度は一歳児の、一番入りにくい年齢枠に下の子を入園させなければならない、ましてや、兄弟同じ園というのは不可能に近いんだ、仕事をやめて、もう保育園をやめるしかないのか、これは一体どういう一億総活躍社会なのか説明してくれ、総理大臣と書いてあるんですよ。

 総理はいませんので、もう一度、今言いました、バランスじゃなくて、この実態を解決するために、やはり待機児童として育休はカウントすべきだと思うんですが、再度いかがですか、大臣。大臣です。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣の方からも答弁申し上げましたように、今委員御指摘のような実態を含めて、全国、保育の実施主体である市区町村によって、この扱いについてばらつきがあるという御指摘をいただいております。

 まず、私どもとしては、どのようなばらつきがあるのかということで、先ほど来御指摘いただいております検討会などで、いろいろなヒアリングあるいは自治体の方々の御意見なども伺いながら、まずは検討させていただいているというところでございます。

堀内(照)委員 この十八日に行われた検討会の自治体からのヒアリングの中でも、復職を希望しているが預け先がなく、やむなく育休延長したと。その可能性があることはわかっていても、カウントしていない自治体があるということもあるわけで、これではやはり実態を正確につかめないと思います。

 これは九月十七日、朝日新聞にありましたが、岡山市では、第三希望まで入れない子供全員を待機児童に含めた、特定のところも含めて、全員を含めたと。待機児童の増加数は全国最多の五百九十五人だったが、市長は、政策目標とすべき具体的な数字が浮かび上がった、来春までに認可保育所の新設など八百人以上の定員増を行う、こういうふうに書かれています。これでこそ本当の受け皿確保に向かうんだと私は思うんです。ここまできちんと待機児童を数えるということをしないと、何のための検討会なのかということになります。

 きのう、読売新聞にこういうこともありました。認可保育所に入所しやすい四月からゼロ歳でという、ここに追われまして、渋る主治医に頼み込んで、およそ一カ月早くに帝王切開で出産した、育休を短縮した事例が記事になっておりました。本当に深刻で切実であります。

 待機児童を正確に把握して、認可保育所の整備、ここに自治体がしっかり向かえるように強く求めておきたいと思うんです。

 それで、待機児童が多くて認可に入れない。その中で、わらをもすがる思いで認可外へと我が子を預けている保護者の方、認可外保育所に預けている方も少なくありません。そこで痛ましい子供の死亡事故が起きております。毎年十数名から二十名近くが保育施設で亡くなっています。

 資料一枚目をごらんいただきたいのですが、在園児比で認可と認可外との死亡事故の発生率を挙げて、一番右の欄は、認可と認可外での比率を比較した倍率ですね。認可外保育所では、認可の十数倍から七十倍近くの割合で死亡事故が起こっているわけであります。

 大臣にこれも伺いたいんですが、認可外施設での死亡事故の発生率が際立って高いということは明白だと私は思います。もちろん認可外保育所の中でも、手厚い保育をと頑張っているところもあります。しかし、認可と比べても有資格者が少ないなど保育条件は低い、そういうことがやはり事故をもたらしている、こういう認識はございますでしょうか。

塩崎国務大臣 認可外の保育施設につきましては、職員配置基準が少し異なるわけでございまして、保育従事者の数は認可保育園と同等であるけれども、保育士の配置を保育従事者の三分の一以上、こうなっているわけでありまして、原則全てを保育士としている認可保育園とは異なるわけでございます。

 死亡事故の原因はさまざまなものが考えられますけれども、施設の職員配置との因果関係は必ずしも明らかではないところもあって、認可保育園や地方自治体が独自に支援をしている保育施設では、公的助成によって設備や運営面の充実が図りやすく、また、指導監督も十分行われている一方で、認可外の保育施設、ベビーホテルなどを含め、認可保育園に比べて公的助成が行われないで、指導監督も最低限にとどまっているということが、認可外保育施設の死亡事故件数の多さ、その背景になっているのではないかというふうに思います。

 そのため、保育の受け皿拡大は、質の確保された認可保育園や小規模保育事業などを中心に行うことが重要でありまして、認可外保育施設の認可保育園等への移行というものも促さなければならない。そして、待機児童解消加速化プランでは、認可保育園等の受け皿を大きくふやすということで、今進行中でございます。

 なお、認可、認可外を問わずに、重大事故の再発防止の取り組みについて、内閣府を中心に設置した専門家による検討会において議論を行って、昨年十二月に最終取りまとめを行ったところでございます。これを受けて、本年三月に、重大事故の予防や事故発生時の対応に関するガイドラインというものを作成いたしました。

 さらに、重大事故の再発防止のため、地方自治体による事後的な検証の実施を求める通知も発出をいたしたところでございます。

 今後とも、自治体と連携をして、重大事故の防止に厚生労働省としても全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

堀内(照)委員 背景としてはということではお認めになったんだと思うんです。

 なぜ認可外で死亡事故が多いのかということについて、二〇〇九年に厚労省が初めて、「保育施設における死亡事例について」ということで、事故の集計を公表しております。その取りまとめの中で、専門家のコメントが掲載されているんです。そこでは、こう指摘されています。「認可外保育施設の事例の中には、保育体制の不備や観察不足があったと考えられ、認可保育所よりも事故の発症率が高い。」

 もう七年も前から、こういうぐあいで、認可外で死亡事故が多いその原因について、保育体制の不備、観察不足と。つまり、子供の安全確保に必要な保育士の体制が確保されていないということがやはり問題だと、既に明確に書かれているんです。

 既に対策ということでは大臣今お答えいただいたんですが、このときの指摘に対して、認可外保育施設の保育環境の改善へ、今大臣がお答えになったこともありますので、ちょっと簡潔に、どういう対策を打たれているのかということをお聞かせください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 保育施設における死亡事例について、今委員御指摘のように、平成二十一年十二月に、各自治体からの報告を取りまとめさせていただきました。その際に、専門家のコメント、今引用をいただきましたようなコメントとともに公表を当時させていただいております。

 これを受けてという御質問でございますけれども、平成二十二年一月に、事故発生防止のため、事故発生時の報告様式というものを定めさせていただいて、さらに、考えられる事故ごとに、睡眠時の観察、点検、あるいはあおむけに寝かせるなどの注意すべきポイントを取りまとめて、各自治体宛てに、平成二十二年一月の段階でまず通知をさせていただいております。

 これ以降、自治体からの事故報告につきましては、年間集計をし、毎年公表させていただいております。当然、それに基づきまして、保育施設における事故防止について注意喚起、また、必要に応じての指導というものを行っているところでございます。

 さらに、国においては、本年三月三十一日に、重大事故の予防や事故発生時の対応に関するガイドラインというものを作成いたしまして、その中で、事故の発生防止のための体制整備、あるいは重大事故が発生しやすい場面ごとの注意事項というものについて定めて、施設や事業者、自治体が具体的に取り組むべき内容を明らかにして、周知をしているところでございます。

 引き続き、保育の現場における事故防止に取り組んでまいりたいと考えております。

堀内(照)委員 今あった報告様式はちょっと後でもやりたいんですけれども、実際になかなかやはり減らないんですね。

 ことしの死亡事故の事例を新聞などで拾ってみますと、七月、千葉県君津の認可外施設で、十一カ月の男児が昼寝中に亡くなっています。二人以上の保育従事者が必要でありますが、一人でここは見ていたと。

 四月には、大阪市の認可外施設で、一歳二カ月の子供がやはり睡眠中に心肺停止で発見されました。初めて預けた日でありました。大阪市の立入調査で、やはり従事者一人で保育する時間帯があった、また、有資格者が不在の時間帯があったということが確認されています。

 三月には、東京都中央区の認可外施設、これは事業所内施設でありますが、一歳二カ月の男児が死亡しております。入園当初からなかなか寝つけないこの子を一人だけ別室で寝かせていたんだ、その日は、月一、二回しか来ない非常勤職員がうつ伏せにさせて、およそ五十分間放置をしていたと。

 死亡事故の多くが乳児のうつ伏せ寝であります。その危険性への知識を持つ有資格者がいない、必要な人員がいない、子供を見る目が行き届かずに放置をされる。今、ことしになってようやく、それに対する注意喚起も含めてお話ありましたけれども、認可外では、保育に必要な基準を満たさないがゆえの事故が起こっているということは明白だと思います。

 七年前のこの専門家の意見をもっと真正面から受けとめて、保育条件そのものを改めるということに向かっておれば、こういった事件というものは防ぐことができたんじゃないかと私は思うわけであります。

 大臣にお伺いしたいと思います。

 現行の認可外保育施設指導監督基準、今大臣も少しお話しいただきました。保育従事者は、保育士資格は三分の一でいいとか、十九人以下の施設でも、保育従事者が一人の時間帯、これは本来あってはならないんですけれども、「必要最小限」という表現がありまして、一人であってもいいというようなことになっています。最小限にすべきだとはいいながら、一人であってもいいということになっている。非常に緩いんです。

 有資格者の基準や、こういった人員配置の基準は改めるべきじゃないでしょうか。

塩崎国務大臣 現状で、認可外の保育施設が、認可保育園のみでは受け切ることができない保育ニーズに応えているという側面があるわけでありますけれども、保育の受け皿確保に当たっては、やはり一定の保育の質というものを確保されている認可保育園等をふやしていくということが望ましいのは、もう言うまでもないわけでございます。

 このため、国としては、認可保育園等への移行というのを希望する認可外の保育施設に対しては、運営費や改修費の一部を補助して、その移行を促すということをしているわけでございます。

 認可外の保育施設についても、適正な保育内容や保育環境を確保するために、指導監督基準を定めるとともに、その基準が満たされていることを確認するために、都道府県等による立入検査を、原則、年に一回以上は行うということになっておりますが、これを通知で示しておるわけでございます。

 認可保育園等への移行促進を図るとともに、実効的な指導監督を進めるということで、認可外保育施設における児童の安全確保を図っていかなければならないというふうに考えているところでございます。

堀内(照)委員 資格者は三分の一でいいということも、その前には「概ね」という言葉があったり、だから、もともと緩いのに、さらに、それを何か守らなくても仕方がないかのような書き方なんです。先ほどの一人だけという時間帯も、「必要最小限」とかですね。ですから、こういう基準は、私は、幾ら認可外だとはいえ、やはり即刻改めるべきだと思うんです、命と安全が守られる基準にすべきだと。

 立ち入りの問題などは、少し、後でまたやりたいと思うんです。

 国は、そのための必要な支援、さらに言えば、今ありました認可化へ進んでいくようなことを、さらに強化をしていただきたいと思います。

 しかし、実際に国が進めてきたのは、認可外の基準を厳しくするどころか、待機児童の受け皿整備として、認可外である企業主導型保育の導入でありました。これはどういうものであるかということを、運営や設置基準、職員の数やその資格者等、少しお答えいただきたいと思います。

中島政府参考人 委員お尋ねの企業主導型保育事業は、本年の四月から展開させていただいているところでございますけれども、これにつきましては、児童福祉法上の位置づけといたしましては、認可外保育施設ということではございます。

 ただ、その人員配置、施設設備の基準につきましては、子ども・子育て支援新制度におけます事業所内保育事業、また小規模保育事業の基準と実質的に同等なものとなるようにという形で、より高い基準を設けさせていただいているということでございます。

 また、職員配置基準につきましては、特に保育の質の向上のため、保育士の割合を七五%、一〇〇%と上げるごとに補助単価もふえるという仕組みを設けておるところでございまして、質の確保をしっかり図るべく制度を組んでおるところでございます。

堀内(照)委員 補助単価を上げて保育士を確保していくということでありますけれども、もともとが小規模等と同等ですから、資格者は半分ということになるわけであります。規制緩和された施設です。

 この春以来の、保育園落ちたの私だというお父さん、お母さんたちの運動は、国会内でも何回も院内集会も開かれましたが、中には、我が子を、それこそ保育事故で亡くしたという方もお見えでした。やはり共通して言われているのは、質の確保をという訴えでありました。大臣は、この三月のこのときにも、そのお母さんたちと直接、署名も受け取られたんだと思うんです。質の確保をと求めているにもかかわらず、基準を緩めた企業主導型の導入ということでいいのかということであります。

 先ほど紹介した、三月に東京都中央区の事業所内施設で我が子を亡くされたお母さんも、五月の院内集会に来られておりました。私も直接お話を伺いましたけれども、三月に亡くなって五月の集会ですから、この二カ月は怒りだけで生きてきたと、声を振り絞って発言をされておりました。その方が言っていたのは、まさに、五万人もの企業主導型保育の導入なんて意味がわからないという声で、厳しい批判でありました。真っ正面からやはりこれを受けとめるべきだと思うんですね。

 資格者は半分でいい、現在の小規模保育等と同等だとはいえ、小規模保育の場合はゼロ歳から二歳までであります。対して、企業主導型保育はゼロ歳から五歳まで預けられるわけであります。定員規模の規制もありません。既に応募されたものを見ますと、二百人の大規模な園も見られます。本当に安全がこれで確保できるのかと思います。

 そこで大事なのが指導監督体制なんだと思うんですが、一つは、そういった施設整備や運営費の助成の業務をつかさどる児童育成協会からの、助成要件の確認にかかわる指導監査だと思うんですが、この協会は、現在何人の体制、どれぐらいの人員規模で今後進めようとしているのか、教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

中島政府参考人 児童育成協会におきましては、現在、助成申請に係る御相談、さらには申請書類の審査に係る事務をつかさどらせていただいておりまして、今のところ、総勢十四名の体制で行っているところでございます。

 この保育事業につきましては、児童福祉法に基づきまして都道府県が立入調査などの指導監督を行うということになっておりますが、児童育成協会におきましても、助成要領に基づいて、必要と認めるときには事業所の設備、運営について調査をするとともに、必要に応じ、助言及び指導を行うことができるということでございます。

 現在、整備費及び運営費の申請をいただいておりますが、その審査においても、いささか気になるなという点があるところにつきましては、児童育成協会の職員が実地調査等を行うような対応をしております。

 整備が終われば、いよいよ運営ということが本格化していきますので、今後、児童育成協会としての計画的な指導監査等の体制整備というものが急務だと思っております。人員面の対応、予算上の手当ても含め、早急にしっかり準備を進めてまいりたいと思っておるところでございます。

堀内(照)委員 目標とする人員体制は大体これぐらいでやりたいということはあるんでしょうか。

中島政府参考人 先月に、第一回目の募集の第一次内示をさせていただいたところでございます。今後、第二次募集、第三次募集とさせていただきます。

 今のところ、整備費中心でございますけれども、それぞれ、整備が終わった園については運営が開始されますので、そういった情報というものを的確にシミュレーションして、現在どの程度の体制が必要なのか。少なくとも年に一回入る、または気になる事業所については臨時でも立ち入れるような体制を整える、もろもろ、どういう条件のもとに指導していくのか、そしてどれだけの量をカバーするのかということで、現在、検討させていただいて、準備をしたいと思っておるところでございます。

堀内(照)委員 立ち入りも含めてやるとなると、今の十四人では到底、これは五万人の規模ですから、恐らく数千という施設でしょうから、これは本当に、それに見合う体制が必要でありますので、やはり、ここはしっかりやっていただかなければならないと思います。

 もう一方の指導監督の目は、各都道府県や政令市などによるものであります。しかしこれは、自治体によって立ち入りの、原則年一回ですが、入り方というのが非常にばらつきがあるなと思いました。東京都はほとんど進んでいないというのが報道もされたし、きのう参議院では我が党の田村智子議員も内閣委員会で指摘をしたところだと思います。

 ほかの、さいたま市とか千葉市などでも実施率が低いことや、中核市では、箇所数は少ないにもかかわらず一〇〇%入れていないと。そういうところを、きちんと監督の目が行き届く必要がやはりあると思うんです。国として、これをしっかりやらせるということでは、どういう対応をされますか。

吉田政府参考人 認可外の保育施設に対する立入調査につきましては、適正な保育内容あるいは保育環境を確保するという観点から、先ほど来御指摘いただいていますように、原則として年一回以上行うということを私どもとして通知で示しておりまして、それぞれの自治体における適切な指導監督が実施されるように促しているところでございます。

 一方で、今幾つか例を挙げられましたけれども、認可外保育施設が多数設置されている都市部の一部においては、その施設数に対応する指導監督をする職員が十分に配置されていない状況ということから、立入調査の実施率が低調となっている自治体もございます。

 ただ、全体を拝見しますと、それぞれの自治体、一〇〇%きちっと対応していただいているところもございますので、今申し上げたところ、一部かとは思いますけれども、御指摘いただいたような低調となっている自治体もあるということは、私どもも十分認識をしてございます。

 厚生労働省としましては、二十九年度の概算要求において、睡眠中、食事中、水遊び中などの重大事故が発生しやすい場面などの指導を行う巡回支援の指導員というものを、配置を要求してございます。

 自治体において、この指導員と従来の指導監督部門が十分に連携を図っていただいて、適切な立入調査の実施につなげていくということが必要かなというふうに思っております。

 認可外保育施設における保育の質の確保という意味では、実効的な指導監督が行われるように、私ども厚生労働省としましては、先ほど来申しておりますような、指導監督に係る通知というものの内容を自治体の方々に再度認識いただくような周知徹底をいろいろな機会に重ねさせていただくとともに、それぞれの自治体の取り組みを私どもとしても支援してまいりたいというふうに考えております。

堀内(照)委員 次年度の概算要求でもというお話がありましたが、立ち入りは、通常は事前通告をしてですので、抜き打ちではありません。本当に実効ある立ち入りができるような人員配置、これは本当に最後まで、ぜひ見届けていただきたいと思っております。

 都道府県などが立入調査に入った際、またはその後に、改善のための助言や指導、また改善指導、改善勧告を行うことができます。それでもなお改善の見通しがなく、また著しく有害だと認められる場合には、事業停止命令や施設閉鎖命令を行うことができることになっております。

 この十年、この事業停止命令と施設閉鎖命令は、それぞれ何件あったでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 直近十年ということで、平成十七年度から平成二十六年度までの認可外保育施設に対する事業停止命令及び施設閉鎖命令につきましては、いずれも、それぞれ一件ずつというのが実績でございます。

堀内(照)委員 ベビーホテルを含む認可外施設への立入調査で指導監督基準に適合していない施設というのは、大体毎年二千カ所を超えています。うち千五百カ所程度で文書指導がなされています。にもかかわらず、改善勧告は毎年一、二件とか数件で、事業停止や閉鎖ということでは、今あったように十年でそれぞれ一件ずつなんです。

 そこまでの指導で全部改善をした結果がそうであればいいんですが、そうじゃありません。二〇〇九年十一月、大阪市の認可外保育施設で四カ月の男の子が亡くなった事例では、大阪市が立入調査を行う中で、三年連続で保育士資格者不足と指摘をされておりました。大阪市では、口頭での改善指導を行い、おおむね一カ月以内に改善されなければ文書指導、もしくは改善勧告、それからさらにおおむね一カ月以内に改善されなければ、公表、事業停止、または施設閉鎖命令、そういう規定なんです。

 ところが、大阪市のこの資格者不足だという指摘に対して、施設側は、有資格者公募、募集しているんだと、そういうふうに報告をしまして、それを受けた大阪市は、改善はされていないけれどもその努力が行われているんだとして、それ以上追及がなかったと。

 ほかにも、立入調査の報告書の中には、午前中なのに服が汚れている子供がいるとか、子供たちの表情が乏しいとか、問題が指摘されていました。にもかかわらず、そういうやりとりが三年続けられて、ついに無資格者だけの保育の時間帯で男の子が亡くなったということです。

 多くのところで聞きますと、結局、問題があっても、亡くなった例なんかもあっても、他の在園児の行き先が決まらないからと指導や命令がちゅうちょされる例があるんだというんです。そうして、ちゅうちょしている間に大切な命が失われる、これはあってはならないと私は思うんですね。

 命を守るということを最優先にして、指導後の対応で改善が見られなければ、ちゃんと規定があるわけですから、勧告、公表、事業停止命令や閉鎖命令、この適切な運用にしっかり改善していくことが必要だと思うんですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 これは、児童福祉法上、都道府県知事などが児童の福祉のために必要だというふうに認めたときは、認可外保育施設に対して、事業の停止、そして施設の閉鎖を命じることが可能になってはいるわけであります。

 これらの命令につきましては、重大な行政処分であることから、改善勧告を行ったにもかかわらず改善が行われていない場合であって、かつ、改善の見通しがなく、児童福祉に著しく有害であると認められるときに行使をすることとしておりまして、口頭指導や文書指導などに比べて実施件数が少ないということで、先ほど数字が出てきたとおりでございます。

 一方、口頭や文書での指導や改善勧告といった段階を踏んでいる時間的余裕がなくて、かつ、これを放置することが児童福祉に著しく有害であると認められた場合は、ちゅうちょなく事業の停止命令や施設の閉鎖命令を行うべきではないかというふうに考えております。

 現に、これらの命令は原則として都道府県児童福祉審議会の意見を聞くということになっておりますが、鳥取県が平成二十六年に業務停止命令を行った際には、緊急に児童の生命または身体の安全を確保する必要があると判断を鳥取県自体がして、都道府県児童福祉審議会の意見を聞く手続を省いたということがございました。

 こうした考え方については、指導監督の指針によって自治体に対して通知をしておりまして、児童の安全の確保を第一に考えるということが重要でありますので、迅速な対応を行うように、引き続き、自治体に対して厚生労働省として指導をしてまいりたいというふうに思います。

堀内(照)委員 命第一で、ぜひ徹底していただきたいと思います。

 事故が起きたとき、施設から自治体へ報告書、事故報告が出されます。今も少しありました。ところが、この書類が施設側に都合よく報告される例が多くて、事故の真の原因の検証もされずに、多くの保護者が泣き寝入りするという例があります。

 資料で二枚目につけておきました。この三月に東京都大田区の認可外施設で、生後六カ月の女の子が亡くなった事例であります。厚労省から取り寄せた事故報告の公表データベースをつけておきました。施設からは、十分置きに子供の様子を見ていたが、急変して、死因は不明だというふうになっているんです。

 しかし、私、直接母親からお聞きをいたしました。全然違うんです。事故が起こったのは三月でした。まだ寒い時期で、園長、無資格者の園長でしたが、もっとちゃんと着せなさいということで、登園するのに、かなり厚手の上着を着て、中にも結構重ね着をして行ったんだと。にもかかわらず、預けられてから、一切、上着も含めて脱がされないまま、暖房のきいた部屋のベビーベッドに寝かされ、さらに毛布、布団をかけられて寝かされていた。

 ですから、病院で告げられた死因は脱水なんです、これは死因不明と書いてあるんですけれども。保護者が異議申し立てをしなければ、今言ったことがわからなかったんです。施設からの報告がそのまま事実として確定してしまうというのが、今の報告用紙の格好なんですね。

 赤ちゃんの急死を考える会の皆さんが、厚労省に申し入れをされております。この事故報告の用紙、各当事者家族の記入欄を設けるような様式にしてほしいという改善提案です。家族にとってみれば、我が子に起きた事故にもかかわらず、行政に対して情報開示等の手続をとらなければ報告内容を知ることができない。改善の内容として、第一報では家族に対する対応の経過も報告させ、第二報で家族からの確認をきちんと用紙に書き込ませる、もしくはコメント欄を設けて家族が書き込めるようにする。そういった、一方の当事者が排除されない仕組み、家族がかかわれる形への改善、これが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

中島政府参考人 委員御指摘の事故報告でございますけれども、昨年の二月に通知をさせていただいているところでございます。

 事故が発生いたしました場合には、まず第一報として、発生日時、お子さんの年齢、性別、発生場所、発生状況を報告していただく、そしてその上で、原則一カ月以内に事故の概要、事故発生の要因分析をしていただくということで、それを自治体、さらには自治体から国の方に報告をいただくということになっておるところでございます。

 自治体におかれましては、この第二報、すなわち事故の概要、事故発生の要因分析等の報告を国に行っていただくに際しては、その内容について保護者等の了解をとっていただきたいという形の運用をさせていただいておるところでございまして、当事者の御家族が関与し得る仕組みとなっております。

 もし、本日御指摘のような形でその運用が十分なされていないということであれば、改めてその運用を徹底するように努めたいと思ってございます。

堀内(照)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 さきに紹介した、二〇〇九年、大阪の認可外で四カ月の男の子が亡くなった事件でも、施設からの報告では、十分ごとに触診をして午睡のチェックをしていたというものでありましたが、裁判の中で明らかになったのは、ゼロ歳から五歳、さらに学童児も含めた十七人を、本来三人で見るはずの体制のところ、有資格者の保育士が急遽休みになって欠員状態で、無資格者二人で保育していた。

 とてもじゃないけれども、当日の状況から見れば、そんな十分ごとに午睡チェックなんかできないということが客観的に明らかなんですが、一審では、その証言が採用されて、SIDSとして敗訴しました。

 高裁でようやく、園唯一の有資格者である元職員が勇気を出して証言台に立っていただきまして、園の実態が明るみになって、実は経験の浅い二人で見ていたことで、窒息死だと施設の責任を認めたという判決になったんです。

 判決が出たのは昨年の十一月、亡くなってから実に六年なんですね。今、改善がというふうにありましたけれども、ぜひ家族の皆さんの思いを酌んで、そういうことがないようにしていただきたいと思っております。

 また、事故の検証の改善も大事だと思っています。この検証委員会のあり方についても、外部の者で構成されているということや、家族が推薦した専門家も入れてほしいという要望もあります。時間がありませんので、これはそういう要望があるということで、つけ加えておきたい、ぜひお願いしたいと思います。

 一方で、認可外の一つである、先ほどやりました企業主導型、この四月の施行以来、順次、事業者の応募があって、助成が決定されておりますが、この運営主体、関係する企業が主体となる場合はもちろんですが、いわゆる保育事業者が設置をして、複数も含めて、契約企業の従業員の子供たちや、それ以外の地域の子供たちも受け入れられる、そういう参入が可能になっています。

 この保育事業者というのは、従来認可園を経営していたような、そういう人も当然可能なんでしょうか。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

中島政府参考人 企業主導型保育事業につきましては、子ども・子育て拠出金を負担していただいている事業主の方で、みずからまたは共同で設置していただく場合とともに、認可保育所等を運営しておられるような保育事業者さんが設置される場合についても対象となるというところでございます。

堀内(照)委員 そして、この設置の場所も、企業内のみならず、事業所外でも、ショッピングセンターなんかでもできるわけでありまして、そうすると、従来は認可保育所を経営する、そんな力のある事業者が、同じような施設をつくるのに、保育士などの基準は緩い、しかし施設整備や運営の助成は認可並みにもらえるということで、企業主導型に参入した方がうまみがあると流れるということも否定できないんじゃないかと思うんです。現に、今、助成決定をした事業所を見ますと、三十二カ所、八百十人分、こういった保育事業者設置型だということであります。

 営利だけが目的でやろうなんというところばかりじゃないとはもちろん思うわけでありますが、ノウハウもあるわけですから、これからどんどん広がっていくという可能性もあるわけでありまして、本来認可を開設できるような事業者が、そういった何か安上がりで参入できるような企業主導型に流れるとなれば、保育の質を高めるということに逆行するんじゃないかと思うんです。

 この点、ちょっと通告していませんけれども、大臣、保育の質を高めるということでありますけれども、そういう形で、今まで認可をやるような力あるところが、いわば保育士の数も認可よりも基準が緩い、しかし、認可外であっても一定の助成もあるということで参入する。受け皿づくりを推進するといいながら、保育の質が低まるようなことになりはしないかと思うわけですけれども、御所見をいただきたいと思うんです。

塩崎国務大臣 今回、企業主導型ということで、かなり条件も緩和をして、受け皿の促進ということを打ち出しているわけでございます。

 一方で、保育の質を確保するということも当然大事であることは、先ほど来私からも申し上げているとおりでありまして、そこのところは、やはり待機児童の数を考え、そしてまた働く方々の働き方もいろいろありまして、そういう意味で、働く方々、お母さんたちに便利な、あるいはカップルにとって便利なものをできる限り用意すると同時に、質をどれだけ確保しつつそういうことをやっていくかということが大事なんだろうというふうに思いますので、オール・オア・ナッシングというわけではないんだろうというふうに思います。

堀内(照)委員 もう終わりますけれども、十六日付の毎日新聞で、認可を運営する株式会社で、公定価格の積算では人件費相当分は大体七割ぐらいだと言われていますが、それではとてもできない、赤字だということで、人件費が大体三割台のところもあるというんですね。やはり資格者を置くというのはなかなか重いということで、今言いましたような懸念を私はするわけであります。

 質の確保が大事だと言っていただきました。ところが、概算要求を見ましたら、一つ、保育の予約制というのが言われています。四月入所に合わせて育休を短縮しなくていいように予約するというんですが、その予約の分、ほかの子が入れなくなるんじゃないかと聞きますと、いや、これは枠を拡大して対応するんですと。結局、定員よりさらに拡大して詰め込むだけじゃないかと私は思うんですね。

 もう一つは、サテライト型の小規模保育。小規模から三歳児が卒園する、私は三月九日のこの委員会でやりましたけれども、その行き場として、認可園を三歳以上に特化して、乳児はその施設のサテライトとして小規模をやるんだと。ゼロ、一、二歳、これは死亡事故が多いところで、その規制緩和をした小規模でいいのかと私はやはり思うわけであります。

 こういう点でも、質の確保といいながら、実際には受け皿確保で、新たなメニューは全部規制緩和だと。私は、これでは本当にいけないと思うわけでありまして、ぜひそれを転換して、本当に認可の保育所を思い切ってもっとふやす施策にこそ力を入れていただきたいということを重ねてお願いして、質問としたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 今国会で、私は初めて厚生労働委員会の理事会のメンバーとさせていただきました。冒頭よりいきなり戸惑うことばかりでございましたが、こうしてようやく質問の機会が来ましたことをうれしく思っております。

 最初の方に、きょうの委員会も一時間ずれ込んだということで、いろいろ与党の先生方に対して厳しい声があったかと思います。

 私どもといたしましては、大臣所信の聴取が完全に終わらない中で閣法審議の話がどんどんどんどん進んでいってしまい、そして、そういったことに対してやはり真摯に、与党だけではなくて野党第一党の先生方も考えていただきたいなというふうに思っているところでございます。

 また、委員会セットがきのう六時半ぐらいになったかと思うんですけれども、そういったことで、我が党は公務員の制度改革、行財政改革を掲げている政党でございまして、なるべく残業をしていただかないようにしようということで、国対でも常に今言っているところなんでございますが、結果として、六時半過ぎに委員会がセットされるということで、もう既にそれで通告が残業の時間帯に入ってしまったということで、この辺もしっかりと与野党ともによろしくお願い申し上げます。

 そういったことをお話しさせていただいて、早速質問に入りたいと思っております。

 きょうは、最初は相模原の事件から伺いたいんですが、平成二十八年七月二十六日、神奈川県相模原市の津久井やまゆり園で発生した事件におきまして多くの犠牲者が出ました。心より御冥福をお祈り申し上げるところでございます。そして、二度とこういった事件を起こさないように、国会としてもしっかり対応しなければならないのかなと思っております。

 この事件を受けて、安倍総理は、施設の安全確保の強化、措置入院後のフォローアップなどを例示して、必要な対策を早急に検討し、できることから実行に移すようにと指示をされたかと思います。

 これまでに既に実行に移されたこと、また、いつまでに実行するか決まったようなことがあればお示しいただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の七月二十八日に行われました関係閣僚会議における総理からの指示を踏まえまして、八月八日に関係閣僚会議幹事会を開催し、十日には検証・検討チームを開催するなどの会議を経て、さまざまな対応を図ってきてございます。

 まず、八月十日、報道等を通じてこの事件に接した全国の障害者やその家族等の心のケアの充実について万全を期すため、適切な相談支援や必要な情報提供等を行うよう地方自治体や関係団体宛てに通知をいたしました。

 また、社会福祉施設等の利用者の安全確保のため、八月二十四日に閣議決定されました今般の平成二十八年度第二次補正予算案におきまして、障害者支援施設等について、非常通報装置、防犯カメラの設置や外構等の設置、修繕などの安全対策に要する費用への補助を盛り込み、十月十一日にその成立を見るとともに、九月十五日、事件の検証・検討チームにおいて確認した事実関係等を踏まえまして、社会福祉施設等における防犯に係る安全確保に向けた点検項目を通知としてお示ししたものでございます。

 検証・検討チームでは、九月十四日に事実関係の検証結果を取りまとめたところであり、直ちに九月二十日より再発防止策の検討を進めており、十一月にも取りまとめに向けまして検討を急ぐようにしてまいりたいと考えてございます。

 今後、速やかに障害者施設の防犯設備の設置等の対応を進めるとともに、検証・検討チームでまとめる再発防止策の具体化を図ってまいります。

河野(正)委員 補正予算の中でも、御説明に我が党に来られましたときにちょっとお話をさせていただきましたが、防犯対策ということは言われていたんですが、やはり、そもそも精神障害者が退院された後のフォローアップというのがなかなかできていないのが現状だと思いますので、そっちの予算もしっかりつけないといけないのではないかなと思います。またそれは後で触れさせていただきます。

 今お話もありましたが、九月十四日、政府の検討チームによって中間取りまとめが公表されました。その中で、容疑者に措置入院の経験があったが、今回の事件は極めて特異なものであり、事件を機に精神障害者に偏見や、差別されることはあってはならないとの記述があります。事件を極めて特異なものと位置づけてしまっていいのかという問題であります。

 精神障害者に限らず、多くの障害者の方々は、差別や偏見を受けた経験を多く持っていらっしゃると思います。極めて特異なことだから気にしなくていいというような、社会全体がこの事件を他人事と捉えてしまうことになりはしないか、心配されるところであります。

 インターネット上では、容疑者が示したような考え方を簡単に開陳している方も多くいらっしゃいます。差別や偏見に満ちた言葉というのは世の中にたくさんあふれております。その言葉を実際に行動へと移したのが今回の事件じゃないかと思いますが、極めて特異的な出来事だからと片づけることはできないというふうに思います。障害者は決して特別な存在ではありません。

 そういったことから、オリンピック、パラリンピック等々もあって、だんだんメディアで取り上げられることも少なくなってしまったのかなというふうになりました。極めて特異的なことだからということで、そのままどんどん進んで事件が風化していくというのも看過できません。

 こうした懸念について、厚生労働省はどのように考えておられるか、伺いたいと思います。

堀江政府参考人 御指摘の九月十四日の中間取りまとめで「極めて特異」と表現いたしましたのは、今回の事件により、地域で生活する精神障害者の方々に偏見や差別の目が向けられることは断じてあってはならないということを確認する文脈で表現されたものでございます。

 精神障害者の地域社会との交流、共生を進めてきたこれまでの流れは、精神障害者の人権擁護の観点から、また、全ての人々が、地域、暮らし、生きがいをともにつくり、高め合う地域共生社会の推進の観点から、決して揺るがしてはならないというふうに考えておりまして、その旨報告書に盛り込まれているところでございます。

 今回の事件は、十九人ものとうとい命が奪われ、二十七人が負傷してしまった非常に凄惨な事件でございます。実際に起こってしまったことを重く受けとめまして、議員の御指摘のとおり、事件を風化させることなく、再発防止策の取りまとめに向けて、しっかり取り組んでまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 私が精神科医として臨床の現場におったときにあの池田小学校の事件がありまして、町で、統合失調症で退院してようやく社会生活を始めたばかりの人が、こういう事件を起こされて精神障害者だといって名乗られると僕たちが一番つらい思いをするんだということを外来の診察室で憤っておったのが本当によみがえってきますので、よろしくお願いいたします。

 神奈川県では、この事件だけではなく、施設入所者を狙った無差別な犯罪が相次いでおります。事件前の昨年は、川崎市の老人ホームの入所者三人がその施設の職員によって転落死させられるという事件が新聞報道であったかと思います。事件後の、先月になって、今度は横浜市で、病院の入院患者が何者かにより点滴に異物を入れられて亡くなったということが報道されております。たまたま神奈川県ということなのかもしれませんが、いずれにせよ、お年寄りであるとか患者さん、障害者など抵抗しにくい方々を無差別に殺傷する事件が続いて発生しており、社会全体を脅かす事態が進んでいるのではないかと危惧しております。

 塩崎厚生労働大臣の所感を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 確かに、打ち続いて発生をいたしております、神奈川県にあってのさまざまな事件がございましたけれども、中には、現在まだ警察で捜査をしているというようなものもありまして、全容も明らかになっていない事案もございますが、高齢者あるいは障害者といった弱い立場に置かれている方々のとうとい命が奪われる事件が相次いでいるわけでありますので、これはもう非常に残念なことであり、また、許されることでは決してないというふうに思います。

 厚生労働省では、川崎市の事件では、施設の運営会社の親会社に対して業務管理体制の改善勧告等を行ってまいりました。それから、相模原の事件では、事件発生後、速やかに、事実関係を検証して再発防止策を検討するためのチームを立ち上げるなどの対応を行ってきております。

 一人一人の命の重さ、あるいは、介護や療養を必要としているか否か、障害があるか否かによって少しも命の重さという意味では変わらないわけでありまして、こうした事件が二度と起こらないようにするためにも、関係省庁とも連携しながら、全ての人々がお互いの人格と個性を尊重し合いながら共生できる社会を実現するとともに、それぞれの問題について、何が欠けていて、何を足さなければいけないのか、あるいは、今までやってきて当たり前と思っていることが問題として浮き彫りになってくることも多々あろうかと思いますので、虚心坦懐に、どうあるべきかについて、それぞれのケースについてよく見て対応していかなければいけないというふうに思っております。

河野(正)委員 お示しした三件のうち、施設で働いていた方が起こした事故というのもございます。

 そういった中で、私も医学部を出たわけですけれども、医療関係の大学とか学校を出られた方というのは、医の倫理であるとか生命倫理について相当時間もかけて勉強しているんじゃないかなと思います。そういったことをもって就労されていた方々がそういうふうな事件を起こしてしまうというのは、極めてゆゆしき事態じゃないかなと思います。

 実際に入所している方々やその御家族の不安は尽きないと思いますし、現場で一生懸命に患者さん、入所者さんを支えている職員の方々にとっても、この事件で受けた衝撃というのは極めて大きいのではないのかなというふうに思います。

 そういった意味で、今、厳しい労働環境の中で、低賃金とも言われておりますが、そういった中で一生懸命働いている人がいる一方で、こういった事件を起こしてしまう方がいる。病んでいる職場になりつつあるのかなという懸念もございます。

 改めて、この辺、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 御指摘のように、施設で働いていらっしゃる方が重大な事件を起こすということで、余りそういうケースは今まで続いて接するようなことがなかったわけでありますので、そういう意味では、非常に、私どもももちろんでありますけれども、むしろ、入所をされている施設の方々、そして、ともに働いていらっしゃる方々、そしてまた、そこの関連する御家族や入所している方の御家族などに思いをいたすと、やはり、安心して生活できるような場としてもう一回立ち直ってもらうような手だてを私どもとしても考えていかなければいけないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。

 今般、ニッポン一億総活躍プランが閣議決定をされておりますけれども、介護や障害福祉に携わる従業員の処遇改善に向けた取り組みをさらに進めることとしております。これまでも、処遇改善に際しては、ミーティングなどによる職場内のコミュニケーションの円滑化、あるいは心の健康管理面の強化といった労働環境の整備を事業者に求めておりまして、今後もさらなる労働環境の向上を進めていかなければならないというふうに思っております。

 今後、川崎あるいは相模原、こういった事件につきましては、裁判や捜査の進展を通じて、職員が犯行に至った経緯などが明らかになってくると思うわけでありますので、引き続き、入所者あるいは職員の方々が安心、安全に生活し、働くことのできる環境の整備に、私どもとして何が対応として必要なのか、よく考えていかなければならないというふうに思います。

河野(正)委員 先ほどお話ししましたように、やはり、医療、介護の現場で働く人というのは、本当にそういった病める人を治していきたい、お手伝いをしたい、いろいろな思いで入ってこられるんだと思いますけれども、厳しい労働環境、低賃金と言われる中で、本当に何か病んでしまっているんじゃないのかなという懸念もありますので、しっかりとそういったところで、本当は患者さんを治す人が逆に傷をつけてしまうというような不幸な事態にならないように手だてをとっていかなければいけないのかなと思っております。

 また、先ほどちょっと答弁の中にもありましたが、安全面ということで、防犯カメラであるとかそういったことを言われます。私、精神科でしたので、まだ当時はカメラというのは物すごく高かったので、二十年以上前とか、なかなかつけられないんですが、特別に保護室であるとか廊下の一部、大学病院でもつけていたと思います。そういった中で、患者さん自体は、監視されているということを非常に嫌って、またそれから妄想に発展する方もいらっしゃいましたので、そういったことを考えると、防犯というようなものも極めて難しい問題があるんじゃないかなと思います。

 そういった意味も含めて、措置入院患者さんの処遇であるとか精神障害者の支援ということに対して非常に厳しい問題があるんじゃないかなと思いますが、この辺、大臣は、ちょっとざっくりとした感じで、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 失礼いたしました。

 今御指摘をいただきましたけれども、障害者支援施設につきましては、障害のある方ができるだけ地域社会で交流や共生を進められる地域共生社会の推進が重要ではないかということで、厚生労働省の中でも、この地域共生社会づくりというのを今、福祉の新しい考え方として強調していこうじゃないかということをやっているところでございます。

 また、障害のある方が地域で安心して暮らせるようにするためには、例えばグループホームであったり、あるいは就労支援など、さまざまな、多様な受け皿を用意していくということが重要であって、あわせて、措置入院から退院をした方が継続的な医療などの支援を受けられるようにすることも重要であるというふうに考えております。

 今回の事案などを見てみても、継続的な支援をしていくという体制に欠けていたということが相模原の事案などでは如実にあらわれていたわけでございますので、そういうことも極めて大事な問題として改善をしていかなければならないというふうに思います。

 今後とも、あらゆる方々が共生できる社会を目指すという考え方のもとで、利用者のニーズに即して、地域生活に向けたさまざまな支援が進められるように、都道府県等や関連の機関との連携を図りながら、環境の整備に取り組んでまいらなければならないというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 済みません、ちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、補正予算等々でも安全面、防犯面ということばかり言われておりまして、そういった、今大臣がお答えいただいたような、措置入院の患者さんを後で地域でフォローしていくというところがどうも欠落しているんじゃないかなと思いましたので、ちょっとお話を伺いました。

 実際に、障害者の地域での生活を支えていく役割は自治体が負っておりますが、その支援には地域差も生じております。例えば、措置入院患者の退院や退院後の支援について、明文化されたルールに基づき実施している自治体や、支援自体を全くやっていないという自治体もあります。こういったものが検証チームの会合で資料として出ているかと思います。

 また、今回の事件のように、措置入院後に生活拠点を別の自治体に移すとしながら実際には移さなかった場合、自治体間での連携に課題があることも事実かと思います。

 現場の自治体の取り組みを支えるため、国の役割は大きいと考えますが、どのように改善を進めていくのか、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、措置入院者が退院された場合に、自治体の方で明文化されたルールに基づいて退院後の支援を実施している都道府県及び政令市というのは全体の一〇%程度ということでございまして、そのほかにも、明文化されたルールはないけれども必要に応じて実施しているというところまで入れますと八割を超すわけでございますけれども、ただ、ルールとして必ず、退院後の支援というのをどういうふうにやっていこうかということを明文化しているところは大変少ないというふうに調査した結果が出ているわけでございます。

 また、退院後に継続的な支援を行うためには、それを支える人員体制が必要なわけでございますけれども、例えば、指定医あるいは精神保健福祉士などについて、人口十万人当たりの、都道府県あるいは政令指定都市当たりの人数というものには大きな差異があるということもわかってございまして、把握しているところでございます。

 九月十四日に公表しました事件の検証チームの中間取りまとめでは、措置入院者に対して、退院後に必要な支援を継続的に確保していくような仕組みづくりが課題として指摘されておりまして、今後、全国の保健所などの人員体制、その専門性などの実態を把握しながら、地方自治体等が患者に対する退院後の医療支援等を継続的に行えるよう必要な対応というのを検討して、支援していきたいと考えてございます。

河野(正)委員 そう言っていただきながら、余り地域が特定できるとまずいんですが、きのうたまたま会った先生とお話をしていたら、措置入院三カ月になりましたよ、そろそろ退院どうですかと役所の方が言ってこられたりとか、もう機械的に、三カ月たったから退院させて地域社会に出したらどうかというような指導というのかお誘いがあるという声も伺いました。

 さらに、よく交通事故とかで高齢者の逆走事故とかがありますけれども、それで免許証の返納ということが言われています。そういった中で、免許証返納をどれぐらいというノルマを課して返納させようとしている県警があるというのも聞いておりまして、お年寄り、特に過疎地域と言われるようなところにいらっしゃるお年寄りにとって、免許証を取り上げるということは本当にライフラインが閉ざされるようなことになりますから、そういったところにノルマをかけていくというのはいかがなものかなというふうに思いますので、こういった問題は少しずつやっていきたいと思いますが、そういった現状もある。

 厚生労働省の方は、そうやってちゃんと地域でフォローしましょうと思っておられるかもしれませんが、地域の現場ではそういったことも起きているということを共有していただければなというふうに思います。

 兵庫県では、措置入院の解除を判断する際に精神保健指定医が相談できる専門家の第三者機関を年内に設置する方針を表明しておられるそうです。昨年三月、兵庫県洲本市で五名が殺害された事件におきまして、今回と同様、措置入院を経験した者が逮捕されたことを受けまして、措置入院解除後の地域生活での継続的な支援に力を入れてきたということです。

 地域で生活を送るための支援は、兵庫県の取り組みのような、自治体の特徴やニーズに応じた創意工夫が必要じゃないかなと思います。こういったことに対して、政府の対応を伺いたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、精神保健福祉法上、措置入院の解除につきましては、精神保健指定医の判断を踏まえ、都道府県知事が判断を行うこととなってございますが、兵庫県では、御指摘のとおり、措置入院の解除や治療方針について、必要に応じて第三者から助言を受ける仕組みを検討しているというふうなことでお聞きしてございます。

 また、兵庫県では、本年四月から、措置入院後の支援を退院後も丁寧に実施しているということもございまして、既に塩崎大臣が八月二十一日に兵庫県にございます精神保健福祉センターを視察されていますけれども、検証・検討チームの方も、今月二十四日、今度の月曜日でございますけれども、構成員が現地に赴きまして兵庫県の先進的な取り組みについてヒアリングを行って、検討を進めていきたいというふうに考えてございます。

 また、措置解除後の継続的な支援に限らず、入院中の精神障害者の地域移行については、各地の実情、いろいろあると思いますので、そうしたものが共有されて、グッドプラクティスが全国に紹介できるような形というのを推進していきたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 薬物事犯者が治療回復プログラムを受けることを条件に刑の一部執行猶予という法律ができております。その法案審議の際にも法務委員会に伺いまして質問させていただいたんですが、我が国には、そうした薬物使用者、依存者の治療、回復を支える施設や専門家がもう十分いると言えない状況どころか、ほとんどいないという現状があります。

 あらゆる人々が地域でともに生きる共生社会を実現するためにも、地域の中で依存症や精神疾患、障害に向き合い、寄り添いながら支えていける専門人材をふやしていくこと、既に従事している医師や精神保健福祉士を初めとした人材の力を高めていくことが必要なのではないかと思います。

 一億総活躍社会を掲げる安倍内閣におかれましては、地域共生社会の実現のために、専門人材の養成や確保について積極的な取り組みが不可欠と考えますが、この点の見解はいかがでしょうか。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 相模原市の事件の検証チームが作成いたしました中間取りまとめにおいて、今委員御指摘の点が非常に明確に記載されているところでございます。

 養成段階から生涯にわたる医学教育の充実を通じて、退院後の医療等の継続支援を企画可能な医師、それから、薬物使用に関連する精神障害について専門的な知識を持った医師を養成し、質の高い医療を提供することが課題ということで指摘されているものでございます。

 このため、今後の再発防止策の検討に当たりまして具体化していくことが必要というふうに考えてございます。

 また、平成二十六年度から今年度にかけまして、依存症治療拠点機関設置のモデル事業を実施してございまして、薬物を含む依存症患者が早期に適切な支援を受けられるよう地域における支援体制の構築を進めておりますが、平成二十九年度概算要求におきまして、これを全国展開できるように要求してございまして、引き続き、個々の疾患にも対応できる地域の体制整備に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 我が国は、薬物依存症だけでなく依存症全般に関して、対策やリハビリ可能な施設というのが極端に不足していると思います。今国会でIR法案の審議がどうなるか、今まだまだわからないところかと思いますが、IR、いわゆるカジノとかを含めて考えるのであれば、この機会にぜひ、依存症対策、精神疾患の社会生活プログラムの充実が望まれるというふうに考えているところであります。

 次に移りたいと思います。

 精神保健指定医の不正取得についてでございますが、昨年四月、聖マリアンナ医科大学で発覚した精神保健指定医の不正取得について、これまでも取り上げましたが、新聞報道では、百名ぐらい調査によって疑わしい例が出たと。今後、ヒアリングをされるんじゃないかと思います。また、先ほどお話しした、相模原の事件の容疑者の措置入院にかかわっていたお医者さんもこの中に含まれているという報道もございます。

 この事実関係を含めて、その後の調査の進捗状況や結果について教えていただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年、聖マリアンナ医科大学病院の精神保健指定医二十三名の取り消し処分を行ったことを踏まえまして、昨年四月及び六月に処分を行ったわけでございますが、厚生労働省で現時点で確認のできる三千五百人の精神保健指定医の申請全件につきまして調査を行いまして、必要に応じ、ヒアリング、聴聞を行ってきております。

 お尋ねの処分の対象者などにつきましては、今後審査予定のため、具体的な内容は差し控えさせていただきますが、今月の二十六日に、来週でございますけれども、医道審議会医師分科会精神保健指定医資格審査部会の開催を予定してございまして、全国調査の結果について議論をいただき、対応を図っていくことになるというふうに考えてございます。

 なお、相模原事件の措置診察にかかわった医師のうち一名につきまして、全国調査の対象となっていたのですけれども、調査の過程において、提出したケースレポートの患者について、みずから診療録に何も記載していなかった事実を認めまして、既に指定医の辞退届を提出し、指定医の資格を喪失しているという事実関係がございます。

 以上です。

河野(正)委員 精神保健指定医というのは、患者さんの、病気の方の、何ら悪いことをしていない、病気がゆえにいろいろな、興奮状態になったりした方の人権を束縛してしまう、極めて重たい仕事をいたしますので、そういった意味では、精神保健指定医を不正に取得できるというようなこと、また、信頼関係を失うようなことがあってはならないというふうに考えております。

 今後の精神保健指定医の資格取得や指定医制度そのもののあり方について見直していくことはどうなるのか、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今お取り上げをいただいております精神保健指定医は、患者の人権を尊重して、個人の尊厳に配慮した医療を提供するという上で重要な役割を担ってきたものでございます。

 昨年の聖マリアンナ医科大学病院の事案は、精神保健指定医制度の根幹にかかわる重大なものとして処分を行ってまいりました。同様の事案に対しても、厳正な対応は私どもとしては必要であるというふうに考えております。

 現行制度では、指定の審査の際に、例えばケースレポートなどの書面だけで実務経験を証明しておるわけでありますけれども、このような取り扱いには課題があるというふうにも考えております。

 今月二十六日に開催を予定しております医道審議会の部会での議論も踏まえて、審査方法を見直すなど、適切に対応してまいりたいというふうに思っているところでございまして、以前にも河野先生の方からこの制度の問題について御意見を拝聴させていただいたことがありますが、ぜひこの改善方について御意見を賜れればありがたいというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 資格の不正取得があるということはあってはならないというふうに思いますし、また、それを看過することもできないと思います。厳しくしていただかなければいけないんですが、一方で、そういったことが見過ごされて多くの精神保健指定医の方の資格が取り消しということになりますと、地域の精神科救急医療であるとか、本当に医療体制が崩壊しかねないということになります。実際、川崎市近郊では極めて深刻な事態が生じているということも聞いております。自治体からも、指定医資格を取り消される医師が多くなれば地域の医療提供体制への影響が大きくなるという不安の声も聞こえますので、十分に備えなければならないと思います。

 この問題が地域医療に与える影響、そもそも不正取得があってはいけないんですが、それが見過ごされてきたがゆえに、その地域から一気にいなくなってしまうということは本当に大変な影響だと思いますので、この辺は軽視すべきではない問題と考えますが、厚生労働省、いかがでしょうか。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、二十六日に医道審議会の精神保健指定医資格審査部会で具体的な議論をすることになるわけでございますけれども、御指摘のとおり、精神保健指定医の指定取り消しが地域医療に与える影響が出ないように備えておくことが必要だという考え方を私どもも考えているところでございます。

 既に、先ほどお話し申し上げましたヒアリングあるいは聴聞を精神保健指定医を今お持ちの方に対しまして行う際に、都道府県あるいは政令市に対しまして、これから聴聞、ヒアリングを行いますということはお伝えしてございまして、そうした場合の善後策といいますか対応につきまして検討いただくように働きかけを行ってございます。

 また、精神科医療を行う団体にも指定医の配置に係る支援協力を要請してございまして、こうした取り組みによりまして、地域の医療提供体制が確保されますよう努めてまいりたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 指定医資格取得に必要な症例レポートというのがなかなか難しくて、今八症例必要なんですけれども、そういった中で、大学病院に勤務していると、大学病院に勤務された先生方もおられると思いますけれども、なかなか、いろいろな諸事情から、依存症の患者さんとかアルコールとか覚醒剤の患者さんを大学病院では余り診れないということがあります。

 一方で、民間病院であれば、児童思春期、小さい、中学生ぐらいのお子さんの病気というのは、みんな大体大学病院に入院を希望されるので民間病院に入院することがないということから、なかなか症例が集まらないといったこともあって、使い回しをされていたのではないかなというようなこともあります。

 先ほど来お話ししているように、患者さんの自由を束縛するような仕事もしますので、極めて重たい仕事ですから厳しくしなければいけないと思っておりますが、そういった中でも、なかなか取りづらいというような声も聞こえてくるわけであります。この点について、厚生労働省の見解はいかがでしょうか。

堀江政府参考人 今委員の方から御指摘ございましたように、症例の類型によっては、なかなかレポートの要件を満たすのが、症例が少なくて書きにくいといったような臨床現場の声があるということは承知しております。

 現行では、精神保健指定医として必要な精神科医療のさまざまな分野における実務経験を確認するため、精神保健指定医の指定申請に当たりましては、統合失調症、躁うつ病、中毒性精神障害、児童思春期精神障害、器質性精神障害、老年期認知症の六分野の八症例以上の措置入院等の症例を中心にケースレポートを書面で提出するということを求めているわけでございます。

 先ほど大臣からもお話ございましたけれども、精神保健指定医が、患者の人権を尊重し、個人の尊厳に配慮した医療を提供するという重要な役割を担うということを考えました上で、精神保健指定医として必要な能力を担保するために十分な症例の経験を確保するとともに、実際に臨床現場でケースレポート等の作成が可能な申請要件を勘案して、制度の改善を図っていきたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 指定医が診療しますと診療報酬上一定の加算がつくケースがあります。本来、指定医の資格を有していない方が診ていた部分については診療報酬返還ということも生じてくるんじゃないかなと思います。昨年質問した際には、「必要な調査等も含めて検討」という答弁でございましたが、その後の取り組みをお聞かせいただきたいと思います。

 あわせて、今後不正が発覚した場合、指定医でなければ診療報酬の加算がないのに、指定医でない方が、不正に取得した方とかが加算を取っていたという場合、返還についての措置をとるのかどうか、対応方針をお示しいただきたいと思います。

鈴木(康)政府参考人 精神保健指定医の指定取り消し及び診療報酬との関係についてお尋ねでございます。

 個別事例についてはちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で申し上げれば、診療報酬上の算定要件に適正を欠くということであれば、これは返還の対象ということになります。

 それからまた、現在行われているものも含めて、今後の精神保健指定医の不正取得に関する全国調査等の結果について、調査の結果、精神保健指定医が取り消されるということになれば、事実関係はよく見させていただきますけれども、その上で適切に対処したいというふうに思っております。

河野(正)委員 精神保健指定医の不正取得事件で本当にさまざまなところに影響が、地域医療にも影響があれば、病院経営にも影響を及ぼすということで、大変なことでございます。今までそういったことが見過ごされてきてしまったがゆえに今こういう問題となっておりますので、今後、そういったことは厳しく見ていただきたいなというふうに思います。

 時間もありませんので、ちょっと質問をかえてまいりたいと思います。

 ことし四月、文部科学委員会で薬学教育について質問をいたしました。

 我が国は、二〇〇〇年代に入りまして薬学教育に大きな環境変化がありました。薬科大学や薬学部の定員が、二〇〇一年は、四十六大学、入学定員八千十人でしたが、二〇一五年には、七十三大学になり、一万三千三十四人と、受け皿がおよそ一・五倍というふうになりました。それだけ薬学教育が人気なのかもしれませんが、このように専門的な薬学教育を受ける人がふえることについて、厚生労働省の受けとめをまずお聞かせください。

武田政府参考人 お答え申し上げます。

 薬学系大学の数、定員の増加についての御質問がございました。

 薬学部の卒業生につきましては、従来から、病院や薬局の薬剤師のみならず、研究者でありますとか企業における医薬情報担当者など、薬学の基礎的知識を持った人材として社会のさまざまな分野において活躍しているところでございます。

 このため、薬学部で学生が習得いたしました薬学の専門知識は、御指摘のように薬学部の定員の数が増加している中にありましても、卒業後、この知識を生かして活躍できる場が多くあるものと認識しているところでございます。

河野(正)委員 何をお話ししたいかといいますと、入学定員が一・五倍にふえたものの、薬剤師国家試験の合格率というのが大学によって極めて差が大きい。残念ながら、国家資格取得に至らない薬学部卒業生がたくさんおられます。後で合格率もちょっと披露していただければと思いますが、薬剤師として活躍できなくても、六年にわたる薬学専門教育を身につけた人たちに何らかの形で社会で頑張っていただけるようなことも選択肢としてつくらなければいけないのではないかなと思います。

 薬学部の国家試験の合格率がどれぐらいかということと、卒業しても試験に受からなかった方の働き先というものについてお話しいただけたらと思います。

武田政府参考人 薬学部の卒業者の薬剤師試験の合格率の御質問がございました。

 直近でいいますと、第百一回の薬剤師国家試験、これは平成二十八年、ことしの数字でございますけれども、全体としては合格率七六・八五%ということになってございます。

 学区、学校ごとの数字も公表しているところでございますけれども、御指摘のとおり、学校によりまして差があるのが現状でございます。

河野(正)委員 質問主意書を出させていただいているので、済みません、ちょっと意地悪だったかもしれませんが、第百一回の薬剤師国家試験では、最高は九八・七%という大学がある一方で、最低は四四・四%ということでございまして、卒業したけれども薬剤師になれない方というのがたくさんいらっしゃいますので、製薬企業であるとか研究者とかいう道は免許を持っていなくてもいいのかもしれませんが、いろいろな選択肢というのを考えなければいけないときなのかなと。本当に、一気に二〇〇〇年代から薬学部はふえましたので、そういった教育の問題というのが生じているんじゃないかなと思いますし、その辺も問題意識を持っていただけたらなと思います。

 そして、何を言いたいかというと、医療従事者を養成するためには極めて多くの税金が投入されておりますので、そういった意味でも、学生さん個人の問題であるとか学校の教育レベルの問題であるとかいうことだけで見過ごしていてはいけないんじゃないのかな、税金の使い道はしっかりと正していかなければいけないのかなと思います。

 もう時間がほとんどないので、最後にちょっと、一つだけお聞きしたいんですが、消費税一〇%に上がることは先送りされたわけですが、今、医療、介護にかかわる消費税という問題がございます。

 そういった中で、医療、介護は診療報酬が非課税ということになっておりますので、診療報酬の中に入っているというたてつけにはなっているわけですが、やはり今、本当にいろいろな、医療器材とか、あるいは耐震構造の見直しで病院を建てかえなければいけない、たくさんあります。

 よく僕がお話しさせていただくのは、昔のガラ携で撮った写真でそこに病巣があるかどうかを判定するのと、今のスマホで撮った写真だと写真の画質が全然違うので、そういうことを考えると、やはりみんな、いい、きれいな写真を撮ってもらって病気があるかないかを判定してもらいたいということで、どんどんどんどん機械を買いかえなければいけない時代に来ております。

 そういった意味で、診療報酬に包括してやっていく消費税制度というのはなかなか厳しいんじゃないかなと思いますが、厚生労働大臣、今後、消費税が延期されたのに当たって、検討するということはございませんでしょうか。

塩崎国務大臣 消費税の医療に係る課税のあり方については、平成二十九年度の税制改正におきましても、抜本的な解決に向けて、総合的に検討し、結論を得るよう要望しております。引き続き、関係者の議論の状況等も踏まえつつ検討してまいりたいというふうに思います。

 診療報酬で賄うということについての御意見を今賜りましたが、さまざまな御意見がございます。仕入れ税額控除を可能とするために、課税した上でゼロ税率にするという御意見もございますが、消費税の軽減税率については、極めて限定的な取り扱いとなっている、それから、仮に行う場合には、国、地方にとって多額の税収減を招くことになり、医療を含む社会保障の必要財源の確保をどうするのかといった種々の課題があるものと承知をしているところでございますので、引き続き議論を深めていただきたいというふうに思います。

河野(正)委員 本当に、診療報酬に包括させていくというのは、極めて今後無理が生じてくるんじゃないかなと思いますので、早急に、いろいろな意見があると思いますが、早く議論しなければいけない問題だと思っております。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 公的年金制度の保障機能の強化を図り、年金制度に対する国民の信頼を高めるため、老齢基礎年金等の受給資格期間を二十五年から十年に短縮することとされています。その施行期日につきまして、現行の法律では、消費税率の一〇%への引き上げの日とされていますが、無年金の問題は喫緊の課題であり、早期に施行する必要があるため、平成二十九年八月一日とするものであります。また、これに伴う所要の経過措置を設けることとしています。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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