衆議院

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第20号 平成30年5月18日(金曜日)

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平成三十年五月十八日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 橋本  岳君 理事 堀内 詔子君

   理事 渡辺 孝一君 理事 西村智奈美君

   理事 岡本 充功君 理事 桝屋 敬悟君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    大岡 敏孝君

      大西 英男君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      白須賀貴樹君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    長尾  敬君

      船橋 利実君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君    池田 真紀君

      尾辻かな子君    長谷川嘉一君

      初鹿 明博君    吉田 統彦君

      大西 健介君    白石 洋一君

      山井 和則君    柚木 道義君

      伊佐 進一君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    浦野 靖人君

      柿沢 未途君

    …………………………………

   議員           西村智奈美君

   議員           岡本 充功君

   議員           浅野  哲君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      牧原 秀樹君

   総務大臣政務官      小倉 將信君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  邦彰君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  浦野 靖人君     足立 康史君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     大西 英男君

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     三ッ林裕巳君

  浦野 靖人君     足立 康史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六三号)

 労働基準法等の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第一七号)

 雇用対策法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一四号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一五号)

 労働契約法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案、西村智奈美君外二名提出、労働基準法等の一部を改正する法律案、岡本充功君外四名提出、雇用対策法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案及び労働契約法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官原邦彰君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、厚生労働省医政局長武田俊彦君、労働基準局長山越敬一君、労働基準局安全衛生部長田中誠二君、職業安定局長小川誠君、雇用環境・均等局長宮川晃君、政策統括官藤澤勝博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。安藤高夫君。

安藤(高)委員 安藤でございます。

 本日は、御質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 前半は、働き方改革のさまざまな問題点についてお話をさせていただいて、後半は、私も医師でありますので、医師の働き方改革についてお話をさせていただきたい、そう思っております。

 最初の質問ですけれども、生産性向上に関する支援策でございます。

 生産年齢人口の急減が予想される中、限られた人材で経済活動を維持、成長していくためには、生産性の向上が欠かせません。今般の働き方改革が契機となり、我が国の産業の生産性が大幅に向上することを期待をしております。

 私の友人が社長をしている、世界でも有名な大手のコンサルタント会社がありますけれども、その日本支社の話ですけれども、残業をやめて、残業代を基本給の上に乗せたところ、会社自体の経常利益が上がったということで、これは本当に成功事例だと思います。これは本当に、大企業だからできたことかもしれません。

 そうであれば、中小企業の、医療機関もそうですけれども、中小企業と医療機関というのは、経営ノウハウがまだ十分に加味されていない組織が多いんですけれども、生産性向上を行うためにはどんなことをしていけばいいのか。

 時間外労働を減らしたことによって中小企業の経常利益が下がってしまうとか、あるいは、働き手の方たちの残業時間というのがもう生活給の中に入っている場合は給料が下がってしまうとか、さまざまなことをクリアしなければならないと思いますけれども、中小企業に対する支援策というのはどういうことが考えられるのか、お答えしていただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業それから小規模事業者の方が、生産性を高めながら、長時間労働の是正を始めといたします働き方改革に取り組んでいきますには、法律による規制とあわせて、労務管理あるいは業務プロセスの見直しについて具体的なノウハウを提供していくことが大切であるというふうに考えております。

 このため、本年四月より、全国の都道府県に働き方改革推進支援センターを開設いたしました。

 この支援センターにおきまして、労務管理などの専門家による個別訪問などにより、コンサルティングを無料で実施いたしますとともに、商工会議所あるいは商工会等との連携を図りまして、中小企業、小規模事業者向けのセミナー、出張相談会を行うこととしております。

 また、生産性向上あるいはIT投資などの企業経営に関する相談につきましては、よろず支援拠点と連携を図りまして、一体的に支援をしてまいることとしております。

 このような支援につきましては、厚生労働省と中小企業、小規模事業者の身近な存在である商工会議所、商工会等の経営支援機関とが十分連携をして行うことが大変重要であるというふうに考えておりまして、働き方改革推進支援センターがこのような商工団体としっかり連携をいたしまして、各地域におけます出張相談会でございますとか企業向けのセミナーを開催してまいりたいというふうに考えております。

 また、勤務環境の改善に取り組みます医療機関を支援するための機関といたしましては、医療勤務改善支援センターを設置しておりますので、このセンターにおきまして、アドバイザーによる医療機関への相談支援等を行ってまいりたいというふうに考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 この制度が動き始めてからも、そのようなセンターが機能して、どういうふうな改善あるいは結果を得たのかということを十分調査していただければと思います。

 続きまして、質問の二番目です。これは、以前にも出たことですけれども、公務員の残業時間のことでございます。

 民間における働き方改革も大変重要ですけれども、霞が関を始めとする公務員の方々の働き方改革も同じく重要だと思っております。特に、霞が関の国家公務員の方たちは、国会審議や質問主意書への対応など、長時間労働になりがちと聞いております。私も、昨日、夜の七時半過ぎまで厚生労働省の方にお話を聞いていただきました。

 こうした中、国民のために国会において充実した審議を行うためにも、そして、我が国の働き方改革を進めるに当たっても、国家公務員の方々に超過勤務を強いることのないようにするためにも、今以上に、与野党を問わず、私も含めて、国会議員の一人一人が、質問通告を可能な限り早く、かつ与えられた質問時間に見合った質問の分量にした上で、質問内容を明確に通告していくことが大変重要だと考えております。

 自民党の中でも、国家公務員の働き方に関する提言、一億総活躍推進本部の誰もが活躍する社会をつくるPT、きょういらっしゃいます穴見先生が事務局長をされていましたけれども、そこからも報告書が出ております。一方、各省庁においても、国会対応の工夫を進めていくことも重要と考えております。

 そこで、働き方改革を推進する立場にある厚生労働省における働き方改革について、厚生労働省の決意をお伺いしたいと思います。

牧原副大臣 大変重要な点につきまして御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 国家公務員は、労働基準法の適用がないということから、何となくこれまで、幾ら働いても、働かせても構わないみたいな雰囲気があったような気もしますけれども、厚生労働省は働き方改革の旗振り役でございますので、みずから働き方改革に率先して取り組まなければならないと考えているところでございます。

 この点、私の前任でもございます橋本岳前副大臣のもとで、省内では業務改革のチームをつくって、少しでも働き方改革をしようということを進めてきたところでございまして、限られた人員の中でより質の高い政策立案等ができるよう、内部打合せ時間の原則三十分の厳守など全職員が守るべき業務改善のルールの徹底、あるいは、無駄詰めや無駄な作業をさせないといった管理職がとるべき業務マネジメントの徹底などを図っているところでございます。

 他方、国会対応につきましては、厚生労働省は、ほかの省庁と比べても、国会答弁数やあるいは質問主意書の件数なども非常に多くて、例えば他の業を所管している官庁と比べると質問主意書の数も三倍以上になるような、そういう傾向もございまして、これまでも国会待機等の当番制や待機縮小の徹底に努めているところでございますけれども、私が見ていても、大変、深夜までとか、あるいは夜を徹してとか、そういう労働がまだ見受けられる状況でございます。

 こういうことでもございますので、今後とも、省内の働き方改革へもしっかり取り組んでまいりたい、このように考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 緊急なこともあると思いますけれども、できることからきちっと御対応していただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問、三番目ですけれども、これは現場ですとか医師会さんや病院協会さんから非常に懇願された問題ですけれども、今問題になっております、人材紹介会社の役割と適正化です。

 働き方改革によって、労働者がおのおのの事情に応じて多様な働き方を選択できるようになると、人材の移動が活発化して、ひいては人材紹介会社の役割が増大すると考えられますが、そうした中、旺盛な需要を狙って、不適正な、悪質な業者が現在も出てきておりますし、これから出てくる、またさらなる懸念があると思います。

 民間の病院においても、医師、あるいは看護師さんであっても、年俸の大体一〇%から三〇%ぐらいの手数料がかかるわけでございまして、これに更に消費税、控除対象外消費税がかかってきます。既に人材不足が深刻な医療、それから最近では介護職、介護業界では、特定の医療・介護従事者を短時間で何度もくるくる転職させるようなことで手数料を稼いでいる業者が存在いたします。俗に言うドクター転がしというのでしょうか。

 そういう中で、働き方改革を推進する上で、このような不適正と思われる業者を排除して、人材紹介会社の適正化を図るための取組がやはり必要だと思います。これについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 職業紹介事業者が転職後短期間で転職を促すような悪質な行為を繰り返すことを防止するため、平成二十九年職業安定法の改正に伴いまして関係指針を改正し、紹介した労働者に対し、就職させてから二年間、転職の勧奨を行ってはならないこととしております。

 さらに、同法改正において、職業紹介事業者に対し、手数料や早期離職者数に関する事項等についてインターネットによる情報提供を義務づけることにより、求職者及び求人者が適切な職業紹介事業者を選択できるようにしたところでございます。

 厚生労働省としては、これらの点について引き続き周知啓発に取り組むとともに、違反する事業者に対しては厳正な指導等を行うことで、改正法の適正な履行の確保に努めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 この前ちょっと見た映画の中に、やはりドクター転がしという内容が入った映画もありましたので、これは本当に国民の人たちにも大分浸透しているのではないかな、そういうふうに思っております。ぜひ、罰則規定に近いようなものも含めて、きちっと御対応していただければな、そういうふうに思っております。

 次に、いよいよ医師の働き方改革についての御質問をさせていただきたいと思っております。

 今回の働き方改革においては、この委員会でも出ておりますけれども、自動車運転業務とかあるいは建築業務、そして今回の医師ですけれども、この働き方改革に関しては、猶予期間を設けた上でさらなる検討を行っていくということが言われております。一方で、現場においては、これらの職種について今後どのように進んでいくのかということを不安視をする声も非常に多く出ております。

 そこで、ぜひ、今後の検討の方向性を含めて、医師の働き方改革について御質問をさせていただきたいと思っております。

 最初に、質問四に当たる部分ですけれども、医師の地域別、規模別、機能別、それから、設立母体といいますか経営主体別、医療法人であったりとか、社会医療法人であったりとか、財団法人とか、公的病院もありますけれども、このような種別ごとの分析を、経営から見てきちっと対応をする必要があるのではないかな、そう思っております。そういう対策をやることが重要だと思っています。

 そういうふうな観点において、医師の働き方の焦点としては、まず、労働時間のお話があります。

 自己研さんを含め、医師の時間外労働について、ある民間調査機関のデータでは、何と、医師の労働時間、時間外をお金に換算すると、年間一兆円を超えてしまうというデータもあります。これは、消費税の約〇・五%分ですし、現在、国の方も社会保障費の伸びを三年間で一・五兆円以内に抑えよう、そういうことを考えると、物すごい金額に当たると思います。

 このような話も含めて、医師の働き方を考える際には、しっかりとしたデータに基づいた議論を進めるべきだと考えております。

 医師の働き方を考える上で、働く場所である医療施設の実態を加味して検討する必要があると思います。

 例えば、医療施設において、地域や施設の経営主体、施設の機能や規模によって医療者の働き方が異なることが容易に想像できます。

 例えば、例に挙げますと、僻地や山間部の小規模の民間の救急病院さんと、大都市部にある回復期や慢性期病院さんでは、全然違った景色になると思います。さらに加えて、医師の偏在とともに、密接に関係しているために、一体的な検討も進められます。

 このことを理解した上で、それぞれの切り口で詳細な分析を行うことが必須だと考えております。これらを考慮した制度設計が望まれますけれども、それに関してはどんなお考えを持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 医師の働き方改革の検討に当たりましては、委員御指摘のような地域性、医療機関の機能、医療機関の経営といったさまざまな観点を念頭に置きつつ検討を進める必要があると考えております。また、ただいま御指摘いただきましたように、しっかりとしたデータ又は実態を踏まえた議論というのは、非常に大事な論点だろうというふうに思います。

 私ども、医師の働き方改革に関する検討会を設置して、鋭意議論を進めております。第一回が平成二十九年八月二日、その後、九月、十月、十一月、十二月、一月と会を重ねてまいりまして、ことしの二月に、中間論点整理、緊急対策についてということで中間まとめをさせていただいたところでございます。

 この検討会におきましても、例えば、病院常勤医師の勤務時間につきまして、都市部、地方部別での比較でありますとか、医療機関種類別での比較をお示しをして議論をいただいているところでございます。

 それから、医療機関に応じた事情の違いというのも議論をされておりまして、例えば、業務の内容につきましても、四病院団体協議会による調査、全国医学部長病院長会議による調査、それぞれ緊急調査をしていただきまして、やはり、大学病院とそれ以外の病院との違いというのも明らかになっているところでございます。

 来年三月までの二年間の検討期間ということでございますので、私ども、こういったさまざまな観点、そしてさまざまなデータ、そして、御指摘のありました医療機関の経営面の影響なども分析をしながら、丁寧に検討を進めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 特に地方、山間部の僻地なんかの小規模の民間救急病院は、ちょっとしたことで地域の医療崩壊を招いてしまうことも十分考えられますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 次に、質問の五番ですけれども、医師の特殊性を鑑みた独自の医療労働規制についてです。

 今回の働き方改革では、高度プロフェッショナル制度の創設が今大変議論になっているところでございますし、また、医師については、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の適用は難しいとの意見も聞いております。

 しかし、私も含めて多くの現場の人間は、やはり医師の特殊性がある、そういうふうなものではないか、そう思っております。その意味でも、まず、医師という職業の特殊性を明確化することも必要ではないか、そう思っております。

 これは私のアイデアなんですけれども、例えば、メディカルプロフェッショナル制度というものを創設してはどうかと思っています。それによって、医師の独自の制度検討についても検討をできると思っています。

 例えば、民間病院においては、医師の就職時に関しては、外来のこま数だとか、あるいは病棟の持ち患者数だとか、あるいは内視鏡検査をするとか検査をするかしないか、当直をするかしないかとか、あるいは学校医として予防接種をするかしないかとか、介護保険の要介護認定審査会に出るとか出ないとか、あるいは在宅や往診をするかしないかとか、医師会活動をするかしないかとか、あるいは遠くから来ているドクターに関しては、出勤時間をおくらせたりもしています。

 そういうふうな、案外いろいろな選択肢を持って就職をしてもらっております。カフェテリア方式というんでしょうか、そういうふうなこともやっているわけです。これが大分一般の方とも違うのかと思っています。

 あと、重要なことは、例えば、医師の時間外労働については、当直、宿直の実態をしっかり把握して、実態に即した検討を行わなければならないと思っております。当直、宿直というものを厳しくしてしまうと、真の労働時間に入れてしまうと、朝から夜中まで、あるいは夜中から朝までということで、連続十六時間勤務になってしまうんですね。

 そうすると、中小民間病院なんかでは、公的病院の中小的なところもそうでしょうけれども、昼間の労働時間を制限しなければいけないということで、これは本当に地域医療あるいは患者さんに迷惑をかけますし、また、その分、ドクターを雇用しなければならない。この医師不足の中で大変な状況になってしまいます。

 もう一つは、結構、中小民間病院もそうですけれども、自前のドクターで当直が回せないところは大学病院から当直に来てもらっています。もしこれが、医師の働き方改革が進んで、大学病院でも自前のところでなかなか回せないような状況になってしまうと、とても民間病院に大学病院から当直を派遣してもらえなくなる可能性が非常に強いです。本当に中小民間病院はほとんどが大学病院から派遣しております。そうすると、もう直ちにサドンデスといいますか、地域医療が崩壊してきてしまうと思います。

 そういうことを含めて、医師の特別条項、さらには地域事情に応じた特例を制定することが必要だと思いますけれども、これについてどうお考えか、お答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 まず、先ほど、山間僻地も含めて医療提供体制を維持する必要性に触れていただきましたけれども、働き方検討会中間的な論点整理の中におきましても、我が国の医療提供体制を損なわない医師の働き方改革を進めていく必要がある、こういう御指摘もいただいておりまして、医療提供体制、そして地域医療の確保ということを進めていくということは非常に大事な視点であるというふうに考えております。

 その上で、ただいま、御提案も含めて御指摘をいただきました。

 医師の働き方改革を検討するに当たりましては、まずは、医師の方々の勤務実態を十分に分析をする必要がある。その際に、勤務実態を分析する際に、個別の論点といたしまして、例えば、今御指摘がありました宿日直の取扱いなども議論に上がっております。

 私ども、今回、医師の働き方改革に関する検討会中間的な論点整理を行っておりますが、その中で、医師の勤務実態の分析状況と今後の検討に関する論点というふうにまとめた部分がございまして、その中でも、例えば自己研さんについての御意見、それから宿日直許可についての御意見などもありまして、こういった特殊性があるのではないかという点については、更に引き続き議論を深めてまいりたいというふうに思っております。

 そして、勤務実態に関しましては、私ども、一分間タイムスタディーを実施をいたしまして、この実態の中で、例えば宿日直の勤務実態などについても詳細に明らかにすべく、現在分析を進めているところでございます。

 そして、ただいま御提案、御指摘をいただきました医師独自の労働時間制度という点につきましては、医師の働き方改革に関する検討会の中間的な論点整理の中においても御意見の一つとして挙げられているところでございます。

 引き続き、中間的な論点整理の各論点について幅広く議論を深めていけるよう、まずはしっかりとデータ分析などを進めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 先ほど、特に山間部や僻地の小規模の救急病院が厳しいというお話をさせていただきましたけれども、関西地区の大きな都市においても、公立病院とか公的病院が余り救急をやっていない、民間病院の方が主にやっているというエリアもありますので、そういうふうなところがサドンデスしないように、ぜひお願いしたいと思っています。

 次に、六番目ですけれども、働き方改革における臨床研修医、専攻医のあり方についてです。

 専門医の養成については、医療需要を見据えた地域別、科別の適正数と配置について考える必要があります。また、超高齢社会や疾病構造の変化により、総合医が重要と考えております。総合医の必要数については特にしっかりと考えていく必要がございます。

 これは前にもちょっと御質問させていただきましたけれども、アメリカにおいては、ACGME、米国卒後医学教育認定評議会というのがございまして、そこで専門医の研修プログラム等を総合的に、そして横断的に評価をして、ここが重要なんですけれども、地域、診療科ごとの定数を決める仕組みがございます。これは、内科や救急など二十八の評価委員会で、それぞれの認定基準を設定するとともに、モニタリングなどもしています。

 さらに、研修医の労働時間におけるモニタリングについて言えば、最長八十時間、七日間に一日の休暇、連続二十八時間以上勤務していないなどがあります。これは、裏を返せば、その寸前までやっているということでございまして、以前、アメリカでは、研修医の労働時間が長くなってしまって、睡眠不足になって医療事故が起きたという例がございますけれども、最近では、そうはいっても、研修医として自分で出した薬が患者さんにどのような効果があったのかということを見据えないといい教育にならないということで、そこら辺も大分変わってきているように聞いております。

 この制度については違反をした場合は罰則規定もありますけれども、日本においてこのような制度を検討をすればと思っていますが、そこら辺のところに関してはどうでしょうか。よろしくお願いします。

武田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のアメリカの制度、ACGMEという組織が、研修プログラムの評価を行ったり、研修医についても労働時間制限の基準なども設定をしているというふうなことでございます。

 米国の制度、私どもはいろいろ調べておりますけれども、米国の医師の勤務時間規制に関しましては、研修医を含む勤務医につきまして、ホワイトカラーエグゼンプションによる労働時間規制の適用除外がなされた上で、研修医については、研修プログラムを評価する民間機関が独自の労働時間制限基準を策定している、このように承知をしております。

 医師の働き方改革に関する検討会が取りまとめた中間的な論点整理の時間外労働規制のあり方についての今後の検討に関する論点におきましても、米国の研修医に対する制度など諸外国における医師の労働時間規制の内容も参考にしつつ検討することが必要ではないか、米国の研修医に対する労働時間規制による医師養成への影響の分析にも留意が必要ではないか、こういう意見が挙げられているところでございます。

 諸外国の事例につきましては、我が国とは医療提供体制や基本的な労働法制なども異なることから、そのような点も踏まえながら総合的に検討することが必要であると考えておりますので、参考にすべき点を精査した上で、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 ぜひ、下手して外国よりも非常に厳しいことになってしまって、医師の質の低下が起きないようによろしくお願いしたいと思っています。

 次に、七番目の質問ですけれども、先ほどちょっと武田局長からもお話がありましたけれども、臨床研修医、それから専攻医の研修の期間についてでございます。

 この期間は、医師としての研さんを積む重要な期間であります。医療の質の向上には、医師の能力は必要不可欠であります。この期間にどれだけ経験を積むかということが非常に重要な点だと思います。

 びっくりしたのは、東京のある特定機能病院は、研修医の夜間の当直を廃止したということですけれども、我々が研修医のときも、夜中の当直のときにさまざまな疾患が出てきて、それを勉強していくということは非常に役立ちました。そんなことをして本当に研修医の質が上がるのかということは非常に疑問に思います。

 先ほどのACGMEでは、専門医の研修などを評価して認定を行う。そのような専門の機関でのしっかりしたモニタリングを行うことで、研修医や専攻医の研修期間について特別的な労働法制から除外するような議論も今後は必要ではないかと感じています。

 そのような意味でも、労働時間を総合的に、横断的に検証するための医療界が自主的に運営するシステムについて検討を行うことが非常に重要だ。現場の声をどれだけ反映をしていただくか。現場でもいろんなやりくりをしながら、質を保ちながらやっているわけですけれども、そういうことが地域医療の崩壊を防ぐと思いますけれども、そこら辺に関してのお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 今委員から御指摘のありましたアメリカのACGMEにおきまして、総合的、横断的に評価がされているということでございまして、私どもも大変参考になり得る制度ではないかというふうに思っております。

 例えば、日本で、先ほども申し上げました医師の勤務実態の把握、これをデータに基づいて議論をしておりますけれども、週当たり勤務時間が六十時間以上の病院常勤医師の診療科別割合というのがございまして、これが、産婦人科でありますとか救急でありますとか臨床研修の研修医が非常に割合が多くなっているということでございます。

 こういうそれぞれの特性に応じて、どういうふうなことを考えていかなければいけないのか。特に臨床研修につきまして、週当たり勤務時間が長くなっているわけですけれども、一方で、今御指摘いただきました、研修の中で患者さんに寄り添って診なければいけない部分があるというような御意見もやはりあるんだろうというふうに思いますので、そういうそれぞれの実態を踏まえながら、さらに海外の状況も踏まえ、そして、よりよい研修という意味に即しても、どのような議論が必要か、幅広い観点から検討を続けてまいりたいというふうに思います。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 臨床研修医の人たちの中では、もっともっと自分たちは症例を診たい、仕事をしたいというのに、何でこのような制限が出てきてしまうのかというような不満の声も聞いておりますので、そこら辺のバランスを考えながら、よろしくお願いしたいと思っております。

 最後になりましたけれども、これは質問じゃないんですけれども、働き方改革という視点で、同一労働同一賃金ということが言われていますが、これは本当の意味での同一労働同一賃金とは少し傾向は違うんですけれども、例えば、同じ病院の中に、慢性期の病棟、介護保険の療養病床、これは介護医療院になると思いますけれども、もう一方で、医療保険の療養病床がございます。

 そこに介護職の人が働いているわけですけれども、介護保険のところの病棟においては、国から処遇改善加算という人件費の補助が出ているわけですけれども、医療保険の療養病床、仕事の内容は全く同じなんですよ、それでまた勤務異動もするわけですけれども、医療保険の場合は、多少診療報酬上に加算がつくかつかないかぐらいなんですね。

 そのような病院で介護職の人たちをふやした場合、特に一般病院なんかもそうなんですけれども、それで、同じような仕事をしていながら、大抵、私のデータだと月に二万円から三万円、お給料の差が出てきてしまうんです。そこら辺は、病院としては、同じ病院で働いている介護職ですから、差がないように自腹を切ったりとかしてお給料を補填をしてしまうんですけれども、そういうふうな現実もあるので、そこら辺は本当に縦割りの社会の悪いところが出ていると思いますけれども、そういうことも一つの例として解決していかなければならないと思っております。

 そういう意味で、まとめですけれども、ぜひとも、エビデンスのあるデータに基づいて、お医者さんの健康管理も含めた、現実的な政策をしていただきたいということと、先ほどお話ししましたけれども、医師だけじゃなくて、公務員の方の働き方改革、そしてまた我々国会議員一人一人も、また秘書の方も含めて、働き方改革をしっかりと実践していくことが求められるのではないかな、そう思っております。

 これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

高鳥委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず冒頭取り上げたいのは、労働実態調査のデータの再検討をせざるを得なくなったという、この件について、まず一言申し上げたいと思います。

 我々の認識をはっきり申し上げると、今回のこの調査結果で異常値が二割にも上っているというようなこの状況、そしてまた、こういう手法で調査を行った、それを、とりわけ裁量労働制との関係では比較をするデータとして使った、ここは私は反省をすべきだというふうに厚労省に申し上げたいと思います。今後、だから、この実態を把握する調査のあり方、ここをしっかりと再検討していただきたいというふうに思っております。

 裁量労働制については、いずれにしても、もう一度これは調査をするということになっております。国会をこれほど混乱をさせたわけですが、こういうことはあっちゃいけないと思っております。さまざま、厚労省の中でも、もちろんマンパワーの制約なりなんなりいろんなものがあるんでしょうが、しっかりと統計の専門家に意見を聞いてアドバイスをもらって、この労働実態の調査、この調査のあり方というものをしっかりと検討していただきたいと思いますが、副大臣、いかがですか。

牧原副大臣 裁量労働制につきましては、厚生労働省において新たな実態調査を行うということにしております。

 議員が、今大切な御指摘をいただきましたとおり、今回の問題点をしっかり反省した上で、正確なデータが得られますよう、専門家の御意見などを伺いながら、国民の皆様の信頼にたえ得る、そして得られるような適切な調査設計を行っていきたいと考えております。

伊佐委員 これは、裁量労働制だけの話ではなくて、今後の労働実態調査ということのあり方も、もちろんそういう意味で私は申し上げておりますので、しっかりと検討いただければというふうに思っております。

 その上で、じゃ、今回のこの件は、果たして政策判断を大きく揺るがすような影響があるのかどうか、つまり、法案の前提が覆されるようなものだったかどうか、本当に議論をミスリードしたのかどうかという、ここをしっかり検証してみたいというふうに思っております。

 まず、このデータは、労政審の審議において、どの議論で使われたのかということです。野党の皆さんからは、いや、もう調査がずさんだったので高プロ撤回だというような、こういう御意見もありますが、まず確認、この調査は高プロの議論に使われたんでしょうか、どうでしょうか。

山越政府参考人 今回の精査でございますけれども、統計として、より精度を高める観点から、論理チェックの条件を明確に設定いたしまして、異常値である蓋然性の高いものは無効回答といたしまして、当該事業場のデータ全体を削除した上で再集計をしたものでございます。

 こうした厳しい方法で精査を行いましても、なお九千を超えるサンプル数がございまして、また、精査前と比べて集計結果に大きな傾向の変化は見られておりませんで、調査結果の妥当性に疑義が生じているというふうには認識をしておりません。

 また、御指摘の労働政策審議会における議論でございますけれども、高度プロフェッショナル制度につきまして、特段この実態調査に基づく議論がされたものではございません。

伊佐委員 局長、じゃ、どの議論で使ったんですか、このデータは、局長。

山越政府参考人 この労働実態調査では、法定時間外労働や割増し賃金率についての調査をしているわけでございます。こうした長時間労働の是正でございますとか割増し賃金率、待ったなしの課題でございます。審議会でおまとめをいただきました、中小企業における割増し賃金率の猶予の廃止や時間外労働の上限規制が必要だ、そういった結論だったわけでございますけれども、そういった結論は変わるものではないというふうに考えておりまして、労働政策審議会の議論をやり直す必要はないと考えているところでございます。

伊佐委員 この調査を見ていただくと、ここに書いてあるのは何かというと、残業時間がどれぐらいかとか、あるいは大企業と中小企業はそれぞれどうだったか、こういうこと。つまり、さっき局長が言われたように、このデータを使って長時間労働の是正とかあるいは中小企業の割増し賃金という議論をした。その結果、やはり長時間労働の是正というのは必要ですねという結論に至った、だから上限規制を設けましょうということになった。あるいは、中小企業についても、六十時間を超えたら普通五割増しの賃金になるんだけれども、それが中小企業に適用されていないのはやはりあんまりだ、中小企業にも割増し賃金適用しましょう、これがこのデータを使った議論の結論だったわけです。

 そういう意味では、私は、この実態調査が結論をゆがめたと言えるのかどうかというと、ちょっと疑問、どうなんだろう、そこまで言えるのかなと。

 じゃ、もう一個聞きます。端的に答えてください、局長。私、時間がそんなにありませんので。

 この調査した後、調査して、一回再集計して精査し直した後は、これまでのデータ、つまり、例えば平均残業時間が、何時間だったものが何時間に変わったんでしょうか。お答えください。

山越政府参考人 まず、精査前のデータにおける一般労働者の一日の時間外労働の平均である一時間三十七分につきましては、復元処理を行う前の実数に基づく数値でございまして、今回の精査後、一時間二分ということでございますけれども、これは復元後の数でございまして、実数に基づく精査後の数値は一時間三十三分となっているところでございます。

伊佐委員 つまり、手法がいろいろ、さまざまあったとしても、この一時間三十七分だったものをしっかりと見直して、結果、この法定外労働は一時間三十三分が正しい答えでしたということ、異常値を除いたらこうなった。つまり、四分しか違わないわけです。この四分の違いが果たして、さっき申し上げたような、じゃ、上限規制を設けましょう、この必要性が疑義が生じるかどうか、あるいは中小企業の割増し賃金の必要性、こういったものの結論は、私は変わらないというふうに思っております。

 じゃ、野党の皆さん、きょう、法案提出していただいている先生方にもお越しいただいておりますので伺いますが、野党の法案でも同じように残業規制が盛り込まれている。立憲民主党の案では、上限規制が単月八十時間、平均六十時間。国民は政府と同じです、百時間、八十時間。じゃ、この数字を導き出した際に、どのようなデータをもとにしたのか。そのデータの根拠を伺います。

西村(智)議員 お答えいたします。

 時間外労働の上限時間の設定に当たって参考になるものとしては、私ども、過労死の実態をあらわしたデータがあると考えております。具体的には、厚生労働省が公表している平成二十八年度過労死等の労災補償状況によると、脳・心臓疾患により労働者が亡くなった事案で労災補償が認められたケースについては、次のようなことが明らかになっております。

 まず、発症前一カ月間の時間外労働時間が百時間以上百二十時間未満のケースについては、平成二十七年度、平成二十八年度ともに十二人の方が亡くなっておられます。また、八十時間以上百時間未満のケースでは、両年度ともに三人の方が亡くなっていますが、これが八十時間未満のケースとなりますと、両年度ともにゼロ人となっております。

 また、発症前二カ月間から六カ月間における一カ月平均の時間外労働時間が八十時間以上百時間未満のケースについては、平成二十七年度で四十六人の方が、そして平成二十八年度では四十八人の方が亡くなっておられます。また、六十時間以上八十時間未満のケースについては、平成二十七年度で四人、平成二十八年度では九人の方が亡くなっていますが、これが六十時間未満のケースになりますと、平成二十七年度に一人で、平成二十八年度はゼロ人となっております。

 このような過労死の実態を踏まえて、人間らしい質の高い働き方を実現するためには、時間外労働の上限時間について、主な過労死認定基準とされている単月百時間と、二カ月から六カ月で平均八十時間という数字を十分に下回るように設定すべきであると私どもは考えております。

 そこで、立憲民主党案においては、過労死をなくすという強い決意のもとで、単月の上限については、産業医の面接等が努力義務とされる基準を参考に休日労働を含めて八十時間未満とし、複数月平均の上限については、割増し賃金率の引上げの基準を参考に休日労働を含めて六十時間以下と設定したところであります。この上限時間の合理性については、先ほど御説明した過労死の実態からも明らかになっているものと考えております。

 以上です。

浅野議員 お答え申し上げます。

 本法案では、時間外労働の上限を、現行の限度基準告示を参考に、原則として四十五時間、かつ年三百六十時間とした上で、臨時的な特別の事情がある場合でも、時間外労働の上限を単月百時間未満、複数月平均では八十時間としたところであります。

 この数字については、まずは過重な長時間労働を一刻も早く是正するため、時間外労働について、早急に罰則つきの上限規制を導入すべきであるという考えから、二〇一七年三月十三日に連合の神津会長と経団連の榊原会長によって労使合意された数字を実現可能性が高いものとして尊重して、設定をしたものであります。

 以上です。

伊佐委員 今お話を伺っていますと、立憲の案については、これは過労死のデータというものをもとにしたということでした。国民の案については、私は、ちょっといまいち、しっかりした実態を把握したデータというものがどこに根拠を置いたのかというのは、なかなか理解ができなかったわけです。

 いずれにしても、これは実態をしっかりと把握するということが大事なわけですが、ちょっと再度伺いたいと思うんですが、今回、厚労省のデータを出し直したわけですが、では、これがいいかげんな数字だった、いいかげんな数字なので、例えば、上限規制の必要性もなくなったし、中小企業の割増し賃金の適用の必要性もなくなったんだ、こういうお考えなんでしょうか。

西村(智)議員 お答えいたします。

 時間外労働の上限規制、それから割増し賃金の引上げ、私たちは必要であるというふうに考えております。

 ただ、今回の労働時間等実態調査については、政府が閣議決定を行って、働き方改革の前提とする基礎的な調査であるという位置づけを、わざわざ確認して行っているものであります。ですから、そのデータは信頼性があるという前提でなければ、働き方改革関連法の議論はできないはずだというふうに私は思います。

 また、この労働時間等実態調査の結果いかんによっては、今よりも、今出されている政府提出法案、ないしは、私どもも盛り込んでおりますが、その内容も、もっと強化をしなければいけないという中身に、もしかしたらなるかもしれません。

 そういったことも含めて考えますと、やはりデータというものは信頼性があるものが大前提である、それを今回は担保していないということが大変大きな問題であると思っております。

岡本(充)議員 私どもも、時間外労働の上限規制、それから割増し賃金の必要性は引き続きあるというふうに考えていますし、このデータがどういうものだったのかということ、働き方改革のキックオフとまで労政審で当時の担当課長が発言をしているわけでありますから、このデータがどういうものだったのか、真実を明らかにした上で議論していくというのは、当然必要なことだと思います。

 そういう意味で、現時点で出されているデータについて、本当にこれが真の値なのか、そして、先ほど委員が御指摘になりましたけれども、一時間三十七分が三十三分だったからいいんじゃないか、こういうラフな話ではなくて、実のデータがどうだったのかということをきちっと確認して、統計学的に検証して、そして議論を進めていくべきだと私どもは考えています。

伊佐委員 上限規制の必要性であったりとか、あるいは中小企業の割増し賃金の適用の必要性、ここは両者とも否定されなかったわけです。

 今回のデータを使って導き出された結論がここですので、ここを否定することにはならないんじゃないか。つまり、このデータがおかしかったから、もう法案撤回だというような極論を、この委員会でもおっしゃっている方もいらっしゃるんです。

 そういう意味では、あくまでデータによって、もしかすると、より厳しい、もっと厳しくした方がいいんじゃないかというような結論もあり得るんじゃないかという答弁を今いただきましたので、少なくとも、この法案については、必要性については、しっかりとこれはあるんだ、この上限規制を設ける必要はあるんだ、あるいは、中小企業の割増し賃金を含め、同一労働同一賃金を含めて、こういうことをやる必要は、もうとにかく一刻も争う、今少しでも早くやる必要があるんだ、ここは合意いただけますか。

西村(智)議員 はい。重ねての答弁になりますけれども、私どもも、その点については必要だという認識でございます。ですので、私たちの案にも、恐らく国民さんの案にも、そのことが内容として含まれている、それは改めて確認をさせていただきます。

岡本(充)議員 私どもも、法案全部問題だと言っているわけじゃなくて、私たちの提出しているところと合致している部分もありますから、閣法が、ということでありますが、ただ、時間が管理をされない働き方がどういう影響を及ぼすのかといったようなことや、実際の働いている実態というのをしっかり踏まえた上で十分な議論をするべきだということを言っているわけでありまして、このデータが出ないまま、よもや採決だけ強行するということがあってはならないということだけは言っておきたいと思います。

伊佐委員 データ自体、冒頭申し上げたように、この手法についてはもう一度しっかりと検討していただきたいというところは、はっきりと申し上げたいと思います。

 その上で、今、こうした長時間労働是正を一刻も早く成立させていくということは、ここはもう皆さん一致していると思いますので、生産的な議論をしたい。

 その上で、高プロ、最後、質問したいと思います。

 先日の議論で、野党の質問、野党の方の質問で、高プロの健康管理時間について、そのままちょっと議事録を読ませていただきますと、健康管理時間は実労働時間と違いますよ、全然違いますよ、裁判になったときに使えません、これはもう常識ですと。本当にそうなのかどうかということ。

 きょうは法務省に来ていただいておりますので、例えば、不幸にして過労死で亡くなられた事案が例えば裁判になる、このときに、一般労働者の実労働時間は使えるけれども、高プロの健康確保時間は使えない、こういうことがあるのか、こういう差があるのかどうか、伺いたいと思います。

金子政府参考人 委員のお尋ねにつきましては、個別具体的事案におきまして裁判所が個別に判断される、こういう事柄でありますので、一概にお答えすることは困難であることは御理解いただきたいと思います。

 あくまで一般論としてお答えしますと、使用者は一般に、業務の遂行により労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負うと解されておりますけれども、過労死の事案における使用者の損害賠償責任の有無が裁判で争われた際には、使用者がこの義務に違反したかどうかということが問題になるということがございます。

 この注意義務があったかどうかについては、訴訟当事者が、例えば実際の労働時間の長さや、業務の遂行に伴う心身の疲労の程度等に関する主張や証拠を提出した上で、裁判所が、個別の事案ごとに適宜これらを踏まえて判断するということになると考えられます。

 御指摘の、健康管理時間に関する主張や証拠が訴訟当事者から提出された場合にも、これらと同様に取り扱われるということになると考えられます。

伊佐委員 ごめんなさい、もう一度、ちょっとはっきりしなかったので。

 ここに差があるのかということです。もちろん、真の労働時間を求めていく、労災認定で、ここは当然のことなんですが、この証拠能力としてもそうですが、ここは差があるんでしょうか。

金子政府参考人 委員が今使われた、差があるということの意味が難しいのでございますけれども、例えば、過労死であるかどうか、労働者が亡くなられたときに、それが労働に起因するものかどうかということが争われているような事案では、体調を崩されたときの、その労働者の肉体的あるいは精神的な負荷がどの程度だったかということが争点になると思いますが、この点を判断する資料として、健康管理時間というものも、およそ関連性がないと言うことはできないと思います。

 それはもう事案によりますが、実労働時間というものを導く際にそれが参考になるという限度で、関連性が当然ないとは言えないということで、差があるかどうかというのは、個別の事案によるというふうに思います。

伊佐委員 時間が来たので終わりますが、少なくとも、裁判になったときには使えません、これはもう常識ですということではないと。私は、ここは同じものとして、最終的にやることは同じだというふうに思っております。

 終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十九分開議

高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・市民クラブの尾辻かな子です。

 午後、本散後ということで、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 きょう、まず最初は、きょう朝に朝日新聞朝刊でございました野村不動産の記事についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 きょうの朝の記事でございますけれども、労基署が、過労死前に野村不動産の調査で違法裁量労働が見抜けなかったという記事が出ております。「関係者によると、新宿労基署は一二年に違法な長時間労働などの疑いがあるとして同社の東京本社を調査。」つまり、一二年ですから、過労死があったのが二〇一六年、その四年前に新宿労基署が入っている。「一般社員の長時間労働については是正勧告した。裁量労働制の適用者も調べたが、勤務時間の適正把握や、働いたとみなす時間数の見直しだけを指導。違法適用について指摘はなかった。」

 つまり、大臣、ずっと今まで、これからもしっかり監督指導、そして、今までもしっかり監督指導しておりますという御答弁をされておりました。しかし、野村不動産の件でも、何と四年前に監督指導があった、そして、それで見抜けなかった、それで過労死が生まれた。この件について、まず加藤大臣の見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 朝日新聞の記事は私もけさ読ませていただいたところではございますが、これまでも申し上げておりますように、個々の監督指導の具体的な中身については、別に本件だけで言っているわけじゃなくて、一つ一つについて具体的に申し上げるのは控えさせていただいているということでありますが、ただ、いずれにしても、前から申し上げておりますように、各種情報から労働基準関係法令違反が疑われる事業場に関しては監督指導を実施し、そして、問題があれば、是正すべく監督指導を行っているということでございます。

尾辻委員 全然お答えいただいていないんですけれども。

 だから、二〇一二年に入って見抜けなかったことについて、どう思われますか。

加藤国務大臣 したがって、先ほど申し上げておりますように、個別の事案を前提に答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私どもとしては、そうした疑われる事業場に入り、是正すべき点を見つければ、それにのっとって監督指導を行っている、こういうことであります。

尾辻委員 大臣、この二〇一二年に野村不動産に監督指導したということをきょうの報道で初めて知ったかどうか、教えてください。

加藤国務大臣 それはなかなか難しい質問なんですけれども、個々の事案について申し上げるわけにはならないと申し上げているので、知ったか知らないかといったところについて、またそれについてお答えをすればそこに言及していくことになってしまうということでございますが、いずれにしても、この点については、けさの朝日新聞を読ませていただきました。

尾辻委員 ですから、裁量労働制が、最初、拡大が入っていたわけです。その指導をちゃんとした例というのが野村不動産だったわけですけれども、この例は、今や、しっかり指導した例ではなくて、全く指導ができていなかった、そして過労死で初めて違法適用がわかったという完全な失敗例なんですよ。

 大臣、もう一度、なぜ二〇一二年で見抜けなかったのか、私は調査すべきだと思いますが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 まず、委員がどこをもって失敗とおっしゃっているのかということでありますけれども、先ほど申し上げた、監督指導一つ一つについては個別にお話しできないということで、この特別指導ということを前提に申し上げれば、私どもも特別指導をやらせていただいた、その結果として、裁量労働制の不適用があった。ということは、逆に言えば、不適用がこの間あったという事実、そのことはそのとおりでありまして、そしてそれを私どもが監督指導に入り、そしてそれを見つけたといいましょうか、ということで是正の指導を行った、是正に向けて監督指導を行ったということであります。

 いずれにしても、残念ながら、この間、さまざまな過労死が実際発生していることは事実であります。そうした事案について、過労死を行わないように我々は更に努力を重ねていかなきゃならないわけでありますし、また、従前から申し上げておりますように、過労死等があればそうした事業所には監督指導に入るということで取決めをさせていただいているわけであります。

尾辻委員 私の質問は、この件について調査しますかということで、今のだと御答弁になっていないんですね。調査されますか、これから、この事例が明らかになったということで。

加藤国務大臣 先ほど申し上げておりますように、一つ一つの事例について具体的にコメントを申し上げるということは差し控えさせていただいているわけでありますけれども、ただ、私どもとして、常に過去を反省しながら次に向かっていく、そのことは大変大事だというふうに思います。

尾辻委員 今、反省という気持ちというのを述べられたわけですけれども、御遺族はさぞかしこれは無念だと思いますよ。

 二〇一二年に指導に入っていて、その指導でわかっていれば、二〇一六年に、この命、なくなることはなかったわけです。もちろんその時点で、今だからそういうふうになるというのはわかりますけれども、遺族にとってはこれはたまらない話なんですよ。だって、労働基準監督署こそが労働者の安全を守る、その人たちが守り切れなかったんですよ。遺族の方がこの朝日の記事を見て、なぜ自分の、例えば親御さんであったら、自分の子供は死ななければならなかったのかと思ったときに、これは悔やんでも悔やみ切れない、何であのときとめてくれなかったんだと。

 そういう御遺族に対して、大臣から何か言葉はありますでしょうか。

加藤国務大臣 いずれにしても、過労死をされた御本人の方、そしてその御遺族の方、私どもも過労死をなくすべく努力をさせていただいている、そうした状況の中で、残念ながら過労死の事案が起きている、このことを重く受けとめながら、過労死を再び引き起こさせない、そういう思いで更に監督指導に当たらせていただきたいというふうに思いますし、それから、先ほど申し上げておりますように、やはり常に、監督指導をやった結果、そしてその監督指導の状況、それを一つ一つ踏まえながら、反省すべきことがあれば反省し、またそれは次の監督指導につなげていく、これは当然の姿勢だというふうに思います。

尾辻委員 遺族に対して何か一言というふうに私は求めたつもりなんですけれども、ないんですよ。ないんですよ。反省という言葉はありましたけれども、遺族に対してというのはないと思うんです。

 もう一度だけ、遺族に対して、ないですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、そうした努力をしている中において過労死が発生している、そのことは大変遺憾でありますし、また、そうした事案が再び発生しないように更に監督指導等に当たっていきたいと思います。

尾辻委員 私が求めているのは、やはり、二〇一二年で見つけられなかったことに対する真摯な反省とともに、それで失われた命に対して申しわけないという謝罪の気持ち、それをいただきたかったんですね。ところが、それがいただけないということ、非常に残念であります。

 野村不動産、もう少しだけ確認をさせていただきますが、この過労死事案について、復命の年月日と支給決定、ここを何度も、資料を出してくださいということでやっておりました。

 やはり、今いろんな資料で見えてくるのは、これは平均が八・一日ですね。たしか、百四十一件のうち、一週間、六日間で支給決定までが九十九件あるわけですね。ですから、今回の野村不動産はやはり異例なんですよ。どう見ても、この百四十一件の中では異例の長さ。

 じゃ、なぜこんなに異例の長さがあったのかということですけれども、私は、やはり、特別指導との整合性をとるためにこんなに長くしたんじゃないかというふうに思わざるを得ないんですよね。その前に、十二月二十五日に特別指導をして、そして二十六日に、過労死の認定の日に記者発表している。

 私、ちょっとこの間、いろいろやっているうちに、大臣の答弁が少し変わってきたなと思ったんですね。

 五月九日の我が党の岡本あき子委員に対する質問と答弁なんですが、岡本委員が、過労死事案に関しては大臣としては全く念頭になかった、この三回の説明の中では、そういうお答えになりますでしょうかと聞いたときに、大臣は、そういう意味で申し上げたのではなくて、その三回しか、私のところに野村不動産に関する事案について説明があったタイミングはないわけであります、そうすると、どこの時点で過労死を、例えば申請を知っていたのかというようなことになると、申請の時期等絡んでくるので、そこで、ちょっとその時期については申し上げられませんし、有無を言えば、そのうちどこかということにもなるので、そこは慎重に答弁をしなければいけないと思っておりますと。

 つまり、その三回しか、私のところに野村不動産に関する事案について説明のタイミングがなかったということになっておりますよね。

 ということは、大臣、この三回の説明の間に、やはり過労死のことをお知りになったんではないんですか。この三回しかないんですよね。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと質問の意味がよくわからなかったんですが、そこで私が答弁したように、この野村不動産の関係については、三回、資料を出させていただいているその日について個別に説明があった、こういうことでございます。

尾辻委員 もう今、ほぼ全てのタイムスケジュールが見えてきたわけです。

 つまり、これでいうと、二〇一七年の春に労災申請があって、十月には復命があって、普通であれば一週間ぐらいで労災支給決定がおりるのに、なぜかそこから、十一月十七日に一回目、十一月二十二日に二回目、大臣に説明、そして十二月二十二日に加藤大臣にまた説明をして、そして野村不動産への特別指導と、その翌日に過労死の労災決定があるということで、やはり、この三カ月の間に、こうやって過労死をいかに表にせずに特別指導だけをしっかりと見せていくかということをやっていたんじゃないかと思うわけです。

 そして、きょうの報道によって、一つ、しっかり監督指導しているという大臣の答弁、これが違っていたことになったわけです。

 例えば、二月二十日に、高橋委員に対して、一方で、今の野村不動産を始めとして、適切に運用していない、こうした事業所もございますから、そういったものに対してはしっかり監督指導を行っているところでありますし、今後とも更に進めていきたいと思っておりますと。

 これはもう今、うそになってしまうわけですよ。撤回された方がいいと思うんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 その御指摘というのは、どこをうそと指摘されておられるのか、ちょっと私には理解しがたいんですが。

 要するに、そこへ入って、そして問題点が見つかれば、それにのっとってしっかり監督をしている、これは当然のことなんですね。問題点がわからなければ監督指導のしようもないわけでありますから。当然、そういった意味で、それで、その端緒としては、これまで申し上げた、さまざまな情報やあるいは過労死事案がある、そういった場合にはしっかりと監督指導に入っている、そういうことを申し上げているので、今委員が何をもってうそとおっしゃっているのか、ちょっと私はにわかに理解はできていないんですけれども。

尾辻委員 もうここはいつも水かけ論になるのでいいんですけれども、私たちに対して、野村不動産に関してしっかり監督指導していますよと。でも、それは、一回目の指導のときには裁量労働制の違法適用は見抜けなかった。これでもって、しっかり監督しているという答弁はおかしくないですかと私は問うているわけです。

加藤国務大臣 その一回目という話については、ちょっと個別の話なので答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、本件に関して言えば、そういったところに監督指導に入り、そして問題点があって、そして問題点を指摘し、対応したということでありますから、そのことを申し上げたわけであります。

尾辻委員 何の反省の気持ちも、過労死で犠牲になった方への哀悼の気持ちも、そして自分たちの力不足だったということも何もお認めにならない答弁で、私は非常にがっかりしております。

 なぜここにここまでこだわるのかというのは、結局、今でも裁量労働制は非常に危険だということですよね。おとついぐらいも、たしか、二十八歳の方が裁量労働制適用になった一カ月後に過労死をされたということで記者発表がありました。結局、今の時点でも、裁量労働制というのはなかなか、このように過労死を生んでいる。さらに、今回、高度プロフェッショナル制度になるわけですよね。

 条文を見ていただいたらわかるんですが、企画裁量労働のことを書いている三十八条の四の条文と、高度プロフェッショナル制度の四十一条の二のこの柱書きというのはほとんど一緒なんですよね。仕組みが一緒なんですよ、導入する仕組みが。だから、委員会をつくって、そこで五分の四の賛成をとって多数で議決をして、そして行政に報告しなさいよ、この仕組み、全く一緒なんです。

 同じ仕組みでやって、裁量労働制の過労死はどんどん生まれている。監督指導に入っても、それが結局見抜けない。それで、高度プロフェッショナル制度になって、どうやって見抜いたり、とめることができるんですか。

 私、これは本当に、もうこの事案だけで、高度プロフェッショナル制度は撤回、そして、裁量労働制、私たちの党では裁量労働制については更に規制を厳しくすべきだと言っています。本来は、ここを受け入れてもらって、規制をどうやって強化するか、この議論をしなければいけないはずなんです。ですから、優先順位を間違えているというか、こちらに出てくるのを間違えているとしか私は思えません。

 おとつい、過労死家族の会の皆さんも緊急記者会見をされました。そこで、三十一歳で過労死をされたNHKの記者の佐戸未和さんのお母さん、佐戸恵美子さんはこう言ったんですよ。人の生身の体は壊れるんですと。ですから、何時間でも働いてしまったら生身の体は壊れてしまう。人の命より大事な仕事なんてないはずなんです。

 ですから、今、私たちがやらなければいけないのは、この裁量労働制がいかに過労死を生んでいるのか、この裁量労働制の今の問題点を、いかに規制を強化するのかであって、高度プロフェッショナル制度という、労働時間規制を全部外す、深夜割増しもない、そして休日の割増しもない、時間外もない、こんなものを今入れるべきではない、撤回すべきだということを強く申し入れたいと思います。

 次に参ります。

 平成二十五年度の労働時間等総合実態調査についてお伺いをしていきたいと思います。

 まず、先日出していただきました報告、五月十五日に、平成二十五年度労働時間等総合実態調査に対する精査結果ということで出していただきました。

 これによって、ちゃんと突合をしましたよと。一日の時間外労働が二十四時間を超えるもの、一日の時間外労働時間数と法定労働時間数八時間を合算した場合、二十四時間を超えるもの、一週と月、一日と月、一日と一週について時間外労働時間数に逆転が見られるものなど四つを除いたということで出していただきました。

 水曜日の質問でも、西村委員に対して、西村委員が、これは、もうこのデータは、それでは完璧なのですかというようなことを聞いたときに、大臣は、これは除外した、しっかり除外したというふうにおっしゃっておりました。

 しっかりとこの誤りは除外したものがこの九千八十三であると断言できますか。

加藤国務大臣 そこに、委員のお手元に、お持ちになっているところにも説明がありますけれども、そもそも、まず調査原票と我々が持っている入力データを突合し、そしてその上に、いわゆるチェックする一つの、整合性がないものがどういったものがあるかということで前提を置いて、そして出してきたということでありますので、異常値の蓋然性が高いもの、これを全体から、一つでもあればその事業所については除外をして再集計したということであります。

 そういった意味で、水曜日もたしか答弁をさせていただいたと思いますけれども、そうした手法を取り入れた、あるいは、もともとやっていたわけでありますけれども、十分でなかったので、それに更にいろいろと検討を加えて、チェックをする仕組みを入れて、異常値である蓋然性が高いものを除外して出させていただいているということでありますから、そういった意味では、信頼性のより高いものになっている、こういうふうに思います。

尾辻委員 大臣、こうおっしゃっているんですよね。今回改めて、異常値である蓋然性が高いというもの、それについてさまざまな要件を設定し、それを、そうしたデータが一個でもある事業所については全て除外をするということでつくらせていただいたと。全て除外すると、わざわざ全てということを大臣はおっしゃっておられるわけです。なのでお聞きしているわけなんですが。

 まず一つ申し上げたいのは、私たち、まだ除外をした後のデータは出していただいていないんですよ。これは、いつ出していただけるんですか。

加藤国務大臣 先ほど、全てと言ったのは、その事業所について一つでも異常値である蓋然性が高いものが入っていれば、その事業所に係るデータ、これは全部外させていただいた、こういう趣旨で答弁をさせていただきました。

 それから、今御指摘の点については、提出すべく鋭意作業をさせていただいておりますので、来週にでも出せるべく作業をさせていただきたいと思います。

尾辻委員 そうすると、突合したとか、全部ですよ、これは正しいかどうか、私たち、わからないんですよ。ですから、きょう出していただけませんか。

加藤国務大臣 前回も、当初の段階でデータを出させていただいたときにも、それなりの日数をいただいているんですね。ですから、そこは、少しお時間をいただきたいということで、来週には出させていただきたいということを申し上げているところでございます。

尾辻委員 余りに遅過ぎますよ。法案審査の前提で、議論の出発点ということで労政審でやったものが、正しいのが出ないと、私たち、どうやって実態がわかるんですか。

 仕方がなく、私たち、この旧データ、これだけある旧データの中で、除外しましたよというものが九百六十六ありますから、この番号を全部はじいて、見てみました。そうすると、今、添付で、皆さんのお手元に配付で行っているかと思います。逆転等が見られるもの、これが五つ。素人の私たちが見ても、まだ、一日と一週間、一週間と一月で逆転しているものが、この旧データの中で、除外したもののほかにあるんですよ。その他確認が必要なものも、私たちが数時間、素人が見ただけで五つも出てきた。これはどういうことなんですか。

 ちょっとお聞きしていきたいと思います。おめくりください。ページ数でいうと一ページであります。一ページと打っているところに、一八九四という、事業所番号か、固有の番号があります。線を引っ張っているんですけれども、一日、最長の者の方の一日の、一カ月の中で一番働いているのはゼロ時間だと言っているわけです。なのに、一週間になったら八時間。本来であれば、一日は八時間以上ないとおかしいですよね、一週間八時間ですからね。月間で十六時間ということで、また、いわゆる算数の整合性がとれていないんですが、これは間違いですよね。いかがでしょう。

加藤国務大臣 今お示しをしていただいたものの整合性ということから考えれば、少なくとも、月とか週に時間が入っているわけですから、それを含めた中で一番長い日を出していますので、ゼロということにはならないということであります。

尾辻委員 そうなんですよ。九百六十六除いても、まだ間違いがあるんですよ。これはどういうことなんですか。

 もう一個聞きます。五ページを見てください。これも本当に単純なもので、番号でいうと五七四八になりますけれども、平均的な者の一週はゼロ時間。一週間はゼロ時間なのに、一日には二時間が入っている。そうすると、一週間は絶対二時間以上じゃないとおかしいですよね。これは間違いですか。

加藤国務大臣 間違いというのは、このデータの関係は整合性がないかあるかという御質問であれば、こういうことはあり得ないと思います。

尾辻委員 私たち、二カ月待ったんです。これは、ずっと私たちが、野党が、一つ一つ突合、見て、これはおかしいですよね、おかしいですよねと何度も何度も指摘して、二カ月待って、そしてやっと、九百六十六もちゃんと全部除外しましたよ、これで大丈夫ですと出てきたやつにまだ間違いがある。もうおかし過ぎるというか、私たちは何を信じればいいんですか。

 まず、本当に氷山の一角だと思いますよ、この間違い。正直、こんな間違ったデータで、私たち、法案審議はできません。本当に、こんな間違ったデータで法案審議はもうできないと思います。もう一度しっかりと調査していただけませんか。私たちが二時間見ただけでまだこんなに見つかるんですよ。

加藤国務大臣 これは、だから、前に出させていただいたデータでありますので、今度は原票とも調整をしながら新たなデータを作成しておりますから、それについては、先ほど申し上げた、来週には全て、九千を超えるデータ、これのうち、前回と同じように、出せないものもありますから、前回と少なくとも同じものは出せるわけでありますから、同じベースのものを出させていただきたいと思います。

尾辻委員 もうこんなずさんなデータで、私たち、議論できないんです。

 いわば、食事が出てきました、そのうち二割に間違いがありました。まあ、二割の間違いは、腐ったものとしましょう。一つのお皿の中に二割腐ったものがあるから、その二割はどけました、信憑性は高くなっています、いいものになりました、さあ食べてください。

 二割も腐ったものがあって、それはのけましたから食べてくださいというのも、これはむちゃくちゃだと思いますけれども、そうしたら、その中にまだ腐ったものがあるんですよ。それを私たちに食べろと言うようなものですよ、これは。

 ですから、もうこのデータ自身をまず今撤回いただけませんか。そして、西村委員への発言、しっかりと自分たちはやって、このデータは全て除外したという発言についても撤回いただけませんか。

加藤国務大臣 ですから、委員のベースになっているデータは過去に出させていただいたデータでありまして、その後、私ども、データそのものも精査をし、そして今お示しをさせているような形で、不合理な関係、委員御指摘ありましたけれども、そういったような不合理な、矛盾するような関係のものについてチェックをし、そして、そのチェックした後のものを出させていただいたということでありますので。

 ただ、委員から、そのこと、もともと修正したデータを出すようにというお話がありましたので、それについては来週出すべく作業を進めさせていただきたい、こういうことであります。

尾辻委員 何で来週なんですか。もう来週だと間に合わないんですよ。正直言いまして、今出してください。それか、きょう出してください。

加藤国務大臣 ですから、前回も出してという御指摘があって我々は出させていただいたんですけれども、それなりにデータとして整えなきゃいけませんから、きょう言って、きょう出せるということではないということ、そこはぜひ御理解をいただきたい。

 ただ、別に、いつ出すかはわからないということではなくて、週明けにも出せるべく努力をさせていただきたいと思います。

尾辻委員 間違ったデータで法案審議なんてできないんですよ。今、立法事実が揺らいでいるんですよ。こんな立法事実が揺らいだまま、法案審議、このまま続けられないんです。きょう出してください。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、データとして出すにはそれなりの作業が要るわけでありますから、それのお時間はぜひ頂戴をし、来週には出すべく努力をさせていただきたいと思います。

尾辻委員 それでは、私が指摘した十件だけでもきょう出していただけませんか、原票と突合して。

加藤国務大臣 ですから、全体としてのデータを出させていただきますので、そこの上で照合していただく方が。一個一個出してみたら、わからなくなってしまうわけですね。だから、全体としてのデータを出させていただきたいというふうに思います。

尾辻委員 いや、きょう出してくださいと言っているんです。

 ぜひ、理事会の方でお諮りいただきたいと思います。提出を求めますので、理事会でお諮りください。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議します。

尾辻委員 そして、私、これは時間稼ぎされているとしか思わないんですよ。そもそも、間違いのないデータを出してくるのが厚生労働省の役割じゃないですか。何で私たちがこんなに一つ一つ見てやらなきゃいけないんですか。それに対して、大臣、ないんですか。こんな誤りばかりのデータを出して法案審議をしていることについて、大臣の認識を問います。

加藤国務大臣 まず、裁量労働制に係るデータについていろいろ不備があり、また、当初の段階では、異なるデータにもかかわらずそれを比較するという不適切な対応があり、そして、その後、データにもさまざまな問題があって、この裁量制については全面的に削除するとともに、データについて撤回をさせていただいた。それが千幾らあります。

 加えて、更にいろんな御指摘があり、我々の中でも精査をした結果として、当初のデータから二千何がしが減少して九千という数字になったということでありますので、そうしたことについては私どもとしても深く反省をし、また、それに関して厚生労働委員会始め国会また国民の皆さんに御迷惑をおかけしていることに対しては、深く反省をするところでございます。

尾辻委員 反省とおっしゃるのであれば、とにかく正確なものをすぐに出してください。そうしないと法案審議ができない。立法事実の、その一番最初の労政審の出発点のデータが間違っていたら、私たちは何もできないですよ。ということを強く申し上げておきたいと思います。

 済みません、きょう小倉政務官に来ていただいておりますので、同一労働同一賃金について一つお聞きしておきたいと思います。

 同一労働同一賃金に係る法改正と地方公務員の非常勤職員との関係ということですけれども、今回の働き方改革の関連法案、その中に、非正規労働と正規労働、この待遇改善を、非正規労働の待遇改善によって同一労働同一賃金の実現を図るものであるということで理念があるわけです。じゃ、これが本当に、今度、地方公務員の非常勤職員、今、非常にワーキングプアなどで問題になっております、ここはどうなるのかということで確認をしておきたいと思います。

 いわゆるパートタイム労働法では、これまでも第二十九条によって地方公務員は適用除外とされているところでありまして、今般の同一労働同一賃金に係る改正内容も、直接的には地方公務員には適用されていないものというふうに私も承知しております。

 しかし、一方で、二〇一六年三月十日の衆議院総務委員会においては、政府から、ニッポン一億総活躍プランにおいて同一労働同一賃金の実現の方向性をお示ししたいと考えているわけでございますが、議論については、もちろん公務員を排除しているわけではないと答弁がされております。また、地方公務員については、二〇一七年の改正によって、新たな一般職の非常勤職員として会計年度任用職員に関する規定が設けられ、今般の同一労働同一賃金に係る規定と同じ二〇二〇年四月より施行される予定となっているわけであります。

 ですので、今般、同一労働同一賃金に係る法改正の目的、趣旨も取り入れて、会計年度任用職員を始めとして、非常勤職員、任期つき職員の賃金、労働条件、これも、しっかりこの考え方を取り入れて決定する必要があると思いますけれども、政府の認識を聞かせていただきたいと思います。

小倉大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まず、地方公務員の臨時、非常勤職員の給与につきましては、委員御指摘のとおり、昨年の地方公務員法等の改正によりまして、一般職の会計年度任用職員制度を創設いたしまして、新たに期末手当の支給を可能といたしました。

 それに加えまして、昨年の八月に発出をいたしました事務処理マニュアルにおきまして、初任給や再度任用時の給与につきましても、職務経験等の要素を考慮して定めるように助言をさせていただいております。

 加えまして、任期つき職員の給与につきましても、ことしの三月に発出をいたしました総務省公務員部長通知におきまして、職務経験等を考慮した初任給の決定でありましたり、勤務成績に応じた昇給を行うよう助言をさせていただいております。

 このような給与面での取扱いは、今回の法案におけます正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消という方向性にも、地方公務員につきましても合致しているものと総務省といたしましては認識をいたしております。

 さらに、給与以外の勤務条件を定めるに当たりましては、地方公務員法第二十四条第四項に基づきまして、国及びほかの地方公共団体の職員との間の権衡を失しないように適当な配慮が行われなければならないとされておりまして、今後、民間法制の議論を受けた国の動向を踏まえた上で、総務省といたしましても対応していく必要がある、このように考えております。

尾辻委員 しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 立憲民主党の初鹿明博です。尾辻議員に続いて質問をさせていただきます。

 きょう、いろいろ質問を用意してきたんですけれども、今の尾辻議員の質問を受けて、改めて私の方からも幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 その上で、まず最初に、基本的なことをお伺いいたしますけれども、我が国は自由主義経済の国でありまして、契約自由の原則をとっております。個人の契約については契約当事者の自由な意思に基づいて行われるものであって、そこに国家は干渉しない、これが契約自由の原則ですよね。この契約の自由の原則では、契約相手の選択の自由や契約内容の自由、そして契約の方式も自由に決めていいということになっているわけであります。

 しかしながら、労働に関する契約については特別法を設けて、労働契約法を始め諸々の労働法制がつくられているわけであります。

 まず最初にお伺いいたしますが、なぜ、契約自由の原則があるにもかかわらず、労働法制が整備されているんでしょうか。

加藤国務大臣 契約という概念でいくと、例えば労働契約法ということになりますが、それ以外にも労働基準法とかさまざまありますから、それを包括して答弁させていただきたいと思います。

 一般に、労働者と使用者との間には、交渉力、これは違いが明らかにあります。そういったことを踏まえて、労働法制は、立場の弱い労働者が劣悪な環境で働くことのないよう保護をする、こういう観点から、今御指摘の契約自由の原則をいわば修正しているもの、こういうふうに認識をしております。

初鹿委員 まさに今大臣が答弁したとおりなんですよね。

 使用者と労働者の間で対等な関係にないんですよ。圧倒的に使用者の側が強い。その中で、当事者同士に任せたままですと、立場の弱い労働者が劣悪な環境で働かされる、そういう契約を結ばされてしまう、それを防ぐために労働法制というものはつくられているわけであります。

 その労働法制が岩盤だといってドリルで穴をあける、そういう規制だというその発想自体、私はそもそも間違っているんだというふうに思います。

 本来なら、今ある規制では不十分な部分、不十分なところがあるから、それをきちんと整備して、労働者を保護するための法律にしていくという改正は私たちも喜んで協力をしていきたいと思いますが、弱い立場の労働者が圧倒的に不利になるかもしれない、そういうことを内容とするような改正は、私は許すわけにいかないと思うんですね。

 そういう観点で見ると、この高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の拡大、労政審で、答申は、おおむね妥当、そういう結論になっているということですけれども、私も何度もここで言っていますが、労働者側の代表は、最後の最後まで、この二つが入っているということは遺憾だと、最後の最後まで、高プロと裁量労働制の拡大は反対だと言い続けてきたわけですよ。

 それを踏まえれば、そもそもこの労働法制が契約自由の原則がある我が国でつくられているという原点から考えると、労働者が反対しているものを国家がつくるということは、私はするべきではないというふうに思います。

 確かに、今、橋本委員が、三者構成の労政審で合意をしたものだ、そういうことを言っていますが、私はこれは合意じゃないと思いますよ、労働者側は明確に反対をしていたわけですから。その前提に立ってこの法案をきちんと見ていかなければならないということを私はまず指摘をさせていただきます。

 その上で、その労政審の議論の出発点になったのは何ですか。今、先ほども尾辻議員が取り上げました、二十五年度の労働時間等総合実態調査ですよ。この議論の出発点が、今、信頼が揺らいでいる。

 そして、二カ月精査をして出てきたもの、九千件になって、我々が、じゃ、その九千件のデータを全部ちゃんと出してくださいと言ったら、まだ出てこない。しようがなく、もともとの一万数千件のデータで見ていったら、残されているはずのものの中にも、まだ、先ほど示したように、時間が合わないものがあるわけですよ。だから、これはもう一回、本当にきちんと出してもらいたいんですよね、本当に九千件が正しいのかどうか。

 今、我々が調べて、五つ、逆転が見られるものを示しましたよ。これは番号もつけているんですよ。一八九四番、一日がゼロ時間だが、一週、月間、年間が記載されていると。番号をちゃんと書いてあるんだから、原票と皆さんが今精査したと言っているデータとを突合して確認をするのはそんなに難しい話じゃないですよ、我々が示したのは全部で十件ですから。逆転が見られるものだけでもいいですよ、この五件だけでも。今すぐやれると思いますが、今すぐやってもらえませんか。委員会を休憩にしてやってもらえませんか。

加藤国務大臣 先ほど委員長から、理事会で御判断されるということでございますので、理事会の判断に従って対応させていただきます。

初鹿委員 では、委員長、今一旦休憩して、理事会を開いてください。こんな五件ぐらい、一時間もかからないで確認できるはずです。委員長、ぜひ理事会を開いてください。

高鳥委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 済みません。速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 これは、前回出したのと同じベースで出させていただいた方が、そちらで見ていただくにも正確性があるというふうに思いますし、今それを精査して、準備しているんですね、ほかの委員会からも御指摘があって。したがって、来週の月曜日中には必ずお出しをさせていただきます。

初鹿委員 精査したものを示したんじゃないんですか。また精査する必要があるということが私は理解ができないですよね。

 丁寧に事業所の番号をつけているんですよ、十件。例えばこの五七四八番という事業所の原票を見て、そして集計したデータと合わせれば、一瞬にして、我々が指摘しているとおりになっているのか、それとも直っているのか、わかるじゃないですか。それが何ですぐにできないんですか。何ですぐできないんですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げた、全てのデータ、九千のデータをお出しして見ていただいた方が確かだということで、そして、今それを、精査というのは、別に、出せるように準備しているという意味で申し上げているので、そういう準備をさせていただいているので、それを月曜日中にはお出しをさせていただく、こういうことであります。

初鹿委員 五件ですからね。まず五件を出していただいて、我々にきちんと、合っているのか間違っているのか、確認をさせてくださいよ。これで一件でも間違いがあったら、やはりそもそも根本的に一から調べ直さなきゃいけないですよねということになるし、ここが全部訂正がされているんだったら、それは今やっている精査の作業で出てきたもので十分だということにはなるんだと思うんですよ。今やっているのが、後になって無駄になるかもしれませんよ。だから、せめて、この五件だけでもやってください。

 局長、伺いますけれども、原票は、番号がわかればすぐに出せるんですよね。すぐ出せるんでしょう、番号がわかっているんだから。六二四三番と言ったら、段ボール三十箱の中からあけて、ここが六千番台だなんて言って、すぐ出せますよね。

山越政府参考人 今、大臣からも御答弁がありましたように、現在、九千八十三事業場の入力データを提供すべく、私ども準備をしているところでございますので、来週月曜日に出すようにしてまいりたいと思います。

初鹿委員 局長、私が聞いたのは、データをどうのこうのじゃなくて、原票、段ボールの中に入っているんですよね。それをすぐに確認できるのかということを聞いているんです。ちゃんと番号順にそろえられているんでしょう。それを確認しているんですよ。答えてください。

山越政府参考人 このデータでございますけれども、調査票原票の内容とそれに基づく、入力されたデータの突合をやっております。したがって、もとのデータと変わったものとなっておりますので、それということになりますので、それについて整理をいたしまして、来週お出しをしたいということでございます。

初鹿委員 質問に答えてください。

 事業所の番号がわかれば、その事業所の原票はすぐに手元に出せるんですよねということを聞いているんです。それが出せるんだったら、そのデータとの突合はすぐできますよねと。

 だから、まずは、出せるかどうか。一八九四番と言ったら手元にすぐに一八九四番の原票を持ってくることができるんですよね。

山越政府参考人 繰り返しの御答弁になって恐縮でございますけれども、前回も全体のデータとしてお出しをしているものでございまして、それに相当するものといたしまして九千八十三事業場のデータの提供準備をしておりますので、それをお出しするようにやってまいりたいと思います。(発言する者あり)

高鳥委員長 質問を続けてください。(発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 繰り返しの御答弁で恐縮でございますけれども、現在、この九千八十三全体のデータとして出すということで準備をしているところでございますので、そうしたものを来週出すようにやってまいりたいと思います。(発言する者あり)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 調査票原票の保管ということでございますけれども、これは私どもで今も保有しているところでございます。

初鹿委員 保有しているのは当たり前ですよね。だから、それが出せる状態に番号順にそろえて並べられているんですよねということを聞いているんです。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 申しわけありません。必ずしも番号順ではないということかもしれませんけれども、局署、局とか署、そういう単位で保管している、そういう順で保管しているということかと思います。

初鹿委員 つまり、番号がわかればすぐに出せるという状況にはなっているということなんじゃないんですか。私は、今からでもすぐにこの五件だけは作業をして、それで、委員会が終わるまでに間に合うならばきちんと出していただきたいと思います。

 その上で、全てのものについては月曜日に出していただけるということを先ほど大臣が答弁していただきましたが、これをどのような形で、月曜日といっても朝から夕方までありますので、いつ出すのか、理事会が開かれる予定は多分まだ決まっていないと思いますので、理事会に提出をするのかどうなのか、時間と方法について明確にしてください。

加藤国務大臣 どういうやり方かについては、これはちょっと理事会の御指示をいただかないと、私の方から申し上げるわけにはいきませんが、当初は来週と申し上げておりましたけれども、こうした皆さんの御意見があるので、月曜日中にはやるということで、では……(発言する者あり)

高鳥委員長 静粛に願います。

加藤国務大臣 ですから、何時ということについて今詳細に答えられる状況ではありませんけれども、先ほど申し上げた月曜日中といえば、普通は夕方五時までに出す、こういうことでございます。

初鹿委員 月曜日の午前中に出していただけないでしょうか。

加藤国務大臣 昼までが無理かどうかということを、ちょっと今、私、申し上げる立場にありませんが、昼という委員の御指示も踏まえて、努力はさせていただきますけれども、いずれにしても、不十分なもの、不正確なものを出すわけにはまいりませんから、できる限り、委員のそうした御指摘を踏まえて対応させていただきたいと思います。

 今、あるでしょうというのは、データ全部があるので、それを前回と同じように整理をして出す、こういう作業をさせていただいているので、それが終わったところで出させていただくということを先ほどから申し上げているわけであります。

初鹿委員 これ以上言いませんけれども、できるだけ早い時間に、月曜日、出すようにしていただきますようにお願いさせていただきます。

 余りこの問題だけにとらわれているとほかのことができなくなるので、次に進みます。

 先ほど尾辻委員もお示しをしましたが、けさの朝日新聞の朝刊にこの野村不動産の事例、過労死の事例について、実は、二〇一二年に新宿の労基署が違法な長時間労働の疑いで調査をしていた、そのときには裁量労働制が違法に適用されていることがわからなかった、そして過労死になった方が申請をしたことで改めて調べたところに裁量労働制が違法に適用されることがわかった、そういう趣旨の記事であります。

 これまで加藤大臣は、特別指導の調査のきっかけが過労死であったということは認めてこられておりませんけれども、この記事からもわかるとおり、やはり、我々野党が見立てたとおり、過労死の労災申請があったから、改めて調べてみて、裁量労働制が違法に適用されているということがわかったんじゃないんですか。違いますか。

加藤国務大臣 これまでも答弁させていただいていますけれども、監督指導の端緒が具体的に何かということについては、本件を含めて、これまでも一貫して答弁は控えさせていただいているところでございます。

 ただ、別途、過労死があった場合、これに対しては確実に監督指導をしろ、これはもう通達で流しておりますから、本件も過労死があったわけでありますので、それを踏まえて対応させていただいている、こういうことであります。

初鹿委員 野村不動産の特別指導について、山井議員や先ほどの尾辻議員も、これは失敗事例じゃないか、そういう表現をいたしました。どこが失敗なんだと加藤大臣は反論していますけれども、なぜそういう言い方をしているかというと、過労死にならないと、違法な適用がされていないということがわからない、そういうことなんじゃないんですか。そういう面で、要は、何事もないときに、きちんと、違法だということをちゃんと調査で突きとめられるのか、それに疑問を持っているわけです。

 事実、野村不動産は一二年に長時間労働でちゃんと調べに入っているのに、裁量労働制が違法で適用されたことに気がつかなかったわけですよね。つまり、今回のこの高度プロフェッショナル制度も同様ですけれども、一回制度が導入されてしまえば、事業主は、皆さん方が考えているように法律をきちんと理解をしている方ばかりじゃありません。そして、遵法精神をきちんと持っている方ばかりじゃありません。ですから、故意か故意じゃないかは両方あると思いますが、間違って適用をしている場合は恐らくたくさん出てくるんだと思います。

 それを労基署が監督に行って、じゃ、見破れるのかといったら、私は多分見破れないんじゃないかと思うんですよ。見破れるのはどういうときかといったら、それは過労死だったり、又は病気になって、そして労災の申請をしたり、そのときに改めて働き方、労働時間をきちんと精査をする中で、これは違法だったんじゃないかということがわかるんじゃないんでしょうか。

 ここにもう一枚新聞の記事をつけておりますが、これは五月の十七日に記事になりました。ことしの四月、都内のIT会社の二十八歳の若者が裁量労働制で過労死していたという事案です。

 三十六時間ぶっ通しで働いていた。このツイッターの投稿、せつなくなりませんか、この投稿を見ていて。見てくださいよ。七月四日、眠い、十三時から翌日の十八時までって何なん。四日午後八時二十分、仕事終わるまであと二十二時間。五日午前六時三十二分、外明るいと思ったらもう六時かよ、アーメン。そして、六日午前一時二十分、うおう、やっと仕事終わった、社会人になってから三十六時間ぶっ通しで働いたの初めてやがな。こんなツイッターを残して死んでいったわけであります。

 この方も、ヒアリングの際に担当の方に聞いたら、はっきりとは個別の事案だからということで言わなかったんですけれども、違法な適用がされていた可能性があるというようなことをおっしゃっておりました。これは確認していませんけれども、そういうようなことも言っておりました。

 つまり、事が起こらないと、違法かどうかわからないんですよ。これは、どうやったら違法だということをわかると思いますか。監督に行って、きちんと適用されているかどうかわかるんですか。

加藤国務大臣 今委員からお話がありましたけれども、平成二十九年で見て、裁量労働制に関する監督指導、これは特に、例えば是正勧告を行った事業数は百三十あるわけですね。

 したがって、こういった、それぞれ端緒は何かというのはいろいろあると思いますけれども、実際入って、問題点を指摘をし、そして、それが法令違反ということであれば監督指導を行っている。その数として、今、これは企画、専門を足してでありますけれども、百三十あるということ、それは事実だということであります。

初鹿委員 端緒を明らかにしないその理由は、端緒はやはり労災の申請があったとか、そういうことなんじゃないかなと疑わざるを得ないですよ。疑われたくないんだったら、それぞれどういう端緒だったか明らかにしてみてくださいよ。何かがないとわからないんだと私は思います。

 そして、この裁量労働制ですけれども、これだけ、このデータの問題から始まって、世の中で大問題になっていると我々議論している側は思っているんですけれども、その状況でも、いまだにきちんと法をどうやって適用すればいいのかを理解していない人がたくさんいるんですよね。

 今、お手元に資料を配付をさせていただきました。三枚めくっていただきたいんですけれども、ある求人サイトを見ました。そこにある裁量労働制の求人を調べていったところ、三つ例を出しましたけれども、営業アシスタント、これは裁量労働制になっているんですよ。営業アシスタントで専門業務型の裁量労働制になるんですか。大臣、なりますか、営業アシスタント。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 専門業務型裁量労働制の中に営業そのものというものは対象になっていないと思いますので、その営業のアシスタントは、通常であれば、専門業務型の裁量制の対象にはなかなかなりにくいと思います。ただ、個別の案件はよく見てみないとわからないと思います。

初鹿委員 では、裏面を見てください。線を引いておきましたけれども、裁量労働制一日八時間と書いてあるんですよ。

 次、ヨーグルト会社なんですけれども、ヨーグルトの企画提案営業。企画提案営業ですから、これを見ただけでもアウトですよね。これも裁量労働制一日七時間四十五分。この募集要項の中身を見ると、メディアでヨーグルトが注目されたタイミングでキャンペーンを提案するなど、アイデアを形にするチャンスも大いにあります。要は、スーパーの店頭などで、キャンペーンだということで店頭販売しましょう、試食をやりながらと。これは専門業務型の裁量労働制の対象業務では明らかにないですよね。

 次、これは牛乳の宅配サービススタッフなんですけれども、これも一日六時間の裁量労働制なんですよね。何と書いてあるかというと、商品の御紹介とサンプルの配布、空き瓶の回収で再訪問。これはどこが専門なんですか。

 これで裁量労働制で募集しているのが、こうやって、きのう見たんですからね、きのうもあるんですよ。この現状を大臣、どう思いますか。

田畑大臣政務官 お答え申し上げます。

 私も今資料を拝見をさせていただいたわけでありますが、対象業務以外に裁量労働制を適用するなど、法令に違反した労働条件で募集を行うことは職業安定法で禁止をされております。そのような求人が求人サイト等に掲載されていることは、当然あってはならないものだと考えています。

 そのような求人が掲載されないよう、募集主に対する指導をしっかり行うとともに、求人サイト等を運営する事業者に対しても、昨年成立をいたしました改正の職業安定法により、募集内容の適正化の取組を促しているところであります。

 この法改正によって、施行は本年の一月一日から施行されているところでございまして、具体的には、求人サイトを運営する事業者は、募集主に対して求人内容の変更を依頼することや、依頼に応じない場合には求人を掲載しないようにすること等を指針において定めております。

 しっかり適正に実施されるよう、啓蒙啓発並びに指導に取り組んでまいりたいと思います。

初鹿委員 いや、全然指導されていないということじゃないですか、今の現状で。もう一回、改めて、求人サイトを運営している会社に厳しく言ってくださいよ。

 それで、ここで例に出したところの求人、全部そこそこの大手ですからね。中小企業じゃないですからね。中には、人材関係の仕事をしているところの子会社ですよ、そういうところでさえこういう求人を出しているわけですよ。

 現行の裁量労働制でこうなんだから、それよりももっと労働時間の管理が緩い高度プロフェッショナルになったらどうなるんだろうかと非常に私は心配ですよね。このような状況で、裁量労働制の規制の強化をしないで高度プロフェッショナルを導入するというのは、明らかに私はおかしいと思います。

 今回、裁量労働制のデータの問題が発覚して、裁量労働制にかかわる部分をそっくり落としましたよね。私は、規制の強化に当たる部分はきちんと今回やる必要があると思います。ですので、高度プロフェッショナルは落として、裁量労働制の規制の強化の部分を逆に改めて加える、そういう修正をしてください。いかがですか。

加藤国務大臣 まず、先ほど、リクルートの、求人情報のお話もありました。

 この裁量労働制についてはいろいろ課題があるということで、本年二月に、裁量労働制を導入している事業場に対して、事業主みずから、法令に従った運用がなされているか改めて点検し、その結果を報告いただくよう求めているところでありますけれども、そうした結果を踏まえて、これは重点的な監督を行っていきたいということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 それから……(初鹿委員「高プロを外して規制の強化を加えてください」と呼ぶ)ごめんなさい。今、私どもは法律を提案させていただいておりますから、それは、裁量労働制については、裁量労働制に係るデータについていろいろ問題があったということで撤回をし、そして裁量労働制全体について削除させていただいたということでございまして、高プロについては、これまでも労政審等でも御議論いただき、先ほど委員からもお話がありました、おおむね妥当ということ、それらを踏まえて、また、改めて高度プロフェッショナル制度の必要性はもう申し上げませんけれども、そういった必要性を踏まえてこの法案を提出させていただいているということでございます。

初鹿委員 ぜひ、与党の理事の皆さん、こういう今の現状で裁量労働制がきちんと守られていないことを考えると、規制の強化が必要なので、その修正も検討していただきたいということをお願いをさせていただきます。

 では、二ページを見ていただきたいんですが、時間がなくなってきたので、ちょっと最後に確認させていただきますが、専門業務型裁量労働制の対象業務、十九業務をお示しをしているんですけれども、今回、高度プロフェッショナル制度が導入されたときに、高度プロフェッショナル制度の対象となる業務の中で専門業務型裁量労働制の業務に入らない業務というのは何がありますか、何が想定できますか。

山越政府参考人 高度プロフェッショナル制度の対象業務でございますけれども、従来から御説明させていただいておりますように、法案成立後、改めて審議会で議論することとしておりますので、今御質問の点について、一概には、すぐにはお答えできないわけでございます。

 ただ、他方で、労政審の建議の中で、高度プロフェッショナル制度の対象業務となり得るものについて例示がされている、その範囲で申し上げれば、専門業務型裁量労働制と重ならない業務としては、金融商品のディーリング業務、コンサルタントの業務については、現行の専門業務型裁量労働制と必ずしも重ならない部分があるというふうに承知をしております。

初鹿委員 裏を返すと、金融の業務とコンサルティング、それ以外は全部、専門業務型の裁量労働制の十九業務の中に包含されるわけですよ。

 私が指摘をしたいのは、現行制度でも、自分の時間に合わせて働く働き方というのは、まずこの裁量労働制もあるし、フレックスタイム制もあるし、そして、成果をきちんと反映させたいということであれば成果型の賃金制度というものもあるわけだから、労働者の側にとって、高度プロフェッショナル制度が導入をされることによって得るメリットというのはほとんどないんじゃないかと思っているわけです。

 伺いますけれども、例えば専門業務型裁量労働制で働いていた労働者が高度プロフェッショナル制度に変わると、それによって得られるメリットって何ですか。

山越政府参考人 裁量労働制でございますけれども、これは、労使で定めた時間、労働したものとみなすという制度でございますので、あくまでも働き方と時間というのはひもづけられた関係になっているわけでございます。

 専門業務型裁量労働制であれば、それはみなし労働時間があるわけでございまして、その労働時間に応じて賃金を払う仕組みということでございまして、労働時間から完全に切り離された形にはなっていない。これに対しまして、新しい高度プロフェッショナル制度におきましては、こういった労働時間との関係というものをなくしているところでございます。

 例えば、労働者の中では、あるときに集中して働きたいという方もおられるわけでございまして、深夜の時間帯の方が能率が上がるという方もおられるわけでございます。時間帯により働く制約を設けてほしくないという方もおられるわけでございまして、こういった創造性の高い仕事につく方がこういった形で自由に働けるわけでございますし、例えば、裁量労働制でございますといろいろな、深夜割増しとかもございますけれども、そういった形と切り離された、成果で評価される仕組み、こういったものの適用を受けることができる、これが高度プロフェッショナル制度だというふうに思っております。

初鹿委員 今例示を示した、深夜の割増し賃金とは切り離される。深夜労働、深夜の方が能率がいい人は深夜働けない、働かせなくしている事業主のその理由は、割増し賃金を払うことがあるから働くなと言っているわけですよね。つまり、これは、労働者の側の問題ではなくて使用者の都合なわけですよ。労働者にとってのメリットじゃないわけですよ。そこを勘違いしないでいただきたいということを指摘をして、質問を終わらせていただきます。

高鳥委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党の池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 まず、データのことからなんですが、九千件のうち、おかしなデータを除いて、加藤大臣も十六日の答弁で、長妻委員の質疑のときにですけれども、一定のおかしなデータは除いたから前進があったというふうにお話をされています。でも、その中で、やはりおかしいというデータが、今、先ほどあったわけですから、これはもう一度、データをきちっと出していただきたいと思います。

 先ほど、月曜日にというお話がございましたけれども、月曜日に出していただくのは、もちろん時間が早くということで、午前中、お願いしたいこと、それと、あと、エクセルの方でいただきたいと思います。

 そして、先ほどの答弁でも、皆さん方がチェックしやすいだろうから、見ていただくためには全部出した方がいいという御答弁がありましたけれども、いや、私たちが見ていただくというよりは、そもそもそちらでチェックをすべきものだと私は思いますので、そのおかしいデータについて印をつけていただきたい、この二点をお願いしたいと思います。

 エクセルで、前回同様のCD―ROMでの渡し方、それと、あとは、おかしいところにデータをつけて、ここを直しましたよというところを、印を必ずつけて提出をいただきたいと思います。これ、御協議をお願いしたいと思います。委員長、委員長にお願い、じゃ、大臣、お願いします。

加藤国務大臣 そのエクセルとか、ちょっとその辺の、前回どういう形で出させたかわかりませんが、今確認、ちょっと耳元で聞いたら、前回のそういう、何ですか、データの形で、紙じゃなくてお渡しをしているというので、それは踏襲させていただきたいと思います。

 それから、おかしなところのマーキングというようなあれですけれども、御指摘のあった番号のところがわかるようにとか、そういった意味ですか。

池田(真)委員 それはこちらがチェックしたところですので、まず、そちらが今精査をしたと言っているものの中で、おかしいところをチェックしていただきたいと思います。

加藤国務大臣 ですから、私どもが今持っている九千何がしのデータは、お示しをさせていただいた、何というかな、チェックリストというかな、それで、ふるっておかしくないものを残しているということでございますので、それを出させていただきたいと思います。

 委員おっしゃっている、その外した九百幾つのやつをとおっしゃっているんですか。

池田(真)委員 おかしいところのデータをチェックしていただきたい、マーキングしていただければいいです。どこを変えたかということを、わかるようにしていただきたいと思います。補正したところです。

加藤国務大臣 多分、委員の御質問は、今、九千何がしが残りますよね。それの精査前と精査後を比べて、異同があるところをわかるようにしてくれ、こういう趣旨ですか。

池田(真)委員 済みません、今ここで、大臣が、作業されている大臣ではないので、私は委員長にお願いをして、この質問については終了させていただきたいんですが、補正したところにチェックをしていただくということは何も難しいことではありませんので、後刻、理事会で協議をお願いしたいと思います。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議します。

池田(真)委員 私の方で質問させていただきますが、きょう、おいでいただきまして、ありがとうございます。原審議官の方においでいただきました。

 まず、御質問の方ですけれども、五月十六日に家族の会の方々が安倍総理に面会依頼をされています。安倍事務所に申入れをした。そして、あと、福島みずほ参議院議員の方の事務所でも面会の申入れをされています。私も、きのうですけれども、参議院の厚生労働委員会を拝見をしておりました。その中での原審議官の御答弁の中では、官邸で受理をしたというふうに伺っておりますが、そこについて間違いがないでしょうか。まず確認をさせてください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の面談の御依頼につきましては、五月十六日の二十一時過ぎにいただいたところでございます。官邸として、組織として受理をさせていただいているところでございます。官邸にも届いているということでございます。

池田(真)委員 そうしましたら、まず、それは総理のお耳にはきちんと、報告といいますか、入っているのでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 官邸として、組織として受理をさせていただいているというところでございます。

 全国過労死を考える家族の会の声には、政府として、十分に受けとめたいと存じます。

池田(真)委員 今、受理の話は最初の質問で確認できましたので、今私が質問しているのは、安倍総理に報告をしているのかということです。

原政府参考人 繰り返しでございますが、組織として、官邸として受理をさせていただいているということでございます。(発言する者あり)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 原内閣審議官。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 関係しているところには渡っているようにしてございますが、御指摘のように、総理そのものに確実に伝わっているかというところは、確認してございません。

池田(真)委員 関係しているところというのは、どこの部署で、どなたのことでしょうか。

原政府参考人 総理室でございます。

池田(真)委員 家族会に今の現状を、要は御返事もしていないということですよね。総理にも伝わっていない。

 組織として受理をされているということでございますけれども、きょう、資料につけました資料六のページ、面談の御依頼文です。この文言を読んで、なぜ報告していないんでしょうか。

 ここに、中段からですが、過労死で愛する家族を失って、地獄の苦しみを味わうのは私たちだけでたくさんです、過労死防止のために私たちは全人生をかけて活動しておりますと。今どういう局面にあるのか、想像がつきますよね。そして、私たちの声を直接お聞きいただきたく、面談を切にお願いを申し上げます、五月の二十二日までにお時間を頂戴できればとあります。

 このような依頼を受けて、とめているということなんでしょうか。総理には、いつ耳に入るのでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 家族会の皆様の声は、政府として十分に受けとめさせていただきたいと存じております。

 いただきましたことについては、どのように回答するかも含めて早急に考えてまいりたい、このように思ってございます。

池田(真)委員 今、考えてまいりますと言いましたけれども、総理が考えるのではなくて、審議官がお考えになるんですか。総理に会いたいということを総理に伝えないで、報告もしないで、確認もしないで、組織として審議官の段階で握り潰すんですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 私のところということではございませんで、組織として受けとめさせていただきましたので、それで全体として相談して、しっかりと対応してまいりたい、このように思ってございます。

池田(真)委員 即刻の対応が私は必要だと思います。

 そして、きのうの答弁で、厚労省の管轄だからという答弁をされていました。

 もう一度確認させていただきますけれども、総理に報告をして面会をセッティングする予定ですか。それとも、きのうの答弁のように、本来これは基本的には厚労省の分野だからということで、厚労大臣に返すんですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しでございますが、全国過労死を考える家族の会の皆様の声は十分に受けとめさせていただきたいと存じます。その上で、所管であります厚生労働省において基本的にはしっかりと御対応いただきたいと考えてございます。

池田(真)委員 とてもおかしいと思います。まず、この働き方改革は総理の肝いりの法案ですよね、今国会、何が何でも通すと。そして、施政演説、きのう福島みずほ参議院議員も話をしていましたけれども、きょうは資料もつけています。

 資料をごらんください。資料の八ですけれども、きちっと、しっかりと結果を生み出す働き方改革を皆さんとともに進めていくと言っているわけですよね。

 そして、新聞報道でもありました。高橋まつりさんのお母さんとお会いしたときの、これは資料七についていますけれども、安倍総理は涙ぐみながら聞いてと。そういうふうに聞いていたということは、これは非常に不誠実ではないでしょうか。

 高橋まつりさんのお母さんとは面会をして、そして、二度と悲劇を繰り返さないと強い決意で長時間労働の是正に取り組む、こう言っているから、総理に会いたいんですよ。なのに、総理に会わせないつもりですか。

 もう一度、御家族に対してのレスポンス、そして、総理に面会をきちっと保証していただけるのかどうか、その検討も含めて御回答いただきたいと思います。

原政府参考人 レスポンスにつきましては、早急に対応してまいりたいと思っております。

 それから、対応につきましては、政府として御家族の皆様の声は十分に受けとめたいと存じております。その上で、基本的に所管の厚生労働省において対応いただくべきもの、このように考えてございます。

池田(真)委員 会わせないような口実にしか私には聞こえません。これは即刻報告すべき問題ですよ。

 そして、担当の厚生労働大臣、加藤大臣には、この御家族の方とはお会いしていますよね、家族会の皆さんと。お会いしていると思います。そして、十六日の厚生労働委員会の中でも、加藤大臣は懇談されたと。

 そして、委員長、このときの、十数人の方が来られている、その大まかな概要をぜひ翌日の理事懇に提出してくださいと。ああ、出ていました。済みません。では、ちょっとこちらの方で今いただきます。

 要するに、加藤大臣と会ったけれども、高プロ、要は高度プロフェッショナル制度を削除とか、その要望がきちっとこの委員会を通しても進められない、それで安倍総理にお願いをしたいということの面会のお願いなわけです。

 ですから、これはきちっと、きょう必ず、すぐにでも報告をして、そして、御家族へのレスポンス、きょう金曜日ですよ。二十二日までということであれば、月曜日にお返事をするとか、月曜日に報告をするなんて、あり得ないと思います。きょう必ず報告をして、御家族の会の方へ御返答をいただきたいと思います。現在のところというような返答の仕方もありじゃないですか。そのお約束をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

原政府参考人 早急に、それから今御指摘いただいた点も含めまして早急に対応したい、このように思ってございます。

池田(真)委員 よろしくお願いいたします。

 非常にこれは、このままずるずるとするわけにはいきませんので、きちっときょうじゅうに対応をお願いしたいと思います。

 そして、受理という言葉の重みをきちっと、行政ですから、受けとめていただきたいと思います。受理をした上で、組織的な判断で厚労大臣に返す、厚労省と話をしてください、これだけは絶対ないようにしていただきたいと思います。

 そして、次になりますけれども、加藤大臣の方ですが、今、紙をいただきましたけれども、お会いして、この前、十六日に配られた、十二名の高度プロフェッショナル制度を推進するようなことが書いてあることとは全く違う御家族の方たちからのお話だったと思います。

 そのことを聞いてですけれども、改めて伺いますが、高度プロフェッショナルを入れたままの法案をこのまま進めようというのは、御家族の会の方たちの言葉を聞いても、そう思っていらっしゃるということでしょうか。

加藤国務大臣 昨年十一月八日に開催されました過労死等防止対策推進シンポジウムの際には五名の御遺族の体験談を伺い、また、今委員御指摘ありました、ことしの二月の二十三日、過労死された方々の御遺族、また、過重な労働の中で心身の健康を損なった方々から直接お話を伺ったところであります。

 その思いについては前回も申し上げましたので、詳細は省かせていただきますけれども、いかに過労死というものが御家族にとって、あるいは、過労に伴う労働によって心身の健康を損なうということは御本人にとってどれほど重いものか、そのことはしっかりと受けとめさせていただいたところでございます。

 その上で、今回の中でも、長時間労働の罰則つきの上限をつけ、時間外労働につける等、そうした長時間労働の是正に向けての内容も盛り込ませていただいておりまして、そういったものをしっかり進めさせていただきたいというふうに思っておりますし、また同時に、高度プロフェッショナル制度については、こうした現在の第四次産業革命あるいはグローバル化、こうした中で、より高い付加価値を生み出していく経済、こういったことが求められ、また、そうした経済の中においては、まさにイノベーションや高付加価値を担う高度専門職の方々がその意欲や能力を発揮をしていただく、こういったことが求められている。また、そのことが、我が国の産業、社会の発展、あるいは、これからに向けての雇用の確保にもつながっていく、こういう思い。そしてそれこそ、それぞれの状況に合わせた多様な働き方の選択肢を提供していく。

 そういった観点から、今回、高度プロフェッショナル制度も含めた法案を提出し、今御審議をいただいているということでございます。

池田(真)委員 上限の時間外管理とかは、高度プロフェッショナルにはありませんよね。

 それと、あと、きょう、もう一度ですけれども、資料の一番は、先ほどの初鹿委員のところでも出ておりましたけれども、おととい記者発表されました過労死の若者のコメントが出ております、SNSのですね。

 そこで、資料三でございますが、御遺族のコメントが載っています。今後、息子と同じような犠牲者が出ないようにということですね。若いときは二度とないから、休日もきちっととれて、リフレッシュできる時間を若い人たちにつくってほしいと。先ほどの答弁は、産業革命だとか、どちらかというと、労働者の保護をする、命を守る厚労大臣の答弁とは私は聞こえませんでした。

 そして、高プロ法案を削除してくれというのも、新聞等でも報道がされています。資料の五に書いてありますけれども、家族会の方々は、高プロは死人がふえる制度だ、これ以上悲しい遺族をふやさないでほしいと。

 それで、この先にも書かれていますけれども、佐戸未和さんのお母様は、労災申請さえも今度高プロではできなくなって、死人はふえても過労死は減るという事態が起こる、そして、死んでも自己責任で片づけられ、苦しむのは残された遺族だというふうに、いろいろなところで要望の声というのは、高プロを削除してくださいということを言っているんですけれども、その言葉は全く大臣の心には届かないのでしょうか。

加藤国務大臣 お会いしたときにも、そういうお話も頂戴いたしました。そうした御懸念ということを、我々は十分に受けとめなければならないと思います。

 ただ、今回の高プロには、もう御承知のように、業種について限定をし、そして収入要件、そして本人の、しかも職務についての中身も決めた上で同意等々、さまざまな要件を課し、その上で健康確保措置についてもるる決めさせていただいている。こういったことをしっかり運用することによって、そうした御懸念をできるだけ解消し、他方で、この高度プロフェッショナル制度によって生み出されるべき、より高い付加価値のある産業、あるいはプロジェクト、そういったものを推進していく。

 そして、先ほど、厚生労働大臣というお話がありました。厚生労働大臣として、労働条件をしっかり確保し向上していく、これは大変大きな仕事であります。しかし、他方で、職業を確保していく、雇用を確保していくということも大きな仕事だというふうに思っておりますので、そういった点について、よくバランスももちろんとりながら、遂行させていただきたいと思います。

池田(真)委員 職業の確保の中で、命がなくなるような職業の確保は、私は要らないと思います。ですので、過労死のない職場を目指していくというのが、ここで政策議論をするものだと思います。

 そして、要は、御家族の会の方たちは、こうやって今みたいな答弁で、加藤大臣の答弁がそういう状況ですから、前向きに受けとめていないと思われますよ。だから、今回、総理に会いたいと言っているわけです。それで、総理に会いたいということを、今最後までいていただいておりますので、ぜひその意味を伝えてください、原審議官。

 厚労大臣には、もう既に終わっているんです。でも、今みたいなやりとりが続くから、だから、安倍総理が肝いりでやると言っている安倍総理に直接会いたい、直接生の声を届けたいと言っているんです。これはぜひお願いをしたいと思います。原審議官、一言お願いします。

 そして、柳瀬さんという人は、いろいろお会いしているようじゃないですか。何で、何回も何回も会って、おかしくないですか。それで、なぜ今回はそんなに会わせないような口実ばかりをされているのですか。もう一度、最後にお願いします。

 それから、ほかの秘書官に言ってくださいみたいな話があれば、そういうところを御案内すべきだと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 本日の御指摘について、伝えるようにいたしたいと存じます。

池田(真)委員 ぜひよろしくお願いいたします。柳瀬秘書官のような方と、ぜひすぐに面会をしていただきたいと思います。

 それともう一つ、最後ですけれども、野村不動産の話が先ほどからありました。そして加藤厚労大臣も、これから徹底する、是正する、長時間労働の是正とか言っておりましたけれども、指導監督の方法に問題があるというふうに思います。

 今でさえ、おとといのそのデータのときの記者会見で、厚生労働省も、初めて調査をする労働基準監督の方もいたとか、調査票の記入の今回のデータについても徹底することができなかった、いろいろなことをおっしゃっています。

 それで、今回のこの野村不動産の部分でも、是正勧告をしたと言いながらですけれども、それを見つけられなかった。その後に、東京労働局の方で特別指導を十二月にしたというふうに言っていますけれども、このやり方について、個別的な案件では御回答はいただけないというのはわかりますけれども、ただ、この指導監督のあり方も見直さなければ、安心はできないと思うんですね。ただでさえ、これだけ見つけられていないわけですから、そこをどうやって変えていく予定なんでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のように、常に端緒を見つけ、そして、さまざまな、まず情報を収集するという意味においては、努力をしていく必要があります。それから、そうした情報に基づいて、限られた人数でありますから、そうした労働法制の違反が疑われる、あるいは疑いが高い、そうした事業所を中心に監督指導に当たり、そして、監督指導に当たっては、さまざまな監督指導の手法も、ある意味では開発しながら、あるいは、今御指摘のあった、まだこの世界に入って経験の浅い方には極力経験を積んで、そして研修をし、そしてその熟度を上げていただいて、より一層徹底した監督指導がなされるように研修も行っていかなきゃならないと思います。

 いずれにしても、監督体制を、そういった質の面においても向上し、それから、量的な面においても指導監督官の増強を図るべく、これまでもやらせていただいておりますけれども、これからも更に努力をしていきたいと思います。

池田(真)委員 ありがとうございます。

 ただ、やはり、この高度プロフェッショナル制度からの残業時間というか、労働時間も把握しないわけですから、その中で高プロの場合を考えると、能力のある人が好きな時間にできる、でも、本当に一日分ある仕事を、能力が高くて午前中だけで終わっちゃいます、ではその後帰れるかというと、帰れる制度だとは言っていますけれども、でも実際は、できる人に仕事がばんばん来て、結局は過重負担になるのではないかということをみんな恐れているわけです。

 ここの、過労死された方々のSNS等、配付資料もありますけれども、みんな頑張っちゃうんですよね。頑張って、頑張って、優秀だから頑張って、頑張って、助けてと言えないんです。今、与党の方では、何だか少し修正案を出そうみたいなことが記事で報道されていますけれども、でも、きちっとここは、高プロの重みといいますか、非常に、一度認めてしまうと、後でやはりやめますというようなことが言えない仕組みです。今だってそういう状況ですから、今だって過労死をなくせていないわけですよ。

 だから、この辺は、高度プロフェッショナルはまず削除していただく、そうでなければ、インターバル制度できちっと時間を、十一時間等を義務づけるとか、そのぐらいをしなければ、全くこれは安心ができないと思います。

 別紙二をごらんいただければ、これは二十九年の就労条件ですけれども、インターバルの導入で、現在で一・四%、そして、導入の予定はなく検討もしていないというのが、この真緑ですよ。これが実態ですよ。こういう中で、やはりきちっと労働時間を管理するということが私は必要だというふうに思っております。

 努力をするというふうにおっしゃっておりますけれども、まずは、この佐戸未和さんの、コメントの部分をごらんいただけると、やはり、自己責任という形で終わらせてしまうということは絶対にあってはならないと思いますので、ぜひそこはお願いをしたいと思います。

 最後になりますけれども、高度プロフェッショナルの制度、あと、健康管理時間との関係というふうに、ここはやりとりがずっと続いてしまいますので、もうやりませんけれども、過労死家族の会の方とお会いして、もう一度、加藤大臣の中で、この高度プロフェッショナル制度が危険だなとか、見直さなくてはいけないなとかというお気持ちはありませんか。本当に加藤大臣の心の中を私はお聞きしたいなと思います。

加藤国務大臣 高度プロフェッショナル制度の必要性については先ほど申し上げたところでありますので、それを前提に法案を出させていただいておりまして、御審議には丁寧に対応させていただきたいというふうに思います。

 その上で、高度プロフェッショナル制度は、これはまだ導入されておりませんけれども、先ほどありました裁量労働制、あるいは通常の働き方の中においても過労死される方がおられるわけでありますから、そうした過労死される方がこれから生まれないように、先ほど監督指導のあり方も考えなきゃいけないんじゃないかという御指摘もありましたが、監督指導の質の向上、あるいは量的な拡充、これらも含めて、しっかりと取り組ませていただきたいと思います。

池田(真)委員 このまま法案審議を進めるという今御答弁でしたので、非常に残念ですが。

 ですから、安倍総理との面会を御家族の方たちは、御遺族の方たちは望まれていますので、ぜひ原審議官の方には早急に対応を、真摯に対応をお願いをしたいと思います。でなければ、この安倍総理の施政方針演説はうそになりますので、そのことはきちっとお願いをして、質問を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党の大西健介でございます。

 先ほど来、いろんなお話がありますけれども、委員会もたびたびとまって、もう金曜日の夕方、もう四時ですよね。でも、大臣、傍聴席を見てください。本当にたくさんの方が傍聴席に詰めかけておられます。中には、過労死を考える家族の会の皆さんも、連日傍聴に来られています。

 そういう中で、先ほどお話がありましたけれども、二月の二十三日には大臣も全国過労死を考える家族の会の皆さんにお会いをされているということで、そのときのメモ、厚労省から出ておりますけれども、その中で、寺西代表からも、過労死の防止につながらない法律が通ってしまうことに危機感を覚えている、私たちはこのまま通されるのを全力で阻止する覚悟で参った、こういうふうに言われている。これは大臣、直接お聞きになったということだというふうに思います。

 また、先ほど池田委員からは、家族の会の皆様は総理に面談を申し入れているということでありますが、その面談の申入れの文書、これも見させていただきますと、そこにはこのように書かれています。多くの国民の命にかかわる切迫した問題ですので、ぜひとも私たちの声を直接お聞きいただきたく、面談を切にお願い申し上げます、こういうふうに書かれております。

 この面談の依頼が出たのが五月十六日でありますけれども、この五月十六日の日に、家族の会、そして過労死弁護団、日本労働弁護団幹事長連名で、緊急共同声明、労働時間規制を破壊し働かせ放題の高プロ導入に反対する、こういう緊急の共同声明が出されておりますけれども、これは大臣、ごらんになりましたでしょうか。

加藤国務大臣 二〇一八年五月十六日、労働時間規制を破壊し働かせ放題の高プロ導入に反対する緊急共同声明ということで、過労死を考える家族の会、過労死弁護団、日本労働弁護団幹事長の文を言っておられるということですか。(大西(健)委員「はい」と呼ぶ)読ませていただいています。

大西(健)委員 読んでいただいたら、冒頭にこう書いてありますよ。今週か来週には一括法案を強行採決しようとしている、極めて憂慮すべき事態であり、政府・与党の一方的な国会運営を看過することができないと。また、この中には、二十四時間労働、休みなしで働けという業務命令が合法となる制度である、高プロが導入されれば、日本で働く全ての労働者にとって、取り返しのつかない危険を及ぼすおそれがあり、断じて容認することができない、こういうふうに書かれておりますけれども、これを読んでいただいたのであれば、大臣、どういうふうに受けとめていただいているんでしょうか。

加藤国務大臣 どういうふうにというのは、この共同声明は、こうした共同声明、また、そうした御主張をされておられるということは受けとめさせていただきました。

大西(健)委員 受けとめさせていただきましたということですけれども、最後のところにこうありますね。私たち、政府・与党に対して、高プロを含む働き方改革一括法案を強行採決することなく、高プロ制度を撤回することを強く求めると。受けとめたんだったら、そのとおりに私はやっていただきたいというふうに思います。

 その上で、きょう複数の委員が取り上げておられますけれども、私からも、先日、裁量労働制で働いていたIT企業に勤める二十八歳の男性社員が、昨年八月にクモ膜下出血で死亡して、池袋の労働基準監督署が四月二十七日に労災認定をしていたことを、一昨日ですけれども、遺族代理人の弁護士が記者会見をして公表されました。

 この問題について改めて聞きたいんですけれども、安倍総理は、施政方針演説の中で、電通の高橋まつりさんの事件に言及して、二度と悲劇を繰り返さない、こういうふうに言われました。そのまさに長時間労働是正に取り組む法案審議のさなかに再び悲劇が起きていたということが明らかになったわけです。

 犠牲になったのは、二十八歳の未来のある若い男性です。配付資料、これも皆さん、お配りされていますけれども、ここにも載せておきました。遺族のコメント、お母さんのコメントが出ていますけれども、今後、息子と同じような犠牲者が出ないように会社に求めます、若いときは二度とないから、休日もきっちりとれて、リフレッシュできる時間を若い人につくってあげてください。非常に悲痛なコメントだというふうに思います。

 若者の命を奪うということは、日本の未来を潰すことです。法案審議中にまたも悲劇が繰り返されたこと、長時間労働により若者の命が奪われたことが明らかになったことについて、改めて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 システム開発会社に勤務する方が長時間労働で過労死をしたという事案、本件で亡くなられた方の御冥福を心からお祈りを申し上げたいと思いますし、御家族の方々には心よりお悔やみを申し上げたいと思います。

 先ほど来から申し上げておりますけれども、こうした過労死事案、そうしたものが発生しないように、再び起こさないようにということで取組をさせていただいておりますけれども、これは昨年こうした事案があったということでありますけれども、このことをしっかり重く受けとめて、今後とも、長時間労働の是正を始めとした働き方改革を進めるとともに、こうした事案が発生しないように監督指導等にも努めていきたいと思います。

大西(健)委員 この遺族代理人の弁護士さん、川人先生ですけれども、記者発表の資料を皆さんのお手元にお配りさせていただいていますが、犠牲となったこの若者は、二〇一七年の七月一日にチームリーダーに昇格をした。それと同時に、裁量労働制の適用になったんです。そして、それからわずか一カ月半後の八月十四日に亡くなっている。

 そして、この六というところを見ていただきたいんですけれども、弁護士さんは次のように述べておられます。

 被災者は、裁量労働制が適用される前から長時間労働に従事していたが、裁量労働制が適用になってからの七月四日から六日にかけて、三日にわたる連続勤務となっていた。専門業務型裁量労働制の適用は、かかる徹夜勤務を招いた要因の一つになったことと思われる。そして、被災者が母親に頭痛を訴えたのは、その後の七月二十二日であったことから、本件過労死に、裁量労働制が悪影響を及ぼした可能性は高いというふうに、この弁護士さんは言われています。

 つまり、裁量労働制が適用されたことによって徹夜連続勤務になった、そして、そのことがクモ膜下出血につながった可能性が高いということなんですね。

 改めて、また、次のページでありますけれども、先ほど来、何人かの委員も言及をされていますけれども、このSNSの投稿です。

 1のやつが、今月も華麗に三百時間や。これは六月二十四日ですから、裁量労働制が適用される前ですけれども、前から長時間労働ではあった、あったんです。

 でも、次の3のところですよね。3は七月四日ですから、七月一日にチームリーダーに昇格をして裁量労働制が適用になった後ですけれども、眠い、十三時から翌日の十八時までって何なん。

 次は、同じく四日の二十時二十分ですけれども、仕事終わるまであと二十二時間。

 そして、続けて五日の午前六時三十二分ですね。外明るいと思ったらもう六時かよ、アーメン。

 そして、日付が変わって六日の一時二十分。うおう、やっと仕事終わった、社会人になってから三十六時間ぶっ通しで働いたのは初めてやがな。

 まさに、弁護士さんが言っていたように、七月一日にチームリーダーになって裁量労働制になって、その前から月三百時間の長時間労働をしているんですよ。でも、裁量労働制になって、四日から三日間、まさに徹夜勤務したことが過労死を招いたんだ、こういうふうに言っておられるんです。そして、その徹夜勤務を招いた要因は裁量労働になったからというふうに言われているんです。

 大臣、この徹夜の連続勤務というのが心身に非常に大きな負荷を与える、こういうことは間違いないというふうに思いますけれども、そのことはお認めになりますか。

加藤国務大臣 連続で徹夜してずっと仕事を続けるということは、まさに長時間労働がずっと続くということ、また、特に睡眠時間がとれないということでありますから、当然身体に与える負荷は大きいものと考えます。

大西(健)委員 これは先日、長妻委員がたしか配られた資料の中に入っていたんですけれども、深夜割増し賃金の趣旨。山越局長なんか、何回か聞いてもまともに答えなかったんですけれども、労働基準法コンメンタール、これによれば、深夜に割増し賃金があるのは、法定労働時間又は週休等の原則を確保するための一つの支柱であり、深夜労働の強度、まさに今大臣答弁していただいたように、深夜労働というのはきつい、だからそれに対する労働者への補償である、こういうふうにコンメンタールに書いてあります。

 つまり、事業者に割増し賃金の支払いの義務を負わせることによって法定労働時間を守らせようとするものであって、かつ、深夜労働は労働者の心身に特に負荷がかかるので補償しているというのが、これが割増し賃金の趣旨であります。

 ところが、高度プロフェッショナル制度では、裁量労働制では支払われることになっている休日、深夜の割増し賃金さえ支払う必要がない。まさに歯どめがないんです。

 過労死した二十八歳の男性は、裁量労働制が適用された直後から三日間の連続勤務、徹夜勤務になっている。ただ、この場合も、会社は少なくとも割増し賃金を払わなきゃいけない。しかし、高プロであれば、それさえ必要ない。年間百四日の休日と、そして健康診断さえさせれば、徹夜連続勤務させることがより容易になる、こういう制度だ。若者の命を奪うことになるのではないかというふうに懸念しますけれども、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

加藤国務大臣 まず、深夜割増し賃金制度が設けられている趣旨というのは、今御指摘のように補償であり、ある意味では抑止であるということはそのとおりだというふうに思います。

 その上で、高度プロフェッショナル制度の対象業務は、高度な専門的知識などを必要として、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものについてのみ認められることになっているわけでありますから、こうした高度プロフェッショナル制度において、徹夜で連続勤務しなければ成果が出ない、時間が長くなければ成果が出ない、こういったような業務が対象になるのかということであります。

 その上で、制度の趣旨を踏まえ、働く時間帯の選択や時間配分は労働者みずからが決定するものであることを法令上明記する方向で検討したいというふうに考えているわけでありますから、そうした意味では、そうしたいわば法令上明記をした上での話でありますけれども、その場合には、御指摘のように連続で働くような業務命令が出された場合には、要件を満たさない、こういうことにもなるわけでありますし、また、命令はないけれどもという場合においても、健康管理時間が長時間に及ぶ場合には、安全衛生法を改正して、医師による面接指導を一律に罰則つきで義務づけるといったことを予定しております。

 そういった措置等によって、もともと、制度のことを申し上げましたけれども、健康確保措置をしっかり図っていくということで、そうした深夜において連続勤務し、心身を壊していくということがないように設計をさせていただいているということであります。

大西(健)委員 私、前回の五月十一日のこの委員会でも、高プロというのは理論上は二十四時間連続勤務が可能ですよね、年間百四日の休日確保と有休と、そして選択的措置で健康診断をさせれば、それで連続勤務が可能ですよねということを言ったんですね。そのときも、今大臣の御答弁の中にあったように、いやいや、二十四時間連続勤務のような命令をすることはできないんだみたいな御答弁をされました。それがネット上では、大臣がうその答弁をしたというふうに書かれているんですね。

 資料の方に、お配りをしましたけれども、資料の三ページ目、タイトルは、加藤厚労相がうその答弁をしたようです。これは私が言っているんじゃないんですよ、佐々木さんというブラック企業対策弁護団の代表をされている弁護士の方です。

 線を引いておきましたけれども、私の前回の質問に対して、加藤氏は、高プロは労働者がみずから時間帯を決める制度だとして、今の答弁と同じですね、例えば二十四時間働きなさいという業務命令を出せば、要件を満たさず高プロは適用できないとしたと。

 でも、このことに対して、右側に行っていただいて、一体何のことを言っているのでしょう、そのような要件は法案には存在しません、これは明らかな虚偽答弁です、うその答弁です、加藤大臣が言うような、労働者が働く時間帯を決めることなどは、どこにも書いてありませんと。

 さらに、下の方に行っていただいて、加藤大臣の不誠実な答弁、加藤大臣が述べた要件は法案には存在しないことを大臣は知っているにもかかわらず、そのような要件があるように答弁することは、端的に言えば、それはうそつきです、うそはよくない、こう書かれていますけれども、これを読んでいただいて、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほど答弁したことの重複になって申しわけないんですけれども、法案においては、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務ということになっているわけであります。

 この制度の趣旨を踏まえて、法律の要件に沿って具体の対象業務を省令で定める際に、働く時間帯の選択や時間配分は労働者みずからが決定するものであることを明記していくということでありますので、そうした省令等含めて考えたときにということでこれまでもお話をし、先ほどもそうした答弁をさせていただいたということでございます。

大西(健)委員 確かに、虚偽答弁だ、うそつきだ、ちょっと言い過ぎかなと。私も、大臣おっしゃるように、この弁護士さんは、法律にはそんな要件は書いてないですよねと。確かに、大臣が言うように、省令で定めるんだということなんだというふうに思うんですけれども。

 ただ、それに関連して、大臣、それでは、先ほどの二十八歳のIT企業で過労死された方のSNSをもう一度見ていただきたいんですけれども、それを見ていただくと、何と書いてあるかというと、うおう、やっと仕事終わった、社会人になってから三十六時間ぶっ通しで働いたのは初めてやというふうに言われているんですね。これは、この亡くなった被災者の方が裁量を持って、まさにみずから時間配分を決定して、自主的に徹夜で働いたと言えるんでしょうか。

 その前には、眠い、十三時から翌日十八時までって何なんという投稿を見ても、私は、そうしないと終わらないような業務、仕事を与えられたから三十六時間ぶっ通しで働いたのであって、何も、みずから、自分で時間配分して、好きで三十六時間ぶっ通しで働いているわけじゃなくて、三十六時間ぶっ通しで働かないと終わらないような仕事量を与えられているんだというふうに思うんですけれども、大臣、これをごらんになって、そういうふうに思いませんか。

加藤国務大臣 今の話は、本件が法令上どういうことになるのかということにもかかわる話なので、私がここで申し上げるのは差し控えたいというふうに思いますし、正直言って、このブログだけでそこを類推するというのもいかがなものなのかなというふうに思います。

 ただ、いずれにしても、まず、これは裁量労働制のもとで働いている方でありますから、この方に対してもし仮に時間帯を指定するというようなことがあれば、それ自体が問題にされるということだろうと思います。

大西(健)委員 それでは、この具体的なケースについてお答えいただけないのであれば、今言ったように、一般論で結構です。三十六時間、徹夜でぶっ通しでやらないと終わらないような業務量を与えることは、これはどうなんですか。合法なんですか。可能なんですか。

加藤国務大臣 ケース・バイ・ケースの中で、要するに具体の中でそういう議論をしないと、なかなか難しいんだろうというふうに思います。

 今、裁量労働制をベースに答えさせていただければいいですよね。

 裁量労働制の対象業務となるのは、業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、その業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務ということでありまして、使用者が対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し具体的な指示を行っている場合、また、業務量が過大であったり、期限の設定が不適切で、対象労働者が、時間配分の決定に関する裁量が事実上失われている場合には、対象業務につかせたことにならず、労働時間のみなし効果が生じず、労働基準法三十二条又は三十七条第一項の違反となる場合があるということは一般的な議論であります。

大西(健)委員 大臣の今の答弁のとおりなんですけれども、先ほど来の議論をちょっと整理させていただくと、大臣はネット上でうそつきと書かれているけれども、私はそれは言い過ぎだと。厚労省は、高プロについては、今大臣の答弁にあったように、使用者が対象労働者に対して徹夜しないと完了できないような分量の業務を与える場合については、省令において、働く時間帯の選択や時間配分は労働者みずから決定するものであることを省令に明記する方向で検討していると。省令に書くんだと。

 じゃ、その上で、今のまた答弁にあったんですけれども、先日、野党のヒアリングの中で、土屋審議官がこのように言われていました。今答弁にあった話ですね。業務量が過大であったり、期限の設定が不適切で、対象労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われている場合であれば、それは対象業務につかせたことにならない、こういうふうに御説明がありました。ですから、事実上裁量が奪われているような、それだけ過大な業務を与えたりとか、期限設定をしたりとか、そういうことであれば、それはもう対象にならないんだ、高プロの対象から外れるんだという話です。

 じゃ、大臣に確認をしたいんですけれども、業務量が過大であったり、期限の設定が不適切で、対象労働者から時間配分の決定権が、裁量が事実上奪われている場合というのは、具体的にどうやって判断するんですか。

加藤国務大臣 今のお話、業務の遂行の手段及び時間配分の決定に関する労働者の裁量が確保されているかという観点でありますけれども、今御指摘は、じゃ一々、監督官が仕事の指示内容まで確認できるのか、そういった観点からの御疑問だというふうに思います。

 実際、そこに行く前段階としては、まず、みなし時間との乖離が非常にあるという労働時間の状況等の記録等から、そういった形での、いわば長時間の労働が行われている、こういう認識というか、確認が必要だというふうに思います。

 その中で、なぜそういうことが行われているのかという中において、今申し上げたような、業務量が過大であったり、期限の設定が不適切で、対象労働者から時間配分に対する裁量が事実上失われている、そういった事案を、どういう形で業務量が与えられている、あるいはどういう形でそれが指示されている、そしてその量は、例えばその会社において、あるいは事業所において、あるいはその本人において、どのぐらいの一日当たりの仕事量等から見てどうなのか、そういったことを含めて最終的には判断していくことになるんだろうと思います。

大西(健)委員 ちょっと今、ちなみに、みなし労働時間と言ったけれども、この二十八歳の男性の話は裁量労働制の話だけれども、私が言っているのは高プロの話ですよ。高プロで、省令で、働く時間帯の選択や時間配分は労働者みずからが決定するものであることを明記するとおっしゃっているけれども、でも、業務量が過大であったり、期限の設定が不適切で、対象労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われているような場合には、高プロの要件を満たしていないので外れるんだというふうな説明が厚労省の説明なわけですよ。

 いずれにしろ、今の大臣の答弁だと、そんなことはわからないですよね。

 だからこそ、さっきも議論がありましたけれども、野村不動産の裁量労働制の場合もそうですけれども、監督署は入っていたけれども、そのときはスルーしていた。十三年間、二〇〇五年からやっていて、二〇一二年でしたっけ、入っているけれども、そのときは見つけられなかった。

 この二十八歳の男性の場合も、残念ながらお亡くなりになるまでわからなかったんです。お亡くなりになった後でも、先ほど私は、SNSのこういう投稿を見て、これは三十六時間ぶっ通しで働かないとできないような業務量を与えられていたということなんじゃないですかと言っても、大臣は、それは一概にはよくわからないと言っているわけですから、結局、具体的にはどうやって判断するんですか。判断できないんじゃないですか。

 結局は、先ほど来お話に出ているように、過労死して初めて、労災認定の過程で、こうやってSNSの投稿を見たり、いろんなことがわかってきて初めてわかるわけです。ですから、外からは、時間配分の決定に関する裁量が事実上失われているような仕事量が与えられるかどうかなんて、わからないんですよ。後になって、労災認定とかするときで今わかっているだけであって、わからない。

 命を落とした後に、いや、これは対象業務につかせたことにならないんですと言っても、そのときはもう手おくれなんです、死んじゃっているんですから。ですから、そんなことを言われたって、その命は戻ってこないというふうに大臣は思いませんか。

橋本委員長代理 じゃ、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

橋本委員長代理 じゃ、速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、先ほどは済みません、裁量労働制を前提に答弁させていただきましたけれども、高プロでいえば、健康管理時間というのがあり、また、健康管理時間が百時間を超えれば、本人の申出にかかわらず医師との面談ということを求められているわけでありますから、そういった事象をまず捉えた上で、なぜそうしたことが起きているのか、その背景に何があるのか、一定、先ほど申し上げたように、じゃ具体的に業務はどうなっているか、業務の指示はどうなっているのか、そういったことを確認した上で、先ほど申し上げた判断につながっていくということであります。

大西(健)委員 さっきも言いましたように、基本的に、百四日、年間休日を与えて、有休を与えて、そして健康診断、百時間を超えたらやれば、理論上は、この間の質疑でも言いましたように、二十四時間、それが連日、これは裁量労働制の事例でありますけれども、二十八歳の男性の場合は三日連続で徹夜勤務をした、こういうことが高プロでも可能なんです。

 可能な上、そういうようなことを命じたらこれはだめですよと言っているけれども、命じなくても、まさにそうしないと終わらないような業務量が与えられるということは、私はあると思うんです。でも、それは簡単には外から、やはり把握できないんじゃないですか、見つけられないんじゃないですか。いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、今申し上げたように、もちろん、具体的に個々の従業員というか社員の方がどういう形で日々指示を受けているか、これはなかなか確認できない、それは委員御指摘のとおりであります。

 ですから、そういった意味で、一つのそうした端緒として、先ほど申し上げました、健康管理時間が百時間を超える、あるいはそういったことが連続する、そういったことを一つの端緒としながら、じゃ、そこからなぜそういうことになっているのか、そして、それにおいて、先ほど申し上げましたけれども、どういう仕事のあるいは職務の指示がおりているのか、そういったことを確認して、そこに問題があり、この高プロの要件に、しかも省令で議論したことを含めてですけれども、そうした法令上の要件に該当しないということになれば、対象外ということになるわけであります。

大西(健)委員 裁量労働制でも、野村不動産のときは見つからなかった。そして、私、何度も大臣とこの委員会でもやりとりさせていただいたみたいに、私は最初から、予算委員会でお話ししたときから、一旦導入すると裁量労働制というのは外から濫用が見抜けない制度じゃないですかと。だから、野村不動産のケースも、亡くなって初めて見つかったんじゃないですかと。実際、今回、途中に監督署は入っていたけれども、そのときは見つけられなかったということがまた出てきたわけです。

 同じように、やはりこの二十八歳の男性も、亡くなってから、連続勤務していたんだ、あるいは、連続勤務しなきゃ、徹夜連続勤務しなきゃ終わらないような仕事を与えられていたというのは、亡くなってわかるんですよ。でも、それだともう遅いんですよ。なくなった命は戻ってこないんです。私は、そういう制度だというふうに思います。

 そして、高橋まつりさんのケースもそうですけれども、この二十八歳の男性のケースも、具体的な時間を何時間に設定するかはともかく、インターバルをちゃんと義務づけていれば、私は亡くならずに済む可能性が高いんじゃないかというふうに思うんです。

 本当は、私たちは全ての労働者にインターバル、休息時間の規制を導入すべき、義務づけすべきだというふうに思いますが、百歩譲って、この高プロというのは、家族の会の皆さんも言っておられるように、人が死ぬ制度なんですよ。佐戸未和さんのお母さんはこう言っていましたよ。死ぬ人はふえるけれども過労死は減る、死ぬ人はふえるけれども、労働時間の把握もできていないから労災申請もできない、そして自己責任で働いたと言われるから労災認定もされない、だから見かけ上の過労死は減る、でも死ぬ人はふえる、こういう制度だというふうにおっしゃっていました。

 ただ、インターバルを入れれば、高プロを導入しろというんだったら、せめて高プロにだけ限定してインターバルを入れれば、高プロでこうやって徹夜労働、連続勤務で亡くなる人というのを防げるんじゃないかというふうに思いますけれども、高プロに限定してでもインターバルを選択的ではなくて義務的に入れるということを、大臣、お考えになりませんか。

加藤国務大臣 インターバル制度の重要性については、これまでも答弁をさせていただいているわけであります。

 ただ、他方で、この高度プロフェッショナル制度というのは、対象業務や年収要件によって対象者を絞った上で、労働時間、休日や休憩等の労働時間規制を外す、こういうたてつけになっているわけでありますけれども、しかし、そういう中において、連合からの要請等もありまして、年百四日かつ四週当たり四日以上の休日取得、これが義務づけられた上で、今委員お話がありましたインターバル規制と深夜業の回数制限、それから二つ目として在社時間等の上限規制、三つ目として二週間連続の休暇取得、四つ目として臨時の健康診断の実施という選択肢から労使の決議によって選択をしていただく、こういう仕組みになっているわけでありまして、ここは労使の決議に委ねていくことが適当だというふうに思います。

大西(健)委員 少しちょっとここで確認しておきたいことがあるので、続けてですけれども、高プロの年収要件ですけれども、厚労省、一千七十五万というのは労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額というふうに説明しておられますけれども、この額に業績変動給は含まれないということで間違いないか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

山越政府参考人 高度プロフェッショナル制度の年収要件の対象でございますけれども、これは確実に支払われると見込まれる賃金でございますので、御指摘のように、業績によって支払われる金額が変動する賃金は含まれないと考えております。

大西(健)委員 ちょっともう一点、事務方に確認したいんですけれども、先日、長妻委員の質疑の中だったと思いますけれども、一千七十五万円を例えば一万円でも下回った場合には、適用要件を欠いて高プロは遡及して無効になる、こういう話があったというふうに思います。

 この話と似たような話なんですけれども、例えば、一年経過した後に対象労働者が休日を百三日、百四日じゃなくて百三日しか取得をしていなかったということが判明した場合には、これは四十一条二の第一項に違反するということで、その場合には対象労働者は高プロから外れて、休日、深夜の割増し賃金を含む通常の労働規制が適用されるということで間違いないか。また、その場合、どこまでそれは遡及するのか。御説明をいただきたいと思います。

山越政府参考人 高度プロフェッショナル制度でございますけれども、対象業務に従事する労働者に対しまして、一年間を通じ百四日以上の休日を使用者が与えることを要件としております。これらの休日を与えていない場合は、法令の要件を満たさないことになりますので、高度プロフェッショナル制度の適用は認められないことになると考えております。

 この場合、いつからかということでございますけれども、例えば、今御指摘のように、一年に百三日しか休日を与えていなかった場合は、その百四日の休日が与えることができないことが確定した時点から、制度の適用がその年の終わりまで認められなくなるということだと思います。

大西(健)委員 最後に、年収要件が将来的に引き下げられるんじゃないかという話について、お伺いしたいと思います。

 これもずっと前からこの委員会でも議論がされていますけれども、経団連は、二〇〇五年の六月のホワイトカラーエグゼンプションに関する提言で、対象労働者の年収を四百万円と当時は想定をしていた。それから、榊原会長は、二〇一五年の四月の会見で、最終的に制度を本当に実効性のあるものにするには、年収要件の緩和や対象職種を広げる方向で考えるべきだとはっきりと言われている。さらに、日経連の会長は、少なくとも一〇%の労働者に適用するように求めていくという発言をされています。

 他方で、資料をごらんいただきたいと思います。これも有名な話ですけれども、二〇一五年の四月の二十日の日本経済研究センターの朝食会、本委員会の委員でもある塩崎当時の大臣が、ここにも書いてありますけれども、ぐっと我慢していただいて、とりあえず通すこと、こういうふうに言われています。そして、右下の漫画にあるように、これは派遣法と同じで、アリの一穴になって、将来は対象が拡大されるんじゃないかと。

 以前、安倍総理も国会答弁で、年収要件がどうなるかはわからないと、これはある種正直な答弁だと思いますけれども、こういうふうに答弁しているんですが、大臣、将来、年収要件が引き下げられる可能性は否定できない、これは、それでいいですね。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 今の大西委員がお引きになったのは、平成二十六年の六月十六日の衆議院の決算行政監視委員会で、山井委員からの御質問に対する総理の答弁だったというふうに思います。

 ここでの総理の答弁は、むしろ、計算した結果、いわゆる平均給与の三倍ということでありますから、その平均給与が下がる上がる、そういったことについて言っておられるわけで、例えば、全体の平均年収とかかわりがあるわけでありますから、全体の平均年収が、果たして今、絶対幾らかということは、絶対そうだということは明確に言えないわけでありますという流れの中での、それは将来の予測ですから、これはわかりませんよ、こういうこと。

 もしそこの答弁をおっしゃっているのなら、そういう趣旨だということをまず御理解いただいた上で、今の御質問でありますけれども、この規定、労働契約により使用者から支払われると見込まれる一年間の賃金の額が毎月決まって支給する給与の平均額を基礎として算定した額の三倍を相当程度上回る水準以上であるということ、この年収要件、これは変更するつもりはありません。

大西(健)委員 つもりはないということなんですね。

 例えば、ホワイトカラーエグゼンプションのあるアメリカ、一九七〇年にニクソン政権当時に基準が年収五万五千ドル、これは日本円にすると約五百六十万円でしたけれども、二〇〇四年のブッシュ政権で基準額が二万三千六百六十ドル、約二百四十万円まで引き下げられてしまった。さすがにこれでは八八%のホワイトカラーが残業代ゼロになってしまうので、オバマ政権で見直しが行われました。

 先ほどの日本経済研究センターの塩崎大臣の発言では、一千万円以上もらっている人は四%、そのうち一・五%は役員で、残りは二・五%、さらに、そのうち希望者となれば対象者は限られてくるというふうに当時の大臣が発言されていますけれども、ということは、正確な数字はわかりませんが、大体、全労働者の二%ぐらい。そういう話になると、結局、経済界にとっても余り導入する意味がない。

 その上で、大臣が今言っているように、下げるつもりがないということだったら、こんなのは意味ないじゃないですか。誰がこんなのを望むんですか。二%にも満たない者しか対象にならない、そして大臣が本当に下げるつもりはないと。やはり、結局下げるんじゃないんですか、そういうふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 最終的にどのぐらいの割合になるかというのを今、具体的な数字としてお示しするのは大変難しいわけでありますけれども、今委員が引用されたように、決して多い数ではないということはそうだというふうに思います。

 その上で、この高度プロフェッショナル制度は、交渉力の高い高度専門職の方で、制度の適用を希望する方を対象に、働く時間帯や時間配分をみずから決定し、自律的に働く選択肢を用意し、そして、そうした方たちが能力をより発揮できるようにしていく、また、それが新しい産業や新しいプロジェクトをつくり出し、ついては、日本全体の経済成長につながっていくということで、この導入を含めて今御議論をいただいているということであります。

大西(健)委員 誰が望んでいるのか、さっぱりわからないですよね。先ほどの緊急共同声明の中でも、主要企業百社のうち七割が、今の国会で成立させる必要はないと回答している。そして、家族の会も、連合も、日弁連も、みんな反対している。何でそれをやらなきゃいけないのか。そして、きょうの質疑の中でも、平成二十五年度労働時間等総合実態調査、精査したといって出てきたものが更に間違っている。それも出てこないという中で、本当に、この緊急共同声明に書かれているように、今週か来週には一括法案を強行採決しようとしている。そんなことは絶対に許されないということを私は申し上げて、質問を終わります。

高鳥委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十五分間、質問をさせていただきます。

 きょう、多くの議員から質問がありましたが、本当に私たちが今までから言っているとおり、今回、高度プロフェッショナル、いわゆる残業代ゼロ制度、過労死促進法、これが強行採決されたら人の命が奪われるということがますます明らかになってきております。

 例えば、野村不動産の裁量労働制についても、二〇〇五年から営業関係の約六百人に導入されたけれども、四年前の労働基準監督署の調査では見抜くことができなかった。それで、この配付資料にもありますが、過労死になられて初めて、十二年たって違法が発覚した。つまり、これは人が亡くならなかったら永遠に発覚しなかったんですよ。いろいろ指導を徹底するとかおっしゃっているけれども、過労死が起こらないと違法がわからない。

 残念ながら、一昨日明らかになった、IT関係会社の二十八歳の若者も一緒です。裁量労働制に入って、三十六時間連続勤務して、一カ月余りで過労死しているじゃないですか。

 そして、初鹿さんも、皆さん言ったように、違法だらけじゃないですか、残念ながら。インターネットを見たら、ハローワークのホームページを見たら、違法な裁量労働制があふれているじゃないですか、これ。野放しじゃないですか。そんな中で、きょうの配付資料にもありますように、ますますこのリスクが高まってきております。

 それで、きょうの配付資料を見ていただきますと、今回の新たな過労死ですね。きょうの配付資料の中に入れさせていただきましたけれども、IT関連会社、そして、テレビ局の方もお亡くなりになられました。

 この四ページにありますように、裁量労働制を適用、三十六時間連続勤務。テレビ会社のプロデューサー過労死、しかしこれは二〇一五年、三年たたないと明らかにならない。そして、管理監督者、残業規制の対象外。

 そして、この裁量労働制、三十六時間連続勤務で働くことになった若者は、みなし労働時間はたった一日八時間。そして、このハローワークの求人、これを見てください、五ページ。ここに書いてあるんですよ、このITの会社のハローワークの求人。裁量労働制、月平均の時間外は二十時間と書いてあるんですよ。

 そして、このような管理監督者や裁量労働制でさえ、人が死なないと取り締まれない。野村不動産は、四年前に指導に入ったけれども、六百人もの違法を見抜けなかった。大西さんがおっしゃるように、裁量労働制というのは恐ろしいんですよ。一旦導入すると、違法で摘発されることなんかほとんどない、ざるなんです。

 それよりもざるなのが、高度プロフェッショナル。この九ページにありますように、裁量労働制でさえ、みなし労働時間、休日労働時間数の、労働時間の把握が義務になっているんです。ここでも過労死は激増しているんです。これは重要ですよ。しかし、裁量労働制の過労死とは公表されないんですよ。違法だから、裁量労働制の過労死とすら公表されないんですよ。人知れず裁量労働制ということで亡くなっても、違法だから、結局は裁量労働制の過労死ということも誰にも知られずに、今回の野村不動産と一緒ですよ、そうやって、深刻さは国民にも伝わりにくい。

 そして、管理監督者、管理職でさえ、深夜労働時間を把握されている。しかし、この九ページにありますように、高度プロフェッショナルは、その労働時間を全く把握しなくていい。ある方がおっしゃっていました。この高度プロフェッショナル、悪魔の制度だと。過労死しても、過労死とさえ認めてもらえない。本当にこれは恐ろしい制度であります。

 そして、このことに関して、ついでに言いますと、十一ページにありますように、先日も私、二人の若者に会いました。裁量労働制。一人は、裁量労働制で百時間残業をして、晩遅くに意識不明になって死にかかった。晩遅く同僚が出社したから命は救われたけれども、本当だったら死んでいた。これを、違法じゃないかということで労働組合が労基署に行ったら、労基署は問題ないといって門前払いされた。もう一人の右側の方も、労基署に行ったら、裁量労働制違反かどうかわからないと言われた。

 もともと見抜けないだけじゃなくて、労基署に行ったって門前払いに遭ってしまう。そうやって若者が二人とも死にかかっているんですよ。いまだにこの若者二人は体調が回復していませんよ。残業させられて、最大百時間ぐらい。こういう状況の中です。

 そこで、一つ冒頭に私、申し上げておきたいのは、きょう、私の質問主意書の回答が返ってきました。どういう質問主意書を出したのか。高度プロフェッショナルの労働者が制度から外れたいと希望した場合は、一般の制度の労働者に戻れますか。きょう、返ってきました、朝十時に。答弁は、高度プロフェッショナル制度については、労働者の同意を要件としているが、当該同意は撤回することができるものであると。

 つまり、この高プロは、現行法で撤回することはできます。でも実際は、本当になかなか途中で抜けられないと思います。今、何やら修正案をして、撤回できないから撤回できるようにするというふうな、そういう報道もありますけれども、質問主意書にあるように、既にこれは撤回はできることにはなっているんですよ。あと、手続をどうするかというだけの話で。

 ただ、言いたいのは、裁量労働制と同じように、裁量労働制も途中で抜けようと思えば抜けられますよ、しかし抜けられないんです。このことは申し上げておきたいと思います。

 そこで、最初に、来てくださっております内閣官房の原審議官に、池田議員の続きをさせていただきたいと思います。

 きょうの配付資料の中に、過労死家族の会の方々の安倍総理大臣への面会希望の面談依頼書というものが入っております。二十ページです。きょうも過労死家族の会の方々が傍聴にお越しになられております。

 読み上げさせていただきます。二十ページです。

 総理大臣安倍晋三殿。面談の御依頼。私たちは、高度プロフェッショナルなど、逆に過労死をふやしかねない改革が法案に含まれていることに強い危機感を持っています。働き方改革は、当初からの安倍総理の御発言どおり、過労死を減らすものであらねばなりません。万一、過労死をふやす法案が成立することは絶対にあってはなりません。過労死で愛する家族を失い、地獄の苦しみを味わうのは、私たちだけでたくさんです。過労死防止のために私たちは人生をかけて活動しております。国際情勢も緊迫する中、御多用とは十分に承知していますが、国民の多くの命にかかわる切迫した問題ですので、ぜひとも私たちの声を直接お聞きいただきたく、面談を切にお願い申し上げます。

 五月二十二日火曜日までにお時間を頂戴できればということで、これはおとといの一時ぐらいですか、安倍晋三事務所に届けられて、そして、かつ、福島参議院議員を通じて、内閣官房にもおととい出されたということを記者会見でお聞きをいたしました。夕方に記者会見をされましたので。

 そこで、原審議官、改めてお聞きします。

 二日前の一時に安倍晋三事務所にこれは提出されております。二日前です。昨日も午前中、十一時、福島みずほ参議院議員が、安倍総理、会ってくださるんですよね、面会してくださいということを強く強く、きのう午前と午後、福島みずほ議員が二回も質問されました。当然、安倍総理には、過労死家族の会から面談の御依頼が行っているということはもう耳に入っているということでよろしいですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほど申し上げましたが、全国過労死を考える家族の会の声については、政府として十分に受けとめる必要があるというふうに考えております。

 その上で申し上げますと、安倍事務所の方はちょっと私どもの方で承知してございません、何時云々というのは。

 それで、私どもの方には、二日前の夜の二十一時過ぎにファクスという形で、議員会館の方に来まして、もう夜の二十一時を過ぎていたものですから、その日は対応がなかなか難しかったというところでございまして、翌日、先ほども申し上げましたが……(山井委員「済みません、もう経緯は結構です、時間がないので。結論だけ、安倍総理の耳には入っているのかだけで結構です」と呼ぶ)先ほど申し上げましたけれども、関係者のところには渡しておりますが、そこのところは確認がとれてございません。

山井委員 一日、二日たっているのに、まだ安倍総理の耳に入っているかどうかわからない、それは余りにも不誠実じゃないですか。きのうも二回、午前、午後で国会で問題になっているんですよ。つまり、安倍総理の耳に入れないんですか。じゃ、いつ安倍総理の耳に入れるおつもりなんですか。これは安倍総理への面談依頼ですからね。いつ安倍総理の耳に入れるんですか、来週火曜日までに面談をしたいというふうに書いてありますけれども。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 早急に伝えるようにいたしたいと思ってございます。

山井委員 早急にって、きのうもそういう答弁をしているじゃないですか。これは来週火曜日の話ですよ。回答ももちろん重要だけれども、安倍総理にすらまだ伝えていないということは、申しわけないけれども、それはブロックしているんですか。会わせたくないんですか。安倍総理の耳に入れた上で、もちろんお忙しいのはわかりますよ、その上でどういう対応をするか考える、わかりますよ。にもかかわらず、一日、二日たっているのに、耳に入っているかどうかもわからない、それは余りにも冷たいんじゃないんですか。

 なぜこんなことを言うかというと、きょうの配付資料にも入れてありますけれども、十八ページ、昨年の二月、安倍総理は、高橋まつりさんのお母さん、残念ながら電通事件で過労死をされてしまったまつりさんのお母さんと会って、長時間労働を是正すると。この記事によると、首相は涙ぐみながら聞いておられた。

 おまけに、昨年の所信表明演説では、この十九ページ、次のページにありますように、一月二十日、安倍総理はこう所信表明演説で言っているんですよ。入社一年目の女性が、長時間労働による過酷な状況の中、みずから命を絶ちました、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意。

 しかし、上を見てください。そのお目にかかった御本人である高橋まつりさんのお母様の高橋幸美さんは、ツイッターで、五月十五日、三日前です、高度プロフェッショナル制度には過労死遺族として断固反対します、これはおかしくないですか。長時間労働を是正すると過労死の御家族に首相官邸で約束しておきながら、一年たったら御遺族の意向に反しているじゃないですか。

 そして、安倍総理は、この国会を働き方国会とおっしゃっていますよね。そこまでおっしゃっているなら、一番長時間労働や過労死の苦しい当事者である過労死家族会の方々の面談要望をなぜ伝えないんですか。

 今ここで答弁してください。きのうも二回、国会で問題になっているんですよ。言っちゃ悪いけれども、門前払いで、安倍総理には伝えたくない、そういうふうに思われても仕方ないですよ。そうでなかったら、いつまでに安倍総理に伝えるのか。これは、この要望書にも書いてあるように、人の命がかかっている問題ですからね。お答えください。いつまでに安倍総理に確実に伝えるんですか。早急というのはもう勘弁してください。いつまでに。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 早急にお伝えしたいと思います。委員の重ねての御指摘を十分踏まえて対応したい、このように存じます。(山井委員「だめです。とめてください」と呼ぶ)

高鳥委員長 山井和則君、質問を続けてください。(発言する者あり)

 原内閣官房審議官、もう一度答弁願います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたが、まず、政府全体として、全国過労死を考える家族の会の皆様の声については十分に受けとめたいと存じます。それから、本日の再三の御指摘も踏まえて、できる限り早急に伝えるようにしたい、このように存じております。(発言する者あり)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 原内閣審議官。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返し申し上げますが、全国過労死を考える家族の会の皆様の声には、政府として十分に受けとめる必要があると思っております。

 きょうは、総理は外交日程もございます。ただ、再三の御指摘もございますので、私の方で、秘書官に必ずきょうじゅうに伝えていただくようにお願いをしたい、このように思ってございます。

山井委員 ちょっと待ってください。

 秘書官にはいつこの話は伝えたんですか、秘書官には。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 もう一度経過を申し上げますと、二日前の夜の二十一時にファクスで来ました。(山井委員「いや、もうそれはいいから。秘書官にはいつですか」と呼ぶ)昨日、昨日に伝えをしております。

山井委員 昨日、何時に秘書官に伝えましたか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 二十一時、二日前でございますが、ファクスで参議院の福島みずほ事務所の方から届きました。それで、私どもの方で、もう二十一時でございましたので、官邸の方に担当者が入れたということでございます。

 翌日、ちょっといろいろばたばたしておりますので、何時ということは、ちょっと私の方では申し上げられないということでございます。

 いずれにしても、前日に入っているということでございます。

山井委員 ちょっと待って。ちょっとはっきりして。そんなことあり得ないよ。

 きのうの午前なんですか、午後なんですか、晩なんですか。秘書官に入れた時間を教えてください。

原政府参考人 ちょっと具体的に何時ということは申し上げられませんが、前の日に入れているということでございます。

山井委員 前の日ということは、きのうということですね。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日でございます。

山井委員 そのときには、昨日中に総理に伝えてというふうにおっしゃったんですか。どういうふうに伝えたんですか。もちろんこれは、渡しただけじゃ意味がないですよね。きょうじゅうに総理に伝えてということをおっしゃったんですか。どういう渡し方をされたんですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 全国過労死を考える家族の会からこういうものが来ているということで、お伝えをしてございます。

山井委員 結局、私も本当にこれは深刻な問題だと思いますよ。二日前の一時に安倍事務所にこの要望、面会依頼を出している。おとといの晩に福島みずほ事務所からも行っている。丸一日たったけれども、総理にもまだ伝わっていない。そして、きょうじゅうに伝わるかどうかもわからない。それは余りにも冷た過ぎるんじゃないんですか。

 例えばですよ、お忙しいのはわかりますけれども、今も首相動静を見たら、きのうも、例えば晩の六時三十七分から九時十八分まで、二時間以上成蹊大学の友人と食事というふうになっていますよ。きょう福島に行っておられるそうですけれども、例えば、きょうの朝二時間は昭恵夫人と一緒に列車で移動というふうに、ここに、見ると書いてあります。

 これは即返事と言っているんじゃないんですよ。この本当に命のかかった要望書、このままでは人の命が奪われる。私たち国会議員の仕事は国民の命を守ることでしょう。このままでは人の命が奪われる。いろいろな仕事、公務、忙しいのはわかりますよ。でも、国民の命が奪われる。

 実際、先ほども言ったように、野村不動産、IT関連会社、続々人が死んでいるじゃないですか。人が死んでいるじゃないですか。その人たちを救うどころか、更に過労死をふやす。そのことを、面会依頼したら、二日たっても総理に伝わらない。それはおかしいですよ。加計学園の理事長とゴルフや食事を十数回して、でも、過労死家族の会が面会したいと言ったら、その面会要望も総理に伝えてもらえないんですか。

 もう一回答弁してください。きょうじゅうに必ず安倍総理に伝えるということを答弁ください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、私ども政府として、全国過労死を考える家族の会の声については、十分に受けとめたいと存じます。

 それから、きょうじゅうにというお話でございました。先ほども申し上げましたが、私の方で、伝わっているか伝わっていないか、ちょっと確認がとれていないということでございます。それも含めて、いずれにいたしましても、きょう再三御指摘をいただきましたので、私の方できょうじゅうに伝えるように努めてまいりたい、このように思います。

山井委員 後で私の携帯を言いますので、私に教えてください。

 これは深刻な問題ですよ。あした、あさって、土日になるわけですからね。

 それで、もう一つ、私、気になったことがあります。

 今回、二月二十三日に過労死の家族の会の方々十数名が加藤大臣に面談をされました。その概要を出してくれと言いました。なぜならば、高プロがいいという意見の十数人の議事録だけ出たから、それだったら、高プロに反対している過労死の家族の会の方々が二月二十三日に面談したから、面談記録を理事会に出してくれと言いました。

 私、これを読んでびっくりしました。裁量労働制の廃案ということは書いてあるけれども、高プロの削除がまさに削られているじゃないですか、この報告書から。

 しかし、ここにあるんですよ、家族の会の方が読み上げた原稿が。ここには大きな問題点として、読み上げましょうか、問題点は高度プロフェッショナルの創設です、そしてもう一つの問題点が企画業務型裁量労働制の拡大の導入です。読み上げたとおりの原稿です、ここにあるのは。

 加藤大臣、結論を読み上げますよ。

 過労死は人災、劣悪な働き方をすれば誰にでも起こります。特に深刻なのは、若者の過労自死が多いことです。日本の将来を担う若者を使い潰すようでは、日本の未来をなくします。今求められているのは、日本の働く社会から過労死、過労自死を根絶するとともに、労働者にゆとりのある生活時間の確保と労働時間規制であることは明らかです。そのためにも、政府の働き方改革法案の中にある、国民の命を奪う高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の拡大、この二つの削除をし、まず実態調査をして、実効性のある長時間労働規制を求めます。このままでは、今回の働き方改革法案は、残業代ゼロ法案です。過労死促進法です。ひいては、過労死防止法違反です。

 結論として、高プロの削除、書いてあるじゃないですか。何で、理事会に提出する資料から、一番重要な結論の高プロのコの字も、この中から削除されているんですか。これははっきり言って、改ざん、捏造じゃないですか。過労死家族の会、過労死遺族の声を何で捏造するんですか。

 これは結局、びっくりしました、高プロと裁量労働制の拡大の削除の要望に行かれたんですよ。この原稿は、寺西代表が予算委員会の参考人で陳述されたとおりの内容です。このとおりを加藤大臣におっしゃった。にもかかわらず、私たちに報告された資料の中では、裁量労働制の拡大だけ、高プロのコの字も書いてない。捏造じゃないですか。出し直してください。

加藤国務大臣 全国過労死を考える家族の会との、要請の概要を出してくれということでありました。

 この会は、基本的には非公開で、率直な意見交換をされたということでありますから、冒頭部分だけマスコミが入られたので、そこの部分は公開をしてやっていますから、そこだけ公開をさせていただいたということでありまして、それ以外については、今申し上げた、もともとの非公開で、そして、率直な意見交換、さらには個人のお話もいろいろありましたから、そういった意味で、そこの部分の開示は控えさせていただいているということで、この冒頭部分について、今委員おっしゃるように、これはマスコミも入っておられますから、そこのところは御確認いただければと思います。

山井委員 おかしい。ほかの、十数人の高プロの割といい点を聞くときも非公開ですよ。公開する前提じゃなかったですよ。そのときは高プロのいい点をいっぱい書いておいて、肝心の、高プロの、裁量労働制の削除のために申し入れたのに、そのためにこれを書かない。捏造じゃないですか。改ざんじゃないですか。これはひどい。考えられません。

 ちょっとこれ、理事会で協議してください。ちゃんと、高プロ削除、裁量労働制の拡大を、ここに原稿、お渡ししますから、ちゃんとそれを出してください。委員長にお願いします。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

山井委員 まあ本当に、そこまでやりますか。家族の会の方々が高プロ削除を要望に行ったら、そのことすら隠蔽しますか。そこまでやりますか。本当に私も大変びっくりしております。

 そして、今回も、残念ながら、IT関連会社、二十八歳の方の過労死。ここにもありますように、三十六時間の長時間労働、二十九時間の連続労働。ということは、裁量労働制で、二十九時間、三十六時間の連続勤務、これは合法なんですか。今回のITの関連の方も亡くなられましたけれども、二十九時間、三十六時間連続勤務、これは合法なんですか、裁量労働制で。

加藤国務大臣 まずその前に、捏造と言いましたけれども、どこが捏造なのかはっきりしていただきたいと思います。これは違います。公開をした部分だけ、記者が入っている部分だけ載せさせていただいているということであります。

 したがって、あとは非公開で率直な意見交換をさせていただいたので、それは出していないということでありますので、そこははっきりさせて、ここの冒頭部分を載せているということをまず……(山井委員「要望したのは私ですから、これを出してくれと言ったのは。私は中身を出してくれと言っているんだから」と呼ぶ)

高鳥委員長 御静粛に願います。大臣が答弁中です。

加藤国務大臣 ですから、開放、オープンにできる部分は公開で……(発言する者あり)

高鳥委員長 答弁が聞こえません。御静粛に願います。

加藤国務大臣 ですから、まず、捏造だとおっしゃるから、捏造ではないということを申し上げているので……(山井委員「捏造じゃないか」と呼ぶ)いやいや、委員から捏造というレッテルを張られたら、それは違うということを明確にする必要があります。

 これは、全体を出してくれということだったので、公表できる部分はここだということで、冒頭マスコミの方が入った部分を出させていただいているということで、それ以上のものでもないし、それ以下のものでもないということであります。

 それから、今の委員のお話がありましたけれども、それについては個別の案件でありますから、それについて今ここで具体的にコメントするのは差し控えさせていただきたいと思います。

山井委員 いや、これなんですね。今の答弁、つまり、三十六時間勤務でも、違法、だめだと言えないわけですよ、個別の問題。

 結局、ということは、三十六時間、これだけへとへとで、このツイッターにあるように、眠い、十三時から翌日の十八時までって何なん、仕事終わるまであと二十二時間、外明るいと思ったら朝の六時かよ、社会人になって三十六時間ぶっ通しで働いた。これでも個別ということは、これは問題だ、違法だと言えないということですね、今のは、加藤大臣。

 つまり、裁量労働制の怖さはここなんですよ。三十六時間ぶっ通しで働かされても、結局、これは違法かどうかもわからない。

 では、加藤大臣、高プロについてお聞きします。

 高プロで、三十六時間連続勤務というのは、これは許されるんですか、許されないんですか。

加藤国務大臣 さっき裁量労働制のお話がありましたけれども、例えば、一般だって同じことが少なくとも言えるわけであります。

 それから、今……(発言する者あり)

高鳥委員長 静粛にお願いいたします。

加藤国務大臣 また今、高プロのお話がありましたけれども、高プロの場合にも、これも、これまでも山井議員ともいろいろお話をさせていただいておりますけれども、法令、法律だけじゃなくて省令も含めて要件をセットした段階の中で、その業務に該当するのかどうか、そして、業務において時間等の指示があるのかどうか、そういったことは一つ一つチェックしていかなければ、今の状況について、それが該当するかしないか、違法性があるかないかということについて申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。

山井委員 そうなんです。だから、結局、取り締まれないんです。だから、過労死が起こらないと違法が発覚しないんです。

 だから、この高度プロフェッショナルでも、三十六時間働かされて死んでも、今おっしゃったように、それが違法かどうかわからない。本当に、さっきも言ったように、労災認定すら受けられないかもしれないわけです。

 三十六時間連続勤務、このことについては、やはり、ここにも書いてありますように、野村不動産については、二〇〇五年から裁量労働制を違法に営業に入れたけれども、十二年間見抜けなかった。そして、今回のIT関連会社に関しても、過労死が起こるまで発見されなかったということで、この高プロを入れると、高プロは、裁量労働制や管理監督者よりも規制が弱いわけです。

 これはやはり、加藤大臣、過労死防止に逆行しているじゃないですか。ますます、労働時間規制が裁量労働制より弱い、そして、過労死しないと違法が取り締まれないのが裁量労働制。にもかかわらず、高プロは、労働時間の把握すらしなくていいんですよ。

 加藤大臣、ぜひとも高プロの削除をしていただきたい。そのためにも、過労死の家族の会が、今、面談を総理に求められているわけです。

 この二十五ページを見てください。

 二〇〇七年一月十七日、実は、安倍総理がこの高プロやホワイトカラーエグゼンプションを出してくるのは二回目なんですね。一回目は、家族会の方々や世論の大反対で断念されているんです。ここにありますように、現段階で国民の理解が得られるとは思えない、決してサービス残業がふえたり、残業を助長することがあってはならないと言って、二〇〇七年の一月十七日、安倍総理は一回断念しているんですよ。

 家族会の方も含めて、世論も含めて、今回も大反対の声があるわけですから、何としても今回も断念をしていただきたい。

 ぜひとも、加藤大臣、この高プロの削除ということを強くお願いしたいですが、いかがですか。

加藤国務大臣 家族会の皆さん方からも、高プロにおけるそうした長時間残業につながるのではないか、それがひいては過労死を引き起こすのではないか、そういう御懸念は聞かせていただきました。

 そして、私どもとして、そうした懸念をできるだけ解消すべく、要件を設定し、また健康確保措置、あるいは健康管理時間を通じてそうした懸念の解消に努めさせていただく。そういった仕組みの中で、今回、一連の時間外労働時間の罰則つきの上限規制、あるいは同一労働同一賃金ともども、最終的には、さまざまな条件がある方がその状況に応じて多様な働き方ができる、こういった中身、あるいはそれを目的として今回の法案を提出をさせていただいているところでございますので、衆議院の厚生労働委員会における御審議をお願いをしているわけであります。

山井委員 三十六時間の連続勤務の問題ですが、一般の労働者は、残業代を払わないとだめだ、そして、そういうことをして過労死をしたら大変な問題になるということで、そんな三十六時間連続勤務なんかあり得ないんですよ。しかし、裁量労働制や高プロではそういうことがあり得てくるし、何よりも、裁量労働制やほかの働き方は、労働時間の管理がされているんです。しかし、高プロは、労働時間の管理もされなくなります。

 ですから、ぜひとも高プロは削除していただきたいですし、最後に申し上げますが、申しわけないけれども、この理事会に出されたペーパーは、私は改ざんと言わざるを得ません。私が求めた資料です。過労死の家族の会から、二月二十三日に面談した際のお話の要旨を、主な内容をお知らせくださいと言って、その要旨は裁量労働制と……

高鳥委員長 山井君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 高プロの削除であったにもかかわらず、それを理事会にも報告しないというのは捏造以外の何物でもありません。ぜひ正確なものを出していただくことをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 平成二十五年労働時間等実態調査について、議論の出発点としたいとされたことは承知をしておりますが、きょう、先ほど来何度も議論がされているように、全国一万一千五百七十五の事業場から、裁量労働制のデータにかかわる千五百二十六事業場を差し引き、また、明らかな誤記と考えられる九百六十六の事業場を差し引いて、九千八十三のデータを今残しているわけです。しかし、先ほど来も、その残った九千八十三も真正なデータとはわからない、これが今の到達ではないか、こう思います。

 調査項目も多岐にわたり、労政審とその前段階の各種検討会でも活用されています。加工されたデータは何種類くらいつくられ、何回くらい資料として出されたか、まずお答えください。

 実は、これは私自身も、もう一年半くらい間がありますので、予算委員会を含めて四回、質問で加工データを使っております。

 一番古いのは、二〇一六年五月二十日の、規制改革会議のワーキンググループに出た資料なんですね。これは、三六協定で特別協定を結んでいるんだけれども、それが長ければ長いほど残業時間が長いというデータなんですよ。

 だけれども、総理は、その下の二つ目の丸を答えて、これは志位委員長に答えているんですけれども、長く特別協定を結んでいるんだけれども、実績はそんなでもないですよと。そんなでもないですよという答弁をしている。何か似たようなことをやっているんですよ。だけれども、現実には、実際は長く結んでいれば長くなるよということを出した、貴重なデータであるわけなんですね。

 もう一つ、ここに、資料の一枚目につけておりますけれども、法定時間外労働の実績、これも、同じやつを、平成二十五年の調査を加工したものですよね。新技術、新商品等の研究開発の業務ということで、この見出しが、一カ月四十五時間以下や一年三百六十時間以下におさまっているのは七割程度と結論づけています。つまり、これは、新技術、新商品等の研究開発の業務が除外になるから、除外になっても、この中におさまっているから大丈夫と言いたいんだと思うんです。だけれども、私は、三割がはみ出ている、このことが重大だと思うんですね。

 しかも、これを見ていただければわかるんですが、一月四十五時間超が、百時間超えというのが三%あるわけです。中小企業だと一・七%です。それが、一年間でいうと、一千時間超えが〇・三%なわけですね。そうすると、零コンマという世界ですよ、データは。

 これが、例えば〇・一%、今の九千八十三の項目が、精査してみたら〇・一%違ったといったって、物すごく重い意味があると思いませんか。私たち議員だけでなく、政策形成過程でかかわった多くの関係者に対しても、その責任をどう考えるのか、伺います。

 二つ聞きました。

山越政府参考人 平成二十五年調査の結果を用いた資料につきましては、労働政策審議会の労働条件分科会には十一回、仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会におきましては五回、資料として提出をしております。

 今回の平成二十五年調査のデータでございますけれども、統計としての精査を、高める観点から、異常値である蓋然性が高いものを削除した上で再集計をしたものでございます。こうした方法で精査を行いましても、なお九千を超えるサンプル数がございまして、精査前と比べて集計結果に大きな傾向の変化も見られないわけでございます。

 また、先ほど申しました労働政策審議会などでは、平成二十五年調査データだけではなく、さまざまな資料を確認いただきまして、御議論をいただいたものと承知をしております。

 お示ししたデータの中に、正確性が必ずしも確保されていないものがあったということについては、これからの反省といたしまして、これから統計をつくっていく際、資料をお示しする際に対応してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 大臣に通告しています。

 今、十一回、五回と言いました。だけれども、私が今指摘したように、規制改革会議のワーキンググループですとか、検討会の前にも、まだ議論をされているわけですよ。そして、それが一つ、二つのデータではない、丈比べをした、そんな話ではないんです。

 この今回の法案の全体にかかわる、上限規制をどうするか、除外をどうするか、全体にかかわる議論の基礎データに、このもとの調査結果がさまざまな形で加工されて出されてきたんだ、その意味を、その重さをどう考えるかということを大臣に聞いています。

加藤国務大臣 労政審の関係では、そういうことであります。

 今委員御指摘の、ちょっとそこ、今言った規制改革会議等々において、いつの時点でどういうデータが提出されたかまでは、済みません、ちょっと今把握をしておりませんが、委員御指摘のように、このデータがさまざまな形で活用されているということは、そのとおりだというふうに思います。

 いずれにしても、そうしたお示ししたデータが、その正確性が必ずしも担保されていない、あるいは異常なデータとしての蓋然性がある、そういったものが入っていたということ、これは本当に謙虚に反省をしていかなければならないというふうに思いますし、今後、今局長からも話をいたしましたけれども、統計をこうやってつくっていく、あるいは資料をお示ししていく際、この点をしっかりと反省をして、これからにつなげていきたいと思います。

高橋(千)委員 少なくとも、私が指摘したような零コンマの世界で出しているこのデータ、やり直した調査結果をもとに、もう一度出してもらえますか、山越局長。

山越政府参考人 ただいまのは、先ほど御指摘があった件でございましょうか。

 先ほど御答弁させていただきましたように、九千八十三の事業場のデータにつきましては、今御提出をすべく準備をしている最中でございまして、来週お出しをしたいというふうに思います。

高橋(千)委員 そうじゃなくて、そこから加工された、今出している、私が出した資料、これは零コンマの世界なんですよ。〇・一%、だから大した違いがないなんて、そんな答弁できないと言っているんです。わかっていますか。これを出し直してくださいと言っています。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 審議会にお出ししました資料、加工された資料につきまして、改めて数字を算出いたしまして、提出できるようにしてまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 だから、やり直しをするべきなんです、調査も審議会も。それだけの意味があるんだということを指摘したいと思います。

 次に、もう一度聞きますが、裁量労働制についても、総理の指示のもとに新しい実態調査をやると聞いています。いつごろ労政審にかけますか。

山越政府参考人 裁量労働制でございますけれども、厚生労働省におきまして新たな実態調査を行うこととしております。

 今回の問題点をしっかり反省した上で、正確なデータが得られるよう、専門家の御意見も伺いながら、適切な調査の設計を行っていきたいと思います。その上で、労働政策審議会で御議論をいただくことにしたいというふうに考えております。

 調査の設計や調査の実施には相応の時間を要するもの、こういうふうに考えておりまして、現時点で今後の予定をお答えすることはできないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、裁量労働制の実態をしっかり把握できるよう適切に対処してまいりたいというふうに考えます。

高橋(千)委員 結局、これは設計がいつごろできるかすらも、これは労政審にかけると聞きました。このデータを撤回したときから、私はずっと聞いているんですよ。だけれども、それすらもまだ答えられない段階なんです。だったら、高プロも当然一緒に調査をするべきなんです。これは今やるべきじゃない。重ねて指摘をしたいと思います。

 先ほど来お話が出ているんですけれども、過労死家族の会の皆さんが、過労死をふやす高プロを削除するんだと緊急の会見を行ったその日に、新たに二件の過労死が判明したというのは大変衝撃でした。

 お一人は、不動産関連のIT会社で、裁量労働制を適用されていた当時二十八歳の会社員。長時間労働が既に常態化していたにもかかわらず、裁量労働制になった直後に、三日連続の徹夜を含む三十六時間の勤務があったといいます。先ほど、山井委員が指摘をしたとおりです。

 これは、三十六時間三日連続自体は、通常の労働者も残念ながら一日限りの規制がないですから、私、前にも何度も質問していましたから、規制がないのとインターバルがないので、それ自体は違法ではありません。だけれども、トータルするとずっと長くなるのがわかっているから裁量労働制にしたんだろう、裁量労働制というのはそういうものなんだろうということを、改めて示していると思うんですね。

 もう一人は、テレビ朝日の五十代のプロデューサーが一五年二月に心不全で亡くなり、同年に認定されていたことが判明したというものでした。テレビ局全体として裁量労働制をしいているけれども、この方自身は上限規制の除外される管理監督者だったと報道されています。

 そうすると、今回の法案では、企画業務型裁量労働制の拡大だけは法案から削除しましたけれども、現行の裁量労働制はそのまま残っています。管理監督者もさわっていません。つまり、改めて、この法案は、過労死をふやすことはあっても、減らす、なくす法案ではないと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 裁量労働制については、委員御指摘のように、規制強化の部分もございましたけれども、それを含めて全面的に削除したところであります。

 ただ、今回の改正では、労働安全衛生法を改正し、事業者に対し、労働者の労働時間の状況を把握することを法律によって義務づけることといたしました。この規定は、裁量労働制の適用労働者や管理監督者にも適用されるということでありますから、これらの方について、労働者と労働時間の状況を把握するということが義務づけられることを通じて、医師の面接指導等が適切に実施されることにつながっていき、労働者の健康確保に資するというふうに考えております。

高橋(千)委員 今、きょうはそれを論じるつもりはありませんでしたが、一言だけ言っておきますが、医師の面接を確かに義務づけました。だけれども、それは、現在は百時間、それを、一般の方は八十時間ですよね。そして、高プロの方は健康管理時間が百時間、これは、過労死ラインに達するぞというときに面接するんですよ。手おくれです。遅過ぎます。それでどうして健康確保措置だと言えるんですか。これはもう言っておきたいと思います。

 管理監督者も、新商品開発業務も、実は何度も聞いているんですが、一体どのくらいの労働者が該当するのかは全くわかっておりません。そして、ちょっと飛びますが、資料の3を見ていただきたいと思うんですね。弾力的な労働時間制度の概況とあるんです。これは、通常の労働時間制が三九・六%、それ以外の方たちが六〇・四%なんです。これは、前回私がこの資料を使ったときは五割台でしたので、もっとふえているんですね、弾力的な労働時間が。

 これを上から見ていきますと、簡単に言いますが、変形労働時間制、フレックスタイム制、これは今回の改正で緩和をします。清算期間を一月から三カ月に拡大をするわけです。そして、事業場外みなし制、これが、NHKの佐戸未和さんが亡くなったのが、この事業場外みなし制が適用されていたわけですよね。そして、専門業務型裁量労働制、長時間労働になっているということは、もう皆さん御存じです。そして、企画業務型裁量労働制。

 これだけ、弾力的な労働時間制度というのはあるわけなんですよ。これ以上やる必要はないし、これ自体を考え直さなきゃいけない、そう言えませんか。一つ一つが、まだまだ実労働時間がよくわからないよということが今指摘をされているときなんです。そういうときに、これ以上、高プロを導入するべきではありません。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今委員お示しのように、こうした、いわばさまざまな働き方、そして今回、フレックスタイム制については今委員御指摘のような修正も法案の中に含ませていただいているところでありますけれども、こうした中でも、これまでも答弁をさせていただいていますけれども、やはり時間の管理が例えば休日、深夜といった形で及んでいく、そうした管理下ではなくて、自律的に仕事をし、そしてイノベーションや高付加価値をつくり出していきたいという高度専門職、そうした皆さんが更にその意欲や能力を十分に発揮をさせていただきたい。

 そして、そのことは、単にその方だけではなくて、新しい産業やプロジェクトが生み出され、ひいては日本の経済の発展、そして将来における雇用の増大、確保、こういったことにつながっていく。

 こういった観点から、今回、高度プロフェッショナル制度を盛り込んだ法案の審議をお願いをしているところでございます。

高橋(千)委員 どうして、高プロを導入すれば、今もこんなに弾力的な制度があるのに、導入すれば経済が発展し、社会が発展していくのか、答えになっていない。これは、この間も議論をしたわけです。

 逆に、こういう柔軟な働き方が、規制が及ばない働き方がふえてしまうと、どれだけ監督官をふやしても、しっかり指導できるはずがないんです。これははっきりしていることです、もう既にその証拠が今も出ているわけですから。これは、本当に考え直すべきだと思います。

 先ほど初鹿委員が、なぜ雇用計画は私的なものなのに国が介入するんですかという質問をされて、大臣もお答えになっておりました。

 上限規制を七十年ぶりに定めますと総理は声を高めているわけですけれども、この労働基準法が最初に提案をされたのは、まだ戦後の帝国議会ですよね。日本国憲法のもとの国会ではなくて、帝国議会の中で提案をされているわけです。民民の契約に任せていれば労働者の健康は絶対に守れない、そういう趣旨で基準法をつくった、国がここは関与しなければならないといってつくったわけです。それ以前に戻る規制緩和であるということを強く指摘をして、これは絶対やめるべきだと重ねて言いたいと思います。

 それで、次の質問に入りますが、十六日の委員会で同一労働同一賃金について質問しました。

 改正労働契約法十八条により無期転換した労働者は、フルタイムであれば同一労働同一賃金の対象になりません。それどころか、比較対象労働者、つまり、比較される側になるわけですから、もともとの処遇が固定化し、かつ、その無期転換した労働者と比較した方は更に低い処遇が固定化する、言ってみれば、負のスパイラルみたいになっちゃうわけですよね。これは見直すべきじゃないでしょうか。

 もともと非正規労働者の待遇改善という趣旨に照らして、均等・均衡処遇の範囲を拡大すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今回の改正法案による改正後のパート・有期労働法においては、パートタイム労働者及び有期雇用労働者が保護の対象となっておりまして、無期雇用のフルタイム労働者、これは、今おっしゃった無期転換した人も含めてということでありますが、保護の対象になりません。このため、有期雇用フルタイム労働者がということでございます。

 これは、我が国においては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に大きな待遇差があることから、この不合理な待遇差の解消を目指すということであります。

 ただ、もっとも、無期転換する有期雇用フルタイムの方についても、有期雇用労働者の間にということは、もちろんありますね、当然、その対象になります。また、無期雇用労働者に転換した後についても、キャリアアップ助成金など対象に、多様な正社員に向けてこれを促進していく、そんな措置も設けさせていただいているところでございます。

 また、対象になるというのは、無期雇用フルタイムの方もなりますけれども、どこを対象にするかというのは、またそれぞれにおいて決めていくことができる、こういう仕組みになっております。

高橋(千)委員 それは、前回お答えいただいたわけですよね。だけれども、無期転換の人しかいなくなってしまったときに、そうなっちゃうわけですから。今回はまだ、五年たって、無期転換が始まったばかりだと。私自身も、東北大学の問題など、何度も質問をしてきました。まずは安定雇用という第一歩を踏み出したわけですから、だから、まずはと思ったんです。でも、それがずっと固定化したり、あるいは負のスパイラルになってはいけない、この問題意識はぜひ大臣に共有していただきたいと思います。もう一回質問しますので、このことは後で。

 それは何かというと、派遣労働者の均等待遇の問題なんですね。

 これは資料の5に書いてあります。不合理な待遇差を解消するための規定の整備とありますけれども、派遣労働者と派遣先の労働者の均等・均衡待遇を実現するためには、派遣先事業主から比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報を得る必要があります。

 派遣先の企業は、情報の提供を拒むことはできません。拒むと派遣労働者を受け入れることができないというふうに書いています。だけれども、派遣先が、比較対象労働者はうちにはいないよというのを情報として提供した場合はどうなるでしょうか。

宮川政府参考人 情報提供に係る比較対象労働者につきましては、均等・均衡待遇規定の実効性を高める観点からは、職務内容等が派遣労働者と近い者とすることが考えられますが、他方で、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであるとして、職務内容が類似する派遣先の労働者が存在しないケースがあるなど、派遣労働の実情を踏まえたものにする必要がございます。

 比較対象労働者につきましては、厚生労働省令で定めることとしておりますが、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更範囲が当該派遣労働者と同一である者がいない場合に情報提供が不要になるわけではなく、そのような者がいない場合には、職務の内容は派遣労働者と同一であるが、職務の内容及び配置の変更範囲は異なる労働者ですとか、職務の内容は派遣労働者と異なるが、職務の内容及び配置の変更範囲は同一である労働者などに関する情報提供を義務づけることが考えられます。

 このため、お尋ねのように、派遣先が、比較対象労働者がいないという情報を提供することは認められないこととなると考えておりまして、いずれにいたしましても、比較対象労働者につきましては、改正法成立後に、労働政策審議会における議論を経た上で考え方を明確にすることとしておりますが、職務の内容等が類似する派遣先の労働者がいない場合にも、不合理な格差が解消されるよう取り組んでいきたいと思っております。

高橋(千)委員 まず、認められないという答弁をいただきました。これは確認をしたいと思います。

 それで、均等待遇がもし条件としてあるのかなということを聞くわけですけれども、派遣元事業主は、平均三割程度のマージンを得ていると聞いています。均等待遇に該当した場合、派遣労働者が受ける賃金は、当然、マージン部分を控除しても、比較対象労働者と同等の賃金になるという意味で理解してよろしいか。また、現実にそのような派遣労働者がいるんでしょうか。どのくらいいるとお考えか、伺います。

宮川政府参考人 今回の改正法案によります改正後の労働者派遣法第三十条の三第二項におきまして、派遣先の労働者と職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一である派遣労働者の待遇につきましては、当該派遣先の労働者の待遇に比して不利なものとしないことを派遣元事業主に義務づけることとしております。

 また、派遣料金につきましては、今回の改正法による改正後の労働者派遣法第二十六条第十一項におきまして、派遣先に対し、均等待遇規定などに基づく措置に要する費用を賄うに足りる派遣料金の額となるように配慮することを義務づけることとしております。

 これらの規定によりまして、派遣先の労働者と職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一である派遣労働者の賃金について、当該派遣先の労働者の賃金に比して不利なものとならないというふうに考えております。

 後段の、均等待遇の対象者の数についてでございますが、派遣労働者につきましては、企業横断的な専門性を生かして、さまざまな職場で働くことが想定されます。また、派遣先も、企業内で長期的に人材育成していく職種とは異なる分野で、あるいは臨時的、一時的に派遣労働者の能力を活用しようとすると考えられることから、派遣先の労働者と派遣労働者との間で職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一であることは、その性格上、やはり限定されるものと考えております。

 その一方で、今回の法改正の趣旨は、雇用形態にかかわらず、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにするものであり、パートタイム労働者あるいは有期雇用労働者とできる限り同じ取扱いとするという観点から、派遣労働者についても均等待遇規定を設けてございます。

 今回の改正法案による改正後の労働者派遣法第三十条の三第二項の、通常の労働者と同視できる派遣労働者の数につきましては、適当な統計資料がなく、推計するのは困難ではございますが、ただ、事業所が一つしかない企業に派遣される場合など、派遣先の労働者に職務の内容及び配置の変更がないような場合には、通常の労働者と同視できる派遣労働者と言えることがあり得ると考えているところでございます。

高橋(千)委員 あり得るということで、パーセントも言えないくらい、パートの一・五%も驚きの数字ですが、それより少ないのかなと思います。

 改正派遣法により、本年九月三十日以降で、個人単位の期間制限の期限が到来する派遣労働者に、雇用安定措置を講じなければならなくなります。この周知がどうなっているかということをまず通告しておりますが、時間の関係で、続けて言います。

 実際に、この雇用安定措置を、多分、派遣先が避けたのかなと思われるケースです。

 派遣先に直雇用を希望していた元専門業務だった派遣社員が、ことし秋から派遣会社の無期雇用になりました。メールをいただきました。この方は四十代、いわゆる二十六業種と言われた専門業務派遣で、CADオペレーターです。十月から派遣会社の無期雇用ですが、希望は派遣先だった。だけれども、法改正後、直雇用を避ける道を探していたようだと。この先、一生、ボーナスも手当も退職金もなく、マージンを取られ続け、将来は不安しかないと。

 無期雇用となっても、派遣社員であることには変わらないわけですね。ですから、派遣先は何のリスクもなく使い捨てすることが可能なわけです。これは、雇用安定措置の次善の策として四つのうちの一つにあったわけですけれども、本当にこれが雇用安定措置になるのかなと。しかも、今言ったCADオペレーターは派遣しか求人がないので、同一労働同一賃金の恩恵もない、こういうふうなことを指摘をされています。

 こうした事態がこれから起こってくるのではないか。やはり雇用安定措置と言った以上は、私たちは随分、これじゃ実効力がないと言いましたけれども、何らかの手だてをするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年の労働者派遣法の改正によりまして、同一の組織単位での就業見込みが三年となる有期雇用労働者につきましては、委員御指摘のとおり、派遣元事業主が雇用安定措置を講ずることを義務づけており、これにより、派遣労働者が無期雇用派遣労働者となる場合がございます。

 無期雇用派遣労働者につきましては、まず雇用が安定するというメリットがあると考えております。さらに、二十七年労働者派遣法改正におきまして義務づけられた段階的かつ体系的な教育訓練の実施に当たり、特に無期雇用派遣労働者につきましては、その職業生活の全期間を通じて、その有する能力を発揮できるよう配慮することを求めるなど、キャリアアップが図られる仕組みとしております。

 今回の働き方改革法案におきまして、派遣労働者について、不合理的な待遇差を解消するための規定の整備に当たり、派遣先の労働者との均衡・均等方式か、労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式かを選択する労働者派遣法の改正を盛り込んでおります。

 以上のような取組によりまして、無期派遣労働者を選択した方についても、適切な待遇が確保されることになると考えております。

高橋(千)委員 適切な対応と今おっしゃいましたよね。

 今、無期雇用が改正後三年間で六六%もふえているわけなんですね。やはりこれは、雇用安定措置といったけれども、派遣先がこれを避ける手だてなのかなと。しかし、今言ったように、派遣先にとって、本当はなくてはならないキャリア、技術を持っているんです。それが無期雇用という名の派遣社員のまま固定化されるのは適切なのか。これは、派遣法をつくったときに、三年後の見直し規定もつくりました。実態を見て、何らかの対応を検討すべきだと思います。

 大臣にもう一回聞くと言いましたが、質疑時間が終了しましたので、ぜひこれは次の課題として、宿題にして終わりたいと思います。

高鳥委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十二分散会


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