衆議院

メインへスキップ



第36号 平成30年7月13日(金曜日)

会議録本文へ
平成三十年七月十三日(金曜日)

    午前九時二十分開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 赤澤 亮正君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 堀内 詔子君

   理事 渡辺 孝一君 理事 西村智奈美君

   理事 岡本 充功君 理事 桝屋 敬悟君

      秋葉 賢也君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    小田原 潔君

      尾身 朝子君    大岡 敏孝君

      神山 佐市君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      柴山 昌彦君    白須賀貴樹君

      杉田 水脈君    田畑 裕明君

      高木  啓君    高橋ひなこ君

      中山 展宏君    長尾  敬君

      橋本  岳君    三浦  靖君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      山田 美樹君    阿部 知子君

      池田 真紀君    高木錬太郎君

      長谷川嘉一君    初鹿 明博君

      山本和嘉子君    吉田 統彦君

      伊藤 俊輔君    大西 健介君

      階   猛君    山井 和則君

      柚木 道義君    伊佐 進一君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      串田 誠一君    柿沢 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   総務大臣政務官      小倉 將信君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 沖部  望君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           信濃 正範君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   参考人

   (国立大学法人長崎大学名誉教授)

   (厚生労働省医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会座長)      片峰  茂君

   参考人

   (愛知医科大学理事長)

   (国立大学法人名古屋大学名誉教授)        三宅 養三君

   参考人

   (一般社団法人日本医学会連合・日本医学会会長)

   (堺市立病院機構理事長) 門田 守人君

   参考人

   (NPO法人医療制度研究会副理事長)

   (一般社団法人日本医学会連合労働環境検討委員会委員)           本田  宏君

   参考人

   (公益社団法人全日本病院協会会長)

   (医療法人財団寿康会寿康会病院理事長)      猪口 雄二君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十二日

 辞任         補欠選任

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  浦野 靖人君     足立 康史君

同月十三日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     柴山 昌彦君

  穴見 陽一君     尾身 朝子君

  小林 鷹之君     神山 佐市君

  繁本  護君     八木 哲也君

  橋本  岳君     三浦  靖君

  船橋 利実君     高木  啓君

  尾辻かな子君     阿部 知子君

  初鹿 明博君     高木錬太郎君

  白石 洋一君     階   猛君

  柚木 道義君     伊藤 俊輔君

  足立 康史君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     小田原 潔君

  神山 佐市君     小林 鷹之君

  柴山 昌彦君     秋葉 賢也君

  高木  啓君     船橋 利実君

  三浦  靖君     橋本  岳君

  八木 哲也君     繁本  護君

  阿部 知子君     山本和嘉子君

  高木錬太郎君     初鹿 明博君

  伊藤 俊輔君     柚木 道義君

  階   猛君     白石 洋一君

  串田 誠一君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     杉田 水脈君

  山本和嘉子君     尾辻かな子君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     中山 展宏君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 展宏君     穴見 陽一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 医療法及び医師法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、医療法及び医師法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立大学法人長崎大学名誉教授・厚生労働省医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会座長片峰茂君、愛知医科大学理事長・国立大学法人名古屋大学名誉教授三宅養三君、一般社団法人日本医学会連合・日本医学会会長、堺市立病院機構理事長門田守人君、NPO法人医療制度研究会副理事長・一般社団法人日本医学会連合労働環境検討委員会委員本田宏君、公益社団法人全日本病院協会会長・医療法人財団寿康会寿康会病院理事長猪口雄二君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 なお、猪口参考人は、所用のためおくれて御出席になりますので、御了承願います。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をいただき、審査の参考にさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず片峰参考人にお願いいたします。

片峰参考人 長崎大学名誉教授の片峰と申します。よろしくお願いいたします。

 現在、厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会の座長を務めてございます。この医師需給分科会は、平成二十七年十二月に設置されまして、今日まで二年半にわたりまして、医師の需給の推計、それに基づきます医学部の定員のあり方、そうした医師偏在対策について議論を重ねてまいりました。この間、三回にわたりまして中間取りまとめを公表したところであります。

 とりわけ医師偏在対策に関しましては、昨年十二月の第二次中間取りまとめで対策案を提言いたしました。この内容が今回の医療法・医師法一部改正案の一つの下敷きになっているというふうに考えてございます。その概要は、きょうお配りしました資料にありますので、ごらんいただければと思います。

 本日は、この第二次中間取りまとめに至る分科会における議論の経緯、これを御説明することで参考人としての責を果たしたいと存じます。

 現在、医学部定員は全国で約九千四百名、過去十年間に千八百名もの急激な増員を見ております。そのうちの約一千十名が緊急医師確保対策及び新成長戦略による臨時定員増であります。また、千五百名がいわゆる地域枠の学生でございまして、増加分の八割以上を占めているという状況でございます。

 次に、分科会で行ってまいりました最新の将来の医師需給予測について説明申し上げます。日本全体、マクロの推計、予測ということで御理解ください。

 医師数は、先ほど申しましたように、急速に今増加中でございます。現在、人口十万人当たりの医師数は約二百五十名ということで、このまま推移いたしますと、七年後の平成三十二年にはOECDの加重平均値を上回ります。

 現在の医学部定員九千四百名が維持される、そういうことを前提にいたしまして、将来の医師需給予測を行いました。とりわけ、需要における大きな変動要因として、働き方改革、これによる医師労働時間の短縮を勘案いたしました。

 御承知のとおり、現状での病院勤務医の週当たりの平均労働時間は大体五十六時間ということで、いわゆる過労死ラインと言われる六十時間を超えて働いている医師が三〇%以上存在するというのが現状でございます。したがいまして、まず、週の労働時間を六十時間に制限するということを仮定いたしますと、医師需給は二〇二八年に需要と供給が均衡いたします。さらに、五十五時間に制限すると仮定いたしますと、それでも二〇三三年には均衡して、それ以降は医師過剰となるという予測でございます。

 一方で、大きな問題が医師の偏在であります。

 全都道府県で、この間、医師数は増加しておりますけれども、増加の程度には差がございます。そして、何より、二次医療圏間の格差が顕著でありまして、医師数が近年かえって減少したという二次医療圏も存在するということで、この格差が著明に拡大傾向にあるということだろうと思います。

 それから、診療科間におきましても、他の診療科に比較しまして、一般外科、産婦人科の増加割合は極めて低うございまして、診療科間の格差も拡大の一途という状況ではないかと思っております。

 要するに、問題は、医師数の増加あるいはマクロの医師需給予測結果にもかかわらず、地域における医師不足感は解消していないということであります。

 そのような背景に基づきまして、分科会におきましては、これまでにない新しい観点を取り入れて偏在対策を議論いたしました。

 この新しい新たな論点、一つは、客観的事実に基づいた議論をしようではないか、さらには、今後、偏在にかかわるもっと詳細なデータが必要である、そういった議論が一つであります。そして、これまで無視されがちであった、医師偏在により医療から疎外されつつある被保険者、その視点も取り入れた議論も行いました。さらに、マクロではなくてミクロの課題対応に向けた地方行政の責任と権限強化の観点も取り入れました。そして、これまでほとんど議論されていなかった地域の外来医療の偏在問題、ここにも切り込んだというあたりでございます。

 第二次中間まとめの重要なポイントを幾つかお示しして、今後の課題についても述べたいと思います。

 まずは、先ほど申しました、客観的事実に基づく議論の重要性に言及したことであります。

 医学部卒業生のうち、地元出身者が極めて高い地元定着率を示すという事実、これに基づきまして、地方行政が医学部入学定員に地元枠の増員を要請する仕組みを導入する、これが一つの重要な例ではないかと思います。

 それから、先ほど申しましたように、分科会の議論に基づきまして、今後、医師偏在にかかわるさまざまな指標がミクロの観点からもデータベース化されることが予想されます。これに基づきまして、今後、偏在対策のPDCAサイクルがより適切な形で機能することを期待したいと思っております。

 二つ目に、都道府県の責任と権限の強化を明記したことであります。

 都道府県知事に、医師過剰地域と医師不足地域を明確化した上で、医師確保計画を策定し、医師対策協議会等のガバナンス体制を強化する責任を課します。その上で、知事による医学部への地元枠設定、増員の要請、臨床研修病院の指定と定員設定、専門医機構への地域の専門医枠についての意見具申、これを可能にすることを提言したわけであります。

 こういった改革が実効性を持つために最も重要なポイントは、都道府県の医療行政能力の向上であろうと思っております。その意味では、国の支援が欠かせないと考えます。さらには、県内の医育機関、大学との有機的かつ密接な連携が欠かせないし、さらには、県境を越えた自治体間の連携も重要ではないかと思っております。

 三番目に、これまでの医師の自由意思を尊重した対策から一歩踏み出し、医師の配置に新しい制度的枠組みを導入することを提案したことも特徴でございます。

 例えば、地域医療に一定期間携わった経緯を国が認定する、そのことを一部の医療機関の管理者要件とするという点、さらには、先ほども申しましたけれども、地域の医師配置における都道府県の権限を強化した点等々でございます。このことは、いわゆる被保険者の視点からの対応という観点から、一つの形ではないかというふうに思っております。

 今後の課題でございますけれども、医師偏在対策と若手医師の志あるいはキャリアパスに関する自主性、この両立をいかに図っていくかというところにあるのではないかというふうに思います。

 そのためには、地域の病院の労働あるいは研修環境をもっと整備する必要がありますし、卒前卒後の医学教育を通して医師の行動変容を促す必要があるというふうに思っております。そのためには、行政、医育機関、大学、医療機関の持続する強固な連携が不可欠であると考えております。

 最後に、分科会では最終合意が得られず、先延ばしした論点がございます。

 一つは、専門研修における地域別定員の設定の是非であります。二つ目が、認定医師、地域で働いた医師を認定する認定医師なんですが、それを管理者として評価する医療機関、この範囲をどうするかという点が二つ目。それから三つ目、無床診療所、外来診療所の開設に係る制度的枠組みを導入することに関する是非、この三点に関しましては、最終合意が得られずに両論併記という形になってございます。

 これらの論点を含めまして、今回の偏在対策の効果あるいは今後整備されるデータベースに基づき、更に踏み込んだ偏在対策を早急に講じる必要があるというふうに考えてございます。

 以上、医師需給分科会の議論を踏まえた今回の医療法及び医師法の一部改正案は、本質的かつ実効性のある医師偏在対策に向けた大きな最初の第一歩であるというふうに考えております。御審議をよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 次に、三宅参考人にお願いいたします。

三宅参考人 三宅でございます。

 きょうは、医療法及び医師法の改正案に関しまして、特に医師偏在に絞って、大学の立場から意見を言わせていただきたいと思います。

 この改正案でございますけれども、現状を踏まえてよく練られておりまして、その対策も盛り込まれておりまして、それなりに評価できるのでありますが、やはり具体的なことで非常に難しい問題も多々抱えているように思えます。

 私は今まで、大学というところで五十年以上仕事をしてまいりました。大学人として、いろいろな経験を持っております。

 昭和四十二年に名大を卒業しまして、しばらくしてからハーバードに三年行きまして、二〇〇五年に名大を退官しまして、その後、国立病院機構の東京医療センターの研究所の感覚器センターに二年おりまして、二〇〇九年から愛知医大に来まして、現在、理事長をやっております。来年の一月からは神戸の理研の直轄のアイセンターの理事長をすることになっておりまして、ずっと大学に近い畑で歩いてまいりました。

 一九七六年に、私、ハーバードに三年ほどおりまして、四十二年前でございますけれども、ともかく日本の医療と比べて臨床、研究ともにすばらしいものがあるというカルチャーショックを受けて帰りましたが、その後、ずっと日本で研究、臨床をしておるうちに、日本もこれはすばらしいところのある国だということをしみじみ悟ってまいりました。

 実際、一九〇〇年代になりまして日本はぐんと発展しまして、御存じのように、医療は、WHOの試算によりますと、世界で一番になりました。それから、医学も、私は眼科でございまして、その論文数、英文のいい論文の論文数でずっと評価しましたところ、ずっとアメリカがトップでありまして、日本は一九九〇年代には二位に、アメリカ、日本、イギリス、そういう順になりまして、こんな小さな島国、資源もない島国で、どうして医療が一位で医学が二位なんということがあり得るかということが欧米で非常に研究材料になったような時期でございました。

 しかし、これもそんなに長くは続きません。二〇〇〇年を過ぎますと、特に日本の研究が落ちてまいりまして、それからいわゆる大学力が低下してまいりました。これはいろいろな原因がございます。例えば、経営が物すごく厳しくなって、経営ということに物すごく重点を置かなければいけない。それから、国からの補助金もぐんぐん減ってまいります。消費税もございますし、それからいろいろな規則もできてまいりまして、規則が厳しくなる。医療安全であるとか倫理とかいろいろなものができてきて、それで、結局、大学でずっと研究、診療しながら、それほど魅力を持って、あるいは生き生きとできないような状態になってきて、その結果、大学離れが頻繁に起こるようになりましたし、それから一番顕著なのは、今、留学者数が激減しております。

 このような、大学が低下してくるということは、これは本当に大事な問題で、僕のように五十年おりますとはっきりそれが見てとれるわけですね、大学力が下がってくる。

 それで、今回のキーワードでございます。私のここのキーワードは、教育機関である大学が機能しないことにはきょうのテーマもうまくいかないのではないか、しかし、大学としての機能はこれ以上落とせない、こういう二つの問題がキーワードなんです。

 まず、地域医療対策協議会。これは、都道府県、大学、医師会が込みになっていろいろ練るわけで、これは非常に重要な役割を果たすわけでございますけれども、これにも、やはり人を動かすことが基本になりますので、十分に大学の意見を取り入れて、大学のことを考慮しながらこの会を進めていかなければならないだろうと思いますし、それから、医師養成過程。この地域枠は極めて重要でございますし、現在行われておるのでありますが、これも、大学にはできるだけ負担がかからないようにしたい。それから、この地域枠自身も、大学にとって非常に役に立つということでやっていくことが非常に重要ではないかというふうに思っております。

 それからもう一つ重要なことは、専門医制度と地域医療の関係でございます。

 あえて言いますと、専門医制度というのは、専門性を持った医師をつくるということと医学という学問のために専門医制度というものはできたわけでございまして、これは地域医療のためにあるものでは必ずしもございません。ですから、地域医療はあくまで行政の問題でございまして、しかし、新専門医制度によって地域医療が悪化することは避けたいというふうに考えておるわけでございます。そのためには、専門医機構というものが非常に責任のある状態になるわけでございます。

 現在、先ほども話がありましたけれども、医師数はずっと増加しておりまして、十八大学ができたことと同じぐらいの医師数が増加しておる、それにもかかわらず医師偏在はますます顕著になっておるということが現状でございまして、これは、平成十六年に始まりました新医師臨床研修制度が地域医療の崩壊に大きな影響をしたのではないかということが一般的に考えられております。臨床研修医と卒業生が都道府県にとどまる率が激減いたしまして、大学に人が残らなくなったというのが大きな原因でございます。

 米国やドイツのように、学会と医会とが一体化しておりまして、自分たちの権益を守るために、自浄的に地域の医師と数をコントロール、診療科をコントロールする、こういうシステムをやっている諸外国もございますけれども、これも日本では一つの方法として考えるべきであろうと思っております。

 さて、最後になりますが、医師の偏在、これは、大学がどのように動くかによって大きく影響されてまいります。しかし、それによって大学の機能低下を招くことは、日本の医学、医療にとって更に深刻な事態になるということを私の締めくくりの言葉といたしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 次に、門田参考人にお願いいたします。

門田参考人 ただいま御紹介いただきました、日本医学会連合、医学会の会長をしております門田でございます。

 私は、今のお二方の参考人の方と少し見方を変えて、医学会ということを、ある学術団体として、どこかの職能団体というよりも、学術団体としての御意見としてお話しさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、少しだけ時間をいただいて、医学会連合と医学会という話をしたけれども、何なんだそれはと多分多くの方が思っていらっしゃると思いますので、お話だけ簡単にさせていただきますと、医学会というのは一九〇二年にスタート、日本医師会が日本全体の組織になったのが一九一六年、戦争に負けますまではこのままの状態で並立してきた。

 そして、一九四七年、敗戦後、医師会の方が解散させられ、我々はそのまま、医学会の方は残っておったということですが、一九四八年、昭和二十三年に、GHQによりまして、医師会に学術的な機能を持たすためということで、医学会が一方的にこの中に統合されたということでございます。

 こういう状態で六十五年続いておったんですが、二枚目を見ていただきますと、六十五年、真ん中のこの関係でございましたけれども、しかし、ここで私たちが考えたのは、医学会というものは学術団体であって、必ずしも医師会の中に入り切るというものではないほかの仕事があるんだというふうなことから、一般社団法人化しようというふうなことでございます。

 そして、本来であれば独立するような格好の、上の方に行こうか、こういうふうなことを考え、しかし、結果的には下のような状態で、一部は医学会として医師会と一緒に動く、そして一部は医学会連合としての動きをするというふうな形で、何とか学術的なことをもっとメーンに発信し、行動するということになったということを、前もってお話しさせていただきたいというふうに思います。

 本日は、専門医制度をどう考えるかというふうなことを中心にお話しするよう伺いましたので準備しましたが、簡単にだけ述べさせていただきますと、その次に、我が国の専門医制度の歩みということで、歴史的なことを書いております。これはまたゆっくり見ていただくことにして、問題は、歴史的には、とにかく専門医制度、認定医制度がスタートする。しかし、それがばらばらであったのでそれを何とか統合しよう、こういう流れがあった。そして、途中で厚生省の方の、専門医制度というものを認め、そしてそれを広告できるようにするというふうな感じになったときから一気に話がおかしくなってきた、こういうことでございます。

 その次の三者懇談会は、これはパスします。見ていただきたいと思います。

 その後、平成十一年に学術会議が、本来の専門医制度とはということを、非常に的を得たまとめを出されたということがございます。これは見ていただくことにしたいと思います。

 しかし、その次、専門医資格を認定する団体の基準ということで、厚労省が平成十四年に出した。ここで学会の基準を決定したというふうなことで、専門医の資格ということよりも、認定する団体のことが中心に、外形基準と言われますけれども、こういうものがスタートしたというふうなことから、その次の図を見ていただきたいんですが、これは十年ほど前に自分が関係していた学会の専門医制度です。ですから、どこまでが、学会さんはわかるけれども、私たちにかかってくる患者さんたちにとって、何の専門がどういうことになっているのか、それ同士がどうなっているかということがなかなかわからないというふうな状態が続いておったということであります。それには問題がある、これは医師会の意見ですが、そういうものを出されました。

 そこで、当時の、前の機構の方で、専門医制評価・認定機構というふうな機構の名前でございましたけれども、前の機構では、あり方委員会という、もう少し真剣にこれを取り組むというふうなことから委員会が立ち上がった。そして、そこで方針としたのは、結局は、質の高い医療を受けられる、患者さんにとって質が高い医療が受けられるんだ、こういうふうなことが何よりもまさる大切なことなんだということであります。そういうふうなこと、先ほどの三宅参考人のお話もございましたけれども、何はともかく、それがメーンの目的であるということであります。

 それで、その図を見ていただきますと、医師の育成の過程ではいろいろな段階がある。だから、どこでどう線を引くかというのは簡単にできることではないということ。そして、その次の棒グラフを見ていただきますと、また病院の状態によっては、こういうふうに外科医の数がとんでもなく違う。そして、それを一つの専門医という名前でどうするのかというふうなこと。そうすると、数の多いところの発想よりも、本当に現場、医療の現場で働いている人たちがどうあるべきかということを考える必要があるというふうな意見に集約されつつあるということでございました。

 そこで、その次にありますけれども、プロフェッショナルとスペシャリストというのが皆さん混同してしまっている。学会が育成しているものはスペシャリストである。それから、制度全体で、医療制度の中で基盤をなすのがプロフェッショナルであって、スペシャリストとプロフェッショナルというのは一緒にはできないんだという認識をしっかりすべきだということを打ち出した。

 そういうふうなことがございまして、専門医制度の基本設計に関する提言という提言をまとめたのでありますが、そこで一から七まで挙げておりますけれども、一番重要なことは、学会単位の制度から診療領域単位で学会を越えたものであるという形にするならば、それを認定するのは学会ではない、第三者機関だというふうに、それを中心に考えていくべきであるというふうなことをやりました。当然ながら、学会ではないので、日本国全体の中で適正数ということを検討していかざるを得ないじゃないかというふうなことになったということであります。

 そして、医師のインセンティブは何かというふうなディスカッションもございました。今は自由標榜科となっておりますけれども、やはり標榜科と専門医領域というのが一致するというのは当然の方向ではないかというようなディスカッション等もありました。そういうふうなことから、旧機構の中ではこの方針が認められたということでございます。

 そして、その次の、小さな字、右に組織図を描いているのがありますが、これだけではだめだというふうなことから、日本医師会にも加わっていただいて、もう一回、第三者機関検討委員会というのを立ち上げたということであります。その委員長を拝命したわけですが、そういうディスカッションをしながら今回の新しい機構のあり方を検討したということであります。

 そういうふうなことで、その次にありますけれども、厚生労働省の中での専門医の在り方に関する検討会の中間まとめ、結果的には、先ほど申しましたように、第三者機関というものの設立ということでスタートしたということであります。

 そういうふうなことで来て、いろいろな紆余曲折がございまして、今回新たにスタートしたとはいえ、初期のこういう大きな本当に理念的な考え方が少し薄れてきている嫌いがあるのではないのかということを、少し心配しているということであります。

 そして最後に、先生方皆さん御存じのことを申し上げて大変失礼ですけれども、福沢諭吉の「文明論之概略」の第一章のところ、「議論の本位を定る事」ということは非常に私は大切なことだというふうに思いますので、これを添えておきます。

 議論の本位を定めざれば、その利害得失を談ずべからず。城郭は、守る者のために利なれども、攻むる者のためには害なり。ゆえにこれらの利害得失を談ずるには、まずそのためにするところを定め、守る者のためか、攻める者のためか、その主とするところの本位を定めざるべからず。利害得失を論ずるは易しといえども、軽重是非を明らかにするは甚だかたし。一身の利害をもって天下のことを是非すべからず、一年の便不便を論じて百歳のはかりごとを誤るべからずということを百五十年ほど前に書かれているということから考えて、私は、専門医の育成というのは、先ほどの方と一緒です、育成は育成がメーンなんです。それをほかのことで、育成のことを忘れたディスカッションをするということは、私は許されないのではないかというふうに思っております。

 そういった意味で、全体を通して私の考え方を申し上げさせていただきますと、今、世の中、分化と統合という言葉がよく使われますけれども、分化の方向ではだめだ、常に、統合して全体でどう見るか、統合の方向を目指すということが必要になります。

 そしてもう一つ。氷山の一角ということがよくありますけれども、氷山の見えるところ、表面と、それから深部の見えないところで非常に重要なことをやっているということ、その構成をしっかり見て、我々が何に向かって何をするのかということが必要ではないかというふうに常に思っております。

 例えば、偏在の問題でもそうです。地域が崩壊してきている、そしてそれから医師の偏在も生じているというバックがあるということを忘れてはならないというふうに思います。ですから、これは社会全体の大きな構成でございます。

 また、診療科の偏在を考えますと、例えば診療報酬だって、高いものをみんな狙いたがります。そうすると、専門性の高いところとか高い手術というふうなことです。でも、一番必要なことは何でしょうか。病気の治療も大切ですけれども、予防の方がもっと大切なんです。社会全体を見る、地域全体を見るというふうなことに配慮した診療報酬体制になっているでしょうか。

 私は、人間がどういう行動を起こすかということ、確かに個々の問題もありますけれども、その点についての、そういう方向に対して大きな意味での政策を打つということをぜひやっていただきたいというふうに思います。

 過去に総合診療部という新設部がありましたけれども、残念ながらこれは失敗に終わったということだと思います。ぜひ、全体としてどうあるべきか、考えていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 ただいま猪口参考人が到着されましたので、御紹介をいたします。

 猪口参考人におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事を続行いたします。

 次に、本田参考人にお願いいたします。

本田参考人 本日は、大変貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。十分という時間ですので、皆さんのお手元の資料の順番に御説明をさせていただきます。

 まず、私は十六年前からずっと日本は医師不足であるということを訴えてまいりましたけれども、きょうのこの一ページ目、医師不足、正確な診断が本当にできているのかということをちょっとお話ししたいと思います。

 実は、私が医学生の四十年以上前から、将来医師は余るとずっと言われていました。四十年間、医師が余ると言って、今でも医師不足の問題が続いているということは、正しく診断されていなかったのではないかな。例えば、外科で急性腹症、おなかが痛いという患者さんがいらしたときに、緊急に手術をしないと助からない方をそのまま四十年間点滴をしていたらどうなるでしょうかと私には見えるわけですね。ということで、それをこれから説明していきたいと思います。

 主なポイントは、まず、一ページ目にも書いておきました。医師をきちんと実働数で把握してください。頭数はだめです。高齢の医師まで一人はだめ。

 あと、二番目。医師不足、地域の偏在と専門家偏在、それから高齢者の増加率をちゃんと考慮してください。救急医が全くいなければ、一般医が救急医のかわりもしているわけですね。それではその場で働きたくなくなるのは当たり前です。

 三番目。実効性ある具体策をとってください。フィジシャンアシスタントです。欧米では既に導入されております。これを日本でこそ導入すべきだということを御説明したいと思います。

 あと、四番目。やはり医療機関が赤字で潰れるようでは話になりません。埼玉県の私の近くの病院も赤字で売却になりましたし、先生方御存じだと思いますけれども、今、都立病院も赤字で独法化が迫られています。赤字の病院が悪いのか、診療報酬の点数が安いのが悪いのか、ちゃんと考えてもらいたい。それがきょうの私のポイントでございます。

 では、次に二ページ目に移ります。

 これは簡単に触れますけれども、二〇〇五年から既にOECDも、日本が医師不足になるんじゃないかということをOECDが心配してくれているんですね。

 この下の下線をごらんください。これもまだ日本では知らない方が多いんですけれども、世界の国では必ずしも医学部の定員を決めているわけではないんです。日本は医学部定員を決めているんですから、不足なく育成する義務があるんじゃないでしょうか。どうでしょう。これが私のまず言いたいところでございます。

 次のページをごらんください。

 これは全国の人口当たり医師数でございます。日本では、多くの場合、人口当たり医師数を見て偏在が問題だと言われますけれども、ごらんいただくように、日本の平均は、この黒い線ですね、今、日本は三十二万人近くいます。これをOECDの単純平均と比較しますと、日本は十万人足りません。しかも、日本で一番多い徳島、京都、高知も、OECDの平均にも追いついていないんです。これを偏在だと言うのはちょっとおかしいんじゃないか。これをまず考えていかなくちゃいけない。

 この三十二万人で十万人足りないということは、今現在、日本の医師は、本来、OECD平均並みにいるとすれば、四十二万人いなくちゃいけません。ただし、先生方御存じのように、日本は世界一の高齢化社会ですから、本当は平均より多くいなくちゃいけないんですよ。この四十二万人ということをよく御記憶いただきたいと思います。

 次のページをごらんください。

 ところが、いろいろな調査機関が試算すると、三十八万人いるともう余るということになってしまうんですね。これはどうなっているんでしょうか。日本の医師だけがどうして少なくて済むのか。時間の関係で細かいことは割愛しますけれども、これが今の日本の試算で、四十年前からこういう試算がなされてきたのではないかなと心配でならないわけでございます。

 その次のページをごらんください。

 それで、実は私は、日本の場合、先ほども申し上げたように、高齢の医師まで一人としてカウントされているんじゃないかということを懸念しましたけれども、かつて、二〇〇六年の医師の需給検討会でも、日本だけが八十歳以上の医師の週間労働時間のデータを出しておりました。

 今回のこのページをごらんいただければわかりますけれども、二〇四〇年、八十歳、九十歳はもう当たり前で、百歳、つまり亡くなるまで医師として働く意思がある人は頭数に入っていて、しかも、その右上をごらんください、九十歳以上の人が週に三十時間働くことになっているんですよ。これだったら、救急外来に来て、九十歳の人が目の前に来たら、どっちが患者さんなんだかどうかわからなくなってしまわないでしょうか。これもぜひ先生方に考えていただきたいと思います。

 その次のページをごらんください。

 これが、今申し上げた、二〇〇六年の医師の需給検討会に出たデータで、右側のグラフをごらんいただければ、ほかのイギリス、フランス、ドイツが六十歳以上の医師のデータしかないのに、日本だけ八十歳以上の医師が出て、しかも三十時間いる。ほかの国では、医師になると、やはり七十、八十になると引退できるんじゃないかなと想像いたします。日本の大手企業もみんな引退しているのに、何で医師だけ九十歳以上まで働かなくちゃいけないんでしょうか。これが問題だと思います。

 続いて、ごらんください。

 今、いろいろな方々が医師の労働時間をおっしゃっていますけれども、幸いというか残念というか、今の若いドクターは、当然ですけれども、ワーク・ライフ・バランスを考えながら将来の科目を選択しようとしています。私も六十歳以上に入りますけれども、私なんかは、外科が忙しいからなんて全く考えないで、すぐ移植外科医を目指してしまいました。

 今、医師の需給を考えて時間を考えている人たちは、結構高齢の方が多いんですね。自分が働かないのに、若手の医師にだけ自分と同じように働かせるというルールを決めて、皆さん、どうなるかは、それはもう説明が必要ないと思います。

 次のグラフをごらんください。

 この二十年間の各科の医師のふえぐあいです。これがまさにワーク・ライフ・バランスを考えている結果と言えませんか。

 この二十年間、いろいろな診療科がふえているのに、外科も産婦人科もふえていません。これで長時間労働したらどうなるでしょう。若い人は外科とか産婦人科に行くんでしょうか。これはちょっと考えればわかることですね。

 逆に、ほかの科がふえているのに、ほかの科が余ったという話は聞かないでしょう。これは医師が絶対数不足だからなんですよ。

 それは、勤務条件がいいか教育条件がいいところに行くのは当たり前です。私も、今医者になればそこから考えますので、それをぜひ検討に入れていただきたいと思います。

 次のページをごらんください。

 これは、先ほど申し上げた地域別の高齢者増加率ですね。この丸で囲んだところは、千葉、埼玉、神奈川などがありますけれども、これは今既に、現在、全国で一番医師不足の地域です。ここで高齢者の増加率が二〇〇%近くになるわけですね。すると、爆発的な医療需要が増大します。これで医師を二、三年後から減らすという話が出ていると聞いて、私は本当にびっくりしているんですけれども、こういう状況で大丈夫なんでしょうかということでございます。

 その次のページをごらんください。

 これが、私が先ほど強調した実働数でございます。年をとっても、医師として働いているという意思表示さえすれば一人としてカウントするのではなくて、もしその人が一週間に臨床医として、これがポイントです、臨床医として十時間しか働いていなければ、四人足して一人でしょう、週に四十時間だから。そういうカウントをして考えないと、いつまでたっても正しい診断ができません。診療の現場では、毎日でも、必要だったら血液検査するわけですから、実働数でカウントするぐらい、やる気があればすぐにでもできます。これをやっていただきたい。

 その次のページ。幸い、厚労省の検討会などでも、タスクシフティングと言われまして、フィジシャンアシスタントの導入などがうたわれております。

 フィジシャンアシスタント、次のページをごらんください。これは私の東京女子医大の後輩の河合先生という方からもらったんですけれども、アメリカでは、フィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナーなど、医師を補助する職種があります。

 その次のページをごらんください。

 これはちょっと時間の関係で簡単に申しますけれども、人口当たり医師数が多いアメリカでさえ、そのフィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナーがもう三十万人以上活動しているんですね。こういう人たちは医師不足の地域から入ったと聞いております。すぐにでも医師不足の地域にこういう人を補充して、その地域の医師の働き方を改善しなければ、その医師はそこに定着するんでしょうか。

 その次のページをごらんください。

 これはフィジシャンアシスタントがやっていることで、ちょっと時間の関係で詳細は避けますけれども、こういうことをやってくれる人がいれば、医師の労働環境はかなり激減するというか、すごくよくなると思います。

 その次のページをごらんください。

 これは世界の医師数ですけれども、日本は残念ながらG7で人口当たり医師数は今でも最低でございます。それで、一番左側にドイツ、G7で人口当たり医師数が一番多いドイツでも、フィジシャンアシスタントを何と十年前から導入しているんですよ。日本で導入しないという手はないでしょう。今すぐにでもやっていただきたい。これは私、十数年来活動してきたお願いでございます。

 その次、先ほど申しました、都立病院が独法化されたり、病院が赤字で、なくなる。今も西日本で、府中北市民病院、私は昔行ったことがありますけれども、もう急性期病院がなくなる。やはりその原因も医師不足などなんですね。一方、日本の薬価、あと薬剤の医療費、院外処方、あとは損税の問題。病院が経営が赤字だったら、皆さん、医師の待遇をよくするために医療秘書を雇うことだってできないんですよ。病院の経営を担保してあげなければ、医師の働き方改革なんか絵に描いた餅でございます。

 最後のページでございます。

 一番上、これは中国の言葉にあるようですけれども、小医は病を医し、中医は人を医し、大医は国を医す。先生方は大医のお仕事をされているわけですね。やはり我々、医療現場で必死に医師が過労死まで覚悟して働いていても、大医の先生方が日本をよくしてくれなければ何にもよくなりません。正確な診断をもとに実効性ある対策をしていただきたい。

 下の四つの項目は、先ほど申し上げました。

 一番最後、実は私、生活保護の関係の裁判なんかも応援しているんですけれども、日本はクールジャパンといいますけれども、コールドジャパンなんじゃないか、冷たい日本じゃないかと。本当の意味でクールジャパンと言えるように、先生方の活躍を期待したいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 次に、猪口参考人にお願いいたします。

猪口参考人 全日本病院協会の会長を務めております猪口と申します。

 今、全日病は、二千五百以上の民間病院を中心とした団体で、全国におります。昨夜、ちょっと徳島の方で講演をしておりましたので、きょう一番で帰ってまいりましたが、少しおくれてしまいました。申しわけございません。

 それで、きょう特に資料を用意していませんけれども、全日病として、今回の医療法及び医師法の一部改正についてさまざまな意見がありましたので、その辺を集約してお話しさせていただきたいと思います。

 まず、医師の偏在についてです。医師の偏在というのは、地域の偏在だけではなくて、診療科の偏在、それから専門医の偏在、それからもう一つは病院と診療所間の偏在というのがございます。

 外来機能の偏在については、今回の法律の方で、地域の医療関係者等において機能分化、連携について協議を行うというようなことが書かれております。方向性としてはよいと思いますが、その実効性について、ぜひ実効性のあるものにしていただきたいというふうに考えております。

 それから、医師の養成数ですが、二年間変更はないということにとりあえずはなっておりますけれども、医学部入学において、地域枠、地元枠というものが今回活用されるということで、将来の医師の偏在是正に対しては非常に有効と考えますので、この地域枠、地元枠についてはぜひ進めていただきたいというふうに考えております。

 それから、医師の需給問題ですけれども、これについては、専門医制度とか現在今議論されております医師の働き方、そういうところで需要がどんどん変化してまいります。したがって、これらの関連する問題を総合的にちょっと議論していただかないと、それぞれ、医師の需給だ、働き方だ、専門医制度だとやっていますと、どこかに必ずそごが生じてしまいますので、これらは総合的に議論する必要があると思っています。ぜひそのような方向でお願いしたいと思います。

 そして、こういうような弾力かつ実効性のある医師の偏在対策、これを行わない限り、医師の不足は今後も続きますので、即効性のある対策がない限りは医師の養成数は減らすべきではないというふうに考えております。

 続きまして、専門医制度について少しお話ししたいと思います。

 この専門医制度、ことしからスタートしたということですが、ぜひ、地域医療をどのように確保していくかという観点からこちらも考えていただきたいと思います。

 専門医の育成ということで今スタートしておりますが、どうしても大学病院とか基幹病院、そういうような大規模病院において専門医を育成するということが中心になるわけですけれども、専門医を取った後、その後また更新ということもしなきゃいけません。このような場合に、地域医療においてさまざまな、必ず皆様が大規模な病院で働いているわけではないので、地域医療を確保するという意味では、専門医の更新においては、いろいろな方法を使ってそれを認めていくという方法にしないと、地域の末端にまで専門医が行き渡るということが不可能になってしまうのではないかというふうに考えているところであります。

 ぜひ、そのような観点で、専門医の認定並びにそれの更新について考えていただきたいと思っております。

 さらに、総合医のことについてちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 今回、総合診療専門医というものもスタートしたわけですが、現在、とにかく日本は超高齢化社会であります。超高齢化社会では、非常に多くの疾患を持つ高齢者、それから要介護、要支援の高齢者、こういう方がもう既にいっぱいいらっしゃいます。こういう方に医療を提供するときに、実は非常に多科に、多くの科にかかって多くのお薬をもらっている方が本当に多い。これは、私も臨床もやっておりますので、実際にリハビリテーションなんかで来ますと、もう本当に四科、五科のお薬が二十種類というような方がざらにいらっしゃるわけです。

 こういう実態を見たときに、それからあと救急の場でも、今、科別に専門医が育っている中で、例えばそういう方が夜、救急なんかを診ますと、自分の専門以外は診ない、診られないというようなことも起きてしまうわけです。そういうことを考えたときに、今後の高齢社会を考える場合に、ぜひ総合医というものに力を注いでいただきたいと思います。

 このような総合医を見る場合には、主治医といいますか、一人の患者さんを診るときに、この医師で大まかなことは大体診られるということで、どうしても必要な場合に専門の医師の方にお願いするというような関係をつくるのがよいのではないかと思います。

 例えば、ライフという言葉がありますけれども、これを患者さんの生命というふうに医学では考えるのが普通ですけれども、これを、生活とか人生、それがライフであるというふうに考えて対応する医師が多く必要だと思います。

 そして、総合診療専門医が今度制度化されて開始されたことは喜ばしいことではありますけれども、この人たちが非常に多く育って、これが日本じゅうに配置されてくるには非常に時間がかかります。そこで、今既にもう経験のある医師を、これは各科の医師ですが、そういう方を総合医として、研修を受けることによって総合医として活躍できる、そういうものを多く用意するということによってかなり総合医というのを多くつくれるのではないかというふうに考えているところであります。

 これに関しましては、全日本病院協会も今回開始しますし、日本病院会も開始しております。多くのところでそういう試みが行われると、日本は総合医というものがどんどんできていくのではないかなと思っております。

 それで、総合医と専門医との組合せ、言うなれば縦割りと横軸を刺した総合医というものの組合せによって、日本の医師不足若しくは医師偏在というものをある程度解消できるのではないかというふうに考えております。

 また、専門医についてはぜひ国全体で、各分野の必要数、それから地域での必要数、こういうことを把握するような方向に行けないかというふうに思っております。もしも専門医と総合医の適正な配置数、地域における適正な配置数ということが設定が可能であるならば、これは強力な医師偏在対策になるのではないかというふうに考えているところであります。

 また最後に、今回、地域医療対策協議会、地対協というものがつくられ、そこで、各都道府県で医師のあり方、そういう配置等々を考えるということになっております。

 ただ、様子を見ておりますと、都道府県によってかなりの差がある。特に、一県一医科大学というところでは、もうそこの医科大学の考え方で大分変わってきてしまいますので、ぜひ、やはり日本全体でこれが今どういう状態にあるか、指針を作成して、地域とともに全体を見る、中央としての対策協議会が必要ではないかというふうに考えているところであります。

 以上、全日本病院協会としての考えをまとめてお話しさせてもらいました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。安藤高夫君。

安藤(高)委員 どうも、おはようございます。自由民主党の安藤高夫でございます。

 本日は、五人の参考人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございました。

 私の方からは、五人の先生方に、最初の段階ですから、御質問をさせていただきたいと思っております。

 今法案の一番の趣旨は医師の偏在問題でございますけれども、しかし、国民医療を守るためには、医師の偏在と医師の需給問題、そしてまた医師の働き方改革、この三つが絡み合っていくことが重要だと思います。

 この法案が成立したときには、特にこの医師の需給問題、医師の働き方改革がどのようなふうになっていくのかということと、それを進めるためにはどういうふうにすればいいのかということを、先生方お一人ずつからお話をお聞きしたいと思います。

片峰参考人 先ほども申し上げたと思うんですが、今、医師の需給予測をする場合に最大のポイントは、医師の働き方がどうなっていくのかというポイントだと思います。そういった意味では、分科会では予想される幾つかの設定をいたしまして需給予測をしたということでございます。

 今後、本法案が通ってということになると思いますが、平成三十一年の三月の段階で、現在の働き方改革実行計画における医師の時間外労働規制等に関する最終結論が出るということを伺っております。その結論に従いましてひとつまた予測をやり直す、それに基づきましてまた対策を検討する、さらに、今回の改革の実施状況、あるいはその成果も横目で見ながら、PDCAサイクルを回して新たな偏在対策に対応していくということになろうかと思います。

三宅参考人 医師の働き方改革と医師の偏在に関しましては、やはり私、大学を中心に述べさせていただきたいんですけれども、医師の偏在を防ぐには、大学を中心に人を派遣する必要がございます、偏在地にですね。そうしますと、大学のスタッフが十分に確保されていないと、自分の大学もちゃんとできないという状態になりまして、大学のスタッフをそろえて、それでもちろん余裕があれば地域医療にどしどしと人を送りたいのでありますけれども、先ほども申しましたように、そこで大学の機能が落ちるようですと、これは本当に大変な問題でございまして、その辺を十分に、まず土台をしっかりそろえて偏在に対処したいというふうに考えております。

 働き方改革も、大学のことで働き方改革を述べますとまた随分長くなる、いろいろな要素がございますので一概には言えませんけれども、これからどうなるかということをよく見きわめて、大学サイドとしては地域に人材を送ったらいいんじゃないかというふうに考えております。

門田参考人 私は、この働き方改革を考えるときに考え方として大切だと思うのは、いわゆる一般企業が、労働者と経営者がいるという一対一の関係で利益をどう配分するかというふうな形に考えるというものと、我々のように、労働者というのか医療者と、それから経営サイド、それから最も大切な第三者としての患者さんという、この三角の中でどうやっていくかということは意味合いが違ってくる。方向性はわかるんですが、意味合いが違ってくる。

 当然ながら、いわゆる今の労使の関係を一般企業で考えるというような形で解決ができないものがあるというほかにも問題が出てくるということ。多くは、先ほども出ておりましたけれども、やはり、それに伴う費用がどうなっていくか、それを抜きに考えるというのは難しい。一方、医療は、全て国家統制の診療報酬という決められた形の中でやっている。

 ですから、私が申し上げたいのは、同じ土俵で考えるという制度をこのまま続けていくというのはなかなか解決するのは難しい、これはきれいに分けて検討する方がいいんじゃないのかなというふうに、今の段階でそれが通るのかどうかわかりませんが、私は強くそれを要求したいというふうに思っております。

 以上です。

本田参考人 安藤先生、この医療法に関してでよろしいんですよね、どう考えているか。(安藤(高)委員「はい」と呼ぶ)はい。

 まず一つは、私、一定の勤務経験、地域で経験した人じゃないと、簡単に言うと院長になれないというのを見てびっくりしました。今の若い人が院長になろうなんて思わないと思いますよ。大体、医師を集めるのが大変。赤字、何かあったらテレビの前で頭下げなくちゃいけないんですね。私も外科医だからこの際すぱっと言わせてもらいますけれども、院長にはなりたいと一切思いませんでした。

 あと、この間、東大の駒場の学生さんにお話ししたら、将来医師になろうかと思ったら、親に過労死するような職業にはなるなと言われたと。さすが東大ですけれども、自分は裁判官になるという人がいました。ですので、この文言を見たとき、いかに実態がわかっていないんだなということがわかって二度びっくりでした。

 あともう一つ、地域にいろいろな権限を与えてくださる、これはありがたい。ただ、地域に権限を与えても、必要な医師がいなければできないでしょう。例えば入院したときに、パズルをするときに、半分ぐらいないパズルを一生懸命自分でやっていいよと言って、ピースがないのをできますか、皆さん。リソースがないんだから、だから、お金と医師をちゃんとふやさないとだめというのがこれを見た正直な印象でございます。

 済みません、外科医なものですからすぱっと言わせていただきました。

猪口参考人 では、私の方からは、ちょっと働き方のことについてお話ししたいと思います。

 現在、この議論は進んでいるわけですけれども、医師だけが特別だと言い切るつもりはないですけれども、ほかとはやはりかなり違う職業であることは間違いない。

 特に、応招義務。例えば自分が受持ちになっている患者さんが本当に状態が悪くなってお亡くなりになるときに、果たして、私はちょっときょうは五時で失礼するよ、後はほかの医師が診るからというのは、なかなかその家族の心情からして多分許されない話であろうというふうに思いますし、例えば手術をした人が夜中ぐあいが悪くなったら、それはもう診に行かなきゃいけないんだろうというようなことがいろいろあります。

 特に、救急の現場とか、あと産科の現場とか、やはり二十四時間対応がどうしても必要になりますし、私どもの全日病の会員からも言われたのは、北海道の方たちにすごく言われました、今こういう流れで、北海道には本当に医師が、札幌以外は少ないんだ、そういうところにある病院が本当に応招義務に応えずにいたとすると、少ない医師で回らなくなったら、もう本当にそこの医療は崩壊しちゃうよ、本当にそれでいいんだろうかというお話をいただいております。

 ですから、そういうことを考えると、よほど慎重に応招義務の件、それからあと自己研さんにも時間がかかります。これは、ほかの企業でもそういうことはあると思うんですが、特に生命を預かる医師として十分な自己研さんを行わなければいけないと思いますので、そういうことを十分に考えて、これからも議論を進める必要があるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

安藤(高)委員 先生方、どうもありがとうございました。

 地域医療を守っていくためには、もちろん医師の健康を考えていくことが非常に重要ですけれども、この医師の働き方改革というのは非常に大きなウエートを置いているのではないかなと思っています。我々厚生労働委員会でもしっかり議論をしていきたいなと思っております。

 二番目の質問ですけれども、これは本田先生と猪口先生にお願いしたいと思っています。

 日本の場合は、先ほどの話じゃありませんけれども、医師の長時間労働が行われている。その中でも、従来だったら、医師じゃなくていい仕事がいっぱいあると思うのです。また、すごく今書類類が多いということです。

 では、具体的に今出ているタスクシフティングを行うため、それでまた、具体的にそれをスムーズにいかせるためにはどんな方法があるかということを、先ほどPAのお話もありましたけれども、ちょっと突っ込んでお話を聞きたいなと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

本田参考人 皆さん、それでは、先ほど私がお渡しした資料の十四枚目なんですけれども、「勤務医の負担軽減策」というところでちょっとごらんいただければ、「スタンフォード大学移植外科部門における分業体制」とありますけれども、ここに、病棟における医師補助職、特定看護師の担う職務というのがございます。例えば、回診、手術助手、スタッフ、患者、家族への教育、ガイドライン実施の促進活動、研究活動ということで、日本でしたら医師自身又は若手の医師が全部やっていることを向こうではフィジシャンアシスタントがやってくれるわけですね。

 前にも聞いたんですけれども、ある私立大学、都内の方が私の勤めていた病院に勤めるかどうかという話を聞くと、まさに都内の若手の又は中堅ぐらいの医師はアメリカのフィジシャンアシスタントの仕事をしているんですよ。しかも手術は余りできない。これでは外科医になり手がいないですね。

 ですから、やはり医師不足の地域こそ、厳しい労働環境の科こそ、こういうフィジシャンアシスタントを導入して、長くそこで働いていると若手の医師よりもなれます、だって、同じところで働いているんですから。こういう人を一刻も早く導入していただきたい。ぜひそれをお願いしたいと思います。

 以上です。

猪口参考人 御質問のタスクシフティングのことですが、考えられることは幾つかあると思います。現在でも、医師事務作業補助者という方がおります。大分なれてくると、いろいろな書類とかいろいろなことを任せられるようになりますので、ここら辺を診療報酬上でも強化していくということは必要かと思います。

 あとは、よく言われている、今お話出ましたナースプラクティショナー若しくはフィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナーに関しては、特定看護、教育を済んだ看護師さんがだんだんふえてまいりますと、そういうような道ができてくるのかなという気がしております。

 ただ、PAに関しましては全く新しい資格で、これをどうつくるかということを考えなきゃいけないんですが、一つ、こういうことはあり得るかなと思っております。今、救急救命士という方が、大学が多くできて、資格を持っている方がいらっしゃいますけれども、これは消防の救急の場面でしか今その資格は使えないことになっています。これを一定の要件のもとにPAのような仕事をしていただくというようなことは可能になってくるのではないか。

 そういうさまざまな方法を使ってこのタスクシフティングを行っていかなければいけないと思いますし、それからあともう一つは、書類とかがやはりどんどんどんどんふえております。これを、例えば診療報酬上似たような書類を一本にして、少し簡素化していくということも実は非常に重要なのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 今お話を……(本田参考人「関連して」と呼ぶ)はい、じゃ、よろしいですか、本田先生。

本田参考人 今、PAに救急救命士さんがいいという話があって、私もそれは賛成なんですが、もう一つ、すごい候補があるんです。臨床工学技士さんです。

 今実際、臨床工学技士さんという方は、一九八六年ですか、法制化されて現場で活躍しているんですけれども、御存じのように、看護師さんと違って、病院に何人いなくちゃいけないというのが決まっていないみたいなんですね。ですから、彼らは院内で働いていて更に活躍したいという希望を持っているということを、この間、私はある臨床工学技士の学会で聞いてまいりました。ですので、そういう職種さえつくっていただければ、手を挙げてくれる人はたくさんいると思います。

 あと、ナースプラクティショナーもいいんですけれども、うまくいっているところはいいんですけれども、御存じのように看護師さんは不足しておりますから、現場の看護師さんに何回もそれはやめてということをあちこちで聞いていますので、爆発的にふやすのであればフィジシャンアシスタントがいいということをちょっと追加させていただきます。

 ありがとうございます。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 今お話を聞いていても、各職種の需給問題、それからまた業務分掌の拡大も含めて、さまざまな規制緩和というものをきちっと整備していく、そしてそれに対する予算もつけていくということが重要ではないかと思います。そこら辺もきっちりまた我々で頑張っていきたいなと思っております。

 時間もないので、最後ですけれども、猪口先生の方に、先ほど総合医のお話がございました。本当に、特に医師の少ないエリアでは一人の医師がさまざまな診療を行うということが必要になってくると思うんですけれども、先生の全日本病院協会で今やろうとされている総合医の研修の内容について、ちょっと詳しくお話をしていただければと思います。よろしくお願いします。

猪口参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 全日病では、ちょうど実はあすが開始日になるんですが、ことしから総合医研修というのを始めました。

 総合医といっても、どこかに集めて一年間教育するというのではなくて、それぞれの病院に勤務しながら、土曜、日曜を使っていろいろなことを学んでいただきたいということで、一つは、いろいろな科のエッセンスをケーススタディーを中心にやっていくということはもちろんあるんですけれども、そのほかに、これにつきましてはプライマリ・ケア連合学会若しくは筑波大学の方に実はお願いをしておりまして、筑波大学でつくっているノンテクニカルスキル、いわゆるテクニックだけを学ぶのではなくて、もっと医師として、若しくは、医師はやはり職場ではそれぞれの方を引っ張っていく立場にもありますので、そういうような、ある程度の中間管理職若しくはその上としてどういうようなスキルを身につけるか、そういうところも実は学んでいただくというようなコースになっております。

 時間がある方が一生懸命やると一年間で終えることはできますけれども、なかなか普通は勤めながらだと難しいので、二年ないしは三年かかってでもコースを修了していただくというようなことを考えております。

 また、そういう方が徐々にふえることによって、それぞれの病院でもいろいろと受け持つ範疇、あとそれから、病院は今、地域では、例えば介護職とかケアマネジャーとか、ほかの施設との連携というのが非常に重要になります。ともすると、医師は余りそういう連携に一生懸命ではない方も多いんですけれども、そういうことも学んでいただいて、多職種の地域における連携、こういうことも少し学んでいただくということも考えております。

 そういう多面的に総合医を育てたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 よく聞く話では、私も経験していますけれども、医師に問題があってチーム医療が保てなくなる、あるいは、特に医療と介護の連携、ケアマネジャーさんとの関係が壊れてしまうということをよく聞きますし、あることですから、医師が組織のマネジメントの能力を持つということは、これは非常に地域の医療と介護の連携にもいいのではないかな、そう思っております。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 では、これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

高鳥委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は、参考人の諸先生方にいろいろお話をお伺いしたいと思います。

 まず、三宅参考人にお話を聞かせていただきたいんです。

 医師の偏在、診療科の偏在が極めて大きな問題になっています。その一因として、先ほど参考人もおっしゃいましたが、日本の大学医学部の危機的な状況があるわけであります。ピンチではありますが、これをチャンスに変えていく、そういった工夫が必要だと考えます。

 最も大きな問題として私が考えておりますのは、さっき本田参考人から院長のなり手がいないという話がありましたが、同様に、教授になることや、大学の研究者、そして大学の勤務医であることに魅力がなくなってきていると考えられますけれども、大学に長くいらっしゃった三宅参考人の御意見を、なぜその魅力がなくなってしまったのか、どうすればいいのか、教えていただければと思います。

三宅参考人 先ほどのスピーチでも申しましたように、一九九〇年代というのはすごい時代でございまして、医療も医学も本当に日本は輝いておりました。

 二〇〇〇年にヒラリー・クリントンが、どうして日本は、こんな小さな国で、島国で、資源もないのに、こんなすごい医療、医学ができるのかということを調べに来たことがございまして、彼女がたしか国務大臣のときだったと思いますけれども、二、三日おりまして、さすが彼女は頭がよくて、こういう言葉を残して帰りました。彼女が最後に言った言葉は、ザ・ジャパニーズ・メディカル・ケア・システム・イズ・メーンテーンド、維持されている、バイ・ザ・セイントライク、聖職者のような、セルフサクリファイス・オブ・メディカル・ワーカーズ、要するに、聖職者のような自己犠牲のメディカルワーカーによって支えられていて、これはとてもアメリカではできないということで帰られたんですね。まさによく見ていたと思うんですね。

 それで結局、大学人というのは、自分が充実してやれることがありますと、そんな働き方改革なんか関係なく働きまくるんですね。それが、やはり僕は一九九〇年代の日本であったと思うんですね。それにはやはりいろいろ、やれば満足できるということを大学でそろえないといかぬわけです。

 今、ちょっと僕が危機感を感じるのは、そういうことが順番に順番になくなってきて、それは大事なことではあるけれども、余りおもしろくないことがいっぱい出てきますと、これは、大学の給料は高いわけでは全然ありませんし、危険なことはいっぱいあります、訴訟もあります。そうすると、大学に残っていなくて、外の病院、例えば開業したり外の病院の方が日本の場合は給与もいいし、いろいろいいわけです。

 また、今、学会で、結構開業しておる人でも学会活動が十分にできている人がいっぱい出てきました。そうしますと、ますます大学の魅力が低下してくるわけで、それを何としても立て直さないといけないなというふうに思っておるわけでありますけれども、言うのは簡単なんですけれども、なかなか難しいんです。ただ、お国の方々も、結局、大学というものが崩れるともう全てがだめになって、大学が崩れたのを直すというのはそう簡単じゃないんです、これは一遍崩れますと。

 例えば、研究にしましても、当時は、眼科ですと世界で二位だ、それがもう今は、中国にも負ける、インドにも負けるというような状態になってきておるわけですね。そんな民族じゃないというか、一九九〇年代は要するに日本人が、お金とかそういうことじゃなくて、満足で頑張った時代だと思うんですね。それがまた頑張れる環境があったということだと思いますね。

 ですから、これからも、何としてもそれを模索して、地域医療も物すごく大事であることはわかりますので、そういうことをやりながらも、大学で満足感が得られる環境をつくりたいということで、それにはやはり、いろいろ政府からの補助、例えば運営交付金にしてもそうですけれども、私立医科大学は経常費補助金なんか非常に下げられていますし、今、国立に比べますと私立はもう本当にわずかです。本当に微々たるもので、その微々たるものがまた下げられている。本当に、それでどうやって満足が得られるかということなんですね、今の大学は。本当に恐るべきことですよ、これは。留学もほとんど、今本当に減りました。

 まあ、そういうことですね。

吉田委員 ありがとうございます。

 今、少しもうお答えをいただいたんですが、医師が減少している診療科、特に、外科、産婦人科、小児科、救急の医師をふやすためにどのような政策をとるべきか。こういった不足する診療科の医師、特にアカデミアに所属する医師や勤務医師の処遇を改善するために政府が何をすべきかということを、では、本田参考人、門田参考人、そして三宅参考人に一言ずつお伺いしたいと思います。お願いします。

本田参考人 二言話そうと思ったんですけれども、一言にいたします。

 まず、やはりマンパワーをきちんとふやすということ。先ほど申しましたように、医師がふえても、ふえている科とふえていない科があるというのは、絶対数が少ないからなのですよ。

 あとはもう一つ、やはり少なくて大変なところにはそれなりの処遇をする。ただし、日本で海外のように、例えば外科にすごく高給を与えるというのは難しいですね。だったら、そういう科にフィジシャンアシスタントをぱっとつけてあげる、医療秘書をつけてあげる。その分のお金の補填をちゃんと国が面倒を見る。アメリカでもそういうところからフィジシャンアシスタントが導入されております。ぜひそれを学んでいただきたいと思います。

門田参考人 私は、広い見方をする必要があろうかというふうに思います。

 今話題になっています産婦人科にしろ外科にしろ、大変なお仕事だと。ほかと比べて厳しい状態の中で働いている。

 そうすると、今そういうところへ行く人が少ないのが何かの制度の問題なのかということも一つですが、もう一つ考えておく必要があると思うのは、やはり医師を目指す人たちがどういう目的で医師を目指し、何をしたいかというあたりが問題ないのか、前と変わっていないのかというあたりを考えていくと、入試制度の問題もあったりしますけれども、私、教授のころ、若い連中に話を聞いたことがあります。多くの若い人たちに、大阪大学のときですが、医学部に行くようになった理由は何ですかということを、本当に正直なところを聞かせてほしいと。世の中には、成績がいいから行けと言われた、進路の先生にというふうな話を聞くことがあるので、あえてそういう質問をしたときに、やはり手を挙げそうになるんですね、半分ぐらいの人たちが。驚いたことがあります。

 そうすると、今度、最終的に自分の専門職をどう選ぶかというふうになったときに、厳しいところよりもほかを選ぶだろうと想像できるなという感じがしました。

 ですから、具体的な対策もあると思うんですけれども、教育そのもの、医学教育あるいは受験制度、あるいはもっと小児のころからの、本当に幼児教育から我が国は見直す必要があるのかもしれないというふうに思っております。

 以上です。

三宅参考人 ただいま、例えば精神科とか眼科とか、医師数がふえておるというふうに一般的に言われておるんですけれども、確かに眼科は、私、眼科でございますけれども、最近、年間百五十人ぐらい医師数がふえています。

 しかし、皆さん、年間、視覚障害者の数がどれぐらいふえるか知っていますか。二万人ふえているんです、年間。というのは、高齢化社会になればなるほど視覚障害者の数はふえ続けるんですね。

 ですから、百五十人か百六十人ふえて、患者さんが二万人ふえて、それをふえていると言われるのもこれはおかしいわけで、医師がふえるということを論ずる場合にそういった背景もよく調べていただきたいなと思っております。

吉田委員 田村先生も眼科はすごく診療にお詳しいですけれども、今、眼科のお話もありました。

 では、先ほど少しお話に出ましたが、全ての医療機関の開設者の要件として、過疎地域での診療を義務づけることを検討すべきという意見があったと先ほど参考人の先生の意見陳述の中でございましたが、ここはどのようにお考えになるかということを猪口参考人にお伺いしたいと思います。

猪口参考人 過疎地域での、医師少数地域ですか、そこでの経験を持って公立医療機関の院長にというお話ではなかったかなと思いますが……(吉田委員「なので、私が言ったのは別の意味です」と呼ぶ)はい。

 それで、確かに、恐らく、大学にいて、そのまま開業する、若しくは民間の医療機関に勤めるということになると、少数地域では全く医師をやった経験がないという医師が多分大多数だと思います。ですから、そういう経験はした方が多分本人のためにもいいと思いますし、視野も広がると思いますので、悪いことではないと思います。

 ただ、それを本当にルーチンにするかどうか、それから、その経験をした後、いつごろ院長にまたなるのかというようなことを考えると、なかなか制度としてスムースに動くにはちょっと時間が必要かなというふうには思いますが、その経験自体が悪いことだとは思いません。

吉田委員 では、同じ質問を門田参考人にもさせていただきたいと思います。

門田参考人 余り経験がなくて、考え方だけ申し上げますと、私は、そういうふうな資格づくりで物事を規定する形式論ということは、決して物事をうまく展開しないだろうというふうに思います。

 そういう意味において、そこに行った経験があればというふうな話で、経験さえすればいいんだな、こういうことになっていくわけですよね。

 ですから、私は、もっともっと大事なところの人の評価ということが出てくるべきであって、何とかの条件ということで一つのところに入れて、それさえ満足できればできるというのは、問題の解決にはつながらないだろうというふうに思います。

吉田委員 そうすると、門田参考人の今のお話だと、やはり医療法自体も、今回そういった、今、門田参考人がちょっと批判的におっしゃった内容が多々含まれていますよね。そうすると、参考人としては、医療法の内容自体もやはり型にはめていっている部分がかなり多いですよね、今回のもの。やはり否定的なのかなということを思いながら今聞いておりました。

 それでは、次の質問に移っていきたいと思います。

 専門医制度なんですが、この専門医制度というものの責任の所在というのが非常に今回の混乱で不明確になりましたですよね。

 本当に責任を持っているのが、今回、五都府県の各シーリングなんかを見ても、厚生労働省が責任を持っているのか、それとも日本専門医機構が責任を持っているのか、もう不明確になってしまっています。これは非常に私は問題だと考えています。

 参考人の諸先生に、ちょっと時間の問題もあるんですけれども、一言ずつ簡潔に答えていただければと思うんですが、一つ目の問いは、まず、この専門医制度の全責任を負うのは専門医機構であるべきか、それとも厚生労働省であるべきか。そしてもう一つは、日本専門医機構というのは、専門医の質の維持や向上を図ることを第一義とすべきなのか、それとも専門医の全国的な配置を第一義として考えてやるべきなのか。

 この二点に関して、先生方から一言ずつお願いできますか。

片峰参考人 専門医機構のあり方、一つあると思うんですけれども、基本的にはやはり、これまでいわゆるプロフェッショナルオートノミーという言葉がございまして、お医者さんのマターは医者が基本的に決めるのがいいという考え方がございましたね。ここをどう考えるかというのが一つだと思います。

 やはり、今回の我々の分科会の意見の中では、公益を考えた場合に、ある一つの制約の中で、プロフェッショナルオートノミーあるいは若手のお医者さんの意思、職業選択の自由等というのは十分図れるのではないか、しかもその二つを両立すべきではないかということですよね。

 そういった意味では、専門医機構か厚生労働省か、これはもうなかなか答えづらいんですけれども、基本的には、大枠はやはり厚生労働省なり国がきちっとつくった上で、その中でプロフェッショナルオートノミーを機能させるというのが今のところの妥当な考え方ではないかなというふうに思っています。

 それから、配置の問題か、プロフェッショナルとしての資質の議論の問題か、ここも両論、どっちかという話ではないんだろうと思うんです。両方を両立させる意味がある。そういった意味では、先ほど申しました、地域で専門研修をやってもそれだけの実が上がるようなやはり対策を講じていくというのがどうしても必要なんだろうというふうに思います。

三宅参考人 専門医機構、どちらが責任をとるかという話なんですけれども、責任ということは、私は権限が伴うと思うんですね。権限を持つ方が責任をとるし、責任をとる人は権限を持たなきゃいかぬ。ですから、誰が権限をとるかということになると、私の個人的な考えとしては専門医機構がとるべきで、厚労省というのは調節役とでもいいますか、そういう立場がいいんじゃないかというふうに思っております。

門田参考人 非常にシンプルです。

 厚労省が責任というのは、制度としての責任はありますが、個々の問題については機構が当然のことだと思います。また、そういう形で機構を育てていかなければ、永久に機構が育たない。私は、プロフェッショナルオートノミーということを本格的に鍛えなければだめだというふうに思います。

 それから、医療の質を高めるというのは、これは言うまでもないことだというふうに思います。ですから、それは、機構あるいは専門医ということで考えるのではなくて、ほかのところで検討すべきこととこれを混同したらだめだというふうに思います。

本田参考人 私も基本的には専門医機構がとるべきだと思うのと同時に、専門医機構又は各学会にぜひ期待したいことがあるんですよ。

 各地域の専門医の実働医師数を明らかにして、公表してほしい。これがないといつまでも偏在の是正にもならないんですね。この地域では救急医がいない、法医学がいない、病理がいないということをオープンにすれば、もしかすると若手の医師が、将来あそこに行けば働きやすいということになるかもしれません。そういう情報開示を、厚労省のデータと協力して、ぜひ各専門医学会が各地域の医療の質を上げてもらうことを期待したいなと思っております。

猪口参考人 先ほどの最初の意見でもちょっと私の意見を言わせていただきましたけれども、専門医に関しては、その質を上げるということは、やはり各学会が責任を持って質を上げていくのであろうと思っています。専門医機構は、それらをまとめて、レベルを同一化していくというところに責任があるんだというふうに思っております。

 ただし、先ほども言いましたけれども、全国的に専門医がどれぐらいの数が必要であり、それから地域にどれぐらい必要であるかというような統計、そういうことはやはり国の方でバランスをとる必要があって、その両者のバランスの上でこれから進めていくべきではないかというふうに思っております。

吉田委員 専門医の質の担保と専門医の適正配置というのは、参考人の先生方のお話はごもっともなんですけれども、時として、本田先生はおわかりですが、相反する状況になってしまう、相反関係になることはやはりあるということは事実ですので、そういったところに関して、多分本田参考人が一番いいと思うんですが、本田参考人、やはりそういうことは往々にしてありますよね、医師を適正配置しようとすると、そのクオリティーの維持が難しくなること。

 現場でずっと外科医をされてきた御経験から、そこの辺はどうするといいと思われますか。

本田参考人 先ほど、アメリカのクリントン大統領夫人の話が出て、私も興味深くその話は聞いているんですけれども、クリントン大統領は日本の医師の過重な労働環境を聞いて、本当、聖職者意識さながらで働いている、すばらしいと言った後に、クレージーだと言ったというんですね。

 やはり、医療関係者がもっとこういうことを関心を持って声を上げていかなければ。医療制度が悪ければ患者さんを助けられないわけでしょう。専門医の配置もそうですよね。だから、本当にやはり医療関係者がもっといい意味で社会的なことを考えてもらいたい、それは私、本当に切に訴えたいと思います、貴重な機会ですので。

 ありがとうございます。

吉田委員 ありがとうございます。

 引き続き、女性医師の問題に関して御意見をいただきたいと思います。

 女性医師、特に不足診療科の女性医師に関して、やはり出産、育児等のライフイベントがあるわけで、特段の配慮をしていかないと。

 三宅参考人はよく御存じだと思うんですけれども、入学者の半分が女性になって、半分以上という大学もある中で、どういったことを政府に対して、女性医師を育成していく立場の大学病院として、政府に求めるものとしては何があるのかということを三宅参考人にお聞かせいただきたいと思います。

三宅参考人 女性医師の問題、特にうちの大学は女性医師の数が東京女子医大に次いで二位、ですから、普通ですと一位になるわけですけれども、それぐらい女性がおりまして、真剣に考えておるわけであります。

 米国の女性医師というのは物すごく数が多いんですよ。五割以上女性医師なんです、米国は。

 それで、さぞかし先生方は、米国ですから、女性に対して待遇がよくて、いろいろなことをやっているだろうと。確かに、保育園とか保育所とかいろいろなことは整備されていますけれども、ずっと調べてみますと、要するに、プロモーションといいますか、上の方に行っている女性というのは物すごく少ないんですね。それともう一つの特徴は、やめない、女性が医師を。ずっと続けているんです。

 僕は、政府に頼むといっても、これを頼むといったら、結局、大学大学ができるだけ女性に対して細かい配慮をするということが大事で、政府が動くということよりも、やはり、日本の女性の医師が、これだけ高い税金を払って医師のあれを続けておるという。まず自分が働かなきゃ、皆さん一生懸命やっておられることはわかっているんですけれども、そういう気持ちを持って、それでどのモチベーションを持つか。

 ともかく、ガラスの扉を突き破るようなモチベーションを持つんじゃなくて、医師というのはいろいろなことが重要なわけで、それを自分がどうやったら、自分がこれだけ高い税金ももらって、それから大学の授業料も高くて、そういうところで医者になった、医者一人をつくるのに一億円かかっていますから、そういうことを頭に入れて、生涯を通して何らかの格好で働いていただくというのが、女性問題に関しては一番解決になるんじゃないかと。

 もちろん、大学としては、いろいろなケアといいますか補助、その他サポートをすることは当然でございますけれども、女性の考え方ということが、僕は、まだちょっと日本とアメリカと違うような気がしてしようがないんですね。

吉田委員 時間となりましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 国民民主党の岡本でございます。

 きょうは、それぞれの先生方、大変お忙しい中、急にお願いをしたにもかかわらず、当委員会にお越しをいただいて意見を述べていただき、大変ありがとうございます。

 本当に、それぞれの先生方、それぞれの分野でさまざまな知見をお持ちでありますが、論点が多岐にわたる今回の法律ですけれども、私が一つ大きな関心を持っているのが、専門医制度というのはどうあるべきなのかということであります。

 非常に難しいなと思ったのは、きょう門田参考人からお配りをいただいた資料の我が国の専門医にはどの水準が求められているのか、こういう話だと思います。

 きのうも、きのうでしたか、水曜日ですね、私、ここで政府に質問したわけですけれども、学会の会員数と専門医の数はどうなのかと。八割とかいう学会があるわけですね、会員の数の八割が専門医だという学会もある。一方、じゃ、本当に専門医として更新制度や、また先ほどもちょっと話がありました、どういう評価をしていくのか、ここについてまだ十分ではないのではないか、こんな話もしたわけであります。

 そこで、まずお伺いをしたいのは、きょうはそれぞれの先生方、分野はいろいろですし、片峰先生はウイルス学だということでありますけれども、長崎大学の学長もされておられましたし、いろいろな地域の実情もごらんだと思いますけれども、どういう専門医が日本の医療には求められているか、若しくは、どういう専門医が必要とされているのか、片峰参考人から順番に全ての参考人の方々にお答えをいただければと。

 専門医は患者さんから見たらどう見えるのか、もちろん医師から見てどうなのか、そういうのがありますけれども、制度としてどういうものがふさわしいというふうにお考えなのか、お一人ずつお答えをいただきたいと思います。

片峰参考人 長崎県の場合もそうなんですけれども、今、人口減少の局面にございまして、特に離島、僻地というところが非常に極端な人口減少が進んでございます。その中で、都市部あるいはそういった地方、医療のあり方というのは当然違ってくるんだろうと思うんですね。

 やはり、いわゆる専門的な高度の医療を提供する施設というのは、ある程度、やはり県内の中で集約していく必要があるんだろうと思います。そういった中では、そういった病院が非常にレベルの高い、専門性を持ったお医者さんたちがそこに集積してくるということじゃないかなと思います。しかしながら、それ以外の部分に関しましては、どの程度の専門性が要求されるかというのはまた違う議論なんだろうと思います、先ほどからも議論があります総合医の問題、家庭医の問題も含めまして。

 そういった意味では、専門医機構の中で、先ほど門田先生も言われましたように、専門医とは何なのか、そのレベル感というのはどこに置くのかというあたりの議論が、きちっとやはりやられた上で、地域として医師の配置、専門医も含めまして、そういう計画をきちっと立てて、それに向けて実施を行っていくということが重要じゃないかなというふうに考えています。

三宅参考人 専門医の定義、私はちょっと変わったことを言うかもしれませんが、最近、私の大学で学是をつくれということで、私、学是に具眼考究という言葉をつくったんです。具眼というのは、伊藤若冲という画家がいますね、彼が言い始めた言葉で、物事の真髄を正しく見るということなんですね。

 結局、今ほど超高齢化社会で患者さんの価値観が多様なときはないと思うんですね。患者さんによって全て、自分はこうしていただきたいということがかなり異なっている。長生きがしたい人もいるし、痛みをとっていただきたい人もいる。そこを見て、患者さんが最も満足する医療を突き詰めるというのが具眼なんですね。

 ですから、科によってそれは違いますけれども、そういう専門性、そういう目を持つ、専門性を持つというのが私の専門医でございます。

門田参考人 私、先ほどの話の途中で、スペシャリストとプロフェッショナルという単語でお話ししましたけれども、世の中全体が混乱しているというふうに思います。

 専門医、我々がここで言っている、あるいは医療制度の中に定着すべき専門医というのはプロフェッショナルというふうに考えています。プロフェッショナル、すなわち、ある学会が、研究会が、あるいは特殊な技術がというものでは決してなくて、我が国の中で受診行動を起こしていくときにどういうふうな形で患者さんが専門科に近づいていけるのかということで、患者さんが、あるいはそれを担当する医療者たちがわかるような形のものであるというふうに思います。

 そういった意味で、我々が検討したころは、標準的な医療を確実にできるということがまず最初だというふうな合意事項で話を進めてきました。ところが、それで学会単位になってきますと、スペシャリスト的な発想が多く出てくるというので、そこのところを使い分けをきちっとしていくことによって物事は整理できるのではないのかなというふうに思います。

本田参考人 私は、自分の経験から考えますと、やはり専門医ということを考える上でまず基本になるのは、かかりつけ医だと思います。

 キューバに三回行ったんですけれども、キューバは、千人ぐらいのところにドクターと看護師さんがいて、その家族ごとのカルテを全部把握しているんですね。だから、生まれたときからずっとワクチン接種まで含めて把握しています。そういう上に更に専門の場合はというところで、病院をちゃんと選択するようにしています。

 ところが、日本ですと、私が例えば胃がんの手術をした方が風邪でも水虫でも私のところに来るというようなことが実際珍しくないんですね。皆さんも、例えば床屋さんに行くときに、やはりなれたところに行った方が何か安心感がないですか。それが、そのなれたところがなくて、急にぼんと総合病院に行くものだから、両方困っているわけですね。

 だから、ぜひお願いしたいのは、これからの人口構成を含めれば、この地域には救急医が何人要る、胃がんの手術をする人が何人必要だ、わかるはずなんですよ。そうすれば、本当に何人足りないということがわかるわけで、それを一切なくして専門医だけどうすると言ってもしようがないので、やはり、どれぐらい必要とされているのか、その基本にはかかりつけ医があるということをぜひ検討いただきたいと思います。

 以上です。

猪口参考人 専門医の問題ですが、今、国民から見て、国民も、やはり専門医にどうしても診てほしいという声が非常に高くなっているわけです。ですから、専門医というのは、そこの領域のある一定のレベルを常に、これは医学がどんどん進歩していくわけですから、それをちゃんとわきまえて治療できる、それが専門医の一応基準ではないかなと思います。それを、専門医機構を通じて各学会の専門医のレベルを統一化していくというようなことでよろしいかなと。

 ただ、実際には、特に外科系ですと、更にその上の専門がまたいるわけですね。特殊な手術で、やはりここにお願いしないとできないというようなことが実際、現実的にありますので、それはまた別の意味でも、更に上の専門医がまだ存在するんだというような感じで私は見ております。

 以上です。

岡本(充)委員 それぞれの参考人の方からお話を伺いましたが、総じて言うと、私自身も感じているんですけれども、患者さん側から見たときの専門医の見え方と、そして医師として、また専門医としてお仕事をされている側から見たときの専門医の問題、そしてまた実際に地域医療をやっている先生方の目線とあるんだと思います。そこをどう統一していくかということになるわけです。

 一方で、もう一つ私、専門医の制度で大変課題だと思っているのは、最初この議論、ちょうど門田参考人が取り上げたころ、平成二十三年のころでありますけれども、これを取り上げたころの課題は、非常に多くの専門医制度が乱立をしていてよくわからないという状況。もっと言えば、診療科がどんどん細分化していけば、これは実は医師不足に拍車をかけるのではないかと私は個人的に当時思っておりまして、門田参考人がおっしゃるように、領域をまたがる形で専門医制度若しくは診療科のくくりをつくっていくということをしないと、これはもうどこまで行っても医師不足になるのではないかと私は感じたわけであります。

 そこでちょっとお伺いしたいんですけれども、門田参考人に改めてこの専門医制度、先生お示しをいただいたこの絵ですけれども、先ほど同僚委員と話しておりましたけれども、子供の描いた絵と言ったら失礼ですけれども、こういう絵を描く子供もいるなと思うぐらいこれは、よくわからないぐらい、もう本当に小さな子供さんが線を引いて遊んだのかと思うようなぐらい、本当にややこしいんです。この状況がやはり今の専門医制度の現状をあらわしていると思いますが、この問題点と解決するべき道について、お話をいただければと思います。お願いします。

門田参考人 ありがとうございます。

 これは、こういうことが起きたのは、私が考えるのは、先ほども申しましたように、学会中心に専門医というものを描いていくとこうなってくる。しかし、一患者さんがどういうふうな病院の受療行動を起こしていくかというふうな話になるものとは全く違うところにある。だから、スペシャリストとそれからプロフェッショナルとの違いだと。

 だから、我々が今つくらなきゃならないのはこういうものじゃなくて、もっともっと整理されたものをつくっていく、それが本当の意味で今我々が求める、国民が求める専門医制度というものだというふうに思います。これは学会が、それぞれの領域の人たちが更にその道のプロを高めていくという意味においてやられるということは否定することも全く必要ないです。

 ですけれども、そういうものを制度の中に入れるかどうかというのは話は別だと思います。私は、一階部分、二階部分、今は三階部分まであるかもしれないなというふうな話がありますけれども、それは、これからいけば、どんどんどんどん専門性の細分化というのが進んでいっているわけですから、難しくなればなるだけそこの専門科というのは非常に狭い領域になります。だけれども、それは制度としてのものでは決してないという認識を持つべきだというふうに思います。

岡本(充)委員 ありがとうございます。

 そこで、やはり日本専門医機構がどういう役割を果たすかということが次の論点になるわけでありますけれども、今回の法案では、厚生労働省が専門医機構に対して、いわゆる箸の上げ下げ、多岐にわたって指示できるというたてつけにはしませんでした。

 しかし、今お話しになられましたように、専門医機構が、これから先こうした学会がそれぞれ、先ほどの先生のお言葉をかりれば、スペシャリストを評価していくという考え方と、プロフェッショナルとしてどうあるべきなのかということを分けて考えていく中で、この機構がきちっと職責を果たしていくということが求められると思いますが、門田先生から見たこの機構の役割として期待するべきこと、それから、例えば、今より更にこうあるべきだというようなことがあれば、お話をいただければと思います。

門田参考人 先ほどから申し上げているような、繰り返しになりますけれども、スペシャリストはもう研究会、学会に任せたらいいので、制度ではありません、私はそういうふうに割り切りたいと思います。ですから、プロフェッショナルとして、先ほども言いましたけれども、本当に一階部分、二階部分、三階部分と言うているものが、本当にどこまで制度として必要なのかということのディスカッションは必要だと思います。

 それからまた、それをどういうふうに、消化器の領域でも、私のこの図を見ていただければわかりますように、いろいろなものが重なっているわけです。一人の患者さんが、ある病気といっても、ここの中でいうといろいろなところがかかってきておりますから、こういうことをやったのでは、国民のための、患者さんのための制度とは決して言えない、プロフェッショナルではないと言うべきだ。ですから、そういった意味では、そういう制度構築を本格的にやるべきだというふうに思いますね。

 ですから、そういった役員構成を考え、そして、もっともっと、今回一年おくれることによってばたばたっといろいろなことが決まったみたいですけれども、やはり一気にいいものというか完璧なものをつくるというのは易しくありませんので、やはり時間がかかっても徐々に変わっていくということを許してやるべきではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 そういう意味では、確かにこれから始まるわけでありますけれども、一つ、やはり気になるのは、先生のきょうのお話でスペシャリストの話が出ました。

 スペシャリストを学会がきわめていくということになると、誰がスペシャリストかというのをやはり患者さんは気にすると思うんですね。それで、要するに、プロフェッショナルとしてこういう専門医があるのとは別に、学会がもし別にスペシャリストということで、この人たちはスペシャリストですよということを公表するような仕組みをつくると、患者さんの目線はどちらかというとスペシャリストに行ってしまう可能性はないんでしょうか。

 そこの点について少し懸念をするんですが、そうならないような仕掛けを、アイデアをいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

門田参考人 アイデアがあるというわけではございませんけれども、先ほどから出ていますように、やはり、プロフェッショナルという意味において、我々が、どういう形であるべきだ、社会の組織として、システムとしてどうあるべきだということを制度化していくということを言うている。そういう意味においては、上の組織、あるいは更に専門性の高まったところを患者さんが選ぶということではない、私はそう思っております。

 ですから、それはプロフェッショナルのぎりぎりのところまで行って、そこから先は医師からの紹介でもって上に上がっていくんだというふうに割り切るべきで、また、逆にそういうふうに、今、最初から専門医に行きたいというふうな国民がたくさんいらっしゃるという話もありますけれども、そういう制度というのは、許していけば本当に複雑怪奇、先ほど岡本先生がおっしゃられるような形になるわけですから、私は、そのあたりが、制度化していくということをだんだんとやっていく必要がある、そうしないと整理はつかないんじゃないかと思います。

岡本(充)委員 おっしゃること、わかります。やはり、きちっとしたシステムをつくって、患者さんが受診をするまでの間に幾つかの段階がありスペシャリストにたどり着く、こういう仕組みをきちっとつくっておくことが重要だ、こういう御指摘だと思います。私もそのとおりだと思います。

 なかなかそれが必ずしもうまくいっていないというのが大学病院にいたときの私の感想でもありますし、今でも覚えています。私が外来をやっていて、患者さんが来て言われるんですね。何で来たんですか、いや、一番近いんだから、それはすぐ隣に住んでいるんだから、私は名古屋大学ですけれども、名古屋大学に受診しますよ、こう言われて、はあという気になった記憶があるわけです。

 いずれにしても、こういう問題意識を持ちながら、私、やはり医師の養成はどうあるべきか。時間が限られていますから、地域枠の点について最後にちょっとお聞かせいただければと思います。

 今、地域枠が、本当に各都道府県が設定をされていて、必ずしも自分の都道府県出身じゃなくてもいい、どことは名前は出しませんけれども、ある県の大学が遠く離れた県の地域枠を設定し、そして、その地域枠に通う生徒は、もちろん、その後その県に縛られることにはなるわけでありますけれども、本当にその県に愛着があるのかわからないというような形になっている地域枠もありますし、また、地域枠の問題といえば、選抜の仕方にもあります。最初から地域枠で入るというのもあれば、入学した後に、肩をたたいて、君、地域枠はどうだと、こういう話もあるわけですね、これで本当に地域枠としてうまくいくのかというのはすごく思うわけですが。

 きょう、いろいろな地域からそれぞれお越しの先生方でありますけれども、こうした地域枠のあり方、長崎県もそうなんですよ。長崎県も、県から離れたところの、ある医科大学に地域枠を設定されています。もちろん、長崎県の小学校か中学校を卒業しておいてくださいという、こういう前提はつくわけですけれども、こういう地域枠の設定のあり方などについて御意見があれば、それぞれの委員からお聞かせいただいて、終わりたいと思います。

片峰参考人 御承知のとおり、地域枠、十年前からどんどんどんどん今ふえてきもしていまして、彼ら卒業生が実際に研修、二次研修も終わりまして社会に出ていくというのは今からなんですよね。そういった意味では、彼らがどういう行動をとるかというのは、非常に、やはり偏在対策上、最重要の問題になってくるんだと思います。

 しかしながら、これまでのデータを見る限り、やはり大学の地元出身者の卒業生は、地元で研修する割合が他県から来た学生に比べてはるかに高いですよね。さらに、研修後も地域に残って医療に携わる割合も物すごく高い。そういった意味では、地域枠の学生だから地域に残ることを義務づける、強制するということは恐らくなかなか法律的に難しいんだと思うんですが、現状でも、地元出身者は確実に高い頻度で、長崎も含めまして、残っているということだと思うんですね。

 そういった意味では、今後、医学部の教育等々も含めまして、そういったところを強化していく、あるいは地域の医療に触れる機会をもっとふやしていく、そこにやりがいを感じさせる等々の取組の中で、地域枠は十分に恐らく機能していくんだと思います。ただ、他県の問題に関しましては、他県の大学に行く地域枠ですよね、もうちょっと恐らく分析が必要なんじゃないかなと思います。

三宅参考人 ただいまの御意見に僕も同じなんですけれども、うちの大学も外からは採っていませんで、地域の方が地域枠を使っていますけれども、うちは、できるだけ地域枠で採った方は地域で働いていただくと同時に、それが大学にとっても非常にメリットがある。大学で出すべきところ、出した方がいいところをそういう人が持ってくれる、そういうことで、随分、地域枠の人もそれなりに貢献していただいておるように思います。

門田参考人 私は、深く直接自分の仕事として考えたことはございません、まず最初に申し上げますが。

 ただ、働く側の医師がうまく、先ほども問題になっておりましたけれども、医学、医療をおられる大学病院に残って研究し、何とかというふうな形に人間が育つのはどういうことかというと、やはりそういう夢を持ち、そしてやる気を持ってやる人がそういう場を与えられることというのが基本だろうというふうに思います。

 そういった意味で、制約をするために、ここからこうしてこうするというふうなことは、医師の立場、その人たちを伸ばしていくという意味では果たしてどうかというふうな疑問を感じるというのが正直なところです。

 ただし、今現在の問題点をとりあえず解決する一つの方法であるというのも理解はできますけれども、私は、長期的には、もっと全国レベルでどうかというふうなことでカバーするようなことを考えるということの方が大事ではないかというふうに思います。

 以上です。

本田参考人 私は青森県の弘前大学卒業なんですけれども、やはり地域枠自体は、私は、地元に定着するという意味では有効性があるのではないかと思います。

 ただし、問題は、北風と太陽ではないですけれども、その後、そこで働こうかな、働きたいなと思えるような環境を整えられているかどうかということですね。

 先ほど大学のスタッフが忙しいというお話がありましたけれども、私のかつて調べたときには、東大、京大クラスでも、アメリカの医科大学の、スタッフが五分の一だと聞いたことがあります、医師の数ですね。しかも、ですから、その少ない数で診療、研究、教育をやっているわけでしょう。そうすると、地域のところは、大学病院の方も、教えることも余裕がないという現状があるんですね。

 ですから、その地域で、若手の医師が残ってもいいな、教えてもらえるな、ワーク・ライフ・バランスがとれるなという環境も同時につくっていかないと、北風で、おまえは一億円かかっているんだからだめということを言っていたのでは解決しないんじゃないかというのが私の意見です。地域枠は、そうすれば有効だと思います。

猪口参考人 現状ですと、地域枠というのは、本当に地元から入る枠、それから他県から来る枠とか、いろいろな使われ方がされています。やはり一番有効なのは、地域枠の中の地元枠なんだろうと思います。それは地元にも定着するというのはもうデータで出ていますので、これを進めることはいいと思うんです。

 ただ、一つ気になるのは、やはり、十八、九で大学に入り、二十四で医師になって、私はこういう医学をやりたいとか、少し外国に行ってこういうことをしてみたいとか、若しくは、基礎のこういうことをやってみたいんだというような希望が大学の途中で湧いてきたときに、それを果たしてとめるべきなのかどうか。そうじゃなくて、あなたは地域枠、地元枠で入ったんだから、ここでこういう医者になりなさいよということだけでいいのかどうか。そういう、ここはやはりもう少しいろいろなケースを考えながら決めていく必要があるのではないかというふうには思っております。

岡本(充)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 終わります。

高鳥委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 まず、五人の参考人の方々には、本当にお忙しい中でこうして足を運んでいただいて、また、それぞれにそれぞれの立場から示唆に富んだお話をいただきました。まず心より感謝申し上げたいと思います。

 私の方から、まず片峰参考人に少し質問をさせていただきたいと思っております。

 今回どういった議論があったかということですが、この国会の審議の中でも、これまでこの偏在是正というのはずっと言われてきたんだ、七十年間ずっと言われ続けてきて、結局できなかったじゃないかというような質疑もございました。今回は何が違うのかというところなんです。

 相当、これまでの偏在対策についても恐らく振り返られて、いろいろ分析もされたんだろうというふうに思いますが、その中の一つで、参考人がおっしゃったのは、医師の自由意思から一歩踏み込んだという発言がありました。これは、医師の志、あるいはキャリアパスに対する自主性、こういうのももちろん大事だ、ところが、これまでの反省、これまでの経緯を踏まえて、やはり医師が不足している地域で被保険者がこうむり続けるような不利益があるんだ、これを是正するんだということで一歩踏み込んだということでした。

 そういう意味では、私は、これは社会のシステムのつくり方として最低限の調整は必要なんだろう、それが今回の法案の一つなんだろうというふうに思っておりますが、いま一度、医師の志とかキャリアパスに関する自主性のところと、そして偏在対策の両立という点でどういう議論があったか、確認させていただきたいと思います。

片峰参考人 まさにその点が分科会における最大の議論の一つであったというふうに考えております。

 これまで、医師数はふえたにもかかわらず、やはり医師不足感がなかなか解消しないということですよね。その一つの原因が、お医者さんの行動変容、地方に向けた行動変容というのがなかなかやはりできてこなかったというところがあると思うんですね。そういった意味では、今回初めて、お医者さんの職業選択、あるいは、要するにその配置等のところに、ある程度の、一定の制約をかけるという大きな一歩を踏み出したというところは大きいと思います。

 しかしながら、それだけではなくて、医師の行動変容を促すべく、きちっとデータベースを整理して、どこにどんな医者がいるかとかということも含めまして、それをきちっとお医者さんたちに提供するということ、さらには、県知事等々の御努力によりまして、そういう地域の労働環境、あるいは研修環境を整備していくということも一体として、恐らく今回の法案になっていると思うんですね。

 そういった意味では、先ほど申しましたように、その制約のあり方に関してはたくさんの議論があって、最終的になかなか合意が得られない部分もあったんですけれども、最小限のところで今回は一歩を踏み出したという考え方で、次の経緯を見ながら、更に踏み出すかどうかということになろうかと思います。

伊佐委員 もう一点お伺いを片峰参考人にさせていただきたいのは、医師偏在指標についてなんですが、今回の法案では、二次医療圏ごとに医師偏在指標というのを国が示す。それで都道府県が、ここは医師少数区域ですよ、ここは医師が多いです、医師多数区域ですというふうに決めていくわけですね。

 これをやるに当たって、私は非常に注意しなきゃいけないのは、これがレッテル張りになっちゃいけないなというふうに思っております。つまり、地域地域で、単に少数多数じゃなくていろいろな恐らく実情があって、その実情の中で、例えば多数と言われていても、診療科によっては少数の医師しかいないとか、相当丁寧にこれはやらないといけないと思うんですが、この点についても伺いたいと思います。

片峰参考人 極めて重要なポイントであると思います。

 人口十万人単位対の医師数だけでは、地域の医療の多様性というのははかれません。そういった意味では、もっと多種多様な指標をもってそれを判断した上で、過剰地域、不足地域という区分けをしましょうと。その方が成果が見えやすいということがありますよね。

 ただし、地域地域で非常に特殊な事情もあります。先ほど申しましたように、離島地域なんかというのは非常に特殊な状況ですよね。そういったところも勘案しながら、その意思決定を国ではなくて地域に移譲するというところがもう一つのポイントなんですね。そういった意味では、地域の医療行政能力がいかに向上して適切な施策が講じられるかが最大のポイントになろうかと思います。

伊佐委員 ありがとうございました。

 次に、三宅参考人と門田参考人に伺いたいと思います。専門医の話についてです。

 三宅参考人の先ほどのプレゼンテーションの中でもおっしゃっていて非常に印象に残ったのは、専門医制度はあくまで学問のためなんだ、地域医療のためじゃないんだ、ただ、それが地域医療に影響を与えるようなことがあれば、そこは考えないといけないね、恐らくこういう趣旨のことをおっしゃったと記憶しておりますが、先ほど来議論になっておりますプロフェッショナルオートノミー、これも、私も今までいろいろ議論を聞いていて、結局、プロフェッショナルオートノミーって何かというと、そこは、専門科の中でどういう医療が標準なのかというところを専門的な見地から示していこうというものであったはずだと思います。

 だから、それに対して、ある意味国が何でもかんでも、箸の上げおろしまで言っていくのはかなわぬということだと思うんですが、ただ同時に、当然、医療というのは国民のための医療というわけであります。住民のための医療ということでありますので、こういう観点から、やはり国民が不利益をこうむるようなことがあってはいけない。

 そこでお二人にお伺いしたいのは、今回、厚労大臣が専門医機構に対して意見具申できるということになっております。これはどの程度ぐらいのものをお二人は想定していらっしゃるのか、ある意味、どれぐらいだったら許容範囲だと思われるのか、伺いたいと思います。

三宅参考人 厚労大臣の方からの指示は、さっきも言いましたように、この地区にどのぐらい、この地区にどのぐらい、どの辺がいるかというようなことを調べてそのデータを出していただくということで、実際的な人を配置するのはやはり学会あるいは大学でございますので、それに基づいて適材適所の配分をする、そういうバランスでいいんじゃないかと思うんですけれども。

門田参考人 私は、同じことをずっと繰り返しますが、やはりこれは学術的な意味でもって、学術的に、科学的に評価し、そしてそれをちゃんとやっていくというのが基本だというふうに思います。

 しかし、結果としてどうなっているか、それを国民がどう感じているかということを、大臣の方から意見として出てくることは当然あることだと思いますが、細かい指示云々ということは全く想定はしていない。そこまで想定すべきでないだろうというふうに思います。

伊佐委員 ありがとうございました。

 それでは、次に本田参考人に伺いたいと思います。医師の働き方改革ということです。

 労働時間の短縮としては、先ほどおっしゃっていただいたタスクシフティングですね。医師ができるような仕事、また、もしほかの職種ができるのならそこにシフトしていこうということですが、確かにおっしゃるとおりで、ではどこにシフトするかというと、多分今もどこもいっぱいで、さっき御紹介いただいた看護師にといっても、看護師としても、ちょっとそれはもうやめてくれ、もうただでさえ人がいないのにということだと思います。

 そこで、PA、フィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナー、NPというところを紹介していただきました。米国で合わせてもう三十万人ぐらいいるということですが、ちょっと伺いたいのは、これは、いずれにしても、やろうとしてもすぐできるものじゃないと思うんです。やはり短期間ですぐそういう人が育つわけじゃなくて、当然、養成していくためには一定の時間も必要でしょうし、あるいはそれの裏づけとなるような財源というのも恐らく要るだろう。そういうところもちゃんと診療報酬上評価してくれないと、そもそもこの制度は広がらないわけで、そういう意味では、このPAあるいはNPに対して、どういう道筋でやっていけば本当に定着していくか、広まっていくかということについて、詳細に伺いたいと思います。

本田参考人 ありがとうございます。

 私がそこを追加して説明したかったところで、本当にすばらしい質問に感謝いたします。

 まず、私の今の受けている感じでは、既に病院によっては、例えば、臨床工学技士さんと一緒に手術をしたりであるとか、心臓カテーテル検査をしたりしているとか、もうアメリカのPAに近い働き方をしているところは恐らくあると思います。一般のクリニックでも、やはりPAのように働いてもらっているというような報告を読んだこともあります。ですから、医療現場にはもうPAの素質を持っている方が実際いらっしゃるんですね。既にもうそれに少しずつ移行して、そうじゃないとやっていけないわけです、忙しいですから。

 ですから、そういう方たちにまず協力していただいて、先ほど申し上げた、例えば、今、院内で私が思いつくのは、一番それに適していそうなのが臨床工学技士さんであるとか、場合によってはリハビリの方とか、放射線科の方とか。というのは、PAはそれぞれの分野で働くわけですね。例えば、心臓カテーテル検査は放射線科の技師さんが常に脇で見ているわけですから、その人がぱっと手伝ってくれればすぐできます。という形で徐々にふやしていって、ある程度法律その他が通ってきたら、いよいよ、MEさんが通ったように、育成の学校もつくっていくという。

 恐らく、臨床工学技士さん、放射線とかそういう方は、医学部と違って縛りがないんじゃないかと思うんですよ、今、育成の定員の。ですから、そういう方たちにこちらにシフトしてもらって、今既になれている方に手伝ってもらえば、もうすぐにでも各地域で助かっていくわけですから、そういうやり方をすれば、かなり実現性がある。

 先ほど申し上げたように、臨床工学技士さんも、先日、横浜で開かれた技士会で私は講演させていただいたんですけれども、非常に前向きで、ぜひそういうのにも参加したいなという声も聞いてまいりました。

 以上です。

伊佐委員 次に、猪口参考人に伺いたいと思います。

 病床数の話なんですが、今回の法案の中でも、病床数の必要量が既存の、今ある病床数を下回る場合には、だから、既にもう必要量を超えているという場合には、新規開設あるいは増床については、いや、それはだめよと、許可しないということ、あるいは、民間に対しては勧告という制度がビルトインされるということになりました。

 ところが、でも、実情は、多くの地域ではもう既に、そもそもこの基準病床数をもう上回っているところが多分ほとんどじゃないかと思うんです。そういうところは、もう今既に、新規に申請も当然受け入れられないわけですし、難しい、同じようにこの勧告を受けるわけですが。

 こういったマクロの病床数の捉え方と、やはり地域をずっと回ると、ミクロでの感覚というのは大分乖離があるなと思っていまして、つまり、例えば救急病院の方々に話を聞くと、本当は受け入れたいんだけれども受け入れられない、ちょっと今もう病床がいっぱいでと言って断る。ところが、基準は超えているんです。基準を超えているんですが、実際には、もうちょっとうちに病床数があればこういう方も受け入れられるのにというような状況になって、結局たらい回し、以前は本当に大きな問題になりましたが、やはりこういうことを依然、私は伺うんです。

 そういう意味では、マクロの世界で病床数が超えていますよという話と、実際に現場レベルでは、ちょっとどうしてもやはり不足しているところもあるんじゃないか。この差をどういうふうに解釈すればいいのかという点について伺えればと思います。

猪口参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 この病床数の問題というのは、本当に複雑でわかりづらい部分があります。

 というのは、まず診療報酬等々の制度が変わっていくんですね。そうすると、例えばDPCというのがあって、毎年、一日、〇・五日ずつぐらい平均在院日数が減っていっているわけです。そうすると、それによって、かなり高度な急性期、七対一とよく言われますが、そこの病床は今実はかなりあいております。大体、利用率がもう八割ぐらい、若しくはそれを切ろうとしているわけですね。ですから、病床数がこれ以上多ければ多いほどいいのだという考え方は少し違うのかなという気がします。

 それに伴って、今度は、今、病床機能報告制度では回復期というのがあるんですけれども、これがまだいま一つ、制度自体がなじみがなくて、各地でいろいろと混乱があるという状況です。

 そこの方も、わかりやすく言うと、急性期以降のリハビリテーションとか、それから急性期までいかないけれどもある程度の入院が必要だとか、そういう方が対象になるんでしょうが、まだそこのところも、制度上の固めが少し、私から見るといまいちで、各地で調整会議とか地域医療構想を組み立てていく上で、まだ少ししっくりといっていないなというようなことがあります。実際に本当に病床が少なくて困っているのか、患者さんが受け入れられないという状況が今あるのかどうかというと、これは地域によって多少の差はあるかもしれませんが、今言ったような事情でかなり、病床の利用率というのは少し下がりつつあるような気もします。

 ですから、そういう実態を踏まえながら、これからも病床のあり方ということを十分に議論していく必要があろうかと思っておりまして、今の制度で今後も全てうまくいくんだという状態ではちょっとなくなっているような気がいたします。

伊佐委員 ありがとうございました。

 また少し片峰参考人に戻って質問させていただきたいと思いますが、先ほどの本田参考人の話の中で、そもそもの医師数が、マクロとしても果たして日本は足りていると言えるのかどうかという問題提起がございました。一つの観点としては、高齢者のお医者さんが一としてカウントされるのは果たしてどうなのかという問題提起がありましたが、この辺については分科会の中で議論があったんでしょうか。

片峰参考人 これも物すごく重要なポイントだと思います。

 今まで、医師が足りているか足りていないか、一番重要な指標というのは、人口十万人対の医師数。そこに書いてありますように、先ほども示されましたが、OECDの平均に達していないわけですよね。だけれども、要するに、そういったマクロの指標だけでは、もっと細かいところでやはり見ていく必要があるというのが我々の分科会における需給予測の考え方です。もちろん、先ほどから議論になっている偏在問題があります。

 それともう一つ重要なポイントは、お医者さんではなくて、人口の方の年齢構成ですよね。恐らく、今の日本で老齢化がどんどんどんどん進んでいますから、あと二十年もたてば、僕ら団塊はいなくなるわけですね。そういった状況の中で、先を見据えてどういう予測をするか。

 それともう一つは、やはり、僕が医学部に入ったころは、十八歳人口二百五十万で、四千人が医学部定員。現在は百万人に近づきつつありますね。それで一万人近い医学部定員がある。昔は六百人に一人、今は百人に一人。しかも、最も優秀と言われておる連中が医学部に行っているという状況ですね。だから、将来の人口構成の中で、今の若者たちの中でそれだけ医者がつくられていくということをどう考えるかというのは非常に重要な問題だと思います。

 それともう一つは、やはり先ほど言われた、医師の年齢構成の中の働き方も勘案しながら今回の需給予測もやっているわけですよね。それでもなかなか、やはり近い将来、医師過剰の時代が来るということは恐らく確実なんだろうと思います。

 それと、もう一つ言わせていただくと、先ほども申しましたが、非常に大きな問題は、千八百名近い地域枠の学生たちが今、社会に出ていこうとしています、医師たちが。彼らがどう行動していくかが非常に重要な問題ですよね。それとともに、医師がふえると医療費も恐らくふえてくるという非常に重要な問題もあります。

 そういったさまざまな問題の中で、その際、前提として、偏在対策、これはもう喫緊の課題であるというふうに考えております。

伊佐委員 ありがとうございました。

 最後に、猪口参考人に伺いたいと思います。

 せっかくわざわざ徳島から急いで駆けつけてきていただいたので、せっかくですので、控除対象外消費税、この年末に向けて、恐らく、いわゆる損税と言われているこの消費税の話が議論になってくるだろうというふうに思っております。

 医療機関が仕入れの消費税を負担しているという問題も、これまで診療報酬で補填しようというような形でやってきたわけですが、恐らくいろいろ御意見もあるんじゃないかと思いますので、最後、一分もないと思いますが、思いのたけをぶつけていただければと思います。

猪口参考人 この消費税の問題も非常に難しくて、一分でしゃべるといってもなかなかしゃべり切れないんですが、簡単に言いますと、日本はもう三十年間、医療は非課税ということでずっと来ました。ですから、これを大枠で変えるというのはとても大変な話だろうなというふうには思います。思いますが、今、やはり消費税をいっぱい払っている、特に、大型で急性期の病院は消費税をいっぱい払っているために、多くの控除対象外消費税を生んでいるわけです。

 ということは、この消費税を診療報酬で補填する、マクロでは補填されていると言われていますが、細かなところまで、それぞれの病院の事情が違う中でそれを補填していくというのは、多分、診療報酬でやるのはちょっと不可能ではないかなという気がしております。

 ですから、今後、ことしじゅうに結論を出すわけですから、さまざまないろいろな可能性についてこれからディスカッションが必要であるというふうに今思っております。

伊佐委員 なかなか一分では思いのたけは全部言い切れないところもあろうかと思いますが、しっかり、きょういただいた御意見、審議に役立たせていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

高鳥委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 五人の参考人の皆さん、本日は、お忙しい中御出席をいただき、また貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございました。

 聞きたいことがいっぱいあるので、早速質問させていただきたいと思います。

 まず、片峰参考人なんですけれども、医師の需給分科会座長として務めていらっしゃいます。今、分科会は、中間取りまとめが第一次、第二次、第三次と出ているわけですけれども、中身といいますか形といいますか、大分違いますよね。その第二次のところで、今回の法案の土台となる中身が書かれているのではないかと。

 それで、第一次の中間取りまとめのときに、働き方ビジョンの検討会をやりますということが突然入って、一年ぐらい休止といいますか、そういう状況があったと思います。そのこと自体が、分科会としては、聞いていないよみたいな混乱があったのではないかと伺っておるところなんですけれども、これをどう思うのかということと、本来であれば、ビジョンですとか、ビジョンの後に今度働き方改革検討会もまたやられておりますし、そういうところとちゃんと連携をとりながら、お互いに議論するというんでしょうか、それでまとめていくというのが本来の姿じゃないのかなと思うんですが、先生はどのように思っていらっしゃるでしょうか。

片峰参考人 そのとおりだと思います。

 医師の働き方、需給等々、さまざまな検討会が存在しますよね。その横のつながりがどうかというと、座長をやっていましてもなかなかそれが見えないところがある。もちろん、複数の検討会に所属されている委員もおられますので、そういったところ、あるいは厚生労働省の事務局の方からいろいろな情報。

 今回、御指摘いただきましたけれども、第一次中間まとめをやりまして、二十八年の五月か六月だったと思うんです。その後、本格的に偏在対策に取り組もうというところで、御紹介のとおり、働き方ビジョン検討会という新たな検討会が立ち上げられている。その後、その結果を待つということで一年近いブランクがあったんですね。その流れの中で働き方改革の話もあった。その過程は、座長としてはかなりじくじたる思いでございました。

 そういった意味では、今後、そういった検討会間の連携を進めるべきだと思いますが、今から振り返りますと、ビジョン検討会で初めて全国規模のお医者さんに対するアンケート調査を実施して、実際何を思われているかというのを少し把握できたこともありますし、あと、やはり働き方改革の非常に大きな要因ですので、それも横目で見ながら我々の検討会も進めなきゃいけないということだと思っております。

高橋(千)委員 じくじたる思いだったということでおっしゃっていただいて、ありがたく思っております。

 確かに、検討会がいっぱいあって、全部追っかけられないくらいで、これはどこが所管しているのかなと思ったりするような中であります。

 ただ、先生今おっしゃった、十万人を対象とした医師の調査、一万五千人弱しか集まってはいないんですが、ただ、そのチャレンジというんですか、貴重なデータを出していただいたのかな、このように思っております。ありがとうございました。

 それで、次に三宅参考人に伺いたいと思うんですけれども、大学力という表現をされました。すごく興味深い表現だなと思っております。やはり、先ほど本田参考人もおっしゃったんですけれども、大学病院などは、臨床、教育、研究、それぞれ三つの役割があって、兼ねる大変さというのがあるんだけれども、しかし、どれもやはりそれぞれにとって大事な総合的な力があるんじゃないか、こういうふうに思っております。

 それで、伺いたいのは、私、自分でも質問したことがあるんですが、地域枠をふやしてきました、ただ、ふやしたといっても、要するに、講義室にちょっと学生がふえるよというのでは済まない、それを受け入れる体制というのは物すごく大変だったのではないかなと思うんですけれども、そこに、本来の所管は文科省かもしれませんが、どういう思いをいたすべきなのかということで、もし御意見がありましたら伺いたいと思います。

三宅参考人 地域枠の学生をどのように迎えたかということですか。それほど難しいことはないと思いますね。

 それで、さっき、ここでディスカッションがありましたように、地域枠だからこの地域に残ってずっとやれという規則は一応あるんですけれども、大学におりますと、その途中でいろいろなことを知って、いろいろなことがやりたくなる人があるんですね。そういうときに、それをフレキシビリティーを持ってやらせるというのが、実は本当の意味の地域枠じゃないかと思うんですね、がんじがらめにするわけじゃなくて。

 ですから、それも、やはり最初に、地域枠の学生をとったときに、そういうこともあったら言ってほしいということを言うべきじゃないかと思っておりますし、実際、そういうことを言う人もいますけれども、ただ、地域枠でとったらやはり頑張ってもらわぬと困るんですよ。中には落第する人もいたりいろいろしまして、そういう対策というか対処も非常に難しいことがございます。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 結局、縛れないですよね、そこは。おっしゃるとおりじゃないかなと思っております。その上で、魅力をどうつくっていくかということでは、やはり大学と行政が力を合わせていかなければならないのかな、そこが求められているのかなというふうに思っております。ありがとうございました。

 次に、門田参考人に伺いますが、先ほど来、専門医のことで皆さんから質問が集中しているわけなんですが、先ほど岡本委員が紹介した先生の図を見て、私は全く違うことを思ったんです。

 というのは、私は、自分が質問してきたいろいろなテーマの中で、ある方から、学会をつくってくれと厚労委員会で質問してくれと言われたことがありまして、それは化学物質過敏症の問題だったんですけれども、いや、それは議員の仕事じゃないだろうと思ったんですね。

 ただ、どうやって学会ってつくるんだろうと、そもそもわからなかったものですから、そのときに、意外にファジーなものだなというふうに思ったのと、ただ、学会があることによっていろいろな学術論文が出されて、そのことによって、標準医療にまだたどり着かないいろいろな疾患の方たち、難病とも呼ばれていない方たちもいらっしゃるわけで、そういう意味での学会の役割というのはあるのかなと。

 ただ、そこに、さっき先生おっしゃったように、標準医療が大事だというのは私はそのとおりだと思うし、枠をはめてというのはまた違うのかなと思うんですが、そういう趣旨に対して御意見がもしありましたら伺いたいと思います。

門田参考人 学会はどういうふうにしてつくるかということは、本当にこれはファジーといいますか、任意団体としてスタートしているわけですから、別に何もありません。

 それと、今できていないことに対して新しいところを開いていくときにどうかということでございますけれども、これは、あくまでも学術という組織とそれから専門医制度というところとは別ですということを私は何度も繰り返していますが、ですから、それは自由にいろいろなことをやっていって、そして、将来的にそれがもう本当に標準的なものとなり、制度の中に入れていくということになれば改めてディスカッションすればいいと思うんですが、最初に制度ありきということはまずあり得ないというふうな前提で考えていくべきではないのかなというふうに思います。

 時々刻々、これはもう新しい進歩をどんどん繰り返していってどんどん広がっていくわけですから、限りなく広がっていくんだろうと思うんですけれども、では、限りなく制度をつくるかというと、それはできません。患者さんができるわけじゃないわけですから、私は、もうそこではっきりと線引きをすべきであると。

 どういうふうにやっていくか、将来的に上がったり下がったりというのはあると思うんですが、それは、考え方とすれば、はっきりしておく必要があるだろうと。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 限りなく広がっていくであろうと。そこに基準ですとか評価をするということ自体が難しいことなんだろうと思って、やはり制度とは分けるべきだという指摘はそのとおりかなと思って伺っていました。ありがとうございました。

 それでは、本田参考人に伺いたいと思いますが、外科医らしく切れ味のよい御意見をありがとうございます。

 いっぱいあるんですが、まず、働き方改革の、医師の働き方改革は結論が出ていませんよね。それで、七年後、あと二年で新しい医師の働き方はどうあるべきかという方向を出すんですが、しかし、七年間猶予が、結局、施行日までとその後五年間猶予があります。では、その間どうするのかということが決まっておりません。

 そうすると、今の労基法のままですと、過労死ラインどころか、三六協定があれば青天井を認めてしまう。それを当てはめてもいいのか、七年も待つのかということがありますので、私はむしろ、医師は新しい方法と言わずに、今までどおり労基法の、一般的な労働者と同じ世界で、どうしても難しい部分だけを整理するというのかな、それが必要だと思うし、むしろ、夜勤がある仕事であるから同じでなくてもよい、つまりもっと短くてもよい、そういう考え方もできるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

本田参考人 ありがとうございます。

 私、かつて大学病院で働いているときに、友人から言われたことがあります、同じ医師の仲間ですけれども。その友人が、奥さんからこう言われたというんですね。あなた、家族も幸せにできないで、どうして患者さんを幸せにできるのって。私、それは正論だと思います。やはり医師自身が歯を食いしばって寝不足で治療していて、患者さんには害を与える危険性さえあるんですよ。そこを考えないと。とにかく診療していればいいという問題ではないんですね。

 トラックの運転手さんも、人の命を預かるからということでかなり厳しく、ちゃんと見ようという時代でしょう、バスの運転手さんも。何で医師だけが長時間労働をして、過労死ぎりぎりで、しかも、医師の場合は、過労死しても余り報道されないんですね、ほかの業界は報道されるんですけれども。

 ですから、おっしゃるとおりで、きちんとやはり見ていく方向に持っていかないと、先ほど申しました、若手の人が医師になりたがるのかどうか。特に、厳しい診療科、あと、医師不足のところでは働いてくれないと思いますよ。それをそうしようと言っている人は、みんな六十代以上の、ちょっと今口が滑りましたけれども、中堅以上の方がおっしゃっているわけで、やはり若手の気持ちも考えながら物事を運ばないと。

 先ほども言いました北風と太陽ですけれども、太陽の方も少し考えてやっていただきたいなというのが私の願いです。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 今の質問に関連して、猪口参考人と本田参考人に同じ質問をしたいと思います。

 この働き方改革で、やはり非常に医師が長時間労働であり、また過労死もある。問題意識はそこから出発しているんですが、医師法の応招義務がある。これが最後のおもしになって、やはり無理よねみたいな議論になっているわけなんです。ですが、もちろん、手術を途中でやめろというわけにはいかない。でも、それ以外の部分では、例えば、誰もが夜勤をするわけでもないし、また、地方に行くと、医師がいないからといって、救急も指定を返上している、そういう状態もあります。

 ですから、むしろ深刻なのは大病院であろうと。そうすると、やはり患者さんの受持ちを減らすために医師をふやす以外にないのかなみたいなことを思うんですが、この応招義務の問題について、お二人に伺いたいと思います。

猪口参考人 応招義務、これは先ほどもちょっと言いましたけれども、やはり医師の今までの感覚ですと、自分が受け持った患者さんに何かあったときというのはやはり診に行くという、半常識的な問題が一つあります。

 ただ、この問題が非常に厳しい方に向かった場合には、もうそういうことも言っていられなくなるのかなというような気もしますが、現実に、今大きい病院と言いましたけれども、小さい病院でも、例えば日勤をやって夜勤もやってまた日勤だというのは、早く言うと、日本の病院では結構当たり前に行われてきたという面があります。

 その夜勤の部分が、これが夜勤なのか、そうではなくて日当直なのかということがやはり非常に大きい問題、つまり、どれだけ忙しいかなんですね。ですから、そこで、応招義務はありますけれども、そういう日当直若しくは夜勤、ここのような区別をどうつけていくのか、そういうことが大きい問題になっていくと思います。

 ただ、これを今すぐ厳しくするということで、二年といっても、もう来年には決めなきゃいけないので、実際には来年までに片をつけて、あと五年間でどう整備するかという問題ですから、これは大きく変わるとすると、日本の医療提供体制そのものを変えてしまいかねない問題なんです。ですから、十分にここからまだ先議論しなきゃいけないと思います。

 そうはいっても、無理をして過労死しても困るわけですが、片一方では、私は一生懸命いろいろな症例を見て、いろいろな手術に入って、いろいろな救急患者さんの体験をして、自分のために自己研さんをしていきたいんだという若い医師も片一方ではいて、やはりそういう方の、何というか、労働でもあるかもしれませんが、自己研さんをするということに対して歯どめをかけるというのもいかがなものかなという気もしております。

 ですから、そこら辺のバランスをとりながら今後の議論が進んでいくというふうに思いますので、これもいろいろな意見をうまく集約する必要があるかなというふうに思っております。

本田参考人 まず、私は、応招義務は、個人の医師ではなくて医療機関が受けるという形にすべきだと思います。

 あと、もう一つ。かつて三重県の松阪に行ったときに私診たんですけれども、今はどうかわかりません。その当時は、三重県松阪にある、たしか済生会と日赤と県立か市立ですかね、三つが交代で救急をしていて、この日はどの病院、例えば、私の済生会にかかりつけの人でもこの日は別な病院に行くという形で、地域で応招義務。

 そういうふうに、要は、患者さんからすれば、どこかでちゃんと診てもらえればいいんですよ。それを、あんたが応招義務は外しているからだめとかいったらもう無理です、今の日本では。それをやっていくことによって、地域で医師数をカウントしたり、先ほどのフィジシャンアシスタントを導入したり、本当にいろいろ知恵が湧くと思います。

 応招義務を個人から地域、又は医療機関、少なくとも、そうすべきだと思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。いい知恵をいただいたと思います。

 さっき猪口参考人がおっしゃった自己研さんに歯どめをかけるというのは、そうなのかなと、少し考えなければならないかなと。

 ただ、民間の個人病院でも、応招義務と言わないかもしれませんけれども、いわゆるみとり、先ほどどなたかがおっしゃったと思うんですけれども、結局、それというのは二十四時間なんですよね。いつでも呼ばれるし、たった一度のみとりに自分がかかりつけの患者さんに会えなかったがために、ずっと家族から責められて、それがすごくつらいということをおっしゃっていました。こうしたことも本当に全体として考えていかなければならない課題なのかなというふうに思っております。

 最後に、一言で、本田参考人に伺いたいんですが、これから医師少数区域と多数区域を決めて、そこを経験した医師に認定を与えるとなるんですが、その少数区域をどうやって決めるかがまだ決まっておりません。

 ただ、青森県でいいますと、三市以外は全部少数区域だとみんな思っています。北海道でいえば、旭川と札幌以外は全部少数区域だ、そう思っていますよね。その中に更に区分するんだろうか、そうなったときに何が起きるんだろうかと不安に思っておりますが、もし御意見がありましたら伺いたいと思います。

本田参考人 ありがとうございます。

 実は、私、青森県で二年間働いておりまして、平内町立病院というところでも働きました。医師不足で、外科で行ったんですけれども、ほとんど手術がない病院。ただ、一生、医師としての経験、いい経験をいたしました、地域で御高齢の方をみとりに行ったり、往診で亡くなるところを診に行ったり。

 ですから、そういうふうな意味では、地域医療を経験するということは、長い目で見ると、医師にとって非常にプラスな面が多いと思います。ただ、それと、院長になるかどうかを結びつけていいのかということ。

 あと、もう一つ。医師の養成についてですけれども、先ほど来、医師になってからいろいろな希望が出てきて地域枠がうまくいかないこともあるという話が出ましたけれども、私は以前から、ぜひアメリカのメディカルスクール型の導入を日本でも考えるべきだと思います。

 アメリカのメディカルスクールは、普通の大学を卒業してリベラルアーツをある程度学んだ人が、医師になりたいといって四年間で学ぶんですね。日本の場合は、私もそうでしたけれども、リベラルアーツを全く学ばないで医師になってしまいました。ですから、世の中がわからないんですよ。そうすると、やはり忙しいところへ行きたくないとか地域に行きたくない。初めから、自分はそういうところでも働きたいという人をメディカルスクールで教育した方が効率がいいと私は考えますけれども、皆さんはいかがでしょうか。日本でもメディカルスクールをぜひ導入すべきときだと思います。

高橋(千)委員 時間になりましたので、これで終わります。

 五人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

高鳥委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 本日は、五人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。

 最初に、猪口先生にお聞きをしたいんですが、先ほど総合医のお話がありまして、ライフという言葉は、命という言葉もあるけれども、生活という言葉も補って総合医というものを活用するというお話がありました。

 そういう意味では、医師の偏在というような部分で、もちろん、それが偏在がすぐ解決できればいいんですけれども、そうでない場合に、総合医というのは非常に有効な手段じゃないかなと。一つの診療科の中で、ないと医師が不足しているという、そういう非常に細分化されているということではなくて、総合医がいればとりあえずは何か対応できる、そんなふうにもちょっと私は受けとめたんですが、認識としてはそれでいいのか。

 そしてまた、総合医というのは、病院に行って総合医という科目が、私は、もっと見れば実はあるのかもしれないんですが、ちょっと聞きなれないというような認識もあるんですけれども、現在の総合医としての育成というか、医師がそれを選択しているとか、そういう現状を教えていただければと思います。

猪口参考人 今、現時点ですと、大学病院でも総合診療科というのがだんだんできてはきましたけれども、まだ確実に機能しているというところまではいっていないのではないかなと思います。

 あと、一般の病院でも総合診療科というところを上げているところがありますが、従来、科別で内科とか外科とか、若しくはもっと細かい、整形外科、リハビリテーション科等々と並ぶような形で総合診療科というものが今でき上がっているわけではないと思います。

 ただ、実態として、例えば日本医師会のかかりつけ医、その教育も実はここに通じていくものだろうと思っておりまして、診療所のレベルでも、一つの診療所で、ある程度のことが賄えるというようなことがこれから高齢化社会の中では特に必要だということが、まず診療所レベルで言えると思うんですね。

 あと、病院でも、実は、総合的に診る医師がいるということは、病院にとっては非常に診療がしやすくなります。それぞれの専門だけいますと、この患者さん、どっちが診るんだとか、そういう話になるんですが、まず総合的に診る医師がいることによって、とりあえずは自分がやるよ、ここの部分については、今度、こっちの科でやろうかなとか、そういう間口が非常に広くできるということが一つあると思います。

 あと、夜間の救急等におきましても、やはり総合的に診る目を持った人間が当直することによって、急患を断らずに、まずこれが必要なんだということがわかって、必要に応じてまた翌日に専門医の方につなぐというようなこともできるようになりますので、我々にとってもそうですけれども、患者さんにとって非常に利便性があるということで、総合医はこれからどんどんふやすべきだろうというふうに思っております。

 あとは、専門医ばかりで固めるとやはり医師不足が顕著になりますので、それを横軸で、少しでも医師不足を解消するためにも、総合医は役に立つのではないかというふうに思っております。

串田委員 ありがとうございました。大変わかりやすく御説明いただきました。

 次に、本田先生にお聞きをしたいんですけれども、フィジシャンアシスタントの件なんですが、私も、神奈川県が選挙区なので神奈川県の話を聞くことがありまして、ついこの前も、神奈川県知事の黒岩知事が救急救命士のことを大変詳しくて教えていただいたんですが、救急救命士というのは毎年たくさん生まれているんだけれども、すごく働く場所が限られていると。それと、消防士との関係というのが消防士ではないのでできないんだというような部分と、フィジシャンアシスタントということですから、医師の指示がないとできない分野に救急救命士というのが活躍していくということができるのかどうかとかというところも含めまして、ちょっとそこら辺、私も理解不足なので補っていただければと思います。

本田参考人 まさに救急救命士さんは、今の日本の法制の中ではフィジシャンアシスタントのようには働けませんけれども、点滴をとったり、場合によっては挿管もたしかいろいろ、心臓も除細動とかもできるということで、救急の現場まで一緒に入って働いている分野だと思います。

 そういうふうな意味では、救急救命士さんが病院で働いてくれるということ、フィジシャンアシスタントとしてそういう道をつくるということは私は非常に有効で、やはりそれぞれステップアップというんでしょうか、さらなる別なところも目指して勉強できるという面では非常にいいのではないかと。

 あと、先ほど来出ましたけれども、医療関係者は少ないですから、ほかの分野で医療関係で働きたいと思う方、さっきのメディカルスクールがまさにそうですけれども、救急救命士をやっていて、病院で患者さんを助けたいと思う人がフィジシャンアシスタントとして入ってくれれば、こんな大歓迎なことはないと思います。

串田委員 次に、門田先生にお聞きをしたいんですが、先ほど、予防、診療報酬制をちょっと変えなきゃいけないということがあったんですけれども、そこの部分と、例えば、先ほど、今回の地域の偏在化ですね。その予防医学と地域の偏在化というのが何か関連性があるのか、あるいは診療報酬制との兼ね合いで予防医学に関して、こういう診療報酬に問題があるのかというようなことも含めまして御説明をいただければと思います。

門田参考人 ありがとうございます。

 偏在の中で、地域による偏在と、それから診療科による偏在ということで考えて、二つのことを申し上げたんですが、地域による偏在と、予防あるいは治療、あるいはその辺の診療報酬というふうなことがちょっとつながらないかもわかりません。

 ですから、私があのときに主にお話ししたかったのは、今どちらかというと、問題の出ている問題点をターゲットにディスカッションし、それをどうするかという話にどうもなることが多いということをお聞きしていますので、私とすれば、問題がある、そこの問題は何なのだと。そういう場合、ワンステップでここだけの問題ではないというのがほとんどの場合なので、そこのところを見ていただきたいというふうなことで、一つの例としてお話しさせていただきました。

 若い医師たちが何をどういう勉強をしていくのか、ただ好きなことというのはあるかもわかりませんが、それと同時に、診療報酬がやはりいい仕事、高い仕事、だから、高いものはいい仕事というふうなことに今はなっているんだろうというふうに思います。そういった意味で、本当に国民を幸せにする、あるいは病気から守るというふうなことになっていくとするならば、予防、あるいは場合によったら、予防だけではだめだったら検診というふうな形になりますけれども、今、簡単な話、検診は保険はききません。

 そういうふうなことで、そちらの方が本格的にやればもっともっと変わってくる医療の現場を、診療という対価を払うということに日本がもうなれてきているということを申し上げたかったんですね。

 ですから、そのあたりを含めて大きく今の全体の問題を見るべきではないでしょうかというところの一つの例として挙げました。

 よろしいでしょうか。

串田委員 今のお話を聞きますと、検診に保険がきかないということですが、地域の偏在化というのはお医者さんがいないから困るということですから、検診を受けると病気を予防できるという意味では、偏在している部分を補うという部分も確かにあるのかなと思ってお聞きをさせていただきました。

 次に、三宅先生にお聞きをしたいんですが、専門医は地域とは関係がないという部分、基本的には、そういうお話という中で、私もそうだなというふうに思いつつ、なおかつ、働き方意識調査というのがお医者さんに行われたときに、二十代の人は、少数地域では専門医の資格取得が困難だから少数地域に行きたくない、そういうこともあって、そこが非常に、何というか、矛盾しているというか難しい部分があるかと思うんですけれども、そこについての先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

三宅参考人 いい御指摘だと思いますけれども、私がさっき言いましたのは、基本的に専門医と地域医療とは別に考えるというか、別々で独立してやっていかなければいけない。ただ、さっきも言いましたように、専門医制度というものがしっかりすると、地域医療に妨げになるようなことはできるだけ避けていくということなんですけれども、今はそれは妨げになっていますから、その例は。ですから、それは直さなきゃいかぬと思います。

 もう一つだけいいですか。ちょっとこの話題じゃないんですけれども、さっき本田先生が言われましたヒラリーの話ですけれども、確かにヒラリーは、日本の医療を見てクレージーと言いました。だけれども、あのクレージーという言葉は、狂っているという言葉じゃないんですよ。クレージーというのは、これは最大限の賛辞なんです。とてもまねができないほどすごいことだという意味で言っておるわけで、日本のやったことはすごいと思います。

 ただ、いろいろこれから、働き方改革、これも大事ですよ、それから、いろいろな地域医療、これも大事、それをやっていって、日本の最も自慢するところが普通になる可能性は十分あるんです。今、飛び抜けておるんです、その一九九〇年で。それが普通になってもいいという覚悟を持ってやってほしいということですね。普通になる可能性はあります。

串田委員 次に、片峰先生にお聞きをしたいんですが、エビデンスというのが非常に重要視されるということで、私も一昨日の質問のときに、検証というものが行われないでずっとやっていっても、戦後七十年間、偏在解決がつかないんじゃないかという部分で、非常にエビデンスというのを大事にしていかなきゃいけないというようなこともあるんですけれども、先生にとって、今後、偏在を解決するに当たって重要視したいエビデンスというのをもし御披露いただければと思うんです。

片峰参考人 どういう趣旨を取り上げるか、いろいろ考え方はあると思うんですよね。

 少なくともやはり、地域別に非常に細かいエビデンスというのは必要になってくると思います。そのときに、やはり医者の数だけではなくて、その地域ごとにニーズが異なるわけですから、ニーズに基づいたエビデンスですね。

 それと、例えばお医者さんも、数だけではなくて女性の比率であったり、それこそ年齢構成であったり、もちろん診療科別のお医者さんの数など、さまざまなエビデンスがあると思います。その中で、やはりそういったもの、それから、いまいち踏み込むことはできませんでしたけれども、外来診療の状況ですよね、開業医の先生方の分布、そういったもののきちっとエビデンス。

 基本的には、三師調査というものがありますから、そういったもの、あるいは各都道府県が得るエビデンス、そういったものを統合してということ、データベースをつくっていってということになろうかと思いますが、この部分はやはり国が責任を持ってそういったデータベースをつくっていく、ここは国の重要な役割なんだろうなと思います。

 これを都道府県にしかるべき形で提供する、あるいはお医者さんにも提供する、職業選択の意味でですね、そういった中で行動変容を促していく、そういうイメージだと思います。

 この指標に関しましても、今からいろいろなことをやりながら、その成果を見ながら、そこもやはり手を加えていくというPDCAサイクルを回すというのは物すごく重要だと思います。

串田委員 次に、本田先生と猪口先生お二人にお聞きをしたいんですが、一昨日質問させていただいたときに、今回の法案も偏在解決に果たして機能するかどうかちょっと心もとないなという気の中で提案させていただいたのは、国家公務員枠、要は、増員というのは何年か維持されるようですけれども、そこの中に国家公務員枠をつくって、ある一定の期間は地域だとかというのを指示できるような体制というのもどうだろうかと提案させていただいたんですが、加藤大臣からは余りいい感じの答えはいただけていないんです。

 現在、自治医科大学、防衛医科大学、それと産業医科大学でしょうか、九年間義務があって、その間におやめになり、そこの義務を果たさない場合にはいろいろ、授業料を返済するというようなこともあると思うんですけれども、何かそういう増員部分の中である程度強制枠みたいなものをつくったらどうかというような部分が、私としてはちょっと提案としてさせていただいたんですけれども、お二人の先生に、この提案は、いや、それは無理なんだよというか、こういうふうな方法もあるんじゃないか、そんなことをお聞かせいただければと思います。

本田参考人 ありがとうございます。

 実は、それは私、先ほどメディカルスクールでちょっと言い足りなかったところなんですけれども、なぜアメリカがメディカルスクールを導入したかというと、高校三年生卒業の時点で自分が医師として適性があるかどうかを判断させるのは酷だ、難しいというのが基本にあるんですね。逆に言えば、メディカルスクールで自分はそういう地域で初めから働きたいという人がいれば、恐らくそのやり方は成功すると思います。

 ただし、今のように、とりあえず成績がいいから医学部に入ろうかなという人にそれを適用するというのは非常に問題があるんじゃないでしょうか。

 そういう意味では、メディカルスクールをつくって、それをされると非常にスムーズなんじゃないかと感じました。

 ありがとうございます。

猪口参考人 医師の養成についてはこれからまだまだ議論しないとなかなか難しいし、とりあえずは医師の働き方をどうするかというところから始まっていると思うんですね。

 ですから、その後、少数のところに医師をどのような形で行くようにするかというのは、そういうお考えもあってもよろしいかと思うんですけれども、私は、先ほど本田先生も言われているように、実際の医師、それも科別に分けて、どの地域にどれぐらいいるのかということをやはり早急に調べていただいて、では、患者の発生数、疾患の発生数から考えて、どれぐらい各科の医師がいるのが妥当であるかという、やはり相当いろいろなところから見た指標が必要であろう。それによって、医師が不足のところはわかるわけですから、そこのところにどういう手当てをしていくかということをもう少し具体的にやっていかないと、ただグロスで医師が足りる足らないだけでは、これからはなかなか難しいなというような気がしております。

串田委員 三宅先生にお聞きをしたいんですが、先ほど諸外国もコントロールをしているというお話があって、偏在という問題は日本だけの問題ではないのかなとも思いつつ、諸外国がどんなことで解決をしているのかという部分を説明いただきたいと思います。

三宅参考人 先ほど申し上げましたが、アメリカの例なんですけれども、例えば、要するにアメリカは、この科はこれだけの枠しかないと枠を決めるんですね。それから地域も枠を決める。それに勝とうとしますと非常に、主権ですね、一種の、聖域じゃない。

 例えば、私はハーバードにいましたけれども、アメリカは、眼科は物すごく人気があるんですよ、眼科はいろいろな意味で。それで、ハーバードのトップテンのうちの何人かは必ず眼科を志望するんですけれども、なかなか眼科医になれない、競争が厳しくて。そういうことをずっと昔からやっているものですから、今言ったような地域の偏在とか科の偏在とか、そういうことは余り起こっていないようです。

 ただ、日本でもしそれをやるとしますと、まず僕が頭に浮かぶのは、開業医の先生方がかんかんに怒りますね。

 例えば、うちの大学には開業医の息子が物すごく多いです。そうすると、自分の病院を継がせようと思って医学部へ入れたのに、自分の希望の科に行けないとなると、これはとんでもない話だと言うんですけれども、僕は反対なんだ。ただ医学生が自分のお父さんの病院を継ぐために医者になるなんということは、どうでもいいことはないですけれども、それよりやはり人類に、日本人民に貢献するために医者になるという気持ちで医師になってほしいわけですよね。

 ですけれども、その辺は必ず問題になると思いますけれども、これは行政のしっかりした組織づくりがあれば、僕はできると思いますね。地域とか科の偏在をなくする一番具体的な、しっかりできる方法はそれじゃないかなと僕は思っています。

串田委員 時間の関係で、門田先生に最後の質問をさせていただきます。

 先ほど社会全体を見ていかなきゃいけないんだという、大変すばらしい、そういったお話をいただいたんですが、厚労委員会というか、今回の医師の問題も含めまして、社会全体的な観点から、先生から、こういったところを重視してほしいというようなものがありましたら、御披露いただきたいなと思います。

門田参考人 非常に難しい、答えるのに難しいという感じがするんですが、私、きょう一番申し上げたかったのは、いろいろなディスカッションの中で、今回のテーマということで限定はされているんだと思うんですけれども、その限定の中で、本当に一番目指すところは、きょう福沢諭吉の議論の本位という話をさせてもらいましたけれども、本当にそれは、今、地域医療なのか、あるいはいい医師の育成なのか、あるいはそれとも患者さんの何とかなのかという具体的なディスカッションの前に、そこの大きなポイント、本位と言うていますが、そこのところは何なのかということを迷わないようにしていくというディスカッションが必要なんじゃないのかなということを申し上げたいと思うんです。

 内容によっていろいろありますけれども、私は先生方に、そこのポイントのところのディスカッションを最初にやっていただいて、そして話を詰めていっていただきたいという感じがします。

 以上です。

串田委員 大変参考になりました。どうもありがとうございました。

高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表して心から御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 引き続き、内閣提出、参議院送付、医療法及び医師法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官沖部望君、文部科学省大臣官房審議官信濃正範君、厚生労働省医政局長武田俊彦君、労働基準局長山越敬一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 モリカケ、カジノだった内閣委員会から、久しぶりに厚生労働委員会の質疑の機会を得て、感謝を申し上げます。

 と同時に、今、西日本災害が大変深刻な状況、特に加藤厚生労働大臣のお地元の岡山も大変状況が厳しい中、この場で御答弁いただくのも心が痛む、もう日々たくさんの復旧や、あるいは被災者の捜索、そして暑くなってまいりましたから感染症対策など、厚生労働行政がかかわらねばならない部分は大きいと思います。

 野党といたしましては、こういうときですから、休戦という形で、各大臣には被災地のことに専念していただきたいですが、きょうは設定された枠ですので、御質問をさせていただきます。

 まず、きょう議題となっております医療法、医師法の関係におきましては、いわゆる地域枠というものが本格的には平成二十二年から始まっておりまして、例えば、平成二十九年度においては、九千四百二十人の医学部定員のうち千六百七十四人と、一七・八%、二割近い方が地域枠で学ばれるという状況を迎えております。

 私は、この地域枠が専ら医師不足、医師偏在、医師の配置という問題から語られることはあっても、医学教育という点においては、果たして、この地域枠で入られた方に十分な教育を保障しておるだろうか、それはその人の将来の役割モデル、ロールモデルも含んだ上での教育になっているだろうかということでお尋ねをいたします。

 質問の一点目ですけれども、いわゆる地域枠で入られても、途中で離脱をされるという方がおられると思います。これを義務違反者という呼び名で呼んではおりますが、私は、その約束した義務には違反しているかもしれないけれども、もしかして、そこには理由があり、御本人の問題だけでなく、仕組みの問題もあるかもしれないと思うものでありますので、加藤大臣にお伺いをいたします。

 厚生労働省として、こういう離脱者についての現状、あるいは、これまでの地域枠の経過の中で、どんな問題意識を地域枠として入った学生が持っているかなどについて、何かお調べになったり、あるいはお考えがあればお願いをいたします。

加藤国務大臣 阿部委員にこうして厚生労働委員会で答弁をさせていただく、ありがたいと思います。

 平成二十年度より、地域枠医師を中心に、段階的に医学部定員を臨時に増員しているわけでありますが、大学が特定の診療科や地域で診療を行うことを条件とした選抜枠を設ける地域枠、これは平成二十九年度は七十一大学で千六百七十四名いるわけであります。

 こうした地域枠の効果を検証するため、平成二十九年に、全都道府県に対して、奨学金を貸与した地域枠等に関する調査を実施し、その結果、奨学金を返済したことによる離脱者の割合、これは、二年目の臨床研修段階で二%、三年目の専門研修段階においても八%、こういう状況であります。

 しかしながら、一定枠の学生、医師が地域枠を離脱してしまっているということ、また、地域における医師確保に責任を持つ都道府県が希望するだけの地域枠を確保できていないということ、また、大学によってでありますが、医学部入学後に地域枠の希望者を募り、十分に希望者が集まらず、地域枠の学生が確保できない結果、実質的な一般枠として流用されてしまっている、こういった課題があるというふうに認識をしております。

 したがって、そのため、この法案においても、地域枠等の医師が、国内外の留学など、本人の希望に応じて多様なキャリア形成が図られるように、一定期間、各都道府県が指定する区域での勤務を行えること、これは前提としつつも、各都道府県にキャリア形成プログラムを策定することなどを盛り込んでいるところでございます。

 このほかも、都道府県、大学に対して、特に臨時定員増員に係る地域枠については、一般枠とは別の選抜枠を設けること等によって地域枠の学生を確実に確保していくことを求めること、また、地域枠の適切な運営がなされるよう、臨床研修病院が研修医の採用を行う際には、研修希望者の従事要件と研修プログラムにそごがないように確認をしていく、調整をしていく、そういったことについて情報提供を行う、こういったことの対応も行っているところでありますので、委員御指摘のように、地域枠という形で地域で従事をしていただく医師を確保していくというその趣旨と、そして、もともとの、医師として、その質を十分高めていただく、そのことのむしろ両立をしていきながら、実効的な偏在対策になるように取り組んでいきたいと考えております。

阿部委員 今、大臣の御答弁の中にもありましたように、研修の一、二年次、初期研修では離脱者二%、三年次で八%、四年次で一二%。年次が上がるほどに離脱者がふえてくる。

 これを必ずしも返済をすればいいということでもないし、また、縛るものでもない。何がキーワードかと申しますと、冒頭申し上げました、地域枠の皆さんの教育の内容を、もう一度この時点で虚心坦懐に見直してみるべきだと私は思うんです。

 と申しますのも、昭和四十年代後半に、自治医科大学といって、各自治体からの拠出によって、また各県が何人かそこに出して、医師を教育してまた戻すという仕組みでできた大学がございます。私も二〇一〇年にも視察に行かせていただきましたが、そこにおいては、理念としては総合医、地域医療ということを重んじた教育カリキュラムが一貫して組まれております。

 もちろん、卒後の義務年限があったりはしますが、結局、そこで学ぶ医師たちが、自分が将来どんな医者になるか、総合医という言葉でくくられておりますが、それは何なのかということを、学生段階からあらゆる教育機会に触れて学んでいっているんだと思います。

 一方の今の地域枠は、正直申しまして、大学による差はあろうかと思いますが、地域枠の皆さんと一般枠の皆さんは同じ土俵で教育をされております。その中で、果たして十分にこうした期待される総合医像というものが伝わっていっているだろうか、ここに疑念を抱いております。

 大臣のお手元にも、また皆さんのお手元にも、自治医科大学医学部のカリキュラムで、一年から三年、あるいは四年から六年と書いたものがございまして、ここは、各学年で総合医療と称するものを座学で学び、なおかつ、いろいろな実習、研修においても、地域医療ということが組み込まれております。

 そして、一枚おめくりいただきますと、「自治医科大学における教育ミッションと実現戦略」と書かれて、学生教育の獲得目標が明確にされております。

 ここには、他者の苦悩に心を寄せることができ、人間としての涵養ということ、それから、総合医及び総合的能力を持つ医療人に必要な基本的能力、あるいは、地域連携のあり方、保健行政におけるリーダーシップ、直面する問題を分析し、解決する能力を養う。私は、教育というのは、目標があって、それをきちんと伝えながら若い人たちをいわば育て上げていく仕組みなんだと思うんです。

 下には、自治医大における地域医療教育というものが、一年から六年までの一貫した地域医療教育、保健所の実習、介護福祉実習、ベッドサイド、もう非常に患者さんのすぐ在宅の近くまで行くようなもの等々、こういうカリキュラムが組まれているということであります。

 きょう、文科副大臣にお越しいただいておりますが、果たして、文部省として、各地方の医科大学で、地域医療枠の学生にどのような理念とどのような教育体系を持ってやっておるか、お調べになったことがおありでしょうか。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 少子化が進展する我が国におきまして、医学教育の中で地域医療について学ぶことは大変重要であると考えております。

 昨年の三月に医学教育モデル・コア・カリキュラムを改訂した際にも、地域医療に係る学修目標を充実したところでございます。

 特に、地域枠の入学者に対しては、他の学生よりも地域医療に関して充実した教育を行い、将来にわたって地域医療に従事するというキャリアビジョンを明確にし、地域を守るという使命感を持った医師を育てることが重要と考えております。

 また、地域枠による定員増員を認可する際には、文部科学省といたしましても、地域医療に関するプログラムをしっかり作成しているか確認しているところでもございます。

 委員のおっしゃるように、例えば長崎大学とか、また岡山なんかでも、そのような形で地域医療を実際的に一年次から早期体験学習などでやるといったことも行っております。

 一方で、委員の御指摘のとおり、自治医科大学においては、地域医療に貢献する医療人を養成することをミッションといたしておりまして、一年次より、早期体験学習、地域医療学総論といった系統的な実習や講義を開始されておりまして、五年次の臨床実習におきましては、出身都道府県等の卒業生が勤務している第一線の現場で臨床実習を体験させるなど、各学年を通じて、将来の地域医療、地域医療のリーダーとしてふさわしい医師になるための要素を修得させるカリキュラムとなっているということは認識いたしております。

 各大学の地域枠の学生に対しての取組を自治医科大学の内容と比較させていただきますと、地域医療を担う医師を養成するための教育については、入学後、早期から地域医療を体験させ、系統的な講義を行うなど、共通点がある大学もある一方で、系統的な講義が開始される時期など取組状況が異なっている大学もあるということも認識いたしております。

 今後、文部科学省といたしましても、この各大学の地域枠学生の六年間の教育を通じて、地域医療の意欲や使命感を涵養する取組が行われるように、しっかりと取組を促していきたいと考えております。

阿部委員 今、文科省からの御答弁のように、実はボリュームにおいても非常に差があります。一泊二日くらいの実習だけで、失礼ですが、お茶を濁しているところもあると思います。そういう中で、地域に逆に縛られるという意識しか学ぶ人が持てなくなったとしたら、それはそもそも、私は、この地域枠を設けた結果の失敗なんだと思います。

 自治医科大学のように、そこで目的意識を持って、プライドを持って、私たちは余人をもってはかえがたい地域医療のエキスパートなんだと思ってくれるような医師を育てられるかどうかは、ひとえに文科省と厚労省のコラボで、本当に一つ一つ丁寧に大学の教育を見直してみられるべき時期だと思います。

 加藤大臣にお伺いいたしますが、岡山には川崎医科大という大学がございます。川崎先生がこれも昭和四十年代につくられて、当初、総合医、そして、いつでも、誰でも、どこでもという理想に燃えてつくられた大学で、昔は家庭医の講座というものも大学でお持ちでありました。ところが、やはりだんだん専門分化する中で、逆に家庭医の講座というものが認められなくなって、今のような臓器別再編に流れていって、今日再び総合医、全人的医療、それが時代の大きな大きな要請だと私は思うんです。

 加藤大臣は、医師不足を何とか配置しなければという観点をどうしても背に背負っておられますけれども、ぜひ、岡山の歴史、岡山の福祉も医療も公衆衛生もです、すぐれていると私は日ごろから思ってまいりました。まさに、地域を担う医師とは、公衆衛生のノウハウ、全人的医療、地域を愛する心、それを涵養することでありますので、ぜひ、きょう、今文科の副大臣、お答えでありますが、大臣の目から見て、各大学の地域枠の学生の教育内容をごらんになってみて、改善すべき点が多々あると思いますから、これを今回の質疑をきっかけにぜひやっていただきたいが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 今委員おっしゃったように、今でも川崎医大は、地域で医療する方を育成していきたい、そういう思いを理事長始め皆さん持っておられるというふうに私は認識をさせていただいておりますけれども、そういった意味で、ある意味では地域包括ケアの中心を担い、医療、介護等の他職種と連携することを目指す地域枠医師については、委員お話しのように、臓器別ではなくて、幅広い領域の疾患等を総合的に診るための総合診療領域を目指していただくこと、これは大変大事だと思っております。

 今回の法案においては、地域医療対策協議会での協議を踏まえ、総合診療領域を含めたキャリア形成プログラムを策定、活用することによって、総合診療専門医の取得を希望する地域枠医師の適切なキャリア支援を実施することができるようになっておりますし、また、厚生労働省としては、総合診療専門医の養成を支援するため、平成三十年度予算において、日本専門医機構に対し、総合診療専門医プログラム責任者養成のための経費や、僻地、離島等において研修を行う医療機関に対する旅費等の財政支援も行っております。

 また、加えて、都道府県ごとに、人口動態や疾病構造の変化を考慮して、将来の必要な医師の見通し数を、平成三十年のできるだけ早期にその見通しについての検討を始め、平成三十二年には国が情報提供することを予定しております。

 この見通しを踏まえた地域枠の専攻医の適切なプログラム選定に資すること、こういった施策を考えているところでございますので、今委員お話がありますように、単に地域枠を設けるということだけではなくて、地域枠の方々がそれぞれまさに地域においてその力を発揮していただく、そうした技能というんでしょうか、そういったものを身につけていただく。そういった意味においては、今は専門医のことを中心に申し上げましたけれども、学部等においてもしっかりとそうしたことを身につけていただく、あるいは基本的なものを身につけていただくということは非常に大事なことだというふうに思います。

 引き続き、こうした点についても、文科省とよく連携をとらせていただきたいというふうに思います。

阿部委員 先ほども申し上げましたが、地域枠の学生が卒業後四年目の研修で一二%離脱するというのにはわけがあると思うんです。そこで専門性を学びたくても、例えば、専門医の、今度は平成三十年から専門医ですが、自分のやりたい科がないなど、あるいは臨床研修においても非常に研修病院が限られているなどとなると、もちろん、一方で総合医になる希望は持ちながらも、自分の医師のキャリアパスの中で学びたいことを学びながら自己研修、自己研さんしようと思っているわけで、大臣にお伺いいたしますが、果たして、地域枠の学生にとって、研修のチャンス、専門医のそうした研修を受けるチャンスは十二分に保障されているとお思いですか、それともまだ課題があるとお思いですか。あわせて、もう一万人近い地方枠の学生がいるわけですから、ぜひ、全員、皆さんにアンケートなり意見聴取なりをしていただきたいと思います。

 いかがですか。

武田政府参考人 済みません、私の方からちょっとお答えをさせていただきたいと思います。

 地域枠の学生でございますけれども、地域枠に入られた学生の方々、大変地域医療への高い志を持って入学をしているものと認識をしております。その後、入学当初のモチベーションを維持するためにも、例えば都道府県におきまして、主に地域枠医師を対象として、地域医療に従事する医師のキャリア形成上の不安解消等を目的としたキャリア形成プログラムの策定、こういった取組も大変重要になってきております。

 また、医学部の在学中におきましても、地域医療の現場における実習などを通じて、地域医療のやりがいを学ぶような取組を行っている都道府県も多数あると伺っておりまして、地域枠医師の離脱率が少ないのはこうした取組の果たすところが大きいのではないかと考えております。

 一方、御指摘もございましたが、地域枠の医師又は学生が医学教育を受け地域医療に従事する中で、地域医療以外の領域に関心を持つということも十分にあり得ることではなかろうかと考えております。

 地域医療の経験といいますのは、将来的にいかなる領域に進む場合においても、医師の基礎的な素養を育む観点から極めて重要になると考えております。例えば、卒後、僻地医療等に従事することとなっている自治医科大学卒業生についても、義務年限終了後、基礎医学、社会医学、国際保健の領域において多数活躍しているのが現状というふうに伺っております。

 したがいまして、地域枠医師についても、義務年限終了後に、地域医療にとどまらず、その経験を生かし、あらゆる領域で活躍することを私どもとしても期待しておりますし、都道府県の策定するキャリア形成プログラムにおきましても、そのような多様な学生又は医師のニーズに応えられるようなものであるように考えていきたいというふうに思います。

加藤国務大臣 今、実際、地域枠を活用して学部を卒業した方々が現在どういう形で働いておられるかということを、これは都道府県がそれぞれ把握をしておりますから、都道府県を介して今実態把握をしているところでございます。

 加えて、今委員からお話がありました、どこで働いているかということで、では、それぞれの医師、今医師として活動されている方が地域枠として研修したことがどうであったかとか、そういったことについて必ずしもまだ把握しているわけじゃありませんので、その辺、どういうやり方があるか含めて少し考えていきたいと思います。

阿部委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 私は、四年次で一二%の離脱率というのは低くはないと思います。多いと思います。その原因は、必ずしもお金を返せば自由でいいんだろうというのではないと思います。キャリアパスの関係かもしれませんし、いろいろ、学生時代に逆に十分なモチベーションを持てなかった教育の結果かもしれませんから、丹念にフォローしていただきたいです。

 特に、何度も比べて恐縮ですが、自治医科大学にあっては、卒業生のアフターフォローも含めて、きちんとやはり私はフィードバックしていると思います。その長年の取組が今日の自治医科大学をつくっているわけで、これを日本全国に開いたはいいけれども、果たして教育はどうか、その後のフォローはどうかというのは、もうこれは政治の課題、厚労省の、あるいは文科省の課題だと思います。よろしくお願いしたいと思います。

 引き続いてお伺いいたしますが、お手元にございます、開いて資料三ページ目。これは、内閣委員会、法務委員会等々でも取り上げさせていただきましたが、昨今、医師によって引き起こされた集団暴行事件がございます。東邦医大、二〇一六年四月、千葉大学、二〇一六年九月、いずれも複数の学生あるいは医師が、女性、それも若い女性にお酒を飲ませて、マンション等々で暴行に及んだという事件であります。

 これは全体、大学生による集団暴行事件として表をつくってございますが、私は、自分が医学部の出身でもありますので、医学部の学生が、あるいは医師がこういうことに手を染めるというか起こすということは規範の雪崩現象だと思いますし、安穏としていられないと思いますが、文部科学省といたしましては、こうした事態が現実に起きていることについてどのように認識しておられるのか、原因は何なのか、そしてどう対策するのか、教えてください。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 平成二十八年ごろ、医学部の学生による性暴力事件が複数回発生したことは、まことに大変遺憾だと考えております。

 これらの事件の要因につきましては一概には言えないものの、医学教育においては、一般社会倫理も含めた高い倫理観や人権意識の醸成が重要であるというふうに考えており、事件後、各大学においては、これらの教育が強化されたというふうに承知いたしております。

 また、このような事例や医療を取り巻く社会的要請を踏まえて、平成二十九年三月、先ほども申しましたが、医学教育モデル・コア・カリキュラムを改訂した際には、新たに、医師としての尊厳と責任を自覚し人格を高めることや、法規範の遵守及び法秩序の形成に努めることが明示された医師の職業倫理指針に関する規範を概説できるといった項目を盛り込むなど、医の倫理にかかわる学修目標を充実いたしております。

 また、今後、各大学における性暴力や女性の人権も含めた倫理に関する教育の状況等につきまして、実態把握を行うことも考えております。

 さらには、医師としての職責や倫理に関する教育がより充実されるように、各大学に対して促していきたいと考えております。

阿部委員 第四次男女共同参画基本計画の中にも、性暴力に対してきちんと医療者について認識を持たせることと書いてあるんですけれども、果たして何がなされたか、学校教育の中で。

 性暴力とは何かということが学校の場で教えられているとお思いでしょうか。私は丹羽副大臣に伺いたい。教えられていると学生に聞いてみてください。改めて、性暴力とは何かということが教えられているとお思いでしょうか。

 私は、今の御答弁はすごく総括的なんだと思います。実際には、世界じゅう、今、ミー・トゥー、私も私もと女性たちが声を上げています。女性の人権への、あるいは性暴力というのは子供にも男の人にも行われますから、相手の意に沿わない性的行為は全てその方に対する暴行として、これは断じて許されるものではないのだと具体的にやらないと、この間も起きたいろいろな、新聞記者さんに対してのセクシュアルハラスメントについて、女性の側がハニートラップしたんだみたいなことを言われる閣僚すらあるわけです。

 情けない国になっているし、まして医学部の学生に、私はきちんと、こういう事件をきっかけに、これはきっかけがあって、よくなかったことだけれども、そこから起こしてしまっている事実を踏まえて、教育の中に取り込んで、教えて、伝えて、人権を本当にしっかり持てる医療にすべきだと思います。

 加藤大臣、そもそも、医師法並びに医療法の中で、医師たちが身につけるべき素養ということで、私は、やはりこの問題というのはとても看過できない。例えば臨床研修制度の中には、「医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識し」云々となっているんですね。

 とても社会的な役割から逸脱していますよね、暴行をしたり、それもお酒を飲ませて無抵抗にして。こういうことが研修制度を受けた医師にも起きているということはどうお思いでしょう。

加藤国務大臣 今の、セクハラを始めとしたさまざまなそうした課題、これは別に医師にかかわらず全ての人、者に対して、もちろんきちっとしていかなきゃいけないということ、その前提の上で、やはり、医師という仕事において、患者さんからもしっかりとした信頼を受けていく、そういった上においても、そういったことはあってはならないというふうに思うわけであります。

 そういったことを今具体に大学等でどういうふうに教えておられるかはちょっと私は承知をしておりませんけれども、セクハラ等にかかわる担当の大臣としては、そういった問題点等について、それから、場合によっては管理者になることもあるわけでありますから、管理者としての対応も含めて、しっかりそういった知識や対応とかそういったこと、それをしっかりと身につけていただき、そうした場合があったときにもしっかり対処していく。そして、自身がそういうことを起こさない、これはもう当たり前の話でありますけれども、そういったことは医師においてもしっかり身につけていただきたいというふうに思います。

阿部委員 今の社会は、当然過ぎるほど当然のことがなされていないという意味で、社会倫理規範が崩壊してきているんだと思います。その中でも、わけても医師になる人は、御病気の人に寄り添い、誰よりも人権感覚を鋭く持ち、社会的な存在として人間に接していかなきゃいけない。もうこれは医学、医療の基本だと思います。

 私は、何度も申しますが、これだけ大学生の暴行事件があるというのは、世の中全体おかしい。だけれども、その中でも、やはり医療者がそれを少なからず担っているということは、もう非常な危機感を持って文科省にあっても厚労省にあっても取り組んでいただきたいと思います。

 お手元の資料の四ページ目。私は、六野党の皆さんと御一緒に、さきの国会もまた今国会も、性暴力に対する病院拠点型のワンストップ支援センターというものを提案してまいりました。性暴力が、警察等々に駆け込んで犯罪性を問われる以前に、とにかく、被害を受けた当事者がどこにすがっていいかわからない、とにかく守ってほしいと思う気持ち、あるいは場合によっては避妊の処置が必要な場合もある。

 病院というのは、例えばぜんそくなどで苦しいときでも、駆け込むだけで守られてほっとしたという感じで、救急に来られる患者さんがよく言います。受け入れてもらっただけで本当にちょっとほっとすると。そういう特別な機能を持ったところです。

 私は、この間ずっと、各委員会で質問しながら、この病院拠点型のワンストップ支援センター、ぜひ日本の中でもつくるべきだ、そういう法案を出させていただいております。

 加藤大臣にも以前にお話ししたかもしれません。大阪の阪南中央病院や沖縄の県立中部病院には、この病院拠点型のワンストップ支援センターがございます。これができることによって、下に書いてございますが、やはり多くの人たちがそこに行くことができる、病院を通じてまた児童相談所やいろいろなカウンセリング機関などにも紹介し、場合によっては警察にも紹介できる。

 今多く日本でやっておりますのはコールセンター、これは男女共同基本計画、先ほどの四次の中で、各都道府県一カ所という、主にはコールセンター機能でやっておりますが、病院との連携、あるいは、とにかく病院に行くということがもたらす安心感とはちょっと距離がございます。

 そこで、きょう、お二方おられますので提案があります。

 まず、文科副大臣には、各大学病院は必ず産婦人科をお持ちです。産婦人科のない大学病院はありませんので、ワンストップ支援センターを各大学に設置していただきたい。それは、学生に性暴力とは何かということを身近に教育するチャンスでもあります。

 あと、加藤大臣には、特定機能病院、これは高度な機能を持って、医療そのものを推進していく、日本の中の基幹病院です。こうしたところにワンストップ支援センター、窓口を持っていただきたい。

 本当は、もっともっとたくさん、国連の勧告では二十万人の女性に対して一カ所ですから、とても今私が申し上げた数でも賄えないけれども、こういう事態、事件を受けて、一歩前に進むための検討をしていただきたい。お二方から御答弁を求めます。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 性犯罪や性暴力の被害者に対して、被害直後から総合的な支援を可能な限り一カ所で提供していくということは非常に重要であり、また、被害者の心身の負担を軽減し、精神面を含め、その健康の回復を図っていくということは物すごく重要なことでもございます。

 そういった中で、緊急医療や産婦人科医療等の専門的な医師等による診療体制が整備された大学病院を拠点としてこのような事業が実施されることは、性犯罪や性暴力被害者の心身の負傷状況に適切に対応する観点から、とても意義があるものと考えます。

 御指摘の事業につきましては、例えば、和歌山県におきましては、和歌山県立医科大学病院内に県が運営するセンターが設置されております。

 今後も、文部科学省といたしましても、性犯罪、性暴力被害者のワンストップ支援センターは、これは文科省だけではできませんので、厚生労働省とも一緒に連携しながら、またこの取組の事例を幅広く大学病院にも周知していきたいと考えております。

加藤国務大臣 私自身が、今の厚労大臣をやる前に、こうした問題も担当させていただき、たしか阿部委員からお話があったからだったというふうに認識をしておりますが、SACHICOにも直接行かせていただいて、そこで働いている医師の方からもお話を聞かせていただき、そこで担っている役割の重要性、そして特に、医療機関としてすぐに対応できるということ、特に証拠の採取等、そういった問題、そういったことにも迅速に対応できるというお話と、なかなかまだ予算が厳しいです、こういうお話も伺ったところであります。

 ただ、センターの設置形態は、もう御承知のように、この病院拠点型だけではなくて、相談センター拠点型等、それぞれの地域の中に応じて展開をされておられるということなので、これでなければならないということはないんだろうというふうに思って、それぞれ地域の実情に応じて検討されていく必要があると思います。

 特定機能病院の要件にするというのはちょっとあれだと思いますが、ただ、地域において、そうした対応が特定機能病院に求められているということであれば、それは積極的に対応していただけるように我々の方からも支援をさせていただきたいというふうに思います。

阿部委員 求められているのであればじゃなくて、どこでも求められております。

 そして、加藤大臣には、男女共同参画を担当しておられるときもおありでしたし、韓国はこの病院拠点型のワンストップ支援センターを非常に充実させております。私は、こういうタイプもある、ああいうタイプもあるではなくて、やはりなぜ病院拠点型が必要とされるのかということで、SACHICOを見てなおかつまだまだであれば、次は韓国にぜひいらしていただいて、取組をごらんいただきたいと思います。これは国家的な問題です。女性の人権や、性暴力がどのように根絶されていくかということで、非常に進んだ取組です。

 あと、丹羽文部科学大臣には、確かに和歌山県立医大はやっておられます。それを広めていただけますよう、県と大学と地域と協力してやっていただく。そのことによって、実は、学生の教育の質も変わってまいります。

 私自身は、ちょうど学生時代に、水俣病を始めとするいろいろな公害の結果、お体を害された患者さんたちと多く会うチャンスを得ました。そこから、医療とは何かとか、多くを学ばせていただきました。学生であるというその貴重な時間に、人権、女性の立場、病者、弱者、そこをしっかりと自分の経験の中におさめていくことが全人教育になると思いますので、加藤大臣にも、丹羽副大臣にも、重ねてお願いをいたします。

 さて、次は、がんの画像診断の報告の見落としについてお尋ねをいたします。

 お手元にございます新聞記事、これは六月二十六日の読売新聞のものでございますが、多くのというか、たくさんの大学、慈恵医大、名古屋、横浜市立、千葉、兵庫県立がんセンター、横浜市立などなどで、画像診断上がんがあっても、例えば、自分の専門の臓器でないので、見落とした。心臓のお医者さんが、心臓の病気は見るんだけれども、たまたまオーダーして、腎臓にもがんがあったんだけれども、それが結果報告を見落としたという、これは具体例ですが、そうした事案が数多く日本医療機能評価機構に上がってきております。

 画像診断は長足の進歩を遂げております、画像も非常に鮮明になって。ところが、こうした事件が、早く発見すればがんで死ななくて済んだと、御家族がどんなにか悔しい思いをしておるかと思います。

 私は、大きな原因、二つあると思います。一つは、医師が臓器別再編の中で専門化していて、自分の専門分野しか見なくなって、全体のその患者さんの不調というところに目が及ばないような臓器別再編医療の結果。もう一つは、今、医療は長足のスピードでIT化されていて、オーダーすれば全ての検査ができ、そこにストックが結果も含めてされるのですが、呼び出さなければ、やったままずっと忘れられて、結局、気がついたときには手おくれという。医療のIT化に伴って、多種多様の検査がそのITの中に入って、重要性がなかなか喚起されないという、二つの構造があると思います。

 まず、文部科学省にお伺いいたしますが、こうした事案を受けて、医学教育の中で改善すべき点、おありでしたら、お願いいたします。

丹羽副大臣 今般の画像診断の報告ミス等を起因としまして患者が亡くなるという重大な事案が発生していることを踏まえますと、チーム医療や安全管理に加えて、医師は、みずからが専門とする臓器のみだけではなくて、全身を総合的に診療することについて学ぶことも非常に重要ということを改めて認識いたしております。

 医学教育におきまして、学生が卒業時までで身につけておくべき必須の実践的診療能力の学修目標を提示いたしました医学教育モデル・コア・カリキュラムにおきまして、患者中心のチーム医療に関する項目が従来からも盛り込まれております。また、平成二十九年三月にこちらのモデル・コア・カリキュラムを改訂いたしまして、委員おっしゃられましたヒューマンエラーの防止や制度、組織エラーの防止など、安全管理に関する記載をより具体化するとともに、新たに、医師として求められる基本的な資質、能力といたしまして、全人的、実践的能力に関する項目を記載するなど、全身を総合的に診療するための教育を充実させるところでもございます。

 文部科学省といたしましても、今般の事案を教訓といたしまして、このモデル・コア・カリキュラムの改訂の趣旨を踏まえて、より一層教育が充実するように、各大学に取組を促していきたいと考えております。

阿部委員 やはり、きちんとこうした事案の一つ一つを学生教育の中でも学生に伝えて、自分が起こさないようにする、そういうリピート、繰り返し繰り返しなんだと思います。

 加藤大臣には、IT化された今の医療の診療の中で、こちらが呼び出さなければ情報があっても死蔵されてしまう、このことについて、厚生労働省として何かお考えとするところ、改善点はあるか、教えてください。

加藤国務大臣 まず、そうした事態が、特にというか、大規模病院においても起きているということ、これは本当に遺憾だというふうに思います。

 厚労省としては、同様の事例が続いていることも受けまして、昨年の十一月十日に、全国の医療機関宛てに画像診断報告書等の確認不足に対する注意喚起の事務連絡を発出して、先月十四日にも改めて発出をいたしました。

 この事務連絡では、画像診断報告書等の確認不足対策として、画像検査の依頼、主治医による画像診断書の確認と患者への説明といった流れを整理し、業務工程を確立するよう取組例の紹介をし、今後、全国の医療機関において、医療関係者の方々に適切に対応していただけるよう、引き続き周知に努めていきたいと考えております。

 その上で、今おっしゃられた、いわゆるICT化が進んでいく中で、どうこの情報伝達ミスを効果的に防いでいくことができるのか、院内の適切な情報システムの構築といった面も含めて、専門家に今検討をお願いしております。その成果について、全国の医療機関で共有され、周知を図っていきたいというふうに思っております。

 この検討では、全国の病院システムに組み込まれている医療安全に資する機能、どういうものがあるのかということを把握し、そして、将来、あらゆる医療機関において適切な情報システムを選択、導入する環境を整えていく、そうしたことを目指していきたいと思っております。

阿部委員 厚労省が電子カルテガイドラインというものもつくっておられますので、そうした中で注意喚起をなさるとか、これ、一例、二例じゃないわけです。二〇一五年から一八年までにかけて、わかっただけでも三十七例、二〇一五年の一月から二〇一八年の三月までで三十七件、わかっただけでですから、非常な量だと思います。

 やはり、起こりがちな構造をとっているということなんだと思いますので、電子化されたことに伴うある種の、人は、自分がオーダー、手で書いてしたり、結果が物で返ってくれば、いや応なく目にするんですけれども、そのITの中に入っているというものは呼び出さないということが多々あって、今は患者さんにさわらないお医者さんもいるくらいですから、非常に私は深刻な事案だと思っています。かといって、電子化そのものを引き戻すわけにもいかないので、このガイドライン等々できちんと、例えば重要な事項が読まれていなければアラームが鳴るでもいいんです、あるいはクラークさんがそれをチェックして、ちゃんと医師に伝えるでもいいと思います。本来は全人医療です。だけれども、そう言っている間にも犠牲が起きますので、よろしくお願いします。

 最後の質問とさせていただきますが、大臣のお手元に、この間のいわゆる紹介事業者による紹介手数料が医療財政にどのくらい影響を与えているかということで、医師、看護師の職業紹介手数料の推移というペーパーを置かせていただきました。平成二十六、二十七、二十八の三年がございますが、年々、医師の紹介手数料は、平成二十八年で百七十四億、看護師の方が三百十九億、その他の医療業種を合わせると六百億というようなお金が診療報酬の中から介在する事業者、紹介事業者に落ちていき、それはどんどん上がってきています。本来は、医療行為に対して診療報酬が支払われていると認識しておりますが、これはもう医療業界では大変大きな問題になっていて、かといって、紹介業を使わない、もう半数以上が使ってお医者さんや看護師さんの紹介を受けているということがあり、しかし、ここが大変に大きくなっていると思います。

 このような事態に対して、厚生労働省として、医療費削減云々言われている中ですが、私たち医療者は、医療現場に、現場でやったことに報酬をいただきたい。どこかで紹介だけした業者さんに流れていくというのは、もうとてもやり切れないと思います。大臣のお考え、そして対策を伺います。

加藤国務大臣 有料職業紹介事業というそのもの自体は一応認められている仕組みでもあるわけでありまして、その中でより適切な、医師でいえばお医者さんを集めて自分の病院に来ていただく、そのためのコストということになるわけだと思います。

 診療報酬自体は、提供されるサービスの対価であり、そしてそのサービスを提供するに当たって必要な費用ということを賄うということで医療機関に支払われているものでありますから、医療機関がどういう形でそれを使われるのか、それはもちろんよりよい医療サービスの提供につなげていただきたいというふうに思っているわけでありますけれども、最終的にはそれぞれの判断ということになります。実際、今、各医療機関は、それぞれの状況に応じて、自主的な判断のもとで民間の有料職業紹介事業者を利用されているんだろうというふうに認識をしております。

 また、利用する際にも、みずからのニーズに合った適切な職業紹介事業者を選択できるようにすることは重要でありますので、本年一月一日から施行されております改正職業安定法においては、職業紹介事業者に対し、手数料等の情報を厚生労働省の運営する人材サービス総合サイトに掲載することを義務づけておりますので、医療機関も含めて、安心して職業紹介のサービスを受けていただけるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

 また、職業紹介事業者が紹介した求職者に早期離職を促すような行為を防止するための対応としても、職業安定法に基づく指針を定めさせていただき、例えば、紹介した求職者に対する転職奨励を二年間にわたって禁止するなどを内容に盛り込んでいるところであります。

阿部委員 紹介業に頼りたくて頼っているわけではありません、現場は。このことも含めて、引き続き質疑させていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、長谷川嘉一君。

長谷川委員 御指名いただきました長谷川嘉一でございます。

 きょうは、質問の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 また、冒頭ではございますが、西日本の大変な豪雨によって犠牲となられた多くの皆様方に、心からの哀悼の意を表したいと思います。また、遺族を始め、まだまだ被災されて大変な現状にあられる皆様方に対しましても、心からお見舞いを申し上げたいと思います。また、これに対して懸命の復旧作業に当たられる国を始めとして多くの皆様方に、心からの敬意とまた感謝を申し上げたいと思います。

 では、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。

 まず最初ではありますけれども、本日は冒頭に参考人の意見陳述及び質問が行われました。

 そのときに、愛知医科大学理事長の三宅養三参考人からこんなお話がございました。今回の医療法の問題に絡めてでありますけれども、平成十六年度に医師派遣制度が改正され、今日の地域の医師の偏在の大きな原因になっている、このことを冒頭指摘を受けました。また、それと同時に、大学病院の機能が派遣も含めて大変厳しくなっている現状を含めて、大学病院をもっと大切にすべきではないかという御指摘もいただきました。

 これは、一昨日、最初の質問で三ッ林裕巳委員がおっしゃられた、長年の大学病院等の勤務経験から、地方の病院へ出向し、さまざまな経験を経て大学に戻ってくる、そしてさらにそこで研さんや教育に当たり、さらにまた次の派遣に行くという、こうしたキャリアアップのシステムが今崩れてしまっている、そういったことも指摘をされ、その中で、大変示唆に富んだ御指摘としては、三宅先生と同じように、大学病院を中心に据えたティーチングホスピタル制度を国は活用すべきであるというふうにおっしゃられたことが、大変私は感銘を受けた次第でございますし、当局におかれましてもこの辺は十分御認識いただけたということで、私は質問に入らせていただきたいと思います。

 最初でありますけれども、今回の医師法、医療法の具体的な影響がさまざまなところで出てくると思いますが、まず一番目でございます。

 これは医師少数区域で勤務した医師を評価する制度ということで、国は、少数地域で一定の勤務経験を持つ医師を厚生労働大臣が認定し、一定の病院の、これは恐らくは地域医療支援病院のことを指していることと思いますが、管理者の要件として当該認定医師を位置づけることにしたというふうにお聞きをしております。

 医師偏在を解消するために医師少数区域への誘導策は重要なことでありますが、これが本当に、医師全体にとって病院の管理者になるものが本当にインセンティブとして働くかは甚だ疑問が残るところでございます。これについての御認識をお伺いいたします。

加藤国務大臣 この法案では、医師少数区域等において一定期間以上の勤務経験を有する医師を厚生労働大臣が認定し、その認定医師は、今お話がありましたように、地域医療支援病院等の一定の病院の管理者として評価をする、また、認定医師であることを広告することを可能にしていく、さらには、経済的インセンティブの対象とする、具体的な中身はこれから検討させていただきますが、ということを考えております。

 この認定制度を創設することによって、医師の少ない地域等での勤務に対する社会的評価を高め、そういった地域での勤務を後押ししていくということ、また、認定を得た医師を雇用又は支援する医療機関にインセンティブを設けることで、医療機関にも認定医師を雇用又は支援する誘因となっていく、そうしたことの結果として医師の地域偏在解消に寄与することを強く我々としては期待しているところであります。

 いずれにしても、こういったインセンティブ等も含めて、医療関係団体を始めとする関係者からの御意見も聞きながら、実効性の上がる仕組みになるよう、平成三十二年の四月に予定している制度の施行までにしっかりと検討を重ねていきたいと考えております。

長谷川委員 ただいまの大臣の答弁は私が思っている内容と違っておりまして、私は、インセンティブとしては、地域支援病院の管理者になるための要件としてこれは明確になってきているのではないかと思いますが、その他の点についてはこれからということでありますが、まず、この部分についてインセンティブとしてどのくらいの波及効果が得られるか、参考人で結構でありますけれども、お聞きをしたいと思います。

 全国にこの地域支援病院が何カ所ぐらいあり、また、具体的には、私の場合は群馬県出身でありますけれども、群馬県においては何カ所の病院がその指定対象になるのか、お答えいただきたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 今回の認定制度におきましては、医師の少ない地域での勤務を促すために、医師の少ない地域での勤務を不安と感じる原因となる障壁を取り除く環境整備を進めることに加えまして、医師の少ない地域での勤務を希望する医師等を後押しする施策、これを講じるということで医師偏在対策を進めてまいりたいということでございます。

 この施策の一環といたしまして、本法案におきましては、新たに医師少数区域等の勤務を一定期間経験した医師を厚生労働大臣が認定する制度を創設いたしまして、地域医療支援病院のうち、医師派遣・環境整備機能を有する病院の管理者として評価する方向としているところでございます。

 この地域医療支援病院につきましては、現在、全国で五百四十三病院でございまして、群馬県の状況につきましては、十三の地域医療支援病院があるというふうに認識しております。

    〔委員長退席、渡辺(孝)委員長代理着席〕

長谷川委員 ありがとうございました。

 全国で五百四十三でしょうか。私の資料では五百三十カ所となっているんですが、若干の差はあると思います。群馬県内では十三病院、これが本当に群馬県内の医師の偏在を是正するための医師全体のインセンティブになるとは到底思えないわけであります。

 今、大臣がおっしゃられたように、このインセンティブについては協議中ということであろうかと思いますが、具体的に更にこういったものも検討しているというものがあれば、この機会にお聞かせいただきたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 この大臣認定の仕組みが実質的にインセンティブとして効果を発揮できるように、私どもとしても関係者の方々と議論を重ねていきたいと思っておりまして、具体的な詳細設計につきましては、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会で検討してまいりたいと思いますけれども、法案の中にございます一定の地域医療支援病院の管理者要件といいますのはインセンティブのうちの一つでございまして、今後、私ども、予算措置の中でも、実際に地域で働く医師の方々に実感を持って評価をされていることが伝わるようなインセンティブについてぜひ検討させていただきたいと思っております。

長谷川委員 具体的な例はまだこれから、お示しになる段階ではない、ただ、まだこれから十分に検討の余地ありというふうに承りましたので、この辺は期待して、次の質問に移らせていただきます。

 二問目は、医師の偏在指標、医療法の部分でのこれについてでありますが、今回の法改正により、新たに国が定める医師の数に関する指標、「医師偏在指標」を踏まえた医師の確保数の目標、対策を含む医師確保計画を、今度はこれを都道府県が策定することとなっているようでございます。

 したがいまして、医師の数に関する指標の算定に当たっては、都道府県がその後策定する問題とも絡みますので、各都道府県の実情が十分に反映されてこなければいけないわけでありますので、これは、いつごろから策定に入り、いつごろまでに完成するものなのか、最初にこの辺を明確にしていただきたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘のございました医師偏在指標でございますけれども、これは、二次医療圏ごとの医療ニーズや人口構成、患者の流出入などの要素を勘案いたしまして、医師の多寡を示し可視化していく指標とすることを考えております。

 具体的には、これまでのような単なる人口十万人当たりの医師数では表現することのできなかった性別や年齢による医療ニーズの違い、具体的には、高齢化の進んだ地域と高齢化が進んでいない地域のこういった医療ニーズの違いを加味できる指標にすることなど、より実情に即した医療ニーズ当たり医師数を指標化し、さらに医師の高齢化の状況を可視化したものを想定しているところでございます。

 この医師偏在指標の詳細な設計については、法案成立後速やかに、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会の場での議論の後、結論を得て、平成三十年度中に医師確保計画の策定方法を都道府県にお示しする中で明らかにしていく予定としております。

長谷川委員 この法案が決定し次第ということで、三月ということになりますと、残す期間が八カ月ということになります。

 現在の県の状況を見ると、表にお示ししてございますが、資料一、二をごらんになっていただければと思いますが、偏在指標の導入ということで、可視化をするということでありますけれども、その前提として、県の状況は資料二にございますが、まず、医療計画における医師確保関連の記載が都道府県ごとにばらつきがあり、法定の地域対策の医師確保策も十七県でまだ未策定となっているというふうなことであります。また、地域医療対策協議会は、西村智奈美委員の質問のときにも示されましたが、七県で未開催、こんな状況であるわけであります。さらに、医師確保に関する各協議会が乱立をしているのがそれぞれの県の状況というふうなことで示されております。

 したがいまして、医師確保対策について、都道府県が主体的、実効的に対策を行うことができる体制をまず十分整えていくことが前提条件となると思いますが、この辺についての御認識をお伺いいたします。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘をいただきました各都道府県における医師確保に対する取組状況でございますけれども、現行の医療法におきましても、各都道府県は、医師確保対策について、地域の医療関係者と地域医療対策協議会において協議することとされておりますけれども、現状の課題といたしましては、その開催頻度が低く十分に機能していない、都道府県によってもかなり差はございますけれども、一般的にもそういった傾向がございますし、地域医療対策協議会を含め、医師確保に関する会議体が複数存在して効率的な運用がなされていない、こういった、今御指摘をいただいたような課題が存在をしておりました。

 したがいまして、今回の改正案の中で、こういった課題への対応といたしまして、まず、医育大学や医師会、主要医療機関等を構成員とする地域医療対策協議会を、医師確保計画に定められる医師確保対策の具体的な実施のための協議を行う場として法律上位置づける、こういうことで位置づけを明確にするといったこと、それから、地域医療センター運営委員会など類似の協議会等を廃止し、地域医療対策協議会に一本化するということ、そしてさらに、都道府県が実施する医師派遣等の対策は、地域医療対策協議会において協議が調った事項に基づいて行うこと、こういったことを求めることとしておりまして、今後は、地域医療対策協議会の実効性が高まり、きちんと開催がされていくものと考えてございます。

 また、私ども厚生労働省といたしましても、各都道府県に対して、地域医療対策協議会の適切な運営につきまして指針を示すとともに、フォローアップにも努め、より適切な運営がされるよう確保してまいりたいというふうに思っております。

長谷川委員 三月末日までにこれを取りまとめて、各県がこれを一年間かけてつくり出していくというふうなことになろうかと思いますけれども、今これだけばらばらになっている県の状況を踏まえて、本当に各県が足並みをそろえられる状況にあると御認識なのかどうか、もう一度この辺について御答弁をお願いいたします。

武田政府参考人 御指摘がございました、過去に開催をされていない都道府県におきまして、個別の事情を私どももお伺いしておりますけれども、地域医療対策協議会ではないけれども、例えばほかの検討会又は運営委員会のようなところで協議がされているといった実態もあるようでございますので、各都道府県ごとにこれを地域医療対策協議会に集約していただき、私どもとしても、個別の都道府県の事情もよくお伺いしながら、都道府県とともにしっかりした体制がとれるように努めてまいりたいと思います。

長谷川委員 そのように期待をして、次の質問に移らせていただきます。

 次の質問は、地域医療対策協議会の強化という部分であります。

 これについては、医師確保計画の実際に関しては各都道府県の地域医療対策協議会で協議を行うこととしておりますが、きょうは表を、お示しをした三をごらんになっていただければと思います。

 これについてちょっと触れさせていただきますが、地域医療対策協議会と地域医療支援センター、現在の位置づけという部分がございますけれども、この協議会の設置が平成十六年にされ、医師確保を行うための具体的施策を協議する場として各都道府県に設置、そして、構成要員は都道府県、大学、医師会等々となっているということであり、現行制度においてその役割がある。

 また、それと同時に、具体的なそれを行う組織としては地域医療支援センターがあり、この設立の経過は、地域医療が崩壊したという緊急事態があってだと思いますが、平成二十三年、都道府県が医師確保関係事務を行うための機関として開始した。二十六年から、地域医療介護総合確保基金を活用し、都道府県の事務として、医師の派遣、キャリア相談、また医師確保関係事務を行うことが法定され、地域医療支援センターはそのための事務の実施拠点として位置づけられたということでありまして、平成二十八年四月までに全ての都道府県に設置がされたというようなことであります。

 実態としてこれを見ると、協議会については、先ほどと繰り返しになるかもしれませんが、年一回から四回、年一回未満というものが六都道府県、全く開催されなかったのは先ほどの七県であり、地域支援センターの現状を見ると、キャリアプログラムの策定状況においては十三の都道府県で未策定となっているという現状です。

 また、医師派遣の実績については、六千九十五名の実績に対して、県別で見ると何と三人から四百五十人という大きなばらつきがございます。たまたまでありますけれども、群馬県が三名、神奈川県が三名。恐らく、これはちゃんとした数字をつかめていないのではないかと私は思います。

 極めてこの辺が危惧される状況がございますので、実態把握をまず早急に同時進行でやっていただき、来年三月の取りまとめが行われた後のプログラムがしっかりと各県足並みがそろって行えるように、この辺は御指摘申し上げたいと思いますが、この辺についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

武田政府参考人 ただいま御指摘がございました、都道府県に置かれております地域医療対策協議会と地域医療支援センターでございますけれども、これまでの設立の経緯は今御指摘をいただいたとおりでございますけれども、現在の法律におきましては、この地域医療対策協議会と地域医療支援センターの関係、役割分担が必ずしも明確ではございません。

 そういったこともありまして、現在の地域医療センターの運営状況を見ますと、キャリア形成プログラムが十三の都道府県で策定されていない、また、大学との連携が非常に大事になってまいりますけれども、十六の都道府県で大学との連携が不十分、こういうような実態も私どもとして把握をしております。

 そして、今回の法律の中におきましては、地域医療対策協議会の役割をはっきりさせるとともに、構成員の中に主要な医療関係者を位置づけることにより、地域医療対策協議会の機能の強化、県と大学その他の関係者との連携の強化を図った上で、協議が調った事項に基づいて地域医療支援センターが実施拠点としての任務を担う、こういう整理をさせていただいたところでございます。

 今回のこういった整理によりまして、各都道府県におきましてより医師確保対策を進めやすい環境が整うものと考えておりますけれども、引き続き、都道府県の御意見もよく伺いまして、実態を把握した上で適切な指導に努めてまいりたいと思います。

長谷川委員 地域医療対策協議会とセンターの関係として資料四にお示しをされたものをお手元に配付させていただきますが、これについてちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 まず、左の方が、現行として、地域医療対策協議会の役割が不明確、また地域医療センターとの関係も役割分担も不明確ということは、今、局長の御答弁の中にございましたが、まず、構成員は、都道府県、また大学、医師会、主要医療機関、役割としては、協議事項が具体化されていないということがあった。また、協議の方法としても、具体的な協議方法も定められていなかったということと、また、国のチェックについてでありますが、協議の内容に対する国のチェックの仕組みもなかった。形はつくったけれども、国が統制をできない、チェックもできないということが先ほどのデータのばらつきにあらわれているというふうに思っておりますし、それが医療政策、医療行政にも災いを及ぼしているのではないかというようなことで、私は御指摘を申し上げたいと思います。

 また、地域医療支援センターでございますが、これは、医師確保対策の事務の実施拠点として、二十六年度、緊急な事態として対応されておりますけれども、これについての関係性が不明確ということは甚だ考えられないような状況で行われてきたということで、これについての改善策は右の方に示されておりますが、果たして、この右の内容が具体的に実施できるかどうかについても、今後注視していかなければいけない問題だと思います。

 特に、見直し後には、地域医療対策協議会の役割を明確化し、協議プロセスの透明化、そして地域医療支援センターとの関係、役割の明確化、今までなされていなかったものを今後、来年の八月以降は実施していくという準備に入られるわけでありますから、今の状況について、ちょっとこれはお聞きしなければいけないと思っております。

 また、構成員としては、今言ったように、都道府県、大学、医師会等々、役割としては、先ほど来出ているキャリア形成プログラム、医師の派遣調整、キャリア支援、それから派遣医師の負担軽減、大学の枠の云々、たくさん、多岐にわたっておりますが、本当にこれだけの役割をかぶせてこれが機能できるかどうかということは甚だ心もとない部分ではないかというふうに思っておりますので、この辺もあわせて後ほど御答弁いただきたいと思います。

 また、協議の方法として、指標に基づき、構成員の合意が必要で、協議結果を公表しますよというところまで述べられておりますけれども、本当に、この協議のプロセスの透明化がどのくらい図られるんだろうかということもあわせて御答弁をいただければと思います。

 また、国のチェックが一番重要な部分であります。これについてもお知らせをいただければと思います。

 そして、センターとの関連は、都道府県が実施する医師派遣等の対策は、地域医療対策協議会において協議が調った事項に基づいて行う、これを法律に明記するとありますけれども、この辺についてもう一度明確な御説明をいただければと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、地域医療対策協議会の、法案による見直しの内容につきまして御指摘をいただいたところでございます。

 先ほども御答弁申し上げましたけれども、これまでの法律的な位置づけによりますと、地域医療対策協議会と地域医療支援センターの関係、役割分担が余り明確ではございませんでした。

 例えば、地域医療対策協議会につきましては、協議事項が具体化をされておらず、医療従事者の確保というようなことでございました。

 また、地域医療支援センターにつきましては、法定事務としては、都道府県内の医師確保状況の調査分析でありますとか医療機関や医師に対する相談援助という法定事務はございましたけれども、喫緊の課題として各地で対策が迫られていた医師派遣のあっせん、調整につきましては法定外の事務で、通知並びに予算事業として行われてきたわけでございます。

 また、この位置づけも明確ではございませんでしたので、例えば、都道府県によりましては、大学に委託する場合もあれば県庁内で実施をするという場合もございました。そういったことが、必ずしも大学と連携が図られていない都道府県があったり、医師派遣の実績が少ないところがあったりというところにつながっていたのではないかと考えられております。

 したがいまして、今回の法案による見直しにおきましては、地域医療対策協議会の構成員を明確化するとともに、地域医療対策協議会で協議する事項を一つ一つ法定化しており、その中の一つとして非常に重要になってまいりますキャリア形成プログラム、医師の派遣調整、派遣医師のキャリア支援策などなどにつきましても法定化させていただくこととしておりますし、協議の方法につきましても、医師偏在指標に基づいて協議をする、そして大学、医師会などの関係者と合意をいただく、そして協議結果を公表する、こういうことによって協議プロセスの透明化が図られるものと考えておりますし、今後、私どもとして、この地域医療対策協議会の運営に対して指針を示してまいりたいと思いますので、国としても責任を持ってフォローアップする体制が整ってくるものと考えております。

 その上で、地域医療対策協議会と地域医療支援センターの関係につきましては、地域医療対策協議会があくまで方針全体を明確にするとともに、その協議が調った事項に基づいて、実施拠点として地域医療支援センターが事務を行う、こういう形で明確化をいたしますので、より医師確保対策という意味では、都道府県における実施体制が整うものというふうに考えておりますし、私どもとしても、より実態を把握した上で、効果的な取組が進むように鋭意努力をしてまいりたいと思います。

長谷川委員 県に期待をするというよりも、県をしっかり、指導という言葉は悪いのかもしれませんけれども、チェックし、支援していただきますよう要望をさせていただきます。

 最後になりますけれども、時間の関係で実態だけになりますけれども、新たな専門医制度をつくられます。これは、平成三十年から研修が始まったものについて、制度を管理する日本専門医機構に対し、各都道府県から専門研修プログラムの仕組みや更新に際して、地域医療の観点から必要な措置の実施について意見をする仕組みが法定化されておりますが、しかし、この各県からの意見の反映は、日本専門医機構に努力義務が課せられているにすぎず、その実行が十分担保されているとは言いがたい状況であります。

 また、きょうの参考人の陳述の中にもありましたけれども、この専門医機構というのは、行政の一端を担うものではなくて、あくまでも認定医や専門医をしっかりつかさどるものがその機能であって、新たにこの機能を付加するとすれば、それなりの対応を国がしっかりしていただかなければ機能しない、また、各県がここに現在問合せをしても、その答えが返ってきていない現状があるということを御指摘申し上げ、質問を終わらせていただきます。

渡辺(孝)委員長代理 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日午前中、お忙しい中、参考人の皆様に来ていただきまして、その御意見、陳述内容やディスカッション、そういったものも参考にしながら、討論を続けてまいりたいと思います。

 まず、全ての参考人の先生方にもお伺いしたんですが、専門医制度に対する責任の所在ということに関して、今までは日本専門医機構だったわけでありますが、本法案によって、それはやはり専門医機構のまま、そこが最終的な責任をとる機関であるのか、それとも厚生労働省になるのか。

 そしてまた、やはり午前中の参考人質疑でもありましたが、責任にはやはり権限も伴わなければいけないと。その最終的な権限に関して、最終的なものを専門医機構が持つのか、それとも厚生労働省が持つのか、それをお答えいただけますか。

加藤国務大臣 御承知のように、専門医制度、十九の診療領域について、日本専門医機構や各学会が定める規定に基づき、基幹病院が研修プログラムを作成し、各学会がそれを評価し、日本専門医機構が検証する、こういう仕組みになっているわけでありまして、そして、こうした策定された研修プログラムに基づいて、基幹病院及び連携病院においてローテートの研修が行われる。

 したがって、専門研修の内容や質などに関する事項については、まずは日本専門医機構、そして各学会、研修を行う医療機関、それぞれに責任を有しているものというふうに考えます。

 他方で、国や都道府県は、医療法に基づき、医療提供体制の確保に責務を負っているわけでありますから、専門医制度が実施された結果、特定の地域で特定の診療科の医師がいなくなるなどの事態を生じさせないよう努めなければならないわけであります。

 このため、本法案では、医療提供体制に重大な影響がある場合は、厚生労働大臣から日本専門医機構に対し、改善の要望を意見する仕組みが盛り込まれているところでありますので、専門医制度の運営が円滑に行われるよう、厚生労働省としては、医療提供体制の確保との観点から日本専門医機構に対して対応していく、こういうことになるので、一義的には日本専門医機構、そしてそのもとで各学会、そして研修を行う医療機関、これが責任を有する、こういうことになっているわけであります。

吉田委員 わかりました。

 大臣、最初、御丁寧に答弁いただきましたが、最後の部分、一義的に専門医機構に責任と権限もあるという理解でよろしいですね。わかりました。

 ここがやはりはっきりしないと、いろいろ今後トラブルや、実際かなりの混乱が起こっているんです、大臣。もう御存じだと思いますけれども、新専門医制度に関してはかなりの混乱が起こっているので、こういったところをしっかりと交通整理して、所管の官庁として、厚生労働大臣、やはり御指導力も発揮していただかなきゃいけない、そのように考えるわけです。

 そうすると、今申し上げたように、新専門医制度、かなりの混乱をしてしまったんですね。そこで、専門医機構が、事務的能力がかなり脆弱な状況がやはり各所から指摘をされていますし、私もそう思います。ですので、今回の法改正に伴って、専門医機構の事務的能力の強化というのは必須ではないかと思うんですね。

 そこで、そういった財政支援とかを含めた強化策、日本専門医機構の強化策をとられるのかどうかということを端的に御答弁いただきたい。局長でも結構です。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま大臣からの御答弁にございましたように、一義的には日本専門医機構がこの実施について責任が属するものというふうに考えており、私どもといたしましては、医療提供体制に重大な影響がある場合について改善の要望を意見するというような仕組みで考えているところでございます。

 したがいまして、事務体制につきましては、日本専門医機構におきまして責任を持って事務体制の強化に努めていただきたいと考えているところでございますけれども、具体的な事業の中身によっては、私どもとしても支援をしていくというような形になろうかというふうに考えております。

吉田委員 ありがとうございます。

 局長、ちょっと状況によっては、厚生労働省も事務的な、人を派遣するとか、そうなるとあちらもちょっと嫌かもしれませんけれども、やはり必要なそういった援助はしていかないとなかなか厳しいんじゃないかなと思っています。専門医制度はかなり大きなドラスチックな動きでございますので、事務的能力を相当強化しないと難しいんじゃないかなと思います。

 そして、情報公開に関して一言お答えいただきたいんです。

 厚生労働省から日本専門医機構に意見、提言、指示をしていくということですよね、必要に応じて。それはどういったときにかもう教えていただきました。そういったときに、この指示は、どういった指示を出したり、どういった方向性を厚生労働省が日本専門医機構に提言、具現しているかということの情報公開が必要かと思うんです。それがないと、やはり学会やプログラム施設、そしてまた専門医を目指す医師たちが疑心暗鬼になってしまったりするので、その情報公開について、少しはっきりとした御答弁をいただきたいなと。大臣でもどちらでも。では、大臣、お願いします。

加藤国務大臣 この法案で、都道府県知事の意見を聞いた上で、厚生労働大臣から日本専門医機構に対し研修計画の改善を意見する仕組みが設けられているわけであります。これを受けて、日本専門医機構においては、研修施設の認定基準の見直しや都市部を対象とする研修定員に上限を設定するなど、研修計画の内容に当該意見を反映させるよう努力義務が課せられている。

 今、委員は、厚生労働大臣からの働きかけという話でございます。

 厚生労働大臣が日本医機構に対して述べる意見については、その客観的妥当性が担保されることは当然でありますから、あらかじめ、医療関係者や地方公共団体の代表者が参加する公開の場、現在想定しているのは、医道審議会に新たな部会を設置するということを考えておりますので、当然それは公開の場ということになります。そこで議論した上で、日本専門医機構に対し厚生労働大臣が意見を述べること、その意見についても当然公表していきたいと考えております。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。十分なお答えをいただきました。

 それでは、午前の参考人の先生方のいろいろなお話の中でもあった、それに関連した内容で、日本の医師の偏在や診療科の偏在には、開業医と勤務医、そして大学病院のようなアカデミアに所属する医師の数がアンバランスであるということが一因ですね、実際は。諸外国のように開業に対して一定の制限や条件を付与する予定というのは、今後検討とかもしていくのかどうかということも含めて教えていただけますでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 医師の偏在対策を議論する中におきましては、我が国がこれまで自由開業医制という形をとっておりまして、これを現在ともに維持されているわけでございますけれども、一方で、一定の規制が必要ではないかという御意見もございます。

 この点につきましては、無床診療所の開業規制につきまして、本制度の検討過程におきましても、厚生労働省の医師需給分科会でも議論を行ったところでございます。

 さまざまな御議論がございまして、昨年十二月の本分科会の第二次中間取りまとめにおきましては、国民皆保険をとる我が国では、被保険者間の医療アクセスの公平性を図るため、医療保険制度による対応も含めて、他の医療資源の偏在是正の仕組みも参考に、無床診療所の開設に対する新たな制度上の枠組みを設けるべきとの意見があった一方で、憲法上の営業の自由との関係の整理や、駆け込み開設の懸念など、法制的、施策的な課題を全てクリアしなければそのような枠組みの実現は困難との意見もあったということで、それぞれの意見を整理する上で、今回の法改正では導入を見送った経緯がございます。

 今後とも、この需給分科会におきましても、今回の法改正の施行状況をよく見ながら引き続き議論をするということになっておりますので、私ども、この医師偏在対策の施行後速やかにその政策効果を検証する中で、必要に応じ、さらなる医師偏在対策について十分議論を行ってまいりたいというふうに考えます。

吉田委員 局長、ありがとうございます。

 両論併記ということで、今後も課題ということで議論していくということなんだと思います。わかりました。

 だから、やはりそういったものが入ってくる可能性もなきにしもあらずということなんですよね、多分、今の局長のお話だと。それは、ただ、議論の上でやっていただきたい、そのように思います。

 それでは、午前もお話ありました。午前の参考人の先生方お二人、外科医でした。外科医はもうどんどん減っていますね。経験が十分な外科医が、勤務の過酷さや給与が不十分、そういった条件もありまして、四十歳で大体脂が乗って一番手術が上手な外科医が、内科医や消化器科、肛門科、場合によっては整形外科を標榜して開業してしまう、そういった状況は本当にあるんですね。

 実際、外科医の日常は過酷です。大体、朝七時半ぐらいからカンファレンスをやって、オペの患者さんやちょっと重篤な患者さんのことをみんなで共有して、九時から外来やオペをします。午後からは大体、総合病院だとみんなでオペをして、夕方五時から七時ぐらいに手術が終わって、自分の患者さんを診たりします。明け方も、自分の持ち患者さんが亡くなったら当然明け方に呼ばれますし、大体、若い外科医なんて、帰るのは毎日十時ぐらい。そこから、夜、中華料理屋さんしかやっていないものですから、大体中華料理とかを食べて、外科医の先生、結構肥えている方も、太っている方もいらっしゃるんですけれども、あるいは本当にたばこを吸う方も多いですし、やはり相当ストレスがあると思います。

 でも、外科医の先生方は、僕らの太ったおなかは、鑷子とかペアンが落ちそうなとき腹でこうやって押さえるんだと言って、そんなようなことを言いながら明るくやってくださっていますけれども、ただ、そういう状況なんですよね、大臣。こういった環境で、訴訟のリスクも今どんどんふえています。

 午前の参考人質疑でもあったんですが、今明らかに外科医が一番、一般外科ですね、過重労働になっている現状を見て、やはり何かしらの対応策をとってあげないと、外科医は減少の一途をたどると思います。それは、給与面であったり処遇面、PAの話も本日議論の俎上に上がっておりましたが、何かやはりやっていかないといけないと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 非常に外科の方の生活についてリアルに御説明いただきまして、ありがとうございます。

 私の地元でも外科の方が本当に少なくて、深夜の救急では、外科は私どもの地域では対応できない、こういう状況にもなって、外科不足、大変深刻な事態になっていると思います。

 その中で、外科を目指している方、残念ながら、減ってはいないかもしれませんけれども、全体がふえていますから、その中において停滞しているということは、相対的には減っているという言い方もできるんだろうというふうに思います。

 そうした理由の中にはいろいろと、これからこういう医師になろうと思う方々が、現状を見ながら、今お話があったように、どうも外科は自分の自由な時間もないし、あるいはキャリアパスとしてどうなのかとか、いろいろな御判断をされた結果、今の状況があるんだろうと思います。

 そういった意味においては、やはり今、働き方改革を進めさせていただく、これは外科だけではありません、そういったことを進めていく中において、もちろん、特に外科の場合にはすぐに命にかかわるオペレーションの問題、手術の問題もありますから、応招義務、そこをどう考えていくのか。しかし、その範囲の中で、現在は本人ができないとか人がいないとかいう以外は対応しなきゃいけないとなっていますけれども、本当にそういうことなのかどうかということも含めて、しっかり議論させていただくということがまず大事なのではないかなというふうに思います。

 それからあとは、こうした診療科を希望する方をどうふやしていくのかという意味においては、やはり将来像ということをお示しすることで、これから外科も少なくなっていくのなら俺もやってみようかな、そういう思いを持っていただく。あるいは、それに対してどう地域枠等を活用していくか、これは地域枠だけじゃなくて診療科も設定できますから、そういった形のものを含めた総合的な対応が必要なんだというふうに思います。

 まず、本質においては、やはり働き方をどう進めていくのかということが大変大きいのではないかなというふうに思っています。

吉田委員 かなり重要な問題として捉えていただいていることは、私は今お話を聞いて理解できました。

 あと給与面も、大臣ちょっと、外科は本当に時間外の労働時間に対してかなり安いものですから、そこもやはり勘案してあげないと、貧すれば鈍するという言葉もありますから、大臣、ぜひ御検討いただきたい。

 今、くしくも大臣がおっしゃった応招義務と働き方改革に関して、これは簡便な通告しかしていないので、局長でも結構ですので、ちょっと聞いてまいりたいと思います。

 本法案に関しては、医師の応招の義務に関しては全くこれまでどおりという理解でよろしいですよね。どうぞ、局長。

武田政府参考人 今回の法案に関しましては、応招義務ということの解釈変更ということではなく、従前の解釈を前提として偏在対策を進めるというスタンスに立っております。

吉田委員 ただ、働き方改革をしていくときに、やはり応招の義務は触れざるを得ないところだと本当に思いますよ。大臣は絶対わかっていて、私も、ある病院で勤務医をしていたときに、かなりそこは、ちょっと周りがバイオレンスな地域を抱えるところで、しょっちゅう呼ばれるので病院の横に住んでいたんですよ。

 当時、実は、月のうち四日間だけ部長が待機をして、あとは全部私が待機していたんですね。一月を三十一日とすると、二十七日待機をしていたわけですけれども、こういった待機の仕方、体制で働くことって、働き方改革、できるんですか。

    〔渡辺(孝)委員長代理退席、委員長着席〕

武田政府参考人 お答えいたします。

 現在、私ども、働き方に関する検討会で議論を進めておりますけれども、この中でも応招義務というのは一つの論点になってございます。

 二月二十七日にまとめた中間的な論点整理の中でも、応招義務に関する意見といたしましては、医師法十九条に定める応招義務については、社会情勢、働き方、テクノロジーが変化してきている中で、今後のあり方をどのように考えるのか、個人ではなく組織としての対応をどう整理するかといった観点から、諸外国の例も踏まえ検討してはどうか、こういう論点が挙げられているところでございます。

 私ども、これらの意見も踏まえまして、応招義務により医師が過重な労働を強いられることのないよう、今年度末まで、検討会の議論の中でさまざま整理を進めてまいりたいと思っております。

吉田委員 もうそれは局長、わかっているんです。私はもうちょっと、だから具体的に聞いているんですよ。

 例えば、一カ月のうち、医者がいないから、ほぼ毎日のように待機をすることが可能なのかどうかということや、例えば、病院の隣なんかで、外科系の医者が隣に住んでいると毎日のように呼ばれるわけですよ。毎日のように呼ばれちゃうんです、どうしても。その場合に、この働き方改革でそれを例えば拒否したり、ちょっときょうはもう無理だし勘弁してくれ、そういったことができるようになるのか。ただ、これをするとなると、応招の義務にやはり抵触するわけですよ。

 局長、前置きはいいですから、端的に、個別具体的にできるだけ答えてください。お願いします。

武田政府参考人 医師の働き方改革の議論の中では、さまざまな医師の働き方の実態、病院内当直の場合もありますし、オンコールの場合もありますし、随時呼び出される場合もございます。これらについてどういうふうに考えていくのか。先ほど応招義務の論点の中で、組織的な対応との関係というのもございました。これは、個々の医師の応招義務のみならず、医療機関全体としての診療に対する体制、そういったことの関係もございますので、ぜひこれは整理をさせていただきたいと思っております。

吉田委員 局長、わかりますよ、答えにくいのは。議論だから。

 ただ、ではもうちょっと、絶対にアウトな場合の話を今からしますよ。これはちゃんと答えてくださいね。

 脳外科で動脈瘤が破裂したときのクリッピング、動脈瘤をクリップするクリッピングというのは、大体三十時間とか平気でかかるんですよ。三十時間ですよ。これは御理解されていないと思うんですよ、多分、役所の方とか。三十時間こうやって働くことというのは、もう絶対、どういうルールをつくっても働き方改革にひっかかりますよ。だって、同じ執刀医が三十時間やるんですもの。かわるわけにいかない。

 こういうのをどうするんですか、局長。

武田政府参考人 ただいまの御指摘の中で、三十時間連続勤務のような実態が外科の場合にあり得るという点、それから応招義務との関係の点、論点がさまざまございます。

 例えば、働き方改革の観点からいたしますと、連続勤務については制限をかけていったらどうかという議論がある一方で、連続勤務がどうしてもやむを得ない場合について、かわりの休憩時間をとる、又は、週又は月単位で必ず休日をとるといった別途の措置をとる場合もございます。

 そういった点も含めて、今後議論を詰めてまいりたいと思います。

吉田委員 なかなかまだ、私も、全部答えをいただけるとは思っていないです。実際、今議論の途中ですからね。ただ、こういうことがあるということを役所の方にもしっかり理解していただきたいという意味で、きょうはるるお話をしているんです。

 あと、やはり時間外の規制が医師の働き方改革でかかってくると、特に、全ての科に複数の医者がいるわけでもないんですね、病院というのは。実際、診療科によっては一人だったり二人だったり、そういった病院がほとんどですよ、マイナー科と言われる科に関しては。そういった場合に、上限規制がかかっちゃった場合は、緊急オペをしたくても緊急オペができなくなっちゃう可能性というのがあるんですね、局長。

 上限規制にひっかかった状態で緊急オペをしなければならないなんという場合は、どういうルールづくりをされるのか。ちょっと、今されている議論で結構ですので、お答えください。

武田政府参考人 まさに今、議論の途上ではございますけれども、検討会におきましても、地域の医療提供体制が損なわれることとならないよう実態にもよく配意すべきだという御議論と、それから、医師の健康確保についてはやはり取り組んでいかなければならない、この両者をどうバランスをとっていくのかという観点から、先般の検討会におきましては、日本医師会を中心に医療関係団体でまとめていただいた意見書の報告もあったところでございます。

 御指摘ございますように、上限規制を設けたといたしましても、個々の診療実態に関しましては、どうしても診療をしなければならないというような実態がございます。

 私ども、例えば欧米の法制度についても研究をしておりますけれども、欧州におきましても、上限規制がありながら、やはり臨時、救急の場合につきましては、上限規制にもかかわらず医師が診療しなければならない、そういったことを認めるような具体的な制度も運用されているようでございまして、私ども、よく状況を踏まえ、議論を進めてまいりたいと思います。

吉田委員 そうおっしゃっていただけるので、ぜひそれは議論をちゃんとやっていただきたいんですけれども、ただ、こういった議論をしていくと、かなり例外だらけになっていってしまう可能性が、大臣もうなずいていただいていますが、多分ありますよね。働き方改革とはいいながらも、例外、例外、例外事項ばかりになってしまって、今までと変わらないなんということにもなりかねないですし、本当に難しい議論だと思います。ぜひ議論を進めてください。

 実際、虫垂炎なんか夜に手術します。あれはオペ室があいていないんですよね、昼間は。だから、もう夜中にやるしかなくて研修医が呼ばれるんですけれども、いわゆる働き方改革で行けないなんということになると、手術の研さんを積む機会もなくなってしまいますし、心筋梗塞、狭心症だって、岡本先生は内科医ですけれども、カテーテルの検査というのは緊急に夜中にやるわけですよね。こういったものの研さんを積む大事な、そこじゃないと、やはり予定のカテーテル検査というのは上の先生たちがやりますので、できなかったりするわけです。

 こういったものも、別の意味ですけれども、この働き方改革の議論の中で、医師の研さんを積む機会を摘むのもやはりまずいと思いますので、これは、答えは大体もう予想できますので、申し上げるだけ申し上げます。

 最後に、時間がないので最後にしようと思いますが、アメリカですね。私もアメリカで仕事をしておりましたけれども、救急の医者というのは移民がかなり多いんです。それは、人気がただ単に純粋にないからなんですよ。救急はつらいので、過酷なので、やはり外国出身の救急の医者が多かったり、また、あと、USMLEという国家試験があるんですけれども、これは日本人ももちろん受けられるんですが、これの成績が悪いと救急の医者のレジデントとかフェローにしかなれなかったりということも実際あるんです。

 ただ、アメリカの救急の医者というのは救急の専門家が多いんですが、日本の救急医療というのは各診療科の混成部隊になっているんですね。ここも、働き方改革を進めていくと、救急が混成状態になっているところも少し考えに入れていかなければいけないと思うんですね。

 そこに関して、局長、今どういうふうな議論をされているんですか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 救急医療提供体制につきましては、ただいま私どもの方でも救急の検討会を立ち上げまして、今年度議論を始めたところでございますけれども、この中でも、例えば救急の専門医だけで救急ニーズを充足できるのか、それを、一次救急、二次救急、三次救急、どういうふうに組み合わせて今後の救急医療提供体制を考えていくのか、そしてまさに、医師の働き方改革との関係はどうなるのか、非常に大きなテーマとして論点が出てきております。

 ぜひ、私どもとしても、十分関係者の皆様と検討を進めていきたいというふうに思います。

吉田委員 時間になってまいりましたのでやめますが、これは本当に、今までどおり混成部隊でやっていくとすると、自分のそもそもの所属の診療科の働き方ともまたすごく連動してしまうし、かといって、おっしゃるように、日本って救急の専門医は少ないんですよ、欧米と比べて。だから、救急の専門医だけで日本の救急を賄うのはもう本当に不可能です。ですから、ここは相当前もって、五年後ということですけれども、議論をしておかないとすぐにパンクしますよ、日本の救急は。

 今、日本の救急ってすごいと思います。フリーアクセスのこれだけすばらしい、緊急でMRIとか撮れたり、緊急で専門医が診てくれる国なんて本当に世界にないですよ。逆に言うと、だから救急はファーストタッチだけで、ほか各診療科の専門家がばっとやってくれるという日本の特徴もあるんですけれども、どうやってやっていくのかということを本当にしっかりと議論しないと、日本の今すばらしいレベルにある救急医療が崩壊してしまいますので、最後に要望ですが、大臣にも局長にもお願いをしておきますが、ぜひしっかりとした議論をしてください。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十分間質問をさせていただきます。

 前半は、今の吉田先生の続きの医師の働き方改革、医師の過労死の問題、後半は、医療にも関連して、介護問題について質問をさせていただきたいと思います。

 その前に、冒頭、けさの朝刊の記事を一番最後、二十一ページに載せさせていただきましたので、ちょっと話題は違うんですけれども、見ていただきたいんですね。

 毎日新聞朝刊、七月十三日、けさの朝刊、「記者の目」、阿部記者の記事であります。「政府の幼児教育・保育無償化」「経済優先が招く迷走」「待機児童さらに増える可能性も」。

 加藤大臣、これは私は別に質問はしませんが、非常に大事な点ですので、問題提起だけ、与党の議員の方々も含めてさせていただきたいと思うんですね。

 この委員会で先月私が問題提起した、低所得者に比べて高所得者の方に約六倍の給付が、八千億円の中で、幼児教育無償化で行ってしまう、逆社会保障なのではないか、これについては自民党の議員の方々からも一部賛同を得たりもしました。これについて、これは赤線を描きましたけれども、読み上げさせていただきます。

 この現状に関して、一番下の赤、自民党のある厚労族議員は、無償化は政策として全く練られていない、むしろ、やらない方がましなくらいだと吐き捨てるように言う、ある厚労省幹部も、痛ましい児童虐待事件が相次いでいることを引き合いに、無償化に費やされる見込みの八千億円があれば、児童虐待に対応する児童福祉司もふやせる、保育士の給与に回せば待機児童対策にもつながる、適切な使い道はもっとあったはずだと。

 これはやはり、本当、党派を超えて、かつ、厚労省の、はっきり言って、ほとんどの方々も、この政策、やはり、決めちゃったけれども本当はまずいよねというふうに本当は思っておられるんじゃないかと思うんです。

 それで、この右の方に、山井事務所の吉沢政策秘書が行った試算を載せさせていただきましたが、これは山井事務所だけじゃないんですよ。

 これは、次の十八ページ、東京新聞には、みずほ証券の末広シニアマーケットエコノミストもされたら、基本的には山井事務所の試算と同じ傾向が出たということなんですね。

 それで、十九ページ、この末広さんがどうおっしゃっているか。赤線を描きましたよ。議論すべきは少子化対策の有効性、それで、高所得世帯の恩恵は非課税世帯、低所得者の約五倍。

 それで、二十ページを見ていただきたいんです。どう言っているか。赤線を引きました。「もともと逆進性があると言われる消費増税の使途が高所得世帯の優遇につながることになれば、批判は大きなものとなりかねない。」次、「少子化対策として機能するかどうかは未知数である。」結論、一番下、「幼児教育の無償化という政策はその分かりやすさもあり、世論調査では賛成が六〇〜七〇%前後の結果が多い。しかし、財源が限られる中でより効率に予算を使う必要があることを考えると、評価されるべき政策ではない。」と。これは私は、本当に立ちどまって考えるべきではないかと思っております。

 なぜこのことを言うかというと、これは、来年、幼児教育無償化法案というのが、厚労委員会か内閣委員会か知りませんけれども、通常国会に出てきます。このままいけば、多くの野党は大反対します。対決法案になります。統一地方選挙があります。参議院選挙があります。これは、一歩間違うと争点にもなりかねませんし、こんな高所得者優遇だったら、やはり、消費税、そもそもやめろという議論にもなりかねない。

 余り政争の具にこういうのがなるのはよくないと思いますので、私は、提案だけさせていただきますが、そうしないために、三点セット、児童虐待防止とか、保育士の処遇改善とか、子供の貧困対策にやはりもうちょっと回すということを、まだ時間はありますから、ぜひ予算編成過程までにやっていただきたいと思います。

 なぜなら、先日も答弁されたように、十月か十一月か十二月には、この試算結果、正式に内閣府は出すそうです。この試算結果が本当に出たら、私は、国民は怒ると思いますよ、何で消費税増税をこんな高所得者優遇に使うんだと。だから、そういう意味では、これは私は警告だけしておきたいと思います。

 それでは、質問に向かわせていただきます。

 まず、昨年度の医師の過労死数が発表になりました。非常に残念なことに、この配付資料のトップにありますように、二人、昨年は過労死されておられます。さらに、脳・心臓疾患の方は、死亡されたのに過労死とも認定されなかったということなんですね。

 それで、この配付資料も見ていただきたいんですけれども、痛ましいですね。二ページ、「研修医自殺 労災認定へ」「最長、月二百五十一時間残業」。次の三ページ目も、「産科、残業二百八時間」「研修医自殺」。それで、この三十七歳の女性の研修医の方も、この記事によると、新潟県警によると、死因は低体温症で、遺体のそばには睡眠薬と飲み終えた酒が落ちていた、自殺前、家族に、人に会いたくないと漏らしていたという、県警は自殺と判断していると。

 こういう、人の命を救うために懸命に働いておられる方が命を落とされる、本当にこれは涙が出てまいります。

 何とかこういう状況を変えていかねば、この医療法、医師法で今議論している、幾ら偏在を防ぐにも、やはりこういう死に至るような過重労働は何としてもストップさせねばならないと思います。

 その意味で、まずお聞きしたいんですけれども、これは通告をしておりますが、結局、それぞれの勤務医数と全労働者数でこの五年間の過労死というものを機械的に割った場合、計算上の過労死のリスクは、勤務医は一般の労働者に比べて約何倍ですか、加藤大臣。

加藤国務大臣 平成二十五年度から平成二十九年度における医師に係る過労死の支給決定件数の合計は、脳・心臓疾患による死亡が六件、年平均すると一・二件、精神障害による死亡は四件、年平均すると〇・八件で、同期間における全労働者に係る過労死の支給決定件数の合計は、脳・心臓疾患における死亡は五百四十九件で、年平均百九・八件、精神障害による死亡が四百三十七件で、年平均八十七・四件ということであります。

 今、どのぐらいの頻度かという御質問だというふうに思いますけれども、労災保険の適用を受ける医師の数については私どもは直接把握をしておりませんので、お求めのような比率を計算することができかねるところでございますので、したがって、勤務医と一般労働者の過労死のリスクについて比較するというのは非常に難しい、数字として比較するのは難しいということであります。

山井委員 そういう答弁でありますけれども、勤務医の方の人口、それと、全労働者とを割り合わせて山井事務所で計算をさせていただきました、機械的に。それがこの表であります。そうなると、全労働者に占める勤務医の割合は〇・四%、しかし、結局、過労死の比率は一%ということで、私たちの計算では二倍以上高いのではないかというような結果となっております。

 そういう意味では、本当に過酷な労働の中で過労死のリスクが非常に勤務医の方に高いというこの現状は、何としても働き方改革で改善をしていかねばというふうに思います。

 それで、また配付資料に戻っていただきたいんですけれども、五ページにありますように、「医師の少ない地域での勤務を促す環境整備の推進」ということですが、結局、なぜ医師が少ない地域において勤務に不安を感じているのかというこの「現状」のグラフですね。これを見てみた場合、トップは、赤丸したように、二十代から五十代まで一貫して高いのが「労働環境」なんですね。そういうお医者さんが少ない地域へ行ったら本当に連続勤務等々で体を壊してしまうんじゃないか、そういう問題点があるわけであります。

 それについて、配付資料を説明しますけれども、医師の働き方改革の検討会がいろいろ行われました。その中でやはり二点、タスクシフティング、業務の移管ということと、勤務間インターバルの設定、このことが議論になっております。

 次の九ページ。ここでも赤線を引きましたけれども、タスクシフティング、業務の移管の推進、勤務間インターバルの設定というものが出ております。

 ちなみに、けさの産経新聞の一面記事がございます。けさの産経新聞の一面記事、これは配付資料の二ページにあります。「看護師らに一定の勤務間隔 政府大綱最終案 過労死防止へ検討」、これはインターバル規制のことですね。

 こういうふうに、私も過労死に詳しい弁護団の方々やお医者さん、関係者に聞けば、やはり一番効果があるのはインターバル規制であろうという声を強く聞いております。

 そこで、加藤大臣にお伺いします。

 やはり医師の過労死を防ぐためにはインターバル規制を、今回の働き方法案では努力義務となっているわけですけれども、努力義務ではなくやはり義務化が必要ではないか、もちろん、さまざまな医療を確保する上では相矛盾してしまうのかもしれませんけれども、いつでも受けられる医療というものと矛盾があるのかもしれないけれども、やはり医師の過労死を防ぐためにはインターバル規制の義務化が必要ではないかというふうに考えますが、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 長時間勤務の実態にある勤務医において、生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送っていただくためにも、勤務間インターバルを設けること、これは効果的な勤務環境の改善策の一つというふうに考えます。

 医師の働き方改革に関する検討会において本年二月に取りまとめました医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組においても、当直明けの勤務負担の緩和や勤務間インターバルの取組を積極的に検討し、導入するよう促しているところであります。

 特に勤務間インターバルの取組については、五月に実施された緊急的な取組に関する病院団体の自主的なフォローアップ調査では、大学病院では五割以上、それ以外の病院でも約四割が実施予定又は検討中と回答しておりまして、医療機関側でも前向きな問題意識が広がりつつあるものと認識をしております。

 こうした現状も踏まえて、今後、検討会において、目指すべき多様な働き方改革の方向性、それを実現するための施策、制度のあり方について検討していくことになっておりますが、その際にも勤務間インターバルのあり方についてもしっかりと議論していきたいと考えております。

山井委員 ぜひこれを、義務化を御検討いただきたいというふうに思います。

 それで、ちょっと過労死のことに関連して、十ページの配付資料、過労死弁護団の方々が、先日発表のあった過労死等の労災補償状況についてのコメントを発表されました。その中で一番気になったところに赤線を引きました。なお、当弁護団が担当している事件の中で、平成二十九年度中に労災認定される見込みだった裁量労働制事案が、不明瞭な形で平成三十年四月以降に決定が延ばされているものが一定数あることを指摘しておくと。つまり、法案を通すために、特に裁量労働制の過労死、三月末までに認定してしまったら明らかになっちゃうから、それをおくらせたのではないかと疑われるものが一定数あると。私も正直言って、個別に何件か聞いております。

 まさかと思いますが、法案を通すためにそういうわざとおくらせたということはないと信じたいですけれども、そういうケースは、加藤大臣、あったんですか、なかったんですか。あったとしたら何件ですか。

加藤国務大臣 済みません、その方が何を根拠に言っているか、全くわかりません。

山井委員 このことはまた今後、個別のケースですので、議論していきたいと思います。

 少し介護の議論をさせていただきたいんですけれども、医療と介護の連携の中で、今、介護職員が不足するということも非常に問題になっておりまして、そういう中で、より多くの方が病院に入院してしまうという悪循環もあるんではないかと思います。

 そこでちょっとお聞きしたいんですけれども、昨年来、政府は十年以上の勤務の介護職員を月給八万円上げるという政策を打ち出しておられるんですね。配付資料の十六ページにも勤務十年以上の介護福祉士について月額平均八万円の待遇改善とか、十七ページにも推定約二十万人おられる、その方々について計約二千億円で賃上げするということになっているんです。

 ただ、重要なのはこの十七ページの上で、だから私も最初聞いたときに、一般の介護職員は賃上げせずに勤続十年以上の人だけ月八万円上げるというのは割と強烈な、ほかの職員さんは怒るんじゃないかなと思ったりも私はしました。

 ところが、それを丁寧に読んでみると、十七ページの上、新しい経済政策パッケージ、平成二十九年十二月八日、こう書いてあるんですね。赤線を引きました。経験、技能のある職員に重点化を図りながら、具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるような柔軟な運用を認めることを前提に、勤続十年以上の介護福祉士について月額八万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に処遇改善を行う、こうなっているんですね。これは非常に重要だと思うんです。

 そこでお聞きしたいと思いますが、公費一千億、保険料を含め合計約二千億の財源により来年十月からの処遇改善、経験、技能のある職員に重点化を図りつつも、勤続十年以上のみならず、全ての介護職員、障害福祉職員の処遇改善を行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、これまでも、介護職員あるいは福祉・介護職員の、障害のサービスに従事している方々でありますが、処遇については、数度にわたり改善を行い、実績ベースで見ると、介護職員については合計五万七千円、福祉・介護職員については合計六万四千円と、着実な処遇改善が図られているわけでありますが、今委員御指摘の昨年十二月に閣議決定されました新しい経済対策パッケージにおいては、介護サービス事業所における勤続年数十年以上の介護福祉士について月額平均八万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費約一千億を投じること、また、障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行うこととしている上において、今、弾力的な話もありますが、それらも含めて、具体的な内容、そのことについては今後検討していきたいと考えております。

山井委員 これは大事なことなんですけれども、ということは、事業所の判断において、勤続十年以外の方々の処遇改善も可能というふうに理解してよいですか。

加藤国務大臣 それは、さっき委員が読み上げていただいたように、「他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に、」ということでありますから、それを前提に具体的な中身については検討していきたいと考えます。

山井委員 ここは本当、私の周りにも介護職員の方々がたくさんおられますので、その多くの方々が、勤続十年以上の人だけが八万円上がるのかというふうに思っておられる方も多いので、ですから、今、加藤大臣、大事なことなので確認しますが、結局、事業所の判断によって、算定根拠は、十年以上の介護福祉士による算定根拠だけれども、処遇改善は、全ての介護職員や障害福祉職員について、事業所の判断で行うことは可能な制度にするということでよろしいですか。

加藤国務大臣 同じ答弁の繰り返しになりますけれども、現時点において詳細をまだ設計しておりませんから、今その段階で具体的なことについて答弁するのは控えたいと思いますが、ただ、ここに書いてありますように、「他の介護職員などの」、この「他」というのはそれ以外ということでありますから、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善を充てることができるようなということでありますから、そういう方向では検討していきたいと思いますが、どういう幅でそれを行っていくのか等々についてはこれから具体的に検討することになります。

山井委員 ぜひこれは、勤続十年以上の方等々ベテランの人にはもちろん重点化しながらも、全ての介護職員の方々の処遇改善に充てられるような制度にしていただきたいと思いますし、そういう方向に検討するというふうに理解をいたしました。

 同時に、もう一つ、ポイントなんですが、私たちが六月に提出した処遇改善法案というのが十八ページにあります。この中でも、やはり介護をしている職員さんだけじゃなくて、例えば、生活指導員さんとか事務職員さんとか、その方々の処遇改善も一緒にできないと、なかなか処遇改善加算は限られているので使い勝手が悪いんだというそういう悩み、あるいは、介護職員以外の方々からの苦情もたくさん来ております。ですから、野党が提出した法案でも、そういう方々も賃上げの対象にしているわけなんです。

 今回の政府のやろうとしていることですけれども、ここも、先ほどの十二月八日の件で、「具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用」と書いているわけですから、そういう意味では、この「他の介護職員など」というのは、事務職員さんであるとか生活指導員さんであるとか生活相談員さんであるとか、そういう方々にも事業所の判断によっては処遇改善を行うことができる、そういうふうに理解してよろしいですか。

加藤国務大臣 これはもともと、この処遇改善は、介護サービス事業所や障害福祉事業所で働く、他の職種に比べて介護職員や福祉・介護職員の賃金が低い、こういう状況に着目してこうした処遇改善が行われてきた。したがって、この職員に限定されてきた。これは多分、民主党が与党のときにもそうだったというふうに理解をしています。

 ただ、一方で、現場の声を聞いても、介護職員や福祉・介護職員の処遇改善を進めていく上では、介護サービス事業所や障害福祉サービス事業所全体における賃金のバランス、あるいは、誰々が上がって誰々が上がらないという、なかなか容易ならないという話、そういったことにもしっかり留意する必要があると思っております。

 したがって、今回の新しい経済政策パッケージを踏まえたこの処遇改善に当たっては、介護職員や福祉・介護職員以外の職種を対象にすることも含めて、より具体的に検討していきたいと考えています。

山井委員 これは、含めてということですから、ここにも書いてありますように、他の介護職員の処遇改善にも事業所の判断でつながり得るというふうに理解してよろしいですか。

加藤国務大臣 得るという中身がどこまでなのかということもありますから、それを含めて、同じ答弁の繰り返しで申しわけありませんが、介護職員や福祉・介護職員以外の職種を対象とするということも含めて、具体的に内容を検討したいと思います。

山井委員 これは、私も忘れもしませんが、民主党政権、二〇〇九年十月、長妻厚生労働大臣のもと、私は厚生労働大臣政務官で、そのときにこの最初の処遇改善加算を担当したのが私でありますので、加藤大臣がおっしゃったように、そのときは介護職員だけに限りました。限ったけれども、やはり、さまざまな声もあることを考え、介護職員以外の方々の処遇改善も今はやるべきだと思いますし、先ほど加藤大臣からも答弁ありましたように、勤続十年以上の方々だけではなくて、できるだけ全ての方々の処遇改善につながるようにしていただきたいと強く要望したいと思います。

 それと、六月に最新の委託研究の報告書が出たようですけれども、私、これを見てちょっと驚いたんですね、介護について。

 その結果が十三ページであります。十三ページに、委託研究の、介護保険の総合事業、介護保険法改正で、私たちが大反対した法改正によって、住民参加型等々の総合事業をしなさいということで、基準を緩和しなさいということになったんですけれども、その結果、採算が合わなくて、大手の事業所が撤退してしまった、ホームヘルプやデイサービスから。

 十五ページですね。四月六日時点の状況、十五ページにありますように、六百七十六の市町村、約四割の自治体でデイやホームヘルプ、要支援の方々へのサービスの撤退をしたということも起こって、今介護難民が生まれつつあるんです。その理由が、ここに書いてある、十三ページの配付資料、つまり、結局、今までのサービスよりも単価が安くなっているということなんですね。

 そこでお伺いしたいんですけれども、六月にこの委託調査結果が厚生省のホームページに発表されましたけれども、基準を緩和したデイサービスやホームヘルプにおいて、単価はそれぞれ従来の約何割に下がったのか、平均するとそれぞれ約何割ですか。

加藤国務大臣 平成二十九年度に実施をいたしました総合事業の実施状況に関する調査、これは、総合事業は、平成二十七年四月から予防給付における訪問介護や通所介護を段階的に移行させ、平成二十九年四月から全ての市町村で実施をしているということでございます。

 それを踏まえて実施をした調査では、市町村で、単価についての回答があった市町村は、訪問型で五百七十五市町村、通所型で六百二市町村であります。その単価について回答があった市町村の割合で見ますと、従来の単価に対し八割以上にしている市町村が約五〇%強、七割以上八割未満が約二五%、七割未満が一〇%となっており、これは訪問型サービスでも通所型サービスでも同様の状況であります。

 今委員から単価の平均ということがありましたけれども、この調査は、何割以上何割未満、最後はたしか六割未満ということで、具体的なその数字の捉えようがありませんので、ちょっとなかなか平均を出すというのは難しいと思います。

山井委員 これは、ここにありますように、この十三ページの下半分は、また山井事務所で計算をさせていただきました、吉沢秘書の力をかりて計算をいたしました。

 そうすると、九割以上十割まで、八割以上九割までというところを九割五分、八割五分と考えたら、平均すると、基準を緩和した通所サービスは八三%、基準を緩和した訪問サービスは八二%と。これは、主観は入っていませんので、機械的に計算したわけですけれども。

 ということで、加藤大臣、ほぼ約八割ぐらいになっているという認識でよろしいですか。

加藤国務大臣 こういう試算の仕方をすればこういう答えが出るということなんだと思いますが、ただ、データはなかなか正確につくらなきゃいけないので、六割未満というのは一体どこなのかという設定自体どうするのか。この場合にはたしか、六割でしたっけ、六〇でしたっけ、五五でしたっけ、何かそこで一応仮置きをされておりますから、こういう仮置きの仕方をすればこういう数字が出てくる、それはそのとおりだと思います。

山井委員 おっしゃるように、六割未満がこの場合は六割と試算してありますけれども、六割未満を、五割とか三割とか二割があったらもっと下になるんですけれどもね。

 ということは加藤大臣、改めまして言いますけれども、やはりこの基準を緩和した通所サービスで平均すると約八割ぐらいに単価が下がっている、こういう現状認識でよろしいですか。

加藤国務大臣 ですから、置き方によってこの八割の数字も変動し得るということで、ただ、今委員の御指摘のような試算の仕方をすればこういった数字が出てきているということ、それはそのとおりだということであります。

山井委員 そこで、これは深刻なのは、私の地元でも、今までデイやホームヘルプを使っている高齢者の要支援一の方は利用できているけれども、新規の人を、もうデイサービスやホームヘルプ事業所が採算がとれないから受けてくれないという介護難民の問題が起こってきているわけですね。

 それで、その解決策として、この報告書ではどう書いてあるかというと、十四ページにありますように、じゃあどう乗り切るか。介護専門職の給与引下げ、賃上げじゃないんですよ、介護職員の賃金を下げて乗り切るとか、それとか介護専門職の人員縮小、介護職員を余り雇わないとか、三番目、基準緩和サービスの提供のための介護専門職以外の人を雇う。専門職じゃない人を雇う、結局これは質が低下するというふうに思うんですね。

 その結果、もう時間がないのではしょりますが、十二ページにありますように、余り予想された多様なサービスというのが行われていないんですよ。これは、もともとの予定では、十一ページにありますように、平成二十七、二十八、二十九が移行期間で、平成三十年度、今年度から本格的に多様なサービスをやるという話だったんだけれども、この十二ページによると全くそれが進んでいない。

 そこで、何を言いたいかといいますと、加藤大臣、これ、もうこのままでは二割の単価を下げてボランティアの人とか住民主体でやるという作戦は絵に描いた餅になってしまうんじゃないかと思うんです。ついては、うまくいっていないという調査研究結果が出たわけですから、やはりちょっとこのやり方を見直すべきじゃないか、そうしないと要支援一、二の高齢者がデイやホームヘルプを受けられないという介護難民がふえるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、サービス利用者でありますけれども、平成二十九年に実施した調査では、従前の予防給付に相当するサービスを含む総合事業全体で利用者を見ると、訪問型はほぼ横ばい、通所型は増加をしている、こういう傾向にあるというふうに思います。

 平成二十九年度の調査時点では、従前の予防給付に相当するサービスの利用が主流になっているのはそのとおりでありますが、要支援者等に対する効果的かつ効率的なサービスの提供を推進するためには、介護サービス事業者によるサービス提供に加えて多様なサービスを充実させていく必要があるというふうな認識をしております。

 そのため、厚労省としては、総合事業の推進を図るため、これまでも、さまざまな先行事例あるいは先行的な取組、これをまとめて周知を図るとともに、都道府県職員を対象とした市町村支援に関する研修を行っております。

 また、今年度より、実際に事業を進めるに当たってのノウハウの構築、横展開を行うことによって市町村による地域資源の掘り起こしや課題の発掘が適切に実施され、総合事業が円滑に推進されるような取組をしっかりと図っていくことによって、そうした多様な取組あるいは多様な主体による取組、これがより一層進んでいくように対応していきたいと考えています。

山井委員 最後、加藤大臣にコメントを一言だけいただきたいんですけれども、冒頭申し上げました幼児教育無償化、やはりこれは高所得者優遇過ぎてちょっと問題がある、見直すべきだとは思われませんか。

 これで終わります。

加藤国務大臣 これについては私どもも、この前の選挙において、こうした対応をするということを公約に挙げさせていただきながら、国民の皆さんからの支持をいただいたということでありますから、それを踏まえて対応していく必要があるというふうに考えております。

山井委員 過ちを改むるにはばかることなかれ。ぜひこの政策は見直していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党、大西健介でございます。

 冒頭、西日本の豪雨でお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災をされた皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 我が党でも、この週末、青年委員会の仲間を中心に、岡山にボランティア活動を予定しておりますし、来週は、十七、十八と愛媛県、そして二十、二十一、二十二ですかね、広島の方で今ボランティア活動を計画しております。我が党としてもできる限りの支援を、この委員会の委員でもある柚木委員や白石委員も、非常に被害が大きかった愛媛県や岡山県の議員でありますので、しっかり連携をとりながら、やれることをやってまいりたいというふうに思っております。

 きょう、法案の質問に入る前に一問だけ、この豪雨災害について関連して質問したいというふうに思います。

 資料の新聞の記事の一枚目、これをごらんいただきたいんですけれども、去る十一日の日に、静岡県の富士市のトイレトレーラー、これが初の被災地派遣ということで、まさに倉敷の真備町の二万小学校に向けて出発したという記事であります。このトレーラーは、洋式トイレを四台備えておりまして、上下水道が不通でも千五百回使用できるというものであります。

 寝ること、食べることは当然でありますけれども、排せつという人間の生理現象、トイレというのは非常に私は重要だというふうに思います。

 一般社団法人の助けあいジャパンが、全国約千七百四十の市町村が一台ずつこのトイレトレーラーというのを持って、自然災害が起きたときに、互いにそのトイレトレーラーを派遣し合うというような、こういう仕組みをつくろうということで、みんな元気になるトイレプロジェクトというのを行っています。

 昨年の七月に初めてこのプロジェクトの参加に手を挙げたのが静岡県の富士市で、二番目に手を挙げたのが、私の地元の刈谷市ということなんですけれども、全国の市町村が一台ずつこのトイレトレーラーを持ち合って、災害のときに助け合うというのは、私、これはすばらしいアイデアじゃないかなというふうに思います。

 これは、一台一千四百万するので、購入資金についてはクラウドファンディングでお金を集めて、市町村の負担を減らすという仕組みをとっているそうですけれども、これは私、公的に支援をしてもいいんじゃないかと。トイレトレーラーは、平時にはイベント等でも使えますし、これを購入する資金を政府で補助してはどうか。これから概算要求が始まってまいりますけれども、私、これは考えてもいいのではないかなというふうに思うんです。

 きょうは総務省から小倉政務官に来ていただいていますので、御答弁をいただきたいと思います。

小倉大臣政務官 お答え申し上げます。

 災害時におけます避難所のトイレ対策は、避難者の健康管理はもとより、避難所の衛生対策を進める上でも大変重要な課題であると私ども認識しておりまして、委員御指摘いただいたトイレトレーラーにつきましても、非常に有効なツールの一つになり得るのではないか、このような思いで聞いておりました。

 実際に、消防庁では、内閣府が作成をしました避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン、これをもとに、災害時のトイレについて、安全性や快適性に配慮するなど、昨年四月に、地方公共団体に対しまして、そういった取組を推進するように要請をしております。

 こうした上で、地方公共団体が避難所の生活環境改善のために快適なトイレ環境を整備する場合には、このトイレトレーラーも含めまして、緊急防災・減災事業債の活用が可能となっております。

 この地方債は、委員御案内のとおり、充当率が全額一〇〇%、交付税措置率も七割というふうになっておりますので、地方公共団体におかれましては、こうした財政措置の活用によりまして、避難所の生活環境の向上に取り組んでいただきたい、このように考えております。

大西(健)委員 御答弁ありがとうございました。

 ぜひこれは、私、非常におもしろい取組だと思いますので、そうした、今御説明いただいたようなものの枠組みの中でも御検討いただきたいというふうに思います。

 政務官、ここまでで結構ですので、ありがとうございました。

 それでは、医療法の質疑に入りたいと思います。

 資料の二ページ目、私の選挙区の碧南市民病院というところが、三月二十三日に、医師不足で消化器内科の診療を制限します、こういう記事なんですけれども、碧南というのは、名古屋から一時間ぐらい、電車でも車でも一時間ぐらい、そんな僻地じゃありません。それでもこういうような状況であります。

 また、次のページですけれども、これは、NPO法人の医療ガバナンス研究所というところが、医師の流出率と流入率上位の自治体を調べた、こういう記事なんですけれども、これによれば、最も流出割合が高かったのは石川県で六八%、島根県は六一%、高知県が五六%。このほかにも五〇%を超えるのが、青森、山梨、福井、鳥取ということになっています。反対に、流入した割合が高いのは、千葉県の二四五%、埼玉県の二二四%となっています。

 これを見ると、千葉や埼玉みたいな人口の多い県の高校生が、他の県の医学部に行って、卒業したらまた出身地に戻るというようなことが起こっているんじゃないかなというふうに思います。

 これは、やはり、長期間にわたって、人口動態、自治体の人口が変化しているにもかかわらず、それを十分考慮せずに入学枠を設定してきたことがこういうことに至っているんじゃないか、ある種、文科省の怠慢でないかと私は思うんですけれども、文科省、こういう、これまで人口動態を十分考慮せずに入学枠を設定してきたんじゃないかという指摘に対して、お答えがありましたらお願いいたします。

信濃政府参考人 今委員が御指摘になりましたとおり、長期間にわたる自治体の人口変化によりまして需給ギャップが生じ、医師の移動を招いているという指摘があることは承知をしております。その結果、例えば、受験生の視点に立ちますと、人口の多い県の高校生が他県の医学部に行かなければならないというケースは生じ得るというふうに思います。

 他方で、医師需給の観点からは、医師の養成数について、全体として過剰を招かないようにするとの閣議決定等を踏まえて対応する必要がある状況におきましては、都道府県全体の人口当たりの医師数のみならずに、各都道府県内の地域ごとの医師偏在の状況等を総合的に考慮して適切に定員を設定する必要があります。

 したがって、人口の多い都道府県の医学部定員を現状より多く設定することは適切とは言えない面もあるだろうというふうに思っております。

 これまでのところは、医師偏在対策としまして、平成九年からですけれども、医学部の既存の定員の一部を地域枠というふうに振りかえておりますし、平成二十年度からは、地域医療に将来従事することを条件とする都道府県の修学資金の貸与枠と連動した地域枠を設定することによって、医学部の入学定員の増を認めてまいりました。

 そして、今後ですけれども、今後につきましては、厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会において、今後の医学部定員のあり方を含む医師養成数の方針について議論がされているところでございますので、この中で、地域ごとの医師偏在の度合いを示す医師偏在指標についても検討が行われると承知しておりますので、私ども文部科学省としましては、今後、医師偏在指標等が示され、地域における医師偏在の状況を踏まえて、医学部入学定員等について対応が求められる場合には、厚生労働省と連携して適切に対応してまいりたいと思います。

大西(健)委員 今後は少しよくなってくるとは思うんですけれども、やはり、それを今までずっと怠ってきたことが、ここまでたまりたまっているんじゃないかというふうに私は思います。

 それで、今ちょっとお答えの中にもありましたけれども、例えば、都会の高校生が地方の大学に行ったら仕送りもしなきゃいけない。親にとって負担になりますよね。

 それから、私は、やはり、医学部の費用というのが非常に気になります。きのう、文科省に医学部の学費というものの資料というのはないのかと聞いたら、まとまったものはないみたいなんですね。

 それで、実は、国公立の場合は、授業料は省令で定められている。学部が違っても一緒だということなので、授業料が年額五十三万五千八百円、入学料が二十八万二千円ということなんですけれども、一方で、私立大学、私立の大学で医学部に通った場合に六年間でどれぐらいの学費がかかるか。いろいろな雑誌記事とかに出ているのは、一般に、平均して三千二百万と書いてあるんですね。

 何かないかなと思って、今、皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいていますけれども、河合塾の調べたものです。

 私立の医学部六年間の学費の一覧というのがついているんですけれども、例えば、比較的リーズナブルなところで、順天堂大学二千八十万円、今話題の東京医科大学は約三千万円ですね。大体、三千万円半ばのところが多いんですけれども、高いところだと四千万円を超える。例えば、金沢医科大学。川崎医科大学は、何と四千七百二十六万五千円ということでございます。六年間でやはり三千万円を超えてくると、一般家庭ではなかなかこれだけの費用を捻出することは難しいんじゃないかと思います。そうなると、医者の子弟とか高所得の家庭の子供が医学部に通うということになっていくんじゃないか。そして、必ずしもそうじゃないかもしれませんけれども、所得の高い人というのは都会に集中しておりますので、卒業後もまた都会に戻ってくる。

 やはり、私は、医学部にお金がかかるという、こういう構造そのものもこの医師の偏在につながっているんじゃないかというふうに思いますが、大臣、これをごらんいただいてどう思われますでしょうか。

加藤国務大臣 その前に、ちょっと、さっき委員のおっしゃられた入学枠の話があったんですけれども、ちょっと、私、地方から見ると、そのまま進めると地方の医学部の定員を減らすという話になっていってしまうので、それが本当に地方にとってプラスになるのかなという思いをしながら、しかし一方で、どうそこに来た人たちに定着してもらうか、やはりそこをしっかりやっていく必要があるんだろうというふうに思います。

 今、委員、確かに、これは相当、医学部の中でも、これはどこでしたか、河合塾ですか、河合塾の資料を見ると相当幅があるわけでありますけれども、医学部の学生のうちの半分が国公立で勉強されているということではありますけれども、基本的に、国公立では大体約三百万円台、そして私立大学では、これは幾つかの例、いろいろありますけれども、三千万円前後、そんな状況であります。

 確かに、こうした大学に行くために、奨学金等々、さまざまな施策もあると思いますけれども、一定、家庭的な要素、それから、やはり、今、医学部を受けるために相当、塾に行ったり、さまざまな費用がかかっているというのも事実だなというふうに思います。

 その辺を含めてどうしていくのかというのは一つ議論すべき課題だというふうに思いますけれども、ただ問題は、それが地域偏在にどう結びついているかということになると、これはいろいろな分析が必要ではないか。例えば、都市の方が裕福であってということであれば、逆に、地元枠とか地域枠とか、ああいったものをやはりしっかりつくっていく、そういったことも逆に必要になってくるのではないかなというふうに思います。

大西(健)委員 もう一つ、医学部、学費が高いだけじゃなくて、六年間ということなので学費が高くなるということですけれども、さらに、最近では、留年を一回もせずに国家試験に一発合格するストレート合格比率というのがだんだん下がってきている。

 次の資料、これは週刊東洋経済の記事ですけれども、タイトルには「留年する医学部生が増加 卒業まで十年コースの学生も」というふうに書いてあります。

 国家試験の合格率は、昨年は過去十年で最低とはいっても八七・八%。一見すると九割近いので相当高いなというふうに見えますけれども、ただ、これにはからくりがあって、国試の合格率が一定より低下すると国から支給される補助金が減らされるので、受け控えがある。合格率を取り繕うために、国試合格が難しそうな学生は六年時の卒業試験でふるい落とすということをやっている大学が多いようであります。

 この記事の左下に、出願者に占める合格者、受験者じゃなくて、出願者に占める受験者の合格率のトップファイブとワーストファイブというのを出しているんですけれども、例えば自治医大だったら、これは受験者だと一〇〇%で、出願者で見ても九八・一%。ところが、帝京でいくと、出願者に占める割合が六〇・六%。これは大きく開きがあるんですね。

 この記事の中にも、一部の大学では、卒業までに平均十年、よくて八年から九年かかるのが実態となっているというふうに書いてあります。

 国試の出願者数に占める合格率が六〇%しかない大学が存在しているという、こういう実態を見て、大臣、どういうふうに思われますでしょうか。

加藤国務大臣 第百十二回国家試験において、出願者に占める合格者の割合が大学によって、私どもの資料では九八%から六五%という幅があるということは承知をしております。

 医師国家試験は、我が国の医療の質を確保し、任務を果たすのに必要な内容を問う観点から、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として持つべき知能及び技能を有しているかを確認するということで、そのために必要な試験の水準が設定をされているわけでありますので、各大学においては、教育の内容等の向上に努めていただいて、そして学生の皆さんが医師国家試験に合格し得るよう、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思いますし、また、我々厚労省としても、文科省と連携をしながら、教育内容の質の向上が進むよう対応していきたいと考えております。

大西(健)委員 言い方はあれですけれども、そういう低い医師国家試験の合格率のところにも医学部の貴重な定員枠は割り振られているわけですから、そこはやはりちょっと考えていただきたいなというふうに思います。

 それで、この医療法、参議院先議ということだったので、きょう午前中は衆議院で参考人質疑がありましたけれども、五月の十五日に参議院で参考人質疑がありました。そのときに、みずから医師でもあって、全国市長会の副会長の立谷相馬市長が、参議院の意見陳述の中で、例えば、産婦人科の医者が少ないところで産婦人科の医者を開業する人の診療単価を高くしたらいいのではないか、あるいは、地域別診療単価あるいは診療科別診療単価という話が市長会の中で地方の市長から出ていますということを述べられています。

 また、この地域別診療報酬という考え方は、奈良県の荒井知事が記者会見の中で提案をされています。これはお手元に資料としてお配りしております。

 また、四月十一日に開催された財政審の分科会の中でも、特例で厚労大臣や知事が地域別に単価を定められる地域別診療報酬の全国的な導入、こういうことも提案をされています。

 実は、この地域別診療報酬というのは、資料の最後のページですけれども、保健医療二〇三五という、塩崎大臣当時にまとめられたものの中にもしっかり書いてあるんです。

 この保健医療二〇三五というのは、非常に先進的なことが書いてあって、非常にアグレッシブなことが書いてあって、ほかにも、例えば、そこに書いてありますように、将来的に、仮に医師の偏在が続く場合においては、保険医の配置、定数の設定や、自由開業、自由標榜の見直しも含めて検討を行い、プロフェッショナルとしての医師キャリアプランを踏まえつつ、地域住民ニーズに応じて、地域や診療科の偏在の是正のための資源の適正配置を行うことも必要となる、こういう非常にいいことが書いてあるんです。

 さすが塩崎元大臣だと思うんですけれども、残念なことになかなか身内の応援が得られないというのが、受動喫煙と同じような構図があるんじゃないかなと思うんです。

 まとめてお聞きしたいと思いますけれども、この地域別診療報酬というものについて、大臣、どのようにお考えになるのか、あるいは、自由開業、自由標榜の見直しにまで将来的に厚労省として踏み込む、そういう考えがあるのか、この二つについて、まとめてお聞きをします。

加藤国務大臣 まず、地域別診療報酬でありますけれども、我が国においては、国民皆保険のもと、誰もがどこでも一定の自己負担で適切な診療を受けられることを基本的な理念としており、診療報酬については、被保険者間の公平を期す観点から、全国一律の点数の設定としているわけであります。

 一方で、委員の五ページ目にお示しをいただいておりますけれども、高齢者医療確保法において、国は、都道府県医療費適正化計画の目標の達成状況を評価した結果に基づき、目標達成のため必要があると認めるときに、あらかじめ都道府県に協議した上で、適切な医療を各都道府県間で公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内で、都道府県の区域内に別の診療報酬を定めることができる、こういう規定があります。

 そうした議論を踏まえて、先ほどの保健医療二〇三五等でもこうしたことを示す中で、本年の三月において、この特例規定の運用について、社会保障審議会医療保険部会で議論をしていただいて、その考え方を周知したわけであります。

 それについては、各都道府県では、医療費適正化計画の取組の実績評価について、保険者、医療関係者等が参画する保険者協議会で議論をする。その際、既存の診療報酬や施策など、他の取組も検討した上で、なお目標達成のため特例の適用が必要な場合に、保険者協議会での議論を踏まえ、国に意見を提出する。そして、厚生労働省で、都道府県の意見を踏まえ、中央社会保険医療協議会において、診療報酬全体の体系との整合性を図りながら、医療費の適正化や適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的と認められるかどうかを議論した上で判断する。こういう考え方が示され、そして、この規定について、仮に都道府県においてこうした意見の提出があった場合には、公平の観点も含めて、関係者の御意見も伺いながら検討し、適切に対応していく、これが今の私どものスタンスであります。

 それから、自由開業、自由標榜のお話がありました。

 自由開業については、外来医療機能の不足、偏在等への対応策の検討過程において、厚生労働省の医療需給分科会でも無床診療所の開業規制の是非について議論を行い、その結果、十二月の同分科会の第二次中間取りまとめにおいては、いわゆる賛成側と慎重側の意見があり、将来に向けた検討課題とされているわけであります。これは今後の検討課題だというふうに思っております。

 また、外来医療機能の不足、偏在等への対応が必要であることから、今回の法案では、医療機能の可視化を行って新規開業者への参考情報とする、あるいは、可視化された外来医療機能の不足、偏在等に対するための方策を地域ごとに策定し、これらの内容について地域の医療関係者等が参画し議論する協議の場を設置することで、外来医療に係る適切な医療提供体制の確保に努めていきたいと考えております。

 また、自由標榜制については、医師が自由に診療科を選ぶことにより特定の診療科に医師が偏り得る、そうした点もありますが、自由標榜制の見直しについては、現在、自由標榜制のもと、複数の診療科を掲げている医療機関において、これまでの診療経験から実際に診療可能であるにもかかわらず標榜できなくなる領域が発生する可能性があるなど、医療現場への影響が大きいため、これは慎重な対応が必要ではないかというふうに考えているところであります。

 いずれにしても、今般の医師偏在対策の効果について施行後にきめ細かな検証を行い、その検証を踏まえて継続的にさらなる対策について検討していきたい、そういう姿勢には変わりはございません。

大西(健)委員 時間ですから終わりますけれども、本当はこの間も同じ質問をしようと思って、時間切れでできなかったんですけれども、人材紹介会社を利用して医師や看護師を確保するというので、医師一人の手数料単価は三百三十七万、医師や看護師の確保に年間一億円以上払う病院もあるということで、さっき阿部先生が質問されました。

 大臣からはちょっと、病院がそれぞれ考えることみたいな話だったんですけれども、原資は保険料ですから、私はやはりかなり問題があるんじゃないかなと思います。高木副大臣は大変問題意識を持っていただいているというふうに承知しておりますので、ぜひ引き続き御検討いただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。

高鳥委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 国民民主党の岡本です。

 午前は参考人質疑でありましたけれども、午後は閣法について政府に問いたいと思います。

 その前に、改めてですけれども、本当に今回の災害、日がたつにつれて大変厳しい状況が明らかになってきています。大臣のお地元も含む西日本の本当に広い範囲で被災されている皆様方に改めてお見舞いを申し上げるとともに、お亡くなりになられた皆様方の御冥福、そして救助を待つ皆様方に一刻も早い救助が届きますようにお祈り申し上げさせていただいて、質問に入りたいと思います。

 それでは、きょうは、午前に引き続いて、専門医のあり方についてもう一度確認をしたいと思います。

 お配りしている資料は、専門医の試験の合格率であります。驚くべきことに一〇〇%という学会も中にはあるわけでありますけれども、もちろん、これは認定試験でありますから、予備試験があるのでということかもしれませんが、いずれにしても、かなり高い合格率になっています。

 午前中の質疑でも、大臣、聞かれたかもしれませんが、専門医は一体どういうポジションであるべきなのかというのは私は大きな論点だと思います。患者さんからすると、午前の話でいうと、スペシャリストじゃないか、こう思っている方も多いわけでありますけれども、名称が専門医となっているからかもしれませんが、こういった現状をどう考えるのか、これは一つ論点だと私は思います。

 またあわせて、きょうは厚生労働省に調査をお願いしました。二ページ目、それぞれの学会の会員数とそれから専門医の数がどうなのかというと、日本内科学会は、この内科学会の専門医を取らずに消化器内科だとか血液内科だとかいったサブスペシャリティーの専門医を取る方も多いということもあって、必ずしも高いパーセンテージでありませんが、それ以外を見ると、かなり高いパーセンテージです。

 この学会の会員数の中には、必然的に、年次が到達しないがゆえに専門医を取ることができない方も会員にいらっしゃいます。そういう意味で、こうした年次が理由で専門医になることができない者を除いた方を分母にして、分子を専門医数にした場合、一体どのくらいの数になるのか幾つかの学会で調べてくださいというお願いをしましたが、どんな結果だったか教えていただけますか。

武田政府参考人 ただいまの御指摘の、専門医取得可能な年次の医師のうち専門医を有する医師の割合、こういう御質問でございますけれども、私ども、今段階では数字を把握しておりませんので、今後、主要な学会に問い合わせ、把握をしてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 把握をすることは可能ですよね。であれば、当然御報告いただけるということでいいですか。

武田政府参考人 しっかり学会に問い合わせてまいりたいと思います。(岡本(充)委員「報告いただけますかと聞いているんです」と呼ぶ)恐れ入ります。把握をし、報告をさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 きょうまでにお願いしますということでしたが、把握ができなかったということでありますけれども、このパーセンテージより高いのは当たり前だと思います。これより低くなることは、大臣、あり得ませんよね、理屈上。したがって、これより高くなるんだと思います。

 そういう意味で、本当にどういう数字になってくるのか、やはり世の中が知っていただくことが重要だと思うし、私は、繰り返しになりますけれども、会費を納めているだけで専門医が更新できるというのはどうかというふうに思っているわけであります。そこをどういうふうにしていくかというのは、もちろん、きょうの午前の議論でありませんけれども、一義的には専門医機構で考えていただくことでありますけれども、どうあるべきなのかというのは国でも考えるべきことなのかなと思います。

 続いて、都道府県における医師確保対策の実施体制についてですけれども、地域医療対策協議会の構成が今どうなっているのかということで、これについて資料をおつけしました。今回の法改正で協議事項はどういうことにするのかという話になるわけでありますが、今回、参加者は誰なのかということがはっきりするわけでありますけれども、現実的に医師を派遣するのは一体誰が担うのかといえば、誰が医師を派遣することを担う、主として担うのは誰だというふうに理解されていますか。局長で結構です。

武田政府参考人 私ども、都道府県に地域医療対策協議会を設置し、また地域医療支援センターを設置いたしまして、都道府県内の医師確保についての医師派遣のあっせん、調整などを行っていただいているわけでございますけれども、実際には各大学の医局と調整をしながら進めていることが多いというふうに伺っております。

岡本(充)委員 そうですね。各大学の医局が医師を派遣するという中で、これはちなみに、地域医療対策協議会は全会一致で決めるんですか、それとも多数決ですか。

武田政府参考人 協議会でございますので、協議をするということでございますけれども、協議が調った事項について、今後は公表し、それに基づいて都道府県が事務を行っていただくということでございまして、通常、多数決というよりは合意を形成していただくということになっていくと思います。

岡本(充)委員 そういう意味では全会一致なんですよね。皆さんが納得するということだと思います。

 そこで、私は、結局のところ、プレーヤーである大学が医師が派遣できる、こういうふうな状況をつくっていくことが、タスクシフティングの話で随分やって、文科省、答弁、きょうは来ていませんけれども、残念でありましたけれども、しかし、やはり大学から医師が派遣ができるというのは最も重要なキーであるということを考えると、これはなかなか、大学に理解をしてもらうスキームになっているのかと。

 つまり、これまでの従来の、例えば市民病院だと、先生方の地元でもあると思います、地元の市長さんが大学医局を挨拶して回るみたいな話が私にも聞こえてきますよ。こういうような、要するにお願いベースの医師派遣と協議会をつくった場合とどう変わるんですか。今までのお願いベースと基本的には変わらないということですか。どうなんですか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 私ども、今回、都道府県における体制の整備を図ることを目的にしておりますけれども、地域医療対策協議会、まず、その構成員を法定いたしておりますし、また役割についての協議事項も法定をすることとしております。

 その上で、医師の派遣の必要性については、客観的なデータによる客観的な議論が必要だろうということでございますので、医師偏在指標についても国としての統一的な指標を定めて、透明性の高い御議論をしていただく、それによって今後は公平な観点での議論が進められることになるのではないかと考えております。

岡本(充)委員 いやいや、議論を経た上で、その先お願いベースですよね。お願いですよね。最後ですよ、最後。最後、結局お願いでしょう。お願いしかしようがないんじゃないんですかと言っているんです。

武田政府参考人 お答えいたします。

 今回の医師確保対策、これは都道府県に主体的に確保対策を立てていただくこととしておりますけれども、まずは、臨床の場に出ております地域枠の卒業生の医師、これが、今後十年間で全国で一万人くらいの臨床の先生方が出てまいりますので、それに関して中心的にこの地域医療対策協議会で議論していただく、それに加えて、大学の派遣につきましても、整合性を図る形でこの地域医療対策協議会で御議論をしていただく、そういうことを想定しているところでございます。

岡本(充)委員 私が聞いているのは、その議論の先ですよ。

 地域枠で入った生徒さんだって、卒業後その県で働いていれば義務を回避できるわけですから。もちろん、そこで、県知事が指定した病院に行けという命令までかけられる地域枠ではないですよね。そういう意味では、県の中で働いていればいい、こういう地域枠の卒業生であれば命令できないですよ、どこに行けというのは。

 そういう意味で、最終的にはこれはお願いベースですよねと言っている。協議の話じゃないです。協議を受けて派遣をするかどうかは、これはお願いベースですよね、こう聞いているんです。

武田政府参考人 協議でございますので、国又は都道府県による命令権限、そういうことではございませんけれども、地域枠の医師について御指摘ございましたけれども、今後、その地域枠の医師につきましては、それぞれの都道府県でキャリア形成プログラムをつくっていただくこととしております。

 このキャリア形成プログラムにおきましては、幾つかの都道府県で先行的に実施をされておりますけれども、一定の病院群を指定してそこへの医師の派遣ということを進めている都道府県もございまして、これは非常に有効な対策であるというふうに評価もされているようでございますので、私ども、こういった形のキャリア形成プログラムを全国でつくっていただく、こういうことを進めてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 キャリア形成プログラムといえども、どこの病院という指定はできないんですよ。この中でどこかへ行ってください、そういう話ですからね。

 したがって、どこの病院、どういう医師が必要だといったときに、この地域医療対策協議会、ここが医師に、ここへ行ってくださいという派遣をする。ここが医師を例えば雇用していれば別ですよ。そうでなければ、派遣をする機能はない。大学なんですから、これはお願いするしかない。これまでもお願いするしかない。最後はお願いするしかないというここは変わらないんじゃないですかと言っているんです。ここは変わるのか、変わらないのか、そこを答えてほしいんです。

武田政府参考人 この地域医療対策協議会で大きな方針を立てていただいた上で、具体的な医師確保対策の事務の実施拠点として、地域医療支援センターに事務の実施を担っていただきたいと考えておりまして、具体的な病院名につきましては、ここで医師の派遣、あっせんという形で行われるんだというふうに認識をしておりますけれども、あくまで、この地域枠医師につきましては、今御指摘ありましたように、一定のグループの中で地域枠卒業の医師の方に選定をしていただくということが多いと認識をしておりますので、そういう意味では、ここの病院というふうに派遣命令ということではないとは思いますけれども、例えば、医師少数区域というのが今後県の方で指定をされますので、そういったところを中心に派遣をするといったような形の、客観的な形の医師派遣が今後進められるというふうに承知をしております。

岡本(充)委員 だから、繰り返しです。それは、地域医療対策協議会のお願いベースですよねと言っているんです。そこを聞きたいのであって、地域医療協議会の協議の内容を聞いているんじゃないんです。お願いベースなのは変わらないですよね、こう言っているんです。

武田政府参考人 御指摘をいただいておりますお願いベースという言葉が必ずしも適切かどうかわかりませんけれども、あくまで、協議に基づいてこういった対策を各都道府県単位でやっていただく、これをぜひ私ども進めてまいりたいと思っております。(岡本(充)委員「お願いは変わらないんでしょうと言っているんだから、そこを答えてよ」と呼ぶ)

高鳥委員長 岡本充功君、質問を続けてください。(岡本(充)委員「大事なところです」と呼ぶ)

 武田医政局長。

武田政府参考人 恐れ入ります。

 今回の医療法の改正でございますけれども、一つは、大学に対してどのような義務がかかるのかということでございますけれども、一つといたしましては、大学を含む関係者が地域医療対策協議会に参画しなければならない旨の努力義務規定が置かれております。

 また、地域医療対策協議会での決定事項につきましては、この協議会に参加した構成員は従うべき旨の努力義務規定も置かれているところでございますので、単なるお願いより一歩進んだ形の協議ということになるというふうに思います。

岡本(充)委員 何としてもそう言いたいんですね。いや、どう考えても違うでしょう。だって、努力義務なんだから、来るか来ないかも大学にかかっています。

 後から聞こうと思っていたけれども、大学は来ないと言う権利があるんですよ。いや、それは行きませんと。もっと言えば、協議が調わない、若しくは大学がいないところで議論をせざるを得なくなって、決まった。この病院に医師が必要ですね、そこで決まった。でも、それは、医師を派遣するのが大学の医局であれば、そこはお願いをするよりほかない。そういうことでしょう。命令はかけられないでしょう。その確認だけは、ではお願いします。

武田政府参考人 今の御質問で、命令の有無ということでいいますと、命令をかける権限まではございませんけれども、あくまで努力義務規定は置かれているということでございます。

岡本(充)委員 結局何が変わるのかということを知りたいわけですよ。いや、変えたように見せているけれども、これは実のところ変わっていないでしょうということを言いたいわけなんですね。

 これは、例えば、都道府県単位でと言っているけれども、県をまたいで医師を派遣していますよ、大学病院が、大きいところはね。そういう場合に当事者は、他の都道府県の場合、これは、地域医療対策協議会のメンバーとしては、これは県内の大学以外はどういうふうに、これも参加する義務を負うんですか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 医師が不足している地域などを始めといたしまして、医師確保が必要な医療機関に適切に医師が配置されるようにするためには、大学による医師派遣と都道府県による地域枠医師などの派遣とが、都道府県内の関係者の調整の上で整合的に行われることが重要であると考えております。

 このため、今回の改正法案では、医師の派遣に関する事項につきまして、大学、医師会、民間病院などを構成メンバーとする地域医療対策協議会の協議事項として法定をするものでございまして、その協議結果に基づいて医師派遣を行うこととしておりますので、原則として、都道府県内に医師派遣を行う全ての大学を地域医療対策協議会の構成員とするよう求めているものでございます。

 しかし、御指摘もございますけれども、地元の大学のみならず、関係大学ございますので、都道府県をまたいで医師派遣を行っている大学の全てを地域医療対策協議会の構成員として毎回出席を求めることはなかなか困難な場合もあるというふうに考えますので、このため、具体的な施行に当たりましては、例えば、都道府県が、大学から医師派遣を受ける医療機関の医師派遣案に関する情報を事前に大学から収集した上で、その案と整合的な地域枠医師などの医師派遣案を都道府県が作成し、当該大学と事前に調整してから協議会を開催するなどの対応を行うことで、都道府県と大学によるそれぞれの医師派遣の整合性が事前に図られる場合につきましては、例外的に、一部の県外大学を構成員としない又は会議への実際の出席は求めない、こういった柔軟な取扱いを認めることを検討しているところでございます。

岡本(充)委員 そこで言うところの県外の大学で派遣をしている大学というのは、どういう定義で決まるんですか。

武田政府参考人 県外に医師を派遣している大学といいますのは、それぞれの地域によってさまざま事情もあると思いますので、これは都道府県に判断をしていただきたいと思っております。

岡本(充)委員 失笑が漏れましたよ。

 これで、法律事項でメンバーは努力義務をかけたんだと言っていますけれども、メンバーも県に決めてください、こう言っている話で、最も重要な大学のキープレーヤーが一体どういう定義でどこが入るのか、はっきりしていないじゃないですか。

 これはもう少しやりたいんですけれども、ほかにも聞かなきゃいけないことがあるから、ちょっと時間の関係で次に行きます。

 公的医療機関等二〇二五プラン、これも何か不思議なプランだなと思って、結局、地域医療構想会議においてその役割を議論するようこれを持っていけと言うんですね。そもそも、地域医療構想会議、ベッド数の調整をすると言っているけれども、これは当然、ベッド数の議論をするということは、医師の数についても議論する場ですよね。

武田政府参考人 御指摘の地域医療構想調整会議でございますが、基本的には、地域医療構想区域内における病院病床の機能の分化、連携についての話合いの場でございますので、医師数そのものについてというよりは、病床機能についての議論の場というふうに承知しております。

岡本(充)委員 ただ、その結果として医師数の議論につながることは当然ですよね。

武田政府参考人 具体的な議論を進めていくに際しましては、例えば、救急体制をどこの病院で集中的に担うか、又は、機能分化の中で、特定の診療科については特定の病院で引き受けるなどの議論が行われることが考えられますので、そういった意味では医師数に関係する面はあろうかと思います。

岡本(充)委員 だから、これはダブっているんですね。医師数、一体どこがどれだけ必要なのか、これを議論する場でもあります。

 そこで、ちょっと、この二〇二五で何を議論するのか。そこの病床稼働率や手術の稼働率、これによって、一体これで、医療の機能に関する具体的な数値目標と言っていますが、これが医療の機能に関する具体的な数値目標になるんでしょうか。病床の稼働率が高い低いで医療の機能を評価することができるんでしょうか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 公的医療機関それから公立医療機関それぞれ二〇二五プランを策定することを求めておりまして、これをもとに地域医療構想調整会議で役割を議論していただくことにしておりますけれども、具体的な数値といたしまして、今御指摘のありました病床稼働率、手術室の稼働率など、当該医療機関の実績に関する項目を示した上で具体的な議論をしていただく、こういうことにしているわけでございますけれども、これらはいずれも、それぞれの医療機関の病棟が果たしている機能を議論するために必要な指標として定められたものということでございます。

岡本(充)委員 いや、だから、私はもう時間が限られているので、はっきり答えてください。

 病床の稼働率が高ければ、では、医療の機能は高いんですか、低いんですか、どっちですか。高いか低いかだけ答えてください。関連しているのなら、はっきり答えて。

武田政府参考人 病床の稼働率につきましては、急性期、慢性期、回復期によって、その高い低いによっては一律に評価ができないと思いますけれども、実際に地域における必要な病床数を議論する際には必要な指標ではないかと思っております。

岡本(充)委員 つまり、高い低いではこれはわからないんですよ。医療の機能を評価する数値目標じゃないということを私は指摘しておきたいと思います。

 きょうは総務省にも来てもらっているんですが、地方の病院、私の地元のこれ、収支を出していますけれども、医業収益とそれ以外と見たときに、一般論からいうと、これはなかなか、医業収益と医業費用だけを見ると赤字はもっと拡大する病院が多いような傾向にあります。全国的に見てこういう傾向なのか、こういうところにどういう対策をしていくのか、ちょっと総務省としての見解を求めたいと思います。端的にお願いします。

沖部政府参考人 お答えいたします。

 公立病院の経営につきましては、総務省が経営改革の指針である公立病院改革ガイドラインを平成十九年度にまず示しておりますが、その前年度である平成十八年度におきましては、経常損益において千九百八十八億円の赤字が生じる状況でございました。

 その後、同ガイドラインに基づきまして地方公共団体が行った経営効率化の取組等によりまして、平成二十二年度から平成二十四年度まで経常損益は黒字になりましたが、平成二十五年度に経常損益が赤字となって以降、その幅は拡大し、平成二十八年度におきましては八百三十一億の赤字が生じており、再び厳しい状況にあるものと認識してございます。

岡本(充)委員 診療報酬改定、これがきいているんですよ。病院が厳しい診療報酬改定に直面しているという事実だと思いますよ。やはり政府全体で対策を考えないといけないと思います。

 最後に、条文の話です。

 現行の医療法の第三十条の二十三の一項の六にある大学、これは最後のページですけれども、この大学の定義、入っていませんね。こんなことってあるんですか。ほかにもあるんですか。

武田政府参考人 御指摘の現行の医療法第三十条の二十三第一項第六号に規定する大学につきましては、定義規定が置かれておりませんでしたけれども、これは、法律上、大学という語が指し示す対象が一般的に明らかであると考えられたことから、当該立法のときにこのような規定が置かれたというふうに承知をしております。

岡本(充)委員 普通はないんですよ。だって、その後に、三十条の二十五で、ここで大学を規定しているんです。本来は、最初に条文上大学が出てくるところに規定を置かなきゃいけないんです。これは、本来、法改正するときに書き間違えましたね。

武田政府参考人 少し経緯を御説明させていただきたいと思いますが、現行の第三十条の二十三第一項第六号の規定は、平成十八年の医療法改正において新設をされた条文でございますが、当初からここには定義がついてございませんでした。その後、平成二十六年の医療法改正におきまして、現行の第三十条の二十五第一項第三号の規定が新設された際に、その条文における大学のところに「学校教育法第一条に規定する」という定義が付されたということでございます。

 これを、今回の法律改正におきまして、現行の規定を踏まえまして、今回の改正は、法技術的により適切な形に修正をさせていただきたいということでございます。

岡本(充)委員 だったら、最初の答弁はおかしいですよ。大学が明らかだから定義する必要はなかったとは言えないでしょう。もしそうだったら、今回だってわざわざ改正しなくていいんだから。ちゃんと誤りだったということは認めてください。

 その上で、こうした誤りを是正するためだけの法改正、今国会、厚生労働省の法律案にほかにあったのか、答弁を求めたいと思います。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 昨日の議員からの御指摘を受けまして、今国会に厚生労働省が提出した法案につきまして、省内の担当部局に照会をし、調査を行っているところでございます。

 しかしながら、改正法案では、関連する他省庁所管の法律も一括して改正するものが多く、そうした法律の改正内容まで調査を行うには一定の時間を要するため、現時点では御質問にお答えすることが困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 御指摘を踏まえまして、引き続き調査を行い、結果が判明次第、速やかに御報告をさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 大臣、最後に、やはり法改正、これは誤りがあったということですよね、前の法改正では。だから、その事実だけはちゃんと認めていただきたいと思います。大臣、どうですか。

加藤国務大臣 誤りという定義の問題なんだろうと思います。

 確かに、今回じゃなくて前回のときに、そこに大学というところを入れたときに、あわせてそちらもやっておけばよかった、それは多分委員の御主張なんだろうと思いますが、ただ、大学と決めたことが間違いだったのかといえば、そこは必ずしも間違いだということは言えないというのが、さっき局長の答弁なんだろうと思いますけれども、ただ、法文上の美しさと言うとちょっと語弊がありますけれども、整合性という意味においては、その段階で本来は図られるべきものだったのではないかなというふうに思いながら聞かせていただきました。

岡本(充)委員 引き続き調査を待ちたいと思います。

 終わります。

高鳥委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今回の医療法案審議は、重要法案に私は値すると思っていますが、参議院先議であり、また、本会議の質疑もなく、会期末ぎりぎりのタイミングで審議入りをしたこと、せっかく午前中参考人質疑を行いましたが、それを本来審議に生かすべきところでありますが、それらを吟味する暇もなく、本日採決が提案されていることを非常に遺憾に思います。このことを最初に指摘しておきたいと思います。

 資料の一は、医学部入学定員と地域枠の年次推移であります。

 昭和四十八年、一九七三年に、一県に一医学部をということで閣議決定をされてから医学部の定員が伸びてきたわけですが、一九八二年の閣議決定により医学部の定員は逆にふやさないとされ、ごらんのように十年以上それが横ばいで続きました。表にはありませんけれども、この閣議決定を変更して増員に転換をしたのは二〇〇八年、平成二十年六月の骨太方針が契機であったと思います。

 私が厚労委員会に所属したのは二〇〇六年からなんですが、まさにその年は医療制度改革の年でした。各地で医師不足が指摘をされ、新聞各紙も連日のように報道し、各党議員がこの問題を取り上げておりました。私は、東北はどこも深刻な医師不足でありまして、自治体病院の統合や無床診療所化などが提起をされて、地域医療を守れという住民や職員の皆さんと力を合わせた運動というのも各地で行われておりまして、繰り返しこの問題を取り上げてきました。

 そうした中、二〇〇八年の二月二十六日の予算委員会で、舛添当時の厚労大臣が、私の質問に対し、閣議決定の事実上の撤回を表明され、以来、七千六百二十五名だった横ばい期から、現在九千四百二十名まで伸びてきたと思っています。

 ただ、このころから医師の偏在というのはずっと言われてきたわけであります。また、勤務環境についても既に議論をされておりました。十年たって、どのような努力をし、変化をつくったと考えていらっしゃるのか、大臣に伺います。

    〔委員長退席、渡辺(孝)委員長代理着席〕

加藤国務大臣 今、委員御指摘のように、平成二十年度以降、毎年医学部定員の増員を図った結果、平成二十九年度までには千七百九十五名の医学部定員の増員が行われ、平成二十九年現在で医学部定員は九千四百二十人、これは表にお示しをいただいているところであります。

 この増員が医師の地域定着につながるよう、この間、地域枠及び地域医療に従事する明確な意思を持った学生に対する奨学金の貸与の推進が平成二十二年度から、都道府県が責任を持って医師の地域偏在の解消に取り組むための地域医療センターの設置が平成二十三年度からで、二十八年四月現在で全ての都道府県に設置がされております。さらに、地域医療介護総合確保基金を通じた医師確保対策を平成二十六年度から、などの対応を実施してきたところでありますし、今、医師の勤務環境の改善ということがございましたが、診療報酬や地域医療再生基金等を活用した短時間勤務、交代勤務制度の導入への支援や、医師事務作業補助者の配置への支援など、平成二十年度から逐次実施をさせていただいておりますし、また、医療法改正による医療勤務環境改善マネジメントシステムの導入、これが平成二十六年十月から対策を講じたところであります。

 今後、増員した医師が臨床研修を終えて医療に従事いただくことが見込まれるわけでありますので、医師偏在や勤務環境の改善にもつながっていくことを期待しておりますけれども、医師偏在においては、今回の法案においてその対策を盛り込ませていただいております。これにのっとって実施をしていくこと、また一方で、これは働き方改革と絡んでくる話でございますので、厚生労働省に設置をした医師の働き方改革に関する検討会において、来年三月まで精力的に御議論いただいて結論を得ることにしておりまして、そうした結論も踏まえながら、更に取組を進めていきたいと考えております。

高橋(千)委員 せっかく大臣に質問しましたので、メニューを列挙するのは参考人でもよかったと思いますので、大臣の言葉でお答えをいただきたいなと思いました。この後幾つか質問した後にもう一度感想を聞きたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 資料の二は、これはよく見る資料なんですけれども、今おっしゃった年度ごとの、ふやしてきて、赤いところが臨時定員増の枠組みを描いたものであります。

 それで、資料の三を見ていただきたいんですが、これは我が青森県の実態をつくっていただいたものであります。

 臨床研修病院の修了者数、これは、県立中央病院とか八戸市民病院が、幾つか人気があるわけですけれども、十三の病院でことし三月に八十二名が修了をしております。うち、県内出身者は四十九名で、そのうち三十九名が県内に残っています。また、県外出身者も三十三名のうち十七名が県内に残り、合わせて五十六名が県内に残っているわけです。弘前大学医学部附属病院のプログラムによって、専門研修を大学でやるというのではなく、関連病院との連携ということで実施分、これは四十九人が実施しているということであります。下の段の年度を見ていただくと、これが少しずつふえているというのがわかっていただけるのかなと思うんです。

 その次のページを見ていただきたいんですが、これは大変細かい数字で恐縮なんですが、頑張ってつくってもらったものなので。二〇〇四年からことし春までの各病院の臨床研修の募集人員とマッチング状況、そして採用人数なんですね。

 下のところに計と書いてあります。その中で一番多いのが九十三人、これは平成二十七年です。これがまさに、先ほど述べた閣議決定を変更して増員に転じた年の卒業生が出た年、最も多かったということです。

 あのとき、今医学部の定員をふやしても、医者になるまでは十年かかるから即効性がないと随分言われました。当時の川崎二郎厚労大臣には、青森県は弘前大学を卒業しても県外に出てしまう学生が多いじゃないかと答弁されて、大変悔しい思いをしたことがございます。しかし、今、こうして地域枠をつくり、大学病院とも連携をして、県内定着がようやく始まったわけです。だからこそ、今の定員枠は、本当は時限つきだったけれども、延長してほしいという要望が非常に多かったと思います。

 確認します。

 医師需給分科会の第三次中間取りまとめを出されておりますが、二〇二〇年度以降についても、この定員増、先ほどの資料の赤いところですね、延長されるのか、確認をいたします。

武田政府参考人 お答えいたします。

 平成三十二年度、西暦でいいますと二〇二〇年度以降の医師養成数についてのお尋ねでございますけれども、私どもの医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会におきまして検討を行い、本年五月三十一日に第三次中間取りまとめを行ったところでございます。

 その中では、将来的には医療需要が減少局面となることが見込まれており、長期的には供給が需要を上回ると考えられるが、マクロの医師需給が均衡することは、必ずしも地域や診療科といったミクロの領域でも需給が均衡することを意味しない等との考え方から、平成三十三年度、二〇二一年度までは暫定的に医学部定員を維持するという医師養成数の方針についてお示しをいただいたところでございます。

 平成三十四年度、二〇二二年度以降の方針につきましては、各都道府県における医師偏在の状況及び医師偏在対策、現在議論を行っている医師の働き方改革に関する検討会の結論などを踏まえまして、改めて医師需給を見込んだ上で医師養成数について検討を行っていきたいと考えております。

高橋(千)委員 といいますと、今約束されているのは二〇二一年度までという意味ですか。

武田政府参考人 医師養成数の方針についてお示しをいただいたのは、二〇二一年度まで暫定的に維持というところまででございまして、それ以降の方針につきましては、改めて医師需給を見込んだ上で検討を行っていきたい、こういうことでございます。

高橋(千)委員 せっかく芽が出たところなんだというお話をいたしました。午前も、医師不足なんだという議論もありました。ここはぜひ、あと三年といいますとあっという間で、まだまだこれから行き渡るところだということを重ねてわかっていただきたいなと思います。

 きょう、ずっと聞いておりますと、地域枠にいろいろな問題点があるというのを御指摘されていたと思うんですけれども、でも、そういう中で頑張っているところもあるということで、改めてのお話をしたかったということです。

 次のページで、五なんですけれども、これは福島県の医師確保対策をつけました。本当はもっといっぱいあるんですが、二枚だけつけております。

 これも、入学定員が八十人から現在百三十人にふえて、そのうち四十八名が奨学金の貸与実績があります。見ていただければ、いろいろな名目で奨学金があります。中には、医師確保修学資金貸与事業の中のイというところに、対象者は帝京大学及び日本医科大学の医学部に在籍する者とありますよね。こういうふうに、県外の大学なんだけれども、県内出身者が修学をしていてバックをしてくる、そういうことを期待して応援をするですとか、さまざまなことをやっているんです。

 下の方は、浜通り、相双・いわき地区ということで、最も原発事故の被害が大きく、医師確保対策で特別な体制をとらなければならない地域においては、医師を確保した事業所に対して人件費を助成する、こうしたいろいろな事業をやっております。

 福島は県立ですのでまた少し違いがあるんですけれども、県立医大とタイアップで寄附講座をやっていたり、若手の医師に教員になってもらう、そういう形で待遇を確保しながら地域に貢献をしてもらう、そういうこともやっているんです。

 ですから、地方でもいろいろな取組をして頑張っているんだと。そこを、芽を出してきた対策にやはり水を差すことがあってはならないですので、大臣にもう一度感想を一言伺いたいと思います。

加藤国務大臣 委員の御指摘は、平成三十四年度以降どうしていくかということでありますけれども、これについては先ほどの局長の答弁を繰り返すということになりますけれども、地域における医師偏在の状況及び医師偏在の対策ということでありますから、今まさに委員が御指摘になった点がその時点においてどう進捗をし、その後についても一定の見通しを見ていく必要が当然あるだろうというふうに思いますし、また、やはり働き方改革をどうするか、これは非常に大きなファクターになるわけでありますので、その両方を見ながら、しっかりとこの議論を進めていく必要があるんだろうというふうに思います。

 この養成数等を考えるときには、もう一つは地域の医療構想もございます。だから、まず地域の医療構想、働き方改革、そしてこの地域偏在、あるいは診療科偏在、この辺を総合的に判断していくということでありますので、現時点ではそれ以上のことは申し上げる状況にはありませんけれども、ただ、いずれにしても、そうした施策がしっかり進んでいくということを前提に考えていく必要はあるだろうと思います。

高橋(千)委員 大臣、申しわけない。あえて感想と述べたのは、やはり地域で、地域枠を設けることで、具体的に県内に定着がやっと始まったんだ、定員増から十年かかるとか言われたけれども、今県内に定着し始めているんだ、そのことについて評価していただけるかということで伺いました。

加藤国務大臣 それは、今、委員がお示しをいただいた青森等においても、成果というんでしょうかがあらわれているというふうに思います。

 ただ、マクロで見るのと地域ごとで見るのと、それはちょっと視点も変わってくる部分があるんだろうと思います。もちろん、全体量が減れば、地域において偏在があるところはより厳しくなるということ、これはそういうことになりますけれども、逆に、これまでのように、マクロとして数がふえてきているけれども地域の偏在がなかなか進んでいないという部分もあるわけでありますので、まずは、そういった意味において今回法案を出させていただき、そうしたことを通じて、地域偏在、これはまず解消していきたいと考えております。

高橋(千)委員 具体の話に入っていきますが、二〇一五年の六月の経済財政運営と改革の基本方針二〇一五において、「地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について、検討する。」とされて、まさに今の期限が来ることを受けて、同年十二月から医療従事者の需給に関する検討会が設置をされました。

 医師の需給分科会の第一次中間取りまとめは、翌年、二〇一六年六月三日に出されておりますが、唐突に文中に、新たな医療のあり方を踏まえた医師の働き方ビジョンを策定し、その上で必要な医師数を検討するとの一文が盛り込まれ、需給分科会は何と一年間休止をいたしました。

 本日、参考人として、この需給分科会の片峰座長が出席をされましたので質問したんですけれども、いよいよ具体の話に入ろうというときに一年のブランクに遭ったのはじくじたる思いとおっしゃっておりました。私は、やはり本来、働き方改革と医師の需給、当然重要ですから、横の連携がもっとあればよかったのになということが強く言いたかったことであります。

 それで、昨年四月に出されたこのビジョンの結論は、タスクシフティングや、全国十万人の医師を対象にした勤務実態調査などに意欲的に取り組んだものの、「敢えて医師数を増やす必要がない環境を作り上げていくことが重要」というふうに書かれております。非常にがっかりさせられました。

 これを受け再開した需給部会も、十二月に第二次中間取りまとめを出していますが、医師の偏在対策のみで、ふやさない方向になったのかなと思います。

 まず、この関係はどのようになっているでしょうか。医政局長に伺います。

武田政府参考人 御指摘の医師の需給分科会でございますけれども、医師の労働時間を踏まえまして需給推計を行ってございます。

 それで、三十二年の医師養成数について、先ほど申し上げましたように、本年五月三十一日の取りまとめで三十三年度までの方針をお示ししたということでございます。

高橋(千)委員 何か答えになっていないんですが、済みません、具体的に聞きます。

 三月に働き方改革の実行計画が策定をされて、これを受ける形で今度は、さっきはビジョンの話をしたんですが、医師の働き方改革に関する検討会も開催されて、今、中間的論点整理が出されている、こう非常にややこしいんですね、いろいろな検討会が立ち上がっていて。

 私が伺いたいのは、その中で、結局、医師は、働き方改革法案が施行、もう案が取れてしまったんです、働き方改革法が施行されて、その後、五年間猶予した上で新しいスキームをつくるということを聞いています。そうすると、上限規制、我々は強く批判をしたわけですけれども、八十時間、百時間、これを超えるのも、新しい規制、医師は特別の規制をつくるというんですから、やむなしという立場なんでしょうか。

武田政府参考人 医師の働き方改革に関する検討会、これは、私ども、医師の働き方について検討をお願いしている場でございますけれども、医師の時間外労働の上限規制につきましても議論をしております。

 この中ではさまざまな御議論が出ておりまして、脳・心臓疾患の労災認定基準である一カ月百時間又は二から六カ月の各月平均で八十時間という時間外労働時間の水準を超えるべきではないとの意見がある一方で、必要な医療ニーズに対応できる医療提供体制を維持できるようにすべきとの御意見、また、現状から大きくかけ離れた画一的な上限時間を設定することについては、医療提供体制の崩壊を招くとの御意見、また、米国の研修医等、諸外国の制度を参考とすべきといった御意見などがございまして、現時点では、まだ一定の方向性が出ている段階ではございません。

    〔渡辺(孝)委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 要するに、全部併記なんですよね。いろいろな意見が出ましたということで、どうなるのかということなんです。

 だけれども、過労死ラインである百時間、八十時間の水準を超えることは慎重であるべきではないか、こういう意見も出されました。私、当然だと思うんですね。医師だから百時間を超えても仕方がないんだ、はなからそういう議論をするのは正しくないと思うんです。

 それから、必要な医療ニーズに対応できる医療提供体制を維持できるような上限規制とすべき、これは、ずっと私たち、医療提供体制、もう地域医療は大変だという話をしていました。確かに、これは命の格差になっています。でも、だからといって、命を守るための医師がみずからの命を削って働くべきなのか、このことは、本当に考え方を変えなきゃいけない。どちらも成り立つためには、ふやすしかないんだという立場に立つべきだと思うんですね。

 さらに、並べて書いてあるのは、「医師においても非常に多様な働き方があることや将来の医師の働き方を見据えれば、時間給でない制度等の新たな労働時間制度の検討も必要ではないか。」、こういう意見もあるんですね。これって、医師も高プロにすべきだという意見なんでしょうかね。

武田政府参考人 検討会におきましては、御指摘の点も含めたさまざまな御意見があったところでございまして、個別にこういう法制度ということではございませんけれども、そのような意見もあったということでございます。

高橋(千)委員 そのような意見があったということは、だから、そのような意見とは、医師も高プロだという意見があったという意味ですかと聞いています。

武田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がありましたように、多様な働き方に沿った法制度ということでございまして、高度プロフェッショナル制度ということでの御議論ではなかったと承知をしております。

高橋(千)委員 「時間給でない制度等の新たな労働時間制度の検討」って、まさにそうじゃないんですか。

 山越局長も来ていただいておりますけれども、結局、時間に縛られない働き方と言っているのに、さっきから議論している、医師というのは応招義務があるから避けられないんだということでされている。最もふさわしくないですよね、こういう高プロのような働き方。もしそれだったら、一言おっしゃってくださいますか。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 医師の働き方改革についての検討会については、今、医政局長から御答弁がありましたように、さまざまな意見も出されているところでございます。

 そうした中で、これは医師の時間外労働の上限基準の水準などを決めていかなくちゃいけませんので、引き続き、こういったことについて、この検討会で検討を進めていく、医政局と協力して取り組んでいきたいと思います。

高橋(千)委員 答えていないです。

 さまざまな意見があったのはわかっている、だけれども、高プロというのは医師にはあり得ないですよねと言っています。

山越政府参考人 医師の働き方改革の検討会におきましては、今申しましたようにさまざまな意見をいただいているところでございまして、そのことを踏まえまして、今申しましたように医師の時間外労働の上限基準の水準などについて議論をしていくということでございます。

 今御指摘をいただきました高度プロフェッショナル制度につきましては、これは別途、法律が成立をいたしましたので、これを踏まえまして、どのような業務を対象業務とするかにつきましては労働政策審議会で今後検討していくことにしているところでございます。

加藤国務大臣 今、局長がお答えしましたように、まさにどういう職種にするかというのはこれからの議論でありますけれども、基本的には、成果と時間とが相当な関係にないということでありますので、特に、どこの何時から何時まで働けというようなそうした指令がないということを、これは省令でということをさんざん申し上げていますので、医師の中に、全然それと関係なく、自分の好きなときだけ手術するというのがあればちょっとわかりませんけれども、一般の勤務医のように、何時から何時まで働いて、その間ここにいてということになれば、これは高プロの対象にはなりがたいというふうに思います。

高橋(千)委員 そうおっしゃってくださればいいんです。あり得ないはずです。

 思いっ切り時間を食ってしまいましたので、相当飛ばして、最後の資料を使いたいと思います。

 実は、これは医師の偏在対策などと言っておりますけれども、看護の話が出てこないのはやはりおかしいと思うんですね。

 看護職員の需給分科会は二年間とまっています。働き方ビジョン、医師と看護職員と言っておきながら、その間、需給分科会は二年とまっているということで、どう考えるのかをぜひ伺いたいと思うんですね。

 資料の最後についているのは、日本医労連が二〇一七年、看護職員の労働実態調査をやったものです。五年に一回調査をしているんですけれども、前回の二〇一三年を上回る三万三千四百二人の回答を集約したものです。左上を見てください。一年前に比べても仕事量が大幅にふえた二一・三%、若干ふえたと合わせれば五八%。右にスライドしてください。慢性疲労が七一・七%。そういう中で、切迫流産が三〇・五%。これは本当に深刻だと思いませんか。

 前にもこの調査を使って、看護職員のワーク・ライフ・バランスが確立されると人手不足は解消されると提案したことがあります。夜勤があるから、長時間労働だから、働きながら子育ては無理だ、潜在看護師を幾ら掘り起こしたいと思っても職場復帰が難しいのはそこなんだ、これがはっきりしていると思うんですね。

 下の方は、仕事をやめたい、これを時々思うのが五六%、いつも思う一九%、合わせて七五%なんです。右を見てください。その理由のトップは、人手不足で仕事がきつい四七・七%。仕事をやめたいといつも思う、これは、時間外労働が長くなればなるほど、いつも思うがふえていますよね。

 大臣、ぜひ伺いたいんです。きょう資料はつけていませんが、日本看護協会の調査でも、看護職員の不足感がある、やや不足感があるとを合わせると、全体の七五・七%。これは看護部長が回答していて、そもそも診療報酬の看護配置基準を満たせない、維持するためには二六・七%の方が不足だと答えている。本当に重大だと思うんですね。

 看護師不足、過重労働そのものが問題なんだという認識があるでしょうか。医師を補助する役割を期待されても、これでは実効性が上がるわけがありません。看護師増員と夜勤を減らすなどの待遇改善は待ったなしだと思いますが、見解を伺います。

加藤国務大臣 今、高橋委員のお示しになられた資料あるいは看護協会の資料などを見ておりましても、個々の地域や施設類型ごとに看護職員の不足感のある医療現場があるというふうに考えております。

 また、看護職員の離職の要因の一つには、夜勤や不規則な勤務などが挙げられているというふうにも承知をしております。

 地域において必要な医療を確保し、看護職員の方が医療現場において求められる役割を適切に果たしていただくためにも、看護職員の確保をしっかり行っていく、また、勤務環境の改善を図っていくことが重要であると考えております。

 このため、厚労省では、各都道府県に設置された地域医療介護総合確保基金による地域の実情に応じた看護職員の養成、確保、あるいは勤務環境の改善に対する取組の支援、例えば院内保育所の整備等々でありますけれども、また、都道府県ナースセンターや医療勤務環境改善支援センターによる支援の強化、こういったことを進めさせていただいております。

 今後とも、やはり看護職員をしっかり確保していく、あるいは離職を防いでいく、そして、そのためにも勤務環境の改善を図っていく、こういった観点に立ってしっかりと取り組ませていただきたいと思います。

高橋(千)委員 そういう意味でも、看護職員の需給見通し、これから発表されると思うんですけれども、しっかりとワーク・ライフ・バランスが確立できるような見通しを持っていただきたいし、前のページにあるように、タスクシフティングで、やはりいろいろな業種はあるけれども、看護職員に対しての期待が大きいわけなんですよね。でも、看護師さんが大変なのに医師を助けましょうって、これは共倒れになっちゃうわけですから、やはりここを切り離して考えないで一体でやっていただきたい、このことを指摘して終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 恐らくきょうが通常国会の厚労委員会の最後の質疑になるのかどうかわかりませんが、かなり終盤に差しかかったということではないかなと思うんですけれども、ことし、今回の通常国会で非常に感じたのは、データというものをうのみにしてはいけないのかなと。私もデータというのは大変弱い方でございまして、折れ線グラフとか円グラフとか棒グラフとか出されますと、そういうものかな、そういうふうに思っていたわけですけれども、今回、働き方改革で出されたデータというのが事実ではなかったということは大臣もお認めになっていらっしゃるんではないかなと思うんです。

 そういう意味で、今回の、きょうの午前中の参考人質疑で、私、非常に不信感を実は持たせていただいたのは、きょうの午前中の本田参考人の方からの、OECDとの比較のところで、医師の数をカウントするに当たっては、ほかの、ヨーロッパの国は六十歳代までを医師の数として入れている。ところが、日本だけは八十歳代以上、九十歳の人も週三十時間働いている計算になっているということなんですね。

 一昨日、私は大臣に対して、需給関係を、均衡になるというようなことに関しては、どういうデータを参考にしているのかという質問をさせていただいたと思うんですよ。そのときに大臣は、るるいろいろな説明をされたと思うんですけれども、そのとき大臣は、日本のこの計算のデータが、OECDの基準とは違って、八十歳以上も入れているということを御存じの上で、私の質問に回答されたんでしょうか。

加藤国務大臣 それは、今言った、OECD、EUですかね、云々ということを私も頭に置いておりませんが、日本においてはそういう形でやっている。実際、日本において、例えば七十代以上では週当たり三十二時間五十八分働いているというデータがありますから、それを踏まえて試算をしている、そういうことであります。

串田委員 もし、仮にそうであるとするなら、OECDのヨーロッパの国の人は六十歳以上は働いていないという前提で比較しないとおかしいんじゃないですか。日本だけが七十歳代も働いて、八十歳代も働いているというときに、OECDは六十歳までを区切りにしているということは、データの中に何も出てこないわけですよ。

 私、非常に、これは通告していないので申しわけないんですけれども、通告できないですよ。なぜなら、午前中の参考人質疑で出てきたことだから。通告の後に出てきているので、それを前提にして、それはおかしいんじゃないかという質問は、やはり一般質疑の中で、あるいは法案質疑の中でさせていただかないと、何のために参考人を午前中に呼んで、答えを出しているのかわからないと思うんですよ。参考人のいろいろな、大変重要な、貴重な情報を提供していただいた上で、それを踏まえた上で、一般質疑なり法案質疑なりをさせていただければ、十分通告はさせていただいていると思うんですけれども、私も午前中、聞いて、それは、そのデータはやはりおかしいよねと。九十歳、百歳、働いていて、出てきたら、患者さんも驚くよねというのを、きょうは本田参考人がお話をいただいたんですよ。

 そういう、何かデータがもし違うんであれば、そこのデータのところに、OECDは何歳以上ということで書いていただかないと、それこそ本当にデータで一直線で、これは何年になれば均衡になりますとか、今は均衡になっていませんと言っても、働いている年齢が違えば、それは変わってくると思うんですよ。そういうふうに大臣はお思いになられませんか。

加藤国務大臣 ちょっと、私も、前の議員のときに、他国のデータで比較した記憶は余りなくて、あくまでも日本における需要と供給の話はさせていただいて、そして、日本における供給を考えるに当たっても、これからどう世代が変化していくのか、そして、現状の世代における週当たりの勤務時間、これを前提に置いて計算させていただいた、多分そういうことを言った記憶はあります。

 例えばあの日野原先生のように、相当な御高齢になっても医師活動をされていた方もいらっしゃったわけでありますので、あくまでも、それは、他国との比較をするときには、今委員おっしゃったように、ベースを合わせるという必要性はあるんだろうと思いますが、日本の国内における今後を見通す中において、現状、六十代、七十代、八十代でも一定働かれているんであれば、そういう前提を置いて試算すること自体はそんな不自然なことではないのではないかというふうに思います。

串田委員 私の記憶の中では、本田先生は、OECDとの比較だけを言っているんではなくて、需給関係も含めて、九十歳、百歳まで働いているということを算定にして需給関係を計算するのはおかしいんじゃありませんかという問題提起を午前中されていたと思いますよ。そして、OECDとしては六十歳までにしているんですよという比較で、日本のその計算の仕方というのはちょっと違うんじゃないかという問題提起を午前中はされていたと私は記憶をしています。

 ここはここで、それでやめますけれども、ただ、OECDと比較しているデータもあるわけだし、そういう意味では、ちょっとその基準を変えているということ自体は、非常に、そういう意味で、今回のいろいろなデータ問題、ことしもありましたけれども、そこら辺の部分でちょっと違うんじゃないかという気持ちが起きたということ自体は大臣も知っていただきたいと私は思っているんです。

 それはもう、八十歳、九十歳も働いているのは当たり前じゃないかと言われちゃったら、それはしようがないですけれどもね。

 この問題はこのぐらいにしますけれども、やはり常識的なものというのはあると思うので、医師の定数の偏在問題も、やはりそれは、常識的な年齢までの部分を加味してこうだというふうに出すべきなんじゃないかと思いますが、納得されていないようなんで、これはまた別の機会に質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの午前中からの参考人のお話でしたので、私自身も、詳細に研究をしているわけじゃないですし、通告もできませんでしたけれども、ちょっとそういう意味で、午前中の本田参考人の回答というものに対しては、それはおかしいなというのは私もちょっと感じたものですから、お話をさせていただいたところでございます。

 ところで、今回の法案は、都道府県における医師配置の、かなり都道府県に権限が強まっていくということでありますけれども、それによってどういうような実効性が生まれてきたのかということをお聞きしたいと思います。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 都道府県による医師配置の実効性という御質問でございますけれども、平成二十年度以降、医学部入学定員の臨時増員などにより設けられてきた地域枠の医師が順次臨床研修を終えることに伴いまして、今後、地域医療支援センターによる派遣調整の対象となる医師が大きく増加することが見込まれております。

 これらの医師を都道府県が適切に配置調整をしていくことが必要でございますし、それこそが、この都道府県による医師配置の実効性の担保ということにつながっていくのではないかと思っております。

 このため、今回の法改正におきましては、大学、医師会、民間医療機関などを構成員とする地域医療対策協議会において地域枠医師の派遣に関する協議を行い、その結果に基づき地域医療支援センターが医師派遣を行う、こういう仕組みになってまいりますので、関係者間での合意形成に基づく実効的な医師の配置調整が実現できるものというふうに考えてございます。

串田委員 そこのちょっと前提部分として、例えば都道府県の中で、都道府県の内部でその派遣先を決めていくということなんでしょうか。都道府県との連携の中で医師というものを調整していくということもあり得るということなんでしょうか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま申し上げましたのは、今後、その増加が見込まれております地域枠医師、この方々の派遣調整において都道府県が大きく役割を担っていくということでございますけれども、これは、地域枠の医師の多くが都道府県から奨学金を得ているということに基づいて、都道府県が配置調整を行っていくということでもございますので、そういう意味におきましては、都道府県の、その県の県域内における派遣についてこの地域医療対策協議会が中心的な役割を担っていただく、こういうことと考えております。

串田委員 そうしますと、今までは、都道府県の医師の偏在というものが十分に把握されていないままに派遣されていたという事実があって、それを、これからは、都道府県が十分にそれを精査した上で派遣をするから偏在というものが解消されていく、そういう改正案ということでよろしいんでしょうか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 医師の偏在につきましては、都道府県間の偏在もございますし、都道府県内における偏在もあるということで、二次医療圏別に見た場合、また都道府県別に見た場合に大きな格差があるというのが現在の実態でございます。

 都道府県間格差の是正につきましては、例えば、医師の養成過程におきまして、地域枠の設置でございますとか、臨床研修病院の定員の枠の設定における格差是正策などによりまして是正を図ってまいってきているところでございますし、都道府県内の偏在是正につきましては、平成二十年以降の地域枠卒業生の方々を中心に、都道府県が中心になって役割を担っていただくということでございまして、さらに、そこと、その地域に医師を派遣している大学との間で地域医療対策協議会で協議を行っていただきまして、この都道府県による地域枠医師の派遣調整及び大学医局の医師派遣、これが整合性を持って進められる、これによって、今後は実効性のある形の医師偏在対策が進むものと考えております。

串田委員 そういう、都道府県が派遣先を決めていくということは、大変それは、各都道府県がわかるということで、地方自治的な部分で大いに評価はできると思うんですけれども、一方、そういったようなことによると、公立だとか公的医療機関に偏っていくのではないか、そういう不信感というのも出てくる可能性もあるわけでございますので、派遣ということに関して公平性というものをどうやって確保していくのか、何らかの形で、クリアな形でそれがなっていくのかどうかという点については、配慮はされているんでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 今回の法案におきましては、都道府県が地域枠医師を始めとした医師の派遣調整を行うに当たりまして、客観データとして示される医師偏在指標を踏まえ、地域医療対策協議会で協議を行い、その結果に基づくこととしておりまして、協議の結果についても公表することとしております。

 また、この地域医療対策協議会の運営でございますけれども、民間医療機関も含めた公平な医師の派遣調整が行われるように、地域医療対策協議会の構成員として民間病院を新たに法律上定めたところでございますし、医師会や大学なども含めた地域の関係者で協議をしていただくこととした上で、例えば、地域医療対策協議会の議長は、都道府県ではなく、都道府県以外の者を互選により選定すること、地域医療対策協議会の事務局を都道府県の外に委託をすることも可能であることなどを、国が示す地域医療対策協議会の運営指針の中で明確化することとしております。

 私どもといたしましては、これらの事項について指針を作成いたしまして、都道府県に徹底を図ってまいりたいと思いますし、改正後の都道府県の取組状況につきましては、しっかりとフォローアップを行ってまいりたいというふうに思います。

串田委員 検証も十分していただくということなので、それについては期待をしたいと思うんです。

 一方、医師数の目標というのも定められていると思います。前回も質問させていただきましたが、戦後七十年間の中で、なかなかこの偏在問題というものを解消できていなかった。

 そして、私、ちょっと心配になったのは、きょう五人の参考人の御意見をいただいたんですけれども、大臣もどこかで見られたかどうかはちょっとわかりませんが、ちょっと、イメージとしては、今回の改正案では偏在が解消できそうにないような感じの御意見というような受けとめ方を私はしました。そういう意味で、非常に前進で、これで大丈夫だというような声ではなかったような気もいたします。

 特に、専門医に関する部分に関しましては、それが地域等の問題ではないという御指摘ももっともだと思いつつ、働き方実態調査によれば、やはり二十代の若い医師は専門医の資格取得が困難であるから地方になかなか行きたくないというような御意見もあったようで、そこら辺の部分の参考人の意見というのも非常に分かれていたんじゃないかなと思うんです。

 そういう意味で、参考人が午前中に非常に貴重な意見を言っていただいた中で、それを生かした質問というのを午後にさせていただくというのはちょっと通告的にも無理があるので、そこら辺はちょっと運営の仕方も検討していただきたいなとは思うんです。

 先ほど、医師数の目標を定めたということでありますけれども、これが十分な進捗状況に達しない場合というのはどういう見直しをする予定になっているんでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 これまで、医師確保に関しましては、各都道府県が定めることとされている医療計画、この医療計画における記載事項ではございましたけれども、その記載事項や具体的取組が法定化されているわけではございませんでしたので、都道府県の運用に委ねられている部分が大きく、実際に各都道府県における医師の確保状況に関する分析、対策又はその目標の設定につきましても非常にばらつきがあったのが実態でございます。

 今回の法案におきましては、全国における医師確保対策の実効性を強化するために、客観的で全国統一的な数字であらわされる医師偏在指標を導入いたしまして、PDCAサイクルに基づく対策の評価、改善が行われるように考えております。

 したがいまして、都道府県内における医師の確保方針、医師の偏在の度合いを踏まえた医師確保の目標、地域ごとの目標の達成に向けた施策内容、こういう一連の方策を医師確保計画に記載をいただきまして、これを明確に法律上都道府県が行う事務と位置づけた上で、医療計画は六年でございますけれども、この医師確保の対策につきましては、三年ごとに計画の実施状況を把握し、計画の見直しを行っていただくこととしております。

 ただし、都道府県によりましては、地域の医師確保が喫緊の課題ということで、三年の定期的な見直しだけではなく、計画期間中においても、必要に応じて、医師の確保状況を把握し、実態に合わせて目標を見直した上で、さらなる必要な対策を講じていただきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、私ども厚生労働省といたしましては、各都道府県の取組状況についてしっかりフォローアップをし、このPDCAサイクルが機能するように力を入れてまいりたいと思います。

串田委員 医師の偏在問題を解消するというのが喫緊の課題だというのは、きょうの参考人の方も皆さんおっしゃられていたわけですが、そのうちの一つの解決策といいますか、今の段階で非常に有効であると思いましたのは、猪口参考人が総合医という提案をされておられました。

 これは、診療科目が非常に多岐にわたる中で、欠けている部分というのは医師がいないということになるんでしょうけれども、総合医というのは、全般的な窓口として、ほとんど何でも診療していくというような医療科目ということでございますので、そういう意味では、各科目が何人かいるけれども、欠けている科目も何人もあって、そこが医師がいないねというよりは、総合医がいることによって、とりあえずは心配なく診療していただいて、もしそれで十分でない場合には、更に専門医を、ちょっと地域を離れてしまうかもしれませんが、受けに行くというようなことができるという意味では、医師がいないという状況というのは解消できるのかなという思いで聞いておりましたし、総合医というものをもう少し、今なかなかすぐ解決できない中では、活用していくということ自体は取り上げていっていいんじゃないかなというふうに感じた次第でございます。

 次に、認定制度についてお聞きをしたいと思うんですけれども、これが医師に対してインセンティブになって、地域の偏在というものが解消していけるのではないかということなんですけれども、どういう効果を見込んでいるんでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 本法案におきましては、医師少数区域等において一定期間以上の勤務経験を有する医師を厚生労働大臣が認定することとしておりまして、この認定医師に対しましては、地域医療支援病院等の一定の病院の管理者として評価することを検討しているところでございます。

 このように管理者として評価をすることによりまして、医師少数区域での勤務により培われる当該医師の地域医療への理解、経験が、地域医療支援病院等において、地域の医療機関への医師派遣や医師の少ない地域での勤務環境整備を主導していくことにつながる、反映をされていくことが期待されるところでございまして、それとともに、当該医師のマネジメント能力の向上にも資することとなると考えております。

 本法案では、こういった一定の病院の管理者としての評価を盛り込んでいるところでございますけれども、認定の効果の一つとして挙げているものでございまして、これだけで医師少数区域で医師が勤務するインセンティブとするものではございません。

 むしろ、今回新たに設ける認定の枠組みを活用いたしまして今後検討されるさまざまな経済的評価や支援、これが得られる形にすることで、認定を取得するインセンティブとしていくことが必要だというふうに考えております。

 現段階では、あくまで厚生労働省で検討している段階ではございますけれども、認定医師個人又は認定医師を支援する医療機関に対する具体的なインセンティブとして、例えば専門医の取得に対する支援などなど、さまざまなことを検討してまいりたいと考えております。

串田委員 私も、当初はインセンティブになるのかなと思っていたんですけれども、やはり、これも午前中の参考人質疑の中で、今の若い医師は院長になりたいという人はいませんよとはっきり言われてしまいまして、そうなりますと、こういう管理者になる認定制度というのが本当にインセンティブになるのかなというのも、ちょっと私も感じた次第でございます。

 一方で、若い人あるいは医師の労働環境の不安というものが一番地域に行くのをためらっているというようなこともあるわけで、そういう意味では、一番にやはり解決をしていかなきゃいけないのは、医師が地域に行っても安心だと思うような環境づくりなんじゃないかなというふうにも思うんですけれども、この環境整備に関して、国としてはどのような取組をしていくつもりなんでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 今回の医師偏在対策におきましては、都道府県が主導的な役割を担っていくこととしているわけでございますけれども、都道府県の役割の中におきましては、医師少数区域における医師の勤務環境の整備、これにつきましても、都道府県の役割として今後力を入れていっていただきたいと思っているわけでございますけれども、それに加えまして、医師の疲弊、勤務環境の悪化の問題に関係して、地域住民の協力というのも非常に重要であるという御指摘がございます。

 地域住民による自主的な協力の事例としては、例えば兵庫県丹波市で、県立柏原病院で二名の小児科医のうち一名が退職する、こういう報道をきっかけに、子育て中の母親が活動を開始し、コンビニ受診を控えよう、かかりつけ医を持とうといったスローガンを作成するといった活動が行われ、この活動の結果、その後、小児科の時間外受診者が半減するといった効果があらわれ、小児科の医師の確保にもつながった、こういう事例があったとも承知をしております。

 こういう先進的な活動が各地で存在をしておりますので、私どもとしても、医師の働き方改革に関する検討会で紹介をしているところでございます。

串田委員 大変有効な地域の住民の協力もあったと思うんですが、こういう地域に任せるだけではやはりこれはいけないかと思います。国としてどのような取組をしていく所存なのか、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 医師の働き方にもつながるわけでありますけれども、これは国民の医療ニーズに応ずるものである点で、その改革には、個々の医療機関の対応だけではなくて、社会全体としてどのように考えるのかという観点が大事だと思います。

 したがって、医療の提供側だけではなくて、患者側も含めた国民的なかかわりによって、我が国の医療提供体制を損なわない医師の働き方、また、そして地域地域においても働いていただける環境をつくっていくということが大事だというふうに思います。

 こうした国民の理解の重要性については、医師の働き方改革に関する検討会において、先ほど申し上げた事例なども紹介させていただきながら議論していただいているところでありますけれども、そこにおいては、国民の理解を得るためには、厚生労働省がしっかりとイニシアチブをとるべきであること、国民にとってわかりやすい実効性のある取組を検討すべき、こういった意見もいただいているところでありますので、先ほどの事例などを一つの優良な事例として、それを周知させる等々によって取組の拡大を図っていく、また、医師の働き方改革に関する理解の促進について全国的な機運の醸成を図っていく、こういったことに行政がしっかりとかかわっていく必要があると思います。

 厚生労働省においても、具体的な枠組みをこれからも検討させていただいて、保険者や企業、団体等々の関係者の御協力もいただきながら、こうした機運の醸成、あるいは国民の理解を一層得るべく努力をしていきたいと考えております。

串田委員 国と地方としっかりと連携をして、実りある結果を出していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、医療法・医師法改正案に反対の討論を行います。

 日本の人口千人当たり臨床医師数は二・四人で、OECD加盟国平均の二・九人を下回り、絶対的な医師不足であることをまず指摘しなければなりません。これは、政府が長年にわたり、医師が過剰になるとの想定で、閣議決定により医学部の定員抑制を行ってきた結果であり、国民からの強い要望を受けて医学部の定員増が図られたのは二〇〇八年になってからです。そして、臨床研修を終え、医師として働けるようになったのはようやく二〇一六年になってからであります。

 本法案の趣旨は、地域間の医師偏在の解消を通じた地域における医療提供体制の確保、医療計画における医師の確保等とされています。過疎地などの医師不足は極めて深刻であり、その解消のために地方自治体は大変な努力を払ってきました。しかし、本法案は、そうした地方自治体の努力に水を差すことになりかねません。

 まず、本法案では、地域医療構想の達成を図るための都道府県知事等の権限が追加されました。

 二〇一四年に成立した医療介護総合確保推進法では、都道府県は、医療機関の病床を高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床機能に分け、地域医療構想と医療計画を策定し、四つの病床の必要量を設定することとされました。その際、都道府県知事は、病床の増設、開設の中止を公的医療機関には命令でき、その他の病院には勧告し、従わない場合には各種補助の対象としないなどの措置がとれる権限が付与されました。

 本法案は、病床削減について、現在の既存病床数と基準病床数の関係だけでなく、現在、基準病床数を下回っていても将来の必要病床数に達している場合には新規開設、増床の申請があっても許可を与えない等、一層病床削減を進めるために、都道府県知事の権限が強化されました。

 委員会で指摘したように、地域医療の不採算部門を担ってきた公立病院等が、新公立病院改革プランや公的医療機関等二〇二五プランを地域医療構想に合わせて修正すべきとされました。地域医療構想の目標達成のための標的にされ、病床削減やさらなる統合を迫られることは明らかです。その病床削減の受皿は、在宅医療、介護などの地域包括ケアシステムに担わせるものであり、社会保障削減のために、公的責任を投げ捨て、家庭と地域に丸投げすることは認められません。

 また、医師の確保もこうした病床削減の計画に合わせることになり、抜本的な医師不足の解消にはなりません。医師の働き方改革は題目だけで、もともと過労死ラインを超えた過重労働が多い医師の現状を追認するものです。

 本日の参考人質疑でも指摘があったように、勤務医の勤務先選択の自由が制限されざるを得ないという問題、外来医療についても診療所の開業規制につながるおそれもあるなど、まだまだ議論は出尽くしておりません。

 以上、問題点を指摘し、討論といたします。

高鳥委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、医療法及び医師法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 この際、本案に対し、赤澤亮正君外四名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。赤澤亮正君。

赤澤委員 私は、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    医療法及び医師法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 医師偏在対策を進めるに当たっては、医療の高度化と専門分化、医療安全対策、医師の働き方改革、新たな専門医制度など、今後の医療の供給に影響を与え得る事項を総合的に勘案した上で、関係者の意見を尊重しながら、実効性ある対策を継続的に講ずること。

 二 地域における医療提供体制の確保については、居住する地域によって受けることができる医療に格差が生じないよう配慮し、医療従事者の過度の負担に依存するのではなく、限りある医療資源を有効に活用するとともに、その課題認識が社会において共有されるよう必要な対策を講ずること。

 三 病院勤務医の夜間・休日勤務や待機時間の実態を調査した上で、医師等の過労死・過労自殺等を防止する観点から、医師の地域偏在解消に向けた対策を強力に推進すること。

 四 外科、産婦人科、小児科、救急等の医師が不足する診療科の勤務医に対する勤務環境改善を更に促進すること。また、特に医師が不足する診療科の女性医師に対しては、出産・育児等のライフイベントについて特段の配慮が行われるよう必要な措置を講ずること。

 五 大学病院の大半が高度の医療の提供等を目的とする特定機能病院であることに鑑み、勤務する医師が経営上の観点から本来担うべき役割に専念できないような事態が生じないよう、大学病院に対する財政上の措置を含む適切な支援を行うこと。

 六 医師の地域間及び診療科間の偏在を是正するため、平成二十八年以降に新設された医学部を卒業した医師に対して、その創設の趣旨に則った進路が選択されているか検証すること。

 七 過疎地域等の医療を守るため、関係地方自治体と協議の上で、自治医科大学医学部の入学定員の更なる拡充を促すよう必要な対応をとること。

 八 医師が不足している地域においては看護師等の医療従事者も不足していることが多いと考えられることから、当該地域においては医師以外の医療従事者の実効性ある確保策も同時に講ずること。また、医師がその高度な医学的専門性を発揮し、本来担うべき業務に専念できるよう、抜本的なタスクシフトを進めるための具体的取組を検討すること。

 九 医師少数区域等で勤務した医師に対する認定の創設に当たっては、認定を受けた医師や医師派遣の要請に応じて医師を派遣する病院に対する効果的な経済的インセンティブの付与について検討すること。

 十 都道府県が医師少数区域等を設定するための医師偏在指標を定めるに当たっては、地域住民の年齢構成の推移、患者の流出入の状況、昼夜人口の変化など、地域の実情やニーズを適切に反映する客観的なデータを用いて検討を行うこと。

 十一 都道府県の地域医療対策協議会の機能強化及び外来医療の提供体制を協議する場の新設に当たっては、地域医療構想調整会議等の既存の会議と並立して非効率に陥ることのないよう配慮し、都道府県に対して既存の会議との一体的な運用を促すこと。

 十二 地域医療対策協議会の運営が円滑に行われ、都道府県の医師確保対策が実効性のあるものとなるよう、同協議会の運営を支える都道府県の組織の機能強化などについて必要な支援を行うこと。

 十三 医師偏在対策は大学医学部における医師養成段階から実施すべきものであることから、厚生労働省と文部科学省が連携して具体的施策を検討し、実施すること。

 十四 地域医療に志のある学生の入学を推進し、地域枠の医師を当該地域に確実に定着させる観点から、地域枠については、地域枠以外の入試枠と峻別した上で学生の募集を促すことによって必要な地域枠学生の確保が確実になされるよう、厚生労働省と文部科学省が連携して大学及び都道府県に対して必要な対応を行うこと。

 十五 専門医制度を運営する一般社団法人日本専門医機構については、特に専門医の質の維持向上を図るため、その独立性に配慮すること。

 十六 厚生労働大臣が一般社団法人日本専門医機構に対し意見を述べ又は必要な措置を要請した場合には、速やかにその内容を公表すること。

 十七 平成三十年度に開始した専門医制度については、医療を受ける立場である国民の視点に立ち、国においても地域医療への影響と専門医の質との両面から検証を行い、一般社団法人日本専門医機構等と協力し、必要な対応を行うこと。

 十八 専門医制度については、プロフェッショナルオートノミーに十分に配慮しつつ、国も医療提供体制の確保等を図る観点から、適切にその責任を果たすこと。

 十九 医師偏在対策に携わる都道府県職員が医療政策に精通し、医師養成を行う大学や地域の医療機関等と協力・連携しながら地域の実情に即した対策を進めることができるよう、都道府県に対し適切な支援を行うこと。

 二十 地域における外来医療の需要は短期間で大きく変化し得ることから、外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項について行う調査、分析及び評価は、地域の実情に即し、六年を待たず都道府県が主体的に実施できるようにすること。

 二十一 地域医療構想の実現に向けては、地域医療構想調整会議において、都道府県がその役割を発揮できるよう好事例を横展開することや、公立・公的医療機関等と民間医療機関がそれぞれ適切な役割を果たしつつ、医療機能の見直しの検討を進め、地域の実情を踏まえた構想となるよう、国として支援すること。

 二十二 離島や山間部等の、医師が不足している地域や病院へのアクセスに困難を伴う地域の医療においては、遠隔医療が大きな役割を果たすことから、遠隔医療に係る規制や仕組みの在り方について、安全・安心の確保を前提に検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

高鳥委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいります。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.