衆議院

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第2号 平成31年3月12日(火曜日)

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平成三十一年三月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    岩田 和親君

      上野 宏史君    大岡 敏孝君

      大隈 和英君    神谷  昇君

      神田  裕君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小寺 裕雄君    小林 茂樹君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    新谷 正義君

      杉田 水脈君    田村 憲久君

      高木  啓君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    丹羽 秀樹君

      野中  厚君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      大串 博志君    吉田 統彦君

      稲富 修二君    岡本 充功君

      白石 洋一君    山井 和則君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    丸山 穂高君

      中島 克仁君    柿沢 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       根本  匠君

   法務副大臣        平口  洋君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   厚生労働副大臣      高階恵美子君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大坪 寛子君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 横山  均君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 石岡 邦章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高橋 俊之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         宮本 真司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局雇用開発部長)       北條 憲一君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  木下 賢志君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 田原 克志君

   参考人

   (元厚生労働省大臣官房統計情報部長)       姉崎  猛君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十二日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     野中  厚君

  小林 鷹之君     杉田 水脈君

  佐藤 明男君     神田  裕君

  丹羽 秀樹君     小林 茂樹君

  堀内 詔子君     岩田 和親君

  吉田 統彦君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     堀内 詔子君

  神田  裕君     佐藤 明男君

  小林 茂樹君     高木  啓君

  杉田 水脈君     本田 太郎君

  野中  厚君     小寺 裕雄君

  大串 博志君     吉田 統彦君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     大岡 敏孝君

  高木  啓君     丹羽 秀樹君

  本田 太郎君     神谷  昇君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     小林 鷹之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として元厚生労働省大臣官房統計情報部長姉崎猛君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として総務省大臣官房審議官横山均君、厚生労働省大臣官房長定塚由美子君、政策統括官藤澤勝博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの大串でございます。

 早速質疑に入らせていただきます。

 まず、私は統計不正をきょう取り上げるんですけれども、大臣と定塚官房長に発言を求めます。

 一月二十四日の厚生労働委員会閉会中審査の場において、特別監察委員会が本当に第三者性を有するのかという議論になりました。そのときに、大臣及び定塚さんからの答弁においては、第三者であるところの特別監察委員会が全てのヒアリングを行ったかのごときの発言があり、結果として、特別監察委員会、外部委員会のメンバーがヒアリングを行った人数において事実とは異なった答弁がなされました。

 一月二十四日の本委員会での答弁に関して、その後、本委員会における訂正と撤回それと謝罪、これは行われていません。議事録に残っている、一月二十四日でございますから、この議事録に残る場で大臣及び定塚官房長にしっかりと、誤った、間違った事実に基づく答弁をしたことに関して撤回をし、謝罪をしていただきたいと思います。

 大臣、そして定塚官房長、お願いします。

定塚政府参考人 一月二十四日の衆議院厚生労働委員会におきまして、一月二十二日の特別監察委員会の報告書公表までのヒアリングに関し、特別監察委員会の委員がヒアリングを行った実人数につきまして大串議員から御質問をいただきました。これに対しまして、私が、実人数について事実と異なった答弁をいたしました。

 具体的には、特別監察委員会の委員がヒアリングを行った人数について、局長、課長について必ず委員がヒアリングを行ったと申し上げたのは誤りであり、人数は、合計二十名ではなく、合計十二名でございました。

 また、補佐以下について、一部事務方でヒアリングという発言もいたしましたが誤りであり、正しくは、補佐以下については全て事務方によるヒアリングでございました。

 これは、基礎的な事実関係についてあらかじめ十分整理がなされていなかったために、委員会の場で正確にお答えできなかったものであり、発言を訂正をいたしましておわびを申し上げたいと思います。おわび申し上げます。

根本国務大臣 今、官房長からも答弁がありました。大臣官房長が特別監察委員会の委員がヒアリングを行った実人数について事実と異なった答弁を行い、私も、特別監察委員会のヒアリングのあり方について御説明する中で、事実と異なる官房長の答弁を引用してお答えをいたしました。

 これは、基礎的な事実関係についてあらかじめ十分整理がなされていなかったために、委員会の場で正確にお答えできなかったものであり、厚生労働省の責任者として率直におわびを申し上げます。

大串(博)委員 一番基本的な、第三者性があるかどうかという、大臣が繰り返し主張してきていた根本論のところで誤った答弁をしている。そもそも、ここからこの統計不正の問題の事後対応においてもとんでもない問題になっていると私は思うんですよね。

 国会の場で事実と異なった虚偽の答弁をするということは、絶対にあってはならないことです。これに関して論を進めさせていただきたいと思います。

 先日、一番大きな問題になっている二〇一五年九月十四日、資料を配らせていただいておりますけれども、大きな論点として私たちは、中江秘書官の示唆、問題意識によってそれまで厚生労働省において全量入れかえ方式と考えていたものを部分入れかえ方式も含めて継続検討とするというふうに、総理の秘書官の意向を受けて変わったのではないかというふうな疑念が持たれています。

 その経緯を一枚目の資料に書いていますけれども、九月十四日の早い時間に姉崎さんと中江さんが会っていらっしゃる、十四時〇一分の厚生労働省ファイル、保存のファイルにおいては、いまだ総入れかえ方式が適当という厚生労働省検討会の結論が書かれている。一方で、十六時〇八分に手計補佐が座長に対して、委員外の方からの意見でということで、部分入れかえ方式も含めて継続検討とするということになりましたというメールを送っている。ところが、ファイル上でそれを直したのは二十二時三十三分と極めて遅い時間であった。こういうふうになっているんですね。

 この中で、姉崎さんが、いやいや、中江さんから言われてこのような修正をしたんじゃなくて、自分の意思で修正したんですということの論拠として、中江さんに会う前に私は補佐にこの修正の指示をしているんです、十一日の金曜日の夜か十四日の朝かというふうに言われていました。補佐の方は、これは十四日の朝に指示を受けたというふうに記憶しているというふうに言われていますけれども。

 私が、先般、二月二十七日の予算委員会分科会において、十四日の朝に姉崎さんから手計さんが指示を受けたにしてはファイルの修正が二十二時三十三分と極めて遅いじゃないか、なぜか、この事実関係を問うたところ、これはなぜかというと、姉崎さんの、中江さんに会う前に指示したんだ、これが本当かということが極めて重要な今論点になっているんですね。これが成り立たなければ全体の説明が崩れるわけですよ。

 私は、おかしいな、なぜ朝に指示して修正が二十二時三十三分にまで遅くなっちゃうのか、怪しいなと思いました。なぜなら、当時、分科会のときの説明の中では、補佐がなぜ十一日金曜日に姉崎さんから指示を受けたのではない、十四日の朝であったかというふうに覚えているかというと、十一日金曜日の夜に指示を受けたのであれば土日を使ってでも修正をしているはずだから、それをやっていないということは十四日の朝だろうというふうに補佐は言っていると。

 そんな重要なことを、その日、指示をされて二十二時三十三分まで放っておくわけがないと私は思うんですね。やはり中江さんから指示を受けて、姉崎さんからこれは変えなきゃいかぬという指示を受けてやったのではないかと思われる。

 これに対して質疑をしました。二枚目です。なぜ二十二時三十三分と遅くなったのかという私の質問に対して、藤澤さんに手計さんによく聞いてから答えてくださいというふうに言ったところ、藤澤さんからの答えは、下線を引いています、十四時〇一分時点のファイルは主に報告書案の前半部分を修正したもので、二十二時三十三分時点のファイルは主に報告書案の後半部分とタイトルを含めて修正作業が完了したものであるが、部長の指示を踏まえた修正箇所、すなわち、継続審議にしますという部分は、報告書案の後半、これは一番最後の二ページですね、後半部分であったがために、結果的に、二十二時三十三分時点のファイルにおいて反映したとのことでございましたという答弁がありましたが、これをもって私は、この日のファイルを全て提出してくださいということをお願いしました。提出してもらったファイルを全てチェックしました。

 三枚目を見てください。三枚目は、十四時〇一分に修正されたファイルです、十四時〇一分に修正されたファイル。これは藤澤さんが、手計さんによると、前半部分のファイルを修正したんだ、よって一番最後のところに書かれている、これで言うと星印のところですね、左の星印、総入れかえ方式で行うということが適当である、この結論部分は変えていないんだ、前半部分の修正をやっていたんだというふうに答弁されました。

 しかし、見てください。十四時〇一分のファイル、一番最後の最後の二ページ、六カ所も修正しているじゃないですか。これだけじゃないんですよ。ほかにも後半部分はたくさん修正をされているんです。

 しかも、見てください、星印のまさに当該のところ、まさに問題のところだけ残して、ここだけぽっこり抜ける形で、ほかのところは全部きれいに修正され切っているんですよ。

 藤澤さん、あなた、分科会のときに、前半部分を修正したからここには行き着かなかった、後半部分には行き着かなかった、よってこの星印の一番肝心なところは修正しなかった、よって二十二時三十三分に遅くなった、こういった説明をしましたけれども、これは事実と反しますね。

藤澤政府参考人 衆議院の予算委員会の分科会の際に御答弁申し上げたことを先ほど資料としてお配りをいただいたのだろうと思いますけれども、それにつきましては、御質問があるということで、当時の担当補佐に確認をし、検討会以外の業務も多忙であったために、報告書案の確認依頼に対する各委員からの意見や部長の指示を受けた修正作業は断続的に実施をしており、十四時〇一分時点のファイルは主に報告書案の前半部分を修正したもので、二十二時三十三分時点のファイルは主に報告書案の後半部分とそれからタイトルを含めて修正作業を完了したということでございました。

 そのことを御答弁申し上げておるところでございますけれども、主にそれぞれの、前半部分、後半部分ということでございましたので、当時の担当補佐がそういうふうに申していたということでございます。

大串(博)委員 この委員会の冒頭に言いました。事実と違う答弁を委員会でする、これは極めて重いことです。

 藤澤さん、あなた、二月二十七日の分科会で、ここに私が資料で示しているように、主に前半部分を修正したもので、当該部分に関しては一番最後の部分であったために修正が間に合わなかったみたいな答弁をしているんですよ。

 ところが、見てください、この資料を。最後の二ページに至るまで、ちゃんと委員の意見を含めて修正しているじゃないですか。全然違うじゃないですか、あなたが言ったことと事実と。

 あなたは、前半部分を修正したから、後半部分、ここに追いつかなかった、よってここは修正していないと言ったんですよ。事実と違う答弁をしているじゃないですか。答えてください、明確に。

藤澤政府参考人 先ほどの繰り返しになりますけれども、当時の担当補佐に確認をし、本人がそのように申していたことを予算分科会でも御答弁申し上げたところでございます。

大串(博)委員 手計さんがそう言ったのでそういうふうに答えたということですけれども、私は、この二月二十七日の分科会の質疑をするときに、手計さんに間違いなく確認してきてくださいねというふうに申し上げたんです。そして、きのうレクをするときにも、もう一度分科会で聞いたことをきちんと確認するので、もう一度誤りがないか手計さんに聞いてきてくださいねというふうに再度お願いしているんです。

 手計さんに関しては、委員長、ああいうふうにおっしゃっているので、何としてもこの場に来てもらって事実を語ってもらわなきゃならないと思いますので、まず参考人招致をお願いします。

冨岡委員長 理事会にて諮らせていただきます。

大串(博)委員 藤澤さん、今答弁しているのは手計さんじゃないんですよ、あなたなんです。

 藤澤さん、私はあなたに二度にわたって、この事実関係に関しては間違いなく確認してきてくださいというふうに言っているんです。ファイルも提出してもらっているのはあなたも御存じのはず。だから、正確なことを議論しなきゃならないのはあなたもわかっているはずです。あなたが答弁しているんですよ、この場で。補佐がこのように言っているからそうだという類いの答弁は成り立たないんです。

 客観的に見て言ってください。主に前半部分の修正だけが行われている二時〇一分のファイルではない、これは事実としてお認めいただけますね。

藤澤政府参考人 申しわけございません。今お配りしている資料をにわかに確認はしてございませんけれども、答弁の繰り返しになりますけれども、衆議院の予算委員会の分科会の時点で当時の担当補佐に確認したことを御答弁申し上げたところでございます。

大串(博)委員 にわかに確認できないじゃないんです。私、昨日、詳細にレクをして、特に十四日のこの事実関係に関してはもう一度誤りがないか確認してから来てくださいと言っているんです。にわかにじゃないんですよ。きちんとあなたは見ているはずです、これを。

 二月の末に、この資料は私に対する提出資料として提出されているんです。あなたも確認しているはずです。にわかになんて、虚偽の答弁は許しませんよ。国会を愚弄するのもいいかげんにしてほしい。この類いの答弁が続いている厚生労働省はどうかしていますよ、大臣。

 藤澤さん、事実を認めてください。十四時〇一分の更新されたファイル、前半部分だけを修正したものではない。よって、あなたは事実と違う答弁をしたと認めてもらえますね。

冨岡委員長 すぐ答弁できますか。

 速記を少しとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こしてください。

 藤澤政策統括官。

藤澤政府参考人 きょう配付をいただきました資料の星印をつけていただいている部分は、九月の四日の時点で既にもう修正がなされていたところでございます。

 それで、衆議院の予算委員会の分科会で御答弁を申し上げましたのは、十四時一分時点のファイルは主にその前半部分を修正したもので、二十二時三十三分時点のファイルは主に後半部分の修正を、作業を行ったものということでございましたので、本人から確認をし、その旨答弁を申し上げたものでございます。

大串(博)委員 大臣、厚生労働省の組織は今どうかしていますよ。

 これだけ明確な資料、これはマスコミに全部渡していますからね、公表されていますからね、これだけ明確な、政策統括官の答弁とは違う資料が出てきているにもかかわらず、主に前半部分を修正していたんだ、だから後半部分のところは行かなかった、よって二十二時三十三分に修正した、これは問題ないんだ、よって、中江さんから言われて修正指示を姉崎さんはしたわけじゃないんだという、こんなつじつま合わせにもなっていないようなことを、後から後からつじつまを合わせる、無理してやるようにして、かつ、最後は補佐に責任を押しつけようというわけでしょう、手計補佐に。補佐がこう言っていたから私はこうやって答弁しているんだと。

 一体、この組織は何なんですか。こんな組織でまともな行政ができるわけないじゃないですか、大臣。私は、ここを非常に心配しているんです。

 しかも、先ほど、二十二時三十三分のファイルは後半部分を主に修正したので、まさにこの引き続き検討の部分を直しましたと言われていますけれども、二十二時三十三分に修正されたファイル、これも公表になっています。私は見ました。こうやってきちんと私も色刷りして、チェックしました。後半部分を修正したなんてものじゃないんですよ。まさにお配りした資料の星印の部分、まさに問題の核心部分、継続審議にするというところだけを直しているんです。二十二時三十三分、そこだけなんですよ。後半部分どころじゃないんです。最後の二ページの中で、まさに核心の部分だけ直しているんです。

 これを見ても、姉崎さんが、中江さんに行く前に私が指示をしたんだ、よって、中江さんから言われたわけじゃないんだ、この一点に頼って説明していることが、いかに根拠薄弱か、いかにうそにうそを重ねて厚生労働省全体でつじつまを合わせようとしているか。その結果、一課長補佐に説明責任を、国会での責任を負わせようとしている。この組織、私はとんでもないと思いますよ。

 姉崎さん、お尋ねします。

 この一連の経緯を今見て、あなたは本当に、中江さんに会う前に手計さんに指示したんだ、自信を持って言えますか。

姉崎参考人 お答えをいたします。

 私が覚えている限り、九月の十一日の金曜日か十四日の月曜日の午前中に、私は個別に指示をしたというふうに記憶をしております。

大串(博)委員 お尋ねしますけれども、国会では口頭で指示をしたということでしたね。個別にとおっしゃいました。十一日の金曜日か十四日の朝に、中江さんのところに行く前に指示をしたと覚えていらっしゃるのであれば、個別に指示をした、個別にどういう指示をしたんですか。部屋に呼ばれたんですか。電話をかけられたんですか。それとも、どこかで会ったときに言ったんですか。具体的に答えてください。

姉崎参考人 お答えをいたします。

 私は、自分の仕事のやり方が、忙しいときに、次の週のことを考えたときに、金曜日かあるいは土日に考えたことを月曜日の朝に言ったりすることが多いものですから、それでそういうことだというふうにお答えをしておりますけれども。

 どういうふうに言ったかというのは、具体的にはよく覚えてはおりませんけれども、多分、部屋に呼んで、手計さんに個別に、直してねということを申し上げたんだというふうに思います。

大串(博)委員 その記憶は確かですか。その記憶は確かですか。

 今おっしゃいました、指示をしたと覚えている理由については、仕事が忙しいときには金曜日か若しくは土日に考えて月曜日の朝に指示することが多いものだから、金曜日の晩か月曜日の朝に指示をしたと思うというふうに言われました。

 これは何ら、中江さんに会う前に指示をしたということの説明にはなっていないじゃないですか。中江さんに会う前に指示をしたと覚えている根拠はどこにあるんですか。言ってください。

姉崎参考人 お答えをいたしますけれども、三月のとき、それから九月、中江総理秘書官からはコメントをいただきました。コメントをいただいて、私は、それを踏まえて直せというふうに指示をした記憶はないものですから、ですから、その前だというふうに申し上げているわけであります。

 それで、大串議員も役人御出身でしょうから役人の行動パターンというのがわかるかもしれませんけれども、御質問をいただいている官邸関係者というのがおりますけれども、私どもの厚生労働省から出向している官邸の参事官等がいますけれども、私が総理秘書官からもしも本当に指示を受けて検討会をつくってと、こういうことであるならば、私は多分もっと事前に、官邸の参事官等を通じて総理秘書官の意向はどうかというようなことを確認した上で報告書というのを考える、こういうパターンをとっていたのではないかというふうに思っておりまして、私が一切そういう行動をとっていないということで、総理秘書官の指示はないということは明白ではないかというふうに私は思っております。

大串(博)委員 私のことまで役人出身なんと言われましたけれども、ちょっと、国会で、この間の内閣法制局長官の発言といい、あなたは官僚だったから官僚の行動パターンがわかるでしょう、そう言われるのは、事実ではありますよ、しかし、何であなたに私がそんなことを言われなきゃならないんですか。

 委員長、今の発言は私は非常に承服しがたいものがありますので、事実ではあるけれども、だからわかるだろうみたいに言われると、私はそれ以外にもいろいろ経験しているんですよ。だから、今の発言は謝罪、撤回してください。

姉崎参考人 大変申しわけございませんでした。今の発言は撤回させていただきます。

大串(博)委員 その上で申しますと、役人の行動パターンからすると、むしろ、中江さんからの指示を受けてやはり指示をしたんだなと思えるような情況証拠が高まりに高まっているわけですよ。

 だって、中江さんのところに行く前に指示をしたということに関しては記憶は曖昧である、だろうということなんですね。修正の履歴を見ると、このとおりです。かつ、修正の履歴を、国会の答弁ですら事実とは異なるような方向で、つじつまを合わせるように極めて無理くりやっている。これは、役所として、何かのことを隠し、つじつまを合わせ、糊塗しようとしているとしか思えないですよ。しかも、それを課長補佐に最終的に責任を負わせている。とんでもないことだと私は思います。

 むしろ、中江秘書官のところに行ったときに、口頭だったということですけれども、検討委員会の状況を説明し、中江秘書官からはやはり部分入れかえの方がいいんじゃないかというふうに言われ、ああ、やはりそうだったかということで最終的に確認をして、やはり手計さん、あそこを直しておいてねというふうに十四日の午後に指示をし、おっ取り刀で四時八分に手計さんは、委員以外の関係者の指示でということで座長に取り急ぎメールをし、このメールには添付ファイルはついていません、なぜなら修正が追いついていないから、取り急ぎ報告をし、そして十時三十三分にやっとファイルの修正が間に合った。こうだとしか、役人の仕事ぶりからすると思えないわけですね。

 そこまでして何を隠そうとしているかというと、官邸の関与を隠そうとしている、これが実態だと普通は思いますよ。

 姉崎さん、証人喚問で呼ばれたら来てくれますか。

姉崎参考人 お答えいたします。

 それは、国会の方でお決めいただくことでございます。

大串(博)委員 姉崎さんの証人喚問を求めて、質問を終わります。なぜかというと、補佐に責任を負いかぶせるようなことがあっては絶対だめですよ。姉崎さんの証人喚問をぜひお願いします。

 終わります。

冨岡委員長 理事会でお諮りしたいと思います。

 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 さまざまな法案の質疑等に入る前に、きょうは大臣所信に関する質問ということでございますので、大臣にお伺いをしたいというふうに思っております。

 きょうは、全般、虐待問題だけで、大臣の強いこれからの思いをぜひ聞かせていただきたいというふうに思っています。

 まず、昨年ですが、目黒で起きました結愛ちゃんの問題、その後ですけれども、この厚生労働委員会では、野党の方では集中審議を求めていました。それでもその集中審議も行われずに、野党だけで香川まで視察に行ったりして、そしてその後、ちょうど国会が終わるときですけれども、七月の二十日に緊急プランの閣議決定がありました。その最終日直前でありましたけれども、無理やり押し込まれた受動喫煙防止法、そのときにもちょうど、子供がテレビ台の引き出しに閉じ込められて亡くなるということがありました。

 今振り返ると、昨年、この厚労委員会でちゃんと虐待に関する問題を取り上げて、十分に議論をする時間をとった方がよかったのではないかというふうに私は思うんですが、大臣はどう思われますでしょうか。

根本国務大臣 委員から今お話がありました。

 国会でどういう審議をするかという国会の審議のあり方については、国会においてお決めいただくものだと認識をしております。

池田(真)委員 大臣としての特に所感というものが聞けなかったので、大変残念に思います。

 では、その後ですけれども、緊急プランが前倒しということで年末に、緊急という形で、増員ということではありますけれども、示されました。

 ここについての緊急、よくわかりませんが、大臣は何をもって緊急というふうに思っていらっしゃるのでしょうか。

根本国務大臣 委員、それは新プランのことだと思いますが、昨年十二月に、増加する児童虐待への対応をより適切に行うために、児童虐待防止対策体制総合強化プラン、これを新プランと称しておりますが、を決定して、具体的には、二〇一九年度からの四年間で、児童福祉司を二千二十人程度増員する、児童心理司を七百九十人程度増員する、保健師を各児童相談所に配置するなど、児童相談所の体制の抜本的拡充を図ることとしました。

 そして、来年度予算においては、児童福祉司について一気に百人増員することとしており、必要な地方財政措置が講じられると承知をしています。失礼しました。一気に千人増員することとしております。

池田(真)委員 現場の方では人員確保が大変難しいよという声が聞かれているのですが、そういった、実質的に現実的にどのように確保していくかという問題もあわせて丁寧にやらなければいけないのではないかと思います。

 また、この人員ですが、とにかく量だということだと思うんですけれども、資料をきょう配付させていただいておりますが、ちょっといっぱい字が書いてあって申しわけないんですけれども、一番後ろの真ん中の方ですけれども、資料の11番をごらんいただきますと、児童相談所の体制ということで、この間に児童福祉司は相当ふやしています。千二百三十人、平成十一年、こちらの方が、児童虐待防止法の施行前の年から二十八年の間にこんなにふえているということであります。

 相談件数が多くなるのは、法律をつくって通告の義務を付与したわけですから、通告があって当然だと思います。それに対応する人員がふえてきたということであります。でも、こうやって同じ問題が繰り返されるというのはなぜだと思いますでしょうか、大臣。

大口副大臣 では、私の方からお答えさせていただきます。

 児童相談所の問題点についてでございますけれども、一つは、児童相談所における児童虐待相談件数が、委員御指摘のとおり、平成二十九年度は十三万三千七百七十八件ということで、児童虐待防止施行直前の平成十一年に比べますと、約一一・五倍になります。ところが、支援を担う児童福祉司は、平成三十年三千四百二十六で、平成十一年に比べますと、平成十一年が千二百三十人ですので、二・八倍。それから、児童福祉司一人当たりの業務量の増加でございますが、これは四・三五倍ということでございます。

 そういう点で、児童福祉司をしっかり確保していくということが大事だということであります。

 それとまた、児童虐待相談対応件数の増加が続く中で、やはり専門的な知識、技術を要する複雑困難なケースが増加をし、また医学的、法的な面でのさらなる専門性強化が必要である、こういうふうに認識しているところでございます。

 医師の配置状況あるいは弁護士の活用状況等々、これからしっかり対応していかなきゃいけないことでございますので、今回、法改正の予定がありまして、その中で、例えば弁護士の配置につきましては、児童相談所が、推薦決定その他法律関連業務について、常時、弁護士による助言指導のもとで適切かつ円滑に行うため、弁護士の配置又はこれに準ずる措置等を検討しているところであります。

 また、医師、保健師の配置につきましても、医師又は保健師の配置ということではなくて、医師及び保健師を配置という方向で検討しているところでございます。

池田(真)委員 まず、質問していないことに答えないでいただきたいのと、あと、きょう、大臣にということを言っています。登録も大臣だけです。なぜそれでべらべらと長くお話しされるんでしょうか。私は、このやり方についても非常に問題があるというふうに思います。

冨岡委員長 根本厚生労働大臣、つけ加えることはありますか。答弁者が一応指名されているので、なるべくそうしてください。

根本国務大臣 副大臣から答弁しましたけれども、児童福祉司、児童相談所の問題点……(池田(真)委員「委員長、いいです」と呼ぶ)いいですか。よろしいですか。

池田(真)委員 大臣以外は退席していただきたいです。なぜ、大臣以外の方が来るんですか。手続していただけないですか。

冨岡委員長 池田真紀君、質問を続けてください。

池田(真)委員 答弁者を大臣にお願いします。私は答弁を大臣にお願いしていますので、委員長、ほかの方を指名しないでいただきたいと思います。

冨岡委員長 はい。

 それでは、改めて、池田真紀君、質問を続けてください。

池田(真)委員 大臣に今お聞きしたかったのは、人数をふやすだけでは同じことが繰り返されているので、別の問題があるのではないですかということだったんです。でも、全然違う回答がありましたので、もう時間がもったいないので、次へ参りたいと思いますけれども。

 例えばですけれども、その後、大臣にお聞きしたかったのは、資料で、公開されている1番と2番、3番のものですが、これは野田市の一連の経過でありますけれども、大臣はもっと詳しい詳細の情報を御存じかもしれません。ただ、この出されている情報だけで、これだけでですけれども、どういうところに着眼点を置いて、第一の介入ポイント、第二の介入ポイントがあるのかということを率直にお聞きしたかったなというふうに思ったんです。それが、人によってさまざまな見方があるということ。

 そして、その次にある、4番の四ページにありますけれども、厚労省の方としてどういう指導をしたのか、どういうメンバーでこの検証をしていて、そして市にどういう指導をしたのかということをこの場で確認させていただきたかったです。

 ただ、時間がないので、昨日、レクをいただきまして、この説明をお聞きしましたから。ただ、ここに書かれているものは、現場では全く理解がなされていないんですね。このずれというのを認識していただけているのかどうかということだったんです。

 子供の声を反映したケースワークはできていたかとか、こういったものが一連、全部理解がされていなかった、DVのかかわりがどうだったかというような観点や視点も全くなかったわけです。どうしてそうだったのかというようなところまで踏み込んでいない現状に、ただ人数をふやしても意味がないのではないかというところがありました。

 ここの部分についてはもう時間がありませんので結構ですが、大臣が、児童相談所に対しての問題点というのが今御回答いただいたものとは違う観点があれば補足をいただきたいと思います。

根本国務大臣 問題点については、要は、相談対応の件数が非常にふえている、それに対して、支援を担う児童福祉司が一人当たりの業務量も非常に増加している、これが児童相談所における問題点の一つとして認識しております。

 それから、委員のお話を聞いておりまして、私もそう思っておりますが、やはり実際の児童相談所の職員が必要な専門性が確保できているのか、質の向上、これも私は非常に大事なポイントだと思います。その意味では、計画的な人材確保、育成が図られることが重要だと思っています。

 そして、人材の育成については、平成三十一年度予算案について、平成二十八年度に改正児童福祉法により義務づけられた児童福祉司の任用後研修等をしっかりしてもらうために実施費を補助していますし、児童相談所職員等の研修センター、これは今まで全国一カ所でしたが二カ所に拡充する、そして、国が主催するブロック単位の児童相談所の職員への研修の開催、こういう観点で児童相談所の人材の育成そして確保を、そして、とりわけ専門性をしっかりと向上させてもらうということに取り組んでいきたいと思っております。

池田(真)委員 人数をふやすのはいいんですけれども、どういう人をふやすのかということと、あと、児童福祉法ですが、児童相談所の設置自体、戦後に、親御さんが亡くなられた方等の児童の保護、収容といったところからスタートしているんですが、それからもう何十年もたって、子供を取り巻く環境が変わっているわけです。

 何十年も前から専門性が専門性がと言われながら、国家資格ができました。ソーシャルワークを含めての介護や社会福祉の国家資格ができて三十年たつわけです。その専門性が言われていて、いまだ、任用資格義務づけにまでまだなっていないんですね。この問題を平行線のままで専門性を、幾らその後の研修と言っても、まずベースがない。お医者さんの免許がなくてメスを握るのと同じような状態でありますから、ここはもう少しこの中身についてきちっと調査をしていただきたいと思います。さまざまな文献も、この二十年間、評価が動いていません。

 それと、最近ですが、総務省の調査ですが、そちらの方で見るとこれは明らかなんですね。実際の現場の児童相談所の職員さんに調査を行って、意識調査です、こちらの回答についてといいますか、まず、その調査項目も、先ほどの野田の事件に対して助言をしていくような専門委員会の方等ではなくて、専門家ではない総務省の調査ですから、総務省の方たちの質問項目というのも非常によく出ているなと思っているんですが、専門性ではないコメントといいますか、選択肢が出ているんです。

 一つ例に挙げますけれども、例えばですけれども、児童虐待の業務負担、どういうことが大変ですかという質問についてのこれは項目ですけれども、指導に従わない保護者の対応に苦慮しているというのが最も多いんですね。あと、児童虐待事例では継続的な対応を求められることが多いからという項目が二番目に、半数を占めています。でも、ソーシャルワークの現場や専門的な見解であれば、こんな質問項目や回答項目は使いません。指示に従わないなんていう言葉はまずないです、相談援助や支援の現場でありますから。これが、やはり行政の中の指導というだけの感覚であるのかなというふうに思います。こういった項目があからさまに書いてあります。

 こういうことも踏まえて、まず、実態調査にぜひ取り組んでいただきたいと思っていますが、今回、新たに、三月の十九日ですか、閣議決定されるとか、これからの審議で児童福祉法の改正が出るということを伺っています。それから中身については議論させていただきたいというふうに思っていますが、それに当たって、大臣は、現場実態あるいは当事者の声、そういったことを新たに追加で調査をするようなことというのはありましたでしょうか、この法案改正なりに向けて。大臣にお伺いします。

根本国務大臣 児童相談所の体制整備に当たっては、児童相談所の業務などの実態を把握すること、これが私も重要だと考えています。

 これまでも、児童福祉司の配置状況など、児童相談所の体制の整備状況に関する調査を行っています。また、死亡事例の検証などを通じて、実際のケースへの対応として、児童相談所などの関係機関のかかわりや、家庭の状況について把握を行っております。

 今後、体制整備を行うために、私が今申し上げましたように、これまでもやっておりますけれども、更に必要な事項があれば実態把握を行うものでありますが、児童相談所の体制整備は急務ですから、新プランに基づいて、先ほど申し上げましたように、児童福祉司三千人、これを一気に千七十人増員して二〇二二年度に五千人体制とする、児童心理司も二〇二二年度に七百九十人程度増員する、全ての児童相談所に保健師を配置する、まずはこうした体制整備を進めていくとともに、自治体の御意見もお伺いしながら、必要な支援を行っていきたいと考えています。

池田(真)委員 ちょっと内容についてはまだこれからでないとわからないなと思っていますので、もう少し、どのような調査をしているのかというのは今後お伺いしていきたいというふうに思います。

 時間がもう少しで終わりますので最後になるかと思いますが、資料の十五、最後のページになります。その内側ですが、こちらの下側をごらんいただきますと、この表六の二ということでありますが、こちらは、ビネットという調査であります。これは国際比較で、各国でどういった違いがあるかということなんですが、取り上げられた事例はなるべく個人が特定されないように配慮されています。この中で明確に出てきた回答があるんですけれども、その前に、この事例をまずごらんいただきたいんです。

 これは、例えば三十代の女性と三人の子供、1番ということで、夫から暴力を受けていた妻子に対する生活再建までの支援ケースということでありますが、この中にはDVも入っているし、生活困窮も入っているし、さまざまな問題が複雑に絡み合っているんです。問題は一つということではないということであります。

 そして、子供のネグレクトというふうに書いてあります3番もそうなんです。これは日本の立てた大阪の事例でありますが、学習支援ということが出ていますが、諸外国ではこういうネグレクト状態のことがまずあり得ないということで、学習支援なんていう言葉が入ってこないということであります。

 とにかく、問題は、一つのプログラムだけでは解決しないということで、そういう意味で、児童福祉の専門家というふうに大臣がおっしゃっているので、どういう専門家なのかということであると、一階建てに、国家資格であるソーシャルワーカー等がまずベースにあって、その次に二階建て、三階建てで、配置であるスクールソーシャルワーカーだったり、医療ソーシャルワーカーだったり、あるいは児童の分野にいるんだというようなことが二階建て構造であるのではないかというふうに思います。問題は一つではないということであります。

 私も、実際にフリーで行っていたときには、特に問題が起こっている方の事例を、グラフだけでありますけれども、類型で分けると、七個ぐらい問題を抱えています。医療の問題なのか、教育費の問題なのか、DVなのか、虐待なのかということであると、本当にそういう問題が絡み合っている方が多いということですから、どこかに配属をしているということで、ベースは専門でなければいけないということ。

 そして、もう一つですけれども、非常に、今後、厳罰化されていく。体罰は本当によくない、暴力もよくない、それを明記することはこの国の示す姿勢だということで、私ももう一歩進めていきたいところではありますが、それをすぐに罪にしていかなければいけないというような報道も出ていますので、それには大変懸念を感じています。

 今回の野田のお母さんが、DVを受けながら逮捕されたということもあります。被害者でありながら加害者になってしまう。誰かがサポートしていればそういうことは起きなかった問題を、この社会が見捨ててそういう加害者をつくっていくことになるのではないかということ。

 そして、もう一方は、私がフリーでたどり着く方々は、多くの方々が、相談する場所に行ったんだけれども適切な支援を受けられなかった。例えば、育児に対する周囲の目や声かけが苦痛でたまらない、育児相談に行ったんだ、そうしたら虐待を疑われた、そして児童相談所に通報された、そういうことで、どんどんどんどん支援の場、相談の場から離れていっているんです。そういう人たちが制度のはざまに今地域の中でたくさんひっそりと生きているということを、まず大臣にとても声を大にしてお伝えしたいということ。

 そして、時間はあと一分になりますので、最後に大臣に端的にお答えいただきたいのですが、十五ページの、一時保護解除後の支援の統計というのがあります。これが今、日本で示されている例でありますが、この一時保護解除後について、大臣が、不足している支援、あるいは今回強めていこうというものがあればお示しいただきたいと思います。

根本国務大臣 委員がいろいろ今の現状の問題点、課題、これをお話ししていただきました。

 私は、委員が専門性を生かしてこの問題に取り組んでいる、そして、委員の御指摘は、私もお話を聞いていて、なるほどなと思うことがたくさんありました。

 そして、今の一時保護のその後のフォローですけれども、継続指導あるいは里親の委託、やはり一時保護解除後のフォローも大変大事だと思っておりますので、その一時保護解除後の対応についても適切にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

池田(真)委員 この後は、具体的な質疑を今後議論させていただきたいと思いますが、先ほどの諸外国の中では、導入された資源といったものが非常に日本は特徴的でした。資金というお金だけで、それ以外のサービスがない、ほかのところはもっと違った太目の手だてがあるということが、大きくこの日本と諸外国の違いだというふうに思っています。

 そして、現場は今、都道府県の児相ということではなく、市町村にもう既に移っていますから、もっともっと、児相だけではなく、市町村の方にも目を向けていくということが私は重要だと思います。

 できれば一時保護を使わずに、最後の手段という形で一時保護で、もっともっと一時保護を使わない中での子育て支援を社会でやっていくという地域づくりをぜひお願いして、虐待という言葉、そしてDVという言葉をなくすようにぜひ大臣にお願いを申し上げたいと思います。それで質問を終わらせていただきます。

冨岡委員長 午前十時三十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時三十五分開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大坪寛子君、法務省大臣官房審議官石岡邦章君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高橋俊之君、大臣官房審議官佐原康之君、医政局長吉田学君、健康局長宇都宮啓君、医薬・生活衛生局長宮本真司君、労働基準局長坂口卓君、職業安定局雇用開発部長北條憲一君、子ども家庭局長浜谷浩樹君、社会・援護局障害保健福祉部長橋本泰宏君、保険局長樽見英樹君、年金局長木下賢志君、人材開発統括官吉本明子君、防衛省大臣官房衛生監田原克志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、大臣所信への質疑でございますので、なるべく根本大臣の直截な御意見を伺いたいと思います。

 答弁者については、基本、大臣をお願いしたいですが、必要に応じて参考人の方も同席は認めておりますので、委員長の御采配のほどよろしくお願い申し上げます。

 まず、さきの国会で非常に重要なテーマでございました新たな外国人の在留資格問題、そして、新たなことを論ずる以前に、既にある技能実習生においてもろもろの問題がございまして、私が本日取り上げたいのは、特に、妊娠された技能実習生が中絶や帰国を迫られて、本当は喜ばしい赤ちゃんを持つということが大変に悲しいてんまつになっている事件が多々起きております。

 この件につきましては、私以外にも衆参さまざまな議員が御質疑でございますが、例えば昨年の十二月六日の参議院の厚生労働委員会では、労働省の人材開発統括官が、男女雇用均等法に基づいて、妊娠したことを退職理由として予定する定め、あらかじめ定めることを禁止していることの御答弁や、妊娠等を理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止しているという御答弁がございます。

 まず、確認でございますが、例えば日本人女性が、あなたが妊娠したら解雇しますとかそういう契約書を結ばされる、これは男女雇用均等法の九条一項違反になりますよね。大臣、いかがですか。

根本国務大臣 委員御指摘のとおり、事業主が、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由としてあらかじめ定めた場合、あるいは女性労働者が妊娠等を理由に解雇された場合は、男女雇用機会均等法第九条違反となります。

阿部委員 その上で、男女雇用均等法は、我が国で働く全ての外国人労働者そして技能実習生、技能実習実施者、使っている側にも適用されるということをまず一点確認したい。

 また、そのことを当然ながら送り出し機関、相手国のいろいろな風習もございましょう、でも、我が国に来たならば我が国の法令で行うということで、送り出し機関にも伝えておくことが重要であると認識いたしますが、いかがでしょう。

根本国務大臣 技能実習生を含め、外国人であっても、雇用されて働く労働者であれば、男女雇用機会均等法や労働基準法などの労働関係法令が適用されます。これは委員おっしゃるとおりであります。

 技能実習が適正に行われるためには、技能実習生に労働関係法令が適用されることを送り出し機関、監理団体、技能実習生などの関係者がよく理解することが重要であると考えております。

 妊娠した場合に強制帰国とするような技能実習生と送り出し機関の契約については我が国法令との関係で不適切であることから、二国間取決めを結んでいる全ての相手国政府に対し、送り出し機関に対する周知、指導などを既に依頼しております。

阿部委員 今大臣は、あわせて労働基準法の第六十五条、妊娠又は出産に関する事由で女性労働者に対しての解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないなどについても相手国にもお知らせをしているということでございました。

 大臣にここで伺いたいですが、技能実習生が我が国で学ぶということは、単に技能にとどまらない、すなわち、女性の母性が保護されたり、あるいはジェンダー平等であったり、これは一つの文化、カルチャーであります。日本がそういう国として、相手からも、また来られた方からもいい国だったと思われるようなことが第一と思いますが、大臣は、この点はいかがですか。

根本国務大臣 技能実習生が日本で安心して実習し、そこで得た技能を母国に持ち帰る環境を確保することは重要であると認識しております。

 技能実習開始前の期間の入国後講習において、男女雇用機会均等や母性保護等の技能実習生の権利や法的保護に必要な情報についても講習しているところであります。

 引き続き、技能実習生が安心して実習を行える環境を確保していきたいと考えています。

阿部委員 そういう大臣の御認識の上に、しかし、これまでいろいろな事案が起きております。

 お手元にある判決文、これは二〇一三年の富山地裁判決の抜粋でありますが、この事案では、中国人の技能実習生が、平成二十二年、二〇一〇年の十二月四日、中国から日本に入国され、二十三年一月からアメリカンドッグを揚げる仕事をしておりました。ちなみに、このアメリカンドッグを揚げるという仕事は技能実習計画にはないもので、これ自身も異様なのでありますが、それで、四月には、実は化学薬品を体に浴びて労災にも遭っております。プラス、すなわち技能実習計画違反、労働災害は起きる。

 そしてさらに、平成二十三年六月六日にこの方は妊娠四週ということが判明いたしまして、六月十七日からは、切迫流産だという診断を受けて、二週間休んでおりました。ところが、その間の六月二十四日に監理組合がこの妊娠の事実を知ることになって、この女性を昼過ぎに富山空港に連れていきまして、そして、パスポートや何やらは部屋から全部持っていって、強制送還に近く、飛行機に乗せようとしたわけです。女性は、腹部の痛みを感じて車椅子を使う、そして連絡をさせてくれと必死に訴えましたが、送り返さんとする側は、これがまたある種暴力的で、強行的にこれをやろうとして、ついにこの女性は、六月二十五日、翌日に赤ちゃんを流産いたします。

 これが裁判になりまして、その裁判の中で、いわゆる妊娠禁止規定を結ばされていたこの女性、この女性は中国から来るときの契約書に妊娠はしてはならないという規定を結んでおりまして、それゆえにまた監理組合も必死になって送り返そうとしたということでありますが、そうした事案は人権侵害であり、公序良俗に反する民法九十条違反だという判決がおりております。

 二〇一三年の判決ですが、以降、このような事態あるいは事件はないのか。これは厚生労働省にお伺いいたしますが、再発防止のために、かかるいわゆる判決の周知徹底、あるいは民法違反の契約書が結ばれていないかどうかのチェックはどのようになっているでしょうか。

吉本政府参考人 答弁申し上げます。

 我が国の法律に違反をいたします妊娠禁止規定のようなものを盛り込んだ送り出し機関と技能実習生の間の契約、こうしたものにつきましては、あってはならないところでございますが、現時点でそれがどの程度結ばれているかといったような把握についてはしておりませんが、技能実習適正化法、平成二十九年の施行以降、外国人技能実習機構におきまして母国語相談を実施しております。

 この中で妊娠、出産に関しましての御相談もございまして、それに対しましては必要な助言を行ってきているところでございます。その際、その技能実習生の個別の事情や希望を聴取しまして、利用できる制度の説明や相談すべき行政機関の案内といったことをしているところでございます。

 監理団体、実習実施者また送り出し機関それぞれに、こうした妊娠禁止規定が我が国において違法だということについては、さまざまなチャンネルにおいてきちんと周知をできるようにしてまいりたいというふうに考えております。

阿部委員 今の御答弁のようなことを言っているから起こるんだと思いますね。把握していないということ自身が問題です。契約書はきちんと技能実習管理機構で把握して、違法なものがあれば排除していかなければ、繰り返し起こります。

 大臣、次の事案ですが、お手元に黒塗りで、大部分が黒く塗ってありますが、これは個人名が特定されないようにという配慮で塗ったものでありますが、これは、つい近年、二〇一八年の五月にベトナムの技能実習生と送り出し機関で結ばれた技能実習事業に関する契約書です。

 五ページ目をめくっていただきますと、ここには「慢性病やAIDSにかかり、妊娠等の場合。」。いいでしょうか。強制送還のケースの中に「慢性病やAIDSにかかり、妊娠等の場合。」ということが五ページ目に明記をされております。

 二〇一八年の五月といえば、もう既に技能実習生に関する法律も改正されて、今のような御答弁、窓口も設けられて、でも、実際にこういう契約書が結ばれているということをきちんとチェックしていないから繰り返し問題が起こると私は思います。

 この方も同じような経過をたどっております。妊娠が判明したところ、すぐ、産むなら帰国、おろすなら病院に連れていくと言われて、考える時間を欲しいと言ったところ、翌日には送り出し機関の方から帰国のチケットを買ってあげると言われて、今度は見張りがついて、彼女は一歩も外出をできなくなってしまいました。

 同僚が見るに見かねてこの女性をシェルターに保護する連絡をして、この女性はさきの女性のように空港で流産するということはなかったですが、しかし、物は、まかり間違うと同じような経過をたどると思うんです。

 二〇一三年にあり、この二〇一八年、具体的に、この契約書を見れば、強制送還の理由の中に慢性病、エイズ、妊娠と明記されているわけです。我が国の法令に違反すると厚労大臣がおっしゃった、それが明記をされております。

 かかることがチェックされていないこと自身おかしいし、大臣としては、基本は、全ての契約書は管理機構でチェックをまずなさるように指示されたらどうですか。いかがですか。

根本国務大臣 監理団体、実習実施者に対しては、改めて、きのう、三月十一日付で、妊娠や出産等を理由に不利益的取扱いをしてはならない旨等を外国人技能実習機構のホームページで周知したところであります。

 そして、今後、これらについて、技能実習生手帳に妊娠等を理由とする不利益取扱いの禁止や産前休暇の法的権利等について具体的に明記するとともに、技能実習制度運用要領で入国後講習において技能実習生に対して説明することにより、技能実習生への周知にも努めてまいりたいと思っております。

阿部委員 昨日の段階で出していただけたということで、いいことだと思います。技能実習手帳にきちんと雇用均等法九条のことを書き込む、それから技能実習制度運用要綱についても書き込む、これは当然なのです。プラス、書き込んだものがちゃんと今度は実施されているか、そして、それに違反した場合はしかるべく認定取消しもあるんだという強い態度で臨まないと。本年一月、大臣も御存じだと思いますが、川崎で中国人技能実習生が生まれたばかりの赤ちゃんを日本人の軒先に捨てて置いていかれて、この技能実習生は逮捕されております。本当に悲しい事案ばかりでございます。

 大臣、ホームページで上げるだけじゃなくて、きちんと契約書を技能実習管理機構はチェックすべきですよね。また、好例を二つ出していただいたのはありがたいと同時に、その違反があった場合は認定取消しなんだと強い態度で臨んでいただきたいが、いかがでしょう。

根本国務大臣 技能実習生からの申告及び相談を通じて不適切な事例の把握と適切な対応に努めてまいりたいと思いますが、委員の御指摘を踏まえて、送り出し機関ごとに、幾つかの契約書の状況について不適切な内容が含まれていないか、これを改めて外国人技能実習機構に確認させたいと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 一つ一つ前向きに取り組めば幼い小さな命も守られますし、また、日本がいろいろな国からやはりひどい国じゃないかと思われることが私は少しでもなくなることを祈っておりますので、大臣にはよろしくお願いいたします。

 そして、そもそも、妊娠をされるということは技能実習の継続が不可能となる事由ではない、このことも明言していただきたいんですね。何か、妊娠すると技能実習できない、では妊娠すると働けない、そんなことはないもので、技能実習の継続が不可能となる事由ではないということを明確にしていただきたいが、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 技能実習適正化法において、妊娠や出産することで技能実習の継続を不可能とする規定はありません。

 また、実態面でも、技能実習生が妊娠したことで技能実習の継続が一律に困難となることはないと考えています。

 厚生労働省としては、妊娠や出産を理由として技能実習を終了し、強制的に帰国させられるようなことはあってはならないと考えておりまして、適正に技能実習が行われるように取り組みたいと思います。

阿部委員 明確で前向きな御答弁、ありがとうございます。

 私が先ほど御紹介したベトナム人の技能実習生の場合は、支援団体の力もあり、また会社側も、この女性が妊娠を継続して、そして仕事、技能実習もできるという受入れが進んでおりまして、一歩前進だと思います。

 そして、あわせて、二つやっていただきたいことがございます。

 先ほど大臣は少しお話しですが、二国間協定ということについて、これはベトナムと塩崎大臣が初めて結ばれたのが始まりですが、二国間協定の中に、日本の労働法令は守られるものなんだということを明示していただきたいです。私が読むとそういう項目はない。でも、当たり前だけれども、日本の労働法令を守って受け入れますということを明示していただきたいが、いかがでしょう。

根本国務大臣 技能実習生が、労働基準法、その他の労働関係法令などにより保護され、技能実習が適正に行われること、これは重要であると思っています。

 委員の御指摘を踏まえ、どのような対応が可能であるか関係省庁と検討してまいりたいと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 そして、最後の質問になりますが、妊娠して、月日が満ちて無事赤ちゃんが生まれてきた場合に、さて、その子供はどうなってしまうのだろう、私は、この特定技能実習のお話があって以来、ずっとこのことを考えておりました。

 最初のころ、いろいろ法務省に伺いますと、その子は強制送還するとよく御答弁をいただきました。赤ちゃん一人で強制送還されても生きていけないわなと、とてもせつなく思いましたが、去年、三十年の十一月二十二日の厚生労働委員会では、先ほどの法務大臣審議官が、家族の帯同は認めないとしながらも、いわゆる在留資格、特定活動という名で、例えば技能実習生の間に生まれたお子さんの特定活動という名での在留資格を、どういう活動なのか、赤ちゃんが泣くのが特定活動なのかわかりませんが、とにかく親子でいられればいいと思います、それを認めるということもあるという御答弁でしたが、この点について、きょう法務副大臣がお越しでありますので、重ねて、技能実習生も含めての御答弁をお願いします。

平口副大臣 お答えをいたします。

 本邦におきましては、入国管理法上、技能や技術・人文知識・国際業務などのいわゆる就労資格の外国人の扶養を受ける配偶者又は子に対して、家族滞在という独立した在留資格を付与しております。

 他方で、在留資格に上限があります技能実習や研修、長期の滞在が想定されない短期滞在の在留資格で在留する者の家族は、家族滞在の対象から除外されております。

 もっとも、技能実習生が我が国で子を出産し、その子を我が国で扶養しなければならない特別の事情があり、技能実習活動が適切に行える体制が確保されている場合等もあり得るところでございます。そのような場合については、個別の事案ごとに諸般の事情を考慮して、人道上の観点も踏まえて、在留資格、特定活動の付与を判断することとなるわけでございます。

阿部委員 赤ちゃんが強制送還されなくてよかったです。

 と同時に、子どもの権利条約、昨今、日本がおくれていると言われる権利条約の七条にも、子供は、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有するとございます。これを私どもの国もしっかりと、子供の権利の充実ということとあわせて、このベトナム人の今回の事案もそうですが、お母さんのもとで育つことができるよう、根本大臣にも格段の支援、御配慮をお願いしたいですが、いかがですか。

根本国務大臣 妊娠した場合に強制帰国とするような技能実習生と送り出し機関の契約については我が国法令との関係で不適切であることから、二国間取決めを結んでいる全ての相手国政府に対し、送り出し機関に対する周知、指導等を既に依頼しました。

 ベトナムについては、三月一日に行ったハノイでの定期協議において、契約書を手渡しの上、ベトナム政府側に送り出し機関に対する周知及び契約書を発見した場合の指導を依頼済みであります。

 また、その他二国間取決めを既に作成した国、ベトナム以外の十一カ国については、三月四日に同旨をメールで依頼済みであります。

 今後とも、こうした取組を通じて、技能実習生が妊娠した場合に不利益な取扱いがなされないよう努めていきたいと考えています。

阿部委員 あわせて、親子が親子でいられるということを大事にしていただきたいと思います。

 質問を終わります。

冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 質問の機会を頂戴しまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質疑の方に入らせていただきたいと思います。

 きょうは、まず精神保健福祉、精神医療についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 精神医療の状況を知るために、六月三十日の時点の状況を調べる六三〇調査と言われる調査があります。まず、この六三〇調査の概要、目的についてお答えください。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる六三〇調査を含む精神保健福祉資料でございますが、厚生労働科学研究班によりまして、精神科病院及び精神科診療所等を利用する患者の実態等を把握しまして、精神保健医療福祉に関する施策推進のための基礎資料を得るということを目的に作成しているものでございます。

尾辻委員 この六三〇調査なんですけれども、厚労省から都道府県や政令市に調査の依頼をして、そこから病院などに調査依頼が行くということになっているんですが、実はこの調査の内容が、今、各自治体で、かなり非開示というのが去年相次いでおります。

 ちょっときょうはその原因を聞いていきたいと思うんですけれども、まず、平成三十年度の六三〇調査の依頼文書を配付資料の一枚目とさせていただきました。二枚目には、平成二十九年度、その一年前の調査依頼の文書をつけさせていただきました。

 実は、同じ調査をしているのに、何か変わっているんですね。変わったところに私の事務所の方で赤字をつけました。まず、それについてお聞きしたいんですけれども、「精神保健福祉資料の作成について」、平成三十年度は「(六三〇調査協力依頼)」というふうになっています。しかし、二十九年度を見ると、「調査依頼」ということになっているんですね。わざわざ平成三十年度は、文書の中でも、最後には「ご協力賜りますよう、よろしくお願い致します。」というような文言がつくようになったり、政策研究の名前とかがついたりしております。

 この変更の理由はどこにあるんでしょうか。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 この六三〇調査と申しますのは、国立精神・神経医療研究センターにおきまして行う研究の方にそれぞれの医療機関に任意に御協力いただくものでございますので、三十年度の調査に当たりまして協力をしてほしいという御趣旨をより明確に、丁寧に相手方に伝えるために、平成三十年度からそのような表題にさせていただいたということでございます。

尾辻委員 なぜ、より明確にする必要があったんですか。

橋本政府参考人 毎年度の実施に当たりましては、当該年度に行うに当たりまして、改めて今年度どのように行うかということを検討した結果でございます。

尾辻委員 検討した結果、なぜ入るようになったんですか。

橋本政府参考人 先ほど申し上げましたように、「調査協力依頼」という表題にさせていただいた方が、調査の研究に協力をしてほしいという趣旨がより明確に伝わると考えたところでございます。

尾辻委員 ずっと同じことをやっているのに、何で平成三十年度からこのように変わったのかということが、私はやはりいま一つわからないんですよ、今の御説明を聞いても。なぜ今そういうことをわざわざ書き込まなければいけなかったのか。

 別紙、配付資料でいうと右の方になりますけれども、「調査票の取扱い」というのがわざわざ平成三十年度の六三〇調査については書かれるようになりました。「平成二十九年度の六三〇調査の流れ」、二十九年度から調査の方法は変わりました。でも、書いていないんですよね、流れがあるだけで何ら書いていないのに、突然、平成三十年度からはこの「調査票の取扱い」という言葉が来まして、文章を読んでみますと、「精神科医療機関から提出された調査票には、当該医療機関の患者に関する情報が含まれていることから、都道府県・指定都市においては、個人情報保護の観点から、各自治体において定められた保存期間の経過後に速やかに廃棄するなど、適切な管理を行うこと。 また、本調査においては、こうした患者に関する情報が含まれた精神科医療機関の提出した個々の調査票の内容の公表は予定しておらず、その集計結果のみを公表する予定であるため、都道府県・指定都市において、管内の精神科医療機関に調査への協力依頼・調査票の送付等を行うに当たっては、その旨を明示した上で協力を求めること。」というふうにわざわざ書かれるようになりました。

 これもどうしてでしょう。

橋本政府参考人 厚生労働科学研究班におきます精神保健福祉資料の作成に係る六三〇調査は、個々の医療機関の状況を調査することを目的としたものではなく、我が国全体あるいは都道府県単位での精神科医療の傾向を把握するために実施しているものでございます。

 したがいまして、研究班の方で精神保健福祉資料として公表する際には、その集計結果のみを公表するということが予定されていることを明確化したものでございます。

尾辻委員 なぜ今までなかったのに、わざわざ平成三十年度から明確化したのかということなんですよ。今、先ほど申し上げたように、これで非開示が各自治体でふえてしまったということがあるんです。

 その中でちょっとお聞きしたいんですけれども、配付の五ページには、日本精神科病院協会から、精神保健福祉資料の実施についての声明文というのが昨年の十月十九日に出ております。ここで、ことしの、平成三十年度の六三〇調査については個人情報流出の懸念がある、それで問合せをしていたというふうに書かれております。

 このような問合せが実際にあったことが変更の理由の一つとなったのかどうか、教えてください。

橋本政府参考人 この調査票には患者に関する情報というものが含まれておりますので、そのような調査票を提出することについて、個人情報保護の観点からためらいを感じる医療機関があったとしても不思議なことではないと思っております。この調査は医療機関の任意の協力に基づいて行われるものでございますので、仮に大多数の医療機関が提出をためらってしまったとすれば、この調査が成り立ちません。

 したがって、改めて、厚労省としての判断といたしまして、個々の調査票の内容の公表は予定しておらず、その集計結果のみを公表する予定であるということを明確化したものでございます。

尾辻委員 これが原因かどうかというのはちょっとお答えをいただいていないんですけれども、この問合せがあったんですよね。それで話をされたんですよね。どうぞ、お答えください。

橋本政府参考人 日精協などの関係者との間では、精神保健福祉に関するいろいろな事柄につきまして、いろいろなお問合せもいただいておりますし、日々説明をさせていただいております。

尾辻委員 その中で、厚労省がこう言ったというふうにあります。「「個々の調査票の内容に関しては、公開を予定せず任意に提出されており、各都道府県・政令市の情報公開条例に照らして、“非公開情報”にあたる」としていた。」ということですけれども、これが厚生労働省の認識ということになるんでしょうか。

橋本政府参考人 精神保健医療福祉の施策に関しまして、先ほども申し上げましたように、必要に応じて関係者への説明を行っております。こうした中で、日本精神科病院協会に対しまして、六三〇調査に用いられる調査票の地方公共団体における公表、公開のあり方につきましては当該地方公共団体の条例に基づき適切に判断されるものと考えられる、そういう旨の説明を行っております。

尾辻委員 では、厚労省が非公開情報に当たるというふうに認識しているのかしていないのかということについて、お答えください。

橋本政府参考人 繰り返しになりますが、それぞれの地方公共団体の条例に基づき適切に判断されるものというふうに考えております。

尾辻委員 では、非公開情報に当たるか当たらないかということについては自治体が判断するので、厚労省としては非公開情報というふうに断じることはできないということでいいでしょうか。

橋本政府参考人 各自治体が判断するものでございますので、私どもが判断する筋合いのものではございません。

尾辻委員 実は、配付資料の四ページをごらんいただきたいんですけれども、この六三〇調査を各都道府県に情報公開請求したところということで、十五自治体で非開示又は一部開示になってしまったということがこの新聞記事でも報道されています。これは、前年度までは開示されていた情報なんです、私も地元の大阪府や大阪市に聞いてみましたけれども。同じ内容の調査が、なぜか非開示になってしまったわけです。

 これはなぜかということを聞きましたところ、左の日経新聞のところにも書いてありますけれども、三段目のところですけれども、「理由として九道府県が厚労省の通知を挙げた」。つまり、厚労省の通知によって、今まで開示していたものを非開示に変えたというふうに答えておられるわけです。

 では、厚労省の通知のどの部分でそのようになったのかということですけれども、それが先ほど申し上げた「調査票の取扱い」、別紙のところで「都道府県・指定都市において、管内の精神科医療機関に調査への協力依頼・調査票の送付等を行うに当たっては、その旨を明示した上で協力を求めること。」と書いたので、各都道府県、例えば大阪も聞きました、そうすると、大阪府も、今まではつけていなかったけれども、こういうふうに書きなさいというふうに言われたので書いたということなんですね。

 ですから、これは、各市町村や自治体が判断するという前に、厚労省がこのように位置づけたから非開示になった、そうではありませんか。

橋本政府参考人 六三〇調査で用いられる調査票の情報公開請求への対応については各自治体におきまして条例に基づき判断されているものでございますので、先ほども申し上げましたように、私ども厚労省はそれに対して意見を申し上げる立場にはないと思っております。

 なお、ことしの三月七日の全国の障害保健福祉関係主管課長会議におきまして、改めて、従来どおり各自治体においてそれぞれの条例に基づき判断されるものであり、今後とも適切に対応されるようにお願いをさせていただいたところでございます。

尾辻委員 これが出なくなったというのは事実なんです。出なくなったのは、ここの通知にこのように書かれたからなんですね。

 先ほどおっしゃった、三月七日の課長会議でこのように言いましたということで、従来どおりだというようなことを書きましたとおっしゃいましたけれども、私もそれで大阪府や大阪市に問合せをいたしました。

 配付資料でいいますと六ページに、障害保健福祉関係主管課長会議の資料としてあります。この三月七日のときに、このように、最後の行ですけれども、「従来どおり各地方公共団体において、それぞれの条例に基づき判断されるものであり、今後とも適切に対応されるようお願いする。」では、この課長の資料によって、皆さんの開示、不開示は変わりますかと言うと、変わりませんと。それはなぜなら、厚労省がもともとの文書の通知でわざわざ、これはその集計結果のみを公表する、調査票の内容の公表は予定していないというふうに書いて明示をしたからというふうになっているわけですね。

 結局これは変わっていませんよ。このことについてどう捉えていますか。

橋本政府参考人 厚生労働省といたしましては、あくまでも、六三〇調査に用いられる調査票の地方公共団体における公開のあり方については当該地方公共団体の条例に基づき適切に判断されるものと考えておりまして、先般の障害保健福祉関係主管課長会議においてその旨を周知したものでございます。

 したがいまして、今後、各自治体におきまして情報公開請求に対応するに当たりましては、本年三月七日の障害保健福祉関係主管課長会議でお示しした内容も踏まえて適切に御判断いただけるものというふうに考えております。

尾辻委員 これは、言っていることと実際やっていることが違うんですよ。

 例えば、七月三日の参議院の厚労委員会では、このように答えているわけですよね。福島みずほさんの質問に政府参考人として宮嵜さんが答えているわけですけれども、ただ、国の方で、都道府県が公表するなとか、そういうことを決して申し上げるつもりはございませんと。

 七月三日に、決して公表するなと申し上げるつもりはございませんと言いながら、七月十三日にはこうしてちゃんと明示をして、調査しなさいよと。それを都道府県や政令市は聞いたから、これは公表しないですよといってもう質問をとっちゃったわけですよ、調査票ももらっちゃったわけですよ。そうしたら、それを今さらこうして課長会議で言われても、それも、課長会議の文言で解釈は変わりますかと言ったら、変わらないんですよね。

 これは、言っていることとやっていることが違うと思いませんか。厚労省はこの因果関係を認めた方がいいと思うんですけれども、いかがですか。

橋本政府参考人 先ほど来申し上げましたように、それぞれの地方公共団体における公開のあり方というのはそれぞれの地方公共団体の条例に基づいて適切に判断されるものというふうに考えております。それは、御指摘いただきました昨年七月の参議院厚生労働委員会における政府参考人からの答弁とそごを来すものではないというふうに考えております。

尾辻委員 では、ここの文章をやはり削除するべきだと思いますよ。そうしないと、まず三十年度の六三〇調査は各自治体から出てきません、情報が。私の地元の大阪府、大阪市、堺市は全部、出さないと答えたんです。私が、この三月七日の課長会議の資料もありますけれども出せますかと言うと、いえ、出せませんという答えが返ってきたわけです。これが結果です。

 結局、必要な情報、各病院がどういうふうな拘束をされているのか、例えば公衆電話があるのか、どういう人員体制なのか、そういうことが全くこれでわからなくなってきたわけです。

 ここの文章は、来年は私は削除すべきだと思いますけれども、いかがですか。

橋本政府参考人 平成三十一年度の精神保健福祉資料の作成については、現段階でまだ決まっている事項はございませんので、今後検討することになるということでございます。

尾辻委員 このやり方をしていると、必要な情報が出てきません。自治体が非開示にしてしまいます。ですから、この今の状況をしっかり把握していただきたいと思います。

 そして、そもそもなんですけれども、この調査というのは任意で協力をいただいているというところでこういうことになるわけですし、二次医療圏ごとにこういったことをまとめていくわけですね。本来、こういった情報は、厚労省がしっかりと調査すべき内容だと思うんですけれども、このことについてはどうお考えでしょうか。

橋本政府参考人 先ほども申し上げましたが、厚生労働科学研究において実施されている精神保健福祉資料の作成というのは、個々の医療機関の状況を調査するということを目的としたものではございませんで、我が国全体あるいは都道府県単位での精神科医療の傾向を把握するために実施しているものでございます。

 いずれにいたしましても、六三〇調査の具体的な方法は、厚生労働科学研究の中で検討いただくものというふうに承知しております。

尾辻委員 こういう調査は、精神保健福祉法などでしっかり位置づけて、本来国が把握すべき数字だと思いますので、しっかり調査を位置づけるようにしていただきたいと思います。

 次のページに行きますけれども、最終ページ、七ページに、実はこれも精神医療にかかわる記事でございますけれども、きのうの共同通信の記事ですけれども、これは埼玉新聞からとってまいりました。

 身体拘束とか隔離の調査が頓挫したという記事が出ております。理由としては、「病院の全国団体が難色を示し、厚労省が姿勢を後退させたためとみられる。」というふうになっておりますけれども、これについてはどうなっているのか、お聞かせください。

橋本政府参考人 厚生労働科学研究班におきまして、精神病床における隔離や身体的拘束の実態把握を行うこととしております。医療従事者のみならず、当事者や弁護士にも参画いただきながら、その調査のあり方について議論を行っていただいているわけでございますが、現時点におきましては適切な調査設計に至っていないというふうにお聞きしております。

尾辻委員 これは三月で終わりですけれども、そうすると、これはもう調査は行われないまま中止ということになるんでしょうか。

橋本政府参考人 隔離や身体的拘束の実態を把握するということは重要と考えておりますので、また今後の厚生労働科学研究班における対応について検討してまいりたいと考えております。

尾辻委員 これは調査ができないまま終わるというのは、ゆゆしき事態だと思うんですよ。だって、拘束とか隔離が二倍近くにふえているというのは非常に問題で、その現状分析ができなければ対策を打てないわけですよね。

 こういうように非常に問題があるわけですけれども、ちょっと大臣にお聞きしたいと思いますけれども、こういった調査の頓挫というのは、日本の精神医療がブラックボックス化しているというか、後退しているように私には見えます。ですので、今年度はもうこの調査は終わりということですけれども、きちんとやはり来年度は調査していただかないといけないわけです。しっかり取り組んでいただく必要があると思いますが、大臣、いかがでしょう。

根本国務大臣 精神障害を有する方が、必要な医療を適切に受けるとともに、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう環境を整備していくことが重要だと考えています。

 今まで、我々は、次のような取組を実施してまいりました。地域において、医療、障害福祉、介護、住まいなどが包括的に確保された、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進。そして、多様な精神疾患等に対応できる医療提供体制の構築に向けて、これらの疾患などごとに医療機関の役割分担、連携を推進する。また、委員御指摘の隔離や身体拘束については、これが行われる場合であっても法令に基づき適切に実施されることが重要と考えており、障害保健福祉部長から答弁をいたしましたが、実態把握の方策を検討していきたいと考えています。

尾辻委員 調査は頓挫しているし、六三〇調査は各自治体が調査票を出さなくなった。日本の精神医療を把握することが難しくなっている現状があるんですね。

 例えば八月二十一日の毎日新聞なんかでは、三ページですけれども、精神疾患、五十年以上入院が千七百七十三人と。これは情報公開でわかったわけですけれども、今後、こういう新聞報道も出なくなる可能性があるわけです。しっかりと国民にわかるように開示をしていただきたいと思います。

 次の質問に参りたいと思います。

 三月に取りまとめを予定している医師の働き方改革に関する検討会の状況について、お伺いをしたいと思います。

 二月の検討会では、地域医療を担う病院の医師や研修医らの残業時間の上限が千八百六十時間ということを示されたというふうに聞いております。この千八百六十時間の根拠というのはどこにあるんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました時間数につきましては、医師の働き方改革に関する検討会におきまして厚生労働省事務局が提案しているものの一つでございます。これは、二つのカテゴリーから成っておりまして、地域医療確保のためにやむを得ず設定する暫定的な特例水準と、二つ目として、集中的にみずからの技能を向上させたい医師に適用される特例水準における、両方、年間の時間外労働時間の上限ということで、これについて、現在、検討会で引き続き御議論をいただいている状況でございます。

 この案は、平成二十九年八月以来の検討会での議論を踏まえまして、医師の診療業務には公共性や不確実性、高度の専門性などの特殊性があることから、時間外労働規制について一般労働者に適用されるものとは異なる水準が必要であるとの趣旨から提案させていただいています。

 お尋ねの時間数の根拠としては、二〇一六年に実施した医師の勤務実態調査における勤務時間の分布をもとに、まずは確実に分布の上位一割に該当する医師の労働時間を短縮するということを設定し、これに医師の健康を確実に確保するための一般則よりも強化した措置を義務づけることとセットで今提案をさせていただいております。

 また、この水準は、現状において年間三千時間に近い労働時間をしているお医者さん、医師もいる中で、幅広いタスクシフティング、タスクシェアリングなどの推進ですとか、あるいは地域医療の立場からさまざまな支援を行うことにより、大幅な時間外労働時間を削減して達成できる水準と考えておりまして、そのために全力で取り組む必要があるというふうに思っております。

尾辻委員 やはり千八百六十というのは結構長いと思うんですよ。過労死ラインが九百六十ですから、これはどうなのか。一割が今そうだからということで、そこをターゲットにするということなんですけれども。

 実は、二月のこの検討会で、副座長の渋谷教授が辞意を表明された。聞きますと、そのままもう辞任されたということなんですね。三月に取りまとめの検討会が、二月のところで副座長が辞任するというのは異例の事態だと思うんですけれども、そのあたりはどうお考えになっているんでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。

吉田政府参考人 恐縮です。二つ申し上げるんですが、実は一つ、先ほど私が答弁を申し上げた中で、三千時間に近い労働時間という言い方を申し上げました。時間外労働の間違いでございます。大変申しわけございません。訂正させていただきます。

 また、事実関係として、今、検討会の渋谷委員の辞任のお話について御言及いただきました。

 副座長をお務めいただいた渋谷健司氏につきましては、一昨年の八月の検討会発足当初から御参画をいただき、十九回にわたる検討会で熱心に御議論に参加していただいておりました。本年一月十一日の検討会の取りまとめ骨子案も、渋谷委員の御意見も十分にいただいて、それを反映した形で整理をさせていただいております。

 その上で、その後、二月二十日の検討会において、みずから辞任の意向を示す御発言を行われて、残念ながら本年二月をもって辞任されたという経緯でございます。

冨岡委員長 ちょっと答えが答えでなかったように感じましたけれども。

 では、再度、大臣の方から。

根本国務大臣 今、事実関係については担当局長から答弁がありました。渋谷氏が検討会の取りまとめの前に辞任されたことは非常に残念であります。

 検討会の各構成員に十分な御議論をいただきながら報告書が取りまとめられるよう、引き続き丁寧に検討を進めてまいりたいと思います。

尾辻委員 いや、どうして渋谷教授は最後になって辞任をされたのか、それをどう受けとめられているのか、何が問題だったのか、お答えください。大臣に聞いております。

根本国務大臣 渋谷氏は、検討会において辞任の意向を示されるに当たり、真剣な議論をし、現場に説明をして改革を進めるべきだと訴えられており、検討会においても、現場からの御意見をいただきながら検討を進めてまいりたいと思います。

尾辻委員 渋谷さんは、千八百六十時間ということについて、報道記事などではかなり強い異論があるというふうに述べられていますけれども、それは事実でしょうか。

吉田政府参考人 お答えをいたします。事実関係ということでございます。

 これは公開の会議でございますが、まだ議事録という形で各構成員の了解がとれておりません。手元のメモで申し上げますと、この議論につきまして、当日、千八百六十時間という提案についていろいろな委員の中でも御議論があり、私ども事務局の方からは、千八百六十時間について、実態をいろいろ見て、タスクシフトがここまでできるだろうかということも総合的に判断した提案である、また、地域医療を守るということ、そして本来医師の健康を守るということ、それぞれを政策課題として一つの形に求められている、労務管理、勤怠管理をしっかりやった上で短縮していくが、五年たっても守らなければいけない医療が地域においてあるということを申し上げ、また、別の構成員からの御発言として、最も長い時間働いて極めて過酷な労働条件にある方というところにまずターゲットを絞って、絶対的な上限を定めた上で健康確保措置あるいは医師の方々の健康と命を守るということが必要だ、その上で、今後どういう形になるかがわからないという中で、地域の医療体制の整備、そこもきちんと対応していくことの組合せでこの問題は考えていくしかないという御発言があり、その上で、渋谷構成員、当時の副座長からは、今、二つの発言については全く同意だということをおっしゃった上で、先ほど大臣からも答弁がありましたように、今後も引き続き真剣な議論を行い、現場に説明して改革を進めるべきだ、そうでないと私としてはその座に参加できないという御発言をされたという事実でございます。

尾辻委員 ちょっと時間が参りましたけれども、これは次で終わるんですよね、三月十五日で。その直前に副座長がやめられるというのは異例の事態だと思います。

 そして、千八百六十時間はやはり長過ぎるんですよ。本当に長過ぎます。そこに張りつくじゃないですか。健康を守る医師が過労死するようなラインを政府が設けるというのは、これはあり得ないと思いますから、しっかり検討して、この千八百六十時間はもう一度再検討していただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦です。

 貴重な時間ですので、質疑を始めさせていただきます。

 まず、大臣は所信表明演説で、医療・福祉分野での人材確保、AI、ロボット、ICT等のテクノロジーの徹底活用、ゲノム医療、AI等の最先端技術の活用などと言及されていましたね。

 さて、科学技術イノベーションの分野では、今世界的に、国を挙げて海外のハイエンド人材を誘致する動きが活発化しています。アジア諸国において、特に中国の動きは脅威であります。

 医療人材、医学研究だけでなく全ての科学技術イノベーション分野で、日本国は国籍を問わず有能な研究者、ハイエンド人材を誘致、確保すべきだと考えます。その意味で、日本は大変立ちおくれていると言わざるを得ません。我が国では、海外からの有能な人材を引き入れるどころか、逆に有能なハイエンド人材の欧米への流出を招いている現状を、私は研究者の一人として大変憂えています。

 その中で、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、いわゆるAMEDは、当初、日本版NIHとも呼ばれて、我が国における医療研究の司令塔を目指して大きな期待を背負って発足しました。

 しかし、大臣御存じだと思いますが、米国メリーランドのベセスダにありますNIHは、アメリカ合衆国の保健福祉省公衆衛生局の下にあります、一八八七年に設立した医学研究の拠点機関ですね。国立がん研究所、国立心肺血液研究所、国立老化研究所、国立小児保健発達研究所、国立精神衛生研究所とか専門分野を扱う研究所、医学図書館などの研究所以外の組織、合わせて全部で二十の研究所、七つのセンター、計約二十七の施設と事務局によって構成されています。一万八千人ぐらいスタッフがいて、六千人ぐらい科学研究者、これは医師、医学、生理学研究者であります。

 規模も全部違うんですけれども、何が最大の違いかというと、自前の研究室や研究者がいるかどうかもその一つなんですね、大臣。NIHは、有能なハイエンド人材をNIHとして一本釣りできるんですよ。ただ、日本のAMEDは、それは全くできないですね。

 AMEDも、真の医療研究の司令塔を目指して、日本のブレーンサーキュレーションのメッカとしてハイエンド人材を集めるためには、予算をつけて自前の研究室を構えないと、とてもこういうことは本当に難しいですよね。これは構造的な欠陥ですが、大臣の御所見を伺います。

根本国務大臣 委員のお話がありましたように、ハイエンド人材あるいはブレーンサーキュレーション、これは本当に私も大事だと思います。国際的な視野を持って、高い能力を有する多様な人材によって臨床研究や医療が行われること、これは世界最高水準の臨床研究や医療を目指す上で大変重要であると認識しております。

 例えば、国立高度専門医療研究センターでは、がんや認知症など国民の健康に重大な影響のある疾患について、高度な医療水準や研究能力を持った人材の育成、研究者等の国際的な交流や招聘、この取組を行っております。

 このような取組を通じて、委員御指摘の国際的なブレーンサーキュレーションの強化につながるように、ナショナルセンターにおける国際的なキャリアパスの仕組みを検討したいと考えています。

 また、今御指摘のあったAMEDとナショナルセンターとの連携、これについても、関係省庁とも連携して何ができるか考えたいと思っています。

吉田委員 大臣、余りしっかりとお答えいただいていないんですが。

 結局、欧米ですごくいい研究をしている研究者が日本に戻ってきたくても戻れない実態があるんですよ、はっきり言って。それはやはり、今の日本の医局や研究室の成り立ちだと、有能な人材でも、例えば大学の研究室に即した研究をしていなかったら戻れなかったり。予算が、科研費があると戻ってくるわけですから、その人材自体に科研費をつけてあげて研究室をつけてあげないと、有能な人材は引っ張れないですよ。委員長もわかっていますよね。

 だから、これは本当に、自前の研究室を構えるぐらいのことをやらなきゃいけないし、あと、トランスレーショナルリサーチということを考えた場合は、そもそもこのAMEDは内閣府の所管じゃなくて、アメリカのNIHみたいに厚生労働省の所管にすべきじゃないですか。大臣、どうでしょう。

根本国務大臣 これは内閣府の所管なので、内閣府から答弁いただきたいと思います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、AMEDにおきましては二十七年四月に研究支援機関として設立をしております。

 具体的には、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が各省で管理をしておりました医療分野の研究開発予算、これを集約して一体的に管理をするという役目を果たしてきたところでございます。

吉田委員 だから、全然今のは答えになっていないでしょう。

 私は、大臣に、アメリカのNIHは厚生労働省所管だからトランスレーショナルリサーチをしやすい環境にあるから、トランスレーショナルリサーチというのが今一番大事ですよね、医学、生理学研究においては。それにおいて、大臣は内閣府にあるデメリットをどうお考えになるか、厚生労働省の所管にすべきじゃないですかと聞いているんです。こんなのは笑われますよ、世界的に。

根本国務大臣 AMEDは、今お話がありましたけれども、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画にのっとって、医療分野における基礎から実用化まで一貫した研究開発等を推進する機関として設立されております。

 具体的には、文科省、厚生労働省、経済産業省の予算を集約して、研究管理をAMEDのもとに集約して、これは、それまで各省において個別に行われていたものですが、プログラムディレクター等による一貫した研究マネジメント体制を構築して研究開発を推進している。

 その意味では、三省庁連携して一体的に取り組むという観点からAMEDがつくられて、それは横断的に内閣府として所管し対応している、こういうことであります。

吉田委員 なかなか御理解がいただけないのかなと思います。

 じゃ、大臣、別の聞き方をしますね。大臣は、日本の医学、生理学研究におけるブレーンサーキュレーションをどのように強化、活性化すべきと考えるか。どうすれば大臣御自身のようなハイエンド人材を医学、生理学研究分野で得られるのか、大臣の御所見を伺います。

根本国務大臣 先ほど私がお話をいたしましたけれども、委員御指摘の国際的なブレーンサーキュレーションの強化、これはやはりナショナルセンターにおける国際的なキャリアパス、いろいろ御提言がありましたけれども、ナショナルセンターで国際的なキャリアパスの仕組みを検討していきたいと思います。

 そして、今、AMEDとの関係では、AMEDとナショナルセンターとの連携、これは、関係省庁とも連携して何ができるかを考えていきたいと思います。

吉田委員 大臣、ぜひ頑張ってください。もう日本から医学・生理学賞が生まれなくなっちゃいますよ、ノーベル賞ね、頑張らないと。

 じゃ、次に行きます。

 ちょっと眼科にかかわる質問をさせてください。

 大臣所信で、健康寿命の延伸や特定健診・保健指導に関して言及されましたね。民主党政権時代に提起されて、田村元厚生労働大臣もかねて熱心にかかわってくださっている課題なんですが、眼科医療や感覚器医療に対する関心は、我が国はやはり他の先進諸国に比べて希薄ではないかという指摘をしばしば受けています。

 人間は、外界からの情報を目から八割得ると言われています。現在、約百六十四万人を超える視覚障害者がいますが、今後増加して、二〇三〇年に二百万人を超えると言われています。こういった視覚障害は、個人だけじゃなくて家族や社会にも大きな負担を、大臣、強いますよね。日本の視覚障害者の総経済コストは、とある研究によれば眼科一般診療費の約八・八倍の八兆八千億円を超えている、これが二〇三〇年には約十一兆円となると、ある研究で試算をされています。

 予防や早期の治療によって視覚障害者を減らすことは、患者個人のQOLの改善だけじゃなくて、こういった視覚障害から生じる総合的な経済コスト等を縮減して日本経済の生産性にも寄与する可能性が高いと私は考えますが、特定健診で眼底カメラによる簡易な眼科健診があることを承知しておりますが、ここで大臣、いかがですかね、大臣は、数年に一度とかある一定の区切りの年齢で緑内障とか糖尿病網膜症、黄斑変性などを対象とした専門性の高い眼科健診を導入する、そういった御意向はないでしょうか。

根本国務大臣 委員、専門家の観点からいろいろと今御教示を賜りました。

 今、健診を制度として導入するか否かという御質問ですが、これについては、私も目の重要性というのは本当に感じます。ただ、導入するか否かについては、検査の安全性や有効性などが明らかであるかなどについての科学的根拠に基づいて、想定される対象者数や疾病の発症リスク、費用対効果などを勘案しながらその適否を判断することが必要だと考えています。

 この眼底検査は、もう先生御案内だから省略しますけれども、この点について、今の眼底検査を実施していることについては今説明を省略しますが、全ての方を対象に眼科健診を行うことについては、医学的効果と医療経済学的効果の観点から検討が必要だと考えておりまして、現在、成人眼科検診の有用性、実施可能性に関する研究を進めております。

 厚生労働省としては、科学的なエビデンスを踏まえて、効果的な健診を行うことによって国民の健康増進に向けた取組を推進していきたいと考えています。

吉田委員 大臣、ありがとうございました。しっかりとした御答弁をいただきました。

 各自治体でかなりこれをやっているところがございますので、ぜひ厚生労働省で御参考にしていただいて、国民にとってメリットがあるものであればしっかりと導入をしていただく。実際、日本人は近眼が多いですよね、大臣。近眼の人はかなりの高い可能性で緑内障になります。緑内障は初期に見つけると失明しないことが今多いんですが、もう自覚症状が出たときは手おくれになってしまいますので、そういった観点からも、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 次に、大臣は、障害者雇用、障害者支援、社会福祉などに関しても、所信表明で多くの時間を割いていらっしゃいました。日本では、片眼のみ失明した方は障害者認定を受けることができませんが、その点を大臣はどのようにお考えになりますか。

根本国務大臣 身体障害者福祉法に基づく身体障害者認定基準、この認定基準については、医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、日常生活の程度によって定められております。現行制度上、片目失明の方については、よい方の目の視力が〇・六を上回る場合には障害認定されておりません。これが障害者認定基準の考え方であります。

 一方で、片目を失明した方が日常生活で不便を感じているという声は伺っております。このため、平成三十年度から、片目を失明された方を含むさまざまな視機能異常により生活に支障を来している方の実態把握を含めた調査研究を実施しているところであります。視機能障害認定のあり方に関する研究、この調査研究を実施中です。この研究結果を踏まえて、片目失明の方にどのような支援ができるかを検討していきたいと考えています。

吉田委員 ありがとうございます。ぜひしっかりと御検討いただいて。

 次に、ちょっと順番を変えますが、医師の働き方改革に関して言及がございましたね。大臣、大学院に所属する医師のアルバイト、これは大学院に所属する医師にとっては唯一の収入である場合が多いんですが、これは勤務時間ですか。彼らの研究時間は勤務時間ですか。また、ほぼ無給で行っている大学病院での診療は勤務時間ですか。この三点、はっきりとお答えください。

根本国務大臣 まず、労働基準法の労働者に当たるか否か、今お話がありましたが、これはやはり個別具体的に判断されるものであります。

 そして、その上で、要はこれは労働時間に当たるかどうかというお話でしたが、労働基準法上の労働者に該当するか否か、これは、契約形態などにかかわらず、仕事の依頼や業務指示等に対する諾否の自由はあるか、あるいは業務を遂行する上で指揮監督を受けているかなどの実態を勘案して、総合的に判断されるものであります。

 そのため、医療免許を取得して病院で診療等を行っている大学院生も、仕事の依頼や業務指示等に対する諾否の自由がない、あるいは業務を遂行する上で指揮監督を受けているという実態があれば、労働基準法上の労働者に当たる可能性があります。

吉田委員 大臣、わかりますよ。今読んでいただいた答弁はわかるんですが、今個別具体的なところを決める段階に来ているんですよ。

 じゃ、今の大臣の御答弁だと、本人が指揮監督を受けていると思ったり、本人がこれは労働だと思ったら労働時間になるという理解なんですか、大臣。端的にお願いします。

根本国務大臣 端的にという話でしたけれども、一概にお答えすることは困難でありますが、やはり使用者の指揮命令下に置かれているかどうか、置かれていれば労働時間に該当するということであります。

 それから、先ほどの話で、例えば医師が研究のために自己研さんを行っている場合、それはまだあれですか。では、とりあえずそういうことで。(吉田委員「ありがとうございます。大丈夫です。では、今から聞きましょうか」と呼ぶ)順番に話をしていただいて。

吉田委員 それは次の問いだったんですけれども。

 ただ、大臣、今先にお答えいただいたのであれですけれども、学会は自己研さんの部分もあるんですけれども、いわゆる指揮監督を受けて学会に行く方が研究者や若い学者は多いんですよ。なので、勤務医の学会準備、学会参加、アルバイト、研究、そもそもそれが勤務時間になるかどうかというのはすごく大事な問題なんですね。

 逆にここを先に解決をしないと、大臣、いわゆる大学病院の医師免許を持つ大学院生というのは、場合によってはそこで一番忙しい存在なんですよ。大学病院の主戦戦力である場合が往々にして見られるんです。だから、ここをまず先に解決しないと、勤務医のいわゆる上限設定とかそんなものは砂上の楼閣になるんですよ。ここが一番大事だし、ここをやっていただかないと困るんです。大臣、どうですか。政府参考人の方でもいいですよ。

根本国務大臣 委員のお話、そこは確かに論点だと思いますが、まず、明示的に労働契約が結ばれていなくて事実上の使用従属関係が存在するにすぎない場合であっても、黙示の合意があったと認められれば労働契約が存在する、こういう話になります。そして、黙示の合意があったと認められるか否か、これは個別具体的に判断されるものであります。

 また、繰り返しになりますが、労働時間に当たるかどうかは、使用者の指揮命令下に置かれているか、これを個別具体的に判断するということになります。

 そして今の、研さんのために研修会に参加する、あるいは医師の自己研さん、これについては、労働時間は労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価されることができるか否か、これによって客観的に定まるものであります。この考え方は医師の研さんについても同様に考えるべきであって、そのために、医師の研さんであっても使用者の指揮命令下に置かれたものであれば労働時間となります。

 医師の研さんは、委員がよくおわかりですけれども、特に医療水準の維持向上のために欠かせないものであります。医師の研さんが労働時間に当たるのかは、研さんの性格なども踏まえて判断されるものだと考えています。

吉田委員 そうすると、PIですね、いわゆるボスの科研費で学会発表してきなさいと言われて出張費を出してもらった場合は、指揮監督下に置かれた仕事という感覚でよろしいですよね。これは答えは要らないです。もう時間がないので、次の話をしたいので。わかりました。多分そういう理解なんだと思います、今のお話、整合性をとれば。

 では、大臣、今般、動物愛護法の改正が予定されていますね。私自身は蚊とかゴキブリも殺傷するのは本当に嫌いなので自分から逃げていくんですけれども、動物愛護、とりわけこういう生命の尊厳を私自身は非常に守る人間でございます。

 ただ、今回の動物愛護法の改正によって、最低限、必要不可欠な動物実験まで制限されてしまうと、生命科学や医学、生理学研究を中心とするイノベーションだとか、ひとしく国民が享受する、いわゆる日本の医療の質にも影響が出てくると考えますが、大臣、いかがですか。

根本国務大臣 動物愛護の推進は重要と認識しています。しかしながら、医薬品等の研究開発を所管する厚生労働省としては、安全かつ有効な医薬品等を求める患者の期待に応えることも重要だと考えています。

 動物の愛護及び管理に関する法律、これは現在、議員連盟や各党で改正案が検討されているものと承知をしておりますが、医薬品等の研究開発に支障が出ないようバランスに配慮した議論が深まるように期待をしております。

吉田委員 大臣おっしゃるように、本当に動物愛護の精神というのは極めて重要ですよね。悪質なペットの業者さんとかそういったものはしっかりと取り締まって、動物愛護、生命の尊厳をしっかりと守る、これは重要であると私は改めて、本当に、極めて重要なことなので申し上げておきます。

 その中で、二〇一二年のノーベル医学・生理学賞受賞者である山中伸弥教授は、今回の動物愛護法の改正草案を実際にごらんになったそうです。科学研究者が、前回改正の際の、例えば参議院厚生労働委員会における附帯決議七の3Rの実効性強化などを起草した部分などを始めとして厳格に遵守をしてきた。ただ、そういうことが全く評価されていない。この草案がそのまま成立した場合、自身の今後の研究の遂行に大きくかかわる可能性があると危惧していらっしゃると仄聞をいたしております。

 繰り返しになりますが、動物愛護法の厳格化や厳格な運用は極めて重要であり、一層進めていくべきであると私からも重ねて申し上げますが、しかしながら、こういった科学技術イノベーションの進歩、国民の健康、命を守る研究を障害するものになってはならないと考えます。

 だから、厚生労働省としては、なるべく減らした方がいいですよ、もちろんなるべく減らした方がいいですが、研究開発に必要な適正な動物実験というのは、やはり適正数は必要である、そのようにお考えだと考えてよろしいでしょうか、大臣。

根本国務大臣 実際の改正案、これは議員立法ですから、各党で今議論中と聞いております。それぞれの立場の皆様が参加されていると思いますが、そこはまさに議員立法という形で議論中だと承知をしております。

 やはり必要なのは、動物愛護の推進と、一方で、安全かつ有効な医薬品などを求める患者の期待に応える、これも重要ですから、私は、その研究開発に支障が出ないように、これはバランスに配慮した議論を望みたいと思っております。

吉田委員 そうですね、今バランスとおっしゃっていただいて。議員立法ですし、大臣、なかなかお答えしにくい部分がある。

 逆に、大臣、さっきのイノベーションの話じゃないですけれども、iPSだとかそういう再生医療を生かすと実験動物を減らすことが今後できてくる、その生理活性を確認するに当たってそういったことも可能になっていきますので、もちろん、そういった科学技術を進めることによって動物実験の数はもう絶対減らした方がいいですよね、それは当たり前です。だから、そこを目指しつつ、ただ、やはり大臣おっしゃったように、バランスが大事だと私も心得ております。

 時間が来たようですが、最後、簡潔に聞きますのでお答えください。

 妊婦加算に関する議論がございましたね、撤回されたわけですが。本加算は、妊婦の診療は医師にとって胎児への影響を考慮した薬剤の選択など通常より配慮が求められるため避けたがる傾向にある、そこで、診療報酬を上積みすることで医療機関に妊婦の受入れを促そうという狙いがあったということであるそうですが、その意味において、大臣、障害者、障害児に対する診療においても加算がないというのは逆に不自然きわまりないなと私は思うわけです。委員長も外科医ですから、障害をお持ちの方の診察は大変だと思います。

 なぜならば、障害をお持ちの方々に対する検査、診療は、妊婦の方よりしばしばコミュニケーションそのものがとりにくいという点もあって、また、主訴や訴えが医師や医療従事者にうまく伝わらない等の理由もあって慎重を期すべきなのは当然のこと、また、医師や医療従事者への負担もしばしば極めて大きなものになるからであります。

 もちろん、受診者である障害者、障害児の自己負担は絶対にふやすべきではないとここで断言をしておきますが、その上で、診療報酬上の加算等、逆に、妊婦さんの検討をされるんだったら、こちらも検討すべきじゃないかなと。大臣の所信表明を聞くとやはり障害者の皆さんに対する思いが伝わってきたので、最後にこの部分をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

根本国務大臣 診療報酬においても、従来から、障害児、障害者の方に対する丁寧な診療を評価する観点から、加算を行っている項目、障害者等加算があります。例えば、血液透析について、著しく実施が困難な障害者等に対して行った場合に加算しており、平成三十年度診療報酬改定において更にその額を引き上げたところであります。

 障害児、障害者の方に対する丁寧な診療の適切な評価については、関係者の御意見も十分に伺いながら、慎重に検討する必要があると考えております。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。

 それは存じ上げているんですが、やはり妊婦加算は違うじゃないですか。あまねく形でやっていますので、特殊な検査だけじゃなくて、やはりもうちょっとしっかりとやっていただきたいというのが趣旨だったんですが、ちょっと説明不足でごめんなさい。ただ、しっかり御答弁いただきました。

 ますます今後頑張っていただきたいと期待を込めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十四分開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、厚生労働委員会での質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 限られた時間ですので、早速質疑に入りたいと思います。

 まずは、健康保険についてお尋ねをしたいと思います。

 かねてより、健保組合の存在によって国庫負担がどう影響しているか、助かっているのか厳しいのかは別にして、どういう影響があるのかということについて議論をしてきましたが、そろそろお尋ねしたいと思いますが、健保組合の平成二十八年度決算見込みにおいて法定給付費は三兆八千四百億円となっているため、前回提示した前提に基づき試算をした場合、全ての健保組合が解散した、まあ、解散する状況にはないと言われるかもしれませんが、仮定ですが、解散した際の国庫補助は六千三百億円増加すると考えているが、これで間違いはありませんか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の試算でございますけれども、現行制度のもと、解散した健康保険組合の加入者が全て協会けんぽに移行する、移行後も一人当たりの医療費は変わらない、協会けんぽの国庫補助率一六・四%を維持といった、岡本議員が提示された前提をもとに機械的に試算を行うということをいたしますと、三兆八千四百億円に一六・四%を掛けると御指摘のような結果になるというふうに考えております。

 ただし、現状におきまして、おっしゃったとおり、全ての健康保険組合が解散するということが想定される状況にはありません。それから、その他の前提についても現状と変わらないといういわば仮定のもとで示された試算であるという点について留意が必要であるというふうに考えております。

岡本(充)委員 大臣、この六千三百億円というのはすごい金額なんですよね。

 確かに全てが解散する状況にはないわけでありますし、もちろん財政的にさまざまだと思います。しかし、やはりどうやって健全に健康保険制度を維持していくかというのは極めて重要な課題であり、このときは国保組合の話も私は指摘したような気がしますけれども、適正な健康保険が運営できるような配慮を今後とも、組合にしろ、各組織に行っていく必要があると思いますが、大臣、どうでしょうか。

根本国務大臣 今、樽見局長から答弁がありました。私も、国民健康保険がきちんと運営されるように適切に対応していきたいと考えています。

岡本(充)委員 適切にということでありますけれども、きちっと意義を踏まえて、やはり健全に保険制度が持続できるようにするべきだということを言っているのでありますから、そのようにお願いしたいと思います。

 さて、お配りをしております資料でちょっと最後の方になりますが、次に、年金の話を伺いたいと思います。

 前回、予算委員会でもちょっと取り上げましたけれども、きょうは年金局長にちょっとお伺いしたいんですが、四ページ目、経済前提設定、前回の平成二十六年の財政再検証では、場合によっては、ケースがAからHまであって、Hになると積立金が枯渇する可能性がある、こういう話でありました。

 このケースHに該当する可能性があるかないかというのは現時点では判断はできないところでありますけれども、内閣府が試算した参考ケース、内閣府が試算した経済再生ではなくて参考ケースの方を今歩んできている、こういう理解でよろしいんでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 財政検証に当たりましては、委員御案内のとおり、さまざまな社会経済情勢の諸前提を設定しております。一つは、やはり人口の推計でございます将来推計人口がどうか、それから労働力の需給推計についてどうか、あるいは物価、賃金、運用利回り、そういったもので判断をしているわけでございます。

 特に、財政検証上、今、プラスといいますか非常にいい状況というのは、一つは出生率でありまして、それが、二〇一七年の出生率は一・四三で、財政検証上は一・三六ということで、上回っています。それから、被保険者数も増加をしております。それからもう一つは、これは重要でございますけれども、特に実質的な運用利回り、スプレッドが二〇一四年から一六年にかけて見込みよりも高い水準で推移しております。こういった部分。

 一方で、財政検証を下回っている要素といたしましては、物価、名目賃金、これは実績は上昇しておりませんで、特にマクロ経済スライドは、来年度は適用されますけれども、二〇一五年度を除いて発動していないということもございます。

 やはりプラスとマイナスの要因がございますので、今の参考ケース、先ほどHのケースというふうにもおっしゃられましたけれども、どれに該当するかというのはなかなか今の段階ではお答えすることは難しいのかなと思っております。

岡本(充)委員 私がつけた四ページ目にあるように、内閣府の経済再生ケース、足元の期間と言われている二〇二三年までのところ、どちらを歩んでいるのかということについて、次の財政検証に当たって、私は、完全に一致しなくても、どの辺を歩んでいるのかということはやはり検証するべきじゃないかと思っています。

 それは全部の指標がどっちに偏るということはないでしょうけれども、そういう意味で、次の財政検証に当たって、前回の検証の結果がやはりどうだったのかということについて、きちっとそれも含めて検証するということが必要じゃないか、こういう考えを持っているわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。こうしたことも踏まえて、少し考えていただいてはどうかという提案であります。どうでしょう。

根本国務大臣 今、年金局長からお話がありましたが、いろいろ、財政検証、あるいは実績値の比較、あるいはどういうケースで我々は想定していくのか、これはこれからの議論だと思いますが、そこは、これからさまざまな要素を勘案しながらきちんと検証していきたいと考えています。

岡本(充)委員 前回の検証の結果で、こうなるんじゃないか、ああなるんじゃないかと考えてみたけれども、実際はどうだったのかということはきちっと検証するべきではないか、こう言っているわけです。それはどうですか。

根本国務大臣 経済前提は、社会保障審議会のもとに設置した経済前提に関する専門委員会で経済等の専門家に御議論いただき、要は幅を持った複数の前提を設定しておりますので、委員の今のお話がありましたが、もともと幅を持った複数の前提で実際どういうことになったのかということでありますが、要は、今、経済の専門家に御議論いただいて幅を持った複数の前提を設定しておりますので、そういう前提を踏まえながら今後よく検討していきたいと思います。

岡本(充)委員 かみ合っていないです、大臣。

 過去の検証がどうだったのかということについて、これからの、次の検証じゃないです、過去の検証の結果がどういうところを歩んでいるのかというところを見るべきである。要するに、過去の検証をやりっ放しではなくて、二十六年もやった、二十一年もやったわけです、そのときこういうふうに推計したけれども、実際はこうだった、こういうふうに来ているんだということについてレビューしてみてはいかがですかと、過去の話を聞いているんです。

根本国務大臣 先生の御指摘の件については、年金数理部会、今、専門部会で検証をしております。

岡本(充)委員 それは、じゃ、過去の推計がどうだったかということを検証して、その評価を公表している、そういう理解でいいですか。

根本国務大臣 幅の広いケースにおいて、実績がどうであったかということを検証していると聞いております。

岡本(充)委員 であれば、今答えてください。できていないと思いますよ。二十一年検証、二十六年検証、一体どこを歩んでいるんですか。今、日本はあの検証のどの位置を歩んでいるのか。さっきのこのグラフでいったらHのケースになるかどうかはまだわからないわけですけれども、足元の期間はどのあたりを歩んでいるのかということについて、そんなに明確に出していないんじゃないですか。局長でいいですよ。出ていないでしょう。

木下政府参考人 今御指摘がございましたけれども、常に、五年ごとに、経済前提については、足元の状況なども見渡しながら変えていって、それで、おおむね百年後にどういう状況になるのか、そこで均衡するのかというところを全て検証しながらやっておりますので、いわゆる足元、今、経済前提の専門委員会で具体的に経済前提を先般出しましたけれども、それを踏まえてまた五年ごとに検証して見通すということでございますので、それはもう前提として、当然今の状況というのは反映されていると思っております。

岡本(充)委員 いや、大分この前やったつもりだったんですけれども、ちょっと議論がかみ合っていないんですけれども、要するに、医療費の推計も過去いろいろ例えばやりました。だけれども、年々医療費の、二〇二五年の必要な医療費は最初は百四十一兆だったかな、ぐらいからスタートして、実際はどうだったかというのは、だんだんだんだん年が近づくに従って推計値が下がってきて、二〇二五年は一体どうなるかというのはこれからですけれども、やはり過去の推計が一体どうだったのかということについて、今の、これからの、次の検証の足元の数字はもちろん今局長が答弁されたとおりの話だと思いますけれども、過去推計してきた手法が、責任をどうのこうのと言うつもりはないですけれども、どうだったのかという検証はあってしかるべきじゃないですか、こう言っているわけです。

木下政府参考人 年金の財政の検証なり、これからの将来の見通しというのは、百年を見通してやるというのはなかなか難しいわけでございます。それを一定の過去のデータあるいは足元のデータをもとにやるわけでございますから、必ずそれは予測を立てているわけじゃありませんので、一定の前提のもとにいわゆるプロジェクションしているわけでありますので、そういう性格のものだというふうに御理解いただきたいと思っております。

岡本(充)委員 大臣、今局長はそう言われたけれども、よく聞いてくださいよ。要するに、いろいろな手法を使って推計するんです。その推計がどうだったのか、推計したとおりの数字になってきているのか、いや、あのときの推計は、こういうことがあってこういうふうに推計したけれども、確かに実際はこうだったよねということは、それは後になれば検証できるわけですから、今後の検証の手法を考えていく意味においても、私は、過去の手法がどうだったのかということを検証する意味があるんじゃないかということで、この議論を最初にやったわけです。

 そういう意味で、これから推計するのは難しいのはわかりますよ。だから、外れたからけしからぬと言っているわけじゃないんですから。これまでの手法がどうだったのか、次の新しい手法をまた生み出していく意味においても検証する必要があるんじゃないかと言っているんです。

 大臣、そういう意味で、どういう手法かは別として、一回考えてみられたらいかがですか、こう言っているんですが、どうですか。

根本国務大臣 今、手法の話がありましたけれども、社会経済状況の諸前提の設定、先ほどありましたけれども、将来人口推計あるいは労働力需給推計、あるいは物価上昇率、賃金上昇率、運用利回り、こういう経済前提を用いて、そして具体的にそれぞれの推計で実績値が、例えば出生率は一・四三が実績値ですが、財政検証の中位推計の一・三六を上回っている、あるいは、労働力率は見通しと比べて上昇し、厚生年金加入者が増加している。

 要は、一つ一つの前提を置いて、それは実績がどうなったかというのは、これはわかりますよね。全体として、プラスマイナスがトータルとしてありますが、私の理解では、それぞれの前提のもとに推計して、それぞれの前提の実績値がどうなったのかというのがわかって、その結果、トータルの推計値あるいは実績値を比較してどうか、そういう話なんだろうと思いますが、そこはちょっとプラスマイナスがいろいろあるので一概には言えないのではないかということで、そこはまさに検証部会で検証していただいていると私は理解しております。

岡本(充)委員 時間が限られていますから、この話は、じゃ、検証されていてそういう結果が出ているなら、また教えていただきたいと思います。

 ちょっと次の話に行きます。

 六ページ目にちょっとイメージ図をつくりました。厚生年金の積立て度合いの見通しであります。

 ざくっと言って、今、二五%、株式で運用されているという中で、これから先、二〇五〇年だか六〇年ごろに積立金は二十六年の価格で二百兆円になり、最終的に十五兆円にまで減っていく、こういうシミュレーションになるわけでありますけれども、二五%が年金の運用だとして、プラスマイナス九%、一六%から三四%です。最も少なくても、百九十七兆七千億円のこの時点で年金の積立金の中のポートフォリオが変わらないとすれば、三十二兆円の国内株式を保有することになります。百年後もポートフォリオが変わらないとすれば、マキシマムおよそ八・五兆円ぐらいの株式、ポートフォリオの中で株式を所持する、日本株式、国内株式を持つことになります。

 この落差が、ミニマムで見ても毎年四千億から五千億円売っていかなきゃいけない、毎年毎年四千億から五千億円。場合によっては、最もマキシマム、つまり年金の積立金が最も多くなる割合は三四%ですから、六十八兆円、ピークのときに持っていて、ミニマムのときにはやはり五兆円ぐらいは持たなきゃいけませんから、カーブは一兆円、毎年一兆円売っていかなきゃいけない、これぐらいのカーブになるんです。

 こういうシミュレーションの中、これだけの金額を売っていくと当然株価が下がっていく影響が出るのではないかと思っていますが、私のこの図に基づいた考え方、まず、この前提が合っているのかどうか、局長から答弁をいただきたい。

木下政府参考人 今委員おっしゃいました諸前提がございましたけれども、そういった前提に基づいて単純に機械的に計算しますと、二〇四〇年の積立金のピーク時から二一一〇年の最終年度にかけての国内株式の売却額は毎年四千億程度になるというふうに考えられます。(岡本(充)委員「少なくて四千億、多ければ」と呼ぶ)それは、多ければ、計算に基づき、今おっしゃいましたようなことだろうと思いますけれども。

岡本(充)委員 そうなんですよ。多ければ一兆円、少なくても四千億円、毎年株式を売るフェーズが二〇四〇年以降やってくるというこのすさまじい状況下で、本当に今の市場価格で株式が売れるのかということを私は聞きたいわけです。

 そもそも、一兆円も売り越すなんということはなかなかないんだと思いますが、日本の株式市場において、これは厚生労働省に調べてくれと言っておきましたけれども、こんな、一兆円も売り越した、若しくは四千億円でもいいです、そういうファンドなりは存在するんですかね、毎年売っているところ。

木下政府参考人 今の前提で、七十年間ぐらいにわたりということになりますけれども、毎年四千億あるいは一兆円を売却し続けるような事例は恐らくないだろうと思っております。

岡本(充)委員 つまり、これまで見たことがない、経験したことがないぐらいのペースで売っていかないと、年金法を変えて、年金はこれから株式で支給しますということになれば、それは株式でいいですよ、株式のまま渡しましょうと。そうでもないから、いや、法改正しない、前提がさっきの話と一緒です、前提が今のままであればというのも保険局長も同じ話でしたけれども、前提が今のままじゃなきゃこれは議論できないわけですから、前提が今のままでいったとすると、これだけの時価総額のものを売っていく、毎年毎年売られるということが目に見えてくれば、どれだけ市場への影響があるのかわからないと思っているんですけれども、それについては、どういう手法で影響を評価するかは別として、考えるべきではないかと私は思っているんですが、それについて、大臣、いかがですか、ここまでの議論を聞いていて。

根本国務大臣 委員の問題意識は、私も、問題意識自体はそういう問題意識もあるだろうなと思っておりますが、将来的に、国内株式を含めた積立金の保有資産を取り崩す過程で、仮に国内の株式市場に何らかの影響を及ぼしたとしても、株価等の市場価格というのはさまざまな要因で決まるんだろうと思いますので、その影響について定量的にお答えすることは難しいと思います。

 その意味では、そこはちょっと定量的に今お答えするのは難しいということと、資産運用を取り崩す局面では将来的な株価の下落リスクがあり得るという御指摘も踏まえて、市場への影響に十分留意しながら取崩しが実施されるべきものと考えております。

 いつかは取り崩すことが要は想定されておりますが、ただ、その際でも、やはり時間をかけて計画的に取崩しを行うことで市場への影響を抑制することは可能だと考えております。

岡本(充)委員 これは議事録が残りますから、二〇四〇年ごろの国会審議で、根本大臣はこんな答弁をしていましたよという話になりますよ。もう既に二十年前、二十五年前にこういう議論がなされていたのに、適切に取り崩せば株価への影響がないなんて、そんな簡単な答弁でいいんですか。真剣に、どうやって現金化していくかということを考えるべきじゃないですか。だって、二〇四〇年から売っていかなきゃいけないフェーズが来る可能性があるわけですよ。もう間もなくですよ。そこからずっと売っていくんですよ。売り始めたらとめられないんですよ、これは、だって。それを、今、そんなのんびりした答弁でいいのかということを聞いているのであって、いや、今ここで答弁できないと思いますよ。だけれども、真剣に厚生労働省内で検討するべきだと私は指摘をしているわけです。

 もう一度、大臣、私が、真剣にどういうふうに現金化していくか、もう研究を早急に始めるべきだ、こう言っているわけですから、そんなおっ取り刀じゃなくて、ちゃんと答えてください。

根本国務大臣 運用資産を取り崩す局面では将来的な株価の下落リスクがあり得る、そういう御指摘も踏まえて、市場への影響に十分留意しながら取崩しが実施されるべきものと考えております。

 やはり積立金というのは、でも、将来の年金給付の原資となるので、いつかは取り崩すことが想定されておりますが、しかし、その際でも、やはりそこは時間をかけて計画的に取崩しを行う、そして市場への影響を抑制する。私はそのときそのときの状況だとは思いますが、そこは、その時点で時間をかけて計画的に取崩しを行うことで市場への影響を抑制する。ここは、その時点その時点で私はしっかり対応していくことだと思います。

岡本(充)委員 それは先送りをしているだけですよ。やはり研究しなければ。これだけのお金ですよ。

 だって、先ほどの局長の答弁じゃないですけれども、そんなに売っている投資家はいないんですから。売り続けるんですよ。下手したら一兆円売り越すんですよ、毎年毎年。一兆円現金化しなければ年金が払えない状況にあるわけですよ、株式を。一兆円売ったらどんな影響が出るかというのはもう明らかですよ。個人の資産じゃないんですよ。これだけのお金を、毎年売るなんということがわかった段階で、それは株価への影響はすごく出ますよ。

 だから、どうやってやるべきかを研究したらどうですか、ここで答えてくださいなんて言っていないんです、研究されたらどうですかということを言っているんだから、それは一回研究してみる必要があるんじゃないんですか。どうですか。その研究すらせずに二〇四〇年に突っ込むんですか。

根本国務大臣 これまでも、今まで国として、国の持っている株式を売ってきた経緯はありますよね、民営化に伴って。そのときも、そこは十分に市場への影響を配慮しながら、そして計画的に売ってきたというふうに私は理解をしております。

 ですから、これからも、やはりそこは市場への影響に十分留意する、そして時間をかけて計画的に取り崩す、市場への影響を抑制する、こういう視点で、この運用資産を取り崩すということについては今のような視点で、私は、やはりその時点その時点でいろいろな状況がありますから、そこは適切に対応していくべきものと考えています。

岡本(充)委員 これまでのは、必ずこのときに売らなきゃいけないという、そんな話じゃなかったんですよ。市況を見て、いいときに売ればよかったんです。毎年一兆円現金化しなきゃ、だって、年金を払えないという状況になるんですよ、その状況とは全然違うでしょう。JT株を売るとかJR株を売るというときは、タイミングを見て売ればよかった、いつでもいいとは言いませんが。必ずこの年内に売らなきゃいけない、支払えないという状況にはならなかったわけですから、それは全然例示が違いますよ、毎年売らなきゃいけない状況になるわけですから。やはりそれは検証しなきゃいけないんじゃないかと思いますよ。

 ちょっと時間がないから、もう一つどうしても聞かなきゃいけない。

 児童虐待の話ですけれども、過去、私が国会で指摘をして、議事録をそこに載せていますかね、これが、平成三十年に私が国会で指摘をして、調査をするということになったと私は理解しているんですが、所在不明の児童の問題、平成二十八年に指摘したのかな、これについて調査をするということになったんですが、実際には、本来、当時の塩崎大臣が答弁していた調査の対象と実際に調べた対象にはそごがあって、結果として十分な調査ができていなかった、これは認められますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年五月十八日に議員から、厚生労働委員会におきまして、三歳以降就学前までは健診がなく、この期間の虐待が多い、あるいは、保育園、幼稚園に通っていない未就園の子供はどういう状況にあるか把握するべきといった御指摘をいただきました。

 その後、乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の緊急把握調査につきまして、昨年七月に決定した緊急総合対策を受けて、安全確認のための緊急調査を実施したところでございます。

 それで、この今回の調査とこれまでの居住実態調査を比較いたしますと、平成二十八年度及び二十九年度の「居住実態が把握できない児童」に関する調査におきましては、乳幼児健診等の乳幼児を対象とする保健福祉サービスを受けておらず、電話、文書、家庭訪問等による勧奨を実施したにもかかわらず連絡、接触ができない家庭に属する児童であって、市町村が所在等の確認が必要と判断した児童を調査の対象児童としていました。

 しかしながら、この調査依頼通知におきまして、対象児童の規定におきましては連絡、接触ができない家庭に属する児童としておりましたことから、保護者と連絡がとれている場合には原則として把握対象から除外していたものと考えております。

 今回の調査では、関係機関による安全確認ができない児童ということでありまして、保護者との連絡がとれているいないにかかわらず安全確認の対象としているものでございます。

 議員御指摘のとおり、今回の新しい調査と平成二十八年度、二十九年度の調査を比較しますと、今回の新しい調査の方がより広い調査対象といたしておりまして、平成二十八年五月に大臣から御答弁いたしました、国は統計を含めしっかりと収集をする、調査をしっかりとするといった趣旨に照らしまして、結果としては不十分ではなかったかというふうに考えております。

岡本(充)委員 塩崎元大臣がこの部屋にいらっしゃいますけれども、そのときそうやって答弁したけれども、結局、役所がやっていた調査は違っていたという話なんですよ。こういう話になることをきちっとやはり、どういう調査をやるかというのを詰めなきゃいけない。私も思いましたよ、最初聞いたときに、なるほど、指摘を受けて調査したんだなと。ところが、聞いてみれば、親と電話で連絡がとれれば、子供が安全かどうかは確認していなかった。親が、元気ですよと、親と連絡さえとれれば、健診に来ない、幼稚園にも保育園にも通っていない子供がいることがわかっていて、所在も確認できないけれども、親に電話して、ああ、いますよと言われたらそれで調査が終わっていたというのは、私は、これは極めて安全確認として不十分だと思います。

 そこで、大臣、きょうは、もうこれは答弁を求めると答弁できないことがわかっているから言いませんけれども、これはきちっと決めるべきです。安全確認とは何なんですか。厚生労働省における子供の、児童の安全確認というのはどういう定義なのか。それぞれの自治体で定義が違うんじゃないですか。何をもって安全確認というのか、これをきちっと決めなければ、今、緊急調査をやっていますよ、それだって、自治体ごとに運用が違っていたらいけないんじゃないか。安全確認という定義を、はっきりこういうことだと言えるようにされたらどうですか。

根本国務大臣 今局長から話をしました。要は、今回、関係機関による安全確認ができない児童、これについては、目視、あるいは子供を見たことがない、そういうことを関係機関による安全確認ができない児童ということで、今、厚労省の方で、そういう整理で自治体と話をしていると考えています。

岡本(充)委員 安全確認と今大臣が言われたその定義は何なのか。何をもって安全が確認された、こういうことで安全確認だという運用が違っているでしょう。違っているんですよ。だから、それをちゃんときちっと、こういうことで安全確認だということを決めてくださいと。それじゃ、安全確認という定義は今言えるんですか。

根本国務大臣 基本的には目視だと考えております。目視でちゃんと確認するということで考えています。

岡本(充)委員 誰が、どういう方法で、何をもって目視というのか、ちゃんとそこを決めてくださいと言っているわけですよ。答えられないでしょう。

冨岡委員長 岡本議員に申しますが、もう時間をかなりオーバーしていますので、これで切ってください。

根本国務大臣 じゃ、一点だけ。

 把握対象児童の安全確認の実施ということで、「把握対象児童とされた児童について、速やかに目視等以下のア又はイいずれかの方法により安全確認を行う。」と、ちょっとそこは省略しますが、こういう整理をして自治体には伝えております。

岡本(充)委員 終わりますけれども、定まっていませんから、ぜひやってください。

冨岡委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 国民民主党の白石洋一です。

 年金について、税金や年金財政、これを年金生活できゅうきゅうとしている方々に振り向けるべきだ、そういう観点から質問させていただきます。

 もうお手元に質問事項はあるんですけれども、まず、今回のマクロ経済スライド発動について、これに関連してなんですけれども、今回、物価スライド、〇・一%アップということで、このことによって追加的な年金給付というのは幾らになりましたでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 来年度の年金額の改定は〇・一%ということになりますけれども、平成三十年度末におけます受給権者数及び受給者の年金総額がまだ確定しておりませんので、平成二十九年度末における数値を用いますと、公的年金の重複のない実受給権者数は四千七十七万人でございます。これをもとに計算いたしますと、年金総額が五十五・四兆円となります。この二十九年度末におけます五十五・四兆円に機械的に〇・一%の改定を掛けますと、五百五十四億円ということになると思っております。

白石委員 そのうち、老齢福祉的給付受給対象者については幾らになりますでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 平成三十一年度の予算案におけます老齢年金の生活者支援給付金の対象者は、約六百十万人と見込んでございます。仮に、この約六百十万人の方が老齢基礎年金の平均受給額を受給していると仮定した場合に、老齢基礎年金の〇・一%の改定による増額分は、機械的な試算としては、年額ベースで約四十億になると考えております。

白石委員 ありがとうございます。

 これの五倍が、マクロ経済スライドによって本来もらえるべきものがもらえなかったということなんですね。

 やはり、特に福祉的給付、つまり基礎年金、月額満額六万五千円ですけれども、それよりも下回る年金受給者の方々については、マクロ経済スライドを停止してあげるべきだと私は思うんです。本当になけなしの年金生活者に対して、マクロ経済スライドの意義はわかるんですよ、わかるにせよ、それを福祉的給付を受けるような方々に対しても適用すべきではないというふうに思うんですけれども、ここは、大臣、もし感想がありましたらお願いします。

木下政府参考人 お答えいたします。

 委員は今、マクロ経済スライドの趣旨はよく御理解いただいているというふうに思っておりますけれども、マクロ経済スライドは、現役、現在受給世代とまさに将来受給される世代ができるだけ多く確保できるように、スライド調整率というのを用いまして、本来の物価スライドあるいは賃金スライドを一部調整して現在の受給世代に少し給付額を抑えるという制度で、それが将来世代にひいては回ってくるものだと思っておりますので、今、御指摘のように、年金額が少ない方々、これは将来においても同じような方々がおられますので、そういった方々の年金額の確保にも少しでも資するものだと考えておりまして、このマクロ経済スライドについては十分御理解いただきたいなと思っております。

白石委員 反論ですけれども、福祉的給付を受けるような方々のマクロ経済スライドの金額、四十億円の五倍ですから二百億円ですね、ここはちょっとポイントの金額だと思います。後でまた在職老齢年金のことについても触れるんですけれども、それで発生する年金財政のマイナスの金額と比べていきたいと思います。

 次の質問なんですけれども、今、骨太の方針を受けて、政府で年金改革を議論されているんじゃないかと思うんですけれども、その内容について、概略を簡潔にお願いします。

高階副大臣 ただいま触れていただきました経済財政運営と改革の基本方針二〇一八、いわゆる骨太の方針等の政府決定を受けまして、目下、厚生労働省内におきましても、社会保障審議会年金部会において検討を進めさせていただいているところであります。

 人生百年時代を見据えまして、勤労者が広く被用者保険でカバーされる勤労者皆保険制度を目指していくといったような方向でありまして、働く意欲のある高齢者の皆様がその能力を十分発揮できるような活躍の場を整備する、それと同時に、六十代後半になってなお引き続き働き続けるという方々の就労の延伸ということもございますので、こうしたことを見据えて、高齢期の就労そして年金の組合せを、一人一人の事情に応じて開始時期の検討の選択肢を拡大するなど、必要なことを講じていくということになろうかと存じます。

 また、女性そして御高齢の方々の就労数が拡大しているという状況にございます。フルタイム勤務のみならず、例えばテレワークという働き方もございます。働き方の多様化、そして柔軟な働き方を年金制度にしっかり結びつけていけるような改革の方向性を目指していく必要があると考えてございます。

 いずれにいたしましても、公的年金制度の持続可能性を確保するためのしっかりとした検証とあわせて、将来にわたって堅持できる年金制度の見直しに向けて検討を進めさせていただいてまいります。

白石委員 そうすると、二つは読み取れたんですけれども。一つ目は、被用者保険の適用拡大ですね。短時間労働者に対して被用者年金に入ってもらうという方向性と、あとは、年金受給開始年齢の柔軟化ですね。この二つ。

 あと、在職老齢年金制度の見直しというのもあるんじゃないですか。この三番目について、イエスかノーか、簡潔にお願いします。

高階副大臣 御指摘ありがとうございます。

 ただいま御指摘いただきました在職老齢年金制度に関しましては、一定以上の賃金がある方について年金を減額する仕組みでございまして、働く意欲をそぐことのないような制度であるべきという部分と、一定以上の賃金を有する高齢者については制度の支え手として給付を制限すべきという二つの要請のバランスで行わせていただいているものでございまして、この点につきましてもしっかりと検討していく必要があると考えてございます。

白石委員 在職老齢年金の見直しもあると。これは骨太の方針にもありますので、やっていくんだと思います。

 その三つを念頭に置いた上で、ことしは年金財政検証の年であります。今の状況、経済前提とその検証作業、このあたりのところの日程について簡単に教えてください。

木下政府参考人 お答えいたします。

 まず、年金の財政検証のスケジュール感でございますけれども、これは、先般、三月十日に経済前提に関する専門委員会が経済前提の取りまとめをいたしまして、この後、三月十二日に年金部会を開催いたします。ごめんなさい、前回はそういう感じだったんですけれども、今回は三月七日に専門委員会を開催しまして、三月十三日に年金部会ということを予定しております。その後、必要な検証作業を行いまして、作業が終わり次第、年金部会において結果を公表する、こんなような段取りになっております。

 さらに、年金部会につきましては、先ほど副大臣が答弁申し上げましたように、さまざまな繰下げの問題ですとか在職老齢年金の問題ですとか、あるいは被用者保険の適用拡大の問題、そういった点につきまして現在年金部会の中で議論しておりますので、これも秋ぐらいに全体的なまとめを考えて、次の制度改正に向けて詰めていく、こんな段取りになっております。

白石委員 秋ぐらいに検証結果の報告をするということですか。それはちょっと六月じゃないかなと思ったんですけれども。

木下政府参考人 前回、二十六年の財政検証においては、六月の三日に結果を公表いたしました。

 これは、先ほど答弁申し上げましたように、今、財政検証の作業を始めておりますので、その結果がまとまり次第公表という段取りになっております。具体的にいつかというところは作業次第、特にオプション試算等の作業を、前回、二十六年のときに新しくオプション試算というのをやりましたけれども、そういった試算の状況などでも一定の時間を要しますので、そういったことを踏まえて、最終的にまとまり次第公表する、こんな段取りでございます。

白石委員 どうしてこういうふうに聞くかというと、経済前提も大事です。経済前提は、そんなバラ色な経済前提を置いたら、また後でもくろみが外れる可能性が高くなりますから、やはり厳し目にやらないといけない。もうリーマン・ショックから回復して、これからが正念場、回復基調というのは一通り、一段落置いているわけですから、経済前提はそんなにバラ色にしない方がいいと思うんですね。

 加えて、オプション試算なんですけれども、オプション試算で、ここで試算したものが次の年金改革につながっていくということで、どんなものをオプション試算するかということがすごく大事だと思うんです。前回の場合は三月から六月の三カ月間でしかなかったんですけれども、今回は、でき次第公表する、秋までということでちょっと長目に置いているように受けとめたんですけれども。そうであるならば、先ほどの骨太で、三つの改革、これはもう公表しているわけです。それ以外に、オプション試算にかけて何か追加的な改革をしようというものはありますでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 財政検証につきまして、私が秋までと答えたのはそういう趣旨ではなくて、ちょっと誤解を与えたかもしれませんけれども、年金全体の、次の年金制度の改正、改革についての議論というのは、恐らく秋に具体的に検討を詰めていく、そういう作業の段取りになるだろうというふうに思っておりますけれども、財政検証は、前回は六月三日に公表いたしましたけれども、今回も三月に、先般、経済前提を踏まえて財政検証を開始いたしましたので、それが終わり次第公表するということでございます。

 オプション試算に関しては、前回は大きく三つ、オプション1、2、3ということで、一つは、マクロ経済スライドをデフレ下においても完全に実施するといった場合。あるいは、被用者保険の適用拡大を二百万人あるいは千二百万人に拡大した場合、それが二つ目でございます。三つ目に、基礎年金の拠出金の対象期間、二十歳から六十までの期間を四十五年に延長した場合はどうなのか、あるいは、同時に在職老齢年金を廃止した場合はどうなのか、あるいは、繰下げをした場合はどうなのか。この三つのケースについてオプション試算を実施いたしました。

 今回は、今、年金部会で具体的にどういうオプション試算をするかということを検討中でありますけれども、前回の二十六年の対象、オプション試算の実施状況も見ながら、実際上どういうふうにするのかというのはそこで更に詰めていくということで、まだ具体的にどれを決定するというところまでは至っていないということでございます。

白石委員 恐らくその三つが該当するであろう、それ以外は決まっていないということなんですけれども、ぜひ試算してほしいことをこれから申し上げます。そのうち一つは、先ほど申し上げました、低年金者に対してマクロ経済スライドを適用しなければどうなるかということです。

 それから次に、在職老齢年金、これは一応、前回も廃止ということでオプション試算をした。今回も、一応廃止ないし縮小という受けとめで私は見ているんですけれども、在職老齢年金を廃止したということ、このことによって追加的な年金給付総額というのは幾らになりますでしょうか。これは配付資料の二ページ目です。

木下政府参考人 在職老齢年金は、六十から六十五歳未満までの低在老と、それから六十五歳から七十までの高在老がございますけれども、低在老に関しては、廃止をした場合は約七千億でございます。高在老については四千億、合わせて一兆一千億が厚生年金の財政にとっての圧迫材料になるということでございます。

白石委員 一兆一千億というのは大きな金額ですね。先ほどおっしゃった給付金額、二十九年度五十五・四兆円、そのうち、あらあらの数字で言っているんですけれども、一兆強の年金財政上マイナスということ、二%のマイナスということになったら、これが本当に実施されたら、マクロ経済スライドのかかる期間というのは本当に長くなっていく。今は、一階部分が三十年、二階部分が十年程度ですけれども、それが相当長くなっていくと思うんですね。

 その一兆一千との比較ですけれども、先ほど申し上げた、老齢者に対する福祉的給付受給対象者に対してマクロ経済スライドを停止する、それに比べたら、二百億円、たった二百億円ですよ。こういった方々を救うということにもっと注力すべきだと私は思うんですけれども、ここは、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 在職老齢年金制度は、もう既にお話がありましたが、やはり多様な就労あるいは社会参加、高齢者の皆さんも、やる気と元気な方は、そういう意欲がある方には働いていただけるような仕組みにしようということで、働いても不利にならないようにする、そして、一定の賃金を有する高齢者については制度の支え手として給付を制限すべきという二つの要請のバランスの中で行われているものであって、その見直しに当たっては、高齢者の就労に中立的な年金制度を整備するという観点と、年金財政に与える影響も考慮する必要があると思います。

 そして、今既に、どの程度の影響があるかということを答弁いたしました。やはりここは、繰り返しになりますが、高齢期における多様な働き方や、高齢者の就労に中立的な公的年金制度を整備するという観点から、年金制度に与える影響も考慮しながら年金制度改革の中で検討していきたいと考えています。

白石委員 在職老齢年金は、今もう制度としてあるわけですよね。あることによって就労意欲がそがれていますか。

 では、これがなくなって、廃止されたことによって、どれだけの就労者がふえるんでしょうか。一兆一千億を年金財政に追加的に負担させる、それだけの価値はあるんでしょうか。それを上回る、例えば、やる気ががんがん出て、そして日本経済を発展させるとか、そのことによって給料がふえて、その分保険料がふえて、年金財政上、一兆一千億を超える効果が出るとか、そんなことはあるんでしょうか。

木下政府参考人 先ほど副大臣からも答弁がありましたように、在職老齢年金については、あり方について今議論をしておりますので、今おっしゃいましたように、財政的な影響も、廃止の場合、一兆一千億ございますので、そういうことも含めて、どうあるべきかということは今考えております。

 それで、仮に廃止をしたという場合においては、先ほどの六十から六十四歳までの低在老が、停止されている方が八十八万人でございます。六十五歳以上の高在老が三十六万人ということでございまして、これがあるがために就労を調整されているかどうかというのは、これはいろいろ研究はありますけれども、低在老に関しては一定程度の就労抑制効果があるのではないかという研究レポートはございます。これは、数字から見ても、ちょうど二十八万円という、二分の一をカットするところで若干就労が落ち込んでいるといいますか、部分が見られます。

 一方で、高在老についてはそういう変化が見られないので、就労抑制的ではないのではないかという研究もございます。

白石委員 一定程度とか若干の効果ぐらいで、一兆一千億を年金財政上負担させるべきではないと思います。

 次の質問に行きます。

 ちょっと飛ばしながらにしますけれども、五番目の、福祉的給付の具体的な内容で、福祉的給付が今度、消費税のアップと同時に十月から予定されていますけれども、その方々に対してどのような通知方法で給付されようと計画されていますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 年金生活者給付金でございますけれども、ことしの十月の施行ということでございますので、これに向けまして、支給対象と考えられる方に、年金の額と前年の所得、市町村から集めた所得データを得まして対象者を調べまして、九月に、給付の見込み額の通知とあわせまして簡単な形の請求書をお送りいたします。お名前を書いていただいて返信いただくことで申請いただくということを考えてございます。

白石委員 つまり、対象者が申請しないとこれはくれないような方式を考えていらっしゃるということなんですけれども、それはプッシュ方式で、二カ月に一度、年金を振り込んでいるわけですから、対象者には金額の通知だけして、別にそれ以上の手間をかけずして振り込む方式に、申請方式じゃなくてプッシュ方式といいますかね、これは受給者にとっては受益のみなんですから、こちらがお支払いするというふうにすべきだと思いますけれども、いかがですか。

高橋政府参考人 この年金生活者支援給付金でございますけれども、受給資格及び給付金の額について認定の請求をしなければならないと、法律上、認定の請求ということが書いてございます。

 これは、年金とは別の福祉的な給付措置ということで立法化されてございまして、そういうことでございますので、申請の意思が本人におありかどうか、受給の意思が本人にあるかの確認、これが必要ではないかと考えてございまして、そのかわり、できるだけ簡易な形で申請ができるようにしてまいりたいと考えてございます。

白石委員 事務費もかかるし、理解できないということでそのままに放っている方はたくさんいらっしゃる、出てくると思いますよ。これはぜひ見直してほしいと思います。

 それから、次の質問なんですけれども、福祉的給付は、今の制度設計としては保険料納付済み期間に基づく案分計算ですけれども、これを一律月額五千円お支払いするということになったら幾らの追加的な国費が必要になりますでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 平成三十一年度予算案におきます老齢年金生活者支援給付金の対象者は、約六百十万人と見込んでおります。

 仮に、三十一年度予算案をベースにいたしまして、この約六百十万人の方に対して、保険料納付済み期間に基づく給付金を保険料納付済み期間にかかわりなく一律に、今御指摘の五千円、年六万円を支給するとした場合には、給付金は恒久的な制度でありますので、機械的な試算としては、毎年度約六百億円の費用が必要となります。

白石委員 ぜひ、六百億円、消費税で逆進性で大変な中お支払いされている、そういう低年金の方々の生活のことを考えたら、案分計算で低年金の人ほど少ない金額というよりかはもう満額にすべきだと思うんですけれども、ちょっと時間も迫っているので、次に行きます。

 さらに、本当に困っているのは、七番目の質問なんですけれども、受給資格期間が足らなくて、十年未満だから掛け捨てになる。公的年金も、それは保険ですから掛け捨てというのはあります。早死にしたらそれは掛け捨てになる、それは仕方ない。しかし、受給資格期間が足らなくて掛け捨てになるという方々は悲惨です。そもそも払えなかったような方々で、更に、せっかく払った年金保険料が掛け捨てになる。この方々にもし年金をお支払いしたら、給付総額は幾らになるでしょうか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 受給資格期間は二十九年の八月から十年ということに短縮いたしましたけれども、今、十年をゼロにということだろうと思うんですけれども、まず、公的年金制度は、老後の所得保障としまして、高齢期の生活の安定が損なわれることがないように、防止することを目的としております。

 このため、年金額の基礎ともなる受給資格期間について、特に老後生活の柱としての役割を果たすためにも、一定の拠出期間を求めるということを踏まえつつ、二十五年を十年としたところでありますので、この上で更に受給資格期間をなくすということにつきましては、まず、滞納期間が長期である者にまで極めて少額の年金を給付することの妥当性、あるいは、保険料を納付する意欲を低下させるのではないかといった課題があるために、受給資格期間は必要だと考えております。

 そういう意味で、先生が仮にということで、今、無年金者と言われる方は約二十六万人というふうに推計しておりますけれども、その方々にも五千円を支給するということにつきましては、そういった受給資格期間の前回の見直しの考え方を踏まえると、なかなか一律にその試算をするということにはなじまないのかなと私は思っております。

白石委員 時間ですから最後になりますけれども、今、無年金の方々に追加的に年金をお支払いしても、そう大した金額にならない。これは比較の問題ですけれども、先ほど申し上げた在職老齢年金の廃止による一兆一千億円よりは随分下回る金額で、彼らを年金受給者にすることができる。加えて、その方々に一律月額五千円の福祉的給付をお支払いしても、先ほど局長がおっしゃった二十六万人掛ける五千円掛ける十二カ月は百五十六億円です。その程度の金額ですよ。

 その程度の金額のところをちゃんと救うべき、これが公的年金の役割で、年金の中でできるだけ生活できるようにする、生活保護に頼らなくても済む、そういう制度に今度のオプション試算等でも試算していただきたくお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次回は、明十三日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十六分散会


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