衆議院

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第9号 平成31年4月16日(火曜日)

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平成三十一年四月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    加藤 鮎子君

      金子 俊平君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小林 鷹之君    佐藤 明男君

      斎藤 洋明君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    新谷 正義君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      福山  守君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    山田 美樹君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      吉田 統彦君    稲富 修二君

      白石 洋一君    牧  義夫君

      山井 和則君    桝屋 敬悟君

      鰐淵 洋子君    高橋千鶴子君

      丸山 穂高君    中島 克仁君

      柿沢 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹)          布山 祐子君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員)            内藤  忍君

   参考人

   (弁護士)

   (国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長) 伊藤 和子君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      山川 隆一君

   参考人

   (日本婦人団体連合会副会長)

   (全国労働組合総連合副議長)           長尾 ゆり君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     加藤 鮎子君

  後藤田正純君     福山  守君

  谷川 とむ君     宮路 拓馬君

  丹羽 秀樹君     斎藤 洋明君

  岡本 充功君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 鮎子君     大隈 和英君

  斎藤 洋明君     金子 俊平君

  福山  守君     後藤田正純君

  宮路 拓馬君     中曽根康隆君

  牧  義夫君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     丹羽 秀樹君

  中曽根康隆君     谷川 とむ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案(西村智奈美君外五名提出、衆法第二号)

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(岡本充功君外五名提出、衆法第三号)

 労働安全衛生法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外五名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案、西村智奈美君外五名提出、業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案、岡本充功君外五名提出、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外五名提出、労働安全衛生法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、各案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹布山祐子君、独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員内藤忍君、弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長伊藤和子君、東京大学大学院法学政治学研究科教授山川隆一君、日本婦人団体連合会副会長・全国労働組合総連合副議長長尾ゆり君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず布山参考人にお願いいたします。

布山参考人 経団連労働法制本部統括主幹の布山と申します。

 私は、政府提案の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成する立場から意見を述べたいと思います。

 本日、資料としてお配りをしております二〇一九年版の経営労働政策特別委員会報告にも記述をしておりますが、経団連は、デジタル革新によって、国連のSDGsの達成に貢献しながら、新たな価値を創造していく社会、ソサエティー五・〇フォーSDGsを目指してさまざまな取組を行っております。

 まず、企業が変化することで、産業の新陳代謝と構造変革を促進しなければなりません。その際、企業にとって最も重要な課題は、職場環境の整備であると考えております。

 年齢や性別、国籍などさまざまな属性の人材が、知識や能力、経験を生かし、働きがいを感じながら、協働することができる職場でなければ、イノベーションは創造できないと思っております。

 法案に盛り込まれております、女性活躍に関する一般事業主行動計画策定の対象の百一人以上三百人以下規模の企業への拡大、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務等の新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化は、経団連が目指すソサエティー五・〇の実現に向けた課題解決のために重要な見直しであると考えております。

 以下、各法案の内容について具体的に述べたいと思います。

 まず、女性活躍推進法についてでございます。

 女性活躍推進法が二〇一五年に施行され、各企業は女性活躍推進に向けた取組を加速させております。その結果が、女性の就業者数の増加や、女性の役員比率、階層別役職者に占める女性の割合の上昇として形にあらわれていると思っております。

 一般事業主行動計画策定の義務の範囲が百一人以上三百人以下の企業に拡大することにより、日本全体における女性の活躍推進が一層進むことを期待しております。

 三百一人以上の企業は、職業生活に関する機会の提供に関する実績、それと、職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績、女性の活躍にとって重要なこの各区分から一項目以上、情報公表することになります。

 数字は、それだけがひとり歩きしてしまう、そういう危険を伴います。特定の項目の公表を義務づけるというのではなく、現行の情報公表項目をカテゴリー分けし、企業に公表する項目の選択の余地を残していただいている点を評価しております。

 また、柔軟な働き方や、仕事と家庭の両立に資する法定以上のさまざまな制度を設けている企業は多くあります。既定の定量的な項目だけではなく、そうした制度の内容の公表も、より女性求職者の職業選択に資すると考えております。これは省令事項になるかと思いますが、労政審の建議で書かれている「「法定を上回る企業内制度」の概要」、この項目追加を希望しております。

 次に、えるぼし認定制度については、七割弱の企業が一番基準の高い三段階目の認定を取得しております。認定制度について当時の審議会で議論していた際には想定していなかった、大変喜ばしい状況となっております。さらに、優良な企業を認定する特例の認定制度が創設されれば、各企業における女性活躍の推進が加速されるのではないかと期待しているところでございます。

 次に、ハラスメント防止対策についてでございます。

 職場のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどのハラスメントは、相手の尊厳や人格を傷つけるなどの人権にかかわる許されない行為だと思っております。

 働く人々が仕事にやりがいを見出し、持てる能力を発揮していく上で、働きやすい職場環境が不可欠です。また、企業が持続的に成長するためには人材の確保、育成が必須であり、その根幹は人間関係が良好な職場だと思っております。すなわち、従業員と企業双方にとって、職場におけるパワーハラスメント防止に真剣に取り組む必要があると考えております。

 経団連では、職場のハラスメント防止の重要性に鑑み、昨年、ハラスメント防止対策キャンペーンを実施いたしました。具体的には、中西会長から会員企業に対し、「職場のハラスメント防止に向けたさらなる取り組み推進のお願い」を呼びかけるとともに、人事担当者を対象にした職場のハラスメント防止対策セミナーを実施するなど、周知啓発を積極的に展開いたしました。

 実際にパワーハラスメント防止に積極的に取り組んでいる企業の取組についてヒアリングをしたところ、現行の均等法指針に示されているいわゆる職場におけるセクシュアルハラスメント防止措置同様に、一つは事業主の方針の明確化及び労働者への周知啓発、二つ目として相談体制の整備、三つ目として事後対応等を実施しているところでございます。

 ところで、セクシュアルハラスメントは、業務と無関係の言動であり、業務上の必要性もないため、白黒の判断がしやすいという面があります。他方、パワーハラスメントは、業務に関する指示、指導や注意などと密接に関連するため、その言動が業務の適正な範囲かどうかを判断する必要があります。したがって、本人の訴えのみで判断をしない仕組みをつくることが重要であると考えております。

 また、パワーハラスメント防止に取り組んでいる企業の多くは、二〇一二年に厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告で示された、職場のパワーハラスメントの概念と六つの行為類型を参考にしております。そうした企業に混乱を生じさせないためにも、そのワーキング・グループで示された概念等が、労使関係者も参加した職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会を経て、労政審の議論においても踏襲され、それが法案に反映されて、パワーハラスメントについて、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定義されたことを評価しております。

 企業の方々から、パワーハラスメントという言葉の認知度が高まる一方で、相談者にとって不快な言動や納得できないことを全てパワーハラスメントとして捉えるなど、本人の受けとめのみを判断基準として訴える事例が増加していると伺っております。そうした行動は、上司の適正な指示や指導までをも逡巡させ、人材育成にも多大な影響を及ぼしかねません。企業がパワーハラスメント防止に取り組むに当たり、多くの具体例を示していただくことも必要ではないかと思っております。

 事業主が講ずべき措置は、セクシュアルハラスメントや妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメント防止措置と同様の枠組みであり、既にある枠組みを活用できることにより、新たな体制を整備することに比べれば、企業の負担はそれほど大きくないと思っております。セクシュアルハラスメントやいわゆるマタニティーハラスメント、パワーハラスメント防止に向けて一体的に取り組むことで、これまで以上の効果を発揮できるよう、企業として取り組んでまいりたいと思います。

 セクシュアルハラスメント防止対策について、他社の措置の実施に関する協力に応ずる努力義務は、セクシュアルハラスメント対策強化に資する見直しだと考えております。

 パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントによりつらい思いをする従業員が出ないように、企業として、周知啓発を始めとする教育をしっかり行ってまいりたいと思っております。今回の法案にあるとおり、社会全体の関心と理解を深めるための広報活動も大変重要です。国の積極的な周知啓発活動をお願いしたいと考えております。

 女性活躍推進法等の改正法案は、労働政策審議会で公労使が真摯に議論して取りまとめたものを踏まえていただいております。喫緊の課題であるパワーハラスメント防止策、セクシュアルハラスメント防止策の強化を盛り込んだ法案をぜひ成立させていただきたく存じます。

 以上でございます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、内藤参考人にお願いいたします。

内藤参考人 労働政策研究・研修機構の副主任研究員の内藤忍と申します。

 今回は、貴重な場で意見陳述の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 私は、労働法の領域で、仕事上のハラスメントについての調査研究を進めてまいりました。

 ハラスメント関係では、厚労省において、二〇一一年度の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ委員、二〇一五年度以降のパワーハラスメント対策企画委員会の座長、二〇一六年度の職場のパワーハラスメントに関する実態調査検討委員会の委員などを務めさせていただいております。

 きょうは、時間の制約上、私からは主にセクシュアルハラスメントの法規制のあり方について意見を述べさせていただきたいと思います。

 セクシュアルハラスメントについては、均等法の十一条で事業主に一定の措置が義務づけられております。

 具体的な措置の内容は、御存じのとおり、指針に十項目定められております。

 柱は三つありまして、一つ目は、事業主の方針等の明確化及びその周知啓発、二つ目は、相談窓口など、相談、苦情に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、三つ目が、事後の迅速かつ適切な対応です。

 こうした措置が義務づけられたのは二〇〇六年の均等法改正ですが、今なお多くの人がセクシュアルハラスメントを受けているという実態があります。

 労働政策研究・研修機構が二十五歳から四十四歳の女性約一万人から回答を得た二〇一五年のハラスメントの調査においては、セクシュアルハラスメントの経験率は二八・七%にも上りました。また、都道府県労働局における相談件数は年間約七千件に上り、均等法の中で最も多い相談事案となっています。

 セクシュアルハラスメントが多いままになっていることについては、二点理由が考えられると思います。

 一点目は、措置義務を履行していない事業主が多いということです。

 どれだけの事業主が措置義務を履行しているかといいますと、二〇一七年度の厚労省の雇用均等基本調査によれば、重要と思われる相談窓口の設置をしている事業主は三九・四%、相談窓口担当者の研修はわずか八・九%の事業主しか行っていませんでした。三四・六%の事業主がセクシュアルハラスメントの防止対策に何も取り組んでいないと答えています。

 JILPTの調査でも、同じように、取り組んでいないと答えた企業は四〇・八%もありました。

 均等法十一条を遵守しない場合、均等法の二十九条に基づきまして行政は事業主に対して是正指導をすることができますが、不遵守に対する罰則はなく、唯一の制裁と言える三十条の企業名の公表制度でも、セクハラの措置義務違反で企業名が公表されたことはありません。

 つまり、十の措置は均等法によって義務とされていますが、遵守させる仕組みが足りないのではないかということです。

 また、仕組みだけでなく、運用上、行政が是正指導を行うのは当事者の相談が契機となることがほとんどでありまして、十一条の是正指導は、例えば二〇一七年度は四千四百五十八件も実施されてきておりますが、遵守していない事業主のほんの一部にしか指導できておりません。

 是正指導を行う労働局の現在の人員では、全ての企業を監視するのは難しいと思います。

 今回の法改正では、パワーハラスメントについても同様の措置義務が提案されていますが、現在、労働局における職場のいじめ、嫌がらせの相談は年間七万件を超えています。つまり、セクハラの十倍寄せられているということです。

 セクハラもパワハラも、たとえ措置義務化されたとしても、現在の労働局の人員では有効な監視や指導が難しいと考えます。

 セクシュアルハラスメントが多いままとなっている理由の二点目は、法が求めている措置がセクハラ防止や解決に有効かどうか実際のところ不明であるということです。

 なぜかといえば、例えば相談窓口の設置は措置義務の一つとされていますが、JILPTの調査によれば、セクハラを受けた人の六三・四%が我慢したと回答していまして、会社の相談窓口に相談した人はわずか三・一%でした。つまり、法は相談窓口の設置を求めていますが、ただ窓口を設置しても利用されない、実効的ではないということです。

 ハラスメント対策として事業主に措置を課すということであれば、どのような取組をどう取り組めばハラスメントを実際に防止できたり、当事者が納得できる解決が得られたりするのかをきちんと検証した上で、企業に義務化する必要があると考えます。

 その際、ハラスメントの抑止の観点から、企業内でハラスメントがあってはならない旨の方針の明確化という現在の措置義務にとどまらず、より実効性がある方法として、法が直接にハラスメントを禁止することもあわせて検討すべきだと考えます。

 なお、ハラスメントの禁止規定については海外の多くの国で導入されておりまして、また、ことしの六月のILO総会で採択される予定の、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約案にも、全ての形態の暴力及びハラスメントを法律で禁じることが盛り込まれ、加盟国として批准を意識した取組が求められること、さらに、国連の女性差別撤廃委員会は、複数回にわたり、日本政府に対して禁止規定の導入を勧告してきていることを付言しておきます。

 もう一つ指摘しなければならないのは、セクシュアルハラスメントの救済制度についてです。

 セクシュアルハラスメントを受けて裁判をできる人はほんの一握りです。

 セクシュアルハラスメントによって精神疾患を負い裁判が難しい場合が多いこと、性被害であるセクシュアルハラスメントの場合は公開手続である裁判への心理的ハードルが高いこと、そして、被害者バッシングの風潮もさることながら、セクシュアルハラスメントを直接に禁止している規定がなく、民法の不法行為を利用することで、過失相殺のための行為者側の被害者の落ち度探しの攻撃にさらされ、二次被害を受けることも多いことなどが理由と考えられます。

 とすると、頼みの綱は行政救済であると私は考えています。

 労働局に寄せられるセクシュアルハラスメントの相談は、二〇一七年度は六千八百八件でしたが、中立的な立場で解決の援助をしてもらう紛争解決の援助の申立てはわずか百一件、調停は三十四件と少なく、ほとんどの被害者が労働局には相談のみしてその後の援助を依頼していません。

 その理由の一つに、被害者の要望と本制度が想定する解決内容との乖離があると私は考えています。

 私も参加して二〇一六年度から一七年度に行った、文科省科研費による行政救済利用者のヒアリング調査によれば、多くの被害者の要望は、一つ目として、行為がセクハラであって違法な行為であると認められ、二つ目として、謝罪され、三つ目として、もう二度と起こらないようにしてほしいというものでした。しかし、制度が実際に提供する解決は、ほぼ金銭解決に限られているのが実情です。

 第一の問題は、均等法がセクハラの禁止や定義を持たないことから、判定や認定が行政には不可能であるということ。

 第二に、そもそも、均等法の行政救済が前提としている被害者と事業主の譲り合いの仕組みがセクハラの被害者には受け入れがたいものであるということです。

 第三に、結局、金銭合意という形になりますが、私たちの調査では、解決金額は中央値二十九・五万円となっておりまして、低額で本人の損害を十分に賠償する額となっていないだけでなく、現状では、解決金の支払いが課された事業主の学びの機会とならず、今後は予防措置を講じようという動機にならない可能性があると考えます。

 被害者救済の観点からも、企業の防止の取組促進の観点からも、現行の行政救済制度の課題を検証し、制度の再検討が早急に必要と考えます。

 最も必要なことは、禁止されるハラスメントが定義され、行為がセクハラであり違法な行為であるという認定を前提に、早期に行政が柔軟な救済命令を出せる仕組みを導入することであると考えます。

 その意味で、業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案において、禁止の対象となる言動の具体的内容を定めることや、セクハラに該当するかを判断することなどが盛り込まれていることについては評価し、閣法の法律案にはこの点が足りないと考えます。

 また、昨今、就活生や教育実習生、そして雇用以外の就業者もハラスメントを受けていることが報告されています。

 ILO条約案でも、契約上の地位にかかわらず就業する者、実習生、ボランティア、求職者などが適用対象者であることが示されています。

 均等法五条の募集、採用時の性別を理由とする差別の禁止では、労働者となろうとする者が対象とされていることから、均等法において労働者しか対象にし得ないわけではありません。立場がより弱く、被害を受ける就活生等を保護対象とすべきだと考えます。

 最後に、パワーハラスメントの定義について一言申し上げます。

 「優越的な関係を背景とした言動であつて、」とされていますが、優越的な関係とは、職務上の地位のみならず、特定の属性を持つ人の場合などさまざまな場合が想定されること、さらに、言動については、本人の了承なくセクシュアリティーについて第三者に公言してしまう、いわゆるアウティングも当然に含まれることを付言しておきたいと思います。

 以上です。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 御紹介いただきました、弁護士の伊藤と申します。

 ヒューマンライツ・ナウという団体で活動しておりますが、こちらの団体は東京を本拠とする国際人権団体です。その中に、女性の権利に関するプロジェクトがございまして、性暴力の問題について取り組んでおります。

 また、私自身、弁護士として、DV、セクシュアルハラスメント、アダルトビデオの出演強要などの被害の問題に長年取り組んでまいりました。その観点から、法案について意見を述べていきたいというふうに思います。

 世界では、ミー・トゥー運動というものが展開され、多くの女性が性被害を語り、女性の声に応えた法改正というものも進んでいます。

 一方、日本ではどうでしょうか。日本では、セクハラ、性暴力被害は深刻であるのに、女性たちの声が抑圧され、ポジティブな変化がなかなか生み出されていません。

 日本で初めてミー・トゥーの声を上げた女性、伊藤詩織さんという方は、過酷なバッシングの結果、海外で生活することを余儀なくされております。最近の報道でもありましたアイドルグループNGT48の山口真帆さんという方は、被害者であるのに公衆の面前で謝罪をさせられ、そして今や孤立した状況に置かれております。

 被害に遭った事実を公表しただけで、命、仕事を失う危険を感じている、バッシングにさらされる、そうした恐怖、これは、日常的にセクハラ被害に遭っている女性たちに大きな萎縮効果を与え、被害に遭っても誰にも相談できない、黙るしかないという状況をつくり出しています。私たちのところに相談に来られる方々も、非常におびえて御相談に来られています。

 女性にとって生きづらい社会というものを克服するために、国は抜本的なセクハラ対策を推進する必要があるというふうに考えております。

 一年前の財務省のセクハラ事件以降、女性たちはずっと、セクハラをなくすための抜本的な法改正に期待をしてまいりました。しかし、上程された政府提出案は、非常に歓迎すべきところもありますが、残念な部分も多いというふうに感じています。

 まず、なぜセクハラ禁止規定の条項がないのかということです。

 他の均等法の条項には、差別をしてはならないという規定があります。それと同様に、セクシュアルハラスメントをしてはならないということを明記することがなぜできないのかということを申し上げたいと思います。野党案には禁止規定を盛り込んでいただいているということですので、ぜひ与野党で合意して、禁止を明確化するというふうにしていただきたいと思います。

 お手元の資料に、国連女性差別撤廃委員会の勧告が載っております。三ページ目ですが、二〇一六年、日本に対して、職場でのセクシュアルハラスメントを防止するために、禁止規定と適切な制裁規定を盛り込んだ法整備を行うことを勧告しています。

 また、ことしの六月には、ILO総会で、暴力とハラスメントに関するILO条約が採択される見込みになっております。資料の最後の方に、条約案と和訳をつけております。この五条が、国の責務として、暴力とハラスメントを法的に禁止する、そして、執行及び監視のための仕組みを強化し確立する、被害者が救済及び支援を受けられるように確保する、制裁を設けるというふうに明記をしております。

 世界の圧倒的多数の国が支持する大切な条約ですが、この誕生に当たりまして、国際社会の趨勢に逆行してこれを批准しないという残念な選択肢をとるべきではないというふうに考えます。この条約を批准すること、そして、その批准を見越して、これに則した法整備をしていただきたいというふうに考えております。

 二〇二〇年にはオリンピック、パラリンピックというものを控え、日本が差別とハラスメントにどう向き合うか、世界が注目をしています。本法案そしてILO新条約への対応は、日本の信用にかかわる問題だというふうに考えます。セクハラそしてパワハラについても、禁止規定を導入していただきたいというふうに思っております。

 二点目に、現行法制ではこぼれ落ちてしまうセクハラの被害者がたくさんいることに向き合っていただきたいというふうに思います。

 昨日、私たちの団体も協力した院内集会で、セクシュアルハラスメントをなくしていこうというイベントが開催され、二百人の方々が集まられ、各界の登壇者から深刻な被害実態が次々と語られました。報告のあった被害事例は、メディア、流通、保険業、教育実習、演劇、映画、司法修習生、介護、訪問看護、地方議員、セクシュアルマイノリティー、フリーランス、就活中の学生に及びました。セクハラを通り越してレイプ被害もたくさんあるというふうに報告をされました。

 特に一点申し上げますと、横行する就活セクハラというものが非常に悪質です。資料にも掲載しましたが、最近、大林組、住友商事の社員が就活中の女子学生に性暴力を行い、逮捕されたということが報道されております。しかし、これは氷山の一角と思われます。

 ウエブメディアのビジネス・インサイダーが就活生約六百人にとったアンケートでは、半数がセクハラ被害に遭ったというふうに回答しております。また、資料に添付しておりますが、メディア関係労組が行った四百二十八人の女性労働者を対象とするアンケートでは、七四%の女性がセクハラ被害に遭ったと回答し、死にたくなるなどの心情を訴えていらっしゃいます。

 しかし、ほとんどの被害者が誰にも相談できず、被害届も出さないまま泣き寝入りをしていらっしゃいます。多くが、労働者というものを対象とする均等法の枠組みから十分に保護されていない、こぼれ落ちているということもございます。救済制度もございません。

 先ほどのILO新条約案では、二条において、就職希望者、実習生が労働者に含まれると明記をしております。また、四条には、クライアント、顧客、サービス事業者、利用者、患者も被害者及び加害者に含まれるというふうにしております。

 均等法も対象を広げて、広く事業にかかわる全ての関係者がセクハラから保護されることが必要です。そして、企業には、こうした外部者にも救済へのアクセスを保障することを義務づけていただきたいというふうに感じております。

 三点目に、いわゆるSOGIハラへの対応についても必要だと考えております。

 性的マイノリティーに対するハラスメントは非常に深刻であり、近年、アウティングに伴い、大学生が自死をされています。命にかかわる問題であり、法のすき間で保護されないということがあってはなりません。

 ILO条約案の七条には、女性労働者のほか、脆弱なグループが条約の対象とされ、性的マイノリティーが想定されております。国際基準に基づいて、今回の法制度で、性的マイノリティーへのハラスメントが許されないことや、事業主の義務が法的に課されるということを期待しております。

 四点目に、女性活躍推進法です。

 この法律の公表義務は大変重要だと認識しておりますが、今回、対象事業者を広げるとともに、セクハラに関する企業としての指針、セクハラに関する規則についても公表対象としていただくと非常に実効性が上がっていいのではないかというふうに感じております。

 それから、第五点目に、調停等の救済手段に関してです。

 いずれも活用は比較的少数にとどまっていますが、私が知る限り、なかなか期待に沿えない結果になっている、非常に残念な結果に終わっているという声をたくさん聞きます。ぜひ、ユーザーの方の声、被害者の方の声を取り入れて制度の見直しを進めていただきたいというふうに思っております。

 最後に、制裁についてです。

 セクハラに関する対応が不適切な事業所については、企業名公表のみならず、刑事罰などの制裁を科すべきだと感じております。行為者本人に関しては、懲戒解雇等の労働法上の制裁にとどまらず、レイプに相当するセクハラ行為は厳しく処罰されるべきだというふうに感じております。

 別件になりますが、先日、実の娘を性虐待し続けた父親が準強制性交等罪に問われ、無罪となりました。その背景には、日本の性犯罪の構成要件、例えば抗拒不能又は暴行、脅迫といった要件が余りにもハードルが高過ぎ、無理やり性行為をされたケースの多くが不処罰に終わるという現状があります。

 お手元にありますピンク色の冊子は、当団体が十カ国の性犯罪規定について調査をした結果ですが、諸外国では、同意に基づかない性行為を禁止する法制を次々と成立させています。日本は、こうした世界の趨勢におくれ、性被害が救済されていません。

 こちらのピンクの冊子の七ページに書いてありますが、隣の韓国では、業務上優位にある者が威力や偽計を用いて性交した場合、五年以上の懲役となっております。また、被害者に不利益な対応をした雇用主は、三年以下の懲役刑に科されるとなっております。日本でも同様に、刑法を抜本的に改正し、意に反する性行為を行う加害者を広く処罰するとともに、均等法の制裁も強化する必要があると考えます。

 今日も、セクハラによって苦しみ、夢を断念し、職場を去ることを余儀なくされ、未来を絶たれている女性たちがいます。若い女性たち、そして未来ある子供たちが苦しまないように、今こそ実効性のある法制度を導入いただくことを訴えて、私の話を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、山川参考人にお願いいたします。

山川参考人 東京大学で労働法を専攻しております山川と申します。

 今回、このような機会を与えていただき、光栄に存じております。

 まず、女性活躍推進法の改正について意見を申し上げます。

 女性活躍推進法は、職場における女性の活躍を推進するため、現状の把握に基づいて、各企業の実情に応じた行動計画を定めることを求めるものでありまして、いわゆるPDCAサイクルの実施という形でポジティブアクションを義務づけた、新たな手法を採用した法律でございます。

 また、情報公表の義務づけによりまして、女性の職業選択に資するようにしております。女性が活躍できる企業は人材獲得競争において有利になるという点で、いわば労働市場メカニズムを通じて女性活躍推進のインセンティブを与える、そういうシステムを法律として採用したものでございます。

 これらは、新たな労働政策の実現手法と言えるものでございまして、有益と考えます。私自身の経験でも、所属先で行動計画の策定に参加いたしまして、現場から意見を吸い上げて、押しつけというより自発的に取り組むという姿勢で男女を問わずかかわっておられたことを非常に印象深く思っております。そうした観点から、より広い企業にこうした仕組みを適用していくということは妥当なものと考えます。

 公表項目につきましては、各企業の実情、特色を考慮する必要はございますけれども、女性の活躍状況のみならず、ワーク・ライフ・バランスにかかわる情報も、女性の活躍にとって、むしろ男女双方にとって非常に重要な情報であると考えますので、こちらにつきましても労働市場での情報開示を義務づけることは適切であると考えております。

 その他、企業名公表によって実効性確保の手段をふやしたこと等を含めまして、全体として妥当な改正法案と評価できるものと考えております。

 次が、パワーハラスメント、いわゆるパワハラへの対応についてでございます。

 既に参考人の皆様方からお話がありましたように、パワハラに関する問題は、都道府県労働局の相談やあっせんの件数でも近年トップを占め続けている大変深刻かつ重要な問題となっております。パワハラによる就業環境の悪化は労働者の人格的利益を害するものでございまして、また能力の発揮も妨げる重大な問題でございますので、立法による積極的な取組が必要であると考えられます。

 この中身としましては、審議会での議論の結果、内閣提出法案におきましては措置義務方式が選択されております。

 措置義務方式は、事案が発生した場合の事後的な対応だけではなくて、予防のための体制づくりも義務づけるものでございます。ハラスメントについては、被害が一旦発生した場合にそれを完全に回復することはなかなか困難が伴うということですとか、また、措置によって体制をつくるということは全従業員に利益をもたらすものであるというメリットがあると思われます。

 その際、これまで規制がなかった問題でございますので、どの法律で規律するかということがございます。内閣提出法案は労働施策総合推進法によっておりまして、他方で、労働安全衛生法の改正法によるということも選択肢として考えられるところでございます。

 安全衛生法に規定を置く場合は、その実施の所轄機関がどこになるかということがございまして、ほかの規制事項との関係でいえば、労働基準監督署が実施を担当するということになろうかと思われます。これに対してパワーハラスメントは、セクシュアルハラスメント等と共通して、いわば人格的利益の侵害という性格を持つという点で特色があると思われます。そうした点では、ハラスメントに関しては、法の実施に当たる部局もそろえるのが妥当ではないかと考えております。

 もちろん、パワハラに関しては、紛争ないし相談件数が非常に多いということから、十分な履行確保の体制をとることが重要になると考えております。

 さらに、措置義務の対象として、取引先や顧客によるハラスメントも含めるかという問題がございます。提出されました安全衛生法の改正法案では、対象に含めているところでございます。

 この点、措置義務ということを考えますと、加害行為者が企業外の者である場合に、従来の措置義務とは措置の内容がかなり異なってくると考えられます。また、対象となる行為の点につきましても、パワハラの場合は、業務上の必要に基づく適正な指導との区別という問題が指摘されているところでございますけれども、取引先や顧客につきましては、取引先ないし顧客としての正当な要求との区別という新たな検討課題が発生するということがございます。労政審での調整の結果を尊重いたしまして、現時点では内閣提出法案が妥当ではないかと考えております。

 ただ、職場環境の悪化というハラスメントの特色につきましては、従業員等によるパワハラと同様の面がございます。そこで、例えば、従業員の相談に乗って雇用環境の悪化に対して対応するというようなことを望ましい対応として指針に盛り込んでいくということは考えられます。また、取引先、顧客等によるハラスメントに対して具体的にどういう措置が考えられるのかという点の検討を進めて、将来の見直しの際に盛り込んでいくことについても検討に値するのではないかと思っております。

 なお、現在でも、就業環境が悪化したにもかかわらず、職場の管理者が何も措置、対応をとらなかったという場合には、民法では損害賠償責任が発生し得るものと考えます。

 三番目が、セクシュアルハラスメント、いわゆるセクハラ等への対応についてでございます。

 これも、参考人の皆様方から既にお話がありましたとおり、均等法で措置義務の規定が定められておりますけれども、まだ根絶されてはおりません。

 この点はパワハラでも同じことが言えるかと思いますが、ハラスメント問題の重大性に関する認識がなお不十分ではないかと思われます。先ほど申しましたように、人格的利益の侵害である、また働く人たちの能力の発揮を妨げる、さらには企業としても生産性が阻害される。いわば、企業としては、従業員に対して十全に能力を発揮してもらいたい、そのような権利があると思いますけれども、それを加害行為者が侵害する、そのあたりで懲戒処分を行うということの根拠にもなってくると考えられます。

 そうした点で、事業主はもちろんのこと、労働者としても、加害行為者になり得るという点で意識改革ないし自覚が必要であると思われますし、国もハラスメントに即した観点からの施策を更に進めていくということが必要と考えますので、国、事業主、労働者に対する責務規定を設けるということは妥当ではないかと思われます。

 これに対して議論がございますのは、労働者に対してセクハラ行為を禁止する規定を設けるかという点でございます。これを含めた法案も提出されているところであります。

 この点は、禁止規定というのは一体どういうものなのかということにかかわってきます。責務規定を超えて禁止規定を設けるという場合、一般的な法律の仕組みとしては、違反行為に対して制裁あるいは行政指導、取締り等を行うということが通常であるかと思います。

 こうした観点からすると、労働者に対する禁止規定を設けるというのは、違反した場合に制裁を加えるですとか、そこまでいかなくても、行政指導によって対応するということになりそうでありますけれども、刑事罰に該当する場合はともかくとしまして、労働者に対してそのような権力的な対応を行うという法制は、これまでの労働法制の中ではやや異例ではないかと考えられます。

 他方、措置義務規定のもとでも、事業主に対してセクハラを禁止することを義務づけているところでございます。ということは、法律上直接禁止されているわけではございませんけれども、企業内においては、就業規則等においてセクハラ行為は禁止されるということでございます、措置義務が履行されていればですけれども。そうした観点で、企業内での禁止は措置義務によっても確保できる、またそれは、制裁といいますか懲戒処分等による裏づけも伴うものであるというふうに考えられます。

 また、保護ないし措置の対象者として、就職活動中の学生、フリーランサー、取引先の従業員も含めるかという問題もございます。この点、最近いろいろ事案が発生しているところでございますけれども。

 ハラスメント問題は、これまでの理解では、事業主の雇用する者の労働環境の悪化への対応ということを労働法上の問題として取り上げる、そういう性格のものでございます。したがいまして、雇用関係にない者、労働者に該当しない者については、従来は対象とすることが想定されていませんでした。

 この点は、特に、非労働者といいますか、労働者でない役務提供者に対してどのような政策をとっていくかということは、ハラスメントの問題に限らず、より一般的に労働政策の範疇をどう考えるかということにかかわっておりまして、私個人としては、より積極的に検討を進めるべきだというふうに考えているところでございます。

冨岡委員長 山川参考人に申し上げます。

 時間が随分過ぎていますので、結論をよろしくお願い申し上げます。

山川参考人 申しわけありません。失礼しました。

 ただ、事業主が雇用する労働者ではなくてもハラスメントによって人格的利益が侵害されるという点は共通性がありますので、求職中の学生やフリーランサー等へのハラスメントにつきましても社内規定の禁止対象にするということを、望ましい対応として指針等で定めてはいかがかと考えております。

 時間を超過しまして大変失礼しました。私の意見陳述はこれで終了させていただきます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、長尾参考人にお願いいたします。

長尾参考人 日本婦人団体連合会副会長の長尾と申します。全労連の副議長もしております。

 本日は、時間の関係で、ハラスメント対策に限って意見を述べさせていただきます。

 財務事務次官のセクハラ行為に対して声を上げた女性の勇気ある行動から一年となります。世界的なミー・トゥー運動の広がりもあって、ハラスメント問題は、人間の尊厳、人格、人権が侵される重要問題であり、その解決は喫緊の問題であるということが改めて明らかになった一年でした。女性団体も労働組合も声を上げた人をひとりにしないと運動を広げる中、パワハラ対策法制化がやっと動き始めたことに感謝申し上げたいと思います。

 しかし、内閣提出法案については極めて不十分であると考えます。五点について、意見を申し上げます。

 まず第一に、ハラスメントは人権侵害であり、全ての人に暴力とハラスメントのない仕事の世界で生きる権利がある、その最も重要な中身が抜け落ちた法案だということです。

 昨年十二月の労政審の建議では、「ハラスメントは、労働者の尊厳や人格を傷つける等の人権に関わる許されない行為であり、あってはならないものである。また、企業にとっても経営上の損失に繋がることから、防止対策を強化することが必要である。」として、労働者の人権と企業の損失との二つの点からハラスメントの問題点が示されました。

 ところが、法案には、労働者の尊厳、人格、人権という言葉はなく、一人一人の人格と人権を守ることこそがハラスメント対策であるのに、その記述はありません。

 雇用対策法を改定した労働施策総合推進法の第四条に、その第一条の目的、つまり労働生産性の向上などの目的を達成するための取組の一つとして、「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実すること。」と書き加えるという案です。これでは、就業環境を守るということを口実にして、事を荒立てずに済ませてしまおうという企業の対応を導いてしまわないかと懸念します。

 第二に、だからこそ、包括的なハラスメント禁止法を策定すべきだと考えます。

 男女雇用機会均等法にセクハラ対策、育介法にマタハラ対策として、「必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」措置義務が書かれたのと同じ文言で、今回、労働施策総合推進法にパワハラ対策として書き込もうという法案です。

 しかし、セクハラ、マタハラの現状を見れば、雇用措置義務を法律に書き込んでも解決になっていない、実効性がなかった、そのことは明らかです。禁止法整備こそ必要です。

 被害者は、自分が受けたハラスメントを違法なものだと認めてほしい、謝罪してほしい、そして二度と同様のことが起こらないようにと求めています。その被害者の要望に応える一番の手段は、ハラスメント禁止規定、制裁規定の法整備だと思います。

 日本政府は、国連女性差別撤廃委員会から、セクハラ禁止法整備を繰り返し勧告されています。また、六月のILO総会で採択が予定されるハラスメント条約、その案にもハラスメント禁止法の整備がうたわれています。お手元の資料に出したところです。EU諸国を始め多くの国に禁止法があり、ハラスメント禁止法と制裁措置を策定することこそ必要です。少なくとも企業名の公表については、すぐにでもできることではないでしょうか。

 さらに、セクハラ、マタハラ、パワハラ対策がそれぞれ別の法律に書かれ、担当部署も違います。被害者に、自分が受けたハラスメントはセクハラなのかパワハラなのか、どちらから訴えた方がよいのかなどと考えさせるというのでしょうか。包括的なハラスメント禁止法が求められます。

 第三に、法案では、労働施策総合推進法第三十条にパワハラの定義として三つの要件を上げていますが、どれも大きな問題をはらんでいます。

 まず、職場の優越的な関係を背景とするという要件ですが、同僚間のパワハラはあります。また、新人からベテランへのいじめやパワハラもあります。また、この定義では、患者や乗客、顧客など外部からの嫌がらせや言葉の暴力についてパワハラと認定できなくなります。

 全労連の介護労働実態調査では、複数回答なんですが、パワハラの相手は上司が六六%とトップですが、セクハラの相手は利用者が八四%とトップになっています。顧客からのハラスメントに苦しむタクシー労働者、そして患者からのハラスメントに悩む看護師、就職試験のセクハラ質問で心が折れてしまった大学生、さまざまな苦しみを持つ方々をどう救えるのか、実態から出発したハラスメントの定義を行うべきと考えます。

 次に、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものという要件もあります。これでは、業務上の必要があったとか正当な業務の範囲だとか、指導や教育を口実にして抜け道を用意してしまわないでしょうか。

 さらに、労働者の就業環境が害されることという要件もありますが、ハラスメントは人格の否定、人権の侵害という大問題です。もちろん就業環境の悪化を引き起こしますが、それにとどまるものではありません。

 第四に、ハラスメント問題では、被害者の方に落ち度があったのではないかと逆に責められたり、相談時に二次被害、三次被害を受けたり、バッシングされて屈辱的な思いをすることが多くあります。

 今回の法案に相談、協力を行ったことへの不利益取扱いの禁止が盛り込まれたことは歓迎しますが、それに加えて、ハラスメントを受けたことによる不利益取扱いの禁止、独立した救済機関の設置、そしてそれに必要な人員配置をあわせて求めるものです。

 第五に、ILO総会で採択が予定されている労働の世界における暴力とハラスメントを根絶するための条約、その水準に見合う法整備を行うべきと考えます。

 条約案の基本的な考え方は、ハラスメントは、あってはならない権利侵害であり、機会均等に対する脅威であり、容認できないというものです。ハラスメントは、ディーセントワークとは相入れない、心理的、身体的、性的な健康や人間の尊厳、家族と社会環境に影響を及ぼす、女性が労働市場にアクセスし、とどまり、活躍することを妨げるおそれがあるなどと定義をされています。

 また、この条約の対象となる労働者には、正規、非正規、フリーランス、インターン、実習生、雇用完了者、ボランティア、求職者や就職申込者、訓練中の人々も含まれます。そして、顧客やサービス提供者、ユーザー、患者など第三者からのハラスメントも対象としています。加盟国には、暴力とハラスメント禁止法規や制裁規定、政策、効果的な被害者保護なども求めています。このILO条約の水準が国際水準だということです。検討をお願いしたいと思います。

 最後に、ハラスメントの土壌として、長時間過密労働、人手不足、競争主義のもとで時間と目標に追い立てられ、人を思いやる余裕もない、ぎすぎすした職場の中で、そして人間が大切にされない社会の中でハラスメントが蔓延していることを指摘しなければなりません。

 私どもの労働組合の実態調査には、妊娠を報告したら産む順番はまだだと言われたという保育士、そして学校が忙しいときに子供をつくるなと言われた教員など、悲鳴のような声があふれています。また、医労連、医療労働者の組合ですが、その調査では、パワハラを受けた労働者のうち約半数が仕事をやめるかどうか悩んでいると答えています。

 今このときもハラスメントに苦しむ方々にとって希望になる法案へと審議を進めていただきますように求めて、発言を終わります。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。繁本護君。

繁本委員 自由民主党の繁本護でございます。

 参考人の先生方におかれましては、本当にお忙しい中この委員会に御出席いただき、また貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 時間が大変限られておりますので、全ての参考人の先生方に御質問を投げかけることが必ずしもできないかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 今回の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律でありますが、先ほど来先生方からお話がありましたとおり、二段構成になっておる。一つは、女性活躍の推進をいかにこれから前に進めていくかということであります。

 今回、一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大と相なりました。もっともっと優秀な女性が企業でいろいろな業種で活躍していただけるように、職業選択あるいは会社を選ぶ上においてもっと情報がたくさんあった方がいいのは当たり前のことだと思うんですけれども、今回、情報公表の義務のことについては、女性がいかに活躍している企業ですかということと、あるいはライフ・ワーク・バランスがいかに確保しやすい企業ですかということの二つの項目があって、規模によって公表する項目の数が違ってくるわけですね。

 先ほど布山さんのお話を聞いておりますと、こういった公表される情報だとか内容とかということについては、その数字そのものがひとり歩きするといったお話があったわけでありますが、実際、会社を選ぶ、働く場を選ぶ女性の立場に立ってみれば、できるだけ情報が多い方が役に立つのではなかろうかというふうに思うわけであります。

 山川先生のお話を聞いておりましたら、こういう行動計画をつくってPDCAをしっかり回していくということは優秀な女性に活躍の場を与える上でも非常に有益であるというようなお話があったわけでありますが、山川先生に、今回、三百一人以上の事業主については、今申し上げた、女性がいかに活躍できるかという点とライフ・ワーク・バランスの点について、一つずつ情報を公表しなさいよというようなたてつけになっているんですけれども、一項目に限らず、できる限りたくさんの情報をもっと公表した方が、先生がおっしゃるPDCAをもっと上手に回して、優秀な女性に活躍してもらえる環境づくりになるのではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。項目数ですね。

山川参考人 ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおり、情報公表の対象項目につきましては、充実した方が求職者にとって選択の充実度が高まるということはあると思われます。

 一方で、企業の特殊性、例えば企業として、さまざまな内容の企業がありますので、業種の特殊性、そういった面も考慮する必要があるかと思われます。

 なるべく多くの項目が公表されることが望ましいと思われますけれども、現在の法案では、とりあえず、重要な観点を二つに絞ったということであります。

 もちろん、より多くの情報を公表することが望ましいということを進めていくことはあるかと思いますし、また、どれだけの項目を公表したかということ自体が市場における評価の対象になるということもあるのではないかと思います。

繁本委員 ありがとうございました。

 二つの項目についてそれぞれ一項目以上ということについては一つの前進かと思いますけれども、今後の検討課題として、より多くの情報があった方がやはり選択に資するのではないかというふうに思いますし、これからの検討課題に我々も持っていかなければならないと思います。

 そして、次に、ハラスメントのことに話を移りたいと思うんです。

 先ほど来先生方のお話をお聞きしていましたら、事前にハラスメントが起きないような措置を頑張っていきましょうというお話と、いやいや、行為そのものが絶対だめなんだから禁止していこうというお話、双方あるんですけれども、実態としては、なかなか相談やいじめの件数も減っていないどころか、今ふえているような状況の中で、しっかりと対策を前に進めなければならないということは全員の共通認識だと思うんですね。

 私は、やはり起きてしまってからの事後対応というよりも、何でこんなハラスメントが、いろいろな業種、いろいろな会社、さまざまなバリエーションがあって、職場の特色もそれぞれ、いろいろあると思うんですね。それぞれの職場環境において、働く側と、働いていただく、管理する側、雇主側の方が自分たちの職場を考えたときに、こんなハラスメントがもしかしたら我が社にとっては起きやすいかもしれぬよねと。女性の比率も随分違いますでしょうし、仕事のきつさ、労働の質というものも大分違うと思うわけでありますから、双方、労使が話し合った上で、どうやったらありとあらゆるハラスメントが未然に防げるんだろうかということを事前に随分話し合うことがまず一番大事なことではないかなというふうに思います。

 禁止すれば全てがおさまるかというと、法律上禁止規定を設けたところで一体どれぐらいの効果があるんだろうかなということも、ちょっと私は疑問に思っているところであります。

 事前にしっかりと措置義務を事業主に課して、労使双方でしっかりと話し合った上で、こういった絶対ハラスメントが起きないような環境づくりが禁止規定よりもまず一歩、問題の根本、起きてしまってからのことではなくて、いわゆる蛇口のもとを締めるような考え方に立ってこれから進めていくべきではないかと思いますけれども、その点について布山参考人から何かコメント、御意見があれば、お伺いしたいと思います。

布山参考人 先生からの御質問は、野党法案で出ているセクハラ禁止規定を設けるのか、それか、政府案の雇用管理上の措置義務のままなのかという御質問ということでお答えさせていただきたいと思います。

 先生の御指摘のとおり、行うべきはまず予防だというふうに思っております。

 雇用管理上の措置義務の中には、当然、事が起こってからの事後処理だけではなく、その前に、まずハラスメントは何なのかということを明確化した上で周知をし、それから、相談体制を整えてそれをきちんと動かしていくということが入っておりまして、あと、労使で話し合っていくという中では、日ごろの職場のコミュニケーション、これを重要視して活性化をしていくことも事業主として必要なことではないかというふうに思っております。

 したがって、現行の事業主に対する雇用管理の措置義務ということで十分機能はしていくのではないかというふうに思っているところでございます。

繁本委員 ありがとうございました。

 ところが、今、ほかの参考人のお話を聞いておりましたら、必ずしもそういった措置義務を法律にのっとって履行できていない会社も多いという御指摘もあったわけでありまして、その点については、経済界を代表する参考人として来ていただいている布山参考人から何か御意見なりコメントがあれば。今、実際の社会において何で措置義務が進んでいないのか、その点はいかがですか。

布山参考人 例えば、セクシュアルハラスメントについて、随分前に配慮義務から措置義務に移ってきて、セクシュアルハラスメントが、やってはいけないもの、深刻な問題としてやってはいけないということは誰もが認識をしているというふうに思われます。

 ただ、その中でなくならない理由としては、一つは、行為者本人が、自分の行った行為がセクハラに該当すると理解していないのではないかというふうに思っているところでございます。そういう意味では、改めて、セクシュアルハラスメントにかかわらず、ハラスメントについて理解を深める取組が必要だと思っております。

 今回のパワハラの法案等々でも、責務規定というものがきちんと入り、行ってはいけないということを前提に責務ということを書かれておりますので、それを企業としても周知するとともに、国全体としてもその周知活動を行っていただければというふうに思っております。

繁本委員 行為を行っている本人が、これはセクハラなのかパワハラなのかマタハラなのかよくわからない、だから起きてしまっているということでありますよね。やはり、だからこそ労使で、こんな場合はやはりハラスメントということになって、企業としては、企業価値そのものを下げるものであるし、生産力を低下させるものであるし、結果として業績が下がれば働く側も雇う側も損失になるわけでありますから、実際、ハラスメントとは何か、こんなことは起きちゃだめだよねという、今のお話を伺って、やはり事前に労使が双方でよくよく話し合って、それぞれの業態であるとかあるいはお客さんも随分違うわけでありますから、実態に合わせた防止対策を話し合って、それに基づいた措置というものをあらかじめ用意していくということがやはり大事ではないかなというふうに今思った次第であります。

 さて、ハラスメントは人によって、受けとめ側によって、逆にやる側によっても全然変わってくるというお話が今、布山さんからあったんですけれども、じゃ、そういったことを法律で禁止してしまうことが本当に可能なのかということについても、伊藤参考人にお聞きしたいのでありますけれども、例えばセクハラの場合、現行の刑法でカバーされない言動のうち、どこまでが対象になるんだろうかとか、あるいは民事上で、どこまでが民法上の不法行為として損害賠償請求ができるんだろうかとか、この辺の線引きが非常に難しいと思うんです。

 法律でセクハラそのものを禁止すべきだと御主張されたというふうに認識しておりますが、伊藤参考人、この点についてはいかがでございますか。

伊藤参考人 均等法には指針がございまして、そこに明確にセクシュアルハラスメントに関する定義であるとか具体例などが載っております。それから、非常に参考になりますのは、人事院規則の中にもきちんと、どのようなものがセクハラであるかということが非常に具体的に載っている状況なんですね。また、判例もございますので、今、現時点で均等法施行から何十年とたっているわけですから、不明確ということ自体非常におかしいし、それは措置義務がちゃんと実施されていないことのあらわれではないかというふうに思っております。

 私たちとしては、もう既にたくさんの法律の本も出されております。議員の先生が出された本というものもありますから、そういう意味で、セクハラの内容というのはもう既に定義として明確になっているというふうに私たちは認識をしております。ですので、禁止規定を置くことに何ら問題はないというふうに感じております。

繁本委員 欧州の諸国、外国では禁止規定を設けている国というものがあって、御紹介もされたところでありますけれども、実際には海外においてもハラスメントの問題というのは今どんどんふえているわけでありまして、禁止規定があるから、随分それが抑止力になってハラスメントの数を減らすことができるというようなことに本当になるんだろうかと思うんです。例えば、諸外国でハラスメントを禁止する規定を持っている国々において実際それが機能しているかどうかということについて、もし伊藤さんの方から見解があればお示しください。

伊藤参考人 セクシュアルハラスメントについて禁止をしている国というものがかなりヨーロッパの方では多いという状況にございます。

 こちらについて単純に比較することは非常に難しいところではございますが、少なくとも相談件数などは日本よりも非常に多いということは、訴えやすい仕組みになっているということではないかなというふうに私たちとしては感じております。

 そして、やはり禁止をするということは、まず、ヨーロッパ諸国は、日本よりも人権感覚など進んでいるように見えて、それでもやはり法律でしっかりと規制をする、禁止をすると国がメッセージを送るということを通じてそれが民間にも行き渡って、それではそれをなくしていこうというような人権意識が醸成されていくんだというようなことを、先日も、ヨーロッパの関係の大使の方などとお話しする際に、そういったことを強調されておりました。

 ぜひ日本としてもILOの新条約を批准してほしいという声が欧州では高まっておりますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思っております。

繁本委員 貴重な御意見をたくさん賜りまして、ありがとうございました。

 時間になりましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 きょうは、参考人の先生方、貴重な時間を頂戴いたしまして御意見をいただきました。本当に感謝を申し上げたいと思います。

 私の方からの質問ですけれども、恐らく全ての参考人の先生方に御質問はできないかと思います。御容赦いただきたいと思います。

 私の方から、まずは、セクシュアルハラスメント対策のことについてお聞きをしてまいりたいと思います。

 ちょうど一年前に財務省の方でもセクシュアルハラスメント事案がありました。いまだにさまざま、男女雇用機会均等法はございますけれども、セクシュアルハラスメントについては事象が起こっているという現状ではないかと思います。

 そこで、まず、山川参考人、そして内藤参考人、布山参考人のお三方にお聞きいたします。

 現在の日本のセクシュアルハラスメント法制の実効性について、問題を感じておられるようなところがありますでしょうか。ありますとしたら、どのような点で感じておられるかということについて教えていただければと思います。

山川参考人 御質問ありがとうございます。

 これまで研究対象として労働政策の実現手法というものを一つテーマとして選んでおりまして、全体として、日本の労働政策ないし労働法の実現手法にはなお課題が多いというふうに感じております。

 セクシュアルハラスメントにつきましては、まず一方で、現在ありますような措置義務の履行確保の十分さというものがございます。これは、是正指導の件数は均等法等の中では一番多いくらいではありますけれども、それが実態を完全に反映したものであるかという点についてはなお課題があろうかと思います。

 また、現実に紛争が起きた場合、これはパワーハラスメント等においても共通しておりますけれども、なかなか、言った言わないということになりますと、認定が難しいという点は課題になろうかと思います。

 もう一つは、これは法律の内容とは直接関係ないんですが、周知について、より実効性を確保する必要があるかと思っていまして、アメリカ等に行きますと、工場見学をすると雇用機会均等法のポスターを張ってありまして、これが法律で義務づけられていまして、EEOC、雇用機会均等委員会の連絡先等も書いてあるという点で、なおそういった点で実効性確保を促進していく必要があるかと考えております。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 実効性の問題ということなんですが、私の方でも先ほど述べたように、やはり、措置義務が法定されているにもかかわらず、まず履行している事業主が少ないということ、これについては、申し上げたとおり、罰則がない、さらに、唯一の制裁と言える企業名公表制度も利用されていないという問題があると思います。

 どうして公表制度が使われていないかというと、指導されて、かつ勧告を受けた上で、まだなお従っていない企業に対して公表するという仕組みになっているためです。今、山川参考人からもありましたように、実際に指導された企業においては指導に従っています。ですから、制度として企業名公表制度までの道のりが長いということが言えると思います。

 それから、実効性という観点で、今、法が求めているセクハラ指針にある十個の措置ですが、これが実際のところ本当に有効かどうかということが言えると思います。先ほど御紹介したように、六〇%を超える人がセクハラを受けても相談窓口に行けていない状況があります。

 さらに、実効性という観点では、本来は、行政救済で多数の人を救済でき、そして企業が取組を行っていた方がよかったと思えばそれは抑止力があるということになるんですが、実際は、低額で解決をするないしは打切りになるといった形で、解決、合意に至っていないケースがたくさんあります。

 そうしますと、行政救済の観点からも、均等法のセクハラについては実効性がないということが言えるかというふうに思います。

布山参考人 ほかの参考人の方からも御指摘があった、まず、セクシュアルハラスメントをどのように認定するか。

 企業の中の窓口の方々の御意見を聞くと、御相談があったときにそれが本当にハラスメントなのかどうかというものを、本人の言い分だけではなく、相手、行為者と言われる方々も呼び、認定をするということになると思います。

 そのときに、他社の方から行ったときこれからどういうふうにすればいいかという中で、今回、他社の方に対しての協力ということも必要になるということが盛り込まれておりますので、そういう形でここを是正されていくのではないかなというふうに思うところです。

 以上です。

尾辻委員 それぞれ問題点の指摘、実効性についてということで指摘をいただきました。

 それでは、今いただいた御指摘の点をどのように改善をしていけば実効性は高まるのかという具体的なところについて、再び山川参考人と内藤参考人から、実効性を高める具体的な改善点について教えていただければと思います。

山川参考人 ありがとうございます。

 いろいろあり得ると思います。全て検討しているわけではございませんけれども、一つは、事後的な問題といたしましては、紛争解決に当たる人々のスキルというものを更に充実させていくということが考えられます。どうやって事実認定をするかという点、難しい点はあるんですけれども、ある種のスキルが出てくるかと思います。言っていることの信用性の判断とか、あと客観的な事実関係から見て一貫しているかとか、そういった点で、企業内でもあるいは行政機関でも、担当される方々のスキルを向上させていくということが一つ考えられます。

 もう一つは、先ほど申しましたところですが、事前の予防という点では、周知、労働基準法の周知は認識可能な状態に置けばよいという解釈ですが、こうしたハラスメント関係については、運用のレベルになるかと思いますが、先ほどのポスターの例ではありませんけれども、より認識が、人事や法務の担当者のみならず、各現場においても周知を現実的に実効的なものにしていくということが考えられるかと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 いかにその実効性を確保していくかという点だというふうに思いますけれども、現在の措置義務、現在セクハラについては措置義務があるんですが、これを必ず履行させるには、現在のシステムでは行政に監視させるということになるんですが、人員の点でなかなかそれは現実的ではないだろうというふうに考えております。

 また、ハラスメントは風土の問題、今少しお話もありましたけれども、組織の風土の問題でもあります。そうしますと、上からこれをやりなさいあれをやりなさいといった形で抜本的な風土改善が望めるものでもないと思います。

 したがって、まずは職場の中から改善できるように、当然、指導ということも必要なんですが、職場全体を変えられるように、職場の中にいる担い手に、言うならば労働組合ないしは従業員代表といった方に、きちんと風土改善を促すような仕組みが必要だというふうに思っています。

 さらに、禁止は必要だというふうに思います。禁止といいますと、事後的な解決ないしは救済のためにあるというふうに思いがちです。もちろんそれもあるんですが、それは抑止の意味もあります。禁止されているということで、それが社会的なルールになっているということがあると思います。

 昨今のセクシュアルハラスメントの事案を見るに、セクハラはいけないんだというルールが社会的に共有されていないというような感じもあります。それは、私は禁止されていないからだというふうに思っておりまして、禁止はまずもって、諸外国の例も鑑みまして、必要だというふうに感じております。

 以上です。

尾辻委員 今、やはり禁止が有効ではないかということで内藤参考人からありました。

 これについて、山川参考人の方にお伺いしたいと思うんですけれども、ことしの六月に採択されるILO条約や女性差別撤廃委員会の勧告も踏まえると、やはり禁止規定というものを今回導入する、若しくは、少なくとも禁止規定の導入を検討する専門家の検討会をすぐに設置して検討を始めるべきではないかと思っております。この点について、参考人はいかがでしょうか。

山川参考人 ありがとうございます。

 ILO条約が締結される見込みということは伺っております。どういう内容になるかは、まだ私としては把握が十分でありませんので、それが確定ないし締結された段階で改めて考えるということはあろうかと思います。

 禁止というものを一体どういうものと考えるのか。法律学者としては、禁止というと、それに違反した場合にどういう対応が考えられるかというのにすぐ頭が行ってしまうので先ほどのような意見を申し上げたわけですけれども、禁止ということが一体どういう意味かも含めて、いわば理論的ないし専門的見地から検討していくということはあり得るのではないかと思っております。

尾辻委員 ありがとうございます。

 引き続いて山川参考人で恐縮なんですが、お聞きしたいと思うんです。先ほど内藤参考人から行政救済制度の話もあったかと思います。ほぼ機能していないのではないかということ、そして検証すべきではないかという指摘がありましたけれども、これについては山川参考人はどう捉えていらっしゃるでしょうか。

山川参考人 ありがとうございます。

 行政救済制度というものを、そもそもどのようなものと考えるかという点もあるかと思います。

 一つは、例えば、行政処分を科するようにする制度、現在でいいますと、労働委員会が不当労働行為の救済命令を出す制度がございます。その制度の運用もいろいろ課題があるかもしれませんけれども、裁判所とある種似たような形で証人尋問をして事実認定をしてということをしておりまして、正直申しまして、かなり迅速さという点ではなお課題が残っております。

 認定の難しさという点からいたしますと、行政処分のようなものにするということはかえって時間の長期化をもたらすということかと思いますので、現在の調停ないし是正指導等の仕組みをより実効性のあるものにしていく。行政救済という概念にそれが入るかということはあると思いますけれども。

 命令という制度、私はアメリカ法を研究している者でございますけれども、アメリカでもEEOCが命令を出すということにはなっておりません。調停とか是正指導を中心として、場合によってはEEOC自身が訴えを起こすということはありますけれども、行政処分のようなシステムにはなっていないというところでございます。

尾辻委員 ありがとうございます。

 昨今、就活中の学生さんたちがOB訪問のときにセクシュアルハラスメントに遭うということが多く報道されております。これは非常に問題だと思うんですけれども。これが本当に守られるのかということでいうと、均等法五条のところでは、募集、採用時の性別を理由とする差別の禁止というのはありますけれども、ただ、セクハラの部分でいう、第十一条のところは労働者ということになっております。

 こういうOB訪問とかOBからの被害をセクシュアルハラスメントとして、均等法十一条で対応可能と考えられるのかどうか。もし考えられないならどういうふうにするべきなのかということについて、内藤参考人と、何度も済みません山川参考人と、お伺いできればと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども最後のところで駆け足になりましたが少し申し上げましたけれども、現在、今御紹介があったように、均等法五条では、募集、採用時の性別を理由とする差別の禁止で、労働者となろうとする者が対象とされていますので、均等法において労働者だけを対象にできるというわけではないかというふうに思っております。

 そういったわけで、本当にひどい事件が今就活生等にあるわけですし、さらに、私、数年前に、雇用以外の就業者もハラスメントを受けているというヒアリング調査をしまして、ILOの言うところの、契約上の地位にかかわらず就業する者、実習生、それからボランティア、求職者、就職志願者なども適用対象とするべしというのは、日本においても実践していくべきだというふうに考えております。

 つまり、もし均等法を改正するならば、労働者及び労働者となろうとする者、ないしは、今回野党案で出ているように従業者といったくくりで、労働者以外も含める形が適当だというふうに思っております。

山川参考人 ありがとうございます。

 先生御指摘のように、均等法の五条と十一条、若干つくりに違いがございまして、十一条では「雇用する労働者」というふうに書いてあるという点で、現行法上の限界はあろうかと思います。

 先ほど申しましたように、雇用によらない就業形態の方々をどう考えていくかということは、いわば労働政策一般の問題として検討すべきものというふうに考えておりまして、厚労省の中でもそのような検討が進められつつあるというふうに伺っております。その一環として、将来的に検討するということはあろうかと思います。

 また、先ほど申しましたように、しかし、現在そういう問題が起きているということでこれは企業イメージも大変傷つけるということにもなります。被害を受けた方の、被害の深刻さという点はもちろんですけれども。そういう観点から、現在でも、指針にそういうことも盛り込む、単に社内の労働者だけではなくて取引先も含められる、指針で、望ましいレベルですけれども、書いていくことによって、例えば、個人事業主、就活中の学生、それから取引先の従業員、そういうことも社内で禁止していくということでしたら、比較的簡単にといいますか、法律改正によらずとも実現できるのではないかと思っております。

尾辻委員 貴重な意見をありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 参考人の皆様、お忙しい中お時間賜りまして、本当にありがとうございます。私からも重ねて感謝申し上げます。

 十五分でございますが、私からももろもろお伺いしていきたいんですけれども。今のお話を聞いていますと、例えばパワハラでも、これは人間の、人が人と関係している限りどこでも起こり得る問題だな、環境によらないんだなというのを非常に痛感して伺っておりました。

 例えば、私なんかが所属しておりました役所だとか、今は政治家ですから、政治の世界でも十分あり得ると思いますし、お話を聞いていて思い出したのは、去年来、森友、加計学園とかで野党の合同ヒアリングというのをやっているわけですよ。あとは財務次官のセクハラの問題で呼出して、本人じゃないんですよ、本人以外の事務方の職員を呼び出して、非常に大声でどなったりののしったりしているようなシーンが、これは報道までされて、この政治の分野においても例外じゃないなと非常に感じているところでございますけれども。

 内藤参考人にお伺いしたいんですが、内藤参考人のお話を聞いていたり、また過去の記事をいろいろ読ませていただくと、顧客や取引先といった第三者からのパワハラも十分あり得て、それに対して、きちんと安全の観点から、本人の健康とかそういった意味で見れば、誰がパワハラをしたかで区別するというのはおかしな話だと。先ほども同様の趣旨を述べられておりましたけれども、非常に大事なお話だと思います。

 これは、たとえ政治の世界だからといって何かしら区別されるものでも私はないと思いますし、現に、同様の事業者を、ほかの別の事業者から言われたときにもパワハラとして措置をしなきゃいけないという法案を、野党側からですよ、今国会に出されているんですけれども、これは官僚なら仕方がないんですかね。

 このあたりも含めて、率直に、今お話しした話をどうお感じになるかお答えいただけますでしょうか。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。それから、私の過去のものも読んでいただいてありがとうございます。

 今、安全衛生のアプローチがあるというお話を言っていただけたと思います。ありがとうございます。

 ハラスメントは、人権のアプローチと安全衛生のアプローチがあるというふうに思っております。特に後者については、誰からの行為であってもそれは関係ないものであると、私も書いたとおりでございます。

 ですので、今、日本においては、相手が、加害者が誰であるかというところが非常に論点になっていますけれども、諸外国においては、相手が誰であってもそれはハラスメントであるということで法制度ができております。主に安全衛生アプローチからそれは判断されているというふうに思っていますので、私も、その観点から、誰からの行為であってもそれはハラスメントになると。

 セクハラに関しては、もう既に均等法で、誰からの行為であってもそれは均等法上のセクハラに該当するというふうにありますので、今般、措置義務化されることになるパワハラについても、セクハラと同じように、誰からの行為であっても同じように措置義務の対象とする、望ましい取組ではなくて義務の対象とするというふうにするべきだというふうに思っております。

丸山委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 合同ヒアで大声で罵倒されていた議員の方に、そして、その所属の党の方はしっかり聞いていただきたいというふうに思います。

 今お話しされたことは非常に大事だと思います。どの環境であってもその方の人権が守られる、人権を著しく阻害するような罵倒が行われるべきじゃないと思いますし、現に、今回、野党側からも今お話をしたような、他の事業者への業務上の優位性を利用して行う当該労働者に精神的又は身体的な苦痛を与える言動は、これはその事業者がしっかりと是正をしていかなきゃいけない、そういった形の法案が出ているわけですから、しっかり、出された党の皆さんも、こうした部分が今後ないようにぜひしていただきたいというふうに思います。

 一方で、与党側の法案も若干不足があるなと私は思っております。

 特に事業者の対応、先ほど野党側の対応の話を言いましたが、民間企業の事業者の対応が今回変わっておりまして、先ほど来お話にあるように、三百一人以上の企業に対してこうした情報公表を強化するというものがあるんですが、布山参考人、そして内藤参考人、重ねて恐縮なんですが、もう一度お伺いしたいんですが、先ほど来お話があるように、非常に私は不足しているんじゃないかなと思います。

 というのは、現状では一項目のみしか公表しなくていい形になっていまして、今回、二項目以上になるんです。しかし、現行を見ていると、一項目のみの公表しかしていない企業も多いんですよね。じゃ、今回、二項目にしたら、恐らく、予想されるのは、二項目。一項目、一項目になっちゃうんじゃないかなと非常に思うんです。

 私としては、法としてきちんと、書けるものは全て公表する、出せるものは公表するぐらいやってもいいんじゃないかなというふうに思うんですが、一方で、企業側の実態の難しさというのもあると思いますので、例えば自発的にどうすればこうした情報公開項目を出してもらえるように、充実させるように、取組を進めてもらえるようにできるのかとか、そういった部分を含めて専門家としての御意見をお伺いしたいんですが、布山参考人、いかがでしょうか。

布山参考人 ありがとうございます。

 女性活躍に関する情報公表の件につきましては、情報公表項目は一律にふやせばいいというふうなものではないと思っていまして、求職者の職業選択に資するという目的を踏まえて、企業が選択し公表することに意義があるというふうに思っております。それを踏まえて、積極的に情報公表している企業は少なくございませんで、五千人以上の企業では、厚労省の審議会で出た資料でございますが、平均七個以上既に公表しております。

 今回、一つの形での一個以上ではなく、女性の活躍推進という意味とそれから両立支援、二つの観点からそれぞれ一つ以上ずつ出すということになっていますが、実際はそれ以上積極的に公表するのではないか、現状を考えてもするのではないかと思っております。

 一方、実績値ですので、数値、先ほども申し上げたように、それだけを見てしまうとひとり歩きする、そういう危険も伴います。例えば現状の数値が低いからといって、女性活躍を推進していないわけではございません。数値を公表する際には、企業の方でも誤解を招かないように丁寧な説明が必要だと思いますし、見る側も、単に数値のみを見るのではなく、数値を正しく読み解くことも必要ではないかというふうに思っております。

 いずれにしても、一つずつと書いてあってもそれ以上出すのではないかというふうに思っているところでございます。

丸山委員 ぜひそうあっていただきたいですし、先ほどお話のあった、数字が全てじゃないというのは非常に大事な点だと思います。

 最近、政治の分野でも、女性の議員をふやしたい、これは非常にいいことだと思いますし、どんどんチャレンジいただきたいと思いますが、一方で、数字目標を課してしまうと、例えば、逆に男性の方からすれば、なぜそういうことになるんだと。もっといけば、その資質があるのか。最後は確かに選挙で有権者の方に選んでいただくことになるんですけれども、そこの部分も含めて慎重に議論しなきゃいけないと思います。方向性は見せつつも、こだわるべきじゃないところに変にこだわるとゆがみが生じるなと、今お話を聞いて思ったところなんですが。

 そういう点で、今回、一項目公表が二項目にふえたという点で、果たして企業側で自発的な情報公開が進むのかどうか、逆に言えばどうすれば進むのか。先ほどお話ししました内藤参考人の方にも、どうすればこうした部分の企業側の情報公開が進むのか、もし御知見がありましたらお伺いできますでしょうか。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 企業側にどう公表させるかといったところですが、それは、一つには、企業側にモチベーションを持ってもらうような法の仕組みにするということが考えられると思いますし、国としては、経営者団体と協力してキャンペーンなどを行うといった、法律以外のところでの取組もあると思います。諸外国では、そういうこともやっているところもございます。

 しかし、私の中では、二つの項目といったところではなくて、活躍状況について四つの項目を把握するところで、この四つの項目の中に男女間の賃金格差が入っていないということが女性活躍推進法の最大の問題だというふうに思っております。

 二〇一四年に、女性活躍推進法ができるときに、私は参考人として内閣委員会に出させていただいたんですが、そのときも、項目の中に男女の賃金格差がないということが問題だと申し上げました。しかし、今回もこれは盛り込まれておりません。それから、女性活躍推進企業データベースの中での公表項目にも入っておりません。

 男女間の賃金格差は、女性活躍に関する結果指標として非常に重要であるというふうに思いますので、こういった点も今後の課題になる、若しくは今回考えていただきたいところかなというふうに思っております。

 私の勤務する労働政策研究・研修機構では、二月に「諸外国における女性活躍・雇用均等にかかる情報公開等について」という資料シリーズを出しまして、この中で、例えば、ドイツにおいては賃金透明化促進法ですとか、アイスランドの、同等業務に従事する男女従業員に同額賃金を支払っているという証明書の取得を使用者に義務づけた世界初の新法の紹介などがありますので、ぜひ御参考にしていただければというふうに思います。

 ありがとうございます。

丸山委員 今御紹介いただいたような欧州の事例というのは非常にこうした部分で進んでいるところがあると思いますので、私もしっかり読ませていただいて勉強させていただきたいというふうに思いますが、一方で、万が一起こってしまったときの対応というのは非常に大事だと思います。

 実は、今回の法案でも、何かしら行政側がそれに対して認定や、そして、それに対して仲裁なり若しくは処分なりというのが非常に甘いんじゃないかという指摘が野党側からもありまして、維新を除く野党でお出しになった法案にはその部分を非常に強化したものが入っております。

 これは、我が党としても必要じゃないかというふうに議論を進めておりますけれども、そうした中で、果たして、行政側が間に入ることが弊害になることがあるんじゃないかなという意見も党内の議論の中で実は出ております。

 その実際の状況を、そうした人権活動をされております伊藤参考人にお伺いしたいんですけれども、まず、先ほど来お話があったように、訴訟に踏み切るのが難しいという話、これは非常に大事な話で、要はその方がきちんと解決に向けて動きができるようにフォローする体制というのが非常に大事だと思うんですけれども、それは果たして行政もやるべきなのかどうか、若しくは、伊藤参考人がやられているような民間の活動をもっと応援するようなところを重視した方がいいのか。

 解決に当たって、若しくは悩まれている御本人に一番寄り添うような支援のあり方というのがどこにあるのかというのは、非常に党内の議論でもいろいろな意見があるんですが、参考人はどのようにお考えか、お伺いできますでしょうか。

伊藤参考人 先ほども話しましたが、調停といった中で、非常にがっかりするような結論、非常に低い金銭解決というようなことが間々あります。これは、例えばアメリカの制度などとはかなり雲泥の差があるという状況ですので、行政による救済というのは否定されるべきものではなく、それは太くしていくべきものだと思います。

 なぜ、日本の行政における解決というのが、このように被害者を諦めさせて、非常に低い金額で解決させるというような、挫折しか与えないような制度になっているのかということ、そして、諸外国の制度はどうなっているのかということを真摯に検討していただいて、また、このあたりについて諸外国並みの行政救済のシステムを構築していただくということが非常に重要ではないかなと私としては思っております。

 今、労働審判制ということもやっておりまして、三回での解決ということもありますが、どうしても、解雇された後で、解雇に対して復職もできず、金銭解決というような形に終わっている事例というのが多いというようなこともございますので、そういった意味で、行政による簡易な解決ということは非常に重要だというふうに認識をしております。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

丸山委員 今の御意見は非常に示唆に富んでいます。

 行政同士は紋切り型になりがちで、本当にそうした制度をつくったときにでも、果たして被害を受けた方に寄り添えるかどうかというのが非常に大事で、そうした制度設計をきちんとしなければ結局救われないという形になりかねないなというのは今のお話でお伺いしましたし、しっかり今後の議論に生かしていきたいというふうに思います。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

橋本委員長代理 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党の大西健介でございます。

 参考人の皆様、貴重な御意見、ありがとうございました。

 私からも、時間が限られておりますので、全ての参考人にお聞きすることができないことをあらかじめ御容赦願いたいと思います。

 私からは、伊藤参考人を中心に御質問させていただきたいというふうに思っています。

 内藤先生の書かれたものを私も読ませていただいて、セクハラについて、均等法で措置義務を課して対応済みだと思考停止してきた面があるということを言われております。私も、行政救済というのはかなり限界があるなというふうに実感をしております。

 均等法の十一条は、会社がセクハラ防止に取り組んでいるかどうかを判断することはできても、当該行為をセクハラ行為と認定してやめさせることはできないということで、先ほど来お話がありますけれども、行政救済では加害者のセクハラ行為を違法と認めさせて謝罪させたいという被害者の願いをかなえることはできないというのが実態だというふうに思います。

 一方で、じゃ、裁判はどうかというと、心理的、時間的、経済的なコストが非常にかかってハードルが高いというのはもちろんですけれども、不法行為法という枠組みで裁判をするということになりますと、これも先ほどのお話の中にもあったと思いますけれども、非常に、勝訴しても失ったものは戻ってこないし、長い時間をかけて加害者からの攻撃にさらされて、新たなおとしめを乗り越えても手にできる賠償金はわずかであるという問題があるというふうに思います。

 また、不法行為法という枠組みでやる限り、不法行為は双方の利益調節の手段という側面があるために、これも先ほどのお話の中にたしかあったと思いますけれども、過失相殺という話が出てくる。そうなりますと、被害者の過失ということが裁判の過程でも加害者側から主張されるということになります。

 被害者の過失というからには、被害者にはその前提として注意義務がなければならないというふうに思うんですけれども、じゃ、セクハラ被害に遭わないための注意義務というのは一体何を指すんでしょうかということなんです。

 性暴力被害においても、時に被害者の落ち度論というのが問題になることがありますけれども、この点、性犯罪にも詳しい伊藤弁護士にお聞きしたいというふうに思います。セクハラされないための注意義務というのがそもそもあり得るのか、この点について御意見をいただければと思います。

伊藤参考人 お答えします。

 非常にゆゆしきお話ですよね。被害者の落ち度というものが裁判の中でも現実的に争われるというようなことがございますし、実際に裁判例の中には、ある程度のしんしゃくをしてしまうという部分がないとは言えないということですけれども。

 被害者がセクハラに遭わない注意義務というものは、課されるべきではありません。基本的には、事業主において、均等法に基づいてセクハラがないというような措置義務を課して、そこでセクハラを防止する責務を担っている、そういった職場になっているというところに従業員として働いていく、そして安全に働いていかなければならないというようなところで、そういった措置義務を行っている事業所において、従業員に対してそのような落ち度ということを問題にすること自体、非常に問題があるというふうに認識をしております。

 そういった観点からも、ぜひ禁止規定というものにしっかりと格上げをしていくということが必要ではないかというふうに痛感をしているところでございます。

大西(健)委員 これも先ほどの意見陳述の中にもあったんですけれども、裁判になると、往々にして加害者側が被害者側の過失を主張して、そのことが被害者を更に傷つけることになる。

 同じようなことで、勇気を出してセクハラ被害を訴えた人が、被害者であるにもかかわらず世間から責められて、バッシングを受けて二次被害に遭うということで、これは先ほど伊藤弁護士の方から話がありましたけれども、伊藤詩織さんが昨年記者会見を開いて、元TBS記者からのレイプ被害を告発したんですけれども、ネット上のバッシングや脅迫のために、身の危険を感じて今ロンドンに住まわれている。さらには、元TBSの記者側から一億三千万円の損害賠償を求める反訴を受けているということです。

 また、財務事務次官のセクハラ事件に対しては、下村元文科大臣が、週刊誌に録音を売るのはある意味犯罪ではないか、はめられたおそれもあるという発言をしました。こういうような形で、本来被害者であるはずの方が非常にバッシングを受けるという現実があります。

 こうした状況について、先ほど伊藤弁護士から話がありましたけれども、日本の社会では何でこういうことになってしまうのか、それを変えていくには具体的にはどういうことをすればいいのか。先ほど少し触れられてはいましたけれども、日本では、女性が声を上げることが好ましくないみたいな、もしそういう風潮があるんだとしたら、例えば教育においてそれを何か変えることができるのかとか、具体的にどうしたら日本のこういう風潮というか文化を、風土を変えることができるのか、伊藤弁護士から御意見をいただければと思います。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤参考人 お答えいたします。

 御質問いただきましたように、声を上げた被害者の方々に対するバッシング、これを恐れて声を上げにくいということは、社会の広範な部分に行き渡っております。

 例えば、伊藤詩織さんがあのようなバッシングをされるということを女性たちは見ておりますので、セクハラ被害で相談に来られる一般の普通の女性の方々も、私も声を上げたらあのようなことになるのではないか、あのような反訴をされるのではないかというようなことで、非常に萎縮効果は重大な状況にございます。これがセクハラ被害を解決させるための一つの大きな障害になっているというところでございます。

 まず、政府関係者であったり、特に国会議員の先生方には、非常に大きな影響力がございますので、そういったバッシングをすべきでない、若しくは、バッシングにかかわるようなことに積極的に加担することをぜひやめていただきたいというふうに、これは本当に思います。そうでない限り、セクハラ対策というものは女性が声を上げない限り進んでいきませんので、ぜひそのことは切にお願いをしたいというふうに思います。

 また、欧州の方では、女性に対するヘイトスピーチという概念をつくっておりまして、ヘイトスピーチ規制法をこちらの方で、国会でも議論して通していただいておりますけれども、それと同様に、女性に対するヘイトスピーチということに関して調査研究を重ねて、そういったことをなくしていこうということでさまざまな法制に取り組んでみたりであるとか、さまざまな国としてのイニシアチブを発揮して教育キャンペーンをされている国もたくさんございます。

 日本でも、こういった声を上げる女性たちに対するバッシングというものに対して、一つの政治課題と捉えて、国会議員の皆さん、そして政府の方々が率先して取り組んでいただくということをぜひお願いしたいというふうに考えております。

大西(健)委員 被害者側の過失という議論に関連して、裁判では、明確に拒否の態度を示さなかったことが同意したというふうに認められるというような議論が交わされることもあるんですけれども、これに関連して、これも実は、せっかく伊藤弁護士に来ていただけるなら聞きたいなと、もとから思っていたんです。

 先ほど意見陳述の中でももう既に触れていただいているんですけれども、先日、名古屋地裁岡崎支部が、娘に中学二年生から性虐待を続けて、十九歳になった娘と性行した父親に対して準強制性交等罪の事件で無罪を言い渡すという驚きの判決が出たということで、これは私も国民感情と非常に大きくかけ離れているというふうに思うんです。

 先ほどパンフレットもお示しいただきましたけれども、では、日本でもし法に不備があるとしたら、我々立法府としてこの法改正をするとすれば具体的にはどうすればいいか、もう少し踏み込んでお話しいただければと思います。

伊藤参考人 御質問ありがとうございます。

 配付させていただきました資料の中に、五、六ページ行ったところに、今の「十九歳の娘に対する父親の性行為はなぜ無罪放免になったのか。」という、私がヤフーに寄稿した記事を掲載させていただきました。

 この事例におきましては、基本的に、十四歳、中学二年生のときから継続的に性虐待を受けております。そして、十九歳のときの事案について、本当に意に反するということが明らかである、それは判決でも認められているんですけれども、意に反する性行為だった、そして前日まで厳しい暴力を振るわれていたんだというようなことが認定されながら、刑法における準強制性交等罪の要件である抗拒不能という要件がございます、この要件を裁判所が非常に狭く解釈しまして、本当に心神喪失と同じぐらい非常に狭い解釈をして、そしてそのハードルに達しなかったということで無罪になってしまったという事案でございます。

 このような事案が無罪で放免されるということですと、同じように苦しんでいらっしゃる性虐待の被害者の方々は救われないですよね。そして、新たな被害すら起こりかねないというふうに思っております。

 二〇一七年の刑法改正のときに、監護者性交等罪というものが新たに規定されて、十八歳未満の方に対する監護者の性交というものは同意の有無を問わず犯罪化されるということになりましたが、それだけでは足りないというふうに思います。

 こちらの小冊子の方に私たちが諸外国の制度をまとめておりますが、例えばスウェーデンでは、被害者側、相手方がイエスと言わない限り、性交するということについては処罰をする、かつ、過失レイプ罪ですね、意に反する性行為だということが明らかであるにもかかわらず、重過失をもってそのことに気がつかずに性行為に及んだ場合はレイプ罪と同様に処罰をするというような規定もございます。

 それからイギリスでは、女性が嫌だ、やめてほしいというふうに言ったにもかかわらず性的な行為に移ったという場合には処罰をするというような法制になっておりまして、カナダ、ドイツなども同様の制度を導入しているところでございます。

 また、韓国におきましても、十九歳までの女性に対して偽計又は威力によってわいせつを行う、偽計と威力というのは例えば暴行、脅迫より非常に軽い要件ですが、そういった場合には非常に厳しく処罰されるというような法制を導入しております。

 同じような法制が日本にも実現していれば、この判決のような事案は防げたのではないか、そして今後も防げていくのではないかというふうに思いますので、この機会に、セクハラに関する規制とあわせまして、刑法改正の課題について国会で十分に審議をしていただきたいと強く望むものでございます。

大西(健)委員 最後に、先ほど長尾参考人の方からも、今回ILOで採択が予定されている条約の水準を満たすような法律をという話がありましたけれども、逆に言うと、最後に全員の参考人から一言ずつ簡潔にいただきたいんですけれども、この政府提出の法案で、ILOが採択を予定している条約を日本は批准することができると考えているのか。できそう、できる、できると思う、あるいはできないと思う、もし簡潔に理由を言っていただけるなら、一言ずつお願いしたいと思います。

長尾参考人 できないと思います。ハラスメントの定義にしても、範囲にしても、対象とする労働者にしても、そしてその方策にしても、どれをとってもできないと思っています。

山川参考人 ありがとうございます。

 内容がどういうものとして確定されるかにもよりますけれども、今提案されているようなことですと、今お話にありましたように、対象、あるいは暴力も含まれている、それから加害行為の主体等について、非常にハードルが高い、難しい面が現時点ではあるのではないかというふうに私としては認識しております。

伊藤参考人 政府提出法案とILO新条約の素案の目指すものというのは著しい乖離がございますので、現行法の範囲では、これを批准するということは非常に難しいというふうに感じておりますが、これを批准できないということも国際社会において非常に恥ずかしいことでありますので、この国会で何とか国際水準に基づく成案になっていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

内藤参考人 難しいと思います。

 しかし、ILO条約は、批准を目指すは目指したいんですが、問題は、職場からハラスメントをなくすこと、職場だけではありませんが、ハラスメントをなくすことですので、その過程の中で条約が批准できればいいかなというふうに思っております。

布山参考人 ありがとうございます。

 昨年のILOの議論以降、各国からまた新たな意見が出て、今度の六月の総会でまた新たにこの点も含めて議論がなされるというふうに思っておりますので、現状では、どういうふうになっていくかということによるかと思っています。

 むしろ、今、我が国でハラスメントについての議論をしているので、ぜひとも、ILOの条約にかかわらず、この国会の中で我が国の防止対策についてまとめていただければと思っております。

大西(健)委員 終わります。

冨岡委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 五人の参考人の皆様には、貴重な御意見を開陳していただきまして、心より御礼を申し上げます。

 私からも、時間に制限がございますので、全ての参考人の方に御質問できるかどうか、できない場合はお許しをいただければと思っております。

 先ほど来お話を伺っておりますと、この法案につきましては、足りない、またILOの条約批准までにはまだ乖離はあるけれども、いずれにしても、前に進めることについては反対をするものではない、そうした御意見かと受けとめております。

 何点か、私からも質問をさせていただきます。

 まず一点目は、パワハラ、セクハラについての禁止規定を設けるかどうかという点でございます。これは、山川参考人、内藤参考人、伊藤参考人に伺わせていただきたいと思います。

 この禁止規定につきましては、労政審の建議にもありますとおり、やはり他の法令との関係の整理、また違法となる行為の要件の明確化など、こうした課題があるため中長期的な検討を要するというのがおおむねの建議であったかと思います。

 当然のことながら、こうした禁止規定を設けるということは、とりもなおさず、労働法制において損害賠償責任を追及する場合の法的根拠であるとか、またその重要な法的根拠の構築ということにつながるわけでありまして、そうしたことで、果たしてこの禁止規定を設けることの可否についてどうなのかという点でございます。

 中長期的な検討を要するということでございますので、当然のことながら、中長期的であっても検討を開始する必要があるのではないかと私は考えております。お考えを伺いたいと思います。山川参考人、内藤参考人、伊藤参考人、よろしくお願いいたします。

山川参考人 ありがとうございます。

 先ほども申しましたが、私としては、労政審での調整の結果を現時点では尊重いたしたいと思っております。

 禁止規定というと、違反の場合の権力的な対応をどうするかという問題を、通常の労働法制ですと検討しなければいけないということがございます。そうした点で、禁止規定というものをどのように考えるかも含めて検討を続けていくということは、先生御指摘のとおりというふうに考えております。

 現状では、措置義務の履行確保の体制を十分に強化していくということは必要と思いますけれども、その中で、社内的には禁止されて、使用者としては対応ができる、そのあたりも考慮して、将来的な観点から検討を続けていくということではないかと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど私も御紹介したように、均等法に措置義務が二〇〇六年の改正で入ったわけですが、それから、さっき御紹介いただいたように、我々も、それでセクハラの対策が終わったということで思考停止してきたかというふうに思っております。

 しかし、実態は、セクハラは減っておりません。企業も守っておりませんで、措置を履行しておりませんで、セクハラは多いままです。

 その状況で、今、次に何を法制度として考えるかといったときに、今の措置義務のままでいくのかというと、違うのではないかと私は思います。

 諸外国も同じ道をたどっていて、禁止がやはり必要だという話になっておりますので、今回、禁止を入れるか、もし入れないのであれば、すぐにでも、どうやったら諸外国のように禁止規定を導入できるかの検討を始めるべきだというふうに思っております。今回、児童に対する体罰禁止を児童虐待防止法に盛り込むということが話し合われたということですが、そういうことができるのであれば、均等法にセクハラの禁止を盛り込むことも可能ではないかというふうに私は思っております。

伊藤参考人 ありがとうございます。

 学生さんなどとお話をしますと、本当に、職場に行ったらセクハラに遭ってどうしようというような悩みなどをよく聞いたりしますし、親族、身内の中でセクハラに遭っているけれども何もできないというようなお話もよく聞くところでございます。

 そういった中で、じゃ、誰が一番このセクハラ問題に関して変わるべきかというと、事業主であり、そしてやはりシニアクラスの管理職が変わらなければならないというふうに私は思います。なぜ若い女性だけが心を痛めなければならないのかというのは、非常に理不尽に感じております。

 そういった中で、やはり緊張感のある対策をとっていくということは非常に大事でありますので、禁止という規定を置いて、そして、場合によっては損害賠償であるとかサンクション、制裁と結びつくような形の規定を置くということは非常に大事だと思いますし、個々の事業所で就業規則などに禁止ということを書く前提としても、法律の中に書き込んでいくということがまず手本としてあるべきだというふうに思っております。

 諸外国は、このILO条約にほとんどの国が賛成するということですし、その中で、国内法制の中で禁止というものを盛り込んでいる国が多いわけですから、同様の法制を検討していく中で、日本の法律でどのように実施していくのかということの整理も比較的短時間で可能ではないかというふうに思いますので、ぜひとも速やかに禁止規定を入れていただきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 この禁止規定を盛り込むということは、先ほど山川参考人からもお話がありましたとおり、私は、例えば児童虐待防止法であっても、ここは罰則つきの強い規定を設けているという内容でございますので、やはり損害賠償責任、また法的根拠、ここをどのようにしていくかという話とセットということが重要ではないかと思います。やはり、中長期的であったとしても、当然これの検討を開始すべきということを今三人の方からまたお話しいただきまして、改めて確認をさせていただきました。

 そこで、それまでの間、やはり事業主においてこの実効性をどう確保していくかというところが必要と思っておりまして、冒頭、布山参考人からも、職場環境の整備であるとか、特に人間関係が、コミュニケーションが良好な職場づくりということを何回かお話しいただきました。

 当然、企業として更に、セクハラ、またさらには今回のパワハラ対策を進めていただかなければいけないわけですけれども、例えば、先ほどありました、セクハラの企業名公表すらたどり着いていないという現状、そうしたことにつきまして、セクハラ対策をどのように今後進めていけばいいか、その点につきましても簡潔に御答弁をいただければと思います。

布山参考人 ありがとうございます。

 セクハラの企業名公表になかなか至らないという話ですが、行政の指導の中には、助言、指導、それから勧告、そして勧告を受けても何もしない場合に企業名公表という形になっていますので、私の理解は、企業名公表に至るまでに各企業が是正をしているのではないかというふうに思っているところでございます。

高木(美)委員 またもう一重の取組を、やはりセクハラを一緒に根絶していくというお取組をあわせてお願い申し上げたいと思います。

 そこで、次に、今回、パワハラにつきまして、初めてこれが法に明確化されまして、定義また措置と盛り込まれたわけですけれども、この効果をどのように考えていくかということにつきまして伺いたいと思っております。これは、布山参考人、山川参考人に伺わせていただきます。

 例えば、いじめ、嫌がらせを含むパワハラは七万二千件というお話があります。増加傾向にあるということですが、これはパワハラも含むいじめ、嫌がらせということでございまして、どのようにここを区別していくかというところも非常に難しい点かと思います。

 この効果をどのように考えるか、また今後どのような取組を進めるべきとお考えか、伺います。

布山参考人 ありがとうございます。

 今回の政府の法案の中には、明確に、優越的な関係に基づく業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の職場環境を害することということが定義されております。実際にこの内容でもし法律が通れば、その後、具体的な内容について、例えば優越的な関係に基づくというのはどういう意味なのか、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によりというのはどういうことなのか、労働者の就業環境を害することとはどういうことなのかということを議論した上で指針の中に盛り込み、それを企業の中に周知するということで聞いております。

 そういう中で、ここを明確にしていただければ、今先進的にやっている企業が困っている、ではパワハラとは何なのかというところの対応というのも随分変わってくるのではないかと思っています。

 それから、そもそも、パワハラに至らないまでも、職場の風土、職場の環境を風通しのよいものにして、それを推進していくということも、パワーハラスメントを起こさない一つの予防になるのではないかというふうに考えているところでございます。

山川参考人 ありがとうございます。

 どのような行為がパワハラに該当するかという点は、今後、指針策定の過程で検討されて、明確化が図られるものと思います。

 もう一つは、いわば意識の問題といいますか、パワハラが従業員本人あるいは企業にとって一体どういうインパクトをもたらすか、その点についての共通の理解を含めて醸成を図っていくということが重要かと思います。これは国の責務でもあると思います。

 また、その中で、私の感じといたしましては、職場の管理者の役割、これは単に指揮命令をするというだけではなくて、職場環境配慮義務とか調整義務という言葉にもあらわされておりますように、職場でパワハラ等紛争が起きないようにすることは管理職の本来の職務の一つであるということを十分周知していくことも有益ではないかと考えております。

高木(美)委員 最後に、もう一度山川参考人にお伺いいたします。

 セクハラの有無の認定を行うことができる救済機関を置くことが必要ではないかという話があります。これにつきましては、それを進めるということは、当然のことながら、司法機関と差がないのではないかという私の考えがあります。

 どちらかというと、セクハラの多くは個人間の言動でありまして、十分な証拠を出すことが難しいというそもそもの入り口があるわけで、そのために苦しんでいる方たちが多くいらっしゃるわけでございまして、先ほど布山参考人からは双方の話を聞いてという話がありましたが、こうした司法機関と差がなくなるのではないかということにつきまして、どのようにお考えか、伺いたいと思います。

山川参考人 ありがとうございます。

 私も、先ほど申し上げましたとおり、救済という言葉の中身として、裁判所ないし行政処分を科する、実施するそういう機関をつくるとすると、やはり手続はおのずから慎重になりまして、裁判所と同様のことになる懸念がございます。

 むしろ、どの機関が担当いたしましても、セクハラについての認定のスキル、例えば、地裁でセクハラの成立が否定されたけれども、心理学的な見地を踏まえて高裁で認定を覆したというような判決もございますので、そういった観点からは、救済の行政処分的なものを導入するかどうかというよりも、事実認定も含めて具体的な紛争解決に当たってのスキルの養成ということが重要ではないかと考えております。

高木(美)委員 今お話がありました、いずれにしても、セクハラの認定のスキルということにつきましては、パワハラも同様に、企業においても、やはり相談機関といいながらもそこに求められることであると思っておりますので、きょうはそうした具体策につきましても承らせていただきまして、しっかりと政策に反映をさせていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、五人の参考人の皆さん、大変お忙しい中御出席いただき、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。

 早速質問に入らせていただきます。

 初めに、女性活躍推進法の情報公表項目について、布山参考人と、後で長尾参考人にも伺いたいと思います。

 この女性活躍推進法の情報を公表すべき項目について、今回は、職業生活に関する機会の提供、また職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備という二つのカテゴリーから一件ずつ公表するとされました。

 これは前回の法律をつくる時点でも大分議論になったし、私自身も質問したことなんですけれども、男女の賃金格差について、企業の中では状況把握項目になっているんですけれども必須ではないということで、やはりこれは女性活躍にとって肝となる課題でありますので、公表すべきではないかと思いますが、布山参考人、いかがでしょうか。

布山参考人 ありがとうございます。

 この件に関しては、労働政策審議会の審議においても同様の意見をおっしゃる委員の方はいらっしゃいました。

 そのとき、公益の委員の先生だったかと思うんですけれども、いわゆる男女の賃金の格差というものは、一番大きな要因が男女間の職階の違い、次いで勤続年数の違い、あとは学歴だとか年齢だということで、それを丸めた形で男女の賃金格差を出して比較するということは、非常にそこの解釈が難しい、そういうことになるというふうに考えていて、背景をしっかりと分析しないと正しい数値の見方にならないのではないかという、そんな御意見がありました。

 私ども企業といたしましても、まさに同様の意見でございます。

 そもそも、男女の賃金の差異にかかわらず、あと性別にかかわらず、社員お互いの賃金は知られておりませんし、社内でも特段公表しておりません。そういう状況の中で、社員も知らないデータを外部に対して公表するということについては非常に違和感を持っております。

 とりわけ、先ほど来申し上げているように数字はそれだけがひとり歩きする危険がとても高いので、数字を見た方が背景も含めた正確な見方ができないと、これは無用なトラブルも起こしかねないと思っております。

 賃金にかかわる数字は、そういう意味で、情報公表項目に含めるべきではないというふうに思っております。

高橋(千)委員 今お答えがあったように、労政審の中でも布山参考人は、男女でざっくり賃金格差を出したところで何を見るのか、疑問と思うというふうな発言をされております。同時に、自社の従業員にも明らかにしない情報が多々あるというふうな御発言もされているんですけれども、ざっくりの格差であれば、それが自社の従業員にも明かせない情報なのかなという思いがいたします。

 やはり見える化を進めていくこと、それは、背景も含めて全体として進めていくことによって要因も見えていくだろうし、要因がもう固定、いわゆる職階だとか勤続年数でわかってしまっているんだからと言ってしまうと、じゃ、そこをどう解決していくのかというところにアプローチができないんじゃないかなと思っております。

 そこで、長尾参考人に伺いたいと思うんですが、本来ならこの女活法というのは働き方改革の要請だったわけですよね。だけれども、同一労働同一賃金の指針においても男女の賃金格差というのは全くスルーされているわけです。そして、雇用管理というのは、もう既定のものとして乗り越えられない、格差があって当然だというふうになっているわけですよね。それではやはり更にその先には進めないのかなと思っておりますけれども、御意見を伺いたいと思います。

長尾参考人 私は、女性活躍推進法は、要するに見える化を進めるためにつくられたのではないかと思っています。現状を公開する、公表する、そして企業がその現状をもとにどのような行動計画を立て、そしてそれをどう進め、それにどのように皆さんからの評価をいただくかというふうな点で、見える化、まずは現状の公表というのが鍵だと思います。

 そして、公表すべき項目の鍵は、やはり男女の賃金格差ではないかと思います。

 国連の女性差別撤廃条約は、結果の平等というのを求めています。女性の活躍についても、アドバルーンを上げるだけじゃなくて、じゃ、この法律がつくられ、そして施策が進められて、結果としてどうなったのかというのを見ることが必要。結果の平等をどう実現するか、その一番大きなわかりやすい指標としてあるのが男女の賃金格差ではないかと思います。

 賃金が保障されなければ、年収が保障されなければ一人で生きていくということはできないわけです。女性が自立して働き生きていく、自分の人生を選んでいくためには、男女の賃金がどうなっているかというところは非常に大事な問題で、公表すべき問題だと思います。

 そして、世界フォーラムのジェンダー平等指数においても、日本の経済的な指標では百四十九カ国中百十位でしたよね、昨年暮れにも。本当に大変な恥ずかしい状況なんですけれども、それはやはり、管理職の中での女性比率と、男女の賃金格差が大きいということが原因になっていると思います。それはまた一体のものですよね。管理職になかなか昇進できない、だから女性の賃金が低い。

 そして、管理職になろうと思ったら総合職を選ばなければならないけれども、入社のときに総合職を選んでも、やはり転勤があり、長時間労働がつきまとう総合職は選べない、一般職に変えざるを得ない、そういうコース別管理の問題。

 それから、女性が育児をしながら働き続けるということの困難さから、第一子を出産したら、ほぼ六割の女性がやめていくという状況。そして、また働き始めると、そのときはパートしかないというふうな状況、非正規が多いという状況。

 そのような男女の賃金格差を見ていくと、その背景にあるコース別管理であるとか非正規雇用の問題であるとかが見えてくるんですよね。そして、子育てしながら働けない現状であるとか、それが見えてくる。

 だから、やはり、一人一人の生きる条件の問題と、そして男女の差別がどうしてこのように広がってしまっているのか、なぜ解決できないのかという問題点を見つけていくという点でも、一番大事な指標として男女賃金格差の指標があるのではないかと思います。ですから、これは、本当に必須項目として入れていただきたいなと思っています。

 そもそも、女性活躍推進法で、男女の賃金の差異については、取組の結果を図るための指標、まさに、本当に結果の平等が実現されているかどうかを図るための指標であって、一番大事なものではないかと思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 賃金格差は縮小されていると言っているわけですから、経団連の方もぜひ見える化を進めていただければとお願いをしたいと思います。

 二つ目なんですけれども、ILOにおいて、先ほど来議論がされている、仕事の世界における暴力とハラスメントの終えんに関する委員会が六月の総会で初の国際労働基準を採択するという予定で、今回の法案にその包括的なハラスメント禁止規定が盛り込まれることが期待されていたと思います。

 そこで、内藤参考人と長尾参考人に伺いたいと思います。

 日本共産党としては、ハラスメント禁止規定と救済機関をやはりセットで法定すべきだと考えています。ハラスメントの定義及び対象の範囲はILO基準に合わせるということで、雇用関係にない従業者に対して、政府はいろいろ言うんですけれども、それは、措置義務と努力義務ということで適切に分けることで対応可能ではないか。あわせて独立した救済機関としての行政委員会の設置が必要ではないか。これは二つが相互に関係し合う問題だと思っておりますが、御意見を伺いたいと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 禁止規定と救済機関ということでしたでしょうか。何回も繰り返しになりますが、禁止規定は導入して、救済機関は具体的にはここでは申し上げませんでしたが、今の行政救済の検証をもとに、どのような救済の改善があり得るか検討していって、その上で、当事者の求めているのがハラスメントの認定である、調査をして認定であるということを踏まえて、どのような救済機関があり得るか。今おっしゃっていただいたパリ条約に基づく独立した人権救済機関、このようなものが本来的には望ましいというふうに私も思っております。

長尾参考人 私も、禁止規定は、先ほどの意見陳述でも申し上げたとおり、本当にすぐにも必要なものであると思いますし、ILOでは、昨年のILO総会から本当に丁寧に議論が行われ、そして各国政府の意見も聴取しながら今改善を進めているところですから、本当に、目の前にお手本があるという状況だろうと思います。

 これをもとに、たたき台にして日本の法整備を進めていけば、それほど困難な課題、例えば指針の中で中長期的に考えていくなどと言われていますけれども、そういう中長期的な時間が必要な問題ではなく、今まさにヨーロッパの法制そしてILO条約をお手本にすれば日本で禁止の法制化はすぐにも可能だと思っています。

 救済機関は、独立した救済機関が必要だということです。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 次に、伊藤参考人に伺いたいと思います。

 最初の意見陳述でもお話しされて、先ほど大西委員からも質問があった件ですけれども、三月二十八日の名古屋地裁岡崎支部での、娘さんに対する準強制性交罪事件で父親に無罪判決が言い渡された件についてです。

 同意はなかったということが認定されながらも、抵抗できなかったわけではない、だから無罪だというのであればもう何でも許される、本当に衝撃を受けました。

 先ほど、二〇一七年の刑法の改正のお話があったんですけれども、百十年ぶりの改正だったということで、一気に現実に沿うところまでは届かなかったということで、新たな見直しが求められているのかなと思うんです。

 ただ、同時に、こうした刑法の限界の問題と、セクハラ罪はないなどと発言させてしまう今の社会というのは、やはり根っこは一つではないかというふうに思っておるんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

伊藤参考人 女性に対する暴力をなくしていくという課題においてセクハラというのは非常に重要なことなわけなんですけれども、やはり政府が率先して、例えばカナダであるとかフランスという国では、首相、大統領といった人が、率先して女性に対する暴力をなくすというメッセージを発信して、取組を進めていくというようなことをされていらっしゃいます。

 それに比べますと、日本ではセクハラ罪はないというような発言が政府の非常に高い立場の方からもあったりするということで、そういう状況が社会の全体の中に行き渡ってしまうと、それがどうしても裁判所にも影響してしまう。そして、それが検察庁、警察に行き届いて、結局、抵抗力の弱い女性や子供が犠牲になるというようなことがあると思います。

 これは本当に、国会議員の先生方そして政府の関係者の方々から意識を変えていただきたいということと、それから裁判所、裁判官に対するジェンダー教育ということも非常に重要だというふうに認識をしております。

高橋(千)委員 裁判所に対するジェンダー教育という、大変いい指摘かなと思います。政府の閣僚や官僚に対しても、我々の国会の中でも本当にしっかりとやっていく必要があるのかなと思っております。

 課題がたくさんあると思いましたし、またたくさん聞きたいことがありましたけれども、きょうの機会をまた次の議論に生かしていきたいと思います。

 本当にありがとうございました。

冨岡委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。

 本日は、お忙しい中、五人の参考人の先生方には、御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。

 最後の質疑者でございますので、どうか、お疲れだと思いますが、おつき合いをいただきたいと思います。

 さまざまな立場からの陳述を聞いておりまして、大変参考になりました。幾つか、その陳述内容を踏まえて、御質問させていただきたいと思います。

 今回、我が国で初めてパワーハラスメント防止に関する制度化に向けて今現在議論が始まったということでございますが、政府案においては、パワハラ三要件が定義をされ、事業主にはパワハラ防止のための雇用管理上必要な措置を講ずることとされています。

 私自身は、パワハラは、長時間労働をしなければいけないような職場環境あるいは有給休暇が取得しにくいなど、いわゆる企業風土、そういったものが背景にある、ハラスメント対策は、日本の職場慣行や風土改善につながる、まさに働き方改革の本丸だというふうに考えています。

 そこで、布山参考人、内藤参考人、山川参考人、それぞれの参考人の方に、今回の政府のパワハラ対策内容は、日本の職場慣行、企業風土改善につながり、変化をもたらすものになっているか、また、もしさらなる工夫が必要だということがあれば、お答えをいただきたいと思います。

 布山参考人からよろしくお願いいたします。

布山参考人 ありがとうございます。

 先生の御指摘のとおり、このパワーハラスメントのそもそも検討を始める厚生労働省がつくった当時の検討会は、その前の年の実行計画に基づいて、パワーハラスメントについての検討も、労使を含めた検討会で検討をするということを発端にしております。そういう意味で、働き方改革の一環としてこれは私どもとしても位置づけています。

 そういう意味で、先ほど申し上げたように、昨年、私どもとしても、この取組について周知啓発をしたところでございます。

 今回の政府案につきましては、その検討会あるいは労政審の内容を踏まえていただいた内容になっているかと思いますので、私どもとしては、これで何度も整理させていただければというふうに思っているところでございます。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 パワハラ予防のために、企業風土改善を促せる仕組みということですね。

 三つあると思います。

 まず、何回も繰り返していますが、社会的にハラスメントがだめだというルールがないので、ハラスメントは禁止する、これが重要だと思っています。これは抑止につながる。もちろん救済にもつながりますが、抑止にもつながることです。

 それから、今回、措置義務が提案されていますが、セクハラで措置義務が導入されて以来、その効果がまだわかっておりませんし、守られていない部分が大きいです。そのために、いかにこれを守らせるかという仕組みをもう一回考えなければなりませんし、どのような取組をすれば効果が上がるのか、こういったことも検証する必要があると思います。それから、労働局で措置義務違反を取り締まっていくわけなので、人員の確保はもっと必要だと思います。

 それから、風土改善ということでいえば、やれよ、やれよと上から言うだけではだめ、やっていないだろうといって窓口を外形的につくらせるだけではだめで、自律的に企業風土を変えるような、労使でともに取り組むことを促すような法的な仕組みが必要だろうというふうに思っております。

山川参考人 ありがとうございます。

 パワハラ問題に関しましては、審議会での議論の結果を経て措置義務という内閣提出法案の形になっているわけですけれども、先ほど申しましたように、件数の多さからいって、履行体制を充実させて、十分な措置義務の履行確保が図られれば一歩前進になっていくであろうというふうに考えております。検討課題としてはいろいろまだあると思いますので、そちらの方の検討も引き続きということになると思います。

 また、先生御指摘の職場風土の改善は大変重要な課題であると思います。

 今、内藤参考人からもお話がありましたように、自発的に自分たちの問題と捉えて改善を種々話合いで図っていく、そういう体制を促進していくことは非常に重要だと思います。

 その意味で、テーマは違いますけれども、行動計画型の仕組みをつくっていく、そこで、上からというよりは、自分たちの職場の問題点を話し合って計画を立てて実行していく、そういう仕組みがより普及していけばいいのではないかというふうに考えております。

中島委員 日本の労働慣行というか職場風土、上司が帰らないと部下は帰れないとか、何となく職場の雰囲気が、有給休暇をとったらいけないんじゃないか、こんな忙しいときにみたいな、やはりその風土、今、外形的ではなかなか実効性に至らない、自発的に行動計画をというお話がございました。

 まさに、先ほど冒頭に述べましたが、長時間労働を強いられる状況自体が究極なパワハラに当たるということで、そういった職場風土を変えていくことにつながらなければ余り意味がなくなってしまうということだと思います。

 加えて、長尾参考人にちょっとお尋ねをしたいんですが、今の長時間労働を強いられる風土というか環境、先日、医師の働き方について有識者検討会が報告書をまとめました。地域医療を支える医療機関の勤務医などの残業時間上限が例外的に、一般の医師の年間九百六十時間を大幅に上回る年間千八百六十時間、月に換算すると、過労死ラインの倍に相当する月百五十時間とされました。

 このことは一部の医師に対するいわゆるパワハラとなっている状況かと思われますが、この件について、お考え、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

長尾参考人 医師の長時間労働について、そしてそれに対する方針については、本当に論外だと思います。人間をどう考えているのか。本当に、生き、働いている人間として、そして生活している人間として、家族と一緒に暮らしている人間としてどれだけの生活時間が必要なのかということから考えて、人間としての労働時間というのを出していかなければならないと思っています。

 昨年、働き方改革の国会の中でも、過労死の遺族の皆さんが本当に切実な訴えをされました。パワハラについても、過労自死の大きな原因になっている問題でもあります。仕事のために人が死ななければならない、受けた人権侵害のために人が死ななければならない、そんな世の中は本当に正していかなければならないと思います。

 今一番必要なのは、本当に人間として生きていけるための労働時間規制だと思います。それは、運輸労働者や医療労働者、例外をつくるのではなくて、全ての国民の一日の生活時間を守っていくという観点からの労働時間規制がつくられなければならないと思っています。それは、パワハラ、ハラスメントの禁止規定と同じように、きっぱりと、これを破れば大きな罰則があるという形の労働時間規制。私は、昨年の働き方改革では非常に不十分な結果に終わっていると思いますので、引き続き厚労委の皆さんの御奮闘をお願いしたいと思います。

中島委員 ありがとうございます。

 地域医療の現状と、いわゆる例外的にそういう働き方をしなければ地域医療が守られないという言い分というか見方と、一方で、長尾参考人は労働者の人権、人格、尊厳と。一人の人間としての最低のことすらも保てないという状況は、これはやはり本質的な話だと思います。きょうは、このお話というよりは、御意見を聞いたということで、また今後に生かしていきたいというふうに思います。

 続いて、伊藤参考人にちょっとお尋ねをいたしたいと思いますが、さまざまな分野でパワハラ、セクハラ問題にかかわられておるということで意見陳述もいただきました。

 その中で、ちょっと個別な話なんですが、介護分野、いわゆる訪問介護ですね。密室な場所での、これはケアマネさんもそうだと思いますし、実は私も訪問診療医でありまして、各家庭に行って、そこで起こっていること。昨今、在宅医療の推進によって、女性である訪問ヘルパーさんも含めてですけれども、個別に行かれて、そこでセクハラ、パワハラが起きることも社会問題となっておるということで、本質的に、この課題について、事例も含めて、どういった課題があるのか、そして今後、どういう対応策をしていくべきなのか、御見解をお尋ねしたいと思います。

伊藤参考人 ありがとうございます。

 こちらは、実は昨日、院内集会がありました際にも、介護職場から切実な御報告がございました。例えば、神奈川県で行われましたアンケートというものが二〇一五年にございますが、どうしても、基本的には介護職場は女性労働者が非常に多い、圧倒的に女性労働者というようなことなんですが、回答がなされた方々の三百八十四名、約四百名の方々から寄せられた回答の中で、やはりセクハラに遭った方というのが三割近くいらっしゃるということで、言葉によるセクハラだけでなく、実際に体にさわられたというようなこと、そういったセクハラがございまして、どうしても入浴介助であるとか体を密着させるというようなことが多くございますので、そういった中でハラスメントが非常に深刻になっている。しかし、その次の日もまたそういった現場に行かなければならないということで、何の対応策も十分にとられていないという状況なのではないかなというふうに思っております。

 こういったことで、事業所がきちんとした対応方針というものを確立していくことが求められるわけですけれども、これがやはり典型的な、先ほどから申し上げております、同じ職場内ではない患者とヘルパーさん、介護職員との間の関係ということで、現在の雇用機会均等法のセクハラの中では解消できない問題もございますので、こういったところに対して、やはりILO条約の案に即した形で範囲を広げて、こういった、同一職場内でないワーカーに対してもセクハラの保護が及ぶような法改正が必要ではないかというふうに考えております。

中島委員 介護、特に訪問系、患家にお伺いして、その場で密室になるということで、いろいろ、それぞれの介護事業所が、二人体制でいくとか、そういう対応をしているところもあるんですが、そもそもそういう介護人材が不足しておる。そういう現状の中で、まさに今現在も日本全国でそういう対応をしている方々がおられるということ、あと、一方では、看護師さんもそうでありますし、医師と患者さんとの関係、さまざまな場面でやはりいろいろなハラスメント対策が必要ということで、またいろいろな事例を御懸念されておるということですので、また御教示をいただければと思います。

 時間ですので、終わりたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

冨岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十七日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十七分散会


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