衆議院

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第20号 令和元年5月22日(水曜日)

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令和元年五月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    石崎  徹君

      上杉謙太郎君    上野 宏史君

      小田原 潔君    大岡 敏孝君

      大隈 和英君    大西 宏幸君

      木村 哲也君    木村 弥生君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    新谷 正義君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      丹羽 秀樹君    百武 公親君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    三浦  靖君

      三ッ林裕巳君    宮路 拓馬君

      山田 美樹君    和田 義明君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      岡本あき子君    吉田 統彦君

      稲富 修二君    岡本 充功君

      白石 洋一君    山井 和則君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    藤田 文武君

      柿沢 未途君    中島 克仁君

    …………………………………

   議員           阿部 知子君

   議員           山井 和則君

   議員           池田 真紀君

   議員           初鹿 明博君

   議員           岡本 充功君

   議員           源馬謙太郎君

   議員           中島 克仁君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   総務大臣政務官      古賀友一郎君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 多田健一郎君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          大村 慎一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 筒井 健夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官)  塩見みづ枝君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  国光あやの君     大西 宏幸君

  佐藤 明男君     三浦  靖君

  新谷 正義君     石崎  徹君

  三ッ林裕巳君     百武 公親君

  山田 美樹君     宮路 拓馬君

  池田 真紀君     岡本あき子君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     小田原 潔君

  大西 宏幸君     上杉謙太郎君

  百武 公親君     黄川田仁志君

  三浦  靖君     佐藤 明男君

  宮路 拓馬君     山田 美樹君

  岡本あき子君     池田 真紀君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     和田 義明君

  小田原 潔君     中曽根康隆君

  黄川田仁志君     三ッ林裕巳君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     本田 太郎君

  和田 義明君     国光あやの君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     新谷 正義君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 パーキンソン病患者が生きる希望を失うことなく治療に専念できる環境の整備に関する請願(宗清皇一君紹介)(第一〇四七号)

 同(田畑裕明君紹介)(第一〇八二号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一一五二号)

 同(菅原一秀君紹介)(第一一六七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一一七六号)

 障害者等の暮らしを支える介護・福祉の拡充に関する請願(山井和則君紹介)(第一〇四八号)

 子供のための予算を大幅にふやし国の責任で安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(篠原孝君紹介)(第一〇五五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一一〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一一一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一一二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一一三号)

 同(清水忠史君紹介)(第一一一四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一一五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一一一六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一一七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一一八号)

 同(藤野保史君紹介)(第一一一九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一二〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一一二一号)

 同(山崎誠君紹介)(第一一二二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一六五号)

 学童保育(放課後児童健全育成事業)を拡充し、子育て支援の充実を求めることに関する請願(福山守君紹介)(第一〇五六号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一〇八〇号)

 同(田村憲久君紹介)(第一〇八一号)

 同(武村展英君紹介)(第一一五一号)

 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立を求めることに関する請願(大河原雅子君紹介)(第一〇五七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一一七九号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため夜勤改善と大幅増員を求めることに関する請願(篠原孝君紹介)(第一〇五八号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一六六号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(篠原孝君紹介)(第一〇五九号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第一〇八九号)

 同(土井亨君紹介)(第一一二三号)

 患者負担をふやさないことに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一〇七九号)

 同(柚木道義君紹介)(第一一〇九号)

 同(小川淳也君紹介)(第一一七三号)

 同(櫻井周君紹介)(第一一七四号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一一七五号)

 じん肺とアスベスト被害根絶等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇八四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇八六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一〇八七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇八八号)

 障害福祉についての法制度拡充に関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第一一六八号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一一八〇号)

 同(中谷一馬君紹介)(第一一八三号)

 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(青山雅幸君紹介)(第一一八五号)

 同(井上英孝君紹介)(第一一八六号)

 同(井林辰憲君紹介)(第一一八七号)

 同(稲富修二君紹介)(第一一八八号)

 同(小沢一郎君紹介)(第一一八九号)

 同(大西宏幸君紹介)(第一一九〇号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第一一九一号)

 同(岡田克也君紹介)(第一一九二号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第一一九三号)

 同(金子恵美君紹介)(第一一九四号)

 同(上川陽子君紹介)(第一一九五号)

 同(神谷裕君紹介)(第一一九六号)

 同(岸本周平君紹介)(第一一九七号)

 同(後藤田正純君紹介)(第一一九八号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一一九九号)

 同(武井俊輔君紹介)(第一二〇〇号)

 同(中川正春君紹介)(第一二〇一号)

 同(野田毅君紹介)(第一二〇二号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一二〇三号)

 同(福山守君紹介)(第一二〇四号)

 同(船橋利実君紹介)(第一二〇五号)

 同(細田健一君紹介)(第一二〇六号)

 同(前原誠司君紹介)(第一二〇七号)

 同(三ッ林裕巳君紹介)(第一二〇八号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一二〇九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及び岡本充功君外十名提出、児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小田部耕治君、総務省大臣官房審議官多田健一郎君、自治行政局公務員部長大村慎一君、法務省大臣官房審議官筒井健夫君、大臣官房審議官保坂和人君、文部科学省大臣官房審議官丸山洋司君、総合教育政策局社会教育振興総括官塩見みづ枝君、厚生労働省子ども家庭局長浜谷浩樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。安藤高夫君。

安藤(高)委員 自由民主党の安藤でございます。きょうは発言の機会をありがとうございます。

 第一問目ですけれども、児童相談所の体制強化について、質も含めて、二つほど質問をさせていただきたいと思います。

 児童福祉司の確保そして育成は、もう本当に重要なポイントです。児童福祉司の確保は、自治体が行われていますけれども、偏在することなく配置することが重要だと思っています。

 各自治体が積み上げていく数と、また、先ほど、国の方でも三千から五千にふやしていこうというようなお話がありましたけれども、自治体の積み上げと三千から五千、これに何となく乖離があるのではないか。このようなことを含めて、児童福祉司の確保に向けて国としてはどんな支援を行っていくのかということが一点。

 また、これは現場からの声なんですけれども、児童福祉司の質に関する事例です。こんな例がありました。

 学校でのアンケートをもとに保護されてきた子供が数人いました。しかし、児童相談所の職員からの適切な対応がなかったために、突然の保護と環境の変化にとまどってしまい、口々に、こんなことになるならアンケートに書かなければよかった、今までもずっとずっと我慢してきたのだから、これからも我慢すればよかったと言っていました。

 保護直後の子供に適切なケアが行われなかったんじゃないか、そういうことを含めて、専門性の質はどうだったのかということを質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、児童福祉司の量の確保、全国どこでもしっかりとした体制を組むということが必要だと考えております。

 近年増加する児童虐待への対応をより適切に行うために、御指摘がございましたけれども、昨年十二月に新たなプランを決定いたしました。これは、二〇一九年度からの四年間で、現行三千人の児童福祉司を二〇二二年度には五千人体制とするということでございますけれども、これをミクロにしますと、児童福祉司一人当たりの業務量を、児童虐待相談とそれ以外の相談を合わせて、今、一人当たり五十ケース相当なんですね、これを四十ケース相当となるように見直しを行って、児童福祉司の業務の軽減を図るということでございます。

 そういう意味では、地域のニーズに応じた体制を地域ごとにしっかりとるという考え方でございます。

 まず、これが大きなプランの考え方でございますけれども、実際に自治体でしっかりと人材を確保しなければいけないということでございます。

 そういう意味では、国としての自治体における人材の確保の支援ということで、自治体の採用活動を支援するための補助を行っております。また、採用のみならず、児童相談所における組織としての専門性確保をすることが重要と考えております。

 先ほどいろいろな事案もございましたけれども、やはり経験者、経験を積んだ方の配置というのは重要だと思っておりまして、例えばですけれども、積極的に児童相談所の配属経験者の再配置、それから児童相談所OB職員の再任用等を行うこと。それから、人事異動サイクルでございますけれども、個々の児童福祉司が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人材配置を行うこと。要は、ずっと、十年とかいるわけにはいかないかもしれませんけれども、五年そこにいてそれからほかの部署へ行ったけれどもまた戻ってきてとかいうことで、キャリアアップをしながら専門性も確保できる、そういうようなイメージですけれども、そういったことを、自治体での工夫が進むように、自治体に対して周知を行っております。

 また、一般的な専門性確保ということからいたしますと、採用活動への協力ということでございますけれども、日本社会福祉士会等の専門職団体に対する働きかけも行っております。

 また、一般的な専門性向上という観点からいいますと、本法案におきましても、児童福祉司とその指導を行うスーパーバイザーの任用要件の見直しを盛り込んでおります。

 また、予算上の措置等も盛り込んでおりまして、こういった取組によりまして、人材確保、専門性の質の向上、双方を図ってまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 ぜひ、子供さんたちが戸惑うようなショックが与えられないようなことをよろしくお願いしたいと思っています。

 では、次の質問ですけれども、民間の活用についてでございます。

 児童相談所の業務を円滑にするための方策として、民間の活用また民間委託ということも考えられると思います。現在、民間企業との協働や委託などの状況はどうなっているのか、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所の業務の一部を民間団体等へ委託している都道府県等の割合でございますけれども、平成三十年四月一日現在で約六一%となっております。

 委託している主な業務でございますけれども、一番割合として多いのは里親委託に関する業務、続いて研修業務、それから家族再統合とか保護者支援プログラムの実施等となっております。

 なお、ことし三月に関係閣僚会議で決定いたしました抜本的強化に基づきまして、児童相談所が行っている業務のうち、今委託が多いと申しました里親養育の支援業務とか保護者支援プログラムの実施等につきましては、外部等への委託により業務が適切かつ効果的に実施することが期待される業務について、民間団体への委託を推進していくという考え方でございます。

安藤(高)委員 民間委託、質も含めて確保した上で進めていただければと思っています。

 例えば、現在、医療的ケア児が非常にふえてきている。そういうお子さん、案外と虐待を受けている場合があります。そうであったら、将来的に病院併設型の児相があってもいいのではないかなというふうに私は考えております。

 次に、三問目ですけれども、第三者評価に関してです。先日、船橋委員からもお話がございました。

 医療においては、医療機能評価というのがございます。それと同じように、公共サービスとなる児童相談所においても第三者評価というものが必要ではないか、そう思っております。

 サービスの質を考える意味では、評価としては、ストラクチャー、すなわち構造、そしてプロセス、過程、そしてアウトカム、結果という視点で考えていく。そして、アウトカムに関しては、国民の方々にもどんどんどんどん開示をしていく、見える化していく、透明化していくということが必要だと思います。

 今回の法案でも、第三者の視点を持って評価をする仕組みを導入することということになっています。野党の案の方ではその部分がちょっと薄かったので、ぜひとも野党の先生方にも第三者評価のことをお願いしたいと思っています。

 こういうことを含めて、今回、第三者評価にかかわる規定を盛り込んだ経緯と趣旨、そして今後の展開について、厚労省の御見解をお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所の質の向上を図るために、第三者評価の導入の促進、これは重要だと考えております。

 まず、経緯でございますけれども、昨年行われました社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおきまして、全国どの地域においても子供の権利が守られることを目的に、児童相談所の質の確保、向上が図られるよう、業務について自己評価及び第三者評価を行う仕組みの創設に取り組む、こういうこととされました。

 こういった審議会の御議論を踏まえまして、本法案には、都道府県知事は、第三者評価の実施も含め、児童相談所の業務の質の評価等を行うことにより、業務の質の向上に努めなければならない、こういった趣旨の規定を盛り込んだところでございます。

 今後の取組でございますけれども、国といたしましても、都道府県知事の取組に資するように、評価ガイドラインの作成等を今後行うことといたしております、調査研究等を行いまして。

 それで、児童相談所の第三者評価に先立ちまして、まず、一時保護所の第三者評価については既にガイドライン等を作成しておりまして、一時保護所内の子供の権利擁護の観点から、これまで評価指標の作成等を進めてきております。

 一時保護も児童相談所の業務に含まれるわけですけれども、こういった一時保護所の評価も含めまして、今回の改正案の支援といたしまして、児童相談所の評価につきましても、この一時保護所の第三者評価指標等の取組も参考としながら、あるいは、各自治体におきまして既に取り組んでいる例もございます、そういったものも参考にしながら、ガイドライン等を作成し、将来的には全国的な普及、展開を目指して取り組んでまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 ぜひ適正な指標、インジケーターと、それからまた、結果の国民への開示をよろしくお願いしたいと思います。

 四問目ですけれども、これから以降、医師に関する質問を三つほどさせていただきたいと思っています。

 最初は、児童相談所への医師の必置についてですけれども、児童相談所の体制強化のための一つの方策として、医師及び保健師の配置がうたわれています。最近の虐待死事案における医師の関与にかかわる問題の所在は、臨床医からの通報を児相が放置又は重要視しなかったということが一つ言われております。

 それを踏まえて、医師を必置とした問題意識及び目的についてお話をお願いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、最近の事案におきましても医師の知見が十分に生かされなかったというような事案がございます。

 児童相談所におきまして、医学的な知見を踏まえた対応ができるように、児童相談所における意思決定に医師が日常的に関与して、児童福祉司等とともに対応できるような体制整備を推進することが重要であると考えております。

 このため、本法案におきましては、これまでは医師又は保健師どちらかがいればよいという形でありましたけれども、医師と保健師、双方を配置するということで、医師の配置を義務化いたしました。

 平成三十年三月に発生した目黒区のあの痛ましい児童虐待事案につきまして、これにつきましては、社会保障審議会のもとの専門委員会が取りまとめた報告書の中で、医療機関から児童相談所に対しまして児童虐待に係る情報提供が行われたにもかかわらず、情報を踏まえたアセスメントが不十分だったことも問題点の一つとして指摘されております。委員御指摘のとおりでございます。

 こうした指摘なども踏まえまして、児童相談所におきまして医学的知見を踏まえたケース対応を可能にする、それから、地域の小児科医あるいは精神科医など、事案に即した専門性を有する医療関係者との連携体制の強化を図る、こういった目的で児童相談所に医師の配置を義務化することとしたものでございます。

安藤(高)委員 ぜひスピード感を持ってお願いしたいと思っています。

 次ですけれども、そもそも医師の不足が懸念されています。特に地方では確保が非常に厳しいという偏在があります。

 医療に関する専門性だけではなくて、虐待などについての専門性も非常に重要だと思っています。特に東京なんかでは、医師への報酬が低くて、こんな報酬ではちょっと行けないよねという、なり手が少ないという問題も存在しています。

 そういうことを含めて、医師の確保の具体策についてお願いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回、医師の配置を義務づけたわけでございますけれども、この分野に限らず、医師不足、地域によって医師不足、深刻な問題だと考えております。そういう意味では、医師の確保のための採用活動の支援等を行っていくことが重要だというふうに思います。

 先ほども引用いたしましたけれども、ことしの三月に関係閣僚会議で決定いたしました抜本的強化についてという決定でございますけれども、この決定におきましては、医師等の配置にあわせまして、一つは、関係団体、医師会等でございますけれども、関係団体の協力も得た採用活動、それから、この分野に関するやはり知見も備えていただく、そういった方々に協力していただくというような環境整備も必要だというふうに思っておりまして、そういう意味での研修の充実、それから、日常的に医師とともに対応できる体制の整備ということにつきまして、こういった点につきまして必要な財政支援等の拡充を図るといった点が盛り込まれております。

 また、専門的な知見を有するという意味では、先ほども申し上げましたけれども、小児科医さんとか精神科医さんとかあるいは法医学者さんなど、事案に即した専門性を有する医療関係者との連携体制の強化、こういったことが盛り込まれております。

 こうした取組を通じまして、児童虐待に十分な知見を有した医師が日常的に関与し、児童福祉司とともに日常的に対応できるような体制を目指して取り組んでまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございます。

 昨日の参考人の方の御意見の中にもありましたけれども、医師に関して、協力医制度を設けるとか、あるいは、地域の実情に応じた体制として、地域の医師を登録方式にして当番制で回していくということも考えられると思います。また、弁護士さんのいい例がありましたけれども、弁護士さんに関しては、非常勤弁護士と協力弁護士という形で法的対応能力を強化している、あるいは、弁護士さんのメーリングリストのような仕組みをつくっていって、これをまた医師の方にも活用して、ある程度何でもありの総合力でもって頑張っていくという方式も必要ではないか、そう思っております。

 次ですけれども、地域によって医師の質が異なることがないことが必要だと思っています。先ほどもお話が少しございましたけれども、研修やガイドラインの設定によって、高い水準による標準化が必要だと思っています。

 そのことについて、御意見の方、よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの答弁と若干重なりますけれども、児童虐待につきましては、早期に気づき、迅速かつ的確に支援につなげていく、こういうことのためには、研修等によりまして医師の一定水準の質を確保することが重要だと考えております。

 これまでも、医療関係者が、虐待の兆候あるいはその端緒に気づいて、医療機関で児童虐待を発見しやすい体制を整備するために実施する研修費用の補助等を行っております。

 加えまして、先ほども申し上げましたけれども、この三月に関係閣僚会議で決定いたしました決定に基づきまして、関係団体の協力も得ながら研修の充実を更に図っていこうと考えておりまして、まずはでございますけれども、自治体におきまして、活用できる研修コンテンツの普及など、研修体制の整備を進めていく、その上で、財政支援の拡充も図っていく、こういう取組をしてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 私、思うには、最終的には、専門医でなくても、どの医師が虐待児を診ても診断ができるような標準化が必要ではないか、そういうためのきちっとしたクリニカルガイドラインというものの作成が重要だと思っています。また、医師会等でも、かかりつけ医研修の中に虐待のこともしっかりと取り入れていく必要があると感じています。

 次に、七問目ですけれども、虐待の防止、予防のための教育についてです。虐待防止対策という意味では、事前の防止、予防も重要な視点だと思います。

 現在、小学校、中学校なんかでは、税と社会保障、あるいは、がん教育、性教育、認知症のサポーターの教育などが行われている場合もありますが、それと同時に、虐待教育を取り入れることも重要ではないかと思います。これによって虐待の防止、予防というものが広がっていくとすばらしいと思っております。

 実際にどんな取組をされているのか、よろしくお願いいたします。

塩見政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待未然防止の観点から、将来、親となる子供たちが、その発達の段階に応じまして、命の大切さを理解し、幼児への理解を深めることは大変重要と考えております。

 このため、学校教育におきましては、学習指導要領に基づき、小中学校の家庭科、技術・家庭科あるいは特別の教科、道徳などにおきまして、生命の尊重や家族や家庭生活についての理解、幼児との触れ合いを通して幼児への理解、関心を深めることなどの指導を行うとともに、高等学校の家庭科におきましては、親の役割と保育、子供を産み育てることの意義などについて指導を行っておりまして、その中で、幼稚園や保育所等の乳幼児、近隣小学校の児童との触れ合いや交流の機会を持つことなどについても進められております。

 特に、二〇二二年度から実施されます新しい学習指導要領におきましては、乳幼児と適切にかかわるための基礎的な技能や子育て支援についての理解などについても新たに明記し、充実を図ったところでございます。

 これらの取組を通じまして、引き続き、親としての役割や子育てなど、将来、親になるための教育の充実に努めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 昨年通りました成育基本法の中にも、虐待の項目があります。今後、日本版のネウボラもできると思いますが、そういう中でも虐待教育をしっかりしていく必要があるのではないかと思います。

 また、命の教育のお話をしていただきましたけれども、今後、親になる準備教育としての中学、高校生を対象としたしっかりとした取組を行うことも重要であると思っております。

 次の質問ですけれども、これも現場からの質問です。きょうだい間の暴力に関してです。

 こういうふうな事例がありました。母、長男、弟、妹の家族内で、行動障害のある長男が、母、弟、妹に暴力を振るった事例で、きょうだい間の暴力、虐待は他害にならないために強制入院ができないということがありました。

 このようなきょうだい間の虐待に関して、児童相談所の対応はどうしているのか。よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 きょうだい間で暴力やその他の加害行為が行われた場合でございますけれども、まずは、保護者がその事実を知りながら放置していたなどの事情があればですけれども、ネグレクト、虐待の一種であるネグレクトの事案として取り扱われるものと承知をいたしております。

 この場合でございますが、児童相談所におきましては、まずは適切にリスクを評価する、その上で、在宅での指導や支援、カウンセリングとか医療機関等へのあっせん等でございますけれども、そういったことができないか検討するということでございます。

 その上ででございますけれども、状況に応じてでございますが、必要があれば、一つは、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図る観点、もう一つは、児童の心身の状況やその置かれている状況その他の状況も把握する、アセスメントする、二つの目的、あるいはどちらかの目的で、一時保護を行うということも考えられます。

安藤(高)委員 今後さまざまなケースが出ると思いますので、しっかりとよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問ですけれども、里親問題に関してです。

 現場の声から、里子における問題が生じたときに里親が相談できるところがないという声も聞いております。先ほどちょっとお話がありましたけれども、そこについて、更に突っ込んだお答えをお願いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 里親支援に関してでございますけれども、里親からの相談につきましては、まずは児童相談所で受け付けるわけですけれども、児童相談所が多忙で相談しにくいとの意見もあると聞いております。こうした事情を踏まえつつ、里親さんが相談しやすく、関係機関と協働ができるような環境をつくるなど、里親の支援体制の拡充が重要だと考えています。

 厚生労働省といたしましては、各自治体の取組を促進するために、昨年十二月に策定した新プランにおきましては、各児童相談所に里親養育支援のための専任の児童福祉司を一名以上配置するプランとなっております。

 また、都道府県におきまして、二〇一九年度中に策定していただくこととなっております社会的養育の推進計画におきましては、里親家庭の相談援助体制の充実を盛り込むように都道府県に依頼しております。

 質の高い里親養育を実現する観点から、児童相談所における民間の里親養育包括支援機関の活用を促しております。これは、里親のリクルート、アセスメントあるいは里親の研修、子供とのマッチング、養育に至るまでの各段階における一貫した里親養育支援を実施する民間の機関でございますけれども、こういった機関の活用を促す、こういった取組をしております。

 また、このような機関がしっかりとその役割を果たせるように、昨年ガイドラインを策定いたしまして、里親養育を包括的に支援する業務につきまして、職員体制などを具体的に提示する、あるいは、業務を民間機関に委託する場合における留意点、民間機関と児童相談所の関係のあり方を示しております。

 さらには、予算措置におきまして、このような民間機関に対する補助を大幅に拡充いたしまして、一機関当たりの補助額を最大約三千万から六千万に倍増したところでございます。

 このような取組によりまして、里親家庭の相談援助体制の充実に努めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 ぜひ、この制度をいいものにしたいものですから、よろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問ですけれども、根本厚労大臣にお願いしたいと思います。

 こういうことを踏まえて、児童虐待防止対策に関して、大臣のお考え、決意をお聞きしたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。

根本国務大臣 虐待によって子供の命が失われる事態、事件が繰り返されることがあってはならない、子供たちの命を守るのは私たち大人全員の責任であると考えています。

 この強い決意のもとで、昨年十二月に児童相談所強化プランを前倒しで見直して、新たなプランのもとで、これまで三千名体制の児童福祉司を今年度一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とすることや、全市町村への身近な相談拠点の設置などを進めることとし、必要な予算を今年度予算に計上しました。

 また、本法案においては、体罰禁止の法定化や、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、一時保護等を行う介入の担当者と保護者支援の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化など、実効性のある対策を盛り込んでおります。

 何よりも、子供の命を守り、社会全体で子供を見守り、児童虐待防止対策を進めるため、全力で取り組んでまいりたいと考えています。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 政府においても成立した法案をしっかりと施行し、二度と痛ましい事件が繰り返されないよう、よろしくお願いしたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

冨岡委員長 次に、丹羽秀樹君。

丹羽委員 おはようございます。二番手の丹羽秀樹でございます。趣味がダイエット、特技がリバウンドでございます。どうぞよろしくお願いします。

 ただいまは、莫大な拍手、まことにありがとうございます。人生八度目のお祝いでございます。本当にありがとうございます。大丈夫です、委員長、ちゃんと質問しますからね。ちゃんとやります、きょうもちゃんとやりますよ、私。しかも、児童福祉法ですからね、これは本当にしっかりやらなきゃいけない問題でございます。

 昨年、目黒区で起きました虐待死亡事案を受けまして、政府において緊急総合対策の策定や児童福祉司の増員を含む児童相談所の体制整備に取り組んでいるさなか、本年一月に千葉県野田市で同様の痛ましい事案が発生してしまいました。厚生労働省を始め、児童虐待防止に日夜熱心に取り組んでおられます関係者の方々も、じくじたる思いであろうかというふうに思っております。

 最近の報道では、資料の方を見ていただきますとわかりますとおり、千葉県の柏相談所で、医師から性的虐待の疑いがあるとする診断書が提出されたにもかかわらず、一時保護を解除していたことが明らかになりました。有識者から、虐待を認めていない父親のもとになぜ返したのか、子供を守る意識が欠如しているのではないかなど厳しい指摘がなされているところであり、多くの方々も同じような思いを持っておられると思います。

 本事案につきまして、五月十六日に母親への公判が始まったばかりでございますけれども、係争中のことでありますから一般論で構いませんが、こういった状況で一時保護を解除したこと等、児童相談所による一連の対応は厚生労働省として適切であったと考えておられるのかどうなのか、その辺を御答弁いただきたいと思います。

 まだ質問は続きますので、待ってくださいね。

 例えば、このような対応をとってしまった原因をしっかり追及しないと、やはり今後、適切な対応ができなかったということにもつながってまいりますので、再発防止の点も含めて、原因の究明を、現時点での認識でも構いませんので、わかりやすく整理して御説明していただけますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 野田市の事案を含めまして、最近の児童虐待事案におきましては、しつけと称して児童虐待を行う事案、あるいは関係機関からの情報漏えいによりまして虐待リスクが高まった、転居によりリスクが高まった、DV対策との連携が必ずしも十分でない、こういったことが生じているものと承知しております。

 野田市の事案につきましての具体的な問題点や課題でございますけれども、現在、千葉県、野田市、沖縄県、糸満市、それぞれの自治体におきまして検証が行われておりまして、この検証を通じまして事実関係を明らかにしていくことが必要だと考えております。

 その上で、本年二月に、厚生労働省の専門委員会、これは虐待の検証を行う専門委員会でございますけれども、専門委員会において関係自治体のヒアリングを行いました。その際には、現時点におきましては、少なくとも、まず一つは、一時保護解除の際の家族全体の状況へのアセスメントがどうだったのか、家庭復帰後の援助体制がどうだったのか、それから、特に学校との連携や役割分担がどうだったのか、こういったことについて課題があったのではないかということを指摘しております。

 今後、千葉県や野田市におきまして検証を行う際にはこうした点に留意しながら検証していただきたいということで、そういった点を自治体に対し伝達したところでございます。

丹羽委員 御答弁ありがとうございます。

 例えば、今回のケースでいいますと、児童相談所の対応のケースが多過ぎてしまったとか、丁寧な対応ができていなかったためとか、さらには、児童相談所も児童虐待だけ扱うわけではないということはよくよく存じ上げております。

 そういった中で、弁護士や医師などの専門家に相談できなかったのか、それとも、警察官やそのOBがそばにおらずに、どうしても威圧的な父親に屈するというか、父親との関係の中でこういった対応になってしまったのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 例えば、医師の意見が十分取り入れられていたのか、弁護士さんなどとの連携あるいは知見は生かされていたのか、あるいは警察との連携が十分だったのか、個別にどういう問題点があったのかというのは今後の検証の結果に委ねられることだと思いますけれども、そういった点も含めて、今後、検証の中で明らかにしていくということだと考えております。

丹羽委員 児童虐待の件数は、年々、一貫して増加いたしております。児童相談所の体制強化、特に児童福祉司の増員は非常に重要なことだというふうに考えております。ただし、単なる増員をするだけではなくて、やはり増員だけでは不十分でありまして、職員の質と量の確保というのは、車の両輪のように、どちらも欠くことができないことだというふうに思います。

 そこで、児童福祉司を一人育てるだけでも約五年から十年かかるとさきの参考人の中でも言われておりましたけれども、このため、児童福祉経験者の復帰やまた社会福祉等専門職の新規採用をふやしていくなど、職員の質と量の確保のために各自治体が取り組む負担は決して軽いものではないというふうに思います。

 国として、さまざまな形で各自治体への支援を強化していただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、今後、児童福祉司を三千人体制から五千人体制に大幅にふやしていくことを目指しているわけですけれども、その際に、質の確保、向上もあわせて図っていくということが重要だと考えておりますし、国として自治体を支援していくということが重要だと考えております。

 まず、自治体における専門的な人材の確保の支援といたしましては、先ほどの安藤先生の答弁と若干重なりますけれども、自治体の採用活動を支援するための補助をまずベースとして行うということがございます。

 それから、児童相談所における組織としての専門性を確保する、こういった観点から、例えばでございますけれども、積極的に児童相談所配属経験者の再配置を行う、あるいは児童相談所のOB職員の再任用等を行うというようなこと、それから、個々の児童福祉司等が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人材配置を行う、こういった点について自治体での工夫が進むように、自治体に周知を行っております。また、日本社会福祉士会等の専門職団体、こういったところにも採用に関する働きかけを行っているところでございます。

 また、一般的な資質向上という観点から申し上げますと、今回の法案でも、児童福祉司とその指導を行うスーパーバイザーの任用要件の見直し等を盛り込んでおります。

 具体的に申しますと、児童福祉司等の任用要件といたしまして、一つは、国家資格として精神保健福祉士とか公認心理師もございますけれども、こういった方々も基礎資格として位置づけるというような内容がございます。

 また、児童福祉司につきましては、福祉事務所などで働いております社会福祉主事という任用資格がございますけれども、そういった方々が児童福祉司になる際に社会福祉主事プラス実務経験要件を課しておりますが、これを、現在では児童福祉事業ということで、児童福祉全般の事業を実務経験にカウントしております。これは、児童手当の支給業務とか事務処理も入っているものですから、ちょっとやはり専門性の確保の観点からはいかがかという観点から、いわゆるケースワーク業務、相談援助業務を一定経験するというような内容も盛り込んでおります。

 また、今年度予算におきましては、児童福祉法におきまして児童福祉司の任用後研修というのを義務づけておりますけれども、こういった研修の実施費用の補助を行う、あるいは、児童相談所等の研修センター、現在は横浜に一カ所でございますけれども、西日本にもつくるということで明石を予定しておりますけれども、全国一カ所から二カ所に拡充する、こういったような内容の予算を盛り込んでいるところでございます。

丹羽委員 児童虐待に関する相談件数は、先ほども申し上げましたとおり、年々増加いたしております。それにもかかわらず、例えば里親委託や施設入所者など、措置がとられた子供の数には、近年そんなに大きな変化は見られておりません。

 虐待の通告件数が増加しているにもかかわらず、代替養育を受けている子供の数が大きく変わっていない理由が、仮に受皿が不足している、また、今回の法案で進めようといたしております児童相談所の機能分化による介入的対応の強化、その目的のとおり機能していかないのではないか、こういうふうに考えられます。

 このため、一時保護所も含め、もし虐待を受けた子供の受皿が不足しているのであれば、その拡充が急務であるというふうに考えますが、厚生労働省はどのようなお考えでございますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 問題意識は、委員御指摘のとおりだと思います。子供の安全確保のための一時保護を適切に行うための体制整備、あるいは、一時保護を解除した後に安心して生活できる里親あるいは児童養護施設等の受皿を確保していくことが重要でございます。

 まず、一時保護でございますけれども、一時保護につきましては、必要な一時保護に対応できる定員設定を行いまして一時保護所を整備する、あるいは、里親、児童福祉施設、医療機関等に対する委託一時保護、直轄である場合と委託の場合がございますけれども、委託一時保護の活用等も行って適切に支援を確保する、こういったことにつきまして都道府県等に周知をいたしております。

 また、予算面でございますけれども、今年度の予算におきましては、適切な環境で一時保護を行うことができるように施設整備に関する補助単価を加算いたしますほか、これは個室とかそういうような、よい環境のための加算ということです、一時保護を実施するための専用施設に対する補助、これは賃貸物件とかそのための専用施設でございますけれども、そういった専用施設に対する補助などを行うことといたしております。

 また、ことしの三月の関係閣僚会議決定におきましては、一時保護所の環境改善、体制強化等に向けまして、「一時保護を必要とする子どもを適切な環境において保護できるよう、里親や児童福祉施設への委託一時保護を含め、一時保護の受け皿の適切な整備や確保を進める。」あるいは「一時保護所が安心・安全な場となるよう、個別的な対応ができる職員体制の強化や環境整備を促進する。」こういった内容が盛り込まれております。これらの対策を実施するための具体的な内容につきましては、一時保護所等の現場の実情も踏まえた上で今後検討することといたしております。

 また、里親、児童養護施設等の受皿の確保についてでございますけれども、これは都道府県等におきまして、児童相談所における虐待等相談対応件数あるいは一時保護児童数の伸び率等を踏まえまして必要な供給量を見込んでおりまして、そういった必要な供給量の見込みに基づいて、都道府県等において必要な受皿整備が現在なされていると承知をしております。

 その上ででございますけれども、現在、都道府県等に策定をお願いしております社会的養育の推進計画におきましては、保護が必要な子供の行き場がなくなることのないよう、改めて潜在的なニーズをしっかりと把握して受皿を確保する、こういったことを求めております。

 厚生労働省といたしましては、都道府県等の受皿の整備が着実に進むように、引き続き、都道府県等に対しまして施設整備あるいは運営費等の支援を行ってまいりたいと考えております。特に、平成二十八年の児童福祉法の改正によりまして、里親委託を推進することが明確にされました。したがいまして、里親を中心といたしました受皿の整備が進むよう、支援を充実させてまいりたいと考えております。

丹羽委員 今回の改正は、児童相談所が子供の安全確保を最優先としまして適切な介入的対応をするための必要な見直しだというふうに考えております。一方で、児童虐待の通告件数の増加に伴い、児童相談所の業務が非常に多忙になっているということも指摘されて久しくなっております。

 児童相談所が担っている業務の一部やそういったものを市町村又は民間団体に委託することで業務のスリム化を図るべきなんじゃないか、そういった指摘もございますが、先ほどの局長の答弁の中にもありましたけれども、介入だけではなくて、やはり支援も必要なんじゃないか。その辺はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 これまで、一時保護などの介入機能と保護者に対する支援機能を同一機関が担うことで、保護者との関係を考慮する余り、必要な保護がちゅうちょされてしまう、親の意向に反する一時保護を行った結果、その後の支援が進まないという点も指摘されているところでございます。

 こうした指摘も受けまして、児童相談所が、保護機能のみならず、支援マネジメント機能を確実に果たし、適切な対応がとれるよう、本法案におきまして、一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を分けるなどの措置を講じることとしております。

 これは、介入にしっかり対応するということをまず第一に挙げておりますけれども、それは逆に言うと、ケースワークもしっかり行えるようにということでありまして、機能としては分けるわけですけれども、児童相談所が一体的に行いますので、そういう意味では、介入と支援を適時適切に行使していくといいましょうか、つないでいくという観点で、いずれも円滑にする観点から、こういったやり方がいいのではないかということで今回の法案に盛り込んでいるところでございます。

丹羽委員 児童虐待の大きな要因の一つと言われていますのが、やはり親の貧困であったり、また親の孤立化であるということも言われております。

 そういった中で、やはり介入して子供の安全を守りながら保護者もしっかりと支援していくことは、厚生労働省またいろいろな役所が一体となってやっていくことが重要だというふうに思っていますので、ぜひこちらの方は、介入、支援、双方でしっかり進めていただきたいというふうに思います。

 法務省の方にもお越しいただいています。

 今回の法案の中で、従来の民法上の懲戒権の範囲を超える行為とともに、しつけを名目としたものであっても、子供に対する体罰は許されないことが明確に規定されました。一方で、民法の懲戒権のあり方について、法施行後二年を目途に検討を加え、必要な措置を講ずることとされております。

 今回の法案では罰則は設けられませんでしたが、児童虐待防止の実効性を高めるために、児童虐待罪の創設を求める意見なんかも出ておりますけれども、法務省の方におきまして、懲戒権の削除を含む見直しについて、現時点でどのようなお考えか、御答弁を願いたいと思います。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘がありましたように、この法律案には、施行後二年をめどとして、民法第八百二十二条の規定のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の検討条項が盛り込まれております。

 懲戒権の規定のあり方につきましては、国民の間でもさまざまな議論がございますが、法務省といたしましても、国会における議論等を十分に踏まえ、速やかに必要な検討を行っていきたいと考えております。

 具体的な検討の進め方につきましては現在検討中であり、見直しの方向性については今後検討することになりますが、この検討の際には、ただいま御指摘がありました民法第八百二十二条の規定を削除することや、懲戒という文言の当否といった点などを含め、さまざまな選択肢を視野に入れて検討されることになるものと認識しております。

丹羽委員 やはり、しつけといいながら介入させないという方も保護者の中には結構いらっしゃるなんという話もよく聞きます。法務省といたしましても、この見直しというのは非常にナーバスになりながら、難しい問題かもしれませんが、誰を守っているのかということが非常に大事です。保護者を守るわけじゃないです、子供を守らなきゃいけないんですよ。そのためにも、ぜひ真剣に御議論していただいて、検討していただきたいというふうに思っております。

 文部科学省にもお越しいただいておりますので、御答弁を願いたいと思います。

 野田市の事案の中で、秘密を守る約束で実施したアンケートの回答をどうして父親に渡してしまったのか、学校や教育委員会の対応に対して強い批判があったのは当然だというふうに認識しております。今後は、学校や教育委員会の現場においても、主体的な児童虐待対策が求められるというふうにも考えております。

 ぜひ、子供たちにも、虐待があった場合は、しっかりと、教師やいろいろなところでSOSのサインを出してほしい。先生に対してもそういったことがしっかりわかるような形で、授業の中に上手に落とし込むとかさまざまなやり方があるというふうに思っておりますので、ぜひ文部科学省の方にその辺の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 委員の方から、今回の野田の事案について、教育委員会の対応に問題があったのではないかという点、それから、学校において子供たちへのいわゆる相談の窓口という点について、二点御指摘いただいたと思っております。

 まず、今回の事案については、アンケートの写しを父親に渡した野田市教育委員会の対応というのは適切ではなくて、極めて遺憾であるというふうに考えております。アンケートの写しを父親に渡す際、児相や関係機関への事前の相談がなされずに、また、速やかに事後報告や情報共有もなされなかったということについて、関係機関との連携の不足についても問題があったというふうに認識をしております。

 文部科学省といたしましては、本事案を踏まえまして、厚生労働省、内閣府と連名で通知を発出いたしておりまして、学校、教育委員会と児相、警察等との連携に関する新たなルールとして、学校及びその設置者においては、保護者から情報元に関する開示の求めがあった場合は、情報元を保護者に伝えないこととするとともに、児相等と連携しながら対応すること、また、保護者が学校及びその設置者に対して威圧的な要求等を行う場合は、速やかに市町村、児相、警察等の関係機関や弁護士等の専門家と情報共有をすることとし、関係機関が連携して対応することということを示したところであります。

 また、委員御指摘の子供たちの相談窓口の周知につきましては、虐待の早期発見の観点からも、まさに委員と同じ認識でございまして、非常に重要であるというふうに考えております。

 こういった認識のもと、虐待はもちろん、いじめや友人関係、進路、さまざまな悩みで困ったことがあれば何でも相談をしてほしいと呼びかけることを目的といたしまして、三月十九日に、子供たちに安心して相談をしてくださいということで柴山文部科学大臣からメッセージを発表し、相談先として、二十四時間の子供SOSダイヤル等について周知を図ったところでございます。

 さらに、児童虐待を受けた子供たちへの支援に当たるスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等の専門家を活用した教育相談体制の充実についても取り組んでおります。

 文科省としましては、学校及び教育委員会において、情報の取扱いや児童虐待の早期発見、早期対応について、市町村、児相、警察等とも連携をして適切な対応が図られるよう通知の趣旨を周知徹底するということ、引き続き、厚生労働省や警察庁等の関係機関とも連携をしながら、今回のような悲劇を二度と繰り返すことのないよう、児童虐待防止対策にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

丹羽委員 ぜひ、丸山審議官、しっかりと対応していただきたいというふうに思っています。

 委員長、私も、ことしの三月まで娘が幼稚園にいまして、こう見えても幼稚園のPTA会長をやっていたんですよ、えっなんてよく言われるんですけれどもね。PTAに来る保護者は、大体そんなに問題ないんですよ。話を聞いてくれるんですよ。やはり手が届かないところの保護者、PTAに来ない保護者とか、PTAに行きたくても、連絡網に入っていない保護者というのは、ママ友のメールとかは結構意外に重要なんですよね。

 うちの家内も、何か去年、ママ友のメールから外されちゃったなんと言って、どうしたのと言ったら、携帯を変えたからと、そんなことがあったんですけれども、携帯を変えたらみんなに言わなきゃいけないのねなんて言っていましたけれども。やはりそういった保護者間の連携も非常に重要になっていますので、これは文部科学省でしっかり対応していただきたいと思います。

 時間も迫ってまいりましたけれども、ちょっと質問を一つ飛ばさせていただきまして、これまでも本当に厳しい指摘もございましたが、親が守れない子供を守るのは我々社会全体の使命であるというふうに考えております。虐待による痛ましい事件が起こった場合、児童相談所に全ての責任を押しつけるのは、これはフェアじゃないというふうに私も考えます。同じクラスの友人やそのお父さん、お母さん、近所の人々、学校の先生、通っている病院の医師や看護師さんなど、たくさんの周りの目で子供を見守る必要があるんじゃないかというふうに思います。

 児童虐待に対しては、私は、今は過剰になってもいいと思いますよ、ここまで社会の問題にもなっていますから。やはりそういったことを我々も認識しながら、子育ても昔と違うんだ、時代が変わって、子育ても新たな時代に来ているんだということを認識しながら、最近よく児童相談所の建設予定地に、地価が下がるとか、資料の三枚目にもお配りしていますが、反対する地域住民のそういった姿もありますけれども、やはり、悲惨な事件を再び起こさないためには、児童相談所だけではなくて、子供たちのSOSを見逃さないように我々一人一人が力を合わせていくことが重要なのではないかというふうに思っています。

 今回の法案で、体罰の禁止というのが盛り込まれました。法律に書くだけで即座に児童虐待がなくなるわけではない、私もその辺はわかっています。重要なのは、体罰によらない子育てなのではないだろうか、また、しつけについても、やはり保護者の理解も、よくよくしつけに対しても保護者も学んでいく必要があるというふうに思います。

 この令和の時代に体罰によらない子育てを広げていくことにつきまして、根本厚生労働大臣の御見解、御決意をお聞かせいただければありがたいと思います。

根本国務大臣 児童虐待に対する委員の認識あるいは委員の御指摘、私は本当にそのとおりだと思います。

 虐待によって子供の命が失われる事件が繰り返されること、これはあってはなりません。痛ましい虐待事案が繰り返されないよう、関係閣僚会議を開催し、政府全体で、昨年七月、十二月、本年二月、三月と、累次の対策の強化を図ってまいりました。

 昨年十二月には新たなプランを策定し、現在三千名の児童福祉司について、今年度一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とするなど、児童相談所の体制を抜本的に強化する。これに加えて、児童心理司も二〇二二年度に八百名増加、保健師についても全児童相談所に配置することとしております。加えて、市町村の体制強化についても、子ども家庭総合支援拠点を二〇二二年度に全市町村に設置することなどによって相談体制の整備を進めていきたいと思います。

 また、本法案では、以下の実効性のある対策を盛り込んでおります。体罰禁止の法定化。ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、介入担当者と保護者支援担当者の分離。児童相談所における弁護士等の配置促進。DV対策との連携強化。

 何よりも子供の命を守り、社会全体で子供を見守り、児童虐待防止対策を進めるため、全力で取り組んでいきたいと考えています。

丹羽委員 もう大臣は、ごもごもごもごもごもっともですよ。そのとおりですよ、大臣がおっしゃるとおりです。やはり、私が見ていても、大臣は非常に優しい方だというふうに思っています。だから、子供がこういった悲惨な事件に巻き込まれるたびに、大臣も、また厚生労働省の皆さん方も心を痛めていると思います。

 ぜひ、こういったことが起きないように、厚生労働省全体として、また霞が関全体といたしまして、行政全体といたしまして、しっかりとこの児童虐待に対して取り組んでいただきたいと思います。

 お後がよろしいようで。これで質問を終わります。

冨岡委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 児童虐待防止対策のための児童福祉法等の改正案、ずっと審議が続いているわけであります。もちろん野党の皆さんからも対案が出されているわけでありまして、ぜひとも、この委員会の現場で合意形成ができますように、関係者の皆様に更に御努力をいただくことをお願いしながら、内容に入りたいと思います。

 まずは、児童相談所の配置の考え方と設置数であります。

 児童相談所の機能ということで最初に議論したいと思います。

 私は、今から三十七、八年前、大昔に児童相談所に勤務をしておりましたので、最近、随分状況は変わっているな、こう思っております。私がいたときは県下に四カ所の児相でありましたが、今は六カ所という体制になっておりまして、児童相談所の中には一時保護機能を持っていない児童相談所もあるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、これもあわせて現状をお示しいただきたい。

 児童相談所の配置の考え方と設置数の経緯、あるいは一時保護機能との関係などについて御報告をいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、児童相談所の設置でございますけれども、かつては通知で人口五十万人に一つ以上というようなものもございましたけれども、現在におきましては、各都道府県等の判断により児童相談所が配置をされております。

 児童相談所の施設数でございますけれども、昭和からまいりますと、昭和六十三年度で百六十七カ所、平成十年度で百七十四カ所、平成二十年度で百九十七カ所、平成三十年度で二百十二カ所となっております。このうち、二百十二カ所のうちでございますけれども、一時保護所を設置している児童相談所は百三十四カ所、設置していない児童相談所は七十八カ所となっております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 昭和の時代から並べていただきましたけれども、漸次こうやって児童相談所の設置も進んでいるということであります。

 そこで、きょうは確認をしたいのでありますが、一時保護所なんですけれども、一時保護所は基本的には児相に附置されるというふうに思っているんですが、都道府県によっては、この一時保護機能を一カ所に集めて集中的にやるというところもあるようであります。

 こうした背景には、過去、私の時代は昭和の時代でありましたから、昭和の時代に、宿直の児童福祉司、心理判定員あるいは夜勤の保母などが、侵入をしてきた保護者あるいは一時保護された児童から殺害をされたという痛ましい事件がありました。そういうことで、一時保護所の機能を強化するために、県下の児相の一時保護機能を集約化していこうというふうにお考えになっている県もあるのではないか、こう思っているんです。

 しかしながら、平成の時代を経て今は令和の時代に入ったわけでありまして、これほど虐待事案がふえている中、改めて児相の一時保護機能が重要とされているというふうに考えております。あるいは、緊急一時保護という緊急性を問われる事態もあるわけでありまして、児相と一時保護所の一時保護機能というものをもう一回改めて考える必要があるんじゃないかと私は思っているんですが、この点はいかがでありましょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 経緯につきましては先生の方がずっとお詳しいと思いますけれども、現行の仕組みでございますが、一時保護所につきましては、法律上は、児童福祉法第十二条の四におきまして「児童相談所には、必要に応じ、児童を一時保護する施設を設けなければならない。」こう規定されております。

 一時保護所の現状でございますけれども、かなりばらついております。都市部で一〇〇%超えの一時保護所もある一方で、全国の平均入所率でございますけれども、これは六五・八%となっております。こういうことで、地域によってかなり一時保護所の実情、現状はさまざまでございます。

 また、児童相談所、県によっては、できるだけ家庭的環境で生活できるように、一時保護委託を、施設等への委託でございますけれども、積極的に活用している自治体もございます。

 こういった実情を踏まえますと、現在のところ、例えば中央児相に集中する、あるいは全ての児童相談所に一律に一時保護所を義務づけるといった一律の考え方はとっておりませんけれども、一時保護を必要とする子供を適切な環境において保護できるように、現場の実情を踏まえつつ、一時保護所の設置促進あるいは環境の向上に努めてまいりたいと考えております。

桝屋委員 昨日の参考人質疑で、泉参考人が御自分の言葉で、今から児相をつくられる、今整備しているという資料もいただきましたけれども、その中で、全国十三カ所の一時保護所を見て回ったと。言い過ぎだなと私は聞いて思いました。一時保護所の現場が虐待の現場だ、それぐらいひどい環境だみたいなことを言われて、ちょっと言い過ぎではないかと私は思ったのであります。

 しかし、そうはいいながら、やはり一時保護所の機能というのは、先ほど申し上げたように、通告があって、緊急性を要するという事態が十分考えられるわけでありまして、県下で一カ所、集中的にやるということでも、移動だけでも結構時間がかかったり、やはり、人口だけでなくて地理的な状況もあるんだろうと思います。

 先ほど局長がお示しをいただいた十二条の四、必要に応じてと。必要性は今大変に大きくなっているというふうに私は思っているわけでありまして、ここは一義的にはもちろん都道府県が主体的に考えていただくわけでありますが、虐待の問題を考えるときに、一時保護の機能というものを、一時保護委託ということはもちろん否定するわけではありませんけれども、児相においてやはり一時保護しなければならぬケースというのは必ずあるんだろうと思っております。二〇%台の利用率のところもあるということでありますが、こういうところも、ちょっと一回、本当にそれでいいのかどうか、二〇パー台というのはこの時代にいかがなものかな、こう思ったりするわけでありまして、ここは、我が党においても、これから現場をしっかり見ていかなきゃならぬと思っている次第であります。

 さて、今回の改正で、きょうも議論されておりますけれども、児相の介入機能と支援機能を分化させる、保護者らとの関係を考慮して必要な保護がちゅうちょされることがないように体制の整備を図る、こうされております。今の現実の二百十二カ所の全国の児相で本当にこうした体制をつくることができるのか、来年の四月から施行だというふうに思っておりますが、本当にこういう体制が一気にでき上がるのかということをいささか私は心配している一人でありますが、大臣、いかがでありましょうか。

根本国務大臣 児童虐待の相談対応件数等の現状は地域によってばらつきがありますので、児童相談所の職員についても、地域の実情に応じて必要な配置がなされているものと考えています。

 今回の改正の目的でありますが、もう委員からもお話がありましたように、ちゅうちょなく一時保護などの介入が行われる体制を整備することであり、これは、地域における職員配置の状況を踏まえて必要な体制を整える必要があると考えています。

 児童相談所においては、これまで、一時保護などの介入機能と保護者に対する支援機能を同一機関が担うことで、保護者との関係を考慮する余り必要な保護がちゅうちょされてしまうという点が指摘されてまいりました。この点から、担当者を分離することが望ましいと考えております。

 ただ、今の現状の実態を申し上げると、機能分化している児童相談所が三五・四%、機能分化していない児童相談所が六四・六%という現状にあります。その意味で、委員も御指摘になるんだろうと私も思います。

 規模の小さい児童相談所などでは、急なケースによって、機械的に担当者を分離することがかえって機動的な対応に支障を来す場合も想定されますので、一律に担当者を分離するのではなくて、ちゅうちょなく一時保護等の介入が行われる体制整備という法律の趣旨を踏まえた上で、そこは柔軟な対応が必要な場合もあると考えております。

 ただ、いずれにしても、地域の実情に応じて、ちゅうちょなく一時保護等の介入が行われる体制を整備することが重要だと思います。今回の児童福祉法等の改正法案に加えて、本年三月に決定した抜本的強化に基づき、専門人材の確保、育成に関する方策など、体制整備の取組内容の周知、あるいは介入的な対応等に着目した研修の充実やアドバイザーの派遣を行うこととしており、こういう形の支援、取組を通じて子供の命を守る社会づくりを進めていきたいと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 児相の置かれた環境によって柔軟にというお話もございましたけれども、冒頭大臣が御報告されたように、今、介入と支援の機能を分化している児相が三五%ぐらい、残りの六四、五%はまだできていないというわけでありまして、これを来年の四月から基本的に分化させていこうということでありますから、私は、これは大変な児相の世界で大きな変化だろう、こう思っているわけであります。

 そこで、柔軟な対応ということでちょっと確認をしたいのでありますが、法律案に「児童の一時保護を行った児童福祉司以外の者に当該児童に係る保護者への指導を行わせることその他の必要な措置を講じなければならない。」とされているわけであります。この「その他の必要な措置」というのは具体的にどういうことなのか、いま少し法律の趣旨を御説明いただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案におきましては、保護者への指導を効果的に行う観点から、一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員に分けるなど、その他の措置も含めて措置を講じることとしておりますけれども、この点につきましては審議会で御議論いただきました。その際に出ておりましたのは、一つは、介入担当部署と支援担当部署の部署分けでございます。典型的な例といたしましては、部署分けと職員を分けるということでございまして、そういう意味では、法律からしますと、その他の措置の典型的なものは、介入部署と支援担当部署を分けるというのがその他の措置の内容でございます。

桝屋委員 わかりましたようなわからないような御答弁でありますが、さっき大臣がおっしゃった、三五%、今分化していると。これは多分、いずれも虐待事案が多い児童相談所でそういう対応がされているんだろうと思いますが、最も効果的な組織体制、児相の体制としてどうあるべきなのかということが私は疑問なんです。

 今局長がお答えになったように、部署を分けるということが典型的な状況なのかなと思いますが、さっき大臣がおっしゃった、児相の置かれた環境によって柔軟にというようなこともあるわけでありまして、一律の形ではないんじゃないかという気が私はいたします。組織を分化するのか、例えば介入班として別の組織をつくるということなのか、あるいは専門職を配置して介入、初期段階の対応をやっていくというようなことなのか、いろいろあるのではないか。

 資料にありますように、今の二百十二の児相を整理されて、A、B、C、D、Eのパターンに分けておられまして、分化されているのが三五パーということでありますが、例えば虐待対応専門部署をつくってその中で対応している、特にケースが多いところはそういう児相もあると思うんですが、虐待対応専門部署の中で初期対応とそれから支援を一緒になってやっているケースもあるんだろうと思うんですね。

 そうすると、今後、部署を分けた方がいい、人を分けた方がいいとなると、この虐待対応専門部署の中で初期対応と支援を一緒にやっている児相については、では支援については別のセクションにするというようなことが求められるのか、このあたりはなかなか悩ましいなと思っております。

 これは、いずれにしても、分ければ分けたで連携が必要になってくる。やはり児相というのは、虐待ケースについても、初期対応から保護者の支援ということまで一貫して取り組むということが、専門家、専門職としてはそれを一体的に取り組むということがスキルのアップになるんだろうと思いますが、それを別々に分けると、あるときはこっちをやり、あるときはこっちをやる、そういう人材養成の組織体制を考えるのかもしれませんが。

 何を言いたいかというと、これはやはり来年の四月一日が施行でありますから、六十数%はまだこの体制ができていないわけでありますから、今、五つのパターンぐらいで調査をされておりますけれども、それぞれの状況に応じて具体的なきめ細かなガイドラインをぜひ検討して示さないと、それでなくても児相というのは、対財政当局あるいは人事当局から大変厳しい人事査定と財源の厳しい中で、アローアンスが全くない中で懸命に動いているわけであります。しかも、先ほどの説明の中では、ずっと昭和、平成と拡充してきたという中で、ぎりぎりの中で来年の四月に向けてこの体制を見直さなきゃならぬということでありますから、ここは、国においても相当きめ細かな支援策といいましょうかガイドライン等をお示しして取り組まなきゃならぬのではないかと思っているんですが、局長さん、いま一度、対応策についてお答えをいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、その他の措置、部署分けと申しましたけれども、部署分けを機械的にしてくれということではありません。

 最も効果的な組織体制につきましては、先ほど大臣からもございましたけれども、介入担当部署と支援担当部署を組織として分ける、あるいは、規模の小さな児童相談所では、部署に分けることによって、担当の不在で柔軟対応ができなくなるといったような課題もあると思います。そういう意味では、地域の実情に応じた対応ということが基本だと思います。

 その上ででございますけれども、多様な対応ということで、国としてどのような支援をガイドライン等を含めましてしていくかということでございます。

 調査研究を行ったわけですけれども、まず、今年度に、介入と支援を分けて対応する好事例の収集を行いたいと思います。その上で、専門人材の確保、育成に関する方策など、体制整備の取組内容の周知、あるいは介入的な対応等に着目した研修の充実、アドバイザーの派遣等を行うこととしております。

 そういう意味では、調査研究は行いましたけれども、各都道府県等における実態とかそういうものを更に深掘りしてよく把握した上で、どのような形がいいか、自治体ともよく相談、協議しながら進めてまいりたいと考えております。

桝屋委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 それから、支援のあり方なんですけれども、先ほど同僚議員からも議論がありましたが、きのうの宮島参考人からも意見が出されましたが、市町村の役割あるいは虐待対応の市町村の対策の強化ということが必要だというお声をいただきました。

 この点については、二〇〇四年、児童福祉法の改正で、虐待の通告を受ける機関、これは市町村も受けるということになっているわけでありまして、虐待の支援の受皿機能として市町村は大事だなと。

 ただ、現場を見ますと、ここは、私、きょう議論するので現場もずっと見て回りましたけれども、そのとおりだ、今からです、準備は今からやるんです、こういう状況でありまして、ここは、来年の四月から今の介入と支援の児相の体制、取組が開始になるわけであります。市町村の受皿、虐待事案の特に支援の機能としてもまさにこれからのような気がしているんですけれども、この点も、局長、いかがでありましょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止に関しましては、発生予防、早期発見、次の段階が児童虐待発生時の迅速的確な対応、それから被虐待児童への自立支援、これを切れ目なく一連の対策として行っていくということでございます。

 その中で、発生予防、早期発見あるいは虐待発生時の迅速的確な対応、これにおきましては、身近な市町村は極めて重要な役割を担っておると考えております。

 御指摘がございましたけれども、制度改正で市町村が通告先と位置づけられた後でございますけれども、相談対応件数は年々増加しておりまして、二〇一七年度には、市町村の相談対応件数でございますけれども、十万件を超えておりまして、二〇〇五年度と比較して二・七倍になっております。こうしたことで、市町村の体制強化は急務と考えております。

 市町村の体制強化を図るために、たびたび出てまいりますけれども、新プランでございますけれども、昨年末の新プランにおきましては、二〇二二年度末までに、子供や家庭に対する相談支援を行いますいわゆる市町村子ども家庭総合支援拠点を全市町村に整備する、それから、要対協の進行管理を担います調整担当職員につきまして、全市町村において常勤となる配置を進めていく、こういったことを決定したところでございます。

 こういったプランに基づきまして今年度から地方財政措置も講じておりまして、引き続き必要な支援に努めてまいりたいと考えております。

 また、この三月の関係閣僚会議決定に基づきまして、市町村において訪問支援あるいは地域における支援体制の構築を進めるといったことも決定いたしておりまして、この決定に基づきまして、概算要求に向けて、必要な財政支援について検討を進めてまいりたいと考えております。

桝屋委員 そこで、今御説明のありました市区町村子ども家庭総合支援拠点、あるいは、その前に、これは地方創生でも整備を進めたのでありますが、日本版ネウボラ、子育て世代包括支援センター、この機能というのは市町村の現場ではどういう役割分担になるんでしょうか。場合によっては、これは一体的にやるということでもいいんでしょうか。

 この整備状況と、今、子ども家庭総合支援拠点、これは二〇二二年に向かって全市町村でというふうにおっしゃったんだけれども、それぞれ、今のネウボラも含めて、今どういう整備状況で、今後、全市町村でやるんでしょうけれども、その両方の関係ということではどういうことになるのか、御説明をいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、現状でございますけれども、二〇一八年四月時点におきまして、子育て世代包括支援センターは、七百六十一市町村、千四百三十六カ所設置されております。

 それから、子ども家庭総合支援拠点でございますけれども、二百十二市町村、二百五十一カ所設置されております。

 子育て世代包括支援センターにつきましては、二〇二〇年度末までに全国展開を目指すという目標を掲げております。

 子ども家庭総合支援拠点につきましては、先ほど申し上げましたけれども、新プランにおきまして、二〇二二年度に全市町村に設置するという目標を設定しております。

 これらの役割でございますけれども、子育て世代包括支援センターは、妊娠期から子育て期までの家庭一般に対して支援を行う機関、いわばポピュレーションアプローチ的な機関でございます。

 子ども家庭総合支援拠点ですけれども、これは、支援が必要な子供、あるいは家庭からの相談に応じて児童相談所等の関係機関と連絡調整を行う機関でございます。

 そういう意味では、役割は違うわけですけれども、相互に連携、密接に関連しますので、一体的な運用ということも必要に応じて行っていくというようなことかと思います。

桝屋委員 済みません。時間がもうなくなってまいりました。

 今の状況はわかりました。早急にこの体制を進めなきゃならぬなと思っているんですが、きょうは総務省に来ていただいております。

 総務省は、児童虐待防止対策総合強化プラン、これに基づいて地方財政措置をするということで、今年度、百九十億動いているというふうに思っておりますが、この内容について御報告をいただきたいと思います。

多田政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のございました新たなプランを踏まえた、緊急総合対策の更なる徹底・強化についてをことし二月に決定されました。児童福祉司を千七十名程度増加させるなどの取組を行うこととされております。これを踏まえまして、児童福祉司等に係る地方財政措置を大幅に拡充するということにしてございます。

 令和元年度の地方交付税の算定で、人口百七十万人を想定している標準団体の道府県当たり、児童福祉司数を、四十二名から十六名拡充し五十八名に、それから児童心理司などの方々の数を、二十八名から四名拡充し三十二名ということで充実をすることとしてございます。

 また、市町村に関しましては、子ども家庭総合支援拠点及び要保護児童対策地域協議会に関する職員について、市町村の人口十万人の標準団体当たりそれぞれ一名を新たに措置することといたしてございます。これらによりまして、御指摘のとおり、地方交付税の算定額につきましては、前年度より百九十億円程度増加する見込みでございます。

桝屋委員 総務省さん、実態をどう理解しておられますかね。

 これだけ確認ですが、今の説明で、児童福祉司、人口百七十万人当たり四十二人から五十八、こうおっしゃって、十六人増の基準財政需要額の積算根拠に入れたと。これは結構なんですが、実態はどのぐらいになっているんですかね。押さえたことはありますか。これは浜谷局長に聞いた方がいいんですかね。

 地財措置で行われている、三十一年度、児童福祉司が五十八名、これは、ちゃんとこのとおりいくのかどうか、百七十万人に対して。その数字だけでもちょっとわかれば。いろいろな人に聞くと、いやいや、とてもとてもこのままではいっていない、三十人から三十六人、三十人台ではないか、こういう話もありますが、今の実態は総務省は押さえていますか。

多田政府参考人 お答えいたします。

 地方交付税の算定の方でいいますと、平成三十年度で、児童福祉司は先ほどの標準団体で四十二名、それ以外の児童心理司等の方々については二十八名でございますが、先ほど申しました新プランでの数字でいきますと、二〇一七年度で、つまり平成二十九年度で、児童福祉司が三千二百四十名、児童心理司が千三百六十名ということでございます。

桝屋委員 これはまたちょっとしっかり詰めたいと思いますが、実際に交付税措置された数字がそのとおりいっているかどうかということは大変気になるわけで、ただ、ことし、市町村子ども家庭総合支援拠点職員あるいは要対協の担当が措置されたということは本当によかったなと思っています。

 最後に、浜谷局長、これでちゃんと千人増員できて、きちっとなるかどうかということのお話を伺って、終わりたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 厚労省といたしましては、地方財政措置、それから採用活動への支援なども行っているところでございます。地方団体と協力いたしまして、目標が達成できるように全力で頑張ってまいりたいと思います。

桝屋委員 もう少し掘り下げたいのでありますが、同僚に時間を譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 児童虐待の防止につきましては、与野党ともに、子供の命を守る社会にというこの思いは共有をさせていただいていると思っております。

 そこで、きょう、貴重な機会でもございますので、厚労省並びに文科省、そして野党の法案につきましても質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、大口副大臣にお伺いいたします。

 今回の野田市の事案につきましては、児相、学校、警察等の連携が非常に課題となりました。

 そこで、公明党は、二月十二日、厚生労働、文科部会等の合同会議を開催いたしまして、その席上でも、またあわせて十九日に行いました緊急提言におきましても、文科と厚労と一体となって問題点を検証、共有をして、実効性のある再発防止策を検討すべきである、なかんずく、そのときには、大口副大臣また浮島文科副大臣が力を合わせてしっかりと一致してやってもらいたいということを要請いたしました。

 そこで、改めて大口副大臣に、学校との連携上の課題についての御認識と、また連携強化のための取組状況についてお伺いいたします。

大口副大臣 お答えします。

 それこそ今の御要請もいただきまして、平成三十一年、ことしの二月に、厚生労働省及び文科省が連携をして効果的な実施をするために、私とあと浮島文科副大臣をトップとするプロジェクトチーム、これを設置させていただきまして、このプロジェクトチームでは、二月の関係閣僚会議で設定することとされた新たなルールの決定や地方公共団体、学校等への周知、児童相談所や学校等における緊急安全確認などの調査結果のフォローアップなどについて、関係省庁で連携を図りつつ取り組んできておりまして、直近では四月二十六日に五回目の開催をしているところでございます。

 その上で、今回、御指摘のように、やはり学校と児相との連携を強化するということが極めて大事であるということで、現行におきましても、学校及び教職員について、児童虐待を発見しやすい立場であるということから、児童虐待の早期発見に努めるとともに、支援を要する子供等を把握した場合、その情報を市町村に提供するよう努めるほか、児相や市町村から児童虐待に係る情報の提供を求められた場合、情報を提供できることとしているところで、こうした連携協力体制を構築しているところであります。

 しかしながら、最近、児童虐待事案において、関係機関からの情報漏えいにより虐待リスクが高まるなどの連携が十分でない事案が生じたわけでありまして、今回の法案で学校の教職員に対する守秘義務の規定を盛り込むとともに、その守秘義務は関係機関との連携を妨げるものではない旨を明確化することにより、積極的な連携強化につながるようにしております。

 合同プロジェクトチーム、更に緊急安全確認のフォローアップをしながら、そして、しっかり連携の強化について取りまとめもしてまいりたいと思います。

高木(美)委員 よろしくお願いいたします。

 そこで、文科省にお伺いしたいのですが、早速、文科省も、学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き、五月九日に公表されました。三十七ページにわたるもので、虐待対応について、文科省におかれましても短期間のうちに充実させたものを取りまとめられたということには評価をさせていただきたいと思います。

 ただ、一方で、これだけの内容を今度は教員が読みこなすのは非常に難しいのではないか、各学校単位で研修を実施するなど、その浸透を図っていただくことが重要ではないかと考えております。

 現場での浸透をこれからどのように進めていくのか、文科省に伺います。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の本手引につきましては、今回の事案も踏まえまして、学校、教育委員会等の一般教職員向けに、児童虐待に当たっての重要な知識や着眼点について記載をしているところでございます。

 文科省としましては、本手引の内容につきまして、会議等のさまざまな場面で周知をしていくとともに、学校、教育委員会等における研修等で活用いただくことで徹底を図っていきたいと考えておりますが、その具体の会議につきましては、六月の十三日の日に、令和元年度の第一回目の都道府県教育委員会生徒指導担当者連絡会を開催いたしまして、手引の内容について、そのポイント等をわかりやすく説明をして、しっかりと周知を図っていきたいというふうに考えております。

 さらに、去る三月十九日の関係閣僚会議決定に基づきまして、今後、児童虐待対応に関する具体的な事例を想定した研修教材を作成し、学校長等の管理職に対する研修を推進することといたしております。

 こうした研修で得た知見を校長等が学校現場に持ち帰って、各学校の中での校内研修、そういったところでしっかり一般の教職員に対しても共有をいただくよう促していきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 教員の方たちの姿勢が非常に重要ですので、よろしくお願いいたします。

 それに関連しまして、この手引の中では、虐待の影響によるさまざまな問題を示すことで、教職員から叱られたり友達から疎まれたりする結果、周囲への不信を更に強め、問題を悪化させる不幸なケースもある、虐待を受けた子供は、大人への不信感や恐怖心を抱いていることや自己肯定感が著しく低いことが多く、教職員は、子供の言動の背景をよく理解した上で、学校で安心して過ごせるよう受容的に接し、不安や緊張を和らげたりすることが必要、このように書かれているわけで、私は、こうした教員の、背景を理解しながら接していこう、背景を理解していきたいというこの強い心情またその考え方というのは、非常にこれは大事な視点であると思っております。

 子供は当然問題行動を発出するわけで、自傷とかまた他害とか、時には暴力とかといった、それを表面的に捉えるのではなくて、その背景のところをしっかりと理解して、そういう子供はこういう行動をするのだという、やはりそうした知識をしっかり持っていただきながら教師のかかわりができるように取り組んでいただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 虐待を受けた子供は、大人への不信感や恐怖心を抱いていることや自己肯定感が著しく低いことが多く、委員の指摘どおり、教職員は、子供の言動の背景をよく理解した上で、学校で安心して過ごせるよう受容的に接し、不安や緊張を和らげたりすることが必要であるというふうに認識をしております。

 また、これも御指摘いただきましたように、不登校や非行、いじめ、自殺等の課題は、いわば表にあらわれた現象面の課題でありますけれども、これらの背景としては虐待が要因となっている可能性があることに留意すべきであるというふうに考えております。

 これらのことは手引においても記載をしているところでございますけれども、文科省といたしましては、学校、教育委員会におきまして、本手引の趣旨を踏まえた児童虐待への対応が行われるよう、会議等さまざまな機会を捉えてしっかりと周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

高木(美)委員 もう一問、文科省にお願いいたします。

 体罰の禁止ということで、今回、この委員会でも議論がされております。

 この体罰禁止につきまして、子供自身に、体罰はしてはならないし、されるものではないのだという、子供自身がそれを知るということが大事ではないかと思います。しつけのためであっても、親が子供に体罰を加えることは許されない、こうしたことを教育現場において子供に伝えておくことが必要と考えますけれども、文科省のお考えを伺います。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の点は大変重要であるというふうに考えております。

 親からの体罰も含めて、虐待の解釈につきましては、一義的には、法律を所管しております厚生労働省において整理すべきものというふうに考えておりますが、体罰の範囲や体罰禁止に関する考え方について、国民にわかりやすく説明するためのガイドライン等を厚生労働省において作成をするというふうに承知をいたしております。

 その上で、子供たちを虐待から守るため、学校教育を含めて、親からの体罰などの虐待に関して、発達段階に応じてどのように伝えていくのがよいかについては、厚生労働省とも相談をしながら、しっかりと検討していきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 重要なところですので。子供たちは、やはり、学校教育で教わるということは、それは一つの規範として受けとめるという非常に大事な場であると思っております。ぜひとも、厚労省と密接な連携の上でお取組をお願いいたします。

 そこで、ちょっと一問、後に回させていただきまして、野党の法案につきまして伺わせていただきたいと思います。

 まず、ずっとテーマとなっております、中核市に児相を必置するということにつきまして伺いたいと思います。

 昨日も、参考人質疑におきましてさまざまな御意見を承ったところでございます。実は、東京都の特別区では、もう既に皆様御存じのとおり、児相の設置につきましては、二十三区のうち練馬を除く二十二区が実施又は検討するということになっております。

 きょう資料を用意させていただきまして、A3で恐縮ですが、練馬区報をそのままコピーさせていただきました。一ページ目の下のところに前川区長のコメントが載っておりますが、実は、前川区長は、ここをお読みいただきますとおわかりのとおり、青春時代から長年児童虐待防止にかかわってこられまして、東京都の福祉局長もお務めであったという経歴の方でございます。

 そこで、二ページをごらんいただきたいのですが、ここでは、この上の方に書いてあります、「虐待通告は急増しています。このうち、非該当や助言で終わる軽微なものが約九割、一時保護や施設入所を必要とする重篤なケースは少なく横ばいです。」すぐ下のところに、「一時保護などの重篤なケースは一万人に六人です」。このようにしております。さらに、矢印の下のオレンジの囲みですが、ここに、親子分離等の「重篤なケースは、施設入所など広域的な対応、児童福祉司・児童心理司・医師等による専門的な対応が必要です。また、在宅指導も含め長期的な支援が必要になります。」

 そこで具体的に一、二、三とありまして、一時入所や施設入所は、親の連れ戻し防止のため、地域から子供を離すことが必要、広域的な対応。二として、子供のトラウマ等には専門的ケアが不可欠。三、リスクが高いケースは、離婚、再婚、別居、また児相の指導を避けるなどの理由により転居が多いので、広域的な対応が必要。このようにあります。

 そこで、三ページ目になりますが、これは昨日も西尾参考人から示された資料と同じです。

 この右側のところに、都の児童相談所、ここでは強い介入と指導を行う。そして、下の、区の子ども家庭支援センター、練馬区がこれらを中心にと進めていますが、寄り添い支援ということになっておりまして、ここでは、親子の心情に寄り添った相談対応を担う、このようにしております。

 昨日の西尾参考人のお話の中でも、都道府県と区市町村が、役割分担のもと、しっかりとルールを決めながら連携を強化し、それぞれの機能を強化し、更に連携そのものも強化する、それが児童相談所、行政全体の対応力をアップするものと考えております、このように述べていらっしゃいます。

 私は、この練馬区の主張は十分理があると思います。このようなやり方も効果的なのではないかと考えます。

 特別区や中核市全てに児相を設置するということも、メリットもありますけれども、反対に、専門人材の不足などの課題もあります。やはり、大臣から何度も答弁をいただいておりますとおり、地域の実情に応じて判断すべきなのではないかと考えますが、野党の法案提出者の方たちのお考えを伺います。

阿部議員 野党案への御質問ありがとうございます。初めての野党案への御質問ですので、深く感謝を申し上げます。

 そして、今高木委員からお示しいただきましたような練馬区の事案、市町村の窓口業務と児童相談所の役割分担並びに連携ということで、大変学ぶところの多い御提示かと思います。

 その上で、そもそも私ども野党が児童福祉あるいは児童虐待に対してどのような考え方を持って中核市における児童相談所の設置を考えたかということをまず申し述べさせていただきたいと思います。

 少子高齢社会が進む中で、児童相談所の設置ということについても、もちろん、地域の実情に応じて判断されるべきという考え方、当然あり得ますし、地方分権という観点からも一つの大事なお立場であると思っております。

 その一方で、児童の生命及び身体を保護するための事項については、国が責任を持って、いわばユニバーサルサービスとして提供していくことも重要と考えており、近年、児童虐待対応件数が急増する中で、適切に事案の重大性を判断し、介入につなげるためには、基礎自治体におけるきめ細やかな対応が重要であり、また、児童と家庭に関する相談についての基礎自治体の役割が強化されることも重要でありますが、その一方で、一体となった例えば中核市における児童相談所の設置というものは、行政単位がともに窓口と中央児相を持つということによるメリットと考えております。

 その上で、児童相談所の設置は一定の負担を伴うものでございますから、本法案では、人口規模、財政規模等を勘案して、中核市及び特別区については児童相談所の設置を義務づけることといたしました。

 現在、中核市及び特別区のうち児童相談所が設置されているのは、横須賀市、金沢市、そして明石市、また、近く奈良市にも予定されておりますが、そのいずれの市長、首長も、ともにあることの効果を皆さんにお伝えで、昨日の参考人の泉さんもそうであったと思います。

 このように、中核市及び特別区への児童相談所の設置が、逆に、にもかかわらず進んでいない要因といたしましては、財政面や専門的人材の確保において問題があることも挙げられるのも事実であります。

 そこで、野党案では、中核市及び特別区が財政面や人材面の課題を乗り越えることができるよう、改正後の児童福祉法第五十九条の四第七項において、国による児童相談所の職員の人材育成や、その確保のための支援、財政上の措置等の規定を設けたところでございます。

 このたび、人材育成研修等を担う新たなセンターが明石市に開設されましたことも、今後十分にその活用が期待されるところと思います。

 なお、高木委員の御提示になった児相の役割、自治体窓口の役割、介入と支援ということには、更に私は深まった論議が必要と考えますので、当面、今の御答弁とさせていただきます。

高木(美)委員 今阿部委員から御指摘がありましたとおり、私も、先ほど来議論のあります介入と支援、これをどういうルールで、どのような連携をしていくのか、ここは更に細かい詰めと、それからまたその周知というものが必要かと思います。

 ただ、一方で、中核市に必置ということにしましても、現実的には、財政がある程度これに回せる自治体は、明石市もそうです、税収がふえているという結果が昨日も提示されましたけれども、やはり財政がある程度自分たちで回らなければ、必要な人材をプラスして運営することもなかなか難しいという、こうした専門人材をどのように確保していくのか等々考えますと、やはり、これから五年間とか、政府が今提案をしておりますとおり、財政的な支援、またそれから専門人材を育成するための支援、これをしっかりと整えながら後押しをしていくという、あくまでも地方自治の本義にのっとって進めていくという、この考え方が重要ではないかということを改めて指摘させていただきたいと思います。

 次に伺いたいのは、野党法案におきましては、保護者支援プログラム、いわゆる特定指導を義務化するとしております。保護者に対する指導及び支援の強化として、保護者の意に反する施設入所等の措置がとられた場合、当該保護者について特定指導を行わなければならない、また、児童虐待を行った保護者について指導を行う場合は、特定指導を行うよう努めるものとする、このようにされております。

 既に、政府の関係閣僚会議が決定をしました児童虐待防止対策の抜本的強化におきましても、保護者支援プログラムの推進は盛り込まれております。取組を強化、推進するという必要性につきましては、認識を共有するものです。

 ただ、保護者指導を一律に義務づけるということには、私は慎重な検討が必要と思っております。それは、支援プログラムが実効性を上げるためには、あくまでも本人の意識、意欲が重要でありまして、あくまでもその改善状況をよく見ていく必要があるのではないかと思います。

 例えば、保護者が子供を取り返すことを目的に形だけの受講を受けるとなりますと、実際は改善されていないのに、私はプログラムを受けました、子供を家庭復帰させてくださいと、かえって家庭復帰を求める口実を与えることになりかねないのではないかということを考えます。これにつきまして、提案者がどのようにお考えか、伺います。

山井議員 高木先生、重要な御指摘ありがとうございます。

 本法案においては、保護者に対する指導を義務づけているのは、保護者の意に反する一時入所等の措置がとられる場合に限られており、このような場合には、一般的には虐待の程度が深刻である場合であることから、その深刻さを保護者が自覚する必要があり、支援プログラムを義務づけることには十分な意義があると考えております。

 確かに、保護者が子供を取り返すために保護者支援プログラムを形だけ受講するケースも考えられますが、そうした形であっても、プログラムを通じて受講者の自覚が促されることが期待されます。

 なお、施設入所等の措置の解除については、児童福祉司の意見を聞くとともに、指導の効果や保護者の心身の状況、児童の家庭環境などを総合的に勘案した上で判断されるものであり、プログラムを受講したからといって解除されるものではありません。したがって、御懸念のような事態は生じないものと考えております。

 私も、学生時代、六年間、母子生活支援施設というところでボランティアをしておりましたが、そこで、DV被害のお母さん、あるいは虐待を受けた子供たちと接してきましたけれども、子供は悪くない、とにかく親が変わらねばということは強く感じましたので、高木先生もおっしゃっていましたけれども、この保護者支援プログラムという保護者への支援、指導というのはしっかり進めていきたいと考えております。

高木(美)委員 やはり、あくまでも専門的な見地に基づいて慎重に判断されるべきものであるということを重ねて申し上げたいと思います。

 そしてもう一問、児童に対する意見聴取ということです。

 野党法案におきましては、施設入所等の措置や一時保護の実施又は解除に当たっては、当該児童の意見を聴取しなければならない、このようにされております。結愛ちゃんの事件、また心愛ちゃんの事件、ともに子供の声を大人が受けとめ切れなかったということは私たちの大きな反省でありまして、子供の意見表明を尊重することは重要と考えております。

 しかし、これまで私も青少年特別委員会等さまざま携わらせていただきながら、この児童虐待につきましても防止を推進してまいりましたが、やはり、被虐待児の心情の中には、自分が悪い子だから、自分がいい子にさえなれば、お父さん、お母さんはこんなふうに自分をぶったりしないのだ、こういう心情があるということです。

 加害親を責めるよりも自分を責めているという、このケースが本当に痛ましい状況なわけでありまして、子供は、どんな親でも親が好きなのだな、何とか親に気に入られたい、大事にされたいという、その無限の思いがあるのだなということを、いつも私も胸痛む思いでさまざまな事例を受けとめさせていただいております。

 そういう中で、こうした子供の意見聴取を一律に義務づけるということは、かえって、現場で、迅速な分離とかまた保護とか、こうしたことを進めなければならない上において制約になるのではないかと考えます。

 抜本的強化についてにありますとおり、施行後二年を目途に必要な検討を進めると政府としてはしておりまして、私はそういう慎重な検討が必要なのではないか。年代に応じ、家庭状況に応じ、どのように判断をしていくのかということが、専門的な検討がされるべきと考えております。

 提出者の認識を伺います。

阿部議員 大変重要な御指摘をありがとうございます。

 私ども野党といたしましては、今回の結愛ちゃんの事件、心愛ちゃんの事件ともに、子供たちが声を発したところから社会に大きな気づきを与えてくれたものと思い、また、そこまで放置した社会や政治の責任というものも重く見ております。

 そして、高木委員御指摘のように、虐待をされている子供たちすら親を好きであり、親をかばい、親によって殺されていく瞬間も親を求めているのも事実でございます。

 そうであれば、一体どのようにすれば私たちはその子供の意見を受けとめて次の施策に、守るための政策に向けていけるかということであり、児童虐待を受けた児童に対しては、施設入所等の措置や一時保護について、これらは大きく環境が変わるときですが、とりわけ児童の権利の利益に重大な影響を与える場面であることから、児童みずから意見を表明する機会を設けることが重要であると考えております。

 そして、そのためには、高木委員も御指摘でありますが、児童の意見表明をどのような形で実際にできるようにするかということが重要になり、その際には、児童の心身の状況や環境等に十分配慮することも言うまでもございません。

 御指摘の迅速な分離や保護の制約になるのではないかという懸念に関しましては、私どもの法案では、ただ単に児童の意見に基づいて分離や保護の判断を行うとしているわけではなく、児童の心身の状況や環境等に十分配慮して意見を聞いた上で、児童を取り巻くさまざまな状況を考慮して判断が行われるというふうにいたしており、その点では、分離や保護を制約するものではない、またそうあってもならないと考えております。

 なお、本法案では、児童の意見聴取に関する規定を設けることに加えて、附則第六条第四項において、児童の意見の代弁や意見表明の支援のための制度の導入など、いわゆるアドボケート制度、子供オンブズマン制度の構築に関する検討を行う。これは、与党もそうでありますが、行うまで待つのか、それとも可能なところからやっていくのかというところで、私どもは、直ちにこうした意見を聴取するということをかなえていきたいと思うものです。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

高木(美)委員 ありがとうございました。

 今、野党案提出者の皆様に三問伺わせていただきましたが、それぞれ、いわゆる政府案とそれから野党案と、当初は大きな隔たりがあるかなと思いましたが、その進めていく方向性、そしてまた検討をどのようにしていくのかという、若干の隔たりはあるものの、方向性は同じであるということを確認させていただきました。ありがとうございました。

 最後に、大臣に、これまでの議論を踏まえまして、児童虐待根絶への御決意を伺いたいと思います。

根本国務大臣 虐待によって子供の命が失われる事件が繰り返されること、これはあってはならない。痛ましい虐待事案が繰り返されないよう、関係閣僚会議を開催するなど、政府全体で累次の対策の強化を図ってまいりました。それにもかかわらず、本年一月に千葉県野田市において痛ましい事件が繰り返されてしまったこと、これはまことに残念であり、事態を深刻に受けとめております。

 最近の児童虐待事案においては、しつけと称して児童虐待を行う事案、関係機関からの情報漏えいにより虐待リスクが高まった事案、DV対策との連携が必ずしも十分ではない事案などが生じておりました。また、児童相談所の管轄区域が大き過ぎることにより、きめ細やかな対応が十分にできなかったのではないかという指摘もあります。

 このため、本法案では、体罰禁止の法定化、学校、教育委員会などの関係機関の職員は児童に関する秘密を漏らしてはならない旨の規定の整備、DV対策を担う婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターの職員は児童虐待の早期発見に努める旨の規定の整備、児童相談所の管轄区域に関する参酌基準の設定といった事項も盛り込むこととしたものであります。

 このほか、児童相談所を始めとした自治体の体制強化、関係機関間の連携強化の観点から実効性ある対策を盛り込んでおり、ただいま委員から大変貴重な議論、意見が展開されたと思っております。これらを通じて、痛ましい事件が繰り返されることのないよう、自治体、関係機関ともしっかりと協力しながら、総力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

高木(美)委員 ありがとうございました。終わります。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。

 まず、先ほども御論議になっておりましたが、今回の児童福祉法の改正は、平成二十八年の改正に基づいて、市町村窓口の強化をどう図っていくか、並びに、数の上でも不足しております児童相談所をどうするかが大きなテーマでございます。

 冒頭お伺いいたしますが、大臣のお手元に、児童相談所のいわゆる相談対応件数と、下段には自治体の児童虐待相談の対応件数の推移を描いたグラフがございます。上段は平成十一年から、児童虐待防止法が始まって以降ですね、それから下段は、その中で市町村窓口が相談の業務を担うようになってからの平成十七年以降であります。

 この上段と下段を見てまいりますと、上段においては二つの大きな特徴がございます。警察からの通報によってDVあるいはその他の子供の虐待が発覚してというものが平成二十五年の十二月から加わっており、これは、警察は児相に連絡ということで、上段の件数がふえております。加えて、平成二十七年の七月、これは今の一八九が始まりまして、広く一般の皆さんからも通報が行く。もちろん、ここの件数は通報を単に加算したものでなく、そこから対応したものでありますので全てではありませんが、やはり児相の業務というものはそのことによってふえたという実態もございます。

 一方、下段は、市町村窓口というものに来るケースは、従来であれば市町村窓口はやや軽く、児相は重いものであるというふうに考えがちのものでありましたが、実は、例えば地域の保健所や福祉事務所などの機関を経て来るものも多うございますのと、加えて、大臣にはぜひ見ていただきたいのですが、都道府県から逆送、都道府県児童相談所から地方の窓口に来るものも二三・一%になってございます。

 すなわち、単に軽いか重いかだけでもなく、市町村窓口のいわば児童虐待相談の件数も、バラエティーもふえて拡大しておるということがこのグラフから読み取れるところであります。

 さて、その多岐にわたる相談を受けねばならない自治体窓口が今回全市町村に設けられるということで、昨年七月、閣議決定の中で、そのために、必置ではありませんが予算措置がされておりますが、さてはて、市町村の窓口相談業務を十分に担える機能、対応能力を持っているのかどうかという、そもそもの認識を大臣に伺います。

根本国務大臣 児童虐待防止に関しては、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援、これを切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要だと思います。

 特に、発生予防、早期発見や児童虐待発生時の迅速的確な対応においては、今委員から御指摘がありました、件数も、そしてバラエティーも非常に富んで、多様ないろいろな相談が出てくる、あるいはさまざまな対応が求められるという観点で、市町村子ども家庭総合支援拠点など、市町村の担う役割は極めて重要だと考えております。

 昨年十二月、新プランを策定して、二〇二二年度末までに、子供や家庭に対する相談支援を行う市町村子ども家庭総合支援拠点を全市町村に整備する、要保護児童対策地域協議会の進行管理事務を担う調整担当職員が全市町村において常勤となるよう配置を進めていくということを決定しました。

 市町村の体制強化を進めていく必要がありますが、市町村の体制強化を図るため、今年度から地方交付税を講じており、引き続き必要な支援に努めていきたいと思います。

 このほか、本年三月の関係閣僚会議決定に基づいて、市町村における訪問支援や地域における支援体制の構築を進めるための取組について、これは概算要求に向けて検討を進めていきたいと考えております。

阿部委員 私のお尋ねは、果たして現状での陣容は十分であるのか。そして、政府の計画されております先ほどの十万人に一人の交付税措置。でも、これは桝屋委員もお尋ねですが、交付税措置をその後何に使うかは、自治体のおのおのの裁量であります。果たして、市町村の窓口業務の中に現状で何人くらいの対応能力があるのかということを、残念ながら、昨日も私は厚労省にお尋ねいたしましたが、なかなかそのデータの把握がされておらない。そして、それは先ほどの桝屋委員と総務省とのやりとりの中でも、やはりそうなのかと思った次第であります。

 計画をするのは容易なんです。でも、実際に何人くらいの窓口業務の皆さんがそこに現実におられるのかということもあわせてお調べいただかないと、効果のある政策にはならないと私は思います。

 ちなみに、大臣にお示ししたいのは、これは平成二十九年の三月三十一日付の厚生労働省の局長通達でありますが、二枚目の資料をごらんいただきたいですが、「市区町村子ども家庭総合支援拠点の設置運営等について」で、主な職員の最低配置人員というものが下に書かれております。自治体の規模に応じて、小規模A、B、C、中規模、大規模と分けておりまして、皆様のイメージのためにあえて例示すれば、中規模というのは大体、中核都市と相応のサイズ、人口十七万から四十五万というくらいであります。

 じゃ、十七万から四十五万の人口に果たして子供がどのくらいいるだろうか。これを見ますと、二・七万人から七・二万人の子供がおります。ここに六人の体制があったといたしましても、一万人以上を見ることになりかねません。私は、子供の相談に応じる子ども家庭相談窓口がこんな陣容でやれるんだろうかと、本当にびっくりいたします。

 昨日の参考人もこのことは同じようにお感じになったようで、長年こうした市町村窓口あるいは児童相談所等で取り組んでおられる方も、この通達の内容は余りに少ない陣容ではないかと。ただ、これは最低配置基準だからと言われるかもしれませんが、現実に何人配置されているかわからないというのでは、到底、担えといったって担えないのではないかと思います。

 この点について、大臣のお考えを伺います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、子ども家庭総合支援拠点に配置される職員数は現在把握しておりませんけれども、現実がどうなっているか実態把握をしませんと施策の推進がしっかりいかないと思いますので、今後、把握を検討してまいりたいと考えております。

阿部委員 PDCAサイクルなんというきざなことを言わなくても、現状がどうなっていて、そこにどんな政策を打って、やれるのか、誰がやるのかということが大事なんだと思います。

 私は、今の局長の答弁が、調べる方向で検討ということでしたが、大臣には明確に、現状、市町村窓口の陣容がどうかということはお調べいただきたいが、どうでしょう。

根本国務大臣 こういう配置基準を示しているわけですが、やはり、要は、政策を打つ場合には、現状がどうなっているか、そしてそれを踏まえて政策をつくり上げていくということが私は基本だと思います。

 その意味でも、既に配置基準はお示ししているわけでありますが、委員のおっしゃられるように、これが一体どういう状況になっているのかという観点から、そこは調査をしたいと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 中核市、せんだって参考人として来られた明石市長にもこの点を伺いましたが、児童相談所を併設している場合は、市町村窓口の職員と児童相談所の職員の一部交流、交換、兼務等々もやっておられる。私は、それはいいことだと思うんです。自治体業務をよく知った人が児童相談所でも仕事をなさるということで、それでは両方兼ね合いでいいんですよという意味で申し上げているのではなくて、十分なおのおのの配置がなくてはならないことは当然ですが、これが中核市と市町村窓口がともに自治体にあることのメリットの一つにもなろうかと思います。

 あわせて、そうした中核市への設置ということで、先ほど高木委員からの介入と支援のあり方、これは今後の検討テーマと私も先ほどの練馬区の事案を見て思いましたが、逆に、その地域に児童相談所があって一時保護所があることによって、一時保護された子供が地域の中学校や小学校に通っているという実態も御紹介がありました。練馬区長のお話の方は、遠くに離した方がいいんだという御主張でありましたが、私は、あくまでケースによりますし、近くで、その子の家庭が崩壊したとしても、学校生活というのはすごく子供に重要な場面だと思います。そうしたことも勘案した場合に、近くにある児童相談所の役割というのは大きいというふうに考えたことも申し添えておきます。

 さて、今回、政府の方にあっても、要保護対策協議会の役割が重要であり、専属の職員の配置ということも念頭に置かれていると思いますし、私ども野党案は、その方をいわば専属、常勤、必ず、いつもという形にしていただきたい。それくらい要保護対策協議会の役割は重要で、そして、ここがいろいろな施設に情報を求めた場合に、相手の機関が情報をきちんと出してくださることも必要なんだと思います。

 要保護対策協議会が、それだけ認められた機関として情報の提供を求め、相手方はそれに応ずる義務あるいは努力義務を課していただきたいが、いかがでしょう。

根本国務大臣 現行法においても、要保護児童対策地域協議会は、協議会に参加する関係機関に対して必要な情報提供等を求めることができる旨の規定が整備されております。

 そもそも、要保護児童対策地域協議会は、市町村や児童相談所だけで把握し切れない情報を学校や医療機関、警察などの協議会に参加している関係機関から得て、情報共有しながら支援していく役割などを担っており、その趣旨、目的に照らせば、関係機関においては、情報提供の求めに対しては適切に対応されているものと認識をしております。

阿部委員 適切に対応されない場合もあるので、これは、要保護対策協議会が求めた場合に、その求めに応ずるよう努力していただかないとならないわけです。さまざまな、例えば、これは個人情報だから言えませんなどになってくると、要保護対策協議会が必要な情報を集められないこともございます。

 もう一度、答弁をお願いします。

根本国務大臣 法律上、協議会は、要は関係機関に対して資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる、こういう規定があって、先ほど、この趣旨、目的に照らせば、関係機関においては、情報提供の求めに対してはこの規定で適切に対応されるものと認識していると答弁を申し上げました。

 強いて言えば、警察等も関係機関に含まれていることを踏まえると、要は、一律に義務化した場合に、関係機関の本来の職務執行に支障を生じるおそれがあるのではないか、あるいは、関係機関としての参加にちゅうちょが生ずるおそれがあるのではないかといったことの課題もあるのではないかと私は思います。

 これは、関係機関に対して、法律で必要な協力を求めることができるといって、協議会に関係機関が入っていただいておりますから、そこで情報共有しながら、きちんと情報提供をその協議会で求める。その意味で、協議会の運営がより効果的に、円滑に回るように、そこが大事なのではないかと思います。

阿部委員 私の質問の意味が不十分でしたら申しわけありません。

 要保護対策協議会内の情報共有ではなくて、要保護対策協議会に必要な、いわば外からとってこなきゃいけない情報があって、今の規定は、求めることができる規定なんですね。情報が欲しいとき、外に求めることができる。でも、相手は応じないかもしれません。それに対して野党案では、情報の提供は、求められたときに応じなければならないという義務規定を置きました。

 大臣の御懸念が今いろいろなケースでおありやに伺いましたが、これは、中での情報の共有じゃなくて、外から求めるときどうするか。今は一方方向なんです。でも、相手にも出してもらわないと情報にならないということですので、恐縮ですが、もう一回、御答弁をお願いします。

根本国務大臣 要は、関係機関は協議会を構成して参加してもらって、そしてさまざまな情報を共有して、その意味で、そこは情報を共有した場合に守秘義務がかかるということだと思いますが、野党案でも「関係機関等は、」ということで、前項の規定に基づき、場合には、応ずるよう求めなければならないということで、これは野党案の解釈ですけれども。

 野党案も「関係機関等は、」と書いてあるので、要は、児童虐待に係るさまざまな機関がありますが、それが一堂に会して協議会を構成しているということで、一体として当たるという趣旨だと思いますので、方向性は同じ方向性だと思います。

阿部委員 野党案の趣旨は、要保護対策協議会に入っている機関ではなくて、さまざまな情報を集めるときを想定してございます。もう一度、ちょっとよく官僚サイドの皆さんとも御協議いただきまして、よろしくお願いいたします。

 続いて、次の質問に入らせていただきます。

 私ども野党案は、今回、心愛ちゃんのケースが、御家庭におけるDVと、心愛ちゃん自身は性的虐待の被害者であったということも大変重く見ており、今後、こういうDVと児童虐待防止のいわば接点というか兼ね合ったところをどう対処していくかというところを重要に考えております。

 大臣のお手元に、三ページ目、売春防止法の抜粋がございますが、売春防止法は、戦後さまざまな経済的な不安定がまだある中で、女性たちが売春という形で生活を支えたりしていたこともあり、しかし、その女性たちの人権や生活をどう再建していくかということでつくられた法律で、社会的信望があり、かつ、こうした職務を行うのに必要な熱意と見識を持っている方を婦人相談員としてお願いするという形態をとっております。

 加えて、その当時、婦人相談員は非常勤とするとなっておりまして、この非常勤という言葉が削除されたのが平成二十八年であります。

 現状において、いわゆる売春防止法でつくられた婦人相談所や婦人相談員が次々とその任務を拡大して、二〇〇一年にはDV防止法、二〇〇四年には人身取引対策行動計画により人身取引被害者への支援、二〇一三年にはストーカー規制法によりストーカー被害者支援等々、多様な業務を担うようになってございます。

 果たして、この木に竹を接いだようなというか、その後に満載になっている今の婦人相談所の考え方、あるいは婦人相談員の考え方について、現状のままいくのか、見直しをなさっているのか、この点についてお尋ねをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 婦人相談所につきましては、御指摘のとおり、売春防止法第三十四条におきまして都道府県に設置義務が規定されております。その一方で、DVや人身取引被害あるいはストーカー被害などさまざまな困難を抱える女性への支援など、売春防止法に定められた要保護女子に関する業務のほか、さまざまな業務を行っているところでございます。

 こうした現状を踏まえまして、現在、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会という検討会を厚生労働省において開催しておりまして、婦人相談所を含む婦人保護事業につきまして、名称や根拠法の見直しの必要性を含め、制度の見直しについて議論を行っているところでございます。夏ごろをめどに見直しの基本的な考え方を取りまとめたいと考えておりまして、厚生労働省といたしましては、検討会での御議論を踏まえ、必要な見直しについて検討してまいりたいと考えております。

阿部委員 今の局長の御答弁にあるように、既に、もともと婦人の売春防止のためにつくられた法律が実態と大きくずれを生じていて、そして、今御答弁にあったように、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に対する検討会ということが進められておって、今後の姿が出てくるかと思います。

 開いていただきまして、四ページ目の資料にこの検討会の論点についてということがございまして、少し御紹介させていただきますが、当然ながら、婦人相談員の専門性、スキル向上等のソーシャルワーク実践にかかわる課題。もともとは、婦人相談員は見識があって、それなりの、いわば、売春をする女性たちをそうではないように導いてさしあげるというような役割であったものが、現状必要とされるDV対応等々も含めて、やはりソーシャルワーク実践にかかわる課題であるという認識や、専門職の配置が手薄いということや、婦人保護施設になかなかつながりにくい、利用しにくい等の制度的課題と、加えて、婦人、女性の自立支援の概念や市区町村の役割の不在等の、そもそもの根拠法に端を発する課題があるだろうという御指摘であります。

 私がこの中で読み取りたいのは、市町村の役割ということが、今の、もちろん売春防止法でも浮かんできませんし、その後のDV防止法でも、明確に、今後市町村がどのような対応をとっていくのかがなかなか見えておらないということを問題にしたいと思います。

 大臣にもう一枚あけていただきますと、婦人相談員の数の推移というものがございます。婦人相談員は、もともと婦人相談所が県でございますから、都道府県に配置されていた。平成二十年当時ですと、市区に配置される婦人相談員と、これは主に福祉事務所ですが、都道府県はほぼ半々であったものが、平成二十九年では、都道府県の方は変わりませんが、市区町村に配置される婦人相談員がふえて、九百八十一名となっております。

 また、その下に婦人相談員の業務内容を書いてございますが、明確に、ソーシャルワーカーとしての婦人相談員業務ということがうたわれておりまして、現状で、福祉事務所や子育て支援課に配置されて、地域コミュニティーに基盤を置くというふうにうたわれるようにもなってきております。

 私は、今回、児童福祉法並びに児童虐待防止法が、大きく市町村にその役割を持ってきたというか、そこをお願いしたいというふうに考えたところとあわせて、このDV業務の婦人相談員のあり方ということも、まさにここに書かれたように、市区町村、それも、私どもは子ども家庭支援窓口に置くべきであるというふうに申し上げておりますが、この点について、大臣、御答弁をお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 婦人相談員につきましては、根拠法となる売春防止法におきまして、都道府県は配置義務、市区は任意設置となっております。

 御指摘のとおり、市区の婦人相談員の配置状況を見ますと、平成二十九年四月一日現在で九百八十一名が配置されておりますけれども、配置率で見ますと四割にとどまっております。こうした現状を踏まえますと、まずは市区における婦人相談員の配置を進めることが必要と認識をいたしております。これまでも、市区に対しまして婦人相談員の配置の拡充を要請してまいりましたけれども、引き続き要請してまいりたいというふうに考えております。

 また、先ほど厚生労働省の検討会の話を申し上げましたけれども、婦人相談員を含む婦人保護事業全般について、制度の見直しについて議論を行っているところでございまして、その議論の中でこの課題についても議論してまいりたいと考えております。

阿部委員 今後とも、自治体が、DV被害のお母さん、あるいはそのお母さんに守られている子供を守りたいと思ったら、やはり市町村窓口でしっかり対応する方向というのを厚労省みずからも打ち出していただきたいと思います。野党案では、市町村窓口に婦人相談員の必置というふうにあえて書かせていただいたのは、現状、虐待の半数がDV関連であるということを重く見たものでございます。

 大臣のお手元に、次に円グラフがございますが、婦人相談所及び婦人相談員が受けた来所相談の内容を見ていただきますと、一目瞭然、四割以上が夫からの暴力の相談で、暴力以外の家族、親族の問題等々、離婚問題、そして居住がないという方もいらっしゃいますが、こうした事案が婦人相談員に訴えられているということであります。

 それが、正直言って、県の婦人相談所までなかなか行きません。そして、婦人センターというところにもなかなか足が遠い。窓口であれば、日常生活の中で子供にかかわって、あるいは、心愛ちゃんのお母さんもそうでした、窓口で相談できていたら、私はもっと事態は変わっていたろうと思います。

 常に遠くに遠くに持っていかれる相談ではなくて、身近な相談というものが親子を救ったのではないか。お母さんは、今度は加害者として法廷に立っておられます。心愛ちゃんの下のお子さんは、お父さんは逮捕、お母さんも法廷、親がいないという状態にさらされております。本当に深刻と思います。早期の介入、相談支援のためにも、自治体窓口にぜひ置いていただきたいと強く思います。

 最後の質問に移らせていただきます。

 婦人保護事業の概要ということで、ここには、今のような相談を受けられた場合、婦人相談員が対応して、あるいは婦人相談所、県に置かれたもの。婦人相談所、県に置かれているものには一時保護所がございまして、DVやストーカー行為から一時身を隠す、逃れるという場所。そして、婦人保護施設というものが更にございまして、そこに移るという場合もございます。

 果たして、女性たちがDV等々でここに相談をし、保護されたりする場合に、子供を伴っているケースがどのくらいあるだろうかというのが、最後にお示しした資料でございます。

 平成二十八年度においても、伴われた子供の数は四千十八人。実は、一時保護された女性の数が八千六百四十二人、それに対して子供が四千十八人。二人にお一人は子供を伴っている、あるいは何人かを伴っている場合もございますが、ここに伴われた子供たちが果たしてどのように遇されているだろうか。これは大臣にお伺いしたいところです。

 単なる同伴者、一緒に逃げてきたのではないのです。親のDVを面前に見て、その恐怖感、PTSDもあろうかと思います。急に住まいが変わること、学校にも行けなくなること、さまざまな問題を抱えた、このDV被害のお母さんに同伴された子供たちについての支援はどうなっているか、大臣にお伺いいたします。

根本国務大臣 児童虐待防止法においては、児童が同居する家庭における配偶者への暴力は心理的虐待とされて、また、児童虐待と配偶者への暴力、DVには一定の関連性があるとの調査結果もあります。

 DVが行われている状況下では、子供の虐待の制止が困難となる場合があって、児童相談所と配偶者暴力相談支援センター等が連携して対応を行うことが大事だと思っております。

 本法案においては、DV対策の連携強化のために、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員については児童虐待の早期発見に努めること、あるいは、児童相談所は、DV被害者の保護のために配偶者暴力相談支援センターと連携協力するよう求める旨の規定を盛り込んでおります。

 また、本年三月の関係閣僚会議決定は、DV被害者に同伴する子供の支援の充実を図るために、婦人相談所に児童相談所等の関係機関と連携するコーディネーターを配置することや、同伴児童も含めて適切な環境において保護することができるように、心理的ケアや個別対応を含めた体制整備を促進することを盛り込んでおります。

 婦人相談所と児童相談所が緊密に連携を図ることで、適切な支援を行ってまいりたいと思います。

阿部委員 もちろん、ぜひそうしていただきたいのですが、そもそも、この四千十八人の子供たちは、児童相談所に同伴児童として来た後、コンサル、相談なり、その子の状況把握が相談されたろうかどうだろうか、どのくらいの子供たちがそうなっていますかと聞きましたけれども、それも御存じない。ただ、チェックシート上は、お母さんが入所するときに子供の状態もチェックするところはあって、そこには、例えば子供も虐待に遭っているかとかいろいろチェックはありますが、チェックしても、その後がなければ実は意味がない。

 やはり、四千十八というのはすごい数です。そして、基本は面前DVの被害者であります。ここにも手厚い児童福祉の手が差し伸べられないと、子供たちは、逆に今度は暴力で人を支配するような方向になってしまいかねないということがございます。あるいは、この中には性被害の子供もいると思います、心愛ちゃんのように、お母さんのDVに伴われた子供が性被害である。本当にきちんと調査をしていただきたい。

 そして最後に、実は、大臣にお示ししたさっきの婦人保護事業の概要の下の方に書いてありますが、下の方が児童福祉法関連の施策でございますが、手薄いです。特に、母子生活支援施設というのは、一時保護や婦人保護施設からではなく、母子が暮らす施設で、そこの充実を図っていただきたい。

 もう御答弁の時間がありませんので、お願い申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます。

冨岡委員長 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの岡本あき子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 質問の機会をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 児童虐待は、今なお年間五十件を超える、あるいは五十件近くの虐待死が起きている、一週間に一人は幼き命を失っているという現状に対して、やはりできることは速やかに行動を起こすべきだということで、伺わせていただきたいと思います。

 この間、昨年の船戸結愛ちゃんの事件、そしてことしの栗原心愛さんの事件、残念ながら、なぜ防げなかったのか、その言葉に尽きると思います。

 改めて、反省すべき課題をどう捉えているのか、厚労大臣にまず伺いたいと思います。

根本国務大臣 昨年三月には、目黒区で五歳の女の子、結愛ちゃんが児童虐待により亡くなるという事件がありました。この事案では、転居の際の児童相談所での引継ぎが不十分だったこと、転居後に子供の安全確認が行われなかったことといった課題がありました。

 これを受けて、昨年七月には、直ちに、緊急総合対策として、転居した場合の児童相談所間における情報共有の徹底、通告後四十八時間以内に子供の安全確認ができない場合の立入調査のルール化などの対策を関係閣僚会議で決定いたしました。さらに、改正法の通常国会提出も視野に入れながら、昨年十二月に新たな新プランを策定して、児童相談所や市町村の体制強化を進めてまいりました。

 それにもかかわらず、本年一月に千葉県野田市において痛ましい事件が繰り返されてしまったこと、これはまことに遺憾であり、事態を深刻に受けとめております。

 これを受けて、本年二月にも、現在把握されている全ての虐待ケースの一カ月以内の緊急安全確認などの対策を進めるとともに、三月に、こういう事案も踏まえて、制度面の対応を講じるために、児童福祉法、今回の改正法案を国会に提出いたしました。あわせて、関係閣僚会議において、二〇二〇年度関係予算に向けた対策を含む抜本的強化策を取りまとめております。

 こういう痛ましい事件が繰り返されることのないように、総力を挙げてまいります。

岡本(あ)委員 私たちは、昨年既に改正の法案も提出させていただいておりました。制度の改正、できる中での対応は努力をされてきたという今の御説明は評価させていただきますが、逆に、法改正も含めて、昨年のうちにお互いに議論がもっと深まれば少しでも防げるものもあったのではないかという思いを拭えないということを言わせていただきたいと思います。

 今御答弁にございました緊急把握調査、二月から行っているということでした。資料の一にもつけさせていただいておりますけれども、未受診者等の緊急把握調査の結果について、対象件数、それから、今現在なお所在不明となっている児童数はどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。これは当局の方にお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 昨年七月の緊急総合対策に基づき実施いたしました未就園児等の緊急把握調査及びそのフォローアップ調査等の結果でございますけれども、確認ができず、継続して確認が必要な児童は六十一人でございます。

 これらの児童を把握対象とした理由につきましては、未就園を理由とするものが三十四人、不就学等が十人、健診未受診が九人、児童手当の支給事務に必要な届出や手続を行っていないが八人となっております。

 確認ができていない児童につきましては、必要に応じて、警察も含めた関係機関と情報共有を図りまして、確認に努めていただいているところでございます。

 また、これら継続して確認が必要な児童の状況につきましては、いずれも五月三十一日までの確認の状況につきまして改めて報告を求めておりまして、結果が取りまとまり次第速やかに公表したいと考えております。

岡本(あ)委員 六十一人の方々が今なお所在不明ということで、今なお努力をされているということです。五月三十一日までに報告をということで、一人でも安全が速やかに確認できることを願ってやまないと思っています。

 これはちょっと通告はしていなかったんですが、二〇一四年、二〇一六年にも所在確認をされていると思うんですね。そのときも所在不明のままの状態のお子さんがいたと思うんですが、これは同じお子さんなのか、そういうような分析とか、あるいはそのときの所在不明児の子供たちはその後どうなっているのか、もし今わかることがあれば御説明をお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今、手元に資料がないので正確な数字はお答えできませんけれども、所在不明のお子さんについては、過去の調査についても、引き続き今でもフォローアップを行っているところでございます。

岡本(あ)委員 もしかしたら、同じお子さんが長年にわたってずっと不明なままになっている可能性もあります。過去には、七年前に残念ながらお父さんに殺害をされて、自宅にそのまま七年、当時五歳のお子さんが厚木市で亡くなっていたという事件もございますので、ずっと継続して、中の分析も含めて、速やかな対応をぜひお願いしたいと思います。

 あと、きょう資料にはつけておりませんけれども、いただいた資料の中で、本人に直接会えなかったけれども安全が確認できたとして、数に上がっていた部分がございます。

 私からすると、今回の野田市の事件もそうですが、父親あるいは親戚の方々が口をそろえて本人は沖縄に行っているとか、そういうことをもって一定の安全と捉えてしまった、そういうリスクもあったということを考えると、今回、目視がなくても安全を確認したというのは、具体的にはどういう根拠をもってなのかということと、私からすると、そうはいいつつも、やはり直接、行政、しかるべき立場の人が本人の顔を見るということが絶対必要だと思うんですが、この点も含めてお答えいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の調査、緊急把握に当たりましては、把握対象児童とされた児童につきましては、目視による安全確認を原則といたしております。

 ただ、御指摘のとおり、この目視によるほか、住所地市町村が実施した調査等によりまして当該児童の所在等について得られた情報の信頼性に確信が持てるとして、住所地市町村が判断したことによる所在等の確認というのも例外的に認めております。

 これは具体的にどういうものかといいますと、例えば海外の学校等に在籍していることが在籍証明書等により確認できた場合、それから、他の市町村の医療機関を受診していることが判明いたしまして、その状況が確認できた場合、それから、配偶者からの暴力等により避難しており、祖父母等を通しますと確実に児童の状況が確認できる場合、それから、複数の関係機関及び関係者から児童の所在等に関して同一内容の情報が得られた場合、それから、児童が自室に引きこもっているけれども、市町村の職員等のドア越しの呼びかけ等には応答して、家族も状況改善に向けて市町村に相談するなど協力的な姿勢が見受けられる場合等でございまして、これはあくまで例外ということであります。

 こういった判断については慎重にしていただくということでありますし、判断に資する十分な情報が得られない場合には、引き続き情報収集等の調査を継続して行うということが前提でございます。

岡本(あ)委員 私は、やはりしかるべき行政の立場が最後は、例えばドア越しでも結構ですけれども、本人の声を聞く、あるいは顔を見る、対面をして体の状態が確認できる、それをして初めて安全確認だと思っております。

 ちょっと違和感があるのが、他の市町村の医療機関を受けて、その情報はあるけれども所在地では確認できないというのも、逆に言うと不可思議だと思うんですね。他の医療機関を受けているのであれば、所在地でも確認できなければ逆に言うとおかしいと思うので、ぜひ、この目視で確認できなかった部分については、引き続き、目視の努力をするという数に加えて、きちんと厚労省から指示を出していただきたいと思います。

 もう一回御答弁いただけますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 私どもからは先ほど申し上げたような形で市町村にお願いしているところでございますけれども、直接安全確認ができるのが望ましいのはおっしゃるとおりでございますので、可能な場合にはそういうことをしていただくようにお願いしてまいりたいと考えております。

岡本(あ)委員 ぜひお願いします。

 ちょうど直近に、船戸結愛さんの転居前の香川でのかかりつけ医というか、受診を受けていたドクターの方のコメントが載っておりました。とても心配をしていたんだけれども、転居後、連絡がつかないままに残念なことが起きてしまったということもありますので、単純に、他の医療機関が、リアルタイムなのか、一カ月前なのか、二カ月前なのかということも影響すると思いますので、ぜひこのことは、目視というところをあえて強調して、全市町村にも御協力をお願いしたいと思います。

 あと、今回、安全確認がされました。ただ、逆に、虐待のおそれがあって、一時保護や指導など、対処したことも件数として上がっています。全体の中で、今回、虐待のおそれがあって対処された件数というのはわかっていますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の緊急把握調査の結果でございますけれども、これまでに、虐待あり又は虐待の疑いありとされた子供は百六十三人確認されております。

 その中で、例えば一時保護の実施は十一件、施設入所措置が十件、児童相談所による指導が五十一件など、全て児童相談所又は市町村による支援が行われている状況でございます。

岡本(あ)委員 今回の再フォローの中では十一件、十件ということです。二月からの状況でいくと、二百件を超える方々が一時保護あるいは里親、児童養護施設につながっております。ということは、今回緊急点検をしたからこそ、予防につながって、子供を安全な場所に、対処できたということにもなるんだと思います。

 私は、今回、安倍総理の号令のもとに緊急点検だということで、メディアも取り上げていただいて、非常に全国的に展開をしたことで、逆に、そこで救われた命もあったんではないかと思います。

 今後、ぜひ、できれば少なくとも年一回はと思うんですけれども、厚労省だけじゃなく、市町村それから教育委員会も含めて、このような所在確認、安全確認、緊急点検というのを毎年一回はやるべきだと思いますが、今後についてはいかがお考えでしょうか。これは大臣に伺った方がよろしいですよね。当局でよろしいんですか。ぜひ大臣に答えていただきたいと思います。

根本国務大臣 この調査は、健診未受診などのために関係機関による確認ができていない子供を対象に、安全を確認し、必要な支援につなげるため実施しているものであります。

 今委員の御質問ですが、今年度以降も定期的に安全確認を行ってまいります。具体的には、本年六月一日時点の健診未受診などのために関係機関が確認できていない子供について、十一月三十日までの安全確認の状況の調査を実施したいと考えています。

岡本(あ)委員 ぜひ、やはりこれは、市町村の努力で、あるいは児童相談所の努力でということではなく、全国で一人でも救える命は救う、もしリスクにさらされているようなお子さんがいるのであれば速やかに対処するということも含めて、継続的にチェックをしていただきたいと思います。

 児童相談所でケースを抱えている方からすれば、やはり、もしかしたらと思いつつも優先順位が下がってしまう、そういうようなことも、現実、これだけ抱えている状況の中では起こり得るということも踏まえると、国からしっかり時期も明示をしての点検ということは継続していただきたいと思います。

 次に、児童相談所の機能強化、環境改善が図られることについて、ちょっと個別のところを確認させていただきたいと思います。

 先ほど阿部知子委員から指摘がございました婦人相談員についてなんですが、先ほど御答弁いただいたので、ここは私からも言わせていただくだけにさせていただきます。

 婦人相談員を調べましたら、やはり売春防止法に基づいて位置づけがなされています。先ほど阿部知子委員からもありましたとおり、今、婦人相談員が抱えているケース、DV、ストーカー、経済的な相談、そういうものの方が圧倒的に多く、売春相談というのは〇・一%というデータがございます。

 これらを含めると、やはり根拠が売春防止法で本当にいいのかというところは指摘をさせていただきます。ことし夏にその検討結果が出るということでしたので、現実に合わせた根拠法、それから婦人相談員の役割を改めて明確にしていただきたいと思います。

 もう一つ、児童相談所の中で、資料二につけさせていただきました児童保護のあり方についてです。

 緊急安全保護ということで児童相談所に一時保護されるお子さん、数は年々ふえてきております。そして、ここ十年間は、大体、一時保護されると平均で一カ月過ごすことになります。本来は二週間以内にしなさいという基準はありつつも、現実、折れ線グラフがそうですけれども、平均滞在で、平成二十九年ですと二十九・六日、一カ月です。

 特に、虐待のおそれがあって一時保護されるお子さんがふえてきます。親御さんから引き離され、それは身の安全ということでしようがないんですけれども、ただ一方で、保護されたお子さんは、大方がそのまま一時保護所の中で一カ月過ごしているという実態があります。

 先ほどの質疑の中では、学校に通うためには地域の中に一時保護、児相があった方がいいんじゃないかという指摘もございました。まさにそのとおりですけれども、少なくとも、一時保護されたお子さんは、親御さんから離されて心細く、心のケアも必要です。でも、もしかしたら学校でお友達と過ごすことをとても楽しみにしているお子さんもいると思います。学校の先生が救いになっているお子さんもいると思います。

 そういう中で、学校にも通わせてもらえない、お友達と遊ぶことも現実許されない、それが一カ月も続くということについては、子供には何の非もないのに子供の生活の自由まで奪われるという、この一時保護所での過ごし方ということはぜひ見直す努力をしていただきたいなと思っています。

 資料三に仙台市の保護所での日課がついていますけれども、学童期のお子さんになりますと、上の段ですが、午前中、室内で、保護所の中で勉強して、お昼をとって、午後も保護所の中で過ごして、三時以降自由時間といいつつも、やはり、親御さんが押しかけてきたらどうしよう、保護所長さんに聞くと、やはりそういうリスクがある中で外に出すというのは残念ながら現実的には厳しいというお声もいただいております。

 通学に対して支援をする、あるいは、先ほどの質問にありましたように児相自体が各学区にあれば非常にありがたいですけれども、送迎の安全を担保してあげる、あるいは委託里親を拡大する、子供にとって、一時保護されたけれども、安心して、それから子供の自由を奪わない、そういう環境の努力が必要だと思います。

 この件についても、速やかにできるところ、課題になるところはあると思いますが、お答えをいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、一時保護は、平均一カ月程度いることになっております。

 一時保護された子供に対しましては、子供の意見や気持ちを十分に聞くなど、子供の権利擁護を図り、安全、安心な環境で適切なケアを提供することが重要です。

 御指摘のように、個々の子供の状況はさまざまでありますけれども、可能な限り通学できるようにすることが望ましいと考えております。先ほど、取り戻されるとかいうような御指摘もございましたけれども、従来から、一時保護所等から子供が通学する場合の付添員の配置を行っております。

 加えまして、一時保護を学区内の里親あるいは児童養護施設等に委託していくことも、今いる学校に通学するためには重要だと考えております。都道府県に対しましては、一時保護が可能な里親、児童養護施設等の確保を含む社会的養育の推進計画を今年度中に策定していただくよう依頼しておりますし、予算面では、児童養護施設等が、自己所有の物件のみならず、賃貸物件として専用施設を設置する際に改修する際の補助を行っております。

 また、ことし三月の関係閣僚会議決定におきましては、まさに御指摘のとおりなんですけれども、一時保護所が安心、安全な場となるよう、個別的な対応を可能とするための職員体制の強化や環境整備を行うこと、それから、適切に教育を受けられるよう、里親の活用を含め委託一時保護を積極的に検討するほか、子供の安全確保が図られない場合等を除き、学校等に通園、通学させ、必要な支援を行うこと、こういう決定をしております。こういった決定を踏まえまして、一時保護された子供の権利擁護、学習環境、生活環境の向上等に努めてまいりたいと考えております。

岡本(あ)委員 今、御説明いただきました。

 ただ、現実は、児童相談所の所長さんにも何名か伺いましたけれども、大方がやはり親からの虐待がある、その中で、親御さんが奪い返しに来る、そういう数がふえている中で、安全だったら通わせていいんだよと簡単に御答弁されましたが、それができないから通わせられないんだと。

 通学の付添いの補助という御説明もありましたが、ボランティアでできる話ではないんですね。通学の安全をちゃんと担保してあげるという意味でいくと、それなりの、学校の敷地内は学校で子供の安全をとってもらうというのは当然のことですけれども、やはり通学の安全の保障というところについては、単純に付添いボランティアがいればいいよという発想ではないということもぜひ頭に置いていただきたいと思います。

 ぜひ、児相の現場を持っていらっしゃる方々に、なぜ通わせられないのかというところはつぶさに聞いていただきたいと思います。それで、今ある制度で改善できるところ、あるいは更に通学のための安全保障、担保する仕組みがとれるのであれば、そういう制度改善に臨んでいただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、一八九の無料化について、進捗状況を伺いたいと思います。

 先週、山井議員が質問されておりました。「未来へと命を繋ぐ189(いちはやく)」という標語ですけれども、「いちはやく」がなかなかいち早くつながらないという状況です。

 時間の改善は徐々にやってくださっているというのは伺っておりますけれども、無料化については、根本大臣、何とか頑張るという話がありましたけれども、これは昨年の補正予算で予算がついたものです。なので、当時の報道でいくと、もう新年度、四月からは始まるんじゃないかと思われるような報道も当時なされていたと記憶しておりますけれども、まだめども立っていないという御答弁だったと思います。

 ちょっとびっくりしたんですが、山井議員のやりとりが五月十七日にあったと思うんですが、この無料化の要は入札というか公示が、山井議員が質問された前の日に無料化の発注といいますか、していらっしゃると思うんですね。これはたまたま偶然なのか、今回、五月十日からこの法案がかかるよ、そういうのも踏まえて、まさか慌ててやったということはないかと思いますけれども、それにしても、五月十六日に公示をしていること自体が、私からすると非常に遅いのではないかと思います。

 根本大臣は急ぐんだとおっしゃっておりましたけれども、補正予算から今まで、五月までの間、なぜこんなに時間がかかったのかということと、あと、これから先、できれば私は六月、七月にも始めていただきたいぐらいの思いでおりますけれども、改めて、いつごろスタートできるのか、めどをお聞かせいただきたいと思います。これは、大臣、ぜひお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、無料化につきましては、補正予算におきましてシステム改修経費を計上いたしております。そういう意味では、システム改修のための段取り、準備を進めてきたところでございます。

 御指摘のとおり、その政府調達の公示は五月になってからでございます。その間でございますけれども、補正予算成立後、少し新しい技術等もございまして、仕様書等の調整に時間を要したということで、政府調達の公示は五月ということでございます。

 それで、今後でございますけれども、六月のできるだけ早い時期に契約を締結いたした上でシステム改修に入るということでございます。

 その無料化に当たりまして、単純に通信を無料化するということではなくて、これは、いわば電話の事業者とそれから共通ダイヤルを持っている事業者、それぞれ事業者が十四ございますけれども、いわゆる電話、電信の事業者ですね、何のどの電話を使うかによって、それぞれの会社の固定電話とか携帯電話とか、そのシステムを全て改修しなきゃいけないということでございます。そのためのシステム改修がどれだけ短縮できるかというところを、契約締結前でございますけれども、内々に事業者と今、鋭意調整しているということでございます。

 また、これはある意味トラブルがあってはいけませんので、システム改修がおおむね全事業者が終わった後に、相互接続のテストということも必要でございます。

 そういったことを考慮しまして、どれだけ短縮できるかというところを今、事業者とまさに調整しているところでございまして、先般大臣から答弁申し上げましたけれども、年内に無料化を実施できるようにということで、まだ確定ではございませんけれども、できるだけ早期にということでございますけれども、今、関係事業者と調整をしているところでございます。

岡本(あ)委員 法案を私たち野党から出したのは昨年からで、今、議論にようやくなってきた。一八九も、昨年、補正予算を通過していたにもかかわらず、先週になって動き出したということも含めて、残念ながら、いろいろな意味で児童虐待に対する姿勢が非常に、ちょっとテンポが遅いのではないかと私からは言わせていただきたいと思います。

 今回、野党提出法案もございますので、その点について少し伺わせていただきたいと思います。

 児童虐待死のうち、ゼロ歳児が約半数です。望まぬ妊娠や、妊娠、出産に伴う経済的、精神的不安が大きいことについて、野党案としてはどのような対策を考えていかれるのか、伺わせていただきたいと思います。

阿部議員 お答えいたします。

 昨年公表された「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第十四次報告)」ですが、心中以外の虐待死事件のうち、約三分の二はゼロ歳児の死亡事例であり、ゼロ歳児の虐待死事例への対処は喫緊の課題であると考えております。

 そのため、本法案では、改正後の児童虐待防止法第四条第九項において、児童虐待の再発の状況等に関する調査において、乳幼児を含めた児童の死亡の原因に関する情報を活用することといたしております。

 さらに、本法案の附則第九条第二項第一号において、児童虐待を受けた新生児が死亡する事態を防止するための方策について速やかに検討することといたしております。

 また、委員御指摘のとおり、ゼロ歳児の死亡、虐待死事例の背景には、予期せぬ妊娠や、妊娠、出産に伴う経済的、精神的不安といった要因があることも承知しております。

 児童虐待、特にゼロ歳児の虐待死を未然に防ぐ観点からは、予期せぬ妊娠や、妊娠、出産への不安に適切に対処していくため、広く子育てに困難を有する保護者に対して支援を行うことが重要であると考えております。

 そこで、本法案の附則第九条第一項において、子育てに困難を有する保護者に対する支援のあり方について、児童虐待防止法の見直しを含めて検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずる旨の検討条項を設けてございます。

 ところで、昨年、野党共同で産後ケアセンターの設置の推進のための法案を提出いたしております。この法案は、近年、核家族化や晩婚化の進行によって、出産後に身近な人の助けが得られない孤立した母親が少なからず存在していることから、町中の実家である産後ケアセンターの設置を推進して、母親が孤立することなく各種支援が受けられるようにするものであり、虐待を防止する観点からも極めて重要なものであると考えておりますので、与党の皆さんの御賛同をいただいて、成立をお願い申し上げるものです。

 ありがとうございます。

岡本(あ)委員 さらに、野党案の中に、加害者への再発防止プログラムあるいは予防のための保護者への幅広い支援というところも、欠かせない点が入っていると思います。この中身、それから市町村の協力がここには必要不可欠です。今、法律で出ているいろいろな制度、市町村の場合、二分の一負担が非常に多いです、メニューとして。特に、保護者に対して切れ目のない支援をする上では、自治体の負担二分の一という部分の軽減も当然図らなければいけないと思います。

 保護者への支援のプログラムの中身、それから自治体の負担についてお答えいただきたいと思います。

池田(真)議員 お答えいたします。

 加害者の児童虐待の再発を防止するためには、児童虐待を行った保護者が、虐待の事実を受けとめ、みずから変わろうとすることが重要であります。また、みずからのみで変えようのないさまざまな課題、そして保護者の置かれた背景も含めて、みずから気づき、理解することも重要と考えています。

 現行法において、児童虐待を行った保護者に対する指導を実施しておりますが、これをより一層充実させる観点から、改正後の児童虐待防止法第十一条第一項では、保護者の意に反して一時入所等の措置がとられた場合に限り、その保護者に対して再発防止のための指導を行うことを義務づけることとしております。

 このような場合、一般的には虐待の程度が深刻な場合であることから、その深刻さを保護者が自覚する必要性からも、再発防止プログラムを義務づけることには十分な意義があり、これにより児童虐待の再発の防止に大きな役割を果たすことが期待されると考えております。

阿部議員 後半のお尋ねの、市町村の役割強化について御答弁をいたします。

 本法案においては、児童虐待を防止する観点から、児童虐待を行った保護者に対する指導の強化、児童虐待を受けた児童の転居時の措置解除の制限など、児童虐待があった場合の対応について、さまざまな規定を設けてございます。

 一方で、児童虐待の発生を未然に防ぐという観点から、子育てによるストレスが虐待につながることのないよう、保護者に対する子育て支援が十分に行き届くようにすることが重要であり、これは、委員御指摘のとおり、基礎自治体である市町村の役割が重要となっておると考えます。

 そこで、本法案では、附則第九条第一項において、子育てに困難を有する保護者に対する支援のあり方について、児童虐待防止法の見直しを含めて検討が加えられ、その結果に基づき必要な措置が講ぜられることといたしており、保護者への支援に対する市町村の財政も含めた体制の充実についても検討がなされるものと考えております。

岡本(あ)委員 最後に質問したかったんですが、もう時間がないので。

 閣法に加えて野党提出法案にも、喫緊性及び効果が期待できる内容が大変盛り込まれているものと考えています。ぜひ、よいところを加えて、何よりも子供にとって最善の利益につながる法改正になることを求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 昼が終わりまして、トップバッターとなります。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、児童虐待防止法、そして児童福祉法改正案についての質問ということですけれども、もう言うまでもなく、児童虐待は、子供たちの育ち、そして命を脅かすものでありまして、しっかりとなくなるように私たちも議論をし、そして、子供だけでなくその親御さんも支援をしていく必要があると思います。

 そんな中で、きょうは、野党の方からも法案が提出されております。今、修正協議がされているということでありますけれども、まずは、この議員提出法案の方から御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まずは、虐待を受けた子供への対応ですけれども、どのようにこれから虐待を受けた子供たちを支えていくのか。特に親子分離となった際の受皿は、今、施設から家庭での養育へとシフトをしていくところ、方向性が示されております。児童虐待を受けた児童の保護のためには、受皿として里親の果たす役割、非常にこれは大きいと思います。

 里親の拡充について、野党案ではどのような考え方になっているのか、お聞かせください。

初鹿議員 御質問ありがとうございます。

 尾辻かな子議員からの里親の拡充についての御質問にお答えさせていただきます。

 家庭における養育は子供の健全な育成にとって極めて重要なものであり、児童虐待を受けた児童を始めとして、何らかの事情により家庭での養育が困難となった児童に対して、家庭環境のもとで養育を提供する里親制度は極めて有意義なものです。

 もっとも、現状においては、里親の数が十分に確保されておらず、さまざまな課題を抱えた児童に対応できる里親の数も少ないことから、里親を開拓するとともに、里親への支援を強化することが必要であると考えます。

 そのため、本法案では、改正後の児童福祉法第十三条第二項において、各児童相談所に里親支援担当の児童福祉司を一名配置するという基準を法定化するとともに、附則第九条第二項第三号において、児童虐待を受けた児童の社会的養護に関し、里親への委託を促進するための措置について速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしています。

 また、本法案では、中核市及び特別区に児童相談所の設置を義務づけしておりますが、住民に身近な自治体である中核市及び特別区に児童相談所が設置されることで、里親の開拓や里親へのきめ細やかな支援が図られ、里親の拡充につながるものと考えます。

尾辻委員 先日の参考人でもありましたけれども、明石市で今児童相談所ということをやっておられますけれども、そこでもやはり、身近なところで相談をする、対応することで、里親も非常にふえているという話がありました。これはそこと本当にリンクしているなというふうに思います。

 それでは次ですけれども、切れ目のない支援をどうするかというところで、児童虐待を受けた児童について、施設入所等の措置が解除された後、ここもやはり引き続き支援をしていく必要があると思います。

 その中で、この切れ目のない支援を野党案ではどのようにしていくのかということについて、お聞かせをいただきたいと思います。

池田(真)議員 御質問ありがとうございます。

 御指摘のように、施設入所等の措置を解除された後も引き続き十分な支援が必要な場合が多いと認識しておりますが、現行法においては限られた場合における支援にとどまっております。

 そこで、本法案の附則第九条第二項第四号において、施設入所等の措置を解除された者に対する自立の支援を充実するための措置について速やかに検討を加え、必要な措置を講ずるものとしています。

尾辻委員 これも非常に大事なことだと思います。

 そして、今回の議員提出法案の中で、一つ特徴的な、DV防止法の改正案も一緒に提出をされておりますので、そのことについてお聞きをさせていただきたいと思います。

 児童虐待防止法では、御承知のとおり、虐待を発見した医師は通報義務がございます。しかし、DV防止法においては、「その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報することができる。」できるということになっておりまして、さらに、「この場合において、その者の意思を尊重するよう努めるものとする。」というような条文とされております。

 今回、この規定を削って、通報を義務化するということになっておりますけれども、義務化したのはなぜかということについてお答えいただきたいと思います。

阿部議員 御質問ありがとうございます。

 確かに、御指摘のように、現行のDV防止法第六条第二項後段では、医師等が通報する場合には、DV被害者本人の意思を尊重するよう努める旨が規定されています。これは、通報を嫌うDV被害者が医師等にかかるのをためらうおそれがあるのではないかと考えられたためであるともされております。

 しかし、一方、DVの被害やDVと相互の関連性が指摘される児童虐待の被害については、死亡事案など痛ましい事案がなくならないのも事実です。そして、医師等の治療を受けねばならないほどの負傷や疾病がある場合には、通常、DV被害者の生命又は身体に対する重大な危険が迫っていると考えられます。

 このため、DV及びその裏に隠れた児童虐待を防止して、何よりも大切な人の命を守るためには、医師による通報を優先させる必要があると考えたところです。そこで、現行の規定を削り、医師等による通報を義務化することといたしました。

尾辻委員 今までは、DVがあって病院に行っても、結局、それが通告されない、通報されないために、そのまま放置されるというような状況があるかと思います。

 このように、今、議員提出の法案の方で、しっかりと通告、通報をすることになると、DV被害者にとってはよりいろいろな支援につながると思いますので、この変更は非常に大事で、重要な点だと私は思います。この方向でしっかりとDV法を改正していただきたいなというふうに思います。

 それでは、次は、閣法に対しての質問をしてまいりたいと思います。

 まずは、虐待の死亡件数のことについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 添付の資料でもつけさせていただきましたけれども、警察庁と厚労省で、虐待による死亡数というのが、カウントが違うということがあります。ちょっとこのことについてお聞きしていきたいと思います。

 まず、警察庁の方にお伺いしたいと思いますが、警察が把握している虐待による死亡児童数というのはどのようになっているのか、お聞かせください。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する児童虐待に該当する事件として検挙した者のうち、殺人、傷害致死その他の被害児童を死亡させた罪により検挙した事件に係る被害児童数を死亡児童数として計上をしているところであり、平成三十年中の死亡児童数は三十六人となっております。

尾辻委員 添付でいきますと、皆様のお手元の二枚目の資料が警察庁が出している死亡児童数、この一番下のところの表ですけれども、死亡児童数の内訳というふうになります。

 警察庁の考え方だと、検挙したというところで出てきますので、死亡児童数の内訳というところを経年変化で見ると、平成十五年、二〇〇三年のときは百三人というところから始まって、十五年、ずっとこうやっていきますと、先ほど言っていただいたように、二〇一八年、平成三十年には、実は死亡児童数が三十六人ということになっているわけです。

 これだけを見ると、非常に減少しているというふうに私なんかは捉えるわけですけれども、警察庁としても、これはやはり減少しているというふうに捉えておられるんでしょうか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、一一〇番通報や児童相談所からの通報等により児童虐待事案を認知した場合には、関係機関と連携して児童の安全確保を図るとともに、事案の緊急性、危険性、結果の重大性等を踏まえて、事件化すべき事案について厳正な捜査を行っているところであります。

 警察庁の統計におきます数字の推移でございますけれども、その要因につきましては、必ずしも明らかではございませんが、いずれにいたしましても、警察といたしましては、児童虐待事案を認知した場合には、関係機関と連携して児童の安全確保を図るとともに、事件化すべき事案について厳正な捜査を推進してまいりたいと考えております。

尾辻委員 警察庁はそういう感じなんですが、じゃ、厚労省はどうかというと、一枚目の方になりますが、死亡事例ということでここは出ておりますけれども、なかなか警察庁とは数が違うんですね。

 この厚労省の児童虐待の死亡数、ちょっとどういうふうになっているのか、そして、なぜこのように数が違うのかということをお聞かせください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 配付資料で配付していただいておりますけれども、厚労省で把握しておりますのは、児童虐待の死亡事例としては、厚生労働省の社会保障審議会の専門委員会で把握している数として公表しております。

 その数字でございますけれども、配付資料のとおり、直近の平成二十八年度の児童虐待による死亡児童数は七十七人、そのうち心中以外の虐待死が四十九人、心中による虐待死が二十八人となっております。

 警察庁の発表と違う要因でございますけれども、一つは、そういう意味では形式になるわけですけれども、厚労省が公表している死亡事例の人数はまず年度単位だということで、警察庁は年単位。

 それから、厚労省の数字は各自治体において児童虐待による死亡事例として把握している人数ということで、警察庁は、先ほど説明がございましたけれども、児童虐待事件として警察が立件したもののうち、殺人、傷害致死その他の被害児童を死亡させた罪により検挙した事件に係る被害児童数ということであります。

 そういう意味では、年度か年かということ、それから、自治体か警察として検挙したものに係るものかどうかという違いだというふうに考えております。

尾辻委員 どちらの数を見るかというので、現状認識が大分違うと思うんです。

 ちょっと調べると、内閣府の子供・若者白書では警察庁の数字を使っているんですね。どちらでもいいんですがお聞きしたいんですが、政府として、児童虐待の死亡数は何人ですかといった場合は、どちらを答えられるんでしょう、政府としてということになった場合。お互いに自分たちの数字をおっしゃることになるんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 そういう意味では、どういう場面で使うかということでありまして、事件とかそういうものにかかわらず虐待による死亡事例ということであれば厚労省の数字かと思いますし、事件関係ということで数字を使う場合には警察庁の数字かと思います。

尾辻委員 非常にわかりにくいなと思うんですね。

 例えば、不思議なのは、心中による虐待死でもかなり数字が違うんですね。例えば、平成二十七年、二〇一五年とかを見ると、厚生労働省だと三十二人になるわけですね。警察庁だと、平成二十七年だと二十人ということで、数が結構違うんです。年度と年の違いとおっしゃっていますけれども、年度と年の違いで十二人も違うのか。結局、比較できないんです、こういった形で。

 もしよかったら、心中による虐待死もなぜこんなに違うのかということもお答えいただければと思いますが、いかがでしょう。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のような観点から厳密な形で数字を比較したことが精緻にはございませんので、正確なことは申し上げづらいわけですけれども、厚労省の数字は各自治体で把握している数、警察庁は事件にかかわる数ということで、そういう意味での違いが基本ではないかなというふうに思います。

尾辻委員 でも、ちょっとかなり数が。

 結局、現状がどっちかによって受けとめ方が全然違うことが私は問題だと思っているんですね。つまり、警察庁の虐待死であれば、十五年間にかなり減少していっていて、減少傾向が見えるなというふうに思うんですね。ところが、厚労省さんのを見ると、ここ最近ちょっと横ばいかなという感じなんです。もう少しやはり整理が必要じゃないかというふうに思います。

 新聞報道だって大きく変わるわけですよ。警察庁さんが出した発表のときは、虐待死、減りましたと出るわけですよね。でも、ことしの多分八月、夏ぐらいですかね、死亡事例を厚労省が発表したら全然違う結果が出る。ということになると、これまた何か混乱するんじゃないかというふうに思うわけです。

 例えば、厚労省さんがこうして出すときに、一応、警察庁さんの数字を一緒に出すとか、警察庁の数字とは違うとか、データ併記とか、何かするべきだと思いますけれども、この辺いかがでしょう。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 厚労省の調査でございますけれども、調査に当たりましては、今後の再発防止策を検討するために、事件化されているかどうかにかかわらず、広く虐待による死亡事例として考えられる事例全てについて調査するという前提で行っております。

 そういう意味では、私どもの認識といたしましては、虐待死の状況については、近年横ばいということで認識をいたしております。

尾辻委員 私、データを併記していただくなり何か、この数字、違うというところについて書いていただきたいというふうに聞いたんですけれども、いかがでしょう。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 もともと、調査の目的なり性格が違いますので、私どもの調査結果そのものに、何か注書きとか併記するのはどうかなというふうに思いますけれども、発表の際に、警察庁の数字はちなみにこういうものだということをあわせて私どもからお話しするということはできると思います。

尾辻委員 これだけ数が違うと、分析とかも違ってくるわけですよね。なので、ちょっとここら辺、数字の問題は丁寧にやっていただきたい。今まで毎月勤労統計の話とかいろいろありますので、お願いしたいということを言っておきたいと思います。

 では次に、人材育成についてお聞きをしていきたいと思います。特に児童福祉司の人材育成ですね。

 いろいろな現場のお話を聞きますと、正直、児童相談所に勤務をされる方、児童福祉司の方々は、三日、つまり、赴任して三日でやめたいと思われる方が非常に多い。そして、何とか二年か三年、自分の任期が終わったら異動したいと言われる方が非常に多いんだということを聞いております。それはやはり、児童福祉司の現場が、ハードな相談があったり、介入によって家族からも恨まれるようになる、敵視されるようなこともあるということで、これは非常にやはり神経を使う職業となっております。

 勤続年数も、今、三年未満が半数弱という現状の中、特に仕事の中でメンタルヘルスを悪くされる人も非常に多いということを聞いております。なので、まず、この児童福祉司さんたち、休職率がどれぐらいなのか。そして、非常に現場が大変だということをきのうも参考人の方からもるるあったかと思いますけれども、こういう勤続年数も短いということ、このことについてどういうふうに捉えて対策をされていくのかということについて、これは大事なことなので大臣からお聞きしたいと思います。

根本国務大臣 委員がおっしゃられたとおり、児童福祉司の皆さんの負担軽減を図る、これは重要だと思います。

 昨年十二月に、児童相談所や市町村の体制強化を図るため、新たなプランを策定して、児童福祉司の二千名増員、全市町村に身近な相談拠点の設置などを進めることとしています。

 特に、児童相談所の体制強化のために、現在三千名の児童福祉司については今年度一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とするなど、児童相談所の体制を抜本的に強化いたします。この強化することに加えて、児童心理司も二〇二二年度に八百名増加、保健師についても全児童相談所に配置することなどを進めてまいります。

 このような取組によって、児童福祉司の一人当たり業務量の軽減を図っていきたいと思います。

 あわせて、児童相談所における専門性強化を図って、多角的、重層的な観点からの支援の実施を促進し、これによって児童福祉司にとって働きやすい環境につながるものと考えております。

 加えて、児童相談所の児童福祉司等の職員について、ただいま委員からもいろいろな御指摘がありましたが、児童虐待に関する通告への対応、介入的な対応や夜間及び休日の緊急的な対応に備えが必要となることから、精神的、肉体的負担が大きい業務であること、専門性を有する人材の確保が求められていることに対応するために、手当などによる処遇改善を図る旨、これを本年三月に関係閣僚会議で決定をしております。

 具体的には、今後、地方の意見も踏まえながら、予算編成過程において検討していきたいと考えています。

尾辻委員 私は、非常にハードな職場で、メンタルをやはりやられて、メンタルヘルスを悪くされる人も多いんじゃないかということで聞いているんですけれども、この休職率などは把握されていますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 メンタルヘルスなど精神的な負担による休職率につきましては、把握をしておりません。

尾辻委員 今どんどん人材をふやしていくわけですけれども、現場の大変さというのは、人数がふえたからといって、新人の方がふえるわけですので余計しんどくなる可能性も、もちろん、やはり一時的にはあるわけで、そうなりますと、メンタルヘルスとか、どういうふうにして休職されるのか、休職率が多い職場なのかどうか、これをやはり把握する必要があると思いますが、いかがでしょう。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今後、処遇改善とかいろいろなことを検討していくわけですけれども、そういった検討をする中で、どのような形で実態を把握できるかどうかについても検討してまいりたいと思います。

尾辻委員 多分、聞けばわかると思うんですね。今休職されている方がいるかどうか、そしてその理由について、聞けばわかると思うので、ぜひ把握していただきたいと思います。ちょっと一言、お願いしたいと思います。把握してください。

浜谷政府参考人 関係自治体の御協力も必要ですので、関係自治体と相談しながら検討してまいりたいと思います。

尾辻委員 よろしくお願いします。

 人材育成のところ、中長期的な視点というのはちょっと飛ばして、要望だけしておきます。

 参考人の方からも、東京都はついに定員数が埋まらないという現状があるということをおっしゃっていましたし、萬屋参考人からは、四月に来た新人が見習期間もなくてすぐ現場の相談に入る、もうちょっとやはり最初は見習期間が必要だ、一人前になるにも時間がかかるということがありました。

 ぜひ、中長期的な視点に立った人材育成、これは要望をしておきたいと思います。

 次に、専門資格化のことについてお聞きしたいと思います。

 今、一年以内に結論を出すということになっておりまして、もちろん、児童福祉司さんそして児童虐待の現場にいらっしゃる方々が専門スキルを身につけることは非常に大事なことだということは私も思っております。

 一方、現場からは、これについては懸念の声も上がっております。

 例えば、今、福祉職でのジョブローテーションをしている、高齢者のところに行ったり、生活保護に行ったり、病院、障害などのジョブローテーションの中で児童福祉の現場にも来て、それでソーシャルワーカーとしてのスキルを身につけていくというようなことをやっているのが、このジョブローテーションができなくなってしまうんじゃないかというような点。そして、五つの専門職団体からは、この専門資格化については懸念の声明が上がっているということもあります。

 これは一年と非常に短いんですけれども、こういった現場の声、そして専門職団体からの声、しっかり踏まえていただきたいと思いますが、これも大事なことなので大臣にお聞きしたいと思います。

根本国務大臣 児童福祉司の専門性向上を図ることは重要だと思います。

 本法案の附則においては、その施行後一年をめどとして、児童福祉司等の資格のあり方を含めた資質の向上を図るための方策について検討することとしています。

 これは、昨年行われた社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおいて、子供の福祉に関する業務を担う人材の専門性向上のため、大きく二通りの意見がありましたが、子供の福祉に関する国家資格を創設すべきとの御意見があった一方で、社会福祉士等を活用し、養成カリキュラムの充実で対応するべきなど、さまざまな御意見がありました。

 しかしながら、人材の専門性の向上及び具体的な方策について検討すべきという点については意見が一致したところであります。今後、国家資格化も含めて、一定の年限を区切って引き続き検討すべきとの取りまとめをいただいているところであります。

 検討を進めるに当たっては、関係者の御意見あるいは現場の実情も十分お伺いした上で、国家資格のあり方を含め、人材の資質向上を図るための方策について検討していきたいと考えています。

尾辻委員 しっかりと現場の声とか職能団体の声も聞いていただきたいというふうに思います。

 専門化するというのは、ある意味、いいことではありますけれども、そうすると、今度は障害専門の人をつくろうとか、高齢者専門をつくろう、この病気のこの専門の人をつくろうという、何か無限に細分化するような、そういう議論にもなりかねませんので、ここについては慎重に検討いただきたいというふうに思います。

 次に、自治体の定数のことについてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、今聞こえてくる話は、子供の虐待のことを手厚くしていこうということは非常にいいことである、ただ、自治体の現場から見ると、そこに人を集めるためにほかのところから人を異動してもらわなきゃいけないというところが、多分定数の縛りがやはり自治体ごとにあって、なかなか児童相談だけに人をつけようというのが非常に難しいんだというような声も聞こえます。

 ですので、まず、総務省にお聞きしたいんですけれども、職員の定数というのは自治体においてどうなっているのか、お聞かせください。

大村政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体の職員数についてでございますが、全体としては、平成六年をピークに減少をしてきておりますけれども、平成二十九年には増加に転じておりまして、また三十年については減少といったような状況でございます。

 こうした中で、一般の行政部門につきましては、平成二十七年度以降、四年連続で増加をしております。これは、子ども・子育て支援体制の充実ですとか防災体制の充実などに人員を要しているということからでございます。

 特に、全体がピークだった平成六年に比べましても、児童相談所等の人員は約一・九倍増加をしておりまして、福祉事務所は約一・六倍増加しているところでございまして、各地方公共団体において、それぞれの住民ニーズに応じて必要な定員の配置を行っていることによるものと認識をいたしております。

 また、総務省としても、定員管理に当たりましては、行政の合理化、能率化を図るとともに、現在、地域の実情を踏まえた適正な定員管理の推進に取り組む旨を毎年度通知しているところでございます。

 今後とも、今般の児童虐待の新プランなどを踏まえて、地方公共団体において、行政需要に応じた適正な人員配置が行われていくものと考えております。

尾辻委員 ちょっとこれは確認ですけれども、結局、児童福祉司さんがふえたり児童心理司さんがふえることによって、やはり定数の中でやりくりしている自治体が多いということでしょうか。それとも、今の段階でいうと、それでやはりふえているんだということでしょうか。ちょっとここは確認です。

大村政府参考人 お答えいたします。

 これは各団体によると思いますけれども、基本的に、各団体は条例で定数を定めておりますけれども、その範囲内で運用していると思います。

 やはり、全体としてはめり張りをつけた形での定員管理ということをやっていらっしゃると思いますけれども、先ほど、全体として平成二十九年には増加に転じているということで、そういう意味では、行政需要の増に応じて全体がふえていくということもあるということで、この辺は各団体によると思います。

尾辻委員 私自身は、児童虐待で人員をどんどん、今回でいうと児童福祉司を二千人とか心理司を七百九十人とかふやしていくなら、定数をしっかりふやさないと、自治体の中でほかのところにしわ寄せが行くというような状況がやはり生まれているんだと思うんですね。

 厚生労働省、この件についてはどのように捉えているでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 厚労省といたしましては、近年増加する児童虐待への対応をより適切に行うために、昨年十二月に新プランを決定したわけでございます。

 御指摘ございましたけれども、児童福祉司、三千人から五千人、児童心理司も八百人程度増員、それから、市町村の拠点の全市町村整備等々について決定をいたしました。また、これに基づきまして、児童相談所及び市町村の体制強化を図るために、地方交付税措置も講じているところでございます。

 こういったことを踏まえまして、各自治体において必要な人材を図って体制強化をすることが必要と考えております。

尾辻委員 地方交付税措置はされていて、それはいいことだなとは思うんですけれども、この定数の部分もやはり見ていかないと、なかなか現場の実態は難しいんじゃないかなというふうに思います。

 次に、児童相談所や市町村の児童相談、ここで、今、常勤、非常勤、これはどういう割合になっているのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、児童相談所でございますけれども、児童相談所でケースワーク業務に当たっています児童福祉司の配置数につきましては、九九・一%が常勤、〇・九%が非常勤でございます。

 市町村でございますけれども、市町村における虐待対応窓口職員につきましては、七三・九%が常勤、二六・一%が非常勤でございます。

尾辻委員 市町村の児童相談において、やはり非常勤の方が非常に多いということを私も聞いておりまして、例えば、東海地方の四十万人規模の市では、家庭児童相談室の組織体制、正規職員が四名、非常勤が十二名の十六名体制だということなんですね。市町村が一義的に責任を担うことになった児童相談への対応は、おおむねここでは非常勤職員が当たっている。児童虐待に対する相談、面接、アセスメントは非常勤職員の仕事になっていて、仕事の負担と責任が賃金を上回っていると感じて人材確保も難しくなっているということがあるんですね。

 今聞いたところだと、常勤が七三・九、非常勤が二六・一、でも、この自治体だとこういうばらつきがあるんですけれども、市町村のそれぞれでやはりいろいろ差があるんでしょうか。全体で丸めたら七対三ぐらいになるんでしょうけれども。

 この辺はどうなっているのかお聞きしたいところですけれども、質疑時間が終了したと来たので、続きはまた金曜日に質問をさせていただきたいというふうに思います。里親のこととか児童養護施設のことについては、この続きということで、次にさせていただけたらと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は児童虐待防止法改正案等の審議ということで、早速始めさせていただきたいと思います。

 まず、児童虐待の防止、早期発見の点からお伺いをさせていただきたいと思います。

 児童虐待から小さな子供の命を守るためには、児童虐待の防止はもちろんのこと、大臣、早期にその兆候を発見して適切な措置をとること、これが何より重要ではないかと考えます。特に虐待による子供の死亡事例については、ゼロ歳児も結構な数、多く見られる、そういった状況だと承知しております。

 その意味でも、乳幼児の段階から、健康診断などの際に、運動器だとか体幹に関する検診を行って虐待のサインを見逃さないということが、児童虐待のいち早い発見につながって、結果、児童虐待防止につながるのではないかと考えます。

 要は、大臣、学校の健診なんかにおいて、若しくは赤ちゃんを診るのは乳幼児の健診とか、まあ乳幼児の場合はちょっとポイントが変わると思うんですけれども、特に、いわゆる学童期とかそういったときに、関節や運動器の健全な発育をチェックするとともに、そういった関節、体幹に虐待のサインがないかということをチェックしていくと、かなりの割合でやはり見つかってくると思うんですね。

 大臣、この点はいかがお考えになられますかね。

根本国務大臣 御指摘のように、手足や胴体に傷がないか、あるいは今、関節とか体幹というお話もありましたが、身体的な発達についておくれがないか等について身体的な診察を行うこと、これは委員のおっしゃるとおり、虐待予防、早期発見にもつながり得るものと考えます。健診等の機会において身体的な診察を行って、虐待の発見や虐待リスクの高い親子を把握して虐待予防の支援を行うこと、これは重要だと考えています。

吉田委員 じゃ、具体的にそういった指導や通知などを厚生労働省として学校等々、場合によっては保健所等々に出すおつもりや予定、また過去にそういった指導をしたことというのは、私の記憶ではちょっとわからないんですが、あるんでしょうかね、大臣。そこを確認させてください。

根本国務大臣 まず、虐待防止の観点からも、乳幼児健診診査、これは重要であると考えています。

 このため、平成二十八年の児童福祉法等の改正において、市町村が、広く妊産婦等と接触する機会である乳幼児健診診査等の際に、悩みを抱える妊産婦等を早期に発見して相談支援につなげるなど、児童虐待の予防や早期発見に資するものであることを留意するよう、母子保健上明確化しております。

 このような法改正も踏まえて、乳幼児健診診査については、平成二十九年子ども・子育て支援推進調査研究事業で策定しました乳幼児健診診査身体診察マニュアルにおいて、健診の際に、子供への身体の視診にてけがの有無や傷跡あるいは打撲痕などに留意することや、火傷や骨折、縫合を必要としたけがなどが複数認められることなどにより虐待の兆候を確認した場合には、児童相談所や子ども家庭相談センターなどへ連絡することなどを促しております。各自治体で活用していただけるように情報提供を行っております。

 引き続いて、乳幼児健診を始めとした母子保健施策と児童虐待防止対策の連携を深めて、児童虐待の発生予防、早期発見に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

吉田委員 大臣、今おっしゃったところの主たるところは、見つけた後の連携とかそういうことですよね。学童はどうなんですかね。学童期が大事。さっきの体幹とか運動器の検診というのは学童なんですよ、乳幼児じゃなくて。だから、学童に対してそれをちゃんとやるように促したりとかしたことがあるのか、若しくはする予定があるのかということを聞いているんです、大臣。

 お答えに時間がかかるんだったら、ちょっと議法の方にも聞きたいので。

根本国務大臣 学童については文科省の所管でありますが、文科省では、学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きというものを示していると承知をしております。

吉田委員 でも、検診は厚生労働省がちゃんと所管しないといけないんじゃないですかね、学校における検診は。学校は、文部科学省もそうですけれども、厚生労働省もだと思いますよ。

 わかりました。

 では、この運動器、体幹とかの検診に関して、やはり私は不十分だとはっきり言って思います、現状。これをやはり強化していかなければいけないと思うんですが、議員立法の方に関してはそこの点どのような御配慮がされているのか、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

阿部議員 御質問ありがとうございます。

 まず、先ほどの閣法での大臣の御答弁がありましたように、乳幼児に関する幾つかの指針はあろうかと思いますが、吉田委員御懸念の学校健診については、実は私も小児科医ですから担当したことがございますけれども、非常にたくさんの子供さんを、主には聴診器を当てて心音を聞く、呼吸状態を診る等々が主になっておりまして、なかなか、いわゆる運動器、体幹検診に当たるような、手足、関節あるいは身体の各所を診る等々は、数が多くてそこまで診ていられないというような実情があるかと思います。

 そこで、野党案においては、きちんと運動器や体幹の骨折やあざ等を学校健診においても確認する、それが早期発見に資するものであると考えておりますので、関係機関との協力、調整の上、実施のために必要な措置について検討を行うものといたしてございます。

吉田委員 ありがとうございます。

 ちょっと時代が変わったからわからないかもしれないですけれども、私が子供のころの学校の身体測定ですかね、ああいうときはパンツ一丁になっていますよね。だから、そういうときはやはりそういうものが発見しやすい状況なのか。今どういうふうにされているのかわからないんですけれども、そういうときにちょっと組み合わせてやったり、そういった工夫もできるんじゃないかなと私は思いますが、次の質問に行きたいと思います。

 大臣に引き続きお伺いしますが、虐待の発覚を恐れて、虐待をしている親権者が乳幼児健診や学校健診を受けさせないということが想定されるわけであります。このような状況を回避するためには、乳幼児健診や学校健診を、完全な義務化は難しいですけれども、半ばやはり義務化していく必要がある。若しくは、それを学校で受けることができない何かの事情があるのであれば、どこかの医療機関等々でチェックをする、そういった必要があるのではないかと私は考えるのですが、大臣、いかがですか。

根本国務大臣 母子保健法では、母性及び乳幼児の保護者につき、みずから進んで母子保健に関する知識の習得並びに母性及び乳幼児の健康の保持及び増進に努めるべきこと、これを定めております。

 また、乳幼児健診の未受診家庭に対しては、家庭訪問等により受診勧奨に努めるとともに、それでも受診しない場合は、児童福祉担当部署等に情報提供を行い、連携して子供の安全確認を徹底することを市町村に求めるなどの対応を行っているところであります。

 引き続き、乳幼児健診を始めとした母子保健施策と児童虐待防止対策の連携を深めていきたいと思います。

吉田委員 大臣、私がもう一言聞きたいのは、では現状の今のやり方で十分と大臣はお考えなのかどうかということであります。

 つまり、いろいろな事件が起こってきているわけですし、やはり今、受診勧奨やさまざまな対応が十分に機能していない部分もあろうかと思うんですね。それによってさまざまな事件が起こってくる。それで、今のこういった状況を鑑みて、今後何か特別なことを、大臣、なさるおつもりはないんですか。

根本国務大臣 私が今答弁したところでありますけれども、やはり大事なのは、関係機関の連携の強化というのも大事だし、母子保健施策と児童虐待防止対策の連携を深めて、そして児童虐待の発生予防と早期発見に全力を挙げて取り組む。ここの母子保健施策、児童虐待防止対策の連携、これをしっかりと今後も強化していきたいと思います。

吉田委員 具体的にどういうふうに強化するかということも教えていただきたいというのが今の趣旨だったんですね、私の質問は。強化はいいんですが、具体的にどういうふうに強化するか、もう一言、大臣、ちょっと詳しく教えていただかないとよくわからないですね。

冨岡委員長 すぐまとまりますか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 起こしてください。

 根本大臣。

根本国務大臣 例えば、訪問して家庭の相談支援を行うために、乳幼児家庭全戸訪問事業によって生後四カ月までの乳児のいる全ての家を家庭訪問して、養育環境の把握を実施しております。これによって把握した、保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭に対して、養育支援訪問事業によって養育に関する相談支援や家事育児援助を行っており、これらの訪問事業の実施状況は年々増加をしております。

 要は、先ほど施策の連携強化と申し上げましたが、今既にさまざまな施策を講じておりますので、やはり大事なのは、関係機関がしっかり連携する、そして深めていくということだと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございました。しっかりとやっていただければと思います。本当に大事なことだと思います。

 次に、同様の質問は他の委員からもあると思うんですけれども、今回の内閣提出法案の眼目の一つは、児童虐待防止法の第十四条で、これまでの「児童のしつけに際して、」の後に「体罰を加えること」という文言を追加して、体罰の禁止を明文化したこととされています。しかし、改正案では、依然として同条の中に「監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、」とあり、体罰の定義を狭く解すると、依然として現在問題となっている体罰が実質的になくならない、こういったおそれも出てくるわけであります。

 そこで、繰り返し御答弁されていると思いますが、本法案における体罰の定義はどうなっているのか、また、体罰を行った場合の罰則規定についてどうなっているのかを端的にお答えください。

根本国務大臣 今回の法案で、体罰に関する規定を置きました。この体罰に関する規定については、罰則は設けておりません。

吉田委員 大臣、体罰の定義を聞いているんですよ、最初。

根本国務大臣 法律上、体罰の禁止規定を置きました。そして、この体罰に関する規定は、既に学校教育法第十一条に体罰を禁止する規定が存在します。

 学校教育法においては、こうした懲戒行為が体罰に当たるかどうか、これは個々の事案ごとに判断する必要があるとされておりますが、殴る、蹴るなどの身体に対する侵害を内容とするもの、正座、直立等の特定の姿勢を長時間にわたって保持させるなどの肉体的に苦痛を与えるもの、こうされております。

 今回の我が方の体罰についても、この学校教育法を参考としながら範囲を定めることを想定しております。

吉田委員 次の私の質問のことも答えていただいたんですけれども。

 つまり、これはきのうちゃんと私は細かく、わかりやすくレクをしておいたんですが、いいですか、大臣。答弁書に夢中になっていらっしゃいますかね。いいですか、ちゃんと聞いてください、大事なことなので。

 もう一回確認ですけれども、学校教育法上の体罰の定義と今回の体罰の定義は一緒ということですかね、大臣。これは大事なことなので、ちょっと確認をしっかりさせてください。学校教育法を大臣は引用されましたが、その体罰と今回の体罰は同じという理解で、大臣、いいですか。

根本国務大臣 学校教育法を参考にしながら範囲を定めることを想定しております。具体的には、今後、体罰の範囲や体罰禁止に関する考え方等について、国民にわかりやすく説明するためのガイドラインを策定したいと思っておりますが、教育法で示されている考え方はあくまでも参考ですから、学校の教育の現場、あるいは家庭の中、そこは学校教育法を参考にいたしますが、そこが必ずしも同一かどうかという点についてはこれから詰めていきたいと思っております。

吉田委員 わかりました。大臣、そういうことですよね。イコールじゃなくて、環境が違うわけですから、やはり変わってくるじゃないですか。そこを確認したかったのと、であればこそ、ちょっと金曜日までに、厚生労働省の今考える体罰の定義をちゃんと確認させてください。きょうはもう答えは結構です。

 では、議員立法の提出者にお伺いいたします。

 同じことをお伺いしますが、議員立法における体罰の定義、体罰禁止の規定等々は議員立法ではどのようになっているか、御答弁いただけますか。

初鹿議員 吉田統彦議員、御質問ありがとうございます。

 体罰については、前回の質疑の中で私も質問させていただいておりますので、ありがとうございます。

 教育やしつけと称して行われる体罰は、児童の心身に著しく悪影響を及ぼすものであり、断じて許されるものではありません。

 国際的にも、体罰は、我が国も批准国である児童の権利に関する条約において、保護者が児童に与えることのできる適当な指示及び指導には当たらないとされております。

 体罰の定義については、提案者としては、二〇〇六年に出された子どもの権利委員会一般的意見八号において示された、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ、何らかの苦痛又は不快感を引き起こすことを意図した罰として捉えることが適切ではないかと考えております。

 体罰をこのように理解した上で、本法案では、体罰は許されないというメッセージを明確に打ち出すべく、およそ親権の行使に際して体罰を加えてはならない旨を規定しております。したがって、しつけと称した体罰も当然禁止するものであります。

 なお、親権者ではない者、例えば内縁の夫からの児童への暴力については、そもそも体罰にすら当たらず、暴行罪、傷害罪、当然虐待に該当し得るものであると考えております。

吉田委員 大臣もぜひ、明確に議員立法の方では定義があるようでございますので、そこも今聞いていただいたと思いますので、また金曜日、しっかりとした、厚生労働省のいわゆる閣法での定義を聞かせていただきたいですね。

 議員立法の趣旨はよくわかりました。ありがとうございます。

 それでは、閣法にまた戻らせていただいて、質問させていただきたいと思います。

 何をもって虐待と言うのか、これはもちろん、大変に難しい問題も内包していると思います。言うまでもなく、今お話にありました体罰などの児童本人に加えられる有形力の行使、これは明確に体罰であると言うことができるわけですが、それでは、子供がぐあいが悪いとか、また何かしらの疾患に、疾病に罹患しているとかそういった際に必要な医療を受けさせないこと、こういった場合は、やはり不作為の虐待ということになりますよね、大臣。

 なるということを明確に確認したいことと、もう一つ、同様の類似の案件ではありますが、ワクチンの定期接種を意図的である、そうでないにもかかわらず行わないような場合、こういったものも今の広義の虐待に当たるのかどうかということを政府にお答えいただきたい。

根本国務大臣 児童虐待防止法では、保護者としての監護を著しく怠ること、これはネグレクトとして児童虐待に該当いたします。また、一般論として、子供が病気になっても医療を受けさせないこと、これについては、本来保護者が行うべき監護を著しく怠っていると考えられることから、これはネグレクトとして児童虐待に当たり得ると考えられます。

 また、予防接種、要はワクチンのお話ですが、予防接種については、伝染のおそれがある疾病の発生等を予防するために公衆衛生の見地から行われるものであって、これは基本的に国民の理解と協力を得ながら実施されるものであります。

 この趣旨を踏まえると、子供に予防接種を受けさせないことをもって直ちにネグレクトに当たるということは難しいと考えられますが、当該子供の家庭の状況とあわせて、ネグレクトと判断されることは考えられると考えています。

吉田委員 ありがとうございます、大臣。ワクチンに関しては、かなり言葉を選んで御答弁されましたね。

 ただ、はしかがこれだけ流行していること。ワクチン政策というのは、アメリカなんかは、CDCがしっかり責任を持って、国家戦略としてやっていますね。北欧の諸国では、予防接種の接種率を高めることで病原体を駆逐してしまって、もうその国に病原体がないような状況も多々存在するわけであります。厚生労働省としては、接種率を当然高めたいわけであります。

 アメリカは、御存じだと思いますが、学校に入るときにワクチンキャリアを確認します。ワクチンを打っていないと学校に入れないんですよ。ただこれは、日本では学ぶ権利に抵触する、そういったことも考えられるわけでありますから、一概に同一にしようと言っているわけではないんですが、ワクチン政策に関して、やはり日本はかなりおくれをとっていた事実がありますよね。民主党政権のときに、かなりワクチン政策を前進させたと思いますよ。

 そういった中で、ワクチンというのは、もう一回確認ですけれども、厚生労働省としては、親が子供に受けさせる義務としては考えていないという理解でよろしいですか、大臣。

根本国務大臣 予防接種については、予防接種法で、伝染のおそれがある病気の発生及び蔓延を予防するために公衆衛生の向上の見地から必要な措置を講ずることによって、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする、法律上そういう規定になっております。

 その意味で、予防接種については、伝染のおそれがある疾病の発生等を予防するために公衆衛生の見地から行われるものであって、基本的には、国民の理解と協力を得ながら実施されるという位置づけであると考えています。

吉田委員 大臣、さっきと同じ答弁なので、私が聞きたいのは、定期接種となっているものを子供に受けさせることは親の義務とか親の責任ではないとお考えなのか、そうであるとお考えなのか、そこを明確にお答えいただきたいんです。であるか、ないかだけでいいんです。お答えください。

根本国務大臣 それは親の努力義務になっていると思いますが、要は、努力義務ということで、義務とはなっておりません。ですから、親にはしっかりと努力してもらう、こういうことであります。

吉田委員 ありがとうございます。

 歴史上は本当に、中世の暗黒時代はやはり病原体によるものもあったわけだし、北米大陸の歴史が変わったのも、天然痘等々のそういった伝染病であったこともあるわけでありますし、まあ一つだけの要素ではありませんが、病原体の蔓延というのは本当に恐ろしいことなわけであります。

 そういった中で、大臣、今は大事な話なので問うたわけですが、しっかりと、努力義務ということなので、努力義務で結構なんです、別にそれはそれでいいんですよ。ただ、やはり努力義務をしてもらうための努力は厚生労働省にしていただかなければいけないので、そこが大事なところだと思います。

 やはり子供は何も知らないわけですよ。子供がわかりますか、大臣。このワクチンを打たなきゃいけないとか、このワクチンは何に効くかなんて子供がわかりますか、逆に。大臣が子供のころ幾ら秀才だったといっても、わからなかったと思いますよ。

 だから、それはやはり保護者ですよね。保護者に対してやはりちゃんとそういったところは啓発をしないといけないと思うので、大臣、引き続きよろしくお願いします。今の答弁は結構ですから。ありがとうございます。

 では、次の問いに移りたいと思います。

 大臣、毎年のように、乳幼児、場合によっては学童も含まれるかもしれませんが、車中に置き去りにされて亡くなってしまうなんていう痛ましい事件が発生しますね。特に、真夏の車中にエアコンが停止した状態で子供を置き去りにすれば、容易に脱水症状が起こって、生命の危機がすぐに訪れます。これだけ危険であるということをよく報道等々でも呼びかけられているにもかかわらず、車中に子供を放置するといった事例が後を絶ちませんね。

 私がかつて住んでいたアメリカという国では、州によって若干違いはありますが、車中に子供を置いてコンビニやスーパーで買物をした、そういった行為をするだけで保護者は逮捕されます。逮捕ですよ、大臣。それと比べると、日本の現状というのは、やはり非常に看過することはできませんね。

 このような車中へ子供を放置することについて、児童虐待防止という観点、子供の命を守るという観点から、今回の法案では何かしら対応するのかということ、若しくは、この後、政省令も含めて、法規制も含めて何か対応していくのかということを、大臣、御答弁いただけますか。

根本国務大臣 児童虐待防止法では、保護者としての監護を著しく怠ることはネグレクトとして児童虐待に該当します。これは、児童虐待の定義の中で、「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による」、省略しますが、「その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」ですから、要は、保護者としての監護を著しく怠ること、これはネグレクトとして児童虐待に該当いたします。

 今の委員の、車中に子供を放置することについては、個々の状況によって異なるとは考えられますが、例えば乳幼児等の低年齢の子供を自動車の中に放置することなどは、ネグレクトとして児童虐待に当たり得ると考えられます。

 これは、「子ども虐待対応の手引き」で、ちょっと紹介しますと、「親がパチンコに熱中したり、買い物をしたりするなどの間、乳幼児等の低年齢の子どもを自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡したり、」あとは省略しますけれども、これもネグレクトという虐待の結果であるということに留意すべきであると紹介をしております。

吉田委員 結果として亡くなったということを今引用されておられましたが、そもそも、車の中に放置することもネグレクトということで、大臣、よろしいですか。それは個々の事例という判断をおっしゃられましたが、今大臣がおっしゃったような、パチンコ屋さんでの遊技中やスーパーでのお買物中に子供を車の中に放置すること自体がネグレクトだ、児童虐待だという評価でよろしいですか、大臣。

根本国務大臣 車中に子供を放置することについては……(吉田委員「いやいや、だから、パチンコ屋とスーパーと言ったじゃないですか、大臣」と呼ぶ)いいですよ、だから、パチンコ屋とスーパー、そういう……(吉田委員「いいですよじゃないですよ、大臣」と呼ぶ)いやいや、そういう状況で子供を放置することは、そこは個々の状況によって異なると考えられますが、例えば乳幼児等の低年齢の子供を自動車の中に放置すること、これはネグレクトとして児童虐待に当たり得ると考えています。

吉田委員 だから、当たり得るだとケース・バイ・ケースという表現になるので。じゃ、逆に言うと、ならない場合もあるんですか、大臣。

 だから、さっき私が言ったように、ここは啓発だと思うんですよ。親に、基本的にそれはしない方がいいと思わせることが大事なんです。だから、さっき、わざわざ私は米国の例を用いて御説明したんですよ。

 これは本当にアメリカは厳格ですよ。私の友人で、世界的に有名な白内障の権威のスターク博士という方がいらっしゃって、彼の娘さんは有名なタレントだったんですけれども、本当に三分、車の中に子供を、コンビニか何かだったと思いますけれども、放置しただけで逮捕されたんですよ。それはやはり、そういうメッセージを強く出して、さっき大臣がおっしゃった、パチンコ屋さんやスーパーで、暑いところで子供が放置されて亡くなってしまう、そういったことに予防線を張るための啓発なわけですよ、大臣。わかられますよね。

 だから、それはやはり基本的にはだめなんだよというメッセージを出すべきだと私は申し上げているんですが、大臣はいかがお考えになりますか。ケース・バイ・ケースで、ちょっとだったら、スーパーにでも五分とかちょっと寄っていく、牛乳を買ってくる間とかそれくらいだけだったらいいですよ、それは看過できますよ、逆にそうお考えなのかどうか。

根本国務大臣 五分、十分ならいいですよというようなことは私は考えておりません。

 要は、三月に、児童虐待防止対策の抜本的強化ということを関係閣僚会議で決定いたしました。そして、まさに委員のおっしゃるところでありますが、「子どもの権利擁護」という項目で、「体罰禁止及び体罰によらない子育て等の推進」の中で、「保護者としての監護を著しく怠ることは、ネグレクトに該当することを踏まえて、子ども(特に自分で危険を判断し対処することの出来ない年齢の子ども)を自宅や車内に放置してはならないことを母子手帳や乳幼児健診の機会などを活用し、周知する。」と関係閣僚会議で決めておりますので、おっしゃるようにしっかり周知をしていきたいと思います。

吉田委員 あとちょっとで時間なんですが、大臣、そういうことでしっかりやってほしいということなんですよ。

 確かに、例えば保育園に子供二人を順番に送っていく、そういうときに、一人送っていく間におろして連れていくのかという議論にもなっちゃうじゃないですか、大臣。そこまでそれを規定しろというわけではないんですが、やはり適切な、危険に及ぶような行為に関しては、相当な啓発をしていただきたい。

 時間がないので簡単に、続きも金曜日にやらせていただきますが、議員立法にちょっと最後質問させていただきたいと思います。

 児童虐待防止において、児童相談所の役割は大変大きいと認識しております。その中で、今回提出した議員立法では、児童相談所の設置を促進するとして、内閣提出法案では検討課題であった児童相談所の数の基準を法制化するとしております。その設置基準の内容と、そのような基準をあえて法制化する趣旨を最後にお伺いさせていただきたいと思います。

池田(真)議員 お答えいたします。

 児童虐待の対応件数が年々増加している現状において、児童相談所の一つ一つが余りにも多くの人口をカバーしており、児童虐待に対するきめ細やかな対応が困難となっているのではないかとの指摘があります。

 そのため、本法案では、中核市及び特別区について児童相談所の設置を義務化するとともに、児童相談所の数の基準を法定化し、人口五十万人に一カ所以上設置することを標準としています。

 こうした児童相談所の数の基準の法定化によって、一つ一つの児童相談所が過度に多くの人口を管轄することを防ぎ、それぞれの児童相談所が児童虐待により適切に対応することが可能になるものと考えています。

吉田委員 時間になりましたので、終わります。また続きは金曜日にお伺いさせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美です。

 児童福祉法等一部改正案、昨日は参考人質疑が行われまして、五名の参考人の皆さんから非常に重要な、また論点も多岐にわたる御指摘をいただきました。一つ一つの論点がとても奥が深く、本当に時間をかけて議論しなければいけないことだと思っております。

 今回は重要広範法案でもありますし、また野党側からの議員立法もありますので、ぜひ、しっかりと時間をかけて、一つ一つの論点について深めていかなければいけないと思っているところです。

 先ほども吉田委員からの質問にありましたけれども、議員立法の方では、児童相談所の設置について、具体的な数値をもって設置するということを法定化したいというふうに考えております。

 昨日参考人でお越しくださった明石市の泉市長も、中核市において児童相談所を日本の中で九年ぶりに設置をしたと、本当にそうなのかなという感じなんですけれども。

 やはりこれだけ児童虐待件数が増嵩している、激増している中で、対処している児童相談所のオーバーワークぶりは、これはここにいらっしゃる皆さんで共有できる問題だと思っております。当然、児童虐待に対応する機関は、専門的な組織、機関として児童相談所があるんだけれども、予防のところから再発防止までトータルで、福祉の分野ともきっちりと連携をしながらやっていくというためには、やはり私は、基礎自治体の役割が非常に重要だというふうに思っております。これだけふえているという中で、また、虐待の実際起きている中身とか件数とか、誰が実際に被害者になっていて、いつの時期にどうだったかというようなことを見ていきますと、やはり予防も非常に重要だというふうに考えます。

 いずれにいたしましても、今、現に児童相談所が非常に過密状態な中で、またそこに働いていらっしゃる皆さんも、先ほど尾辻委員の質問の中にもありました、勤め始めて三日でもう異動したいというふうに考える、そんな状況ですから、とても、子供と向き合う、あるいは保護者の方、御家庭の方と向き合うというような時間もなかなかとりにくい状況にあるんだろうと思います。中核市それから特別区、ここにおいて設置をきっちりとやっていただくことが私は必要だと思います。

 それで、平成三十一年の三月十九日、関係閣僚会議で「児童虐待防止対策の抜本的強化について」という方針が示されました。ここにおいて、法律で対応すること、それから、法律と書いていないところは恐らく予算で対応することだと思うんですね。二〇二〇年度予算に向けて更にその具体化を図るというふうに書いてありますから、これはもう、法律で対処しなければ、予算しかないということだと思いますので伺いたいんですけれども、中核市における児童相談所の設置に向けということで、この閣議決定のポイントでいいますと、三ページ目の真ん中ぐらいにそういうことがあるんですが、「中核市及び特別区における児童相談所設置に向け、支援を抜本的に拡充する。」と書いてあります。

 「抜本的に拡充する。」というのは一体どういう内容を指すのか、根本大臣にまずはお伺いをしたいと思います。

根本国務大臣 抜本的に拡充したいと思っております。

 今年度予算においても、人材確保、育成や施設整備に関する支援を拡充するなど、順次取り組んでおります。

 中核市からは、国と中核市の間で丁寧な議論を積み重ねるとともに、継続的、安定的な支援措置を講じること、一時保護所、児童相談所の整備費への適切な財政措置や専門的人材確保、育成といった要望が寄せられております。

 このような状況を踏まえて、本法案においては、施行後五年を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備並びに職員の確保、育成の支援その他の必要な措置を講ずること、この支援を行うに当たっては、地方団体等との連携を図ること、施行後五年を目途として、児童相談所等の整備並びに職員の確保及び育成の支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること、法律上はこう規定しておりますが、今委員からも御紹介がありましたが、三月十九日の「児童虐待防止対策の抜本的強化について」の中で、中核市、特別区の児童相談所設置に向けた施設整備、人材確保、育成の支援の抜本的拡充、国と中核市及び都道府県等の関係団体が参画する協議の場の設置などを盛り込んでおりまして、地方公共団体との協議を行いながら、概算要求に向けて必要な対応を行っていきたいと考えています。

西村(智)委員 地方公共団体とも連携、話合いをしなければというようなお話でした。

 きょうは総務政務官にもお越しをいただいておりますけれども、私は、地方分権という全体的な本旨は、一〇〇%賛同いたします。自治体が、みずからが持っている権限を生かして、そして自治体運営をしていく、これは、日本国内、日本国の国の形からしても当然のこと、必要なことだと思いますし、ぜひ強力に進めていっていただきたいと願っている者の一人です。

 ただし、子供の命、子供の暮らしに関しては、やはりここは一定程度、ナショナルミニマムと言ったらちょっといささか古い言葉にはなってしまうけれども、自治体の取組もさまざま、いろいろな違いがあるんじゃないかと思うんです。それを平準化して底上げをしていくということは国でないとできないことだと思いますので、ぜひここは、総務省からも御理解をいただいて、中核市ないしは特別区、こういったところに児童相談所をつくるという方向に向けて、ぜひ総務省からも協力をしてもらいたいというふうに思いますけれども、いかがですか。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど、この中核市、特別区の児童相談所の設置の問題については、厚労大臣がお答え申し上げたとおりでございまして、中核市の方からもいろいろな御意見が出ております。こういったことも踏まえて、これから検討が必要だ、こういうふうに考えているわけでございますが、これから、国と中核市及び都道府県等の関係団体が参画する協議の場が設置されるというわけでございますので、その場におきまして、今後、児童相談所の現場の実情等を踏まえた上で、具体的な措置についていろいろな検討がなされていくもの、こういうふうに認識をいたします。

 もちろん、総務省といたしましても、こういった状況を踏まえまして、関係省庁と連携いたしましてしっかり適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。

 以上でございます。

西村(智)委員 子供の命を守るのは、まずは、保護者が第一義的な責任を負う。しかし、それを可能にできるような社会のサポートというのがどうしても必要です。国も努力をするけれども、都道府県、基礎自治体、ここもやはり力を合わせて努力していかなければならないと思います。ぜひお願いをいたしたいと思います。

 そういったことを進めていく上でも、やはり私は、最後、決め手になるのは財政的な支援だというふうに思うんですね。

 この間、私たちも、中核市、特別区への児相設置、あるいは児童福祉司の配備拡充というようなことを訴えるたびに、どこぞから、いや、金がかかるとか、金がないとか、こういう話はよく聞かれるんですけれども、財務省として、この点はやはり未来のある子供たちの命を守るということですから、ここは、この関係閣僚会議の決定にもありますけれども、二〇二〇年度予算に向けて、更にその具体化を図るということでもあります。五年かけて検討して、その後つくっていくというのだと、私はやはりちょっと時間がかかり過ぎだと思う。

 とにかく、来年度の予算でどのくらいつけるか、それで本気度を示してもらいたいというふうに思うんですけれども、政務官、いかがですか。

伊佐大臣政務官 今年度予算においても、先ほど西村委員の御指摘がありました、人材確保の育成又は施設整備に関する支援を拡充、増額させていただいております。ソフト、ハードを含めて増額させていただいて、この設置促進に向けた取組を現在においても進めさせていただいております。

 この中で、この関係閣僚会議の決定ということで、支援を抜本的に拡充するというふうにされております。

 先ほど大臣の方からも御答弁がありましたとおり、今後、厚労省において、関係者との協議を行いながら具体的な検討が行われていく、その上で概算要求が行われていくものというふうに承知をしております。

 財務省としては、引き続き、この厚労省における検討状況をしっかりと注視しながら、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

西村(智)委員 抜本的にですからね。抜本的にじゃないと抜本的にではありませんから、そこのところ、よくお願いをいたしたいと思います。

 先ほども、桝屋委員だったですかね、児童福祉司の増員に向けて交付税措置をしたんだという御答弁が、これは政府参考人からでしたでしょうか、ありまして、では、一体何人ふえたんですかと聞かれて、政府参考人はこれを答えられなかったんですよ。

 結局、交付税措置しても何人ふえたかわからないという、最後、こういううやむやな結論であっては、これはまた抜本的とは絶対に言えないわけですから、そこのところはよく踏まえておいていただきたいというふうに思います。ここは、ちょっときょうは指摘だけにとどめておきたいと思います。

 先ほど私が冒頭申し上げたとおり、やはり基礎自治体の役割は非常に重要だと思います。

 昨日の参考人の御意見の中でも、児童相談所だけで子供や家族を守れるはずはありません、他の福祉領域と同様に、基礎自治体が困難を抱える子とその家族の福祉の主な担い手となるべきですという御意見がありました。私も全く賛同するところですけれども、これについて、大臣の見解を伺いたいと思います。

根本国務大臣 私も、委員おっしゃるように、住民に身近な基礎自治体の役割、これは非常に大きいと思っております。

 その意味で、平成二十八年の児童福祉法等の一部改正において都道府県や市町村の役割の明確化を行い、都道府県の児童相談所においては一時保護や施設入所措置など専門的な知識や技術を要する支援等を行う一方で、市町村においては身近な場所における継続的な支援を行うということとしております。

 児童虐待防止については、発生予防、早期発見、発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援、こういうものを切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要であります。特に、発生予防、早期発見や児童虐待発生時の迅速的確な対応においては、市町村も極めて重要な役割を担っております。

 このために、昨年十二月に新プランを策定して、二〇二二年度末までに、子供や家庭に対する相談支援を行う市町村子ども家庭総合支援拠点を全市町村に整備するとともに、要保護児童対策地域協議会の進行管理事務を担う調整担当職員が全市町村において常勤となるよう配置を進めていくということを決定いたしました。

 市町村の体制強化を図るために今年度から地方交付税措置を講じておりまして、引き続いて必要な支援に努めていきたいと考えています。

西村(智)委員 やはり、児童相談所の役割をきちんと押さえて、その体制を強化していくこと、これは私は恐らく短期的に集中的に今やらなければいけないことだと思いますが、福祉の担い手としての自治体とよく、うまく連携をとっていかないと、結局、児童相談所のところに仕事がぎゅっとまたふえてくるということにもなってしまうと思います。

 それなので、今大臣は改正の内容等についても説明をしてくださいましたけれども、きょう総務省と財務省にもお越しいただいているんですが、やはりここもよく両政務官には踏まえていただいて、何か目に見える形での財政的な支援、そういうことを考えていかないと、幾ら交付税で措置したといっても、じゃ、不交付団体はどうなるのという話もありますし、先ほど午前中の質疑でもあった、じゃ、交付税を措置して児童福祉司が一体何人ふえたのと言ったら、結局それは把握できないという話だし、何か、つぎ込んだ水がどこに行ったのかわからないというような状況になってしまうので、もう少し色のついたといいますか、何か見える形での財政支援のあり方というものもあわせて、セットで考えていただきたいなというふうに思うんです。

 続けて質問いたしますけれども、大臣もさっきお触れくださった要対協、それから支援拠点のあり方、これについても、関係閣僚会議の決定されたポイントの中で、ページでいうと三ページのところですけれども、「子ども家庭総合支援拠点に対する支援等の拡充」それから「要保護児童対策地域協議会の充実強化」ということで、これもまたお話がありました。

 これも参考人の御意見であったんですけれども、全ての市町村の要対協に常勤かつ専任の担当者を置くべきだという御意見がありました。また、全ての市町村に子ども家庭総合支援拠点を設置できるようにすることが不可欠だという御意見がありました。

 これについて、大臣、どういうふうにお考えになっていますか。体制強化は、具体的に何をするんですか。

根本国務大臣 児童虐待を防止する観点からは、さまざまな場面において各種の支援が必要となるために、関係機関が連携、役割分担して支援を行う必要があります。その際、関係機関で構成する要保護児童対策地域協議会を活用して、個々のケースについて援助方針や役割分担を共有し支援を行っていくこと、これが重要だと思います。

 要保護児童対策地域協議会に登録されているケースは、関係機関がそれぞれ把握している情報をもとに、子供の状況把握や問題点の確認、経過報告とその評価、新たな情報共有などの進行管理を行うとともに、支援方法の検討や役割分担を行っております。

 こういう観点からいいますと、要保護児童対策地域協議会における支援方法の検討などを実効的に行うためには、事務局である市町村で進行管理事務を担う調整担当職員の役割が重要であります。このため、平成二十八年改正において、調整担当職員の配置を義務づけたところであります。さらに、新プランに基づいて、二〇二二年度までに調整担当職員が全市町村において常勤となるよう配置を進めていきたいと考えております。

 さらに、子ども家庭総合支援拠点の設置については、児童虐待における市町村の支援体制の充実を図るために、平成二十九年四月から、児童福祉法の市町村に対する努力義務として位置づけられております。平成三十年四月現在で、二百十二市町村、二百五十一カ所設置されております。

 全国的に設置を進めるためには、これまで市町村子ども家庭総合支援拠点に常勤職員を配置した際の予算措置が十分講じられていなかったことなども踏まえて、必要な予算をまず実施していくことが重要だと考えています。このため、財政面での支援を行うために必要な地方財政措置を講じて、そして二〇二二年度末までに全市町村に整備することを目標とする新プランを決定いたしました。

西村(智)委員 結局、法律で義務づけられていても、それが完全には設置されていないし、二〇二二年度までに支援を拡充するということについても、大臣みずからが財政支援について考えていきたいというような発言で、結局最後は、やるといって決まっていたその方向性もきちんとできていないということは、やはりどこかにうまくいかない問題点があるから。私は、それはやはり財政的な問題なんじゃないかというふうに思うんです。

 大変申しわけない。この点については通告をしていないんですけれども、財務政務官にこの点を伺いたいと思います。

 やはり、今お話がありましたように、何かをやろうとして、本当に、これは参考人の御意見であったんですよ、きのう。与党推薦の参考人の方が、全ての自治体、市町村に必置だというふうに、それはマストだというふうにおっしゃったんですね。それが財政の問題でできないということですから。いかがですか。

伊佐大臣政務官 西村委員のおっしゃった、つまり、地方交付税の中でしっかりとまずは色をつけた方がいいんじゃないかというような御発言も先ほどあったと思います。

 地方交付税の中の話でございますので、もちろん基本的には総務省また厚労省との間でしっかりと議論していただくことになろうかというふうに思っております。

 ただ、国が独自に、地方交付税の枠を超えて、国の事業としてサポートできるところはしっかりとやらせていただきたいというような思想のもとで、例えば先ほど増額をさせていただいたと申しました児童虐待・DV対策等総合支援事業であるとか、あるいは次世代育成支援対策施設整備交付金であるとか、こういうものについては、国が切り分けて直接やるということで増額をさせていただいております。

 いずれにしましても、総務省また厚労省が関係機関と議論する中で、我々、しっかりと適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

西村(智)委員 これも総務の政務官に、大変申しわけありません、通告してありませんが、切り分けられないお金、交付税として出ているお金、これをもうちょっと、こういった虐待防止、予防、対応のための、今でいえば要対協それから子ども家庭総合支援拠点のための事業、こういったところにもっと行くような連携を厚労省ないしは財務省と図っていただきたい。お願いですが、いかがですか。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 この要対協それから子ども家庭総合支援拠点の地方財政措置については、今年度、その職員の配置についての地財措置をさせていただいております。

 そういった意味で拡充をいたしておりますが、我々総務省の地財措置というのは、要するに、地方公共団体がその仕事をできるような、そういった環境をつくるというのがこの地財措置の大きな使命でございまして、直接の財政による促進を図るというのは、また国費も含めて考えていかなければならない問題であろうというふうに考えております。

 したがいまして、関係省庁ともよくよくこれは協議をしながら、どういったやり方が一番適切なのか、こういったことも考えてまいりたい、こういうふうに考えております。

 以上でございます。

西村(智)委員 地方自治の本旨からいえば、そういったことは自治体が独自で考えてやっていただくというのがもうベストなんですけれども、設置されていない自治体、それから常勤の人を置いていないところはやはりまだあるわけなので、ここをどうしましょうかという話を私はさせていただいているということで、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 残り時間が少なくなってまいりまして、ちょっと一点飛ばして、人事ローテーションのことについて伺いたいと思っております。

 これも、閣議決定の中で、何かこれは主語がよくわからないんですけれども、恐らくこれも予算事項だと思います。「児童相談所の体制強化」の項目なんですが、「専門性確保のため、児童相談所OBの活用や人事ローテーションへの配慮の要請。」というふうに書いてあります。

 「人事ローテーションへの配慮の要請。」は、誰が誰に対してするもののことを指しているんでしょうか、大臣。

根本国務大臣 組織の人事ローテーションというのは非常に大事なことだと思っていますから、厚生労働省の方から人事ローテーションを地方自治体の方に要請していきたいと思います。

西村(智)委員 そうしましたら、総務省がそれの要請を受けるというか、あるいは、これは三月の関係閣僚会議ですので、既に受けた、その上でどういうふうに対応されていますか。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、厚生労働大臣から御答弁があったとおりでございますが、厚労省におきまして地方公共団体における職員の専門性の確保に向けた支援が現在行われているもの、このように認識をいたしておりますので、総務省といたしましても、今後、具体の職員の採用が進んでいく中で、地方公共団体における対応状況等も踏まえながら、関係省庁としっかり連携をして対応してまいりたい、このように考えております。

 以上でございます。

西村(智)委員 済みません。何に答弁していただいたのかよくわからないんですけれども。

 つまり、これはあれですよね、先ほども申し上げたけれども、例えば、働き始めて三日で、もうこの職場ではやっていけないというふうに思う職員の方がいたり、あるいは、福祉の現場といっても、例えば二年とか三年で人事異動があったとして、児相に三年、そしてほかの福祉の、生活保護の窓口とか高齢者介護とか障害者のところで三年、そしてまたどこかへ回って戻ってくるという、このローテーションのことを多分言っているんだと思うんですけれども、それをどういうふうにしろということをこれは言っているんですか、大臣。

根本国務大臣 個々の児童福祉司などが必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルの見直し、あるいは、ストレートではありませんけれども、児童相談所配属経験者の再配置、あるいは児童相談所OB職員の再任用などを行う。要は、専門性がある人事のローテーションをしてくださいねということと、さらに、やはり将来の専門職としてやってもらうためには計画的な育成、これも計画的に進めることが必要だと思います。

西村(智)委員 計画的に何を進める、配置ですか。

根本国務大臣 まず、個々の児童福祉司などが必要な専門性を確保できるような人事異動サイクル、これの見直しを行う、あるいは積極的に児童相談所配置経験者の再配置をしてもらう、あるいは、少し観点が異なりますが、児童相談所OB職員の再任用等を行う、また、計画的にというのは、児童福祉の専門職採用や、専門性の高い人材の育成を計画的に進める、そういうことも必要だなと考えています。

西村(智)委員 済みません、時間が来ましたので終わりますけれども、恐らく、人事ローテーションの配慮は多分どこの自治体もやっていると思います、既に。

 ただ、これから厚労省が要請できるとすれば、OBの活用とか新たな児童福祉司の採用。結局、最後は金の話、財政支援の話だというふうに私は思います。ですので、そのことを財務政務官と総務政務官にしっかり心からのお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党の大西健介でございます。

 早速質問に入りたいと思いますが、きょう私からは、政府案とともに、議員立法提出者の皆さんにも質問させていただきたいというふうに思っています。

 まず、東京都の目黒区の事件、そして千葉県の野田市の事件、対応経過の中に、私は幾つかポイントになる部分があるんだというふうに思っています。

 まず、主に野田の事件に沿いながら、ポイントになる部分について伺っていきたいというふうに思うんですが、参考として、皆さんのお手元に野田の事件の時系列をお配りさせていただいております。

 まず、野田市の事件では、二〇一七年の七月六日、引っ越す前に住んでいた沖縄県の糸満市が、DVに関する相談を親族から受けていたことがわかっております。心愛さんの母親は、夫の暴力を受け怖い、娘も恫喝されていて暴力を受けるのではと不安、こういうふうに親族に訴えていたということであります。

 娘も恫喝されていると言っているんですから、もしこの時点で糸満市が直接、心愛さんに会っていれば、もしかするとこんなことになっていなかったんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣に、まず、このことについてどう思われるか。

 あわせて、この質疑の中でもDVと虐待は密接不可分だという専門家の意見が多数出ていますけれども、東京都の調査でも、DVの約四割に虐待がある、虐待を伴っている、こういうデータもあります。

 政府がどのようにこの対策を講じようとしているのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

根本国務大臣 野田市の事案については、具体的な問題点や課題、これは、現在、自治体による検証が行われており、この検証を通じて事実関係を明らかにしていくことが必要だと認識しています。

 今回の事案については、委員がおっしゃるとおり、DV対策との連携が十分ではなかったのではないかとの課題があったと認識しております。

 また、一般論として、配偶者への暴力、DVが行われている状況のもとでは、子供への虐待の制止が困難となる場合があって、児童相談所と配偶者暴力相談支援センターなどが連携して対応を行うことが重要だと思います。

 このため、本法案には、DV対策との連携強化のために、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員については、児童虐待の早期発見に努めることとし、児童相談所は、DV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携協力するよう努めるものとする旨の規定を盛り込んでおります。

 加えて、DV対策を行う機関と児童虐待への対応を行う機関の情報を包括的に評価を行い、リスクを判断する手法や対応方法等についてガイドラインを策定していくこととしております。

大西(健)委員 野田の事件が起こったのは一月ですから、もう半年近くたっている。都道府県が検証してと言うけれども、せっかくこの審議をしているわけですから、私はやはり、今言ったように、DVのところで、娘が恫喝されている、怖いと言っているんですから、そこで心愛さんに会っていたら、これを防げたんじゃないですかと言ったら、防げたのかもしれないぐらい私は言えばいいと思いますよ。まさに、大臣、答弁の中で、DVとの連携が不足していたということはお認めになっているわけですから。もしかすると、そこでちゃんと心愛さんに会うことができていたら、私は、沖縄のところでもしかしたら防げたかもしれないという事案じゃないかと思います。

 次のポイント、これはやはり転居だと思います。

 これは何度も言っていますけれども、虐待している親というのは、児相の介入を逃れるために転居する傾向があります。野田の事件では糸満市から野田市に転居していますけれども、この時点で、DVの相談があったことはちゃんと糸満市から野田市には引き継がれてはいました。ただ、要保護児童対策地域協議会に伝えていなかったために、児相や警察とそのことが共有されていなかったということであります。

 多数の関係機関の円滑な連携協力を確保するために設けられているのがこの要対協というものですけれども、先日、岡本委員の質疑の中で、この要対協が多くのケースを抱えていて、限られた時間で進行管理を行っているという実態が浮かび上がってきました。

 要対協の機能強化というのは、私、一つのポイントになると思っているんですけれども、この点、野党案では、先ほども話が出ていましたけれども、児童福祉法等第二十五条の二の第六項で、常勤の調整担当者一名を配置するということを法律で定めていますけれども、提出者にその趣旨について伺いたいと思います。

岡本(充)議員 御質問ありがとうございます。

 児童虐待を早期に発見して、各関係機関が適切な役割分担のもと児童虐待への対応を進める上で、要保護児童対策地域協議会は極めて重要な役割を担っています。

 現行において、要保護児童対策地域協議会には、関係機関の役割分担や連携に関する調整を行う主体を明確にする観点から、事務の総括、支援の実施状況の把握及び関係機関との連絡調整を行う調整機関が置かれているものと承知をしています。

 調整機関の役割には、個々のケースに関する関係機関等との連携、連絡調整も含まれることから、委員御指摘の個別ケースに関する情報共有についても、調整機関の果たす役割は大きいと考えられます。

 しかしながら、調整機関を置いたとしても、具体的に調整を行う担当者が定まっていない場合には、関係機関との連絡調整等の業務が適切に行われないおそれがあると考えています。

 そのため、本法案では、全ての要保護児童対策地域協議会に調整担当者を置くこととし、調整担当者が責任を持って連絡調整等を行う体制を整えることとしています。

 提案者としては、調整担当者の役割の大きさに鑑み、全ての調整担当者が常勤かつ専任で配置されることを期待したいと思っています。

大西(健)委員 やはり、この重要性をまさに考えると、常勤の担当者というのをちゃんと置くということは私は重要だと思います。

 もう一つ転居に関して言うと、目黒の事件では、香川の児童相談所が、転居した際に指導を解除している。それから、けがの写真であったりとか危険度を判定したときの客観的な資料の引継ぎを東京都に行っていなかったために、東京都側は、緊急度がそんなに高い事案だというふうに判断しなかったということが言われています。

 この点について、政府案、野党案、それぞれにおいて、今回の法案の中でどのような対策を講じているか、簡潔に御説明いただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 目黒区の事件を受けまして、昨年七月の緊急総合対策に基づきまして、全ケースについて緊急性や内容がわかる資料を転居先の児童相談所へ伝えること、緊急性が高い場合には対面等により引き継ぐこと等々について、昨年七月に決定したところでございます。

 また、この緊急総合対策を受けまして、転居ケースに係る児童相談所間の引継ぎ等に関しましては、児童相談所運営指針を改正いたしまして、全国ルールとして周知いたしました。

 さらに、けが等の写真等について御指摘がございましたけれども、国の死亡事例検証委員会におきましても、今後の対策として、引継ぎの際には、けがの写真等の客観的な情報を引き継ぐことで、転居先の児童相談所が緊急性や重症度が十分に判断できる資料を提供することが報告されておりまして、その旨自治体に周知をいたしております。

 また、本年三月に関係閣僚会議で決定いたしましたけれども、その中では、今後、転居ケースにおける引継ぎなど、児童相談所間、市町村間の情報共有をより効率的、効果的に行うため、全都道府県においてシステムの整備の構築を進めることといたしております。

岡本(充)議員 児童虐待を受けた児童が転居しても、対応の必要性が変わるものではありません。しかし、実際には、児童虐待を受けた児童の転居に伴って支援が途切れてしまう例や、指導を逃れるために転居を繰り返す例も珍しくありません。

 本法案は、転居後の児童相談所が迅速に対応できるよう、改正後の児童虐待防止法第八条第四項において、児童相談所が通告を受けた児童等が転居する際の児童相談所間の情報共有について規定をしております。

 その上で、同法第十二条の五第一項において、転居前の都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について指導措置がとられている場合において、当該児童が他の自治体に転居することを知ったときは、転居の前日まで措置を解除してはならないこととしております。

 さらに、同法第十二条の五第二項及び第三項において、転居後の児童相談所長は、転居前の児童相談所長から情報提供を受けた後、直ちに指導措置をとらなければならず、指導措置開始から一カ月の間は、一時入所等の措置に移行する場合などを除き解除してはならないこととしております。

 これに加えて、同法第十三条第一項及び第二項においては、転居を理由として施設入所等の措置や一時保護が安易に解除されることがないよう、これらを解除しようとするときは、転居後の家庭環境等を勘案しなければならないこととしています。

 以上の措置により、児童虐待を受けた児童が転居する場合であっても、切れ目のない対応が可能になるものと考えております。

大西(健)委員 先ほど指導逃れのための転居というお話がありましたけれども、こういうケースが多発していることを考えると、解除制限等をしっかり法律で書き込むことというのは私は必要じゃないかというふうに思っています。

 それからもう一つは、解除等をするときに、やはり子供の意見というか本心をしっかり聞くことだと思っているんですけれども。

 例えば野田の事件、一時保護中の二〇一七年の十一月二十二日に親族宅で両親に対面したときに、心愛さんは泣きっぱなしで、父親におびえているように見えたという記録が残っています。また、十二月下旬に帰宅することになった際には、両親や親族の前でうちには帰りたくないと泣き出した、こういう記録もあります。さらには、二〇一八年三月十九日、児童相談所が小学校で面談した際に、小声で言ってもいいのかなと言いながら、アパートに帰ったときにこういう手紙を書くように言われて、それを見ながら書き写したということを告白をしている。

 つまり、なかなか子供というのは自分の本心を語ることができない。その本心をしっかり酌み取って、あるいは、どうしたいのか、子供がどうしたいと思っているのか、その思いを酌み取って代弁するということが私は極めて重要だと思っています。

 児童の権利に関する条約は、第十二条で「児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。」というふうになっています。この子供の意見表明権を保障するためには、子供の意思を第三者が酌み取り関係機関などに伝える、英国やカナダで行われているアドボカシー制度が必要じゃないか。これは繰り返しこの委員会でも言われておりますけれども。

 きのうの参考人質疑で花島参考人は、厚労省でモデル事業をまずやって、まずは制度化して、それから内容を充実させていけばいいじゃないか、このように述べておられましたけれども、厚労省、どうでしょうか。ぜひ、まずモデル事業をやって、それをよくしていけばいいんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の子供の意見表明権を保障する仕組みにつきましては、平成二十八年の児童福祉法改正の附帯決議におきまして、「自分から声を上げられない子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討する」とされております。

 また、昨年行われました社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおきまして、全ての子供の意見表明権を保障するアドボケート制度の構築を目指すべきというような御提言をいただいております。

 このため、本法案の附則におきまして、児童が意見を述べることができる機会の確保、当該機会における児童を支援する仕組みの構築などのあり方につきまして、その施行後二年をめどとして検討することとしております。

 今後でございますけれども、御指摘がありましたように、海外で先行事例などもございます。また、国内でも類似の仕組みを設けているところがございます。まずは、海外における事例を含む先行事例の研究などを行いまして、有識者による検討の場も設けまして、施設入所の措置等の対象となっている児童の意見表明を支援する仕組みの構築について検討してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 海外の事例もありますし、民間でもこのアドボケート、市民アドボケーターというんですかね、この育成をやっているような団体もあるということですから、早くモデル事業をやっていただいて、どんどんこれを広めていっていただければなというふうに思います。

 次のポイントとして私が思うのは、一時保護解除時の判断の問題なんですけれども、先週になって、心愛さんに対して性的な虐待があったのではないかという事実が明らかになりました。資料として記事をつけておきましたけれども、二〇一七年十二月二十七日の援助方針会議においては、父親からの性的虐待の疑いがある、恐怖心はかなり強い、PTSDの状態という医師の診断書がこの援助方針会議で共有されていたということがわかっています。

 ところが、そのときのリスクアセスメントシートは、保護開始時は緊急度が最も高いAAだったのが、性的虐待があったにもかかわらずBに引き下げられている。この判断というのは、私は明らかな児相の判断ミスだというふうに思いますけれども、厚労省、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 野田市の事案につきましての具体的な問題点あるいは課題につきましては、現在、自治体におきまして検証が行われております。この検証を通じて事実関係を明らかにしていくことが必要と考えております。

 ことし二月に厚労省の専門委員会において実施しました関係自治体のヒアリング、ヒアリングを行ったわけですけれども、そのヒアリングにおきましては、現時点においては、少なくとも、一時保護解除の際の家族全体の状況へのアセスメント、家庭復帰後の援助体制、特に学校との連携や役割分担について課題があったのではないかということ、検証を行う際にはこうした点に留意すること等につきまして自治体に伝達したところでございます。

 一時保護解除を行うに当たって、児童相談所は十分に調査を行ったのか、一時保護解除の際、継続指導の内容、期間の設定はどうなっていたのか、その後の経過でその内容は守られていたのか等々につきまして、事実関係を把握し、その背景等も含めて自治体において検証するよう伝達しているところでございます。

 引き続き、しっかりと検証を行った上で、問題点や課題の把握に努めてまいりたいと考えております。

大西(健)委員 さっきの大臣の答弁のときも言いましたけれども、一月に起こって、千葉県で検証しているからと言うんですけれども、今この法案を、まさに目黒区の事件を受けて、千葉県の事件を受けてこの法案を国会で審議しているのに、千葉県で検証していますからみたいなことでしか答えが返ってこないというのは、非常に私、残念だと思うんですけれども。

 ただ、百歩譲って、もう一つ次の質問でも同じようなことを聞こうと思っていたんですけれども、今度、二〇一八年二月二十八日の援助方針会議では、リスクアセスメントシートで虐待のリスクが高まるとされる「はい」の回答が、十二月の一時保護解除時の五項目から八項目にふえていたにもかかわらず、帰宅を了承するという判断をしたということがあった。この判断も私はおかしかったと思うんですけれども、これは、個別具体的なことについて答えられないんだったら、一般論でいいですよ、一般論でいいけれども、性的虐待があったのに緊急度が引き下げられるということが正しいんですか。あるいは、リスクアセスメントシートのチェック項目がふえているにもかかわらず、保護解除という決定がなされるということは、一般論として正しいんですか。これについて答えてください。

浜谷政府参考人 なかなか、個別事案を念頭に置きながらの一般論ということですので、完全な一般論としては答えづらいわけでございますけれども、性的虐待があるということが新たに判明した場合に、通常は、リスクが高まるというのが通常だというふうには考えます。

 ただ、一時保護解除をするかどうかということについては、家庭環境とかほかの状況とかも含めての判断ということになりますので、そこは、今回の事案について言えば、事実関係をしっかりと把握した上でしっかり検証し、課題を明らかにしていくということが必要だと思います。

大西(健)委員 何回も言いますけれども、目黒と野田の事件を受けて今やっているんでしょう。やっているのに、私は、その反省がちゃんとこの国会審議の中に生きなかったら、やはり意味がないというふうに思いますよ。

 続けて聞いていきますけれども、柏の児童相談所が、二月二十八日の援助方針会議の会議録がないと初めは言ったんですよ。でも、会議録が見つかりましたということだったんですけれども、その会議録には、帰宅を了承という記載はなかったし、児童福祉司の意見書も添付されていなかったことがわかっているんです。

 この点、私、三月六日に、岡本委員と一緒に千葉県庁に行きました。そのときに、千葉県庁の皆さんと意見交換をしましたけれども、そのときも、千葉県庁の皆さんも、今検証中ですから、答えられることと答えられないことがありますよと言っていましたけれども、でも、千葉県庁の方々がそのとき言っていたのは、千葉県の方が言われていたのは、会議録を残すことになっているんだけれども、その会議録に何をどう残すかというのが余りはっきり決まっていないんだということを言っていました。

 もしそうだとしたら、やはり、帰宅を了承したという重要な決定事項については、ちゃんと会議録に私は残すべきだと思うし、そして、その理由についてもちゃんと残さないと、後で検証のしようがないと思うんです。

 つまり、会議録に何をどう残すかということがちゃんとルール化されているのかどうなのか、この点についてお聞きしたいと思います。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所が児童の相談援助活動を行う場合には、援助方針会議を行いまして、その会議の経過及び結果につきましては会議録に記入し、保存することを、児童相談所運営指針で示しております。

 また、昨年十月に公表いたしました死亡事例の検証結果におきましても、アセスメントの記録につきまして、「状況の変化に着目してリスクを判断するとともに記録に残す必要がある。」というふうに指摘されております。

 御指摘の会議録におきまして、個別にどの資料を保存すればよいかということを個別個別にお示ししているわけではございませんけれども、児童相談所が組織としての判断を行った経過あるいはその結果が適切に保存されている必要があるというふうに考えておりまして、こうした趣旨につきましては、今後、自治体にしっかり周知していきたいと考えております。

大西(健)委員 ちょっと今の答弁だと、何を残すかということが決まっていないんですけれどもという話ですけれども、例えば、今言ったように、帰宅を了承した、これは、了承したという決定事項をちゃんと記録に残さなきゃいけないんじゃないですか。そして、その重要な決定事項をしたとしたら、その理由もちゃんと残さなきゃいけないんじゃないですか。

 これを残すように、具体的に、今後しっかりと自治体に私は指導していただきたいと思いますけれども、再度、答弁をお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所が組織としての判断を行った経過や結果、理由については適切に保存されている必要があると考えておりますので、その趣旨につきまして自治体にしっかり周知してまいりたいと考えます。

大西(健)委員 さっきも言ったように、私が岡本さんと一緒に千葉県に行ったときは、千葉県の人は、だから、何を残さなきゃいけないのかというのが決まっていないんですと言ったんですよ。

 今みたいに、自治体として重要な判断をしたときには残しなさいじゃ、何を残さなきゃいけないのかがやはりわからないんですよ。だから、結局同じことになっちゃうんじゃないかと思いますけれども、どうですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 重要なということではなくて、児童相談所が組織としての判断を行った経過、結果について適切に保存されている必要があるということでございまして、多分、御趣旨と余り変わらないと思いますけれども、そういったものについては保存されている必要があるということにつきまして周知してまいりたいと考えます。

大西(健)委員 済みません。言葉は確かに、組織としての判断。でも、まさに、その組織としての判断が何かということに関して、そこに共通の理解が私はないんじゃないかというふうに思いますので、ここはしっかり示すべきだというふうに思います。

 次に、きのうの参考人質疑でも私は参考人の方に聞きましたけれども、今回、心愛さんを担当していた柏の児童相談所、管轄区域人口が約百三十万人ということなんですけれども、児相は、今は都道府県と政令市に設置が義務づけられていますけれども、現在では、人口減少によって都道府県で人口が百万人を割っている県というのが十県ある。例えば百三十万人で見ると十七県あるということなんですね。

 こう見てくると、やはり、管轄区域人口百三十万人ということにちょっと無理がある、網の目が粗過ぎるというふうに思うんですけれども、この点、児相ごとに管轄区域の人口の上限、例えば七十万は超えないようにするというような、例えば設置基準としてそういうことを書き込む必要があるんじゃないかと私は思いますけれども、この点について、大臣や提出者の双方に伺いたいと思います。

 ちなみに、きのうの参考人質疑では、人口だけじゃなくて面積も重要ではないか、こういう意見もありました。提出者と政府にお聞きをしたいと思います。

根本国務大臣 今回の改正では、児童相談所の管轄区域について、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする旨の規定を新設することといたしております。

 この改正は、今議員からお話がありましたように、児童相談所の管轄区域が大き過ぎることによってきめ細やかな対応を行うことが困難になっているのではないかとの指摘があること等も踏まえて、児童相談所の管轄区域について参酌基準を設けるものであります。

 具体的な基準については、国として一定の考え方を示す必要があると考えておりますが、一方で、今後の虐待相談対応件数の増加や各地域における人口変動など地域の実情も踏まえて児童相談所の設置を推進するためには、政令において規定した方が機動的に対応できるものと考えております。

 具体的な基準の設定に当たっては、かつて、過去において人口五十万人に一カ所程度という基準があったことも踏まえながら、今後、地方団体とも丁寧に協議しながら検討していく予定であります。

 いずれにしても、虐待予防、早期発見から虐待発生時の迅速的確な対応を切れ目なく行うとともに、一つ一つのケースに対して一層きめ細やかな対応をとることが可能となるように検討していきたいと考えています。

山井議員 大西委員の御質問にお答えを申し上げます。

 今、根本大臣から答弁ありましたけれども、今の答弁のような参酌基準や政令ということでは、やはり実効性に疑問が残るのではないかと私たちは考えております。

 大西委員御指摘のとおり、児童相談所の一つ一つが余りにも多くの人口をカバーしているため、児童虐待への対応件数が年々増加している現状においては、きめ細やかな対応が困難になっているという懸念を私たちは思っております。

 そのため、この法案では、中核市及び特別区について児童相談所の設置を義務とするとともに、児童相談所の数の基準を法定化し、人口五十万人に一カ所以上設置することを標準としております。

 こうした児童相談所の数の基準の法定化によって、一つの児童相談所が過度に多くの人口を管轄することを防ぎ、それぞれの児童相談所が児童虐待により適切に対応することが可能になります。

 さらに、改正後の児童福祉法第十三条第二項により児童福祉司の数を法定化し、昨年十二月に決定された政府の新プランよりも、更に加えて、児童福祉司の数を各児童相談所につき一人増員することとし、これに加えて、こうした増員を行ってもなお児童虐待にかかわる相談件数の増加により児童福祉司が不足するような事態に備えて、本法案附則第五条において、児童福祉司一人当たりの相談件数が四十件を超えないよう、児童福祉司の数の標準に関する見直し規定を設けております。

 児童福祉司の増加数については、政府の法案や今の政府のプランでは不十分と考えております。ぜひとも私たちの法案の修正に与党にも応じていただければと思っております。

大西(健)委員 まさに、きめ細やかな対応のためには、管轄区域人口だけじゃなくて、児童福祉司の増員、さらには一人の児童福祉司が抱えるケースの上限みたいなものも私は必要だというふうに思っています。

 きのうの参考人質疑で泉参考人からも、金も人も要るんだということで、腹をくくって、つける金はつける、人がいなきゃ育てるということをやるべきだということだというふうに思います。

 次に、SNSを使った相談について伺いたいと思いますが、資料として新聞記事をお配りしましたけれども、東京都が昨年の十一月に、児童虐待防止推進月間に合わせて、全国初となるLINEを使った児童虐待相談を試行的に実施をしました。都では、検証を行った上で、来年度から本格実施するということになっています。全国SNSカウンセリング協議会によると、いじめなど子供の悩み相談では、相談件数が電話相談の二十六・四倍になった例も報告されているとのことです。

 野党案では、児童虐待防止法第四条の第七項で、早期発見のための相談及び通告を容易にするための措置を講ずるよう定めていますが、ここにこうしたSNSの相談というのは含まれるのか、また、こうした相談を容易にするための措置を講ずるよう定めた趣旨について、提出者に伺いたいと思います。

山井議員 大西委員にお答えを申し上げます。

 現行法上、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者の通報義務や、児童虐待を発見しやすい立場にある教職員や医師等の早期発見の努力義務が規定されておりますが、本法案では更に児童虐待の早期発見につなげるべく、新たな措置を講じております。

 具体的には、委員御指摘の児童虐待防止法第四条七項もその一つであり、児童虐待にかかわる通告及び相談を容易にするための措置の具体的な措置としては、委員が例に挙げられたSNSの利用を想定しております。

 SNSを利用した相談は、既に自治体においてトライアル実施がなされております。大きな成果を上げているケースもあれば、一方では、LINEで今は対応できませんという自動メッセージが返信されて、十分に対応できていないモデルケースもあります。そのようなさまざまな今の実情を、状況を踏まえて、使いやすい制度の導入をすべきだと考えております。

 また、通報を容易にすることに関しては、この委員会でも今問題になっております児童相談所全国共通ダイヤル一八九についても、現在、通話料は有料であるということですが、早急に無料化を図ることも通報を容易にするために非常に重要であると考えております。

 以上です。

大西(健)委員 きょうの委員会でも、相談ダイヤルを無料にすることについて、先日の山井委員の質問に対して全く対応ができていないことが明らかになっていますが、これはぜひ早くやっていただきたいというふうに思います。

 次に、保護された子供の受皿の問題について伺いたいというふうに思うんですが、政府の新しい社会的養育ビジョンでは、里親委託を七五%を目指すとされています。

 塩崎大臣は今、元大臣はいらっしゃらないですけれども、これは、当時の塩崎大臣が、数値のない目標は意味がないという強い大臣の要請でこういう数値目標が入ったと聞いていますけれども、そこには、施設偏重の養護から家庭養護優先に大きくかじを切るんだ、こういう強い政治の意思というのがあるんだというふうに思います。これ自体は私は結構なことだというふうに思います。

 ただ、日本には、血縁重視の文化を背景に、親が一番いいんだ、家庭幻想というようなところがあるんじゃないか、反面、施設の子はかわいそうという偏見があるんじゃないか、こういう指摘もあります。

 数値目標ありきで機械的に措置を行っていくと、逆に、里親による虐待が起きたり、相性が合わずに里親を転々とする子供が出るおそれがあるんじゃないか、こういう指摘もあるんですけれども、大臣、この点いかがでしょうか。

根本国務大臣 里親委託の推進については、都道府県に二〇一九年度中に策定いただくよう依頼している社会的養育推進計画において、国の目標を念頭に置いて、個々の子供に対する十分なアセスメント等を行った上で、数値目標や達成期限を設定することをお願いしております。これによって、里親による虐待や里親を転々とするといったことがないよう計画を立てていただくこととしております。

 また、実際の里親委託の際にも、個々の子供に対する十分なアセスメントと丁寧なマッチングが前提であるということを求めております。

 さらに、里親による虐待等が起きないような支援体制を講ずるため、里親支援機関が行う支援業務等のガイドラインの策定、今年度予算における里親支援機関への補助の大幅な拡充、各児童相談所への里親養育支援を担当する児童福祉司の配置といった施策を講じております。

 乳児院や児童養護施設などについては、これまで、子供を保護し養育する専門機関として重要な役割を担っていただいてきたと考えています。家庭的な養育を推進していく中にあっても、小規模、地域分散化や高機能化などを進め、今後とも、施設養育が必要な子供の養育に力を発揮していただきたいと考えております。そのために必要な事項についても社会的養育推進計画に定めるよう、都道府県にお願いをしております。

 このような総合的な取組が必要だと思っておりますが、このような取組を通じて、より多くの親元で暮らせない子供たちに、それぞれの子供たちに合った家庭的な養育環境を提供できるようにしていきたいと思います。

大西(健)委員 丁寧な御答弁をいただいたので、今のでいいと思うんですけれども、一応、念のために確認をすると、塩崎元大臣は、まさに政治的に、これはもう数値目標を入れなきゃいけないんだ、七五%と入れさせたというわけですけれども、大臣も、政治家として、これはまあ数値目標は数値目標だけれども、それは機械的に数値目標を押しつけるわけではないんだ、あるいは、施設イコール悪、家庭養護イコールこれがいいんだみたいな話じゃないということでよろしいですよね。その確認だけ。

根本国務大臣 やはり、目標で数値目標というのを置いていますから、目標は目標として私は大事だと思いますが、そこは、今委員のおっしゃっていること、私はそのとおりだと思います。

大西(健)委員 大臣からそのとおりだということを言っていただいて、施設関係者からは、施設イコール悪みたいな捉え方というのはどうなんだろうというやはり反発の声がありますので、そういう御答弁をいただけてよかったというふうに思います。

 当たり前のことでありますけれども、今言っていただいたように、数値目標ありきではなくて、要は、最後は子供の利益を最優先に考えることが重要だと思います。

 そうしますと、どうしても施設でなければ難しい子供がいることも私は忘れてはいけないんじゃないかと。例えば、解離症状があるとか、激しい自傷行為、リストカットなんかを繰り返すような子供がいます。そういう子供は、やはり里親委託というのはなかなか難しいと思います。

 そうした子供が入所している施設に、児童心理治療施設というのがあります。かつては、情短と呼ばれていた施設ですけれども。ここに措置された子供の約七割は被虐待児ということなんですけれども、厚労省も、かつて、雇用均等・児童家庭局の家庭福祉課が二〇一三年に出した事務連絡の中で、虐待件数の増加や社会的養護の対象となる障害児の増加に伴い、情短の役割が大きくなっており、情短の新設や増設が必要との見解を示しています。

 私も、里親委託を推進していくということ自体には賛同しますけれども、先ほども言いましたけれども、施設養護全てが悪いというわけではなくて、例えば児童心理治療施設のように、必要な施設はこれからも整備をしていくべきだと思いますけれども、この点について、大臣の御見解をいただきたいと思います。

根本国務大臣 児童心理治療施設、これは、心理的困難や苦しみを抱え、日常生活に生きづらさを感じている子供に対し、心理治療や退所後も含めた相談援助を行うものであって、私は非常に重要な施設だと考えております。

 平成二十八年改正後の児童福祉法による家庭養育優先原則のもとに、里親委託を推進する中においても、そうした困難を抱える子供たちのために、児童心理治療施設には、引き続き、その重要な役割を担っていただきたいと考えています。

 地域によっては児童心理治療施設がないところもあり、そうした地域でも必要な受皿を確保していただけるよう、国として、自治体を支援していきたいと考えています。

大西(健)委員 今大臣に御答弁いただいたとおりで、まだ児童心理治療施設がない地域というのがありますので、その空白地域を早くなくしていただくように、しっかりやっていただきたいなというふうに思っています。

 次に、子供の受皿の問題に関連して、ちょっと話がそれるというか、かわるんですけれども、資料の三ページ目の裏の新聞記事を見ていただきたいんですけれども、東京新聞の記事であります。

 子供のいる非正規滞在外国人を入管当局が拘束、収容する際に、子供を親から分離して児童相談所に保護を依頼したケースが二〇一七年度に急増している。左上のところに棒グラフが載っていますけれども、前年の約七倍になっている、二〇一七年度。

 入管当局は、従来は、親子分離による子供の精神的負担を考慮して、子を持つ外国人は原則拘束せずに退去手続を進めるということで、そういう方針で従来はやってきたというふうに聞いています。ところが、この子供の分離が急増している背景には、法務省が、こうした非正規滞在外国人の帰国を促すために外国人を追い込む方針を強化したためではないかという見方があります。

 しかし、国際人権規約や子どもの権利条約では、国家による家族への介入や親子分離を禁止しており、入管当局のこのような対応は、この趣旨に反しているおそれがあると思います。

 この委員会でも、児相の一時保護所がもういっぱいだという話をしているのに、その児童の一時保護所に非正規滞在外国人の子供をどんどんどんどん送っているわけですよ。これは私はおかしなことだというふうに思いますので、このような措置は改めて、従来、法務省が行っていたように、子供の精神的な負担を考慮して、親子分離をできるだけ行わないようにすべきだというふうに思いますが、きょうは法務省から政務官に来ていただいていますので、御答弁をいただきたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 法務省では、退去強制手続に際し、原則として児童は収容しないこととしているのみならず、その児童の監護に必要な親がいる場合には、その親も収容することなく手続を行っておりまして、その方針には変更はないと承知しております。

大西(健)委員 方針に変更はないということなんですけれども、この記事の中を見ていただくと、監護権の有無にかかわらず分離をされたという事例がこの記事の中には書かれています。実際に、このグラフを見たらもう一目瞭然で、一七年にぼんと数字が伸びているわけですから、ここにやはり方針の転換があったんじゃないか。

 今言っていただいたように、従来のように、もちろん子供は拘束しないので児相にということになるんですけれども、この分離をできるだけしない、親とは引き離さない、監護をするべき親がいる場合には引き離さないという方針を私はぜひこれからも堅持していただきたい。そうでないと、まさに先ほど言ったように、これは国際人権規約や子どもの権利条約に反するんじゃないか、こういう疑いを持たれますので、これはぜひそのようにしていただきたいなというふうに思っています。

 次に、きのうの参考人質疑の中で、萬屋参考人が、施設内の暴力について意見を述べられました。

 資料の次のページですけれども、朝日新聞の記事であります。きのう参考人も触れられていましたけれども、厚労省が児童養護施設や里親家庭で起きた子供の間の性的問題に関して初めて全国調査を行いました。その結果、子供の間の性被害、性加害が児童養護施設内で広く起きていることが明らかになった。萬屋参考人からも、この問題はずっと施設の人たちの中ではあるというのはわかっていたんだけれども、なかなか表に出てこなかったんだという話がありました。

 萬屋参考人は、施設が保護された子供たちにとって安心、安全な場所でなければならない、私は、虐待から保護した子供を被害者にも加害者にもしたくないというふうに言われていました。この問題は、被害に遭ったら言ってきなさいよというやり方では把握できないんだということもおっしゃっていました。だからこそ、長年、被害が潜在化してしまったんだというふうに思います。

 この点、萬屋参考人は、安全委員会方式が有効であると主張されていますけれども、全国調査のこのような結果を受けて、子供間の性加害、性被害が施設内でかなりあるんだということがわかった、これを受けて、安全委員会方式の導入を全国の児童養護施設に進めるなど、具体的な対策を行うべきではないかというふうに思いますが、厚労省の御答弁をいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 施設内の子供間で発生いたします性的な問題の未然防止あるいは早期発見等の対応は極めて重要でございます。現在、さまざまな取組が行われておりまして、御指摘の安全委員会方式もその一つでございます。

 今回の厚生労働省の調査におきましては、性的な問題に対しまして積極的な取組を行っております施設のヒアリングも行いました。その結果を踏まえまして、報告書の公表、先月二十六日でございますけれども、これに合わせて、都道府県あるいは施設等に対しまして、取り組むべき事項を通知したところでございます。

 具体的には、一つは、定期的な面接や性教育の実施など、今回の調査で聞き取りました施設の取組事例を参考にいたしまして、未然防止や早期把握を徹底すべきこと、二つ目といたしまして、事案を把握した場合の児童相談所との連携、あるいは被害児に対する安全確保、専門的ケアを確実に実施すべきこと、これを求めております。

 今年度、引き続き、今回の調査結果の分析と各施設におけるさまざまな取組の考察を行います。御指摘の安全委員会方式につきましても考察の対象といたしまして、個々の現場で取り組むことのできるマニュアルやチェックリスト等の作成を行ってまいりたいと考えております。

大西(健)委員 最後に、資料の最後のページにつけましたけれども、再発防止のための虐待死の事例の検証ですけれども、読売新聞の記事なんですけれども、全部検証することになっているんだけれども、検証を実施したのは五割にとどまっているという記事です。静岡で二〇一二年に二歳の男児が虐待死した事件があったにもかかわらず県の検証が行われず、同じ家庭で一四年に再び八カ月の女児が虐待死するという事件もありました。

 この検証実施を私は徹底すべきだというふうに思いますけれども、最後に簡潔に厚労省の方から御答弁いただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 虐待児童の検証につきましては、各地方公共団体においても行われておりますし、国におきましても、社会保障審議会の専門委員会において死亡事例等の検証を実施いたしております。

 死亡事例の検証に当たりましては、残された関係者の有無などその状況がさまざまでありますから一概には言えませんけれども、将来の対策につなげていくという観点からは、可能な限り検証が行われることが望ましいというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、検証に関するガイドラインの策定、あるいは検証実施を行っておりまして、適切な検証が実施されるよう努力してまいりたいと考えます。

大西(健)委員 時間ですので終わりますけれども、野党案では、チャイルド・デス・レビュー、これをしっかりやるというように法律の中にも書いております。実際には五割しかやられていないわけですから、しっかりやるべきだと私は思います。

 今度こそ悲劇を繰り返さないために、与野党の思いは、目指すところは一致していると思いますので、ぜひ修正案についてよりよい成案を得ていただくように最後まで御努力をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

冨岡委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 国民民主党の稲富修二でございます。

 きょうも質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 きょうは、政府と、そして議員立法提出者に質問させていただきます。

 まず、ちょっと順序を変えて、児童虐待防止強化法案についてお伺いをしてまいります。これまで当委員会でも随分と議論を重ねてまいりましたが、重なる部分もありますが、大事な点でございますので、改めてお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、児童相談所の設置についてでございます。

 きょうも各委員から御質問がありましたけれども、改めて議法の提出者にお伺いをいたします。まず、与野党の違いと、その目的、狙いと背景についてお伺いをいたします。

源馬議員 お答えいたします。

 本法案では、政府提出案と異なり、中核市及び特別区について児童相談所の設置を義務とするとともに、児童相談所の数の基準を法定化し、人口五十万人に一カ所以上設置することを標準としています。こうした児童相談所の数の基準の法定化によって、一つ一つの児童相談所が過度に多くの人口を管轄することを防ぎ、それぞれの児童相談所が児童虐待により適切に対応することが可能になるものと考えています。

 なお、児童相談所の数については、地方分権の観点から、地域の実情に応じて判断されるべきとの考え方もあると思いますが、児童の生命及び身体を保護するための事項については、国において必要と思われる対応を統一的に行うことが必要と考えます。

稲富委員 ありがとうございます。

 政府案では、先ほど大臣からもありましたけれども、「政令で定める基準を参酌して都道府県が定める」ということになっておりますが、その基準とは何か。あるいは、その検討状況についてお伺いをいたします。

根本国務大臣 今回の改正では、児童相談所の管轄区域について、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする旨の規定を新設することとしております。

 今、具体的な基準設定の御質問でありますが、過去、人口五十万人に一カ所程度という基準があったことも踏まえて、虐待予防、早期発見から虐待発生時の迅速的確な対応を切れ目なく行うとともに、一つ一つのケースに対して一層きめ細やかな対応をとることが可能となるよう、今後、地方公共団体等とも協議しながら検討していく予定であります。

 各地方公共団体においては、新プランに基づく人員増とあわせて、児童相談所の配置等についても計画的に整備を進めていただく必要があるため、法案成立後、国と中核市及び都道府県等の関係団体が参画する協議の場を設置、活用しながら、速やかに準備を進めたいと考えています。

稲富委員 その基準の中に人口は入りますか。それと、いつごろまでにその基準を設置するということは言えるでしょうか。現時点で結構ですが。

根本国務大臣 かつて、人口五十万人に一カ所程度という基準があったことも踏まえて考えていきたいと思いますが、どういう書きぶりにするかということはありますけれども、人口は一つの基準になると考えています。

稲富委員 済みません。大体いつごろまでにこの基準を設けるかということもお伺いをいたします。

根本国務大臣 児童相談所の配置等については、各地方公共団体において計画的に準備を進めていただく必要がありますので、法案成立後、速やかに協議の場を設置、活用して、速やかに準備を進めたいと思います。法案成立後、速やかに準備を進めたいと考えています。

稲富委員 できるだけ早く、ぜひお取組をお願いしたいと思います。

 次に、中核市、特別区への児童相談所設置についてお伺いします。

 議員立法提出者にお伺いします。義務化をする目的そして背景についてお伺いをいたします。

源馬議員 お答えいたします。

 現行法上、児童相談所については、都道府県及び指定都市に設置が義務づけられており、中核市等については設置することが可能とされていますが、現在、中核市等で設置されているのは横須賀市、金沢市及び明石市であり、必ずしも設置が進んでいない状況であります。その原因は、児童相談所の設置が自治体にとって負担になることもあると考えます。

 そこで、人口規模、財政規模等を勘案して、改正後の児童福祉法第五十九条の四第一項において、中核市及び特別区について児童相談所の設置を義務づけるとともに、同条第七項において、児童相談所の設置が過度な負担とならないよう、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等の規定を設けております。

 最近の虐待対応件数の増加を踏まえると、基礎自治体におけるきめ細やかな対応が必要であり、また、児童と家庭に関する相談についての基礎自治体の役割が強化されている中で、基礎自治体において、子育て支援から児童虐待への対応まで一貫した児童福祉施策を実施することが求められていることからも、中核市、特別区への児童相談所設置の義務化が必要であると判断したものです。

稲富委員 ありがとうございます。

 政府に伺います。

 さまざまな財政措置等を含めて、児童相談所設置について促進をする案を、これから基準を含めてつくっていくということが政府の姿勢かと思います。しかし、こういったさまざまな事件、そして今回の法案に際して、結局のところ、児童相談所をこれからふやしていく意思が政府としてあるのかどうか。我々は、必要だ、要するに、ふやすべきだと思っています。ただ、最終的に都道府県が決めると幾ら言っていても、ふえるかどうかというのはわかりません。

 ぜひそこを、ふやす意図があるのかどうか、ふやすのか、そうではないのか、大臣の決意を含めてお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今回、具体的な基準設定、これは先ほど申し上げたとおりですが、要は、今後、地方団体などとも協議しながら検討していきたいと思っております。

 やはり中核市の児童相談所設置は必要だと我々も思っておりますが、ただ、児童相談所の設置を一律に義務化する、これについては、児童福祉法上の都道府県と市町村の役割分担を踏まえて、市区は地域に根差したきめ細やかな支援に特化し、都道府県は専門的、広域的な観点での支援等に特化すべきという意見、あるいは、限られた福祉人材について都道府県と市区で分散させることは、それぞれの体制を弱くするのではないかという意見、あるいは、中核市は人口二十万人程度から六十万人程度とばらつきがあることや、都道府県の体制や近隣自治体の状況、地理的条件など、その置かれた状況もさまざまであり、一律に義務化することは適切ではない等の意見が公共団体から寄せられております。

 こういうことを踏まえて、本法案においては、一律の義務化を前提とした検討を行うのではなくて、まず、施行後五年間は、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備あるいは職員の確保及び育成の支援措置、これを講ずる。そして、その支援に当たっては、地方団体との連携、要は十分にお互いに話し合っていく。そして、施行後五年をめどとして、児童相談所の整備並びに職員の確保及び育成の支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされております。

 中核市及び特別区における児童相談所の設置が進むよう、地方公共団体と丁寧な意見交換を行って、必要な支援を講じていきたいと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 都道府県に児童相談所を設置するということは法で明記できるわけです。だから、やろうと思えば法律に書ける。ただ、地方公共団体からの意見があってできない、法律には書けないという御答弁かもしれません。

 ただ、私がお伺いをしたいのは、これだけ多くのことがあって、そして今国会でこれだけ大きな法案として扱い、そして政治家としての大臣に対して、ふやす意思があるのかどうかということを再度お伺いしたいと思います。

根本国務大臣 私も、中核市に児童相談所の設置をする、これは必要なことだと思っておりますが、やはり地方公共団体と丁寧な意見交換を行いながら、国として必要な支援を講じていきたいと思います。

稲富委員 ぜひ、これは必要だと思いますので、政府としてもお取り組みいただきたいと思います。

 引き続き、保護者の支援の拡充についてお伺いをします。

 議員立法提出者にお伺いをします。

 政府は、児童虐待防止対策の抜本的強化を閣僚会議で三月十九日にまとめる中で、保護者支援プログラムの推進ということをここでも書いております。しかし、議員立法提出ということで、これを法定する、法に書くということでございますので、その目的、背景をお伺いいたします。

岡本(充)議員 児童虐待が起きた場合、児童虐待を受けた児童の保護や支援が必要なことはもちろんですが、児童虐待の再発を防止するためには、児童虐待を行った保護者が虐待の事実を受けとめ、みずから変わることが重要であります。

 現行法においても、児童虐待を行った保護者に対する指導を実施しておりますが、これを一層充実する観点から、本法案では、改正後児童虐待防止法第十一条において、保護者の意に反する一時入所等の措置がとられた場合には、その保護者に対して再発防止のための指導を行うことを義務づけるとともに、それ以外の一時入所等の措置や一時保護の場合においても、再発防止のための措置に係る規定を設けております。

 いずれの措置も、虐待を行った保護者に対して再発防止を特に重視したプログラムを実施することにより、当該保護者の自覚を促し、効果的に児童虐待の再発の防止を行うものと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 保護者の支援拡充、これは極めて大切なことだと思います。ぜひ、政府におかれても積極的にお取り組みいただきたいと思います。

 続きまして、情報共有、そして、先ほど大西委員からもありましたけれども、引継ぎ等についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 結愛ちゃんの事件があった後、子ども虐待による死亡事例等の検証結果というのが専門委員会でも平成三十年十月に出されております。その中においては、「問題点」として、転居前の自治体におけるリスクアセスメントが不十分だったという評価がございます。そして、その次に、「引継ぎ」のところで、以下のような問題点そして課題がこの検証でなされております。

 一つは、移管元の児童相談所からの引継ぎ書類は、ケースの特徴や危機度のアセスメントが不明確であった。次に、移管元の児童相談所は、転居の数週間前に児童福祉司指導を解除、移管先の児童相談所では緊急性の高い事例と判断しなかった。三番目に、移管元と移管先では対面の引継ぎが行われなかった。四番目には、児童相談所への引継ぎが遅く、転居先の市区町村と児童相談所で直ちに連携した対応ができなかったということが書かれております。そして、転居先の自治体においてもリスクに対するアセスメントが不十分であったということで、そういう検証結果が書かれております。

 結愛ちゃんの事例も心愛ちゃんの事例も、五歳、十歳のお嬢さんで、私もちょうどその同年代の娘がおります。大変これは言葉にならない事案でございまして、これを何とかしたいという多くの親の思いがあると思います。皆さん思っていらっしゃると思います。

 しかし、この検証結果の中で、最後に「国への提言」のところで書かれていることは、平成三十年の十月、要するに心愛ちゃんの事件の前です、「死亡事例等の検証でも指摘された内容や、平成二十八年の児童福祉法の改正をはじめとした虐待防止のために取り組んできている内容が多く含まれている。」要するに、これまで指摘されてきたことが多く含まれているんだと。最後にこう書かれています。「全国で取組が確実に実践されるような体制整備を進めることが必要」だと。

 要するに、紙を幾ら書いても、検証を幾らやっても、実践が足りないんだ、だからまた同じことが起こる、国会で幾ら議論しても、それをどう実行するかということがなければ意味がないということかと思います。

 そういう意味で、今回の事例でいうと、ちょっと質問させていただきますのは、引継ぎの部分です。これは何とかしないと、幾ら議論してもよくならないと思いますので、これについて伺います。

 まず、議員立法提出者にお伺いします。児相間の引継ぎ、情報共有、これはどうやったら改善できるのか、改めて提出者の意思をお伺いします。

岡本(充)議員 私も、昨年、香川の事案も調査に現地へ行ってまいりました。委員御指摘のとおり、大変その点が重要だと思っています。

 児童虐待を受けた児童が転居しても、対応の必要性は変わらない。しかし、実際には、転居に伴って支援が途切れてしまっている事例があり、また、指導を逃れている事例があるという話を先ほども答弁させていただきました。

 本法案においては、転居後の児童相談所が迅速に対応できるよう、児童相談所が通告を受けた児童等が転居する際の児童相談所間の情報共有について規定をしています。

 その上で、転居前の都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について指導措置がとられている場合において、当該児童が他の自治体に転居することを知ったときは、転居の前日までに措置を解除してはならないこととしております。

 さらに、転居後の児童相談所長は、転居前の児童相談所長から情報提供を受けた後、直ちに指導措置をとらなければならず、措置開始から一カ月の間は、一時入所等の措置に移行する場合などを除き解除してはならないこととしております。

 これに加えて、転居を理由として施設入所等の措置や一時保護が安易に解除されることのないよう、これらを解除しようとするときは、転居後の家庭環境等を勘案しなければならないこととしています。

 以上の措置により、児童虐待を受けた児童が転居する場合であっても切れ目のない対応が可能になるものと考えておりまして、こうした悲しい事案を二度と繰り返さないために、ぜひこうした措置を実現したい、このように思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 政府におかれては、与党と今の議法の方で、何とかここの点は、やはり引継ぎの点を切れ目のないようにしたいということ、これがないといつまでたってもこのような事案がなくならないという意思を、ぜひ各党間で話し合って、いいところで私は結論を見出していただきたいと思います。

 そして、政府におかれては、情報共有については、当委員会でも鰐淵委員が情報共有の大切さについて質問されたことがありました。

 そこで、改めて伺います。国による標準的な情報共有の仕様、システムの共有化ということをおっしゃっておりますが、具体的にお伺いをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待の対応に当たりましては、支援の対象としております家庭が転居する際に、自治体間のケースの引継ぎが必要不可欠でございます。この引継ぎをより効率的に引き継ぐためには、ICTを活用したシステムを使用することが有効だと考えております。

 このため、今年度の予算におきまして、同一の都道府県内での児童相談所と市町村の情報の集約あるいは共有を可能とするシステム構築を支援するために、必要な費用を計上したところでございます。また、このシステムで扱う情報の項目も含めまして、国が標準的な仕様を示す予定でございます。こうしたことによりまして、今後、都道府県等で構築されるシステムの標準化を図ってまいりたいと考えております。

 さらに、情報共有システムを活用いたしまして、今申し上げましたのは都道府県内でございますけれども、都道府県間で情報共有を行うことも検討課題というふうに考えております。

 より効率的に情報共有を行うことができるシステムの構築に向けて、努力してまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 情報共有、そして児相間の引継ぎ、これがやはり防止するための肝の部分だと思います。ぜひしっかりとしたお取組をお願いします。

 そして次に、児童虐待防止対策及び社会的養育の予算についてお伺いします。

 昨日の参考人の皆様の陳述、恐らく共通していたのは、予算が必要だということ。人、物、金ということでいうと、人とお金の部分が必要だということ。いろいろな意見があったにもかかわらず、そこはほぼ全ての参考人の皆様が共通していたことだったと思います。

 この予算についてお伺いをします。

 児童虐待防止及び社会的養育関係予算なんですけれども、ここ五年間の国の予算の変遷について、まずはお伺いをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止対策及び社会的養育関係の予算につきましては、ここ五年間ですけれども、平成二十七年度は千百九十八億円、二十八年度千二百九十五億円、平成二十九年度千四百九十三億円、平成三十年度千五百四十八億円、令和元年度千六百九十八億円ということでございまして、平成二十七年度との比較でいいますと、一・四二倍となっております。

稲富委員 ありがとうございます。

 予算としては、毎年百億円から百五十億円、この五年間ふやしてきているということでございます。

 そして、その中で、内訳を見ますと、平成三十一年度予算で見ますと、千六百九十八億円の中で児童入所施設措置費が千三百十七億円なので、約八割を占めているということで、児童虐待等の支援事業というのは、あくまで千六百九十八億円の中の十分の一の百六十九億円に限られているということ。

 これは大臣にお伺いをいたします。

 先ほど西村委員その他の委員も、やはり予算が必要だということをおっしゃってまいりましたし、私もこれはそうだと思います。これこそ、やはり政治の意思だと思います。どれぐらいここに予算を振り向けるか、次年度に向けて、ぜひ大臣のここは強い意思を示していただきたいなと。やはり先ほどの、児童福祉司が交付税に算入されてどうなっているかわからないなんということは、この期に及んであっちゃならないと思います。それは、別の何らかの形で、ふやすための予算を国からぜひ分捕ってきてほしいです、財務省から。

 ぜひ大臣、これは来年度に向けて強い決意を示していただけないでしょうか。よろしくお願いします。

根本国務大臣 昨年十二月に決定された新プラン、あるいは本年三月の関係閣僚会議決定に基づく事業の実施、これに必要な予算の確保に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。交付税措置も講じたところでありますが、交付税を含めて、必要な予算の確保に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

稲富委員 大臣、ぜひ全力を挙げてよろしくお願いいたします。

 それでは次に、里親委託についてお伺いをいたします。

 資料の一枚目でございます。先ほどありましたけれども、社会的養育ビジョンがあって、これからは施設から家庭へということで里親委託率を上げていくということが決まって、各都道府県が推進計画を今年度じゅうにつくるということを前回の本委員会で御答弁いただきました。

 この表を見ると、新潟市と堺市では、里親委託率が随分と開きがございます。これはなぜかということをまずお伺いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、里親等の委託率につきましては、全国平均としては平成二十九年度末時点で一九・七%でございますけれども、自治体ごとに大きく差がありまして、秋田県の九・六%から新潟市の五七・五%まで、大きなばらつきがございます。

 この理由につきましては、自治体によって事情がさまざまでございますので一概には言えないわけでございますけれども、例えば、里親を含めました社会的養護の受皿の状況が地域によって異なることなどもあるのではないかと考えております。

 一方で、里親等委託率を伸ばしている自治体もございまして、例えば福岡市や大分県におきましては、児童相談所へ専任の里親担当職員の配置をするとか、里親支援を行う民間などの機関との積極的な連携を行う、あるいは体験発表会、市町村と連携した広報、NPOや市民活動を通じた口コミなどさまざまな努力を行っておりまして、里親の登録の増加あるいは里親支援の充実を図っているものと承知をいたしております。

稲富委員 ありがとうございます。

 先ほど大西委員からもありましたけれども、ここは数字ありきではなく、地域の事情に応じて、施設から家庭へという流れを一律じゃなくやっていくんだということを、先ほどもそうでしたけれども、前回、当委員会でも御答弁いただきましたので、その点はよろしくお願いいたします。

 次に、里親制度の周知啓発についてお伺いします。

 資料二枚目でございますが、日本財団が二〇一八年一月に公表した「里親」意向に関する意識・実態調査というのがございます。その中でいうと、里親になってみたいという意向を持たれている方は全体の六・三%ということで、単純に言うと、潜在的な里親家庭候補は全国に百万世帯と推計されるということでございます。

 ただ、里親の意向はあるけれども現状里親になっていない理由は、例えば経済的負担が心配だから、あるいは子供の人生を左右するので責任が重いからということで、理由があります。

 他方で、里親には子供の生活費として養育費が支給されているとか、あるいは二カ月など短期間でも里親があるということについては、ほとんどの方が御存じなかった。例えば、養育費が支給されるということを御存じの方は一・九%、短期間でもできるという方が二・六%ということで、意向はあるものの、なかなか中身についてのお知らせが行き届いていないということかと思います。

 もしその内容等がよりわかれば、先ほど申し上げたような六・三%の潜在的な里親家庭は増加するのではないかとも考えられますが、大臣、この点の御見解をお伺いいたします。

根本国務大臣 里親は、平成二十八年の児童福祉法改正で定められた家庭養育優先の原則を推進していくために重要な役割を担っていると思います。

 今、委員からも御紹介がありました。やはり、今御紹介のような、里親制度というのは具体的にどういう制度なのか、あるいはその意義、役割、こういうものをしっかりと周知する、これは重要だと考えております。

 厚生労働省では、毎年十月を里親月間と位置づけて、里親委託を推進するための集中的な広報啓発を実施しております。

 例えば昨年度においては、具体的に次のような取組を行っております。ポスター三万枚とリーフレット六十四万枚を作成し、全ての都道府県及び市町村に配布、関係団体や首都圏の鉄道事業者にも掲示を依頼、あるいは、厚生労働省ツイッターやフェイスブックを活用した周知を実施、一般メディアを活用した取組や、政府広報として新聞やインターネット、テレビ、雑誌による広報啓発活動、里親月間に合わせて地方自治体が取り組む広報啓発活動を報道発表として当省のホームページで紹介しております。

 さまざま取り組んでおりますが、今後も、関係機関と連携しながら、まさに委員が御提案するように、周知にしっかりと取り組むことによって里親制度の社会的認知度や里親登録数の向上を図っていきたいと考えています。

稲富委員 以上で終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 先週に引き続いて質問させていただきます。

 まず冒頭、きょうは、前回の質問の残りでもあります、文部科学大臣政務官にきょうお越しいただいておりますけれども、前回もちょっと指摘をさせていただきました、学校、教育委員会向けの虐待対応の手引、これには私はさまざまな改善点があるのではないかという指摘をしたわけであります。

 例えば、非常に項目が前後していてわかりにくい、分量が多いなどもありますし、前回議論を、個別にちょっと指摘はできませんでしたが、要対協から教育委員会が情報を得て、これをどうやって学校に均てん化していくのか、均てん化していくべきだ、こういう指摘を私は職員の方としたわけでありますが、政務として、実際これを見られて、私が今指摘しているような改善点があるのではないかと思いますが、そういった点についてどのようにお感じか、改善をしていく、そういうお考えがあるか、お答えいただきたいと思います。

中村大臣政務官 前回の委員会で、最後に岡本先生から手引の見直しについて御質問いただいたわけですけれども、時間がない中での御質問で、私もそのポイントについて理解ができなかったということがあって、十分な答弁ができずにいたことを御理解いただきたいと思います。

 先生の今お話しになった点でありますけれども、このたび文科省が取りまとめしました学校、教育委員会等向けの虐待の手引では、要保護児童対策協議会と学校、教育委員会の連携について、要対協への参画や進行管理台帳に登録された児童生徒等の情報提供の必要性を明記しているところでありまして、また、要対協に学校が参画することで虐待のおそれのある児童生徒等の情報を学校が要対協から得た場合、対象となる児童生徒に対して学校と関係機関が連携して必要な支援を行うことが重要であることも明記をしているところであります。

 一方で、分量が非常に多いので、なかなかポイントがつかみづらいのではないかということでありますけれども、その点について、学校と教育委員会が要対協としっかり連携できるようにという内容で取りまとめたものでありまして、確かに分量が多いという指摘があると思いますので、これから、活用しやすいような取りまとめについて、また検討してまいりたいと思います。

 以上です。

岡本(充)委員 もう一度確認ですが、この手引の中に、要対協から情報を得たもの、情報を各学校にどうやって周知をするか、それについて周知をしなさいということが書いてあるという理解ですか。

中村大臣政務官 要対協の会議で得られた情報について、学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きにおいて、要対協から虐待のおそれのある児童生徒の情報を要対協に参画した学校が得られた場合……(岡本(充)委員「学校じゃなくて、教育委員会から学校」と呼ぶ)教育委員会が得られた場合は、教育委員会が得た情報を学校や教師、教員と情報共有をして、その対象児童に対して必要な支援を行うことが重要であるということが記されているところであります。

岡本(充)委員 それは何ページのどこに書いてあるんですか。

中村大臣政務官 手引でいうと、六ページの下段の方になりますが、読みますかね。

岡本(充)委員 読んでください、それを。

 ちょっととめてくださいよ。そこで黙って読まないでよ。ちょっと、声を出して読んでください。目が動いているだけじゃないですか。

冨岡委員長 その文章は書いてあるんでしょう。読んでください。

中村大臣政務官 大変失礼しました。

 要保護児童対策協議会への参画や学校からの虐待に関するあらゆる相談に対応することが重要である、教育委員会はということですね、その際、市町村の虐待対応課との連携も欠かせないということであります。(岡本(充)委員「そこは違うよ。ちょっと政務官、ちゃんと聞いた方がいい」と呼ぶ)

冨岡委員長 手を挙げて、岡本充功君。

岡本(充)委員 もう時間が限られているんだから。もうそれはさんざんやったんだから。

 要保護対策児童協議会への参画ですよ。学校からの虐待に関するあらゆる相談に対応する、これは教育委員会ですよ。どこに教育委員会から学校に情報を伝えなさいなんて、書いてないじゃないですか、この六ページに。そんな間違った答弁をしてもらっちゃ困りますよ。これはやったんだから、もう。書いてないんだから、やりますということしかないんです。

中村大臣政務官 先生、大変失礼しました。

 教育委員会の対応ですけれども、要対協から通告があった場合に、当該事案のその後の経緯について学校と共有しておくことが重要ですということが書かれてあります。その重要だということが情報……(岡本(充)委員「どこに書いてありますか」と呼ぶ)六ページの「(2)事案への対応」、これは、事案への教育委員会の対応という意味でございます。失礼しました。

岡本(充)委員 これは、学校から児童相談所や市町村に対して虐待と思われる事案の通告があった場合ですよ。学校から児童相談所や市役所に通告があった場合です。要対協からの連絡があった場合に学校と共有をしておくことが重要ですとどこに書いているんですか。書いてないじゃないですか。

 もうこれで時間とらないでよ。だから、書いてないの。書かなきゃいけないということをもうこれは整理してあるんだから。政務官、そこはぜひ、書かなきゃいけないことがあるということを認めて、ちゃんと見直していただきたい。もうこれはさんざんやったんだから。

中村大臣政務官 要対協の会議で得られた情報については、学校、教育委員会等向け虐待の手引において、要対協から虐待のおそれのあると寄せられた情報を学校が得られた場合、これは学校が得られた場合でよろしかったですか。(岡本(充)委員「学校じゃない、教育委員会から」と呼ぶ)教育委員会ですね。

 ちょっと失礼します。ちょっととめてください。(岡本(充)委員「ちょっととめてよ、委員長。こんなことで十分も。ちょっと待って、政務に聞いているんだから。ちょっと整理させて」と呼ぶ)

冨岡委員長 ちゃんと御答弁で、文部科学省の丸山さん。(発言する者あり)ちょっと静かにしなさい、静かに、今言っておるから。

 ちゃんと答えて。書いてないなら書いてないように、対応をちゃんと。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 六ページの「事案への対応」、これは、教育委員会の役割について明示、整理をしている部分でありまして、先ほど政務官の方から御答弁をさせていただいたように、「通告があった場合、当該事案のその後の経過について学校と共有しておくことが重要です。」という書きぶりでございますので、これは当然に、共有をするわけですから、教育委員会から学校に対して連絡をしている、それで共有をする、そういうふうに解するべきだというふうに考えております。

岡本(充)委員 もう時間がもったいない、ちょっと。

 学校から児童相談所や市町村に対して虐待と疑われる事案の通告があった場合、いいですか、学校から矢印は児相や市町村ですよ、そっちに通告があった場合、当該事案のその後の経過について学校と教育委員会が共有しなさいと書いているだけです。どこに要対協からの情報を共有しなさいなんて書いているんですか。自分たちが、学校が通告した場合、それを教育委員会と共有しなさいと書いているだけじゃないですか。要対協からの情報を、どうしてそれを学校におろしなさいと、逆の矢印のことは書いてないでしょうと言っているんです。

冨岡委員長 だから、僕が言うわけにはいかないけれども、いいですか。質問の内容はわかるね。(発言する者あり)

 一応、ちょっととめてくださいね。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 じゃ、起こしてください。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員、資料の四ページでございますけれども、「関係機関の役割」ということで整理をさせていただいておりまして、その中で、市町村の虐待対応担当課の役割の中に、ここにありますように、市町村に設置する要対協の調整機関としてということが整理されておりますので、これは当然に、先ほどの繰り返しになりますけれども、市町村の機関としての役割の中に情報提供それから育児不安に対する相談等に応じるというようなこと等々が含まれておるということであります。

岡本(充)委員 それをどうして教育委員会と読みかえることができるんですか。

 教育委員会が得て、返ってきたものを学校にちゃんと周知してくださいとそれは読めないでしょう。市町村は、それはそうですよ、調整機関としてやるんですよ。

 私が聞いているのは、教育委員会から学校に行く矢印はないですよねと言っているんです。もうこれはないんだから。

 ちょっととめて、もう。ちょっと、委員長、これはだめだよ。ちゃんと、ないということを。

冨岡委員長 じゃ、ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 じゃ、起こしてください。

 中村政務官、しっかり答弁してください。

中村大臣政務官 手引の四ページ目に「教育委員会等設置者の役割」という項目がございまして、五ページ目の頭に、学校及び教育委員会等設置者は、要保護児童対策協議会に参加するとともに、特に教育委員会設置者は、教職員に対して、学校及び教職員等に期待される役割や関係機関等の役割の周知に努めるほか、ちょっと飛んで、日ごろから関係機関との連携を推進することということが教育委員会の役割として記されているわけであります。

 要対協からの情報を受けた場合もこのような対応になろうと思います。

岡本(充)委員 本当に関係機関は、今から言いますけれども、関係機関と言っているけれども、これは、日ごろから関係機関と連携を推進することって、違うんですよ。日ごろからちゃんと仲よくやっておいてくださいと言っているだけです。情報を得たときにちゃんと学校に伝えなさいということは書いてないんですよ。日ごろから連携しなさいと言っているだけですよ。

 情報を得たときにどういうアクションをするのか、どういうことを知ったときにどうやって学校と連携するのか、そのことについて書いてないんですよ。だから私は言っている。

 もう、政務官、さすがにこんなに時間をとらぬでほしい。ちゃんと、もう書いてないんだから、それはそれでやりますと言って。お願いします。

中村大臣政務官 時間をとって申しわけありませんけれども、岡本委員の指摘を受けとめて、よく検討させていただきます。

岡本(充)委員 検討って、書いてないんですからね。ちゃんと両方向から情報が来なきゃいけないんです。それをやってくださいということを、私はもう、実は先週からこれはやったんですよ。それを、ここで今、一生懸命そうやって、あります、ありますと言っても、ないんです。

 では、ちょっと重要な話に行きます。

 本当に、もう時間が限られてきて残念ですけれども、きょうはもう少し聞きたいことがあります。一つは、ショートステイについての話です。

 ショートステイがまだまだ不十分じゃないか、そういうところがあるのかと思って、七ページ目、皆さんにお示しをしています。ショートステイする子供さんをふやして、やはりレスパイトもふやしていかなきゃいけないという思いがあります。

 ショートステイ事業において、実は、ショートステイしている子供さんは、いろいろな理由で行きづらい。一つは、やはり、学校に通っていて、休まなきゃいけないということがあるんじゃないか。そして、それを解消するために予算化した。でも、これはまだ一割なんですよ、実施しているのが。これをもっとふやさなきゃいけない。

 大臣、それでいいですね。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 ショートステイ事業につきましては、御指摘のとおりでございますけれども、平成二十九年度末時点での状況を調査した結果でございますが、調査の結果、実施していると回答した八百二市町村のうち九十一市町村、一一・三%におきまして、ショートステイを実施している施設と学校との間の子供の送迎を行っておりました。

 ショートステイ事業を利用しやすい環境を整えるためには、子供の送迎の実施を促進することが有効と考えております。今年度予算におきまして、居宅とショートステイを実施している施設の間、あるいは施設と学校間の子供の送迎を行った場合の補助の加算を創設したところでございまして、今後、こうした支援を引き続き行ってまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 これは確実に実施するべきですよ。やはりちゃんと学校に行けるようにしてあげることが、子供さんのこういうところに入るときにハードルになるとすれば、それをやるべきだと思います。

 それからもう一つ、医療ネグレクト。先ほども議論がありました。六ページにあります。

 私も医療の現場でこういう経験をしましたけれども、実際に、親権停止をしてまでも受けさせなきゃいけない医療、こういうのはどういう医療なんですかね、そもそも。医療ネグレクトになり得る、親権停止をして受けさせなきゃいけない医療はどういうものがあるのか。これはなかなか例示が難しいんだと思います。全ては出せないと思います。

 ここで、局長、別に大丈夫です、一生懸命答弁を探さなくても。難しいのはわかっていますから。

 だけれども、これはどういうものなのかとやはり考えていくべきじゃないかという指摘をした上で、では、一体どのぐらいの時間で親権停止ができるのか、きのう聞きました。やはり一日程度時間がかかるということであります。

 その場合、やはり一日程度で保全措置がとれるということだとしても、それでも間に合わないことがあり得るときに一体どういう措置をとることができるのか、これについて質問をしたいと思います。

 つまり、一日も待てない、直ちに何らかの措置をしなければいけないけれども、親が拒否している。その拒否の理由もいろいろな理由があると思いますけれども、そういうときにどういう措置がとれるのか。私が経験したのは、ある宗教に入っている方の治療でありました。私は血液内科にいますから、そういう分野で、拒否をされて、大変苦労した記憶があります。

 こういう場合、緊急性を要するときにはどういう対応が医療機関でとれるのか、これについて御説明いただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 保護者が児童に必要とされる医療を受けさせないということで、子供の生命、身体に重大な影響がある場合でございますけれども、資料にございますけれども、一つは家庭裁判所による親権停止の審判の確定、もう一つは、それにあわせて申し立てることが通常だと思いますけれども、親権停止の審判前の保全処分ということでございます。

 ただ、これも一日程度の時間がかかるということでございまして、それよりも緊急を要するという場合には、児童福祉法に基づく、児童相談所長の職権によりまして、親権者にかわりまして児童相談所長等が医療行為に同意することができる、これを使用するということになると思います。

岡本(充)委員 大臣、これをやはりきちっと医療の現場に徹底させるべきだと思いますよ。どういうことができるのかということを現場の医師にきちっと周知すること。そしてまた、その場合に、例えば、局長、もしそれでも親が抵抗したらどうするんですか。児童相談所の所長が同意をしたとしても、それでも現場で親が反対をする、こういうときにはどうできるんですか、実際。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 一応、資料でもお配りいただいておりますけれども、この措置につきましては、その親権を行う者の意に反してもこれをとることができるということでございます。制度上はそういうことでございますけれども、現場現場において、こういった職権の規定を使うかどうかというところは適切に判断していただくものと考えております。

岡本(充)委員 大臣、この議論を聞いて、やはり、医療現場でどういうことができるのか、医師も命を救いたいと思う一方で、後でそれが訴訟になるのは嫌だなと思う気持ちもあるでしょう。今言ったように、親が抵抗して嫌だと言っているものを無理やり何らかの処置をするというのは、相当程度、医療現場としても強い意思が必要になると思います。

 そういう意味で、やはりきちっとした手引なりガイドラインなりをつくって示してあげる必要があると思います。今すぐにはできないと思いますけれども、ぜひそれを進めていただきたい。

 大臣、どうですか。政治家として進めていただけませんか。

根本国務大臣 委員の言われたことは、私も大事な御指摘だと思います。

 既に通知も出してはおりますけれども、今委員のお話もありましたように、やはり私も、これについては、具体的にいろいろなやり方はあると思いますが、今のお話を受けとめて対応させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 それでは、ちょっと要対協の話に戻りますが、三ページ目の要対協の構成機関、結局、前回の質問でも指摘をしたけれども、資料ができ上がりませんでした、間に合いませんでした。これは至急つくっていただきたい。金曜日も質問の時間をいただける可能性がありますので、ぜひ至急つくっていただきたいと思います。

 要対協の調整担当者になるに当たって、いろいろな研修があるそうです。研修はどんなことをやっているのというので、もらってきました。厚生労働省の皆さん、ありがとうございます。また、関係機関の方、ありがとうございます。

 例えば、大臣のお地元であります福島県はこんなに資料がありました。これだけの研修をしている。一方、残念ながら、今回、事件の舞台になってしまった香川県、そして、それ以外にも島根県や沖縄県、大分厚さに差があるように思います。鳥取県に至っては、どうでしょう、局長、調べがつきましたか。ちゃんとレポートを出させているんですか、どうですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 通知におきまして振り返りをするということになっておりますので、基本的にはレポートを出していただくというのが考え方でございますけれども、鳥取県におきましてはレポートを提出していないということでございました。

 しかしながら、今後でございますけれども、鳥取県においてもレポートの提出をする方向で考えるということでございます。

岡本(充)委員 私も、この実施要綱を全部読んだわけじゃないけれども、大体読みましたよ。そうしたら、鳥取県だけないんです。

 しかも、実は、どのぐらいのレポートを書いているのと思って見ました。どのくらいのレポートを書いているのかなと思ってつらつら見たら、この島根県の要綱にはレポートが載っているんです。これは、全部で九十分の授業を七つ受けたやつを一ページにこうやって二行ずつぐらいレポートを書くんですかね。

 私も大学で講義して、今度試験があるというので、学生さんにすごく、どんな試験をやるんですかといって心配されています。そのときに、レポートだというとみんな安心するそうでありますが、さすがに大学生でも、二行や三行のレポートでは単位がもらえないと普通は思うんじゃないかと思うんですね。

 これで本当に、九十分の講義を受けて、調整員としてこれから最前線で頑張ってもらう人のレポートとしていいのか。大臣、見てください。これですよ。一枚のペラの中に何個もあるんですよ。こういうような感じであるという、やはりこの研修のあり方もきちっと見直していく必要があると思います。

 そういう意味で、都道府県ごとに厚さがこんなにばらばらで、レポートがあったりなかったりとかいうことではなく、きちっと、私が調べたこの県だけじゃない、四十七都道府県全部は調べられませんでした。ぜひ、大臣、こうした研修のあり方もしっかり見直して、より専門性の高い職員の育成に地方自治体が取り組めるように省として協力をしていくべきだと思いますが、最後にその答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。

根本国務大臣 児童相談所及び市町村の専門性強化を図る観点から、平成二十八年児童福祉法改正によって、児童福祉司や要保護児童対策調整機関の調整担当者等については、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修の受講、これが義務づけられました。

 この研修に関する基準については告示で定めるとともに、研修の具体的な到達目標やカリキュラムを通知で示しておりまして、都道府県においては必要な研修が実施されているものと認識しておりますが、今、委員から詳しく御紹介がありました。これについては、実態を把握した上で、しかるべく必要な措置を講じたいと思います。

岡本(充)委員 今、フロアからありました。私から指摘されてやっているようじゃだめなんですよ。私がこれを自分で調べて読んでやっている話じゃなくて、役所できちっと統一的に規格をつくるべきだ、やっていないんだから。お願いします。

 終わります。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 昨日の参考人質疑で、泉房穂明石市長は、中核市に児童相談所設置は、国がやると言えばやれると話しました。

 ことし一月の中核市長会の緊急要請においては、一時保護所、児童相談所(事務所部分)の整備費への適切な財政措置や専門的人材の育成、確保について提言などを行ってきたが、政府において十分な対応がなされなかった、こういう指摘をされています。これについてどのような検討を行ってきたのかをまず伺いたいと思います。

 続けて二つ聞きますので。

 また、条文の附則第六条には、政府は、この法律の施行後五年間を目途として、児童相談所等の整備の状況、児童福祉司その他の児童相談所の職員の確保の状況等を勘案し、中略します、中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、児童相談所等の整備並びに職員の確保及び育成の支援その他必要な措置を講ずる、こうあるわけなんです。

 聞きたいのは、五年後、どのような姿を政府は考えているのか。つまり、五年後には全ての中核市及び特別区で児相が設置されているということなんでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

根本国務大臣 児童虐待防止対策においては、身近な地域で子育て支援から虐待への対応までの切れ目ない一貫した対応が重要だと考えています。このような対応を可能にするため、中核市、特別区における児童相談所の設置を促進してまいりました。

 具体的には、平成二十八年児童福祉法改正において、特別区も含め児童相談所を設置できるようにする、同法の附則において、政府は、施行後五年を目途に、中核市、特別区が児童相談所を設置できるよう必要な措置を講ずることといたしました。

 その上で、今年度予算においても、人材確保、育成や施設整備に関する支援を拡充するなど、順次取り組んでいるところであります。

 中核市からは、国と中核市の間で丁寧な議論を積み重ねるとともに、継続的かつ安定的な支援措置を講じること、一時保護所、児童相談所の整備費への適切な財政措置や専門的人材の育成、確保といった要望が寄せられております。

 このような状況を踏まえて、本法案については、施行後五年間を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備並びに職員の確保、育成の支援その他の必要な措置を講ずること、この支援を行うに当たっては地方団体等と連携を図ること、これは十分に協議するということでありますが、施行後五年を目途として、児童相談所等の整備並びに職員の確保及び育成の支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。

 施行の五年後どうなるかというお話でしたが、地方団体との協議を行いながら、当然、これは、支援の抜本的な拡充あるいは協議の場の設置ということもやりながら、施行後五年をめどとして、希望する全ての中核市及び特別区が児童相談所を設置できるように必要な対応を行ってまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 条文が大変回りくどくなっているのを何度も読むとまた更にわかりにくくなってしまうんですけれども、今、最後に希望する全てのというふうにおっしゃったので、希望しないところはいいんだ、そういうふうな意味なんだと思うんですね。だけれども、二〇一六年、平成二十八年の児童福祉法の附則第三条では、「政府は、この法律の施行後五年を目途として、地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、その設置に係る支援その他の必要な措置を講ずるものとする。」と、今の条文よりも、五年は一緒なんですけれども、もっとシンプルな条文でありました。

 この条文について、ことしの三月一日に、中核市における児童相談所設置に向けた打合せ会議に資料を出しておりますけれども、これは要領がありまして、都道府県社会的養育推進計画策定要領、昨年の七月六日です、基本的考え方の中で、平成二十八年の今の附則第三条の趣旨は、全ての中核市、特別区が児童相談所を設置できるようにすることであるからと。趣旨は、全ての中核市、特別区が設置できるようにすることであるということを要領にちゃんと明記して説明しているわけです。ということは、考え方が後退したということになりますね。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 結論から申しますと、趣旨は変わらないと考えております。

 全ての中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、できるということでございますので、そういう意味では、義務ではございませんので、希望する全てのという趣旨、もとからもそういう趣旨だというふうに理解しております。

高橋(千)委員 趣旨が変わらないのであれば、今回、回りくどい表現をする必要はなかったと思います。違いますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 条文上は、そういう意味では、集中的に五年間という意味合いをしっかりするということ、それから、支援の内容が、人材とか施設整備とかそういう内容が具体的にわかるようにということで条文を少し具体的に書いておりますけれども、趣旨は変わらないということでございます。

高橋(千)委員 では、義務づけはしないけれども、全てが設置することを目標とするんだということでお話を進めていきたい、このように思います。

 資料の3に検討状況をつけました。

 これは、中核市五十二市のうち、設置する方向は、昨日いらっしゃった四月開設の明石市、それと奈良市。設置の方向が、旭川、船橋、柏、豊橋、鹿児島市、五カ所であります。そのほかには、設置の有無を含めて検討中は二十六カ所、設置しないは十二カ所、未検討は七カ所となっている。

 そうすると、要するに、さっきの、希望するの部分が微妙になってくるわけです。この十二カ所と七カ所はやらなくてもいいことになるのかなというのが気になるのと、その理由、設置しない、未検討の理由はどうなんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 中核市のうち児童相談所を設置する方向で検討を行っていない自治体につきまして、その理由の全てを把握しているわけではございませんけれども、地方団体からは三つ言われております。

 一つは、児童福祉法上の都道府県と市町村の役割分担を踏まえれば、市町村、市区は地域に根差したきめ細やかな支援に特化し、都道府県は専門的、広域的な観点での支援等に特化すべきではないかといった意見。

 それから二つ目には、限られた福祉人材につきまして、都道府県と市区で分散させることについては、それぞれの体制を弱くするのではないか。

 それから三つ目といたしましては、中核市は人口二十万人程度から六十万人程度とばらつきがあること、あるいはその都道府県の体制、近隣自治体の状況、地理的条件など、その置かれた状況もさまざまであることから、一律の義務づけはどうか、こういった意見が寄せられております。

 また、個別の中核市におきましてでありますけれども、我々が個別に把握している幾つかの意見の中では、児童相談所を設置している中核市への国からの財政措置が著しく不足しているということ、もう一つといたしましては、県との役割分担のもとで良好な関係で児童虐待の対応に当たっており、設置のメリットが感じられない、こういった理由を挙げる市もあると認識をいたしております。

高橋(千)委員 メリットが感じられないというのは、多分、きょう午前に高木委員が紹介をされた、そういう自治体も中にはあるのかもしれません。ただ、そこに対しても、よく議論をしていって、今、児相の果たす役割、それから限られた人材や都道府県と中核市との関係というのをやはり相乗効果に持っていかなければ、児相だけで解決できる問題だとは誰も思っていません。だけれども、やはり相乗効果を出すためにも必要なんだということで国がイニシアチブを発揮してほしい、このように思うんですね。

 それで、ちょっと順番があれで申しわけないんですが、戻っていただいて、資料の2なんですけれども、中核市を管轄する児童相談所の管轄人口とあります。

 きょうも少し議論がありましたけれども、二〇一〇年までは、児童相談所設置基準において、人口五十万人に最低一カ所が望ましいとされていたわけです。ですが、現実の今のこの人口を見ておりますと、かなり多いということなんですよね。全国でならすと六十万人に一カ所くらいだという答弁が前にありましたけれども、これはならす意味は全然ないわけで、話題になっている柏が百三十五万六千九百九十六人。だけれども、その上の市川も百三十七万七千五百六十三人というように極めて多くて、これではとても対応は難しかろうと誰もが想像できることだと思います。

 それで、これから児相をつくるという旭川の場合は、一番上を見ていただきますと、管轄区域の人口が六十一万八千八百七十三人、うち中核市の人口が三十三万九千六百五人。ここの部分は、新たに児相ができますと結構バランスがよいことになりますよね。

 同時に、我が青森市は、中央児相、県がやっている児相と中核市の人口が余り変わらなくて、差が二万三千人ほどしかないんですね。そうすると、県都に児相ができて、中核市に対応する人が移っただけで、県の責任はどうなんでしょうというふうな話にもなっていくわけなので、そこを逆に、都道府県のノウハウをうまく生かして、移行した中核市児相への支援機能を持たせるなど工夫をして相乗効果につなげていく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の政府の法案におきましては、都道府県が市町村に対しまして体制の整備その他の措置について必要な助言を行うことを規定しております。中核市が児童相談所の設置を検討する場合等におきまして、都道府県は市町村に対しまして必要な助言を行うことができることになります。

 また、今年度予算におきましては、人材確保あるいは育成に対する支援といたしまして、児童相談所の実務経験のある職員を市区に派遣する場合等の代替職員の配置費用の補助を行うなど、支援の拡充に順次取り組んでいるところでございます。

 加えまして、三月十九日に関係閣僚会議で決定した抜本的強化についての中では、中核市、特別区の児童相談所の設置に向けまして、都道府県を含めた関係団体が参画する協議の場を設置することなどを盛り込んでおります。設置が進めば、地方公共団体と丁寧な意見交換を行いながら、必要な支援を講じてまいりたいと思います。

 また、この際、子育て支援から虐待対応までの切れ目のない一貫した対応を行っている事例など、中核市、特別区の特色を生かした取組についても把握いたしまして、先行事例として共有するなど、そういった取組にも取り組んでまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 先行事例も生かし、助言もし、人材確保もし、五年後には、三年たって五年ということですから、八年になってしまったということになるわけですけれども、全ての中核市、特別区を目標にするのだということで、国としてもいろいろな指摘をされた課題に応えていくのだということを確認したいと思います。今のは質問です。もう一回答えていただきます。

 それから、先ほど稲富委員の質問に対して、管轄区域における人口において都道府県が定めると。その参酌の基準に対して、五十万人に一カ所といった基準も踏まえという答弁がございましたけれども、それは私にしてみれば最低ラインだなと思って、それ以上はないなと思っているんですが、そのことも確認したいと思います。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案における児童相談所の管轄区域における基準でございますけれども、具体的な基準設定につきましては、過去におきまして人口五十万人に一カ所程度といった基準があったことも踏まえまして、虐待予防、早期発見から虐待発生時の迅速的確な対応を切れ目なく行う、あるいは一つ一つのケースに対しまして一層きめ細やかな対応をとることが可能となるようなこと、こういった観点から、今後、地方団体とも協議しながら検討していく予定でございます。

 いずれにいたしましても、各地方公共団体におきましては、新プランに基づく人員増とあわせまして、児童相談所の配置等についても計画的に準備を進めていただく必要がございます。したがいまして、法案を成立させていただいた暁には、国と中核市及び都道府県等の関係団体が参画する協議の場を速やかに設置、活用しながら、速やかに準備を進めていきたいと考えております。

高橋(千)委員 先ほどの答弁の中であったんですけれども、中核市に児相を設置するための財政支援ということで、例えば市から県に研修に行く、そのときのその人がいたポストの代替職員の補助ですとか、その逆、県から派遣をされるときの代替補助ですとか、あるいは補助職員、設置準備のために直接かかわる職員の補助など、そういうさまざまな補助をつけているというのは承知をしています。ただ、五年という目標を設定した以上、やはり単年度予算ではなくて、毎年毎年確保していって、ことしは大丈夫かななんということがないように、確実にやるというふうに表明されたらいかがでしょうか。これは大臣にお願いします。

根本国務大臣 今回の改正案では、施行後五年間を目途として、中核市、特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備並びに職員の確保、育成の支援その他の必要な措置を講ずること、そして、施行後五年を目途として、児童相談所の整備並びに職員の確保及び育成の支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。

 この規定は、施行後五年間は、いわば集中支援期間として、児童相談所が設置できるように必要な支援を講ずること、こういうことを意図したものであります。

 厚生労働省としては、このため、この五年間、地方団体等の意見を踏まえつつ、集中的かつ継続的に必要な支援を講じてまいりたいと思います。

高橋(千)委員 ですから、予算も集中で、途切れることはないということでよろしいですね。一言で答えてください、時間がないので。

根本国務大臣 そのような趣旨であります。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 政府は、緊急対策として児童福祉司を向こう三年間で約二千人ふやすと言い、また、児童心理司は、児童福祉司二人につき一人以上配置するということが標準で、現在千三百六十人だそうですが、これを二〇二四年には二千五百人、倍近くにしなければならないという目標があります。大変な課題でございます。

 資料の一枚目に児童福祉司の任用要件というのをつけておきました。いろいろな場合があるんですよね。医師とか社会福祉士、精神保健福祉士などの資格があれば一年目から児童福祉司として任用できるわけで、その方たちが今、千四百十七人で一番多いわけなんですけれども、ただ、行政職員の場合は、社会福祉主事というのが多いと思うんですけれども、児童福祉事業を二年以上の勤務経験と講習会の受講を要件とするわけです。

 児童福祉司は、もうこれまで何度も指摘をされているように、経験年数三年未満が圧倒的に多い。なので、本当に経験を蓄積していって、新しい人としっかりつなぎながら、連携しながらというふうな体制をつくっていかなければならないわけですね。そうすると、この任用要件を満たすために、まず、まだ福祉司とは呼べないけれども、そういう職員も採用していかなきゃいけない。絶えずそうやってふやしていかなければならないわけですよね。

 そうすると、率直に伺いますが、大学で心理学を学ぶ学生の動向や、社会福祉、児童福祉などを学ぶ者という、いわば未来の児童福祉司という点で、人材養成の見通しはどうなっているでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、これまで何回も答弁させていただいておりますけれども、昨年十二月の新プランにおきましては、児童福祉司五千人体制、児童心理司も二〇二二年度に八百人程度増員等の、児童相談所の体制の抜本的拡充を図ることといたしております。

 自治体における専門的な人材の確保については、国としてもしっかり支援しなければいけないというふうに思います。御指摘のような新卒につきまして、自治体の採用活動を支援するための補助を行います。

 また、採用のみならず、児童相談所における組織としての専門性を確保することが重要だと思います。

 これも何度か答弁いたしましたけれども、例えばということでございますけれども、積極的に児童相談所の配属経験者の再配置をしていく、それから児童相談所のOBの職員の再任用等を行うといったこと。

 それから、これは人事のことでございますけれども、個々の児童福祉司等が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人材配置を行う、こういったことについて自治体での工夫が進むように周知をしております。

 また、これは新卒関係でございますけれども、新卒といいましょうか、中途採用などもあると思いますが、日本社会福祉会等の専門職団体に対する採用に関する働きかけなども行っております。

 また、今年度予算におきましては、児童福祉法により義務づけられました児童福祉司の任用後の研修等の実施費用の補助、あるいは、昨日参考人からもお話がございましたけれども、研修センターについて、全国二カ所に拡充する、そういった措置も講じておりまして、全般的に、人の確保それから資質の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 中途採用や再配置といった可能性を追求するのも当然必要なことなんですけれども、新しい人たちがこの児童福祉司という仕事を選択できるように、やはりカリキュラムの分野でも文科省ともよく議論をしていただきたいと思いますし、やはり仕事の魅力というんですか、そこを本当に、待遇改善だとか、そうしたことも議論していただきたいなと思います。

 実際は、現場からは、そもそも児相でそんなに人がふえても机を置くスペースさえない、そのくらい大変なんだという声も聞こえているんです。どうなっているでしょうか。

 だからこそ、人をふやせというのは、児相にぎゅうぎゅう詰めにしろとか、無理やり児相を建て増ししろとか、そういう議論では本当はなくて、身近なところに、児相や分所でもいいんです、そうやってふやしていくということとセットでやはり人の確保というのは必要なんじゃないかなと思います。いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所あるいはその一時保護所の整備につきましては、地方から、児童相談所設置に当たりまして、国と中核市との間で丁寧な議論を積み重ねるとともに、継続的かつ安定的な支援措置を講ずることといったこと、それから、一時保護所、児童相談所の整備への適切な財政措置、あるいは専門的人材育成、確保といった要望が寄せられております。

 このため、今年度予算におきましては、施設整備に関する支援の拡充に順次取り組んでおります。

 具体的にということでございますけれども、児童相談所整備に係る地方債の元利償還金に対する地方交付税措置を行っております。また、一時保護所を設置する際に、子供の特性に配慮した処遇を可能とするような施設整備を行う場合に補助単価の加算の拡充などを行っております。

 また、これは先ほどの議論でございますけれども、今回の改正では、児童相談所の管轄区域が大き過ぎるといった御指摘があることも踏まえまして、児童相談所の管轄区域に関する参酌基準を定めることとしたところでございます。

 こうした取組によりまして、児童相談所自体の設置が適切に促されるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 引き続き、実態を見て、あわせて対応していただきたいと思います。

 児相をふやせという議論をしてきたのは、子供たち一人一人にやはり本当に目が行き届く、そういう環境がつくれるのかな、十分な対応ができるのかな、そういう思いから話を進めてまいりました。

 介入と支援の機能分化について、昨日の参考人質疑で、萬屋参考人は、一時保護を、深刻になってしまってからではなかなかおうちに帰すことができないので、早目に保護をしているとお話をされました。一回たたいて学校で通報があって顔にあざがついていた、すぐ保護して、親を呼んで、暴力を振るわないと約束させて帰すんだと。だから、早い段階で、深刻な事態になるのを防いでいるということなんですよね。

 泉市長は、親御さんを殴った子供さん一人のケースで、あとの兄弟も保護しました、そして親御さんには、逆にこの機会にゆっくりしてもらいたい、そして話し合うというふうなことを紹介されたんですけれども、私は我が意を得たりという気持ちだったんです。

 つまり、今の状態は、通報されて児相が駆けつければ、虐待親と言われたと親が泣き出したり、児相が来たら子供を連れていかれる、そう警戒することが多いんですね。だから、介入と保護の支援の分離ということがすごく議論されてきたと思うんです。

 やはり、介入あるいは一時保護、それがイコール即親子分離ではないんだ、むしろ親子関係を改善するプロセスでもあるんだという位置づけが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所におきましては、必要がある場合にはちゅうちょなく一時保護を行うわけでございますけれども、その後につきましては、施設入所が必要な場合もございますけれども、保護者の個々の状況に応じまして、保護者支援プログラムを含め、家庭環境の改善のため、関係機関とのネットワークのもとに継続した支援を行うことにより、円滑な家庭復帰を図っていくことが重要だというふうに考えております。

 具体的には、保護者支援プログラムに加えまして、家庭環境の改善のための訪問サービスあるいは一時預かりサービス、それから児童福祉司が家庭へ通いまして、家庭環境を踏まえた上での助言、指導などにつきましても、保護者の特性に合わせた支援に取り組むこと、こういったことによりまして、家庭における養育環境や状況の改善を図り、その上で円滑な家庭復帰に取り組むこととなるものと考えております。

 こうした取組によりまして、子育て等に悩み、孤立しがちな家庭を発見し、適切な支援につなげることで児童虐待の予防を図ってまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 そこで、きのうもきょうも話題に上った、子供間の性的な問題の厚労省の初の調査のことなんですけれども、七百三十二件、千三百七十一人の子供が、加害者であったり被害者であったり、そのどっちでもある場合もあるわけです。そういう調査のきっかけは、三重県の母親が、施設に預けた七歳の長女が同じ施設の少年からわいせつ行為を受けたことで提訴をしたというのがきっかけで、三重県だけで調べていただいたら、九年間で百十一件、二百七十四人が施設内での性被害、加害に加わっていたということが判明し、国としても調べてほしいということを受けての調査でありました。

 そこで、この調査を今後どうするかということなんですね。やはり、子供たちが、親からの性虐待や暴力を受けたとか、DVを見てきたなどの背景もあるだろうし、そういう子供たちがいっぱいいて共同生活しているという困難さもあるということがいろいろ見えてくると思うんですが、その成果をどのように生かしていくのか、伺いたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回、御指摘の調査結果を発表したわけでございますけれども、この調査結果の発表、先月二十六日でございますけれども、これに合わせまして、都道府県、児童養護施設等に対しまして、取り組むべき事項を通知いたしました。

 具体的にでございますけれども、定期的な面接あるいは性教育の実施など、今回の調査で聞き取った施設のいわば先進的な取組事例を参考にいたしまして、未然防止や早期把握を徹底すべきこと、あるいは、事案を把握した場合の児童相談所との連携、被害児に対する安全確保や専門的ケアを確実に実施すべきことを求めたところでございます。

 今後でございますけれども、今年度、引き続きまして、この調査で得られたデータを活用いたしまして、御指摘いただいた、子供たちの背景事情、あるいは施設での生活状況、あるいは施設の問題発生防止に向けた取組内容などが性的な問題とどのような関連性があるのか、そういった分析等を行いまして、個々の現場で取り組むことのできるマニュアルあるいはチェックリスト等の作成を行いたいと考えております。

 今回の調査結果を生かした取組によりまして、このような問題の未然防止を図っていきたいと考えております。

高橋(千)委員 未然防止は当然なんです。絶対あってはなりません。

 同時に、私が言いたかったのは、その背景を本当につかんでいただきたいということなんですね。

 この報告書の前に、二〇一六年の被措置児童等虐待事例の分析に関する報告というものが出されています。これは、施設職員による虐待事例、毎年とっているものを、そのうち特徴的な事例を分析して研究したものであります。中には、性虐待で職員が逮捕され、八年の懲役を受けたという事案もありました。その被害者になった子供の後のケアというのは本当に深刻だと。まして、暴力の父親のところに連絡を返しているわけですから、そういう後々のことも非常に問題なわけです。

 ただ、私は、この報告書の中身で非常に興味深いなというか大事だなと思ったのは、「子ども間暴力は、職員集団を含めた施設全体の管理的で支配的な文化の中で起こりやすいため、予防には個を尊重する文化の醸成が必要ではないか。」と書かれている。また、「性的加害行動や性的問題行動の背景には、性的被害歴や性を介した力の支配やその継承が存在することが多いとの認識に立って、対策と予防とケアを実施する必要がある」、こう指摘しているんですね。

 施設内の支配的な関係に踏み込んだ記述は大変重要だと思います。親との間でもそういう関係だったからこそ、自己肯定感が持てない。なので、性イコール生、それを生教育と呼んでいるようですが、を通して、職員も児童も自他ともに大切な存在だという共通認識を持つことによって、入所前の被害を、今までなかなか語れなかったものを言うようになったり、施設の中で起こっているトラブルをみずから訴えやすくなる、そういうことを指摘しています。

 子供の権利擁護を考える上で本当に大事な指摘だと思うし、今後、今度の子供間の性的な問題に関する調査研究が、やはりそういう子供たちの背景に、それは親たちの背景でもあると思うんですが、切り込んでほしいなと思いますが、最後に一言、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 若干繰り返しになりますけれども、今回の調査で得られたデータを活用いたしまして、御指摘のような子供たちの背景事情等々についても深掘りをして分析いたしまして、個々の現場で取り組むことのできるようなマニュアルやチェックリスト等の作成を行ってまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 あと、時間がないので、要望だけにとどめておきたいと思います。

 これから、児童相談所の第三者評価が位置づけられたわけですけれども、それに先立って、一時保護所の第三者評価のためのガイドラインを準備しているんですね。

 それで、資料の中にお手紙を、子供たちにみずから、保護所の中の食事はおいしかったですかとか、そういうのを書かせるアンケートをとり、そして今、それに先立っての調査をしているんですけれども、後で見ていただきたいんです。

 資料の6と7を見ますと、LGBT等配慮が必要な子供を受け入れた経験があって、対応を行った保護所が二七・六%もあるんです。受け入れたけれども対応できなかったが七・六%。これだけの子供たちに直面しているんだということや、妊娠している子供への対応というのが、受入れ経験があって対応を行ったのが三九%、受け入れたことはあるが対応はできなかったが六・七%。

 だから、子供が子供を産んでいる、そういう状況に、一時保護所が、健康状態から、母子手帳の交付についていったり、中絶の手術につき合って、お寺の供養までつき合ったとこれに書いているわけですよ。それだけのことを一時保護所はやらなきゃいけない。

 これは本当に大変だなと思うし、だけれども、それだけの多様な複雑な子供たちが集まっているという中での、本当に、さっきから言っている、いかに子供の権利を守れるかというのは極めて重大な問題で、そういう意味でも、実効性ある第三者評価にしていただきたいということを一言述べて、終わりたいと思います。

冨岡委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 きょうは、通告させていただいている質問の前に、先ほどからの他党の先生方の質問等を聞きながら、やはり中核市、特別区の設置については私もちょっと意見を一言申し上げたいなと思いまして、質問に入る前にお話の方をさせていただきたいと思います。

 まず、きょう直前に共産党の高橋先生がお話しされていまして、まさにそのとおりだなと思って聞いていたんです。維新の会と共産党はなかなか意見が食い違うところが多いんですけれども、本当にこの件については、まさに論理的でそのとおりだなと思ったところが、二十八年の改正のときに、五年を目途として前に進めていくというビジョンを示されているにもかかわらず、ほとんど進んでいない状況の中、今回も、高橋先生からは後退したのではないかというような御指摘、確かにそう言われてもおかしくないような状況であるというのは、私は一〇〇%同意するところだなというふうに思います。

 一方で、何度も申し上げているんですけれども、私の地元は寝屋川市というところで、中核市にこの四月になりました。そのときにやはり争点となるのは、では、なったときにどんなメリットがあるのというのは市民の方も多く興味を寄せられるところで、我々の仲間の議員も他党の先生方もなかなかその説明が難しい中で、都市格を上げて、地方分権の、より身近なサービスは身近な組織体がやっていくことがよりきめ細やかな住民サービスにつながる、そういう大きな理念のもとでお話をさせていただきながら進めていっている。

 そういう中で、やはり児童相談所の設置については、この現状、先ほどの高橋先生の資料を拝見しても、設置する方向で意思を示されている自治体が余りにも少ない。つまり、法制度として、設置しようという気持ちを持つような力学が全然働いていないというふうに捉えられても仕方がないかなと思います。

 ただし、昨日の明石の泉市長のお話は、私は本当に、ある種個人としては感銘を受けました。それはどういう視点かというと、やはり政治的意思をしっかりとメッセージとして放って組織を動かしていっている。でも、その反面、それだけのリーダーシップをとらなければ進まないというのも事実だと思います。

 泉市長の場合は、子供の分野に非常に力をかけておられた市長ですし、強いパーソナリティーのもと、リーダーシップをとられてここまでこぎつけられて、約三年間で立ち上げまで来て、これからその真価が問われるというところであると思いますが、我々も、地元の状況を見るにつけて、これが設置の方向で希望する自治体に支援をしていきますよというスタンスであった場合に、果たしてその希望するところまでたどり着くかどうかは非常に懐疑的だなというふうに思うわけです。

 ですから、他党の先生方も御指摘をたくさんしていらっしゃるとおり、やはりロードマップを示していただいて、特に、人と金。私は、お金の方はともかく、人のところは時間がかかる問題ですから、五年だったら五年のうちに、新しく労働市場に入ってくる児童福祉司等、そういう子供の、児童虐待にかかわりたいという人材をふやすに当たっても、その労働市場が広がるというメッセージを放つこともやはり必要だと思います。

 ですから、しっかりとこの設置を中核市、特別区がしていけるような制度設計、そしてそのメッセージを強く政治家が放っていくべきだというふうに私は思いまして、意見を述べさせていただきたいと思います。

 その中で、強いメッセージを放っていくということは、やはり社会全体でこの児童虐待に対して関心をもっと高めていく、関係各所がそれに目をつぶるのではなくて、一歩感度を上げて関心を高めていくということが必要であって、そして多くの目で見守り、抑止していくということが必要だと感じています。

 その中で、社会に対して、児童虐待がだめであるということを強くメッセージを放つ上で、一つ論点として見解をお聞きしたいことは、児童虐待に対する厳罰化、それから児童虐待罪の創設なども含めて、議論がこれまでもなされておりました。

 私も、そのことについては、どれだけ厳罰化が抑止につながるのかということは専門的知見をもともと持っているわけではありませんから、いろいろな方に御意見を聞きながら今そしゃくしている段階ではありますけれども、児童虐待に対して厳罰化したり、また児童虐待罪のような名前も冠した上で社会的にメッセージを放つということは、一定の理もあることでもあると思います。

 しかしながら、本当に抑止に効果があるかどうかはもう少し検証しないといけないところではあると思いますが、もう一点の視点として、厳罰化に関して、やはり厳罰化してしまうと、いわゆる再統合も含めて、家族が再統合することが非常に難しくなるというおそれもあるわけです。

 そういった中で、児童虐待ならではの問題も含めてこの厳罰化というものをためらうのか。その辺の抑止の視点と児童虐待固有の問題、そういった視点で、政府並びに野党共同提案者の方から御意見をいただけたらと思います。よろしくお願いします。

保坂政府参考人 罰則についてのお尋ねでございますので、法務省の方から御答弁させていただきます。

 児童虐待に対する罰則のあり方の前提としまして、現行法の罰則について簡単に御紹介いたしますと、児童に対して暴行を加えて傷害をしたという場合には、傷害罪となりまして、これは法定刑は十五年以下の懲役などとなっております。児童に暴行を加えて死亡させた場合には、殺人罪。殺人罪となりますと、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役。傷害致死罪ということでしても、法定刑は三年以上の有期懲役。保護する責任のある者が生存に必要な保護をしなかったという場合には、保護責任者遺棄罪となりまして、これは法定刑は三年以上五年以下の懲役。致傷の場合、けがの場合には三月以上十五年以下の懲役、致死の場合には三年以上の有期懲役というふうに規定されているところでございます。

 その上で、実際の量刑、どれだけの刑に処せられるかということにつきましては、各罪の先ほど申し上げた法定刑の範囲内で、裁判所が個別の事案に応じて判断することとなっているところでございます。

 厳罰化あるいは児童虐待罪の創設に関して申し上げますと、現在発生しているような児童虐待の事案の内容ですとか、それに対する実際の処罰の状況を踏まえまして、先ほど申し上げた既存の罰則に加えて新たに罰則を設ける必要があるのかどうかという点ですとか、あるいは罰則ということになりますと、明確性の点で、児童虐待として処罰すべき行為あるいはその刑を加重する行為について外延を明確に定義することができるのかといった観点から、慎重に検討することが必要であろうというふうに考えております。

 以上でございます。

初鹿議員 ありがとうございます。

 野党の提案者としてお答えをさせていただきます。

 まず、その前に、我々の法案では、改正後の児童虐待防止法十四条一項において、児童の親権を行う者は、当該児童に対して体罰を加えることはできないと規定をしております。ここに言う体罰とは、二〇〇六年に出された子どもの権利委員会の意見にもあるように、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ、何らかの苦痛又は不快感を引き起こすことを意図した罰と認識しており、このように幅広く体罰を禁止することにより児童虐待の防止が図られるものと考えます。

 その上で、体罰禁止の規定を実効的なものとするためには、体罰禁止の周知広報の徹底やガイドラインの策定、体罰を行った親権者に対する支援の拡充などの施策を講ずることが必要であると考えます。

 また、今、法務省からも答弁がありましたように、現在でも傷害や殺人に該当するものは刑法の処罰の対象になっております。ですので、むしろ児童虐待防止のためには、あえて、児童虐待のみを厳罰化することよりも、幅広く体罰を禁止した上で、親権者を含む保護者への支援を拡充することにより児童虐待自体が起こらないようにする必要があると考えます。

 また、被害者の子供は加害者の子供でもあるわけでありますので、その後、加害者の子供として生活をしていかなければならないということも配慮することが必要ではないかと考えます。

 以上を踏まえますと、児童虐待に対する厳罰化や児童虐待罪の創設などについては、諸外国の法制度や体罰禁止規定の施行状況を勘案しつつ、極めて慎重に検討するべきものと考えます。

藤田委員 どうもありがとうございます。

 その件については、御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 次に行きたいと思います。

 まず、この児童虐待の問題は、やはり多面的に、市町村、児童相談所、警察、病院、医療機関、それから教育機関である学校、教育委員会等が密に連携しながら早期発見し、手を打っていくということに対して異論がある方はいらっしゃらないとは思うんです。

 その中で、医療機関との連携という中で、今回、医療機関がリスクのある子供たち、虐待の可能性がある子供たちに対しての通報をしていただいたり情報共有をしていただくということに、前回の法改正でも、個人情報保護の観点からも整合性をとっていただいて、しているかと思うんですけれども、その中でも、ちょっと特定妊婦について少し突っ込んでお聞きしたいと思います。

 特に保護者側の虐待のリスク要因として、望まない妊娠であるとか、精神的な不安定とか経済的な理由ということで、妊婦の時点で既に潜在的にリスクを抱えているという事案はたくさんあると思うんですけれども、特定妊婦、つまり、出産後の養育について、出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦のことを特定妊婦といいますけれども、この児童相談所、行政機関との情報共有について少しお聞きしたいと思います。

 まず、前回の改正の中で、いわゆる個人情報保護法との関係性がクリアになっているかと思うんですけれども、この後、医療機関からの通報、情報共有というのはふえているのかどうかということ、それから、それも踏まえて現在の実情を把握されているかということをお聞きしたいと思います。

 といいますのも、やはり努力義務というのは非常に難しいもので、強制力がないゆえに、医師は医師の責任の中で判断されます。ですから、個人情報の取扱いにまだまだ慎重なケースも多いということもありますので、その辺の実態がどうなっているかということをお聞きしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、前回改正によりまして、特定妊婦を含む要支援児童等を発見した医療等の職務に従事する者は、市町村に情報提供するよう努めなければならないという努力義務が課されました。また、同じ改正におきまして、この関係につきましては、刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による情報の提供をすることを妨げるものと解釈してはならないということで、その辺の関係についても明確化を図りました。

 実態でございますけれども、この規定の施行日は平成二十八年十月一日でございます。ちょうど十月一日時点の前後という正確な統計はございませんけれども、年度単位でちょっと見てみますと、この規定が施行される直前の平成二十七年度中に要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協に新規に登録された特定妊婦につきましては六千五百八十五件でございましたけれども、直後の平成二十八年度中に要対協に新規に登録された特定妊婦は八千五百四件ということで増加しておりますので、これらにつきましては前回の改正の規定の効果ではないかというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 ふえているということで、非常に喜ばしいことだと思うんですけれども、実態として、どれぐらいの母数の中からどれぐらいその八千件というのがふえているのかというのは、ちょっと追っかけて調べていただきたいなというふうにも思います。

 より効果的な情報共有を行っていくために、医療専門職に特別ないわゆる通告義務を課していくべきかどうかということも一つ論点としてあると思うんですけれども、そのあたりは御見解はいかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 審議会等でそういった義務化的なことについては正式に議論したことはございませんので、一律に今、公式的な見解はございませんけれども、例えば、考えられる議論といたしましては、特定妊婦の方は大人、成人の方が大半だと思いますので、本人の意向を考慮する必要があるのではないかといったような議論、あるいは、情報提供を恐れて医療機関に行かなくなるのではないかといった議論はあり得るのではないかというふうに考えておりますので、その点につきましてはさまざまな議論をする必要があるというふうに考えております。

藤田委員 そのお答えは、確かに答弁としてはわかるんですけれども。

 あわせて、これはちょっと質問に入れていないのでお答えは結構なんですけれども、警察との全件共有というお話が一つ議題としてあると思うんですね。それと同じ議論で、結局、どこからどこまでを情報共有して、どこからどこまでをしないかというのは、個人の判断だったり、専門職の医師に任されているというのが今の現状だと思います。

 そのはざまというのが結構危ういものがあって、例えば、警察でも全件共有していたら免れたであろう事案というのはたくさんあるわけで、今回でも、実際に見てわかる体罰があった場合、通告の義務がもちろん課せられていますけれども、いわゆる巧妙な場合、外目からはわからないようなけがとか又は心理的なDVのようなことは、外目から見たら判断が難しいわけですね。たくさん、数ある事案の中で、それを児童相談所の担当者の方、又は医師もそうですし、それから教育機関もそうです、そういった人たちがその場の判断で適切に振り分けていくというのは、ある種、神わざみたいなもので、人間ですから間違いもあるわけです。

 ですから、私は、情報量は多い方がいいという立場に立っていまして、情報量が多い中で、情報共有された中で対処は判断していくというのが一番適切じゃないか。つまり、情報をどこからどこまで共有して、どこからどこまではしないという切り分けが今のままだったらすごく曖昧で、そのはざまに落ちた子供たちを救うことができないという観点です。

 特定妊婦さんも、例えば日本産婦人科医会から、特定妊婦をスクリーニングするような、いわゆるチェックリストのようなものがもう整備されておりますから、それで該当するものに関しては自動的に全件共有するというふうな仕組みにした方が、漏れがなく、より多くの情報を関係機関が持てるというふうに考えるわけです。

 ですから、そのような形で、ぜひ、今後の検討の中で、積極的に情報を共有していくという方向にかじを切っていただきたいというふうに思います。

 それから、次に行きまして、今回、先ほどは医療機関の話でしたが、今度は教育機関との連携という意味で、日ごろから連携をしていくということはうたわれているんですけれども、非常に曖昧であって、やはりこれも、情報共有をある一定のところから全件やっていくということにかじを切るべきだというふうに私は思っています。

 その中で、一つ御紹介をさせていただきたいところでいうと、大阪府の能勢町では、教育機関で、福祉のスクリーニングのようなものを教育機関にも持ち込んで、実際に教員の皆さんがチェックをして、リスクのある子たちを抽出して情報共有するという取組がなされています。

 実際には、イメージでいうと、例えば毎日同じ服を着てくるとか、遅刻や早退が多いとか、保健室に来る回数が多いとか、そういうアラートみたいなものがチェックリスト化されていて、それでリスクのある子をよりいち早く抽出していくということを各先生方にやっていただいた上で、複数の先生方がそれを確認し、スクリーニング会議をして、校内として共有していく。それを児童相談所等に共有したり、又は、ひどい場合には警察に通報していく、こういうような取組がなされています。まだ試行段階ではありますけれども、私は非常によい取組だなというふうに思います。

 実際にも、教育機関からの通報というのは、これも先生のスキルの問題によりますけれども、経験のない先生方がそれを適切に判断していち早くリスクを見つけ出すということが、なかなかなれていない先生の中で難しい中で、こういうスクリーニングのような仕組みを入れて、いち早く情報共有をしていくということは効果が上げられるんじゃないかというふうに思っているんですけれども、そういう事例について一つ見解をお聞きしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、大阪府能勢町におきましては、平成三十年度から、つい最近だと思いますけれども、五歳児から小学四年生までを対象といたしまして、福祉を担当する部署と学校側それぞれが全ての子供をスクリーニングいたしまして、その結果を突合させることで、それぞれ単独では見えなかった課題あるいは支援方策を把握するといった取組を実施しているものと認識をいたしております。

 こうした取組でございますけれども、私どもといたしましても、虐待予防、早期発見の観点から有効な取組ではないかというふうに考えております。こうした先進事例も十分参考にさせていただきながら、虐待予防、早期発見のための施策を検討してまいりたいというふうに考えております。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 学校における児童虐待への対応に当たりまして、関係者が情報を共有しチームとして取り組むため、早期から組織として気になる事例を洗い出し、検討するためのスクリーニング会議を定期的に実施した上で、支援が必要な児童生徒について複数の教職員などによるケース会議を開催し、情報を共有し支援の方向性を決めるなどの取組が一部の学校で行われていると承知をしております。

 こうした取組につきましては、児童虐待の早期発見、早期対応の観点から有用であると考えておりまして、委員から御紹介いただきました大阪府能勢町における取組につきましては、先般作成をしました学校、教育委員会向けの虐待対応の手引においても紹介をさせていただいたところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、本手引の周知等を通じ、スクリーニング会議の実施も含め、学校における児童虐待の早期発見、早期対応のための取組の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 厚生労働委員会なんですけれども、私は学校現場にいたこともありまして、学校の先生もなかなか大変な時代で、いろいろな子供さんの状況を抱えながら、やはり武器を渡してあげないと本当に個人が抱え込んで疲弊していくというのが、この虐待の問題もそうだし、一つ前の、発達障害を含めて障害者の支援という問題もやはり深刻で、いち早く手を打たないといけない課題でありますから、ぜひとも前向きにいろいろ取り組んでいただけたらと思います。

 次に、児童相談所が把握した情報を統一した様式等で集約して全国的なデータベースとして活用し、地域の異なる相談所が相互に情報共有を円滑に進められるようにすべきではないかという考え方がありまして、私もそれに賛同します。

 これは、特に今回、転居等の事案がありまして、そのはざまに落ちてしまった悲惨な事件も起こったわけですけれども、全国的なデータベース化をして、そこにアクセスをして、実際にナレッジというか経験値をしっかりとためていって次の対策を打つというのは、これはもう当たり前にやはりやっていかないといけないなということです。

 実際的な現場でいうと、いわゆるペーパー文化、紙文化。余談ですけれども、私もここに来させてもらって一カ月、この紙文化とファクス文化の恐ろしさに、私は十年商売をやっていまして、ファクスをこんなにしたのは十年間でないなというぐらいのファクスをしているんです。

 本当に、テクノロジーを活用したり、情報共有というのが各階層において物すごくスムーズにいけるツールというのはもう世の中にあふれている時代でございますから、ぜひ、もちろんセキュリティーの問題はありますけれども、全国的なデータベースとして活用し、そして今後の対策に生かしていくためにも、こういったものを取りまとめ、進めていただきたいという思いがあるんですけれども、そのあたりのお考えをお聞かせいただけたらと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待の対応に当たりましては、支援の対象としている家庭が転居する際の自治体間のケースの引継ぎ、あるいは、転居していませんでも、例えば児童相談所と市町村間でケースを移管する、そういったこともございます。そういった引継ぎは必要不可欠でございます。

 より効率的に引継ぎを行うためには、ICTを活用したシステムを使用することが有効だと思います。このため、今年度予算におきまして、まずはということでございますけれども、同一の都道府県内での児童相談所と各市町村の情報を集約する、あるいは共有を可能とするシステム構築を支援するための必要な費用を予算上計上いたしました。加えまして、このシステムで扱う情報の項目も含めまして、国におきまして標準的な仕様を示す予定でございます。これによりまして、今後、都道府県等で構築されるシステムの標準化を図ってまいりたいというふうに考えております。

 さらに、この情報共有システムを活用いたしまして、次のステップといたしましては、都道府県間で情報共有を行うことも検討課題だというふうに考えております。

 これは、そういう意味では、まずは都道府県内の都道府県と市町村間、次のステップとして都道府県間、そういったステップを踏みながらシステムの構築を進めてまいりたいというふうに考えております。

藤田委員 これはちょっと突っ込んで話をしたいところで、やはりうまいことマネジメントしないことには結構ばらばらになるんじゃないかというような危惧を持っています。

 私は介護をやっていまして、介護事業所から総合事業に移行したりしたときに申請書を出すところが、今までは大阪府だけだったのが各市町村の四つぐらいに出し直さないといけないということがあったんですね。そのときに、フォーマットが、厚生労働省から例みたいなものが示されていて、それが各市町村におりてくると、何かちょっとずつ違うものになっているんですよ。違うものを、隣の市のものを書いて出したら、内容は全く同じで線の位置が違うだけで、フォーマットが違いますと突き返されるわけですね。こういう本当に無駄なことは、僕はマネジメントの下手さだというふうに思っています。

 ですから、こういうデータベース化をして、最終ゴールとしては、やはり全国の事例をより有効活用するために、みんながアクセスし、そこに情報がたまっていって、それが資産となっていくというようなことが今後本当に凄惨な事件を減らしていくための一番重要なことじゃないかなというふうに思いますので、そのあたりをちょっと勘案していただきながら、ぜひハンドリングをしていただけたらと思います。

 それから、関連して、要対協における情報共有の推進について、ICTを活用したシステムの整備を促進する方針が、三十年の関係閣僚会議でも指針が示されておりますが、どのようなアプローチとスケジュールで進めるのか。自治体ごとなのか、政府が主導なのか、これは何を目的にどのような情報共有システムをイメージしているのか、最後にお答えいただけたらと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただいた昨年七月の関係閣僚会議決定におけます要対協のICT活用でございますけれども、これは、内容といたしましては、先ほど申し上げました都道府県と市町村間の情報共有のシステムと同じシステムを想定いたしております。そういう意味では、先ほど申し上げたような、都道府県とその都道府県内の市町村間の情報共有、それからそれを都道府県間で共有していく、そういうステップを踏みながらシステムの構築を進めてまいりたいというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 情報共有については本当に重要になってくると思っていまして、きょうはちょっと時間がないので次回したいなと思っているのは、やはり警察との全件共有については、私自身はぜひやった方がいいという立ち位置なんですけれども、警察、医療機関、教育機関、そういったところから人の属人的な判断によって不運にも漏れ落ちてしまった上で、その子たちが凄惨な事件に遭ってしまうという事例が多々あるものですから、できるだけ情報量を集め、それを使って踏み込むかどうかということは各関係機関の判断というような設計思想にした方が、私はリスクの大きな事案というものを減らせるんじゃないかというような立ち位置でございます。

 ですから、次回に譲りますけれども、各関係機関の連携というものはもう少し細かく、いわゆるここに風穴をあければ一気に円滑化するというところをしっかりとチョイスしていただいて、政治的意思を示していただけたらなというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうはこれで終わらせていただきます。ありがとうございます。

冨岡委員長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 柿沢未途でございます。

 アメリカのオレゴン州ポートランドという都市は、知る人ぞ知る、今注目の町であります。全米で一番クリエーティブでイノベーティブでオーガニックでスタートアップも多くて、先進的な町づくりが進んでいる。全米で一番格好いい、全米で一番住みたい町と言われているのがポートランドなんですね。

 このポートランドという都市なんですけれども、児童虐待対策でも私たちが見習うべき取組を行っています。

 資料の一枚目、ちょっとずらずらずらっと視察報告書からの抜粋をつけさせていただいていますけれども、オレゴン州では、カーリー・シーハンちゃんという三歳の女の子が虐待死した、それを防げなかったという悔恨と反省から、その名をつけたカーリー法、カーリーズローというのができて、二〇〇八年にオレゴン州の州法として施行されています。

 アメリカでは、全ての州において、子供にかかわる全ての専門職、つまり、保育士、学校教員、クラブチームのコーチ、養護教諭、心理士、カウンセラー、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、看護師、医師、警察官、検察官等々ですけれども、これらの子供にかかわる専門職全て、子供の安全に何らかの疑いを見つけた場合、それが虐待であるかどうか、加害者は誰かにかかわらず、全て通告することが義務づけられている。通告しなかった場合の罰則規定も設けられております。

 そして、オレゴン州においては、虐待通告ホットラインが受理した通告内容は全てチャイルド・プロテクティブ・サービス、CPS、子供虐待とネグレクトだけに特化している児童相談所と、警察のチャイルド・アビュース・チーム、CATといいますけれども、つまり児童相談所と警察が全部共有するということになっている。後ほど詳しく紹介しますけれども、MDT、マルチディシプリナリーチーム、多機関連携チームというのを組んで虐待事例の対応に多機関連携で当たるという仕組みも、全米で一番早くオレゴン州で整備をされています。

 このようにもともとかなり先進的だったんですけれども、そんなオレゴン州であっても、身体的な児童虐待については司法面接やまた系統的全身診察の実施が限られる傾向にあったそうです。そんな中で、オレゴン州で二〇〇五年、先ほど申し上げたカーリー・シーハンちゃんの、三歳の女の子に不審なけがが見つかって虐待通告をされた。

 ホットラインから連絡を受けたCPS、児童相談所のソーシャルワーカーが、日本でいえば児童福祉司ですけれども、一般の医師にカーリーちゃんを見せたところ、保護者が主張するとおり事故による外傷であるということで、CPSはこのとき一時保護を見送った。自宅に帰されたカーリーちゃんは、その後間もなく、エスカレートした虐待によって死亡してしまった。このカーリーちゃんの事件が大きな衝撃を与えたということなんですね。

 それで先ほど申し上げたカーリーちゃんの法、カーリー法ができて、これによって、未就学児に身体的虐待が疑われるときは、一般医ではなくてトレーニングを受けた虐待専門医に通告受理後四十八時間以内に必ず診察を受けさせなければいけない、こういうことが定められたそうであります。

 ちなみに、アメリカは、二〇〇九年にはアメリカ全土において、チャイルド・アビュース・ペディアトリシャンという、虐待専門の小児科医制度がつくられています。

 資料一枚目の下の方をごらんいただくと、オレゴン州では、虐待の通告の経路も、医師、医療機関からの通告が全体の一〇%を占めているという状況でもあります。しかるに、資料の二枚目、きのうの参考人質疑で東京都児童相談センターの西尾次長の資料にありましたが、黒囲みのところではなくて医師のところを見れば、医療機関からの虐待通報というのは日本は二%ということになっているわけです。

 オレゴン州では、カーリーちゃんの悲しい事件から、一般医ではだめだ、虐待専門医でなければだめだというところまでなっている。しかるに、日本には、虐待専門医と言えるだけの診断スキルを持ち研修を受けた医師、残念ながら国内にもほとんどいないのではないかというふうに思います。

 まず、お伺いをいたしますけれども、日本にこうした虐待専門医と言えるだけの医師はどれだけ存在しているのかということをお伺いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 日本におきましては、虐待専門医というような仕組みはございませんので、そういう意味では、虐待専門医と言えるような人数が何人いるかということはわからないわけでございます。

 なお、医療従事者向けの研修は行われておりまして、例えば一般社団法人日本子ども虐待医学会が開発いたしました医療従事者向けの研修プログラム、これはBEAMSと言っておりますけれども、この受講者につきましては、平成二十九年度におきまして、少なくともということでありますが、約三千二百人程度ではないかというふうに認識しております。

柿沢委員 厚生労働省として把握はしていない、そういう制度がないからということなんですけれども、子ども虐待医学会が行っているBEAMSというプログラムについては後で触れますけれども、虐待専門医レベルと呼べるような、そうしたレベルに達している医師の数は、もしかすると百人にも満たない、こういうことではないかというふうにも言われているところです。

 虐待の発見と診察について、さっきのカーリーちゃんの事件も踏まえて、それを見つける、それだけのスキルを持った虐待専門医を育てるということをアメリカそしてオレゴン州は行っている、専門医に子供を必ず見せる、四十八時間以内に見せるということもやっているわけですが、大臣と衆法提出者それぞれにお伺いをいたしますけれども、虐待の専門医と呼べるようなスキルを持ち研修を受けた医師を養成し、そしてできる限り児童相談所等に配置をしていく、こうしたことの必要性について認識を伺いたいと思います。

根本国務大臣 児童虐待について、早期に気づき、迅速かつ的確な支援につなげていくため、児童相談所において、医学的知見を踏まえたケース対応ができることや、地域における医師などの医療関係者、医療機関との連携体制を構築することが必要だと考えています。

 本法案においては、これまで医師又は保健師を児童相談所に配置することとしていたものから、医師と保健師の両方を配置することとしております。

 児童相談所に配置される医師の質の確保、向上も重要であり、あるいは、関係団体の協力も得て採用活動や研修の充実を図るとともに、必要な財政支援等の拡充について、概算要求に向けて検討していきたいと思います。

 今委員が御紹介いただいたアメリカの事例、私は非常にすぐれた事例だなと思っております。日本でもBEAMSというのが開発されておりますので、委員の御指摘のような、やはり医師の児童虐待に対する理解をきちんと深めていただく、これも大事なことだと思います。

中島議員 御質問ありがとうございます。

 お答えいたします。

 昨年の東京都目黒区の事案、またことしの千葉県野田市の事案の経緯を見ますと、虐待の兆候に関する医師の第三者的な所見が必ずしも十分に生かされていないことが重大事件をもたらす要因の一つであり、より積極的に医師が児童虐待の現場に関与すべきと考えます。

 政府案では、児童相談所における医師及び保健師の配置について規定しておりますが、それのみで児童虐待の重大事件を防止することは困難であり、児童虐待を発見しやすい医療の現場において虐待の兆候を見逃さないことが必要であると考えます。

 このため、児童相談所への配置に加え、医療の現場において、児童虐待の発見のために必要な知識及び技術を十分に有する医師が対応することが望ましく、専門的知見を有する医師の増加が必要であると考えられます。

 そこで、本法案では、医師等が特に児童虐待を早期に発見しやすい立場にあることを踏まえ、現行法上の医師等に対する研修を強化し、医師等に対し、児童虐待の発見のため必要な知識及び技術等に関する研修の実施、児童虐待の発見のため知識と技術を有する医師等の確保、養成及び資質の向上の措置を講じております。

 現行法においても、医師等に対する研修は、学校の教職員、児童福祉施設の職員等に対する研修とともに規定されておりますが、必ずしも十分に研修が実施されているとは言えない状況にあります。

 本法案において、医師等に対する研修を特に規定することにより、研修の機会が拡充するとともに、児童虐待の防止や早期発見に資するよう、研修の内容が充実することが期待されるところであります。

柿沢委員 丁寧な御答弁ありがとうございました。

 先ほどからお話が出ておりますが、子ども虐待医学会がやっているBEAMSという研修があります。ステージ一は、一般の開業医や子育て支援関係者が受けるレベル、ステージ二は、小児科医や地域の中核病院で虐待に対応する医師らが受けるレベル、ステージ三は、まさしく虐待専門医というそういうレベル、三つのステージに分かれた研修プログラムが用意をされています。

 カーリーちゃんの事件でカーリー法ができて、そしてアメリカでは虐待専門医の制度もできた。私たちは、結愛ちゃんや心愛ちゃんの悲しい事件から今この議論をやっているわけです。ぜひ、このBEAMSというプログラムがあるわけですから、医師に、必要な人は全員受けてもらって、そしてこうした専門のスキルを持った医師を力強く養成していくべきだと思いますけれども、大臣、どうお考えでしょうか。また、衆法提出者にもお伺いします。

根本国務大臣 医師等の医療従事者は、診療の機会を通じて、児童虐待の兆しや疑いを直接的に発見しやすい立場にあります。早期発見、早期対応のためには、地域の医療従事者を対象として、児童虐待の医学的診断や医療機関としてのかかわり方などについて理解を深めていただく研修を普及していくこと、これが重要だと思います。

 このような観点から、委員からもお話がありました、民間団体が医療従事者向けの虐待対応の研修プログラム、BEAMSを開発し、研修会を開催されており、これは、医療従事者に理解を深めていただくための重要な取組の一つと認識しております。

 厚生労働省としても、BEAMS研修を始めより多くの医療従事者に研修を受講していただけるよう、関係団体の連携協力のもとにプログラムの開発や周知などを進め、地方公共団体が行う研修として実施できるように取り組んでいきたいと考えています。

中島議員 先ほども御答弁させていただきましたが、本法案では、医師等に対し、児童虐待の発見のため必要な知見及び技術等に関する研修の実施、児童虐待の発見のため知識と技術を有する医師の確保、養成及び資質の向上の措置を講じております。

 以上のような措置を講ずるに当たり、国及び地方公共団体の判断にはなりますが、委員御指摘の医療者向けの虐待対応啓発プログラム、BEAMSが活用されることも考えられます。

 委員も御説明していただきましたが、BEAMSは三つのステージで構成されており、それぞれの立場で求められる虐待対応の基本について習得可能なものとなっております。

 ステージ一は、対象は一般の開業医を始め全ての医療関係者で、虐待の早期発見と通告の意義を理解し、迅速にまた適切な行動がとれるようになることが目標とされております。学校健診、一般外来など、一人でも多くの医療関係者に子供虐待について考えるきっかけになることを目指すものです。ステージ二は、CPTメンバー、小児科医などが対象で、全ての二次医療圏での虐待対応能力のボトムアップを目指すものであり、ステージ三は、虐待専門医レベルのプログラムとなっております。

 効果的な虐待対応プログラムにより、虐待に関する専門的な知見を有する医師等がふえ、重層的な虐待対応体制の構築により、児童虐待の防止や早期発見に大きな役割を果たすことが期待されるとともに、大変重要なことと認識をしております。

柿沢委員 オレゴン州では、組織をまたいだ多機関連携の仕組みも進んでいます。

 最初に申し上げましたけれども、アメリカでは、全ての州において、子供と接する特別職にペナルティーつきの虐待通告義務が課されています。子供の安全にかかわる不審な点を見つけたら、虐待かどうかを問わず、ホットラインに通報しなければなりません。

 そして、オレゴン州では、虐待通告ホットラインが受理した通告内容は全てCPS、そして警察の児童虐待チーム、CATに共有される、いわゆるクロスレポーティングが行われています。その後、CPS、児童相談所、警察、検察、子供の権利擁護センター等関係者間で締結された協定書に基づいて、虐待の初動調査、捜査が実施されます。

 CPSのソーシャルワーカー、児童福祉司ですね、子供虐待専門刑事、子供虐待専門検察官、司法面接者、系統的全身診察医、この五名で多機関連携チームがつくられる、マルチディシプリナリーチーム、MDTと呼ばれますけれども、通告された児童虐待の中で深刻な虐待、中でも性的な虐待については、MDTを組んで多機関連携チームで対応する仕組みを、オレゴン州は全米で初めてつくった。そして、MDTは、必要な場合、通告から四十八時間以内にチームとして集まって動き始めなければならない、こういうことも定められています。

 MDTを組むスタッフは、同じMDTビルディングの中で、同じ屋根の下で仕事をしているというんですね。警察、検察担当部署、児童福祉局、虐待通告のホットラインセンター、同じビルの中にいるんですよ。机を並べて働いているわけです。ポートランドを見習わなきゃいけません。

 やはり、このMDTのような多機関連携を進めて、深刻な虐待を見過ごさず、子供の命を守る、いわば日本版カーリー法、こういうことをつくらなければいけないというふうに思いますけれども、今回の法律案はそういうふうになれているのかどうか、大臣そして衆法提出者にお伺いをしたいと思います。

根本国務大臣 児童虐待について、早期に気づき、迅速かつ的確な支援につなげていくためには、地域において関係機関との連携体制を構築することが必要だと思います。

 御指摘のオレゴン州に設置されているMDTは、一つの機関に児童相談所、警察、検察などのさまざまな機能が集約されている機関であると認識しております。

 本法案においては、関係機関を一つの機関にまとめるものではありませんが、児童虐待防止のため、関係機関の一層の連携を図るために、学校、教育委員会、児童福祉施設等の職員に対する守秘義務の規定を設けるとともに、関係機関との連携を妨げるものではない旨の明確化のほか、DV対策の連携強化のために、児童相談所は、DV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携するよう努める旨の規定を盛り込んでおります。

 また、本年三月に関係閣僚会議で決定した児童虐待防止対策の抜本的強化に基づいて、児童相談所への警察OBの常勤的な配置や警察職員の出向等の推進のための必要な財政支援の拡充、情報共有や連携に関する協定等の締結の促進、ケース検討や訓練等の合同研修の実施、児童相談所、検察、警察による協同面接の適切な実施などを行うことによって、関係機関間で適切な連携が図られるよう取り組んでいきたいと思います。

中島議員 本法案では、改正後の児童虐待防止法第四条第一項において、国及び地方公共団体による児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に関し、児童相談所、警察を含む関係機関の連携の強化について明記するとともに、連携の強化の内容として、児童相談所と警察の間の情報共有に関する協定の締結が含まれることも明らかにしております。

 もっとも、本法案は、委員御紹介の例のように、多機関連携チームを組み、同じ屋根の下で児童虐待に対応することを国及び地方公共団体に義務づけるものではありませんが、国及び地方公共団体の連携強化の取組により多機関連携が進むことを望むものでございます。

柿沢委員 政府提出法案に連携に努めると書いてあるということでありますが、努める、努力規定がいかになかなか行われないかは、中核市の児童相談所の例を見てもわかるとおりだと思います。やはり、ある程度の強い書きぶりが望まれるところでもあるのかなというふうに思います。

 警察との連携のことでありますが、きょう、二ページ目の裏面に資料をつけさせていただいておりますが、警察が児童虐待についてどのような基準でかかわるのか、刑事的介入をするのか、その判断基準が外側の誰にもわからないという問題があります。

 警察出身の京都産業大学の田村正博先生が、児童虐待事案への刑事的介入における多機関連携シンポジウムという、その名もずばりな会議で提示した資料なんですけれども、いわばブラックボックスとなっている警察の判断基準で、子供にかかわるその他の機関にとっては、警察というのは連携しづらい組織になってしまっているということであります。

 では、オレゴン州ポートランドはどうかということなんですけれども、一枚目の資料の裏面でありますけれども、オレゴン州では、警察がかかわるケースとして三つの事例がこの資料のとおりに明記をされています。そして、児童相談所、児童保護局と警察が合同でチームをつくって連携をするときの基準としても、書かれたとおりの基準が示されています。

 こういう警察と児童相談所などが共同で対処するための基準が明記をされている、この部分もやはり見習うべきところがあるなというふうに思いますけれども、これは、国家公安委員会及び厚生労働省、いかに考えるか、お伺いしたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 オレゴン州におきまして、御指摘のような事例等の場合に児童相談所と警察が共同して対処するとの御指摘をいただいたところでございますけれども、児童相談所と警察の連携のあり方につきましては、それぞれの国の実情、制度等を踏まえて定められているものと承知しており、一概に比較することは困難であると考えております。

 その上で申し上げますと、児童虐待事案に関しましては、我が国におきましても、警察と児童相談所等関係機関が連携して、児童虐待の早期発見と被害児童の安全確保に努めているところでございます。

 警察におきましては、警察が取り扱った児童虐待が疑われる事案の情報を全て児童相談所に通告し、又は情報の提供を行っているところでございます。

 また、昨年七月の関係閣僚会議で決定された緊急総合対策において示された、児童の身体に対する危険性が高い三類型、具体的には、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、通告受理後、四十八時間以内に児童相談所等において安全確認ができない事案、一時保護等をしている事案で、保護等が解除され、家庭復帰する事案の情報につきましては、必ず児童相談所から警察に情報共有することが明確化され、全国ルールとして徹底されたところでございます。

 警察におきましては、このような情報提供を受けた場合には、児童相談所等と連携しながら、児童の安全確保、保護を行うとともに、事案の危険性、緊急性を踏まえ、事件化すべき事案については厳正な捜査を行うなど、迅速的確に対応しているところでございます。

 また、児童虐待防止法第十条に基づいて警察へ援助要請がなされた場合には、児童相談所職員等による立入調査等に警察官が同行し、連携して児童の安全確保や被害児童の保護に努めているところであります。

 このように、警察におきましては、関係法令や政府の各種決定等を踏まえまして、児童相談所と共同して児童虐待事案に対処しているところであり、引き続き、児童相談所と適切に連携しながら、子供の命を最優先とした対応を徹底してまいりたいと考えております。

根本国務大臣 児童相談所において警察と情報共有を行う目的は、情報共有を契機として警察と連携し、子供の安全確認を確実に行うとともに、安全確保や必要な支援の実施につなげることであります。

 このため、情報提供を行った後の支援等において、単なる情報共有にとどまるのではなくて、円滑に連携が図られるよう、要保護児童対策地域協議会も活用し、児童相談所等の支援の方針などを警察とも共有し、方向性を一にした対応をとることが重要であります。

 児童相談所と警察の情報共有、これについては、今、国家公安委員会の方から答弁がありましたが、昨年七月の緊急総合対策において、必ず警察と情報共有を行う事案として次の事案を明確化し、示しております。虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、通告受理後、四十八時間以内に安全が確認ができない事案、一時保護等が解除され、家庭復帰する事案、これを明確化して示しております。

 また、児童の安全確認、一時保護、立入調査等の際、必要に応じて警察に対し援助要請することが可能となっております。

 引き続き、各自治体での取組も十分踏まえながら、警察ときちんと連携してまいります。

柿沢委員 時間が参りましたので質問を終わりますけれども、ううん、まだまだだなという感じもしております。これからも頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十九分散会


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