第21号 令和元年5月24日(金曜日)
令和元年五月二十四日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 冨岡 勉君
理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君
理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君
理事 橋本 岳君 理事 西村智奈美君
理事 大西 健介君 理事 高木美智代君
安藤 高夫君 上野 宏史君
大岡 敏孝君 大隈 和英君
神山 佐市君 木村 哲也君
木村 弥生君 国光あやの君
小林 鷹之君 後藤田正純君
佐藤 明男君 塩崎 恭久君
繁本 護君 新谷 正義君
杉田 水脈君 田村 憲久君
高木 啓君 高橋ひなこ君
谷川 とむ君 中曽根康隆君
丹羽 秀樹君 船橋 利実君
堀内 詔子君 三ッ林裕巳君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
山田 美樹君 和田 義明君
渡辺 孝一君 阿部 知子君
池田 真紀君 尾辻かな子君
初鹿 明博君 吉田 統彦君
泉 健太君 稲富 修二君
岡本 充功君 白石 洋一君
玉木雄一郎君 日吉 雄太君
桝屋 敬悟君 鰐淵 洋子君
高橋千鶴子君 藤田 文武君
柿沢 未途君 中島 克仁君
…………………………………
議員 阿部 知子君
議員 岡本 充功君
議員 初鹿 明博君
議員 池田 真紀君
内閣総理大臣 安倍 晋三君
厚生労働大臣 根本 匠君
厚生労働副大臣 大口 善徳君
文部科学大臣政務官 中村 裕之君
厚生労働大臣政務官 上野 宏史君
厚生労働大臣政務官 新谷 正義君
政府参考人
(内閣府男女共同参画局長) 池永 肇恵君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 多田健一郎君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 筒井 健夫君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 丸山 洋司君
政府参考人
(厚生労働省子ども家庭局長) 浜谷 浩樹君
政府参考人
(厚生労働省保険局長) 樽見 英樹君
政府参考人
(国土交通省道路局次長) 榊 真一君
厚生労働委員会専門員 吉川美由紀君
―――――――――――――
委員の異動
五月二十四日
辞任 補欠選任
小林 鷹之君 宮内 秀樹君
後藤田正純君 神山 佐市君
繁本 護君 中曽根康隆君
船橋 利実君 宮川 典子君
尾辻かな子君 初鹿 明博君
稲富 修二君 玉木雄一郎君
白石 洋一君 泉 健太君
山井 和則君 日吉 雄太君
同日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 後藤田正純君
中曽根康隆君 高木 啓君
宮内 秀樹君 小林 鷹之君
宮川 典子君 和田 義明君
初鹿 明博君 尾辻かな子君
泉 健太君 白石 洋一君
玉木雄一郎君 稲富 修二君
日吉 雄太君 山井 和則君
同日
辞任 補欠選任
高木 啓君 繁本 護君
和田 義明君 杉田 水脈君
同日
辞任 補欠選任
杉田 水脈君 船橋 利実君
―――――――――――――
五月二十四日
児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)
児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)の撤回許可に関する件
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○冨岡委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及び岡本充功君外十名提出、児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長池永肇恵君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、総務省大臣官房審議官多田健一郎君、法務省大臣官房審議官筒井健夫君、文部科学省大臣官房審議官丸山洋司君、厚生労働省子ども家庭局長浜谷浩樹君、保険局長樽見英樹君、国土交通省道路局次長榊真一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。国光あやの君。
○国光委員 茨城六区の国光でございます。
本日は、質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
皆様、児童虐待を何とかストップする、もうこれ以上悲惨な事件を繰り返さない、この強い決意のもと、私自身もきょうは、内容ももちろんですが、見た目から全身オレンジで、ちなみに、靴もかばんも名刺入れも全部オレンジでございまして、私、今、地元では歩くオレンジリボンというふうに実際言われるまでになりました。
「いちはやく」という番号も、たったの一〇%しか知られていない今でございます。ぜひ、この議論を通じ、また、きょうお集まりのお一人お一人を通じて、児童虐待が実効的にストップできるように更に努めてまいりたいと思います。
さて、実効的に努めていくという点で、先日も参考人の皆様の御質疑も伺っておりまして、やはりいろいろな論点がある、課題がある。例えば、中核市の児童相談所設置の話も、非常に熱いお話が市長からもございました。やはり最後は予算と人、これを、もう腹をくくって決めていくということが一番求められるというふうに私自身も、一国会議員、与党の国会議員として、また一人の子供を持つ親としても感じるところでございます。
この予算に関して、五年後ではなくて来年に、早々に検討せよということが盛り込まれていることがございますので、この点をまずは御質問させていただきたいと思います。
今回の法案と、それとともに、法案には盛り込まれておりませんが、三月に閣議決定をなされた児童虐待防止対策の抜本的強化の中で、来年の予算に向けて検討せよという話になっている点がございます。一つは、児童福祉司の皆様の処遇改善でございます。
こちらは、処遇改善の検討を、やはり児童福祉司の皆様方の質そして量、ともに向上させるためには、私も現場のいろいろな児童福祉司の皆様方と意見交換も重ねてまいりましたが、非常に厳しいお立場にある。やはり、すぐ離職をする、又は本当にバーンアウトして、仕事上のストレスでうつになってちょっと今お休みになっている方というのもいらっしゃるぐらいでございます。そういう方々に、一番フロントラインで頑張っていっていただかなきゃいけない。
私、この処遇改善の意義も非常に大きいものだというふうに考えておりまして、閣議決定にも盛り込まれている事項でございます。ぜひ、秋口からはこの議論が始まると思いますけれども、しっかりと取り組んでいただきたい。特に児童福祉司さんの処遇改善に関しましては、厚労省はもちろん、きょうお越しいただいておりますけれども、総務省の皆様方にも強い決意を持って取り組んでいただきたい。
特に、実は私は県の職員を二年間させていただいたことがございます。大体、実際に何度か、地方交付税措置されたといっても、県庁内で、市もそうです、財政課と担当課の間で相当な綱引きがあって、交付税措置された、基準単価に入っているだとか需要額に入っているだとか言われても、結局、回ってこないじゃないかということが繰り返されているのが、この地方交付税措置でもあると思っております。
ぜひそのあたりの決意を、改めて総務省に問いたいと思います。よろしくお願いします。
○多田政府参考人 お答えをいたします。
委員からお話がございました児童虐待防止対策の抜本的強化におきましては、児童相談所の体制強化に向けまして、児童福祉司の増員等に向けた支援の拡充などとともに、児童福祉司等の処遇改善を図ることが対策項目として位置づけられているところでございまして、重要な方策の一つであるというふうに認識をしております。
現在、厚生労働省におきまして、各自治体の実態を踏まえ、改善の具体的な手法、財政措置のあり方などについて御検討されているものと承知してございます。
総務省としては、厚生労働省始め関係各省庁と連携して、適切に対応してまいる考えでございます。
○国光委員 ありがとうございます。
そのようなお答えが返ってくるかなというふうには思っておったわけですけれども、ぜひ、今いただいた御質問を具体的に、もうこれはタイムライン、来年の予算というふうに、検討を図るというふうになっておりますので、ぜひ総務省、厚労省、そして財務省の間できちんと御検討いただきたいというふうに思っているわけでございます。
もう一つ、こちらはちょっと要望にとどめたいと思いますけれども、予算措置で書かれていることが来年に向けてもう一つございます。それは、一時保護所の環境の改善でございます。
私自身も、実は学生時代から、児童相談所で学習支援のボランティアなどをいろいろさせていただいたこともありますけれども、やはり、今はかなりましにはなってきましたが、相当一時保護所、保護所に入った方が虐待なんじゃないかというふうな御発言もどなたかあったかと思いますけれども、本当にそういう環境にもともとあった。
これをやはりしっかりと、例えば個室化を図っていく、あるいはユニットを図っていく。ちなみに、私の地元茨城県は、一時保護所は全て、個室までいきませんけれども、ユニット化を図っておりまして、かなり環境改善が数年前に図られて、非常に子供たちの笑顔が見えるようになったというふうなお話もいただいております。
この点も、来年の予算に向けてしっかり具体化を図るとなっておりますので、きちんと対応をいただけるように、厚労省、財務省の間でお願いを申し上げたいと思っております。
そしてもう一つ、虐待を根本的にストップするというためにはどうしたらいいかということを私も常々考えます。
虐待が起こりそうである、あるいは起こったということに関しましては、いろいろ対策というのは、児童相談所の体制整備であるとか早期発見するための、例えば健診を受けに行かれないお母さん方をフォローするとかあるわけですけれども、やはり、地元を歩いていても、恐らくここにいる全ての方がお感じになっていると思いますが、虐待を起こす親というのは、何となく、ちょっとこの親は大丈夫かなというところは、結構、見て聞いていると、どうしてもある程度わかってくるようなことがあると思います。
ほかの施策でいっても、例えばメタボだとかいろいろなほかの施策においては、例えば、そういうことを起こしそうなハイリスク群のようなことをある程度特定して、ハイリスク群アプローチというものを、結構介入したりいたします。
ただ、なかなか、人権的な話もありますし、難しいかとは思うんですが、例えば、私もアメリカで生活していたこともあるんですけれども、アメリカだとかですと、虐待だとかDVだとかいろいろ依存症だとか起こしそうな方々を、ある程度客観的なデータから、もともとベースに例えばどういうバックグラウンドを持っている、それは社会経済要因かもしれませんし、あるいは今までの疾患の背景かもしれません、ある程度特定をして、その方の尊厳を傷つけない形でフォローしていく。
何かそういう方がいて、定期的に通院をされている、そうしたら、医者の方が、例えば男性だとします、お父様に、結婚した、子供ができたとなると、おめでとうなわけですけれども、その後に、そういう傾向がある方におかれては虐待を起こさないように見守っておくとか、そういうある程度ハイリスクになるかなと思われる方をしっかり温かくフォローしていくということをもう少し客観的にやっていただくことも必要ではないかというふうに思っております。
その点につきまして、今の取組、実際そういう方々がどういう状況にバックグラウンドを有しているかということを客観的に把握をしていることがあるかという点と、そういう取組をどういうふうに進めていかれようとされているかというあたりをお尋ねさせていただきたいと思います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
厚生労働省におきまして、地方自治体の職員用に作成いたしました「子ども虐待対応の手引き」というものがございます。この手引におきましては、保護者が子供を虐待するのはさまざまな要因があるということで、幾つか挙げております。
一つは、例えば、子供時代に大人から愛情を受けていなかったとか、生活にストレスが積み重なって危機的状況にある、社会的に孤立化し援助者がいない、あるいは親にとって意に沿わない子であるなどのさまざまな要因が複合的に絡み合って起こるものによるというふうに承知をいたしております。
また、同じ手引におきましては、保護者側のリスク要因といたしまして、妊娠、出産、育児を通して発生するもの、あるいはその保護者自身の性格、精神疾患等の精神的に不安定な状態から起因する、こういったものがあるということも記載をされております。
また、社会保障審議会のもとの専門委員会において実施しております死亡事例等の検証におきましても、加害の動機、背景なども含めまして、保護者の置かれた状況についての分析を行っております。
こうしたことから、厚生労働省といたしましては、これまでの分析も踏まえまして、孤立しがちな子育て家庭を早期に発見いたしまして必要な支援につなげること、これが虐待予防の観点から重要であるというふうに認識しております。
こういったことから、妊娠期から必要な支援につなげられる体制の整備ということで、子育て世代包括支援センターの設置促進、あるいは、予期しない妊娠等で悩む妊婦に対しまして、産科への同行支援等により状況を確認し、関係機関につなぐ事業の実施などを行っております。
また、ハイリスク群と言うかどうかちょっと言葉遣いはございますけれども、戸別訪問をして家庭の相談支援を行うために、乳児家庭全戸訪問事業で、生後四カ月までの乳児のいる全家庭を訪問して養育環境等の把握の実施をしておるわけでございますけれども、こういったことにより把握いたしました保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭、これは虐待リスクがある家庭等も含まれます、こういった家庭に対しましては、養育支援訪問事業によりまして、養育に関する相談や支援、育児、家事の援助等を個別に実施しているということでございます。
こうした取組によりまして、子育て等に悩む家庭を早期に発見する、あるいは特に支援を必要とする家庭に個別に訪問する、そういった対応をしてまいりたいというふうに考えております。
○国光委員 ありがとうございます。
こういう例えがちょっと適切なのかはあれですけれども、虐待が起こった後に対応するというのは、ある意味、対症療法的なものなんだというふうに私自身は思っておりまして、虐待を起こす、虐待だけではありません、DVでも全部そうですけれども、そういう方がそれを起こさないようにする、それこそがやはり本当の早期の予防であって、根治的な、いわゆる根治療法なのかなというふうに思っております。
私の地元でも、結構、民生委員や児童委員が割としっかりしている地域なんですが、やはり気がきく児童委員さんや民生委員さんだとかは、ちょっとこの家、ごみ屋敷で、このお父さんはちょっとそういうリスクがありそうだから、四半期に一遍ぐらいちゃんと訪問をして子供たちが大丈夫かということを確認したりということを、気がきく民生委員や児童委員さんはやられています。
ただ、それは〇・五割ぐらいで、残りの九・五割は、何か起こってから行きますみたいな形でして、これはちょっと、やはり子供たちにとって、結果的には、非常に大きな負荷が見えないところでかかっている時間が長過ぎるんじゃないかというのが私の問題意識でございますので、ぜひもう少し、客観的、合理的、そして妥当なアプローチを更に進化させていただければというふうに思っております。
続きまして、同じく子供という意味で、私の地元、そしてさらに全国的によくいただくお話で、非常に困っているということがございます。結果的には虐待ともそのうち結びつくこともあるのかもしれませんが、実は、出産の費用というのが年々上がっている。
例えば、私の地元ですと、実はこの四月にとある病院が値上げをいたしました。もともと四十五万で出産をできたところを、六十万から七十万にしますというふうになりました。それは、助産師さんの確保だとか人件費がかなりかかるしというふうなお話であったわけですが、一つの病院が値上げをしたら、何とそれに追随してほかの病院まで値上げをしたというふうなことがありました。
私、かなり地元から、出産費用にお金がかかると。一時金は、御存じのとおり四十二万円です。でも、四十二万円で出産ができるところはどれぐらいあるか。私、調べましたら、資料をいただきましたらば、出産の費用の平均が四十二万円より下の県というのは、もう本当に数えるぐらいしかありません。
全国でも、一番お金がかかるのは東京の五十一万円、出産の費用の平均です。一番最低金額が、鳥取県の三十三万円。つまり、鳥取県だったら、出産育児一時金四十二万円をもらっても、お釣りが来るわけです、お釣りが。でも、東京じゃ足りません。私の地元茨城でも四十六万です。大臣の御地元の福島も四十二万で、ちょうどジャストぐらいですけれども。
これが、更にいろいろ調べたんですけれども、年々やはり上がっているんですね。出産育児一時金も、制度ができてからだんだんそれに対応して、平均価格を見て標準価格を上げていると思うんですが、ただ、これはイタチごっこじゃないかというのが私の問題意識です。
出産育児一時金、本当に四十二万円は非常に重要で、ただ、当時は、いわゆる平成二十七年ですかね、これが設定されたときは、そのときは四十二万円が一応平均であったというふうにして設定されたと聞いておりますが、今、四年たちました。もうこのありさまです。どんどんどんどん高くなっている。
やはり出産費用に、二人、三人というふうに希望なさる方が、よく皆さんがおっしゃるとおり、アンケート調査で、一番の負担は経済的な負担だとおっしゃっています。我々としても、幼児保育無償化、そしてまたさらには高等教育という話もあるわけですが、そもそも産むときにやはりお金がどんどんどんどん今かかっていて、それが増額しているというのは、ちょっと余り健全な話ではないのかなというふうに思います。
サービスに見合った対価であればそれは納得ができるかと思いますけれども、私もちょっといろいろ地元を歩いて調べたんですけれども、別にサービスが増加しているわけでもない、なのに値上げをしている。産科医療機関が一つ上げたらほかも追随して、どんどんどんどん全体が上がっていく。これをやはりもうちょっと真面目に考えなきゃいけないんじゃないかというのが、私も強く問題意識を持ちます。
さらに、出産育児一時金は今健康保険から出ていますよね、四十二万円。ただ一方、妊婦健診だとかは、自治体からになるわけですけれども、公費なわけですが、出産は病気じゃないから診療報酬に入っていないということもありますけれども、そもそも出産への支援、金銭的な支援のあり方というのを、するならば、それは保険の中がいいんですか、保険の中でも診療報酬とそうではない部分があります。また一方で、公費がいいんですかというふうな話というのは、ある程度そろそろ整理なさったらいかがかなというふうに思っているわけですけれども、この点、いかがですか。
○樽見政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、医療保険制度で、出産に要する被保険者の経済的負担を軽減するという観点から、保険給付として出産育児一時金というものが支給をされているということでございます。
ただ、一方で、出産と申しますのは、通常の病気やけがのような療養の給付として出ているものとは違って、異常なことではなくて、いわば正常なことであるというようなこともございます。また、それと関係があると思いますが、出産の場所も、病院あるいは診療所あるいは助産所というような形で、非常にその幅が広いというようなことがございまして、そうした背景から出産育児一時金という形での支払いという形になっているわけでございます。
支給額については、原則として、公的病院における出産費用などを勘案して定めるということになっておりまして、これまで出産費用の上昇などに伴って数次にわたって見直しが行われてきているということでございます。
御指摘のとおり、平成二十三年から四十二万円という形になっているということでございますけれども、引き続きまして、この額については、出産費用あるいは保険者の財政状況等を総合的に勘案した上でということになりますけれども、必要に応じて見直していきたいというふうに考えているところでございます。
御指摘の問題意識は受けとめさせていただきますけれども、一方で、今申し上げましたような、出産育児一時金という一時金で払っているということの考え方、その経緯、あるいはこれまでの変遷といったようなものを踏まえて検討を進めていく必要があるとは考えております。
○国光委員 ありがとうございます。
一時金のそもそものあり方、そして、そもそも出産に対してどういうふうに支援していくのかということは、両局長、隣同士に座っていらっしゃるわけですから、しっかり厚労省の中でも検討していただいて、過度な負担が余り妊婦さんにかからないということをぜひ徹底していただきたいというふうに思っているわけでございます。
最後に、済みません、きょう国交省にも来ていただきましたけれども、ちょっとタイムリーな話ですので、一点。
大津で非常に悲惨な事故がありました。子供さんが二人亡くなって、今でも入院中の子もいるわけでございます。本当に痛ましい事件で、私も、この間、決算委員会で質問させていただいたんですが、やはり、この事故をちゃんと検証して、子供さんが巻き込まれないということを、ぜひ、国交省、警察庁、いろいろまたがる話ではありますけれども、早急に対応していただきたいと思います。
そして、地元でもやはりよく言われるんですが、例えば大津の事故も、あの交差点でまさか車が突っ込むなんか思わないわけです。ただ、あそこはガードレールはありませんでした。ポールもなかった。地元でも言われるんですけれども、国がどこにガードレール、防護柵ですよね、防護柵を設置するかという基準が余り明確でなくて、今は、PTAだとか自治体からあそこにつけてくれだとか、そういう要望をいただいたところから適宜検討して対応しているというふうな状況でございます。でも、つまり、声が上がらなかったら、結果的に危険なところがなおざりであるということもあるわけです。
全てをがちがちに基準をつくれとは私は思いませんが、もう少し実効的な防護策だとかいろいろな、交通安全とおっしゃるのであれば、地域の実情も大事ですけれども、国としてきっちり子供の命を守るためのそういうルールづくりをしっかり取り組んでいただきたい。その点につきまして、いかがでしょうか。
○榊政府参考人 お答えを申し上げます。
去る五月八日、滋賀県大津市におきまして、散歩中の保育園児に車両が衝突し、幼い命が失われるという、大変痛ましい事故が発生いたしました。
国土交通省では、五月十三日に通知を発出し、警察と連携して、過去五年間で子供が当事者となった交差点での重大事故の箇所や類似箇所を対象とする点検を始めております。
さらに、散歩などで園児が日常的に利用する道路等を対象とした点検や対策の方法につきましても、関係府省庁と連携して検討し、速やかに実施してまいりたいと考えております。
また、ガードレール等の防護柵の設置基準についてでございますが、防護柵につきましては、交差点部への設置も含め、各道路管理者が、個別箇所ごとの道路や交通の状況、路外の状況等を踏まえ、その設置の必要性について判断することとされております。
国土交通省といたしましては、今般の事故を踏まえまして、今後、専門家の意見も伺いながら、防護柵の設置に関するガイドラインの見直し等についても検討し、各道路管理者の判断が適切に行われますよう、技術的な助言等を行ってまいりたいと考えております。
○国光委員 ありがとうございました。ぜひしっかりと、早急に対応いただければと思います。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、橋本岳君。
○橋本委員 自由民主党の橋本岳でございます。
今回の児童福祉法改正両案に対する質疑というのは大変充実したものになっているな、大変勉強になったなというふうに思っております。感謝をしたいと思います。
その上で、私の方からも、二点ほどにちょっと注目をして質問したいと思っております。
まず、中核市の問題について。これも、いろいろな方からいろいろな御質疑がございました。私の方からは、中核市側の言い分についてちょっと掘り下げてみたいなと思っております。
お手元に資料をお配りしておりますので、ぜひごらんになりながら聞いていただければと思います。
まず、一枚目、中核市制度の概要等についての総務省の資料でございます。右側に変遷というものが書いてありますが、その一番下を御注目いただきたいと思います。
五年前、平成二十六年に地方自治法の改正がございまして、実は、中核市というのは要件が緩和をされて広がっております。泉市長が参考人質疑でおっしゃっていた、私が現職のときにもう義務づけしておけばよかった、こういう話がありましたが、そのときの中核市と今の中核市では少し定義が違っているというのは御留意いただかなきゃいけないんだと思うんです。
ちょっと一枚めくっていただきまして、二枚目、これは、私がたまたま、その地方自治法改正のときに本会議で質疑をしたときの議事録の抜粋でございます。当時、特例市というものがあって、それを、特例市から中核市へともう統合しようということだったわけですが、そのときに保健所の設置というのがハードルになる、実際にそういうふうに話を聞いたものだから、そういう質問を本会議でいたしました。
ですから、保健所ができて何で児童相談所ができないんだということもおっしゃっておったと思いますが、保健所をつくるのだって、新しく中核市になろうという市にとっては大変なハードルだったということは認識をしないといけないし、その上で、例えば藤田議員のお地元の寝屋川市はこの間、中核市になられたわけでありますが、そういう市にとってみると、保健所をつくるのを一生懸命頑張りました、えっ、今度は児相もつくらなきゃいけないのということで、もちろん、やればできる話かもしれないけれども、そこには一定のハードルがあるんだということはぜひ御認識はいただくべきなんだろうと思うわけであります。
続いて、三ページ目、四ページ目、これは、それぞれ中核市の尼崎市と倉敷市さんの資料をつけておりますけれども、児童相談所をつくらない、今のところつくることを考えていないからといって、別に児童虐待に対して手をこまねいているわけではないということでございまして、子ども家庭総合支援拠点、それぞれ名前はありますけれども、を中心に、県の児相とも連携をして、予防的なことから、あるいは妊産婦のときから子供、家庭への支援を行って、虐待につながらないようにずっとちゃんとやっているのだということでございます。これも御認識をいただきたいなということ。
それから、五ページ目、中核市市長会の資料でございますけれども、国からの補助がどうなのかということについて彼らで調査を行った。そのときに、例えば一時保護所の整備費と財源状況の調査結果、左下のところでありますけれども、本来、事業費の二分の一相当の補助というはずが、実態としては一割ぐらいしか達していませんよという話がある。あるいは、その右側、児童相談所(事務所部分)整備に係る交付税措置、含まれている自治体と含まれていない自治体とを比べてみた差が三百六十万円しかありません。それで児童相談所が運営できると思ったら、それは大分見当違いという話なのでありまして、実態に見合った算定方法等の見直しを要望、こういうことになっています。実態に合っていないということの指摘がある。国からの支援はどうだったのかということであります。
さらに、ちょっともう時間がないので駆け足でどんどん行きますけれども、六ページ目の中核市市長会のアンケートでありますが、いろいろな市がありますし、既に、財源の問題それから人の問題、いろいろな問題があるということは御指摘のとおりでありますけれども、やはり、支援と介入というものを分担するのがいいのか、それとも一体的にやることがいいのかということは、両論あったと思います。泉市長のおっしゃることもそうだなと思いながら聞きましたし、一方で、分担でいいのだという意見もある。高木委員と阿部委員の前回の議論でも、まだ議論があるというような状況だったというふうに理解をしておりますが、それはそれぞれに考えがあってやっておられるというところもぜひお気にとめていただきたいわけであります。
こうした状況がある中で、これは高橋委員がお触れになりましたが、一月二十三日に中核市市長会が厚生労働省に緊急要請というのをしております。それは七ページ目についておりますが、多くの中核市が未然防止等に取り組んでいるところであるということをお触れになった上で、「これまでの提言等に対して十分な対応はなされておらず、」とか、「当事者である中核市の実情や意見が反映されないなかで、」こういう結構厳しい言葉がこの要望には並べられて、厚生労働省に要望されているという実態があるわけでございます。
今回、二つの法案の中で、議員立法の方では、中核市、これは特別区もですが、児童相談所必置ということで規定をされておられますが、この規定の検討の過程でこの要望書というのはごらんになっていたのでしょうか、まずこれを伺いたいと思います。
○阿部議員 橋本委員からの御質問、まことにありがとうございます。
まず、本法案において、私ども野党案ですが、中核市及び特別区に児童相談所の設置を義務づけましたのは、近年、児童虐待対応件数が急激に増加をいたしておりまして、一つ一つの児童相談所がカバーする人口が、例えば柏市の百三十万のように、大変大きくなっております。それに伴って、児童相談所において広域な自治体に対してきめ細やかな対応が困難になっていること、また、児童と家庭に対する相談についての基礎自治体の役割が強化される中で、基礎自治体と児童相談所との密接な連携のもとに、子育て支援から児童虐待への対応まで一貫した児童福祉政策を実施することが求められていると考えるためであります。
平成二十八年度の児童福祉法等改正法の附則第三条においても、施行後五年間を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、その設置に係る支援その他の必要な措置を講ずるものとすると規定されており、中核市及び特別区への児童相談所の設置を進めるという大きな方向性が示されたと考えております。
一方で、今、橋本委員御指摘の中核市における児童相談所の設置に関する緊急要請、市長会から上がりましたものについては、「義務化ありきではなく、設置の後押しとなる十分な財政措置や専門的人材の育成・確保にかかる支援の充実によるものとするよう強く要請する。」という意見が示されており、私どもも拝見をいたしております。
中核市がこのような要請をされた背景には、平成二十八年度改正において設置に向けた支援が規定されたにもかかわらず、国による財政面や人材面での支援が不十分であるという現実があるのではないかと考えます。実際に、委員御指摘の緊急要請においては、これまで中核市、市町村が行ってきた財政措置や専門的人材の育成、確保に関する具体的な提言に対しても十分な検討、対応がされてこなかったという指摘もございます。
そのために、本法案では、緊急要請で示されたような御懸念を受けとめつつ、改正後の児童福祉法第五十九条の四第七項において、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等の規定を設けております。
したがって、本法案は、決して中核市など当事者の意見を無視したものではなく、むしろ、その要請の本来の支援を深く理解して、この私どもの案にあっても支援の強化を求めるという点を強調しておるものでございます。
○橋本委員 ごらんになったかどうかということをお尋ねした割には、随分丁寧な御答弁をいただきました。時間が限られておりますので、御協力をいただければ幸いであります。
そうはいっても、受けとめていらっしゃるということは理解をいたしましたので、ちょっと更問については、時間の関係もありますので、割愛をいたします。
ただ、よくこの委員会でも、何で関係者の意見を聞かないんですかという御議論というのはあるんだと思います。要望はごらんになったということですが、中核市市長会、それから念のために会長市の倉敷市のそれぞれ東京事務所に確認をしたところ、野党の方から特段ヒアリング等しておられないというふうに聞いています。
せっかくなので、やはり、特に、やるところの御意見を聞くことも大事なんですが、やることを考えていないとかできないと思っているところの御意見を聞くということも僕は大事なことなんだろうと思っていますので、それは我々みんなですけれども、そういう姿勢を持って臨みたいなというふうに思うところであります。
その上で、今、阿部委員から御答弁がありましたように、確かに、政府の措置というのは、資料でも触れましたが、どうだったのかということはやはりあるわけであって、これは政府の方にお尋ねをしますが、その平成二十八年改正で、支援等の必要な措置を講ずる、こう書いてあるけれども、実際、今、中核市って三つしかつくっていないよねという状況の中で、これは十分だと思っていらっしゃるんですか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
御指摘いただきましたように、まずは、平成二十八年児童福祉法の改正の附則におきましては、政府は、施行後五年をめどに、中核市、特別区が児童相談所を設置できるよう、必要な措置を講ずるとされております。
この規定を踏まえまして、これまで、人材確保、育成支援、市区の職員が県の児相の業務を学ぶ間の代替職員の配置等の人材面での支援、あるいは施設整備、児童相談所あるいは一時保護所の整備に係る支援等を行ってきたわけでございます。
しかしながら、今回の法改正に向けた議論におきまして、中核市からは、御指摘いただいたような指摘、また、国と中核市との間で丁寧な議論を積み重ねる、継続的かつ安定的な支援措置を講じるといったことを改めて御指摘いただいている、要望も寄せられているということにつきましては、結果として支援が不十分だったのではないかというような御指摘だと思いますので、これは重く受けとめたいというふうに考えております。
○橋本委員 今後についても問うつもりでしたが、これは割愛をいたしますが、ぜひしっかりしていただきたい。
特に、大臣が、設置したい自治体には設置できるようにという形での方向性をお示しになっておられます。もちろんそれはいいことなんですが、今設置を考えていないとか、どうしようか迷っているみたいなところについても、きちんとコミュニケーションする中で、やはり、いいことであればぜひやりましょうねという方向性というものはぜひ厚生労働省の方からもお示しをいただけると前に進んでいくのかな。できれば、強制をしてやらせるというよりは納得をしてやってもらうというのが一番いいことだと思いますし、そのことの御努力はぜひ厚生労働省にもいただきたいなということは申し上げたいと思います。
もう一点、ちょっと残りわずかですが、触れたいと思いますが、実は、閣法の方では、都道府県は、児童相談所の行う業務の質の評価を行うことにより、その業務の質の向上に努めるものとするという規定が入っております。
議員立法の方ではこの規定というものは特段見当たらないんですが、このことについてどうお考えか、教えていただいていいですか。
○岡本(充)議員 ただいま橋本議員御指摘のように、私どもの法案には、児童相談所の業務の評価を規定しておりません。
確かに、政府案では都道府県知事による児童相談所の業務の質の評価などの規定が存在していることは承知をしていますが、個々の児童福祉司が多数の事案を抱えている現状においては、児童相談所の業務の評価よりも先に、児童福祉司の負担の軽減や児童相談所の体制整備を行うべきという考えに立っております。
この考えから、本法案には、児童福祉司の段階的な増員や、児童福祉司一人当たりの相談件数が四十を超えないよう児童福祉司の配置基準の見直し、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等を規定することにより、児童相談所の業務の評価ではなく、まずは児童相談所の体制の強化を図ることを主眼にする、こういう考えに立っております。
○橋本委員 もちろん、体制の強化というのは大事だと思うんです。
ただ、忙しくてもう大変という状態だからこそ、一度落ちついて振り返るという意味での評価というものの機会をつくることが私は実は大事なんじゃないかと思っております。
政府の方は第三者評価ってちょっと言い過ぎな気がするんですけれども、もともとワーキンググループでの議事録ではそういうふうに出ておりましたが、実は、評価というのも、何のためにやるのかということがきちんと検討されてやられれば、それは業務改善のためにするということで、いいことであります。
特に、これは常々思っているんですが、児童相談所というところは、何か事件が起こると、あそこの児童相談所がどうだということで大変注目を集めるわけですが、いっぱいケースを抱えている、その中の多分大半は事件とかにならないで、例えば大学に進学するとか就職をするとか、そういう、支援の卒業というか何というかがあるんだと思います。そうしたことはほとんど報道もされないし、数字になって出てきたことも個人的には見たことがないんです。
でも、たくさんそういう例があるはずだし、児童相談所などの支援がうまくいったケースの数というものをちゃんとつかまえて、そういうことも含めてちゃんと評価を、全体像を見てあげる、あるいは自分たちで見直すというような機会として評価というものをつくっていただくのであれば、それは、忙しい中でもちょっと立ちどまって自分たちの業務を見直し、改善につなげていこう、あるいは、こういうことはちゃんとやっているということを外に対してプレゼンテーションする、そういう意味でも、評価というのはやる意味はあるんだろうと思います。
ただ、もちろん、業務多忙の折という中で、それにちゃんと配慮をした形での実施をしないといけないということもまた事実だし、そういう形でちょっと自分を振り返るための評価、それを第三者の方に検証していただくような形みたいなことが児童相談所にはふさわしいのかなと思いますけれども、単に、忙しいので負担をかけるという話ではないと思っています。そういう形の機会というのを今回政府案で設けられるということでありますから、今申し上げたようなこと。
あと一点、ちょっとくぎを刺すと、事件の数とか通告の件数とかを評価指標にしないでくださいねということは申し上げておきます。
それは、それが少ない方がいいみたいな形で評価をするということにすると、隠蔽とかそういうことにつながりかねないという面があります。もちろん数字として持っておくのは大事ですが、むしろ、どっちかというと、児童相談所がちゃんと発見をするということはすごく大事なことなので、ちゃんといっぱい受けとめるということはいいことだという評価をする。そして、それがきちんと支援につながり、それができれば事件とかにならないで、子供さんが大きくなるということをきちんと見てあげられるような評価につなげていただきたいなということを申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、高木美智代君。
○高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。
実は、二月十九日、公明党は、千葉県野田市の事件を受けての緊急提言「すべての子どもの命を守るために」を取りまとめまして、申入れをいたしました。
本日は、この提言を踏まえまして、本改正案や先般の関係閣僚会議決定「児童虐待防止対策の抜本的強化について」、こうした内容に多くが反映されていると承知をしておりますが、公明党が出した提言に対しまして、政府の個々の具体的な取組と、また今後の展開につきましてどのような対応になっているか、伺いたいと思います。
まず初めに、子育て支援についてです。
体罰の禁止等につきましては、本改正案にも体罰禁止が法定化されまして、また、政府は、施行後二年を目途として、民法に定める懲戒権について検討を加え、結果に基づいて必要な措置を講ずる、このようにされております。結愛ちゃん、心愛ちゃん、こうした事例を申し上げるまでもなく、虐待が行われている父親の多くは、また加害者の多くは、しつけだったということをコメントしているわけでございます。
そこで、体罰禁止規定について、この委員会でも多くの議論があったところですが、私は、どんなに軽いものであっても体罰は許されないということを社会全体で共有していく、そうした基盤をつくっていくことが重要であると思っております。また一方で、育児に孤立し、悩み、つい手が出てしまう、こうした親を追い込まないような子育て支援が重要であると考えております。
大口副大臣のお考えを伺います。
○大口副大臣 高木委員にお答えいたします。
公明党の提言も踏まえて、今回、法案にいろいろ盛り込ませていただいたところでございます。
結愛ちゃん、心愛ちゃんのような痛ましい事件が二度と繰り返されてはいけない、しつけと称して体罰が虐待になる、こういうことを防がなきゃいけないということで、今回、全ての体罰禁止を法定化する趣旨は、子供の健全な心身の育成という観点から、体罰によらない育児を推進するためのものであります。痛みや苦しみを利用して子供の言動を支配するのではなく、子供が健やかに育つことについて、子育て中の親に対する支援も含めて社会全体で啓発していくための取組を進めていくことが重要である。今回の体罰禁止の法定化も、その取組の一環であると考えています。
そういう点で、今お話がありましたように、体罰禁止に当たっては、体罰の範囲や禁止に関する考え方を国民にわかりやすく説明するためのガイドラインを作成することとしておりまして、このガイドラインによる周知に当たっては、子育て支援策も盛り込んだ形、例えば相談窓口の紹介をするなど、そういうものを盛り込んだものとしたいと考えております。
また、孤立化しがちな子育て家庭を早期に発見し、必要な支援策につなげるため、妊娠期から必要な支援につなげられる体制を整備するため、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センター、日本版ネウボラの設置を促進する、また、予期しない妊娠で悩む妊婦の方に対し、産科への同行支援等によりその状況を確認し、関係機関につなぐ事業の実施、また、こんにちは赤ちゃんの訪問ということで、戸別訪問して家庭の相談支援を行うため、乳児家庭全戸訪問調査事業によって生後四カ月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、養育環境の把握を実施、そして、把握したことによって保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭に対しては、養育支援訪問事業によって養育に関する相談支援、育児、家事支援の実施等をやってまいりたいと思います。
「いちはやく」でありますとか、未就園児の対応でありますとか、こうしたいろいろな取組によりまして子育てに悩む孤立化しがちな家庭を早期に発見し、適切な支援につなげることも含め、児童虐待の予防を図るとともに、国民全体で、体罰によらない子育てを推進していくことを通じて、子供の健全な心身を育成する社会をつくってまいりたいと考えております。
○高木(美)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。
その子育て支援に関連しまして伺いたいと思います。
昨年一月、愛知県豊田市で、生後十一カ月の三つ子の次男を自宅で畳に二回たたきつけて、脳損傷により死なせたということで、本年三月十五日、傷害致死の罪に問われた母親に対する裁判員裁判の判決が名古屋地裁岡崎支部でありました。この判決によりますと、裁判長は、母親はうつ病の状態にあったが責任能力があったと指摘した上で、無抵抗、無防備の被害者をたたきつけたのは悪質と言うほかないなどとして、懲役三年六カ月の実刑判決を言い渡したわけでございます。
一方で、育児の大変さに共感する母親たちに、一人でも大変なのに三つ子ということはどういうことになるのか、こうした共感が広がりまして、執行猶予を求める署名が広がっていると承知しております。
一回に三つ子ですと、ミルクの授乳だけで二十四回、もう寝る間もない、夫も実家も頼れない状況。産前に行政に相談したところ、パンフレットを渡されたという話もあります。まさに孤立した育児でありまして、中には、ファミリー・サポート・センターに行ってはという回答もあったようですが、それでは三つ子を連れていかなければその支援が受けられない、こういう話のようでございます。
まさに、三人の乳児を抱えて最も求めていたのは、先ほど大口副大臣からの答弁にありました、やはり具体的な育児支援であり、家事支援であり、育児支援ヘルパーなどの派遣という、誰か助けてもらえる人の存在なのではないかと思います。こうしたことに行政は応え切れていないのではないか。
私は、むしろ、こうしたすき間事案に対しまして、自治体にも取組に差があるということも、さまざま調べながら実感いたしております。出産年齢の高齢化であるとかそうしたことを考えますと、多胎児支援への取組について強化すべきなのではないかと考えます。
厚生労働省のお考えを伺います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
多胎児につきましては、まず、低体重児の割合が高い、同時に二人以上の妊娠、出産、育児をすることに伴う身体的、精神的な負担が重い、あるいは経済的な問題、さまざまな困難に直面する保護者も少なくないと考えておりまして、多胎児支援は重要な課題と認識しております。
こうしたことを踏まえまして、昨年度行いました調査研究事業におきまして、自治体の保健師等を対象といたしましたマニュアルでございます多胎児支援のポイントというものを作成いたしました。また、保護者向けのリーフレットも作成いたしまして、広く活用いただくよう自治体に周知をいたしました。
このマニュアルにおきましては、多胎児にさまざまな困難を伴う一方で、妊娠届出時から把握することにより、出産、育児に伴う困難を予想した支援を行うことが可能でありますことから、妊娠中からの継続的な関与、育児環境のアセスメント、多職種連携による支援のあり方など、こういったことをお示ししますとともに、自治体における具体的な支援の取組例、先進事例などを御紹介いたしております。まずはでございますけれども、各自治体におきましてこのマニュアルを活用いたしました支援体制の構築を促したいと思います。
今後でございますけれども、更に、御指摘の育児支援サポートなどを含めまして、多胎児家庭への具体的な支援方策について検討してまいりたいと考えております。
○高木(美)委員 どうぞよろしくお願いいたします。
それから、DV対策の取組について伺います。
今回、児童虐待対策とDV対策の連携が盛り込まれたことは、評価をいたしております。婦人相談所と児相との連携であるとか、また我が党の提案では、婦人相談員が要対協のメンバーに加わるなど、日ごろから顔の見える関係を構築しておくことが重要だ、このように考えております。
その実効性を確保する取組が重要でありまして、DV対策の対応を行う機関側の取組として具体的にはどのようなことをお考えか、内閣府の答弁を求めます。
○池永政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、児童虐待とDV被害が重複して発生していると思われるケースもあり、被害の防止、救済の取組の実効性が上がるよう、DV対策と児童虐待防止対策を相互に連携協力して進めていくことが必要であると考えております。
そのため、内閣府においては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための業務を行う配偶者暴力相談支援センターの対応力強化に向け、今年度の事業において、配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター、児童相談所等に対する研修において児童虐待との関連性をテーマとした講義を盛り込むなど充実を図ったり、DV被害者支援に係る手引、マニュアルの改定や、DV被害者の特性等の必要な情報について児童相談所等の関係機関に周知を図ったり、また、危険度判定、リスクアセスメントでございますが、に基づく被害者支援や加害者対応、加害者更生プログラムの実施基準等の作成に向けた検討を行うことなどについて、関係省庁とも連携して進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○高木(美)委員 どうぞ、厚労省とも当然連携が必要でございますけれども、現場で、婦人保護事業の強化に向けましても、我が党におきましてもしっかりと後押しをさせていただきますので、この連携の強化をよろしくお願いいたします。
次に、学校における体制構築、強化につきまして、文科省に伺いたいと思います。
提言におきましては、学校いじめ対策組織というのを以前お願いいたしました。これと同じように、虐待事案に迅速かつ組織的に通報、対応できるように、各学校におきまして虐待事案に組織的に対応できるそうした体制を構築することが大事だと思っております。それぞれ学校で、では誰がこれを担っていくのか、そこが中途半端な形、そしてまた、誰が連携をしていくのか、そこの出口も中途半端な形。これではスムースな対応ができないと思っております。
そのためにも、例えば、一つはスクールソーシャルワーカー、この方たちを全ての公立小中学校に配置することが重要であると思っておりまして、全てに配置できないまでも、十分に活用できるように、配置体制を抜本的に拡充していただきたいと思っております。
さらに、今回の事例がそうでしたが、保護者等による威圧的な要求や暴力の行使等、恐らくいろいろな保護者の方がいらっしゃいますので、日ごろからそこと闘っていらっしゃる学校現場であるわけですが、虐待事例だけではなくて、そうしたことも含めて、教職員が毅然とした対応がとれるように、来年度からスクールローヤーやまた警察官OBを配置するために財政支援を行っていただきたいと思っております。
特にこうしたスクールローヤーまた警察OBにつきましては、いわゆる調査研究的な事業としてスタートしていると承知しておりますが、我が党も財政支援を後押しさせていただきますので、学校における虐待防止体制の構築、強化の取組のためにも、ぜひともこれを前に、しっかりと全国に大きく広げていただきたいと考えております。
文科省の取組はいかがでしょうか。
○丸山政府参考人 お答えをいたします。
公明党から御提言をいただきました学校における虐待防止体制の構築、強化は、児童虐待防止対策の観点から大変重要であるというふうに考えております。
いただきました御提言のうち、虐待事案に組織的に対応する体制の構築につきましては、五月九日に公表しました学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きにおきまして、学校では、管理職が前面に立った組織的対応、関係教職員によるチームとしての対応とすることが重要であることを明記するとともに、校長等管理職、学級担任、養護教諭、生徒指導主事、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校医、学校歯科医の役割を具体的に記載しているところであり、今後、学校、教育委員会等に対してこの趣旨をしっかり周知していきたいと考えております。
また、学校及び教育委員会において、市町村、児童相談所等の関係機関と連携をし、児童虐待の早期発見、早期対応を図るためには、児童生徒の福祉に関する支援の専門職であるスクールソーシャルワーカーの配置や、法的な助言を受けるためのスクールローヤー、威圧的な要求に対応する際のノウハウを有する警察OBの活用は大変重要であるというふうに考えております。
去る三月十九日に児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議で決定をした「児童虐待防止対策の抜本的強化について」においては、スクールソーシャルワーカーの配置推進、スクールローヤーや警察OBの配置支援について盛り込まれております。
文部科学省といたしましては、いただいた御提言も踏まえ、児童虐待防止対策がしっかり進むよう、関係省庁との連携のもと、スクールローヤーの配置支援、財政措置の充実等必要な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
○高木(美)委員 次に、警察庁に伺います。
警察との連携強化の取組におきまして、児相における警察OB等の常勤的配置については、ぜひ積極的に進めていただきたいと考えております。警察におきましても、やはり専門部署の設置など、児童虐待に対応する体制の強化を進めていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
児童相談所における警察OB等の配置につきましては、本年三月の関係閣僚会議決定で、児童相談所への警察OBの常勤的な配置や警察職員の出向等を進めるということが示されているところでございます。
児童相談所への警察OBや警察職員の配置につきましては、配置された警察OB等を通じまして平素から両機関の連絡、相談を密にし、警察と児童相談所の相互理解を深めるとともに、児童相談所による事案の危険性、緊急性等に関する評価や立入調査、臨検、捜索等の実施に際して警察OB等が警察実務の経験に基づいて助言等を行うことなどにより、児童の安全確保に向けた円滑な連携の強化に資するものと考えているところでございます。
今後、厚生労働省等からの要請に応じまして、このような趣旨を踏まえた警察OB等の配置の促進に可能な限り協力してまいりたいと考えております。
次に、警察における児童虐待に対応する体制の強化に関しましては、児童虐待事案については、事態が急展開して重大な事案に発展するおそれがあることから、各都道府県警察におきまして、児童の安全確保を最優先として、児童虐待事案に刑事部門と生活安全部門等が連携して組織的に対処するための体制を構築しているところでございます。
また、累次の関係閣僚会議決定におきまして、警察の児童虐待への対応力の強化が求められていることを踏まえまして、児童虐待の疑いのある事案を認知した際の的確な初動対応の徹底、児童相談所等関係機関との的確な連携、被害児童の心理等を踏まえた事情聴取等の実施等の児童虐待事案に関する専門的対応を一層的確に行うための体制の構築にしっかりと取り組んでいく必要があるものと認識しております。
警察といたしましては、引き続き、児童相談所等関係機関と連携を図りながら、児童虐待の早期発見と児童の安全確保に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。
○高木(美)委員 ぜひとも緊密な連携をとっていただきまして、厚生労働省が把握している重要事案と警察庁が把握する重要事案との数のずれがないような、そうした緊密な連携システムの構築であるとか、また、児相におきましても、さまざまなほかの事務作業に携わることもあるでしょうけれども、当然、警察OBの方たちが持つスキルが生かされるような児相での役割を果たしていただきますようにお願いをしたいと思います。
最後に、法医学との連携につきまして伺いたいと思います。
死に至る虐待の早期発見ということが重要でありまして、役割が期待されるのはやはり法医学の医師であると考えております。医学部では、虐待は法医学で学んでいる。傷の専門家である法医は、それがみずから傷つけたものか、それとも他人に傷つけられたものか、正確に判断できます。都道府県によりましては、児相が法医の診断を受けているところもあります。
そこで、児童虐待の早期発見等における法医の果たす役割の重要性と連携の具体的な取組をどのようにお考えか、厚労省から答弁を求めます。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、法医学の医師は、虐待の判断の観点から重要な役割を果たし得るものと認識しております。
現在、「子ども虐待対応の手引き」におきましては、「虐待を受けた子どもに身体医学的所見が見られる場合、」「セカンドオピニオンを求めることができる法医学医等の専門家を確保して協力を依頼することなどが必要」といたしておりまして、法医学医等との連携を求めております。
また、先ほど来出ております、本年三月に関係閣僚会議で決定いたしました児童虐待防止対策の抜本的強化におきましても、「小児科医、精神科医、法医学者など事案に即した専門性を有する医療関係者との連携体制の強化を図る。」といたしておりまして、今後も、虐待の早期発見等における法医学者も含めた医療との連携に努めていきたいと考えております。
○高木(美)委員 ありがとうございました。
以上で終わります。
○冨岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十時二分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。大串正樹君。
○大串(正)委員 自由民主党の大串正樹でございます。
早速ではありますが、総理に幾つかお伺いしたいと思います。
まず、本法案は、当初より与野党ともに早急に対応すべき課題であるということで、しっかりと議論をする中で、またお互いの意見を反映させながら、修正の上、これから採決に向かうということで、大変意義深い法案であるということでございます。
その中で、やはり子供の命を守るというこの重要な法案について、総理にあられましては、さまざまな政策課題がある中で、もちろん外交の問題も、そして経済政策さまざまある中で、やはりこの重要な法案、ここにいる厚労委員のメンバーだけではなくて国民も大変注視をしているというこの重要な法案を、政府の中においてどのように位置づけられるか。
さらに、新たな被害を出さないという意味で、総理としての決意をまずお伺いしたいとともに、もちろん、法案が成立したら早急に急がなければならない法案でもございます。児童相談所の体制強化であったり、あるいは設置の促進など、そういった面を急がなければならないと同時に、質も高めていく、質の充実も大切であると考えます。
政府における法案の位置づけ、さらには質の充実とあわせて、総理の決意をお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 子供たちの命を守るのは、私たち大人全員の責任であります。それにもかかわらず、虐待によって幼い命を奪われる事件が繰り返されたことは、本当に悔やんでも悔やみ切れません。
この強い決意のもと、昨年十二月に児童相談所強化プランを前倒しして見直し、新たなプランのもとで、三千名の児童福祉司を今年度一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とすること、そして、全市町村への身近な相談拠点の設置などを進めることとし、必要な予算を計上しております。
また、児童相談所の所轄区域が大き過ぎることにより、きめ細かな対応を行うことが困難になっているのではないかとの指摘等があることも踏まえまして、本法案では、児童相談所の管轄区域について参酌基準を設けるほか、体罰禁止の法定化、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、一時保護等を行う介入の担当者と保護者支援の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、そしてDV対策との連携強化など、課題に対応した対策を盛り込んでいます。
本法案は、子供の命を守るための重要な法案であり、何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
○大串(正)委員 ありがとうございます。
これ以上の被害を出さないように、まさに総理のリーダーシップに期待をしたいところでもございます。
そして、今、答弁の中にもありましたけれども、連携ということが一つのキーワードになっていると思います。さまざまな委員から、これまでの審議の中でも連携の重要性が語られているわけでありますが、これは、すぐに整備をして、すぐに連携ができるというものではありません。これからその連携が本当に意味のあるものになるかどうか、また同時に、児童福祉司や心理司など専門家も含めて、現場の皆様の臨床力の向上というのが欠かせない、そういう意味では、継続的に課題と向き合っていかなければならないわけでありますが、政府としての意識やその対応についてお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 本法案に盛り込まれました関係機関の連携強化の仕組みについては、その運用に当たり、対象となる具体的な事案の明確化などにより、しっかり機能するものとしていきたいと考えています。
また、児童福祉司等の専門性の向上については、本法案において任用要件の見直し等を定めたところでありますが、研修の充実なども含め、現場の声を十分に聞きながら、職員の実践的な対応能力の向上を図ってまいります。
○大串(正)委員 ありがとうございます。
現場の声を丁寧に受けとめて、制度の実効性を高めていただければと思います。
以上で質問を終わります。
○冨岡委員長 次に、高木美智代君。
○高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。
何としても子供の命を守りたいとの決意を与野党で共有をいたしまして、昨日、実務者間での修正合意ができましたことは、国会という政治の場からの強いメッセージを発することになると考えております。野党の皆様の合意への御努力に感謝申し上げます。
本日は、重要広範議案のいよいよ出口ということで、総理に質問をさせていただくわけですが、実は、昨年、目黒の結愛ちゃんの事件直後、厚生労働副大臣であった私は、こうした案件は、厚労省だけではなく、政府を挙げて政治として取り組む必要がある、関係省庁の連携が大事であると考えて、関係閣僚会議開催を提案させていただきました。それを、山口公明党代表、また官房長官、加藤前大臣が受けとめてくださって、開催が決まりまして、さらに、総理が御自身の御判断で出席をされ、今日の流れをつくっていただいたと思っております。
総理には、児童虐待根絶のために先頭に立って取り組まれていることを高く評価させていただいております。
また、公明党は、これからも、子供を守る党として、健やかな成長のために働いてまいる決意でございます。
そこで、本改正案の重要なポイントである体罰禁止の明示、民法の懲戒権のあり方の検討につきましては、公明党の強い要請に基づいて実現できたと自負をいたしております。
その実現に当たっては、総理が強いリーダーシップを発揮されたと思っておりますが、この体罰禁止についての総理の思いと、体罰のない社会の実現に向けた御決意を伺いたいと思います。また、懲戒権の見直しにつきましても、引き続き強いリーダーシップを発揮していただき、実現していただきたいと思いますが、総理の御決意を伺います。
○安倍内閣総理大臣 子供たちの命を守るのは、私たち大人全員の責任であります。虐待根絶のためにも、体罰のない社会を実現していく強い決意のもと、本法案を提出いたしました。
そのため、改正法案においては、御党の要請も踏まえまして、体罰を加えることが、民法上の懲戒権の範囲を超え、許されないものであることを法律上明確化するとともに、御指摘の懲戒権については、家族のあり方にかかわり、国民の間でもさまざまな議論があると承知をしておりますが、国会における議論等も踏まえながら、法務省を中心に徹底的な議論を行い、施行後二年を目途に適切な結論が得られるよう全力で取り組んでまいります。
何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
○高木(美)委員 総理には、やれることは何でもやるとの御決意のもとで、矢継ぎ早に、抜本的強化についてなど、政府を挙げての取組を打ち出していただいております。
その対策を実行に移すために必要なのは、予算の確保でございます。強く総理にこのことを要請させていただきます。
また、重ねて、今後も、虐待対策の進捗状況を見まして、必要に応じて方針を見直すなど、引き続き最優先でリーダーシップを発揮していただきたいと考えておりますが、総理の御決意を伺います。
○安倍内閣総理大臣 先ほど御紹介いただきましたが、これまで政府は、痛ましい虐待事案が繰り返されないように、関係閣僚会議を開催するなど、累次の対策の強化を図ってきたところでございます。
本年三月には、児童虐待防止対策を抜本的に強化するため、御指摘にもあった、スクールローヤーの教育委員会への配置や警察OBの学校への配置支援など学校等の児童虐待防止の体制を強化すること、そして、子育てに不安を抱える家庭などを訪問するなど子育て支援サービスの充実、産後の初期段階における母子に対する支援の拡充などの実施を、厚生労働大臣を始め各省庁に指示をしています。
今後とも、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
○高木(美)委員 ありがとうございました。終わります。
○冨岡委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。
我が国をめぐるさまざまな状況が大きく揺れ動く中、本来であれば、予算委員会をまずもって野党として強く要請したいと思っております。しかし、同時に、今回のこの児童虐待防止、一刻の猶予もならないものと思い、本日の質疑に臨ませていただきます。
冒頭、安倍総理に伺います。
私ども野党は、昨年三月、目黒区の結愛ちゃん事件を受けて、その六月には、いち早く児童相談所の強化法案を提出しております。審議もされないまま年を越えて、一月には心愛ちゃんの事件が起きました。
私は、大変残念ですし、総理がこのことを強い決意を持って臨むとされていることで、しかし、なお迅速性を欠いていると思いますが、いかがお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 児童虐待防止対策については、平成二十八年及び二十九年に児童福祉法を改正し、対策を講じてきたところでありますが、昨年三月に五歳の結愛ちゃんが児童虐待で亡くなったことを受け、児童虐待の防止に政府一体となって取り組むため、緊急総合対策を取りまとめ、さらに、年末に児童相談所の大幅な体制強化を図るなど、累次の対策を講じてきたところであります。
しかしながら、再び痛ましい事件が繰り返されたことは痛恨のきわみであります。
政府としては、本年三月に「児童虐待防止対策の抜本的強化について」を取りまとめるとともに、本法案を今国会に提出しました。
何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
○阿部委員 私が御指摘申し上げたのは、野党は法案を提出しておりました、児童相談所間の特に転居に伴う連携、あるいは体制が不備な児童相談所の問題。もしももっと早くに野党案を取り上げ審議がされていれば、私は、防げたことも多々あろうかと思います。国会は、与野党の本当に熟議の場であります。その姿勢が安倍政権に欠けておると私は強く思います。
そして、総理、次の御質問に行かせていただきますが、先ほど御答弁で、今回の改正案の意味を述べられました。繰り返す時間の余裕がございませんので、私は、総理の答弁の中に、画竜点睛、最も大切なことが欠けていると思いました。体制の強化も重要ですし、市町村窓口の役割も重要です。しかし、私たちが今回最も学ばなければならないのは、わずか五歳の結愛ちゃんがノートに小さな鉛筆で書き残した文字の一つ一つ。
総理は、今まで被虐待児の声を聞いたことがおありですか。お願いします。
○安倍内閣総理大臣 子供たちの生の声には心の叫びやその気持ちが含まれていることがあり、それをどう活用していくかは重要な課題であります。そうした声からさまざまな状況をしっかりと読み取りながら対応していくことが大切であろう、こう考えておりますが、私自身も、児童養護施設や乳児院、児童相談センターなどを訪問し、子供たちからも話を聞いてきたところでございます。
平成二十八年の改正児童福祉法などを踏まえて、社会保障審議会のもとに設けられたワーキンググループにおいて、アドボケート制度の必要性やアドボケーターが有すべき能力や機能のあり方などについて議論を深めてきたところでございまして、さらに、こうした検討を踏まえ、本法案において、児童福祉審議会で子供の意見を聞く際に子供の状況に配慮する旨を規定するとともに、附則において、アドボケートなど子供の意見表明権を保障する仕組みについて、本法案の施行後二年を目途として、その構築についてしっかりと検討することとしております。
今後、海外を含む先行事例の研究を行うなど、厚生労働省において、有識者による検討の場を設け、具体的な仕組みのあり方について検討してまいります。
○阿部委員 平成二十八年度の児童福祉法の改正は、初めて子どもの権利条約というものを児童福祉法の中にうたい、子供の意見表明権ということを明確にしたものでございます。
例えば、心愛ちゃんの事件にあっても、心愛ちゃんは、一時保護の解除に当たって、自分のおうちには帰りたくないということを児童相談所の方にも言っておられました。しかし、その声もかき消され、また学校アンケートで、先生何とかしてくれませんかと。これも声であります。
私は、今回、この二つの事案から学ぶべきは、本当に、我が国の児童福祉行政には、子供の声に傾聴、耳を傾け、寄り添い、それを一つの形に持っていく、そうした行政がなかったことだと思います。先ほど、総理の御答弁の中で今後アドボケート制度なども検討されるやに伺いましたが、遅過ぎるんです。その間にも命が失われている。
総理、何度も申しますが、あの結愛ちゃんの事件のときに審議があれば、私は心愛ちゃんの事件は違ったと思っております。その一つ一つの失われた命、今も失われ続けています、二年間ゆっくり検討している暇はない、やれるところからやらなければ救える命は救えない、このことを総理も肝に銘じていただきたいと思います。
そして、さらに、私は、野党案では児童相談所の圧倒的な不足ということを提示いたしました。総理のお手元に円グラフを描いた図がございます。
もともと、総理、児童相談所ってどんな機能を持っているとお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 児童相談所は、専門的な知識や技術に基づき、子供や家庭からの相談に応じること、児童の一時保護を行うことなど、子供の命を守るために重要な業務を行っているものと承知をしております。
私も、何度か訪問し、現場の声を聞かせていただいたところでありますが、昨年十二月に、児童相談所の体制を抜本的に強化するために、現在三千名の児童福祉司を今年度一気に千名増員をしまして、二〇二二年度には五千名体制とすること、児童心理司を八百名増員すること、全ての児童相談所に保健師を配置することなどを決定し、今年度予算で必要な地方交付税措置を行ったところであります。
また、今の御質問の中にはございませんが……(阿部委員「児童相談所はどんな役割ですか」と呼ぶ)今、役割については述べさせていただきましたが、これで結構でしょうか。
○阿部委員 結構ではないのであります。
なぜならば、総理、お手元の円グラフを見てください。私は小児科医ですので、どんなときに児童相談所を利用するか、ぜひ総理にも知っていただきたい。
ここは、もちろん虐待もございますが、障害の相談、障害児がお生まれになったときに、例えば療育手帳をつくる、障害の等級を判定する、もろもろの障害にかかわる業務、特に最近は発達障害と言われるお子さんがふえております。
高木委員が事務局長をお務めで、鋭意御尽力いただいておりますが、私は、現状において児童相談所といえば虐待と、もう直結している国民のイメージの中で、もっと子供全体を支えるものなんだという認識をぜひ共有していただきたい。子供の命のとりでであります。とりでなくして守られもせず、戦いもできないと思います。
総理、下の円グラフ二つ、見てください。
私ども野党は、少なくとも中核市には児童相談所を置いてほしいということを提案しております。その理由は、これまで、大人の人口に比して、今、六十万人の人口に対して一カ所、平均すれば、児童相談所がございます。皆さんは、子供の人口がどうかということを着眼なさいません。
そこで、私はここに、児童相談所が預かる子供の人口というものの集計を出したものを円グラフに直してございます。
子供約八千人から三十万人が一つの児童相談所で扱われております。大人ではありません。子供三十万人を一つの児童相談所が扱う、とてもできません。さまざまな、子供の養育上の問題、御家庭の問題、中には虐待もございます。圧倒的に不足しておると私ども野党が言い、なおかつ、せめて中核市や特別区にあっては児童相談所を設置してほしいというのは、ここのグラフの中で、例えば五万人から十万人のお子さんがいるところ、ここは多く、中核市に当たろうかと思います。ここまで、せめてエリアで扱う子供の数をそのくらいにしてもらわないと、子供たちに行き渡らない、子供を守る仕組みが届かないということでございます。
今回、中核市からもいろいろな御意見をいただきました。私は、御意見には理由があると思っておりますので、後ほど総理にもう一度問わせていただきますが、総理は、こういう実態にある子供の人口に対してすら児童相談所が足りない、カバーする人数が多過ぎるということの御認識はどうでしょう。
○安倍内閣総理大臣 先ほども、児童相談所とは何か、役割について問われましたので、私の答えの中で、まさに虐待だけではなくて、お答えをさせていただきましたように、専門的な知識や技術に基づき、子供や家庭からの相談に応じることということでお答えをさせていただいているところでございますが、児童相談所の管轄区域が大き過ぎることにより、きめ細やかな対応を行うことが困難になっているのではないかとの指摘があること等も踏まえまして、本法案には、児童相談所の設置に関する参酌基準を盛り込んでいるところであります。
さらに、中核市、特別区が児童相談所を設置できるように、いわば集中支援期間として、施行後五年間を目途として、児童相談所の整備のための支援等を行うこと、そして、施行後五年を目途として、さらなる支援のあり方について検討することとしております。
これらの取組により、一つ一つのケースに対して一層きめ細やかな対応をとることが可能となるよう取り組んでまいりたいと思います。
○阿部委員 平成二十八年の改正で、五年を目途に、中核市における児童相談所の設置を検討するとなっておりました。二十八年から五年、また今からというかこれから施行される法律で五年、五年、五年、五年と後送りされているにすぎないと思います。
私は、事務方に伺います。この間、中核市の市長さんからも、財政的、人材的支援の不足を指摘されております。局長で構いません。お願いします。これを投げましたけれども、おいでじゃないので、お願いします。短くお願いいたします。一体、厚生労働省は、一つの児童相談所をつくるのにどのくらいの初期費用そしてランニングコストがかかるのか、調べたことがおありでしょうか。お願いします。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
網羅的な数字はございませんけれども、例えば二月十四日に開催されました自民党の児童の養護と未来を考える議員連盟及び超党派の児童虐待から子どもを守る議員の会合同勉強会におきまして奈良市長から提供された資料によりますと、児童相談所を整備する費用、イニシャルコストにつきましては約四億五千万円、児童相談所を運営する費用、ランニングコストにつきましては約一億八千万円。これは、一人当たり八百万円で、法定数二十二人を掛けた数字というような数字がございます。
○阿部委員 今のは一時保護所を除外した数値であります。一時保護所にも四億くらいかかります。児相そのものにも四億、ランニングコスト、今の交付税措置で足らざる分、年間約〇・七億であります。国からの補助も、全く少な過ぎる。
そして、私は、総理、何よりも申し上げたい。なぜ、中核市の自治体の首長たちが、財政的支援が必要だ、人的資源が必要だと言ってこられている中で、調査もしないのですか。今の奈良市の例は、塩崎大臣が開かれた会合で奈良の仲川市長が示されたものです。
私は、きのうから、日本全国五十二でしょうか、中核市があるじゃないですか、どんなふうに計画して、幾らかかるんですかと。一つも調べていないんです。なぜ、厚労省みずから調べようとしないんですか。厚労省が財務省に言わなきゃ、金なんか出てこない。
総理、どうですか。これは総理にお願いします。
○安倍内閣総理大臣 突然の御質問でございますので、私も詳細については存じ上げませんが、しかし、私も、児童養護を考える会で塩崎さんと一緒に自民党の議論をずっとやってまいりましたので、多少は総理になる前の知識として承知をしておりますが、この課題については、中核市、特別区による児童相談所の設置は、身近な地域で子育て支援から虐待対応までの切れ目ない一貫した対応につながるものであると考えています。
一方、人口規模や当該自治体の有する人材などの状況もさまざまでありまして、一律に義務化することは適切でない等の意見が地方団体等から寄せられているのも、これは御承知のとおりだろうと思います。
こうしたことを踏まえまして、本法案では一律の義務化とはしていませんが、今後、地方団体と十分協議をしつつ、設置に向けた支援を抜本的に拡充、設置促進に取り組んでまいります。
そして、厚労省に調査しろということについては、その状況は私はわかりませんので、厚労大臣の方からお答えをさせていただきます。(阿部委員「はい。でも、うんと言いましたから結構です」と呼ぶ)
○冨岡委員長 いいですか。
○阿部委員 申しわけありません。きょうは総理のお時間なので、根本大臣は十分理解していただいたと思います。
とにかく、全く調査されていない。きのうも聞き、けさも聞き、今はちょっと答弁者がおられませんでしたけれども、そうやって中核市からの要請をネグレクトしているんですよ、今の体制は。それじゃ、やれない。中核市が全部かぶっているんです。それでもやろうという志ある中核市を、私は、子供の命のために高く評価をいたします。
総理にお願いがございます。
総理のお手元には「企業主導型保育事業の執行状況」、こういう一枚のペーパーがございます。この事業は、総理が旗を振って、企業が保育所をつくる、そのお金は経済界が出すということで、総理が、二十九年には三千億余り、企業の拠出をお願いされました。総理は、それほどに待機児童対策が緊急なものであるという御認識があったんだと思います。
しかし、残念ながら、この事業は、実態においてはたくさんの剰余金を残しております。二〇一六年度は五百九十九億、二〇一七年度は五百二億、二〇一八年度も恐らくこのままでは六百億。せっかく企業に出してもらいながら、御承知のようにさまざまな不祥事があって、企業主導型保育はお金を生かし切れていない。
私は、こういう実態を見るにつけ、命のために総理がみずから、どこにお願いしていただいてもいいです、企業でも構いません、拠出していただいてでも、緊急加速化プランを児童相談所にこそやるべきです。
総理への御質問は、この企業主導型保育所にこれだけ剰余金が余っている現実を御存じであったか。そして、今、多くの中核市が、財政的問題、人材の問題もあります。人材の育成に係る費用もあります。しかし、そこをエンパワー、支援すれば、不可能が可能になるんです。子供たちが助かるんです。
総理、二点についてお尋ねいたします。御答弁をお願いします。
○安倍内閣総理大臣 企業主導型保育事業については、平成二十八年度分として約六百億円、二十九年度分として約五百億円の返納金が発生し、積立金として積み立てられているものと承知をしております。
企業主導型保育事業の予算の執行率に関しては、事業の定着に伴い、着実に改善をしてまいりたいと思います。
当該事業の財源である事業主拠出金については、児童手当や企業主導型保育、保育所等の延長保育事業、放課後児童クラブなど、法律で充当する事業を限定しています。これは、仕事と子育ての両立が図られるなど、就労環境の整備や将来の労働力の確保に資するものとして、経済団体との協議も経て、企業等の皆様に御負担をいただいているところであります。
中核市の児童相談所の整備については、地方公共団体と丁寧な意見交換を行いながら、支援を抜本的に強化することとしております。そのために必要な財源はしっかりと確保してまいりたいと思います。
○阿部委員 私が今、企業主導型保育を例に挙げたのは、やろうという総理の意思がここにあったからです。しかし、お金は現実に余らせていて、問題も多々あります。しかし、なぜか中核市への設置を含めて後送りされている政治の情けない状況について、総理にぜひ強く自覚していただきたい。このことを申し上げて、終わらせていただきます。
○冨岡委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。
総理、お久しぶりです。それもそのはずで、三月に予算委員会が開かれてから八十日以上、予算委員会が衆議院では開かれておりません。そして、衆参それぞれ、野党から予算委員会の開会要求をしておりますけれども、一向に受けていただいていない状況が続いております。ある人は、これは与党側の審議拒否と、厳しくこの現状を批判する人もいます。
しっかりと議論をしていくこと、これが国会の重要な務めだと思います。今も話がありましたけれども、タイムリーに内外のさまざまな問題を議論することによって、世論を喚起し、立法府だけでなく行政がその問題を共有し、問題の解決につながっていく。そのことが議論の重要性であり、国会の重要な意義だと考えます。
予算委員会を開いて堂々と議論をしていただくこと、総理の出席をぜひお願いしたい。このことを、まず冒頭、安倍総理に強く要請したいと思います。
その上で、やはり国内で多くの国民の皆さんが今心配しているのは、今後の景気の行方です。米中の貿易戦争はより熾烈なものになってきておりますし、五月十三日の景気動向指数では基調判断を悪化に引き下げています。そして、先般の五月二十日のGDPの速報では、確かにプラスになっていますが、消費も企業設備投資も輸出も全部マイナスです。しかも、内需が弱まっていることによって輸入が極めて減少していて、結果として純輸出がプラスになるという、数字のマジックである意味プラスになっていますが、非常に、日本経済の行方について、政府が出す数字も極めて不安定なものになってきていると思います。
そこで、総理に伺います。
十月に予定されている消費税率の引上げについては、上げる方向に変わりはないのか、それとも、今後更に日本経済が悪化するということがあれば、再び税率を引き上げることを延期することがあるのか。総理の見解を伺います。
○安倍内閣総理大臣 消費税率の引上げをどうするか等については、今までも随分私も委員会でお答えをさせていただいてきているつもりでございます。
そこで、足元の我が国の経済は、中国経済の減速などから輸出の伸びが鈍化し、製造業を中心とした生産活動に弱さが続いていますが、雇用、所得環境の改善や高い水準にある企業収益など、内需を支えるファンダメンタルズはしっかりしています。
消費税率の引上げについては、これまでも申し上げているとおり、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、ことし十月に一〇%に引き上げる予定に変わりはありません。
通商問題の動向、中国経済の先行き等、海外経済の不確実性には十分に留意をしながら、経済運営に万全を期していきたいと考えております。
○玉木委員 今、総理、内需を支えるファンダメンタルズはしっかりしているということなんですが、その内需を支えるさまざまな数字に、私は非常に脆弱な傾向が出てきているなと。だから心配しているんです。
特に、消費です。アベノミクスは、幾つか、雇用情勢がよくなったり、あるいは株価が上がったりということでプラスもありますが、最大の弱点は、実質賃金がなかなか上がらない、それに伴って消費がやはり盛り上がらない。GDPの六割、アメリカでは七割が消費です。この消費が弱含んでいるところに消費税というのは、結果として全体としての税収を下げてしまうのではないのか、そういう懸念も本気で考えなければならない状況になってきていると思います。
そこで、今の答弁であれば、リーマン・ショック級の経済的な悪化があれば、逆に先送る可能性も否定されないということだと理解しました。仮にそうなった場合は、改めて国民に信を問うということでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 従来から申し上げておりますように、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、予定どおり消費税は引き上げていくと答弁させていただきました。では、リーマン・ショック級の事態になればということでございますが、それはそのときに適切に判断をしたい、こう考えているところでございます。
そこで、そのときに、では信を問うのかどうかという質問でございますが、今の段階ではそれにはお答えしかねるわけでございまして、まずは、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、消費税は引き上げさせていただきたい、こう考えております。
それは、まさに我々が果たすべき責任を果たしていかなければいけないということでございます。しっかりとした社会保障の充実、財政の健全性等の観点から、国の信認の観点からも引上げを行わなければいけない、こう考えているところでございますが、リーマン・ショック級の出来事の中において、では、どういう状況かということ等も分析をしなければいけないわけでございまして、そして、それは必ずしも国民の信を問うことに、そもそもこれは、もう既にそう申し上げているわけでございます。
リーマン・ショック級の出来事が起こらない限りということを既に申し上げているわけでございまして、先般の際の新しい判断だということではないわけでございますので、私は、信を問うことは考えてはいないということ、基本的には信を問うということは考えていないわけでございますが、そのときの状況等によりますので、一概にはお答えできない、こういうことでございます。
○玉木委員 何か曖昧な、するのかしないのか、よくわからない。
前回も、リーマン・ショック級のあれがあると言って、それで引き延ばしたわけですけれども、結局、リーマン・ショック級の……(発言する者あり)静かにしていただけますか。消費税も社会保障に大きくかかわりますから。
まあ、都合でやらないように、しっかりと客観的な数字を分析してもらいたいし、我々もしっかりと分析をしていきたいと思います。
次に、法案について伺います。
昨年の三月、東京都の目黒区で船戸結愛ちゃんが虐待死する悲惨な事件が起こりました。実は、これは香川県の西部子ども相談センター、丸亀の児相から品川の児相に移されたケースでもありましたけれども、まさに転居に伴ってこうした悲惨な事件が発生してしまいました。
私たち、私も行きましたけれども、大西理事や野党の皆さんで現地を訪れて、児相の皆さんにも話を聞きました。印象的だったのは、いろいろな批判が児相にも来ます、ただ、それぞれの職員は一生懸命やっています、一生懸命やっていますが、さまざまな制度のはざまに落ちて、なかなかそこは対応できなかったと。いろいろな案件があります。一人で百人以上のケースを抱えて必死でやっている、児童福祉司さん自身がメンタルを病んでしまう、そういうケースも伺いましたので、こういった体制そのものを変えていくのが政治の責任だということを強く感じました。
そこで、六月八日に訪問した後、六月二十六日には、野党で対案、議員立法をつくって提出をしましたが、先ほど阿部先生からもあったように、ずっとたなざらしで、議論さえしてもらえませんでした。そして、ことしの一月、新たに、沖縄の糸満市から千葉県の野田市にまさに引っ越しをして、同じようなケース、栗原心愛ちゃんの虐待死の案件が、再び悲劇が起こりました。
もし早く議論をしてもらえていれば、守れた命かもしれません。ここに私たち一人一人が責任を感じて、問題に対して速やかに議論をし、具体的な解決策を示していかなければならない。子供の命を守れない社会に未来はないと思います。予算のこともある、人員のこともあります。ただ、ここに最大限の努力をしていくことが大事だと思います。
転居時のさまざまな対応が抜けてしまうところについては、与野党間で、実務者でも協議が進んで、かなり前向きなことが進んだと聞いております。私たちは、転居した際には、少なくとも一カ月は措置解除をしない、ある種、措置解除の規制をしっかり入れていくことで、制度のすき間、児相間のすき間に落ちるそんな子供たちを救いたいということを提案しましたが、これは一定程度、与党の皆さんにも御理解いただいて、前向きになったと承知をしております。
私が改めて求めたいのは、中核市の児相の設置についてであります。
先ほども議論になりました。中核市からも、予算の問題やいろいろなことで反対もあることも承知をしていますが、二〇〇四年に、できる規定として、中核市に児相を設置できることになりましたけれども、今現在設置されているのは、五十八あるうちの三市のみです。
多くの設置できない理由は、やはり予算と人員。でもこれは、総理が、まさに国がリーダーシップを発揮して、しっかりと予算も人もつけるんだ、必要な対応をするんだということをすれば、できると思います。総理の判断で子供たちの命を救うことができるんです、総理。
子供の命を救うこと以上に、今この少子化の日本で大切なことがあるんでしょうか、総理。あえてここは最重点を置いて、これまでのさまざまな制約を乗り越えて政治判断でやるべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 中核市、特別区による児童相談所の設置は、身近な地域で、子育て支援から虐待対応までの切れ目のない一貫した対応につながるものであると考えています。
一方、人口規模や当該自治体の有する人材などの状況もさまざまであり、一律に義務化することは適切でない等の意見が地方団体等から寄せられております。
こうしたことを踏まえ、本法案では一律の義務化とはしていませんが、今後、地方団体と十分協議しつつ、設置に向けた支援を抜本的に拡充し、設置促進に取り組んでまいります。
○玉木委員 中核市もそうなんですが、基礎的自治体が大事だと思うんですね。
妊娠届を受け取るところから、市町村は極めて子供に寄り添います。学校もそうです。教育に関しても市町村の果たす役割が大きいので、同じ責任を持ったところが同じように子供を最後まで見守る、その意味でも、実は基礎的自治体、特に二十万人以上の中核市に設置することに意義があるということを私たちは申し上げているんです。
だから、予算の問題あるいは人員の問題、人が育っていないということ。人は育てればいいんです。予算はつければいいんです。もちろん、いろいろな制約があること、できない理由はいっぱい聞いてきました。でも、これだけのことが起こっている以上、しっかり対応することが私は国家の責務だと考えますので、ぜひここは、私たち野党が野党案の中にしっかりと書き込んだことを政府も受けとめて対応していただきたいと思います。
繰り返し申し上げますが、子供を守れない社会に未来はありません。
私たち国民民主党は、チルドレンファースト、そして、子供に対してしっかりと投資をすることによって、結果として人口もふえていく、経済も活性化していく、あるいは税収もふえていく。私はこれをコドモノミクスと呼んでいますけれども、子供を中心に経済社会にプラスの効果を広げていく、こういう政策にぜひ安倍政権としても力を入れていただくことを強くお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
○冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
女性活躍加速のための重点方針二〇一九に、DV対応と児童虐待対応との連携強化を盛り込むと聞いております。野田市の事件で加害者となった妻がDV被害者であったことを受け、重要視されたものではないかと思っております。
ただ、虐待相談の中で最も多いのが、心理的虐待、面前DVであるということは周知の事実であります。面前DVをカウントし始めたのは平成十六年、二〇〇五年からで、もう十四年もたっており、警察がDV事案に積極的な介入を行うとし、警察から児相への通告が増加したのは平成二十五年、二〇一三年のことです。
二〇〇五年から二〇一七年までの間で、十万件も虐待相談がふえている。こういう中で、対応ができてこなかったということは率直に認めるべきではないかと思います。現場の対応が縦割りになり、連携や認識が十分ではなかったと思いますが、総理に伺います。
○安倍内閣総理大臣 DVが行われている状況下では、児童への虐待の制止が困難となる場合があることから、DV対応と児童虐待対応を連携して行うことが重要でありますが、本法案においては、そのさらなる強化を盛り込んだところであります。
また、本年三月には、DV対応と児童虐待対応について、リスク判断手法や対応方法等のガイドラインを策定していくことを決定したところであり、さらに、現在取りまとめている女性活躍加速のための重点方針にも、両者の連携強化について盛り込む予定であります。
何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くして、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
○高橋(千)委員 伺ったのは、縦割りにならないで連携や認識を十分にしてほしいということなんです。
これは本当に、質問するに当たって、例えば警察からDVの通報があったときに、子供はどうしますか、子供がその場にいなかったときどうしますか、学校に迎えに行くんですかとかいろいろ聞いてみたんですけれども、はっきりした、ぱっとした答えが出てこないんですね。つまり、DVをどうしますかという一つのポンチ絵の中にだけでも、厚労省があり、内閣府があり、警察があり、そして市町村がありということで、細切れになっちゃっている。そこが問題だということを指摘しているんです。ここを認識していただきたい。
今度の事件を通して、夫やパートナーからのDVに苦しんでいる女性たちが、自分もそうなってしまうかもしれない、被害者が加害者になってしまうかもしれないという不安にとらわれているんです。
私、率直に言って、女性活躍や人生百年といったスローガンは好きではありませんが、しかし、その大きな障害であり、社会の損失であること、そういう立場に立てば、責任の所在が曖昧になって譲り合う、こんなことをしていればまた事件が続くわけです。この認識は了解していただけるでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 高橋先生のおっしゃった認識については共有させていただいております。であるからこそ、DV対応と児童虐待対応について、先ほど申し上げさせていただいたんですが、リスク判断手法や対応方法等のガイドラインを策定していくことを決定したところでありますが、その中でやはり連携強化を盛り込んでいかなければならない、こう考えているところでございます。
○高橋(千)委員 総理は、十日の本会議で、私の質問に対し、体罰は完全に禁止するのだから、体罰の正当化という余地を残しているのではとの指摘は当たらない、このようにお答えになりました。しかし、十七日のこの委員会で私も確認したんですけれども、事実として、これまでの政府答弁で、体罰の規定は定かではないと答え、厚労省はこれをガイドラインで定めていくと言っています。つまり、これまで懲戒権に体罰の一部が重なっていて、その重なる部分は、民法八百二十条並びに八百二十二条があるために認められるわけなんです。
ただ、重なる部分は時代によって変わりますよということで、これが、子どもの権利委員会に照らしても、そもそも懲戒権という規定そのものが要らないという立場に立たなければ余地を残しておくという趣旨で質問させていただきました。
時間が来てしまったので、御指摘は当たらないというのは言い過ぎでしたと撤回していただきたい、このことを指摘して、残念ですが、一旦終わります。
○冨岡委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。きょうは、質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。
私、当選から約一カ月になりまして、一カ月目で安倍総理に直接質疑させていただけることを本当にありがたく思っております。感謝申し上げます。
時間も限られておりますので、早速内容の方に入らせていただきます。
今回の法案、児童虐待を社会全体で抑止していくということを一歩進めるという意味においては非常に意義深いと思っておりますが、その中でも、進まなかった点の一つであります警察と児童相談所の全件共有について、少し御見解を全般的にお聞きしたいと思います。
まず、東京都目黒区の結愛ちゃんの事件、そして千葉県野田市の心愛ちゃんの虐待死の事件については、一面的には、児童相談所が案件を抱え込んで、危険な状態に放置してしまったということが一つとして挙げられると思います。学校から児童相談所に通報があった時点で児相が警察と連絡していれば、警察は立件する可能性もありましたし、立件せずとも、事件化せずとも、警察が父親に警告するなどして抑止を強めることができた可能性がございます。
児相から警察に情報提供される対象というのが、三十年の緊急総合対策でも示されている三要件のように限られているということがありますので、結局は、情報共有をするしないという切り分けが現場の判断になってしまって、どうしても、そこから漏れ落ちて、はざまに立ってしまう子供の事案というのを防げないということがあります。結局は、現場の職人芸のようなところに、どうしても属人的なところに陥ってしまっていることを解消するには、私は、警察との全件共有が一番ではないかというふうに思うわけです。
例えば、今、十三万件ほどの、児童相談所への情報共有がありますけれども、その約半数は既に警察経由ですから、警察は、その経由されたものは全件共有されているわけです。ですから、これは、児童相談所と警察の連携を強化し、属人的な部分を排除し、より情報共有を円滑に進めるためにも、この全件共有をぜひとも進めたいと思っているんですが、総理の御見解をお願いいたします。
○安倍内閣総理大臣 子供の安全確認を確実に行うとともに、安全確認や必要な支援を的確に行っていくためには、警察と児童相談所との情報共有は重要と認識をしています。
このため、昨年七月の緊急総合対策において、必ず警察と情報共有を行う事案として、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、通告受理後四十八時間以内に安全確認ができない事案、一時保護等が解除され家庭復帰する事案を明確化し、示しています。
現在、全件情報共有している自治体も含め、地域の実情を踏まえた連携体制が構築をされているところでありまして、例えば大阪府は、大阪市と堺市以外ですか、全件共有をされているのは、地元の寝屋川もそうですか。(藤田委員「はい、そうです」と呼ぶ)引き続き、先行する自治体での取組も十分踏まえながら、効果的な連携の方策を検討してまいります。
○藤田委員 総理も、お越しいただいて、寝屋川を覚えていただきまして、ありがとうございます。
先ほど答弁がありました三要件、やはり、この三要件では私は漏れ落ちてしまう情報がどうしても多くなるんじゃないかなというふうに思っています。虐待による外傷をいかに証明するかというのは、親御さんが階段から転落したんだよというようなお答えなんかで濁してしまうこともありますし、最近では巧妙に傷が外に残らないようにする虐待なんかもふえておりますから、そういった意味で、全件共有、ぜひとも、今回の法案には盛り込まれなかったことは非常に残念ではあるんですけれども、この後、私も引き続き訴えてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
時間になりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、柿沢未途君。
○柿沢委員 柿沢未途でございます。
五分しかありません。
数ある課題や論点の中で、一つピンポイントで選ぶならこれ、ボーリングでいえばセンターピンに当たるのはこれだというのは何ですかと、児童虐待にかかわる専門家何人かに聞きました。虐待防止の分野におけるオピニオンリーダーとして知られるNPOチャイルドファーストジャパン理事長で医師の山田不二子先生などであります。
ほぼ口をそろえて言われたのは何かというと、やはりそれは児相改革、児童相談所の改革だということであります。介入保護とその後の支援、その分担を截然と分けなきゃいけない、こういうことであります。児相が介入保護のフェーズとその後の親と子の再統合の支援のフェーズを同時に担っていると、どうしても介入のときに親の顔色をうかがう格好になって、子供の命にかかわるような差し迫った状況にも、親に気兼ねをして、なかなか踏み込んで対処できなくなる。逆もまたあって、家庭に介入して親と子を引き離して、いわば親と対立関係になった当事者の児相がその後の支援も引き受けるということになると、児相はもう嫌、もう来ないでというふうになって、支援を受け入れてもらえない、こういうことであります。
今回の法案では、子供の保護を担当したケースワーカーと家族を支援するケースワーカーを分けるべし、こういうことにはなっているわけですが、しかし、そんな生ぬるい対応では到底問題の解決にはならない。児相は、子供の保護や分離養育の支援に特化をして、子供の命をとことん守る、そういう対処を行う。でなければ子供の命は守れない。そして、家族に寄り添う支援、また治療のための専門機関は、児相とは別につくるべきである。ケースワークの原則を、介入は児相、そして支援は市区町村、こういうふうに分ける。ここが現下の最大のポイントだというふうに山田不二子先生はおっしゃられておりました。
子供の命を守るという観点から、この点について、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 これまで、一時保護などの介入機能と保護者に対する支援機能とを同一の機関が行うことで、保護者との関係を考慮する余り、必要な保護にちゅうちょが生じる、親の意向に反する一時保護を行った結果、その後の支援が進まないという点が指摘をされてきたところであります。
こうした指摘を踏まえて、本法案においては、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、児童相談所における介入と保護者支援の担当者の分離を盛り込んでいます。その上で、参考人質疑においては、実務的には両者を単純に分離できない部分もある、また、一貫した流れの中で行うべきとの御意見もあったと承知をしています。
したがって、適切な役割分担のもとに、専門機関である児童相談所においては、児童福祉司の大幅増員などによって介入と支援に必要な専門人材を配置すると同時に、身近な相談拠点を全国市町村に設置することなどにより、児童相談所の機能強化、市町村の体制強化に努めてまいりたいと考えています。
○柿沢委員 結愛ちゃん、心愛ちゃんの悲しい虐待事件があって、今、この法案の審議になっているわけです。先日、オレゴン州で、やはりカーリーちゃんという三歳の女の子が虐待死、これを防げなかった教訓から、オレゴン州法としてカーリー法というのができたという話をいたしましたけれども、もうこういう悲しい事件を起こしてはならないという観点で、今度こそ実効のある施策を講じていかなければいけないというふうに思っています。
もう一つ、ペーパーを配らせていただいていますが、私、先般の厚生労働委員会でも、脱孤育てというキーワードをお示しさせていただきました。孤立した子育てファミリーの状況が、子育てに煮詰まって、そして、泣きやまない赤ちゃんと向き合って、気がついたら虐待につながっていってしまう、こうした孤立した子育ての状況をいかになくしていくか、地域ぐるみの脱孤育ての支援ということが必要とされているというふうに思います。
私、この言葉、端的で物すごく重要だというふうに思うんですけれども、こうした言葉を広めることによって孤立した子育てをなくしていく、こうしたムーブメントを広げていきたいと思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 脱孤育てという言葉は、孤立しがちな子育て家庭を早期に発見し、必要な支援策につなげることが重要であることが的確に表現されているように思います。
孤立しがちな子育て家庭を早期に発見し、必要な支援につなげるために、子育て世代包括支援センターの整備や、乳児のいる全家庭の訪問に加えて、育児、家事援助の実施や関係機関のネットワークづくりなどを推進しており、このような取組を通じて、子育て家庭が社会的に孤立しないように努めてまいりたいと思います。
○柿沢委員 時間になりました。
ありがとうございました。終わります。
○冨岡委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。
内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。
質疑を続行いたします。吉田統彦君。
○吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。
では、大臣、先日の続きの部分から行わせていただきたい、そのように考えます。
一昨日、ここで質問させていただきました。閣法における体罰の定義、先ほども高橋委員からこの定義に関しては質問がありました。先般、もう一度金曜日に聞かせていただきますがということを申し上げたと思いますが、今回の内閣提出法案における体罰の定義、もう一度、わかりやすく、しっかりと御説明いただけませんか。
それは、やはり本法案によって体罰をなくしていくために重要であって、明確な定義もないものをなくしていくというのは当然困難でありますから、もう一度お伺いしますが、お答えいただけますか。
○根本国務大臣 まず、今回の体罰禁止の法定化、この法定化をしたのは、痛みや苦しみを利用して子供の言動を支配するのではなく、子供が健やかに育つことについて、子育て中の親に対する支援も含めて、社会全体で啓発していくための取組の一環であります。
痛みや苦しみを利用して子供の言動を支配するのではなく、子供が健やかに育つことについて、子育て中の親に対する支援を含めて、社会全体で啓発していくための取組を進めていくことが重要であり、今回の体罰禁止の法定化はその取組の一環であります。
そして、体罰、これは今回第十四条で「体罰を加えること」、こういうことを法案に明記したわけでありますが、体罰が禁止されるべき本質、これは、子供に対して痛み、苦しみを与えようとすること、その痛み、苦しみを利用した懲戒により子供の言動を支配しようとすること、体罰が子供の心身の健全な育成の観点から悪影響があることにあると考えており、このようなことを国民にわかりやすく伝えるようにガイドラインで、私が申し上げた体罰禁止の本質、こういうことを踏まえて、ガイドラインを通じて普及、周知していきたいと思います。
また、ガイドラインにおいては、学校教育法の体罰の範囲、今、学校教育法に体罰が規定されておりますが、子どもの権利委員会における定義なども参考にしながら、体罰の範囲を定めていきたいと考えております。
○吉田委員 わかりやすくとお願いしたんですけれども。
じゃ、今おっしゃったことが体罰の定義でいいんですかね、三つほどおっしゃいましたよね、大臣。それが厚生労働省の本法案における体罰の定義というふうに理解してよろしいんですか。
今、繰り返し、水曜日の答弁でもいただきましたが、学校教育法の体罰も参考にということをあのときもおっしゃっていましたね、大臣。ただ、参考にということは、違うわけじゃないですか、全く同一ではないということですよね。
わかりやすくお答えいただきたいんですが、さっきの例示された三つのものが体罰ということでよければそれでいいんですが、もう一度確認ですが、それでよろしいんですね。ガイドラインどうこうというのは、それを書いていくということでいいんですね、大臣。
○根本国務大臣 先ほど私が申し上げたのは、体罰が禁止されるべき本質ということで三つ答えさせていただきました。そして、これを踏まえて、わかりやすく伝わるように、ガイドラインを通じて普及、周知していきたいと思っています。
そして、今、学校における体罰については、既に文科省の方で考え方を示しておりますが、学校における体罰と家庭内における体罰、これについては、それぞれ私が申し上げた本質は大きく変わるものではないと考えております。
ただ、家庭における体罰禁止に際しては、私は本質と申し上げましたが、学校と比べて生活上におけるさまざまな場面が想定されるので、ここはより丁寧に具体例を示していくことが必要であると考えております。
○吉田委員 わかりました。
大臣、ガイドラインはいつまでにできるんですかね。お答えいただけますか。
○根本国務大臣 これは法案で、今、体罰ということを規定して、そして法案の施行ということがあるわけでありますが、我々も、ここは少し、ガイドラインというのはかなり丁寧に整理していかなければいけないと考えておりますので、さまざまな専門的な知見も踏まえてガイドラインをつくり上げていきますから、その意味では、可能な限り、できるだけ早くお示しをしたいと思います。
○吉田委員 もちろん丁寧にはやっていただきたいですし、大臣のおっしゃることはわかりますが、大体いつまでと普通はわかるんじゃないかと思うんですけれども、これで法案が成立をしていった場合、いつごろまでにと。でも、ガイドラインは非常に大事な部分なんじゃないですかね。
大臣、もうちょっとはっきりと、どのような工程を踏んでということを具体的におっしゃっていただいても結構ですから。そうすると大体わかりますので。どういった工程を踏んで、逆に言うと、ガイドラインに関してはいつごろまでに結論を得たいかという大臣のその思いを伺いたいんですが、どうですか。
○根本国務大臣 本法の施行は来年四月でありますので、来年の四月が施行ということになるので、ここはできるだけ精査をして、そして速やかにガイドラインを示していきたいと思います。
○吉田委員 じゃ、年内には遅くともでき上がるという感じで、大臣、よろしいんですかね。
じゃ、次の質問に行きます。
水曜日は、初鹿委員から体罰のかなり明確な御答弁をいただきました。対比すると、どうしても閣法は頼りないなとちょっと思ってしまったところでございますので、きょうこういった質問をさせていただいた。大臣も、初鹿委員のを聞いていましたよね。結構明確に議法では定義をしていましたね。聞いてみえましたよね。だから、そういった形で、参考にしながら、ちゃんとしっかりとやっていただきたいと思います。
じゃ、ちょっと議員立法の方に質問させていただきます。
途中になってしまったんですけれども、児童相談所の数の基準の法定化等々を聞きました。そのときに、火曜日の参考人質疑で泉参考人からも指摘されていますし、しばしば委員の方からも指摘されていますが、児童相談所人材の確保及び資質の向上が大変重要であります。ここに関しては、議員立法の方ではどのように実現していくということになっていくのか、提出者にお伺いしたいと思います。
○初鹿議員 御質問ありがとうございます。
児童相談所をふやすに当たっては、そこで業務に当たる人材の確保や資質の向上が必要との御指摘は、まさにそのとおりだと思います。
そこで、本法案では、政府プラン以上の児童福祉司の増員を規定するとともに、児童福祉司の資質の確保についても配慮しています。
まず、資質の確保のため、専門性の高い精神保健福祉士及び公認心理師を任用資格に追加するほか、実務経験に関する任用要件を厳格にいたします。
さらに、一定期間の勤務経験のある児童福祉司が、指導教育担当児童福祉司として、いわゆるスーパーバイザーとして、ほかの児童福祉司に専門的技術に関する指導及び教育を行うものとしております。
なお、資質の向上については、自治体だけに任せるのではなく、国として十分な支援を行う必要があることから、本法案では、児童相談所の職員の人材の育成、確保のための国による支援、財政上の措置を規定しております。
○吉田委員 ありがとうございます。
なかなか、本当に今なり手も、人気が殺到する仕事じゃないわけですよね。ですから、本当に重要な課題であって、逆に言うと、先ほど柿沢委員からですか、児相改革なんという言葉もございましたが、そういった部分で肝になっていく部分なんじゃないかなと思いますので、ぜひここはしっかりやっていただきたい、そのように思います。
では、次にDV防止法をお聞きします。
今回、内閣提出法案同様に、DV被害者の保護を行うに当たって、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるべき機関として、児童相談所を明記してありますね。配偶者暴力相談支援センターがその業務を行うに当たり連携に努めるべき機関に児童相談所を追加するなど、DV関連の法律についても整備を進めていますね。
特に六条一項で、DVの発見者に対し努力義務とされている通報を義務化するとともに、六条二項では、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる、医師その他の医療関係者について通報を義務化しました。
これらの通報義務化の趣旨に関して、提出者に御答弁いただきたいんです。お願いします。
○池田(真)議員 お答えいたします。
現行のDV防止法第六条第一項では、DVが起きていることは外部からわかりづらいという事情等を踏まえ、その被害者の保護を図るため、広く社会に情報を求めるべく、身体的なDVの発見者に通報の努力義務を課しています。
また、六条第二項では、医師その他の医療機関者は、業務上、DVを発見しやすい立場にある反面、守秘義務があるため公的機関に通報することをちゅうちょすることも考えられることから、通報できることを注意的に規定しています。
しかし、それでもDVの被害やDVとの相互関連性が指摘される児童虐待の被害については通報に至らない事案も多くあると考えられ、また、死亡事案などの痛ましい事案がなくならないのも事実です。
このため、DVやその裏に隠れた児童虐待を防止して、何よりも大切な人の命を守るためには、冒頭御説明したとおり、通報制度をより強化して、通報を義務化する必要があると考えたところです。なお、これは児童虐待の発見者による通告が義務化されていることも参考としたものです。
通報制度の強化とあわせて、本法案では、市町村の子ども家庭総合支援拠点を必置とし、そこに婦人相談員を配置することで、配偶者暴力相談支援センターとの連絡調整を図り、DVの裏に隠れた児童虐待の防止を強化するものであります。
○吉田委員 御答弁ありがとうございます。
このDV、世の中ではやはり男性から女性に対するDVというのが多いような印象があるんですが、実は逆もまたかなりあるんですよね。
私の知っている男性の方が、女性からのDVで、御長男と旦那さんがもう毎日ぼこぼこにされて、体格差はすごくあるわけですよ、女性は百五十センチぐらいで、男性は百八十五センチぐらいあるんですけれども、女性からの暴力で、結局、離婚ということになってしまった。かわいそうに、長男まで一緒にぼこぼこにされていた。
やはり、どういう類型で起こっているかわからないことでございますので、しっかりと対応を当然していかなきゃいけない、そのように考えております。
次に、大臣にまたお伺いをしていきたいんですが、児童虐待の防止と養育里親制度の関係についてお聞きをしたいと思います。
里親制度、橋本委員と去年の夏、先ほど、かつて委員長をされていた高鳥副大臣と、高橋委員もいらっしゃいましたかね、本当に充実した勉強をさせていただいたところでございます。
日本は、やはり本当に里親制度がおくれていますよね。厚生労働省自体が発行している里親制度に関するリーフレットを見ると、里親に委託された理由として、父母の虐待が一八・六%、養育拒否が一八・二%、父母の放任八・四%。広い意味で捉えて虐待と言うべき案件ばかり、これだけでもう半数以上占めてしまっていますね。半数近くですね、失礼しました。
私自身は、日本において里親制度は、虐待事案以外でもさまざまな事情で家族と暮らせない子供たちを自分の家庭に迎え入れて、温かい愛情と正しい理解を持って養育する里親制度、これはどんどん邁進すべきだと考えます。大臣も当然そう思っておられると思います。
ただ、本当に里親制度がなかなか日本は浸透しませんね、大臣。親から離れてそもそも暮らしている子供たちの中でも、里親のもとで養育されている割合が低い。この状況は、なぜこのような状況になっていると大臣はお考えになりますか。
○根本国務大臣 里親やファミリーホームへの委託率、これについては年々着実に増加しておりますが、平成二十八年度末現在で一八・三%、直近のデータである平成二十九年度末現在では一九・七%となっております。御指摘のとおり、日本の場合はまだまだ低い、そして、欧米主要国に比べますと、日本は施設養護の割合が高い状況となっております。
日本において里親の委託率が低いということで、一方で、施設養護の割合が高くなっている理由としては、終戦直後に身寄りのない子供について現在の児童養護施設が中心となって受け入れていた経緯もある、こう思っております。
一方で、最近の里親等の委託率の状況を自治体ごとに見ると、平成二十九年度末時点で、秋田県の九・六%など低いところもありますが、新潟県では五七・五%となっておりまして、高いところもあります。里親等委託率の高い自治体では、地域における社会的養護の受皿の状況を踏まえながら、積極的な取組を行っていただいて、里親委託を推進してきているところであります。
現在、都道府県に対して、里親委託を含む家庭的養育を推進するように、社会的養育推進計画、これを二〇一九年度中に策定いただくように依頼をしております。その進捗状況を把握しながら、自治体の取組を支援していきたいと思います。
先ほど、私、新潟県が五七・五%と申し上げましたが、これは新潟市であります。ということで訂正をさせていただきます。
○吉田委員 なかなかやはり、大臣、さっき一部お答えを、戦後の話を引用されて、まだ認識として、なぜかということが明確には、ちょっと今の答弁だとわからない。
では、逆に、お尋ねしますが、大臣自身、里親になってもいいと思われますか。
○根本国務大臣 私は、里親というのは大事な制度だなと思っております。私も今政治家をやっておりますので、そこは、すごくいい制度だなとは思っております。
○吉田委員 その次に大事な問いを聞きたいので、大臣自身、里親を今やってもいいかなと思いますか。受け入れられるかなということです、逆に言うと。受け入れられないんだったら、受け入れられないで結構です、何か事情があって。それを答えてほしいんです。
○根本国務大臣 私もそういう気持ちは、私はやりたいと思っておりますが、今ちょっと政治家をやっているので、そういう能力と時間とかその辺が対応できれば、それは気持ちとしてはやりたいと思っています。
○吉田委員 恐らくそういう答えになると思うんですよ。だから、大臣、心はあるとおっしゃいましたね。やりたい思いはあると、いい制度だから。ただ、やれないというお答えですよね、今は。
なぜ大臣が里親をやれないのかということをもうちょっと教えてほしいんです。それが参考になるんですよ。なぜ里親制度が進まないか、日本に。お答えください。忙しいからで結構ですよ。
○根本国務大臣 委員も私も同じ状況にあると思いますが、例えば、私は日々国会でも対応しているし、土日だって、私は厚生労働行政の分野で今大臣としていろいろな仕事をやっておりますから、実は、客観的に、今、たった今ということではそういう状況にありませんので、そこは、思いはあるということで申し上げました。
○吉田委員 大臣、そこなんじゃないですか。やはりみんなそう思っているんじゃないですか。やりたくても、なかなか受け入れられない、お忙しい。大臣がお忙しいのはわかっていましたよ。日々、国家国民のために寝る時間も削って頑張っていただいていますから、それはわかるんですけれども、やはりそういったところがあるんじゃないかな。
だから、大臣御自身の感覚も大事にしていただきたいんですよね。日本で里親制度が進まないこと、やはり、御自身が今おっしゃったように、思いはある家庭はいっぱいあると思うんですよ。だから、その思いのある家庭の何が障害なのか、そこをある程度、個別具体的に、大まかに、やはりあると思いますよ。今大臣がおっしゃった、忙しくてなかなか政治家は難しいという思いが、多分、今大臣の御答弁の中であったんだと思います。ただ、ファミリーホームみたいな、そういったところだったらまた別にできるかもしれませんよね、大臣自身も。
だから、そういった現下の状況をよく見て、本気でやるのであれば、そういった障害を取り除く制度ができるのであれば、していかなければいけないんじゃないですか。そういうことを言いたいわけです。
この児童虐待防止における里親制度の効果、意義、ここに関しては、大臣自身どのようなお考えがありますか。
○根本国務大臣 養育里親、これは、虐待を受けたなどの事情によって親元で暮らせない子供たちに家庭と同様の養育環境を提供するという重要な役割を担っていただいております。
平成二十八年の児童福祉法改正においては、里親委託推進などを含む家庭養育優先原則を法律に規定をしております。
その意味で、これを具体化するために、厚生労働省では、より多くの方々に里親の担い手となっていただけるように、都道府県に対して、里親家庭への相談援助体制の充実を含めた、先ほども申し上げましたが社会的養育の推進計画、これを二〇一九年度中に策定していただくことをお願いしております。
○吉田委員 ちょっと趣旨とずれた答弁だったと思いますが、結構です。
大臣、先ほど、御自身の仕事がこういうことで里親ができないとおっしゃった。里親は一人でやるものでもないですから、そういったこともよくよくお考えになって、本当に日本は里親制度を進めていった方がいいと思いますよ。しっかりとやはり愛情を注いで、いい環境を子供に何とか届けてあげて、そのお子さんの健やかな生育をさせてあげたいと思いますよね。しっかりやっていただきたい。
ちょっと時間が迫ってまいりましたので、もう少し聞いてまいります。
児童相談所の体制強化についてお伺いします。
ここも類似の問いは他の委員からもございますが、火曜日の参考人の意見聴取で明石市の泉市長は、弁護士を二名常勤で配置しているとお話ししていました。
政府提出法案で、具体的にどのような形での弁護士の配置を進めるつもりなのかということを簡潔に。そして、そのときに弁護士をどのような形で個々の案件にかかわりを持たせていくつもりなのか、これも簡潔に教えていただきたい。そして、報酬をどのようになさるのかということ。この三点、お答えください。
○根本国務大臣 まず、今回の改正では、児童相談における弁護士の関与について、法律に関する専門的な知識経験を必要とするものについて、常時弁護士による助言又は指導のもとで適切かつ円滑に行うため、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うということを規定しております。
そして、弁護士の配置形態、これについては、弁護士の人数や確保方策も地域によりさまざまでありますので、今回の改正では、一律に配置方法を定めるものではなくて、地域の実情に応じて、実質的に日常的に弁護士が関与できる体制がとれるように、常時弁護士による助言又は指導のもとで法的業務が行える体制整備を行うことといたしました。
また、今の報酬の件ですが、勤務の状況などに応じて決定していただくものと考えております。国としては、児童相談所一カ所当たり約七百八十万円までを補助基準額として配置費用の補助を行っております。
○吉田委員 もう時間が迫ってまいりました。
ある程度お任せするということでいいですか、大臣。自由だということですかね、それは。どうぞ。
○根本国務大臣 常時弁護士さんが確保されるということは法律でも求めておりますが、要は、私も児童相談所でいろいろな話を聞きましたが、いろいろなパターンがあって、常勤で入るパターン、複数でローテーションでやるパターン、あるいは、ある程度の数の弁護士さんを用意していてそこと常時連絡をできるようにして法的な指導、助言もいただけるパターン。ですから、常勤にするパターンもありますし、ローテーションのような形もありますし、そこは各自治体の実情に応じてさまざまなパターンがあると思います。
ただ、常に、つまり常時弁護士が助言又は指導ができるようにということで、それはそれぞれの相談所の柔軟な対応に、私はそれぞれの相談所で決めてもらえばいいと思います。
○吉田委員 時間が参りました。
あと五、六問用意していたんですけれども、残念ですが終わりますが、実効性は厚生労働省が担保するということでいいんですよね。うなずいていらっしゃるから、いいということで質問を終わらせていただきたいと思いますが。実効性をしっかり担保してやっていただくことを希望しまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。
○尾辻委員 立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。
総理入り質疑の後なんですが、定足数が足りていないと思うんです。確認していただけますでしょうか。
○冨岡委員長 着席してください。席に着いてください。今、ちょうどかな。
定数が足りました。どうぞ。
○尾辻委員 ちょっと、私の時間が大分これで使われてしまって残念でございますけれども、きょう、修正案も出て、やるということですから、最後までしっかりと議論をさせていただきたいというふうに思います。
では、質疑の方に参りたいと思いますので、よろしくお願いします。
おとつい、私がお聞かせいただいた質問の続きをさせていただきたいと思うんですが、市町村の虐待対応窓口職員の常勤、非常勤の割合について聞いたところであります。そこで返ってきたお答えが、常勤が七三・九、非常勤が二六・一ということでありました。
さらに、この答弁のもとになった状況調査を見させていただきましたところ、政令指定都市や児童相談所の設置市、あと町村を除いた市区を見ると、大体、常勤、非常勤の割合は六対四ぐらいなんですね。都道府県別や政令市別も見させてもらいましたけれども、やはりすごく地域差が大きいなというふうに思います。ですので、非常勤が多いところだと、やはり四割ぐらいを非常勤の方が担っている。
これから、児童虐待への対応というのは市町村が非常に大きな役割を担っていただく、児童虐待を本当にここで市町村がしっかりやっていただくことになるんですけれども、その職員が本当に非常勤でいいのかというのは、私はすごく問題視したいと思っております。
一昨日紹介させていただいた市は、実はちょっと虐待事案もあったようなところなんですけれども、相談窓口の四分の三が非常勤ということでした。恐らく、このような市がほかにもあると思うんです。
児童虐待の最前線を担う人材が非常勤で、所得も低くて、まさにワーキングプアの状態になって、身分も安定しないから勤続できない、経験の蓄積もできない、こういう状況が本当にいいのかということについて懸念をしているところでありますが、このことについて厚生労働省としてはどのように考えておられるでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
市町村における虐待対応につきましては、しっかりとした体制をつくっていただきたいというふうに考えております。
その上ででございますけれども、具体的にどのような形で雇用するかにつきましては、これは各自治体の判断になりますので、各自治体において適切な対応をしていただくべきものと考えております。
○尾辻委員 自治体任せにしないようにこれはしていただきたいというふうに思います。そうしないと、例えば生活保護のケースワーカーさんなんかもそうですけれども、市町村は、どんどんと非常勤の職員、特に福祉職員が非常勤にかわっていっておりますので、ここは、今後ともしっかり追っていきたいというふうに思います。
次に、児童福祉司の配置基準と配置数の差の現状についてお伺いをしたいと思います。
お手元に三枚配らせていただきました。三枚目をごらんいただきたいんですが、平成三十年度、二〇一八年度児童福祉司の配置基準についてということで、児童相談所がある都道府県、政令市ごとの配置数と、どれだけマイナスになっているかということについて表になっております。
私の地元の大阪府、大阪市、これは配置基準の加配がありまして、大阪市では、私、今年度の分も聞きました、二〇一九年度の配置基準が百六十五名、四月一日時点での実配置の人数は九十二名。ただし、係員が異動した後、四月十五日で九名増員して、現在は百二十名だということであります。大阪府の方は、ことしですけれども、表は去年です、四月一日時点で配置基準は三百四十二人だと。実配置数が百九十九人で、百四十三人足りないというふうに大阪府は聞きました。
こういうふうに、地域によっては非常に配置基準の人数がふえた。しかし、この大人数をいきなり、急に採用するのはやはり難しいんじゃないか。私も大阪市の児相さんに行って話を聞かせてもらいましたけれども、やはりOJTによる指導も要りますし、研修というスキルアップもあるので、急に来てもらってもなかなか難しいんだということ、ここは現場からも話がありました。
いち早く増員をと願う一方で、スキルを身につけてもらうにはやはり時間がかかる。ですので、少し時間がかかっても段階的にやはりふやす方がいいのではないかというふうに私は考えます。厚生労働省としてどう考えているのか、お答えください。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
近年の増加する児童虐待に対応するためには、量と質をやはりしっかりと確保しなければならないというのが基本的な考え方でございます。
これまでも何度か御答弁申し上げておりますとおり、昨年十二月に決定した新プランにおきましては、二〇一九年度から四年間で、現在三千人の児童福祉司を二〇二二年度には五千人体制とするというプランでございます。
なかなか自治体において、御指摘のとおり、採用とかは難しいというようなお声もお聞きしておりますけれども、国としても、専門的な人材の確保をしっかりと支援していく必要があるというふうに考えております。
自治体の採用活動を支援するための補助を行っておりますけれども、そのほかに、児童相談所における組織としての専門性の確保が重要ということでございまして、積極的に児童相談所所属経験者の再配置、児童相談所OB職員の再任用、それから個々の児童福祉司等が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルでの人材配置、こういった工夫につきまして自治体にも周知をいたしております。
また、日本社会福祉士会等の専門職団体にも働きかけをいたしておりまして、こうした取組によりまして、任用要件を満たす人材の確保を図り、児相の体制強化を図ってまいりたいということでございます。
○尾辻委員 ですから、こういうような大量採用のところはやはり段階的にせざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
今回のプランは四年間のプランということでございますけれども、やはり近年の児童虐待への対応件数の増加等を踏まえますと、前倒しでの対応ということが私どもとしては必要というふうに考えております。そのための支援をしっかりと行いたいということでございます。また、専門性の向上に関しましては、今回の法案におきましても、スーパーバイザー任用要件の見直し等も行っております。
要は、若い方々がふえていきますとなかなかマネジメントが難しい、そうしますと、ベテランの方々が核になって若い人たちを支援していく、そういう体制もあわせて構築していくというようなことも含めまして、しっかりと対応をしていかなければならないというふうに考えております。
○尾辻委員 現場のこともしっかり考えていただきたいというふうに思います。大阪は特に忙しいところで、本当に新人を研修するのも難しいというところは言っておりますので、もちろんふえなければいけないんですけれども、これだけ、大阪は特に加配が多いので、やはりこういった事情があるところというのは、またそれはそれでしっかり配慮いただいたりサポートいただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。
ちょっと質問の順番を変えまして、先にLGBTのことについて、LGBTと里親また児童養護施設、一時相談所のことについてお伺いをしていきたいと思います。
お手元の資料の一枚目に、毎日新聞の記事をお配りさせていただきました。
同性カップルが里親になれるかどうかということについては、二〇一七年の四月、実は大阪市で一例、男性二人のカップルが里親になったということで、報道されております。その際、厚生労働大臣だった塩崎大臣が記者会見で、同性カップルでも男女のカップルでも、子供が安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されれば我々としてはありがたいと述べ、同性カップルを里親として容認、歓迎するような姿勢を示されました。
まず、根本大臣として、LGBTの当事者や同性カップルが里親となることについてどう捉えておられるのか、塩崎大臣と同じように思っておられるのかという捉え方についてお聞きをし、あわせて、この新聞記事の中にもありますとおり、LGBTの方々、私は里親の有力な担い手となる存在であるというふうに思いますが、毎日新聞の二〇一七年四月十六日の記事によると、川崎市、相模原、岡山の三市は、申請、これは多分里親の研修の申請ですね、申請があっても受理するかわからないというようなお答えになっていますし、新潟、京都、熊本、横須賀の四市は、同性であることを児童相談所がどう評価するかわからないというふうに回答しています。また、八自治体の担当者が、適否を判断する審議会でマイナスに評価される可能性があるとの見解を示したと報告をされています。
里親が同性カップルなどであることで子供の福祉が損なわれることはないと考えますが、それについても大臣の御見解をお伺いし、また、現状、同性カップル、LGBTの方々への里親委託は今、実際行われているのかどうかもお答えをいただきたいというふうに思います。
○根本国務大臣 委員からいろいろ御質問がありましたが、個々の里親についてLGBT当事者であるかどうか、これは現時点では把握をしておりません。
基本的には、里親については、年齢やLGBTなどを含めた属性などにかかわらず、子供に良好な家庭的環境を提供できるかどうか、これが重要だと考えています。
そして、里親登録の判断、委員御案内でありますが、これは都道府県が行いますが、国としては、必要な研修を受講していること、経済的に困窮していないこと、禁錮以上の刑に処されていないこと、保護が必要な子供への理解や熱意、愛情があることなどを満たすべきことをお示ししております。その意味で、LGBT当事者であるか否かにかかわらず、このような視点で判断されるべきものと考えております。
また、登録された里親に実際に子供の養育を委託するに際しても、里親がLGBT当事者であるか否かにかかわらず、子供の十分なアセスメントやマッチングなどを行って、よりよい家庭的な環境を提供できるようにすること、これが子供の福祉のために重要であると考えております。
○尾辻委員 厚労省の里親の要件には、こういうLGBTかどうかというのはないわけです。研修を受けているかどうかと先ほど大臣がおっしゃったとおりですが、この新聞記事の報道によると、申請があっても、つまり里親研修の申請があっても受理するかどうかわからないと言っている市があって、その入り口の段階からどうもシャッターを閉めているような、こういうことがあるわけです。私は、すごく、本当はLGBTの当事者の方々というのは非常に里親として、やはり担い手となれる方々だと思うんですね。
ですので、この辺、同性同士でもこのようにちゃんと里親研修を受けたり里親になれるんだというような発信とか、できれば通知などを出していただきたいんですけれども、いかがでしょう。
○根本国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、重要なことは、安定している家庭の中で子供が育成される環境を整えることであったと考えています。
多くの方に里親の担い手となっていただけるように、引き続いて、御指摘の同性同士の場合も含め、単身者や共働き世帯でも里親になれることなどについて、各自治体に通知するほか、幅広い周知啓発に取り組んでいきたいと考えています。
○尾辻委員 単身と共働きはあったんですが、今、大臣の答弁にはLGBTがなかったんですけれども、それは入るんでしょうか。
○根本国務大臣 多くの方に里親の担い手となっていただけるように、御指摘の同性同士、要はLGBTを含め、単身者や共働き世帯でも里親になれることについてということで私は申し上げました。
○尾辻委員 今、欧米とかEUでは、こういう同性カップルたちがやはりいろいろな、私もお会いしたことがありますけれども、例えば親御さんが薬物依存でお子さんを育てられない、そういうちょっと困難な事例のお子さんを里親として預かるとか養子縁組するとか、そういうことがあります。
日本で今、里親が足りないと言われる中で、本当にこの同性カップルやLGBT当事者の方々というのは里親の重大な担い手になるという認識を持っていただきたいと思いますし、塩崎大臣が大臣のときにお答えされた、やはり我々としてはありがたいんだ、そういうメッセージをしっかり出していただきたいと思います。
もう一度だけ大臣にお答えいただきたいと思います。
○根本国務大臣 私は、先ほども申し上げましたが、幅広い周知啓発にこれからも取り組んでいきたいと思います。
○尾辻委員 塩崎さんがありがたいと答えていただいているのに、大臣は周知啓発ということですから、ぜひとも周知啓発に頑張っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
さらに、一時保護所や児童養護施設におけるLGBTの児童についてお聞きしたいと思います。
もちろん子供たちにもLGBT当事者がいるわけです。例えば、一般社団法人レインボーフォスターケアという団体が児童養護施設にアンケート調査をされました。二百二十の児童養護施設から回答があって、四割以上にLGBTなど性的少数者と見られる子供がいたという結果が出ております。それが、二枚目のところにつけている新聞記事であります。
その中では、実は入所拒否事案も報告されている。ある施設で、MTFトランスジェンダー、つまり戸籍上男の子だけれども女の子として生きていくトランスジェンダーの児童を、児童相談所から依頼があったけれども、うちでは預かれないということで断ったと回答し、この児童は、他の施設にも断られ、養育が困難とされたはずの実家に結局戻ったというようなことがあって、実は、LGBTの子供たちが児童養護施設の中でさまざまな困難を抱えているんじゃないか。この調査の中でも、例えば周囲のからかいの対象になったとか、集団入浴で裸を見られるのを嫌がったとか、そういうような実際の話も聞こえてきております。
また、今度は一時保護の方ですけれども、一昨日の高橋委員が配付された資料にありました、厚労省の平成三十年子ども・子育て支援推進調査研究事業の一時保護の第三者評価に関する研究報告書でも、回答された百五の一時保護所のうち、「LGBT等配慮が必要な子どもへの対応」への回答として、「受入れることは難しい」という割合が最も高くて二九・五%、次いで「受入れた経験があり、対応を行った」が二七・六%という結果が出ています。
一時保護ができないとか児童養護施設に入所できない、では、この子供たちはどこに行けばいいのか。しっかりと受け入れるための取組を進めていく必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○根本国務大臣 今議員御指摘の調査結果は、今議員から御紹介いただきましたが、平成三十年度に実施した一時保護の第三者評価に関する研究報告書に掲載されていると認識しております。
この調査研究では、あわせて、一時保護所における第三者評価の手引き、これも作成しております。この評価指標においても、性的アイデンティティーへの配慮などが評価項目として設けられております。
また、特別な配慮が必要とされる子供たちを適切な環境で一時保護を行うことができるよう、今年度予算においては、一時保護所の施設整備において個室整備をする場合の加算を拡充いたしました。
さらに、三月の関係閣僚会議で決定した児童虐待防止対策の抜本的強化においては、一時保護所の環境改善、体制強化などに向けて、「一時保護を必要とする子どもを適切な環境において保護できるよう、里親や児童福祉施設への委託一時保護を含め、一時保護の受け皿の適切な整備や確保を進める。」「一時保護所が安心・安全な場となるよう、個別的な対応ができる職員体制の強化や環境整備を促進する。」こととしております。
○尾辻委員 その配慮のところには性的マイノリティーの児童も入るということでよろしいでしょうか。
○根本国務大臣 先ほど申し上げましたが、その評価指標の中で、性的アイデンティティーへの配慮などが評価項目として設けられております。
○尾辻委員 一つ、やっていくんだという話なんですけれども、やはり研修なども大事だと思うんですね。
そして、厚労省が実は一回、事務連絡を発出されていまして、「児童養護施設等におけるいわゆる「性的マイノリティ」の子どもに対するきめ細かな対応の実施等について」というのを私もきのういただきまして、それを見させていただきました。実は、中身はほとんど書いていないというか、文科省の取組、LGBT児童生徒に対する文科省の配慮を参考にしてねとしか書いていないんです。これではちょっと、余りにやはりお粗末ではないか。
今回、調査をされましたし、指標もつくられる。民間団体の調査もあるわけですから、しっかりと一時保護所、児童養護施設で受け入れるための対応について、中身を書いてもう一回事務連絡をするべきだと思いますが、これはいかがでしょう。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
今度、評価指標もできましたので、御意見、委員の御指摘も踏まえ、どのような対応が可能か検討させていただきます。
○尾辻委員 一時保護所、児童養護施設、なかなか今、現状では難しいというところもある、そこは進めていくということなんですが、だからこそ、やはり里親も必要なんです。これが最初の質問のところに返ってくるわけですけれども、当事者の里親がいれば、もちろん当事者でなくてもいいですけれども、理解があるわけですよね。それはやはり、理解やサポートがうまくいく場合もあると思うんです。それとか、虐待を受けた子供たちの中には、例えば男性が怖い、男性と一緒だとしんどいんだという子もやはりいるわけです。そうすると、女性同士の里親の方がその子供にとってはいい環境になったりもするわけですので、ここは、里親の話、児童養護施設、一時保護所のLGBTの子供たちへの対応とつながってくると思いますので、しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。
それでは、次の質問に参りたいと思います。
あと五分なので、少しちょっと順番を変えます。お聞きしておきたいことということで、ちょっとDVのことについてお聞きしておきたいと思います。
DVの相談対応をする婦人相談員の身分ですね。先ほどは児童虐待の相談の方々の常勤、非常勤の話をお聞きしました。現在のDV相談を受ける婦人相談員の常勤、非常勤の現状、また勤続年数はどうなっていますでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
婦人相談員につきましては、売春防止法におきまして、都道府県は配置が義務、市区は任意となっております。
配置状況につきましては、平成二十九年四月一日現在で、都道府県に四百六十六人、市区に九百八十一人、千四百四十七人でございます。
まず、この千四百四十七人のうち、常勤、非常勤の別でございますけれども、常勤が二百九十五人、非常勤が千百五十二人でございまして、七九・六%が非常勤、常勤は二〇・四%でございます。
また、この四月一日現在における婦人相談員の在職年数でございますけれども、まず都道府県でございますが、三年未満が四八・九%、三年以上五年未満が一六・五%、五年以上十年未満が一六・五%、十年以上十五年未満が一一・二%、十五年以上二十年未満が五・〇%、二十年以上が一・九%ということでございまして、比較的短い傾向だと思います。
また、市区におきましても同様の傾向でございまして、三年未満が四七・〇%、三年以上五年未満が二三・七%、五年以上十年未満が二〇・八%、十年以上十五年未満が六・一%、十五年以上二十年未満が一・七%、二十年以上が〇・七%でございます。
○尾辻委員 やはり八割の方が非常勤で、三年たたない人が約五割ということなんですね。これから児童虐待のこと、やはり後ろには暴力、DVなども一緒に絡んでいる話が多くなる中で、その対応をする婦人相談員の身分がこれで本当にいいのだろうか。そして、今後は会計年度任用職員にもなっていくわけですよね。そうすると、また雇いどめの話なんかも出てくるわけです。
処遇改善、そして雇いどめにならないような通知、こういうことが必要かと思いますが、いかがでしょう。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
DV被害など、女性を取り巻くさまざまな問題は、年々増加するとともに深刻化しております。婦人相談員につきましては、高い専門性と切れ目のない継続的な相談支援を行うことが求められていると考えております。
こうした実態を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、ことし三月一日の全国会議におきまして、婦人相談員の勤務実態や業務内容等を踏まえ、婦人相談員の専門性にふさわしい処遇や配置の拡充について適切に検討していただくようお願いいたしますとともに、能力のある婦人相談員が理由なく雇いどめされることがないように、継続的に雇用に配慮するよう地方団体にお願いをしております。
さらに、婦人相談員の任用につきましては、任期の定めのない常勤職員、あるいは非常勤職員、それから会計年度任用職員等のうちいずれが適当かにつきましては、職務内容、勤務形態等に応じまして、基本的には各地方公共団体におきまして適切に判断されるべきものと考えておりますけれども、厚生労働省といたしましては、引き続き適切な任用をしていただくようお願いしてまいりたいと考えております。
○尾辻委員 ちゃんと把握もしていただきたいと思います。
やはり婦人相談員の方々の身分やまた給与とかがしっかり安定しないと相談業務はできませんので、ここをしっかりお願いしておきたいと思います。
最後の一問に行きます。児童養護施設の小規模化の話を一点だけさせてください。
児童養護施設の小規模化ということで、地域のファミリーソーシャルワーク拠点を目指す、この方向性は私も賛成であります。
ただ、じゃ、現場からどういう声が聞こえてくるのかというと、定員が四十人を割ると栄養士がいなくなる、二十九人で家庭支援専門相談員がいなくなる、十五人で看護師がいなくなって、十人を割ると心理職がいなくなるということで、専門職によるファミリーソーシャルワークを担う人材がどんどんいなくなっていくという、全く逆のことが起こっているということを言っておられます。
できれば、やはり専門職配置に係る人数要件を廃止していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
児童養護施設におきまして小規模かつ地域分散化を進めるに当たりまして、施設全体の定員規模を維持しつつ、生活単位を小規模かつ地域分散化する場合におきましては、専門職の人数要件は、施設全体の人数を用いて加算認定を行いますので、現在と状況は変わらないわけでございます。
一方ででございますけれども、里親委託の推進等に伴いまして施設全体の定員規模が縮小される場合には、加算対象となる児童等の減少によりまして専門職の配置が困難となる場合も想定されます。
そういう意味では、専門職の人数要件については今後検討すべき課題と考えておりまして、今後の施設の役割、あり方を考えながら、丁寧に検討を進めてまいりたいと考えております。
○尾辻委員 しっかりと検討していただきたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、池田真紀君。
○池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いします。
最後の質問になるかもしれませんので、残された課題、そしてこれから先に具体的に進めていかなければいけないことを、市町村なり都道府県なり、あるいは現場なりが明確に今回確認ができるような質問時間にさせていただきたいというふうに思っています。
まず初めに、局長一人なので、順序が変わるかもしれませんが、御理解いただきたいと思います。
子ども家庭支援拠点と包括支援センターとの連携についてお伺いいたしますが、こちらについては、平成二十九年三月三十一日の設置運営基準の部分の通知によって、連携、調整を図るものというふうに明確に位置づけられています。しかしながら、ここの市町村間、あるいは児相管轄でも構いません、この包括支援センターや家庭総合支援拠点における、市をまたがる情報の共有といいますか連携といったものはどのようになっているでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
例えば、転居を繰り返す家庭につきましては、児童虐待のリスク要因でございまして、そうした家庭を把握した場合に、必要に応じて支援を行うことになります。そういう意味では、市町村間の連携が重要でございます。
市町村において支援を行っている家庭が転居する際の対応につきましては、連携を図りつつ対応してきた関係機関等に連絡する、あるいは転出先の市町村等に通告し、ケースを移管する、こういった対応をしております。
また、ケース移管に当たりましては、移管元の市町村は、支援を行っていた家庭の転出先あるいはこれまでの対応状況など必要な情報を提供するなど、移管先の市町村等と十分に連携を図ることにいたしております。
○池田(真)委員 ここにかかわる子供たちというのは、管内に所在をする全ての子供が対象だというふうにこの設置運営基準に書かれているわけでございますので、この取扱いというのが非常に重要になってくるかと思います。特段何か問題がある児相の管轄の移動とは違いますので、市町村間、ここの地域包括支援センターと家庭総合支援拠点の取扱いについても、今後丁寧に検証していく必要があると考えています。
そして、情報を共有すると今おっしゃいました。この共有の中身は、御本人あるいは親御さんに確認をしているのでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
これはケース・バイ・ケースでございますけれども、本人には伝えない場合もございます。
○池田(真)委員 ケース・バイ・ケースしかできない今の信頼関係というふうに受けとめるしかないかなと思います。
当然、伝えられない専門職の見解というのも必要だと思いますが、御本人に返していくセルフプラン、さらにはアドボケートということをこれから取り入れようということで言っているわけですから、ぜひこれは丁寧に推し進めていく必要があると私は考えています。
ちょっとここら辺で変わりますが、一八九がこの国会でも話題になりました。一八九と包括支援センターそして家庭支援拠点との情報共有は、一一〇番や一一九番のように、連絡をしたらすぐにつながるような仕組みを検討しているのでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
虐待を受けたと思われる子供を見つけたとき、あるいは子育てに悩んだときなどに、ためらわずに児童相談所に通告、相談できるように、覚えやすい三桁番号として「いちはやく」を設定し、広く一般に周知を図ってまいりました。
この一八九でございますけれども、児童相談所に二十四時間三百六十五日相談につながる体制を整えるということでございまして、夜間、休日で緊急性の高い一時保護等の対応が必要となるケースにも迅速に対応できるように、まずは児童相談所につなげるということになっているわけでございます。
一方で、一八九により児童相談所に通告等があったケースでありましても、子ども家庭総合支援拠点などにおきまして子供の身近な場所における継続的な支援を行うことが適切と判断される場合には、市町村に事案を送致しているということでございます。
○池田(真)委員 早く一八九の無料化をという問題もあるんですが、まず児相という壁がすごく高いということはもう重々承知しているかと思います。すぐに助けてといったときには、本当にすぐなんですね。なので、遠い児相というよりは、目の前にいる子供、赤ちゃんをすぐにおぶってくれる、だっこをしてくれる、市町村へ、せっかく地域包括支援センターそして家庭総合支援拠点といったものをこれから全地区へ配置していくということであれば、こういったところがしっかりとつながらなければ私は問題が残るというふうに思います。命を守る一一九番、一一〇番と同様の重みがある番号でなければならないというふうに思います。
そして、一八九ですが、相談と通告を分けるという検討をしているということで、今国会も、そしてその前にも私は質問させていただいて、御説明いただいていたかと思います。その後、どうなったでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
通告と相談を分ける方向で準備を進めております。現在、システム改修に向けて作業をしているところでございます。
○池田(真)委員 分けるといったときに、相談だったら、支援の対象で今すぐではなくていいな、あしたでいいなといったときには、先ほどの地域包括支援センターや子ども家庭支援拠点のところにつながるというような仕組みでよろしいでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
一義的には、まず、一つの番号ですので一カ所につながる。それは、やはり県内一カ所。そうしますと、窓口は児相で、そこから必要に応じ市町村の機関につなげていく、こういう仕組みでございます。
○池田(真)委員 今、つなぐというお答えをいただきましたので、期待したいと思います。今、利用者が、さまざまな番号を各自で把握しなければいけない、そういう状況になっていますから、つなぐというお答えをいただいたことは大変期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
そして、子ども家庭支援センターや子ども家庭総合支援拠点についての最後の質問になりますけれども、これは対象が管轄の住民なんですよね。そうすると、住登外あるいは、これからそっちの方に逃げようと思っているんだけれども、そちらはどうなっていますかという、これから身を置こうとしている場所を探そうとしている人たちは対象となるのでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
住民登録のお話かと思いますけれども、住民登録をしていない家庭におきましても必要な母子保健サービスを受けられることが重要でございます。
厚生労働省では、平成二十八年の事務連絡におきまして、母子保健に関する事業につきましては、対象者の住所要件がなく、戸籍及び住民票における記載の有無にかかわらず、当該市町村に居住している実態を確認できた場合には対象となる旨を自治体に周知したところでございます。
○池田(真)委員 住民票がない、又は逃げてくる、あるいは、これから移動しようと思っている人たちが揺れ動いていくのが、この児童虐待やあるいはDVの問題だと思っています。
こういうさなか、生活困窮者自立支援法においては、一時生活支援等のシェルター機能を持っているところにおいては、たらい回し、うちの市ではできないよというようなこともあるのが現実です。保健所もそうです。地区担当の保健師さん、地区が決まっていない、だからこそ相談に乗れないということが現実に今起きているので、さらなる実態調査、そしてこの包括支援センターがちゃんと機能するように、今後ともお願いを申し上げたいと思います。
続いての質問をさせていただきますが、転居時の連携を強化していこうというような取組があるというふうに今回受けとめております。チェックリストについて、変更した、改善した点を伺いたいと思います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
転居により児童相談所間で引継ぎが必要となるケースにつきましては、昨年七月の緊急総合対策に基づきまして、全ケースについて、転居先の児童相談所へ、リスクアセスメントシートを含めて緊急性や内容がわかる資料を移管先の児童相談所へ伝えること、緊急性が高い場合には対面等で引き継ぐこと、転居元の児童相談所は、原則、引継ぎが完了するまでの間、指導を解除しない、あるいは、転居先の児童相談所は速やかにもとの児童相談所が行っていた指導を継続することといたしております。
緊急総合対策を受けまして、転居ケースに係る児童相談所間の引継ぎに関しましては、児童相談所における業務のあり方を示しております児童相談所運営指針を改正いたしまして、全国ルールとして周知いたしました。
また、転居の際には、一時保護決定に向けてのアセスメントシート等により緊急性の判断を行うこととしておりますけれども、このアセスメントシートの項目につきましては、例えば、過去の介入や保護者に虐待の認識があるかなどの虐待が繰り返される可能性、それから、保護者への拒否感や恐れ、虐待に起因する身体的症状などの虐待の影響と思われる症状、保護者の生育歴や家族状況などの家庭環境など、緊急性や事案の状況が端的にわかる項目としているところでございます。
○池田(真)委員 単純にチェックシートというふうになりますと、素人がやるときには有効な、忘れ物がないようにというようなチェックシートだと思いますが、専門職が専門的にしっかりとかかわったときというのは、チェック項目にない、そういうことがたくさんあるわけです。だからこそ専門性が必要であって、その項目が忘れ去られてしまう、引き継がれることがないということを私はちょっと危惧しておるところでございますので、このシートの検証というのはぜひちゃんとしていただきたいんです。定期的にやっていただきたいんです。
アセスシートの方も私も拝見いたしましたけれども、これは何かジャッジシートなんですよね。虐待、問題あり家庭ジャッジシートみたいな形なので、もう少し丁寧な、内容が把握できるようなことが私は必要だというふうに思っています。
また、転居の際の、このチェックシートがなかったから、書かれていなかったからという、支援できなかった言いわけに、できない理由にならないように、それは本当にお願いしたい点であります。専門機関であるからこそ、そして、環境が変われば新たなアセスメントをするのが当然でありますので、きちっと転居先のところで専門的なアセスメントをしっかり行う。
そして、何でその情報を知っているのということで、信頼関係が壊れることもあります。きちっと、引継ぎをする際に、どこまでが御本人あるいは御家族に共有をして御納得いただいているものなのか、あるいは共有できていないものなのかといったことまでも丁寧に引き継ぐ必要があると思いますので、このチェックリストといったものが簡素化しないように、それだけはお願いを申し上げたいと思います。
引き続きでございますが、新資格化といったものが残された中で、よりによって一年という、余りにも短いことが今回の法案の中で書かれているかと思います。もっと言いますと、きょうは資料につけておりませんが、二月四日の福祉新聞でも報道がなされておりました。新たな国家資格をというふうなことでありました。
まず、この新たな国家資格の構想といったもの、一年なんですから当然おありかと思います。どこで新たな国家資格の活用をしようと思っているのかということをお聞かせいただきたいと思います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、本法案の附則におきましては、施行後一年をめどといたしまして、児童福祉司等の資格のあり方を含めた資質の向上を図るための方策について検討することとしております。
これは、昨年行われました、社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおきまして、子供の福祉に関する業務を担う人材の専門性向上のために、子供の福祉に関する国家資格を創設すべきとの御意見があった一方で、社会福祉士等を活用して養成カリキュラムの充実で対応するべきなど、審議会におきましてはさまざまな意見がございました。
しかしながらということでございますけれども、人材の専門性の向上及び具体的な方策について検討すべきという点については意見が一致したところでございまして、今後、国家資格化も含め、一定の年限を区切って引き続き検討すべきとの取りまとめをいただいたところでございます。
また、検討の範囲につきましては、ワーキンググループにおきまして、児童相談所の職員のみならず、市町村の専門人材を始め、広く人材の専門性の向上について検討が必要とされていることを受けまして、本年三月の関係閣僚会議決定におきましては、児童相談所の児童福祉司のみならず、市区町村子ども家庭総合支援拠点の職員、里親養育支援を行う者、児童養護施設等の職員、児童家庭支援センターの職員等、幅広く子ども家庭福祉に携わる者の資質向上が求められていることから、この検討に当たっては、これらの人材も含め検討すると決定しているところでございます。
この決定を踏まえまして、まずは、今年度行う調査研究におきまして海外の事例や国内の実態の把握を行いますとともに、施行後一年、これは来年四月施行ですので、そこから一年ということで二年弱あるわけですけれども、法案が成立した暁には、具体的な方策につきまして、関係者の意見も聞きながら検討してまいりたいというふうに考えております。
○池田(真)委員 資格化だけの話ではなくて、これは全体の構想が見えないということが私は問題だと思っています。せっかく、児相の中から、市町村に設置をしていこうという包括支援センターと、さらには子ども家庭支援拠点といったものを整備していく。この中で、保健師さんは配置されていますけれども、支援員というのがいらっしゃいますね、利用者支援員。こういったものを、もう少し専門性を高めていくんだというようなことであれば、高齢者でいうケアマネジャーさんのような形で、セルフプランの方々に対しても、全ての人たちに対応できるそういったマネジャーが必要だということもあるかとは思います。
でも、むやみやたらに国家資格だけ、しかも、じゃ、児相は何をするんだ、児相と市町村の役割はどうなんだということも明確にビジョンが見えないまま、単純に人口減少のある中でこういった議論だけを、当事者の声なく、専門の各現場にいる職員の声もなく、さらには利用者の声もなく進めることは、私は拙速には行わないでいただきたい。丁寧に行って、さらには、でも急ぐことなので、体制整備には、どのようにしていくのか、たくさんのアイデアがあると思いますので、ぜひ丁寧な審議をお願いしたいと思います。
まずは専門性を本気で追求するんだということであれば、すぐできることは任用資格の廃止ではないでしょうか。福祉専門職を条件に絶対にするということ。
それと、児相の中での病欠。この間にも質問にあったかもわかりませんが、疲れた人は速やかにお休み、あるいは異動するということで、本当に、希望しない職員が来たときは、職員も大変ですが、利用者も大変な目に遭うわけなんです。なので、万全に、常に情熱を持った職員が業務に向き合う、そして本当に、疲れた職員を生まないための配置も検討する必要があると考えているので、お願いを申し上げたいと思います。
そして、支援と介入の話がこの間も出てまいりましたが、こちらの中で、全体のスキームといったものは明確にあるんですか。それとも、まだないよということであれば、ないということで一言でも結構です。確認の答弁だけお願いします。
○浜谷政府参考人 支援と介入の分離でございますけれども、現状では、児童相談所の職員についても、地域の実情に応じて必要な配置がなされております。
本法案によります支援と介入の分離につきましては、具体的な運用といたしまして、一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員を分けて対応する、あるいは介入担当部署と支援担当部署を分けて対応する、こういったことなどを想定しておりますけれども、いずれにいたしましても、地域の実情に応じて、ちゅうちょなく一時保護等の介入が行われることが重要と考えております。
議員の御指摘が、児童相談所と市町村とかそういうところの役割分担の中で支援と介入をきっかり分離するとか、そういうような御指摘であるとすれば、そういった役割分担につきましては審議会でも意見が分かれたところでございまして、そこは引き続きの検討課題というふうに考えております。
○池田(真)委員 よろしくお願いします。
次の質問でございますが、アドボケート、児童の権利擁護ということでありますが、簡単ではないと思いますけれども、やらなければいけないことであります。長年忘れていたことではないでしょうか。
この表明について、どういう方法か今具体的に示すことができるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
子供の意見表明権を保障する仕組み、いわゆるアドボケート制度につきましては、平成二十八年、児童福祉法改正の附帯決議におきまして、「自分から声を上げられない子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討する」とされております。また、昨年行われました、社会保障審議会のもとに設置しましたワーキンググループにおきまして、全ての子供の意見表明権を保障するアドボケート制度の構築を目指すべきという御議論をいただきました。
具体的な枠組みにつきましては今後の検討ということでございますけれども、例えばということでございますが、イギリスの事例あるいは国内の先行事例を踏まえますと、一つは、子供の意思決定と意見表明の支援を行う、それから、子供の利益を代弁する、三つ目といたしまして、子供が必要とするサービスを獲得できるようにするための支援などが考えられるというふうに考えております。
この制度につきましては、本法案の附則におきまして、施行後二年をめどとして検討することとしておりますけれども、今後の段取りでございますが、海外における事例を含む先行事例の研究を行うなど、有識者による検討の場を設けまして、まずは、施設入所の措置等の対象となっている児童の意見表明を支援する仕組みの構築について検討してまいりたいと考えております。
○池田(真)委員 二年ありますが、まずは入所の子供たちからということであります。
これは施設長から、十年ぐらいおつき合いのあるところなんですが、改めてお伺いしたことなんですけれども、語れない背景に何があるのか。意見表明、全ての子供たちが、きちんと表明できるというわけではない子供たちが多いわけです。語らない意見といったものを尊重してほしい、こういう意見が多くありました。私自身も、さまざまな子供たちと接する中で、本当にそう思います。
ですので、このアドボケート制度をつくるに当たって、子供たちが、子供の自己責任にならないように、今回、結愛ちゃん、心愛ちゃんは明確に言葉で、文章で発信したけれども、それが受け入れられなかった。でも、彼女たちは発信できたけれども、できない子供たちもたくさんいます。ゼロ歳からの意見表明をきちっと酌み取るような丁寧な検証も行いながら、前に進めていただきたいと思います。
そして、もう時間がなくなりますので、あと二問、質問させていただきます。
子供の貧困ということで、今、貧困対策の有識者資料をということで、厚労省の見解をお聞きしたいなと思っているんです。今検討しておりますが、大臣にお伺いしたいと思います。
子供の貧困ということで、今、夏ごろ最終提言ということで伺っておりますが、これは内閣府なんですね。それで、もちろん、子供の貧困と言われたら、絶対厚労省が責任を持って内容、情報を共有してちゃんと対応するんだということだとは思うんですが、念のため、ここは重要だと思いますので、確認をさせていただきたいと思います。
○根本国務大臣 我が国の未来を担う子供の将来がその生育環境により左右されることがないように、子供の貧困対策の充実を図っていくこと、これは私も極めて重要だと思っております。
子供の貧困対策に関する大綱に基づいて総合的に推進してきましたが、今委員からお話がありましたように、現在、大綱の見直しに向けて、厚生労働省も参加している内閣府の有識者会議で、これは厚労省が参画をしております、子供の貧困対策に関する有識者、貧困の状況にある世帯に属する方、支援に携わる方など、幅広く関係者からの意見を伺いながら具体的な検討を行っております。ことしの夏ごろ取りまとめられる予定でありますが、年度内をめどに新たな大綱を作成することとしております。
厚生労働省としても、子供の貧困対策、今までもさまざまな取組を厚生労働省としてやっておりますので、有識者会議における議論を受けとめ、全ての子供たちが夢と希望を持って成長していける社会の実現に向けて、関係省庁とも連携しながら、貧困対策の推進に全力で取り組んでいきたいと思います。
○池田(真)委員 今のお言葉を信じて、絶対的に前に進めていただきたいと思います。
最後になりますが、きょう、資料に、二十三区中、練馬区ができないということで、新聞の記事をつけさせていただいたんですが、その理由の最後のところに、さまざまな理由がおありだとは思いますけれども、万が一、虐待死事件が起きたとき、区が責任を負う、対応できるのかというふうなコメントが入っています。
でも、もう一回、今回、この国会でちゃんと認識しないといけないなと思っていることは、この責任です。この責任といったものが誰にあるのか。
今までの支援サービス、法の目的にここで養護といったものが入らない理由も、第一義的には保護者だということでありましたけれども、きょうおつけしたとおり、児童福祉法の二条三項によっては、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」とあります。
国も地方公共団体も、子供たちを育てていく、そういう責任があるんだということを今国会しっかりと受けとめなければいけないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○根本国務大臣 今、委員から、児童福祉法の規定を言っていただきました。
児童を心身ともに健やかに育成すること、これは、児童福祉法の二条二項で第一義的責任を保護者にあるとしておりますが、三項で、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」と規定されております。
このため、国及び公共団体においては、まず、可能な限り児童が保護者のもとで養育を受けられるように、例えば、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターにおいて、必要な支援の調整などを行っております。さらに、虐待を受けたなどの事情によって親元で暮らせない子供たちに対しては、心身ともに健やかに養育されるように、児童福祉法第三条の二の家庭養育優先原則を徹底すべく、社会的養育を推進しております。
国そして地方公共団体は責任を負っているわけですから、そのために、国も公共団体も必要な施策を更に推進していくということだと思います。
○池田(真)委員 大臣、やりますという一言の方がよかったと私は思っています。いろいろ細かいことをおっしゃっていて、だから今までできなかったことがあるんじゃないですか。さまざまな法律や制度のはざまで埋もれて亡くなっていった命、これを今、私たちはしっかりと受けとめなければいけない今国会の審議だと私は思っていますので、最後、そこをしっかりと一言で受けとめていただきたかったなというふうに思っています。
もう一度確認をさせてください。
○根本国務大臣 きめ細やかにやります。
○池田(真)委員 本気でお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、泉健太君。
○泉委員 国民民主党の泉健太でございます。
まず、厚生労働委員会、こういった時間を与えていただいたことに感謝を申し上げます。
また、今回、この児童虐待防止法をめぐっては、各党各会派それぞれに案を持ちながら、御努力をしていただいて、一つの案に上がってきているというふうに思っておりますので、その御努力にも敬意を表したいというふうに思います。
さて、恐らくこれまでさまざまな点で御質問があったと思いますし、なるべく重複を避けて質問をさせていただきたいという思いで、きょうは文部科学省にも来ていただいておりますので、よろしくお願いいたします。
栗原心愛ちゃんの件でも、やはり、繰り返しになりますが、教育委員会や学校の対応ということが問題となりました。そういったことを受けて、学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きというものを、五月九日、文部科学省がつくって、これを全国の教育委員会やそして学校にもお届けをされているというふうに認識をしております。
しかしながら、私もこの虐待対応の手引というものを読ませていただいて、やはり、学校の側とすればまだまだ迷うところがあるのではないか、現場の先生の気持ちに立って、現場で起こり得る事態を想定して、この手引以上にどう対応するのかということがリアルに確認できる方がよいのではないか、こういう思いできょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。
それでは始めたいと思いますが、まず、児童虐待、警察には通報、そして市町村や児相には通告ということになっておりますけれども、この栗原心愛ちゃんのケースでいえば、後で親が問い詰めてきたということがあったわけです。
そして、今回、この虐待対応の手引では、それについては児童相談所や市町村の役割というふうに書かれているわけでありますけれども、改めて文部科学省に確認をさせていただきたいと思います。
家庭内の虐待を学校が把握した場合、そして、そこから児相なり市町村に通告をした場合というのがありますが、この案件で、学校がその当該保護者に連絡をとるということは許されますでしょうか。
〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕
○中村大臣政務官 お答え申し上げます。
学校が家庭内の虐待を把握した場合は、児童虐待防止法第六条の規定に基づき、速やかに、これを市町村や児童相談所等に通告しなければならないとされておりますことから、学校が当該保護者へ連絡をとることは想定されないと考えております。
また、今回の事案を踏まえ、先般、文部科学省において作成しました学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きでは、学校として虐待を把握した場合や通告を行った場合には、虐待を認知するに至った経緯や通告元に関して、学校から保護者に伝えないように記載しているところでありまして、文部科学省としては、学校における児童虐待への対応について、本手引の趣旨に基づく適切な対応が図られるよう周知徹底を図ってまいりたいと思います。
○泉委員 ありがとうございます。
今、私がこの点をクローズアップして、そして中村政務官にお読みをいただいたのは、改めてですけれども、恐らく、学校の心ある先生の中には、間に立てるものなら間に立ちたい、親にも、やはり何らかメッセージを届けることで親が軟化をするかもしれない、自分に何かできるかもしれない、そういうふうに思う学校の先生はいっぱいおられるはずなんです。だけれども、涙をのんで、歯を食いしばって、それは学校の役割ではないんだ、それが今回の趣旨でありまして、ですから、私は、あえて、当該保護者へ連絡をとることは許されるかという聞き方をさせていただきました。
今お話があったように、虐待対応の手引では、学校がこういった経緯ですとか状況については保護者に連絡はとらないということでありますので、ぜひ、全国の学校の関係者の皆様には改めてそこを御認識いただいて、虐待が疑われたりして、そして通告をされたケースにおいては、あくまで、それは児相や市町村の役割であって、学校の役割ではないということを、本日、今、厚生労働大臣と副大臣もお座りになられておりますので、ぜひとも、これは学校の役割ではないということを御認識いただきたいというふうに思います。
さて、そこからもう少し詳しく、事例の中でもあり得そうなことを確認したいと思います。
学校側が虐待を把握したケースで、しかし、実際には、幼児、児童、生徒本人が通告を望んでいないケース。確かにアンケート調査には書いた、確かに先生にはちょっと相談してみた。しかし、先生、言わないで、こういうふうな場面ができたときに、学校はどうするべきなんでしょうか、お答えください。
○中村大臣政務官 学校が家庭内の虐待を把握した場合は、児童虐待防止法の六条に基づき、速やかに、これを市町村や児童相談所等に通告しなければならないとされていることから、子供本人が通告を望んでいない場合であってもこれを通告しなければならないというふうに考えているところであります。
なお、虐待が疑われる場合において、通告するかどうかの判断に当たっては、子供は自分の置かれている状況が客観視できず虐待されていると認識していないことや、子供の安全、安心が確保されておらず虐待を受ける危険性がある状況では虐待されているとは言い出せないこと、また、どんなにつらくても自分から保護者を悪く言うことができないこと、保護者から見捨てられる不安を持っていることなどがあり、子供本人の言葉だけで判断しないように留意する必要があると手引に記載しているところであって、速やかに、学校は市町村や児童相談所に通告しなければならないと考えているところであります。
○泉委員 今改めて確認をしたかったのは、要は、被害を受けている本人が通告を望んでいない、ないしは、本人が学校側が気づいていることを認識していないケース、これにおいても学校は通告をするケースがあるということですね。
それは客観的に先生方が、管理職、養護教諭、そして学校担任、学年主任、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、さまざまな学校関係者がおりますが、これは決して児童本人、被害者本人の同意を必要とするものではないということ、ここもぜひ明確に認識をしていただきたい、また、学校の現場にもお伝えをいただきたいということの二点目であります。
そして、三点目になります。
今度は、同じ学校に、あるいは教育委員会という広い意味で見れば同じ地域の別の学校にかもしれません、兄弟姉妹がいるケースにおいて、その兄弟姉妹には学校側が虐待の事実を児相なり市町村に通告をするにおいてどのように説明をなされるのか、ここについて確認をしたいと思います。
○中村大臣政務官 学校は、子供の安全を最優先に考え、虐待が疑われる場合は確証がなくとも速やかに市町村や児童相談所に通告しなければならないところであります。通告する事実を本人や兄弟姉妹に伝える必要はないものというふうに考えております。
○泉委員 厚生労働省にもお伺いしたいんですが、同じ学齢期のというか学校に通う兄弟姉妹がいる場合には、その扱い、例えば一時保護を判断するケース、例えば妹や弟や兄や姉が一時保護の対象になる、しかし、きょうだいはその場合どういった扱いになるというふうに考えてよろしいでしょう。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
児童虐待は、多様な問題が複合的、連鎖的に作用し、構造的な問題となって発生をするところでございます。
このため、虐待通告等を受けた子供の家庭にきょうだいがいる場合においては、虐待を疑われる子供の安全確認と並行して、きょうだいについても速やかな安全確認を実施しているところでございます。
また、その安全確認の結果を踏まえて、必要な場合は、速やかに、一時保護所による安全確保を最優先に対応することになっております。
その際、きょうだいについて直接虐待が行われていることが確認できなかった場合においても、虐待の場面に直接又は間接的に遭遇しており、きょうだいに対して心理的外傷のケアが必要であることもございます。
いずれにしましても、通告のあった子供のみならず、きょうだいも含め家族全体の状況に着目して支援を行う必要がある、そのように考えております。
○泉委員 まさに兄弟姉妹にも着目して支援をしていただく必要があるんですが、わかればちょっとお答えいただきたいんですけれども、兄弟姉妹に対する連絡ですね。学校にいるかもしれないわけですが、例えば学校にその時間いる兄弟姉妹に対して、学校の先生が、実は、例えば弟が保護されることになったからというふうに言ってしまうことは、ある意味通告の主体だとかそういったことが判明してしまうことにもつながるわけであると思います。
そういった意味でいえば、これまでの虐待対応の手引の原理原則からいけば、兄弟姉妹が学校にいようが、それとも家にいようが、その兄弟姉妹に対する連絡というのは、基本的に児相があるいは市町村が行うものというふうに推測をされますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
○中村大臣政務官 通告によって幼児、児童、生徒が一時保護された際には、児童相談所が保護者に速やかに連絡することとされておりまして、学校が説明するものではありません。ですから、学校が兄弟姉妹等にお話をするということはないわけであります。
○泉委員 ありがとうございます。
ということを厚生労働省には御認識いただきたいんですが、今の御答弁でいえば、ちょっと四角四面な話のように聞こえるかもしれませんが、学校内に兄弟姉妹がいたとしても、一義的には児童相談所に責任があって、もちろん、児童相談所から学校に連絡があって、ちょっと当該兄弟姉妹を別室に呼んでくれますかと、それぐらいの話はあるかもしれませんが、兄弟姉妹に伝えるのも児相の役割であるというのが今回の、実は、ちょっとまどろっこしいかもしれませんが、線引きである、こういう理解をぜひしていただかなくてはならないというのが、今回の虐待対応の手引に書いてあることであるということを共有したいと思います。
さて、実際に学校の先生の立場になれば、保護者が急にやってくる、そこにたまたまいた先生が詰め寄られるケースも当然あるわけですね。必ずしも担任がその場にいないかもしれません。あるいは、校長先生がいないかもしれません。教務主任、学年主任がいないかもしれません。そういう中で、誰が対応するかというのは本当にわからないところからまずスタートをすると思いますが、通告された側の保護者から、学校に対し、さまざまな確認のための連絡や面会を求められた場合に、学校側は誰が窓口となるのか、また学校側はどのように答えればいいのか、お答えください。
○中村大臣政務官 一時保護された場合については、児童相談所が一義的に対応することになりますので、学校としては、児童相談所と連携をしておきながら、保護者からのお申出については、児童相談所の方にきちんと確認をするように促すということになりますが、一時保護でない場合も保護者から説明を求められることがあろうと思います。そういった場合においては、管理職が前面に立った組織的対応、関係教職員によるチームとしての対応をすることが重要であります。
そして、具体的には、校長等の管理職のリーダーシップのもとに、通告時や通告後の保護者への対応方針をしっかり統一しておくこと、保護者との調整を行う教職員の役割分担を定めておくこと、また、保護者対応の窓口につきましては、それぞれ、担任の先生が信頼ある場合等々ありますので、個別の事案に応じて、学級担任、生徒指導主事、校長等の管理職などが窓口となって、チームとして対応されることが望ましいと考えております。
いずれの場合においても、対応が難しいケースについては複数の教職員で対応することが重要であるとともに、学校だけで対応できない事案については、児童相談所、教育委員会等が連携して対応することが望ましいというふうに考えております。
○泉委員 そこはチームとして対応するとか、複数の教職員で面会、面談をするとかいうお話だったんですが、実はちょっとそこは違うのではないのかなというふうに思うんですね。
といいますのは、対応してよいのかというところがそもそものスタートだと思います。ですから、もちろん一人で先生が立ち向かう必要はないんですが、基本的には、大原則は、お答えできません、我々はお答えできる立場にございません、我々は何も情報提供することができません、児童相談所にお聞きくださいというふうに言わざるを得ないはずなんです。そうでなければならないわけなんです。
ですから、学校側が、チームで対応しますではなく、私はひたすら、全国の学校の皆さんに改めて知っていただかないと、学校は対応しなきゃいけないのかということに今の話だとなってしまいますので、そうではないんだと。学校側は、これも対応したい、いつも別なことではおつき合いしている保護者なんだから、できれば少しお話もして、気持ちもやわらげてあげたい、そういう気持ちもあるかもしれませんが、事虐待のことにおいては、学校の先生方は保護者に対応してはならない、それがこの手引の趣旨であるということでありますので、ぜひ、児童相談所の連絡先をやはり保護者に伝えるまで、そこまでが原則なんだというふうに確認したいと申しますが、それでよろしいでしょうか。
○中村大臣政務官 保護者から問われた場合ですけれども、一時保護は児童相談所の判断でありますので、学校が決定したものではない、児童相談所に問い合わせてほしいというふうに、一時保護が専門機関の権限や責任で行われていることを明確に伝えることが重要だというふうに考えております。
一時保護に至らない場合で、突然来る場合もありますので、何の連絡もなく来る場合もありますので、そうした場合のことを申し上げた次第です。
以上です。
○泉委員 そうした場合も、不当な要求を突きつけられて、長時間先生が拘束をされて根負けしてしまう、それが実は前回の心愛ちゃんのケースであったわけなんです。だからこそ、全国に知らしめなければいけないのは、保護者に対しても、一般社会に対しても、学校はそのことにお答えする立場ではないんですということをもう明確にしなければいけない、そういうことだと思います。
あくまで、通告があった以上は、その先の相談、対応は児相や市町村の役割というふうにしたわけですから、ぜひ、保護者に学校の側が強いプレッシャーを受けることがないようにしていただきたいというふうに思います。
さて、もっと細かい話で、例えば、学校に置いてある当該児童生徒の持ち物を親が引き取りたいといった場合にどうするのかという話もあります。子供にとっては大切な私物でありますが、親が一時保護された子供の物を勝手に引き取りたいというようなケースもあるかもしれない。これも、そんなことは許さないということでよろしいですね。
○中村大臣政務官 一時保護期間中の幼児、児童、生徒の持ち物の取扱いについては、子供の安全、安心を最優先に考える必要があります。
例えば、子供の安全を確保するために、学校に通学、通園させずに児童相談所の一時保護所で保護し、一時保護所内で学習を行わせることがありますことから、教科書など一時保護中に必要なものを基本的に子供に所持させるということが一つの判断になろうと思います。
また、子供のノートや作文、学校の教室に張ってある作品など、そうしたものから子供が通告の情報元であることがわかってしまうような場合もありますので、情報元が伝わらない観点から、保護者に返却することはないようにということで手引の方で徹底をしているところであります。
持ち物の取扱いについても、児童相談所とよく連携して判断していくことになろうと思います。
○泉委員 最後に、一つだけ提案をさせていただきたいと思います。
一時保護所、全国に百三十六カ所ございます。そこでは、事実上、学習環境がほぼないに等しい状態となっております。そういう中で、学習指導協力員と呼ばれる方が、一部の一時保護所に来て、できる限りのことはしておりますが、全部の一時保護所に配置されているんでしょうか。
私からお願いしたいのは、何かボランティアの方がおられるというふうにお伺いしておりますので、ここについてはやはり、一時保護所に保護される期間が、実は、基本二カ月までとされているにもかかわらず、三カ月、六カ月というふうな子供たちもいる。そして、学校に通えない状態で、多少のプリントを解きながら生活をしているという状態が続いている子供もおります。
ぜひ、この学習指導協力員を全一時保護所に配置をする、その予算措置、こちらもお願いしたいと思いますが、御答弁をお願いします。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
一時保護された子供の学習環境の向上は極めて重要だと思っております。
昨年度、学習指導協力員の配置に係る補助単価の引上げなど、財政支援の拡充を図りました。また、こういった一時保護所における学習指導協力員の配置とあわせまして、子供の状況はさまざまでございますけれども、できればもともと在籍している学校に通学できる環境を整備するということも重要だと考えておりまして、その場合の付添員の配置についても行っております。
さらに、ことし三月の関係閣僚会議決定におきましては、個別的な対応を可能とするための職員体制の強化や環境整備を行うこと、適切に教育を受けられるよう、里親の活用も含め委託一時保護を積極的に検討するほか、子供の安全確保が図られない場合等を除き、学校等に通園、通学させ、必要な支援を行うこと、こういった決定をしておりまして、この決定に沿って、学習環境の向上に努めてまいりたいと考えております。
○泉委員 ありがとうございました。
〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕
○冨岡委員長 次に、岡本充功君。
○岡本(充)委員 きょうも閣法について質問させていただきますが、さまざま、これまでいろいろ聞いてきましたが、少し総括して確認をしていきたいと思います。
まず、一点目。大臣、児童相談所の設置は、今後、数をふやしていく。その数をふやしていくというのも、人口が多いところ、そして虐待や非行のケースが多いところ、こういうところの数を勘案しながら積極的にふやしていく、こういう理解でいいか、端的にお答えいただきたいと思います。
○根本国務大臣 今回の改正では、児童相談所の管轄区域について、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする旨の規定を新設いたしました。
具体的な基準設定については、過去、人口五十万人に一カ所程度という基準があったことを踏まえつつ、今後、地方団体などとも協議しながら検討していく予定であります。
この協議に当たっては、この法案審議において、管轄人口が多過ぎる児童相談所があるのではないか、これを踏まえて、きめ細やかな対応ができるようにする必要があるのではないかという御指摘も踏まえて、これはしっかり対応を検討していきたいと思います。
要は、虐待予防、早期発見から虐待発生時の迅速的確な対応を切れ目なく行うとともに、一つ一つのケースに対して一層きめ細やかな対応を探ることが可能となるようにしっかりと検討してまいります。
○岡本(充)委員 一つの県の人口を超えるような管轄地域を持つ児相があるわけでありますね、現に。そういうところには速やかに対応ができるように、来年度予算でつけるぐらいの勢いで頑張っていただける、こういう理解でいいですか。頑張るという決意はちゃんと言っていただけますね。
○根本国務大臣 今後、地方団体とも協議しながら検討していきますが、しっかりと我々は後押しをしていきたいと思います。
○岡本(充)委員 違う。私が言っているのは、私が先ほど言ったような決意でやるということでいいですね。決意があるんですか、ないんですか。大臣、そんな紙を見ている場合じゃない。秘書の方を見ている場合じゃない。大臣の決意を聞いているんですから。
○根本国務大臣 今、いろいろと委員からお話がありましたが、しっかりとやってまいります。
○岡本(充)委員 私の指摘のようにやっていただけるということですから、来年の予算を注目したいと思います。
さて、じゃ、児童福祉司のさらなる増員。強化プランをつくったけれども、一人で抱えているケースが多い。私も、児相のスタッフの声を聞いて、本当に大変だと思いました。
私も病院で働いていて、思い起こすと、一人で入院患者さんが二十人を超えてくると、やはり、だんだんだんだんケースが混乱してくるんですね。三十人、四十人になってきたら、恐らくもっとなるんだと思います。四十人というだけでもなかなか厳しいなと思っています。
児童福祉司のさらなる増員は絶対に必須です。十二月に決めたプランより更にふやしていくために全力を尽くしていく、来年度予算でこの人員確保を図るために、私たちは、あとプラス一、つまり、児相が二百少しありますから、あと二百少しの人員をふやすことを法律案に盛り込んでいますが、こうした人員増を目指してさらなる努力をされる、この理解でよろしいですか。大臣、これも決意です。どうぞ。
○根本国務大臣 初年度に一気に千七百人程度増員するなど、体制の抜本的な強化に前倒しで取り組むこととしております。
まずは、地方公共団体における人材確保が着実に進むよう、国としても支援してまいります。
加えて、来年度以降、一人当たりのケース数が過重なものとならないよう、実態を踏まえた上で、必要な増員について引き続き検討していきたいと思います。
○岡本(充)委員 それは役所が書いたペーパーです。大臣の決意を聞いているんです。
いいですか、大臣。どれだけ大変なのかということを想像してみてくださいよ。物すごく大変な仕事をしていますよ。しかも、極めて重要です。政府としてプランはつくりました、閣内でいろいろな調整をしました、やったんだと思います、そしてこのプランが出てきたけれども、しかし、野党からこういう指摘もあった、この委員会での審議もあった、これを踏まえれば、さらなる増員をしていかざるを得ないだろう。もうわかっていただいたと思います。
そういう意味で、大臣として、この十二月の計画をもちろん前倒ししていただくのは結構ですが、でき上がった絵姿は、更にふやすことを含めて積極的に取り組んでいく、その決意があるのかどうかを聞いています。いかがですか。
○根本国務大臣 当然、私は積極的に取り組んでまいりますが、とにかく、二〇一九年度、これは前倒しで千七百人程度、あっ、千七十人程度増員することにしました。これは、公共団体における人材確保が着実に進むように支援していかなければいけないし、加えて、来年度以降も、実態を踏まえた上で、一人当たりのケース数が過重なものとならないよう、必要な増員について検討してまいります。
○岡本(充)委員 大臣、最後、読まれているけれども、そこを踏み外さないように注意深く答弁されているのはわかるけれども、だけれども、政治家としてやはりどうするのかですよ。前倒してやるんだから、前倒してやった分、さらにその後に同じペースでふやしていくということが可能になるわけですよ。そういう意味では、頑張ってふやしていくという決意だ、こういう理解でいいですねと聞いているんです。結構ですというなら、結構ですで結構です。短く端的に、ペーパーではなくて、大臣の思いを聞いています。
○根本国務大臣 まずは前倒しで千七十人と、これは一気に引き上げました。そして、そこは自治体としっかりと協議しながら、そして実態を踏まえた上で、来年度以降、さらに必要な検討をしていきたいと思います。
まずは千七十人、これを自治体と協議してしっかりやりたい、こういうことであります。
○岡本(充)委員 さらなる検討をしていただけるという理解で、大変心強く思っていますので、ぜひやっていただきたいと思います。
では、児相の職員や市町村の職員の、前回もやりました研修。正直言って、時間がかかればいいというか、時間が長ければいいというものでもないと思いますし、なかなか難しいと思います。ただ、いろいろなシチュエーションが起こる。残念ながら、例示を習っても、その例示どおりの事態が起こるとは限らないわけです。例示とはちょっと違うケースを含めて、臨機応変に対応しなきゃいけない、そういう部分があると思います。
そういう意味で、研修は、どれがいいのか、どういうふうにあるべきなのか、やはり不断の見直しをしていかなければならないと思いますが、十分ないわゆる研修をしていくこと。
また、人事ローテーションで、あるとき突然、これも、私も調査に行って、ある市で聞きました、つい先日まで全然違う部署、その人は同じ市の環境部局から児童福祉主管課に移ってきた、こういう人がいました。もちろん、人事で動いて、新たな人材がこうした知見を持って取り組んでいただくことは重要だと思いますが、こうした全く違うところから来る職員もいるところでありますから、そういう意味で、児童福祉主管課で働く人のどういうようなキャリア形成が望ましいのか、こういうことも総務省と相談をしながらきちっとつくっていくべきだと考えますが、これについてもしっかり取り組んでいただけるという理解でよろしいでしょうか、端的に答えてください。
○根本国務大臣 まず、研修は非常に大事ですから、特に平成二十八年度の児童福祉法改正、これは、研修の受講が義務づけられました。今、到達目標やカリキュラム、これを通知で示しておりますが、都道府県等においては、このカリキュラム等に基づいて必要な研修が実施されるよう、周知徹底を図っていきたいと思います。
委員も、やはりきちんと実践に近い研修、研修の内容の充実が必要だ、こういうお話がありました。自治体で実施されている研修の実態を把握するとともに、自治体で実施される研修がより効果的な内容となるように、先進的な事例の周知など、必要な周知を行って、支援を行っていきたいと思います。
○岡本(充)委員 それは人事のローテーションのあり方も含めて考えなきゃいけませんよ。
それから、もう一つ重要なのは、私は自分のいろいろな経験の中で会社の産業医なんかをやっていますけれども、産業医も研修があるんですよ。座学の研修というのももちろん必要ですけれども、やはり、いろいろな会社に行って実地研修というのがあるんです。この実地研修というのは非常に有意義なんですね。
やはりこうした実地研修を取り入れるとか、それから、先ほども大臣からありました、前回私が指摘をしたように、一部の都道府県では余り適切とは言えない、こうした研修の実態を私は明らかにしたわけであります。そういうこともあるわけでありますから。私が調べた県はわずかです。四十七都道府県全部は調べられませんでした。しかし、その私がピックアップした中に出てきたわけです。そういう意味で、きちっとそういったところもしっかり見ていただきたい。
大臣、大丈夫ですね、この二点。どうですか。
○根本国務大臣 人事ローテーションも大事だと思いますし、自治体で実施している研修の実態把握、本当に、岡本委員が前回も見せていただきました。
これはやはり効果的な内容となるようにしっかりやっていきたいと思いますし、岡本委員が福島県の事例を見せてくれたので、私も福島県のこの担当研修のプログラムを見ましたら、岡本委員がおっしゃられるように、要は、講義と同時に演習というのが結構入っておりました。
やはり、それぞれ県によって研修の中身は確かにばらつきがあるのではないかと思いますので、そこは、実態を把握するとともに、岡本委員がおっしゃられるように、効果的な内容になってしっかりと質を担保してもらう、これが必要だと思いますから、ここはしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○岡本(充)委員 次は、児童福祉司一人当たりの業務。
これは先ほどの話にちょっと戻るんですけれども、四十ケースはそれでも多いという話をしましたが、しかし、いわゆる四十という数は、これは何も虐待ケースだけではありません。非行事案も含めて四十ケースを超えてくると、さっきの話で、私は、とてもじゃないけれども、混乱してくると思います。
そういう意味で、児童虐待のケースがふえるだけでなく、こうした非行ケースを含めて四十ケースを超えないような取組がやはり必要だと思いますが、こうした四十という数字を勘案しながら児童福祉司の増員を図っていただける、こういう理解でよろしいですか。
○根本国務大臣 児童福祉司が、一人当たりの業務量を減らして、よりきめ細やかにケースワークが行えるようにすること、これは重要であります。
新プランをつくりましたが、新プランにおいては、児童福祉司一人当たりの標準的な業務量について、児童虐待相談件数及びそれ以外の相談を合わせて五十ケース相当であった配置基準、これを四十ケース相当となるように見直しを行うこととしております。
そして、二〇二二年度までに二千二十人程度、児童福祉司を三千二百四十人から増加させることにしておりますが、ここは、人口当たりの基準に加えて、平成二十八年十月から、虐待相談対応件数の増加による業務量の増加が著しいことを踏まえて、虐待相談対応の発生件数が全国平均と比べて四十件多くなるごとに児童福祉司を一人上乗せ配置する仕組みとしております。その意味では、児童虐待相談対応ケースについて、平均四十ケース相当になるように、この四十件は設定しております。
さらに、今後、非行ケースなどの虐待以外のケースが多くなって、児童福祉司の一人当たり業務量が過重になるなどが生じた場合には、実態を踏まえた上で、一人当たりのケース数が過重にならないようにする観点から対応を検討してまいります。
○岡本(充)委員 大臣、児童虐待ケースと非行ケースを合わせて過重にならないようなケース数というのは大体どのぐらいだと考えているんですか。私はそれが四十だと思っていたんです。どうですか。
○根本国務大臣 今、私、加算のところを申し上げました、加算のところ。
加算のところは、現在は虐待相談対応の発生件数が全国平均と比べて四十件多くなるごとに、こうやっていますが、今後、非行ケースなどの虐待以外のケースが多くなって業務量が過重になることが生じた場合、これは実態を踏まえた上で、そこのところは一人当たりのケース数が過重にならないように、そこは……(岡本(充)委員「過重とは幾つなのかと聞いているんです」と呼ぶ)要は、今のところは、児童虐待件数が四十、それで加配するとなっていますが、委員の御提案、お話もありますので、そこは少し柔軟に考えていきたいと思っております。
○岡本(充)委員 いや、非行のケースも含めて何とか四十でおさまるように努力をしていくという理解でいいかと聞いているんです。いいんですよね。
○根本国務大臣 基本的にはそのとおりでいいんですよ。そのとおりでいいんです。
○岡本(充)委員 そうです。もうこれはやっているんですから、お願いしますよ。後ろにレクに来た人もいるわけですから、ちゃんと頼みますよ。
それでは、リスク評価のことについて次に聞きます。
さらなるリスクアセスメントをしていく必要があると思うんです。本当にこれは難しいですが、これからAIも出てきますから、もっとAIを活用するなんという方法もあるかもしれません。しかし、どういうリスクアセスメントなのか。ただ一時保護をするためだけではない、それ以前にでもそのケースのリスクを評価していくことが必要です。
今は一時保護に関してのリスクアセスメントという形になっていますが、事態に応じてリスクアセスメントができる、そういうアセスメントなんかも必要だと思います。
もちろん、これは私の提案だけであって、もっといろいろな人の意見を聞きながらつくっていくという必要があると思いますが、リスクアセスメントのための工夫、そしてやり方、手法、検討して実現をしていくという理解でよろしいですか。
○根本国務大臣 子供虐待の発生の予防や早期発見、対応のためにはリスクを的確にアセスメントする、これが必要だと思います。そして、子供や家庭の状態の変化を把握して、これを支援にかかわる関係機関が共有して、変化に応じた支援を行うことが必要であります。
今年度の調査研究で、アセスメントの実施状況の調査とか、あるいはアセスメントシートの信頼性、妥当性についての検討、あるいは、これらを踏まえたアセスメントを適切に行うための指標や手法の見直しに取り組むこととしておりますから、委員のお話のとおり、状況の変化がきめ細かく把握できて、関係機関が共有できるようなアセスメントのあり方、これを研究していきたいと思います。
○岡本(充)委員 それには、やはり、我々は、例えば配偶者というかパートナーへのDVの問題だとか、それから、これは前から私は言っているんですけれども、虐待の兆候をどうつかむかとか、それから特定妊婦への支援や特定妊婦へのアクセスのあり方だとか、こういったところも論点になると思います。ぜひ、こういうところも踏まえてリスクアセスメントのやり方を考えていただきたい。
これは要望です。大臣、お願いできますね。
○根本国務大臣 私もリスクアセスメントというのは重要だと思いますから、要は、状況の変化がきめ細かく把握できて、関係機関が共有できるようなリスクアセスメント、これはしっかり、どういうリスクアセスメントが必要なのかというところは取り組んでいきたいと思います。(岡本(充)委員「私が指摘したことも踏まえてやっていただくか」と呼ぶ)委員が指摘いただいたことも含めてさまざまな課題があると思いますので、そこはしっかりと検討していきたいと思います。
○岡本(充)委員 きょうは話が早いですね。いつもはこうやって一問聞くのに十五分ぐらいかかるんですけれども、大分話をきちっと聞いていただいて感謝ですけれども。
さて、きょうは警察庁にも来ていただいています。このリスクアセスメントで得られた情報を警察ではどういうふうに対応していくか、それを活用していくつもりなのか、それをちょっと聞きたいんです。
つまり、この家はちょっとリスクがあるんじゃないですかとか、この子供にはこういうリスクがあるんじゃないですか、虐待の兆候があったようですよ、こういう情報を要対協などで今得たときに、現時点ではこんなことをやっている、これからはこうしていきたい、今はこうしているけれどもこうしていきたい、こういうようなことがあるのであれば、お答えをいただきたいと思います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
児童虐待事案につきましては、事態が急展開して重大事案に発展するおそれがあることから、児童の安全確保を最優先として、警察におきましては、認知の段階から、事案の危険性、緊急性を的確に判断し、児童の安全確保、検挙等の措置を迅速的確に講ずることができるよう、刑事部門と生活安全部門とが連携して対処するための体制を構築するとともに、DV事案等ほかの人身安全関連事案との関連も踏まえて、警察本部の対処体制の指導のもと、組織的に対応しているところでございます。
そして、児童相談所から児童虐待の情報の提供を受けた場合におきましても、その内容を確認した上で、必要に応じて、児童相談所に対しまして詳細を確認したり必要な資料の提供を求めるとともに、警察における過去の取扱いの状況やあるいは直接被害児童の状況を確認するなどいたしまして、警察の保有する情報とも照らし合わせて、こうした情報を総合的に勘案した上で、警察として、事案の状況を確認して、事案の危険性、緊急性や、事件化すべき事案についての適切な判断に努めているところでございます。
今後とも、さまざまな情報につきまして、的確に児童相談所等を含めた連携を図りながら、事案の危険性等に応じた適切な対応をとってまいりたいと考えております。
○岡本(充)委員 これまでの児童虐待で亡くなられたケースについても、要対協で取り上げられたものは何例かあったわけですよ。そこには警察署の方も出席していたんだと思います。しかし、結果としてそれが事件につながっている。警察として未然に何らかの対応をとったかどうかは、ここで一々個別のケースには答えられませんと答弁するということはわかっているから聞きませんが、結果としてこういう結果になっているということを重く受けとめて、やはり工夫をする必要があるということを言っているんです。
今までどおりではまずいんじゃないか、こうしたリスクアセスメントを新たに厚生労働省がすると言っているわけですから、それを踏まえてどういう対応をするのか、リスクに応じた対応のあり方を、もちろん表に出せるかどうかは別として、警察の中でも協議をし、検討するべきだということを言っているわけでありますが、やっていただけるのでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
先ほど御指摘がございましたリスクアセスメントの検討状況等も踏まえながら、私どもとしても、より的確な事案の危険性の判断等ができるように努めてまいりたいと考えております。
○岡本(充)委員 ぜひ工夫をするべきだと思いますよ。結果として、もちろん事件にならずに防げているものもあるのかもしれませんが、防げていないものがやはりあったわけですから、それを踏まえて、ぜひ、今、適切に検討していくということですから、やっていただきたいと思います。
それでは、もう一つ、最後に、〇―一歳児の虐待死亡が非常に多くて、私も本当に心が痛いと思っています。
正直言って、先ほど特定妊婦の話もしましたけれども、どうやって望まない妊娠を減らしていくのかというのは本当に難しい課題だと思います。
一方で、赤ちゃんポストというものができてきて、一部の地域ではこうした受入れも行われています。そろそろ、評価をしながら、これを広げていくのかどうするのか、判断するべきときに来ているんじゃないか。わざわざ飛行機に乗ってその病院まで行かなきゃいけない、こんな話をテレビでも見ました。
厚生労働省として、この評価は今どうなっていて、これからどういうふうにしていくつもりなのか、御答弁をいただきたいと思います。
○根本国務大臣 さまざまな事情で子供を育てることが難しいケースもありますが、どんな事情があっても、子供の命は社会全体で救わなければならないと思います。
子供を置き去りにすることはあってはならないことですが、「こうのとりのゆりかご」、平成十九年の運用開始以来、百三十人を超える多くの命が救われたという事実を重く受けとめております。
一方で、匿名で子供を預かる窓口、いわゆる赤ちゃんポストについては、子供にとっては、出自がわからない形で預けられ、また、匿名での安易な預け入れや、預け入れを前提とした自宅等での母子ともに危険な出産を助長するおそれがある一方で、預けることによって虐待や死に至るようなケースを救うことができる可能性もあって、これは大変難しい課題だと思います。
厚生労働省としては、いわゆる赤ちゃんポストに預けざるを得ない状況にならないように、予期せぬ妊娠に対応すべく、教育や相談体制の整備などを進めていきたいと思います。
検討状況の方は。赤ちゃんポストはそれでいいんですか。じゃ、一回ここで終わります。
○岡本(充)委員 大臣、そこまでは役所答弁なんですよ。僕が聞きたいのは、これからどうしていくのか。だから、いいところと悪いところはあるんです。でも、悪いところをどういうふうに乗り越えて、やはり課題があるわけですから、それをやっているのが十二年もたっているんだから、そろそろ考えて。役所の答弁ではなく、これは大臣の決意ですよ。
大臣、答弁の紙を一生懸命見ず、こっちを見てください。ぜひ、大臣、そこは大臣の決意ですから、やはりこれはきちっと整理をして。いや、いろいろな課題はあるんですよ。でも、これをやはり役所の中でいろいろな有識者の皆さんと議論しながら、課題を乗り越えて、どうしていくのがいいのかという答えをそろそろ出すべきじゃないかと言っているんです。
今ここでは答えがないんです。ぺらぺら紙をめくってもないです、答えは。ですから、大臣、これはやはり検討をきちっとして、評価を決めて、これから先どうしていくのか、これをやるべきだと私は言っているわけですから、ぜひそれに向けて歩を進めていただきたい。どうですか。
○根本国務大臣 私は、赤ちゃんポストの抱える課題、先ほど申し上げました。そして、大変困難な課題だと思います。
我々が今何をやっているか、これは過去においても議論がありました。そして、予期せぬ妊娠をした女性への支援のあり方、これについては諸外国でもさまざまな施策が行われておりますから、その実態を調べるために、妊娠を他者に知られたくない女性に対する諸外国の法制度について、昨年度、調査研究を実施しました。そして、今年度は、諸外国の各制度がそれぞれの国でもたらしている効果、これを引き続き調査を行うことを予定しております。
このような調査研究を踏まえながら、赤ちゃんポストというお話も今委員がおっしゃられましたが、予期せぬ妊娠をした女性に対するさらなる支援に取り組んでまいりたい。
ですから、諸外国の制度を今調査しておりますので、それらを踏まえて議論していきたいと思います。
○岡本(充)委員 本当に、早く結論を出して、どういう政策を進めるのか、決めるべきだと思います。
きょうは、大変いい質疑ができたと思っています。これからもこのようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、保護者支援について伺いたいと思います。
二十二日の委員会で、私は、一時保護イコール親子分離ではなくという話をしました。子供の命を守るためにちゅうちょなく一時保護を行うことは必要ですが、再発防止、あるいは虐待の芽を摘む未然防止策が重要だと思っています。
そこで、二十二日の質問のときには、保護者支援プログラムや、家庭環境改善のために円滑な家庭復帰を図っていくとの答弁がありました。では、保護者支援プログラムはどの程度の実績があり、今後どう進める考えなのか、伺いたいと思います。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
児童相談所は保護者への指導、援助を行っておりますけれども、その手法の一つといたしまして、保護者の特性に合わせて各種の保護者支援プログラムによる支援を行っております。
児童相談所における保護者支援プログラムの実施状況でございますけれども、調査をいたしました。回答を得た児童相談所、百七十二カ所のうち、平成二十八年度の一年間で保護者支援プログラムを実施したのは百十八カ所、六八・六%でございました。また、これを虐待ケースにおける実施数の割合として見ますと、平均で三・二%でございます。また、保護者支援プログラムを実施した児童相談所の中で、年間で五ケース以下が五十カ所、百ケース以上が三カ所となっておりまして、児童相談所によりまして実施状況にかなり幅がある状況でございます。
保護者支援プログラムを効果的に実施するための課題といたしましては、限られた人員の中で緊急対応やケアが必要な子供への対応に追われておって、保護者へのプログラムを実施するための人員確保が困難である、あるいは、予算が不十分なため、プログラムを学ぶために必要な費用を職員が個人で負担していることなどが挙げられております。
そういう意味では、これまでも児童相談所におきまして保護者支援プログラムにつきましては一定程度行われているわけではございますけれども、職員数の不足あるいは研修のための予算の不足などの課題から、十分には活用されていないのが現状でございます。
今後でございますけれども、本年三月の関係閣僚会議で決定いたしました抜本的強化に基づきまして、保護者支援プログラムの実施を担う専門人材の養成、あるいは実施する場合の支援の拡充など、より児童相談所でプログラムを実施しやすい環境整備、保護者がプログラムによる支援を受けやすくするための仕組みを検討してまいります。
○高橋(千)委員 今、早口だったので全部は書き取れなかったんですけれども、三月に抜本的強化策が閣議決定されたことで、そこに位置づけられて一定の姿が見えてきたというのは重要なことかと思います。ただ、まだまだ課題が多いし、ばらつきがあるという趣旨だったと思っておりますので、進めていただきたいなと思います。
先日、運動団体の皆さんから、「体罰と戦争」という本をいただきました。著者である森田ゆりさんは、日本各地の児童相談所で、虐待に陥ってしまった親の回復、「MY TREEプログラム」を実施しており、千百三十八人の親たちの虐待や体罰をストップさせた経験を持っていらっしゃいます。各地で研修活動などをやっていらっしゃいます。
森田さんの実践に基づく言葉は、大変共感できるし、感銘を受けました。例えば、深刻な虐待をしている親たちの多くは、子供を傷つけようと意図していたわけではありません、時には必要だと思っていた体罰をしているうちに、それがエスカレートして、生死にかかわる虐待にまで至ったのですと。
これは、実際にプログラムに参加した親の言葉も書かれています。何度言っても言うことを聞かないので、あんまり腹が立って頬を思いっ切りたたいたら、子供は、泣くでもなく、怖がるでもなく、謝るでもなく、固まって、ただ私の目をじっと見るのです、その子供の反応に怒りが一気に燃え上がりました、泣いてごめんなさいを言うまでたたき続けないと気が済みませんでしたと。
ほんのささいなことから、これはあくまでもしつけだということかもしれないけれども、それが、子供の反応に納得いかなくて怒りがエスカレートして、とめられなくなってしまった、やはりこのプログラムの中でみずからを振り返ってそこを脱却することができたということで、非常に大事な取組だなと思っております。
また、何年か前に、仙台市のNPO法人キャプネット・みやぎといいますが、前に参考人質疑でこの委員会にもスーパーバイザーの方が参加をしてくださっておりますけれども、取り組んでいる保護者支援プログラムについて伺ったことがありました。
これは、毎週毎週、同じ場所でグループミーティングをするんですね。スーパーバイザーは、参加していますけれどもコメントはしません。お母さんたちだけが延々と、ぐるぐると発言をするんです、自分がなぜたたいてしまったのかとか。最初はなかなか口を開くのがつらいんですけれども、だんだん何周もするうちに話ができるようになって、順を追って話ができる。絶対にそれを参加者同士で責めたりとか、アドバイスしたりということを一切しない。でも、そのことが、自分自身の内心を見詰めて、未然防止につながるんだと。非常にすばらしい取組だなと思ったことがありました。
このような中で、保護者支援プログラムは、本人が意識を持って取り組まなければ意味がないとか、義務づければ、子供を取り返すために形だけ出席する場合もあるというような指摘もありました。最初から意欲的に受けたいという加害親がいるとは思えないんです。でも、プログラムを位置づけることによって、実践例に学び、必要な体制をつくらなければならない。そのことによってやはり変わってくるし、また、深刻な虐待事件をもう起こさないためにも不可欠だと考えますが、いかがでしょうか。
○根本国務大臣 今高橋委員の紹介された「MY TREEペアレンツプログラム」あるいはコモンセンスペアレンティング、後者のプログラムですけれども、こういうプログラムは本当にいいプログラムだなと私も思います。こういうプログラムをどんどんやっていっていただくということが大事だと思います。その意味では、そういう保護者に対するプログラムをやってもらえるような支援、これは重要だと思います。
保護者支援プログラムは、やはり虐待を行った保護者本人が問題意識を持って取り組むことによって、より効果が期待できると考えております。保護者支援プログラムは、個々の状況に応じて、他の支援も組み合わせながら行うことが効果的でありますので、一律に義務づけるというよりは、むしろ保護者に問題意識を持って取り組んでもらう、これが重要だと考えています。
こういう観点から、保護者支援プログラムの実施を担う専門人材をしっかりと養成する、さらに、実施する場合の支援の拡充、こういうことで、より児童相談所でプログラムを実施しやすい環境整備、あるいは保護者がプログラムによる支援を受けやすくするための仕組みやアプローチ、保護者に対する支援は本当に大事だと思っていますから、これはしっかりと検討していきたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
ぜひ前に進めるようにお願いしたいし、体罰は禁止、しつけだからと正当化させる余地を残さないこともやはり大事だと思うんです。さっき言ったように、ちっちゃなことから出発をしてエスカレートしていくというのが非常に多いよということが指摘をされているわけですので、改めてそのことも指摘をしておきたい、このように思います。
では、次に資料の1を見ていただきたいと思います。
先ほど総理にも質問した、女性活躍加速のための、加速なんですね、重点方針二〇一九の策定方針と主な事項例というふうにあります。三つの柱なんですけれども、その一番目の最初に「女性に対するあらゆる暴力の根絶」とあるわけです。性犯罪、性暴力、ハラスメントと続き、「DV対応と児童虐待対応との連携強化」とあります。
野田市の事件を受け、改めてDVと児童虐待の関係が注目されたことがあるかと思いますが、具体的にどのような問題意識でどのようなことを盛り込む考えか、内閣府に伺います。
○池永政府参考人 お答えいたします。
児童虐待とDV被害が重複して発生していると思われるケースもあり、児童虐待におけるDV対策との連携の必要性を強く認識しているところでございます。
三月十九日、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議で決定された児童虐待対策の抜本的強化についてでは、DVの特性や子供への影響等に係る啓発活動の推進、DV対応機関と児童虐待対応機関のそれぞれの情報を包括的にアセスメントするリスク判断の手法や、各機関の適切な対応のあり方に関するガイドラインの策定、配偶者暴力相談支援センターや児童相談所等を対象とする、DVと児童虐待の特性また関連性等に関する理解の促進を図るための取組などの対策を行うこととしているところでございます。これらを女性活躍加速のための重点方針二〇一九の検討にも生かしてまいりたいと考えているところでございます。
以上です。
○高橋(千)委員 今述べていただいたことは、済みません、資料の2に載せてありますが、三月十九日の関係閣僚会議の抜粋なんですけれども、その「DV対応と児童虐待対応との連携強化」の中で書かれていると思います。それが女性活躍加速の中でどういうふうに書かれていくのかなということは、まだ案はできていないんですよね。それでちょっと改めて指摘をさせていただきました。
それで、二〇一七年度の配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は、十万六千百十件です。二〇一六年の数字ですが、婦人相談所による一時保護された女性は、少し減ってきているとはいうものの、八千六百四十二人、うち同伴家族が四千十八名。児童相談所と連携をしたのは、四千十八名のうち九百三人というデータもございます。
そこで伺いたいのは、一時保護されるに当たり、被害者が児童を同伴している場合、児童相談所で対応するべきかどうかということは誰がどのタイミングで判断をしているのか、また、それが民間シェルターの場合はどうか、お願いします。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
DVが行われている状況下におきましては、子供への虐待の制止が困難となる場合がありますので、児童相談所と配偶者暴力相談支援センター等の関係機関が連携して対応を行うことが重要でございます。
婦人相談所におきましては、今御指摘のDV被害者と同伴する子供についての一時保護の検討の際には、支援に関する方針を決定するための入所調整会議を開催して対応を検討いたしております。
この調整会議におきましては、DV被害者による同伴児童への虐待のおそれがある場合には、母子を分離し、児童相談所へ対応を依頼いたします。また、民間シェルター等への一時保護委託を検討する、これも入所調整会議等において検討いたします。このような形で、各機関と連携をとって対応することといたしております。
なお、先ほどから出ております本年三月の関係閣僚会議決定におきましては、DV被害者に同伴する子供の支援の充実を図るために、婦人相談所に児童相談所等の関係機関と連携するコーディネーターを配置すること、あるいは、同伴児童を含めて適切な環境において保護することができるよう、心理的ケア、個別対応を含めた体制整備を促進することを盛り込んでおりまして、この決定に沿いまして、婦人相談所と児童相談所が密接に連携を図ることを推進してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 入所調整会議という言葉がありました。これがどういう場合でも開かれているのか、そこを確認したいと思うんですね。
これまで出された通知などを見ますと、婦人相談員等が児童虐待が疑われる情報を得た場合は担当部局に通告をされたいとか、支援センターが市区町村や児童相談所に通告するとか、さまざまな通達が出されています。ですから、そこをちゃんとわかっていて、ちゃんとやられていればいいんですけれども、はっきりわからないんですよ、聞いてもお答えがきちっとなかったものですから。
そこで、そうした調整会議が直ちに開かれて、子供のことを必ず決めるんだということが徹底されていれば別に問題はないと思うんですけれども、そこをもう一回確認です。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
いずれにいたしましても、利用者の支援に関する方針を決定する際には入所調整会議を開催するということになっております。そういう意味では、一時保護をする場合、せずに定期的な相談支援を実施するとか、決定にはさまざまありますけれども、決定する際にはこの会議を開くことになっております。
○高橋(千)委員 いずれにいたしましてもとおっしゃいましたので、必ず開かれるものだと確認をしたいと思います。
さらに、母のニーズが子供の利益に合致しないときもあります。最初に説明されたのは、お母さんの意思を聞きます、希望に沿いますというふうに説明を受けました。私は、それは正しくないと思うんですね。
お母さん自身が、やっと逃げてきたんだから子供と一緒にいたいという気持ちもわかるけれども、お母さんが治療しなければならないこともある、子供が治療しなければならないこともある、その二人が一緒にいることで傷つけ合うこともある。さまざまな場合があるわけですよね。もう一度お願いします。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
ちょっと先ほどの答弁と重なるかもしれませんけれども、おっしゃるとおり、母子分離が必要な場合もございます。その場合には、児童相談所へ対応を依頼いたしまして、児童相談所において一時保護等の対応をすることになると思います。
○高橋(千)委員 DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会が、片山大臣のもと、今開催をされて、多くの民間団体からヒアリングをしています。残念ながら議事録は公開されていないんですが、資料だけはアップされているんですね。その資料が大変詳細で、よくぞここまで集めたなと感心をしました。とてもいい資料なので、そしてとてもいい声なので、それを生かさなければと思うんですね。
中でも、シェルターネットさんの資料を拝見しますと、一つ一つの事例が、ひどいな、本当に腹が立つ、何でそうなのと思うことばかりなんです。現制度を変えなければならないし、今の制度でもできることがあるはずだと思います。
例えば、幾つか紹介すると、相手が逮捕されているから危険性がないという理由で保護されなかった、警察が、前科もあるから、全く反省していないから危険だと言っているのに、一度逮捕されているから二度とやらないだろうといって、本人の保護してほしいという声を無視しているとか、身体的暴力でなくモラハラなどの暴力等、人権が侵害され心が壊れているのに、緊急性がないんだと保護されないとか、退所後の見通しが立たないので保護しない。これは緊急保護になりませんよね。見通しが立つんだったら行かないんですよ。
全くわけのわからないこうした貴重な実態、実践例を今後のDV対策にどう生かしていくのか、また、これは虐待対策にも生かすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○池永政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の検討会は、民間シェルター等の抱える課題を整理するとともに、民間シェルター等に対する支援のあり方について検討を行うため、片山男女共同参画担当大臣の私的懇談会として開催されたものでございます。
検討会におきましては、委員御指摘のように、構成員や外部有識者からヒアリングを行いました。そこで得られた声というのは、民間シェルターが重要な社会資源である、社会にとって大変重要であるということ、それにもかかわらず、財政的また人的基盤で厳しい状況に置かれている、心理専門職等によるメンタル面のケアに取り組む必要がある、また、児童虐待対策との連携に取り組む必要があるなど、数々の課題が示されたところでございます。
こちらの検討会につきましては、実は今報告書を取りまとめているところでございまして、またさらに、女性活躍加速のための重点方針につきましても今まさに取りまとめているところでございますので、こうした声を生かしながら、しっかりと施策を進めていきたいと思います。
以上でございます。
○高橋(千)委員 重要な社会資源であるからこそ、丸投げではなく、本当にしっかりと連携をして、公は公で大事な役割を果たして、民間シェルターなどの力を引き出していく、支えていくということも必要ではないかと思います。
検討会で出されたNPO法人DV防止ながさきの資料を3につけておきました。暴力環境にいる子供がどんな思いで毎日を過ごしているのかをわかりやすいイラストにしています。不安、葛藤、混乱、不信、秘密・孤立、自責。これは、単なる面前DVという言葉では片づけられない、本当にいろいろな意味で、心が壊れている。そういうことを、母子共通の、共同のというんでしょうか、心理ケアのプログラムをこの方たちはやっていまして、県が位置づけてやっているということでやはりすごく安定した事業になっていると思うんですね。
こうした貴重な取組を本当に生かして全国的にやっていけるようにお願いをしたいということで、残念ながら時間が来ましたので、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○冨岡委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
先ほど安倍総理にも質問させていただいた警察と児童相談所の全件共有について、今回なかなか進まなかった点の一つでありまして、私は全件共有は進めるべきとの立場ですので、そのことについて、少し突っ込んで質疑をさせていただきたいと思います。
まず、平成二十九年五月三十一日の衆議院の厚生労働委員会の附帯決議においても、「児童虐待対応が必要な家庭に関する情報について、児童相談所と警察や医療機関等が全件共有できるよう必要な検討を行う」というふうにあったはずでありますけれども、その後どのような検討がなされたか、検討経緯、内容等あれば教えてください。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
児童相談所と警察との情報共有につきましては、昨年の目黒区で発生した事案を受けまして、昨年七月に緊急総合対策を決定いたしました。
この決定では、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、通告受理後四十八時間以内に児童相談所や関係機関において安全確認ができない事案、虐待に起因した一時保護、施設入所等している事案で保護等が解除され家庭に復帰する事案、この三つの事案につきまして必ず情報共有を行うことを全国ルールとして徹底いたしました。
また、本法案の検討に当たりましては、社会保障審議会のもとのワーキンググループにおきまして児童相談所の業務のあり方等について検討を行ったわけでございますけれども、このワーキンググループの議論におきましては、警察との情報の共有につきましても議論をしております。
その議論では、子供の意見、意思が無視されたり、福祉や医療でのかかわりが尊重されずに、警察の判断だけで対応がなされて、当事者の福祉が損なわれたりすることのないようにすることが必要といったような意見もあったわけでございます。
また、児童相談所と警察が全件共有することにつきましては、相談の中には、保護者や家族と時間をかけて信頼関係を醸成しつつ継続指導を行うことが改善につながるケースもあること、あるいは、機械的に警察と全件共有することは、警察に相談内容を知られることで、保護者、関係機関等が相談を控えるおそれがあるのではないかなどの指摘もございます。
全件情報共有している自治体も含めまして、地域の実情を踏まえた連携体制が構築されているところでございまして、先行する自治体での取組も十分踏まえながら、警察との情報共有のあり方につきまして引き続き検討してまいります。
○藤田委員 ありがとうございます。
経緯はまさにそのとおりだと思うんですけれども、昨年三月、目黒区の結愛ちゃんの事件、そしてその後に、七月に緊急対策が策定されて、先ほど局長が説明していただいた三要件も含めて提示されています。しかし、その後に千葉県野田市の事件が起こっているわけです。つまり、その三要件から漏れた事案だったわけなんですね。
これは、私は、児童相談所と警察が全件共有を盛り込まなかったからというのがやはり一因であって、それはやはり、どこまでの案件を共有して、どこまでの案件はしないかという、何度も申し上げていますが、これが本当に現場の職人芸のようになってしまって漏れ落ちている事案というもの、これを防がないといけないというのが、この結愛ちゃんの事件から心愛ちゃんの事件につながる一つの問題解決なんじゃないかなというふうに思っているわけです。
これはやはり、この指針の出し方が私はどうしても納得できない部分でして、この全件共有について、もし七月の緊急対策の策定のときにされていたら防げたんじゃないかというふうなことを思うんですけれども、いかがでしょうか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
まず、警察と児童相談所におきまして情報共有を行う目的でございますけれども、情報共有を契機といたしまして、警察と児童相談所が連携をして子供の安全確認を確実に行う、あるいは安全確保や必要な支援の実施につなげていく、これが最終の目的でございます。
今御指摘の目黒区の事案を含めまして、個々の事案におきまして、どの部分が要因だったかを一つの要因のみで一概に申し上げることは難しいと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、単なる情報共有にとどまることではなく、警察と児童相談所が円滑に連携が図られるように、例えば要保護児童対策地域協議会、ここには警察、市町村、児童相談所等も入っておりますので、これを活用しながら、児童相談所が支援の方針等を警察と共有して、方向性を一つにした対応をとることが重要ではないかと考えております。
○藤田委員 そういう答弁になると思うんですよ。実際に、かなりこれはレクのときに意見交換もさせていただいたんですけれども。
次の質問なんですけれども、昨年七月の緊急対策で、児童相談所から警察に情報提供をする対象を三要件の中で、虐待による外傷が認められる事案というふうにある種限定してしまっているわけです。でも、この限定があるがゆえに共有されなかったということが、私は常にそれを感じてしまうんです。
虐待による外傷がある事案というものを判断するときに、やはり外目から見える殴る、蹴るのあざなどは、それはわかりやすいからすぐわかりますけれども、服を着ている中にそういう外傷があったりとか、シャワーを浴びせるとか、そういうことも含めて、外目からは一回、二回の訪問ではわからないような、でも、もしかしたらというようなところまでやはり共有した方がいいんじゃないかと。
このようなものもありますし、今、児童相談所が警察に共有しなかったことによって、実態的には抱え込んでしまったということで、ここ十年ぐらいでは百五十件以上の虐待死も出ていますから、やはり情報共有のやり方をもう少し広げないといけないということは思うわけです。
ですから、この要件自体が私はちょっと瑕疵があるんじゃないかというふうに思うんです。実際に、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、つまりここに該当しないといってはじかれてしまうものがかなりあるんじゃないかというふうに思ってしまうんですけれども、そういうふうに外されてしまうのはちょっとおかしいんじゃないかというふうに今思うんですけれども、御見解はいかがですか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
確かに、緊急総合対策で決定しております事案の定義は、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案ということで、ある意味、少し範囲がわかりづらいという形になっているわけですけれども、そういったこともありまして、実際に警察と児童相談所の間で情報共有する基準につきましては、通知で更に明確化を図っております。
具体的には、一時保護決定に向けてのアセスメントシートというシートがございまして、その基準に準拠した形で個々の事案について適切にアセスメントを行った上で警察との情報共有の要否を判断しております。
具体的に申しますと、アセスメントシートに基づくアセスメントでございますけれども、外傷の有無だけではなくて、例えば子供や保護者などの当事者が保護を求めているか、あるいは戸外放置や溺れさせる等の生命に危険な行為を行うなど、次に何か起これば重大な結果が生じる可能性が高いかどうかなど、さまざまな観点からのアセスメントを行うこととしておりまして、虐待のリスクが高いものについては警察との情報共有あるいはちゅうちょない一時保護を実施する、そういう形になっております。
○藤田委員 ありがとうございます。
三要件に加えて、アセスメントシートで更に細かく規定しているということなんですけれども、私は、その設計思想自体がちょっと違和感があって、事細かく規定すればするほど、現場では、これは共有すべきものなんでしょうか、所長、どうですか、いや、それはどうやろう、こういう不毛なやりとりが、共有するかしないかという瀬戸際をどうするかみたいなことがそもそも間違いであって、やはり虐待のおそれがあるものについては、多くの機関と共有して、多くの目で見守る、抑止するというふうにかじを切らないことには、これはちょっと、なかなか漏れ落ちてしまう事案というのを防ぎ切ることはこれからも難しいんじゃないかなというふうに思います。
その中で、全件共有を否定される、二の足を踏む理由、先ほども幾つか挙げていただいたと思うんですけれども、全件共有したら保護者の方とか周りが児童相談所に相談しにくくなる又は信頼関係がなくなるというようなことも政府として挙げておられますけれども、実際に全件共有が進んでいる先行事例の高知県とか茨城県、また大阪なんかでは、そういうことはないというふうに回答しています。
また、この理屈で言えば、例えば大阪でいうと、全件共有前は約一万件の虐待情報があって、そのうち四千件を既に警察には共有していました。だから、四割ぐらいは共有しているわけです。しかも、それはある種現場判断で共有するわけですから、大体共有しているということなんですよ。だから、情報を児童相談所に上げたら四割ぐらいは共有されるということは、共有されるということじゃないですか、保護者とかからの認識でいうと。というのであれば、全件なのか四割なのかというので、それほど信頼関係を逸するものなのかというのはちょっと思っていて。
私は、これはかなりミスリードしていると思うんですよ。警察に共有したらすぐ警察が全部踏み込んでくる、だから恐ろしいみたいな、それはちょっとミスリードだと思っていて、共有してそれを実際にどう対処するかというのは、警察側がやはりいろいろな捜査の中で、本当に必要なところは踏み込むし、同行したりとか、又はその他のデータと突合して、例えばDV事案もこちらからも上がってきている、そうしたら、児童相談所からは軽いような情報共有だけれども実はこれは重篤なんじゃないかというようなことが、複数の目で検証できるわけです。
そういうようなことをやはり考えたときに、信頼関係を逸する可能性があるんじゃないかというような否定理由というのは、私はちょっと違うと思うんですけれども、見解を教えてください。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。
要は、繰り返しになりますけれども、最終目的は、警察と児童相談所が方向性を一にして、統一的な方針でしっかり臨むということだと思います。
そういう意味では、例えばですけれども、児童相談所が今の時点では見守りが必要だといった中で警察が警察の判断で関与するといった場合には、ケースワークに支障を与えるというようなこともあり得ると思います。そういう意味では、児童相談所と警察との間でしっかりと連携をして行動する、その手段の一つが情報共有だと思います。
先行している自治体について見てみましても、単に、いきなり全件共有になったのではなくて、その前にいろいろな会議をする、あるいは人事交流をする、それから合同研修をする、そういう積み重ねの中で、まさに警察と児童相談所の間での信頼関係を構築して、その上で共有になっているわけです。
そういう意味では、そういったプロセスが極めて重要だと思っておりまして、そういう最終目的の中にどのようなプロセスで進んでいくかというのは、各地域地域の判断があると思います。
○藤田委員 局長がペーパーを見ずにおっしゃっていただいたことは、まさにそのとおりだと思うんですけれども、私は同時進行やと思うんですよ。
逆に言うと、信頼関係ができていないところは、信頼関係ができていないからこそ情報共有が、やはり漏れ落ちる率は高くなると思うんですよね。ですから、全件共有ありきで、信頼関係を含め、そして、全件共有しても、いきなり警察が勝手に踏み込むんじゃなくて、児童相談所と相談した上で踏み込んだりとか、又は、児童相談所というものは、警察と違って三百六十五日二十四時間対応じゃありませんから、即応できるような警察の力を介入においてはかりるというのは、介入と支援の機能の分化の中でもやはりかなり必要になってくるというふうに思っているわけです。
ですから、局長が真摯に御答弁していただいたことは、まさにもうおっしゃるとおりだと思いますけれども、やはりこれは政府にももう一度考えを煮詰めていただいて、前に進めていただきたいなというふうに思っています。
それから、最後に大臣にお聞きしたいんですけれども、多くの自治体では、先ほど局長からもありましたように、連携は政府が旗を振る以前にもう進んでいっているということもあります。その中で、私は別にこれは東京都と千葉県のせいではないとは思いますけれども、東京都と千葉県は全件共有を拒否しているわけです。進んでいないわけです。でも、そこで事件が起こってしまったというのは、私は悲しい事例だなというふうに思っているんですけれども。
現在、大体約二十ぐらいの府県とそれから政令市ではもう既に全件共有が進んでいまして、私も、警察側が全件共有されたら情報過多で大変になるのかなと最初想像したんですけれども、そんなことはないんですよ。実際に、データベースに打ち込んで、打ち込んだ後はデータ処理の話なので、例えば案件が倍になったら倍の労力がかかるわけじゃないんです。ですから、これは、情報はやはり多い方がよくて、その中でいかにリスクを見つけ出していくかということにかじを切らないことにはいけないというふうに思います。
その中で、一つ一つ、自治体の中で、先ほど局長が言われたように、信頼関係ができたところが全件共有に進んでいっています。それを、もう大分ふえていますから、やはり政府の力で旗を振っていただいて、これはいい取組だということで全国に広げていただきたいというふうに考えるんですけれども、これは政治的意思の話だと思いますので、大臣にそのあたりの見解を聞きたいと思います。
○根本国務大臣 今、委員と局長のやりとりも聞いておりました。
警察と児童相談所において情報共有を行う目的、これは、情報共有を契機として、警察と連携して子供の安全確認を確実に行うとともに、安全確保や必要な支援の実施につなげることであると思います。
情報提供を行った後の支援等において、これは単なる情報共有にとどまるのではなくて、円滑に連携が図られるように、要保護児童対策地域協議会も活用して、児童相談所などの支援の方針などを警察とともに共有して、方向性を一つにした対応をとること、これが私は重要だと思います。
警察との情報共有のあり方、確かに、全件共有している自治体もある。それは、先ほど局長からも話があったように、そこはずっと信頼関係を積み上げて、そして全件共有に至った。だから、そこのプロセスの中でかなりきちんとした議論を詰めながら全件共有に至ったんだろうと思います。
警察との情報共有のあり方については、先行する自治体での取組も十分踏まえながら、これからも検討していきたいと思います。
○藤田委員 もう時間が終わりましたのであれなんですけれども、今のお話だったら、信頼関係が深まらなかったら全件共有されないという話になってしまうと思うんですよ。
ですから、全件共有というのは一つの手法ですけれども、大きな風穴というか、スムーズに円滑化させる一つの、一番いいポイントやと私は思っているので、ぜひともこれは前向きに、先行事例等を検証していただいて、進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○冨岡委員長 次に、中島克仁君。
○中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。
限られた時間ですが、質問させていただきます。
赤ちゃんポストに関して通告もしてあったんですが、先ほど岡本委員から質疑もございましたので、割愛させていただきたいと思います。
さまざま議論が児童虐待防止根絶のためにこの厚労委員会でされてきました。我々は、私自身も医師として、この虐待対応に医師又は歯科医、医療従事者がもっともっと取り組めるんじゃないか、そういう観点で野党議員立法の方にもその旨を反映させていただき、修正案については関係者の実務者の皆さんの御尽力で取りまとめられたということでございますが、身体的変化、心理的変化、学校健診や一般外来においてその変化に気がつきやすい医師、その医師に対する研修、これは義務化若しくは必須化していくべきだというふうに私は個人的に今も思っております。
この趣旨の質問に、三月十三日、大臣から、医師や医療関係者が虐待の兆候に気づいて医療機関で虐待が発見しやすいように、施策として研修費用の補助などを行っております、このような取組を進めることによって、児童虐待にかかわる医師の確保の体制整備を進めていきますと答弁をいただいたわけであります。
大臣にお尋ねします。
大臣の言う費用の補助を行っている研修とは具体的にどのようなものなのか、また、その実施状況についてお尋ねをします。加えて、その研修によって、医師の配置、大臣がおっしゃる医師による虐待早期発見に向けて順調に進んでいるとお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
○根本国務大臣 まず、虐待対応関係機関専門性強化事業というものがあります。児童虐待防止対策支援事業の中で二つありますが、その中の一つは専門家の養成。これは、都道府県などが、児童虐待の予防や早期発見、早期対応において重要な役割を担っている医師などの専門家の養成など実践的な研修を実施するとともに、専門的対応マニュアル、ガイドラインを作成して関係機関に配布するなどの活用を図るというのが一点。原則、年二回以上実施しています。こういう取組に対して補助をする、支援をする。
それから、医療機関従事者研修というものがあります。これは、都道府県、中核市及び特別区は、児童虐待の早期発見、早期対応を図るため、地域の医療機関の医師、ちょっと割愛しますが、医師などを対象として児童虐待に関する研修を実施する、こういったことに補助をしております。
ただ、この補助事業の実施状況については、昨年度、延べ十九自治体にとどまっており、これは取組状況がよいとは言えないと認識しております。
○中島委員 なぜ、面で見ていくために医師の研修が必要か、義務化していくべきか。大臣の答弁を聞いて、私も調べて、今のお答えを聞いて、虐待対応関係機関専門強化事業については三県二政令指定都市、そして医療機関従事者研修は十二県二政令指定都市にとどまっていて、その内容についても、各自治体がガイドラインというかマニュアルをつくっていて、厚生労働省として把握されていないという実態だと私は思うんです。
先日、柿沢委員から、議員立法についての質疑の中で、日本子ども虐待医学会、BEAMSという、ステージが三つに分かれた、私も見たんですが、非常によくできています。私も実際、十数年前に一般外来でそれを通報させていただいた経験から、やはりそういった目くばせを、そして、地域にいればいるほど、親御さんも知り合い、そしておじいちゃん、おばあちゃんも知り合い。そして、お子さんの変化に気がついたときにやはり自信を持って的確に迅速に対応していく、そのために医師また医療従事者がそういう目を持つということは非常に大事だ。
今回、この補助事業の実施状況は、今答弁いただきましたように、これを進めていくのか、それとも、今回のことを機に、厚生労働省としてそういう研修を、海外の事例ももとに、日本にもBEAMSという、私は非常にすぐれた研修だと思います、そういったものをぜひ取り入れていっていただきたいというふうに思います。
時間がございませんので次の質問に入りますが、児童虐待防止、毎年八十人前後の子供の命が虐待によって奪われている、特に最も多いのがゼロ歳児、そのうち半数は新生児ということで、端的にお答えいただきたいと思います、この児童虐待防止の観点での産前産後ケアセンターの必要性また位置づけを大臣はどのように認識されておられますでしょうか。
○根本国務大臣 厚生労働省では、子育て経験者などが相談支援を行う産前・産後サポート事業、あるいは、退院直後の母子に対して助産師等が心身のケア等を行う産後ケア事業を推進しています。これは、児童虐待防止の観点からも、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目ない支援が非常に大事だと思います。
さらに、これらの事業の効果的な運営を支援するために、平成二十九年に留意事項等を示したガイドラインを作成して、身体的、心理的不調あるいは育児不安以外に、特に社会的支援の必要性がある者など、事業の対象者を明確化して周知を図りました。
産前・産後サポート事業、産後ケア事業、こういう事業にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○中島委員 私の地元山梨県に先週の日曜日にもお伺いをしてきました。山梨県は人口八十一万人の県であるわけですが、二十七市町村が広域連合をつくって各市町村がお金を出し合って、そして今、産前産後ケアセンターが稼働しています。
やはり、産後うつが十人に一人と言われている状況の中で、この間、江東区は九五%が孤立化した世帯と。地域によってはさまざまだと思いますが、やはり、妊娠から産後直後まで、実態としてゼロ歳児、新生児の遺棄が多いという実態を踏まえれば、レスパイトできる場所も含めて、これを法的に位置づけていく必要があるんじゃないかということを御指摘させていただきたいと思います。
最後に、さまざま虐待防止のために取り組まれている一方で、虐待によって死亡した可能性があると医師が判断し、その後、警察や児相に通告をしながら、その後の調査が十分に行われていないという事実もあります。その観点で、これも端的にお尋ねしますが、欧米諸国で実施されているチャイルド・デス・レビュー制度導入についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○根本国務大臣 いわゆるチャイルド・デス・レビュー制度、これは、二十九年の児童福祉法改正の附帯決議において導入を検討することとされておりますし、昨年の成育基本法においても規定をされております。
厚生労働省としても、予防可能な子供の死亡の再発防止を図るため、その導入について検討する必要があると考えています。
平成二十八年からチャイルド・デス・レビュー制度の確立に向けた調査研究を実施しておりますし、二十九年十月には省内で関係部局による省内プロジェクトチームを立ち上げて、有識者からのヒアリングや論点整理を進めています。
今後とも、この取組を更に進めて、導入について検討していきたいと考えています。
○中島委員 この制度を政府として、取り組むだけなら誰でもできるわけで、現実に進めていただく、そして、国民にも理解を得るための議論をぜひ、大臣、旗を振って取り組んでいただきたいと思います。
時間ですので終わりますが、きょうは私が最後の質疑者なので、先ほど言ったように修正案を取りまとめられた皆様に敬意を表するとともに、一刻も早く児童虐待が根絶されることを願って、質問を終わります。
ありがとうございました。
―――――――――――――
○冨岡委員長 この際、お諮りいたします。
岡本充功君外十名提出、児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○冨岡委員長 内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案について議事を進めますが、特に御発言がありませんので、本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○冨岡委員長 この際、本案に対し、後藤茂之君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議の七派共同提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。西村智奈美君。
―――――――――――――
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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○西村(智)委員 ただいま議題となりました児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
本修正案は、これまでの本委員会における議論を踏まえ、子供の命を守る観点から、政府提出の法律案を一層充実させ、児童虐待防止対策のさらなる強化を図ろうとするもので、先般来、与野党において協議を重ね、取りまとめたものでございます。
その主な内容は、
第一に、児童相談所長等は、児童虐待を行った保護者について、児童虐待の再発を防止するため、医学的又は心理学的知見に基づく指導を行うよう努めるものとすること。
第二に、政府が検討を加えるべき、児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置の例示として、児童の意見を聞く機会の確保及び児童の権利を擁護する仕組みの構築を追加すること。
第三に、児童福祉司の数の基準に関する政令は、各児童相談所の管轄区域内の人口、児童虐待に係る相談に応じた件数、里親への委託の状況及び市町村における児童福祉法による事務の実施状況その他の条件を総合的に勘案して定めるものとすること。
第四に、関係機関等は、要保護児童対策地域協議会から資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力の求めがあった場合には、これに応ずるよう努めなければならないものとすること。
第五に、児童相談所長は、児童虐待を受けた児童が住所等を管轄区域外に移転する場合においては、当該児童及び児童虐待を行った保護者について、移転の前後における支援が切れ目なく行われるよう、移転先の児童相談所長に対し、速やかに必要な情報の提供を行うものとするとともに、当該情報の提供を受けた児童相談所長は、要保護児童対策地域協議会が速やかに当該情報の交換を行うことができるための措置その他の緊密な連携を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
第六に、児童相談所の体制強化に対する国の支援のあり方についての検討規定、通報の対象となるDVの形態及び保護命令に係るDV被害者の範囲の拡大についての検討規定等を追加すること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○冨岡委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
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○冨岡委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。初鹿明博君。
○初鹿委員 私は、立憲民主党・無所属フォーラムを代表して、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及び七会派共同提案の修正案に対して、賛成の立場で討論を行います。
平成三十年三月に目黒区で起きた結愛ちゃんの事件や、本年一月に千葉県野田市で起きた心愛ちゃんの事件など、虐待による痛ましい死亡事件が後を絶たず、児童相談所における虐待相談対応件数も増加の一途であり、児童相談所の体制強化は喫緊の課題となっております。
野田市の事件では、救いを求めるSOSが発せられていたにもかかわらず、関係機関の連携不足などにより、命を救うことができませんでした。
野党は、昨年六月、目黒区の事件が発生したことを受け、早急に行うべき取組を法案にまとめ、国会に提出いたしました。この時点で野党案の審議が行われ、必要な改正がなされていれば、野田市の事件は防ぐことができたかもしれないと考えると、残念でなりません。今後は、野党が提出する法案について、与党は放置することなく、速やかに審議することを求めるものであります。
本年一月の野田市の事件発生を受けて、立憲民主党を始めとする野党は、今国会に更に内容を充実させた法案を再提出しました。本委員会において政府案とともに審議が進められ、修正協議を経て、本日、与野党合意のもと、野党案の内容を一部盛り込んだ修正案の提出に至りましたが、充実した国会審議の好事例となると考えます。
原案において、体罰の禁止が明確化され、懲戒権の見直しについて検討規定が設けられました。
体罰の定義が定まっておらず、今後ガイドラインを策定するとしていたり、懲戒権の見直し期間が二年と長期であることなど十分とは言えない点もありますが、体罰によらない子育てを推進していく上で、法律に体罰の禁止を明記することは一歩前進であり、評価できます。
ただし、単に法律に明記しただけで体罰がなくなるわけではありません。体罰が許されない行為であることを社会全体で共有するため、国民に広く啓発するなど、実効性ある取組を強く政府に要望いたします。
次に、修正案についての賛成理由を一点申し述べます。
野党の提案を受け、児童虐待を行った保護者に対し、再発防止のため、医学的又は心理学的知見に基づく指導を行うよう努めることとされました。
一時保護等から家庭復帰した後、虐待の再発により子供が被害を受けることも少なくないことから、保護者に対する適切な指導を行うことは極めて重要なことであり、野党の提案を受け修正合意に至ったことを評価いたします。
最後に、今回の改正で児童虐待防止対策が進み、虐待により失われる命がなくなることを強く願うとともに、全ての子供たちが幸せになれる社会の実現を目指し、残された課題に更に取り組んでいくことを誓いまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○冨岡委員長 次に、大西健介君。
○大西(健)委員 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました政府提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及びその修正案に賛成の立場から討論を行います。
結愛ちゃんや心愛さんの悲劇を二度と繰り返さないために、政府は法案を提出したはずでしたが、残念ながら、その内容は、野党五会派が提出した法案に比べて不十分と言わざるを得ませんでした。
例えば、政府案では、中核市及び特別区への児童相談所の必置が見送られました。参考人の泉明石市長は、地域に近い中核市だからこそ必要であり、大切なのは腹をくくることで、国がやると決めて、やれるように金をつけ人を育てることだと述べました。十年後もまた同じ議論を繰り返さないために、政治の決断が求められていると思います。
また、政府案には、児童相談所が支援を行う家庭が転居した場合の引継ぎを強化し、転居しても児童相談所の指導措置が一定期間継続されるようにすることも盛り込まれていません。目黒区の事件と野田市の事件に共通する問題は、転居時における資料や情報の共有、切れ目のない支援が行われなかった点にあり、野党案のような規定がなければ、同じような悲劇が繰り返されてしまうおそれがあります。
これ以外にも、児童福祉司のさらなる増員を始め、政府案にはまだまだ不十分な点がありますが、国民民主党など野党が法案修正を強く求めた結果、児童相談所が支援する家庭が転居した場合のリスクに鑑み、引継ぎを徹底するとともに、必要な支援が切れ目なく行われるよう定める等、野党案の内容の一部を政府案に盛り込む修正が行われることとなりました。修正は十分とは言えませんが、児童虐待防止対策の強化は喫緊の課題であり、早急に対策を一歩でも前進させる必要があるため、政府案とその修正案に賛成することといたします。
今回の法改正で、児童虐待防止対策の強化を終わらせてはいけません。野党案には、子供の命を守るために必要不可欠な内容が多数盛り込まれています。修正協議の結果、撤回することとなりましたが、野党案にある内容の実現を引き続き政府に求めてまいります。
最後に、修正協議に御尽力をいただきました与野党の関係者の皆様に心より感謝と敬意を表しますとともに、国民民主党は、子供の命を守るため、児童虐待防止対策の抜本的強化に引き続き全力を挙げて取り組んでいく決意を申し述べ、私の討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
○冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、児童福祉法等改正案並びに七会派提出修正案に賛成の立場から討論を行います。
日本が子どもの権利条約を批准して二十五年、残念ながら、子供の権利は脅かされ続けています。児童虐待の相談件数は毎年ふえ続け、命まで失われる最悪の事態が後を絶ちません。子供の命を守り、最善の利益を守るため、与野党が一致して修正案がまとまったことは、不十分さはあっても意義あることと思います。
法案の最大の焦点は、親権者による体罰の禁止を明文化したことです。
しつけのためと称して繰り返される体罰をなくすために、法律ではっきりと禁止することは不可欠です。しつけの根拠とされた民法八百二十二条の懲戒権については、削除も視野に入れた二年以内の検討を行うとしました。しかしながら、体罰の定義は今後ガイドラインで示すと言い、その参考とする学校教育法十一条は明確に正当な懲戒を認めています。これでは、許される体罰の余地を残すものになってしまいます。
子供が声を上げたのに、大人の判断で体罰に当たらないなどという不当な対応になってはいけません。懲戒権規定は速やかに削除し、子どもの権利条約の精神にのっとって、子供の品位を傷つけるあらゆる行為を禁止するべきです。
法案は、児童相談所の設置を促進し、体制強化を図るとしています。野党案は、児童相談所設置基準の法定化を求めていましたが、参酌基準にとどまりました。また、中核市、特別区での児童相談所設置について、五年間で集中的に措置を講ずると言いますが、二〇一六年改正では、五年後に全ての中核市、特別区での設置を目指していました。希望する全ての中核市、特別区ということでは、後退したと言わざるを得ません。
また、参考人の方々からは、人材確保、育成など児童相談所の体制確保のためには、国による思い切った財政措置が必要不可欠との意見が寄せられました。子供の命と権利を守る最前線で働く職員が確実に育ち、現場を支えることができるように、国が責任を果たすことが求められています。
児童相談所の業務を第三者機関により評価し、質の向上に努めるとしたことは重要です。子供の権利がしっかりと守られる質が全国どこでも確保されるために、まずはきちんと実態を調べ、第三者性のある機関により評価することは第一歩と言えます。実効性ある体制の整備を進めていただきたいと思います。
問題が深刻になる前に早い段階で保護をと、参考人から提言がありました。一時保護イコール親子分離ではなく、親子関係改善のプロセスと位置づけるべきです。なお、そのために、一時保護所は子供にとって安全で安心の居場所であること。残念ながら、職員による虐待や子供間の性トラブルなどもある中、管理と支配の関係ではなく、心を開ける信頼関係を築くことは一層重要です。
あわせて、保護者支援プログラムについて、専門家の育成や民間団体との連携含め、国の強力なイニシアチブを求めたいと思います。
最後に、何が体罰に当たるのか知らなかった、自分の家が虐待家庭だとは気づかなかった、虐待されて育った子供たちから寄せられた声です。子供が権利について学び、嫌なことは嫌だと声を上げられること、その声を大人が正面から受けとめることが、真に子供の権利を保障することにつながるのではないでしょうか。
そのような社会を目指し、国として全力で取り組むために力を尽くすことを決意し、討論といたします。(拍手)
○冨岡委員長 以上で討論は終局いたしました。
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○冨岡委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、後藤茂之君外六名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○冨岡委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○冨岡委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
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○冨岡委員長 この際、本案に対し、小泉進次郎君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。稲富修二君。
○稲富委員 私は、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 体罰によらない子育てを推進するに当たり、子どもの権利条約を参考に具体的な例示を示したガイドライン等を早期に作成するとともに、体罰が子どもに与える影響について広く国民が理解できるよう啓発活動に努めること。その際、子どもに手を上げてしまった保護者を追い込むのではなく、可能な限り早期に適切な子育ての方法や相談窓口についても周知し、支援すること。
また、法施行後二年を目途として検討される民法の懲戒権の在り方については、児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、規定の削除を含め、早急に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
二 虐待リスクの高い子どもを早期に発見し、支援につなげられるよう、乳幼児健診及び就学時健診未受診者、未就園、不就学等の子どもに関する安全確認を定期的に実施すること。また、学校健診、保育園健診の充実を検討すること。
三 若い世代をはじめ、子育てに悩みを抱える者等が相談・支援につながりやすい仕組みづくりを進めるため、SNS等を活用した相談窓口の開設を進めること。
四 医師、歯科医師その他の医療従事者から児童虐待に関する通告又は児童相談所の対応に対して意見等があった場合には、その医学的知見に基づく意見等が十分勘案されるようにすること。
また、地域の医師会等と協力して研修等を実施するなど、医師等の児童虐待対応の向上に努めること。
児童虐待の発見のため必要な知識・技術を十分に有する医師、歯科医師、保健師、助産師及び看護師の確保、養成に努めること。
五 子ども自身が教職員等に適切に相談することができるよう、学校教育の場において児童虐待に対する正しい知識を提供できる取組を推進すること。
また、学校、教育委員会の教職員等に対し、子どもの権利条約の周知も含めて必要な研修を実施するなど、教育現場における児童虐待対応の向上に努めること。
六 児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づく児童福祉司等の増員を確実に進めるとともに、その資質の向上が図られるよう、中長期的な研修の実施を含め、人材確保のため必要な措置を講ずること。
また、児童福祉司一人当たりの相談対応件数が平均で四十件を超えないよう、更なる増員に向けた人材・財源確保に努めるとともに、非常勤職員の常勤化を含め、児童虐待に係る相談に応ずるための職員の処遇改善に努めること。
七 児童福祉司をはじめとした児童福祉を担う人材の専門性の向上に当たっては、地方自治体の職員が十分な経験を積み上げることが必要不可欠であることから、当該職員の人事異動等に際し、地方自治体に対し配慮を求めるなど、必要な措置を講ずること。
また、児童相談所における介入機能と支援機能の分化に当たっては、一体的な対応が必要なケースもあることを踏まえつつ、各児童相談所の実情等に応じた柔軟な取組が行えるようにすること。
八 市町村における相談支援体制を強化するため、全市町村における子ども家庭総合支援拠点の設置・運営のため必要な支援の拡充を図ること。
九 一時保護を必要とする子どもが適切な環境の下で保護されるよう、一時保護の受け皿の整備を早急に進めること。
また、一時保護中においても、従前の学校に通学できるようにするなど、子どもの生活環境に配慮した一時保護所の環境改善に努めること。
十 要保護児童対策地域協議会の実効性を向上させ、関係機関が有機的に連携しながら活動できるよう、調整担当者の研修内容の充実や入ることが望ましい構成機関、効果的な運営方法に関するガイドラインの作成などにより必要な支援を講ずること。
十一 中核市及び特別区における児童相談所の設置を目指し、設置に係る必要かつ十分な支援を講ずること。併せて中核市及び特別区の理解が得られるよう努めること。
また、不交付団体に対する支援について検討すること。
十二 児童虐待の対応に当たり、家庭が転居する際には、リスクが増加するため十分な注意を払いつつ、地方自治体間の引継ぎを徹底するとともに、児童相談所及び市町村相互間の情報共有を効率的かつ効果的に行うことができるよう、全都道府県において情報共有システムの構築を推進すること。
十三 児童相談所における援助方針会議の会議録には、後で検証ができるように、組織としての判断とその判断の理由を明確に記録するよう支援を行うこと。
十四 警察と児童相談所との連携が円滑にいくよう警察と児童相談所の合同研修の実施や、警察における虐待対応の専門部署の設置等を通じ、交番等における早期発見など、警察及び児童相談所双方の対応力の強化を図ること。
十五 虐待対応とDV対応の連携の実効性を確保するため、婦人相談員の専門性確保や待遇改善など、必要となる体制整備等の措置を講ずること。
十六 虐待の再発を防止するため、加害者である保護者への支援プログラムについて、必要な専門人材の養成などの支援体制を充実させ、プログラムの実施を推進すること。
十七 一時保護等から家庭復帰した後の虐待の再発により、子どもが被害を受けることも少なくないことから、家庭復帰後の一定期間においては児童相談所による家庭訪問の実施等を通じて児童からの意見の聴取や養育状況等を把握するとともに、切れ目なく保護者支援が実施されるよう、必要な措置を講ずること。
十八 児童虐待が再発した状況等に関する調査、分析等を行い、必要な対策を講ずること。
十九 新しい社会的養育ビジョンを踏まえ、里親の開拓、研修及び養成のほか、フォスタリング機関の整備等の支援体制を拡充すること。
二十 心理的困難や苦しみを抱えているなど、里親委託が難しい子どもたちもいることから、心理的治療や相談援助を行う児童心理治療施設の整備が図られるよう、必要な支援を講ずること。
二十一 児童養護施設等の施設内における暴力、性暴力について、実態調査の結果等を踏まえ、子ども間に限らず、問題の発生を防止するための効果的な対策について早急に検討を行い、必要な措置を講ずること。
また、被害にあった子どもが、継続的に心身のケアを受けることができるために必要な措置を早急に講ずること。
二十二 子どもの死因に関する情報の収集、管理、活用等に関する体制整備の在り方について速やかに検討し、虐待の再発防止に資するよう必要な措置を講ずること。
二十三 子どもが意見を述べることを支援するための制度を構築し、子どもの最善の利益を確保するため、いわゆるアドボケイト制度の導入に向けた検討を早急に行うこと。
二十四 児童相談所全国共通ダイヤル一八九(いちはやく)について早急に無料化を実現するとともに、運用改善による通告者及び相談者等の利便性の向上に努めること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
○冨岡委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○冨岡委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、根本厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。根本厚生労働大臣。
○根本国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。
―――――――――――――
○冨岡委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○冨岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時三十三分散会