衆議院

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第3号 令和2年3月11日(水曜日)

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令和二年三月十一日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 盛山 正仁君

   理事 後藤 茂之君 理事 新谷 正義君

   理事 冨岡  勉君 理事 長尾  敬君

   理事 平口  洋君 理事 小川 淳也君

   理事 岡本 充功君 理事 高木美智代君

      あべ 俊子君    畦元 将吾君

      安藤 高夫君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      大隈 和英君    木村 哲也君

      国光あやの君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      武井 俊輔君    谷川 とむ君

      鳩山 二郎君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      阿部 知子君    稲富 修二君

      尾辻かな子君    岡本あき子君

      下条 みつ君    白石 洋一君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      山井 和則君    柚木 道義君

      伊佐 進一君    桝屋 敬悟君

      宮本  徹君    藤田 文武君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       宮下 一郎君

   厚生労働副大臣      稲津  久君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  奈尾 基弘君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  平川  薫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤  信君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        藤原 朋子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 竹内  努君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁審議官)            佐藤  淳君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           蝦名 喜之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         藤澤 勝博君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           渡辺由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            奈須野 太君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     武井 俊輔君

  小林 鷹之君     宮路 拓馬君

  白須賀貴樹君     宗清 皇一君

  田村 憲久君     畦元 将吾君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     鳩山 二郎君

  武井 俊輔君     務台 俊介君

  宮路 拓馬君     小林 鷹之君

  宗清 皇一君     白須賀貴樹君

同日

 辞任         補欠選任

  鳩山 二郎君     田村 憲久君

  務台 俊介君     大岡 敏孝君

    ―――――――――――――

三月十一日

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

同日

 全国一律最低賃金制度の導入、食品衛生監視員を大幅にふやすこと等に関する請願(畑野君枝君紹介)(第一四七号)

 同(藤野保史君紹介)(第一四八号)

 福祉職員の大幅な増員と賃金の引上げに関する請願(稲富修二君紹介)(第一四九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第一五一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一八四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一八五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八七号)

 同(清水忠史君紹介)(第一八八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一九三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一九四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一九五号)

 同(下条みつ君紹介)(第二三一号)

 同(小川淳也君紹介)(第二九三号)

 同(白石洋一君紹介)(第二九四号)

 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(奥野総一郎君紹介)(第一八〇号)

 同(田嶋要君紹介)(第一八一号)

 同(宮川伸君紹介)(第一八二号)

 同(谷田川元君紹介)(第一八三号)

 同(岡島一正君紹介)(第二一二号)

 全ての子供に格差なく、等しく質の高い保育を保障するための保育・学童保育関係予算の大幅増額と施策の拡充に関する請願(青山大人君紹介)(第二四八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二四九号)

 同(大河原雅子君紹介)(第二五〇号)

 同(岡本あき子君紹介)(第二五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二五二号)

 同(吉良州司君紹介)(第二五三号)

 同(岸本周平君紹介)(第二五四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二五五号)

 同(佐藤公治君紹介)(第二五六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二五七号)

 同(清水忠史君紹介)(第二五八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五九号)

 同(関芳弘君紹介)(第二六〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六二号)

 同(武内則男君紹介)(第二六三号)

 同(中川正春君紹介)(第二六四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二六五号)

 同(藤野保史君紹介)(第二六六号)

 同(宮本徹君紹介)(第二六七号)

 同(本村伸子君紹介)(第二六八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二七一号)

 同(池田真紀君紹介)(第二七二号)

 同(岡本充功君紹介)(第二七三号)

 同(神谷裕君紹介)(第二七四号)

 同(下条みつ君紹介)(第二七五号)

 同(田嶋要君紹介)(第二七六号)

 同(堀越啓仁君紹介)(第二七七号)

 同(牧義夫君紹介)(第二七八号)

 同(宮川伸君紹介)(第二七九号)

 同(宮本徹君紹介)(第二八〇号)

 同(山崎誠君紹介)(第二八一号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第二八九号)

 同(海江田万里君紹介)(第二九〇号)

 同(櫻井周君紹介)(第二九一号)

 同(白石洋一君紹介)(第二九二号)

 全国一律最低賃金制度の実現を求めることに関する請願(田嶋要君紹介)(第二七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

盛山委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、委員会を代表して一言申し上げます。

 本日で東日本大震災から九年を迎えます。改めてお亡くなりになられた方々を悼み、深く哀悼の意を表しますとともに、被災地の一日も早い復興を祈念いたします。

 これより、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。

 全員御起立、お願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

盛山委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

盛山委員長 内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官奈尾基弘君、内閣法制局第四部長平川薫君、内閣府大臣官房審議官伊藤信君、子ども・子育て本部審議官藤原朋子君、法務省大臣官房審議官竹内努君、出入国在留管理庁審議官佐藤淳君、文部科学省大臣官房審議官蝦名喜之君、厚生労働省大臣官房総括審議官田中誠二君、医政局長吉田学君、健康局長宮嵜雅則君、労働基準局長坂口卓君、雇用環境・均等局長藤澤勝博君、子ども家庭局長渡辺由美子君、保険局長浜谷浩樹君、中小企業庁事業環境部長奈須野太君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 西村智奈美です。

 先ほど厚生労働委員会冒頭でも黙祷が行われましたけれども、東日本大震災からきょうで九年です。九年前のあの日とは打って変わって暖かな日となりましたけれども、あの日のことを思い出すと、そしてまた、それ以降起こったことを振り返りますと、本当に胸の締めつけられるような思いがいたします。

 私としても、福島の再生なくして日本の復興なし、この思いをしっかりといま一度確かめ、そして、被災地の皆さんに寄り添って一日も早い復興をなし遂げていきたい、その決意を申し上げたいと思っております。

 きょうは労働基準法の一部改正案についての審議ですけれども、新型コロナウイルス感染症対策も、昨夕、緊急対応策の第二弾が公表されたということもありまして、その点についても質問させていただきたいと思います。

 まず、労働基準法の改正案についてですけれども、今回、賃金請求権の消滅時効期間等が見直しをされることになりました。本則五年としながらも、当分の間ということで、三年、三年、五年、三年と、こういうふうにちょっと短い期間に設定されておりますけれども、実際に、例えば平成三十年で見ますと、労働審判の中で金銭を主たる目的とする申立てがおよそ二千件、また、その平成三十年の中で訴訟に移行した件数がおよそ五百件、労働審判の中に占める割合としてはかなり高い割合になっておりますので、やはりこれは一日も早く当分の間を本則に戻していくことが必要だというふうに考えております。

 しかし、審議会の議論の中で、賃金台帳等の記録の保存が負担であるという意見がかなり聞かれて、それで当分の間ということになったんだということなんですけれども、賃金台帳は一旦作成してしまえば保存の負担というのは新たに生じないというふうに考えていますが、そういった声があることに対して厚労省としてはどういうふうに対応していきますか。

加藤国務大臣 今回の賃金請求権の消滅時効に関して、委員の御指摘の点が一つある一方で、労働者間の公平を図る観点から、改正民法ではこの四月一日以降の契約に限ってということでありますけれども、これでは労働者間でばらばらになるということで、施行日以降に支払い日が到来する全ての労働者の賃金請求権については新たな消滅時効期間を適用するということで、ここは必ずしも民法とそろえているわけではないという部分もあります。

 そうしたことも踏まえながら、今委員御指摘のような、労働者の賃金、労働時間等に関する記録についての長期保存だけではなくて、事業主の残業の指揮命令や労働時間管理の方法についても当然長期にわたって保存していく、また、はっきりさせていくことがより求められていくということが使用者側からもあり、直ちに措置することは課題が多いということにされ、労使で御議論いただいた結果、当分の間は消滅時効を三年間にするというふうになったところであります。

 五年に延長した場合に、例えば紙媒体の資料の保管スペースをどうするのか、あるいは、電子媒体で記録を保存している場合に労務管理システムの改修が必要になるといったことも考えられるわけであります。こうした対応について、私どもとしても、一定の補助制度、助成制度も設けておりますので、そういったものも活用しながら、そういった課題の一つ一つの解決を一緒になって図っていきたいと思っております。

西村(智)委員 できるだけ早期に、やはり本則に戻していただきたいというふうに思います。

 他方で、賃金の消滅時効期間は当分の間三年、賃金台帳の保存期間も当分の間三年となっております。ところが、賃金台帳の保存期間は現行法でも三年と既になっておりまして、これは、監督上の必要があるということから二年よりも長く設定されていたというふうに思います。今回、賃金の消滅時効と合わせて三年になったんですけれども、労基署が行う監督や指導において影響はありませんか、大丈夫ですか。

加藤国務大臣 私の記憶では、一方で、刑事の公訴時効が三年だということも、それも含めて三年であったというふうに記憶をしておりますけれども、改正後は賃金請求権の消滅時効期間と記録の保存期間が同一となります。基本的には、消滅時効が満了するまでの間は関連する記録は保存されているため、労働基準監督署の監督指導に大きな影響はないと考えております。

 なお、記録の保存期間の起算日については、これは起算日が合わないとずれが出てきますので、労働基準法施行規則において定めており、例えば、賃金台帳については最後の記入をした日、あるいは、タイムカード等の賃金その他労働関係に関する重要な書類についてはその完結の日となっております。

 法案成立後は、改正法の内容や、賃金請求権の消滅時効期間が満了するまでの間は関連する記録の保存は当然必要になりますので、そこは適切に周知を図るとともに、労働基準法施行規則の改正等の具体的な措置についても、よく労使と相談をして、実効性のある対応がとれるようにしていきたいと思っています。

西村(智)委員 災害補償請求権について最後に伺いたいと思います。

 これについては現行のまま二年とされたんですけれども、そもそも審議会で十分に議論されておりましたでしょうか。

 例えば、業務に起因してメンタルヘルスに係る疾患を発症した場合に、こういったケースというのはすぐに災害補償請求はできないと思います。ある程度治癒してから請求しようとした場合に、消滅時効によって請求権が消滅している場合もあると考えられます。

 災害補償請求権は労災保険とあわせて見直す必要があるのではないかと考えますけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 災害補償請求権は、労働基準法上創設された権利であります。これまでも、民法の一般債権の消滅時効期間は十年とされた中で、労基法では二年の消滅時効期間とされております。今回の民法改正で一般債権の消滅時効期間が原則五年となった場合においても、現行の消滅時効期間である二年を維持したところであります。

 災害補償の仕組みでは、労働者の負傷等の業務起因性を明らかにする必要があるわけですが、時間の経過とともにその立証は困難となり、早期に権利を確定させ、労働者の救済を図る必要があること、また、労災事故が発生した際に早期の災害補償の請求を行うことにより、企業に安全衛生措置を早期に講ずることを促すことにつながり、労働者にとっても迅速な職場復帰を果たすことが可能となるといった効果が見込まれるといった議論もあって、労政審の審議において、現行の二年を維持するということが適当とされたと承知をしております。

 なお、災害補償及び労災保険給付の請求権の消滅時効については、疾病に罹患する等により実際に療養や休業等をするときから進行するものであります。メンタルヘルスのような疾病については、現実に療養等をした時点から消滅時効が進行するということになります。

西村(智)委員 答えていただいていないんですけれども、審議会の経緯をたどってみても、十分に議論は行われていません。やはり労災保険のあり方とあわせてしっかりと今後の課題として見直していっていただきたい、そのことは強く申し上げます。

 それで、昨日の夕方、新型コロナウイルス感染症対策の緊急対応策第二弾を決定をいたしました。雇用の維持と事業の継続、これを当面最優先にするという文言も見えまして、ぜひともというふうに期待をしたいところなんですけれども、これまで私たちが聞いております範囲の中で、スピード感のある、そして十分な対応がなされているとはとても言えないと思っております。

 例えば、政策金融公庫に融資の依頼に相談に行った。他の条件をみんな満たしているんだけれども、例えば、返済計画はどうですかと事業主の方が聞かれたときに、新型コロナウイルスの感染症の影響がどこまで出るのかわからないということから、返済のことについてなかなか事業主の側から積極的な話ができないということで融資が受けられなかったり、それから、ほかの条件が全部満たされているのに、なぜか窓口のところで、時間がかかります、二カ月、三カ月かかりますと言われている事例、こういうのがあるんですよ。一カ月でも大変なのに、二カ月、三カ月待たされたらどういうことになりますか。もっとスピード感を持ってやってもらいたい。これは本当の、文字どおりの死活問題ですよ。

 中小企業庁、どうですか。例えば、融資をすると、お金はつけると、枠で確かに第一弾、第二弾は出ていますよ。出ているけれども、実際にそれが回るかどうかというところが大事なので、もっとスピード感を持ってやるべきだと思いますけれども、いかがですか。

奈須野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、中小企業の事業継続に対して、資金繰りの確保というのは何よりも重要な課題でございます。そのため、日本政策金融公庫、それから全国の信用保証協会に対しては、事業者の実情に応じた柔軟な対応に全力を挙げて努めるよう要請しております。具体的には、赤字であるとか、債務超過であるとか、あるいは条件変更先である、こういった形式的な事情のみで判断するのではなくて、事業者の実情に応じて柔軟な対応を行うということを求めております。

 とりわけ、現在、年度末になっております。資金繰りの重要さが一段と高まる時期であるということを踏まえまして、融資や保証の手続を一層迅速化するということが重要と考えております。このため、相談の受け付けや審査、それから実行に最大限のスピードを上げて取り組むよう求めております。

 それでも遅いという御指摘がございました。確かに、全国の保証協会あるいは公庫の窓口には相談が今殺到している状況でございます。

 こうしたことを踏まえまして、日本政策金融公庫では、本部の人員からの応援の派遣、支店の営業時間の延長、それから千六百名規模の定期の人事異動の凍結、こういったことをやっております。また、信用保証協会では、柔軟な人員配置による相談・審査体制の強化、それから休日の相談受け付け、平日の相談時間の延長、こういったことに取り組んでおります。

 また、今後の先行き、返済の見通しがつかないという御指摘もございました。

 今回、第二弾の対策の中では、特別貸付制度というのを設けております。この中では、元金の返済の据置期間を、これまでの最長三年以内から、これを最長五年以内に長期化するということによりまして、新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからない、こういう中におきましても、まずは事業の再建、事業の継続にじっくりと取り組むというような期間を確保することで、返済計画を立てやすくするように工夫しております。

 こういったことを踏まえまして、事業者の資金繰りに支障が生ずることがないよう全力で応援してまいりたいと考えております。

西村(智)委員 現に支障は生じています。生じているから、いろいろな声がいろいろなところで上げられています。そのことを真剣に受けとめていただいて、スピード感なんて生易しい言葉じゃない、すぐやってください。今いいことをいろいろ説明していただきましたけれども、それが本当に現場でちゃんと回るように、すぐやってください。強く要請します。

 もう一つの死活問題、今度は働く人たちの生計、生活のことについて伺いたいと思います。

 全国一斉の休校要請がなされました。それによって影響を受けている保護者の方は大変多いです。しんぐるまざあず・ふぉーらむといいます、一人親の方々、その当事者や支援者の方でつくっている団体のアンケートによると、十八歳以下の子供がいる一人親の四三%が、この学校休業に関連して収入が減る、三%が収入がなくなると答えています。また、どうしても仕事に行かなきゃいけないということで、低学年の子供を置いて、葛藤を抱えながら仕事に行っているという一人親の方もいらっしゃいます。

 そういった中で、臨時休業による助成金制度が創設されるということなんですけれども、私が承知している限り、どういう条件の人が、どういう手続をとって、どういうことが認められればその助成金の対象になるかということがいまだに明らかになっていないんじゃないかというふうに思うんです。

 何をもって、どういう条件で、新型コロナウイルス感染症による影響で休業している、学校休業の影響によって休業しているというふうに判断をされ、助成金の対象となるのか、そして、支給額はどういうふうにして決定していくことになるのか、現状で決まっていることをお話しください。もしそれが今答えられないということであれば、いつまでに示されるのか、その時期を明確に話してください。

加藤国務大臣 まず、助成金の対象となるのは、二月二十七日から三月三十一日までの間に、新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業などをした小学校等に通う子供や、新型コロナウイルスに感染した又は風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある小学校等に通う子供の世話を行うため、保護者に休暇を取得させた事業主を助成する、これが一つの制度であります。当然、事業主から保護者の方に本来の給与が支払われるということが前提になり、それに対する、最高八千三百三十円を上限として、全額国費でその分を助成する、これが一つであります。

 それからもう一つは、個人で就業する予定であり、また、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、発注者から一定の指定を受けるなどの場合において、先ほど申し上げたような、子供さんを世話するため、その仕事をとめなければならない、そういった方に関しては、これは個別に支給するということになります。就業できなかった日、一日当たり四千百円をお支払いする、こういう仕組みであります。

西村(智)委員 今のは全く無回答なんですけれども。それだったら、これまで出ているペーパーを読めばわかりますよ。

 私が伺いたいのは、どういう条件で、新型コロナの影響で例えば休業して所得が少なくなったとかいうことが証明されて対象になるのか、その詳細をいつ示してもらえますかということなんです。答えてください。

加藤国務大臣 今委員がおっしゃっているのは、いわゆる雇用されている人でない場合ということでおっしゃっておられるというふうに……(西村(智)委員「雇用されている人もです」と呼ぶ)ですから、雇用されている人はもうはっきりしているのであって、引き続き雇用がなされて賃金が支払われている、そのかわり、いわばその中において休業が認められている、そうした方に対して賃金が支給されていることに対して、国として先ほど申し上げた八千三百三十円を上限として企業に対してお金を支給する、こういうスキームであります。

西村(智)委員 結局、企業に対して助成金が支払われるわけですよ。働いている雇用者の方々は、例えば休んだときに、休むといってもいろいろな理由はありますけれども、本当にその新型コロナウイルス感染症の影響で休んだのかということをやはり企業の側は判断しますよね、そこは。そうでない理由であれば、企業の側は出さないということになりますよね。

 きょう資料でおつけしている一枚目なんですけれども、これは新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金の詳細版というものです。この右下の方に驚きマークがついていて、「小学校等の臨時休業等により子どもの世話が必要となる労働者に有給の休暇を取得させましょう!」というふうに書いてあります。

 つまり、有給休暇というのは企業が、例えば働き方改革で年間の日数が義務づけられましたけれども、有給休暇というのはやはり労働者にとってはなかなかとりにくいものだ、それを事業主、雇用主の側が取得させるということがあって初めて取得できるものであって、それを、本当に新型コロナウイルスの影響かどうかというところを見きわめた上でこの助成金というのは支払われるはずのものであろうから、やはりそのあたりはちょっと不明確なんだと思うんですよ、私は。

 それで、やはり、本当に休んだ分だけの賃金相当額が支払われているのかどうかということは政府の責任においてきちんとチェックをする、これが必要だというふうに思うんですけれども、その点については、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 通常の年次休暇の話をしているわけではなくて、それとは別途に有給で休ませていただきたいということを申し上げています。当然、有給ですから、その間に賃金が支払われていなければなりませんから、それは確認しなければ今回の新しい助成金を支給することにならない。それから、その場合の対象については、これは幅広く考えていまして、まず、学校が休業であれば、基本的に、それに伴って子供さんがいるわけですから、そういった子供さんがいる方が休まれればそのまま対象になる。

 それと、もう一つの、感染したとか、風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれがあるという場合については、これは、必ずしも受診をしていなくても、企業側から、そういった事情があったね、一定休んだねという中において休業が認められていれば今回の支給の対象になるということであります。

西村(智)委員 そこはしっかりとチェックをしていただきたいと思います。

 あわせてなんですけれども、先ほど大臣もちょっと触れられましたが、フリーランスや自営業の方々、こういった方々へも助成金が、対象になるということになったようなんですけれども、一日四千百円だという話なんですね。

 今、全国で最低賃金はどのくらいでしょうか。大体、全国でざっと見て四千百円というと、いいところ、最低賃金の四時間分とか五時間分とか、そのぐらいにしかならないと思います。これは低過ぎませんか。もうちょっと増額すべきではありませんか、大臣。

加藤国務大臣 今回の臨時休業要請によって、小学校等に通う子供さんの世話を行っている、そういった中で、業務委託、要するに、雇用関係の方は、正規でも、いわゆる非正規の方についても先ほどの仕組みで対象になる、しかし、それ以外で働いている方もいらっしゃるという中において、個人で業務委託契約等で仕事をされている場合についても何か考えていく必要があるのではないか、こういう御指摘をいただきました。

 ただ、具体的に、その方が一体どこまで働いているかというのはなかなか把握しづらい部分があります。そういった意味において、働き方や報酬の定め方が多種多様であるということ、それから、個々に細かく求めていけば膨大な提出資料をお願いしなければなりませんし、一方で膨大な作業が必要になって、結果として支給時期がおくれてしまうということもございます。

 そういったことで、現在、上限額が一般の方は八千何がしでありますから、それを見込みながら、そして、通常四時間程度ということであれば、東京都の最低賃金、これは一千十三円でありますから、その四時間分ということで四千百円、こういったことを一つの基準として出させていただいたということであります。

西村(智)委員 基準というふうに言われますと、何か基準から上がったり下がったりというのがありそうな口ぶりですけれども、ないんですよね、これは。四千百円と決まっているわけです。

 さっき大臣はいみじくもおっしゃいました、どういうふうに働いているのか把握しづらいと。ただ、このフリーランスとかという多様な働き方、多様で柔軟な働き方をまさに推進してきたのが今の政権ではありませんか。どういう働き方をしているか把握できないままいろいろな類型をつくり、そしてそれをもてはやし、多様な、柔軟な働き方であることがすばらしいことのように喧伝して、他方で、そういった働き方の人たちに対する雇用類似の保護のあり方については何の検討もなされてこず、そして今、セーフティーネットがない状態でこういうことになった。

 この流れからすると、私は、雇用と同じように、生活が成り立つという水準まで、やはり、この雇用類似、フリーランスとか自営業とか、そういった方々への補償があるべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、フリーランスといった中、要するに、多様な働き方を私たちは推進させていただきました。したがって、それを踏まえて、まさに多様な働き方をされている方がおられます。それを一くくりといっても、これは別途フリーランスの議論をさせていただいていますけれども、今回は、そういった中で、非常に難しい言い方なんですけれども、まさに雇用されている方と一定程度類似性で見ることができる部分、そこのところについては何がしかの手だてができないかということで、先ほど申し上げたような仕組みをつくらせていただいたということであります。

 フリーランスといっても、すごく高額にお金を取っている方もおられるし、そうでない方もおられるし、いろいろなパターンがあるわけであります。したがって、今回は、そうしたフリーランスを対象にするというよりも、業務委託を受けて仕事をされている方々ということを対象にこういった仕組みをつくらせていただいたということであります。

西村(智)委員 政府が、安倍政権が推進してきたんですよ、多様な働き方というのを。しかし、その働き方になってみたら、現に非常に不安定で、特にこのような新型コロナウイルスの影響が非常に大きいというときには、保護のあり方が何もない、こういったことはやはり私は政府の責任だというふうに思います。

 ですので、この四千百円について、いろいろな方がいらっしゃるとは思うんですけれども、生活が成り立つ水準か。さっき私は申し上げました、最低賃金の大体四時間分とか五時間分、それでとても生活が成り立つんでしょうか。そういったこともよくよく考えていただいて、改めて、この水準については見直しを、あるいは助成のあり方については見直しをお願いしたいと思っております。

 ちょっと時間が限られてきました。きょうは内閣府から副大臣もお越しいただいております。

 新型コロナウイルス感染症対策については、昨日、新型インフルエンザ対策特措法の改正案の閣議決定がされたと承知いたしております。私は、新型インフルエンザ感染症特措法の中で、実は法改正しなくても新型コロナウイルスというのは対象にでき得るというふうに考えております。

 それで、そう思って政府のこれまでの発信をいろいろ見てみたら、資料におつけしているんですけれども、三枚目、総理が二月二十九日の記者会見で、未知のウイルスとの闘いというふうに述べておられました。

 二月二十九日は、総理が国民に向かって記者会見をするというので、私も非常に注目をして聞いたんですけれども、具体的なことが何もなく、プロンプターを見ながら、そして、記者とのやりとりでは紙を見ながら、でき上がった原稿を読んでいるだけのようでありました。その中で、未知のウイルスというふうに述べておられるわけです。

 ところが、資料の四枚目を見ていただくと、これは内閣官房国際感染症対策調整室のツイートですけれども、この前、参議院の予算委員会でも問題になったツイートですが、その真ん中ぐらいにあります連続しているツイートの最後の方、ここに、現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないというふうに書いております。参議院の予算委員会で問題になったのは、この連続ツイートの二つ目です。

 ということは、総理は二月二十九日の時点では未知のウイルスと言っている。内閣官房は三月六日の時点で未知のウイルスではないと言っている。恐らく文脈が違うから違うんですというふうに言うんだと思うんですけれども、それだったら、なぜ、総理は二月二十九日の記者会見であえて未知のウイルスという言葉を使ったんですか。

宮下副大臣 お答えをいたします。

 二月二十九日の安倍総理の記者会見の引用をいただいているわけですが、実は、おつけしている前に総理が最初にコメントされている部分があります。そこに総理がどういう意図で未知という言葉を使われたのかが明確になっている部分がありますので、御紹介いたします。

 そこは、今回のウイルスについては、いまだ未知の部分がたくさんあります、よく見えない、よくわからない敵との闘いは容易なものではありません、これを、次、未知の部分が多いというふうに言って、三回目には、未知のウイルスというふうに、未知を三回使われているんですけれども、一番詳しく述べられているのは、今回のウイルスについていまだ未知の部分がたくさんある、この部分だと思います。

 事実関係を申し上げますと、ウイルス自体は、二月一日以前にCOVID―19というウイルスが七番目の人に感染するコロナウイルスということで特定をされておりまして、二月一日に指定感染症の指定を受けております。

 事実関係としては、ウイルスとしては既知の分類で、感染症法に既に位置づけられているという状態で総理の記者会見が行われた。ツイートについては、そういったことでいえば、コロナウイルス特措法では、未知の疾病についていうと、ウイルスが特定されていないものを新感染症として対応することは可能ですけれども、既にそのときに指定感染症として、ウイルスが特定された疾病として分類されている、これについて特措法でも対応していくには法改正が必要だ、その文脈で未知のウイルスではないという表現を使ったということだと思います。

西村(智)委員 でありますけれども、では、未知のウイルスではないけれども既にある感染症、これはどういう理屈ですか。三月四日のぶら下がり会見で、総理は、今度は既知の感染症だというふうに言っているんですね。ウイルスと感染症はやはり異なるというふうに思うんですよ。異なるんだけれども、感染症の中にはウイルスという要素、いろいろな要素も入ってくる。

 未知のウイルスなんだけれども既知の感染症になるというのは、これはどういう理屈でそうなるんですか。私、今の副大臣の答弁を聞いていても、何か、新型インフル特措法を改正する理由をあえて探そうとして、無理やり感染症法の定義、解釈を変えて、そして新型インフル特措法の解釈を変えて答弁しているというふうにしか聞こえないんですね。後づけですよ、まさに。

 副大臣、どうですか。既知の感染症である、これはどういう理屈でこういうふうに言えるんですか。

宮下副大臣 法的な整理としましては、ウイルスが特定しておって指定感染症に指定をされている、この時点で既知の感染症となる、こういう法的な位置づけであります。

 ただ、総理が言われた未知の感染症、その前に、未知の部分がたくさんあるウイルス、こういう面はいまだそのとおりでありまして、治療法も確立しておりませんし、検査法もまだ開発途上ということもあります。そういったことを受けているということであります。

 感染症法上は疾病を指定しますので、ウイルスを指定するということではない、そういうことでも、ウイルスと感染症、疾病とウイルスの関係は法律の位置づけとしては異なっているということだと思います。

西村(智)委員 治療法もない、ワクチンもない、副大臣もさっきそういうふうに答弁されました。これは未知の感染症そのものじゃないですか。やはり、今のような、何かとにかく言葉だけで取り繕おうとするような、また、ごまかそうとするような答弁はやめていただきたいと思います。

 先週の金曜日、公明党の高木委員もこの場で、未知のウイルスとの闘いというふうにおっしゃりながら、実は、新型インフル特措法というのは、このような、新型コロナのような状況に対応できるようにも立法したはずだというふうに趣旨も述べておられました。私もそういうふうに読みますし、また、この法律は、水際対策の早い段階で国や自治体から備えてもらうためのものであるというふうにも私は承知をいたしております。ですので、やはり、この国会の中にいる人たちは、新型コロナウイルス感染症が感染症法第六条第九項の新感染症の対象とできて、そして、行動計画などをつくって備えることができるというふうに考えている人たちが多いんですよ、実際のところ。だけれども、総理が非常に法改正ということにこだわっている。

 新たなカテゴリーがこれでつくられるということになります、新インフル特措法で。こうしますと、新たな感染症が全国的かつ急速な蔓延のおそれがあるとしても、その都度改正案をつくって閣議決定して、国会を通して法改正してようやくその特措法の対象とするという、非常に時間がかかる手続の前例ができてしまうことになります。

 今、新たなウイルスがグローバル化した世界の中で出てくるという可能性はないとは言い切れません。大臣は、これまで新型コロナウイルスの対応に当たってこられましたけれども、特措法の対象にするのにこうやって法改正を一々しなければいけないということについてどういうふうにお考えですか。

加藤国務大臣 これはかなり深い議論なんだと思います。

 新型インフルエンザ特措法というのは、かなり私権を制限するという法律であります。新感染症だって該当だ、みんな該当だ、該当だ、該当だといったら、何でもできるようになりかねない。今回のようにウイルスがはっきりしているものすら新感染症だというような指摘がなされ、もちろん、かつてのSARSのように最初わからなければ、これはもちろん新感染症であります。

 ただ、新感染症の場合の手続は非常に厳密に感染症法ではつくられておりまして、一件一件、都道府県がさまざまな措置をする場合には厚労大臣に伺いを立て、また、厚労大臣は厚生審議会に諮りという、非常に厳密な定義をつくられているというのがまさに新感染症のケースでありますから、ある意味では使い勝手が悪いです。それに比べたら、指定感染症の方がはるかにいろいろな措置が任意でとれるという部分もあります。

 それから、逆な言い方をもっとすると、では政令で定めるものにすればよかったじゃないかという議論があるんだろうと思います、政令で定めれば何でもできますから。ただ、そうしなかったという当時の議論、ちょっと私はそこまでわかりませんが、多分そこは、まさにこの新型インフルエンザ特措法の持つそうしたある意味では強権性といったものをどう判断するのか、さまざまな議論があったのではないか。これは私の推測であります。

 したがって、今回の措置は確かに迅速性という意味においては欠けるかもしれませんけれども、ただ、こういった本当に私権を大きく拘束するようなものに対してどう適用するのかについては、それぞれ我々も議論していかなきゃいけない部分はあるんじゃないかなと思います。

西村(智)委員 私権を制限するがゆえに、非常に慎重な議論が必要だと私も思います。

 それで、副大臣に最後に伺いたいのは、政令で定める要件に該当したときに緊急事態宣言を実施するということになっていますけれども、非常に曖昧なんですね。要件一について今具体的にどういう検討をされているのか、教えてください。

 肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚労大臣が定める重篤である症例の発生頻度が季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いというふうになっていますけれども、実は、我々のところへの口頭の説明では致死率の比較なんという話があったんですけれども、具体的にどういう状況、どういう基準をあらわすことになりますか。やはり、あらかじめ明らかにしておく必要があると思います。

宮下副大臣 現在の状況をまず御報告いたしますと、この新型コロナウイルス感染症に関しまして、まず、世界保健機関、WHOが季節性インフルエンザよりも深刻な病気を引き起こすと発表したということが事実としてございます。また、専門家会議の議論を踏まえて、二月二十五日に策定されました新型コロナウイルス感染症対策の基本方針におきましても重症度についての記述がありまして、季節性インフルエンザと比べて高いリスクがある、こういうふうに現状認識はされているということであります。

 ただ、一定の要件を満たせば自動的に緊急事態宣言が出るかということに関して言えば、この立法時の中川大臣の御発言等々を見ましても、ここは総合的に判断するとおっしゃっていらっしゃいます。

 また、要件一を満たしているかどうかということについても、実際に、WHOのこういった判断等々、それから専門家会議での判断はあるんですけれども、改めて数値を比較する場合に、対象集団の年齢とか地域の特性などに注意を払ってしっかりそこを判断する、その上で、要件二についてもチェックをした上で、最終的に総合的に判断する、こういうプロセスをとるということを考えているところであります。

西村(智)委員 極めて不十分な答弁ですけれども、残念ですが、時間になりました。ほかの質問も残していましたが、終わります。

盛山委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立国社の尾辻かな子です。

 本日は、三月十一日ということでありまして、東日本大震災から九年目を迎えております。被災された皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた皆様にも改めて哀悼の意を表したいと思います。

 ことしは政府の追悼式が新型コロナウイルス感染拡大により中止になったという異例の事態ですけれども、しっかりと東北の被災地を思い、復興を願いながら、質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 まずは、労働基準法改正案について順次お聞きをしてまいりたいと思います。

 まず最初に大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、今回の法改正によって、賃金請求権の消滅時効期間、これが二年から原則五年に、しかし当分の間は三年にということになりました。民法の原則的な消滅時効期間は、主観的起算点から五年、客観的起算点から十年で、いずれか早い方の経過によって時効になるということで、今回、改正後の民法の規定より今回の賃金請求権の消滅時効期間の方が短くなるということになりました。これは、労働基準法のそもそもの趣旨、労働者保護という趣旨からいうと問題になるのではないかと思います。なぜ三年になったか、お聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 今回の法案では、今御指摘のように、賃金請求権の消滅時効期間について、改正後の民法における契約上の債権の消滅時効期間とのバランスを踏まえて、最終的には改正後の民法と同様の五年とするところであります。

 他方、当分の間は消滅時効を三年としております。これは、一つは、改正民法においては新たに契約をする者が対象になるわけでありますが、それでは会社の中において扱いがばらばらになってしまう、そういったことで、施行日以降に支払い期日が到来する全ての労働者の賃金請求権について、新たに消滅時効期間を適用するということにしたところであります。

 そうしたことも踏まえて、またさまざまな労使の御意見もありまして、現行の記録の保存、今は三年でありますけれども、それを五年にするのも直ちにするのはなかなか難しい、こういった御議論も踏まえて、当面、消滅時効を三年とすることにしたところであります。

尾辻委員 その理由が本当に適切なのかということをまた順次聞きたいと思いますが、私は、労働者保護を目的とする労働基準法であれば、やはり原則五年というのが本来あるべき姿だというふうに思いますし、そもそも、未払い賃金をこういうふうに発生させない、ちゃんと未払い賃金なく支払う体制をとっていただく、これが何より前提として大事だと思います。

 ちょっとこの前提の確認だけ。大臣、いかがですか、やはり未払い賃金は問題だと思われませんか。

加藤国務大臣 これは当然、労働者というか、働き手が働いた、そもそも約束をしているわけですから、それにのっとった賃金が支払われるのは当然のことだというふうに思いますし、これに対しては、今までも未払い賃金の指摘がいろいろありますけれども、しっかり我々は引き続き監督行政において未払い賃金が発生しないように努力をしていきたいと思います。

尾辻委員 まず、その前提のところを確認できたかと思います。

 ちょっと個別の論点を聞いていきたいんですけれども、例えば、今回、非常に特異になるのが家事使用人と呼ばれる方々でして、家事使用人は労働基準法の適用除外なんですね。ですから、今回でいうと、労働債権保護の範囲が縮減されるというのが今回の労基法の方ですから、家事使用人の方は五年になるという、長ければ十年ですけれども、逆転現象が労働者と家事使用人で起こってしまうということになっているわけです。他方で、今、家事使用人に関しては、労災保険とか労働基準法が適用されないということは問題じゃないかということで訴訟も提起されている、こういう矛盾も今出ているわけです。

 まず、家事使用人について、同じ労働者といえどもこういうちぐはぐな待遇になってしまっているわけですが、やはりここは、しっかり家事使用人をまず労働者として位置づけて考えていくべきだと思います。いかがでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員の方からのお尋ねについてはそもそもの労働基準法の適用の問題かと考えますが、御指摘ございましたように、現在、労基法の百十六条の二項におきまして、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」ということで、議員御指摘のとおり、適用除外ということの扱いになっております。

 この点につきましては、そもそも、家事使用人というものにつきましては、今申し上げたのは同居の親族のみというものと同等に通常の労働関係とは異なった特徴を有する関係にある者ということで、国家による監督規制というような法の介入が不適当というような考え方から適用除外としておるところでございまして、私どもとすると、現行のそういった取扱いということを維持したいと思っております。

尾辻委員 でも、そうなると過労死しても労災の申請ができないとか、こういう不都合なことが起こっていますから、やはりそろそろこれは見直すべきときに来ているというふうに思いますので、指摘しておきたいというふうに思います。

 賃金請求権ですけれども、範囲は一体どこまでなのかというのもこれまた議論になっているわけですけれども、労基法二十六条の休業手当や有給休暇中の賃金、これは労基法上の賃金に当たるんでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法の第十一条に賃金について置いておりますけれども、この定めでは、名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うものを指すということとされております。

 したがいまして、今議員お尋ねの、労基法の第二十六条に基づきます休業手当、それから労基法の第三十九条に基づく年次有給休暇中の賃金というものにつきましては、この労基法の第十一条に言う賃金に該当するというものでございます。

尾辻委員 確認をさせていただきました。

 ちょっと一問飛ばしまして、先ほど大臣が、何で三年になったのかというときに、保存期間、保存がなかなか難しいというようなお話があったかと思います。今回も、労働者名簿等の保存期間は原則五年ということになりましたが、当分の間は現行の三年のままということです。

 私、これなんかはやはりちょっとおかしいなと思っていまして、例えば税法上の事業年度の確定申告に係るものは七年保存なんですね。ですから、別に、三年が五年になってもそんなに負担は変わらない。五年保存が使用者側から負担が大きいとされたことについては、やはり私は疑問が残るんです。

 これについて、二年延びることが負担なんだという客観的なデータが示されたり、企業の記録保存に係る負担がどれぐらいどうなるのか、こういう実態把握はあるんでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 記録の保存期間を五年に延長した場合ということになりますと、やはり、いわゆる紙媒体の文書のみならず、企業においては、システム改修でございましたり、あるいは紙媒体に係る保存の方法の見直しというようなことも付随して必要になってくるということで考えてございます。その際の具体的なコストや負担についてでございますけれども、やはり企業規模あるいは記録の今申し上げました保存方法等によって大きく異なりますので、そういったものについては一概にお示しすることが困難ということで、これまでもお示しはできていないというものでございます。

 ただ、一般的には、従業員が多い事業場、あるいは紙媒体での保存を行っている事業場ということであれば相応の負担が発生するというもので考えてございまして、労働政策審議会の労働条件分科会においてもそういったような意見というものが行われていたということでございます。

 私どもとしましても、本法案の検討規定にもございますとおり、労使あるいは公益委員の御意見も踏まえて、こういった企業における労務管理の状況等についても可能な限り把握できるように今後努めてまいりたいと考えてございます。

尾辻委員 確認ですけれども、客観的データというのはないわけですよね、負担だという。

坂口政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、いろいろ、企業規模等々でさまざまでございますので、定量的な、客観的なデータということについては持ち合わせていないということでございます。

尾辻委員 今回、こういった議論をするときに、本来、ちゃんと把握をして、客観的なデータがあって、これだけの負担があるから三年ですということならわかりますけれども、こう考えましたとかいうことで、結果的に、原則五年ですけれども、当分の間三年になっているわけです。しっかりと、これはやはり、実態把握、データとして私たちに示していただきたいと思います。そして、本則の五年に早くしていただかなきゃいけませんので、紙媒体が大変だというのであれば、IT化とかデジタル化とか、こういうことも支援していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、こういった労務管理あるいはそういった文書の保存というようなことにおきましても事業主の責任と負担において行われるということが前提ではあると考えますけれども、やはり、私どもも、先ほど申し上げましたような、いろいろ困難を抱えておられる中小企業事業主を中心としまして、労務管理の適正化等に取り組まれるという中小企業事業主に対しまして支援を行ってございます。

 例えば、現行も、時間外労働等の改善助成金というようなものにおきまして、中小の事業主が生産性の向上を図りながら労働時間の縮減等に取り組む場合に、労務管理用のソフトウエアあるいは労務管理用機器の導入、更新に要する費用というものの助成というものもしております。

 私どもとしましても、引き続き、こういった助成金の活用を進めるとともに、長時間労働の削減、賃金不払いが起こらないようにするための取組ということを支援するということで努めてまいりたいと思います。

尾辻委員 まず、しっかり実態把握をしてください。そして、支援をしていただくようにお願いしたいと思います。

 次、大臣にちょっとお聞きいたしますけれども、今回の法案は施行期日が四月一日ということで、民法改正案は公布から施行まで一応三年かけたわけです。あっという間に四月一日ということになるわけで、そうすると、本当に労働者の皆さんにこういった一年延びましたよとかいうことが周知できるのか。この辺はどうお考えなんでしょうか。

加藤国務大臣 本法案の施行期日は今委員御指摘のように令和二年四月一日となって、特段の周知期間は設けておりません。

 この規定は遡及適用はしないということであります。施行日時点で既に支払い期日が到来している賃金債権については過去にさかのぼって三年分請求するわけではなく、あくまでも二年であるということ。また、新たな消滅時効期間が適用される施行日以降に支払い日が到来する賃金債権についても、三年なんですけれども、最初の二年は今でも二年ですから、そこから、要するに二年超えたところにおいて、皆さんまだ請求する権利がありますよということをしっかり周知しなきゃいけない。

 そういった意味においては、令和四年の四月以降にそういった事態が生じますから、それに向けて今からしっかりと周知等を図っていきたいというふうに思います。

尾辻委員 だから、民法のときに比べたら、今回の労基法の改正というのは本当にばたばただなというふうに感じています。ですので、もちろん、二年から三年に延びるということで、今すぐというのは大臣もおっしゃるとおりなんですが、しっかりわかるように周知をしていただきたいというふうに思います。

 では、今度、これをいつ本当に改正するのかということを最後に大臣にお聞きしたいんですけれども、今回、施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定については、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするというふうに附則でなっているわけですね。当分の間ということ、そして施行後五年を経過した場合、必要と認める場合ということなんです。

 実は、中小企業の時間外労働に五割以上の割増し賃金率が義務づけられた、この際は三年経過後の見直しだったんですが、結局、適用猶予の廃止は二〇二三年からですから。法改正は、二〇〇八年から二〇一八年まで、結局、十年かかったんです。三年経過後の見直しといいながら十年、そして本当に施行するまで十五年かかった。では、当分の間の廃止ということは、これは本当に五年後に見直されるのか。本来、きちっと廃止時期を明記するべきじゃないかというふうに思いますが、このあたりはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 これもいろいろな議論の中で経過措置の期間が当分の間とされたところでありまして、現時点では、まことに申しわけないんですが、当分の間は当分の間としか言えないというのが今の状況ではあります。

 ただ一方で、消滅時効期間の延長に際しては、未払い賃金に係る紛争が発生している実態、それに対応するため企業に対し労働時間の適切な管理がこれまで以上に求められていくわけでありますから、このため、厚労省としては、改正法の周知、定着はもとよりとして、長時間労働の削減や賃金不払いが起こらないようにするための取組を推進をしていく、また、労働時間の適切、適正な把握と記録保存のため、特に、中小企業に対する労務管理の適正化に向けた支援、労務管理機器等の活用に対する助成、こういったことに取り組むことによって、一つ一つの課題、今指摘されているわけでありますから、その解決に向け、努力をしていきたいと思っております。

 なお、施行後五年の見直しという規定があるわけでありますけれども、そうした際にも、今回のこの当分の間をどうするのかということも含めて検討がなされるものという、その上で適切な判断がなされていくんだろうというふうに思います。

尾辻委員 私は、原則というのがあって、当分の間と書いてあるんですから、本当はきちんと廃止時期を明記するべきだというふうに思います。今のままでは言えないということですけれども、私は、ちゃんと五年のときに見直して、しっかりと原則に戻すべきだということを要請をしておきたいというふうに思います。

 続いて、新型コロナウイルス感染のことについてお聞きをしてまいりたいと思いますけれども、まずもって、今回、本当に、厚生労働省の皆さん、ダイヤモンド・プリンセス号から始まって、今回のコロナウイルス感染について日夜取り組んでいただいていることには心から敬意を表したいというふうに思います。

 特に、専門家会議の方では長期化を視野に入れたというような話もありますので、今、短期的にやって、集中的にやっておられますけれども、しっかりと、どこかでかわりながら、休みも入れていただきながら、この長期戦を乗り切っていただけるように頑張っていただきたいというふうに思います。

 ちょっと、先ほどから少し議論のあるところで確認をしておきたいことがあります。コロナウイルス感染症とウイルスがどうもいろいろ議論の中で混同されているようなので。新型コロナウイルス感染症というのは、WHOでいうとCOVID―19である。そして、ウイルスというのはこれまた別のちゃんとした名称があって、これはSARS―CoV―2ですよね。ちょっとここだけ確認させてください。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に議員の御指摘のとおりでございますが、WHOにおきましてこの感染症はCOVID―19という名称が定められましたが、日本では既に新型コロナウイルス感染症という名称が一般的に定着しているので、この名称を使わせていただいております。

 また、ウイルスにつきまして、SARS―CoV―2でございますけれども、これについてはまだ和名等が現時点では学会等で定められたものがないということで、この和名というのはないというふうに理解しております。

尾辻委員 済みません、ウイルスの和名がないということは、では、皆さんはそのウイルス名は何と呼ばれているんでしょう。

宮嵜政府参考人 一般的に、現時点では新型コロナウイルスというふうな呼び方をさせていただいております。

尾辻委員 新型コロナは、私はこれは今緊急性のあるときにやる議論ではないと思いますが、コロナウイルスの七種類目ですよね。そうすると、また新しいコロナウイルスが多分来るときにこれまた新型と言わなきゃいけなくて、結局混同していくわけですから、どこかの段階でしっかりと、このCOVID―19とか、ウイルス名のところも名づけてやっていただかないと混乱が起こると思います。指摘をしておきたいというふうに思います。

 済みません、あともう一点、新感染症のことだけ、少し確認をしておきたいと思います。

 今、新型コロナウイルスは指定感染症になっているわけですけれども、新感染症というのは、私の中では、非常に劇症化する。それも、日本でこれに対処できる病院というのはほとんどなくて、四病院、十床、これしかない。要は、一類相当のような扱いの未知のものがなるということですよね。これは確認だけです。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 新感染症につきましては、今委員からもございましたけれども、感染症法では第六条の第九項においていろいろ規定されているところでございます。

 それから、収容というか、治療を行う医療機関というのは今委員から御指摘のありました特定感染症指定医療機関というところが定められておりまして、そこで対応する感染症ということになります。(発言する者あり)新感染症です。

尾辻委員 新感染症というのは、私が聞きたかったのは、今、新型コロナウイルスというのは指定感染症ですよね。私のイメージでは、新感染症というのは非常に劇症型で、一類ぐらいになるようなもの。これが新感染症。だから、皆さんの取扱いも、特定の感染症の医療機関、四病院、十床でしかできないという取扱いにしていますよね、今。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今、一類のようなという話がありましたが、一類とか二類とかということでありますと指定感染症ということでございまして、あくまでも、その原因とか、そのウイルス、感染症が未知の感染症であるということであれば新感染症というような取扱いになるということで、すごくアバウトな表現ですけれども、そういう取扱いになるという整理でございます。病院は、特定感染症医療機関で対応するということでございます、新感染症であれば。(発言する者あり)

盛山委員長 では、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 では、時計を起こしてください。

 では、宮嵜健康局長。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 医療機関の方は、新感染症につきまして、特定感染症医療機関というふうに申し上げましたが、先生が言われている特定感染症医療機関は全国で四医療機関で十床が指定されているところでございまして、そこで対応するということでございます。

尾辻委員 じゃ、それは、例えばバイオセーフティーレベルはどれぐらいのものですか。

宮嵜政府参考人 指定の要件としては、必ず陰圧でいろいろな対応ができるようにとか幾つか要件を定めて、その感染症を取り扱う医療機関の中では一番高いレベルで対応するような形となってございます。

尾辻委員 バイオセーフティーレベルは聞いていませんでしたので。感染症において新感染症というのは地域で診られるようなものではなくて、日本で四つの病院、十床しかその枠組みがないようなものを新感染症として位置づけているということをただ確認したかっただけですから、もう結構かと思います。

    〔委員長退席、冨岡委員長代理着席〕

 きょうはいろいろ確認したいことがあるんですけれども、今何が一番問題になっているかというと、専門家会議を経ずに実行されている一斉休校とか入国制限とかイベント自粛とかで、働く保護者の皆さんとか子供たち、自粛による経済損失など、本当に多岐にわたって国民生活に支障が出る状況になっているわけです。これを、じゃ、どういうふうにして今後打開していくのかということについて、ちょっとまず確認を各府省庁にしていきたいと思いますので、お聞きしたいと思います。

 文科省にまずお聞きしますけれども、一斉休校を要請されたわけです。要請したということは、どこかで解除するというタイミングがやってくると思うんですけれども、解除のタイミングというのに何か基準があるのか、全国なのか、地域限定で解除していくのか、専門家会議に聞くのか。この辺はどうなるのか、お聞かせください。

    〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の学校の一斉臨時休業の要請は、今がまさに感染の流行を早期に終息させるために極めて重要な時期であることを踏まえ、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まることによる感染リスクをあらかじめ抑える観点から行ったものでございます。

 一昨日、三月九日でございますけれども、開催された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、依然として警戒を緩めることはできないとの見解が示されたところでございます。当面は、円滑な臨時休業の実施を通じて感染拡大防止に全力を尽くすことが最も重要と考えております。

 なお、今後、この専門家会議においては三月十九日を目途に新たな報告が出される予定と聞いてございます。この内容も踏まえながら、学校を再開するに当たってのいわば目安について検討してまいりたいというように考えてございます。

尾辻委員 ということは、今文科省において、こういう状態になりましたら解除しますよとか、そういう基準があるわけではないということでいいですか。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 今この瞬間に、例えばどういった状況になれば開校、閉校の解除が可能であろうといったような明確な基準を私どもは持ち合わせているわけではございませんで、これは、各地域それから各学校の状況もよく見ながら、また専門家会議の報告の内容も踏まえながら、しっかりと検討していくということとしたいと考えてございます。

尾辻委員 では、次、法務省にお聞きしますけれども、入国制限をされました。解除のタイミングというのはどこなのか、それに対する基準はあるのか、そしてそれは専門家会議などに聞かれるのか、お聞かせください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、入管法五条一項十四号の上陸拒否の対象地域についてお答えしますけれども、政府におきまして、これまで新型コロナウイルス感染症の感染者が外国の一定の地域におきまして多数に上っている状況等がある、それから当該地域に滞在する外国人の上陸を拒否すべき緊急性が高い場合、こういう場合には当該地域を政府対策本部において報告して公表しているところでございます。

 法務省は、これを踏まえて期間を当分の間といたしまして、入管法五条一項十四号に基づきまして、中国湖北省を始めとする対象地域に滞在歴がある外国人について上陸拒否の措置を講じているところでございます。

 措置の解除でございますけれども、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況が時々刻々と変化しておりますけれども、上陸拒否の措置の対象地域が今現在拡大している状況にある中でございますので、上陸拒否の措置の解除のタイミングについてお答えすることは困難でありますけれども、上陸拒否の措置を行う場合と同様に、措置の解除に当たりましても、政府全体としてのさまざまな情報や知見に基づく検討を踏まえまして、法務省として必要な措置を講じていくことになると考えているところでございます。

尾辻委員 ということは、明確な基準が今あるのかないのか、そして専門家会議に聞くのか聞かないのか、ここだけ端的に確認します。

佐藤政府参考人 それは、専門家会議における議論も含めまして、政府全体としてのさまざまな情報や知見に基づく検討が行われるものだというふうに理解しているところでございます。

 基準といいますのは、先ほど申し上げましたとおり、感染者が外国の一定の地域に多数上っている状況等があって、外国人の上陸を拒否すべき緊急性が高い場合ということでございます。

尾辻委員 これもやはり基準がわからないということであります。

 では、今度はイベント自粛でありますけれども、イベント自粛も要請をされております。では、要請解除というのはもちろんあるんですよね、どこかのタイミングで。まず、要請解除というのをするのか、それに対して何か基準はあるのか、全国一斉なのか地域限定なのか、専門家会議の意見を聞くのか、ここをお聞かせください。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の現状につきまして、先日、三月九日の専門家会議におきまして、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえているものの、同時に、依然として警戒を緩めることはできないとの見解が新たに示されまして、三月十九日ごろを目途に、これまでの対策の効果について判断が示される予定でございます。

 政府といたしましては、当該専門家会議の判断が示されるまでの間、今後おおむね十日間程度は全国規模のイベントについて中止、延期、規模縮小等の対応を継続していただくように要請しているところでございます。引き続き専門家の見解も踏まえつつイベント等の取扱いについて判断してまいりたいということでございまして、今現時点で何か定量的な基準があるということではなくて、今もお話を申し上げましたけれども、専門家からの見解も踏まえつつ今後判断してまいりたいということでございます。

 それからあと、全国一斉か地域限定かというお話もありましたが、現時点では、どういう形になるかということは今申し上げられるような状況じゃありませんが、可能性としてはいろいろな、こういう可能性はどちらもあるというふうには考えております。

尾辻委員 今確認してきましたけれども、結局明確な基準がないということは、どこが出口になるのかわからないということなんです。それはやはり、国民生活とか、生活している人にとってはすごく不安になるわけですよ。出口が見えない、どの段階になったら自分たちはどうできるのかという。やはり、しっかりと出口のめどを示すというのは大事だと思います。それを客観的な数字とか専門的な知見をしっかり活用してやっていかないと、本当に不安は広がるんじゃないかなと思いますので、皆さん、しっかり基準を検討して示していただくように求めていきたいというふうに思います。

 次に、濃厚接触者の定義のことでちょっと確認なんですけれども、国立感染症研究所の積極疫学調査実施要領を見ると、患者(確定例)が発病した以降に接触した者が濃厚接触者だというふうにいっています。

 ただ、今、陽性者、つまりウイルスを持っている無症状病原体保有者もいらっしゃるわけです。そうすると、この無症状病原体保有者の濃厚接触者というのは、この定義からいうと、この人は要は濃厚接触者には当たらないということになるということでよろしいですか。

宮嵜政府参考人 今委員から御指摘がありました無症状病原体保有者につきましてですけれども、これにつきましては、感染症法上、入院の措置とかは患者等と同様に行う形でございますけれども、今の、濃厚接触者としての疫学的調査の対象ということで申し上げますと、国立感染症研究所が作成いたしました新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領によりますと、今委員御指摘がありましたように、濃厚接触者とは患者(確定例)が発病した以降に接触した者ということで規定されております。

 この無症状病原体保有者につきましては、同実施要領によりますと、接触者に対して感染伝播をさせた場合の影響の大きさを評価し、接触者調査の実施については個別に判断するというふうにされているところでございます。

尾辻委員 これは私はちょっと整理するべきだと思うんですね。今、実際、無症状病原体保有者でも感染力を有するということは指摘されているところですから。これは本当に市民生活の中でいろいろな影響が出てくるんです。濃厚接触者になり得るというような整理が必要かと思うんですけれども、いかがでしょう。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員から御指摘がございましたが、無症状の病原体保有者の感染力についてはまだいろいろエビデンスを収集しなければいけないところがあろうかと思いますが、そういうことも含めまして、無症状病原体保有者も患者(確定例)と全く同じような取扱いで濃厚接触者として取り扱うと、委員からもお話がありましたが影響もかなりいろいろあるということでございますので、この積極的疫学調査の実施要領の中では、患者(確定例)とは別の考え方で、個別に接触者調査の実施について判断するという整理にされているところでございます。

尾辻委員 残りは後でさせていただきます。

盛山委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時五十分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時四十二分開議

盛山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。尾辻君。

尾辻委員 それでは、残り時間の質疑をさせていただきたいと思います。

 大臣にお戻りになったところでお聞きしたいと思うんですけれども、先ほど濃厚接触者のことについては確認をさせていただきました。これはちょっと、もうひとつ整理が必要だと思います。

 今何が起こっているかというと、コロナウイルス感染による過剰反応がかなり地域で起こっていて、差別的とも言えるような状況があります。

 特に、私が見聞きする中では、濃厚接触者、そして濃厚接触者の家族までもが、出勤を停止しなさいとか、職場に来てはいけませんというような状況が生まれております。濃厚接触者の家族は濃厚接触者じゃないわけですよね、今のところ。にもかかわらず、そういう人にまで例えば陰性証明書を出してくださいとか、そうやって求めるようなことも出てきていますので、家族や濃厚接触者、感染者含めてそういう偏見を防ぐために、やはりわかりやすい情報発信が必要だと思います。大臣の御所見をお伺いします。

加藤国務大臣 まさに、患者の御家族の皆さん、そしてさらに今言われた濃厚接触者、あるいは接触をされた疑いのある方、またその家族、また、ちょっと視点は違うんですけれども、先般のクルーズ船に出て、本当にみずからの危険を顧みず働いていただいた医療関係者の方々、またその家族に対しても本当にいわれなき言動が行われているというのは承知をしておりまして、本当に、私どもそうしたことをお願いした立場からしても、しっかり本当の姿を、本当の姿というのは、正しい情報をしっかり提供していかなきゃいけないというふうに思っております。

 基本的対処方針の中においても、患者や対策にかかわった方々の人権に配慮した取組を行うということを明記させていただいております。なかなか簡単なことではありませんけれども、一つ一つの機会を捉えながら、そうした間違った理解、そしてそれに基づく言動が行われないように、私どもも努力をしていきたいと思います。

尾辻委員 この辺、広がれば広がるほどそういった事象も広がっていきますので、しっかり情報を発信していただきたいと思います。

 ちょっと確認ですけれども、陰性証明書というものは今医療機関ではまず出せませんよね。例えば退院したときに、退院したことは証明できても、この方が新型コロナウイルスがありませんとかいう証明書は出せるものでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、今回の新型コロナウイルス感染症に限らずですけれども、感染症に係る陰性の判定が記載された診断書等につきましては、患者さんの求めがございましたらば、医療機関というか医師の判断で発行するかどうか判断されるものというふうに承知しております。検査の実施状況にもよるかと思いますけれども、最終的には医師の判断で発行されるかどうかというものだというふうに承知しております。だから、出せないというルールもありませんし、出すべきということでもないということです。

尾辻委員 じゃ、出そうと思ったら出せる。ちょっとこれは、もう少し私は整理が必要だと思います。より混乱する可能性があると思いますよ。

 最後に一言。今、自治体でかなりプライバシーの公表に当たるんじゃないかという情報までが公表されたりしていて、自治体によってこれはばらつきがあるんですね。こういうふうに公表されると、検査を受けたくないという、検査を忌避するような動きが出てくる可能性があると思います。知事会からもこの公表の基準を示してほしいということを言われているかと思いますので、この辺、プライバシーと公表のバランスのあたりについてはちょっと基準を示していただくようにお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立国社の阿部知子です。

 本日は、労働基準法の改正についてまずお伺いをいたしますが、非常に、コロナウイルス感染症の問題もあってタイトな日程の中、急がされる審議ということで、実は大臣の所信も伺っていない中、質問に入らざるを得ない。厚生労働行政の全般的な姿勢というものを伺う前に個別の法案ということで、私はこの点は大変遺憾に思うものですが、時局柄ということで、御質問をさせていただきます。

 まず冒頭、先ほど尾辻委員とのやりとりの中で問題になっておりました今般の労働基準法の一部改正に関してですが、そもそも民法の改正に合わせてもろもろの、例えば賃金請求権の消滅期限を二年から五年にするということをメーンとした改正が今回の改正だと思います。そして、賃金という勤労者にとって最も重要なものの請求権をせめて民法並びの五年にしようというところから発したはずのこの改正が、当分の間三年というふうに区切られて、法律用語で当分の間というと永遠の当分の間というのもございますので、本来の労働者保護の観点からどうかということで、質問の一問目をお尋ねをさせていただきます。

 当初一問目として予定したものは尾辻議員が聞いてくださいましたが、その中で、なぜ今回の法律の改正で五年にできないのだということをお伺いいたしましたところ、簡単に詰めて申しますと労務管理上の問題があり、その具体的な内容は、賃金の台帳等の未整備、あるいは雇用者側の負担が大きいということが突き詰めると御答弁だったと思います。

 そこで、お伺いいたします。

 お手元の一枚目にございますが、賃金台帳等が整備されていない状況というものが厚生労働省においてどの程度把握をされておるのか。お示しいたしました一枚目の下段でありますが、この五年間で、労働基準監督等々の中で、いわゆる賃金台帳の問題が違反として挙げられた事業所の数と監督総数を挙げてございます。

 大臣に見ていただければわかりますが、例えば、平成三十年、監督総数十三万六千二百八十一のうち、百八条という賃金台帳違反が一万一千八百八十二。労基法の三十七条の割増し賃金違反が二万九百八十七、いわゆる残業代不払いに当たるものですが、それに次いで多いのがこの賃金台帳問題だと思います。

 大臣にあってはこの現状認識はいかがなものか、御答弁をお願いします。

加藤国務大臣 賃金台帳というのはある意味で、そこで働かれている方に対してどう支払いがなされているのか、これを私どもが監督指導に当たってチェックする上で大変重要な資料であります。そこにおいて違反が認められるということはゆゆしき事態ということで、これまでも、数字をお示しいただいておりますように、是正の指導に当たってきているところであります。

 今後とも、厚労省としては、まさに監督指導の入り口として賃金台帳をしっかりチェックをしていく、そういった姿勢で、労働基準監督法令がそれぞれの企業において遵守される、特に、こうした賃金台帳の違反がないように監督指導の徹底を図っていきたいと思っております。

阿部委員 大臣、ごらんいただければ、この五年間、ある意味で一貫して改善していないんですね。一割弱です。全体の監督数の中の一割弱、相変わらず一割弱。監督数、立入りに入ったりすることが多いのは、それはそれで労働基準行政上いいことでもありますが、しかし、五年間積み重ねてきてほとんど改善点がないわけです。これを、雇用側の準備が整わないからということで、五年間見てもほとんど変わらないと思うんです。どんな目安でどうなったら当面の間の三年から五年の本則にできるのかという問題意識を持って厚生労働省にはやっていただかなければなりませんが、そこで、二つ目の質問です。

 実は、この間の改正で当面の間三年とされたことの大きな理由が、この賃金台帳も含む保存の問題が今三年であるからというふうに政府側から御答弁をいただきました。三年であっても、違反があるのも減ってはいないわけです。今、三年ということが守られていないものもこれだけずっと減っていないわけです。

 では、賃金台帳等。賃金台帳が百八条ですから、賃金台帳等の保存状況について、等と申しますと、上段にあるように一から七までが等に当たります。大臣もお手元で見ていただきたいと思いますが、この賃金台帳等の保存状況については、各労働監督実施のときに、定期監督実施のときに、どのくらいの違反率があるか把握しておられますでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御指摘ございました、いわゆる労働基準法の百九条につきます労働者名簿、賃金台帳などの労働に関する重要な書類の保存義務の違反の件数ということにつきましては、現在、私ども、その件数そのものについては集計という作業ができていないということでございます。ただ、私どもも令和元年度分からは集計をしっかりしてまいりたいと考えております。

 先ほど大臣からもございましたとおり、賃金台帳等をしっかりつくるというのは入り口でございますので、その作成のみならず、書類の保存も含めまして、基準関係法令が遵守されるように、監督指導の徹底ということをしっかりやってまいりたいと思います。

阿部委員 私は正直言ってびっくりしたんです。だって、民法改正に平仄を合わせなきゃいけないという要請は、きのう、きょうに始まったわけではない、少なくとも昨年に始まったわけではない。しかし、そのときに、どんな労働現場にあって、例えば三年の保存を要請されているものが賃金台帳以外にたくさんあるわけです。それを百九条と取りまとめてどのくらい違反率があるだろうかということを、去年から、あえて言えば去年、平成三十一年から集計する。その前はまるで集計していなかったんでしょうか。一体、この法改正に向けて厚労省は何を準備してきたのでしょうか。

 もちろん、事業者側の理由を挙げ立てるのは容易です。しかし、それをよくしていくために、改善していくために、当分の間の三年を五年にしていくために何をしてきたか。保存状況が三年の規定だから五年にはできないと、あるときは理由に使い、しかし、三年がどのように守られているかということの実態も把握せず。これでは改善のされようがないではないですか。大臣、おわかりですか。

 私は、そんなことを理由に挙げるなら、というか、わかっているでしょう、厚生労働行政の中でやってきて。なぜ百九条を、今さらです、元年から集計することにしていると。余りにも遅い。そして、予定される法改正への備えがない。いかがですか、大臣。

加藤国務大臣 今ありましたように、これまでの審議の中においても、こうした百九条の記録の保存の違反がどうなっているのか把握をしていない、それに対して指摘があり、それを踏まえて元年度分から集計をすることとさせていただいているところでございまして、ことしの六月下旬には違反件数をお示しできるというふうに考えております。

阿部委員 大臣、一年分ですよ、せいぜい示されても。私が、ここに五年をデータで出してくれと、これを出していただくまでに当の部局には御負担はかけましたが、一体改善しているんだろうかという目を持って見ないと、漫然と五年を過ぎて見直して、また、状況が変わっていないから、いや、労側だけじゃなくて使側も大変だからこれは五年にできないねとなるに決まっているんですよ。

 きちんとした労働基準監督業務が行われて、例えば、どこをサポートすれば保存がよりスムーズに、あるいは、より違反と問われることが少なくなるのか、そのような目でお考えになったことはあるでしょうか。大臣、お願いします。

加藤国務大臣 まず、基本は、こうした保存がしっかりなされていく。きちんとした賃金台帳がなければ保存してもしようがないわけですから、まずきちんとした賃金台帳を調製していただく、その上で、それを今は三年きちんと保存していただく、こういったことについて理解を深め、また、今回の改正法の周知も含めて、周知、定着に取り組んでいく必要があると思います。

 それから、実際、現場の中において特に中小企業における負担が大きいという声があったわけでありますから、こうした労務管理の適正化に向けた、今、労務管理機器等の活用、これは働き方改革と一体にはなっていますけれども、そういった中での助成措置もあります。そういったことをしっかり周知をし、また、その利用を図っていくことで、まさにしっかりと賃金台帳等を保存していただける、こういう環境をつくっていきたいと思っております。

阿部委員 総論的に言えば、そのような御答弁にならざるを得ないでしょう。でも、私は大臣にもっと深刻にこの状況をお考えいただきたいんですね。

 ここに保存が要請されているものは、賃金台帳のほかにも極めて重要なものであります。労働者名簿にしろ、さまざまな解雇に関する書類にしろ。もし、これらが、今、違反件数は出てきませんよ、でも、膨大な数の違反があったら、当然ながら、五年後に見直したって、さっき申し上げました本則の五年になんかならないんですよ。三年、そこだって実はどうかというような現状だと思います。

 今回の急がれる改正がこうしたことを全く抜きに、私は、条文だけ改正したって意味がない、中身が伴わなければと強く思いますので、この件、もっと早く調べていればいいじゃないかと繰り返しですが思います。そのようにお努めいただきたいと思います。

 重ねて、もう一つあります。いわゆる災害等々に係る債権の問題。災害補償その他の請求権、労災も含めて、これは二年に据え置かれました。これも本来平仄を合わせて五年がしかるべきと思いますが、私がお尋ねしたところ、迅速に請求をしてほしいから二年にとめ置いたんだというふうに役所は言われました。しかし、労災もまた労働者の大事な権利で、自分に権利が発生していることを実際の請求行為に起こすまでの間も、当然、時間もあろうかと思います。

 労働者保護の観点から、短いよりは長い方がよい、果てしなく長くしろとは申しませんが、せめて五年に平仄を合わせられてはどうですか。大臣に伺います。

加藤国務大臣 まさに、災害補償請求権、もう委員御承知のように、現在、民法の一般債権の消滅時効期間の十年の対象になるわけでありますけれども、労基法で二年の消滅時効期間とされているということでありますので、そういった意味では、民法の消滅時効期間とかかわらず、二年ということを引き続き維持した。

 また、災害補償の仕組みでは、労働者の負傷等の業務起因性を明らかにする必要があるが、時間の経過とともにその立証は困難となり、早期に権利を確定させて労働者救済を図ることが制度の本質的な要請であり、労政審の建議においても、このような考え方から、現行の二年を維持することが適当とされたところであります。

阿部委員 申しわけないけれども、よくわかりませんでした。

 私は、労災というのも賃金と並ぶ重要な労働者の権利であります、ただ、その請求が今の二年という形では、自分の権利の行使に結びつかないこともあろうかと思います。一般の民法上十年とおっしゃいましたが、せめて五年、ここを延長する、その方向が労働者保護の観点であると思います。それが労働者保護に反するという、何か実証を挙げてくださるなら納得をいたします。でも、大臣の今の御答弁からは、そうしたことではありませんでした。とにかく形式だけの改正、それも、ここにおいては極めて不十分な、改正も行わないということで、本当にこれからの労働現場が守られていくのか、大変不安に思うことを申し添えます。

 今以上聞いても今以上の御答弁がないやに思いますので、この件については私の見解を申し述べて、次のテーマに移らせていただきます。

 次は、この間、最も大きな問題、きょうも内閣委員会で特措法の問題が論議されているコロナの、新感染症としての問題についてお尋ねをいたします。

 まず大臣に、恐縮ですが、先ほど西村委員と御答弁側の御意見を聞いていて、ちょっと確認をさせていただきます。

 大臣、新コロナ感染症の原因ウイルスは何でしょうか。

加藤国務大臣 今でいうSARS―CoV―2ということで、これまで日本の中では新型コロナウイルスというふうに言ってきたところであります。

阿部委員 おっしゃったように、コロナウイルスの一種、SARS―CoV―2と言われているものであります。これが病原体です。病原体がどのくらいの病原性、人間に、あるいは、大臣にこんな変なことを聞いて済みませんが、O157、これはばい菌ですが、これは牛には病原性を持ちません、牛の中では病原とはならないんです。人間に来たときに病原性を持ちます。病原体と病原性は異なります。

 さて、コロナの先ほどおっしゃったSARS―CoV―2、これがどんな病原性を持って人間に何を起こすかというところでついた名前が、COVID―19、新型コロナウイルス感染症です。新型コロナウイルス感染症、COVID―19が一体どんな病態、疾病の特徴を持っているか、これは、大臣、どうお考えでしょうか。(発言する者あり)

盛山委員長 私の方で指名しましたので、その後、大臣に答えてもらいます。

宮嵜政府参考人 申しわけございません、簡単にお答えさせていただきます。済みません。

 病原体につきましては、今申し上げたとおり。それから、病原性につきましても、いろいろ、中国の状況も含めて、全くわかっていないわけではないですけれども、ある程度のところもわかってきている部分もあるということ。それから、疾病につきましても同様でございます。

加藤国務大臣 症状ということであれば、WHOの中国のレポートでは、発熱が八七・九%、せきが六七・七%、倦怠感が三八・一%、たんが三三・四%、息切れが一八・六%、喉の痛みが一八・六%、筋肉・関節痛が一三・六%、頭痛が一三・六%等の報告が行われているところであります。

阿部委員 私がこんなことを伺いましたのは、例えば、重症急性呼吸器症候群、いわゆるSARSについては、ある程度病像が固まって、理解されております。それから、中東呼吸器症候群というものについても、MERSですが、ある程度病状と病態が把握されております。

 さて、新型コロナウイルス感染症については、残念ながら、いまだそこまで至っておりません。大臣がおっしゃった幾つかの症状が挙げられているだけで。例えば、大臣は、先ほど官僚の皆さんの御答弁がありましたが、この間の中国とWHOの中国における感染の報告を受けて、これをどのように受けとめておられますか、報告をどのように受けとめておられますか。全体でもいいです。病原性についてでもいいですし、全体についてでもいいです。

加藤国務大臣 症状に関しては、八〇%が軽度、それからシビア、深刻が一三・八%、重篤が六・一%、こういう数字が出ております。

 致死率ですけれども、中国全土では三・八%でありますが、武漢を除けば〇・七%、また、八十歳以上では二一・九%、合併症がある場合、特に循環器疾患が高い場合は一三・二%。また、一月一日から十日の発病者の致死率は一七・三%でしたが、二月一日以降の発病者は〇・七%。

 こういった数字を見ると、一つは、このCOVID―19の中では八割が軽症だということが一つ言える、他方で、八十歳、要するに高齢者、基礎疾患のある方はやはり致死率が高いということ、それからもう一つは、先ほど申し上げた一月一日から十日と二月一日以降で発病者に占める致死率が違うということは、やはり医療提供体制がしっかり整っていけば相当致死率を抑え込むことができるのではないかといったところが見えるのではないかと思います。

阿部委員 私は、特措法を振り回す前に、まず、そういう状況、中国から学んだことをしっかり国民にもメッセージすべきだと思います。

 大臣がおっしゃったように、私がお示ししたこのグラフでも、当初の発症当時の死亡率と現在の死亡率は明らかに異なっております。それだけじゃなくて、武漢とそれ以外の中国の各地の感染を時間経過とともに追うと、死亡率はどんどん減ってきております。

 少なくとも、私たちの世界と社会がこのウイルス感染症をある意味コントロール、ある意味です、でも、全体像は私はまだわかっておらないと思います。MERSやSARSのようには明らかになってはいない、これが新型コロナの感染症の現状であります。であれば、その病原性も含めた病態、疾患の特徴、これを丹念に追うというのが現状のフェーズであると思います。

 そこで、私たちはもともとの新型インフルエンザ等の感染症の中で読み込んで丹念に追っていくべきだという主張をしておるということを、ぜひ御理解をいただきたい。

 今、感染症パニックが世の中を支配しております。先ほどの、陰性証明書などというものが要求される社会は間違っております。このことも厚生労働省がきちんと、そんなことを、お医者さんが出すことで、あり得ますとか言っていては、歴史的緊急事態うんたらかんたら以前の、人権と、そして、それがなければ職場云々。

 だけれども、実は、この検査で、ウイルスがいても陰性に出る場合もあります、残念ながら。だから、万全じゃないんです。まだわからない、私たちには。余地を残しているという、そして、わかった経験のことを国民に伝える、これが、感染症を過度に恐れず、しかし正しく対応していく基本であります。

 ぜひ大臣には、きょうはちょっと失礼な質問をしたかもしれません、でも、私は、これは行政のトップとしてわかっていただかないと誤るから、繰り返し申し上げました。

 次に、学校休業等々の問題に移らせていただきますが、これは、大臣、今いろいろな文献が出ておりますが、普通、肺炎というと、高齢者と小児に両方のピークが生まれるものがこれまで多かったです。大体、小児が抵抗力が弱い、御高齢者は呼吸器疾患のベースを持つことが多い。ところが、この新型コロナウイルス感染症は、今のところ、子供においては、例えば中国の発症例でも一%と言われているほど、なぜか子供には少ない。若い世代で、十代の若者で重症になった例はありますが。

 では、子供に少ないということの意味は何か。それが今後明らかにされていくべき課題なのですが、その中で小学校の休校という措置がとられました。

 この休校というのは、実は、民主党時代に新型インフルエンザで関西地方を中心に休校措置がとられたことがございます。そのときに、民主党政権下に、いろいろな、新型インフルエンザ対策総括会議の報告書というのが大臣のお手元の三ページにございます。ここにしっかりと提言されていることを、今回の安倍総理の休業宣言はこれを見た上で行ったのかどうか。大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 そこまで総理が読み込んでいるかどうかは私は承知をしておりませんけれども、いずれにしても、これまでの専門家会合から、やはり拡大のスピードを抑制していく必要があり、この一、二週間がその瀬戸際であるということ、また、症状がない人も、対面で人と人との距離が近い接触が会話などで一定時間以上続くと、それが多くの人の間で交わされるような環境では非常にリスクが高いということ、また、教育機関等において、それぞれの活動の特徴を踏まえ、集会や行事の開催方法の変更、移動方法等の分散など、できる限り工夫を講じること、こういったことが二月二十四日の専門家会議の見解でも示されていたわけであります。また、子供たちの感染事例も見られた。

 それを踏まえて、何よりも子供たちの健康、安全が第一であること、また、学校において子供たちへの集団感染という事態は何としても防がなきゃならないという思いから、二月二十七日に、全国全ての小中高等学校、特別支援学校について、春休みに入るまでの臨時休業を要請したということでありまして、そういった要請に当たっては、今申し上げた認識のもとで判断がなされたということであります。

阿部委員 私は、行政は連続性だと思います。たとえ政権がかわろうとも、一回休校措置ということをとった政権があって、そのとき学んだことがあります。それを生かさないで、極めてファジーな印象で突っ込んだのが小学校の休校だと今も思っております。

 例えば、提言のAの二を見ていただくと、国が一定の目安を示した上で、方針、基準。じゃ、目安は二週間という、また延長されましたが。

 でも、その二週間は何で二週間なの、何で延長なの、何を基準にしたの。例えば各地域の患者発生率なのか、検査の陽性率なのか、これも示されておりません。そういう曖昧な、いかようにも言えるようなことをもって、休校という、期限が限られたものであるとはいえ、子供の居場所を奪うことは間違っております。基準をちゃんと示すべきでありますが、政府には示せる基準がないのです。その理由は次の質問で申し上げますが、今後いろいろな措置をなさるでしょう、宣言とかお好きですから。しかし、きちんと基準を示さないで、国民と共有できない勝手な刀を振り回さない、このことを強く申し上げたい。

 そして、B、運用上の課題というところもぜひ見ていただきたい。休業中の学校等の生徒が学校等の休業の意味や休業中の行動について理解しなければ、休業の効果がなくなると。

 今、残念なことに、例えば、子供たちが日中学校がないときにゲームセンターに行ったり、いろいろなところで集まって、果たして感染のリスクが低いか高いかというような状況もあります。私は、この総括がその後どのように出たかを探したけれども、わかりませんでした。子供に休業させるということは、本当の子供を守る観点からどうであるのか。

 もう一度繰り返します。判断の根拠、基準を明示されない。そして、子供たちには強制的に休業という形。自治体の長が判断すると言われても、自治体の長だって正直悩みます、基準がわからないから。こういうことをやった曖昧な行政というものは極めて問題が多いです。

 そして、もし子供たちの休業に疫学的な意味があるとすれば、あるかもしれません、ここだって検証が必要です。

 子供は、実は不顕性感染が多いかもしれないと言われています。どういうことかというと、症状を出さないうちに感染をしている。先ほど、それが子供の症例の少ない理由であります。そうであるならば、ある期間、子供たちは元気なんだけれども感染のリスクはあるという考えのもとに、まず小学校からというのはあり得ます。しかし、何らかの根拠、基準を示さなければ、本当に混乱だけを来します。このことについての補償制度等々はまた別途お尋ねをいたしますが、大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 もちろん、判断に当たって、科学的な知見というものを大事にしていくことはそのとおりだと思います。

 ただ、委員のおっしゃっている基準というのはすごく難しい。要するに、なかなかあらわれていない、それがあらわれたときは、実は二週間前、三週間前の事態だった。したがって、そこをどう読み込むかというのは、なかなか専門家の方もそこまでは言及できない。

 ですから、むしろ解除するときは、一定の効果があったかどうか、これは一定、今お願いをしていますけれども、物事をスタートするというところは、ある意味ではもちろんできる限りの知見は踏まえながらも、一定、政治的な判断というのを私は求められるのではないかと思います。

阿部委員 私は、求めるべき基準を求めていない、あえて言えば政府の怠慢によって基準は出ないんだと思いますので、次の質問に行かせていただきます。

 次に、大臣にお示ししたのは、新型コロナウイルス感染症サーベイランス体制、これは私の事務所の責任でつくりましたが、今、大半が、症状がある方は都道府県の相談センターに行って、保健所を介して専門外来に紹介され、そこからまた情報は保健所に返り、地方衛生研究所に行くという流れが従来で、この間、政府は、これが一部民間の検査機関にも行けるようになさいました。検査数を少しふやしたことにおいてよしといたしますが、圧倒的に検査数は足りません。

 そして、加えて、検査の数が足りないだけじゃなくて、大臣、これは私はずっと二月七日から大臣にお尋ねし続けていますが、総数で幾らできるようになったじゃなくて、実際に日々どこで幾ら検査して、どれくらいの陽性率が出たかということを政府は一貫して把握していない、把握しようともしていない。

 大臣、おわかりですか。日々各地でどのくらいの検査をして、どのくらいの陽性率が出ているかをごらんになったことはあるでしょうか。大臣に伺います。

加藤国務大臣 PCR検査を含めて、帰国者・接触者外来の相談件数、あるいは外来に来られた件数、これは全部、日々日々お出しをいただくように地方公共団体にお願いしておりますし、私は、これは、いろいろ考えるに当たっては非常に大事な指標だと思っております。

 ただ、残念ながら、各地方公共団体、特に保健所等は大変忙しい、そういった事情もあってなかなか上がってきていなかったので、例えば、直近においては全体の三分の一程度の時期もありました。そういった中で、もう一度、それぞれの地方公共団体に対して、この数字が非常に大事であるということ、また、その地域の感染状況を分析するに当たって大事であるということ、そして、その感染状況をまた我々が分析してフィードバックをする、そういったことも申し上げる中で、ぜひこれに御協力をいただき、そしてその数字を我々も日々発表させていただく、こういうふうに考えているところであります。

阿部委員 大臣は今、あえてわかって抜かれたのでしょうか。相談件数等々のお話でしたが、私が求めているのは実施した検査件数と陽性率です。五十検体を検査して一出るときと十出るときでは、その地域の感染状況は違います。それが今のところ一番確実に地域をつかまえられる数なんです。私は、それをまず把握すべきであると。

 じゃ、何がそれを把握できなくしているか、大臣はもしかして御承知かも。地方衛生研究所から厚生労働省には報告が上がっているのかどうか、そして公表はされているのかどうか。

 これは、私は、衛生研究所、何カ所かお尋ねさせていただきました。公表ということを定める法律がない、公表してよいのかどうかわからないと。私は、そんな体制で、国民に緊急事態だの休校だの、勝手にやってほしくない。せめて検体数と結果、名前はいいんです、どのくらいの陽性率があったかを国民に示すべきです。そのための法体制はないんです、大臣。

 私ども野党が、次のページを見ていただきたい、新型コロナウイルス感染症検査の円滑かつ迅速な実施の促進に関する法律案概要というものをつけさせていただきましたが、ここでは、一番目に政府による検査体制の検証というのを載せて、そして、きちんと検査の結果を把握されて、それを公表していただく。一と二ということで、私たちは検査実施体制の強化と、そしてその公表ということを求めました。第二項の三番目は、結果を速やかに公表せよということを求めるものです。第二項の一番目は、非行政検査をしたら都道府県知事を介して厚労省に上げてくれと。

 これは、感染症を国家管理でやらなければいけないのであれば、そのような国民にわかりやすい本当の情報をお示しにならなければ、残念ながら、この間、専門家の皆さんの御発言も、もっと言えば政治の側の発言も、こうらしい、ああらしい、こうだろう、こうなるだろう、だろうだろうだろうで、何も根拠がないんです。こんな体制で、緊急事態だ、特措法だと言ってほしくない。

 大臣、どうですか。私ども野党のこの法案、お認めいただきたい、審議して体制を整えていただきたい。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 ですから、私どもは、陽性件数を含めて、検査件数を含めて、これまでもしっかりお願いをして、とるようにしているわけでありますけれども、ただ、残念ながらリアルタイムではなかなか上がってきていない、こういう実情があるということであります。

 こういった法律をおつくりになるときには、やはり地方とよく協議をしながらやらなきゃいけないと必ず言われます。ですから、我々も、都道府県とも、あるいはそれぞれの地衛研ともよく連携をとりながら、先ほど申し上げたこの数字の重要性をお互いが理解をした上で、速やかに報告を集めていただいて、我々の方に連絡をしていただける、そして、それを我々としても遅滞なく皆さん方に公表していく、こういう流れをつくっていきたいと思っております。

阿部委員 大臣は与党です。そして、今、歴史的緊急事態とか新型コロナ特措法をやれ、やれと言っています。まず大臣が地方の状況を、衛生研究所が、私が聞く限り、公表してよいかどうかの法の定めがない、このことがネックだというふうに聞いてまいりました。大臣、手間暇がかかる、それは当然です。だけれども、判断するときに、そこがなければ何もできないのです。大臣たちは、いろいろな今の宣言、宣言、宣言とやる前に、平時のきちんとした体制を把握する必要があるんだと思います。野党ももちろんやる必要があるでしょう。

 しかし、それ以上に、与党が、新しい法律を出し、審議時間も不十分にところてんのように通過させていく前に、まず基本データをとる、当たり前の科学的な行動をしていただきたいと思います。

 私は、まだ残した問題がございます。でも、残した問題が、時間の終了ゆえ、これにて終わらせていただきますが、大臣は国民や野党に責任をぶん投げるんじゃなくて、国民はもうみんな自分でホームページに集計して上げていますよ。しかし、公表していない衛生研究所があるから、穴がぼこぼこあいているんです。その状態では完全な本当の情報にはならない。公文書管理のもともできない。言い添えて、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

盛山委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 労基法改正案について質問いたします。

 今回の労基法改正案、民法の改正されたものが四月から施行される、それに合わせて、本則では賃金請求権を五年にしながら、当分の間は三年。その当分の間も、先ほどの大臣の答弁では、当分の間というのは当分の間なんだと。いつまで続くかわからないということでございます。私は、こういう法案はおよそ認められないという立場で、質問させていただきたいと思います。

 まず、大臣の基本的な認識をお伺いしたいと思いますが、賃金の未払い、不払いはなぜ許されないんですか。

加藤国務大臣 賃金は、まさに働く方の生活を支える重要な糧と言っていいんだろうと思います。そのため、一度労使間で定めた賃金、あるいはもちろん契約に基づく賃金と言うべきかもしれませんが、これは労働者保護のためにも確実に支払われなければならず、必要な規制を行っております。

 具体的には、労働基準法第二十四条など、賃金に関する規定があり、使用者はそれを遵守し、賃金が確実に労働者に支払われるようにしなければならないということであります。

宮本委員 支払わなかった場合は刑事罰があると思いますが、どういう罰則でしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣からございましたとおり、労働基準法第二十四条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされてございます。

 同条に違反した場合でございますけれども、労基法第百二十条第一項におきまして、三十万円以下の罰金に処すると定められております。

宮本委員 刑事罰も課されるわけですよね、賃金を払わないということは。

 大臣からも、生活の糧であり、支払わないことは絶対許されないんだという話でございます。しかし、支払っていないことが横行しています。一番横行しているのはサービス残業ですよね。一体全体、今サービス残業というのはどれぐらいあるというふうに推計されているのか、お伺いしたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員の方からございましたいわゆる賃金の不払いの残業ということでございますけれども、どうした要因で起こるかということで見ますと、使用者の故意によるものだけではなくて、単純な給与の計算のミスによるものまで、内容もさまざまかと存じ上げます。また、労使間で自主的な解決ということも図られているケースということも多いということもございまして、私ども、その全てを行政で把握できているものではございません。

 あえて、行政で把握しているものとしてということで申し上げますれば、平成三十年度におきまして労働基準監督署が監督指導を行った結果として、一企業で合計百万円以上の不払いとなっている割増し賃金の支払いがなされたものにつきましてでございますけれども、対象労働者の方が十一万八千六百八十人ということがございます。

宮本委員 今のは百万円以上のケースということですかね、一企業で。それ以外、全体を把握されていますよね。

坂口政府参考人 サービス残業、いわゆる賃金不払い残業ということに限った形での状況ということについては、人数という意味ではございません。ただ、私ども、定期監督や申告監督という形では監督指導を行っておりますので、そういったものの法違反件数ということについてはございまして、定期監督等の実施事業所、例えば平成三十年におきましては十三万六千件強ございますけれども、このうち何らかの法違反が認められた事業所数は九万三千件強でございますけれども、うち賃金不払いに関する法違反が認められた事業所は二万六千九十九件というようなデータはございます。

宮本委員 そうすると、十三万六千件のうち二万六千件ぐらいの比率である、大体、監督に入れば二割弱ぐらいが賃金不払いがあるという理解でいいわけですね。

坂口政府参考人 今委員ございましたとおり、定期監督の実施事業所数全体に対して、先ほど、何らかの法違反が認められた事業所数が九万三千件強ということで、その違反率が六八%でございますが、賃金不払いに関する法違反につきましてはそのとおりで、二万六千件との対比ということでございます。

宮本委員 ですから、大体、定期監督に入れば二割ぐらいは不払い残業、不払い賃金があるというのが状況なわけですよ。定期監督に入れているのは年間十三万数千件前後というのがこの間の実績ですよね。事業所全体でいえば、どれぐらいの比率で定期監督が入れているんですか。

坂口政府参考人 申しわけございません、ちょっとお答えの向きが定かではないですけれども、先ほど申し上げましたとおり、定期監督に入った実施事業所数が、先ほど御答弁申し上げましたとおり、十三万六千二百八十一件というのが平成三十年度の指導監督かつ定期監督の状況ということでございます。

宮本委員 数ぐらいは多分手元にあると思うんですけれども、一体、事業所数、分母が、定期監督は十三万だ、事業所の分母はわかるでしょう。

坂口政府参考人 全体として、約四百十二万事業所のうちの先ほど申し上げた数字に定期監督を実施しておるということでございます。

宮本委員 四百十二万分の十三万だから、三%ぐらいに入って、そのうち二割がある、残りの九七%も含めて恐らく全部指導に入ればそれだけサービス残業があるということですから、物すごい数があるわけですよね。

 ですから、今、労基署が是正できているサービス残業というのはごくごく一部だ、そういう認識は、大臣、お持ちですね。

加藤国務大臣 これは別にランダムサンプリングして監督指導あるいは調査に入っているわけではなくて、さまざまな情報を受け取りながら、そうした違反の疑いがあるもの、そういったものを中心にしているわけでありますから、今申し上げた数字をもってそれを全てに敷衍するというのは、いささかちょっと乱暴なのではないかなというふうに思います。

 ただ、いずれにしてもそういう実態があるということを含めて、我々は引き続き監督指導にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

宮本委員 定期監督等というのは、申告監督は入っていないわけでしょう。先ほど大臣からは情報に基づいてとありましたが、申告監督は入っていない数ですよね、今のは。

坂口政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたのは定期監督等ということでございますが、申告監督は、ですから、別ということでございます。

 ただ、先ほどの中に災害時の監督なんかも入っておりますし、先ほど大臣が申し上げましたように、定期監督も、我々は、それまでの届出状況とかいろいろなものを勘案しながら、やはり、優先的な、限られた体制の中で法違反の状況をしっかり是正していくという構えで定期監督を実施しているということでございますので、そういったことについての御勘案をいただければと承知しています。

宮本委員 申告監督は別と。それとは別に労働者から不払いだ、直してくれというのは、また別に何万件とあるわけですよ、これ以外に。ですから、実際に是正できているのはごくごく氷山の一角なわけですよね。そして、現行法では二年の壁があったわけですよ。賃金請求権は二年だという時効があったために、多くの労働者が本来受け取るべき賃金を全額受け取れないということが大変問題になってまいりました。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、労基署の監督指導で是正を行ったサービス残業のうち、現在の時効である二年以上の不払い残業代があるケースというのはどれぐらいの比率を占めるんでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来申し上げていますとおり、労働基準監督署におきましては、割増し賃金について労基法三十七条違反が認められたという企業、事業所に対して割増し賃金の不払い分を遡及して支払うようにという指導を行ってございますけれども、私どもとしまして、不払いであります割増し賃金のその期間に着目した集計ということは行っておりませんので、委員お尋ねの、二年を超えて遡及支払いをした件数ということについてはお答えは困難でございます。

宮本委員 いや、集計していないだろうからと思って二日も前に通告しているんだから、あらあらどんな感じかぐらいはわからないんですか。

坂口政府参考人 私どもとして、そういった形での集計ということそのものもしておりませんので、申しわけございませんが、あらあらという形でもちょっとお答えは申し上げられないという状況でございます。

宮本委員 労働者の糧で大事だ、賃金不払いは許されないと。そして、今回、賃金請求権を時効何年まで設けるのか、こういう法改正をするのに、一体全体実態として何年ぐらいたまっている不払い残業があるのか、そういう実態も何も議論せずにこの法改正案を出させたということですか。三年がいいのか、五年がいいのか、あるいは二年がいいのか、そういう議論をするときに、実態は何もわからないまま今度の法案は出てきたということですか。

坂口政府参考人 今申し上げましたように、私どもとしましては、監督指導においての賃金不払い残業ということの是正ということについてはしっかり取り組んでいきたいということで、賃金不払い残業の状況についての公表ということは行っておりますけれども、今の段階で労働者に支払われるべき割増し賃金の額が何年間分ということについての、着目したという形でのものについては、期間に着目したということについては行っていないということでございます。

 今後、今回の検討規定等も受けまして、どういった形で今後また検討を行っていただくかということに際して、労使等の御意見も伺いながら、私どもとしても検討をしてまいりたいと考えます。

宮本委員 いや、本当に、はっきり言って、今度の法案を議論する上での基礎的な材料すらないと言わざるを得ないと思いますよ。

 大臣、これはやはり、すぐというより、参議院の審議までに調べろとは言いませんけれども、調べられる範囲で調べなきゃいけないですし、今後、法案自体には見直し規定もあるわけですから、どれぐらいの期間、不払い残業が二年を超えるものはどれぐらいあるのか、三年を超えるのはどれぐらいあるのか、こういうものぐらいはちょっと調べる必要があるんじゃないですか、是正勧告している範囲だけでも。

加藤国務大臣 これからとりあえず三年になるわけでありまして、それからまた五年ということになりますので、そういった中で実態がどうなのかというのは把握していく必要というのは大事だというふうに思います。ただ、これまでのやつを全部洗えといっても、これはなかなか大変な作業になりますので、どういうやり方があるのか、そこは中で検討させていただきたいと思います。

宮本委員 これまでのが大変でしたら、これからのものを期間も含めて集計をとっていけばいいわけですから、一つ一つは、今でいえば二年分払いなさいという是正勧告は相当やっているわけですから、これからのは、将来集計するのは難しい話じゃないと思いますので、それをしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 そして、二年以上の賃金不払い残業がどれぐらいあるかわかっていないということは、これを聞いてもお答えが何も返ってこないかもわからないですけれども、どういう類いのケースが、二年以上不払い残業があるケースというのがあるのか、それは何だかわかっているものはありますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御答弁させていただいておりますように、申しわけございませんけれども、件数とか、データ的な、定量的な形での二年を超える状況等々ということについては、現在も時効期間が二年ということでございますので、なかなかそういったものを私どもがデータ的に把握するというのは難しいし集計もしていないというのが、先ほど来御答弁をさせていただいているというものでございます。

 ただ、どういう類いのケースということで、事例ということでいくと、私どもの方でも、そういった過去の労働時間について指導したところ、あるいは、いろいろ、管理監督者該当なものとして時間外又は休日労働に対する割増し賃金を支払っていなかったというようなことで指導した中で、企業の方が二年を超えて割増し賃金を支払われたというような例は仄聞しておりますけれども、なかなか定量的にというような形での状況というのは私どもとしても把握しかねているということでございます。

宮本委員 ぜひ、今後、実態把握をお願いしたいと思います。

 資料をお手元に配っていますが、先日の日経新聞に「「未払い残業代払って」急増」という記事が出ておりました。サービス残業の是正指導の中で、一企業で百万円以上の支払いがなされた企業の数が増加しているという記事ですが、これは原因は何でしょう。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方から配付していただいている資料でございますけれども、先ほども申し上げましたデータを年次で追っていただいている記事かと存じ上げます。

 内容的には、私どもの方で先ほど申し上げました、労働基準法の三十七条の違反で是正勧告を受け、割増し賃金の不払い分を支払った金額が百万円以上の企業の数ということでございまして、平成三十年度が一千七百六十八企業、平成二十九年度が一千八百七十企業ということでございます。その直前の平成二十八年度が一千三百四十九企業ということでございますので、そのグラフにありますように、二十八年度に比べますと二十九年度、三十年度が増加しているということでございます。

 こういう状況について、要因ということを一義的に申し上げるというのはなかなか難しゅうございますけれども、考えられる、ちょうど先ほど申し上げました二十八年度と比べてというような形での変更時期については、私ども、平成二十九年の一月に、使用者による労働時間の適正な把握のために、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインというものを定めまして、その周知、指導ということを行っておるということもございますが、そういったものも一因かとは思いますけれども、全体としての要因ということについてはなかなか難しいかと思っております。

宮本委員 この記事を見ていますと、転職者がふえていることも一因じゃないかという分析が書かれているわけですよね。実際に働いている、在職している最中だと声が上げづらい、だけれども、転職を機に、前の職場の働き方は大変問題であったということで未払い残業代を請求するという人がふえている、日経新聞はこういう分析をされているわけですけれども、この未払い賃金の請求というのは、退職後に行われるケース、これがかなりの比率を占めるということなんじゃないでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 賃金不払いにつきまして、監督署の方に対しまして労基法に基づく申告を行った方への対応ということで私どもは指導監督そして是正指導ということを行ってございますけれども、その方が在職中か退職後であるかということについての着目した集計は行っておりませんので、そのようなデータについてはちょっとお答えができないという状況でございます。

宮本委員 データがないという答弁ばかりが続くわけですけれども。

 ブラックな職場に就職してしまった、やめよう、やめようと思ってやめるわけですよね。だけれども、ブラックな職場だったためになかなか、未払い賃金があっても、サービス残業が山のようにあっても、やめるまでは声を上げられなかった、しかし、やめるときに、やはりこれは請求しようということで、声を出して請求した。

 こういうケースは、その人がそのブラックな職場に就職してからある意味ずっと、退職して請求するまで全部未払い賃金になっているということでしょう。二年どころじゃないですよね。五年だったり十年だったりする人もいると思うんですよね。そういうことを考えたら、私は、可能な限り不払い賃金というのはさかのぼって払うのが当たり前じゃないかというふうに思いますが、大臣、そう思いませんか。

坂口政府参考人 冒頭も大臣の方から申し上げましたとおり、賃金不払いということはあってはならないということで、私どもも是正指導ということについてはしっかり行ってまいりたいということで考えてございますが、その事実関係ということを確認するというすべについては、労使双方のいろいろ、書類、証拠であったり、あるいはその事実というようなものに応じて、やはり事実関係をしっかり確定した上で権利関係を整理していくということが重要かと思っておりますので、一定の時効制度という範囲の中で私どもとしてもしっかり対応をしてまいりたいと考えております。

宮本委員 ですから、その時効を考えるときに、こういうブラックな職場でずっと我慢して我慢してやはり退職した、それは、五年なり十年なり未払い残業がいっぱいたまっているケースもいっぱいあるわけですよ。可能な限りそういう悪徳な働かせ方は是正していく、さかのぼって不払い賃金を支払わせる、こういう立場に政府は立たなきゃいけないんじゃないですか。

 大臣にお伺いしたいと思いますが、三年を超える賃金未払いで問題になった事件について、大臣はどういうものを記憶されているでしょうか。

加藤国務大臣 具体的な事案ということですか。ちょっと私には、にわかに、すぐは浮かんではきませんけれども。

宮本委員 よく新聞でいろいろ報道されておりますので、きょうは幾つか、新聞に報道されている昨年からことしのものの一部を配付資料として配らせていただきました。

 資料の二ページ目、これは公務の職場ですね。

 上にあるのは三原市ですね。嘱託職員の宿直時の仮眠時間を労働時間から外し、正当な賃金を支払っていなかったということで、過去二年間分、二千七百二十八万円を支給するという話です。ただ、これはいつからやっていたかといいますと、三原市は〇五年の合併以来同じようなことをやっていた。ですから、十数年、未払いの賃金があったということであります。

 それから、その下、これはことしの二月十日、先月出たニュースですけれども、埼玉県春日部市。ここは、超過勤務手当の支給額を予算の枠内に抑える、公務の職場ではよくやられている話ですね、予算の枠内に抑えるために過少申告が行われていたということであります。これも長年続いていた、慣例になっていた、だけれども、賃金請求権は二年だからさかのぼって支払いができないということで、二年分だけ支払ったという話でございます。

 次、資料の三枚目を見ていただきたいと思います。

 これはスバルですね、大企業。これも昨年流れたニュースですけれども、これは労基署が是正勧告をしていたという話ですけれども、これも残業を実際より少なく申告していたわけですね。職場で定められた残業時間の上限目安を超えないよう申告を控えていたということで、三千四百人が勤務記録にない残業をして、未払い残業代は七億七千万円。これも二年分ですよ、支払われたのは。

 その下、ヤマハ。これは計算の誤りということですけれども、一九九九年の操業開始時から社員の超過勤務手当の計算を誤っていて支払いが不足していた、請求権が消滅していない二年分について一千六百万円払ったという話なわけですよね。

 ですから、二年を超える未払い残業というのは山のようにあるんですよ。これを今度は三年に延ばす、でも、民法は五年なのに三年にとどめて、それで、当分の間は、いつまでかわからない当分の間、三年にとどめるというのは、今の不払い賃金の現状を正すという点では全く不十分だと言わなければいけないというふうに私は思います。

 こういう二年を超える不払い残業が山のようにある現状について、大臣はどう思いますか。

加藤国務大臣 山のようにあるのか、何のようにあるかはなかなか把握が難しいところでありますけれども、そうした報道がなされてきているということを踏まえて、やはり、最初に申し上げた、賃金というのは約束したとおりに支払われる、これが大原則でありますから、それに向けて我々も、日々の監督行政を含めて、しっかり是正させるべきものは是正させていく、また、そうならないように、それぞれの事業主の理解、周知、それをしっかりと図っていきたいと思います。

宮本委員 払ってもらうのは大原則なんですけれども、大原則をやらない事業所が少なからずあるわけですよ。そういう中で三年に賃金請求権の消滅時効期間をとどめるというのは、結局ある意味悪事のやり得ということを許すことになるんじゃないですか。

加藤国務大臣 民法の改正をそのまま適用すれば四月一日以後は新たに結ばれる契約のみが対象になるわけでありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、同じ会社の中で違う取扱いがなされるというのは適切ではないということで、これは、民法よりも踏み込んだ中身もこの中に盛り込まれている、そういったことも含めて御理解いただきたいと思います。

宮本委員 いや、それは、起算点は民法と違うことにするのは当たり前の話だと。それは今もそうしているわけですから当たり前の話だと思うんですけれども、問題は、消滅時効の期間の問題ですよ。そっちがなぜ民法並びにならないのかということを私は問題にしているわけであります。

 次の資料の四ページ目を見ていただけたらと思うんですけれども、去年の十二月、セブンイレブンの残業代未払いの問題であります。これを見たら、計算式が間違っていたということなんですけれども、これも、未払いの方式がいつ始まったかわからないけれども、一九七〇年代からこうだった可能性があるという話ですから、本当に何十年、こういう事態が続いていたということであります。

 だけれども、セブンイレブンの場合は、記録のあるのは二〇一二年三月以降だ、四億九千万あるからこれは払いますよと。二〇一二年からですから七年ですかね、今の二年よりもさかのぼって払うというところもあるわけですよね。

 更に二〇一二年二月以前も含めて調べて払いたいということもこの記事の中には書いてあるわけですけれども、こういう形で、企業が持っている記録からしたら、二年とか三年とかじゃなくてもっと払うことが可能な場合もいっぱいあるんですよね、実態としては。こういうケースはもっと払うようにさせるというのが本来政府がとるべき態度なんじゃないですか。

坂口政府参考人 個別の事案についてのお答えは控えさせていただきます。

 先ほど来申し上げているとおり、やはりこういった時間外労働等の割増し賃金を含めての賃金不払いというのはあってはならないということでありますので、私ども行政監督機関としましてはそういったことがないようにということで、各種情報からそういった違反が疑われるという事業所に対して監督指導をしっかり実施するという中で、法違反が認められた場合には、その是正に向けて法の枠の中で必要な指導をしっかり行うということでございます。

 私どもとしましては、そういった基準関係法令の遵守ということについての監督指導の徹底ということに努めてまいりたいと思います。

宮本委員 ですから、セブンは何回も労基署から指導されているわけですけれども、そういう中で、時効を超えたものも含めて払う、こういう態度をとったわけですけれども、そういうことは多いんですね、政府として推奨していった方がいいと思いますよ。

 もう一点お伺いしますけれども、外国人技能実習生、以前私たちも国会で大問題にしたわけですけれども、最低賃金以下というのも少なくなかったわけですよね。借金をしてやってきて、本国に送り返されたら怖いという不安から声を上げられずに、ひどい労働条件で働き続けるという場合もあるわけであります。そして、帰国直前になってから不払い賃金があるということで労基署に申告するというケースもあると思うんですけれども、この外国人技能実習生でも三年を超える不払い賃金があるというケースは少なくないんじゃないですか。

坂口政府参考人 この外国人技能実習生の関係につきましても、私ども、労働基準監督署の方に賃金不払いに関する申告がなされるケースは御指摘のようにございます。そういった中で、雇用されている事業場における技能実習の継続を希望せず、外国人技能実習機構に保護を求めた事例であったりとか、帰国直前に申告が行われた事例ということも含まれているということも承知はしてございますけれども、そういった事案の件数、あるいは賃金が不払いとなった期間に着目した集計ということは行ってはございません。

 いずれにしましても、私どもとしましては、引き続き、賃金不払いの労基法違反に対しての指導監督、厳正な対処ということをしっかり行ってまいりたいと考えております。

宮本委員 帰国直前に申請があるということですよね、そういうケースもあるという話ですよ。

 そうすると、外国人技能実習生は最長五年ですから、五年間、それこそ余りにも劣悪な労働環境の中で働かされて声を上げられない方が、帰国のときにその分を払ってくれと言っても三年分しか返ってこない、これは私は理不尽だと思いますよ。この制度がもたらしているひずみの現状からしても、三年というのは問題がある面もあるんじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 やや同じことの繰り返しになって恐縮なんですが、例えば今の技能実習の方々について言えば、例えば一年前に契約をしていた、今回の民法改正を適用すればその方々は引き続き二年にとどまっていく、要するに従前どおりのルール。この四月一日から新たに技能実習の契約を結んだ方だけが対象になるということになるんですけれども、やはりそういうわけにはいかないということで、四月一日以降の賃金支払い、これは、その基づく契約がいつの時点であってもその支払いをもって一律に取り扱うという民法の今回の改正を超えた改正もさせていただいている、こういったことを含めながら、また、先ほど賃金台帳の保存の話もありましたけれども、そういったいろいろな議論の中で、最終的に労使の合意を得て今回の法律を出させていただいたということであります。

宮本委員 その起算点の問題については民法並びにしろということはこの議場内で誰も言っていないわけですから、そこはもう、大臣、何度も答弁されなくてもいい話だと思いますよ。そうじゃなくて、賃金請求権の消滅時効の期間について私たちは問題にしているわけであります。

 その上で、通告している質問に行きますけれども、賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会が昨年七月一日にまとめた論点整理には次のように書いてあります。仮に消滅時効期間が延長されれば、労務管理等の企業実務等も変わらざるを得ず、紛争の抑制に資するため、指揮命令や労働時間管理の方法について望ましい企業行動を促す可能性があると書いてあるわけですよね。これはどういう意味か、かみ砕いて説明していただけますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今の委員の御指摘は、有識者の方にこの消滅時効のあり方についてお集まりいただいた検討会の中での取りまとめにおける記載ということかと存じ上げます。この記載については、その間の有識者検討会における委員の方々の御指摘を踏まえて盛り込まれたものと承知しております。

 例えばということで申し上げますと、委員の御指摘の中で、例えば、消滅時効期間が延長された場合に、これまで口頭で行われていた業務命令とか残業命令ということが明示的に記録が残るメールなどの形で行われるようになることなど、労働時間の適正な把握や紛争の未然防止に資するように企業の労務管理が変化する可能性ということが、こういった消滅時効期間が延長されるということによって行われる可能性もあるのではないかというようなことを念頭に置かれた発言があったということで、取りまとめの中にその委員の指摘を踏まえて盛り込まれたということでございます。

宮本委員 その取りまとめの指摘からすれば、やはり消滅時効は三年から五年に延びた方がより望ましい企業行動を促すことになる、この点は大臣もお認めになりますよね。

加藤国務大臣 今の文章しか私は聞いていませんから、全体を読んでいないからわかりませんが、何年にしろという話をしているわけではなくて、延ばすことがということでありますから、二年から三年に延ばすことにおいてもそういう意味があるんだろうというふうに思います。

宮本委員 二年から三年に延ばしてそういう意味があるんなら、三年から五年に延ばしたら、よりそういう行動を促すということになるのは間違いないんじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 ですから、この方は、そうやって延ばせばそうだということを言っておられるにすぎないということを、今はやりとりの文章しか見ていませんからわかりませんけれども、その文章からはそういうふうに受けとめさせていただき、そういった意味では、今回、二年から三年にさせていただいているということです。

宮本委員 いや、これは、この方のただの発言として書いたわけじゃなくて、取りまとめの中に入れているわけですよ。全体としての、検討会のまとめに書いてある文章ですから、個人の見解じゃないですからね。検討会の見解の中に盛り込まれている話ですから。

 次に行きたいというふうに思います。民法の改正では短期消滅時効を今回廃止したわけですが、廃止の理由を端的にお答えいただけますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 改正前の民法では、債権の性質などに応じまして時効期間を三年、二年あるいは一年とする短期消滅時効の特例を設けておりました。

 ただ、時効期間が区々に分かれておりますことによって、どの規定が適用されるのかという確認の手間がかかることや、あるいは、適用の誤り、見落としのおそれがあるという指摘がございました。あるいは、取引自体が複雑多様化しておりますことによって、短期消滅時効の適用を受けると言えるかどうかという判断が容易でない場合もありました。そのようなことで、短期消滅時効自体の合理性に疑義が生じていたために、いわゆる債権法改正によりまして短期消滅時効の特例を全て廃止したものであります。

宮本委員 簡単に言えば、いろいろたくさんあってわかりにくいから整理したということだというふうに思うんですよね。

 今回、先ほど別の委員の指摘もありましたけれども、労働弁護団からこういう指摘が出ています。民法よりも労働者に不利益な条件を労基法において認めることは労働者保護を目的とする労基法と根本的に矛盾することになると、大変厳しい指摘が出ているわけであります。

 やはり、労基法の労働者保護、この精神からしたら、民法の時効よりも短くする、こういう規定を労基法の中に盛り込むというのは、これはおかしいんじゃないですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の労働基準法の中にも、例えば退職手当の請求権あるいは災害補償の請求権につきましては現行の民法の消滅時効期間を下回る消滅時効期間を定めているというようなものもございまして、一義的に今委員が御指摘のような点が言えるということではないのかと存じ上げます。

 また、今回の法案の中では、消滅時効期間につきましては、改正民法とのバランスも踏まえまして、最終的には本則の方という形に書いてございますとおり、改正民法と同様に五年としている中で、御指摘いただいているとおり、当分の間は消滅時効の期間を三年ということとしております。

 先ほど来大臣の方からも御答弁申し上げているとおり、いわゆる起算点ということではなくて、いわゆる経過期間なり適用関係として、改正民法の取扱いとは違って、今回の御提案させていただいておる改正法案では、経過措置として施行日以後に支払い日が到来する全ての労働者の賃金請求権に新たな消滅時効期間というものを適用することとしたということでございまして、そういった点につきましては民法とも異なるということで、そういった点も、全体を考慮して、必ずしも労働者保護に欠けるというようなことでは私どもとしては考えていないということでございます。

宮本委員 いや、災害補償の請求権も延ばせばいいんですよ。民法が延びたんだから、合わせて延ばせばいいわけですよ。毎日毎日発生しているこの賃金の請求権について、なぜ民法よりもこんなに少ない期間にしてしまうのか。まともな説明になっていないと思いますよ。

 その上で、先ほど来議論になっていましたが、当分の間について議論させていただきたいと思いますが、なぜ、法律の検討を加える五年後ではなくて、五年間とせずに、当分の間は当分の間という大臣の答弁がありますけれども、当分の間にしたんですか。

坂口政府参考人 改正の内容については、先ほども申し上げたような形で、当分の間三年ということにさせていただくということでございますが、今回の法案というのは、退職金を除きまして賃金請求権の消滅時効期間について初めて見直しを行うということでございますので、その影響についてやはり現時点で特定の期間ということを見通すということはなかなか難しいということで、この点については、労使の方でもいろいろ御議論いただいた結果として、今回、経過措置の期間を当分の間ということとさせていただいているという内容でございます。

 また、あわせまして、法案の中には、その改正法の施行から一定期間として五年経過後の状況を踏まえて検証するということもあわせて、そういった形で建議をいただき、今回御提案をさせていただいているということでございます。

宮本委員 使用者側が反対をした、労使の議論の結果そうなったんだということですから、そうすると、使用者側がずっと反対し続ければ、ずっと当分の間ということになってしまうんじゃないですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点でそういった、今どういった影響をというようなことで、その経過措置の期間を見通すことができないということで、建議を踏まえて当分の間という形で御提案をさせていただいているということでございますので、繰り返しになりますけれども、法案の中にも、附則の三条に、この施行後五年を経過した場合に、この法律による改正後の規定については施行後の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときはその結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということも含めまして、この法案として御提案させていただいているということについて御理解をいただきたいと思います。

宮本委員 きょうは内閣法制局にも来ていただきましたけれども、他の法律で、経過措置で当分の間が盛り込まれたもので、最も長い期間この経過措置の当分の間が適用されているものはどういうもので、何年でしょうか。

平川政府参考人 お答えいたします。

 当分の間と定めている規定の適用期間の長さを網羅的に調べているわけではございませんので、確定的にお答えすることは困難でありますが、承知しているものを例として申し上げます。

 戦後の立法といたしましては、学校教育法附則七条の規定、小学校、中学校等には当分の間養護教諭を置かないことができるという規定でございますが、これは昭和二十二年四月から施行され、現在まで七十二年余り効力を有しております。

 さらに、戦前の立法を含めますと、刑法施行法の第二十五条第一項、旧刑法第二編第四章第九節の規定は、当分のうち、その当時は当分のうちという言葉を使っておりましたが、これは当分の間という今の用語と同じ意味でございますが、刑法施行前と同一の効力を有するという規定がございます。これは明治四十一年十月から施行されておりまして、百十一年余りにわたって効力を有している。

 さらに、労働分野の立法において申しますれば、例えば行政執行法人の労働関係に関する法律の附則第三項というものがございまして、職員の組合専従期間について当分の間同法の第七条を読みかえるという規定でございますけれども、これは昭和六十三年十月から施行されておりまして、現在まで三十一年余り効力を有しているというものでございます。

宮本委員 ですから、当分の間というのは、私も初めて聞きましたけれども、長いものは百十一年ですよ、百十一年。大臣、当分の間は当分の間だという答弁じゃなくて、やはり大臣として目安をちゃんと示した方がいいんじゃないですか。そうしないと百十一年、法律をつくったらずっと変わらないんじゃないか、こういう思いを持ってしまうわけですよ。そういうことも過去例としてあるわけですよね。

 大臣の腹づもりとしては、百十一年だとか三十一年とかはあり得ないんだ、五年後を目指して準備を整えていきたいと。腹づもりとしてはそうなんだ、法律は当分の間だけれどもそうなんだとおっしゃってくださいよ。

加藤国務大臣 今の法制局の答弁、私も大変勉強になりました。当分の間とか臨時とかがついていながら長い間あるものというのは結構あるなということを改めて認識をさせていただきました。

 本件の当分の間については、まさにこれから実態を見ながら御議論をいただくということになるんだろうと思います。歴史をそんなに、先ほどの明治から今の令和までとか、そんなに長い距離を想定しているわけではないということでありますけれども、いずれにしても、何で現在当分の間とされているのか、その理由はこれまで述べさせていただきました。それに対する対応を我々もしながら、また、この法律に対する周知も図りながら、まずはそれに努力をさせていただきたいと思います。

宮本委員 期限を区切るかのようなことは言いづらいからなかなかしゃべられないんだろうと思いますけれども、先ほど労働分野の法制の話もありましたけれども、障害者雇用なんかも、障害者雇用の納付金は一九七六年に設けられて、これも、当分の間三百人超の企業から二百人超になるまで二十四年かかっているんですよね。だから、労働関係の法律でも当分の間というのが長いものはいっぱいあるんですよね。それは許されないんだという指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、当分の間三年ということですけれども、その理屈についてもるるきょうも答弁がありましたけれども、法案の提案理由の説明を見ますと、権利関係の安定に与える影響という文言が書いてあるんですね。労政審の建議では、労使の権利関係を不安定化するおそれがある、だから当面三年なんだという話でありますが、この権利関係の安定に与える影響というのは具体的には何を指しているんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの関係でございますけれども、賃金請求権につきましては、いわゆるこの時効期間が満了するまでの間は、労働者の方からは使用者に賃金の支払いをその間求めることができるということでございます一方、使用者側から見ても当該賃金額ということが確定しないという状態に置かれるというような形になるわけでございます。

 このように、消滅時効期間が長期に及ぶということによって具体的な賃金債権額が確定をしないということになりますので、それによって労使間での紛争ということが事後的に生じたり、あるいは企業が紛争の発生に備えていろいろな対応をとることの必要性が生じるというようなことの影響が生まれるというようなことを指して、このような形で表されているということでございます。

宮本委員 債権関係が確定しないということですけれども、もともと使用者が賃金を払っていれば不払いに基づくそういう紛争は発生しないわけですが、労働者の側が自分の正当な権利に基づいて、自分が払った分はちゃんと残業代も含めて払いなさいと請求することが権利関係を不安定化させるという論理が、私は全く納得できないんですね。

 労働者の側からすれば、債権関係は、二年分でも三年分でもなく、五年分確定してもらった方がいいわけじゃないですか。労働者の権利にとって、五年になって不利益なことというのはないんじゃないですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 要は、労働者の側にとって不利益かどうかというよりは、労働者にとって、労働者の方が御主張されているその権利関係、債権関係ということがどういった事実に基づいてそういったものなのか、あるいは、使用者としてそういったものについての対応ということにどう備えるかという意味での権利関係の安定ということを図る必要があるということでございます。

宮本委員 ですから、労働者の側からすれば、五年分払ってもらった方が労働者の権利は獲得できるじゃないですかということを言っているんですよ。権利関係が安定化しないとか不安定とか、よくわからないですけれども、労働者の権利からすれば、五年分払ってもらった方が権利はある意味安定するじゃないですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、その労働者が御主張される権利というものが、実際、例えば、管理監督者に該当するかどうかというようなものの実態ということが本来的に労働者の御主張どおりなのか、そうでないのか、使用者はそうでない形で労使関係を結んでいたところということについての争いということが事後になって生ずるということについての問題として、権利関係が安定しないということを申し上げているということでございます。

宮本委員 ますますよくわからないんですけれども、使用者側が労働者の言い分を認めないから不安定になるんだという話ですよね、今のお話を伺っていると。結局、使用者側の言い分そのものではないかということを言わざるを得ないと思います。

 それからもう一つ、先ほど来議論になっていますけれども、企業の労務管理の実務に与える影響、これがあるから当分の間三年なんだという話があります。

 今でも、賃金台帳等は三年間の保存義務があるわけですね。これを五年に延ばすというのは、普通に考えたら、捨てるタイミングを二年延ばすだけだと思うんですね。保存しているわけですから。必要になるのは、ほかのスペース、電子媒体なのか紙なのかによりますけれども、それぐらいなんじゃないかというふうに思いますけれども。それが実務に与える影響というふうに大げさに言われることが全く理解ができません。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 文書の保存の対応ということでございますけれども、やはり、紙媒体の資料の保管スペースというものの確保をどうするかという問題もあろうかと思いますけれども、それだけではなくて、いろいろ、電子媒体で例えば記録を保存されている場合には、そういった電子媒体での記録をするための労務管理システムの改修等というようなものも必要になるというような場合もあると考えてございますし、また、労働時間を正確に確認するためには、賃金台帳、タイムカードといったものだけではなくて、いろいろ、電子メールであったり入退館記録というようなものの記録も含めて保存しておくということが労働時間の正確な確認、把握ということにもつながるということで、そういったものも含めて、企業の方での保存の方法ということが、紙媒体、電子媒体、いろいろな対応の中であるということで、私どもとしてはやはり一定の影響があるということで考えているということでございます。

宮本委員 今の説明を伺っても、保存しなきゃいけないものは今でも保存しているわけですよね。三年、建前上は保存することになっているわけでありますよ。それを、捨てるタイミングを二年ずらす。それ以外は保管のスペースと、あともう一つ今お話があったのは、システムの若干の改修が必要になるかもわからない。そんなに大きな負担だとはとても思えないんですよね。

 企業の違法行為を正し、労働者の権利を守るために、なぜその程度の実務がふえたらだめなのか、保管スペースがふえたらだめなのか。そこが今の説明ではとても納得できません。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 それは単に保存期間の延長ということで保存スペースが一年分余計に要るというだけではなくて、先ほども申し上げましたように、いろいろ、システムを使っての電子媒体での記録の保存というようなことになりますと、単なるスペースの問題だけではありませんので、そういった改修等の関係もありますし、先ほども答弁の中で申し上げましたような労働時間の管理、把握ということを適正に行っていただくためには、いろいろな形での大量の文書なりそういった電子媒体の保管ということもされておるということもございますので、やはりそういったものの保存期間が延びるということへの影響ということは考えられるということかと存じ上げます。

宮本委員 電子媒体であれ、紙媒体であれ、必要なものは保存はしているわけですから、捨てなければ残り続けるだけなんですよ。もしかしたら、自動的に三年で消えるというシステムがあるんだったら、その部分については改修が必要かもわからないですけれども、それ以外はスペースだけの話じゃないですか。全く説明になっていないと思いますよ。

 その上で、最後にお伺いしたいのですけれども、厚労省に残業代の不払いはないのかということをお伺いしたいと思います。

 資料を最後につけておきましたけれども、厚労省の若手改革チームの皆さんが、約四分の三の職員が徹底した労働時間管理を行い正当な額が支払われるようにすべきだと、そして、各部局の支払いルール等を含めて実態を徹底的に調査し、不公平な運用があれば早急に是正すべきだと書いてあります。

 そして、霞国公という組合の調査では、霞が関で働く皆さんの四二%に不払い残業があると。最近は、かなり時間管理をやられるようになったという話は私も伺っております。そして、超過勤務を行ったら請求した分は払われるように大分改善してきたというお話を伺っておりますが、それでもこういう調査結果が出ているわけであります。

 厚労省自身は、残業代の不払いの対象人数、金額がどれぐらいあるのか。もしないというんだったら、なぜこういうペーパーが厚労省の中から出てくるのか。しかと説明いただきたいと思います。

田中政府参考人 私ども厚生労働省の職員に対する超過勤務につきましては、超過勤務命令に従って行われた勤務に対し、給与法に基づいて適切に超過勤務手当を支給していると考えております。

 一方で、超過勤務の長さにつきましては、相当程度の超過勤務を行っている職員がおります。この縮減は喫緊の課題だというふうに考えておりますので、管理職による労働時間、業務のマネジメントの強化など、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

宮本委員 全部払われている、超過勤務命令を出したと。命令を出さずに働いている人がたくさんいるからこういう結果が出ているのかなというふうに思いますけれども、今の説明では、こういう結果がなぜ出るのか、厚労省の若手改革チームの出されるようなものが出るはずがないじゃないですか。ちゃんと、もうちょっと血の通った答弁をしていただきたいというふうに思います。

 もう時間が来たから終わりますけれども、先ほど答弁にありました、労働時間の方がより重大な問題になっているというのは、その点はおっしゃるとおりだと思いますので、新型コロナ対策の問題で本当に厚労省の職員の皆さんも大変だと思いますので、私は、いいかげん、今の定数管理、どんどんどんどん削減していくというのはやめた方がいいということを強く申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 きょうは労働基準法の法案質疑でございますが、前段、新型コロナについて少し質疑をしたいと思います。

 先月の二月三日、我が党の緊急提言書を加藤大臣に提出させていただきまして、その際にも、新型インフルエンザ対策に並ぶ、この特措法に並ぶ政府権限の拡大に向けて立法措置を講じることをそのときから提案してまいりました。このたび、政府・与党が新型インフル特措法改正という立法措置に進むことについては、我が党としては前向きに協力をしたいというふうに思います。

 また、先週、三月の四日の日に我が党の提言書第二弾をお渡しいたしまして、六項目にわたる提案事項を挙げさせていただきました。その中でも、入国制限の措置の強化、それから、医療用マスクの調達を始めとする医療崩壊を防ぐための措置などについても言及させていただきましたが、この点についても政府に大幅に前向きに検討していただきまして、昨日発表の緊急対策にも盛り込んでいただいたことに、まずは敬意を表したいと思います。

 その中で一点、感染拡大のスピードを弱める、いわゆるピークカットを目的とした大型イベントの自粛について、我が党としては、民間にもこの基準が曖昧なままに責任を丸投げしているような形でどうしても進んでしまう、自治体も民間も非常に判断が難しいというのが今の現状でございますが、これは一歩踏み込んで、いわゆる中止命令といったような強制力のある形と補償というのをセットで行って、政府が責任を持つ、そういう政策の設計思想を盛り込んだ法整備にまで踏み込んで今後進めていただきたいという思いを再度確認させていただきまして、冒頭、コメントとさせてもらいます。

 昨夜、新型コロナの緊急対応策の第二弾が政府から発表されたわけでございますが、きょうに限りましては、休業補償についてまずお聞きしたいと思います。

 昨日の発表の中にも、フリーランス、自営業に対しての休業補償について話がございましたが、これはちょっと事実確認で、報道では、小学校のお子さんとかがいらっしゃって、それが影響して臨時休業をされた方々に対して四千百円という額が出ておりますけれども、これがどのような範囲で、又はなぜこのような金額の設定になっているかということをまず御説明いただけますでしょうか。

藤澤政府参考人 お答えを申し上げます。

 きのう取りまとめられました第二弾の緊急対応策におきまして、小学校等の臨時休業等に伴い、子供の世話を行うため休業せざるを得ない保護者を支援し、子供さんたちの健康、安全を確保するために、委託を受けて個人で就業する予定であった方についても、就業できなかった日数に応じて、一日四千百円を定額で支給する措置を講ずることとしたところでございます。

 この金額でございますけれども、働き方やその報酬の定め方が多種多様でいらっしゃるような中で、迅速に支援をする必要性も踏まえまして、雇用保険における失業給付の日額上限とのバランスや最低賃金相当を勘案して、四千百円ということで定めたものでございます。

藤田委員 これは確認ですが、財源はどちらからですか。

藤澤政府参考人 一般会計でございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 この額の決め方は非常に難しいと思うんですが、雇用調整助成金で八千三百円強というのが企業に助成金として支給されるわけで、それと対比して見ると、半額以下になっている。私は、多様な働き方を推進しようという今の社会の流れとしては、これはちょっと手薄じゃないかなという印象を受けます。

 プラス、範囲として、今このコロナ対策の経済的影響がかなり広範にわたっている中、いわゆる学校の自主休校に関するところにちょっと手当てを打とうというところが恐らく今回の範囲の決め方の趣旨だと思うんですが、例えば、イベントもかなり自粛されていて、イベントに関係するお仕事の方とかはほとんど、自営業の、例えば司会業とかそういったことも含めて、ほとんど仕事がこの一、二カ月ないというところも含めると、やはり学校絡みの範囲をもう少し広げるべきじゃないかなというふうには思います。

 このあたりに関しては、この制度なのか、又は新たな制度なのかを含めてぜひとも検討していただきたいですが、何かコメントはありますか。なければ大丈夫です、要望とさせていただいて。よろしかったら、いいですか。大丈夫ですか。

 広範にわたる補償対策、それから今後の経済対策は分けて考えるべきではありますが、いわゆる一体的な部分もありますので、一つ提案として、これは我が党でも一週間か十日前ぐらいに一つアイデアで出たところで、児童手当というのが今いわゆる直接給付のスキームとしてございます。いわゆる直接給付のこのスキームを使って、子育て世代に対して、特に、学校が休校になりましたから、その関係者の方々がかなり仕事にも影響が出ているということを鑑みると、補償又はその先に進んだ経済対策の一環として、この児童手当の既存スキームを活用して、何か直接的にお渡しするような特別給付を実施できないかというふうに思いますが、御見解、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 こういう施策というのは、目的が何なのかということなんだと思います。今回の施策は、新型コロナウイルス感染症に伴って学校が臨時休業等になって、そして、子供が休むことによって自分が休まざるを得ないという方についてどういう支援をしていく必要があるかということなので、今回のようなスキームをとらせていただいているということであります。

 きのう取りまとめた第二弾の緊急対策については、小学校等の臨時休業等に伴い、子供の世話を行うために仕事を休まざるを得ない保護者等を支援するため、これは雇用されている方だけではなくて、業務委託契約等に基づき個人で就業する予定であった方まで幅を広げる中で、新たな対策を講じるということにしたところであります。

藤田委員 ありがとうございます。

 この児童手当は、直接給付の仕組みとしては既に確立されているものなので、一考の価値はあるんじゃないかなというふうには思いまして、またこういうスキームの検討もぜひしていただけたらと思います。

 先日の報道では、二〇一九年の十月から十二月期のGDPの改定値が、速報から更に下がりまして、年率七・一%減という形で下方修正されました。なおかつ、この一月から三月は恐らく恐ろしいような状況になると。なおかつ、ここ近々の報道を見ていますと、株価も乱高下しているという形で、非常に経済が不安定という形で、きょうは厚生労働委員会なので経済対策に対しては省かせていただきますが、ぜひ大幅な経済対策を政府一丸となってやっていただくようにお願いを申し上げます。

 それから、このコロナ対策のことについていろいろな意思決定がこれまで政府でもなされてまいりました。せんだってより、他の委員会ですが、野党の皆さんからの質疑の中でもありますが、政策決定過程における議事録ですとか、そういったものを保管し、そして公開していくことについての議論があったかと思います。

 今回の事態を、行政文書の管理に関するガイドラインに基づいて、国家や社会として記録を共有すべき歴史的緊急事態に指定すると決めて、関連する会議の議事録の作成が義務づけられるという方針が出されておりますけれども、特に全国的に影響の大きい学校の一斉休校ですとかイベントの中止要請というものに関しては、その発信に至る意思決定の過程が不透明であるというような趣旨の批判が論調としてもございます。

 そもそも、ちょっとここで問いたいのは、この歴史的緊急事態の指定がなければ、いわゆる連絡会議等を含めた意思決定過程を議事録や記録に残す意思はなかったのか、又はそれは残す方針だったのか、これをお聞かせいただけますか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、新型コロナウイルス感染症対策本部、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議、それから新型コロナウイルス感染症対策本部幹事会については、順次議事概要を公表してございます。

 その他会議につきましても、国内外の状況が時々刻々と変化する中で、まずは感染拡大の防止に全力で取り組んでいるところではございますけれども、これまでの記録を公表に向けて整理し、作成してまいりたいと考えておるところでございます。

藤田委員 ちょっと曖昧な答弁だったんですが、私はこれを追及したいわけではなくて、今回の、この今の事態を終息に向かわせるというのは一番最も大事なことですが、今後、恐らく来年以降、同様の新しい感染症ですとか、こういうグローバルに人、物、金が動く時代ですから感染のスピードも速い、そして広い、こういう中で、我々が国家としてどのように対応していくかということが、ある程度ノウハウを蓄積しないといけないというのが至上命題だと思います。その中で、事実とデータに基づいた事後検証を必ずやらないといけないというふうに思います。

 それで、これは事務方の皆さんとちょっとディスカッションしたんですが、事務方の皆さんはこれをやるべきだという声をなかなか上げにくいと思いますし、各部門部門で、いわゆる自分の範囲外に及んでは、これを検証するというのは非常に難しい。

 例えば今回でいうと、一番最初の水際対策、それから入国管理、検査体制、医療体制、そして感染拡大のスピードを弱めるためのピークカット策、イベントの自粛や補償問題、学校の一斉休校、自治体との協力、クルーズ船の対処、法整備上の不備や欠点をアジャストしていくこと、それから労働者の休業補償、フリーランス、自営業のセーフティーネット、中小企業のセーフティーネット、そして経済対策というように、広範にわたって省庁横断的に手を打っているわけであります。もちろん、外務省も法務省も入国管理にかかわりますし、学校の一斉休校は文科省にもかかわりますし、多岐にわたるわけです。

 ですから、今後のいわゆるノウハウを蓄積するという観点から、事後検証をやるという意思を私は示していただきたいなというふうに思いますが、この意思があるかどうか、また、その準備はなされているかどうか、大臣に一言いただけたらと思います。

加藤国務大臣 今回、ちょっと正確な名前は忘れましたけれども、歴史的事態ということが既に指定をされているわけでありますから、それにのっとって、まずはこれまでの資料を残す、あるいは残っていないものにおいても記憶を呼び戻しながら残していく、そういったことをする中において、最終的には、クルーズ船の話は私も所信の中で申し上げましたけれども、これも含めてしっかりと検証していきたい、また、検証していただけるような状況をつくっていきたいというふうに思っています。

藤田委員 ありがとうございます。ぜひ、対策本部の副本部長でもありますから、よろしくお願いを申し上げます。

 通常でいうと、企業だったら、トラブルとかアクシデントがあったときに、それを処理しつつも、やはりこれを次に生かすぞということで、次の検証の準備を同時進行で進めるというのは当たり前のことだと思いますので、ぜひとも、これは何か足を引っ張るためではなくて、日本の国が次の新たな感染症にどうやって対峙していくかということを考えたときに必ず必要になることだと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、残りの時間、法案に入らせていただきたいと思います。

 先ほど来、野党の先生方の質疑をお聞きしていると、やはり労働者側の権利から見たときに、おっしゃっていることは正論だというふうに思います。しかしながら、これは、労働者側の権利を保護することと、それから企業側がより生き生きと活動していき、リスクをヘッジしながら収益を上げ、社会に貢献していくということを、両方、やはりバランスを見て考えないといけない問題であるというふうに思います。

 労働紛争、今回の賃金請求権等に絡むものについては、いわゆる、先ほどもありましたが、在職中よりも離職した後にちょっとしたもめごとになったり請求が発生するということがあるわけでありますけれども、これはちょっと事実確認で、賃金請求に係る訴訟や紛争のデータというのは把握しているかどうか。その内訳とか件数の推移なんかで押さえているものがあれば、教えてください。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 賃金関係につきましては、民事訴訟の関係でございますけれども、例えば、直近五年間の比較でいいますと、平成二十六年が三千三百七十三件でございましたが、平成三十年が三千三百八十六件となってございます。

 また、金銭請求を主とします労働審判でございますけれども、この関係につきましては、平成二十六年が一千八百二十五件で、平成三十年が二千六十七件となってございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 これを何でお聞きしたかといいますと、これは今後の、先ほども議論になりました、当分の間三年で、その後、五年後にこの見直しを行うという中で、この紛争の件数なんかは一つの参考にすべきデータになるんじゃないかなというふうに思っています。

 というのも、先ほど、企業の負担というのは何があるんですかという問いが他の委員からありましたが、いわゆる保存期間、保存の書類を置いておいたら、それ以外にはないじゃないかという指摘があります。

 確かに物理的にはそうでしょう。しかしながら、中小企業を経営する立場から見ると、リスクというのを織り込んで経営しなければいけません。例えば紛争になって、企業側が一〇〇%完璧にやっていた場合でも、紛争にかかるコストはありますし、二年が、五年さかのぼってデータを集めないといけないというのもコストでございます。

 それから、今、働き方の多様化の時代で、いわゆる事務所や工場に来てずっといて、そのまま残業して帰るという働き方だけではありません。実際には、テレワークですとか、それからメールのやりとりは業務外にも派生することもあるわけです。そのあたりをどのように労働債権として確定させるかというのはかなり膨大な作業ですし、一旦紛争になると、企業側は相当なコストを受けないといけないわけです。

 このようなバランスの中で、私は、労使が対立関係にあるというような価値観は、確かに一つの考え方としてはあるでしょう。しかしながら、多くは、労使共同して経済活動をやっていくという現場の方が多い。ですから、これはバランスが非常に大事で、例えばこの当分の間三年ということを見直すかどうかを検討する際には、一定の検証項目をしっかりと挙げて、中小企業の負担、そして労働者の権利の保護というものがどのように進捗したかということをしっかりと見直す必要がある。主観ではなく客観的データに基づいて検証するべきであるというふうに考えますが、これはどのような検証をするか、現時点でお考えはありますでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方からも御指摘のとおり、賃金債権ということでございますので、民法の一般債権とは違って、いろいろ大量、定期的、長期にわたって発生するという中で、今まさに委員の方が御指摘ございましたような、労使の権利関係の安定性というようなものとの関係であったり、紛争の早期解決であったり、紛争が生じないようにするため、あるいは紛争が生じたときへの備えというようなことも含めての対応ということが考えられる案件かと考えております。

 そういったことで、本法案の検討規定を踏まえた検討では、この賃金債権の特殊性を踏まえながら、今回の改正でどのような影響が生じていくのかということを検証するということが必要かと考えております。

 検証方法につきましては、今後また労使とも十分に相談をしてまいりたいと思っておりますけれども、現時点では、やはり、先ほども御答弁させていただいたような賃金の未払い、あるいは未払い賃金をめぐっての紛争、民事であったり労働審判、あるいは、私どもの行政との関係というのはその件数であったり内容というようなもの、あるいは、企業の側の文書の保存のみならず労務管理の負担等々、効率性の向上というようなものがどういう状況になっているかというようなことも含めまして、検討項目をまた私どもとしてもしっかり検証した上で行ってまいりたいと考えております。

藤田委員 時間がなくなりましたので、一言だけ。

 紛争は少ない方がいいわけです。企業側はしっかりと正しく払って、そういう、正しく払って正しい経営をするような力学を働かせるのが本旨でありますから、これは延びた時点で見込みのコストはふえます、そういう現状も含めて、次回、これは雇用保険法の方でもやりますが、今、中小企業に非常に厳しい法改正が、一個一個をとるとそれほどでもないけれども、並べて見ると、かなり中小企業の経営にとっては負担になる改正項目がこの数年非常に多く出ておりますから、このあたりの全般的なバランスも含めて御検討いただけたらと思います。

 以上で終わります。

盛山委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから四十分間、質問をさせていただきます。

 労働基準法、そして、昨日発表になりました緊急対策の中でのフリーランスの方や自営業者の方々の問題、休業補償の問題、また、労働基準法の中の働き方改革で大きな議論になりました高度プロフェッショナル制度の問題、また、コロナウイルス対策の中で焦点となっておりますPCR検査、ウイルス検査の問題などについて、四十分間質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭、けさからずっと議論を聞いておりましても、なぜ三年なのか、五年にすべきではないか。私も過労死の問題やさまざまなブラック企業の問題を国会で質問させてもらいましたけれども、やはり、この当面の間三年にするというのは全く納得できないわけであります。

 ただ、このことについては、せめて、当面というのは一年なのか、二年なのか、三年なのかということをはっきりしてもらわないと、またいずれ、これを五年にするかわりに裁量労働制の拡大と抱き合わせの労働基準法改正をしますとか、そういう何か労働者にとって痛みを伴う改革と必ずセットになってしまうという部分もあります。

 そういう意味では、ちょっと重なる質問で申しわけありませんけれども、最大の論点でありますので、この審議の中で、採決までに、この当面というのはおおよそ何年以内かということについては、やはり、大臣、はっきりと議事録に残すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今回の措置、これまでもるる説明をさせていただきましたけれども、民法の改正に伴って消滅時効期間をどうするのか、あるいは、民法とは異なるけれども、施行日以降に支払い日が到来する全ての労働者の賃金請求権を認めていくのか、さらにはそれをどういうスケジュールでやるのか、これについて、労使が入っておられる労政審でいろいろ議論した中で今回の姿が生まれてきたわけでありまして、そこで当分の間という言葉も最終的に盛り込まれてきたということであります。

 この一つの背景には、やはり賃金台帳の保存等の課題があるということも先ほどから御説明をさせていただきました。これについては、特に中小企業において、これは働き方改革と一体とした助成措置ではありますけれども、そういったものも活用していただきながら、まさにそれぞれの企業において、きちんと保存ができる状況、そして五年に向けて準備ができる状況をつくっていく、さまざまな取組をしていく、そして、それを見据える中で、最終的にこの三年から五年をどのタイミングで行っていくのかということを議論していただくということになるわけでありますから、今の時点でこの当分の間がいつなのかということを明確に申し上げるのは難しいことは、ぜひ御理解いただきたいと思います。

 ただ、本法案では、施行から五年経過後の状況を踏まえて検討する旨の検討規定も設けられているわけでありますから、当然、この問題も含めて検討することにはなるというふうには思います。

山井委員 本当に、残業代不払いというのは、お金だけの問題じゃなくて、それを野放しにすることによって過労死がふえるというような、さまざまなブラック企業の問題がありますので、これはぜひ早急に五年にしていただきたいと思います。

 それで、それに関連して、配付資料一ページと二ページにありますが、高度プロフェッショナルですね。野党の多くが大反対をした高度プロフェッショナル、残業代ゼロ制度とも過労死促進法とも言われたこの高度プロフェッショナルについて、配付資料のように、現在、四百十三人、十一件、十企業の方々が対象になっていると思います。

 この法案の審議の際に、しっかりとした健康確保措置、そういうものをとらないとだめだということで、健康確保時間がどうなっているのか、そのような現状について報告をいただきたいと思います。

 つまり、この健康確保時間は、この四百十三人、大体何時間ぐらいが平均なのか。また、この制度に入って、これは二十四時間、三日でも四日でも働かせようとしたら働かせることが可能になりかねない危うい制度でありますので、このようなチェックをどうされているのか。そして、この四百十三人で、もう長ければ一年たっている方もおられると思いますので、去年の四月一日に導入されて、体調を壊した方とか、まさか過労死をされた方とかがおられないかとか、そのような現状についてお聞かせください。

加藤国務大臣 私から言うのはちょっと限界があるので、そこはぜひ御了解をいただきたいと思います。詳細であれば、やはり部局の局長等から御答弁させていただいた方がより正確だと思いますが、ちょっと手元にある資料を読ませていただきたいと思います。

 まず、高度プロフェッショナル制度が適用されているのは何社か、何人かということでありますけれども、高度プロフェッショナル制度を導入する場合には、労働基準法の規定により、労使委員会による決議をし、高度プロフェッショナル制度に関する決議届を労働基準監督署に届け出ることとされております。

 十二月末時点の届出は十一件、対象労働者は四百十三名、企業数は十企業であります。内訳は、多分、今、委員の資料の中に入っていたと思います。

 それから、健康管理時間や健康確保措置の状況はどうかという話がございます。

 高度プロフェッショナル制度を導入した事業場は、労働基準法に基づき、労使委員会による決議から六カ月以内ごとに、最長の労働者の健康管理時間、労働者の健康管理時間の平均、同意を撤回した労働者等について所轄労働基準監督署長に報告することになっております。労働基準監督署においては、定期報告を受ける際に、健康管理時間の状況などの問題が認められる場合には、必要な窓口指導を行っております。

 既に報告のあった事業場の健康管理時間の状況等については、制度施行からまだ一年たっておりません、現時点で報告されている事業場数が少ないということ、また、個別事業所や個人の状況の公表につながりかねないということで、現時点で具体に申し上げるのは難しいというふうに考えております。

 それから、既に体調を壊した人、やめた人はいるのかというお話でありますが、高度プロフェッショナル制度に関する決議届を届け出た事業場であって、対象労働者の同意がなされ、実際の運用が開始された事業場に対しては、適切な時期を捉え、全件監督指導を実施することとしております。

 監督指導の詳細について申し上げることは控えさせていただきますが、監督指導に際しては、使用者に対する聞き取りや書面での確認に限定せず、対象労働者へのヒアリングも含めて、制度の運用実態を把握するために必要な調査を行うこととしております。

山井委員 これは残念ながら強行採決をされた法案ですから、こういうことをすれば過労死がふえる、労基法の適用除外で過労死がふえるということをさんざん言ったわけですから。これで万が一、やはり過労死の方が出ましたということになると、これは本当に大きな政治責任になるということを申し上げて、ですから、そういうことにならないように、きっちりと健康確保のチェックをお願いしたいと思っております。そして、近い将来、当然、こういう制度は中止すべきだと私たちは考えております。

 それでは、配付資料八ページ、昨日、緊急対策第二弾が公表されました。その中で、八ページの左上、学校臨時休業に伴って生じる課題への対応として、委託を受けて個人で仕事をする方も支援、一定要件を満たす方は日額四千百円と。上に書いてありますよね、非正規を問わない、一般の労働者は日額上限八千三百三十円。ところが、フリーランスの方などは日額四千百円。

 はっきり言って、これは差別じゃないですか、半額。多様な働き方で、フリーランスとかいろいろなものを推進、奨励もしておきながら、いざこういうことになると明確に差別をする。同じように一日八時間働いている方、フリーランスの方でも一般の社員の方でも、非正規、正規、おられると思いますよ。

 この四千百円の根拠と、なぜこんな差別扱いをするのか。当然、同様に全額補償ということで引き上げるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今の委員の中の全額補償というところが最大のポイントなんです。何をもって全額にするかというのは、正直言って我々もわからなかった。したがって、これまでは雇用のところしかできなかった。しかし、そこをどう踏み込んでいくのかということで、中でも議論しました。それから、フリーランスの方からもお話を聞きました。正直言って、これでいってほしいという答えはありませんでした。しかし、こうした事情の中で、そうした業務委託を受けている人がキャンセルをして子供を見なきゃいけないという事情は聞かせていただきました。

 そういう中で、どこでどうやってやるのか、そして、全額云々という話についても、余り細かいデータを求めても難しい話だし、それを分析しようとすればかえって時間がかかる。その辺で、どういう形をするのかというところは、相当、我々も正直言って悩んでいるのは事実なんです。

 では、四千百円で合理性があるかというと、何か積み上げて積み上げてこうなったというものでは必ずしもありません。今、委員御承知のように、八千三百三十円というのがあって、そして、この八千三百三十円というのは雇用保険における失業給付の日額上限であります。それとどうバランスをとるのか、ではどの程度フリーランスの方が働いておられるのか、必ずしもデータが十分あるわけでもありません。

 そういった中で、しかし何がしかの支給というものをしていく必要があるということを考えて、その半分、四時間、四時間であれば東京都の最低賃金もクリアできる、そういったことも含めて、この数字とさせていただいたということであります。

山井委員 これは、加藤大臣、そして担当課の方々も必死になって御努力してくださったということは、もちろん私も理解しております。しかし、確たる根拠がないといいながら、結局は正規、非正規の方々の半額である。この八千三百三十円にはこの上に事業主負担がつきますから、半額以下なんですよね。やはりここは残念ながら差別待遇だと言わざるを得ません。これはもっと大幅に、当然引き上げるべきだと強く申し上げたいと思います。

 それと、それに関連して、もう一つは、これも質問通告しておりますけれども、小学校とか中学校のお子さんのお世話をするための休業でなくても、コロナウイルスの影響で、昨日も安倍総理は更に十日間の大規模イベントの自粛などを要請されましたよね。そういうイベントの関係で仕事がなくなった方々というのはいっぱいおられるんですよ。その方々に関して、今、融資しかないわけです。

 ある方がおっしゃっていたのは、安倍総理、政府が要請されたんでしょう、それで、その政府の要請に基づいてイベントがキャンセルになったんでしょう、仕事がなくなったんでしょう、それに対して融資しかないというのはやはりおかしいんじゃないかと。これは真っ当だと思いますよ、政府が要請しているんですから。

 これは経済産業省と厚生労働省の間のことだというのは私はわかっておりますけれども、そういう意味では、厚生労働省に期待しつつ、休業補償を子供のお世話をするために出すのであれば、同様に、今回のコロナの被害で、政府の要請によって仕事がなくなった方については、やはり融資じゃなくて休業補償、幾ばくかの休業補償をやるべきだと思います。

 実際、現場からは、このままではフリーランスの方々から失業者、生活保護、自己破産が激増するというふうな声も上がっているわけであります。このようなイベントなどの自粛等々の関係で仕事がなくなったフリーランスの方々、自営の方々などへの補償、貸付けじゃなくて、融資じゃなくて、それについて、加藤大臣の見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 先ほどのものは、小中高等学校の臨時休業を要請した、そういった意味で、そこから生まれる課題については政府としてもしっかり対応するという中で、金額については御議論があったというふうに思いますけれども、対応させていただきました。

 今御指摘のイベントでありますけれども、これに対しては、イベントについては中止、延期、規模縮小等をお願いしたということではありますけれども、そうすると、そこで直接絡んでくるのは事業主ということになります。したがって、事業主に対する支援ということであれば、厚労省というよりは、むしろ経産省等で資金繰り対策を行っている。

 それから、やはり、フリーランスあるいは個人事業主の方でも、まさにそれをきっかけとして仕事を失うということはもちろんあるということであります。そうした生活に不安を感じている方については、個人向けの緊急小口資金というのがあるんですが、これを保証人がなくても無利子にする。そして、返済の免除についてもこういう考え方をとりますよ、要するに、所得が一定程度低くなればこれは免除できますよと。こういった仕組みをつくることによって、生活の立て直しを支援していきたいというふうに考えています。

山井委員 これはまた改めてじっくり議論したいと思いますが、融資や貸付けでは絶対だめです。これはやはり休業補償すべきです。自己破産、生活保護、一歩間違うと、これは本当にみずから命を絶たれる方も出かねないですよ。そういう意味では、ある意味で与野党を超えてこういうことについては取り組んでいかねばならないと思いますし、強くそのことは要望したいと思います。

 また、さまざまな問題点があり過ぎますので、次の質問に移りますが、九ページ。

 きょうも、最新のニュースでも、千葉県市川市で、デイサービス、八十代の方が新たに感染して、百四十のデイサービスセンターにサービス縮小などの検討をしてもらう依頼文を千葉県、市川市が出したということであります。

 さらに、きょうの配付資料にありますように、昨日は伊丹でデイケアの高齢者が感染された。さらに、九ページにありますように、名古屋ではデイサービスの高齢者が十数人感染して、ここは百二十六カ所のデイサービスに対して休止の要請、約六千人の高齢者に影響が出てしまっているということなんです。

 そこで、一つ提案なんですが、昨日の緊急対策の中でも、保育園が休み、幼稚園が休み、こども園が休み、小中高が休みのときに親が休業すれば一定の休業補償はしますということまでは言われているわけです。しかし、これは残念ながら、デイサービスの休止というものは今後広がる可能性があります。自主的な休止じゃなくて、今回のような自治体からの要請に応じて休止した場合、当然、御家族が仕事を休んで、認知症の御両親の介護をされる。一人でおれないという方も非常に多いですからね、デイサービスを週に三回、四回利用している方なども含めて。そういう意味では、子供のお世話で休業をすれば一定の補償が出る、しかし、今は同様に親の介護で休業しても一銭も出ないんです。私は、これはやはり問題があると思います。

 ぜひ、加藤大臣、子供のお世話だけじゃなくて、自治体の要請でデイサービスセンターや高齢者施設が休止になった場合、家族が仕事を休んで、子育てのみならず、親の介護をした場合も休業補償をするという方針を出していただきたいと思います。いかがですか。

加藤国務大臣 家族の介護を行う労働者が仕事と介護を両立できるようには、育児・介護休業法で介護休業制度が既にあるわけでありまして、対象家族一人当たり九十三日の休業を、三回まで分割して取得することが可能であります。また、一定の要件を満たした場合には介護休業給付金も支給されることになっておりますので、まさにこうした制度等の利用促進を、しっかり周知を図っていきたいと思います。

山井委員 いや、介護離職ゼロとかおっしゃっているけれども、全然やる気がないじゃないですか。本当に、先回りして私は言っているんですよ。これは多くの家庭が崩壊しますよ。大変なことになります。

 ぜひとも、額がどうとかというのは二の次ですけれども、子供のお世話には休業補償はするけれども、親の介護には休業補償しないというのはおかしいですから。おまけに、デイサービスとかの休業が今後ふえる可能性は非常に大ですから、ぜひとも考えていただきたいと思います。

 それでは次に、PCR検査のことをお聞きしたいんですけれども、私、ちょっとびっくりしたことがあるんですよ。これは与党の方も一緒だと思いますが、PCR検査、保険適用してから件数が減っているんです。ふえているんじゃないんです、減っているんです。このグラフを見てください、減っているんですよ。それで、私、びっくりしました。てっきりふえているものだと思っていたら、減っているんですね。

 日曜日のテレビ番組でも、加藤大臣は、一日六千件の検査能力があると。そして、きのうの緊急対策では、今月末には一日最大七千件のPCR検査を行うと。現在六千件なんですよね。

 ところが、これはもう配付資料に入れてありますから、時間がもったいないので言いませんが、ここに出ていますよ。三月五日木曜日、千四百八十五件、保険適用になった三月六日金曜日、千二百二十三件、三月七日土曜日、八百六十二件、三月八日日曜日、六百六十九件、一昨日月曜日、三月九日は千九十八件。テレビでは六千二百件の検査能力があると言ったら、国民は、ああ、六千件ぐらい検査してくれているんだなと普通思うじゃないですか。何でこれは六分の一なんですか。おかしいじゃないですか。一歩間違うと、これはだましですよ。実施件数の方が重要に決まっているじゃないですか。なぜこれは減っているんですか。そして、六千二百件の能力があるのに、数百件とか千件しかできないんですか。いかがですか。

加藤国務大臣 ちょっと済みません、質問の意味が十分受け取れていないんですが、能力と必要な検査数というのは必ずしもパラレルになるわけではありません。しかも、これまで四千件あったときだって、千何百いったときもあるし、そうでないときもあります。

 ですから、それが六千、七千になったからといって、すぐにふえるかふえないか、これはまさに感染状況等々、いろいろな事情によって変わってくる。(発言する者あり)いやいや、これはそうじゃないですか。これは何事もそうで、能力があるからといって、全部それができる、これはまた別の問題で、ちょっと私は、そこはにわかに受けとめられないところはあります。

 ただ、これまでも指摘をされて、それから、もう一つ申し上げておくのは、必ずしも、今出した数字は私どもの手元に報告が来たものだけを出しているので、全てではありません。したがって、報告がふえてくれば当然件数がふえていくということは、ひとつお含みおきを……(発言する者あり)いやいや、無責任じゃないですよ。これだって、お願いをして我々はデータをとっているわけですから。強制的にとれるものではないんです、これは。それぞれの都道府県にお願いをしながらやらせていただいている、ここはぜひ理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、ただ、これまでも、この衆議院の予算委員会も含めて、十分PCRは至っていないという御指摘もいただいています。そして、医師会にもお願いをしたら、たしか六十件を超える件数が、医師が頼んだけれども伝わっていないということもありました。これについては、一つ一つ潰すというか、一つ一つ検証しながら、必要なものは実施していただくようにしているということでありますので、我々は別に抑制をしているわけでは全くなくて、実際に、今回の保険適用も含めてさまざまな手だてをしながら、必要なPCR検査が実施できるようにこれからも努力をしていきたいと思っています。

山井委員 いや、驚きました。開き直りですか、それは。能力と実施件数は違う、必要性に応じてといって。必要性はあるんですよ。それだったら、今後、加藤大臣、検査の能力、能力と言わないでくださいよ。国民をだますことになりますよ。

 では、お聞きします。

 今月末までに七千件の検査能力とおっしゃるのであれば、では、今月末に何件検査するんですか。能力はいいですよ、当てにならないから。(発言する者あり)ちょっと理事、出てください。とめてください。何ですか、いいかげんな質問をするなって。人の命がかかっている質問をしているのに。(発言する者あり)

盛山委員長 静粛に。皆さん、静粛にお願いします。

 戻ってください。(発言する者あり)静粛にお願いします。

山井委員 国民の命を守るために質問しているんじゃないですか。とめてください。(発言する者あり)

盛山委員長 静粛にお願いします。席に戻ってください。(発言する者あり)

 とめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げているのは、私は能力の話をずっとさせていただいているのであります。

 したがって、これまでも能力が少なかった、そこを、当時四千から今は六千、そして月末には七千ということで、民間の検査機関、医療機関、あるいは大学、そういったところの協力もいただきながら、今、逐次能力を上げているということを説明しているのであって、では実際にどれだけ検査があるかというのは、まさにそれぞれの、特に帰国者・接触者外来を始めとした医師の判断によって、必要な検査数がどれだけになるか、これは全く別のものでありますから、それを一緒に議論されても、これはかえって誤解を生むのではないのでしょうか。

山井委員 誤解を生んでいるのはそちらですよ。

 質問に答えてください。七千件のPCR検査を月末に目指すということですけれども、実施件数は何件を考えているんですか。能力はいいですよ、国民が知りたいのは実施件数ですから。

加藤国務大臣 ですから、私どもが申し上げるのは、どれだけできるかということしか申し上げられないわけでありまして、あとどれだけの検査が必要とされるかは、まさにその時期時期でありますし、我々としては、そうした検査が少なくて済むように、今、小学校、中学校の臨時休業をお願いしながら、また大規模、全国イベントの縮小をしていただきながら、国民の皆さんの努力をいただいて、感染全体の抑制を図っているんですよ。ですから、それと、要するに、必要な検査数とできる能力、これを一緒にしたらかえって混乱を招くというふうなことを私は先ほどから申し上げているところであります。

山井委員 だから、CNNなどからも、日本の感染者数は氷山の一角じゃないかと言われているんですよ。感染者が日本は少ないのは検査をしていないからだと言われているんですよ。

 実際、ここにも書いてありますように、配付資料を見ていただきますと、手おくれになったことによって多くの感染が拡大している例というのがあるんです。

 例えば、十ページの札幌の件でも、患者Bさんが十七日から受診しているのに、結局、検査するのがおくれたせいで、十ページの右にありますように、Aさん、Bさんまで二十四日に感染してしまった。早目に感染の検査をしていたら、感染が防げたかもしれません。

 それと、十一ページ、山梨県の髄膜炎の方でありますけれども、この方も結局大変な事態になっているんですけれども、検査が非常に後手に回ったわけであります。さらに、左側は広島の方ですね。A、B、C、Bと四回受診して、合計七、八回受診したにもかかわらず、それまで検査が行われなかった。

 さらに、熊本のケースですね。熊本のケースも申し上げますが、熊本のケースは十二ページに詳細なものがありますが、この熊本のケースでも、若い看護師の女性の方がなかなか検査をしてもらえなかった。その結果、お父さん、お母さん、知り合いの方にどんどんどんどん感染が広がっていってしまったわけであります。そういう意味では、これは先手先手を打って検査をすることが非常に重要であります。

 それで、一つ申し上げたいんですけれども、和歌山モデルというものがあるんですね。これは私たちも調査をしてわかったんですが、配付資料の十五ページを見てください。私たち立国社の会派で、全ての都道府県に連絡をして、帰国者・接触者外来の相談件数は何件ですか、そして受診件数は何件ですか、PCR検査は何件ですかということを聞きました。それをもとに、厚生労働省に対して、厚生労働省としてもその数を調べてほしいと言ったら、きのうこの資料が出てきました。

 注目していただきたいのは、赤線を引きましたが、十五ページ左、和歌山。和歌山は、仁坂知事が安全宣言までされたんです。閉鎖されていた有田病院も再開しました。そのポイントは、疑いのある人を早目にどんどん検査した、それで感染が拡大しないようにした、そういうことをおっしゃっている。安全宣言をされています。私は一つの成功事例だと言えると思います。

 見てください。三百四十三件、相談センターに相談した。右端、PCR検査数、百十八件、三四%。つまり、機械的に計算すると、三人に一人は、相談した人のうちの三分の一の数字として、百十八人が検査されているんですね。もう一つの赤線、東京を見てください。東京は一万五千四百八十四人が相談しているんです。しかし、PCR検査は百五十四人、一%なんですよ。つまり、和歌山では三人に一人の割合で検査がされている。東京は一%、三十四倍の開き。そして、たくさん早目に検査したところは安全宣言をしている。

 だから、私は、ウイルス検査の拡充法案も野党で国会提出しましたけれども、能力があるならば、早目に、初期でも、お医者さんが必要と判断したらどんどん検査すべきだと思うんです。にもかかわらず、検査がふえていないんですよ。先ほど加藤大臣は必要性とおっしゃいましたけれども、必要性はあるんですよ。検査を受けられない、たらい回しに遭っている人、後手後手に回っている方が残念ながら多いんです。

 先ほどの名古屋のデイサービスセンターも、デイサービス、高齢者住宅、そういうところでお年寄りが熱を出された、せきをされた。検査してくださいと言ったら、残念ながら、保健所に大丈夫ですと断られてしまったという話を聞きました。その結果、十数人感染して、デイサービスセンター、百二十六、とめてくださいということに残念ながらなってしまった。こういうものも含めて、早目に検査していたら未然に防げたんじゃないですか、こういうことを和歌山県の仁坂知事もおっしゃっています。

 これは、加藤大臣、この和歌山と東京の比較を見て、別に東京だけが悪いわけじゃないですよ、一つの例として言ったんですけれども、やはり早期、初期にもっと検査をして、重症化する前に、そしてほかの方に感染させる前に、もっと検査件数を大幅にふやすべきだと思われませんか。

加藤国務大臣 和歌山の話、ちょっと私も十分把握していませんが、委員の話を聞いていると、幾つかのことが混濁していると思います。一つは、医師からいってやっているものと、濃厚接触者についてどこまでPCR検査をして陽性、陰性を判定するか、これは別の問題なんですね。

 多分、和歌山は、濃厚接触者、これは東京も、屋形船の関係者については積極的にやられました。だから、これは医療とは別にやっている。ただ、それも全部ここに載っているということなんですね。(山井委員「わかっていますよ」と呼ぶ)いやいや、わかっていなくておっしゃっていますよ、一緒に。だって、和歌山とほかの地域を比較しても、そういったベースがあるということを含めて理解しないと、やはりPCRそのものはしっかり理解をしていただかなきゃいけないと思います。

 ただ、今おっしゃった愛知とか熊本とか、これは医師会からも、頼んだけれどもできなかったという事例は私どもも聞いておりますから、それは一つ一つ是正をさせていただきたいと思いますし、また、従前から申し上げているように、我々は、医師が必要とするもの、これまでも地域縛りがあったりとかいろいろな御指摘がありましたので、それを一つ一つ周知をして、そういったものではなくて、まさに医師が判断していただいたら、積極的にやっていただきたい。

 それからもう一つは、医師が判断するに当たっての診断の目安みたいなものの必要もあります。これまでも出てきておりますが、さらに、これまでの症例を集めた症例集もそういった方々にお配りをしながら、早くに新型コロナウイルスのおそれがあるということを判断していただいて、そして必要なPCR検査につなげていく、そして、それができるようにといった意味において、できる限り受け入れる能力の拡大を図っていく、そういうものを一連として進めているということを先ほどから申し上げているところであります。

山井委員 遅過ぎると言っているんですよ。先ほど、和歌山モデル、それほど知らないとおっしゃったけれども、やはりこれは一つのモデルだと私は言えると思います。

 それで、加藤大臣が答弁されている、お医者さんが判断したら検査できるようになるというふうになっていないんです。

 具体的にお聞きします。例えば、四日間、三十七度五分とか、こういう一つの制約があるわけです。これは守らなくていいということになっていますけれども、多くの場でそれが一つの縛りに残念ながらなってしまっているんです。尾身副座長も、例えば三十七度五分、四日間でなくてもいいんだ、キャパシティーの問題だから、将来的には三日ということも検討する可能性があるかもしれないとおっしゃっているんですけれども、この四日の縛りを三日とか二日に緩めていくとか、検査のハードルを下げていく、このことについて、そういうことを検討されてはどうですか。

加藤国務大臣 いや、検査の話じゃないんです、それは。診療の目安を申し上げているんです。それによって、少なくとも四日続いたら必ず行ってくださいね、そして高齢者や基礎疾患がある方は二日、そうした状況があれば、あるいは倦怠感が強かったりしたら行ってくださいという、少なくとも一つの目安を出させていただいているので。また、インフルエンザ等がありますから、そういったことが疑われれば、通常のように、特に、かかりつけ医にかかってくださいということを申し上げている。その話と検査の話を一緒にしていただくと、これはぐちゃぐちゃになってしまうんじゃないかというふうに思います。

 そこは我々も、診療の目安は目安、そしてそれを見ながら、感染拡大がないように、帰国者・接触者相談支援センター、あるいは帰国者・接触者外来に行っていただいて、そこで必要なPCRをしっかりとつなげていく、こういう流れをお願いさせていただいているというところであります。

山井委員 いや、何か、加藤大臣の答弁を聞いていると、危機感が感じられないんです。これは人の命がかかっているんですよ。感染がどんどん拡大しているんですよ。これだけ検査がふえていないということを、検査を受けられずに重症化あるいは感染拡大していることに対して、もっと危機感を持って答弁すべきだと私は思います。

 このグラフも見せさせていただきますが、海外は日本を疑惑の目で見ていますよ、感染者をふやさないために検査をとめているんじゃないか、検査の件数を低くしているんじゃないかと。実際、韓国に比べて検査件数は十分の一ですよ。そういうふうに見られても仕方がないと思います。

 加藤大臣、保険適用に、先週金曜日に導入されて、保険適用によってふえた件数は何件ですか。

加藤国務大臣 申しわけないですけれども、危機感を持ってやっていないわけでは全くありません。むしろ、きちっとした情報を的確に伝える、私はそこを、しっかりと情報を提供したいから冷静に申し上げているのであって、やはりそこは混濁をぜひしていただきたくないと思います。

 それから、韓国の事例を言われましたけれども、では、韓国と日本で死亡者数がどれだけ違いますか。そういうことを一つ一つ検証して判断しなければ、一部言われたものだけでそれを言われる、また、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、この場をみんなが見ているんですよ。しかも国会という場、ここでどういう議論をしているかということはすごく私は大事だと思っています。だから、なるべく、委員には御迷惑をかけていますが、できるだけ丁寧な説明をさせていただいているということであります。

 それから、民間については、都道府県を通じてお願いをしていますけれども、まだなかなか上がってきていません。これはしっかり集約をして、都道府県ベース、それから、今、民間の検査会社にも我々は聞いて数の把握には努めさせていただいているところで、把握でき次第、また公表していきたいと思います。

山井委員 先週金曜日から保険を適用して、その適用でふえた検査件数がまだ一件もわからない。それもおかしいと思うんですよ。もう五日ぐらいたっているんです。

 私、もちろん加藤大臣も厚労省の方も必死になって頑張ってくださっているのはわかるんです。でも、結果的に件数が全然ふえていないんですよ、残念ながら。ふえていないんです、必要性があるのに。そのことを私は言っているわけです。

 そういう意味では、きょうの配付資料の中でも、原則として相談センターを通すということになっているんですけれども、原則としてということではなくて、この原則というものを外して、直接、相談センターを通さずに検査をお願いできる、そういうふうな、ここの資料にもありますけれども、今のところ、配付資料の七ページの右上ですね、先週の保険適用のときにも、原則としてやはり相談センターを通してと。原則外として直接外来に紹介してもいいということになっていますけれども、ここの原則を外して、相談センターを通しても通さなくてもいいとか、あるいは帰国者・接触者外来の数を八百からもっともっと急速にふやすとか、ぜひ、こういうことをしていくという答弁をお願いしたいんです。

 そうしないと、これだけふえていないのに、何か今のままで頑張っていますよというだけでは、やはり国民の命は私は守れないと思います。

 いかがですか、今の提案。

加藤国務大臣 ふえているかふえていないかというのは、正直言って、今、リアルタイムで我々も情報が上がってきていませんから、今の段階では何とも言えません。

 それから、実際どういう状況か、それぞれの医師の判断によって、どれだけの検査が必要なのかというのは、これは刻々と変わってくるというふうに思うんですね。

 ただ、これまで御指摘があるように、本来回るべきものがさまざまなところで滞っている、こういう指摘がありますので、それは一つ一つ是正すべくこれまでも努力をしてまいりましたし、引き続き、そうした御指摘が具体的にいただければ、それは一つ一つ是正をしていきたいというふうに思います。

山井委員 最後に、一つ提案があります。

 阿部議員からも提案がありましたが、はっきり言いまして、この数字も公開されていないんですよ、国民に対して、一日千件か八百件か。せめて、リアルタイムで、昨日まではトータル日本じゅうで何件検査ができました、それぐらい公表するのが当たり前だと思うんですよ。せめて、せめてですよ。それで、その中で保険適用の部分が幾つだったとか、そういうことも含めて。

 そうしないと、繰り返し言いますけれども、加藤大臣の、六千件検査能力があります、安倍総理の、七千件に検査能力をふやします、でも実際は千件でした、八百件でした、それは公開していませんと言うと、国民をだますことにもなりかねませんから。

 そういう意味では、正確な進捗状況を知る上でも、都道府県も含めて、オール・ジャパンでどれだけの件数を前日やったかということは、ホームページで即、翌日か、遅くとも翌々日に公開すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

盛山委員長 加藤厚生労働大臣、既に時間となっておりますので、簡潔な答弁をお願いします。

加藤国務大臣 まず、全体のPCR検査は、これまでも、厚労省のホームページを見てください、載っております。全体でPCR検査は幾つしたかという数字は出させていただいておりますけれども……(山井委員「一日ごとは出ていません」と呼ぶ)いやいや、累計で出させていただいておりますけれども、加えて、今御指摘があった都道府県別の数字も、これを逐次上げるべく、もう今既に載っているはずであります。

 ただし、これは、先ほど申し上げたように、こちらに集計をさせていただいたベースということで載せさせていただいているところであります。

山井委員 きょうから上げられたということですか、そうしたら。

盛山委員長 山井君、既に時間が経過しております。質疑を終了してください。

山井委員 いつから上げたということですか。(発言する者あり)いや、上げたとおっしゃったので、いつからなのか、最後に。

加藤国務大臣 全体の分は、累積ベースですけれども、従前から上げさせていただいていることは先ほど申し上げたとおり。都道府県については、昨日から都道府県のものを上げさせていただいているところであります。

山井委員 これで終わらせていただきます。

盛山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 労働基準法改正案に反対の討論を行います。

 本法案では、本則において、賃金請求権の消滅時効期間を改正民法に合わせて五年に延長することとしています。これは、民法改正時から我が党が求めてきたことであり、当然の措置です。

 最大の問題は、当分の間三年という経過措置を附則に盛り込んでいることです。施行五年経過後に検討するという検討規定にも、五年後の見直しで本則の五年を実現する担保は全くありません。いつまで続くのかわからない当分の間、賃金請求権が四月施行の改正民法の五年を下回る三年で消滅します。労働者保護の法体系である労基法の趣旨に反するものであり、認められません。

 賃金は労働者の生活の糧であり、賃金請求権は労働者の生存に不可欠な権利です。だからこそ、労基法第二十四条は賃金全額払いの原則を定め、賃金不払いに刑事罰を科しています。

 賃金不払いは悪質な犯罪であるにもかかわらず、二年の壁により、長年にわたって使用者の悪事やり得が横行してきました。この実態を是正するためにも、直ちに五年の規定を適用すべきです。

 なお、災害補償請求権の消滅時効期間は現行の二年に据え置かれています。うつ病など精神疾患による労働災害で休職した場合、労働者がすぐに災害補償請求をすることは困難で、二年の壁がここでも問題となっています。このようなケースを救済するためにも、労災保険法等とあわせて早急に見直すべきです。

 以上、指摘し、反対討論とします。

盛山委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 この際、本案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党及び日本維新の会・無所属の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 賃金請求権は労働者の重要な債権であることに鑑み、施行後五年を経過した場合においては、労働者の権利保護の必要性を踏まえつつ、未払賃金をめぐる紛争防止など賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等を検証した上で、賃金請求権の消滅時効期間を原則の五年とすることを含め検討し、その結果を踏まえて適切な措置を講ずること。その環境整備のため、施行後五年の経過を待たずに賃金台帳等の記録の保存期間の延長が可能となるよう、中小企業等における記録の電子データ化を支援し、記録の保存等にかかる負担の軽減を図ること。

 二 労働基準監督署においては、賃金の未払いを発生させないよう、事業所に対する指導・監督を徹底するとともに、賃金未払事案に対しては是正指導を厳正に行うこと。

 三 災害補償請求権の消滅時効期間については、労働者の災害補償という観点から十分であるのか、施行後五年を経過した際に、労働者災害補償保険法における消滅時効期間と併せ、検討を行うこと。

 四 改正後の規定に基づく消滅時効期間が本法の施行日以後に支払期日が到来する全ての賃金請求権に適用されることについて、周知徹底すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

盛山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいります。

    ―――――――――――――

盛山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決した法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

盛山委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 少子高齢化が急速に進展する中で、高齢者、複数就業者等に対応したセーフティーネットの整備、就業機会の確保等を図り、誰もが安心して活躍できる環境の整備を進めることが重要な課題となっています。

 こうした状況を踏まえ、高齢者の就業機会の確保や、労働者災害補償保険制度及び雇用保険制度において複数就業者等が安心して働き続けられる環境の整備等を行うとともに、失業者、育児休業者等への給付等を行う基盤となる雇用保険制度について、安定的な運営を図るために財政運営の見直しを行うことを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、七十歳までの高年齢者の就業機会を確保するため、六十五歳から七十歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることを事業主の努力義務にするとともに、その実施に関し厚生労働大臣が必要な指導や助言をすることができることとしています。

 また、雇用保険制度について、六十五歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて高年齢雇用継続給付の給付率を令和七年度から引き下げるとともに、七十歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置づけることとしています。

 第二に、複数就業している者が安心して働くことができる環境を整備するため、労働者災害補償保険制度について、複数の就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定、給付の対象範囲の拡充等の見直しを行うとともに、雇用保険制度について、複数の事業主に雇用され、週二十時間以上労働する六十五歳以上の者に対して適用することとしています。

 第三に、中途採用を希望する労働者と企業とのマッチングを促進していくため、大企業に対して、中途採用比率の公表を義務づけることとしています。

 第四に、雇用保険制度の安定的な運営を行うため、育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置づけるとともに、育児休業給付の保険料率を設定し、育児休業給付資金の創設等を行うこととしています。

 その上で、令和二年度及び令和三年度について、暫定的に、雇用保険の保険料率の引下げを行うとともに、失業等給付等に係る国庫負担について国庫が負担することとされている額の百分の十とすることとしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和二年四月一日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただきますことをお願い申し上げます。

盛山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十七日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会


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