衆議院

メインへスキップ



第4号 令和2年11月17日(火曜日)

会議録本文へ
令和二年十一月十七日(火曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 とかしきなおみ君

   理事 大岡 敏孝君 理事 門  博文君

   理事 菅原 一秀君 理事 長尾  敬君

   理事 橋本  岳君 理事 中島 克仁君

   理事 長妻  昭君 理事 伊佐 進一君

      青山 周平君    安藤 高夫君

      上杉謙太郎君    上野 宏史君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      木村 次郎君    木村 哲也君

      木村 弥生君    小島 敏文君

      後藤田正純君    高村 正大君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      田畑 裕明君    百武 公親君

      村井 英樹君    山田 美樹君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      稲富 修二君    尾辻かな子君

      大島  敦君    川内 博史君

      白石 洋一君    西村智奈美君

      長谷川嘉一君    山川百合子君

      山井 和則君    高木美智代君

      桝屋 敬悟君    宮本  徹君

      青山 雅幸君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    大隈 和英君

   参考人

   (川崎市健康安全研究所所長)           岡部 信彦君

   参考人

   (大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)           宮坂 昌之君

   参考人

   (公益社団法人日本医師会常任理事)        釜萢  敏君

   参考人

   (薬害オンブズパースン会議事務局長)

   (弁護士)        水口真寿美君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十七日

 辞任         補欠選任

  国光あやの君     上杉謙太郎君

  山川百合子君     長谷川嘉一君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     国光あやの君

  長谷川嘉一君     山川百合子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

とかしき委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、川崎市健康安全研究所所長岡部信彦君、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授宮坂昌之君、公益社団法人日本医師会常任理事釜萢敏君、薬害オンブズパースン会議事務局長・弁護士水口真寿美さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ二十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 それでは、岡部参考人にお願いいたします。

岡部参考人 おはようございます。川崎市健康安全研究所の岡部と申します。

 私は、もともと小児科医なんですけれども、そこで予防接種を経験していますけれども、その後、WHOでやはり予防接種の担当をしていたり、前任が国立感染症研究所の感染症情報センターにおりましたので、そのときに各種の対策の矢面に立っていたというようなことがございます。

 きょうは、予防接種法改正で、もちろん新型コロナに関連することだと思うんですけれども、それについて、私のふだん思っているようなこともあわせて述べさせていただければと思います。

 お手元に資料がございます。

 一番最初の一枚目の下の方は、これは一八〇〇年代ですけれども、蝦夷、北海道で初めて天然痘のワクチン、種痘を始めたときですけれども、まさに緊急時のワクチン、それから、急遽海外から入ってきたというようなことだと思うんですけれども、まさに集団接種でアイヌの方々を集めてやっているというのがあります。

 この絵でおもしろいのは、絵の後ろの方に、上の方になりますけれども、お土産をいっぱい置いてあるんですね。やはりそういうことをやるときのインセンティブがあったということではないかと思います。

 ページを開いていただきますと、右下にページが書いてありますけれども、スライドで四となっていますけれども、上の方が、スマトラ島沖の地震のときに、これは自衛隊が医療援助で行っているわけですけれども、そのときに、はしかのワクチンの集団接種をやっております。これも緊急接種であります。

 右側は、つい最近、二〇一七年ですけれども、ロヒンギャキャンプでジフテリアという病気が発生したことがあります。日本ではずっとゼロが続いていますけれども、やはり、こういったような病気が発生したときにワクチンを使って一斉に投与をするということがございます。これは、日本人がこの中には写っていませんけれども、日赤のチームがこれにはかなり応援しているということがあります。

 下のスライドですけれども、そうすると、平常時、私たちは、例えば日本ですと定期接種というような形でワクチンを使うわけですけれども、これは、日本では感染症が蔓延しているという状態ではないんですけれども、しかし、その状態を維持する、あるいは場合によっては強化するということでワクチンが必要になり、大きくは、例えばポリオの根絶であるとか、はしかの排除、風疹の排除、そういったようなものに平常時のワクチンとして使います。

 一方、ワクチンは、先ほどちょっと例にお示ししましたように、危機管理としてワクチンを使うことがございます。これは、既に手持ちのワクチンであれば、例えば誰かがどこか危険な地域を含めて渡航をするとき、オリンピックも一つのマスギャザリングですけれども、人が多数集まるようなイベントのとき、それから、上のはしかであるとかジフテリアのように、わかっている疾患だけれども、それがアウトブレーク、集団で大きい発生を起こしたとき、こんなようなときが危機管理のワクチンとして、しかし、これを本当はストックをしておかなくちゃいけないわけです。

 それから、今回の新型コロナもそうですけれども、未知あるいは新規感染の場合にも、感染症がアウトブレークを起こしたとき、そのようなときもワクチンは求められますが、これまでも、二〇〇三年のSARSであるとか、あるいは二〇一二年から現在に至るまで病気が出ているMERS、エボラ出血熱、ブラジルのオリンピックの前に発生したジカ熱、こういったようなものもやはりワクチンは求められるわけですけれども、残念ながらこれは実用化に至っていないということがございます。

 パンデミック、新型インフルエンザが発生するのはいつか。これは二〇〇九年に発生したわけですけれども、それについては我が国も随分準備を行っていますが、しかし、これはいつ起こるかわからないということでその準備が進められております。

 そのような中で発生した新しい疾患がCOVID―19、新型コロナになるわけで、通常、ワクチンの開発は少なくとも五年、十年かかる、つまり、ウイルスあるいは細菌が見つかってから、それを大量にふやさないとワクチンのもとができないんですけれども、今回は一年足らずで治験という段階まで来ているというのは、これはすばらしい科学の進歩ではないかというふうに思います。

 左の方に行きまして、五、六と右側に番号を振ってありますけれども、その未知・新規感染症がアウトブレークが起こったときは、いずれもそのワクチンというものに期待があるわけですけれども、それが既知の手法でできるものであればかなり様子がわかるわけですけれども、新たな手法で製造すると、今回はまさに新たな手法になるわけですけれども、そうすると、動物を使った非臨床試験、あるいは人の臨床試験、小規模から中規模、大規模まで、これをどうやってやっていいか、あるいは、それこそ製造、販売のための認可、その方法、これが、新しいワクチンですとそこが追いついていないというか、新しいものですから、そこら辺の議論が十分に行われていないことがあります。

 それから、我が国でありますと、予防接種は、予防接種法という法律に基づいてやっているものと、それから、定期接種としては入っていないけれども、やはり認可としてはきちんとしたプロセスを経ているんですけれども、そのワクチンを実際に人々に接種しようとするときは、どういう根拠でやるか、これが定期接種なのか、任意接種なのか、あるいは臨時接種なのか、特措法によるものなのか、新たな枠組みが必要なのか、私は今自治体の方にいるんですけれども、やはりそこら辺を早く決めていただかないと、実施主体は往々にして、国が決定しますけれども、実施をするのは自治体になりますので、また、実際にそれを患者さん、その人たちを目の前にして接種するのはやはり医師会の先生であるとかあるいは医療機関になるので、基本的な方針を早く決めていただかないと、やるにしてもやらないにしても、あるいはどういう工夫をしたらいいのかというのがわからないので、これは要望をしていたところであります。

 また、そのために、今回の予防接種法改正がワクチンそのものが目の前にある前に行われているわけですけれども、そういう意味では、自治体側あるいは実際に接種する、後で釜萢先生がお話しになると思いますけれども、極めて重要になります。

 というのは、実際に搬送するのはどうしたらいいのか。今回、超低温冷凍庫が要るというようなことも新たにわかってきているわけですけれども、その問題。あるいは、対象をどなたにしたらいいのか。これは、世界じゅうで誰を対象にしたらいいかというのは議論をしているわけですけれども、いつ、どのようにやるか。それから、通常の定期接種は個別接種というふうに、以前、ここにおられる方は多分インフルエンザの接種は学校でみんな一斉にやった方が多いと思うんですけれども、そういうようなやり方をとるのか、それぞれの方がかかりつけの先生ないし地域の先生に来てやっていただくのか、こういったような工夫も要ります。

 ここに集団的接種と書いてあるのはわざわざ入れてあるんですけれども、以前のインフルエンザに見られるような一斉に人を集めて片っ端からばっとやっていくというような集団接種ではなくて、今行われようとしているような集団接種は、やはりきちんと話を聞いて予診をして説明をして、更に何かあったときの対応をするというような形をとる必要があるので、パンデミックインフルエンザワクチンのときから集団的接種という言い方をしております。

 もちろん有効性を確認するのは重要でありますけれども、更に必要なのは安全性に関するチェックを行っていくということ。それから、残念ながらワクチンは一〇〇・〇%安全というわけにはいきません、いろいろな潜り込み等々がありますので、そういったような方が生じたときの対応もやらなくてはいけない。

 これらは全て法律に基づいてやることになるので、ぜひ、こういうものに対する改正といいますか、実情に合う形をやっていただきたいというのがこれまでのお願いでした。

 ただ、下の方に行きますけれども、あらわれてまだ一年足らずの病気です。いろいろな病気は、やはり、免疫状態、どうやってその病気が動くかというようなことがわかって初めてワクチンを使って、ワクチンというのは免疫機構をいじるわけですから、そのためにはある程度免疫状態が解明されていないといけないわけですけれども、これはどんなに急いでも一年では経過がよくわからないというので、免疫機構がわからないまま使用するというところも基本に考えておく必要があります。

 したがって、効果ももちろんですけれども、安全性を確認する、あるいはモニターしながらやっていくということと、ただ、それは、許容できる範囲の例えばちょっと痛いとかちょっとだけ熱が出るというのは、やはりちょっと我慢していただければ本物の病気が防げるというような、そのバランスをちゃんと考えなくちゃいけないということがあります。

 それから、日本の予防接種は、定期接種にしろ、任意接種はもちろんですけれども、個人の意思を尊重するということが前面に出ております。やはり、海外からそんなことで公衆衛生が求められるのかというのが予防接種法改正の以前のときに議論がありましたけれども、これは非常に成熟した社会では私は重要なことだというふうに思っています。

 ただ、できるだけいいものはやはりお勧めしなくちゃいけないので、それが勧奨という言葉にもなっていますけれども、過剰な勧奨にならないようにということもこの予防接種法の改正については重要ではないかというふうに思います。

 それから、万が一、有害事象、有害事象というのは必ずしもそのワクチンによるものだけではなくて、紛れ込みと言われるようなものも含まれるわけですけれども、しかし、それが起きたときには、やはりどなたかが説明をして、なおかつ、場合によってはそれに対する健康被害の救済とかいうことにもなるので、そこをどこがやるかというのは、いわば、ここに司令塔と書いてありますけれども、予防接種を担当するところはいろいろなところにあるので、そういうところがどこが中心になってこれをやるのかということはぜひ明確にしておいていただきたいというふうに思うわけです。

 ページを繰っていただきまして、下に七、八というふうに書いてあるのは、それで、今回は一連のどういう位置づけでやるのかというのが、臨時接種に近い形といいますか、それを少し変更した形というふうになりますけれども、明確にされているのは、これは、費用がかからないように、自治体の方ではなくて国の負担でやる、しかし実施主体は都道府県、自治体になるわけですから、こういう情報がやはり早く入ってこないと、自治体の方は、自治体は自治体なりに予算も組まなくてはいけないですし、一線の先生方との相談もありますので、これはやはりぜひ早く決めていただきたいというのがございます。

 下の八と書いてある方の図ですけれども、今回のワクチンについては、従来の方法で使われていたワクチンではなく、極めて新しい、これはまさに科学の勝利と言っていいぐらい急速には進んでいるんですけれども、この三、四に書いてあるようなDNAワクチンとかmRNA、メッセンジャーRNAワクチンであるとか、遺伝子をつくったようなワクチンが既に研究がされているので、これらを新しく導入するということに急速に動いているのが現状であります。

 左側の方の上下の方にありますが、パンデミックインフルエンザ、新型インフルエンザが世界じゅうに流行したようなとき我が国ではどうしたらいいか。

 これは、枠組みとしては、私もこれの委員長をやっていましたけれども、長く議論をして、特定接種というような形で、医療機関を始めとするライフラインを保つような人、あるいは患者さんの治療に携わるような人を優先的にやって、そうこうしているうちに新しい病気のウイルスがとれればそれで新しいワクチンをつくるので、備蓄をしておいたワクチンから新しいワクチンに使えるというような枠組みは、これはパンデミックの場合にはできております。

 下の方は、このパンデミックのときの応用でもありますけれども、今回は、例えば一億二千万人分が一、二の三でぼんと入ってくるわけではないので、それを入っていくためには、どういう順番で誰が優先かというようなことは、これはあらかじめ議論をしておく必要があります。

 ただ、いずれも、自分が大切だ、あるいは私の職業は貴重な職業だというような議論が必ず起こるんですけれども、一定の制限があるものを使う以上は、やはり優先順位というのは決めざるを得ない。そのことを多くの方々に納得していただかないとスタートしないと思います。

 ページを繰っていただきますと、次に、上と下に分かれていまして、上は、パンデミックの新型インフルエンザの場合は、既に住民接種をどうするかというようなことは国の方も手引を出して、下の方は、その手引のもとは私が班長をやっていた研究班で既にでき上がっているんですけれども、そういったようなものの応用は多分可能だろうというふうに思います。

 左側の方に行きますと、その中にいろいろな実施要領もできているんですけれども、第二、基本的な考え方、それから、対象者をどうしたらいいか、接種体制の構築。ですから、各自治体は一応この体制は持ってはおりますけれども、しかし、全く同じように今回のCOVIDに利用できるかというと、例えば、赤字で書いてありますけれども、ワクチンの流通、特に冷凍庫というようなものをどういうふうに配備しなくてはいけないか、これも、もし導入するのであれば早くから準備をしておく必要があろうかと思います。

 下は、二〇〇〇年前後だったと思いますけれども、石川県ではしかが大流行したときの大学生に対する集団接種。集団接種の会場というものはこういうものなんですけれども、以前は、皆さん方は経験もされているように、学校でずらっと並んでやるというのがあったんですけれども、今は行政側も医師側も、あるいはほとんどの人がこの集団接種になれていないので、慌てて集団接種をやると、異なった人で集まってチームをつくるので、非常に混乱が多いということが危惧されるわけです。

 それで、次のページを繰っていただきますと、例えば川崎市、私の市の場合ですけれども、接種体制を一応こんなことを考えております。これはパンデミックインフルエンザの場合ですけれども、応用として考えるんですが、一部については個別接種、一人一人の患者さん、接種される方にやる。あるいは、場所によっては、例えば小学校は小学校の体育館でやった方がいいというほかに、地域の先生方の御協力をいただいて、そこで自分の患者さんだけではなくて周辺の方々を一斉に診ていただくハイブリッド型のような集団接種といったようなことも計画をしております。ただし、これも、流通であるとか、あるいはどういうワクチンを使うかによっても違ってきますので、ここら辺の応用問題を今検討しているところであります。

 ワクチンの発生がありますと、必ずその副反応、副作用という言葉の方がおわかりしやすいと思いますけれども、我々は副反応という言葉を使いますが、副反応は、明らかにワクチンが悪い場合。しかし、そのほかに何だかよくわからないけれども一斉に起きるようなものがあるので、有害事象というような言葉を使います。

 それで、ページをあけていただきますと、ワクチン接種後の有害事象というのは、ワクチンの成分による反応の場合、品質が悪い場合、接種の手技が悪い場合、そのほかに、不安ということによる生体の反応が強く起きることがあります。

 例えば、ワクチンを集団で接種すると、どなたか何人かはひっくり返っちゃうということがあるので、下は川崎市における訓練風景ですけれども、右の下にありますように、この訓練の中でも、どなたかがぐあいが悪くなったときは救急の用意をしておくといったようなことも訓練の中に入れてあります。こういうものの準備に取りかからなくちゃいけないというのが、これはワクチンが目の前にあるなしのほかに、やっておかなくちゃいけないことであると思います。

 こういうようなものについて、ページを繰っていただきますと、細かい話は省略しますが、WHOでは、この右の上にあるようなワクチンにかかわるような不安、痛みに対してどういう備えをしたらいいのか、それについては全ての医療従事者、関係者がこういう状態があるということを知って、なおかつ丁寧な接種、それから丁寧な説明、そして丁寧な科学的根拠に基づくワクチンが必要であるというようなマニュアルを出しております。私はWHOの委員としてこのドラフティングにも関与をしております。

 次、お願いします。次のページ、最後のページになりますけれども、したがって、予防接種のリスクは必ず、ぽちっとですけれどもあるわけですけれども、そのときのリスクに対して、個々の人への対応のリスクをきちんとする。それから、もし個々の人だけに向き過ぎてしまうと全体を見失ってしまうことがあるので、全体の対応もやらなくちゃいけない。このバランスが非常に重要であります。

 最後は、私が少し強調したい点なんですけれども、今回のワクチンは、ただいま治験、そのようなデータがちらちらと漏れ聞こえてはおりますけれども、悪い方のシナリオで、もし今回のワクチンが利用できないというふうになったとしても、このワクチンの研究開発というのは必ず次の何かしらの病気の発生について備えとして重要になると思います。

 それから、二番目は、仮に今回のワクチンが利用できないというふうになっても、現在二百種類ぐらいの候補のワクチンがあるので、この新型コロナウイルスのワクチンが悪いんだという評価にならないように、そこは冷静な判断が必要になります。

 それから、もし今回のワクチンが使えないというようなことになったとしても、ワクチン全体の信頼が落ちないというようなことを、ぜひこの予防接種法の改正ということを機会に念頭に置いていただければと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

とかしき委員長 ありがとうございました。

 次に、宮坂参考人にお願いいたします。

宮坂参考人 大阪大学の宮坂です。

 本日は、ワクチンの有効率、副反応、開発で注意すべき点などについてお話しさせていただきます。

 まず、最近、テレビ、新聞のニュースで、どこどこの会社のワクチンの有効率が九〇%だった、あるいは、きょうなんかでも、モデルナ社が九四%だったというニュースを聞きますと、ほとんどの方が、百人にワクチンを打つと九十人あるいは九十四人に効いたんだというふうに理解される方が多いと思います。私もワクチンのことを本当に勉強する前は、もしかするとそうかもしれないなと思っていたんですけれども、自分でよく調べてみると、そんなことはありません。

 そういうことを含めて、きょうはワクチンに関する誤解について説明させていただきたいと思います。

 まず、一ページ目の下のスライドですけれども、ファイザー社のワクチンの有効率が九〇%であるということが大きく報道されました。そうしますと、今もお話ししましたように、ほとんどの方は、百人にワクチンを接種したら九十人に効果があったと理解されるんですけれども、実際はそうではありません。

 これはどういうことかというと、ワクチンを打たなかった人、非接種者、その発病率を一としたときに、接種をするとその発病率が何%に、どのくらいの割合に下がるか。これが〇・一に下がると、一マイナス〇・一イコール〇・九、すなわち九割の人に有効性が認められたということになります。

 ですから、この対象というのは、ワクチンを打った人を一〇〇とするのではなくて、ワクチンを打たなかった人を一〇〇として考える。その発病率を一〇〇としたときに、発病率がもしも一〇%に下がれば、一〇〇から一〇を引いた九〇%、それが有効率であるということになります。

 そのことを示しましたのが次のページの上のスライドです。

 これは、ワクチンを打たない群、ワクチンを打った群、これは通常は同じ数でやりますので同じバーの長さとなります。そのときに、ワクチンを打たなかった人の発病率を一と仮定しますと、ワクチンを打ったときにこの一がどの程度に変わるか。今回のファイザー社の場合には、後でお話ししますけれども、実はこのパーセンテージを言うということはかなり問題のあることなんですけれども、これが〇・一に減った、したがってワクチンの有効率は九割だったということを言っているわけです。

 文章で書きますと、非接種者、ワクチンを打たなかった人と比較して、ワクチンを打った人の発病率あるいはリスクが相対的に九〇%減少した、これが現在の状況です。これを言いかえますと、打たなかった人、非接種で発病した人の九割はワクチン接種をしていたら発病しなかったとも言いかえることができます。このようなときにワクチンの有効率を九割、九〇%といいます。逆の言い方をしますと、相対的リスク、感染するリスクというのは〇・一、一〇%だということになります。

 下のスライドに移ります。

 今回の場合にはワクチンが九〇%の有効率を示したということが言われていて、現在公表されているのは、ファイザー社の例の場合には臨床試験対象が四万三千五百三十八人であった。ということは、恐らく、ワクチン群とプラセボ群半々ですから、その半分の数がそれぞれの群の被験者の数ということになります。

 そして、新型コロナの感染者が全体で九十四人いたということがわかっています。しかし、ここにもしも有効率が九割だったという数字を入れますと、唯一出てくる可能性は、この図に書いてありますように、プラセボ群二万一千七百六十九人、ワクチン群も二万一千七百六十九人、簡単に仮定するとこういうことになります。その中で、ワクチンを打たなかったいわゆるプラセボ接種群には八十六人の感染者がいた、ワクチン接種群には八人の感染者がいた。こうすると、コロナの感染率が九割減ったという計算になるわけです。

 したがって、本来はこの数というのは公表できない数なんですけれども、全体の被験者数、そして感染者数、有効率の答えを言えば、自動的にこれが出てきてしまう。すなわち、第三相試験の中身を公表したのと同じことになっているんですね。

 ここに書いてありますように、ワクチンの有効率の計算方法というのがありますけれども、それは、接種者の罹患率と非接種者の罹患率がわからないと出せない。でも、今お話ししたように、実際は、非接種者も、接種者中の罹患率が自動的に計算できてしまうわけですから、実は中身を全部出したのと一緒だということになるわけです。

 ここに書いてありますように、本来は、ワクチンの有効率を算出するためには、接種者罹患率、非接種者罹患率を知る必要があります。ところが、第三相試験の場合には、通常は二重盲検法、すなわち、お医者さんも誰に何を上げているか知らない、受ける方も何を受けているかはわからないという状況の二重盲検でやるわけですけれども、この場合に、どちらかの群に感染者が起きたとしても、それはどちらの群で感染が起きているかはわからないわけです。でも、それは唯一、わかろうとすれば、いわゆる割りつけ情報、誰がどのグループにいるのかという割りつけ情報を情報公開する、これをキーオープンといいますけれども、キーオープンしない限り、どちらのグループに何人感染者がいたかというのはわからないはずなんです。しかし、キーオープンしますと、盲検性が失われますので、第三相試験としてはデータは使えなくなります。

 そういうことから、恐らくファイザー社としてはこういうデータの出し方をして、しかし、これはグレーゾーンといいますか、なかなか、出し方としては厳しい、私はよくない方法であろうというふうに考えています。

 ですから、恐らく、このことから考えますと、このワクチンはかなり効くんだとは思います。しかし、問題は、後でお話しするように、安全性であります。

 次に、これは岡部先生がもう既におっしゃいましたけれども、ワクチンの副反応と有害事象ということがありまして、これはもう皆さんよく御存じのことでありますけれども、有害事象というのは、ワクチンそのものに原因があるかどうかはわからないけれども、ワクチン接種後に起こった好ましくない現象の全てのことをいいます。

 その内側に、副反応。すなわち、これはワクチンそのものによって起こった反応、特に、局所の痛み、発熱、腫れ、全身の発熱、これは、実は免疫反応のために起こるものですから、副作用とは言わずに副反応という言葉を使います。免疫のためにやむを得ず起こった反応であるということであります。

 ただし、その中には、脳炎、神経麻痺、アナフィラキシーショックのような、しばしば不可逆的な、取り返しのつかないような重大な事故が起こることがあります。

 その下に重篤な副反応の例というのを、どのくらいの頻度で起こるのかということを挙げてあります。

 まず、アナフィラキシーショックというのは、急激に全身的に起こるアレルギー反応の一種であります。皮膚や粘膜のかゆみ、息苦しさ、吐き気、立ちくらみが起こって、だんだん血圧が下がって意識障害が起こって、ひどくなるとショックになって亡くなるというのがアナフィラキシーショックです。

 実は、この頻度というのはもう既にわかっていまして、これまで使われているワクチンは、アメリカでも日本でも共通で、大体百万回に一回以下の頻度でこのアナフィラキシーショックが起こる。極めてまれなことですけれども、重篤なことなので非常に大きく喧伝されます。

 ただし、このアナフィラキシーショックは学校では食べ物によってしばしば起こるということが既にわかっておりまして、例えば、小学生、中学生、高校生いずれを見ましても千人に数人ほど、例えばピーナツを食べた、特定の物を食べたときにショックを起こして倒れる。このアナフィラキシーショックの経験者というのは千人に数人いるんですね。ということは、ワクチンの方がずっとアナフィラキシーショックに関してはリスクが低いということになります。

 次に怖い脳炎、脳症。脳症というのは脳の病気全体、脳炎というのは明らかに炎症を起こしている状態を脳炎といいます。これを一くくりにして説明しますと、はしかのワクチンを打ちますと、百万回に十回程度、脳症が見られることがある。これは怖いなと思います。しかし、はしかそのもの、自然感染によっても脳炎というのは起こりまして、その頻度はワクチンを打つ十倍、百万回に百回も起こる。こういうことから、ワクチンを打った方がはしかの場合には安全ですよということになるわけです。

 インフルエンザワクチンに関しましては、脳炎の起こる確率は百万回に〇・一五程度、ギラン・バレー症候群、こういう麻痺が来る、これも百万回に一回程度という非常に低い頻度であります。

 それから、非常に恐れられていた乳幼児の突然死症候群、SIDSと呼ばれるものですけれども、日本でもアメリカでも報告されましたが、アメリカに関しましては、二〇一九年現在で、ワクチン接種とSIDSの間には因果関係はないということが示されています。しかし、日本に関してはまだこの答えが出ておりません。

 以上をまとめますと、ワクチン接種による重篤な副反応というのは百万回に一回から十回の間であるということであります。

 じゃ、ほかのリスクというのは高いのか低いのか。我々が飛行機に乗って死亡事故に遭う確率というのは百万回に九回程度なんですよ。ワクチンより高いか、どっこいぐらいですね。あるいは、交通事故。免許証保有者百万人に対して死亡事故を起こす人が八十二人ですから、これはワクチンのリスクよりもずっと高いです。しかし、我々は、それでも自動車に乗らないとは言いません。飛行機に乗らないとは言いません。必要な場合にはやむを得ないということになるわけです。ですから、現在使われているワクチンに関しては、ゼロリスクでないことは確かでありますけれども、そのリスクは非常に低いというふうに言ってよろしいかと思います。

 次のページに移ります。

 こういうワクチンのリスクがどれだけあるのかということを調べるのが臨床試験で、通常は参加者が二十歳以上六十五歳以下でやります。ここに書いてありますように、第一相、第二相、第三相。通常、第一相で百人以下、第二相で数百人、第三相で数千人、こういう数の人たちにワクチンの安全性と有効性を調べるわけですけれども、この場合には厳格なグッド・クリニカル・プラクティス、GCPに従って行われるわけです。しかし、通常、数千人やっても答えが出ない場合、その場合には、その下に書いてある第四相、これは製造販売後に試験を行うということも現在行われています。

 ただし、臨床試験のポイントは、第三相試験でも数千人、あるいはアメリカで現在数万人までやりつつありますけれども、それでもワクチンの副作用が言えるのかどうなのかということが問題になります。

 といいますのは、その下にありますように、現在の感染者の頻度を考えますと、東京の直近一週間の人口十万人当たりの感染者の数は二十人程度であります。ということは、もしも検査が不足していて我々が九割見落としていたとしても、人口十万人当たりの患者数は二百人程度。ということは、患者の頻度は千人に二人ぐらいということになります。もし人にうつす確率をここに掛けますと、それの一割から二割ですから、実際我々が感染者に出会う確率というのは非常に実は低いんだということがおわかりになるかと思います。

 日本でもしも臨床第三相試験を総勢一万人でやったとします。そうすると、プラセボ群、ワクチン群に五千人ずつということになります。ただし、上の頻度で感染者が出たとしますと、プラセボ群でも十人程度しか感染者が出ませんので、ワクチン接種群と比較するには余りにも小さな数字である。ということは、もっともっと大規模な調査をしないとわからない、あるいは、日本では第三相試験を成立させるのは難しいんだということになります。時間もかかります。

 たとえ十万人の第三相試験をやったとしましても、その下に書いてあるように、ワクチンで見られる重篤な副反応の頻度は百万回に数回程度ですから、十万人の試験でもわからないんですね、本当の頻度は。

 あるいは、HPVワクチン、子宮頸がんワクチン、先ほど岡部先生がおっしゃいましたけれども、この場合には、有害事象、直接原因かわからないけれども、ともかく起こった健康被害の頻度というのは、百万回に百回以下。百万回に百とすると、一万回に一回ですね。一方、今も申しましたように、我々が感染する確率というのは、それとどっこい、余り変わらないぐらいのことになってしまうんですね。そうすると、若い人に本当にワクチンを強制的に接種すべきかということが問題になります。

 この問題を解決するために、実は、この右側のページに移りますけれども、PMDAは条件付早期承認制度というものを持っていまして、四つの条件を満たせば日本で第三相試験を飛ばせる可能性があるということになっています。

 一番目は、適応疾患が重篤である。これはなかなかこの病気の場合には解釈が難しいですね。重篤になる方もいらっしゃいます。

 二番目、医療上の有用性が高い。これはそうだと思います。

 三番目、検証的臨床試験の実施が困難。この場合の検証的臨床試験というのは第三相試験を指していると思っていただいて結構です。第三相試験の実施が困難、又は実施可能でも相当の時間がかかる。ここに星印をつけて赤字で書いていますけれども、コロナの発生率は千人に数人なので、実際は、第三相試験を成立させるのは、例えば日本のような感染者の少ない国では難しいということになります。

 四番目、第三相試験以外の臨床試験などにより一定の有効性、安全性が示される。ファイザー社の場合には現在百六十人のボランティアに日本でも打っているそうですので、恐らくそういうデータをつけて出してこられる。でも、百六十人では、今お話しして、おわかりいただけますけれども、感染者は出ないと思います。ですから、安全性、予防効果の判定はともかくできないのではないかと思います。

 こういうことを考えますと、海外の第三相試験だけにのっとって日本がこのワクチンを打つというのはなかなか難しいことだということがわかります。

 特に、ワクチンというのは健常人に打つものであるということ。そして、ワクチンの副反応は極めて重篤。脳炎、神経症状は。その頻度は非常に低いので、千人、数千人、数万人、十万人程度の試験ではその効果は見えないということ、リスクは見えないということ。

 ワクチンの場合には、私は、ウサギと亀の競争みたいなもので、亀でもいいですから、日本のワクチンは今おくれていますけれども、しかし、安全な予防効果の高いものをつくれば、後からでもこれが使われるようになるわけです。ですから、最初にできたものが本当にいいとは限らないということであります。

 その点をもう一度強調するために下のスライドをつくっていますけれども、臨床試験というのは、ここに書いてありますように、基礎研究から始まって、臨床試験、第一相、第二相、第三相を経て承認申請に行くんですけれども、通常は十年以上かかる。これを、岡部先生もおっしゃったように、今、一年でやろうとしている。それぞれの試験の中で明らかにしなければいけないこと、実際に抗体ができるか、感染予防ができるか、病気を悪くしないか、副反応ができるか、これを動物で調べるとともに、人でも調べる、これが臨床試験です。

 今回の場合には、第三相試験を海外のデータに依存しようとしていますけれども、この一番右に書いてあるように、第三相試験というのは、最終的な安全試験であり、予防試験の確認であります。

 過去に日本は、海外のデータのみにのっとって第三相試験を飛ばしてお薬を認可して、痛い目に遭ったことがあります。それが抗リウマチ薬のアラバというものでありますけれども、海外のデータを信用して認可したところ、五千人超使ったところで二十五人の方が間質性肺炎で亡くなった。何でそうなったのかと思って海外のデータを見ると、海外ではほぼ死んでいない。わかったことは、使用量が日本人は海外と同じ量を使うとこういうことが起こる、もっとずっと低い量でないといけないということが後からわかってきた。ということから、ワクチンの使用というのはリスクがあるということであります。

 下に書いてありますように、ワクチンが前臨床から第一相、第二相、第三相を超えて認可に至るのは五%以下。そして、最も早くできたワクチンでもこれまで四年かかっています。ということから、自国の第三相試験を飛ばして条件付早期承認をするのがよいのかどうなのかというのは考えなければいけないと思います。

 私の結論は、新型コロナワクチン、今回のものは有効性はかなり高い、それは間違いないと思います。ただし、安全性に関してはまだ全く担保されていない。その中では、やはり私は、新型コロナに対するワクチンは、もしも使うとすれば極めて慎重に使わなければいけないであろう。

 その具体的なことを言いますと、恐らく、希望者から接種する、ここが大事なポイントではないかと思います。努力義務ということをしますと、リスクがわからないものを努力義務を与えることになるわけですから、ここはなかなか倫理的にも問題が出てくる可能性があります。

 もしも打つとすれば、それはやはりリスクの多い集団から。例えば高齢者、持病持ち。実際、昨日イギリス政府が、このワクチンを国民に打つ仮の優先順位というのが出ましたけれども、一位は八十歳、二位、七十歳、三位、六十歳、四位、五十歳。若い人は一番下です。医療従事者はその中に入っていません。

 私は、医療従事者から優先接種するのは、このワクチンに関しては極めて疑問であろうというふうに考えています。なぜかといいますと、万が一医療従事者から先に倒れることがあったらば、何をしているかわからない。ワクチンは健康な人に投与するものであるということであります。

 岡部先生がおっしゃいましたけれども、大事なのは何よりも安全を確認することであり、そして個人の意思が尊重されるべきであるというふうに考えます。

 私の発表は以上であります。(拍手)

とかしき委員長 ありがとうございました。

 次に、釜萢参考人にお願いいたします。

釜萢参考人 日本医師会常任理事の釜萢と申します。

 日本医師会で感染症危機管理、それから予防接種の担当をしております。小児科医であります。

 きょう、このような機会にぜひ先生方に申し上げたいことは、私からは、実際に新型コロナのワクチンを接種することになった場合に、医療現場ではどういう準備をしなければならないか、そして現時点において課題はどういうところにあるのかということを中心に申し上げたいと思います。

 まず、国の方針として、新型コロナ感染症に対するワクチンを、来年の六月までに全国民分のワクチンを準備する、調達するという方針を打ち出されたことは大変心強く存じます。

 それで、一方、もう既にお話がありましたけれども、今回の新型コロナウイルス感染症というのは、これまで経験したことのないものでありまして全世界に広がっておるわけですから、日本の国民にだけワクチンが供給されればよいというものではなく、幅広く世界の多くの方々にワクチンが供給されるように、日本がその役割を担うという方針も出しておられるということはとても大事なことだろうというふうに思います。

 また、ワクチンの開発を特に国内でしっかり行う体制をとるために、いろいろな補助を行って、すぐれたワクチンが国内でつくれるようにするための対策を講じておられるということも非常に重要だろうというふうに感じます。

 その中で、もう既にお二人の先生からいろいろお話が出ましたが、仮にこのCOVID―19に対するワクチンが供給されるようになった場合に、国民の皆さんがそのワクチンの接種を希望されるかどうかというところをぜひ考えなければならない。

 このためには、ワクチンに対する信頼と、安全性もそうですし、効果が期待できる。この効果という点については、症状が発症しないような発症予防というのと、それから重症化を防ぐという要素が非常に大事であります。感染を防ぐというところができるかどうかについては、これはちょっと検討に時間もかかりますけれども、まずは発症予防効果、そして重症化の予防にどれだけ効果があるのかということが非常に大事であります。

 現時点では、断片的な情報は伝えられていますけれども、まだまだわからないことがたくさんあるので、それらの情報が、実際に接種を開始されるまでにはなるべく幅広く国民に情報が共有されて、その中で接種を、それぞれの方がしっかり判断をして接種をしていただくということが極めて大事だろうと思います。

 そして、既に宮坂先生からも御指摘がありましたけれども、今後この新型コロナのワクチンは薬事承認という手続を必要とします。この薬事承認に当たっては、やはりこれまで積み上げてきたしっかりした基準あるいは手順、そういうものをしっかり踏んで、今回のワクチンについて国民の皆さんが納得していただけるような手続が必要です。もちろん早く手に入れたいというお気持ちもよくわかりますけれども、しっかりした手続を経て、納得してワクチンが供給できるようにするということが極めて大事だろうと思います。

 それから、これももう既にお話が出ていますけれども、接種後の有害事象というのは必ず起こり得ることでありますので、その有害事象をいかに早く察知するのか。そして、なかなかワクチンとの因果関係がわからない段階のものもあるわけですけれども、それらの情報が速やかに公表されて、そして情報が共有されるということは大事だというふうに思います。

 この接種後のいろいろな事象を最も早く察知するのは接種に携わった医療従事者でありますので、これまでの経験から、ワクチンの接種後の重篤な反応というのは大体接種後三十分以内にいろいろ出てきます。ですから、それらの時間的な経緯をしっかり踏まえる必要があるし、それから、その後に、接種を受けられた方からのさまざまな訴えについては、医療従事者らがしっかりその情報を伺って、そして行政と速やかに情報を共有して必要な対策をとるということが極めて大事で、それは我々医療現場の役目であるというふうに感じております。

 それで、先ほど申し上げましたように、実際にこのワクチンの接種をどのように行っていくかということですが、実はまだわからないことがたくさんあって、ワクチンの提供がどのくらいの単位でというのは、一つの単位、何人分の接種、何接種分の単位で来るかというところについては、現在でも、ある程度伺っているところはありますが、通常のこれまで私どもが扱ってきたワクチンは、せいぜい一人用とか二人用の単位でワクチンが提供されるわけですけれども、はるかに大きい単位でないと提供できないものもあるやに伺っています。場合によっては千接種が一単位というようなものも予想されるということであります。それらをどういうふうに迅速な接種に結びつけていくかということの対応が、今後それぞれの地域で検討されなければならないと思います。

 平成六年に予防接種法は大きく改正が行われました。それで、平成六年の改正の背景は、予防接種に伴う副反応に関する訴訟の判決も踏まえて、どういう形で対応したらば最も国民の皆さんに納得していただけるかという検討の中で法律改正されたというふうに承知をしております。

 それで、そのときの大きな変更点は、接種を受ける方、あるいは小児の場合などは保護者の方が、予防接種に対する情報をしっかり御理解をいただいて、そして同意をして、接種を受けたいということをしっかり表明をした上で接種をしていただくということ。それから、接種を受ける方の体調について、できれば日ごろからよく、接種を受ける方の体の背景について理解している医師が、個別で、最も接種に適した時期を選んで接種をするという、個別接種を推奨するという方向が、大きく変わりました。

 岡部先生がお示しになられた、以前の集団接種のスライドがありましたけれども、以前はあのように行われていたわけですが、現状、平成六年の改正以降は大分やり方が変わりまして、しっかり、まずは集団の接種においても予診といって本日の体調などがしっかり把握できて、そして接種のラインに乗っていって、そして適切に医療従事者が接種を行うという体制になりました。

 今回のコロナの流行のある中でワクチンを接種しなければならない場合の、仮に集団で接種をした場合の留意点としては、もちろん動線をしっかり分離することは当然でありますけれども、あのような写真のように混んでいてはとてもだめでありますから、しっかり間隔がとれて、そして人と人との接触の距離が保たれた形で十分配慮しながら接種をするという体制をとらなければなりません。

 もちろん、個別接種としての、医療機関において十分な条件のもとで接種する体制が望ましいわけですけれども、先ほど申し上げましたように、大量に、例えば千接種分の供給が行われるということになると、なかなかこれは個別接種だけでの対応というのは難しいだろうというふうに感じます。

 一方、先ほど申し上げたように、平成六年の法律改正以降は、各自治体では集団接種の経験がほとんどなくなってしまいました。それ以前は、それぞれの自治体に集団予防接種に精通した職員、保健師もそうですし、あるいは事務の方々の中でも非常に精通した方々がそれぞれおられたのですけれども、現状ではもう集団接種の経験が全然なくなってしまったので、そういう経験を踏まえた方はほとんどおられなくなってしまいました。

 その中で、今回のコロナに対してそのような体制を急速に整えるということは、なかなかこれは容易ではないので、今回の接種は臨時接種として、実施主体は、国の方針のもとに都道府県知事が協力をして市町村が実施するという枠組みでありますので、そのあたりのところを市町村がどういうふうに準備できるのかなということについては今後大きな検討課題であろうと思います。

 接種を担いますのは、接種を行える医療従事者が突然湧いてくるわけでは決してなくて、その地域で医療に携わっている医療従事者が、その時間、予防接種に従事しなければ絶対に不可能ですから、診療、医療行為もやりながら予防接種もしっかり担うということをやらなければならない。ここについても十分な検討が必要だろうというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、このワクチンに関する情報はまだまだわからないところがあって、それはやむを得ないのですけれども、接種までの間にわかる情報をしっかり分析、評価して、それぞれの地域で体制を整えていくという作業が必要で、いつからワクチンの接種が可能になるかまだ今の段階では全く予測できませんけれども、それぞれ準備をしなければいけないというふうに感じております。

 それから、あと、ぜひ申し上げたいことは、既にお話が出ていますけれども、接種に対する勧奨ですね、接種をぜひ受けてほしいという勧奨の接種ということと、それから接種の努力義務についてどういうふうに考えるかということであります。

 今回国会に提出されております内容を伺いますと、ワクチンについてまだいろいろよくわからないところもあるので、接種勧奨とそれから努力義務については、でき上がったワクチンのことをよく評価した上で柔軟に対応できるような取組になっておられると伺っていますが、そのことはすごく大事なことだと思います。ぜひそれは今後しっかり検討して、どういうふうにしたらばよいのかということを決めていくという作業が必要で、そのことが国民の皆さんのワクチンに対する信頼に大きくつながってくるというふうに思います。

 最後になりますけれども、やはり、今回のワクチンの特にわからない点は、接種後の副反応の、有害事象の頻度がどうか、そしてそれらが重篤なものでないかどうかということであります。そのことと関連して、接種の対象者をどういうふうに選んでいくか。高齢者あるいは基礎疾患を有する方、そしてCOVID―19の診療に直接携わる医療従事者というのが優先順位を高く設定して、今検討がされているわけですけれども、そのあたりについては、接種後の有害事象の頻度や内容をよく見きわめながら、接種開始までに十分議論、検討する必要があるというふうに考えております。

 それらをしっかり準備を整えながら、なるべく希望される国民の皆さんに早くワクチンを提供して、接種に備えるということが大事になってくるだろうと思います。

 今回、まだまだ課題が山積しているというふうに感じておりますところから、実際の接種の現場における問題点について申し上げました。

 私からは以上であります。(拍手)

とかしき委員長 ありがとうございました。

 次に、水口参考人にお願いいたします。

水口参考人 薬害オンブズパースン会議の事務局長をしております弁護士の水口と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、薬害オンブズパースン会議というのは、一九九七年、その前年に薬害エイズの和解が成立したわけですけれども、その教訓をもとに発足した、薬害防止を目的とする民間の医薬品の監視組織です。弁護士、薬剤師、それから研究者、薬害被害者の皆さんなど、多様な立場の方が集まって、薬害防止のための活動を行っております。

 新型コロナウイルスのワクチンの問題につきましては、本年の十月六日に今お手元の資料の三ページ以下にございます意見書を公表しております。本日は、この意見書を踏まえ、改正法案についての意見を述べさせていただきたいと思っております。

 まず、結論的なことを申し上げますと、今回の改正法案についてなんですが、検疫法の期間延長の点については適切だと思っております。一方、予防接種法の改正については、接種勧奨と努力義務の設定、それから損失補償契約に関する規定に問題があるのではないかと考えております。また、法の適用との関係では、承認審査や情報の提供のあり方について課題があると考えております。

 以下、少し詳しく述べさせていただきます。

 まず指摘させていただきたいのは、医薬品の安全性確保の重要性です。医薬品は、言うまでもなく人類の健康を守る上で大きな役割を果たしてきましたけれども、その一方で、時に重篤な副作用も生じさせております。

 ワクチンに関して社会問題化した例もありまして、その中には、予防接種禍訴訟、これは先ほど来から出ている予防接種法の改正の契機となったわけですけれども、こうした訴訟やMMR訴訟など、大規模な訴訟に発展して国の責任が認められた例もあります。

 私は職業柄これまで医薬品の副作用の被害者に多く接してまいりましたけれども、医薬品の副作用被害というのは、疾病で苦しむ方々の苦しみとはまた異なった側面があると思います。それは、もちろん御本人の身体的な苦痛というのもあるんですけれども、やはりそこには、治療薬やワクチンを勧めた御家族とか、そういう関係もあるわけですね。ですので、そういった方々の苦しみも生まれるということです。

 また、中には副反応や副作用との因果関係が明らかになるまで時間がかかって、そのために適切な治療が受けられないという事態が起きることもあるわけです。

 一方、医薬品の副作用については事後の救済の制度がありますけれども、事後的に救済を受けたとて失われた人生や時間が戻るものではなく、また救済申請に医師の協力が思うように得られないケースや、あるいは判定不能、情報不足などによって不支給ということになるケースも少なくありません。

 新型コロナウイルス感染症の感染の広がりに伴いましてワクチンへの期待が非常に高まっておりますけれども、国民が求めるのはあくまでも有効で安全なワクチンであるということは疑いがないと思います。したがって、やはり、国が承認審査においてその有効性と安全性を十分に審査した後に市場に出すという、このことがまずもって重要なことであるということを指摘させていただきたいと思います。

 そこで、新型コロナウイルスワクチンの承認審査と安全確保のあり方なんですけれども、まず、ワクチンというのは、先ほど来から御指摘がありましたように、健康な方が接種するものですから、一般の治療薬に比べて、より一層高い安全性と有効性が必要であると考えられます。

 この点、新型コロナウイルスのワクチンについてはまだわからないことがたくさんあるわけですけれども、しかし、このウイルス自体がRNAウイルスで非常に変異しやすいと指摘されていることや、再感染の報告があるということなどから、ワクチンができてもその効果の持続期間が限定的になる可能性があるのではないかという指摘がなされています。もし有効性に限界のあるワクチンによって深刻な健康被害を引き起こすようなことになった場合、それはワクチン全体の信頼を揺るがす結果となりかねません。そういう事態はぜひとも避けたいと考えております。

 特に、ワクチンの副作用との関係で注意を喚起したいと思っておりますのは、自己免疫性の副作用なんですね。ワクチンがギラン・バレー症候群とかADEM、急性散在性脳脊髄炎と言われるんですが、こういった自己免疫性の疾患を発症させるということはよく知られたところで、厚生労働省の重篤副作用マニュアルにも記載されています。二〇〇五年には、この急性散在性脳脊髄炎の発症を理由に、当時の日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨が差し控えられたという経過もありました。

 この自己免疫性の副作用というのは、要するに、ワクチンの接種によって人体の免疫機能に異常が生じて、ワクチンによって生じた本来は体を守るべき抗体などがいわば自分を攻撃してしまうような事態になるということで、症状も非常に複雑ですし、治療も困難な例が少なくありません。また、症状が接種してすぐにあらわれるとは限らない。こういったことも起きる可能性があるということは十分に配慮する必要があると思います。

 政府が供給の合意をしたと報じられていますアストラゼネカ社のワクチンですけれども、ことしの九月、開発中に重大な有害事象が生じたということで臨床試験を一時中止しておりますが、これは横断性の脊髄炎であるというふうに報じられておりまして、これも今申し上げた自己免疫性の疾患の一つであります。この点も十分に考慮に入れて審査をしてほしいと考えております。

 また、政府が供給合意したワクチンは、いずれも、ウイルスの遺伝情報を接種するという、これまでにない新しいタイプのワクチンであります。承認前の情報は大変そのため限られております。新しい機序のワクチンから新しいタイプの副作用が生じるという可能性も否定できないわけですね。

 そして、申し上げたいのは、仮に新しいタイプの副作用が生じたときに、市販後のワクチンの安全監視のシステムというのは必ずしも十分に機能しないことがあるということです。

 現在のワクチンの安全性の監視システムは、データベースを用いて統計的な手法で行われていますが、その仕組みから、副作用症状の定義について臨床上の一定のコンセンサスが形成されるに至っていないに等しい、そういう副作用に対しては十分に機能しない可能性があります。このことは、ワクチンの安全性のモニタリングをしている、ウプサラにそういうWHOの部署があるんですが、そこの専門家からも指摘されているところなんですね。

 また、厚生労働省では、ワクチンの安全性について、副反応部会や安全対策調査会という審議会を設けまして、ここで協議をして、PMDAがまず監視をして、それを協議するわけですけれども、基本的には自発報告をもとにしたものなんですね。したがって限界があります。

 自発報告というのは、その因果関係が否定できないというふうに判断された場合に、企業を経由し、あるいは直接に医師がPMDAに報告を上げるというものなんですけれども、一般にこの報告は氷山の一角であるというふうに指摘されています。特に新しいタイプの副作用が起きた場合には、患者も医師もそれがワクチンによるものだということについて十分に認識できないということが起こり得るわけで、そしてまた現在は報告された有害事象について追跡する十分なシステムもできておりません。

 このように、ワクチンの副反応というものに対して私たちは非常に謙虚にならなければいけない。いろいろなことが起こり得る、解明されていないことはあるし、現在の安全監視のシステムの限界もあるんだということを考慮に入れる必要があります。だからこそ、承認審査において十分に吟味してほしいと考える次第です。

 なお、海外で薬事承認を得た医薬品について、日本での承認審査を経ずに承認を与える特例承認という制度がございます。これは、ワクチンには適用するべきではないと考えております。それは、やはり、免疫に作用するワクチンというのは、免疫自体人種差が大きいというふうに言われておりますけれども、そういったものについてこれを適用するというのは、安全性確保や有効性の確認の点において非常に問題があるというふうに考えております。

 この特例承認については、新型コロナウイルス感染症の治療薬のレムデシビルについて最近一度適用されていることは御存じだと思いますが、このレムデシビルは、特例承認を適用した段階では、EUAという、アメリカの未承認の薬で緊急的な使用を認める、そういうもとでの認可だったわけですね。正式な薬事承認ではなかったわけです。それを日本は正式に特例承認制度のもとで薬事承認をした結果、私の認識に間違いがなければ、結局、日本はレムデシビルを世界で一番最初に正式承認した国になったということです。

 その後、レムデシビルは米国でも薬事承認されるに至っていますけれども、この特例承認制度というのは、いろいろな緊急の場合に、海外でしっかり有効性と安全性を確認されて承認されているということを前提にした制度です。

 ですので、先ほど申し上げましたように、正式に承認されたものであっても、ワクチンについて、人種差のことを考えたら特例承認を適用することは適切でないと思いますし、ましてやそれが海外での正式の薬事承認でないということであれば、なおさら適用するべきではないということを申し上げておきたいと思います。

 さて、以上、ちょっと審査に関して申し上げてまいりましたけれども、この審査をきちっと通って、有効性と安全性がしっかり確認されて市場に出るという場合に、それでは、接種を勧奨し努力義務を課すというのがこの新型コロナウイルスのワクチンについて適切なのか、そういう論点に移りたいと思います。まさにこれが今回の法案の問題点です。

 先ほど来から御紹介がありましたように、予防接種禍訴訟の教訓を踏まえて、一九九四年から、予防接種法のもとでは、それまでの接種の強制、接種義務というのはなくなりまして、現在可能であるのは、接種の勧奨と、そして国民に接種の努力義務を課すということです。

 しかし、やはりそれは、いかに努力義務といっても、政府が勧めて、そして国民に努力の義務を課すわけです。それをすれば、やはり国民は、ああ、国が勧めているんだということで信頼してそれを接種するわけですね。日本の定期接種の接種率は非常に高い状況にあります、全般に。

 ですので、国は勧める以上は、それは勧奨だ、努力義務だといっても、やはり十分に責任を持った対応が必要で、国が勧めるためには、私は、公衆衛生上の必要性と、それから先ほどワクチンは治療薬よりも高い有効性と安全性が必要だと申し上げましたけれども、更に接種勧奨するにはより高い有効性と安全性が求められると考えております。

 では、新型コロナウイルスワクチンが、このより高い有効性、より一層高い有効性と安全性、国が打ってくださいとお勧めするだけの要件を満たすのかどうか。この点は、現段階ではやはり明らかにはなっていない、それを満たすとは言える状況ではないのではないかと思います。

 今後いろいろ研究が進んだとしましても、この新型ウイルスの感染症自体が、先ほど来から御指摘がありますように、まだその対象の感染症自体が歴史が浅くて、わかっていることは非常に少ないわけです。そういう意味では、免疫に作用するワクチンについて、どんなに努力をしても未知の部分が残るということは避けがたいのではないかと思います。また、技術が進歩したといっても、本来は十年とかそのぐらいかかってきたものが非常に速いスピードで開発され、審査される。そういうことがワクチンの安全性と有効性に影響を与える可能性がないのかということであります。

 ことしの十一月の十日、厚生科学審議会予防接種基本方針部会で、国立病院機構本部総合研究センター長である伊藤委員が、医療関係の人ほど本当に大丈夫なのかという不安があり、積極的に打ちたい人はそれほど多くないと発言したということが報じられています。

 実は、私の周りにもそういう医療従事者は少なくないわけです。わかっている人ほど大丈夫なのかと思う、そういう状態にあるワクチンについて、接種を勧奨したり、接種義務、努力義務を設定するということが適切なのか。私は適切ではないのではないかと思います。

 改正法では、臨時の予防接種の特例という位置づけで今回提案されています。臨時の予防接種というのは、要件が感染症の蔓延の予防の必要があると認めるときということになっておりまして、これはやはり、制度の成り立ちとしては集団予防に重点を置いた制度なんですね。それを前提に、臨時の接種というのは接種勧奨と努力義務を規定しているわけです。

 ところが、新型コロナウイルスのワクチンというのは、現時点で、集団予防の効果がどのぐらいあるのか、それすらよくわかっていないということになります。そうすると、先ほど申し上げた、より高い有効性と安全性がはっきりしていないじゃないかということと、この集団予防、法のたてつけとの関係からいって、やはり、国が接種を勧奨し、接種義務を課すのは適当ではないということにならざるを得ないわけです。

 では、無償とか厚い救済というのはどうなるのか。国が勧奨して努力義務を課すから、無償としたり救済を厚くすることが説明しやすいのだというのは確かにあるかもしれません。しかし、ワクチンは公衆衛生と深くかかわる医薬品ですので、感染症の拡大を前に、接種や努力義務を設定しない、だけれども、無償にする、そして救済も厚くする。そこを切り離して考えて、そういう設定にすることだってできるのではないかと思います。

 現在提案されている改正法案は、臨時接種の特例と位置づけて、まず国民全体に接種義務をかけてしまう、その後対象を指定して解除していく、そういうたてつけになっているんですが、やはり、まず全体、国民に接種の努力義務の網をかけるということがいいのかどうか。それはやはり非常にリスクが高いし、科学的な根拠との関係で避けるべきことではないかというふうに思います。

 先ほど来から臨床試験でわかることは限られているというお話がありましたけれども、ワクチンは、やはり、まず任意で接種して、それから様子を見て定期接種にするというのが王道だったわけです。ですので、新しいタイプでよくわからないことがたくさんあるワクチンを、承認してすぐに全国民に接種を勧めるというやり方というのは危険なのではないかと考えております。

 方法としては、附則の四項において、予防接種法の八条と九条は適用しないと明記するなどして義務を外すということを考えるべきだと思います。

 それから、情報提供の関係ですけれども、これはやはり、自己決定を十分に保障するための十分な情報提供、これが必要だと思います。ワクチンへの期待がバイアスを生むんだということも十分に考慮を入れる必要があると思います。

 特に、接種をしないという選択をした方に不利益が及ばないようにする。これは非常に大変なことで、仮に努力義務が設定されるとすると、それは非常に難しいことになるのではないかというふうに思います。

 高い順位を与えられている人が接種をしなければ、医療や福祉の現場で働く人が接種をしなければ業務に従事できないような立場に置かれる、そういう風潮が起きることを大変危惧いたします。

 審議会で、先ほど、医師はそれほど打ちたいと思ってはいないんじゃないかという御指摘がありましたけれども、ある意味、医師は自分が打たない理由を説明できる人たちです。でも、そういう人たちばかりではないんですね。

 例えば、中小の企業などで、小さなコミュニティーの中で、会社がみんな打ちましょうという方向性を出したときに本当にそれを拒否することができるのか、それは非常に難しい問題なのではないかと思います。ということで、この点も十分な配慮が、小さいコミュニティーの中で弱い立場にいる方たちの自己決定権をどう守るのか、これは本当に真剣に考える必要があると思います。

 それから、損失補償契約、最後に申し上げますと、これは既にこの厚生労働委員会でも議論されていると思いますけれども、公共政策としての正当性にかかわる問題なので、やはり十分な説明が必要だと思います。

 国会の承認が要らない理由、時限立法でない理由、そこのところは私にはよくわかりません。この点については、やはり、更に十分な吟味をして、情報開示と説明責任が可能な限り果たされるような仕組みをつくっていくということが必要なのではないかと思います。

 以上で、私が述べたいことは一通り終わりました。ありがとうございました。(拍手)

とかしき委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

とかしき委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日、参考人の皆様には、お忙しい中でこうして委員会に足を運んでいただきまして、それぞれのお立場から有益なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。

 総じて、私、伺っておりまして、皆さんがやはり強調されるのは、どの参考人もおっしゃっていたのは、ワクチンというのは信頼が大事だ、信頼性が大事だという話だったと思います。

 そこで、私の方から、きょう、まず安全性について、有効性について、そして接種体制についてという観点でそれぞれ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず安全性ですが、宮坂参考人から非常に極めて論理的でわかりやすいお話をいただきました。この観点で、少しちょっと岡部参考人にもぜひ意見を聞きたいと思います。

 というのは、この第三相試験というのは日本でやっていない。日本で第一相、第二相はやりました、ところが第三相はなかなか日本でやるのは難しいというお話だったと思います。その理由は、宮坂参考人がおっしゃっていただいたとおり、感染の規模というものがそもそも千人に数人、こういう少なさだからなかなか難しいんだというお話だったと思います。

 そこで、宮坂参考人がおっしゃっていたのは、時間がかかっても、亀の速度でも安全なワクチンというのがあるのではないかということですが、少しちょっと、私、もし日本がこの感染者数のまま推移をして、つまり、どこかで今以上に爆発的にふえるのではなくて、ずっとこの千人に数人というのが続くのであれば、いつまでたっても、実は、この根本的に日本では第三相ができない原因というのは変わらないわけです。だから、亀ですら最後ゴールできないという状況なんじゃないかと思っておりまして、そういう意味では、どこかの段階、今の与えられた条件の中で、状況の中で最善の決断をするしかないんじゃないかというふうにも思っておりますが、まずその点について岡部参考人に伺いたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 やはりその判断は難しいところだと思うんですけれども、基本的には、私は、三相試験は必要だというふうには思っています。

 ただし、その三相試験を飛ばさなくちゃいけない条件というのは、感染者数だけではなく、重症度も十分に勘案しなくてはいけなくて、例えば、一万人の患者さんが出たとしても、その致死率が一%もいかないというような状態でしたならば、これは慎重にやる必要もあると思うんですけれども、その場合に、例えば致死率が一〇%ぐらいになるんだというふうにすれば、海外のデータを参考にして緊急にやる必要はあるというふうにも思います。

 ただし、海外における承認も、やはりちゃんと公開になっていて、先ほどどなたかもおっしゃっていましたけれども、それが十分に議論されて、あるいは十分なデータに基づいてやっている承認であるということであれば緊急性の方が優先すると思うので、一律には言えないと思うんですけれども、基本線からいえば、ルールどおりの三相試験は必要だと思います。

 ただし、人数を例えば少し制限をするとか、このぐらい時間がかかるものをもっと短く、議論するんだというようなことも含めて、総合的に議論が必要だというふうに思います。

 以上です。

伊佐委員 今の話も含めて、今度はまた宮坂参考人にお伺いしたいと思います。というのは、その点と、あとちょっと、今回委員会でも議論になったのは、例えば第三相試験をしているのがアストラゼネカであれば十八歳以上、ファイザーであれば十二歳以上、モデルナであれば十八歳以上。当然妊婦は除外されている中で、今第三相試験をやっている。

 そうすると、このワクチンを、例えば十八歳以下、十二歳以下が全く打ったことがない中で、打って大丈夫なのかという安全性の議論もあって、それは、さっきの今までの議論の、日本人は第三相をしていないけれども大丈夫なのかというところともしかすると相通じるところがあるのかもしれませんが、ただ一方で、子供は重症化していないというような、極めてまれだというこのリスクの比較という点も含めて、宮坂参考人に御意見を伺いたいと思います。

宮坂参考人 まず最初に、第三相試験に関しましては、岡部先生と私は意見を同じくいたします。

 すなわち、日本でもそれはやった方がいい。ただし、十分な数がそろわない可能性というのは十分にあります。したがって、時期、時間を決めて、できるだけ目標の人数を決めて、やることはやはりきちんとやらないといけないと思います。今後、例えばどこかで感染のアウトブレークが起こらないとも限りません。ですから、これはやることをやはり原則とした方がよいと思います。

 問題は、年齢の低い層、これまで行われている臨床試験も年齢の低い層は対象に入っていないわけですけれども、それは、これまでの第三相試験というのが、健康な若い人たちに対して健康被害がどれだけ出るかということを知ることを目標としていたために、若い世代は入っていなかったわけですけれども、じゃ、今先生がおっしゃったように、そもそも重症化率が低くて死亡の率が低い若い層にワクチンをどうするのか、ここはもう非常に大事な問題だろうと思います。

 先ほど私が申し上げたように、日本における感染リスクを考えますと、ワクチンを打たなければいけない方々は恐らく高齢者が先であって、若年層はもっとずっと下になるであろう。そういうことから考えますと、私は、若年層に関しては、一定の期間を置いてから考えるということでいいのではないかと思っております。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 次に、釜萢参考人に伺いたいと思います。

 副反応が起こった場合の報告の話をさっきもしていただきました。通常であれば十五日以内でありますが、我が党の高木委員からの質問でもあったんですが、いかにやはりこれは迅速にするかというので、即日にでも報告してもらうべきじゃないかと。さっき参考人の方からも、いかに早く察知され、公開され、共有されるかが重要だというふうにお話をいただきました。そこはひとえに、やはり医療現場のお医者さん、医師の先生方にしっかりと御協力をいただかなきゃいけないというふうに思いますが、この即日、あるいはその次の日でも構いませんが、とにかく迅速に報告できるというのは、現場の対応というのは可能なんでしょうか。

釜萢参考人 それは可能だと思います。

 特に、今回のように国民の非常に関心も高い状況で、接種後の健康被害についての判断が強く求められている事例ですから、全てのデータが即日でそろうというわけではないので、後で追加のデータの報告も必要ですけれども、まずは、そういう事象が起こったということについてはなるべく早く行政と、PMDAも含めてですが、行政と情報を共有することが必要だろうというふうに思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 それでは次に、有効性について議論させていただきたいと思いますが、これを打つかどうかというのは当然御本人の意思に最後はなるわけです。ただ、一方で、一定程度打っていただかないと、集団免疫という考え方があると思いますが、集団免疫が獲得できなくなるということも指摘されております。

 ある数字では、社会全体の六割が抗体を持てば初めて集団免疫ということになるんじゃないかという御指摘もございますが、まず、岡部参考人、宮坂参考人、それぞれ伺いたいと思いますが、まず岡部参考人に伺いたいのは、じゃ、最低何割の人が打てば集団免疫という形になるのか、そのお考えをいただければと思います。

岡部参考人 明確な数字は申し上げられない。というのは、なかなか難しいと思うんですね、五〇%なのか、六〇%なのか、七〇%。教科書的には、ただいまおっしゃいましたように、大体六、七割の方が免疫を持っていただければ、その病気は下火になっていくということは経験的にもあるわけです。

 ただし、集団免疫というのは、多くの人に接種をするわけなので、その前提は、繰り返しますけれども、安全性に対する確保ができていないと、集団免疫を期待して一斉にやるというのは私は難しいと思います。

伊佐委員 宮坂参考人には、同じ質問に、あわせて更にまた違う観点でも今質問させていただきますと、これは、宮坂先生が書かれていた論考にもあったと思いますが、抗体がどれぐらいもつのかというところにもよるのかなと。つまり、抗体が長期間もつのであれば、当然、予防接種、ワクチンを打っていただいて、その抗体を持った人がどんどんふえていく。ところが、一定期間で消滅していくようなものであれば、いつまでたってもこれは集団免疫というのが獲得されないということになります。

 そこで、そういう意味では、どれぐらいの期間があれば初めて有効と言えるのか、逆に、一定期間以下、抗体の持続期間がなければ有効性がないというふうに判断されてしまうのか、その点を伺いたいと思います。

宮坂参考人 まず、集団免疫が、これまでの皆さんがおっしゃることは、社会の六割の人が抗体を持っていると社会に免疫ができるとおっしゃっているんですが、それは間違いであります。

 すなわち、それはどういうことかというと、免疫というのは抗体だけで決まるわけではありません。抗体以外に、我々の中には大事な免疫細胞、何種類ものものがあって、抗体をつくるのはBリンパ球、B細胞ですけれども、B細胞だけが大事なんじゃなくて、実際に、先天的に抗体をつくれない患者さんがコロナにかかって治っています。すなわち、抗体はなくても治る人がいる。ということは、抗体だけを指標にした集団免疫の考え方というのは誤りがあるということであります。

 その六割という数字がどこから出てきたかというと、これはある公式がありまして、新型コロナウイルスの場合には、一人当たり大体平均二・五人に感染させる、この二・五というのを集団免疫の公式の中に当てはめると六〇%という数字が出てきて、すなわち、社会の中で六割の人が感染、免疫を獲得するとこれ以上広がらなくなるだろうと推測されたわけであります。

 ところが、今、日本の中でどういうことが起こっているかというと、皆さん、対人距離を保つようになって、マスクをして、いろいろなことをやりますと、平均一人当たり一人うつすかうつさないかぐらいのところまで下がってきています。例えば、それを、一人が一・二五人として先ほどの公式に当てはめますと、二割という数字が出てくるんです。二割が免疫を獲得すると、それ以上広がらなくなる可能性がある。それは必ずしも抗体という意味ではなくて、二割の人が抗体以外の免疫、いろいろな種類の免疫があります、それを獲得すればいいのかもしれません。しかし、ここは残念ながらまだ答えが出ていません。

 それから、持続なんですけれども、確かに、この新型コロナの場合には、抗体が半年続くか続かないかというようなデータが最近出つつあります。しかし、一度抗体が下がっても、体の中に免疫記憶が残っている場合には、二度目の感染のときには必ずたくさんの抗体がつくられていることがほかのウイルス感染ではわかっていますので、万が一、抗体が早く下がったとしても、一回目に打ったワクチンの効果というのはかなり長く残るんではないだろうか。

 しかし、恐らくこのウイルスに関しては毎年ワクチンを打たなければいけないような状態になるんではないかというふうに考えております。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 次に、接種体制について水口参考人に伺いたいと思います。

 さっきのお話、期待がバイアスを生むんだというお話がございました。不十分な情報提供であるとか、あるいは過剰なプロモーションというものが問題を引き起こすというところもあるんじゃないかと思います。やはり透明性をしっかりと政府は持つべきだと思いますし、あるいは、すごいワクチンなんだと有効性ばかり強調するべきでもないというふうに思います。その辺の、もちろんこれは政府もそうだし、できることならメディアの皆さんもそうだと思いますが、この冷静、客観的なコミュニケーションというところとかが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

水口参考人 今御指摘がありましたように、情報提供をきちっとバランスよくするということは非常に重要で、特に、先ほど申し上げましたように、やはり希望を持ちたいわけですね。ですので、期待は、そして、効くとか自分にとってうれしい情報はやはり体にしみ込むといいますか。

 例えば、先ほどの、ちょっとありました九〇%の有効性だという言葉が出たときに、一体何人対何人、本当にバランスよく二つに分けられているのかとか、それから、どのぐらいの期間続いているのかとか、よくわからないけれども九〇%とはすごいなというものだけがインプットされる、こういうことはあると思います。

 あと、そもそも臨床試験の結果が出ていない段階でいつごろには全員に行き渡るというような話が出るということ自体が、やはりかなりバイアスを生んでいるのではないかというふうに思います。

 危険性の情報についても、これは先ほどからお話がありましたように、リアルタイムで、今は審議会で、そこにまとめて情報が整理されて、出したときに初めて全体の数字がわかる、そういうたてつけなんですが、仮に審議会を少し頻度を多く開いたとしても限界があるので、別のやり方を、並行して情報提供の方法を考えていく必要があるのではないか、このように考えております。

伊佐委員 次に、ワクチンの接種の優先順位について伺いたいと思います。

 まず、宮坂参考人に伺いたいと思いますが、御指摘のとおり、今示されているのは、まず高齢者から、あと基礎疾患がある人、医療従事者というのが確かに上位に位置づけられております。

 これは委員会でも実は議論がありまして、というのは、ワクチンといったとしても、感染を防御する効果があるワクチンなのか、重症化予防をするワクチンなのか、多分それによってもまた全然違うのではないかと。

 さっき宮坂参考人がおっしゃっていただいたのは、医療従事者が打てば、あくまでそれは副反応とかという観点で、先に倒れると困るという観点でおっしゃっていただいたと思いますが、今申し上げたように、ワクチンの役割によってもこれはまた違うんじゃないか。

 例えば、医療従事者の方が重症化予防のワクチンを打ったとしても、感染して、それがクラスターになって、医療機関がクラスターを発生すれば、ある意味、意味がありませんので、どういうワクチンかによってどういう優先順位になるのかというのを考える必要があるんじゃないかというのも、これも委員会の議論でございましたが、その点どう考えられますでしょうか。

宮坂参考人 先生がおっしゃるように、ワクチンには、感染予防効果があるものと、感染予防効果は低いけれども重症予防効果があるというものもあります。例えば、インフルエンザワクチンは後者の方に。そんなに感染予防効果は強くないんですけれども、お年寄りには打っている意味というのは、重症化を予防するところがあるので、そういう意味がある。

 恐らく、この新型コロナウイルスに関しましては、ウイルスの性状その他を考えますと、インフルエンザとやはりよく似ています。それから、免疫反応もやはりよく似ています。そういうことを考えますと、新型コロナのワクチンも恐らく予防効果はそんなに高くはなくて、しかし一定程度の重症予防効果があるのではないか。

 ただし、今回ファイザーですとかモデルナが出しているデータを見ると、予防効果ももしかするとかなりあるのかもしれないとは思いますけれども、初期段階のことですのでなかなか判定が難しい。そして、きょう、モデルナのデータは、これもオフレコデータであるはずなんですけれども、実は重症化予防効果があるということが報告されています。

 そういうことを考えますと、医療従事者をどういう順番にするのかというのは極めて難しいことですけれども、私は、決して高くない、ただし、医療従事者で希望者があるんだったら、その方はお受けになったらいいと思いますけれども、医療従事者に接種義務を与えるようなことは、なかなかこのワクチンに関しては難しいだろうというふうに考えています。

伊佐委員 ありがとうございます。

 恐らく時間的に最後の質問になると思います。最後、岡部参考人に伺います。

 今の点とあわせて、医療従事者というと、やはりいろいろな、我々のところにも、いやいや介護も大変なんだ、介護こそまさしく濃厚接触で、もう抱きかかえるようにして利用者の皆さんと触れ合っていると。だから、介護の事業者の皆さんも、やはり、医療従事者が優先されるのであれば同じじゃないかというようなお話もあるし、あるいは薬局の皆さんからすれば、いや、熱が出て、来られるのは薬局なんだというようなお話もあります。

 医療従事者といったときに、じゃ、そこから介護事業者はどうなるのか、薬局はどうなるか、この辺の観点を最後、御示唆いただければと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 新型インフルエンザのワクチンのときにも同じような議論がありまして、結局、直接患者さんに携わる医療従事者、介護その他も同様だと思うんですけれども、その人たちが無防備で行っていいのかというところから、当時やはり医療従事者は優先順位になったというふうに思います。

 当時の、その十年前あるいはもうちょっと前のときの高齢者対策というような福祉の考え方が随分変わってきていますので、私自身の考えで言えば、高齢者をよくお世話していただくような介護の方、それからハンディキャップの方を抱えなくちゃいけないような方々は、そういう意味では優先順位は高いと思います。

 ただし、先ほど宮坂参考人もおっしゃいましたけれども、それは全て強制ではなくて、やはりそこには、予防接種というのは必ず、私は嫌だと言う権利は残しておくべきだというふうには思います。

 もう一つ、よろしいですか。

 それは、ただし、私も私も私もという、私の職業も大切なんだと。これは職業の貴賤にもかかわることなので、余り枠を広げ過ぎていくと今度は優先順位があるかないかわからなくなるので、やはりそこはある線で切る必要があるというふうに思います。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 非常に勉強になりました。しっかりと皆さんからいただいた御意見を国会の審議に役立たせていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

とかしき委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁です。

 本日は、四人の参考人の皆さん、大変お忙しい中を厚生労働委員会に御出席をいただき、また、それぞれのお立場で貴重な御意見を聴取することができましたこと、改めて心から感謝を申し上げたいと思います。

 時間の関係もございまして、全ての参考人に御質問できないかと思いますが、御容赦を願いたいというふうに思います。

 四人の参考人、それぞれのお立場であったわけですが、やはり今回の法改正によって、まだ何物かわからないワクチンが、積極的ではない、勧奨とか努力義務がかかるということ、そこには慎重にということ、ここは意見が同様だったのかなというふうに思います。その点についてもお聞きしたいんですけれども。

 宮坂参考人にまずお尋ねをしたいんです。

 先ほど、ワクチンの有効性、副反応、開発で注意すべき点ということで重点的にお話をいただいたんですが、資料の方で、多分お時間の都合だったと思うんです、ちょっと御説明ができていない部分だと思うんですが、回復者の血漿輸入ではだめだ、そして悪玉抗体、善玉抗体と、余り聞きなれない言葉なんですが、この血漿輸入、これは恐らく、アメリカ・トランプ大統領、血漿輸入ではなくて、その次のページ、最後から二番目ですね、モノクローナル抗体。

 これは、人工抗体による治療というのは、トランプ、前と言ったらいいのか現と言ったらいいのかわかりませんが、トランプ大統領への治療の内容なのではないかなというふうに思うんですが、この部分について、善玉抗体、悪玉抗体ということについても含めて、この人工抗体による治療に、どのようなものなのか、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

宮坂参考人 今の御質問に関しまして、アメリカで最近までよく行われていたことは、実は、人工抗体を投与するよりももっと前の治療法というのがありまして、それは、回復者の血液をとってきて、その中にはいい抗体があるはずだから、その抗体を入れたらば治るであろう。初期のデータは非常に目覚ましい結果だったんですが、その後、数をふやしてみると、治る人もいるし、むしろ悪くなる人もいる。何にも変化がない方もいる。これは難しいということになったわけです。

 ここに、私の資料の横書きのところに、なぜ回復者の血漿輸入ではだめなのかというのを用意してありますけれども、それは、回復者の血漿には、できればウイルスを殺す善玉抗体、中和抗体だけがいてくれたらいいんですけれども、人によっては、ウイルスを殺せないような抗体、役なし抗体と私は呼んでいますけれども、そういうものが多かったり、あるいは、逆に感染を促進してしまうような悪玉抗体というものがある場合がある。これは非常に個人差が多い。したがって、ある一人の回復者をとっても、この人がどの抗体を持っているかがわからない。これはちょうど人間の社会と一緒で、恐らくここの席におられる方は善玉ばかりと思いますけれども、実社会はいろいろあるわけです。それは抗体も同じで、いろいろな個人差がある。

 そうしますと、回復者から抗体をとるだけじゃだめだ。じゃ、抗体をつくっている細胞を培養して、そこから抗体をとったらいいじゃないか。ところが、この細胞は二週間ぐらいしか培養できません。

 そういうことから、下にあるように、善玉抗体を人工的につくれないだろうか。中国とアメリカのグループが遺伝子工学の技術を利用して実際につくったところ、千種類以上のものが現在世界じゅうでつくられていて、これを動物に打ちますと、ウイルス量が二日から三日の間に千分の一、一万分の一と、もう激減をするということがわかっています。アメリカのイーライリリー社のものは、現在、第三相試験までが終わって、緊急使用許可が出ております。

 実は、この抗体が人工モノクローナル抗体と呼ばれるんですけれども、その原理といいますのは、このちょっとわかりにくい図ですけれども、まず、リンパ球というのは、いろいろなクローンから成っていると言われています。例えば、このクローンの三番目、これが新型コロナウイルスに反応するクローンだったとしますと、新型コロナウイルスと出会うと、その細胞が、一個が二個、二個が四個、四個が八個となっているうちに、最終的に、細胞表面にある抗原レセプター、ウイルスを捕まえる腕が抗体に変化して、それが細胞の外に分泌されるようになります。このことを抗体と呼ぶわけですが、これが単一由来のクローンからできた抗体なので、モノクローナル抗体ということを言われます。

 ところが、モノクローナル抗体というのは、さっきもお話ししたように、一人の人から一定量しかとれません。したがって、現在使われている方法というのは、この抗体をつくっているリンパ球から遺伝子を抜き出してきて、その遺伝子を永久に増殖する細胞に入れてやれば、その遺伝子が一生読まれますので、抗体がもう継続的に、工場でつくることができる。そういうのを、永久に抗体をつくる技術である人工モノクローナル抗体と呼んだわけです。この抗体をトランプ大統領に投与したところ、わずか三日で退院をすることができた。

 最後のページは、これは重症化抑制剤として、もしかするとゲームチェンジャーになるのかもしれないということの図であります。

 まず、回復者から抗体をつくるBリンパ球を精製してきまして、そこから抗体をつくる遺伝子をクローニング、抜き出してきます。この遺伝子を永久にふえる細胞の中に入れ込んで、その遺伝子を永久に活動させる。そうすると、コロナ特異的な抗体を人工的につくることができる。この抗体を動物に打ちますと、さっきお話ししたように、もうウイルスが短期間の間に激減をする。

 そこの右側に書いてありますように、強い中和活性を持つ抗体が既に作成されていて、動物レベルではウイルス排除に有効。動物のみならず、トランプ大統領にも有効だったということです。アメリカでは既にこの抗体については緊急使用許可が出ていまして、右の一番上に書いてあります。

 もしもこれが本当に重症化抑制には大事であれば、アメリカが使う方法はどういうことかというと、PCR陽性になった患者さんにみんな打つ。そうすればそこでウイルスが消える。そうすれば重症化はしないだろうという考え方なんです。もしもそれで重症化がとまれば、コロナはインフルエンザと同じ病気になります。

 もしもそこのレベルで重症化がとまれば、その抗体というのは、今度は予防に使うこともできます。もしも、例えば中島先生がブラジルに出張しなければいけないとなったらば、その抗体を打っていけば、半減期が二週間ですから、ほぼ一カ月の間、感染しなくなります。そういう使い方もあります。

 ただ、問題は、この抗体が非常に高価である。トランプ大統領に使った量をお金に換算すると、一億円ぐらいかかったと言われていますけれども、現在、これは、大量生産をすることによって抗体の額というのはどんどん下がっていきますので、現在リウマチなんかで使われている抗体医薬というのは、ワンショット数万円であります。そこにまで多分落ちる可能性がある。

 そういうことになりますと、少なくとも日本ぐらいのところですと、一般的にも使う可能性があるということであります。

 そういうことから考えますと、この人工抗体というのは、重症化をとめるだけではなくて、もっとすごいゲームチェンジャーになる可能性があるというふうに考えています。

 ただし、これも日本でやはり臨床試験をやって確認しないといけないというところがあります。

中島委員 ありがとうございます。

 トランプ大統領は、あの大統領選のさなか、感染をしたということ。あそこで、医師団の説明も何かちょっともやもやした感じがあったんですが、今先生のお話を聞いて、かなり高価だということはありましたけれども、そういう理由だと。

 そして、アメリカでは、今、三相試験もやられておるということでありますけれども、これは、我が国においてはどのような進捗になっておるのか、ちょっと補足して御説明いただきたいと思います。

宮坂参考人 この抗体は、アメリカでは、イーライリリー、アストラゼネカ、それからリジェネロンという三つの会社がしのぎを削っておりまして、アメリカで、ファイザーだけで三十万人分ぐらいがもう抗体ができているそうですけれども、アメリカは一日に十数万人感染していますから、今アメリカがつくっている量というのは焼け石に水の量なんですね。

 では、日本のメーカーはどうかといいますと、日本のメーカーは、リウマチなんかにおきましては抗体医薬というのを既につくっていますので、人工抗体をつくる細胞を大量に培養して抗体を精製し、医薬品に変えるという技術は持っております。

 しかし、私が知る限りにおいては、現在、日本のメーカーでこれに直接手を出しているというところはないようで、実は、水面下で海外のメーカーと既にコンタクトしている可能性は十分にあると思いますけれども、工場レベルで既にこれをつくり出したという話は聞いておりません。しかし、技術的には、もう十分に日本のメーカーはこれをできる技術は持っていると思います。

中島委員 ありがとうございます。

 重症化予防にもという意味と、もう一点、一定期間、免疫パスポート的な役割も果たせるということで、大変興味深い話でありますし、今審議されているのはいわゆるメッセンジャーRNAワクチン、ウイルスベクター、世界でほぼ初と言われる遺伝子ワクチン、ここについて、宮坂参考人始め、皆さん、大変慎重な御意見、安全性ということ、共通していたと思うんですが、宮坂参考人は、いわゆる今の感染状況からいくと、やはり三相試験はかなり困難な状況の中で、ある意味、この人工抗体というものは、新型コロナの切り札と言えるということの意味として捉えてよろしいでしょうか。

宮坂参考人 それは、可能性としてはあると思いますけれども、これもやはり、日本での第三相試験を行わないと、アメリカ人あるいはトランプ大統領に効いても、日本人に効くのかという問題があります。

 ただ、抗体を大量に投与するというのは、もうリウマチなんかで、実際に医薬品として投与するということは行われていて、中にはアナフィラキシーショックが起きたという報告もありますし、普通の医薬品を投与するのと同程度のリスクがあるということはわかっています。

 でも、先ほどから何度も申し上げていますように、海外のデータだけで、我々がそれをうのみにして、日本で第三相試験なしにお薬を使うということはなかなか難しいという状況がありますので、このお薬についても第三相試験はやった方がいいと思っています。

 ただ、このお薬のメリットというのは、先ほど、新型コロナの場合には千人に数人しかならない、したがって、予防の効果を調べる第三相試験は物すごく難しいわけですね。何十万人とやらないと、多分答えが出てこない。だから、この場合には、まず重症をとめられるかということだけであれば、感染者に打つわけですから、感染者百人を五十人、五十人に分けて打った、そのときに感染がどうなるのか、重症化はどうなるかということで、答えはもう短期間に出てくるわけです。

 そういう意味では、この抗体の第三相試験の実施というのは日本でも十分できることですので、そして、第三相試験というのは、何度も繰り返しますけれども、必ずやらなければいけないものだと私は考えております。

 水口先生おっしゃったように、我々が使ったことのないものを体に使うという場合には、よほど慎重に考えなければいけない。その場合には、やはり規定の第一相、第二相、第三相をやって、よほどのことがない限り、やはり、緊急、早期承認というのはなかなかワクチンの場合には出すべきではないというふうに、ワクチンも人工抗体もそうですけれども、と私は考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、次の質問に入りたいと思うんです。

 また再度宮坂先生になってしまうんですけれども、宮坂先生、免疫学の御専門ということで、私は臨床医で外来にも出ているんですけれども、昨シーズンも今シーズンも、いわゆるインフルエンザ、季節性のインフルエンザがかなり抑えられている。

 これはもちろん、新型コロナウイルス感染症の影響で感染防護対策が徹底されておるということは、これは一つ理由であるというふうに思うわけでありますが、一方で、我が国、六十五歳以上はインフルエンザワクチンを推奨していたり多くの方がワクチン接種をしておる。こういう影響、ダブルインフェクションという考え方もあるかもしれませんが、この新型コロナに対してインフルエンザワクチンが効果があるということも一部言われていたりいたしますが、その辺に関して、先生の御見解をお尋ねしたいと思います。

宮坂参考人 これまでのワクチンの考え方というのは、インフルエンザワクチンを打てばインフルエンザの予防はできるけれども、ポリオウイルスなりほかのウイルスの予防はできないという考え方。それはおおむね正しいと思います。

 それはなぜかといいますと、ワクチンを投与すると、我々の体では二段構えの防御体制というのがあって、自然免疫という、どのウイルスでもどの病原体でも防ぐ自然に持っている免疫機構、それが最初に働きます。次に、獲得免疫といって、抗体をつくったりウイルスを殺すTリンパ球ができたりという、後から、生後獲得する免疫機構、この二つが働く。

 ワクチンの場合には、通常、後の方の獲得免疫が働くと、これが記憶をしていて、二度目にインフルエンザが入ってきたら、インフルエンザだけを覚えているのでインフルエンザに対する防御機構ができるけれども、ポリオは見たことがないのでポリオに対する免疫は働かないというのがこれまでの考え方だったんです。

 ところが、その後わかってきたことは、BCGなんかがそうなんですけれども、BCGというのは自然免疫を非常に強く刺激するものなんですけれども、それを強くしておくと、いろいろな感染症に対して実は効果がある。獲得免疫が動いて、抗体なんかはふえていないんですけれども、自然免疫が強くなる、自然免疫を訓練すると感染症一般に強くなるということが言われていまして、確かに、BCGなんかですと、BCGを生後すぐやっている国と全くやっていない国で比べると、統計的には非常に大きくBCGをやっている国はこの感染が少ないという傾向は明らかにあるんですね。

 ところが、はっきりとした例外が二つありまして、それはニュージーランドとオーストラリア。これはBCGをやっていないんですけれども、コロナの発生率、死亡率は日本と同じ程度なんですね。すなわち、BCGがなくてもそういうことを実現できている国もいる。ただし、同じアジアなんです。アジアというのは一つの大きなキーファクターなのかもしれません。

 問題は、ワクチンのところに戻ってきますけれども、インフルエンザワクチンをしたらばコロナに対して効果があるだろうか。これは実は、私はあると期待をしております。

 ちょっと違う実験ですけれども、もう何十年も、二十年、三十年前に、東北大学の先生方が、高齢者施設で起こる誤嚥性肺炎、これは細菌性肺炎ですけれども、これをどうしたら減らせるのかとやって、インフルエンザワクチン、BCGワクチン、ライノウイルスのワクチン、三種類、どれかを打ったときに、この肺炎の、細菌性肺炎なんですけれども、どれが下がるか調べたら、効果があったのはインフルエンザワクチンとBCGだった。ライノは効かなかった。すなわち、ワクチンのうちのあるものは非特異的に免疫の力を上げて、ほかの病原体を防ぐ効果もあるんだということを示しています。

 インフルエンザは、まだ本当に、いいデータは、十分なデータはないんですけれども、自然免疫を上げると新型コロナの感染率が下がるという可能性は私は十分にあると考えていますので、私はかねてから、高齢者の方々ができるワクチン、それは肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、ヘルペスワクチン、ぜひ皆さんやってください、思わぬ恵みがあるかもしれませんというふうに申し上げています。

中島委員 ありがとうございます。

 インフルエンザワクチンに関しては、高齢者の重症化予防というエビデンスはしっかりしておりますけれども、あるからこそ積極的に補助もして打っている一方で、それ以外の年齢に関しては、重症化予防のエビデンスは明確にはなっていないと。ただ、免疫学的にいくと、細胞性免疫、自然免疫も賦活しながら、今回の新型コロナにもやはり有効性があるというお考えということでよろしいでしょうか。もう一度確認。

宮坂参考人 一つ追加させてください。

 ワクチンが働くとき、あるいは病原体が入ってきて我々の免疫機構が働くのは、必ず自然免疫が働いて獲得免疫が働きますので、最初に何らかのワクチンを打っておきますと自然免疫が高まりますので、そこにコロナが入ってくれば、コロナに対する獲得免疫ができやすくなる可能性も十分あるわけです。

 ですから、私は、Aというワクチンを打ってもBという病気に対しての防御効果がある程度ある可能性というのは十分にあると思っていますし、最近、アメリカで少しずつその実験が進んでいまして、いろいろなワクチンを前に打った人と打たない人に分けて、じゃ、どのワクチンを打ったときに新型コロナの発生率が低いかと調べますと、何種類かのワクチンがやはり新型コロナの発生率を下げるという初期的な報告があります。その場合に、インフルエンザに関しては、老人の打つインフルエンザワクチン、アメリカの場合には実は四倍量打つんですけれども、それをやった場合には、明らかに新型コロナの発生率が下がっているという初期的なデータがあります。

中島委員 大変参考になりました。ありがとうございます。

 もう時間になってしまいました。済みません。私の興味もあって、他の参考人の方にも質問を用意していたんですけれども、時間が来てしまいました。質問できなかったことをおわびを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

とかしき委員長 次に、安藤高夫君。

安藤(高)委員 自由民主党の安藤高夫でございます。

 本日は、参考人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございます。さまざまなことを勉強させていただきました。しっかりと政策に生かしていきたいと思っております。

 最初の質問ですけれども、ほかの先生方からも質問がありまして、先生方からも十分お話がありましたけれども、安全性及び有効性のことですけれども、これに関して、岡部先生、宮坂先生、釜萢先生にお聞きしたいと思っております。

 先生方は、どちらかというと安全性に関して非常に、十分にお話をされておりましたけれども、今回のワクチンの効果に対する期待というところがちょっと薄かったような感じもいたしますけれども、これに関して、効果に対して期待できるところを中心としてお三方にお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

岡部参考人 ありがとうございます。

 私は、長い間、自分の専門領域で、ワクチンというのは一つの専門領域に入っているんですけれども、ワクチンは基本的には病気にかかる前に防ぐというもので、非常に大切なツールだというふうに思っています。

 そういう点では、開発を行うべきであり、できたワクチンがいいものであるという期待はもちろん持っていますけれども、しかし、その答えを出すだけのデータは私のところに来ていないので、現在のところで、現状、俎上にのろうとしているものがいいか悪いかということについては、ちょっと判断ができない段階です。それが私は、多くの人が慎重に、焦らずに、科学的にデータを見て判断するべきだと言っていることになります。

 以上です。

宮坂参考人 今回開発されているワクチンに関しましては、初期データを見る限りにおいては、これまでのインフルエンザワクチンなんかよりもずっと効く、効果は高い可能性は十分にあると思っています。それは予防効果に関してです。重症化効果についてはまだわかりません。

 しかし、どのワクチンでもそうですけれども、今までも効くワクチンというのは幾つも開発されてきたんですけれども、最終的な成功率というのは、前臨床から薬事承認まで至ったのは四%、すなわち百分の九十六個は全部おっこっちゃったわけです。それはどういうことかというと、抗体ができなかったわけではなくて、抗体はたくさんできる、さまざまな免疫を起こしてくれるんだけれども、副反応が強い、健康被害を及ぼす、これは全部落ちるわけです。

 残念ながら、今のこのワクチンに関しては、恐らく効きそうだなという心証はかなりあるものの、副反応に関するリスクがどのくらいあるのか、長期効果、短期効果、これはどちらもまだよくわかっていません。ただ、わかっているのは、二万人ぐらいやったときには、大きな、生命に及ぼすような副反応は起こらなかったということだけは聞いておりますけれども、あと二万人やれば出るかもしれません。

 ですから、この辺に関してデータがない以上、何とも申し上げることができないというのが現状だと思います。

釜萢参考人 お答えいたします。

 まだいろいろな詳細のデータは明らかになっていないものが多いので、効果の判定について、マスコミ等で公表されたものについても、詳細がどうなのかということは今後検証が必要だと思っておりまして、効果というか、発症予防効果です。感染の予防効果はちょっとまだ判断ができないので、発症予防効果とそれから重症化予防効果でありますが、今、今後出てくるのはまず発症予防効果だろうと思いますが、それに関しての正確な詳細がわからないという段階です。

 一方で、接種後の有害事象というか体調の変化等については、国の公的な審議会等に出たデータを見ますと、他の既存のワクチンに比べると、例えばだるさなどもかなり強いということもありますので、そのあたりについては慎重に見なければいけないなというふうに感じている次第です。

 以上です。

安藤(高)委員 では、慎重に効果を期待していきたいと思っております。

 次に、二つ目の質問ですけれども、ワクチンの購入に関して、これは岡部先生と釜萢先生にお聞きしたいと思っております。

 菅総理は、安全性、有効性の確保を最優先として、来年の前半までに全国民にワクチンの確保を表明いたしましたが、先生方のお話の中にありましたけれども、安全性、有効性が評価が定まらない中で、このような状況の中で、こうしたワクチンの確保の方針について先生方のお話をお聞きしたいと思います。岡部先生、釜萢先生、よろしくお願いいたします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 今世界じゅうがワクチンを求めているという中で、全部のデータを待って安全性、有効性を全部確認して、さあ買おうかといったときに、なくなってしまう可能性は多分にあるというふうに思います。

 新型インフルエンザワクチン、二〇〇九年の海外から導入のときも同じような議論がありまして、そのとき、時の政府側は、仮に要らなくなったとしても、きちんと確保しておくということをすることが大切であるというような話を当時されていました。

 私は、そういう意味では、よく説明した上で、これは、条件としてはいいワクチンができたらであるという意味で、しかし、それについて確保するというような方向性はやはり必要だろうと思いますけれども、最終的にはいろいろな政策的な問題があると思いますけれども、その点については、私は必要な方法ではないかという考えを持っています。

釜萢参考人 お答えいたします。

 今国がやっておられるワクチンを確保するためのいろいろな政策は、ぜひ必要だろうと思います。正式に契約が締結できたもの、かなり前段階のものとあるようですけれども、今の取組はぜひ続けていただきたい。

 また、加えますと、ワクチンの接種に伴う健康被害を、メーカーに対する損害賠償の対応について、国がそれを肩がわりをするというようなことも、ワクチンを確保する上では必要な政策だというふうに感じております。

 以上です。

安藤(高)委員 ありがとうございます。

 やはり、きちっとさまざまなところを準備をしていく、製造者にも安心していいお薬がつくられるようにしていくということが非常に大事だと思っております。

 次に、三番目の質問ですけれども、接種事業の構築に関してです。これは岡部先生と釜萢先生にお聞きしたいと思っております。

 今回の新型コロナに関して、比較的短期間でこれまでにない規模の接種になると思います。新型コロナウイルス感染症は、再び大きな拡大の局面になってきております。私どもも医療機関を八王子の方でやっておりますけれども、この二、三日、急激に入院がふえてきた、そしてまた発熱外来もぱんぱんになってきた、あるいは心カテの患者さんの中にも陽性者が紛れ込んできているというような、ちょっと今までにないような局面を迎えている。

 そういうような拡大のところを背景にして、事業実施を中心的に担う自治体や医療機関ではどのような準備をこれからしていく必要があるのかということと、そしてまた、国としてはどのような支援が必要になるのかというところをちょっとまた御教示いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 自治体は、私の意見のときにも申し上げたんですけれども、やはり実際にやらなくちゃいけないので、それこそ輸送の問題、それから実際に接種をする先生方への依頼、それは医師だけではなくて看護師あるいは事務系の方も含めてきちんとした人数が必要であるので、そういったようなものの確保ができるように。それから、特に輸送に関しては、もし今のものが実用可能であるとすると、冷凍保存というのは非常に重大な問題になってくるので、したがって、そういったようなものも、さあ、全部医師会でやってくださいというわけにはいかないと思いますので、きちんとした国の方針のもとに、輸送問題も含めて取り組んでいただきたいというふうには思います。

 しかし、それについても方針がまず決まらないといけないので、それが、対象と、いつやって、誰に誰がどういう責任でやるかという意味で、私は、今回の予防接種法改正というものに対しては、まだ目前にあるワクチンではないとは思うんですけれども、それに対する準備としては必要なものだというふうに思っています。

 以上です。

釜萢参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、医療従事者がワクチンの接種も担う部分がかなりあります。もちろん、事務の方その他の御支援が必要ですけれども。その場合に、集団あるいは集団的な接種と、それから医療機関で行う接種と、両方やらないととても打ち切れないだろうというふうに思いますが、その場合の体制の整備ということがぜひ必要になって、医療従事者は診療に携わっていながらワクチンの接種も担わなければならないということがありますので、そのことが可能になるように、今から行政としっかり連携をとっていくことが必要だというふうに考えております。

 以上です。

安藤(高)委員 ありがとうございました。

 岡部先生からも、コールドチェーンの問題、これも今までなかったことではないかと思っておりますけれども、釜萢先生からも、集団的接種を踏まえて、やはり、かかりつけ医の先生たち、スタッフの人たちと十分打合せをしていくということが非常に重要になってくるのではないかということを勉強させていただきました。

 次に、第四問目は、接種勧奨と努力義務、これは水口先生には詳しくお話をお聞きさせていただきましたので、岡部先生と、釜萢先生も少しお話をしていただきましたけれども、お伺いしたいと思っております。

 現時点ではどのようなワクチンが出てくるのかわからない中、接種勧奨と努力義務をつけることに国民の方の中では強い抵抗感を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。改正案では、接種の勧奨や努力義務について、必要に応じて適用しないこととすることができるという規定もありますが、勧奨や努力義務を原則とすることについてのお考えや、適用すべきでないと考えられるものはどのような状況なのかということについて御教示いただければ幸いです。よろしくお願いします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 どうしても義務接種という言葉が優先に出てくると、やはりかつての強制的な、罰則を伴うような義務接種であるというようなイメージが先に出ると思うんですけれども、私は、今の勧奨予防接種というものは、基本的には、ノーと言える権利をちゃんと留保しているというところが一番大切ではないかと思っています。

 したがって、これが仮に努力義務があったとしても、ノーと言える権利は必ず確保すべきものだと思いますし、途中で申し上げましたように、最終的には、個人の御判断というものを尊重できるような形はぜひ保っておいていただきたいというふうに思います。

 以上です。

釜萢参考人 お答え申し上げます。

 接種勧奨あるいは努力義務をかけない場合はどういう場合が考えられるかということですけれども、基本的に、国が国民に対して予防接種をしっかり受けてほしいということは、そのワクチンがすぐれたワクチンで、安心して国民に受けてもらえるという大前提があってそれが可能になるわけですけれども、今回のワクチンについて十分な知見がそろわない中でも接種を開始しなくてはならないという場面もありますから、そこについては、今、岡部先生が言われたように、個人の判断ということが更にしっかりと担保されなければいけないというふうに思います。

 ですから、情報をきちっとお伝えすることは当然ですが、国民の皆さんにきちっとお伝えする情報がまだ確定していない段階でワクチンを始めなければならないこともあるので、この条項というのは私は非常に重要だというふうに考えております。

 以上でございます。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。十分な情報と国民の方々に対する説明力ですね、しっかりと受けとめさせていただきたいと思っております。

 最後の質問ですけれども、これは四人の先生方にお話を聞きたいと思います。

 リスクコミュニケーションですけれども、日本人のワクチンに対する信頼をどのように見ておられるのか、ワクチンの接種が円滑に進むためにはどのようなことを伝えていくべきかということ、これについて最後にお願いしたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 一つの例を挙げたいと思うんですけれども、日本は、世界もそうなんですけれども、はしかという非常に重症な病気のエリミネーション、排除に向けて大きい活動をやっております。その中で、日本のはしかに対しては、定期接種ではありますけれども、先ほども申し上げましたが、強制力は全くないんです。しかし、こういうことが必要であって、こういうワクチンをぜひやってくださいという勧奨をしていくわけですけれども、その結果としては、多くの方がそれを受け入れていただいて、日本は、西太平洋地域の中でも、決してトップではなかったんですけれども、はしかを排除した国というふうに認定をされております。

 ですから、決してがちがちの法律で決めなくても、きちんとした説明等々を粘り強く続けていきますと、やはりそれなりの成果は出るというふうに思いますので、はしかとCOVIDではちょっと種類が違うかもしれませんけれども、基本的な考え方としては、私はそういったようなことが重要ではないかというように思います。

 以上です。

宮坂参考人 私も岡部先生と意見は同じでありまして、大事なことは、今回、何社かのワクチンの有効率が語られていますけれども、極めてソフトなデータに基づくものであって、それにバイアスがかかると、このワクチンは効くはずだ、効くはずだと、やはり早く受けなければいけないというような前のめり体制がどんどん進んでしまう。

 一方、何度も指摘されていることですけれども、本当の大きな重篤な副反応が起こるリスクが現在ではわからない中では、マスコミももう少しこのあたりをきちんと報道していただきたいと思いますし、一方、効くワクチンの重要性ということをきちんと報道していただきたいと思います。

 そういうことがあれば、国民の皆さんは信頼をしてワクチンを打つという体制が整っていくのではないかというふうに思っています。

 以上です。

釜萢参考人 日本の国民の皆様は、ワクチンに対して大変関心もお持ちですし、そして正しく判断していただいていると思います。一方で、情報を正確にお伝えすることの困難な事例もこれまでに経験をしてきています。

 ですから、国民の皆さんがしっかり安心して納得して打っていただけるように、更にわかりやすい情報をしっかりお届けするということが必要だというふうに感じております。

 以上です。

水口参考人 私は、ワクチンに対する信頼性というものは、やはり、一つ一つのワクチンについて有効性と安全性をきちっと吟味して市場に出す、そのことの積み重ねがまず基本だと思います。

 それから、重篤な副作用被害をできるだけ回避するということは大事なんですけれども、まれですが、やはりそういう被害に遭う方はいらっしゃるわけですね。そのときに、その方たちが不都合な真実を知らなかった、これは知らされていなかったというふうに思うことのないように、やはりきちっとリスクを伝えていくということを特に重視するべきだというふうに考えております。

 被害に遭われた方の救済やその後の治療、こういった体制も全てあわせて、やはり全体としてワクチンに対する信頼性が確保されていくものだと思います。

 そういう意味で、この新型コロナウイルスのワクチンについても、やはり有効性と安全性をしっかりと吟味していただきたい、情報提供もしっかり出していただきたいというふうに考えております。

安藤(高)委員 四人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

とかしき委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、お忙しい中、参考人の皆様におかれましては、大変貴重な御意見を聞かせていただき、本当にありがとうございます。

 まず、努力義務についてなんですけれども、第三相試験を日本人で行わないまま始まる可能性がかなり高いのが今の状況だと思うんですけれども、第三相試験を日本人で行わないものについて努力義務をつけるのはいかがなものなのかなということを国会でも質問させていただいております。

 法律上は、先ほど紹介がありましたけれども、必要に応じて適用しないことにすることができるということにはなっているわけですよね。ですから、初めから外すことも、法律上、接種前に外すこともできるとは思うんですよね、努力義務を。

 ところが、この間、国会での厚労省の答弁は、通常は努力義務をつけてスタートして、それから、いろいろな情報が入ってきたら外すかもわからないみたいな説明をするんですけれども、これは、場合によっては最初から努力義務は外すということも考えなきゃいけないといいますか、第三相試験を日本人でやっていないわけですから、私はそういうふうに考えているんですけれども。

 最初から努力義務をつけるということについての御意見を、岡部参考人と釜萢参考人にお伺いしたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 そこら辺は極めて法律のテクニカルな問題なので、どちらがいいということまで言及できませんけれども、その気持ちとしては、再三再四申し上げているように、御本人の意思がちゃんと確認ができる、いわゆる強制力を持つものではない、この考え方がどんな場合でも必要であろうというふうに思っています。

 三相をやる、やらないということなんですけれども、ほかの医薬品でも、我が国では、もしそれが希少な病気であったり重症な病気であった場合には、我が国でのトライアルや知見が十分ではない場合でも、海外のデータを参考にして、それを取り入れることはできるということになっていますので、これも途中で申し上げましたように、この病気の重症度、広がり度、そういうものを勘案した場合には、必ずしも第三相が全て必要だというわけではないですけれども、基本的なところは、第三相をやって、きちんとデータを評価すべきである、それに加えて、病気の重症度その他を勘案して総合的に決めるものであるというふうに思います。

 努力義務についても同様で、そこの根本にある、個人のノーと言える権利、あるいはイエスと言えるところは十分に残しておいていただきたいというふうに思います。

 以上です。

釜萢参考人 国民の皆さんに国がワクチンを提供し、積極的に受けてもらうというために、そのワクチンの有効性と安全性についてしっかり国が判断をして出してきているということが大前提でありますから、その前提に立つと、やはり多くの国民に受けてほしいということで、努力義務というのが前提になるということは私は理解できます。

 一方で、今回のように、非常に緊急を要して早期に対応しなきゃならないという場合に、得られた情報の中でしっかり判断はするけれども、今後また更に治験を重ねて得られた情報を施策に生かしていかなければいけないという場面を想定して、今回のような、かけないこともできるということがなされているというふうに理解をしておりますので、今の法案の内容について私は賛成であります。

 以上です。

宮本委員 法案の中身というよりも法の運用の話を、私は、適用しないというタイミングを、どこで適用しないようにするのかという議論をさせていただいているわけですけれども。

 ノーと言える権利が大事だと岡部参考人からお話がありましたけれども、ノーと言える権利との関係でこの努力義務というのをどう考えるのかということもあると思うんですけれども、ノーと言える権利と努力義務をつけることがもたらす意味について、これは宮坂参考人と水口参考人にお伺いしたいと思います。

宮坂参考人 努力義務という言葉の定義によると思うんですけれども、文字どおり努力をすることが義務であるというのであるのだったらば、ノーと言えるわけですから、私は、そういうふうにとればノーと言える、考慮される可能性があると思いますので。

 ですけれども、問題は、努力義務というのを違う意味で使われたらば、要するに、逆に言うと、人は努力をしないとけしからぬというようなニュアンスがそこに入ってくると、そういう形での努力義務と言われると、ノーと言いにくくなるわけです。そういう形は極めてまずいだろうというふうに考えています。

水口参考人 法的に言って、努力義務の場合はもちろんノーと言う権利があるわけです。ですので、努力義務だからノーと言えるということは確かなんですが、それを言ったところで、今やはり一番考えなければならないのは現実なんだと思います。権利があるというのと、それを実際に行使しやすいのかということはやはり違うということです。

 私が一番危惧しておりますのは、先ほども申し上げましたように、努力義務がかかっていることによって、例えば、福祉施設、そういうところで、では、入所者の皆さん、努力義務もあるんですから打つようにお勧めします、やってくださいというふうになったときに、やはり拒否するというのはそんなに簡単なことでは、日本の社会の中で、今のあり方の中で、ないのではないか。例えば、自分の会社がなかなか厳しくて、自分の雇用が守られるかどうかというのが厳しいときに、やはりそれをノーというふうに言うというのはそんなに簡単なことではないというのと同じです。

 ですので、現実に、本当に自己決定権を守るようにするにはどうしたらいいかということを考えたときに、やはり努力義務というのが課されているということの意味は非常に大きいのではないか。そのことを考えて、本当にこれが努力義務を課さなければいけないケースなのかということを判断する、それが必要だろうと思っています。

 それについての基本的な私の考えは先ほど申し上げたとおりです。

宮本委員 ありがとうございました。

 皆さん、いずれも自己決定権を尊重するのが一番大事だという点は共通されていたことだと思います。

 その上で、釜萢参考人にお伺いしたいと思いますけれども、私の周りのお医者さんも、お医者さんから打ち始めることへの懸念というのは結構ちらちら聞こえてくるんですよね。やはり、まず何で自分たちからなのかと。報道を見る限りは、ファイザーでも、効果もあるし、安全性も、重大なものは出ていないとは報道されているけれども、日本人ではまだ第三相の試験もやっていないという中で、やはり安全性が日本人の中でも確認されてから打ちたいなというお話もよく聞くわけですけれども。

 今、医療従事者が優先順位が高くなっているわけですけれども、きょうの皆さんのお話から、医療従事者であっても打つ、打たないは本人の権利だということだと思います。

 そういうことを踏まえると、打たないことによって職場でのハラスメントのようなことが起きないようにするには、医師会としてはどういうことをされたらいいとお考えなのか、お伺いしたいと思います。

釜萢参考人 現状においてワクチンに関する詳細な情報がまだ得られていないので、得られている中で考えると、先ほど申し上げましたように、接種後にいろいろ見られる身体の症状等の出現率が割合高いなというところが今前面に出てきています。その重みづけがどうなのかという情報は、今後またより詳しく出てくるんだろうと思います。

 ですから、現状で出た出現頻度などからすると、医療従事者がそれを見た段階で、あれあれ、これは割合出現頻度が高いねというふうに思っているということで、やや接種に対して慎重な意見を先生もお聞きになっておられるのかもしれないなと感じます。

 接種を受けないことによって職場での非常に立場が悪くなったり、やりにくくなったりすることがないようにというのは御指摘のとおりで、それはこれまでもしっかり医師会としてもそのように対応してきたことでありますが、更に今回の件に関して御指摘のことも踏まえて適切にやっていきたいなと今感じております。

 以上です。

宮本委員 ありがとうございます。

 あと、宮坂参考人にお伺いします。

 先ほど善玉抗体、悪玉抗体というお話もありましたけれども、これができるのは個人差があるという話なんですけれども、これは一般的な傾向として人種差というのも、悪玉抗体、善玉抗体が、悪玉ができやすいとか、そういう差というのもあるものなんでしょうか。

宮坂参考人 それについてはほとんどわかっていないと思います。

 今、善玉抗体ははかる方法というのははっきりと統一した方法があるんですけれども、悪玉抗体のはかり方というのはグループによってもはかり方が違っていて、特に、試験管の中で悪いことをしても、それが本当に人の中で悪いことをしているのか、この確認をとるのがなかなか難しい。

 といいますのは、このウイルスの場合には人体実験ができませんから、猿なんかでそういうことをやらないといけない。ところが、しかし猿は人ではないという議論もありますし、それから、猿の一番の問題点は重症化しないんですね。感染は起こるんですけれども重症化しないんです。これはハムスターもフェレットも全て同じなんです。

 ですから、我々としては、動物実験でワクチンを接種して感染予防ができるかどうか、あるいは発症予防がどれだけできるか。感染予防が一番できればいいんですが、感染は防げなくても発症予防ができればいい、発症予防できなくても重症化予防ができればいい、なんですけれども、重症化予防の程度を確かめるいい方法が今ないんです、動物を使っては。

 ですから、あるいは人種差においても、特に欧米人が重症化しやすいのは確かなんですけれども、それが全て悪玉抗体のせいなのかどうかというところもまだ議論が分かれるところなんです。

 ただ、明らかにわかっていることは、重症化する人ほど抗体をたくさんつくっている。これは逆説的なんですよね。抗体がいいものであったら、よくなる人ほど抗体をたくさんつくって、悪くなる人は抗体が少なければいけない。でも、実際の患者さんは、世界じゅうどこでも同じですけれども、重症化する人ほど抗体をたくさんつくっている。善玉抗体も中にいることもわかっているんです。しかし、恐らく、悪玉抗体がたくさんいるために、プラス・マイナス・ゼロになってしまう、あるいは悪い方が勝ってしまう、こういう状況なんだと思うんですけれども。

 残念ながら、それにおける人種差とか、あるいは地域差とか、何がそれに影響するのかとか、もしも免疫系がそこにかかわっているんだとすれば、例えば、人の白血球表面にあるHLAという、我々が持っている白血球の血液型がありますけれども、そういうものが関係しているのかとか、そういうことについてはほとんどわかっておりません。

宮本委員 わかりました。ありがとうございました。

 あと、水口参考人にお伺いしたいと思いますが、指摘の中で、市販後の安全監視のシステムの脆弱さということが指摘されておりましたけれども、被害を広げないためにモニタリングについてどういう仕組みが必要とお考えなのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

水口参考人 先ほど申し上げましたように、有害事象報告について、今、自発報告で、それを上がってきたものをきちっと追跡していくというシステムはありません。やはりここを根本的に、特にワクチンの安全性を確保するという観点からは検討するべきではないかと考えております。

 それともう一つは、やはり情報をできるだけ早く出すというための工夫、これも必要だと考えております。

 被害を拡大させないというのは、先ほど言ったように、安全なものを出すというのは一番なんですけれども、有効性と安全性をしっかり吟味したとしても、やはり市販後に有害事象が起きることは避けがたい部分もあります。

 ですので、そういうものが出てきたときに、例えば、患者さんがこれはワクチンの副反応なんだということがわかるためには、きちっと、このワクチンではこういう症状が出たらそれは有害事象なんですよ、これは副反応なんですよということがわからなければ、それはやはり行動も起こせないし、ワクチンとの関連性もわからないということが起きてくるわけです。副反応は、熱が出たり、局所が腫れたり、誰にでもすぐわかるようなものばかりとは限らないわけで、被害を拡大しないという観点からは、やはりそういう副反応症状についての情報をしっかり出すということ。

 それから、やはり医療機関においても、そのことに対するきちっと対応ができるようにするということは大事だと思います。医療従事者の方には、例えば、新しいワクチンで新しい症状が出てきて、先生方に実は余り今まで見なれたものでなかったときに、やはりそのことにきちっと寄り添って診療していただく、こういう態度はぜひお願いしたいと思っています。

宮本委員 ありがとうございます。

 あと、水口参考人にもう一点お伺いします。

 救済制度も十分機能しない可能性という指摘もありましたけれども、救済制度でいえば、たくさん相談に乗られてこられたと思うんですけれども、どういう点の改善が求められるとお考えでしょうか。

水口参考人 救済制度は、御承知のことと思いますけれども、今、PMDAの救済制度と、それから予防接種法の救済とありまして、それぞれ補償のレベルがちょっと違うんですけれども、基本は、薬害スモンの事件があったときに、薬の被害の救済を受けるのにこんな大変な訴訟をしなきゃいけないのかということで、被害者の方々が創設した制度なんですね。その制度の精神にのっとって、因果関係の認定の姿勢において、やはり、被害者に寄り添った形、有利に判断、余り厳しい因果関係を求めないという対応でお願いしたいというのが一つ。

 それからもう一つは、結構、情報不足とかですね。情報がないならもっと追いかけてほしいなというふうに思うところがあるんですけれども、そういうことで、判定不能とちょっと書きましたけれども、そういうのも多いです。

 今、PMDAの方は救済制度のことについてアンケートをとったりいろいろ検討しているようですけれども、予防接種法の方も含めて、やはり、認定の仕方と、それからあと利用のしやすさの周知徹底というのを一層お願いしたいというふうに考えております。

宮本委員 ありがとうございました。

 今回、予防接種法とあわせて検疫法も改正なんですね。きょう、お話、皆さんからはなかったんですけれども、ちょっと私は懸念していることが一点ありまして、入国規制を緩和しようということでどんどん進んでいるわけです。

 きのうはオリンピックのバッハ会長も見えて、選手、観客について十四日間の待機免除というのが打ち出されたわけです。オリンピックは、海外でのチケットは百万人分売れているということもあります。ですから、十四日間待機の免除というのがなされた場合に、もしその前に日本が感染を一定程度のレベルまで抑え込んでいたとしても、またそこから広がる懸念があるのではないかというふうに思いますが。

 これは、どなたにお伺いすればいいのかと思うんですけれども、岡部参考人と釜萢参考人にお伺いすればいいのかな。

 分科会でも入国の問題はずっと議論になってきていることだと思うんですけれども、こういうオリンピックの扱いというのは相談があったのか、あるいは、こういう動きについてどう見ていらっしゃるのかというのをお伺いしたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 相談があったのかということについて言えば、私はオリパラの新型インフル対策の医療関係のアドバイザーに入っているので、相談は受けています。

 それから、その中で議論されていることでは、ゲームをまず、競技ができるかできないか。それから、それに加えて、それにかかわる関係者、メディアの人がどうするか。それから、次の段階が観客で、どのレベルかということなんですけれども、そこで申し上げていたのは、十四日間待機というようなことを厳守していると、結局、仮に外国から来た場合にはゲームを見ないで帰っちゃうことになるので、それは、観客は来ないでくださいということになると思うんですね。

 ですから、そのときの状況、流行状況に応じて違いますけれども、ただ、普通の観光のように入ってきてフリーにするというのではなくて、何らかの制限をつけたり、あるいは行動の、不自由かもしれませんけれども、普通の観光旅行ではないというような形の上での十四日間の待機を外すということは例外的にも可能ではないか。そんなようなことが今ディスカッションはされています。

 ただ、バッハ会長がどういうふうにおっしゃったのかはつまびらかではないんですけれども、日本は日本のやり方でやっていく必要があると思います。

釜萢参考人 実際に競技に参加される方及びその関係者と、それから観客とはちょっと区別をして考えた方がいいかなというふうに思っておりますが、まず、我が国においての感染の状況がどうなのかということも踏まえて、また今後議論が必要だと思っております。

 分科会ではこの件に関する話は時々出てきておりまして、それに対しては意見を申し述べております。

 以上です。

宮本委員 時間になりましたのでこれで終わりますけれども、ぜひ、分科会でも、オリンピックの扱いについてはどこが司令塔で入国制限の問題もやるのかというのはあるんですけれども、オリンピックのチームで今議論されているということですけれども、やはり私たちからすればコロナ対策全体をやっているのは分科会だという認識でいますので、そこでもしっかり議論していただいて、押谷先生なんかは、やはり入国のところでの検査のすり抜けは必ず起きるんだということも分科会で発言されているのを議事録でも拝見しておりますので、ぜひ対応をよろしくお願いしたいということを申し上げまして、終わります。

 きょうは本当にありがとうございました。

とかしき委員長 次に、青山雅幸君。

青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸でございます。

 きょうは大変参考になる知見を御教示いただきまして、大変ありがとうございました。

 時間がございませんので、早速質問させてください。

 まず、先ほど宮坂先生がおっしゃっていた悪玉抗体、ADE、抗体依存性増強にかかわる話だと思いますけれども、そこをちょっといろいろ調べますと、SARS、MERSでは、やはりワクチンが開発されましたけれども、この抗体依存性増強の問題点があって実用化されなかったというふうにも聞いております。

 今治験が進んでおりますけれども、気になるのは、やはりそこの部分、いろいろな学説はありますけれども、例えば欧米で、先ほども少しおっしゃったような気もしますけれども、抗体依存性増強のせいで重症化率が高いんじゃないかというようなお話もございます。

 現在の第三相の規模の人数でこのADEが起きるか起きないか、これは十分とお考えかどうか、日本における心配等について、宮坂先生と岡部先生にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

宮坂参考人 ADEという現象、すなわち、ウイルス感染によって起きた抗体が感染自体を悪化させてしまうという状態。これは、コロナウイルスでは、新型コロナ以外の例えば先生がおっしゃったSARS、MERSでも、そういう事例がワクチンの開発段階で動物で見られたということもありますし、猫のコロナウイルスでもADEが見られたという報告があります。

 したがって、人間でもそういうことが起きたら困るなというのも我々は心配なんですけれども、残念ながら、それがどのぐらいの頻度で起こるかということに関しては全くわかっていません。もしもこれが例えば一万回に一回ぐらいだとすると、数千人単位で行う第三相試験では結果が出てこないということになりますし、それから、大事なことは、このADEというのは、感染したときに初めて、ワクチン接種者が感染を受けたときに悪くなるかということですから、もしもこれが数千分の一だったら、感染者が数万人出ないとわからないということになるわけです。ですから、それはもう、普通の第三相試験の中では答えは出てこないと思います。

 もう一つの心配は、ワクチン接種者が悪くなるだけじゃなくて、既に抗体を持っている人、実は前に知らない間に感染していた、こういう人が、万が一、ワクチン接種を受けたときにどうなるのか。これは今わかっていないんです。なぜかといいますと、現在、治験に入る、臨床試験に入る人は全部陰性、ウイルス陰性の人がワクチンを受けますので、抗体陽性、すなわち既に感染をした人がワクチン接種を受けたときにどういう状態になるのかというのは全くデータがありません。それは、だから、臨床試験を幾らやっても、今の段階では、感染者は除外していますから、わからないということになります。

 以上です。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 残念ながら、医学の世界では本当に不測の事態というようなこともあり得るので、それに対する、逆に言えば備え、そうなったときにいかに早く見つけるか、あるいはその患者さんをリリーフ、救うことができるかどうかということを考えていかなくちゃいけないんですけれども、不測の事態を全て考えてストップをしてしまうと、今度は逆に病気の方を救うことができない、予防することができない。常にそのジレンマを考えながらやるわけですけれども、どっちが必要かという、そこの議論が必要なことだと思うんです。

 ただ、ADEでいえば、明らかに、自然感染の場合に、ADE、免疫がある人が感染をすると悪くなるというのはデング熱という病気で、これは熱帯地方ではもう日常、それこそインフルエンザのようにたくさんある病気なので、そういう現象が理解されているわけです。しかし、それがワクチンで本当に起きるかどうか。これについては、ちょっとメカニズムは違うんですけれども、子供さんの病気でRSウイルス感染症というのがあって、このワクチンの開発の歴史は、最初にいいワクチンだと思ってつくられたワクチンを接種すると、これは生ワクチンだったんですけれども、逆に接種した子が重症になる、ワクチンのあること自体が問題になるということが後からわかって、開発の方針を変えたといったようなこともあります。

 SARS、MERSでいえば、特にSARSは、病原体が消えうせてしまって、病気もないので、自然界でどういうことが起こるかというのはわからないので、先ほどの動物モデルで判断するしかないわけです。

 私は説明のところでも申し上げましたけれども、ワクチンというのは、やはり、免疫機構をいじくって人間が有利なように働かせるツールではあるんですけれども、免疫機構がわかっていないものについて使うときは、そういう不測の事態も起こり得るんだということを頭の中に入れながら、これは安全だ、安全だ、大丈夫だということではないということは非常に重要じゃないかと思います。ですから、何か一例、不測の事態が起きたときに、物すごい勢いでこれは大変だということじゃなくて、そういうものをきちんと冷静に捉えて判断をしていくという方向性も必要だというふうに思います。

 以上です。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、お二方の御意見をお伺いする限り、やはりADEに対する懸念、心配というのはこれは当然あると。そして、現在の臨床試験、第三相試験の人数などによると、まだそれが起こるかどうかもわからないし、当然大規模に接種すれば起きてくる可能性はある、そういうことだと思うんです。

 私は、このワクチン、今、岡部先生もおっしゃったように、ベネフィットがあれば、もちろんそういった不測の事態もあるけれども、チャレンジしていくというのはそれはいいと思うんですけれども、このコロナの特徴というのは、世代によってそのリスクの度合いが全く違うというのが非常に大きな特徴だと思っています。

 厚労省がなかなかきちんとデータをわかりやすく出してくれていないものですから、うちの方で聞いて調べたんですけれども、まず、これは皆さん御承知のとおりで、二十代未満の死亡者は日本においてはゼロですね、これは春先から。重症者も数がわからなかったものですから、お聞きして調べたところ、六月の三日からのデータしかないようですけれども、十代未満で一人だけ、十代では一人もいないと。つまり、二十代未満では重症化のリスクも極めてゼロに近い。

 そう考えると、私、これはベネフィットとして考えて、二十代未満にこのワクチンを打つベネフィットはあるのかどうか。そうすると、当然ながら、やはり二十代未満は少し控えておいて、十分に検討されてからの方がいいと思うんですけれども、これについても宮坂先生、岡部先生の御意見をお伺いしたいと思います。

宮坂参考人 既に申し上げましたけれども、私は、二十代以下、若年者に対するワクチン接種というのは、今すぐ急ぐ必要はないというふうに考えております。

岡部参考人 私も途中で申し上げましたように、対象をはっきり、明確にしておくということはそういう意味であって、特に小児あるいは二十歳未満ということでいえば、感染者はいないわけではないんですけれども重症化は非常に少ないということであれば、仮に副反応が少し出てきた場合のことを考えれば、今すぐ対象にはならないと思います。

 ただ、疫学的に本当に小児に少ないかどうかというのはこれからの流行の度合いによっても違ってくるので、そこは、大丈夫だ、大丈夫だといって何もしないのではなくて、きちんと疫学状況を見ていく必要はあるというふうに思います。

 それから、治験の段階でも、小児について、妊婦という話もありましたけれども、小児、妊婦というのは治験の対象になっていませんので。それがなっていないのに、これを接種対象にすぐ入れるということは、これは必要ないのではなくてやらない方がいいと思います。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 今、岡部先生、お話ありました妊婦の話です。

 先日の厚労委員会で、十八歳未満の第三相試験、海外で行われている状況をお聞きしまして、きょうもお話で出ましたけれども、アストラゼネカとモデルナはたしか十八歳未満はやっていないので、もうそもそも承認の対象となり得ないのではないかというお話がございました。ファイザーは十二歳以上があるものですから、そこの部分、私、危惧はしておりますけれども、十二歳から十八歳が入ってくる可能性がある。そして妊婦。今、岡部先生がおっしゃったとおり、やっていないんだけれども、これは注意書きという形で一応対象にはなるというふうに大臣の方で補足して答弁されたんですね。

 今、岡部先生の方は、打つべきではないというような御意見を御開示いただきました。宮坂先生、そこの辺、どういうふうにお考えでしょうか。今、妊婦について御意見をお聞かせください。

宮坂参考人 今まで申し上げたとおりで、特にそこに足すことはございません。岡部先生がおっしゃったとおりで、私も同じ意見であります。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、両参考人とも、妊婦それから未成年者については非常に慎重にあるべきだという御意見だというふうに伺っていますが。

岡部参考人 私が申し上げたのは、禁忌という意味ではないんですね。やはり、妊婦さんは、年齢にかかわらず、幅が広い年齢層ですから、そこでもしリスクであるということが考えられるならば、逆にこれは、希望があればできる余地は残しておいていいと思いますけれども、一斉にこれがオーケーだというような形には持っていくべきではないというのが私の申し上げたかったことです。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 それで、更にもう少し妊婦についてお伺いしたいんですけれども、気になるのは、やはり妊婦さんですと催奇形性とかの問題があると思います。これはしばらくたたないとわからないと思うんですね。そういうものがあったのかどうなのかというのはすぐに結論が出る問題だとは思わないんですけれども、その辺についてどういうふうにお考えなのか、やはり岡部先生、宮坂先生、御意見を教えてください。

岡部参考人 理論的には、生ワクチンでなければ、胎児に対する直接的な影響は極めて少ないというふうには思います。

 しかし、医薬品としての成分なので、そこを全くなしに頭の中だけで考えて大丈夫だということではなくて、そこはきちんとした科学的な答えを持って、もし必要ならばその時点で進めるということが必要だと思います。

 繰り返しますけれども、それは、リスクを知りながら、やはり病気の方が危ないんだというふうに考える方には、道具として使えるような余地は残しておいた方がいいというのが私の考えです。

 以上です。

宮坂参考人 妊婦あるいは母体に、あるいは胎児に対してワクチンがどういう影響を持つのか。これまでは、生ワクチンでないと恐らく影響は少ないだろうと言われていたんですけれども、免疫学的に考えますと、できてくる抗体は、IgM抗体とIgG抗体、二種類ができてきます。特に免疫の後期ではIgG抗体ができる。これは胎盤を通過します。したがって、胎児の中に入り得ます。したがって、理屈から考えると、もしも胎児の例えば神経系に対するような抗体をつくるようなワクチンというのは、母体にも影響を及ぼしますけれども、胎児にも影響を及ぼす可能性というのはあります。

 ところが、こういうものはそのための動物実験をしないとわかりませんし、人に関しては、妊婦さんに実験するわけにいきませんから、そして、通常は第三相試験の中に妊婦さんは入ってきませんので、これはもうやっていきながらしかわからないということになります。

 しかし、これまでの開発されてきたワクチンの中でそういう可能性を示しているものはほぼないというふうには考えていますけれども、これまで使ったことのないRNAワクチンであるということを考えると、注意して使うべきであるというふうには思います。しかし、それをもって実施を妨げるものではないのではないかとは思います。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 あと、確認なんですけれども、きょうも何度か言葉が出てまいりましたけれども、ファイザー社の第三相試験の有効性の発表でも、あるいはモデルナ社の発表でも、ワクチン接種群からも発症者が出ているようですね。そうしますと、有効性という意味で発症予防効果はあるにしても、感染予防効果はないというのは既に実証されているように私は考えているんですけれども、その点について、岡部先生、宮坂先生、どういうふうにお考えかを伺います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 きちんとした、その試験がオープンに、キーボックスというものがオープンになって、最終的な第三者的な評価が得られていないので、私も、今聞いているのはメディアから入ってきている情報だけなので、それをもっていい悪いは、ちょっと今のところは言えないと思います。

宮坂参考人 私も全く同じ意見でして、現在は、今までのデータをもとにして想定をすると、私が最初のお話でもしましたように、恐らくプラセボ群とワクチン群でこういう感染者の数なんだろうなということが推定されるというだけであって、実際にそのデータは示されているわけではないんですね。それは示してはいけないデータなんです、実は。

 ですから、それを、推定したデータのもとにいろいろなことをお話しするのは難しいんですけれども、ただし、一般的なことを申しますと、ワクチン接種群だからといって感染が起こらないワクチンは皆無です。必ずどのワクチンでも、ワクチンを接種するんだけれども病気は起こってしまう。それがどのくらい抑えられるか。

 例えば、おたふく風邪、はしかのワクチンだと、リスクはもう本当に二%とか三%とか、物すごく小さくなる。九七%、八%の人には効果が出るということがありますけれども、よく効くワクチンでも、しかし、ワクチンを打っても感染者はまれに出る。

 今回のワクチンの場合には、先ほども申し上げたように、具体的な数字は、推測するだけでわからないわけですから、この点に関しては議論をしない方がいいだろうというふうに思っています。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 現段階では、いずれにしろ推測で物を言うしかないところがございまして、ただし、科学者である先生方には、そこら辺、厳密にお答えいただいていると理解しております。

 その上でお伺いするんですけれども、ワクチンを打つ、打たないの差別の問題が起きては困るというのは先生方もお考えのところでしょうし、きょう、委員の皆様も同じお考えだったと思います。

 今先生がおっしゃったように、一般的に、感染予防が一〇〇%できるわけではない、それから、感染はしながらも、もしかしたら無症候であるだけだという可能性は十分にあると思うんですね。そうしますと、この新型コロナの場合では、無症候の感染者であっても他人に感染させる力はあるというのが一般的な考え方、今まで論文などを見るとそういうふうになっていますし。ですから、我々も、熱もないのにこうやってマスクをしているんだと理解しています。

 そうしますと、そこの部分を本当によく言わないと、例えば同僚の議員なんかでもそこを勘違いしている人がいて、ワクチンを打ってもらわなければほかの人に感染させちゃうから困るよという人もいるわけですね。そこを非常に十分によく告知して、感染自体を防げるわけじゃないから、ワクチンを打ったからといって、誰かに無症候であって感染させる可能性はあるんだから、ワクチンを打たないと会社に出てきちゃだめだよ、イベントに参加しちゃだめだよとか、そういうようなことはする必要がないんだということをぜひ政府がPRすべきだと思うんですけれども、その点について、また済みません、岡部先生、宮坂先生、御意見をお聞かせください。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 大変申しわけないんですけれども、データがないので、科学的にいい、悪いはきょうこの場ではとてもお答えができません。きちんとしたデータを見て、もう一度呼んでいただければ、そのときにお話をします。

宮坂参考人 お答えは同じです。

 先ほども何度も申し上げていますけれども、データを推測でしか我々は、出てくるやつはそういうデータしかない段階で、このワクチンの感染予防効果はどのくらいかとか、発症予防効果はどのくらいかと議論をすると、どんどんどんどん間違った方向に行く可能性もありますので、ここは議論を避けた方がいいと思っています。

青山(雅)委員 大変正確なお答えだと思います。

 では、逆に、こういうふうにお答えしたらいかがでしょうか。これを最初、第三相試験が終わった後にするときに、これは感染予防効果もあるんだから全国民打つべきだとか、あるいは、そういうような形で企業なり何かが取り扱っていくのはまだ時期尚早というふうに考えられると思うんですけれども、そういう一般論的な考え方としてはいかがでしょうか。両先生にお伺いしたいと思います。

岡部参考人 一般的な議論としてお答えさせていただきますと、日本環境感染学会というのがありまして、私はそれの予防接種の委員長をやっていたんですけれども、医療従事者に求めるワクチンというのが幾つかあって、こういう状態のときはやはり医療従事者はやってもらいたいんだというようなガイドラインを出しております。

 ただし、そこには、本人が不利にならないように、あるいは本人が、あくまで強制的ではないということをきちんと伝えた上で医療従事者にはやってほしい。ただし、医療従事者は一般の人よりは認識を高く持つ必要があるし、それは自分を防ぐだけではなくて、ほかの人を防ぐ可能性がある、ほかの人にうつらない可能性を持たなくちゃいけない。

 それは、今のワクチンについてもやはり同じことであるというふうに言えると思います。つまり、強制力を持つものではない。しばしば申し上げているようなところで、そこはぜひ守っておくような形でできるようにしていただければと思います。

宮坂参考人 これも何度も申し上げていることなんですけれども、もしも例えばワクチンの有効率が九〇%だったとしても、問題はどのくらいの副反応のリスクがあるかということで、ここが読めないわけですから、ワクチンの有効率のみで、じゃ、あなたは打ちますかとか、ほかの人に勧めるべきですかということは議論ができないということを何度も申し上げているんですが。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 大変参考になりました。そういったことを踏まえて、やはりいろいろな意味での広報であるとか正確な知識の理解が我々も必要だと思いました。

 ありがとうございます。

とかしき委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十八日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.