衆議院

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第4号 令和4年3月9日(水曜日)

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令和四年三月九日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 齋藤  健君

   理事 高階恵美子君 理事 牧原 秀樹君

   理事 山井 和則君 理事 柚木 道義君

   理事 池下  卓君

      畦元 将吾君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    加藤 勝信君

      加藤 竜祥君    勝目  康君

      川崎ひでと君    後藤田正純君

      塩崎 彰久君    鈴木 英敬君

      鈴木 憲和君    田村 憲久君

      高木 宏壽君    土田  慎君

      西田 昭二君    野中  厚君

      長谷川淳二君    深澤 陽一君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      柳本  顕君    山口  晋君

      山本 左近君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    中島 克仁君

      長妻  昭君    野間  健君

      山田 勝彦君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      金村 龍那君    吉田とも代君

      山崎 正恭君    吉田久美子君

      鈴木  敦君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   厚生労働副大臣      古賀  篤君

   厚生労働大臣政務官    深澤 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         村山  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    田原 克志君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           小林 洋司君

   参考人

   (独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)    尾身  茂君

   厚生労働委員会専門員   大島  悟君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     野中  厚君

  後藤田正純君     五十嵐 清君

  佐々木 紀君     鈴木 憲和君

  土田  慎君     山口  晋君

  田中  健君     鈴木  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     後藤田正純君

  鈴木 憲和君     加藤 竜祥君

  野中  厚君     加藤 勝信君

  山口  晋君     土田  慎君

  鈴木  敦君     田中  健君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     宮澤 博行君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     佐々木 紀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人地域医療機能推進機構理事長尾身茂君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官村山誠君、健康局長佐原康之君、職業安定局長田中誠二君、雇用環境・均等局長山田雅彦君、社会・援護局障害保健福祉部長田原克志君、人材開発統括官小林洋司君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がございますので、順次これを許します。一谷勇一郎君。

一谷委員 皆さん、おはようございます。日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず冒頭、ウクライナの情勢について。朝もテレビを見ましたが、やはり、多くの市民の方が亡くなり、そして子供にも被害が及んでいると。私も幼い子供を育てる親として大変痛ましい気持ちになっております。どうか皆様、そして政府におかれましては、できる限りの外交努力をしていただき、一日でも早い解決を強く望んでまいります。

 それでは、我々日本維新の会は、マニフェストの柱として維新八策を掲げております。その中で、挑戦する人たちを後押しする、チャレンジのためのセーフティーネット、大胆な労働市場の改革、そして社会保障の改革、併せて唱えております。今回のこの一部法案の改正に対しては大変重要な位置づけになりますので、その思いで質問をさせていただきたいと思います。

 まず、職業能力開発推進法、都道府県単位の協議会について御質問をさせていただきます。

 雇用保険法の一部を改正する法律案、提案理由の説明の中に、職業能力の開発及び向上の促進のため、地域の実情に応じた取組が適切かつ効果的に実践されるよう、都道府県の区域ごとに関係者による協議会を組織する仕組みの創設等を行うとしています。

 これまでの協議会では、主にハローワークの求人、職業情報によりニーズを把握しているため、短期的で大まかな人材ニーズの把握にとどまっていたと思われます。協議会の法定化に伴いどのような運営の改善が図られるのか。その運営については国においてどのように関与をしていくのか。また、協議会においては、女性、シニア、障害の方、NPOなどの意見も取り入れるべきではないかと考えています。さらに、構成員に対しては守秘義務が課せられるとのことですが、それによりどのような効果がもたらされるのか。御質問をさせていただきます。

小林政府参考人 お答えいたします。

 離職者向けの職業訓練でございますが、訓練受講者の就職の促進に重点を置いて取り組むということで、これまで、ハローワークへの求人の状況を中心に、地域訓練協議会において把握したニーズを踏まえてコース設定を行ってきているところでございます。今般法定化する協議会におきましては、産業界などから、地域における今後の産業展開も踏まえたデジタル化の急速な進展ですとか、地域の詳細な訓練ニーズをしっかりと把握いたしまして、精度の高い教育訓練の設定を効果的、効率的に進めてまいりたいというふうに考えております。

 また、本協議会でございますが、必要と認める者についても構成員として参画できるということになっておりまして、御指摘ございましたような様々な立場の方の御意見を伺うことも可能な仕組みとしております。

 さらに、構成員に対しましては守秘義務を課すことによりまして、訓練受講者ですとか採用企業などから個別事例を含むヒアリングも行いながら、訓練効果の把握、検証をしっかりと行い、カリキュラムの改善につなげていきたいというふうに考えております。

 本協議会は、都道府県や労働局が中心となって運用することとしておりますが、厚生労働省におきましても、運用状況の把握、見える化、必要な助言等、行ってまいりたいと思います。

 こうした取組を通じまして、これまで以上に効果的な人材育成の推進に努めてまいりたいというふうに思います。

一谷委員 ありがとうございます。

 私は、このフロアを見てみましても、圧倒的にやはり男性の方が多いというところで、やはり女性の方の参画をできるだけ増やしていただきたいとは思っております。また、世代間の考え方の違い、私、民間で自ら経営も行い、いろいろな方にお会いしますが、世代間での考えの違いもあります。特にZ世代なんかは生まれたときからもうスマートフォンがある、そういった考えの違い、そして、世界のイノベーション、新しい産業を生み出すのはやはり二十代の方ではないかと思っておりますので、そういった若い方のこの協議会への参画も促していただきたいと思いますし、この協議会が求人のハローワーク、職業訓練についての肝になる部分だと思いますので、注力をして今後も見ていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次の質問に入らせていただきます。

 同じく職業能力開発推進法、職業訓練の成果設定について大臣にお聞きしたいと思います。

 今後、労働人口が減少する中で、職業訓練を通じて一人当たりGDPを高めていくという視点も重要だと考えます。そのためには、法定化される協議会においても、政策効果を把握するためのフレームワークを定め、KPI設定をするなどして運用していくことが重要と考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

後藤国務大臣 委員御指摘のとおり、一人当たりGDPを高めていくためには、効果的な職業訓練を通じて働く方のスキルアップを図り、生産性を高めることが重要であります。

 今般法定化する協議会には、労使団体、教育訓練実施機関、民間職業紹介事業者、労働局、都道府県など多くの関係者に参加していただきまして、デジタル化などの地域のニーズを反映した訓練コースの設定を促進するとともに、訓練効果の把握、検証を通じて訓練内容の改善を図るなどの役割を果たしてもらうことを考えております。

 協議会の実施に当たりましては、委員の御指摘のように、政策効果をしっかりと把握することが重要であります。各都道府県の職業訓練の就職率や訓練コースの定員充足率などを目標として定めることを検討し、より効果的な職業訓練の実現に努めてまいりたいと思います。

一谷委員 今まで、公共訓練、職業訓練なんですけれども、やはり、就職率だけで見てしまうと、職業訓練を受けたその業務と違う職に就いても就職という扱いになります。また、職業訓練を受けた方の就職率と受けなかった方の就職率、こういったことを測るのは非常に難しい状況だと思います。

 また、政策を始める際に、その政策のアウトカム評価、評価をするためのフレームワークを同時につくりながら進めていかなければ、政策が進んでから、時間がたってから評価をしてくださいと言ったところで、なかなかこのフレームワークを作るのが難しいという意見を、昨日、経済学者の方からお聞きをしました。

 この経済学者の方も、今のデータ、今公表されているデータではなかなか公益の訓練が生きるかどうか分からない、できれば、就業構造基礎調査、これの集計されたものは出ているんですが、これの個票と言われるマイクロデータ、そういった細かいところのデータさえ示していただければ、この経済学者の方は、分析をしていけるというふうに話されておりました。

 この個票については、名前や個人情報は隠しても構わないということでしたので、できましたら、先ほどの協議会の参画される方々の中にこういった分析に明るい経済学者の方も入れていただき、分析をしていただきたいと思います。

 そして、これから、人口が三十年間減り続ける中で、GDPは維持していかなければなりません。おのずと、どれぐらいの生産力を上げないといけないのか、生産人口が一年当たりどれぐらい稼ぎ出さなければいけないのかは数字で出てくると思いますので、そういった目標をつけ加えていただけたらと思っております。

 では、続きまして、職業安定法、早期離職に対する紹介手数料についてお伺いをさせていただきます。

 今回の法案では、求人メディアに対して、届出制創設や求人情報の的確な表示等の義務が設けられることとなっております。これは労働市場の適正化の視点から必要なことと考えています。最近は、IT技術を活用した新しい求人メディアが多数生まれており、これを利用して希望にかなった職に就く方が約三割と、採用経路の中では最大になっております。しかし、今回のこの法案に対して、イノベーションを阻害するようなことがないのか、厚生労働省の見解をお伺いさせていただきます。

田中政府参考人 今回の職業安定法の改正については、労働政策審議会において公労使で御議論いただいて、建議をいただいておりますけれども、その中でも、今回の募集情報提供事業に関するルール整備に関しまして、労働者になろうとする者にとっても有益なイノベーションを阻害することのないように留意することが必要であるという基本的な考え方をお示しいただいております。

 これを踏まえ、今般の改正法案では、募集情報等提供事業について、IT技術の発展により求職者にもメリットをもたらす可能性のある多種多様なサービスが登場することを妨げないなど、労働政策審議会の建議で示された基本的な考え方に沿って、届出制などの制度設計を行ったものでございます。

 今後も、この届出や事業概況報告書の内容について、事業者の過大な負担とならないよう留意しつつ、改正法の効果的な施行を図ってまいりたいと考えております。

一谷委員 やはり事業者にとって余りに負担になるというところは控えていただけたらと思いますし、やはり、国が定める規則として、多くの規則の中で、必要でないのかなと思うようなところの記載も多くなる傾向にあるんじゃないかなと思いますので、そこら辺はできるだけ簡単な登録方法にしていただけたらというふうに思っております。

 では、続きまして、職業安定法の早期離職に対する紹介手数料について御質問をさせていただきます。

 私は、長らく、医療と介護の分野で二十年間仕事をし、経営も行ってまいりました。その中で、特に医療、介護の分野での離職がやはり多い。どうしても紹介の会社に頼らなければならないのですが、その際の手数料が経営に大きな負担になっております。この点について何らかの対策が必要ではないかと考えておるんですが、お考えをお聞かせください。

田中政府参考人 厚生労働省といたしましては、求人者の方々のニーズに合った職業紹介事業者を安心して選択できる環境を整備することが重要と考えております。

 このため、平成三十年一月から施行された改正職業安定法に基づき、手数料などの情報開示を義務づけるとともに、職業紹介事業の利用者である医療、介護、保育分野の業界団体等が参加した、医療、介護、保育分野における職業紹介事業に関する協議会におきまして適正な職業紹介事業者の基準を策定しまして、今年度より、基準を満たす事業者を認定する制度の運用を開始したところでありまして、現在、三十五事業者を認定したところでございます。

 こうした取組を通じまして、利用者が優良な職業紹介事業者を選択することが可能な環境を整備することによって、労働市場において職業紹介事業者が適切に役割を果たしていけるようにしてまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 厚生労働省が、人材サービス総合サイトというものを用いて、優良人材紹介業をやっておられる三十五社、これを告知されておる。これは昨年の十一月から開始ですかね。ただ、多くの方がこれを知らないんじゃないかなというふうに思っております。ですから、ここをしっかりPRするのが大事じゃないかというふうに思うんです。

 また、紹介料については、余りに厳しい設定をしてしまうと、介護や医療に対しての人材の紹介が少なくなってしまうという本末転倒にもなりかねないと考えております。

 ただ、実際、今、この三十五社だけでは、我々、資格制度ですので、余剰のスタッフも抱えなければなりません。資格者の方が休んでしまえば運営ができないという状況になりますので、より多くの求人を求める。それに対して三十五社では、やはり現実的に無理だというような声も聞いておりますので。

 もちろん優良なところを評価していくシステムも大事なんですけれども、できるだけ、まあ、悪徳業者も実際あると思います。私も、自ら運営しながら、特に看護師さんがやはり辞められることが多い。なかなか看護師さんの採用が難しいんですが、就職していただいて、そして、一か月、二か月、長くても半年ぐらいで辞めて、また次に移っていくということもあります。これは二〇一八年の雇用保険の改定でも一部改定をしていただいたと思うんですけれども、更なる、罰則を作るというのは考え物だと思いますが、少し検討していただけたらと思うんです。

 やはり、医療、介護の分野、これから裾野を広げていかなければいけないときに、もちろん事業所側も働きやすい環境というのをつくらなければならないと思うんですが、先ほど話されていた協議会の中で、この改定の中で、キャリアコンサルタントを事業所に求めるということもありました。私は、職業紹介をされる職業業者にもやはりキャリアコンサルタントの方がいらっしゃって、いいマッチングができるような取組をしていただくと、早期離職も減ってくるのではないかなというふうに思っております。

 実際、私が関わらせていただくような人材紹介会社は、しっかりそこ、キャリアコンサルティングをして、なるべく離職をさせないような取組もしていますので、キャリアコンサルタントの方に活躍していただける幅を、是非職業の紹介会社にも広げていただけたらなというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 では、続きまして、雇用保険法の、令和七年以降の育児休業給付について御質問をさせていただきます。

 現在の育児休業給付について、育児休業開始から六か月目までは休業開始前の給与の六七%水準となっていますが、七か月目からは五〇%水準までに下がります。これがなぜ五〇%水準に下がるのかというところをお聞かせいただけたらと思います。

田中政府参考人 雇用保険法に基づきます育児休業給付は、累次の制度改正によりまして拡充を行ってきております。給付率については、平成二十六年に、改正前の一律五〇%から、最初の六か月間について六七%にするという改正を行っております。

 最初の六か月間とした理由は、女性と比べて男性の育児休業取得率が低い中で、六か月という期間に限って給付率を六七%に引き上げることにより、女性だけでなく男性も育児休業を取得するインセンティブを高めるという趣旨でございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 実は私の運営していた会社でも、男性の管理者が育休を取りました。それを取りに行くときに、一年間取らせていただきたいということで、どうぞどうぞと言ったんですが、やはり五か月目で帰ってきました。それはやはり、六七%から五〇%に減額されるのが家計的に痛いというようなことでした。

 平成二十六年に五〇%から六七%に上げていただいたんですけれども、もうこの改定から八年がたち、どちらかというと、六七%から五〇%に下がっていくようなイメージがあると思うんです。ですから、この辺のやはり告知も大事だと思いますし、もう一つ大事な視点は、育児休業の給付はあくまで、職を続けていただく、そして離職をさせない、そういった目的だと思うんですが、働いている方々は、なかなかそこが認識されていない方も多いんじゃないかなと。実際問題、育児休業を取って、育児休業が終わった瞬間に会社を辞めてしまうという事例も見受けられますので、この辺は少し考えていく余地があるのではないかなというふうに思っております。

 続きまして、同じ雇用保険法の中の、七か月目からの育児休業についてなんですが、令和七年以降、財源がもたないというふうなことが言われております。この財源がもたないということに対して、やはり不安になって、育児休業をなかなか取らないという方も出てくるのではないかと思うんですが、この財源が足らないということに対してどのような対策を取っていかれるのか、御質問をさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 この育児休業給付の在り方についても、今回の法改正に先立ちます労働政策審議会で公労使の御議論をいただきました。その中で、今後の収支の見込みにつきましては、令和六年までは運営が可能ということになっております。しかしながら、七年以降については、その収支状況についてマイナスが出る可能性があるということでございます。

 そのため、育児休業給付制度については、六年度までにその後の姿について更に検討をするということで、今般の改正法においても検討に関する規定を盛り込ませていただいているところでございます。

一谷委員 やはりここは、雇用保険の中では、離職をさせない、継続するというところでの給付なんですけれども、できましたらほかの財源も考えていただいて、半年たって七か月目以降、五〇%に下がる、そこから違う給付をまたいただくような検討もしていただけたらと思いますし、どうしても、令和七年度以降、財源が足らずに育児休業が取りにくいんじゃないかという話がメディア等で流れますと、なかなか、育児休暇を取ろうということもされることが少なくなってくるのではないかなというふうに思っておるんですね。男性の育休も大分取得率も上がってきていると思いますし、やはり、これからの少子化の対策に対して、雇用保険の中そしてほかの財源を使っての育児休業の継続、これは非常に重要だと考えておりますので、どうか検討していただけたらと思います。

 我々は、これからの人口の減少を考えまして、どのようにしてGDPを維持していくか。そして、若い方々に負担をかなり課していきます。これから、やはり成長する産業に投資をしていくということも大事じゃないかなと思っております。これは、ある程度やはり政府主導で導いていくということが大切じゃないかなと思っております。世代間の考えの違いもあります。こういったところも考慮していただいて、できるだけ働きやすい、そして、これからは海外の方も働きに来られると思いますので、その海外の方も働きやすい環境をつくっていけたらと思っておりますので、この改定が更に日本の成長につながるように、皆さん、党派を超えてお力添えをいただいて考えていけたらと思います。

 以上が私の質疑になります。どうも、皆さん、誠にありがとうございました。

橋本委員長 次に、金村龍那君。

金村委員 皆さん、おはようございます。日本維新の会、金村龍那です。今日は、どうもよろしくお願いいたします。

 私からは、雇用保険の一部を改正する法律案に対する法案質疑について質問をさせていただきます。

 私は、今回の衆議院選挙で初当選をいたしましたが、その前は、八年間、発達障害児を支援する事業所を経営してまいりました。なので、コロナがスタートした段階は二足のわらじでした。日々政治活動もしてきたんですが、やはり一番頭を悩ませてきたのは、どう事業を継続して、そして障害児支援、その御家族のサポートにつなげていくのか。そういった中で、雇用保険制度の中で特例措置があったおかげで現場が安心して働けてきた事実、それは現場を預かる者として非常に実感があります。なので、事業者の立場としては非常に深く感謝をしたいと思います。

 その上で、どこかでやはり次のステージへ向けたスタートダッシュが必要だという意味では、今回の改正案というのは、私は非常に理解をしております。

 一方で、コロナ禍が始まって、やはり事業を継続するために融資を受けなければならなかった企業の皆さんやそういった方の、いわゆる返済がそろそろスタートする段階でもあります。飲食店を経営する友人とかは、この返済が始まることを、どうやって事業に含めてしっかりと経営していくのかということに頭を悩ませている人も非常に多くいるのが実態です。

 そんな中で、失業等給付に関わる暫定措置の継続等について、緊急事態措置終了日から一年後と期間を設定したことについて、根拠や、そしてその周り、周辺のことも含めてお答えいただければと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 雇用保険におきましては、今回のコロナ禍においてたくさんの特例措置を行ってまいりましたけれども、おっしゃるとおり、徐々に元に戻していく部分も必要だということは私どもも認識しつつ、引き続き厳しい部分については丁寧に対応していきたいと考えております。

 そこで、今の御質問の、緊急事態措置から一年の後に期限を設ける根拠ということでございます。

 新型コロナウイルス感染症等の影響による求職活動の長期化等に対応するために、新型コロナの影響により離職した方については、要件を満たす場合には基本手当の所定給付日数を延長して給付をすることとしているところでございます。

 この点について、緊急事態措置が終了し一定期間が経過した場合には、新型コロナの影響により求職活動が制限されるような状態も相当程度減少すると考えられますことから、今回、緊急事態措置の終了から一年経過時を終期とする改正を行うこととしているものでございます。

 なお、この一年で区切った理由は、雇用保険におけるほかの延長給付制度においても、その起点から一年を延長給付の期限としていることなどを踏まえてこの改正内容としたところでございます。

金村委員 ありがとうございました。やはり次へ向けてということだと認識しておりますので、不測の事態が起きたときに速やかに対応できるようにということをつけ加えて、私はこの改正については理解を示したいと思います。

 加えて、失業等の給付の基本手当に関わる新規措置の部分です。

 私、高校生の就職活動に非常に問題意識を持っておりまして、以前、厚生労働省の方と意見交換させていただきました。その中で、いろいろお話を聞いてみると、職業訓練等に非常にハローワーク等を通じて力を入れているという実態を改めて把握することができました。しかし、それがしっかりと求職者に届いているかといえば、なかなか難しいのも一方であると思います。

 つまり、今回、この新規措置そのものは私、非常にすごくいいことだと思うんですね。失業した方が、求職中にやはり独立をしようとか事業を始めてみようとか、それが失敗に終わった後にもまた失業給付を受けられるというのは、チャレンジしやすい環境につながると思っています。でも、働いている間にこの制度を理解していれば、もっと独立を促すことにつながるかもしれない。

 そういった意味では、周知徹底をやはりしっかりとしていかなければ、せっかくいい制度があっても利用者が増えない実態というのが私はあると思っています。なので、この新規措置について、どのように周知徹底をして実際に経済や環境にいい好循環を与えていくのか、そういったことについて少しお尋ねをさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 今回の雇用保険法改正においては、事業を開始する雇用保険の受給資格者に係る受給期間の特例制度を創設することといたしております。

 その制度周知についてですが、本特例の対象者は雇用保険の受給資格者であることから、まずは、雇用保険の受給資格決定時や雇用保険受給者初回説明会の機会を捉えて、雇用保険受給資格者のしおりや周知リーフレットを活用し、全ての受給資格決定者に対して周知を図ることを予定しております。

 また、委員御指摘のとおり、失業者に対するアナウンスだけでなく、在職者も含む、社会全体への周知も重要と考えております。

 厚生労働省や都道府県労働局のホームページやツイッターによる周知、労使団体、自治体、関係団体等を通じた周知として、団体等が発行する広報誌への掲載依頼、団体等のホームページへの掲載依頼など、必要な方にしっかりと支援が行き届くよう、制度の趣旨を含めて、事業主、労働者双方に対して、丁寧に周知を図ってまいりたいと考えております。

金村委員 この周知徹底等によって、本当に、働き方だったり選択肢、そういったものに大きな影響が与えられると思いますので、是非しっかり頑張っていただきたいと思います。

 加えて、私、よく厚労省の方とお話しすると、本当に、ざれごとのように、著名人を広報官に雇ってはどうかというお話すらしているんですね。そのぐらい、アピールすることにしっかりと力を入れていただきたい。

 それは、私が障害児支援をしてきたということもやはり関係しておりまして、やはり、この厚生労働行政に対して非常に僕は愛着があるんですね。愛着があるからこそ知る情報というのがたくさんありまして、そういった知れる人だけが知る情報ではなくて、広く皆さんに周知していただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 雇用調整助成金ですけれども、実際、私の職場は、障害児支援の現場は、そのまま事業が継続してまいりましたし、早いタイミングで厚生労働省が御対応いただいたこともあって、雇用調整助成金を必要とする従業員というのはいませんでした。

 ですが、この雇用調整助成金によって多くの方が安心、安全な環境、暮らしを守られたという事実は多くあると思います。本当に御努力されたことだと思います。

 その上で、元々、雇用保険制度そのものはやはり失業給付が私はメインだと思っておりますので、休業支援に余りにも偏りが生まれると、そもそもの雇用保険制度そのものにゆがみが生まれるということと、一方で、余りにも休業期間を据え置いてしまうと、やはり実態として働く市場のゆがみだとか、あとは、例えば成長産業でしっかりと労働移転が行われないとか、そういった問題点は含まれてしまうと思います。

 そういった中で、休業期間を令和四年度末とした根拠、これも、先ほど失業給付のところでお伺いした、緊急事態措置終了日の一年間という期間設定と同様に、次へ向けたスタートラインだと認識しておりますが、改めて、この令和四年度末とした根拠についてお伺いさせていただきます。

田中政府参考人 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けまして、企業の雇用維持支援のために雇用調整助成金の特例措置を講じることと併せまして、特に、中小企業において休業手当の支払いもままならない状況が見られたことから、コロナ禍における異例の対応として、労働者個人に直接支給をする休業支援金・給付金制度を創設したところでございます。

 雇用調整助成金の特例措置につきましては、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく方針としておりますが、今回の法案では、当面の措置として、令和四年度において、中小企業の基本手当日額の上限を超える部分について、一般会計により負担する仕組みを継続することとしております。

 これと併せて、休業支援金につきましても、雇用調整助成金の特例措置の取扱い等に対応する形で制度の在り方を検討することとし、当面の対応として、令和四年度においては制度として存続させることとしたものでございます。

金村委員 やはり、雇用保険制度から見ると、コロナ後を見据えた改正が幾つも出てきているということなんですが、実際に今、東京都であれば蔓延防止措置が適用されている。その中でも、例えば先ほどの失業給付のところで一例を挙げさせていただきましたが、飲食店の返済、飲食店というか企業の融資を受けた際の返済がそろそろスタートするということで、その見据えたスタートラインと実際の町というか人々の暮らしというものは少しミスマッチが起きているのかもしれませんので、しっかりと緊急時にまた対応できるようなシステムは少し残していただきたいなと思います。

 その上で、お手元の資料を御覧いただきたいんですが、まあ少し、働くこととか雇用情勢とかそういったところを広く見させていただく中で、以前より私が問題意識を持っていたのが、この霞が関の働き方改革になります。

 お手元の資料、内閣官房の資料になりますが、霞が関の存続の危機ということになっています。やはり、私がこの数字を改めて見て実感したのは、志望者がそもそも六割減ってしまっている。二十代の総合職に就かれた方の離職割合がこの六年で四倍以上、三十歳未満の男性職員については七人に一人が早期離職意向と、非常に危機的な状況だと認識しています。

 その上で、これだけ志望者が減っているにもかかわらず、実は厚生労働省を希望される方についてはそんなに数字が減っていないとお聞きしています。

 つまり、私も、先ほど来申し上げているとおり障害児支援をしてまいりました。やはり、医療、介護、福祉、こういった産業に興味を持ち、そしてその中で自己実現を果たしていくという思いを持った人というのは、例えば厚生労働行政においても志望者は減っていないのであれば、やはりそのマインドとして、そういう行政の中で体現したい、例えば我々の現場であれば障害児支援をしたい、そういった人たちの努力や善意を仕組み化してしまうことが一番怖いんじゃないかなという認識があるんですね。

 つまり、これぐらいの努力ができるだろうという努力指数で働き方のルーティンをつくってしまうと、皆さんが長時間労働とかを前提とした仕組みになってしまう。

 だから、私がやってきた障害児支援の現場であれば、できるだけ負担のないように、意思を持ってそこで働いているわけですから、何もしなくても一方的に努力をしてしまうんですね。厚生労働省で働いている方も同様だと認識をしていまして、多分、努力をする前提で仕組み化になっているんじゃないかな。なので、霞が関の働き方改革の象徴は、やはり厚生労働省であるべきじゃないかと私は認識しております。(発言する者あり)ありがとうございます。前大臣から励ましの言葉をいただきました。

 その上で、この離職理由に挙げられる長時間労働、これをどのように厚生労働省の中で是正、そして取組をされているのかをお伺いさせていただきたいと思います。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省は、御指摘のとおり働き方改革の旗振り役でございまして、厚生労働省が役割を果たしていくべき新型コロナウイルス感染症への対応でございますとか、全世代型社会保障改革等の施策をしっかり前へ進めていくためにも、こうした業務を担う職員の長時間労働の是正に取り組んでいく必要があると私ども考えております。

 委員から御指摘のございました省職員の意識についてでございますが、本省職員を対象として令和二年十一月に実施したアンケート結果におきましても、厚生労働省という組織で働くことを誇りに思っていると回答した者は多数に上っておりますが、一方、同時に、職員の長時間労働をめぐる課題がこうしたアンケート調査等も含めまして、様々指摘されてきているところでございます。

 その長時間労働の是正に向けた具体的な対策でございますが、まず、やはり必要な仕事に見合った体制の整備が重要であるということで、令和四年度におきましては、本省内部部局で感染症対策を始めとする諸課題に対応するため、二百四十九名の定員のネット増を図る予定でございまして、また、業務改革といたしまして、打合せの効率化でございますとかペーパーレス化、ICTツールの活用、管理職による適切な進捗管理等、効率的に業務を進める取組を業務改革推進月間等の節目を設けて推進しているほか、階層別研修におきまして、特に管理職、新任管理職等に対しまして、マネジメント向上に係るプログラムを盛り込み、実施しているところでございます。

 今後とも、必要な体制確保や適正な勤務時間管理に努めますとともに、各職場における管理職のマネジメントが徹底されるように、大臣始め政務の御指導の下、業務改革の取組を息長く進めてまいりたい、このように考えてございます。

金村委員 ありがとうございます。

 実直な厚生労働省らしいプランだったので、できれば四百人ぐらい増やした方がいいんじゃないかなと思います。

 そして、次の質問、最後になりますが、資料を準備させていただきました。「賃上げに取り組む経営者の皆様へ」ということで、これはいわゆる賃上げ税制です。これそのものは経産省の側になるんですけれども、例えば、大企業、中小企業と仕組みがあるんですが、例えば、私がやっていた事業もそうですが、この厚生労働省の枠組みに入る事業者とか経営されている企業って、実は余り入らないんですよね。

 聞くところによると、経産省の中でも、エッセンシャルワーカーの皆さんの例えば賃上げにこの税制がつながるかどうかという議論は、相当しっかりされたということでした。それは、いみじくも、議論をした結果、なかなか行き届かないかもしれないねという議論の終着点だったと私は聞き及んでいます。

 つまり、私が問題意識があるのは、やはりエッセンシャルワーカーの皆さんの賃上げなんですね。特に、医療そして介護、例えば私がやってきた障害福祉、この分野は公定価格ですので、賃上げをできるならば、やはり僕は二つしかないと思っていまして。

 それは、公定価格を実際に上げていくという、どちらかというと今の大きな流れからは少しずれてしまうかなと思います。

 一方で、これは全く党の議論は得ておりませんが、例えば障害福祉の分野であれば、公定価格を変えずに自己負担だけ、例えば今一割負担になっているところを二割負担にする。例えばですよ。それは何かというと、大体、全体の売上げに占める自己負担の割合って三%から五%ぐらいなんですね。それが、倍とは言いませんが、七%とか八%になると、その増えた分がそのまま職員の例えば処遇改善加算に充てられるようになる。会社の中で、自己負担金の増えた分は職員に配分するとかですね。そうすると、実際に所得は上がるわけですね。

 一方で、その賃上げのところでいうと、決めの問題で、そこまで直接、厚生労働省が、働く人たちの処遇改善加算を上げるためにこういう取組をしますよというのはなかなか伝えられないとは思うんですけれども、ただ、実際に働いている皆さんが、月額二十五万とか三十万ぐらいの所得で暮らしを賄っているという実態。そして、私の会社もそうでしたが、同僚同士で結婚する機会って結構多いんですね。でも、二人で結婚して所得が例えば八百万円未満とかになると、なかなかそこに踏ん切りもつかない、そして、家庭を持ちたい、子供を産み育てたいというところにまで至らないという実態も実はやはりあります。

 なので、この医療、介護、福祉、いわゆるエッセンシャルワーカーの皆さんの賃上げについて、どのような認識がおありなのか。

 先日、私、十五名程度の保育士の皆さんと懇談させていただく機会がありまして、私の会社もそうなんですが、安倍政権のときに、賃上げ、賃上げと政治が大きな声を上げていたんですね。そうすると、従業員が、うちの会社も上がるんですかというふうに尋ねられて、まあ特段業績がよかったわけではありませんが、期待に応えなあかんなということで、実は賃上げしたんですね。

 つまり、政治のメッセージって非常に大きいんですよ。そういう中で、これだけ賃上げ税制と取り上げられている中で、自分たちはその枠外なんだと思われることもやはり厚生労働省としては余りいいことではないと思いますので、そういった意味では、エッセンシャルワーカーの皆さんの賃上げに対する取組や認識、お伺いさせてください。

後藤国務大臣 今の日本の経済状況や働く人の置かれている状況から考えて、賃上げが非常に重要であるという認識を持っております。

 それに加えまして、看護、介護、障害福祉、こうした分野については、公的な価格ということでございますから、まず政府が率先してそういう対応をしていくべきだということでございます。もちろん、その前提として、看護、介護、障害福祉等に従事するエッセンシャルワーカーの方々の処遇の改善が大変重要な課題、現状において重要な課題であるという認識をしておりまして、今般の処遇改善の措置が継続的なものとなりますように、補正予算によりまして二月に前倒しして実施した上で、その後、本予算を通じて、本年十月以降については、報酬改定等、より恒久的な措置として今後も続くように実現したところでございます。

 これにとどまらず、今後の更なる具体的処遇改善の方向性については、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえまして、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がる、それは結果として必要な人材が確保されるということを意味するわけですが、そうした観点から、今後とも処遇の改善については検討していくこととしたいと思っております。

金村委員 ありがとうございました。

 いみじくもコロナ禍で明らかになった、いわゆる人が人にサービスを提供する、そういった現場をしっかりと重視しているというメッセージを常に発信していただければと思います。

 それでは、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 おはようございます。立憲民主党の吉田統彦でございます。

 今回の雇用保険法改正は大変重要な法案でございます。しっかりとした審議を行わせていただきたいと思いますので、政府の皆様におかれましても簡潔に、しかし中身の濃い答弁をしていただきたいとお願いを申し上げまして、始めさせていただきたいと思います。

 まず、国庫負担の責任について質問をさせていただきたいと思います。

 雇用保険の国庫負担割合は、現行法の本則で四分の一となっているところ、附則第十四条に本来負担すべき額の百分の十とすると定めており、本則である四分の一の百分の十である四十分の一になっているというのが現行の国庫負担率のたてつけになっています。しかし、これはあくまで暫定措置であり、いわば計算上、負担割合を機械的に定めたものにすぎないと考えます。

 そして、このように定められた国庫負担割合に基づいて労働保険特別会計へ毎年繰り入れられている予算は、一般会計の社会保険関係費に位置づけられています。これは、年金、医療、介護、福祉と同じ区分であるということでよろしいでしょうか。

田中政府参考人 御指摘のとおりでございます。

吉田(統)委員 局長、ありがとうございます。

 例年の当初予算において、社会保険関係費に占める失業等給付の国庫負担の額は、現在四十分の一に暫定的に減額されていることもあり、決して大きな額ではありません。しかし、昨年十二月に補正予算で措置された際の約二兆円の国庫繰入れは大変に大きな金額になります。

 そこでお聞きしますが、この予算はどこから捻出されたんでしょうか。

田中政府参考人 令和三年度補正予算におきまして一般会計から労働保険特別会計に繰り入れた今御指摘の二・二兆円の歳出につきましては、特定の財源にひもづいているわけではありません。同補正予算における歳入約三十六兆円の一部が当該繰入れに充当されたものと承知しております。

    〔委員長退席、牧原委員長代理着席〕

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 約二兆円を今おっしゃった形で捻出したのであれば、できたわけですよね。暫定措置の期限が令和三年度末で切れた後の令和四年度に本則の国庫負担割合である二五%に戻すために必要な二千億から三千億の予算をまず捻出した上で、それを二兆円から差し引いた額を国庫繰入れするのが原則だと考えますが、それは局長、いかがですかね。

田中政府参考人 今般のコロナ禍においては、国庫負担割合を一律に四分の一にしたとしても対応できないほど急激な財政悪化が生じたところでございます。

 こうした中で、給付の削減や保険料負担の増による雇用情勢への悪影響を可能な限り回避するため、雇用保険臨時特例法において定率負担とは別の一般会計による国庫繰入規定を創設し、今年度の補正予算においてはその規定に基づいて二・二兆円の繰入れを実施をいたしました。

 こうした経緯を踏まえて、今般の法案において、国庫負担については雇用情勢及び雇用保険財政の状況に応じて負担割合を四分の一又は四十分の一とした上で、こうした定率の負担とは別枠で機動的に国庫繰入れができる仕組みの常設化を行うこととしたところでございます。

吉田(統)委員 ちょっと筋が違うんじゃないかなとは思うんです。

 だって、局長、この暫定措置に関しては、過去の法改正時に衆参の厚生労働委員会で附帯決議が付されていますよね。また、雇用保険法附則では、令和三年度までの措置であり、令和四年度からは本則に復帰することがそもそも予定されていますね、局長。さらには、この間の労働政策審議会での労使意見でも本則復帰が求められていたわけじゃないですか。

 今回の法改正で、こういったものを全て押し切っているわけですよ。全て押し切ってまで、新たな国庫繰入制度なるものを持ち出してまで、二・五%にとどめようとしているわけですよね。

 今るるちょっとお話はされましたが、何でこういった経緯を一切無視した上で二・五%にとどめようとするのでしょうか。この二・五%にどうしてもとどめようとする理由があるわけですよね。その理由を明確に答えてください。どうぞ、局長。

田中政府参考人 少し繰り返しになるところがございますけれども、今般、コロナ禍の対応において雇用保険財政が極めて厳しい状況になったことを踏まえて、雇用保険臨時特例法において国庫繰入規定を創設して、その運用によって二・二兆円の繰入れを実施したところでございます。

 こうした経緯を踏まえた形で、今回の新たな国庫負担の仕組み、すなわち一定の負担割合とは別枠で機動的に国庫繰入れができる仕組みの常設化を行うこととしたわけでございます。

 こうした見直しは、過去の附帯決議等の趣旨も踏まえつつ、雇用情勢や雇用保険財政の状況に応じて機動的な財政運営を可能とする仕組みを通じて、国の雇用政策に係る責任を果たして、雇用保険財政の安定化を図ることを目的とするものであると考えております。

    〔牧原委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(統)委員 余り理由になっていないようにも感じるんですが、一部。

 元大臣から、厚労省に聞いても意味ないんじゃないかというようなやじが飛んだように私には聞こえたんですが、そんなことはないですよね。そういうやじが飛んだんですが、前大臣から。これはちょっと問題じゃないですかね。

橋本委員長 済みません、不規則発言だと思われますので、どうぞ、お続けください。

吉田(統)委員 ただ、不規則発言でも、前大臣の不規則発言はちょっと気になりますよね。

 じゃ、続けますね。

 失業等給付、じゃ、ちょっと、次、大臣に聞きます。後藤大臣、立派な方なので、本当にしっかりお答えいただけると思いますが。失業給付等の費用の一部を国庫が負担するのは、本来、雇用情勢などにかかわらず、その直近のですよ、政府の経済政策や雇用政策の結果としての失業の発生に対する国の責任を継続的に果たすためではないですか。そうですよね。その責任を示した上で国庫繰入制度の常設化をすべきだと思います。そちらの方が本来あるべき姿だと思いますが、大臣の見解を求めます。

後藤国務大臣 失業等給付に係る費用の一部を国庫により負担しているのは、雇用保険の保険事故である失業は、政府の経済政策、雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきとの考え方によるものです。この考え方自体については、今委員から御指摘いただきましたが、今回の改正によっても変わるものではないというふうに考えております。

 今般の新たな失業給付の国庫負担の仕組みは、雇用情勢及び雇用保険財政が悪化したときには四分の一、それ以外のときには四十分の一とした上で、これに加えて、こうした負担割合にかかわらず、機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化する、雇用情勢等に応じて機動的な財政運営ができる枠組みを新たに設けることによって、雇用政策に係る国の責任を果たしていくものであるというふうに考えております。

 こうした仕組みを適切に運営するとともに、総合的な雇用政策を効果的に推進し、国の責任を果たしてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 大臣、十分お答えいただきましたが、まず、雇用情勢に係る政府の経済政策、雇用政策の結果としての失業の発生、しっかりと国としてその責任を果たしていくということ、お言葉の中にありましたが、そういうことでよろしいですね。はい、ありがとうございます。

 では、続き、また役所の皆さんとちょっとお話をしていきたいと思いますが。

 昨年の十二月二十二日の雇用保険部会で、国庫負担割合の本則復帰について、部会長は、この問題は国家財政の構造的な制約にも絡むところがありますので、当部会だけで解決できる部分、必ず全てが解決できる問題ではありませんと発言されていると仄聞しております。

 この発言中の、国家財政の構造的な制約とは何でしょうか。また、政府として国庫負担割合の本則復帰について、国家財政の構造的な制約に服すると考えているのかどうかをお答えいただけますか。

田中政府参考人 雇用保険部会長の御発言ですので必ずしも正確なお答えは難しいんですけれども、私どもの理解するところとしては、一般論としてですが、国家財政全体について、社会保障費が増加を続けている一方で、財政の健全性を保つ必要性から、各施策に充てる財源について政府の予算の編成過程で厳しい調整が必要な状況にある旨を御発言なさったものと理解しております。

 厚生労働省としてどう考えるかという御質問もございましたけれども、国家財政の構造的制約というのは、部会長のおっしゃった言葉ですのでそのまま意味を取ることはできませんけれども、一般会計につきましては、毎年毎年、各施策の中で優先順位がつけられていくという意味では、厳しさがあるというふうには考えております。

 私どもとしては、雇用保険財政の観点から見れば、保険料と国庫負担によって財源を支えていく、先ほど大臣が申し上げた考え方の下で財源を確保し、適切な雇用保険財政の運営を図っていくという考え方に変わりはないということを申し上げておきたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 当然、国家財政の構造的な制約、予算上の制約を受けるということは、国の予算である以上、当然ではありますね。今に始まったことでもないのも明白であります。

 一部、今ちょっとお答えいただいたので、もう少しはっきり確認したいんですけれども。ただ、補正予算で、局長、二兆円もの予算計上が可能だったわけですよね。しかし、当初予算ではできないとするのは、やはりこれは本末転倒ではあると思います。本来あってはならないことでもあると考えます。

 そこで、改めてお聞きしたいんですが、財源の構造から根本的に検討すべきではないかと思いますが、そこはいかがですか、局長。

田中政府参考人 今回の改正は、国家財政が非常に厳しい状況にあるということも背景にありますけれども、それだけではなくて、コロナ禍において国庫負担割合を一律に四分の一としたとしても対応できないほど急激な財政悪化が生じたことに対して、雇用保険臨時特例法に基づいて令和三年度補正予算において一般会計から繰入れを行った、そういう経緯も踏まえまして、今後は、雇用情勢や雇用保険財政の状況に応じた国庫負担割合とするとともに、機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化することとしたものでございます。

 保険料及び国庫負担という大きな財源構造は変わりませんけれども、その中でそれぞれがどのように役割を果たしていくかというものは様々な情勢を踏まえて検討していくべきものと考えておりまして、おっしゃるとおり、そういった意味での財源の構造はきちっと検討して制度をつくっていく必要があると考えております。

吉田(統)委員 おっしゃることは分かるんですけれども、最後の部分はしっかりちょっとお答えいただいていない部分があるんですが。

 次に、大臣に、ではお伺いをします。

 コロナ禍における雇用調整助成金のように、雇用保険制度によるセーフティーネット機能を強化すれば支出が増えるのは当然ですよね、大臣。雇用保険財政はより厳しくなるわけであります。

 雇用保険の財源が厳しいことはもちろん理解していますが、雇用保険制度は憲法の労働権や生存権を保障するための不可欠な国の制度ですね、大臣。万一、国庫負担割合の本則を引き下げることとなっても、今後も国庫負担割合を引き上げることについても、引き続き労働政策審議会で行ってはいかがかと思いますが、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 今般の法案について、労働政策審議会に法案要綱を諮問した際、公労使一致した意見といたしまして、引き続き、新たな国庫繰入制度を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証、検討し、必要な対応を行うよう強く求めること、今回新たな国庫負担の仕組みを導入したとしても、雇用保険事業における諸給付及びその費用負担の在り方について、引き続き、労働政策審議会において総合的に検討を行うべきである等の意見が付された上で、こうした意見を厚生労働省が最大限尊重することを前提に、法案要綱についておおむね妥当という結論をいただいたところでございます。

 厚生労働省としては、この趣旨をしっかりと受け止めまして、適切に対応してまいりたいと思います。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。よく分かりました。

 大臣、確認ですが、おっしゃる趣旨はよく分かったんですが、一か所、フォーカスして申し訳ないんですけれども、国庫負担割合を引き上げることについても議論をしていくということが今の大臣の御答弁に含まれると考えてよろしいですか。

後藤国務大臣 諸給付及びその費用負担の在り方ということについての限定はないということでございます。

 ただ、今回こうした制度を新たにつくっているわけでございますので、その全体像としての今回の制度についてのまた御議論もいただけるものと思っております。

吉田(統)委員 全体像と言われちゃうとあれなんですけれども、そこを聞きたいんですよ。

 だから、引き上げるということも当然この議論の中に含んでいただけるのかどうかということが、大臣、ちょっとはっきり聞きたいんですよね。大臣のおっしゃることはよく分かります。本当に、パッケージで、それは分かるんですが、ここが一番聞きたいんですよ、大臣。もし、それが含まれないとしたら、その理由を教えてほしいんです、大臣。

 含まれるのか、含まれないのか。そして、含まれないんだったら、その理由を教えてください。

後藤国務大臣 二つの面において、含まれると思います。

 一つは、新たな国庫繰入制度を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証し、そして必要な対応を行うということを強く求めることも含めて審議をする。また、雇用保険事業における諸給付及びその費用負担の在り方について総合的に検討を行うべき、それを求めているということで、尊重するということで申し上げておりますので、いろいろな今委員御指摘の点についても、もちろん審議会の検討事項として入っていないということを申し上げるつもりはありません。

吉田(統)委員 回りくどいですが、入っているということですね。大臣のお立場だと、そういう御答弁になっちゃいますよね。はっきりと含まれているということを大臣に言っていただきまして、もう十分です、ありがとうございます。

 それでは、保険料率について、また役所の方と議論していきたいと思います。

 雇用保険料率に関しても、現在は原則千分の八の保険料率が、令和三年度まで、法律による特例措置として千分の二の引下げ、積立金規模に基づく引下げが千分の四実施されており、現行は千分の二の保険料率となっていますね。

 これに対して、今回の改正だと、令和四年四月から九月までは千分の二に据え置かれる、そして十月から令和五年三月までは千分の六に引き上げられることになっております。

 ここでお聞きしますけれども、改正法案においてなぜこのような料率設定に至ったのかを教えてください。

田中政府参考人 雇用保険財政が極めて厳しい状況にある中、失業等給付に係る雇用保険料率は原則千分の八であるところ、実際の費用負担者である、保険料負担者である労使も参画した労働政策審議会の取りまとめも踏まえて、令和四年度においては、激変緩和措置として、年度後半の十月から千分の六とすることとしたものでございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 局長、では、確認なんですけれども、元々保険料率が千分の二となる暫定措置は令和三年度末までの措置ですね、千分の八に戻るわけですけれども、今回はその千分の八との差額を令和四年度予算の一般会計から繰入れは特段なされないということでよろしいですか。

田中政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

吉田(統)委員 じゃ、続いて聞いてまいります。

 財源の枯渇が続くことから、例えば失業等給付から貸し出す雇用調整助成金の費用にしわ寄せが、局長、行っていますね。第一回雇用保険部会の資料によると、令和三年度末に一・三一兆円あった積立金の残高が、令和四年度には保険料収入が〇・七九兆円にとどまり、結果として差引き余剰は〇・七七兆円の赤字、雇用安定事業への貸出し〇・五兆円を行うと、積立金残高が僅か〇・〇五兆円程度となるということになっているようですね。令和四年度の雇用保険料率が〇・八%であれば、保険料収入は一・六兆円で、雇用安定事業費への貸出しは昨年、一昨年並みの一・三兆円程度が可能になったという試算になりますね。

 一方で、雇用調整助成金の必要性は依然として高水準で推移しているのも事実であります。二〇二二年一月の支給決定額は約一千三百億円で、このまま毎月一千億円以上で推移し続ければ年度内に予算が不足することになりますね、局長。予算が不足した場合に、どのように対応するんですか。

田中政府参考人 雇用調整助成金については、昨年末以降、支給決定額が徐々に減少をしておりますけれども、令和四年度予算案では、四月以降も一定程度、特例に基づく雇用調整助成金の支給が続くことを想定して、約〇・五兆円を計上しておりまして、当面の執行には問題がないと考えております。今後も執行状況をよく注視しながら、必要に応じて適切に対応していきたいと考えております。

吉田(統)委員 適切に対応を聞きたいんです。今、私の質問を聞いていましたよね。適切に対応を聞きたいんです。そこを聞いているんです。それ以外答えないでください。

田中政府参考人 今年度においては補正予算などにおいて対応しておりますけれども、そういったことも踏まえながら、四年度においても必要に応じて適切に対応していきたいと考えております。

吉田(統)委員 今、半分お答えになっているかもしれません。補正予算と同様に国庫繰入れを行うという意味ですか。

田中政府参考人 今回の法案におきましては、仕組みとして、引き続き、積立金から雇用安定資金への貸出規定、それから一般会計から積立金へのコロナ特例としての繰入規定を存続させることとしております。そういった制度の活用も考えられると思います。

吉田(統)委員 局長、では、最低でも千分の八であった場合との差額についても、繰入れ等を行うとか、一般会計から。そういったことは、局長、考えませんか。

田中政府参考人 国庫繰入れにつきましては、保険料との差額を埋めるために繰り入れるという考え方はございません。あくまで給付の面を見て、そこに足らざる部分があれば措置するという考え方でございますので、直接的に保険料との差額という形での対応は考えていないということでございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 局長、ちょっと、今から申し上げること、お答えいただければお答えいただきたいんですけれども。

 この雇用保険料率というのは、職種等に関係なく一律に決定されていると承知しております。

 しかし、現在の業種ごとの状況を鑑みると、昨年十二月の日銀短観で、大企業の製造業はプラス一八、非製造業でプラス九、中小企業の製造業がマイナス一、非製造業がマイナス四と、企業の規模や、そして製造業と非製造業で大きく差が見られますね、局長。

 実際に飲食、交通、観光などの労働集約型の非製造業では業況の改善の足取りはまだまだ鈍いですよね、料率を引き上げることは問題があるとやはり感じるわけであります。

 雇用保険の意味合いからすると、基準を大企業の製造業に合わせるのではなくて、非製造業の中小企業の状況に合わせるように今後基準を変えていくべきではないかとも感じるところであります。

 現在のこのような状況や、年度途中での変更には余計な事務コストが生じることもありますね、そういったことを勘案すると、雇用保険二事業見合いで引き上げられる千分の〇・五、十月以降引き上げられる千分の四については、当面は国が責任を持って保険料を負担するというような、そういったことも検討できませんかね、局長。

田中政府参考人 保険料率については、こういった厳しい状況の中で、必要な給付を賄うために必要な額を必要最低限の措置として対応しておりまして、国庫も合わせてぎりぎりのところで財源を調達しております。

 厳しい状況ではありますけれども、保険料を失業された方とかあるいは休業を余儀なくされた事業の方に再配分するという観点もございますので、そういった観点も丁寧に説明しながら、関係者の理解を求めていきたいと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では、このテーマは一旦これで、もうあと五分しかありませんので。

 それでは、同様に本法案の求人メディアのマッチングへの規制と職業紹介事業者についてということで、大臣と議論をしたいと思います。ちょっともう時間がないので駆け足になるんですが、医療、介護、保育分野だけに、大臣、特化してちょっと聞いていきますね。

 医療・介護・保育分野適合紹介事業者宣言というものが、大臣、ありますね。私も、この委員会でも指摘されたことがあると思うんですけれども、医療機関って、今、有料職業紹介の高額な紹介料が極めて大きな問題になっているんです。

 そこで、この医療、介護、保育分野の紹介事業者宣言、これはどのような基準で宣言が可能なのか、また、各々の分野ごとに宣言をしている事業者数を、大臣、お答えいただけますか。

後藤国務大臣 医療・介護・保育分野適合紹介事業者宣言につきましては、医療、介護、保育分野の職業紹介事業者が厚生労働省が運営するサイトに紹介実績や手数料に関する事項を公表していること、自社の紹介により就職した者に対し二年間転職勧奨を行っていないこと、返戻金制度を設けていること等について、自主的に宣言を行うものでございます。

 現在宣言していただいている事業者は、四百四事業主、九百六十八事業所となっております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 今、今枝先生のお顔も目に入ったんですが、大臣、医療機関や保育、介護に大臣がしっかりと診療報酬で、医療機関をしっかり、コロナ禍も頑張っているこういった医療機関を助けてあげようと思ったり、特に大きな総合病院、民間の病院も含めて、そういったところが医療人材を確保するときに、本当にこの紹介料が問題になっているし、かなり悪質業者もばっこしている。

 結果として、診療報酬を上げたり、例えばあと介護、保育では様々な助成や国の補助金、そういったものが入っても、結果的に、本来受け取るべき方々には届かずに、本来の趣旨から外れてしまって、紹介業の方の業者の収益になっているという現状があるんですよね。

 大臣、ちょっと時間がないので、そういった総論的な、るる細かく通告をさせていただいたんですが、大臣、正直な話、そこをどう思っていらっしゃいますかね。今のままでいいとお考えですか。

後藤国務大臣 今、委員御指摘がありましたけれども、職業紹介手数料の水準については、労働市場の需給の状況や求人の内容に応じて決定されるものと認識をしております。

 利用者のニーズに合った職業紹介事業を安心して選択できる環境を整備することが重要であるということで、平成三十年一月から施行されている改正職業安定法に基づきまして、手数料等の情報開示を義務づけたところでございますし、また、紹介事業者の利用者である医療、介護、保育分野の業界団体が参画しました、医療、介護、保育分野における職業紹介事業に関する協議会において適正な職業紹介事業者の基準を策定しまして、今年度より、基準を満たす事業者を認定する制度の運用も開始したところでございます。

 こうした取組を通じまして、利用者が優良な職業紹介事業者を選択することが可能な環境を整備することによりまして、労働市場において職業紹介事業者が適切に役割を果たせるようにしてまいりたいというふうに思っております。

 一部医療関係で紹介手数料が相当高額であるという実態については、承知しております。

吉田(統)委員 大臣、需給とおっしゃいましたが、足下を見ているんですよ。ですから、しっかりと対応いただきたいですし、以前も提案させていただいたんですが、ハローワークというすばらしい職業紹介の制度があるわけです。ここに確かに相談窓口はあるんですよね、大臣。それは承知しているんですが、例えば、以前は、特に、大臣、国家資格職が非常にやはり、当たり前ですけれども、数が、パイが限られている分、非常に難しい状況になっています。

 相談窓口ではなくて、看護協会や医師会が各々でやっている職業紹介もありますが、なかなかこれは公知ではないし、行き渡っていないので、是非、大臣、やはり国家資格職各々に関してのマッチングをするようなハローワークの制度を、相談窓口というものではなくて、しかもそれ自体今まだ知られていませんから、ほとんど。是非やっていただきたいという要望を最後に申し上げて、一言お答えいただければうれしいですが、それで終わらせていただきたいと思います。

後藤国務大臣 今おっしゃいました医療、介護、保育関係等の人材不足分野のマッチング支援を行うために、ハローワークに人材確保対策コーナーというのを設置しておりまして、助言や指導、情報発信、セミナー、就職面会等、いろんな分野について指導を実施しております。令和四年度予算におきましてもこうしたコーナーを増設しておりますし、しっかりとした事業が展開されるように、今後とも努めてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 期待しております。

 ありがとうございました。終わります。

橋本委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 後藤大臣、大変御無沙汰をしております。

 私が初めて厚生労働委員になった二〇一四年に、ちょうど大臣は委員長をしておられて、当時、医療介護総合確保法案という十九本を束ねた大変な閣法に対して我々野党側の出した介護、障害者福祉スタッフの給与アップ法案、これを並行審議までしてくださって、最後は委員長提案で通してくださったということ、大変感謝しております。また、夏には、トスカーナの風を受けながら、各国の医療、介護、福祉の勉強を共にさせていただきました。

 与野党の立場や期数、経験が違っても、事厚生労働の政策となれば、正面から向き合って議論に応じ、話を聞いてくださったこと、改めて心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。そんな大臣と久しぶりに厚生労働の議論ができること、楽しみに参りました。

 まず、雇用保険の国庫負担割合について伺います。

 資料一の右上を御覧ください。本法案の最大の問題は、国庫負担が四分の一から事実上四十分の一に引き下げられることであります。

 現在、失業給付の国庫負担割合は、本則で四分の一と定められています。しかし、積立金が六兆四千億円まで増えたことを受けて、平成二十九年からは、国庫負担が、本則四分の一のまま、暫定的に四十分の一まで引き下げられています。

 まず、この四十分の一という数字の根拠、なぜ四十分の一になったのかということでお伺いします。

田中政府参考人 平成二十九年の雇用保険法改正において、国庫負担を、本来の負担割合の五五%水準から一〇%水準へ引き下げておりますけれども、これは、平成十九年改正における保険料率と国庫負担の対応関係や、平成二十八年、二十九年の改正における保険料率の引下げの状況等を踏まえて、引下げ幅を判断したものと承知しております。

井坂委員 えらいまとめて答弁されたんですけれども、私の承知しているのは、元々四分の一だったのが、その八割に引き下げて、更に八割の七掛けに引き下げて、計五六%分まで引き下げられて、また一旦上がったんですけれども、もっと下げろということで、五六パーよりもう一つ下の五五パーまで下げて、更にもっと下げろと言われたので、一〇〇から五五まで四五削ったのを、更に倍ということで四五掛け二の九〇%削って、一〇%の水準にまで下がった、こういう経緯であります。

 今回の法改正では、国庫負担割合は四分の一というシンプルな本則だったのが、資料一の左上にあるように、三つのパターンを併記した複雑な本則に変わります。雇用情勢と雇用保険財政が悪化しているときは四分の一、そうでないときは四十分の一、さらに、必要なときは機動的に国庫繰入れをします、この三つが併記されている。本則がこれほど大胆に変わるのは、雇用保険法始まって以来の大改正であります。

 そこで、今回の法改正で、四分の一と四十分の一、どちらも本則に書いてあるわけですが、どちらがより原則的な数字か、これは大臣にお伺いします。

後藤国務大臣 今般の新たな失業給付の国庫負担の仕組みは、そのどれか一つ、いずれかが本則、原則ということではなくて、今委員もお話しされていた制度でございますけれども、雇用情勢及び雇用保険財政の状況に応じた国庫負担割合と機動的な国庫繰入規定の全体をもって雇用保険法の本則として制度を規定するものでございます。

 具体的には、繰り返しますが、雇用情勢及び雇用保険財政が悪化したときには四分の一、それ以外のときには四十分の一とした上で、これに加えて、こうした負担割合にかかわらず機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組み、これを常設化するものでありまして、これらの適切な運営を通じて、雇用保険財政の安定的な運営を目指すものであります。

井坂委員 昨日、局長にお聞きしたのとちょっと違うんですけれども。三つ併記されているというのは私が説明申し上げたとおりなんですが、その中で、四分の一と四十分の一、二つの数字が併記されて、どちらかといえば、どちらがより原則的な数字なんですかということをお聞きをしているわけであります。

後藤国務大臣 私の答弁は、全体としてのこの仕組みそのものをもって原則であるということで申し上げております。

井坂委員 今回の法改正をイメージしやすくするために、私、地元で、この間、飲み会に例えてみたんですね、飲み会の会費。

 政労使ありますから、政府君、労働者君、使用者君と三人で定期的に飲み会をやっているわけです。元々三分の一の割り勘だったわけですが、政府君はお酒を飲まないということで、四分の一でいいよということで長年やってきた。大体、いつもお会計一万円なので、政府君は二千五百円いつも払っていたわけであります。ところが、今回、急に政府君が、一回に払うのを二百五十円にすると。ただ、会費は、お店のお会計がいつもより高いときは四分の一出すよ、でも、それ以外のときは二百五十円しか払いませんと言い出した。これだけだと、さすがにけんかになるわけですが、政府君がもう一つ言ったのが、ただ、みんなが本当に厳しいときは、そこはもうどんとまとめて出すよ、こういうことを言っているわけでありますね。

 それだったら、じゃ、一体、お会計が幾ら以上のときに二千五百円払ってくれるのか、どういうときに本当にどんとまとめて払ってくれるのか、ここを聞こうじゃないかということになるわけであります。

 資料一の左下の部分を見ていただきたいんですが、国庫負担割合が四分の一になる条件の一つとして、雇用情勢悪化の具体的な指標は、失業給付を受ける失業者が月平均七十万人以上いることというふうになっています。そうなると、いわゆるお会計が増えて、失業給付の給付金が増えて大変なので、そういうときは国庫負担を四分の一に戻しましょう、こういうことであります。

 ところが、七十万人を超えたのは、十三年前のリーマン・ショック以降、コロナ禍を含めて一度もないんですね。これだと、国庫負担四十分の一、一万円の会計で、居酒屋会計、二百五十円しか払わないのが、これが当たり前になってしまう。むしろこっちがもう完全に原則になってしまって、国庫負担四分の一というのは、併記はされているけれども、まさに名ばかり本則という形になってしまうわけであります。

 やはり、本則、原則は、私は四分の一に戻すべきだということは、これは強く申し上げたいと思います。

 その上で、なぜ七十万人という数字で線引きをしたのかということなんですね。

 本会議の答弁では、近年の受給者数が下は三十七万人から上は八十五万人までの幅があって、大体その真ん中の六十万人ぐらい、中間値六十万人を基本想定とした、六十万人と一番多かったリーマンのときの八十五万人の、六十万と八十五万のまた間ぐらいを取って七十万人という数字を設定したんだという本会議の答弁でありました。

 資料二の下の真ん中を御覧いただきたいというふうに思います。基本想定の六十万人のとき、これは仮に国庫負担が四十分の一でも、失業給付の収支は一兆五千五百億円で収支とんとんとなる、こういう表であります。

 そこでお伺いしますが、受給者数七十万人どころか、受給者数六十万人であっても、特例延長給付とか追加給付が少しでもあれば、支出は一兆五千五百億円を超えて、国庫負担は四十分の一のままだと単年度赤字になってしまうのではないですか。

田中政府参考人 このお示しいただいた資料二は、私どもが労働政策審議会の議論において作成して提出させていただいた資料でございます。

 このイメージの資料につきましては、財政運営のベースとなる受給者実人員と保険料率の考え方について、直近の実績を基に検証しても、受給者実人員六十万人で保険料率が〇・八%の場合におおむね収支が均衡する状況に変わりがないということについてお示しする趣旨で作成、提出させていただいたものでございます。

 御指摘の特例延長給付、これは雇用保険臨時特例法に基づくものでありますけれども、こうした臨時的な措置等につきましては、その時々の雇用情勢に応じた対応がなされることから、基本的な財政運営イメージとしてあらかじめ想定することは難しいと考えております。

 なお、こうした特例延長給付のような措置を講ずる際には、その財政影響や財源確保についても留意しつつ、必要な対応が図られるものと考えております。

井坂委員 資料二の上の方を見ていただければはっきり書いてあるんですが、特例延長とか追加が一切ない場合の想定で、これで六十万人のとき収支とんとんですということなので、当然、特例延長とか追加給付があれば単年度赤字になる想定なんですね。

 もう一つ伺いたいのが、失業給付の受給者数、これはコロナ禍でも全く増えておりません。それは、雇用保険の積立金から雇用調整助成金に多額の貸出しをして失業を未然に防いだからであります。

 受給者数が七十万人を超えたら失業給付の支出が増えて雇用保険財政が赤字になるから、だから雇用保険の国庫負担割合を本則の四分の一に戻しますよというのが七十万人を指標とする趣旨だというふうに思います。

 ただ、雇用調整助成金みたいなやり方であると、仮に受給者数が五十万人だろうが四十万人だろうが、雇用調整助成金など二事業への貸出しが増加することによって、雇用保険財政は大幅に赤字になるんじゃないですか。現に赤字になっていますよね。お伺いします。

田中政府参考人 雇用調整助成金の特例等のための積立金からの貸出しにつきましては、雇用保険臨時特例法に基づくコロナ禍の特例措置となっておりまして、併せて、同法では一般会計からの必要に応じた繰入規定も措置しているところでございます。

 コロナ禍である令和二年度の受給者実人員は約四十七万人である一方、雇用保険財政は、雇用調整助成金等のための積立金からの貸出し等により厳しい状況に陥っております。こうした状況に対処するために、雇用保険臨時特例法に基づいて補正予算で一般会計からの繰入れを行った結果、一定程度の積立金が積み立っているという状況でございます。

 今般の法改正においては、積立金からの貸出しの特例と併せて、一般会計からの繰入規定も同様に継続することとしておりまして、これにより適切に対応してまいりたいと考えております。

井坂委員 局長、お聞きしたことにちょっとお答えいただきたいんですけれども、要は、七十万人で線引きしているけれども、特例給付とか、あるいは今申し上げたほかの会計への貸出しとか、いろいろ対処すればするほど、七十万人と、線引きと関係なく雇用保険財政は悪化するんじゃないですかということなんです。

田中政府参考人 七十万人の基準というものは、通常の雇用保険法の運用において国庫負担を考えるときの基準であります。

 今おっしゃっている雇用保険の特例、積立金から貸出しをして雇用調整助成金を賄うというものは雇用保険臨時特例法に基づく臨時の措置でありますので、臨時の措置につきましては、それに対応する臨時の財源措置で対応することが基本でありまして、それを本体の国庫負担の運用に反映させるということはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

井坂委員 結局、悪化したときは臨時の措置になるんです。それで、臨時の財源とおっしゃったって、それは去年、二兆円ありましたけれども、でも、雇用保険からも貸し出して、はっきり言っていつ返ってくるか見通しが立たないような状況になっているわけですから、悪化したときというのは、大体、今後もこういうことになると思いますよ。

 もう一つお伺いしたいのが、本会議答弁では、受給者数七十万人というのは雇用情勢が相当程度悪化した状態として設定した、こういうふうにおっしゃっているわけでありますが、戻って資料一の上のところを見ていただきますと、ここで定めているのは、雇用情勢が相当程度悪化ではなくて、雇用情勢が悪化している場合ということだけ書いてあるんです。

 これは大臣にお伺いしますが、受給者数七十万人というのは相当程度悪化の状況であります。やはり、この元々のルールは雇用情勢の悪化でありますから、七十万人、相当程度悪化の線引きを持ってくるというのは、これはちょっと実態に合わないのではないでしょうか。

後藤国務大臣 今般の仕組みにおいては、失業等給付の国庫負担率を判断するに当たって、その支出額に直結する失業手当の受給者実人員の動向によって雇用情勢の悪化状況を測ることが適当であるというふうに考えました。雇用情勢が相当程度悪化した状態として、受給者実人員七十万人という水準を設定しております。

 厚生労働省としては、まずは、新しい国庫負担の仕組みによりまして雇用保険財政の安定的な運営を確保するとともに、労働政策審議会の法案要綱を諮問した際に出てまいりました様々な意見等も踏まえまして、適切に対応してまいりたいと思います。

井坂委員 今るる申し上げましたように、リーマン以降でも七十万を超えた年はないし、受給者数が仮に六十万人でも五十万人でも、特例とか追加とかあるいは雇用調整助成金とかやればやはり財政は悪化をするわけです、七十万人に全然いっていなくても。あるいは、そもそも、七十万人というのは相当程度の悪化だと本会議で実際、政府も答弁されているわけであります。

 今後、この七十万人というのは私はちょっと現実に合わない線引きだと思いますが、実際この七十万人で運用して、全然七十万人を超えないとか、七十万人を超えないけれども雇用情勢は悪化しているとか、こういう現実に合わない、実態を反映していないという状況が明らかになってきたときは、七十万人の線引きを私は見直すべきだと思いますが、見直していただけますか。

後藤国務大臣 今、井坂委員から御指摘のあった、雇用調整助成金等を始めとした様々な新型コロナの緊急事態における措置によって雇用保険特会が全体として非常に厳しい財政状況になっている、こういう緊急事態まで含めると、通常の事態の雇用情勢の失業手当の受給者実人員のような判断基準だけではなかなか財政の健全化が保てないのではないかと。

 先ほどから言っておられることは、事象として注意しなければならないことだと思っております。しかし、そのことについては、局長の方からも、そういう非常に臨時的な措置が取り行われた場合には、今回もそうでありますけれども、臨時的な借入規定や繰入規定みたいなものを発動させたりして対応をしていくわけでありまして、ここについて言えば、基本的には、通常のいわゆる失業手当の支給に関わる施策の枠の中で議論をしております。

 七十万人というのは、おっしゃったように、リーマン・ショック以降ないのは委員の御指摘のとおりでありますけれども、しかし、その前、遡りますと、例えば平成五年から十五年までの間はずっと七十万人を超える受給者の実人員がございました。そういうことも含めての実人員七十万人ということでございますが、いずれにしても、今、直接の問いにお答えするとすれば、労働政策審議会においては、新たな国庫繰入規定を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証、検討し、必要な対応を行うよう強く求めると意見を付されておりますし、これが前提での議論でございますので、そうした意味を踏まえて、諮問も踏まえまして、継続的検証、検討を我々としてもやはりしていくという気持ちで適切に対応してまいりたいと思います。

井坂委員 そんな変わったことを言っていると思わないんですよね。七十万人が現実に合わないとなったときには、七十万人の線引きの見直しを検討していただけますかということなんです。

 最後に、労政審で検証、検討とおっしゃった中には、当然、七十万人という線引きも入っていますよね。それだけ除外するなんておかしいですから。そこをお答えください。

後藤国務大臣 委員御指摘のとおりで結構でございます。

井坂委員 七十万人というのも、金科玉条ではなくて、現実に合わなければ当然検証、検討していくということだということですね。ありがとうございます。

 あと、次は、雇用保険財政の単年度黒字、それから、積立金の確保について伺います。

 資料一の右下なんですけれども、弾力倍率という数字、今回、キーになってきます。弾力倍率というのは、ある年の積立金の残高と、それからその年の単年度収支がその年の支出の何倍あるかという数字です。ですから、この弾力倍率が大きいほど雇用保険財政には余裕がある、逆に、弾力倍率が一を切ってくると、積立金不足で翌年度の給付金支払いに支障が出る可能性がある、こういう数字であります。

 資料三を御覧いただきたいんですが、資料三の右下、令和四年度はもう積立金の残高がほぼゼロになって、収支もマイナスの見通しです。令和四年度の弾力倍率というのは、この見通しだと幾らになりますか。

田中政府参考人 雇用保険料率を一定の範囲で調整することが認められる基準であります弾力倍率につきましては、失業等給付に係る令和四年度予算案等に基づく収支見込みにより機械的に算出した場合、令和四年度の弾力倍率はマイナス〇・六七となる見込みです。

井坂委員 マイナスになるんですよ。私も、一かゼロの間かなとは普通思っていたし、大体、普通、そういう想定の数字だと思うんですけれども、マイナスの〇・六七ということで、異常事態中の異常事態なわけであります。これはもう早急に弾力倍率を増やす必要があります。

 この弾力倍率の上の分子の部分は積立金の残高と単年度収支ですから、どちらが増えても弾力倍率が増えるわけですが、同じ弾力倍率、仮に一だったとしても、積立金が給付の一年分あるときの弾力倍率一と、積立金は枯渇して、単年度黒字が給付の一年分あるときの弾力倍率一というのは、どちらが雇用保険財政が安定していると考えられますか。

田中政府参考人 積立金と単年度収支というものは給付の支出の状況を介して相互に関連をいたしますので、今の比較で一概にどちらがどうこうということは言いにくいところでございます。

 ただ、一般的に、積立金が少ない、あるいは今のように枯渇しているという場合は、予期せぬ景気変動に伴い雇用情勢が更に悪化の方向に向いた場合、対応が困難となるというリスクがあることから、その点は望ましくない点であると考えております。

井坂委員 積立金はもう既に入っているお金ですから、それはもう確定しているんですよね。一方で、単年度収支黒字というのは、今年これだけ黒字だったから来年もこれだけ黒字だろうぐらいの未確定のお金ですから、当然、同じ弾力倍率でも、積立金が多い方が財政は安定している、これは当たり前のことだと思いますよ。一概にどちらがいいか言えないなどということではないと思います。課長もはっきりそうおっしゃっていましたけれども、局長の御答弁、ちょっと残念であります。

 少なくとも積立金が失業給付の一年分を超えるまでは国庫負担四分の一にするとか、あるいは機動的繰入れをするとか、そういうやり方で単年度黒字をやはりしっかり続けて積立金を増やす財政運営が大事だと思いますが、大臣、お伺いします。

後藤国務大臣 雇用保険財政については、保険料及び国庫負担により、将来にわたって安定的な運営を確保し、予期せぬ景気変動に伴う雇用情勢の悪化が生じたとしても十分対応できるものとしておくことが重要である、そのことはもう委員指摘のとおりであります。

 今般の法案において新設する機動的な国庫繰入規定の運用に当たっては、労働政策審議会の報告書において、保険料の本則を超えた引上げが可能である弾力倍率一を下回る場合であって、雇用保険財政の悪化により積立金が不足し、失業等給付の支払いに支障が生ずるおそれがある場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入れが行われるべきとの考え方が示されているところでございます。

 厚生労働省としては、今回の改正後の仕組みについて、こうした労働政策審議会の議論も踏まえつつ、適切に運用をいたしまして、雇用保険財政の安定的な運営を確保してまいりたいと思います。

井坂委員 大臣、私は物すごい普通のことをお聞きしていると思うんですけれども。

 今、弾力倍率マイナスみたいなときですよ。基本的にはやはり、増やそうと思えば、単年度黒字にしていく以外ないわけですよね、積立金も今、ゼロなんですから。単年度黒字にちゃんとなるように、足りなければ、繰入れあるいは国庫負担四分の一などして、とにかく単年度黒字になるような収支構造を目指すべきだ、当たり前のことをお聞きしていると思いますが、目指すべきだと思うと答弁いただけますか。

後藤国務大臣 単年度収支黒字を目指すような運営をしていくべきだという御指摘は、そのとおりだと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 加えて、この積立金が失業給付の一年分を超えた後も、やはり、国庫負担四分の一とかあるいは機動的繰入れでこの積立金の水準は当然維持すべきだと、これも本当に当たり前のことだと思いますけれども、維持すべきだと思いますが、大臣もそうお考えでしょうか。

後藤国務大臣 繰り返しにはなりますけれども、雇用保険財政、しっかりと適切に運用してまいりたいと思います。

 それで、要綱等の諮問の際の労働政策審議会の答弁を丁寧に御披露しているのは、我々は、そういう前提条件の下でおおむね妥当の結論をいただいているということなのでわざわざ紹介しているというつもりなんでありますが、公労使一致した意見としまして、引き続き、新たな国庫繰入制度を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証、検討し、必要な対応を行うよう強く求める、こうした意見を最大尊重することを前提に、法案要綱についておおむね妥当とされたところでありまして、この趣旨をしっかりと受け止めてやってまいりたいということで、今、委員が御指摘された趣旨にそぐうものだと思います。

井坂委員 大臣、お気持ちは、同じことを、心配して同じことを考えてくださっているんだというのは分かります。だから、全然、意見が対立しているとは思いませんので。ただ、御答弁が。やはり、もう本当に当たり前のことですから、ちゃんと、弾力倍率一を目指すと。一になったらまた下がってもいいじゃなくて、一をやはり維持するように、繰入れも含めて運営していくと。当たり前だと思いますから。最後にちらっと、委員がおっしゃったようにとおっしゃった、そこをちゃんと、大臣も同じことをお考えなわけですから、御答弁をお願いします。

後藤国務大臣 今申し上げたとおりです。

 少し堅く御答弁しているのは、それが私の覚悟とか意見という意味じゃなくて、それはしっかりと、実を言うと、今回、おおむね妥当という結論をいただいた労政審の、公労使の共通した認識であるから御披露していることだということで、委員の今の御指摘についても、私も同感に思います。

井坂委員 私も同感と言っていただけたということで承知をいたしました。ありがとうございます。

 最後、一点、育児休業給付について。

 先週の本会議では、育児休業給付はこれまで雇用保険の枠内で運営されてきたわけですけれども、そうするとフリーランスなどの雇用保険料を支払わない働き方には当然対応ができないわけであります、また、育児休業給付の増加率が今後も高い水準で移行した場合は令和六年にも雇用保険財政が破綻する可能性があるということで、育児休業給付の在り方を雇用保険の枠内で検討していては間に合わなくなるおそれがあるので、最初から子育て部門と連携して検討を開始すべきではないかということで、本会議、お尋ねしました。

 それに対する御答弁、資料四枚目で下に囲っておりますが、大臣答弁は、その上で、育児休業給付の制度の在り方については、少子化社会対策大綱において、中長期的な観点から、その充実を含め、他の子育て支援制度の在り方も併せた制度の在り方を総合的に検討するとされており、子育て支援施策を担当する関係省庁とも連携して検討したいという御答弁をいただいております。

 これは確認ですけれども、この本会議答弁は、要は、雇用保険制度の枠外で運営することも含めて令和四年度から検討を開始するという理解でよろしいですね。大臣、最後お伺いします。

後藤国務大臣 少子化社会対策大綱において答弁させていただきましたし、現在の保険料率では、令和七年度以降の安定運営が可能な見通しも立っていない状況でありますので、今般の法案においての附則で、令和六年までをめどに、育児休業給付及びその財源の在り方について検討を行う旨の規定を置いております。

 また、労政審の報告書においても、その在り方そのものについて、他の関係諸施策の動向等も勘案しつつ、令和四年度から検討を開始し、令和六年度までをめどに進めていくというふうに述べられているところでありまして、この育児休業給付の制度の見直しというのは子育て支援制度の在り方全体の総合的な検討の中で行われるもので、今委員の言われたようなそういう検討も含まれているというふうに考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 本日は、主に国庫負担割合、やはり四分の一であるべきなんじゃないかというお話、また、その線引きの七十万人のお話、それから最後に少しだけ、フリーランスも含めた育児休業給付にするためには雇用保険の枠内の議論では駄目なのではないかということ、質疑をさせていただきました。

 資料五を御覧いただきたいんですけれども、我々は、今質疑させていただいたような内容を盛り込んだ、国庫負担四分の一とか、フリーランスの育児休業給付とか、こういったことを盛り込んだ修正案を今現在、作成をしているところであります。こちらも是非、皆様にも御検討、御賛同いただけるようにお願いをいたしまして、本日の質疑を終わらせていただきます。

 本当にどうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 立憲民主党の柚木道義です。

 質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 五項目、雇用保険法改正について通告しているんですが、一項目だけ、済みません、尾身先生に今日来ていただいていまして。雇用保険法は大事なんですが、このままいくと蔓防延長期間中に質疑が、コロナのことができないので、ちょっとお許しをいただいて、短く幾つか尾身先生、それから厚労大臣に伺って、終わったら退室していただきますので、雇用保険法に入りますので、よろしくお願いします。

 早速伺いますが、今まさに蔓延防止期間延長中のところもある中で、第七波にそのまま移行する懸念、おそれについて尾身先生も述べておられます。

 そういった中で、まさに東アジアの、例えば四回目接種が始まっている韓国でもまた感染が増えたり、あるいは香港の状況とか、アフリカにおけるいろんな感染の動向とかも含めて、やはり私は、もう第七波を想定した、先生おっしゃっている高齢者への集中的なワクチン接種の前倒しであったり、それで、今日伺いたいのは、ワクチンもそうなんですが、資料の五ページ目につけておりますが、これは岡山県の、私の地元のことを書いていますが、「高齢者施設集中検査へ」と。

 岡山県は蔓防が解除されたんですが、今月中はリバウンド防止月間ということで、ここに記事をつけていますけれども、これは岡山、倉敷、政令市、中核市は独自のあれなんですが、それ以外の四百八十七の高齢者、障害者施設に抗原検査キット約五万個を配って、定期的に、県の職員さんが、従事者の方々、あるいはもちろん施設の利用者さんの点検、検査ということですね、実施をするということでございます。

 これは、私、昨日通告で伺ったら、いろいろ定期的に、もう既に、私が通告した後に資料をもらったんですけれども、東京、大阪、愛知の集中点検の状況を伺ったんですが、蔓防が出ているところはやっているんですよね。ちなみに、岡山は、でも蔓防が出てから初めてなんですよね。解除してから、リバウンド防止でやっているということなので。

 そうじゃなくて、蔓防が出ていないところも含めて、七波対策、防止策も含めて、例えば高齢者施設のワクチン接種が遅れているとか、クラスターが出ているわけですから、あるいは高齢者のワクチン接種、二月末で六割、目標の四割が未達なわけですから。特に遅れている自治体、ちなみに、施設の遅れている状況については、昨日が締切りで、もう調査結果が出てきますから、そういう都道府県については、集中検査をやることは私は非常に感染防止に、尾身先生がおっしゃっていることに合致する、意味があると思うんですが、いかがでしょうか。

尾身参考人 重点措置を解除した後にも、実は全く高齢者施設の感染がなくなったわけではないですね。したがって、私は、高齢者施設の感染が続いている場合には、残念ながら死亡される方も多いので、今委員のおっしゃる、いわゆる集中点検というんですか、こういう重症化予防を、高齢施設の対策を集中的にやるという点では全く同感です。

 そういう意味では、一つは、これは沖縄なんかでやって結構効果があったと私たちは認識していますけれども、感染例が出たら早期に介入して、二十四時間以内に検査してやるということが極めて重要です。それから前から言われているように従業員には定期的検査、それから高齢施設で発熱した場合には、従業員がもう行かないということと同時に発熱した人が休めるような環境をつくるということ、それからワクチン接種ですね、追加接種、こういうことをまだ高齢者施設での感染が続いている地域では私はやった方がいいんじゃないかと思います。

柚木委員 全く先生のおっしゃるとおりだと思うんですね。

 そこで、後藤大臣に伺いたいんですが、まさに蔓防をやっている地域がやるのはある意味当然というか今後も是非お願いしたいんですが、やはり、それ以外の地域でも、昨日締切りだった高齢者施設におけるワクチン接種が遅れている都道府県、地域、あるいは、接種が遅れている、高齢者のあるいは全体の、そういう都道府県においては、これは別に強制ということではないんですが、今の仕組みだと蔓防の出ているところはやるということですから、そうでないところも含めて、七波対策も含めて、そういった高齢者施設の集中検査を厚生労働省としても是非お考えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 高齢者が集団生活をしておられる施設での重点的検査が重要だということについては、全く同感でございます。

 一言だけ、ちょっとつけ加えさせていただくと、そもそも、蔓防が適用になる、ならないの前から、全ての地域において、発熱等の症状者が出た場合には必ず検査を実施し、施設全員に対して検査を実施すること、それから、感染者が多数発生している地域等においては、感染者が一人も発生していなくても従事者、入所者の原則全員に一斉検査を実施することは、当初から行政検査の対象でした。それを、蔓防については集中的実施計画の策定を要請し、それについて行政検査としておりますが、それ以外の自治体においても、地域の感染状況やワクチンの接種状況を踏まえまして、独自に集中的実施計画を策定して検査を行うことを可能としておりまして、実際に、蔓防重点区域外、区域に指定されていない期間や地域でも、これを実施している自治体がございます。

 こうした高齢者施設に対する必要な検査が確実に行われるようにしていきたいというふうに考えております。

柚木委員 是非お願いします。大事な答弁ですよね。私は、昨日の時点で三大都市圏を出してもらいました。施設の職員さん、正規、非正規問わずそれぞれやっていく、あるいはやっている。大阪なんかは特にそうですよね、今重要ですから。それ以外のところも今ということで、これは是非、全体を点検して、また委員会、あるいはコロナ本部会合とかでも確認させてもらいますので、大事な答弁をいただきましたので、よろしくお願いします。

 次に、五歳から十一歳のワクチン接種も始まって、前回も質疑させていただきましたが、やはり、私も二人の該当する娘と息子を持つ親としても思うんですけれども、やはり副反応の実情を、頻度、程度、こういったものを早めにまさに厚生科学審議会副反応検討部会で、これは実は二月の十八以降やっていないんですね。多い月は月三回ぐらいやっているんですよ。もう既に二月末ぐらいから接種をスタートしている自治体があるわけですから、その自治体における副反応の程度、頻度というものを早期に検証そして公表していただきたいんです。

 もうこれはそろそろやるタイミングだと思うので、やるんであれば早期に開催をして、そして早く実態を公表していただきたいと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 新型コロナワクチンの接種後に生じた副反応を疑う事例については、審議会において専門家が議論した上で定期的に公表しておりまして、直近が二月十八日でありましたのは事実です。五歳から十一歳までの子供に関する事例の報告はありません。

 審議会の開催の頻度について、具体的に決めているものではないものの、これまで二週間から四週間程度の間隔で開催してきました。副反応の評価に当たっては、副反応疑い報告を単純に集計すればよいものでもなく、個別事例の専門家による評価に加えて、集団データを用いて集計、分析、評価する等のプロセスが必要でありまして、一定程度の間隔で審議会を開催しております。

 今後の審議会についても、子供への接種を含め、副反応疑いの情報を集団として評価できるよう、子供への接種の進捗状況や副反応疑い報告の状況も踏まえまして、適切な頻度での開催を検討してまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 二月十八は、まだ子供接種をやっていないんだから、ゼロで当たり前なので。

 二週間から四週間ということで、来週中でほぼ一か月になりますから、大臣、来週をめどに開催をして、ちゃんと検証して公表していただけるということでよろしいですか。一言だけ答弁をお願いします。

後藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、適切な頻度での開催を行っていきたいと思います。重篤な事象が発生したり、例えば心筋炎が出たときなどは、通常のペースとは違って、非常に頻度を高めて開催もいたしております。なるべく早くに開催をする必要があるときに開催したいと思っております。

柚木委員 よろしくお願いします。

 それから、もうそろそろ終わりにしたいんですが、尾身先生、前回も申し上げたんですが、三回目のワクチン接種ももちろん、都内とかでようやく高齢者以下の方に接種券が届き始めている状況を私も承知していますが、四回目の追加接種についても、先日も全国知事会からこういう要望が出ていますね。「諸外国の動向や専門的知見等を収集・分析し、接種の必要性や接種間隔、開始時期などについて、政府の考え方を早期に提示するとともに、必要なワクチンを確実に確保すること。」と。

 これは、確実に確保することも含めて、尾身先生、前回の答弁では、まずは三波に集中して、高齢者集中と。それはそのとおりですよ。しかし、その後、中長期的にとおっしゃった部分は、その後ではなくて、まさに同時進行でお願いしたいんですね。そうでなければ、また後手後手になりかねません。

 昨日も、五万人以上の方が感染され、二百四十人以上の方が、五波の三倍亡くなっていますので、決して後手後手にならぬためには、四度目の接種を早急に分科会、アドバイザリーボードなどでも検討いただいて、そして何よりも、ワクチンを確保いただきたいんですね。イギリスなどでは、既にもう来年度分ぐらいまで、一億回分を確保、あるいはファイザーのCEOも、毎年、何年間も必要になる、新型ウイルスのワクチン接種。

 本当に、各国で、そういう意味では、既に今年、来年にかけての対策、ワクチンの確保が進んでいるわけですから、是非、四回目の接種を早期に検討して、政府におかれても、ワクチンの確保に動いていただきたい、自治体の接種体制を整えていただきたいと思いますので。特に、エッセンシャルワーカーの方々、前回もやはり遅かったと思います、三回目も。それも含めた対応を是非お願いしたいと思いますが、尾身先生の見解をお願いします。

尾身参考人 私は、今回のコロナ、オミクロン株後のことですけれども、今回の第六波が仮にある程度乗り越えることができても、このワクチンはすぐに、いわゆるゼロになることはないと思います。そういう意味では、何らかの形でその後のワクチンを確保していくということは委員おっしゃるように極めて重要だと思います。

 その上で、四回目のワクチンのことを委員お尋ねですけれども、四回目のワクチンの間隔であるとか、あるいは効能というのは、日本でまだやっていないわけで、一部の外国はやっていますね。そういう諸外国の例も含めてどのようにすべきかという検討を私はすべきだと思いますけれども、今のところ、まだ確固たる情報がないので、これから情報を集めて精査する、検討するということは大事だと思います。

柚木委員 尾身先生、ここまでで結構です。この後、法案質疑に入りますので、ありがとうございました。

橋本委員長 では、尾身先生、どうぞ御退席ください。

柚木委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと通告、五項目しておりますので、雇用保険法改正あるいは職安法改正の質疑に入りたいと思います。

 それぞれ先ほど各委員からの御指摘もあった中で、ちょっと私は、国庫負担については大分詰めた議論をされていますので、二項目めの雇用保険制度の給付の内容、水準、つまり、失業等給付、下げないでくださいよ、維持してくださいよ、あるいは水準を回復してくださいよという視点から質問にまず入りたいと思います。

 二〇〇〇年、二〇〇三年の法改正で、失業等手当、基本手当の日額、給付日数の水準を引き下げられているわけですね。現在に至っても水準は回復していないということでございます。

 政府法案は、教育訓練給付や雇用保険二事業などを含めてまさに給付の内容や水準を維持するために、先ほど井坂さんの説明もあったように、それぞれ本則、そして今の暫定的な四十分の一、それから機動的な国庫繰入れ、財政確保、こういったことと組み合わせる制度だと思いますが、これは、給付の水準、内容を守るためのものである、そういうことでよろしいですか、大臣。

田中政府参考人 今般の雇用保険法改正法におきましては、コロナ禍からの回復途上にあることも踏まえて、雇い止めの方の給付拡充などの暫定措置については継続するとともに、その財源確保については失業等給付の保険料率を本年十月から〇・六%としたところでございます。また、令和三年度補正予算において、当面の雇用調整助成金の財源確保及び雇用保険制度の安定運営のため、二・二兆円の一般会計からの繰入れを実施したところでございます。

 今後の雇用保険制度における具体的な給付水準等につきましては、その時々の雇用情勢等を踏まえ、労働政策審議会における議論も経た上で検討する必要があると考えておりますが、今般の改正により雇用保険財政の安定的な運営を確保することを通じて、失業期間中の生活保障と再就職支援の役割を持つ失業給付を滞りなくお支払いすることなどにより、今後とも雇用保険制度のセーフティーネット機能が十分に果たされるよう適切に対応してまいりたいと考えております。

柚木委員 最後のくだりが水準、内容を維持していただくというふうに受け止められるんですけれども、そのためにも、次の項目に入りますが、場合によっては大臣にお尋ねして、細かいところは局長の答弁で結構ですので。新たな国庫繰入制度の運営の実効性について、本当に機動的な繰入れがちゃんと発動するのか。もっと言うと、繰入れがなされれば絶対に減額にならないとか、そういうことでないと繰入れされても余り意味がないわけですから、是非、そういった視点から伺いますので、それぞれ御答弁をいただきたいと思うんですね。

 まず、この間、労政審の中でも議論をされてきて、こういうケースであれば、例えば四パターンぐらいで政省令にちゃんと規定されていれば、そういった場合には機動的繰入れが発動する、そういうイメージができるんですが、政府案については、そこまで明記をされないということでございますが、その理由も分かるんですね。余り書き込んじゃうと柔軟に機動的に繰入れができない可能性もありますから。

 ただ、いろいろなパターンを例示をいただくと同時に、別にそれ以外のケースでも機動的な発動をいただける、そういう柔軟な例示というのは政省令の書き込みは可能なわけですから、様々なパターンが読めるように工夫して、何らかの具体的な規定を是非政省令に書き込んでいただきたいんですが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 今般の法案において新設する機動的な国庫繰入規定は、失業等給付に係る保険料率が法律上の本則である千分の八である場合に加え、翌年度にこの保険料率が千分の八となる場合や、雇用情勢や雇用保険財政が急激に悪化した場合も実施できる仕組みとなるよう政令で定める予定です。

 機動的な国庫繰入れにより対応すべき具体的な状況を政省令で規定することについては、かえって柔軟な制度運用を妨げるおそれもあり、適切ではないと考えておりますが、厚生労働省としては、労働政策審議会の報告書において示されている考え方も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

柚木委員 ということは、最後のくだりの部分でちょっと確認で、その後、大臣にも伺いますが、まさに労政審の職業安定分科会雇用保険部会報告に、このような、今答えていただいたことも含めて、部会で議論を行い、その意見を踏まえ必要な対応を取るとの記載があります。これは、委員の求めがあった場合には部会を開いていただくということでよろしいでしょうか。

田中政府参考人 今般の法案において新設する機動的な国庫繰入規定の運用に当たりましては、労政審の報告書におきまして、機動的な繰入れを行うべき状況として、同報告書に記載された類型に該当し、又は該当するおそれがある場合には、雇用保険部会に適切な時期に雇用保険財政等の状況を報告し、その上で、雇用保険部会において財政安定化のために必要な財源の内容やその確保策も含めて議論を行い、その意見を踏まえ必要な対応を取るべきこととされております。

 厚生労働省としては、こうした議論も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

柚木委員 それで、大臣に伺いたいのは、今の前提で結構なんですが、確かに、具体的に書き込むメリット、デメリットの話も理解はできるんですね。

 他方で、政府案においては、例えば、国庫繰入要件についての政令委任の規定はあるんですが、これは、国庫繰入れの発動を政令で定める場合に限る。つまり、国庫繰入発動のための最低限の条件を定めるということであって、例えば、四パターンが労政審で示されているわけですが、そういうパターンに該当すれば必ず発動されるということには読めないんですね。だからこそ、一定程度の例示をいただきたいというのが一つ。

 もう一つ申し上げると、例えば、政府案において、令和四年度における国庫繰入れの特例が規定されている中で、先ほども議論があったものですね、しかし、それは必要な場合に行うことができるとされているのみで、実際に、じゃ、どういう具体的なケースであれば発動されるのかどうなのかということも担保されていないわけですから。

 是非、一定程度、足かせにならないようなことを政省令に書き込んでいただく、あるいは、そのことの議論を、この間の労政審の四項目プラスアルファで、今後まさに労政審での議論なども含めて書き込んでいく、今回書き込まないにしても以後そういうことにしていくとか、そういうようなことは是非御検討いただきたいんですが、大臣、いかがですか。

後藤国務大臣 少し局長の答弁の繰り返しになりますけれども、今先生から御指摘あったような政令で定める予定の内容は、失業等給付に係る保険料率が法律上の本則である千分の八である場合に加え、翌年度にこの保険料率が千分の八となる場合や、雇用情勢や雇用保険財政が急激に悪化した場合も実施できる仕組みとなるような政令を定める予定でございまして、分かりやすい言葉で言えば、これは繰り入れることのできる要件を書いているわけであります。

 どんな場合に繰入れを行うかということを明確に政省令で規定することは、委員御自身も一理あるとお認めいただいたのかもしれませんが、かえって柔軟な制度運用を妨げるおそれもあるということでございます。

 雇用保険部会におきましては、労働政策審議会報告書としてきっちりと例示を挙げていただいているわけでありますし、同報告書に記載された類型の該当又は該当するおそれがある場合には、雇用保険部会に早急に財政の状況を報告して、そして財政安定化のための必要な財源の内容やその確保も含めて議論を行うということでございますので、厚生労働省としては、こうした議論をしっかり踏まえながら適切に対応していきたいと思います。

柚木委員 大臣答弁で今ピン留めいただいた部分はあると思いますね。今日、連合の方も傍聴されていますので、労政審の四パターンというものが一つのベースになって。ただ、書き込まないということであれば、どこまでそれが実効性があるかどうかにはやはりちょっと不安がありますので、今後ちゃんと、まさに労政審の意見も聞いてもらいながら、その四条件も含めて、実効的に、機動的に発動されるということを担保していただきたいと思います。

 それで、ちょっと時間がなくなってきたので、雇用保険料を据え置くべきという我々の立場と、国庫負担本則、これを是非実現していただくというのは、実はパラレルの部分もありますので、そういう観点で伺います。

 これはもう資料等におつけをしていますように、激変緩和で千分の八が千分の二、千分の六ということで、激変緩和ですが、いずれ千分の八になれば、これは就労形態によって違うんですが、試算してもらうと大体月額で千二百円ぐらい、皆さん保険料負担増になるんですよ。年間で一万五千円ぐらいこのコロナ禍で、労使共にですよ皆さん、増大するわけです。やはり、それはちょっとないんじゃないのかなと思うんです。

 是非、政府におかれても、コロナ禍の影響、今長期化して、まだ出口がなかなか見えてこない中で、この激変緩和措置以降も、そのときにおけるコロナ禍の影響を踏まえて、場合によっては当面の間、雇用保険料の据置きを是非御検討いただきたいと思いますが、これは大臣、政治判断が必要なところなので、是非御答弁いただけませんか。

後藤国務大臣 令和四年度の雇用保険料については、雇用保険財政が極めて厳しい状況にある中で、失業等給付の保険料率は原則千分の八であるところを、実際の費用負担者である労使も参画した労働政策審議会の報告書も踏まえまして、現下の経済や雇用の状況を勘案し、令和四年度における激変緩和措置として、年度前半を千分の二、後半を千分の六とすることといたしました。

 雇用保険制度は、労使間で広く御負担いただいた保険料を原資として、雇用を失った方への失業給付や雇用調整助成金の支給といった再分配を行う機能を有しているというふうに思います。そのため、負担増の観点からのみ議論するというわけではなく、雇用保険のセーフティーネット機能を十分に発揮できるよう、今般の保険料、国庫負担の見直しにより雇用保険財政の安定を図ったところでございまして、そうした趣旨を踏まえて今後議論をしていくことだと思います。

柚木委員 是非、まさに後段の部分で、国庫負担の特に本則化に絡む部分なんですね。なぜそこを私が絡めて言うかというと、これは本来そもそも、国庫負担四分の一、本則に戻さないのであれば、コロナ禍において労使の雇用保険料負担増も据え置くべきだと思うんですよ。だって、三方一両損という言葉がありますけれども、それぞれ公労使、負担の分かち合いですよね。それで最大の分かち合いはやはり本則化、四分の一なわけです、その十分の一ではなくて。あるいは機動的な出動だけではなくて。ですから、政府法案のように仮に労使負担を今後、激変緩和措置があるんだけれども引き上げていくのであれば、せめて国庫負担も本則の四分の一に戻してからにすべきじゃないですか。

 それぐらいのやはり責任が、まさにこの間、国の責任とおっしゃっている。これは結局、労使は負担増をして、給付金は減るかもしれない、国庫負担は本則の十分の一のみで。結局そうすると、制度は守れるけれども、保険料の負担は上がって、労使共に生活や経営が守れないということになりかねませんよ。制度は守れても生活や事業が守れなければ、保険制度の意味ないじゃないですか。

 是非、国の負担、本則四分の一なくして本来は雇用保険料の労使負担増なしなんだ、そういう視点を持ちつつ、先ほど来の質疑のような、国庫負担四分の一、本則、保険料の財政状況が悪化している場合は四十分の一だけれども回復してくれば四分の一、この議論を、まさに本則四分の一なくして本来であれば雇用保険料の労使負担増なし、その後のコロナ禍の影響も含めて延長もあり得る、そういう認識を是非大臣、お持ちいただきたいんですが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 雇用保険のセーフティーネットの機能を十分発揮できるように雇用保険財政の安定的運営に努めてまいりたい、そのように申し上げたとおりであります。

柚木委員 ちょっと職安法の方、最後行きたいので。

 つまり、セーフティーネット機能を維持するということは、本則四分の一に戻らない間であっても機動的な繰入れによって給付の水準、内容は下がらないというふうに私は理解しますので、これはまた、それぞれの委員から詰めさせていただきますので、よろしくお願いします。

 職安法のところ、資料の九、十の辺りをつけていますが、皆さん御覧ください。多分この後の委員もされると思いますが、人材サービスを利用した際のトラブルが三人に二人ですよ。約半分が、要は、聞いていないよ、違うよという話なんですね、処遇。次のページを見てください。勤務地が半分も違う、給与も半分ぐらい違う、業務内容も三分の一ぐらい違う、労働時間も三分の一ぐらい違う、雇用形態、正社員か非正規とか、肝腎なことですら十ポイント以上も違うと。相談したけれども解決しなかった、そのままにしたが三四%もあるんです。こういう中で、せめて労働条件の明示をお願いしたいんです。

 二点まとめて伺います。

 求人広告に記載された募集情報を見て応募したら違うじゃないかということは少なくないんです、ここのデータのように。応募して実際の労働条件が異なる場合は、虚偽又は誤解を生じさせる表示ということになるのか、これが一つです。

 それから、その条件が異なる場合、求人者は労働条件の変更について明示しなければならないとなっていますけれども、例えば、ネットの求人情報を見て応募した求職者は、求人者と接して初めて労働条件が異なることが分かるなんということになれば、その間の応募に至るまで様々時間をかけて調べて手間をかけて、こういったことを考えると、求職者保護に欠けるのではないか。募集情報等提供事業者に対しても、そもそも労働条件の明示が必要ではないかと思うんですね。そのことは今回の法案に含まれておりますし、特に求職者保護の観点から、今問い立てをした二問について、これは局長になりますかね、お答えください。

田中政府参考人 まず、虚偽表示とか誤解を生じさせる表示の件でございますけれども、今回の改正法案におきましては、求人企業や募集情報等提供事業者に対して、広告において虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁止しております。例えば、意図して求人広告に掲載された募集情報と応募した実際の労働条件が異なる場合には虚偽の表示として法律違反となりますし、また、虚偽とまで言えなくても、一般的、客観的に誤解を生じさせる表示であれば同様に法律違反となります。

 どのような場合が虚偽表示や誤解を生じさせる表示に該当するかについては、更にできるだけ具体化して分かりやすい周知に努めてまいりたいと考えております。

 それから、労働条件明示の件でございます。

 募集情報等提供は、多数の者に対して広く募集情報を提供することとなる一方で、労働条件明示となりますと、特定の労働者に対して、その労働者の希望等も踏まえながら具体的な賃金や労働時間等を示すことになりますので、募集情報等提供の段階で労働条件の明示を行うことは一般的には難しいと考えております。

 このため、募集情報等提供事業者には、求人内容の的確な表示の義務をしっかりと履行させるとする一方で、御指摘のとおり、職業安定法において、求人企業に対しては賃金、労働時間等の労働条件を明示する義務を課しておりますので、引き続き、その履行確保に取り組んで、そういったトラブルのないようにしてまいりたいと考えております。

柚木委員 終わりますが、是非、求人情報の正確かつ最新の内容を保つための措置を講じなきゃならない。これは、事業者規模等あるかもしれませんけれども、それを信じて行く人は違いがないわけですから、そこの実効性の担保を強くお願いして質疑を終わります。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、高木宏壽君。

高木(宏)委員 自由民主党の高木宏壽です。

 四十分間、時間をいただきました。ありがとうございます。当委員会では初めて、そちら側で答弁はしたことはあるんですけれども、初めて質問をさせていただきます。

 冒頭、厚労行政に関わる問題ということで、一言申し上げたいと思います。

 前回の委員会においても取り上げられましたけれども、全国の在宅医療、介護関係者に強い衝撃を与えた埼玉の医師立てこもり事件。亡くなられた医師の方には心から哀悼の誠をささげたいと思います。政府として地域包括ケアとの関わりで推進している、そして需要も増大している在宅医療にとって極めて大きな問題であると思います。

 今回、猟銃が凶器として使用されましたけれども、当然台所には包丁もありますし、その気になれば凶器になるものは家中にあるわけで、まさに患者や家族の生活の場に入っていくことの怖さというものを感じさせる事件でありますけれども。

 二〇一八年に全国訪問看護事業協会が実施した調査によれば、患者や家族から身体的暴力を受けた訪問看護師は四五%、精神的暴力は五三%、セクハラが四八%と、回答した訪問看護師約三千百人のうち約半数が何らかの被害を経験しているという数字もございます。

 また、昨年末には大阪のクリニックで二十六人が犠牲になった放火殺人など、今回の埼玉での医師が殺害された立てこもり事件を含め、医療関係者を狙った事件が相次いでおります。

 事件に至らなくても、医療従事者が患者や家族から受ける暴力、暴言、いわゆるペイハラと呼ばれる事案が全国各地で深刻化しております。病院によっては、暴力、暴言お断りといったポスターを提示したり、職員向けのマニュアルを作ったり、警察官OBを配置したり、暴力のあった場合は院内放送で知らせますよという対応を取っているところもあります。

 もっと医療者を守るような対策がないと、在宅医療が破綻しかねないのではないかと思っております。トラブルに発展しそうなときに医療者が相談ができる場所がないのが実情で、例えば、地域包括支援センターに相談しても、同センターは個別のケースに介入することは難しいということで、なかなか役に立たないということで、相手が相当に困難な人物である場合、医療者が相談できる組織を設ける等、何らかの対策を是非、厚労省としても検討していただきたいと思います。

 今回、凶器として使われた猟銃の所持、保管については、私も警察OBですので、何ができるのか考えていきたいと思っております。

 保管スペースの不足から、現在、ガンロッカーという固定のロッカーに保管して、弾薬も別に保管しなければならないといった様々な条件を課した上で自宅保管とするのが現状で、現行の制度では在宅医療訪問先に猟銃が保管されているかどうか分からない、それが現状であります。

 また、今回のケースでは所有目的が標的射撃なんですね。ですから、生活狩猟や駆除目的とは違うので、例えば、その場合、射撃場への委託保管を原則とするような対応も考えられるのではないかと考えております。

 通告はしておりませんので答弁は求めませんけれども、前回、大臣が答弁されておりましたけれども、是非、厚労省としても、まずは実態把握、それから各省、自治体との連携、相談の場の設置等、この問題の対応を検討していただきたいと思います。

 それでは、雇用保険法等の一部改正、質問に入らさせていただきます。雇用保険というのは雇用のセーフティーネットであるとよく言われますが、雇用のセーフティーネットである雇用保険が将来にわたって安定的に運営されることが大事であって、そのためには安定した雇用保険財政が不可欠である、その観点から何点か質問をさせていただきます。

 弾力条項というのがございます。積立金残高と差引き剰余の合計が失業等給付の二倍を超える場合は保険料率を最大千分の四引下げ可能、失業等給付の一倍を下回る場合は最大千分の四引上げ可能とする仕組みでございます。要は、雇用情勢が良好に推移して雇用保険財政が好調のときは保険料を下げ、逆に厳しいときは上げるということであります。

 事実、雇用情勢が良好に推移して積立金残高も高い水準にあったことから、平成二十八年度に六億ほどあったと記憶しておりますけれども、平成二十九年から令和三年度まで、法律上の措置を講じた上で暫定的に千分の二引き下げた上で、弾力倍率が二を超えていたことを踏まえて弾力条項に基づき更に千分の四引き下げ、現行の千分の二になっていたわけで、コロナ直前の令和元年の雇用情勢も、求人が求職を上回って推移し、年平均で有効求人倍率が一・六倍、完全失業率も二%台前半で推移するなど、着実に改善が進んでおりました。

 かように、雇用情勢と雇用保険料率や国庫負担割合そして雇用保険財政は不可分の関係にあるわけで、そこで、まずお伺いしますけれども、今回、雇用保険料率、国庫負担割合を見直すに当たって、現下の雇用情勢、政府としてどのように認識されているんですか。経済状況に対する認識を、まずお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 まず、経済情勢ですけれども、月例経済報告によりますと、経済状況については、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さが見られると承知しております。また、現在の雇用情勢は、求職者が引き続き高水準にあり厳しさが見られるものの、令和四年一月時点において有効求人数が十三か月連続で増加するなど、求人に持ち直しの動きが見られます。

 このように、足下では改善の動きが強まりつつあるものの、新型コロナウイルス感染症の感染状況の今後の雇用に及ぼす影響が不透明な中で、引き続き、コロナ禍への対応を図りつつ、雇用保険財政の安定的な運営を確保していくための対応を取っていく必要があると考えております。

高木(宏)委員 この弾力条項なんですけれども、保険財政的には極めて真っ当、正しいやり方なんですけれども、雇用情勢が良好、経済状況が良好、そして企業業績も好調で資金繰りにも余裕がある、従業員もボーナス、給料も上がって余裕があるときに労使の保険料率を下げて、逆に、企業が苦しいとき、消費が落ち込んで従業員も苦しいときには上げる。何かちょっと、保険財政的には正しいやり方なんですけれども、ちょっと首をかしげるところがある。苦しいときは、逆に、保険料率は据え置いた上で例えば国庫負担を追加するといったいろいろな対応が考えられるんじゃないかなと私は思っております。

 回復途上にあるという認識ですけれども、世界保健機関が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言してから、二〇二〇年の三月ですから、ちょうど二年が経過しようとしております。まだまだ変異株の感染拡大、いまだに収束が見通せない中、この間、日本経済もやはり大きな影響を受けて、二〇二〇年度の実質GDPはマイナス四・六%、リーマン・ショック時を超える最大の下落を記録しました。

 また、緊急事態宣言の発令などで休業者も一時的に急増して、特に感染拡大の厳しい影響を受けた宿泊業、飲食サービス業などは、雇用者数の減少や新規求人の回復の遅れなど、雇用にも大きな影響を与えたわけでありますけれども、こうした中で、失業率の急上昇を食い止めて、企業の雇用維持を支援する中心的な役割を果たしてきたのが、この雇用保険二事業の雇用調整助成金であったと思っております。

 一昨年の二月以降、新型コロナウイルス感染症が全国に拡大する中で、雇用保険臨時特例法や累次の補正予算によって各種の雇用対策が講じられてきております。

 具体的には、大幅な雇用調整助成金の拡充や、雇用調整助成金を補完する制度である新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の創設、そして、新型コロナウイルス感染症の影響により離職した者等に対しては基本手当の給付日数の延長に関する特例措置も講じてきたわけで、こうした特例措置等を行うに際し安定的な財政運営を確保するために、雇用保険臨時特例法により、令和二年度及び令和三年度に限り、失業等給付に対する一般会計からの任意繰入れ、雇用調整助成金に要する費用の一部の一般会計からの繰入れ、雇用安定事業に要する経費について失業等給付の積立金からの借入れを可能にする財政運営上の特例措置も講じてきたわけであります。私は、こうした一連の特例措置による財政支出は、雇用を守る上で大きな効果を発揮したと考えております。

 そこで、お伺いしますけれども、新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けた諸外国と比較して、こうした一連の特例措置による財政措置が雇用情勢の悪化を一定程度抑えたと考えておりますけれども、具体的に失業率をどの程度抑制したのか、そして政府としてその効果をどう評価しているのか、お伺いをします。

田中政府参考人 雇用調整助成金等による完全失業率の抑制効果についてですが、令和三年版労働経済白書で推計を行っております。一定の仮定の下での推計でありまして、相当の幅を持って見る必要がありますが、これによりますと、二〇二〇年四月から十月の完全失業率が二・六%ポイント程度抑制されたと分析されております。完全失業率の上昇が緩やかなものにとどまっていることなどを見ると、労働者の雇用や生活を守ることに一定の役割を果たしたと考えております。

 一方で、休業の固定化や、スキル、意欲の低下など、特例の長期化に伴う弊害も懸念されているところでございます。

 今後の経済活動の再開に向けては、人手不足分野や成長分野における人材の確保も重要であり、経済や雇用情勢を見極めながら雇用の維持を図るとともに、人材活用や再就職支援にも取り組み、バランスの取れた雇用対策を進めてまいりたいと考えております。

高木(宏)委員 一定の効果、前向きに評価しているとのことですが、一方、こうした特例措置による財政支出で、支出が保険料収入を大幅に上回って、その補填のために雇用安定資金残高は令和二年度末でゼロとなる、積立金も枯渇する、極めて厳しい状況になっております。

 そのため、令和三年度補正予算において、令和二年六月に施行された雇用保険臨時特例法により設けられた任意繰入規定等により、当面の雇用調整助成金の財源及び雇用保険財政安定のため、一般会計から労働保険特別会計雇用勘定に対して約二・二兆円の繰入れが実施されております。これにより、この繰入額を令和三年度中の支出に充てた後に残る令和三年度末の積立金は約一・三兆円となる見込みでありますが、令和四年度も、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、引き続き雇用調整助成金の支出が想定されること等を勘案すると、雇用保険財政の見直しは喫緊の課題であります。

 そこで、雇用保険財政に対する、どのように認識されているのか、そして、令和四年度の失業等給付関係の収支状況、積立金の残高見込みについて伺っておきたいと思います。

田中政府参考人 雇用保険財政につきましては、雇用情勢がコロナ前までは良好に推移してきたこと等から暫定的に雇用保険料及び国庫負担の引下げを行ってきましたけれども、コロナ禍の対応により極めて厳しい状況に陥っております。

 令和四年度予算案では、失業等給付関係の収支は、保険料率の引下げの継続や雇用調整助成金等への貸出しを行うことにより、今御指摘のとおり、今年度末時点で一・三兆円程度と見込まれます積立金を大幅に取り崩す見込みであります。その結果、令和四年度末の積立金残高は約五百億円というふうに、非常に僅かな額になる見込みとなっております。

高木(宏)委員 今、御答弁いただいたように、改正案に盛り込まれた保険料率を前提としても、令和四年度末の残高は僅か五百億円。雇用のセーフティーネットとしての本来の役割が果たせるのか、大きな疑問であります。

 単年度の収支も均衡しない。さらに、積立金が大幅に減少した大きな要因は、これは令和二年度から令和四年度までの累計で約三・一兆円に上る雇用安定事業費への貸出しであります。現時点で返済のめどは立っていない。

 雇用保険財政の立て直しはまさにこれから取り組んでいかなければならない状況にあると考えておりますが、現時点で雇用保険財政の立て直しに向けて政府として何らかの方向性を持っているのか。持っているのであれば、その具体的な方向性について、副大臣にお答えいただきたいと思います。

古賀副大臣 現在の雇用保険財政の状況は、高木委員から御指摘いただき、そして局長から御答弁させていただいたとおりでございます。

 そういった保険財政の状況を踏まえまして、今回の法案におきましては保険料及び国庫負担両面から見直しを行う。具体的には、保険料率については、原則千分の八であるところを、年度前半には千分の二、そして十月以降の後半は千分の六とします。また、国庫負担につきましては、雇用情勢や雇用保険の財政状況に応じた負担割合とすることに加え、機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化するとしているところであります。

 こうした新たな仕組みを適切に運営していくことで、予期せぬ景気変動に伴う雇用情勢の悪化が生じた場合にも、雇用のセーフティーネット機能が適切に果たされるものと考えているところでございます。

 雇用保険制度につきましては、引き続き、保険料そして国庫負担により必要な財源を確保し、将来にわたって安定的な運営を図ってまいりたいと考えているところでございます。

高木(宏)委員 コロナ禍、こうした一連の特例措置による財政支出が雇用保険財政悪化の大きな要因であるわけですが、こうした支出について、国の緊急事態措置などに伴う休業要請によるもの、国の感染症対策によるものであるから、雇用調整助成金等に要した費用は既存の制度の枠組みから捻出するのではなく、国の感染症対策に係る経費として一般会計から負担すべき、そうした意見もございます。

 リーマン・ショックのときも雇調金の拡充などで対応したわけですが、二〇〇八年から二〇一〇年度の執行額を累計しても約一兆円に満たないのに対して、今回の新型コロナ禍の下では、支給決定額は既に五兆円近くになっていると承知しております。

 新型コロナウイルス感染症は百年に一度の感染症パンデミックと言われております。リーマン・ショックのときも百年に一度の危機と言われたわけですけれども、こうした危機というのは二十年、三十年周期で起こるとも言われております。

 これからもこうした危機は起こるわけですから、雇用保険というのは、日本の労働政策の中で重要な位置を占める制度であります。コロナ禍のような経済危機のときに大きな力を発揮する制度なんです。

 そのような危機のときに力を発揮するには、平時から災害や経済危機が来るのを前提とした準備が欠かせないと私は考えるわけですけれども、先ほども触れたように、コロナ禍前に積立金が潤沢にあるからといって雇用保険料率や国庫負担割合を下げてきたわけで、準備が不十分だったところもあるのではないかと考えております。

 国の雇用政策への責任がしっかり果たされるためには、こうした非常時、危機のときの仕組み、枠組みを平時からしっかりと検討しておくべきと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

古賀副大臣 高木委員が御指摘された、まさに今、コロナ禍での非常時におけるこの雇用政策でありますが、しっかりと今後も平時から、コロナが収まった後に平時から検討していくべきじゃないかと、大変大事な指摘だというふうに受け止めております。

 そして、実際、今回の法案につきましても、本年の一月ですが、労働政策審議会において要綱を諮問した際に、公労使一致した意見として、雇用保険制度は労働者や使用者が負担する保険料と国庫負担から成り立つ仕組みであり、雇用保険財政の立て直しに向けてまさにこれから取り組んでいく状況であることから、雇用保険事業における諸給付及びその費用負担の在り方については、引き続き、労政審において総合的に検討を行うべきだという意見を付された上で、こうした意見を厚労省が最大限尊重することを前提に、法案の要綱についておおむね妥当とされたところだと受け止めております。

 厚労省としましては、この趣旨をしっかりと受け止めて、コロナ禍における対応の検証を進めるとともに、その結果を踏まえて、引き続き検討してまいりたいと考えているところであります。

高木(宏)委員 しっかりと検討をお願いしたいと思います。

 雇用保険料率については、令和二年度の弾力倍率が一・八五ということで、弾力条項により引下げが可能な二を下回っていることや、法律により暫定的に千分の二に引き下げていた措置が令和三年度末で期限を迎えることから、失業等給付に関わる保険料率は原則の千分の八に戻るところ、今回の改正案では、コロナ禍における労使の負担が過大とならないように配慮して、激変緩和措置ということで、令和四年度においては、四月から九月までは千分の二、同年十月から令和五年三月までは千分の六と、年平均で千分の四としたわけでありますけれども。

 回復途上にはあるものの新型コロナの経済への影響はまだまだ残っており、妥当な措置として評価するわけですけれども、年度途中で雇用保険料率が変わるというのは平成十四年に一度だけあったと承知をしておりますけれども、極めて変則的であり、事務手続の負担が生じることも予想されます。料率の変動に事業主が円滑に対応できるように、丁寧な周知を始めとしたきめ細かな方策を行うべきと考えますが、いかがですか。

田中政府参考人 今回、御指摘のように、異例の措置として年度途中での保険料率の変更を行うことになっておりますけれども、このことに関して、労働政策審議会においても使用者代表委員から丁寧な周知等を求める御意見をいただいておりまして、しっかり対応していく必要があると考えております。

 厚生労働省としては、変更内容のお知らせや説明会の実施などにより、できる限り早期に事業主の皆様への周知が行き届くよう、あらゆる機会を通じた周知の徹底に努めてまいりたいと思います。

 また、保険料を納付いただく際の事務負担の軽減のため、申告に当たって活用できる計算支援ツールを作成してホームページで周知するとともに、都道府県労働局における丁寧な相談対応を行うなど、円滑な手続に向けた取組も進めてまいります。

高木(宏)委員 雇用保険の保険事故である失業等については、政府の経済政策や雇用政策と関わりを持っており、政府もその責任の一端を担うという考えから、国庫負担の制度が設けられていると理解をしております。

 今回の改正案では、求職者給付の国庫負担を附則で規定する暫定措置の対象から外して、雇用情勢や雇用保険財政に応じて異なる割合を適用することとしております。雇用情勢等が悪化している場合は現行の本則と同じ四分の一で、それ以外は現行の附則第十四条と同じで四分の一の百分の十である四十分の一ということで、雇用情勢や雇用保険財政が悪化した場合に国庫負担の割合を増やすという考え方は理解できるわけですが、国庫負担の本則復帰については、労働政策審議会の雇用保険部会も再三にわたり国庫負担の割合を四分の一に戻すように求めてきていると承知をしております。

 また、令和二年の法律改正時の衆参厚生労働委員会の附帯決議においても、雇用政策に対する国の責任を示すものである雇用保険の国庫負担については、改正後の雇用保険法附則第十五条の規定に基づき、早期に安定財源を確保し、本則に戻すこと、また、今回の時限的な国庫負担率の引下げの措置の継続については、令和三年度までの二年度間に厳に限った措置とすることとございます。

 まさに、雇用保険事故である失業は、政府の経済政策、雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきという考え方が背景にあるわけですから、国庫負担割合について変更を加える場合には、国の責任という観点からも十分な説明が必要だと考えております。

 そこで、お伺いしますけれども、失業等給付の国庫負担について、本則の負担割合である四分の一ではなく、今回新たな国庫負担の仕組みを導入するに至った考え方についてお伺いしたいと思います。

 あわせて、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合以外は国庫負担割合は四十分の一となるわけですけれども、コロナ禍からの経済の回復途上にあると言われる令和四年度においてもその要件は満たしておらず四十分の一となるわけで、二つの要件、今、失業等給付の受給者は四十万人から五十万人で推移していると記憶しておりますけれども、この二つの要件をいずれも満たすのは極めて難しいと考えるわけですけれども、受給者人員の月平均七十万人以上の要件の根拠と、四分の一が適用される具体的な状況について、お答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 雇用保険における政府の役割、国庫の役割についての認識については御指摘のとおりで、従来の考え方を変更するものではありません。

 その中で、厳しい財政状況の中で、今後とも雇用保険財政の安定運営を図っていく観点から、今般、失業等給付に係る国庫負担の見直しを行うこととしたところでありまして、雇用情勢や雇用保険の財政状況に応じた仕組みとするため、雇用情勢及び雇用保険財政が悪化したときには四分の一、それ以外のときには四十分の一とした上で、これに加えて機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化することで、こうした仕組みを活用して雇用保険財政の安定的な運営を図ろうとするものでございます。

 その上で、失業等給付の国庫負担率が四分の一となる基準である受給者実人員七十万人という水準ですが、これは、雇用情勢が相当程度悪化した状態として、原則の雇用保険料率を設定するに当たっての基本想定としている六十万人と、近年で最も高い水準である八十五万人の中間程度の水準をもって設定をしております。

 受給者実人員は、今般のコロナ禍においても、雇用調整助成金の特例などの効果もあって大きく増加しておりませんけれども、過去には、リーマン・ショック時の平成二十一年度、アジア通貨危機、ITバブル崩壊など長期的な不況にあった平成十年度前後の時期においてこの七十万人という水準を超えており、今後においても十分に想定され得るものであると考えております。

高木(宏)委員 改正案では、さらに、これとは別枠の新たな国庫繰入制度を創設することとしておりますけれども、一定の要件の下、機動的に国庫から繰入れができる新たなこの制度について、何よりも制度の機動性、特に実効性を担保することは重要だと考えております。それがひいては雇用保険財政の安定化に資するわけで、どのような国庫繰入れの要件、制度の運用を想定しているのか、お伺いします。

田中政府参考人 今般の新たな国庫繰入れの要件は、失業等給付に係る保険料率が法律上の本則である千分の八である場合に加えて、翌年度に保険料率が千分の八となる場合や、雇用情勢や雇用保険財政が急激に悪化した場合も対象となるよう、政令で定める予定でございます。これにより、失業者の増大等による財政リスクの発生などの際に、より機動的に国庫を投入できる仕組みとなると考えております。

 また、この規定の運用に当たりましては、労働政策審議会の報告書におきまして、保険料の本則を超えた引上げが可能である弾力倍率一を下回る場合であって、雇用保険財政の悪化により積立金が不足し、失業等給付の支払いに支障が生ずるおそれがある場合などにおいて、機動的な国庫繰入れにより対応すべきであるとの考え方が示されております。

 厚生労働省としては、こうした議論も踏まえつつ、適切に制度を運用することで、雇用保険財政の安定的な運営を図ってまいりたいと考えております。

高木(宏)委員 雇用保険二事業の収支についてお伺いしたいんですけれども、緊急事態宣言など国の感染症対策が雇用に与える影響への対応は、先ほども申し上げたとおり、主として雇用保険二事業を含めた雇用保険措置の拡充等によって対応してきたわけで、令和二年度及び令和三年度の規模と比較すると、令和四年度予算の雇用調整助成金の支出は大幅に少ない上、積立金からの借入れも両年度の半分以下であります。

 新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない中、企業の雇用維持を支援する中心的な政策であった雇用調整助成金の特例措置の取扱いを含めて、雇用保険二事業の収支の見通しについてお伺いします。

田中政府参考人 雇用調整助成金につきましては、昨年末以降、支給が減少しておりますけれども、令和四年度予算案には、四月以降も一定程度の支給が続くことを想定して、約〇・五兆円を計上しており、当面の執行には問題がないと考えておりますが、今後も、執行状況を注視しながら、必要に応じて適切に対応してまいります。

 また、雇用保険二事業の収支につきましては、雇用調整助成金に必要な予算額を措置する必要がある中では剰余を計上することは困難であり、令和四年度予算案においても雇用調整助成金以外の事業内容を厳しく精査しているところでございます。

 そうした中においても、一定期間、一定の規模で、成長分野への労働移動の円滑化や人材育成を強力に推進していくため、人への投資に必要な予算として約一千億円を計上するなど、必要な事業についてはしっかりと実施することとしております。

高木(宏)委員 雇用保険の財政構造で私が懸念しているのは積立金からの借入れであるわけですけれども、今回の改正案で、積立金からの借入額の返済については、二事業収支の剰余の二分の一の範囲内での返済猶予、一定の場合に返済免除ができる規定が盛り込まれたわけですけれども、新型コロナ感染症の、受ける前の二事業の剰余の規模、例えば令和元年度は千十億円、平成三十年度で約千九十六億円と考えると、債務の解消に極めて長時間を要することが見込まれるわけであります。

 また、借入額の規模を考えると完済が危ぶまれるわけですが、借入額の返済の在り方について令和六年度末を目途とする検討規定を設けておるわけですけれども、本来は借入れが生ずる前に、銀行の融資もそうですけれども、返済の在り方については検討するものなんですけれども、コロナ禍における二事業は、雇用調整助成金の特例措置、休業支援金制度の創設で、雇用保険二事業で異例の個人給付の実施で、本来は増大したであろう失業等給付、これを抑えたことから、失業等給付に係る労使や国庫の負担等を実質的に肩代わりしている側面もあるわけであります。

 借入額の返済を全額事業主負担である雇用保険二事業の剰余のみで負担するのはおかしいのではないかという考え方もございます。また、剰余の規模からも返済がなかなか難しいと考えます。

 一般会計からの繰入れも行われている雇用保険二事業の免除の在り方を含め、借入額の返済について厚労省としてどう考えているのか、お伺いします。

田中政府参考人 御指摘の雇用保険二事業における借入額の返済の在り方につきましては、労働政策審議会の議論において、労働者代表委員からは、労働者が拠出した保険料が含まれる積立金からの貸出額が保全されるべきとの意見があった一方で、使用者代表委員からは、委員御指摘のような意見、すなわち、雇用調整助成金の特例や休業支援金制度の創設により、失業等給付に係る労使や国庫の負担等を実質的に肩代わりしている側面もあることから、受益者全体で負担すべきとの意見もありました。

 こうした検討は、今後、雇用調整助成金の特例的な支給が落ち着いた段階で行うことが適当であることから、今般の法案においては、令和六年度までを目途に累積債務や返済の在り方について検討する旨の規定を置いております。

 今後、雇調金等の支出状況や積立金、雇用安定資金の額等の財政状況も踏まえながら、適切に検討をしてまいりたいと考えております。

高木(宏)委員 時間も来ましたので最後の質問になりますけれども、コロナ禍での政府の雇用対策は、雇用調整助成金の特例措置を矢継ぎ早に拡充して、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金も創設するなど、大胆かつ迅速であったと評価をしております。

 一方、コロナ禍を通してこうした対策を打つ過程で、雇用のセーフティーネットが不十分な点、各種の課題も明らかになりました。例えば、雇用調整助成金の支給手続の問題、それから、シフト労働者やフリーランスなど不安定就労を余儀なくされている人々に対するセーフティーネットの整備、雇用調整助成金に関わる特例措置の在り方、それから、従業員シェアリングの課題、働き手のスキル転換や労働移動推進に関わる課題等々、多々ございます。

 そこでお伺いしますけれども、コロナ禍における雇用対策として雇用保険制度を活用して講じた様々な特例的対応や、それらが雇用保険財政に与えた影響、特に雇用調整助成金の長期にわたる特例措置が雇用保険財政に与えた影響、そして、コロナ禍で露呈したセーフティーネットの欠陥など、こうした点を総合的に検証して、先ほど申し上げたように、二十年、三十年ごとに危機はやってまいります。今後の危機時における対応に役立てるべきと考えるわけですけれども、所見を伺いたいと思います。

古賀副大臣 今、委員御指摘のコロナ禍における雇用対策として、雇用調整助成金の特例措置、あるいは休業支援金制度の創設、求職者支援制度の特例といった、雇用保険制度における特例的な対応を講じて、状況に応じたセーフティーネットの確保に今日まで努めてきたところでございます。

 こうした取組によりまして失業の抑制に相応の効果が認められた一方で、雇用保険財政には御指摘のように大きな影響があり、厳しい財政状況になっているところであります。

 今回の法案につきまして一月に労働政策審議会に要綱を諮問した際には、公労使の一致した意見として、今般のコロナ禍に対応するため、雇用保険制度において講じた様々な特例的な対応について、公労使が参加する労政審において検証を進めて、将来の有事における対応に資する必要があるとの意見を付された上で、今回この法案の要綱についておおむね妥当とされたところでございます。

 厚生労働省としては、この趣旨をしっかりと受け止めて、将来の危機時における対応に資するべく、今後も今般のコロナ禍における対応の検証を進めてまいりたいと考えているところであります。

高木(宏)委員 雇用保険財政の立て直し、まだスタートしたばかりでありますので、しっかりと検討していただくようにお願いして、私の質問を終わります。

橋本委員長 次に、吉田久美子君。

吉田(久)委員 公明党の吉田久美子でございます。

 本日は、厚生労働委員会委員としての初質問となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 雇用保険制度の見直しについてお伺いします。

 公明党は、二月二十四日、長期化しているコロナ情勢から国民の雇用、事業、生活を守り抜くという観点から、政府に対して提言をまとめて、提出させていただきました。その中で、いまだに蔓延防止措置が続く区域も残る感染状況から、雇用への影響もやはり出続けていることもあり、雇用調整助成金、休業支援金、緊急雇用安定助成金については現状の制度内容のまま六月いっぱいまで延長していただけるとの発表が翌日ございました。大臣始め政府の決断に大変感謝申し上げたいと思います。世界的に見ても完全失業率を低く抑えてくることができたのも、この制度を活用してきたからだと言えると思います。

 その上で、今回の法改正ですが、コロナの長期化で雇用調整助成金等の支出が積み上がりました。二月末、およそ、雇用調整助成金五・四兆円、休業支援金・給付金二千七百億円、合わせて累計で五・七兆円という支出でございました。積立金も底をついてしまったということで、今回の法改正にならざるを得なかったと思いますし、そこは理解できるところではあります。

 法改正をしなければ保険料率が四月から元来の千分の八に戻ることになるため、激変緩和措置ということで、今回、当面は千分の二、現状を維持し、その上で本年十月から千分の六に、つまり現行の三倍に引き上げることになるという改正でございます。

 私は、さきの選挙で初当選させていただくまでは、主婦目線、庶民目線で政治を見詰めてまいりました。先ほど高木委員より同じ御指摘がございましたけれども、素朴に感じるのは、世の中、景気がいいときには賃金も上がり、少しは貯蓄に回す余裕も生まれるものでありますが、景気が落ち込めば出費も切り詰め、食卓からはおかずも一品減るとか、とにかく少しでも家計の負担を抑えようと努力するものです。

 それとは今回、逆の形で、法改正で、そもそも、景気がよかったときに、積立金も増えていたことから雇用保険料の負担も抑えて、国庫の繰入れも減らしていた。その中でこのコロナ禍に見舞われ、想像以上の支出となり、とうとう積立金もゼロになってしまった。今回の法改正によって、本来の保険料率までは戻さないまでも、現行よりはいずれ、十月に引き上げること、誰も予想できなかったコロナ禍という特殊事情であるとはいえ、いまだに景気回復も見通せない、事業主にも労働者にも双方に負担をおかけしなければならない事態になっていることを深く憂慮しております。

 改めてお伺いしたいのは、本法案によって雇用保険財政の安定化を図ることができるようになるのか。また、今回定める新たな国庫繰入規定の条件に照らして、本当に、予測できない雇用情勢に見舞われたときに機動的に国庫を投入できるような制度になったのかを改めて確認をさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 まさに、現在の雇用保険財政の状況に鑑みて今回の法改正を御提案させていただいております。

 細かくなりますけれども、今回の新たな国庫繰入制度につきましては、機動的な国庫繰入規定というものを、通常の定率の負担の枠組みを超えて新たにつくります。その国庫繰入れの要件につきましても、失業等給付に係る保険料率が法律上の本則である千分の八である場合に加えて、翌年度に保険料率が千分の八となる場合や、雇用情勢や雇用保険財政が急激に悪化した場合も対象となるように政令で定める予定でありまして、これによって、失業等の増大等による財政リスクの発生などの際により機動的に国庫を投入できる仕組みとなっております。

 保険料率の引上げについて、こういう厳しい時期に御負担を求めるのは非常に心苦しいところでありますけれども、雇用保険料というものは、幅広く負担をいただきながら現に必要とされている方や休業を余儀なくされている事業に対する支援、要は再配分として対応している部分もありますので、そういった認識の中で、単に負担の増ということでなくて、厳しい中での雇用の維持、雇用の安定のための対応をどうすればいいかという観点からも含めて検討する必要がありますし、また、その趣旨、考え方も関係者の皆様にしっかりお知らせをして御理解を求めていきたいと考えております。

吉田(久)委員 雇用保険料の更なる引上げの可能性についてお聞きしたいと思います。

 ロシアのウクライナ侵攻によって、先行きの予想できない情勢が続いております。今後の日本経済に少なからざる影響があるのは必至で、社会経済状況がどのように変わるか分からないわけでありますが、労働業界には、雇用調整助成金の財源を確保するために更なる雇用保険料の引上げがあるのではないかとの不安があるということであります。このことに対しての政府のお考えをお聞きしたいと思います。

田中政府参考人 令和四年度の雇用保険料率については、雇用保険財政が極めて厳しい状況にある中で、本来は原則の千分の八に戻るところ、実際の費用負担者でもある労使も参画した労政審の報告書も踏まえて、令和四年度における激変緩和措置として、年度前半を千分の二、後半を千分の六とすることといたしております。

 雇用保険制度は、繰り返しになりますけれども、労使から広く御負担いただいた保険料を原資として、雇用を失った方への失業給付や業況が苦しい企業への雇用調整助成金の支給といった再配分を行う機能を有しているところでありまして、こうした制度の意義について事業主に丁寧に周知、説明し、理解を得てまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 育児休業給付についてお尋ねします。

 本年一月二十五日の日本経済新聞に、雇用保険制度にある育児休業給付が財源不足に陥るとの記事が掲載されておりました。この記事の中で、今年四月から始まる男性の育児休暇新制度にも触れながら、育児休業給付の伸び率がこの十年弱で倍以上の伸びを示しており、現在の積立金を充当しても、試算では、二〇二五年度に資金ショートすると書かれておりました。

 今後、育児休業取得者を増やそうという政策を進めている中で、かつ、これまでの支給期間を延長する施策であることから、財源不足になるということがないような制度設計にしていかなければ、被保険者も安心して利用することができません。

 同記事の中で、育児給付制度を雇用保険制度から分離する可能性について指摘し、今年度から厚労省は財源の在り方を見直す検討に入ると断定的に書かれておりました。この点についても確認をさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 雇用保険制度に基づきます育児休業給付の在り方の検討に当たりましては、まず、従来の給付の伸び率で増加し続けるとしても、令和六年度までは運営可能であることを確認をしております。

 その上で、今般の法案では、仮にそれよりも高い伸び率が継続した場合の財政リスクにもきちんと備えるという観点から、失業等給付の積立金からの借入規定を令和六年度まで延長することとした上で、仮に借入れが生じた場合には、返済の在り方について検討する旨の規定を盛り込んだところでございます。

 さらに、少子化社会対策大綱におきまして、育児休業給付について、中長期的な観点から、その充実を含め、他の子育て支援制度の在り方も併せた制度の在り方を総合的に検討するとされていることや、現在の保険料率では、令和七年度以降、安定運営が可能な見通しとなっていないことも踏まえまして、令和六年度までを目途に、育児休業給付及びその財源の在り方について検討を行う旨の規定を置いております。

 制度の実施状況を踏まえながら、その在り方について検討を行ってまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 フリーランスの働き方、雇用環境についてお伺いしたいと思います。

 先日、福岡市の創業支援の拠点であるスタートアップカフェ福岡を視察させていただきました。実際、コロナでセミナー等に集まる人は減ったそうですが、オンラインで参加する方が、女性を中心に増えているとお聞きしました。若い人の中で新しい働き方が求められていることを実感いたしました。

 長年にわたり、求人、転職事業に携わっていらっしゃる方と懇談する機会がありましたが、最近の就業傾向として非正規やフリーランス化が進んでおり、今後は更に進む傾向があるという御意見でありました。働き方の多様化により、企業が業務委託契約をフリーランスの方と結ぶというビジネスモデルが広がる中で、従来であれば企業内で社員が行っていた業務をアウトソーシング又はクラウドソーシングし、雇用保険料も含め企業側の負担を節約する手法が広がっているということでありました。

 企業にとっては総体的なコストダウンを図れる一方で、非正規の方、フリーランス、副業、兼業している働き手への賃金アップに必ずしも結びついていないということは、やはり健全な労働環境とは言い難く、格差がますます広がる温床となり続けてしまうのではないかと懸念しております。

 フリーランスの定義が定まっていないために厚労省も詳細を押さえていらっしゃらないそうですが、内閣官房が令和二年に実態調査を行っており、広義の意味で四百六十二万人、ほかの調査結果を照合してみても三百五十万人から四百七十万人、およそこの範囲内の方がいらっしゃるという受け止め方をしております。

 今問題になっているのは、本来労働者として扱われるべき働き方をしていながら自営業者として扱われ、労働法の適用を受けられないという偽装自営業者が増えていること、労働者とも自営業者とも言えない中間的な存在の人たちも一くくりに自営業者としてみなされ、健康保険、厚生年金保険の対象外にあるということには大変違和感を感じます。

 特に、フリーランスの女性にとって、雇用保険に入れない、つまり育児休業給付金という収入保障のない中で産休、育休を取るということは実際かなり困難で、産後一月ほどで、収入がないために仕事復帰することが多いと聞いております。

 二〇二一フリーランス白書によれば、フリーランスとして働かれている人たちの声として、セーフティーネットが欲しいというアンケート調査結果が出されております。雇用保険に加入したいかという問いに対して、当然の結果だとは思いますが、是非加入したいという方が三八・九%、どちらかといえば加入したいが二九・二%で、合わせると七割近い、六八・一%の方々が必要性を感じているということでございます。

 今回のコロナ禍では、経産省の持続化給付金などフリーランスの方々も対象として大いに活用していただいたわけですが、恒常的な制度というものではありません。今後、こうしたフリーランスとして働かれている方たちを視野に入れて、保険制度の在り方というものも大胆に見直すべき、検討すべきときに来ているのではないかと思います。

 新たなスタートアップ企業が生まれていることこそが我が国の経済的活性化を生むとして国が後押しをするのであれば、なおのこと、フリーランスの方々の保障をどうするのか。また、育児休業給付金も、働き方によらず、つまり雇用保険の制度外であっても産前産後の収入保障がなされるような仕組みが必要なのではないか、先ほどの財源不足が想定されていることと併せて真剣に考えていくべきではないかと思いますが、厚労省の見解をお伺いしたいと思います。

古賀副大臣 今、吉田委員から大変大事な御指摘をいただいたと思っております。

 私の地元の福岡市で意見交換をされたということで、お取組に敬意を表させていただきたいと思います。

 フリーランスなど雇用形態によらない働き方につきましては、現行、実態として労働者に該当しない限りは、雇用関係を前提とする各種社会保険制度の対象とはならないとなっております。こうしたフリーランスなどに対する保険の適用につきましては、給付の仕組みや水準、費用負担の在り方など多くの課題があると考えておりますが、今後は、多様な働き方に対応したセーフティーネットが確保される勤労者皆保険の実現に向けた取組を進めていく中で、こうした課題を整理していきたいと考えているところであります。

 また、出産や子育てに係る経済的負担を軽減するために、児童手当の支給ですとか、三歳から五歳児の幼児教育、保育の無償化、妊婦に対する健康診査など、各種支援を実施しているところでございまして、今後とも、こうした様々な支援策を組み合わせることによって、多様化する子育て家庭のニーズに応じた支援を進めていきたいと考えております。

 さらに、フリーランスとして業務を行っていても、個々の働き方の実態に基づいて実質的に労働者と認められる場合には、労働関係法令を適用し、適切な保護を図ってまいりたいと思っております。

 なお、フリーランスの方が安心して働ける環境の整備については、関係省庁と連携をしまして、昨年三月に策定した、独占禁止法や労働関係法令の適用関係等を明確化するガイドラインの周知だったり、フリーランスの契約上のトラブルなどについてワンストップで相談できる窓口における丁寧な相談対応などに取り組んでいるところでございます。

 以上です。

吉田(久)委員 是非、私は、通常の労働者と変わらない働き方をされているフリーランスの方々の労働者としての権利を守り、保障を含め、保護をしっかりと進めること、また、静かなる有事というべき少子化対策が働き方によって差が出ないように、雇用保険外であっても、仮称ですが、出産育児休業支援金など、制度を創設することなども柔軟に考えていただいて、先ほどの財源問題と併せて、しっかり議論を進めていただきたいと思っております。

 次に、募集情報等提供の定義の見直しについてお伺いします。

 求職者と求人者との関係は、ウェブ上での検索が今や当たり前になってきております。その情報が今まさに玉石混交で、今回の法改正でようやくルール整備が行われると受け止めております。

 ネット上での求人サイトが提供するサービスは、企業情報だけにとどまらず、求職者の職務経歴や今後の希望職種や分野など細かく入力というか設定をしますと、マッチング機能でずらっと具体的な企業名なども提示されるような状態でありますが、このような求人情報、募集情報等提供と従来の職業紹介との違いは何か、お伺いしたいと思います。

田中政府参考人 御指摘の点につきましては、職業安定法に基づく指針において、情報の提供先や内容について、あらかじめ設定された客観的な基準に基づかず加工又は選別を行った場合などには職業紹介に該当するといった判断基準を示させていただいております。

 最近では、募集情報等提供事業者が何らかの仕組みで一定の求人をピックアップして表示するというような、いわゆるリコメンドという機能を有しているサイトもございますけれども、こうしたリコメンドの実態は様々であって、職業紹介に該当するかは個別の事業に応じて判断する必要があると考えておりますけれども、労働政策審議会においても、現在のネット化の進展とサービスの多様化を踏まえ、職業紹介と募集情報等提供の区分について明確化すべきとの建議をいただいております。

 詳細については、法案成立後に労政審で御議論をいただき、現状を踏まえた判断基準の明確化を図るとともに、分かりやすく周知するように努めてまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 虚偽情報の責任の所在について確認をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正では、募集情報等提供事業者が提供する情報に虚偽記載や誤解を招くような内容が確認された場合の責任が明確になり、罰則規定が設けられるということで、クローリングして収集した情報には、古い求人情報や勤務条件、先ほどありましたように勤務地が違うなど、実態にそぐわないものがネット検索では見ることができる状況であり、改善することは当然であると思います。

 これからこれは期待してまいりますが、罰則との関連で、こうした更新がなされないままの情報、募集情報の虚偽記載は、元々の求人者に責任の所在とするのか、それとも、その情報を提供した、クローリングした募集情報等提供事業者の責任になるのかを最後にお聞きしたいと思います。

田中政府参考人 募集情報の内容の正確性に関する責任は、一義的には募集をしている求人企業にありますけれども、今回の改正では、募集情報等提供事業者に的確表示の義務を課して、正確な内容に保つための措置を講じなければならないこととしております。

 したがって、募集情報が虚偽であった場合、まず求人企業の責任が問われることになりますけれども、募集情報等提供事業者についても、求人内容の正確性を確認するために必要な対応が求められることとなります。

 今回の改正内容について、求人企業や募集情報等提供事業者に対してしっかりと周知してまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 求職者の側に立った制度になっていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

橋本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦です。

 本日は、本来委員の田中委員に代わりまして、たっての願いで今回時間を融通していただきました。

 私は、この雇用保険法について、あるいは働き方というものについて何より重視をしてまいりました。その理由は、まず第一点に、この部屋の委員の皆さんの中で私が一番若いんです。なので、社会情勢上、若者の貧困対策ですとか若者の経済対策をおっしゃる場合には、私たちの意見がなければ分からないのが、まず一点です。そして、次のもう一点、これは非常に大切なエッセンスですけれども、私自身が非正規雇用を経験している、あるいは失業を経験している、そういう若者の代表なんです。ですから、雇用保険あるいは労働に関しての問題を審査する場合には、私たちの意見が、直接皆様に声が届いていないと実態とはかけ離れた議論が繰り返されてしまう、私はこのように思うんです。

 なので、本日はいい機会ですから、十五分ですけれども、皆様に是非、質問は私がさせていただきますが、同時に、参考人だと思って私のお話を聞いていただいて、そしてこの後の審査に資する内容にしていただきたい、このように思います。

 まず、このコロナ禍におきまして、非正規雇用の皆さん、何が一番非正規で困っているか。それは、一つは休暇の問題です。正規の雇用と違いまして、特別休暇ですとか有給休暇はありませんので、休めばその分お給料が減る。単純な話なんです。もう一つは、シフトの問題です。正社員でもシフト制で働いていらっしゃる方はたくさんいらっしゃいますけれども、非正規雇用でシフトで働いている方は、シフトが減ればお給料が減るんです。なので、コロナで人を削減したり、あるいは低出力で工場を動かしたりしている場合には、非正規の皆さんは生活に直接ダメージがある、こういう実態があります。

 ただ、昨今、雇用調整助成金やあるいは在籍出向型の産業雇用安定助成金など様々な助成をしていただいているおかげで、幸いにして失業率はそんなに上昇しておりませんけれども、一方で、国がかつては持っていた、セーフティーネットと呼ばれる雇用保険ですとか、あるいは様々な取組が、このコロナという緊急事態、あるいは今まで想定していなかった状態で顕在化してきた、このように思います。

 それを申し上げた上で、シフト制ですとか非正規ですとか、こういった皆様が、短時間、今の基準でいいますと、週に二十時間以下で働いていらっしゃる方、これは私の同級生にもまだたくさんいるんです。ただ、私たちの世代はそうですし、ほかの方々もみんなそうですけれども、決して怠けていたわけじゃないんです。就職活動で怠けたわけでもなければ、待遇のいい会社を求めて転職を繰り返したわけでもないんです。そもそも就職できなかった事情があったんです。それは、私が大学を出るときには東日本の大震災がありました。社会上あるいは経済上の理由で、仕事に就けない、正規の仕事に就けない方々も多くいらっしゃる、このことは是非念頭に置いていただきたい。

 それを申し上げた上で、この週二十時間という雇用時間の制約、これは、今このコロナの状況を見ても、時間だけに就業時間の適用範囲を求めるというのは、これは現代の労働環境にはそぐわないものだと私は思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。

後藤国務大臣 雇用保険制度は、週所定労働時間が二十時間以上かつ三十一日以上雇用見込みがある労働者を適用対象としています。これは、自らの労働による賃金で生計を維持している方について、失業時に必要な給付を行い、求職活動を支援するという考え方に基づいております。

 週所定労働時間が二十時間に満たない方は、労働時間がフルタイムの半分にも満たない方であるため、こうした趣旨に照らして、雇用保険適用の対象外としているというのが、雇用保険制度における労働時間の考え方の基本です。

鈴木(敦)委員 本来の働き方はそうだったのかもしれません。しかし、かつてのように、家計を支える人が一人とは限らないというのが今の実態です。実際に、おやじの仕事は余り給料がありませんでしたので、私も家計にバイトをして金を入れたこともありますけれども、そういうふうに働いている方々も多数いらっしゃるわけですね。お父さんとお母さんだけが働いているわけじゃない。

 俗に今、社会的に問題になっていますけれども、ヤングケアラーと呼ばれる方々もそれと同じです。ただ、彼らも一つの家計を支えているわけですから、ここに関しては支援の輪を広げていかないと、今この状況下で、お父さんだけが家計にお金を入れて家庭はお母さんが守っていきます、そういう家計状況というのは今はもうそぐわないと私は思っています。大臣、そこは見解いかがでしょうか。

後藤国務大臣 働き方がいろいろな形態があるとか、家族でどういうふうに生計をお互いに支え合っていくかとか、いろいろな問題もあると思います。

 先ほどの先生の御指摘が、労働時間以外の方法による適用基準を追加することを検討してはどうかということであれば、一言申し上げるとすれば、雇用保険制度において、同種のリスク、失業とか、そういうことにさらされている集団として適用する場合の必要性、それから労働時間以外の指標の適切な設定方法とか、その把握に伴って、どのぐらいの事務コストや実現可能性があるのかとか、いろいろ整理すべき課題は多いというふうにも思いまして、労働時間以外の適用基準の追加という狭い意味での、もし御発言だとすれば、相当に慎重な検討が必要であるというふうには思っていますけれども、働き方の多様化だとか家族の家計を支える在り方だとか、そういうことの多様性ということについては、先生の御指摘はそのとおりの実態だと思っています。

鈴木(敦)委員 是非、時間がかかっても構わないと思いますが、検討はしていただいた方が、これから先、じゃ、急激に家計を支えるのがお父さんだけの時代が返ってくるかといえば、それは私は考えられないと思いますので、是非、慎重で構いませんので検討はしていただきたい、このように思います。

 そして、今働き方の多様性という御発言もありましたので続けてまいりますが、今この適用外になっているのはフリーランスの方々も同じです。

 フリーランスって、皆様想像されるのは、今、町中を自転車で走っていらっしゃる方を想定されるかもしれませんけれども、私が申し上げているフリーランスというのは、ごくごく小さな単価で仕事を請け合っている方、コピーライターだとかフリーライターだとか、そういった方々を指しています。そういう方々は雇用契約ではないので、当然、雇用保険が適用範囲にならないというそのロジックは分かるんですが、一方で、そういったフリーランスで働いている方々の功績だとか実績が皆さんの身の回りにもたくさんあるという、これは一つの実例として把握をしていっていただきたいというふうに思います。

 例えば、新規に展開するお店のチェーン店のお名前を考えるとか、あるいはロゴマークをくっつけるとか、デザインをする。あるいは、今、インターネットでよくまとめサイトというのを皆さんも見たことがあると思いますけれども、そのライティングというのは実はフリーランスがやっているんです。私も何本か書きましたので。あれは単価三千円とか五百円とかすごく安いんですけれども、それでもフリーランスで働いて家計を支えている方々もいらっしゃるわけで、そう考えれば、このフリーランスという働き方に対しても何らかの措置を講じなければならないというふうに思います。

 ただ一方で、じゃ、彼らは雇用主なのかあるいは就業者なのか、どちらかということが分からないので、フリーランスを今後どのように位置づけていくのか、大臣はどのように御見解をお持ちでしょうか。

後藤国務大臣 今委員御指摘のように、フリーランスは、働く個人という側面とともに事業者としての側面も有しているほか、その働き方は業種や職種、仕事内容によっても大きく異なっておりまして、多種多様であると思います。このため、多様な働き方を選択できる社会を実現する観点から、フリーランスの働き方の実態や課題等に応じた取組を進めていくことが重要だと考えています。

 雇用関係を前提とする各種社会保険制度のフリーランスなどへの適用については多くの課題がありますけれども、今後、勤労者皆保険の実現に向けた取組を進めていく中で課題を整理していきたいというふうに思っています。

 また、厚生労働省としては、フリーランスとして業務を行っていても個々の働き方の実態に基づいて実質的に労働者と認められる場合には、これは労働関係法令による適切な保護を図っていくとしております。

 さらに、関係省庁と連携しまして、昨年三月に策定した、独禁法や労働関係法令の適用関係等を明確化するガイドラインの周知、フリーランスの契約上のトラブルなどについてワンストップで相談できる窓口での丁寧な相談対応など、フリーランスが安心して働ける環境の整備に取り組んでいきたいと思います。

鈴木(敦)委員 フリーランスの取扱いは非常に難しいと思いますが、例えば休んでいるのか、失業しているのか、それが区別がつかないですとか、様々仕組み上、難しいのは分かるんですが、ただ、一つの在り方として、今から検討を開始しないと間に合わない課題だというふうに私は思っております。是非、検討を開始していただきたいと思います。

 時間の都合上、最後の質問になってしまいますけれども、就業マッチングについて質問をさせていただきたいと思います。

 今回、就業情報について発信力あるいは発信できる業者が増える、大変いいことだとは思いますけれども、実態としては、どんなに待遇がよくても採用の試験に来ないですとか、人が集まらない、そういうような実例が実はあります。

 これはなぜなのか。いろいろ私も企業に聞いてみたりですとか、自分の体験も踏まえて考えたんですが、一つは、求人情報誌、ぱっと開いて斜め読みをして、企業だとか待遇だとか、いろいろなものを考えて興味がある部分だけ改めて見直す。新聞も同じですね。皆、見出しだけ最初に見て、興味のある分野の本文を読んでいく。これが、求人情報誌、紙でやっていたときにはよかったんですが、今、インターネットになりますと、自分の興味のある分野をジャンルで選択をして、そこに合致するものだけをスクロールで見ていく。こういう形になると、本当に自分がジャンルとして選択したものだけがすくわれて、実際には判断基準に入れた方がいいのではないか、ちょっと近いんじゃないか、そう思っているような情報が実は求職者側に入ってこない、情報だけがたくさんある状態に今なるわけです。

 なので、マッチングそのものはよろしいと思うんですが、システムの問題として、実際にマッチングを行う際に、就業者、希望者側が判断しやすい、選択しやすい、そういう仕組みに変えていくべきと思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。

後藤国務大臣 インターネット上で展開されているサービスには様々なものがあると承知しておりまして、多数の情報から求職者が検索ワードを入力して検索するサービス、また、求職者が登録した学歴、職歴などの情報を求人企業に提供することで求人企業からのスカウトにつながるサービスとか、いろいろな形態があると思います。

 各事業者において、利用者が自ら望む職を見つけやすい機能の開発、サービス向上が図られていると承知しておりますけれども、求職者においてもそれぞれのサービスの内容をよく理解して、自身に合ったサービスを利用していただくことが望ましいというふうに考えております。

 どの募集情報等提供事業者を利用する場合でも安心してサービスを利用することができる環境とするために、今般の法律においては募集情報等提供事業者が依拠すべきルールの整備を図ることとしたところでございまして、改正法の円滑な施行を通じて事業の適正な運営を確保していきたいというふうに思います。

鈴木(敦)委員 ハローワークのシステムも実はすごく使いづらくて、私も全然ひっかからなかったので何か月も失業したという経験がありますので、是非そこは実態として把握しておいていただきたいなと。

 本日は、時間が短くて、大して大きな実例を挙げることができませんでしたが、後藤大臣以下、厚労省の皆さん、そして厚生労働委員会の皆様におかれましては、若者の貧困の実態はこれですので、もし御興味があればまた懇談させていただきたいと思いますが、この雇用保険だけにかかわらず、労働法制、様々な分野での問題、若者にローカライズした部分を是非議論していただきたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 そろそろ時間になりましたので、ここで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、職安法の改正について伺います。

 配付資料を見ていただきたいと思います。

 悪質なグループが求人サイトを利用して求職者を食い物にしております。Aさんは、求人情報サイトで、ゼロからITエンジニアへ、未経験でも月収三十万円という求人情報を見て応募しました。ところが、求人サイトの記載にない自社のプログラミングスクール受講が採用の条件とされ、四十八万円支払った。しかし、プログラミングは何一つ教えられず、経歴詐称のスキルシートの作成を強要され、無給で営業の電話かけをさせられたと。このグループは、追及されると、フロンティア、クライムゲート、サクセスなど、社名、所在地を次々変え、今、青年ユニオンの皆さんが相談に乗っている被害者だけで十人いるというお話でございます。

 資料の二ページ目を見ていただきたいんですけれども、ハローワークの場合は、求人情報を公開する前に、労働者保護のために虚偽記載の排除のためにチェックをしっかり行うということになっております。求人内容の点検項目の資料をいただいたら、今日は一ページ目だけつけていますけれども、八ページにわたるものでございました。

 そこでお伺いいたしますが、今回の法案では、情報を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないとありますが、募集情報等提供事業者には、求人を出した事業者の求人情報の内容が偽りでないのか事前に確認することを義務づけるんでしょうか。

後藤国務大臣 ハローワークにおいては、求人者から求人を受理するに当たって、法令違反の確認や指導、正確で明確な求人条件の明示のための確認や指導を行っております。この確認に当たっては、事業者からの聞き取りのほか、必要書類の提出を求めるなどを行っております。

 また、法案においては、募集情報等提供事業者に対しまして、募集情報等を正確かつ最新の内容に保つための措置を講ずる義務を課しております。その内容は、それぞれの事業者の募集情報等の収集、提供の態様が異なること等を踏まえまして、募集情報等提供事業者が行うべき確認の在り方については、今後、労働政策審議会においても御議論をいただき、省令でお示ししてまいりたいというふうに思います。

宮本(徹)委員 事前に確認することを義務づけるという答弁はなく、今後省令で検討していくということでございますが、やはり求人サイトも、本来ならばハローワーク並みのチェックをするというのがやはり労働者保護の立場でいえばベストだと思います。

 ちなみに、資料の三ページ目、四ページ目につけておりますが、この案件の被害者の相談に乗っております青年ユニオンはいろいろ提案をしております。例えば、登記簿の存在の確認の義務づけ、あるいは、過去に募集情報に偽りがあるとクレームがあり、改善されていない場合は求人情報の掲載を行わないことの義務づけなどなどでございます。

 大臣、是非、これから省令や指針を作っていく際に、こうしたものを参考にして求職者を守るすべを検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。うなずいているので、次の質問に行きます。

 法案は、罰則規定及び改善命令などの規定を設けます。募集情報の内容が虚偽であることについて募集情報等提供事業者が知らないまま情報提供を行った場合には、刑事罰が科される、虚偽の広告をなし、若しくは虚偽の条件を提示して募集情報等提供を行った者に該当するんでしょうか。

後藤国務大臣 法案においては、虚偽の広告をなし、若しくは虚偽の条件を提示して募集情報等提供を行った場合について罰則の対象としております。この罰則は故意犯を処罰するものでありますので、虚偽であることを知らなかった場合は犯罪は成立しないと解されます。

宮本(徹)委員 つまり、Aさんのようなケースは、求人サイトの側は知らずにそのまま載せているわけですね。来た情報をそのまま載せているということだけですから、罪には問われないということになるわけですね。

 それでは、この募集情報の内容が虚偽であることについて募集情報等提供事業者が知らないまま情報提供を行った同様のケースの場合、改善命令やあるいは業務停止、こうした対象にはなっていくんでしょうか。

後藤国務大臣 募集情報の内容の正確性の責任は、一義的には求人企業にありますが、今回の改正で、募集情報等提供事業者に的確表示の義務を課し、正確な内容に保つための措置を講じなければならないこととしております。

 したがって、求人内容が虚偽であった場合、指導対象としては求人企業と募集情報等提供事業者の双方が考えられます。募集情報等提供事業者については、虚偽であることを知らなかった場合であっても、求人内容の正確性を確認するために必要な対応を怠っているような場合等は指導や改善命令等の対象になると考えられます。また、事案に応じた対応になりますけれども、改善命令に従わない場合は事業停止命令の対象になり得るということでございます。

宮本(徹)委員 指導の対象にはなるということであり、場合によっては改善命令、業務停止の対象にもなり得るということでございます。

 ただ、そういうことをちゃんとやっていこうと思ったら、やはり初めのルールが大事だと思うんですよね。求人サイトに情報を掲載されるときのルールをどう作っていくのかということがしっかりしていないと、なかなかその先の指導には実際には行きにくいのかなと思いますので、その点もしっかり改めてお願い申し上げたいと思います。

 あわせて、やはり、先ほど、午前中の柚木さんの質問にもございましたけれども、実際は、物すごい数の虚偽といいますか、実際の労働条件と違うものがあふれているというのが今の求人サイトの状況です。そこにしっかり行政指導をやっていくんだということになると、相当な体制をしっかりつくっていかないと、こうした被害は繰り返されていくというふうに思うんですね。ですから、本当にしっかりとした体制づくりをお願いしたいというふうに思います。

 その点で、今回のこのAさんたち被害者は、労働局にも相談した、警察にも言ったんですね。でも、警察に相談しても、こういう労働の案件というのはなかなか分からないということで、労基署に言ってほしいとか、たらい回しにされたと言っていました。消費者庁に言ってもなかなからちが明かなかったというお話もされていました。ですから、この求人サイトのトラブルについては労働局でしっかり相談に乗る体制をつくってほしいというふうに思います。

 資料の五ページ目に、この十年で、虚偽の広告、虚偽の条件の提示で職業紹介、労働者の募集、求人の申込みを行った者への行政処分は、改善命令で五件、業務停止が二件と。そこまで行ったものもあるということなんでしょうけれども、実際はこの背景に物すごい大きなたくさんの被害があると思います。

 今回の法案では、求人サイトの事業者に苦情へ迅速に対応する体制を求めることになります。あわせて、労働局でも相談体制を強化して、こういう問題はしっかり相談に乗りますよというのを広く知らせていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今般の改正において、募集情報等提供事業を行政処分の対象に加えるとともに、一部に届出制を創設したことに伴いまして、募集情報等提供事業の実態把握や指導監督を行う新たな組織を厚生労働省本省に設置する等の体制強化を図る予定です。

 新たな規定に基づく届出情報等を基にした指導監督などに適切に対応できるように準備してまいりたいと思いますし、そうした体制の整備とともに、それぞれサービスの向上につながるようにしっかりと取り組んでいきたいと思います。

宮本(徹)委員 本省にも体制をつくっていくということでございますけれども、例えば、専用の相談窓口なり相談ダイヤルなり、こういうものも含めて是非つくっていっていただきたいと思いますが、いかがですか。

田中政府参考人 今、後藤大臣が答弁させていただいたとおり、本省に新たにそうした対応をする組織、室をつくるということでございますし、また、それに併せて、労働局での体制も強化をしていきたいというふうに思います。

 様々なことを考えておりますけれども、基本的には、新たに募集情報等提供事業についてルールの整備がされるということで、まずはルールの周知を図り、また、ルールに対して違反をするとかそうでないというようなことについて、事業者あるいは求職者からの相談を承り、かつ法違反あるいはそれに近いような指導事案があれば、それに対して的確に対応していくということでございます。

 今回、そうした実効性を確保するために、新たに立入調査の権限なども労働局の職員に付与する法律の内容にしておりますので、そうした権限も必要に応じてしっかりと活用していきたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 そういう権限もいろいろ付与して、本省にも体制をつくって、労働局もということになったら、やはり人自体を増やしていかないとそれはできないと思いますので、抜本的な人員増の体制もしっかりつくっていただきたいと思います。

 あわせて、ハローワークの拡充というのは、やはり本来ならここが本流でなきゃいけないと私は思うんですよね。やはり、求人サイトだとかこういうものは、民間が採算ベースでやろうとすると、それは当然どうしてもいろいろな弊害が生じてきます。ですので、やはり、求人情報について虚偽がないか、そして労働条件もしっかりチェックしているハローワークを拡充していく、このサービスの拡充こそが一番やらなきゃいけないことだということを併せて申し上げておきたいと思うんですね。

 そして、ハローワークインターネットサービスのことも今日議論になっておりましたけれども、これも、人がいろいろなものを、就職、探そうと思って検索しても、上には出てこないんですよね、グーグルなんかで検索しても出てこないんですよ。ほかの民間のサイトの方がずっと上に出てくる状況がございますので、やはり、安心してみんなが職探しができるハローワークインターネットサービスがグーグルの検索で上位に出るようにすることも含めて、サービスの拡充をしっかり図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今、委員御指摘のように、労働者を募集する事業主がハローワークをより利用しやすくなるようにすることは重要でありますし、オンラインで求人提出や職業紹介ができるようにするなどのオンラインサービスの充実など、サービスの強化に努めているところです。

 また、ハローワークインターネットサービスやハローワークの各種サービスが必要な方に広く利用されるようにすることが重要でありまして、引き続き周知広報に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、雇用情勢の変化等に明確に対応できるように、引き続きハローワークの必要な体制の確保にも努めていきたいと思います。

宮本(徹)委員 時間がなくなってきたんですけれども、もう一つ、こうした問題、トラブルがあったときに、先ほど、警察に相談してもなかなか労働問題の案件というのは相手にしてくれないという状況も現実にはあります。

 一番後ろに、警察が職安法違反でどれぐらい対応したのかというので数も載せてありますけれども、幾つかこれはありますが、多分、この職安法違反で対応した多くは、風俗店のスカウトだとかそういう問題じゃないかと思うんですね。今回のような、求人サイトでの情報が虚偽だとかそういう案件ではないんじゃないかなと思います。

 そういう点でいえば、労働基準監督官の抜本的な増員を前提に、労働基準監督官に職安法違反に関わる司法警察権の職務を行わせる、こういうこともしっかりと労働者を保護していく上では必要なことになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 労働基準監督官の職務については、まさに事業所の現場で労働者が働いているところに立ち入ってその労働条件を現実に確保していくという重要な任務がございまして、そこを中心に、今なかなか人数が足りない中でその体制の充実に努めているところでございます。

 そのような中で、職業安定法に関する司法警察権を労働基準監督官に付与することまでは考えておりませんけれども、先ほど申し上げましたが、本法案の施行に向けては、募集情報等提供事業の実態把握や指導監督を行う新たな組織を本省に設置する予定であり、新たな法規定に基づく届出情報等を基にした指導監督などに適切に対応ができるように準備してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 時間になりましたので終わりますけれども、とにかく、マンパワーの体制を抜本的に拡充することが労働者、求職者の保護につながりますので、その点、強くお願いいたします。

 終わります。

橋本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。

 今日もラストバッターで質問させていただきます。

 今回の雇用保険法の改正の一般質疑で大きな議論となっておりました今回の財政的な措置ですけれども、この草案の過程においては、例えば今問題になっておりますロシアのウクライナへの侵攻等々、それに伴う原油高とか等々、そういった負荷が想定されていなかったと思うんですけれども、大臣、改めて、この間の審議、いろいろ野党系を中心に不安視するような意見も出ておりますけれども、あるいは一部修正案も出るかもしれないという情報もありますけれども、大丈夫でしょうか。

橋本委員長 ちょっとうまく聞き取れなかったようなので、もう一回、先生の質問をお願いしていいですか。

仁木委員 財政的なこの保険の財源として、自信があるというか、大丈夫でしょうか。

 今回、ウクライナへのロシアの侵攻等々、その草案の過程においてなかった事態が、これが日本の経済に及ぼすことも強く想定されますけれども、この法案を所管する大臣として、大丈夫でしょうか。

後藤国務大臣 今回の法案につきましては、今後の雇用保険の財政の在り方等を決めるものでございます。そういう意味においては、今後例えば大きな経済の変化やあるいは労働環境の変化が起きるということになっていけば、それに応じてこのルールを適用しながらしっかりと雇用保険を守る、そういう形で運用できるということでございます。

 そのときに織り込んでいなかったことでも、そういう形で対応できる、そういう全体像としての法案の形にしたと思っております。

仁木委員 トップとしての今、意気込みを聞かせていただきました。ありがとうございます。

 その上で、ちょっと私は詳細なことを聞きたいと思います。

 失職しました方が求職する際の制度は様々ありますけれども、現行でもコロナ禍において様々な例えば訓練を受ける要件緩和がなされていますけれども、これも今のところ財源はある程度あるということでございますけれども、この辺の制度は、例えば、今コロナ第六波でございますけれども、第七波あるいは今後続くような状況であれば、この緩和措置というのはまた持続してやられる予定でありますか、大臣。

後藤国務大臣 雇用のセーフティーネットを強化して円滑な労働移動を促していくために、無料の職業訓練と月十万円の給付金を支給する求職者支援制度について、コロナ禍で非正規雇用労働者等が利用しやすいように、本人収入要件や世帯収入要件などを緩和する特例措置を設けております。また、シフト制で働く方などが働きながら訓練を受講し、ステップアップとなる仕事への転職を目指せるように、職業訓練の期間、内容の多様化、柔軟化を図る特例措置も設けております。

 こうした特例措置を活用しまして、非正規雇用労働者等の再就職やスキルアップを支援してまいりたいと思います。

仁木委員 そういう中で、求職者が受ける職業訓練コースのことでございますけれども、このコース、何が適当か、あるいはどういったものがいいかというのは、地域性もあったり、あるいは今後のいわゆる職域の変換、あるいは業種の転換等々、新しい時代に先駆けて、これも岸田総理も言われている、例えば地方におけるDXの振興とか、グリーンとか、様々な新しい産業の創出にもつながることになってくると思います。

 そういう中で、JEEDで、設定されております、地域訓練協議会のメンバー等々においても、やはり、新しいそういったトレンドを取り入れた形が望ましいと思いますので、その人選等々に、いろいろな、従来、その地域で御活躍された方という、名士的な方が選ばれることが多うございますけれども、そういった人選においても工夫を凝らして、より効果が出て、特にマッチングはうまくいくように、こういう人材をこのように育成していただいたら、訓練を積んだらより就職しやすくなるような、そういうコースにつながるような、そういう地域訓練協議会にしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 地域のニーズに合った求職者支援訓練のコース設定、訓練の質の向上は、委員の御指摘のとおり、非常に重要だと思います。

 今般法定化する協議会では、労使団体、それから教育訓練実施機関など、関係者に参加していただきまして、求職者支援訓練も含めて、御指摘のあったデジタル化など、地域のニーズを反映した訓練コースの設定を促進するとともに、設定後も訓練効果の把握や検証をしっかりと行いまして、訓練内容の改善を図るなどの役割を果たしてもらうこととしております。

 また、求職者支援訓練の質の担保のために、訓練実施機関に対する訓練委託費について、就職実績に応じたインセンティブを設けるなどの措置も講じております。

 このような取組を通じて、より効果的な求職者支援訓練の実施に努めてまいります。

仁木委員 こういった厚労省あるいは国の持つ施策で、そういう対策、すばらしいものもたくさんあるんですけれども、実際、本当に届いてほしい情報が本当に必要な方に届いていないという現実もあると思います。例えば引きこもりの人とかニート、こういった人で、例えば経済的に厳しいと新聞も取っていなかったり、あるいはテレビも見ていなかったり、あるのは手元にあるスマートフォンだけとかいう方もいらっしゃると思います。

 そういう中で、厚労省のこういった事業は、一般に、私もレクを受けましたけれども、そういった広報がちょっと弱いと思うんですね。ですから、広報部門にもう少し重点的に、どういった対象の人をターゲットとして予算立てをして、その方に本当に政府が構築した必要な措置あるいは政策が通ずるために、どういった、媒体を含めて、あるいは内容を含めて、広報をしていけばいいのかということで、これは要望になりますけれども、今後、またこういった予算立てをする際に、広報、これに関してもかなりまとまった形で予算を取っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今、委員から御指摘があったように、お一人お一人の状況に応じて、その状況に応じた制度利用の働きかけを行っていくことが大切だというふうに思っております。

 必要な方に制度を利用していただけるように、地域若者サポートステーションやハローワーク等での求職支援制度に関するリーフレットの配布ばかりではなく、インターネットやSNSを活用した広報、それぞれに応じた働きかけ等をしっかり行ってまいりたいと思います。

仁木委員 今、大臣、前向きな御答弁をいただきましたが、今、先ほどの委員の質問でもあったように、やはり、本当に政策って必要な方に届いていなくて、中間ぐらいの方というか、ちょっと得ようとする前向きな方には届いて、それで結果として、その政策を受けて、この場合なら復職できたり就職できたりするということにつながっているわけでございますけれども。本当に社会の中で、孤独になったり、あるいは独り暮らしの方とか、いろいろな境遇の方がいらっしゃると思うんですね。ですから、従前の、一律のこういった広報のみならず、繰り返しになりますけれども、そういった個々の実態を把握した上での、それぞれの戦略的な広報をして、必要な方に国の政策、特に厚労行政、大切なものでございますから、それをやっていただきたいというふうに改めて御要望申し上げたいと思います。

 時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十五日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十一日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十一分散会


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