衆議院

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第5号 令和4年3月11日(金曜日)

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令和四年三月十一日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 齋藤  健君

   理事 高階恵美子君 理事 牧原 秀樹君

   理事 山井 和則君 理事 柚木 道義君

   理事 池下  卓君

      青山 周平君    畦元 将吾君

      石原 正敬君    上田 英俊君

      加藤 勝信君    勝目  康君

      川崎ひでと君    神田 潤一君

      後藤田正純君    田村 憲久君

      高木  啓君    高木 宏壽君

      高見 康裕君    土田  慎君

      西田 昭二君    西野 太亮君

      平沼正二郎君    深澤 陽一君

      古川 直季君    松本  尚君

      三谷 英弘君    三ッ林裕巳君

      柳本  顕君    山本 左近君

      阿部 知子君    井坂 信彦君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      野間  健君    山田 勝彦君

      吉田 統彦君    早稲田ゆき君

      一谷勇一郎君    金村 龍那君

      吉田とも代君    山崎 正恭君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   厚生労働副大臣      古賀  篤君

   厚生労働大臣政務官    深澤 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           小林 洋司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         江口 純一君

   厚生労働委員会専門員   大島  悟君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     青山 周平君

  塩崎 彰久君     神田 潤一君

  鈴木 英敬君     古川 直季君

  長谷川淳二君     西野 太亮君

  三谷 英弘君     高木  啓君

  柳本  顕君     高見 康裕君

  山本 左近君     石原 正敬君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     佐々木 紀君

  石原 正敬君     山本 左近君

  神田 潤一君     塩崎 彰久君

  高木  啓君     三谷 英弘君

  高見 康裕君     柳本  顕君

  西野 太亮君     平沼正二郎君

  古川 直季君     鈴木 英敬君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     長谷川淳二君

    ―――――――――――――

三月十一日

 保育・学童保育制度の抜本的改善に関する請願(吉田はるみ君紹介)(第三五一号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第三七八号)

 同(田嶋要君紹介)(第三九一号)

 同(道下大樹君紹介)(第三九二号)

 学童保育(放課後児童健全育成事業)の拡充に関する請願(和田義明君紹介)(第三五四号)

 同(鈴木貴子君紹介)(第三六九号)

 同(遠藤利明君紹介)(第四二五号)

 同(田野瀬太道君紹介)(第四六九号)

 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(大河原まさこ君紹介)(第三六七号)

 同(森山浩行君紹介)(第三六八号)

 高齢者の命・健康・人権を脅かす七十五歳以上医療費窓口負担二割化中止に関する請願(小宮山泰子君紹介)(第三九三号)

 同(枝野幸男君紹介)(第四二四号)

 パーキンソン病患者への難病対策の推進に関する請願(枝野幸男君紹介)(第四二三号)

 同(大口善徳君紹介)(第四八一号)

 命を守り社会を支える福祉職員を増やし、賃金を引き上げることに関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第四三九号)

 同(青山大人君紹介)(第四四〇号)

 同(新垣邦男君紹介)(第四四一号)

 同(石川香織君紹介)(第四四二号)

 同(稲富修二君紹介)(第四四三号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四四号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第四四五号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第四四六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四四七号)

 同(下条みつ君紹介)(第四四八号)

 同(白石洋一君紹介)(第四四九号)

 同(末次精一君紹介)(第四五〇号)

 同(牧義夫君紹介)(第四五一号)

 同(宮本徹君紹介)(第四五二号)

 同(森山浩行君紹介)(第四五三号)

 同(山崎誠君紹介)(第四五四号)

 同(笠浩史君紹介)(第四五五号)

 全国一律最低賃金制度の実現を求めることに関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第四五六号)

 同(新垣邦男君紹介)(第四五七号)

 同(大石あきこ君紹介)(第四五八号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第四五九号)

 同(岸本周平君紹介)(第四六〇号)

 同(白石洋一君紹介)(第四六一号)

 同(寺田学君紹介)(第四六二号)

 同(中川貴元君紹介)(第四六三号)

 同(福田昭夫君紹介)(第四六四号)

 同(牧義夫君紹介)(第四六五号)

 同(宮本徹君紹介)(第四六六号)

 同(森山浩行君紹介)(第四六七号)

 同(笠浩史君紹介)(第四六八号)

 じん肺とアスベスト被害根絶等に関する請願(近藤昭一君紹介)(第四七〇号)

 安全・安心の医療・介護・福祉を実現し、国民の命と健康を守ることに関する請願(新垣邦男君紹介)(第四七一号)

 同(石川香織君紹介)(第四七二号)

 同(稲富修二君紹介)(第四七三号)

 同(大石あきこ君紹介)(第四七四号)

 同(白石洋一君紹介)(第四七五号)

 同(寺田学君紹介)(第四七六号)

 同(福田昭夫君紹介)(第四七七号)

 同(牧義夫君紹介)(第四七八号)

 同(宮本徹君紹介)(第四七九号)

 同(笠浩史君紹介)(第四八〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長佐原康之君、職業安定局長田中誠二君、雇用環境・均等局長山田雅彦君、人材開発統括官小林洋司君、経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官江口純一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。今枝宗一郎君。

今枝委員 よろしくお願いいたします。自民党の今枝宗一郎です。

 まず、本日は、三月十一日、東日本大震災から十一年であります。亡くなられた方に心からお悔やみを、被災された方にお見舞いを申し上げ、引き続き復興に全力を尽くすこと、今日いらっしゃる議員の先生方、皆さん同じ思いだと思います、強くお約束申し上げたいと思います。

 それでは早速、十五分しかございませんので、質問に入ります。

 まず、今回の法改正の要因となりました雇用調整助成金についてお聞きをいたします。

 世界では、コロナ禍で失業率が跳ね上がってまいりました。先進国でも、高いところは一四%を超える国もあり、ほかの国でも一〇%近くなったりもしておりました。失業率が一%上がりますと、約二千名から三千名の方が経済的なことを理由にして命の危機に直面をする、こういったデータもございますので、やはりこれを何としても抑えねばならないというところであります。

 一方で、我が国では、失業率、この間、二%台後半から高くても三%ということであります。その大きな理由が雇調金であると考えられます。企業が労働者に支払う休業補償の十分の十、一日の上限額も一万五千円と、世界最高レベルまで高めていただきました。直近も、業況特例や、いわゆる地域特例を、今の水準のまま四月、五月、六月と延ばしていただきました。これは本当にすばらしいことかと思っておりますし、政府の英断に本当に感謝を申し上げたいと思います。

 そこで、二問続けてお聞きをしたいと思います。

 一つ目は、雇調金の特例措置の業況特例、これは三割の売上げの減少が要件であります。現在のような感染拡大と社会経済活動の抑制を繰り返す状況では、コロナの影響で売上げが三割以上減をしてしまう、こういった業況の厳しさがありますと、やはり、コロナの状況を踏まえて、七月以降も現在の高い水準を維持すべきと考えておりますけれども、政府のお考えについてお聞きをしたいと思います。

 また、もう一つ、飲食やサービス、旅行、宿泊業、運輸、交通業などは、コロナ禍のこの二年間、休業を繰り返さざるを得ない状況が継続をしております。在籍出向も行っていただいておりますけれども、やはり一部であります。こういった業種については、一時の対応をする雇調金のみでなく、ポストコロナ時代の経済や暮らしを支える業種として、産業そのものをしっかりと支える支援策というものが必要かと考えますけれども、厚労省から各所管省庁に対して、今後の対策を、検討を呼びかけてはどうかなというふうに思うんですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。お願いします。

後藤国務大臣 雇用調整助成金については、今委員が御指摘いただいたように、これまでに例のない特例措置を講じまして、事業主の雇用の維持を強力に推進してきたところでございます。

 先般、雇用調整助成金の特例措置等を六月末まで延長する方針を公表したところでございます。七月以降の取扱いについては、経済財政運営と改革の基本方針二〇二一を踏まえまして、引き続き、感染が拡大している地域及び特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら検討していきたいというふうに考えております。

 また、多くの産業で人手不足感が強まる中、今後は、アフターコロナに向けて、産業人材の確保を始めとする取組が重要になってくるということもございます。人への投資によりまして、成長分野等への円滑な労働移動を図っていく必要もあるというふうに考えております。

 コロナ禍において業況の厳しい産業から、その状況について業所管省庁とも連携してヒアリングも行ってきたところでございますけれども、今後は、各省が講じる個々の産業向けの取組とも適切に政策連携を図っていきたいというふうに考えております。

今枝委員 ありがとうございます。是非とも今後も検討をしっかり進めていただければと思います。

 次に、小学校休業等対応助成金についてお聞きをいたします。

 オミクロンは感染力が非常に強く、特に、ワクチンの接種が始まったばかりの小学生や、またワクチンが承認されていない就学前のお子さんへの流行が顕著であります。そこで、コロナで学校等が休校になり、保護者が仕事を休まねばならないとき、十分の十、蔓延防止等重点措置中は上限一日一万五千円と高い水準で助成してきておるのがこの小学校休業等対応助成金かと思います。学校、こども園、また幼稚園、保育園、学童保育など、非常に幅広に支援ができるものですから、すばらしい制度だと思っております。

 一方で、企業に申請や協力を断られ、助成制度を使えないという事例もございました。このような問題についても、厚労省の都道府県労働局から企業に連絡をしていただいて、そして申請をするような働きかけを一つ一つ個別にしっかり対応していただいたりですとか、さらに、それでもどうしても企業が申請しない場合については、個人申請の休業支援金を活用しまして、厚労省から企業に休業の確認をする、こういった対応もしていただきました。ここまで行うことによって、非協力的な企業で働く方々もかなり支援を受けられるようになってきております。

 しかし、この小学校休業等対応助成金につきまして、周知広報について、学校からは保護者の方々へ、また、商工会や商工会議所といった経済団体からはその経営者の方へしっかりと周知を行っていただいているんですけれども、実情、やはりなかなかまだまだ知られていない部分もございます。

 そういった中で、最も効果的な企業側への周知広報について、やはり、企業の経営者と話をすることが多い地域の金融機関、こういったところからしっかりと行っていただくというのも非常に進んでいくんじゃないかなというふうに思うんですけれども、政府として、この地域金融機関に制度の周知を進めていただくという点について、是非とも御答弁をお願い申し上げたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 小学校休業等対応助成金については、これまでも、先生御紹介あったとおり、事業主や保護者に周知が行き届くように、事業主団体や学校、保育の現場への周知依頼を行ってきたところであります。

 御指摘いただいた地域金融機関を通じた周知につきましては、金融庁とも連携いたしまして対応してまいりたいと思います。

 引き続き、必要な方に支援が届くよう、本助成金の周知徹底に努めてまいります。

今枝委員 受け入れていただきまして、ありがとうございます。是非とも早期に進めていただければと思っております。

 さて、それでは、今回の法改正の中身に入ってまいります。

 これまでコロナ禍で雇用を守り続けてきた雇調金でありますけれども、支払いには、約一・五兆円ありました雇用安定資金の積立分に加えて、失業等給付の積立金から借り入れられるように令和二年に特例措置をつくりまして、この積立金というのは入れていったわけなんですけれども、それでも、令和四年には尽きようとしているという現状であると思います。そこで、積立金がこれまで六兆円台まで積み上がっていて暫定的に引き下げていた雇用保険料率を、千分の二から千分の六に一部戻すというのが今回の改正かと思います。保険料率は元々千分の八でありますから、激変緩和の措置はしていただいております。

 一方で、国庫負担に関しましては、今回の法改正で、雇用情勢及び雇用保険の財政状況の悪化がしている場合に、現在の四十分の一から本則四分の一に戻すというふうになっております。

 このうち雇用情勢の要件につきましては失業者七十万人以上となっておるということは、今までもずっとこの委員会答弁でもあったわけでありますけれども、現在は、雇調金で失業者をぐっと抑えて、四十万人台となっております。雇用安定資金を通して、雇用保険財政、失業等給付の方に猛烈な負荷をかけつつ、それによって失業者が抑えられているという状況でありますから、こういったことを考えていくと、この状況で国庫負担四分の一に戻らないというのがどういうふうなのかな、こういうふうな疑問の声も上がっているわけであります。

 やはり、雇用情勢と雇用保険の財政の悪化というのが裏表の関係にあって、国庫負担四分の一に戻す要件を、雇用情勢と雇用保険の財政状況、どちらかが基準を超えたとすることも一つの考えかもしれません。

 一方で、この国庫負担と別に、一般会計からの繰入スキームも令和四年度まで延長されたわけであります。これまでのスキームでも多額の一般会計が繰り入れられており、このことによって国として雇用や労使の方々への責務を果たしているようにも、同時に、見えます。

 そこで、お聞きいたします。

 これまでのスキームで、昨年、国庫から繰り入れられた金額は幾らぐらいとなるのでしょうか。また、国庫負担を本則、今の四十分の一から四分の一へ戻したとして、国庫負担で失業等給付の積立金に入る金額は幾らぐらいなのか。これをちょっと比べてみたいと思いますので、簡潔にお示しいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 まず、雇用保険臨時特例法に基づいて繰り入れられた額ですけれども、令和三年度に一般会計において負担した金額は、補正後予算額で二兆五千七百八十億円です。

 それから、既存のスキーム、失業等給付の国庫負担を仮に四分の一とした場合の失業等給付に係る一年の国庫負担額は、令和三年度当初予算を基に機械的に算出しますと、二千六百九十八億円ということになります。

今枝委員 どうもありがとうございます。本則四分の一で投入される国費に比べて、今回の繰入スキームで入れられる国費が十倍ぐらい多いということが分かりました。

 また、これまでの答弁におきまして、機動的な国庫繰入れを行うことについても、最大限柔軟に行っていただけるような対応を今考えていただいているということもよく分かります。

 是非とも、失業手当ですとか、また雇調金の支払いに支障が生じないように、確実に対応していただければと思っております。

 次に質問を予定しておりました失業給付から雇用保険二事業への貸出金の全額返済免除について、ちょっと、時間がないので少し飛ばさせていただきたいと思います。令和六年までに検討となっていますけれども、いち早く、労使の負担が過大にならないような形での検討を急いでいただきますように、これは御要望として、お願いいたします。大臣、うなずいていただいてありがとうございます。

 では、続きまして、育児休業給付についてお聞きをいたします。

 育休は、我が国最大の有事とも言える少子化対策に本当に大きな役割を果たしております。夫の育児時間が長いほど第二子以降の出生割合が高いというデータもあります。育休でいわゆるワンオペ育児を避けることというのは、子供をもう一人産んでみようか、育ててみようか、そういうインセンティブになっていくと思います。

 元々非常に低かった我が国の男性の育休取得率でありますけれども、二〇二〇年にはたしか一三%ぐらいに、目標を達成しまして、二〇三〇年三〇%を目指すんだというところまでどんどん来ていると思います。これ自体はいいんですけれども、給付率の増加率が高い水準で推移をしていく場合、今、国庫負担一〇%水準の暫定措置をやっておりますけれども、これが三年延長されると、令和六年度には財源が枯渇をするおそれがあります。

 この対策については、令和六年度までに子育て支援制度の在り方とともに総合的に検討をするとなっておりますけれども、財源がもう枯渇寸前、枯渇した、こんな状況ではもう絶対に手遅れになってしまって、いかぬものですから、また、子育ての世代にとっては、育休財源に不安があるという状態で、給付水準の低下をやはり不安視されてしまう、それによって出生率に影響したら一大事でありますから、いち早く暫定措置を元に戻すなど、これまで以上に子育て支援を充実させるという視点で検討を急いでいただきたいと思いますけれども、今の政府の対応、お願いいたします。

古賀副大臣 今枝議員から、育休、育児休業給付の国庫負担について御質問いただきました。

 今般の法案におきましては、お話にもありましたように、本則の一〇%水準とするという暫定措置を令和六年度まで延長するということにしておりますが、令和六年度までを目途に育児休業給付及びその財源の在り方について検討を行う旨の規定を置いているところであります。

 また、労働政策審議会の報告書において、育児休業給付の在り方等については、令和四年度から検討を開始し、令和六年度までを目途に進めていくべきとされておりまして、厚生労働省としましても、こうした議論を踏まえ、令和四年度から検討を開始したいと思っておりますし、今日御指摘いただいたことあるいは問題意識、私としても共有させていただきたいと思います。

今枝委員 ありがとうございます。

 是非とも、少子化対策という我が国最大の、静かなる有事なんという言い方をされますけれども、静かと言わなくても、本当に大きな国難、有事でありますから、これを乗り切っていくために、育休制度に、財源問題も含めて万全を期していただくということ、心からお願いを申し上げたいと思います。

 本当は、職業能力開発促進法改正での、デジタル化の推進ですとか、就職氷河期、非正規雇用の方々へのキャリアアップ支援について、また、成長戦略で非常に重要な鍵になる創業支援とか、事業承継、MアンドA支援に対する雇用制度の整備など質問したかったんですけれども、もう時間が来てしまいましたので、今日はここまでとさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の衆議院議員の阿部知子です。

 本委員会で質問をさせていただくのは半年ぶりとなります。よろしくお願い申し上げます。

 本日は、先ほど今枝議員も御指摘でありますが、二〇一一年の三月十一日から丸十一年という年月がたって、まだまだ、被災者の皆さん始め、様々な困難を抱えて、原発事故、地震という事態に、困難を乗り越えようとしていらっしゃいます。国として、また政治として全力の応援をしていかねばならないと思いますので、また後藤大臣にもよろしくお願い申し上げます。

 さて、私は、本日の質問に際して、通告外のことで一つ、後藤大臣に御質問がございます。

 実は、去る三月二日のこの委員会で山井議員も御指摘でありますが、旧優生保護法による不妊手術を強制された方々が、大阪の高裁の裁判で初めて国の賠償責任を認めたということで、上告をしないでくれという申入れがありましたが、残念なことに、厚労省は三月七日、上告をなさいました。

 まず、初めて責任を認めた大阪高裁判決は、いわゆる除斥期間をそのまま認めることは著しく正義、公平の理念に反するという指摘をしております。一方、厚生労働省は、上告受理申立ての理由を、判決は、除斥期間の法律上の解釈、適用で重大な問題を含んでおり、近く同種訴訟の判決も予定されているため、上告したとしてございます。

 果たして、長い間、差別、偏見の中に置かれた障害のある方々が、自分になされた不法な手術について二十年の中で声を上げることができなかった、本当に特殊な状況というか、深刻な状況があると思います。

 そのときに、後藤大臣、伺いますが、法律上の解釈、適用で重大な問題を含んでおりと。今まで二十年ですから、そうであります。しかし、高裁の指摘は、それを上回る、非人道的な、正義や公平を著しく欠いたものであるという指摘でありました。この点について、後藤大臣はどう思われるのか。また、近く同種訴訟の判決もある。確かに、本日午後二時、東京高裁の判決もございます。私は、いわゆる除斥期間が、その間にも差別と偏見の中に置かれて声を上げられなかったということを指摘したのが高裁判決だと思いますので、改めて後藤大臣の受け止めをお聞かせいただきたいと思います。

後藤国務大臣 旧優生保護法につきましては、この法律に基づき、またこの法律の存在を背景として、多くの方が、特定の疾病や障害を理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、厚生労働省としても真摯に反省し、心から深くおわびを申し上げる次第でございます。

 御指摘の一時金、御指摘というのは、今の法律の前でございますけれども、一時金支給につきましては、平成三十一年に、超党派の議連において法律案が取りまとめられておりまして、国会において全会一致で定められたものでございまして、この法律では、当時の手術に関する記録の多くが残っていない中にあって、幅広い対象者に一時金を支給することとしているものと承知しておりまして、こうした一時金の支払い、円滑に確実に支給してまいりたい、そのことをまず申し上げたいというふうに思っております。

 そういう真摯な反省と、心からのおわびの気持ちでございますけれども、先ほど先生から御指摘をいただいたように、除斥期間の法律上の解釈、適用につきまして、旧優生保護法に関わる本件事案にとどまらない法律上の重大な問題も含んでおるということ、また、別の高裁の判決も予定されているということから、最高裁の判断を仰ぐということを、法務省を始めとした関連の役所とも相談の上、政府として決定をいたしました。

 気持ちの問題と、訴訟において除斥期間の適用等の一般的な法律適用の問題として争われるということでもありますので、そういうことで今回は上告をさせていただくこととなりました。

阿部(知)委員 この高裁の判決の趣旨は、一般的な除斥期間では語り切れない差別や偏見が今この瞬間もあるのではないか、そういう中に置かれた障害者の人権であったり、当然保障されるべき子供を持つ権利が奪われたことについて、正義に反し、不公平であるという指摘でございます。

 障害を持つということは、今もって、津久井やまゆり園でもそうですが、障害者が存在することについてまだまだ差別や偏見が根強い、根深い、そして解消していかなければならないという観点からですので、大臣にはここまで指摘をさせていただいて、通常の除斥期間とは異なる側面をこれははらんでいるということを立法府は自覚しないと、また大臣は行政として自覚していただかないと、また同じような過ちを繰り返しかねないと思いますので、指摘にとどめさせていただきます。今日午後の判決がよりよいものであることを私は願っております。

 さて、いただきましたお時間ですので、雇用保険法の質疑に入らせていただきます。

 まず、今回の雇用保険に関しまして、非常に、雇用保険二事業という部分、雇用調整助成金を出している方について、財源の問題が大きくマイナスになった。新型コロナ禍の失業防止策として、雇用保険二事業の一角である雇用調整助成金の支払いというものに、本来この雇用調整助成金の財源ではないところの失業給付金の積立金を貸し付けざるを得なかったというところから、いろいろな問題が派生していると思います。

 もちろん、失業防止策として功を奏しました。でも、失業給付金の積立金が枯渇をいたしました。貸してあげたら自分のところがマイナスになっちゃったというのが失業給付金の財政であります。

 そこで、そうであれば保険料率を本則の〇・八%に、今〇・二ですから、これを戻していきましょうというのが今回の改正案になっておりますが、私は、そもそも、令和二年の臨時特例法、すなわち、お手元に示しました一枚目の図式の失業給付の積立金から育児休業給付金あるいは雇用安定資金、すなわち雇用調整助成金の財布の方に貸出しができるようにしたこと、このことは、やはりある種のルールを乗り越えてしまったもののように思います。

 育児休業給付金、育児休業については労使の折半、雇用安定資金については使側が負担をしております。ここに、積立金のところにお金を入れることによって両方にお金が流れる仕組みをつくりましたが、果たして、こうしたそもそも保険の財源の成り立ちが違っているものについて、失業給付のところに国がお金を入れて、そこから流していくという、区分を超えたことにしてしまった理由は何でしょうか。

 そして、区分を超えたこと、すなわち、これまで使側のところにお金がためられている雇用調整助成金、ここに、失業保険、労側もお金を出しているところに、もちろん国庫から入れたわけですが、流れていくという構造は、区分を乗り越えたものではないかと思いますが、いかがでしょう。

田中政府参考人 労働保険特別会計雇用勘定におきましては、失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業、それぞれ経理を区分しておりまして、それぞれの収支状況を明確にして、独立して適切な保険料率等を検討、設定できるようにしております。

 しかしながら、コロナ禍に対応した雇用調整助成金の特例措置の実施に伴う当面の財源の確保のため、雇用保険臨時特例法によりまして、雇用調整助成金等の中小企業に係る日額上限を超えた部分について一般会計から負担することとするとともに、同じ雇用勘定である積立金からの借入れを可能とするなどの特例的な財源措置を講ずることとしたものであります。

 なお、今後も雇用保険二事業の支出は一定期間高い水準で推移することも想定されることから、当面の雇用保険二事業の安定的な運営を図るため、今法案では、積立金からの借入規定について、令和六年度まで延長することとしておるところでございます。

阿部(知)委員 簡単に申しませば、本来独立した区分会計であるのに、イレギュラーな措置を、失業給付からの繰入れを令和六年まで続けるということであって、私は、このやり方というのは、なぜ区分会計があるのか、出と入り、どれくらいの保険料率にしていくかなどをしっかりと決められないことになっていくと思います。

 次に、後藤大臣にお伺いいたしますが、こうやって失業給付から育児休業給付やあるいは雇用安定資金の方にお金を流して、さて、将来、令和六年という形で、育児休業給付金については、不足すればどう改正するかを論議するということも労政審などでも出ておりました。こちらについては、そういう見通しが一定ございます。それに、そもそも労側、使側が負担しております。

 果たして、雇用安定資金の方にはどんな見通しがあるのか、みんな不安に思っていると思うんです。雇用調整助成金が今年度五千億だったとしても、今までのように兆の単位に行かなかったとしても、こうやって借金して借金して借金してやっていかざるを得ない構造にしているのではないか。こちら側の財政的見通しはどのようにお考えでしょう。

後藤国務大臣 今御指摘がありました雇用保険二事業における借入額の返済の在り方につきましては、労働政策審議会でも議論になっております。労働者代表委員からは、労働者が拠出した保険料が含まれる積立金からの貸出額が保全されるべきだという御意見があった一方で、使用者代表委員からは、雇用調整助成金の特例や休業支援金制度の創設により、失業等給付に係る労使や国庫の負担等を実質的に肩代わりしている側面もあることから、受益者全体で負担すべきであるとの意見もございました。

 こうした意見を踏まえた検討は、今後、雇用調整助成金の特例的な支給が落ち着いた段階で行うことが適当であることから、今般の法案においては、令和六年度までをめどに、累積債務や返済の在り方について検討する旨の規定を置いております。今後の雇用調整助成金等の支出状況や積立金、雇用安定資金の額等の財政状況も踏まえながら、適切に検討してまいりたいと思います。

阿部(知)委員 雇用保険法という法律をこうやって質疑させていただくと、極めて厳密に、誰が何を負担して、どのような計算をして将来を見通していくかということが極めてタイト、極めてかっちりした法律なんだと思うんですね。

 でも、今回取られた措置によって、丼勘定と言っては失礼ですが、とにかく足りないのは分かっているんです。だから、何とかしなきゃならない。このことが功を奏さなかったとも思っていないんです。だけれども、区分が不明瞭になって、構造自身がおかしくなりはすまいかと私は思うわけです。労側にすれば、当然自分たちが出した保険料は保全してくれというふうになりますし。でも、今大臣お分かりでありますから、この点は、緊急時といえども私はほかに策があったのではないかと思っておりますので、また後ほど申し上げさせていただきます。

 と同時に、今回の改正は、いわゆる国庫負担四分の一、雇用保険に関しまして、失業給付に関しまして、ここの大枠もないがしろにした、揺るがしたと思います。

 いわゆる本則四分の一問題ですが、開けていただきまして、法文にお示ししたとおり六十六条のイとロという形で、イは四分の一、ロは四十分の一。せんだって党でヒアリングいたしましたとき、田中局長は、イもロも本則なのだと。本則イ、本則ロみたいに御答弁をなさいましたが、逆に、本則のイは、遠くなってしまった本則、いろいろな条件がつけられて、失業者数とか様々な積立金の見通し等々を出さなければ使えない本則イ、架空の本則になりかねない。ロの方は、現状四十分の一でやってございますから、これが逆に本則の座に居座ってしまった構造を取っていると思います。

 大臣、本則に条件がついたという改正は今まであったでしょうか、こういうことがなければ本則にならないという。本則は本則で、本則からだと思うのですが、いかがでしょう。

後藤国務大臣 今般の新たな失業等給付の国庫負担の仕組みは、四分の一、四十分の一、そのどれか一つが原則ということではなくて、雇用情勢及び雇用保険財政の状況に応じた国庫負担割合と機動的な国庫繰入規定の全体を新たに雇用保険法の本則として規定しているというふうに考えます。

 具体的には、まず、雇用情勢及び雇用保険財政が悪化したときについて国庫が四分の一を負担することを規定し、次に、それ以外のときに国庫は四十分の一を負担することを規定した上で、さらに、これらに加えて、こうした負担割合にかかわらず機動的に国庫からの繰入れを可能とする規定を国の雇用政策に関わる責任を果たすため常設化するものでありまして、これらの適切な運営を通じて、雇用保険財政の安定的な運営を目指すものであります。

阿部(知)委員 一般会計からの国庫繰入れは、私は常設されてよかったと思っています。しかし、そのことによって、原則が遠のいて、原則が実施されずにこの一時繰入れの方に傾いていっているということを指摘をさせていただきたいです。

 もう一つ言えば、この四分の一の原則が遠くなったのみならず、ほかの、例えば育児休業給付や介護給付、職業訓練受講給付金などについても、みんな本則が十の一とかに、今までの、下げられてしまいます。本則総下げ改正のような形を取っております。

 後藤大臣は、もちろん、何度も言いますが、一般からの繰入れは必要ですし、常設していただきたいです。でも、それでほかの本則を全部変えちゃったら、本則が消えちゃうと思いますが、いかがですか。

後藤国務大臣 ここはなかなか議論がかみ合わないところかもしれませんが、雇用情勢、雇用保険財政の状況に応じて、国庫負担の割合、機動的な国庫繰入れの規定も含めて、全体を新たに雇用保険法の本則として、機動的な国庫負担を含めた、そういう形で保険財政をしっかりと支えていくというふうに考えています。

阿部(知)委員 一般繰入れが、もちろん後藤大臣が財務省と交渉なさるわけですよ、確実に取れるときと、財政状況等、これはあって当然なわけです。そのために、雇用保険というゆるがせにしてはならない制度の方の本則、原則をまずしっかりと確立しておかねば、今後の財政の様々な問題があると思います。大臣はそれを御承知の上でというか、そういうことはよくお分かりの上で、今回の改正は、むしろ一般会計からの繰入れということを取るがために、ほとんどの原則を原則ではなくしてしまったというふうに私は指摘せざるを得ません。

 私は最初、失業保険の四分の一、四十分の一しか気づきませんでした。でも、よくよく改正案を読んでみると、全部十分の一に、これまでの、例えば育児休業給付すら、八分の一から八十分の一に国庫負担を減らしていきます。制度の安定性を全部ないがしろにしていく、私は大変問題が大きいと思います。

 それでもこのコロナの危機だとおっしゃるのであれば、大臣には全力を挙げて、本当に全力を挙げて財務省と交渉して、一般会計の繰入れをしっかりと、人々の雇用やあるいは出産、育児、介護などに関わる、もう生活の基本ですから、ここが担保されるようにしていただきたいが、どうですか、覚悟は。

後藤国務大臣 このことについては労政審でも大変に議論になっておりまして、きちんとした財政運営が担保されるための十分な質疑等も求められているわけでありまして、我々としては、そうしたことを前提にいただいた労政審の結論でございますので、しっかりと責任を持って、それを踏まえてやっていくというふうに申し上げたいと思います。

阿部(知)委員 私は、今回の労政審の審議はあくまで、びほう策、妥協の産物だと正直言って、申します。この制度に持続可能性がないからです。安定化資金の方は、すぐさま私は頓挫していくと思います。ですから、労政審は都度必要に応じてしっかりと開いていただいて、先ほど申し上げました、労働者側はもちろん、使側も様々な困難を抱えた状況下ですから、支えられるようにお願いをしたいと思います。

 続いて、先ほど今枝委員が御指摘になりました、この間、コロナで、子供たちも感染し、御家庭にも著しい負担がかかっていて、お開きいただきました三ページ目、どれくらいの保育園やあるいは小学校が、保育園は休園、あるいは小学校等はいわゆる学級閉鎖や休校がどのくらい数があったか。特に第六波、見ていただきますと、著しい数の休園等々がございます。

 そして、こうした状況を支えるために、この間の改正で、いわゆる小学校休業等対応助成金あるいは小学校休業等対応支援金。助成金の方は雇用保険会計にお入りの方、支援金はフリーランスなど。助成金は雇用主が申請、雇用主が申請できない場合に、下の表にあります新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金。いろんなスキームをつくられて、何とか支えてこられようとしたことは評価をいたします。子供が学校に行けない、保育園に行けない、お母さんは見なきゃいけない、仕事に行けない、それを有給休暇として担保していこうということはとても重要ですし、いい試みだと思っております。

 ところが、これが知られておりません。先ほど今枝議員も提案をいろいろしてくださいましたが、私は、後藤大臣には、まず、どのようにこの支援のスキームのことを文科省と共有しているのか、御答弁をいただきたいです。

後藤国務大臣 小学校が臨時休校した場合等において、保護者の方が安心して必要な休暇を取得できるよう、是非、事業主の方には、小学校休業等対応助成金の活用、また、休業支援金の仕組みによる個人申請への御協力をいただきたいというふうに考えています。

 そして、これまでも、厚生労働省として、事業主団体への周知と御協力の依頼のほかに、文部科学省と連名で、学校、保育の現場を通じた保護者への周知徹底を行ってきております。

 まだ足りないという先生の御指摘、肝に銘じますが、必要な方に支援が届くように、引き続き、関係各所との連携や様々な機会を通じた丁寧な周知を行いまして、本助成金の活用が進むように努めてまいりたいと思います。

阿部(知)委員 本当に情報が伝わっておりません。そして、保育園で感染がはやれば、親は、不安の中、子供を行かせるかどうかを悩んで、仕事を辞めようかと思ったりもしておられますので、是非、情報が届くようにお願いいたします。

 最後に、時間が限られておりますので、先ほどの育児休業支援金について大臣にお願いがございます。

 お手元の資料は、今般の見直しで、いわゆる育児休業支援金が、単に労使関係にあるところの男性や女性に対してだけでなく、フリーランス、非正規、あるいは国保の加入者などにも認められるべきと私は考えますが、その第一点は、母性保護。女性は出産して、産む性でありますから、そのことが保障されねばなりません。

 お手元を見ていただきますと、母性保護の概念に反した早過ぎる復帰というグラフがございますが、右側のグラフだけを簡単に、上の右を申し上げますと、ここは、産後約二か月以内で職場、仕事に復帰する方が六割ということであります。産後二か月といえば、体も安定せず、精神も安定せず、収入も安定せずであります。この方々が今は、育児休業の支援金、育児休業給付から外されておるということであります。

 正規の労働者とそうでないフリーランスの方を比べると、保険料も免除がありませんから、結局、フリーランスの方の方が出産に関わって約三百万円ほどの差の負担がある、簡単に申しますと。

 こういう実態について、是非、これからの見直しがあろうことかと思いますから、厚生労働省として調査をしていただきたい。

 実は、これは二〇一八年の調査で、加藤大臣にこれをお示しして、調査をしてくれないか、どれだけ非正規の皆さんの差が大きいかを厚労省は把握すべきであると申し上げました。そのときは明確な御答弁をいただけませんでしたが、今般、見直しに際して、こうした正規、非正規の大きな差、これを調査していただきたいが、後藤大臣、いかがでしょう。

田中政府参考人 御指摘の雇用関係の有無による出産、育児の際の所得の差の点でございますけれども、雇用関係にない方の出産、育児期間中の所得の実態の把握は困難でありますので、したがって、両者の差の把握も難しいと考えております。

 なお、仮に試算という形で対応するとしても、御紹介いただいた調査のように、フリーランスの出産、育児期間中の所得がゼロであることを前提としない限りは、一概にお示しすることは難しいのではないかと考えております。

阿部(知)委員 そんなやる気のないことを言っているから、いつまでたったって、この国の少子化は何ともならないのです。どれだけの女性たちが非正規で働き、出産を望んでもできずにいるかということを把握しないと、幾ら子供、子育て、家庭支援と言ったって、絵に描いた餅になります。

 最後の表は、私が十年前に、出産育児一時金、出産手当金、傷病手当金、育児休業給付金、産休、育休中の保険料免除、正規だったらこれだけあるのに、いわゆる国保、非正規では出産一時金しかありませんとマル・バツをつけた、十年前の資料であります。何も変わっていない、変えようとしない。

 是非、後藤大臣のときに、田中局長ともよく相談して実態調査をしていただけたらと思います。

 終わらせていただきます。

橋本委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 一昨日に続き、雇用保険法に関して質疑をさせていただきます。

 まず冒頭に、本日の理事会で修正案を提出させていただきました。

 資料の一ページ目を御覧ください。

 大まかに御説明申し上げて、国の負担率を四分の一のままというのが一つ目。それから、雇用情勢とか労働保険の財政状況が悪いときには労政審の意見を聞いて機動的な国庫繰入れをする、また、そういったことを政令に書くということが二つ目。そして三つ目が、先ほど阿部委員の質問にもありましたが、育児休業給付、これはもうフリーランスなど雇用保険の外側の働き方などにも支払えるように、雇用保険ではなく国庫負担による新しい制度を検討すること。大きくこの三点の修正案を提出をさせていただきました。是非、各党の皆様にも、御検討そして御賛同をよろしくお願いをいたします。

 それでは、失業保険の給付水準について伺います。

 この雇用保険の議論をするときに、やはり労働者にとって一番大事なのは、失業などのいざというときに、まともな金額の給付、失業保険金がもらえるかということであります。保険制度だけが細々と続いても、給付の金額が下がってしまえば、やはりセーフティーネットの役割は果たせません。

 しかし、平成十二年と十五年には、財政上の理由で賃金日額や給付日数などが引き下げられたわけであります。財政の立て直しを行った上で、過去に引き下げられた水準を回復をすることも重要であります。

 資料二の上のところを御覧いただきたいのでありますけれども、今回の法改正では、国の負担割合が、元々の本則の四分の一から、三つの本則を組み合わせた形に変わります。失業給付の国庫負担が四分の一の場合と、そして四十分の一の場合、さらには、もうお金がどうしても足りないときは機動的に国庫を繰り入れるという新しい仕組み、この三つの組合せに変わるわけであります。

 今回の法改正、大臣に伺いますが、これは、こういう三つの財政上の国の措置というものを組み合わせることによって給付の内容や給付の水準を維持することを前提としたものであって、今回の法改正は内容や水準を引き下げることを意図したものではないということでよろしいでしょうか。確認です。

後藤国務大臣 今後の雇用保険制度における具体的な給付水準等については、収支だけではなくて、失業期間中の生活保障と再就職支援という制度本来の趣旨、目的も踏まえて、労働政策審議会における議論も経た上で検討する必要があると考えております。単純に財政状況の悪化のみを理由として給付水準の削減を行うことは望ましくないと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 大臣の法律改正の意図としては、財政上の理由で給付水準を下げることは望ましくない、そういう意図の法改正ではないということで、深くうなずいていただきましたが、ありがとうございます。

 続きまして、国庫負担の本則について、先ほど阿部委員も随分議論をされておられました。

 私、前回の委員会で飲み会の会費に例えましたが、みんなで集まって一万円のお会計だったときに、これまでは二千五百円、割り勘で払っていたんですよ。これは普通です。ところが、今回から四十分の一しか払わないと、二百五十円。一万円のお会計で二百五十円は、それはないだろうと。でも、本当にお金が足りないときは、これは二千五百円払いますよ、こういう話であります。

 お伺いをしたいんですけれども、委員会の答弁では、そもそも四分の一を国が負担したって、それでは追いつかないほどの財政悪化が生じているんだ、こういう答弁がありました。それはそうだと思います。四分の一割り勘どおり払ってもらったって、それに追いつかないぐらい財政が悪化するときがある。

 しかし、そのことと、じゃ、四分の一じゃ追いつかないからといって、四十分の一のままでよいか。特に過去に国会の附帯決議でも四分の一に戻すようにということで、これは強くはっきり書かれているわけであって、四分の一じゃ追いつかないから四十分の一でいいんだということには全くならないわけであります。

 これは、四分の一の引上げに着手しない理由には前回の答弁はならないんじゃないですか。参考人、お伺いします。

田中政府参考人 今般の新たな失業等給付の国庫負担の仕組みは、雇用情勢等に応じて機動的な財政運営ができる枠組みを新たに設ける、このことによって雇用政策に係る国の責任を果たしていく、こういう趣旨でございます。

 その上で、今後の国庫負担の在り方についてですが、今般の法案について労働政策審議会にその要綱を諮問した際、公労使一致の意見として、本審議会においてこれまで本則四分の一復帰を求める意見が出された点も踏まえ、今回の諮問案における求職者給付に係る国庫負担の仕組みの導入後においても、引き続き、新たな国庫繰入制度を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証、検討し、必要な対応を行うよう強く求める、上記の意見を厚生労働省が最大限尊重することを前提に、厚生労働省案は、おおむね妥当と認めるとされたところでございます。

 厚生労働省としては、その趣旨をしっかりと受け止め、適切に対応してまいりたいと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 局長から趣旨をしっかりと受け止めということで言っていただきましたが、これは本当に、そこまではっきり書かれることはなかなかないことだと思いますから、今後も四分の一への引上げも含めた検証、検討、これはもう前回の委員会でも御答弁いただいておりますが、やっていただきたいというふうに思います。

 大臣にお伺いしますが、先週の本会議答弁で、今回の法改正でも、雇用保険政策の結果としての失業、この失業の発生に対する国の責任は継続的に果たしていくんだ、こういう本会議での御答弁がありました。

 今回、三つ、四分の一、それから四十分の一、そして機動的な国庫繰入れ、この三つの財源の取り方で国が責任を果たしていくという御答弁なわけですが、しかし、おととい議論したように、四分の一になるということは、これはもうめったにありません。したがって、ほとんど四十分の一になるわけですが、さすがに、さっきの飲み会の例でお話ししたように、一万円のお会計で二百五十円、これで責任を果たしたとは誰も認めてくれません。

 ということは、残る一つの機動的国庫繰入れ、新しい国庫繰入制度で国の責任を果たしていくということになるんだと思いますけれども、そういうお考えなのかどうか、大臣にお伺いいたします。

後藤国務大臣 今般の国庫負担の仕組みというのは、四分の一、四十分の一、これに加えて、こうした負担割合にかかわらず機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化することです。

 この新たな国庫繰入制度を含めて、雇用情勢等に応じて機動的な財政運営ができる国庫負担の枠組みによって雇用政策に係る国の責任を果たしていくものである、こういうことで考えております。

井坂委員 ちょっと再度いただきたいんですけれども、要は、三つあるけれども、もちろん三つセットで国の責任を果たしていくんだということでありますが、実質的には、四分の一や四十分の一だけで国の責任は、これはもう全く果たせないわけですから、おのずと国の責任の比重のかかり方は、これは新しい機動的な国庫繰入制度、こちらでしっかりと国の責任を果たしていく、そういう考えの法改正なんだということで、ちょっともう一度お聞きしたいと思います。

後藤国務大臣 今回の新しい国庫繰入制度によって、国庫負担の枠組み、機動的な財政運営をすることによって、国の責任を果たしていきたいというふうに考えています。

井坂委員 まさに今大臣がおっしゃった新しい国の繰入制度、いわゆる機動的な国庫繰入制度が、今後しっかり国が、この雇用保険に、あるいは労働政策の結果としての失業に、責任を果たしていくのかいかないのかの大きな分かれ目になってくるわけであります。

 そこで、資料の三を御覧いただきたいと思いますが、まず、参考人に御紹介をいただきたいと思います。

 雇用保険部会の報告には、まさに今後最重要となってくる機動的国庫繰入れの要件や、そうなった場合の労働政策審議会への報告等々について、どのように記載をされているのか、参考人に御紹介いただきたいと思います。

田中政府参考人 労働政策審議会の雇用保険部会報告におきましては、今般の新たな国庫の機動的繰入制度について、これから読み上げさせていただきますとおり運用されるべきとされております。

  今般の新しい国庫負担の仕組みを制度趣旨に沿って運用するためには、新たな国庫繰入制度の実効性を可能な限り担保することが必要である。そのため、以下のような状況下において、それぞれに記載のように制度が運用されるべきである。

  1 受給者実人員の平均が七十万人を下回るが、弾力倍率が一未満であって、かつ、積立金の残高が不足しているなどにより、失業等給付の支払いに支障が生ずるおそれがある場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきである。

  2 受給者実人員の平均が七十万人以上、かつ弾力倍率が一未満に該当する場合は、特に安定的な財政運営の確保が求められるため、弾力倍率が一を超えるように国庫繰入が行われるべきである。

  3 コロナ禍において雇用調整助成金等の支出額が増加し、積立金から二事業への貸出額を増加しなければ雇用調整助成金等の支払いに支障が生ずるおそれがあり、かつ積立金の残高が不足している場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきである。

  4 1〜3に該当しない場合、雇用情勢の急激な悪化など、早期に財政の安定化を図る必要があると認められる場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきである。

  したがって、厚生労働省においては、1〜4に該当し、又は該当するおそれがある場合には、決算確定後などの時点を問わず、まずは当部会に余裕をもった適切な時期に雇用保険財政等の状況を報告し、その上で、当部会において財政安定化のために必要な財源の内容やその確保策も含めて議論を行い、その意見を踏まえ、必要な対応をとるべきである。

以上でございます。

井坂委員 局長、どうもありがとうございました。

 大臣、こういうことなんです。部会の報告には、こうして具体的に四項目、こういう場合には機動的な国庫繰入れを行うべきであるという四項目がまず明記をされて、しかも最後に、そうなったとき、あるいはそうなりそうなときも含めて、早めに労働政策審議会に報告をし、そして労働政策審議会の意見を聞いて政府は対応すべき、こういうふうに報告書には書いてあるわけであります。

 大臣にお伺いをいたしますが、この機動的国庫繰入れについては部会報告を尊重して制度の運営や労働政策審議会への報告等を行うと明確に答弁をしていただけますでしょうか。

後藤国務大臣 今、機動的繰入れを行うべき状況として労政審の報告書に記載された四つの類型、確認がされておりますけれども、雇用保険部会に早急に財政の状況を報告し、財政安定化のために必要な財源の内容やその確保も含めて議論を行い、必要な対応を取るべきとされた労働政策審議会の議論を尊重し、その意見を踏まえて対応していきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。明確に御答弁をいただきました。

 先ほど局長に長い文章を読み上げていただいて大変お手数をおかけしたんですが、なぜそういうことをお願いをしたかといいますと、実は今のいわゆる四条件のようなもの、要は、どういう場合にこの機動的国庫繰入れが行われるのか、行われる必要があるのかということについては、今回の法改正には書いていないんですね。しかも、法律の下にある政令にも、そういった、どういう場合にやるべきだということが書かれない予定になっているんです。

 こうなると、もちろん、今大臣とか局長がお元気で、この職にいらっしゃる間は、私は、しっかりそうやっていただける、これはもうこの間の議論を通して、私、確信をしておりますよ、御信頼申し上げております。

 ただ、やはり、これが次の大臣、次の局長になって、もうこの厚生労働省の議論が忘れられた頃には、法律と政令しか見ないですから。法律、政令を見たときには、別にどういうときに国庫繰入れしなきゃいけないとどこにも書いていないんですよ。

 ということは、財政状況が悪くなろうが、あるいは給付の水準が引下げを余儀なくされるような状況になろうが、いや、繰入れはできるとは書いてありますけれども、しなければならないとか、こういうときにはすべきだという方針すらどこにも書いていなかったら、これは悪い大臣や局長の時代になったら、いやいや、一切繰入れしません、しろなんてどこにも書いていないでしょう、どこかにあるんですか、こうなってくるわけですよ。

 だから、今回やはり政令に書くべきということを修正案にも盛り込ませていただきましたし、改めて大臣にお伺いをしたいのは、やはり、法令に書き込むということは、大臣が先ほど御答弁いただいた、今回の国の責任を法改正で果たしていくために、特にこの機動的国庫繰入れが今後中心になってくると。その中心になってくる機動的国庫繰入れが、きちんと必要な場合には行われる、国が責任を今後も果たし続けていくために政令に書くということは必要なことだと思います。

 大臣にお伺いいたしますが、どのような状況のときに国庫繰入れを検討すべきなのか、そうした何らかの方針とか要件を、これは労働政策審議会の意見も聞きながら、政令に記載すべきではないでしょうか。大臣、お伺いします。

後藤国務大臣 今般の法律において新設する機動的な国庫繰入規定は、失業給付に係る保険料率が法律上の本則である千分の八である場合に加えて、翌年度にこの保険料率が千分の八となる場合や、雇用情勢や雇用保険財政が急激に悪化した場合も実施できる仕組みとなるような、そういう仕組みとなる、政令で定める予定でございます。

 機動的な国庫繰入れの実施を検討すべき今御指摘の具体的な状況を政令に規定するということは、かえって検討すべき状況を限定することにもつながるということで柔軟な制度運用を妨げるおそれもあり、適切ではないというふうには考えておりますけれども、ただ、労働政策審議会の報告書において示されている考え方を尊重し、適切に対応してまいることについてはしっかりとやらせていただきたいと思います。

井坂委員 大臣の今の御答弁の、前半部分だけだと、ちょっともう一度お聞きしなければと思ったんですが、後半の部分で、とはいえ労働政策審議会の報告も踏まえて、そこの部分、まあ、政令に書き込むことが必ずしも適当かどうかという御答弁ではありましたが。

 しかし、それは、変な、縛るような細かい書き込み方をしたら、それはデメリットもありますが、そうならない、少なくともこういう場合は検討すべきであるというぐらいの方針、指針は、私は政令に書けると思いますので。それで、書いたからといって何かが限定されるわけではないですから。こういう場合しか繰入れしちゃ駄目みたいな書き方をしたら、それは縛りますけれどもね。

 今、幅広く、繰入れしていいケースは幅広く今回取っていただいている、これは別に悪いことじゃないと思うんですよ。ただ、できるという最大限の範囲は広く取りつつも、こういう本当に悪いときは繰入れを少なくとも検討すべきであるぐらいのことは、やはり政令に方向性、方針を私は書いていただきたい。是非大臣、御答弁の後半の部分のように、労働政策審議会ともその辺議論して、議論をちゃんとやっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、その今後大事になってくる労働政策審議会の議論についてお伺いをいたします。

 資料の四番目を御覧ください。

 資料の四番目の左側、四角く囲っております。これは今回の法改正、雇用保険法の第七十二条。右側にはいろいろ、こういうときこういうときと細かく書いてあるんですが、左側に最後、「その他この法律の施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。」これが七十二条に書いてあるわけであります。

 大臣にお伺いをいたしますが、この最後の重要事項ということには、これは雇用保険財政の悪化ということも含まれるのかどうか、お伺いいたします。

後藤国務大臣 委員御指摘のとおりで、雇用保険法第七十二条では、厚生労働大臣は、この法律の施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聞かなければならないと規定されております。

 この施行に関する重要事項について具体的な基準が定められているものではありませんが、新たな国庫繰入制度の実施については、財政当局との調整も前提とした上で、制度の運用に関することであり、まさに法律の施行に関する事項と言えること、かつ、雇用保険財政の安定的な運営に影響を及ぼすことでありまして、重要な事項と言えることから、施行に関する重要事項に含まれるものと考えます。

井坂委員 ありがとうございます。

 大臣から、この七十二条の最後の法律の施行に関する重要事項の解釈について、今重要な御答弁をいただいたと思います。

 是非、今重要な御答弁だと思いますので、施行に関する重要事項、七十二条のこの重要事項の解釈に関する通知を、これは労働政策審議会ともその書きぶりなど相談しながら、今おっしゃったような解釈なんですよということを、これは通知を出していただけないでしょうか。

後藤国務大臣 法律の施行に関する重要事項の解釈についてこれまで具体的な基準や解釈を定めたことはありませんが、少なくとも機動的な国庫繰入れの実施に関することは施行に関する重要事項に含まれると考えておりまして、そうした旨を何らかの形でお示しできるかどうか、検討してまいりたいと思います。

 いずれにしても、厚生労働省として、今回の改正後の仕組みについて労働政策審議会の報告書において示された考え方を踏まえつつ適切に運用いたしまして、雇用保険財政の安定的な運営を確保してまいりたいと思います。

井坂委員 大臣、ありがとうございます。

 ちょっと今御答弁でやや気になったところがありまして、私は、財政状況の悪化そのものが重要事項だと、そういうことかなというふうに思っているんですが。

 というのは、機動的国庫繰入れの実施、これはもちろん重要事項だと思いますよ。ただ、私が心配しているのは、実施されないことが一番心配なんですよ。財政が悪化しているのに実施されない、これが一番大変なことですので、実施だけが重要事項と言われると、ややちょっとひっかかるんですね。

 だから、実施するしないの判断そのものが重要事項だと思いますので、ちょっとそこだけ明確に御答弁いただきたいと思います。

後藤国務大臣 機動的な国庫繰入れの実施というのは、入れることだけを入れて考えているのではなくて、その実施という事柄について施行に関する重要事項に含まれているということで、委員の御指摘で結構でございます。

井坂委員 大臣、ありがとうございます。ちょっと心配し過ぎて、大変申し訳ありませんでした。

 もう一つ、今は厚生労働省の側から労働政策審議会に意見を聞かなければいけない条件について議論をしてきたわけでありますが、一方で、労働政策審議会の側から会議を開いてくれと開催を発議できる必要もあります。

 資料五を御覧いただきたいんですが、これは分科会の運営規程を取り寄せました。第三条に、委員の三分の一から請求があれば分科会及び部会を開くということが書いてあるわけであります。

 しかし、参考人にお伺いしますが、三分の一で開いていただく、これはありがたいんですが、たとえ三分の一に満たなくても、一部の委員の意見であっても、三分の一じゃないから駄目だと切り捨てるのではなくて、やはり真摯に受け止めて、労働政策審議会の開催を検討はすべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 今御指摘の、一部の委員から労政審の開催について意見が出た場合には、通常は、ほかの委員の方々の意見も聴取した上で、雇用保険部会長の判断で会議の開催を検討するということになろうかと思います。

井坂委員 一部の意見が開くべきだといったときであっても、ほかの委員などとも、特に、多分、委員長や部会長などとも相談をして、必要があれば開催をする、その検討ぐらいはしていただけるということだと思います。

 ちょっと時間が足りなくなってきましたが、最後一点だけ、地域における雇用創出について伺います。

 今回の雇用の安定というためには、やはり、各地域ごとに受入先となる企業の数が十分あって、しかも、多様な、いろいろな働き先、仕事先があってということが重要です。そのためにも、受入先の産業、企業の開拓とか、雇用機会の創出が必要になりますが、政府の取組と予算確保の状況だけお伺いいたします。

田中政府参考人 労働者と企業のマッチングのためにハローワークに求人者支援員を配置しておりまして、各地域において求職者ニーズに合った積極的な求人開拓等の取組を行っております。

 また、地域における雇用の機会の創出が非常に大事ですけれども、これは産業政策等と連携しながら取り組む必要がありますので、地方公共団体に対する支援などを厚生労働省としても行っており、地域の関係者が協働して雇用の創出に取り組む枠組みを動かしているという状況でございます。

 これらの施策について令和四年度政府予算案においても所要額を計上しておりまして、こうした支援を通じて引き続き地域の雇用の安定を図ってまいりたいと考えております。

井坂委員 いただくべき答弁、全て明確にいただけましたので、終わります。どうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は東日本大震災が発災した日ということでございまして、命を失われた方、また、今なお不自由な生活を余儀なくされている方、全ての被災された皆様にまずお悔やみとお見舞いを申し上げて、質問に入りたいと思います。

 それでは、本日は、職業安定法に関して質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、労働条件の明示は、求職者がどの求人に応募するか決定する際に絶対に必要なものであります。そのため、原則として、求人者や職業紹介事業者が求職者と最初に接触する時点にする必要があり、そして逆に、求人広告を扱う募集情報等提供事業者に対する労働条件明示は義務づけられておりません。しかし、応募をしたところ、求人情報と実際の労働条件が異なるという話はよく聞きますし、また、そのような相談も寄せられているとお聞きしております。

 三月九日の厚労委員会で我が党の柚木議員が、応募して実際の労働条件が異なる場合は虚偽又は誤解を生じさせる表示ということになるのかとの質問に対し、田中職業安定局長は、改正法案では、求人企業、募集情報等提供事業者の求人広告において虚偽又は誤解を生じさせる表示を禁止している、虚偽とまで言えなくても、少なくとも一般的に誤解を生じさせるものは禁止されると答弁されましたね。

 そこで、虚偽と、一般的に誤解を生じさせるものの区別についてお聞きします。例えば、正社員と募集情報にあったが、実際の労働条件はパートだったというような場合は虚偽に当たるという認識でよろしいですか。

田中政府参考人 募集の際に、正規雇用だと求人広告ではうたい、本当はパートの募集をしていたなど、意図して求人広告に掲載された募集情報と応募した実際の労働条件とを異ならせた場合には、虚偽の表示に該当するものと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では、局長、もし虚偽の情報が掲載されていることに気づいた場合、一義的には、募集情報等提供事業者に苦情を申し立てることになると思います。しかし、それでも改善されない場合は、労働局に相談すれば指導なさるということでよろしいですか。

田中政府参考人 まさにそれが労働局の役割でありますので、労働局に虚偽の募集情報であるとの御相談があれば、実態を把握して、必要に応じ、指導等を行います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 先日の委員会で柚木議員が、募集情報等提供事業者に対しても、そもそも労働条件の明示が必要ではないのかと問いました。局長答弁では、募集情報の時点で労働条件明示は難しいということでした。

 しかし、求人者については、求人情報と労働条件が異なることへの苦情が多いことから、平成二十九年の職安法改正で、労働条件を変更した場合には、求人者は労働条件変更を明示しなければいけなくなった。これは職安法第五条の三第三項と承知しておりますが、求職者の保護を図るためには、求職者が正しい募集情報に基づいて応募できることが当然必要ですよね、局長。

 それでは、例えば、募集期間中に労働条件を変更した場合、変更前の情報に基づいて求職者の応募があったとき、求人者はどのタイミングで労働条件変更を明示する必要があるのか、お答えください。

田中政府参考人 現行の職業安定法においても、求人企業は求職者と最初に接触するまでの間に労働条件の明示を行う義務があります。したがって、求職者がどのような募集情報を見て応募したにせよ、求人者が応募に関して連絡する場合等には、募集情報とは別に改めて労働条件の全体を明示する必要があります。労働条件の明示が行われないまま雇用契約が締結された場合は、求人企業は職業安定法に違反することになります。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、局長、ちょっと細かいことなんですが、求職者から求人者に対して最初にコンタクトがあった時点というのはどの時点のことをいうのか確認させてください。例えば、電話やメール等で応募の意思表示があったときに、求人者としては労働条件の変更について明示する必要があるという理解でよろしいでしょうか。

田中政府参考人 これは平成二十九年にQアンドAを出しておりまして、求職者から求人者に対して最初に接触のあった時点とは、求人者と求職者等との間で面談により職業相談、職業紹介を行う時点や、求職者等から電話やメールにより労働条件等に係る質問を受けた時点をいうものとしております。

吉田(統)委員 ちょっと確認ですが、質問を受けていなければコンタクトとみなさないんですか。

田中政府参考人 これは、実際、個別の事案によりますけれども、問合せが単に応募希望や面接日の日程調整にとどまる場合は、まだ最初に接触した時点には該当しないと考えておりまして、実質的な中身にわたる部分が始まった時点と考えていただければいいと思います。

吉田(統)委員 そこは大事なところなんですけれども、本来は、連絡、応募の意思があった時点が最初のコンタクトだと普通は思うと思うんですけれども、それはおかしいんじゃないでしょうか。だって、条件を聞かなかったら、まあ、書かれているものを信じて接触した場合に、あえて聞かないことだって、我々だってありますよね。そうすると、そのままずるずるいっちゃうわけじゃないですか。やはりちゃんと、応募の意思があったときに改めてそれを説明するのが正しい姿じゃないですか。

 局長、ここ、ちょっとはっきり、しっかりと言ってください。

田中政府参考人 それもあくまで、ちょっとぎりぎり、まあ非常にどちらか微妙なところだと思いますけれども、そのコンタクトの状況、非常に時間が短い間で日程を調整したりということがお互いに分かっているような場合にそこまで言うかという話がありますので、これは個別にやはり判断する必要があると思います。

吉田(統)委員 そういう言い方なら分かります。最低限のそういうやり取りの中で説明できない状況ということですよね。分かります。それはいいですが、原則としては、やはり求職者の方をしっかり保護する形で運用していただきたいと思います。

 では、最初のコンタクトで労働条件変更を明示せずに、実際に採用が決まった、労働契約締結に至って、募集情報と労働条件が異なることが明らかになった場合、求人者に対する何らかの行政処分はあるのでしょうか。

田中政府参考人 労働条件の明示が行われないままに雇用契約が締結された場合、求人企業は職業安定法に違反することになります。

 この場合、個別の事案によって対応は異なりますが、必要に応じて改善命令などの行政処分を行うことになります。

吉田(統)委員 改善命令以外で、局長、職業安定法第六十五条第九項に基づいて、もっと重い処分という形で、六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金ということにもなりますよね。著しい違反があれば。局長、そこはそれでいいですか。

田中政府参考人 罰則規定の運用になりますので慎重に答弁しますけれども、行為があって、違法性があれば、犯罪は成立するということになります。

吉田(統)委員 それで結構です。

 局長、今の御答弁、よく分かります。ただ、安定法の罰則規定によって求人者に対して厳しい罰金刑、懲役刑が科されたとしても、求職者は当然それまでに、過去に時間や費用をたくさん費やしているわけであります。戻ってこないわけで、そういった求人者に対する罰則があっても、求職者保護には当然欠けているわけであります。求職者の保護という観点でいえば、やはり、募集の時点で労働条件を明示するとともに、変更があった場合においても変更明示を原則義務づけるべきではないかと思いますが、どうでしょうか。

田中政府参考人 募集情報等提供は、多数の者に対し広く募集情報を提供することとなる一方で、労働条件の明示となりますと、特定の労働者に対し、その労働者の希望等も踏まえながら具体的な賃金や労働時間等を示すものでありますので、募集の時点で労働条件の明示を行うことや、募集情報から労働条件の明示に至るまでに変更があった全ての点を求職者に明示することは困難であると考えております。

 このため、募集情報等提供事業者には、求人内容の的確な表示の義務を的確に履行させることとする一方で、職業安定法において、求人企業等に対しては賃金、労働時間等の労働条件や変更点を明示する義務を課しておりますので、引き続き、その履行確保に取り組み、この両面でしっかりと求職者の保護を図ってまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 局長、おっしゃることは分かるので、しっかりと、求職者保護をしっかりやっていくということを、今おっしゃった中でやっていくことはお約束いただきたいと思います。個々、いろいろなケースはあるとは思います。

 それでは、改正法の第五条の四第三項は、「公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、この法律に基づく業務に関して広告等により求人等に関する情報を提供するときは、厚生労働省令で定めるところにより正確かつ最新の内容に保つための措置を講じなければならない。」と定めていますね。これはどのような措置か、お答えいただけますか。

田中政府参考人 募集情報等提供事業者等に求められる措置の内容は、情報が正確又は最新でないことを確認した場合に、遅滞なく当該情報の提供を中止することなどを想定しておりますけれども、それぞれの事業者の募集情報等の収集、提供の態様が異なることを踏まえまして、今後、労働政策審議会においても御議論いただき、省令で定めることとしております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、今後の議論の推移を、局長、見ていくわけでありますが、この措置が設けられることによって、求職者が実際に応募してみたら求人情報と労働条件が異なっているという状況を実際に防ぐことが果たしてできるかどうか。そこはどうお考えになられていますか。

田中政府参考人 募集情報の流れの中で、そこに関わる関係者がそれぞれ努力するということが必要だというふうには総論的には思いますけれども、今の御質問にお答えしますと、募集情報等提供事業者に対し、募集情報が正確又は最新でないことを確認した場合に、先ほど申し上げましたように、遅滞なく情報の提供を中止するといった対応のほか、求人企業に内容の訂正の有無を確認することなども考えられます。募集情報の的確性に関し、求人企業だけでなく求人メディアの側から積極的にアクションして是正することも考えられます。

 今回の改正法で求人企業に課される正確かつ最新の内容に保つ義務や、義務違反に対する指導等による履行確保と併せて、実効性を担保していきたいと考えております。

吉田(統)委員 局長、そんな、余り早口でしゃべらなくても大丈夫ですよ。ちょっと、委員の先生がちょっと聞き取りにくいかなと思って今聞いていたので。多分、ちょっと局長、大変いっぱい、たくさん話していただきたいという思いが、ありがたいんですけれども、分かりやすく、もう少し落ち着いてでも結構です。

 それでは、続き、本当に局長はしっかりと答弁いただいていますが、正確かつ最新の内容というのは、局長、本当に大事なところですよね、当然。これが本当に大事なんですが、これは確認ですけれども、局長、簡潔にでいいんですが、求人情報を掲載中に労働条件が変わったら、募集情報等提供事業者における求人情報も変更されるという認識でよろしいですね。一応確認です。

田中政府参考人 今回の法案で、求人企業には募集情報について正確かつ最新の内容に保たなければならない義務を課しておりまして、御指摘の場合、求人企業が当該募集情報を変更することが必要になります。

 一方で、今回の法案において、募集情報等提供事業者は募集情報を正確かつ最新の内容に保つための措置を講じる義務があるところ、具体的な措置の内容については省令で定めることになりますが、変更後の労働条件に対応して募集情報が正確かつ最新の内容となるように検討をしていきたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっとたくさん聞きたいことがあるので、届出制について教えてください、局長。

 求職者情報を収集する募集情報等提供事業者については、特定募集提供事業を行う者として届出が必要となりました。今まで法規制の対象ではなかった。どのような事業者がいるか、実態が不明であるということが問題でありましたので、一歩前進したと大変評価できる部分だと思います。しかし、規制の在り方については、やはり若干の疑問が残ります。

 そこでお聞きしますが、募集情報等提供事業者のうち、求職者の情報を収集する事業者については、今回の改正によって届出制ということになるんですよね。どうして届出制にされたのか、簡潔に理由を教えていただけますか。

田中政府参考人 特に求職者情報を収集して募集情報等提供事業の用に供しているという事業者については、収集した情報を基に募集情報をメールで配信するなど、求職者に対して積極的な情報発信を行っている実態も見られます。こうした事業者において募集情報の的確表示などの問題が起きた場合に、より迅速、的確な対応が必要となることから、あらかじめ事業実態を把握するために届出制を設けるものです。

 既に広く行われている事業に対しての新たな法的規制の程度としては届出制が適当なものであると考えたところです。

吉田(統)委員 届出制にしたというにしてはちょっと弱いとは思うんですけれどもね、今の御説明ですと。分かりました。

 じゃ、特定募集提供事業を行う事業者は届出の必要があるわけですよね。厚労省として事業者の実態、全体像をどの程度把握しているのか、先ほどもちょっと分からない部分があるというのはございましたが、疑念が当然あるわけであります。実態を把握していないのであれば、実態を把握していない場合は、届出が必要ということを知らない事業者がいっぱいいるわけですよね。結果として届出がなければ、結果としては求職者の保護に欠けて、求人者にも不利益となる場合があると思うんです。実態把握が、だって、できていないわけですよね。

 そうすると、じゃ、どうやって、そういった有象無象いろいろある中で、届出制であるということを周知するのか、ちょっと私には分かりにくいんですが、どうされるおつもりですか。

田中政府参考人 御指摘の届出義務周知につきましては、ホームページ等を活用する、あるいは業界団体を通じて周知するという通常の方法のほか、その届出状況も踏まえながら、私どもが積極的にネット検索をしまして未届け事業者を確認して、届出を促していくということもやっていきたいと思います。

 今回の業態の特徴ですけれども、事業をやっているということは、ほぼネットの上でそういう形跡が認められる部分がありますので、そこを捉えてしっかりやっていきたいと思っております。

吉田(統)委員 ただでさえお忙しい皆さんがそこまでやられることは本当に可能かなと、ちょっと思いますよね。本当に、皆さん、そう思っていると思いますよ、ふだんの皆さんのお仕事を評価した上でなんですが。なかなか、ローラーで見ていくのというのは難しいと思いますけれども、ネットで。ですから、これは本当に実態としたものになるのかちょっと不安ですので、しっかりそこは、またやりますので、やってください。

 では、もう少しだけ伺いたいと思います。

 実態が分からないから、今回の届出制により実態を把握することが可能になる部分もありますよね、局長。そうすると、その把握した内容については、適宜、審議会等に報告をされて、議論に付されるという理解でよろしいですか。

田中政府参考人 当然のことですけれども、今般の改正法案の施行状況については労政審へも報告し、必要があれば議論も行っていただくというふうに考えております。

吉田(統)委員 議論の先にあるんだと思いますが、実態把握して、やはり、求職者保護に欠けるような実態が明らかになった場合は、当然、届出制というものから規制の在り方をいろいろ変えていく、そういうおつもりでよろしいですか。

田中政府参考人 改正法案におきましては、附則の九条四項において見直し規定を規定しておりまして、施行後五年を目途に、施行の状況を勘案して、検討を行うこととしております。

 今回の改正において設けた規制の在り方については、事業概況報告や指導監督等を通じて把握した実態に基づく検証を行ってまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 この議題は終わらせていただいて、大臣に、時間がなくなってきましたので少し通告の順番を変えさせていただきますが、リコメンド機能について聞かせていただきたいと思います。

 雇用仲介事業者によって、求職者の属性や希望等を入力すると、AIが自動的にお勧めの求人情報を示してくれるというリコメンド機能を有するサイトはたくさんありますね。職業紹介事業者においては、当該者の判断により情報の選別又は加工を行うことは、許可が必要な行為として挙げられています。リコメンド機能が高度化した場合は、許可が必要な職業紹介と募集情報等提供事業者の境界が曖昧になるおそれが当然あります。一方、情報の選別、加工を行うことは許可制になっているにもかかわらず、リコメンド機能を有する募集情報等提供事業者については届出制ですよね。規制の違いが大きくなっているわけであります。

 井坂議員が本会議で、募集情報等提供事業者のリコメンドに関し、これは職業紹介事業の許可要件である情報の選別又は加工に当たらないかと質問しましたが、大臣は、募集情報等提供事業のリコメンドは実態として様々、職業紹介に該当するかどうかは個別の事業に応じて判断すべきものと考える、改正法の施行に当たっては判断基準の明確化にも取り組んでいきたいと答弁されました。

 最高裁の判例では、職業紹介について、求人及び求職の申込みを受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のために便宜を図り、その成立を容易ならしめる行為一般を指す、必ずしも、雇用関係の現場にあって直接これに関与介在する要はないと解すべきとあります。

 成立を容易ならしめる行為一般とリコメンドの境界をどう考えるのか、実態を把握する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 昭和二十八年の最高裁判決におきまして、職業紹介とは、求人及び求職の申込みを受けて求人者と求職者の間に介在し、両者における雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易ならしめる行為一般を指称するものと判示されておりまして、平成三年の最高裁判例においても支持されているところです。

 これらの判例を踏まえまして、職業紹介に該当するかどうかの基準を平成十二年の局長通知で出しておりまして、平成二十九年には、通知と同じ内容を職業安定法に基づく指針に規定し、例えば、あらかじめ明示的に設定した客観的基準に基づかず選別又は加工を行った場合等には職業紹介に該当するものとしております。

 御指摘のいわゆるリコメンドにつきましては、実態として様々でありまして、職業紹介に該当するかは個別の事業に応じて判断すべきものでありますけれども、今後、現在のネット化の進展とサービス化の多様な実態をよく踏まえまして、労働政策審議会においても御議論いただきまして、現状を踏まえた判断基準の明確化を図るとともに、分かりやすく周知するよう努めてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございました。私が読んだところは、大臣、ありがとうございます、おっしゃっていただかなくても大丈夫ですので。

 じゃ、大臣、もう少しだけちょっと確認させてください。

 リコメンド機能、大臣がおっしゃったように、今後高度化をしていく可能性が高いわけであります。そうすると、求職者の属性等から細かくリコメンドすることが可能になってきますね。それはいいことでもある中で、しかし、そうなると、職業紹介との境界が非常に曖昧になってくるわけであります。

 繰り返しますけれども、職業紹介は許可制、一方の募集情報等提供事業者については届出制です。同じような役割、機能を有するにもかかわらず、規制が違うわけであります。許されるリコメンド行為と職業紹介の境界線を一定程度はっきりさせないと、予測可能性を損ない、萎縮も生まれると同時に、求職者保護にも欠ける事態になりかねませんが、そこはどのようにお考えになられますか。

後藤国務大臣 求職者保護の観点からも、事業者が事業展開をするに当たっての予見可能性の観点からも、多様なサービスが生まれている実態を踏まえた職業紹介と募集情報等提供の区分の明確化は重要だと考えております。労働政策審議会にも御議論をいただきまして、しっかりとその点に取り組んでいきたいと思います。

吉田(統)委員 なかなか現時点では、大臣、しっかり、難しいですかね、お答えいただくことが。じゃ、問題提起だけになって、また同じお答えになっちゃうかもしれませんが、もうちょっと、一歩踏み込んで考えていただきたいんです。

 例えば、AIが本当に進んでくる中で、リコメンド機能は、AIがアンコンシャスバイアスを助長する側面が当然出ますよね、大臣。AIに学習させるのは、今は人間ですよね。バイアスのある情報を基に学習させてしまうと、一層差別が助長される可能性だってあるわけであります。

 例えば、例ですよ、女性と入力すると、例えば理系的な仕事やリーダー的な役割が期待される職務が表示されなかったりするなど、求職者がバイアスによって有用な求人情報にたどり着けないことがあったら、これは問題ですよね。そうならないようにしなければいけない。

 こういったサービスは、当然、民間のサービスであります。厚生労働省として、こういったAIによるリコメンド機能について、何か先んじて検討して、民間に知見やガイドラインなど、そういったものを提供する部分も、これだけ時代が速く動く中では必要なんじゃないかと思うんですが、そこは、大臣、いかがですか。

後藤国務大臣 いわゆるリコメンド機能といってもその実態は様々でありまして、例えば、AI等の高度な技術を活用した場合については、今委員御指摘のあったアンコンシャスバイアスの再生産が生じるおそれなどが一般的に指摘されております。

 労政審等において、現時点で我が国において直ちにそのような問題が今生じているとの指摘はありませんでしたが、AIには、人の経験や思い込み等にとらわれない客観的で新しいマッチングが期待できる一方で、今後新しい技術の活用が進展する中で、アンコンシャスバイアスの再生産などが生じ、特定の求職者が不利に取り扱われることのないよう留意することが必要であると考えています。

 労働政策審議会においても、AIやマッチングアルゴリズムの使用に係る留意点について、今回講じる具体的措置の状況を踏まえ必要に応じて検討を進めていくことが適当と建議をいただいているところでありまして、業界団体とも協力しまして、状況把握や検討に努めてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 時間になったので終わりますが、また時間を設けていろいろ、フリーランス保護、そういったことも議論したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。

 本日は、東日本大震災から十一年を数える日ということもあります。まだ行方不明者が二千五百名を超える方々、また多くの方々が亡くなられたということで、まだ復興も道半ばということでありますけれども、私も皆様と同様、国会議員の一人として、これからも復興に尽力をしていきたいという具合に考えております。

 それでは、順次質問の方をさせていただきたいと思いますけれども、まず、職業安定法に、特に募集情報等提供に関する規定についてお伺いをしていきたいと思います。

 雇用仲介サービスの現状におきまして、求職者のうち採用される経路を見ますと、約三割がインターネットを通しての求人メディアであるということがあります。こういう状況の中で、募集情報については、実際の就業状況と異なる内容で提供されている場合や、既に募集が終了されたにもかかわらず、いまだに掲載されているという状況があるということがありました。そういうこともありまして、募集情報の的確性を確保するという課題から、今回の改正については、一定の理解をさせていただいております。また、これまでも、多くの委員の皆様から、この点につきましては議論また指摘というものがされてきたところです。

 そこで、この求人募集を収集している募集情報等提供事業者のうち、労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う者、いわゆる特定募集情報提供者に対しては、届出を義務づけ、求人、求職情報の規模、提供しているサービスの内容を記載した事業報告書というものの提出を求めているところです。また、先ほど委員からもありましたけれども、なぜ届出制なのかというところにつきましても、本来でしたら言いたかったところなんですけれども、先ほどちょっと議論がありました。

 求職者の視点から見れば、たくさんの事業者があるうち、どの事業者が適正なサービスを行っているのかどうかというのは、外から見たときに非常に判断がしづらいんじゃないかなという形で思います。

 そこで、提案なんですけれども、募集情報の適正性を確保している事業者に対して、例えば認証マークなどを作るなどして、求職者が安心して求人に応募できるような仕組みをつくるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今回の法案においては、求職者情報を収集して募集情報等提供を行う事業者について、届出制を導入しているところでございます。

 これにより、把握した事業者名簿の情報等については、厚生労働省で開設している人材サービス総合サイトにおいて一覧で閲覧できるようにしまして、利用者のサービス選択に資するようにしてまいりたいと思います。

 いずれにしても、委員御指摘のような、求職者に分かるようにしていく工夫が必要だと思います。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑中ではありますけれども、ここで、黙祷を行うために、一旦中断をいたします。

 質疑の途中ではありますが、この際、委員会を代表して一言申し上げます。

 間もなく東日本大震災から十一年目の発災の時刻を迎えます。

 改めて、お亡くなりになられた方々を悼み、深く哀悼の意を表しますとともに、被災地の一日も早い復興を祈念いたします。

 これより、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするため、午後二時四十六分に合わせ、一分間の黙祷をささげたいと存じます。

 まだ少し時間がありますので、そのときにまた御起立をお願いします。少々お待ちください。

 全員御起立願います。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

橋本委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

 御協力ありがとうございました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑を再開いたします。池下卓君。

池下委員 大臣、御答弁ありました。

 今、大臣の方から、一覧で表示をするということであったかなと思うんですけれども、私も地方議員をやっていたからよく分かるんですけれども、何かあって、周知啓発してくださいねというときに、ホームページで一覧で表示しますよと言われたときに、じゃ、求人者の皆さんが、わざわざそこにアクセスして細かい字を見るかというと、なかなかそういう具合にはいかないと思いますので、是非その認証マークなんかというのも御検討いただければなと思います。

 また、加えて、この提供事業者というのも本当に数多くあるかと思いますので、求職情報に関して、その質の担保をしっかりとしていくということも重要であると考えております。

 そこで、例えば、業界のガイドラインなんかというものを活用しまして、ミシュランガイドではないんですけれども、一つ星とか二つ星とか三つ星とかという具合に、見える化というものをしていったらどうかなという具合に思っております。

 こういうことをしていくことによって、求職者に対する安心感というのも上がりますし、そして、業者間の中の切磋琢磨、これをすることによって質の向上を図るきっかけにもなるかなと思うんですけれども、大臣の御見解、お伺いをいたします。

後藤国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、今般の改正法案において、募集情報等提供事業者に対して、募集情報の的確表示等の依拠すべきルールを定めております。改正法に基づく届出事業者について、一覧で閲覧できるようにし、利用者自らがサービスを選択できる環境を整えていくことが必要だと思います。

 さらに、事業運営の質の向上についてでございますけれども、この質の向上を図るために、事業者団体とも連携しながら、優良な事業者を周知する取組についても検討していきたいと思います。例えば、認定する仕組みなども検討の一つだと思います。

池下委員 ありがとうございます。

 また、認定の仕組みということも御検討いただけるということでしたので、期待の方をしていきたいなという具合に思います。

 それでは、次に質問を続けさせていただきたいという具合に思います。

 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金、そして給付金についてお伺いをしていきたいと思うんですが、当該支援金・給付金は、コロナの影響によって事業主が休業させ、休業期間中に休業手当の支払いを受けることができなかった雇用保険被保険者に対して休業給付金を支給するものです。また一方、雇用保険被保険者でない労働者についても同様に、給付金を支給する事業を実施できるということも書いてあります。

 雇用保険被保険者でない労働者というのは、恐らくアルバイトさんであったりパートさんであったりというところを想定されているかなという具合に思うんですけれども、私の方にも実は切実な御相談が先日ありました。

 個人事業主の方なんですけれども、御家族と従業員さんと一緒にされている小さな事業主さん、はっきり言うとお魚屋さんやったんですけれども、そういうところでもやはりこの支給金であったり給付金というのを使っていきたいなと思っておられまして、従業員に対しては使えるんだけれども、いわゆる青色事業専従者、生計を一にされている青色事業専従者、奥様であったり家族であったりというところは使えないんじゃないかということで、どうなんだということで御心配をいただきました。やはり、生活をしていく中で、家族というのも当然お仕事を労働者と同様にされているということになりますので。

 そこでちょっと御確認でお伺いをしたいんですけれども、今回、この労働者というものの定義について教えていただきたいと思います。

田中政府参考人 労働者性については、通常、事業主の指揮命令下で働き、それによって賃金を受けている者というふうに言われております。

 それが一般的な定義ですけれども、同居の親族のような部分については、その指揮命令関係等が曖昧なことから、通常は労働者性がないというふうに考えられておりますけれども、一定の要件に該当する場合は労働者性を認められる場合もあるということとなっております。

池下委員 労働者性を認めることができれば該当しますよというお答えだったと思うんですけれども、全国、同様のこういう青色事業専従者の方々も心配されているかと思うんですけれども、ちょっと具体的な要項を、例えば、どこに相談したらいいのかとか、どのような資料、これを持っていけば労働者性があるんだということを示せるのかということにつきまして、ちょっとお伺いをしたいと思います。

田中政府参考人 個人事業主と同居している親族の方の労働者性の判断について、原則としては労働者性がないということが多いんですけれども、次のような条件に該当する場合は、労働者性があるものと判断しております。

 一つ目に、業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること、二つ目に、就業の実態が当該事業所におけるほかの労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること、三つ目に、事業主と利益を一にする地位、取締役等ですが、そういう地位にないこと、こういった条件を満たせば、労働者性があるものとして判断される場合があります。

 この具体的な判断については、この休業支援金・給付金の支給に関しては、労働局、ハローワークの方で対応しておりますので、その点、不明な部分については、そちらの方にお問い合わせいただければと思います。

 その際に、通常であれば、労働者名簿とか賃金台帳とか、そういった労働関係の諸帳簿の存在というのは有力な証拠になるわけですけれども、なかなか個人事業主の場合、そろわれていない場合もあります、実際あります。ですので、そのときには、それに代わるような書類がないかとか、そういったこともきめ細かくアドバイスはさせていただきますので、この点、個別にお問い合わせいただければと思っております。

池下委員 ありがとうございます。

 うちのところにもやはり相談が幾つか来ておりますので、是非、こういう制度が使えるんだよということの周知も併せて図っていただきたいなという形で思います。

 改めて、次なんですが、育児休業給付の国庫負担金の改正についてお伺いをしていきたいと思います。

 この論点につきましても、本当に多くの委員の皆様から御指摘があったところで、ちょっと違う観点からもお話ししていきたいなと思うんですが。

 この給付金につきまして、雇用保険の財源がもつのかどうかという御意見というのも本当に多くあったかと思います。雇用保険部会でも、労使双方の委員から、育児休業の取得促進は少子化対策の一環として行われるべきだという御意見もあったところです。

 また、これまでの答弁の中で、令和六年を目途に、育児休業給付及びその財源の在り方について検討を加え、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするという具合に言われておりました。

 令和六年度までは、育児休業給付資金、この積み立ててきたものを使いながら、給付についてマイナスとならないような形で事業を行っていくような形になるのかなと考えておるんですけれども、一方、四月から男性の育児休暇についても今後増えていくと予想されることから、これまでよりも育児給付の支給額というのは増加すると思います。

 万が一、令和六年度末までに財源がもしマイナスになるようなことがあった場合に、どのような対応をされるのか。また、必要があると認められるときとは具体的にどのような場合を想定し、さらに、所要の措置というのは具体的にどんな対応をしていくのか。令和七年度以降も育児休業給付の仕組みが継続的に行われるようにするために、方針につきましても併せてお伺いをしたいと思います。

後藤国務大臣 まず、育児休業給付の財政運営試算に当たりましては、これまで、男性受給者の増加傾向も織り込んで試算を行っているところでございます。

 本年十月から施行される産後パパ育休によりまして、仮に男性育児休業取得率が三〇%に達するまで進み、平均二週間取得するなど一定の仮定を置いて試算すると、年間約六十六億円程度増加する見込みでありまして、これを加えても、令和六年度末の育児休業資金は残存する見込みであるというふうには考えてはおります。

 その上で、今般の法案では、仮に高い伸び率が継続した場合の財政リスクに備える観点から、失業給付の積立金からの借入規定を令和六年度まで延長することとした上で、仮に借入れが生じた場合には、返済の在り方について検討する旨の規定を盛り込んでいるところでありまして、支給状況に応じて適切に財政運営を行ってまいりたいというふうに思います。

 それから、令和六年度以降の在り方、それも一緒にお尋ねがありましたけれども、育児休業給付の今後の在り方については、少子化社会対策大綱において、育児休業給付について、中長期的な観点から、その充実を含め、他の子育て支援制度の在り方も併せた制度の在り方を総合的に検討するとされていることや、現在の保険料率では、令和七年度以降、安定運営が可能な見通しとなっていないことも踏まえまして、今般の改正法案の附則において、令和六年度までをめどに、育児休業給付及びその財源の在り方について検討を行う旨の規定を置いているところでございます。

 どのような場合にどのような措置を講ずるかは、まさに今後の議論を踏まえ検討されるものでありまして、制度の実施状況を踏まえながら、その在り方について検討を行ってまいりたいと思います。

池下委員 ありがとうございます。

 具体的なことは今後ということになるかと思います。

 ちょっと時間がなくなりましたので、これで質問の方は終了させていただきますけれども、また今後ともしっかりとやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代です。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 雇用保険法の改正案の質疑に入る前に、一点、新型コロナウイルス感染症について質問をさせていただきます。

 お手元の資料を御覧ください。三月一日の朝日新聞夕刊の記事です。アメリカのニューヨーク保健当局の研究者らによる研究結果が掲載されています。この研究結果は専門家の査読を受ける前の論文によるものですが、ニューヨークでの新型コロナワクチンを二回接種した五歳から十一歳の約三十七万人のデータから発表されたものです。

 この記事によりますと、五歳から十一歳の子供における感染を防ぐ効果は、昨年十二月中旬には六八%であったものが、本年一月下旬には一二%に落ちています。同じく五歳から十一歳の子供における入院を防ぐ効果は、同じ期間の間に一〇〇%から四八%へと半分以下になっております。

 この約一か月半ほどで五歳から十一歳の子供に対する新型コロナワクチンの効果が著しく低下していることが分かります。また、十二歳から十七歳の子供に対する新型コロナワクチンよりも効果の下がり方が急激であるとも言えます。

 こういった海外のデータをどのように受け止めていらっしゃるのか、また、日本での五歳から十一歳の子供の新型ワクチン接種についてどのように生かしていくのか、厚生労働大臣の見解を求めます。

後藤国務大臣 御指摘の新聞報道は、米国における専門家の査読を受ける前の研究成果を取り上げて、五歳から十一歳までの子供に使用する新型コロナワクチンのオミクロン株に対する感染予防効果や入院予防効果を、十二歳から十七歳までの子供に使用するものと比べて早く低下する旨を報じたものと承知をいたしております。

 一方で、別の報道では、この研究結果に関して、入院予防効果については重症化する子供の数が少ないため正確な分析をするためのデータとしては不十分である旨も、併せて報じられております。

 いずれにしても、まだ査読前の論文でもありますし、こうした研究結果の評価については、専門家の評価を待って、我々としても慎重に解釈したいと思っております。

 なお、五歳から十一歳までの子供への新型コロナワクチンの接種の主たる目的は重症化予防と発症予防でありますので、この研究結果のみをもって特例臨時接種として実施することの意義が揺らぐというものでもないというふうにも考えております。

 五歳から十一歳までの子供への新型コロナワクチン接種を行っている米国、英国、ドイツ、フランスにおいても、この研究結果を踏まえて、接種の対象範囲等を変更してはおりません。

 引き続き、子供に対するワクチンの効果に関する知見の収集に努めまして、必要な情報をしっかりと発信しながら、ワクチンの有効性、安全性を丁寧に分かりやすく説明してまいりたいと思います。

 今、御指摘をいただいたような、こうした論文の成果、こうしたことも注意深くこれからフォローしてまいりたいと思います。

吉田(と)委員 このように、これからも、海外そして日本から、こういったワクチン接種についての様々な研究結果が今後も出てくることが予想されます。今、後藤大臣から、有効性、安全性についてしっかり、疑義を、していくということでしたけれども、その都度立ち止まっていただきまして、場合によっては五歳から十一歳の子供の新型コロナワクチン接種について見送るということも視野に入れながら、極めて慎重な対応をお願いしたいと思います。

 では、続きまして、次の資料を御覧ください。この資料は、ヤフー特設サイト、新型コロナワクチン情報まとめからの資料によります。

 この資料によりますと、アメリカにおける五歳から十一歳の子供さんへ新型コロナワクチンを二回接種した後の副反応の出現頻度が掲載されています。日常生活に支障が出る割合が七・四%、そして、登校できない割合が一〇・九%となっております。

 新型コロナワクチンを二回接種した後に一割以上の小学生が登校できないというのは極めて大きい副反応出現率だと思いますが、厚労省はこの結果をどのように受け止めておられますでしょうか。

後藤国務大臣 御指摘のデータは米国CDCの報告を指すと承知しております。

 この報告の中では、五歳から十一歳までの子供への新型コロナワクチン接種による副反応の発生頻度について、十二歳から十五歳までの子供と比べて、登校できない者の割合は多いものの、その他の局所反応や全身反応等の割合は少ないと報告されております。こうしたデータや、その他様々なデータを総合的に勘案して、特例臨時接種として実施することといたしたわけでございます。

 御指摘のように、厚生労働省では、QアンドAによりまして、副反応により学校等を休んでも欠席とせず柔軟に取り扱うことが可能であることや、保護者も看護のために休暇を取得できる場合があることなども周知しまして、子供のワクチン接種の環境の整備を進めているところでございます。

吉田(と)委員 子供のワクチンで、ジフテリアとかはしかとかインフルエンザ、こういった接種を今までも行ってきているわけですけれども、接種した翌日に、幾ら治験で安全性があるとはいえ、クラスの一割が休むというのは、やはり普通ではないと思うんですね。

 こういった結果、今、SNSの時代ですので、多くの保護者や、そして子供さんに素早く情報が提供される時代となっております。

 先般、私が衆議院予算委員会で五歳から十一歳へのワクチン接種について極めて慎重にすべきであるという主張をした際にも、もっと私たちの声を届けてほしいと、多くの国民の皆様から反響がございました。

 ですので、一度決めた方針ですけれども、変更するということも全く問題ないと私は考えておりますので、是非、五歳から十一歳への子供さんへのワクチン接種に関する最新データ、これには機敏に対応をしていただきたいとお願い申し上げます。

 それでは、続きまして、雇用保険について質疑させていただきますが、働き手を守るはずのセーフティーネットの機能に綻びが生じています。

 雇用保険事業の根幹を成す失業保険を二〇二〇年度中に受け取った方は、労働力調査における完全失業者のうち、仕事を辞めたため求職者の数は約百三十二万人に対して、雇用保険の受給者実人員数は約四十八万人で、受給比率は約三六%でした。受給者比率は近年微増傾向にあるものの、それでも失業者十人のうち六人から七人が失業保険を受けていないという計算になります。

 この受給者率は何が問題だと政府は受け止めていらっしゃるのでしょうか。

    〔委員長退席、牧原委員長代理着席〕

田中政府参考人 御指摘のとおり、労働力調査によりますと、二〇二〇年度の完全失業者のうち、仕事を辞めたため求職している方が月平均で百三十二万人であるのに対し、同じ年度の雇用保険の受給者実人員の数は月平均で四十八万人であり、その比率を機械的に計算すると、約三六%となります。

 この受給者実人員に含まれない失業者としては、基本手当の受給期間終了後も引き続き求職活動をしている方や、短期間での離職により基本手当の受給資格を得られなかった方などが想定されますけれども、こうした方々が早期に安定した仕事に再就職できるよう、円滑な労働移動を図り、雇用のミスマッチを解消することが必要と考えております。

 こうした観点から、求職者支援制度をより利用しやすくなる特例を講じるとともに、求職者支援制度の訓練を含む職業訓練の充実、新型コロナの影響による離職者をトライアル雇用する事業主への支援といった施策を講じており、こうした施策を通じて離職者がより早期に再就職できるよう支援してまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 雇用保険の根幹を成す失業保険ですので、働く人の安全網、セーフティーネットであるべきです。

 失業保険の給付の条件というのが、まず一週間に労働時間が二十時間以上、それを満たして初めて被保険者となり、また、被保険者として一定期間保険料支払いの実績が必要になってまいります。こうした条件がパートやそして日雇の方、非正規雇用の方には十分に機能していないと言えるのではないでしょうか。

 この雇用保険料、会社と働き手が折半するものですけれども、経営が厳しい例えば会社ですと、シフトの調整などで保険加入の要件を満たせないなど、そういった保険加入の、会社の意向で左右されないとも言えないと思います。この雇用保険の適用については企業への働きかけを厚労省としても積極的に行っていただくことを要望したいと思います。

 それでは、求職者支援制度について質問をさせていただきます。

 本法律案には、求職者支援制度に基づく訓練、いわゆる求職者支援訓練を公共職業安定所長の受講指示の対象に追加する改正案が盛り込まれています。

 この求職者支援制度はリーマン・ショック後の二〇一一年十月に創設されたもので、雇用保険が適用されない非正規労働者向けの制度でありますが、厚生労働省として、そもそもどのくらいこの訓練受講者数を想定していたのでしょうか。また、職業訓練受講給付金の訓練受講手当、これを月十万円とした根拠をお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 求職者支援制度の制度創設時の訓練受講者数は、半年でおおよそ十三万人を予定していたところでございます。

 また、訓練期間中の生活支援のために支給する職業訓練受講給付金の額は、一人当たりの標準的な生活費を踏まえまして、月十万円としております。

    〔牧原委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(と)委員 創設当時はかなり高い受講者数を誇っていたという求職者支援制度ですけれども、二〇二一年度の受講者数目標は約五万人と設定されています。

 一方、二〇二〇年度の受講者数は約二万四千人であり、厚労省としてはこの数字をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。また、これらの状況を踏まえて今後どのように展開していかれるのか、厚生労働省の見解をお聞かせください。

田中政府参考人 令和三年度の求職者支援訓練の受講者数は、令和二年度の実績である約二・四万人を倍増させる五万人を目標として掲げておりますが、本年一月時点の実績は約二・二万人と、前年同期と比べて約一・二倍の増加にとどまっております。

 このため、必要な方に制度を御利用いただけるよう制度を使いやすくする特例措置を設け、ハローワークでのお一人お一人の状況に応じたきめ細かな情報提供をし、さらに、インターネット、SNSを活用した幅広い周知広報等を行い、活用促進に向けた働きかけを積極的に行っているところでございまして、今後とも努力してまいりたいと思います。

吉田(と)委員 従来より抱えていた格差や貧困問題、これらに輪をかけて、このコロナ禍で更に浮き彫りになったこの雇用問題、弱い立場の方々が守られるよう、更に支援制度の広報宣伝、周知徹底をお願いいたします。

 本日は、ありがとうございました。

橋本委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 立憲、維新の皆さんから質問の時間の配慮をいただきました。ありがとうございます。

 また、先ほどは黙祷がささげられましたが、本日は東日本大震災から十一年となります。亡くなられた方の御冥福をお祈りし、また、被災地の皆様に思いをはせながら、質問をさせていただきたいと思います。

 職業安定法改正について伺います。

 今回の法改正では、求職者情報を収集して募集情報等提供を行う者を届出制、事業概要等の報告により把握するということであります。

 求人メディアの業界としては公益財団法人の全国求人情報協会という団体がありまして、六十一社が加盟をしていますが、今回の法改正でどれくらいの届出数になると想定をされていますでしょうか。まず伺います。

田中政府参考人 募集情報等提供事業者の数につきましては、私どもの方で、インターネットで検索をすることで、八百程度の事業者を把握しております。

 一方で、全ての事業者を網羅しているとは考えておらず、今後、届出制の導入も踏まえて、より実態を把握できるように努めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 かなり多くの数になるということであります。

 求人情報の、先ほど言いました協会の発表によりますと、二〇二〇年度を対象としました市場規模というのは四千百五十億ということでありまして、一方、ソーシャルリクルーティング、アグリゲーター、クラウドソーシングと、ちょっと横文字ばかりなんですけれども、こういった新形態のサービスの市場規模はこの数字に含まれておらず、一千八百八十六億円ということで、これは前年比プラス七〇%ということで、新形態のサービスが大きく拡大をしています。

 今回の改正の想定される求人検索のエンジンなどに加えて、次々と新しいサービスが生まれておりまして、これも横文字であるんですが、キャリアSNS形態、マッチングプラットフォーム形態、またカジュアル面談と言われるような、直接的に雇用に関係のあるですね、成立をあっせんしないといったサービスも次々と登場しています。こういった新しいビジネスモデルによるものも今回の対象になると考えていいんでしょうか。

田中政府参考人 インターネット上のサービスは本当に様々なものが出てきておりまして、その中で、何を捉えてルールを定めるかということが非常に難しい状況でありますし、今後も状況は変わってくるものと思っております。

 一般論として今回の対応をお答えすれば、求人企業が募集に関する情報を登録して、求職者が当該情報を閲覧できるようにするサービスや、求職者が自らに関する情報を登録して、求人企業がそれを閲覧できるようにするサービスについては募集情報等提供事業に該当し、SNS上などでこのようなサービスを行っていれば、その名称にかかわらず、職業安定法の規定を遵守していただく必要があると考えております。

 募集段階において給料や待遇を具体的に記載しないものであってもこの考え方は同様でありまして、実際に応募してきた労働者に対して、求人企業は職業安定法に基づき賃金等の労働条件の明示が必要となることは、先ほど御答弁したとおりでございます。

田中(健)委員 先ほど吉田先生の方からもるるその質問がありました。新しいサービスにおいては、もしかしたら、自分が適合しないんじゃないかというふうに思っている会社さんもいらっしゃるんじゃないかとも思いますし、また、そういった会社を、先ほどの答弁では、それぞれインターネットで探していくということでありましたので、ちょっと、やり方は随時変えていき、また、適切な方法を考えていただきたいと思っています。

 先ほどの答弁の中に少し入っていたんですけれども、この新しいサービスの中には、給料や待遇などの条件ではなく、やりがいや環境でマッチングをするとうたっているサービスがあります。例えば、募集に関しては給与、待遇の記載NGというような会社もありまして、そもそも、このような会社が雇用仲介業者として位置づけられるのかどうかということを大変疑問に思っています。

 これは、求人情報とは何なのかということにも通ずるわけでありますが、給与や待遇などが分からないのであれば、就業内容がそもそもの掲載内容と異なっているかどうかを判断できず、今回の一つの目玉でもあります的確表示そのものの意味が薄れてしまいますというか、そもそも実効性が図れないというような懸念が生じるわけですけれども、再度この点について伺いたいと思います。

田中政府参考人 今回、募集情報等提供事業について、届出制なり様々なルールを定めるわけですけれども、今回の法改正においても、前回、募集情報等提供事業について指針を定めるというときに定義した範囲よりも今回、一定拡大をして、再定義させていただいております。

 この雇用仲介事業というものは、インターネットの登場に伴って様々な形で展開しておりますので、今回の規定の中に、ルールの対象になるのかどうかという判断の明確性をまずお示ししていかないといけないですし、また、その外にあるサービスで、人材募集とか様々な人材関連のサービスが出てくると思います。その中で、先ほどもありましたけれども、求職者の利益が損なわれているというようなものがあれば、様々な形で議論をし、検討していかないといけないことは今後とも出てくると思います。そういう課題意識を持って取り組んでいきたいと思っております。

田中(健)委員 さらに、会社の形態としましては、今回対象となる特に求人検索エンジンのような大きな会社においては、そもそもの事業運営主体が海外に本社があるというケースも多々あります。先ほど、実態状況、届出制とともに求めていくということでありますが、そのサービスの中のどの範囲までが職業安定法による届出や報告の対象となるのかということもお聞かせ願えればと思います。

田中政府参考人 海外の事業者であっても、求人企業や求職者が日本国内にいるなど、募集情報等提供事業が日本国内で行われていると評価できる場合には、今般の法に規定している募集情報等の的確表示等のルールを遵守していただく必要があると考えております。

 事業開始の届出や事業概況報告の提出の義務についても、日本国内向けに募集情報等提供事業を行う場合は遵守していただく必要がありますけれども、逆に、海外事業者が海外向けのサービスを行っている場合には、職業安定法に基づく義務は及ばないものと考えております。

 日本に存在する求人企業あるいは求職者の利益の保護という観点から、しっかりと職業安定法上のルールを適用していきたいと考えております。

田中(健)委員 日本国内に事業所がある企業を対象とするということなんですが、今、働く環境というのは日本だけでなく世界でありまして、どこで働くかという場所は、それも問わないような時代となっていまして、もしかしたら、海外で働くということも日本のサイトの中で提供し、また、それが実際に結びつくということもあるかと思います。今後の課題かと思っておりますので、是非これについても今後議論を深めていきたいと思っています。

 さらに、そもそもの、今、件数のことについて聞きたいんですけれども、さきの全国求人情報協会という団体が発表しています二〇二一年の年間求人の広告の掲載件数というのは、職種別の合計件数で千八十九万という数が出ています。さらに、直近の、本年度、二〇二二年の一月は、百十万件と、これは先月比三〇%増ということで、かなり増加をし、また、今現在増え続けています。

 的確表示の義務として、虚偽又は誤解を生じさせる表示を禁止し、また、最新かつ正確な内容に保つための措置を講じることを義務づけるということとされています。

 これについても先ほど来るる議論があったんですけれども、この数を見て議論をすると、これだけの件数をなかなか全てチェックしていくというのは相当な業務量となることが想定をされます。どのようにして実効性を担保していくのか、内容を伺います。

田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、最新かつ正確な内容に保つというのは、求人ビジネス、あるいはその求人ビジネスが活動する労働市場の信頼性にとって非常に重要な要素だというふうに思っております。

 もちろん、今回規制を、ルールをつくるのも、こういったビジネスが大幅に伸びてきていて、取り扱う情報の数も莫大な数になりつつある、その中で法的にどういうふうに考えていくかという議論をしたわけでございます。

 したがって、多いから難しいじゃないかということでなくて、恐らく、このルールをしっかり周知しつつ、基本的には、事業者がしっかりと自覚を持ってルールを自主的に守っていただくということが大事ですし、それを一つカバーするように業界団体の機能も重視していかなければいけませんし、業界団体と私どもルールを所管する行政官庁が、地方の組織、指導のための行政組織の充実も含めてしっかりと対応していく必要があるのではないかと考えております。

田中(健)委員 これは、始めてみないとどこまで実効性を担保できるか分からないんですが、ネット上ないしSNS上、様々な誤った情報を検索するのに、大手はAIを使ったりして、かなりのコストを払って実行しています。今回対象となる会社は、もちろん大手はあるんですけれども、かなりベンチャーや小さな企業もありますので、今、業界団体やまた地方を使っても実効性を担保していくということをおっしゃっていただきましたので、せっかくこのような的確表示を義務づけても、それが担保できないということでは意味がありませんので、是非徹底して行っていただければと思っています。

 さらに、苦情処理を義務づけるということも今回明記されています。

 皆さんも御案内のとおり、これは、人材サービスだけでなくて、インターネットを使っていますと、苦情処理や問合せというのは、今やもう電話をするというものはありません。一生懸命ネットのページを見ていても、電話番号を探しても、なくて、ほとんどメールか問合せフォームのような形でしか受け付けていないのが現状です。

 今回の義務づけの中には、迅速かつ適切な苦情処理のためということが掲げられておりますが、これも、どこまでの対応を業者に、また業界に求めていくのかということが具体的にここでは分かりませんので、是非お示しいただきたいと思います。

田中政府参考人 今般の法改正では、募集情報等提供事業を行う者に対し、求人情報等を広く提供する社会的役割に鑑みて、迅速な苦情処理及び必要な体制整備の義務を課すこととしております。

 この義務に沿ってどのような体制を取るかについては事業の規模などによって異なりますが、少なくとも、苦情の申出先を明らかにする必要があるとともに、苦情を放置するような状況は義務違反になると考えております。

田中(健)委員 もちろん、苦情を、義務づけるということで書くことは分かるんですけれども、つまり、その義務づけたことが、単に、問合せはこちらというメールや、単にお問合せフォームということでは、やはり、苦情する人が自分の苦情を一生懸命メールで書くというのではとても迅速かつ適切だとは思えないんですね。

 といって、じゃ、各会社にコールセンターを整備しろとか電話をつけろというのは非現実的だとは思うので、この苦情処理というのをどのように義務づけるかというのは大変大事だと思いますし、求職者の保護にもつながってくるかと思っていますが、いま一度、業者に義務づけるというだけでなく、更に一歩進んだ対応ができないかと思っていますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 これもいろいろな形で実態を踏まえて考えていかないといけない部分がありますけれども、今のようなネット社会におきましては、電話のみならずメールによる苦情受付を行うことは、時間を問わず求職者が申告できるなどのメリットもあり、苦情処理体制の一つの手段になると考えられます。また、電話を必須とするということも本当に必要かどうかということも考えないといけないと思います。

 ただ、それだけでは駄目で、どういうような形で受け付けようと、先ほど申し上げましたように、苦情をそのまま放置する、要は電話に出ないとかメールに返信しないとかそういったことをやると、やはり義務違反になるというふうに思いますので、そこまできちっと体制整備と、それを実際動かすということをしっかりと周知して、実効ある措置を取っていただくように促していきたいと思っております。

田中(健)委員 以前のこの委員会でも、新聞記事を取り上げて御質問を、先生、いただきましたけれども、求職者が、話が違うということで尋ねようとしても、会社が変わっていたり連絡先が分からないので結局泣き寝入りしてしまったというような例を示していただきましたが、そのようなことがないように、是非、今るる対応も検討していただけるというので、お願いをしたいと思っています。

 次に進みます。

 求人サイトでは、利用者が氏名や年齢、住所、さらには学歴や職歴ということなど個人情報を登録する場合が多く、情報漏えいを懸念するという利用者も多いと言われています。

 どの国にサーバーがあるのか、また契約の委託先がどこで管理しているのか、再委託先は等々、個人情報の管理というのは多くがデータ管理を外部に委託をして、詳細を把握していないというケースがあります。LINEが、外部に十分説明しないままに、日本国内の利用者の個人データに中国の関連会社からアクセスできる状態を放置していたことが発覚して問題になったことは、記憶に新しいかと思います。

 個人情報の保護については個人情報保護法、また、サーバーの管理や閲覧等の外部送信には電気通信事業法といった制約があります。

 今回の法改正では、この個人情報の保護や秘密保持ということも大きな項目として掲げられておりまして、これが義務づけられるということでありますが、職業安定法に基づいては、このような個人情報の保護、秘密保持というのはどのような対応が可能になるのか、伺います。

田中政府参考人 今般の職業安定法の改正によりまして、募集情報等提供事業者の適正な運営を確保する観点から、これまでの職業紹介事業者に対するのと同様に、募集情報等提供事業者についても個人情報の保護に関するルールを適用するということにいたしました。

 具体的には、求職者等の個人情報の取扱いや適正な管理に関する規定の対象とするとともに、個人情報の不適切な取扱い等に対し厚生労働大臣が改善命令等の行政処分を行うことを可能とするという点が、職業安定法に個人情報の保護のルールを規定して適用するという重要な点でございます。

 もちろん、個人情報保護法や電気通信事業法は、それぞれ、職業安定法とは別の趣旨、目的を有して、それに照らして必要な法規制を図っていると承知しております。事業者が各法律の規制対象に該当する場合は、職業安定法に加えて、当然、それぞれの法律の規定も遵守していただく必要があると考えております。

田中(健)委員 ちょっと分からなかったんですけれども。

 例えば、個人情報保護法、この四月に法改正が全面施行となりまして、先ほどちょっと懸念を示しました海外のデータ保存などは、規制は強化されます。海外事業者にデータの処理を委託する場合は、国名を示したり、また本人の同意取得なども義務づけということで、今、企業が一生懸命この対応に追われているところであります。

 そのようなことが求職者保護につながるということは大変いいことだと思っておるんですが、さらに、その中でも、今回の法改正では、職業安定法に基づいた保護と秘密保持をするというのが、ちょっとどのようなことになるのか。否定をしているわけではなくて、更に求職者に対して安心や安全につながるというのを、もう少し具体的にお示しいただければと思います。

田中政府参考人 恐らく、職業安定法での個人情報保護と個人情報保護法などでの個人情報保護のルール、当然重なる部分はありますけれども、私どもの個人情報保護というものは、職業選択の観点から個人情報が、どうしても人材ビジネスの過程において個人情報を使わなければなかなかうまくマッチングができないということで、非常にそういう意味で個人情報が漏れやすい、あるいは誤って使われやすい部分でもあります。そういうことで、特にこういった事業を規制するといいますか、事業を所管する厚生労働大臣がその視点から求人ビジネスに対して指針を定めて、独自の対応をしていくということは重要かと思います。

 ですので、私どもの個人情報の観点でお示ししている職業安定法に基づく指針は、一般的なものではなくて、まさに人材ビジネスに即応した形で、情報の取扱いあるいは適切な管理の在り方等を示しているという形になっておりますし、それに違反があった場合には厚生労働大臣が指導するという体系になっております。

 それと、一般的な個人情報の取扱いについてのルールは、これは重畳的に適用されると考えておりまして、入念的に、私どもの指針の中にも、個人情報保護法の規定に従うようにということを書かせていただいて、その点のそごがないようにさせていただいております。

田中(健)委員 先ほど来、厚生労働大臣という言葉が何度か出てきておりまして、ちょっと時間もないものですから、今回この改正法についてるる、ちょっと私も具体的なものが分からなかったものですから、一つずつ確認をしながら質問させてもらいました。まだ明らかでないことや、先ほど吉田委員の様々な提案も、課題が残っているかとは思うんですけれども、是非最後に、大臣のこの改正法に向ける意気込みと、また、今回の質問のまとめとして一言いただければと思います。

後藤国務大臣 今、丁寧に、法律、新しい、特に募集情報等提供事業者、SNSや、あるいはAI、あるいは国際的な問題、新たな質を担保する中での競争の問題、多角的な問題点があること、よく承知して、しっかりと新しいビジネスとして成り立つことと、そして、情報を受ける人の権利や、しっかりとした役に立つように、しっかりと見ていきたいというふうに思っております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 ますますこの転職市場というのは活発化してくると思っておりまして、新しい会社やサービスも続々と生まれてくると思いますが、どんな形であれ、求職者が安心してサービスを受けられるという環境を是非つくっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、職安法について、一点お伺いします。

 見かけの賃金額を高く見せる固定残業代が横行しております。求人サイトでも、基本賃金額は残業代等を除いた所定労働時間に相当する賃金額の表示を義務づけるべきだと考えますが、いかがですか。

後藤国務大臣 現在でも、職業安定法に基づく指針において、労働条件を明示するに当たっては、賃金形態や基本給、手当に関する事項について明示するとともに、いわゆる固定残業代を採用する場合は、固定残業代算定のための基礎となる労働時間や、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業代の対象となる労働時間を超える時間労働に対して割増し賃金を追加で支払う旨等について明示することとされております。

 労働条件の明示を行う前の募集情報についても、今般の法改正により、募集情報等の虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁止しているところでございまして、法案成立後に、どのような表示が誤解を生じさせる表示に該当するのかお示ししていく中で、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 よろしくお願いいたします。

 次に、雇用保険法についてお伺いいたします。

 今回の法案の最大の問題は、国庫負担の原則を四十分の一へ引き下げ、失業者の生活安定への国の責任を逃れようとしている点にあります。雇用保険部会でも、労使双方から納得できないという意見が噴出しておりました。

 資料の二ページ目を見ていただきたいと思います。雇用保険部会長が本法案について一月十三日に出した意見です。

 本部会として、雇用保険財政の在り方に関する今後の検討に際し、以下のとおり公労使一致の意見を付すと。財政を含めた雇用保険制度全体の在り方について、拙速に議論を進めることは避け、雇用保険制度の当事者たる公労使が一致して納得のいく結論を出せるよう、厚労省は必要な資料を時間的余裕を持って提示し、改正案の内容について明確かつ合理的な説明を行うなど、丁寧な会議運営を行うべきであると。

 裏を返せば、今回のやり方へのふんまんやる方ない思いがこもっているというふうに私は思いましたよ。こうした意見がつくのは、大臣、前代未聞じゃないですか。

後藤国務大臣 過去二十年について確認しましたところ、丁寧な会議運営に関する御意見が付された例はないものと承知しております。

宮本(徹)委員 前代未聞なわけですよね。本当に乱暴な会議運営で、結論ありきで押し切ったというのが今回の件だったわけでございます。労使参加で政策を決める労政審を形骸化させるもので、極めて重大なやり方だったと思いますよ。

 加えて、資料の三ページ目につけましたけれども、国会の附帯決議です。国会との関係でも本当に問題があると思いますよ。

 この附帯決議の中でも、前回、二年前ですけれども、時限的な国庫負担率の引下げの継続ですね、四十分の一は、令和三年度までの二年度間に厳に限った措置とするというふうにしていたわけでございます。

 ということは、もう次は引き上げる、四十分の一はもう続けないというのが、これは後藤大臣も賛成された附帯決議だったんじゃないんですか。覚えていますよね。国会附帯決議違反じゃないですか。

後藤国務大臣 今回、全体として、こうして新しい四分の一、四十分の一、そして、機動的な国庫繰入れという形で新しい雇用保険の財政の議論をお示ししたところでございます。

宮本(徹)委員 誰がどう見ても、これは本当に附帯決議違反で、何のために附帯決議を上げたのかという事態だと私は言わなければならないと思います。

 その上で、今日議論したいのは、失業給付の水準の問題でございます。

 コロナ禍の中で、国はもっと失業者の生活支援に責任を果たす必要があるということが私は浮き彫りになったと思います。

 資料の四ページ目に、自民党の高鳥修一元厚労政務官のインタビュー記事を載せておきました。政治的スタンスは私はかなり違うところが多いわけでございますけれども、この中では、失業給付の増額を、困っている人を助けるのが政治の使命だということをおっしゃっています。雇調金は日額上限を引き上げたのに、失業給付は低いままだ、給付率も改善すべきだと。この点では大変賛同できる意見を述べていらっしゃいます。

 大臣にお伺いしますけれども、コロナ禍で、雇調金の助成率と日額上限が大きく引き上げられました。この背景には、従来の雇調金の水準では生活保障に欠ける、こういう国民の声があったからではないのか。そして、日額上限を引き上げたことでどのような効果があったのか。この点、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 雇用調整助成金の原則的な日額上限は、雇用保険の基本手当日額の上限額に基づき定めております。

 雇用調整助成金の助成率と日額上限の特例的な引上げは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、全国規模で急激な経済活動の低下が生じ、雇用環境が悪化する中で、休業手当を支払って雇用を維持する事業主の負担を軽減することにより、休業を余儀なくされた労働者の雇用の維持と生活の安定を図るため、実施してきたものでございます。

 日額上限引上げの効果でございますけれども、令和三年版労働経済白書で推計を行っておりまして、これによると、一定の仮定の下ではあるものの、二〇二〇年四月から十月の完全失業率が二・六%ポイント程度抑制されたと分析されております。

宮本(徹)委員 失業に陥らせないという効果もありましたし、何よりも、生活の安定を図るためには引き上げるしかないんだと。これは本当に与野党一致した意見で、雇調金の上限は引き上がっていったわけでございます。

 そうすると、じゃ、問われるのは失業給付の方だと思うんですよね。

 資料の五ページ目につけました。これは、失業給付の基本手当日額の推移でございますが、二〇〇三年に大改悪が行われて、手当の日額上限は一万六百八円から、今は八千二百六十五円に下がっています。このときに、給付率も六〇%から五〇%に引き下げられました。その結果、一日平均受給額は、二〇二〇年度は二〇〇二年度に比べて八百八十円下がっている。月にすれば、一人当たり二万六千円失業給付が下がっているということになります。

 全労連の皆さんがハローワーク前アンケートに取り組んでいるものを拝見いたしましたが、とにかくもう給付額が少な過ぎて、生活や支払いがつらい、健康保険料、年金、住民税を払う余裕がない、厳しいんだ、こういう声があふれておりました。

 大臣、今の失業給付というのは、生活保障、生活安定の水準としては不十分なんじゃないですか。

後藤国務大臣 労働者が失業した際に支給される基本手当については、失業中の労働者の生活保障のみを目的としたものではなく、その早期の就職を促進することを目的として行うものでございます。

 したがって、基本手当の水準は、労働市場における再就職賃金の水準とバランスの取れた給付水準に設定される必要があるとともに、失業者個人の再就職活動に要する期間を勘案して設定する必要があると考えます。

 こうした考え方を踏まえまして、基本手当の給付水準は離職前賃金の五〇から八〇%としつつ、年齢、離職理由など、再就職の困難度に応じた所定給付日数分を支給することとしておりまして、制度の趣旨も踏まえたものと考えております。

宮本(徹)委員 生活保障のみを目的にしたものじゃないとおっしゃいますけれども、やはり生活保障が最大の目的なわけじゃないですか。安心して就職活動ができる、職探しができるようにしようというのが失業給付の最大の私は目的だと思います。

 資料の六ページ目を見ていただきたいと思いますが、これはOECDが発表している比較でございます。仕事に就いていたときの所得に対する失業者への給付水準は、OECD平均は五三%、日本は四八%。日本より低い国もありますけれども、日本はOECD平均以下ということになっているわけです。

 恐らく与党の多くの皆さんも、このコロナ禍の中で、住宅ローンや子供の教育費や生活費や、失業者の皆さんが本当に困っているという話を聞いていらっしゃったんじゃないかというふうに思います。私は、本当に今の失業給付の水準で妥当なのかというのは、今回のコロナ禍の多くの皆さんの悲鳴の声を踏まえて、いま一度考える必要があると思うんですよね、実態調査も含めて。

 そういう考えは、大臣、ございませんか。

田中政府参考人 先ほど大臣からお答えしたとおり、失業給付については、生活の保障とそれから再就職をしっかり促していくという機能がございます。そういう観点から、再就職後の賃金とそれから失業給付の比較において、就職をちゅうちょするような高いレベルになりますと、失業期間が長期化するというような弊害もございます。雇用保険の制度設計においては、そういった様々な面があることを慎重に考えながら、現在の水準を定めております。

 今回の改正におきましても、その点について、基本手当の内容についてどうすべきかということを労政審で議論をしました。その結果、現段階においては、様々な暫定措置は据え置きつつ現状を維持するという結論になったところでございます。

宮本(徹)委員 しかし、それは多くの国民の皆さんの実感と違うと思いますよ、私は。再就職をちゅうちょするような水準では決してないですよ、今のは、今から少し引き上げたとしても。本当に低くて生活できないような状況にあるわけですから、ここは本当に考えていただきたいと思います。

 この失業給付の水準を引き下げることと併せて、並行して行われてきたのが、暫定措置として国庫負担割合の引下げであります。

 本則である国庫負担割合の四分の一から引下げが行われた二〇〇七年度から二〇二〇年度までの間において、本則の四分の一で算出した額と実際に支出された国庫負担額との差額、この合計額というのは幾らになりますか。

田中政府参考人 雇用保険の国庫負担額について暫定的な引下げ措置を開始した平成十九年度から令和二年度の間の決算額と、同期間について本則の負担割合により算出した額との差額を機械的に算出いたしますと、約二・二兆円となります。

宮本(徹)委員 約二・二兆円、国庫負担が入ってこなかったわけでございます。

 その上で、二〇二〇年度の国庫負担は二百三十億円ですけれども、仮に、国庫負担が原則の四分の一だとして、その差額を基本手当の増額に均等に当てたとしたら、一人当たり一か月、どの程度の基本手当の増額が可能になりますか。

田中政府参考人 二〇二〇年度の基本手当の国庫負担割合が本則の負担割合であった場合の所要額を機械的に算出しますと、約二千二百億円となり、実際の国庫負担額との差額は約二千億円となります。この二千億円を基本手当の年間の延べ受給人数で除した場合、一人一月当たりの額は約三万五千円程度となります。

宮本(徹)委員 つまり、国庫負担を、四分の一、本則どおりとすれば、一人当たり月三・五万円増やせるだけのことができるわけですよね。

 ちょっと前に申し上げましたけれども、法の改悪によって二〇〇三年に大きく給付が下げられたわけですけれども、そのときから今下がっているのが平均二万六千円だと。それを上回る額の給付の引上げが、国庫負担を四分の一にしていればできるということなわけですよ。私は本当に、国庫負担を四分の一に戻す、そして、もっと失業者とその家族の生活を支えて、安心して就職活動できるようにすべきだというふうに思います。

 資料の七ページ目を見ていただきたいと思いますが、これもOECDの資料でございます。

 OECD諸国の中で失業者への公的支出のGDP比を出しておりますが、残念ながら日本は下から四番目ということになっております。かつてはそうじゃなかったわけですよね、四分の一出していた頃はこうではなかったわけですけれども、今は四十分の一ですから極めて低い水準に世界の中でもなっているわけであります。こういう状態を固定化していいのかと思います。

 ちょっとお伺いしたいと思いますけれども、OECD諸国は、日本よりも失業給付が手厚いところもあるわけですけれども、一般的に言って、失業給付の水準が高いことにはどういうメリットがあるとお考えですか。

田中政府参考人 雇用保険の基本手当は、失業中の労働者の生活の安定を図るとともに、その早期就職を促進することを目的としております。

 一般論としては、給付水準が高い方が生活を安定させる効果が高くなると考えますが、一方で、再就職後の賃金との差が小さくなり、あるいは逆転する可能性もあり、就職促進効果が損なわれるおそれがあると考えております。

 こうしたことも踏まえ、基本手当の制度設計は、離職前賃金の低い方ほど給付が手厚い制度設計とした上で、再就職時賃金との乖離の状況も必要に応じて確認し、給付と負担のバランスも踏まえて行っているところでございます。

宮本(徹)委員 私たちの国は、コロナ禍で大変な事態になっても、生活の水準を維持できるようにしようじゃないか、消費の水準を維持できるようにしようじゃないか、こういうことで、雇調金について本当にみんなで努力したわけでございます。しかし、失業された方々は、もちろん失業給付の延長というのをやりましたけれども、しかし金額自体は低いままで大変苦労されるということになったわけですよね。やはり失業給付は手厚い方が生活の安定に資すると。

 さらに、海外の研究を見ますと、失業給付の水準が手厚いほど再就職後の勤続年数が長い、こういう研究もございます。給付水準が低いと、どうしても次への就職がせかされていく、不本意な就職先を選ばざるを得ない、こういうことも起きていることの裏返しだと思います。そういうことを考えると、私は本当に、国庫負担の原則を引き下げる本法案は、向かうべき方向が全く反対だということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 資料の八ページ目を御覧いただきたいと思います。これは財政審の十二月の建議でございます。

 これは今回の国庫負担の考え方と共通するのかなと思いますが、国庫負担割合については、社会保険制度における雇用保険制度の相対的な位置づけを踏まえる必要があるとして、我が国の社会保障制度は、自助、共助、公助の最適な組合せに留意して形成すべきとされており、国民皆保険、皆年金に代表される共助としての社会保険制度が基本であり、国の責務としての最低限度の生活保障を行う公的扶助等の公助は自助、共助を補完するという位置づけとされている、こういうふうに書いているわけですよね。

 つまり、公助は自助、共助の補完なんだ、まさに今回の法案の中身は、本則四分の一を原則四十分の一に引き下げて、自助、共助を補完するところまで公助を引き下げるものになっているのではないかと思いますが、大臣はこの財政審とは全く同じ考え方なんじゃないですか、大臣の立っている立場は。

後藤国務大臣 御指摘の令和三年十二月三日の財政制度審議会の建議については、平成二十五年の社会保障制度改革国民会議報告書において、主として年金制度や医療保険制度に代表される社会保険制度における公費投入の考え方を踏まえたものであると理解しております。

 雇用保険制度の国庫負担については、雇用保険の保険事故である失業が政府の経済政策、雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきという考え方によるものでありまして、今回の改正によってもその考え方は変わらないものと考えております。

宮本(徹)委員 この考え方とは若干違うんだということを大臣はおっしゃいますけれども、実際、しかし、やっていることはこの財政審に書かれていることそのままじゃありませんか。失業が政府の経済政策、雇用政策の失政の結果だ、だからこそ責任を負わなきゃいけないという考えがあるのであれば、私は、今回の法案は撤回して、出し直すべきだというふうに思います。

 そのことを申し上げまして、質問を終わります。

橋本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。

 今日は雇用保険法の最終、今日の最終でございますけれども、この間議論に上がっております国庫負担、いわゆる雇用保険の財政、これの安定に寄与することについてお尋ねしたいと思いますが、労政審での議論内容、もちろん大きいわけでございますが、私はその中で気になるのが、例えば今、国庫負担の割合にも寄与する受給者人員、この七十万人という数字ですね。

 これは、例えば今後、労働者人口も日本の人口動態を考えると減少してくることも考えられますし、この数字というのは、例えば次回の労政審、あるいはこの法案を作成する中で変化し得るということはあるのでしょうか。それを、まず一番、問いたいと思います。

田中政府参考人 御指摘の受給者実人員七十万人という水準は、雇用情勢が相当程度悪化した状態として、原則の雇用保険料率を設定するに当たっての基本想定としている六十万人と、近年で最も高い水準である八十五万人の中間程度の水準をもって設定しているものでございます。

 今般の基準は近年の受給者の動向を踏まえて設定しているものでありますので、現段階でこれを引き下げる検討はしておりません。厚生労働省としては、この基準を含めて、今回の保険料及び国庫負担の見直しにより、雇用保険財政の安定的な運営を確保してまいりたいと考えています。

 その上で、労政審に法案要綱を諮問した際に、今回の諮問案における求職者給付に係る国庫負担の仕組みの導入後においても、引き続き、新たな国庫繰入規定を含めた雇用保険財政の在り方について、制度、運用両面において継続的に検証、検討し、必要な対応を行うよう強く求めるとの意見を付されたことをしっかり受け止め、適切に対応してまいります。

仁木委員 そして、保険料率の話にもつながるんですけれども、労政審が開催された時期、特に去年から今年の前半ですけれども、例えばコロナも、オミクロン株が世界では報告され、それがあるでしょうけれども、例えば重症化した患者さんが少ないとか、つまり、経済は上向いてくる、リベンジ消費というような言葉も一時出回っておりましたが。ただ、ここのところに来て、BA・2、オミクロン亜種の広がり等々で、コロナ禍がより長期化するようなことも想定されます。

 また、今回、私も前回の厚労委員会で指摘しましたが、新たな経済、雇用を下振れさせるような負荷が、例えばウクライナ・クライシスというような形で襲っております。

 そういう中で、一旦この法案が通りますと、保険料率は例えば下半期も前半より高い状況で実施されるわけでございますけれども、これは経済政策からいってもちょっと逆行するような形であるわけです。

 ですから、その辺の、後藤大臣、このままで大丈夫というふうなことを前もお聞きしましたが、保険の今回の財政面の安定ということに関しましては、前回と同じ答弁でよろしいでしょうか。

後藤国務大臣 令和四年度の雇用保険料については、雇用保険財政が極めて厳しい状況にある中で、失業等給付の保険料率は原則千分の八であるところ、実際の費用負担者である労使も参画した労働政策審議会の報告書も踏まえて、令和四年度における激変緩和措置として年度前半を千分の二、後半を千分の六とすることとしております。

 雇用保険制度は、労使から広く御負担いただいた保険料等を原資として、雇用を失った方への失業給付や業況が苦しい企業への雇用調整助成金の支給といった再分配を行う機能を有しております。したがって、単に負担増の観点からのみ議論するのではなくて、雇用保険のセーフティーネット機能を十分に発揮できるように、今般の保険料及び国庫負担の見直しにより雇用保険財政の安定を図ってまいりたいというふうに思っております。

仁木委員 これも、私は保険のことを論じているような形でございますので、いわゆる過去の事例でいいますとリーマン・ショックのような形の、大きな、今回ウクライナ危機に端を発して、日本経済にも、あるいは雇用にも大きく資するような状況が生じたことも、例えば今固定した保険料率、これは市場にお金が、労使共に、ちょっと流す、いわゆる消費する機会を、機会というか、その量を減らすことにもなるわけでして、そういったことも踏まえて、例えば不景気のときの景気対策としては逆行するものであります。

 そういうことを踏まえて、今後の労政審の議論に、そういった大きな、これからこういう天変地異の状況、自然災害とか、あるいはこういった世界経済、世界的ないろいろな状況、イベントによって経済が変わってくることも想定した上での、そういった内容も盛り込んだ上での労政審のありようもお願いしたいと思います。どうでしょうか。

田中政府参考人 労政審の今回の法案の諮問時に公労使の一致の意見でも指摘されたところですけれども、今回の法案は法案として、今後、やはり有事における対応の在り方についても、しっかり今回のコロナ禍の対応を分析しながら考えるべきだという御意見がございました。

 どこまでのリスクを通常の制度に織り込むのか、それを超えればまた今回のような臨時的措置が必要になりますけれども、そういうことも慎重に考えながら、雇用保険財政が安定し、求職者それから事業者の皆様が安心して事業活動、就業活動ができるような雇用保険のセーフティーネットを築いていきたいと考えております。

仁木委員 ちょっと話題を変えます。コロナ対策、ワクチンのことについてお尋ねします。

 五歳から十一歳までワクチンが接種されるようになりまして、私も、長男、三番目の、息子が打つ予定でございますけれども。やはり、私のところにも連日、反対というか、このことをより慎重にすべきだというふうな意見があるわけですけれども。

 私は、要は、これは政府からのリスクコミュニケーションがやはり足りないのかなということを感じていますが、そのリスクコミュニケーションにおいて大切な情報、つまりエビデンスを国からつくるということも大切だと私は思っております。

 といいますのは、十八歳未満の方の三回目接種が展開されていません。これもお聞きしましたら、いわゆる製薬メーカーの方から薬事承認の申請がないということだけが理由らしいですし、それでしたら今からやってはどうですかといったら、例えば対象が高校生であったり、中学生であったり、あるいは一回目、二回目を打って時間がたち過ぎているから、そういった前向き研究をやりにくいというふうなことになっています。

 このことを踏まえて、私は、五歳から十一歳の方にもやはり国が主導したそういう前向きコホート研究等々、臨床研究をしっかりとやっていって、不安に思っている方には、これだけ副反応が断片的に出ている、しかし、それ以上のメリット、例えば協力していただける方においては血液検査等々をして、抗S抗体、そういった免疫を測るようなものをやはり国として持っていく。海外の文献、海外の研究だけに依存するのではなくて、これは今後この委員会でも議論される薬機法にもすごく関係することでございますけれども、我が国がバイオヘルスの部分でこれから成長していくため、そしてまた日本の国益を考えると、やはりそういった臨床研究、特に治験も含めて、やれる音頭、これを国が取っていくべきであると考えますけれども、いかがでしょうか、大臣。

後藤国務大臣 新型コロナワクチン接種後の健康状況に関する調査につきましては、予防接種法上の予防接種に位置づけられた対象者及びワクチンについて、国民の皆様に接種後の状況を情報提供することを目的として、必要に応じ厚生労働科学研究を実施しております。

 また、御指摘の一、二回目接種を受けた五歳から十一歳までの方についても、厚生労働科学研究の枠組みの中で調査を実施しているところであります。

 今後、この調査で得られた結果も含めまして、ワクチンの有効性や安全性など、子供や保護者が接種の判断をするに当たって必要な情報を、引き続き丁寧に分かりやすくお伝えしてまいりたいと思います。

仁木委員 大臣、安全性、これはもちろん今一番保護者等々が気になされていることで、やはり、周りが打ってから反応を見てみて打ってみるという方は、これは特に若い方、一回目、二回目のワクチン接種においても多かったアンケート結果だと思います。

 それで、大臣、有効性と言われましたけれども、例えば、私の友人というか知り合いの方で、福島の第一原発の後、内部被曝を測定して、子供の健康調査をやっている、そういうことをずっとこの十一年間続けてこられているグループがありました。その先生方の協力があったからこそ、例えば、一回目、二回目接種した後の一か月後、二か月後、三か月後の採血に御協力いただき、何と二千五百人ぐらいの方がエントリーした前向きコホート研究が出ております。これがあってこそ、抗Sたんぱく、いわゆる抗体、免疫があるかどうか分かるわけでございまして、やはりそういった定期的に通ってくるためには、かなりの信頼というか、大切なんですね。

 だから、やはり、日本の治験あるいは臨床研究の難しさというのは、そこにお金、人材がないのもそうですけれども、急に生まれるわけではありません。ですから、やはり、現場で頑張っている先生方の経験も踏まえて、国がこの臨床研究、しっかり音頭を取って、海外のデータだけに依存するのではなくて、我が国が本当に国としてそういったことを主導してやっていく、これがひいては国民の健康、そして日本の経済にも寄与するということを最後に指摘させていただきまして、私、仁木博文の有志の会の質問とさせていただきます。よろしくお願いします。

    ―――――――――――――

橋本委員長 この際、本案に対し、山井和則君外二名から、立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。

    ―――――――――――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山井委員 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 雇用保険の国庫負担は、雇用政策に対する政府の責任を示すものとして定められています。しかし、平成十九年の雇用保険法改正によって、当分の間、本則で定める割合の百分の五十五とされ、さらに、平成二十九年度からは、本則で定める割合の百分の十とする暫定措置が講じられています。このような措置に対し、これまで公労使の代表委員で構成される労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が、報告を取りまとめるたびに本則で定める割合に戻すことを求め続けてきております。その上、衆参の厚生労働委員会も、法改正の際の附帯決議において同じことを何度も求めてきました。にもかかわらず、政府案では、国庫負担を現行の本則で定める割合の百分の十まで実質的に引下げをしようとしています。

 また、政府案では、新たな国庫繰入規定を設けようとしていますが、その要件は法律上明確になっておらず、機動性及び実効性が担保されているとは言えません。この新たな国庫繰入規定及びコロナ禍における特例として延長する国庫繰入規定の適用に当たっては、公労使の意見を十分に聴取する必要がありますが、そうした規定も設けられておりません。

 さらに、育児休業給付に関しては、抜本的な見直しが重要な課題となっており、全額国庫負担の新制度への移行やフリーランス等への給付対象拡大を含め、速やかに検討を行うべきです。

 こうした認識の下、雇用保険が将来にわたり安定的に運営され、あわせて、現行制度の枠にとらわれない検討が進められるよう、本修正案を提出いたしました。

 次に、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、本則で定める国庫負担割合を引き下げる改正を行わないこととするとともに、附則で定める国庫負担割合の軽減に係る暫定措置を廃止すること。

 第二に、毎会計年度において、政令で定める基準に従い、失業等給付等の支給に要する費用の一部を国庫が負担することができるものとし、当該政令で定める基準は、労働保険特別会計の雇用勘定の財政状況、求職者給付の支給を受けた受給資格者の数の状況等に応じた機動的な国庫の負担が確保されるように定めるものとすること。また、厚生労働大臣は、当該政令を定めようとするとき及び当該費用の一部を国庫が負担しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聞かなければならないものとすること。

 第三に、厚生労働大臣は、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための令和四年度における失業等給付等の支給に要する費用の一部を国庫が負担しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聞かなければならないものとすること。

 第四に、政府は、子育て支援における国の責任を踏まえ、速やかに、子を養育するための休業に係る給付の在り方について、費用の全額を国庫が負担する新たな制度に移行すること及び業務の委託を受けて役務を提供する個人事業主等の雇用によらない働き方をする者を給付の対象とすることについて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

橋本委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十二分散会


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