衆議院

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第5号 令和5年3月29日(水曜日)

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令和五年三月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      五十嵐 清君    石井  拓君

      石橋林太郎君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    工藤 彰三君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    西野 太亮君

      橋本  岳君    深澤 陽一君

      古川 直季君    穂坂  泰君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      保岡 宏武君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    吉田とも代君

      古屋 範子君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         村山  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 中村 博治君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           五十嵐徹人君

   参考人

   (独立行政法人国立病院機構理事長)        楠岡 英雄君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     西野 太亮君

  小泉進次郎君     保岡 宏武君

  塩崎 彰久君     深澤 陽一君

  橋本  岳君     石橋林太郎君

  三谷 英弘君     穂坂  泰君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     五十嵐 清君

  西野 太亮君     川崎ひでと君

  深澤 陽一君     石井  拓君

  穂坂  泰君     古川 直季君

  保岡 宏武君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     橋本  岳君

  石井  拓君     塩崎 彰久君

  工藤 彰三君     小泉進次郎君

  古川 直季君     三谷 英弘君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(逢坂誠二君紹介)(第四九六号)

 同(神津たけし君紹介)(第四九七号)

 同(新垣邦男君紹介)(第五二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第五四一号)

 同(緑川貴士君紹介)(第五四二号)

 同(寺田学君紹介)(第六二〇号)

 福祉職員の大幅な賃金の引上げと増員に関する請願(青山大人君紹介)(第四九八号)

 同(神津たけし君紹介)(第四九九号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第五二八号)

 同(新垣邦男君紹介)(第五二九号)

 同(森田俊和君紹介)(第五三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第五四三号)

 同(末次精一君紹介)(第五九七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第六二一号)

 全国一律最低賃金制度への法改正に関する請願(逢坂誠二君紹介)(第五〇〇号)

 同(神津たけし君紹介)(第五〇一号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第五三一号)

 同(新垣邦男君紹介)(第五三二号)

 同(岡本あき子君紹介)(第五三三号)

 同(野間健君紹介)(第五三四号)

 同(山田勝彦君紹介)(第五三五号)

 同(階猛君紹介)(第五四四号)

 同(末松義規君紹介)(第五四五号)

 同(徳永久志君紹介)(第五六三号)

 同(藤岡隆雄君紹介)(第五七九号)

 同(末次精一君紹介)(第五九八号)

 同(渡辺創君紹介)(第五九九号)

 同(田嶋要君紹介)(第六二二号)

 同(長友慎治君紹介)(第六二三号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(古川元久君紹介)(第五〇二号)

 同(瀬戸隆一君紹介)(第五四六号)

 同(伊藤渉君紹介)(第五六四号)

 同(今枝宗一郎君紹介)(第五六五号)

 同(神田憲次君紹介)(第五六六号)

 同(金子恭之君紹介)(第六〇〇号)

 同(佐藤茂樹君紹介)(第六〇一号)

 同(高鳥修一君紹介)(第六〇二号)

 同(根本幸典君紹介)(第六〇三号)

 同(福田昭夫君紹介)(第六〇四号)

 同(堀内詔子君紹介)(第六〇五号)

 同(御法川信英君紹介)(第六〇六号)

 同(渡辺創君紹介)(第六〇七号)

 同(赤澤亮正君紹介)(第六二四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六二五号)

 同(東国幹君紹介)(第六二六号)

 同(井林辰憲君紹介)(第六二七号)

 同(石川昭政君紹介)(第六二八号)

 同(石破茂君紹介)(第六二九号)

 同(泉田裕彦君紹介)(第六三〇号)

 同(上杉謙太郎君紹介)(第六三一号)

 同(小熊慎司君紹介)(第六三二号)

 同(小里泰弘君紹介)(第六三三号)

 同(小渕優子君紹介)(第六三四号)

 同(大口善徳君紹介)(第六三五号)

 同(加藤鮎子君紹介)(第六三六号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第六三七号)

 同(菅家一郎君紹介)(第六三八号)

 同(吉良州司君紹介)(第六三九号)

 同(城内実君紹介)(第六四〇号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第六四一号)

 同(日下正喜君紹介)(第六四二号)

 同(小林史明君紹介)(第六四三号)

 同(斎藤洋明君紹介)(第六四四号)

 同(櫻井周君紹介)(第六四五号)

 同(塩崎彰久君紹介)(第六四六号)

 同(田嶋要君紹介)(第六四七号)

 同(田野瀬太道君紹介)(第六四八号)

 同(橘慶一郎君紹介)(第六四九号)

 同(寺田学君紹介)(第六五〇号)

 同(冨樫博之君紹介)(第六五一号)

 同(土井亨君紹介)(第六五二号)

 同(中野洋昌君紹介)(第六五三号)

 同(長友慎治君紹介)(第六五四号)

 同(西岡秀子君紹介)(第六五五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第六五六号)

 同(福重隆浩君紹介)(第六五七号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第六五八号)

 同(森山裕君紹介)(第六五九号)

 同(山本有二君紹介)(第六六〇号)

 同(吉野正芳君紹介)(第六六一号)

 同(若林健太君紹介)(第六六二号)

 高齢者の命・健康・人権を脅かす七十五歳以上医療費窓口負担二割化中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第五七八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五九六号)

 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(松原仁君紹介)(第五九四号)

 介護保険制度の改善を求めることに関する請願(田村貴昭君紹介)(第五九五号)

 高過ぎる国民健康保険料の引下げへ抜本的改善を求めることに関する請願(田村貴昭君紹介)(第六一七号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第六一八号)

 安全・安心の医療・介護・福祉を実現し、国民の命と健康を守ることに関する請願(笠井亮君紹介)(第六一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人国立病院機構理事長楠岡英雄君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として厚生労働省医政局長榎本健太郎君、健康局長佐原康之君、雇用環境・均等局長村山誠君、子ども家庭局長藤原朋子君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長大西証史君、保険局長伊原和人君、政策統括官中村博治君、国土交通省大臣官房審議官五十嵐徹人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田畑裕明君。

田畑委員 おはようございます。自民党の田畑裕明でございます。

 質問の機会、誠にありがとうございます。

 まず、昨日、一般会計予算案が成立をいたしたところでございます。加藤大臣を先頭に、厚労省の各皆さんにおかれましては、予算の迅速な執行をお願いをする次第でございます。特に、国民の命、雇用ですとか暮らしを守る厚労行政、大変重要な部分でございます。万全の体制を整えていただいて新しい資本主義を実現をしていただき、また、あしたにつながる、国民の皆さん方が明るい気持ちを持って生活をできる、そんな基盤づくりのためにもしっかり頑張っていただきたいというふうに思います。私も与党の一員として、当然、共に責任を果たしてまいりたいというふうに思います。

 また、もう一点でありますが、四月一日からこども家庭庁が発足ということであります。ここまで、特に厚労省においては、子ども家庭局の皆さん方ですとか設置準備室と併任の人事の中で準備を進めてこられたというふうに承知をしております。四月一日からこども家庭庁に勤務される方々は指示命令系統が変わるわけでございますが、共に国民のために奉仕をしていただき、こどもまんなか社会のために頑張っていただきたいというふうに思います。そのことにエールを送らせていただいて、法案の質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 今回、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案でございます。大変ボリュームもあり、これは慎重審議の上にしっかり様々答弁をお願いをしたいというふうに思いますが、まず一番最初に伊佐副大臣にちょっとお聞きさせていただきたいと思います。

 今回の法律案は十一本の法律が取りまとめられているということになるわけでございますが、どのような意図で十一本の法律をまとめて改正をされるのか、まずお聞きをさせていただきたいと思います。

伊佐副大臣 本法案は、人口動態の変化、また今後の医療、介護のニーズの状況、こういうものを踏まえまして、全ての世代が安心して生活することができる全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するために、まず医療保険財政、ファイナンスの部分と、そして、それによっての医療・介護サービス提供体制、ここを総合的に改正することとさせていただいております。

 具体的に、まずファイナンスの部分ですが、出産育児一時金に係る費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みの導入というものでありますとか、あるいは後期高齢者医療制度における高齢者負担率の見直しなどを行う。そしてまた、提供体制の方では、医療保険各法、医療法、また介護保険法を一体的に改正することによりまして、かかりつけ医機能が発揮される制度整備と、そして医療、介護の各種計画を連携させるという点でありますとか、医療・介護情報を共有する基盤の一体的整備を図るということとしております。

 こうした改革によりまして給付と負担のバランスを確保して、そして全ての世代が能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う仕組みを構築するということとともに、地域において質の高い医療及び介護サービスを効率的また効果的に提供してまいりたいというふうに思っております。

田畑委員 全世代対応型、全世代型の社会保障制度の構築の議論というのは、ここ近年、数年来、安倍政権からずっと行ってきており、直近でも、令和三年の六月にも同じく健康保険法等を含めた社会保障制度構築のための法改正も成立しているわけでありますね。累次にわたって総合的に、一体的にやはり議論をしながら、そして、法改正も含めて全体として、医療提供体制もそうでありますし、情報の提供もそうであります、これをしっかり推し進めるために、法律の数といえば非常に多いわけでありますが、これは非常に必要だということでの今の答弁だというふうに理解をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、まず、出産育児一時金も含めて、各項目について質問をさせていただきたいと思います。

 出産育児一時金の見直しは、支給額を五十万円に引き上げるということであり、支給費用の一部を、現役世代だけではなく後期高齢者医療制度からも支援をする仕組みということであります。

 出産一時金は、健保法、国保法に基づく保険給付ということになります。出産に要する経済的負担を軽減するため一定の金額を支給をするという考え方の下にこれまで推移をしてきているというふうに承知をしてございます。

 そこでまず加藤大臣にお聞きをしたいと思いますが、今年度、令和四年四月から、人工授精等の一般不妊治療及び体外受精、顕微授精等の生殖補助医療につきまして保険適用ということがスタートした、見直しがされて保険適用されたところであります。年齢、回数の要件ですとか、保険診療治療費の三割という自己負担も入った形での保険適用でございます。現在、出産育児一時金についてもいろいろな検討の議論がなされているかの報道等も私は目にしているところでございますが、大臣にお聞きしたいのは、出産についての保険適用につきましてはどのようなお考えでございますでしょうか。また、仮に保険適用とした場合に、妊婦さんにはどんなメリットですとかデメリットということが生じるのでありましょうか。お聞きをしたいと思います。

加藤国務大臣 今、田畑委員からお話があった不妊治療は、治療と疾病の関係が明らかで、治療の有効性、安全性が確立しているものについて、これは従来から保険適用の対象となっておりました。他方で、原因が不明な不妊症に対して行われる体外受精や顕微授精等については保険適用の対象としていなかったところでありますが、関係審議会における議論、関係学会が策定した診療ガイドラインを踏まえ、疾病に対する治療として、昨年四月から保険適用を行ったところであります。

 他方、出産は、出産場所や提供されるサービス、これが様々でありますし、また、妊婦の方がそれらを自由に選んでいるという実態がある中で、出産育児一時金という形で現金支給を行っているということで、不妊治療とはそうした事情が異なる面がまずあるわけであります。

 この正常分娩を保険適用するとした場合、公定価格として全国一律の価格の設定ということになるわけでありますが、他方、先ほど申し上げたように、出産においては出産場所や提供されているサービスが様々で、妊婦の方がその下で自由に選択をしているという実態の中で、全国一律の診療報酬で評価することがどうなのか、また、現在、医療機関によっては出産費用の自己負担がかからないケースもある中で、新たに定率の自己負担が生ずることをどう整理をするかなど、いろいろと課題があると認識をしております。

 今回、本年四月から出産育児一時金を大幅に増額しましたが、あわせて、出産費用の見える化を抜本的に強化し、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関を選択できる環境を整備することとしておりますし、また、この取組の効果を検証し、あわせて、出産費用の上昇、地域差の状況についてより詳細な費用分析を行う。これらを通じて、まずは安心して妊娠、出産できる環境整備をしっかりと進めていきたいと考えております。

田畑委員 答弁ありがとうございます。

 おっしゃっていただいた課題については非常に共感、共有をするものであります。正常の妊娠は当然、分娩というのは疾病ではないわけであります。医療保険で取り扱うことについては、そもそも医療保険制度そのものの考え方も相当踏み込んだ議論が必要ではないかなというふうには思います。この法案についても、いろいろ準備は昨年から行ってきたわけでありまして、いわゆるいろいろな意味での見える化等も含めたものが、この法案も含めた考え方として盛り込まれているわけでありますので、いろいろなお考えはあるというふうには思いますが、保険適用についても私は丁寧な議論が当然必要だというふうに思いますし、今回は五十万円への引上げということでありますから、ここについてしっかり、国民に混乱がないように、丁寧な答弁を含めた、成立をまず行うということに尽力すべきだということを表明をしたいというふうに思います。

 それで、見える化の実施について一問聞きたいと思いますが、地域の産科医療提供体制に与える影響、これは否めないのではないかなというふうに懸念もしているところであります。どのように対応していくのか、まずそのお考え方を保険局長にお聞きをしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関等を選択できる環境を整備するため、御指摘の出産費用の見える化、これを強化していきたいと考えております。

 来年四月を目途に、医療機関等の特色や出産費用等について、厚生労働省が新たに設けるホームページで医療機関ごとに公表したいと考えています。

 この公表項目などにつきましては、今後、医療関係者を含めた有識者により検討を進めていきたいと考えておりますが、検討に当たりましては、現場に過重な負担が生じないよう、分娩数が少ない医療機関等の公表は任意とするなど、産科医療の現場の実情に合ったものにしたいと考えております。

 こうした中で、関係団体とも連携しながら見える化に取り組んでいきたい、このように考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 見える化に伴って、かえって、分娩対応の産科医療機関が地方では集約、いい意味で集約になる部分と、集約するということは、少し離れた住民の方にとってはアクセスが当然悪くなるということにもつながるわけでありますので、身近な場所での出産とかという考え方とともに、今御答弁もありました、産科医療の皆さん方ともしっかり協議をするということでありますので、大変丁寧に行っていただきたいということを要求をしたいというふうに思います。

 あわせて、今回、出産一時金の引上げに伴い、産科医療補償制度についても一点確認をしたいというふうに思いますが、補償対象基準の見直しですとか保険料の変更というのはあるんでしょうか、いかがでしょうか。よろしくお願いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員お尋ねの産科医療補償制度でございますが、これは、日本医療機能評価機構によって、民間の制度として運営されているものでございます。現段階でその補償対象基準や保険料に変更はございませんで、今回の出産育児一時金の引上げはこれらに影響を及ぼすものではないというふうに承知しているところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 変更がないということですね。かしこまりました。

 続いて、高齢者負担率の見直しの項目について一問質問したいというふうに思います。

 今回の高齢者負担率の見直し、増加する医療費を世代間で公平に支え合うための見直しであるというふうに理解をしています。ただし、昨年十月より、後期高齢者に係る窓口二割負担というものが導入をされたところであり、高齢者の具体的な負担を含めた全体像ですとか今後の負担の将来像をしっかり見える化をし、高齢者の方また国民の皆さんに安心と納得が得られる努力を政府には求めたいというふうに思います。

 その上で、被用者保険者への支援について質問したいと思います。

 過去、後期高齢者支援金ですとか介護納付金は、段階的な報酬割から全面総報酬まで見直しが行われ、健保組合の拠出金負担は非常に大きな影響を受け、厳しい財政状況となった経緯があったこと等が指摘をされているところであります。

 そうしたことを踏まえて、今回の制度改正で導入される前期高齢者納付金の報酬水準による調整については、その導入範囲は三分の一とされているところでございますが、三分の一とした趣旨についてお聞かせをいただきたいと思います。また、今後、この範囲についてどのように考えているのか、その考えもお聞かせをいただきたいと思います。保険局長、よろしくお願いします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御質問ございました前期高齢者の調整の件でございますけれども、ここに、今回、報酬調整の仕組みを導入しようと考えております。

 その理由でございますけれども、被用者保険者間で二倍を超える保険料率の格差が現在生じております。これを、世代間だけではなく、世代内でも負担能力に応じた仕組みを強化する、こういう観点から実施したいと考えております。

 この報酬調整の導入によりまして負担能力に応じた仕組みが強化されることによりまして、被用者保険者間の保険料負担の格差は全体として縮小することになります。一方、報酬水準が相対的に高い健保組合については、報酬水準に応じた追加の負担をお願いするということになります。

 この改正につきまして、社会保障審議会医療保険部会でも議論してまいりました。その中では、保険者機能への配慮や、保険者、労使の理解の必要性が指摘されておりまして、これらの御意見も踏まえまして、報酬調整の導入範囲については三分の一ということにしたところでございます。

 また、健康保険組合に対しましては、後期高齢者医療制度における高齢者負担率の見直しも踏まえつつ、さらに、企業の賃上げ努力を促進する形で、現在行われている支援を見直し、さらに、国費による支援を強化し、四百三十億円追加して行うことといたしております。

 御質問のございました今後の前期調整の在り方につきましては、今回の報酬調整の導入による格差の是正の効果や各保険者に与える影響を見極める必要があると考えております。

田畑委員 答弁ありがとうございます。

 現役世代の負担を増加させる面もありますので、やはり慎重に対応すべきであり、三分の一というのを一つのメルクマールとしていただいて、これ以上拡大すべきではないというふうにも考えるものであります。今回、被用者保険者に関わる調整の仕組みは幾つも充実をされており、今答弁ありましたとおり、国費の四百三十億円も含めて一定の評価の声は寄せられているというふうに思います。国費による更なる支援により、勤労者や国民の健康、生活を守る姿勢を一層打ち出し、とりわけ健保組合の安定運営にもしっかり努めていただきたいということを申し伝えをさせていただきたいと思います。

 それでは、続いて、かかりつけ医機能が発揮される制度整備についてお聞きをしたいというふうに思います。

 まず伊佐副大臣にお聞きしたいというふうに思いますが、そもそも、このかかりつけ医機能の制度化によって地域の医療提供体制は何が変わるのでしょうか。お願いいたします。

伊佐副大臣 かかりつけ医機能については、医療機関の機能としまして、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能というふうに規定をさせていただいております。

 これは、今後、複数の慢性疾患、あるいは医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者が更に増加していくという点、また、生産年齢人口が急減していく、こういうことが見込まれる中で、身近な地域における医療機関の役割が重要になってまいります。現在、省令で、医療法の施行規則で規定されております内容をベースに、格上げをいたしまして、今回、新たに法律を規定するというものでございます。

 その上で、国民、患者の皆様がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるように情報提供をまず強化するという点、そして、医療機関に対しては、その機能の報告を求めまして、都道府県がその体制を有することを確認し、公表する、これらを踏まえて、都道府県と地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討して、公表する、このような制度を設けることとさせていただいております。

田畑委員 ありがとうございます。

 改めて、かかりつけ医機能についての定義、位置づけについても御答弁をいただいたところであります。適切に国民の皆さんが医療機関を含めて選択をできたりですとか、都道府県の関与もしっかり行って、面としてやはりかかりつけ医機能をしっかり整える、これが私は大変大事だというふうに思います。

 幾つか、それでは、医政局長にちょっと確認を込めて何問か連続で質問したいと思いますので、端的にお答えをいただきたいと思います。

 まず、ここの部分につきまして、自民党の厚労部会の中におきまして、都道府県が行う、かかりつけ医機能について報告の確認について、行政行為ではなく事実行為であると厚労省から回答があったところであります。私も記憶をしているところでありますが、改めて、この委員会の場で確認をしたいというふうに思いますが、この解釈については間違いありませんか。お願いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の確認につきましては、医療機関からの報告内容を事務的に確認するものでございますが、地域における関係者の協議を効果的に行うためには、客観性が担保された形で機能の現状を的確に把握することが重要であることに鑑みまして、法律上、規定することとしているところでございます。

 この確認は、医療機関からの報告内容を事務的に確認するものでありまして、また、その法律上の効果としても、医療機関に対して直接的に権利義務に影響を与えるものではないことから、行政行為ではなく事実行為であるというふうに考えているところでございます。

田畑委員 これは、受入れの体制を含めて確認をするというような事実行為だというふうにも理解します。要件を客観的なものとしていただきまして、報告様式についてもそれを反映をしていただきたいなというふうに思います。

 続いてでありますが、患者が自らの意思で整形外科ですとか皮膚科といったような複数の診療科を受診すること、また、消化器内科ですとか呼吸器内科といったように、同じ診療科といえども専門性が異なる医療機関を受診することは至極自然であり、かかりつけ医を一人に限定するのではなく、複数のかかりつけ医を持つことが自然と考えますが、いかがでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ、自らが担うかかりつけ医の内容を強化をし、地域において必要なかかりつけ医機能を確保することで、医療サービスの質の向上につなげるため、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うこととしてございますが、患者の受療行動への介入について否定するものとはしてございません。

 したがって、これまで患者が複数の医療機関から継続的な医療の提供を受けている場合には、日頃から身近にあっていつも受診している医師として、いわゆるかかりつけ医を引き続き複数持っていることも想定されるところでございますが、本法案はそのような状況に影響を及ぼすものではないというふうに考えているところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 かかりつけ医を一人に限定するわけではないという答弁であったというふうに理解します。

 それはすなわち、患者さんのフリーアクセスを制限をし、かかりつけ医を一人だけ登録する登録制ではないということでよろしいでしょうか。やはり、国民ですとか患者は、かかりつけ医を固定するような制度は求めていないのではないかというふうに思いますので、改めて確認させてください。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、国民、患者から見て、一人一人が受ける医療サービスの質の向上につなげるものとする必要があるというふうに考えておりまして、必要なときに必要な医療を迅速に受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が、地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すということが重要であると考えております。

 このため、本法案では、国民、患者がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるように情報提供を強化するとともに、医療機関に対して、その機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表して、それらを踏まえて、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討、公表するということとしてございます。

 このように、本法案は、患者の受療行動への介入について否定するものではございませんですし、また、患者の医療へのアクセス制限や、かかりつけ医を一人だけ登録するいわゆる登録制を導入するものではないというふうに御理解いただければと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 今、何度か機能報告の答弁もありましたが、かかりつけ医機能の報告は、あくまでも医療機関の機能の報告であって、個々の医師について、かかりつけ医かどうかを報告するものではないという認識でありますが、それで正しいでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、今委員御指摘のかかりつけ医機能報告につきまして、これは、医療機関に対して、その医療機関が有するかかりつけ医機能の報告を求め、都道府県は、その体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえて、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討、公表するというふうにしているところでございます。

 今委員御指摘いただきましたように、個々の医師について、かかりつけ医かどうか、これを報告するというものではございません。

田畑委員 この分野でもう一問、最後でありますが、一つの医療機関が全てのかかりつけ医機能を持たなければならないのか、そうではないとは思いますが、そのことについて答弁をお願いしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、多様なかかりつけ医機能を一つの医療機関が全て一律に担うということを求めているのではございませんで、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情や、あるいはその機能、専門性に応じて、他の医療機関とも連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すということが重要であるというふうに考えております。

 このため、本法案におきましても、かかりつけ医機能報告を行う際には、他の病院又は診療所と相互に連携してかかりつけ医機能を確保するといったような場合には、その名称及び連携の内容を報告するよう求めるということにしているところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 先ほど伊佐副大臣から、かかりつけ医機能の定義についても御答弁があったわけであり、今、るる、何点か、榎本局長と確認を込めたやり取りをさせていただきました。

 このかかりつけ医機能をどう発揮できるか、それはそれぞれこれから構築をしていくということに相なるわけでありますが、コロナ禍の中でも、日本の医療についての国民との関係、また、もちろん、医療と国民の受診との関係というか、信頼感をつくりながらお一人お一人の健康をしっかり守っていく、超高齢化社会の中で様々な、年齢とともに疾病、疾患が複雑化をしていくということになるわけでありますので、地方におけるかかりつけ医機能、また、地域全体のこうした医療提供の水準の強化につながる改善である見直しであっていただきたいということを期待を込めて質問させていただいたところであります。よろしくお願いします。

 それでは、介護情報基盤整備の方について二問質問したいと思います。

 生産年齢人口の急激な減少など、医療や介護の提供体制を取り巻く環境が変化をする中で、必要な情報を収集し、政策の企画立案に生かしていくことが大変重要であります。

 今回、医療法人、介護事業者のデータベースを整理するということでありますが、具体的にどのような情報を整理をし、どのように活用していくのか、引き続き医政局長に御答弁を求めます。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 国民医療費、介護費用の増加でありますとか、あるいは生産年齢人口の急激な減少など、医療・介護政策を取り巻く環境の変化を踏まえまして、本法案におきましては、医療法人が開設する病院及び診療所ごとに、また介護サービス事業者が運営する事業所、施設ごとに、毎年度の決算終了後に収益や費用の内容など経営情報の報告を求めるほか、任意で職種別の給与の情報についても報告を求めることといたしまして、これらを蓄積したデータベースを構築するということにしているところでございます。

 この蓄積したデータを分析等いたしますことによって、一つは、効率的かつ持続可能な医療提供体制や介護サービス提供体制の構築に向けた政策の検討に活用する、また、新興感染症の発生などに際しまして、医療機関や介護サービス事業者、施設への的確な支援策の検討に活用する、また、分析結果を分かりやすく丁寧に情報提供することによって国民の皆様に医療、介護の置かれている現状、実態の御理解の促進を図るといったような活用を考えているところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 もちろん、データを収集することによって政策立案にも当然生かせるわけでありますが、事業者等の協力も仰ぎながら、そして、むらがないようにというか、凸凹がない形でのしっかりとした収集と、また、このために新たな何か仕組みとかシステムを構築をするというよりも、既存のものをなるべく利用しながらデータをしっかり収集する、そんな取組をしっかりお願いをしたいというふうに思います。

 地域包括ケアシステムの関連でありますが、二〇四〇年頃に向けて高齢者人口が急激にまだまだ増加をしていき、また、若者世代が減っていくわけであります。このような状況下でも高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、医療、介護、福祉、その他のサービスが包括的に確保された地域包括ケアシステムを更に深化させていく必要があります。

 今回の改正法案において、今後の高齢社会の姿をどのように認識をし、それに向けてどのように介護サービスの基盤整備や人材の確保などを進めていくのか、老健局長にお聞きをしたいと思います。

大西政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、二〇四〇年頃に向けまして高齢化の一層の進展、また生産年齢人口の急減が見込まれているところでございます。こうした状況の変化の中で、高齢者となっても安心して暮らすことができる社会を構築する必要があると考えておりまして、介護サービスの量と質を確保しつつ、制度の持続可能性を維持していくことが重要な課題であると認識しております。

 このため、本法案におきましては、これまで各地域において構築してまいりました地域包括ケアシステムを深化、推進するために、要介護者等の医療・介護情報を医療、介護の間で共有するための情報基盤を整備することによりまして、より質の高い介護サービスの提供を可能とすること、医療ニーズの高い中重度の要介護者の在宅生活を支えるサービスでございます看護小規模多機能型居宅介護、いわゆる看多機の更なる普及を行うこと、認知症高齢者の御家族を含めました家族介護者の支援等の充実のために地域包括支援センターの業務負担の軽減を図ること、こうしたことを盛り込ませていただいております。

 これによりまして、地域の特性に応じまして多様化する介護ニーズへのより柔軟な対応が可能となると考えております。

 また、あわせて、介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進が不可欠でございます。

 生産性の向上につきまして都道府県が助言、援助を行う努力義務規定を新設いたしまして、都道府県を中心とした取組を推進すること、また、介護サービス事業所の経営情報を把握、分析も行いながら、事業所等に対して財務状況の報告を義務づけることなどにつきましても本法案に盛り込んでいるところでございます。

 これらを通じまして、介護現場の取組を支援し、介護現場で働く方々が、加藤大臣も常々言われておりますが、自信と誇りを持って働ける環境づくりを進めてまいりたいと考えております。

田畑委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 本日は、健康保険法等改正案について質問してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず最初に、大臣に、全世代型社会保障の構築についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今、我が国は、少子高齢化、人口減少が急速に進んでおりまして、家族のありよう、また地域のありようも大きく変わっております。単身世帯が増えていく、地域のつながりが薄れていく、また、過疎化が地方においても進んでくる。そういう中で、将来にわたって持続可能で、また、子供から高齢者まで安心できる全世代型社会保障制度への道筋を示していかなければならないと思っております。

 中でも、少子化対策は最優先課題だと思っております。仕事と家庭の両立支援、教育負担の軽減、子供の視点に立った政策の充実、男女間の不平等の解消、性別役割の分担意識の是正、また、何といっても若者の経済的基盤の安定化、こういうことが重要だと思っております。

 我が党は、子供の幸せを最優先する社会を目指しまして、結党以来、教科書の無償配付、児童手当の創設等、政策を実現してまいりました。二〇〇六年には、坂口元厚労大臣が本部長となり、私が事務局長で、少子社会トータルプランを策定いたしました。一年半かけまして、子供の幸せを最優先する社会、チャイルドファースト社会を目指して策定をいたしました。仕事と家庭の両立をして生活を犠牲にしない働き方改革、また、切れ目のない総合的な子育て支援、この二つを柱として少子社会トータルプランを作りました。そして、こうした考え方の下で、昨年十一月に子育て応援トータルプランを策定をいたしました。そして、昨日、この子育て応援トータルプラン実現のための申入れを総理に行ったところでございます。

 今回提出の法案は、給付と負担のバランス、現役世代の負担上昇の抑制を図りながら、全ての世代が安心と信頼で支え合う持続可能な社会保障制度を構築するための改正となっていると思います。国民の納得が得られるよう説明を尽くす必要があります。全世代型社会保障構築への意義、特に、少子高齢化、人口減少社会が進む日本が目指すべき全体像について、大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今委員から御指摘のように、まさにこれから先行きを見て、高齢者人口が更に増加をする。ただ、他方で、更に問題なのは、いわゆる現役世代、生産年齢人口と言われる世代が、これから大きく減少していくわけであります。

 そうした中で、この経済社会を維持していく、そして社会保障制度を維持していくという意味において、やはり一つは、今委員御指摘のように、やや中長期的なということになりますが、少子化の流れ、これをしっかり止めて変えていくということが必要で、そのための子供、子育て支援を強化していかなきゃならない。まさに御党からも提言をいただき、政府においても、今、まずはたたき台の議論をさせていただいているところでございます。

 それと併せて、やはり、これから先行きの社会保障を考えたときに、一つは、疾病予防、介護予防等による健康寿命の延伸ということで、高齢者の方がいつまでも健やかでいていただくということが一つ。そして、そうした皆さん方が更に就労していただく、あるいは社会の中で様々な活躍をしていただける環境をつくっていく。そして、医療・福祉サービスの改革による生産性の向上を図るということを申し上げさせていただきましたし、更に今、被用者保険を拡大をさせていただいております。こうした中で、働き方に中立的な制度をつくり、さらには、働く方にとってよりよい労働市場改革を進めていく。こういったことを一体となって進めていく必要があると思います。

 同時に、この社会保障を持続させるためには、財政的な面にも配慮が必要であります。負担能力に応じて、全ての世代で公平に皆が支え合う仕組みを強化していくことが必要だというふうに考えております。さらに、個々の地域の医療・介護サービスの提供の在り方、今はマクロ的なことを申し上げましたが、地域においてそれぞれ事情が異なるわけでありますけれども、そうした地域の事情、あるいは、今回の新型コロナで顕在化した様々な課題、これらも踏まえて、より質の高い医療・介護サービスが効率的、効果的に提供できる体制を構築していく。

 そのためにも、機能分化、また、他方で連携、こういったことをそれぞれの地域の皆さんの視線に立って進めていくことが必要だと考えております。今回の提出した法案についても、こうした観点を踏まえて、必要な取組を盛り込ませていただいたところでございます。

古屋(範)委員 総括的なお答え、ありがとうございました。

 税と社会保障一体改革を思い出すんですが、年金、医療、介護という社会保障の中で、あの中で、子育て支援が最優先という体制ができたと思います。あのとき、自民、公明は野党だったんですが、加藤大臣とも制度設計の協議をさせていただいて、不思議な時代で、自公で協議をして、それがある意味、そのように決まっていくという時代ではあったんですが。

 我が党も今、二〇四〇年ビジョンを作っております。二〇四〇年、高齢者が安心をし、また、若い世代も納得していただけるような社会保障の絵姿を示していかなければいけないということで、今、二〇四〇年ビジョンを考えているところでございます。しっかり、全世代型社会保障構築に向けて、これからも取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、出産育児一時金についてお伺いをしてまいります。

 若い世代の経済的不安解決の一助となる出産育児一時金、連立前の支給金というものが三十万円でした。公明党からも一貫して拡充を訴えてまいりまして、二〇〇六年十月に三十五万、二〇〇九年一月に三十八万、同十月に四十二万円と、段階的に引き上げられてまいりました。病院窓口では支給額を超えた費用だけを払えば済む直接支払い制度というものも実現をしてまいりました。

 さらに、二〇二〇年、私が委員長をしております公明党の女性委員会で、当時の菅総理に、出産育児一時金の五十万円への引上げということを要望させていただきました。この四月からこれが実現するということは、大きな意義があると思っております。

 この出産育児一時金の増額については、子育てを社会全体で支援するという観点から、新たに、後期高齢者医療制度が費用を一部負担する仕組みが導入されております。特に低所得者層や賦課限度額が引き上がる所得層に急激な負担増が課されることのないよう、激変緩和等の措置が行われることになっております。その内容についてお伺いします。

 また、新たな分かち合いの考え方への共感を得ることが重要だと思っております。今回の見直しの趣旨について、影響を受ける後期高齢者、現役世代に対して丁寧な説明をしていく必要があると思います。これについて厚労省のお考えを伺います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 今般、子育てを全世代で支援する観点から、出産育児一時金を大幅に引き上げまして、あわせまして、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を御支援いただく、こういう仕組みを導入したいと考えております。

 この制度導入に当たりまして、令和六年度から高齢者の方々に新たな御負担をお願いするということになるわけですけれども、ここにつきましては、与党の御提言もいただきまして、負担の配慮ということをすることとしております。

 具体的に申し上げますと、高齢者全員に一律の負担をお願いするのではなく、低所得の方々の負担増が生じないよう、負担能力に応じた負担とします。それから、出産育児一時金に対する後期高齢者からの支援対象額を二分の一にするなど、激変緩和措置を講ずることとしております。

 こうした措置を講じることによりまして、均等割保険料のみが賦課される約六割の低所得者の方には制度改正に伴う負担の増加が生じないようにする、さらに、その上の所得の約一二%の方々につきましても、令和六年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないようにする、こういう措置を講じることとしております。

 こうした制度改正の趣旨や内容につきましては、激変緩和措置を含めまして、被保険者お一人お一人にお知らせをお送りするなど、丁寧な周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 激変緩和措置についてお伺いをいたしました。

 次に、出産費用の見える化についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今回、五十万円に出産育児一時金は引き上がるわけなんですが、御存じのように、出産は原則自由診療のために、この一時金を増やしても、結局は医療機関で値上げをしていけば意味がない、出産育児一時金の引上げは出産費用の増加につながる、また、今回の発表を受けて必要以上に値上げされる動きがあるというような指摘もあるところです。

 こうした指摘に対しまして、厚生労働省は、二〇二四年四月をめどに出産費用の見える化を実施するとしております。これによって、妊婦の方々が、各医療機関等における分娩費用やサービス内容等、情報を入手しやすくなって、医療機関等を適切に選択できるようになることが期待をされております。ただし、出産ができる医療機関が選択できるほどない、自分の地域にそういう医療機関さえない、隣の市に行かなければ出産できないというようなところも実はありまして、なかなか、この選択の可能性というのが今は狭められている現状もございます。

 この出産育児一時金、出産費用の見える化の具体的な内容についてお伺いしたいと思います。また、見える化で適切な費用の在り方を示すことができるのか、見える化の効果をお伺いします。また、一刻も早く妊婦が適切に医療機関を選択できる環境整備のため、出産費用の見える化の実施を、是非、二〇二四年四月から前倒しをしていただけないか、この点についてお伺いします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 出産育児一時金の大幅な増額と併せまして、出産費用の見える化、これを抜本的に強化していきたいと考えております。

 その内容でございますけれども、現在考えておりますのは、医療機関などの機能や出産についての運営体制、それから、分娩費用、室料差額や無痛分娩の取扱いなど、サービスの内容や費用、それの公表方法、これにつきまして医療機関などに報告を求めて、あわせまして、それぞれの医療機関の平均在院日数や出産費用の平均値、こうした情報を公表項目とさせていただきたいと考えています。これらを医療機関から情報をいただきまして、来年四月をめどに、厚生労働省が新たに設ける見える化のためのホームページ、これで公表していきたいと考えています。

 この公表項目の詳細につきましては、今後検討を進めるところとしておりますけれども、この取組により、妊婦の方々が、現在以上に、どの医療機関でお産をするか、こういう選択に資するものと考えております。

 それから、見える化の前倒しについて御質問いただきました。

 まず、来月から出産育児金が引き上げられる、来週ですけれども。今月、関係団体を通じまして、医療機関等に対しまして、来年四月からの本格的な見える化に先立ちまして、まず、御自身のホームページ等において分娩費用やサービスごとの料金を明示するなど、分かりやすい公表に努めていただくよう要請を行いました。

 その上で、来年の四月に向けて作業を進めていくわけですけれども、具体的に申し上げますと、本年夏までに、有識者による検討を行いまして、公表項目の整理、中身を決めていきたいと思います。その後、各医療機関等に協力を得まして、そこの項目に整理された情報について集めていきたい。あわせまして、並行してホームページの立ち上げを行う、こういう作業が必要でございます。そういうことを考えますと、来年の四月が本格稼働である、このように今考えておるところでございます。

 出産費用の見える化に向けまして、これらの取組に全力を尽くしてまいりたい、このように思います。

古屋(範)委員 出産費用につきましては、地域によっても平均額もばらばらですし、出産する側からすると、どこまでが本当に必要最低限度な費用で、どこまでがプラスアルファ、オプション分なのか、なかなか今のところは見えにくいという現状があります。また、私はこの部分は要りませんからと一人だけ断るというわけにもいかない、込み込みで出産費用というのが設定をされているわけです。是非、公表するということが非常に重要だと思いますので、しっかり検討して、この準備をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、かかりつけ医の制度化についてお伺いをしてまいります。

 新型コロナウイルスの感染拡大下で、ふだんかかっていた医療機関に診療を拒否されるという事例が相次ぎ、必要な医療を受けられないという問題が顕在化をしました。また、コロナワクチン接種の際も、自身の状態に心配な方々は、かかりつけ医に相談の上、接種を受けるようにという指導がありまして、自分はかかりつけ医は持っていないという方も多かったと思います。

 本法案では、かかりつけ医について、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療を行う行為と定義をして、初めて法制化をすることになったことは評価できます。身近な診療所がかかりつけ医として初期医療に責任を持って、高度な治療が必要な場合には大病院、専門機関につなぐ、この役割分担ができれば、医療全体の効率化につながることも期待できます。

 今回の改正で、真にかかりつけ医機能が発揮される制度整備となるのか、また、かかりつけ医の役割と責任、制度整備の効果、現状の診療体制との違い、また、かかりつけ医の確保について、伊佐副大臣にお伺いをしたいと思います。

伊佐副大臣 今後、複数の慢性疾患、また医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者が更に増加していく、そしてまた生産年齢人口が急減していくというのが前提条件の中で、治す医療から治し支える医療に転換していこうというものでございます。つまり、治療したら終わりではなくて、地域生活に定着できる取組までを実現していこう、こういう趣旨で、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めていく必要があるというふうに認識をしております。

 その上で、本法案におきましては、国民、患者の皆様がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるように情報提供を強化するとともに、また、医療機関に対してはその機能の報告を求めまして、都道府県がその体制を有することを確認し、また公表する、これらを踏まえて、都道府県と地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討し、公表する、こうした制度を設けることとさせていただいております。

古屋(範)委員 このかかりつけ医につきましては、公的に認める認定制、登録制というものは見送られました。一部では、かかりつけ医は一人にして、登録制が必要だという意見もございます。それぞれの医療機関が幅広い病気や休日に対応するかどうかを都道府県が公表することとしております。今回の制度で報告されるのは医療機関としての機能であって、患者が身近なかかりつけ医を持てるかどうかは医師の自主性に委ねられることになっています。これでは現状追認に近く、実態は変わらないのではないかという意見も一方でございます。

 現在、特に、健康な現役世代にとっては、なかなか、身近な医療機関の医師をかかりつけ医だと考えていても、医師がその患者のかかりつけ医だと認識していない場合もあると思います。

 また、どうしても、職場の近くで、昼休みとか空いている時間に医療機関を受診するという方も多いのではないかと思います。私ども、地元の医療機関にかかりにくいということもあり、職場に近いところでかかるという方が現役世代の場合はどうしても多いと思うんですね。高齢者の場合は、やはり医療機関に行く回数も多いですし、かかりつけ医という感覚が生かされる場合も多いかもしれません。

 日常の医療は診療所、専門医療は大病院、この役割分担がどこまで進むのか、見通しがないという指摘もあるんですね。いざというときのためにかかりつけ医を決めておく登録制が必要、受診先の明確化、薬の重複処方の回避など長所があるとの声もある一方で、患者が受診先を自由に選ぶフリーアクセスを阻害するとの懸念もございます。

 ふだん、ほぼ受診しない現役世代にとっては、かかりつけ医は大変重要だというふうに思っております。今回の改正で、健康な現役世代がかかりつけ医を選んで持つことができるようになるのか、今回の制度整備はかかりつけ医制度整備の第一歩なのか、今後、更に必要な制度整備に向けての検討が続けていかれるのか。今後の議論の方向性について、伊佐副大臣にお伺いします。

伊佐副大臣 国民の皆様、患者の皆様が、それぞれのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を選択することができる、そして利用することができるということが重要だというふうに思っております。そのためには、それぞれのかかりつけ医機能に関する情報を分かりやすく提供するということが前提になってまいります。

 これまで、医療法施行規則等の規定に基づきまして、かかりつけ医機能に関する国民、患者の皆様への情報提供は行われておりました。ところが、この情報提供の項目の内容が非常に分かりにくいという点でありますとか、あるいは、診療報酬の届出状況をそのまま公表しているだけということがございました。ツールとして不十分だという指摘もございましたので、本法案では、これらの制度の充実強化を進めるということにしております。

 具体的には、都道府県がそれぞれ独自に構築、運用しております患者等に向けました閲覧システムについて、令和六年度を目指して、全国統一のシステムによる検索サイトを構築するということにしております。

 また、その情報提供項目につきましても、法案が成立した場合には、今後、有識者等の参画を得まして、具体的な内容を検討するということにしております。その際、健康な現役世代を含む全ての国民の皆様にとって、その意味合いが十分に理解され、また分かりやすい内容となるように検討してまいりたいというふうに思います。

 今後のことでございますが、本法案の附則には検討規定が設けられておりまして、五年見直しが設けられております。これに基づきまして、施行の状況等を勘案して、各法律の規定について検討を加えて、その結果に基づいて所要の措置を講じてまいるということになると認識しております。

古屋(範)委員 是非、このかかりつけ医が機能するよう、今後しっかり検討していただきたいと思います。

 最後、前回の一般質疑で積み残しました、小児てんかん薬ブコラム口腔用液についてお伺いをしてまいります。

 小児のてんかん薬ブコラム口腔用液なんですが、三月二十六日はてんかん啓発の日なんですね。御存じのように、てんかんというのは脳の慢性疾患で、てんかん発作を繰り返し起こす病気です。国内では六十万人から百万人のてんかん患者がいると言われております。六十万人から百万人、本当に多いわけなんですけれども、全ての年代で発症の可能性があって、発症率では小児と高齢者が高く、患者の多くは適切な治療によって普通に日常生活を送っています。

 我が党としても、てんかん患者が安心して適切な治療、相談、就労支援を受けられるよう、てんかん診療拠点病院の全国への展開などを進めてまいりました。

 このブコラムにつきましては、二〇一七年に、政府に、ブコラムの製造、販売ができるよう早期承認を私たちは提言いたしました。二〇二〇年九月、承認をされまして、医師の指導に従って緊急時に家庭で使用が可能に。二〇二一年九月には、政府に学校での使用を認めるように要請をいたしまして、二二年七月、学校で発作を起こした場合に教職員らによるブコラムの投与が実現をしてまいりました。

 海外では、てんかん重積症状の病院前救急として、ブコラム口腔用液が救急救命士にも認められております。この即効性を含め、有効性と安全性に関する報告が蓄積されております。さらに、口腔内に入れるという、公共的な場所でも速やかな使用が可能となるので、利便性も高いということです。

 小児救急医療の現場ではけいれん性疾患に遭遇することが多く、それが長引いて重積状態に至ることがあります。てんかん状態となって救急車を呼ぶ、しかし、現状では救急救命士がこれを使用できません。この救急救命士の使用を可能にしていくことによってどれだけ多くの命が救われるかということで、多くの救急救命士は早期治療介入の必要性を感じております。

 使用時の副作用への対応を含めた教育、使用時の責任所在の明確化など、課題をクリアした上で一日も早く救急救命士の使用を可能にしていただきたいと思っております。これについての御見解を伺います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の薬の投与につきましては、これは医行為ということになってまいります。これを新たに救急救命士が医師の指示の下に行うことができる救急救命処置に追加をするということに当たりましては、救急救命処置としての安全性、必要性、難易度、あるいは必要となる教育体制なども含めて丁寧な検討が必要というふうに考えております。

 今後、厚生労働省の検討会等におきまして、医師の指示の下に救急救命士が実施する救急救命処置を議論することとしてございまして、今委員御指摘のブコラム口腔用液の投与につきましても、その他の処置と同様、救急救命処置の追加、除外、見直しに当たってどのように検討していくか議論をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

古屋(範)委員 是非、前向きな検討をお願いしたいと思っております。

 アレルギーでアナフィラキシーショックを起こしたときに打つエピペンという注射なんですが、これも承認をされてからなかなか個人で使えないという時代がありました。それを、家族、本人が打てるようにし、また、学校でも持っていって、そして、いざというときは教員も打つことができる、救急救命士も打つことができる、この過程に本当に長い年月がかかった記憶がございます。

 是非、このブコラム口腔用液につきましても、様々な課題があることは分かります、安全性を確保しなければいけない医行為であるということ、これには重要な検討が必要だというふうに思いますけれども、是非とも前向きな検討をお願いしたいということを申し述べて、少し時間を残しておりますが、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 立憲民主党の小川淳也です。よろしくお願いします。

 大臣、既に先行する与党の質疑の中で、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の改正案、ちょっと随分、名前が中身に先行している、名前倒れである、看板倒れであるという印象を禁じ得ません、率直に申し上げて。

 るるお述べになりましたが、この全世代型社会保障とは何なのか、端的にその本質をちょっと述べていただけませんか。

加藤国務大臣 端的に言えば、これから少子高齢化が更に進む中で、それぞれの負担の能力に応じてそれぞれ負担をしていただく。そして、さらに、そうしたことと同時に、先ほど申し上げましたけれども、それぞれの地域において必要な医療、あるいは介護、こういったものが効率的に提供される、こういった仕組みをつくっていくということ。ちょっと、もっと言えば各論はいろいろありますけれども、そういったことが基本になるというふうに考えています。

小川委員 もうちょっと問題をクリアにする必要があると思うんですが、地域でかかりつけ医が必要だとか地域の医療体制を整備するというのは、どの時代も必要なんですよ。一方、今おっしゃった少子高齢化というのは、まさに今の時代なんです。

 それで、全世代型対応の社会保障を築くということは、本質は、私は、現役世代への給付を拡充するということが一つ。これは、経済情勢も低迷していますし、あるいは賃金も上がらないし、とにかく、自助に現役世代の生活を置いておくことはできない。つまり、現役世代への社会保障、現役世代への給付を拡充する。これが一つなんです、その本質は。人口構成が変わっていますから。

 それから、もう一つ言えば、高齢者といえども一律給付の対象にはならない、あるいは応能負担を求めていく、高齢者といえどもです。ということで、結果として、人口構成が昭和の正三角形から逆三角形に向かうわけですから、賦課方式、世代間扶養が成り立たないことを率直に認めていくということをも意味しているわけです。ここの構造に踏み込んで理解をしないと、議論が散漫になると何だか分からない、全世代型社会保障とは。

 もう一回繰り返しますが、現役世代への給付を拡充し、高齢者といえども応能負担を求めていく、そういう時代がやってきているということを正面から認めていくということを意味しています。

 したがって、ちょっと、余り皮肉を言いたくないんですが、法案は、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するために健康保険法等のごく一部を改正する法律案ぐらいが、ネーミングとしては適切なんじゃないんですかと非常に心もとなく感じています。

 それで、この議論は、加藤大臣、行き着くところ、社会保険方式じゃもう無理だという議論に行き着くんですよ。

 つまり、年収一千万円の人も社会保険だと月額の保険料は約十万円なんです。一億になっても十万円なんです。十億もらっている人も十万円なんです。まさに加藤大臣がお述べになった応能負担を徹底していくということは、社会保険方式から税方式に移行していくということをも意味せざるを得ず、そしてその税方式とは、フローの収入、フローの所得だけじゃなくて、むしろ本丸は、相続税を含めた資産課税に踏み込まざるを得ないということまで射程に置いて視野に置くと、初めてこの問題が、その本質がくっきり見えてくる。そのことを是非、担当大臣としては、私は共有させていただきたいと思っています。

 ちょっと各論でお聞きしますが、既に何度も議論になりました出産一時金の五十万円ですが、いただいた資料によると、幾つか問題点を指摘したいんですが、九四年にこの制度ができたときが三十万円、それから十五年間、〇九年まで三十万円で据え置かれているんです。〇九年から二三年まで十四年間、四十二万円で据え置かれているんです。ただ、いただいた資料を拝見すると、毎年五千から一万円上がっているんですよ、実際の出産費用は。ですから、診療報酬改定は通常二年に一回やっているでしょう。ちゃんと、十年、十五年も放置せず、細かく追跡してフォローすべきだったんじゃないかということが問題点の一つ。

 もう一つは、先ほど議論になりましたが、地域によってはいまだに三十万円台の出産費用と言われており、東京を始めとした都市部では既に六十万円に近づいていると言われている。全国一律五十万円に仮に引き上げたとはいえ、この全国一律の価格設定がどれほど意味を持つのか。

 これは実は、医療の公定価格に波及する問題です。都心の一等地で同じような診察行為を行っても、公定価格ですから、同じ。随分地代の安い過疎地域や離島に行っても、同じ診療行為は同じ値段。この公定価格の矛盾そのものでもある。費用を反映していないという意味でね。私、やむを得ないと思っているんですよ。後期高齢者の医療保険から、押しなべて大体月額百円ぐらい保険料負担が出てくる、後期高齢者の方に。出産費用を負担していただくという意味でね。

 ちょっと問題点を二、三申し上げましたが、ちゃんと十年も十五年も放置せず追跡すべきだったんじゃないかという点、それから、全国一律は必ずしも合理性を欠くんじゃないかという点、ちょっとこの点については答弁を求めたいと思います。

加藤国務大臣 ちょっとその前に、まず、委員が最初におっしゃった、かかりつけ医の云々というんですけれども、確かに、従来から、どんな状況でも、近くで頼れるお医者さんがいる必要性はある。しかし、より一層、これまで、治すという、いわば病院で診療を受けて、治療を受けて、そして戻って元気に働けるという状況から、やはり、高齢者が増えると、治るんだけれども、引き続き支えてもらわなきゃいけない。そして、それを地域で求めていく。それから、もう一つあるのは、さはさりながら、働く人の数が減っていくわけですから、よりそうしたものをどう提供するかという意味においては、まさにかかりつけ医機能が求められる必要性が高まってきている。この認識はやはり共有していただく必要があるんじゃないかなということが一点。

 それから、もう一つは、保険制度が云々とおっしゃいましたが、保険制度はあくまでも共助であります、税は公助でありますから、そこのところを保険でどこまで求めていくのかという議論が別途あると思います。今おっしゃるように、標準報酬で上限が決まっていますから、その辺はどうなのかという議論はあるのかもしれませんが、やはり、共助と公助の違いというところを意識しながら議論していかなきゃいけないというふうに思っております。

 その上で、毎年見るべきだったかという意味においては、ある意味では、先ほど委員がおっしゃった若者への厚くというのは子育て世帯に対する支援策をしっかりやらなきゃいけないということが含まれているんだろうというふうに受け止めさせていただきましたけれども、まさにそういった意味において、少子化への対応、いろいろ図ってまいりました。そうすると、限られた財源の中で何をやっていくのかということでいろいろやってきたわけでありますので、おっしゃるように、それぞれの負担をできるだけ軽減をしていきたいということで、今回、全国的な標準的な費用を見て、五十万円まで思い切って増額をさせていただいたということでございます。

 それから、診療報酬が全国一律かどうかということについてのお話がありました。

 やはり、国民皆保険の下で誰もがどこでも一定の自己負担で適切な医療を受けられるという意味において、一律の点数が設定される、これは被保険者間の公平も期すということでつくられている。ただ、地域においていろいろ事情がありますので、そういったことについては、一部の加算評価において、医療資源の少ない地域において人員配置の要件を緩和する等の工夫は取り入れておりますが、基本はどこでも同じような負担で医療が受けられる、そういった必要性から一律の診療報酬になっているというのが今の状況であります。

小川委員 ちょっと医療制度のことは後で議論しましょう。

 問題点がある、あるいは課題があるということは御理解いただきたい。

 大臣、医療保険の仕組みが、あるいは医療提供体制の仕組みが、ちょっとかねてから申し上げていますが、九〇%、税金と保険料で成り立っているんですね。共助だとおっしゃいましたが、特に後期高齢者医療制度は半分税金です。もたなくなっているんですよ、保険じゃ、社会保障制度が。それで、私、かねてから申し上げています。最大の問題は、医療は特に、介護もそうですが、九〇%、税金と保険料で成り立っています。医療提供体制は自由化されています。市場原理で動いている。医師は開業が自由で、行きたいところに行き、診たいものを診ている、その価格設定は公定価格になっている。極めて制度設計が矛盾をはらんでいるんですね、全体として。財源は九割公費、提供体制は市場原理、しかし、全国一律の公定価格。その貫く理念、概念からいうと、極めてキメラになっているということなんですよ。

 それで、ちょっと一つお尋ねしておきます。今回、後期高齢者医療制度から一定負担をもらって出産一時金を増額するわけですが、片や一方で、同じ政府が、少子化対策のパッケージを議論していて、あさって発表しますよね、そこでは、出産費用を保険適用すると言っている。そうすると、保険適用した場合は、これは、後期高齢者が出産することはないでしょうから、保険適用の世界から、給付も外れるし、当然、負担も外れてくる。片や、近々、後期高齢者の負担で出産一時金を引き上げると言っている。

 この同じ政府内における矛盾、あるいは時期の前後、これをちょっと、どう考えているのか、現時点で。御説明いただきたいと思いますが。

加藤国務大臣 たたき台の中身については今まさに検討しているところでありますから、その中身を、何か今おっしゃるようなことを前提に物を申し上げるのは、今の段階では差し控えさせていただきたいなというふうに思います。

 その上で、出産費用の保険適用については、これまで申し上げていますけれども、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、出産費用の地域差も見られる実態を踏まえると、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかという課題があることは申し上げているところでありますが、今回、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援する仕組みとすることで、子育てを全世代で支援する観点から実施をしようとするものでございますので、そこについては是非御理解をいただきながら、ただ、その負担については、それぞれの高齢者の所得状況等も踏まえながら対応させていただきたいというふうに考えているところでございます。

小川委員 とはいえ、もうあさって発表するんですからね。同じ政府内で、片や、後期高齢者の負担で出産一時金を増額すると言い、片や、出産費用は保険適用するんだと言っているわけですから、同じ政府内で。あさって発表するんですからね。これは矛盾なくちょっと整理してもらわないと、場合によっては、この方針を引っ込めざるを得ない可能性があると思いますよ、時期の前後によっては。

 という矛盾をちょっと指摘した上で、大臣、これもちょっと一緒に共有していただきたいんですが、この法案の中にも、保険者間の財源調整に苦労した跡が見えますよ、苦心している跡が見える。それには賛否両論いろいろな意見がある。しかし、そもそもを言えば、医療保険の世界が、私なりに言えば、九つの領域に細分化されていることの矛盾なんですよね、九つの領域。それは、一つには年齢による横割りなんですよ。七十五歳以上の後期高齢者、六十五歳から七十四歳の前期高齢者、そして六十四歳以下の現役世代、年齢によって三つに分けられている、医療保険制度がですね。そして、働き方による縦割りなんです。大企業と、中小企業と、無職、自営業と。この九つにあえて医療保険制度を分割しなければならない論理、必然性はないんです。ひとえに、歴史的な事情。その保険者間で、当然、一番負担能力があるのは大企業にお勤めの現役世代でしょう。最も負担能力がないのは七十五歳以上の無職の方でしょう。この余りにも異なる事象を、どうやってやりくりするのか、あるいは給付を整えるのかに悶絶しているわけです、九つに分けてしまっているがゆえに。

 この辺はもう極めて限界に来ている。ですから、保険者間の財源調整に悶絶していること自体が、今の制度の矛盾を何より表しているということを、ちょっとこれは答弁は求めませんが、是非事実として共有していただきたい。当然のことですが、当たり前のことですが、今更ですが、改めて。

 その上で、今、出産費用の保険適用化、恐らくこれはやるんでしょう。若干私はこれは順序が前後したと受け止めているんですが、去年の四月から、これはもう既に議論が出ましたが、いわゆる不妊治療、人工妊娠が保険適用化されました。これは長年、病気じゃない、疾病じゃないという扱いになってきた。

 しかし、出産費用も、病気じゃないと言いながら、事実上、三割の自己負担を求めない全額給付を保険財政からやってきたわけですから、医療保険財政全体として見ると、出産という、つまり、個人的疾病ではないにしても、そのまま放置しては社会生活をそのままは送れないわけですから、働けない、あるいは体調に異変を生じ得る、育児の負担がかかる、そういう意味では、私は個人的な疾病を超えた、社会保険の概念の拡張として受け止めているんですね、この不妊治療、人工妊娠の保険適用を。これから出産そのものを保険適用にするとすれば、私は順序が前後したと思いますが、まさに社会保険の概念の拡張の更なる一歩だと受け止めているんです。

 それで、ちょっと派生してお聞きしたいんですが、来月から、来週から東京都が、いわゆる晩婚化などに関連をして、女性の卵子凍結、これに対する公的助成を始めるという一報に接しています。

 そうすると、妊娠、それは自然妊娠も人工妊娠も含む、あるいはそれに晩婚化等も含めて備えるという、現状、政府はこの卵子凍結に対する公的支援には否定的であり、後ろ向きだと聞いていますが、ここまで含めて社会的なニーズがあると位置づけ支援を行う、あるいは公的保険の対象にしていくということも、ここまで来れば一つの考え方、視野に入ってくる考え方だと思いますが、ちょっと大臣の現時点における御認識をお聞きしておきたいと思います。

加藤国務大臣 ちょっと幾つかあったので、最後の卵子の凍結については、正確にはちょっと事務局から答弁させます。基本的に、卵子凍結そのものについてどう評価するかというところが、課題があるのではないかと思っておりますので、それから先には今進めていないというのが私どもの立場であります。

 それからもう一つ、健康保険法を読んでいただくと分かるように、保険給付の対象は、出産も入っているんですね。ただ、療養の給付という形にはなっていない。療養の給付では、疾病又は負傷に関しというふうに書いているわけであります。

 今回の不妊治療に関しては、まさに疾病に対する治療としてこの不妊治療は読んでいるということでありますから、ちょっとその辺は、今委員が不妊治療と出産を同列に扱っておられましたけれども、法律上の取扱い、我々の取扱いは違うということは申し上げておかなきゃいけないと思います。

小川委員 しかし、社会的情勢の変化で、こういうことも含めて、まあそれを保険でやるのか、社会保障の領域は私は税でやった方がいいと思っているんですけれども、もう放置できない、カバーせざるを得ないということになってきているという意味では、随分概念が変わってきている。それはあながち間違ったことじゃない、正しいことだ、必要な方向性だということを申し上げているわけです。

 時間も限られていますから、ちょっとお聞きしなきゃいけないこと、それで、私は、繰り返し、医療が九〇%税金と保険料で成り立っているにもかかわらず提供体制が自由化されていることによる大いなる矛盾、これは厚生労働省で本格的に、本気で考えてほしいと思っています。

 その関連で、かかりつけ医については、一つには、コロナのときに見られた診療放棄ですよね、事実上の診療拒否、診療放棄、こういうことがないようにしていかなきゃいけない。もう一つ、明確にはおっしゃいませんが、重複は排除して、非効率は排除しなきゃいけない、効率的な診療体制を取らないと、まさに加藤大臣、さっき答弁でおっしゃったとおり高齢化が進んでいく。医療ニーズ、医療需要は拡大する一途なわけですから、重複は排除して効率化しなきゃいけないという両面から、かかりつけ医ということについては推進していかざるを得ないんでしょう。医師会にはフリーアクセスというお声も強いんでしょうし、いろいろせめぎ合いながらだと思いますが、そうだと思います。

 その点にちょっと関連するんでしょうが、今回の法改正の中で、医療や介護事業者の経営状況について報告を求めるという条項が入っていますね。これは、私、今まで事業所ごとにやっていなかったことをむしろ驚いているぐらいなんです、法人ごとにはやっているということを事務的には聞いていますが。とにかく、九〇%、税金と保険料ですから、どういう経営状況で、どういう処遇で、どういう待遇で経営が成り立っているのかは説明する責任がある。

 それで、突き詰めてちょっとお尋ねします。

 従業員の給与等についても報告を求めることになっていると理解していますが、医療従事者や介護従事者が極めて低い待遇で、離職率も高く、また、派遣業界が随分とはびこって、派遣手数料に医療保険財政が消えているといういろいろな矛盾をはらんでいると思いますが、少なくとも収益報告、報酬報告に、私は、医療や介護事業者の経営者の報酬は必ず含めていただきたい。それはちょっと大臣の確認を取っておきたいと思いますので、答弁を求めます。

加藤国務大臣 現行制度において、既に医療法人や社会福祉法人については都道府県に貸借対照表を提出をしております。この法案成立後は、法人ごとの資産の状況などについて、都道府県から報告を求めることにより把握も可能となるところであります。また、本制度においては、任意での職種別の給与費の提出も含めて、医療機関の経営の中に占める給与費の総額を把握することも可能となっております。

 こういったことも踏まえながら、これから求める具体的な方向、内容、項目については検討していきたいというふうに思っておるところでございます。

小川委員 何もおっしゃっていませんが、任意では駄目だし。繰り返し申し上げますが、九〇%、税金と保険料ですからね、医療行為は。どういう経営状況なのかちゃんと公的に報告するという当たり前のことは当たり前にやらせるように、これは是非責任を持ってやってください。

 つけ加えて申し上げますが、私も、医師の方々から個人的に御寄附いただいたりすることがあります。しかし、税金と保険料が財源になっている診療報酬、医療報酬ですから、やはり扱いは微妙だと思うんですよ。例えば、医師会なんか、組織的に巨額の自民党への政治献金をしているでしょう。財源、九〇%、税金と保険料ですからね、これは。補助金や公共工事を受託している企業は献金できないことになっていますから。そういう問題もはらんでいるということはちょっとここで改めて指摘し、そういうことが複雑に絡み合っている問題だということを再確認させていただきたいと思っています。

 最後に、今日は内閣府から副大臣、お越しいただきました、ありがとうございます。あさってまさに発表される子育て支援のパッケージについて、まず最初に、子育て世帯への住宅支援、あるいは、ちょっと一時報道で目にしましたが、博物館にファストトラックで入れる、それから、報道によるとですけれども、大学の授業料については、国が立て替えて卒業後に年収に応じて支払う、これを大学院の修士課程の学生向けに導入するということ等が報じられておりますが、事実なのかどうか、まずちょっとお聞きしておきましょう。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 まず、博物館等へのファストトラックの件でございますけれども、子供ファースト社会をあらゆる政策の共通目標とする中、幅広い年代が集まる施設等の入場に当たって、子供を優先するという取組を考えております。

 その上で申し上げますけれども、少子化対策について岸田総理は、個々の政策の内容や規模はもちろんでありますが、これまでの関与が薄いと指摘をされてきました企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身の方も含めて、社会全体の意識の変革を含め、次元の異なる対策を講じていくと述べております。

 加えまして、先般、総理の記者会見におきまして三点申されました。一点目、若い世代の所得を増やす、二点目、社会全体の構造、意識を変える、三点目、全ての子育て世帯を切れ目なく支援をするの、三つの基本理念が示されたところでございます。この会見で、子供ファストトラックに言及がございました。総理会見は、少子化、子育て政策についての大きな基本理念を伝えることに主眼が置かれており、個別の政策につきましては、全体の流れの中で例示をされたものというふうに認識をしております。

 いずれにしましても、こども家庭庁としては、こども政策担当大臣の下、総理から示された基本理念等をしっかりと受け止め、漸進的な対策にとどまらず、長年の課題を一気に解決する方向でしっかりと前進させ、子育ての不安を払拭することができるよう、今月末、もう末ではございますけれども、今月末目途の取りまとめに向けて議論を尽くしてまいります。

 また、先ほど御指摘のありました住宅の件でございますけれども、公営住宅についての御質問だったというふうに理解をしております。

 公営住宅については国交省が所管でございますけれども、公営住宅について、国交省におきまして、入居後に高額所得者となって公営住宅本来の対象から外れた方に退去を促して入居可能な住宅を増やした上で、子育て世帯が優先的に入居できる取組を地方公共団体と連携してこれからも拡大していく所存でございます。

 以上でございます。

小川委員 あさって発表されるんでしょうからそれを待ちたいと思いますが、ちょっと先に指摘しておくと、もし報道のとおりだとすれば、大学院の修士課程から支援しますというのは遅いですよ、学士課程からやらないと。意味がないとは言わないが、極めて不十分だと思います。

 それから、住宅支援も、公営住宅でそういうことはあるんでしょうが、報道によれば、住宅ローン金利で優遇するとか、それから博物館で、何で子連れ世帯が別ルートで入らなきゃいけないんですか。

 これはよくよくお考えいただきたいんですが、子育ては社会的に応援されなきゃいけない。子育ては社会的に応援しなきゃいけない。しかし、別に特権階級でも何でもありませんからね。逆に、今、こういう声も聞こえるんですよ。子育てばかりに焦点が当たって子育てをしていない私たちはと、独身女性や単身者含めて、という声も聞こえてきていますからね。支援はしなきゃいけないが、特別扱いする必要はないんですよ、子育て世帯を。そこは履き違えることがないようによく御研究をいただきたい。いろいろな声をバランスよく受け止めて、バランスのいい方針を打ち立てていただきたい。ちょっとそのことを指摘しておきます。

 それから、児童手当についても、所得制限を撤廃して、支給年齢を引き上げるという報道に接していますが、必要なことだと思いますが、ちょっと確認です。

 今、扶養控除は、十六歳未満は児童手当がありますからありません。これは民主党政権時代の責任でもあるんですがね。仮に、十六歳から十八歳まで児童手当を引き上げるとした場合、十六歳から十八歳の扶養控除は廃止されるおつもりだという理解でいいですか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、今月末目途の取りまとめに向けて、今議論を進めている最中でございます。お答えをその後にさせていただきたいと思います。

小川委員 あさってのことですからね。よくよく今の指摘は受け止めていただきたいと思います。

 加藤大臣、最後に、関連して、年収百三十万の壁を何とかしなきゃいけないという議論があります。それは私たちもそのとおりだと思う。片や一方、ここに助成金を支給して自己負担が増えないようにする、あるいは手取りが減らないようにするということに関してはかなり私は首をかしげています。

 これはどういうことかというと、年収百二十九万円の方が百三十万円になり、社会保険の適用対象、加入対象になった瞬間に約三〇%の社会保険料が課されることになりますから、労使折半で一五パー、一五パーで分けるんですが、百二十九万円の人が百三十万円になった瞬間に、約三〇%、四十万円近い給付を行うということを意味しているんですね、もしこれが事実だとすると。

 それは、何重にも問題がある。どの時点で百二十九万円の人が、どの時点で百三十万円になったら給付の対象にするのか。総額で、マックスで四十万円もの給付を行う正当性はどこにあるのか。百二十九万円以下しか働けない人たちも世の中にはいるでしょう、必ずしも労働調整ということではなくて。その人たちとの不公平の問題はどうするのか。

 これは、極めて筋が悪い。よくこの手のことをやりがちなんですけれどもね、安倍政権になって以降。本当に軽いというか、筋が悪いというか、そういう政策を平気で実行しがちだからちょっと心配しているんですけれども、この百三十万円の壁を、助成金で百二十九万円の人が百三十万になった瞬間に四十万円給付しますという政策は、私はあり得ないと思いますが、加藤大臣、ちょっと御見識をお聞きしておきたいと思います。

加藤国務大臣 若干、委員御指摘のところは百三十じゃなくて多分百六なんだと思います。百三十万を超えたら、これはいわゆる一号保険になるので、使用者負担もなくなりますので、むしろ百六万の話だろうというふうに思います。

 その上で、ただ、そこのところはあれですが、ただ、今委員おっしゃるように、この辺、ここを議論するときに当たって、同様に働いている扶養者でない単身世帯の方、あるいは国民健康保険や国民年金の加入者のうち百三十万とか百六万の基準未満の負担をしている方々もいらっしゃるわけですから、そことの公平性はしっかり考えなきゃいけないという御指摘、それは私も全くそのとおりだというふうに思います。

 その上で、総理からも指摘がされているのは、被用者が新たに百六万円の壁を越えても、手取りの逆転を生じさせない取組の支援などをまず導入し、さらに、制度の見直しに取り組むとされておりますので、我々も、まずは短時間労働者への被用者保険の適用拡大とか、最低賃金の引上げ、こういったもので解消していくべきものだと思いますが、ただ、年収の壁を意識して労働時間を調整される方もいらっしゃるという指摘もございますから、そして今の総理の指示も含めてどういうやり方が可能なのか、具体的な検討は早急に進めていきたいと考えています。

小川委員 百六万円だと仮にしても、三〇%だったとすると三十万九千円になるんですね。

 それから、百三十万の壁は、社会保険の適用事業所じゃない零細事業所で百六万円を超え百三十万円未満で働いている方々がいらっしゃる。ですから、レアケースというのかな、多数派かどうかはちょっとよく見なきゃあれですが、しかし現に百三十万の壁は存在しているという意味では先ほど指摘したとおりであります。

 ちょっと種々指摘をしましたし、あさっての発表を待って議論しなきゃいけないことも多々ありますが、ちょっとこの法案のこのネーミングが非常に大それ過ぎていて、何か気恥ずかしい、野党が言うのもなんですが、ちょっと気恥ずかしいなと感じているということが一つ。

 それから、社会保険の細分化と、そしてこれからの全世代型対応が求められる時代をにらめば、この細分化を解消し、そして税方式に移行し、資産課税も含めて応能負担を徹底していかざるを得ないということ。そして、提供体制は、特に医療、介護は、より公営化を進め、公的な関与を強化し、そして九〇%の公費負担にふさわしい提供体制を築かなければならない。この辺りはこれから長期的に極めて重要な論点だと思いますので、再度指摘して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 全世代対応型社会保障構築のための健康保険法改正案、本会議の趣旨説明、質疑に引き続いて、今日が実質審議初日ということでございます。我々の考え方もお示しをしながら、今日は初日でございますので、今後の取り組み方、考え方について、今日は大臣に確認をさせていただきたいと思います。

 先ほども小川筆頭理事からも話がございましたように、全世代対応型ということで、かなり風呂敷、広く見えるわけでありますが、今回の内容について、特に、先ほど来話がありますが、我が国は、急速に進行する本格的な少子高齢化、人口減少時代、この人口構造の変化、これが一点。家族の在り方、また地域社会の変容、これは社会構造の変化。そして、生活習慣病、これが絡み合って、いわゆるマルチファクター、これが絡み合う、そして、人生百年時代に重複疾病を抱える、半世紀前、三十年前からしても、この疾病構造の変化。こういった大きく三点の構造の変化、こういった変化に対して、医療、介護、また社会保障制度、これは再構築が不可欠であって、より、そのための、本質的な課題に対して、真剣な議論がやはり必要だと思います。

 それ以上に、そういう時代を迎えた国民の皆さん、年金もそうですし、そして医療、介護、図らずもこの三年余りで、コロナの状況の中で、医療提供体制、さらには年金も、そして介護も、不安に包まれた、閉塞感に包まれている。この不安を、やはり、覚悟を持って政治が再構築、基盤を、国民の皆さんには、不安を取り除く、これは改めて覚悟を持って臨む必要があると私は考えておりますし、私は、そのつもりでこの政治の世界に足を踏み入れた人間と自分は自負しています。

 改めてでございますが、国民の皆様にとって信頼できる、納得できる制度設計、提供体制を構築するため、本質的な課題に切り込み、真剣に取り組む、国民の皆様にとって信頼できる、納得できる社会保障制度、医療・介護提供体制を必ず再構築するという、加藤大臣、御覚悟があるのか。あるのならば、その決意をお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 今委員から御指摘ありました、人口構造が大きく変わってきている、少子高齢化が進んできている、あるいは社会構造、特に都市への一極集中、そして地方過疎化、また、そうした中での家族のありようの変化、そして、高齢化にも伴うことだと思いますけれども疾病構造の変化、こうした中で、さらに、ここに来てコロナへの対応ということで、また様々な課題が浮かび上がってきたわけであります。

 ただ、その前からもちろんこういった課題があって、これに対して一つ一つ取り組んでいかなきゃならない。そして、そうした問題意識の中でいろいろな見直し等も図ってきたところでありますが、ただ、現下、足下を見て、あるいはこれから先行きを見て、よりこの流れが強くなっていくということを考えれば、当然、それに対する対応というものをしっかり講じていかなきゃならない。そのためには、制度の問題もあります、それから、地域地域での取組をいろいろと促していくということ等を含めて、我々がそれだけの危機意識を持っていくこと、そして、そのことをそれぞれ皆さんが共有化し、それの克服に向けて一歩、二歩と進んでいく、それに資するものとして、今回もこの法案を出させていただいたということでございます。

中島委員 先ほども小川委員からも話がありましたが、この全世代対応型というのは、これまで、我が国の社会保障制度、先ほど三角形と言いましたけれども、現役世代が高齢世代を支えるという賦課方式、これが原則、こういう流れで来た。しかし、今もおっしゃいましたが、急速な少子高齢化、人口減少、人生百年、また、疾病構造、社会構造の変化、これを、今までの延長線上で継ぎはぎではとても、もしかしたら制度は何となく維持できるかもしれないけれども、国民の皆様の先ほど言った不安、また生活は立ち行かなくなる可能性がある。そういう意味から、先ほど小川理事も、より本質的な議論、逃げないで正面からまさにこの国会の場で議論していくことが求められるんだと。

 そこは大臣も政府も我々も共有しているものとして、今法案が、先ほど言ったように大きな風呂敷だけれども、これが本当に第一歩、恐らく、第一歩なのか〇・五歩なのか分かりませんが、今後より本質的な問題に正面から真剣な議論をしていく、そういうことを約束していただいて、その上で、本法案がどういう位置づけで、今後どう進められていくかについて確認をさせていただきたいと思います。

 資料の八枚目でございますが、これは、我が党、立憲民主党の社会保障調査会、私が事務局長として取りまとめた中間報告、昨年の四月のものでありますが、この内容は、昨年夏の参議院選挙の公約にもなっています。赤線の部分が今回の政府提出法案の内容と合致する部分だと思います。このうち、私としては、何といっても三つ目の赤の点線、かかりつけ医を明確に定義し、制度化します、この内容について議論、今日は初日でございますので、させていただきたいと思います。

 今回、政府案で、かかりつけ医機能に関する制度整備が実施されるとされておりますが、これは、私が先ほど言った本質的な課題、医療提供体制の中でのかかりつけ医の位置づけというのは、例えば、人生百年時代、疾病構造の変化に対しては予防とかかりつけ医、さらには地域包括ケアシステムとかかりつけ医。そして、コロナ禍では、いわゆる災害とかかりつけ医。そして、今、医師の働き方改革と言われておりますが、医師の働き方改革とかかりつけ医。常に、かかりつけ医の在り方が、今課題となっている、解決に導くキーになる。こういうことから、私は、実際に現場でいながら、このかかりつけ医の不明瞭さ、ここに問題意識を持って、これを何としても日本の新たな医療基盤の軸にしていく、これを私は目的に政治家になったということで、今まで一ミリたりとも動かなかったものが、ようやく今回、閣法で、かかりつけ医機能の報告制度ということで、その点については評価をしたいと思います。

 評価をした上で、まず確認なんですが、先ほど言ったキーになる、様々、予防とかかりつけ医、いろいろあるんですが、大きく、今、かかりつけ医がなぜ必要とされているか。現状では二点あると思います。

 まず一点目は、疾病構造の変化、人生百年時代を背景に、生活習慣病予防、慢性疾患への対応、このための医療、介護との連携の役割。そして、二点目は、やはりコロナ、コロナにおいて、かかりつけ医に対するニーズの急増と、必要な方が必要なときに医療にアクセスできなかった、コロナ自宅放置死、このような状況が、背景が、新型コロナウイルス感染症のような感染症パンデミック、先ほど言った災害時へのかかりつけ医の対応と役割。大きく、私は、今、国民の皆さんにとって、この二点がかかりつけ医が求められる役割と考えています。

 この役割、必要とされる背景について、政府と、大臣と認識を共有されているのか、確認したいと思います。

加藤国務大臣 前段の方は、先ほどやり取りをしたんだと思いますので、まさに疾病構造あるいは人口、社会構造の変化の中で、こうしたかかりつけ医機能を確保していくことの必要性というのは、これはまさに共有しているんじゃないかなと思います。

 ただ、感染症のときの、委員がかかりつけ医の立場をどういうふうに位置づけているか。要するに、感染症の場合には、もう委員御承知のように、今回、特定の人に診療をお願いをするという仕組みを取っていますから、そうすると、多くのかかりつけ医は、中には対応された方もいますし、今回でいえば、発熱外来という言い方ですが、中には、自分の機能からしてできないという方もいらっしゃったわけでありますので、そうすると、そこまでかかりつけ医機能の中にお求めになるのかどうか。

 私どもとしては、先般の感染症法の改正で、いわば今回のコロナのときは急に医療機関にお願いをしたわけですが、事前に協定を結んで対応してくださいと、環境を構築していく、そのためのいろいろな手当ても入れさせていただいて、そういった形で感染症に対する診療的な対応はしていきたい。もちろん、今回、新型コロナが位置づけが変われば、これは一般の診療の中で受けていただくわけですが、いわゆる感染症に対してはそういった対応なのではないか。

 ただ、そういった際に、かかりつけ医が、例えば、今回協定が決まった医療機関、こういうところがありますよ、じゃ、こういうところに行ったらどうかということ等の示唆をしていただくということは十分あり得るんじゃないかなとは思いますけれども。

中島委員 もちろん、感染症ですから、種類も違うし、状況も違う。ですが、例えば上手な医療のかかり方で、例えば、ワクチンに迷ったらかかりつけ医に、そして、コロナかどうか分からないけれどもちょっと体調が悪い、発熱外来ではないけれども、そういうときにはかかりつけ医、これはさんざん、厚生労働省、アナウンスしたじゃないですか。

 だから、こういうかかりつけ医の機能、今日、土台となる部分を議論してちょっと整理整頓していきたいと思うんですが、これまで立憲民主党、資料の四枚目になりますが、日本版家庭医制度法案、二年前に議員立法として提出をいたしました。そして、一年前に、コロナかかりつけ医法案。二種類の法案を提出しています。

 資料の五枚目、六枚目は、もう私、七年前になるんですが、先ほど私、ライフワークと言っておりましたが、政策大綱として、かかりつけ医制度の創設、登録制のかかりつけ医、また、かかりつけ医への登録は任意とする、こういう内容のものをたたき台に、二年前、議員立法として、私、このときは、プライマリーケア機能を持つかかりつけ医を家庭医と位置づけて、登録制そして認定制にするという内容の法律。

 そして、コロナかかりつけ医に関しては、これはオミクロン、大体状況が分かってきた、そしてデルタからオミクロンになって、そして重症リスクの高い不安を抱える方が、それまでにも、かかりつけ医だと思っていた人のところにアナウンスどおり相談したら、私はあなたのかかりつけ医ではありませんと、こういうことが頻発したわけです。ですから、コロナ第七波対策として、事前に重症リスクの高い方、お若い方でも糖尿病とか持っておられる方がいる、そういう方は事前に登録できる制度。コロナ禍でも、それは、感染初期段階から状況は三年間の間で随分変わったんです。やはり、確実に重症リスクのある方が医療につながる、アクセスできるためのコロナ対策としてのコロナかかりつけ医、こういう法案を出して、これが一枚目の関係性ですね。

 左側がコロナかかりつけ医の仕組み。これは、大分、新型コロナウイルス感染症がデルタ、オミクロンと変わってきて、状況が分かってきた内容のとき、ちょうど一年前でありますけれども、必要に応じて医師が検査をして、その結果を報告して、必要な方が病院に、自宅で健康観察をしていく、こういう仕組み。これは平時でいうと右側の家庭医の仕組みに波及する。というよりは、土台が右側の家庭医であれば、コロナのときにもこういう内容になるだろうと。

 そして、今後どういう感染症が来るか分かりませんが、しかし、一定程度こういう基盤をつくっておけば、今回医療にアクセスできなかった人は、これは絶対全員が完璧というわけにはいきませんが、そういう状況が生み出せたのではないかということで、これを二年前に家庭医法案、そして一年前にコロナかかりつけ医法案を出したということです。

 我々は、先ほど古屋委員もおっしゃっておりましたが、構築会議の中でも、事前登録、そして認定の在り方ということが議論になっていたと思います。我々は、登録制を採用することによって患者と医師の認識のミスマッチを防止することを想定しておりました。登録制が簡単に実施できないのだとすると、これは構築会議の中でも議論されておりましたが、せめて、かかりつけ医の定義を明らかにして、国民、患者、医師、医療機関、行政等の全ての関係者のかかりつけ医に対する認識をまず一本化していくこと。今回の政府案にはかかりつけ医の定義がありません。コロナ禍の経験を踏まえ、まず、かかりつけ医とは何者か明らかにするべきではないかと思います。

 かかりつけ医の意味や患者や医師、医療機関の関係者の認識を一致させる必要がある、このことについて大臣の見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まずは、政府としては、必要なときに必要な医療を迅速に受けられるフリーアクセスの考えの下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じてその機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要ということで、今回の法案で、医療の提供の制度を強化をしていく、また、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県が確認、公表する、また、そうしたものをベースに都道府県と地域の関係者の協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討していく、こういった仕組みを設けさせていただいたところでございますので、この法案では患者の受療行動への介入について規定するものではなく、また、患者の医療のアクセス制限を行おうとするものではないことから、法律上、かかりつけ医やかかりつけ医療機関といった用語を定義する必要はないと考え、実際、法案にはそうした定義を行っていないということであります。

中島委員 やはり今回もさんざん、厚労省、上手な医療のかかり方で、困ったらかかりつけ医、かかりつけ医に相談しましょうということを再三アナウンスした。しかし、医療者の間でも、私がやってきたことがかかりつけ医だと言う人もいれば、患者さんの中でも、例えば、眼科のかかりつけ医、整形外科のかかりつけ医。まず、かかりつけ医とは何者かということを前提に、共有化していった上で、かかりつけ医機能とはというところに入らないと、先ほど古屋委員もおっしゃっていましたが、これでは現状追認に終わってしまう可能性がありますよ。

 例えばですけれども、大臣、大臣にはかかりつけ医がおられますか。

加藤国務大臣 おっしゃる意味でのかかりつけ医、まさに定義に関わると思いますが、私のイメージとしては、日頃から何かあったらかかるお医者さんということであれば、それはおります。

中島委員 今回政府が、かかりつけ医機能、身近で何でも相談できる、そして初期診療から継続的な医療、これはかかりつけ医、そういう方が大臣にはおられる。

 でも、私もよく地元に帰って、国政報告会等で、今日御出席の皆様の中でかかりつけ医を持っていらっしゃる方と。そうすると、大体八割ぐらいの方が手を挙げるんです。それでは、そのかかりつけ医の先生に、夜寝られないとか、もしかしたらコロナになったかもしれないとか、そういったことを幅広に、家族の相談までも、自分の仕事の悩みまでも、そういったことも相談できるかかりつけ医を持っている方は何人いらっしゃいますかと言うと、さっと手が下がります。

 私、ここをちょっと整理しておきたいんですが、よく主治医といいますよね、主治医。主治医と、かかりつけ医、これから議論しようとしているかかりつけ医機能を持つ、これは明確に違うんだと私はちょっと、指摘をさせていただきたいんですが。

 例えば、先ほど言った整形外科のかかりつけ医、これは、膝が痛い、腰が痛い、これを診ていただいて、そして継続的にその疾患を診ていく、これは、我々がこれからつくり上げようとする、共有化しようとするかかりつけ医ではなくて、これは整形外科の主治医ですよ。眼科で、白内障だったとしたら白内障を継続的に診ていく、だけれども、ちょっと最近ストレスがたまっている、こういう方、眼科の先生は、多分それは私の範疇じゃないと。これは眼科の主治医ですよ。

 今、先ほど言った人口構造の変化とか、疾病構造の変化とか、こういう社会構造の変化も含めて、必要とされているのは、まさに、人生百年時代もそうですが、様々な抱える課題、そしてその先には介護というものも出てくるかもしれない、いわゆる伴走型の、身近にいて相談できる、このかかりつけ医が必要だということであるならば、やはりそこは明確に、かかりつけ医というものが一体どういう役割を果たす人なのかということを明確に定義をする必要があると私は述べているわけですが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 国民が、まさに日常の医療というんでしょうかね、において期待する中で、例えば、日常的によくある疾患への幅広い対応をお願いしたいとか、あるいは休日、夜間の対応とか、在宅医療とか、いろいろニーズがあるんだというふうに思います。

 そういったニーズに対して応えていただけるものを企画をするわけでありますけれども、これはただ、昨年十二月の全世代型社会保障構築会議の報告書にもありますように、国民一人一人のニーズを満たすかかりつけ医機能が実現するまでには、各医療機関、各地域の取組が必要で、今回の制度整備はそれに向けた第一歩と捉えるべきであるとされているところでありますので、まさに今回は、先ほど申し上げたような法案の内容の中で、今ある、求められているかかりつけ医機能、そして、そうした機能の情報を提供することで、患者さんあるいは患者さんになる人が選択できるための環境をつくっていく、こういったことを進めているわけでありますから、まさに今申し上げたように、全世代型社会保障構築会議の報告書にあるように、そうしたことに対する一つのアプローチの仕方だというふうに考えております。

中島委員 私、そこが今回、明確にまず第一歩と言うなら、かかりつけ医機能は分かります。ですから、私、評価はしているんですよ。ようやくそういうことを法令化して規定した、かかりつけ医機能とはいかなるものかを規定したことは評価しています。ただ、先ほど古屋委員もおっしゃっていましたが、それは一体、例えば、今日、本田政務官がおられるから、別に一般論としてでもいいですけれども、かかりつけ薬剤師さん、かかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局、これは定義が決まっていますよね。定義も決まっていて、そして、かかりつけ薬剤師さんは、一人の患者さんは一人の薬剤師と決まっていますよ。そして、書面でいわゆる登録する、こういうことになっています。なぜかかりつけ薬剤師はそういう状況で、かかりつけ医は機能で何となくお茶を濁すのか。

 どうですか、本田政務官。だって、かかりつけ薬剤師、Aという病院から処方箋が来ました、Bという処方箋が病院から来ました、そして、同じような薬が、いや、飲み合わせが悪いかもしれない、そのときにかかりつけ薬剤師さんはAという病院の先生に、これはこうですよという話をして、だけれども、そこでかかりつけ医がつながっていなければ、一体。処方箋を出す方は医者の役目ですから、かかりつけ薬剤師だけ登録制、ある意味認定制になっていて、かかりつけ医は機能だけ、そして、登録制でも、定義も位置づけされない。これは薬剤師さんの立場から、どうですか、やりづらくないですか。

本田大臣政務官 お答え申し上げますけれども、まず、かかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局というのも、おっしゃるように登録制になっているわけでございますけれども、かかりつけ医につきましては、そうですね……。

中島委員 私、通告していなかったので。政務官は薬剤師さんだということで、恐らくこのかかりつけ医の件についても、私は実際に薬剤師さんとも話をしていて、薬剤師さんの役割、かかりつけ医と連携して、より役割分担をしていくという意味で、かかりつけ薬剤師、薬局の前に、やはりかかりつけ医がしっかり明確にならないとやりづらいですよ、こういう話も聞いていたものですから、今日おられたので、済みません、通告もしていなかったので申し訳なかったと思いながら、もし御意見があればお聞きしたかったということであります。

 そういうことから、やはり、さっきも言った上手な医療のかかり方で、ずっと、困ったらかかりつけ医を、厚労省はこの定義もないのにアナウンスしてきたわけですよね。その結果、ミスマッチが生じた。やはりここは、厚生労働省、今回、かかりつけ医機能を明文化することは評価しますが、これまでそれもなかったのに、困ったらかかりつけ医へとさんざんアナウンスした、このことは反省すべきじゃないですか。どうですか。

加藤国務大臣 これは、まさに身近な医師や医療機関に相談してくださいという趣旨の中でそういったことを申し上げてきたということだと思いますし、一般的な用語としては使われていたということでありますけれども、ただ、法律的な用語として定義するということについては、先ほど申し上げたような状況にあるということでございますので。

 今回は、先ほど申し上げた、多分、薬剤師の話をされましたけれども、やはり、薬剤師さんの状況と、医師あるいは医療機関の状況、薬局と、状況、これはそれぞれ違うわけでありますから、その状況を見ながら、先ほど申し上げた、国民一人一人のニーズを満たすかかりつけ医機能の実現に向けた第一歩として、今回、かかりつけ医機能、そしてそれについて医療機関から公表してもらう、また、それをベースに地域の医療体制を議論してもらう、こういう法案、枠組みをつくらせていただいた。まさにそれに向けての一歩というふうに認識をしています。

中島委員 ちょっとやはり、私、かみ合わないというか。さっきも言ったように、かかりつけ医機能を明文化するということは、私、一歩いくかなと。

 まず、さっきも指摘した、まず医療者の中、また国民の皆様の中でも、かかりつけ医というものはどうなのか、最終的には、自由標榜がいいかどうか分かりませんが、私は若しくは私たちの病院はかかりつけ医機能があるということを明確に示して、そして国民の皆さんとの間で、ああ、ここにはかかりつけ医がいるんだ、機能を果たしてくれる病院なんだ、お医者さんなんだということが分からなければ、これじゃ、また同じことを繰り返しますよ。

 そういうことが、例えば、よく、フリーアクセス、国民皆保険、最大の特徴はフリーアクセス。私も、先ほどお示しした議員立法、登録制の認定制度というと、何かイギリスのGPにしちゃうのか、管理医療にしちゃうのかと言われますが、よく読んでください。これは手挙げ方式ですから。私はかかりつけ医機能を持っている、これを分かりやすくしておけば、必要な方が事前に登録をする。そして、そのかかりつけ医は本当にそういう資質があるのかということを、一定の研修を受け、そして認定をしていく。このマッチングをするだけですから。

 フリーアクセスは、ここもちょっと整理しておきたいんですけれども、何かカード、保険証を一枚持っていれば、自分は北海道にいても九州にいても。いい制度だと思いますよ。自由に行けるからいい。でも、今回コロナで浮き彫りとなったのは、自由に行けたんだけれども、誰もその患者さんに責任を持っていなかった。その患者さんをもし整形で診ていたとしても、発熱をしてコロナかもしれない、だけれども、そこは私は関係ないよと押し出されちゃった。

 今、この人生百年時代、疾病構造上、先ほども大臣おっしゃいましたが、全人的に、病だけではなくてその人を包括的に診る、そういうかかりつけ医がこれから求められている、そういう意味なんじゃないですか。

 ですから、フリーアクセスの意味も、自由に行けるから皆保険制度はいいんだではなく、先日、私、日本病院会の相沢理事長とも話をして、相沢理事長は社会保障審議会で度々このかかりつけ医の制度化については御発言をしていた。その中で、もう一度、まさにこういう国会の場で、我が国のフリーアクセスは最大の特徴で、これまではよかったかもしれないけれども、その意味をもう一度共有、理解をした方がいいんじゃないかと御指摘をされていました。

 フリーアクセスというのは、患者さんが適切に、自分に合う医者を自由に選べること。ですから、我々が言っている登録制というのは、患者さんが、まあその前提は、かかりつけ医がどこにいますよということを分かりやすくする。これは、今回のかかりつけ医機能報告制度が、あと五年後、どういうものを吸い上げて、どういう形で国民の皆さんに分かりやすくするかどうか、これはまだ分かりませんけれども、その上で、それを見た患者さんがかかりつけ医機能を持つ病院若しくは医師に登録をする。これで初めて確実にひもつけになるし、先ほどのかかりつけ薬剤師と同じ状況になり、さらに、これは何もアクセスを制限するものではなくて、フリーアクセスを維持しながら、確実に、不安を持つ方が医療にアクセスできる方法。これをコロナに応用すればコロナかかりつけ医ということになるわけですが。

 是非、そこのフリーアクセスの意味、また、先ほども言ったかかりつけ医と主治医の混乱、こういったことを整理した上で、かかりつけ医機能報告制度を、一体、どういう要件を吸い上げて、どういう認定をしていくつもりなのか、大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今回は、別に認定とか登録とかいうような仕組みを設けていないわけであります。

 今委員おっしゃったように、まさに、かかりつけ医機能を今回出させていただきますけれども、これから関係者とも議論しながらその中身は詰めていきますが、例えば五つあったとすれば、五つ全部持っていなきゃかかりつけ医機能だということではないわけであります。

 多分、みんなが思っているものも、かかりつけ医機能としてお持ちのイメージ、あるいはかかりつけ医のイメージも、今、委員は委員としてのイメージを持たれた、しかし、違うイメージを持っている方もおられるというのが今の状況ではないかなと。そういった中で、先ほど申し上げた第一歩というのは、まさにそういう状況の中で、しかし、よりよい医療を提供してもらう、そして、かかりつけ医機能の必要性というのは、先ほどるる申し上げた、これから更に高まっていく、そういった意味で、これを、半歩と言われましたが、ひとつ、一歩としながら、ここから一つ一つ詰めていくということ、このことが大事だというふうに考えています。

中島委員 要するに、かかりつけ医を、ちゃんと医というものを定義した上で、私と大臣とそして委員の皆さん、国民の皆さんとの間で、かかりつけ医とはが一定にならないと、この話は進まないんですよ。だから、それをまずやった上で、かかりつけ医機能報告、そして、このかかりつけ医機能を都道府県が確認すると言っていますが、何をもってかかりつけ医機能があると評価するか、これによって、先ほど言ったように、現状追認で終わってしまうか、それとも一歩なのか、〇・五歩なのか。私は、今日聞いた限りでは〇・三歩ぐらいですか。

 まあ、今日は初日でございますので、私、委員の皆さんに御了解を得て、今回は毎回質疑に立たせていただくことになっておりますので、次回は、構築会議の内容、また財政審の建議と今回との整合性、御質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 私は、本日、通告外のことで一問、加藤大臣に御質問させていただきます。

 昨日、国会の院内で、優生保護法の早期全面解決を求める院内集会というものがございまして、実は、この優生保護法問題は、私ども国会に属する議員の、いわば、優生保護法という法律を作って、それが憲法に違反するという、違憲立法であるということを問われ続けている問題であります。議員、立法府にいる者が超党派で議員連盟もつくりまして、支援金による一定の給付も実現というか行ってきたわけですが、やはり、被害に遭った皆さんは謝罪と全面解決を求めておられる。

 元々は尾辻参議院議長がこの議連の代表というかおまとめ役でしたが、今は田村憲久先生と加藤先生、実は大臣になられるまではお二人がやっていただいていたということで、とりわけ加藤大臣にあっては、この問題についての御見識はおありなものと思います。

 お手元に、この間、この集会で配られました資料ですが、去年の二月から今年の三月まで、八つの裁判の結果が、いずれも、すなわち憲法には違反する、二十年の除斥期間は基本的には適用されないと。一部、適用の大阪地裁の二二年の九月の判決は、これは請求棄却となっておりますが、基本的には除斥期間の適用は制限されるものではなく、被害者がそれを申し出たときに、きちんと国として補償をすべきであるという認識がずっと続いております。すなわち、違憲であり、なおかつ請求権は消滅しない、簡単に言うと、そういう訴訟で判決が出ております。

 一年間に八つですから、かなり立て続いているとも言えますし、特に、今回の大阪高裁判決にあっては、個人の尊厳を著しく侵害したということと、国が優生条項の憲法違反を認めたとき、又は最高裁判所の判決による確定から六か月の間は除斥期間経過の効果は発生しないと、かなり明確に、国が責任を認めるか、最高裁が認めたら、そこから六か月はすなわち請求をできるという形に、高裁判決がございます。

 大臣として、この問題、やはり私は、国が謝罪して、損害賠償をしていくべきものと思います。それに向けて、政府内の御調整を是非お願いいたしたく、私たちも、先ほど申しました超党派で、何と申しましょうか、慰労金、慰謝の念を表すことはいたしましたが、さらにまた、被害者たちの求める謝罪と、そして何よりも上告せずということを求めておられますから、大臣の御認識、冒頭、お願いいたします。

加藤国務大臣 まず、旧優生保護法に基づき、あるいはその法律の存在を背景に、多くの方が特定の疾病、障害を理由に生殖を不能にする手術などを受けることを強いられ、そして心身に多大な苦痛を受けられたこと、これは政府として真摯に反省をし、心から深くおわびを申し上げているところでございます。

 また、議員立法が成立した平成三十一年四月二十四日に、内閣総理大臣、厚生労働大臣から、それぞれ、真摯な反省と心からのおわびを表明しており、政府のこうした立場は今も変わらないところであります。

 その上で、訴訟についてでありますけれども、今回の訴訟は、除斥期間である二十年を経過したことを前提とした上で、除斥期間の適用の制限が焦点となっております。これまでに国の損害賠償責任の一部が認められ上訴した判決について、優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいること、また、除斥期間の適用を制限する根拠と範囲が判決によって随分異なっているというのが現下の状況でございます。

 そうしたことも踏まえて、これまでも、検討の上、個別訴訟についてそれぞれ対応させていただきましたが、現在、三月十六日の札幌高裁判決及び三月二十八日の大阪高裁判決がございます。関係省庁と協議した上で、上訴期限までに適切な対応を検討していきたいと考えているところでございます。

 他方、先ほど委員がおっしゃられた議連に関しては、厚労省からも、一時金の支給状況などの報告を願うとともに、今後の対応の在り方についても検討をお願いしているところでございます。

阿部(知)委員 今加藤大臣の御答弁にもありましたが、いたずらに長引かせる、すなわち、二〇一八年に仙台で今の各地の提訴につながる動きがあって、もう五年であります。実は、既に二〇一八年の段階で、坂口元厚労大臣も、国がしっかりと責任を認めて対応すべき事案であるというふうに述べられております。

 私は、皆さん御高齢化し、亡くなれば受給権はなくなる、請求権はなくなるわけですから、一日も早く、今おっしゃった札幌高裁、大阪高裁判決をどうするか、ここで確定させるんだという強い意思を持って臨んでいただきたいと申し添えます。

 では、本日予定されました質疑に移らせていただきますが、私は、まず一問目、この間、全世代型の社会保障に向けてという今回の審議であろうと思いますが、後期高齢者の保険料の引上げ問題についてお尋ねをさせていただきます。

 大臣も、当時、後期高齢者医療制度が大きな論議になった二〇〇八年、国会は揺れておりました、この問題でも。大臣は今のように与党、私たちは野党で、後期高齢者という七十五歳で区切ったグループをつくって、いわゆる経済的にも身体的にもいろいろ負荷が加わりやすいところで、保険という形にくくることの是非をめぐって様々な論議があったと思います。

 そのとき、政府は、保険料を多少軽減する、経過措置を取る等々おっしゃっておられましたが、今日、開いて二枚目の資料を見ていただきますと、制度発足時、五千三百三十二円であった保険料の平均は、今は六千四百七十二円。後期高齢者にとっては私は大きい負担だと思います。

 そして一方で、後期高齢者医療制度は若い世代からの支援金という形を取っておりまして、その支援金のいわば負担率の上昇というのが、下の赤いカーブでございます。

 これを見た政府は、上の後期高齢者の保険料の伸びの方が支援金の伸びよりも緩やかだから、支援金の伸びくらい後期高齢者に負担してもらってもいいんじゃないかというのが、簡単に言うと今回の改正なんだと思います。

 しかし、大臣、覚えておいでだったら、ちょっと記憶を呼び覚ませていただきたいんですが、下に置いてある、それまで老人保健制度だったものを後期高齢者医療制度にいたしますときに説明に使われたもの、後期高齢者制度には三つのポイントがあると、そのとき繰り返し言われました。

 若者と高齢者の分担ルールを明確化し、高齢者の保険料負担は一割、若い人が四割ですね。そして、保険料を納めるところとそれを使うところ、すなわち、都道府県単位でやる。都道府県の医療費の水準に応じて、例えば予防的なことに力を入れれば医療費は下がりますし、そうすると保険料も下がってくるだろうというふうな、三点を説明に使われました。

 さて、今回、この改正を実施された場合に、高齢者が一割という保険料の負担よりも更に、現状でも実は一割より多いのですが、今後、更に負担割合は増えていくと思います。

 例えば、よく言われる高齢化のピーク、二〇四〇年に、後期高齢者の保険料の負担率は幾らになるでしょう。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 高齢者負担率の御質問でございます。

 現行制度を前提にしまして、二〇四〇年の高齢者負担率は一四・八〇%と考えております。

阿部(知)委員 ずっと一割一割と言われてきたものが、気がついたら一五%くらいになっていくと。その後も、この方式に従えば、更に、負担能力が本当に弱い御高齢者に対して、保険料負担が伸びていく。

 七十五歳で分けた理由は、国民健康保険が大変逼迫する、その中でも特に七十五歳以上は大変であろうから、そこを何とかカバーしていきましょうということでしたが、そもそも、一割負担、一割負担と言われてきたものは、保険料においては既に約束をたがえている現状にあります。

 大臣、このことについては、こうした改正というのは最初の説明と違ってくるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 今委員からお示しをしていただいたように、後期高齢者に移ったとき、これはまさに、二〇二五年までに団塊の世代が全て後期高齢者となる中、人口動態などを見据えて、現役世代の負担上昇を抑制しつつ、負担能力に応じて全世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みを構築するとされていたわけであります。そして、実はこの仕組みの中においても、当初から、現役世代の人口減少に伴う分については調整されるという仕組みを実は設けられております。

 実は、その前に、委員御承知のように、介護保険制度がスタートして、介護保険制度はむしろ人口構成比で調整する仕組みになっています。そうした議論を、ちょっと私も全部つまびらかに覚えているわけじゃありませんが、当時、議論がある中で、幾つか調整の仕組みがあるけれども、例えば後期高齢者医療制度の保険料と当時の国民健康保険料、この上下を見ても、介護保険方式を取るとそれを凌駕してしまうんじゃないかというような懸念等が出されて、生産年齢人口の減少に伴う分だけの調整ということに当時はなったというふうに承知をしておりますが、ただ、その後の推移等を見ておりますと、既に、後期高齢者医療制度が平成二十年の創設以来一・二倍であるのに対して、現役世代の負担の支援金は一・七倍となっている。こうしたことを踏まえて、今回、介護保険を参考にこうした仕組みを入れさせていただく、ただし、この仕組みを入れるに当たっても、負担がやはり低所得の方に行かないように工夫をしながら対応させていただいておるところでございます。

阿部(知)委員 それは政府の考えた今回の改正のことなんですけれども、私が申し上げたいのは、そもそも、後期高齢者医療制度を導入するに際しての説明と中身がどんどん違ってきているのではないかということです。これは、国民の理解、やはり医療政策ですから国民の理解がないと進まない。一割なんですよ、一割に負担をとどめますからと何度も私は言われた。でも、実際にやってみると、この制度が立ち行かないということなのかもしれませんが、若者の負担率の方が高いので、それに合わせてもっと負担をしてくれと。

 しかし、大臣、先ほど介護保険のこともおっしゃいましたが、介護保険でもこの年齢は保険料を負担しておられます。あるいは、七十五歳以上の御高齢者の医療費の窓口負担も二割になった。さらに今後、介護保険の改正も控えている。果たして現実に、この御高齢者層にそれだけの負担能力があるのかどうか。そのことは私は緻密に分析されるべきものと思いますが、今回、こういう若者のカーブに合わせましょうという改正に当たって、それをなさいましたかというと、やっていないということでありました。

 大臣、今後、もう来年です、介護保険の改正も迫っています。是非、御高齢者の生活実態を調べる、その上で負担能力を見る、そして必要な制度改正をする、当たり前のことなんですが、そういうお約束をしていただけませんか。

加藤国務大臣 まさに負担は高齢者だけではなくて若者世代も負担があり、そして、その負担が増加している中で大変厳しい状況に至っているわけでありますので、そういった意味において、それぞれのまさに負担能力に応じて必要な、例えば今でいえば医療費とか介護に必要な費用、これを支え合う仕組み、これが医療保険制度であり、介護保険制度だというふうに思っております。

 もちろん、それぞれの制度の中でその負担を求める際には、今言ったそれぞれの負担の状況といったこと、まさに負担の能力、それに応じて検討していくことが必要だと思っておりますし、今回も、していないとおっしゃる趣旨が、個々の生活の家計まで調査して云々ということをおっしゃっているんだろうと思いますが、ただ一方で、現行の制度を踏まえながら、個々の能力に応じるような形で、一律に負担を設けるわけではなくて、所得あるいは負担能力に応じて負担をお願いするという仕組みも併せて盛り込ませていただいているところでございます。

阿部(知)委員 大臣のおっしゃりたいのは、一定所得以下だと減免しますよということですが、そのやり方でやると、中間層に大変負担が重くなってまいります。

 やはり御高齢者の生活実態は、これだけ負担、負担、負担となっていくのですから、きちんと調べて、それで国民合意を取っていく。基本は応能負担でありますし。しかしながら、日本の社会保険制度は全てそうですが、中間層に重いのです。それによって逆に御高齢者層が、その負担ゆえに、更に貧困になってしまう。これはどの年代でもそうですが。私は、そういうことの分析もあった上で制度改革をしないと、表面の負担率だけで比べては、実態を見ない、木を見て森を見ずになると思います。

 あわせて、私が指摘したいのは、最初に説明した、高齢者医療制度はこういうものですよというものからどんどん逸脱している。

 もう一点指摘をさせていただきます。出産育児一時金、支援金のお話であります。

 今度は後期高齢者にもそれをお願いしようと。正直言って、日本の後期高齢者は優しいですし、子供たちが少ないことに心を痛めて、何とかという思いはないわけではないと思います。けれども、本来の趣旨をたがえたことをどんどんやり出せば、法が崩れていきます。

 私が大臣に見ていただきたいのは三枚目の資料で、出産育児一時金について、それぞれ、健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、市町村国保、国保組合、その保険内で何人の出生があり、そこに給付がなされる、保険内の方への給付ということになっております。ただしかし、市町村国保だけは、財政的な弱体化、弱体ゆえに、地方交付税を入れて給付をサポートしております。また、国保組合についても国庫補助を行っておる。

 すなわち、これは保険の原理なわけです。いただいた保険料から、そのグループの中で生じた疾病あるいは出産などについて給付していく、これが保険と給付の明確な関係であります。

 先ほどどなたかがおっしゃいましたが、後期高齢者は残念ながら出産ということは、まあないわけですから、ないと思います。そうすると、保険料を納めるグループの中に発生することではないことに保険料を用いていくという、いわば一線を越えることになります。これがやはり、私は、考え方においておかしいと。

 そして、もしも出産育児一時金が足りなければ、国保や市町村国保でやっているように、国からの支援というものを増やしていく、それが本来であろうと思います。いかに何でも、七十五歳以上は別にしておいて、今度は、あなたたちのグループには給付はないけれども負担だけしてねということは成り立たないと思います。

 大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 委員が言われた後期高齢者医療制度も、ある意味では共同連帯ということでありまして、後期高齢者の医療制度から支給されるものは特段現役世代に支給されるわけではない、その分を現役世代がそれぞれの形で負担をしている。まさに共同連帯の精神に基づいているわけであります。

 一方で、少子化が進む中で、社会全体としてこれに対して対応していかなきゃならない。そういった意味において、後期高齢者医療制度への現役世代からの支援と同様に、子育てを国民全体で支えるべきという考え方に立ち、出産育児一時金の大幅な引上げに合わせて、後期高齢者医療制度に対しても、出産育児一時金に要する費用の一部の支援をお願いするという仕組みを入れさせていただいたところでございます。

 たしかに、国民健康保険などにおいては、出産育児一時金の財源の一部に地方交付税措置等を行っておりますが、これは、国民健康保険が厳しい財政状況にあることを踏まえて支援をしているものでありますので、医療保険の給付である出産育児金の財源、これは保険料で賄うことを基本と考え、今回の制度をお願いさせていただいたということでございます。

 また、この制度が始まる前においては、高齢者の方も含めてこうした出産育児一時金を負担していただいたものと承知しております。

阿部(知)委員 そうですけれども、始まる前は七十五歳以上は分けていなかったんです。分けた上で、そこから本人たちには全く関係のない給付金、それを負担せよというのは保険の原理を逸脱しておると私は指摘したいんです。

 加えて、大臣、次のページを見ていただきますと、出産育児一時金はどんどん上がっております。

 この下からいきましょうか。平成六年、約三十年前は三十万円だったものが、今回は五十万円に。そうすると、どんどん上がっていくものに、御高齢者も含めて、自分たちの給付でないものを応援していくということになり、これは、私は、そうであれば、例えば、税はその人の所得に合わせていきますから、税から入れるという方が応能負担になります。保険料は論理が違いますから、保険料は保険者が払い、そのグループに生じた疾病のために使うということであります。

 続いて、もう一点。次のページは、出産費用の上昇と併せて地域差のことがグラフになっております。一番安い鳥取、そして高い東京。大体、都市部が高いわけですが、しかし、今回、政府にあっても、出産の保険適用ということをおっしゃっております。私は基本的に賛成をいたします。ただ、目的があると思います。

 今、政府でお考えの出産の保険適用の目的は何でしょう。

加藤国務大臣 考えというか、まだたたき台を出しておりませんので、この段階でたたき台の内容に関わるような話については、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 目的もなくたたくことはありません。何をするために考えるかですから。

 私がお手元につけさせていただいた資料、実は人工妊娠中絶がいかに多いかであります。十二週以前の妊娠中絶が十三万件、そして十二週以降が約七千八百二十件。これらも、十二週以降であれば一時金の対象になります。そして、ここはとてもグレーゾーンです。実態が分からない。見える化ですね、ここが。

 もう一つの目的は、出産の安全性の担保です。

 お産は病気でないとよく言われますが、産む側は命懸けです。どんな出産だって楽な出産なんかないんです。産後の体も、体調も、あるいは心理的な負担もすごく大きいです。

 せめて、私は、これこそみんなで支える共助もあってほしいと思います。私が思う出産の保険適用は、見える化と安全性の担保です。安全性は、産科医療補償制度をつくったときに様々なデータが集まってくることによって、より安全なお産に近づいていったと思います。把握できないものをやっている限り、安全性は上がらない。

 ちなみに、その次の資料につけさせていただきましたが、これは二〇〇八年の連合の主張の中にある、産科医療において、正常分娩は療養の給付ではないことから保険適用とはされないが、出産は常にリスクを伴うから、患者にとって安心、安全な産科医療を確保するために、正常分娩や事前の健康診査等についても現物給付、ここではすなわち保険適用です、保険適用とすべきであると。

 私は、保険適用をめぐっては、やはり、なぜそうするんだということをしっかり押さえないと、これこそ納得と合意が必要です。女性たちの健康をみんなで支え、安全なお産を実現する、私はそれに尽きると思いますので、大臣にはお伝えをしておきます。

 最後になりますが、今日は、国立病院機構の楠岡理事長に来ていただいていますので、私が以前から問題にしております、徳島病院と東徳島病院の基本的には統合という方向性について、いま一度、理事長とお話がしたいと思います。

 国立病院機構は、この間、実は、赤ちゃんたち、新生児医療が発達することによって、重度の障害のある子も、生き、暮らしていけるようになった。ただ、ICUがいっぱいになるので、ポストNICUといって、赤ちゃんたちがICUを出て少し生活に中間移行していけるような場を持つということで、これは二〇〇八年、九年あたりから国立病院機構でやってくださっています。そのことに大変感謝しますし、国の政策医療を担うという大事な国立病院機構のミッションだと思って、実はこれからますます増えてくると思います。なぜならば、助けられる命が増えて、しかし障害を持って、しかし生きていく、その大きな流れを支えていただくために、国立病院機構には更に頑張っていただきたい。

 その上で、今回、徳島病院のポストNICU、今徳島病院にあるものを東徳島医療センターに移すという構想についてであります。

 実は、二〇一八年の二月に楠岡さんにも来ていただいて、この二つの病院の統廃合は地域の合意を得ていないとたくさんの反対が起こって、それではやはり国立病院機構として地域と生きていくことができなくなるということで見直しをお願いして、今日まで凍結状態になっている中、三月七日に発表されたのがポストNICUの移転でありました。

 私がここで今日、理事長にお伺いしたいのは、これからコロナ感染症が、五疾病六事業の六事業目として国立病院機構のミッションに加わります。感染症と、こうしたいわば日々の生活のケア、生活を支えるケアということを、どうやってバランスを取りながらやっていくのか。これは、今この時点で立ち止まって考えていただきたい。単にポストNICUを東徳島医療センターに移せばいいという問題では私はないと思っています。

 例を挙げると、東徳島医療センターは、コロナの患者さんも受け入れておられました。その結果、いわゆるショートステイ、短期にレスパイトで預かるということはどんどん件数が減って、中止をある時期せざるを得なくなった。しようがないんです、スタッフをそっちに、コロナに回さなきゃいけないから。どこの病院でもあったことです。しかし、またそういう事態が必ず起こる。そのときに、本当にこのポストNICUにいる子たち、あるいは私は重心の子供たちもそう思いますが、きちんとケアがされるだろうか、これから増えていくこの子たちのケアがそういう急性のリスクを抱えたところでできるだろうかという懸念がございます。楠岡理事長のお考えを伺います。

楠岡参考人 お答えいたします。

 まず、徳島県の小児医療に関しましては、徳島県医師確保計画令和二年度において、産科、小児科における医師の確保は喫緊の課題であるとされております。

 また、ポストNICU病床の専門医療については、合併症や在宅移行支援などの患者ニーズにも対応していくことが求められております。

 このため、徳島病院のポストNICU八床を、重症心身障害児病床や、あるいは短期入所、ショートステイなど、関連する医療機能をより広く持つ東徳島医療センターへ移し、合併症や在宅移行支援などの患者ニーズにより対応できるようにするということで、医療機能の持続可能性を高め、徳島県全体の医療体制に貢献していきたいというふうに考えております。それに基づきまして、今回の計画を出しているわけであります。

 しかし、そのポストNICU病床の移転先であります東徳島医療センターの重症心身障害児病棟は、議員が御指摘されるように、東徳島医療センターはコロナ病床も持っておりますけれども、その新型コロナウイルス感染症病床がある病棟とは全く独立した病棟でありまして、また新型コロナウイルス感染症の病床においてはゾーニングを行うなど、適切な感染防止策を講じた上での患者受入れを行っている状況でございます。

阿部(知)委員 恐縮ですが、理事長はそのように現場から報告を受けたのでしょうか、本当に。

 例えば、重症児病床からも看護師さんたちを、ほかのコロナ病床に回さなくちゃいけないんです。これは、どこの病院でも起こりました。そうしますと、重症児病床の方は手薄になります。そうしますと、ポストNICUとかを加えて迎え入れることができなくなります。もちろん、病床をゾーニングしてあるというのは当然です。そうしなければできませんから。

 私は、コロナ後の医療という中で、従来、重度心身障害者、あるいは今新しくやっていただいているポストNICU、本当に、国立病院機構に頑張っていただきたい。

 そのために、感染症のリスク、リスクは感染のリスクだけじゃなくて、そこに働く人の確保、どうしても異動させねばならない、数が減ってしまう。それゆえに、実は、東医療センターでのショートステイは現状減って、一時ゼロになっております。

 こういうことは、よくよく、私は、国立病院機構しかそういう分析はできないと思うんです。通常医療や、そういう慢性期医療に与える影響を加味した上でないと、今後の再編はないと思います。

 是非、理事長にあっては、リーダーシップを取って、例えば、北海道の医療センターでも八雲病院の筋ジスと重心を受け入れましたが、ここもやはりコロナのときは大変でした。筋ジスや重心は、比較的穏やかなというか、日常をどう管理するかという医療で、しかし、そこのスタッフにもコロナの方に行ってもらわないとできません。

 私どもも、普通の病院でもあった。例えば、慢性の病床から看護師さんを抜いてこないといけない。緩和ケア病床からも抜いてこないといけない。それがコロナでした。

 そこを十分考えていただいて、今後、私は今日問題提起させていただきましたから、是非、国立病院機構として、状況を分析して、よりよい重心医療、あるいはポストNICU医療を充実していただけますようお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は、健康保険法改正案に対する質疑ということで、早速質問に移らせていただきます。

 まず、少し、トピックスでございますので、私も今回の質問の事前レクを先週の二十四日金曜日の午前中に行いましたが、同日の夕刻でしたね、出産費用を将来的に公的医療保険の適用対象として検討することを岸田政権が三月末にまとめる少子化対策のたたき台に盛り込む方向で調整しているとの報道がなされました。

 まず、端的にお答えいただきたいのですが、大臣、これは事実でしょうか。

加藤国務大臣 まさにたたき台を現在検討しているところでございますので、今検討中の段階で、これが入っている、入っていないとまだ言えませんので、たたき台を公表したときに御説明をさせていただきたいと思います。

吉田(統)委員 いや、なぜかというと、大臣、これは、この法律案と密接な関係がある話ですので、本来は、やはり、この審議を進める上で、関連ですからね、今回、出産育児一時金等の話をするわけですから、大臣、極めて密接な関係があることですので、本来は、この委員会の場で、正直なところを御開陳いただいて、質疑を進めるべきだと、まずは冒頭、では、申し上げておきます。

 私は、出産費用の保険適用をかなり慎重に行うべきだと考えます。歴史的に見ても、正常分娩というのは疾患の治療ではありません。そして加えて、様々な理由で産婦人科医、そして産婦人科医会は保険適用にずっと反対をしてきています。これには様々な、当然、理由があります。

 まず、そもそもの話として、医療保険は医療に対して支払われるものですね、大臣。ですから、医療は医療保険上の狭義には治療を行うものであります。つまり、予防も医療保険における医療ではありませんし、出産も同様であります。本当に保険適用にするということであれば、かなり配慮が必要だと思います。

 まず、産科医師がお産の保険適用を恐れるというか嫌がる理由の一つとして、本当に適正な診療報酬が設定されるかという心配がまず大きいんだと思います。

 例えば、地域医療の中でお産を取り扱うには、医師一人ではもう到底できないという事情があります。三百六十五日二十四時間一人の医師で対応するのはもはや困難であるのは、厚生労働省は御存じだと思います。基本的に、いつお産があるか分かりませんね。今、確かに、促進剤等々を使って、ある程度コントロールできるようになってきてはいますが、それでもなお、やはり、なかなかそう思うようにいかないのが自然分娩、正常分娩でありますので、当然、複数の産婦人科医で今はもうチームを組んでやるのが、これは開業医も当然そうなっていますし、助産師や看護師、その他様々なコメディカルの協力があって、お産を取り扱うことができます。

 各々の医療機関が置かれた状況の中で、適正と考えられる費用が存在するわけですよね、ですから。これが適正値段以下の保険適用ということになると、必然的にお産に関わる人員の削減をせざるを得ません。医療機関、医療現場での働き方改革にも明らかにマイナスのバイアスがかかってまいります。

 ですので、特にコメディカルの方々の意見、現場の意見を十分に聞く必要があると思います。

 これを避けるためには、大臣、当然、出産に対する診療報酬を高く設定する必要がありますよね、これを防ぐために、十分な報酬として。そうしなければ、先ほど申し上げたように、お産に関わる人材の確保はできない。さらには、産婦人科のなり手も更に減少していきます。出産に対してのリスクが高まって、産科医療がまた、以前、二〇〇九年の政権交代前は本当に産科医療は崩壊していましたね、実際には。更なる少子化の要因となりかねません。

 さらに、逆に、大臣、診療報酬に高額な点をつけた場合は、今度は、現状三割負担ですから、基本的に皆さん、お産をされる方は。出産される方の自己負担は極めて高額になります。これも当然、少子化の要因となります。

 さらに、今まさに議論をしている出産育児一時金が継続されるかどうかも大きな基になるんですよ、議論の。

 つまり、このお産に関する診療報酬と出産育児一時金の問題はパラドックスな問題なんです。だから、どうしていくべきなのかということは、やはり、今この議論をする前提で、保険診療をどうするかということをお考えなのであれば、その前提がないとこの議論がなかなか進まないと思うんです。本来やはり審議できないという声が上がってもしようがないと思います。

 大臣は、私が今るる申し上げた点、どのようにお考えになるかを教えていただければと思います。

加藤国務大臣 まず、保険給付の対象には出産もなっているわけですよね。ただ、療養の給付の対象は、委員御指摘のように、疾病、負傷というふうになっている。したがって、そこには該当しない、こういった整理をさせていただいております。

 その上で、保険への適用の件でありますけれども、まず、現状は、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、出産費用も、よく地域差といいますけれども、地域差以上に施設差も結構あります。そうした実態がそれぞれであるということ。そういう中で、全国一律の診療報酬ということになりますので、医療保険は。そこをどうするのか、あるいは三割負担の自己負担をどうするのか、そういった課題があることはこれまでも申し上げてきているところではあります。

吉田(統)委員 いまいち答えになっていませんけれども。

 じゃ、大臣、保険適用にした場合、例えば、十万点とすると百万円の診療報酬を得ますよね、医療機関は。そうすると、自己負担は三十万なわけですよ。そうすると、万が一保険適用をなさるという場合に関しても、出産育児一時金、今議論をして、大臣、以前私とお約束していただいたじゃないですか、出産育児一時金、そのうち上げますよとお約束していただきましたよね、大分前の話ですけれどもね。この出産育児一時金は、じゃ、継続をされるという理解でよろしいんですか。

加藤国務大臣 まだ、先ほど申し上げたように、たたき台の中身については、検討しているところでありますから、こうなった、ああなったということを前提には申し上げられませんけれども、ただ、私どもが今申し上げている出産費用を上げようとしているこの時期、本年四月から出産育児一時金を大幅に増額をするわけでございますので、そうした意味において、そこを何か、やめるということではなくて、今年四月から出産育児一時金は大幅に増額する、このことは明確に申し上げられると思います。

吉田(統)委員 大臣、私は、大臣は立派な大臣だし、どういう質問をしても一定程度明快な御答弁をいただけるので感謝をしているんですが、ただ、今まさにこの法案の審議をして、その出産育児一時金の話をしているときに、よもや、あさっていきなり、じゃ、保険適用にしますと。そこで、出産育児一時金は、保険適用になったら、やめるんですとか、大幅に削減するんですとか、そういった議論になる前提の議論を、その二日前のこの委員会の場でやるというのはやはり無理があると思いますよ。

 だから、もし、本当にそのたたき台をそういう形で、三月末とおっしゃっていますからね、総理は。三月三十一日ですよね、あと二日しかないんです。これは激変ですよね、ある意味。激変をするのであれば、法案はやはり出し直すべきだと。これは立法府に失礼だと行政は思わないんでしょうか。純粋な質問で、どう思いますか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げているように、本年四月からは出産育児一時金を大幅に増額して支給をするということ、これは明確に申し上げ、そうした予算も出させていただいているわけでございますので、その上に立って、その費用をどうするのかということを含めて、この法案の中で御相談をさせていただいているということであります。

吉田(統)委員 だから、それはもうよく分かるんです。それはよく分かるんですが、またあさって保険適用にするという方針が出たとすると、そことの整合性を、今増額することが、そんなころころ変わるいいかげんな、いいかげんと言っては失礼かもしれませんけれども、ことを、二日前の委員会質疑でちゃんと御答弁いただけないような形ではやはりおかしいし、本来やはり、そういった前提があった中での議論をするということであれば、法案は、もっと遅く出されるなり出し直された方がいいんじゃないかと思いますよ、これは。

 だって、議論の前提がまた全て崩れていくわけですよね。だって、また今度、まだ来週、この質疑は続きますよね、あさって出てきた発表によっては全く内容が変わってくるわけですよね、我々が議論をする土台が。だから、そこは本当に真摯に行政としては御対応いただいた方がいいと私は思います。いろいろ議場からも声が上がっていますから、大臣、しっかり本当にお考えいただいて、また、逆に言うと、そういう話が出るのであれば、更に十分な質疑時間を取っていただく必要があるのかなと感想を述べて、次の質問に移ります。

 今回の法案について、内閣提出法案の条文において、憲政史上初めて、かかりつけ医機能という形でかかりつけ医という文言が法律に示されることになりました。

 もちろん、これまでも、政省令の中では、例えばかかりつけ医機能については、医療法施行規則において、医療法第六条の三第一項の規定に基づき病院及び診療所が報告する機能として、「地域医療連携体制」の中で、「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う医療機関の機能として厚生労働大臣が定めるもの(以下「かかりつけ医機能」という。)」と定められていますし、かかりつけ医については、子ども・子育て支援法施行規則において使用されていると厚生労働省とも確認をさせていただいています。

 いずれにせよ、今回、かかりつけ医機能という文言が使用されたことは、以前から、立憲民主党の中で、自身も、ほくと診療所というところで地域医療に三百六十五日二十四時間、寝る間もなく従事している医師でもある中島克仁委員が議員立法成立のために本当に取組をずっとされていたもので、その思いが一部結実したものであるということと、そして、大きなインパクトがあるということで、同僚の議員としても心から敬意をまず表します。

 日本の医療はフリーアクセスであって、医療従事者の自己犠牲でやはり成り立っている部分があるものの、世界で最もいい医療だと私は思います。現場の医師と医療従事者、そして厚生労働省の皆様方も頑張っていただいています。結果、コストパフォーマンスはもう断トツで世界一です。ちなみに、一例を申し上げると、PETはアメリカだと百万ぐらいしますね、一回やると。日本は十万でできますよね。これが本当に一例です。だから、PETは撮らないですね、アメリカはほとんど。でも、フリーアクセスが守られている、世界でも類を見ない医療体制です。

 しかし、若干の綻びが出てきたところは、コロナの際の孤独死や、フォローアップがなされない中での自宅死、すなわち、医療が個々人へリーチできなかったことと、医療の本質に国家としての費用がかかるのではなくて、医療周辺産業の経営者が収益を上げ過ぎている。もうけるなとは言いませんが、ちょっと収益を上げ過ぎている部分がある。

 例えば、医療関係の、医療人材派遣の法外に高い紹介料、これは本当に問題です。これは、ハローワークの機能とかを拡大して改善してほしいです、本当に。医療との連携関係にある介護、調剤などは、経営者のみが余りにも収益を上げているということは、やはりもう従前から指摘をされています。その一方で、現場の人は大変困難な状況に置かれています。処遇改善が必要になっていますよね。大きな綻びです、これも。

 医院、病院は収益率はもう極めて低く抑えられています。これは診療報酬上、そして、国家として、医療のグランドデザインとして問題があります。総合病院は、大臣、ほとんどもうからないの御存じですよね。大半が赤字です。

 それに対して、同じく、公的に値段が決まって、パイが決まる介護、調剤、保育といったものも、企業努力を大いにしていただくのは本当にありがたいんですが、優良なオーナーもたくさん見ていますけれども、時として、やはり、オーナーが給与を低く抑えているということがあります。余力があるのにオーナーが収益に回してしまっているということは、本当に、実態でもあると私は指摘をしています。

 一言もう一度付言すれば、ある議員のところに、介護の経営者が、もっと介護の報酬を上げてくれ、従業員のスタッフの給与を上げてくれと言ってきたけれども、ポルシェで来て、ポルシェで帰っていったと。同席していたインターンの若者が、心に響きませんでしたと言っていたという事実も、これは事実として申し上げさせていただきます。

 そういったこともちょっとるる申し上げさせていただきましたが、このような綻び、そして、先ほど申し上げた、医療の手が届かなかったところ、この部分にかかりつけ医機能がどう対応していくのかを、大臣、教えてください。

加藤国務大臣 この法案では、医療法に、かかりつけ医機能について、医療機関の機能として、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能と規定をすることにしています。

 これまでは、委員御指摘のように、省令の中にこうした書きぶりをして、それをベースに書かせてきていただきましたが、その背景には、これまでも御説明したように、複数の慢性疾患、また医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の更なる増加に合わせて、地域医療の担い手の確保が困難になる中、身近な地域における医療機関の役割が重要になっている、こういう事情がございます。

 そこで、この法案では、医療機能情報提供制度による情報提供を強化をしていく、また、医療機関にその機能の報告を求め、都道府県がそれを公表をする、そして、それらを踏まえて、都道府県と地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討していく、そして公表する、こういうことで、今回、かかりつけ医機能を法律に位置づけ、こうした制度整備を進めることで、国民や患者の方が自らのニーズに応じて適切に医療機関を選択できるようになるということ、また、医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化し、地域において必要なかかりつけ医機能の確保が進み、結果的に、国民、患者一人一人がよりよい医療サービスの提供を受けることになるということにつながるというふうに考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 役所の方の書いた御答弁書としてはよく大体分かるんですけれども、大臣、中島委員が法案化して、以前から委員会でも何度もしつこく言ってきましたね、かかりつけ医の重要性ということ、中島克仁委員、言ってきました。

 今回、この概念を特に法律に書き込んだわけですよね。それについて、このかかりつけ医機能が国民にどんなメリットがあるのかということを、もう一回大臣の言葉で、国民に語りかけるように、分かりやすく教えていただけませんか。ちょっと今の答弁書だと長くて、聞いていると、分かるんですけれども、もう少しコンパクトにそのメリットを、こういういいところがあるんだというのを教えてくれますか。

加藤国務大臣 メリットというか、今回の法律の中においては、まさにそうしたかかりつけ医機能、これは今でもそれぞれの医療機関が持っておられると思うんですけれども、でも、どこの機関がどういうことを持っているかというのは必ずしも分からない、今の医療情報提供制度の中では分からないということもあり、まず、そういった中で、特に継続的に治療が必要な方に係る、いろいろな診療に係る話について、こういう機能を持っています、こういう機能を持っていますということをそれぞれお示しをしていただくことで、ではどこを選ぼうかということに資するということ、そして他方で、それぞれの機能がどうなっているかということを俯瞰することによって、その地域における医療体制が十分か十分でないのか、あるいは必要ならこういった機能がプラスアルファ必要だから、では誰かやってくれないかという意味で地域の医療体制が向上される、こういったことにつながっていく、そしてそれが、もっと、最初に戻りますけれども、各患者、国民にとってよりよい医療が地域において提供していただける環境に資するというふうに考えています。

吉田(統)委員 大体分かりました。ありがとうございます。

 それでは、かかりつけ医機能を法定化するに当たって、今大臣よく御説明していただいたんですが、患者さんの医療へのアクセス制限、すなわちフリーアクセスを阻害することにつながる制度にしてはならないと考えています。というか、ここが一番大事だと思います。

 先ほど申し上げましたが、我が国は、国民皆保険の下でフリーアクセスを確保することにより、誰もが安心していつでも医療を受けることができる、世界に誇るべき医療制度を実現してきました。

 確認ですが、今回この法律により初めてかかりつけ医機能が定められるわけですが、今回の制度改正によってもフリーアクセスを阻害されることはないということでよろしいですか。これは榎本医政局長。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、かかりつけ医機能に関する制度整備について、国民、患者さんから見て、一人一人が受ける医療サービスの質の向上につなげるものとする必要があるというふうに考えておりまして、必要なときに必要な医療を迅速に受けられるフリーアクセスの考えの下で、地域のそれぞれの医療機関が、地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しながら、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要だというふうに考えているところでございます。

 このため、本法案におきましては、先ほども大臣から申し上げましたような、医療機能の情報提供制度の見直しでありますとか、医療機関からの機能報告を求めるというような仕組みを設けることとしているところでございます。

 こういったことで、本法案におきましては、患者の受療行動への介入について、これを規定するものではございませんでして、患者の医療へのアクセス制限につながるものではないというふうに考えているところでございます。

吉田(統)委員 次も榎本医政局長に聞いていきますが、今回のかかりつけ医機能の法制化については、例えば、令和四年五月二十五日の財政制度等審議会が取りまとめた「歴史の転換点における財政運営」では、「地域の医師、医療機関等と協力している、休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している、在宅医療を推進しているといったかかりつけ医機能の要件を法制上明確化すべきである。その上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである。」と示されています。

 このような、患者とかかりつけ医を結びつける認定制度や登録制度を導入すべきとの考え方もあります。しかし、この点では現在の政府案とは大きな差があり、私は、現時点では政府案が優れていると考えています。

 すなわち、マネージドケア、管理医療を取る形になると、これを目的とするか否かにかかわらず、やはり人頭払いとか、検査や治療に関して医師の判断まで制限される、あるいはマルメとすべき検査が増えて、必要な検査や治療ができなくなるなど、これはアメリカで実際に起こっているんですよね、本当に。アメリカというのは、医師の裁量よりも保険会社の裁量の方が大きくて、悲惨なんですよ、本当に。こういったアメリカ型の管理医療に近づくという印象が私にはあるんですね、この財政審の考え方というのは。私は、これはあってはならないし、やらない方がよいと考えます。そして、厚生労働省も同じ考えであると認識を私はしています。

 そこで、改めてお聞きしますが、厚生労働省はなぜ認定、登録制度をやってはいけないと思うのか、問題点をどのように考えているのかを教えてください。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございました認定、登録制度についてでございますけれども、今回、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に当たりまして、社会保障審議会の医療部会などにおきまして御議論いただきました。

 その中では、医療機関の選択権が患者側にあるという現時点の国民にとっての当たり前の意識に照らして抵抗感がある、強い、それから、既存の医師養成制度はかかりつけ医の登録を前提にした教育になっていないといったような御指摘をいただいているところでございます。

 その上で、政府としては、全世代型社会保障構築会議の報告書におきまして、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すべきであるとされたことを踏まえまして、今回の法案を提出させていただいたという次第でございます。

吉田(統)委員 厚生労働省が大変に妥当なお考えをお持ちで、しっかりとした御答弁をいただいたことに私は安心をしましたし、これからもしっかりやっていただきたいと思います。

 我が国の医師の在り方は、世界でも特殊だと思います。

 私は以前から、特にアメリカにいたときによく感じたんです。やはりジョンズ・ホプキンスに夜中とか土日にいる人間というのは八割ぐらい日本人だったりするんですね。というか、もうワーカホリックですよね。だから、やはり一流のラボとかは、日本人研究者を結構好む傾向はありました。日本人は本当に特異に勤勉な民族であると、これは、アメリカ人の研究者たちもやはり言いますね、口に出して。

 特に開業医も勤務医も、日本の話に戻りますが、極めて働き者である上に、特に内科医、外科医を中心に、世界でいう総合診療医的な知識と能力をそもそも持っていて、かつ、循環器だとか消化器といった専門医的な知識を持つ、そもそも希有な総合診療医が日本の大半の開業医であると実は私は考えますし、指摘をしています。

 日本では、ただ、総合診療医というと、実は一定以上の年の医師だと、研修医が行う外来か、ないしは奇病や不明熱、不定愁訴、こういった原因不明のものを探っていく総合内科というのが昔から日本にはございまして、そういったものを総合診療医と言ってきたんですよね。

 しかし、これと厚生労働省が立ち上げた総合診療専門医とはまた別のものであり、更にかかりつけ医機能というものが入ってくると、またこれは三者三様にちょっと違う概念だと私は認識しています。

 このように、かかりつけ医機能という言葉は国民にとって分かりにくい部分がどうしても出てくるんです。さっき申し上げた三者三様の概念が混ざってしまうことにもなるので、能力、資質をはっきり定義しておいた方がよいとも思います。

 そこで、お聞きしますが、かかりつけ医機能のうち、日常的な診療を総合的かつ継続的に行うと書いてありますよね。これは、どういった資質を持つことを想定しているのか。総合診療専門医という厚生労働省がつくったものとは完全に異なる概念なのか。その辺の理解をちょっと深めたく存じますので、榎本局長、お願いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘ございました総合診療専門医でございますが、これは、小児科、救急科なども含めて幅広い領域について研修等を行っておりまして、そういう意味で、総合的な診療能力を有する医師ということで、日本専門医機構によって認定されている専門医というふうに承知してございます。

 一方で、今回御審議をお願いしております法案の第三十条の十八の四第一号で、先ほど委員も御指摘されました日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能でございますが、これは、地域において確保する医療機関のかかりつけ医機能の一つとして、風邪や外傷など比較的専門性が低い疾患のほかに、専門性が高い疾患であっても状態が安定しているような場合などの日常的な診療について総合的かつ継続的に行う機能を想定しているものでございます。

 こうした法の趣旨に基づいて、今後、有識者などの御意見をお聞きをして、この機能の具体的な範囲や報告項目などについて検討して、この機能に関する省令などを定めてまいりたい、このように考えているところでございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 専門医制度もまだ、完全に制度の移行期間ですよね、局長。制度の移行期間中じゃないですか、全体的に。どの診療科もという意味です。これは、変な質問をしませんから大丈夫ですよ。安心してください。

 要は、ただ、ちょっとフレキシブルに運用したいとか、制度上の工夫が必要なところというのが、やはり過渡期で見えてきていますね。これは、ちょっと、通告をしていない話ですが。

 例えば、アレルギー専門医というのが、これからの時代、やはり、杉花粉症というのは一九六五年まで学会では発表されていなかったわけで、寄生虫と人間が共生していた時代にはほとんどなかったわけですね、アレルギーというのは。これが一九六五年に杉花粉症が報告をされているわけですが、今でも、広節裂頭条虫、サナダムシを飼うとアレルギーが治るなんて、そういう話がございますよね。

 ただ、このアレルギー専門医というのが、私がちょっと今仄聞している範囲で、ファクトチェックをして、また新たに質問するんですが、何か、内科と小児科医しかその専門医が取れないとか。耳鼻科とかが多いんですね、アレルギーね。眼科も多いですよね、アレルギー対応がね。こういったことも、やはり過渡期なのであれですけれども、私、またちょっとこれは、質問は改めてさせていただきますが、フレキシブルかつ実践的な運用をやはり専門医制度はしていってほしいと一言付言させていただいて、次の質問に移ります。

 今度は大臣に、やはり、また聞いていきます。

 介護を質問させてください。

 介護についての最大の問題は、介護の現場で働く方々の待遇が非常に低いまま抑えられているということ。だから、若者が入ってこないし、入ってきても辞めちゃうんですよね。寿退社なんて、本当に結構あるんですよね。結婚することでもう家族を食わせられないから辞めるとか。

 介護報酬を増やしてほしいとか、働く方も増やしてほしいという話も聞きますが、私から見ると、本質的な問題は、やはり、介護施設、介護関連企業が、オーナーの取り分がちょっと多いんじゃないかというところは感じます。

 確かに、報酬が公定で決まる業界ですので、個々、給料をずっと上げ続けることは難しいとは思うんですが、それでもやはり、なお最大限の支払いをしていく必要はあると思います、大臣。

 オーナーなどが取り分を、ちょっと一定程度まで、もうけるなとは言いません、もちろん、事業ですから、収益を上げていいんですよ。ただ、取り過ぎを抑えるためには、例えば人件費割合、その中から、オーナーやオーナーの一族、例えば三親等以内とか、そういう方を除いた割合を開示するとか、これを一定程度、あるいは一定程度下限をルール化するなどということをすれば、介護報酬そのものを無理に大きく引き上げたり、諸々の加算をしなくても、必然的に現場で働く方の報酬が上がってきて、様々な問題が一定程度解消するのではないかと思います。

 介護現場で働く方々の待遇を引き上げる方策について、私が今、一案を開陳させていただきましたが、厚生労働省はどのようにお考えになっていますか。これは大臣、全部大臣です。

加藤国務大臣 まず、介護の関係でございますけれども、今回の法案で詳細な経営情報の提出等を義務づけることになっていますが、これはあくまでも政策決定に資するということで、個々の事業所の情報等を公表することはまず考えていないところであります。

 他方、人件費割合のお話がありました。各事業所、施設のサービス提供に当たって必要となる費用や経営状況に応じて、ただ、これはかなり変わるもので、これ以上、下限だからこれ以下ではいけないとか、そういったことを一律に設定するのは、これはなかなか難しいんじゃないかなというふうに考えていますが、ただ、介護職員の処遇については先般三%の引上げを行って、それがどう反映するかも検証しているところでございますので、そうした検証状況も踏まえながら、さらに、令和六年度は介護報酬改定の議論もございます、そういったことに当たっていきたいと考えています。

吉田(統)委員 では、いろいろ聞いていきますけれども、介護の中のケアマネジャーの資質についてお伺いします。

 介護の世界では、ケアマネ、非常に大きな権限を持っています。利用者の介護全般に関する相談援助や関係機関との連絡調整などを行います。すなわち、どの施設を利用するかの決定権限もある程度持つということなんです。

 このような権限を持つケアマネさん、公正中立性が高度に要求されます。しかし、現場の状況をお聞きすると、ケアマネさんからの金品の要求などが結構横行しています。施設側が手ぶらで挨拶に来ると、もうお前たちには仕事を回さないとか、そういったことを実際言っている話もたくさん仄聞します。これは介護の質を損ねかねない重要な問題であって、ケアマネの資質の担保は非常に重要だと思います。もちろん、一生懸命やっている方は多いんですよ。中にこういうちょっと悪質な方が交ざるとまずいんです。

 だから、ケアマネの資質の担保として、私が今るる申し上げた問題、厚生労働省としては、どのように考え、どのように対処していこうとお考えかを大臣にお伺いします。

加藤国務大臣 まず、指定居宅介護支援事業の運営基準というのがございます。そこでは、ケアマネジメントは、利用者に提供されるサービスが特定の種類、特定の事業者に不当に偏する、偏ることのないよう、公正中立に行われなければならないとしております。

 居宅サービス事業者等からの利益収受、利益を受けることですね、また、居宅介護支援事業者の管理者が従業員であるケアマネジャーに対し特定の事業者によるサービスをケアプランに位置づける旨の指示を行うこと、これは禁止をされているところでございます。また、市町村が実施する居宅介護支援事業所への指導監査の結果、これらの基準に従って適正な事業運営がされていないことが確認された場合には、市町村から事業者に対して改善指導を行うこととしております。

 公正中立性を確保するための報酬上の対応としては、特定事業所集中減算を設け、ケアプランに位置づけられた訪問介護等のサービスのうち、同一事業者によって提供されたものが八割を超える場合には基本報酬を減額する、こんな仕組みも入れ込ませていただいているところでございます。

 こうした効果検証を踏まえながら、多くのケアマネさんは本当に介護者のためにいろいろ考えて対応していただいていると思いますけれども、こうしたケアマネジメントが今申し上げたように公正中立で行われるということ、これは実は介護保険制度のコアでありますから、それに向けて、我々もしっかりと方策を講じていきたいと思います。

吉田(統)委員 是非、ちょっと調査をしっかりと役所もしてくださいね、実際起こっていますからね。

 次に、東京、大阪、名古屋の大都市圏で起こっている問題をちょっと申し上げます。

 高齢者施設等で医師の配置が義務づけられていない施設、つまり常勤の医師がいない施設で、往診に来る、往診で診察に来る医師に対して、いわゆるショバ代を要求するという話が横行しています。主治医というか、これもかかりつけ医の一種ですね、大臣。このような要求は許されないと思うんです。もっとひどいのは、こういった施設が、ショバ代を出さないこと、ないしはショバ代が安いことを理由に医師を交代させる例も最近起こっています。

 このような事態について、法律の趣旨からどのように考え、どのように大臣は対応されますか。

加藤国務大臣 まず、有料老人ホームについては、国が都道府県に対しお示しをしている標準指導指針というのがございまして、そこで、入居者が医療機関を自由に選択することを妨げないこと、医療機関から金品等の経済上の利益を受けることにより、入居者が当該医療機関の診療を受けるように誘引してはならないこととしています。

 また、保険医療機関等に関しては、療養担当規則等の中で、事業者に対して患者を紹介する対価として金品等を提供することによって患者を誘引することは禁止をされているところでございます。

 このように、有料老人ホーム又は医療機関のそれぞれに対して必要な規制を設けているところでありますが、御指摘のような事案があるとすれば、都道府県において事実関係の確認が行われるとともに、必要に応じ改善指導等を適切に行うべきものというふうに考えております。

 現時点で具体的に把握しているわけではありませんが、現在、複数の自治体や関係団体に対し聞き取り調査を行っており、その結果を踏まえて必要な対応を検討していかなければならないというふうに思っております。

 なお、この法案とは直接は関わるわけではありませんが、御指摘のような事案があるとすれば、地域医療の確保や患者への適切な医療サービスの提供といった点からも適切なものではないというふうに思います。

吉田(統)委員 もう、大臣や、さっきも局長もうなずいていらっしゃいますが、このおっしゃっている内容は私もよく存じ上げております、当然。その上で質問しているのは、そういう事案がどうしても横行していると。私は、本当に多くのケアマネさん、心から敬意を表します。今日そういう話を取り上げていますが、悪いとは全く思っていないんです。一生懸命頑張っていただく中で、本当にちょっと、一部そういったことが横行すると、これは本当に公平性、中立性、利用者の損益になることなので、是非御対応ください。

 もう時間的に最後の質問になっていくかもしれませんが、大臣、るる御説明は受けているのでよく分かっているんですけれども、ちょっとこれは、こういった事案があることをどうしても委員会の場で議論したいので申し上げます。

 大臣、逆に、介護施設などが自分たちに有利に配慮してもらうようにケアマネを接待するということが常態化していることもあります。先ほど申し上げていますが、これは介護施設が過度に収益を上げ過ぎているということも影響している可能性は実はあるんだと思います。

 ある介護施設のオーナーとお話をしたときに、各事業所は二割収益率を目指す、全て二割、二割稼がないところは所長を叱咤したり、所長に指導するとオーナーが言っていました。そうすると、売上げが百億だと、二十億、自分のポケットに入るということを言っているわけです。これは、幾ら何でも、国が進める政策の中で、正しい姿なのかなと私は感じます。

 是非、厚生労働省においては、実態把握をした上で、このような接待を禁止することもそうですし、やはり、禁止することはもうされているんですけれども、指導取締りを強化するなどをしていただきたいこと、そして、私が重ねて申し上げたいのは、事業ですのでもうけるなとは全く私は申し上げませんけれども、もう少し現場にお金が流れるように、これは現代版「蟹工船」じゃないですから、本当に。現場で一生懸命汗水垂らす皆さんに少しでも報いる形になるような制度を本腰を入れてやっていただきたいということを申し上げまして、この取締り強化、大臣、いかがでしょうか。どうしても局長が何か言いたければ、局長でもいいですよ。局長、一回ぐらいは。

大西政府参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 指定居宅サービス事業等の運営基準におきまして、居宅サービス事業者等が居宅介護支援事業者に対し利益を供与することは、先生御指摘のとおり、禁止をいたしております。これらの基準に従って適正な事業運営がされていないことが確認されました場合には、市町村から事業者に対して改善指導を行うこととなるわけでございます。

 利用者に必要な介護サービスが適切に提供されることがもちろん重要でございまして、これらの基準を遵守して、市町村において適切に対処されるべきものでございますけれども、先生のこれまでの御指摘も踏まえまして、まずは自治体に状況を聴取してまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 まだ少し時間がありますので、じゃ、もうこれは局長にしましょうかね、最後。大臣、たくさん答弁いただきましたので。

 やはり、こういった事態を防ぐ手段としては、介護、調剤も法人化をして、介護、調剤とかそういうものを、株式会社じゃなくて医療法人みたいに法人化をして見える化、見える化が一番大事だと思いますよ、適正化をしていくということをすると、もっと公平公正な制度、これは厚生労働省が目指される姿だと私は思うんですよ、なると思いますが、局長、どうですか。

大西政府参考人 新たな御質問でございまして、適切なお答えができますかちょっとあれでございますけれども、見える化ということでいきますと、先ほども御答弁申し上げておりました、本法案におきまして、法人の形態はいずれにしても、介護サービス事業者に対して経営に関する情報の報告を求めることといたしております。その情報に関するデータベースも整備することとしておりますし、介護保険制度といたしましては、事業者ごとの情報公表制度も設けております。そういうものをしっかり活用いたしまして、人件費なども把握をいたしていく予定でございます。

 また、さきの話に戻りますと、御指摘のような不適切な事例につきましては、都道府県等におきまして改善指導等により適切に対応していってほしいと思いますし、それに向けての私どもも動きをしてまいりたいと思っております。

 なお、二割の利益率というお話もございました。端的にデータだけ申し上げますと、令和四年度の介護事業経営概況調査ですと、平均的な収支差率は、施設においてですが、約三%でございます。また、令和四年度の決算の状況も調査することとしておりまして、六年度の介護報酬改定に向けて、こうした結果も踏まえまして、必要なサービスが介護が必要な方に行き届きますように、関係者の御意見も伺いながら検討してまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 時間が来ましたので終わりますが、報酬のところ、経費で好きなように使っている部分があるから、それもチェックしてください。

 以上です。

三ッ林委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、政府提出法案のタイトルである持続可能な社会保障をどう構築するかということについて質疑をいたします。

 今回の法改正は、一言で言えば、社会保障の費用の分担を世代間や保険者間で調整をしようというものであります。出産育児一時金に後期高齢者医療制度からの支援金を導入したり、後期高齢者医療制度の負担率を後期高齢者と現役世代で同じ伸び率にしたり、前期高齢者の医療給付費を保険者の報酬水準に応じて調整をしたり。しかし、世代間で負担のツケ回しをしても、負担の総額は減らず、社会保障が持続可能になるわけではありません。

 社会保障を持続可能にする方法は大きく二つあります。一つは、少子化対策で人口構造を変えて、社会保険料を主に負担する現役世代の人口割合を増やすこと。もう一つは、健康、予防政策で、病気や要介護になる人の割合を減らすことであります。

 少子化対策については、二月三日の予算委員会で、五十分フルに使って、財源確保の方法まで含めて提案をいたしました。N分N乗方式より効果的な子供一人当たり一律の減税又は給付、児童手当の所得制限撤廃と対象年齢の引上げ、自治体の医療費無料化に対するペナルティーの廃止、国による子供医療費の無料化、そして給食費の無料化、また第二子以降の保育料の無料化、大学授業料無料化に向けた高等教育の公費負担割合の増加、そして、将来の税収増を見込んだ少子化国債、また、税収増につながるエビデンスを担保するエビデンスセンター、そして、中立的に厳しく財政見通しを行う独立財政機関。

 これらの提案がたたき台にどこまで盛り込まれるか、また、言いっ放しのたたき台ではなく、実際に財源を確保して実現をされるか、今後の政府の対応をチェックしてまいりたいというふうに思います。

 本日は、社会保障を持続可能にする二本柱のもう一つ、予防政策について伺います。

 実は、予防医療や介護予防で健康寿命が延びても、その後に来る不健康な期間が短くなるとは限りません。予防政策で短期的には医療、介護の費用が下がっても、人一人が一生に必要とする医療・介護費は結局同じということがあり得ます。

 本会議でも申し上げましたが、約六百の論文をレビューして、一千五百種類の予防医療の費用対効果を分析したアメリカの研究によると、予防医療の中で医療費を下げる効果のあるものは全体の二〇%でありました。大半の予防医療は、健康にはなるが医療費も増えるということであります。

 これまで、健康日本21では、健康寿命を延ばすことが目標に掲げられ、健康寿命を延ばす政策や事業が実施をされてきました。しかし、健康増進や予防の効果が同じぐらいある政策であれば、医療、介護の費用が増える政策よりも、減る政策を優先すべきと考えます。

 現在、政府は、健康日本21の第三次計画を作っています。全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現がビジョンとして掲げられる見通しであります。

 そこで、大臣に伺いますが、健康寿命を延ばすだけでなく社会保障財政にプラスの影響を与える健康政策や予防医療政策を進めるべきではないでしょうか。お伺いいたします。

加藤国務大臣 まず、誰もができる限り医療や介護に頼ることなく健やかで心豊かに生活できる社会を実現していく、まさに健康増進施策を進めることが重要ということで取り組んでまいりました。

 国民健康づくり運動である健康21においては、健康寿命の延伸を目標として、生活習慣の改善や健康づくりに取り組める環境整備等に関する指標を設定しており、医療費や介護費について直接の目標は設定をしておりませんが、医療費適正化計画においては、特定健診、特定保健指導等の健康の保持の推進に関する目標を設定し、これに関連する取組を盛り込み、医療費の適正化を図ろうとしているところでありますし、また、健康21において、医療費適正化計画と共通の指標も設定をし、健康増進施策を進めるということにしているところであります。

 これまでも、特定健診、特定保健指導については、予防・健康づくりに関する大規模実証事業において、健康増進効果や医療費適正化効果のエビデンスの収集にも努めてきたところでありますので、今後とも、こうした知見の蓄積を図りながら、国民の健康増進の施策をしっかりと進めさせていただきたいと思います。

 ただ、なお、今それを前提としてお話しになっていると思うんですが、健康増進して医療費に係る影響だけじゃなくて、健康増進した結果としてその人のQOLは上がるということも非常に大事でありますから、そうしたことも総合的に勘案して考えていくべきものだと思います。

井坂委員 大臣が最後におっしゃったのは、もう当たり前過ぎる前提として申し上げませんでしたが、あくまで、健康、予防政策というのは、QOL、生活の質を上げるというのが第一の目標である、これはもう当たり前のことであります。加えて、QOLを上げるだけでなくて、その中にも、例えば、健康政策、予防政策、いわゆるQOLを上げる効果と、それから財政に対する効果、二つの効果を二軸で今後は見ていく必要があるのではないかということを本日議論をさせていただきたいと思います。

 この二つの軸で政策を仕分けると、健康政策あるいは予防政策は大きく四段階に分けられます。

 一つは、健康、予防効果があり、すなわちQOL、生活の質を上げる効果がきちんとあり、その上でさらに財政にとっても黒字効果、将来の医療・介護支出を減らす、財政にとってプラスの効果がある政策、これが一番目であります。

 二つ目が、これが多いわけですけれども、健康、予防効果はもちろんある、QOLを上げる効果はある、ただ、将来の財政に対しては、必ずしも黒字になるわけではなくて、実は、一生、トータルで見ると出ていくお金が増える政策。これが非常に多いわけであります。この政策が二番目。

 そして、その中でも、費用対効果が高い政策と低い政策という二つに分かれるということであります。これが二番目と三番目。

 そして、最後、あってはならないことでありますけれども、実は健康、予防効果がない政策というのも一部残っております。QOLを上げる、生活の質を上げる効果が実は余りないということがエビデンスとして出ている、こういう政策もあるわけです。

 まとめますと、健康、予防効果があって、さらに財政にもプラスの効果がある、一番私が望ましいと思う政策が一番上にあり、次に、健康、予防効果はあるけれども財政にとってはやや赤字、ただし費用対効果は高いというのが二番目。そして、健康、予防効果はあって、しかし費用は思った以上にたくさんかかる、費用対効果が余りよくない政策というのが三番目。そして、そもそも健康、予防効果がない政策というのが四番目であります。

 大臣又は細かい話であれば参考人でも結構ですが、今回、先ほどの御答弁で、健康日本21、それからあと医療財政の話、医療費適正化計画というのでその二つがつながっているんだという御答弁がありました。しかし、健康政策があまたある中で、医療費適正化計画に含まれているのは本当にごくごく一部であります。健康政策が大きくあって、医療費の話があって、重なるごく一部の部分が医療費適正化計画に入っている、こういう状況であります。医療費適正化計画だけでなく、そこに含まれていない、それ以外の予防政策や健康政策を医療や介護の財政が黒字になる政策と赤字になる政策に分けて、黒字政策を優先する仕組みや計画を作るべきではないでしょうか。伺います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 健康政策、御指摘のように、あまた、様々なものがございます。QOLを高める効果がもし同じであれば、医療や介護の費用が増える政策よりも御指摘のように減る政策を優先して取り組むという意味での費用対効果、こういったものも意識した上で健康増進施策に取り組むことは非常に重要であるというふうに考えております。

 これは一般論になりますけれども、健康増進施策につきましては、その施策の効果が表れるまでに非常に長時間を要することでありますとか、あるいは施策以外の様々な要因も健康状態には影響することがございます。全ての施策について費用対効果を検証することはなかなか実際には容易ではございませんけれども、様々な研究成果や国内外の文献等から得られる科学的な知見も踏まえて、委員御指摘の費用対効果といったようなことも意識しつつ、必要な取組を行っていくことが非常に重要なことだと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 おおむね前向きな御答弁だったというふうに思います。ただ、それを単なる一般論ではなくて、本当に健康21で、特に第三次計画でやろうとしている政策に全部を、悉皆的に、全ての政策の財政効果というものを、あるいは健康効果というものを全部出せというような無理を申し上げるつもりはないんですけれども、ただし、健康政策でやろうとしているような、いわゆる世界でも広くやられているような政策はおおむね様々な角度からの論文そしてエビデンスが出ているわけでありますから、それはやはりちゃんと全部チェックをした上でやっていただきたいというふうに思いますが、ちょっとそこだけ、一般論ではなくて、健康日本21で本当に各政策、分かる範囲で全部やるということについてお答えをいただきたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 健康日本21、今新しい計画を作っているところでございますけれども、この作成の過程におきましても、御指摘のように、様々なエビデンスを確認させていただいた上で実施をしているところでございます。その中には、もちろん、QOLを上げるという効果だけではなくて、費用対効果、そういった観点のエビデンスも含めて評価をしているところでございます。こういった観点はしっかりと持ちつつ、今後とも取り組んでまいりたいと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 続いて、大臣に伺いますが、さっき四段階と申し上げました。一番下の、そもそもの健康、予防効果がない政策、あると思ってやってきたけれども、実は最近の研究で、ないことが分かったような政策、こういったものも一部続けられているというふうに認識をしております。こうした、そもそも健康寿命を延ばす効果や治療効果がない政策については、やはり一定のエビデンスに基づいて、これは今後行わないというようにすべきではないかと思いますが、大臣の今後の話をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 まさに、そうした効果がない、要するにコストだけかかっている、あるいは、場合によっては逆の影響が出てしまっている、こういうようなものはしっかり把握をしながら是正をしていく、これは当然のことなんだろうと思います。

 また、医療保険制度の持続性を高めていくためにも、エビデンスを踏まえた取組が必要であります。

 これは医療費の関係になりますが、令和六年度からの第四期医療費適正化計画では、新たな目標として、急性気道感染症に関する抗菌薬処方など、効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療の適正化を位置づけ、関係者が地域における医療サービスの提供状況を把握、検討し、地域ごとに適正化に向けた取組を進めるとしております。

 さらに、エビデンスに基づくこうした取組を広げていくことが重要で、有識者による検討体制を発足させ、エビデンスを継続的に収集、分析し、医療費適正化計画において都道府県が取り組める目標、施策の具体的なメニューを追加していくこととしているところでございますし、また、こうした議論をしていく場として、この法案では、都道府県ごとに保険者協議会を必置をすること、また保険者協議会への医療関係者の参画を促進することなど、都道府県が医療保険者や医療関係者等と連携して、地域の実情を踏まえ取組を推進する体制の構築も入れさせていただいているところでございます。

 いずれにしても、今委員から御指摘があった、エビデンスに基づいて必要な医療をしっかりと、あるいは健康増進を進めていきたいというふうに思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 どうしても、当局と議論していても、常に、医療費適正化計画というこの二つが重なった非常に狭い部分で御説明をいただくので、その中においては真面目にやっていただいているというふうに私も認識をしております。是非、医療費適正化計画に入らない、その他多くの健康政策について、そういった観点でしっかり見直しをしていただきたい。医療に関しては今回の法案でそういった見直しはされるということが入っておりますので大変よいことだというふうに思いますが、健康政策について、これまでやや曖昧に漫然と続けられてきたようなことがございますので、そこもしっかり見直していただきたいというふうに思います。

 続きまして、これまでは財政効果も考えて健康政策や予防政策を推進しましょうという話をしてまいりました。逆に、今みたいなことを本当にやっていただくと今度どうなるかというと、社会保障支出を減らす健康、予防政策、いわゆる黒字政策が増えてくる。そうすると、今度は逆に健康、予防政策の黒字効果も考えて社会保障財政を運営しなければならないということになると思います。

 大臣に伺いますが、健康、予防政策による財政的なプラスの影響を織り込んで社会保障財政の見通しや計画を作るべきだと考えますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 基本的に、医療費、介護費は伸びていますので、伸びをマイナスというのはなかなか難しいとしても、今委員おっしゃるように、伸びをいかに抑制させていくか、そのためにどういう取組が必要なのか。

 医療費適正計画では、先ほど申し上げたように、特定健診、特定保健指導等の健康の保持の推進に関する取組を盛り込み、これが達成された場合の効果で医療に要する費用の見込みを推計をし、介護保険事業においても、自立支援、重度化防止など介護予防等に係る取組を盛り込むとともに、それを踏まえた介護給付費の見込みも出させていただいておるところでございます。

 それらを総じて、二〇四〇年を見据えた社会保障の将来見通しを作成しておりますけれども、その見通しは、今申し上げたような、それぞれの医療、介護の適正化を反映した形になっているわけであります。

 これは将来の見通しでありますから、その見通しを実施していくためにも、健康政策、予防政策、効果のあるそういったものをしっかり実施をしていきたいというふうに思っておりますし、特に医療費適正化のことを中心に申し上げましたが、先ほど申し上げた大規模実証実験も厚労省と経産省でもやらせていただいておりますので、こういったこともいろいろやりながら、効果のある施策をしっかり進めていきたいと思います。

井坂委員 今、どうしても議論をすると医療費適正化計画の世界の中の話がやはり御答弁の中心になるわけで、そこは私も認めているんです。

 ただ、健康政策においては、医療費適正化計画、特定健診とか本当に限られた個別の政策の個別の効果を積み上げ型で医療費適正化計画は数えているというふうに思うんですが、それだけではなくて、健康日本21の第三次計画で、一個一個の細かい数字は分からなくても、全体、これだけやればマクロでこれぐらいの健康増進効果とこれぐらいの財政効果が見込めるんだ、こういった見通しを立てた上で、両者、医療・介護財政と健康政策をちゃんと全体を連携をさせて見通しを立てていただきたい、こういう趣旨で御質問を申し上げておりますので、ちょっと適正化計画から離れて、健康日本21全体と医療・介護財政の長期のマクロの見通しをきちんとリンクをさせるということについて、大臣の、もう一度御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 先ほどちょっと申し上げたように、大規模実証は、必ずしも医療費適正化計画ではなくて、様々な健康増進施策等々、これまで言われてきているものが実際にどの程度効果があるのか、これを三年にわたって今実証し、その結果を刈り取ってまた次の施策につなげていきたいというふうに考えているわけでございますので、そういった幅広い対応をしていく、それが多分、委員がおっしゃっていることだと思いますので、まさにその思い、同じ思いで取り組ませていただきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 大規模の実証で実際にエビデンスが取れる範囲がどんどん広まっていくということについては、当然よいことだというふうに思いますが、是非、健康日本21全体でどれだけ医療、介護の持続可能性に寄与できるのか、こういう目線でやっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、本日の大きなテーマの二つ目、かかりつけ医について伺いたいと思います。

 本法案では、医療機能情報提供制度を使って、かかりつけ医機能を持っていますと自己申告をした医療機関の情報が国民に提供されることになります。しかし、医療機関が十分なかかりつけ医機能を本当に持っているかどうか、これはやはり最低限チェックをした上で国民に情報提供すべきではないでしょうか。伺います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘いただきましたように、本法案におきましては、国民、患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を選択して利用することができますように、かかりつけ医機能に関する情報を分かりやすく情報提供するということとしてございます。

 これまで、医療機能情報提供制度において、医療法施行規則などの規定に基づいて、かかりつけ医機能に関する国民、患者への情報提供が行われているところではございますが、情報提供項目の具体性が乏しいとか、あるいは診療報酬の届出状況をそのまま公表しているだけで内容が分かりづらいとか、国民、患者が実際に医療機関を選択するツールとして不十分だといったような御指摘がありましたことも踏まえて、国民、患者の医療ニーズを踏まえた情報提供項目に見直しをして、医療機関の選択に資するように分かりやすいものとしていこうというふうに考えてございます。

 今既に、医療法におきましては、都道府県は、病院等から報告された内容について確認が必要と認める場合には、市町村等に対して、その病院に関する必要な情報の提供を求めることができるという規定がございます。また、病院等が報告を行わない場合等には、当該病院等の開設者又は管理者に対して、適切な報告を行うよう指導することができるといったような規定がございます。

 私ども厚生労働省といたしましては、引き続き、医療機関から正しい報告が行われますように、都道府県に適切な対応を促していきたいというふうに考えているところでございます。

井坂委員 確認ができる、そして、確認をして必要な機能がなければ、ちゃんと申告をしてくださいという指導ができる、そういう御答弁だというふうに思います。

 重ねて伺いますけれども、このかかりつけ医機能をうちの診療所は持っていますと医療機関が自己申告をした場合に、都道府県が確認をして、いや、あなたのところはかかりつけ医機能を持っていないでしょうと、確認の結果、都道府県がそう判断した場合というのは、医療機能情報提供制度のホームページには、その医療機関はかかりつけ医機能を持っていない医療機関と表示されるということでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今御紹介しました医療機関の医療機能情報提供制度でございますけれども、この制度、先ほども委員から御指摘ございましたように、平成十九年に創設して以来、これは基本的には、病院等が自らの責任においてその医療機能情報を都道府県知事に対して報告をしていただいて、報告を受けた都道府県知事が基本的に当該医療機能情報をそのまま公表するという形で運用してきているものでございます。

 そういった中で、確認が必要だということが認められれば、市町村等に対して、その病院等に関する必要な情報の提供を求めることができるという形にし、仮にまた、病院等が報告を行わないといったような場合には、適切な報告を指導することができるということになってございますので、そういった枠組みの中でこれはやらせていただいているというところでございます。

井坂委員 今のお答えですと、医療機関が自己申告でかかりつけ医機能ありと言ったけれども、都道府県から見たら、あなた、機能ないじゃないですかと思っても、別に国民への情報提供はそのままされるということでしょうか。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 榎本医政局長。

榎本政府参考人 失礼いたしました。

 基本的に、先ほど申し上げましたように、この医療法の枠組みの中におきましては、医療機関の方からその情報の報告をいただいた上で、仮に報告をしない、あるいは虚偽の報告であったといったようなときには、その報告を改めて管理者の方から行わせて、またその是正を命ずるということができるような規定にはなっているところでございます。

 そこまで、実際にどこまでやっているかというところは、各都道府県の取扱いというところではございますが、一応そういった枠組みの下で各県の方で適切な情報提供が各医療機関の方からなされるように対応いただいているものというふうに考えているところでございます。

井坂委員 今回、いわゆる認定の仕組みは取り入れないということで、代わりにということで、かかりつけ医機能を持っていますよということをまず国民に情報提供しましょうというので、第一歩であるという御説明だったというふうに思いますが、しかし、その第一歩が、本当にかかりつけ医機能を持っていないのに自己申告で普通に国民にはそう情報提供されてしまうということでは、これは大変問題だというふうに思いますので、そこはしっかり実効性のある仕組みにしていただきたいというふうに思います。

 要は、ただの情報提供じゃなくて、本来認定すべきじゃないかという議論が本当にこの間ずっとある中で、認定をせずにまず情報提供にとどめたわけですから、その情報提供の中身すら自己申告で事実上担保されない、都道府県のチェックもどこまでやるか分からないということであれば、これはちょっと第一歩とも呼べないものになってしまいますから、ちょっとそこ、本当に大丈夫なのか、お伺いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ございましたように、私どもとしても、この医療機能情報提供制度の趣旨に鑑みて、正確な情報が国民、患者の皆様に提供されるようにする必要があるというのは全く御指摘のとおりだというふうに考えてございます。

 基本的に、今回のかかりつけ医機能報告の中で、医療機関の体制を確認した結果、必要な要件を満たしていなかったような場合ということがあれば、ちょっと具体的なその手続などは施行までに改めて検討を進めさせていただきたいと思っておりますが、先ほど申し上げたような正確な情報を提供するという考え方の下で、どういうふうにできるかということは改めて整理をしていきたいというふうに考えてございます。

井坂委員 今後の検討ということで、また引き続きチェックをしていきたいというふうに思います。

 立憲民主党は、必要な機能ということに関しては、プライマリーケア等に関する研修を修了した医師がかかりつけ医として認定をされて、そして地域住民が自らのプライマリーケアを担うかかりつけ医を登録できる制度ということで提案をしてまいりました。

 大臣に伺いますが、プライマリーケア等に関する研修を修了した医師がかかりつけ医として認定、まあ認定が今回先送りされるにしても、せめてこうしたプライマリーケア等に関する研修を修了したということが情報提供されるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、先ほどの公表の件ですけれども、都道府県が医療機関の報告内容を精査し、実際に体制を有していないことが明らかになった場合は、その機能について都道府県による公表の対象外になるという形で運営させていただきたいと思っていますが、ただ、どういうふうに基準を見るかとか、その辺はこれから詰めていかなきゃならないというふうに考えています。

 その上で、プライマリーケアのお話がありました。

 社会保障審議会医療部会においても、かかりつけ医機能に関する情報提供の強化に関する議論の中で、研修を受けた医師に関する情報を国民に提供すべき、あるいは、標榜する診療科と併せてその医師の専門性に関する研修歴を患者が確認できるようにすべきといった意見を頂戴したところでございます。

 法案が成立し、施行に向けてということになりますが、かかりつけ医機能に係る情報提供項目の内容について有識者の意見を聞いて検討したいと思っておりますが、その際、今申し上げた意見があったことなども踏まえて検討を深めたいと考えています。

井坂委員 大臣、ありがとうございます。

 最初にちらっとおっしゃった、先ほどの補足の御答弁ですけれども、都道府県がチェック、確認をして、かかりつけ医機能を持っているとは認められないとなった場合は情報提供の対象から外すという御答弁だったと思いますが、それはもう認定に近いようなことというふうに捉えてよろしいんでしょうか。認定とかはしないけれども、かかりつけ医の有無は都道府県が判断をして、持っていないとなれば、かかりつけ医とは国民には情報提供はさせない、こういうことですか。

加藤国務大臣 かかりつけ医機能があるかないかというよりも、どういうかかりつけ医機能を持っているのかということについてこれからちょっとお示しをし、どういう基準があればその項目を有していると言えるのかというのをこれからお示しをさせていただきますので、そのお示しをした基準と、まあいわば外形的な基準が多いと思いますが、当該診療機関、医療機関の実態とを確認したときに、その項目に合っていなければ、その項目については公表しないということでございます。

井坂委員 外形的な基準ということであれば、ちょっとやはり、我々が想定する、いわゆる本当にかかりつけ医としての能力の有無ということと外れがあるのかなというふうに思いますので、ここは引き続き、見解が現時点で違う、議論が必要な部分かなというふうに思います。

 続きまして、かかりつけ医機能の定義について午前中から様々な議論がされております。本法案では、かかりつけ医機能の定義に、疾病の予防ということが含まれています。ただ一方で、かかりつけ医機能報告の制度の要件にはこう書いてあります。継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能、これがかかりつけ医機能報告の要件として定義をされています。

 今日の議論の前半で、社会保障を持続可能にするためにということで、健康、予防政策が重要だという議論をしてまいりました。慢性疾患の高齢者やあるいは継続的に医療が必要な患者だけでなく、病気でないときも一人の住民を継続的に診続けて、病歴や体質や生活環境などを把握した上で予防や医療を提供する、こういう本来のかかりつけ医機能が必要ではないか、いや、むしろ必須ではないかというふうに考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、必要なとき必要な医療を迅速に受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が、地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要と考えておりまして、医療法に、かかりつけ医機能について、個々の医師ではなく医療機関の機能として、先ほど委員がおっしゃられた、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能を規定することとした上で、かかりつけ医機能を有する医療機関が適切に、国民、患者が選択できるよう情報提供を強化しようとするものであります。

 中身についてはこれから有識者の意見も踏まえて検討していくこととしておりますが、疾病の予防のための措置についてもかかりつけ医機能に含まれるものであるというふうに考えております。特に、高齢化の進展を見据え、日常的な診療を総合的、継続的に実施する機能など、継続的な医療を要する方に対するかかりつけ医機能については地域で確保していく必要があると考えており、今回の制度を入れさせていただいたところでございます。

 こうした仕組みを入れることによって、疾病の予防のためも含めて、質の高い医療が必要に応じ受けられる体制をつくっていきたいと考えています。

井坂委員 今回の法案では、かかりつけ医機能の定義で二つ書かれていて、この二つをちょっとごっちゃに議論するとややこしいんですけれども、大きくは、かかりつけ医機能の定義として、さっき申し上げた疾病の予防とかも含まれている。あれを見る限りは、ほとんど何でも入るような、普通の町の診療所が普通にやっていることがかかりつけ医というような定義になっていると思うんですね、日常的な医療を提供しますというだけなので。もう一つのかかりつけ医機能の定義は、かかりつけ医機能報告の際の要件で、これは逆に物すごい狭くて、継続的な医療が必要な慢性疾患の人だけを対象にしたような機能ということになっていますから、片や広過ぎて、どこのお医者さんでも入ってしまうような定義、もう片っ方は狭過ぎて、それだけだとちょっと役割を十分に果たせないんじゃないかという二つの、広過ぎる定義と狭過ぎる定義が本法案では同時に定義をされているというふうに思います。

 一つ目の、医療も疾病予防も全部提供しますみたいな広過ぎる定義は、これはもう地域医療の分担機能ぐらいに呼ぶべきものじゃないかというふうに思いますし、二つ目のかかりつけ医機能報告の要件に関しては、慢性疾患の継続診療機能と呼ぶべきものではないかなというふうに思うんですけれども、この二つを併せてなぜあえてかかりつけ医と名づけたのか、本来の言葉の意味であるかかりつけという要素は一体どこにあるのか、お伺いをしたいと思います。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 榎本医政局長。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、かかりつけという用語については法律上、定義をしているものではございませんけれども、今回、この法案としては、それぞれの医療機関が地域の実情に応じて、フリーアクセスの下でその機能や専門性に応じて連携しながらかかりつけ医機能を発揮するよう促すという観点から、医療機能情報提供制度でありますとか、あるいはかかりつけ医機能の報告の仕組みといったようなものを設けるということにしてございます。

 そういう意味で、患者の受療行動に介入したり、あるいは患者の医療へのアクセス制限を行うといったようなものではないことから、法律上、かかりつけ医とかといった用語を定義する必要はないという整理でやらせていただいているというところでございます。

井坂委員 今答弁でおっしゃった、かかりつけ医機能を発揮するために分担をしてとおっしゃった、そのかかりつけ医機能というのが今議論をしていて問題になっているんですけれども、法律上の定義は非常に広過ぎるわけですよ。ただの医療と疾病予防の提供ぐらいしか書いていないので。それだったら、別に、普通の町の診療所全部当てはまるというふうに思うんです。

 そういう、だから、地域医療の分担機能と呼べばいいぐらいの話を、なぜ、かかりつけ医機能、かかりつけという言葉を使って今回名づけたのか、そのかかりつけと言える要素はどこにあるのか、お聞きをしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、今委員から御指摘ありましたように、かかりつけ医機能という用語をなぜ使っているかというところでございますけれども、基本的に、かかりつけ医機能、非常に、先ほど委員御指摘いただきましたように、幅広い概念であるというふうに考えてございます。

 そういった中で、多様な機能が想定される中で、それぞれ、医療機能情報提供制度の仕組みでありますとか、あるいは医療機関から機能の報告を求める仕組み、それぞれ、国民の皆さんに幅広く情報を提供して国民の皆様の選択に資するというために機能情報をつくる。あるいは一方で、地域において必要な、高齢者などの方々を支えるためにかかりつけ医機能の充実を図っていくための議論を行う、そのベースとして、かかりつけ医の報告をいただく。それぞれその仕組みの目的がございますので、それぞれに合わせて具体的な中身については整理をする必要がある。

 ただ、全体としてのかかりつけ医機能ということが、ある程度法律の上では定義をした上で、今後、具体的な中身についてはそれぞれ有識者の方々に御議論いただきながら、必要な機能を柔軟に位置づけていくことができますように、法律上は幅広い形で、かかりつけ医機能という形で表現をさせていただいたというふうに御理解いただければと思っております。

井坂委員 かかりつけ医の定義が幅広いからという御説明でありますけれども、やはり、それはかかりつけ医と呼ぶべきものでは、現状ないと思うんですよ。少なくとも、現状、書かれている定義の範囲ではですよ。

 そこで、私、一つ御提案ですけれども、やはり、かかりつけ医機能の要件の中にこれを加えるべきじゃないかというふうに思います。病気でないときも一人の住民を継続的に診続けて、病歴や体質、生活環境などを把握した上で予防や医療を提供する機能、こういうことを入れるべきだ。

 逆に、これが入らないと、もうかかりつけ医とは呼べないと思うんですよね。それは地域医療医とかそういう名前にしたらいいだけであって、かかりつけとわざわざ名前をつける必要も理由もないと思いますから、今申し上げたような、病気でないときも一人の住民を継続的に診続けるんだ、病歴や体質や生活環境などを把握した上で予防や医療を提供するんだ、こういう要件を一つ明確に足すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 これは先の話なので、大臣、この議論を伺って、いかがですか。こういう要件、さすがに要るんじゃないですかね、かかりつけと名づけるからには。

加藤国務大臣 今、委員、どちらでお話をされているのかあれですが、第六条の三においては、医療を受ける者が身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能というふうに書かせていただいておりますので、委員のおっしゃっている意味は含まれているのではないかと思いますが。

井坂委員 大臣、済みません、予防の有無を今問題にしているんじゃなくて、一人の人を病気じゃないときも含めてずっと診ていく、背景も含めてちゃんと分かった上で医療や予防を提供するんだ、そこが入らないとかかりつけと名づける意味も理由もないのではないですかと、そこを言っているんです。予防の有無を今議論しているんじゃないんです。

加藤国務大臣 そこはまさにフリーアクセスとの絡みも出てくると思うんですけれども、そういったことを判断しながら患者、国民側がどうアプローチをしていくのかということだと思いますので、まずは、医療を受ける側が、この医療機関がどういうことを提供してくれるのか、それを見ながら、最終的にはその医療機関に継続的に診てもらう、こういうことになるんじゃないかと思いますが。

井坂委員 また引き続き議論をさせていただきます。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 それでは、今回の閣法に関しまして質問させていただきたいと思いますけれども、まず、今回の出産育児一時金に関しての質問なんですけれども、三日後、四月から、四十二万円から五十万円に一時金が上がるということで、どういった効果を期待しているのか、まずお尋ねしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 急速に少子化が進展する中、子供、子育て政策は最優先の課題となっていると考えております。その中におきまして、出産につきましては、平均的な標準費用を全て賄えるよう、実はこれまで十三年間据え置かれていた出産育児一時金を、先ほどお話ありましたように来月から、過去最大の引上げ幅となる二割増しの五十万円に増額する、あわせて、費用の見える化を抜本的に強化していきたいと考えております。

 これに伴いまして、出産に係る経済的負担が大幅に軽減されるということと同時に、見える化を図ることによりまして、妊婦さんが、適切な産科医療機関、これの選択が容易になる、このように考えております。

遠藤(良)委員 この出産育児一時金の引上げについては、先ほどもお話しいただきましたけれども、見える化があると。

 出産費用の増加の背景を見てみると、一九九四年では三十万円から、ずっと上がってきまして、直近では、二〇一二年が四十一万七千円、令和三年度、二〇二一年度では四十七・三万円だったというところがあると思うんですけれども、この中で、年間で大体一%ずつ出産費用が増加していっている。主な原因については、どのように捉えられているのか、お尋ねしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、出産費用の推移でございますけれども、年によって幅がありますものの、直近十年間の平均では毎年一%強上昇しているところでございます。

 出産費用に影響を与える要因としましては、研究などによりますと、出生数や分娩年齢の変化、それから、医療費水準、所得水準、物価の動向、こうしたことが要因として挙げられております。

 これが、出産費用の上昇の要因についてどうなるかということについての研究等はないので、ちょっと一概にお答えすることは難しいと考えております。

遠藤(良)委員 岸田政権は、異次元の少子化対策を行うということで、今回、目玉にもなると思いますけれども、この中で、年間で、令和四年度では、出生率が下がっていって、八十万人も切ったということがあると思います。

 この中で、例えば、五十万円に上げていく中で、東京都では五十六・五万円の出産費用がかかると。これは、まだ足らずになっているように思うんですけれども、この辺りはどのように捉えられているでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 出産費用につきましては、妊婦さん御自身が自由に選択して、様々な産科医療機関がある中から選ばれて、サービスを利用されております。そして、そうした中でいきますと、地域ごとに、それからあと施設の類型ごとに随分差がございます。そうした中で、地域的な差もありまして、施設ごとの差がある中で、どのような出産育児一時金に引き上げるか、こういう議論を行ってまいりましたが、去年、医療保険部会で審議したときにも、そこについては全国一本にするか地域差を設けるかみたいな議論の中で、やはり地域間で差があることについては適当ではない、こういう御意見もございまして、今回は全国一本の費用で引き上げる、こういうことにさせていただいております。

 そうした中で、具体的な金額を定めるに当たりましては、まさに全国の平均費用、先ほど四十七万ウン千円というお話がありましたけれども、これを踏まえまして、今回、五十万円とさせていただいたところでございます。

遠藤(良)委員 先ほども地域ごとでということを御説明いただきましたけれども、例えば、厚労省としては、この手出しになる部分についてはそれぞれの個人の判断で手出しになるというのは問題ない、そういうふうな認識でよろしいでしょうか。

伊原政府参考人 ちょっと今、最後のところを聞けなかったので申し訳ございませんが、妊婦さんが選ばれることが最初の段階でいいのかというお話であれば、今の実態がそうなっているので、そういう選択は当然尊重しなければならない、現在は尊重しているところでございます。

遠藤(良)委員 五十万円に上がると。最近、ある病院がもう既にこれを見越して、この四月、来月に向けて、既に通知をしている。要するに、八万円上がる分をもう既に織り込み済みで、四月以降は金額が上がりますよと、これを、実際、もう今、既に病院に通っている方、妊婦の方がそういう通知をもう既に受けている。

 つまり、これは余り、金額を単純に補助していくと言っている状態なだけで、病院だけがもうかっているというか、病院だけに補助金を出しているような構造になってしまっているんだと思うんです。この辺り、どのように考えられていますか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、出産育児一時金につきましては、前回の引上げから十三年間経過しておりまして、四十二万円にずっと据え置いておりました。この間、様々な物価上昇とか人件費の上昇等もあった中で、それで四十二万円という状況でございましたので、今回引き上げさせていただいております。

 そういう意味で、当然、医療機関側としても、自分たちがかかった費用、そこの部分を引き上げていくということ自身はあり得ると思っておりますが、他方、御指摘のように、今回、出産育児金が大幅に上がる中で、メディアの報道等でも引上げに関していろいろな御意見が出ているところでございます。

 そうしたことを踏まえまして、今月、まさに産科の医療機関に対しまして、実際、妊婦さん、その方々の御理解を得ていくことが非常に大事であるということで、まずちゃんと、値段の改定をする際にはそれを説明していただきたい、このようなことをお願いしております、要請しております。

 あわせまして、それぞれの御自身の医療機関の費用あるいはサービスにつきまして、来年の四月に向けて本格的に見える化を進めていく予定でございますけれども、前倒しで、それぞれの医療機関のホームページで公表するなどして、できるだけ広く選択に資するようにしていただきたい、こういう要請をさせていただいているところでございます。

遠藤(良)委員 要するに、多分、十三年ぶりということで金額を上げた、これはイタチごっこだと思うんですよね。

 要は、育児一時金を政府は上げた、そして、これは異次元の子育て対策だというところなんですけれども、一方で、医療保険の適用というところで考えると、例えば、自己負担を三割にして、三割の部分を育児バウチャーを支給をしていく、こういった、つまり自己負担がないようにする方向にすることこそが異次元の子育て支援だと思うんです。この辺りはどうでしょう。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、出産費用の保険適用につきましては、現実、実際問題としまして、今、妊婦自身が自由な選択で様々なサービスを利用され、施設ごとあるいは地域ごとにいろいろな差が見られるという実態の中で、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかという課題があると思っております。

 それから、御指摘いただきましたように、例えばバウチャーとかいうことにつきましては、具体的にどういうふうに制度設計するかによりますけれども、端的に申し上げると、新たな事務負担が発生する、あるいはもう一つは、バウチャーの対象範囲、どういう費用まで使っていいのかとか、そういう新しいいろいろ論点があるんではないかと考えております。

遠藤(良)委員 新しい発想をしていったり、新しい政策を、多分今回も五十万円に引き上げるというのでいろいろ議論があったと思いますけれども、やはり、まだずっと今後も続く話だと思うんですよね。また経済の状況が変わった、そして、出産費用に関しても上がっていく、こういう背景がずっとあったわけですよね。

 多分、ある段階で医療保険を適用していって、自己負担をしないという方向じゃないと、やはり国民の皆様方は、なかなか、結局今までと支払う金額変わらへんやんということになりかねないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、この辺り、どういうふうな制度設計を見込んでいるのか、お尋ねします。

伊原政府参考人 昨年末に、まさに出産育児一時金をどのように上げるかというような議論を社会保障審議会の医療保険部会で議論いたしました。まさに先ほど先生がおっしゃられたような御意見も出てまいっている中で、最終的には、今回、四十二万円を五十万円に引き上げると同時に、見える化をしっかりやりますということと同時に、まず、この見える化の効果、これをやることによって実際の出産費用がどう変わるかとか、それから、サービス面でどういう変化があるか、この辺りについて検証をしっかりやって、三年後をめどに出産育児金の在り方について検討するということが最終的な取りまとめとして入っておりまして、我々としてもそういう作業をしていこう、このように考えているところでございます。

遠藤(良)委員 是非、これは三年をめどというところなんですけれども、恐らく一気にこういう産婦人科のクリニックが値上げをしていくんじゃないかというふうに、私自身、すごく危惧をしているので、なるべくこれは保険適用して、バウチャーで対応していって、そしてなるべく自己負担がないような制度設計にしないといけないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。

 出産における国民保険料の負担軽減も出てきていますけれども、出産前後期間相当分の四か月分の保険料が一部免除になる。均等割保険料と所得割保険料について免除をすることになった理由、お尋ねしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まさに先ほど出産育児一時金でも申し上げましたように、近年の急速に進みます少子化対応、ここにしっかり対応していくということが最優先課題であるということで、御質問いただいた国民健康保険の産前産後の保険料免除の話も、そういう位置づけの中で考えております。

 具体的には、来年の一月から、出産する被保険者の産前産後期間に相当する四か月分の均等割保険料と所得割保険料を免除する、その免除相当額につきましては、公費で支援をしていくということで考えております。

 この均等割それから所得割について、なぜそういうふうにしたのかということでございますけれども、均等割保険料につきましては、出産する被保険者も含め世帯に属する被保険者数に応じてひとしく賦課されていること、それから、出産する被保険者は産前産後期間に働くことができなくなって世帯所得が減少する、こういうことがありますので、この二つの均等割と所得割の保険料について免除対象にしているということでございます。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 大臣にお尋ねしたいんですけれども、先ほどのところなんですが、今後、恐らく、長い目で見ていくと、この出産育児一時金に関しては、やはり保険適用とかそういうふうな方向性を検討していただきたいので、その辺り、いかがでしょう。

加藤国務大臣 出産費用の保険適用については、これまでも申し上げておりますように、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、出産費用の地域差も見られる実態を踏まえると、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかなどの課題があるというふうに考えております。

 まず、今回対応する中で、出産費用の見える化などの取組の効果を検証しつつ、あわせて、出産費用の上昇や地域差の状況についてより詳細な費用分析を行って、安心して妊娠、出産できる環境整備を進めていきたいというふうに考えています。

遠藤(良)委員 岸田総理が会見で、男女で育児休業を取得した場合の給付率を手取り十割に引き上げるという表明をされています。希望する場合には、時短勤務時にも給付が行われるよう見直しを行うと。これによって、夫婦で育児休業を取得するところが増えるところが期待できるのじゃないかなというふうに思うんですけれども、この辺り、大臣、どのようにお捉えでしょう。

加藤国務大臣 まさに今、育児休業、女性の場合にはかなり育児休業取得率が高くなっていますが、男性の育児休業の取得というのが、少子化を乗り越えていくためにも一つの課題とされているわけであります。

 その場合、一つは、育休を取りやすい環境をつくっていくということの中で、手取りの部分を引き上げることによってより取りやすい環境が出てくる、また、夫婦で育児分担ができる環境が出てくるということであり、それを踏まえて先日の総理の発言があったわけでありますので、今、厚労省としては、そうした総理の指示を踏まえて、具体的な内容について検討していきたいと考えています。

遠藤(良)委員 同じく総理の会見で、男性の育休取得率の政府目標を大幅に引き上げて、二〇二五年度に五〇%、二〇三〇年度には八五%目標を促す、企業ごとの取組状況の開示を進めるということを言われているんですけれども、男性の育児休業取得率、二〇二一年度から一四%上昇して、元々の、当初の、二〇二五年度で三〇%の目標設定をされていたと思います。元の目標設定の達成の見通し、どのようになっているでしょう。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 男性の育児休業取得率につきましては、委員御指摘の二〇二五年三〇%目標を掲げた少子化社会対策大綱策定時の足下では、平成三十年度に六・一六%でございましたが、直近の令和三年十月時点の調査で一三・九七%と上昇傾向にございます。

 さらに、昨年、令和四年の十月からは、既存の育児休業制度に加えまして、産後パパ育休として、男性が子の出生後八週間以内に四週間まで分割して休業を取得することや、労使の合意を前提に休業中に一定の就業ができるようにするなど柔軟な制度を創設するとともに、この産後パパ育休の期間についても育児休業給付を支給しております。

 こうした制度改正を施行した昨年十月以降、毎月取りまとめております男性の育児休業給付の初回受給者数は、前年同月と比べて約六割を超える大幅な増加が続いてございまして、男性の育児休業取得率の一層の向上につながるものと考えております。

 今後とも、こうした改正法の施行を徹底いたしますとともに、男性が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備した上で、男性に育休を取得させた中小企業事業主に対する助成制度等による支援を通じまして、御指摘の政府目標の達成を目指してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

遠藤(良)委員 今年四月から、従業員千人超えの企業に男性労働者の育児休業取得率等の公表の義務化。この中で、育児休業取得率に応じて政策的な、例えば減税などを行う方向性についてどのように考えられているでしょう。

加藤国務大臣 先ほど申し上げた男性が育児休業を取得しない理由としては、業務の都合により取れない、職場が育児休業を取りづらい雰囲気であるといったことが挙げられており、企業における取組が進むよう、昨年四月から施行した対象事業者への育児休業制度等の個別周知と意向確認義務の履行確保を図るほか、特に、育児休業の取得に伴う代替要員の確保の課題がある中小企業に対しては、助成金等による支援を行ってきているところでございます。

 さらに、自ら積極的な取組を進めていくという社会的な機運を醸成するため、常時雇用する労働者数が千人を超える事業主に対しては、本年四月より、男性育休取得率等の公表を義務化することとしたところであります。

 その上で、男性の育児休業の取得率については、先ほど総理から大幅な政府目標の引上げ、企業ごとの取組状況の開示を進めること、中小企業に対する支援の強化といった御指示がございましたので、企業ごとの取組状況の開示や応援手当など、育児休業を促進する社会的機運の醸成や環境整備を行う企業に対する支援、これを通じて、育児休業を取得しやすい職場づくりに取り組むこととしております。

 なお、今お話があった政策減税については、実効性の観点からも慎重に検討していく必要があるのではないか。すなわち、特に中小企業の場合には、欠損法人割合が非常に高いということもございますので、そうしたことを考えて、慎重な検討が必要ではないかと考えています。

遠藤(良)委員 僕自身も、会社員で育児休業というところを取ろうとしたときに、先ほど大臣がおっしゃられたみたいに取れない雰囲気はあるんですよね。取れないし、やはり、みんな責任ある立場で仕事をしているので、なかなか周りの方に迷惑をかけられないとか、そういう日本人的な考え方があれなのかもしれないんですけれども、そういう雰囲気があると思うんですよ。なので、是非、ここの、育児休業を開示して機運が変わるんじゃないかな、そこまでそんな簡単な話じゃないと思うんですよね。なので、政府としても是非、男性の育児休業の取得、これは本当に非常に今後重要なテーマになってくると思いますし、是非、政府には積極的にウォッチしていただいて、次の施策をどんどん打っていただくよう要望したいと思います。

 次に、介護の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今回の法案では、介護サービス事業者が有する介護施設又は事業所ごとに収益、費用といった経営情報を報告をする。この点について、まず意義について確認をしたいと思います。

大西政府参考人 お答えいたします。

 介護事業者の経営情報を把握する意義でございますけれども、本法案におきましては、御指摘のように、事業者に対しまして経営に関する情報の報告を求めまして、これら情報に係るデータベースを整備することとしております。これによりまして、介護サービス事業者の詳細な経営情報を定期的に収集、把握いたしまして分析等を行うことが可能になりますので、介護職員の処遇のほか、物価上昇ですとか新興感染症の影響等を踏まえた介護事業者への支援策の検討等、様々活用することができると考えております。

遠藤(良)委員 僕も以前、介護の会社を経営していたんですけれども、他社に余り情報を開示したくないというのが多分本音だと思うんですよ。そういう辺りというのは、そこまで事業者目線というのは考えられた制度になっているんでしょうか。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 介護事業者の経営情報について、どのような事項を公表していくことになるのかということとつながってくるのかと思っておりますが、介護事業者の経営情報の分析結果、これを公表することになってまいりますけれども、事業者の特定につながらないように、昨年十二月に取りまとめられました介護保険部会、審議会の意見書におきましても、介護サービス事業者から届け出られた個別の事業所の内容を公表するのではなく、グルーピングした分析結果を公表することが適当というふうにされているところでございます。

 分析結果の公表の詳細につきましては、例えば、先行して取組が進められております社会福祉法人につきましては、独立行政法人福祉医療機構の社会福祉法人の財務諸表等電子開示システムにおきまして、サービス活動収益の規模別の法人の割合などが公表されておりますので、そういうものも踏まえつつ、今後、施行に向けて検討してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 個別の企業ごとの内容を開示しないということなので、これをしっかり発信いただきたいと思うんですよね。グルーピングをしてということなんですけれども、これは企業間では非常に、何というか、ちゅうちょされている懸念事項だと思うので、個別では内容を開示しないということを是非発信していただきたいと思いますけれども。

 現在、介護事業実態調査、介護事業経営概況調査というものがあると思います。これは、現場にとっては大きな負担であると。そのため、この有効回答率が四〇%しかない。必ずしもこれは高くないと思うんですけれども、この状況についてどのように捉えられているでしょう。

大西政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の介護事業経営実態調査及び介護事業経営概況調査、二つございますけれども、まず、回収状況でございますが、令和二年度の実態調査、こちらは、有効回答率が御指摘のように四〇%台、四五・二%でございました。令和四年度の概況調査の方でございますが、こちらが、やはり五〇%には届きません、四八・三%という状況になっております。

 これはやはり、サービス施設、事業所の経営状況を正確に把握をしていく必要がありまして、有効回答率を向上させることが大変重要であると考えております。

 今後、令和五年度の介護事業経営実態調査になってまいりますけれども、こちらでは、調査項目の簡素化ですとか、法人本部に一括でお送りして集約をいただくといった形とか、様々、更なる有効回答率の向上を図って、より精度の高い調査となりますように取り組んでまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 今回の法案の中で、医療法人については医療機関等情報支援システムを現状、利用している、今回、介護事業者に関しましても新たにシステムを構築するというところなんですけれども、当面は紙媒体による提出になると思うんですが、提出方法をどのようにしていくのか、お尋ねします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどのお話に戻りまして、介護事業者の経営情報の提出をどのような形でというお問いかけと認識しておりますが、介護サービス事業者の経営情報につきまして、厚労省が新たに整備するシステムにおきまして、主として各事業所、施設において作成されている損益計算書の内容を電子的に提出いただくことを想定をいたしておるわけでございます。

 この経営情報の提出を新たに求めることになりますので、それに当たりましては、事業者さんの事務負担が可能な限り増えないような方策を検討していくことが重要と考えておりまして、例えば、事業主体によって会計基準が異なるものが適用されているわけでございますけれども、新たにこの報告のためにまた様式を作って、それでやってくださいという形ではなくて、国が構築するシステム上で、それぞれの事業者さんが用意される会計基準に沿った勘定項目を対応させていくといった方向での運用でございますとか、あと、介護サービス事業者さんから別の機会に報告を求めているような情報もございます。そういうものにつきましては、情報連携によりまして、ダブって、重複して報告をいただいたりするようにはしないといったことを検討しているところでございます。

 円滑な施行に向けて、引き続き、適切な提出方法につきまして、事業者さんの事務負担に十分配慮しながら検討してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 令和三年度の介護報酬改定において、一部加算で、LIFEという、データを提供する要件があったと思います。LIFEによって収集、蓄積したデータを活用するというところだと思うんですけれども、現状、このLIFEの活用はどのようになっているのか、お尋ねします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 LIFEの活用ということでございます。

 まず、今回の法案では、LIFE情報を含めました介護サービス利用者の情報を介護事業所等の関係者が電子的に共有できる介護情報基盤を今後整備していくこととしております。

 こういう介護情報基盤を用いましてLIFE情報を共有し活用することで、例えば、利用者が自身の介護情報を閲覧することで、より積極的に自立支援、重度化防止に取り組めるようになるということですとか、ケアマネジャーさんが利用者さんの状態、例えば体の機能ですとか認知機能などを随時確認をされて、御本人の状態に合ったケアプランの見直しを行っていくといったような効果が期待されるところでございます。

 具体的な情報の範囲、共有先など、情報共有の在り方につきましては、引き続き、専門家、自治体関係者含めた、介護情報利活用ワーキンググループ等立ち上げておりまして、そちらでしっかり検討してまいりたいと思います。

 今、現状どうなっているのかというお言葉もございました。

 こちらにつきましては、そういうものを目指しながら、現在は、LIFEの情報を事業者さんで入力して登録、送っていただく必要があるわけですけれども、レセプト情報などと併せて一体で送っていただくわけですけれども、各種情報の入力に手間がかかるですとか、ADL等の評価方法が分かりにくいといった御指摘を、アンケート調査などでいただいているところでございます。

 こうした負担の軽減に向けまして、動画マニュアルを作りましたりとか、利活用の手引などを作成して、周知を図っているところでございます。

 先ほどの情報基盤の話と併せまして、令和六年度介護報酬改定に向けまして、システム改修ですとか入力項目の見直しなど、更なるそういった負担軽減の方策について検討してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 新しいシステムを導入するとなっているんですが、このLIFEとの互換性とか親和性は、ほとんど余り変わらないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、今、現状、介護会社とかのヒアリングをしていると、LIFEの入力作業が本当に大変で、もっと簡素化してほしいとか、そういった要望が非常に多分多いと思うんですけれども、その中で、もうLIFEに入力する内容が正確な内容じゃなくなっているということも聞いているんですけれども、その中で、要するに、負担を軽減してあげないと、本当に介護現場は大変だと思うんですよね。そういう要望は本当に多いと思います。なので、この負担を軽減していく方向で是非検討いただきたいのと、あと、経営情報の報告において、どのように負担に対して対応していくのか、これをお尋ねしたいと思います。

大西政府参考人 お答えいたします。

 LIFEにつきましては、先ほどのお答えと若干重なるところもございますけれども、LIFEの入力ですとか評価方法に関します動画マニュアルですとかLIFE利活用の手引などを作成し周知を行っておりますし、更にこれを改善してまいりたいと考えております。また、入力項目の見直しなど、システム改修でより円滑に登録いただけるようなやり方、あと、フィードバックがまだ一部しか事業者さんにお返しできていないといった課題もございまして、こういったところも令和五年、本年の六月までには全てのフィードバックを返していけるように進めていく予定としております。

 また、先ほどの介護情報基盤へのデータの登録につきましても、国の方で用意いたしますシステムで、新たな様式に入力いただく形ではなくて、それぞれの会計基準に則して用意されているもので、それをシステムの方で受け取って整理をしていくような方法での運用などを検討していきたいと考えております。

遠藤(良)委員 繰り返しになるんですけれども、例えば事業所でも、会社の社長がいて、現場は本当に三人、四人で回している会社もあったり、非常に苦しい状況で回していると思います。その中で、こういういろいろな要求が、どんどんどんどん書類の提出とかというのが増えてきている中で、やはりこれは本当に課題だと思うんですよね。いろいろな情報を収集するのは必要だとは思いますけれども、小さな事業所はやはり大変なので、運営するだけでも大変ですし、人を集めるのも大変なので、ここだけは、是非、周知、その辺りも含めて御検討いただきたいと思います。

 次に、地域医療連携推進法人に関するところをお尋ねしたいと思いますけれども、令和四年十月でこれは三十三法人ある。私の地元の川西、猪名川でもヘルスケアネットワークというのが設立されている。こういった法人が地域医療に果たす役割というのはどういうふうに捉えられているのか、お尋ねします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員お尋ねの地域医療連携推進法人制度でございますが、これは、地域の医療機関相互間の機能の分担、連携を推進をし、質の高い医療を効率的に提供することを目的として、平成二十九年四月から創設された制度でございます。

 実際の地域医療連携推進法人の業務としては、病床融通を含めた医療機能の分化、連携でありますとか、参加医療機関の間での患者の紹介、逆紹介、また医薬品等の共同購入、あるいは医療従事者の人事交流や質の高い共同研修の実施などに取り組んでいただいているものと認識しているところでございます。

遠藤(良)委員 今回、これは対象を拡大するというところだと思います。個人の医療機関であったり介護事業所が対象になっている。今回、株式会社が対象になっていないところなんです。何で株式会社は省かれているのか、お尋ねします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 地域医療連携推進法人でございますが、これには、病院等の医療機関を開設する医療法人などの非営利法人を参加法人とするとともに、介護事業等の地域包括ケアシステムの構築に資する事業を行う非営利法人を参加法人とすることができるということとしてございます。

 これは、医療におきましては非営利性を堅持することが必要でございまして、また、仮に地域医療連携推進法人に株式会社が参加された場合、株式会社が社員として議決権を行使することによって、結果として地域医療の機能分担や連携などに影響を及ぼすこととなりますことから、地域医療連携推進法人全体の非営利性を確保するために、営利を目的とする事業を営む者につきましては参加法人になることはできないということと整理しているものでございます。

遠藤(良)委員 社会福祉法人とかは多分対象になると思いますけれども、同じように株式会社で介護の仕事をしている、社会福祉法人で介護の仕事をしている、医療法人でも介護の仕事をしている、これは同じだと思うんですけれども、僕は、株式会社も介護の事業というのは重要な役割を担っていると思うんですけれども、これも、実際、医療連携推進法人に入れるべきなのじゃないかなというふうに思うんです。そこの辺り、どうでしょう。

榎本政府参考人 今ほどお答え申し上げましたように、地域医療連携推進法人に営利を目的とする法人が参加できない理由としては、医療におけます非営利性を堅持をし、地域医療連携推進法人全体の非営利性を確保するためということでございます。

 この法案におきましても、個人立の医療機関あるいは介護事業所なども地域医療連携推進法人に参加できる仕組みを新たに設けるということとしてございますが、医療における非営利性の必要性においては変わりはございませんことから、引き続き、営利を目的とする事業を営む者については、地域医療連携推進法人の参加法人になることができないという整理とさせていただいたところでございます。

遠藤(良)委員 是非、そういう一定の既得権みたいな形にならないように、やはり、地域ネットで彼らというのは連携をして、介護であったり医療であったり連携してやっているので、一部のところが入れないというか、非営利というところを強調されていましたけれども、株式会社もそういったところもしっかりと担ってきているので、そういう意味では、更に踏み込んで検討していくべきだということを申し上げまして、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代です。本日もよろしくお願いいたします。

 さて、我々日本維新の会は、予算委員会、それからこの厚労委員会におきまして、池下卓議員を筆頭に、臓器移植について質問をさせていただきました。私も、冒頭、臓器移植について皆さんにお伺いをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 日本人が海外で臓器移植を受けた場合であって、いわゆる移植ツーリズムに該当するような場合、臓器移植が行われた事実について厚生労働省が把握する仕組みはあるのでしょうか。また、海外で臓器移植を日本人が受けて帰国した場合の届出義務のような仕組みはあるのでしょうか。

佐原政府参考人 現在、渡航移植患者の届出義務等によりまして海外で移植を受けた患者さんの実態を制度的に把握する仕組みというのは、ございません。また、渡航移植をした患者の届出を義務化するということは、渡航移植が行われることを前提とするものであり、イスタンブール宣言というのがございますけれども、これに違反することとなるため、慎重な検討が必要であると考えております。

吉田(と)委員 この四月から六月にかけて、海外での渡航移植の実態を医療機関を対象に調べるというふうにお伺いをしておりますが、こちら、海外に行って、残念ながら亡くなってしまわれた方、また、海外でそのまま暮らしている方というものは含まれてはきませんので、生きて日本に帰ってこられた方のみが把握できるということで、全数把握は難しいと思います。

 一体何人の人が海外で移植を受けたのかが分からないこの現状で、病院で調査をしても、海外に臓器移植を受けに行くというやはり届出をしないと、正確な数というのは把握できないかと思います。臓器移植を受けるという、まず届出をさせる仕組みが必要だと考えております。

 さて、臓器移植に関する先ほどイスタンブール宣言についても触れていただきましたけれども、政府としてはどのような姿勢で臨んでいるのか、また、支持する、尊重する、遵守するなど様々な言い方があるかと思いますけれども、見解をお伺いいたします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ありましたイスタンブール宣言、これは、一部の国におきまして人身取引による臓器売買が行われていたこと等を背景としまして、国際移植学会が中心となり、平成三十年に、移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすることという趣旨のイスタンブール宣言が採択をされております。この宣言は、現在、臓器移植に関する国際的な原則になっていると承知をしております。

 このイスタンブール宣言の趣旨は非常に重要なものと考えておりまして、国内における臓器移植を推進するためにも、この宣言に沿いまして、今後とも、国としても、普及啓発活動あるいは医療施設間の連携強化等を通じまして、臓器提供、移植体制の充実に取り組んでいきたいというふうに考えております。

吉田(と)委員 今御答弁いただきましたけれども、イスタンブール宣言があるから、そもそも海外の移植に厚労省はタッチしないんだということになりかねないと思うんですね。厚労省が海外移植にタッチをしなければしないほど、アンダーグラウンドで海外にますます臓器移植を受けに行ってしまいます。現時点でやらなければいけないことというのは、イスタンブール宣言を一〇〇%守るということではなく、闇で海外移植を受ける方を減らすことが大切だと思います。

 このイスタンブール宣言ですが、二〇〇八年の会議で合意をされて、二〇〇九年七月に日本の臓器移植法が改正され、二〇一〇年七月に全面的に施行されました。この改正によって、十五歳未満の場合においても、家族の同意があれば臓器提供ができるようになりました。

 この平成二十一年の臓器移植法改正は議員立法によるものであることは承知をしておりますが、厚生労働省としては、この臓器移植法改正は、二〇〇八年のイスタンブール宣言により、海外での、特に子供の臓器移植が困難になったことを見越して、イスタンブール宣言を守ることができるようにするための改正だったと考えますが、見解をお伺いします。

 また、平成二十一年の議員立法改正以降、臓器移植の件数はそれほど増加をしていないのではないかと思います。臓器移植法改正後の臓器移植の件数の推移を厚生労働省はどのように認識をされているのか、また、なぜ増えないのか、その原因をどのように分析されているのか、見解をお伺いいたします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 まず、海外の渡航の状況につきましては、今回の不適切なNPOの事案を踏まえまして、厚労省としては、速やかに、生体移植を含む海外での臓器移植の実態を把握する必要があると考えております。このため、関係学会等と連携して、医療機関を通じた渡航移植に関する実態調査、これは本年四月の上旬にも開始したいというふうに考えております。

 それから、今御質問の、平成二十二年の臓器移植法の改正の件ではございますけれども、この改正では、本人による臓器提供の意思表示がない場合でも家族の書面による承諾で脳死判定及び臓器提供が可能とされたこと、また、十五歳未満の方の脳死判定、臓器移植について、家族の書面による承諾により可能とされたこと、また、運転免許証への意思表示の記載を可能とすることによる普及啓発等の見直しが行われたところでございます。

 これは、臓器移植の国際的な原則であり国内の移植医療の推進に努めるべき旨が規定されております、御指摘のイスタンブール宣言の趣旨に合致するものというふうに考えております。

 その後、厚労省では、国内の臓器移植の推進に向けまして、様々な方に対しまして、ホームページやパンフレットによる普及啓発、あるいは運転免許証やマイナンバーカードの意思表示欄を周知すること、あるいは、更に言えば、運転免許証の更新時の講習において、臓器移植の意思表示に関する案内を流す等の普及啓発を行ってきたところでございます。また、医療機関間の連携体制の構築や院内体制の整備等を通じまして、臓器提供、移植体制の充実に取り組んできているところでございます。

 ただ、なかなか臓器の提供が伸びないという、様々な原因がもちろんあると思いますが、これにつきましては、昨年、厚生科学審議会の臓器移植委員会におきまして今後の提言を取りまとめていただいております。

 この提言におきましては、臓器移植の認知度の向上のみならず、意思表示の行動に結びつく普及啓発の在り方、これは、例えば、運転免許証の裏に意思表示欄があることを御存じの方は多いと思いますが、なかなか書いていただいている方は少ないということがございます。あるいは、医療現場において医師等が、ドナーになり得る患者、家族に対して臓器提供という選択肢提示を確実に行うためにも、医療従事者への教育の在り方、あるいは、臓器提供、これ自体は非常に大変な業務でございますので、臓器提供体制の整った医療機関の更なる整備、こういった課題が指摘されておりまして、こういったものについてもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 私ども日本維新の会では、脳死移植も、そして生体移植も、全ての移植、臓器移植を含めて、海外に受けに行くことを減らしていきたいと思っております。これはイスタンブール宣言があるからではありません。あろうがなかろうが減らしたいということなんですね。その理由というのは、やはり、海外の劣悪な医療機関や医療技術で日本人が受けに行って命を落としている、この現状を何とかしたいと思っております。それを防ぐには、やはり、日本国内の脳死移植のドナーを増やして、少しでも海外移植渡航を減らしていくことが必要だと考えています。

 そこで、臓器移植の件数を増やすには、救急救命医が家族に脳死を告げる際に臓器移植という道があることを示す必要があり、また、そのための環境整備が必要なのではないでしょうか。具体的には、脳死判定された方の家族に臓器移植の意思を必ず確認するように救急救命医の研修などに盛り込むべきではないでしょうか。御見解をお聞かせください。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 救急医等による臓器提供に関する意思確認につきましては、厚生科学審議会の取りまとめにおきましても以下のように述べられております。臓器提供の可能性がある患者の家族に臓器提供に関する情報の提示を行う際、多忙な担当医、担当看護師は必ずしも十分な時間をかけての説明ができないということが課題として挙げられております。

 このため、救急医等の負担を軽減するための対応として、他の職種が臓器提供に関する意思確認に係る業務に関与できるよう、厚生労働省としては、医療現場における院内コーディネーターの配置、あるいは患者等への支援を行う入院時重症患者対応メディエーター等を養成する研修事業の実施に積極的に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、医療現場におけます実態を把握しながら、多職種による連携の促進や御指摘のような研修の充実に取り組み、救急医の臓器提供に関する意思確認に関する負担の軽減を図ってまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 今、多職種の連携で円滑に進むような体制づくりを行っているという御説明をいただきましたが、現実として脳死移植が増えていない。研修をやっていても、なかなか成果が出ていないんだと思うんですね。ドナー提供を進言するにはやはり精神的負担があること、それがやはり原因で、成果を出すためにはどうすればいいのかということを、私も今現状、分かりませんが、何かが足りないということが現実なので、しっかり検討を進めていただきたいと思います。

 それでは、今回の法律案についての質問に移らせていただきます。

 本日は、主に言葉の意味について確認をさせていただこうと思っておりますので、素人感覚で恐縮ですけれども、おつき合いをいただければと存じます。

 本法律案では、かかりつけ医機能に関する法整備が実施をされましたが、その前に、厚生労働省のかかりつけ医の定義について確認をさせていただきたいと思います。

 コロナ禍において、かかりつけ医に相談してくださいという案内がされました。このとき、国民は誰に相談すればよかったのでしょうか。厚生労働省が考えるかかりつけ医とは、医師なのか、医療機関なのか、両方なのでしょうか。厚生労働省が言うかかりつけ医とは、かかりつけ医師なのか、かかりつけ医療機関なのか、厚労省の見解をお伺いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回提出しております法案におきましては、医療法に、かかりつけ医機能について、医療機関の機能として、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能と規定することとしてございます。

 今お尋ねのかかりつけ医という言葉でございますが、この法案においては規定することとはしてございませんけれども、一般的には、日頃からかかっている身近な医師や医療機関を指しているものと承知しておりまして、厚生労働省といたしましても、各種施策の推進に当たって、こうした一般的な用語として使用させていただいているという状況でございます。

吉田(と)委員 定義をしていないというのは少し不思議な感じがするんですが、それでは、法律の定義ではなく、厚生労働省として、かかりつけ医という言葉の意味をどのようなものとして理解をしておられるのでしょうか。

 厚生労働省のホームページ、上手な医療のかかり方jpでは、かかりつけ医の定義として、健康に関することを何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師としています。

 かかりつけ医師なのか、かかりつけ医療機関なのか、厚労省の見解をお伺いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございました上手な医療のかかり方プロジェクトでございますが、これは平成三十年に開始をしてございますけれども、患者、国民の皆様が安心して必要な医療を受けられますように、時間外、土日の受診ですとか、大病院への患者集中による混雑の緩和などを進める観点や、あるいは医師の働き方改革の観点から、上手な医療のかかり方に関する啓発を行っておるものでございまして、この一環として、平成二十五年の日本医師会・四病院団体協議会からの合同提言に基づくかかりつけ医の定義を参考にしつつ、かかりつけ医を持ちましょうという啓発を行っているところでございます。

 このプロジェクトは、大病院への受診の集中を避けるという観点から、身近な地域の日常的な医療を担う医療機関の受診を呼びかけるものでございまして、ここで言うかかりつけ医につきましては、医師も医療機関も含むものとして普及啓発を進めさせていただいているというところでございます。

吉田(と)委員 先ほど、一つ前の答弁で、定義はないというふうにお伺いをしておりまして、厚労省のホームページでは、定義、かかりつけ医と記載され、今御説明はありましたが、定義だとおっしゃっていますので、これではちょっと混乱をしませんか。

 一方、実務上では、厚生労働省としては、かかりつけ医という言葉の意味がどのようなものと理解して行政を行っておられるのでしょうか、お聞きしたいと思います。

 例えば、先ほど中島先生もおっしゃっていましたけれども、新型コロナワクチンQアンドAを見ますと、ワクチンについて相談したいとき、どこに相談すればよいですかとの質問に対して、自治体の窓口やコールセンター、かかりつけの医師などに御相談くださいとあります。また、ワクチン接種後の副反応はどこに相談したらよいですかとの問いには、まずはかかりつけ医や接種を受けた医療機関で診ていただくことになりますと記載があります。

 これらからしますと、厚生労働省がホームページで用いているかかりつけ医は医療機関なのでしょうか。また、事務連絡でも、かかりつけ医やかかりつけ医等という言葉が用いられています。事務連絡に用いられる場合には、どのような意味で使われているのか、御見解をお伺いいたします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁申し上げましたように、かかりつけ医という言葉につきましては、法令上、定義は明らかにされておりませんけれども、一般的には、日頃からかかっている身近な医師や医療機関を指しているものと承知してございまして、厚生労働省としても、各種施策の推進に当たって、こうした一般的な用語として使用させていただいております。

 今ほど御指摘ございました、コロナワクチンのQアンドAあるいは事務連絡などにおいて、かかりつけ医という用語を使用しているという御指摘がございましたけれども、このような、今申し上げましたような、医師や医療機関を含む一般的な用語として用いさせていただいているという状況でございます。

吉田(と)委員 かかりつけ医というのが個人を指すなら、かかりつけ医師として、かかりつけ医等というのは、かかりつけ医療機関と最後まで文字を書けばすっきりして、こういう議論も起きないのではないかなと思うのですが、これは素人考えなのでしょうか。

 ここまで、かかりつけ医という言葉が厚労省としては一つに定められていないというお話だとは思いますが、法案に使われているかかりつけ医機能という名称は、かかりつけ医と機能をつなげたものではないのでしょうか。なぜかかりつけ医機能という名称を用いたのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

加藤国務大臣 かかりつけ医機能という用語については、平成二十五年の社会保障制度改革国民会議報告書において用いられたほか、同年の日本医師会・四病院団体協議会合同提言において両団体としての定義が提唱されているなど、様々な議論が積み重ねられてきた経緯がございます。

 また、厚労省としては、省令において、身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談などを行う医療機関の機能をかかりつけ医機能と規定をし、これを有する医療機関から都道府県への報告を求め、医療機能情報提供制度による国民、患者への情報提供を進めてきたところであります。

 また、昨年十二月には、全世代型社会保障構築会議の報告書で、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方のもとで、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すべきであるとされたところでございます。

 今後、複数の慢性疾患、医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の更なる増加などの中で、身近な地域における医療機関の役割が重要になります。

 こうした議論の経緯や施策の取組状況も踏まえて、本法案では、かかりつけ医機能と医療法に規定することとしたところであります。

吉田(と)委員 私たちとしましては、かかりつけ医の定義が定まっていないにもかかわらず、かかりつけ医機能という言葉を使うから、困惑する人も出てくるんだと思います。

 国民がかかりつけ医機能と聞いたら、百人中百人が、かかりつけ医の機能のことじゃないですかと答えるのではないかと思います。それが自然な考え方だと思います。それなのに、かかりつけ医機能という言葉ができました、しかし、かかりつけ医という言葉の定義はありませんというのはいかがなのでしょうか。かかりつけ医と機能ではなく、かかりつけ医機能のみですと。「かか」とか「りつ」とか「け」とか分けているのではありません。かかりつけというよく聞く単語が入っていますので。医師の医という言葉が加わっている。それなら、かかりつけ医というものもある、何かしらの定義があるのですねというのはおかしな話なのでしょうか。

 世の中にあるかかりつけ医という言葉とは無関係ですと。例えば、少年少女野球のトーナメントで大谷翔平杯と名づけた場合、メジャーリーガーの大谷翔平さんと無関係です、関係あると思うのは個人の勝手な誤解ですと言うのなら、厚生労働省として、かかりつけ医の定義を決めていないのだから、国民会議の報告書や全世代型社会保障構築会議報告書に対して、かかりつけ医機能という名称は紛らわしいからやめてほしいということを表明すべきではなかったのかなと思います。

 そういう意味で、関係ないというのであれば、私としては、例えば、かかりつけ医機能という言葉を、医者の医という文字を抜いて、かかりつけ機能と呼べば、かかりつけ医とは関係ないんだなと理解がしやすいかと思います。

 さて、ここまで、言葉についてお伝えをしてきたんですが、今度は法文上の実際の書きぶりを確認をしていきたいと思います。

 医療法六条の三の改正部分では、「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能(以下「かかりつけ医機能」という。)」という文言が追加をされます。この部分について考えると、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置は、医療の提供の例示なのでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、本法案では、かかりつけ医機能につきまして、医療法第六条の三第一項におきまして、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能というふうに規定をしておりまして、身近な地域における日常的な医療の提供の例示として、診療でありますとか疾病の予防のための措置があるというふうに考えているものでございます。

吉田(と)委員 この場合、例示であるのでしたら、医療の提供を行う機能がかかりつけ医機能と定義をされているように思います。その解釈でよろしいのでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今、かかりつけ医機能につきましては、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能というふうに規定をしてございます。医療の提供につきましては、身近な地域における日常的なものに限定されるというふうに理解をしているものでございます。そういう意味で、全ての医療が対象になるというものではないというふうに御理解いただければありがたいというふうに思っているところでございます。

    〔委員長退席、田畑委員長代理着席〕

吉田(と)委員 この医療法第六条の三第一項の改正部分の続きを見ると、かかりつけ医機能その他の病院等の機能となっています。このかかりつけ医機能とその他の病院等の機能のそれぞれを御説明をお願いいたします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 法案におきましては、御指摘の医療法第六条の三第一項の改正によりまして、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能でございますかかりつけ医機能を規定しているところでございます。

 例えば、在宅医療を提供する機能、これは後ろの方の三十条の十八の四第一項第二号ハのところに規定しておりますし、また、介護サービス等と連携して必要な医療を提供する機能ということで、同号のニにも規定しているものでございます。こういったものが含まれるものであるというふうに考えてございます。

 また、かかりつけ医機能と併せて規定することとする、その他の病院等の機能につきましては、現行の医療機能情報提供制度におきましても、省令に基づいて、例えば高度な救急医療や集中治療の実施の有無などに関する報告を医療機関に対して求めておりまして、こうした機能が含まれることになるというふうに考えているものでございます。

吉田(と)委員 かかりつけ医機能についてもそのように説明をいただけるのであれば、かかりつけ医についても同じように定義をして説明ができるように思いますが。

 別条項ですけれども、今回の法改正では、医療法六条の四の二が新設され、継続的な医療を要する者に対する説明の努力義務が盛り込まれます。この説明を受けた患者のかかりつけ医は、その説明を行った医師又は歯科医師なのか、それとも、その診療を担当する医師又は歯科医師が属している病院又は診療所なのか、どうなのでしょうか。大臣、お伺いをいたします。

加藤国務大臣 これまでも説明させていただいておりますように、本法案では、法律上、かかりつけ医を定義していないことから、かかりつけ医を特定の医師や医療機関に限定するものではまずありません。

 今後、慢性疾患を有する高齢者等の更なる増加が見込まれる中で、継続的に医療を必要とする患者が、治療に関する計画や必要なときに相談できる医療機関の連絡先などを把握していることが重要と考えております。

 このため、御指摘の規定、改正医療法の第六条の四の二については、在宅医療を提供する場合など、外来医療で説明が特に必要な場合であって、継続的に医療を必要とする患者等が希望する際に、医療機関に対し、治療に関する計画やその医療機関の連絡先について説明を行うよう求めるものであり、こうした説明の有無によって、法律上かかりつけ医を特定しようとする仕組みにはなっていないということでございます。

吉田(と)委員 やはり少し分かりにくいところだと思うんですが、かかりつけ医師とかかりつけ医療機関という言葉を使って区別した方が分かりやすかったのではないでしょうか。

 ところで、この医療法六条の四の二の説明を受けた患者やその家族はどのような効果があるのでしょうか。例えば、単に医療機関の出来合いのリーフレットを渡されて、あとはどうぞお読みくださいというようなものなのでしょうか。医療法に規定を置き、医療機関の管理者に努力義務を課してまでやる必要があるほどのものなのでしょうか。医療法六条の四の二の説明を受けた患者やその家族にはどのような効果があるのか、御説明をお願いいたします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、医療法におきましては、医師その他の医療の担い手は医療を提供するに当たって適切な説明を行うよう努めるということとされますとともに、特に、入院や助産に際しては、医療機関などの管理者に対して、治療などに関する計画や緊急時の連絡先などの具体的な事項を適切に説明するように求めているところでございます。

 こういった中で、今後、慢性疾患を有する高齢者の更なる増加が見込まれます中で、継続的な医療を要する患者が、治療に関する計画、あるいは必要なときに相談ができる医療機関の連絡先などを把握しているということが重要となってまいります。

 このため、本法案におきましては、かかりつけ医機能の確保に係る体制を有する医療機関は、在宅医療を提供する場合など、外来医療で説明が特に必要な場合であって、継続的な医療を必要とする患者又は家族が希望する際には、かかりつけ医機能として提供する医療の内容などについて、電磁的方法又は書面交付によって説明に努めるということとしたものでございます。

 これによって、国民、患者お一人お一人が受ける医療サービスの向上につながるというふうに考えているところでございます。

吉田(と)委員 この努力義務ですけれども、あくまで医療機関任せなところがありますので、しっかり意図が伝わるように、形だけで終わらない、丁寧な案内が継続的になされるようにお願いしたいと思います。

 他方、医療法六条の四の二の説明を行った医療機関にはどのような効果があるのでしょうか。単に宣伝ができたということでしょうか、同じく労苦に見合うメリットがあるのでしょうか。医療法六条の四の二の説明を行った医療機関にはどのような効果があるのでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今御説明させていただきました医療法六条の四の二に基づきます説明につきましては、医療機関側としては、この規定に基づいて、患者などからの希望に応じて、かかりつけ医機能として提供する医療の内容などを御説明することによって、患者さんとの間での信頼関係が構築をされ、より円滑に継続的な医療が提供できるようになるメリットがあるというふうに考えているところでございます。

    〔田畑委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(と)委員 チェック機能がないということですので、医療機関に努力義務を課すことだけでは、医療機関ごとに、患者さんに提供する内容、そしてサービスの質が変わるのではないかと考えます。やはり、どの程度までカルテに記載するのか、新たな管理料を取り入れるなど、医療機関側も患者さんも、双方効果があるものにすべきだと考えます。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 日本病院会の相沢孝夫会長は、二月二十七日の記者会見で、これまでのようなゾーニングは不要なのか、それでも安全、安心に入院医療を提供できるのかなどの基本的事項について、国、国民、医療機関等、自治体の間で認識を一致させる必要があるのではないかと指摘をされています。

 国が、もう安心、安全である、厳重なゾーニングは不要であり、インフルエンザ等と同等の対応で入院医療を提供してよいなどの考え方を明確に出してもらわなければ、医療機関と患者と家族との間で必ずトラブルが生じると指摘をされています。

 政府として、入院医療に関して、季節性インフルエンザと同様の対応でいいとの呼びかけを行う予定があるのでしょうか、それとも、季節性インフルエンザと同様の対応では不十分なのでしょうか、御見解をお伺いいたします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナの感染症法上の位置づけの変更に伴いまして、入院医療体制につきましては、これまでの限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の体制に移行していくこととなってまいります。移行に当たりましては、新たに診療に対応する医療機関も含めて、医療機関における感染対策についての周知や支援を行うことが、御指摘いただいたように重要であるというふうに考えてございます。

 その際、医療機関における新型コロナへの感染対策につきましては、今、季節性インフルエンザとの比較を御指摘ございましたけれども、学会が示している新型コロナのガイドラインにおいて推奨されております対策は、インフルエンザで一般的に実施されてまいりました感染対策と比較をいたしますと、飛沫対策としてのサージカルマスクの着用や、あるいは、直接接触する場合のガウン、手袋の着用に関する考え方、これらは同様であるというところでございますが、一方で、新型コロナにおきましては、換気やあるいは気管挿管などのエアロゾルを発生する手技を実施される場合などでのN95マスクの着用など、エアロゾルへの対策が求められているところでございます。

 こうした点も踏まえつつ、医療機関における感染対策につきましては、学会などのガイドラインに沿いながら、安全性だけではなく、効率性も考慮した対応に見直すこととしておりますけれども、こうした今申し上げたような特性を踏まえて、適切に対応するとともに、感染対策に必要となる設備整備や個人防護具の確保などへの支援を継続して行うこととしておりまして、こうしたことや診療方針などに関する分かりやすい啓発資材を作成をいたしまして、地方自治体や医師会などの医療関係者とよく連携しながら、まず、医療機関にはしっかりと周知をしていきたいと思っております。

 また、あわせて、国民の皆様に対しましては、高齢者など重症化リスクの高い方への感染を防ぐためにマスク着用が効果的な場面、指定医療機関を受診されるとき、また、高齢者など重症化リスクが高い方が多く入院しておられる医療機関などへの訪問時などにおいてマスクの着用を推奨し、感染対策をお願いしてきているところでございます。

 国民の皆様や医療機関の皆様には、医療機関での感染対策に関する考え方や内容をしっかりと周知をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

吉田(と)委員 新しくコロナ患者を受け入れる医療機関への体制支援というのは必要でしょうし、入院医療も従来の体制に戻るのが基本だと思います。インフルエンザでもゾーニングが必要でしたらコロナでもゾーニングが必要ということで、両者の間でそんなに大きな隔たりがあるのではないと申し上げたいと思います。

 今日、質問がまだたくさんあったんですけれども、国土交通省の皆さんにもお越しいただいて申し訳ございません。次回また質問をさせていただきます。私の質問は以上で終わります。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、前回の委員会での質問が少し残ってしまいましたので、それについて冒頭伺いたいと思います。

 学童保育と放課後デイについてです。

 前回の委員会で、放課後デイに課題があるということをこの委員会の中で何度か議論をさせていただきました。学童に入れない子供たちが放課後デイに入ってしまっている、本来の目的でない利用がされているということです。それを厚労省にお聞きしたら、把握していないということでありました。

 また、事業者の運営に関しても、増えているという指摘はありますけれども、実は、一方で、かなり廃業や倒産に追い込まれている、そういったものを数を把握、ないしは、是非、現状を分析してほしいと言ったら、それに対しても、民間のデータしかお示しができませんでした。

 これを聞いて、事業者の人また委員会の先輩方からも、しっかり調べた方がいいんじゃないか、しっかり質問をすべきだということをアドバイスいただきまして、また、最後にこれについて大臣にもお聞きをしましたら、検討会でも議論をいただいております、支援の充実をしっかり図っていきたい、そういうふうにさらっとお答えをいただいたんですけれども、やはり、厚労省、もっと現場を調査して理解した方がいいと思っています。

 そして、その上で、来年の診療報酬に向けて、また新たな対策や、また対応というのも生まれてくると思いますので、是非そこをお願いしたいんですが、大臣の見解をまず伺います。

加藤国務大臣 まず、放課後等デイサービスは、障害のある子供さんの発達支援を担う重要なサービスであります。課題等も含めて、実態をしっかり把握して対応していく必要があるというふうに考えています。

 本来の目的とは異なり、放課後児童クラブの代わりとして利用がされているという指摘については、市町村の適切な給付決定に関する御指摘だと思いますが、この給付決定については、例えば財務省の令和三年度予算執行調査において、個々の利用者の発達支援のニーズに沿ったものとはなっていない可能性があること、今般開催した障害児通所支援に関する検討会報告書においても、市町村が、給付決定において、子供本人や家庭の状況をより丁寧に把握することが必要である、市町村により判断のばらつきが生じにくくなるよう、給付決定事務等に関する事務要領を見直す必要があるとの御指摘をいただいているところでございます。

 こうした御指摘を踏まえて、利用者の発達支援のニーズに沿った給付決定がより丁寧に行われる必要があると考えており、今後、市町村が行う給付決定事務に係る事務要領において、例えば、市町村の職員が子供の発達状況などをより丁寧に把握できるよう、判定の際に把握すべき事項について、より具体的に示すよう見直しを行うとともに、自治体の給付決定の状況を逐次把握し、必要な助言等を行うなど、適切な給付決定を確保するための取組を進めていきたいというふうに考えております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 丁寧に大臣から、対応またこれからの取組をお話しいただきました。

 実際、障害判定がなくても、お医者さんに行って少し診断書をもらえば入れてしまうというようなことも聞いています。そうしますと、本来は、冒頭大臣がおっしゃってもらったように、障害のある人たちを、何とかして療育を見ていきたいという人たちから見ると、来てしまえば受けなければならないわけで、やはり、本来のしっかりとした仕事をしたいという思いの人たちに応えられるように、そのような対応を徹底して行っていただければと思います。

 また、今廃業やまた倒産している事業者さんは、決して不正請求したという内容だけでなく、逆に、真面目に十人の定員のところを十人きっちりでやっていると、診療報酬が少なく、休んでしまうと入りませんから、それによって経営が厳しくなったり、ないしは、お迎えや、また送り迎え、そのことについても、すれば加算になるんですけれども、しかし一方で、やはりお父さん、お母さんが迎えに来た方がいいという理念の下にやっている、そういう事業者さんというのは、どうしても加算が入らずに経営が苦しいということで継続できないなど、いろいろな本当に声があり、もちろん厚労省も把握をしていただいておると思うんですけれども、是非その実態を踏まえた上で、次の報酬改定に向けての改善に向けて取り組んでいただければと思っています。

 それでは、本旨の今回の法律案について伺いたいと思います。

 まず、出産育児一時金についてです。

 十六日の本会議で、妊娠、出産に係る費用については、診療費用から分娩費用まで含め、全て保険適用をすべきでないかと提案をし、見解を求めたところ、総理の方からは、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかなどの課題があるという答弁をいただきました。

 具体的に、今日の委員会の中でも何度か発言がございましたけれども、この保険適用について、ハードルというものをどのようなものが考えられているのか、伺います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 仮に出産について保険適用した場合、どういうことが課題になるかということでございますが、実際は、今、妊婦自身の自由な選択で様々なサービスが利用されていて、それに基づいて、地域差があったり施設ごとに出産費用が違っているという状況がございます。

 片一方で、保険適用となりますと、通常全国一本の価格を決めていくということになりますが、果たしてその格差、今、差がある問題と一本にすることの間を、どのようにその乖離を埋めていくのかというような話があるのではないかと思います。

 それから、もう一つが、療養の給付として、もし保険適用すると、通常、三割負担というのが発生します。そういう三割負担のようなものを、現在の出産育児一時金の場合は、相当数の方が負担なしで済んでいるというのもございますので、そういう取扱いをどういうふうにするかというようなことが課題になるんじゃないかと思います。

田中(健)委員 先ほど来、三十一日に保険適用の提案が出るんじゃないかというお話がありましたが、それらが議論をされ、クリアできるようであれば提案がなされるんじゃないかと思っていますので、またそれが出ましたら議論をさせていただきたいと思っています。

 今の局長の答弁の中で、出産に当たっては各地域によって差があると。この議論も委員会で何度もされてきました。東京と関東地方又は地方によって大きな差があります。出産費用に大きな差が生じてしまっている理由というものについて、どのように分析して、また、理由について考えられているのか、伺います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 令和三年度の調査によりますと、都道府県別の平均額を見ますと、最も高い東京都と最も低い鳥取県の間では約二十万円ほどの差がついております。

 こうした出産費用の地域差につきましては、幾つか研究もなされていまして、どういう要因がこの地域差の原因になっているのかということについて、相関関係をほかの指標と見たものによりますと、所得水準とか、あるいはその地域の入院の医療費の水準とか、そういう要素が指摘されております。その中で最も影響が大きいと言われるのが所得水準、こういう分析が出ていると承知しております。

田中(健)委員 首都圏、東京を始め、所得水準が高いから、それに比例をしているということであるかと思うんですけれども、今回、その一方で、出産費用の見える化というのも進めることが提示をされていますけれども、この見える化によってどのように変わっていくのか、今のこの差というものにも何か影響や、また改善というのが図られるのか、伺いたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 現在も個々の医療機関ごとにホームページなどでそういう価格とかサービスについてやられていると思いますが、今回我々がやろうと思っていますのは、全国でそれぞれの医療機関のサービスとか価格が見えるようなホームページを立ち上げて、妊婦さんが選べるようにしていこう、こういうことでございます。

 この見える化によってどう変わるかということですけれども、今考えておりますのが、室料差額や無痛分娩の取扱い等、サービスの内容についてまず見える化していく。それから、分娩費用の価格等についても見える化していく。そうすると、妊婦の方々が比較した上で医療機関を選択できる、こういうふうになると思っております。

 今後、出産費用の見える化をやった結果、地域別とか施設類型別の出産費用にどのような影響が及ぶのか、そうしたことについて分析をしていきたいと思います。これをやることに伴って、今後の出産育児一時金の在り方、それを考えていきたい、このように考えているところでございます。

田中(健)委員 費用面の実態調査というのが始まるかと思うんですけれども、なかなか正常分娩の実態についてもこれまでは分かりづらかった、国がつかんでいなかったということですから、今回の見える化で国がまず正確に情報を把握した上で、出産にはやはり事故などもつきものでありますけれども、事故が起こったときの原因分析や疫学調査などにもつなげていってほしいと思っています。

 さらに、そのためにも、今現時点での見える化が一つの方法でありますけれども、正常な妊娠、分娩も含めた保険適用をすることで、今言いました事故などの原因分析、疫学調査も更に進むと思っています。費用面の透明化も確保できますし、それだけではなく、周産期医療の安全性の向上とか標準化にも更につなげていけると思っています。

 先ほども、やるためには何の目的かということがありまして、保険適用をするのであれば、このような目的を持って是非取組をできるんじゃないか、進めていってほしいと思っていますが、見解を伺います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 正常分娩の保険適用に関しましては、先ほど申し上げましたようにした場合の課題というのはございます。逆に、そうではなくて、こういうメリットがあるではないかという御指摘ももちろんございます。そうした議論は我々も念頭に置いて考えていくということは分かるんですけれども、我々といたしましては、まず来月、出産育児金を大幅に引き上げる、それから見える化を進めていく、そして見える化の影響、効果をしっかり検証していく。その上で、去年の医療保険部会の取りまとめによりますと、それを検証した上で、三年後に出産育児一時金の在り方について更に検討していく、このようなことを今考えております。

田中(健)委員 まだ出ておりませんので、三十一日ですね、どのような議論になるか分かりませんけれども、保険適用になれば医療データとして情報が集積することにもつながりますし、是非、それに伴って周産期医療の安全向上、医療の標準化というものを進めてほしいと私からも要望をしたいと思っています。

 続きまして、前期高齢者の財政調整制度における報酬調整の導入について質問をいたします。

 現在、前期高齢者の給付の調整というのは、加入者に応じた調整が行われていますが、今回の法改正では、能力に応じた負担の観点から、被用者保険間で加入者に応じた調整に加えて、報酬水準に応じた調整、報酬調整と書かれていますけれども、行うことが提案をされています。

 医療保険においては、保険料の支払い額と給付が比例しないため、保険料と実際の医療費の負担のバランスが分かりにくくなっています。また、被用者保険においても、高齢者の医療費に対する支援金、給付金が増加していることもあり、保険者機能の役目を、役割を果たすことが難しくなっています。さらに、今回、これに前期財政制度における報酬調整が追加をされます。医療保険の給付というのがフラットであるために、保険料の額と医療費の負担との関係が分かりにくくなっております。

 保険財源の累進化を進めるに当たり、被保険者が納得することが一番のまず重要なことだと思っていますし、これは誰もが同じ認識だと思いますが、その納得のためにはどのような方策が考えられますでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先生から御指摘のとおり、やはり医療保険制度、被保険者の保険料によって成り立っている制度でございますので、被保険者の方々の御理解と御納得をいただくということは何よりも重要なことだと考えております。

 そうした中で、今回、前期高齢者の医療給付費の調整に当たりまして、負担力の調整というか、財政調整という仕組みを入れるわけですけれども、なぜこれが必要なのかと申しますと、それぞれ医療保険制度、現役の医療保険制度がありますが、そこに所属されている六十五歳から七十四歳の前期高齢者の割合が非常に偏在している、特に国民健康保険中心にいる、こういう状況ですので、それぞれの保険者だけで六十五歳から七十四歳の方の医療費を賄っていくと、特定の保険者に負担が大きく寄ってしまう、どうしてもそういう構造がございます。それを調整するために前期の調整制度があり、従来はそれを人数の頭割りでやっておりましたけれども、頭割りでやっておりますと、特に報酬水準の低い被用者保険の健保組合なんかの負担が高くなってしまう、こういう状況がありますので、今回まさに三分の一という範囲内で報酬調整、こういう仕組みを入れさせていただいています。

 さらに、今回、調整制度を入れることと同時に、健保組合に対しましては国費で更なる支援をしていこう、こういうふうに考えておりますので、我々としましては、保険者間の調整というのは必要なことだと思っています。それが分かりにくくなるという御指摘についてはそういうところがあるのかもしれませんけれども、実際の保険者から見ると、収入が同じならば保険料率がより近接してきますので、保険者間の不公平が減ってくるというようなこともございますので、今回こういう制度改正を実施した場合には、そういう改革の趣旨というか、そういう目的、狙い、これをしっかり多くのそれぞれの方々に御理解いただけるように丁寧に説明をしていきたい、このように考えております。

田中(健)委員 そもそも前期高齢者の財政調整というのは、社会保険が本旨としている給付と負担の対応というのを著しくやはり私は損ねているんじゃないかと思っています。社会保険は、本来、給付と負担が対応することによって負担に対する納得感を得ていくということが基本であります。ところが、今回、医療保険制度が複雑に入り込んできておりますから、その給付と負担の実感をすることがなかなか難しくなっています。

 そんな中で、本会議においては、何か国民全体での議論をする場がないかとか、また、給与明細にそれがしっかりと分かるような何か仕組み、自分たちが払っているんだ、そして負担してもらっているんだと、お互いの納得感を得る何かないかなという提案もさせていただきました。

 現役世代が報酬に応じて高齢者の医療費を支える財政調整を行うことは、更に負担と受益の関係というのをゆがめることにつながってきますから、問題ではないかと考えていますが、どのように理解すればよろしいでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 実は非常に悩ましい問題でございまして、先ほど申し上げましたように、今、現役世代の保険者の間でも、中に入っておられる高齢者の方の入っている割合が違っていたりとか、あるいは、もう一つ、所得水準自身が違っている、こういう状況がございます。それを考えますと、シンプルに、それぞれの制度の中だけでしっかり収支を相償わせていく仕組みというのは難しい。

 でも、他方、片っ方で、それではみんな保険制度を全部一本化してしまえばいいかとなりますと、今度は保険者機能という面から見るとなかなか課題があるということでございまして、やはり、その辺、保険者が分立していることの意味と、同時に、それぞれの保険者が分立していることに伴う格差をどう調整するかの問題はやはりなかなか悩ましい問題でありますが、できるだけ両立できるように、同時に、先ほど先生がお話があったように、それを被保険者の方々が御理解いただけるようにしていくということが大事だと思います。

 それで、先生からも本会議でも御提案いただきましたように、例えば、給与明細書の中で支援金部分とか拠出金部分を明示するような方法、これは我々の方からも、保険者にそういう選択肢がある、そういうことを取り組んだらどうかというような御案内もさせていただいているところでございまして、どういう工夫ができるかは引き続き考えていきたい、このように思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 中身についてお伺いしますけれども、報酬調整の範囲です。今回、三分の一ということでございますが、後期高齢者における後期高齢者支援金に係る報酬調整も、当初は三分の一でありましたけれども、段階的に引上げになって、今は全面報酬割となっています。

 今回も、当初は三分の一ということで範囲を決められましたけれども、最終的に、また足りなくなった、また負担をお願いしなきゃならないということでどんどんと段階的な引上げをされるんじゃないかという懸念も言われておりますけれども、この報酬調整の範囲というものについて、これ以上引き上げないというような理解でよろしいでしょうか。

伊原政府参考人 まさにその報酬調整の範囲につきましては、導入に当たりまして、社会保障審議会医療保険部会でも議論になりました。

 そうした中で、やはり保険者機能への配慮、これはそれぞれの保険者の自主性ということです。それから、保険者や労使の理解の必要性ということから、調整対象幅につきましては三分の一ということで御理解、御納得が得られて、取りあえずはそういう仕組みとしたところでございます。

 それで、今後の在り方について具体的に何かの考えがあるわけではございません。そして、まさに、今後の前期財政調整の在り方については、今回この法案を可決させていただきましたら、実際に実行していく中で、格差是正の効果がいかほどだったのかとか、各保険者に与えた影響はどうなっているのかというようなことをしっかり見極めていくことが必要だと考えております。

田中(健)委員 小さく産んで大きく育てるような、違った意味の形にならないように是非取組を進めていってもらいたいと思っています。

 最後に、これまで議論をしてまいりましたけれども、やはり、かなり複雑になっているのは事実でありまして、これらの議論の根源というのは、高齢者医療制度の在り方が問われていると思っています。

 これは阿部委員からも御指摘がありました。当初から変わってきたと。それは社会情勢によって、人口動態によっても大きく変わることは当然ではあるんですけれども、やはり、これ以上複雑にして負担と受益の関係というのをゆがめていく、ゆがめていくという言い方があれか分かりませんけれども、バランスが悪くなっていくというのは、制度の根本的な改革に関する議論というのが次の段階ではまた必要になってくるんだと思うんですが、大臣のお考えを伺います。

加藤国務大臣 委員からも御指摘ありますように、医療であり、社会保障制度全般と言ってもいいのかもしれませんけれども、やはりそれぞれ国民の皆さんが社会保険料として負担をしていただいて、その上で成り立っているわけでありますから、その負担に対する理解がしっかり進むようにいろいろな周知をするということと、制度そのもの自体もなるべく分かりやすいものにしていくということは御指摘のとおりなんだろうというふうに思います。

 ただ、やはり、これまで経緯がいろいろあります。後期高齢者医療制度も四十八年の老人医療無料化からスタートして、転々として、今日、後期医療制度、このときもかんかんがくがくの大変な議論がございました。また、前期高齢者については、退職者医療制度を廃止して、その給付費用を保険者間で調整する新たな仕組み、今回御議論いただいている前期財政調整制度も導入したところでございます。

 そして、二〇二五年には、いわゆる団塊の世代の全ての方が七十五歳以上、いわゆる後期高齢者の世代に入るということでありますが、そうした中で、引き続き、医療保険制度の持続可能性を図り、国民医療の皆保険制度、これは世界に冠たる制度であると思っております。こうしたものをしっかりと次の世代に引き継いでいく必要がある。そういった意味で今回も改正案を提示をしているわけでありますけれども、さらに、これから支え手の中心となる生産年齢人口の減少等、いろいろな人口動態の変化もあるわけでありますから、やはり、不断に検討し、必要な見直しを図っていくことは当然必要だろうと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 まさに持続可能な社会保障制度をつくるのは誰もがやらなきゃならないという思いがあると思っていますし、負担も、これだけ、人口動態が変わり、高齢者が増えていく中で、負担もやむなしと、みんなで負担していかなきゃならないという思いは同じだと思っています。その中で是非、納得感のあるものを、また分かりやすく、そして国民全体がそれに参画できるというような取組を進めていただければと思っています。

 引き続きまして、かかりつけ医制度について伺います。

 これも委員会で議論がされてきましたが、私からも確認をさせていただきます。

 まず定義です。これも今何度も議論がされてきましたが、この条文の中におきまして、身近な地域における日常的な診療、そして疾病の予防のための措置、そしてその他の医療の提供を行う機能と。これは、よく条文などにある、AそしてBその他のCということで、一番大事なところは、肝はCでありますから、医療の提供を行う機能であるということで、先ほどの吉田委員の質疑の中でも、その前の二つはあくまで例示であるということが、答弁がありました。

 つまり医療の提供を行う機能だと、かかりつけ医機能は。そうしますと、つまり、かかりつけ医機能でなくても、いわゆる一般医療機能でいいということに捉えられるわけでございますが、これはどのように理解すればいいのか。あと、私たち患者にとって、かかりつけ医の機能ということが定義されることで何が変わるのか。最終的には安心な医療体制を築くというのが皆さんの思いで、そのために何を盛り込んでいけばということが議論をされているかと思っています。

 私は、この医療提供というところ以外に、やはり機能をどのように明確化して規定していくかということが大事だと思うんですけれども、見解を伺います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御紹介ございましたように、この法案におきましては、かかりつけ医機能につきまして、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能と規定をして、かなり幅広い機能をこの中に含み得るように規定をしているところでございます。

 これはかかりつけ医機能として非常に多様な機能が想定されます中で、今後、有識者等による議論なども踏まえてでございますが、必要な機能を柔軟に位置づけることができるよう、法律上、幅広く定義を置いたというものでございます。

 その上で、この法案におきましては大きく二つ取組を掲げておりまして、国民、患者の皆様がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるように、医療機能情報提供制度によって情報提供を強化をするということと、それから医療機関に対して機能の報告を求めて、都道府県と地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討する、こういったことを考えているところでございます。

 それぞれ制度の枠組みごとに有識者などの御意見を伺った上で、それぞれの仕組みの目的に沿った機能の具体的内容を省令などに定めることとしたいというふうに考えてございます。

 法律上に具体的な定義を規定することのみによって直ちに現状が大きく変わるものというふうには考えてございませんけれども、こういった形で整理をさせていただくことによって、本法案でかかりつけ医機能を法律に位置づけて、こうした制度整備を進めることによって、国民、患者の皆様がそのニーズに応じて適切に医療機関を選択できるようになるとともに、医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化をして、地域において必要なかかりつけ医機能の確保が進み、結果として、国民、患者一人一人が受ける医療サービスの向上に資することになるようにしていきたいというふうに考えているものでございます。

田中(健)委員 今のを国民が聞いて、一般の人が聞いて、分かったかどうか、ちょっと疑問なのでありますけれども。かかりつけ医機能が、明確に、逆に柔軟で、どうとでも捉えられるからというのが答弁でありますけれども、だからこそ逆に、皆が分からなくなってしまっているということだと思います。

 例えば、今回、かかりつけ医機能ということで、医師会さんからは、複数のかかりつけ医を持つことが自然だと。ここはかかりつけ医になってしまっているんですけれども、かかりつけ医はいっぱいいて、いいんだと。それも当然、今回、話の中ではあるんですけれども。

 しかし、私が考えるかかりつけ医は、やはり、まずかかりつけ医、ふだん通っている先生がいらして、それを補完するかのように、今回、地域で医療を診るということですから、専門的な先生がいたり、また、そこから相談できる先生もいたり、さらには、私が年配であれば介護にもつながるとか。そういう理解ではあるんですけれども、複数のかかりつけ医を持つことが自然と言ってしまうと、複数の医療を受けられることは、フリーアクセスは当然ですから、いいことです。だから、複数のお医者さんに診てもらうことは自然だというのは分かるんですけれども、複数のかかりつけ医を持つことが自然、当たり前だ、それが当然だというふうに本当に先生たちから言われてしまうと、一般の人たちは混乱してしまうんじゃないかと思うんですけれども、私の理解は間違っていますでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案におきましては、地域において必要なかかりつけ医機能を確保する目的で、医療法上、かかりつけ医機能の内容について明確化をするということとしてございますが、今お話があったような患者の受療行動に介入するような規定は設けるものではございません。

 したがいまして、これまで患者さんが実際に複数の医療機関から継続的な医療の提供を受けておられるような場合には、引き続き、日頃から身近にあっていつも受診している医師として、いわゆるかかりつけ医を複数持つということも想定されるところではございますが、この法案によって、そのような状況に影響を及ぼすものではないというふうに考えているところでございます。

田中(健)委員 もちろん、私も、患者さんの選択を拒んだり、若しくは限定するようなことを言っているわけではないんです。今回の議論を聞いていても、何か、このかかりつけ医機能ないしはかかりつけ医を定義することで、フリーアクセスに大きな影響があると。これ以上、定義を進めてしまうとフリーアクセスが維持できなくなっちゃうんじゃないかというようなふうに聞こえるんですけれども、フリーアクセスを確保しつつ、維持しながら、そうしたかかりつけ医機能というのを効果的にその体制をつくっていく、つまり、共存をしていくということはできないんでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案におきましては、基本的には、かかりつけ医機能を地域においてどう確保していくのかという観点から整理をさせていただいておりまして、その観点で必要な規定を今回整備をさせていただくという整理で取り組まさせていただいております。

 そういう観点から、今回、今議論ございましたように、かかりつけ医機能の中身というのは、非常にちょっと幅広い機能を読み得る形になってございますけれども、先ほどの情報提供制度でありますとか、あるいは、かかりつけ医機能の報告の仕組みといったもの、それぞれの仕組みの目的によって、それぞれ具体的にどういうことをかかりつけ医機能として求めていくのかということは、また改めてちょっと有識者の御意見なども伺いながら、よく整理をしていく、そういうふうに考えていきたいと思っているところでございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 皆さん、思いは同じで、先ほど大臣や皆さんの答弁を聞いても、ニーズに応じた選択ができる、分かりやすく伝えると。全てそれは国民のためであり、患者のためであるならば、やはり分かりづらい、そして混乱をさせるようなことはあってはならないと思いますので、是非、整理をしていただければと思います。

 それでは聞くのですが、この条文の中で、かかりつけ医機能報告対象病院というのが書かれています。これは報告をする病院ではあるんですけれども、この対象病院はどのような病院を指すんでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたかかりつけ医機能報告対象病院等というものでございますが、医療法において、地域におけるかかりつけ医機能を確保するために必要な病院又は診療所を、今委員御指摘があったかかりつけ医機能報告対象病院等と規定をいたしまして、この病院等に対してその機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえ、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討、公表するというスキームにしてございます。

 かかりつけ医機能報告対象病院等の範囲についてお尋ねがございましたが、これにつきましては、病院、有床診療所、無床診療所を含め、外来医療や在宅医療を担う幅広い医療機関を対象とすることを想定してございますが、今後、有識者などの御意見をお伺いして、医療機関や自治体の負担にも配慮をしながら、地域のかかりつけ医機能の確保の状況を的確に把握をし、関係者の間で適切な協議が行えるようにするという観点から、今後検討して、省令で定めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

田中(健)委員 つまり、全ての医療機関、診療機関ということでいいですか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、この範囲というのは、病院、有床診、無床診含めて、外来や在宅医療を担っている幅広い医療機関を対象とするというふうに理解しておりまして、それを更に具体的にどう整理をしていくかということを、今後、有識者の御意見なども伺いながら、しっかりと整理をしていきたいと考えているものでございます。

田中(健)委員 つまり、全部ということですから、全部ですと今ある医療機関と変わらないので、かかりつけ医機能報告対象病院というような、何か大それた、何か変わるんじゃないかというような書き方でなく、病院ないしは診療所と書いても同じなわけですよね。改めてここでかかりつけ医機能報告対象病院と定め、そこに報告を求めるとしますと、何か変わったかのように感じるんですが、何も変わらないわけですよね。ですので、私は、かかりつけ医機能というのがしっかりと整理をされないと混乱をするんじゃないかということを申し上げています。

 それにおいて、報告の対象についても慢性疾患しか、限定されたのはなぜかという質問もほかの先生がしてくれておりましたが、例えば、じゃ、健康な現役世代におけるかかりつけ医機能というのは、私も病院に余り行かない健康な体であるんですけれども、どのように考えていますでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案におきましては、かかりつけ医機能を確保するために医療機関に報告を求める内容につきまして、特に、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有する高齢者の増加が見込まれるということから、慢性疾患を有する高齢者を例示してございますが、高齢者以外の継続的な医療を要する者に対するかかりつけ医機能につきましても報告の対象として、かかりつけ医機能の在り方を検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。

 その際、かかりつけ医機能の報告を求める者の範囲や報告対象とする具体的な機能の在り方などにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、省令で定めることとしてございますが、医療提供体制における課題や他の既存の施策との関係、あるいは医療機関や自治体の負担などを踏まえながら、今後、有識者の御意見を聞いて、適切に定めてまいりたいと考えております。

 それから、健康な方ということのお尋ねでございますが、継続的な医療を要する者には該当しないということになってまいりますけれども、一方で、様々な健康の維持増進を図る取組を進めるということは重要でございますので、そういった点も適切に推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

田中(健)委員 継続的な医療ではないかもしれませんけれども、突然けがをしたり、ないしは突然コロナにかかるということもありますので、是非、全ての人たちがかかりつけ医機能を受けられるということにしてほしいと思います。

 そもそも、今回かかりつけ医機能を法案化したのは、やはり人口減少で、先ほども出ていましたが、高齢化が進み、大きく保険財源も、先ほど、前半議論しましたが、厳しくなっている、また医療資源も厳しくなっている、その中でどのように医療の最適化を図るかという中の一つが、このかかりつけ医だったと思っています。医療の資源の、強化とか連携というのはかなり具体的に議論ができたんですけれども、やはり分化、どのように役割分担をしていくかというところがまだまだここでは見えてきません。是非議論をまた続けさせてもらいたいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上です。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、優生保護法の問題についてお伺いいたします。

 今年、連続して五つの判決が出ております。いずれも、除斥期間は適用しない、そして国の賠償責任を認めております。昨年来のこれまでの高裁判決四つも、全て除斥期間の適用を認めておりません。もうこの問題で除斥期間の適用を認めないというのは司法の判断としては定まってきていると言っていいと思います。覆ることは最高裁に行ってもないと思います。

 その一方で、原告の方も高齢で、次々亡くなっております。先週の大阪高裁の原告の小林宝二さんは九十一歳なんですね。昨年、原告として共に闘ったパートナーを亡くされております。昨日、院内集会がありましたけれども、小林さんは、これ以上待つことができない、こうおっしゃっておられました。これ以上、解決を先延ばしすべきでないと思います。

 そして、昨日の院内集会で、議連会長代理の田村さんも、早期に解決したいとおっしゃっておられました。院内集会では、田村さん頼んだよという大きな声もかかっていたわけでございます。

 ただ、早期の解決のためには政府の決断も必要なんですよね。是非、加藤大臣には速やかな解決を図る立場に立っていただきたいと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 旧優生保護法に基づき、あるいはこの法律の存在を背景として、多くの方が特定の疾病や障害を理由に生殖を不能にする手術などを受けることを強いられたこと、また、心身に多大な苦痛を受けてこられたこと、これは政府として真摯に反省し、心から深くおわび申し上げる次第であります。

 また、いわゆる議員立法が成立した平成三十一年四月二十四日においても、総理及び厚労大臣から真摯な反省と心からのおわびを表明したわけでありますが、政府のそこで表した立場、今も全く変わるものではありません。

 その上で、係属中の個別の訴訟についてお話がありましたが、それぞれの個別には、検討の上、対応させていただいているところでございます。

 委員から今いろいろお話がございましたけれども、判決の中身を見ると、除斥期間の適用の制限が焦点となっております。これまでに国の損害賠償責任の一部が認められ、また上訴した判決については、旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題が含まれていること、また、除斥期間の適用を制限する根拠と範囲、これは判決によって随分異なっているというところもございます。

 いずれにしても、三月十六日の札幌高裁判決及び三月二十三日の高裁判決については、関係省庁と協議した上で、上訴期限までに適切に対応を検討していきたいと考えております。

 また、今、超党派の議連のお話がございました。厚労省から、一時金の支給状況等についても適宜報告を行っておりますが、あわせて、今後の対応の在り方についても検討をお願いをしており、政府としてもしっかりと協力等をさせていただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 今後の対応の在り方について議連に検討をお願いしているということなんですけれども、議連の側からしても、政府が裁判で争い続けるということになったら、なかなかこれは進むべきことが進んでいかないことになってしまうわけですよね。

 先ほど大臣は除斥期間の問題について、優生保護法の問題に限らないほかの問題まで波及するんじゃないか、こういうお話がございました。あるいは、除斥期間の適用を制限する根拠と範囲には、いろいろ判決によって違いがあるということをおっしゃいました。

 ですけれども、法律上の問題は、ハンセン病の解決のときは、法律上の問題については意見があると、意見があるということを一方で表明しながら、しかし、熊本地裁の判決を受けて、控訴せずに時の総理の判断で解決に進んでいったわけですよね。私はそのことと同じことを今回もやらなければならないと思うんですよ。

 とりわけ、やはりこの旧優生保護法は、議員立法で作られた法律です。一九四八年、議員立法で、全会一致で作られた法律です。私たちの先輩は大変大きな過ちをしてしまった。我が党の先輩も含めて、いるわけですよね。ですから、この立法府が行った過ちについては、政治家がやはりこれは本当に責任を持って判断して、一刻も早い解決を図らなきゃいけない問題だと思うんですね。

 ですから、加藤大臣には是非、上告の期限、札幌高裁、あしただと思いますけれども、総理と是非相談していただいて、これはもう裁判で争うのをやめて政治解決で早期全面解決を進めよう、こういうことをしていただきたいと思うんですけれども、是非総理に対してお話ししていただけませんか。

加藤国務大臣 ハンセン病訴訟のお話がありましたけれども、平成十三年のハンセン病訴訟判決では、除斥期間の起算点について、らい予防法廃止時まで違法行為が継続的、累積的に発生してきたものであって、このような違法行為と損害の特質からすれば、らい予防法廃止時と解するのが相当である旨判示され、そもそも除斥期間が経過していなかったわけでございますけれども、それと今回とではちょっと事情が異なるというところもあるということを申し上げたいと思います。

 それから、まさに今委員御指摘のように、現在の法律そのものは議員立法によってお作りをいただいたという経緯もあり、そういった関係で議連の皆さんに検討等のお願いもさせていただき、政府としては、できる協力はしっかりさせていただきたいと申し上げたところでございます。

 さらに、訴訟に関する対応については、上訴期限をしっかり踏まえながら、適切な対応を検討していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 適切に判断ということをおっしゃるわけですけれども、政治家として何が適切なのかということを考えた場合は、これはもう速やかに、早期に解決を図るというのが適切だ、そう思うんですよね。

 加藤大臣も、内心はそう思われているのではないですか。その点は、そういう思いがあるんじゃないですか。

加藤国務大臣 内心というのはあれですけれども、内心においては、最初申し上げたように、こうした対応を強いてきたということ、これは本当に深くおわびを申し上げなければならないというふうに私も思っているところであります。

 その上で、個別の訴訟については、これまでの判決の問題点は先ほど申し上げ、委員も改めてまとめていただきましたけれども、そういったこともあることなども踏まえながら、関係省庁と協議をして、上訴期限までに適切に対応を検討していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 これは本当に政治判断だと思うんですよね。与党の皆さんの中でも、この問題は本当に早期に解決しなきゃいけないというのが圧倒的多数の皆さんの思いだと思いますので、是非皆さんからも、もう上告せずに解決を図るべきだ、この声を官邸に向けて上げていっていただきたい、そのことを心からお願い申し上げたいと思います。

 では、次に、法案の質疑に入ります。

 まず、ちょっと通告の後ろの方の話なんですけれども、今回の法改正で一体お金の流れはどうなるのかということなんですけれども、今回の法改正で見れば全体では国庫負担が大きく減るということになっているわけですけれども、大臣、今回の法改正全体で、国庫負担は一体幾ら減りますか。大臣に答えてもらいたい。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 後期高齢者医療に対する国庫負担につきましては、仮に、制度が創設された平成二十年度の後期高齢者医療費に占める国庫負担額の比率を令和五年度……(宮本(徹)委員「違うペーパーを読んでいますよ」と呼ぶ)失礼しました。ちょっと確認します。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 伊原保険局長。

伊原政府参考人 失礼いたしました。

 今回の制度改正全体で、国費負担額は九百十億円の減となります。

 内訳を申し上げますと、その中で一番大きいのが、前期財政調整について被用者保険間で新しく財政調整の仕組みを入れることに伴う見直しに伴う部分ですけれども、これは、被用者保険間で部分的に報酬水準に応じた調整を導入することによりまして、その導入に伴いまして協会けんぽの方の拠出が減るものですから、それに合わせて国庫補助を廃止する、それが一番大きな金額の影響になっております。

 ただ、これはあくまでも、協会けんぽの前期高齢者に係る負担が、負担能力に応じたものによって調整されることで生じた結果でございます。

宮本(徹)委員 今お話ありましたように、今回の法改正全体では、九百十億円も国庫負担を減らすというのが今回の法改正の中身なんですね。

 じゃ、どこの負担が増えているのかということで、資料の一番最後、八ページ目に厚生労働省提出の資料を載せておきましたけれども、左側が出産一時金関係のものがない場合ですね。協会けんぽは負担が二十億円増えます、共済組合は負担が二百四十億円増えます、後期高齢者は八百二十億円増えますと。出産一時金のところの法改正まで入れた場合は、協会けんぽは二百三十億円増えます、健保組合は三十億円増えます、共済組合は三百二十億円増えます、後期高齢者は九百五十億円増えますという中身になっているわけでございます。

 現役世代の負担軽減とかと言っておきながら、中小企業で働いている方が多い協会けんぽも負担が増えるというのが今度の法改正の中身ということになっているわけですよね。ですから、今回の法改正というのは、全体として言えば、国庫負担を減らすというのが目的になっている法改正ということなんじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 それは今、先ほど保険局長が申し上げたように、今回はあくまでも被用者保険者間で部分的に報酬水準に応じた調整を導入することでありますので、まさに負担能力に応じたものによる調整の結果として国費が削減をされた。ただ、削減部分についても、一部については健保組合等に対して予算措置を講じているところであります。

宮本(徹)委員 もうお金の流れははっきりしているわけですね。結果としてということを言いますけれども、別に、浮いたお金を更に保険料の負担軽減のために、国庫負担を減らさないという選択肢だって制度設計によってはできるわけですけれども、そうではなくて、あえて九百十億円国庫負担を減らすという中身になっているわけです。

 じゃ、この減らした九百十億円は今後どこに行くんでしょうか。

伊原政府参考人 まさに、今回の法律の施行というのは令和六年度を予定しております。令和六年度の予算編成の過程において今回の国費九百十億円の話がございますけれども、同時に、現在、毎年後期高齢者が増えて、医療費の増加、自然増等も発生しております。さらに、来年度は同時改定とかいろいろな要素もございますので、そうした予算編成過程の中でその話は議論されるものと考えております。

宮本(徹)委員 先ほどの話だと、社会保障の自然増の抑制の一部を構成するかのような話なわけですよね。社会保障の予算を、本来伸ばすべきものを伸ばさずに、国庫負担を減らして、結局、岸田政権は今軍事費を二倍に増やそうとしておりますけれども、お金に色はついていないですから、そういうところに回っていくんじゃないかということを私は言わざるを得ないというふうに思います。

 その上で、国庫負担を減らして最も大きな影響を受けるのが、七十五歳以上の高齢者の皆さんです。資料の三ページ目に、高齢者の負担率がどうなるのかというのを、資料をいただいたものをグラフにさせていただきました。青い棒グラフが現行制度、ダイダイ色が見直しの場合の負担率ということになります。二〇二四年よりも二〇二六年、二〇二八年と、現行制度に比べてかなり大きく負担が増えるということになっていくわけです。

 これは本会議でもお伺いしましたけれども、来年七十五歳を迎える方が九十歳までに支払う一人当たり保険料の合計というのは、法改正すれば、現行制度に比べおおよそ何倍ぐらい増えるんでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、保険料額が幾らになるかということにつきましては、医療費の見込みができないと算出できないんですけれども、医療費の伸びは今後の物価や賃金、あるいは医療の高度化とか様々な影響であるので見込めないので、具体的な累積の数字の比較倍率を出すことは難しいんですけれども、仮に、それぞれの年ごとの比率、現行制度とそうじゃないものについては、大体、人口構成比率で算出できますから、それを計算いたしますと、まずは、二〇三〇年度までは後期高齢者負担率の伸びが改正前より大きくなります。したがいまして、二〇二四年に改正前の一・〇四倍になります。最大では二〇二八年に改正前の一・〇六倍になります。

 しかし、二〇三〇年以降におきましては、後期高齢者人口も減少局面に入るものですから、今回の見直しでは後期高齢者人口の変化を反映する仕組みにするということですので、現行制度に比べて伸びが緩やかになります。その結果、二〇四〇年の改正前の負担率の〇・九九倍になるというふうに見込んでおります。

宮本(徹)委員 倍率だけを述べていただいたわけですけれども、先ほどのお話でも、ピークでいえば、二〇二八年は今の制度に比べて、高齢者負担率の見直しだけでも一・〇六倍に保険料が増える、これに出産一時金の負担分も増えるということですよね。ですから、現行制度に比べて、一人当たり、保険料が年間六千円以上増える年もある、実際の医療費の伸びによってはもっと多く増えるということになると思うんですよね。かなりの大きな負担ということになるわけです。

 それで、これも本会議で聞いたわけですけれども、医療費の窓口負担を二割に引き上げる際の対象というのは年収二百万円以上でした。そのとき、また名前を出して恐縮ですが、その当時の田村大臣からは、余裕があるという答弁がございました。

 それは、資料の次のページ、四ページ目のところを御覧いただければと思いますが、これは総務省の家計調査を基にしたグラフということになったわけです。

 今回はそのときよりも厳しい、年収百五十三万円以上から保険料が増えるということになるわけですよね。このグラフを見ても、年収百五十五万円の方の消費状況を見て、とても余裕があるとは言えないというのははっきりしていると思うんですけれども、この年収百五十三万円というのは、月収十二万七千五百円です。加藤大臣、月収十二万七千五百円の年金生活者の方の生活に余裕がある、こうお考えでしょうか。

加藤国務大臣 当時二百万としたときにも、それぞれの階層ごとに収入と支出の差を見て、どの程度幅があるのか、それを踏まえて御議論されたんじゃなかったかというふうに記憶をしておりますけれども、後期高齢者の保険料は、所得にかかわらず低所得の方にも負担していただく定額部分、いわゆる均等割と、年収百五十三万円以上の方に所得に応じて負担をしていただく定率部分、いわゆる所得割によって賦課されており、負担能力のある方に能力に応じた負担をいただく仕組みとなっているわけであります。

 今回の制度改正では、令和六年から高齢者に新たな御負担をお願いするわけでありますけれども、一律の負担とならないように負担能力に応じた負担とする、また激変緩和措置を講ずる、こういうことをさせていただいたところであります。

 こうしたことによって、均等割保険料のみが賦課される年収百五十三万円以下の、約六割の低所得者の方々、要するに対象者の約六割の方々は負担の増加が生じないようにするとともに、それより上の年収の、一二%の方々についても、令和六年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないようにさせていただいたところであります。

 令和三年の制度改正において窓口負担割合を見直した際は、二割負担への変更による影響が大きい外来患者について、施行後三年間、一月分の負担増が最大でも三千円に収まるような配慮措置も、そのときの改正においてもさせていただいたところであります。

 また、今回の見直しでは、百六十万の方の保険料については、改正がない場合には、令和六年、七年度に月額千八百四十円と見込んでおりますが、改正後においては、激変緩和を講ずることで、令和六年度は制度改正に伴う負担の増加は生じず、また令和七年度においても制度改正に伴う御負担は月額で五十円程度と推計しているところであります。

宮本(徹)委員 年収百五十三万円の方は今でも大変生活が厳しいわけですよね。恐らく皆さんもそういう声をたくさん聞いているんだと思いますよ。私も地元を歩いていましたら、本当に今年の冬は大変だったというお話を、お風呂の回数を減らしたとか、そういう話をたくさん聞いています。だからこそ、今度、予備費で、住民税非課税世帯に対しては三万円給付するということを皆さん決めたんじゃないですか。東京でいえば、住民税非課税世帯というのは、年金生活者は百五十五万円ですよ。給付対象の世帯にも含めて負担増を求めていくというのが今度のやり方なわけですよね。全くやっていることが筋が通っていないじゃないですか。一方ではもう大変だから予備費で給付しましょう、一方では保険料を増やしましょう、これは筋が通らないと思いますよ。

 加藤さん、首を振られていますけれども、普通に考えてこれは筋が通らないんじゃないですか、ここから負担を増やすというのは。

加藤国務大臣 したがって、そういうことも踏まえて、令和六年度の制度改正に伴う負担の増加は生じず、令和七年度において御負担をいただくという、そうした対応をさせていただいているということでございます。

宮本(徹)委員 物価上昇は続いているわけですよね。物価が、じゃ、マイナスに、またデフレのような状況になっていくのかといったらそんなことはとても考えられないわけですよ。ですから、一方でもう給付しなきゃ支えられないという方々に保険料で負担増を求めていくというのは、これは全く大きな問題があると申し上げておきたいと思います。

 加えて、昨年十月から、後期高齢者医療の窓口負担、二倍化が行われたわけですけれども、受診に対してこの負担増がどういう影響を及ぼしているのか、既に把握されているんでしょうか。あるいは、まだ把握していないのでしたらどう把握されようとしているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御質問いただきました、この二割負担が後期高齢者の受診に与える影響についてでございますけれども、まさに、この窓口負担の見直しを国会で御審議いただいた際の附帯決議におきまして、窓口負担割合の見直しが後期高齢者の受診に与える影響を把握する、こういう決議がされております。

 そうしたことから、我々の作業としましては、施行前後の後期高齢者の所得に応じた受療状況の分析が可能になるように、まずは、二割負担の対象となった方の施行前後の医療費データの収集を進めているところでございます。今後、その収集したデータを踏まえて、分析を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 今データを収集しているということですけれども、そのデータの収集と分析というのはいつ頃終わるんでしょうか。

伊原政府参考人 受診行動等の分析には、ある程度まとまった期間のデータが必要でございます。

 そこで、令和四年度分のデータを集めることにしておりまして、そのデータがそろうのが本年夏頃と考えております。そのデータを踏まえまして、二割負担となった方の医療費や受療行動の状況について、分析、評価を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 データが集まるのがようやく今年の夏だと、そこから分析をすればもう少し時間がかかるということなわけですよね。

 私たち、政府の試算でも二割負担をやった場合に、約一千億円の受診抑制が起きるということが出たわけですから、これは健康に影響を与えるんじゃないかということをさんざんこの場で指摘をさせていただきました。その健康状況への影響もつかめていないというのが今の現状なわけですよね。そのまま同じ方々に対して更なる負担増を求めるというのは、健康を守るべき厚生労働省の立場からしても無責任と言わなければならないんじゃないですか。

加藤国務大臣 まず一つは、今回の措置をなぜ行っているのか。委員は後期高齢者の保険料だけをお示しされましたけれども、一方で、支援金、要するに若い方々が納めている支援金の負担がその分だけ減るわけでありますから、そうしたバランスを取っていく必要があるということで今回提案をさせていただいたということであります。

 一方で、その導入に当たっては、先ほども申し上げましたけれども、能力に応じて、またその負担が一遍にかからないような措置を講じさせていただいてというような工夫を、対応をさせていただいているところでございます。

宮本(徹)委員 現役世代の負担の軽減をやるんだったら国庫負担をちゃんとやればいい、それでちゃんと財源を確保してやればいいだけの話で、七十五歳以上の高齢者の皆さんの負担を引き上げるというのは、私はやり方として間違っていると思いますよ。

 その上で、窓口負担引上げの影響ですけれども、今日は資料を少しお持ちしました。資料の五ページ目を見ていただきたいと思いますけれども、これは全国保険医団体連合会のアンケート調査ということです。

 経済的理由による受診控えがあるかないかというものですけれども、年収二百万円以上の方で、あると答えた方が一六・八%、一割負担の年収二百万円未満の方で、あると答えた方が一二・七%、nはそれぞれ四百三十五と八百二十六ということですから、両方で一千数百余りのデータということになりますけれども、これを見ると、年収が多い二割負担の方の方が、四ポイント、一割負担の方よりも経済的理由で受診を控えたことがあると答えた方が多くなっております。

 これは一つのデータですけれども、紛れもなく受診抑制が起きているということを示すものじゃないかと思います。

 それから、次の資料の六ページ目を見ていただきたいと思います。こちらの資料の方は、全日本民医連の調査の資料でございます。

 これは、二割負担になった方々、七千六百十五人についての回答です。今までどおり受診するとお答えになっている方が七九%ということになっていますが、これは重複回答になっていますので、一とそれ以外を丸をしている方もいるんですけれども、受診をためらうようになったという方が一四%、受診回数あるいは薬を減らすとお答えになった方が一一%、食費を削って受診するとお答えになった方が一三%、貯金を切り崩して受診するとお答えになった方が一九%、家族に支援してもらうとお答えになった方が一一%ということなわけですね。

 ですから、本当に医療費の負担というのは大変大きくなって、受診行動にも大きな影響を与えている。この中で、やはり受診をためらったり、受診回数、薬を減らすということになったんですね、文字どおり健康に影響を与える。しかし、健康を守ろうというために、暮らしを本当に切り縮めて病院にかかる、こういう状況が生まれてきているということだと思うんですよね。

 ですから、こういう事態がアンケート調査等で出ているにもかかわらず、政府自身がまだ調査もしていないのに、この層に負担を増やしていくというのは、私はやってはならないと思いますよ。このアンケート結果を御覧になって、大臣の受け止めをお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 これは、ちょっとどう評価していいのか、それから、複数回答ですから必ずしもちょっと読み切れないなというふうに思っております。いずれにしても、私どものやる調査結果を見ながら、そこは分析をしなきゃならないと思っております。

 それからもう一つ、窓口負担と保険料の負担、これは必ずしもイコールではないんだろうなというふうに思うところでありますけれども、さはさりながら、先ほど申し上げたような様々な措置も講じさせていただいて、できるだけ負担が一どきにかからないように、あるいはできるだけ所得の低い方には配慮をする、こういった形で今回も制度設計をさせていただいたということでございます。

宮本(徹)委員 負担をかからないようにすると言うんだったら、国庫負担を増やせばいいんですよ。そうすれば、現役世代の負担軽減は、ちゃんと後期高齢者の皆さんに負担を求めずにできるわけですから。その点、ちょっと改めて数字を確認したいと思いますけれども、一番初めに局長がお答えになった点を聞きますよ。

 後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率は制度発足から減っているわけですけれども、仮に制度発足時の国庫負担率に戻せば、幾ら国庫負担は増えることになりますか。今度の予算案で答えていただきたいと思います。

伊原政府参考人 先ほどは失礼いたしました。

 後期高齢者医療に対する国庫負担につきましては、仮に制度が創設された平成二十年度の後期高齢者医療費に占める国庫負担額の比率を令和五年度予算ベースの後期高齢者医療費の見込みに乗じた場合、七兆円となると考えます。そうしますと、同年度の国庫負担の総額六・四兆円との差は、六千五百億円ということになります。

宮本(徹)委員 だから、同じ比率を維持していれば、あと六千五百億円国庫負担があったということなんですよね。いろいろなやり方で国庫負担を減らしてきて、更にまた今回、法改正で国庫負担を減らしていくと。

 今日、立憲民主党の小川さんから、共助よりも更に公助が大事なんだという話がありました。この公助の部分をどんどんどんどん切り縮めているんですよ、制度発足以降。この公助の部分をしっかりと増やしていくことこそ本当にこれから極めて大事だということを、私からも申し上げておきたいというふうに思います。

 あわせまして、私の持ち時間がなくなってきましたので、通告している問いの一点だけ、あと、お伺いしたいと思います。

 少子化対策のことは今日も議論されておりますけれども、今度、報道を見ていましたら、今、国が行っておりますいわゆるペナルティー、子供の医療費の助成を行ってる自治体に対して補助金を減らしている措置についてはやめていくということが報道されております。

 そうであるならば、もう一つ、国が自治体にやめろと言っている問題があるんですね。それは、市区町村独自で子供の均等割の軽減をこの間やっている自治体があったわけですけれども、これに対して国が大変否定的な事務連絡を出して、その事務連絡が出てから、私の地元でも幾つもの自治体が子供の均等割のこれまでやってきた独自の軽減をやめるということが起きているわけです。

 少子化対策と子供予算倍増なんだ、こうやって政府が旗を振るんでしたら、市区町村が独自にやっている子育て支援、医療費助成についてもそうですけれども、子供の均等割の軽減についても、これをやめろやめろというような圧力をかけるのはやめるべきではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 国民健康保険の保険料については、同じ医療費水準や所得水準であれば、どの保険者に加入していても同じ基準で受益に応じた公平な保険料を設定することが適当と考えております。

 国民健康保険法第八十一条に基づき、保険料に関する上限額や保険料率の算定方法に関する基準を国が定めた上で、その基準に従って保険料を設定することとされております。国が定める基準を超えて一律の保険料軽減を独自に条例で定めることはできない、こういう仕組みとなっているところでございます。したがって、それに沿って対応していただかなきゃならないということであります。

宮本(徹)委員 いやいや、本当に冷たい答弁ですね。これまで独自にやってきたものをやめろやめろと言って、それで本当に本気で少子化対策をやろうとしているのかと大変疑問だということを申し上げまして、時間になりましたので、今日の質問は終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。今日もラストバッターで質問したいと思います。

 この間の議論で、やはり給付と負担、特に負担を、人口動態が過去とは変わってきまして、それに対応した形で何とかお互い助け合う、そういう形が見えてきていますが、私はあえて今回給付の方を、医療給付、いわゆる医療資源、そういったことについて進めていきたいと思います。

 まず、私も取り組んできましたお産に関して、出産育児一時金が八万円アップ、これは大臣、全国あるいは各地域で分布に差があるということでございますが、余剰となったお金は、確認ですけれども、これは、通常はお産をした施設が請求して、それで現金はそちらの方に振り込まれるわけでございますけれども、個人に返ってくる、それの確認と、その上で、もう一点は、例えば医療機関に新たな注文があって、例えばおむつを買うお金に充てるとか、あるいは、場合によったらその医療機関、入院中でなければ受けられない乳房マッサージとか、あるいは悪露、いわゆるそういった出産後のいろいろなトラブル等を聞いていく形の、保険診療に入っていないところでカバーするというようなことにも使える、そういう認識でよろしいでしょうか。大臣、お願いします。

伊原政府参考人 お答えをいたします。

 出産育児一時金につきましては、法律上は、まずは一人一人の御本人に支給する、こういう構成になっております。ただ、今は直接支払い方式といいまして、医療機関の側が、出産に要した費用については本人に代わって支払基金に請求する、こういうことが可能となっております。

 したがって、今ですと四十二万円、四月からは五十万円と、実際にかかった費用との差額については御本人の手元にも入るということになっていると承知しております。

仁木委員 あえて国民の方に、岸田総理も、八万円上げたということをよく言われますので、やはり、国民に上げた実感というか、政府あるいは公に、子育てを応援していく、あるいは少子化対策を全国民が取り組んでいくという実感があるような形の広報の仕方も進めていただきたいと思いますが、私はその医療のことに関しまして、いろいろな形で危惧しております。

 これは国の方で、今、実際、地方の方の民間のお産ができる産婦人科、減っているのは御存じだと思います。そうしますと、地域、特に地方の方で出産費用は安いといっても、そこに暮らす妊婦さんは、いざお産となると、ただでさえ妊婦健診でも高い交通費や時間をかけて移動しております。

 そういった観点で、私が今日問題にしたいのは、今回の答弁の中でも出てきました無痛分娩。大臣、これは通告していますので、二〇一七年の医療過誤を受けて、大臣は無痛分娩に関する考え方はどのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 平成三十年七月に、産婦人科、麻酔科、周産期領域の関係学会により、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会、いわゆるJALAが組織をされ、無痛分娩取扱施設の診療体制に関する情報の公開、無痛分娩の安全な実施に必要な医師と医療スタッフの研修の推進、無痛分娩に関連して発生した有害情報の分析、無痛分娩取扱施設の医療従事者への共有といった、無痛分娩を安全にするための取組を進めていただいているところでございます。

 厚労省としても、これまで、都道府県を通じて、JALAが実施しているこれらの事業に医療機関が参加することを重ねてお願いをしてきております。

 さらに、令和六年度から開始する第八次の医療計画を作成するため、本年度内に国から都道府県に示す予定の周産期医療の体制構築に係る指針において、安全な無痛分娩の実施に向けて、無痛分娩を実施する施設に対して、JALAが実施する研修に参加することや、そうした取組を実施している施設の情報を公表することなどを促すことを明記することを検討しているところであります。

 都道府県や関係学会と連携しながら、大事なのは、安全な無痛分娩ができる実施体制を構築をする、そして、妊婦の方々が安心、安全に出産できる環境の整備を図っていく、こういった立場であります。

仁木委員 一般に、お産で急に分娩が遷延したり胎児仮死が起こったりして急速の遂娩という形に至ることがあります。いわゆるその中には緊急の帝王切開とかが含まれていまして、麻酔ということが非常に重要です。腰椎麻酔は、今現場で、産婦人科医師、私はやっていました、あるいは無痛分娩も、硬膜外麻酔とかまでやっていましたが、そういう一連の麻酔行為を、医療行為を麻酔科の先生に委ねていく、あるいは、国がそういうことをやっているのか知りませんが、今新しく、新規に産婦人科専門医になった者が、この麻酔の方、特に腰椎麻酔等々、これはお産に欠かせない、そういうものでありますけれども、それがなされていないという現実もあります。

 そういうことを踏まえて、大臣、実は、来年から施行される医師の、特にその産科当直も問題になっていますが、働き方改革及び冒頭申し上げた医療資源という概念でいいますと、これを厳密に国が、例えばこういう形の体制でなければ帝王切開はできない、麻酔科もちゃんと置いていないとできないとかということになってきますと、更に厳しい給付の現実が顕在化すると思いますが、大臣、この辺の実態のこと等踏まえて、どういうふうにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 考えというよりもまず現状でありますけれども、帝王切開時の腰椎麻酔をどの医師が担当するかについては、患者の状態や医療資源の状況により個別に現場で適切に判断されるべきものと考えており、厚生労働省としては特定の方針は示していないと承知をしています。

仁木委員 今、大臣、重い御発言をいただいたと思います。

 そうしたら、現状のように、産科医療特に周産期医療における帝王切開の麻酔は、産婦人科医が従来やっているのであれば産婦人科医がどんどんやっていってもいい、従来方針でいいわけでしょうかね。今、大きい病院では、ちなみに、大臣御案内のように、もう専ら麻酔科医がやりますし、無痛分娩の麻酔、硬膜外麻酔もみんな麻酔科医がやっているのは現実です。ですから、いろいろなオプションがあるよということを提示しましても、患者さんが結果的に選べない、そういうようなことも出てくるというのは、今回のこの答弁あるいは議論を聞いていまして感じた率直な意見です。

 そういう意味で、大臣、冒頭私も、今、民間のところがお産をしなくなっているということを申し上げましたが、日本の命が誕生する場、周産期医療のいわゆる拠点化というか集約化はなされるべきであるというふうにお考えでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 周産期医療については、従前より、限られた産科医等の有効活用を進めるため、医療資源の集約化、重点化を推進することが、良質かつ適切な医療の提供に資するという考えに基づき、地域において周産期医療体制の構築を進めているところでございます。

 令和六年度から開始する第八次医療計画の作成指針においては、各医療機関の役割分担を進めていく、例えば周産期母子医療センター等ではハイリスクの分娩を行うなど、そうした役割分担を進めていくこと。また、地域医療介護総合確保基金を活用した院内助産や助産師外来の推進によるタスクシフト、タスクシェアにより周産期医療の集約化、重点化を進める方針としております。

仁木委員 大臣、今、実際現場は、そうはいっても、民間の、一人の産婦人科医がいて、一人の先生が頑張ってお産を続けているという、昭和あるいは平成の前半であったような光景というのは、本当に、地方においては特に消えていっています。ですから、そういうことを踏まえた上で、いわゆる、私は今日は、負担のことはほかの議員も質問されましたが、給付のことを、いわゆる医療の限られた資源の適正化ということについて申し上げていますので、またその辺の今の大臣のお声を聞いて、例えば周産期医療も、今後展開が変わっていくというふうに思います。

 ちょっと、先ほど言い漏らしたことで一つ大臣に確認したいんですけれども、医療DX、大臣も進めておりますけれども、例えば、私は、余剰となった、あるいは、五十万円の出産育児一時金、これを例えば産褥のサービスにも入院中に受けられる、これは非常に大切なことだと思いますけれども、それを大臣、例えば、デジタルを導入するということは迅速性も担保されますので、そういった入院中、これは経産婦と初産婦さんでも違いますし、帝王切開しても入院期間は違うわけでございますけれども、そういったところで、今、例えば産褥後ケアハウスなるものもありますけれども、やはり個人がある程度負担しなければいけません、そういったことにも代えられるという認識でよろしいでしょうか。これは政府参考人の方でもいいと思いますけれども。

伊原政府参考人 御質問の趣旨は、恐らくは出産育児一時金をそういう用途で使うことは可能か、こういう御質問だと……(仁木委員「それと迅速性」と呼ぶ)ということですね。

 そういう意味で申し上げると、出産育児一時金の方は、今ですと、御本人が請求する場合は事後請求です。なので、子供が生まれてから請求する。それから、直接支払い方式といって、医療機関が請求する場合は、出産費用でございますので、まさに子供が生まれる前後のところのときに現金を支給するということはちょっとなかなか難しいですけれども、当然、支払われて何に使うかについては、可能だと思います。

仁木委員 この名前というか、この一時金の趣旨からいっても、そしてまた、デジタルといって環境が変わっていますので、より迅速に支給していただきたいということを申し述べたいと思います。

 その上で、別の質問に移りたいと思いますが、この間も出ておりましたかかりつけ医の問題でございますけれども、またこのことに関しまして詳しく来週の方で質疑したいと思いますが、ある医師会主催の勉強会で、こういう現状があるということも聞きました。

 いわゆるかかりつけ医、これは、例えば訪問診療医や、あるいはふだんかかっている医師なんですけれども、特に訪問診療等において、例えばケアマネ等々が、御自身でどの先生にしようかなという、今回のマッチングにも相当することですけれども、よく、冷静に判断できないような方に対して、ここの先生がいいですよという形で紹介をして、いわゆる囲い込みの現象が起きていると。場合によっては、ケアマネさんというのは、だけとは申しませんが、その家族、あるいはその患者さんとより時間なり、もっと言うと経済的なことまで、お金のやり取りもありますので、そういう接触している方がドクターに紹介をしていって、どんどん、そのドクターにしてみたら患者さんが増えていく、そうしたら、経営的に言うと、例えば、収益が上がって、その分の見返りを求めるような、いわゆるそういった方もいらっしゃるといったことがありますけれども、まず、大臣、冒頭に、そういった事案は把握されていますか。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 指定居宅介護支援事業、ケアマネ事業でございますけれども、そちらの運営基準におきまして、ケアマネジメントは、保健医療サービスも含め、利用者に提供されるサービスが不当に偏る、偏することのないよう、公正中立に行われなければならないことといたしております。これは先ほど吉田先生の方にも御答弁、大臣の方からあったところでございます。

 また、保健医療サービスを含めまして、居宅サービス事業者等からの利益収受等、禁止をされているところでございます。

 ということで、これらの基準に従って適切な事業運営がされていないことが確認されるような場合には、市町村の改善指導等の対象となるところでございます。

 厚生労働省におきましては、現時点で御指摘のような事案は承知しておりませんが、仮にこのような事案が生じた場合には、運営基準に従いまして、市町村において適切に対処いただくことになると考えております。

仁木委員 そうしたら、次の質問に移りたいと思います。

 私は、予防医療が大切だと思っていまして、やはり医療費の適正化ということに関してすごく寄与するというふうに思っています。ですから、冒頭に、そういった予防医学、医療、たくさんあるんですけれども、そういったことのエビデンス構築のための研究に対してもこの医療DXを駆使したりしてやっていただきたいということを申し述べたいと思います。

 その上で、保険者機能を強化するということをより提言したいと思います。例えば、一次予防の予防接種を接種した患者さん、いわゆる被保険者、あるいは、二次予防、がん検診とかそういうのを実施している被保険者に対して、保険者が、何かプレミアというか御褒美というか、よく民間の生命保険会社の、健康の増進、そういった事業等々と称して、今、すごくそういう保険も民間は多いんですけれども、そういうのを公的な保険に対してより強化していくというふうな考えは、大臣、あられますか。どうでしょうか。

加藤国務大臣 個人の予防・健康づくりに対して意識を喚起する、そのための健康ポイント等のインセンティブを与えるということをおっしゃっておられるんだと思いますが、そうした取組は大変大事だと思います。

 こうした取組を更に推進するため、健康保険組合や市町村国保等の医療保険者による予防・健康づくりの取組を評価し後期高齢者支援金等の額に反映させる保険者インセンティブ制度において、予防・健康づくりへの個人インセンティブの取組を評価する、また、個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドラインを策定し、医療保険者が個人にインセンティブを提供する方法などをお示しをし、取組を進めているところでございます。

 また、個人にインセンティブを提供する具体的な方法については、ガイドラインにおいて、被保険者等の予防・健康づくりの取組に応じて、ポイントを付与し、物品等に還元することなどを挙げて、具体的にも挙げさせていただいております。

 予防・健康づくりの取組、疾病のリスクに応じて、ただ、個人の保険料に差をつけるというようなことは、我が国の医療保険制度が、相互扶助の理念の下、疾病のリスクを国民みんなで分散する国民皆保険の仕組みとなっておりますので、その趣旨にはそぐわないのではないかというふうに考えているところであります。

仁木委員 ありがとうございます。

 私も、本当にそういう考え方を、より保険者が、皆保険制度ですから全ての国民が何かの保険に入っているわけでございますので、その保険者から被保険者へ、しっかりそういったメッセージ、具体的な行動変容を促すような施策というのをもっと浸透させていくべきだというふうに思っていますので、そのことを、やはり、若いときは痛みもない、大丈夫だろうといって無理してしまうことがありますけれども、知らないうちにメタボリックシンドロームになっていたり、がんになっていたり、そういった形が起こるわけでございますので、適正な、医療機関へ何か定期的に足を運んで自分の体をチェックしていく、セルフメディケーションという言葉もありますけれども、そういったのを保険者が後押しするような形の政策というのを、もっと国が推進していただきたいということを申し述べたいと思います。

 さて、私、先週、この全世代対応型ということに関して、全地域対応型という概念を出しました。それは、今日の給付というか、医療資源は限られていますので私が加えてほしいという考え方なんですけれども、やはり、東京とか人口の多い地域は、医療機関、ありますよね。いっぱい待たなきゃいけない、地域の十万人当たりの医師数は少ない、それは分かるんですけれども、待てば診てもらえます。これは皆保険制度プラス、フリーアクセスということでいいんですけれども、フリーアクセスしてください、かかりつけ医を持ってくださいと言っても、地方ではいない話を先週しました。

 そういう中で、大臣、例えば、医療機関に向けてのレセプト請求のときに、訪問診療した際に、例えば患者さんからそういった交通費をいただいていいという記載もあるんですね。国はそういう形で認めています。ということは、逆に言えば、大臣、先週は明確にお答えいただきませんでした、診療報酬という切り口で私が質問したものですから。されど、やはりそういった、私もさっき言いましたが、移動して、時間もお金もかけて医療機関に行かないと医療を受けられない国民が多くいるという現状、これは、大臣、何か救済する方法はないでしょうか。私は、例えば国民健康保険、国保においてはそういうことがあると聞いておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 国民の皆さんがどこに住んでいても医療に対して適切なアクセスができるということ、これは大変大事なポイントだと考えております。

 国民健康保険制度においては、僻地など民間の医療機関が乏しい地域において必要な医療が確保されるよう、保険者自らが、国民健康保険直営診療施設、これを運営するとともに、厚労省は、施設の運営費、機器導入等に対する補助を行っているところでございます。また、医療機関や診療科の廃止等に伴い医療機関へのアクセスが困難となる地域の患者の医療機関へのアクセスを確保するための財政支援措置、これも行っているところでございます。

 その上で、例えば、国民健康保険料について、同じ医療費水準や所得水準であれば、どの保険者に加入しても同じ基準で受益に応じた公平な保険料を設定することが適当であります。

 したがって、国民健康保険法に基づき、保険料に関する上限額や保険料率の算定方法に関する基準、これを国が定めた上で、その基準に従って保険料を設定することとしておりますので、国が定める基準を超えて、一律の保険料軽減を独自に条例で定めることはできないという仕組みとなっているところでございます。

 そして、保険料の設定については、都道府県単位の保険料水準の統一を進めているところであります。僻地など医療費水準が低い地域では、まずは二次医療圏ごとの統一をするなど柔軟な対応を可能としておりますが、小さい単位で独自に軽減するといったようなこと、これは認められないということで対応させていただいているところでございます。

 いずれにしても、各地域で、先ほど申し上げたような、診療所の設置等、どこに住んでいても適切なアクセスが確保できるように対応していかなきゃならないと考えています。

仁木委員 大臣、今回の法改正に伴って、医療機関等々が情報をより、経営的な情報も提供するようになる、そういう議論も先ほど出ました。地域の例えば診療の実態もより見えてくると思います。そういうことを、例えば、自由に開業できるというふうな、そういった医師の側としてはありますので、その辺で気をつけなきゃいけないのは、開業する際にそういったデータも、目的として、地域医療を担保していく、限られた資源を守っていくという点で、例えば、そういった開業を考えている医師とかあるいはまた病院を移転しようと考えているような医療機関に開示するということは、今後ありますかね。

 つまり、私は、データとしては、この地域で医療を、大臣、診療している内容によって、診療の額面が出てくると思うんですね。そういうことを見て、例えば、その地域は、耳鼻科なら耳鼻科の患者さんが多い地域なのか、眼科が多い地域なのか、高齢者が多い地域なのか、そういうことが見えてくると思うんですけれども、そういったことを医療機関が新たにオープンする前提のデータとして活用するということも、これは、医療情報の、給付をより国民が受けやすくするような形につながる、場合によってはマイナスの面もあるかもしれませんが。大臣、その辺、ちょっと通告していなかったんですけれども、いかがでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年に医療法の改正を行った際に、医師確保計画の枠組みをつくったときに、外来医療につきましても、今委員おっしゃったような、情報提供、やはり開業を新たにされる先生方に提供することによって、その地域がどういう状況なのかということを御理解いただいた上で、それぞれどういった分野で開業していくかということを御検討いただく、そういうようなスキームをつくっているところでございますので、今委員おっしゃったようなことをしっかりとまた進めていきたいというふうに考えてございます。

仁木委員 来週述べると言ったかかりつけ医の話でございますけれども、かかりつけ医は、じゃ、何人なのか、あるいは、その地域に、かかりつけ医に相当するような、例えば今でいうと総合医みたいな先生がいらっしゃらない、そういうような地域も結構日本の全国にあると思うんですね。そういうときに、患者さんが本当にどういう形でかかりつけ医を見つけていくのか。そういうことで、医療資源がやはり適正に、自分の住んでいる地域からアクセスもいいということもすごく大切な実態だと思うわけです。

 ですから、そういった利活用を進めているということは今確認を私もしましたので、今後ともそういったマッチングをして、適正な患者さんが適正な医療機関で治療を受けているということで、いわゆるミスマッチによる年間一兆円を超えるともされる医療費の、無駄遣いとは言いませんが、不適切な支給になっている形をより是正して適正な医療になっていくと思いますので、この辺はより検証していっていただきたいと思いますし、また、その辺のことの情報を教えていただきたいと思います。

 今日はこの辺で、時間が来ましたので終わらせていただきますが、また来週、かかりつけ医のことについて質問したいと思います。

 今日はありがとうございました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る四月四日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る四月四日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十六分散会


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