衆議院

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第13号 令和5年5月12日(金曜日)

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令和五年五月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      石井  拓君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    岸 信千世君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    橋本  岳君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      吉田 真次君    井坂 信彦君

      大西 健介君    西村智奈美君

      野間  健君    山井 和則君

      吉田 統彦君    早稲田ゆき君

      一谷勇一郎君    遠藤 良太君

      吉田とも代君    古屋 範子君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     石井  拓君

  吉田 真次君     岸 信千世君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     塩崎 彰久君

  岸 信千世君     吉田 真次君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国立健康危機管理研究機構法案(内閣提出第四九号)

 国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国立健康危機管理研究機構法案及び国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁長官官房審議官野村知司君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、文部科学省大臣官房審議官西條正明君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官浅沼一成君、大臣官房生活衛生・食品安全審議官佐々木昌弘君、健康局長佐原康之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉田統彦君。

吉田(統)委員 おはようございます。立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は、国立健康危機管理研究機構法、通称日本版CDC法案の質疑を行います。

 今回の新型コロナ感染症への対応に関しては、様々な課題が指摘されていると承知しております。例えば、行政各部の感染症危機への対応を統括し、司令塔機能を担う組織や有事における法規制を整備する必要性、様々な立場から情報を収集、分析できるような体制づくり、地方公共団体が安心して情報提供できるような環境整備、特にトランスレーショナルリサーチにつながる基礎研究も含めた研究環境の向上等が課題として挙げられています。

 これらの課題への対応の一環として、さきに成立した新型インフルエンザ特別措置法改正案では、政府の司令塔機能の強化として、内閣感染症危機管理統括庁が設置されることになりました。また、感染症等の調査、研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、感染症危機の発生時に、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し、科学的知見を提供できる体制の強化を図るための感染症等に関する新たな専門家組織の創設が求められるようになり、その中で、我が国でも、米国のいわゆるCDC、アメリカ疾病予防管理センター同様の組織が必要でないかという指摘がされて、この度の法案提出に至ったと承知しております。

 以前から私は、国立感染症研究所、感染研の強化を訴えてまいりました。また、この感染研の抱える様々な問題が、我が国の感染症対策にとどまらず、医学研究、ブレーンサーキュレーション、トランスレーショナルリサーチ、そして医薬品開発など様々な我が国の問題が集約されていると指摘をしてきております。本日は、このような問題点が、この法案によって設置される日本版CDCによって解消されるのか、しっかり伺ってまいります。

 以前、内閣委員会と厚生労働委員会の連合審査での新型インフルエンザ特措法改正案の審議において、内閣感染症危機管理統括庁サイドからの日本版CDCとの連携についての質問を予定して、通告もしてありましたが、時間が不足して、できませんでした。今回、逆に、日本版CDC、国立健康危機管理研究機構を所管する立場であり、また感染症対策部という組織を持つ厚生労働省に、逆に、内閣感染症危機管理統括庁との連携について伺います。

 五月八日から、感染症法上の位置づけが二類相当から季節性インフルエンザと同等の五類感染症へと変更になりました。また、今国会では、内閣委員会で、新型インフル特措法の改正によって、内閣感染症危機管理統括庁が設置される法案が審議され、四月二十一日に成立しています。また、厚労省の中で、健康・生活衛生局の下に感染症対策部を設置して、省内全体の取りまとめを行うとお聞きしています。このような我が国の感染症対策に大きな変化が加えられているわけであります。

 今回、通称日本版CDC法案が審議されるわけですが、感染症対策部と国立健康危機管理研究機構、そして内閣感染症危機管理統括庁との連携をどのようにしていくのかということが法案のポイントの一つであります。また、今後の我が国の感染症対策の肝であると考えます。

 従前から私も申し上げておりますが、アメリカでは、CDCが、感染症対策の上で非常に大きな権限を持っている。これはもう皆さん御承知のことです。私が感覚的に感じて思っていることは、米国では、今回の感染症パンデミックの発生においてCDCの果たす役割は極めて大きく、CDCが政策立案し、事実上決定するという方向性であります。

 以前、法案に関して省庁にレクをいただいたときに、アメリカでは形式的な決定権限は各州政府、まあアメリカは合衆国ですから、にあるという話ですから、CDCが政策立案することによってほぼ自動的に予算がつくというイメージが私にはあります。これは異議がほとんどないんじゃないかと思うんですが。

 今回の日本版CDC法案とさきに成立した統括庁設置を定めた新型インフル特措法改正案を見ると、日本版CDCにそこまでの権限がないような感覚ですし、そのような権限はないと読み取れますよね。設置が決まった統括庁が全体の司令塔の少なくとも一翼は担っていると思いますが、それでは、パンデミックに際して日本版CDCが蓄積していく科学的知見をどのように政策に反映するのか、逆に、統括庁からどのようなことを日本版CDCに求めていくのか、連携をどのように取っていくのか、そこが重要であるわけでありますが。

 懸念するのは、今回、内閣感染症危機管理統括庁は内閣官房に設置される。一方で、日本版CDCは厚生労働省の下に設置されます。厚生労働大臣、厚生労働省の下に設置された感染症対策部という、いわゆるクッションに当たるような部署がある中で、三者の有機的な連携をどのように取るのか、そしてアウトプットにどうやってつなげるのかということを確認したいんですが、まず、これは大臣、お願いします。

加藤国務大臣 今委員が整理していただいたように、まず、内閣感染症危機管理統括庁、これは内閣全体の総合調整機能を持っていて、特に感染症の発生及び蔓延の防止に関して持っている、これは明確になっています。そうした傘の下において、厚労省、私ども、厚労大臣がこの新しい機構、国立健康危機管理研究機構を監督するという立場にあり、実際の組織的に申し上げれば、厚労省の中にできます感染症対策部が当該機構を監督するというのが組織的な意味での枠組みとなります。

 その上で、政府の感染症対策を一体的、迅速に進めるため、機構は科学的知見を厚生労働省だけではなくて政府の司令塔でもある統括庁にも直接提供する役割を担うということを明確にしております。

 具体的には、平時から感染症に対する情報収集、分析を機構は行い、質の高い科学的知見を統括庁などに提供する、また、統括庁の求めに応じ、調査研究などを行い、政策決定に必要な科学的知見を迅速に提供するということでありますので、単に全て厚労省を介するだけではなくて、直にそうしたやり取りもできる、こういう仕組みになっているところであります。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。分かりやすい御説明だったと思います。

 先日、我々の会派の厚生労働部門、立憲民主党新型コロナ対策本部合同会議で、我々の質問に対して役所からいただいたペーパーで、ちょっと大事なことなので読みます。

 内閣感染症危機管理統括庁の役割は、一つ、厚労省等との一体性を確保しつつ、国及び地方公共団体による感染症危機への対応を総括し、司令塔機能を担う。二つ目に、国立健康危機管理研究機構の科学的知見等を踏まえ、基本的な方針等に係る政策立案を行う。三つ目に、有事には、特措法に基づいて設置される政府対策本部の事務を処理とされております。

 厚生労働省感染症対策部の役割は、感染症対策について、予防接種、検査、保健所の業務指導、検疫等の業務を一体的に実施するとともに、感染症危機対応の業務に関する厚生労働省内の取りまとめを行う。次に、国立健康危機管理研究機構の科学的知見等を踏まえ、政策立案を行う。次に、国立健康危機管理研究機構を監督する。次に、有事には、厚生労働大臣による都道府県知事等に対する指示権等を保有とされています。

 そして、国立健康危機管理研究機構については、一つ、全国的な情報基盤、基礎から臨床までの一体的な研究基盤、外部専門家との連携により質の高い科学的知見を獲得し、内閣感染症危機管理統括庁及び厚生労働省感染症対策部に迅速に提供する。地方衛生研究所等に対する研修や技術支援を行うとともに、地方衛生研究所等から地域の感染情報等の提供を受け、全国的な感染症状況の分析等を行う。次に、緊急時の厚生労働大臣の監督、指揮命令に基づく検体採取、収去等の感染症法に係る業務を行うとともに、総合診療機能を生かした高度専門的な入院治療等を提供するとされています。

 結局のところ、形の上では、一応、内閣感染症危機管理統括庁が全体の指揮権を有するのかなと、この御説明だとぼんやり分かるんですが、実質的な権限は、やはりちょっといま一つ分からないんですが。

 浅沼審議官にちょっと、ではお伺いするんですが、内閣感染症危機管理統括庁と厚生労働省感染症対策部、国立健康危機管理研究機構がどのように役割を分け、どのように連携していくのか、大臣からさっき大まかにお話しいただいていますけれども、ちょっと、説明文を作っていただいた担当官として、もう一度説明をいただけますか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 政府の感染症対策における役割分担といたしましては、統括庁は、司令塔といたしまして、各省庁における対応を一段高い立場で強力に統括する、厚生労働省感染症対策部は感染症対応の実務の中核を担う、機構は、統括庁や厚生労働省に対しまして、その政策立案に資する科学的知見を提供することとしております。

 科学的根拠に基づいた感染症対策を推進していくために、統括庁と厚生労働省と機構が密接に連携することとしておりまして、具体的には、統括庁の幹部の内閣感染症危機管理対策官に充てられる厚生労働省の医務技監を結節点として、統括庁の指示を厚生労働省に迅速に徹底させるとともに、機構は、統括庁や厚生労働省の求めに応じて、政策決定に必要な科学的知見を迅速に提供していくこと等としております。

 このような取組によりまして、統括庁、それと厚生労働省、さらには機構とが常日頃から密接に連携して対策に邁進していきたいというふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。確認なので、それで結構です。

 それでは、次に、地方衛生研究所等の位置づけと連携について、ここは佐原健康局長に、ではお伺いをしていこうと思います。

 先ほど話した、役所から、厚生労働省からいただいたペーパーによると、地方公共機関の役割は、一つ、都道府県や保健所設置市等は、感染症法に基づき、予防計画の策定や発生届等の情報収集などを行い、地域の感染症対策を実施する。二つ、都道府県等は、専門的な知識、技術を必要とする調査研究や試験検査等を実施するために必要な体制の整備を行う。三つ目に、有事において、インフル特措法に基づき国が定める基本的な対処の方針を踏まえ、都道府県知事が地域の感染状況等に応じて講ずべき対策を実施することを基本とすることであり、一方で、地方衛生研究所等の役割は、一つ、地域における感染症等の調査研究、試験検査等を実施する。二つ、国立健康危機管理研究機構に対し、検体の提供や地域の感染状況の提供等の協力を行うとされていますね。

 そこで、この法案の中で、地方衛生研究所等の位置づけと連携について、日本版CDCとの対比の中でお聞きしたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症への対応において、その設置が都道府県等に委ねられている地方衛生研究所に対しては、法令上の位置づけが不明確であり、新型コロナウイルス感染症の発生初期の段階において、地方衛生研究所における検査体制は十分でなく、その能力拡充も遅々として進まなかったという指摘がありましたよね。そして、それを踏まえて、令和四年の地域保健法の改正では、地方衛生研究所の機能について、一、調査研究、二、試験検査、三、情報収集、分析、提供、四、研修指導と法定化されましたね。

 まず、この法案について、地方衛生研究所等について、法令上どのように位置づけられることになるのか、佐原局長、お答えください。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月に成立しました改正地域保健法におきまして、保健所設置自治体に対し、地方衛生研究所等の機能を確保するために必要な措置を講ずる責務が定められましたけれども、その改正法案の附帯決議におきまして、地方衛生研究所について、法律上の位置づけを明確化するとされたこと、また、国立健康危機管理研究機構の設立に伴い、地方衛生研究所と新機構との連携を強化する必要があることを踏まえまして、本法案では、地域保健法第二十六条第一項に基づく業務を行う機関を地方衛生研究所等と定義づけた上で、地方衛生研究所と新機構との連携規定を設けることとしております。

吉田(統)委員 今局長おっしゃいましたけれども、連携規定、だから、連携をどのように取っていくか、そこをもうちょっと具体的に、簡潔におっしゃってください。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 本法案では、新機構と地方衛生研究所との連携強化を図るために、まず、機構の業務としまして、国際的な知見や全国的な感染状況の提供、そして、地方衛生研究所等の職員に対する検査技術の向上を図るための研修、そして、地方衛生研究所等へのゲノム解析技術などの技術的支援を行うこととするとともに、これは、地方衛生研究所に対しましては、地域保健法の方で、機構が実施する検査結果や感染情報などの情報収集への協力義務や、機構が実施する研修等を職員に……(吉田(統)委員「連携だけでいいです。簡潔に、正確に、具体的に」と呼ぶ)はい。済みません。

 地方衛生研究所では、機構が実施します検査結果でありますとか感染情報などの情報収集への協力義務、あるいは機構が実施する研修等を職員に受講させる努力義務、こういったことを課すこととしておりまして、連携を強化していくこととしております。

吉田(統)委員 いや、委員長、今のを聞いて、分からないですよね、連携。同じ説明を繰り返しているだけだし、連携をどう取るかということ、すごくこれは一番大事な部分ですから、局長、ちょっと、まあ先に進んでいきますけれども、いい答えがあればちゃんと答えてください。いや、まだいいです。

 今も、研修等ということをおっしゃって、一部答えていただいているんですけれども、地方の衛生研究所等は、地域によって人員の体制、能力に差がありますよね。今回の改正によって、国による地方衛生研究所等の体制整備に関する援助の規定が設けられますよね。政府としてはどういった支援、さっき研修とかいろいろおっしゃっていましたが、ここ、数とか質、まあ質は研修等によって担保するが、数とか人員強化はどのようにやっていくのか、佐原局長、お答えください。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 佐原健康局長。

佐原政府参考人 失礼いたしました。

 昨年十二月に成立しました地域保健法において、地方公共団体における地域保健対策に関する調査研究、それから試験検査等を行う検査体制等が円滑に実施されるよう、国が必要な助言、指導その他の援助の実施に努めるものとされておるところでございます。

 そして、国としての支援としましては、地方衛生研究所の体制強化を図るために、例えば、令和五年度におきましては、地方衛生研究所職員を全国で百五十名増員するために必要な地方財政措置を講ずるとともに、令和五年度予算におきましては、地方衛生研究所等の検査能力の向上、情報収集等の機能強化のための訓練に関する財政支援を盛り込んだところでございます。

 こうしたことを行いながら、自治体の声も聞きながら、引き続き、必要な支援にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。最後は少しかみ合いましたけれども、何か、佐原局長にしては珍しくちょっと答弁が不安定だったなと思いましたが。

 さらに、じゃ、局長、最後に、今後の在り方をちょっともう一度確認をさせてください。

 地方衛生研究所等は、現在、多くの保健所設置地方公共団体に置かれていますよね。ただ、法令上の設置は任意ですよね。しかし、政府の進める感染症への対応力の今回の強化の観点、今回の本法案の趣旨を鑑みれば、地方衛生研究所等を必置機関とすべきという意見も当然ありますよね。必置機関とすべきではないでしょうか。まずそれと、今回の法案で、地方衛生研究所等を必置機関と逆にしなかった理由と、地方衛生研究所等の今後の在り方をどのようにお考えなのか、最後に確認させてください。

佐原政府参考人 まず、地方衛生研究所は、保健所等と連携しながら、地域における科学的かつ技術的中核機関として地域保健に関する調査研究を行う機関でありまして、保健所を設置する自治体において必要な体制をしっかりと確保することが重要であると考えております。

 一方、中核市や特別区など、都道府県や政令指定都市と比べまして人口規模や財政規模の小さな保健所設置市、保健所設置自治体におきましては、必ずしも単独で地方衛生研究所等の整備を求めるのではなくて、都道府県や政令指定都市の大きな地方衛生研究所等との連携により、全体としてその機能を確実に確保することが重要であるというふうに考えております。

 このため、これは地方公共団体の自主組織権を尊重すべきとする平成九年の地方分権推進委員会の勧告も踏まえつつ、昨年十二月に成立しました改正地域保健法において、保健所設置自治体に地方衛生研究所の機能を確保するために必要な体制整備の措置を講ずる責務規定を設けた上で、地域保健法の基本指針によりまして、都道府県や政令指定都市においては、地方衛生研究所等の設置により自ら体制を整備するとともに、その他の保健所設置市、保健所設置自治体においては、自ら体制を整備することが困難な場合には、都道府県内の地方衛生研究所との連携を図るよう求めたところであります。

 引き続き、都道府県単位でしっかり体制が確保できるように努めてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 局長、途中から何回も同じことをおっしゃっているんですが。

 ですから、趣旨は分かります。だから、その趣旨を実現するために、隣の中核市との連携をどのように強化するかということをこの際聞いているんです。ちょっと簡潔にそこだけ。

 もう一度言いますよ。今おっしゃった趣旨はよく分かります。だから、逆にそこなんですよ、ポイントは。中核市と自治体、基盤が脆弱と申し上げていいのか分かりませんが、自治体との連携をどうするかが肝になるわけですよ、おっしゃっている趣旨からすると。そこをどうするのかと聞いているので、そこだけ答えてください。

佐原政府参考人 これにつきましては、地域保健法に基づきます基本指針の中で、各都道府県等、あるいは政令指定都市、それから中核市、保健所設置市、こういったところでの地方衛生研究所の機能をどういうふうに連携していくのかということをしっかりと明記していく、また、その予防計画の中でそういったものについて計画をしっかり立てていくということとなっております。

吉田(統)委員 ちょっと、多分考えがないんですよね、具体的に。だから、そこは、明記されるんだったら明記をしっかりしていただいて、進めていただかなきゃいけないです。ここは、だって、肝のところですよね。お答えを我々受け止めて鑑みると、ちょっとそこは多分しっかりとした準備ができていないのかなと思いましたので、そこはしっかりお願いします。全然駄目と中島委員からも声が出ていますので、お願いします、そこは。本当に大事なところだと思います。

 じゃ、次に行きます。

 浅沼審議官に、ではちょっとまた聞いていきましょうかね。大臣でも結構ですが、テクニカルな部分は審議官からで。

 本案は、先ほど述べたとおり、感染症等の調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、感染症危機の発生時に、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し、科学的知見を提供できる体制の強化を図るための感染症等に関する新たな専門家組織の創設を目的にしていますね。

 だとすると、当然、本法案の策定に当たって、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施する機関やそれをサポートする機関として、政府内の準備段階で、一昨年六月のワクチン戦略に関連するAMED、内閣官房の健康・医療戦略室及び大学、文科省、経産省等からの意見をお聞きする必要性などがあったと思いますが、これらの組織がどの程度協力してくれたのか、過程を教えていただけますか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 本案につきましては、ほかの法律案も同様なんですけれども、法案作成過程におきまして、今議員から御指摘の省庁も含む関係省庁と協議、調整を行った上で、閣議決定をして、国会に提出したところでございます。

 具体的に申し上げますと、本案の準備におきまして、例えば、先ほどお名前が挙がりましたけれども、政府の健康、医療政策に基づく研究開発との関係では内閣府健康・医療戦略推進事務局、大学との関係では文部科学省、研究開発支援との関係では経済産業省と、必要な協議、調整、あるいは連携を行ってきたところでございます。

 今後は、機構が質の高い科学的知見を獲得していくためには、こうした関係省庁や他の研究機関、大学等と連携しながら調査研究を行っていくことが重要であると考えております。

 本法案が成立いたしますれば、令和七年度以降の施行に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 次は、関連なんですけれども、ガバナンスのことなので大臣にお伺いしたいんですが、先ほど、内閣感染症危機管理統括庁、地方衛生研究所等との連携についてそれぞれお伺いしました。なかなか、後者に関しては少し、まだ奥歯に物が挟まったような局長の答弁でしたが。一方で、健康危機管理研究機構がその目的を果たすためには、実務面での司令塔である必要があるわけですよね、大臣。であるならば、設立後は、これらの省庁、機関に対してガバナンスを利かせていく必要があるわけであります。

 どのようにガバナンスを利かせていくのか、現時点で想定される限りで結構ですので、具体的に、大臣、御答弁いただけますか。

加藤国務大臣 まず、先ほど来の議論の中で、ちょっと地衛研との関係ですけれども、大事なことは、現在、国内の感染状況はどうなっているかということを共有するということがまず第一でありますから、機構から必要な情報を提供するし、また、地方の状況を上げていただく、これがまず一つ大事なこと。それから、もう一つは、地衛研自体が、その地域の状況を把握するためには、研究調査し、あるいは試験検査をしていただくわけでありますから、それに必要な器材等、また人材的な対応力、これを上げていただく、これを、逆に言えば、機構が支援をしていく、そういったことを通じて全体として科学的知見を得る基盤を強化し、そして、それにのっとって、政府側にいろいろとそれを提供していただいて、より的確な政策判断、対応をしていく、こういったことを目指していきたいというふうにまず考えております。

 その上で、今の研究機構との関係でありますが、法律を作る段階では、先ほど説明をさせていただいたそれぞれやり取りをしてきたわけでありますが、ただ、機構自体は各省庁や他の研究機関等に対してガバナンスをするという立場、利かせる立場にはないというのは、これは法文上明らかでありますので、今後、科学的根拠に基づく感染症対策をしていくためには、しかし一方で、機構が質の高い科学的知見を獲得できる、これは大変大事なことでありますので、関係省庁、他の研究機関、大学等とも連携をしながら調査研究を行っていくということがまず必要だと思いますし、また一層、関係省庁との連携が図られるよう、厚労省としても、多分、機構の創設は令和七年度以降になるというふうに想定をされておりますけれども、施行に向けて、どういった形で連携が取れていくのか、しっかり取り組みたいと思います。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、この日本版CDCがつくられることによって得られる効果を具体的に、佐々木審議官に、では、聞いていきたいと思います。新型コロナが二〇二〇年に蔓延し始めたときに、もし日本版CDCが存在していればどういったことができたということ、これが非常に分かりやすい例示になりますので聞いていきます。

 今回の日本版CDC創設に当たって、感染症危機の発生時に、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し、科学的知見を提供できる体制の強化を図るための感染症等に関する新たな専門家組織の創設が求められた、繰り返しになりますが、そう書いてあります。そして、そのような科学的知見というか、情報を提供できずに日本国内での蔓延を許してしまったのではないかと考えられる事例についてお聞きします。

 まず最初は、二〇二〇年の中国の春節対応です。

 二〇二〇年十二月一日のダイヤモンドオンラインの「新型コロナの感染爆発は中国の「春節」で起こった」という記事の中で、中原圭介氏の「疫病と投資」という書籍から次のような引用がなされています。

 SARSやMERSは全世界に拡散させることなく抑え込むことができたのに、なぜCOVID―19は世界中に広がってしまったのでしょうか。その要因は、SARSが流行した二〇〇二年から二〇〇三年や、MERSが流行した二〇一二年当時と比べて、現在は、中国を中心に海外旅行で往来する人々の数が圧倒的に増えたためだと考えられます。ウイルスの広がるスピードが格段に上がり、感染の連鎖を断ち切るのが難しくなったのです。

 さらに、次の引用もあります。

 それに加えて、中国が当初から、SARSのときと同様にCOVID―19の感染拡大に関する情報を隠蔽したため、他の国々の対策が遅れてしまったという要因があったのも否定できないでしょうとし、結論として次の引用をしています。

 もっと言えば、WHOによるパンデミック宣言が遅れたことも、世界的にウイルスを拡散させた原因の一つと考えられます。COVID―19に関してWHOがパンデミック宣言を行ったのは二〇二〇年三月十一日のことでした。しかし、二〇二〇年の中国の春節は一月二十四日から三十日で、この期間が大型連休になることから、発生源と見られている武漢に住む人も含めて、大勢の中国人が海外旅行に出かけてしまいました。もっと早い段階でWHOがパンデミック宣言を出し、それによって中国から海外への旅行などをストップさせていれば、ここまで感染が拡大することはなかったと思われます。

 この二〇二〇年春節の際には、前年から既に中国国内では新型コロナ感染症の蔓延が始まっていたにもかかわらず、約七百万人が海外に旅行に出たとされ、その最も人気の旅行先は日本であったとされています。

 さらに、北京の日本大使館のホームページに安倍晋三総理の中国向けの祝辞を載せていたという点も問題点として指摘されていました。

 そこでお聞きしますが、もし当時、今回設置される日本版CDCがあったとすれば、どのような対応ができたのか、何が変わるのか、分かりやすく例示してほしいと思いますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 二点お答えいたします。

 新型コロナの発生当初では、いかにその情報、知見を収集するか、これが極めて重要でした。よって、この国立健康危機管理研究機構がもしあったとすれば、その情報収集においては、この機構には国際医療協力に関する機能があります。つまり、海外のネットワークがあるので、発生国、その周辺国からも情報を集めることができた。それによって効果的に収集された情報、知見を基にして、水際対策を担う検疫所での対応が行うことができただろう。これが一点目です。

 二点目ですけれども、この時期に、政府は武漢市在住の邦人の帰国支援を行いました。その際には、国立国際医療研究センターで健康確認だとか検体の採取を行いました。これは理事長にお願いして、実施していただきました。その検体の分析は、国立感染症研究所が、施設等機関としてそこで担う。こういう二股に分かれて一連のオペレーションを行いました。これが、同機構が一つになることによって一連のものがスムーズに、一つの組織としての対応が可能になるということが、もしあれば可能だったということになります。

吉田(統)委員 ありがとうございます。よく分かりました。

 更にお聞きしますが、今年の春節期間到来を前に、中国本土からの直行旅客便による入国者に対して実施してきたサンプル検査が行われてきました。この検査実施に関して、日本版CDCがあった場合、いかがだったでしょうか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 こちらについては、約三年の知見の収集がなされていました。検査がということで申し上げますと、まず、検査そのものは、今回、各検疫所が行って、陽性判定とかは行いました。一方で、国立感染症研究所、新たに同機構になるわけですけれども、ゲノム解析についてはここに一元的に集約を行ったということでございます。その上で、今回のこのオペレーションについては、新しい機構ができても同様のオペレーションを行ったものと考えております。

吉田(統)委員 では、ダイヤモンド・プリンセス号への対応についても伺います。

 日経新聞のオンライン、二〇二一年二月三日に「「対策が数日早ければ…」後悔 クルーズ船集団感染一年」という記事が掲載されています。

 この中で、ダイヤモンド・プリンセスでは、乗員乗客三千七百十一人の約二割に当たる七百十二人が感染し、十三人が死亡した、前例のない豪華客船でのアウトブレーク、当時の乗客と乗員は、未知の感染症のリスクを軽視していたと振り返る、生活は通常どおり、まだ誰もコロナの恐ろしさを分かっていなかった等々書いてありまして、ちょっと時間がないのであれなんですが。

 全体的にやはり、配膳が一日三回されていて、乗客と接触する機会があるのに、体調を崩して休む乗員と仕事を続ける乗員が相部屋だったとか、様々、オペレーションの問題があったわけであります。このように、事業者の対応、政府の対応にも問題があったと指摘されているわけです。

 もちろん、ダイヤモンド・プリンセスは英国船籍で、船会社はアメリカの企業で、国際法上、感染症対応に関して責任の所在が曖昧だったことも理解しますが、その上で、もし当時、日本版CDCがあった場合、同様の事案に対してどのような対応ができたのか、どのように何が変わったのか、分かりやすく例示してください。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの知見等の不足に加えて、これは大規模なオペレーションをどう行うかということがございました。

 そこで、二点、疫学や臨床について、この機構があれば効果があったと考えます。

 一点目は、多数の乗客乗員に対して疫学調査をきっちり行う、これによって公衆衛生的な知見を整理して、国民や海外への発信が可能となったのではないか。

 二点目は、患者さんの治療を行う医療機関が複数、多数に分かれました。これらの医療機関に対して臨床上の留意点を具体的に提供するとともに、今度は、フィードバック、治療経過やゲノム等の解析の結果を含めた情報を集積することで、より具体的な診療ガイドラインの作成、改定などの学術的な情報発信や国民への説明が可能になったものと考えられます。

 もう一点加えたいと思います。

 委員からは、先ほど来、この機構と他の機関とが感染症に対して一つのチームとして対応できるのか、連携できるのか、チーム組成ということで御指摘いただいています。このダイヤモンド・プリンセス号でも、DMATですとか、また関係学会、大学からの人材、それぞれの異なる所属からを一つのチームとしてということがありました。同機構が担っている、そことの人材がこういったチームを組成していく、チームビルディングのリーダーになっていく、こういった役割も果たせたのではないかと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 もうちょっと議論したかったところなんですけれども、ちょっと時間がなくなってきてしまったので、簡単にお伺いさせていただきました。

 では、ここから概要をちょっと確認をさせてください。

 この国立健康危機管理研究機構の予算規模ですが、ここをどのように想定しているのか。既に、アメリカのCDCと比べるとかなり額が小さいだとか、そういったことも言われているわけですが、統合される感染研と国際医療センターの予算と比較してどのような想定になっているかを確認させてください。大臣、お願いします。

加藤国務大臣 新しい機構の予算、具体的な組織構成、人員については、基本的には、まず、現在の国立感染研究所と国立国際医療研究センターの部分をしっかりと引き継ぎながら、ここで申し上げているように、その特性を生かし、基礎から臨床までの一体的な研究開発などの機能強化を図っていく必要があります。

 そうした期待に応えるために、どういう部署にどういう研究者を配置、予算と人員をどうするか、これは、これから併せて、先ほど申し上げた令和七年度以降の創設までにしっかり検討していく必要があるというふうに考えています。

吉田(統)委員 ちょっと本当に時間がなくなってしまったので、昨日、自転車で通勤される伊佐先生とお会いしたので、伊佐先生にも一問と思いまして、日本版CDCに置かれる研究機関について伊佐副大臣に聞きたいと思います。

 この研究機関と日本版CDCの位置づけ、それをどのような組織にしていくかというのは非常に重要ですよね。厚生労働委員会などで今までも私は質疑を行ってまいりましたが、ブレーンサーキュレーションの問題で、日本にはそのような国際的な人材を競争して獲得する器がないということをしばしば指摘しています。今回、感染研と国際医療センターが統合されるにしても、看板のかけ替えになっちゃいけないですね、副大臣。

 そうすると、この日本版CDCの中の研究機関の位置づけがまずどうなるのかを簡潔にお伺いします。

伊佐副大臣 研究機関の位置づけ、今委員おっしゃっていただいたとおり、とにかく機構が質の高い科学的知見を得るという必要が大事だというふうに思っておりまして、そういう意味では、国内外から最先端の研究を行っている人材等を確保していく、そういうような機構の研究部門にしていきたいというふうに思っております。

吉田(統)委員 繰り返し私もいろいろな委員会で言っていることです。日本の研究機関の欠点は、やはり魅力のあるポストではない、数もそうだし、給与、待遇もそうだと。やはり、短期間で結果を出せと言われても研究者はなかなか難しいところがありますし、そういったところですね。だから、有為な人材をどれくらい日本版CDCで獲得しようと思っているのか。国籍を問わず有為な人材を獲得する手段として、ポスト、待遇をどのように考えているのかをお答えください。

伊佐副大臣 例えば報酬、給与、処遇というものをどういうふうに考えているかということですが、この法案の中におきましても、例えば、報酬、給与を定める際には、国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性を考慮するという規定を盛り込んでおります。

 そしてまた、具体的に、じゃ、採用人数でありますとか予定のポストがどうなるかということについてですが、ここは、先ほど大臣の方からも答弁させていただきましたとおり、新しい組織である機構にどのような部署を設置するかとか、あるいは、それぞれの両機関の、どういうふうに部署を統合していくかとか、そしてまた、その部署、ポストに適任の人材の確保について、その能力や研究課題を踏まえて検討していく必要があるというふうに思っておりまして、しっかりと機構が期待される役割が発揮できるように、今国会での審議、また、両機関の関係者や有識者の御意見も踏まえながら、創設までに鋭意検討してまいりたいというふうに思っております。

吉田(統)委員 伊佐副大臣、額なんか、例えば給料なんかは、結局誰が決めるんですかね。誰が決められるのか。本当に国益にかなう人材だったら、一億出してもやはり欲しいわけですよ。アメリカの私がいたジョンズ・ホプキンスの教授というのは、やはり一億円以上はサラリーをもらっていますよね。誰がそれを決めるのか。アメリカだとチェアマンが決めたりしていくわけですよね。もう一答、簡単に。

伊佐副大臣 もちろん予算の範囲内でということになると思いますが、理事長が決めることになります。

吉田(統)委員 理事長の権限で決めることができるという理解でよろしいですね。分かりました。ありがとうございます。

 ちょっと、最後、時間になりましたので。

 日本版CDCと言われても、何ができて何ができないか分かりにくいという指摘が十日の与党の質疑でもございました。

 終わりですので、最後、健康危機管理研究機構という名称からすると、もしかしたら、政府の皆さんは、米国のCDCではなくて、英国で、パブリック・ヘルス・イングランド、PHEを改組して数年前に設置されたUKHSA、ヘルス・セキュリティー・エージェンシーを意識したものかとも私も思ったところであります。仮にそうであった場合は、英国政府のホームページにある、情報をより簡潔に、明確に、迅速にということ、原文だと、ザ・ベスト・プレース・トゥー・ファインド・ガバメント・サービシーズ・アンド・インフォメーション・シンプラー・クリアラー・ファスターとなっていると思いますが、この機構でも是非実践していただくことを強く要望して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 おはようございます。立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 国立健康危機管理研究機構、日本版CDC、この法案についてでありますが、これは岸田総理が日本版CDCを創設すると表明をされまして、その後の第七波、八波の感染爆発がその後、表明された後もあったわけですけれども、これについてほとんど総括もされないままに、中身よりも看板だけ、とにかく大きな目標を持ってやるんだという、そのメッセージだけが先行しているような気がいたしました。

 そして、現在ある国立感染研究所と国立国際医療センター、これを、今あるものを統合して、そして、その中身としては、感染症の疫学研究から、それから臨床までを一気通貫で、そして迅速に対応することができる組織なんだということを先ほどの答弁の中でも繰り返していらっしゃるわけですけれども、コロナ禍の十分な総括を基にこの国立健康危機管理研究機構の在り方が検討されたとは言い難いのではないかと私は思います。

 そして、私たち立憲民主党は、二〇二一年六月に提出もしておりますが、国民の命を守るための検査の拡充、病床確保、それから医療従事者三法案始め、様々な課題、コロナ対策のできなかった部分を進めてほしいという意味で、この内容の法案を出してまいりました。

 とにかく、発生当初は検査も少ないし、それからまた、医療崩壊も最後まで残念ながら部分的には起こっておりました。それからまた、国産ワクチンや治療薬の開発も遅れに遅れておりますし、今なお特効薬というものはインフルエンザのようにはありません。そうしたコロナ禍で顕在化した問題を解決に導く組織になるとはなかなか言い難い、そうした印象を持っております。

 それから、先ほど来お話もありました米国のCDC、これを目標にはしていないとおっしゃいましても、この資料も見ていただきたいと思いますけれども、非常に、予算も、それから人員配置も桁違いであります。そして、私たちがヒアリングの方で作っていただいた資料、三ページも御覧いただきたい。それからまた、一の資料の方にも書かれているとおり、非常に実効性がどうなのかということが今問われているのではないかと思っております。

 その中でございますが、米国のCDCとは本当に全く違う。特に米国の方では、政策に影響をする、そういう判断も多々出されていて、もちろん米国内だけではなくて世界中が注視をしているというところであります。特にマスクの着用、それから渡航や入国制限に関しても、推奨という判断もされておりますし、もちろん最後の決断は政府がするわけですけれども、そうしたことの非常に重要な影響を持っている。そういう判断までできるのかどうかということも問われると思います。

 その中で、有事の際、それから平時の際とありますけれども、ちょっと質問を飛ばしまして、対策本部ができる有事の際、このときに、先ほど来ございます厚生労働省の対策本部、対策室、それからまた統括庁、それと機構との関係、この有事の際はどのような連絡、それからまた指揮系統になるのかということ、これを御説明いただきたいと思います。

加藤国務大臣 まさに政府対策本部が設置をされたというときになるわけでありますけれども、その場合、政府対策本部長が内閣総理大臣、厚労大臣を含む本部員を内閣総理大臣が指揮監督するということとなり、統括庁は政府対策本部の下になるわけでありますが、厚労省を含む各省庁との対応を統括するという立場にあるわけであります。

 機構については、政府対策本部長の招集を受けて政府対策本部で意見を述べるということにもなっておりますので、統括庁における政策決定あるいは対策本部における政策決定につながっていくものというふうに考えています。

早稲田委員 意見を述べることができるわけですけれども、有事の際には、毎回そうした意見を対策本部が聞く、それから、対策本部から聞かれなくても、機構の方でしっかりと定期的にそれを出していくということができる、そういう理解でよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 まさにそれは平素からもそうでありますけれども、機構からは、それぞれの科学的知見を内閣感染症危機管理統括庁あるいは私ども厚労省の方に提供していただくという形になっておりますし、また、そうした危機においても、まさにそうした機能をしっかり果たしていただくということになるわけであります。

早稲田委員 そして、コロナ禍で言われたのが、リスクコミュニケーションの在り方に課題があったのではないかということであります。専門家なのか、それから行政か、どちらの立場で発言をしているのか、また、そこにそごが出るとか、様々ございました。これについては、この機構ができたことによってどうなんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、そうした御指摘もあったことから、厚労省では、いわゆるアドバイザリーボードにリスクコミュニケーションの専門家にも参画していただいて、そうした点にも配慮しながら情報発信等に努めてきたところであります。

 この法案が成立すれば、国立健康危機管理研究機構が、内閣感染症危機管理統括庁の総合調整の下、感染症に対する調査研究や情報収集、分析により明らかになった科学的知見、これを分かりやすく発信できるようになるわけでありますから、そうした対応の整備を進めていきたいというふうに考えています。

早稲田委員 それでは、質の高い科学的知見、そして、さらに、中立性ということについて伺います。

 政治家への、また政治への、その時々の政権への忖度なく、政府に都合のよい情報だけでなく、独立した立場で科学的知見を判断として下せるかどうか、非常に鍵になると思っています。

 ある意味、米国CDCも、コロナ禍では非常に後手後手になった、また、トランプ政権に圧力もかけられて、言うべきことを言えなかったというような報道もございます。その一方で、バイデン大統領のときには、いつも、そのそばでCDCのワレンスキー所長が情報発信をして、これが非常に分かりやすい、そしてまた信憑性が高いと国民が信頼をしたという報道もございます。

 こういう二面性があるわけですけれども、こういうことも厚生労働省としてはどのように分析をされているのか。それこそ中立な判断でなければならないわけですけれども、そこの分析について伺います。

加藤国務大臣 新しい機構は、先ほど申し上げたように、統括庁等に対して科学的知見を提供する役割、これが重要な役割であります。その際、具体的な研究における科学的手法、また得られた科学的事実の内容等について、例えば私ども、あるいは政府が関与することは想定をしておりません。

 ただ、この機構法の中にいろいろと、例えば命令等の規定もありますけれども、これはあくまでも例えば検査をお願いするとか、そういったことを想定しているわけでございますので、改めて、そうした科学的事実あるいは科学的知見の提供に関して、私どもが関与するということは考えておりません。

早稲田委員 関与することは想定していないということですけれども、アメリカのCDCのいろいろ混乱した、そこのところの分析はどのようにされているか、これについて伺いたいと先ほど申し上げました。

加藤国務大臣 なかなか他国のことですから、それを我々が分析するのは難しいと思いますが、ただ、CDCと根本的に違うのは、CDCは政策立案という部分を担っているわけであります。機構はそうではなくて、科学的知見ということでありますから、まさに科学的ないろんな要素を分析そして研究していただくということですから、少なくともそこに関して政治側が、あるいは政府側が関与するということは、先ほど申し上げたように考えていないということであります。

早稲田委員 是非、中立な、そしてまた政策立案ではないけれども正しい情報を、そして、それは政府にとっては耳の痛いことでもやはり出してもらう、それによって判断を間違えないようにしていただく、そういう組織であることを強く望みます。

 それから、先ほど来議論もされておりますが、地方衛生研究所です。昨年の感染症法の改正のときには、附帯決議の中に法定化についても入れました。しかしながら、今回も法定化はされておりませんで、多くの保健所設置地方公共団体に置かれてはいるものの、法令上の設置は任意となっております。感染症の対応の強化の観点から、自治体に十分な予算を講じた上で地方衛生研究所等を必置機関とすべきではないかと私も考えます。

 三ページの資料を御覧ください。この中で米国の方を見てみますと、もちろん予算も全然違うわけですけれども、自治体への補助金も含むと書かれておりますので、相当その規模は違います。しかしながら、直轄の地方組織や検疫所もCDCの組織に位置づけられているともあります。

 これはなぜこういうことになっているかといえば、やはり地方の情報をしっかりと酌み取るためには、こういうふうにしていくことがベストだと米国では考えている。もちろん大きな大きな大国でありますから、そういうことが必要だ、その意味でやっていらっしゃるんだと思いますが、これはやはり私は見習うべきだと思っています。

 今の、この必置をすべきではないか、先ほども御議論ありましたけれども、もう一度大臣から伺います。

加藤国務大臣 まずは、地衛研組織を国の組織として一括にするか、アメリカはそうだとおっしゃるわけで。ただ、これはそれぞれ社会や文化の違いがあって、いろんなやり方があるんだと思いますが。ただ、大事なことは、地方の情報等が国にしっかり上がっていく、また国の考えていること、あるいは国が持っている情報を地方に共有をしていく、このことが非常に大事だというふうに思っております。

 今回においても、そうした形をしっかりやるということ、機構法の中には提供というふうに書いてあるわけですが、当然、提供の対象には地衛研が入ってくるというのは明らかであります。その上で、先ほども申し上げましたけれども、地域における能力を上げていくために、今回の機構からも様々な研修等、その力を上げるための支援をしっかりしていく。また国においては、先ほども説明をさせていただきましたように、地衛研の職員あるいは予算における対応ということも令和五年度予算においても実施をさせていただいたところでございます。

 ただ、全ての保健所設置市に地衛研をつくれるかというと、やはりなかなか人口規模や財政規模等々の課題もあって難しいところもあるということでありますので、まずはつくれるところを先ほど申し上げたような形でしっかり支援をしていく。つくれないところに関しては、その地域にある都道府県や政令指定都市の地方衛生研究所と連携をしていただくわけでありますが、そうした形によって、それぞれの保健所がその機能をしっかり果たしていただけるよう、我々も協力をしていきたいというふうに考えております。

早稲田委員 つくれないところに対する連携を強化していくとおっしゃいますけれども、そこが一番難しいわけなんです。

 次に、資料の四、五を御覧ください。もう設置をされている地方衛生研究所についても機能が低下をしているというグラフでございます。

 職員数も五年間で一三%、予算も三〇%、研究費に至っては四七%減ということが出ております。それから、常勤の衛生職員も減っておりますし、もちろん都道府県で自治体間格差が出ているということは一目瞭然でありますから、その中で、この機構ができたことで、情報を収集するということが本当にできるようにこその支援が必要ではないでしょうか。

 コロナ禍での教訓として、二〇二二年度の地域保健法改正の中では、地衛研の機能については、調査研究、試験、それから情報収集、分析、提供、研修指導と法定化されました。さらに、今回の法案では、地域保健法を再改正して、試験検査やサーベイランスなど、地衛研とそれから新機構の連携を法定化して、それからまた研修を受講させるのを努力義務化するということも設けられました。国による地方衛生研究所の体制整備に関する援助の規定が設けられたのは一つ前進です。

 ただし、人員体制や能力に地域間格差がございますので、地方衛生研究所それから保健所の体制強化、この機能拡充を、国の主導で、この機構ができたことをもって更に計画的に進めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 若干繰り返しもありますけれども、人員体制の強化、育成を図るために、令和五年度、これは地方財政措置で、全国で約百五十名の地方衛生研究職員を増員する。また、令和五年度予算に、地方衛生研究所等の検査能力向上、情報収集等の機能強化のための訓練等に対する財政支援を盛り込ませていただきました。

 また、保健所に関しては、昨年の感染症法改正で、都道府県に設置する連携協議会において、関係機関間での連携の在り方等検討、議論し、保健所の体制整備を含めた予防計画を策定すること、また、令和五年度の地方財政措置で、保健所で感染症対応業務に従事する保健師を全国で四百五十名、事務職員を約百五十名増員したところであります。

 こうした取組によって、具体的な体制整備の在り方、これは各都道府県の中で必要な機能が確保されるよう検討していただかなきゃなりませんが、国としても、地方衛生研究所や保健所の機能がこうした感染症対応においても大変重要だということは認識をしておるわけでありますので、引き続き、体制の確保、強化に向けた支援を行っていきたいと考えております。

早稲田委員 今回は、今、百八十人ですか、増えるという予算をつけていただくということですけれども、一つの地衛研について言えば、一人か二人か三人か、そのぐらいのお話であります。

 それからまた、研修に行ってくださいということで、これも支援をしていただくということですが、このコロナ禍で、アンケートがございますけれども、教育機会の研修、七三%、機会が減少したということであります。それからまた、現在の業務量に対して適切な人員配置ですかという、このことについては七七%が人員不足と答えられております。

 これを抜本的に改善していくためには、相当、国が、機構との連携というのであれば、地衛研に対して、保健所に対して、計画的にこの後もやっていただきたい、そして、私はやはり法定化をしていくべきだということを申し上げておきます。

 今回のこのCDC法案ですけれども、地衛研に対しても、業務の連携ということは書かれておりますが、法定化がされなかったこと、それからまた、コロナ禍での課題検証が不十分なままに機構という組織をつくることに関しては、私は懸念が残っております。そのことを申し上げまして、この質問を終わりまして、次の質問に移りたいと思います。

 次は、宗教二世問題、宗教虐待の問題でございます。

 これは、厚生労働省、加藤大臣筆頭に、大変前向きに取り組んでいただいたおかげで、ここまで参りました。

 三月十日、私の質問に対して、エホバの証人の団体の関係者とお話をする、そしてまた、実情をしっかりと聞いていくということの答弁をいただいて、そして、三月三十一日には要請を出していただきました、宗教虐待というようなものがないようにということ。これは大変私は感謝をしておりますし、さらに、それを引き継いでいただいたこども家庭庁にも感謝を申し上げる次第であります。これはもちろん、私だけでなく、特に被害者の皆様、弁護団の皆様は、ここで一歩、本当に一歩、二歩前進だということで、高く評価をされていらっしゃいます。

 その中で、五月十日、このエホバの協会の皆さんと、それからこども家庭庁が面会をし、そして、この資料六、七にございます内容を伝えられたと思います。

 この内容でありますけれども、要請を厚生労働大臣がしていただいたことについての返答という形で、信者さん全てに周知をするという形でここに出ております。これは幾つかあるわけですけれども、特に児童虐待、虐待は許されないということをはっきりと言われております。

 このことについて、そのきっかけをつくっていただいた厚生労働大臣として、受け止めを伺います。

加藤国務大臣 どんな理由、どんな背景、例えば保護者の信仰などを背景として児童虐待が行われることは決してあってはならないということであります。

 現在、今委員が御承知のように、こども家庭庁に所管が移っておるところでありますので詳細についてお答えをする立場ではありませんが、こども家庭庁においては、法的根拠のない任意の協力を求めるものであった中、あの通知がですね、当方の依頼の趣旨を酌み取った対応をしていただいたと受け止めをしているというふうには承知をしているところでございます。

 引き続き、厚労省としては、こども家庭庁と緊密に連携をしながら、また、必要に応じて協力をしていきたいというふうに考えています。

早稲田委員 それでは、こども家庭庁にも伺いたいと思います。

 まず、五月十日に面談をされたその受け止めについても伺います。

 それから、この内容でありますけれども、子供のしつけということで、エホバの証人は児童虐待を容認していませんとはっきり書かれております。

 それからまた、次の、最後の資料を見ていただきたいのですが、これは、エホバの証人の問題支援弁護団、田中広太郎弁護士始め、多くの皆様がこの弁護団に入っていらっしゃるわけですけれども、そのコメントが出ております。

 むちの問題については、エホバの証人は児童虐待を容認していない、極めて過酷なむちについては容認しないとのメッセージと受け取れますとも、この弁護団の方では書かれております。そしてまた、むちがなされないと期待をされるというふうに弁護団の方ではおっしゃっています。

 これは私も、絶対にそのようになってほしいと期待を込めて、そのようにむちが行われないことを今後、これまでの検証もありますけれども、まずはここでやめていただきたいということを強く申し上げたいわけですけれども、そのほかの問題についてです。

 これは、一つは前進なんですけれども、一方で、輸血の問題、それから忌避ですね。いわゆる子供を排斥する、もう自分の子供ではないんだ、エホバの子供ではないんだということで、非常にきつく、ネグレクトという形でやっている問題については、残念ながらゼロ回答であります。

 このことについて、こども家庭庁の受け止めはいかがでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、五月十日に、私どもこども家庭庁担当課の職員のところへ、エホバの証人の法人関係者の方複数名が来られまして、面会をいたしたところでございます。三月三十一日に、当時厚生労働省でございますけれども、の方から要請を行ったことに対しての対応ということで、エホバの証人内でこういった周知を行ったということの中身について説明を受けたところでございます。

 具体的には、先生の方からも資料配付がございますけれども、この法人の日本支部から全国の信者グループに対して、以下のような内容の文書を送付したというような中身でお聞きをしております。

 児童虐待を容認していないこと、輸血を含め、どのような治療を受けるかは各自が決めるものであること、未成年の子供が脱会させられた場合でも、親は引き続き養育する責任があること、親は子供の福祉に関わる最新の法律を知っておく責任があることといったような中身であるというふうに報告を受け、なおかつ、この資料を受け取ったところでございます。

 この三月三十一日の面会において、任意という前提ではございますけれども、協力を要請した中で、それを受けて、日本国内の二千を超える全ての信者グループにこの文書を送付した上で、その集会では全文を朗読して周知徹底を図るとともに、一か月間、その場において掲示を行うといった対応を取るということでありまして、当方の要請の趣旨というものを酌み取って対応してもらっているものというふうに受け止めてはおります。

 その一方で、今、先生から、これで十分なのかどうかというところも御指摘がございましたけれども、私どもとしては、今申し上げましたように、一定程度、虐待は容認できないこととか、治療行為については本人が選択することであるとか、排斥された、脱会させられた場合でも引き続き養育責任があることなどが明確にされていることから、そうしたものの動向はしっかり見守っていきたいなというふうに思っております。

 こういった、令和五年度におきましては宗教を背景とする児童虐待の実態把握などを行うことも予定をしておりますので、そうしたことを講ずる中で必要な対応があれば、また考えていきたいと思ってはおります。

早稲田委員 当時の厚生労働省の方で調査についても決めていただきました。それを受け継ぐ形でやっていただくということは分かっております。

 もちろん、輸血の問題、それから脱会後の養育の問題とか、いろいろあると思いますけれども、ただ、毎日のことでありまして、今もそうしたことが行われている。さらに、脱会をして排斥をされたら、もう家にいたくない、いられない。幾らここで、脱会しても養育は親がするものですよと、でも本当に、御飯は出してくれるかもしれないけれども、しゃべることもしない、そして無視をされるような形でずうっと続いていくかもしれない。これを見た信者の子供たちがどのように思うかということです。それが非常に心配です。

 そして、輸血については、どんな治療を受けるかについては一人一人自分が決めることですと言っても、親の庇護の下にある子供たちが自分で決められないわけです。そして、その後には、エホバの証人は血を神聖なものと考えているので、エホバの命令に従って血を避けますということまで、また更にここに書かれてしまっていると、結局、輸血できないんだと子供は思ってしまう。そういう中で、むちについても、むちはやらない、これは虐待であるということも書かれていないというのも、非常に懸念点の大きな問題であります。

 だからこそ、ここの最後に、教団の方でも、必要であれば更に情報交換を続けることが必要だと考えていると言っているのですから、こども家庭庁としては、この被害者の方たちとも、今、この通知を基にお会いになったと昨日も聞いております。その中でも、多くの方たちは、うまくここには書かれているけれども、何一つ、実は進んでいないのではないか、改善されないのではないかという心配の声が、むちについても多数上がっているということもこども家庭庁は御存じだと思いますので、是非、また面談をしていただいて、そして、再要請をしていただけないでしょうか。お願いいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、法的根拠のない任意の協力を求めるという前提の中ではございましたけれども、当方の要請の趣旨というのを酌み取って対応いただいているところもあるというふうに考えているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

 こども家庭庁といたしましては、各宗教を背景とする行為の中で、こういったことは児童虐待に当たるのではないのかということは、厚生労働省時代にお示ししたQアンドAがございますので、こういったものについては引き続き様々な機会を通じて広く周知を図っていく。そういうのに基づいて、児童相談所等、関係機関では対応を図っていく、こういったことを進めるとともに、これはもう、ちょっと済みません、先ほど申し上げてしまいましたけれども、宗教を背景とする児童虐待の実態把握などを行いながら、引き続き、必要な対応を行っていくことなどを通じまして、こういった児童虐待に当たるような事態の発生というものの防止を図ってまいりたいというふうに考えております。

早稲田委員 是非もう一度お会いになって、そして、この不十分なところ、これを是非再要請をしていただきたい。もちろん、法的な問題はありますけれども、ここまで来たのは皆様の御尽力のおかげだと私も、それから、被害者の方たちの、声を上げていただいている方たちの御尽力のおかげだと思っています。それによって救われる命があるとすれば、是非、これで終わらないで、再要請を御検討いただきたいということを強く申し上げたいと思います。

 それでは、法務省に伺います。

 法テラスの問題であります。法テラスでいろいろ相談を受けていただいています。

 資料を十ページ、十一ページにつけさせていただきました。霊感商法等対応ダイヤルというもので、こちらでも、旧統一教会の問題やこれと同種の問題でお悩みの方は是非どうぞというふうに書かれております。

 しかし、今のエホバの宗教二世の問題で、なかなか、資料のとおりであれば、連絡しにくい、子供がかけづらいということはやはり分かるのではないかと思います。

 十日の山井議員の質疑の中でも、そこをもうちょっと何か踏み込んだ形で検討していただけないかということがありました。そして、何ができるか検討するということも答弁をされておりますので、是非ここは、今の私がこども家庭庁との質疑をした中身でありますけれども、まず、未成年の方、宗教二世の若年者の方も相談の窓口なんだよということを是非周知していただきたい。それと、輸血の問題、むち、それから脱会で忌避、排斥などという問題も、これが受けているんだということが分かるように、きちんと文言として書いていただきたいんですね、QアンドAの内容がありますので。

 それによりまして、忌避の問題も全然進まないとがっかりしている未成年の子供たち、そして、もしかしたら、もうこのままでは家を出なければならないというふうにまで思い詰めている子供たちの、例えばですけれども、避難所、一時保護所、シェルター、それから民間団体へつなぐとか、そういうことがここでできないと、本当によるすべがないわけです。

 だからこそ、私はもう一度このことについての検討をお願いしたいわけですけれども、そのことはどのように検討されているか、伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法テラスの霊感商法等対応ダイヤルにおきましては、宗教二世であります未成年者の方や若年者を含むお困りの方々から、宗教を背景とした虐待を含めまして、旧統一教会問題やこれと同種の問題に関する相談を幅広く受け付けているところでございます。

 法務省と法テラスでは、これまでに、関係機関等と連携をしながら、ホームページやSNS等、様々な媒体を用いて周知広報を行ってきたところではあります。

 もっとも、未成年者等の中には、宗教を背景とした虐待を始めとする様々な問題を抱えながら、適切な相談先が分からず、誰にも相談できずにお困りの方が相当おられるのではないかと考えておるところではございます。

 法務省といたしましては、委員の御指摘等も踏まえまして、様々な問題を抱えた未成年者等に広く霊感商法等対応ダイヤルを御利用いただくため、関係機関等と連携を図りつつ、未成年者等からの相談や宗教を背景とした虐待等に関する相談に対応していることが分かるような周知広報の実施について、速やかに検討してまいりたいと考えております。

早稲田委員 今、速やかに検討していただくということでありますし、今おっしゃった、未成年の方、宗教二世の問題、宗教虐待、そうした文言を何かの形で入れていただきたい。特にメールは若い人たちがやりやすい、LINEなんかもそうですけれども。そこについても、このサービス内容では、霊感商法や高額献金等でお悩みの方のお問合せと。その等の中に入っているというふうにおっしゃるのは分かりますけれども、分からないんです、一般の人には。特に子供には分からない。やはり、宗教二世問題であるとか未成年、それから輸血の問題とか宗教虐待、そういうことも入るんだということを、是非その言葉を入れて明確にしていただきたい、これを強く要望いたします。そして、今、多分考えていただいているのは、そういうことも入れていただけると私は信じておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 そして、重ねてですけれども、そういうことであれば、この霊感商法等対応ダイヤルのタイトルですけれども、是非ここに、霊感商法それから宗教二世問題ダイヤルというふうに、この名称も変更していただきたい。そうすればもう一目瞭然で、子供も分かるし、宗教二世の方たちも分かる。ここに連絡をすればほかのところの専門につながるんだということが一目瞭然でありますし、それで命が救われる。そして、家庭で、家出をしようとしている子供たちも、何とかそこで相談ができれば一時保護所にもつながるかもしれない。町に立って、例えば性被害であるとか、それから本当に大変な問題に女の子たちはすぐに遭います。そういうことを防ぐためにも、是非、これが一番のとりででありますから、是非やっていただきたいと思いますが、その点についていかがでしょうか。

竹内政府参考人 霊感商法等対応ダイヤルは昨年の十一月に設置をされたものでありまして、これまで半年以上にわたりましてこの名称でやってきているところでもありますので、名称の変更についてはいろいろ難しいところもあるかもしれませんけれども、いずれにしましても、未成年者等からの相談や宗教を背景といたしました虐待等に関する相談に対応していることが分かるような周知広報の実施については速やかに検討してまいりたいと考えております。

早稲田委員 最後のその名称変更も要望をいたしまして、そして、とにかく皆さんに分かるように、子供たちにも分かるようにしていただくということをお願いして、この質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、国立健康危機管理研究機構について質疑をいたします。

 岸田総理は、昨年の六月、日本版CDCを創設すると記者会見で表明をされました。CDCとは、アメリカの疾病予防管理センターのことで、感染症に限らず、幅広い健康危機を予防し、そして危機管理を行う組織であります。情報収集をして、政策立案も行うとともに、国内外に対して強力な情報発信機能を持つわけであります。

 一方、今回の法改正で新たに設立される日本版CDCは、国立感染症研究所と国立国際医療センターの二つの組織を統合したものであります。正式名称は先ほど申し上げた国立健康危機管理研究機構ですが、守備範囲は感染症のみであって、米国CDCのように幅広い健康危機に対応するわけではありません。また、日本版CDCは、研究機構の名のとおり、研究がメインであって、米国CDCのように政策立案は基本的に一切行わないという組織であります。

 まず、大臣に伺いますが、米国CDCの組織あるいは機能の何を今回の国立健康危機管理研究機構の制度設計に反映をさせたのか、伺います。

加藤国務大臣 今、井坂委員、御整理いただきましたが、米国CDCは、感染症危機に対応するための情報収集、分析、研究、自治体、医療機関等への助言、現場への専門家派遣といった機能も有しているわけでございます。

 国立健康危機管理研究機構においては、これらの基本的な機能を我が国でも果たすことができるような組織として、今回、法案を提出させていただきましたので、そういった点は米国CDCとも共有しているところがあるというふうに認識をしています。

井坂委員 今大臣がおっしゃったことは、実は、元々、国立感染症研究所でやっていた、できていたことであります。今回、CDCとあだ名がついて、総理もそういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、さらには、検討プロセスでも、CDCを始めとする海外の組織をいろいろと参考にしながら検討するというふうにされたわけでありますが、実際のところ、何が本当にCDCのよい部分として今回採用されたのかというのは、事前に事務方の方と随分議論をしても、なかなか明らかにはなってまいりません。

 本日、特に議論をしたいのは、コロナでは反省して改善すべき点が幾つもあるわけでありますが、特にパンデミックの初期について、議論を集中したいと思います。

 国内にコロナが蔓延するまでの、具体的には二〇一九年の十二月から二〇二〇年三月までを中心に議論をしたいと思っております。なぜなら、どのようなウイルスか分からないパンデミックの初期こそ、今回設立される国立健康危機管理研究機構が、しっかりと情報収集をして、そして迅速に検査体制を立ち上げなければならないからであります。

 そこで、まず参考人に伺いますが、政府が本機構の参考にした米国CDCが、実際に二〇一九年十二月から二〇二〇年三月、パンデミック初期に何を行ったのか、時系列で教えてください。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 米国CDCにおきましては、二〇一九年十二月から二〇二〇年三月の新型コロナウイルス感染症に対する初動対応といたしましては、二〇二〇年の一月上旬頃から対応を開始し、検疫対応、国内各地の疫学調査の支援、各種の技術的なガイドラインの発出、感染者のPCR検査法の開発、中国への不要不急の渡航自粛勧告等を実施したものと承知しております。

井坂委員 今参考人がおっしゃったことは、この組織の前の段階の国立感染症研究所でも、まさにそのとおりやっていたことであります。実は、この点も事前に事務方に随分繰り返しお聞きをしたんですけれども、今回のこの検討に当たって、この一番大事なパンデミック初期に米国CDCがいつ何をしていたのかということは、恐らく政府が把握をしていなくて、それを特に検討の参考にはしなかったというふうに私は認識をしております。

 何が言いたいかといいますと、恐らく、今回のこの組織をつくるに当たって、米国版CDCをそれほど参考にしたわけではないと思うんですね。実際に何をしたのかとか、どういう組織がどういうふうに動いているのかとか、余り参考にしたわけではない。これは事前に随分やり取りをさせていただいて、私は今そのような確信を持っております。

 当たり前の話で、米国版CDCと、今からつくる日本版CDC、これは同じところを探すのが難しいぐらい全く別の役割、また能力を持つ組織だからであります。どうしても日本人、私も含めて、舶来物に弱いところがありますから、CDCと言われると、何か強そう、感染症に頑張ってくれそうというイメージがあるわけで、そういう日本版CDCというあだ名を当初つけられたのかなというぐらいのことではないかと思います。

 私は、今回設立する国立健康危機管理研究機構が、米国CDCとは全く異なる組織であっても、それを責める気はありません。全く実態に合わない日本版CDCというあだ名は、これはさすがに誤解と失望を生むから撤回した方がよいとは思います。

 しかし、大切なのは、今回の法改正で、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが統合されることによって、次のパンデミック、とりわけ初期の対応がどれだけ改善されるのかということであります。迅速に検査体制を立ち上げ、そして、疑わしきは全件検査をやり切って、ゼロコロナの状態をいかに長引かせて、そして、治療法や蔓延時の患者受入れ体制をつくる時間を稼ぐかということであります。

 そこで、大臣に伺いますが、前回の、三年前ですね、国立感染症研究所とそれから国立国際医療研究センター、今回統合されるこの二つの組織が二〇一九年十二月から二〇二〇年三月に行ったことが、今回の法改正を経て今後どのように改善をされる見通しか、大臣に伺います。

加藤国務大臣 今回の、新型コロナの初期において、国立感染症研究所は、検体の採取、輸送のマニュアルの作成、PCR検査の手法の確立、地方衛生研究所への技術移転、試薬の供給などを実施をし、また、国立国際医療研究センターは、ダイヤモンド・プリンセス号への職員の派遣や患者を率先して受け入れるといった取組をしたわけであります。

 今後、未知の病原体が出現した当初における対応ということでありますけれども、隔離、待機時間、治療方法を決定するための必要な科学的知見が、今申し上げた、それぞれがばらばらではなくて組織が一体として、しっかり一体的運用を図っていくということが非常に大事でありますけれども、そうした中で、より必要な科学的知見を早期に収集し、また分析をされるということが期待をされる。また、そうした収集、分析された結果に基づいて、具体的な初動対応が、迅速に対応できる、この点が非常に大事だというふうに考えております。

井坂委員 今大臣がおっしゃったのは、今回の組織統合の一つの長所だというふうに思います。

 臨床機能、病院機能、これは米国CDCにはない機能ですけれども、物すごい単純化して言うと、感染症研究所と感染症の病院、この二つを統合するというのが今回の組織統合でありますから、病院でやっていることがそのまますぐに、同じ組織の中で研究部門にもすぐに情報が行って、そして、病院で起こったことが科学的知見に高められるスピードが格段に速くなる。更に具体的に申し上げれば、いわゆるパンデミック初期の、最初の百事例を集めることが今回の組織統合で早くなるだろうということを、事前に事務方から説明を受けております。

 そこで、参考人に伺いますが、パンデミック初期にいわゆる最初の百事例を集めることが早くなるということであれば、実際、前回、二〇二〇年は、何月何日頃にいわゆる最初の百事例が集まったという状況になったのか。そして、それが、今回の法改正で、大体ですよ、それはもちろん先の話ですけれども、同じような状況であれば、何日ぐらい、あるいは何週間ぐらい早まることが期待をされるのかということについて伺いたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症につきましては、二〇二〇年二月一日から指定感染症に位置づけられ、厚生労働省におきましては、発生初期段階から感染症法に基づく積極的疫学調査を実施しており、同年二月二十九日には、国立感染症研究所において、初期の百十二例の症例につきまして、渡航歴や症状、基礎疾患、臨床経過などの詳細な分析結果の初報告が公表されたと承知しております。

 機構の創設によりまして症例を収集するスピードがどの程度速くなるかということでございますが、これは感染症の種類にもよりますので、具体的にお示しすることは困難ではございますが、総合診療機能を持ち、治療や臨床研究で感染症対応の最前線に立ってきました国立国際医療研究センターと、ウイルス学や細菌学など感染症に関する基礎的研究能力を持ち、感染症サーベイランス情報のまとめ役ともなる国立感染症研究所を統合することによりまして、最初の数百例程度の知見につきまして、詳しい臨床情報や疫学、病態情報、こういうものを踏まえました調査、分析、評価を一体的かつ迅速的に行うことによりまして、政策判断に資する質の高い分析、評価を行うことが可能になると考えているところでございます。

井坂委員 どれぐらい早くなるかはなかなか示しづらいが、しかし、病院と研究所が分かれていたときに比べれば、中身の詳しさ、情報の詳しさという点で、より多くの情報が研究所に入って、科学的知見の質が高まるだろうということを期待しているということであります。この点に関しては、今回の組織統合の非常によい点だというふうに私も評価をしております。

 次に、感染症危機管理に関する人材の強化について、これも参考人に伺います。

 平成二十二年の新型インフル対策総括会議の報告書でこう書かれています。感染症危機管理を担う人員体制の強化と人材育成と。そして、この問題は、それ以降ずっと続いている我が国の課題であります。そもそも、感染症危機管理の人材育成を行う前に、感染症の専門家を増やさなければなりません。

 そこで、これは文科省になるかもしれませんが、伺いますが、大学医学部の感染症学講座を増やすなど、感染症の専門家をそもそも増やす必要があるのではないでしょうか。

西條政府参考人 お答えいたします。

 医学部における教育研究をどのような組織体制で実施するかについては各大学において判断されるものではありますが、感染症に関する講座は、令和四年五月現在で、医学部八十一大学のうち七十大学に設置されておりまして、これは、新型コロナウイルス感染症流行前の令和元年度と比較しますと、八大学増加していると承知しております。

 また、文部科学省におきましては、令和二年度補正予算において、各大学における感染症の診療や感染制御に関する教育実習環境の整備を支援するとともに、令和四年度からは、感染症を含めた地域ニーズの高い分野に係る教育プログラムの充実への支援を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、医学部長会議等の機会を通じて、医学部における感染症に関する講座の設置など、各大学の取組事例を周知することで感染症研究を担う人材育成が更に充実するよう、各大学に促してまいります。

井坂委員 ありがとうございます。

 是非、人員体制の強化、そして、人材育成の根本となる、そもそも、危機管理以前に感染症について詳しい研究者を増やすということが非常に今大事だと思いますので、そのようにお願いをいたします。

 そして、今回つくられる国立健康危機管理研究機構が米国CDCと大きく違うのは、政策立案をしないことであります。機構は、研究をして、科学的な知見を政府に提供する役割であって、政策立案と意思決定は感染症危機管理統括庁、それから厚労省感染症対策部が行う、こういうふうになっています。科学的知見の提供とそしてそれに基づく政策立案をむしろ明確に分離をするのが、今回の我が国の法改正の特徴であります。そして、そのことによって科学的根拠に基づく政策判断のプロセスが強化をされるんだと政府は説明をしておられます。

 そこで、これは大臣に伺いますが、今回、この国立健康危機管理研究機構をつくることで、科学的根拠に基づく政策判断のプロセスがどのように強化されるのか、伺います。

加藤国務大臣 まず、国立健康危機管理研究機構を創設することによって、これまで議論してきたこともそれにつながる話だと思いますが、基礎から臨床までの一体的な研究基盤、また、全国的な情報基盤を確立するということをこれまでも進めてきております。そういったものを活用することで、質の高い科学的知見が提供される、しかも迅速に内閣感染症危機管理統括庁等へ提供される、これがまず一つのポイントであります。その上で、政府は、質の高い科学的知見を踏まえて、政策判断をより迅速に行うことができるということとなります。

 また、機構からどういうデータが示されてきたか、まさに科学的知見も明らかになり、また、それにのっとってどういう判断をしてきたかといったことも明らかになるといった面もあるのではないかというふうに思います。

井坂委員 プロセスがより分かりやすくなると。科学的知見をつくるところとそれに基づいて判断をするところが分かれる、そして、その途中のやり取りがきちんと法定化をされるということで、プロセスが明確化をされるというよさはあるというふうに思います。

 一方で、先ほど早稲田議員も質疑をしておられましたが、懸念もございます。それは、科学的知見の内容に関して、政府がそれに対して口出しをするというような懸念であります。

 大臣の答弁は、科学的知見の内容に政府が関与することは考えていないという先ほどの御答弁でありました。

 しかし、これは、考えていないという御答弁では私は弱いと思います。科学的知見に対して政府が口出しをすることは絶対にしない、絶対にしてはいけないことだと、これは明言をしていただくべき重要なポイントではないでしょうか。仮に、政府の不手際を隠すために、これは今は言わないでくれとか、あるいは言い方をもう少し変えてくれというようなことは、これは十分に想像し得ることであります。

 大臣に伺いますが、そんなことあるかと今顔をゆがめておられるわけで、是非そこははっきりと御答弁いただきたいわけでありますが、厚生労働省と機構は、これは監督関係、命令関係が今回の法律でも書かれております。こういう関係があると、これはあってはならないことですが、機構の科学的知見、科学的助言の内容や、あるいはその助言をする時期などを政府がゆがめる、こういうことがないように、むしろ何らかの規定が必要ではないでしょうか。大臣、伺います。

加藤国務大臣 もちろん、今回の機構法案の四十一条には監督命令がございます。ただ、これは、中期目標を達成するためその他この法律及び感染症法を施行するために必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる、これはいわゆる一般的な規定であります。

 さらに、具体的にどういうことができるかということを明示した規定が六十五条の五で、ここでは、まさに、パンデミック時に病原性の高い検体の採取や入院治療等を迅速に行えるようにする観点から、必要に応じて命令をできるようにするということを想定した規定となっているわけでございますので、先ほどからも申し上げておりますように、具体的な研究における科学的手法、また、得られた科学的な事実の内容、これについて関与することは毛頭考えてはおりません。

井坂委員 毛頭考えておりませんということで、やってはいけないことだ、言わずもがなだという御答弁と理解をさせていただきます。ただ、それだけでは私は大丈夫なのかなと思いますので、何らかの規定が要るのではないかということを御提案を申し上げました。

 今ほどは、この機構と厚労省の関係についてをお伺いをしたわけでありますが、今回の機構は、対厚労省、あるいは対感染症の危機管理統括庁には、これは日常的に科学的知見を提供することができます。しかし、実際にパンデミックとなって立ち上げられる政府対策本部、この政府対策本部に対しては、求められたときに機構は対策本部に出席をして科学的知見、意見を言える、こういう形になっております。

 そこで、参考人に伺いますが、政府対策本部に求められたとき以外であっても、機構が科学的知見を対策本部に情報提供する方法や機会はあるのか、お伺いをいたします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 新たな感染症危機に備えまして、政府といたしまして、科学的根拠に基づく感染症対策を推進するために、国立健康危機管理研究機構は平時から感染症に関する情報収集、分析を行い、質の高い科学的知見を内閣感染症危機管理統括庁等に提供するとともに、統括庁等の求めにも応じて、調査研究等を行い、政策決定に必要な科学的知見を迅速に提供することとしております。

 具体的には、機構は常設の研究機関でございまして、平時から獲得した科学的知見を統括庁等に積極的に提供することを想定しております。

 期待される役割をしっかりと果たせるよう、統括庁等と常日頃から密接に連携をしてまいりたいと考えています。

井坂委員 ちょっと、お聞きしたことにはお答えにならなかったんですが。対統括庁、対厚労省は割と自由に言えるんですよ、機構は。ただ、対政府対策本部ですね、政府対策本部は呼ばれたときだけ行って意見が言える、こういうたてつけになっておりますが、政府対策本部に対して、それでも、呼ばれていなくても、これは重要だ、これは言わなければというようなときに、そのような機会があるのかということについてお答えをいただきたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 政府対策本部の事務は統括庁が行うこととされておりまして、もちろん呼ばれたとき以外でも、統括庁を通じて意見を伝えることはできると考えております。

井坂委員 統括庁を通じて、あるいは、本当に対策本部で言うべきことがあれば、統括庁が事務局であるということをもって対策本部が呼ぶという形をつくる、こういう御答弁だと思います。

 次に、パンデミック初期の検査について伺います。

 感染症対策は、時期によって大きくやることが変わってまいります。

 初期は、ウイルスの毒性や感染力も分からず、治療法もありません。ですから、海外から国内に絶対に入らないように厳しい水際対策を行い、そして、一人でも感染が疑われれば隔離、また、その接触者は全て検査をする、こういう形になります。国内にウイルスを入れず、また、国内で発生してもシラミ潰しに全て潰して、いわゆるゼロコロナの時期をいかに長く保つかというのが初期の最重要課題であります。その間にウイルスを研究し、また治療法を少しでも確立し、そして、来るべき国内での蔓延に備えて医療体制を整えるという流れになります。

 その後、国内で感染者が多数発生し、もう接触者が追い切れない蔓延期ということになれば、これは経済社会活動の規制が避けられなくなってまいります。

 その後、やがてワクチンや治療薬が開発され、そして、多くの場合はウイルスが変異を繰り返して弱毒化し、やがて現在のように経済社会活動を再開できる状態になります。

 このように、時期によってやるべきことは百八十度異なるわけでありますが、パンデミック初期は、徹底的に幅広く検査をすることが重要であります。

 ところが、日本では、二〇二〇年二月、三月当時、検査し過ぎると病院が逼迫するからすべきではないなどの世論が高まり、また、テレビのニュースなどでも、偽陽性で、感染していないのに感染者と認定される人が多数出るなどの報道が繰り返されました。

 大臣に伺いますが、これはもう言わずもがなの確認だと私は思っておりますが、パンデミックの初期は、疑わしきは全件検査を徹底することが必須だという認識で間違いないでしょうか。

加藤国務大臣 感染症危機が発生した際には、流行初期から有症状者や濃厚接触者などに対して必要な検査をしっかりと実施することは重要だと考えております。

 委員御指摘のように、今回の新型コロナの当初の段階においては、まさに検査能力そのものがなかなか立ち上がらなかった、こうした課題もありました。

 したがって、そうしたことがないように、昨年十二月に改正していただいた感染症法等においては、検査に関する数値目標を盛り込んだ予防計画を各都道府県が策定し、地衛研において、国立感染症研究所と連携しながら検査能力を確保すること、都道府県において民間検査機関等と検査実施に関する協定を締結すること、まさに流行初期から必要な検査体制ができるような体制確保、そしてその備えを推進するということにしているところであります。

井坂委員 ちょっと大臣に更問いをしたいと思うわけでありますが、確かに当時、今振り返れば、日本はパンデミック初期の検査能力が十分に拡大ができなかった。その結果、その結果というか、ほかの国に比べて検査数が全然増えずに、それの理由づけとして、いや、むしろ検査し過ぎない方がいいんだみたいな世論が広まったというようなふうにも受け止めているところであります。

 こうしたいわゆる間違った世論には、これからは、今回できる機構がまさにCDC的な役割も果たそうとするのであれば、国民向けに正しい科学的知見を情報発信すべきではないかと思います。この国民向け情報提供も機構の役割ではないかというふうに考えております。ここは米国CDCを見習うべきところで、米国CDCには広報部というところがあって、情報発信力が非常に高い組織であります。

 伊佐副大臣も、二〇二〇年二月の予算委員会で、CDCをかなり早い段階で、議事録を見たら、多分二番目ぐらいか、すごい早い段階で提案しておられて、さすがだなと思ったわけでありますが、伊佐副大臣が、当時、CDCを提案した文脈も、ダイヤモンド・プリンセスで日本がパンデミックを拡大しているんじゃないかと海外から批判にさらされたのに対して、やはり海外に対する情報発信が弱い、だから、CDCのような情報発信力の高い組織をつくるべきじゃないか、こういう文脈で、当初、伊佐副大臣はCDCの必要性を訴えておられました。

 また、同じ頃に医師会もCDCの創設を政府に提言しておりますが、その書き方も、健康医療情報を学術的な見地から国民に発信し情報共有ができる日本版CDCの創設、このように政府に提言をしているわけであります。

 つまり、パンデミック初期、まさに、私が今、問題意識を持っている、あの頃に先見性を持ってCDC必要だとおっしゃった方は、国民に対する情報発信力、あるいは国内外に対する情報発信力という観点でCDCを提言をしておられた。

 大臣に、ちょっと更問いで申し訳ないんですが、国民に科学的な正しい情報を広報、情報発信する機能を本機構は強化をすべきではないでしょうか。

加藤国務大臣 今回の国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の第十三条で、国もそうではありますが、国立健康危機管理研究機構は、国民に対する知識を普及するとともに、国民の理解と関心を深めるため、国民に対する啓発に努めなければならないと規定をしているわけでございますので、まさに委員御指摘のように、この機構が分析した内容等についても、国民に対して分かりやすく発信できるよう準備を進めていきたいと考えております。

井坂委員 法文に書かれているのは一般的な啓発という話だと思いますけれども、是非、パンデミックのような緊急時、危機時に、国民世論が誤った方向に行きそうであれば、米国CDCのように、きちんと広報部ようなものを持って、国民に正しい科学的知見をタイムリーに伝える、まさに危機管理上の目的を持って伝えるということを、きちんと役割としてやっていただきたいというふうに思います。

 次に、検査マニュアルの作成について伺います。

 これは、地方衛生研究所の方に対して我が党がヒアリングした際に出てきた話でありますが、各地方衛生研究所の方に伺うと、もちろん試薬も大事、人員も大事、その上で、やはり本当に一番早く欲しいのは、感染症研究所からの検査マニュアルが早く欲しい、こういうことであります。

 このことを私も調べてみましたら、実は、二〇二〇年、国立感染症研究所が検査マニュアルを作ったタイミングというのは、非常に早かった。一月十日にゲノム情報が公開をされて、そのゲノム情報だけを見て、一月二十二日ですかね、もう既に、他国、多くの国に先駆けて検査マニュアルを日本は作ったということで、これは評価すべき点だというふうに思います。

 ところが、マニュアルは早かったのに、なぜ、さっき大臣がくしくもおっしゃったように、パンデミック初期の検査体制がなかなか整わなかったのかというと、これは地方衛生研究所で伸び悩んだということであります。

 そこで、参考人に伺いますが、今回の法改正で、この地方衛生研究所における検査体制の確立、これを更に早めることが可能になるのかどうか伺います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今回の新型コロナウイルス対応では、比較的速やかに検査のマニュアル等の配布ができたと考えております。

 もし、大規模な地方衛生研究所等においては、独自に検査手法を開発するということも可能かもしれませんけれども、国としては、全国の感染状況を的確に把握し……(井坂委員「それは多分、次の質問の答えじゃないですか」と呼ぶ)はい。済みません。

 地方衛生研究所の体制の確立ということにつきましては、これにつきましては、今大臣からも御答弁いただきましたが、例えば、予防計画の中で、各都道府県におけます検査の体制の確保といったことを整備していくことにしておりますし、また、地方財政措置によりまして人員体制あるいは予算措置、そういったこと、あるいは地方衛生研究所と新機構との間の連携体制の強化、こういったことを通じましてしっかりと強化ができるものというふうに考えております。

井坂委員 次にちょっとお聞きしようと思っていたことは、東京みたいな大きな衛生研究所では、もうマニュアルを待たなくてもできるんじゃないかというようなこともお聞きをしようと思っておりましたが、これは、メリット、デメリット両方あるので、今後の検討課題だというふうに思っております。

 今回、地方衛生研究所で検査体制がなかなか広げられなかった幾つか理由があると思うんですが、一つは検査試薬とか、あと、全自動PCR検査機、いわゆる機器が十分に用意できなかった、あるいは備蓄が足りなかった、あるいは、医療用マスクなど個人防護具の備蓄も、政府のいろいろな、昨年六月の中長期的課題などにも書かれているわけであります。

 参考人に伺いますが、これら検査試薬や検査機器、また個人防護具の備蓄、今後は十分になるのか、お伺いいたします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 平時のうちから、今御指摘のような必要な物資の備蓄ということにつきまして計画的に実施していただくことは、非常に重要であると考えております。

 このため、昨年十二月に成立しました改正地域保健法に基づく基本指針におきまして、各自治体や地方衛生研究所に対しまして、検査機器の整備や検査試薬の備蓄など、感染症危機の際に必要な物品等の備蓄を含めた取組を求めているところでございます。さらに、これらの取組を計画的に進めていただくため、改正感染症法に基づきまして、各自治体に対し、地方衛生研究所等の検査体制を含めた予防計画の策定を求めているところでありまして、厚生労働省としては、各自治体の取組状況も把握しつつ、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

井坂委員 これもちょっと更問いをしたいんですが、備蓄は今後非常に強化をされるということで、そこは期待をしたいと思います。ただ、実は、試薬は、あらかじめ備蓄できる試薬と、それから、実際にウイルスが出てからでなきゃ作れない試薬というものがありまして、ウイルスに反応する、プライマーと呼ぶそうなんですが、この試薬はウイルスのゲノム情報が分かってから作り始める。これも国立感染症研究所は非常にしっかりやっていただいて、さっきちょっと間違って言ったかもしれませんが、一月十日にゲノム情報が分かって、一月二十二日にできたのがこのプライマーだというふうに伺っております。中央では早くこれができたんですけれども、このプライマーと呼ばれる試薬が、じゃ、地方でどれだけ本当に量産できて、地方の研究体制の拡大につながったかというと、ここも非常に心もとなかったというふうに認識をしております。

 このプライマーの速やかな量産について今後どう改善をされるのか伺います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のプライマーなどにつきましても、次の感染症危機の際に迅速に供給体制を整備することは非常に重要であると考えております。

 厚労省としては、新型コロナのPCR検査試薬を製造していたメーカー複数社に対しまして、新型コロナ対応における経験等についてヒアリングをするなどしておりまして、今後の対応について、今検討を始めたところでございます。

井坂委員 最後に、地方衛生研究所の人員体制について一点だけ伺います。

 先ほどの、前の委員の質疑の中で、人員は増やす、百五十名増やすというふうに私は伺っているんですけれども、この増やし方なんですね。

 結局、人口比例でこの百五十名を配分するんだというふうに伺っておりまして、そうすると、我々がずっと、前の委員も含めて懸念をしておる地方衛生研究所ごとの格差、弱いところは、相変わらず人口比例で人員増強しても弱いままではないかというふうに考えます。

 この部分をどう考えるのか。特に、設備とか人的能力のばらつきですね。全体の底上げは今政府がやっているやり方でできると思うんですが、ばらつきをどう解消するのか、格差をどう解消するのかということについて、最後、参考人に伺います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 底上げにつきましては、答弁をいろいろさせていただいているとおりでありますけれども、格差ということにつきましては、都道府県や政令市あるいは中核市の保健所、様々ございますけれども、例えば、中核市や特別区などの地方衛生研究所、こういったところは、都道府県や政令指定都市と比べまして人口規模や財政規模の小さな自治体の場合は、必ずしも単独で整備を求めるということではなくて、都道府県や政令指定都市の地方衛生研究所等との連携等によりまして必要な機能を確実に確保することが適当であるというふうに考えております。

 このため、昨年度の改正地域保健法によりまして、都道府県が主導する形で域内の地方衛生研究所等による連携体制の構築ということを進めているというところでございます。

井坂委員 ありがとうございます。

 是非、今回法改正でできる機構がパンデミック初期の検査体制の肝になってまいりますので、しっかり検査体制を立ち上げて、いわゆるゼロコロナ期間をいかに長く保つかということに注力をしていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

三ッ林委員長 次回は、来る十七日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時五十七分散会


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