衆議院

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第3号 令和5年11月10日(金曜日)

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令和五年十一月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田畑 裕明君

   理事 大岡 敏孝君 理事 古賀  篤君

   理事 橋本  岳君 理事 三谷 英弘君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 足立 康史君 理事 伊佐 進一君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      五十嵐 清君    上田 英俊君

      上野賢一郎君    大串 正樹君

      勝目  康君    金子 容三君

      川崎ひでと君    岸 信千世君

      塩崎 彰久君    新谷 正義君

      鈴木 英敬君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    田村 憲久君

      高階恵美子君    高木  啓君

      中谷 真一君    仁木 博文君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      柳本  顕君    山本 左近君

      吉田 真次君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山岸 一生君    山井 和則君

      吉田 統彦君    早稲田ゆき君

      一谷勇一郎君    遠藤 良太君

      岬  麻紀君    福重 隆浩君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田  薫君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         猪原 誠司君

   政府参考人

   (消費者庁消費者法制総括官)           黒木 理恵君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     鈴木 建一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 吉田 雅之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            内山 博之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  間 隆一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 鹿沼  均君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       佐藤  紳君

   政府参考人

   (環境省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           神谷 洋一君

   参考人

   (慶應義塾大学法学部教授)            太田 達也君

   参考人

   (地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立精神医療センター副院長)  小林 桜児君

   参考人

   (Asabis株式会社代表取締役)        中澤 亮太君

   参考人

   (公益社団法人日本てんかん協会理事・事務局長)  田所 裕二君

   参考人

   (一般社団法人ARTS代表理事)         田中 紀子君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     五十嵐 清君

  勝目  康君     高木  啓君

  川崎ひでと君     本田 太郎君

  塩崎 彰久君     岸 信千世君

  堀内 詔子君     田中 英之君

  吉田 統彦君     山岸 一生君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     上田 英俊君

  岸 信千世君     塩崎 彰久君

  田中 英之君     堀内 詔子君

  高木  啓君     勝目  康君

  本田 太郎君     川崎ひでと君

  山岸 一生君     吉田 統彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

田畑委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官和田薫君、刑事局組織犯罪対策部長猪原誠司君、消費者庁消費者法制総括官黒木理恵君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、消防庁審議官鈴木建一君、法務省大臣官房審議官吉田雅之君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官内山博之君、医薬局長城克文君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長間隆一郎君、保険局長伊原和人君、年金局長橋本泰宏君、政策統括官鹿沼均君、農林水産省大臣官房生産振興審議官佐藤紳君、環境省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官神谷洋一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田畑委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。

上田委員 おはようございます。自由民主党の上田英俊でございます。よろしくお願いします。

 今日は、厚生労働委員会におきまして、同じ富山県選出の田畑委員長の下、質問させていただけるというのは大変光栄だというふうに思っております。

 本日は、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 今回、この改正法案について、先輩議員から質問の機会をいただいた際に、私は、大麻、麻薬、向精神薬については全くの素人なんですというふうに思わず口走ってしまいました。それに対しまして、先輩議員いわく、大半の人は素人ですよとの回答でありました。確かに、それはそうだという思いで思い直し、今回、質問に臨ませていただいております。

 確かに、大麻、麻薬、向精神薬については、合法的に職業として携わる方、違反を取り締まる方などを除き、多くの方々が素人でありましょう。しかし一方で、非合法的に、法律を犯す方、残念ながら少なからず存在しているというふうに思います。私自身、現物を直接見たことがない大麻、麻薬、向精神薬という規制薬物についての質問ですので、隔靴掻痒の感は否めませんけれども、順次、通告に従い、質問に入らせていただきます。

 かつて、そう遠くない過去において、日本には安全神話がありました。安全神話であります。誰もが平和に暮らし、犯罪に巻き込まれることがほとんどない日本社会がありました。

 安全神話を支えていた理由が、私は二つあるというふうに思っています。まず一つは、拳銃等の殺傷能力のある武器を一市民が入手するということが難しかったということ、そしてもう一つは、大麻、麻薬、覚醒剤、違法ドラッグ等も、合法的に仕事として扱える方々、そしてまた、ある意味でいうと特殊な組織に属する人などを除いて、非常に遠い存在であったということでありましょう。テレビドラマやワイドショーで見るものでありました。この二つにより安全神話というものが支えられ、保たれていたというふうに認識をしております。

 残念なことに、今日では、殺傷能力のある武器、そして法律の規制を受ける薬物が身近な社会に潜み、世代を問わず蔓延しているという強い危機感を覚えます。治安が明らかに悪化し、安全、安心を脅かしていると認識しています。大麻、麻薬、向精神薬等の規制されている薬物が、今日の事件、事故を誘発する大きな要因になっているというふうに考えるものであります。

 そこで、まず質問いたしますが、法律で規制されている薬物の広がりが今日の社会にどのような影響を与えているのか、現状に対する認識を伺いたいというふうに思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国における令和四年の薬物事犯の検挙人員は一万二千六百二十一人でございました。依然として高水準で推移しておりまして、国内における根強い薬物需要がうかがえますとともに、いまだ深刻な状態が継続しているものと認識をいたしております。

 また、近年、インターネット上のサイバー空間を悪用した薬物の密売等が急速に広がっておりまして、SNS等により、国民の誰しもがインターネット端末一つで違法薬物の購入のみならず薬物密輸に関与し、薬物犯罪の当事者になり得る深刻な状況にあるものと考えております。

 政府といたしましても、今年八月に第六次薬物乱用防止五か年戦略を策定いたしまして、関係省庁が緊密に連携して、薬物の供給の遮断、啓発等による需要の削減の両面から総合的に薬物乱用防止に取り組むこととしているところでございます。

上田委員 今ほど局長から、薬物事案の件数を踏まえて、深刻な状況だというふうに答弁がありました。そうした社会において今回法改正が行われますが、その概要は三つの柱から構成されていると認識しております。

 まず一つは、大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備、二つ目には、大麻等の施用罪の適用等に係る規定の整備、そして三つ目には、大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備でありますが、まず、今回の法改正の必要性とその内容について確認をいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案におきましては、大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするためにこの禁止規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置づけることによりまして、流通規制の下でその施用や製造等を可能とすることとしております。

 また、国内で大麻事犯の検挙人員が増加している状況も踏まえまして、他の規制薬物と同様に、大麻等を麻薬及び向精神薬取締法の麻薬に位置づけまして、不正な施用に係る禁止規定や罰則規定を適用するものでございます。

 さらに、大麻草採取栽培者の免許制度の見直しを行いまして、大麻草に由来する製品の原材料を採取する目的の栽培と医薬品原料を採取する目的の栽培の免許区分を設けますとともに、大麻草由来製品の原材料とする目的での栽培につきまして、安全性確保のために、有害成分が基準値以下の大麻草から採取した種子等を利用して栽培しなければならないこととするなど、所要の規制を設けることとしているものでございます。

上田委員 大臣の提案理由説明でも述べられましたが、大麻草から製造された医薬品には医療上の有用性が認められるという文言がありました。法改正により、適正な利用を図ることが可能になるとされているわけでありますが、具体的に、医薬品におきまして、どのような病気に対し、どのような医薬品があり、どのような効果が期待されるのか、伺います。

城政府参考人 大麻から製造された医薬品でございますが、欧米諸国では、難治性てんかんの治療薬等といたしまして、従来の治療で十分な効果が得られない患者に対しても臨床的な効果が得られておりまして、承認、利用されていると承知をいたしております。

 我が国では、エピディオレックスという難治性てんかんの治療薬の治験が進められておりまして、昨年十二月には最初の被験者への投与が開始されたところでございます。この治験の結果も踏まえまして、早ければ令和六年後半にも医薬品としての承認申請が行われるものと考えております。

 しかしながら、現行の大麻取締法におきましては、大麻から製造された医薬品の施用等が禁止されておりまして、こうした医薬品を利用することができないことから、早急に改正が必要であると認識をいたしております。

上田委員 調べてみましたら、大麻取締法は昭和二十三年に制定された大変古い法律であります。大麻に関する事件というものは、今日、どこの誰とは言えないくらいに、地域や世代を問わずに蔓延しているというふうに認識をしております。特別視できないほど広がっているということでありましょう。

 大麻取締法においては、第三条の一項で、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」というふうに記されております。使用についての規定はないわけであります。このことが、あえて都合よく解釈をして、曲解をしているというふうに認識をしているものでありますけれども、まず、大麻の所持罪について伺いたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、大麻につきましては、大麻取締法におきまして、従来から、所持罪は設けられておりますが、施用罪は設けられていないところでございます。

 これは、昭和二十三年、一九四八年の大麻取締法制定当時におきましては、大麻草やその有害成分に対する科学的な知見が乏しかったこともありまして、栽培農家が大麻草を刈る作業を行う際に、大気中に大麻の成分が飛散し、それを吸引して麻酔いという症状を呈する場合が考慮されたことが理由の一つとして考えられているところでございます。

 制定当時の国会審議におきましても、大麻草の栽培を免許制とした趣旨につきまして、大麻の不正取引及び不正使用を防ぐためであるとしております。免許制度を採用し、施用の前提となる所持を規制することで、不正な取引、使用を防ぐことができると考えられていたというふうに解されるところでございます。

 このように、施用罪がないことは大麻の乱用を認めていたというものではなく、所持罪を設けることにより、その乱用も禁止しようとしていたものであると考えられるところでございます。

上田委員 第三条第一項で、今ほど答弁もありましたけれども、大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、研究というふうに列挙されているわけでございますけれども、今ほどの答弁の中で、使用であるとか吸引という言葉が用いられていなかった理由の一端というものを認識をさせていただきました。

 しかしながら、使用について、規定がないことイコール無罪というふうにあえて認識をしている人たちもいるわけであります。規定がないことイコール無罪ということを教え込んで、信じ込ませているということであります。

 ある行為を犯罪として処罰するには、法令において、行為の内容、科される刑罰をあらかじめ明確に規定しておかなければならないというのが罪刑法定主義の考え方なんだろうというふうに思います。あえて抜け道を利用しているということは、何とも本当にゆゆしき事態だというふうに思っております。

 そこで、そもそも、大麻の有害性というのは一体何なのか、健康への影響としてどのようなものがあるのか、伺いたいと思います。

城政府参考人 大麻を使用することによる短期的な悪影響といたしましては、意識障害、認知障害、知覚障害、情緒又は行動障害など、それから、車の運転における障害、交通事故によるけがのリスクの高まりなどの報告、研究成果がございます。

 また、定期的に大麻を使用することによる悪影響といたしましては、大麻に対する依存のほか、青少年期や成人後の若い時期に連用する場合には、学校中退、認識機能障害、その他の薬物の違法使用、抑うつ症状などのリスクが高まるといった報告や研究成果があるところでございます。

上田委員 今ほど、局長の方から様々な障害等について話がありました。

 しかしながら、大麻を不法所持している、そして使用といったものが至る所で見られますけれども、大麻取締法違反として検挙者数はどのように推移しているのか、伺いたいと思います。

城政府参考人 大麻事犯の検挙人員でございますが、令和三年まで八年連続で増加している状況にございました。昨年の検挙人員は五千五百四十六人でございまして、令和三年と比べると若干減少したものの、依然として高水準にありまして、また、検挙人員中、三十歳未満の割合が六九・二%を占めるなど、若年層の大麻乱用の拡大が顕著でございます。現在は大麻乱用期にあると考えているところでございます。

 これには様々な要因が影響していると思われるところでありますが、その一つとして、大麻に有害性はないといった誤った情報がインターネット等で流布され、主に若年層による安易な乱用につながっているものと考えているところでございます。

上田委員 検挙者数は高水準で推移しているとともに若年化が進んでいる、そしてまた乱用期にあるという答弁でございました。

 今回の法改正により、大麻の施用罪が、麻薬及び向精神薬取締法において麻薬として禁止規定及び罰則が適用されることになりますけれども、そのことにより、どのような効果といったものを期待されるのかというふうに伺います。

 今ほどの答弁にもありましたけれども、検挙者数の高止まりということがありましたけれども、やはり、我々地域で生活する者にとって、体感として、肌感覚として、こんなところにまでも拡散しているのかという大変強い危機意識を覚えます。

 今回の法改正により、大麻の施用罪がどのような効果が期待されるということをまず伺いたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 他の薬物の規制におきましては所持罪とともに施用罪が設けられているのに対しまして、現行の大麻取締法では、法律の制定当初から、所持罪等は設けられている一方で、使用罪は設けられていないところでございます。

 こうした中で、大麻の所持で検挙された者に対する調査結果によりますと、約七割の方が大麻に使用罪が設けられていないことを認識をいたしておりまして、そのうち約二割は、大麻に使用罪がないことが使用へのハードルを下げているということが明らかとなっているところでございます。不正な使用の契機につながっていると考えております。

 このように、大麻に使用罪が設けられていないことが、大麻を使用してよいという誤った認識を助長し、大麻使用へのハードルを下げている状況がございますことから、今回の改正法案による施用罪の適用が、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めにつながると考えているところでございます。

上田委員 まさしくおっしゃるとおりだというふうに思います。大麻取締法において列挙されている中で、使用というものが述べられていない、そのことをあえて曲解、都合よく解釈をすることによって若年層への蔓延が拡大されてきているという認識だというふうに思います。

 そうしたところにおいて、この施用罪が、禁止規定及び罰則が適用されるということは大切なことだというふうに思います。また、その一方で、大麻を使用、吸引する、施用するということは犯罪なんだということをやはり広く教育現場等を中心にも普及していくべきことなんだろうというふうに思います。

 さて、大麻草なるものは現物をもちろん私も見たことがないわけでありますけれども、いろいろ調べてみると、当然自生もしているということでありますし、事件になった報道等に接していると、個人のアパートでも栽培をしているという話であります。大麻草なるものは自生もしており、学生のアパート等でも簡単に栽培されていた事案といったものが非常に多く、今日特に見受けられるというふうに認識をしております。

 大麻草の栽培については、合法的に栽培されていても、やはり常習性のある者から、欲望として盗んでやろうと盗まれる危険性といったものもあろうかというふうに思います。その結果として、その危険性に対して栽培地周辺の住民から不安の声が出て、反対が発生する場合といったものが想定されるというふうに思いますが、いかにして対応していくのか、伺いたいと思います。

城政府参考人 今回の改正法案におきましては、有害成分が低い大麻草の種子を用いて栽培しなければならないということといたしております。盗難や乱用される危険性が低いものでございまして、栽培される大麻草の安全性が確保されるというふうに考えているところでございます。

 こうした点につきまして、まずは、大麻草栽培者において栽培地の周辺住民に必要な説明等を行っていただき、理解を求めていくことが重要であるというふうに考えております。

 その上で、こうした大麻草の栽培に関する情報につきまして、国から国民への正しい情報提供を行うことが重要でございますから、法案が成立した場合には、そうした情報提供や啓発に努めてまいりたいと考えております。

上田委員 最後の質問になりますけれども、今回の法改正を受けて、大麻に関して、先ほども局長から答弁がありましたけれども、医療上の効果が医薬品として期待される、そして医薬品として適正利用といったものも期待される。しかしながら、冒頭から述べさせていただいていますけれども、一方で、やはり大麻の有害性なるものを全ての方々に正しく理解してもらう普及啓発といったものが必要だというふうに考えますけれども、厚生労働省の所見を伺いたいというふうに思います。

城政府参考人 今回の改正法案におきましては、大麻の施用罪の適用を通じて大麻の乱用を防止する一方で、医療や産業への利用など、大麻草の適正な利用を認める内容となっております。こうしたことから、御指摘のとおり、大麻に関する正しい知識や情報の提供が重要であると考えております。

 関係審議会における取りまとめにおきましても、薬物乱用防止のため、正しく栽培、使用されているものと、嗜好用と称して乱用されるものとを区別した上で適切に情報提供するなど、科学的なエビデンスに基づいた大麻の有害性に関する正確な情報の広報啓発に取り組むべきとの方向性が示されているところでございます。

 法案が成立した場合には、こうした方向性を踏まえまして、正しい情報の提供と啓発に取り組んでまいりたいと考えております。

 具体的には、大麻の不正な施用について禁止や罰則を適用すること、免許制度の下で適正に栽培される大麻草について、安全性確保のために有害成分の上限値を設けること、大麻草の伝統的な利用方法や新たな産業用途について広く国民向けの啓発資材を作成し、周知を行う、こういったことを行いたい、そういう予定といたしているところでございます。

上田委員 ありがとうございました。

 今回の質問で、医薬品としての有用性は認識しました。しかし、だからといって危険性が消滅したわけではないというふうに思っておりますので、省庁横断的にしっかり対応していただきたいというふうに要望しておきたいと思います。

 終わります。ありがとうございます。

田畑委員長 次に、鈴木英敬君。

鈴木(英)委員 おはようございます。自民党の鈴木英敬であります。

 質問の機会を御配慮いただきました理事、委員長を始め皆さんに感謝を申し上げたいと思います。

 今日は地元の町長さんも傍聴に来ていただいておりますので、しっかり頑張りたいと思いますが、答弁者の皆さんも、分かりやすく、そしてよい答弁を是非よろしくお願いしたいと思います。

 今回、私、知事時代に神事用の精麻を生産する栽培免許に関わった経験や、安倍元総理が最高顧問を務めていただいた勉強会に参加をさせていただいたそういう経験なども踏まえまして、科学的根拠に基づく規制、それから運用も含めた法改正の実効性、これに力点を置いて質問したいと思いますし、また、自治体目線を加えて質問させていただきたいと思います。

 他方、現時点では、先ほど上田英俊先生からもありましたとおり、法改正の趣旨がいまだ社会全体に十分伝わっておらず、大麻利用が何でもかんでも解禁かのような誤解も生じかねない状況にあると懸念しておりまして、まずは、しっかりと厚生労働省において国民の皆様の正しい理解につながるように説明を行っていただくことを最初に強く要望をしておきたいと思います。

 では、質問に入ります。

 まず、乱用防止について質問します。

 今回の法改正において施用罪を適用するということは評価をしますけれども、他方、日大アメフト部の事案などもありましたが、大麻事犯検挙人員のうち三十歳未満が約七割を占めるなど、若年層における大麻乱用拡大が見られます。そのような中、今回の法改正も契機として、若年層を始め国民の皆様が正しく理解をするための普及啓発や教育に今まで以上に注力するべきだと思います。

 そこで、今回の法改正も踏まえまして、薬物乱用に関する普及啓発を今後具体的にどのように行うのか、特に、若年層向けという視点や新たに取り組むという視点で伺いたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、今回の改正法案におきましては、大麻の施用罪の適用を通じて大麻の乱用を防止する一方で、医療や産業への利用など、大麻草の適正な利用を認める内容となっておりまして、大麻に関する正しい知識、情報の提供が重要であると考えております。

 この点につきましては、関係審議会の取りまとめにおきましても、薬物乱用防止対策におきまして、科学的なエビデンスに基づいた大麻の有害性に関する正確な情報の広報啓発に取り組むべきとの方向性が示されているところでございます。

 近年、若年層での大麻乱用が進んでおりますことから、特に若年層をターゲットに、SNS等を活用し、興味を引くバナーや動画の掲載、そこから大麻の正確な知識を掲載しているホームページに誘導するといったことで、大麻乱用に興味がある若年層の行動を変化させることを目的とした啓発活動を実施をしてきているところでございます。

 今回の法改正におきましても、厚生労働省としては、こうした経験を踏まえまして、大麻の正しい情報を掲載したホームページを作成するとともに、あわせて、プレスリリースやインターネット広告なども使いまして、周知啓発を実施をしていくことといたしております。

鈴木(英)委員 是非、若者の関心を引く、若者が正しく理解できる、そういう広報啓発に努力していただきたいと思います。

 若年層への普及啓発、教育という観点では、学校薬剤師の活用による乱用防止のための教育の充実が有効と考えます。そのためには、学校薬剤師の先生たちが活用できる教材や研修、これを充実していくことが必要だと思います。

 そこで、今回の法改正を踏まえまして、学校薬剤師を活用する形での普及啓発や教育の取組、それから、大麻のほかの薬物も含めた乱用防止に向けた学校薬剤師等の活動の支援の充実、その二点についてお伺いしたいと思います。

城政府参考人 現在、小学校、中学校、高等学校におきまして、薬物乱用防止教育が行われているところでございます。こうした教育に当たりましては、学校薬剤師の方々も薬物乱用防止指導員の一員として重要な役割を果たしていただいていると認識をいたしております。

 厚生労働省におきましては、学校薬剤師を含めた薬物乱用防止指導員の方々に対しまして、最新の薬物情報に基づいた知識について研修を実施するなどの取組を行っているところでございます。

 薬物乱用防止指導員としての学校薬剤師による薬物乱用防止教育は大変重要な取組と考えているところでございまして、今後も、最新の薬物情報に基づいた教育コンテンツの研修等を実施いたしまして、その活動を支援してまいりたいと考えております。

鈴木(英)委員 ありがとうございます。

 学校薬剤師の先生方に頑張っていただいてというのが重要だということをおっしゃっていただいて、大変ありがたいと思いますし、学校薬剤師をしていただいている先生方も大変使命感と緊張感を持って今回の法改正を見ていただいていると思いますから、是非、研修やコンテンツの充実、しっかりとお願いしたいと思います。

 続いて、今回の法改正による規制を実効たらしめる根幹の一つは科学的根拠に基づく規制でありますけれども、中でも、栽培に使用する種子、種、これの成分をいかに管理をするか、安全性の高い種子を使用するか、そのための測定をどのように行うか、その測定の確からしさをどう高めるかということがまさに根幹であるというふうに考えております。

 栽培が続いていくと、種子の混合とか、あるいは野生種の登場、そういうことも懸念されるわけでありまして、きちんとした成分測定や把握、管理が重要だと思います。しかしながら、栽培者任せだけではその実効性を確保するというのが難しいというふうに考えております。

 そこで、種子の成分測定などの具体的な手法について伺いたいと思います。

城政府参考人 今回の改正法案におきましては、大麻草の製品の原材料を栽培する第一種大麻草採取栽培者につきましては、有害成分でありますテトラヒドロカンナビノール、THCの濃度が基準値以下である大麻草から採取した種子等を用いて栽培するといったことを義務づけるものでございます。このため、栽培者は、その使用する種子等のテトラヒドロカンナビノールの濃度が基準値以下の大麻草に由来することを確認するための検査を検査機関に依頼するといったことが必要になります。

 そこで、海外の規制も参考にしつつ、テトラヒドロカンナビノールの基準値や検査方法について今後策定、周知をいたしますとともに、栽培者が安心して検査を依頼できる検査機関の実施体制を、法案の成立後二年以内の施行を目指して整備をしてまいりたいと考えております。

鈴木(英)委員 ありがとうございます。

 協力検査機関のようなものをつくっていただくということでありますので、そこで規制の実効性を確保できる種子の検査ができるような体制の整備を是非お願いをしたいと思います。

 それでは、ここからは都道府県が関わる栽培免許、運用について伺いたいと思います。

 私、知事時代に、大学なども関わる民間団体の方々から、神事に用いる神具やしめ縄などに用いる精麻が中国産が増えてきたので、国産精麻の安定供給をしたいということで申請がありまして、神事等の伝統文化の維持、継承を目的とした上で、県内販売に限る場合においてその栽培を、一度は不許可にしたんですけれども、再申請後に免許を付与した経験があります。栽培許可は自治事務でありますので正式な全国統一基準がなくて、また、ほかの産地の許可がかなり以前のものでありましたから参考になるものが乏しくて、都度都度厚労省に相談しながら対応するということで、大変苦慮したことを覚えております。

 そこで、今回創設される第一種免許につきましては、免許付与の基準や栽培管理の基準について都道府県で余りにばらつきが出るようなことがあってはならないと考えています。緩いところがあって、それで乱用防止につながるとか、あってはいけませんし、過剰に厳しいところがあって適正利用が妨げられるということがあってはなりません。

 一昨日、塩崎政務官から、都道府県に対して厚労省として統一基準を示していくという趣旨の答弁がありまして、これは大変重要なことであります。塩崎政務官及び厚労省の判断を歓迎したいというふうに思います。

 その上で、都道府県に示すそういう基準やガイドラインの中で、悪質な栽培者を排除し、栽培者への適正な許可を行う観点から、今日町長さんたちが来ていると言いましたけれども、市民との関係で重要な基礎自治体が、この制度の中で蚊帳の外になってしまっています。なので、基礎自治体の役割をどうするかということや、あるいは先ほど種子の話をしましたが、国の基準以下の安全な種子を入手できることを確認する、例えば契約書を確認するとか、そういうようなことを盛り込んではいかがかと思いますが、いかがでしょうか。

城政府参考人 今回の改正法案におきましても、産業利用のための大麻草の栽培免許につきましては、従来どおり都道府県知事による免許となっておりまして、これは各都道府県の実情に応じて実施される自治事務となっております。

 一方で、これまで、御指摘のように、大麻草の栽培免許について国から基準等は示しておらなかったということがございます。今回の審議会の取りまとめにおきましても、国で免許や栽培管理の基準等を明確化し、一定程度全国統一的なものにしていくべきという指摘をいただいたところでございます。

 改正法案が成立いたしました場合には、私ども、安全性確保のため、有害成分テトラヒドロカンナビノールの濃度が基準値以下の大麻草の種子を入手すべきことが全国一律の免許基準として法律に定められるほかに、各都道府県で免許基準を設定することになりますことから、その際には、御指摘の栽培地域の市町村との連携や栽培地の管理等の要件を設定することといたしますが、それらの適正な運用ができるように、厚生労働省におきまして、免許や栽培に関する基準等を技術的助言として示す予定といたしております。

鈴木(英)委員 重要な答弁ありがとうございました。基礎自治体との連携、それから種子に関する要件も設けていただくということで、ありがとうございます。

 あわせて、都道府県における許可、運用に差が出ないようにするためには、今おっしゃっていただいた事前の統一基準だけじゃなく、許可後の現状とか実態をしっかり把握して、そして、この制度の運用の改善を図るというサイクルをつくっていく必要があるというふうに考えておりますが、そのために例えば都道府県と厚労省との連絡会議を設けるなど、都道府県の実態把握に向けた方法が必要だと思いますが、それについてお伺いしたいと思います。

塩崎大臣政務官 ただいま鈴木委員より大変大事な御指摘をいただいたと思っております。

 今回の改正法案を受けまして、国では、産業利用のための大麻草の栽培免許制度について一定の基準等を設けていく予定でございますが、知事として実務にも当たられて、また法案作成にも事務局長として関わってこられた鈴木委員、よく御存じだと思いますけれども、まさにこの基準を設けるに当たっては、栽培の実情を把握していくために、国と都道府県の連携、これが大変重要になってくるものと考えております。

 国と都道府県の間では、今回、これまでも複数回にわたって、改正法案に向けてこういう協議をしてきたところでございますが、まさに今おっしゃったとおり、基準を最初に定めただけじゃなくて、その後の収去検査なども含めて、しっかりと継続的に栽培の実情を把握していくということは大変大事でございますし、今まさに御提案をいただきましたような連絡会議、こういった形も都道府県との連携の有効な一つの方法だと考えておりますので、設置に向けて前向きに検討をしてまいりたいと思います。

鈴木(英)委員 塩崎政務官から大変前向きな、そして力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。是非、設置、あるいは都道府県との連携に向けて善処をしていただきたいと思います。

 それでは、ここからは、適正な利用のために必要な施策ということで、ちょっと順番を変えさせていただいて、農業のお話から行かせていただきたいと思います。

 実は今、大麻栽培は現在ほとんど手作業で行われています。栽培も収穫もですね。そのためコストも高くなっていて、海外産と比べてコスト競争力で負けているというふうに言われています。

 そこで、そういう状況を改善し、何より安全なものを作ってほしいので、安全かつコスト競争力のある生産が行われるようにするためには、機械化、省力化の支援を行っていくことが必要と考えておりますが、農水省の考え方をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国では、伝統文化の継承等を目的とした大麻草の栽培が行われておりますが、その栽培面積は小さく、播種や収穫等の作業はほとんど手作業となっていると承知しております。

 大麻草について、今後、食品や建材、化粧品の原材料等、幅広い分野での産業利用を図るためには、効率的かつ安定的な生産が不可欠であり、委員御指摘のように、機械導入を通じた省力化や、用途に応じた最適な栽培方法の確立が必要と考えます。

 農林水産省では、これまでも、薬用作物等の新たな品目に取り組む産地に対し、栽培体系の構築や作業体系確立のための実証などを支援しているところであり、新たな産業利用に向けた大麻草の産地化に当たっても、他品目で使用されている既存機械活用の可能性の検証及び必要な改良、用途に応じた栽培マニュアルの作成、産地化を図る上で必要となる機械、施設の導入などの支援が可能であると考えております。

 加えて、大麻草については、大麻取締法等の関係法令を遵守した生産が大前提であることから、関係省庁と連携し、生産者に対する正しい知識や適正な栽培管理の習得が行われるよう努めてまいります。

鈴木(英)委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、環境省さんにお聞きしたいと思います。

 今日、三重県の明和町長さんが来られているんですが、三重県明和町では、産学官で連携して、大麻栽培を通じて産業振興とか、あるいはカーボンニュートラルについて考えようというプロジェクトをスタートしていただいております。

 大麻栽培の、これはEUの公式サイトにも載っていますが、カーボンニュートラルへの有用性、これを調査したりやっていこうということでスタートをしていただくわけですが、とはいえ、でも、まだやはり科学的根拠の積み重ねが少ないというふうに思いますので、環境省において、大麻栽培のカーボンニュートラルへの有用性に関する調査とか、自治体プロジェクトの支援などを行ってはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

神谷政府参考人 二〇五〇年カーボンニュートラルに向けましては、既存の再生可能エネルギー等の技術を最大限導入することはもとより、バイオマスを含みます新たな技術開発、イノベーションやその社会実装を進めることが不可欠であります。また、地域の特性を生かして、脱炭素かつ持続可能で強靱な、活力ある地域社会を構築することが重要です。

 環境省としましては、民間の自主的な取組だけでは十分に進まない、CO2排出削減効果の高い技術の開発、実証を進めています。

 また、地域の脱炭素化に当たっては、国と地方が連携し、地域主導の脱炭素の取組を国がしっかり後押しすることが重要です。このため、昨年四月から地方環境事務所に地域脱炭素創生室を新設しまして、自治体や企業に対して、具体的な事業の推進への伴走支援や相談窓口としての体制の強化を図っております。

 今後とも、財政、人材、情報等の面から関係省庁と連携しつつ、地方公共団体の意欲的な脱炭素の取組を支援してまいります。

鈴木(英)委員 是非よろしくお願いします。

 最後に一言。

 今、環境省さんに答弁していただいた。その前は農水省さん。乱用防止と適正利用をしていくには、厚労省だけではなくて、あと警察や文科や経産とか、いっぱい関係省庁が出てくると思います。この法改正を踏まえて、関係省庁の連携が重要だと思いますが、厚生労働省、一言。

城政府参考人 薬物乱用防止対策等につきましては、厚生労働大臣を議長といたしました、関係省庁の大臣で構成される薬物乱用対策推進会議において策定される薬物乱用防止五か年戦略に基づきまして、政府一丸となった対策を行ってきたところでございます。本年八月には、新たな五か年戦略となります第六次薬物乱用防止五か年戦略を策定いたしまして、戦略上の重要項目といたしまして、大麻乱用期への総合的な対策の強化を掲げたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、第六次薬物乱用防止五か年戦略に基づきまして、法務省や警察庁等の関係省庁と密接に連携した取組を実施し、薬物乱用の根絶を図ってまいりたいと考えております。

田畑委員長 簡潔に答弁をお願いします。

城政府参考人 はい。

 利用促進等につきましても、関係省庁と連携を取って進めたいと考えております。

鈴木(英)委員 終わります。よろしくお願いします。

田畑委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 早速ですが、質問に入らせていただきます。

 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。

 政府は、大麻草を原料にした医薬品の使用を認める一方、若者などの乱用を防ぐため、既に禁じられている栽培や所持等に加えて、他の規制薬物同様に、大麻の使用に対する罰則、施用罪を盛り込んだ大麻取締法の改正案を十月二十四日の閣議で決定をいたしました。

 武見大臣は十月十七日の記者会見で、現行法では大麻から製造された医薬品は使用禁止でありますが、改正により欧米で承認された大麻由来医薬品を必要とする日本の患者に使用可能とすることで、アンメット・メディカル・ニーズ、いまだに有効な治療法がない患者の医療ニーズを解消する意義があると考えていると述べられています。また、近年、若者の間で乱用が広がっている大麻については、他の規制薬物と同様に大麻の乱用に対して施用罪を適用することで、乱用の拡大の歯止めにつながると考えていると述べられました。

 改めて、今回の法改正の意義、必要性、また有効性についての御見解をお聞きいたします。

武見国務大臣 今回の改正法案の意義の一つ目といたしまして、大麻草から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置づけることで、麻薬の流通規制の下で承認された大麻由来の医薬品を必要とする日本の患者の皆様に御利用いただくことを可能とし、欧米で既に承認されている医薬品のドラッグロスやアンメット・メディカル・ニーズ、いまだに有効な治療法がない患者のニーズを解消する点があります。

 また、意義の二つ目といたしましては、大麻についてはこれまで施用罪がなかったことで、大麻を使用してもよいという誤ったメッセージとなっていた側面もございます。このため、大麻の不正な施用を法律上禁止することで、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めにつながると考えております。

 これらの意義について、仮に今回の改正案が成立をした場合には、国民の皆様に分かりやすく丁寧に周知し、適切に薬物乱用施策等を進めてまいりたいと考えております。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきます。

 施用罪に、今まで罰則がなかったということに関しましての理由につきましては、先ほど上田委員の質疑に対しまして御答弁がありましたので、割愛をさせていただきたいと思います。

 それに対してまた、施用罪の適用により、大麻草を原料にした医薬品を本当に必要とされる方が、使用への恐怖心から医薬品の使用をちゅうちょしてしまうこともあるのではないかというふうに思っております。その点についてはどのような対策を検討されているのか、御見解をお伺いいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、他の薬物規制におきましては所持罪とともに施用罪が設けられているのに対しまして、現行の大麻取締法では、所持罪等は設けられている一方で、使用罪が設けられていないということでございます。

 この理由につきましては、先ほど申し上げましたように、当時、大麻草の栽培農家が大麻草を刈る作業を行う際に大気中に大麻の成分が飛散し、麻酔いという症状を呈する場合を考慮したことも一因ということがございますし、当時、大麻草が乱用されていた実態がなく、農産物として利用されていた大麻草の栽培を免許制とすることで不正な取引を防ぐことができると考えられていたところであります。

 今回の改正法案におきましては、大麻草から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置づけることによりまして、流通規制の下でその施用や製造等を可能とするといったことといたしております。

 その上で、医療用の麻薬につきましては、従来から、厚生労働省主催で、医療従事者、患者、それぞれを対象に、有用性、安全性の正しい理解及び適正使用を推進するための講習会を開催をいたしているところでございまして、大麻草を原料にした医薬品につきましても、医療用麻薬の一つとして適正使用を推進してまいりたいと考えております。

福重委員 では、ちょっと次の質問に入ります。

 法改正により、医療用への利用が認められることとなりました。一部報道によりますと、昨年の六月、タイにおいて大麻の使用制限が大幅に緩和をされ、医療用が許可されたことにより、いわゆるグリーンラッシュと呼ばれる状況になっているとの報道がございました。

 日本においては、当然、医師の処方箋が必要であることから他国のような状況にはならないと思いますが、ある意味、医療用が認められることにより大麻に対する危険性への認識等が薄れ、大麻が不正に乱用されるようなおそれはないでしょうか。また、防止策についてはどのような対策を検討されているのでしょうか。御見解をお伺いいたします。

浜地副大臣 ただいまの福重委員の、大麻に関する危険性の意識の希薄化による乱用、これの防止、大変重要な視点だと思っております。

 まず、今回の改正法では、大麻を麻薬の一つと位置づけます。ですので、その所持や施用等については、ほかの麻薬と同じように、麻薬及び向精神薬取締法に基づいてまず規制を受けることになるということでございます。

 その上で、大麻を原料とする医薬品につきましては、これはあくまで麻薬でございますので、麻薬の流通につきまして免許を受けた者に限定した形で行います。その上で、施用の制限、管理義務、保管義務、記録義務等を課しまして、厳格な管理を行っていくことになります。ですので、医薬品に関しましては乱用の可能性は低いというふうに考えております。

 その上で、大麻一般につきましては、先ほど申し上げましたとおり、大麻から製造された医薬品の施用は認めることになるんですけれども、あくまで、大麻一般については、体によいといった誤った認識が広がらないように、大麻草の医薬品としての有用性に加えまして、やはり、大麻草の有害性、また危険性もしっかりと周知をし、大麻草に関わる正しい知識の提供と啓発に努めてまいりたいというふうに思っております。

福重委員 副大臣からしっかりとした御答弁をいただきました。何とぞよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 大麻草の成分は、大きく、テトラヒドロカンナビノール、THCと、カンナビジオール、CBDの二つに分けられます。今回、麻薬、向精神薬の有害成分規制への移行に伴い、麻薬成分ではない大麻草由来製品、例としてCBD製品は、葉や花穂から抽出されたものも流通及び使用が可能となることから、保健衛生上の危害を発生するため、当該製品に微量の残留する有害成分のTHCの残留限度値を設けるとしています。

 今後、市場流通品の監視指導の徹底はどのような対策をして行われるのでしょうか、御答弁をお願いいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 CBDは、THCとは異なりまして、有害な精神作用を有しない成分でございます。麻薬として規制されるものではないことから、改正法案の成立後も、CBD製品は、事業者の責任において必要な検査を受けて、THCが残留限度値以下であることを確認、担保することといたしております。

 その上で、市場に流通するCBD製品の安全性を担保するため、行政といたしましては、CBD製品を買い上げて、THCの残留限度値を満たしているかの調査を行うことといたしております。仮に限度値を超える製品が見つかった場合には、事業者に対して製品の回収等の指示を行うことといたしております。

 本年八月に策定しました第六次薬物乱用防止五か年戦略におきましても、CBD製品の買上げ調査につきましては厚生労働省が取り組むことといたしております。

 改正法案成立後も、引き続きCBD製品の安全性確保を図ってまいりたいと考えております。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、最近、大麻は、更に副作用や依存性がある覚醒剤などにつなげる、ゲートウェードラッグと呼ばれております。覚醒剤等に比べ、大麻事犯の検挙者は高い水準で推移しております。また、検挙者の年齢は、先ほどもお話がございましたけれども、三十歳未満が七割を占めています。

 若者への大麻が広がっている要因をどのように考えられておられますでしょうか。

 また、これまでに薬物犯罪の若年化が進んでいる背景には、スマートフォンとまたSNSの普及により、誰でもどこでも簡単に危険な違法薬物の売買が行えてしまう現状があると思っております。

 薬物乱用防止対策の強化と同時に、薬物犯罪の入口となっているSNSの実態調査及び対策が必要と考えますが、御見解をお伺いをいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、若年層を中心とした大麻の乱用拡大が著しく、また、SNSを悪用したサイバー空間を利用した薬物密売が行われていると承知をしております。

 こうした若者による大麻の乱用拡大は、大麻に有害性はないといった情報がインターネット上で流布していること、SNSの普及による秘匿性の高いメッセージアプリが悪用されていること等によりまして薬物の購入が容易となっていることが要因の一つとなっていると考えられるところでございます。

 こういった現状に鑑みまして、これまで麻薬取締部におきましては、インターネット上の薬物密売広告の監視や、SNSによる薬物犯罪への悪用の実態等を調査分析してきたところでございます。さらに、本年四月には麻薬取締部にサイバー捜査課を設置をいたしまして、こうした調査分析に加えまして、サイバー空間を利用した薬物密売への取締りを強化しているところでございます。

福重委員 しっかりとした対応をお願いしたいと思います。

 次に、危険ドラッグは、医薬品医療機器法に基づく販売停止命令の結果、二〇一五年七月までに販売はゼロになったというふうに認識をしております。しかし、最近、大麻の有害物質の構造を一部変えた成分などを含む危険ドラッグの健康被害が複数報告されていると聞いております。厚労省は、危険ドラッグの販売店が約三百店確認されたと明らかにされております。危険ドラッグによる健康被害も相次いでいると報道で聞いております。

 先頃、先ほども答弁があったかもしれませんけれども、厚労省や警察庁など関係機関では対策会議が開催されました。早急な対策が必要と考えますが、御見解をお願いいたします。

城政府参考人 危険ドラッグによる健康被害が相次いで報告されたことを受けまして、本年七月に、麻薬取締部等が健康被害を発生させた販売店舗に対し立入検査等を実施するとともに、危険ドラッグに含まれる成分を医薬品医療機器等法に基づく指定薬物として指定をしたところでございます。

 また、健康被害事例を踏まえまして、本年九月には、捜査機関を含めた関係省庁で危険ドラッグ対策会議を開催をいたしまして、現在流行するタイプの危険ドラッグについて、包括指定も含めた迅速な指定、危険ドラッグ販売店舗への立入検査、検査命令、販売等停止命令の発動など、関係機関と連携した取締りの強化などの危険ドラッグ対策強化に向けた取組について確認をいたしたところでございます。

 厚生労働省としましても、危険ドラッグ対策会議で確認された内容を踏まえまして、関係省庁と連携をして、必要な対策を速やかに講じてまいりたいと考えております。

福重委員 私、衆議院議員になる前、十八年間、群馬で県会議員をしていたんですけれども、やはりそのときも、こういう今のような地道な取組によって、危険ドラッグを若者から遠ざけるために徹底した取組が行われておりました。しっかりとした対応をよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入ります。

 少し古いデータになりますけれども、総務省消防庁が二〇一四年に発表した、危険ドラッグが原因と見られる全国の救急搬送者数が、二〇〇九年一月から二〇一四年六月の五年半で四千四百六十九人に上ったとあります。また、この調査期間の五年半の間で、緊急搬送がゼロであった都道府県は一県もありませんでした。

 薬物汚染の全国拡大の要因に、先ほども言いましたけれども、スマートフォンの普及やインターネット販売が活発化したことが挙げられていますが、現在は、更にSNSが普及し、当時とは比較にならないほどの情報拡散力があると思います。

 現在の危険ドラッグ被害拡大の実態を把握するためにも早急な調査が必要と考えますが、危険ドラッグが原因と見られる緊急搬送の状況や件数についてお伺いをいたします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました危険ドラッグによるものと疑われる救急搬送人員数の調査、これにつきましては、平成二十六年に、救急隊が出動ごとに作成しております救急活動記録に基づいて調査を行ったものでございます。

 救急活動記録の記載方法には救急隊や地域による差がございますけれども、当時は、救急隊が危険ドラッグに関係するというふうに認識したものにつきましてはそのように記録に記載したというようなことがございましたので、活動記録上のドラッグとかあるいはハーブとかこういったキーワードを検索いたしまして件数を集計して、参考値として公表したものでございます。

 そして、この調査は、危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策が平成二十六年に当時策定をされたタイミングでございまして、このときに緊急的に私どもとしても実施したものでございますので、その後の政府全体の取組の進捗などを踏まえまして、それ以降の調査は行っていないところでございます。

福重委員 調査は行っていないということであれば、しっかりとまた実態を調査していただきたいなというふうに思います。

 私の手元に、二〇一四年の九月二十日の我が党の公明新聞の一面に、四千四百六十九人、過去五年半で、緊急搬送、これは消防庁が初調査というような記事がございまして、ここに、水谷先生から、今回の調査結果によって、今まで薬物汚染問題を人ごとと思っていた自治体も動かざるを得なくなってきている、自分の市町村にも危険ドラッグが入り込んでいるという前提で、薬物の撲滅を後押ししてほしいというようなコメントが載っておりました。

 しっかりと実態を調査することが必要だと思いますので、是非、救急搬送の実態調査、もう一度行っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、危険ドラッグが販売されていることは前の質問でも述べました。危険ドラッグは、化学構造を僅かに変えて規制を逃れ、製造されている可能性もあるのではないかと個人的に考えております。

 夜回り先生こと水谷修氏は、危険ドラッグによる死亡事例や自動車事故も発生しており、早急に国家的な取締り強化が求められる、学校でも危険ドラッグの恐ろしさ、法律上の問題を徹底し、子供たち自ら危険ドラッグはノーと言える意識づくりをしなければならないと述べられております。

 危険性を広く伝え、まず手を出さない取組が重要であります。厚労省の取組について、御答弁をお願いいたします。

城政府参考人 厚生労働省におきましては、青少年の発達段階に応じた薬物乱用防止啓発読本や、国民的啓発運動に合わせて作成しているパンフレットやリーフレットに危険ドラッグについての情報を記載しているところでございます。また、薬物乱用防止のためのフェイスブックやXを活用して情報を発信をいたしておりますが、危険ドラッグについても機会を捉えて発信を行っているところでございます。

 さらに、小学校、中学校、高等学校等の要請に応じまして、薬物乱用防止教室等の講師を派遣しております。その際に使用している資料でも危険ドラッグについて触れておりまして、薬物乱用防止指導員などへの研修でも、危険ドラッグの特徴などについて研修を実施しているところであります。

 今般の危険ドラッグ乱用の再燃を受けまして、危険ドラッグに対する注意喚起について、より積極的に行ってまいりたいと考えております。

福重委員 先日、党の会合において水谷修先生を招きまして、若者のオーバードーズ問題について講演を聞く機会がありました。市販薬を過剰に摂取し、あるいは複数の市販薬を摂取することによる効果まで開示しているものもあるとお聞きをいたしました。もちろん心身に悪影響があることは言うまでもありませんけれども、水谷先生は、オーバードーズを繰り返す青少年は、一時的にでも孤立感や絶望感から逃れる手段としてオーバードーズを行っていると指摘されました。

 その上で、多くの乱用者がネットで市販薬を入手しているため、対象となる薬のネット通販を規制すべきだとし、現在、当事者や親が相談できる窓口について、各都道府県に設置はされておりますけれども、更に幅広く周知徹底する必要があると思います。厚労省の御見解をお伺いいたします。

城政府参考人 乱用等のおそれのある医薬品の販売方法につきましては、現在、有識者で構成される検討会におきまして検討いたしているところでございます。

 一般的なインターネット販売は、対面と異なりまして、購入者の状況把握や必要な支援へつなぐといった対応が困難な面がありますことから、検討会では、インターネット販売も含めまして、医薬品の販売ルールの見直しについて議論をしているところでございます。

 また、市販薬の乱用に悩む方やその御家族の方からの相談につきましては、全国の精神保健福祉センターや各都道府県の薬務課等において対応しているところでございます。

 厚生労働省では、こうした相談窓口について、ホームページに掲載をするとともに、啓発資材を作成して周知を行っているところであります。今後更に、一般用医薬品の乱用防止に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

福重委員 どうもありがとうございました。

 大麻や危険ドラッグ、しっかりと情報が国民に伝わるということが大事でございますので、しっかりとしたお取組をお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田畑委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

田畑委員長 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

田畑委員長 引き続き、内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学法学部教授太田達也君、地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立精神医療センター副院長小林桜児君、Asabis株式会社代表取締役中澤亮太君、公益社団法人日本てんかん協会理事・事務局長田所裕二君、一般社団法人ARTS代表理事田中紀子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をくださりまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず太田参考人にお願いいたします。

太田参考人 慶應義塾大学の太田達也と申します。

 本日、このような意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私は、刑事政策と被害者学を専攻領域とし、犯罪者に対する刑罰制度や、仮釈放、保護観察といった処遇制度のほか、犯罪被害者の支援制度を法制度の観点から研究する一方、法務省や警察庁、厚生労働省、地方自治体における立法や施策の検討にも関わってきております。本日は、そうした研究や立法作業の経験を踏まえて、若干の意見を申し述べさせていただきます。

 近年、大麻取締法違反による検挙人員が急増し、特に少年や二十代といった若者の検挙人員の増加が著しいことから、若年層に大麻乱用が蔓延し始めていることがうかがえます。政府の調査によりますと、若者の大麻の危険性に対する認識は極めて低く、これには、大麻は海外でも合法化している国があるから健康に害がないとか、日本では大麻の使用は禁止されていないといった誤った情報がSNSなどインターネット上で流布されていることが背景にあります。

 しかし、カナダやアメリカの二十三州のように嗜好用大麻の合法化を行った国や州でも、大麻が安全であるから合法化したわけでは全くありません。むしろその逆で、大麻が有害であることを前提としているからこそ、厳しい統制下で流通させることで若者に大麻を入手させないようにするための施策として行われたものであります。

 大麻など違法薬物の生涯経験率が極めて低い日本と異なり、これらの国や州では、若者の間での大麻の乱用が極めて深刻になっています。そこで、やむを得ず、嗜好用大麻の一部を合法化し、大麻の流通や使用を一定の制限下で認め、若者の大麻乱用を防ごうというのですが、近年の薬物乱用の調査結果を見ても、こうした施策が成功しているとはとても思えません。

 しかも、大麻が自由化されたわけでは全くなく、販売や所持、使用場所、栽培等について厳しい規制と違反に対する処罰規定があり、一定の年齢以下の若者の所持は犯罪として禁止され、若者への販売や譲渡しも、例えばカナダでは十四年以下の拘禁刑とされるなど、犯罪とされています。これが、日本で大麻の合法化と言われる国の実態です。

 大麻の有害性に関する検証が十分でないとする医学的な見解もありますが、これは、大麻の使用経験者の大半が他の薬物も乱用しているため、大麻単独の有害性を検証し難いという事情があるようでありますが、そのこと自体、大麻の使用が他の薬物乱用につながるゲートウェードラッグとしての問題性を物語っているようにも思われます。

 さらに、法務省が国立精神・神経医療研究センターと共同で行った調査によりますと、覚醒剤事犯の受刑者が最初に乱用した薬物が大麻である者が多いとの結果が出ています。日本の場合、覚醒剤取締法違反の初犯者は全部執行猶予となる者がほとんどであるため、刑事施設に収容されている覚醒剤の受刑者は、薬物の再乱用に至った、薬物依存が相当深刻な者でありますが、その多くが覚醒剤の乱用を始める前に大麻を乱用していたという調査結果は、無視するには余りにも深刻な事実であると思われます。

 だからこそ、我が国でも、大麻の輸出入や施用、受施用を全面的に禁止し、大麻の所持、栽培、譲受け、譲渡し、研究のための使用も免許を受けた大麻取扱者でなければできないこととされてきたのであります。従来の大麻取締法にはいわゆる使用罪はありませんが、これは、同法が大麻草の栽培という農業目的のために立法されたことが関係しているものと考えております。

 研究者の間でもほとんど知られておりませんが、戦後の一時期、大麻の使用罪があった時期がございます。昭和二十一年の麻薬取締規則では、大麻草は麻薬とされ、麻薬取扱者以外、製剤、販売等のほか、使用が犯罪として禁じられ、刑罰も法定されていました。しかし、同規則によって大麻の繊維を取る農業に支障が出たことから、大麻を他の薬物から独立させた大麻取締規則が制定され、さらに、その後の大麻取締法においても、使用自体を禁止する規定が置かれなかったため、使用罪が抜け落ちてしまいました。その理由は、大麻取締法の立法経緯を見る限り、当時、大麻の乱用という問題もその認識もなく、また大麻の医学的利用もなかった日本が、農業としての大麻草の栽培と管理を規制するために制定したという事情が関係しているものと思われます。

 当時の国会での立法趣旨説明や答弁からも、大麻草は麻薬と同様な害悪を持っているが、他の麻薬と違って、取締りの対象は医療関係者ではなく農業従事者であることから、別個の法律を作って免許制の下で不正取引や不正使用を取り締まればよいという発想がうかがえます。

 しかし、使用罪がないからといって、使用が認められているわけでは決してありません。大麻の使用の前にはほとんどと言ってよいほど所持や譲受けという行為があるわけであり、大麻を所持することさえも禁止し、人への譲渡しも譲受けも犯罪として処罰の対象としているのは、ほかならぬ大麻の使用を防ぐためだからであります。所持罪や譲渡し罪、譲受け罪を設けることによって使用を禁止してきていると言っても過言ではありません。日本では大麻の使用に関する罰則がないことから、大麻の使用が法的に許されているという理解は、正確ではなく、危険でもあります。

 近年の大麻の乱用が深刻な若者の間に、大麻の使用罪がないのは使用が許されているからであるかのような誤解があり、それが大麻の乱用に拍車をかけている面があるとすれば、こういった誤った認識を正す上でもきちんと法規制をすべきであります。大麻とその有害成分であるTHC、すなわちテトラヒドロカンナビノールを麻薬に指定することで、所持などとともに施用も禁止の対象であることを立法で示すことには、薬物乱用の防止という点でも重要であると考えます。

 また、施用罪がないことで、違法薬物検査で大麻の陽性反応が出てもそれだけでは検挙ができないなど、僅かではありますが、違法薬物の規制に抜け穴が残ってしまっています。

 さらに、近年は、大麻から抽出した成分を濃縮したTHC濃度が高い大麻リキッドやワックスが市場に出回り、若者の間でも乱用されるようになっています。こうした、大麻草の植物としての特性を残していない有害性の格段に高い大麻製品の施用も併せて規制し、乱用につながらないようにする必要が高くなっています。

 そもそも、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノールは、化学的に合成されたものは、これまでも既に麻薬及び向精神薬取締法において麻薬として規制され、所持、譲渡し、譲受け、施用が全て犯罪として規制されています。それと化学的に全く同じ大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノールや、それを含む大麻を同様に規制しないというのは、合理性を欠きます。

 大麻の使用を犯罪化すると、大麻に対する社会の偏見や依存者の差別が助長され、大麻の乱用者を治療から遠ざけてしまうことを危惧する向きがあります。しかし、さきに述べたように、これまでも大麻の所持や譲受けなどが全て犯罪とされてきている以上、事は使用罪の有無に限りません。それでは、大麻の所持や譲受けも、さらには覚醒剤やヘロインなどの所持や使用も、薬物に対する偏見や差別解消のために全て合法化すべきということになるのでしょうか。

 薬物依存のある人の治療の促進や、差別や偏見の解消は犯罪化とは別の問題であり、安心して治療を受けられる環境の整備や、児童生徒等に対する適切な薬物乱用防止教育、それに国民に対する正しい啓発と広報において取り組まなければならない問題であると考えます。

 さらに、薬物の乱用に至る背景には、乱用者が、小児期逆境体験を生むような悪質な家庭環境、不良交友、孤立、孤独、社会的差別、偏見、DV、いじめ、性暴力等の問題を抱えている場合があります。そうした者にとって違法薬物の使用は逆境から逃れるための苦しい選択であり、誰にも相談できずに孤立し、苦しんでいるという深刻な現実があります。

 だとすれば、有害性の高い薬物の所持や施用等は規制した上で、薬物乱用に対する治療環境を整備するとともに、個人が抱えるそうした逆境や問題に対して適切に対応できる体制づくりと、その広報、教育が重要であると考えます。

 違法薬物を全て合法化すれば問題が解決するかのような見解は、正鵠を失したものだと言わざるを得ません。

 今回の、大麻の有害成分であるTHCとそれを含む大麻を麻薬に指定し、施用も含めて犯罪として禁止するとともに、大麻から抽出した成分を用いた医薬品を活用することができる道を開き、大麻取締法は大麻草の栽培や研究に特化した法律として合理的な規制の下での栽培を認め、法律に反した栽培や流通に対して刑事規制を加える大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正は、正当かつ合理的なものであると考えます。

 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

田畑委員長 ありがとうございました。

 次に、小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 本日は、貴重な機会を与えていただいて、ありがとうございます。私は、神奈川県立精神医療センターから来ました、精神科医の小林と申します。

 私は、精神科医になって二十三年になるんですが、そのうち四年間を除いて十九年間ずっと依存症の臨床に従事してきた、精神科医の中では比較的変わり種と言われております。そういった意味では、本当に依存症の臨床現場で今どういった状況なのかということを医師の立場から皆様にお話しさせていただければと思います。

 先ほどの太田参考人からももちろんお話がありましたけれども、大麻の検挙者数は本当に年々増えておりまして、私が精神科医になったばかりの頃で依存症の専門病院に赴任した際には、大麻だけの依存症の患者さんというのはほとんどいなかった。それが、ここ五年ぐらい、本当に大麻だけの依存症の患者さんで受診する方が非常に増えてきているんですね。

 皆さん御存じのように、統計を見れば分かるんですが、覚醒剤の検挙者数は逆にどんどん減っていて、直近のデータですと、年間で覚醒剤が六千人ぐらい、大麻が五千人ですので、恐らく、数年以内にはもしかすると、検挙者数だけを見れば、大麻がもう薬物のトップになってしまうのではないかという、私が最初に精神科医になった頃にはちょっとあり得ない事態が現在進行中ではないかなというのを、ちょっと現場では危惧しております。

 これはあくまで検挙者の話なんですけれども、特に、その検挙者数の中でも年齢層を見てみますと、若年の三十歳未満の検挙者数が約七割を占めているというところが覚醒剤とは非常に対照的で、覚醒剤は年々高齢化しているんですね。だから、昔乱用を始めた人がそのまま高齢化しているんですけれども、大麻は若い人がやはり使用して検挙されている。

 私は医師の立場から様々な医学論文ももちろんチェックしているんですけれども、世界的な海外のデータを見ましても、やはり、若年から、十代、二十代から週に一回とか毎日とか習慣的に大麻を使用していると、将来的に、例えば依存症を発症する可能性、そういった若年の習慣使用者の三分の一が依存症を発症するとか、あるいは、将来、統合失調症を発症するリスクが三倍になるとか、うつ病も一・三倍、自殺のリスクも三倍。あるいは、若年から大麻を習慣的に吸い始めると、四十五歳の時点でIQ検査を比較してみると、大麻を使用する前のIQと比べて四十五歳になったときのIQの点数が、全く大麻を使用しなかった人と比べて平均で五・五点下がっている、IQの低下が中年期に見られるというデータもございます。実際に脳の画像を見ても、記憶をつかさどる海馬が萎縮しているという論文もあります。

 そういった意味で、大麻が医学的に危険性があるということは様々な権威のある医学論文にも書かれていますが、残念ながら、もちろん、大麻の使用罪に反対される方々に関しては、そういった医学的なエビデンスに疑義を挟む方もいらっしゃることは当然なんですけれども、少なくとも、一般的に権威のあると言われている医学論文でそこまで書かれているということであれば、我々もそのリスクはやはり無視できないというふうに考えています。

 また、これはアメリカのデータなんですけれども、大麻が合法化されている州では交通事故の死者数が一六%増加しているというデータもございます。これは、アルコールと同じように大麻もやはり、大麻を吸った状態で運転すると、いわば飲酒運転と同じようなリスクがあるんだということがそこからお分かりいただけるかなと思います。

 では、なぜ欧米では、こういった合法化とか、嗜好に関しては違法にしないという政策が取られているかといいますと、もうデータを見れば一目瞭然で、生涯経験率が、アメリカの場合、四四%とか、ドイツもたしか二三%ぐらいだと思いますけれども、フランスも四〇%ぐらい。だから、欧米では、ほぼ二〇%から四〇%の国民が生涯のうちに一回は大麻を吸ったことがあるよという、そういう国なんですね。

 では、比較して日本はどれだけか、日本国民で一度でも大麻を吸ったことがある人がどれだけいるかというと、一・四%なんですよ。ほぼ二十倍から四十倍の差があるんですね。

 さらにまた、若年で考えてみますと、高校生では、アメリカの高校生は大体二七%ぐらい。でも、日本だと大体〇・三とかそんなものですね。だから、アメリカの高校生だと、高校に行って、四人に一人が、俺は大麻を吸ったことがあるよという人たちなわけですね。

 そういう国と日本で、ほとんど大麻を吸ったことがあるということがない国とが果たして本当に同じ政策を取るべきなのかということは、医師の立場からでは非常に疑問に感じます。

 先ほど、大麻がうつのリスクがあると言いました。アメリカのうつ病に費やしている医療費というのは十四兆円。私、調べてみたら、厚労省のデータを見ると、日本でうつ病に費やしている医療費というのは三千五百億円。約四十倍の違いがあります。アメリカと日本の人口の差はせいぜい二倍ぐらいですよね。それぐらいめちゃめちゃアメリカというのは精神障害も持っているし、薬物依存研究部という巨大な組織がアメリカにあるんですけれども、日本の薬物依存研究部との規模の違いを調べていただくと、日本は当然、千人なんという職員はいませんので、アメリカの問題の大きさというのはそこでお分かりいただけるかと思います。

 当院のデータを皆さんに御紹介しますと、初診で大麻だけで来る患者さんは結構いらっしゃるんですけれども、大体一回から二回で受診を終わっちゃう人が多いんですね。

 なぜかといいますと、先ほどお話ししましたように、若年から習慣的に使用すると、その後、十年、二十年と使っているうちに統合失調症とかうつ病とか様々なリスクがあるとお話ししましたけれども、若いうちはそんなに害がないんですよ。これが、大麻はそんなに害がないと言っている方々の確かに主張のポイントになっておりまして、すぐに害が出るわけじゃないんです。

 だけれども、それを習慣的に使っているうちに、その後に害が出て、その頃にはもう手遅れなんですね。ああ、やっぱりやめておけばよかったと言っても、十年後、二十年後に、戻ることはできません。

 そういった意味で、私たち、何とか、若い人が親御さんに連れてこられて病院に来るわけですけれども、本人は何も困っていない。むしろ、大麻によって、自分はこんなに不眠に苦しんでいるのに、大麻のおかげで眠れるようになった、自分はいろいろな職場のプレッシャーがあるのに、大麻のリラックス効果によって職場でリラックスして仕事ができるようになった、そういった意味で大麻のいい面はいっぱいあるんですけれども、大麻の害なんて別にないよ、別に今、幻聴も何も聞こえないし、別にうつも全然ないし、むしろ今、自分から大麻を奪われる方がはるかにうつになってつらいんだ、そういう若者はいっぱいいるわけです。

 そういう方に対して、私たち医者が、正攻法で、いや、二十年後、三十年後にあなたに害があるからやめるべきだと言ったところで、そんなの、治療は必要ないよと言われて、お断りされちゃいます。ですので、二人に一人の初診の患者さんが、結局、医療の現場から今いなくなってしまう現状があるわけですね。

 そういった意味で、彼らの動機づけ、やっぱり薬物はやめた方がよさそうだなというふうに思ってもらうためには、これは別に大麻に限らず、アルコール、薬物、ギャンブル、何でもそうなんですけれども、何かしらそれに伴って困ったことがなければ、そして、メリットとデメリットを自分の頭の中で考えて、これはいまいちメリットよりもデメリットが上回るなというふうな考え方にならなければ、行動を変えようというふうには思わないんですね。

 皆様も、何か自分でやめた方がいい習慣というのをお持ちかもしれないんですけれども、やはり、何かデメリットを言われないと、例えば健康診断で何か太り過ぎですよと言われたから少しダイエットをしようかと皆さんも当然お考えになると思うんですけれども、何も問題がなければ、わざわざ自分のそれまでの習慣を変えようとは思わないはずです。

 そういった意味で、私は、大麻の使用罪が依存症を治すと主張するつもりは全くございません。

 むしろ、先ほど太田参考人からもお話がありましたけれども、当院のデータでも、大体、薬物依存症の患者さんの九割以上が十五歳までに何らかの、小児期逆境体験と言われる虐待やネグレクトや、あるいは教育虐待とか、恵まれた家庭でも非常に受験のプレッシャーにさらされているとか、家庭内で心理的に孤立していて自分の気持ちを分かってくれる人がいないとか、そういった悩みを平均で大体三、四個抱えているんですね。そういったしんどい状況を生き延びるために薬物の力をかりて何とか生き延びているという患者さんが多い中で、実際それによって短期的に救われているんだったら、やめる理由がないじゃないですか。

 でも、十年後、二十年後、日本の将来を担う若者たちがそのときになっていろいろな精神障害を発症したときに我々は手の打ちようがないわけですから、早い段階でこれはやめた方がいいかもしれないと思ってもらうための動機づけの一助として使用罪は私は役に立つと思いますし、実際に私は多くの覚醒剤の患者さんや大麻の患者さんを診ていますけれども、やはり、そういった司法対応になったことがきっかけに、もう二度とあんな思いはしたくないからとか、ああいうリスクがあるんだったらちょっとやめておこうかなと思って病院に来ましたという人はいるんですね。実際に、そういった司法対応がなければなかなかやめられなかった、そういった患者さんも私は診てきていますので。

 何度も言いますけれども、彼らを犯罪者としてつるし上げて、マスコミの前で土下座させることが治療に役立つとはこれっぽっちも思っていません。それは絶対にやめるべきだと思います。そういった意味では、まだまだ日本はアメリカと比べるとやはり牧歌的で非常に乱用者が少ないので、そういったまだまだ古い見方が蔓延しているんだと思うんですが、これからもっと薬物依存症の背景にあるそういった子供から抱えた生きづらさについてきちんと広報をして、マスコミの方々も、これは犯罪者なんじゃなくて、リハビリが必要な精神障害者なんだというふうな観点を強調した上で、それでも私は、司法というおせっかいが患者さんの回復に役立つというふうに思っています。

 これまでの地域の共同体が崩壊して、個人社会が今蔓延している中、司法がむしろ、かつての長屋の隣のおじちゃん、おばちゃんが果たしていたようなおせっかいの役割を果たす面は大きくなっているというふうに思います。それは様々な保健、福祉、医療と同じことなんですけれども。

 そういった意味で、医療の現場ではなかなか大麻に関してやめたいと思う若者が少ない、そういう現状がある。彼らに早くやめてもらうためにはそういった司法というプレッシャーも一部役に立つことがある。それだけではありません、もちろん早い段階での教育も必要なんですが、そういった側面もあるということを皆様にお伝えして、私のお話を終わりにしたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

田畑委員長 ありがとうございました。

 次に、中澤参考人にお願いいたします。

中澤参考人 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。Asabis株式会社代表取締役の中澤と申します。

 私どもは、CBDに関するコミュニティーを二〇二〇年頃から運営をしておりまして、現在は、そのコミュニティーを核として、CBD、ヘンプに関する展示会を主催したりだとか、メディア、プラットフォームの運営をしているものでございます。特定のCBD製品、ヘンプ製品を作ったり販売したりということをしているわけではないんですけれども、インフラとして、CBD、ヘンプ産業全体を盛り上げるような、事業者の助けになったり消費者の助けになるような仕組みの構築を目指して事業を推進している会社でございます。

 先週には、CBDジャーニー・アンド・カナコンと題しまして、渋谷駅直結の会場にて、展示会とカンファレンスが一体になったようなイベントを主催いたしまして、約百社以上の企業の出展や協賛、各国大使館との連携、そして二千六百名ほどの来場者の方々にお越しいただきまして、法改正が直前に迫る中での熱気にあふれたイベントとなりました。

 今回、法改正について思うところを話してくれと二日ほど前に急遽御依頼いただきまして、私どものような事業者かつプラットフォームのような目線から、何点かお話しさせていただければなというふうに思っております。

 まず、前提として、CBDについて簡単に御説明させていただきますと、大麻草に含まれるカンナビジオールという成分の略称でございまして、従前から欧米では医薬品、食品として幅広く活用されているところでございます。世界保健機構、WHOの報告としても、依存性や乱用の可能性が低いということで、国際的な薬物条約の規制対象外であることが確認されております。日本においても、数年ほど前から、健康食品業界や美容業界を始めとして注目を集め始めておりまして、ドラッグストアやコスメショップ等でも一般に流通しているものでございます。現在、CBDオイル、ドリンク、チョコレート、コスメといったように様々なラインナップの商品が日々生まれているような状況でございます。

 今回の法改正全般に関しまして、CBD産業に興味を持つ大手企業、海外企業の方々は、おおむねポジティブな動きとして捉えている方々が多いというふうに認識しております。

 これまでは、日本特有の部位規制、つまり成熟した茎や種から取ったCBDのみを認める、逆に、葉っぱ、花から取ったようなCBDは認めないというような規制があったりだとか、あと、THCの基準値が設定されていない、つまり、〇・何%まではオーケーというようなカットオフ値、ゼロ基準というのが設定されていないというような、ルールが若干曖昧で、国際基準からずれたような状況がございました。そうしたところで、どうしても参入のリスクを排除し切れないということで、大手企業の方々も、CBD産業の参入に二の足を踏んでいたりだとか、海外企業に関しましても、日本向けの特別なカスタマイズに対応できるような企業しか参入ができないような状況でございました。

 今後、法改正後にその辺りの基準が明確になることによって、投資や参入や研究を見据えているというような声もよく伺うところでございます。

 先日の私どもの主催した展示会におきましても、スイス、リトアニア、アメリカ、タイ、中国等の日本進出前の企業も含めまして、数多くの国外企業から出展をいただきました。日本市場への進出に大変意欲的でございましたし、出展企業だけでなくて来場者の方々の中にも、大手企業ですとか海外企業の方々も多数いらっしゃったというような状況でございます。

 日本の現在のCBD市場は、先ほど申し上げたような規制の状況のため、大きく強力なプレーヤーがいるという状況ではなくて、割と横並びで中小零細企業が多くひしめいているような状況になっております。今回の法改正を受けて、大手企業、強力な海外企業というのが参入をしてくることで、市場全体の底上げですとか、盛り上がり、健全化というのを後押しするものであるというふうに考えております。

 また、部位規制がなくなるという点に関しましては、今後、CBD原料の生産コストが低くなる可能性がありましたり、もしかすると大麻草の形状を有するものとして分類されると駄目になるかもしれないんですけれども、例えば、葉っぱや花からできたような大麻草のお茶のような新たなプロダクトラインナップの可能性の幅も広がってくるのではないかというふうに期待をしております。

 また、THCの基準値設定に関しましては、こちら、具体的な数値は恐らくこれから議論されて定められていくというふうに認識しておりますけれども、私どもプラットフォーム的な立場としては、欧米で医療大麻としても活用されているTHCという成分に関して、一律で有害なものとして完全に禁止するというのではなくて、きちんとしたルールの下で活用する方向を模索することが重要なのではないかというふうに考えております。

 微量のTHCに関しては、特に幻覚作用もなく乱用のおそれがないという論文もありますので、今後、政令で定めるTHCの閾値を、日本のガラパゴス的な基準にするのではなくて、欧米の国際基準とそごのないようなものにすることで、日本が今後、CBD、ヘンプ領域においてグローバルスタンダードに追いついて、医療、研究、栽培、経済等の様々な面での可能性を伸ばしていくことにつながるのではないかというふうに考えております。

 また、今回の法改正で、エピディオレックスを中心とした大麻草から製造された医薬品が承認されるということで、それにより助けられる患者さんも多数いらっしゃると思いますので、大変喜ばしいことかと思っております。

 一方で、食品として現在流通しているCBDに関しまして、矢野経済研究所さんで、二〇二五年には八百二十九億円の市場になるという予測もありますように、市場の成長率としても大きいものを見せておりますし、かつ、現在、ドラッグストアやデパート等でも広く普及しているものでございますので、これらの状況ですとかCBDの安全性というところを考慮いただいて、医薬品として全面的に規制するのではなくて、食品としても流通が許されるような状況を、事業者の目線としては望んでいるところでございます。

 また、これにつきましても、今後、政令やガイドラインの中で議論されていく点かもしれませんけれども、現在の日本の市場に出回っているCBD製品の成分の表示、これが正しいかどうか怪しいという問題が発生していると認識しております、一部ですね。

 CBDは、第三者検査機関が分析をして、その結果をCOAと呼ばれる、サーティフィケート・オブ・アナリシスの略なんですけれども、成分分析表を、原料の段階であったり製品製造の段階、それぞれの段階において出すのが望ましいとされておりますけれども、それらを偽造したりだとか、あと、複数の別の製造ロットで使い回したりしているところも一部伺います。

 現在、様々なCBD関連の協会が生まれておりますけれども、それぞれで独自の認証制度を実施しているものの、まだ業界全体のスタンダードとなるようなルールが生まれていないような状況だと認識しております。誤解されやすい成分や業界であるからこそ、原料や製品の安全性を担保するための共通のスタンダードを関係者一同で議論した上で定めていくことが求められるのではないかというふうに考えております。

 また、これらの土台となる成分検査についてですけれども、現状の日本の市場が黎明期であるということもあって、国内の検査体制や人材だけでは限界が現状ではあるのかなというふうに認識しております。そのため、海外の最先端のラボ等からの協力や知見も取り入れながら、検査体制の運用ですとか、ルールや基準を設定していくことが重要であるというふうに考えております。

 私自身、こうした課題意識から、アメリカのラボと連携を取っておりまして、日本進出の支援をしているところなんですけれども、彼らが主張するには、悪貨が良貨を駆逐するというような状況がアメリカでは発生しておりまして、いわゆる成分分析表の製造工場と言われてしまうような、ある種クライアントの思うとおりに検査結果を安い価格で出してしまうというような検査機関も一部横行してしまっているということでございます。また、用語的に少し専門的になってしまうんですけれども、GC・MSという専用の分析機器で実施しないと正確な検査ができないというようなケースに関しましても、一律でHPLCという機器のみで検査をしてしまっているというような検査機関も多い状況というふうに伺っております。

 こうしたアメリカと同じ失敗を日本で繰り返すべきではないというふうに考えております。検査のテクノロジーも日々進化していくものでございますので、ルールについてはアップデートしていけるように一定の柔軟性を持たせるべきだというふうに思っておりますけれども、品質の高い検査ラボが駆逐されて市場全体がグレーな製品であふれてしまうことのないように、一定の基準やガイドラインを設定していくことが重要であるというふうに考えております。

 まとめますと、今回の法改正につきまして、私どもプラットフォーム的な事業者の立場としては、関係各所の御尽力によって、おおむねポジティブで、あるべき方向に進んでいるというふうに認識しております。一方で、今後議論が進んでいく運用やガイドラインの部分につきまして、必要以上の厳しい規制ですとか、あるいはその逆の全くルールを定めないというようなことが起きないように、健全に産業が発展していくような議論が進んでいくことを望んでおります。

 以上でございます。(拍手)

田畑委員長 ありがとうございました。

 次に、田所参考人にお願いいたします。

田所参考人 公益社団法人日本てんかん協会の田所と申します。

 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、本日は、大麻全般ですとか、今お話がありましたCBD全般のお話ということではなくて、今お手元に資料を配っていただいていると思いますけれども、抗てんかん薬というかなり狭い範囲の話になりますけれども、今回の大麻取締法の改正に関連する薬ということで、限定の発言でありますけれども、時間を少しいただきます。

 資料のタイトルに書きましたエピディオレックス、商品名なんですけれども、この薬を何とか日本でも使えるようにしてもらいたいということで活動してきました。

 二〇一八年に、私どもの国際組織、国際てんかん協会というところから、アメリカで新しい難治てんかんの薬が発売されたという情報がありまして、その情報を持って厚生労働省に相談をしたところ、これには大麻成分が含まれているので現状では治験も難しいのではないかという話をいただきました。

 そこで、資料にありますけれども、この薬の適応の対象になっているドラベ症候群というてんかんの中でも難治の領域があるんですけれども、その患者家族会と、私どもと常に活動しています日本てんかん学会、さらに日本小児神経学会、この四つの団体で何とかこの薬が使えるようにできないかということで、厚生労働省と協議を始めました。

 今回、この四団体の共通の思いとしては、最初に言いましたエピディオレックスを国内で使いたい、日本に生まれたことが不幸だということにはならないように、世界レベルのてんかん診療が日本で行われるようにと。ただ、この薬の中に大麻成分が含まれているために大麻取締法を見直してもらわないといけないという課題が出てきたということで、共通の行動目標としては、ドラッグラグを解消してもらおう、欧米やアジアで使われ始めていた薬を日本でも使いたいということと、難治てんかんの克服を進めていきたいということの二つの点で、四団体で協働活動を始めました。

 てんかんについて少し御説明しますと、てんかんは脳神経の病気でして、慢性の疾患です。何らかの理由で、脳のどこかで、電気の異常興奮といいますか、興奮が生まれることで、てんかん発作と言われる様々な症状、勝手に体が動いてしまうとか、いろいろなことを感じるとか、よく泡を吹いて倒れると言われていましたけれども、大きな発作としては、けいれんをして体が硬直して倒れてしまうみたいなものから、ぴくぴくと体を動かすような、様々な症状が出てくるんですけれども、そういった様々な症状、てんかん発作のある方々を総称して、てんかんといっているわけです。

 全世界的に大体人口比〇・八%ぐらいの有病率と言われていて、日本では約百万人、世界では、先ほどの私どもの国際組織では、五千万人の方がてんかんを有しているだろうと言われています。そのうちの約七割強ぐらいが現在の薬物療法中心で発作症状が軽減できる、残りの三割から二割五分ぐらいの方々が難治てんかん、今で言う薬物抵抗性てんかんということで、発作が最低でも年に一回、このドラベ症候群もちょうど出てきますけれども、日に何十回と起こすお子さんまでいるというような難治の方々が残されている。

 その難治の治療に関しても、日本では、二〇〇六年以降、大分、国際的な薬が認められるようになってきましたので、一時的にはドラッグラグの解消にもつながったところはありますけれども、まだまだ、お手元の資料で見ていただいても分かるように、六剤から七剤ぐらいの薬が日本では使われないという現状にあります。

 その中で、CBDと書かれている、カンナビジオールを主成分といいますか由来するエピディオレックスというのが今回アメリカで発売され、その後ヨーロッパ、アジアと広がってきていますので、日本でもそれが使えないかというような状況にあります。

 てんかん症候群という、先ほどの難治てんかんの種類ですけれども、お手元の資料を見ていただければ、一部ですけれども、厚労省のホームページから抜粋するだけでも、小児期を中心に慢性特定疾患の中にこれぐらいの種類がありまして、特に今回は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、さらに、結節性硬化症の中でてんかん発作を有する方々、トータルすると一万二千人ぐらい推定されるんですけれども、が対象になる薬ではないかということです。

 ドラベ症候群に関しては、資料を見ていただければと思いますけれども、一歳前ぐらいからの症状が多く出ていて、けいれんですとか様々な障害を伴うことが多いですし、一度発作が起こると、重積といって、発作が繰り返してしまうというリスクが高い病気です。急性脳症になったり突然死の対象になったりということで、ドラベ症候群の患者家族会の中だけでも年間に数名の方が亡くなってしまうというような現状にあります。

 さらに、薬をどれぐらい飲んでいるのかという、ドラベの中の調査をしてみても、二剤から多くて六剤ぐらいの薬を飲んでも発作が止まらない、平均的に三剤から四剤ぐらいを毎日飲み続けているという現状にあります。それでも、会員さんの調査をしていただくと、年間で、多い方ですと百回を超えるような発作が起きているようなお子さんたちがまだまだいて、現状では改善ができないので、新しい薬に期待をしているという現状があります。

 発作が起きないようにするためにということで新しい薬を求めているわけですけれども、その中で、CBDという、カンナビジオールを使うエピディオレックスがあるわけですけれども、これが二〇一八年に、先ほど言いました、アメリカで発売がされ、やっと学会等でもその効果等についての報告が今出始めています。まだまだ十分なデータが出てきてはいませんけれども、日本の学会の中でも、海外の報告を見ながら、この薬には大変期待は持っております。ただ、全く副作用がないわけでもないですし、依存的なものがどうなのかというのもこれからまだまだ情報が出てくるんだとは思いますけれども、現状では精神症状や依存性は少ないということで、てんかんに効果があると。一部、肝機能障害等の注意というのはありますけれども、そういった部分で大変期待している薬ではあります。

 ただ、不安を持っているのは、先ほどの中澤参考人の話でもありましたけれども、どうしてもCBDという言葉が独り歩きしていて、私たちはエピディオレックスという製剤を、医薬品を日本でということで活動しているんですけれども、CBD全般的な広まりを求めている方々に利用されているようなところがありまして、CBDの食品系のものにも、てんかんに効くよというようなうたい文句をされて、わらをもすがる思いの親御さんたちはそれに救いを求めてしまうというような実情も現在あります。

 その辺も厚労省に今相談をしながら、規制ができるのかどうかは分からないですけれども、紛らわしいことのないように、私たちはやはり薬を求めていくという活動を進めている点を十分にメディア等にも今お話をしているところです。

 よく、医療大麻の推進ですとか、CBD全般がてんかんにいいんだとかという情報は今出てきていますので、その辺りとは全く違いますよと、私たちは、海外で使われている薬を日本でも使えるように、難治で苦しんでいる子供たちを少しでも生活しやすいようにしていきたいということで求めています。

 経過としては、資料の後半の方にありますけれども、二度、厚生労働大臣宛てに、治験を進めてほしいということと、薬を使えるようにしてほしいということで、今回の法改正の中にも入れていただいているという状況です。

 まとめになりますけれども、基本的に私たちも、依存性など人体に影響のある、可能性のあるものについては、科学的な根拠が前提で、それがなければ使用制限されるべきであろうというのは基本的な部分では持っています。ただ、その中で、そういった成分であったとしても、治療効果が評価できるというものが国のルールの中で証明されたものであれば、医薬品として使われるということが保障されるのであれば、是非必要な人に届けてもらいたいというような思いでおります。

 他方、これからの課題になってくると思いますけれども、この薬が承認されたときに、販売される、処方されるというときに、ほかの発達障害ですとか抗精神病薬の一部のように、処方できるお医者さんですとか薬局に対する制限といいますか、多分、登録制みたいなものになると思うんですけれども、そういったものは今後この薬にも適用されてくるんだとは思うんですけれども、当然それは必要なことだとは思いますけれども、今のてんかんの診療現状を考えると、まだまだ専門の先生方が、首都圏とか大都市圏中心で、地方には少なかったりとかありますので、何らか運用上の柔軟な対応をしていただいて、どこどこの県に住んでいるのでこの薬は使えませんよ、責任ある方が、登録のお医者さんがいませんよというようなことのないような、どこに住んでいても安心して必要な薬が届けられるような運用というのも今後検討していっていただければありがたいかなと思います。

 限られた時間ですので、その後の方に、私どものてんかん協会の活動の内容などを記してありますので、またお時間のあるときに見ていただければと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

田畑委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 一般社団法人ARTS代表の田中紀子です。

 ARTSは、薬物ほか依存症問題の啓発や社会提言を行い、依存症問題に苦しむ当事者や家族の方々の支援をしている団体です。

 私は、こういった場に立つことも二回目ですし、割といろいろなことに緊張しないタイプなんですけれども、今日は、本当に大きな悲しみというか、なかなかやはり現場の声は届かないんだなということと、本当に小さな、現場で困っている当事者や家族という立場の人間の意見はなかなか反映されないなという悲しみ、そして、でも、だからこそ、この機会を与えていただいて、その声を届けなきゃいけないという責任感で今ちょっと緊張しております。

 先生方のお手元に私どもの資料をお配りしております。どうかお手に取って御覧いただけたらというふうに思います。

    〔委員長退席、三谷委員長代理着席〕

 今日は、限られたお時間ですので、三つのポイントに絞ってお話しさせていただきたいと思います。

 まず第一に、偏見を生み出している我が国の薬物政策についてです。

 我が国の薬物問題は、刑罰中心の政策、間違った啓発の在り方、それに伴うメディアの過剰反応により、多くの誤解や偏見を生み出し、当事者や家族に苦しみを与えています。

 まずは、お手元の資料の図一を御覧ください。この図を見て、先生方、どう思われるでしょうか。これは、各自治体が薬物乱用防止キャンペーンの一環として子供たちに描かせ、賞を受賞した作品です。ここには、薬物問題に苦しむ当事者や家族に対する人権への配慮どころか、人間としてすら描かれていません。子供たちに長年こういう教育を続けた結果、大人になって審査員の立場になっても、このような啓発に何も疑問を持てないのです。

 なぜこのようなことが起こってしまっているのか。

 図二の厚労省の薬物乱用のパンフレットを御覧ください。驚くことに、麻薬・覚醒剤乱用防止運動のキャッチコピーは、「薬物の乱用は、あなたとあなたの周りの社会を壊します!」となっています。これでは、まるで薬物乱用者自身が社会の破壊者のようです。

 さらに、このパンフレットの六ページ目にはこんな記載がございます。図三を御覧ください。薬物乱用により凶悪な事件を起こしますとありますが、本当にそうでしょうか。

 警察庁が発表している年間の犯罪という統計をグラフにしてみました。図四を御覧ください。このように、実は、薬物の作用で起きている犯罪は、異常酩酊及び精神障害又はその疑い、パチンコ依存、ギャンブル依存と比較しても最も少なく、突出しているのは実はギャンブルによる犯罪です。ギャンブル依存とパチンコ依存を合わせると、どれだけ多くの犯罪が起きているかという数字がお分かりいただけるかと思います。

 では、犯罪の種別で動機を見ていくと、どうでしょうか。異常酩酊の方にはほかの精神障害も含まれておりますので、これを除き、ギャンブル及びパチンコ依存と薬物の作用で比較してみたいと思います。

 殺人、強盗、放火、強制性交等といった凶悪犯でも、ギャンブルとパチンコ依存の方が犯罪が多いのです。粗暴犯も同様です。窃盗犯や、詐欺や横領といった知能犯に至っては、比較にもならないほどです。

 ちなみに、これらの薬物の作用は、大麻だけでなく、覚醒剤ほかのハードドラッグや、処方薬や市販薬も含めた数字です。

 このように、薬物乱用者は、凶悪犯といういわれなき偏見、そういった啓発をされ、社会で居場所を奪われてきました。それは、アルコール、ギャンブルが、一部を除いて、手を出しただけでは犯罪にならないという違いがあるからです。

 では、法律に反して未成年者がアルコールやギャンブルに手を出した場合に、一々逮捕されているでしょうか。アルコールやギャンブルに手を出したという微罪で逮捕という処分が下れば余りにも失うものが大きい、それは誰でも理解できることです。だからこそ、これまで、そういった青少年には、生活習慣の見直しや、背景にある生きづらさ、又は家庭や学校という環境要因の見直しがなされてきました。

 大麻も全く同じです。アルコールやギャンブルでも、習慣から依存症になれば、精神に異常を来し、事件や事故が起こるのです。一度でも手を出せばリスクを背負うのは、大麻と全く変わりありません。

 にもかかわらず日本では、薬物乱用者に対し、刑罰を科し、懲らしめ、さらしものにし、社会の厄介者として人間扱いすらせず、再起すら許してきませんでした。これ以上、犯罪者というスティグマを増やすべきではありません。

 ちなみに、申し上げますが、私たちが求めている非犯罪化ということは、合法化とは全く別です。薬物全てを合法化しろなんということを求めているのではありません。そこのところ、誤解なきようお願いいたします。

 次に、世界の薬物政策はどうでしょうか。

 まず、アメリカですが、二〇二二年十月六日、バイデン大統領は、大麻の単純所持で有罪者全員に恩赦を与えました。日本と同じく刑罰で大麻を取り締まってきたアメリカの薬物対策に対して、アメリカの大麻に対するアプローチは失敗であり、余りにも多くの人の人生を狂わせてきました、大麻所持の犯罪歴は雇用や住宅、教育の機会にも無用な障害をもたらしている、この過ちを正すときが来たのですと述べました。

 また、二〇二三年六月二十三日、国連人権高等弁務官事務所は、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらしますと声明を発表しました。

 このように、世界では、薬物乱用者を犯罪者として汚名を着せ、懲らしめるのではなく、非犯罪化へとかじを切り、薬物を使わざるを得ない状況の人々を医療サービスへつなげる方向に進んでいます。

 こういうことを伝えると、先ほどの委員の発言にもありましたが、日本は海外ほど薬物問題はない、日本の政策こそ成功しているという声が上がりますが、本当にそうでしょうか。

 図九を御覧ください。確かに大麻の検挙数は増えていますが、だからといって、覚醒剤等のよりハードドラッグが増えているわけではありません。むしろ薬物事犯自体は減っています。これは、大麻はハードドラッグのゲートウェーという仮説を否定しております。

 そして、図十を御覧ください。これは、薬物依存症治療の第一人者である松本俊彦先生からお借りしてきたデータですが、二〇一四年に危険ドラッグが流行しましたが、取締りが強化されると、結局、合法薬物である処方薬や市販薬の乱用が増えました。薬物にもはやり廃りがあるのです。大麻の取締りが強化されれば、同様のことが起きるでしょう。

 そして、松本先生によれば、大麻の害よりも、処方薬、市販薬の方がよほど依存症は難治性になるとのことでした。大麻の捜査を強化すれば、大麻使用罪を作れば、難治性になっていく、処方薬や市販薬に流れていく青少年が増えていくことが懸念されます。

 つまり、海外と逮捕者数が違っていても、問題の本質は同じです。大切なのは、薬物乱用者に対する犯罪者というスティグマを軽減させ、早めに医療サービスへアクセスさせることです。

 先ほど委員たちの間でも、このことは皆さんおっしゃっておりました。最初はいいけれども、そのうちいろいろ重大な問題を引き起こす、そのとおりです。アルコールでもギャンブルでも何でもそうですが、早期に相談、早期治療が大切なんです。だからこそ、早期治療を実現するためには、相談したら逮捕されるかもしれない、そういう懸念があっては、誰が早期に相談ができるでしょうか。そこのところの弊害について、よくお考えいただきたいと思います。

 最後に、捜査機関と報道の在り方についてです。

 最も望むことは、捜査機関が大麻の個人使用のような微罪の逮捕者を、報道機関に個人情報を提供することをやめていただきたいということです。

 先日、大麻所持で逮捕された芸能人は、逮捕の前から自宅等を報道機関に張られていました。これは捜査機関と報道機関の情報漏えいと思われ、人権が侵害されています。

 また、日大の大麻所持事件では、僅か〇・〇一九グラムの大麻片を持っていただけで、連日繰り返し学生の実名報道がなされ、教育の機会も奪われました。

 一方、島根県警では、自宅で大麻を所持していたとして、県内の警察署勤務の男性巡査長を大麻取締法違反の疑いで書類送検し、懲戒免職処分にしましたが、県警は、証拠隠滅や逃亡のおそれがないなど総合的な判断として逮捕せず、プライバシー保護を理由に名前や勤務場所も公表しませんでした。

 私たちはこのことを責めているのではなく、全国的にこの島根県警の取組が広まってほしいと願っています。この事件は、所持量が少量だったこともあり、後に不起訴処分になっております。

 大麻を個人で使用、所持したという微罪でデジタルタトゥーが残り、若者の将来が奪われてしまうべきではありません。島根県警のように、現在でも実名公表を控える捜査機関も既にあります。報道の自由も大切ですが、この国の未来を考えれば、何よりも若者の再起に配慮することが優先すべきだと考えます。

 また、このような実名報道のおかげで、当事者だけではなく家族が職を奪われたこともございます。暴力団との関係を疑われると上司に暗に圧力をかけられ、退職を余儀なくされてしまいました。この会社は公共事業の入札を行っている会社でした。そのため、このようなことが起こってしまいました。

 また、大麻と覚醒剤の使用と所持で逮捕経験のある俳優の高知東生さんは、SNSで、事件から七年たった今も駐車場すら借りられないとおっしゃっています。こういった、逮捕の後、再起を目指す人たちのフォローが何もないまま、また更に刑罰を増やすことに私どもは大変心配しております。

 このように、困っている御家族まで社会から疎外し、薬物乱用者の再起を阻んでしまう、さらしもののような報道の在り方には問題があり、今回の改正では配慮を求めます。

 長年行われた「ダメ。ゼッタイ。」運動は、薬物が駄目なのではなく、薬物乱用者が駄目という烙印を押してきました。

 依存症者は、社会や他人の厳しさでは変われません。依存症の背景には、もう十分厳しい環境にさらされた経験があります。逆境体験があるんです。政治家の先生方、官僚の皆様、そして学者の先生やお医者様、立派な大学を卒業された皆様が頭で考えた政策だけでなく、社会から取り残された当事者や家族の声を取り入れた改正を望みます。大麻のあり方検討会では、薬物問題を抱えた家族はメンバーにすら入れていただくことができませんでした。メンバーの選定にも恣意的なものを感じています。

 どうか、大麻使用という微罪で、これ以上若者の未来を奪わないでください。問題を抱えた青少年、そして依存症者は、厳しさで変わるのではなく、社会の優しさと希望で変われるのです。

 以上です。(拍手)

    〔三谷委員長代理退席、委員長着席〕

田畑委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田畑委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。仁木博文君。

仁木委員 自由民主党・無所属の会、順番が変わりましたが、仁木博文と申します。

 今日は、参考人の皆様方、本当に現場の方の御意見、ありがとうございました。

 今回の法改正というのは、ブレーキとアクセルというか、緩和といわゆる規制の両方を盛り込んだものだと思いますが、まず、今回の薬の部分、田所先生の方にお聞きしたいと思います。

 エピディオレックスを使用すれば、ドラベ症候群あるいはレノックス症候群みたいに難治性のてんかんに対して効くかもしれないということでございますけれども、先行して上市されているアメリカにおいて、例えば論文等々で、それは何かエビデンスがあるというふうなことは先生は御承知でしょうか。

田所参考人 ありがとうございます。

 先ほども話しましたけれども、二〇一八年にアメリカで発売が始まって、二〇二〇年頃からやっとアメリカのてんかんの学会で報告が出るようになりました。

 まだ実際には件数が少ないですので明確なものは言えませんけれども、国内で漏れ伝わる中では、難治てんかんには期待ができる薬の一つではないかというふうには言われております。まだこれからデータを整理していくことになると思います。

仁木委員 先生、それでしたら、今、てんかんの患者さん、結構いらっしゃいますね。百万人という先生の資料もありました。そうすると、難治性のてんかん以外の方々も、従来の抗てんかん薬以外で、CBDが含まれたエピディオレックスの承認が得られた暁には、今、抗てんかん薬を飲まれている、結構複合で飲まれている方も多いわけですけれども、そういう方々もこのエピディオレックスを使用できる、あるいは、治療のプロトコールが処方において変わるというようなことがあると先生はお考えでしょうか。

田所参考人 現状ではそれはないと思っております。難治てんかん、特に今示しています三種類のものが中心で今後進んでいって、将来的にはもう少し広がる可能性はあるかもしれませんけれども、現状では全般に広がるということはないと思っております。

仁木委員 私も、CBDの使用を推進するというか、その議連の方に入っています。先般も、イギリスのGWファーマという、エピディオレックスを製造している方々の方と意見交換をしましたが、今、PMDAで承認して、それを使えるようになると、もしかしたら、原材料の大麻草の栽培というのが我が国においてもより必要になってくるかもしれない、そういうことを言われておりました。

 今、国内は二十八件、約三十件弱の農家の方しか大麻草の栽培が許されていないというか、そういう状況でございます。そうすると、先生は、医療の分野ではそれは余り増えないというふうな形、いわゆる今の二十八件では足りないというふうな感じですかね。その辺は御理解いただけますか。

田所参考人 GW社と十分に話しているわけではないですけれども、現在のところでは、海外からの輸入というところで賄うというふうに聞いておりましたので、国内で増やしていくという議論は、まだ残念ながらしておりません。

仁木委員 私は、逆に今日、中澤さん、あるいは小林先生も依存症の治療ということで御陳述いただきましたが、まさに使用する、CBDオンリーというか、THCの少ない部分に関しては使用されるような、商業ベースでほかの商品も出てくるかもしれないということも想定されます。

 そういう中で、規制をやっていくときの検査体制も言われていました。そして、一方で、性善説に立っての測定方法であるとかそういったチェック体制があるわけですけれども、もし仮に何か間違ってそういったことになったときに、場合によっては、例えば、小林先生が依存症の治療をしている現場でいるわけですけれども、大麻の依存症の方が増えているということを御陳述いただきましたが、例えば、先生、私は今認識していないのですが、アルコール依存症の場合でしたらアルコール依存症の治療薬というのが開発されていますけれども、大麻依存症に関しての治療薬であるとかそういうのは、将来的にできるというか、そういうことはどういうふうにお考えでしょうか。

小林参考人 現時点で、薬物依存症に関して適応のある、いわゆる治療薬というのはございません。

 全てやはり対症療法ですね。薬物によって二次的に引き起こされたうつ状態や不眠に対して対症療法的に治療を行っているのみで、いわゆる依存症の主たる症状である、コントロールができない、節度ある使用ができない、あるいはそもそも使用の欲求を抑えることができないということに対して特効性のある薬物はございませんので、恐らく大麻に関しても、今後も、すぐに、短い期間でそういった特効薬が生まれる可能性は皆無に近いと思います。

仁木委員 そうしますと、アルコールの場合は依存症に対する治療薬があるのは先生御案内だと思います、最近できましたが、そうすると、やはり、レギュレーションの部分、厳しくTHCの濃度をチェックしていって、そういうTHC濃度が基準値を超える、カットオフ値を超えるようなものが流通しないようなこともこれから大切だと思います。

 そういう意味で、太田参考人にお聞きしたいんですけれども、今後、商業ベースも加わってくると、先ほど、治療薬、エピディオレックスの原材料も将来的には日本で作られるようになると思いますので、大麻草もある限られたところで作られる体制ができると思いますが、より大麻草を作っているところが分かるような形になると思うんですけれども、今まで、この三十件弱の農家の方というのはかなり厳しい環境でやっているわけですけれども、その辺は、法の実践というか、法を実行していく上で、何か本当に問題点というか。特に私が一番懸念していますのは、将来的にこのことが広まっていく過程において、特にこの法律が施行されたときに、あるいはこの法案が通ったときに、ミスリードというか、間違ったメッセージになる可能性がありますので、この辺のレギュレーションはしっかりやっていかなきゃいけないと思っています。

 何か農家の人の今の現状、大麻のこともよく御存じだと思いますので、そういった流れ、今でしたら大麻法における大麻がそういった対象のものになりますので、そういう流れのものの中で、生産体制に関して何か予想できるような問題点なり、あるいは、政府が取り締まっていくというか規制していく上での何かお考えとかがありましたら、教えていただきたいと思います。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 今後、大麻関連の医薬品ですとか製品なんかが日本で普及するようになると、大麻農家の方がそういったものを踏まえて大麻草を栽培することも増える可能性もあります。

 ただ、現在の場合に、大麻農家の方は非常に厳しい管理の下での栽培と流通を求められておりまして、中には、法律上大麻に該当しない、要するに、成熟した茎は大麻に法律上該当しないにもかかわらず、その流通管理にも非常に厳しい制約が課せられていて、非常に不安になっているというふうに伺っております。

 今後、医薬品とか研究の場合には、かなり高濃度のものを含んだような大麻草の栽培も行われるようになるかと思います。そうした場合に、今後は恐らく、法律の構造も今そうなっておりますけれども、いわゆる繊維を採取するような大麻草の、いわゆる現在の農家さんの場合には、規制を合理的なものに変えていくということが必要であり、かつ、繊維を取るためにはTHCが含まれている必要は全くありませんので、現在の「とちぎしろ」のような品種のものを広く普及させて、そういった種子の管理を徹底した上で安全な大麻草を栽培して、そこからの大麻の繊維の採取だとかということについては規制をある程度緩和したものにしていく。一方、研究目的とか医薬品の場合には、反対に非常に高濃度のものが必要になる場合もありますので、こちらの方の種子の管理や栽培はかなり厳しい管理の下にしないと、それがほかに漏れてしまっては大変ですので。

 そういった二重構造といいますか、目的と大麻草の内容に分けて、規制を合理化する面、緩和する面と、それから一定の厳しい管理の下で栽培、流通していく、この二つが必要ではないかというふうに考えております。

仁木委員 いずれにしましても、今回の法改正で、いろいろな方々が大麻というかCBDの活用を望んでいらっしゃったり、あるいは依存症のことを危惧されていたりという形で、いろいろな形の法整備が行われると思います。そういう意味で、今後とも、私は、立法化を経た上での新しい体制づくりに向けて、いただいた御意見も参考にして、またこちらの立法府の方でも頑張っていきたいと思っております。

 今日はありがとうございました。

田畑委員長 次に、中島克仁君。

中島(克)委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 本日、大麻取締法等改正案の参考人質疑で、五人の参考人の皆様には、大変お忙しい中御出席をいただきましたこと、改めて心から感謝を申し上げます。それぞれのお立場での陳述、大変勉強になりました。

 限られた時間でございますから、全ての参考人に御質問できるか、ちょっと微妙でございますが、よろしくお願いしたいと思います。

 今回の法案、大きく二点。大麻草から製造された医薬品、抗てんかん薬でございますが、この使用を可能にすること、これが一点目。そして二点目が、大麻草の使用罪の規定を設ける。

 この一点目に関しては、私も医者でありますけれども、難治性のてんかん、田所先生には我々は部会にも来ていただき、その重要性、必要性と、てんかんの治療の選択肢を増やすということ、非常に大事なことという観点。一方で、使用罪を適用すること。今日、田中参考人からも先ほど陳述いただきましたが、様々な御意見があるということは我々も非常に受け止めているところでございます。

 改めて、その観点から、先ほど田中参考人からも話がございました、太田参考人、そして小林参考人、田中参考人、それぞれにお尋ねをしたいと思いますが、我が国の薬物乱用対策、これは、違法薬物に手を出さないという一次予防に重きが置かれてきた。その結果、先ほど田中参考人からも少し触れられておりましたが、薬物依存症者に対する差別のようなものが助長されているのではないかという指摘があることも事実だと思います。

 今後の対策に当たっては、一次予防軸足のみならず、違法薬物を使用してしまった方々の早期発見、早期介入、加えて薬物依存者に対しましての再発防止、社会復帰を支援していく三次予防、これをやはり徹底していく。これまでできていなかったかどうかも含めて、なぜできていなかったのか、そしてその重要性について、それぞれ三人の方にお答えいただきたいと思います。

太田参考人 日本でも、大麻を含めて、違法薬物については、規制薬物については違法とされて、いろいろな、所持とか、それから譲渡し、譲受け等は犯罪として規制されているわけではありますけれども、私も、ただ犯罪化して刑罰を適用すれば薬物乱用の問題が解決できるとは思っておりません。

 ただ、人体に非常に有害なものは違法であると規定した上で、社会の中では、まず、そもそもそういった者に対する治療の体制をきちんと整える、患者の方が安心して治療を受けられる環境を整えるという点、社会の中での二次予防、それから三次予防も重要だと思いますし、それから、犯罪である以上、検挙されて刑事手続に乗った者に対しても、現時点はもちろん違法であるので訴追される者が多いんですけれども、ただ、現在も、厳罰と言われているような風潮がありますけれども、今、例えば大麻についても、覚醒剤についても、それから麻薬についても、初犯の場合はほとんどが全部執行猶予になっております。

 ですから、これを刑事政策的には、ダイバージョンといって、犯罪ではあるけれども、刑事手続に乗っても最終的に刑罰を科さずに、若しくは実刑を科さずにその手続から外すというダイバージョンというものが行われておりまして、ある意味では、薬物犯罪については事実上の非刑罰化が行われているようなものであります。

 ただ、問題は、刑罰を科したところから、若しくは執行猶予にしたところから治療とか処遇、支援につながっていない、これが非常に大きな問題だと思います。

 我が国の場合、覚醒剤もそうですけれども、ほとんど起訴されます。大麻の場合は起訴猶予率が三〇%ぐらいありますので起訴率はもうちょっと低いんですが、起訴猶予になった場合も、起訴猶予にして終わりで、そこから治療につながらない、若しくは処遇につながらない。それから、起訴された場合でも、全部執行猶予、しかも保護観察のつかない単純執行猶予になって、そこからの治療につながらない、ここが大きな問題だ。

 要するに、刑事手続に乗った者を治療につなげるという二次予防的な発想がないということが問題だと思っております。

小林参考人 昨今、本当にマスコミの報道を通して、依存症に関する意識は随分高まっていると思います。

 それは、通常のアルコール、薬物のみならず、ネットゲームとか、様々な問題で依存症の問題があるんじゃないかということが随分と意識されるようになっておりますので、そういった意味では、我々医療現場にとってうれしい反面、御家族も本人も、自分が依存症なんじゃないか、家族が依存症なんじゃないかと早めに気づいて医療につなげていただく分、余り困っていない、つまり、むしろ、依存症によってメリットがあって生活がうまく回っている初期段階で医療機関につながる患者さんが増えておりまして、そういった患者さんをどのような形で、断酒、断薬、断ギャンブル等、依存症的な行動をやめる方向に動機づけるかということに関しては、むしろ新しい問題に直面しております。困っていない人の行動を変えることというのは非常に難しいんですね。

 当院で、治療を始めてから三年後、どれぐらい依存症をやめられているかという三年予後を調査したことがございます。

 これは、精神神経学会でももう既に雑誌に論文を発表しておりますので御参照いただきたいんですが、実は、アルコールが三年後に断酒できている人というのは大体一四%ぐらい、市販薬、処方薬は二〇%、違法薬物は四六%がやめられているんです。こういった意味では、この数字を見ていただいても、アクセスのしやすさ、そして、その使用に伴う様々なデメリットの大きさ、これが実はこういった三年予後に反映されているというふうに考えています。

 何度も言いますが、刑罰そのものが別に依存症を治すわけではありません。また、そういったスティグマ化が患者さんの回復を促すわけでもありません。むしろ、そういった様々な人が、本人が困っていない段階で早くに早期発見、早期治療につなげるためには、早期に本人が何らかの困り感を体験できるような様々なおせっかいのシステムが、それは司法のみならず、様々な保健制度でもそうですけれども、教育現場でもそうですが、より早く、そういった逆境体験を抱えていたり地域で困っている人を早期発見できるような、そういったシステム、そして国民全体に対する啓蒙がやはり不可欠だと思いますし、今回、使用罪に関して、賛否両論、かなり議論が盛り上がっているところがございます。

 私は、それはいいことだと思います。むしろ、使用罪に反対される方々の議論を通して、実は、やはり司法だけではどうにもならないんだということを皆さんが知るきっかけになっていると思いますので。ただ、やはり臨床医の現場の意見としては、白黒で簡単に決められないんだと。じゃ、司法を全部排除して、司法の役割を全部否定すればそれでいいのかというわけではないんだという、この難しいグレーな部分を是非御理解いただきたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 依存症問題は、また薬物乱用の問題というのは、医療で解決できる部分はごく僅かです。ほとんどは、まず家族の相談から始まって、家族が家族会や自助グループなどにつながって、何とか本人を治療に結びつけようとして努力しています。でも、この家族の第一歩というのが、犯罪化されているとなかなか結びつかないという現実があります。

 先ほど、早いうちに来てやる気がないみたいなお話がありましたが、私たちのところに来る方は、むしろ、どこに相談していいか分からなかった、ずっと自分たちで抱え込んでいて悪化させてしまったという方々ばかりです。

 一次予防と三次予防が矛盾するものではありません。一次予防はもちろん必要なことだとは思いますけれども、やはりこれからは、薬物依存症者の人権を否定するような、そういった啓発をやめていただくこと、そして三次予防を強化していただくということが大切かと思っております。

中島(克)委員 ありがとうございます。もう限られた時間なので。

 先ほど田中委員、陳述の中で、規制の強化がなると、市販薬への移行、これはオーバードーズにつながる話だと思いますが、このオーバードーズ、若い女性が八割、若年化も、調べによると十二歳が最低年齢だったと言われております。

 このオーバードーズ、これは小林参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどの田中参考人の、規制を強化することでこのオーバードーズの問題が更に大きくなる可能性、また、対処方法、今後の対策の在り方、一言お願いしたいと思います。

小林参考人 元々、こういった法で規制されていないものを求めて、依存症の患者さんは様々な、自分の不眠とか苦痛を和らげるために過量服薬に及びます。大麻が使用罪ができたからといって、元々処方薬、市販薬を乱用していた方が急増するかといいますと、どちらかというと大麻の使用者で多いのは男性です。一方で、処方薬、市販薬で多いのは女性です。ですから、患者さんのポピュレーションがちょっとずれます。ですので、それが著しく急激に市販薬、処方薬の乱用者を増やすということはないと思いますし、処方薬、市販薬の乱用者が増えている現実は、大麻の問題よりも、むしろやはり若年女性が置かれている今の現代日本社会の様々な多様な問題を反映しているというふうに考えた方が私は正確だと考えます。

中島(克)委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

田畑委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 参考人の先生方の質問を聞いて、私の考えも少し変わってきたところもありまして、やはり現場の皆さんの声を聞くのは非常に重要だなというふうに感じております。午後からも質疑をさせていただきますので、是非参考にさせていただきたいと思います。

 まず中澤さんにお聞きしたいんですが、先ほどもCBDの市場が八百二十九億円の市場になるというふうにお聞きをしました。二〇一九年では四十七億円市場ですので、約十七倍から十八倍になるということなんですが、どんな市場というのは先ほどお聞きしたんですが、なぜこれほど急激に成長していくかというような、要因があればお聞きできたらと思います。

中澤参考人 御質問ありがとうございます。

 要因はいろいろあるかと思うんですけれども、そもそも、CBDという市場がこれまでなかったところにでき上がってきたというところがあるのと、あとは、CBDに関する諸外国での活用というところがどんどん広まってきまして、それが日本が対応する形で広まってきているというところで、なので、日本だけではなくて世界的に広まってきているものだというふうに認識しております。

一谷委員 ありがとうございます。

 そこで、CBDの効果として、リラックスやストレス解消、また肩凝りに効果があるとか、眠れないときに寝られるというような言葉がすごく、ネットを見たりしても出てくるなと思うんですね。

 そうなってくると、産後ケアであったり、フィットネスであったり、整骨院であったりというところでそういった商品を取り扱うような、サプリメントであったりとか健康食品というのは増えてくると思うんですが、安易に海外から輸入してきてそれにTHCが含まれていて、抜き打ち検査で厚生労働省がやられて、含まれていますよというのも出ているんですが、やはり違法状況というふうになってくると思うんです。

 まず、やはり、こういった状況をどうやって抑えていったらいいかというところと、先ほど中澤先生がおっしゃっていただいたように、やはり、ある一定、業界を健全に成長させていくためには、過大広告は止めていかなければならないんじゃないかなと思うんですね。

 私も見ていると、先ほどおっしゃっていただいたように、一般社団、NPOが何か認証していますよみたいな感じで、一般の方が一般社団とかNPOと聞くと、何か公的なもので、すごく安心感を得てしまって、それを使ってしまう。先ほど田所先生もCBDはてんかんに効くということが、ちょっと危惧されていましたが、その辺のお話、考えをお聞かせください。

中澤参考人 御質問ありがとうございます。

 御質問いただいたとおり、本当に業界団体が今ばらばらになっているような状況で、特にCBD業界に関する共通の画一的な、これを守っていきましょうというルールというのがまだこれからできていくというような状況だと思っています。

 それら本当にいろいろな論点がありまして、成分の表示という先ほどお話ししたようなところだったり、先ほどてんかんのお話もありましたけれども、薬機法だったり、広告のところで、薬品としてはまた別で、食品的な言い方をしなきゃいけないだったり、そういうところをちゃんとやり切れていない。業界が黎明期ということもあって、大手企業もこれからというところなので、そこはまだまだ未熟な産業であると認識しておりますので、その辺りを関係者一同、議論をして、論点を洗い出した上でルールというのを定めていく、それを遵守していくというところが重要なのかなというふうに思っております。

一谷委員 そこで、もう一つ中澤さんにお聞きしたいんですけれども、検査機関というのが重要だというふうにおっしゃっていたと思うんですが、これは国内、国外のレベルの差みたいなのはあるんですかね。お願いします。

中澤参考人 ありがとうございます。

 私の認識しているところですと、やはり、そもそも日本でTHCの検査をできるというところが大分限られているというところで、単純に経験の歴が全然違うというところがあるのと、あとは、同じ検査様式、検査機器を使っていたとしても、科学者のレベルによって出てくるデータが違ったりということがあったりします。

 あとは、検査方式の基準とかガイドラインというのも、各ラボで日々進化、テクノロジーも進化していくところですので、そこが日本ではまだ実際に限られた人たちしかやれていないというところで、ちょっと、どれぐらい遅れているかというところは何とも言えないところはあるんですけれども、日本独自で国際基準のところに持っていくというところは大分厳しいものがあると思っておりますので、最先端の知見というのを取り入れるのは非常に重要なのかなというふうに考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 それでは、質問のちょっと視点を変えさせていただいて、田所先生に御質問させていただきたいと思うんですが、私は、実は、てんかんの薬というのは非常に重要で必要だと思っているんですが、その薬を処方するドクターはある一定やはり研修を受けられた方がいいのではないかなというふうな視点に立っています。

 ADHDや統合失調症の薬のように研修を一定受けた方がいいのではないかなというふうに思っていまして、午後からの質疑もそれをさせていただこうと思うんですが、田所先生のお話を聞いて、確かに過疎であったりとかドクターがいないところは検査できないなということで、今ぱっと思ったんですが、これはオンライン診療という手もあるのではないかなと思うんですが、オンライン診療でもできるようなものなのかというところを御意見をお伺いできたらと思います。

田所参考人 てんかんの領域というのが、面白いと言うのはおかしいんですけれども、てんかん科というのが残念ながら東北大学以外ありませんで、小児の場合は小児神経、成人になると精神神経、脳神経内科、脳神経外科という大体四つの領域が合わさって、その中でてんかんに関心のある先生方が診療されるのが専門医としては多いんですけれども、ただ、今言いました四つの領域以外でも、てんかんの学会には参加していない、専門医ではないけれどもてんかんのことは十分に治療できるという先生方も全国にいらっしゃいます。

 そういう意味では、余りてんかんだけに特化をしないで、てんかん学会なんかが中心になりながら、国と連携しながら、全国に、今先生がおっしゃったように、この薬の特徴ですとか注意点であるとかというものの研修をしていくというのは重要なことだとは思います。

一谷委員 続いて田所先生にお伺いしたいんですが、てんかん薬というのを使うことも大事なんですけれども、やはり周りの、そのケアを、フォローをしている方々の生活、そしてその負担というのもかなりあると思うんですね。

 私は、今回の法改定とは少し射程が違うかも分からないですけれども、そういったところも整備していくということも大事じゃないかなと思うんですが、その辺りの御意見を少しお伺いできたらと思います。

田所参考人 ありがとうございます。

 先ほど触れました、てんかん診療自体が全国的にまだ地域偏重というんですかね、あります。あわせて、てんかんに関してそれを相談をする機関というのがほぼない状態です、医療機関以外は。そういうことで、国の方にお願いをして、全国のてんかん診療の整備事業というのを進めていただいていて、今、約三十都道府県で拠点をつくってという事業が進んでいるんですけれども、その中に、私たちの活動でもそうですけれども、ソーシャルの部分も含めて生活支援をどういうふうにサポートするかというものを少しずつ今広めているところですので、そういったものを全国にもう少し充実させられると、こういった新しい薬が使われるときにもサポートがしやすくなってくるかなとは思っています。

一谷委員 ありがとうございます。

 私も福祉の業界に二十年以上おりますので、やはり周りの家族の方のサポートというのも非常に重要だというふうに考えていますので、ここも、今回の法改定の射程外かも分からないですが、議論をしっかり進めていきたいと思います。

 それでは、小林先生にお伺いをしたいんですけれども、CBDの市場がこれだけ大きくなってきて、ちょっと広告も過大になってくると、それを常に使っている若者が、もっと効果があるのではないかということで大麻を使い出すというふうな感じになるんじゃないかなというふうに、私は今、意見を聞いていて思ったんですけれども、そういったリスクを抑えていくためにもどういった取組が必要かということと、やはりそういったことは想像されるのではないかなというような点について御意見をお願いいたします。

小林参考人 実際、私の患者さんでも、CBDだったら捕まらないんですよねとか、CBDは効果ありますよねということを言い出している患者さんはもう既におります。

 CBDを使っているうちに、より効果の強いものを期待する可能性もあります。そういった意味では、やはりTHCを含有している通常の大麻の方がより社会的な、法的なハードルが高いというふうにした方がぎりぎりCBDのレベルでとどまる可能性がありますし、同じ過量服薬、乱用のリスクがあるにしても、やはりエビデンスの面で、長期的、大量に使用したときの害が大きいものに対するハードルを高くする。低めの方にまだ誘導する方が、実際、中長期的な、社会的な影響も少なくて済むのではないかなと。

 ただ、今後CBDが普及してくると、今後CBDの乱用者というのが医療現場で増えてくる可能性は私も現時点で危惧しておりますが、こればかりは、市販薬や処方薬と基本的には同じ状況になってくると思いますので、同様の対応をしていくしかないだろうというふうに考えています。

一谷委員 ありがとうございます。

 太田先生、田中先生、時間の都合でちょっと質問できなかったんですが、今日、本当に、参考人の皆様の意見を聞いて、午後からの意見の私の密度が大分上がったと思いますので、今後ともどうぞ御指導をよろしくお願いします。

 私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田畑委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 本日は、五人の参考人の先生方に、お忙しい中、国会までお越しをいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

 時間も短うございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、エピディオレックスに対する期待について、日本てんかん協会の田所事務局長様にお伺いをさせていただきます。

 二〇一九年の九月に、日本てんかん協会を始め、関係する四団体から当時の加藤厚生労働大臣宛てに要望書の御提出をいただきました。その要望書を受け取ったのは、本日の委員会にも出席しております、当時厚生労働副大臣でありました我が党の伊佐議員でございました。

 大麻成分を含む難治性てんかん薬、エピディオレックスは、現在、臨床試験の段階であります。医薬品としてエピディオレックスは多くの患者さんが待ち望んでいると思います。長きにわたる要望活動が実を結んだことは明らかであると思いますが、田所事務局長様の今の御意見をお伺いしたいと思います。

田所参考人 ありがとうございます。

 公明党さんの中には、てんかんの対策を推進するプロジェクトチームをつくっていただいておりまして、その中心になっている方々が、てんかん患者、今回対象になっているドラベ症候群のお子さんを持つ親御さんが議員さんで、たまたま応援をしてくださるということで始まっているわけですけれども、その方々、親御さんとしての思いもあって、厚生労働省に、早い時期にこの薬を何とかということでスタートしたのが始まりでしたので、大変ここまでいろいろありましたけれども、家族、患者本人も含めて新しい選択肢ができるということはありがたいことだと思っておりますので、是非これを国内の中に広めていただいて、更に充実をしていければいいなとは思っております。

福重委員 どうもありがとうございました。

 次に、大麻を含む違法薬物の乱用に陥る方の背景には、先ほどもちょっとお話ございましたけれども、不良交友、孤立、孤独、社会的差別など、様々な要因が考えられます。こうした方々は、置かれている環境から、医療機関や行政など誰にも相談できずに悩み、苦しんでいる方も多いと思います。

 個人が抱える悩みや置かれている環境に対して適切に対応できる仕組みが私は必要であると思いますけれども、小林先生、太田先生からの御意見をいただければと思います。

小林参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。

 これまでどうしても依存症の業界においてなかなか注目されてこなかった点が、まさにこの小児期逆境体験であると思います。当院では、もう十年前から、初診の患者さんに対して、十五歳まで、中学三年までにどのような逆境体験を経てきたかということを全ての患者さんにアンケートを取って、もう十年分のデータがあります。そのデータとして、先ほどお話ししましたように、覚醒剤や大麻、処方薬等の薬物依存の患者さんは、特に、アルコール、ギャンブルと比べても非常に逆境体験に該当する方が多い。もう九割を超えていて、しかもそれがもう三個から四個ぐらい。一つだけじゃないんですね。一つの例を挙げますと、十五歳までに片方又は両方の親と離別体験があると答えた人は、ほぼ三人に一人の割合でいるんですね。

 いろいろな意味で分かりやすいいわゆる虐待とかネグレクトだけではなくて、様々な、表面的には恵まれているけれども、非常に自分の感情の持っていき場所がない、自分の感情を一人で我慢しなければいけないという、そういったことがございます。

 ですので、私、いろいろな場面でお話ししているんですけれども、思春期になってからでは本当に遅くて、場合によっては母子保健の段階から、例えば母子家庭で妊娠されている方、シングルマザーの妊婦の方とか、その後も経済的に苦境に置かれている方、あるいは、表面的には非常に優等生で、部活でも活躍しているように見えているんだけれども、実は非常に本人が我慢していて、そういった、周りに合わせ過ぎている方。

 近年、ネットゲーム依存が増えている背景には、表面的に別にそんな虐待を受けているわけではないんだけれども、やはり本人が自分の本音をシェアできる場所がない、そういった心理的に孤立している若者たちが非常に増えている。かつての、一九七〇年代のような、いわゆる校内暴力みたいなそういった激しい人は減っていて、むしろ、引きこもってしまったりとか、自分の心の殻の中に内向してしまう人がいる。

 そういった意味では、早めに相談できる窓口を増やしていくということが一つなんですが、ただ、相談できる窓口を増やしても、本人自身が、そういった逆境体験を経ている上で、だんだんと相談すること自体を諦めてしまって、周りに期待しなくなっていってしまう、こういった問題があります。

 そういった意味で、御家族は非常に困るんですけれども、本人は、本当に、一人で、誰の助けも必要ない、自分はこの依存症の行動さえあれば、薬物、アルコール、ギャンブルさえあれば何とかなるんだというふうに閉じこもってしまう、そういったリスクはあります。

 ですので、そうなってからのもちろん支援も必要なんですけれども、こういう事態、依存症の背景にはこういった問題があって、自分一人で抱え込んで、自分一人で何か努力や我慢だけでしのいでいくというライフスタイルや生き方そのものに問題がある、それが実は依存症のリスク要因なんだということを、早い段階で子供たちに教育して、またその養育者である親たちにもやはり教育していく。

 しばしば母子保健では、母親に対していろいろな、授乳の仕方とか赤ちゃんの体のことについての指導は結構保健福祉センターなどでやられているんですけれども、もっとメンタルの面、子供を養育していく上でどういったメンタルの支援が親として必要なのか、親がどういう子供の面を見ていかなければいけないのかという、そういったメンタルヘルスのリテラシーを親御さんたちに上げていくための支援を提供していくという視点が今後必要になってくるだろうと私は考えます。

太田参考人 私は刑事法の研究をしておりますけれども、その一方で、性暴力でありますとかDVでありますとか、そういう犯罪の被害者の方たちの支援に携わっております。こうした人たちの中には、そういった様々な問題を抱える中で、薬物の依存に陥らざるを得なかったような方たちがいらっしゃいます。

 そこで、一つの方法としては、まず、薬物の方の問題として医療機関で関わった方が、その薬物の面だけではなくて、そういった背景にある様々な逆境体験とか性暴力といった問題に対して関係機関にきちんとつなぐことができるような、いわゆるワンストップサービスといいます。被害者支援では、様々なところにつなぐワンストップサービスといったものを今構築しようとしております。

 こういった薬物依存に陥った方も、医療機関に関わってそれ以外の問題を放置すると、また薬物依存の方に陥っていって、そこから抜け出すことが非常に難しいので、そういった医療機関がハブとなるとして、そういった関係機関にいろいろつないでいくような、そういったワンストップの支援の体制といったものが重要であるかと思います。

 これは、刑事手続に乗ってしまった少年、少年院に収容されたり、それから、先ほど言った全部執行猶予を受けたような、それで保護観察になったような人たちに対しても、今、こういった逆境体験に対する配慮といったことは非常に問題意識が高まってきておりますので、単に薬物は駄目ですよということだけじゃなくて、その背景にあったような問題にきちっと対応するような対応が今図られつつあります。

 ただ、問題は、例えば少年院から出た後の保護観察の期間とか、それから、刑務所、刑事施設から仮釈放された後の保護観察期間が非常に短いという問題がありまして、もう少し、社会の中でそういった依存の問題、プラス、その背景にある逆境体験の問題に対してきちんと対応できるようになるまでの間、司法も伴走しつつ、次第に地域の支援なんかに移行していけるような、そういう比較的一定期間の見守り期間が必要な法制度が必要だと思っております。

福重委員 ありがとうございました。

 実は、今太田先生がおっしゃられた再発防止、再使用、こういったことをどう未然に防いでいくかということは非常に大事なこと、そういった意味で今お話をしていただいたんですが、もう少しそこの部分で太田先生の方から何か御所見があれば教えていただければと思いますが、今のことでよろしゅうございましょうか。再発防止に対してということです。

太田参考人 繰り返しになってしまいますけれども、やはり、一つ、司法に関わらなかった依存の方が医療機関に自ら受診した場合のその後の様々な本人の抱える問題に対するケアをどうしていくかというそういう体制づくり。

 それから、私がちょっと関わっておりますそういった司法の方に関わらざるを得なかったような依存の人たちを、刑罰とか、保護処分というその後の保護観察という社会の中における処遇の期間においていかにその依存に対する処遇とか治療とともに、本人の抱えている問題にきちんと対応できるための体制づくり。

 それから、期間が今非常に短くなっていますので、そこを長期化するためにはかなり大きな法改正がちょっと必要になってまいりまして、こういった再乱用防止とその背後での問題の緩和、若しくは働きかけのためには、やはり司法ももう少し、それだけでできるとは私全く思っておりませんが、司法の方ももう少し伴走期間をつけて、その間に社会の中における様々な支援につないでいくという、その司法の期間、それから司法と社会の地域の支援機関が伴走する期間、そして社会の中だけの支援に完全に移行する期間という、その三つの段階で移行していくシステムづくり。

 ただ、そのためにはかなり法改正も必要な部分がございますので、そういったものも併せて御検討いただければというふうに思っております。

福重委員 どうも大変ありがとうございました。

 医療に道を開いていく今回の法律改正、そしてまた、乱用を防いでいくというような、様々な五人の先生方々の御意見をしっかりと踏まえて、今後もこの問題についてしっかりと取り組んでいきたいと思いますので、どうか今後とも御指導いただけますようによろしくお願い申し上げます。

 本日は大変にありがとうございました。

田畑委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 本日は、五名の参考人の皆さん、ありがとうございます。大変、それぞれの立場で、参考になりました。

 早速、質問させていただきたいと思います。

 まず、小林先生に二点お伺いしたいと思います。

 今回の大麻取締法の改正は、大麻事案の検挙が増えているということが大きな原因であり、さらに、若者の利用があるということでありまして、先生は、その理由としては、小児期の逆境体験、またさらには、信頼障害仮説というのも読ませていただきましたが、こうおっしゃっています。若い世代に利用が増えているのは小児期の問題が増えているということと関連づけて増加の理由を捉えていいのかということが一点でございます。

 二点目は、今回の施用罪の創設についてです。

 先生は、ほかのところで、なくてもぎりぎり今は問題ない、しかし、今回の医療用大麻の解禁や様々な合法的な大麻の流通が増える、これはペアの議論であるということをおっしゃっています。そしてさらに、アメリカでは、産業用の、産業系の、鎮痛剤や、医療用大麻のネット流通や、また入手可能な時代が来るのじゃないか、この対応が求められているからこそセットで議論がされている、そういった理念がこの施用罪にあるということをおっしゃっています。

 私も、単に取締りが増えたから、検挙が増えたからというだけではちょっと根拠が弱いのかなと思った中、こういうお話をされていましたので、その思想的な部分についてもお聞かせいただければと思います。

小林参考人 御質問ありがとうございます。

 大麻が増えているということの一つの理由としては、薬物乱用の中にも、やはり流行とかファッションがございます。昔はシンナーが若者の一番、大流行だったわけですけれども、もはや今はもうシンナーは見られなくなっていまして、一つのトレンドとして、今実際、大麻や市販薬や処方薬に移行しつつある。

 だからといって、じゃ、かつての子供たちが生きづらくなかったのかといったら、そういうことはないと思います。ただ、一つ言えることは、より、ここ数十年の社会構造の変化の中で子供たちが心理的に孤立しやすい環境は実際にあるだろうと思います。

 それは、皆さん御存じのように、少子高齢化で、そもそも同胞の数が減っておりますし、ネット社会は非常に広まって、子供たち自身のリアルなつながりや、子供たちが地域の中で様々な自分の感情を受け止めてもらえる大人が減りつつある。そういった子供たちを取り巻く環境が、実はもはや我々中年の人間が子供の頃に過ごした時代とは大分変わってきているのではないか。

 そういったことの複合的な要因がありますので、一つの要因だけを捉えて言うことは難しいと思いますけれども、ただ、一つ、やはり、私が初診の患者さんから聞き取ってきた多くのそういった逆境体験の中身を見ますと、本当にもう非常に幅が広い。表面に表れないんだけれども、結構社会的には立派な立場のお父さん、お母さんでも、結構、家の中の閉ざされた密閉空間では暴力が満ち満ちていたりとか、そういったことを実際に患者さん本人から聞くことはございます。そういった意味で、非常に子供たちがSOSを出しづらい環境があることは、今日の薬物乱用の増加にはつながっているというふうに考えております。

 そしてまた、今回の使用罪に関する理念的な問題なんですけれども、何度も言いますが、刑罰で別に依存症が治るわけではない、あくまでこれは一つのツールとして、患者さんの困り感を高めるための一つの契機にはなるだろう。

 それぐらい、逆に言うと、市販薬や処方薬の依存症の患者さんを診ていく中で、彼らにとってのそれをやめるメリット、やめる理由が非常に乏しいがゆえに、逆に難治になっている、なかなかやめづらい、繰り返し繰り返しODをしてしまうというところはあると思います。

 そういった意味で、私たち依存症の臨床医は、ほとんど素手で戦っています。特効薬もありません。基本的には、患者さんの、どうしてそういったアルコール、薬物、ギャンブルがやめられないのかということの背景にある、それが彼らの生きづらさを緩和する上で役に立っているという彼らの心情を理解し、そのような状況にあっては誰にも助けを求めることができない状況にあって、人間以外のそういった薬物に助けを求めざるを得なくなった、その彼らの孤立感に共感することからスタートしなければ、やはり治療的な力を発揮することはできません。

 その上で、やはり、患者さんたちが非常に人に助けを求めない生き方を選び続けるのか、それとも、それを選び続けると様々な社会的なデメリットがあるのであれば、じゃ、人に助けを求めるという新しい医療を受ける、新しい支援を受けるという方向に踏み出すのか、そういった彼らの中でのデメリットとメリットを勘案する中で、使用罪というのは一つの方法にはなる。

 そして、これを通して、是非、司法の方々にも、単なる刑罰では終わらない問題が実は多数含まれているんだということに関する理解を広めていっていただきたい。

 そして、具体的な法の運用に関しては、私たち依存症の臨床現場にいる者の意見や様々なそういった考えが反映されるような、願わくば合議体のようなシステムを、法の運営においては是非検討いただきたいなというふうに医療の現場からは思っております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 先生のお話の中にもありましたが、ただ刑罰を与えるだけでは意味がない、それでは解決しないという中で、先ほど来、太田先生からも、ダイバージョンのチャンスをつくるというお話がありました。

 これは先ほど御説明をいただきましたけれども、実はこのお考えは田中さんも提案しておりまして、治療的ダイバージョンのチャンスをつくるべきじゃないかということで、薬物乱用が短い初犯など軽微な事案については、執行猶予期間中に医療機関などの依存回復プログラムを受講させて、不起訴になるような仕組みづくりも必要じゃないかとおっしゃっていましたが、これらについて御意見をいただければと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 やはり、いきなり逮捕されてしまうと、本当に仕事も失い、教育の機会も失い、場合によっては家族も失いということで、余りに失うものが大き過ぎるというふうに私たちは考えています。

 なので、執行猶予がつくとしても、いきなり実刑判決ではなくて、きちんと治療プログラム若しくは生活改善のプログラム、認知行動療法などに取り組んでいる場合に、そして、その取組姿勢が良好な場合には、処分に対して不起訴というような、先ほど島根県警の例にもありましたが、あちらの事例も、本当に少量の所持だったということで、結果として不起訴になっております。ですので、そういった処分ということも考えていただければなというふうに願っております。

 ありがとうございます。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 もう一点、田中さんにお聞きをしたいんですけれども、相談支援づくりということで、先ほど、警察への通報や行政機関への届出を恐れて治療を避けている人もいるんじゃないかというお話がありました。一方で、小林先生などは、ハームリダクションをやっていますということで、覚醒剤を使ってきた人も絶対に通報しない、医療の現場では罰則を与えないということもおっしゃっていまして、これも私、皆さん、同じ立場なんだなということは分かりましたけれども、実際、その支援をされている中で、そうはいっても、医療機関や相談支援機関、若しくは大学の問題もありましたけれども、大学の医療機関というところが、なかなか、守秘義務というのが本当に守られているのかという心配もありますが、これらの現状についてもお聞かせいただければと思います。

田中参考人 現状は、守秘義務が優先されていることの方が少ないと思います。日大の事例を見てもお分かりのように、学生が正直に相談をしてしまえば通報されてしまうというのが現実で、また、私も支援に関わっていて、入院された、本当に覚醒剤のODというかで倒れてしまった方が病院に救急で運ばれたら、いきなり通報されてしまったというようなことがありましたので、現実には、今ほとんど通報してしまう病院の方が多いのではないかなというふうに、病院だけに限らず学校とかでも多いのではないかなというふうに思っております。

 一部の依存症のことをやっていらっしゃる機関の先生たちは通報しないということがありますけれども、それは本当にごく少数だと思います。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 田中さんの方からこの資料の「ダメ。ゼッタイ。」のポスターを見させてもらって、確かに毎年どんどんどんどんグロテスクになっていくのを見ておりましたが、これについても実は太田先生も小林先生も、駄目、絶対だけでは解決しないんだということをおっしゃられていましたけれども、これについても一言ずつ、二人からもらえればと思います。

太田参考人 駄目、絶対というのも、一次予防の効果を上げるという点では、日本ではある程度成果を収めてきていると思います。だからこそ、欧米では非常に大麻そのほかの薬物の生涯使用率が、経験率が非常に高いのに、日本では非常に低いということも、こういった薬物乱用防止教育に一定の効果があるというふうにやはり評価した方がいいと思っております。

 ただ、問題は、駄目だけで終わってしまっているのが駄目で、要するに、薬物を使った場合のこと。

 昔は、そういう教育をすると、薬物を使うことを何か容認しているかのような雰囲気を醸し出すから駄目だというふうな主張がありましたけれども、私はそんなことはないと思っていて、やはり、いろいろな問題を抱えている子供や大人がいる中で、薬物を使ってしまった場合にどうしたらいいのか、様々な支援体制がきちんとあるということを学校の教育、それから国民に対するいろいろな広報啓発でもきちんと、二次予防の重要性と必要性と、それから先ほど言った守秘義務のことも含めて徹底していくこと。要するに、子供も含めて、安心して相談や治療ができるという体制づくりが必要だと思います。

 先ほど大学という話がちらっと出ましたけれども、最近、学生を見ていて、大学生でも非常に人に頼れない子供が増えている、人に弱みを見せられない学生が増えているなというふうに、この三十年で大きく変わってきたように思います。そういう人でも、こういうふうにすればいいんだよということをきちんとルートを示していくということが、やはり薬物乱用の防止、それから再乱用の防止につながると思っております。

小林参考人 依存症医療に従事している者から見ると、やはり、駄目、絶対の言葉の背景にある、意思を強く持てばやめられる、そういったフィロソフィーをどうしても強調されてしまうことは非常に懸念しております。

 意思の問題ではないです。やはり、彼らは生きづらいから、辛うじてそれだけしか助けを求められないから使っているわけなので、むしろ、しんどいときには、助けてもらいたいときには必ず助けてくれる人がいるんだということをメッセージとして私は発していくべきだというふうに思います。

 衝撃的だったのは、とある学校で、依存症は治療できるんだということを言わないでくださいと言われたことがあるんです。治療できるということは使ってもいいというふうに誤解されかねないからみたいな、余りに、ちょっと私は驚いてしまったんですけれども、それぐらい、やはりまだまだ医療も司法も、そして、医療も、医学部においても、依然として依存症の授業が行われているところは極めてまれです。

 そういった意味で、まだまだ医療現場において依存症という疾患の特殊性を幅広く、まだまだ社会全体のリテラシーを上げていく必要があるということをこの場をかりてお伝えしたいと思います。

田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。

田畑委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、五人の参考人の皆様、大変貴重なお話をありがとうございました。

 田中参考人から、当事者の話を聞いてほしいというお話がございましたが、薬物依存症の御家族にとって一番のお困り事というのはどういうことなんでしょうか。

田中参考人 本当に、今、薬物依存症の御家族に対するケアや支援というのがほとんどないのが現実なんですね。なので、私たち、やっとのことでつながってこられた御家族のお話を聞くと、まず、公共の相談機関、例えば精神保健福祉センターのようなところに電話をしたら、その電話が盗聴されているんじゃないかとか、録音されているんじゃないかとか、電話をしたらすぐに通報されるんじゃないかということを心配してしまって何年も電話ができなかったというようなことをおっしゃるんですね。私たちも、相談してください、絶対通報しませんということをホームページなどに掲げているんですけれども、そういうところにたどり着けるまで本当に長い時間がかかって、物すごく状況が悪くなってしまったということ。

 あとは、やはり、こういった問題に関わってくださる、今、司法の問題が出ているわけですけれども、司法の方の専門家の方たちも全く分かっていないので、例えば、保護観察処分になったとしても、保護司さんが、お母さんの育て方が悪いから薬物なんかに手を出したんですよとか、御家庭の教育の在り方が悪いとか、お母さんの愛情が足りなかったのではみたいなことを言われてしまって、家族の人たちは、やはり自分が悪いんだということを責めて、病院とかそういったものにつながっていくということが難しいということが一番大きな問題だと思っております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 加えて、田中参考人から、駄目、絶対、先ほども話題になっておりましたけれども、この啓発が偏見を助長している、こういうお話がございましたけれども、この弊害について詳しく教えていただけるでしょうか。

田中参考人 駄目、絶対と言って手を出さないのであれば何も問題はないというか、駄目、絶対と言って手を出してしまう人を救うことが大人の考えることだと思うんですね。

 例えば、薬物のこと以外で、駄目、絶対、闇金とか。駄目、絶対、殺人とか。そんなキャッチコピーをやっているところなんかありませんよね。なので、駄目、絶対というのは余りにも単純なコピーで、その裏にある本当の意味というのが取りにくく、そして、駄目人間という方にどんどんどんどん進んでしまったんです。

 これは三十年前に厚労省が電通と一緒に仕掛けたキャッチコピーですが、電通のこのコピーを作った方が、このコピーには効果がないとおっしゃっているんですね。なので、もうこのコピーを変えるべきだというふうに思っています。三十年間も同じコピーでやっていて、これはもう変えるべきだというふうに思っています。

 そして、駄目、絶対という、薬物依存症者の人権を否定して、こんなになったら二度と、人生はもう終わりだよというのがペアになっているんですね。一度でも手を出したら人生破滅、人生終わりというのをペアにして、その脅しがいいことだと思っているんです。だから薬物の依存症の人たちは諦めてしまうんですね。自分はもう回復できない、こんな人間は最低だと。

 私たちの方でも、こういった運動で声を上げると、もう自分は無理だから放っておいてくれというような電話をいただくことがあるんです。その絶望を皆さんお分かりいただけるでしょうか。

 ですから、こういう分かりやすい、そして誤解を招くようなコピーを変える時代が来たというふうに思っております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 あと、田中参考人のお話の中でも日本大学の大麻所持事件への言及がございましたが、今回の日本大学当局の側の対応についてどうお考えでしょうか。

田中参考人 やはり、日本大学の先生方は、あのように実名なんかを報道機関に渡してしまったというか、逮捕に至ってしまったので仕方がないんですが、学生から相談があった場合に、あれを、捜査機関に情報を渡すということは必要なかったのではないかなと。むしろ、薬物問題の専門家に相談して、彼らに対してどのような教育をしたらいいのか、彼らがどのような問題を持っているのか、例えば、カウンセリングや認知行動療法などで再発を防止するべきではなかったかな、それで彼らの将来ある身ということを守ってあげる必要があったのではないかなと。

 教育者としては、捜査機関に名前を出すよりも、やはり相談機関に、薬物依存症の専門家のところに相談に行くべきだったというふうに考えております。

宮本(徹)委員 次は、太田参考人と小林参考人と田中参考人、三人にお伺いしたいと思います。

 依存症、アルコールもギャンブルも薬物もあるわけですけれども、その中で、大麻は今回、使用罪が設けられるということになっているわけですけれども、有害性だとか、社会に対して与えている犯罪の統計なんかも今日、田中参考人からも紹介があったわけですけれども、刑罰、それぞれの依存に対しての刑罰に様々差があるわけですけれども、このことについてはどうお考えなんでしょうか。

太田参考人 それぞれの犯罪に対する刑の重みについては、やはり、犯罪とされる行為の社会や本人に対する影響の大きさとか責任に応じて決められているというふうに承知しておりますので、様々な依存の中の行為にも様々な態様があって、それをひとしく同じような、依存という問題からすればいいというのは、これはどちらかというと予防的な発想でございまして、あくまでも犯罪と刑罰制度というのはその者が行った行為責任に対する制度でございますので、そういった点から差をつけざるを得ないという面があろうかと思います。

 ただ、それはあくまでも刑罰制度として、刑法とかいろいろな法律で規定されている刑罰としての法定刑の話でありまして、実際には、各事件において、それをどのように適用するかということにおいて様々な事情を考慮しているというふうに承知しております。

 特に、先ほども申し上げましたけれども、日本では、大麻については三〇%が起訴猶予になっておりますし、起訴された場合でもほとんどが執行猶予ということになっております。そのほかの薬物でも、起訴猶予率は低いんですが、執行猶予率が非常に高くなっております。ただ、問題は、その後の、保護観察ないしは処遇とか治療に結びついていないというところが問題であります。

 私も、刑事規制だけで全て解決できるとは全く思っておりませんで、例えば、一定の非常に反跳が軽い薬物の使用とか所持の場合には、私は、場合によっては起訴猶予にして、海外で広く行われているような、いろいろな、薬物に対する防止プログラムを受けることを条件として起訴猶予にしますよという制度を日本でも導入すべきだというふうに思っております。そうすれば、前科もつかず、裁判も行われませんので、社会復帰に対する障害も格段に低くなるというふうに思っておりますので。

 一番問題が大きいのは、起訴して、刑を科して、保護観察もつけずに何もしないというのが一番大きいと思っておりますので、刑事手続に乗ってしまった者に対しても、できるだけ、犯罪であることは前提としなければいけないんですけれども、その者に対して、個々の状況に応じて、場合によっては刑罰を回避するような、それで、回避しただけで終わりでは駄目で、それに対して処遇とか支援につないでいくという仕組みづくりが必要だと思っております。

小林参考人 古くは禁酒法がアメリカで失敗したのと同じように、使用者が圧倒的に多い状況ではそういった犯罪化というのはもう無効だということは、まさにバイデン政権が認めているとおりだと思うんですね。もし日本も大麻の生涯経験率が四〇%を超えるような社会になってしまっていたら、私もここで、使用罪については反対したと思います。ただ、日本は一%台です。この状況において、今まだ司法がおせっかいの力を、一%台だったら発揮し得る。これが四〇%台になったらもうおせっかいも意味がなくなってしまう。

 そういった理由での、私は、アルコールやあるいはニコチンとかいろいろなほかにも害があるものは幾らでもありますけれども、それと大麻はどうなんだというところの唯一の論点は、ここの、どれだけの生涯使用率なのか、それを司法で対応することの有効性がどれぐらいあるのか、そういったプラグマティックな観点がやはり必要だというふうに考えます。

田中参考人 ありがとうございます。

 私は、おせっかいを焼くなら、刑法ではなく、三次予防でやればいいのではないかというふうに考えております。

 また、宮本先生の御質問にありましたように、刑罰に余りにも差があるということで、先日、闇カジノの経営者が長野県で捕まったんですけれども、闇カジノの経営者で執行猶予がついて、求刑は一年だったんですけれども、執行猶予は三年です。これは、大麻所持の某有名人と全く同じ判決です。闇カジノでたくさんの被害者を出しているにもかかわらず、そんな軽微な犯罪なんですね、ギャンブルにおいては。ところが、大麻使用罪は、自分以外は傷つけている人はいないわけですよね。被害者を生み出しているわけではない。それなのに、これだけの重罪を科されている。今現在、十分に不平等だというふうに思っております。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 時間なので終わります。

田畑委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 無所属の四人で会派を組んでいる有志の会の福島伸享でございます。

 五人の参考人の皆さん、今日は有意義なお話をありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきますけれども、最初に小林先生にお聞きをしたいんです。

 この間、バズフィードというニュースのインタビュー、先生のやつを読ませていただきまして、大麻しか使われない人も一定いるけれども、最初から健康に問題を抱える人はほとんどいないとか、あるいは、まともに依存症の診療をやっている人間だったら、大麻のみの使用だとコントロールできていて、問題を起こさないということは分かっていますとおっしゃっていて、医学上いろいろな問題はあるんでしょうけれども、そうしたことをおっしゃっています。

 司法の強制力を使ったおせっかいとしてやるんだと。特に、今おっしゃっていらっしゃいましたように、アメリカほど使用率が上がっていない今だからこそやるんだということをおっしゃっていましたが、ただ、ほかの麻薬と同じ扱いになると、先ほど来議論されているように、いきなり刑罰、懲役の刑罰がつく罪になるわけですけれども、これは果たしておせっかいなのかなと。先ほど田中さんからもありましたけれども、もっと別のやり方があってもしかるべきじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

小林参考人 既にお話ししているように、大麻は短期的には大きな影響が出ないんですね。使い続けて習慣化していく中で影響が出てきます。そういった意味では、特に若年で、保護者が気づく、学校が気づく、そういって医療につながった段階では、確かに、御本人には何の困り感もありません。それが、逆に言うと、医療機関で困っているポイントです。

 先ほどの法の運用に関しましては、実際にすぐに厳罰化するということに関しても、私は全く、それを別に要求しているわけではございません。あくまで、今回の司法対応をきっかけに、普通に刑務所に行かないために適切な医療や福祉の支援を受けるというダイバージョンがここで実現されることを、それで、願わくば、これが大麻にとどまらず、実は、覚醒剤等ほかの違法薬物に関しましても、より、刑務所や刑罰に行くのではなくて、きちんと医療や福祉に行けるような呼び水となることを私は期待したいと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 もう一点、同じニュースのところで、大麻のあり方検討会で松本先生、第一人者が使用罪に反対していたところ、厚労省が困るから委員が替わったのだと思うというふうに発言されていますけれども、それは事実なんでしょうか。

小林参考人 恐らく、こういった刑事政策、違法にするということが最終的には患者さんの回復に資するというふうな観点を考えたときに、様々な医療の立場で一つの意見だけが表明されてしまうということはやはり問題だろうと。

 すなわち、臨床現場においても、この使用罪に関しては様々な意見があります。ですので、賛成する、反対する、それぞれの意見がきちんと表明される機会がやはり必要だというふうに私は考えていますので、それを反映したものだというふうに思います。

福島委員 ありがとうございます。

 次に、田中さんにお聞きしたいんですけれども、本当に私、現場の、関わってきた方の声は大事だなと思って、私自身、立派な大学を卒業しただけの、頭でっかちの政策論議をしているんじゃないかと改めて反省した次第であります。そうした観点から、先ほどの小林先生との質問と同じなんですけれども、今回の立法プロセス、厚労省の検討プロセスについて思うところを述べてください。

田中参考人 先ほどのときにも申し上げたとおり、一番この問題で困っているのは、薬物の問題を抱えた御家族だと思うんです。けれども、その御家族が大麻のあり方検討会には誰も入れなかったというようなことがあり、また、松本俊彦先生も使用罪は作るべきではないということを強調されていたと思うんですけれども、やはり、現場感があって、一番私たちがこの薬物問題で頼りにしているのは松本俊彦先生ですので、松本俊彦先生が当事者や家族のこと、気持ちを代弁してくださっていたのではないかなというふうに私たちは考えております。

 なので、大麻のあり方検討会は、本当に、学者の先生方とかそういった先生方ばかりが占めていて、ちょっと、メンバーを見ると、一体この先生は何で入ってこられたんだろうと思うような先生方もいらして、そして、何度も繰り返しますが、本当に一番困っている家族が入れなかったということは非常に残念に思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 やはりそれが当事者の声だと思うんですね。ですから、新たに使用に対して刑罰を科すということにはそれなりの合理的な理由がないと、我々立法府としても、なかなかそこは慎重に考えなければならないのかなという思いにも、今日お話を聞いてなりました。

 そこで、太田先生、使用罪がないから使用が認められているわけではないとさっきおっしゃったんですけれども、法学者として、罪刑法定主義の観点から見て、それでよろしいんでしょうか。

太田参考人 私が申し上げたのは、大麻取締法で所持とか譲渡し、譲受けが犯罪として禁止されているということは、要するに、持っていることも、人に渡しても、人からもらってもいけないというのは、なぜそういうものが罪として規制され、刑罰が科せられているかというと、別に、大麻を見て楽しむのを禁止するためではなくて、大麻を使用することを防ぐために所持や譲渡し、譲受けを禁止しているというふうに理解している、そういう趣旨で申し上げた次第でございます。

福島委員 でも、そうであれば初めから使用が禁止になるわけで、我々法を扱う者は今の法律の条文に忠実であるべきなんじゃないかなと、私は個人的に思います。法律の条文のない刑罰について、さも禁止されたように言うのであれば、立法府の立場として、そこに合理性があるのであれば立法措置を行うべきであるし、それをもう何十年もやってこなかったというのはそれなりの理由があるという前提で法律改正の議論をしないと、私は、全ての罪刑法定主義なり立法主義の前提はおかしくなっちゃうと思うんですね。

 その上でお伺いするんですけれども、このあり方検討会報告書では、制定時に大麻の使用に対する罰則を設けなかった理由は現状においては確認されず、大麻の使用に対して罰則を科さない合理的な理由は見出し難いとなっているんですね。理由は分からないけれども、でも罰則を科さない合理的な理由は見出し難いという論理が、私は一番合理的じゃないと思うんですよ。

 やはり、罰則を科す合理的な理由がなければ駄目で、さっき先生がちょっとおっしゃっていましたけれども、それまでは農産物としてしか扱っていなかったからそこに規制がなかったけれども、これこれこういう合理的な理由があるから規制しますということなら分かるんですけれども、それをすっ飛ばした上で、使用がなかったのは、単に、理由は分からないけれども合理的と言われると、恐らく、我々国会の中で様々な立場の方の御意見を聞いて刑罰をかけるという重い改正をやるときに、それに反対する人や、そこに問題を感じている人の説明になかなかならないと思うんですね。

 私は、だから、逆に、厚労省が今回の取りまとめをするに当たって、そこをもう少し、なぜ使用に刑罰が今までかかっていなかったのか、今回どのような事情があって刑罰をかけるかというそこの論理構成をもっともっと緻密に作るべきだったんじゃないかなと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

太田参考人 先ほども意見陳述の際に申し上げましたけれども、実は、日本では戦後、大麻が麻薬として使用も禁止され、犯罪とされて、刑罰も法定されていました。それがどうして落ちてしまったのかというのは、当時の国会なんかの答弁を見てみますと、麻薬とかは、要するにモルヒネとかがございますので規制対象は医療従事者である、それに対して大麻というのは、要するに繊維を取るための農業であるから農業従事者を規制する必要があるので、それで免許制にすることによって不正取引と不正使用を規制することが望ましいというような答弁があったというふうに承知しておりますので、こういうことが一つの立法事実になっているのかと思います。

福島委員 それでも、どうも、話を聞いて、なぜ使用が当時禁止されなかったかというのは謎のままなんですけれども、これから法案の審議、また私、登場いたしますので、短時間でありますが、しっかり議論してまいりたいと思います。

 参考人の五人の先生方、どうもありがとうございました。

田畑委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

田畑委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は大麻取締法の質疑ということで、早速始めさせていただきたいと思います。

 大臣におかれましては、御就任おめでとうございます。また、政務三役の皆さんもおめでとうございます。

 大臣、非常に御丁寧な答弁をされていらっしゃるんですけれども、できれば、なるべく答弁書を読まずに、私の質疑をしっかり聞いて、大臣が聡明な方であるのを我々はよく存じ上げていますので、やはり答弁書を余り読んじゃうと質問の趣旨とずれちゃうものですから、是非そこはお願い申し上げたいと思います。

 まず最初に、厚生労働省の薬物に対する根本的な考え方についてお聞きしたいと思います。

 今回の法改正にも関係すると思いますが、二〇二一年に一年延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、海外選手による、ADHDやナルコレプシーの治療薬であるアンフェタミン、いわゆる覚醒剤の一種であるアデラールの国内持込み、使用を認める特別措置法の改正が議論されまして、私も同法案が審議された文部科学委員会で質疑に立ちました。

 その折に、事前に厚生労働省からヒアリングをしたところによると、厚生労働省は内閣提出法案での法改正についてはできないと回答されたために、議員立法での法改正にせざるを得なかったとはっきりそのとき聞きました。

 私は、このときの厚生労働省の姿勢は、それまでの薬物に対する厚生労働省の方針と一致していて、首尾一貫した正しい判断であったと思います。政府の良心であったと現在でも評価をしております。

 そこで、まずお聞きしたいのですが、この議員立法の法改正によって、実際に海外選手によりアデラールが持ち込まれた例がどれくらいあったのか、把握しておられれば御回答をお願いします。また、使用された競技はオリンピックであったのか、あるいはパラリンピックであったのか、その両方であったのか、お答えください。

武見国務大臣 議員立法であるオリパラ特措法の規定により、東京大会に参加する選手のうち、オリンピック選手が四名、それからパラリンピック選手三名の合計七名が、医薬品である覚醒剤の携帯、輸出入を行ったと承知しております。

吉田(統)委員 分かりやすい答弁で、ありがとうございます。

 大臣、このアデラール、もう大臣はよく御存じだと思うんですが、eスポーツの世界ではスマートドラッグとして使用されているんですね、実は。かなり問題になっています。

 先ほど申し上げた議員立法での法改正の折に、私もその質疑でお話ししましたが、私、アメリカ、ジョンズ・ホプキンズにいたので、ボルティモア・オリオールズという今年優勝したチームを応援しているんですが、そこに所属していたクリス・デービスというのは、二〇一三年に五十三本塁打、百三十八打点で二冠王に輝いたんです。しかし、二〇一四年九月に、彼は、アデラール、つまりアンフェタミンの陽性反応で、二十五試合の出場停止を科されました。本人が言うには、二〇〇八年にADHDと診断されてアデラールを摂取していた、そうやって言っています。

 二〇一五年から、実は彼は、我が国でも使用可能な代替薬、リスデキサンフェタミン、代替薬のビバンセ、英語だとバイバンセと発音すると思うんですが、この使用許可を得ていますが、アデラールは即効性があるんですが、ビバンセはパフォーマンス向上の目的で使用される可能性は低いんです。その後、彼は実は、このビバンセに替えてから、三十代で急激に成績が落ちてきまして、やはりこのアデラールからビバンセへの薬剤変更と軌を一にしていると考えられています。

 このように、やはりアデラールというのは競技力向上の効果が明らかに見られるために、その使用の有無によって不公平、不公正が生じないかという疑念が私もありました。

 今から、大臣、ここが大事なところなんですが、東京オリンピック・パラリンピックが終わって二年経過した現在において振り返っていただくと、政府として閣法で改正することはやはり妥当ではなかったと考えるのか、今振り返ると閣法でやるべきだったのかということで、現時点での厚生労働省のお考えをお聞かせいただけますか。

武見国務大臣 結論から先に申し上げると、厚生労働省としては苦渋の決断であったろうと思います。

 まず、覚醒剤取締法を所轄する厚生労働省の立場ですけれども、覚醒剤を含む薬物については、近年、実は押収量が増加している。取締り強化をすべき状況にあるというふうに私は認識しております。一時的であっても覚醒剤を国内に持ち込むことは、厚生労働省としては極めて慎重に判断すべきというのが基本的な立場で、私も全くそのとおりだと思っております。

 ただ、オリパラのときには内閣官房が所轄をしておりまして、当時のオリパラ担当大臣は、国会において、我が国における厳格な覚醒剤取締法の規制という観点と、五輪憲章で、スポーツをすることは人権の一つであると掲げられているように、東京大会の理念である多様性と調和との観点との間で非常に高度なバランスを図るために、政治主導で御対応いただくことが望ましいということに至ったと答弁している。それは、もう言わずもがな、これは苦渋の決断であった、そういう理解です。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 そうやって言っていただいたので、本当に苦渋の決断、判断ですよね。厚労省としては、お立場としては、覚醒剤、今首を振っていますけれども、論外だ、そういうお考えだと思います。それを確認できたので、よかったです。

 それを前提に、では、質疑、法案、もっとより審議を深めていきたいと思います。

 では、大臣、お詳しいと思いますが、大麻由来の抗てんかん薬についてお伺いしたいと思います。

 後でもう少し詳しく聞いていきますが、今回の法改正の前提に、てんかんで苦しんでおられる患者さん、てんかんは本当に非常に厳しい病気でありまして、治療困難であります。この団体から、患者団体からの要望が強くあったということも承知しております。

 私も、以前から我が国のドラッグラグ、デバイスラグの解消に向けて、かつて民主党政権時代、当時、薬事法から薬機法への抜本改正をした際に、私は責任者でありましたので、今は御退官された、当時の局長、審議官を経て退官された皆さんと真摯な議論を重ねて、法改正を進めてまいりました。

 したがって、患者さんのためになる医薬品がいち早く国内で使えるようにすることに関しては私も何の異論もございませんし、既に我が国は、大臣、ドラッグロスが起こっていますね。大臣もおっしゃっていましたね、ドラッグロス。こういった我が国の置かれた国際的な状況は深刻であります。

 ただし、今回対象とされるエピディオレックスは、大麻草由来のカンナビジオール、以下CBDと呼ばせていただきますが、を有効成分とする医薬品であります。英国のGWファーマシューティカルズ社、ちょっと発音しにくいんですが、が開発を進めて、二〇一八年六月にFDAから難治性てんかんであるレノックス・ガストー症候群やドラベ症候群に対する承認を取得しています。欧州でも二〇一九年九月に承認を取得して、その後、欧州、米国共に結節性硬化症にも適応を拡大しています。

 このエピディオレックスは、大臣、大事なことは、脳に働きかけて、てんかんを抑える生理活性と薬理活性が不明なんですよ。これがこの薬の大きな特徴なんです。

 そもそも、CBDは、カンナビノイドの受容体はCB1とCB2がありますが、これに対して非常に親和性が低いことも分かっています。一説によると、トウガラシに含まれるカプサイシンが辛さを生じさせるメカニズムの中の、感覚神経にあるTRPV1というイオンチャンネル、この活性化によるんじゃないかという、ただ、これはちょっと厳正に、薬理活性として、私も、仮説があるのは分かるんですが、どうも、推測であり、エビデンスとしては弱いんじゃないかと思うんです。

 いずれにせよ、大臣、この薬は、患者さんのために承認していくことを私は是ともしますが、ただ、生理活性、薬理活性が不明な状況で今回の改正法が成立すると、今後、承認審査が行われていきますよね。これはもちろん、太古から昭和というのは、よく分からない薬というのが、使ってみて効果がある薬というのを使ってきたのが医療ですよね。しかし、ここ数年の新薬承認においては、生理活性、薬理活性不明の薬の承認というのは極めて異例だと私は考えます。

 そこで、厚労省に確認なんですけれどもお伺いしたいのは、このエピディオレックスの生理活性と薬理活性についてどのように捉えているのか、また、この医薬品を使用するための今回の法改正や承認の在り方についてどのように考えているのかを教えてください。

武見国務大臣 委員御指摘のとおり、大麻由来の抗てんかん薬であるエピディオレックス、これは、欧米で難治性てんかんの治療薬として、従来の治療では十分効果が得られない患者に対しても臨床的な効果が得られるとして承認、利用されております。

 薬物の薬事承認をするときの一つの重要な要件は、確かに作用機序ではあります。どういうふうに人体の中で作用をしてそうした臨床効果を持つのかというプロセスが明確であることは、実は一つの重要な要素ではあります。

 しかし、他方で、実際に臨床治験を通じて確実に治療の効果があるというふうに認められた場合には、その作用機序が必ずしも明確ではなかったとしても承認するというのがおおよそ世界の基本的な考え方になってきております。

 したがって、こうした観点から、患者団体からも法改正に強く御希望をいただいておりますし、このために、我が国においても、大麻草から製造された医薬品の利用を可能とする必要があるというふうに考えております。

 ただ、委員御指摘のとおり、作用機序についてのまだ不透明さというものがございますから、やはり、神経伝達において重要な役割を果たすカルシウムの動きに作用することなど、関与しているというふうには見られておりますが、これは、今後我が国において承認申請された際には、治験の成績も踏まえて、有効性、安全性というものについてもきちんと確認をしていきたい、こう思います。

吉田(統)委員 大臣、それで結構です。

 ただ、大臣よく御承知のとおり、プラシーボ効果というのもありますし、大臣はそれが世界的なコンセンサスというおっしゃりようをしたんですが、ちょっとこれは若干私はリスクがあると思います。今、珍しいですよ。生理活性、薬理活性が分からない薬を承認するというのは、世界で珍しいです。逆に、生理活性や薬理活性が明らかでも、効果が出なくて、承認を得られない薬は結構あります。なので、大臣、そこは非常にちょっとリスクがある御答弁だったんじゃないかと私は今心配を勝手に、老婆心ながらしております。

 では、逆に、大臣、そうおっしゃるのであればこういう質問がされちゃうんですけれども、では、大臣は、ほかにも本薬剤のように生理活性や薬理活性が不明で使用されている薬剤が日本にどれくらいあるか、御存じですか。

武見国務大臣 ちょっと事前に通告がなかったので、その確認はできないんですが、ただ、現実に、例えば、昨今話題になっております認知症に関わるエーザイが開発した薬がございますね。あれも、脳におけるベータアミロイドの数を減少させるということについては一定の作用機序に関わる解明はされておりますけれども、実際、最終的に認知症の抑制効果としてどこまでその作用機序が解明されているかというと、実は解明されていないんですよ。

 したがって、そういう点からも、一定の効果が認められると思われたときに、やはり社会的ニーズ、必要性から承認するということは私は現実にあると思っておりまして、その点に関する考え方は、私は、委員とはちょっと違うかもしれませんが、持っております。

吉田(統)委員 大臣、それは全く違います。私は学者ですので。

 ベータアミロイドの沈着を防ぐ時点でエビデンスです。そして、ベータアミロイドが認知症やそういう障害と関与しているということもエビデンスがありますので、全然これは違います、大臣。申し訳ないですけれども、ベータアミロイドの沈着を減らすというのは科学的エビデンスです。そして、薬理活性、作用機序として考えられます。

 これはなぜかというと、結局、一つの遺伝子や一つの生理活性だけで薬というのは効くわけじゃないんですよ。様々な、今はマイクロアレイとかそういった技術ができて、どういう遺伝子がどういうふうに動くかということも網羅的に見ることが、大臣、できるんです。これは十五年ぐらい、もうちょっと前かな、十七、八年前ぐらいから出た技術。なので、様々な遺伝子がカスケードを組んでやっていくんですよ、大臣。例えばインターロイキン6だとJAK―STATパスウェーとか、そういうふうに動いていくので、大臣、それは全く違って、ベータアミロイド、事実、科学的事実がある場合はもうエビデンスなんです。いいですか。

 だから、大臣、これはただ、申し訳ないけれども、この質問をしたら、やはりそういう代表例ぐらいは、これは役所の方が悪いんですよ、役所の方がちゃんとこういった薬の例ぐらいは挙げておかないと大臣が答弁でもたないですから、これはちゃんと役所の人がやらなきゃいけない。

 代表的なのは、大臣がおっしゃるとしたら、漢方薬を挙げるべきだったと思います。漢方薬なんですよ。漢方薬が、大臣、まさに大臣がおっしゃった例の典型例。だから、古典的に使われているわけですよ。だから、大臣のお考えが間違っているというわけじゃないんですが、そういうことがあるということはやはりちょっと、これから大臣は大臣を長くやられると思いますので、所管ですので、しっかりとやっていただきたいと思います。

 では、次の質問に行きます。

 政府は、現状でも治験は可能というような見解を出されたとも承知をしておりますが、どのようなロジックで可能かということを、大臣、お答えください。

武見国務大臣 まず、現在、我が国において、大麻取締法に基づいて、大麻から製造された医薬品を施用することをあまねく禁止している、完全に禁止しておるわけですね。

 一方で、医薬品医療機器等法で、治験に用いられる薬物は医薬品ではなくて、治験は研究の一環として行われるものとしてみなされます。したがって、大麻由来の抗てんかん薬について、大麻研究者の免許を受けた医師の下で適切な計画に基づき治験を行うことは、これは実は可能でございます。

 なお、大麻由来の抗てんかん薬であるエピディオレックスの治験が現在進められておりまして、昨年十二月には最初の被験者への投与が開始されたということは理解しております。

吉田(統)委員 大変分かりやすい御答弁で、ありがとうございます。よく分かりました。

 大臣、やはり難治性の抗てんかん薬にとって必要だということを大臣はさっき御答弁されました。

 ただ、専門家たちに聞くと、エピディオレックスというのは、ゲームチェンジャーというほどのインパクトはもちろんない、そして魔法の弾丸でも実はないわけであります。すなわち、エピディオレックスは、てんかんの患者さんの一部にのみ適応される医薬品とも承知しておりますし、また、患者と医師に選択肢を与えるものにすぎないという判断が本当は正しいんだと思います。

 繰り返しになりますが、魔法の弾丸でもないし、ゲームチェンジャー的な極めて強い効果があるわけでも実はない。ただ、必要とされる患者さんがあるなら、それを使うべきだと私も感じます。

 では、具体的に、このエピディオレックスが承認された場合、どのような症状に対してどれくらい使われることを想定しているのかなということを、厚生労働省、教えていただけますか。

武見国務大臣 エピディオレックスの対象となる難治性てんかんの国内の患者数は、約二万人から四万人と推計しております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問に行きます。

 エピディオレックスは、生理活性、薬理活性が不明なんですね、大臣。そうすると、大臣、副作用の予測というのが、実は、生理活性、薬理活性が不明だと、しづらいんです。当たり前ですよね。もちろん、生理活性、薬理活性が明らかだと、効果や、そしてそれに伴う副作用の予測はしやすいわけであります。ここはすごく大事ですよね、大臣。

 国内の治験のデータはこれからですよね、大臣。そういう中で、海外のデータからもう厚生労働省はいろいろな類推をされていると思いますが、それに関してどのような御知見をお持ちですか。

武見国務大臣 御指摘の副反応に関わる課題でありますけれども、大麻由来の抗てんかん薬、エピディオレックスについて、米国の承認審査においては、本剤による有害事象として肝障害等が着目をされています。本剤の有効性や対象疾患の重篤性を踏まえて、リスクは許容可能と評価されている、そして、その結果として薬事承認をされたというふうに考えております。

 我が国はまだ承認申請が出てきておりませんけれども、この安全性等については改めて評価する必要性があると私も思っております。

 一方で、学会や患者団体からは、本剤の承認への強い要望を実はたくさんいただいておりまして、この改正案に必要な改正を実は盛り込んでいるところであります。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃったように、肝障害なんですよね、これは。用量に関して、やはり欧米人と日本人、かなり体のサイズも体重も違うものですから、また、ここに関してやはり慎重な取扱いが必要なんじゃないかなと思います。

 大臣は、じゃ、もうちょっとはっきり聞くんですが、エピディオレックス、要望がたくさんあるので、私は承認するのは構わないんですが、これは他の薬剤に比して優越性がかなりあると、もう一回、ちょっと若干重なるんですが、思われるのかということと、あともう一つは、既に使用されている抗てんかん薬との相互作用に関しては、厚生労働省、どんなふうに考えていらっしゃるのかなと。教えてください。

武見国務大臣 大麻由来の抗てんかん薬、エピディオレックスについて、米国での承認審査の過程というものの中では、他剤との直接比較した臨床試験は実施されていなかったんですね。他の抗てんかん薬に対する優越性というのは、実は、米国の検査プロセスの中では明らかにされておりません。

 また、薬物の相互作用については、肝障害の懸念から、バルプロ酸との併用等について注意喚起がされていると承知しております。

 他方で、海外のエピディオレックスの臨床試験では、他の抗てんかん薬では効果が不十分な患者への有効性が認められており、これがやはり、改めて新たな薬として承認すべきか否かのときの大事な判断基準になってきているだろうと思います。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 よくその点を把握していただいたことで、十分結構なんです。要は、そこをしっかり厚生労働省におかれましては把握をした上でこの承認に当たっていただきたいというのが私の趣旨でありますので、それで結構です。

 本当に、薬の承認は、あくまで全て利益を受ける患者さんのために、大臣、あります。私は、当然、この本承認、全く反対はしません。

 しかし、大臣もよく御存じのように、ヒポクラテスの誓いには以下の二節があります。自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。依頼されても、人を殺す薬を与えない。つまり、我々は絶対に患者を傷つけては、害してはいけないわけでありまして、ここに関してはしっかりとよく承認過程で評価をいただきたいとお願いして、次の質問に移ります。

 次に、様々な危惧が指摘されている大麻使用罪について確認させてください。

 そもそも、大麻については、今までの法律で使用罪がない理由の一つとして、麻農家の人たちが麻の刈取りなどで大麻成分を被曝することがある、そのような方が使用罪に問われる可能性があるなどと言われてきていますよね。

 今回、今までそのように考えられてきた大麻使用罪を処罰化すると、大臣、聞いておりますが、どのような立法事実があって処罰化することになったのかをできるだけ簡単に教えてください。

武見国務大臣 他の薬物規制と異なり大麻に使用罪が設けられていなかった理由は必ずしも明らかではありませんが、まず、栽培農家が大麻草を刈る作業を行う際に、大気中に大麻の成分が飛散し、それを吸引して麻酔いという症状を呈する場合を考慮したことが一つの一因とされております。

 また、一九四八年の大麻取締法の制定当時は、大麻の乱用実態がなく、大麻草の栽培を免許制とすることで不正な取引を防ぐことができると考えられていたことも背景にあるというふうに認識をしております。

 しかしながら、今回の制度改正に向けて、栽培農家に対して作業後の尿検査を実施したところ、いわゆる麻酔いは生じていないということが確認をされまして、昨今、我が国の薬物事犯における大麻事犯の検挙人員が増加傾向にあって、若年層の大麻乱用の拡大が顕著であることなど、現在は大麻乱用期にあると実は私ども認識をしております。

 これらの点から、法改正において大麻の施用を法律上禁止することで、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めにつながるというふうに考えております。

吉田(統)委員 分かりました。ありがとうございます。

 では、大臣、続けて、大麻草というのは自生もかなりすると御存じですよね。北海道なんかでは結構自生している地域がありまして、私も、母校の名古屋大学の医学部に、構内に自生していまして、これは面白いんですけれども、いつになったら気づくかなと思っていたんですよ。私、毎日ずっと見ていまして、いつか誰か気づいて除去されるだろうなと思ったら、案の定、一か月ぐらいしたら除去されまして、これは本当に自生力が結構強いんですよね、委員の皆さん御承知のとおり。

 今回、CBDが使用可能になると、THCはもちろん禁止になるということですが、こうなると、栽培とか自生の、特に栽培ですよね、広がっていくリスクがあるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、そこに関してはどういう対応をされるんですか。

武見国務大臣 今回の改正法案でも、委員御指摘のとおり、栽培目的を大麻草製品や医薬品の原料にも広げますけれども、不正栽培が決して行われないよう、免許制度を適切に運用していきたいと思います。

 改正法案では、栽培に当たっては、有害成分THCが基準値以下の大麻草から採取した種子等を利用しなければならないこととしておりまして、こうした有害成分が低い大麻草は、盗難や乱用の危険性は低くなると考えております。

 そこで、改正法案では、大麻草の種子の不正流通や不正栽培を防止するために、栽培者が栽培者以外に種子を譲り渡す場合は発芽不能処理をしなければならないこととしております。このような形で種子についても必要な規制を設けることによって、栽培地外で自生をすることがないように措置をしてまいるところであります。

吉田(統)委員 濃度の評価というのはかなり難しいんじゃないかとは思うんですけれども、そこはしっかりやってくださいと言うしかないと思いますので、大臣、しっかりとやってください。

 今回の法案は、やはり結構SNSとかでも注目度が高くて、簡潔に申し上げますが、マスコミですらちょっと勘違いしているところがあるので、是非大臣、はっきりと分かりやすく御説明いただきたいんですが、今回の法改正と医療用大麻解禁との考え方に関しては、何か政府の考えが変わったのか、あるいは全く変わっていないのかということはいかがでしょう。

武見国務大臣 これは、医療用大麻という言葉が何を示すのかということにもよるんですけれども、海外で、大麻たばこの吸煙のように、大麻草を医療用途で直接施用等する場合もあるということは承知しております。

 しかし、今回の改正法案による大麻草の医療用途の利用方法としては、あくまでも大麻草の成分を抽出して製剤化した医薬品であって、医薬品医療機器等法に基づく承認を得たものの利用を想定しているものでございまして、医療用として承認を得ていないような大麻の葉の吸煙は想定しておりません。

 厚生労働省としては、この改正法案が仮に成立した場合には、この点については正確に情報が伝わるよう、周知徹底をしていきたいと思います。

吉田(統)委員 大臣、分かりやすい御答弁で。

 続けて、医療大麻解禁どころか、大麻解禁なんて報道しているマスコミを大臣も見ていますよね、絶対。あれはちょっとまずいと思うんですよね。ここは啓発がやはり必要だと思います。

 大麻は、昔は誤った考え方で、たばこより体に害がないんだとか、そういうような話をしていた人もいるんですけれども、今は、大麻のTHC成分はかなり有害事象が多いことをよく大臣は分かっていますよね。

 ですから、ちょっと一言、大臣、しっかりとメッセージで、大麻解禁ではないんだよと、ちゃんと大臣がここでおっしゃっていただければと思います。

武見国務大臣 委員御指摘のとおり、これは大麻解禁ではございません。医療用大麻の解禁との報道があったことは承知しておりますけれども、しかしながら、今回の改正法案では、あくまでも大麻草の成分を抽出して製剤化した医薬品であって、医薬品医療機器等法に基づく承認を得たものの利用を想定しておりますので、御指摘のような報道というのは極めて適切でないというふうに私も思います。

吉田(統)委員 是非、今の大臣の毅然としたお言葉を国民の皆さんにしっかりとお伝えいただきたいと思います。

 それでは、大臣が本当に的確で分かりやすい答弁をしていただいたので、少し次のテーマに移らせていただきます。

 新型ウイルス感染症の蔓延が始まって間もない二〇二〇年三月十八日、トランプ大統領は、ゼネラル・モーターズに人工呼吸器を製造せよと、戦時下などの緊急時に民間企業に物資増産を求める等の、政府が産業界を直接的に統制できる権限を付与する、一九五〇年に制定された、日本語だと国防生産法、英語だとディフェンス・プロダクション・アクト・オブ・ナインティーンフィフティーに基づく命令を発出しています。

 また、バイデン大統領は、二〇二二年三月三十一日に、同法に基づいて国防長官に、大容量蓄電池などに使用するリチウムなど重要鉱物の国内生産増に向けた取組を指示する覚書に署名をしています。バイデン大統領は、EVや再生可能エネルギーの貯蓄をする蓄電池に使われるリチウムやグラファイト、ニッケルなど、重要鉱物の国内サプライチェーンを確保するため国防生産法を使う、未来の力の源泉を中国やその他の国に長く依存した時代を終わらせる必要があると発言をしています。

 我が国でも、やはり様々な局面において、国家の責任と強いリーダーシップにおいて、医療分野を含めて、国家にとって不可欠な物資、医療機器、医薬品等を製造していく必要があるのではないでしょうか、大臣。

 この委員会で前から何度も私は申し上げていますが、ペースメーカーは国産品がありません。全部輸入です。中国は、二〇一七年に自国製のペースメーカーを開発しています。

 こういった状況は、本当に日本はひどいですし、かつては、体内で吸収されるステントを京都医療設計が開発しましたが、国内では承認が非常に遅れて、欧州で先に承認されて使われています。

 また、例えば、ダビンチというのがありますよね。アメリカのインテュイティブサージカル社ですね、ちょっとごめんなさい、発音しにくいんですが、ダビンチは大臣御存じだと思います。ただ、大臣、逆に、ヒノトリというのは、やっと二〇二〇年の八月に川崎重工とシスメックスの共同出資で設立されたメディカロイドが開発しているんですけれども、なかなかこれは日本でも売れていないわけですよ。だって、大臣は御存じだと思うんですけれども、患者さんの家族に、ではダビンチで手術しましょうかと言ったら、ああ、ロボット手術をするんだなと分かりますよね。でも、患者さんに、ヒノトリで手術しましょうかと言ったら、まだ、それは何ですか、手塚治虫ですかと言われちゃうと思うんです、本当に。まあ、手塚治虫先生のところから名前を取っていますからね、ヒノトリは。

 これも、ダビンチの約半額なんですよね。ただ、これは海外に売っていくべきもの、すばらしいものですが、国内でも導入が進んでいない。我が国の医療機器産業はどんどん衰退しています。

 ちょっと長くなりますが、経産省の方にも聞きたいんですが、今年行われた、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業費補助金の二次公募においては、ワクチン製造に不可欠な製剤化、充填設備と医薬品製造に必要な部素材等の製造設備を有する拠点を重点的に採択する予定とされていました。

 二〇二三年九月二十日に、二十三件、約九百五十五億が採択されていますが、この中のワクチン製造拠点整備はアルカリスとモデルナの日本法人の二つなんです。共に外国産業です、大臣。しかも、モデルナはメッセンジャーRNAワクチン以外の製造経験は実はないと私の記憶では思います。しかも、その製品はコロナワクチン一つで、これはやはり極めて不自然な採択のように見えますね。

 以上述べてきたように、我が国の医薬品、医療機器の製造体制、状況を考えると、我が国の安全保障、危機管理のためには、政産官学一体の国産医薬品、医療機器の推進をするとともに、我が国も米国の国防生産法に準じる制度が必要だと私は考えますが、大臣、いかがですか。

武見国務大臣 今回のコロナのパンデミックを経験して、多くの国民が、やはり、こうしたリスクの高い感染症というのは、人の命や健康、そして日常生活を大きく脅かすものであるという意味で、国、社会にとっての安全保障でもあるという認識を私は持ち始めておられるというふうに思います。

 あと、アメリカでは、その点は明白にそうした認識の下に、国家安全保障とほぼ同等の観点でこうした感染症対策の危機管理の体制ができていて、その中で、こうした医薬品、薬事承認についても迅速に進める仕組みも、アメリカの中では、先生御承知のとおり、できていますよね。ただ、我が国ではまだそこまで行っておりません。

 しかし、御指摘のような形で、産官学民しっかり連携をして、こうした緊急時において必要な医薬品あるいは医療機器というものを国内でも確実に迅速に開発して承認する仕組みを更に充実していく必要性というのは、私も認識をしております。

 しかし、そのためには、相当、エコシステムをきちんと再構築をし、特に創薬と連携するようなシーズの研究開発能力をアカデミアの中でつくることを出発点として考えないと、恐らく新しい体制づくりはできないと考えておりますので、その点は恐らく先生と同じ認識を私は持っていると思います。

吉田(統)委員 大臣、今、答弁書を見ずにお答えいただいたので、やはり思いがしっかり分かりますよね。本当にそのとおりです。

 ただ、大臣、だから、日本の今強みは、何で勝負できるかというと、遺伝子治療ですね。再生医療は残念ながらコストがかかり過ぎて、iPSの、私は眼科なので残念なんですけれども、網膜の治療、加齢黄斑変性の治療とかは、あれはコストに合わないし難しい、結果もしっかり出ていない。ですから、遺伝子治療に関しては、是非、アカデミアで完結させてしまっても可能なので、つまり、遺伝子治療はシーズじゃないので、ですので、そこは大臣はよく御承知だと思いますが、遺伝子治療に関しては、アカデミアで完結させることも含めて、世界をリードさせることは今でも可能なので、是非、大臣、頑張ってください。

 それで、では、大臣が御就任の前後だったのでちょっとあれなのかもしれないですけれども、幾ら経産省マターといえども、ワクチン製造拠点整備を何で日本国の企業に担当させなかったのか。もし公募がなかったというんだったら、公募を促すぐらいしても、大臣、いいと思いますよ。これはどうしてですか。参考人からで結構です。

武見国務大臣 私の方からの答弁で御容赦ください。

 実際に、新型コロナウイルス感染症拡大下において、例えば、人工呼吸器メーカーなんかについては、自動車メーカーなどとのマッチングを通じた、人工呼吸器メーカーによる部品調達などの支援などの取組を経済産業省と連携しながら行ってきたというのは事実でございます。それから、縫製事業者においても、医療用のガウン、これは非常に当時少なくて大変現場が混乱したのは先生も御存じのとおりでありますけれども、これを早急に作るために、医療用ガウンの生産も行われてきたところであります。

 取りあえずそこまでは今この時点で答弁させていただきます。

吉田(統)委員 分かりました。じゃ、ちょっとまた今度、ここは経産省を交えて議論しましょう、是非。

 では、大臣、ちょっと時間がなくなってきたので、薬のことをまた少しお話しさせていただきたいんですが、簡潔に聞いていきます。

 簡単に言うと、大臣、薬はデフレですよね、薬価。世の中はインフレですよね。これではやはり、当然、企業は成り立たないわけであります。

 また、今まで、ここは特に大臣の御専門かと思うんですけれども、薬価を下げた分を診療報酬に補填してやってきたやり方というのも、やはりこれは問題だったと思うんです。診療報酬はちゃんと上げて薬価も別途考える、そういったやり方を本来やはりすべきだと思います。

 今、医薬品を製造してももうからないと、ちょっと配慮はしていただいているのは分かります、不採算部門に関して。ただ、そういう小手先のでは、今のインフレと物価上昇の中で、対応困難ですよ。ですから、もっと言えば、新規収載される高額な医薬品は全部外国産なわけじゃないですか。日本産なんてほとんどないですよ。

 ですから、医薬品不足で、また更に私は問題だと思うんですが、先日の報道で、ジェネリックへの置き換えを進めるため、医療保険部会での議論で、特許が切れている先発医薬品についての患者の負担額を引き上げる方針で、年末までに具体策をまとめたいと言っています。ただ、一応言い訳として、捻出した財源を創薬力の強化や後発薬の安定確保に充てると言っていますが、これはうまくいかないと思いますよ。だって、部会でも、実際、後発薬の安定供給を優先させろという意見が出ていたじゃないですか。

 これを本当にやると、ただでさえ弱っている我が国の先発品メーカーの足腰を膝かっくんするようなものですよ、大臣。ですから、どう考えていらっしゃいます、本当に。これは深刻ですよ。本当にやるんですか。

武見国務大臣 今回、年末にかけての薬価制度に関わる政策決定というものの中では、やはり、どのように国民皆保険制度の持続性というものとそれから委員御指摘のイノベーションというのを両立させるかというのが、今、最大テーマになってきております。

 現状の制度の中でも、市場の実勢価格を踏まえた改定を基本としつつ、医療上必要性の高い医薬品の安定確保を図るという観点から、保険医療上の必要性が高い医薬品であって、薬価が著しく低額であるため供給継続が困難であるものについては、薬価を維持又は引き上げる、不採算品再算定等の薬価を下支えする仕組みというのは御存じのとおりあるわけでありますが、要は、これをどう今後運用していくかというところの課題がこれから出てくるんだろうと思います。

 しかし、いずれにせよ、薬価の改定だけで我が国の創薬あるいは医療機器のイノベーションが起きるというわけではありません。もっと深刻な問題が背景にございますので、全体をきちっと把握した上で、この問題に、イノベーションに更に取り組む必要性があると思っています。

吉田(統)委員 大臣がおっしゃるとおりなので、これは本当にそんなに簡単な問題じゃないので、引き下げて、それでイノベーションを起こすなんて無理ですから、お考えは今もう大臣が言っちゃったので、そのとおりなんですよ。そんなので小手先のことをやって、それでイノベーションを起こさせようなんて政策は無理ですね。

 大臣、最後に一言申し上げますが、日本は本当に、アカデミア、もうすごい力が落ちているんですよ。私が医者になったのは一九九九年ですが、一九九〇年代から二〇〇〇年までにかけては、日本の医学論文は世界二位だったんですよ。何と、イギリスより上だった。アメリカはもうしようがないんです、ちょっと時間がないので話しませんが、論文数が圧倒的なのはしようがない。ただ、二位が日本だった時代があるんですよ。ただ、今もう日本は三十位ぐらいですよ。これは、大臣、文科省ともタッグを組んでやらないと、アカデミア発のスタートアップも、ちょっと言い方は悪いですけれども、アンジェスみたいなうさん臭いところだけ出ちゃうので、だから、本当にしっかりやらないといけない。

 大臣、本当にここをお願いして、また議論したいと思いますが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

田畑委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、大麻取締法等の改正案について、私は、いわゆる使用罪、施用罪の法定化を中心に質問をしたいというふうに思っております。

 今回、施用罪が法定化されるということで、恐らく、逮捕になる前の段階では尿検査等が行われるんだというふうに思います。この尿検査なんですけれども、どういう基準で逮捕となるのか等については法律が成立してからその後示すということになっておりますけれども、やはり受動喫煙などの問題もありますし、これは具体的にどういう考え方で作ることになるのか、法令できちんと明示をするのか、数値でというのはなかなかちょっと難しいのかもしれないんですけれども、基準の考え方について伺いたいと思います。

武見国務大臣 尿検査においては、尿中の大麻成分の代謝物でございますTHC―COOHの濃度を基準に判断をしておりまして、陽性になった場合に施用罪を適用をいたします。その際に、受動喫煙と意図的に行われた不正な施用を区別し、立証することは可能であろうと考えております。

 尿中の大麻成分の代謝物濃度の基準については、研究報告の内容や、海外のガイドラインなどを参考に今後検討を進めていくことになります。捜査に支障を来すおそれがあることから、具体的な数値を今の時点ではお示しできませんので、その点は御了承いただければと思います。

西村(智)委員 陽性の人がはっきりと分かる、しかも受動喫煙とは分離されるということのお考えでありますけれども、いろいろ個人個人の体質によって代謝にも差があるのではないかというふうに思っております。

 そういったことについても十分勘案された上で基準についての考え方、これが示されるのかどうか、そこを伺いたいと思います。法令で示すのかについてもお願いします。

武見国務大臣 薬物の尿中排せつの量や期間というのは、摂取量や体内動態などの個人差によって変動することが知られております。御指摘のとおりであります。これまでも、各鑑識機関においては、大麻以外の違法薬物について、一定の科学的根拠に基づき個人差による変動の幅を考慮した判断基準を設定した上で、尿を用いた鑑定をしてきております。

 今回の大麻の施用についても同様に、こうした科学的根拠に基づいた判断基準を設定して、適切に対応していきたいと思っております。

西村(智)委員 もう一つは、例えば海外で使用した場合です。

 大麻、海外での、使用が合法化されている国、ちょっとずつ今は増えている状況ですよね。そういったところで使用して国内に帰ってきた場合に、例えば空港などで使用罪に問われることがあるのかどうか、伺います。

武見国務大臣 まず、麻薬関係法令において施用罪に国外犯処罰規定は適用されないために、海外で大麻を吸引しても、日本の麻薬及び向精神薬取締法の適用はされません。

 また、改正法案によります大麻施用罪創設後も、大麻を海外で吸引して帰国した人については、大麻を所持していなければ、仮に尿から大麻の代謝物が検出されても、直近で海外への渡航歴があり、国内での施用を裏づける証拠がない限り、立件されることはございません。

 ただし、大麻の所持や譲受け等の行為については国外犯規定が適用されますので、当該各行為が滞在国において合法でない場合は各罰則が適用される可能性がございます。

 なお、現行法でも麻薬や覚醒剤には施用罪が設けられておりますけれども、御指摘のように、海外から帰国した施用に関わる取締り上の問題は、現在の時点では生じておりません。

西村(智)委員 実は、今日午前中に参考人質疑がございまして、五人の参考人の方からお話を伺いました。最初は意見の隔たりがかなりあるのかなと思った意見陳述でしたけれども、質疑を重ねていくにつれて、やはり参考人の方々も、大麻を使用した人たちが周りの人に相談しづらかったり、あるいは孤立を深めていたり、また偏見を助長するおそれがあるというようなことについては、ほとんどの方が意見が一致していたというふうに思います。

 ですから、今回施用罪が法定化されたとしても、やはり大事なのは、何もみんな逮捕して検挙するということではなくて、いかにその後の更生、あるいは治療、あるいは社会復帰、こういうところにつなげていくか、それができるのかということで、それは私は今回の法改正とはまたちょっと違うところの問題なのではないかなというふうに思ったんです。

 ちょっと、今回の改正によって、もう少し、何が変わるのかということについて確認をしたいと思っています。

 使用をした、大麻を服用した、だけれどもやめたいと思っている、司法の手続になる前に、大ごとになる前にやめようと思ってお医者さんに行かれる方もいらっしゃるということは、今日の午前中の参考人質疑でもそのようなお話がありました。そうなったときに、医師の方は捜査機関の方に通報する義務があるのかどうか、あわせて、厚労省の麻取部に通報義務が課されているのかどうか、確認をしたいと思います。

武見国務大臣 まず、依存症患者による違法薬物の使用を医療機関が把握した場合には、麻薬取締部を含めた捜査機関への情報提供については、刑法等に基づいて、医師等に守秘義務があるというふうに承知をしております。

 一方で、公務員の立場にある医師などにおいては、刑事訴訟法に基づき、公務員として告発義務が課されることとなります。そのような場合でも、職務上正当な理由があれば、告発するか否かの裁量を全く否定するものではないと承知をしております。

 したがって、この取扱いは、本改正法案が成立、施行された後でも変わるものではないという認識であります。

 具体的には、医師等において治療継続の必要性も踏まえながら、個別の事案に即して判断していただくものと考えております。特に、今委員御指摘のような形で、治療をしたい、そういう思いで来られた方なんかについては、これは、こういう形で捜査当局の方に通知する必要性があるかといえば、むしろ医師の守秘義務の方を考えるケースになるんだろうと思います。

 したがって、ケース・バイ・ケースでそれぞれ考えていく課題になるんじゃないかと思います。

西村(智)委員 大麻は、検挙されている件数の七割が三十歳未満の方々だということも伺いました。ですから、若い人たちが大麻を使っているということなんだと思うので、それをやはりよくよく厚労省としては含んで考えていただいた上で対応が必要になってくるというふうに思います。

 大学におけるケースです。

 学生がやっている、だけれども、やめたいと思っていると。例えば、大学には健康保健センターとか学生支援センターとかいろいろ学生の相談窓口がありますけれども、そこに申告した場合あるいは相談した場合に、この方々は捜査機関への通報義務、あるいは麻取部への通報義務というのは課せられているんでしょうか。それとも、それぞれの大学の判断ということになりましょうか。

武見国務大臣 大学の健康保健センター等の職員には、大麻の施用について相談を受けても、原則として、捜査機関への通報義務はないと承知しております。

 ただし、議員の御関心が公務員である大学の職員に関することであると、法人化していない公立大学の職員には、刑事訴訟法に基づき、公務員としての告発義務が課されますけれども、そのような場合も、職務上正当な理由があれば、告発するか否かの裁量は否定されていないというふうに承知をしております。

 薬物依存症の方々への再乱用防止対策や治療を行うことは極めて重要であろうと考えておりまして、引き続き、関係省庁、さらに民間団体とも連携をして、支援対象者が相談、治療をしやすい環境整備をつくっていくことが大事だ、こう考えます。

西村(智)委員 一応確認しましたら、国立大学法人の方はみなし公務員なんだけれども、こちらの方も通報義務はないということでありました。

 こういうふうに、数は今の時点でどのくらいなのか、実のところ分かりません。大学の方の学生支援センターですとか健康保健センターなどは、それこそまさに、学生のための秘密を保持しながらいろいろ対応に当たっているということなので、実際にどのくらいあるか分からないんですけれども、そういった申告や相談があった場合に、やはり私、大事にしてもらいたいと思っているのは、何か学生に対する処分をしてそれで終わりとかいうことではなくて、ちゃんとその後の相談、真摯に応じてもらって治療につながっていくということ、あるいは、学業もちゃんと継続をしながら、社会人であれば社会復帰につながっていくということだと思うんです。専門家への相談も含めて、そういうことをちゃんとやっていただく、若い人たちの未来を潰すようなことはしない、そういうことだと思っております。

 大臣からもそのように答弁をしていただいたところなんですけれども、文科省に、そのことを何か学生に周知するとか広報するとか、そういったことを今回の法改正を契機にやっていただけませんか。文科省と大臣、是非ちょっと話をしていただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

武見国務大臣 御指摘のとおりだと思います。

 文科省と緊密に連携を取りながら、こうした治療を希望する学生などに対する支援を行っていきたいと思います。

西村(智)委員 確認ですけれども、使用罪が法定化されたということですが、これで、例えば、やめたいと思って申告したり相談したりという方がいたとして、通報や逮捕を恐れて相談が更にしにくくなるんじゃないかという懸念はやはりあるんですけれども、それについては、大臣はどういうふうにお考えですか。

武見国務大臣 大麻等の施用の相談を受ける精神保健福祉センターなどの相談支援機関などで従事する者には、刑事訴訟法に基づき、公務員としての告発義務が課されてはおりますが、職務上正当な理由があれば、告発するか否かの裁量は否定されていないというふうに承知しております。この取扱いは、改正法案の成立後も変わることがありません。したがって、委員御指摘のとおり、こういった相談がしやすい環境を運用を通じてどう整備していくのかというのが次の課題になってくるだろうと思います。

西村(智)委員 確認ですけれども、では、医師、医療機関ですとか大学に、捜査機関でないところにいろいろ相談に行ったときに、今回の法改正後、医療機関や大学なんかに相談に行ったら、それをもって捜査機関が尿検査などの捜査を行うようなことになる、そういうものではないということは確認させていただけますか。

武見国務大臣 現在、捜査機関でないところの薬物使用の申告、相談があった場合、薬物取締りの観点からは、必要な事案については通報いただきたいと考えておりますけれども、薬物乱用防止の観点からは、相談した者の健康状況や生活環境なども踏まえつつ、安心して相談できる環境の整備も極めて重要であるというふうに考えております。

 また、医師などのところに申告などがあったことをもって、医師等のところに出向いて捜査機関が尿検査などの検査を行うということはありませんけれども、通報を捜査機関が受けた場合は必要な捜査を実施することになるというふうに理解をしております。

西村(智)委員 必要な場合には通報されるというのは、どういうケースでしょうか。

武見国務大臣 これは個々のケースによって異なります。しかし、これが例えば犯罪行為と関わるようなケースというものであれば、当然に通報義務の対象になると思いますが、これはやはりケース・バイ・ケースで考えられてくるので、一概にこれだというふうには現状ではまだ申し上げられないと思います。

西村(智)委員 そういったことも含めて、是非、大臣、先ほど文科省と話をするということについては前向きな御答弁をいただきましたけれども、あわせて、厚生労働省の薬物、大麻の規制について、もう一度、関係機関に運用の考え方について改めて通知などを出していただく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 御指摘の点も、関係機関ときちんと相談をしながら進めていきたいと考えます。

西村(智)委員 午前中の参考人質疑では、お二方の参考人の方が報道機関の過度な報道の在り方について言及をしておられました。何か、報道機関の方が大麻を使用していた人をつるし上げて土下座させるようなことがあってはいけないとか、名前の公表などについても慎重であるべきではないかというようなお話がありました。

 大臣、ちょっと通告しておりませんでしたけれども、午前中の参考人のお話を踏まえて、何か、報道機関に対しても、そういった人権配慮のお願い、こういったことを是非ちょっと相談してみてはいただけないでしょうか。

武見国務大臣 これはなかなか難しい判断です。

 実名報道は、薬物依存症の方のスティグマ、偏見となっているとの指摘があることは承知しておりますし、一方、実名報道は、国民の知る権利の保障に努める報道機関の役割でもございます。報道機関の記事の信頼性につながるものであるとの意見もあります。このため、公的機関が実名公表を行わないと情報の隠蔽につながるという指摘を受ける可能性がございます。

 こういった課題を踏まえつつ、いただいた御懸念は捜査機関ともしっかりと共有をして、薬物事件の広報としてはどのような対応が適切であるかということを、これから慎重に検討を進めていきたいと思います。

西村(智)委員 大麻法について最後の質問になりますけれども、厚生労働省のホームページでは、支援施設の一覧が掲載をされております。さらに、更生、あるいは治療、あるいは社会復帰、こういったものにつながり得る支援の手だてをもう一歩、厚労省の方からは考えていただきたいと思いますけれども、是非検討をお願いできないでしょうか。

武見国務大臣 厚生労働省では、薬物依存症の治療につながり得る支援として、相談、治療及び回復支援に係る対策を実施しておりまして、具体的には、専門医療機関や相談拠点等の整備を進めるとともに、行政、福祉、司法等の関係機関職員への研修を通じた専門性の向上、それから、自助グループなどの民間団体も含めた地域における支援ネットワークの構築などを行う自治体への支援、それから、依存症は病気であり適切な治療支援により回復するものであるなど、依存症の正しい理解を深めるための普及啓発、それから相談窓口等の周知、これらを実施しているところでございまして、これなどはやはり法務省などと、関係省庁とも連携して、こうした考え方に沿って取り組んでいきたいと思います。

西村(智)委員 依存症は病気である、だからそれは、つるし上げて、そして検挙をばんばん増やしてということでは決して解決しないことだと思っておりますので、是非、今の答弁の考え方を基本に、関係省庁ともしっかりと話をしていってもらいたいというふうに思います。

 残り時間で、ちょっとマイナ保険証のことについて伺いたいと思っております。

 閉会中審査が七月の五日に、地こデジといいますけれども、地域活性化・こども・デジタル特別委員会で開かれまして、そこで私、当時、加藤厚生労働大臣に、お薬手帳はどうするんですかという質問をしたんです。つまり、マイナ保険証は、みんな紙の保険証を残してくれという声がある中で強制的にこれをやめるという話が今進んでいて、マイナ保険証に一本化すると。ところが、厚生労働省がこれまで取り組んできたお薬手帳については、当時の加藤大臣の答弁が、ちょっとよく分かりにくかったんですけれども、なくすとはおっしゃっていなかったので、なくすんじゃないんだろうなというふうに思ったんです。

 大臣、改めて伺いますけれども、お薬手帳は、マイナ保険証になってもなくさない、残すんでしょうか。

武見国務大臣 結論から先に申しますと、残します。

 お薬手帳というのは、処方、調剤された薬剤に加えて、OTC医薬品の服用歴とか、それから体調変化なども記録されていて、自らの健康管理に用いるものでございます。そのほか、電子版お薬手帳では、マイナポータルで閲覧できる薬剤情報をダウンロードして、そしてその情報と患者の服薬歴、体調変化の記録、服薬を促すアラーム機能などを組み合わせて用いることができますから、したがって、お薬手帳は残します。

西村(智)委員 自らの健康管理に用いるという答弁は、済みません、私、ちょっと過去の議事録も探してみたんですけれども、今回武見大臣から初めていただいたんじゃないかなというふうに思うんですよね。

 今までは、マイナ保険証になったらそこで薬剤情報も見られるようになります、今まだ道半ばですけれども、オンラインでカルテが電子化されていけばもうタイムラグもできなくなる、今はまだ保険診療の状況が一か月半マイナ保険証の方に反映されるまでに時間がかかるというので、これのタイムラグもあるということが問題だと言っていたんですけれども、カルテの電子化ができていけばタイムラグもなくなるから、次第にお薬手帳を持つ人もなくなるんじゃないでしょうかということで答弁をいただいていたんですよ。

 自ら健康管理をするために用いるものという答弁は私、初めていただいたんですけれども、大臣、じゃ、今までの答弁とちょっと変わったんですかね。

武見国務大臣 特に変わったわけではございませんで、お薬手帳の場合には、処方された調剤、薬剤に加えて、そのほかの情報、個人でどういうその他OTC医薬品を服用しているかとか、あるいは体調の変化などを記録しているということがあって、そこで自らの健康管理にも使えているわけでありますから、したがって、お薬手帳と、それから新たにできていきます電子版のお薬手帳で、この両者を組み合わせて、そして、デジタル化がより完全にきちんと整備されていくまでの過程の中でこうしたお薬手帳との共存というものが求められてきているものだというふうな考え方ですので、基本的には、加藤厚労大臣のときと考え方は変わってきておりません。

西村(智)委員 ただ、加藤大臣は、マイナ保険証が普及していって、それからオンラインのカルテの電子化が進んでいったら、お薬手帳を持つ人は少なくなっていくでしょう、そのときにどうなっているかということはありますよねと。私、議事録、肝腎なところを置いてきちゃいましたけれども、そういうふうに答弁しておられたんですよね。加藤大臣の答弁とちょっと違うんじゃないかと思うんですけれども。

武見国務大臣 一貫しております。

 要は、こうしたお薬手帳の中には、OTC医薬品の服用歴であるとかその他いろいろ、患者さん個人個人がいろいろな情報を実は記入しております。そうしたものを組み合わせて、今、デジタル化が進む中で、マイナポータルの中で管理されるそうした情報と併せて活用していただくという必要性を認めてそうなっております。しかし、これは、デジタル化が更に進んで、こうした情報がきちんとうまくデジタル化の中で吸収できるようになれば、これは次第にデジタル化の方に実際にその役割というのは吸収されていくことになるだろうと思います。

 したがって、その考え方は、前任の加藤厚労大臣と私、基本的には変わりございません。

西村(智)委員 加藤大臣は、マイナンバーカードを使わないという方がいらっしゃればお薬手帳というのはあるというふうにおっしゃって、だんだんなくなっていくだろうという考え方を示しておられるんですけれども、私はやはりちょっと違うんじゃないかなというふうに思います。

 大臣、もう一回、マイナ保険証、それは持ちたい人は持っていいと思いますが、私、この七月の五日の地こデジの特別委員会のときにこういう質問をしたんです。

 一度登録したら、マイナ保険証は、要するにデータを解除できないというか切り離せない、そういうシステムだった。間違ってマイナ保険証を登録してしまった二十七人についてだけは解除するんだけれども、それ以外、いっとき自分の意思として登録をした人は解除できないというそういう仕組みになっていたのを、私は解除すべきではないかというふうに質問しましたら、八月の九日ですか、デジタル庁から出された検討会の最終報告で、解除できるというふうになったんですよ。

 私、何かここまでやってきてどうしてマイナ保険証に政府がこだわり続けるのかという理由がよく分かりません。お薬手帳は残ってもいいという今の御答弁、それから解除するということについても認めていただいたという八月の検討会の最終報告、ここまで来ていますから、紙の保険証を残したいという声にもここはもう応えていただくという、今、大英断するときじゃないかというふうに思います。

 大臣も新任になられた、着任されたばかりですので、変えるチャンスがあるとすれば今だと思うんですよ。大臣、ここは御判断いただけませんでしょうか。

武見国務大臣 私はかねてから医療DX推進の急先鋒でもございまして、やはり、コロナで、我が国はもう見事なまでのデジタル敗戦でしたよ。この状況を一日も早く私は克服して、そして、国民一人一人の大事な健康に関わるデータというのが、やはり国全体で一元的に、しかも安全性をきちんと確保した上でしっかりとシステムとして管理できる、そういう仕組みをつくるというのは、もう医療制度改革の中でも一番の急務になっているというふうに思います。

 そのことを国民のお一人お一人にもしっかりと理解していただくために、そのメリットについての御説明もこれからもずっと一貫してやりますし、それから、いろいろな問題が過去にあって、そこで一旦信頼が失われたような状況が出てきたことについては、この十一月末にそうした過去の課題について全部整理をして、そして新たな対応策については示すことになりますから、その中でマイナ保険証というものについても、常に国民の一人でも多くの皆さん方がお使いいただけるように、今まさに、一度でいいからとにかくマイナ保険証を使ってみましょうよというキャンペーンをやっているところでございますので、是非その辺の私の立場も御理解いただければ大変幸いであります。

西村(智)委員 使用している人はほんの数%。私は、医療のデジタル化は大賛成でありますけれども、今のやり方ではうまくいきませんというふうに思っております。

 是非、大臣、根っこのところからもう一回一緒にシステム、考えませんか。そのことを申し上げて、終わります。

田畑委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 今回の法改正を急がなければいけない理由の一つは、諸外国で認可されている大麻由来の医薬品を日本でも使えるようにする必要があることであります。

 大麻の花や葉っぱが原料に入ると違法という必ずしも科学的とは言えない現在の規制から、麻薬効果のないCBD、そして麻薬効果のあるTHCといった成分による規制に変えることで、難治性のてんかんに効くエピディオレックスという薬が認可できます。

 ただ、せっかく認可されても、大麻由来医薬品が限られた医療機関や薬局でしか処方されない、手に入らないとなると、これは、てんかんの患者さんはただでさえ複数の薬剤を使っておられますので、薬によって行く病院や薬局を複数回らなければいけない。大変負担になるわけでもあります。

 参考人に伺いますが、制度面だけでなく、実際に多くの医療機関や薬局で新しい認可される薬が処方されるようになるのか、お伺いいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案におきましては、大麻草から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置づけることで、流通規制の下でその施用や製造等を可能とするということといたしております。

 大麻草から製造された医薬品は、医療用麻薬としての規制を受けることになりまして、他の医療用麻薬と同様に、麻薬施用者の免許を受けた医師が従事する医療機関における処方でありますとか、麻薬小売業者の免許を受けた薬局における調剤が全国どこでも可能となるものでございます。

 令和三年の末の時点でございますが、麻薬施用者の免許を受けた医師が約二十六万人、麻薬小売業者の免許を受けた薬局は約五万二千か所となってございます。多くの医療機関や薬局で取り扱うことは可能と考えておりますが、大麻由来医薬品を求める患者様が確保できるようにするために、医療機関や薬局への流通が円滑に行われるように配慮してまいりたいと考えております。

井坂委員 もう一つ、新しく認可される薬の運用のことで確認をしたいと思います。

 これまで、大麻の規制は都道府県の条例によるものが多く、別の県に行くと使えないなど、不便な状況がありました。今回の法改正で大麻由来医薬品が認可され、管理や取扱いのルールは国が一律に定めることになります。患者さんや御家族のためにも、細かいルールや運用が都道府県によって異なるという状況にしてはならないと思いますが、いかがでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、先ほどお答え申し上げましたように、大麻草から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置づけるということといたしております。

 この改正法案が成立いたしました場合、大麻草から製造された医薬品につきましては、医療用麻薬としての規制を受けることになりますが、医療用麻薬につきましては、厚生労働省におきまして、病院、診療所、薬局における管理マニュアルを示しまして、全国統一的な運用がなされているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、都道府県と連携いたしまして、大麻草から製造された医薬品の流通が円滑に行われるように取り組んでまいりたいと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。是非そのようにお願いいたします。

 今回の法改正で賛否が分かれる最大の争点は、大麻使用の犯罪化であります。ごめんなさい、ちょっと時間の都合で三番目、四番目を飛ばして後回しにしたいと思います。通告の五番目に行きます。

 午前中の参考人質疑でも、賛否両論の激しい議論がありました。しかし、依存症患者に医療や離脱プログラムが提供されないことは、両者が共通して懸念をしていることであります。

 そこで大臣に伺いますが、犯罪化で処罰して終わりということではなく、司法介入はあくまできっかけにして、医療や各種のプログラムに適切につなげることが最重要ではないかと考えますが、所見を伺います。

武見国務大臣 今回の改正法案では、大麻を麻薬として規制して、施用罪を設けることとしております。その目的は、麻薬及び向精神薬取締法で規定しているとおり、麻薬及び向精神薬の乱用による保健衛生上の危害を防止して、もって公共の福祉の増進を図ることがその目的になっております。

 審議会でも、薬物依存症治療の専門家から、逮捕などをきっかけに薬物依存の治療につながった事例もあるという意見もあったところでもあります。それから、治療などの推進のためにも、施用罪を設ける意義はあるというふうに考えているところでございます。

 また、他方で、御指摘の医療ケアや治療プログラムについて、麻薬取締部では、現在も断薬プログラムの提供や地域の社会資源への橋渡しなどの支援を行っておりまして、来年度は更にその拡充を行うことを今検討しております。さらに、相談拠点、専門医療機関の整備も推進をして、治療等の対応も行っておりまして、今後もこうした取組を進めてまいりたい、こう考えております。

井坂委員 先ほど西村議員との質疑でも、大臣もそういうふうに考えていただいているというのはよく分かっております。ただ、後ほどちょっと法務省さんとも議論するんですけれども、やはり、実際、犯罪化ということが法律で定められてしまうと、どうしても、本当に犯罪があれば実際に逮捕しなければいけない、検挙しなければいけないというふうになりかねないので、さっき答弁でおっしゃった、そもそものこの法律の目的の部分をしっかりと、そこが最重要なんだということを改めて厚労省内外に徹底をしていただきたいというふうに思います。

 今回、大麻使用を犯罪化するデメリットの部分は、先ほども少し議論がありましたが、大麻を使ってしまい、やめたいと思っている患者が相談をしたら、通報されて逮捕されてしまうおそれがあることであります。また、逮捕を恐れて大麻使用者が治療や相談をためらって、問題や症状が悪化をしてしまうということがデメリットであります。

 実際には、これまで、先ほども答弁にもありましたように、医療機関や相談機関は、相談を受けても通報せずに治療や支援につなげている例が多くあると承知をしております。今回の法改正で大麻使用が犯罪というふうにされても、医療機関、それから相談支援機関、また国立大学の保健管理センター等々が依存症患者から相談を受けたときは、基本的には通報ではなく今までどおり適切な医療や支援につなぐべきだと考えますが、そこをはっきり言っていただきたいと思います。

武見国務大臣 御指摘の課題については、やはりケース・バイ・ケースで考えていくべきもので、守秘義務が尊重されるべきケースというのは、先ほど西村委員からも御指摘があったようなケースはそれにまさしく当たるんだろうと思いますが、先ほども申し上げたとおり、犯罪に関わることがかなり明白に認識されるようなケースとか、そういう場合には、やはり、通報していただくことによって犯罪の広がりを阻止するということが必要になってまいりますから、その点に関わる配慮も当然していかなければならないということは御理解いただきたいと思います。

井坂委員 そのとおりなんですが、事前に当局の方とも相当やり取りをしまして、基本的には通報ではなく今までどおり適切な医療や支援につなぐべきだ、これぐらいは答弁をいただけるというふうに思っておりますので、お答えをいただきたいと思います。

武見国務大臣 先ほども申し上げたとおり、医師等には守秘義務があるということは改めて確認をさせていただきます。そして、精神保健福祉センターとかこういった相談支援機関などで従事する者、これは医師ではありません。しかし、刑事訴訟法に基づき、公務員として告発義務が課されております。しかし、そのような場合でも、職務上正当な理由があれば、告発するか否かの裁量を全く否定するものではないというのが現状の認識であって、これは改正前も改正後も変わりはございません。この取扱いは本改正法案が成立、施行された後でも変わりがないんだということを改めて確認させていただきます。

    〔委員長退席、大岡委員長代理着席〕

井坂委員 この議論は、本当に、一般の人からすると、えっ、違法なのは分かっていても通報しなくていいのというのは、やや驚きのあることだと思いますので、特に大学なんかは、知ったのに通報しないのはけしからぬみたいな議論になると、これは本末転倒だというふうに思いますから、あくまでこれまでどおり、やはり相談支援機関は、もし聞いたら通報するなどということが思われたら誰も相談に来ないわけで、相談支援機関の役割が果たせませんから、薬物の相談支援の。あるいはお医者さんもそうで、もし知ったら通報しなきゃいけないみたいなふうに思ったら誰も治療に行けませんので、本来の任務のために通報しないという取扱いが、むしろそちらが基本なんだということは、我々は今回、この件でよく知ることになりましたが、是非、世間一般にも、あるいは大学であれば大学の関係者にもきちんと伝えていただきたい。

 本来任務を守って通報しなかった人が、何か犯罪者をかくまったみたいな間違った批判を受けることは絶対ないようにしていただきたいと思うのですが、そこだけお願いいたします。

武見国務大臣 御指摘のとおり、やはり現場における医師等がケース・バイ・ケースでその判断をしっかりとしていただいて、そして、御指摘のような、相談すると直ちに改正によって逮捕されるようになるんだというようなこととは異なるということについては周知させていただきたいと思います。

 ただ、改めて、麻薬と同じ施用罪、これが適用されることになる理由は、やはり我が国は欧米諸国とは異なっていて、こういう大麻を使う方というのが相当少数に社会の中で抑え込まれています。これは全く違います。したがって、その今の状況というのをでき得る限り一次的に抑止するという意味で、こうした麻薬と同等の対応にさせていただくことになっていて、それは基本的には私は誤りではないと思いますので。ただ、その上で、運用するときに委員御指摘のような懸念が生じないよう努力していくことにいたします。

井坂委員 一次予防のメリットの部分については、私もそれは認めているところであります。ただ、今はちょっとデメリットの部分をしっかりと議論をしたいということでさせていただきました。

 今回の法改正で大麻使用を犯罪化をしても、それはやはり、処罰とかあるいは刑務所への隔離が目的ではなくて、あくまで依存症患者を適切に治療や支援につなげることが重要だと考えております。これが午前中の参考人質疑で犯罪化に賛成の立場の専門家も含めた共通認識だと思います。

 これは法務省さんに伺いますが、大麻使用者を何でもかんでも起訴するのではなく、起訴猶予にして、プログラムをきちんと最後まで受けてもらう、こういう取扱いも大事なのではないかというふうに思います。法務省さんとも昨日大分いろいろやり取りはさせていただいて、何でもかんでも起訴猶予にするなんという答弁はできないのはよく分かっておりますが、ただ、今の議論を聞いていただいて、普通の法務省のような取扱い、起訴してということではなくて、あくまで治療や支援につなげるという趣旨での今回の犯罪化だというところを踏まえて、最大限の答弁をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 一般論として申し上げますと、検察当局においては、個別の事案ごとに、法と証拠に基づいて、まず、有罪を立証するだけの十分な証拠があるかどうかを判断いたします。その上で、犯罪の軽重及び情状、犯罪後の状況といった様々な事情を総合的に考慮して、起訴するか否かを判断しているものと承知しております。

 そして、大麻を含む規制薬物の罪に係る被疑者が御指摘のような医療機関の治療プログラムなどを受講したこと、これを犯罪後の状況の一つとして起訴、不起訴の判断に当たって考慮することはあり得るものと承知しております。

 いずれにしても、そうしたことを含めて、先ほど申し上げたような様々な事情を総合的に考慮して、起訴、不起訴の判断をするものと承知しております。

井坂委員 起訴猶予とかになって、じゃ、プログラムを一生懸命受けていれば、それでそのまま不起訴になるのか、そういう単純なことではないのはよく理解をしておりますが、答弁をいただいたように、そういったことも一つ、反省し、悔い改めていることの判断材料になるという考え方で、是非そちらの方になるべく持っていっていただきたいという思いで質疑をさせていただいております。

 それから、先ほども少し西村委員の方から通告外ということで質問がありましたが、それは通告外ということでざっくりしたお答えだったわけでありますが、こちらはきっちりと通告をして御準備いただいておりますので、きっちり御答弁をいただきたいことがございます。

 それは、犯罪化をすることで、前科であったり実名報道によって依存症患者の社会復帰が難しくなってしまう、これも、今回、犯罪化に反対をされる方の大きな理由になっています。これはやはり、前科、実名報道などに対して何らかの対応が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 実名公表を行いまして、これが、実名報道をされることによりまして、薬物依存症の方のスティグマ、偏見となっているとの御指摘があることを承知をいたしております。

 一方で、実名公表が国民の知る権利の保障に努める報道機関の役割や報道機関の記事の信頼性につながるものであるということも、実名公表を行う理由である、そういった側面もございます。このため、公的機関におきまして実名公表を行わない場合には情報の隠蔽につながるとする指摘を受けるおそれもあるということでございます。

 こういった課題を踏まえつつ、こうした御懸念を含めまして、捜査機関との間で共有をいたしまして、薬物事件の広報においてどのような対応が可能かも含めまして、慎重かつ適切に対応してまいりたいと考えております。

井坂委員 昨日議論させていただいた段階では、施用罪について報道発表が必要なのかどうかということについても関係機関で慎重に検討したいぐらいのことはお答えいただけるのではないかというふうに伺っておりましたが、それぐらいは言えませんか。

城政府参考人 そういった御指摘いただいたことも含めまして、捜査機関の間で共有をいたしまして、薬物事件の広報においてはどのような対応が可能かということも含めまして、慎重かつ適切に対応してまいりたいと考えております。

井坂委員 ちょっと残念で、せっかく二日前に通告して、一日前に綿密なやり取りをしても、当日が後退をしてしまっては、何か通告する意味がないなと思ってしまうんですが。

 何か、それも含めてとかいうことではなくて、午前中にも、実際、参考人の方から、島根の方、実際、警察の方が大麻所持をしていたけれども、でも、それは起訴猶予にして、結局不起訴になった、実名も報道しなかった、これが適切な例として紹介をされたわけであります。

 何をもって微罪かとか、何をもって知る権利かというのは、これは当然議論があるところでありますが、しかし、せっかく昨日議論させていただいたので、ちょっとそのラインでぐらいはお答えいただきたい。報道発表が必要なのか、特に、実名による報道発表は必要なのかどうかということそのものを慎重に検討してくださいよ。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたような実名公表が必要かどうかということにつきましても、これは、捜査機関の間で共有をいたしまして、適切に検討をしっかりいたしていきたいと考えております。

    〔大岡委員長代理退席、委員長着席〕

井坂委員 ありがとうございます。

 続きまして、また大臣に、これは九番目ですね、お伺いをしたいと思います。

 今、もちろん、大麻の利用が増えているということで、大臣、先ほど答弁でおっしゃっておられました。しかし、実はもっと増えている深刻な薬物依存があります。

 午前中に依存症支援団体の田中紀子参考人が資料を持ってこられたこの八ページ、今お持ちの方がおられたらあれなんですけれども、八ページの黒いグラフを御覧いただくと、これは国立精神・神経医療研究センターの研究データです。厚労省も補助を出している正式な研究です。これを見ると、全国の精神科医療施設で、一年以内に薬物使用ありと答えた患者さんについての悉皆調査ですが、その一年以内に使用した主な薬物が何だったかというパーセンテージのグラフであります。

 確かに、二〇二二年、使った薬物の中で七・八%は大麻だったというふうになっているんですが、一番圧倒的に多いのは睡眠薬や抗不安薬で、これは二八・七%、それから市販薬も二〇%。大麻よりはるかに多くの市販薬や処方薬の大量摂取による薬物依存患者が発生をしています。

 大臣に伺いますが、この市販薬や処方薬に対する実効性のある対策はないものか、お答えください。

武見国務大臣 一般医薬品の乱用につきましては、現在、そのおそれのある医薬品に関しまして、適正な使用のために、必要な数量に限り販売することを求めるなどの取組を行っておりますが、依然としてその乱用は課題となっております。

 このために、有識者で構成される検討会において販売ルールの見直しに向けた議論を行うとともに、学校薬剤師などの協力を得て、青少年に対する乱用防止の啓発活動の取組を今現在検討しているところであります。

 また、処方薬の乱用については、重複受診による大量の処方を防ぐことが重要であります。したがって、いわば医療のデジタル化が進めばこうした重複受診みたいなものはリアルタイムですぐ捕捉できるようになりますので、とにかく、こうした医療DXはそのためにも確実に推進していかなきゃならないなというふうに思います。

 それから、現在、普及拡大に努めている電子処方箋、これも重複投与を検知できる仕組みでありますので、こうした大量の処方を防止するということのために、こうしたデジタル化というものも一日も早く実現をしたいというふうに思っております。

 このような取組を積み重ねて、関係機関と連携をしながら薬物乱用に向けた取組を進めていきたいと思います。

井坂委員 重複投薬についてデジタル化というのはおっしゃるとおりでありますが、私は、本当に、予算委員会でも申し上げたとおり、医療のデジタル化は推進の立場であります。ただ、現状は、まさに電子処方箋が広まっていなかったり、マイナ保険証では直近の投薬の情報は得られなかったりとか、この問題に関して今の政府がやっているデジタル化は対応できていない、遅れているということは改めて指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほどの黒いグラフで、市販薬や処方薬が非常に多いというのは大変問題なんですけれども、もう一つ私が見過ごせない問題が、このオレンジ色の部分なんですね、危険ドラッグ。危険ドラッグは、二〇二〇年、僅か〇・三%にまで減っていたのが、二〇二二年は三%と十倍に増えてしまっているわけであります。

 私は、二〇一四年に、こちらにいらっしゃる中島議員や山井議員と一緒に、危険ドラッグ禁止法を作った一人であります。夜な夜な池袋や新宿や渋谷や上野の危険ドラッグ店を回って、変装して実際に買ったりして、開けて確認をしたら、厚労省に、違法成分が入っていたら逮捕しなきゃいけないですよ、何てことをしたんですかと大目玉を食らったのも今はいい思い出であります。

 そんなこんなで、二〇一四年の秋に危険ドラッグの禁止法を与野党で作って、当時、その法律の後も私ども、店を回って、最後の二店舗はたしか新宿だったと思いますけれども、最後の二店舗も実際に当局に、ここにまだあるということで通報して、ようやく二〇一五年七月にゼロになったわけであります。

 ところが、去年ぐらいから、まさに今回の法案とくしくも同じ名前の合法大麻というあだ名で危険ドラッグが急速にまた増えてきて、そして、今年ぐらいは救急搬送なども増えて、調べてみたら、今、三百軒もの危険ドラッグ店舗がまた存在をしてしまっている、こういうゆゆしき事態であります。

 大臣に伺いますが、当時、議員立法では、販売等停止命令という新しい武器を作りました。当時は、イタチごっこで、成分が分からない、成分を調べている間にもう危険ドラッグ業者はちょっと形を変えた次の新製品を出して、禁止されたと同時に次の製品を売り始めるということが大体一、二か月スパンで行われていたわけでありますが、議員立法で、成分は分からないけれどもまず販売停止をする、成分が分かってオーケーであればまた販売していいよと。ただ、ほとんどの場合は、販売停止をした後調べたら、当然、麻薬性の強い成分で、そのまま違法薬物に指定をされるという形で、ある種、議員立法でしかできない強烈なやり方でこれを抑えることを我々はやったわけであります。

 その武器がどう使われているのかなと思って気になって、この販売等停止命令の実施件数というものをこの十年間、昨晩遅く、一時半ぐらいにメールが来たので本当に申し訳なかったと思いますが、数字を出していただきました。

 そうすると、二〇一四年には、この法律を作った年には九十六件もの販売停止命令が実施をされて、翌年二〇一五年には二十八件、二〇一五年の七月に店舗がゼロになって、その後はおおむね販売停止命令はゼロ件でずっと来て、去年、今年とようやく六件ずつ販売停止命令が実施をされているわけであります。

 大臣に伺いますが、この当時作った議員立法で規制し切れなくなって今また危険ドラッグ店舗が増えてしまっているのか、あるいは、規制はできるんだけれども、ちょっとこの実施が少なくて増えてしまったのか、お伺いをしたいと思います。

武見国務大臣 御指摘の二〇一四年の議員立法でお作りいただきました危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策に基づく徹底した取締り、確実に効果はございました。二〇一五年七月には、危険ドラッグ販売店舗を全て廃業にいっときは追い込みました。しかしながら、今年八月の危険ドラッグに関する実態調査結果、さらに昨年の危険ドラッグ事犯の検挙人員数によりますと、現在、危険ドラッグの乱用が再燃していると考えられます。

 この要因を二つ挙げておきたいと思います。第一が、使用が容易な電子たばこ形態の新しいタイプの危険ドラッグが流通し始めたこと、二つ目は、大麻に類似する危険ドラッグ成分を合法大麻と称して販売する広告や店舗等の増加といったことが挙げられます。

 厚生労働省としましては、この危険ドラッグについて、包括指定を含め、指定薬物への迅速な指定を行うとともに、販売店舗への立入検査、それから検査命令、販売停止命令などを行って、関係機関とも連携して厳しく取り締まっていくようにしたいと思います。

井坂委員 今の法律で取り締まれないような形にはなっていないという御答弁だと理解をいたしますので、是非、今ある武器を最大限に使って、また二〇一四年、一五年当時のような質と量でこの仕事をやっていただきたいというふうに思います。

 特に、合法大麻というあだ名で今回広まっているのが、今回の法改正とリンクをして、何か、大麻の合法化とか、あるいは、CBDという大麻の中の合法成分がこれからどんどん広まったり、あるいは、大麻由来の医薬品が認可をされたり、いろいろなニュースが同時に出ると、本当に、大麻ということに対してのハードルが今下がっている時期だと思いますので、是非、この危険ドラッグに関しては厳しい取締りをよろしくお願いをいたしまして、質疑を終わります。

 どうもありがとうございました。

田畑委員長 次に、山井和則君。

山井委員 二十分間、質問をさせていただきます。

 今日は大麻取締法ですが、その大麻取締りと、それに関連しまして、今お話がありました危険ドラッグの問題。また、日本で一番大麻が蔓延しているだろうと言われているのは歌舞伎町なんですね。その歌舞伎町、私も先日も調査に行ってまいりましたけれども、そこで今問題になっているのがホストクラブの売掛金問題。これは昨日、塩村議員も国会で質問をされました。そのことについても、大麻に関連して質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭、今、井坂議員からもありましたが、二〇一四年に危険ドラッグ禁止法というのをこの厚生労働委員会で、超党派で作りまして、そのときの大臣が田村厚生労働大臣で、危険ドラッグ運転の被害者の御遺族の方にも田村大臣が本当、会っていただいて、党派を超えて危険ドラッグの禁止に取り組んで、私と中島さんと井坂さんと歌舞伎町に何回か行って実際、危険ドラッグを買って、警察と厚労省に怒られて。そういうこともしながらですけれども、党派を超えて、一旦はゼロにまでなりました。それと同じように、これからも、大麻、危険ドラッグ、そして、今言っています、それに関連してホストクラブの売掛金問題というものを超党派で、この厚生労働委員会で、今回は武見大臣のリーダーシップの下、何とか解決できないかと思っております。

 それでは、今、大麻、若者の大麻の検挙が非常に増えているわけでありますね。その中でも、残念ながらというか、最も深刻なのは歌舞伎町なんですね。

 ここにもありますように、トー横キッズ、薬物が横行、蔓延ということで、今日の配付資料の中でも、これはつらい内容ですけれども、四ページを見ていただきますと、大麻の売買がトー横キッズで行われている、トー横キッズの子供たち、未成年が悪い大人に唆されて売人をさせられているとか、残念ながら、大麻部屋というのがあって、そこでトー横キッズの子供たちに、あるいは大人の人たちに大麻が広がっている、こういう問題があるわけです。

 そして、非常に残念ながらというか、こういう大麻の売人ですね、売っているのに、一部ですけれどもホストの方がいると。そしてまた、実際、女性からの被害としては、ホストとつき合ったらそのホストが大麻を吸っていて、自分は大変な思いをしたというような被害の声も聞いたことがあります。

 そういう中で、まずお伺いしたいと思いますが、歌舞伎町での大麻の蔓延の現状、大臣、どう認識されておられますか。

武見国務大臣 日本有数の歓楽街でございます歌舞伎町において、暴力団組織それから外国人組織が薬物密売拠点を構えて、これらの組織が大麻など多種多様な薬物を組織的に密売しているのは現状にあるんだということは承知しております。

 その上で、若者が多く歌舞伎町に集い、こうした密売組織から大麻を始めとする薬物を購入し、大麻などが乱用されている状況があるものと認識をしています。

 こうした現状から、麻薬取締部におきましては、薬物密売組織に対する取締りを強化するとともに、警察など関係機関と集中的な取締りも実施しておりまして、こうした対策強化、引き続き続けていきたいと思います。

山井委員 今もありましたように、残念ながら、日本の中でも、東京の中でも最も大麻が蔓延していると言われているのが歌舞伎町なわけですね。これについては、厚生労働省も警察庁も今必死で取り締まりいただいていることは、私もそれについては認識をいたしております。

 そういう中で非常に私は気になりますのが、まあ後ほど、この法案がどういう大麻の取締りの効果に実効性があるかということは質問したいと思うんですけれども、最後のページを見ていただけますでしょうか。前から私は非常にこの問題は気になっているんですけれども、最終ページ、十八ページですね。十八歳の誕生日をホストクラブで、二、三回の来店で七百万円、偽の住所の婚姻届を信じ風俗へ。残念ながら、昨年四月から成人年齢が引き下げられたので、ホストクラブのターゲットが十八歳、十九歳になってしまっているという現状があるわけですね。

 それで、どういうわながあるかといいますと、十ページ目を見てください。昨日も塩村議員が指摘しておりましたけれども、悪質ホスト。今日質問しますけれども、全てのホストクラブ、全てのホストさんが悪質だと言う気は私は全くありません。しかし、今日は私は、悪質ホストと言われる人たちの問題について問題提起したいんです。

 悪質ホストの研修教材入手と。マインドコントロールをするというんですね。ホストクラブでは女性のお客さんのことを姫と呼ぶ。まず、色恋をして、疑似恋愛を提供する営業方法、そしてそれが高じると、本営といって、本当の彼女として、それで高いシャンパンを、五十万、百万、あるいは三百万のを入れてもらう、こういうやり方になるわけです。残念ながら、巧妙な、こういうマインドコントロールのマニュアルがあるわけですから、これにからめ捕られて、高額のシャンパンとかを入れさせられたりする。

 例えば、典型的なケース、十一ページを見てください。典型的なケース、事例二ですね。二十歳前半の女性。ナンパされて話を聞くと、初回三千円と懇願されて、ホストクラブに連れていかれた。初回三千円。二回目行くと、支払いで十万円と言われ、手持ち現金がなく、身分証を撮られ、売掛金、借金をさせられた。後日、支払いに行くと、今日は支払い日でないからとお酒を勧められた。酔っている状態で高額なシャンパンを入れるように迫られた。四、五回繰り返した後で、売掛金が百万円になっていることを言われ、出稼ぎ、福島県の違法風俗店に連れていかれた。こういうケースが、今、残念ながら多発をしております。

 実際、これがその伝票です、十三ページ。つまり、売掛金、ツケですから、正式な領収書じゃないわけです。これは青伝と言われるんです。青いから、ツケだから。見てください。一枚百二十万円ですよ。十八歳とか二十歳の女性が払えますか。百二十万円、一回ですよ。それで、この左を見てみても、一回で七十七万三千円、三十二万五千円、一回九十万円。

 これは、言っちゃ悪いけれども、大金持ちの男性でも無理ですよ。それが、十八歳とか十九歳とか二十歳、若い女性がターゲットにされているわけです。

 その結果何が起こっているかというと、返せないですよね。返せなかった女性が逃げたら、先日も事件が起こりましたけれども、ホストの関係者に拉致監禁されて暴行を受けたとか。なぜかというと、ホストもお店から追い詰められているところがあって、そのツケを払ってもらえなかったらホストが立て替えないと駄目だから、ホストも必死になって取り立てる。

 その結果どういうことが起こるかといいますと、ここにありますように、配付資料八ページ。結局、客に売春をさせた容疑、元ホスト十人超逮捕。結局これは、歌舞伎町のホストクラブで、売掛金を二十代女性に対して、早く金をつくってこいと言って一千万円を要求して、これは大変ですよ、東京都や福島、愛媛、熊本、大分、沖縄のソープランドをずっと回らされた。かつ、八ページ右下。この被害なんか、風俗店に女性をあっせん、一年間で千六百人。千六百人ですからね。さらに、実際、名古屋であったケースでは二千人、ホストクラブの借金で苦しむ女性を二千人風俗店にあっせんした。

 これはもう、こういう例がありますよじゃなくて、残念ながら、常態化しているんじゃないんですか。高い借金を若い女性に背負わせて、払えるはずもないから、払うには風俗しかないよと。

 そこで、武見大臣にお伺いをします。

 歌舞伎町などで頻発している深刻な問題について、若年女性客の月収をはるかに上回る数十万円、数百万円の高額な売掛金がホストクラブでできた場合、ホストが売掛金の返済のために客の女性に風俗や売春の仕事をあっせんした場合、職業安定法の六十三条の一号と二号に違反するのではないですか。いかがですか。

武見国務大臣 違反いたします。

 罰則の適用に関する条文でありまして、最終的には個別の司法判断にはなりますけれども、一般的に、借金等の弱みにつけ込み、精神的自由を不当に拘束して行う職業紹介など、それから、風俗業や売春などの有害業務に就かせるための職業紹介などは、それぞれ、職業安定法第六十三条第一号、第二号に該当すると考えます。

山井委員 そのとおりなんです。これは配付資料十四ページに、職業安定法六十三条一号、二号。読み上げませんけれども、明らかに違反している可能性が高いんですね。

 先ほども言ったように、一つのあっせんグループが千六百人とか二千人を、こういう借金を抱えた人をソープランドや風俗に送り込んで、捕まっています。これは、警察も厚労省も頑張ってくださっているんです。でも、それ以外の、下手したら被害者は何万人もいるんじゃないでしょうか。

 ついては、ここで、武見大臣、今おっしゃってくださったように、職業安定法違反、有害な職業にあっせんする、あるいはマインドコントロールであっせんするということに違反している事例が多いんです。是非、ホストクラブの高額な借金に関して風俗をあっせんして、そしてそれを借金返済をさせる、こういうことに関しては違法の疑いがあるから厳しく厚生労働省としても警察と連携して取り締まりたい、その御決意をお願いします。

武見国務大臣 職業安定法に違反した違法なあっせんなどにより、女性客である労働者が有害業務に就く被害に遭わないよう、警察と連携して、適切に対応してまいります。

山井委員 それに関して、残念ながら、ホストクラブのツケ払い、売掛金で借金ができた方を風俗に紹介するのは違法だと知らなかったと言っているホストの人たちも多いんですね。

 ついては、これは、女性に対しても啓発が必要ですし、ホスト業界にも啓発が必要なので、ホストやスカウトによる風俗や売春のあっせんは職業安定法に違反し違法だと啓発するために、QアンドAを作成し、厚生労働省のホームページに公表していただけませんか。いかがですか。

武見国務大臣 職業安定法第六十三条は、暴行、脅迫等によるあっせんや有害業務へのあっせんから労働者を保護する趣旨で設けられたものであります。御指摘いただいたホストによる女性客への風俗等へのあっせんを含め、今日の様々な問題についても本条が同様に適用されるものであります。

 法の趣旨や考え方などについて、QアンドAのような形で適切に周知してまいります。すなわち、ホームページなども使って、QアンドAなどを作成し、周知徹底に努めてまいりたいと思います。

山井委員 ありがとうございます。

 結局、考えてみれば、十八や二十歳過ぎの若い女性に数百万のツケを払わせるといったら、そんなこと、お金が入る仕事というのはありますか、一般の仕事で。ストレートにこれは風俗業のあっせんになってくるんです。今の武見大臣の答弁でQアンドAができたら多くの方が救われるのではないかと思います。

 ついては、これは消費者契約法にも違反するんじゃないかと思います。先ほど言ったホストのマニュアルにもあるように、恋愛を誤認させ、若年女性に対して高額なシャンパンを入れさせることは、消費者契約法のデート商法の違反、ここにありますけれども、デート商法の違反に当たり、これは取消しが可能なのではないか。もしそうであれば、そういう内容を、違法、つまり取消し可能であるということを消費者庁のホームページにも公表し、啓発、注意喚起すべきではないですか。

黒木政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者契約法は、消費者の利益を守るため、消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消し等について規定をしております。

 委員御指摘のとおり、好意の感情などを不当に利用した契約、いわゆるデート商法につきましては、法第四条三項六号に取消権を定めておりまして、御指摘のような手法が本条に定める要件に該当します場合には、取り消し得る可能性があるということでございます。

 このような好意の感情などを不当に利用した契約が消費者契約法に基づく取消しの対象となり得るということにつきましては、これまでも周知をしてきているところでございますけれども、委員の御指摘も踏まえ、更なる消費者への周知に努めてまいりたいと思います。

山井委員 配付資料十五ページを見てください。消費者契約法で、デート商法、つまり、消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げた。つまり、シャンパンを入れてくれなかったらもうあなたのことを嫌いになっちゃうよとか、そういうふうなことで、結局、シャンパンを五十万、百万、三百万と入れざるを得ないようにする。これはマインドコントロールであって、今おっしゃったようにデート商法という違法に当たるわけですから、取消しが可能であると。

 先ほどの厚生労働省のホームページとともに、消費者庁もホームページに載せてくださるということですので、これをやはり、私たちも周知していけばかなりの被害者を、私は減るのではないかと思います。

 しかし、それに加えて、一番頼りにしておりますのは、やはり、厚生労働省と消費者庁とセットで、警察庁さんなんですね。学生も含め多くの若い女性がこういう被害に遭っているわけであって、早急に被害を防止すべきです。

 ついては、警察庁さんも今までから必死で取り締まって逮捕してくださっていますが、九月にも百店以上のホストクラブに立入りをし、注意喚起をして頑張ってくださっているわけですけれども、私からの要望は、これだけ問題が深刻化しているんですから、再度立入りをし、まず一点目は料金表。このシャンパンは五十万ですよ、百万ですよという料金表がないところがあるわけですね。それはおかしいでしょう。

 かつ、料金表があっても、聞いてみたら、今日も関係者の方が傍聴に来てくださっています、支援団体の方々が。結局、料金表があっても見せないというんですよね。見せない、それは駄目でしょう。やはり見せてもらわないと駄目だし。

 かつ、今日の支払いが五十万だったのか百万だったのか、領収書、明細がないと、三、四回行ったら合計二百万ですと言われたって、それは困りますよね。やはりこれは、警察庁さん、しっかりと領収書と明細も発行するように。

 さらに、今も答弁があったように、売掛金が重なったからといって風俗へあっせんしたら職業安定法違反で逮捕される可能性がありますよと。

 さらに、これはうそですからね、本当の恋愛だったら仕方ないけれども、好きですよとか同棲しようとか結婚しようとまで言ったりしてだまして、結果的にそれで高額なシャンパンを入れさせた場合には、今消費者庁から答弁があったように、消費者契約法違反のデート商法に当たり、契約取消し、つまり売掛金は支払わなくてもよいということになると。

 そしてさらに、犯罪の原因ともなっている多額の売掛金を支払わせるような悪質なホストクラブ商法はやめるべきというようなことをトータルで、もう一回立入りをして、ホストクラブに注意喚起、指導すべきと考えますが、いかがでしょうか。

和田政府参考人 警察では、違法行為について、売春防止法違反や職業安定法違反で検挙するなどの取組を行っているところです。また、ホストクラブに対する立入りなども実施しており、御指摘のとおり、本年九月、警視庁において、歌舞伎町のホストクラブに対する立入りに際し、売掛金回収に関するトラブル防止のための注意喚起を行ったものと承知しております。

 今後も、違法行為に対する捜査を始めとして、風営適正化法の遵守の徹底や、効果的な広報啓発、注意喚起など、様々な対策を引き続き講じてまいりたいと考えております。

山井委員 もう時間になりますので、最後、発言だけしますが、七ページを見てください。残念ながら、大久保公園の辺りに立っておられる女性の人たちが今年八十人摘発されて、四割はホストクラブのツケが動機だということなんですね。

 あえて言いますけれども、立ちんぼというふうに呼ばれていますけれども、私は、この呼び方はよくないと思うんですよ。好きこのんでやっているわけじゃないんですよね。こういうふうに男性に半ばだまされて高額な借金を背負わされて、その性を売らざるを得ない状況に追い込まれているわけですから、逮捕した、悪いことをしている、そうじゃないんですよ。その人たちが何でそういう状況に追い込まれたのかということを根絶するのが、武見大臣や、自民党さん、公明党さん、野党、私たちを含めた大人の責任ではないかと思います。

 これからもこの問題には取組をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田畑委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 ありがとうございます。日本維新の会の一谷勇一郎です。

 午前中の参考人の質疑に引き続いて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、今回の法改定について、全般的な質問になるんですが、もろもろの細かいルールやガイドラインが制定されるスケジュールや、そしてプロセスはどのようになっているか、事業所の意見をまた聞いていただけるような余地はあるのかということについて、参考人の方にお伺いをいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法改正に向けまして、二〇二〇年に大麻等の薬物対策のあり方検討会を、そして二〇二二年には厚生科学審議会の大麻規制検討小委員会を開催をして、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた技術的な検討を行ってきたところでございます。

 そうした審議会や麻産業を振興する団体による勉強会などを通じまして、専門家のみならず、大麻の栽培者、栽培希望者や、産業利用を目指す業者などから幅広く意見を伺い、そうした意見も踏まえまして、栽培目的を広げた上で、合理的な栽培規制の下で栽培できるよう改正をすることとしたところでございます。

 法案が成立した際には、製品に関するTHCの残留限度値や検査方法については公布の日から一年以内に、栽培する大麻草の濃度や検査方法については公布の日から二年以内に、海外の規制も参考としつつ、専門家の意見も聞きながら定めることといたしております。その際は、パブリックコメントの実施を含めて、CBDに関係する事業者などの関係者からの意見聴取も行ってまいりたいと考えております。

一谷委員 今の話でいきますと、一年目は、医療品というんですか、そういったところの、もう治験は始まっていると思うんですが、使用を認めていって、二年目になると、大麻農家の都道府県知事の認可が始まるというようなスケジュールでよろしいでしょうか。うなずいておりますので、そういうふうに認識をしました。

 そこで、私が、医薬品については、やはりてんかんの症状をお持ちの方もいらっしゃって、非常にスムーズにやっていただくことが大事だと思うんですが、そもそも、都道府県知事の認可をして大麻農家を増やしていくというところに対して少し疑問があります。

 てんかんをお持ちの患者さんの数というのは大体分かっていて、それに必要な薬の量も分かると思います。ですから、その量を今全て輸入に頼っている、輸入に頼るのはいけないので農家で栽培しようとしたときに、どれぐらいの農家さんが要るかというのは大体分かってくるんじゃないかなというふうに思うんです。

 その辺を考えて、どれぐらいの農家を増やせばいいかということがあると思うんですが、そもそも、大麻農家をなぜ増やしていかなければならないのかということについてちょっと疑問がありますので、ここは大臣にお答えいただけたらと思いますので、お願いします。

武見国務大臣 現在、国内で栽培されている大麻草は、神事、祭事のしめ縄などの主な繊維が利用されておりますけれども、免許を受けた大麻栽培者の数は全国で二十七名、大変少数であります。伝統的な麻文化の継承が困難な事態に陥っております。

 また一方で、海外では大麻草の産業利用が進んでおりまして、大麻草の繊維の利用以外にも、医薬品原料、それからCBDといった成分の抽出、利用、バイオプラスチックなど、様々な活用が進められています。

 こうした中で、栽培農家の方々や産業利用の推進に関心のある事業者の方々からの要望も踏まえて、我が国でも、大麻草の安全確保や乱用防止対策の向上のための措置を講ずることを前提に、栽培者の負担軽減や栽培農家の継承、今後の健全な産業利用なども考慮をし、合理的な栽培規制へと見直す必要があると考えたものでございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 この質問を作る前に政府の方とやり取りしていると、農家の方からの要望が多かったというふうにお聞きし、大臣もうんとうなずいてくださいました。

 私、二十七人というと非常に少ない人数だなというふうに思うんですが、その方々の民意が反映されて今回の法改定になったというふうな感じなんですが、大麻栽培で町おこしという厚生労働省が出されている資料を見ると、この十ページ、配付はしていませんけれども、農家の方は非常に、大麻栽培は重労働だというふうに書いてありますし、大麻の栽培には多様な費用と手間がかかるとか、せっかく栽培した大麻も販売先があるとは限らないとかというふうに、何かちょっと後ろ向きのようなことが非常にたくさん書かれている中で、本当に大麻農家の方々が農家の数を増やしてほしいということをおっしゃったのかなというふうにちょっと疑問に思っていて、ここが非常に自分の中で腑に落ちないので、ここは大臣でも参考人の方でも結構ですので、お答えをいただけたらと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 栽培農家の方々からのお話も検討の途中では伺っておりますが、やはり栽培をしたいという御希望があったときにそれができなかったといったことでありますとか、品種として成分の低いものを使っているんだけれども、防犯に関する措置等が非常に厳しくて栽培しにくいといったお話を承ったところでございます。

一谷委員 栽培を増やしていくというのは、先ほどの、CBDの産業もすごく増えていくということで、非常にお金というか、もうかるようなことであったり、利権が出てきたりとかいうふうなこともあるんじゃないかなというふうに思いますので、ここはちょっと不思議に思ったので質問をさせていただきました。ただ、農家の方の意見としては、こういうのが厚生労働省が出されているので、ちょっと反するんじゃないかなというふうに思っています。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 次は、部位規制から成分規制に変わったということで、大麻草の形状を有するの定義は、例えば大麻草のお茶や、花穂を用いたプロダクトはオーケーなのか、できるのかということを政府参考人の方にお伺いするんですが、午前中の有識者の方から話を聞いていて、事業所の方でさえ同じ質問をされたと思うんです。大麻草のお茶や、花穂を用いたプロダクトは使えるのかというところですね。

 ですから、なかなか周知も行き渡っていないというか、プラットフォームをつくっておられるような事業所の方でさえこういったことを質問してくるということなので、これから海外の企業も入ってくるというところで、これが本当にどうなのかということと、周知をどうするのかということも併せて質問させていただきます。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案におきましては、大麻草の形状を有するものは大麻として、大麻草の形状を有しないものについては有害成分であるTHCに着目をして、残留限度値以下のTHCを含有するものを除き、規制を行うといったものとしております。

 一方で、大麻草の葉でありますとか花穂、花につきましては、一般的に有害成分であるTHCが残留限度値以上に含まれているものでございまして、かつ、低THCの大麻草でありましても麻薬からは除外をしておらないため、それらを用いた製品は、通常、麻薬たる大麻として規制対象になるものでございます。

 その上で、大麻草の形状を有するものの解釈につきましては法案成立後にお示しをした上で、製品として流通可能かどうかといったものは個々の製品ごとに判断をすることになると考えております。

一谷委員 そうしたら、花穂を用いて製品を作ってしまうと、花穂の形状は分からないと思うんですが、グミになったりとか、チョコレートになったりとか、健康食品のサプリメントになったりとか、そういったものがもし入ってきた場合はどうなるんでしょうか。これは、やはりTHCが入っているという、検査されてしまうということになるんでしょうか。

城政府参考人 今回、成分規制の考え方を取り入れますので、そういったものにつきましても、基本的には事業者の方にそういったものはTHCを限度値以下であるということは検査をしていただいた上でということになりますし、私ども行政におきましても、市販の製品の購入等をいたしまして、実際に検査をしていくということを考えております。

一谷委員 そうした検査をして、THCが成分の下であればいけるというような解釈でよろしいんですかね。はい、分かりました。

 そうしたら、何度もこの質問も出ているんですが、次の質問にもつながりますのでさせていただきたいんですが、THCの基準値について、現時点ではどのような基準になりそうなのか。成分に含まれる基準値について、検討中だと思うんですが、改めてお伺いをさせていただきます。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 製品中のTHCの残留限度値につきましては、改正後の麻薬及び向精神薬取締法におきましては、その乱用による保健衛生上の危害が発生しない量として政令で定める量と定めているところでございます。

 この点につきましては、大麻規制検討小委員会の取りまとめにおきまして、保健衛生上の観点から、THCが精神作用等を発現する量よりも一層の安全性を見込んで適切に設定されるべきとされているところでございます。また、尿検査による大麻使用の立証に混乱を生じさせない量とすることを想定をいたしております。

 今後、専門家の意向も伺いつつ検討を進めまして、適切な残留限度値を設定してまいりたいと考えております。

一谷委員 その時期というのは大体決まっておるんでしょうか、参考人の方にお伺いしたいんですが。まだ時期も決まっていないか、スケジュール的にはあるか、お願いします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 その部分の施行までということでございまして、これは法の成立後一年以内ということでございます。

一谷委員 一年以内に決まったとしたら、次は検査機関というのを強化させていかなければならないのではないかなというふうに思います。

 検査機関に関するガイドラインやルール、どのようなプロセスで、どのようなタイムラインで制定されるのか、素案はあるのか、あと、これは午前中の参考人質疑の中でも出てきましたが、海外の有力な検査機関の活用も考えておられるのかということも併せて質問をさせていただきます。政府参考人の方にお願いします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法案におきましては、CBDの製品につきましては、事業者が自らの責任で検査を受け、THCの含有量が残留限度値以下であることについて確認をし、製品の質を担保するということを基本といたしております。あわせて、行政では、買上げ調査等を含めた監視指導を行うことといたしております。

 事業者が検査機関に検査を依頼した場合には、どの検査機関でも同じ検査結果が得られるようにするという必要がございます。このため、THCの含有量に係る統一的な検査方法を国で定めまして、公表することといたしております。今後、海外の事例も参考にしつつ、専門家の意見をお伺いしながら、公布の日から一年以内の法律施行日までに公表をする予定でございます。

 また、検査機関につきましては、例えば食品であれば食品衛生法に基づく既存の登録検査機関等に、麻薬研究者免許を取得していただいた上で実施をしていただくということを想定をいたしておりますが、検査事業者を登録制や指定制にするということは考えてはおりません。また、国が定めた検査方法を実施できる海外検査事業者を排除することも考えていないところでございます。

 なお、先ほど申し上げた施行の日でございますが、公布から一年以内の政令で定める日ということになってございますので、それまでということでございます。

一谷委員 ありがとうございます。海外の検査機関でも問題なし、フォーマットが同じであればいいということですね。

 ここで、今日、このCBDの市場が二〇二五年に八百二十九億円になる、二〇一九年は四十七億ですから十八倍ですか、かなりの規模が、広がっていくんですが、現在、もしCBDの製品にTHCが入っていると、一応違法になりますので成分検査をしないといけないんですが、これができる方が二千六百人いるというふうに説明のときにお伺いしました。

 現在では足りているということなんですが、これから市場がこれだけ膨らんでいく中で対応し切れるのかということについて、参考人の方に少し質問させていただきます。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、例えば、検査機関につきましては、食品であれば食品衛生法に基づく既存の登録検査機関等、こういったところに麻薬研究者の免許を取得していただいた上で実施をしていただくということを想定しております。

 そういった形で、しっかりと検査できる体制をしっかり整えていきたいと考えております。

一谷委員 この検査機関というのが非常に重要になってくるのではないかなというふうに思います。午前中の参考人質疑でも、プラットフォームをつくっておられる事業所の方がイベントを開催したら、やはり海外の企業もかなり来られて、二千人を超えていたということですので、市場の広がりとともに、混乱しないようにすることが必要ですので、やはり、成分が入っていないかという検査をしっかりできるような体制づくりをお願いをいたします。

 次の質問なんですが、最初の、一問目にちょっと重複してしまうかも分かりませんが、これまでの栽培免許は、三重県等を例外として、実質的には新規発行ができないものだったと認識をしています。今後はどの程度のハードルになるのか、農家の件数などに関して目標設定があるのかどうかということについて、これは大臣にお伺いをしたいと思います。

武見国務大臣 大麻草の栽培免許につきましては、現行制度では、国から基準等を示してはおりません。各都道府県においても、大麻草の乱用への懸念から、免許の付与に対しては非常に調査を厳しくしておりまして、事実上増やしていない、非常に慎重な対応をしてきております。

 改正法案では、厚生労働省において大麻草の種子の基準を設けることにより、栽培される大麻草の安全性を確保するとともに、厚生労働省から免許や栽培に関する基準等に関して技術的助言としてお示しをした上で、都道府県が免許を付与する際の要件を明確化することとしております。

 栽培者数の目標設定を行う予定はありませんけれども、各都道府県において、国からの技術的助言を踏まえて適正な免許付与の運用ができるよう、都道府県への必要な説明を行ってまいります。

 また、今後、大麻栽培者数が増加した場合でも、国と都道府県が連携をしながら、申請に対する審査や栽培した大麻草の検査等を適切に実施することで、着実に指導監督を行ってまいりたいと思います。

一谷委員 ハードルが下がるということで、農家の方は、重労働であったりとか、高い壁を作る又は監視カメラを作るというところは少し緩んでくるのではないかなと思うんですが、私は今、農林水産の委員も兼務させていただいていて、農林水産の、農業で働いていただく、農林水産で働いていただく方も人が足らないという中で、本当に数値を決めないで農家の数が増えるのかなと。

 一つは、医薬品で使うのを全て輸入に頼っているというところに危機感を感じて、農家の数を増やしていきたい、自国で栽培をしたいというのであれば、ある一定、やはり目標設定というのをしないと増えないのではないかというふうに思いますので、ここは少し認識が違うのかも分かりませんが、質問をさせていただきました。

 それでは、少し視点を変えて、次の質問をさせていただきます。

 CBDの食薬区域についてどのように考えておられるのか、政府参考人の方にお伺いします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 人が経口的に服用するもののうちで、専ら医薬品に使用される成分であると指定されたものについては、食品への利用ができなくなるというものでございます。

 この該当性の判断につきましては、原則として、事業者等による申請があれば、それに基づきまして、有識者の意見を聞いた上で検討、判断をすることといたしております。

 なお、専ら医薬品に使用される成分であるかという判断に当たりましては、国内外での食経験も踏まえて判断されるところでございます。

 CBDにつきましては、現に国内外で食品として流通している製品が多数あるということを承知をいたしております。

一谷委員 分かりました。ワーキンググループで検討されていくということもお聞きしていますので、分かりました。

 それでは、ちょっとよく似た質問なんですが、CBDの化粧品についての取扱いはどうなるのか。これはポジティブリストに入らないとNGなのかということについて政府参考人の方にお伺いをいたします。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 化粧品に配合できる成分は、化粧品基準により定められているところでございます。この基準におきましては、医薬品の成分は化粧品に配合してはならないこととされた上で、個別に配合制限成分としてポジティブリストに掲げられたものに限りまして、掲げられた最大配合量の範囲で配合するということが認められております。

 化学合成由来のCBDを配合する化粧品は現在でも市場流通をしているところでございますが、それ自体は、今般の改正法による改正後も、この取扱いは直ちには変わらないところでございます。

 今後、この改正法によりまして、CBDを有効成分とする医薬品が我が国で承認された場合には、この化粧品基準を改正をいたしまして、一定量以下のCBD成分をポジティブリストに位置づけた上で市場に流通をさせるということになると考えているところでございます。

一谷委員 直ちにはしないということなんですが、業界の混乱が起きないようにしていく必要があるのではないかなというふうに今お聞きしながら思いました。

 それでは、CBDの輸入プロセスには今かなり時間がかかるというふうに聞いているんですが、今後はそれが簡要化されていく可能性があるのかどうかについてお伺いをいたします。

城政府参考人 現在、CBD製品の輸入に当たりましては、関東信越厚生局麻薬取締部におきまして、CBD成分が大麻草の規制部位から採取されたものではないといったこと等の確認を行った上で、大麻に該当しないものとして輸入を認めているところでございます。

 今回の改正法案では、CBDなどの大麻草の成分を抽出したものにつきましては、部位による規制から成分による規制へと変更になります。どの部位から採取したものかの確認は不要となりますので、今後は、CBDに含有されるTHCが残留限度値以下であることを確認するという形になります。

 こうした確認の手続が迅速なプロセスとなりますよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

一谷委員 それでは、次に使用罪の運用についてお伺いしたいんですけれども、政府参考人の方、私がちょっと、業者とか、あといろいろなところで聞いてみると、THC以外のカンナビノイド使用でも陽性になる可能性があるというふうにお伺いしているんですが、この点については政府のお考えはどうでしょうか。

城政府参考人 大麻の施用罪の適用に当たりましては、尿中の大麻成分の代謝物でありますTHC―COOHを検査をすることで施用の有無を判断するということといたしております。

 また、大麻草には、電子たばこ機器などで容易にTHCに変換されるカンナビノイド成分が存在しておりまして、これを吸引した場合、尿中で陽性を示すため、今回の改正法案では、そのようなものを指定をいたしまして麻薬とみなす、こういった規制を行うことといたしております。

 天然の大麻草に含まれるカンナビノイドでは、現在のところ、THC自体や、先ほど申し上げた麻薬とみなされる物質、麻薬に容易に変化する物質を含みますが、こういったものの使用以外では、THCに関する尿検査で陽性になるものはないと認識をいたしております。

一谷委員 政府の認識では、陽性になるものはないということですね。分かりました。

 それでは、次の質問に行かせていただきます。

 CBDの話で、参考人の午前中の質疑でも、やはり常に、常習したい方が現れてくるのではないかというふうなことを話されていました。ならば、CBD、カンナビノイドの事業者に対してライセンス制にする可能性は考えておられるのかどうかということについてお伺いをいたします。

城政府参考人 CBDにつきましては、THCとは異なりまして、有害な精神作用を有しない成分でありまして、麻薬として規制されるものではありません。

 薬物法規では、麻薬等として規制すべき成分について、免許を受けた事業者にその取扱い等を限定しておりますが、有害ではなく、それ自体規制すべき成分ではないCBDについて、免許制度等を設けて取扱いを制限することは適当ではないと考えているところでございます。

 一方で、国内で栽培した大麻草からCBD成分を抽出する場合には、その栽培について免許制としているほか、大麻草の成分の抽出等の加工を行う場合には、麻薬成分も抽出をされることから、大麻草の栽培免許者が厚生労働大臣の許可を受けて行うこととしているところでございます。

 あわせまして、市場に流通するCBD製品につきましては、買上げ調査等を含めた行政による監視指導を行うこととしておりまして、これらの取組を通じまして、CBDの安全性確保に努めてまいりたいと考えております。

一谷委員 規制はしないということなんですが、大臣にお伺いをしたいと思います。

 CBDやヘンプに関して、様々な協会が乱立をしていて、一般社団であったりNPOであったりとか、よく眠れるとか肩凝りに効くとか、いろいろなことをうたっています。

 様々な認定制度を設けているようなこの状況で、やはり国民の皆さんの過度な広告に対しての被害が出ないように、国として、ある一定、こういったことについて認定制度を検討する必要があるのではないかというふうに私は考えるんですが、大臣の御見解をお伺いいたします。

武見国務大臣 CBDや産業用の大麻草の活用を推進する観点から、事業者による自主的な取組として様々な協会や団体が設立をされていて、その中には独自の製品の認証制度を設けているものもあるということは承知しております。

 一方で、CBDについては、大麻草の有害成分であるTHCとは異なり、麻薬などとして規制すべき成分ではないことから、厚生労働省としては、現時点ではCBDなどの製品の認証制度を設けることは考えておりません。

 なお、過度に効果、効能を宣伝などをしている場合などには、個別の事案の内容に応じて、医薬品医療機器等法や麻薬及び向精神薬取締法の広告規制により取締りの対象となるものであると認識をしております。

一谷委員 ありがとうございます。

 一定、やはり国民の皆さんが混乱しないようにしていくことは大事じゃないかなと思います。

 では、視点を変えて質問をさせていただきます。

 これも大臣にお伺いしたいんですが、大麻由来のてんかん薬使用による、薬に対して、私は、ADHDの薬、コンサータや、統合失調症、クロザピンのように、医師免許だけではなく、取扱いには一定の研修を受講することを義務づける必要があるのではないかというふうに思うんですが、大臣のお考えをお伺いいたします。

武見国務大臣 御指摘の例えばコンサータについては、依存性リスクが認められておりますから、医師が使用するに当たっては研修を受講する必要がございます。

 麻薬由来の抗てんかん薬のエピディオレックスについては、欧米の承認審査ではこうしたリスクは認められていないものの、今後、我が国で承認申請された場合には、医薬品の安全対策について、御指摘の研修の実施も含めて慎重に検討してまいりたいと思います。

一谷委員 これも午前中の参考人質疑のときに、全く私が思っている意見と逆の意見もあって、ここは慎重に考えないと、やはり過疎地であったりとかドクターが非常に少ない地域であると対応できないということもお聞きしました。

 ここでぱっと思いついたのが、オンライン診療ができないのかなという話も考えたんですが、やはり小さいお子さんのてんかんは非常に重度で、この薬を使われるお子さんというのはなかなかやはり、次の質問に行きますけれども、重度の方だと思いますので、この薬の取扱いには十分注意をしていかないといけないんじゃないかなと思います。

 あわせて、大臣にお伺いをします。

 小児に大麻由来のてんかん薬を使用するというのはドラッグラグの視点から必要であると思うんですが、それだけではなく、非常に、生活をするに対して、やはりケアされる方の重労働であったりとか、時間的都合もなかなかつきにくい、そういったフォローも必要だと思います。あと、やはりてんかんの方が何十回とてんかんを起こして倒れるということもお聞きしているんですが、こういった環境整備を併せて政府として考えていっていただきたいんですが、大臣のお考えをお伺いします。

武見国務大臣 やはり、てんかんの患者の皆さんが日常生活上支障なく安心して暮らすことができる社会をつくっていくことは、極めて重要な課題だと思っています。

 てんかん患者の方々などへの支援として、てんかん患者や家族に対する相談支援やコーディネーターの設置、それからてんかんに関する理解を深めるための市民講座等の実施、それからてんかんの治療を専門に行う支援拠点病院を設置する自治体への財政補助などの事業は行っております。

 てんかん患者の方々が地域において適切な支援が受けられる環境整備を図るために、てんかん患者の方々に対する地域連携体制の構築をこれからも引き続き確実に行っていきたいと思います。

一谷委員 今回の法改定は、見方によれば、CBDを使いやすくするような法案改定と受け止めることもできると思うんですね。ですから、市場の混乱が起きないようにしていただきたいのと、やはり、てんかん患者さんに今スポットが当たっていますので、これは今回の法改定の射程外ですけれども、生活環境もよくするような取組を是非していただきたいと思います。

 それでは、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。誠にありがとうございました。

田畑委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 今日は大麻法の審議ということでありまして、私も多数の、数多くの質問をちょっと用意してきたんですが、事ここに至るまで、一谷勇一郎委員も含めてほぼ全て出尽くしてしまいまして、さっきからどうしようかなと思っていたんですが、大麻法については、今日も参考人の皆様から御意見も賜りましたが、本当に大事な法案で、我が党はもう既に、今日の質疑も含めて、賛成ということで決めておりますので、ほぼそこは、政党としての態度は決まったということであります。

 ついては、法案審議ではありますが、関連ということで、もうちょっと話を広げてお話をさせていただきたいと思います。

 久しぶりに見た山井さんの山井劇場、急にテレビカメラが来て盛り上がっておりましたが、私も以前、初当選の頃、一期目、二期目はずっと厚生労働委員会にいまして、毎回山井さんがいろいろ芸を、芸じゃないな、やりまして、大臣は田村憲久大臣で、田村大臣と山井さんのやり取りを聞いていると眠くならないという時代がありましたが、厚労委も様変わりして、小川淳也筆頭の下、余り名前、失礼しました。上品にやっているということであります。

 山井さんが、今日、大麻の話だけれども、若い方々の経済状況とか、ホストクラブという話がありました。そういう若い方々の貧困という話をされました。結局、今の日本の様々な問題の背景は、今山井さんが取り上げたような問題も含めて、やはり私はマクロ経済にあると思っております。だからこそ、一昨日の大臣所信でも、社会保険料の負担構造ということを取り上げた。だから、今日はちょっとその続きをさせていただきたいと思います。ここまで、何でそれがつながっているのかということをずっとお話をしてきたわけでありますが。

 大臣、実は、おとついこういうグラフを、今日もお配りしていますが、お見せして、厚労省、それから財務省はこういう包括的なグラフを持っていないんだということを私が指摘した。そうしたら、今日の午前中か、うちの事務所に厚生労働省から御連絡を頂戴しまして、作り方を教えてくれと。大変、何といいますか、真摯な対応でありまして、心から敬意を表したいと思うし、一緒になって、これが本当に決定版かどうかを含めて、厚労省としっかり詰めていきたいと思います。

 今日は、この話を、社会保険料の話をさせていただくんですが、大臣、ちょっとこれも通告していないというか、していないので、昨日、こども庁が支援金制度という資料を出されましたね。別にいいですよ。別に、発言したければしていただいたらいいので、全然ばたばたする必要はありません。

 支援金制度というのは、まさに医療保険のルートを使って集めると。ということは、全世代から集めるということで、画期的な制度ですね。このグラフにもう一段乗るわけです。税金と社会保険料と、社会保険料じゃないものね、あれは、支援金だから。だから、税金と社会保険料と支援金というのが乗るわけです。だから、昨日こども庁から発表、こども大臣が記者会見をされて発表された内容というのは、大変な国民的議論をしなければならない。ところが、実はこの委員会、次、十二月の第二週までどうも委員会が、予算委員会もあるので多分余りないと思うので、これはやはり早めにしておく必要があるなということでちょっと取り上げるわけでありますが。

 大臣、こども庁のこの支援金の制度というのは、厚労省は要は、秘書官、関係あるかないかなんですよ。関係あるんだけれども、あるよね、だってルートを使うんだから。でも、所管という意味では、ルートを使うだけなんだから、今ちょっと秘書官がレクする時間を稼いでいるわけでありますが、これはどうなんですかね。厚生労働大臣というのはこの支援金については所管関係はどうなんですか。ちょっともし分かれば。もう秘書官に出ていただいてもいいですよ。

武見国務大臣 所管は明らかにこども家庭庁でございます。ただ、御指摘のとおりの徴収のプロセスがございますから、そこは我々も関わることになります。したがって、緊密に連携をしながら対応すべき課題、こう理解しています。

足立委員 まさに緊密に連携をいただきたいと思っておるわけであります。何でかというと、まさにこれですよ。

 まず、実は私、社会保険料がどんどん上がる、少子高齢化の中で累次のいろいろな見直しが行われる中で、税と社会保険料の話は地元でもよく議論します。大体、有権者の皆様は分からないと言うんですよ。税はまだ、所得税は累進だよね、消費税は逆進性があると言われているから軽減税率があるよね、住民税は基礎的なものだから、これも制度が変わってきているんですが、この辺は普通の人は大体分かるわけです。大臣、次は参考人に振るので、のんびり聞いてください。どうぞどうぞ、十五分ぐらい大丈夫ですよ。

 分からないと言うんですよ。私は、何となく分かっているんだけれども、正確に人前で説明しろと言われたら確かに難しい。

 今日は詳細をやる時間はありませんが、医療保険と介護保険と年金の三つを考えたときに、その保険料率の定め方が全然違うじゃないですか。大ざっぱに言うとどんな感じかというのを、ちょっとどなたかお願いできますか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医療保険の方についてお答えさせていただきます。

 医療保険の場合には、地域保険、国保とか後期高齢者医療の地域保険と、健康保険のような職域保険とございます。

 国民健康保険を例に御説明させていただきますと、被保険者の負担能力に応じて算定される応能割という負担と、被保険者の受益を考慮して定額の負担を求める応益割で構成されまして、その保険料率や額については、各市町村が被保険者の所得の総額や被保険者数で按分し、条例に基づいて設定してございます。

 それに対して、サラリーマンの保険の方は、それぞれの健康保険組合が保険料率を決める、こういうふうになってございます。

足立委員 順番にいってもいいんですが、もう時間を取るので。

 要は、医療は、これぐらいは大体皆さんは御理解されていると思う。介護保険は階段状にたしかなっていましたよね。それから、年金は、例えば国民年金は、釈迦に説法ですけれども、これは定額ですね。だから、社会保険と一言に言っても千差万別で、それは応益だとか、応能だとか、均等割だとか、所得割だとか、資産割まである。それから、更に言うと、賦課限度額まである。余り細かいことは今はいいか。だから、いろいろ、僕はよく分からないですよ、何でそうなっているんだと。

 一つ一つそのリーズニングというか、合理性を今日議論する時間はないので、一つだけ、もう一問聞くと、賦課限度額、これは、だから、今の国保、国保の場合は、今御紹介があったとおりですが、上限がありますよね。上限というのは、これを皆さん見てください。税が比較的、所得税が累進になっているんだけれども、社会保険料は大体一千から一千五百万の世帯がピークを示しているわけです。それから下がっていくわけですね。負担率がですよ。負担率が下がっていく。下がっていく理由の一つは、上限があるからですね。これは何であるんですか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医療保険でも年金保険でも、社会保険を採用している場合に、負担能力に応じた公平な保険料負担を求めていくという考え方がございます。

 一方で、医療にしても年金にしましても、受益をはるかに超えた負担を求めた場合には、やはり保険料の納付意欲が低下してしまうということもございますので、保険料負担に受益との関係で一定の限度を設けるということにしてございます。

足立委員 まさに今おっしゃったように、受益と負担、このバランスで保険は成り立っているんです。なぜ税ではなくて保険かといったら、受益と負担の対応関係、対価性があるからですね。でも、今局長がおっしゃったように、受益をはるかに超える負担はあかんということで、納付意欲とかそういうものに関わるという御答弁でした。

 大臣、長いな。ここで大臣に振る予定だったんですけれども、済みません。じゃ、局長、ちょっとじっくりやりましょう。

 やはり、局長は医療の御担当でありますが、今あったように、国保については、納付意欲とか受益とかいう観点から上限を設定している。この負担の規模も、私は、少子高齢化の中でこれからも上がっていくと言われているけれども、税はいろいろ議論がありますよ、消費税だとか固定資産税だとかいろいろな議論、でも、社会保険料というのは給付と負担の関係が大事なんだと。まさに今局長がおっしゃったとおりなんです。

 そうであれば、おのずからこのグラフの黄色いところには、これは所管を超えていると思いますが、これはおのずから限度があるんだと思いますが、いかがですか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、社会保険の場合は、どれだけの給付を受けるか、払ってもらえる額というのはある程度関係があると思います。

 そういう意味で考えますと、例えば医療の場合も、当然、受給の可能性のあるものに対する保険料としてどこまでが限界かみたいなのがあると思います。その場合は、それぞれの被保険者の負担能力、所得の水準、それが一つ大事な点になってきますし、あるいは、医療の場合でいきますと、医療費の水準がだんだん高度化に伴って上がっていけば、我々が払わなきゃいけない金額も増えていく、その対応関係が決まっていくと思いますので、そうしたことを考えながら賦課限度額を考えていくことが必要だと考えます。

足立委員 ところが、医療の場合、介護もそうですが、もうとにかく少子高齢化。少子高齢化というのは、現役世代が減って高齢世代が増えていくわけですから、まさにそのバランスが、年齢で並べたときのバランスがどんどんどんどん崩れていく。そういう中で、私は、国会議員の一人として、地元を歩いていて、地域を歩いていて、全国の方々の声に耳を傾けると、もう限界だと言っているんです、みんな。

 ここからは大臣なんですけれども、今申し上げたように、社会保険料負担はもう限界だと言っているんです。ところが、限界だと言っているその横で、こども庁が、いやいや、社会保険料はルートを使うだけで、今度は支援金なんだ、少子化対策だから容認してくれと。ここは、大臣、直接子供の話はいいですよ、所管じゃないんだから。いいんだけれども、そういう思いで昨日の発表を皆さん聞かれたわけであります。

 まだどういう世代にどういう負担を求めるかは決まっていませんが、支援金については。しかし、もう限界なところに更にやってくる。加えて、少子化対策の内容はほんまかと言う人もいるわけですよ。まあ、野党ですから、私は。

 それなりに、小倉大臣は尊敬していますので、替わられましたけれども、加藤鮎子大臣にね、いずれもすばらしい大臣でありますが、ただ、少子化対策は僕は難しいと思っていて、国民民主党みたいに、教育国債、子供国債を出せばいいんだよと国民民主党の玉木さんが言っていますけれども、僕はナイーブに過ぎると思いますね。少子化対策はそんな甘いものじゃない。

 だから、私はやはり少子化対策についても、今政府・与党がやっているようにしっかりと財源の話はすべきだと思って、我が党もする努力をしています。それはいいんだけれども。

 だから、大臣、もちろん、我が党としてのソリューション、じゃ、どうするんだという話はまた後でやりますが、少なくとも、このグラフを見て、ここにまだ支援金が乗ってくるんだ、少子高齢化で社会保険料も増えていくんだと。もう限界だと国民は言っていますが、どうお感じになりますか。

武見国務大臣 委員のこのグラフ、しっかり見させていただいております。

 現状では、確かに、少子高齢化進展の中で、社会経済構造が大きく変化して、そして、社会保障給付の水準が確実に増大をしていて、所得に占める社会保険料負担の割合が増加傾向にあるというのは共通認識としてございます。

 このために、現役世代の負担にも考慮をしながら持続可能な社会保障制度を構築していくというのが非常に重要であると考えます。

 社会保障を支えるのは若い世代であり、また、高齢者は支えられる世代だという固定観念はきちんと払拭をした上で、能力に応じて皆が支え合う全世代型社会保障の構築に全力を挙げて、そして、社会保障の担い手となる現役世代の皆様に保険料の納付にも御理解をいただけるように我々は努力しなければいけないんだ、こういう考え方であります。

足立委員 だから、全世代型という抽象論はもう私も百回ぐらい聞いていますから分かっているんですが、でも、上がっていくわけですよ。

 特に、前回私も御質問しましたが、資産を捕捉できない。自民党は、政府・与党は、一九五五年だから、もう六十八年政権の座にある、あっ、三年ないから、三を引くと六十五年ですね、六十五年政権の座にある自民党はいまだに、六十五年たっても国民の資産は分からないと言っているわけですよ。

 資産が分からないから、幾ら資産の大宗を保有している高齢層に負担を求めようと思っても、分からないんですよ。そうすると、所得で考えるということになって、だから、非課税世帯にはお金を配るというのが今回の経済対策。おかしいよねということで、支持率がどんどん下がっているわけです。

 六十五年政権を担ってきて、何で資産の捕捉をしないんですか。それは多分、自民党がやりたくないんだと僕たちは地元では演説をしているわけでありまして、それは難しいのは分かっていますが、私が大臣ならやりますよ。

 もうちょっとやると、大臣、だから、本当は、だって、私は限界だと思っているんです。そうであれば、現役世代の負担は、だって、少子化対策をやると言って現役世代の負担を増やしていたら、何のためにやっているか分からない。だから、大臣は全世代型と言っている。後期高齢者にも負担を求めるとこども大臣はおっしゃっているんだけれども、でも、それは限界があるわけですよ。なぜか。資産を捕捉していないからですよ。

 その隘路にはまり込んで、結局は、何か知らぬけれども、現役世代にもそれなりの負担が行って、それで、どんどんどんどん中間層に過大な負担が行っているというのが今の日本の経済社会の構造であって、その中で、山井さんがおっしゃっているような問題が起こるわけです。まあ、立憲民主党も、最近ちょっとはましな政策を言い出すようになってきたかなと評価をしておりますが。ただ、根本問題はそこなんだということで、私たちは、大きな問題、統治機構とか、税と社会保障と労働市場の三位一体改革とか、そういうことを言ってきたわけですね。

 ここで大臣に更問いをしても仕方ないんだけれども、だから、大臣は、要は、全世代型でいくんだという答え、今読まれた答えしかもうないわけでしょう。

 例えば、後期高齢者医療制度をつくりました、七十五歳で線を引きました、そこをもっと、おとついもやりましたけれども、もう一回、後期高齢者医療制度の改革、ここにチャレンジしてみようなんていう思いはないですか。いいですよ。ないなら、ばしっと、ないと言ってください。新聞の見出しになるぐらい、ちょっと。

武見国務大臣 全くないわけじゃありません。

 後期高齢者医療制度の創設のときにも私は関わりましたけれども、私は、数多くある我が国の保険者の負担というものをあの当時考えていたときに、あのまま後期高齢者医療制度をつくらないでほったらかしたら、恐らく国保は潰れていたでしょうね。したがって、あの制度を設計したのは私は間違いじゃなかったと思いますよ。

 後期高齢者医療制度というものの中でも、やはり、高齢者にだってお金持ちもいればお金の余りない人もいるわけですから、お金がある方々からは三割負担とか二割負担とかいって応能負担でこれからいろいろお願いをしようということを、今もう既にやっているわけです。

 しかし、それに加えて、我が国はやはり、高齢化というのに極めて熱心に対応してきましたけれども、少子化に対する対応というのは、残念ながら、高齢化と同時には行いませんでした。したがって、改めて、少子化を含めて、全世代でこうした新しい課題に対応していく、しかも、その中で、個人の応能負担という観点でこれを組み立てていく。

 御指摘の、資産というのを使えとおっしゃる点、全く分からないわけではない。しかし、これは捕捉をするのが極めて難しい。しかも、それを公平に捕捉するのが非常に難しい課題なんですよ。したがって、こういったことの技術的な点をきちんと解決できませんと、御指摘のような形のものはなかなかできない。しかし、今の時点でできるのは全世代型の中での応能負担という幅を広げていくことだろう、こう考えております。

足立委員 だから、マイナンバーだと。同じ意見ですね。大臣から、そうだと指を指されてしまいましたけれどもね。

 まさに、だからマイナンバーが大事になるということで、私は、政府・与党、安倍政権、菅政権、とにかく、僕はミスターマイナンバーと言われていましてね、国会の中でマイナンバーを取り上げた質問回数ナンバーワンですから。だから、皆さんが、マイナンバー法ができた後、ほったらかしにしていた時代があるんですよ。その頃から私はおかしいと。

 まず、入管法の改正が累次ありますね。そのときに、日本人はもう大変だから、まず外国人からやろうと。外国人のフル活用。要は、在留カードはもう偽造ばかりですから。在留カードは、全部マイナンバーカードを持ってもらって、外国人は持てる関連の口座を全部登録させて。だって、お金の動きは別にプライバシーじゃないんだから。そういうことを提案をしてきました。でも、ようやく、河野大臣が今御苦労されながらやっていますが。

 だから、今日、西村智奈美議員が何かぐちゃぐちゃ言っていましたけれども、私たちは、政府のマイナ保険証の取組はもう応援一択です。頑張ってくださいという、応援という思いでふだんから取組をさせていただいています。

 だから、何が言いたいかというと、早くやりましょうと。だって、一時は、消費税に軽減税率を入れるときに給付つき税額控除の議論もしたじゃないですか。財務省だって厚労省だって、そのときに、まだ給付つき税額控除をやるためにはマイナンバーとかでいろいろ制度を整備しないとできないもんねといって、軽減税率になったわけですよ。

 だから、繰り返しになりますが、経済社会のことを考えるんだったら、それを早くやって、今日、塩崎さんもいらっしゃいますけれども、DXなんかは早くやって、そして、そういう新しい時代の医療、介護、福祉の世界を、それは今日はもう質問しないことにしているんですが、それだって、この間、日経新聞の一面を飾った介護のデジタル化というのは、事業者の指定申請だけですよ。そんなもの、利用者のことまで考えたら、氷山の一角だけデジタル化すると言っているんですよ。何だそれと。それから、介護はまだ新しい世界だけれども、障害福祉なんてもう本当に遅れているわけです。だから、工賃も低い。

 だから、全て、そういうことを私たちは早くやろうということで、大臣、お訴えをしていて、たしか昨日も猪瀬直樹さんが質疑の後、御本をあれして、早速、その御本についてお電話を頂戴したと、言っていいのかな、おっしゃって、大変感謝をいたしておりました。

 今、猪瀬さんと一緒に日本維新の会の中で、医療改革タスクフォースというのをつくって、連日一緒に、産業論を含めて、二つ柱があります。一つは産業論、そしてもう一つが、今私が申し上げている、負担と給付です。

 私たち日本維新の会は、後期高齢者のところは、やはりこのままじゃ駄目だと。一つは、今はほとんど九割が税と支援金になっている世界ですから、場合によっては、もう少し、抜本的に税負担の世界を広げていくべきじゃないか。当然、そうすれば、もう保険じゃない、福祉だというふうに考えたときに、じゃ、税はどうするんだというときに、当然、歳出改革と併せて、消費税の議論とか、あるいは今議論をした資産にかかる、抽象的に言うと資産税とか、そういうことまで、それを言うとまた炎上するので、私も選挙があるのでちょっとこれ以上はやめておきますが、でも、それぐらいの、大臣であれば、今私が申し上げたこと、お分かりいただけると思います。

 だから、日本維新の会は、そういう負担と給付の大きなフレーム、それから産業。だって、年金とか生活保護と違うのは、産業だからですね。医療、介護、福祉、サービス提供体制がある。この産業の在り方を医薬も含めてやっていく。この二本柱で、要は、負担と給付の関係、それから産業論、これを二本柱で考えて、五十年先までもつような、そういう骨太な改革提案を年明けの通常国会に向けて今つくっています。

 だから、大臣も、よくよくそこは、全世代型という聞き古された抽象概念ではなくて、本当にこのグラフをどうするんだという議論をこれからさせていただきたいと思いますので、まず、今日はこのグラフをちゃんと作っていただけると聞いた。猪瀬さんにも御連絡をいただいた。今日もマイナンバーで指を指してくださった。

 だから、私は、大変、医師会の何か、かいらいのように悪く言ううわさしか聞いていませんでしたが、どうも、厚労委員会でやっていると、すごいじゃないかと。私たちが今申し上げた二本柱の議論にしっかりと相対峙していただける大臣だと期待をしていますので、最後、ちょっと、維新の会としっかり議論していく、もう立憲はどうでもいいと、ちょっとお願いします。

武見国務大臣 我が国は、議会制民主主義の中で、やはり、政党間同士というのは、率直に、極めて公平に、ルールに基づいて議論を交わすというのが私は基本でなければいけないと思います。そういう意味で私はこの場で答弁をさせていただいているわけでありまして、そういう意見の交換ということであれば、全ての政党の皆さん方と私はきちんと意見交換をするつもりでおります。

足立委員 ありがとうございました。

 今日は、たくさん実は質問通告させていただきましたが、ちょっと白熱してしまい、白熱でもないけれども、してしまいまして、割愛してしまいました。大変申し訳ありません。通告して御用意いただいた議論は、事務的なことも含めて必ずちゃんとフォローさせていただきたいと思っているし、障害福祉も含めて是非御指導いただきたいと思います。

 それでは、大臣、予算委員会で私がお会いできるか分かりませんが、とにかく十二月にはまた委員会もあると思いますので、是非御指導をお願いします。

 ありがとうございます。

田畑委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 私は、大麻取締法の改正に戻って議論をさせていただきたいと思います。

 施用罪についてであります。

 私自身、国家が個人に刑罰を与えるというのは慎重でなければならないという立場であります。皆さんもそうであると思っています。今回の施用罪については、どのような罪なのか、罰則なのかということをやはりしっかりと理解した上で私たちも賛否に臨みたいと思っておりますので、お聞かせをいただきたいと思います。

 今回の施用罪については、大麻事犯の検挙人員が増えている、若者も増えている、そして高止まりしているということが掲げられています。

 そして、今日の一日の質疑の中では、大麻の使用罪に対する認識調査においては、検挙された人が、七〇%が使用罪がないことを知っていたと。確かにこれは高いなと思いましたが、もう一つ、規定されていないことと大麻を利用したこととの関係で、ハードルが下がったのかというのは二〇%、こう説明があったんですけれども、二〇%は逆に低いんじゃないかなと。関係ないという人が七割ということでありますから、これは根拠にはなり得ないと思うんですね。

 ですから、やはり、そもそもは、七十五年前に所持は禁止して処罰を科しているのに、この間、何度かは大麻の大きく乱用の危機があったと思うんですけれども、そのときに作らずここまで来てしまったことが問題だとは思うんですが、それはおいておいたとしても、今回どうして施用罪を作るに至ったかというのを、単純な検挙数ではなく、もう少し大臣から、その思想も含めて私たちにお伝えいただければと思うんですが、お願いします。

武見国務大臣 私も、改めて今回の法律を勉強する中で、この法律が当初、昭和二十三年に制定されるときの経緯というのを聞きました。これは、GHQの指令で大麻の栽培を止める、そういう指示が来たときに、我が国の中ではこうした大麻草というのを神事であるとかそうした別の目的のために現実に使っていた。しかも、その当時、大麻を使用する人たちは日本の中ではほとんどいなかった。したがって、そういう中で、実際にGHQのそういうやめろという指示を回避するためにこの法律が改めて作られたんだということを知りました。

 この大麻取締法、法制定の当初から所持罪は設けられているんですけれども、したがって、使用罪は設けられていないんですよね。これは、所持罪等があれば、免許制と併せて、大麻の不正取引だとか不正使用を防ぐことができると考えられていたためで、使用を許す趣旨では実はなかったわけです。

 また、他の薬物の取締りの法規では所持罪とともに使用罪が設けられていることを踏まえて、大麻の使用に対してのみ罰則を科さない合理的な理由は見出し難いということで、今回、麻薬と同じ扱いにしようという考え方になったわけです。

 大麻の乱用期であると言える中で使用罪がないということで、若年層の中で、大麻を使用してもよいという誤った認識を助長したり、それから大麻使用のハードルを下げている状況にあるということを踏まえますと、引き続き、大麻を含めた薬物の乱用を極めて低い水準に抑えていくためにも、施用罪を今回の改正法案で創設する必要があるというのが、今回の法律を出させていただいた経緯であります。

田中(健)委員 それじゃ説明になっていないんですね。同じ説明なんですね。それですと大変弱いですよね。今なぜ必要なのか、今困っているのか、じゃ、今までは困っていなかったのかと。もちろん、経緯は今、七十五年の経緯をお示しいただきましたけれども、今なぜかという説明が不十分だと思います。なぜなら、私たちはこの法案を国民に説明しなきゃいけませんから、反対をしたり懸念を持っている人もいる中で、もう少し、その背景にある理念や思想というのを聞きたかったんですね。

 例えば、今日の参考人に来ました小林先生というのはこういうことも言っています。今回、医療用大麻の解禁等、様々な合法的な大麻の流通が増える、それとペアになった今回、法案改正だと思うんですけれども、一方で、大麻を流通させたい、使いたいという人がいる、それによって様々な、もちろん害がある大麻ではないといえど、大麻の利用が広がっていく、一方、やはり禁止をしていない大麻もしっかりと使用罪は、禁止しなきゃならない、その両輪であるというふうに言っています。そういった思想が今回の法案にあるんじゃないかと。

 ですから、そういうふうに大麻がこれから、入手が困難であったものが入手もしやすくなるかもしれませんし、ネットでもたやすく入るかもしれません。様々な形で大麻が私たちの身近になってくるわけでありますけれども、それを抑えていくんだという考えがあるとするならば一つだと思うんですが、大臣はその考えについてはいかがでしょうか。

武見国務大臣 まず第一には、施用罪、これを改めて適用させていただくことで、現在、欧米諸国と比べるとまだまだ大麻を使っておられる方の数は少ない、したがってこの状態をどうしても維持していきたい、そのための一次的な法的抑止としてこうした施用罪の適用ということを実際にこの法律の中でやるわけであります。

 しかし、他方で、こうした大麻に関わるそうした実際に薬物依存症と同じような状況になられた方々をどのような形で治療にうまく誘導をし、そしてまた、きちんと社会生活が行えるように支援をしていくのか、この両方を考えながら今回この法律を策定をし、そしてまたそれを運用していくというのが基本的な考え方なので、先ほどの説明ではそこを十分と説明させていただけなかったことは御容赦ください。

田中(健)委員 では、実際、その施用罪というのはどのように適用されていくのか、若しくは摘発されていくのか。

 今まさに大臣が日本においては一%と、一・四%というのを聞いていますが、生涯経験率ですね。これを換算すると百万人以上になりますよね。じゃ、この百万人を施用罪で逮捕していくのか。つまり、大キャンペーンで、脱法ドラッグ、先ほど脱法大麻の話もありましたけれども、大きく取締りをしていくぞ、そして啓発をしていくぞというような考えでいるのか。どれだけの摘発を想定して今回の施用罪を適用していくお考えか、伺います。

武見国務大臣 この法律の効果をどのように測定するかという御議論とほぼ同じだろうと思うんですけれども、大麻の施用罪が適用されるようになって、これまで検挙していなかった、所持の証拠が存在しない大麻施用者の検挙が可能になりますから、それでは、一定程度、検挙者が増加することが見込まれますね。他方で、今度は、大麻に施用罪が適用されることにより、大麻の不正な施用への抑制がかかって、結果として検挙者が減少することも期待されるわけです。

 したがって、検挙者が増えるかもしれないけれども、同時に、検挙者になる対象者が、あえて一次抑止の効果で少なくなっていくということで減少していくことも期待されるわけで、むしろそれを我々は期待しているんですけれども、これを併せて考えていかなければなりません。

 したがって、大麻の施用による摘発件数の見通しというのは、こういう各機能がいろいろありますので、一概にこの人数というふうには申し上げられないというのが私は現状だと思います。

    〔委員長退席、大岡委員長代理着席〕

田中(健)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、施用で増えることもあると今おっしゃって、午前中の質疑の中でも、所持に関する証拠が十分でない場合、大麻の使用を取り締まることができなかった、そういうものにも活用できるという話だったんですが、じゃ、実際、どういう場合に施用罪というのが適用されるのか。

 所持の場合は、もちろん持っているから、そこで証拠になりますけれども、尿を調べる、THCの濃度でそれを判断すると言ったんですが、じゃ、室内で、例えばクラブで、ないしはバーでやっている人を、検査を求めるんでしょうかね。例えば、繁華街に、警察が職質をしまくって、尿を出せと言って取り締まるのか。

 つまり、施用罪といっても、私は実質的になかなか適用ができないんじゃないかと。私は、抑止のために必要だという立場で、あえてこの施用罪がどういったふうに使われるのかというのをお聞きをしたいんですけれども、この辺はどのようにお考えでしょうか。

城政府参考人 施用罪の適用に当たりましては、御指摘のように、尿中の大麻成分の代謝物を検査をするということによりまして、施用の有無の判断をするということでございます。

 大麻喫煙者から非喫煙者への受動喫煙といった影響もあるという御指摘もございますが、これまでも複数の研究報告がございまして、その中で、能動喫煙者、受動喫煙者の区別は科学的に可能であるということを承知をしています。

 これまでも、所持の証拠がない状態で大麻の施用をしたという場合で検挙ができない、若しくは立件ができないといったものがございましたが、こういったものについて、これまでと違いまして、施用の事実が確認できれば検挙をする、そういった形になろうかと思います。

田中(健)委員 受動の話とかというのは副次的なものでありまして、じゃ、実際、クラブに行って、そこで調べるといった場合、あくまでも任意ですよね、この場合は。任意で出さなければ調べられないということでよろしいですか。

城政府参考人 はい。御指摘のとおりでございます。

田中(健)委員 そうしますと、なかなか、イメージとしては、施用罪ができると、使っている人は摘発できるわけですから、それこそクラブで、みんながもしも使っているようなところがあればそこに立ち入って、はい、ストップと言って皆さんの尿を取れるかと思いきや、そうではない、しっかりとそれは令状がなければできないということでありますから、私としては、先ほど大臣が言ったように、あくまで抑制だということ、そして、施用していると次から次へ捕まえて、初回から刑務所に入れて、その話も実は先ほどの午前中の議論であったんですけれども、そういうことではないということはしっかり確認をさせていただきたいと思って、質問させてもらいました。

 さらに、この施用罪ができますと、そもそもの麻薬の根源というのは、国内というよりも、密輸入や卸や密売などの犯罪組織が大きく関わっています。ここをどう取り締まるかというのも併せてテーマとしては大切だと思うんですけれども、例えば、今回の施用罪ができることで、麻薬取締官を始め厚生労働省としてはどのように麻薬を取り締まる環境というのが変わっていくというふうに捉えているか、お聞きします。

武見国務大臣 今回の改正法案によりまして、大麻の施用を法律上禁止するということは、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めになり、一次的抑止効果を確実に持つだろう、こう考えて、大麻乱用者の減少につながるというふうに推測をしております。

 その上で、不正薬物の流通などを阻止するためには、乱用者に対する取締りのみならず、薬物の供給源になる薬物密売組織を壊滅させることが重要である、これはもう先生御指摘のとおりであります。つまり、需要と供給の両面から対策が重要であって、そのためには、引き続き、警察、税関、それから麻薬取締、それから海上保安庁、こういったところと緊密に連携して、薬物乱用根絶に向けた取組を実施していくつもりであります。

田中(健)委員 もちろん、なかなかゼロになるというのは難しいとは思うんですけれども、しかし、せっかく施用罪を作って取締りを強化していくというならば、そちらの、まさに水際の対策にもしっかり力を入れて、今大臣からもいただきましたが、お願いをしたいと思います。

 さらに、次に進みます。

 てんかん患者への理解促進についてです。

 今回、大麻成分を含む医薬品の利用において、てんかん患者への利用が想定をされています。

 てんかんというと、名前は聞いたことはありますけれども、私自身も詳しい病状というのは余り知りませんでした。そして、今日も、午前中の中で、てんかん協会の参考人の方からのお話でも理解を深めることができました。やはり、国民の理解を深めることが、この際、大切なことではないかと思っています。

 といいますのも、てんかん協会の方も言っていましたが、今回のエピディオレックスを認めること、あくまでこれは海外の薬を日本で使えるようにしてほしいという要望でありながら、一方で、CBDを広げたい人に利用されているだとか、ないしは、医療用であれば大麻が解禁したんじゃないか、全てですね、というふうに利用されるという懸念も今日示されました。

 是非、しっかりとした国民の理解を深めるための線引きということと、また国民への理解ということを併せてお願いできればと思うんですが、大臣、見解をお願いします。

武見国務大臣 今回の改正法に関わる国民の御理解を得る努力というものを確実にしていく中で、てんかんについての国民の理解も同時に深めていくことが必要だと思います。てんかんの患者の支援につながる、これは非常に重要な取組になっていくと思います。

 このため、国民への理解を深める施策として、都道府県が行うてんかん地域診療連携体制整備事業におきまして、てんかんに関する理解を深めるための市民向けの公開講座であるとか啓発資材の作成等を行っておりますし、また、厚生労働省のホームページでのてんかんに関する知識提供や相談窓口の紹介なども実施しております。

 各都道府県におきましては、拠点病院があって、そこでこうした役割を果たしていただいているというのが現状であります。

 厚生労働省としては、引き続き、この改正法に関わる国民の理解を得る努力をするとともに、てんかんに関わる今後の地域医療等含めた対応というものについても是非、理解していただくことを同時に進めていきたいと思っております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 是非同時に進めていただきたいと思いますが、もう一点、先ほどちょっとお聞きした中での、医療用大麻の解禁運動と併せての動きがありますので、しっかりと線引きをして、医薬品利用の国民への周知を図るべきです。

 医薬品は、今回は、厳密な管理下の中で、そして医薬品利用がしっかりと限られた中で患者さんに処方されるということがないと、何かネット上では、お医者さんが処方ができる、医薬品大麻をですね、そして、てんかんだけでなくいろいろな病気にもこれから応用できるような現実も見られるものですから、やはりここははっきりと、違うんだということの情報提供が国から必要だと思うんですが、見解、いかがでしょうか。

武見国務大臣 今回の改正法案では、大麻から製造された医薬品について、麻薬と位置づけることで、その流通規制の下で施用や製造等が可能となります。このため、大麻から製造された医薬品を利用する患者は、個々の医薬品において承認された際の適応疾患を有する患者に限定されます。

 このように、麻薬として流通をし、利用される医薬品は厳格に管理されることになりますから、一般に流通する医薬品とは異なることを含め、医療機関や患者に向けての講習会など、様々な機会を捉えて適切に周知を進めていきたいと思います。

田中(健)委員 是非、今回の施用罪とともに、しっかりとした大麻への理解、国民への理解というのを進めていただきたいと思っています。お願いをします。

 続きまして、CBD製品についての話を伺いたいと思います。

 先ほど来も話がありましたけれども、大きな市場として期待がされている一方、様々な、中でもまだ不安が残る人もいらっしゃいます。今回の法改正の中で、これまでは海外からCBDの原材料を仕入れたり、そもそもの食品を仕入れたりして販売を行っておりましたけれども、原料を栽培できるという栽培免許が与えられます。ビジネスチャンスにつなげていこうと考える人もいるかもしれません。

 この栽培農家、今までは伝統的な農家さんを基準とした農家から、CBDを含めた原料を栽培できると、また違った意味での新しい産業になってくるかと思うんですけれども、どのくらいの就業農家ないしは規模というのを想定して今回許可を与えたんでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案によりまして、繊維若しくは種の採取に限定されておりました栽培目的が、CBD製品を含む大麻草から製造される製品の原材料を採取する目的及び医薬品の原料を採取する目的に拡大をされるところでございます。そのため、一定数は栽培者数も増加することが見込まれると考えております。

 ただし、大麻草栽培への新規参入の判断につきましては、CBD製品の事業者や医薬品製造業者の判断によりますことから、その具体的な増加数について予測することは困難ではありますが、直ちに大幅に増加するとは考えていないところでございます。

 一方で、新規参入しようとする事業者等が発生したときに負担にならない、合理的な栽培管理を検討してまいりたいと考えております。

田中(健)委員 これまでは県が規定を定めてやってきたということで、今回国が定めますけれども、栽培農家という言い方と、今は栽培者というお話があって、例えば、農業法人や、ないしは食品やクリームを今作っている株式会社等、そういった会社でも、法人でも農業参入ができると考えていいんでしょうか。

城政府参考人 御指摘のとおり、法人も対象になると考えております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 少し時間が過ぎてしまいましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

大岡委員長代理 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 大麻草からできた医薬品の解禁は私たちも当然だと考えておりますが、大麻について新たに使用罪を設けることについては、依存症支援団体などから批判の声が上がってまいりました。

 まず、立法事実についてお伺いしたいと思います。大麻所持での検挙数は増えておりますけれども、大麻の使用が増えることでどんな問題が国内に生じているんでしょうか。病気が増えている、暴力が増えている、交通事故が増える、こういうことは起きているんでしょうか。

    〔大岡委員長代理退席、委員長着席〕

城政府参考人 お答え申し上げます。

 近年の大麻事犯の検挙者数は、覚醒剤に迫る勢いで増加傾向を示しておりまして、令和三年には過去最多の検挙者数を記録をいたしまして、今まさに大麻乱用期の渦中にあると言える状況だと承知をいたしております。

 一方で、海外に比べていまだ大麻の生涯経験率が低い我が国におきましては、大麻に起因する病気や暴力、交通事故などの影響までが社会で顕在化している状況にはないと考えております。

 しかしながら、大麻の乱用自体は人体に対して有害でありますことから、大麻事犯の増加は憂慮すべきことと考えております。

宮本(徹)委員 病気や暴力や交通事故が顕在化しているわけではないという話なんですね。

 午前中の参考人のお話の中では、警察庁の発表では、犯行の原因、動機について、薬物依存よりもギャンブル依存の方が多かった、こういう話なんですね。この間、カジノは合法化に道を開く、その一方で新たに大麻に使用罪を設ける、大変ちぐはぐなことが進んでいるのではないかなということも感じております。

 大臣にお伺いしますけれども、大麻使用罪を設けることのデメリットについてはどうお考えでしょうか。

武見国務大臣 大麻の不正な施用を法律上禁止することで、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めになる、まずこれが一次抑止として私どもが期待しているところであります。

 その一方で、審議会の議論では、薬物を使用した者を刑罰により罰することは、薬物を使用した者が孤立を深め、社会復帰が困難となり、スティグマ、偏見を助長するおそれがあるという意見もございました。

 そのため、厚生労働省としては、今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略の下で、関係省庁とも連携をし、大麻を含む薬物乱用者に対する回復支援の対応を推進をし、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援策も併せて充実させてまいりたい、そう考えております。

宮本(徹)委員 大麻使用罪を設けることのデメリットについて、孤立を深め、社会的復帰を妨げ等と言ったわけですね。

 六月に出された国連人権高等弁務官事務所の声明では、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらします、こう指摘されていました。これは午前の参考人質疑でも紹介されました。この指摘については、大臣はどうお考えなんでしょうか。

武見国務大臣 御指摘の声明は、薬物の所持や使用の非犯罪化や刑罰の軽減を提言したものと承知しておりますけれども、この提言は各国に履行義務を課すものではございません。

 一方、条約の締約国会議でございます国連麻薬委員会では、各国の処罰について、国内法に従い、医療サービスなどへのアクセスにつながるよう、有罪判決や処罰に関する代替措置や追加措置を講ずることを求めております。

 これを受けて我が国では、この追加的な措置に相当する対応として、関係各府省が薬物使用者等に、罪を犯した者の地域社会への移行や再乱用防止のための指導を行うプログラムを実施してきております。

 厚生労働省としては、今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略の下で、関係省庁とも連携をして、大麻を含む薬物乱用者に対する回復支援の対策を推進をして、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援等も併せて充実させていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 いろいろな対策を打っても、結局、新たな犯罪を作っていく、大麻使用罪を設けていくということによって、今指摘されてきたような弊害が、私は拡大していくことは避けられないというふうに思いますよ。それが国際的な到達点ではないかというふうに思います。

 検討会の取りまとめでも、今大臣がおっしゃったことが言われているわけですよね。大麻を使用した者を刑罰に罰することは、大麻を使用した者が一層周囲の者に相談しづらくなり、孤立を深め、スティグマを助長するおそれがある、こういう意見が記載されてきたわけです。

 ですから、結局、大麻使用罪を設けると、本来、治療につながらなければならない依存症の患者の皆さんが誰にも相談できなくなって、結果として治療につながりにくくなる、このことは避けられないんじゃないですか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 薬物の依存の方につきまして、犯罪を犯したことを切り離して依存症の患者様として考える場合、治療などの支援を提供することが必要なことは言うまでもないことでございます。

 審議会の議論におきましても、そういった指摘もございますが、刑事司法の手続がないと依存症の治療につながりにくいといったことも指摘をされていたところでございます。

 こうした治療や断薬プログラムなどの支援を行うといったことが必要であるということ、これまで第六次薬物乱用五か年戦略等でも記載をしておりますので、こういったことにつきまして、関係省庁連携して、一層の支援のための取組を行ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 言っていることがよく分からないんですけれども、早口過ぎて。

 いずれにしても、これは、審議会でも国際的にも指摘されているように、やはり医療アクセスを、結局、相談しづらくなる環境をつくることによって妨げていくというのは間違いないことだと思うんですね。

 加えて、使用罪の創設で健康被害の悪化が懸念される、こういうことも指摘されているわけです。

 資料の二ページ目ですけれども、これは今日午前中の参考人質疑でも少し紹介されておりました。薬事法を改正して危険ドラッグを禁止して、市中での流通というのは一旦なくなる、今、若干増えてきていますけれども、そういうことになったわけです。ただ、薬物依存の患者数自体は、左のグラフを見ていただければ分かりますように減っていないわけですね。結局、処方薬や市販薬を使用する薬物依存患者が増えて、薬物依存の患者数そのものは減っていないわけですね。

 つまり、ある薬物の使用を禁止すれば使用する薬物が他の薬物に替わっていって、患者数そのものが減るという単純なものではないということだと思うんですけれども、このことはお認めになりますよね。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、ある薬物の規制強化によりまして、新たに他の未規制物質等が乱用される可能性があることについては承知をしているところでございます。

 その上で、厚生労働省におきましては、保健衛生上の危害が発生するおそれがある未規制物質の指定薬物への迅速な指定等を推進し、他の薬物への移行も抑止するための取締りを強化しているところでございます。

 また、薬物乱用そのものを未然に防止するための予防啓発活動を関係機関と密接に連携し、取り組んでいるところでございます。

 引き続き、これらの取組を通じまして、薬物乱用の根絶に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 私も先生にお話を聞いたら、日本人というのは、薬物が嫌いな国じゃなくて捕まりたくない人たちの国なんだ、ですから、捕まらなければハイになりたいとか薬を使って気分を変えたいと思っている人はたくさんいるんだ、規制しても規制してもほかの薬物に替わっていくだけじゃないか、こういうお話を伺いました。

 今日配っている資料の一ページ目は、ちょうど昨日の東京新聞に出ていた記事です。今日も話題になっていますけれども、合法大麻蔓延と報じられているわけですね。

 CBDについても、熱やあるいは酸、これを加えていけばTHCに似たものができる。つまり、さっきの話と併せれば、薬物は規制されれば規制されていないところに行くという話ですから、こういったものがどんどんどんどん作られていくという、イタチごっこになっていくと思うんですね。そうすると、大麻使用罪を設けることによって、合法CBDからこうした脱法的なTHCの類似物が、どんどん新たなものが作られていく、そしてより危険なものが流通していく。こうなると、結果として、今の大麻使用よりも、健康被害という側面から見れば、悪化するということになるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

城政府参考人 本改正法案におきましては、大麻の不正な使用に対しまして施用罪を適用することとしております。これによりまして、若年層を中心とした大麻事犯の拡大への歯止めにつながると考えているところでございます。

 一方で、昨今、大麻の有害成分であるTHCに類似した合成化合物が国内外で流通をしておりまして、大麻の取締りの強化により、これら新しいタイプの危険ドラッグを含む未規制薬物の乱用に移行するおそれがないとは言えないと考えております。

 こうした未規制薬物に対する取締りを強化するとともに、その有害性や危険性などを広く周知することで、乱用防止につなげてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 ですから、大麻使用罪を設けたらこういう新しいものに移行することは否定できないわけですね、厚生労働省も。より健康にとって被害があるものにどんどんどんどん移っていくということになると、麻薬取締法の目的というのは保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図るということですから、法律の目的の逆のことが使用罪を設けることによって起きる、こういう危険もあるということだというふうに私は思います。

 さらに、今日議論が出ていましたけれども、今、薬物絡みで一番若者たちの健康を損なっているのは市販薬だと。オーバードーズによって救急搬送される患者が増え、死亡事例も出ていると。大麻使用罪の創設によってこういう市販薬のオーバードーズが増えていく、こういう可能性もあるわけですね。そうすれば、これも健康被害が拡大していくということになっていくわけです。

 大麻使用罪を作れば、大麻の使用をやめようという人はそれなりにいるのは間違いないと思いますよ。依存症になっていない人はやめるでしょう。ただ、依存症の人はやめられないわけですね。結果、大麻使用罪で逮捕されるのは依存症でやめられない人になるんじゃないか、こういう指摘もあるわけですね。

 大臣、私は、薬物依存症の方に真に必要なのは刑罰ではなくて治療だと思うんですけれども、その点はいかがですか。

武見国務大臣 私は、やはり、法律上のまず一次抑止効果というものについては、今日、我が国では、他の欧米諸国などと比較した場合に、こうした麻薬であるとか大麻を使用する人の数は、増えてはきておりますけれども圧倒的に少ないわけでありますから、この状況を維持するためには、こういった一次的法的抑止の強化を図るためにこの施用罪に適用するということは、私は正しい選択だと思います。

 しかし、委員御指摘のとおり、それが結果として、こうした治療をしようとする動機を逆に抑えてしまうというようなことがあってはなりません。したがって、この点に関しては審議会でも様々に議論がされてきましたけれども、依存症の治療等にきちんとつながるように、常にこうした司法の当局との連携を図りながら、そして、こうした依存症に関わる人たちに対する救済の仕組みというものをやはり周知徹底させていく、これが今年八月に策定された第六次薬物乱用防止五か年戦略の基本的な考え方でございますので、この考え方と組み合わせてこの法律を運用することで御懸念の点を解消をし、そして、一次抑止効果については確実に効果を上げる、これが私どもの考え方です。

宮本(徹)委員 ですから、繰り返しますけれども、やはり、刑罰を新たに作っていくと、そのことによって、治療につながるのは、本当につながりにくくなるわけですよ。幾ら努力したって、刑罰になれば相談しづらくなっちゃうのは誰でも容易に想像できる話ですからね。そこは本当に私は考え直していただきたいんだと思います。

 その上で、少なくとも、やめられなくて困っている人たちが、通報されないと安心して相談したり、治療を受けたりすることができる社会には最低限してほしい、こういうお話も聞いております。

 今日、西村議員と大臣とのやり取りも聞いておりました。それを踏まえてお伺いしたいと思いますが、医療機関に相談があった場合、今日の大臣の答弁では、医師は、助けてほしい、治療してほしいと助けを求めてやってきたことについては、通報する義務よりも守秘義務だと大臣はおっしゃいました。これは大変大事な考え方だというふうに思います。この考え方を医療機関全体に通知で徹底していただけませんか。

武見国務大臣 警察への情報提供の在り方と医師の守秘義務の問題というのが緊密に関わり合ってくるわけでありますけれども、医療機関や自治体ごとの取扱いに、確かにばらつきがあるということは承知しております。

 したがって、厚生労働省としては、薬物依存症の患者の治療継続に配慮をした警察への情報提供の在り方について全国的に共通した方針を示せないか、今、実は検討を始めております。

宮本(徹)委員 是非、ここは、医療機関に助けてほしいと相談に来た方については通報はしない、これは医師の守秘義務が優先なんだ、これを確立していただきたいと思います。

 もう一つ、教育機関での対応の話も西村議員とのやり取りを聞かせていただきました。

 教育機関においても、捜査機関に通報する義務はない、公務員についても、告発しない裁量というのは否定されていない、こういうのが大臣の答弁で、これは非常に大事な答弁だと思います。

 ただ、一方で、今でも大学の中では、教育や更生の観点から告発しないという対応を取っているところもあるわけです。当然あるわけですね。ところが、それが、社会から隠蔽しているだとか非難される風潮が一方であるわけですよ。大学に相談してきても、大学で使われているのを隠蔽していると。こうなるとなかなか相談しづらくなるわけですね。

 今日、大臣は答弁で、大臣、聞いていてもらってもいいですか、今日の答弁を踏まえて聞いていますので。先ほど、文科省との相談をやっていかれるというお話がございましたが、文科省との相談だけじゃなくて、やはり社会全体に対してもそのことをアナウンスをしていく必要があると私は思うんですね。こういう、教育機関に相談があった場合は、それは守秘義務がちゃんと尊重されての対応というのが大事なんだ、通報しなきゃいけないということはないんだ、ここをやはり社会全体に是非アナウンスしていっていただきたいと思いますが、その点、いかがですか。

武見国務大臣 今も申し上げたとおり、各都道府県ごとにばらつきがかなりあることは事実であります。したがって、これに対する全国的に共通の方針というものをつくる検討に入っておりますから、それがきちんとできましたら、当然これを全国的に周知徹底せしめ、ただ単に自治体の関係者だけじゃなくて国民に幅広く理解していただくための努力は、そこでも私は求められてくると認識をしております。

宮本(徹)委員 それは教育現場も含めて様々な面でお願いをしておきたいというふうに思います。

 次の問題ですけれども、治療が必要な薬物依存の方を逮捕、起訴、刑罰を科すと、社会から一層孤立する、再犯リスクを高める、社会復帰を妨げていく、こういうことが繰り返し指摘されてきたわけですが、薬物依存になっても立ち直る上で居場所があるというのが非常に大事だという話をお伺いしました。

 例えば、薬物で少年院に入った子供でも、元いた学校に戻れた子たちは、その後はいいそうなんですね。大学まで進学していく。ですから、居場所を失わないということが非常に大事だという話をしました。

 ですから、薬物依存になっても、その後、仕事とか学校とか当たり前のレールの上に戻れていく、こういう可能性があるということが、再犯防止や更生にとっては非常に大切だというふうに思います。

 ところが、今回の日大の大麻所持事件のように顔写真と実名がさらされると、一生、今はネット社会ですから、デジタルタトゥーがずっと残り続ける、就職にも影響するということがずっと起きてしまうわけですね。そうすると、もう患者さんは薬は断ち切った、やめているにもかかわらず社会復帰、社会参加の道が困難になっていくという問題が生じてしまいます。

 今日は警察庁にも来ていただいていますかね。少量の大麻所持あるいは大麻使用、こういう逮捕について実名を公表したり実名をリークする、こういうのはやめるべきだと思いますが、いかがですか。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 一般論といたしまして、警察が被疑者を逮捕しました場合にどのような報道発表を行うかにつきましては、各都道府県警察におきまして、個別の事案に応じ、捜査活動に与える影響や情報提供を行うことの公益性等を総合的に勘案し、適切に判断しているところでございます。

宮本(徹)委員 今日の議論、何を聞いていたのかなと。武見さんだって、これから、こういう問題、社会に対して、やはり治療が大事なんだ、警察に通報するということじゃなくて治療こそ大事なんだということで、そういう方向でずっと考えようという方向になっているときに、その答弁はないんじゃないかと。公益ということを考えたら、その一人一人の薬物依存になった方々の立ち直りを支援していく、このことこそ最大の公益だと私は思いますよ。

 ここは、ちょっと大臣、今の答弁、どう思いました。警察ともちゃんと相談してくださいよ。

武見国務大臣 警察は、警察として社会の治安、秩序を守る大変大切な役割を持っておるわけでありますから、その立場からのこうした御意見が今示されたものだというふうに思います。

 私どもも、基本的には、こうした大麻で依存するような方々が増えることを阻止し、そしてなおかつそれを法的に抑止する仕組みをつくる一方で、実際にこうした依存症になられる方々などを救済する仕組みをより丁寧に再構築をしていって、それによって実際にこういった社会の偏見なども是正をし、そして社会復帰が確実にできるようにしていくという政策を組み立てることが基本的な私どもの立場になる、そう思います。

宮本(徹)委員 是非警察ともよく相談していただきたいと思います。

 それから、次の問題に行きます。

 配付資料で、最後に、大麻使用罪の創設に関する緊急要望書、二年前に出されたものですけれども、孤立する若者にワンチャンスの支援をというのが書かれています。今日も若干議論になっていましたけれども、支援団体からは大麻ダイバージョンを導入してほしいという強い要望が出ているわけです。通常の刑事手続に乗せて処理することを回避して、他の非刑罰的な方法を取ってほしいということです。

 実は午前中、参考人質疑がございました。与党、野党問わずの推薦人の方から同じように、大麻ダイバージョンを設けていくのは大事だと。起訴するのではなくて、起訴の手前にちゃんと医療機関などで依存症回復プログラムを受講させて、その状況によっては不起訴にする、こういう仕組みを設ける、これは、与党、野党の推薦どちらの参考人を問わず、大事だという答弁がありました。これは是非設けていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

田畑委員長 既に時間が経過しておりますから、簡潔な答弁をお願いします。

吉田政府参考人 まず、前提として、現行法の下でも、大麻を含む規制薬物に係る罪の被疑者が依存症回復プログラムなどを受講した場合に、そのことを犯罪後の状況として起訴、不起訴の判断に当たって考慮することはあり得るものと承知しております。

 他方で、それを超えて、検察官が被疑者にそうしたプログラムの受講を例えば義務づける、命じるといったことになりますと、被疑者に対してそうした処遇を行う権限が検察官の持っている訴追裁量権、起訴、不起訴を決める裁量権に含まれるのかという問題などがございまして、慎重な検討を要するものと考えております。

宮本(徹)委員 時間ですので終わりますけれども、大臣、この問題も是非、法務省も含めて相談していただきたいと思います。よろしいですか。うなずいていただけたらいいです。うなずいていただきました。

 時間になりましたので、終わります。

田畑委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 十五分と短時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 通告の順番をちょっと変えまして、法律の条文の解釈について何点か確認したいと思います。

 まず一点目は、改正大麻栽培法の第二十四条の大麻栽培罪、二十四条の三の大麻栽培予備罪、二十四条の四の大麻栽培準備罪は、二十四条の五によって国外犯処罰規定というのがあります。

 例えば、ワーキングホリデーで日本の学生が海外の農場に行って、たまたまそこが大麻の農場でCBDの大麻栽培などに従事した場合というのは、この規定が適用されると考えてよろしいでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 改正後におきましても、大麻草の栽培に関する罪につきましては、引き続き国外犯規定が適用されることといたしております。

 国外犯の規定につきましては、その行為が行われた当該外国においてもその国の法令に違反する行為であると同時に、当該行為が我が国で行われたとしたならば我が国の法令にも違反する場合に、各罰則が適用されるものと承知をいたしております。

 国によって大麻草の栽培に関する規制は異なりますことから、一概にお答えすることは困難ではございますが、大麻草の栽培行為が滞在国において合法でない場合は各罰則が適用される可能性があるものと承知をしております。

福島委員 では、滞在先が合法の場合は、これは適用されないと考えてよろしいんですか。

城政府参考人 御指摘のとおりでございます。

福島委員 同様に、業として、例えば、大麻草の栽培が許されている国で大麻草を日本の業者が栽培をして、それを輸入して行うという場合は、これはどうなるのか。

 これは改正の法律の五条一項で、第一種大麻草採取栽培者になる者は栽培地の属する都道府県の知事の免許を受けなければならないとなっているんですが、海外の場合は都道府県知事はいないんですよ。この場合はどうしたらよろしいんでしょうか。

城政府参考人 条文上は、みだりに栽培してはならないということでございまして、その栽培地、外国であろうと思いますが、そこで合法かどうかということにかかると考えております。

福島委員 合法であったとしても、都道府県知事の免許は受けなければならない、これは適用されないと考えてよろしいですか。

城政府参考人 御指摘のとおりでございます。

福島委員 確認をいたしました。

 次に、大麻草の製品の原材料を製造する第一種大麻草採取栽培免許は、十二条の三第一項で、含有量が政令の定める基準を超えない大麻草の種子となっていますが、この政令の定め方が問題だと思っておりまして、大麻草全部を乾燥したものの何%とするのか、あるいは部位ごとに何%という規制になるのか、この辺りの政令の定め方は具体的にどのようになる見込みでありましょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案におきましては、有害成分が基準値以下の大麻草の種子等を用いて栽培しなければならないこととされているところでございます。

 この基準値につきましては、審議会の取りまとめにおきまして、〇・二%のような海外の事例等を踏まえつつ設定することを検討すべきとされておりますことから、法案が成立した際には、こうした海外の基準値を参考に決定することといたしております。

 また、今回の改正法案では、製品中に残留する有害成分であるTHCの限度値を設定することともいたしておりますが、この残留限度値につきましては、保健衛生上の観点から、THCが精神作用を発現する量よりも一層の安全性を見込んで適切に設定されるべきと審議会で取りまとめにおいて記載されております。そういったことで考えていきたいと考えております。

福島委員 ただ、政令で定めると法律で落とす場合は、審議会でこれからやりますというんじゃなくて、我々立法府として、どういう方向かと分からなきゃならないんですよ。

 例えば、大麻草の分母が何で分子がどれで、それで何%となるわけですよね。あるいは、製品においても、製品ごとに、食品かサプリか、それぞれによって違う規制を設けている国もあるわけですけれども、その辺りの具体的な政令の定め方の方針だけは、数値は審議会で定めればいいですけれども、具体的にどのような定め方をする予定なのでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 実際にどういったところで検査をするかということにつきましては……(福島委員「検査じゃない」と呼ぶ)失礼しました。定め方でございますが、実際にどういったところをサンプリングして、そして、葉でありますとか、花でありますとか、どういったところをサンプリングして、それでどういった検査方法を定めるかといったことも含めまして、海外の例を参考にして定めたいと考えております。

福島委員 だから、その政令の定め方を聞いているんです。基準の値はこれから決めればいいですよ。でも、政令の定め方ぐらいは、法律で政令に委任するわけだから、法案審議のときに答えられるようにしなければ駄目だと思いますよ。余りにも予見可能性がないので、しっかりそこは答弁していただければと思います。

 今、ちょっと先走ってやった検査もそうなんですけれども、大麻規制のあり方に関する小委員会では、医薬品と異なり、食品やサプリメント等であることを踏まえ、販売、製造等を行う事業者の責任の下担保することを基本として、必要な試験方法も統一的に示すと。法律の枠組みじゃなくて、事業者がやる、責任を持ってやるんだという、この方向はいいと思うんですね。

 ただ、厚生労働省の資料では、民間の製品検査体制は麻薬研究者免許を取得した検査事業者等により実施となっていて、これは別に国外の事例じゃないですよ、そうあなたたちの資料で書いているんですけれども、この麻薬研究者なんて、大した数がいるわけじゃありません。もうちょっと具体的に、どのような検査体制をするのかをこの国会の法案審議の場でもおっしゃっていただかなければ、今事業をやっている人は、じゃ、新たに麻薬研究者を雇わなきゃならないのかとなれば、これはまた大ごとになるわけですね。その辺りの検査の実施方法の具体的なことを可能な限り教えてください。

城政府参考人 CBDの製品に関しまして、THCの含有量が残留限度値以下であることにつきましては、事業者の責任において必要な検査を受けて、確認、担保することを基本といたしております。その上で、法案が成立した場合には、THCの含有量に係る統一的な検査方法を国で定めまして、公表することといたしております。

 検査機関につきましては、学術研究のために麻薬研究者免許を受けた者のみならず、例えば食品であれば食品衛生法に基づく既存の登録検査機関等に、麻薬研究者免許を取得していただいた上で実施していただくことを想定をいたしております。

 あわせて、厚生労働省におきましては、買上げ調査等を含めた行政による監視指導を行いまして、CBD製品の安全性の確保を図ってまいりたいと考えております。

福島委員 やや踏み込んでいただきました。

 ただ、食品衛生管理者とか、その人が麻薬研究者の免許を取るというのは、現行の法律とか運用の枠組みでは極めて困難だと思いますので、その辺りの運用をしっかりしていただければと思います。

 そして、今、厚労省はホームページ上で、CBDを輸入する場合には様々な文書を提出することを求めております。これは、法律の規定に基づくものではありませんよね。輸入するときにはそれを提出しなければならないということではないですよね。今のような検査体制があるのであれば、こうした書類を提出するのは任意であって、その提出をしない人は輸入ができないということにはならない、それでよいのかどうか、お答えください。

城政府参考人 現在は、CBD製品の輸入に当たりましては、関東信越厚生局の麻薬取締部におきまして、CBD成分が大麻草の規制部位から採取されたものでないこと等の確認を行った上で、大麻に該当しないものとして輸入が認められているところでございます。

 今回の改正法案では、CBDなどの大麻草の成分を抽出したものにつきましては、部位による規制から成分による規制となりますことから、どの部位から採取されたものかという確認は不要になります。

 一方で、CBDにつきましては、保健衛生上の危害の発生を防止する観点から、CBDに微量に残留するTHCの残留限度値を設けることといたしております。このため、CBD製品の輸入に当たりましては、引き続き、関東信越厚生局麻薬取締部におきまして、CBDに含有されるTHCが残留限度値以下であることを確認した上で、麻薬に該当しないものとして輸入を認めることといたしております。

福島委員 私の質問の趣旨はそうじゃなくて、それは、例えば、何らかの法律に基づくものではないですよね。提出を求めるのは任意であって、その提出を求めなければ輸入ができない、通関できないというものなのかどうかということを問うております。

城政府参考人 現在、税関から法令確認を求められているところでございまして、通関する際にはこれをやらないと実質上通関ができない、行政指導でございますが、そういった状況でございます。

福島委員 はい、分かりました。

 一つ苦言を呈すれば、質問通告は二日前に出しているんですよ。こういう緻密なやり取りをしたいから、レクはいいんですかと言っても、厚生労働省は要らないと言ったんですね。ちゃんとこれから、緻密な議論に備えて事前に来てください。お願いします。

 最後に、この使用のところは、やはり今までの議論ではなかなか納得できない。私は、今日の参考人の皆さん方の話を聞いて、この立法の過程において、必ずしも様々な立場の人が納得できる形で新たな大麻の使用に関する規制を入れているとは思えないんですね。

 これまで厚生労働省の報告会などで言っていることは、制定時に大麻の使用に対する罰則を設けなかった理由は現状においても確認されず、大麻の使用に対し罰則を科さない合理的な理由は見出し難いと。そうですか、日本の法律というのはそんなに軽いんですか。私は、使用に罰則が設けられなかったのは、必ずその理由があると思っております。

 先ほど太田参考人が、所持とかが禁止されているから使用も当然禁止されているんだと言いましたけれども、私は目を疑いました。(発言する者あり)ああ、刑罰がかかるか、かからないかね。それは、当然、所持とか譲渡は刑罰がかかるんだから、使用もやっちゃいけないんだということを言っていましたけれども、法律上はそうじゃないですよ。法律上は、刑罰がかからないから、使用はいいんですよ。それがいいか悪いかという質的な問題とは別に、それは法律上はいいんですよ。

 そこには何らかの合理的な理由があって、先ほど大臣もおっしゃったように、GHQの下ですから、当時の法制局長官だった林修三さんは、占領軍当局の指示で大麻の栽培を制限するための法律を作れと言われたときは、私どもは、正直なところ、異様な感じを受けたのです、先方は、黒人の兵隊などが大麻から作った麻薬を好むのでということであったが、私どもは何かの間違いではないかと思ったと。こういういきさつがあるので、平和条約が発効し、占領が終了した後、大麻取締法の廃止ということが相当の優先順位で取り上げられたんです。

 恐らく、この大麻取締法は、米軍に対して大麻が供給されるのを止める法律だったんじゃないか。だから、使用には規制がなかったんじゃないか。先ほど太田先生も、これは農業規制なんだということ、栽培規制なんだと。

 それを変えるという目的なら分かるんですよ。今回、そうじゃないんですよ。初めから、何か、大麻の使用に罰則を科すのは当たり前だということに対して、それが当たり前じゃないという意見が今日参考人の方から出て、しかも、それはかなりの納得性を得られる理由での反対意見だったと思うんですね。それに対する回答は、残念ながら、今日の審議では与えられていないと思います。

 私はこの法案に賛成するつもりでおりましたけれども、参考人の意見を聞いて、非常にその賛成の態度は揺らいでおります。参考人質疑の後に、本当は日を置いてこの法案審議をやれば、私も会派に帰って、みんな、四人のメンバーで議論をして態度を決めることができましたけれども、それができません。

 大臣、もう一度、これは今答弁いただきたいですけれども、なぜ使用を禁止するかというのを、これまでの政府のやり方では納得できていない人が多くいるわけでありますから、きちんと説明していただきたいと思いますし、もう一度この場で、なぜ新たに大麻の使用を禁止するのか、これまでなぜ罰則を、刑罰をかけていなかったものに新たに刑罰をかけることになったのか、もう一度御説明をいただけますでしょうか。お願いいたします。

武見国務大臣 まず麻薬については、麻薬及び向精神薬取締法において、麻薬の所持、施用等の必要な取締りや中毒者への必要な医療を行う等の措置を講ずることなどにより、麻薬及び向精神薬の乱用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図ることを目的として規制をしており、今回、その麻薬と同じ扱いにすることといたしました。

 その理由でございますけれども、大麻を麻薬として位置づけ、その施用について必要な取締りを行い、所要の罰則を設けることとしている理由のまず最初に、大麻の乱用の防止であります。二つ目には、個々人の健康を守ることであります。それから三つ目には、薬物に関連する各種犯罪の発生を防止することであります。そして四番目に、第三者又は社会全体に対する危害をも防ぐことになる、こういう考え方を持って今回の法律を作らせていただいたわけであります。

福島委員 最後に一分だけ。

 それが納得できないんです。ゲートウェーなんですよ。ゲートウェーだったら、それにふさわしい規制の在り方もあると思っておりまして、もう一度、多くの人が納得できる、この刑罰をかける理由を探していただくことを求めまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

田畑委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田畑委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 大麻取締法等改正案について反対の討論を行います。

 本法案は、大麻から製造される医薬品の使用を可能とするとともに、大麻について新たに使用罪を設け、現在ある所持罪等を重くするものです。

 大麻草から製造された医薬品について、日本てんかん協会など関係団体からは国内承認の強い要望が出されており、医療目的の使用に道を開くことは賛成であります。

 一方、新たに大麻使用罪を創設することに対しては、依存症患者支援に携わる多くの団体、個人、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会、日本医療ソーシャルワーカー協会などから反対の声が上がってきました。

 違法だと知りつつ薬物に手を出してしまう人は、心に痛みを抱え、薬物に頼らざるを得ない社会的に孤立した状態に追い込まれていることが多いと指摘されています。薬物依存症については、発生予防だけではなく、進行予防、再発予防の三段階の予防策を充実することが重要です。

 しかし、新たに大麻使用罪を設けることになれば、一層周りの方に相談しづらくなり、治療につながりにくくなることが指摘されています。また、薬事犯としてのレッテルで、スティグマを助長し、社会的孤立を一層深め、再び薬物を使用する悪循環に陥っていくことが指摘されています。

 支援団体だけでなく、国連人権高等弁務官事務所の声明においても、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらしますと弊害を指摘しております。

 政府の薬物乱用防止五か年戦略においても、薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援による再乱用防止を目標に掲げています。

 大麻使用罪の創設は、弊害を深刻にし、この政府の目標への障害となる危険があります。使用罪の創設は、適切な治療と効果的な社会復帰支援を妨げることにつながり、賛成できません。

 必要なことは、薬物依存症の方が、誰もが安心して相談でき、早めに医療サービスにつながれる社会にすることであり、未来が奪われず再チャレンジできる社会にすることであり、何よりも、生きづらさと社会的孤立を生む社会を変えていくことです。

 加えて指摘したいのは、法案提出過程の問題です。

 厚労省における大麻等の薬物対策のあり方検討会では、委員十二名のうち、依存症患者支援に関わる三名の委員が使用罪の創設に反対し、使用罪の創設については検討会としての一致した見解は出せませんでした。これを受けて設けられた大麻規制小委員会では、使用罪に反対する立場の人を入れず、使用罪に反対しない人を集め、結論ありきの出来レースともいうべきものでした。

 薬物対策を練り上げる上で大事なことは、当事者家族を始め、薬物対策に関わる第一線の方々の知恵を集めることだと思います。

 本日の審議の中でも、賛成だと考えていた委員からも、賛成が揺らぐ状況だ、こういう発言もございました。

 法案の大麻使用罪の創設に係る部分については削除し、関係者で徹底的な議論をすることを求め、反対討論といたします。

田畑委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田畑委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田畑委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

田畑委員長 この際、本案に対し、古賀篤君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。野間健君。

野間委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 各国において難治性てんかん治療薬として承認されている大麻から製造された医薬品について、我が国において薬事承認を受けた場合に備えて、その製造や施用が適切に行われるよう、免許制度等の流通管理の具体的仕組みを適切に運用すること。

 二 今般の大麻から製造された難治性てんかん治療薬の処方については、今後の承認審査において、研修の受講等の一定の資格を満たす医師が行う等の要件の必要性について検討すること。また、小児のてんかん患者に関して、発作時の介助、急な発作に備えた生活環境整備等についての患者本人や家族への支援を検討すること。

 三 第一種大麻草採取栽培者が大麻草の栽培に用いる種子等のテトラヒドロカンナビノールの含有量の基準や濫用による保健衛生上の危害が発生しない量として定めるテトラヒドロカンナビノールの製品中の残留限度値については、米国や欧州の基準等を参考に合理的なものとすること。

 四 テトラヒドロカンナビノールの残留限度値を担保するため、その検査法や検査体制については、明確かつ実効性があり、事業者による対応が可能なものとすること。

 五 カンナビジオールを使用した製品について、安眠等の機能を過度に強調した広告で消費者が惑わされることのないよう、監視指導を行うこと。

 六 大麻草を活用した産業の育成を図る場合には、関係省庁が連携して進めるようにすること。

 七 大麻の不正な施用に対する罰則について、大麻不正施用者が一層周囲の者に相談しづらくなり、その孤立を深め、偏見を助長するおそれがあるとの指摘があることを踏まえ、大麻不正施用者に教育プログラムや治療プログラム、就労支援プログラム等への参加等を推進する仕組みの導入、大麻不正施用者が安心して相談できる体制整備等について検討すること。また、大麻不正施用罪の検挙・立証に必要な証拠の研究等の適正な取締りを実施するための方法を検討すること。

 八 大麻乱用者その他の薬物事犯者の薬物再乱用の防止のため、保護観察期間中における治療・支援につながるための働きかけの強化、保護観察期間満了後や満期釈放後の自発的な地域における治療・支援につながることができる取組の実施、保護観察の付かない執行猶予者や起訴猶予者に対する治療・支援等について、薬物事犯者に対する長期的な支援を目指して関係機関が連携しながら総合的な取組がなされるよう検討すること。

 九 大麻に有害性はない、健康に良いなどといった誤った情報が氾濫し、若年者の大麻事犯が増加し続けている現状に鑑み、大麻の乱用について開始時期が早く、使用量が多く、乱用期間が長いほど依存症となるリスクが高まること等科学的根拠に基づいた大麻の有害性に関する正確な情報を取りまとめ、必要以上に薬物使用の恐怖を煽ることなく、若年者の視点を生かしながら、教育の現場等における分かりやすい乱用防止のための広報啓発活動等に取り組むこと。

 十 我が国の薬物乱用対策は、違法薬物に手を出さない一次予防に重きが置かれた結果、薬物依存症者に対する差別を助長しているのではないかとの指摘があることを踏まえ、今後の対策に当たっては、一次予防のみならず、違法薬物を使用してしまった者の早期発見及び早期介入並びに早期治療を行う二次予防、薬物依存症者に対する再発防止や社会復帰等を支援する三次予防についても配慮して実施すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

田畑委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田畑委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、武見厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武見厚生労働大臣。

武見国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいります。

    ―――――――――――――

田畑委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田畑委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会


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