第5号 令和6年3月27日(水曜日)
令和六年三月二十七日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 岡本 三成君
理事 小林 鷹之君 理事 鈴木 隼人君
理事 松本 洋平君 理事 山下 貴司君
理事 荒井 優君 理事 山岡 達丸君
理事 守島 正君 理事 中野 洋昌君
井原 巧君 石井 拓君
大岡 敏孝君 加藤 竜祥君
金子 容三君 神田 憲次君
木村 次郎君 国光あやの君
鈴木 淳司君 関 芳弘君
冨樫 博之君 中川 貴元君
福田 達夫君 細田 健一君
堀井 学君 宮内 秀樹君
宗清 皇一君 山際大志郎君
山口 晋君 山本 左近君
吉田 真次君 和田 義明君
若林 健太君 大島 敦君
落合 貴之君 小山 展弘君
重徳 和彦君 田嶋 要君
山崎 誠君 市村浩一郎君
小野 泰輔君 山本 剛正君
吉田 宣弘君 笠井 亮君
鈴木 義弘君
…………………………………
経済産業大臣 齋藤 健君
経済産業大臣政務官 石井 拓君
経済産業大臣政務官 吉田 宣弘君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 林 孝浩君
政府参考人
(経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官) 辻本 圭助君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 小林 出君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 浦田 秀行君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 西村 秀隆君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 殿木 文明君
政府参考人
(経済産業省産業技術環境局長) 畠山陽二郎君
政府参考人
(資源エネルギー庁長官) 村瀬 佳史君
政府参考人
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長) 井上 博雄君
政府参考人
(資源エネルギー庁資源・燃料部長) 定光 裕樹君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 堀上 勝君
参考人
(公益財団法人深田地質研究所顧問)
(京都大学名誉教授) 松岡 俊文君
参考人
(日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長) 冨田 珠代君
参考人
(日本CCS調査株式会社代表取締役社長) 中島 俊朗君
参考人
(公益財団法人地球環境産業技術研究機構専務理事) 本庄 孝志君
経済産業委員会専門員 藤田 和光君
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委員の異動
三月二十七日
辞任 補欠選任
国光あやの君 金子 容三君
山際大志郎君 木村 次郎君
同日
辞任 補欠選任
金子 容三君 山本 左近君
木村 次郎君 山口 晋君
同日
辞任 補欠選任
山口 晋君 山際大志郎君
山本 左近君 国光あやの君
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三月二十七日
岸田政権の新原発推進政策の撤回に関する請願(笠井亮君紹介)(第七一八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会申入れに関する件
政府参考人出頭要求に関する件
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出第一六号)
二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出第一七号)
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○岡本委員長 これより会議を開きます。
この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。
内閣委員会において審査中の内閣提出、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案の両案について、内閣委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、連合審査会の開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。
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○岡本委員長 次に、内閣提出、二酸化炭素の貯留事業に関する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、公益財団法人深田地質研究所顧問、京都大学名誉教授松岡俊文さん、日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長冨田珠代さん、日本CCS調査株式会社代表取締役社長中島俊朗さん、公益財団法人地球環境産業技術研究機構専務理事本庄孝志さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。各参考人の皆様方におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず松岡参考人にお願いいたします。
○松岡参考人 松岡でございます。よろしくお願いいたします。
地球温暖化対策といたしまして、今日はCCSの関連の議題でございますが、CO2の排出量を削減する方法として主に三つの方法が知られています。
一つ目は省エネルギーです。二つ目は再生可能エネルギーの利用拡大、そして三つ目が、化石燃料の使用後に発生するCO2を大気中に放出せずに地下深くに貯留する技術です。この技術はCCSと呼ばれ、大量のCO2を直接的に削減できる有望な方法です。昨年十二月に開催されたCOP28でも、CCSは温暖化対策の選択肢の一つとして取り上げられました。
このCCS技術は、CO2の大規模排出源においてCO2を回収し、貯留地点まで輸送し、そこで地下約千メートル以上の深い場所に貯留する技術全体を指すものです。この技術が世界的に認識されたのは、二〇〇五年にIPCCからCCSに関する特別報告書が出版されました。この中でCCSの具体的な成果例を示して詳しく解説された、これがきっかけであったというふうに思っています。
このIPCCの報告書で紹介された代表的な事例が、実は、ノルウェーの石油会社が一九九六年から北海で始めたスライプナー・プロジェクトです。このプロジェクトは、天然ガスの採掘に伴って出てくるCO2を年間約百万トン回収し、地下約千メートルの砂岩層に貯留しています。現在まで、既に約三千万トン近くのCO2が安全に貯留され、事業は順調に継続中でございます。
CCSを実現するには、CO2の回収、輸送、貯留という三つの段階で様々な技術が必要とされます。
まず、CO2の回収に関しましては、アミン法と呼ばれる化学的な手法が主流ですが、これに関しては、三菱重工はこの分野で世界トップクラスの技術力を誇り、世界市場の約七〇%を占めています。
CO2の輸送に関しては、パイプラインと船舶の二つの方法がありますが、アメリカでは既に全長八千キロを超えるCO2パイプラインネットワークが稼働しています。一方、CO2の船舶輸送に関しては、まだ技術開発の段階にありますが、日本ではNEDOの研究プロジェクトが遂行中でございます。
CO2を地下に貯留する技術は、意外に長い歴史を持っております。一九七〇年代初めから、アメリカの石油会社は、生産が減退した油田に対してCO2を圧入して原油の回収率を高めるというCO2―EORという攻法を実用化してきました。現在では、これはCCUSの技術として広く認識されるようになっています。
さて、このCCS技術を用いて、IEAは、二〇五〇年時点で年間三十六億トンから七十二億トンの削減を期待しています。これは世界の排出量の一〇%から二〇%に当たる量です。では、この量は現実的に実行可能な量であるかというのが問題になってきます。これに関しては、世界のCCS関係者は、世界が協力すれば十分この量を貯留できるというふうに考えております。
仮に一か所で百万トンのCO2を圧入すると、三十六億トンの貯留には実は三千六百か所の圧入サイトが必要になります。一方、米国のメキシコ湾では、石油生産のためのプラットフォームは約四千か所あるというふうに言われています。そのため、石油の生産の代わりにCO2を始めれば、単純計算では十分貯留できると言えます。さらに、CCSの実施場所として期待されているノルウェー沖の北海、中東地域、アジア圏では、インドネシア、マレーシア、さらにオーストラリアなど、CCSの有力候補です。このように、IEAの目標値は技術論的に見れば十分達成可能な数字というふうに思われます。
一方、国内ですけれども、現在約十一億トン程度のCO2が排出されております。経産省は、二〇五〇年時点でCCS量の目標値の目安として一・二億トンから二・四億トンを定めました。このため、国内のCCSの適地と考えられる場所に対して最新の地下探査手法を利用して調査が行われています。その結果、現在までに調査された場所では貯留可能量として約百六十億トンが推定されています。
また、ここで注意が必要なんですが、この百六十億トンという数字は、日本中をくまなく調査した結果出てきた数字ではありません。まだ調査されていない地域は数多く残っており、今後とも調査が必要であるというふうに思います。その結果、この数字はもっと大きな数字になると考えられます。
このように、国内においても、二〇五〇年断面で年間一・二億トンから二・四億トンのCCSを実施しようと思えば、貯留可能地域は存在しているというふうに言えると思います。
次に、CCS事業の形態について一言意見を述べたいと思います。
CCSの各々の要素技術は長い歴史を持っていますが、これらの技術を統合して、全体として一つの巨大なバリューチェーンをつくり上げるという意味では、今議論されているCCSは新しい技術体系と言ってよいでしょう。
さらに、注目したいのは、現在、世界のCCSは新しい局面に入ってきたというふうに私は考えております。今までの技術開発のステージから、CCSが一つの新しい産業として成長していく、そういうステージに移りつつあります。世界で七十億トンものCO2を地下に貯留する事業は、自立した新しい産業に育て上げる必要があります。このため、各国は、その枠組みと同時に、産業の育成のために力を尽くしているというのが現状です。
例えば、国際標準化機構、ISOではCCSに対して国際規格の作成を進めてきており、既に幾つかの規格が発行されています。さらに、欧米各国はCCS事業を進めるための法体系と技術基準などの整備を着々と進めています。我が国においても、今回の法案は、日本におけるCCSの産業化にとっては非常に重要なファーストステップというふうに考えております。
一方、CCSは、コストが製品価格に反映されないという外部不経済です。これに対して、各国はいろいろな政策を駆使して、CCS産業の育成を進めております。
有名なのは、アメリカの連邦政府がインフレ抑制法の中で採用している四十五Qと呼ばれる税額控除です。これは大変有名な政策です。この内容は、補助金政策であり、CCSを行うとCO2一トンに対して八十五ドルの税額控除が与えられます。
一方、ヨーロッパでは、多くの国がカーボンプライシングを導入して、CCSの、排出に規制をかける政策を採用しています。しかしながら、CCSを事業として立ち上げるには初期投資が大きいため、資本調達など問題があり、規制のみではCCS産業は育ちません。
ノルウェー政府は、石油会社三社、シェルとトタールとエクイノールという石油会社ですが、この三社が立ち上げたノーザンライツJVと呼ばれるCCS事業会社に対して多額の補助金をつけて、事業を立ち上げました。このCCS会社は、排出企業からCO2を受け取り、輸送、貯留を請け負う新しいビジネススタイルです。各国は、CCS産業を育てるため、補助金やカーボンプライシングなどの政策を駆使しているのが現状だと思われます。
我が国において、今後どのような産業育成の政策が取られるか分かりませんが、世界のCCSの産業化に乗り遅れることは大変よくないことであるというふうに考えております。世界的に見たときに、我が国のポジションですが、日本でも世界に対して十分に競争力を持った企業群が成長し、国内産業として確立され、将来は世界に展開可能だというふうに考えています。
日本は地質的に油田が少ないため、石油産業は大きな産業ではありません。しかしながら、CCS産業は、簡単に言えば、CO2の排出量が多く、地質学的には貯留適地となる堆積盆が存在し、技術力があれば事業を進められる事業形態です。
先ほども言いましたが、三菱重工に代表されるように、エンジニアリング部門では世界に高い評価を受けています。また、輸送に使われるCO2特殊船などの造船技術力も高く、石油産業の技術者もそれなりに有しておりまして、貯留事業を十分できるというふうに考えています。
我が国の石油産業が世界に比べて小さいからCCS産業は国内では育たないと考えるのは、大きな間違いであろうと思っております。CCS産業の育成で重要なのは、多種多様で大量のCO2の排出国であること、さらに技術力と巨大なバリューチェーンをまとめるアグリゲーターの存在であると思われます。特にアグリゲーター役としては、日本独特の業態である総合商社が持っているノウハウと新規産業をつくり上げる発想力は大変貴重であるというふうに感じています。
以上のような背景の下で、我が国においてもCCSの技術開発を目的に実証試験が二か所で行われました。新潟県長岡市の岩野原で一万トンの貯留が行われ、北海道苫小牧市において三十万トンの実証試験が行われました。その結果、多くの科学的な知見が得られております。これらの中で特筆する必要があると思われるのは、リスク管理に関する知見です。
CCSは今まで経験のない事業であるため、リスクに対する議論が必要になります。この問題を考えるには、まず地下の貯留層の状態をできるだけ正確に把握する必要があります。このため、石油業界で広く使われている三次元反射地震探査と呼ばれる手法を適用します。この手法を用いて、地下数千メートルまでの地下構造の可視化が可能になります。
まず、この方法で、貯留層に適した地下構造を見つけると同時に、断層の場所も特定します。断層は貯留したCO2の漏えいの経路になるリスクがあると考えられるため、貯留サイトを選ぶときには慎重に進める必要があります。ただし、油田の場合には、貯留層に断層が存在する油田は数多く存在しており、断層の存在が直接的にCO2の漏えいのパスになるとは簡単には言い切れません。
次に、取得された情報を基に地下の地質モデルを作ります。このモデルを使って、圧入したCO2が将来どのように移動するかのシミュレーションができます。圧入開始から数十年、さらに圧入が終わってから数百年後までの状況を予測し、最も安全で安心できる場所を貯留サイトとして選びます。
さらに、CCS事業で特徴的なことは、貯留層サイトで常時モニタリングが実施されていることです。これは、地下にあるCO2の場所を把握して、管理しているということです。万一シミュレーション予測と観測されたCO2の分布が一致しないときは、地質モデルの修正が行われ、修正されたモデルを基に次の予測が行われます。このように、CO2は、圧入する前、圧入中、圧入後においても、次はどこに地下で移動するか、事前に把握され、管理されているというふうに言うことができます。
また、圧入されたCO2の広がりは、実は思ったほど広くありません。苫小牧のときは、三十万トンですが、その広がりは一キロ程度です。また、スライプナー・プロジェクトでは、千二百万トン圧入した時点でのCO2の広がりは、一キロ掛ける三キロ程度でした。
これらの苫小牧での実証試験の知見は、貯留層サイトの選択に重要な情報となっています。つまり、圧入後のCO2の広がりをきちんと予測できるということは、断層がCO2の漏えいのリスクの要因と考えられるのであれば、どの程度距離を離せばよいかといった情報を提供してくれるからです。
一方、北海道苫小牧でのCO2実証試験において、胆振東部地震が起きた際にCO2圧入との関連性が指摘されるという出来事がありました。後ほど説明があるかもしれませんが、これを受けて、地震学者を含む専門家による詳しい調査が行われた結果、CO2の圧入によって貯留層の圧力は増加します、しかし、この地震が起きた震央での影響は、地球潮汐による圧力変化のざっと千分の一程度であるという結論が出されました。これは、胆振東部地震はCO2の貯留が誘発した地震ではないという結論です。このように、地震はCCS事業にとってしっかりと取り組むべき課題であります。
最終的には、この地震はCCS事業に関して重要な知見を提供してくれています。CCSに関するISOの規定においても、貯留場所の選定において、地下の力学的な性状と断層に関する影響は十分注意するように記載されております。
このように、事業を進める上で考えられるリスクに対して、常時モニタリングを通してリスクを正しくマネジメントするという基本姿勢の下で、我が国においても世界に誇れる技術革新が進んでいるというふうに考えています。
最後に、これもCCSに特有な作業として、社会的受容性と呼ばれる問題があります。
CCSの事業の実施には、三つのライセンス、許可を取る必要があるというふうに言われる場合があります。それは、最初は政策的許可、これは、開始予定の事業は政府が進めている政策に合致しているかどうか。次に法規制の許可、これは、CCS事業に対する各種の法律を正しく守って実施されているかどうか。さらに、三番目に社会からの許可、これは、事業を進める上で、関連する全てのステークホルダー、特にサイト周辺の住民からの賛成が得られているかどうかということです。特に最後の、サイト周辺の住民の賛成が得られないと、CCS事業を着手することは困難です。
苫小牧の実証試験は、都市部近くでCCSが実証された世界でも大変珍しい例で、住民への情報公開の在り方など、多くの教訓を残しました。これは、貯留事業の担い手となる我が国の石油、天然ガス鉱業には地元の理解を得ながら進めるという文化が根づいているためというふうにも考えられます。
現在、日本でもCCS事業に関する法整備が始まっていますが、CCSが温暖化対策の切り札となり、将来の有望産業に成長していくために、技術的な課題の克服とともに、社会の信頼を得ながら一歩一歩進めていくことが肝要であるというふうに考えます。日本が着実にCCS技術を育て、地球環境の解決と経済発展の両立に貢献できる日が訪れることを期待しております。
最後に、一つだけコメントさせてもらえるならば、将来のCCS産業の育成には、新しい観点からの人材教育が必要というふうに思われます。政府としても力を注いでいただければありがたいと願っております。
以上で、私からの説明を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○岡本委員長 松岡参考人、ありがとうございました。
次に、冨田参考人にお願いいたします。
○冨田参考人 皆様、おはようございます。
ただいま御紹介をいただきました連合総合政策推進局長の冨田でございます。
この度は、このような場で連合の意見陳述の機会をいただきましたこと、まずもって御礼を申し上げたいと存じます。
連合は、七百万人の働く者から成る労働組合の全国組織です。本日は、カーボンニュートラルの実現に向けて日々努力を続けている働く者、生活者の立場から意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
まず初めに、本案に対する基本的な態度を申し述べます。
今やカーボンニュートラルの実現は世界共通の重要課題でありますが、我が国におけるGXの推進は、産業、企業、地域経済、国民生活に大きな変化をもたらすものであり、特に二酸化炭素を多く排出する産業の仲間からは期待と不安の声が寄せられております。
諸外国と比してエネルギー資源に乏しい我が国において、カーボンニュートラルを達成するには、あらゆる手段を総動員する必要があり、CCS事業の環境整備や一括審議される低炭素水素等の活用推進は必然であると考えております。
また、CCSや水素を事業として展開する際は、労働者や地域住民の安全確保が不可欠ですが、今回のCCS事業法案には、審議会での連合の意見も踏まえ、充実した保安規制が盛り込まれたことなどから、連合は、法案の速やかな成立を求めたいと存じます。
次に、CCS事業の運用上の課題について、五点申し述べます。
一点目は、公正な移行の実現についてです。
先ほども申し上げましたが、CCSに限らず、GXの推進は、産業構造、地域経済、労働者への影響が大きいことから、分野横断的な課題を深掘りする省庁横断的な体制と、政労使の社会対話の場を設置をし、複数のシナリオの下、必要な対策を検討する必要があります。
今回のCCS事業でいえば、事業の安定と持続的成長を担保するには、中長期的に新たな技術を開発し、技術伝承のための人材を確保していくことが重要であり、新たな事業で生み出される雇用を、グリーンでディーセントな付加価値の高い雇用としていく必要があります。
同時に、CCS事業は、一定の貯留が終わると事業を廃止することがあらかじめ組み込まれておりますので、事業廃止による雇用や地域経済への影響を想定をし、対策を打っておく必要がございます。
特に、雇用については、失業なき労働移動が大前提ですが、労働者に対しては、企業内の異動で対応するのか、それとも、新たな技術の教育訓練を行って別の産業に移動するのか、その場合、訓練中の住居や生活保障をどうするかなど、重層的なセーフティーネットを構築をしていく必要があります。
公正な移行を実現するには、雇用と経済対策を同時に推進することが最も重要であり、労働組合を含む地域の関係当事者が参加する社会対話の場を設置をし、事業廃止による影響と対策について、複数のシナリオを検討し、ロードマップを作成するとともに、必要な予算措置を講じておくことが重要です。二十年後、三十年後のことだからと後回しにせず、事業計画にあらかじめ織り込んでおくことが肝要であると考えます。
二点目は、貯留施設の立地地域の関係者との丁寧なプロセスを踏むことについてです。
CCS事業の安定と成長は、事業所で働く者の労働安全や立地地域住民の安全確保を大前提に、地元関係者との利害調整や環境保全を万全に行い、地域社会に受け入れられてこそ可能となりますが、多くの国民は、CCSという言葉になじみがないですし、二酸化炭素が漏えいをすると、窒息や爆発といった事故リスクがあることも余り知られておりません。
そのため、貯留施設の候補地選定の段階から、地元住民や事業者などの関係者に情報を提供し、当事者の意見を聞く機会を設けるなど、丁寧なプロセスを踏んで進めることが重要です。
この点で申し上げますと、CCS事業法案では、経済産業大臣が事業者に貯留事業などを許可するときは、都道府県知事と協議しなければならないなどの規定が置かれています。しかし、地元関係者などの利害関係人が意見を述べることができるのは、貯留事業などの許可に関する公告に限られており、地元へのきめ細やかな情報提供や、公告以外に関して意見を聞く機会については何ら定めがありません。
苫小牧における実証試験では、地元への情報提供や意見集約がきめ細やかに行われたと承知をしており、こうした好事例を参考に、丁寧なプロセスの在り方についても議論を深めていただきたいと考えます。
三点目は、二酸化炭素を海外に輸出した際の現地の労働者の安全確保についてです。
政府は分離・回収した二酸化炭素を海外に輸出して貯留することも視野に入れていると承知をしてございます。国内外にかかわらず、労働安全は何よりも優先されるものですので、二酸化炭素の輸出は、現地の貯留技術と労働安全が万全に確保されている場合に限って認めるとしていただきたいと存じます。
この点について、審議会の取りまとめには、二酸化炭素の輸出に当たり、日本政府が事業者に対し、輸出先の貯留事業者に対する環境、労働安全などに関する法令遵守の状況を確認するよう指導する旨が盛り込まれました。
政府には事業者への指導を徹底していただきたいと存じますが、大事なのは、この点が十分に担保されることです。そのため、政府や事業者の間で協力覚書を締結する際には、現地の労働者の労働安全確保を項目に盛り込むなど、現地労働者の安全確保策についても審議を深めていただきたいと存じます。
四点目は、二酸化炭素の圧入時と事業終了後の長期貯留における管理業務などの確実な実施についてです。
貯留事業においては、二酸化炭素の貯蔵状況の監視などの管理業務が事業者に義務づけられます。また、それらの管理業務は、貯留事業が終了し、貯蔵の状況が安定するまでの一定期間が経過したら、JOGMECに移管することとされております。
管理業務やJOGMECへの移管の在り方は、事業を安定的かつ適正に運営する観点はもとより、安全確保の観点からも重要なポイントです。詳細は今後の検討に委ねられますが、在り方を具体的に詰めていく際は、安全確保を大前提に、科学的根拠に基づいて検討し、適切な規定を設けていただきたいと存じます。
五点目は、事業者の賠償責任についてです。
CCS事業によって事故などの損害が生じたときには、被害者への賠償責任が果たされなければなりません。
幸いなことに、これまでにCCS事業による国内の重大事故はありませんが、仮に重大事故が発生した場合、事業者に十分な賠償能力がないと、事業破綻に追い込まれ、被害者への十分な賠償や、当該企業で働く者の雇用が維持できなくなることが懸念をされます。
賠償責任については、鉱業法に倣って保険加入を操業許可の条件とするとのことですが、CCS事業での事故対応や損害賠償の知見、経験がない中で、保険による対応だけで十分であるか否かは更なる検討が必要です。被害者や労働者を守るためにも、国が事業者の賠償責任をサポートする仕組みなども整えていただきたいと考えてございます。
最後に、カーボンニュートラルの達成に向けては一刻の猶予もございません。今ほど申し上げた課題について審議を深めていただき、適切な事業展開と安全確保の道筋をつけていただいた上で、CCS事業法案と一括審議される水素社会推進法案の早期成立を図り、官民一丸となった取組を推進していただくことをお願いを申し上げ、連合からの意見陳述とさせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○岡本委員長 冨田参考人、ありがとうございました。
次に、中島参考人にお願いいたします。
○中島参考人 本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。中島でございます。
私からは、弊社が行ってきた実証事業の概要の御説明を差し上げまして、その後に、本法案に関する若干の意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、そちらを御覧いただきたいと思います。
一枚めくっていただきまして、二ページ目を御覧ください。
日本CCS調査株式会社は、二〇〇八年、G8の洞爺湖サミットでCCSの必要性が確認されたことに呼応して設立をされております。日本のエネルギー関連企業、電力会社、都市ガス、石油精製、石油、天然ガス開発、プラントエンジニアリング会社、総合商社さんなど、三十三社の民間企業の御出資をいただいております。
弊社は、苫小牧CCUS大規模実証のほかに、貯留適地の調査、液化CO2の船舶輸送実証等を国等からの委託を受けて実施をしております。こうした取組は、二〇一五年のCOP21におけるパリ合意、これが成立する大分前から、地道に十六年間取組を行ってまいっております。
三ページを御覧ください。
記載をしております四点、すなわち、分離・回収から貯留までの一貫システムとしての実証、安心、安全なシステム開発、情報公開と社会的受容性の醸成、技術習得と実用化などを目的として本事業を開始しております。
記載にはございませんけれども、二〇一二年から二〇一五年度まで約四年間を準備期間といたしまして、設備の設計、建設、坑井の掘削作業などを行い、二〇一六年四月からCO2の圧入を開始し、二〇一九年十一月に予定しました三十万トンの貯留を達成し、稼働を休止しております。二〇一九年十一月以降は、現在まで、圧入したCO2のモニタリング、あるいは設備の保全等を継続して実施してございます。
四ページを御覧ください。
図にお示ししてありますとおり、本実証では、隣接する製油所内の水素製造装置のオフガスの一部を受け取り、そこからCO2を分離・回収し、地下に貯留しております。
五ページを御覧ください。地下の地質構造と圧入坑井の関係をお示ししております。
分離・回収されたCO2は、海底からの深度約一千から三千メートルに存在する貯留層にCO2を圧入しておりますけれども、貯留層の上部には液体や気体を通さない緻密な遮蔽層が存在しており、一旦地下に貯留したCO2が再び海中や地上に漏出するリスクは極めて小さいと評価してございます。
六ページを御覧ください。実証設備の位置関係をお示しした写真でございます。
実証センターや圧入地点が、人口約十七万人の苫小牧市街地のごく近傍に位置することが見て取れるかと存じます。しかしながら、観測井や海底地震計の設置など、しっかりとしたモニタリング体制を構築し、あるいは情報公開を徹底したことによりまして、また、積極的かつ地道な広報活動を実施したことにもよりまして、地元市民の皆様や関係者の御理解を得ながら円滑に作業を実施することができました。このような点は、海外の研究機関等から、地元理解の醸成の好事例として高い評価を得ております。
七ページを御覧ください。
圧入期間中であった二〇一八年九月に、北海道胆振東部地震が発生いたしました。本実証試験センターは震度五弱を観測いたしましたが、CO2の地下からの漏出等は確認されず、地震や地層の専門家による検討によって、地震の発生原因としても、また、発生した地震による貯留層や坑井への影響についても、いずれについても因果関係がないことを確認しております。
八ページを御覧ください。
ページの下の方に記載がございますが、本実証は海洋汚染防止法の適用を受けて実施をいたしましたものの、同法には地下の地質構造の利用に関する権利義務の関係あるいは技術基準についての規定がございませんでしたので、坑井掘削及び貯留等の作業は、経済産業省さんのガイドラインに従い、鉱業法、鉱山保安法に準拠して実施をいたしております。今後、民間事業者によるCCSを推進するためには、海域、陸域を包括した一元的な法律の整備が必須であると考えております。
九ページを御覧ください。
ここまで御説明いたしましたとおり、苫小牧での四つの実証目的はしっかりと達成できたものと認識しております。
ただし、苫小牧実証から得られた社会実装に向けた課題として、大きく四点、コストの低減、輸送手段の確立、貯留適地の確保、事業環境の整備の四点がございます。
このうち、コスト削減については特に分離・回収における技術開発が期待されること、輸送手段、貯留適地調査につきましては次ページ以降で御説明する取組が行われていること、そして、事業環境整備につきましては、まさに本法案により法整備が行われようとしており、加えまして、CCSを事業として行える経済的な枠組みの整備が必要であろうと認識してございます。
十ページを御覧ください。適地調査に関する御説明でございます。
二〇〇五年から一二年頃に行われましたRITEさんなどによる概査を受けて、弊社は、二〇一四年から今年度までにかけまして、日本周辺のCO2貯留ポテンシャル調査を実施いたしました。その結果、十一地点、百六十億トンのポテンシャルが存在すると推定しております。
未調査の地域も残されておりますことから、日本全体の年間排出量約十一億トンのうち、仮に一億トンを毎年貯留し続けるといたしましても、国内にはまだ相当の貯留キャパシティーが存在する可能性がございます。
十一ページを御覧ください。
大規模な排出源集積地域の近傍に貯留適地が見つからない場合、CO2の長距離輸送手段が必要となりますため、液化CO2船舶輸送実証を受託させていただきまして、現在、必要な設備の建設等を進めているところでございます。
本実証の一環として、CO2タンクの大型化を目指し、世界初となる低温、低圧状態での運用が可能なCO2輸送船「えくすくぅる」号も建造され、竣工しております。新年度より本格的な実証運用を開始する予定でございます。
十二ページを御覧ください。最後に、まとめと若干の意見でございます。
カーボンニュートラルと我が国のエネルギー安定供給、安全保障を両立するためには、CCSの活用を図ることが不可欠であると認識しております。
海外においてもCCSへの取組は加速をしており、我が国での実績を積み上げて、海外に伍して社会実装を進めるためには、我が国の石油、天然ガス鉱業者等の貯留事業参入を促進するべく、早期の法整備が必須であると考えております。
本法案は、技術的親和性の高い石油、天然ガス鉱業のプラクティス、これには地域の理解や環境対応等も含まれますが、これら及び苫小牧実証等から得られた知見が適切に反映されているものと認識してございます。
一方で、事業の予見性を高めるためには、モニタリングを含め、国際標準と比べて過度なコスト負担にならないような留意が必要であると考えております。
加えまして、本法案成立後の課題といたしまして、二〇三〇年までの貯留開始を実現するためには、最終投資意思決定を行う必要の生じる二〇二六年頃までに、貯留事業等を成立させる経済的枠組みを早急に立ち上げていただき、国による全面的な支援措置をまとめていただくことが極めて重要であると考えております。
また、当社が地質等の有識者の御指導の下で進めてきた貯留適地調査により、十一地点で百六十億トンが推定されておりますが、引き続き、更なる調査を進める必要がございます。
また、更なるコストダウンに向けて、研究開発等を促進することも必要と考えております。
私からは以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
○岡本委員長 中島参考人、ありがとうございました。
次に、本庄参考人にお願いいたします。
○本庄参考人 公益財団法人地球環境産業技術研究機構、略称でRITEというふうに呼んでいただいておりますが、本庄でございます。
今日は、衆議院経済産業委員会におきまして、私どもRITEが長年研究開発しておりましたCCSについての考察を説明させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
二ページを御覧いただきたいと思います。本日は、CCSの位置づけを始め、四点についてかいつまんで御説明させていただきたいと思います。
まず、三ページを御覧ください。本論に入る前に、ごく簡単にRITEの御紹介をさせていただきたいと思います。
私どもRITEは、一九九〇年に設立されました研究機関でございまして、地球温暖化防止の研究開発がメインの仕事でございます。特に、CCS技術、バイオリファイナリー技術といった研究開発に加えまして、温室効果ガス削減の将来目標を定めるシナリオ分析、この事業を三本柱として行っております。場所としては、京都府木津川市にございます、けいはんな学研都市に立地しております。現在百八十四名のスタッフがおりますが、そのうちの約半分がCCS関連の業務に従事しておりまして、そういう意味では、CCSについての知見は日本の機関の中でもかなり上を行っているのではないかと自負しております。
四ページをお願いいたします。まず、CCSの位置づけをざっと簡単に御紹介させていただきます。
国際エネルギー機関、IEAがつくりました持続可能なシナリオを掲げさせていただいております。二〇七〇年までにいろいろな技術を導入することによってCO2を削減しようというふうな見込みでございますが、IEAのシナリオでは、ここに書いてございますとおり、下のところに赤でございますが、全体削減量の一五%をCCUSで対応できる、二〇七〇年の断面で年間六十九億トン、これを実現しようということで、それだけの効果が期待されております。
次に、五ページを御覧ください。
昨年十一月にアラブ首長国連邦で開始されましたいわゆるCOP28、ここで、いわゆるグローバルストックテイク、パリ協定に基づいて各国が自主的に削減する削減目標を積み上げた、将来どうなるかということをみんなで評価をするという評価会が行われました。
その中でまとまったのが、この真ん中に赤字で書かせておりますけれども、ゼロ排出、低排出技術の加速、炭素回収、利用、貯留、CCUS、こういったことに世界全体で取り組みましょうということが強くうたわれておりまして、そういう意味で、このCOPの決定において化石燃料からの移行に言及したのは初めてですが、原子力やCCUSについてきちっと記載していただいたということは注目に値するのではないかというふうに思っておる次第でございます。
次に、六ページをお願いいたします。日本国内でのCCSの位置づけでございます。政府の目標として二〇五〇年カーボンニュートラルというものがうたわれておりますが、それを達成するための技術の積み上げをポンチ絵で記載させていただいております。
当然、省エネとかあるいはエネルギー需要の低減によって温室効果ガスの削減を図る、これが一番でございます。上の緑のところでございます。さらに、原子力、国内再生可能エネルギーの導入で一次エネルギー供給量を下げる、足らないところは海外から、再生エネルギーを活用したグリーン水素、グリーンアンモニアを輸入する、また、海外のCO2の貯留層の利用ということで、いわゆるブルー水素、ブルーアンモニアを輸入する、そういったことで国内の一次エネルギー供給量からの脱炭素化が図れるわけでございますが、下に書いてありますとおり、そうはいっても、やはり化石燃料はある程度使わざるを得ないだろうと。
その場合、CCSつきの化石燃料あるいはCCSなしの化石燃料の使用というのがございます。CCSつきの化石燃料は、右側に行きまして、国内で貯留する、場合によっては海外のCO2の貯留層を利用するということもありますが、CCSの、化石燃料につきましては、いわゆるオフセット、要するに、バイオマス発電によるBECCS、それから大気からのCO2の直接回収、DACでございます、そういったものによってオフセットをするということが必要になってまいります。
いずれにしましても、BECCS、DACCS、CCSつき化石燃料につきましては、どこかに貯留をしなければならない。国内に貯留をするか、あるいは海外の貯留層を活用する、要するに海外にCO2を輸出する、こういったことによってカーボンニュートラルが達成できるだろうというのが私どもがつくっておりますシナリオでございます。
次に、七ページを御覧ください。
そのCCSというのはどれぐらいのコストがかかるのですか、これはよく聞かれます。結論から言いますと、CO2の回収量、それから、どれだけ運ぶのか、どれだけ貯留をするのか、また貯留する場所も陸域なのか海域なのかによって、いろいろバラエティーに富んだ結果が出ます。
代表的な例で申し上げますと、足下で見ますと、パイプラインで国内に運んで陸上から入れる、これが一番安くて、CO2一トン当たり一万二千八百円と見ております。また、船舶輸送で、海上で比較的長距離を運んだ場合には二万二百円ということで、大体、今の足下のコストとして、CO2一トン当たり一万二千八百円から二万二百円というふうなのが私どもの試算でございます。
これをどう評価するかということでございます。カーボンプライシングとの関係で判断するのがいいのかなということで、次の八ページでございますが、カーボンプライシング、ちょっと日本国内ではきちっとしたものが見当たりませんので、一番使われておりますヨーロッパ、EU―ETSでのカーボンプライシングと比較してまいりました。
第一フェーズ、第二フェーズ、第三フェーズ、ずっと低迷しておりましたが、二〇二一年の第四フェーズからこのカーボンプライシング、EU―ETSのプライスが上がっておりまして、二〇二三年にはCO2一トン当たり百ユーロ。したがいまして、これは日本円に換算しますと一万五千円ぐらいになるんでしょうか。そうしますと、先ほど申し上げました今の足下の断面の日本国内のCCSコスト一万二千八百円から二万二百円と、まあまあ、どっこいどっこいといいますか、かなり近づきつつあるのではないかなと思います。さはさりながら、これを更に研究開発によってコストを下げなければならないということは必要だと思います。
続きまして、RITEの取組について御紹介させていただきます。九ページを御覧ください。
私ども、二〇〇〇年から基礎研究を始めております。後ほど触れますけれども、新潟県の長岡で、国内で初めての実証試験を開始しております。二〇一一年から基盤技術開発、安全に貯留をする、また経済的に貯留をするという基盤技術開発をしております。その成果を基に、二〇一六年から実用化、実用化というのは大体国際標準で年間百万トンのCO2の貯留をするということでございますので、そういった目標に向かって実用化に向けた研究開発に取り組みましたが、私どもRITEだけではなかなか難しいということで、二〇一六年に、右下にございますが、二酸化炭素地中貯留技術研究組合、これは、現在は民間企業九社と産総研さんとRITE、十一社でございますけれども、こういった民間企業の知見、あるいは、もちろんサイトも活用しながらの研究開発に取り組んでおりまして、二〇二四年度、今度の四月から新たな第三ステージの研究に移行するところでございます。
具体的に御紹介いたします。次の十ページを御覧ください。
二〇〇三年から二〇〇五年に、国内初でCO2貯留の実証試験をRITEが行っております。CO2の総圧入量が一万四百トンでございます。ここに写真で描いてありますような装置を使って、地下千メートルぐらいの圧入井にCO2を一日四十トンから六十トンくらいの量で貯留しております。圧入井の横に観測井というのを掘りまして、この井戸をうまく活用して地下のモニタリングをずっと継続しております。
その状況が次の十一ページでございます。十一ページを御覧ください。
坑井間弾性波トモグラフィーという技術を継続して実施しておりまして、二つの坑井の中に弾性波を飛ばすことによってその地下にあるCO2をモニターしております。この図にありますとおり、赤の中の緑の部分が、これがCO2でございます。二〇〇四年の中越地震の前に取った図、それから、圧入を終了してから五年九か月後の図ということでございますが、見ていただいて分かりますとおり、ほとんどCO2の移動が確認されていない。逆に言いますと、安定的にその場にとどまっているということが確認されております。
話が相前後して申し訳ございませんが、実は、CO2圧入を開始した翌年の二〇〇四年に中越地震がございました。このサイトも震度六強が揺れて大変だったりというふうに聞いておりますが、新潟県の御指導もあって操業はすぐ止めました。その後、CO2の漏えいが全く確認されなかったということもありまして、一か月半後に圧入を再開し、二〇〇五年にCO2の圧入を無事終了いたしました。やれやれと思っておりましたら、その翌々年に中越沖地震というのがまた起きまして、このときも、大変揺れましたけれども、CO2の漏えいは確認されておりません。さらに、その後もモニタリングをずっと続けておりまして、CO2の挙動についてはちゃんと安全にとどまっているということが確認されましたので、二〇二一年にモニタリングを終了して、圧入井も閉鎖しております。
このモニタリングでございますが、次の十二ページを御覧いただきたいと思います、新しい技術に我々はチャレンジしております。
CO2の圧入坑井と観測坑井、それぞれに光ファイバーケーブルをはわせまして、二種類の波長の光信号を送って、その波長の違いによって、何かイベントがあったときに戻ってくる時間が違うということで、どこでどんなイベントが起きているのかというのが分かる。具体的には、CO2の分布状態ですとか、それから地下の地層のひずみの状況、あるいは地下の温度変化、こういったものがリアルタイムでどこで何が起きているかというのが分かるという新しい技術をRITEが開発しております。
その技術については海外からも注目を浴びておりまして、次の十三ページを御覧いただきたいと思いますが、アメリカと豪州の研究機関から一緒にやろうよというお誘いがございました。
アメリカでは、ノースダコタ州のCCSプロジェクトサイトに光ファイバー観測システムを置いて、もう既にここでは三十万トンのCO2の圧入が行われておりますが、私どもの光ファイバー計測技術でCO2の挙動等を解析しております。また、右側の図は豪州でございますけれども、これもオーストラリアの方から共同研究の申出がありまして、ここはむしろチャレンジングで、断層の安定性評価をやりたいということで、断層に穴を掘って光ファイバーケーブルを垂らすことによってその断層についての評価を行おうということで、今、オーストラリアのパースの近郊で行っているところでございます。
続きまして、ちょっと観点が変わりまして、次のページを御覧いただきたいと思います。私どものこれまで培ってきたCCSについての成果を、二〇二五年、来年の大阪・関西万博で実証プラントを動かすことによって内外の皆さんに見ていただこうという試みでございます。
この図面にありますとおり、会場の右下、バックヤードの場所でございますけれども、RITE実証プラントを置く。何を置くかといいますと、次のページ、十五ページを御覧いただきたいと思いますが、実証プラントのイメージ、これは昨年の七月に博覧会協会さんの記者発表のときに使った資料でございますけれども、この実証プラントの中核になりますのは、この紙の左の上の方にございます、ダイレクト・エア・キャプチャーと英語で書いておりますが、大気からの二酸化炭素の直接回収装置でございます。要するに、博覧会会場の中の大気のCO2を回収する。
その回収したCO2をどうするのかというのが右に書いてございますけれども、まず、地中に貯留しましょう、ちょっと博覧会の会場の中には直接貯留できないので、ローリーで貯留サイトまで運んで、そこで地中貯留をするという計画がございます。それから、二つ目には、アスファルト舗装材に使って、会場の建設に使っていただくということ。それから、三番目は、これは、私どもではなくて、私どものサイトの隣にございますメタネーション施設、CO2と水素によってメタンガスを合成して作るメタネーションでございますが、大阪ガスさんがそれを動かされるということで、私どものダイレクト・エア・キャプチャーで回収したCO2もそのメタネーションに使っていただく。そこで作られたメタンガスは、パイプラインで、会場の中の迎賓館、RITE実証プラントの横、三百メートルぐらいのところにございますけれども、そこの迎賓館の厨房に持っていって、内外のVIP様のための料理を作るという構想でございます。
こういったことによって、日本の優れた環境技術を万博の場を使って内外の方にアピールしようという計画でございます。
続きまして、CCSの国際的動向を御説明させていただきたいと思います。十六ページを御覧いただきたいと思います。
これはグローバルCCSインスティテュートが昨年発表したものでございますが、昨年の段階で、稼働中のCCSプロジェクトが四十一、建設段階二十六、開発段階三百二十五ということで、開発段階がかなり増えて、プロジェクト総数でも前の年に比べて一〇二%増、ほぼ倍増しているということで、世界的にCCSが動き出したということでございます。日本も先進的CCS事業が昨年の七月に採択されたということもありまして、緑がいっぱい増えているというところでございます。
こういった世界のCCSプロジェクトを後押しするために、諸外国では早い段階からCCSの法制を導入しております。十七ページを御覧いただきたいと思います。
EU、英国、ノルウェー、豪州、アメリカ。大体二〇〇八年ぐらい、これは先ほど中島社長が御説明されておりましたが、二〇〇八年の北海道洞爺湖サミットで、G7でCCSをやろうじゃないかという合意があって、それを受けて各国が一生懸命法制の準備をしたということで、日本でも、今回、CCS事業法が導入されるということで、やっと諸外国と足並みがそろったなという感じがした次第でございます。
もう一つ、技術的に国際的に協力をしましょうというのが十八ページでございます。
国際標準、ISOを作ろうということで、ISOのTC265というコミッティーをつくりまして、その中に六つのワーキンググループ、回収、輸送、貯留等々でございますけれども、その六つの分野での標準化を進めているところでございます。既に十三の規格文書を発行済みで、八つの規格文書を現在審議中でございます。
国際標準化によって、やはりCCSの社会実装が進む、それから安全に運用される、経済的にもCCSができやすい、また、こういった国際標準に従って行うということで社会的受容性も得やすいということだと思います。
私どもRITEは、僭越でございますけれども、国内審議団体として、日本としての意見を取りまとめる役割が課されているところでございます。
十九ページを御覧いただきたいと思います。最後に、CCSについての私から見た今後の期待でございます。
まず第一が、今回御審議いただいておりますCCS事業法の整備によって、日本のCCS事業がいよいよ本格的に展開されるということでございます。それから、もう既に政府では政府支援が行われておりますけれども、さらに、先進的CCS事業の後の本格的な事業に対する支援の検討、また、コスト削減のために、分離・回収、地中貯留、そういった分野での研究開発を更に進めていただくということと、それから、CDR、カーボン・ダイオキサイド・リムーバル、要するに二酸化炭素除去という、先ほど御説明いたしましたダイレクト・エア・キャプチャーのような技術でございますが、こういった技術、もう欧米では本格的に研究が進んでおりますので、日本でも本格研究に是非着手していただきたいということでございます。
また、経産省の目標では、二〇三〇年までに年間六百万トンから千二百万トン、二〇五〇年までに年間一・二億トンから二・四億トンのCO2貯留という目標を掲げられておりますけれども、それを達成するためには、いろいろな施設の整備が必要、またインフラの整備も必要になっております。これは、逆に言い換えますと、そういう施設整備を行うということで、大きな経済波及効果、さらには雇用効果が日本全体にもたらされるのではないかと思います。
そういった観点から見ますと、そういったことを実施するいわゆるサポーティングインダストリーというのは、ちょっと用語は悪いかも分かりませんが、CCS事業を底から支える産業も育てていかなければならないと思いますし、何といっても人材の育成、確保、これが一番大事なことだと思います。私どもRITEも、微力ではありますけれども、人材の育成に御協力できればと思う次第でございます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○岡本委員長 本庄参考人、ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○岡本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。和田義明さん。
○和田(義)委員 おはようございます。自由民主党の和田義明でございます。
今日は、四名の参考人の先生方にお越しをいただきました。先ほど来大変貴重な御知見、そして法案に対する御意見を賜りました。御多忙のところお越しをいただきまして、心から感謝を申し上げます。
CCS法案、大変期待の大きいものでありまして、二〇三〇年までに民間業者さんがCCSの事業を開始するための事業環境を整備するというようなことで、それを政府としてもしっかりと応援しなければいけないというところがミッションであります。地球の環境を守り、そして同時に産業も育成するというすばらしい取組であり、私も大きな期待を持って応援させていただきたいと思っております。
化石燃料のCO2の排出削減、これに極めて有効であるということ、温暖化緩和策、また脱炭素とエネルギー安全保障、これを両立できるということは極めて重要だと思っております。エネルギーソースをしっかりと分散させなければ、やはり国民にエネルギーを安定供給できないというふうに思いますし、私は選挙区が北海道でありますけれども、冬にエネルギーが断たれるということを胆振東部地震のときに、本当に数日ではあったんですけれども、強い恐怖感を持って体験をいたしました。やはり安定供給を確実にするということ、ここは極めて重要だと思っておりますので、石油そして天然ガス、こういったものをできるだけ減らす必要はあるものの、やはりCCSという新たな技術を使って、これらも含めたエネルギーソースの分散、安定供給、こういったことが実現できるということは大変すばらしいことだと思っております。
苫小牧のCCSの実証実験、実は私の選挙区はお隣の千歳からスタートしまして、今日苫小牧の選挙区の堀井先生もお越しでございますけれども、身近なところでこういった実証実験が行われている、特に苫東厚真の火力発電所のところで行われているということは、極めて意義が大きいと思っております。北海道も火力発電所がメインでありまして、今は泊の原子力発電所が止まっている状況でありますので、やはり火力発電所の環境対策をどうするかというのは、これは喫緊の課題でございます。
それに加えまして、苫小牧の隣の千歳市という町に先端半導体の工場のラピダス、これが目下建設中であります。二〇二五年には試作が開始され、そして二〇二七年には量産が開始されますけれども、この半導体がグリーン半導体と言えるかどうかということは、この先端半導体、政府がもう本当に力を入れて推進しているプロジェクトでありますけれども、この国策プロジェクトが本当に浮沈を懸けているところでありまして、何としてもやはりグリーン半導体であり続けなければならないというふうなところは、これは最大の課題の一つであります。
泊の原発の再稼働が二〇二七年の前半ないし半ばというふうに言われておりますので、本当に量産開始のタイミングとぎりぎりでありますけれども、その後、この半導体の工場というのは、第二工場、第三工場、今、最大第四工場まで造るかもしれないという構想もある中、最大、北海道の電力の一〇%ぐらいを消費する可能性があるというふうにも言われております。
そういった中、このCCSの存在というのは極めて大きいので、本当に政府挙げて推進しなければいけないというふうに思っておりますが、その一方で、私は、家族が阪神・淡路大震災の被災者でもありまして、地震というものに非常に強い心配を抱いておりますし、特に、二〇一八年、胆振東部地震があったとき、まさに苫小牧のCCSの実証実験中だったというふうなことでございました。
そこで一点、中島先生に確認をさせていただきたいんですけれども、モニタリングをして、CO2の漏れがないように確認をされているというふうなことでございました。本庄先生からも、長岡のところでしっかりと確認をされているということでございますけれども、金属等々で密閉されている状況ではない、地層でのみ遮蔽をしているという状況下で、縦から漏れない、じゃ、横から漏れないのかというふうな、本当に基本的な心配をしちゃうわけでございますけれども、これが漏れない、安心であるというところの背景について、少し御開陳をいただけたら大変ありがたいと思います。よろしくお願いします。
○中島参考人 お答え申し上げます。
まず、サイトを選定する際に、地層の状況を十分に調査をした上で、それがまさに貯留適地であるかどうかということを確認して、貯留作業を開始することにいたしております。苫小牧の実証でも、実際に、試掘井といいますか調査井を掘削した上で、遮蔽層の能力ですね、遮蔽能力が十分であるということも技術的に確認をした上で貯留を開始したということが一点ございます。
それから、その上で、貯留層の中でどの程度CO2が広がっていくのかということは、あらかじめシミュレーションを行いまして、松岡参考人から少しお話がございましたけれども、想定をしております。圧入をしている期間中も段階的に弾性波探査というのを繰り返し行っておりまして、そうすると、地下の貯留層の中にCO2がどのぐらいの広がりを持って貯留されているかというのが可視化できる技術がございますので、そういった技術と事前に行ったシミュレーションとの整合性といいますか、合致しているかどうかを確認しながら実施をしてまいっております。
今、この苫小牧実証におきましても、これまでの間、繰り返し弾性波探査を含めて地下の貯留状況を確認しておりますけれども、その広がり方というのは、おおむね事前にやったシミュレーションとも合致しておりますし、その範囲内の中でとどまっているということを見ておりますので、胆振東部地震を経験した後も、その点については大きな変化は起こっていないということを確認しております。
それから、地下の状況につきましては、観測井も含めて地下の温度や圧力を観測をしておりまして、まさに地震が発生した直前直後も含めまして、地下の温度、圧力に異常がないということも確認をしております。
そういった点から、この苫小牧の実証においては、地震の専門家も含めた専門家、有識者の皆さんから、地震の発生源となったのではないかということについての因果関係も否定されておりますし、それから、大きな地震が発生したことによって、貯留地点の地下であったり井戸であったりが破壊されたり異常が生じていないということについても確認をされてございます。
一般論として申し上げますと、日本国内にも油ガス田というのは、海外の大産油国とは違いますけれども、存在をしておりまして、新潟や北海道苫小牧にも油ガス田が存在しておりますが、そうしたところは、相当長期間にわたってずっとそこに安定的に油ガスが貯留され続けているわけでございますので、一般論としては、地下、大きな深度、千メートルから三千メートルという深度でございますので、ここに大地震が与えたときに何か油ガス田が破壊されたということは、海外でもそういう事例は私は寡聞にして聞いておりませんので、そういう意味でも安心できるのではないかと考えている次第でございます。
以上、お答え申し上げました。
○和田(義)委員 誠にありがとうございました。
確かに、油田等々はしっかりと、何百年、何千年と油をしっかりと貯留しているというようなことでございますので、非常に分かりやすい御説明をありがとうございました。
その一方で、人工的に液化されたCO2、これを圧入するというようなことでありまして、新たなものを、自然でないものを入れるというようなことがあるわけでございますけれども、仮に、例えば地震でどこかしらにクラック等々ができて、それでこれが大気中ないし水に漏れた場合なんですけれども、これを速やかに止める方策というのはあるのかというところが一点と、あともう一つは、例えば仮にその近隣に人間が住んでいた場合の影響、その可能性について御開陳をいただければと思います。
○中島参考人 お答え申し上げます。
まず、苫小牧の実証の事例におきましては、圧入井もそうですし、周辺に観測井、それから御紹介した海底に地震計を設置をするなどいたしまして、圧入中に地層が破壊された場合には振動が生じますので、そういった人為的な原因による振動が生じていないかということをずっと観測してまいりました。幸いにして、この苫小牧実証の期間中には、そういった微小振動を観測することはございませんでした。
基本的には、シェールガスの開発や何かがアメリカで行われていますけれども、あれは人為的に、わざと地層を破壊することによって、油やガスが採取しやすくなるということをやっておりますけれども、逆に、CCSの場合には、いかに地層にダメージを与えずに効率よく貯留していくかということに留意しておりますので、まず、それが生じないため、あるいは振動が生じたことを観測できるような措置を講じているということでございます。したがいまして、もし遮蔽層にそういった亀裂なり遮蔽層の破壊が疑われる場合には、直ちにその時点で圧入を停止するという措置が講じられることになると理解をしております。
そうした上でも、漏えいする、漏出するリスクというのは、一番リスクが高いのは、圧入している坑井自身を伝わって地上にCO2が出てくる場合でございまして、これにつきましては、坑井に対して何らかのアクション、石油、ガスの場合でも地下から逆流してきた場合にそれを措置する技術というのはございますので、そういったものを講じることによって、坑井からの漏えいは止めることができるであろうと思っております。
それから、地層を伝って出てくる場合でございますけれども、松岡参考人の御説明にもありましたが、例えば断層を伝って漏出する可能性ということは完全に否定することはできませんけれども、地下千メートルを超える深度であると、相当の地層圧で、断層のところであってもぱっくり口が開いているわけではなく、ぎゅっと押し詰まった状況でございますので、苫小牧の実証をする際にも、もし想定しないところに非常に大きな断層が仮にあると仮定をして、そこからどのぐらい漏出が起こるかというシミュレーションもしましたけれども、極めて少量しか出てこない、そういったシミュレーションも行っております。
したがって、地下千メートルに一旦埋めたものが別のところから、それを伝って再び大量に一気に漏出するというリスクは極めて低いのではないかと考えているところでございます。また、そういった極めて一気、短時間に大量に漏出することがなければ、仮に大気中に出てきた場合でも大気に希釈されますので、健康等に被害を及ぼす可能性というのは、絶対にないということはなかなか申し上げられないんですけれども、やはりそのリスク、可能性ということは相当程度低いのではないかというふうに考えているところでございます。
以上、お答え申し上げました。
○和田(義)委員 どうもありがとうございました。
続きまして、松岡先生にお伺いしたいと思います。
現時点までで、貯留可能地を十の地点、確認され、そして百六十億トンのCO2が貯留できるというようなことでチェックをされているということですけれども、これが日本の排出するCO2の七十年相当というようなことでありまして、かなりの量が貯留できる可能性が、この十地点でもってしてももう既にあるというようなことでございました。
その上で、今後こういう地点をこれから調べていって開発をするというふうなことが期待されるわけでございますけれども、同時に、CO2船で外国にもこれを持っていくというような話もございました。国内で貯留した方が、例えば燃料をたいて船で海外に持っていくというよりもいいのかな、環境にもいいのかなというようにも思いますし、トータルのCO2の排出量とかを考えても、その方がいいのかなと思うんですけれども、この点についての御意見を先生からいただけませんでしょうか。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
まず、百六十億トンという数字ですけれども、これについては、先ほども御説明ありましたけれども、将来増えていくだろうというふうに考えております。
海外にCO2を持っていって圧入するというストーリーが考えられています。これは、もちろんそういう手法も重要でありますが、私の意見としては、まず国内でしっかり技術をつくり上げるというステージを取った後で、どうしても時間的な制約で、すぐに足りないというような状況になったときには、当然のことながら、海外に持っていくというアイデアは重要であろうというふうに思います。
ただ、そのときに、基本的には、やはりコストというのがどうなるかというのが、その判断の一つの鍵になるのではないかというふうに考えております。簡単ですけれども。
○和田(義)委員 ありがとうございました。
きっちりと産業化をして、コスト競争力もつけて、そして日本の強みにしていく、このことが大変重要だというふうなことを勉強させていただきました。
貴重な御意見、どうもありがとうございました。
○岡本委員長 次に、中野洋昌さん。
○中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。
今日は、松岡参考人、また冨田参考人、中島参考人、そして本庄参考人、四名の皆様、それぞれのお立場から、このCCSの事業法案につきましての、CCSをめぐる様々な歴史であるとか、あるいは技術的な状況であるとか、いろいろな御知見をいただきまして、本当に参考になると思っております。改めて感謝を申し上げます。ありがとうございます。
今回、経済産業委員会で議論をしておりますのは、一つ水素社会の推進法案とCCS事業法という、カーボンニュートラルに向けての二つ重要な法案を今一括審議ということでやっておるわけであります。
カーボンニュートラルを実現をしていく、あるいはこうした脱炭素、気候危機に対応していく、こういうことはかなり社会的にも、それは必要だということで非常に理解が今進んでいる状況だとは思うんですけれども、その中でのCCSの位置づけがどうなのかということについては、まだ、正直、なかなか皆さん、CCSが、そもそも技術的な、先ほども地震の関係とかの御質問もありましたけれども、やはり安全性あるいは技術的にどんな状況にあるのかとか、あるいはそもそも何のためにやっていくのかであるとか、そういう必要性のところも含めて、これからしっかりとやはりそういうことを我々も説明しながら、CCSを事業化をしていく、推進をしていくということをしないといけないのかなというふうに個人的には思っております。
冒頭、松岡参考人とあと本庄参考人にお伺いをしたい、改めてというか、冒頭の非常に基本的なところではあるんですけれども。
そういう意味では、国民の皆様にとってまだ余りなじみがないCCSという事業でありますけれども、しかし、先ほど来のお話を伺っても、元々の歴史はかなり長い間あるというか、ノルウェーですとか、あるいは石油の採掘に伴ってそういうことをやってきたようなこともございますし、他方で、CCSの事業としての開発というのは近年急速に加速しているというか、そういう状況にもあるのかなというふうにも思っております。
そういう意味では、CCSをめぐる、今まさにそういうことがどんどん加速しているというふうな国際的な情勢や、あるいはそういう必要性でありますとか、その中で、今まさにこの事業法というものを作る必要性、そういう意味では、ひょっとしたらもっと早くやるべきであったという御意見もあるかもしれませんけれども、そういう、CCSをめぐる国際情勢の変化や、必要性がどう増えてきたか、あるいは、今まさにこの法案を作る意義というものをちょっと改めて参考人のお二人からお話をしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○松岡参考人 お答えしたいと思います。
御指摘いただいたとおり、CCSに関しては長い歴史がありまして、その間いろいろな変遷がありました。ブームが幾つかありました。その中で、ブームがやはり途切れるといいますか、山の時代と谷の時代がありまして、現在、非常に一気に加速しています。
その原因ですけれども、まず、非常に重要な原因は、外部不経済であるというこの問題をいかに解決するかということが各国なかなか手をつけられなかったということだと考えています。
そういう意味で、CO2―EORという、まさにビジネスに直結して外部不経済ではない分野においては、一九七〇年代初頭から使われてきた技術だった。
そういう状況の中で、なぜ今、お金がかかるCCSに着目されているか、その理由について、待ったなしであるという認識が世界中に広がっているということだと思います。
つまり、カーボンプライシングをしてもなかなか全体に下がらない状況もありますし、再生可能エネルギーを、ますますこれから発展していくとは思いますけれども、その発展の仕方に対して、一・五度Cの目標が実現できるかというそのバランスの中で、CCSというのは現在存在している排出源に対して使える技術であるということと、直接的に更に大量に削減できるという、非常にそういう点があるということです。
例えて言うならば、火力発電所から出ている数百万トンのCO2を、じゃどうハンドリングするかと聞かれたら、一番答えとして出てくるのはCCSだろうと。その足かせとなっていた環境を、法的な整備ができてきたということと同時に、いろいろな、アメリカの四十五Qというような税制に対する手当てとか、そういう環境の変化の中で一気に進んできたというふうに私は見ております。
簡単ですけれども、以上でございます。
○本庄参考人 お答えいたします。
ただいま松岡先生が説明されたことと若干重複はあろうかとは思いますが、二〇〇八年がまず第一次CCSブームで、北海道洞爺湖サミットでのG7サミットでの宣言、それから各国がどんどんCCS法制を作った。しかし、実際には、事業としてはそれほど国際的にも進展していなかった。
第二次のステージが、二〇一五年にCOPでパリ協定ができて、各国が約束草案を提出する、自主的に削減をしよう、それを五年ごとにグローバルストックテイクのようなレビューでしていこうということで、温室効果ガス削減に待ったなしという状況になりました。
その上さらに、各国がカーボンニュートラルというものをかなり政策的に強く打ち出した。カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーで全てを賄うことはできない、既にある化石燃料施設を使わざるを得ないという意味で、やはりCCSにしっかり取り組まなければならない、そういう世界的なムードにもなってきたということで、二〇二二年ぐらいからまたブームになって、現在ここに至っているということではないかと思います。
当然、その背後には、松岡先生が御説明されたとおり、各国がカーボンプライシング制度を導入する、あるいは税制その他財政上の優遇措置を講ずる、そういう手厚い支援策をやることによって、外部不経済と言われていたCCSのビジネス環境が整ったということでございますので、今回のCCS事業法によって、日本国内でもそういう動きが進むんだと思います。
もう一点、社会的合意といいますか社会受容性の確保については、これは私ども若干不徳の致すところでございますが、そういった地道な活動は我々中立的な研究機関がもっと一生懸命取り組んでこなければならなかったかなと深く反省をしておりますが、その埋め合わせになるかどうかは分かりませんが、大阪・関西万博でCCSの実証プラントを動かすことによって、内外、特に日本国民からの認知度、理解度を高めていきたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
○中野(洋)委員 ありがとうございます。大変よく分かりました。
済みません、ちょっと、本庄参考人にもう一問お伺いしたいのが、私、CCSの技術の開発というか、それを今後どういうところをやっていかないといけないのかというのも少しありまして、実際にやっていく中でコストがどのくらいかかるかという試算も示していただいて、少しその技術開発をめぐる今後の支援の在り方も是非お伺いできればと思うんですけれども。
CCSは、ずっとやってこられ、昔から歴史のある事業ということで、ある程度技術としては確立をしているような、そして、先ほど松岡参考人の方からも、日本もそういう技術はかなり有しているという御指摘もありました。そういうところで、今後またコストを下げていく中で、どういう技術的なブレークスルーがあり得るというか、ある程度大型化してロットを確保していけば下がっていくというふうなものなのか、あるいは、もう少しこういうところの技術開発をしていけば、日本に足りない技術、あるいはもっと世界で競争力が出てくるようなものがあるのか、ちょっと、そういう点についてお伺いをできればと思います。
○本庄参考人 お答えいたします。
先ほど、私、資料で、七ページでCCSのコストを御紹介させていただきましたが、足下の断面でのコストが一万二千八百円から二万二百円というふうに申し上げましたが、それを、二〇三〇年、二〇五〇年の削減目標をここに記載させていただいておりますが、一番金額的にも比率的にも削減効果が高いのが分離・回収でございます。まさしく、こういった分離・回収の研究開発をしっかりやることによって、かなりコストが下がるのではないかなというふうに見ております。
具体的に申し上げますと、既に液体吸収技術というものが確立されておりますが、それを大型化することによってコストも下がりますし、また、現在我々も取り組んでおりますけれども、違うやり方、固体にCO2を吸着させてそれを放散させて回収するような固体吸収技術、あるいはCO2だけを選択的に通す膜分離技術、こういったものが実現できますと小規模排出源にも適用できるということで、トータルで見たCCSの分離・回収コストが下がるというふうになると思います。
それから、貯留の部分につきましても研究開発要素はまだまだございまして、何といってもモニタリング技術でございますね、きちっと精度を上げて、安全にCO2があるということをいかに経済的に安くモニタリングできるかという技術を更に磨きをかけていく、この二点が必要かなというふうに思っております。
以上でございます。
○中野(洋)委員 ありがとうございます。
分離・回収あるいはモニタリングということで、具体的な技術も示していただきまして。しっかりと、やはりこういう、日本がどれだけ技術的に、世界的にこういう技術を磨けるかというのが非常に大事だと思いますので、是非そういう応援もしていきたいと思います。
もう一問、中島参考人にお伺いをしたいのが、先ほどもありました、地震との関係がやはりどうしても、いろいろな御心配の声もあるものでございますので。
よく、地震があったときにCO2が漏れるんじゃないかという御意見は一つあります。先ほど、胆振東部のときにはそういうことはなかったというふうなお話もありました。
もう一つ、地層にCO2を入れていくと、それが地震のそもそも原因になるんじゃないかみたいな、そんな御心配の声もあるとも聞いておりまして、この点について、実際に胆振東部のときにはそうじゃなかったというふうなお話もありましたけれども、またこういうところについて、一般的にどのくらい安全性のそういうところが立証されているのかですとか、もう少し詳しくお伺いできればと思いまして、よろしくお願いいたします。
○中島参考人 御回答申し上げます。
まず、胆振東部地震のケースにおきましては、具体的には、水平距離それから垂直的な深度、震源との位置関係の分析を専門家の先生にしていただきまして、そこにおいて相当の距離が離れている、これは実際には三十キロメートルほど離れている、それから深度も、貯留地点は一千メートルから三千メートルぐらい、これに対して震源の位置は三万メートルということで、こちらも桁が一桁違うということがございました。したがって、この間の地層の連続性というものがなくて、入れたCO2が震源まで届くということはあり得ないというのが一点あろうかと思います。
それからもう一点は、地下に圧入したときの圧力の変動が震源の方まで伝播をして、それが何らかの影響を及ぼしたのではないかという疑念が出る可能性もあるんですけれども、それについても、この三十万トンを入れたことによる地下の圧力変動、応力の変動の幅というのが、月の運行で生じる潮汐力による地下に与える応力の影響、これの一千分の一ということで、したがって、月の運行によって日々苫小牧の実証のケースではその千倍の応力の変動を受けているということでありますので、これはやはり、圧力の伝播等が地震の発生につながったという可能性もないだろう、こういう御評価であったもの、要約いたしますとそういうことであったと理解しております。
その上で、苫小牧実証のエリアを選定した際もそうですし、今後行われるであろう貯留地の選定においても、地震の震源が集中しているエリアというのはやはり国内でありますので、そういったデータはもう十分に蓄積されておりますので、先ほど私の方から十一地点、百六十億トンと言った、ああいった貯留適地と思われる地点というのは、そういった地震の震源地域からは離れた地点というものをまずは抽出して、適地があると思っておりますし、実際に、最終的にサイトを選定する場合にも、それは、そういった震源地域あるいは大きな断層があるエリアからは距離的に離れたところを選んでいくということで、地震との影響を回避していくということであろうかと思っております。
以上です。
○中野(洋)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
○岡本委員長 次に、荒井優さん。
○荒井委員 立憲民主党の荒井優でございます。
本日は、CCSの専門家の先生方、そしてまた、働く人の、まさにCCS事業にも関わる働く人の専門家の方にもお越しいただきまして、様々な論点で大変勉強になりました。
特に、最初に松岡先生から、まさにこのCCS、産業になっていく中では、社会的な受容性というものが今後非常に重要なんだということを大変強調してお話しいただいたというふうに思いますし、その中でも、特に社会からの許可が非常に重要だということだったかと思います。地域の住民そして地元の理解、そしてもう一つ、やはり働いている人たちにとっても、それをしっかり理解するということが同時に今重要なんだろうなというふうにも思います。
実は私も北海道選出でして、今日、実はお話を伺っていて一つ思い出した演劇があって、北海道の倉本聡さんという劇作家の方が悲別という演劇を昔書かれていて、炭鉱の閉山に伴う演劇ではあったんですが、それまで北海道は特に炭鉱事業が熱心でしたので、それが閉山したときの、その働いている人やその家族の人たちがその後離散していく、次のサイトというか、ほかの事業に向かっていくみたいな話を書いた演劇だったなというふうに思い出しましたが、先ほどまさに冨田参考人からも、いずれこの終わりのところも含めてしっかり考えていく必要があるんだということをおっしゃられていたかというふうに思います。
まさに大きな産業をつくっていく中で、今の既存の産業から働いている人たちを少しずつ移転させていって、そして、この産業に関わった人たちも、いつかその地域からいなくなることが出てくるかもしれない、それはコミュニティーを失っていくことになるかもしれないというふうにも思ってもいます。
そういう意味で、新しい産業をつくっていこうと非常に前向きな取組の中に連合が最初から関わって、まさにそういう視点を述べていくというのは非常に重要な視点じゃないかというふうに思いながら今日伺っていましたが、冨田参考人、そのところの部分で、どんなように今後の関わり方についても考えていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。
○冨田参考人 お答えいたします。
先ほど冒頭の中でも申し上げましたけれども、このCCS事業に限らずですが、GXは、二酸化炭素の排出削減と産業競争力強化、経済成長の同時実現を目指すものでありますので、産業構造、地域経済、労働者への影響が大きいというものです。
したがいまして、その事業を推進していく規定には、負の影響を最小化する公正な移行、これを織り込んでいくことが大変大事だと考えてございます。
具体的な対策については、先ほども申し上げましたので繰り返しはしませんが、特に私ども重視をしておりますのが、中小企業において、こうした産業移転などに対処するときの対応をどのように取っていくのかということでございます。
特に、中小企業において失業なき労働移動を実現していくためには、サプライチェーンにおける事業の予見可能性であるですとか、新規の事業に対する国からの投資の支援、それから地場企業の雇用に対する目くばせといった、国、地域、サプライチェーンが協力をし、複合的に中小企業を支援できる体制を検討していくということが大変重要だというふうに思ってございます。
残念ながら、労働組合の組織率がなかなか増えていかない現状にあって、さらに、中小企業の中でも労働組合が少ないという中にあっては、私ども全国的な組織である連合が、働く者の代表として、大企業だけではなく中小企業も含めた、そして、雇用形態に限らず、全ての働く者の皆さんのこうした公正な移行に向けた意見を聞いていただく場を是非地域の場でつくっていただいて、企業の発展と労働者の生活の安心、安定が同時に推進されるような、そうした場の設置に是非御尽力いただきたいというふうに考えてございます。
○荒井委員 ありがとうございます。
冨田さんにもう一つ是非お伺いしたいんですが、まさに地元の理解がこれからますます必要になっていくということがCCSも問われているわけですね。
まさに、連合の持っているネットワークだったり、組合員だけではなく、働いている人たちに対して、実は、この前の経産委員会でも、今の福島の第一原発の部分で、廃炉の作業に関わっている人の二五%はまさに地元の双葉郡に住んでいる人だというお話も東電にお答えいただいたりもしました。まさに働いている人は同時に住民でもある可能性が非常に高くなっていますので、地域の理解を促していくのに、連合としても、まさに政策に関わるところから地元の理解に関わるところまで、細かく、丁寧に、一緒にやっていくことができるんじゃないかというふうに思いますが、その辺、いかがでしょうか。
○冨田参考人 お答え申し上げます。
私どもの仲間であります地方の連合会では、多くの地方で行われる協議会などにおいて、労働者の立場から意見を申し述べる機会をいただいているところでございます。
まさに地域の経済は、地域で働く人と、そこで行われる事業の発展が、その地域の発展や暮らし、そして、我々は、地域に対する愛着みたいなものも含めて醸成されていくんだというふうに思っておりますので、引き続き、こうした場に労働者の意見の反映をお願いをさせていただきたいというふうに存じます。
○荒井委員 ありがとうございます。
まさに、こういう、非常に重要だし、また地域の理解が必要な大きな政策、法律に対して働く人たちの意見が入るような取組を、今後も経済産業委員会として求めていきたいというふうにも思っております。
続いて、CCSの専門家の先生方三名にお伺いしたいんですが、まさに今、少しイメージいただいたかと思いますが、CCSの事業というのがどんどん始まっていけば、そこで働く人たちがたくさん出てきて、そしてそこで生活をしていくわけですね。昔の炭鉱ほどではないかもしれませんけれども、いろいろな大きなコミュニティーができ上がっていくんだというふうに思います。
当然、そこで働いている人、お父さんやお母さんが子供たちに対して今こういう仕事をしているんだという話をしたときに、今日も和田先生、中野先生からもお話がありましたけれども、地震との関係性というのは、やはりこのCCSというのは切っても切れない、松岡先生も、地震というものはCCSにとってしっかり取り組むべき課題なんだというふうに今日も冒頭お話がありましたけれども、例えば、子供たちに対して、働いている人や地域の人たちが、CCSというのは地震とはこういうふうに関係がないんだとか、まさに今日、二点、地震を誘発するんじゃないか、若しくは地震によって二酸化炭素が出てしまうんじゃないかということを、多分、これは多くの、まさに社会的受容を深めれば深めるほど、皆大きく思うんじゃないかと思います。
今日も、実は、まさに厚真の地震であったり中越地震であったり、CCSの話をするときに、どうしても地震の話が近く出てくるというもので、今後もそうなのではないかと思います。
いろいろ資料で、若しくは研究者のお立場から対大人に対してお話を伺いましたけれども、例えば、子供たちにこのことをどう説明したらいいのか、少し分かりやすく御説明いただければと思います。お三方からお願いいたします。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
大変難しい御質問なんですけれども、子供たちには、まず、CCS事業というのが現在進んでいる温暖化の対策の非常に重要な手法であるということを教えることと、地震というのは、多分すぐに問われる質問だと思います。
一点、私が、例えばうちの孫と言ったら変ですけれども説明するとしたら、地面の中にある構造物と地表にある構造物で地震の影響はどちらが大きいかというと、それはもちろん地表なんです。それはなぜかといいますと、地面の中は、例えば千メートルのところに貯留層があったとすると、地震で揺れるのは全体で揺れますが、地表の例えばマンションですと、一階は揺れますけれども、上が揺れないわけです。だから、地表のマンションも全体として左右に揺れれば、これはただ揺れているだけです。だから、壊れることはありません。ところが、地面はそういう状況なんですけれども、地表は、片っ方しか揺れないために壊れてしまうわけです。
こういう説明をしたら、もしかしたら子供も理解できるかなというふうに思いました。よろしくお願いします。
○中島参考人 御回答申し上げます。
具体的にどう子供たちに説明すればよいのかというのは、ちょっと今すぐ妙案を持ち合わせているわけではございません、今、松岡参考人がおっしゃられたのが一つではないかと思っております。
それで、私どもJCCSで、これまで地域の皆様に御理解いただく活動を行ってまいりましたけれども、その中では、大人向けの広報活動以外に、子供たちに向けた広報活動というのもかなり力を入れて取り組んでまいりました。子供実験教室であるとか、それからパネル展を開催して、そうすると学校単位で見に来てくださったり、あるいは学校への出張講義といったものも行わせていただいております。
基本的には、子供だからって、分かりやすい説明や工夫は必要だと思いますけれども、やはり本質的な部分をしっかりと子供向けに伝えていく、そういう活動を事業者側、あるいはCCSを推進する国、公的機関によって進めていただく、そういうことによって、広く、CCSというのはこういうふうなもので、安心、安全なんだということを理解していただくのが必要なことではないかと思っております。
以上でございます。
○本庄参考人 お答えします。
私どもRITEでは、長らく近隣の小中学生を対象に環境教育、特に夏休みを中心に来ていただいて、CO2とは何だ、CO2を貯留するというのはこういうことなんだ、そういった広報、普及活動を行っておりましたが、先生御指摘のような子供に分かりやすく地震との関係を説明するということは、私の記憶にある限りではなかったので、これは非常にいい課題をいただきましたので、今年度の環境教育の中でしっかりと取り組んでいきたいと思います。貴重な御指摘、ありがとうございました。
○荒井委員 ありがとうございます。
是非、大阪万博でもそういった、やはり日本は地震大国ですから、アメリカやノルウェー、ほかの海外のお話とは、やはりどうしても地震との関連性というのはみんな頭をよぎるんだと思います。社会的受容性を高めようと思えば思うほど、アウトリーチすればするほど、必ずこの話になっていくと思います。技術的にはしっかりしているんだということは素人ながら感じますが、そこが多くの人が理解いただけるようにしていただきたいなと思っております。
もう一点、松岡先生にお伺いしたいというふうに思います。
特に、このCCSというものを産業化していく必要があるんだということを先生は強く主張されていると思います。今回はCCS事業法ではありますけれども、インダストリーにしていく。そして、先生は、インダストリー、産業化という場合には、それぞれ、大学の学部も一対一になっていく必要があるんだということを提起されていらっしゃったかと思います。
本当にそのとおりだと思っていまして、実は、今日も北海道大学の工学部の学生と朝、ちょっと話をしていました。彼は、社会環境という学科にいまして、実は、日本財団が毎年行っている海洋開発のサマースクールがありまして、海外にそういう工学部の学生を派遣するプログラムがありまして、そこで、それこそノルウェーに行ったり、いろいろなところに行き、CCSのものを見たりしながら非常に知見を高めてきて、是非この分野で頑張っていきたい、そういう若者がいるということを改めて知りました。
ただ、彼から聞いたのは、この業界で今勉強している人というのは全国に日本人は二百人しかいないんだということなわけですね。CCSがまさにこれから産業化していくというふうに広がっていく中に、当然、今彼は大学三年生ですけれども、今二百人だけであれば人材としてはやはり少な過ぎるわけですけれども、これから産業化していくためには、まさに、例えば工学部にはCCS学科みたいな、そういったものが必要になってくるんじゃないかというふうに思いますが、先生の意気込みとまなざしを教えていただければと思います。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
まさに御指摘のとおりでして、日本においては、資源関係の学科は昔は鉱山学科というふうに呼ばれていました。しかしながら、日本で鉱山がだんだん少なくなっていくにつれて資源という名前に変わって、その資源も業界として魅力がなくなってきたということで、だんだん衰退していって、最終的に二百人というのは、多分それぐらいの数字だというふうに私も思っています。
しかしながら、一方、実は、スタンフォード大学がサステーナビリティースクールというのをつくりました。これは、CCSの先生がそこにおられるわけです、数名。つまり、サステーナビリティーですから、CCSも、それから地熱とかそういう分野の先生も、さらに、経済的な専門の人とか土木関係の人とか、新たな視点で、どういう人材をつくりたいのかということで、みんな協力しながらつくっていく、そういう試みが去年スタンフォードで始まりました。これはさすがスタンフォードだというふうに私も大学にいたので感じています。
是非、日本においても、やはり看板というのは多少重要であるということと、それから単一の分野じゃないということですね、CCSは。多分、機械の先生もいれば、法律とか経済、社会学の先生もいないと社会受容性に対応できないでしょうし、環境の先生も必要です、だから、そういう部門をつくっていくという試み、チャレンジをどこかでできればすばらしいなというふうに感じています。
以上でございます。
○荒井委員 どうもありがとうございました。
これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。
○岡本委員長 次に、守島正さん。
○守島委員 日本維新の会の守島です。
本日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
早速質問に入らせていただきたいと思います。
まず、松岡参考人にお伺いしたいと思います。
RITEさんの過去の分析で、CCSの事業化が頓挫した理由は経済性の問題が六〇%以上というようなものを見たんですけれども、なので、もちろん補助の拡充であったり炭素市場の確立というのは大事だというふうに思っているんですけれども、やはり、事業化に向けてはコストを縮減していくということが非常に重要かなというふうに思っています。
先ほど資料で、EUのETS価格とCCSコストが見合ってきているという話があったんですが、松岡先生の講演などの資料を見ますと、分離・回収装置とか圧入サイトの大規模化であったり、また、IGCCなどの技術革新の具体的な提案というのをなされておりますが、現実的には、どのようなアプローチによってこの市場採算性を担保していくべきかという想定がありましたら、お聞かせください。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
コストについては大変難しい問題でありまして、常にコストを意識しながら進める必要があるというふうに思っています。
それで、非常に、こう言ったら変ですけれども、雰囲気的に、CCSは公共事業であるような雰囲気をいまだに持っておられる方がいるというのは大変問題であるというふうに考えています。
アメリカの四十五Qという制度は、八十五ドルというふうに値段を設定しました。これは、八十ドルでCCSができる業者にとっては、五ドル分は全部利益になります。基本的に積み上げ方式ではないというのがアメリカのやり方です。
一方、カーボンプライシングの方は規制なので、どうしても、多少積み上げ的に上げていって、足りない部分をノルウェー政府が出すというようなスタイルを取っていますけれども、そういう意味では、カーボンプライシングの制度は必要ですけれども、それだけではなかなか進まない。
現実的に、じゃ、技術開発の中でどういうふうにコストを削減していくかというのは、最終的に、私が、こうすればいいという名案があるわけではありませんが、企業間の競争というのを促すようなシステムであればおのずとコストは下がっていくんじゃないかというふうに、非常に単純なお答えなんですけれども、そういう状況をいかにしてつくっていくかということが今後課題じゃないかなというふうには感じております。
以上です。
○守島委員 先生、ありがとうございます。
本当に、公共事業とみなして、ピグー税じゃないけれども、外部不経済だから税金を出すということだけではなくて、やはり事業性を考えて、採算ベースに合って市場で競争させるということがコストを下げていくためには大事というふうに、おっしゃっていただいたように、僕自身もそう思っていますので、そうした点からもちょっと続いて聞いていきたいと思います。
続きまして、また引き続き松岡参考人と、本庄参考人の見解も伺いたいと思います。
政府のCCSの長期ロードマップにおける年間貯留量の目安は二〇五〇年で一・二億トンから二・四億トンということですが、CO2を分離・回収するには、現状は製油所のプラントに隣接した設備を設置して化学的に吸収する方法が進められていて、将来的には、IGCCなど発電所での運用も視野に、より効率的な技術というのはこれから開発されていくと思うんですけれども、もし順調にこのCCSの技術的な課題がクリアできて、コストも市場環境の中で縮減できて、かつ、参考人の皆さんからあったように、日本のキャパも貯蔵量も問題がない、余裕があるということを仮定した場合、CCSというのは化石燃料の立ち位置を変える有効な手段になるというふうに思っています。そうなると、二〇三〇年、二〇五〇年に向けた電源構成における化石燃料への依存に対する考え方も同時に変えてもいいのかなというふうにも、ちょっと僕は飛躍して思っているんです。
ちょうど昨日の朝日新聞で、水素、アンモニアの発電への貢献は限定的で、脱炭素の寄与度が低いという想定を京大の研究グループが出したという記事を見ました。なので、やはり発電も計画どおり進むかというのは非常に不確かだというふうに思っていて、カーボンニュートラルの実現は、松岡先生が言ったように急務なんですけれども、道筋というのは、僕は柔軟性があってもいいかなというふうに思っています。
なので、CCSの技術確立とかコストの縮減などが将来目標とする電源構成比率に影響を与えるものなのかどうかということを、率直な意見を両参考人に聞けましたら。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
電源に関して将来どういうシナリオが考えられるかということは、大変重要な点だというふうに考えています。
IGCCにおける分離・回収コストは、もちろん一番低く環境省は考えているところです。これが完成すればいいんですけれども、ただ、設備費が高い、そういうこともあります。
それで、水素、アンモニアを、例えばJERAさんなんかは、それを輸入することによって発電を賄うというストーリーを描いていますけれども、一方、CCSが非常に重要な点は、電力以外の、例えば製鉄とかセメントとか、こういう業界はどうなるんですかということです。代案がありません、直感的に言うと。電力に関しては水素、アンモニアという代案がある中で、国内でCCSをできない場合は海外から持ってくる。最終的には、御指摘のように、そのときの、国内CCSと海外から持ってきたアンモニアとのコスト比較になります。これに関しては、電力中央研究所の方がコスト比較をされています。
幾つかシナリオがあります。現在、一番安いシナリオは、現在のインフラを使って海外から天然ガスを輸入してCCSを国内でやるという電力料金が一番安く計算できます。一方、海外で水素を作って、そこでCCSをやって、それを国内に持ち込んでやるとなると、やはり輸送費が、今までのインフラをなかなか利用できないような状況が生じますので、計算的には高くなるという現状があります。
そういう意味で、単純にどうなるかというのはなかなか難しいところですけれども、多分、電力会社さん各社はいろいろなシナリオを考えられて、一番いいシナリオを選んでおられるんじゃないかなというふうに外からは想像しております。
以上です。
○本庄参考人 お答えします。
今、松岡先生が御回答されたことと重複するかもしれませんが、二〇五〇年という断面で見ますと、一・二億トン―二・四億トンのCO2が国内で貯留できるという仮定を置きますと、かなり化石燃料、ただしLNGが中心になると思いますが、それは残っていくんだというふうに、私の私見ですけれども、そういうふうに思っております。
そのほか、化石燃料を燃料ではなくて酸化還元反応として使うような業界については、なかなかCCSで対応するのは難しい。そこについては、オフセット、ダイレクト・エア・キャプチャーのようなものでCO2を回収して地中に埋める、それとのオフセットによって埋め合わせるということも必要になってくるかなというふうには思っております。
以上でございます。
○守島委員 ありがとうございます。
先ほど言ったように、やはりカーボンニュートラルが目的で、手段としてはいろいろ企業も選択肢を持って考えているということで、LNGとか、化石燃料が絶対ノーじゃなくて、しっかりと排出をなくす、処理するということが大事だと思うので、そこは合理的な判断を、先生方の見解も伺いましたので、これから委員会でもしていきたいというふうに思っております。
続きまして、冨田参考人にお伺いしたいと思います。
連合さんは、地域理解も重要という話をされておりまして、この点は同意しますし、同時に、やはり働く人々の環境とか労働条件とかもしっかり安定させていかないといけないというふうに思っていて、僕自身、製鉄所で働いていた経験があるというか、冨田参考人の後ろは僕の名古屋時代の同期なので、たまたま同期が座っていて、非常に変な緊張感があるんですけれども。
そういうことも含めて、例えば製鉄業でいうと水素還元製鉄とか新たな技術に注目しているんですが、とはいえ、生産プロセスを変えるというのはたやすいことではないと思っていて、それこそ労働環境というのが大きく変わるし、場所も変わるかもしれないという中で、例えば高炉にCO2分離吸着装置みたいなものを近くに隣接してそれを製造すれば、現状の製造プロセスも一定維持ができるというふうに思っているんですね。
なので、GXを推進するに当たって、先ほどからおっしゃっている公正な移行という点に関して、CCSのメリット、デメリットというのを他の手法と比べてどのように感じているのか、見解がありましたら教えてください。
○冨田参考人 御質問ありがとうございます。お答えしたいと思います。
CCSのメリットという点においては、先ほど松岡先生の方からも御発言がありましたが、火力発電や製鉄など直ちに脱炭素するのが難しい産業において、事業を継続して雇用を維持しながら新しい取組を同時に進めることができるという大きな利点があるかというふうに思ってございます。
さらに、我が国は、分離・回収、輸送、貯留といったCCSのバリューチェーン全体にわたって競争力ある技術を有する少ない国でもありますので、そうした観点からも非常にCCSに対する期待値は高いというふうに思ってございます。
先ほど来からもありましたが、CCSの実用化が進むということは、新しいビジネスを拡大をしていくというチャンスでもありますし、それに伴う新たな雇用が、グリーンで、先ほども申し上げましたが、ディーセントで付加価値の高い雇用であれば、長らく賃金の上がってこなかった日本において、賃金の上がる社会の実現に向けた歩みにもなろうかというふうに思っておりますので、そうした点でも、CCSを実現しながら新たな事業にもチャレンジする環境を担保するという観点でも非常に重要だというふうに連合としても認識をしてございます。
○守島委員 ありがとうございます。
今おっしゃっていただいたように、他と比べてどうというわけではないんですけれども、比較的、公正な移行という点ではCCSも有効な手段であるというふうに連合さんも捉えてくれているということで、引き続き、他の技術と比較検討しながらGXの推進に向けて進めていただきたいというふうに思っております。
時間も残りあと僅かなので最後の質問にしたいと思いますが、やはり気になるのは、二〇五〇年以降も二酸化炭素の排出というのは起きるわけですし、CCSは先ほどから話しているように設備産業で、やはり投資に対する回収という点が重要と思います。
RITEさんの資料で二〇五〇年以降の二〇七〇年の目標値というのも見させていただきましたが、この点、将来に向けて想定がありましたら、中島参考人と本庄参考人の見解を聞かせていただければと思います。
○中島参考人 御回答申し上げます。
まず、私の私見にはなりますけれども、カーボンニュートラル・イコール脱化石資源ではないという認識でございます。これは、化石資源を有効に利用しながら、かつ、そこから発生するCO2の処理を適切に行っていくというのがエネルギーの安定供給や安全保障上も重要なポイントであろうかと思っております。
そうした中で、CCSを推進していくとすれば、先生御指摘のとおり、相当のインフラの構築をしていく必要があるわけですし、仮に、二〇五〇年にカーボンニュートラルがその時点で達成されている状態、そのときには、CCSが一定の貢献をしている、例えば年間一億トンから二・四億トンの貯留が行われている状態が二〇三〇年以降、五〇年にかけて構築をしていったとすれば、その状態というのでカーボンニュートラルな状態になっているわけですから、それを継続していくことはできるのであろうと思います。
そのときの化石資源が天然ガス主体であるか、ほかのものもまだ残っているのかというところはいろいろあるかと思いますけれども、基本的にはそういう認識でありますので、先生の最初の方の御質問にもありましたけれども、化石資源の位置づけというのは、CCSが実際に社会実装されることによって大きく変わってくる可能性があるというふうに認識してございます。
それからもう一点、本庄参考人からもありましたけれども、CCSをDACあるいはバイオといったものと組み合わせることによって、今、俗称DACCSとかBECCSと言われておりますけれども、そういった中で、ネガティブエミッションという効果を生み出すことになります。
ですから、製鉄あるいはセメントといった、なかなか脱炭素化を進めにくい産業でどうしても排出が続いていく部分については、その排出を容認しながらネガティブエミッションと相殺することで全体としてカーボンニュートラルが達成できる、そういう世界観は一つ目指すべきではないかと私自身は考えております。
以上でございます。
○岡本委員長 恐縮ですが、守島さんの持ち時間が終了しておりますので、簡潔な御答弁をいただければありがたいです。
○本庄参考人 お答えします。
今、中島社長が御回答されたのと全く同意見でございまして、二〇五〇年カーボンニュートラルが仮に達成されるとしたら、そのままの状態で二〇六〇年、二〇七〇年を迎えれば基本的にいいのではないかというのが私の個人的な考えでございます。ただし、今社長がおっしゃったように、ネガティブエミッション技術をもっと導入して、カーボンニュートラル以上に、過去に蓄積したCO2まで減らすんだというようなことで世界が動き出すと、またちょっと変わるかも分かりませんが、まだそこまでいっていませんので、私は二〇五〇年以降はこのまま横ばいかなというふうに思っております。
以上でございます。
○守島委員 ありがとうございました。
○岡本委員長 次に、笠井亮さん。
○笠井委員 日本共産党の笠井亮です。
今日は、松岡参考人、冨田参考人、中島参考人、そして本庄参考人、お忙しいところ、御意見ありがとうございました。
まず、本法案をめぐって、二〇五〇年カーボンニュートラル、この実現が重要なテーマとされております。
そこで、まず四人の皆さんに端的に伺いたいと思っています。
今、地球沸騰化と言われる中で、気候危機打開は待ったなし。世界気象機関、WMOは年次報告を最近出しまして、二〇二三年が観測史上で最も暖かい年だったとして、過去一年間の世界の平均気温は産業革命前に比べて約一・四五度C上昇していると警告いたしました。今一・五度Cまでに抑え込むということが必要で、その方が、将来、更なる気温上昇の代価を支払うよりも安く済むということも述べられております。
IPCC第六次報告書は、人間活動が地球を温暖化させていることは疑う余地がないとしております。
まさに、人間活動のスタイルを変える、社会システムの大改革ということが今必要だと思うんですけれども、四人の参考人の方々の御意見、それぞれ端的にお願いしたいと思います。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
御指摘のように、IPCC第六次の報告書で、疑う余地がないという書き方をされています。この話をするときに、私は学生にこういう言い方をするんです。今の温暖化は我々人間がつくり出したということを言っている、つまり自然現象ではないんだと。つまり、太陽から来る熱が毎年毎年上がっている、こういう状況ではないということを明確に言い切ったわけです。自然現象であれば、我々は緩和策というのは取れないわけです。適応策しか取れない。一方、現在の温暖化というのは緩和策が取れるのだからこそ、CCSあるいは再生可能エネルギーを使うべしというメッセージとして第六次の報告書を読みなさい、こういうふうに私は考えています。
ですから、沸騰の時代において、我々はどういう手法を使ってこれを乗り切っていくかというのは、いろいろな知恵を出さなきゃいけないんですけれども、その一つとして、CCSは、個人的には強力な手法であろうというふうに考えています。
以上です。
○冨田参考人 お答え申し上げます。
私ども連合は、我々の活動を通じて、働くことを軸とする安心社会をつくっていきたいというふうに考えてございます。
今回のカーボンニュートラルは、将来世代に働く人たちに対して安心社会をつくることの大変重要な観点だというふうに思っておりまして、そのためにも、カーボンニュートラルがなぜ必要なのかという観点について幅広い理解が必要だというふうに思っておりますし、そのことが、御質問いただきました気候変動に対する対応にもつながっていくものというふうに認識をしてございます。
○中島参考人 基本的に、気温の上昇とそれから大気中のCO2濃度の上昇というものについては科学的な因果関係があるという理解でございますし、専門家の御見解もそういうふうであると思います。短期的な天候の変動というものは、必ずしも因果関係を言うことは難しいのかもしれませんけれども、大気中の濃度と平均気温の上昇傾向というものには因果関係があるというふうに認識をしております。
その上で、じゃ、どう対策をするかということであります。
松岡先生の冒頭のプレゼンの中にもありましたけれども、省エネや電源の脱炭素化、すなわち再生可能エネルギーであったり原子力発電といった対策はありますけれども、いずれにしても、それらだけで何とかできるということはなかなか難しい。それから、時間もかかっていくということでありますので、そうした中で、CCSもそこに一つ組み合わせることで、沸騰という喫緊の課題に一刻も早く対応するための有力な手段だという認識でございます。
以上でございます。
○本庄参考人 お答えします。
私どもRITEは、一九九〇年の創立以来、三十四年間、地球温暖化の防止、端的に言いますと、温室効果ガスの削減に地道に取り組んでまいりました。
こういう緩和策の研究をこれから引き続き続けていきたいというふうに思っておりますが、その中でも、やはり、出てきたCO2をうまく回収して地中貯留する、CCSが費用対効果の面でも一番優れた緩和策ではないかというふうに思いますので、それに取り組みます。さらには、ダイレクト・エア・キャプチャーのように、いわゆるネガティブエミッション技術、こういったものも取り組んでいきたいと思っております。三点目に、あえて申し上げますと、IT化、あるいはライドシェアみたいなものによってエネルギー需要自体が将来減っていくだろう、それをうまく温室効果ガスの削減に取り組むための分析、研究、これは国際的なネットワークで今進めておりますけれども、そういうことを組み合わせて、これからの温室効果ガスの削減に取り組んでいきたいと思っておるところでございます。
○笠井委員 ありがとうございました。
それぞれのお立場で、本当に、地球温暖化対策をする、気候危機打開が大事であると。CCSについては、私、ちょっと意見が違うんですけれども、しかし、大きな方向では、やはり今人類をめぐっての大問題に取り組むということが大事だということも改めて感じました。
冨田参考人に伺いたいんですが、公正な移行ということで、私もこれは大事だと思います。脱炭素社会の実現というのは、生活水準の悪化や耐乏生活を強いるものでも経済の悪化や停滞をもたらすものでもなくて、やはり、新しい雇用をもたらして地域経済を活性化するなど、持続可能な成長に向けて大きな可能性を持っているというふうに考えます。
そこで、新しい技術の開発というのはやはり大事だということで、必要だと思うんですけれども、同時に、先ほどの御意見をいただいておる関係でも、実用化のめどが立つかどうかというのも一つ大きくて、早期に立つかどうか、そして、二〇三〇年、五〇年とかになったときに、そのときに、やはりCO2削減にとってどれだけ効果があるかというのもまた大事な点だと思っております。
ある研究者グループからは、省エネ、再エネの既存技術だけでも二〇五〇年に九〇年比で九三%のCO2を削減できる、それに本当に本格的に思い切って取り組めば、新たな雇用が年間二百五十四万人増えて、GDPも二〇三〇年までに二百五兆円押し上げるという提言も出されております。
そういう点で、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、二〇三〇年までに緊急にCO2の大幅な削減が求められている今、まず今ある技術に最大限の資源や予算を思い切って配分するということ自身が大事だと思うんですけれども、その点、冨田参考人、どうでしょうか。
○冨田参考人 お答え申し上げます。
非常に広範な形で様々なことを考えなければならない御質問をいただいたというふうに思ってございます。
まず第一に、一番大事なのは、エネルギーをどのように安定供給していく環境をつくるのかということだというふうに思っておりますが、その点については、連合としては、エネルギーの基本理念であるSプラス三Eを堅持をしていくことが大変大事だと考えてございます。
その上で、エネルギー政策においては、インフラだけではなくて、蓄電、水素、SAFなど次世代燃料の開発や化石燃料の高度利用など、より環境負荷の低い技術への大胆な投資が必要だというふうに思っています。
特に、再生可能エネルギーにつきましては、原子力の依存度を低減させるための重要な代替エネルギーでありますので、大量導入が可能な電源の確保と安定性の確立、低廉な価格の実現、信頼性の向上に向けた取組、こうしたものを進めていく必要があるというふうに考えてございます。
ただ、一方で、投資とコストの関係を見ますと、技術開発と市場の形成両面での大変重要な点にあるかというふうに思いますが、このコストを誰が負担をしていくのかというのも大変重要な課題だというふうに思っております。
いずれにしても、省エネも再エネも含めて、こうしたカーボンニュートラルに係る様々なコスト負担につきましては消費者に理解を求めていくということも大変大事だと思っておりまして、その意味で、エネルギー全般を含めまして、国がきちんと、カーボンニュートラルに進む道筋の中で、エネルギーに対してもどういったような投資や開発が必要なのかということの道筋を示し、理解を得ていくということが大変重要ではないかというふうに考えてございます。
○笠井委員 ありがとうございました。
これは非常に大事な問題なので、これも大いに、国がどういうふうに考えるか、そのことと、それぞれ、労働分野もそうですし、市民の方々、専門家、科学者、産業分野もそうですが、やはり英知を結集して、どうやってCO2を削減するか、そしてカーボンニュートラルに持っていくかということで考えていきたいと思います。
それでは、CCS事業そのものをめぐって、先ほどから地震の影響ということも随分議論になっています。これも、私も先日、委員会の質問でもやらせてもらったんですが、松岡参考人とそれから中島参考人に伺いたいと思いますが、やはり高濃度のCO2というのはそれ自身が命の危険が高い物質とされていて、本当に、無色無臭で、空気より重いということで、高濃度で大気中に漏出した場合には窒息するなどの命に関わるおそれがある。ここのところはやはり、我々、それぞれの立場でも、どう考えるかというのが大事だと思っております。
一つは、CCSで圧入、貯留ということにとどまらず、現にアメリカのミシシッピ州では、二〇二〇年に、CO2のパイプラインが破損して、三百人近い住民が避難されて、四十五人がCO2中毒で病院に搬送されたということもあった。事故が起きれば住民に大きな被害が出るということで、パイプラインの破損ということも、その段階でやはり、地震ということもあるでしょうし、それ以外もある。
それから、CCSそのものでいうと、これは、圧入の段階、貯留で、千メートルを超えると、深いところだと、胆振東部地震のときには影響はなかったから大丈夫というお話もあったんですが、圧入してからそこに行くまでの過程でも、いろいろな地震の影響というのはどういうふうに考えたらいいのかというのがありますし、それから、地中への注入によって地震が誘発される可能性ということの指摘もあったりするわけで、CO2が漏れ出したときのリスク、水ストレスの増加とか、海洋の酸性化などの環境に対するそれ以外の影響も懸念されているわけです。
そこで、伺いたいのは、東日本大震災あるいは東京電力福島第一原発事故があり、その十三年目の元日に能登半島地震があって、想定外ということが随分問題になって被害を受けるということになりました。
そこで、地震大国日本ということで、どこで大地震が起こってもおかしくないという観点から見て、CCSに伴う、要するに、輸送するパイプラインのところから地下に圧入して安全かつ安定的に貯留できるかということになると、かなりいろいろなことについて検討しなきゃいけないと思うので、適地が本当に見出せるのかという問題について松岡参考人と中島参考人に伺いたいと思います。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
地震の問題は非常に重要な問題で、CCS関係者全員、いろいろな観点から議論しています。
先ほどもちょっと簡単に説明しましたけれども、地下構造物は、地震に対しては地上構造物よりもずっと安全である、まず第一点です。そういう意味において、地下で地震が起きたときにすぐ貯留層が壊れるということはないというふうに私は地質学的に思っております。
あと、漏えいという問題があります。地表に出てくるかどうか。問題は、そういう現象が起きるということは、ある意味では、モニタリングしていますので、多少分かってくるわけです。分かったときに何をどう行動するかというと、圧入をやめます。圧入をやめるということはどうなるかというと、それは、圧入するときは圧力が高いんですけれども、圧入をやめたらそこの時点のそもそもの圧力に戻るわけです。例えば千メートルですと、その地表までの間は水が存在します。その水の存在を押しのけてCO2が地表まで上がってくるのは、どういう力があるのかということが問題なんです。
圧入しているときは押していますから、それは何か亀裂ができると地表まで戻ってくるかもしれませんけれども、圧力を、もう力を与えなくなると、じゃ、そのCO2が地表に上がってくる力は何ですかというふうに考えると、浮力なんですよね。浮力の力で地下千メートルのところにあるCO2が地表まで出てくるというのは非常にまず時間がかかります。そういう意味で、仮にCO2が断層のところに行ったら、それを伝わって地表まで出てくるんじゃないかというふうに考えるのは、少々短絡的であるのではないかなというふうに考えます。
リスクをどう見るかということに関しては、御指摘のとおり非常に重要でして、私の意見は、地震のあるところではCCSは余り行われておりません、当然のことながら。
私は、日本はこれは優位な点だと思っています。つまり、苫小牧でも地震が起きました、その結果、科学的に検証したら、誘発ではないし、それから漏えいもしていないという結論になりました。これを我々日本人は心配として見るんですけれども、海外の人はどう見るかというと、あれだけ地震が多い国でよくやっているな、ちゃんとしているなというふうに見てもらえるというふうに感じています。つまり、日本の技術力は高いんだという印象を逆に与えるというのが私の見方です。
ですから、もう地震を避けることは日本では不可能なわけで、それに対するリスクを十分考えて対応を取って、そういう技術をつくり上げることこそが世界で認められる技術をつくり上げるというふうに感じているところです。
以上でございます。
○岡本委員長 大変恐縮ですけれども、笠井さんとの申合せの時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁いただけると幸いです。
○中島参考人 御回答申し上げます。
基本的に想定外のことはあり得ますし、絶対に漏出しないと言い切ることはできないと思っております。
問題は、漏出する場合にどの程度、あるいはどういう場合にどの程度漏出するのかということを、今松岡参考人がおっしゃったような形でシミュレーションなり事前の検討を十分に行うということかと思います。また、漏出した場合に、じゃ、それがどのように拡散する、しない、極めて高い大気中の濃度にならない限りは健康被害は出ませんし、それが出るような場合というのは一体どういうことなのかということをきちんと科学的に整理をしていく、こういったことが必要でありますし、あるいは、CCSをやる際に、そういったことを地元の皆さんにも御説明をしていく必要はあると思っております。
それから、御指摘のあったミシシッピのパイプライン事故については、私どもも報道の範囲でしか承知しておらないんですけれども、一部の報道では、硫化水素が含まれた気体を、CO2と混合されていたという話もあって、健康被害が生じたという報道は私どもも認識しておりますが、その原因が余り明確に分かっておりません。
調査してもそこがよく分からない状態ですが、そういったこともありますので、必ずしもあれがCO2だけの問題であったか、そういった面も含めて、今後、パイプラインを引くこともありますし、あるいは船舶で輸送することもある、そういった運んでいる最中のものがどっと漏れるということは、事故が起こった場合にはあり得ますので、じゃ、そういった場合のハザードであるとかリスクはどうであるかということは事前に十分に評価して、その上で対策を講じて、やはりその上で実施していくということが重要ではないかと考えます。
以上でございます。
○笠井委員 ありがとうございました。
地震大国日本をどう見るのか、それから、リスクに対してそれをどう対応するのかということについては分かれ道が出てくると思うんですが、今日伺った意見、本当に、しっかりと参考にしながら、またこれから法案の審議にも臨んでいきたいと思います。
ありがとうございました。
○岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。
○鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。
本日は、四人の先生方、参考になる御意見を頂戴して、ありがとうございます。
質問に入るんですけれども、先週も、CCSだとか水素の法案の質疑をしたときに、やはり人材と機材をどうするのかという質問をさせていただきました。人数は答えがなかったんですけれども、人材の育成を、今も実証プラントだとか、モデル的におやりになられているから、そこには技術者がいらっしゃるんだと思うんです。
例えば、じゃ、今日御説明いただいた、十一か所で一千六百万トンですか、貯留するといったときに、どのぐらいの技術者がいないと、管理とか圧入とか、それだけではなくて、今度は、パイプラインはどうするとかタンクはどうする、陸上輸送はどうする、船はどうするという、これは次に入っていく話なんですけれども、実際に貯留をするといったときにどのぐらいの人数のボリュームを考えていて、そのために人材育成をしていくんだとならないと、なかなか、人材育成、人材育成と漠然と言っても、何人ぐらい必要なのかというのが分からないと、そこにエントリーしてくる学生も集めることができないんじゃないかと思うんですね。
そこのところ、もしお考えがありましたら、四人の参考人の方に、簡単で結構ですから、御答弁いただければありがたいんですが。
○松岡参考人 技術者がどれだけ必要かということに関しては、ほとんど明確なアイデアを持っていません。多分、参考になるのは、後ほどお答えになると思いますけれども、苫小牧の例で、具体的にどれだけ人が必要かということだと思います。
現在、先進的CCS事業において、いろいろな会社が進めていますけれども、そこら辺で、具体的に何人ぐらいの技術者が担当して、実際にオペレーションが始まったらどうなるかという計画を、恐らくもう既に何となく持っているんじゃないかと思いますので、そういうデータはMETIさんにお聞きになれば手に入るんじゃないかと思います。
人材育成で、そういう意味で、興味を持ってこの業界、あるいはCCSをやりたいといって来た学生がいるのであれば、恐らくかなり短時間である程度のレベルまで達するんじゃないかなというふうに直感的には思います。
以上でございます。
○冨田参考人 お答え申し上げます。
人数についてはちょっと私ども知見がないのであれなんですが、今、CCS事業にかかわらず、様々な産業での後継者ですとか新たな技術の開発者の人材不足が言われております。
このCCSに限って申し上げれば、今日お越しの専門家の先生方に是非お願いしたいのが、やはりCCS事業は新しい事業ですので、事業の魅力を広く伝えていただき、そこに必要な技術を、それぞれの様々な教育機関が積極的に取り上げていただくような、そうした環境整備を是非お願いをしたいと考えてございます。
○中島参考人 御回答申し上げます。
まず事実関係として、苫小牧の実証設備で圧入操業していたときの操業要員としては、二十名程度の要員でございました。それから、今CO2の船舶輸送の実証をこれから行おうとしておりますけれども、苫小牧と舞鶴それぞれに船積み、出荷の基地を造っておりまして、こちらの操業要員が一か所十五名程度の配置になってございます。
実証でございますので、社会実装するときにはもう少し効率化をして削減していくことはできるかと思いますけれども、一つの目安としては参考になるかもしれないと思っております。
その上で、例えば、ちょっと全然別の視点になりますけれども、例えば年間一億トン、毎年埋めていこうということになったときには、圧入井だけで数百本必要になってくるであろう、そうすると、例えば数百本の井戸を掘るための掘削リグというのが十分にあるか、あるいは掘削リグを運転するための高度な技術を持った作業員の方々がどれだけいるか、あるいは、液化CO2で運搬するということになればタンクもたくさん造っていく必要がありますけれども、タンクを建造するための溶接技術者がどれだけいるか、こういった問題が、まさに先生御指摘の点だと思っております。
これは今後、恐らく、先進的事業が今国の方で七件採択されて、これから進んでまいりますので、そこでそれぞれのコンソーシアムの皆さんがどういう形で進めていくのかというのがまず試金石となって、それを更に拡大させていくときに、全体の産業として、いろいろな、CCSの分離・回収、輸送、貯留といったパートごとにどれだけの人材が要るのかというのをまさに今後検討していく必要があるのであろうというふうに思っております。
以上でございます。
○本庄参考人 お答えいたします。
私ども、研究機関でございますので、今まで研究をやってきた実績から申し上げますが、ラボでやる研究は一テーマについて数名ぐらいで済みますが、実際、今、冒頭私が御紹介しました海外のサイトの、アメリカのノースダコタ、豪州のサイトをお借りしていますけれども、そちらには我々の研究員数名を派遣しておりますが、現地で数十人の規模の作業員が従事しているというふうに聞いております。したがいまして、一プロジェクト当たり二十名前後の人が圧入事業に携わっているというふうに推測できます。
以上でございます。
○鈴木(義)委員 ありがとうございます。
それと、あと、冨田参考人の方から意見陳述をいただいたときに、貯留場などを設けるときに地域住民への十分な説明と丁寧な合意形成が必要だというふうに意見陳述されたんですけれども、じゃ、その点について、具体的な要望等があればお聞かせいただきたいと思います。
○冨田参考人 お答え申し上げます。
CCSの事業を進める際は、今日も様々な皆様方からも御意見ありましたが、利害関係者の理解と地域社会の受容が不可欠であります。
そうしたそれに伴う手続を法律に明記をして担保をするという方法もありますが、私どもとしては、どう規定をするのかよりも、どう実質的にそれを担保していくのかということの方が重要だと考えてございます。
この点につきましては、審議会の中でも経産省の方からは、利害関係者の意見聴取についてはガイドラインでの記載を検討するといった説明も受けたところでありますが、国会審議の中でも、利害関係者の声をどう受け止めて反映するのか、その道筋をどう担保するのか、この点につきまして御議論いただけるとありがたいと存じます。
○鈴木(義)委員 八年ぐらい前だったんですけれども、ヘリウムガスが高騰した時期がありました。当時、経産省の高圧ガスの担当の人に、なぜこんなに高くなってしまったのと聞いたら、アメリカから輸入しているヘリウムガスが全体の八割、あとはポーランドだとか西アフリカだとか、商業ベースで採掘できているヘリウムガスというのはそんなに多くないんだそうです。それがもっと高騰していったら、今使っているヘリウムを回収するという方向に向くだろうと。高くなり過ぎれば、回収しましょう、それで、またもう一回リターンをして使うんですけれども、このCCS事業も同じことが想定される可能性が私はないわけじゃないんだと思うんですね。
これから合成燃料を作っていく、いろいろな、CCUを片ややっていく。それで、CCSのコストの話になっていくんですけれども、今まで参考人の方が、コストダウン、コストダウンとおっしゃるんですけれども、コストダウンすればするほど、こっちのCCUが機能しなくなる。だって、安い方に物は流れていくわけですから。例えば、二十年前に超臨界CO2を大学だとかいろいろな研究所で使って研究開発していたんですけれども、結局、今どこも、ほとんど聞かないんです。
だから、もしこれが、ある程度の価格が必要だという、このバランスだと思うんですね。水素も一緒だと思います。CCSの方を安くすればするほど、水素に移行をしようというインセンティブが働かないと思うんです。最後のとりでだというんだったら、やはりある程度は、ここのところをどう設定していって、ここの、水素だとかCCUの方とのバランスを取っていくというのが今後必要になってくると思います。
それともう一つは、圧入をかけて事業をやっているときはいいんですけれども、それがある一定期間終わったら、JOGMECに移行するんですといった、後の管理をJOGMECがやるんですけれども、そうすると、今人数のお話を教えていただいたんですけれども、二十人は要らなくなっちゃうと思うんですね、例えば三十万トンのプラントで二十人で今実証されているという話になったときに。それが一つ。
長い期間貯留しなくちゃいけない、ある意味じゃ半永久だと思うんですね。人的な投入も含めて、そこにどこまでコストをかけられるかという、そこのところが一番危惧されるところでありますので、御専門のお立場でお考えを、松岡参考人、中島参考人、本庄参考人の方からお聞かせいただければありがたいんですが。
○松岡参考人 御質問ありがとうございます。
CCUSにおけるCO2のポジションというか立場なんですけれども、CCUSというのは、CO2を使って何か価値あるものを生み出したい、例えばメタネーション、重要だと思います。
その事業者は、実は、先生も御理解いただけると思いますけれども、まず水素を手に入れなきゃいけない、と同時にCO2も手に入れなきゃいけない、それでもって、メタネーションをやってユーザーに渡す、どうしても必要な人たちに渡していく、そういうストーリーだと思うんです。
そのときに、その企業にとっては、仕入れ値としてCO2を買うわけで、CO2の価格が下がるということは、決してメタネーションみたいな事業を圧迫するということではないというふうに、単純なんですけれども、そういうふうに感じているところです。
いろいろな議論が多分あると思います。そういう意味で、非常に難しい議論だと思いますけれども、ユーザーにとってはコストが下がるし、CCSの方にとってもコストが下がるというのはハッピーじゃないかなというふうに、非常に単純に考えます。
JOGMECへの移管の件ですけれども、一応、例えば、事業は三十年程度、つまり、火力発電所があったとして、そこにCCSをつけたら、火力発電所の稼働している間は全部CCSが稼働するということです。まあ、三十年あるいは四十年かもしれません。その後に、事業者はそこを管理する必要があるわけです。モニタリングする。これは各国によって年数はいろいろ違います。一番長いのは、アメリカは五十年という数字を挙げています。それから、EUは二十年、オーストラリアは十五年。我が国はどのぐらいの数字になるかよく分かりませんけれども、その間は事業者が面倒を見るといいますか、メンテナンスをやって、その後JOGMECに渡す、そういう多分ストーリーになると思います。
それで、今の法律のたてつけは、圧入後の間、JOGMECに渡すまでは、自分の責任として事業をして、その後は管理費を多分、何か払うような形になっていたんじゃないかと思うんです、ちょっと詳しく知りませんが。そういう意味で、各国、ほかの国もそういうような、最終的には国が管理しますというスタイルを取っておりますので、そういう形になるんじゃないかなというふうに考えています。
コストに関しては、ある意味では、事業者がある程度カバーするというようなたてつけかというふうに理解しています。
以上でございます。
○岡本委員長 この後、中島参考人、本庄参考人にお答えいただきますが、鈴木さんの持ち時間が終了しておりますので、大変恐縮ですが、簡潔に御答弁をお願いいたします。
○中島参考人 お答え申し上げます。
まず、カーボンリサイクル、CCUでございますけれども、全体のプロセスを眺めると、まずはキャプチャーの部分、CO2を分離・回収するというプロセスはCCSもCCUも同じでございます。ですから、分離・回収されたCO2を何か別の生産物を生産するために材料として使うのか、それとも地下に埋めてしまって隔離をするのか、この二つに分かれるものになると思っております。
例えば、CCUの在り方はいろいろあると思いますけれども、大量に使えるとすると、やはり合成燃料というのが一つの候補になろうかと思っています。これはCO2と水素をくっつけて合成燃料を製造して使うということですので、キャプチャーまでのコストが同じだとすれば、今度は、合成燃料を作るためのコスト、それから地下に圧入するためのコスト、どっちが安いですかということが一つ出てくるということかと思います。
また、合成燃料については、それを燃料として消費すれば、またそこでCO2が発生してしまいます。一方で、地下に圧入すれば、それは半永久的に閉じ込められるということであります。
カーボンニュートラルというか地球温暖化対策の目的は、大気中のCO2濃度は上げない、あるいは下げていくということなので、そこに対しての効果も評価した上でどうやっていくのかということ、それからもう一つ、エネルギーの安定供給、安全保障という意味で、合成燃料が果たす役割、これらの総合的な勘案の中で、それぞれの役割分担というのがあるのではないかと思っているところでございます。
それから、もう一点、サイトを閉鎖した後のお話でございます。
これも二つステップがあって、貯留サイトで一定の貯留量をずっと貯留し続けて、この器はもうそろそろ入らなくなるということになると圧入を停止するわけです。その後、停止した後しばらくの間は、やはり、地下のCO2がどう移動するのか、あるいは坑井は大丈夫かというようなことも含めて、その状態でのモニタリングの期間というのが一定期間設けられることになると思っています。その上で、地下に完全に安定してCO2が貯留されているということが確認できて、漏出するリスクももうほとんどないよねということになれば、そのサイトを閉鎖するということになると思っています。つまり、圧入した井戸だとか観測井だとかというものを全部埋め立ててしまって、全く元の状態に戻してしまう。
その後も、更にそういう、埋め立ててしまった後も一定期間まだモニタリングをする必要があるかどうか、あるいは、そのときに必要なモニタリングというのはどの程度のものをするかどうかということが、これは今後議論されていくことだと思っていますし、どこかの段階で事業者からJOGMECさんにその管理が委託されるということになりますので、安定的に貯留されているという状態の確認の度合いが進めば進むほど、必要なモニタリングというのはだんだん少なくなっていく。いずれは全くモニタリングが必要ないというタイミングが来るんだろうと思っています。
そういったところを今後、法案成立後の具体的な運用の中で、政省令等で議論されていくものだろうというふうに認識をしてございます。
以上でございます。
○本庄参考人 お答えいたします。
私からは、長岡で行いましたCO2貯留後のモニタリングの状況について御説明させていただきたいと思います。
私ども、二〇〇五年に、CO2の圧入一万四百トンを無事完了しまして、その後、毎年一回モニタリングをしておりました。この土地は当時の帝国石油開発さんから、今はINPEXさんでございますけれども、お借りしている土地でございますので、圧入終了後一定期間たった後は、私どもは、基本的にはそこの現地には行かずに、一年に一遍、坑井間弾性波トモグラフィー測定によるモニタリングを行っておりましたが、二〇二一年に最後のモニタリングを終えて圧入井を閉鎖したということでございます。
したがいまして、それほど多くの人数を我々割いたわけではなくて、一年に一遍、数名がサイトに行ってモニタリング作業を行ったということでございます。
以上でございます。
○鈴木(義)委員 どうも本日はお疲れさまでした。ありがとうございました。
○岡本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
この際、参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
本日は、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、心から御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして一言御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○岡本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案の両案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官林孝浩さん、経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官辻本圭助さん、経済産業省大臣官房審議官小林出さん、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行さん、経済産業省大臣官房審議官西村秀隆さん、経済産業省大臣官房審議官殿木文明さん、経済産業省産業技術環境局長畠山陽二郎さん、資源エネルギー庁長官村瀬佳史さん、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄さん、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹さん及び環境省大臣官房審議官堀上勝さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○岡本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田嶋要さん。
○田嶋委員 立憲民主党・無所属の田嶋要でございます。今日もどうぞよろしくお願いいたします。
五分前に委員長からうれしいお話がございまして、委員長、ありがとうございます。先週の私の鴨川のメガソーラーの件で、鴨川市議会が全員で御覧になったということと、行政の皆さんも御覧いただいて、委員長は今度鴨川に行っていただくというお話を賜りました。ありがとうございます。
それで、先週の議事録を拝見しますと、これは結構齋藤大臣も踏み込んだ御発言でございまして、この件については、詳細に把握する必要がある、訪問ですね、現地を見ていただく必要性も含めて検討ということですが、その後、どんな今状況でございましょうか。
○齋藤(健)国務大臣 引き続き検討しています。
○田嶋委員 是非、ゴールデンウィーク明けぐらいを意識して、私もお連れしたいと思っておりますので、御検討をどうぞよろしく。委員長、どうぞしっかり見てきていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それで、今日は二法案でございますが、午前中も、参考人、四名の有識者の方々から、今日はCCSのお話がございました。
お話をいろいろ聞いていますと、正直言って、私もこういう手の話は嫌いな方じゃないものですから、わくわくしてきます。新しい挑戦のスタート、そういう感じがするわけでございまして、今日はCCSだけでございましたけれども、それにつけても、よく考えれば、世界で四十一稼働、建設段階二十六ということで、何でこんなに遅く始まっているのかなというのが逆に素朴な疑問にもなっておるわけでございます。
そこで、最初の質問は、ちょっと順序を入れ替えまして、CCSのことを大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、これは是非とも力を入れてやっていただきたいと思う一方で、少し出遅れ感を感じておられる方も多いのではないか。役所の説明だと、かなりポテンシャルは日本はあるんだというちょっと意外なお話も、私もレクを受けさせていただきました。
そうしたところで、この法案を審議して、いよいよスタートを切るということでございますが、私は、前回も申し上げたかもしれません、山崎委員も指摘をしておりますけれども、環境アセスということはやはり大事ではないかなというふうに考えております。苦い経験がございまして、先ほど申し上げた鴨川は、初期の案件でありまして、実は、環境アセスは風力発電にしか適用になっていなかったということがございまして、結局はメガソーラーであってもアセスの対象にならなかった、こんなようなことがございます。
そうしたことを踏まえて、是非とも、今回、知見がないから様子を見ているなんという、そんな答弁が前回ございましたが、それではちょっと心配でございます。むしろ、経済産業大臣に、このCCSを地域社会でつつがなく成功裏に進めていくために、やはり環境アセスはしっかりやってもらいたいというお考えをお聞きさせていただきたいと思います。
○齋藤(健)国務大臣 まず、今般のCCS事業法案におきましては、CO2が漏えいする可能性があるなど、CO2の安定的な貯留が確保されない場合には貯留事業の許可を与えないということにしています。
また、実際の貯留事業の実施に当たりましては、貯留事業者に対して、貯留事業実施計画を定めた上で国の認可を受けるということを義務づけておりまして、CO2の漏えいを防止するための措置などが適切であると認められない限り許可をしないということとしています。こうした措置が適切に講じられない場合には、要するに、貯留事業を行うことができないということであります。
加えて、貯留事業者に対しましては、貯留したCO2のモニタリング義務や、万が一CO2の漏えいが発生した場合、この場合には応急措置を講じるということを義務づけておりまして、そもそも貯留したCO2の漏えいが発生しなければ周辺環境への影響はないと考えられるため、これらの措置を通じて、周辺環境に影響を及ぼさないCCS事業というものを実現をしていきたいと思っています。
その上で、特に海域においてでありますが、CO2の漏えいによる海洋生物への影響、これも想定をされることから、従来は、海域の貯留事業に対しては海洋汚染等防止法に基づく規制を講じていましたが、今回、本法律案に規制を一元化をするということにさせていただきました。
そのため、貯留事業実施計画の認可の際には、海洋の環境に及ぼす影響の事前評価も含めて、環境大臣とともにその内容を確認するということにしておりまして、両省で協力をしながら、周辺環境に影響を及ぼさないCCS事業を実現していきたい。これは、地域の御理解をいただく上でも大事だなと思っています。
○田嶋委員 法案の中でやろうとしていることは私も承知しております。
大臣は、結論として、環境アセスはやる必要がないという理解でいいですか。
○齋藤(健)国務大臣 まず、CCS事業と……(田嶋委員「いや、それは」と呼ぶ)まあ、ちょっと聞いていただきたいんですが、環境影響評価法との関係については、同法は、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価手続の実施を求めているところ、CCS事業は、現段階で環境影響の程度が著しいものとなるかどうかの知見が十分ではない、この間も申し上げたとおりでありますが、同法の対象とする必要性については今後のCCS事業の実態を踏まえた上で検討を深めると環境省において御判断されているというふうに承知をしております。
○田嶋委員 知見がないからというのは、いかにも心配でございますので。世界中でやっておるわけでございます、世界の多くの国々で既に動いている案件で、環境アセスはなかったのでしょうか。そういうことも含めて情報を取っていただいて。
もう一つは、齋藤大臣、特に、古巣に戻って大臣をやっておられますから、そういう意味では、経産省だけで全部完結するやり方じゃない方が私はいいと思います。環境省がしっかりとチェックを入れるような形の環境アセス。なおかつ、これは、法改正は必要ございません、省令によって追加をして、遅まきながら、風力に遅れることたしか八年か十年で加えたというのがメガソーラーの環境アセスであります。
そうして後から慌てて入れてみても、初期のプロジェクトはアセスをクリアしてしまう、アセスを逃れてしまうという反省が、私は鴨川で非常に残念な経験をしておりますので、是非とも、ここは改めて、大臣、考えていただきたいと思います。後悔先に立たずということで、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、環境省も来ていますよね。では、環境省、一言お願いできますか。知見がないからというのはちょっと心配ですよ。早く知見を積み上げてほしいんですけれども。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のとおり、環境影響評価法の施行の後で追加されたのは、風力発電事業とそれから太陽光発電事業の二つでございます。
これは、電気事業法に基づく事業として追加をしておりまして、法律に基づくということに関しては、今後、新たな事業が更に法律に基づくものであれば法改正が必要になります。その点はちょっと申し添えておきます。
もう一点、CCSにつきましては、先ほどもお話がありましたとおり、海外の事例、あるいは今後事業化されていく国内の事例を十分踏まえて、環境影響評価法の対象とする必要性について、CCS事業の動向を踏まえてきちんと検討を深めていきたいと考えてございます。
○田嶋委員 お尻を切って、速やかにやっていただいた方がいいというふうに思います。
かなり世界から遅れたスタートなので、ひょっとしたら、経産省は、いろいろ環境省にアセスなんかやられると、そこでまた二年、三年、余分に時間がかかっちゃう、遅れが広がっちゃう、そんな思いもあるかもしれませんよ、本音では。そうあってほしくないですけれども。そうやって、慌ててやって後で大変なことにならないように、環境省もしっかりと御検討いただきたいと思っております。よろしくお願いします。
それでは、石炭火力発電の方に移りたいと思います。
水素の法案も審議をするわけですが、今日は、水素等の等の方でございまして、石炭火力でございます。
資料、おつけをさせていただいている三番を御覧くださいませ。
最近まで特使をされていたアメリカのケリー特使、それから、つい先日お越しになられて、ケリーさんの後の方でございますが、ジョン・ポデスタさん、私も日米議連で参加をさせていただきました、お二人とも、石炭火力のアンモニア混焼ということに関しては、下線を引いていますが、長期的な脱炭素への移行を遅らせるということで、懸念をなさっております。
そうした声は、結構、先進国どこにも共通でございまして、欧米からはほとんど異口同音に懸念をされているということでございます。
なぜ私たちの国で今政府がやろうとしているアンモニア混焼はほかの国では全然関心を持たれていないのか、なぜそうした技術を我が国だけはやろうとされているのか、その点について大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○齋藤(健)国務大臣 国によって事情は様々だと思いますが、日本のカーボンニュートラルの取組というのは、やはり、多様な取組の組合せの中で辛うじて実現をできるような大変難しい課題だと思っています。
二〇三〇年度の四六%削減目標の設定を踏まえて、二〇二一年十月に閣議決定をされました第六次エネルギー基本計画では、非効率な石炭火力のフェードアウトを進めるというふうに書いてありまして、進めるとともに、脱炭素型の火力発電への置き換えに向け、アンモニア、水素、CCUSなどを活用しながら脱炭素化を進めていくという方針であります。
その中で、安定供給と脱炭素を両立していく観点から、石炭火力のアンモニア混焼に取り組むことは、我々の目標を達成をする上で必要な取組だというふうに理解をしています。
○田嶋委員 いろいろな面で連携をしているアメリカも含めて、このようにはっきりと懸念を表明されるというのは珍しいことではないかなというふうに思うんですが、齋藤大臣の元にあるいは経産省に、アメリカから、このソリューションはちょっと心配だというような話は来ているんですか、具体的に。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
アメリカ政府とも、水素、アンモニアの活用について様々なチャンネルで意見交換を行っておりますけれども、我が国として置かれている事情を踏まえて、我が国において石炭火力へのアンモニア混焼を進めていくということについて、是非ともやめるべきだといったようなことは、我々としては承っておりません。
○田嶋委員 でも、こうやって、結構パブリックにはっきり言っているじゃないですか。
○井上政府参考人 はい、御指摘のとおりでして、私どもも、こうした報道を拝見しております。また、いろいろな場面で意見交換していく中で懸念が示されることもあるかと思いますが、私の認識している限りで御答弁申し上げました。
○田嶋委員 調べてみますと、アメリカもドイツも、割と最新鋭の石炭火力を持っているんですよ。だけれども、目標を定めて、すぱっとやめるんですね。アメリカも今度、強化するみたいです、規制を。ドイツはもうやめることに決めている。要するに、G7の中でやめないのは日本だけのようなんですね。
絶対成功しないとは言わないけれども、かなり私はハイリスクではないかなというふうに感じるんですね、これは外形的な話ですけれども。多くの国々から、そして多くの研究所、これは一つや二つじゃないですよ、ググって検索していただくと出てきますけれども、いろいろなところが日本の石炭火力、アンモニア混焼は問題だと、指摘は多いんですね。
齋藤大臣、十二月に着任されて、ちょっと短期ですから、レクをいっぱい受けられたと思うんですけれども、心の底からこれは大丈夫な選択と信じていますか。いやいや、みんなから、もう時間がないから、これは、だって齋藤さんが着任したとき法案ができていますから、だからもうやるしかないという感覚は分かるんですよ。だから、余り聞くと気の毒な感じもするんですが、心の底から、石炭火力のアンモニア混焼、これは大丈夫ですか、勝算はあるんですか。
○齋藤(健)国務大臣 私が心の底から思うことは、残念ながら再生可能エネルギーだけでこの日本のエネルギー供給構造を構築することはできないということは心の底から断言できると思います。
そのために、いかにして策定した目標を実現するためにあらゆる道を探っていくか、そのうちの一つが今委員御指摘をされたアンモニア混焼だというふうに理解しています。
○田嶋委員 前半は別に私も反対しないんですよ。ただ、残りのいろいろな選択肢で、今回水素も議論するし、今回CCSも議論するし、大いにやった方がいいと思うんですよ。私、石炭火力のアンモニア混焼も、絶対失敗するとは言っていませんから。ただ、仲間たちの国々がみんな心配していると言っているんです。
これをきっちり議事録に残して、記録に残して、後で、あのときの大臣は誰だったかということはやはり検証しなきゃいけない。これは齋藤さんの本にしっかり書いてあることですから。かつての、先週もお示ししましたけれども、齋藤さんの本の中で、なぜ日本は失敗したのかの四つ目にちゃんと書いてあるじゃないですか、戦史をしっかり、「深く洞察した正確な戦史を残してこなかった」と。失敗の記録も成功の記録も、やはり残していかなきゃいけないと思うんですよ。
だから、私は、これは絶対失敗するとは私も言いたくはないし思いたくないですよ、しかし、かなり無理をして今回突っ込んでいくような気がいたします。それは、齋藤さんだから、是非、役所のスタッフが一生懸命やって説明されたとしても、御自身でしっかり考えていただきたい。
ここで立ち止まることは、私も見てきましたJERAの碧南火力なんてもう動いちゃっていますから、まずは動き出すんでしょうけれども。したがって、私の今日の問題意識は、どこかで立ち止まる勇気も必要になってくるんじゃないかということを是非大臣と共有したいし、この本を読めば、まさに失敗の本質と同じように、なぜ日本は負ける戦にどんどん突っ込んでいったのかということを書いてあるわけですよ、それを分析されている。それが繰り返されているんじゃないかと本に書いていますね、今のこの時代も。その繰り返す先頭にひょっとしたら、残念ながら齋藤大臣がこういうタイミングで今大臣になられて、可能性は私はゼロではないと思っているんですよ。そうなってしまうと非常に残念でありますので、そのことを続けて議論をさせていただきたいと思います。
それでは、技術的なお話をちょっといたしますが、配付資料の七を御覧をいただきたいと思います。これはJERAさんからいただいた資料なんですけれども。
これは釈迦に説法ですけれども、石炭火力は天然ガス火力の二倍のCO2を出しますということなわけですね。アンモニアの混焼を二〇%から始めて、五〇%になるのは、五〇%以上ということで、三〇年の前半ですよ。
どこまで行くと天然ガス火力と同じCO2の排出量になるかということは、五〇パーでは足りないんだと私は理解しています、アンモニアはCO2を元々製造のときに出しますからね。そうすると、何が言いたいかというと、二〇三〇年代前半に五〇%以上の混焼を実現するということは、二〇三五年前後にようやく今の天然ガス火力と並ぶぐらいのCO2の排出削減なんですよ。分かりますよね、大臣。
もう一つ言わせていただくと、二つ前のページを御覧ください。これは、最初の、二〇一七年の水素戦略なんですけれども、大臣、当時、アンモニアの言葉も石炭火力の混焼も何も出てこないんです。二〇一七年時点で世界で最初に水素戦略を立案しました、その後四十か国以上が追従しましたと。しかし、当時の戦略は水素発電だったんです、そこの発電というところにありますけれども。つまり、水素発電であり、天然ガス火力に対する水素の混焼は柱として考えられたかもしれませんが、石炭火力のアンモニア混焼というのは、どうも後づけだったような印象なんですね、私は。取ってつけたような印象です。
背景に何があるのか、次の資料を御覧ください。
資料の六でございますが、これは我が国の石炭火力なんですけれども、新品、二〇一九年以降だけで九基も新たに造っているんですね。これはアメリカもゼロじゃありません、ドイツにもありますが、やはり一番多いのは日本なんです。日本は一九年から僅か、まだスタートから五年たっていないようなのが九基もある。典型的には横須賀ですよ、JERAさんの。前の環境大臣の御地元ですけれども。
私は、大丈夫かなと当時からずっと警鐘を鳴らしていました。要するに、座礁資産になるのが目に見えているのに何でやるのかな、十年後、二十年後に石炭火力を動かせるんだろうか、そういう懸念がありました。したがって、そういう民間の事情を踏まえて、後から水素戦略の中にこのアンモニアの混焼というのを無理やり入れ込んだのではないのかなという、私は印象を受けているんですが、齋藤大臣、どういう御認識ですか。
○齋藤(健)国務大臣 私自身も資源エネルギー庁勤務を三回やっておりまして、環境変化、技術の変化というのは絶えず、結構ドラスチックに起こるんですよ。それに応じて内容が変化していくというのは当然のことであるということであります。
それから、更に加えて言えば、石油も駄目、石炭も駄目、原子力も駄目で、本当に日本の安定供給というものを責任を持って進められるかという問題もあります。できるだけあるものを利用しながら、しかし設定した目標は達成していくという姿勢で取り組むということが私は大事だと思っています。
それで、混焼についてですけれども、混焼の技術は我が国にまず強みがあります。アジアを中心に、エネルギー需要を石炭火力で賄う状況、これは続くんです、残念ながら。そういう中において、安定供給と脱炭素を両立できる現実的な手段として、こういう国々ではニーズがあるわけですね。
具体的には、中国や韓国に先んじて、石炭火力の比率が高いインドやインドネシア等の現地エネルギー企業とともに導入の検討を実は今進めているんですね。
また、中国や韓国もアンモニア混焼への技術開発に今参入し始めておりまして、窒素酸化物や一酸化二窒素への対応、アンモニアの着火や燃焼の安定性といった課題への対応は日本に優位があるんです。このため、大気汚染が深刻なアジア諸国において、中国や韓国と差別化が図れるという意味でも、私はこれは追求すべき技術だと思いますよ。
いち早く信頼性の高い脱炭素技術を商用化して、ある意味、産業政策として、アジアのマーケットを中心とした市場を何としても獲得していければいいなというふうに思っています。
○田嶋委員 私も先週JERAさんに行ったときに、例として挙げたのが車のハイブリッドカーなんですね。エンジン車の時代に日本のメーカーがハイブリッドを、ほかの国がやっていないときに頑張ったということで、今や電気自動車も出てきておりますが、すり合わせ技術というのか、何かちょっと面倒くさそうな技術ではあるけれども、それをやり切ったことで一世を風靡して今日まで続いている。
このアンモニア混焼というのは、ちょっと自動車産業のハイブリッドカーみたいな感じがしますねなんということを私は申し上げて、それはそれで、私もそう思います。ただ、違いは、ハイブリッドカーはガソリンしか使わないわけですよ、ある意味。だから、このアンモニアというところがやはり悩ましいところで、石炭火力だけで何かハイブリッドができればいいわけですが、このアンモニアが果たして価格面、技術面で大丈夫かという点を少し掘り下げてお伺いさせていただいております。
だから、大臣が強調されました、私も、もしアジアがそういう形でかなり席巻できれば、日本にとっていい産業戦略になると思います。おっしゃるとおり、アジアは石炭火力が多いですからね。私は、かなりハイリスクな賭けに出ているなという印象を持っているということを申し上げておきます。
技術の点は先ほど確認しましたが、もう一つ、コスト面でございますが、水素にもう少しなぜ安心感を感じるかというと、用途が多岐にわたるということが見えているからであります。他方で、アンモニアはこれまで肥料で使われてきたわけでありますが、まず、サプライチェーンというのは、肥料のサプライチェーンと燃料のサプライチェーンでは、全く新しいものをゼロからつくり上げるという理解でよろしいんでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、今までアンモニアは肥料の原料としてずっと使われてきて、これはサプライチェーンが確立していると思います。ただ、今般のように、例えば発電所で使うといったような、大規模な、燃料として使う場合については、新しいサプライチェーンが必要だと思います。
ただ、使用する船舶が、今まで小規模あるいは中規模だったものを、より大規模化して運搬効率を高めるといったようなところにとどまる変化でございまして、全く運んでいなかったようなものを新たに運ぶといったようなことはございません。
○田嶋委員 サプライチェーンも、原料アンモニアとは異なるものをこれからつくっていくということで、そして、気になるのは、水素のように多岐にわたる用途がどこにも記述がなくて、主に石炭火力発電なんですね。もうちょこっと船があるというふうにも書いてございますけれども、飛行機には適用にならないということで、これはどこまでいっても、石炭火力との相性が燃焼スピードでいいアンモニアの混焼が成功しない限りは、燃料アンモニアのサプライチェーンもできようがない。
そしてもう一つ、やはり一番気になるのは、価格が下がるんだろうかという点ですね。水素は、やはりこれから世界中、先ほども申し上げたとおり、戦略を打ち上げたのはもう既に四十か国を超えています、日本が先頭を走っているかもしれないけれども。だから、世界中で価格競争が起きますから。太陽光も風力も、それから蓄電池も、二十分の一に価格が下がった。同じようなことが水素も起きるかもしれない。しかし、燃料アンモニアはどうやって価格が下がるんですか。そこは非常に気になるところです。大臣、いかがですか。
○齋藤(健)国務大臣 敬愛する田嶋委員の御質問に少し寄せて答弁をしますと、確かに、アンモニアの混焼技術というのは、これからのところが正直あります。そのリスクについては、田嶋委員はとてつもなく大きく感じておられるかもしれませんが、私どもはそこまでは感じておりませんので、追求すべき技術だろうと思っています。
その上で、価格につきましては、これはもう少し技術的な検討が進まないとなかなか見通すことは難しいというふうに思います。それは、何もアンモニア混焼に限らず、あらゆる新しいエネルギーというのはそういうことになっていくんだろうと思います。
ただ、確かに、おっしゃるように、これからサプライチェーン自身も構築をしていくことになりますと、そういった意味では、かなりの努力が必要だろうなということは分かります。
○田嶋委員 リスクがとてつもなく大きいかどうか、これは分からないですけれども、しかし、用途が非常に限られているというのは懸念材料だと思います。
そしてもう一つは、この資料の最後にMRJもくっつけさせていただいて、MRJも、私たちは胸を高鳴らせた思いがあるんですが、何かあえなく、六回延期で、残念な結果。そうしたら、たまたま今日の日経一面トップに出ていましたよ、MRJ、MSJが再挑戦だと。ちゃんと反省ということも入っていましたね、日経の記事は。
だから、私は、いいんですよ、五百億投じた、失敗に終わった、だけれども、もう一回挑戦する。五百億が大きいか小さいかは見方によりますが、今度の航空産業、五兆円使うと言っていますから、一%ですよ。まあ、授業料かもしれません、見方によっては。
このアンモニア混焼がちょっと気になるのは、これがポシャると、CO2のバジェットという意味では、かなりほかの先進国に後れを取ってしまう。つまり、うまくいけば、混焼が進み、専焼に移り、そうしたら、CO2は二〇五〇年カーボンニュートラルに向かって、一・五度目標と、まさに政府が言っている整合的な形で進められると思いますが、これがポシャったら、振出しに戻りますよね。だから、セットでCCSなんじゃないかなという気がして。これは、失敗したときは全部CCSというふうな、過大な期待を今度CCSに向けられる可能性もあるのかなと思うんですよ。
だから、巨大なリスクとおっしゃいますけれども、私は、金額以上に、この道を選んでしまって、うまくいくと考えているけれどもCO2削減にちっともつながらないということで、MRJのように、十年後に混焼、専焼の道を諦めるとなったときに、カーボンバジェット上は大変大きな消費を既にしているから、日本に残された時間はなくなってしまうんじゃないか。
これは質問の一つにも入れていましたけれども、二〇五〇年にカーボンニュートラルだけじゃないですよね、大事なことは。それは瞬間風速ですから。二〇五〇年にカーボンニュートラルのためにやらなきゃいけないことは、道のりとして、バランスシートとして、カーボンバジェットを節約しながら一・五度目標を整合的に達成するというのが先進国としての義務だと私は思いますよ。これはG7でうたっているわけでございますね。
私は、ここを大きく外れてしまうんじゃないかということをアンモニア混焼の最大のリスクだと思っているんですが、大臣はいかがですか、そこは。
○岡本委員長 資源エネルギー庁、先に。(田嶋委員「大臣でいい。手を挙げているじゃないか」と呼ぶ)部長、その後に補足。
○井上政府参考人 じゃ、一言だけ。
アンモニアの混焼の関係でございますけれども、発電用途以外にも、現実的に、産業用の熱需要のところでアンモニアを燃やしていきたいといったような要望が複数の企業、地域から出てきております。あるいは……(田嶋委員「分かりました」と呼ぶ)はい。
以上でございます。
○齋藤(健)国務大臣 余り固定的に考える必要は私はないと思っていまして、状況は変わりますから、流動的なところも踏まえまして、技術開発の様子も見ながら、進展状況も見ながら、そしてCCSの進捗状況も見ながら、約束した目標を達成していくということに尽きるんだろうと思います。
それで、カーボンバジェットのお話がありましたが、まず、パリ協定では、排出削減水準やその実現手段については各国の判断に委ねられています。
その上で、私どもは、二〇五〇年カーボンニュートラル及び二〇三〇年度四六%削減の目標達成に向けて、現在、オントラックで削減を進めているというふうに考えておりますので、カーボンバジェットを直ちに導入する必要はないというふうに考えていますが、いずれにしても、国民生活に欠かせないエネルギーの安定供給を前提に、排出削減と経済成長を共に実現していくGXの取組、これは状況に応じて柔軟性も必要だろうと思いますが、引き続きしっかりと前に進めていきたいと考えています。
○田嶋委員 大臣が自信を持って前に進めるのは結構なことだと思うんですが、ちょっと大臣、齋藤さん、古巣に戻った感覚は、農水大臣になられたとき、法務大臣になられたときのような緊張感が私はないと思うんですよ。(齋藤(健)国務大臣「失礼だな」と呼ぶ)それはごめんなさい。じゃ、それはちょっとおきます。そうじゃなくて、やはり緊張感がなくなるような仲間意識が生まれやすい場所にいると思うんですよ、私は、齋藤さんが。だから、そこはやはり常に警戒意識を持ってやっていただかないと、自分が今までやってこられなかった農水とか法務の分野とは違う分野であるけれども、ここは慣れているということになると、私はリスクが逆に高まるんじゃないかという心配もしております。言葉に気をつけますので。
○齋藤(健)国務大臣 御助言は、大変、そういう面もあるかもしれないというふうに思い当たるところもなきにしもあらずですので、しっかりやっていきたいと思います。
○田嶋委員 これは西村大臣のときも申し上げましたけれども、二代続けてそういうことになって、よっぽど困ったときの齋藤さんという話になったのかもしれませんけれども、そこはくれぐれもよろしくお願いしたいと思います。
それともう一つは、いろいろなことが変わり得る、どんどん変わっていくからということがやはりこの法律にも表れていて、多くのことが書き込まれていないんですね。いろいろなことが政省令に委任をされているような感じに映ります。
あとは、やはり私は、これは経済産業省のフリーハンド法案という印象があるんです。結構経産省だけで何でも決めていける、指針も含めて。環境省にちょろっと相談するみたいなことも書いていますけれども、これでいいのかなというのが先ほどのアセスと同じ問題意識ですね。
これは、先ほど委員長からも御指摘いただいた鴨川の件で、私はもうあと二つ反省点があって、この間申し上げた点で、一つはアセスができなかったこと、二つ目は認定のタイミングで価格を決めたことなんですよ。これは法律事項じゃないんです。
それから三つ目は、最初の三年間を利益考慮期間とかいって上乗せしちゃったんですね。これは私たちの法案の元にはなかったけれども、当時の野党の筆頭理事、ここに座っていた西村康稔さんの下で法案修正したんですよ。私たちもそれに応じてしまった。それが今の何兆円の元の、一番最初の三年間に一番集まっていますから、御案内のとおり駆け込みがあって。私は、それは本当に残念なことで、失敗だと思っています、その点に関して。
再生可能エネルギーもFITも必要だったけれども、制度設計の細部で失敗した。まさに悪魔は細部に宿るなんですよ。
だから、齋藤さん、これは読んでも読んでも具体的な言葉が余りなくて、この法案。私も読ませていただきましたよ、そんなに長くないから。例えば、どういうものが低炭素なのかの数字が、水素は三・四だと。だけれども、アンモニアはいまだ決まっていないんですよ。〇・八四という話もあるけれども、決まっていないんですよ。これは全部後から決まるということで、本当にそういうことで大丈夫かと。経産省に全部任せておけというふうに読める法案なんですね。経産省の方が今大臣をなされていて、私は、ちょっと危うさを感じます。
一つ例を挙げますが、三・四、これは水素の話ですけれども、この間、先週、山崎さんかどなたかの答弁で、いや、アメリカは四だ、EUは三・四だ、厳しい方に寄せましたという答弁があったんですが、これはちょっと通告していないので、もし役所で説明できれば。
実は、アメリカは、四カテゴリーに分けていて、その強度というんですか炭素の度合いが高いところは、四までは確かにあるんですが、その補助は本当に僅かなんです。そして、その下に、もうあと三つ、グリーン水素まで更にレベルを上げていて、一番レベルの高いところは、これは税額控除ですけれども、三ドル。だから、三ドル、一ドル、〇・七五ドル、〇・六ドル。この〇・六ドルが先週御説明のあった四なんですよ。そうすることによって、一生懸命、事業者はグリーンの方にグリーンの方に向けていく努力をするということなんですね。
しかし、今回の我々の法案は、何にもそんなことは書いてない。この間は、四じゃなくて、三・四にしました、EUと一緒です、アメリカより厳しいですと。何かちょっと違うんじゃないかなと思うんですけれども、そういう話は我々には知りようがないですよ、外部のいろいろな情報を取らないと。どうですか、その点の懸念は。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
アメリカの制度で、どういう基準になっているかというのは委員御指摘のとおりだと思います。あと、EUの基準も先日お答えしたとおりでありますが、我々といたしましては、この法案を立案していく中におきまして、審議会での御審議はかなり細かくやっていただいております。全て公開されておりますし、パブリックコメントもいただいた上で策定してきております。
御指摘の、今後の低炭素水素の基準につきましても、しっかり審議会等で御議論いただいた上で、パブリックコメントもかけて、省令あるいは政令と、必要な法体系に落としていきたいというふうに考えてございます。
○田嶋委員 いいんですよ、一生懸命やってくれて。ただ、今言ったような四段階のような話は、先週もなかったですよね。だって、意味が違うじゃないですか。三・四をクリアすればいいとか、そういう話じゃなくて、常に努力をしてグリーンに近づけることを制度設計で組み込んでいるのがアメリカのやり方だよ、それがないじゃないですかということを申し上げているんです。
だから、そういうことが一切分からない法案になっちゃっているから、なかなか評価が難しいし、私たちに全部お任せくださいというのは私はよくないんじゃないかと。齋藤大臣だからこそ、それは強調させていただきたいと思います。
そこで、私は御提案を申し上げたいんですが、やはり、もう既にJERAさんが始めている。先週、JERAさんに勝算はありますかと言ったら、二秒、間が空いて、ありますと答えましたよ。勝算はもちろんあるわけですね。先ほど大臣も表現していただいたように、アジアに打って出られる可能性だってあるわけですよ。
しかしながら、私は、そうじゃないシナリオも当然想定はしなきゃいけないということで、私の方から申し上げたいこととして、仮に、この政策判断、制度設計が誤りだった、これは先ほど言ったように、実際のケースとして、FIT法でも悪魔が細部に宿って国民負担につながってしまったような残念な点があるので、是非とも、今回これから始めることに関しても、その誤りが傷口を広げないためにも、私は二つのことを御提案申し上げたいと思います。
一つは、毎年の国会への報告です。これは、今ほかの委員会で議論している、いわゆるセキュリティーに関するものですね、経済安全保障。こちらでやはり修正がなされたということを聞いています、国会報告ですね、一年に一回。
それから、見直し規定が今、五年というふうになっていますが、これも、いろいろな法案でこういう見直し規定を入れるのはPDCAとして当然かもしれませんが、私は、先ほど大臣がおっしゃったように、激変する環境の中にあって、こういう制度設計でよかれと思ったけれども、それがあだになることだって当然考えられる。私たちは、そういうことを慎重に考えるべきだと思っております。特に、最初のスタートダッシュのところは、私は、五年では長過ぎると思っております。二年の見直し条項というのを私は入れるべきではないかというふうに考えております。
それから、もう一点確認したいのは、間もなく第七次のエネルギー基本計画でございますが、理論上は第五次から入ったアンモニア混焼ですが、第五次、第六次に入っているアンモニア混焼が、これからの検討の結果、第七次では落ちる、つまり、もう、ちょっと支援はできないというふうに当然考え方が変わる、方針が変わる可能性はあるのかないかをお答えください。
○齋藤(健)国務大臣 これから第七次の基本計画は検討することになっておりますので、今の時点でどうなるということについて私の方から言及するのは、これから検討していただく審議会の先生との関係上も適切ではないと思うので、控えるしかないかなと思っておりますが、いずれにしても、委員おっしゃっていることは分かるので、やはり柔軟に、いろいろなことが起こり得るからということ、その点は私は肝に銘じて、失敗の傷口を広げながら決めたことに固執するということがあってはならないと思っていますので、私が大臣である限りは、そういう柔軟性を持って対応していきたいと思っていますよ。
○田嶋委員 本当に期待したいですよ、こうやって過去の歴史まで分析をなさって、本まで著されているわけですから。そして、今の時代が当時の時代と重なるとまで書かれていらっしゃるわけで、それで今、こういう未知のプロジェクトに挑戦する責任者としていらっしゃるわけですからね。
ただ、難しいのは、入っていくときにはみんなで元気にやるんですよ。この間、どなたかも言っていたじゃないですか、経産省の文化だといって、お祭りのように。それはいいことですよ。だけれども、潮が引いたように誰も忘れるんですよ、そういう意味では。
みんな人事異動で異動されますよね。だから、FITのときだってそうで、あれだけ盛り上がって始まっても、二年、三年、五年たつと誰もウォッチできていない状況が起きて、そして、全国でひどい、鴨川のような事例が十年もほったらかしにされている。私がそれを知ったのは、僅か五年前ですから、恥ずかしいことに。だから、ウォッチできないんです、なかなか。
だから、私は、念には念を入れて、やはり、国会報告という負担をかけることで、ちゃんと一年ごとに整理をして、状況の変化も把握をしてということをレポートにまとめること、そして見直し規定ももっと短縮するということを是非立法府として検討していただきたいというふうに考えております。
また、有識者がいらっしゃるから言えないということですけれども、それは、可能性としては、固執するわけじゃないんだったら落ちる可能性もあるというふうに私は受け止めさせていただきました。
時間で、最後でございますが、資料の二を御覧をいただきたいと思います。
実は、今日、昨日の夜ですか、ニュースが流れて、「政府・自治体の太陽光発電導入、目標の数%どまり 率先できず」というニュースも流れたところなんですけれども、これも世界中から本当にあらゆる指摘をされていますが、日本だけが異常な状況になっていまして、特に太陽光ががた落ちになっているんですね。全然増えていない。
そして、前の資料、一番の資料に戻ってください。これもIPCCからの、IPCC、御存じですよね、百九十五か国ですよ。組織の目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えること、最新の科学的知見の評価をすることですよ。その団体の評価結果がこれですよ。そのグラフの見方は、風力と太陽光は極めて安上がりな気候変動対策だということです。
大臣は先ほど、これだけでは全部はできない、おっしゃるとおりだと思います。しかし、これをどれよりも力を入れてやらなきゃいけないけれども、この日本はそれができていないんですよ。全くできていないんです。今日の新聞もそれを、日本ができていないだけじゃないんです、政府ができていないんです。目標の数%ですよ、これは。国土交通省にも同じ質問をしましたけれども、全然目標が達成できていない、こういう状況にある。これでは、そりゃ、原発も必要だ、CCSだけじゃなくてアンモニア混焼も、あれもこれもやらざるを得ないような環境に自ら追い込んでいると私は思いますよ。
齋藤さん、大臣になられてまだ間もないですけれども、この十年間の我が国の道のり、再エネ、省エネ、余りにも適当というか、本気になって進めるということができていないと私は思いますよ。
法案ぐらい出して、私たちが出した法案は継続審議になっております、公共的な建物が率先してやることによって、価格を下げていくという役割を果たす。それが一向にできていないから、ソーラーのパネルの設置代、ソーラーのパネルのハードの代金が世界一ロシアと並んで高い国ですよ、日本は。この事態を御存じですか、大臣。ここが、私は、一番の問題なんです。
だから、CCSにやはり危機感を持って取り組まなきゃいけないし、アンモニア混焼もハイリスクでも突っ込んでいかなきゃいけない。おっしゃるとおりですよ。あらゆることをやらなきゃ駄目なような状況に追い込んでいるのは自らだと私は思っているんですね。
経済産業大臣に、大臣になられる前からその御認識がおありなのか、そして、これから再エネ、省エネをどうしていくかということを改めて最後に御答弁いただきたいと思います。
○岡本委員長 齋藤経産大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔な答弁でお願いいたします。
○齋藤(健)国務大臣 簡潔に答弁できる内容じゃないんですが、いずれにしても、私は、経産大臣になる前は経済産業政策に余り関与していませんでしたが、ただ、カーボンニュートラル二〇五〇年、それから二〇三〇年の目標については極めて高い目標であるということだけはよく分かっているし、その中で、やはり再エネを重視して進めていかなくてはいけないという思いはずっと強く持ち続けてきています。
○田嶋委員 余り強さを感じませんでしたが、次回に引き継ぎたいと思います。
どうもありがとうございます。
○岡本委員長 次に、落合貴之さん。
○落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。
本日は、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案、いわゆる水素社会推進法案について質問をさせていただきます。
まず、岸田政権、経済成長戦略の柱の一つに、GX、グリーントランスフォーメーションを掲げております。これは、化石燃料を使わないで、二酸化炭素を出さない経済社会を実現しよう、そしてその変化を経済成長にもつなげていこうということでございます。そして、その手段として、これまでもいろいろな法案が審議され、通ってきました。再エネを強化する、それから再生可能エネルギー等を促進するということが政策として進められてきました。
それで、今回、それでも対応できない分野に関しては水素を活用しようという話で、この法案が出てきたわけでございます。
この水素を省エネ、再エネで対応できない分野に位置づけて、国費も投入して、民間投資も大きく喚起をしていくというようなことでございますが、これはなぜ水素が選ばれたのか。省エネ、再エネに対応できない部分で、なぜ水素を選ばれたのか。今まで国民にはそんなになじみがあるものではありませんが、国民負担ですとか民間の投資も大きく経産省が喚起をしていくわけですので、分かりやすく改めて御説明をいただければと思います。
○齋藤(健)国務大臣 水素は、再生可能エネルギーを始め、様々なエネルギー源からまず作ることができます。燃焼時にCO2を排出しないということから、我が国のカーボンニュートラル実現に向けた突破口となるエネルギーの一つではないかと思います。
加えて、水素は、燃料としての利用にとどまらず、アンモニアや合成メタン、合成燃料等の原材料としても活用可能であるということから、幅広い産業分野での活用が見込まれるということであります。
このように、水素は今後、燃料用途に限らず産業分野での幅広い活用が見込まれておりまして、水素社会推進法案の支援対象の中でも中核を成す物質であることから、例示としても水素を規定させていただいたということであります。
○落合委員 私もいろいろ改めて水素を調べまして、化学の元素記号の一番が、原子記号の一番が水素なんですよね。宇宙で最も存在している物質だそうです。物質の中で、最小、一番小さい、最も軽い。燃やすと酸素と結びつきますので、二酸化炭素は排出しないで水になる。作るときも余剰の再エネとかも使えますので、組合せとしてはある程度相性がいいかもしれません。
一方で、デメリットも調べてみますと、まず、化石燃料と比べると体積が大きくなってしまうということ。それから、沸点ですとか融点が物すごく低いので、運ぶために液化する際には大量の電力を消費する。それから、保存にも、冷やしておくための電力が必要である。それから、最小の物質ですので、少しの隙間でも通過してしまうので、密閉するときに材料ももろくしてしまいますし、密閉自体もしづらい。それから、気化しやすいのでLNGよりも保存が長期でできない、どんどん気化してなくなっていってしまうというようなデメリットもあります。
ですから、このメリットとデメリットをうまく組み合わせていかなければ、うまく経済性も兼ね合わせた利用ができないというところはしっかりと認識をして、国の方向性を決めていかなければならないというふうに思います。
今回の法案では、水素等を産業、モビリティー、それから発電に主に使うということです。この水素等というのは、水素がメインなんですが、水素から、ほかの物質も、燃料も作ります、アンモニアですとか合成メタンですとか、合成燃料を指しているということでございます。
この産業、モビリティー、発電の中で、先ほども取り上げられていますが、発電で使うとなりますと、まず、水素自体を作るのに、発電するための水素を作るのに電気を使う、それから、水素からアンモニアですとかを作るときもまた電気を使う、その燃料を使って電気を発電するということで、これは大変エネルギー効率も悪い、コストもかかってしまうわけです。
これは試算を見てみますと、先ほどもありましたが、再エネをじかで使った方がコストとしては安いわけでございます。しかも、この水素を再エネ由来でないもので作る場合はCCSともセットにしなきゃいけないので、それもまたコストがかかるわけでございます。これは、私は、今のこの時点では、やはり少し無理があるんじゃないかなというようなことを感じられる計画を今立てているなというふうには思います。
歴史を振り返ってみますと、オイルショックが一九七三年、五十年前にありました。その翌年に経産省がサンシャイン計画を作って、石油に代わる新たなエネルギーを開発しようということで、その中に水素も含まれてまいりました。二〇〇九年に家庭用燃料電池が市場に投入され、それから、二〇一四年には、水素を燃料とした燃料電池車、これも投入されたわけでございます。これは世界に先駆けた先行的な結果を出していますが、まだ世界市場全体を変えるにも至っていません。まだ日本国内の市場を変えるにも至っていないわけです。
五十年間、水素政策をやってきたわけですが、これは振り返ってどう総括しているかと、やはり五十年たっても今この状態である、この反省点はございますでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、我が国における水素の導入に向けては、オイルショック、一九七三年以降、サンシャイン計画を始め、様々な導入策が進められてきました。今では家庭用燃料電池や燃料電池自動車は世界のトップクラスの水準で普及はしていますが、その導入数はまだ途上段階なんだろうというふうに思います。
御指摘の、水素の導入に関するこれまでの総括ですが、従来のようにCO2の削減目標を設定をするというだけでは、CO2排出量の多い分野で省エネや再エネ導入が主な取組として認識されるにとどまっておりまして、なかなか水素を利用する、そういう必然性は乏しかったのではないかというふうに残念ながら思います。
しかし、二〇二〇年のカーボンニュートラル宣言によりまして、私は、水素をめぐる状況は大きく変化をしたと思います。電化が難しい産業熱等の脱炭素化までもが必要となってきたということでありまして、一方で、世界を見れば、水素等への様々な政策措置が講じられて、低炭素水素等のサプライチェーン構築に向けた、いわばもう競争が起こってきているということなんだろうと思います。
したがいまして、政府としても、カーボンニュートラルを宣言し、多くの企業がこの目標にコミットする中、規制ですとか制度的措置による水素等の新たな市場の創出ですとか利用拡大を促して、水素等が実社会で幅広く利活用されていくように政策を前に進めていかなくてはいけないのではないかというふうに思っています。
○落合委員 実験ですとか実証は、幅広く、いろいろな可能性を考えてかなり幅広にどんな分野もやっていくと思います。ただ、社会実装となると、やはり、その実験、実証の中で、ここはいけるぞ、いくべきだというところにばっとやっていくことが、政策を絞っていくことが重要であると思います。
ほかの、家電の分野等も、結局、社会実装のところで日本が競り負けてしまう。最初の実験も実証もリードしていたという分野は多いわけです。その失敗を残念ながら繰り返してきたわけですので、やはり水素も、今までこの五十年間幅広くやってきました、ただ、ここからもうそろそろ、ここよりもこっちをですとか、今回のこれで見ますと、産業分野は、もう必ず社会実装をしていくんだというふうに絞っていく分野だと思います。
一方で、先ほど田嶋委員からもありました発電の分野ですとかは、少し柔軟に方向性も考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。そこはやはり、国のかじ取りの具合、重要な点ですので、それを今回、この法案の審議の上で指摘をさせていただきたいというふうに思います。
次のもう一つの論点なんですが、経産省は、この法案の説明に当たって、エネルギーの安定供給と脱炭素とそれから経済成長の三つを同時に実現しますというふうに言っているわけですが、これは、水素社会を日本で実現する上でどこから水素を持ってくるんですか、どこで作るんですかというと、具体的には、まだ正式には決定していないでしょうけれども、大きく言われているのは、当面、案件があるのは、オーストラリアの低質な利用されていない石炭、褐炭を使って水素を製造して、それを輸入する。これは、褐炭の場合は、石炭の中でも更に二酸化炭素を大量に出すということで、CCSもセットにしなきゃいけないわけでございます。
これは、国内でCCSの設備が間に合わないときは海外のCCSも利用しなきゃいけないということで、CO2を運ばなきゃいけないコストもかかる、国富の流出にもなるわけです。水素を運ぶコストもかかるわけです。それから、海外から輸入するわけですので、安定供給という面でも、リスクの高低はありますけれども、海外から輸入するという点で、化石燃料とそんなに大きく変わるわけではないわけです。
今、日本ではもう実証実験もやっていて、水素を作る技術はあります、再エネから。ですから、もう技術があるんですから、価格の低減ですとか大量生産を追求して、国内で水素製造産業を振興していくということも選択肢の一つだと思うんですが、それはどうなんでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 もう委員御指摘のとおりなんですね、結論から言えば。
少し整理してお話をさせていただきますと、低炭素水素等のサプライチェーン、この構築に当たりましては、エネルギー安全保障の観点からも、まずは国内における低炭素水素等の製造、供給体制の構築に取り組む、これが重要なんだろうと当然思っています。
このために、価格差に着目した支援においても、十分な価格低減が見込まれ、将来的に競争力を有する見込みのある国内事業を最大限支援していく方針であります。
一方、当分の間は、国内での低炭素水素等の製造規模は、海外案件に比べて小規模かつ高コストであるのも現実でありますので、国内製造のみでは低炭素水素等の需要量を賄えないというおそれがあります。加えて、安価に低炭素水素等の製造が可能な適地の確保など、世界では既に低炭素水素等のサプライチェーン構築に向けた競争が始まっているという状況もあります。
そういったことから、国内技術等を活用して製造された低炭素水素等であって、国内よりも相対的に安価かつ大量供給が可能な輸入事業についても、その重要性を精査の上で支援をしていく、そういう方針であります。
○落合委員 国内技術を使って、海外の方が最適であればそちらを使っていくというふうに今考えているということです。
私も、いろいろな、こういうのに関わりそうな事業者の方々からヒアリングなども行いました。結局、水素等の製造のコストは、電気代が一番ネックになるというような話、日本の電気代は高過ぎるんだというような話をする方が多いわけです。
これは今月初旬に報道されていましたが、中国が内陸部で風力ですとか大規模な太陽光発電をがんがんがんがんやっているんですが、一方で、内陸部に電力消費地がないので、日本でいう出力抑制のような形で、一〇%ぐらいは、今の時点でも事実上捨ててしまっている。なので、この余剰電力を、内陸部でグリーン水素の基地を造って、大量に設備投資を行います、それで世界のイニシアチブを水素の分野で取っていくという戦略を今立てているということでございます。
日本でも、どんどんどんどん再エネが増えてきて、昼間の余剰電力が増えています。試算によると、昨年、出力抑制がかなり増えて、昨年分だけで、年間で換算すると、約四十五万世帯分が一年で使う量の電気を出力抑制しております。今年はもっと増えるというようなことです。
これは、電気が余っている時間だけ、例えば電気代をただに近くしますということも、価格の設定として、やりようによってはできると思います。その時間、水素製造のために電気を使うのであれば、十分の一ですとかただ同然で電気を売るという仕組みをつくることで出力抑制も抑えられ、そして水素製造にも余剰電力を使うことができる、そういう仕組みをつくることも検討するべきだと思いますが、いかがですか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
一般に、国内の余剰再エネを活用する場合は、余剰再エネの状況次第では稼働率が低くなってしまうケースもございますけれども、御指摘のとおり、余剰再エネを十分に活用できる場合には、水素製造に必要な電力コストの低減効果が見込まれるというふうに考えてございます。
加えて、我が国のエネルギー自給率向上の観点からは、国内の余剰再エネの有効活用を促進し、水素等の製造及び供給体制の構築に取り組むことは、極めて重要だというふうに考えてございます。
○落合委員 大臣、いかがですか。思い切った仕組みをつくるというのは、大臣のリーダーシップが必要だと思います。
○齋藤(健)国務大臣 確かに、国内余剰再エネはこれからまだ増える可能性もあると思います。ただ一方で、事務方も答弁しましたけれども、結構乱高下するという難しい面も確かにあると思います。そういう中で、いかに余剰再エネを活用していくかという工夫をするということは、私は大事なことだろうというふうに思っています。
○落合委員 是非御検討をいただきたいんですが、平均して電気代が安価になればいいと思うので、余剰しているときは物すごく下げるという形を取れば、水素製造において平均して安価な電力を使うということも、制度設計によっては可能だというふうに思います。
これは、再エネを増やすための例えば送電線投資も物すごいお金がかかるわけで、水素製造と組み合わせば、送電線投資は抑えることができるわけです。
そういった、総合的に、水素の分野と再エネの分野、一緒に政策をつくっていくことで、より速度も速めることができると思います。これこそ政治がやるべき仕事であるというふうに思いますので、是非前向きな御検討を早急にいただければと思います。
それから、私、欧州の水素基地も見に行ってまいりました。ロッテルダムに、これは報道もされていますが、ヨーロッパ中からお金を集めて、それから企業を集めて、ロッテルダムに水素基地を造ろうと。それから、その沖合に洋上風力を物すごくたくさん造って、ロッテルダム港で水素を作って、そこは日本でいう京浜工業地帯のようなところですので、産業用にも使う。それから、今ヨーロッパ中にガスのパイプが通っていますが、それを将来的には水素に換えるんだ、ラストワンマイルに近いところまで、各地区、各家庭、各建物に水素を供給できるようにするんだというような計画を聞かされました。
それだけの大規模な話ですから、物すごい投資を集めています。プレゼンテーションも欧米の方々の方がうまいので、これは本気でやっているなと。それから、多くの資金をもう集め始めていますので、ステークホルダーが増えれば増えるほど、その人たちも損をしたくないので、水素社会をつくらざるを得ない状況をヨーロッパは半ば強引につくっているわけでございます。
私は、感覚的には、ヨーロッパは完全に水素社会をやる気だなと。もうガスを輸入しなくてもいい状況を一年でも早くつくるというような執念を感じました。その話を、帰ってきて、日本の企業のそういう分野で働いている方々に話しても、ううん、そういう社会ができればいいですねと。ただ、ヨーロッパはこれだけ金を集めているから本気ですよ、やっちゃいますよという話をすると、はっとした表情に変わるわけでございます。それだけヨーロッパが本気でやっているということは、ヨーロッパは水素社会を実現する可能性は高いと思います。
そういった中で、いろいろな資料を見てみると、日本の団体も、世界規格を日本が取るんだというような大きなことも書いてあるんですが、私からすると、本気度がこれだけ違うのにそんな立派なことができるんですかというように思います。
もちろん、これだけ公費をつぎ込むんですから、水素社会実現、政府は本気であるということと、しっかり民間にも本気になってもらうという覚悟があるということでよろしいんですねということがまず質問と、あと、世界規格をどうやって取るのか。少なくともヨーロッパがそれだけ本気であるなら、ある程度協力しなければ共通の規格というのはできない、別々の規格で走ることになってしまうと思います。その世界戦略も含めて伺えればと思います。
○齋藤(健)国務大臣 世界がカーボンニュートラルに向けてもう走っている中で、私は、水素社会というものは必須の流れになってきていると思います。
我が国は、水素分野で高い技術力を有しています。こうした分野のルール形成ですとか国際標準化を進めることで、海外市場を獲得して、我が国の産業競争力の強化につなげていく、これは何としてもやっていきたいと思っています。
欧州は、おっしゃるように、水素分野で野心的な取組を進めていまして、また、我が国と同じように水素等を輸入する大消費地でもありますので、ルール形成に向けて、実は戦略的に欧州と連携して進めていく、これは大事なんじゃないかなというふうに思っています。
例えば、我が国は、水電解装置の部素材の開発に関して強みを持っています。日本企業とEUの企業が協力して水電解装置の大型化等の技術開発に実は既に取り組んでいるところであります。
同時に、水電解装置の耐久性や電解性能といった日本企業の強みがしっかり評価されるよう、欧州とも連携して、性能評価手法の国際標準化を進めて、海外市場の獲得につなげていきたいというふうに考えています。
また、国家レベルでは、実は、EUと、水素に関する協力覚書締結や首脳も関与する協力枠組みを構築しておりまして、水素流通のルール形成ですとか水素関連機器の国際標準の協力については協議を進めているところであります。
産業競争力の強化という面もしっかりと踏まえた上で、我が国の技術的な強みをてこに、グローバルスタンダードの形成、これを主導していきたいというように考えています。
○落合委員 客観的に見てみると、規格の面ではやはりヨーロッパとの協力が重要である。それから、前段申し上げましたが、水素自体は長距離で運ぶのに気化してしまうので向いていない。石油ですとかLNGと同じような政策では、なかなか難しいところがあると思います。
実際、ヨーロッパの企業は、たとえ輸入するとしても、地中海の反対側、アフリカの北側ぐらいから運んでいく、それぐらいの距離しか想定していないとなると、やはり日本も短い距離となると、東南アジアですとかオセアニアの北側ぐらいでこの経済圏をつくっていくというような形になるんだと思います。
世界規格をある程度参画して、日本がそれに適合できるようにすること、それから近隣諸国とのエコシステムをつくっていくこと、本当に実現するのであれば、これが大変重要なポイントであると思います。
最後に、絶対に水素が向いているだろうという分野が、私は産業の分野、特に製鉄であると思います。日本の製造業の排出CO2の四割ぐらいが製鉄業から排出されている。これをもしゼロにしたら一気に製造業の排出量が四割減るわけです。
そもそも、水素還元製鉄は、日本が実験でも優位に進めてまいりました。しかし、これはヨーロッパも駆け足で追ってきている、もしかしたら抜かされつつあるのかもしれない状況でございます。いろいろな、力を入れなきゃいけない分野はあるんですが、水素還元製鉄こそ絶対にヨーロッパに負けてはならない、これこそ集中的に投資をする分野だと思います。
先日、大臣の答弁で、二〇四〇年に前倒しして社会実装するというような答弁もありましたが、この二〇四〇年というのは、つまり、ヨーロッパより早いということでいいのかという確認をさせていただければと思います。
○浦田政府参考人 お答え申し上げます。
先日の答弁にもありましたように、現在、GI基金を使いまして技術実証を進めているところでございまして、私どもとして、二〇四〇年の実装を目指して取り組んでいるところでございます。
欧州につきましても同様に、早期の社会実装を目指して取り組んでいるところだというふうに承知をしております。
○落合委員 これは、我が国がヨーロッパに勝つ必要があると思います。
ヨーロッパは、水素社会の完成を、私への説明では二〇四〇年代と言っていました。なので、産業用はもっと早いはずですので、これはもっともっと加速をしていく必要があるのではないかと思います。こういうところに公費を使い、そして民間の旗を振っていくというのが経産省の仕事であるというふうに思いますので、是非、ここに力を入れていただければと思います。また取り上げます。
ありがとうございます。
○岡本委員長 次に、大島敦さん。
○大島委員 衆議院議員の大島です。
先ほど落合先生の質問を聞きながらいろいろなことを考えていまして、ヨーロッパは自己完結できると思っています。北欧は水力がありますし、フランスは原子力がありますし、ヨーロッパの中で自己完結できる。先ほど落合先生がおっしゃっていた北アフリカかなというのは、多分、砂漠地帯での太陽光発電による水素を作ることかなと思います。アメリカも恐らく自己完結でできる国です、食料も、エネルギーも。
私たちの国の立ち位置は、極めて不利な立ち位置にあると思っています。中国があって、東南アジアがあって。恐らく、京都議定書についても、今回のパリ協定についても、スタンスは違うと思う。私たちの国がヨーロッパの隣にあったら、一緒に、ヨーロッパ人の中に入って、ルールメイキングしながら世界をリードできるという領域は多分にあるなとは思うんですけれども、いかんせん周りが中国と東南アジアですから、厳しい中で産業をいかに守っていくのかということかなと思いました。
北海の風力発電についても、元々北海は北海油田がありました。ですから、北海の地盤等は、彼らはよく承知をしています。北海油田のパイプラインがあるので、それを使いながら様々なこともできるわけですし、北海、なかなか暗い海で、でも、ずっと遠浅ですから、日本と違って、海上風力も、地盤にしっかりと食い込んでの海上風力発電、洋上風力なので、比較的取り組みやすい。偏西風がずっと吹いているところですから。
ですから、極めて厳しい環境の中でどうやって回答を出していくかというのは、なかなか出し切れないところがあるなというのが正直なところです。
総人口あるいは生産年齢人口を見ると、中位推計で、二〇二〇年が一億二千六百万が、二〇五〇年には一億ですから、二千万人ぐらい減るわけですよ。生産年齢人口も七千五百万から五千五百万ですから、中位推計でも二千万減る中で、今後、これまでとは全く異なる環境の中での経済政策なり産業政策をどういうふうに我が国として落とし込んで、二〇五〇年のイメージをつかむというところかなと思っています。私自身もまだつかめていないので、二〇五〇年がこういう社会だと一つ想定できると、それに向かってシナリオが書きやすいかなとも思いました。
あとは、法案審議なので、実務的な話をさせていただきます。
一月一日の能登の地震があった後に、その直後だと思いますけれども、各電力会社の皆さんは、千人以上が能登半島に入りまして、この地域は中部電力さん、この地域は関西電力さん、全部電力会社が地域を分けながら復旧復興、電力の回復に取り組んだと聞いております。特に、関西の方は台風が多いので、九州電力さんも、なかなか復旧復興が手際がいいというお話も聞きました。応急処置をしながら復旧するということ。
ですから、電力会社の皆さんは、原子力もそうですし、水力もそうですし、火力発電所も、半分は恐らく、会社に入るときに、公務員の皆さんと同じように公共に尽くしたいという気持ちで入っていらっしゃるので、そういう気持ちですぐ初動を取っていただいたと思います。
そうすると、火力発電が悪いわけではなくて、たまたま火力発電がCO2を出しているということをまず考えなければいけないなと。
この委員会でも発言しましたけれども、前に、三年ぐらい前ですかね、電力が足りないときには、姉崎のもう廃止を決めた発電プラントを二基動かして急場をしのいだというのがあって。休止を決めるのと廃止を決めるのは次元が違うので。休止を決めるのでしたら、再稼働があるので、メンテしながら。廃止を決めて、もうスクラップにしようかなというのをわざわざ動かして、二基で急場をしのいだというのがあって。
ですから、今の足下の電力需要を見ると、やはり火力発電に頼るところはあるとは思うんです。最新鋭は、ガスタービンで発電するというのが最新鋭の発電の仕方だと思います。
ですから、まずは火力発電において、水素、アンモニアなど、あるいは、先ほど、午前中、参考人から聞いたCCSの活用に向けて、投資の予見性の確保、必要な人材、技術の開発、実装に向けた事業環境整備はやはり必要だと思う。
もう一つは、GX経済移行債、去年議論しました、先行投資支援が二十兆円。これは、有償オークションを含む排出量取引制度と化石燃料輸入業者等を対象とする炭素に対する賦課金を財源としているので、ここのやはり受益と負担の公平性というのも大切だと思います。
もう一つは、発電分野の、先ほど申し上げました、現場の実情を踏まえた人材の確保、技術の開発、実装に向けて資金調達、コスト回収ということも必要かなと思います。
まずは、冒頭、先ほど議論になっているアンモニア混焼。足下、やらざるを得ないと思うんですよ。やらないよりもやった方がCO2は減るわけですし、将来的にずっとアンモニア混焼でいくわけではないと思う。ですから、カーボンニュートラルの実現に向けた発電事業における移行期間を支える役割も期待されると思うんですけれども、その点についても政府の答弁をお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりでございまして、足下の電源構成の約七割を占めておりまして、再エネの変動性を補う調整力であるとか供給力を確保する観点等から引き続き重要である火力発電につきましては、水素やアンモニアあるいはCCUS等を活用して脱炭素化を進めていくことが必要だというふうに考えてございます。今後、水素やアンモニアは、発電分野においても重要な役割を果たすと認識いたしております。
具体的にどう進めるかですが、これも委員御指摘のとおりでございますが、燃焼時に二酸化炭素を排出しませんので、水素やアンモニアにつきまして、トランジションとして、まず混焼から導入を進めていく。例えば、JERAの碧南火力発電所では、商用運転中の百万キロワットの実機におきましてアンモニアの二〇%混焼試験を間もなく開始する予定でございまして、この試験結果も踏まえて、二〇二〇年代後半の実用化を目指しているとお聞きしております。
さらに、グリーンイノベーション基金等を活用しまして、早期に混焼率の引上げ、さらには専焼化を目指していくと同時に、我が国が強みを有する燃焼技術に関する国際標準化にも取り組むことで、産業競争力の強化にもつなげていければというふうに考えてございます。
○大島委員 もう一つは、この間の能登の能登半島地震。私の部屋に二〇二〇年の一月一日現在の文科省の防災研究所の大きな日本地図が貼ってあって、そこの能登半島は真っ白。ある程度色は塗られているけれども、余りマークはしていなかったので、どこで地震が起きるか分からない。二〇一一年の東日本大震災の後、我が国としても地震は活動期に入っているかもしれないわけですよ。
ですから、国際会議でそろそろ言った方がいいかなと私は思う、ちょっとほかの国とは違うんだと。三月十一日の地震があって、能登半島もあって、今後、首都直下、あるいは南海トラフも七割。南海トラフは七割、八割ですから、三十年間で。そういう国土の中でどうやってカーボンニュートラルを目指していくかというのは、多分日本人とともに、人類と言ってもいいかもしれないけれども、大きな取組だと思うので、やはり我が国の特殊事情、ヨーロッパはヨーロッパの理屈で、何かロシアから天然ガスが入ってこなければ、やはり変えてくるわけですよ、考え方を。ですから、考え方を変えていく。カーボンニュートラルは守るんですけれども、我が国として、やはり、申し訳ないんだけれども、ある程度輸出で外貨を稼がなければいけないかもしれないので、そこのところを考えながら、産業競争力の観点も必要かなと思います。
そして、話は戻るんですけれども、令和六年一月二十九日に総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会水素・アンモニア政策小委員会の合同会議で取りまとめられた中間取りまとめでは、価格差に着目した支援の中核となる条件に、鉄、化学等といった代替技術が少なく転換困難な分野、用途に関し、新たな設備投資や事業改革を伴う形で原燃料転換も主導するものであると記載があったり、あるいは、制度の支援措置では、代替技術がなく転換が困難な鉄、化学等といった分野、用途と、こうしたサプライチェーン組成に資する発電等において、変革の嚆矢となる事業計画に対して、価格差に着目した支援を行うことで、パイロットプロジェクトを立ち上げていくと書いてあるので、先ほどの議論があったアンモニア混焼の技術については、諦めないということが私は政治としては大切だと思う。
MRJについても、諦めてしまったので一回頓挫したし、よくこの場でも発言させていただいている一番微細な露光機についても、十五年ぐらい前は産総研で研究していたのに、あれをやめたおかげで中核的な安全保障技術が我が国は担えなかったんですよ。
ですから、やはりやるからには、民間企業とか研究者に対して、やれるまでやれと言うことが、余り言い過ぎるとパワハラになるものですから、やってくださいとお願いをしながらやることが必要だと思う。
鉄も、先ほど落合さんがおっしゃっていた水素還元製鉄もよく分かる、化学分野もよく分かる。ですから、アンモニア混焼、水素混焼等についてもしっかりとした技術として、発電会社だったら、プラントを持っているし、エンジニアリング会社との研究開発もありますし、製鉄所でも、水素還元製鉄と、あそこも、これは副生ガスといって、高炉ガス、転炉ガス、あるいは高炉のガスを使って自家発電していますから、そういうところでもアンモニア混焼についての技術をエンジニアリング会社とやっていくと思うので、ここについても政府としてしっかり対応していただきたいなと思うんですけれども、その点についての答弁をお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりでございまして、発電分野を対象とするかどうか、価格差に着目した支援についてというところにつきましては、審議会の中間取りまとめにおきまして、これは、支援の基本的な考え方である支援の制度趣旨、御指摘いただいた部分ですが、ここに、発電分野への価格差に着目した支援を行う旨が明確に記載されております。
また、一方で、これも御指摘いただきました、中核となる条件では、制度趣旨に記載のある発電用途を対象とすることを前提としつつ、支援対象事業を通じた構造改革を更に促進するために、鉄、化学といった代替技術が少なく転換困難な分野、用途も含めた計画の策定を求めていくべきだという指摘になってございます。
こうした考え方から、発電用途での大規模な需要の取り込みと、転換困難な分野、用途での活用、双方とも経済的かつ自立的発展が可能なサプライチェーンの形成に向けて極めて重要であると考えてございまして、しっかり取り組んでいきたいというふうに考えてございます。
○大島委員 この質問もテクニカルな質問ですけれども、水素やアンモニア等の発電用途での活用では、長期脱炭素電源オークションの対象であると理解しております。
投資回収の予見性の確保に向けて、電力自由化の下での人材の確保や技術の開発、実装に向けても、長期脱炭素電源オークションを通じたコスト回収は非常に重要であると考えておりまして、こういう結果を踏まえながら制度改善を行っていく必要性についての答弁をお願いします。
○村瀬政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、電力の安定供給を確保しつつ脱炭素化を進めていくためには、脱炭素電源への新規投資を安定的に促していく必要があるところでございます。
こうした観点から、水素やアンモニアといった脱炭素型の火力を含めまして、脱炭素電源への新規投資を促す措置である長期脱炭素電源オークションを今年度から導入したところでございます。
初回のオークションでは、海外の水素、アンモニアの製造設備等の費用が対象となっておりませんが、事業の実態を踏まえ、第二回オークションではこうした費用も制度の対象に含める方向で、審議会において検討を進めているところでございます。
こうした検討の結果や、御指摘いただいたように、今年一月に行われた長期脱炭素電源オークションの初回の応札結果も踏まえつつ、投資が進む事業環境をしっかりと整備してまいりたいと考えてございます。
○大島委員 原子力のいわば投資のオークションについては、別途改めて細かく議論をさせていきたいなと思っていて。私自身は、電力自由化には原子力は合わないと思っている立場なので、しっかりとした応分の負担が必要だと思っています、国策民営ですから。国の関与が必要だという立場で、また次回に譲っていきたいなと思います。
この文脈の中で、最後に、大臣、やはり利害関係人の皆さんの意見をあまねく伺うということが必要だと思っています。
今後の詳細な制度設計に当たっては、学識経験者あるいは有識者、産業界、労働界等から広く意見を伺いながら、その意見を十分に尊重するということも、やはり当事者意識を持ってもらうことも必要だと思っていますので、その点についての御答弁をお願いします。
○齋藤(健)国務大臣 まず冒頭、委員が我が国の置かれた特殊な環境に関して御持論を述べられたところに関しましては、私どもの悩みを共有していただいたのかなという思いでおります。ありがとうございました。
御指摘の点でありますが、制度設計に当たりましては、様々な方から広く御意見を伺う、これは当然のことであります。制度設計のプロセスの透明性を確保していきたいと考えています。
価格差に着目した支援や拠点整備支援の制度設計に当たりましては、これまでも、公開の審議会等の場におきまして、事業者や関係団体の方からのプレゼンや有識者からの御意見をいただき検討を深めてきた、そういう経緯がございます。
今後も、公開の審議会等の場において有識者と議論を深めるとともに、産業界や労働界の意見をしっかりとお聞きしながら、透明性を持って制度設計の検討を進めていきたいと考えていますが、先ほど委員がおっしゃった当事者意識というのは私も非常に重要な点だと思っておりますので、その点もしっかり踏まえてやっていきたいと考えています。
○大島委員 それでは、総論的な議論に入りたいと思います。大前提である二〇五〇年カーボンニュートラル社会の絵姿についてであります。
カーボンニュートラルとは、大気中に排出される二酸化炭素を始めとする温室効果ガスから森林などによる吸収量を差し引いた、温室効果ガスが実質ゼロである状態を意味します。
二〇二一年十月に改定された地球温暖化対策計画では、二〇三〇年度時点の温室効果ガス排出量が、二〇一三年度十四・一億トンから四六%、六・五億トン削減され、七・六億トンになるという具体的な見通しが示されています。
詳細に見ると、森林等による二〇三〇年時点での吸収量は四千八百万トンにすぎず、排出量四六%削減の大部分は排出部門からの削減に頼る形になっております。部門別では、産業部門は三八%、業務その他、五一%削減となっています。
二〇三〇年の排出量四六%削減に向けて、具体的に、どのような産業分野、業種において、どの程度の排出量の削減を見込んでいるのか、事業者が取り組むと想定される具体的な対策と併せてお答えいただければと思います。加えて、二〇三〇年度の排出量四六%削減の達成見込みについても御答弁をお願いします。
○畠山政府参考人 お答え申し上げます。
我が国は、温室効果ガスにつきまして、二〇三〇年度に二〇一三年度比四六%削減を掲げておりまして、その九割を占めるエネルギー起源CO2につきましては四五%削減を目指しているところでございます。
エネルギー起源CO2の部門ごとの削減目標につきましては、委員御指摘のとおり、産業部門において二〇三〇年度に三八%削減、業務その他部門において五一%削減、それから家庭部門におきましては六六%削減、運輸部門においては三五%削減、それからエネルギー転換部門においては四七%削減を見込んでいるところでございますが、個別業種ごとに削減目標を設定しているというわけではございません。
また、目標達成に向けた具体的な取組といたしましては、例えば、業種横断的な取組として、高効率ボイラーや空調の導入拡大などを推進するほか、多排出産業である鉄鋼業ですとかあるいは化学工業においては、それぞれ、革新的な製鉄プロセスの導入ですとか、化学の省エネルギープロセス技術の導入などを促進することといたしております。
それから、その進捗状況ということでございますけれども、達成見込みというところでございますけれども、我が国は、二〇一三年度から二〇五〇年度まで温室効果ガスを直線的に削減していくことを想定した場合、線が引けるわけでございますけれども、今現状、最新の数字では、ほぼその線の上に乗っております。その意味では、オントラックで進んでおりまして、他の先進国に比べても着実に進展しているということで考えておりますが、引き続き必要な対策をしっかりと講じていきたい、このように考えております。
○大島委員 続きまして、今年の一月に日本製鉄の君津製作所を訪れまして、水素還元製鉄のプラント、中には入れてくれなくて、外枠だけ、そして担当の皆さんと意見交換をさせていただきました。当委員会にも、守島さんが日本製鉄出身だということを知りましたので、二人、製鉄会社出身の方がいるかなと思っています。
二〇三〇年度に排出量四六%を達成するために、産業部門の排出量の半分を占める製鉄産業の排出量削減を避けては通れないと思う。日本鉄鋼連盟のカーボンニュートラル行動計画を見たりしながら、これは結構厳しいなと思います、ここは。
水素還元製鉄は、実は中国も取り組んでいて、日本だけが先行しているわけじゃないと思っています。どれだけ水素を還元で使えるかという競争になっていまして、日本は二〇〇八年からNEDOの資金で研究開発をしていたので、今先行しているとは思っています。ただ、お金のかけ方が、中国は、宇宙の分野もそうですけれども、異なるので、遅れてしまうおそれが多分にあると、ルールメイキングに参加できないと思うんです。
やはり、先ほどのアンモニア混焼、水素混焼、あるいは、落合さん、私も質問して、山岡さんも質問している水素還元製鉄についても、標準と規格を押さえることによって他国との交渉ができると思うので、結構しんどい、もう少し加速した方がいいかなと思っています。二〇〇八年からやっていただいたことは、今まで注目されなかっただけに、こういう研究の在り方は大切だと思っています。
温室効果ガス排出量は、二〇二一年度、ネットで十一・二億トン、二〇三〇年度四六%削減目標まで三・六トンと、開きがある。これは産業界に過度な負担を強いることにならないかな、その計画を守るために。ですから、我が国の産業基盤の喪失につながるかなと危惧しているものですから、もちろん地球温暖化は避けては通れないし、これはしっかりやり抜くんですけれども、産業界に対しての、どういうふうに臨むかというところのアクセルのかけ方について、政府側から答弁いただければと思います。
○畠山政府参考人 お答え申し上げます。
我が国は二〇三〇年度四六%削減などの国際公約を掲げておりまして、これは大幅な削減ということになりますが、これを持続的にしっかりと実現するためには、やや逆説的に聞こえるかもしれませんけれども、経済成長と両立しなければ、途中で腰折れしてしまって、カーボンニュートラルまでたどり着かないというふうに思っております。
こうした中で、経済成長、産業競争力強化とともに実現していくため、成長志向型カーボンプライシング構想という規制、支援一体型の新たな政策パッケージを導入し、これをGX施策として進めているところでございます。したがって、元来我々がGXというふうに申し上げているのは、排出削減のみならず、経済成長と両立する形で進めていく、そういう取組でございます。
その中核であります成長志向型カーボンプライシング構想につきましても、これを直ちに導入するのではなく、企業がGXに先行して取り組む期間を設けた上で、その期間の間に、GX経済移行債を活用した二十兆円の政策支援で大胆な投資を支援をしていく、その上で、カーボンプライシングの導入スケジュールはあらかじめ明確に示して、当初低い負担から徐々に引き上げていく、こういう設計にしたいというふうに思っております。
御指摘のとおり、産業界に過度な負担をかけると、場合によっては排出規制の緩やかな国外への生産移転が生じ、そういうことになれば、経済や雇用に悪影響を及ぼすだけではなくて、グローバルなCO2の排出量という意味でもむしろ増加してしまうおそれもあるということだと思っております。
そういうことにならないように取り組んでいく必要があると思っておりまして、御指摘のように、脱炭素と経済成長の同時実現、これを追求していくということで取り組んでいきたいと考えております。
○大島委員 今の上場企業の外国人株主の割合に着目しながら考えると、経営判断としては、やはり利益追求が経営判断になると思う。だから、国内での外貨を稼いだり輸出入のバランスを取るよりも、やはり投資家の利益を考えれば合理的な判断をします。やはり、水素でしたら、オーストラリアの太陽光発電なり褐炭を使いながら水素を作るとすれば、産業立地も変えるおそれだってあるかもしれない。
こういうところを踏まえながら、我が国の産業と産業競争力と産業技術を磨くということをしっかり心がけていかないと、先ほど言っていた二〇五〇年に何もなくなってしまうおそれもあるものですから、ここのかじ取りは物すごく難しいなというのが実感をしています。私自身も解はありませんので、今いろいろと考えたいなとは思っています。
それで、京都議定書なんですけれども、これまでもここで質問したことがあって、多分、政府だけでも排出権を買うために二千億円を超えてお金を出していると思います。民間の鉄鋼、電力を含めれば、公開はされていませんけれども、多くの金額が、日本の富が抜けてしまっていると思う。
あのときは、カナダは、百五十億円を払わなければいけないので、私の記憶だと多分離脱している。ゴアは、結局、あおっておきながら、米国は参加しなかったので、真面目に守ったのは日本だけでした、京都議定書は。
ですから、パリ協定と京都議定書の違いについて御説明していただければと思います。
○畠山政府参考人 御指摘いただきました京都議定書の際には、温室効果ガスの排出削減目標達成のために、京都メカニズムというクレジットを他国から購入して実現をしたというのは御指摘のとおりでございます。
こうした取組につきましては、京都メカニズム、そのクレジットは、費用対効果の高い方法で世界全体の排出削減を実現する効果はある一方で、やはり、日本企業が何ら関与していないなど、単に我が国の排出削減義務の達成に必要なクレジットを海外から購入した、こういう批判もございました。
したがって、この教訓を踏まえまして、今我々はパリ協定に向けてJCMという取組をやっております。これは二国間クレジット制度と言っておりますけれども、これは、日本企業の関与がある形で優れた温暖化技術を途上国などに対して普及をし、対策を実行することによりまして、実現した温室効果ガスの排出削減、吸収への我が国の貢献をむしろクレジットとしてカウントし、それを我が国の削減目標の達成にも活用できる、こういうものでございます。
今、二十九のパートナー国との間で二百五十件以上のプロジェクトを進めておりまして、再生可能エネルギーですとか省エネですとか廃棄物発電などの脱炭素技術の普及や展開を図っておりまして、ここでもやはり我が国の成長ということと両立する形での取組というのを考えているところでございます。
分量といたしましては、JCMを通じて、官民連携で、二〇三〇年度までの累積で一億CO2トンの国際的な排出削減、吸収量を目指して取り組んでいるところでございまして、これを我が国の排出削減目標の達成に向けてもうまく活用していきたいと思っております。
こうした取組は、やはり、おっしゃるように、経済成長と排出削減の両方を追求するということでございますので、京都議定書の際の教訓も生かしながら取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。
○大島委員 京都議定書のときは、まだ日本経済は、バブルがはじけても若干温まっていた時代だと思うんですよ。今、大分冷え切っている時代なので。やはり私の政治家としての心構えとしては、できるだけ国から国富が出ていくことは避けたいと思っていて。
ですから、もう一度政府参考人に伺いたいんですけれども、京都議定書の教訓、できるだけ国富が出ないような仕組みをお願いしたいと思うんですけれども、再度答えてください。
○畠山政府参考人 日本にメリットのない形で単に国富が流出するということは避けたいというふうに思っておりまして、これは京都議定書から得られた教訓でもあると思います。
したがって、先ほど申し上げたJCMのような取組でも、やはり日本の技術を生かすことで、むしろ日本の市場もこれからどんどん拡大していくという市場では必ずしもございませんので、そういう意味では、アジアあるいは諸外国におけるそういうビジネスチャンスも生かしていく、日本の技術を生かしながら世界の排出削減にも貢献していくということで、そういう意味では、単に国富が流出するという形にならないような形で進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○大島委員 今の御答弁を伺っていても、やはり技術ということが大切であって、様々な技術について世界をリードすることが今御答弁いただいたことにつながるかと思うので、その点についても是非よろしくお願いをいたします。
政府は、二〇五〇年度時点における排出量はどの程度になると見込んでいるのでしょうか。もちろん、カーボンニュートラルですから、ネットの排出量はゼロであります。では、グロスでは排出量や吸収量はどの程度を見込んでいるのでしょうか。また、排出量の産業別内訳や削減量、吸収量の内訳をどのように見ているのか、お答えいただければと思います。
もう一つは、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現には事業者や家庭を始めとする民間部門による積極的な技術開発や行動変容が必要となり、これを強く促すためには、民間部門が将来の絵姿を予見できるよう、政府が五〇年カーボンニュートラルを実現した社会の絵姿を定量的に示すべきと考えますが、御答弁ください。
○畠山政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの排出量、吸収量の二〇五〇年時点における産業別の内訳につきましては、むしろ、民間団体による複数のシナリオ分析が示されているところでございますけれども、この分析結果は、今後数十年にわたる技術開発、市場動向などによって大きく異なっていく可能性があるものだというふうに承知しております。
その上で、我が国は二〇五〇年カーボンニュートラルということを国際公約として掲げておりまして、そういう意味では、グロスではなくネットで、排出量、吸収量が正味ゼロになるということで進めているところでございます。
また、このカーボンニュートラルの実現に向けましては、御指摘のとおり、技術開発などのリスクの高い投資や行動変容、これが鍵だと思っておりまして、これらの促進には民間企業の予見性を高めるということが極めて大事だというふうに思っております。
こうした観点から、政府といたしましては、昨年末に、GX実現に向けた専門家ワーキンググループでの議論を踏まえまして分野別投資戦略というのを作りまして、各分野における新たな製品の導入目標ですとか、規制、制度的措置の導入時期、それから今後の官民投資の見通しを示して民間部門の予見性向上を図ってきているところでございます。
引き続き、民間投資や行動変容に資する形で予見性を高めるということを行いつつ、二〇五〇年カーボンニュートラルなどの国際公約と産業競争力強化、経済成長を同時に実現していくGXを着実に進めていきたい、このように考えております。
○大島委員 続きまして、確認です。
仮に、今回の水素社会推進法案とCCS事業法案が成立した暁には、二〇三〇年から低炭素水素等のサプライチェーンが立ち上がり、産業分野での利活用が本格的に開始され、あわせて、先進的CCS事業の操業が開始され、CCSの導入が本格化するかと思います。これにより、具体的にどのような産業分野でどの程度排出量を削減することができるのか、定量的にお示しいただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
低炭素水素等、それからCCSは、共に脱炭素化が難しい分野においてGXを実現するために不可欠な手段だと考えてございまして、水素社会推進法案、CCS事業法案によりまして、両輪で進めていくことが必要だと考えております。
御指摘の削減量についてでございますけれども、今後、両法案で措置する支援措置、あるいは事業環境整備によりまして、具体的にどれだけの排出量の削減量が実現できるのかというのは明らかになってくると思います。
その前提ではございますが、水素につきましては、第六次エネルギー基本計画におきまして、二〇三〇年の電源構成のうち約一%を水素、アンモニアで賄うとしておりまして、水素換算で六十から七十万トンの需要量に相当いたします。
二〇三〇年の発電電力量の想定を前提にしまして、再エネ由来水素等で代替する火力発電について、水素をLNG火力、アンモニアを石炭火力に代替したと仮定して機械的に算出する場合、CO2を約一千万トン、電力全体の排出の約四から五%程度の削減が可能というふうに算出されます。
発電以外の需要につきましては、産業の熱であるとか化学、あるいは商用車などでも需要が想定され、合わせて、二〇三〇年に向けて年間最大追加百万トンということになっておりますが、こちらにつきましては今まさに動いている状況でございますので、どれだけのCO2排出削減が化学であるとか具体の産業、商用車などで起こるかというのは、いましばらくお待ちいただければというふうに考えてございます。
また、CCSにつきましては、将来的には、産業や発電の脱炭素化、低炭素水素の製造などの分野で活用が想定される一方、コストやビジネスモデルなどが確立していない現時点では、部門別のCCSの利用水準を見通すことは容易ではないという状況でございまして、二〇三〇年までの事業開始を目標として先進的CCS事業を選定し、国による集中的な支援を通じて、二〇三〇年までに年間貯留量六百から千二百万トンの確保にめどをつけることを目指しております。
○大島委員 あと三分だけありますので、早口で読みます。
我が国では、世界で初めてとなる水素の国家戦略である水素基本戦略を二〇一七年に策定し、燃料電池自動車の実用化や家庭用燃料電池の普及拡大などを進めてきました。二〇二三年六月に改定された水素基本戦略において、二〇三〇年に三百万トン、二〇四〇年に千二百万トン、二〇五〇年に二千万トンといった導入量の目標が示されています。
水素等は、電力、ガス、鉄鋼、化学といった産業、運輸といった幅広い分野での活用が想定されていますが、政府が示している導入目標はどのような考え方に基づいて策定されたのか。また、その導入目標のうち、それぞれの分野でどの程度の需要が生じると見込んでおり、本法律案における各支援分野を設けることで、これらの導入目標量に対してどの程度の効果をもたらすと考えているのかについて答弁をお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の目標量につきましては、事業者へのヒアリングであるとか審議会等における御議論を経て、野心的ではあるけれども実現可能性もある数値として定めたものと考えてございます。
それで、水素、御指摘の数値の部分は、二〇三〇年の部分は先ほどお答えしたとおりでございます。二〇五〇年につきましては、イノベーションが進展する等、一定の仮定の下ですが、鉄で七百万トン、モビリティーに六百万トン、発電に五百から一千万トン程度と想定しておりまして、こうした目標に向けて低炭素水素等社会推進法案を使って取組を進めていきたいというふうに考えてございます。
○大島委員 時間が来ましたので、終わります。
ありがとうございました。
○岡本委員長 次に、山本剛正さん。
○山本(剛)委員 日本維新の会の山本剛正でございます。
ちょっと私、先週の木曜日に携帯電話をなくしまして、結構不便な生活を強いられるなと結構焦ったんですけれども、三日ぐらいたつと、これはこれでありなのかなというちょっと無責任な考え方になったんですが、これは何が言いたいかといいますと、やはり、我々は便利な生活に慣れて大事なものを見失っている傾向があるのではないかなというのを今気づかされているところがあるんですね。そういったものに頼らないといいますか、もう少し違う生活をしていくと、おのずと、例えばCO2も削減できたりとか、いろいろな社会に対する負担が軽減されていくのかななんということを思いながら、今日は質問に立とうかなと思ってやってまいりました。
今日私がグレーを着ているのは、最近グレー水素とかグリーン水素とか言うじゃないですか。グレーはちょっと怪しいみたいな、こういう雰囲気があって、やはり化石燃料由来は怪しいという認識でそういう言い方になっているのかなと思うと、ちょっと悔しい思いがするんですね。グリーンというと、グリーンのスーツを着ている人というのはなかなかいない、郵便局員さんとかぐらいしか思い浮かばないんですけれども、何か環境にいいみたいな、緑のイメージが環境にいい。でも、緑は、いわゆる森の木々は二酸化炭素の吸収源でもありますから、やはりそういうイメージなのかな。
そういう中で、必要なもの、必要な言い方、必要な在り方というものに着眼をして様々なことを考えていくと、今回、例えば水素の法案、水素社会推進法案は、要は、確かに水素は、まず人体にも影響がないと言われていて、かつ環境負荷も非常にないということで、これはいいものだといって、みんなが、があっと、今、水素、水素と言っているわけでありますけれども、何となく水素の危険性というものはちょっと端に追いやられているような気がするんですよ。
原発事故前のエネルギー基本計画で、CO2を削減するために原発の依存度を五〇%まで引き上げるというエネルギー基本計画を策定をいたしました。あのときも、私は、CO2を削減するという大目標ができ上がった中で、原発の危険性というものを少し軽んじたのではないかなという思いもしています。そういった、原発を増やすべきだと言っていた人たちが、原発事故が起こって以降、原発は危ない、やめろ、やめろと大合唱だったわけですね。私は、やはり、あのときに、ちょっと違うんじゃないのかな、もう少し冷静に物事を見ていく必要があるのではないかなという思いを持ったのを思い出しました。
そういう中で、今回の水素社会推進法も、水素の危険性、やはり非常に揮発性が高くて、爆発限界も四%から七五%。これはあくまでも密室というか密閉した中での爆発限界ですから、いわゆる常温常圧、若しくは空気中であったりするならば全く違うような話になるかもしれませんが、引火性が非常に強い、そういう危険性をはらんでいる中で、まず高圧ガス保安法の特例についてちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。
法律を作るときに、そもそも、特例というものがなじむのかなじまないのかといったら、私はなじまないと思います。我々立法府の人間が法律を作るときに、いや、これは特例でやりましょうと言ってしまったら、逆に言うと、何でも特例で認められるようなものになりかねない。だからこそ、法律をしっかりと作り込んで、それを実行していく必要があると私は思っていますから、この特例というところにちょっと着眼をして質問をしていきたいというふうに思います。
認定計画に基づく設備等について、国が保安確保のための許可や検査等を行おうとしているわけでありますけれども、そのための手段は、いわゆる今言った高圧ガス保安法上の特例ではなくて、低炭素水素等に特化した独自の規定を私は設けるべきではないかなというふうに思っていますが、まず、これがいかがなのかということ。
なぜかというと、今回、いろいろ話を聞いていると、これだけ大規模な水素を扱うところというものが今までないということであるならば、やはりより慎重になるべきなのではないかなという思いがあってこの質問をいたします。
この特例の期間は三年と伺いましたが、特例期間経過後の扱いがどうなるのかというのをまず教えていただきたいと思います。
○殿木政府参考人 委員お尋ねの、第四章第三節の高圧ガス保安法の特例の趣旨でございますけれども、御案内のとおりでございますが、高圧ガス保安法に基づきまして、高圧ガスの製造につきましては、都道府県等が行うということになっているところでございます。
その一方で、大規模低炭素水素等のサプライチェーンの構築に必要な関連施設については、最新の科学的、技術的知見を要する場合があって、高圧ガス保安法の許可、検査等を行う場合に、都道府県等においては、通常より時間を要したり判断が困難になる場合があるということが想定されているところでございます。
一方、国は、現行の高圧ガス保安法において、設備の特性に応じた技術基準や検査方法、あるいは手順等のルールについて策定するなど、水素を含めた高圧ガスについて、科学的、技術的知見を有しているというところでございます。
このため、いわゆる水素社会推進法案では、認定された低炭素水素等供給等事業計画に基づく施設につきましては、一定の期間、高圧ガスに該当する低炭素水素等につきましては、高圧ガス保安法に定められている都道府県に代わり、国が一元的に保安確保のための許可や検査等に当たる行為を可能とする特例を講じたというものでございまして、これは、本法案の「目的」にもございます、「我が国における低炭素水素等の供給及び利用を早期に促進するため、」との趣旨にも沿うものであるというふうに考えているところでございます。
あと、もう一つお尋ねでございました、特例期間三年が経過した後、どうなるかということでございますけれども、三年が経過した後につきましては、都道府県等に検査等の権限を移管するということにしているところでございます。
これにつきましては、本法案の特例措置に基づき国が承認、検査等を行った場合には、その都度その旨を都道府県等に通知することを二十四条一項において法定化しているところでございまして、国から都道府県等への検査等の権限の移管に関しては、円滑な事務手続の移管に配意もしているところでございます。
○山本(剛)委員 今の話を聞いていて、特例でやる、国がまず引き受けるのは、時間もかかるであろうと。その理由だけで特例にするのかというところはやはり残ると思います。
それで、各都道府県が、当然、それぞれの判断基準なんていうものはなくて、判断基準は一定でなければならないわけですから、本来、それによって時間がかかるところとかからないところがあるという方がちょっとおかしいのではないかなという思いがしておりますし、その基準をもう少し明確にしてやっていかなければならないけれども、残念ながら、その基準をやはり設けられないから、ある意味特例なのかなという思いがしています。
いずれにせよ、特例ということは、こういう枠組みの中に、ぽこっと出たところが特例だという、私はそういう認識なんですよ。ぽこっと出たところを、三年後に全て、同じことを高圧ガス保安法の中に組み込んでやっていく。でも、例えばいわゆる認定事業者というふうにしたときに、それをやはり私は尊重する必要もあるのではないかなというふうに思うんです、そういうふうに指定を受けるわけですから。
だから、三年経過した後もそういった基準を設けて認定事業者をしっかり育てていく、そこに配置をするわけでありますけれども、そういう人たちをしっかりとこれから、先ほど参考人でも人材の話もありましたけれども、育てていくということが私は必要ではないかなというふうに思いますので、是非お願いをしたいというふうに思います。
それで、今後、水素の製造者とか利用者の環境がある意味多様化をしていくであろうという中で、高圧ガス保安法自体がどのように今までの枠組みを超えて発展をしていくのかというのをちょっと教えていただきたいと思います。
○殿木政府参考人 高圧ガス保安法がどのように発展していくかというお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、水素の製造者や利用者をめぐる環境の多様化に応じまして、高圧ガス保安法を含めて、必要な保安規制の見直しを行っていくことが重要であるというふうに考えているところでございます。
現段階における水素関連の設備の保安につきましては、既存の高圧ガス保安法等に基づく基本的な枠組みでありますとか今回の法案で対応できると考えてございますけれども、まさに御指摘のとおり、今後、水素の供給や利用の環境が変化する中で、規制を取り巻く環境も変化していくというふうに考えているところでございます。
この点、本年一月、経済産業省の小委員会においても、国内外の水素等事業の進捗に応ずる形で、段階的に保安規制の合理化、適正化をしっかり進めていくことが重要である旨、その上で、技術基準等については、国が一元的、体系的に合理化、適正化を図り安全を確保していくことが重要である旨等、中間取りまとめがなされたところでございます。
経済産業省といたしましては、引き続き、適時かつ合理的、適正な形で水素に係る保安規制の在り方を検討してまいりたい、そのように考えているところでございます。
○山本(剛)委員 ありがとうございます。
法律で言うところの第三節、十二条から三十条まで、非常に長きにわたって高圧ガス保安法の特例について記述がございます。
読み込んでいくと、やはり、これからもう少し運用をしていく中で考えていかなければならないところ、足らざるところ、そしてまた、今後に向けてどういうふうに高圧ガス保安法を、ともすれば改正をしていかなければならないところ、いろいろな視点をしっかりと経済産業省の皆さんで、今後の運用の中で捉えて、考えていっていただきたい。これは要望でございますので、是非お願いをしたいというふうに思います。
次に、特定水素等供給事業者への勧告及び命令についてなんですが、第三十四条に「判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分である」という文言があります。
その判断の基準は三十二条にいろいろ、るる書いてありますが、例えば著しくというと、肌感覚でいうと、十やらなければいけないところを一しかやっていないとか二しかやっていないというのが僕は著しくと。まあ、人によっては、三しかやっていないのも著しくだと。三十点以下は赤点ですから。そういう意味では、三十点以下、三以下は赤点だということで、著しくに入ると。でも、いわゆる範囲というのはちょっとよく分からない。判断基準はある、それで、著しくその判断基準に満ちていなければ駄目ですよというたてつけになっているわけですね。
その基準がどの程度でいつまでに定められるのかというのをちょっと教えていただきたいのと、それから、特定水素等供給事業者について、供給する水素等の量が政令で定める要件に該当するものとしていますが、どの程度の規模の事業者が対象となることが見込まれて、対象事業者数はどれぐらいいるのか。過度な規制への懸念もありますけれども、本規定の運用においてどのような点に配慮するのかをちょっとお尋ねをしたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
判断基準に照らして著しく不十分であるか否かを判断するに当たりましては、対象となる水素等供給事業者のこれまでの取組であるとか、あるいは当該事業者を取り巻く環境などを総合的に勘案した上で判断することを想定いたしております。
その上で、委員御指摘の勧告や命令を受ける対象となり得る具体的な基準でございますけれども、例えば、水素等供給事業者が、判断基準において取り組むべきこととされる自主目標の設定、低炭素水素に向かっていけよという自主目標の設定であるとか、それを公表すべきだ、こういった中身の判断基準になっていった場合に、そうしたことを行っていない、自主目標の設定や公表を行っていない場合におきまして、経産大臣が指導助言によって改善を促したものの、一向に改善が見られず、低炭素水素等の供給を行っていない、こういう場合なんかは著しくということに該当するというふうに考えてございます。
いずれにしても、御指摘の具体的な基準につきましては、事業者の予見可能性を高める重要性も踏まえまして、この法案の施行をするまでにしっかりと検討して具体化していきたいと考えてございます。
また、委員御指摘の水素等の量、政令で定めるというところでございますが、今後、これは審議会において有識者の御意見も伺いながら検討していく予定でございます。
現状、実は、水素等を供給している事業者の方々にアンケート調査も改めて行っておりまして、どれだけ供給しているんだ、そのうち副生水素とかはどうなっているんだというデータを集めているところでございます。
念には念を入れて、こういったデータもしっかりと取った上で、審議会等有識者の御意見も伺いながら検討していきたいと考えておりまして、したがいまして、現時点では対象となる事業者数をお答えすることは難しいですけれども、委員も御指摘のとおり、過度な規制とならないように十分配慮しながら法律の運用を図ってまいりたいと考えてございます。
○山本(剛)委員 ありがとうございます。
今の答弁、やはり議事録に残すことが僕はすごい大事だと思うんですね。
だから、やはり業者の皆さん方が、この著しくというものに対して、判断基準はあるけれども、どのようなものなのかと。これは、施行までにということをおっしゃられたので、是非しっかりやっていただきたいというふうに思います。
次に、今度はCCSの事業法で、同じように著しく妨害という言葉がよく出てくるわけですが、この法律で、貯留事業等の実施あるいは鉱業の実施を著しく妨害するものではない旨の文言が随所に現れるわけでありますけれども、この著しく妨害の程度はどのように判断をするのか。
そして、この著しく妨害の程度を判断する基準として、これはないんですけれども、鉱業法の五十四条において、実は、経済産業大臣は、鉱物の掘採が他人の鉱業を著しく妨害するに至った場合に、鉱区のその部分について減少の処分をし、又は鉱業権を取り消すことができるとあるわけです。これが参考になるのかなと思うんですが、そうすると、この鉱業法、この間も申し上げたとおり、昭和二十五年から施行されているわけでありますが、この五十四条に基づく鉱区の減少や取消しの処分というのがあったのかないのか、もしあったとするならば、その内容はどんなものだったのか、教えていただきたいと思います。
○定光政府参考人 お答え申し上げます。
まず、CCS事業法の規定についてですけれども、この規定は、貯留事業等の適切な運営を確保するために、貯留事業などと、それ以外の、他人が行う貯留事業等や、他人が行っている鉱業との両者の調整を図る観点から設けた規定でございます。
委員御指摘の他人の貯留事業等の実施を著しく妨害するケースとしては、例えば、新たに貯留しようとするCO2が既に行われている他人の貯留事業に係る許可貯留区域に広がっていくおそれがある、その影響で、その他人が既に貯留されているCO2の適切な管理を行うことができず、CO2の安定的な貯留に支障を及ぼすようなケースなどが考えられるところでございます。
また、他人の鉱業の実施を著しく妨害するという規定もありますが、このケースとしては、例えば、既に行われている他人の石油、ガス開発の鉱区と重複する区域を対象としてCO2の貯留事業を行うことによって、これが、その人が行う石油、ガスの採掘を妨害することになったり生産量の大幅な減少を引き起こすといった、石油、天然ガスの安定的かつ効率的な開発に支障を及ぼすケースなどを想定してございます。
いずれにしましても、これらの具体的な基準については引き続き検討を行わせていただきまして、今後、行政手続法に基づいて、この法案を施行するまでの間に定めることになります審査基準あるいは処分基準というものの中で明らかにしていきたいと考えております。
それから、鉱業法五十四条についても御質問いただきました。この五十四条にあります鉱区の減少や鉱業権の取消しを行った事例ということは、これまでないというふうに承知してございます。
その上で、この規定の趣旨ですけれども、ある者の鉱業権の出願の許可を行うに当たりましては、その出願に関する鉱業出願などが他人の鉱区に隣接又は重複する場合には、その他人の鉱業の実施を著しく妨害するものではないことを確認した上で許可することにしてございます。このため、鉱業権の設定の許可があった後、当該許可を受けた者が行う鉱物の採掘が他人の鉱業の実施を著しく妨害するということになる事態に発展することは、実際上は考えにくいところではあります。
一方で、万が一このような事態が生じた場合には、その他人の鉱業の実施を妨害することとなっている原因を除去する必要がありますため、経済産業大臣が、その原因となっている鉱区の減少の処分又は鉱業権の取消しを行うことを可能としたというのが、この鉱業法第五十四条の規定の趣旨でございます。
以上でございます。
○山本(剛)委員 ありがとうございます。御丁寧に説明をいただきました。
非常に分かりやすかったんですが、長きにわたって今まで一件もなかったということをもって、これからもないであろうと言うのは、ちょっと余りにも乱暴だなというふうに思いますので、やはり何らか手段の基準というものは、私は必要だというふうに思います。
ここで大臣にちょっとお尋ねをするんですけれども、今回、CCSの法律と水素の法律を同じテーブルに上げて議論をしています。確かに鉱業法は古いかもしれませんが、その著しくという言葉は、法律上、よく出てくる文言ではあると思います。ただ、同じテーブルに上げて議論をする以上は、やはりそのトーンは私は合わせる努力はしなければならないんだろうなと。
水素法では判断の基準がしっかりと条文の中に書き込まれている、一方で、CCS法では書き込まれていないということがあるわけでありますから、是非大臣の口から、この著しくという判断基準について、特にCCS法について、どのように今後判断基準を設けていくのか、いつ頃までにというのをちょっと、お答えできる程度で話していただければと思います。
○齋藤(健)国務大臣 まず、法律上の著しくという規定につきましては、様々な規定の仕方があると承知をしています。例えば、一つの仕方は、御指摘の水素社会推進法案における、判断基準に照らして著しくのように、何らかの基準に照らして著しくと規定しているものもあれば、CCS事業法案や鉱業法における、著しく妨害のように、特段何らかの基準に言及することなく著しくと規定している、そういう立法例もあるわけであります。
いずれの規定でありましても、制度の予見可能性、これを高めるということは重要であります。したがいまして、CCS事業法案における著しくの具体的な基準については、今後、行政手続法に基づきまして、本法案を施行するまでに定めることとなる審査基準や処分基準において、その内容を明らかにしていきたいというふうに考えています。
○山本(剛)委員 済みません、時間が来てしまいまして一問ちょっとできなかったんですけれども、是非よろしくお願いしたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
○岡本委員長 次に、市村浩一郎さん。
○市村委員 今日もよろしくお願いします。
私は、なぜ、今、経済産業委員会におるかといいますと、エネルギーの話をしたい、こういうことが一つありました。やはり、食とエネルギーというのが大変重要だという思いで、今おります。
そのエネルギーということで、私も前回も、例えば再エネということでいえば洋上エネルギーファームの話もさせていただいたりとかしています。その中で、今回、この低炭素水素の話、水素社会を目指すという話とCCSの話が出てきているというところで、今日また四十分いただいて、お話をさせていただきたいと思います。
それで、大事なのは、何といってもやはり経済、産業の発展ということでありまして、私ども日本は、失われた三十年、失った三十年とも言われていますが、これを経てしまいましたので、もうそろそろ、日本もその持てる技術力を生かしながら、今、第四次産業革命とも言われていますので、この中で、やはり、少子高齢化という、これから国内における大きな課題を乗り越えながら、乗り切っていくということが求められているこの時代であります。
その中で、しかし、地球温暖化、いわゆる温室効果ガスによる地球温暖化ということがあって、これもやはりしっかり考えなくちゃいけないという中で、いわゆる二〇五〇年までにカーボンニュートラルということが出てきているんだという中で、その中でいろいろ考えた挙げ句、取りあえず水素とCCS、これが、あらゆることをやる中でも、サプライチェーン等も考えながら日本における技術力をより生かせる、また新しい産業をつくり出す可能性もあるということで選ばれて、頑張ろうということでなっているんだというふうに認識を持ちながら、ちょっと議論をさせていただきたいと思います。
本当は、そもそも本当に温暖化なのかという議論はずっとあったんですね。でも、それはもう間違いないんだということに決したということなので、そこはやはり、世界の中で生きている日本としても、そもそも我々日本は、脱炭素に関しては絞り切った雑巾を絞らなくちゃいけないということをずっと、もう多分二十世紀の後半あたりでも言われていたと思うんですね。
その中で、今、二〇一八年の数字でいくと三・二%が日本のシェアということになって、この場合シェアと言っていいのかどうか分かりませんが、我々は全世界の二酸化炭素排出量の三・二%を出しているというところで、もちろん、これも別にちっちゃい数字とは言えませんが、しかしながら、最も多くを出している、いわゆるアメリカ、中国、最近は特に中国、アメリカ、このところで頑張っていただくのがやはり一番であって、やはり、エネルギーの使用量と経済発展というのは、もうこれは大臣御存じのように正比例の関係です、はっきり言いまして。だから、本当は、LNGでも石炭でも、我々、三・二まで落ちたんだから、これから日本がまた経済発展するためにはちょっと減らしてくださいと本当は言いたいぐらいのところではあるんだと私は思います。ここまで頑張ってきているわけですから。
中国なんというのは、二〇二〇年から五年間は一割増すると言っているわけですよね。一番頑張ってほしいところがそう言っているわけであって、我々、頑張ってきて頑張ってきて、またこれから頑張らなくちゃいけないのか。いや、それでも頑張るといって、こうやっているわけでありますけれども。しかし、今産業の発展とのバランスを考えたときに、果たして本当にいいのかということも、やはり本当はちゃんと考えなくちゃいけないと思うんです。
そこはちょっと指摘しながら、じゃ、水素社会ということで、まず今日の一番目なんですが。
これは前回も出しましたけれども、天然水素ガスというのがどうやら地球のマントルの上層部で、鉄分、鉄を多く含んだ岩石、例えばかんらん岩とかがマントル上層部で、鉄が酸素と結合して結局水から水素ができる、それがちょっと上がってきて、岩盤の下の方でたまっている場所がどうやらあるのではないかというところがあります。
これがもし本当に取り出せるのであれば、純度も結構高い、もちろん場所によっては差があるようでありますが、純度が高い天然水素、いわゆる今天然ガスと言われるメタンガスがあるように、それを取り出すことができれば、それを取り出して天然水素ガスを使えればありがたいですよね、一々電気分解せずに、もう地球の中でそれを作ってくれているわけですから。
そういうのも、実は、今年の一月にアメリカのワシントンDCで何かエネルギー関係の会議があったらしいんですが、そこでもこの天然水素ガスが結構一つのメインの話題だったというのも行った方にお聞きしまして、ついこの間話をしていたらそういう話をされていました。
だから、是非とも、この天然水素ガスを取り出せれば恐らく、もちろん、これは液化して運んでくる、どこで取り出すかということもありますから、そのコストのことも考えなくちゃいけないかもしれませんが、ひょっとしたら日本の下にも、日本は、いわゆる陸地は狭い方かもしれませんけれども、海を、EEZ、排他的経済水域も合わせると世界で六番目に国土が広いと言われているところでありまして、我々の国土の地下にひょっとしたら天然水素だまりがあるのかもしれないというところがあるかもしれません。
だから、是非ともこういうことについて研究調査を進めていくことが必要ではないかと思うんですが、ここはちょっと大臣の方からいただければと思います。
○齋藤(健)国務大臣 御指摘の天然水素ですけれども、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMECの調査によりますと、御指摘の天然水素は、日本を含む世界の複数地域で観測事例の報告があると承知しています。
現時点では、その生成、貯留プロセスの解明、これは研究段階にありまして、実効的、効率的な探査や可採埋蔵量の把握手法、こういったものがまだ開発途上であるというふうに理解しています。
JOGMECによりますと、このような課題については、油ガス田等の探査、採掘の既存の技術や知見を生かして解決できるならば、コスト効率的に天然水素を開発することが可能となる、そういった見込みもあるということであります。
今後、技術の進歩次第ではあるんですが、民間事業者の関心等も踏まえながら、経済的に利用可能な資源や技術があるのか検討を行ってまいりたいと思います。
○市村委員 ありがとうございます。
やはり、いろいろな研究予算の中で、この間その会議に出られた方と話をしているときに、そこで出ていたのが採掘方法なんですね。天然ガスを採掘するということも今やっているわけですけれども、やはり、日本はまだ自分のところで天然ガスとか余りないというか、採掘技術がかつてはあったのかもしれませんが、今はアメリカに比べて圧倒的に遅れているというところで、アメリカは、シェールガス等もありますから、極めていろいろな採掘方法を実装して運用しているというところなんですね。
ところが、天然水素ガスをどう取るかというときに採掘の話もある、また、この間もたしか鈴木委員だったと思いますが、いわゆる鉱物学に対する日本の人材が少ないということで、日本の地層がどうなっているのか、どういう鉱物があるのかとかどういう状況になっているのかとか、そういうのも余りまだ分からないというか、それを知る、学んでいる学生というか人材が少ないというのもあって、実際にもしあったとして、それを取り出すための技術が極めて欠けている。では、それも結局海外の人材に求めるのかというところになってきて、なかなかそれも、資源というのは、国内でやる場合においては、ちょうど今度内閣委員会と合同委員会でセキュリティークリアランスの話もしますけれども、やはり、そういう技術とかが流出しないように、できるだけ日本でそういう情報を守るということも大切だと思うんですね。
だから、そういった意味では、ここでも何度も人材の話がさっきから出ています、今朝の参考人質疑でもやはり人材をどうするかという話が出ていますので、是非とも、天然水素に限らず、天然水素に限らずなんですが天然水素においても、やはり掘削技術といいますか採掘技術といいますか、こういうことについても是非ともまた人材育成を進めていただきたい、こう思うところでありますが、まず、先ほどのアメリカの採掘技術について、もしよかったら、政府委員、今日は少し時間がありますので、ちょっとお答えいただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
天然水素について、委員御指摘のとおり、アメリカを始め様々な国際会議でも議論の対象になってきている状況と存じます。一方で、大臣お答え申し上げましたとおり、現状まだ分からない点も多々、多いというところかと思います。
御指摘の掘削技術については、日本にも一定の蓄積、経験がございます。これがそのまま生かせる形になるのか、あるいは、おっしゃっておられるとおり、別のテクノロジーが必要になるのかといった点は、これから、天然水素にせよ、それ以外の観点にせよ、しっかりと見極めていく必要があると考えております。
そうした検討を踏まえながら、これも御指摘でございますが、人材、どのような方々が必要なのかといったような点も含めて総合的に検討を深めてまいりたいと考えてございます。
○市村委員 ありがとうございます。
それで、その水素ということになりまして、日本の地下にそれこそ天然水素があって、そこを上に持ってこれたらそれにこしたことはないんですが、これを、じゃ、日本以外のところで天然水素を取り出したり、又は日本以外のところで電気分解を進めて水素を作って持ってくる、こういうことになりますと、これはいわゆる液化していくということになります。これは、マイナス二百五十二度。
これも何度かここでお話をしていますが、やはりこの冷熱の利用というのを進めるということが、要するに、産業の育成のためには、我々は食べないと生きていけませんが、経済、産業の発展のためには何といってもエネルギーがある意味食料なわけですね、エネルギーがないとやっていられないというところであります。
そのエネルギーも、多くは電気が一番いいわけですね。電気エネルギーというのが一番使いやすい。だから電気を使っているんですが、熱エネルギーというのもあるわけでありまして、熱しか使えない製鉄業においてCCSとか、後からちょっと議論したいと思いますが、なっていると思いますけれども。
ですから、その熱も、大体皆さん思うのは、温熱なんですね。あったかい熱の方は、なるほどな、余っている熱を使いましょうと。ところが、今度は、今後もし運搬とか、水素とか、その液化、LNGもそうです、マイナス百六十度ぐらいです。CO2が何度かちょっと分からないんです、後でもしよかったら教えてほしいんですが。CO2も恐らくマイナス何度、多分百度ぐらいですかね、分かりません。液化するのは何度ぐらいですかね。もしよかったら、何度ぐらいですか、CO2の液化は。
○定光政府参考人 CO2を液化する場合には、マイナス約五十度に冷却する必要がございます。
○市村委員 それで、結局、マイナス五十度でも大変使い勝手があるんですね。いろいろな冷凍倉庫とか、あとスケートリンク。
今、日本は電気代が高いのでスケートリンクがなかなか造れないんです。建物を造れても、あれは、氷を維持するのは物すごく高いみたいで、その電気代が高いのでやっていられないということで、それで、元オリンピック金メダリストの高橋さんだったかも何とか冷熱を利用してほしいと言っておられるようであります。だから、それがマイナス二十度ぐらいだったかな、とにかくマイナス六十度でもあればありがたいんですね。なお、LNGだとマイナス百六十度、液体水素だとマイナス二百五十度なんですね。この熱は使わないと損なんです。ということで、今は余り使われていないんですね、冷熱。結構、捨てられているというか、一部使っているらしいですけれども、なかなか使えない。
あとは、今、川崎重工さんが神戸空港沖、神戸で何か実証施設を造っておられますけれども、液体で運んできて、液体でタンクにためて、液体からいわゆるガスタービン、発電装置に回していくという実証実験もされておられますけれども。
ですから、そうやって温度を保って液体のまま保管するということももちろん大切でありますし、かつ、これからは、今ここでも申し上げましたが、経産省が予算を出して作った、いわゆる二重真空管における、要するに温度を上げないで液体のまま運ぶ導管も、ちゃんともう実証実験は済んでいるんですね。まだ実装はできていませんけれども、実証実験は済んでいるということでありまして、そういうものを生かすと、今のところ数キロぐらいはそのまま、液体のまま運べるんじゃないかということで、そこで工場を造る。
どういうことをやってほしいかというと、何度も申し上げておりますが、食とエネルギーですけれども、食の方にも関心がありますが、米粉を作ってほしい。マイナス百度ぐらいで米を瞬間冷凍させて、それで何か圧力を加えると米粉になるらしいんですね。よく昔CMでも、液体窒素か何かにバラを入れるとぱらぱらぱらとなるという感じですけれども、ああいう感じで米を米粉にする。そうすると、グルテンフリーということによって、今、小麦粉代替を言われています。国産小麦粉の話もこの間どこかでされていましたけれども、小麦粉代替で米粉を使える。しかも備蓄はしやすくなるんです。だから、それで農業でももっと米を作ってほしいと言えるようになるわけですね。用途も広がります。
こういう感じで、冷熱を利用するということも、是非とも考えていただきたい。そうすると、新しい産業がそこでまた生まれてくるということにもなります。ですから、熱の利用ということも含めて、是非とも、液体水素というのは、水素社会においては液体水素も必要になるのであれば、液体水素ということで運んでくるのであれば、その冷熱を有効活用するという道も考えてほしい、こう思っておりますが、経産大臣、改めて。では、もう一回。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の利用されていない冷熱の活用というのは非常に重要でございまして、ファクトですけれども、足下ではLNGを気化する際の冷熱の活用は徐々に進みつつありまして、例えば、LNG基地内での水産物の養殖であるとか、あるいはドライアイスの製造といったようなものも進められております。
こうした取組も参考にしながら、御指摘の液化水素の冷熱、これは、例えば、ボイルオフガスの再液化に利用できたり、あるいは、温度によっては冷蔵庫や空調用の冷媒として活用するといったようなことも考えられますし、既にビルの空調に利用するチャレンジも始まっているところでございまして、こうした点、しっかり取り組んでいきたいと考えております。
○齋藤(健)国務大臣 元農林水産大臣としても大変興味深いお話を伺いました。
今後、政府として水素の導入促進を図る中で、恐らく、液化された水素、これが広く利用されるようになってくるんだろうと思いまして、そうなってくれば、その冷熱も可能な限り有効活用していくということが可能になりますし、重要なことだと思っています。
今後、様々なアイデア、技術の可能性、こういったものは追求していきたいと考えています。
○市村委員 かつて、三十年前ぐらいに、冷熱に関しては、神戸の方が計算したときに、神戸で捨てられている冷熱をうまく利用すると、いわゆる空調とか考えると、もう十分に、電気をかなり節約できるという試算も三十年前にもう出されているというふうに聞いております。ですので、是非ともこういうのをまた考えていただければと思います。
それで、あと、さっき海外で水素を製造するということを申し上げたんですが、そこで考えると、いわゆる水力発電というのも結構やはり有効なんですね。
結局、この間も申し上げたんですけれども、今、一トンの液体水素を作るのに六万キロワットアワー必要で、それを全て発電に回すと二万キロワットアワーの電気ができるということで、エネルギー効率を考えたら、ほかのものでも、太陽光でも風力でも、そんなに高いわけじゃないわけなので、それはそうなんだろうなと思うんです。
では、その六万キロワットアワーをかける方の電気をどこで作るかというのは、やはり、先ほども議論があります再エネがやはり一番安くCO2も出さないというところで電気を作るわけですから、再エネ。だから私は、洋上風力というか、洋上エネルギーファームでやってほしい、風力も太陽光も使う、海洋温度差や潮流、波力を使えるということを申し上げているんです。
あとは、やはり、水力発電も私は有効ではないかと思います。水力発電も、今、余った電気の話もありましたけれども、今、揚水発電ですね、揚水にして、余った電気でポンプアップして水を上げて、また落としてタービンを回してまた発電するということですが、その余った電気、水力発電を、例えば水素を生み出す専用の水力発電施設とかいうのを、日本に限らず、海外と協力をして造ったらどうかというアイデアもあるやに聞いております。
これについてちょっと、またお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおりでございまして、例えば、水力発電大国であるラオスにおきまして、我が国企業と現地企業が協働し、水力発電などの再エネから肥料向けのアンモニアを製造するプロジェクトといったようなものが進められております。
あるいは、マレーシアでも、我が国企業が参画いたしまして、水力発電を活用して水素を製造する、それを日本に輸入するといったようなプロジェクトが検討されている状況でございます。
○市村委員 ありがとうございます。
是非とも、だから、アジアにおけるサプライチェーンといいますか、先ほど大島委員の方から、やはり、ヨーロッパとかアメリカは、特にヨーロッパがいい、自己完結できる、アメリカも多分自己完結できる、我々はなかなか自己完結できない。できるだけ近くでということになると、東南アジア、本当は中国が一番いいんでしょうけれども、中国とは、今の政治的状況を考えると、なかなかこれは協力できないのかなという残念な思いなんですが、そういうところときちっと協力をしながら。
ラオスはこれから経済発展ですから、恐らく電力需要は、なかなかほかに回す余力はひょっとしたらないのかもしれません。マレーシアもどうか分かりませんが。
しかし、日本向けの水素生成水力発電設備ということで、一つの産業をつくり上げる。それを機に、そこで雇用が生まれたり、そこで作る電気は、そこはちょっと申し訳ありません、こっちの日本のために使わせてもらうけれども、しかし、そこでいろいろな産業が生まれて、その発展段階でまた別のエネルギー源、電気を作る、そこのときはそれこそ原発なのかもしれませんが、ひょっとしたら発展段階においてそういうものがまたラオスとかにも生まれてくる可能性があるわけですから、ちょっと、しばらくの間は、我々の水素を作るのを手伝っていただけませんでしょうかということで、日本がODA等々で昔空港とか造らせていただいたように、水力発電施設を造らせていただくというのも一つのアイデアなのかなというふうに思いますが、大臣、ちょっと御見解をお聞かせいただけますか。
○齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のように、水力発電は、安定供給性に優れた再生可能エネルギーだと思います。ですから、これを利用して製造されるグリーン水素も、出力が変動する再生可能エネルギーに比べ、安定的かつ低廉に製造できるポテンシャルを有するわけであります。
したがいまして、海外の事例は井上部長の方から御紹介をさせていただきましたが、国内外の水力資源の活用、こういったものを見据えつつ、安定的かつ低廉な低炭素水素のサプライチェーンの構築に努めていきたいというふうに考えています。
○市村委員 ありがとうございます。
是非とも、天然水素ガスも含めてあらゆる手段を、コストの問題が一番だと思うんですが、できる限り低コストで作れるような、天然水素ガスが一番だと思います。いろいろ、先ほども、グレーだ、グリーンだ、ブルーだという話がありますけれども、どうも、この天然水素ガスはゴールドと呼ばれているようです。ゴールド若しくはホワイトと呼ばれているそうなんですが、いろいろな色の水素があるんだということなんですが、是非とも、水素社会の実現のために、またいろいろなアイデアをやっていくということだと思います。
ここで、ちょっと一つだけお聞かせいただきたいのは、今我々はH2、水素の話をしていますが、炭素というのは本当にそんなに悪いのかというところなんですが、これは政府委員の方から、Cはそんなに駄目なのかというところをちょっと一言、よろしくお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
Cについて、突然の御質問なのであれですけれども、Cは、やはりいろいろな意味で、エネルギーを生み出すという意味では特性がございますし、先ほど委員の御指摘等ございましたけれども、ぐっと集約されたエネルギーを生み出すという意味では非常に大事だというふうに考えておりまして、それと、どうやってカーボンニュートラルの取組を両立させていくかということが、これからの課題なんだろうというふうに考えてございます。
○市村委員 我々生物もCでできている部分が大きいので、恐らく一番身近というか使い勝手がいいんだろうなというふうに思いますので、だから、Cについても、温室効果ガスにならないというか、できるだけ地球環境に悪い影響を与えないような感じで使っていくというか、そういう技術革新も必要ではないかと思います。
それで、今度は、次に議論させていただきたいのは、カーボンプライシングなんですけれども、これもいよいよ、この二〇二〇年代後半ぐらいに本格的になってくるということでありまして、これも、いわゆる外部経済であるものを資本主義的手法というかによって価格をつけていくということになりますよね。それで排出権取引市場をつくるということなんだと思います。
これは、我々はもちろん、それは約束、公約でやるんでしょうけれども、これってアメリカや中国はちゃんと取り組んでくれるんでしょうか、このカーボンプライシングの方には。お願いします。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
中国は、一部においてカーボンプライシング、特に排出権取引制度が行われているというふうに承知をしております。アメリカは、連邦政府としては行っておりませんが、一部の州といったところでは、そういった取組が行われているというふうに承知しております。
○市村委員 そういうことは、中国は国内でやり、アメリカは一部の州でやっているということであって、広がりとしては、別に国際的ではないということなわけでしょうか。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
各国、置かれている状況は様々でございます。エネルギー安全保障に関する状況、それから産業構造、それぞれ違う中で、やはり今世紀半ばのカーボンニュートラルというものを目指して取り組んでいるということであろうかと思います。
その中で、例えばEU、それからまたイギリスといったような国は、排出権取引制度あるいはカーボンプライシングというものを主力の制度として取り上げているということであろうかと思います。
○市村委員 このカーボンプライシングでとにかくカーボンニュートラルを進めていく、一つの流れにはなるわけですよね。でも、やはりそれを、例えば先ほどから出ている製鉄や化学とか、どうしてもCO2を出さざるを得ないところの企業からすると、物すごい負担になる。それを結局CCSとかで頑張ると、それが売れる、沈めているから売れる。しかも、さっきの話だと、価格的には、今日の参考人の話だと、大体、今一万五千円ぐらいで取引してもらえるので、埋めたらその分のコスト、要するに、CCSに使ったコストが、それは政府もお金は出しますけれども、見合うというところで、いいところに来ているんじゃないかという話だったような気がしますが、その理解でよろしいんでしょうか、今の私の理解で。
○定光政府参考人 お答え申し上げます。
CCSに関しましては、現在、足下でのコストは約一万円強、八千円から約一万二千円程度というのが試算で出ているところでございまして、仮に企業に対してカーボンプライシングでCO2を排出する場合にはそれだけのある種負担がかかりますよという制度が、日本では今まだそこまでのものはないですけれども、仮に導入された場合には、企業は自社がやったときのCCSのコストとてんびんにかけて、CCSの方が安いというふうに判断すれば、それを企業の判断としてやっていくということになっていくと考えてございます。
○市村委員 そうやって、結局、排出権の方でお金を払えというものを、なるべく頑張るからお金を払わないようにしよう、そっちで払わないようにしようということだと思いますので、手法としてはあるかもしれませんが、しかし、これも、我が国はもちろん、カーボンニュートラルというところでの国際公約もあり、その一つの有効手段としてカーボンプライシングも使うということかもしれませんけれども、やはり、先ほどからお聞きしているように、一番排出しているアメリカ、中国の取組というのを、我々も頑張るんだから一番出しているところはもっと頑張ってくださいよというのが是非とも言い続けていただきたいと思うんですが、大臣、是非とも国際会議等で言い続けていただきたい。いかがでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 私も全く同感でありまして、アメリカと中国とインド、合わせて世界のCO2排出量のたしか五割ぐらいあるわけであります。日本は三%ですので、どこが削減すれば一番効果的かというのは一目瞭然のことなんだろうと思います。
○市村委員 感謝いたします。
次に、やはり何といっても蓄電池なんですね。これがいいのができ上がってくると、再エネとの融合で大変ありがたい状況になってきます。これまでもいろいろな取組があって、今はリチウム電池が非常に優勢なんですが、昔から、例えばNAS電池やレドックスフローとか、あとキャパシタとか、いろいろな取組がされてきているところでありますが、今後の蓄電池の、日本における蓄電池開発の状況について、今の現状を教えていただけますでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
蓄電池でございますけれども、今委員御指摘ございましたとおり、これまでも、系統において安定的に大型蓄電池を運用する技術を確立をするために、リチウムイオン電池に加えまして、NAS電池、あるいはレドックスフロー電池を活用した技術実証を行ってきております。
御案内のとおり、NAS電池やレドックスフロー電池というのは長時間充放電が特徴であるというところが見えてきておりまして、どうやってやれば上手に運用できるかという技術開発を進めてきているところでございます。
加えまして、蓄電池の普及拡大を更に進めるという観点から、令和五年度補正予算では、家庭あるいは業務産業用の蓄電池の導入支援に百億円、それから、令和六年度予算案では、これは単年度だけではなくて、後年度負担も含めて、複数年で使える形にした系統用蓄電池の導入支援に四百億円を計上しておりまして、蓄電池の導入を図ってコスト低減を図っていくという取組を進めております。
加えまして、蓄電池の系統への接続ルールの整備、それから需給調整市場等の各種電力市場の整備による収益機会の拡大などの取組も進めていきたい、かように考えてございます。
○市村委員 是非とも、系統、ここも再エネのときの議論で出てくるのは、どうしても送電網というのは、これは交流なんですよね。我々が家庭で使っているのは直流電流で、直流、DCでありまして、再エネで生まれてくるのは直流電流が生まれてくるんですね、直流電気。直流を直流で送った方がいいんじゃないかということもあって、直流送電網というのをつくろう、つくるべきだと、それで送電ロスも少なくなるようにするような技術開発もかつて経産省さんで予算を出してやっていたんですね、超電導による直流伝導網というか伝送網というか。だから、そういうのも、日本はせっかく今まで実験、実証はしてきていますので、是非とも使っていただきたいなと。これも経産省予算でやったと思いますので、お願いしたいと思います。
それと、CO2を埋めると同時に、一方で、原料として使うという発想もやはりあるわけであって、これも技術的に磨いていく必要があるだろうと思います。
ここでも合成燃料というような話も出てきていますが、この間も出しましたが、最近は、いわゆるドリーム燃料という言い方で、CO2を使って石油代替製品、ガソリン代替製品を作れるんだから、それで車を動かせばいいんじゃないかと。そうしたら、まさに、その出した分、それはまた燃料に戻すわけですから、まさにそこではカーボンニュートラルになるわけであります。
だから、そういった技術の提案もあるわけでありますので、是非ともそれを使ってほしいなと思いますが、いかがでしょうか。
○定光政府参考人 まず、恐縮ですが、冒頭、ちょっと先ほどの私の答弁の訂正をさせていただきます。
CCSのコストですが、足下のコストは、CO2一トン当たり、試算によれば、約一万二千八百円から二万二百円程度でございました。先ほどの、八千円から一万二千と申し上げたのを、おわびして訂正させていただきます。申し訳ございません。
それから、御質問のドリーム燃料でございますけれども、原料となります化石燃料に二酸化炭素と触媒から作る特殊な水を混合して製造する燃料でございます。他方で、現在のところは、専門家の間においても、その製造原理や品質、製造コストなどにおいて定まった評価はまだないという状況でございます。
政府としては、化石燃料の脱炭素化の手法としては、いわゆる合成燃料ですね、御指摘ありましたe―フュエルの研究開発、これを今注力しているところでございまして、いずれにしましても、化石燃料を有効に活用しながら、脱炭素化を実現していくような技術開発についてもしっかりと進めていきたいというふうに考えてございます。
○市村委員 時間が来ました。終わります。CCSの話をまたさせてください。
どうもありがとうございました。
○岡本委員長 次に、笠井亮さん。
○笠井委員 日本共産党の笠井亮です。
今日は、低炭素水素等供給利用促進法案をめぐって質問いたします。
まず、論点の一つは、低炭素の定義、すなわち法案の第二条で、経産省令で定めることとされている、「その製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であること、」という在り方についてであります。
前回、三月二十二日の当委員会での質疑で、井上政府参考人は、海外の制度も参考に、例えば、水素一キロの製造に係るCO2排出量が三・四キログラム以下のものを対象とする、こういう形で審議会において有識者の方々に議論いただいているとして、国際的に遜色のない水準を設定していきたいというふうに答弁されました。
そこで紹介されたEUのRED2における基準は三・四キログラムと、数値自体は本法案と同一なんですけれども、EUでは、本法案が基準とする水素の製造時、これに加えて輸送や利用機械の使用まで含むということではないんでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のEUの再生可能エネルギー指令でございますけれども、水素の製造に伴って排出される温室効果ガスをライフサイクルで考慮することとされていることから、御指摘のとおり、水素の製造から輸送、利用機器の使用までに排出される温室効果ガス排出量は含まれるものと考えております。
○笠井委員 そうしますと、日本でも、水素の製造時にとどまらず、輸送や利用機器の使用まで含むと、CO2排出量は三・四キログラムよりも多くなるということですね。
○井上政府参考人 お答えいたします。
仮にそういうものも含むとすれば、そのとおりになります。
○笠井委員 そうしますと、国際的に遜色ないと前回答弁されたんだけれども、それどころか、EUよりも遜色がある。どこまでCO2排出削減に効果があるかが問われているわけで、その点をごまかしちゃいけないと思うんですね。
その上で、低炭素水素が果たして実用化できるのかということについて伺っていきたいと思うんですが、本法案との関連で、経産省の高温ガス炉実証炉開発事業について幾つかただしたいと思います。
高温ガス炉とは、ウランを燃料として、冷却材にヘリウムガスを使う原子炉。炉心の構造材と中性子の減速材に黒鉛を使って、核分裂の熱でヘリウムガスを九百五十度Cという高温にして熱エネルギーを作り出すというものであります。
そこで、齋藤大臣に伺います。
来年度予算に経産省が計上している高温ガス炉実証炉開発事業について、その内容の一つは、既設の試験研究炉HTTRに水素製造試験施設を接続して、そして水素を製造しようとする事業、もう一つは、大型の実証炉を今度は新設をして水素を製造しようとする事業、この二本柱で構成する事業という理解でよろしいんでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 高温ガス炉実証炉開発事業では、一つは、日本原子力研究開発機構が有するHTTR、高温工学試験研究炉に水素製造施設を新たに接続するための技術開発を行うとともに、もう一つは、HTTRとは別に、大型の実証炉を開発、建設し、カーボンフリーの水素を製造する実証を行うということですので、委員御指摘のとおりであります。
○笠井委員 新型の実用原子炉開発は、一般に、実験炉、それから次が原型炉、そしてその次が実証炉、このステップを経て実用炉へと進められる。
経産省の革新炉ワーキンググループが二〇二二年十一月に取りまとめた高温ガス炉実証炉の導入に向けた技術ロードマップによりますと、高温ガス炉の実証炉は、二〇二三年度から基本設計に入って、詳細設計を経て、二〇三〇年に許認可、建設に入り、三〇年代後半から運転を行うというスケジュールになっております。
実証炉建設スケジュールは、試験研究炉に水素製造試験施設を接続して行う研究開発と同時並行で進められるということなんですけれども、原型炉、これを設けずに、いきなり実証炉を建設して、原型炉がないというのはなぜなんでしょうか、大臣。
○齋藤(健)国務大臣 高温ガス炉の技術開発は、原子力機構が有するHTTRを中核施設として、これまでに基盤技術の確立、高度化等が進められてきたところであります。その成果として、商用規模を見据えた、大規模化に向けたある程度の技術的見通しは既に得られている。
また、本事業では、実証炉の開発と併せて、HTTRに水素製造施設を新たに接続をして水素製造に取り組むことで、高温ガス炉と水素製造施設の接続技術を確立することとしています。
こうした成果を得ることで、いわば原型炉で得るべき成果をHTTRによって十分に得られる取組の計画になっているというふうに考えています。
○笠井委員 原型炉をやらなくても十分に成果が得られるというふうに言われるわけですけれども、それで果たしていいのかという問題になります。
試験研究炉は、HTTRの原子炉に接続した水素製造試験施設は、水素製造施設つきのHTTRであって、原型炉ではない。実用化しようというなら、HTTRよりも原子炉出力を大きくした原型炉を造って、そして、原子炉自体の技術的性能の見通しを得る。実証炉は更に大型になるわけですから、その点で、大型になるんだから、それにふさわしい技術的な課題を洗い出して問題解決をする。
やはり、この間、原子炉開発でやってきたようなプロセスをきちっと、実験炉、原型炉、実証炉というステップを経て実用炉というふうに踏まないと、これは、どうしてそういうことをやるかというと、失敗の可能性があるからですよね。それでも原型炉を造らないというのは、ともかく二〇五〇年のカーボンニュートラルに間に合わせる、そういうつじつま合わせをしたい、それで飛ばしてやるんだということではないんですか、大臣。
○齋藤(健)国務大臣 先ほど答弁したとおりでありまして、実証炉の開発と併せて、HTTRに水素製造施設を新たに接続し水素製造に取り組むことで、我々としては、高温ガス炉と水素製造施設の接続技術、これを確立するということとしています。
こうした成果を得ることで、いわば原型炉で得られる成果、これをHTTRによって十分に得られる取組となっているということであります。
○笠井委員 普通は踏むプロセスを飛ばして、通例のプロセスを踏まずとも失敗しないという確証はありますか。
○齋藤(健)国務大臣 十分技術的検証を行いながら、慎重に進めていくということだと思います。
○笠井委員 これは、やはり規模が大きくなると、様々なことで、実際に、プロセスが進むによって、それで本当にいいかというのを一歩一歩やりながらやっていくのが技術だと思うんですよ。それを飛ばして、もう十分な技術があると言うのは、これは本当に科学的でないと言わざるを得ないと思うんです。
大臣、経産省の二〇二四年度予算資料では、高温ガス炉実証炉開発事業は、三年間の国庫債務負担を含めて総額八百六十六億円。二四年度の単年度の予算額は二百七十四億円でありますが、実証炉の運転開始までの総事業費、それから運転開始後の事業費というのは、それぞれ幾らというふうに見積もっていらっしゃるでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 実証炉の運転開始までの総事業費につきましては、今後の研究開発の進展に加えまして、実際の立地等の条件ですとか新規制基準の適合性審査の結果等によっても変わるため、現時点で、委員も御案内だと思いますけれども、見通しをお示しすることというのはなかなか難しいと思います。
また同様に、運転開始後の事業費についても、実際の実証炉がどういうものになるかがまだ決まっていない中で、現時点で見通しをお示しすることはこれまた難しいと考えていますが、いずれにいたしましても、経済性や社会的ニーズ等を見極めながら今後の研究開発を進めてまいる、こういう方針でございます。
○笠井委員 これは、八百六十六億円ということで始めて進めながら、見通しなく進めていいのかということは、やはり、その賛否は別としても、しっかりと問われる問題だというふうに思うんですよね。
その上で、経産省は二〇二三年度に、高温ガス炉実証炉開発事業の基本設計、それと、その先の製造と建設を行う事業者を公募いたしました。公募に応じたのは三菱重工業一社だけで、基本設計それから製造、建設というのを行うことになりました。この事業者選定に当たっては、経産省は、技術評価委員会を設けて選定審査を行いまして結果を出したと。ここにペーパーがありますけれども、経産省のホームページ上で公表しております。しかし、選定審査の経過などは明らかにされていなかった。
それで、私は今月上旬から資料提出を求めてきたんですけれども、評価委員会での審査過程の記録は、ここにあるんですが、一部黒塗りにされておりまして、発言のところも黒塗りで分からないところがあって、全部読み通すとよく分からないという話になっているところがあり、それから、三菱重工業との間の契約書、それから事業の実施体制、再委託先があるわけで、その状況、これはいまだに提出をされていません。
大臣、なぜこれをきちんと提出しないんでしょうか。それからまた、契約金額というのは幾らになっていますか。
○齋藤(健)国務大臣 まず、委員からお求めのあったいわゆる中核企業選定に関する技術評価委員会での審査過程の記録につきましては、当省からはその議事要旨を提出をさせていただいております。
そのうち御指摘の黒塗りの部分につきましては、事前に選定事業者である三菱重工業に照会を行わせていただきまして、公にすることで競争上の地位を損なうおそれがある、そういった回答をいただいていることなどを踏まえて、非公開の扱いとしたものであります。
また、三菱重工業との契約書につきましては、同様に、不開示とすべき情報が含まれないかどうかを照会をして、今確認を行っているところであり、今後できるだけ速やかに委員に提出したいと思っています。
以上であります。
契約金額については、事務方に答弁させます。(笠井委員「あれっ、担当が違うんじゃないの。だって、呼んでいないです」と呼ぶ)
ちょっと確認をさせていただいて、お出しできるかどうかも含めて検討させていただければと思います。
○笠井委員 これは税金を使う事業なので、当省から議事要旨を提出しているとおっしゃったんですけれども、議事要旨が私のところに来たのは昨日の夜ですからね。初めて昨日来たんです。
それで、公にすることで利益を損なうと企業の話をされるけれども、税金を使ってどんなふうなことになっているかということも明らかにならなきゃいけないし、契約金額もまだ分からない、言えないということですと、そんなことでいいんですか、これ。どうですか。
○齋藤(健)国務大臣 先ほど御答弁させていただいたとおりでございます。
○笠井委員 契約金額はいつまでに明らかにされますか。
○齋藤(健)国務大臣 これは、質問の打合せを笠井委員とさせていただいたときに、このやり取りがあったかどうか、私、よく存じ上げませんが、少なくとも、今この時点では、私にとりまして突然の御質問だったものですから、少なくとも検討はさせていただきたいなというふうに思います。
○笠井委員 契約書のことを聞くと言っているわけですから、金額はどこかに書いてあるんじゃないですか。なかったら、これはおかしな話になるので。私、このテーマで質問するということはもう既に通告をいたしておりました、大臣にお伺いすると。
結局、最初から、三菱重工が相手だからということで、結果が決まっているので、形式的であっても、手続を経ないから、ちゃんとやっていないからじゃないかというふうに言われても仕方がない。違うというんだったら、これは包み隠すことなく全て直ちに提出をして、やはり、税金を使うわけですから、国民に明らかにする、これは必要ですよね、大臣。
○齋藤(健)国務大臣 税金を使う事業でありましても、情報公開法におきましては、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報等は不開示とされていることがありますので、今回の措置はそれに準じたものでございます。
○笠井委員 ですけれども、この議事要旨自体も、先ほど申し上げたけれども、黒塗りになっているところがあるわけですよ。オブザーバーメンバーについても、具体的に、プレゼンターも含めて、誰かという名前も、それは名前、個人名と言うかもしれないけれども、じゃ、どんなことを言ったかという話についても省かれていて、これは本当に様子が分からないんです、これを読んだだけでは。
やはり、こういうのはきちっと明らかにしないと、税金がどう使われたのか、そして本当にそれがふさわしいのかということを国会としてもきちっとチェックをする、また、国民の前でもきちっとした議論をするということにならないというふうに思うんですよね。
国民の税金を使う事業だけれどもということで、だけれどもというふうに大臣はおっしゃったけれども、やはりこれは本当に大事なことで、委員長、この関連資料、今、契約金額も含めて、当委員会への提出を求めたいと思います。理事会で協議をお願いいたします。
○岡本委員長 後刻、理事会で協議いたします。
○笠井委員 じゃ、ロードマップにある高温ガス炉実証炉と燃料製造施設は、それぞれどこに建設を予定しているんでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 高温ガス炉の実証炉や、その燃料製造施設の建設予定地は、現時点では決まっておりません。
建設に当たっては、設置主体の判断や地元の御理解が当然大前提となりますが、実証炉の研究開発等を進めることと並行して今後検討していくべきものと認識をしております。
○笠井委員 これはもう三菱重工と契約しているんですよね。それで、お金もつけているわけですよね。それで、どこに造るかもまだ決まっていない。こういう事業をやるんですか、経産省というのは。
○齋藤(健)国務大臣 先ほど考え方は申し上げたとおりであります。
○笠井委員 なぜ未定なんでしょうか。その辺もきちっと。
○齋藤(健)国務大臣 これも先ほど答弁したと思うんですが、建設に当たっては、設置主体の判断や地元の御理解というものも大前提となりますので、実証炉の研究開発等を進めることと並行をして検討していかなくてはいけないというふうに考えているところであります。
○笠井委員 こういうものというのは、米軍基地の辺野古の建設もそうですけれども、地元の理解とかいろいろなことを言いますよね。だけれども、とにかくここに造るというところで、理解があるかどうかという問題になって議論になる。辺野古では、本当に絶対基地は許さないということで地元の声も上がるということで、そうやった民意も何度も示されたりするわけですけれども、結局、どこにやるかも分からない、地元の理解が、確保が必要ということで、一方では予算を計上して今年度予算をやって、三菱重工が再委託先も決めてどんどん進めてくるという話というのは、一体どういうものなのかということになりますよね。
大臣、原型炉で技術的成果を得ることもなく、総事業費も分からず、それから契約金額も分からず建設場所も未定、それでも予算をつけて事業を進めると。高速炉の原型炉の「もんじゅ」は、一兆円を超す国費を投じながら廃止となりました。その教訓に学ばず、今回も繰り返そう、あるいは、そういうことになりかねないということでもいいということになりますか。
○齋藤(健)国務大臣 ちょっと、「もんじゅ」との比較はやや飛躍をされているのではないかなというふうに思いますけれども、我々の考えは先ほど申し上げたとおりであります。
○笠井委員 「もんじゅ」の場合は、一定の知見を得ても廃炉になった。原型炉の段階で廃炉になったという状況になっているわけですよね。
高温ガス炉というのは、じゃ、これは本当に安全性としては問題ないのかということについては、どのようにお考えでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 ですから、実証炉をやりながら、安全性の問題も含めてきちんと検証していく、そのための実証炉ではないんでしょうか。
○笠井委員 高温ガス炉というのは、よく進められる側で言われるのは、福島第一原発事故のような軽水炉での事故を引き起こす可能性はないんだ、空冷できるということが言われたりしますけれども、これは本当に、ガスの出口の温度が九百度から一千度Cで、運転中にヘリウム配管が破損するというふうになりますと、ヘリウムが大気中に漏れ出して、そして炉心に大量の空気が流入して、高温の黒鉛が空気中の酸素と接触すると燃え出して、そして放射性物質が拡散をする、こういう危険性を持っているというものなんですよね。それに対して、原型炉で技術的成果を得ることもなくどんどんどんどん進める、どこに造るかという話も含めてまだだ、こういう形でやるのがいいのか。これはもう本当にとんでもない話になるというふうに思います。
そこで、高温ガス炉を動かすことによる使用済燃料及び施設の廃止に伴う放射性廃棄物の処分をどうするかということも問題になってまいります。
文科省に伺います。
既設の試験研究炉HTTRの設置変更許可申請書の使用済燃料の処分の方法には、次のように記載をされております。「英国又はフランスの再処理事業者、若しくは米国のエネルギー省に再処理を委託又は引き取りを依頼して引き渡す。引渡しまでの間は、HTTR原子炉施設の使用済燃料貯蔵設備において貯蔵する。」こうありますよね。
そこで伺いますが、軽水炉と同様に、使用済燃料は再処理してプルトニウムを分離するというわけですけれども、使用済燃料の引渡先というのは具体的に決まっているんでしょうか。また、分離したプルトニウムの利用法は決まっているんでしょうか。
○林政府参考人 お答え申し上げます。
使用済燃料の再処理につきましては、今ほど笠井先生の方から御指摘のあったように、申請書に書いてあるところでございます。
それを踏まえまして、使用済燃料の具体的な在り方につきましては今後検討していくということになろうかと思いますし、また、再処理に伴うプルトニウムの扱いについては、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則に基づいて、今後適切に検討されるものと承知しております。
○笠井委員 今後だ、今決まっていないというわけですね。
じゃ、大臣、今回の事業で新たに建設しようという高温ガス炉実証炉の使用済燃料の処分、新たな方ですね、また、施設の廃止に伴う放射性廃棄物の処分というのはどうするか決まっているんでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 将来的に高温ガス炉の実証炉で生じる使用済燃料や、それに由来する放射性廃棄物の処理処分の方法は、現時点では決まっていません。今後、必要な技術開発等を進めつつ、実際に建設するまでに決定する必要が当然あるとは思っています。
例えば、高温ガス炉の燃料は、通常の軽水炉燃料と異なり、科学的には安定であるものの、そのままでは再処理しづらい被覆材で覆われているなどの特徴がございます。そのため、日本原子力研究開発機構におきまして、その被覆材を除去する技術開発などを実施しているところでございます。
また、施設の廃止に伴います放射性廃棄物の処分につきましても、現時点で決まっているものではありませんが、当然のことながら、原子炉等規制法に基づいて、段階に応じて適切に対応していくものだと認識をしています。
○笠井委員 ちょっと驚いてしまうんですけれども。
新たに建設する方でも、使用済燃料の処分と施設の廃止に伴う放射性廃棄物の処分というのは現時点では決まっていない、だけれども、建設事業はどんどん進めていくということであるわけですよね。使用済燃料や放射性廃棄物の処分のめどもなく更に新たに生み出し続けるということになってくる、これほど無責任なことはないと思います。
原子力規制委員会の更田豊志前委員長は、高温ガス炉について、日本経済新聞二〇二二年十月十日付で次のように語っておられます。「高温ガス炉の新設へ期待は高いが、硬い殻に覆われた燃料は再処理に向かず、直接処分が常識となる。一方、日本は使用済み燃料を全量再処理する方針で、政策を見直さなければ高温ガス炉の利用は夢物語となる。」「こうした「本丸」の議論を避ける社会に原子力を利用する資格があるか。」と。私、これを拝見して、まさに的を射た指摘をされていると思います。
大臣、使用済燃料の処分はどうするのか、再処理で生み出した有害なプルトニウムを現実にどのように減らしていくのか、具体的な答えを出さないまま先送りをしてこの事業を進めていいんでしょうか。
○齋藤(健)国務大臣 まず、高温ガス炉の燃料につきましては、さっき申し上げたように、再処理を可能とすべく、被覆材を除去する等の技術開発を進めているので、まずは、こうした技術開発に取り組んでいくということがあります。
それで、御指摘の、続けるのかという話ですが、総事業費や建設費、使用済燃料の処分方法などの見通しは、実証炉の研究開発等を進めることと並行して、今後しっかり検討していくべきものだと思っています。
その上で、高温ガス炉は、九百度Cを超える高温の熱を取り出せることを生かした、カーボンフリーの水素や熱の供給により産業の脱炭素化に貢献すること、こういった点は期待をされます。
このため、エネルギー安定供給と脱炭素化を両立するためのGXを進めていく上で、あらゆる選択肢を確保する観点から、実証炉の開発に取り組む意義はあるものと考えております。
○笠井委員 あらゆる選択肢を活用とおっしゃいますけれども、新たに建設しようという高温ガス炉実証炉の使用済燃料の処分はどうするのか、それだけでも決まっていなければ、やはり設計図を一枚も書いちゃいけない、くいの一本も打っちゃいけない。
大臣、大臣も無責任な後継者になるというのかというのが問われると思いますが、この実証炉開発はやはり思い切ってやめるべきじゃないんですか。
○齋藤(健)国務大臣 先ほど全くそういう趣旨の答弁をさせていただいたと思うんですけれども、いずれにしても、笠井委員の御指摘というものは私もしっかり受け止めながら、この計画は進めていく必要があるというふうには思っておりますので、そこは御理解いただきたいなというふうに思います。
○笠井委員 是非、指摘を受け止めていただくんだったら、やめていただきたい、この事業を。事業をですよ。
実用化のめどもない新技術を前提にすればCO2削減の先送りになるだけです。政府は、石炭火力の継続建設を前提にして、CCS、アンモニア混焼や単独で燃やす、水素利用の技術等を今後開発してCO2削減と言いますけれども、どれも実現するか定かではないものばかりであります。
研究者グループからは、省エネ、再エネの既存技術だけでも、二〇五〇年に九〇年比九三%削減できるとの提言があります。
二〇三〇年までに緊急にCO2大幅削減が求められています。まずは、今ある省エネ、再エネにこそ資源や予算を厚く配分すべきだ、このことを強く申し上げて、今日の質問は終わります。
○岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。
○鈴木(義)委員 今日は一日、長丁場でお疲れだと思いますが、最後になりますので御容赦いただきたいと思います。
国民民主党の鈴木義弘です。
法案について、今日は少し細かくお尋ねしていきたいというふうに思っております。
CCSの方で、貯留終了後、一定期間経過後の一定期間というのはどのぐらいを見込んでいるのかという点です。
一定期間後、JOGMECに管理業務を移行することになっているんですけれども、移行した後にCO2が漏えいしたときには、それを貯留した事業者が責任を取るというふうになっているんですけれども、ただ、午前中の参考人の質疑の中で、モニタリングはずっとしていく、それが十年続くのか二十年続くのか三十年続くのかというふうに、それが一定期間なんだというような、参考人からそういう開陳をいただいたんですけれども、じゃ、そのときに、ないだろうというふうに言われているんですけれども、結局、前提が、一〇〇%安心なんです、ないんですということは、やはり人間がやることだから、私は分からないと思うんですね。
それと、あともう一つは、掘削をしていったときに管を入れるんでしょう。それが長い年月たてば、劣化もするだろうし、腐食もすると思うんですね。そういう材料を使わないと言えばそれで終わってしまうんですけれども、ただ、この新しい事業をするに当たっては、一〇〇%大丈夫なんだということに立ってやろうとするのか、もしかあったときにどうするかというふうに立ってやるか、そこのところが一番問題じゃないかなと思うんですね。
ですから、答弁は分かるんですけれども、責任の所在はどこにあるのかというのがあったら教えていただきたいんですけれども。
○定光政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、このCCS事業法案におきましては、CO2の貯留停止から相当程度の期間が経過した後、経産大臣が、CO2の貯留の状況が安定しており、その状況が将来にわたって継続するということが見込まれるなどの一定の要件を満たすと認めた場合に限って、モニタリングなどの貯留事業場の管理業務をJOGMECに移管するということを認めることとしてございます。
御質問の移管までの期間でございますけれども、CO2の貯蔵の状況が安定するまでに必要な期間ということ、これは実際には省令で定める予定でございますけれども、その際、例えばイギリスやノルウェーでは、CO2の圧入停止後原則二十年間、あるいはCO2の安定性が確認されればそれを短縮することも可能とされている、ないしは、ほかの例では、アメリカのノースダコタ州では、CO2の圧入停止後少なくとも十年間、こういうふうな定めがありますので、こういうこと、諸外国の実例、諸外国のCO2の貯留の動向、それから最新の科学的知見なども踏まえながら今後検討していきたいと考えてございます。
その上で、責任の問題でございます。
業務移管に当たりましては、先ほど申し上げたCO2の安定貯留がしっかり図られているかどうかといった厳格な基準を設けておりますため、移管後にCO2の漏えいなどにより何らかの損害が生じる可能性は低いと考えられますけれども、これも絶対安全ということはないというふうに我々も承知してございまして、万が一損害が発生した場合には、JOGMECに業務移管する直前に貯留権を有していた貯留事業者に、無過失責任、故意、過失の有無を問わず責任を負っていただくという形の規定にしてございます。
○鈴木(義)委員 次に質問するところに答弁していただいたんですけれども。
無過失責任を事業者にお願いするという法律のたてつけになっているんですけれども、そこまで責任を、瑕疵も含めてあなたにやってもらいますと。許可するときに、そこで手を挙げる事業者というのは、私、逆に怖くてできないんじゃないかと思うんですけれども、そこは、やはり国策としてやるんだったら、最後は責任は国が持つというぐらいなことをやらないと、事業者は安心して手を挙げないんじゃないかと思うんですね。
午前中の参考人のときにも、長岡市で一万トンぐらい、北海道で三十万トン貯留して、今のところは安定しているというような説明を受けたんですけれども、ただ、まだやり始めて何年もたっていないんですよね。
貯留事業は半永久ですよ。よっぽど、技術革新がもし生まれて、CO2をどんどん使っていくようなものが、今後、その後三十年なのか五十年なのか、その先になるか分かりませんけれども、そういう技術開発ができるんだったら、一回貯留したものを掘り出してもう一回使うということは可能でしょうけれども、埋めたらほとんど半永久だと思うんですね。そうすると、長いスパンで管理をしていかなくちゃいけないということになると思うんです。
それで、安定したからいいだろうというんですけれども、もし、今までのデータにはなかったような地震が起きるとか、何か突発的なものが起きる可能性があったときに、対応するようなことも想定しておかなければならないだろうということだと思うんです。
そこのところ、じゃ、例えば、貯留事業の許可をした経産大臣には責任はないのかということですね。この考え方は、特に公共事業の場合は発注者責任を問わないんです、日本は。責任施工という名の下で、過去ずっと業者が全部責任を負ってきた。でも、その公共事業、これが公共事業に値するかどうかは別ですけれども、結局、許認可を出している自治体でも国でも、責任を負わないんです。それでやれるかというふうに思うんですけれども、そこのところを御答弁いただければ。
○定光政府参考人 お答え申し上げます。
CCS事業法の検討に当たりましては、第三者への賠償責任の在り方の点については、民法などの法律専門家を含む幅広い有識者から成る審議会で議論を行っておりまして、その過程で、参入を希望する事業者の方の御意見というのも聞いた上で、一定の方向づけを行ってございます。
この審議会の議論では、諸外国においても、貯留事業を原因とする損害賠償責任は原因者である貯留事業者が負うことが一般的であること、また、CCS事業は地下の地層を使用する事業形態でありまして、被害者が貯留事業者の過失を証明することは困難であるなどの事情があることなどを踏まえまして、適切な被害者救済を図る観点から、この法案では、鉱業法の例に倣いまして、貯留事業者に無過失責任を負わせることが適当と判断して制定したものでございます。
ただし、民間に押しつけ過ぎていないかということなんですけれども、全ての責任を貯留事業者に求める制度にしているわけではございませんで、例えば、諸外国の例も参考にしながら、御指摘のとおり、CO2の貯留停止後に行うモニタリングなどの貯留事業場の管理業務につきましては、CO2の挙動が安定しているなど一定の要件を満たせば、国の機関でありますJOGMECに移管することができる制度としておりまして、制度全体としては、事業者に過大なリスクを負わせる設計にはなっていないものと考えてございます。
その上で、経産大臣の責任という話もございましたけれども、国としては、CO2の漏えいやこれに伴う損害が発生することがないよう、貯留事業者の監督などにしっかりと取り組んでいきたいと考えてございます。
○鈴木(義)委員 私、鉱山学を習ってきたわけじゃないんですけれども、試掘を幾つかするんだと思うんですね、大体このぐらいのボリュームでと。じゃ、それが、最初の目測で百トン貯留できるよといったときに、もしかしたらもっと先まで行っちゃう可能性がないのかということなんですね。それはもう場所によって全部違うと思うんです。そうすると、最初に想定していたことじゃないことが起きる可能性がないわけじゃない。
それで、例えば保証金の話をしたいんですけれども、ちょっと質問項目を飛ばさせてもらうんですけれども、長期間の事業を見込んでいて、昨日、問取りのときに説明は受けたんですけれども、その会社の引当金で保証を賄うんだというんですけれども、じゃ、その会社が破綻しちゃったら誰が責任を取るんですか。
五年とか十年で事業が終わるわけじゃなくて、これは何十年もかかると思うんですよ。安定するか安定しないかは、先ほどの答弁の中でもありましたけれども、国によって二十年というところもあれば十年というところもあるし。いろいろな技術的な、またモニタリングの仕方もどんどん開発されていって、これが安定しているというふうになったらJOGMECが受けますよとなるんですけれども。
だから、そこのところがやはり、保証金制度みたいなものを別個でつくってやらないと、保険だけ入ればいいとか、会社が破綻しちゃったときにどうするんだとか、そういうときに、じゃ、誰が責任を持ってやるんですか。それはやはり、最終的には、経産大臣が許可を与えたわけだから、国がやはり責任を持つというふうにならざるを得ないんじゃないかという考え方です。もう一回お願いします。
○吉田大臣政務官 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、貯留事業におきましては、CO2の注入を停止した後もモニタリングを行うということが必要になります。
事業期間が長期間にわたることが想定されることも御指摘ございました。事業者はその事業の実施に必要な資金を確保することが必要となってくるわけでございますけれども、このため、今般のCCS事業法案では、モニタリング等の管理業務をJOGMECに移管する仕組みを設けておりますが、JOGMECが行う貯留事業場の管理業務に必要となる資金をしっかりと確保するために、貯留事業者に対してはJOGMECに拠出金を納付する義務を課す法制度とさせていただいております。
加えまして、CO2の注入を停止した後、JOGMECに管理業務を移管する前においても、貯留事業者に対しては、貯留したCO2の挙動が安定するまでの間モニタリング等の義務を課すこととしておりまして、これに要する資金をしっかりと確保するため、貯留事業者に対しては、引当金の積立てなどの措置を講じることを義務づけております。委員御指摘のとおりでございます。
この資金の確保の具体的な手法については今後省令で定める予定でございますけれども、委員の御指摘も踏まえ、今後、諸外国の動向や、会計の専門家などの御意見も伺いながら、必要な資金をしっかり確保できる制度の在り方を引き続き検討していきたいと思います。
その上で、万が一貯留事業者が破綻した場合には、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律を参考とさせていただきまして、破産管財人に対して各種の義務を課すこととしておりまして、貯留事業者が破綻した場合においてもCCS事業法上の義務を履行する主体がいなくなるという事態は発生することがないような制度としているところでございます。
○鈴木(義)委員 じゃ、簡潔に答弁をいただきたいんですけれども、一つは、作業監督者について伺いたいんですが、平成十六年に、鉱山法で、上級保安技術職員試験というのかな、資格がそこで終わったというんですけれども、こういった資格を援用するのか、新たな資格を持たせて貯留事業に従事してもらおうというふうに考えているのか、そこのところをお尋ねしたいと思います。簡潔にお答えください。
○辻本政府参考人 お答え申し上げます。
CCS事業法案では、事業者が保安に関する一定の知見を有する者から御指摘の作業監督者を選任し、CCS事業の保安を監督させることとしております。
実際の作業監督者が保安を監督する対象といたしましては、例えば、高圧ガスや火薬類の取扱いに関することが想定されております。
このため、鉱山法における作業監督者制度と同様に、ガス事業法や高圧ガス保安法、火薬類取締法などの法令によって定められた既存の資格制度を活用することが可能と考えております。
こうしたことから、本法案の中で独自の資格制度を設けるのではなく、今後、経済産業省令におきましてこれらの資格を有することを要件とすることを検討するなど、事業者にとっても合理的な保安体制の確保が可能となるように対応してまいりたいと思います。
○鈴木(義)委員 それと、もう一つ確認したいんですけれども、来週、もしかしたら環境委員会と合同審査するかもしれないという話なんですけれども、このCCS事業を進めていくに当たって、どうしても省庁が二つ、三つ出てきてしまうと思うんですね。そうなったときに、やはり、経産省のどこそこの局の部の課が窓口ですといってたらい回しにしないで、必ず窓口を一つにして、ワンストップサービスで、いろいろな相談なり、事業の報告を受けるとか、変更するとかというふうにやった方が、事業者としては、時間ばかりかからないで。
あとは内部の中で結局調整すればいいことを、なぜ業者側にやらせるかということは、地方自治体でも国でも同じだと思うんです。そこのところはどう考えているか、確認したいと思います。
○定光政府参考人 御指摘のとおり、CCS事業に関する事業環境整備に当たりましては、このCCS事業法案の整備だけではなく、事業者から見て手続の円滑化を図る、ワンストップで行政がしっかり対応するということが大事な課題だというふうに考えてございます。
このため、経済産業省におきましては、昨年七月に、CCSを推進するための施策を専門に扱う部署、CCS政策室というのを立ち上げて、省内につきましては窓口を一元化してございます。
加えて、今般のCCS事業法案においては、包括的な事業法の整備に伴い、現在の海洋汚染等防止法に基づく海域における貯留事業に関する規制、これは環境省さんが担当ですが、これを本法案に一元化することとしておりまして、事業者にとって二重規制とならないような形で設計をさせていただいているところです。
この法律の施行後もワンストップサービスが基本だと考えてございまして、当省が中心となって、環境省始め関係省庁ともしっかりと連携、連絡を行うことによりまして、事業者の負担軽減を含め、この法案の効率的な運用を図るとともに、様々な手続の面でも、事業者に不都合が生じないかということをしっかり注視しながら運用してまいりたいというふうに考えてございます。
○鈴木(義)委員 ありがとうございました。
先週も大臣に質問したときにもお尋ねしたんですけれども、CCSのコスト、午前中の参考人のときも、一トン当たり一万二千八百円から二万二百円。それは貯留事業だけの。これから、パイプラインでやるのか、陸上でやるのか、海上にやる、その輸送費。あとは、貯留するとか、CO2を分離させる。ここにもすごく技術も必要だしお金もかかるだろうというふうに言われているんです。
そうすると、なかなかCO2の削減が難しい業種があって、それがCCSの方に行くんですというと、値段がやはり、経済ベースになってきますから、じゃ、水素をどんどん使うとか、アンモニアを使って混焼させる、専焼にしますというふうにいいながらも、今までと同じで、CCSの方にCO2を持っていっちゃった方が安くできるんだといったら、こっちの技術開発は進まないんじゃないかと思うんですね。それが実際、CO2の削減につながるかという経済的なベースの中で、どうしても行き詰まる可能性はなきにしもあらずですね。高過ぎれば今度はこっち、高くすればこっちはと。
でも、午前中の参考人の質疑の中で、なるべくコストを下げていきたい、そういう技術開発をしていきたいというふうに答弁をされるんです、関係者の方が。そうすると、こっちが回っていかなくなってしまうんじゃないかという懸念があるんですけれども、その辺をどう考えるかということですね。
○吉田大臣政務官 お答え申し上げます。
CCSは、世界的にも商用ベースの大規模プロジェクトがこれから本格的に稼働していく段階でございます。このコストは、地理的条件、制度、プロジェクト固有の条件などに大きく左右をされます。このため、現時点で、CCSのコストについて、他の脱炭素手段との比較を一概に申し上げることは困難でございます。
その上で、本日参考人として御意見も賜りました公益財団法人地球環境産業技術研究機構では、委員も今御指摘いただきましたけれども、現在のCCSのコストをCO2一トン当たり一万二千八百円から二万二百円とした上で、二〇五〇年にはCCSのコストを現在の水準から四割程度低減させることができるとの試算を示しているものと承知をさせていただいております。
まずは、CCSに係るコスト低減を実現し、利用者においてCCSを安定的に利用できる状態を確保することが重要ではないかというふうに存じます。他の脱炭素手段とのバランスについては、技術の進展などの動向をよく注視しつつ、社会全体として効率的な設備形成がなされるよう、必要に応じて適切に対応をしてまいります。
○鈴木(義)委員 例えば、CCSの施設を使って貯留するという事業者さんがいたときに、先ほど、一定期間を過ぎたらJOGMECに、それで、JOGMECに移管するときに、保証金じゃないけれども、お金を払ってもらいますよと。要するに、利用者からあらかじめ、トン当たり幾らにするかは別としても、千円でも二千円でもお預かりしたら、預り金みたいな形で最終的には出すというふうな形を取れればいいんじゃないかと思うんですね。
それで事業を安定化していくのと、事業者に負担をかけるということを極力、まあコストはコストでかかるんですけれども、それ以外、預り金みたいな形でJOGMECに渡していくというふうな形を種銭にして、何かあったときには保証していく。まあ、保険を掛けるのもいいでしょうし。そういう制度をやはり構築するべきだと思うんです。
もう一つ。これも問取りをいただいたときに、えっ、そうなのと思ったんですけれども、海外でも三百四十か所ぐらい、何か、このCCS事業が世界中で行われているんだそうですね。そうすると、日本で、まあいいでしょう、二万円で貯留できますよといって、そんなに遠くない距離のところで一万円でできますといったら、みんなそっちに持っていっちゃうんじゃないかと思うんですね。
そこに持っていったときに、そこで事故が起きました、じゃ、誰が責任取るのという話も出てくると思うし、じゃ、例えば、貯留事業者が日本法人だけじゃなくて、外国法人も日本に参入してきて、私どもがやるんだったら、二万円の価格はもらわなくて、一万八千円でできますよ、一万六千円でできますよといったときに認めるのかということですね。じゃ、その外国法人が破綻したときどうするんだということが次に出てくるわけです。
だから、国内の事業者だけを想定するのか。いや、海外は縛っていません、日本から海外に出ていくことも認めるんでしょうけれども、外国から来るのも認めるみたいな言い方なんだね。だから、今回の法律の中で、日本法人とか、日本に本社を置いてあるとかというような縛りがないんですよね。
その点について、じゃ、日本法人の概念というのはどういうことなのか。外国人の持ち株比率が高いような事業者も日本国内にはいっぱいありますよ。じゃ、それを日本法人として認めるかということですね。だから、そこのところをもう一回再考した方が、私は、後々いろいろな問題が出てこないようにしておいた方がいいんじゃないかと。制度をつくるのであればですね。
政省令でそれを縛れるかどうかは分かりませんけれども、その辺の考え方をお尋ねしたいと思います。
○吉田大臣政務官 お答え申し上げます。
他の一般的な事業法と同様、CCS事業法案におきましては、貯留事業者の資格を日本法人に限定することはしておりませんが、貯留事業の適切な運営を確保するため、貯留事業に係る許可や不許可の判断を行うに当たっては、一つ目は、申請者が経理的な基礎や技術的能力に加えて社会的信用を有しているのか、二つ目には、CO2の安定的な貯留が見込まれるのか、三つ目には、他の産業に悪影響を及ぼすおそれがないかなどの観点などから審査することとしております。
仮に外国法人から貯留事業の許可申請があった場合には、当該事業者の適格性に加えて、その事業者が行おうとする取組が我が国におけるCCS事業の健全な発展やカーボンニュートラル実現に資するものであるかなどを、許可基準に照らして審査することになると存じます。
その審査に当たってでございますけれども、先生、本当に問題意識をお持ちの、日本に裨益しないCCS事業が行われることがないように、しっかりと確認をしてまいりたく存じます。
○鈴木(義)委員 時間が来たので。
今は何か外国の企業と日本法人で、株式会社をつくるんじゃなくて合同会社をつくるんだそうですね、その事業だけに特化して。そういうふうになったときに、日本法人も絡んでくるよということも想定のうちに入れて審査しなくちゃいけないんじゃないかと思います。
終わります。
○岡本委員長 この際、御報告いたします。
内閣委員会との連合審査会は、来る四月二日火曜日午前九時から開会することとなりましたので、御了承願います。
次回は、来る二十九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時一分散会