衆議院

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第10号 令和7年4月16日(水曜日)

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令和七年四月十六日(水曜日)

    午前八時四十分開議

 出席委員

   委員長 宮崎 政久君

   理事 小泉進次郎君 理事 新谷 正義君

   理事 山下 貴司君 理事 荒井  優君

   理事 山岡 達丸君 理事 山崎  誠君

   理事 斉木 武志君 理事 丹野みどり君

      岩田 和親君    鬼木  誠君

      小池 正昭君    坂本竜太郎君

      島田 智明君    鈴木 英敬君

      関  芳弘君    土田  慎君

      西村 康稔君    細野 豪志君

      松本 洋平君    宮内 秀樹君

      向山  淳君    森下 千里君

      東  克哉君    梅谷  守君

      大島  敦君    岡田 克也君

      落合 貴之君    小山 展弘君

      鈴木 岳幸君    田嶋  要君

      福森和歌子君    森山 浩行君

      吉田はるみ君    東   徹君

      村上 智信君    岡野 純子君

      平岩 征樹君    福重 隆浩君

      山口 良治君    佐原 若子君

      辰巳孝太郎君    吉良 州司君

    …………………………………

   経済産業大臣       武藤 容治君

   国務大臣         伊東 良孝君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   国土交通副大臣      高橋 克法君

   経済産業大臣政務官    加藤 明良君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 古谷 一之君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房デジタル・国際総括審議官)          佐久間正哉君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房政策立案総括審議官) 品川  武君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房審議官)       向井 康二君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        大胡  勝君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 斎須 朋之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房長) 片岡宏一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦上健一朗君

   政府参考人

   (経済産業省イノベーション・環境局長)      菊川 人吾君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         江澤 正名君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局首席国際博覧会統括調整官)           茂木  正君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         木原 晋一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        和久田 肇君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    山下 隆一君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           堤  洋介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木村  大君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     秋田 未樹君

   経済産業委員会専門員   花島 克臣君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  坂本竜太郎君     森下 千里君

  鈴木 英敬君     土田  慎君

  落合 貴之君     森山 浩行君

  吉田はるみ君     梅谷  守君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     鈴木 英敬君

  森下 千里君     坂本竜太郎君

  梅谷  守君     吉田はるみ君

  森山 浩行君     落合 貴之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

宮崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、経済産業省大臣官房長片岡宏一郎君外二十名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島委員 大島です。

 今日も質問をさせてください。

 まず、五十四年前のニクソン・ショック、八月十五日、そのときのニクソンの演説の中にこういう文案がある。

 他国は、他国というのはヨーロッパとアジア、戦後、アメリカの資金供与によって、工業国は経済が壊滅状態にありましたが、彼らは復興し、その自由を維持できるように、合衆国は二十五年間に一千四百三十億ドルもの対外援助を提供してきたのですと書いてあって、この他国、ヨーロッパとアジアが経済的に力をつけた今こそ、各地で自由を守るための負担をそれぞれが平等に負担する時期に来ましたと。

 トランプ大統領が言っている内容と同じで、このときに、テレビ、ラジオを通しての国民に向けた演説の中で、一〇%の輸入課徴金を導入している。その二年後に変動相場制に移行して、金融資本主義になって今に至っていて、五十四年ぶりの大きな変化だと思っているんです。ですから、トランプ氏が言っている製造業回帰ということは、多分、この金融資本主義に対して一定の理解があるのかなという見方もできるのかなとは思っていまして。

 私がずっと価格転嫁の問題を強く訴えて、この委員会でも大島が作ろうとしている法案、取引価格適正統括者を大企業、大きな企業の役員として位置づけて下請構造をしっかりと把握するということは、実は私たちの社会はまだ分断はされていないと思っています。何ゆえに中間層が必要かというと、極端な意見を中間層が包摂するからこそ中間層が必要だと思っています。

 ですから、五十四年前のニクソン・ショック、そして変動相場制、金融資本主義で、二〇〇八年のリーマン・ショックのとき、多分、当時は恐らく、私がある識者の方から伺ったのは、世界のGDPの十倍を超えたマネーが流通しているという話を聞いて、一旦世界は反省したとは思ったんですけれども、その後続いて今に至っていると思うので、是非、この下請価格の転嫁問題はしっかり取り組んでほしいと思っています。

 特に、今回、三月までに、連合を始め大企業の賃金交渉は極めてうまくいって、サラリーマンにとっては物価高に見合った、あるいは超えた賃金アップは確保できたと思います。

 ただ、今後の局面の、大手から下請に対する価格交渉は厳しくなると想定しているんです。やはり、局面が変わりましたので、大手も含めてこれからは経営が結構厳しくなることが想定されるので、下請に対しても、その代金については、こういう状況だから、なかなか下請価格への転嫁、特に賃金を含めた転嫁が難しくなる局面だと思っています。

 したがって、経済産業省及び政府の役割は大きいと考えておりまして、その点について、まず大臣の御所見をお伺いをさせてください。

武藤国務大臣 おはようございます。

 今、中小企業と大企業の格差の視点で価格転嫁の御質問をいただいたと思います。

 我々、価格転嫁対策の目的というのは、我が国の雇用の約七割を支える中小・小規模事業者が、コスト上昇分を売上げに適切に反映をして収益を上げ、そして成長への投資だとか賃上げの原資をしっかり確保していただくことであると認識をしているところであります。

 価格転嫁が進まなければ大企業から部品等を受注する中小企業に適正な利益が行き渡らない、そして賃上げを阻害してしまう、まさに、委員おっしゃられるように、賃金格差の拡大につながることも懸念をされるところであると思います。

 また、足下では、米国の関税措置、これが価格転嫁の取組に影響を与えないことが重要であると思っております。自動車業界と産業機械業界のトップに対して私から直接要請を行い、約千七百の事業者団体に対しても事業所管の大臣の配慮要請を行っているところです。

 委員がおっしゃられるように、まさに、ここ数年、賃金アップということが、今までの勾配からすると急激に上がってきているというのも、これも現実なんですけれども、中小企業の経営者にしてみれば、これからの予見性が極めて難しいということになれば、当然ですけれども、賃上げの抑制につながる意識が働くと思いますし、そういう意味では、しっかりと賃上げができるように、公正取引委員会を始め各省と緊密に連携をしながら、価格転嫁を今こそ一層やっていかなきゃいけないという認識をしているところです。

大島委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 私は、製造業は、大統領任期が四年間だとすれば、今後、工場閉鎖だけは避けたいと思っている。生産現場は、一度でも工場を閉鎖すると、それまで積み上げてきたあらゆる蓄積が消滅してしまいます。

 例えば、NCマシンなどを微調整しながら築き上げてきた工作機械の精度、機械を扱う従業員の熟練度、従業員が取得した資格、元請からの品質認証、ISOなど工場への各種認証、品質を保証するための検査の精度、カイゼンによって積み上げられてきた生産性、労働災害を防止するための安全管理など、日本の付加価値の源泉が私は工場だと思っていまして、一回工場を閉じると再開したり同じものを作ることは難しいと考えています。

 前回も指摘をさせていただきました。今の五人、十人の小さな物づくりの現場、NCマシンは入っています。ただ、減価償却は終わっています。従業員の年齢、NCマシンを動かしている従業員は五十代後半ぐらい、六十を超えています。子供も成人して、ローンも全部返済が終わっているかもしれない。ですから、検査工程にいる小さい部品を何百万個も検査している女性の方も、この間お伺いをしましたら、最低賃金です。ほかに職場がないから。ほかに移ろうとも思わないしというところもあります。

 ですから、今、そういう中での下支えをしているのが日本の中小企業、特に小規模企業であって、ここが崩れると、結構これからボディーブローのように。多分、今のアメリカがそうかもしれない。なかなか、製造業といっても、製造業自身が復活しないのは、そのような、従業員の皆さん、工場がないので、だから、物は言ってもなかなかうまく製造業が盛り上がらない。日本の貢献としては、一番大きな貢献が、米国の製造業の復権を助けるということもあるかなとは考えています。

 今日は法案の審議ですので、あとは法案の行間を埋める確認答弁をお願いしたいと考えておりまして、是非よろしくお願いします。

 それでは、まず、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案に関し、以下の点について質問します。

 適正価格の推進と価格転嫁による労務費の確保について。

 原材料価格やエネルギーコストのみならず、賃上げ原資の確保も含めて、適切な価格転嫁によりサプライチェーン全体で適正な価格設定を定着させ、物価に負けない賃上げを行うことは、経済の好循環を実現するために不可欠と考えます。

 政府は、令和五年十一月、内閣官房及び公正取引委員会連名で労務費の適正な転嫁のための価格交渉に関する指針を作成し、急激な物価上昇を乗り越え、持続的な構造的賃上げを実現するための原資を確保できる取引環境の整備に取り組んでいることは承知をしております。

 こうした取組が進められる一方、例えば、建設資材を製造する現場では、部材単価や人件費の高騰分を製品価格に転嫁することが課題であるといった声が上がっています。

 このような状況を踏まえると、発注者の地位の優先により、立場の弱い中小受託事業者等が価格高騰に伴う不利益やリスクを一方的に被ることがないよう、独占禁止法に基づいて適切な措置等の実効性のある対策を講じることが必要と考えますが、政府としての見解を伺います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、取引上の立場の弱い事業者が物価上昇に負けない賃上げの原資を確保できるようにするため、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる、そういう取引環境の整備というものが極めて重要でございます。

 そして、政府といたしましては、令和三年十二月でございますが、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージというものを作りまして、公正取引委員会におきましても、そのパッケージに基づきまして、例えば、特別調査の実施、これは、令和四年、五年、六年ということで大規模な調査をしておりまして、その調査結果に基づきまして、価格転嫁が進んでいない事業者に対して注意喚起文書を送ったり、先ほど御指摘のありました、令和五年十一月にはいわゆる労務費転嫁指針というものを策定し、周知に努めておるということでございます。

 今回の改正法案が成立いたしますと、更に一層の適切な価格転嫁及び取引の適正化につながるというふうに考えてございますので、この改正法のみならず、御指摘の独禁法の優越的地位の濫用、こういうものに違反する行為があれば厳正に対処していきたいと考えてございます。

大島委員 適正契約の推進と必要な価格転嫁を実現するためには、政府が一人当たりの実質賃金や労働分配率といった実態を十分に把握しつつ、中小受託事業者を含めた適正な労務費の確保について発注者の理解を得られるよう、積極的に働きかけることが重要です。

 その上で、本法案の趣旨を周知徹底するとともに、適正な取引環境を整備するための現行のガイドライン改定なども検討すべきと考えますが、政府としてどのようにお考えでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法が成立した場合には、委員御指摘のとおりでございまして、改正法案の趣旨、こういうものを周知徹底を図るということが重要と考えてございます。

 先ほど指摘いたしました労務費転嫁指針、こういうものも改正法とは関係なく周知をするということが極めて重要でございますので、こういうものにつきましては、中小企業庁や事業所管省庁と連携いたしまして、引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。

 そして、御指摘の、独禁法に基づく優越的地位の濫用に関する規制でございます。これにつきましても、今回の改正法に伴いまして見直しをするということを考えてございますので、そのようなガイドラインというものを見直しまして、それに基づきまして、取引適正化の推進、価格転嫁の実現というものを図ってまいる所存でございます。

大島委員 法改正の実効性を担保するに当たっては、ガイドラインの改定に加えて、行政による監視、指導の徹底が必要だと考えます。

 実際の現場では、営業活動の一環として、部材価格や労務費の高騰分を販売価格へ転嫁するための交渉を進めているといった取組がなされている一方、ダンピングや賃上げの妨げとなる不適切な契約を是正する必要も指摘されています。

 先般の建設業法改正においては、附帯決議で、建設Gメンの機能や体制を強化し、関係機関が一丸となって監視や指導を徹底することが明記されていましたが、本法案に基づいても同様の対応をすべきと考えます。政府としての見解をお聞かせください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、これまで、定員の緊急増員や、取引適正化担当の官房審議官を令和六年四月に新設するなど、同じく法執行を担う中小企業庁とともに、調査、執行体制の強化に努めてきたところでございます。

 今回の改正法案でございますが、各業界に関して知見を有する事業所管省庁に対しましても、現行の調査権限に加えまして、問題行為につきまして直接指導助言をする権限というものが付与されたということでございます。これによりまして事業所管省庁との連携強化を進めるということでございまして、当委員会、公正取引委員会におきましても、関係当局などとも相談いたしまして必要な体制の確保を図りまして、更なる価格転嫁、取引適正化の推進に取り組んでまいりたいと考えてございます。

大島委員 本法案を施行するに当たって、構造的な価格転嫁を確実に進めるためにも、公正取引委員会や中小企業庁、厚生労働省、国土交通省などの関係機関が連携し、監視、指導を徹底することが必要と考えますが、政府としてはどのように取り組まれるおつもりでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、この法律の執行を共に担当しております中小企業庁との間で、人事交流や調査担当者同士の定期的な連絡会議などを通じまして、各種情報や調査のノウハウ、そういうものの共有を図ってきたところでございます。

 また、国土交通省との間でございますが、いわゆるトラック・物流Gメンに対しまして、この法律につきまして研修を行うとか、違反のおそれのあるような行為がありますと通報をしていただけるような仕組みを設けるなど、現在連携を強化しているところでございます。

 そして、先ほども御説明いたしましたが、今回の改正法につきましては、関係省庁と連携をしようということでございまして、関係省庁が問題行為に対しまして直接指導助言ができるという権限が付与される、そして関係機関間での相互の情報提供というものが行われるということでございます。

 このようなものも踏まえまして、従来やっております中小企業庁や国交省と行ってきた連携につきまして更に強化する、その他の事業所管省庁にも同様な取組を広げていくということでございます。

 このような連携強化のために、今年の四月からでございますが、公正取引委員会におきまして関係省庁との連携を強化する企画官級の担当官を設置したところでございまして、そういう者も活用いたしまして、関係省庁との連携強化というものを図ってまいる所存でございます。

大島委員 適正契約や価格転嫁を推進するためには、国民全体の理解を醸成することが鍵となると考えます。というのも、こうした取組によって一時的に費用負担が増す場合があるかもしれず、政府が前面に立って国民に対して丁寧に説明することが求められるからです。

 負担増の可能性も含め、適正契約と適正転嫁の意義や必要性について、国民全体の理解を得るため、政府が主体的に広報啓発を行うことが必要だと考えますが、政府としての見解を伺います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど武藤大臣からも答弁を差し上げたところでございますけれども、価格転嫁、取引適正化対策の目的は、我が国の雇用の約七割を支える中小・小規模事業者が、コスト上昇分を売上げに適切に反映して収益を上げ、成長への投資や賃上げの原資をしっかり確保していただくことであると認識しております。

 この価格転嫁によりまして、消費者の皆様にとっては製品、サービスの価格が上昇し得るところでありますけれども、同時に、価格転嫁分が原資となりまして、中小・小規模事業者におきましても従業員への賃上げを促進することが可能となるものでありまして、こうした流れをつくることは極めて重要であると認識しております。

 価格転嫁、取引適正化は、サプライチェーン全体を強くし、結果的に発注事業者にも裨益するものであります。こうした観点も含めまして、下請法の遵守や適正取引に関する呼びかけを多くの事業者にお届けするよう、価格交渉促進月間の実施や講習会の開催等を通じた周知啓発を、主体的に、今後も積極的に行ってまいる所存でございます。

大島委員 今の質問の中で、費用負担が増す場合というのは、国民の今の局面だと極めて厳しいと思います。

 実は、私の事務所にこれまでなかった問合せがあって、今回の給付はあるのかという問合せがあった。昨日も、駅でレポートを配布しておりましたら、御高齢の御婦人の方から声をかけられて、報道等だと給付金が報道されているんだけれども、これは行われるかどうかという問合せがある。今までなかったんです、こういうことは。

 やはり、ここは相当、今、年金生活者の皆さんを中心に、一人親家庭の皆さんもそうですし、物価高は直撃、生活を本当に厳しくしているなという実感があります。ですから、米の価格が高止まりしているというのは、思い切って、半分の、百万トン放出した方が私はいいのではないかなと考えるところもある。思い切ってやらないと、マーケットは多分このまま推移すると思うので。

 ですから、この物価高対策、中長期的に、下請価格が上がって小さな会社の賃金も上がってくればこの負担ものみ込めるかもしれないけれども、今の局面はここをうまくやっていかないとまずい局面かなと思うので、そこのハンドルは政府として慎重に、まずは中小・小規模企業の価格を転嫁することと、この問題は是非注力しながら丁寧にやってほしいと思います。

 では、続いて。

 本法案に基づく取組は、物価高に苦しむ国民生活を守り、物価上昇を上回る賃上げを実現し、分厚い中間層を再生するために不可欠だと考えております。そのためにも、価格転嫁と賃上げの好循環が生まれるよう、産業界や労働界など、実務の最前線で携わる方々の意見を広く徴収した上で具体的な制度設計を進めることが大切です。

 今後の具体的な制度設計や運用に当たって、産業界や労働界などの実態や要望を十分に踏まえた上で検討すべきと考えますが、政府の方針をお聞かせください。

伊東国務大臣 大島議員の質問にお答えします。

 この法律の改正の検討に当たりましては、昨年の七月から公正取引委員会と中小企業庁の共催で有識者検討会を計六回開催をしたところであります。この研究会には、経済団体、中小企業団体、労働者団体、消費者団体、中小企業経営者、弁護士、法学者、経済学者といった幅広い分野の有識者に御参画いただき、取引実態や実務上の支障など、現場の声を踏まえた御意見を多数いただいたところであります。

 さらに、有識者団体の検討と並行いたしまして、計二十八の事業者団体へヒアリングを行ったほか、約五百の事業者団体に対しまして説明会を実施し、検討の方向性についての御意見も伺ったところでございます。

 この改正法案は、これら産業界や労働界の当事者や関係者の現場の声を踏まえたものとなっているところでありまして、委員御指摘のとおり、今後の具体的な制度設計に当たりましても、産業界や労働界などの御意見を十分に踏まえることが必要であると考えているところであります。

 この改正法案が成立した場合には、引き続き、下位法令の整備などの施行準備におきましても関係者から広く御意見を伺うとともに、一定の期間をかけて周知広報活動を行うことが重要である、このように考えているところであります。

 以上でございます。

大島委員 二〇二一年三月に閣議決定された成長戦略実行計画において、五年後の約束手形の利用廃止に向けた取組を促進するとされました。

 先月、全国銀行協会は、手形等の決済システム、電子交換所運用を二〇二六年度末で終えることを決定しており、手形の取扱いを続ける金融機関はほとんどなくなる見通しです。

 手形の利用を廃止することの意義について、政府の考えをお伺いします。

伊東国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、政府におきましては、約束手形につきまして、令和三年六月に閣議決定をされた成長戦略実行計画におきまして、五年後の利用廃止を目標と定め、産業界や金融業界と連携して、五年後となる令和八年の利用廃止に向けた取組を進めてきたところであります。

 約束手形は、実質的に支払いを繰り延べる効果を持つことに加え、早期に約束手形を現金化する際の割引料が受注者の負担とされることが多くなっているなど、受注者へのしわ寄せが大きい支払い手段となっております。さらに、紙である約束手形を取り扱うことによる紛失のリスクや、管理あるいは取立てに伴うコストも存在をするわけでありまして、約束手形の利用廃止によりこうした受注者の負担が軽減されることで、事業者間の取引が適正に向かっていくものと考えているところであります。

 以上であります。

大島委員 時間が来ましたので、ここで終わりたいと思います。誠にありがとうございました。

宮崎委員長 次に、鈴木岳幸君。

鈴木(岳)委員 立憲民主党の鈴木岳幸でございます。

 では、今回の下請法改正案に関する質疑ということで、お願いをいたします。

 今回のこの下請法、まず改正に至る背景とか経緯ということについてお聞きしたいと思っております。

 地方の経済というのが大変に今疲弊しておりまして、私も静岡県の藤枝市というところでございますけれども、武藤大臣も同じ東海地区の議員でいらっしゃいますけれども、やはり大都市に比べると地方都市というのは相当に厳しい状況でございます。

 私の地元の藤枝市というところ、人口十四万人程度の小さな町でありまして、静岡市に通うベッドタウンでもありますけれども、ほとんどの方は中小零細企業、そして、もちろん大きな企業がある企業城下町とかでもございません。

 私は、地元では藤枝商工会議所という商工会議所に所属しております。私の地元の商工会議所は議員でも特別会員という立場で所属することができるものですから、十一年前に市議会議員に初当選したときから特別会員として入会しておりまして、商工会議所の青年部にも入っておりまして、様々な会員の方とお話しする機会がたくさんございます。

 やはり、中小零細企業の方というのは大手から仕事をもらうこともありますし、そうすると、今回テーマになっている価格転嫁が非常にやりづらい状況がありますし、例えば、それだけでもなくて、仕事をやった後に、支払いの段になってちょっと値切られるなんということも間々あることでありまして、中小零細の経済状況というのはなかなか上向いてこないので、そういう意味では、この下請法の改正というものには大変期待をするところであると多くの方が感じているかと思います。

 今まででも、この下請法というのがあったにもかかわらず、なかなか厳しい状況で、価格転嫁ができてこなかったということがあるので、今回の改正案に至っているということは感じるわけでありますけれども、今回のこの改正案提出に至るまでに、現状、政府側としてはどのような認識を行ってきたか。特に、昨今の取引適正化に関する実態調査ですとか、あるいは中小の下請事業者の皆様からの声をどのように把握してこられたかという点について、まずお聞かせいただければと思います。

武藤国務大臣 委員の御地元藤枝、私の地元でも、うちは十五万人ぐらいですから、ほぼ同じ。中小企業九九・九%。まさに物づくりの集積地でもありますけれども、委員おっしゃられるように、今、こういう形で、やっと下請法の改正がやれるという形になりました。

 この背景に至っては、下請Gメンというものによって年間一万社を超えるヒアリングに加えまして、毎年二回、三十万社から価格交渉、転嫁できたかなどを調査するとか、また、中小・小規模事業者の取引実態について把握に努めてきているところであります。

 個別の事業者からは、価格交渉にすら応じてもらえない等の声も伺っておりまして、また、価格転嫁率というのも直近の調査ではまだ四九%、まだ道半ばでございます。価格転嫁は本当に厳しいなというのが正直なところですけれども。

 昨年七月から、公正取引委員会と中小企業庁、これが企業取引研究会というものを開催しまして、中小企業経営者、また中小企業団体から直接伺った厳しい取引実態を踏まえて、下請法の改正の検討を進めてきたところです。

 この研究会と並行して、中小企業が所属する団体も含めて計二十八の業界団体へのヒアリングも行い、そうした声を十分に踏まえ、下請法の改正案を提出させていただいたところです。

 今日もこの審議でいろいろと、各委員の先生方から様々な御指摘もあろうかと思います。いずれにしましても、さっき大島先生がおっしゃられたように関税問題もあり、刻々と世の中が変化する中で、何とか皆さんの御指導、御意見をいただきながらこの法律がしっかりできるように、よろしくお願い申し上げたいと思います。

鈴木(岳)委員 現状認識、非常に厳しいということを把握されているということで、今回の改正案の提出に至ったということでありますけれども、様々に調査して、入り込んで、様々な中小企業の方のお声を聞いていただいているというのは大変ありがたいことかなと感じます。

 今お話の中で出てきました下請Gメンというものが様々に活動されているということでございますけれども、この下請Gメンという方々にはどれほどの権限が付与されて、行使されてきたのか。

 私のイメージでいくと、例えば麻薬Gメンという方がいますよね、麻取というやつですか、あのような方々は捜査権があって逮捕権があって拳銃も持っていいとか、あるいはトラックGメンとか、先ほど大島先生がおっしゃられた建設Gメンとか、Gメンというと物すごい権限があって、悪をばっさばっさと切っていくような、そんなイメージもあって、我々庶民のために役立ってくれるのかなと思うんですが、この下請Gメンというのはどのような権限があるのかという点についてお尋ねいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 下請Gメンは、本省と地方局を合わせ約三百三十名体制でありまして、全国の中小企業の取引実態につきまして、先ほど大臣からもございましたが、年間一万件を超えるヒアリングを行っておるところでございます。

 ヒアリングの内容といたしましては、価格交渉や転嫁など価格決定方法や、手形等の支払い条件、型の保管状況など、中小企業の取引適正化に関連する幅広い事項についてこれを行っているところでございます。

 この下請Gメンの調査結果につきましては、例えば自動車や産業機械などの業種別に取りまとめをいたしまして、各業界団体へ問題点等を指摘し、取引適正化に向けた自主行動計画の策定や見直し、その遵守のために活用してきているところでございます。

 また、毎年三月、九月の価格交渉促進月間では、下請Gメンのヒアリングも活用して、価格転嫁の状況の芳しくない発注事業者への指導助言も行ってきているところでございます。

 さらには、公正取引委員会とも連携しまして、このヒアリング結果を下請法の執行強化の側面でも活用しておりまして、こうした連携を一層深めてまいる所存でございます。

 このような下請Gメンが、取引の実態を把握する中で、事業者に対しまして、取引適正化に有益な施策情報を提供するという役割も果たしております。

 下請Gメンにお寄せいただいた貴重な現場情報は、秘密を厳格に管理した上で、個別の発注企業の取引方針の改善から業界全体での取引慣行の改善まで幅広く活用し、日本経済の取引適正化の推進に引き続き役立ててまいる所存であります。

鈴木(岳)委員 下請Gメンの方は、大変多くの仕事をされて、何万件ものヒアリングを行っているということでございますけれども、ただ、そこで、私が思うところは、指導助言、連携強化ということでございますけれども、もう少し権限を強化して、強力な、捜査権とまでは言いませんけれども、強制的にやらなければならないということまでできるようなものも今後御検討いただいた方がいいんじゃないかと思います。

 もちろん、ほとんどの発注側の経営者の方も発注担当の方も、そういった下請Gメンの方とかが来れば、ある程度、やらなきゃならないという意識にはなると思いますが、やはり海千山千の経営者の中には、面従腹背といいますか、聞いたふりだけして実行しないという方も恐らくはいることはもう容易に予想がつきますので、今後その権限強化ということも是非お考えいただいた方がよろしいんじゃないかということをここでちょっとお願いをさせていただきたいと思います。

 今回の法案は、何といってもやはり価格転嫁を進めなければならないということがメインになってくるかと思うんですが、その中で、先ほど来お話も出ていますパートナーシップ構築宣言のことについてお尋ねをしたいと思います。

 このパートナーシップ構築宣言が、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージなどというものが政府によって進められてきたということを聞いておりますけれども、この施策パッケージと価格転嫁対策との連動性というのがちゃんとできているのかどうか、又は、パートナーシップ構築宣言によって価格交渉がしやすくなってきたという実績がこれまでどれほどあるのか、あるいは、パートナーシップ構築宣言を発しても価格転嫁に応じていない発注側の企業というのもあるかと思うんですが、その辺りにどのように対応してきたかという点についてお聞かせいただけますでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 パートナーシップ構築宣言の拡大、実効性強化は、政府全体の価格転嫁対策として令和三年に打ち出されておりますパートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージの重要な取組の一つに位置づけられております。

 このパートナーシップ構築宣言による価格交渉への影響につきましては、中小受託事業者向けのアンケートを行っておりまして、このアンケートにおきまして、取引の相手方、中小受託事業者から見てパートナーシップ構築宣言企業は、価格交渉、価格転嫁、いずれについても、パートナーシップ構築宣言を行っていない企業と比べて優れた対応を行っている傾向があるとの結果が出ておりまして、一定の効果があるものと考えてございます。

 また、パートナーシップ構築宣言は下請振興法の振興基準を遵守することとしておりまして、価格転嫁に係る協議、労務費指針に沿った行動や適切なコスト増加分の全額転嫁等を求めているところでございます。

 宣言企業が下請法の勧告を受けた場合など、宣言を履行していない場合、宣言のポータルサイトへの掲載を取りやめることとしております。この結果、賃上げ促進税制の利用ができなくなるといった効果もついてまいりますけれども、引き続き、こうした宣言の実効性向上に向けて取組を進めてまいる所存であります。

鈴木(岳)委員 やはりパートナーシップ構築宣言をやってくださる企業はちゃんとその対応も行ってくださる、一定の効果があるということで、その点は非常に安心をします。

 このパートナーシップ構築宣言は、私も地方に住んでおりますけれども、私の地元でも静岡県が県庁を挙げて取り組んでくださっているようでございます。主に、どうも都道府県の方々が熱心に取り組んでいるということを感じるわけでありますけれども、これは国と都道府県がどのように連携してやっているか、あるいは、パートナーシップ構築宣言を宣言しない企業でもちゃんと価格交渉にも応じているというところもあるかと思うんですけれども、それらの企業が宣言を行わない理由というのもあるかもしれないと思うんですけれども、そういったものは把握されておられますでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 パートナーシップ構築宣言につきましては、経済産業大臣から各地方経済産業局長に対しまして、地方自治体や経済団体に対し宣言拡大に向けた働きかけを行うよう指示をしておるところでございます。これを踏まえまして、各自治体と各地方経済産業局が宣言普及のための会議を共催するなど、地域における更なる宣言の拡大を図ってきているところでございます。

 この結果、各都道府県におきましては、宣言の普及に向けた自治体と経済団体の協定の締結でありますとか宣言企業への自治体補助金による加点措置を講じるなど、地域での宣言拡大に向けた取組が行われまして、今や全ての都道府県において行われておるところでございます。また、今般改正する下請振興法の中でも国、地方公共団体の責務規定を新たに設けること等によりまして、一層の自治体との連携強化を図ってまいる予定としております。

 引き続き、自治体と連携しながら取組を進めてまいります。

 また、パートナーシップ構築宣言につきましては、先週、四月の十一日時点で、既に約六万四千社が宣言を行っていただいております。価格交渉にきちんと向き合う、しかしながら宣言をしておられない企業におきまして、宣言を行わない理由を承知しているかとの御質問でありますけれども、これはつまびらかには把握をしてございませんけれども、価格交渉に真摯に向き合う姿勢であるとすれば、それは振興基準に則したものでございますので、そのような取組は称揚されるべきすばらしいものと考えてございます。

鈴木(岳)委員 パートナーシップ構築宣言、宣言してくださる企業も、していない企業でも、ちゃんと価格交渉に応じてもらえるようにということで、今後、法律の面でも強化していっていただきたいということが今回の改正案の趣旨にもなってくるかと思いますので、今回の改正案の具体的内容の方も次にちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 今回の改正案では、価格転嫁の実現のために様々な内容が盛り込まれております。価格据置取引への対応とか、手形払いの禁止とか、規制対象を強化するとかということですけれども、これに違反した事業者に対する指導とか勧告というのはどのようにやっていく予定でしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会では、この法律の執行に当たりまして、違反事業者、違反行為、そういうものを積極的に調査をするというような取組をしております。

 具体的には、書面調査というのを毎年やっておりまして、これは、やはり違反があっても取引構造上なかなか申し出にくいということもありますので、積極的に発注者に対してまず質問書を送る、そして、そこと取引しております受注者、そことの取引関係についても反面調査をするということで、大規模な調査対象というものを絞り込むということでございます。

 その結果、例えば令和五年でございますが、重大な事案につきまして十三件の勧告をしております。勧告につきましては、その事業者名、内容につきまして公表するということになっておりまして、公表はしないものでございますが、八千件以上の指導も行っておるということでございます。令和六年で申しますと、二十一件の勧告ということでございます。これは平成以降過去最高ということでございまして、指導につきましても八千件ということでございます。

 このような勧告、指導を行いますとどういう効果があるかということでございますと、その違反行為をまずやめていただくということもございますし、さらには、例えば代金の不当な減額というのがこの法律では禁止をされておりますが、そういう行為があった場合には、その減額分につきまして、受注者に返しなさい、いわゆる原状回復を求めるという内容になってございます。具体的な内容といたしましては、令和五年でございますが、受注者約六千名以上に対しまして、総額約三十七億円相当の原状回復を行っておるということでございます。

 このように、勧告、指導につきましては、取引の公正化という観点と受注者の利益の保護という観点に資するというものでございますので、引き続き、この法律の執行につきまして、迅速かつ効果的に対処してまいりたいと考えてございます。

鈴木(岳)委員 今までも厳しく取締りが行われてきたということで、これからも更に行うというお答えだったかと思います。

 今回の法改正において、下請事業者が中小受託事業者に、親事業者が委託事業者に呼称を改めるとされておられますけれども、これはどのような理由によるものなのか。また、これによってどのような効果があるでしょうか。これによって全ての業種、業態に価格転嫁の交渉促進が進んでいくと考えるか、その点についてお聞きしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 下請という用語につきましては、受注者が発注者よりも下であり、対等な立場ではないかのような語感を与えるということでございまして、現場の声といたしましても、そういう言葉を聞くと非常に耳障りだというようなことでございます。

 そして、昨今では、取引当事者間でも、親や下請、そういう言葉を使わないようにしているというふうに聞いておりまして、特に発注者につきましても、購買担当の人に対しましてそういう言葉は使わないということを徹底しているような企業もあるということでございまして、こういう意識が変わりつつあるということでございます。

 このような時代の変化、当事者間の意識の変化ということも踏まえまして、今回の改正におきまして、下請事業者を中小受託事業者などとするような、いわゆる従属的な意味合いを含まない用語に改正をしたいというものでございます。

 このような改正をいたしますと、受注者と発注者の間には上下関係があるかのようなイメージを与えます従来の下請、親というような言葉がなくなるということでございますので、相互に対等な立場で交渉を行う機運というものが醸成されるのではないか、そうしますと、ひいては、幅広い業種、業態におきまして実効的な価格協議というものが促進される、その結果、取引の適正化の推進が進むのではないかという効果を期待しているところでございます。

 公正取引委員会といたしましては、取引適正化の推進に向けまして、事業者の皆様の意識を変えていただくために周知活動を徹底するということを取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

鈴木(岳)委員 本当にそうですよね。ビジネスの場において、上とか下とかというのがあるわけじゃなくて、本当に対等に仕事と仕事でつながるというのがあるべき姿ではないかなと私も感じております。

 それでは、これまでも様々に下請法の違反の事例というのがある中で、更に強化していくとなると、これは本当に、こちらの行政側の体制も、もっと仕事がどんどん増えてきちゃうかと思うんですけれども、これからの監督体制の強化とか違反者へのペナルティーの実効性というのはどのように担保していくか、体制強化をこれからやっていくのか、できるのかという点についてお聞きしたいと思います。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、体制につきましては、関係当局とも相談いたしまして、必要な体制というものが講じられるように取り組んでいきたいと考えてございます。

 そして、今回のこの法律におきましては、やはり関係省庁との連携というものが重要というふうに考えてございます。

 従来は、中小企業庁、公正取引委員会、こちらが調査をいたしまして、問題がありましたら指導するということでございましたが、今後は、業界の知見のあります事業所管省庁におきまして調査をいたしまして、問題があれば直接指導助言ができるということになりますので、違反行為に対する抑止力というのも高まるのではないかというふうに考えてございます。

 さらには、今回の改正法におきましては、勧告の内容につきましても若干の改正をしようと考えているところでございます。

 具体的には、例えば減額をしたということで勧告をいたしまして、原状回復ということで減額分をお返ししなさいということを勧告の内容に従来盛り込んでおるんですが、今回の改正によりましては、それに更に遅延利息というものも上乗せして勧告の内容とするというようなこと、そのような勧告内容の拡充というものも図っておるということでございます。

 そして、もし勧告に従わないということになりますと、その後には、この法律は独占禁止法の優越的地位の濫用の補完法という位置づけでございますので、独禁法に基づきまして、厳格な措置ということで、行政処分であります排除措置命令とか課徴金納付命令が待っておるというようなことになってございます。

 このような法律でございますので、引き続き、先ほど申し上げましたように、中小企業庁や事業所管省庁と一緒に、違反行為というものを見つけますと、厳正に対処していきたいというふうに考えてございます。

鈴木(岳)委員 内容も相当厳しくして対応していくということであると受け取りました。

 そうしますと、端的にお聞きしますけれども、今回の法改正によって、今までよく言われていた下請法の適用逃れという言葉があったかと思いますけれども、この適用逃れというのは根絶できると考えてよろしいでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる法の適用逃れということでございますと、これは何かといいますと、この法律は、資本金区分によりまして取引が確定されておるということでございます。そうしますと、例えば事業規模は大きいんですが資本金が少額であるというような事業者は、この法律の発注者に該当しないということでルールが適用されない。そのほか、自ら資本金を減資をするというようなことによりまして、この法律の適用を受けます発注者から逃れるというような問題、さらには、相手方に対しまして、私と取引をしたいのであれば資本金の増額をしてくださいというようなことを求めるというようなものが御指摘のような適用逃れというものでございます。

 このようなものにつきましては、企業取引研究会でも検討いたしまして、資本金基準に加えまして、従業員基準というものを導入しようということでございます。

 従業員というのはなかなか、ビジネスをやっておりまして大幅に増減をさせるということは難しいということでございますので、従来のように資本金がちっちゃくても、従業員を一緒に縮小させるというようなことは難しいということになりますので、そういうような観点からは、この法律の適用から逃れるということは難しくなってくるということでございまして、適用の範囲というものが拡大することを期待しているところでございます。

鈴木(岳)委員 下請法適用逃れ、今まで想定されていたものは、これでほとんど解消されるというお答えだったかと思います。

 ただ、敵もさるものというか、どこかを直せばまたどこかから綻びを見つけてくるということも考えられますので、新たな適用逃れというのが出てくるかもしれないということもまた念頭に置きながら、そういった部分への対応というのもこれから随時行っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 次に、今回の改正で対応し切れない部分という点があるかどうかという点についてお聞きします。

 例えばフリーランスや個人事業などの取引なども今回の対象とされるのでしょうか。いかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正におきまして、下請法の適用対象拡大という御説明が先ほど公正取引委員会からございましたけれども、例えば中小企業同士の取引など、対象外となる部分は存在しております。

 一方で、構造的賃上げの実現のためには、下請法の対象外となる中小企業同士の取引も含めて、サプライチェーン全体での取引適正化が重要でございまして、中小企業同士の取引も対象となり得る下請振興法の振興基準の活用、これを考えてございます。また、先ほど御説明申し上げましたように、業界ごとの自主行動計画の改定、徹底などの取組もございます。

 いわゆるフリーランスにつきましては、そのための法律もございますので、取引適正化を総合的に進め、定着させてまいる所存であります。

鈴木(岳)委員 やはり一部対象にならないという方もあるかと思いますが、やはり、仕事をいただいたらちゃんとお金を払っていただくというのは、これはもうビジネスの基本でありますので、なるべく漏れがないようにこれからも御対応を期待していきたいと思っておりますので、その対応は是非お願いいたします。

 今、価格転嫁というのをみんなで推し進めようとしているわけですけれども、基本的には、商売というのは安く買って高く売るというのが基本であるかと思っております。ですので、発注側の仕入価格を抑えるというのが企業努力と言える部分があるかと思いますが、これによって違反となる場合とならない場合の差というのはどの辺りで見つけていくおつもりでしょうか。お伺いします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、企業努力なのか、それが新たな規定に違反するのかということでございますと、そこは個別の判断となるわけでございますが、例えば価格につきまして、両者が自由な意思に基づきまして交渉をして納得した結果なのかというところをよく見ていく必要があるのかなと思っております。

 例えば、受注者が製品ごとのコストを考慮いたしまして発注者に希望する価格を申し入れるとか、発注者が受注者からの申入れ内容の根拠をよく吟味する、そして合理的な根拠を示しながら申入れを受けるかどうかを示すというような場合で、お互いに納得して取引価格を決めたということになりますと、そこはお互いの企業努力によって決定をするということでございますので、そういうものにつきましては価格が取引当事者間の自由な意思に基づきまして決まったということでございますので、そういうものは問題とならないということでございます。

 一方で、それは形式的な協議という形を整えているだけだというようなものにつきまして、発注事業者が、受注事業者も納得していない価格を押しつけられているというような状況になりますと、新たに規定をいたします禁止に違反をするということとなりますので、具体的にどういうものが問題になるかというものにつきましては、仮にこの法律が成立いたしまして施行されたということになりますと、運用基準など、そういうものを示しながら考え方の明確化を図っていきたいというふうに考えてございます。

鈴木(岳)委員 そうですよね。確かに両者が納得していれば高くなっても安くなってもそこは問題ないというのは当然のことでありますが、問題は、片方だけの気持ちで、主には発注者側の思いだけでどんどん下げられてしまうというところが問題になっていますので、そこはもうどんどん取り締まっていくというのが本改正案の趣旨かと思いますので、そこはまた今後も強化していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 済みません、ちょっと時間もなくなってきちゃいましたけれども、最後に、下請側とか受注側の立場の弱さというのがこの下請の問題の根本であるかと思うんですけれども、今回のこの改正案によりましてその構造的な課題にどれほど切り込んでいけると考えているか、政府の思い、これをお聞かせいただけませんでしょうか。大臣、お願いします。

伊東国務大臣 たくさんの御提言をいただいたところでございます。

 立場の弱さという根本課題についてのお尋ねでありましたけれども、近年の急激なコスト上昇を受けまして、発注者と受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で構造的な価格転嫁を定着させることが重要な課題となっているところであります。

 このため、改正法案では、実効的な協議が行われることを確保し、交渉力の弱い受注者が一方的に価格を押しつけられることのないよう、価格交渉、決定に当たりましては、協議の求めに応じることや、あるいは協議の際に必要な説明や情報提供を行うことを新たに義務づけることとしております。

 また、構造的な問題を乗り越えサプライチェーン全体での価格転嫁を進めるには事業所管省庁による対処も重要でありまして、事業所管省庁の権限につきましても必要な規定を盛り込んでおります。

 他方で、デフレ型の商慣習から脱却するためには、自社の商品やサービスの価格を据え置き、その原資を取引先に求めるという旧来の社会的規範を変えていく必要があろうかと思います。

 これを実現するため、公正取引委員会におきまして本法や優越的地位の濫用規制を引き続き厳正に執行していくことに加え、担当大臣としても、労務費転嫁指針の普及啓発などにつきまして、中小企業庁や事業所管省庁とも連携してしっかり取り組んでまいりたい、このように考えております。

鈴木(岳)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、新谷正義君。

新谷委員 自由民主党の新谷正義です。

 本日は、この経産委員会の場で質問時間をいただきまして、ありがとうございます。宮崎委員長、理事の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。

 下請法、下請振興法の法案審議に際しまして、まず、米国における関税の問題に関しまして政府にお伺いをさせていただきたいと思います。

 せんだって、加藤政務官におかれましては、私の地元である広島に視察に来ていただきました。主に自動車生産及び関連サプライチェーンとの車座での対話あるいは視察におきまして、自動車生産現場における非常にシビアな原価低減などの取組を御覧になられた、そのように思います。

 こうした中で、米国政府は二五%関税をプラスしようとしているところであります。これまでも質問が多数出ておりましたけれども、車は、アメリカでの値段をそのまま据え置くとすれば、価格をその分、吸収をしなきゃいけないんですけれども、これは既に生産者の努力によって吸収できる枠を明らかに超えている、そのように指摘をされているところであります。

 自動車メーカーは大変裾野の広い産業でありまして、完成車メーカーにおいては、国内生産を維持することによって、地域のサプライチェーン、これを通じて地域経済、雇用に大きな貢献をしているところであります。整備とか販売まで含めたら、およそ我が国で五百万人以上がこの産業に従事をしている、そのような指摘もされておるところであります。

 政府といたしましては、米国との関税協議、これに全力で取り組んでおられることと思いますけれども、もしこの関税がかかり続けるのならば、自動車産業全体への影響、これは非常に深刻なものになる懸念があるところであります。

 加藤政務官におかれましては、この視察においての率直な感想と、また関税問題における自動車産業に対する想定と、あるいは想定される対策をお答えいただきたく思います。よろしくお願いします。

加藤大臣政務官 新谷委員の御質問にお答えをさせていただきます。

 去る四月三日、アメリカの関税措置の影響を受ける対策といたしまして、経済産業省の中に米国関税対策本部を武藤大臣の指令の下で設置をしたところでございます。

 その中で、様々な国内の経済体制、産業界への影響をプッシュ型で把握をするべく、先般、委員のお地元の広島県に私も出向かせていただきました。その中で、マツダ株式会社及び生産体制のサプライヤーの皆様方と車座対話で、皆様方の御意見を伺ってきたところでございます。

 海外の輸出向けの大半をアメリカに委ねているというようなマツダ自動車の販売体制の中で、今回の影響力の大きさというのを改めて実感をいたしましたと同時に、集積するサプライヤーの皆様方の企業のつながりの深さということを改めて実感をいたしましたときに、やはりこの関税の影響力というのが、地域経済に及ぼす大きな影響力というのを感じた次第でございます。

 現場の御意見の中では、今後の見通しの不透明さに関する不安というのが大変大きな意見でございました。さらには、その中で、売上げが落ち込んだときの資金繰りの支援、さらには雇用維持の支援、この支援に対します国への期待感というものの大きさを感じてまいりました。さらには、前向きな御意見といたしましては、ピンチをチャンスに変えるんだというような御意見の中で、人材育成であったり、さらには設備投資であったり、また新事業への挑戦、このような様々な体制についての国からの支援の強化というのを是非ともお願いしたいという声をいただきました。

 経済産業省としましては、特別相談窓口というのを全国に約千か所設けておりまして、広島県関係では二十八か所、経済産業局、またさらには政府系金融機関、そして商工関係団体の皆様方に御協力をいただいて相談窓口を設置をすると同時に、これからの資金繰りの支援の強化、さらには設備投資、新事業への様々な支援の強化について、実際に今検討を行っているところでございます。

 引き続き、この影響把握を切れ目なく続けると同時に、産業に及ぼす影響力につきましてしっかりと精査をして、それらが現状にどのような、自動車産業を始めとする我が国産業を守るための追加措置が必要なのかということもしっかり行っていきたいと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 まさに、これまで国として取り組んできた中小企業政策、その強化にもつながるところだろう、そのように思っております。是非対策を進めていただきたいと思います。

 加藤政務官、もう御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

宮崎委員長 それでは、加藤政務官は退席をしていただいて結構です。

新谷委員 次に、米国は対日貿易赤字をひたすら訴えているところであるんですけれども、一方、我が国のデジタル貿易赤字、これはせんだっての半導体の法案でもいろいろ様々出てきたところではあるんですが、デジタル貿易赤字は六・五兆円となっているところであります。放置すればこれはますます拡大するおそれがありますし、まさに、先ほど政務官はピンチをチャンスにということをおっしゃいましたけれども、これを覆していく気概が求められているとも考えておるところでございます。

 その中で、介護事業におけるデジタルサービス、これも一つこの赤字を覆していく柱になるのではないか、そのように思っておるところであります。

 国内的には、介護事業はもう慢性的な人手不足でありますし、DX、これは必須の状況となっておるところであります。そのために、現在経産省で進めているところの介護DXを利用した抜本的現場改善事業、これの拡充を進めて、国内の設備投資、そしてモデルづくりの推進を進めていくべきと考えておりますが、御見解を伺いたいと思います。

 さらに、こうした世界情勢の中にあって、日本が先を行く産業として世界で打ちかつためには、逆に介護産業はチャンスを有している、そのようにも考えておるところであります。

 アジアを中心とした各国が、介護サービスあるいは介護制度を本格的に、これから高齢化を迎え、少子高齢化ということで整備を進める中で、日本の介護テクノロジーとオペレーションを含めたジャパン・パッケージとしてこれを海外に浸透させることができれば、我が国にとっても大きなビジネスチャンスになるのではないか、そのようにも思っておるところであります。そのために、日本の介護パッケージの海外展開を強力に進めるべきと考えておりますけれども、両方併せて見解を経産省にお伺いしたいと思います。

江澤政府参考人 お答え申し上げます。

 介護の質の向上及び効率化のため、介護テクノロジーの活用は大変重要であると考えています。

 その開発及び普及をモデル的に推進するため、御指摘の介護DXを利用した抜本的現場改善事業を令和六年度の補正予算にて計上したところでございます。

 本事業では、介護DXモデルを全国約九十か所に確立し、地域において高い効果を上げた先進事例の横展開を強力に推進することで、介護現場のDX化を加速させ、現場改善を図るものであります。

 現在、同事業の公募を行っているところでございまして、事業の実施を通じて高い先進性のあるモデルを確立し、日本の介護テクノロジーをパッケージ化するということでございまして、横展開を推進していきたいと考えております。また、こういったことによって海外への展開も強力に推進していきたい、このように考えております。

新谷委員 ありがとうございます。是非強力に推し進めていただきたく、そのように思います。

 次に、トラック業界における取引の適正化についてお伺いをいたします。

 トラックの業界構造の特徴、これは多重下請構造にある、そのように考えておるところであります。

 多重下請構造の下では、実際に商品を運搬する実運送事業者に支払われる運賃が、抜かれる分、低下していきまして、適正な利益確保が困難となっているところであります。運送事業者の経営だけではなくて安全運行の観点でも悪影響がある、そのように思っておるところであります。

 本来ですと、私としては、そもそも余りにも四次請、五次請というような多重下請構造自体は解消すべきじゃないか、そのように思っているところではあるんですけれども、なかなか容易ではないところがありまして、その存在を前提としても、この法改正を機会にできる限りの対策を取っていかなければならない、そのように思っておるところであります。

 今回の改正法案では、荷主から運送事業者への運送委託も新たに規制の対象に加えるとともに、事業所管省庁の大臣には下請法の指導権限が与えられることになります。

 そこで、国交省に伺いたいと存じます。

 国交省ではこれまでもトラック事業法あるいは物流効率化法によりましてトラック業界の適正化に取り組んできたと思うところでありますけれども、国交省として、今般のトラック業界の適正化に向けて法改正をどのように活用していくか、それをお伺いしたいと思います。

 また、あわせて、これまでも下請Gメン、トラックGメンがいたわけでありますけれども、それに加えて、更に人員、予算を拡充して公正取引委員会の監視機能を強化すべきと考えておりますが、これに関しては公正取引委員会にお伺いをしたいと思います。よろしくお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省におきましては、貨物自動車運送事業法に基づきまして、トラック・物流Gメンによる荷主等の違反原因行為への是正指導を行うとともに、適正な運賃の収受ができる環境の整備を進めているところでございます。

 今般の下請法改正法案におきましても、御指摘いただきましたとおりでございますけれども、荷主から運送の発注行為も下請法の対象とした上で、協議に応じず一方的に価格を決めることの禁止、あと、国土交通大臣等に対する指導助言権限の付与などの規定を盛り込ませていただいたところでございます。また、トラック・物流Gメンへの情報提供者も、報復措置の禁止により保護をされるということになっております。

 このように、改正後の下請法の運用を通じまして、国土交通省と公正取引委員会や中小企業庁との連携が深まりまして、それぞれのノウハウや強みを持ち寄ってより有効な指導が可能となると考えております。

 国土交通省といたしましても、今回の法改正をトラック・物流Gメンの是正指導等の活動に十分に生かさせていただきまして、物流全体の取引適正化に引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、緊急増員とか、取引適正化担当の官房審議官を昨年の四月でございますが新設をするなど、この法律に基づきます調査、執行体制の強化に努めてきたということでございます。

 改正法案につきましては、委員御指摘のとおりでございまして、各業界に関して知見を有する国土交通省のような事業所管官庁、そういうところに対しまして、現行の調査権限に加えまして、問題行為につきまして指導助言をする権限、そして情報共有をするというような枠組みをつくったわけでございます。

 この点も踏まえまして、令和七年度の四月、つい最近ですが、今年の四月からでございますが、執行連携の担当官、これは企画官級でございまして、その方も活用いたしまして、国土交通省を始めといたします事業所管省庁との連携強化を進めるとともに、公正取引委員会においても、関係当局などとも相談いたしながら必要な体制の確保を図る、それによりまして更なる価格転嫁、取引適正化の推進に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。

新谷委員 ありがとうございます。是非、連携と強化、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、防衛産業に関してちょっと質問させていただきたいと思います。

 防衛産業も多重下請構造が言われているところでありまして、今般、防衛省と経産省が連携してガイドラインを策定するなど、連携を進めておられるところであります。是非実効性を確保していただいて進めていただきたい、そのように思っております。

 一つ、スタートアップの育成とサプライチェーンを積極的に後押しする、こういったことも課題となると思うんですけれども、それを是非お答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘の防衛産業における下請適正取引等の推進のためのガイドラインを三月に作りました。実効性の確保に向けまして、防衛省や業界団体と連携しまして、下請Gメンなどを活用しながら、継続的にフォローアップしてまいります。

 また、スタートアップの優れたデュアルユース技術の活用に向けましては、これまで、防衛省と共催する防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会、これにおきまして、スタートアップと防衛省のマッチング機会を提供してきまして、参加企業の調達実績を創出してきました。

 一方、防衛分野における更なるデュアルユース技術の活用に向けましては、競争力のある企業の創出、育成が不可欠でございます。こうした観点から、具体的な取組として、デュアルユース分野のうち無人機に焦点を当てて、我が国の産業基盤強化に向けた政策の方向性を産学官で議論していく検討会を設置する予定です。

 防衛省を始めとする関係省庁と連携しまして、民間と防衛双方の需要を取り込み、需要側と供給側の取組を一体的に進めることにより、デュアルユース産業基盤の構築、サプライチェーンの構築を図ってまいりたいと考えております。

新谷委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。ありがとうございます。

宮崎委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 時間の制約もありますので、早速質問に入らせていただきます。

 四月十一日の本会議におきまして、私は、武藤大臣に対し、米国の相互関税導入という予測不能な荒波に備え、日本経済、特に中小・小規模事業者の生命線を守るため、万全の体制を構築するよう強く求めました。

 九日、トランプ大統領は九十日間の停止措置を発表し、一時的な安堵をもたらしましたが、一〇%の基本税率部分が継続されているという事実は、依然として我々経済が不安状況に置かれていることを示唆しています。

 さらに、米中両大国の報復関税合戦は、世界経済を揺るがす巨大な渦となりつつあります。この米中戦争が長期化すれば、日本経済を取り巻く、とりわけ中小・小規模事業者の資金繰りに壊滅的な打撃を与えることは避けられません。二〇〇八年のリーマン・ショックの記憶は生々しく、黒字経営であっても、資金繰りの悪化が企業をいともたやすく倒産に追い込みました。

 明星大学の細川教授は、我が党の機関紙で、セーフティーネット貸付けの重要性を述べた上で、トランプ関税への対応に限らず、これを機に、中小企業が従来から抱える後継者不足や事業承継などの課題に対し、全体の基盤を強化することも必要であり、労働環境や雇用を守るため、企業の足腰を強くする中長期的な対策を併せて講じるべきと指摘しております。

 細川教授が指摘する企業の足腰を強くする中長期的な対応は、まさに今回の下請法改正と深く連動しております。この危機を乗り越え、日本経済を新たな成長軌道に乗せるために、政府の英断と実行力を強く求めるものであります。

 そこでお伺いをいたしますが、今回の下請法改正が中小・小規模事業者の基盤強化にどのように貢献するとお考えでしょうか。政府の御見解をお伺いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、米国政府による関税措置への対応に限らず、中長期的な視点で中小企業の足腰を強くする対策が重要でございます。

 今回の改正法案は、発注者による一方的な価格設定を禁止するほか、資金繰りの負担をしわ寄せする手形による支払いを禁止するなど、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁、公正な取引慣行を定着させるものでございます。これにより中小企業が適切に利益を確保できるようになれば、更なる成長に向けた投資や賃上げの原資の確保の後押しにつながると考えてございまして、中小企業の経営基盤の強化につながるものと認識しております。

 さらには、事業承継への支援や生産性向上支援など、中小企業の足腰を強くする中長期的な対策を中小企業庁として引き続きしっかりと講じてまいる所存でございます。

福重委員 ありがとうございました。

 今、更なる成長に向けてということがございました。これは本当に、短期的に見るのではなく、中長期的に見て、やはり稼げる中小企業、小規模事業者をつくっていくことが大事なことだと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 昨年公表された骨太方針では、「サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」を実現する。このため、独占禁止法の執行強化、下請Gメン等を活用しつつ事業所管省庁と連携した下請法の執行強化、下請法改正の検討等を行う。」と示されました。

 公正取引委員会では、令和五年度に十三社、令和六年度に二十一社を下請法に違反したとして勧告し、企業名を公表しました。日本商工会議所の小林会頭は、下請法に抵触しそうなことをやっている大企業の名前は当然公表されていいと述べ、公正取引委員会に取組の強化を求めました。

 今回の法改正は、単なる罰則強化ではなく、執行の強化及び充実を図るための法改正であります。その実効性を最大限に引き出すためには、公正取引委員会、中小企業庁、そして各事業所管省庁の緊密な連携と情報共有が不可欠であります。

 そこでお伺いをいたしますが、下請法改正を踏まえ、執行の強化及び充実に向けて政府はどのように取り組まれていくのでしょうか。公正取引委員会の御見解をお伺いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、中小企業庁との間で、職員間の人事交流、そして調査担当者同士の定期的な連絡会議などを通じまして、違反問題に関します各種情報、そして調査に係るノウハウ、そういうものの共有を行ってきておるところでございます。

 そして、国土交通省との間では、トラック・物流Gメンに対しまして、この法律につきまして研修を行うとか、問題があるような事例がありましたら通報していただくような枠組みを設けるということをいたしまして、従来から連携を強化してきたところでございます。

 今回の改正法では、国土交通省を始めといたしました事業所管省庁におきましても、問題行為に対しまして直接指導助言ができるという権限が明記された、さらには、関係機関の間で相互に情報提供を行うという枠組みも法律上明記されたということでございます。

 これらを踏まえまして、公正取引委員会といたしましては、違反行為につきましては、先ほど御紹介がございましたが、勧告、公表というものを積極的にしていくとともに、事業所管省庁におきましてもこの改正法がしっかり施行されますように、関係機関との間で協力体制の構築というものを図ってまいりたいと考えてございます。

福重委員 ありがとうございました。

 この間の本会議場でも言ったんですけれども、トラック運送業界が一番価格転嫁ができていない、そういった意味では、本当にトラックGメンさんは頑張っていただいているわけでございますけれども、やはり省庁間を超えて連携をしっかり取って実効を担保していく、そういったものをしっかり取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 サプライチェーンの階層が深まるほど価格転嫁率が低くなることは、統計や調査結果から明らかであります。これまでの商慣習は、一次取引先にのみ目が向けられ、二次、三次取引先の苦境を見過ごすことがありました。

 しかし、今回の振興事業計画の見直しは、この閉塞状況に風穴を空ける可能性を秘めております。この制度は、下請事業者が、親事業者の協力を得て、設備の導入や技術の向上、事業の共同化等の事業について振興事業計画を作成し、国の承認を受けることによって、融資等金融上の支援を受けることができるスキームであります。これまで一次取引先に限定されていた国の承認と支援が今回の改正により二次、三次取引先にも拡大されることは、サプライチェーン全体の底上げを意味します。

 しかし、制度の拡充だけでは十分ではありません。中小・小規模事業者の潜在能力を最大限に引き出し、サプライチェーン全体の競争力を高めるためには、具体的な支援の方向性と振興事業計画の活用促進策が不可欠であります。

 そこでお伺いをいたしますが、二次、三次取引先に対する具体的な支援の方向性及び、振興事業計画の活用を促進するためにどのような広報活動や相談体制を構築するとお考えでしょうか。政府の御答弁を求めます。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今回の下請法の改正には、複数の取引段階にある事業者が共同で効率化や投資等を行う事業に対して承認、支援を可能とする計画の追加を盛り込んでございます。

 より具体的には、例えば、ティア1、ティア2、ティア3に当たる事業者が共同で製品の改善や生産効率化に取り組む計画に対しまして、国が承認し、支援することとしております。これにより、直接の取引先との関係を超えて、サプライチェーン全体で連携した取組を促してまいりたいと考えます。

 この振興事業計画の活用促進に当たりましては、事業者に対して計画策定のメリット等を丁寧に周知してまいる所存でございます。

 加えて、事業者の望ましい取引慣行を定めた振興基準におきましても、直接の取引先の更に先の事業者との連携を促す旨、これを反映することによりまして、事業者に、サプライチェーン全体での取引適正化を進めてまいる旨、しっかり促してまいりたいと存じます。

福重委員 ありがとうございました。

 今も、ティア1、ティア2、ティア3で、サプライチェーン全体で取り組んでいくというようなことで、やはり小さなところがまとまってそういった大きな企業に向かっていく、また、設備だとかそういったものを充実させていくというのは非常に底上げになるというふうに思っておりますので、そういったところの生産性の向上だとか稼ぐ力だとか、そういったところに本当にいい意味に作用すると思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 下請企業振興法の改正では、地方公共団体は、受託中小企業振興に必要な取組の推進に努める、国、地方公共団体等が密接な連携の確保に努める旨を規定することになっております。

 現在、全国に設置されている下請かけこみ寺は、中小企業の生の声が集まる貴重な情報源です。この下請かけこみ寺に寄せられる中小企業からの声の一層の活用のため、連携強化を図ることを新たな取組として示されております。しかし、その活用、連携強化に限定することは、地域ごとの取引実情を考慮した全国的な価格転嫁の推進という観点からは十分とは言えないと考えております。

 地方公共団体は、地域の企業取引の実情を熟知しており、価格転嫁の推進において重要な役割を担うことができます。国は、地方公共団体とどのように連携し、その力を最大限に引き出していくのでしょうか。また、全国的な価格転嫁を実現するためには、地方の成功事例や課題について全国で共有することも必要と考えますが、政府の御見解を求めます。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、全国で価格転嫁を浸透させていくためには、各地域の事業者に身近な存在であり、その取引実態を詳細に把握し得る地方公共団体の役割が重要であります。そうした観点から、今回の下請振興法の改正では、地方公共団体の責務や国と地方公共団体との連携規定を盛り込んでおるところであります。

 具体的な地方公共団体との連携につきましては、例えば、労務費転嫁指針始め、取引適正化に関する国の施策を自治体から地域企業へ周知いただくことや、下請Gメンを活用した都道府県ごとの施策認知度の調査、さらには、地方公共団体が収集した取引情報を国にも共有いただき、取引適正化に関する施策の立案や法執行へ活用することなどを想定しております。

 また、各都道府県が独自に実施している価格転嫁促進に係る先進的な取組を地方経済産業局などを通じて全国の自治体に展開するなど連携を深め、全国津々浦々で価格転嫁を浸透させてまいりたいと存じます。

福重委員 ありがとうございました。

 次のパートナーシップの問題なんですけれども、時間が短くなってきましたので、ちょっとはしょって質問させていただきます。

 政府は、二月二十一日に首相官邸で企業間の取引適正化に向けた会議を開き、発注者側企業が下請法に違反し勧告を受けた場合などはパートナーシップ構築宣言のサイトへの掲載を取りやめる方針を示しました。

 宣言が取りやめられると、一部の税制優遇が使えなくなり、企業にとっては大きな痛手となります。パートナーシップ構築宣言は、単なる形式的なものではなく、企業の信頼性を担保する重要な指標でありますので、政府の厳格な対応と透明性の確保により公正な取引環境が実現することを強く期待しております。

 そこでお伺いをいたしますが、下請法違反の勧告を受けパートナーシップ構築宣言の掲載が取りやめられた企業は、最新のデータで何社あるのでしょうか。また、下請法違反などで宣言を取りやめられた企業が再び宣言をするためには具体的にどのような対策を行った場合に可能となるのか、御答弁をお願いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 パートナーシップ構築宣言公表要領に基づき、下請法違反の勧告を受けたことによりまして宣言のポータルサイトへの掲載を取りやめた企業、これは令和七年四月十五日時点で十一社となっております。

 また、再宣言につきましては、パートナーシップ構築宣言の公表要領において、掲載が取りやめになった日から一年を経過していること、また取りやめの原因となった事由について適切に対応している旨の十分な説明を業所管省庁に行っていることを宣誓することを要件としておりまして、宣言に即した対応がなされることを求めているところでございます。

福重委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、とにかく中小企業の皆さんが本当にもうかる体制、そして賃上げができる下請法改正になることを切に望んでおりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

宮崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。梅谷守君。

梅谷委員 立憲民主党・無所属の梅谷守です。

 今日は、この質疑の機会をいただきました先輩、また同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。

 まず、私の方からは、政府の成長戦略の中において価格転嫁がどのように位置づけられているのかということを伺わせていただきたいと思います。

 本法案は言うまでもなく賃上げのために価格転嫁を定着を目指すものだというふうに受け止めておりますが、石破総理が、一昨日、連合の芳野会長との政労会見において、賃上げこそが成長戦略の要との認識を持ち、物価上昇に負けない賃上げを早急に実現、定着させていきたいというふうに御発言されております。

 言うまでもなく、賃上げのためには価格転嫁は不可欠なものであり、そして、私自身の認識としては、成長戦略の要の要にこの価格転嫁が当たるのではないかというふうに考えてはおるんですが、政府の御認識をお伺いしたいと思います。

武藤国務大臣 梅谷委員から御質問いただきまして、ありがとうございます。

 政府としては、デフレを脱却し、成長と分配の好循環を実現するためには、賃上げこそが成長戦略の要と認識しているところであります。まさに委員御指摘のとおりだと思います。

 中小企業の賃上げ実現には価格転嫁が鍵で、コスト上昇分を売上げに適切に反映をし収益を上げなければ、利益が削られ、成長への投資や賃上げの原資を確保できないということになります。

 このため、年二回の価格交渉促進月間を粘り強く継続してきたところで、さらに、協議に応じない一方的な価格決定の禁止等を措置する下請法の改正案を提出したところであります。

 転嫁なくして中小企業の賃上げは実現しないとの考えの下、転嫁政策の周知まで含めて、適切な価格転嫁を推進してまいりたいと思います。

梅谷委員 ありがとうございます。

 転嫁なくして賃上げなしというお言葉をいただきました。

 その上で、今、これも御案内ですけれども、今年、まだ春闘が全部終わってはおりません。三分の一ほどがまだ交渉中でございます。私の新潟県においても、連合傘下の組合の八十組合がまだ妥結しておらない状況です。

 その中で、これも釈迦に説法ですけれども、こうした状況の中、トランプ関税、これに対する強い懸念が今来ているわけでして、せっかくの春闘で、昨年からの賃上げの流れ、これがどうなっていくのかという強い不安があるわけでして、この点、芳野会長が一昨日の会合後に、中小の賃上げの環境整備について政府から協力が得られたというふうに述べました。これは新聞報道であるわけでございます。そしてまた、総理が、あらゆる政策を総動員する、中小企業に関税問題のしわ寄せが行くことがないよう、したいというふうにこの後つながるんでしょうが、と発言されたと報じられております。

 そこでお尋ねしますが、この協力が得られたというのは一体どんな中身で、そして政策の総動員の中身についても、具体的にお答えできるようであれば、お答えいただけないでしょうか。

武藤国務大臣 今般の関税措置でありますけれども、国内産業にも広範囲に及ぶもの、影響が出る可能性があることから、これを精査をして、そして、国内の産業や雇用を守るために必要となる支援に万全を期すことが重要だと思っています。

 特に中小企業に向けては、まずは、短期の支援策として、全国約千か所の特別相談窓口の設置、セーフティーネット貸付けの利用要件の緩和を含む、資金繰りやあるいは資金調達への支援、また、ものづくり補助金等での優先採択を含む、中堅・中小企業の事業強化のための支援を展開してまいります。

 また、関税措置が契機となって適切な価格転嫁が影響を受けることがないよう、事業者団体に対し私も含めて要請を行ってきているところでもあります。

 現在、プッシュ型で現場を訪問させていただいて、関税措置による影響の把握を行っているところです。影響を把握した上で、現場の実態に即した追加の対応を検討してまいりたいというふうに思っております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 まずは現場の声を伺いながら、追加対応、強い決意をいただいたと受け止めました。

 これも言うまでもございませんが、不安を抱えて状況を注視されている中小企業の方、またそこで働く方々に対して安心そして自信をお届けできるように、是非的確なメッセージをこれからも強力に発信をしていただきたいですし、また、強力な支援、後押しを、是非早期の対応を強くお願いを申し上げ、次の質問に移ります。

 下請業と建設業の関係についてお尋ねをしたいと思います。

 私の地元、新潟五区なんですけれども、ここには八つの市と町があります。上越市、糸魚川市、妙高市、そして十日町市、津南町、新たに加わって、米どころの南魚沼市、魚沼市、湯沢町、いわば六つの市と二つの町で構成されているところです。ここが全て八つとも特別豪雪地帯、非常に雪が降るんですね。そうなると、冬の降雪期においては、基本的にみんな除雪に追われるといいましょうか、対処されるわけでして、まさにその除雪の風景が日常茶飯事になられて、斎藤先生もよく御案内だと思います。この除雪を担っているのが一般的に地域の土木建設産業の方々です。本当に支えていただいておることに感謝と敬意です。

 この下請法、改正前なのでそのまま呼ばせていただきますが、ここでは、建設業者が業として請け負う建設工事は本法の適用が除外、適用除外されているわけですね。第二条四項。

 そこで伺いますが、なぜ建設業が適用除外になっているのか、この理由についてお尋ねをしたいと思います。

伊東国務大臣 梅谷先生の御質問にお答えしてまいります。

 建設業法の建設工事につきましては、建設業法におきまして建設工事の下請取引における不当な行為を禁止する規定が設けられているため、御指摘のとおり、この法律の適用対象外となっているものであります。

梅谷委員 今、業法の方でということで、建設工事が類似の規制があるということでの、これは平成十五年改正で除外されたものだと思います。

 ですが、近年、下請法違反行為に対する公正取引委員会による勧告とか指導などの件数は増加傾向、そしてまた原状回復していただく金額も増加傾向にございます。建設業法でも、下請法違反に相当する行為があった場合は、国交大臣が公正取引委員会に措置要求をすることになっています。

 では、この措置要求が行われた件数、公正取引委員会の措置につながった件数はどれだけあるでしょうか。お答えください。

古谷政府特別補佐人 お答えいたします。

 御指摘の公正取引委員会に対する建設業法の規定に基づく国土交通大臣又は都道府県知事からの措置請求というのは、これまでのところ、実績はございません。

梅谷委員 御答弁ありがとうございます。

 建設業法の観点から必要な指導等はされているというふうにもちろん認識はしておりますけれども、全くないというのは、これがまた私自身としては違和感を覚えます。そもそも、中立な立場の公正取引委員会による指導、勧告と業界を所管する省庁による指導監督は意味合いも異なるのではないかということを指摘をさせていただきたいと思います。

 私の地元では、下請というと、斎藤副大臣も恐らく御認識は一緒だと思うんですが、やはり土木建設業を思い浮かべるものなんです。私自身はそう思い浮かべます。今回の質問に当たって、地元で様々な事業者の方のお声を伺いました、いろいろな業界の。その中で、やはり多くが建設業界の事業者の方々でした。

 今回の下請法改正の大きな背景は先ほど申し上げたとおり価格転嫁ですけれども、建設業の価格転嫁率も五〇%前後、そして業種別で十二位と、特に価格転嫁が進んでいるというわけではありません。先ほど確認したように、ここでは一応、対象として、伊東大臣はお答えいただけませんでしたけれども、一部工事に下請法が適用される部分がありますよね。例えば、工事に必要な資材作成の発注だったり、また除雪など、建設業でも取引の種類によっては下請法の適用を受けるわけです。このような下請法の適用の有無が現場できちんと認識され切れているのかどうかというのが一つ私、問題意識でございます。

 建設業法によって業界に即した規制や指導を行う必要性はもちろん否定はしません。しかし、建設業もそれ以外の業種も広い意味で独禁法の優越的地位の濫用の禁止の規制が及ぶことを考えれば、優越的地位の濫用を防止する観点に特化し、様々な業種を包括的に規制する下請法の規制を建設業にも及ぼしてよいのではないか、私はこう考えています。わざわざ建設業だけ適用を除外する必要はないのではないかと考えますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

伊東国務大臣 先ほど、答えていないのではないか、こう言われたところでありますけれども、例示されました除雪作業についてでありますが、建設業者が行います除雪作業につきましては、通常、建設工事には当たらないと考えられているところであります。

 そのため、発注者から除雪作業の委託を受けた事業者が建設事業者にその作業の全部又は一部を委託する場合につきましては、当該委託を受ける建設事業者は下請業者としてこの法律の適用対象となり得るところである、このように解釈されております。

古谷政府特別補佐人 大臣の御答弁を補足させていただきます。

 委員が御指摘になりましたように、建設業法は業法でございます。一方で、下請法は、独禁法の優越的地位濫用の規制を補完する形の業種横断的な取引適正化を図るための法律でございまして、取引を適正化するという点では同じ考え方でできているんだと思います。

 そういう意味で、建設業法の方は下請法の適用除外ということが明確になっておりますので、それぞれの役割を分担しながら規制をしているという位置づけであろうかと思います。

 今回、下請法の改正案では、事業所管省庁にも指導監督権限を付与するなど、公正取引委員会と事業所管省庁との連携もちゃんとやって規制を適正化していこうという方向をお示しさせていただいております。

 そういう意味では、建設業法を国交省に運用していただいて、問題があれば独禁法の優越的地位濫用の規制の方につなげていただく。先ほど御指摘になった措置請求ということも、そういう連携をする中で今後活用して、それぞれの法律を有機的に連携をして運用していく、そういう体制を取っていきたいというふうに思っております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 運用によってこれから体制をより強化していきたいということでございます。

 そして、次に、除雪についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほど申し上げたとおり、豪雪地帯では、地域の建設業者の方が冬場に除雪を担って、いわば地域の暮らしと経済を支える、それこそインフラを担ってくださっているわけです。

 ただ、除雪という仕事は特殊でして、雪国の方はよく分かると思うんですが、まず、いつ仕事が発生するのか、これは天候次第。そして、命に直結する仕事ですので、降ったら即座に動くということが求められます。前日、お酒も飲めない。

 そういう中で、雪が降っていないときも事業者の社員には生活があって、給料を払わなければいけません。今年は雪が少なかったから無給というわけにはもちろんいかないわけなんです。雪国では基本的に冬に工事ができない、しづらい、その上、除雪の仕事もあるかないのかとなると、従業員を雇っていけないために、建設業者は生活のため出稼ぎなどで地元から出ていくことを考えざるを得ません。

 このため、私の地元では、近年、除雪の人手の確保のため、事業者の方に待機料という制度を設けて、そして雪が少ない場合でも一定の補填をしています。いわばこれは最低保障のようなものなんですけれども。

 例えば新潟県では、十一月十五日から三月まで、県道の除雪に備えてワンシーズン機材と人を拘束する代わりに、一時間当たり八千円、そして、山間部なら二百四十六時間分、平地なら百二十三時間分、海岸部なら八十二時間分を人件費分の待機料として払います、こういうふうな制度にしています。除雪機械を出してもらう場合には、別途機材の管理料も負担をする。また、市においては、市道も除雪のため、待機料を支払う制度があります。これらを総合してやると、これだけでも四か月で数十万円ないしは百数十万円程度で、一人分の人件費としてもぎりぎりな金額。

 実際には、除雪車を動かすには二人体制、安全確認のために必要なんですね。人手不足の中で、他県ではワンオペするところも、チャレンジングしているということも耳にしますが、いずれにしても、除雪機というのはむき出しのブレードが回っていますから、見通しの利かない中で生活空間を動く非常に危険なもの、だから二人体制でやりなさいとなっているんです。実際、除雪機による事故、死者が毎年絶えない状況も続いています。百人ぐらいお亡くなりになられるときもあります、年間。しかし、安全のために必要な二人目を待機させておくお金が出ない、これが現実なんですね。

 事業者からは、何もなかったときよりはましだけれども、厳しい状況に変わりはない、下請にも備えていただくお金を出したいけれども、でも、今の待機料では難しい、こういう声が上がっているんです。これが現場の声です。切実な声です。

 そこで、国交省にお伺いしますが、私は、除雪の体制を維持するため、その年の雪が多い少ないにかかわらず従業員の収入を確保し、事業者を支える施策が雪国では必要だ、このように考えます。申し上げたとおり、除雪は二人体制で動かすのが現実ですが、今ほど申し上げた地元の仕組みでも、この実態を前提として支える仕組みに及んでいないのが実情です。自治体が設けている制度、自治体によって違うかもしれませんが、この点、どのようにお考えになられますか。

高橋副大臣 お答え申し上げます。

 冬期間の除雪に従事する建設業者が人材を確保しながら今後も持続的な除雪体制を維持していくためには、発注者が実態を踏まえて費用を適切に見積もり、支払うことが重要です。

 国土交通省直轄の道路除雪工事の工事費につきましては、土木工事標準歩掛を用いまして、除雪機械の運転に必要となるオペレーターの人員や機械などに要する費用を除雪機械の稼働時間に応じて計上いたしております。

 この土木工事標準歩掛は、道路除雪工事などの工事現場において標準的に用いられる人員、機械、材料等の規格や所要量の実態を毎年調査をいたしまして工事現場の実態を正しく反映するように見直しを行うとともに、工事費の積算等の参考となるよう地方公共団体に対して通知をいたしているところでもあります。

 また、政府としては、令和六年十二月に公共工事品質確保法に基づく基本方針を改正いたしまして、公共工事の発注者は、持続的な除雪体制を確保するために、待機費用の計上や少雪時における固定的経費の計上等も含めまして、事業に係る経費の精算においてその実施に要する経費を適切に計上するよう努めることとされたところでもあります。

 国土交通省といたしましては、総務省とも連携をいたしまして、公共工事品質確保法等の趣旨を踏まえ、持続的な除雪体制を確保できますように、地方公共団体に対して積極的な支援や働きかけを行ってまいります。

 以上です。

梅谷委員 ありがとうございます。

 済みません、力強い御答弁をいただきましたが、このままでは特に地方では持続的になり得ない、難しいというのが私は現場の声だというふうにこの間受け止めております。是非更に現場の声を聞いていただいて、そして積極的な体制支援をお願いしたいと思います。

 経産大臣、ちょっと飛ばしまして、次に、公共入札における賃上げ実施企業に対する加点措置について伺いたいと思います。

 令和三年のコロナ克服・新時代開拓のための経済対策を受けて、総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置というのが制度としてあります。これは、簡単に言えば、賃上げを促すために、賃上げをした企業を公共事業等の入札で加点する、優遇する仕組みでございます。これは、国交省だけじゃなく経産省でも、各省庁で実施されています。ただ、この仕組みが国や自治体から直接受注する事業者を対象としていて、いわば下請の賃上げには関知し切れない、こういう中身です。

 そこで伺いますが、下請における賃上げないしは下請への価格転嫁を適切に行っている企業を優遇する仕組み、これを是非検討していただきたいと思いますが、制度を所管する財務省、いかがでしょうか。

斎藤副大臣 お答えいたします。

 賃上げを行っていくためには、行政が率先して行政サービスや公共施設の施設整備等の公共調達における価格転嫁を進めることが重要と考えております。委員御指摘のとおりでございます。

 こうした観点から、国の公共調達につきましては、官公需法に基づき、中小企業の受注機会を確保するため、毎年閣議決定しております中小企業者に関する国等の契約の基本方針におきまして、最新の実勢価格等を踏まえた積算に基づく適切な予定価格の作成について定めております。

 その上で、委員御指摘の価格転嫁を適切に行っている親事業者を調達において加点することについてでございますが、まず、各所管省庁におきまして親事業者が価格転嫁を実施していることを具体的にどのように把握するのか、それから、業種ごとに価格転嫁のやり方は異なってくると思いますが、何らか一律の基準を設けることができるかどうか、それから三点目に、下請を用いない事業者が同じ入札に参加する場合、入札の公平性をどのように確保できるかといった課題があることに留意する必要があると考えております。

 いずれにいたしましても、公共調達において適切な価格転嫁が進むように、関係省庁と連携しつつ、必要な取組を進めてまいります。

梅谷委員 ありがとうございます。

 非常に難しいという御答弁でした。

 ただ、冒頭私が確認させていただいたとおり、価格転嫁なくして賃上げなしというふうに経産大臣からお言葉をいただきました。そう考えたときに、非常に制度としては難しい点もあるんでしょうけれども、私は検討の価値があるというふうに思っていますので、是非ちょっと御検討いただければと思います。

 ところで、この賃上げ加点措置なんですけれども、落札者である事業者の会社内全体の賃上げを促さなきゃいけない、やらなきゃいけないという話なんですね。ただ、これが、例えば入札を実現した公共事業部、その部門だけであればいざ知らず、今や地方によってはそれが、多面的に、多角的に経営を広げている部門があるわけで、物流部門とか、農業部門とか。そういったところもあるのだけれども、一社の中全部に賃上げ加点措置が義務化されるわけなんです。

 うちの地元の方では、地元の話で恐縮ですけれども、実際、これだと、毎年公共事業を受注していくと、全体の賃上げをして、私はこれは否定しませんよ、賃上げ自体は否定しません、ただ、全体を上げるとなったとき、毎年公共事業を受注したら、中小で一・五%上げていかなきゃいけない、全体で。そうなってくると、継続してこのままでは賃上げできない、公共事業から手を引かなければならないという声も上がっているんですね。もし賃上げしなかったら重いペナルティーも科されているからなんですよ。

 そこで、是非ちょっと御検討いただきたいのは、他部門を分社化し、この公共調達を、部門ごとに、売上げの出ている部門に限定して賃上げにする制度にする必要があるんじゃないかと思うんですが、財務省、いかがでしょうか。

斎藤副大臣 お答えいたします。

 制度については御案内のとおりと思いますので、説明は割愛をさせていただきまして、この制度でございますが、導入した狙いといたしまして、多くの事業者の方々にとって賃上げ表明を行う契機となって、政府調達を直接受注する部門だけではなくて、民間企業全体の賃上げ機運の醸成につながることを期待して導入したものであります。

 受注部門のみならず、企業全体の賃上げの状況を踏まえたものとしていることは、その制度の導入趣旨からいたしまして適切な取扱いであると考えております。

梅谷委員 私は、是非一度現場の声を聞いた上で、まず検討していただけたらなというふうに思います。

 時間も来そうなので、最後に簡潔に。

 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止という項目がありますが、これは、地元を回っていますと、親事業者と交渉できているかというと、最近の風潮でしている者は増えているんですけれども、でも、やはりできない。仕事が切られちゃうんじゃないかと思って、下請業者からなかなかそういう交渉の声を上げられないという声があるのも事実なんですね。

 その中で、是非、最後の質問になろうかと思いますが、公正取引委員会が、要は、親事業者から協議をしましょう、こういう責務を課すのは必要なのではないかというふうに思うんですが、この点、最後になりますが、お伺いをして、お願いしたい。

 要は、下請業者から協議の要請があって初めて必要な書類などの提出が求められますけれども、親事業者から協議をしようと言う、そういう責務、義務が課せられていないのが今回の法案です。

 その中で、例えばインフレですごい物価が上がって大変だとか、そういう状況になったとき、やはり、親からある一定の要件の下で交渉を持ちかける、そういう責務があってもしかるべきじゃないか、そういう趣旨ですので、最後、御答弁をいただきたいと思います。

伊東国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほどお答えいたしましたとおり、発注者から協議を持ちかけることが本来望ましいわけでありますけれども、他方で、法律上の新たな禁止行為を定めるに当たりましては、規制対象となる発注者の負担にも一定程度配慮する必要があると考えられております。

 受注者が協議を申し出ていない場合にも多数の受注者に対して一律に協議を持ちかけることを義務づけることは発注者にとって過度な負担となり得ることから、改正法案では、受注者から協議の求めがあった場合を規制対象としているのであります。

 実効的な協議のためには、発注者において、窓口の設置等、協議をしやすい環境を整備していただくとともに、受注者においても積極的に自らの希望する条件を発注者に提示していただくことが重要であり、改正法案の適切な運用によりまして適切な価格転嫁の実現が図られると考えているところであります。

梅谷委員 ありがとうございます。

 最後にします。

 公取の平成五年の指針の中で、一年に一回ないしは半年に一回、そういうふうに親事業者の方から協議を持ちかけるべきですよ、そういう規定があるんですね。なので、私はこのことを指摘をさせていただいて、終わりにしたいと思います。

 時間が過ぎて失礼しました。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党、森山浩行でございます。

 中小企業憲章を作ったときの起草者の一人といたしまして、これを大事にするよというふうに本会議で言っていただいたこと、また、以前の政府の顧問ですかアドバイザーですか、アトキンソン氏が中小企業を減らすべきだ、あるいは多過ぎるんだというような発言をされたことに関しても、今の石破内閣においてはそういう考え方には立っていないというふうなことを言っていただいたことに関しましては、感謝を申し上げたいというふうに思います。日本の経済の中心ということでありますから、この中で、しっかりと支えていくという決意の中で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 下請法というのを、下請という言葉をやめて、今回は受託委託法とでもいうんでしょうか、言葉を換えるということで、下請という言葉自体が業界全体でも使われなくなってきていたりとか、あるいはニュアンスが余りよくないのだというようなお話であったかと思いますけれども。

 これは改めて、下請という言葉をやめるんだといったことの意味、それから、例えば下請Gメンとかいうような形で、他省庁も含めていろいろな形で使われている部分があると思います。これは全部一掃するという形になるのか、あるいは、下請Gメンなんというのはなかなかもう浸透していて、恐ろしい、こんなものに目をつけられたら大変だというような部分もあるのでしょうから、そういうブランドをまた再構築するのであるならば、そういったことはまたちょっと違うんだよという話なのか、お答えをお願いします。

伊東国務大臣 森山先生にお答えをしてまいります。

 改正法案で下請という言葉をなくすことについてのお尋ねでありました。

 現行法におけるこの下請という用語につきましては、あたかも、受注者が発注者よりも下であり、対等な立場にはないのかのような語感を与えるとの指摘や、あるいは、昨今では、取引当事者の間でも、親や下請という用語は使わず、対等な立場で適切に取引を行うという意識の高まりが見られているという指摘があると承知をいたしております。

 そのため、今回の改正法案では、このような取引当事者間の意識などの時代の変化を踏まえ、下請事業者を中小受託事業者とするなど、従属的な意味合いを含まない用語に改めることにより、取引適正化に向けた意識改革をより一層推進させたいと考えているところであります。

 なお、下請Gメンにつきましては、我々でまた、ちょっと判断がつかないところでありますので、お許しをいただきたいと思います。

森山(浩)委員 こういったことも、政府全体で取り組むのだということであるならば、横横で連携をしていただければというふうに思います。

 この下請法に関しては、やはりガイドラインというのが本体だと考えています。

 まずは航空業界の話からですけれども、二〇二四年、インバウンド、これはコロナ禍を経て過去最高ということになっています。経済効果も大きいということ、あるいは、島国である日本においては、訪日客の大半は航空機を利用して、空港がにぎわいを見せているという状況にあります。一方で、航空機の運航を地上から支えるグランドハンドリング業、これについては、人数こそコロナ前の水準まで回復をしつつあるものの、人手不足の状況が続いています。

 国交省で二年ほど前から検討会を設置し、国としての支援をされていると認識をしておりますし、各社も採用を頑張っているということで、今年の入社式には多くの新入社員が臨んでいるというような様子も映されておりました。一方で、グランドハンドリングの業務には、航空会社のグループ企業や独立系の専業企業、さらに地方空港などでは地場企業の一部門など、多くの形態の企業が実施をしておられまして、多重の下請構造となっているということであります。

 三月十四日の本委員会におきましては、山岡達丸筆頭理事よりの質問で、国交省の航空局から、グランドハンドリング業務における適正取引ガイドラインの策定に向けた準備を進めているというような答弁がありました。インバウンドの増加を現場でかつ日本で最初に迎える人たち、現場の実態に即した実効性のあるガイドラインの策定が必要であると考えます。

 インバウンド増加に向けては、日本の、本邦の航空会社よりも、外国、海外の航空会社の方が今後の就航増加の余地が大きいのではないかと考えています。策定するガイドラインも、外国航空会社、そして本邦のグラハン会社、国が違うわけですから、この間の適正性の維持あるいは確保というのが重点的に求められると考えていますけれども、なかなか、この実態について詳細に把握しているよというような御報告はこの間いただけていません。

 現状において、今回のガイドラインの策定に当たって実態の正確な把握、これが必要不可欠であると考えておりますけれども、今後どのようにこの作業を進めようとされておりますか。

秋田政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほどお話しいただきましたとおり、空港グランドハンドリング業務につきましては、令和五年六月の有識者会議におきまして、多重委託構造の見直し等により、業界において適正な企業間取引が行われることが重要である、こういった旨の取りまとめがなされているところでございます。

 これを受けまして、国土交通省といたしましては、空港グランドハンドリング分野におけます適正取引等推進のためのガイドラインの策定に向けまして、労働組合を代表する方を含みます官民の有識者から構成されますワーキンググループを今月の十八日に立ち上げる予定にしてございます。

 御指摘いただきました外国エアラインとグランドハンドリング事業者との契約の実態につきましては、このワーキングにおけるヒアリングを通じまして実態の把握に努めてまいりたい、このように考えております。

森山(浩)委員 なかなか大きな団体だけに聞くよということではなくて、しっかり実態把握をしていただくというのが大事だと思います。

 今後、下請法、受託委託法に抵触をする事態が発生した場合に、外国航空会社への適用に支障がないようにしておくという必要もあるかと思います。現状の法的要件で、このままで可能なものなのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げますと、外国法人との取引でありましても、そこが日本国内において行われた取引ということでありますと、この法律、いわゆる下請法というものは適用対象となり得るということでございます。

 グランドハンドリング業務に関して申しますと、例えば旅客の手荷物の受入れなどといった役務、その提供をするものがグランドハンドリングというふうに承知しているわけでございますが、このような業務を請け負う事業者がその行為の例えば全部又は一部を他の事業者に委託をするということになりますと、この法律の定義でいきますと役務提供委託というところに該当いたしまして、さらには、資本金基準、仮に改正法が成立したということになりますと、従業員というものを見まして、役務提供委託規模要件というものを満たしますと、この法律の適用対象となり得るということでございます。

森山(浩)委員 商習慣等も違うと思います。しっかり適用できるようにお願いをしたいと思います。

 また、下請法の業種別ガイドラインが二十一業種ということでありますけれども、共通する項目はどんなものがありますか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 下請適正取引等の推進のためのガイドラインは、受注者と発注者との間に、適正な取引が行われることを目的として、様々な業種ごとに国が策定するものでございまして、委員御指摘のとおり、二十一業種ございます。

 その内容といたしましては、例えば、下請法の禁止行為の解説といった関係法令の解説や、下請法等に抵触するおそれのある留意すべき取引の事例、また望ましい取引の事例などにより構成されているものでございます。

森山(浩)委員 それで、グランドハンドリングについては、一般的な項目だけではなくて、労働基準法あるいは労働安全衛生法の遵守などに関する項目も反映することが大事なのではないかと思いますが、いかがですか。

秋田政府参考人 グランドハンドリング業界の持続的な発展に向けまして、いただきました安全の確保を図ることや関係法令の遵守を図ることは大変重要だ、このように考えております。

 今月十八日に立ち上げますワーキンググループにおきましては、委員御指摘の、安全確保や関係法令遵守が図られる取引の在り方につきましても議論を深めていただくようにしてまいりたい、このように考えております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 次に、航空機燃料の高騰対策ということで、二月の予算委員会で経産大臣にお答えをいただいておりますけれども、そこから二か月たちました。トランプ関税の問題もあります。改めて、航空機燃料の高騰対策、昨年十二月までの水準でやるべきではないか、また、少なくとも、今後ガソリン価格の引下げを検討する際には、航空機燃料も併せて実施すべきと考えますけれども、武藤大臣、いかがですか。

武藤国務大臣 委員から、あれは二月でしたか、予算委員会で御質問いただきました、いわゆる航空機燃料の関係であります。

 この燃料油の激変緩和事業につきましては、あくまで一時的、緊急避難的な対応として実施しているものであり、昨年秋に閣議決定した経済対策でも、国際的な脱炭素の流れ等も踏まえ、出口に向けて段階的に縮小するもの、前回もこういう答弁をさせていただいたと思います。

 昨年十二月から補助を縮小してきているところでもありますが、現在、自民、公明、国民の三党間で、足下のガソリン価格を引き下げる方策について議論がされているところであります。

 委員御指摘の燃料油価格の支援の在り方、これはまさに政党間の協議の結果を踏まえて適切に対応していくものと考えております。

 航空機燃料の在り方も含めてこの燃料油価格支援の在り方、これは政党間の協議の結果を踏まえて適切に対応していくものと考えておりますので、現時点では協議の動向を注視しているところであります。

森山(浩)委員 今申し上げましたけれども、国内線専業の中小会社等を中心として相当ダメージを受けているところですから、コロナ禍以降の部分のダメージも含めてということでお願いをしたいと思います。

 さて、SAF、持続可能な航空燃料の量産化の問題です。

 廃食油を原料とした製造を開始するというようなことで、私の地元でありますけれども、コスモ社の堺製油所でスタートをしておるわけですけれども、原料の持続的な確保をどのように行っていくのか、国としてのサポート体制をお伺いしたいと思います。

木原政府参考人 お答え申し上げます。

 SAFの安定供給に向けては、御指摘の国内の廃食油は貴重な国産資源でありまして、その活用が重要と考えています。

 廃食用油回収団体によりますと、国内の一般家庭で発生する廃食用油は年間約十万トンと推計されておりまして、その回収拡大が今後期待されるところでございます。

 こうした中、日揮ホールディングスを筆頭に、コスモ石油も参加している廃食用油を航空に活用するフライ・トゥー・フライ・プロジェクトなど、業界横断的に廃食用油を回収する取組が進められていると承知しております。

 経済産業省としては、廃食用油業界を所管する農林水産省等とも連携をしまして、持続可能な形で廃食用油等の利用を進めることに加えて、グローバルサウス補助金による非可食植物油等の調達拡大への支援なども通じて、SAFの安定供給に取り組んでまいりたいと考えております。

森山(浩)委員 堺のてんぷら屋さんなんかでは、今までお金を払って引き取ってもらっていたてんぷら油がお金をもらって引き取ってもらえるというので喜んだりもしているわけなんですけれども、原料はお金がかかっているわけですね。

 今後、国際線への供給が優先されるんですけれども、将来的に、国内線も含めてSAFを使うぞとなってきたときには、課税は既存の燃料と同じ取扱いということでいいのかなというような疑問があるわけですけれども、どうなりますか。

斎須政府参考人 お答え申し上げます。

 航空機燃料税が課される航空機燃料とは、航空機の燃料用に供される炭化水素油をいうとされております。

 基本的に、航空機の燃料用に供されるSAFは、航空機燃料税の課税対象であります炭化水素油に該当するものと承知しております。

 したがいまして、御質問のSAFが国内線の航空機の燃料に供されるとき、すなわち航空機の燃料として航空機に積み込むときに航空機燃料税が課されることとなるというふうに考えております。

森山(浩)委員 SAFを一生懸命作りましょうよと言っておいて、でも負担は一緒よということにならぬように、ここから先、量産化については、このような支援もお願いをしたいというふうに思います。本来であれば、空港の造成というためにつくったこの課税でありますので、廃止ということが目的であるというふうにも思っておりますけれども、それも含めて御検討をお願いをいたします。

 アニメーション業界についてです。

 この二十一業種、下請法の中では、アニメというのも入っているわけですが、団体に聞いて、そしてガイドラインを作っていくという形になっているかと思いますけれども、作り方、どうでしたか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 アニメ業界は、一つの作品を制作する上で、多くの制作会社やアニメーター等が関与する多重下請構造となっており、業務委託等の取引が多く存在しております。

 このため、その取引の適正化の推進を通じて、健全なアニメ産業を成長させることを目的に、平成二十五年にアニメ制作業界における下請適正取引等の推進のためのガイドラインを策定し、これまで五度にわたる改定を行ってきております。

 昨年度におきましては、昨年十一月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の内容を盛り込むほか、近年の取引状況を反映させるべく、本ガイドラインの更なる改定に向けた委託調査事業を実施してきております。

 近年の取引状況を把握する上で、アニメ制作会社が参画する業界団体やアニメーター等が参画する団体のみならず、例えば、作画、美術、撮影、3DCG、演出、監督といった代表的な工程や役割を担う制作会社及びアニメーター等に対し、延べ十九回のヒアリングを実施し、書面の交付状況、単価や契約期間の交渉状況を始めとした取引実態を確認しました。現在、これらの委託調査結果を踏まえたガイドラインの改定版の公表に向けて、調整を進めているところであります。

 引き続き、取引実態を踏まえたガイドラインの改定や周知徹底を通じて、適正な取引を促してまいりたいと思っております。

森山(浩)委員 多重下請構造なんですよ。単価が安いとかというようなことで、中国や韓国に負けているというような話もあります。一つは単価、何かきちっと決められないのか。

 もう一つは、新人が育っていくまでの間も食べられるようにしないと、これはどんどん人材が枯渇をしていく。今回、アニメのタイトル、二五年春の段階では八十本のアニメが配信やらテレビやらで放映をされています。どんどん新しいものができているのに、人が足りないという状況でもあります。一つは人材育成。

 そして、もう一つは著作権。これは、製作委員会方式とかということで、スタジオに分配をされずに、配給元に非常に大きくというような問題もあります。しっかり見ていただきたいと思いますが、いかがですか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 アニメの制作には多くの制作会社やアニメーターの関与が必要となりますが、アニメーターの就業環境の改善や安定的な収入の確保は、アニメ作品の質を維持向上していく上で重要であります。

 アニメーターの報酬は、スキルや実績がベースとなり、経験の少ないアニメーターの収入は不安定になりやすい。このため、アニメーターの育成に向けて、官民が一丸となって環境整備に取り組むことが重要だと考えております。

 このため、今年三月に公表しましたエンタメ・クリエイティブ産業戦略の中間取りまとめ案において、アニメーター等の人材育成に資する支援制度や新たな人材育成スキームの検討や、アニメーション制作業界の就業環境改善に向けた取組を進めていく旨を盛り込んだところであります。

 引き続き、業界と連携して取組を進めてまいりたいと考えております。

森山(浩)委員 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、福森和歌子君。

福森委員 立憲民主党の福森和歌子です。よろしくお願いいたします。

 本日質疑をさせていただく下請法改正案は、中小企業の価格転嫁を促し、賃上げにつなげていく重要な法案だと考えておりますので、いろいろな視点でお聞きしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、価格転嫁を行いやすくする環境整備についてお聞きします。

 本改正案で、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず協議に応じないということは禁止だということが追加されました。協議に応じないことが禁止されたことは、中小受託事業者にとって大変心強いものであると思います。

 しかし一方で、多数の中小受託事業者と様々な取引がある委託事業者にとっては、多様な中小受託事業者と頻繁に個別交渉するということは非常に煩雑で、取引費用も増加させるということで、取引を打ち切るというようなおそれがあるのではないか、あるいは、もう面倒だから応じたふりをするにとどまるといったような懸念もあるのではないかと思います。

 価格転嫁を着実に実施するために、今回追加されましたけれども、どのように取り組まれていくのでしょうか。

向井政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、協議に応じたふりをしたり、協議を求めた際に、内製化をするなどそういう取引の打切りを示唆いたしまして、実質的な協議を行わない、そして一方的に価格を決定するというような行為も懸念されるというのは我々も同様に感じております。

 こういうものを牽制するために、仮にこの法律が成立いたしまして施行されるということになりますと、どういうものが違反なのかというものを運用基準の中で明確に書いていきたいというふうに考えております。

 例えば、形式的な協議のみで必要な資料など説明を行わなく一方的に価格を設定するというようなものとか、受注者に対し取引の打切りを示唆した上で協議に応じずに一方的に価格を決定するというような問題事例を盛り込むことによりまして、それを周知徹底をするということで、違反行為の未然防止を図りたいというふうに考えてございます。

 さらには、公正取引委員会では、毎年、発注者、受注者に対しまして大規模な書面調査をしておりまして、取引状況について確認をしておるところでございますので、そういうところで取引状況を見まして、本当に、ふりをしているとか怪しいというものがありますと、そこにつきましては積極的に調査の対象にいたしまして、両当事者から話を聞くというふうなもので、仮に違反行為が認められるということになりますと、それに対しまして厳正に対処するということで、この規定の実効性を担保してまいりたいと考えてございます。

福森委員 今、大きく二つ、運用基準を厳しく徹底していくということと、その後、取引をきちんとチェックされていくということの御答弁だったかと思います。本当に両方必要だと思います。ふりをするということは往々に見られることだと思いますので、より徹底を望みます。

 次に、本改正案、適用対象とする委託事業者及び中小受託事業者について、資本金基準に加えて、従業員の数の大小による基準を新たに追加するということになっております。

 今回、資本金区分の見直しとか取引依存度といった基準も検討された中で、従業員数による基準を導入した意義をお示しください。また、このことによってどのぐらい範囲が拡充されるかということも併せてお示しをお願いいたします。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律の規制の対象につきましては、規模の大小に応じまして規制が決まってくるということでございまして、現行法では資本金という基準を設けているところでございます。

 しかしながら、事業規模が大きいんですが、資本金の額は少額というような事業者もあるわけでございます。そして、自ら減資をするということによりましてこの法律の適用を逃れるケース、相手方に対しまして増資を求めるということでこの法律の適用を逃れるというような問題がございました。

 ということで、検討の段階では、資本金基準に比べて適切な基準を設けるべきではないかという議論がなされておりまして、その中に、委員御指摘のような、売上げとか取引依存度とか従業員とか、いろいろなものが提案されたわけでございます。

 その中で、一番安定的で分かりやすいものということで、資本金基準に加えまして、従業員、これにつきまして導入をしようということが、公正取引委員会、中小企業庁で共同で開催いたしました企業取引研究会の報告書の中で提言がなされたということでございます。

 この従業員基準が仮に導入されますと、どれぐらいの対象範囲が広がるのかということでございますが、全数調査とか、そういうのはなかなか困難ではございますが、サンプル調査を行ったもの、それに踏まえましてお答えいたしますと、例えば我が国における製造委託とか役務提供委託というような取引の中で、四%から一二%が新たに規制の対象となるというふうに推計をしているというものでございます。

福森委員 今お答えの幅がちょっとありましたけれども、四%から二桁%ぐらいと。これによって、やはり一つでも、一社でも多くの中小企業が価格転嫁できるように助かるといいと思っておりますので、引き続きの検討ということはお願いしたいと思います。

 適用基準が拡大されたということではございますが、一方で、改正案では対象とならない大企業同士の取引についても様々な問題があるんじゃないかという指摘もございます。

 実際、私自身も、長年大きめの企業で働いておりましたが、価格転嫁については、下請法対象の取引だけではなくて、大企業同士の取引についても優越的地位の濫用があって、それを是正すべきだと感じながら勤務しておりました。

 この件、企業取引研究会報告書では、サプライチェーン全体で価格転嫁が円滑に行われるように、優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方等で想定事例とか考え方とかを示すことを併せて検討していくべきではないかとされていますが、実際、これはやっていかれるのでしょうか。

向井政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおりでございまして、適切な価格転嫁を進めていくためには、この法律の対象取引だけではなく、サプライチェーンを構成する取引全体、そちらでの価格転嫁や取引適正化を進めていくというのが極めて重要ということでございます。

 大企業同士の取引ということになりますと、この法律の対象には入ってこないわけでございますが、この法律は元々、独占禁止法の優越的地位濫用規制の補完法ということでございまして、その大本の規制法に戻りまして、そちらを踏まえまして、例えば取引の相手方が優越的地位にある、取引の内容が不利益行為だということになりますと、そこは独禁法上、優越的地位の濫用ということで違反になるということでございますので、今回の改正法の内容も踏まえまして、新たに独禁法上のガイドラインというものも、どういうものが適当なのかというのを検討させていただきまして、改定を行っていきたいというふうに考えてございます。

 仮にこのような改定が行われますと、令和五年の十一月でございますが、労務費転嫁指針というものも作成いたしまして、労務費の転嫁につきまして政府全体で今進めていこうという対応をしておりますが、この新しいガイドライン、労務費転嫁指針というものなども含めまして、中小企業庁や事業所管省庁と連携いたしまして、そういう周知に取り組んでまいりたいと考えてございます。

福森委員 ガイドラインはこれから考えていくということかと思いますけれども、私、実は、下請法の対象外の大企業の取引というものが下請法対象の取引に多大なる影響を及ぼしているのではないかと、自分の体験も含めて考えております。ですから、独占禁止法においても、併せて周知徹底とか強化といったことを考えていってほしいと思います。

 次に、代金の支払いについてお聞きしたいと思います。

 本改正案では、対象取引において手形払いを禁止することになりました。現行法では、支払い日に手形を交付すると、製品や役務の受領から現金受領までの期間は最長で百二十日ということですが、本改正案によって、手形払いは禁止、また現金受領までの期間も六十日まで短縮されます。

 ただ、中小企業庁あるいは公正取引委員会の下請取引等の実施に係るアンケートによると、手形受取をやめられない理由として、取引先が手形による支払いを希望している、業界の商慣行であるということとか、手形をやめたくない理由として、受取手形を自社の支払いに使っているんだといった声が上げられていて、いずれも手形がなくなれば他の手段に行かざるを得ないのかなとは思いますけれども、手形等を支払い手段としている企業はいまだ一〇%程度あり、資金繰りに苦慮されないかということが心配されます。

 また、全銀協は、手形を扱うほぼ全ての金融機関が利用している手形等の決済システム、電子交換所ですね、この運用を来年、二〇二六年度末で終えるとしていて、手形の取扱いを続ける金融機関はほとんどなくなるということで、このスケジュールに合わせ手形をやめようと思っていた中小企業もいらっしゃると思うのですけれども、この本改正案が施行されると、ちょっとタイムラグが生じる。事業者は全銀協のスケジュールに合わせようと思ったんだけれども、今回改正されることで、支払い手段、手形をやめて、あるいは支払い期限を短縮して、そういったことで経営危機に瀕する可能性はないか、ちょっと教えてほしいと思います。また、そういった懸念に対し、具体的にどのように取り組んでいらっしゃるのか、支援策もお知らせください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 手形の利用廃止や他の支払い手段への変更を円滑に進めるためには、経済界への丁寧な周知や支援が重要と考えてございます。

 手形の利用廃止につきましては、令和三年に五年後の廃止に向け取り組む旨をアナウンスした上で、円滑な移行に向けて段階的に取り組んできているところでございます。

 まずは、昨年十一月より、下請法上認められる手形の支払い期間を六十日といたしました。この際も半年前からその方針を公表し、分かりやすいリーフレットを作成して、中小企業団体や業界団体へ周知するなど、丁寧に対応してきているところでございます。

 また、手形払いから現金払いに変更しようとする中小企業に対しては、委員御指摘のとおり、手元に資金が必要となります。このため、日本政策金融公庫の低利融資制度の活用も呼びかけ、対応を促しているところでございます。

 今般の手形の利用廃止を含めた下請法改正の内容につきましても、既に本年三月以降、業界団体に対しまして会員企業へ周知するように要請をしております。法案が成立した暁には、中小企業団体を始め経済界に対し、手形払いの禁止及び低利融資制度が活用可能であること等につきまして、丁寧に周知してまいる所存でございます。

 また、委員御指摘のとおり、手形の利用状況は業種ごとにばらつきがございます。業界ごとの自主行動計画への反映とそれに基づく対応も促してまいりたいと存じます。

福森委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 本当に、その業界全体がまだ手形が主流であったりというところもあります。そうすると、川上、川下で言うと川下の一番小さな企業にしわ寄せが行くことも考えられますので、周知徹底と、救援策といいますか支援策をよろしくお願いしたいと思います。

 ちょっと時間があれですので、一個飛ばして、次に、従来からある課題への対応についてお聞きしたいと思います。

 本改正案では、物流分野にも下請法の適用範囲を拡大することとされ、独占禁止法上の物流特殊指定により規制されてきた発荷主と運送事業者との取引も対象になります。本改正案によって下請法の対象になることによって、これまでも規制はあったと思うんですね、荷積みの強要とか荷待ち等の問題とか、そういったことに規制もあったと思うんですけれども、今回、下請法の対象になることによってどういった効果が期待されるか、あるいは、問題解決に向け、どういった対応を強化されていくのか、お示しください。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の法律でございますが、物流事業者間の取引、これは役務提供委託ということで対象になるわけでございますが、御指摘のとおり、発荷主と運送事業者の取引、これにつきましては、現行法の法律では対象になっていないということで、従来は、独占禁止法の不公正な取引方法の一種ということで物流特殊指定というものを明確に規定をいたしまして、それに基づきまして対応をしてきたということでございます。

 今回の法改正で、発荷主と運送事業者の取引が対象になるというもので考えられる効果といたしましては、次のようなものがあるかと思われます。

 例えば、この法律は、発注者に対しまして、取引条件を明確にするために、発注書面を交付するという義務が課されております。特殊指定ではそういう義務は課されないものでございますが、そういう義務が課されることによりまして、例えば、どういう運送をするのか、場合によりましては附帯役務というものもお願いするのであればその内容も書いていただくということで、運賃と附帯役務という内容が明確になるのではないかということでございます。

 そして、この法律でございますが、例えば、今申し上げた荷積みとか荷待ちとか、そういうものにつきまして無償でやらせているということになりますと、この法律で禁止する行為といたしまして、例えば、不当な経済上の利益提供要請というものとか、不当な給付内容の変更、元々運送しか想定していなかったんですが、現場で荷積み等をやらされたということで、発注内容が異なるというようなケースでございます、そのような禁止行為に該当するということになりますと、この法律に基づきまして、簡易迅速という形で、勧告、公表ということで迅速な処理ができるということでございます。独禁法の特殊指定の場合ですと、やはり行政処分というものでございまして、排除措置命令ということになりますとやはり時間がかかる。一方で、こちらの法律ですと、勧告、公表を簡易迅速にできるというところのメリットがあるのではないか。

 そしてさらには、今回の法律の改正の中で、事業所管省庁との連携ということでございまして、国土交通省が直接指導ができるようになるというところも大きなところではないかと思っておりまして、直接指導もできる、そして関係機関の間での相互の情報共有もできるということでございますので、このような問題に対して厚く対応ができるようになるのではないか、そのような効果が期待ができるというものでございます。

福森委員 御丁寧な熱い答弁をありがたいんですけれども、もうちょっと端的に答えていただけるといろいろ聞けるので、ありがたいです。済みません。

 分かりました。

 次に、発注者が、長期間部品の発注を行わないにもかかわらず、型や治具の保管や管理を受注者に求めるという商慣行が問題になっている。最近では、型ではないけれども、某食品メーカーが、受注者に発注した包装資材や香料などを受け取らず、支払いもせず、保管させておくといったような違反事項もニュースになっていました。

 こういった商慣習について、企業取引研究会報告書でも、現行の下請法運用基準を見直して、金型の所有権の所在にかかわらず、型の無償保管要請が下請法上の問題になり得るということを整理して、どういった場合に下請法の問題になるか、発注者や受注者に分かりやすい基準を明記すべきだ、それで指導していくべきだという方向性が示されましたが、これについてもガイドラインは作られるのでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 型の無償保管、これにつきましても、平成二十八年の十二月に、いわゆる運用基準にこういうものが問題だということで明記をしたところでございます。

 御指摘のような、所有権を持っていて、それを貸与して長期に保管させるというものが問題だという事例が書かれておりますが、一方で、所有権は受注者にあるんですが、捨てさせられない、管理は発注者がやっているというような問題もございますので、そういうものについても問題となり得るということを運用基準に今後明記していきたいと考えてございます。

福森委員 実際、いろいろな事例が蓄積されて、これは問題だなということが公正取引委員会さんにたまっておられると思いますので、そういった事例も示しながら、より分かりやすい基準を徹底していっていただければと思います。

 それ以外にも、取引に関して言うと、受注者側が元来保有していたり、あるいは、発注者に提案するといったようなことで、取引によって発注者側が得た知的財産とかノウハウというものを無償あるいは低廉な価格で発注者側に帰属させるといった行為もかねてより問題視されているかと思います。知的財産とかノウハウというのは目に見えないものなので、特に無償とか買いたたかれたりというようなことがあると思います。

 これについてもやはりルールとかガイドラインを徹底していくべきと思いますが、現状、どうでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点でございますが、公正取引委員会におきましても、知的財産やノウハウ、そういうものに関しまして独禁法上の問題が生じるということは認識しているところでございまして、過去にも、実態調査を行ったり考え方を示してきているということでございます。

 御指摘のように、たくさんのそういう問題があるのかもしれませんので、今後、実態調査を改めて実施いたしまして、それを踏まえまして、新たな問題が発生しているということがありましたら、既存のガイドライン等も含めて見直しを行うということを考えているところでございます。

福森委員 先ほど、森山委員がアニメーションの分野で御質疑をされておられましたけれども、例えばアニメーションですとか、あるいは企画とか映像とかといったところでは、こういったところに抵触することが多いのではないかと私感じておりますので、先ほど調査してということでしたけれども、幅広く調査を深くされてガイドラインを作っていっていただければと思います。

 次に、本改正案の執行体制を強化する施策についてお聞きしたいと思います。

 本改正案では、公正取引委員会、中小企業庁及び事業所管省庁が相互に情報提供する規定が置かれましたが、政府内ではどのような連携体制を取り、強化されていくのでしょうか。

向井政府参考人 お答えします。

 これまでも、この法律の執行を公正取引委員会と担っております中小企業庁、その間で人事交流や調査担当者の定期的な連絡会議、そして、各種情報そして調査のノウハウ、そういうものの共有を行ってきたところでございます。

 そして、国土交通省との間でございますが、トラック・物流Gメンに対しましてこの法律につきまして研修を行うとか、どういう問題があるのかというのをお互い情報交換をしようというようなスキームを設けて、連携を強化しているということでございます。

 そして、御指摘のように、今回の改正法案の中には、国交省を始めといたしました事業所管省庁が調査をいたしまして、違反があれば直接指導ができるという権限もございますし、関係機関間で相互の情報提供をするというようなスキームも盛り込まれておるところでございます。

 改正法案が可決、成立をした場合には、このような既存の連携を、中小企業庁、国土交通省だけではなく、他の事業所管省庁にも広げまして、相互に知見やノウハウを共有する、そういうことを通じまして共有に際して必要な情報共有を行い、取引の適正化を図っていきたいというふうに考えてございます。

福森委員 きめ細やかな連携体制ということですけれども、そうしてくると、やはり公正取引委員会等の人員確保ということも必要になるのではないかと思います。今日午前中Gメンの話もございましたけれども、そういった部分、どのように取り組んでいく予定か、教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、例えば緊急増員がなされるとか取引適正化担当の官房審議官が新たに新設されるなど、この法律を担う中小企業庁とともに、調査、執行体制の強化、そういうものに努めてきたところでございます。

 そして、先ほど申し上げましたように、今後、関係省庁との連携も強化されるということでございますので、そういう連携強化も進めるとともに、公正取引委員会におきましても、関係当局などとともに相談しながら必要な体制の確保を図りまして、更なる価格転嫁、取引適正化の推進に取り組んでまいりたいと考えてございます。

福森委員 よろしくお願いします。

 私、この度の下請法改正によって価格転嫁を促し、それを賃上げにつなげていくことはとても重要だと思っています。そのためには、この法案を来年一月までに施行して、来春の春闘に間に合うようにさせるべきではないかなと。ガイドライン等の整備や認知徹底、啓発に特にスピード感を持って取り組んでいかないと、価格転嫁ということ、それから賃上げにつなげていくということがすごく大事で、それをスムーズにしていくためにも、繰り返しになりますが、来年一月までに施行して取り組んでいくべきだと思っておりますが、同じお考えであると。よろしいでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法によりまして、取引上の立場の弱い中小の受注者が価格交渉をしやすくなる、その結果、賃上げをするための原資の確保につながるというような観点から、改正法の施行につきましては来年の春闘に間に合わせるべきであるというような御意見、委員の御指摘の御意見というものを承知しているところでございます。

 他方で、改正法案につきましては、仮に成立、可決した後におきましても、政令、規則、運用基準という下位法令の整備も必要ということでございまして、その内容につきましても一定の期間をかけましてしっかり周知、広報していくことも必要ということもございます。

 改正法案が可決、成立した場合には、このような事情も勘案しながら適切な施行期日を判断することとし、速やかに施行に向けて尽力していきたいというふうに考えてございます。

福森委員 本当に価格転嫁と賃上げというのは待ったなしだと思っておりますので、大臣始め関係各位に迅速な御対応をお願いしたいと思います。

 次に、下請振興法についてお聞きしたいと思います。

 主務大臣による執行強化として、主務大臣による指導助言をしたものの状況が改善されない事業者に対して、より具体的な措置を示して改善を促すことができるとしていますが、どのような措置を想定していらっしゃるか、教えていただけますでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 価格交渉、価格転嫁の状況が芳しくない事業者に対しては、各事業所管大臣から経営トップに対し指導助言を行っており、価格交渉、転嫁の定着に一定の成果を上げてきているところと認識しております。

 一方で、何度か指導助言を受けても取引方針が改善されない事業者も一部には存在しております。こうした事業者に対しましては、具体的な改善内容は事業者に委ねる指導助言から一歩進めて、改善いただきたい具体的な措置、内容を明示し、より具体的に取引方針の改善を促すような勧奨を行うことで、その事業者の取引方針の改善を図ることとしたいと考えております。

 具体的な運用については、取引実態等を踏まえたものにしたいと考えております。

 例えば、下請Gメンによる深掘り調査などで交渉方法に課題が見つかった事業者に対しましては、取引先に対し、記入しやすい価格交渉のフォーマットを用意して、発注者の方から書面で交渉を申し入れるといった具体的な改善の取組を示して、その取組が企業内で定着するよう促していく、このようなことを想定しております。

福森委員 おっしゃるとおり、指導や助言では聞かない経営トップといいますか企業もあるんだろうなと思いますので、よりきめ細やかにというか厳しく、勧奨という措置も必要だということを認識いたしました。

 経営トップに助言とか指導とかということをされているということでございましたが、私は、下請法については、受発注を行う現場の従業員が認識、理解していないケースが多々あって、発注者が無自覚に、これまでどおりで頼むわとか型を預かっておいてなと中小受託事業者にお願いしていることも多いかと思います。

 私自身も、当初、下請法をよく認識していなくて、会社のマネジメント研修で下請法について学びました。研修を受けることによって、この法律の趣旨を改めて理解して、中小受託事業者への発注に注意を払うようになったという経験があります。

 ですから、経営トップに助言するだけじゃなくて、いかに現場に知らしめていくかということも非常に大事だと思っておりますけれども、この度の改正、どのように啓蒙されていくのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 現場の従業員がこの法律を認識、理解するというのが極めて重要でございます。従来から我々もそのような認識を持っておりまして、周知に努めているところでございます。

 具体的に、毎年この法律を詳細に解説したものがございまして、いわゆる講習会テキストと言われているものですが、そういうものも広く周知を図っております。そして、動画も作成いたしまして、ウェブで流しておりまして、この法律を分かりやすく解説をする。さらに、事業者団体がいろいろな研修会とかを開催しておりますが、そこに現役の職員を講師として派遣をいたしまして、この法律の内容を説明をする。そして、日々の業務で困った場合にすぐ相談ができるように、公正取引委員会は相談電話も受け付けておりまして、例えば、令和六年につきましては二万件を超える相談を受けておるということでございます。

 このようなことを通じまして、現場の従業員の認識、理解が促進するような普及啓発に努めていきたいと考えてございます。

福森委員 本改正案については、価格転嫁を促して、繰り返しになりますけれども、来年の賃上げにつなげていけるようスピード感を持って推進していただくこと、また、不当な取引を是正するために、改正案の内容を普及、啓蒙、徹底していくことが肝要だと思いますので、大臣始め関係各位の皆様に切に要請して、私からの質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、東徹君。

東(徹)委員 日本維新の会の東徹でございます。

 四月の十三日でありますけれども、万博がいよいよ開催をされたということで、四月十二日には開会式もありましたけれども、四月十三日、伊東万博大臣も今日はここにおられますが、武藤経産大臣と伊東大臣、お二人、朝から多くの来場者をお出迎えになられていた姿もちょっと遠目に見させていただきまして、本当にありがたかったなというふうに思っております。

 そんな中で、四月十三日なんですけれども、多くの方が来場されました。十二万人ぐらいとかそんなような話もありましたが、ちょっと残念だったことがありまして、それは何かと申しますと、やはり多くの人はあのブルーインパルスが見たかったんだなということがすごく分かりまして、私も見たいなと思って、大屋根リングの上に上って、さあ、もう来るかなと思って待ち構えておったんですけれども、天候がちょっと悪かったので中止ということになったわけです。

 あれだけ多くの方が楽しみにされていたんだなということが本当によく分かりましたので、今日は、ここは経済産業委員会ですので武藤大臣に、できれば伊東万博大臣にもお願いしておきたいと思うんですけれども、防衛大臣、中谷大臣にも働きかけていただいて、是非ブルーインパルスをもう一度見る機会をつくっていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 十三日、私も伊東大臣も、たしか中谷防衛大臣もテープカットのときに一緒におられたと思います。あのときに青空になって、よかった、今日は晴れるなというのが正直なところだったんですけれども、私はちょっとすぐ戻ったものですから、そうしたら天気が悪くなったということで、晴れ男は多分私だけだったと思います。

 本当に、このブルーインパルスの展示飛行が中止になったことは誠に残念だと思っています。天候不良が理由であるため、やむを得ないとは思いますけれども、個別具体のイベントの実施につきましては、これは主催者が判断するべきものでありまして、万博は国家的イベントであり、その機運醸成については関係省庁を挙げて取り組んでいくことが重要だと思っています。

 防衛省とも連携しながら、開幕後もどのように機運の醸成を図っていくか、引き続き検討していきたいと思っております。

東(徹)委員 我々も防衛省の方に、また中谷防衛大臣の方にも働きかけをしていきたいなと思いますので、是非働きかけていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 前回、経産省の所管する法人のことについて聞かせていただいたんですけれども、時間の関係でちょっと中途半端になってしまいまして、まずはそこを先に質問させていただきたいと思います。

 経済産業省が主たる所管である法人ですけれども、独立行政法人が九、それから特殊法人が三、特別の法律に基づき限定数設置されている認可法人が四ということで、これで十六法人。そして、他省庁が主たる所管の法人のうち、経済産業省も所管している法人ということで、独立行政法人が五、それから特殊法人が二、特別の法律に基づき限定数設置されている法人が三ということで、合計、合わせますと二十六法人ということになります。

 今日、経済産業省が所管している法人の一覧を資料としてお渡しをさせていただいております。これを見ますと、何かこれとこれは一つにできるんじゃないのかというふうに思ったりもするような法人もあるわけですけれども、独立行政法人だけを見ても運営費の交付金が三千七百二億円なんですね。職員数も九千百三人ということで、だんだんと一万人近くなってきているという状況にもあります。

 このままでいいのかという思いもありまして、やはり税金を効率的に運用していくというふうなことが大事だと思います。所管する独立行政法人の統合とか効率化、こういったものを検討して、見直すべきところは見直していくべきというふうに考えますが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 独立行政法人につきましては、平成二十五年十二月に閣議決定をされました独立行政法人改革等に関する基本的な方針に従って、組織、制度両面からの見直しが行われたところだと承知しています。この枠組みにおいて、経済産業省においても、民でできることは民でとの原則などを踏まえて、組織面において、日本貿易保険の特殊法人化を行ったところであります。

 その上で、制度面では、同方針に基づく新たな評価制度に基づき、中期目標期間等の終了時までに組織の存続の必要性を含む組織、業務全般の検討を行っていると承知しています。加えて、独立行政法人ごとに業務の効率化目標を設定をし、毎年度評価を行っており、例えば、効果の低減した事業の廃止ですとか、デジタル化による業務効率化などの成果を上げていると承知しています。これらの取組は、総務省の独立行政法人評価制度委員会においても確認を受けながら、組織、業務の見直し、効率化に向け、進めているところであります。

 今後も、独立行政法人の組織や業務の在り方については、これらの仕組みも通じて検討し、不断の見直し、効率化を図ってまいります。

東(徹)委員 大臣のおっしゃるとおり、不断の見直しということが大事だと思いますので、私もまたこの委員会の中で指摘をさせていただきたいと思います。

 その中で、今年に入って、やはりこれはちょっと問題だなと思う事件が日経新聞の方に出ておりました。これも皆様の方にお配りさせていただいておりますけれども、今年に入ってから、二月二十五日の日経新聞ですけれども、産業技術総合研究所ですが、国内に三つある特定国立研究法人のうちの一つですけれども、二千人超えの研究者がおって、世界トップレベルの研究開発に従事しているというふうなことで、何と、この問題は、二〇一八年四月ですけれども、産総研の主任研究員だった方が、営業秘密に当たるフッ素化合物の合成技術に関する研究データを中国企業にメールで送信していたということで起訴されて、有罪判決となったということであります。これは本当に国益の流出だというふうに思っております。産総研が厳しい漏えい防止措置を講じていることから営業秘密に当たるというふうに結論づけたというふうに記事で出ております。

 これからも、大事な日本の技術というか国益が海外へ、中国に出ていくということは非常にやはり許されないことであります。是非とも、セキュリティークリアランスの制度も昨年から始まったわけでありますし、外国籍の研究員の採用の在り方、情報管理の徹底、こういったことをどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

菊川政府参考人 今委員から御指摘ありました事案が生じたことは、極めて遺憾だと思っております。

 産業技術総合研究所、産総研でございますが、においては、これまでも、情報管理に関する組織体制、そしてシステム、ルール、こういったところにのっとって対応してきた認識ではございますが、結果として御指摘のような事案が生じてしまったということでございます。極めて遺憾だと思っております。

 今回の事案の発覚を踏まえまして、産総研に対しまして、情報漏えい対策、そして法令遵守の徹底等の対応を指示してきたところでございます。現在、必要な再発防止策が講じられていると承知をしております。具体的に申し上げますと、採用、受入れ時の適格性審査の強化、そしてモニタリングの強化、技術情報の管理の厳格化、また研修実施等による職員等の意識向上等に取り組んでいると承知をしております。

 また、委員から御指摘ありました産総研の職員の採用でございますが、この点につきましては、独立行政法人通則法等におきまして国籍の要件はありませんで、産総研としては、業務遂行に必要かつ優秀な人材を適切に確保しているという認識でございます。

 ただ、委員御指摘のように、研究開発の成果につきましては、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすような国外流出を防止すべく、産総研における情報管理の徹底等による再発防止にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

東(徹)委員 これは重要経済安保情報保護活用法ですよね。これは、産総研の同意が前提ですけれども、適合事業者としてやはり認定する必要があるんじゃないのか、私はこう思ったりもします。これは通告していませんけれども、もし御答弁できるようだったらお願いしたいと思います。

菊川政府参考人 現時点でお答えできる範囲でお答えしたいと思います。

 情報管理の重要性に鑑みまして、産総研におきましても、今、先ほどの答弁で申し上げましたが、情報管理の強化等々を行っているわけですけれども、令和六年度の補正予算などを活用いたしまして、研究施設の建物内のセキュリティーゲート、こういったところや、セキュリティーレベルの高い情報の保管、整備、こういったところの導入をやってきております。先端技術の研究開発に関する重要なデータに関する情報保全の取組を徹底してやってきているところでございます。

 今委員から御指摘あった本年五月の重要経済安保情報保護活用法の施行後でございますけれども、これは、政府が指定した重要経済安保情報を産総研に利用させる必要があると認めたときには、法令で定める基準に適合することについて審査を行って、適当と認められた場合のみ当該情報を提供するということになるというふうに承知をしております。

東(徹)委員 この事件後も外国籍の方も採用されておられるということでありますから、非常に大事な国益に資する情報をやはりしっかり守っていく必要があると思いますので、是非そういったことも進めていっていただけたらというふうに思います。

 それでは、下請法のことについて質問させていただきます。

 これは、最近よく言われる、やはり賃金を上げていかなければならないわけでして、その賃金であったり、また、原材料費が高騰している、電気代も上がっていますし、ガソリン代も上がっている中で、構造的な価格転嫁をすることができるための改正だということで、これは改正すべきだなということで評価をさせていただいておりますが、いろいろと問題点もあると思っておりまして、その点についてまず質問させていただきたいと思います。

 まず、下請代金支払遅延等防止法、いわゆる下請法ですけれども、独占禁止法を補完する法律として昭和三十一年六月一日に制定されたということで、六十九年がたとうとしておるということでありますが、日本は今、よく言われている失われた三十年ではないですけれども、一人当たりの実質賃金の伸びがこの三十年間上がってこなかった。日本は一・〇五倍ですけれども、アメリカとかイギリスは一・五倍になっているというような状況があって、価格転嫁が進んでこなかった、下請事業者で働く人の賃金が上がってこなかったことも原因があるというふうに思います。

 そういった事情を踏まえて、これまでの下請法に規制の効果がどこまであったというふうに認識されていたのか、伊東大臣にお伺いしたいと思います。

伊東国務大臣 東議員の御質問にお答え申し上げます。

 公正取引委員会におきましては、これまで現行法につきまして積極的に運用してきたところであり、取引の公正化やあるいは受注者の利益保護について効果を発揮してきた、このように評価をいたしております。

 取引の公正化の観点から、違反行為を是正することを目的として、令和六年度においては、八千件以上の指導が行われ、平成以降で最高の件数となる二十一件の勧告、公表も行われたところであります。さらにまた、受注者の利益保護の観点から、令和五年度におきましても、受注者六千名以上に対し、代金の減額分の返還など、総額約三十七億円以上に相当する原状回復が行われてきたところでもあります。

 他方で、近年の急激なコスト上昇を受け、発注者と受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で構造的な価格転嫁を定着させることが重要な課題となっており、現行法に基づく取組だけでは限界もあると考えております。そのため、本改正案を国会に提出したものであり、これによって更なる取引の適正化を図ってまいりたいと思うところであります。

 三十年間の賃金は、ちょっと私も答えづらいところであります。

東(徹)委員 現在の物価上昇のときであっても価格を据え置くという商慣習というのは、やはりすごく根づいているというふうに思うわけですね。最近は価格転嫁という言葉がようやく出てきたわけですけれども、これも、私の知っている限りでは、二十年以上も前から、下請いじめとか、下請たたきとか、そういった言葉がよく言われていたというふうな気がします。

 今回の法改正によって長年続いてきた商慣習を変えることができるというふうに考えておられるのかどうか、まずお聞きしたいと思います。

伊東国務大臣 今回の改正法案が成立すれば、適切な価格転嫁を我が国の新たな商慣習としてサプライチェーン全体で定着させていくことにつながると考えております。また、この法律の対象外の取引につきましては、独占禁止法の優越的地位の濫用規制に関するガイドラインを改定するなど、独占禁止法での手当てを検討をしているところでもあります。

東(徹)委員 このことによって価格転嫁が進んでいけばいいというふうに思います。

 私は、下請法の勧告について次にお伺いしたいと思います。

 下請法に違反する行為ですけれども、公正取引委員会のホームページを見させていただくと、令和七年に十件の勧告事案が公表されています。

 余り名前を言っていいのかどうか分かりませんけれども、赤坂見附に近い、大きなカメラ屋さんがありますが、そこがホームページに出ておりましたけれども、要するにビックカメラですけれども、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに下請代金の額を減じたということで、その減額した金額が何と総額五億五千七百四十六万八千九百九円ということだそうです。こういったことがありましたというふうなことで勧告が出ております。勧告の内容としては、取締役会で自社の行為が下請法違反を確認することとか、下請法の研修の実施などによって措置を求めておったり、実際に取った措置を公正取引委員会に報告するというふうになっております。

 ほかの事例も同様の内容になっておりますが、これまで出された勧告ですけれども、ちゃんと事業者はそれに従った措置を取って報告を行ったのかどうか、まずお伺いをさせていただきます。

向井政府参考人 お答えいたします。

 違反事業者が勧告に従ったというような場合には、この法律の規定に基づきまして、独占禁止法に基づく排除措置命令とか課徴金納付命令、そういうものを命じないというような規定がございます。現在のところ、事業者が勧告に従わないというような理由でこのような命令を行った事例はないわけでございまして、実務上も、勧告の内容につきましては、適切に報告をしたり、再発防止策というものを講じていただいているというように認識をしておるところでございます。

東(徹)委員 勧告を見ますと、本当に誰もが見たことがあるような、聞いたことがあるような会社名ばかりが出てくるわけでありまして、これが公正取引委員会のホームページに出ているということは非常に大きなことなんだろうなというふうには思います。

 ただ、勧告のほかにも指導というものがありまして、令和元年度から令和五年度までの五年間の指導の件数ですけれども、四万九百七十八件ありますね。一年間で平均しますと八千百九十六件ということになるわけですけれども、指導件数が八千件ということで、こっちの件数は物すごく多いわけですね。

 これは、指導した結果、ちゃんと事業所はその指導に従っているのかどうか、改善してきているのかどうかとか、この辺のことはきちっと確認をしていっているのかどうか、この点についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会では、この法律の取引構造を踏まえますと、違反行為がありましても自ら申し出ることが難しいということでありますので、こちらから、違反行為がないかどうか、積極的に毎年大規模な実態調査をしておりまして、受注者、発注者それぞれに対しましてアンケート調査をしております。そこで発注者と受注者の間で何か問題がないかということを毎年フォローアップをするというような体制もできておりますので、例えば、指導をいたしまして、翌年どうなっておるのかということも我々は確認をしておるところでございます。

東(徹)委員 そこはちゃんと指導を行って、アンケート調査をして、それがきちんと是正されているかどうかということを確認して、問題があった場合には適切に対応しているし、ほったらかしにはしていないということでよろしいんでしょうか。

向井政府参考人 そのような認識でございます。

 具体的に、指導をいたしますと、その違反行為がなくなっているかどうかというのを確認いたしますし、場合によりましては、代金の減額とかがありましたら、それを回復するように報告を求めるということでございましては確認をしているところでございます。

東(徹)委員 続いて、今回の法案での名称のことについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回の法案では、下請事業者という名称を中小受託事業者にということで、親事業者は委託事業者に改めるということですね。

 下請という言葉、これは社会的に定着しておって、言葉の意味合いとしては伝わりやすいわけですけれども、よくないだろうということで変えたことにしたと思うんですけれども、中小受託事業者は非常にちょっと分かりづらいのではないかというふうに思いますが、今回変更する趣旨についてまずお伺いしておきたいと思います。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律の下請という用語につきましては、受注者が発注者よりも下であり、そして対等な立場ではないかのような語感を与えるという指摘もありますし、受注者サイドといたしましても非常に耳障りだというような声もございます。そして、発注者サイドに聞いておりましても、もうこのような言葉は使わないということを徹底しているというような会社もあるわけでございまして、こういう用語を使わずに、対等な立場でやっていこうというような認識も現在では醸成されつつあるということでございます。

 このような時代の変化も踏まえまして、従属的な意味合いの含まない用語に今回改正をしようというものでございます。

東(徹)委員 私は、対等な立場でと今おっしゃいましたけれども、対等な立場ということを徹底するんだったら中小という言葉も抜いた方がよかったんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。

古谷政府特別補佐人 なぜ中小をつけるのかという点でございますけれども、議員からも御指摘ありましたように、下請法は、独占禁止法の優越的地位濫用規制の補完法でございまして、取引上の立場が弱い受注者の利益保護を簡易迅速に図るという趣旨の法律でございます。

 そのため、保護対象となります受注者といいますか、今でいいますと下請事業者と発注者との関係について、中小企業基本法も参考としながら、資本金額とか、改正法案の通った後には従業員数も加わりますけれども、そういったことでこの関係を外形的に定めております。

 こうした法律のたてつけを踏まえまして、この法律が規模格差のある事業者間の取引を対象としているということが明らかになりますように、受託事業者というものの前に中小というふうにつけさせていただいて、保護対象となる事業者を示すことが適切であろうと考えた次第でございます。

東(徹)委員 最後、ちょっともう一問だけお聞かせいただきたいと思いますが、価格協議についてなんです。

 価格協議なんですけれども、一方的に製造委託等代金の額を決定することというふうにありますが、これはどういったときが一方的な価格決定だと認定されるのか、この点、御説明をいただきたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 例えば、実質的、実効的な協議を行わないというものを念頭に置いていることでございます。具体的には、例えば、協議の求めを拒んだり、無視したり、繰り返し先延ばしにして、協議に応じず価格を決定するというようなことや、形式的な協議のみで必要な説明を行わないというようなことを想定しているわけでございます。

 いずれにしても、この改正法案が仮に成立したということになりますと、どのような事例が問題なのかというものは運用基準等によりまして明確化をするということで、違反行為の未然防止のために十分な周知を図っていきたいと考えてございます。

東(徹)委員 全く価格協議を行わなかったら、これは分かりやすいと思うんですよ。価格協議を行った上で一方的というふうに言われるそこの基準ですよね、そこはやはりきちっと示していっていただきたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、村上智信君。

村上(智)委員 日本維新の会の村上智信でございます。

 本日も質問の時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

 今、東委員が少し長めに話をしましたので、党としての時間を守りたいと思いますので、少し私の時間は短くしようというふうに考えています。

 さて、今回の法改正におきまして、下請という言葉を使わないというふうなことでございますけれども、今、東委員からもそのことについては触れましたけれども、私もそのことから話をしたいんですが、私は、このような下請という言葉を使わないというふうな話について異議を唱えるという趣旨は全くないんですけれども、自分自身がもう下請法と言い慣れているものですから、今日、この場所の質問では下請法というふうに言わせていただこうと思います。

 この法律の題名も今回変わるということですが、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律、かなり長い法律の名前ですね。このように長い場合は大体略称がつくんですけれども、では、下請法じゃなくなるんだったら何というふうに略称をつけるんですかと担当者にちょっと聞いてみたら、これから考えますとか、あるいは中小受託事業者代金法だとか、そんなことをおっしゃっていました。略称というのは、みんながしゃべっているうちに、いつかしら定着するようなものだというふうに思いますけれども、ちょっと聞いたら長いものですから、本当にそれが定着するのかなというのは私はちょっとよく分からないところではありました。私だったら、支払い遅延防止法かな、そんなふうには思うんですけれども、この場所で勝手に言い始めてもなかなか皆さんぴんとこないでしょうから、この場所では下請法と言わせていただこうと思います。

 さて、この法律の趣旨につきましては、私から言うまでもありませんけれども、大企業と中小企業、その支払いなどの関係で、委託をする、発注をする、そういう関係で立場が優位な大企業が不当に要求をしてくる、例えばどういう要求かといいますと、支払いの遅延など、このような不当な要求を防ぐことが法律の趣旨とされております。全く有意義な趣旨だというふうに考えております。

 しかし、法律の在り方を考える際には、様々な関係者の立場に立って、その関係者にどういう影響があるのかということを考えなければならないというふうに思います。中小企業への不当な要求は許されませんけれども、他方で大企業への影響も確認しておこうというふうに思います。

 そこで、質問をいたします。

 本改正では紙の手形を禁止するとのことですけれども、手形を禁止することによる発注側の企業への影響をどのように見込んでいるのでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会の調査では、近年、この法律の対象取引におきまして約束手形がどれくらい使われておるのかということを調査したところ、全体の一割程度ということでございます。かつてに比べまして商習慣の変化が生じておるということが確認されてきたということでございます。このような観点から、今回の改正法案におきまして約束手形を禁止をするということにつきましても、発注者に対する影響はそれほど大きくないのではないかというふうに考えておるところでございます。

 他方で、約束手形払いを禁止をいたしますと、やはり一時的に発注者にとりましては資金繰りの負担が生じるという懸念もあるわけでございますので、支払い手形を現金化する中小企業を対象とした例えば低利融資制度の活用など、中小企業庁等の関係機関と連携をいたしまして、こういう改正が行われるということにつきまして一定の期間をかけましてしっかりと周知を図っていきまして、円滑な施行に向けて取り組んでまいりたいと考えてございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 手形については、もう既に廃止をする方向であるというふうに政府として方針を出されておりますけれども、二〇二六年度末、二〇二七年三月末ということになりますけれども、それに向けて廃止の方針ということです。多分、その方針を決める際には、既に企業などにヒアリングをして、影響はどれぐらいあるんだろうかということを見積もった上で方針を決められたんだというふうに思います。先ほど、昨今の手形の決済の割合は一割程度だという話をしておりました。以前より随分下がってきているということで、こういうふうに、もうやめていってもいいという状況がそろっているんだろうなというふうなことは私も分かりました。

 それでも、なお影響がある発注側企業というのはあると思います。先ほど、中小企業庁の方でそういうことをカバーするような話をされておりましたけれども、公的な融資制度があるというふうにお聞きしておりますけれども、そのような制度の運用をしっかり行っていただきたいというふうに考えます。

 さて、次の質問に移ります。別の法律改正の事項について話題を変えます。

 現行法では、大企業である委託事業者から中小の受託事業者に対して委託する場合、発注する場合、その委託の内容、必要的記載事項と言っているようですが、それを紙の書面で交付するということが現行になっておりまして、それを、下請業者の承諾を得た場合には電磁的な交付ができるということにされています。それは今の話。

 そして、今回の法改正では、下請業者の承諾なしに電磁的な交付ができるように改正しようとしております。これは、大企業にとってはメリットがある、手続が減って楽になる、そういう内容だというふうに思われます。

 そこで、質問をいたします。

 必要的記載事項を電磁的な方法により提供可能とする狙いを教えてください。また、必要的記載事項と電磁的な方法とは何かも併せて教えてください。お願いします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法律におきましては、発注者は、取引条件の明確化の観点から、発注時に、発注の内容、代金の額、支払い期日、そういうものにつきまして一定の規則で定めている事項がありますが、それを記載した書面を受注者に交付する義務がございまして、それが、現行では書面が原則になっておりまして、受注者からの承諾があれば電子メール等でもいいということでございます。

 電磁的な方法というのは、電子メールとか、いわゆる電子受発注システム、EDIなど、そういうものを想定しているわけでございます。

 しかしながら、昨今の情報技術を利用した取引というものが普及をしておるというような現状を踏まえますと、紙の書面を保存するコストとか郵送するコストとか、あと検索が容易とか、そういうようなものを考えますと、電子メールとかEDIとかそういうもので、必要なデータを電磁的な方法によりまして受注者に送るということを希望するような事業者も増えておるということでございます。

 このような事情を踏まえまして、改正法案では、発注者、受注者双方の利便性の向上のために、受注者からの承諾の有無にかかわらず、発注者が発注の内容や代金の額などの記載事項を、電磁的な方法、電子メールや電子受発注システム、EDI等でございますが、そういうものによりまして提供することができるように改正をしようとするものでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 必要的な記載事項ということで、大企業から中小企業に発注するときの内容、金額などというふうなことで、これは必ず必要なことだというふうに思います。

 そして、電磁的な方法というのが電子メールも含んでいるということで、聞いて安心をしました。これは、いただいた資料も見ていますし、法律の条文も見ましたけれども、法律の条文が非常に難しい書き方をしていて、電磁的方法、括弧、電子情報処理組織を使用する方法そのほかの情報通信の技術を利用すると書いてありまして、ちょっと普通の人が聞いたら何のことか分からないものですから、是非これは、一般の方といいますか、中小企業、大企業などに周知、広報する際には、分かりやすい広報に努めていただけたらと思います。電子メールと聞くとみんな安心をすると思います。

 関連して、次の質問をいたします。

 電子メールと聞くと、多くの中小企業にとってもそのやり取りというのは当たり前のようにも思うんですけれども、それでもこれに対応できない中小企業というのはあるのかなと思うものですから、質問いたします。

 電磁的な方法に対応できない中小受託事業者にはどうするんでしょうか。教えてください。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法の規定では、受注者が書面での交付を求めたというような場合には、発注者は、電磁的記録ではなく、書面で交付をしなければならないという規定になっておりますので、今のようにやはり書面の発注書が欲しいという場合には申し出ていただくということを想定しておるところでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 中小企業から求められた場合は紙の書面ということで、これも実態に合って、ちゃんとカバーできるなというふうに思います。

 同時に、中小企業の電子化を進める施策、これも取り組んでいただきたいなというふうに思います。これは中小企業庁への話になるかもしれません。中小企業における電子化の推進、多分今までも随分いろいろなことを取り組まれているというふうには思いますけれども、しかし、こういうふうに制度も変わるものですから、これを捉まえて、また更に一段と考えていただけたらと思います。

 ただ、電子メールというふうにいうと、今さら設備導入補助金という話でもないのかもしれません。むしろ、そういう電子メールをしっかり使えるように、仕事でも使えるように、そういう普及啓蒙活動を図るということかもしれませんね。よく商工会議所などでは、そういうSNSとかメール、その使い方を教えるようなセミナー、初心者向けのセミナーをやっていますけれども、こういうことをしっかりやっていただく、こういうことが必要なのではないかなというふうに考えます。

 さて、次の質問に移ります。

 下請法の施行のためには、多くの事業者の状況を調べて、そして下請法の違反者を見つけていく、そういうことが必要になってくると思います。たまたま知り得た案件だけで行政指導しているようでは効果が限られてくると思います。

 そこで、質問いたします。

 下請法の施行のために、何人くらいの体制で、どのような調査を行っているのでしょうか。

向井政府参考人 お答えします。

 公正取引委員会のこの法律の執行体制につきましては、今年度における検査官等の人数は、本局と、公正取引委員会には地方の事務所がありますが、そこと合わせまして百十九名でございます。

 そして、この取引は、やはり、不利益を被ったといたしましても、自らその情報を当局に提供するというのが難しいということでございますので、公正取引委員会、中小企業庁は毎年大規模な書面調査をしておりまして、それに基づきまして積極的に違反行為がないかということを確認いたしまして、違反行為があったという場合には、そういうものに対しまして勧告、指導等を行うというような調査手法でございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 体制で百二十人ほどということで、少なくない人数が活動されていると思います。

 定期的な調査をしているということで、アンケート的なものを送っているということですけれども、これの送り先をお聞きしたら、大規模な事業者について九万通、中小の事業者については三十二万通ほど送られているという話をお聞きしました。大変多くの数を送って、しっかり調査をしているなというふうな感想を持ちました。

 関連して、次の質問をいたします。

 このような調査の結果、成果を知りたいと思います。これまで、下請法により毎年何件の行政指導を行ったのか、教えてください。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の直近のデータを申し上げますと、行政指導の一種であります、法律に規定しております勧告、これにつきましては、令和四年度六件、令和五年度十三件、令和六年度二十一件でございます。この二十一件というのは平成以降で最多というものでございます。

 そして、指導、こちらは事業者の名前というようなものが公表されるというものではございませんが、これにつきましては、大体最近では毎年八千件前後の指導を行っておるというところでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 毎年八千件もそうやって指導しているということでお聞きしますと、大変機能的にやられているな、組織的にやっているな、そういうふうな印象を持ちます。

 勧告については六件から二十件ちょっとということで、お聞きすると、アンケートの郵送をして、返ってきたものの中から見つけていくような話が多いんだと聞いていますけれども、何十万件と送りますけれども、どうしてそんなことができるんだろうかと聞いたら、これはマークシートだそうですね。マークシートで送って、それを機械的に処理をして、怪しい情報が入ってくるとこの八千件に入っていく。特にその中でも指導だけじゃなくて勧告までしないといけないんじゃないか、そうなってくるとヒアリングをするような、そんな仕方をされているというふうにお聞きしました。大変組織的に、機械的にやっておられるなというふうな印象を受けました。

 さて、次の質問に移ります。

 ここまでお聞きしていますと、調査の体制がしっかり整っていて、毎年のアンケートも何十万件と送っていて、それで下請法の実績が上がっているというふうに考えました。このように体制がしっかり整っているわけですから、下請法の対象を広げて、そして更に多くの不正事案を見つけようとする、そういうことを考えてもいいんじゃないかというふうに思います。

 今回の法改正では、従業員について新しくこの対象に加えるように、三百人以下と以上で、それで対象になって、場合によっては、今までは特段指導しなかったのが、見つけて指導するようになる、そういう対象になっていくわけですね。

 ここで質問をいたします。

 下請法の対象について、従業員の人数を要件に加えていますが、売上規模も要件に加えていいのではないでしょうか。あるいは、中小企業も中堅企業から零細までありますので、そういうふうな中小企業への支払い遅延なども対象としてよいのではないでしょうか。お答えください。

    〔委員長退席、新谷委員長代理着席〕

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法につきましては、公正取引委員会と中小企業庁が共同で開催いたしました企業取引研究会におきまして検討をしたところでございます。資本金基準を補完する基準としてはどういうものがいいのかということをいろいろ検討しておりまして、御指摘のとおり、例えば売上高とか取引依存度とか、そういうものについてもアイデアといたしまして議論の対象となったということでございます。

 例えば売上高につきましては、取引先に開示いたしまして取引依存度が明らかになるということになりますと、適用逃れの観点から、例えばその取引依存度以下にしようとか、発注控えがあるんじゃないかというようなことが特に中小企業団体や中小企業の経営者からも出されたということでございます。

 一番分かりやすい基準が何だろうということを議論したところ、そこに参加している有識者の方ですと、やはり従業員というのが一番分かりやすいのではないかということで、今回、資本金基準を補完するものといたしまして従業員基準を導入をしたというような改正法案を盛り込んだという経緯でございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 この法律を施行する上で、発注側と受注側、それぞれがお互いの例えば従業員数が分かっておいて、それで法律の対象かどうかを認識した上で、そして法律をちゃんと守っていきましょう、多分そういった認識はやはり必要だということだと思います。

 そう思ったときに、確かに売上げを相手の企業に知られたら面白くない、知らせたくない、そのように企業は思うんじゃないかということだと思いますけれども、その気持ちも分かるんですけれども、他方で、会社法によって既に公開されている情報もあるものですから。会社法によりますと、大企業においては損益計算書と貸借対照表、これを公開することになっておりますし、決算の公示ですね、そして、中小企業においても貸借対照表。貸借対照表ということは、だけなので、確かに売上げはないんですけれども、しかし、そういう情報は公開されておりますので、それが前提だと思うと、果たして売上げというのはそれほど機微な情報として出せないのかなというのは、ちょっと私では分からないところはありました。貸借対照表もかなりのことは書いておりまして、借金がどれぐらいかとか、現金がどれぐらいある、金融資産がどれぐらいある、そういうふうなことも書きますので、そういうふうなものを公開しているにもかかわらず、売上高だけそうやってお教えにならないのかなというのは、ちょっと私としては分からないところがありました。

 従業員は三百人で分けて、それで今回法律の対象にしようとしておりますけれども、もうちょっと、この従業員、もしそれを企業同士で教え合うのがはばかられないとなるんだったら、中小の受託側の従業員の例えば二倍とか三倍あれば発注側と受託側の関係は本法の対象にするとか、そういうふうな考え方もあると思いますので、三百人で切ってしまうと、法律上は確かに三百人かもしれませんけれども、しかし、件数を増える、下請法の更に効果を上げるという意味では、いろいろな考え方があっていいのかなというふうに思いました。

 さて、次の質問に移ります。次は大臣に質問をさせていただこうというふうに思います。

 今回の法改正によりまして、更に下請法を強化をしようとしております。下請法改正により取引を適正にしたいという大臣の意気込みを教えてください。

伊東国務大臣 村上委員の御質問にお答えしてまいります。

 大臣の意気込みというというお問いでありますが、これは、今回、取引上の立場の弱い事業者が物価上昇に負けない賃上げの原資を確保できるようにするためには、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる取引環境の整備が重要である、このように認識をしております。今回の改正法案が成立をすれば、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化につながることと考えております。

 また一方、デフレ型の商慣習から脱却するためには、自社の商品やサービスの価格を据え置き、その原資を取引先に求めるという旧来の社会的規範を変えていく必要があろうか、このように思います。

 これらを実現するために、公正取引委員会においてこの法律や優越的地位の濫用規制を引き続き厳正に執行していくことに加え、担当大臣としても、労務費転嫁指針の普及啓発などにつきまして、中小企業庁や事業所管省庁とも連携してしっかり取り組んでいきたい、このように考えております。

 以上でございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 まさに今、物価高で多くの庶民が困っているものですから、その原資となるように、大企業から中小企業へ幅広く価格転嫁が行われるように、是非大臣の御活躍をお願いいたします。

 さて、次の話題に移りますが、次は下請振興法に関して質問をさせていただきます。

 この法律に関連しまして、下請Gメンという組織があるというふうに伺っております。今日の午前もほかの委員の方が質問しましたけれども、余りにも名前がちょっと聞きたくなる名前なものですから、私からも質問をさせていただきます。

 いわゆる下請Gメンが活動していますが、下請Gメンとはどのような組織で、どのような活動をしているのでしょうか。お答えください。

    〔新谷委員長代理退席、委員長着席〕

山本政府参考人 お答えいたします。

 現在、下請Gメンは、本省と地方局を合わせて約三百三十名の体制であります。全国の中小企業の取引実態につきまして、年間一万件を超えるヒアリングを行ってございます。その内容につきましては、価格交渉や転嫁などの価格決定方法や、手形等の支払い条件、型の保管状況など、中小企業の取引適正化に関連する幅広い事項についてヒアリングを行っております。

 これらの下請Gメンの調査結果につきましては、例えば自動車や産業機械などの業種別に取りまとめまして、各業界団体へ問題点等を指摘し、取引適正化に向けた自主行動計画の策定や見直し、その遵守のために活用してきております。

 また、三月、九月の価格交渉促進月間では、下請Gメンのヒアリングも活用して、価格転嫁の状況の芳しくない発注事業者への指導助言も行ってきております。

 さらには、公正取引委員会とも連携してヒアリング結果を下請法の執行強化の側面でも活用しておりまして、こうした連携を一層深めていきたいと考えております。

 下請Gメンにお寄せいただいた貴重な現場情報は、秘密を厳格に管理した上で、個別の発注企業の取引方針の改善から業界全体での取引慣行の改善まで幅広く活用し、日本経済全体の取引適正化に引き続き役立ててまいりたいと考えております。

 また、下請Gメンの名称につきましては、本法案の成立の暁には、適切なものに変更をする必要があると認識しております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 下請Gメンの名前がどうなるか私も気になっていたものですから、下請という名称をやめるのでどう変わるのかなと思って、これは通告していないにもかかわらず質問しようかなというふうに思っていましたけれども、先を越されてしまいました。

 この下請Gメン、三百三十人ほどということで、人数としては先ほどの下請法よりも多くの人数が関わっております。その分だけ多くの成果を出していただきたいなというふうに思います。

 関連しまして、最後の質問になります。

 下請振興法に基づく振興事業計画の改正の狙いを教えてください。また、どのように実績を増やそうとしているのかを教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今回の下請振興法に基づく振興事業計画の改正におきましては、複数の取引段階にある事業者が共同で効率化や投資等を行う事業に対して承認、支援できる旨を盛り込んでいるところでございます。

 具体的には、例えばティア1、ティア2、ティア3に当たるような事業者さんが共同で製品の改善や生産効率化に取り組む計画に対して、国が承認し、債務保証等で支援することとしております。こうした取組を通じて、直接の取引先との関係を超えて、サプライチェーン全体で連携した取組を促していくことを狙いとしております。

 計画策定に向けて参照される振興基準においても、直接の取引先の更に先の事業者との連携を促す旨、これを反映することとしたいと存じます。

 今後、振興事業計画の活用促進に向けて、事業者の皆様に対して計画策定のメリット等を周知するとともに、サプライチェーン全体の取引適正化の趣旨も含めて丁寧に説明してまいる所存であります。

村上(智)委員 以上をもちまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、平岩征樹君。

平岩委員 国民民主党の平岩征樹です。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。本日は少し長めに質問の時間をいただいておりますので、どうか最後までよろしくお願いいたします。

 それでは、下請法改正案について御質問させていただきます。

 私自身、議員になる前は中小企業を経営しており、この法律がいかに重要か、また、その立法事実となる中小企業経営者や契約担当者のしんどさ、現場の頃、身をもって実感してまいりました。武藤大臣も同様に中小企業経営者の御経歴をお持ちということですので、ここについては御理解いただけるのではないかと思っております。

 大企業は、契約に関して、例えば値上げ等の変更が比較的容易なのに対して、中小企業はその価格転嫁が容易ではないことは、残念ながら御承知のとおりでございます。そして、価格転嫁がうまくいかなければ、賃上げの原資が確保できず、大企業との人材確保競争に負けて人手不足に陥ってしまう。こうした負のスパイラルを断ち切るということは喫緊の課題であります。

 そこで、まずは価格転嫁と賃上げについてお伺いいたします。

 価格転嫁と賃上げの関係について、まず政府はどのように整理されていますでしょうか。また、双方の施策を検討するに当たって、価格転嫁と賃上げは複数省庁にまたがる政策課題になるかと思いますが、それぞれの検討会議等で相互に参照され、連携した政策立案が行われているのでしょうか。午前中の質疑で、大臣は価格転嫁は賃上げの原資になるというふうに御答弁されていたと思いますが、改めて大臣にお伺いいたします。

武藤国務大臣 ありがとうございます。

 改めての部分もありますけれども、原材料費、人件費、エネルギーコストなどが上昇する中で、そうしたコスト上昇分を売上げに適切に反映をして収益を上げなければ、利益が削られ、成長への投資や、また賃上げの原資を確保できないということであります。このため、我が国の雇用の約七割を支える中小・小規模事業者の賃上げ等の原資を確保するためには、価格転嫁が不可欠だというふうに考えているところです。

 中小企業団体や労働組合からも賃上げのためには価格転嫁が不可欠だとの声をいただいておるところで、毎年二回の価格交渉促進月間のフォローアップ調査でも、価格転嫁ができている割合が高い受注側の中小企業ほど賃上げ率も高い傾向にあるというところもございますし、また、賃上げと価格転嫁のこうした関係についての認識の下で、中小・小規模事業者の賃上げのために、下請法の改正を含めた価格転嫁のための施策に公正取引委員会を始め各省と緊密に連携して取り組んできているところであります。

平岩委員 今お答えいただいたように、まさに価格転嫁は賃上げの原資だと私も思います。

 しかし、残念ながら、国民の中にはまだまだデフレマインドがあって、物価高騰は悪だというような風潮があります。これは、失われた三十年の中でなかなか賃金が上がらなかったこととか、また、昨今の急激な物価高騰が特に中小企業で働く皆さんの賃金上昇を上回っているということが理由だと思われます。

 現在行われている価格交渉促進月間、先ほどお答えいただきましたけれども、このフォローアップ調査では、価格転嫁率が微増傾向にあるものの、いまだ五〇%を超えず、まだまだコストカットの意識が根強いというふうになっています。

 そこで、今度は価格転嫁といわゆるデフレ脱却という関係なんですが、価格転嫁が賃上げの原資であり、それを積極的に促進していくということがデフレ脱却と経済の好循環につながるという点について、経済産業省の基本的な見解をお伺いいたします。

武藤国務大臣 委員と全く同じ環境で私もここまで来ましたので、御指摘のとおり、このデフレ脱却というものと成長と分配の好循環の実現のためには、先ほど申したとおり、雇用の七割を支えているのが中小企業でありますので、ここの賃上げ実現が極めて重要だというふうに承知をしています。そのために、価格転嫁が鍵であり、政府を挙げて積極的に推進してきたところであります。

 価格転嫁によって製品、サービスの価格は上昇し得ますけれども、同時に、それを原資として物価上昇分を上回る賃上げにつながるものであり、これは社会全体での機運醸成が不可欠であると思います。

 このため、経済界全体での価格交渉、価格転嫁する取引慣行の定着化を目指して、毎年、これまで三月、九月を価格交渉促進月間と設定をして、新聞あるいはウェブ等々、実は私自身も中企庁のホームページにビデオメッセージで流させていただきましたけれども、交渉、転嫁の状況を、社名入りも含めて広く公表してきたところでもあります。

 こうした取組の結果ですけれども、価格転嫁率は、委員おっしゃられるように四九%まで上昇してきているところで、まだまだ正直道半ばであります。やはり、長年しみついた価格転嫁を阻害する商慣行、これを直ちに変えることは確かに難しいと思います、容易ではないと思います。しかし、こうした取組や講習会の開催等を通じて周知啓発を積極的に行いながら、やはり適切な価格転嫁を今後とも引き続き推進してまいりたいと思います。

平岩委員 ありがとうございます。

 広く周知徹底を行われているということは分かりますが、先ほども申し上げましたように、残念ながら、まだ価格転嫁が賃上げの原資であるということの国民への理解醸成が行き渡っているようにはなかなか思えないわけです。

 その上で、今いろいろやられていると思いますけれども、その現在の取組を継続若しくは強化していくのか、あるいは新たな抜本的対策を、いわゆる国民への理解醸成という点についてですよ、この辺りはどのように御見解を持っていらっしゃるでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 この機運をしっかりとつなげていくことが非常に重要でございますから、今できる政策は当然やっていきますが、更に検討を深めて、更なる政策にも充実させていきたいというふうに思ってございます。

平岩委員 価格転嫁があって、値上げがあって、それが経済の底上げをして、デフレ脱却をしていく、こういう流れを御理解いただくことが大事なのかなと思っています。

 現場では、値上げをすると消費者が離れるとか、あと、また、取引先との関係が悪化するのではないかみたいな、こういった懸念がやはり根強いわけです。だから、この価格転嫁という経済全体の課題が何か個々の企業に委ねられて、結果として萎縮してしまっているみたいな話になっているのを、もうちょっと政府全体としてもっとメッセージを出していかないといけないのかなと思っています。

 その上で、やはり値上げと賃上げと価格転嫁みたいなものをセットで説明していくという必要があると思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

山下政府参考人 賃上げにつきましても、これまでも価格転嫁が賃上げにつながるということは繰り返しいろいろな場で説明してございますし、これは業界の団体のいろいろな行動計画みたいなところでもそういう話は盛んにさせていただいております。

 引き続き、それも強化してやっていきたいと思っております。

平岩委員 是非、価格転嫁と賃上げについてしっかり後押しをしていただきますよう、よろしくお願いいたします。

 さて、次に、建設業法との連接についてお伺いしたいと思います。

 建設業は、その特殊性により下請法の範囲から外れていますが、その精神を同じくした規定があると承知しています。建設業法では、労務費の価格転嫁や、契約後であっても資材高騰等による事情での誠実な協議の努力義務があり、近接した規定が置かれています。

 そこで、昨年、建設業法と入契法が改正されたと思うんですが、まず、これらの改正と今回の下請法の改正がどのようにつながっているのか、お伺いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、いわゆる下請法と建設業法の関係でございますが、いわゆる下請法では、役務提供委託というものを追加をした改正でございますが、その際に、建設工事というのを法律上明示的に除いております。

 これは、建設業法でもこの法律と類似したような取引の適正化のための規制があるということでございまして、重複して適用するというのは避けようということで、この法律から建設工事につきましては除かれておるというふうに理解しておるところでございます。

 一方で、このように除いたというのは重複があるということでございますので、内容について見てみますと、例えば、書面交付義務というものがこの法律にありますが、建設業法ですと請負契約の内容の記載、相互に交付する義務とか、こちらの法律では買いたたきの禁止というものがありますし、建設業法では不当に低い請負代金の禁止というようなものがあったり、相互に関連するところもございまして、相互に、改正を検討する際には、どういうような内容になっておるのかというところはお互い参考にしながら一般的には検討をしておるというところでございます。

平岩委員 今お答えいただいたように、それぞれの法律で類似する部分があるというふうに承知していますが、その政省令、それぞれから派生する政省令とかガイドラインの策定等についても、いわゆる相互に整合性が取れるというような運用構造にはなっているのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 下位法令につきましてもどうなっておるかということでございますが、全てについて重なっているということでもありませんが、例えばこのいわゆる下請法につきましては、長期手形ということで割引困難手形というものを禁止しておりまして、そのサイトにつきまして、昨年の十一月に、指導基準ということで、六十日を超えるというものは問題だということで、従来百二十日であったものを短縮したということもございます。

 そのようなものも建設業法におきましても参考にして検討を行っておるというふうに聞いておりますので、重なる部分はありまして、相互に取り入れられる部分につきましては、お互いの制度を見ながら検討しておるというふうに承知をしておるところでございます。

平岩委員 ありがとうございます。

 建設工事の場合、例えば元請の建設会社から下請、協力会社に発注をする際には、いわゆる建設業法において規制がなされると思いますが、でも、その協力会社が資材、部材、電材みたいな製造会社、小売業者に発注するのは、いわゆる下請法の対象範囲になる。そういうことがあるので、現場レベルでやはりどうしても参照されるのはガイドライン等になると思いますので、是非その辺をしっかり連携していって、整合性のあるものを指定していただければと思っております。

 そうしたら、次の質問に進みます。

 昨年の建設業法改正では、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律、いわゆる入契法も同時に改正されました。この中では、公共工事において公共発注者が守るべき規律も定められており、先ほど申し述べました建設業法における契約後の価格交渉において、誠実に協議に応じる義務というのを定めています。これは、民間と民間における努力義務より一層厳しい義務となっています。

 でも、しかし、今回の下請法では、いわゆる公共発注者には一切網がかけられていません。下請法が特に公共発注者を対象外としている点について、この委員会でも、また本会議でも、ほかの委員の皆様からも質問があったと思いますが、いま一度その理由を御説明いただけますでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法律、これは独占禁止法の優越的地位の濫用を補完する法律ということでございます。独占禁止法やこの法律というのは、基本的に民間の事業者間の取引の公正化を図ろうというものでございます。

 他方で、公共発注者につきまして、一般的に事業者に該当するかどうかというところは、ケース・バイ・ケースで判断する必要があるということでございます。

 そして、そのような公共発注者につきましては、御指摘されたような別の規制で規制がなされておるということもありますので、そういうものと二重にして、こちらのいわゆる下請法に対象といたしまして公共発注者というものを追加をするという実益が乏しいのではないかということで、この法律の規制対象にはなっていないというふうに理解しておるところでございます。

平岩委員 ちょっと一つ分からないのが、建設業法や入契法で公共発注者にも義務が課されているわけじゃないですか。そんな中で、下請法では一切対象外とするという合理的理由みたいなのはあるんでしょうか。

向井政府参考人 先ほど申し上げましたように、やはりこの法律の性質というものにあるのではないかと考えてございまして、独占禁止法というもの、これは、公正かつ自由な競争を促進するという民間の事業者の競争を促進しようという法律でございまして、その一形態で優越的地位の濫用というのがありまして、それを補完する法律といたしましてこの法律があるということでございます。

 そして、この公共発注者につきましては、そちらの規制というよりは、また特別の規制というところがあるということでございますので、そこはそちらで規制した方がより適切ではないかという、規制の区分の問題というふうに整理ができるのでではないかと考えておるところでございます。

平岩委員 下請法は民間と民間の取引のみを対象としている、その趣旨は理解しました。

 ちょっと、少し角度を変えて質問をいたします。

 御記憶にあるかも分かりませんが、二〇〇一年、当時の防衛省は、アパッチロングボウという戦闘ヘリを六十二機導入する計画を決定しました。発注先は富士重工業株式会社で、富士重工は、まずアメリカのボーイング社からライセンスを取得して、その製造ラインを立ち上げました。つまり、いわゆる初期投資をした上で製造を開始したわけです。

 問題になったのは、この多額の初期投資分を導入する六十二機の費用に分割して支払うという契約だったところ、実際には、年に一、二機製造しているうちに、二〇〇八年になって、六十二機製造、配備するという計画を十三機まで縮小してしまった、それを防衛省が決定した。さらには、残りの機体価格に上乗せされるはずだった初期投資分も払わないということを富士重工に伝えて、これでは富士重工は初期投資分を回収できなくなってしまいますから、結局訴訟になって、一審は二〇一四年の富士重工が敗訴、二〇一五年は逆転勝訴して、国が初期投資分を全て支払うということになりました。

 一応、防衛省の名誉のために申し上げますと、この事件の後は、そういうことがないように、初期投資分は最初に一括して支払うというようなことにしているようですが。

 これはちょっと仮定の質問になるんですが、これが民間と民間の取引の中で起きた場合、これは独禁法違反や下請法違反で調査対象となり得るかということです。私の見解では、設備投資等の投資を最初にさせておいて、その後で、契約によって後々その分は補填するよと言っておいて、後から契約数量を大幅に減らすことで下請企業に初期投資分を負担させるみたいなことは問題になると思うんですが、その辺りはいかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 仮定の質問ということでございますので、一般論でお答えしたいと思います。

 先ほど御指摘のあったようなものが事業者間であった場合ということでございますが、例えば、発注者が受注者に対しまして取引上の地位が優越しておるというようなところが明確でありまして、それで一方的に取引条件をまず設定をいたしました、その後、受注者に不利になるように変更いたしましたということに該当いたしますと、優越的地位の濫用として問題となり得るケースもあろうかと思います。

 そして、いわゆるこの下請法というもので製造委託をしておりますということで、最初これぐらい発注するんだということで発注したんですが、必要なくなったということで、途中で取り消すとか数量を変えるというような場合には、例えば、もう既に作っているものを引き取らないということになりますと受領拒否になったり、作っていなくても、その分に要した費用について負担をしないということになりますと、不当な給付内容の変更というものに、禁止する余地というものはあるというふうに考えてございます。

平岩委員 そうなんですよね。民間と民間の関係では多分許されないことが、現行の法律では公共発注者が想定されていないので、この事例は、裁判で賠償が決定するまで五年かかっています。富士重工は大企業ですから裁判を闘い抜くことができましたが、これがもし中小企業なら、なかなか体力がもたずに潰れてしまうということもあり得ると思います。

 何か中小企業支援とかで補助金とかを使っておきながら、一方で、予算の制約によって適正な取引ができないみたいなことが起こり得るならば、なかなか対策としては不十分ではないかと思っています。

 そこで、ちょっと改めてお伺いしますが、委託と受託という関係であれば公契約についても当てはまると考えますが、国や自治体が発注者となる場合、その優越的地位の濫用を防ぐための措置みたいなのは、現在あるのでしょうか。また、公契約における価格転嫁の実態、現状について、把握されていれば教えてください。

武藤国務大臣 国や地方自治体からの契約に関しましては、優越的地位の濫用規制等は、今のお話のとおりで、適用されないということです。一方で、官公需法に基づきまして、毎年度閣議決定される契約の基本方針に、国や地方公共団体が発注を行う際に取るべき措置が盛り込まれているところであります。

 官公需におけるコスト上昇分に対する価格転嫁率というものは、昨年九月時点の調査結果によれば五五・八%で、まだまだ道半ばであります。

 このため、令和七年度の基本方針において、協議の申出があった際には誠実に応じなければならないとか、あるいは、少なくとも年に一回以上の協議を行うよう努めることを含む方向で、今、調整を進めておるところであります。

 できる限り早期の閣議決定を目指しておりまして、引き続き、官公需においても、受注者の賃上げ原資の確保に資するように、各省とも連携して、更なる取組を講じてまいりたいと思っております。

平岩委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいたように、通達で実効性が本当に確保されているのかというのは、ちょっと疑問だと思います。国に対する措置としてやはり通達のみでどうなのかというところが、私は疑問に思うところです。

 御承知のように、自治体では公契約条例を定めているというところも出てきますが、条例がないところでは、いわゆる規制になりませんし、また国も自らを律する必要があります。

 先ほど述べたように、ある意味、立法事実があると考えるので、例えば、現在存在する入契法を業種等を大幅に拡大して、若しくは新規で立法するなどして、例えば公契約基本法みたいなもの、このようなものを作るみたいなことは検討されているのでしょうか。いかがでしょうか。

山下政府参考人 一般的に、自治体の公契約、自治体における条例の策定につきましては、地方自治の下、各自治体において御判断されるものというふうに理解してございます。

 経産省といたしましては、繰り返しになりますが、国等の契約の基本方針、これは官公需法に基づく基本方針なので、通達ということではなくて、法律の中で定められているものでございますが、について、各省庁や地方自治体に対して実践を周知するなど、官公需の受注者の賃上げ原資の確保に資するよう、各省とも連携して取組を講じていきたいというふうに思ってございます。

平岩委員 それでは、いわゆる入契法の対象外の分野で起きる問題に対しては、現状の制度で十分とお考えになっているのでしょうか。その辺りはいかがでしょうか。

山下政府参考人 今の法律の中で、官公需法の中で、自治体は、努める規定という形で、国に準じた形でやっていただくということで、自治体にも、我々としても、こういう形でやってくださいということのお願いはしているわけなんですが、あとは地方自治の中で自治体が御判断されるという、今のたてつけになってございます。

平岩委員 分かりました。その辺りについても、まだまだ公契約に関する優先的地位の濫用というのは懸念されるところでありますので、是非しっかりやっていただきたいと思っております。

 さて、ちょっとここからは少し話題を変えて、デジタルプラットフォームについてお伺いしていきたいと思います。

 私たちの生活は、私が申し上げるまでもなく、アマゾン、グーグル、アップルといった、いわゆる巨大なデジタルプラットフォーマーともう切っても切り離せない関係になっているということは御承知のとおりです。

 こうした状況の下では、これらのプラットフォーマーが取引相手に対して不当な条件を強いたとしても、いわゆるそれを断る自由が事実上なくなってしまう。つまり、優先的地位の濫用が生じやすい構造が固定化されている。

 実際、この優先的地位の濫用が疑われる事案は、世界中で頻発しています。ちょうど昨日も、グーグルに対して公正取引委員会がいわゆる排除命令を発出するという大きな動きがありました。まずはこの件について伺います。

 昨日のグーグルに対する排除措置命令について、その概要を御説明いただけますでしょうか。

大胡政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会は、グーグル社が、遅くとも令和二年七月以降、アンドロイド端末メーカーとの間で、端末メーカーが製造する端末へのグーグルプレーと称するストアアプリの初期搭載の許諾に併せて、グーグルサーチと称する検索アプリ等の自己のアプリを初期搭載させ、加えて、当該アプリのアイコン等の端末画面上の配置場所を指定するなどの契約を締結していること、また、アンドロイド端末メーカーらとの間で、自己と競争関係にある事業者の検索アプリ等を搭載しないことなどを条件に金銭を支払う内容の契約を締結していることから、グーグル社以外の事業者の検索機能を端末に実装させないようにしていることについて、独占禁止法第十九条の不公正な取引方法、具体的には拘束条件付取引でございますけれども、の規定に違反すると認定し、昨日、グーグル社に対して、違反行為の排除等を命ずる排除措置命令を行ったところでございます。

平岩委員 昨日のことについて、急遽の質問になりましたが、御答弁いただき、ありがとうございます。

 今回、このタイミングであえて取り上げさせていただいたのは、それだけデジタルプラットフォーマーをめぐる諸問題が大きくなって、今まさに顕在化しているということをこの委員会で共有したかったということがあります。

 もちろん、この下請法の範囲での問題もまだまだあって、三月下旬にも勧告の発表があったとおり、依然重要な問題です。しかし、それらの問題が元請、下請の範囲内で起きるのに対して、デジタルプラットフォーマーについては、その影響する範囲がほとんど全国民、また全世界の事業者に及びます。

 世界では、グーグルには、EUではEU競争法、アメリカでは反トラスト法に基づいて、どちらも、各国の独禁法によって巨額の制裁金等が措置されているということは周知の事実です。こうした国際的な動向を見ても、やはり、もはや国内法の枠を超えた、包括的かつ機動的な対応が求められるのではないかと考えます。

 公正取引委員会にお聞きしたいんですけれども、こうした巨大デジタルプラットフォーマーを独禁法の観点からどのような存在だと認識されているのか、特に、優越的地位の濫用が起きやすい状況にあるという問題認識はあるのでしょうか。御答弁いただけますでしょうか。

佐久間政府参考人 デジタル市場、一般論としては、特定の事業者に市場の支配が集中するという傾向がありまして、特定の一者ないし二者が非常に力の強い地位にあるということは一般としてそうだと思います。

 デジタル市場におけますデジタルプラットフォーム事業者による競争制限行為に対しては、昨日のグーグルの件もありますし、また、優越的地位の濫用ということですと、アマゾンジャパンの事件審査を行ったことも含めまして、これまでも、公正取引委員会において独占禁止法に基づく事件審査を行うなど、積極的に取り組んできたところでございます。

 加えて、独占禁止法による個別事案に即した対応では立証活動が著しく長引く等の課題があることを踏まえまして、国民生活や経済活動の基盤となっているスマートフォンの利用に特に必要なソフトウェア、OSでありますとかアプリストアなどですが、これらにつきまして、迅速かつ効果的に競争環境の整備を図るため、昨年、スマホソフトウェア競争促進法が立法され、本年十二月の全面施行に向けて、現在、公正取引委員会でも準備をしているところでございます。

 公正取引委員会としましては、このスマホソフトウェア競争促進法の実効的な運用、また、これに加えまして、引き続き、スマートフォン以外のデジタル市場の他の商品、サービスにつきましても、優越的地位の濫用を含め競争上の問題が生じていないか注視いたしまして、独占禁止法上の問題があれば、独禁法に基づいて厳正に対処する所存でございます。

平岩委員 今お答えいただいたように、スマホ法とか透明化法とか、法律も整備されていますが、これは、やはりピンポイントの対応で、いわゆる包括的にデジタルフォーマー全体に対して網をかけているわけではないというふうに思います。

 やはり、優先的地位の濫用が従来で想定されていたものとは全然違うものが起こっていて、例えばネット通販で物を売られている小売業とか製造販売業の方だと共感してもらえると思うんですが、例えばアマゾンとか楽天とかから排除されたら、そもそももはや商売が成り立たないのはもちろんのこと、そういうふうに、検索ページで一ページ目の、しかもできるだけ上位に表れるかどうかが死活的な問題になっています。そのために、SEO対策で商品名を工夫したりとか、ほかにも、送料を下げるみたいな、日時指定ができるようにするみたいな、発注してからできるだけ早期に発送したいといった、いわゆるプラットフォーマーの要求に応えざるを得ないみたいな状況が生まれている。逆に、これらの要求に応えられないなら、もう出品しなければいいんじゃないかといっても、とはいうものの、プラットフォーマーが顧客を囲い込んでいるので、そうすると、直ちに売上げが立たなくなって行き詰まってしまう。こうした状況は、まさに優先的地位の濫用の温床になるのではないか。

 もちろん、今お答えいただいたように、公正取引委員会におかれましては、独禁法の範囲で何とか最大限努力をされて、優先的地位の濫用を取り締まろうというふうにされているとは思うんですけれども、なかなか、現行の独禁法のみで対応し続けるということは、そもそもちょっと限界があるんじゃないかというふうに考えます。

 公正取引委員長にお聞きしたいんですが、こうした巨大化したプラットフォーマーに対していわゆる特段の立法的な措置を講じるということについて、公正取引委員会としてどのようにお考えでしょうか。

古谷政府特別補佐人 議員から御指摘の論点は、基本的に私どもも共有をさせていただいていると思っております。

 デジタル市場において強大な影響力を有するデジタルプラットフォーム事業者の競争上の問題への対応につきましては、御指摘がありました優越的地位の濫用にとどまらず、それこそ、支配とか排除といった、より大きな独占、寡占の問題をはらむ部分もございますので、公正取引委員会としては、基本的には独占禁止法でしっかり対応すること、これが一番大事なんだと思っております。

 その上で、御指摘ありましたように、昨年も、スマートフォン、これは、国民みんなが持っているような、もう我々の社会生活や経済活動の基本になって、インフラになっていますので、そこで起きる競争上の課題については、独占禁止法を補完する特別の法律を作らせていただきたいということで、スマホの競争促進法を通していただきました。

 また、今回の下請法でも、発注者と受注者の関係を、資本金だけじゃなくて、従業員基準も加えてやっていこうということで、デジタルプラットフォーム事業者でも、資本金の基準では捉まえられないようなところも、場合によっては捉まえられるかもしれません。

 そうした工夫もしながらやっておりまして、御指摘のような、包括的なデジタル規制法みたいなものを検討するかどうかという点につきましては、今私どもがいただいておりますいろいろな手法を使ってデジタルプラットフォーム事業者に対していく中で、今後の市場の動向ですとか、どういう競争上の課題があるのか、そういったことも含めながら、引き続き検討させていただけたらありがたいなと思っております。

平岩委員 ありがとうございます。

 下請法の成り立ちを見ると、下請法は元々、独禁法が制定された昭和二十年代に、優先的地位の濫用は主に元請、下請の関係の中で起き得ることが多かったために、いわゆる場面を限定して早く処理できるように補完的に立法された。

 しかし、今御答弁もいただきましたけれども、やはり、最近の動向を見ると、プラットフォーマーの存在はもう大幅に増していて、下請構造を持たない取引、あるいは国境を越えたプラットフォーム上の取引において、優先的地位の濫用が見られるわけです。やはり、これは、もはや下請法に並ぶ独禁法を補完する法律として、例えばデジタルプラットフォーマー法みたいな、そういうような立法もちょっと必要なのではないかと私は思ってもおりますので、是非また御検討をお願いしたいと思います。

 最後に、公正取引委員会の執行体制についてお伺いいたします。

 下請法が改正され、その範囲が広がっていく中で、また、今後、先ほど述べたような、いわゆる巨大なデジタルプラットフォーマーの影響力が一層強まっていくということが予想される中で、公正取引委員会の果たす役割というのが非常に大きくなっていくと考えます。適正取引を推進し、価格転嫁をしっかり行い、その結果として賃上げの原資を確保し、景気の好循環を生み出していく、その第一歩を担うのが間違いなく公正取引委員会です。

 そのために、執行体制について、人員も含めてしっかり強化していかなければいけない、また、人員だけでなく、AI等のデジタル技術も使って効率的に監視していく必要があると考えますが、いわゆる今後の執行体制の在り方、公正取引委員会としての見解と体制強化に向けた抱負をお聞かせください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、大幅な緊急増員や、取引適正化担当の官房審議官の新設、これは昨年の四月でございますが、そういうような調査体制、執行体制、そういうものの強化に従来から努めてきておるところでございます。

 そして、改正法案につきましては、各業界に関して知見を有する事業所管省庁、こちらにつきましては、現行は、違反行為がありましても調査をするという権限しかございませんが、問題行為がありまして、それに対しまして直接指導助言をする権限というものも付与されるということでございまして、今後、今中心的にやっておりますのは公正取引委員会、中小企業庁でございますが、そこに事業所管省庁も加わりまして、違反行為につきまして幅広く連携して対応しようということでございます。

 令和七年度、この四月からでございますが、新しく連携強化を図る担当官、これは企画官級の職員でございますが、これを配置しておりまして、今申し上げましたような各省間の連携強化、こういうものも図っていきたいと思っております。

 やはり、事業所管省庁ですと、その業に精通した問題というものも把握しておりますので、迅速な違反行為に対する処理ができるのではないかというふうに考えておりますので、相互に情報交換をする、ノウハウを共有するということで、この法律の実効的な執行に取り組んでまいりたいと考えてございます。

平岩委員 もちろん、今までどおりの所管のところでやっていくというのは大事だと思うんですけれども、先ほどもずっと申し上げておりますように、いわゆる、この前出されたグーグルへの排除命令とか、デジタルプラットフォーマーへの監視というのが、ネット上というのは非常に大きな世界なので、よりそこへの監視、指導みたいなのが必要になってくると思うんですけれども、その辺りの体制については、もっと強化するとか、どういう方向性でやっていかれるおつもりでしょうか。

古谷政府特別補佐人 昨年の国会でスマートフォンの競争促進法を通していただいた際にも、附帯決議で、公正取引委員会のそのための体制を強化するべきだという決議をいただきまして、今年度の予算で、デジタル関係の体制を強化するために相当な増員もいただきましたし、局長級の審議官も認めていただいております。

 そういう意味で、量的な意味での体制もそうですし、やはりデジタル市場というのは大変技術的で複雑な面もありまして、そういったものに対して理解をして挑んでいく能力もつけていかなければいけませんので、そういった質的な面でも私どもの体制を充実していく必要があると思っておりまして、両面から、今後とも、体制を強化した上で、実効的な取組ができるように努めていきたいと思いますので、引き続き支援をよろしくお願いいたします。

平岩委員 済みません、先ほど、ちょっと私の聞き逃しだとあれなんですけれども、AIとか、いわゆるデジタル技術を使って効率的に監視していくという点については、今の方向性というか、これからどうしていくのか、もう一度御説明いただけますか。

古谷政府特別補佐人 生成AIの技術の進展が大変急速であります。公正取引委員会だけでなく、霞が関のいろいろな役所も生成AIを取り入れて、どういう業務を高度化していくかというのは課題だと思っております。

 デジタルプラットフォーマーを監視する競争当局としても、AIの技術を使える部分はしっかり使って、対峙していかなきゃいけないと思っております。

平岩委員 実効性の担保が非常に大事ですので、人員確保とか技術導入のための予算確保も含めて、確実に実行していくということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、佐原若子君。

佐原委員 れいわ新選組、佐原若子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。失礼なことも申し上げねばなりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の下請法改正案につきまして、率直に申し上げて、実効性に乏しく、本質的な改善が見られないと感じています。大企業の優越的地位の濫用によって、中小企業、そしてそこで働く現場の労働者は疲弊しています。産業を支える中小企業、働く人たちを守るために実効性がある改正なのかどうかを確認したいと思います。

 国交省の、発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン第七版、建設業法令遵守ガイドライン第十一版、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省、フリーランス・事業者間取引適正化法、公正取引委員会、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が関連する内容と思いますが、これらとの関連性や指針の結果を踏まえてお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、改正案では、主に第五条に委託業者が受託業者を不当に害する行為を禁止する規定があります。これらの規定は、実際にはどのように効力を発揮するのでしょうか。例えば、通報、調査、是正の流れだと思いますが、具体的なスキーム、どこに通報、調査の仕方、是正の方法など含めて、詳しく教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法律では禁止行為が規定をされておりまして、それに対してどう執行するかということでございますが、このような取引は、場合によりましては、当局に情報提供いたしますと報復されるんじゃないかということで、なかなか情報提供が難しいという側面がございます。

 それに対応するために、大規模な書面調査を行っておりまして、発注者、そして発注者と取引しております受注者の名簿を出していただきまして、反面調査をするということでございます。禁止行為について行われていないかどうかというのを両者から確認をするということでございます。そこで問題となりそうな行為が見つけられますと、公正取引委員会といたしましては、その事業者に対しまして必要があれば立入検査をしたり報告命令をするということで事実確認をいたしまして、違反行為があるということに認定いたしますと、重大な案件ですと、勧告をいたしまして、それを公表するということでございます。

 勧告、公表につきましては、昨年度の数字でございますが、二十一件の勧告、公表もしておりまして、公表するということでかなり広く報道もされておるということでございます。そして、勧告ではございませんが、指導ということで、最近ですと八千件以上の指導を行っておるところでございます。

 このような指導、勧告につきましては、そういう違反行為を是正をするということで受注者の利益を保護する、さらには、例えば、代金を減額しましたという場合には、過去に遡ってその減額分を返還しなさいという原状回復も求めるということでございまして、具体的な数字を申し上げますと、令和五年度ですと、受注者約六千名に対しまして、原状回復額は総額約三十七億相当の原状回復が行われるということでございます。このような執行を行っておるということでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 通報に際して、取引停止とか、そういう報復を恐れて通報をちゅうちょするというお話を複数聞いたことがございます。その問題に対して、今のお答えですと対応していただけるということなので、少し安心いたしました。

 ただ、小さい企業ならば、限られた取引先ですから、通報者をおおむね推測できることもあると思います。通報した企業の地位の保全は大丈夫でしょうか。できますでしょうか。お伺いします。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 違反がございましたら、公正取引委員会に通報するということも可能でございます。これにつきましては、自分の名前を出さずに、匿名ということも可能ということであります。そういう情報と我々が積極的に実態調査をするというところの情報と突き合わせて、問題がある事業者ということになりますと、そこに対しまして調査をいたしまして、違反があると指導をするということでございます。

 我々が特に注意しておりますのが、やはり情報源の秘匿というものは我々の検査官には徹底をしておりまして、相手方にも絶対漏らさないということを説明をして協力をしていただくということを基本といたしまして、そういうような運用に努めておるところでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 それでは、通報した企業の地位の保全ができるということですね。ありがとうございます。

 委託事業者と中小受託事業者は、継続的な受注関係において、これまで、委託事業者、元請ですが、優位な立場という傾向があり、その関係性で、受託事業者、下請が無理を強いられる問題が顕著であったと思います。最初にお尋ねした禁止行為の規定による是正措置が取られた場合において、継続的な受注関係は維持されますでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 受注者が被害を受けました、それを公正取引委員会や中小企業庁に通報する、それを理由といたしまして指導されました、それに対する報復をするという行為につきましても、法律上禁止をしております。

 そして、今後、改正法の中に盛り込んでおりますのは事業所管省庁との連携ということでございまして、事業所管省庁も、調査をいたしまして、今後、直接指導助言ができる権限を付与しておりますが、それに加えまして、事業所管省庁に例えば私は被害を受けていますという情報提供をします、それに基づいて指導を受けた場合に、その情報提供者に対しまして報復措置をするということも新たに禁止事項としておるということでございまして、このような観点から、継続的な受注関係が維持される、報復措置を禁止するということによりましてそのような関係が維持されるというふうに期待をしておるところでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 中小企業庁による昨年九月の価格交渉促進月間フォローアップ調査では、コストが上昇したものの、発注減少や取引停止を恐れて交渉できなかったというアンケート回答が二割近くありました。労務費の適切な価格転嫁が難しいという声は、業界からの意見、報道記事にも取り上げられてきました。

 労務費の反映がされているかどうかはどのようにチェックされますか。

 また、中小受託事業者、下請の社会保険加入のチェックはされますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 適切な価格転嫁というものは、中小企業の賃上げの原資ということで極めて重要ということで、政府といたしましては、例えば原材料費とかエネルギー費、労務費、そういうものが転嫁されているかどうかというものに対しまして厳しくチェックをしておるところでございます。

 公正取引委員会におきましても、特別調査等を行ってきたところでございます。そして、その中で、令和四年の調査を踏まえますと、原材料費やエネルギー費、こういうものの転嫁は比較的進んでおるんですが、労務費がなかなか進んでいないという問題意識が指摘されたところでございまして、令和五年の十一月でありますが、内閣官房と公正取引委員会の連名で労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針というものを著しております。

 これは、受注者、発注者、どういう行動を取るべきなのかということで、労務費が転嫁できやすいような環境を整備するような指針でございます。このような指針を作成いたしまして、関係省庁も含めまして、政府全体でこの指針の周知を図ってきておるということでございます。この労務費指針を知っている方は労務費の転嫁が行われやすいという傾向がございますので、引き続き、この労務費指針の周知を図っていきたいというふうに考えてございます。

 そして、もう一点でございますが、中小受託事業者の社会保険加入のチェックということでございます。

 公正取引委員会は、この法律の執行の責任を持っているものでございまして、この法律は、違反行為があるのかどうかという観点から、その範囲で調査をするということでございます。

 そのような観点から、中小受託事業者が社会保険に入っているかどうかというところまで調べるというのはやや権限の範囲外かなということでございまして、そういう確認は、把握はしていないというところでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 では、周知を徹底して、お願いしたいと思っております。

 手形払いが禁止とされますが、支払いの保留も下請にとっては経営圧迫の要因です。この対策は何かありますか。

向井政府参考人 この法律の禁止事項の一つといたしまして、支払い期日を設定する義務を課しているわけでございます。例えば、製造委託の場合ですと、物を受け取ってから、それから六十日以内に支払い期日を定める義務を課しております。そして、支払い期日までにお金を払わないというものにつきましては、いわゆる支払い遅延ということに該当いたしまして、禁止をされるということでございます。さらに、支払い期日から支払うまでの間、遅延利息というものが法律上明記されておるというところでございます。

 このように、支払い期日にお金を払わないというものに対しましては禁止をしたり遅延利息を課すということによりまして、このような行為が起こらないような制度設計がなされておるということでございます。

佐原委員 一定の罰則があるということで認識してよろしいですよね。

向井政府参考人 罰則と言うとちょっと語弊がございますが、支払い遅延をした場合には、支払い期日から支払うまで、支払い遅延を含めて払うという義務が法律上明記されておるということでございます。

 こういうものがございますと、公正取引委員会といたしましては、違反行為がありますと勧告なり指導をいたしまして是正をするということでございまして、刑事手続ではないという観点からは罰則とは言えませんが、こういう支払い遅延、そういうものをいわば防止するというような、担保的な意義のある制度というふうに位置づけられるのではないかと考えられます。

佐原委員 一定の強制力があるということで認識してよろしいですよね。はい。

 では、続いて、主務大臣の権限強化については、具体的な方法はどのようなものですか。

 また、下請Gメン、こちらも名称変更が必要と思いますが、具体的な活動と実績について教えていただけますか。

向井政府参考人 私からは、主務大臣の権限強化に関する改正法の内容につきまして説明をさせていただきます。

 この法律につきましては、取引の適正化と受注者の利益保護ということを目的としているものでございまして、対象となる取引というのはサプライチェーン全体であるということでございます。そこは業種横断的にあるということでございまして、現在、中小企業庁、公正取引委員会で調査をいたしまして、問題がありますと指導を行っておるというような体系でございますが、そこに、業界の知見を有します事業所管省庁にも指導助言権限、そして関係省庁間の情報共有というものを今回改正法の中に新たに盛り込もうということでございます。

 このようなことを踏まえまして、関係省庁との連携強化を図るということで、違反行為に対しまして広く効果的に対応しようということを意図したものでございます。

山本政府参考人 下請Gメンについてお答えを申し上げます。

 下請Gメンの名称につきましては、先ほどもお答えを申し上げましたけれども、本法案成立の暁には、適切な名称への変更を考えてまいりたいと存じます。

 その下請Gメンの活動内容でございますけれども、本省と地方局を合わせて約三百三十名の体制でございます。全国の中小企業の取引実態につきまして、年間一万件を超えるヒアリングを行っております。その内容は、価格交渉や価格転嫁など価格決定方法や、手形等の支払い条件、型の保管状況など、中小企業の取引の適正化に関連する幅広い事項に及んでおるものでございます。また、事業者に対しまして、価格交渉にも活用できる取引適正化に有益な施策に関する情報を提供させていただくこともございます。

 この下請Gメンの調査結果につきましては、業種別に取りまとめまして、各業界団体へ問題点等を指摘し、取引適正化に向けた自主行動計画の策定や見直し、その遵守のために活用してきておるところであります。

 また、毎年三月、九月の価格交渉促進月間では、下請Gメンのヒアリングも活用いたしまして、価格転嫁の状況の芳しくない発注事業者への指導助言も行ってきているところでございます。

 さらには、公正取引委員会とも連携してヒアリング結果を下請法の執行強化の側面でも活用しておりまして、こうした連携は一層深めてまいる所存であります。

 下請Gメンにお寄せいただいた貴重な現場情報でありますけれども、これらは秘密を厳格に管理した上で、個別の発注企業の取引方針の改善から業界全体での取引慣行の改善まで幅広く活用させていただきまして、日本経済全体の取引適正化に引き続き役立ててまいりたいと考えております。

佐原委員 ありがとうございました。

 次に、対象の事業者に関して、従業員数の区分が追加されました。製造関係で委託事業者は三百人以上の規模となっています。

 例えば、従業員百人の企業が下請事業者に対して不当な行為を行った場合は、公正取引委員会は動くのでしょうか。それと、三百人以上という線を区切ったのは、それ以下の方々には不利なのではないでしょうか。ある一定の大きさを持つ企業に有益であって、なかなか大変な状態のところにはメリットは本当はないのではないかしらと思ったりもしているんですけれども、いかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法律の適用対象につきましては、現在、資本金区分ということでございます。この資本金区分につきましても、三億と一千万という二つの区分がございます。ということで、先ほどおっしゃられたような、例えば中堅企業と資本金が一千万以下のような事業者や個人事業者の取引、こういうものもこの法律の対象になってくるということでございます。ということで、大企業も法律の規制の対象となりますし、さらには、いわゆる中堅というんでしょうか、一千万の基準を挟むところの取引というものも対象となるわけでございます。

 一方で、そういう資本金につきましては、例えば、大企業が大規模な事業活動をしておるんですが、資本金を意図的に小さくするというようなところもありまして、そういうものにつきましてはこの法律がなかなか適用できないという問題がございました。

 それに対応いたすために、委員御指摘のように、従業員ということで、今回新たに、製造委託につきましては三百、そして役務提供委託については百というものを設けておるところでございます。

 これにつきましては、元々、三億というものは、中小企業基本法というもので中小企業の定義としておりまして、それを参考としたものでございます。従業員基準についてどれぐらいが妥当なのかということを検証したところ、過去の公正取引委員会の違反事件というものの運用状況、そしてその中小企業基本法の定義、従業員でいいますと三百とか百とか、そういうものが使われておる。

 そうしますと、規制される方、保護される方、両方が分かりやすい基準として、従業員基準とするのであれば三百、そして役務提供であれば百が妥当ではないかということで改正法に盛り込むことが有識者会議の中でも提言をされておりまして、政府といたしましても今回の改正法案に盛り込んだということでございます。

 このように、大企業だけが有利ということではありませんで、逆に、大企業から不当な不利益を与える行為があったといたしましてもこの法律が適用されないというような状況に対しましても対応するために、新たに従業員基準というものも設けたというようなところが検討の経緯でございます。

佐原委員 今、時代は、フリーランスとか、それから自分でユニオンをつくるとか、そういう時代になってきました。なので、そういった本当に弱小というか、零細の企業や個人にもこういった問題が対処されることを望んでいます。いつかそのようなことを実現していただけるんでしょうか。

向井政府参考人 このいわゆる下請法でございますが、一千万超の事業者が、個人事業者、個人事業者の中にはフリーランス等も入ると思いますが、そういうような零細ないわゆる事業者、その取引についても対象になっておるところでございます。

 一方で、この法律につきましては、対象範囲というのが取引によりまして定義をされておりまして、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、そういうもので定義をされております。そうしますと、いわゆるフリーランスの方というものの取引が、その中の取引に該当しないものも出てきておるという実態もあったわけでございます。

 そういうものも踏まえまして、フリーランス・事業者間取引適正化法というものが昨年十一月から施行をされておりまして、そういうフリーランスの取引を適正化をしようというような内容の法律でありまして、例えば、取引条件を明示するというような、この法律と類似のようなものとか、こういう行為はしてはいけないというものが盛り込まれた法律が施行されたところでございます。

 この法律につきましては、本年の三月ではございますが、公正取引委員会では、この法律に基づきまして、四十五名の事業者に対しまして、契約書や発注書の記載、発注方法、支払い期日の定め方等につきまして是正指導を行っておるということでございまして、御指摘の取引、そういうものの適正化を図っておるというところでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 それでは、いわゆる弱小な、例えばフリーランスとか一人親方とか、そういう方が受託して被害を受けた場合には、どこにそれを訴えたらよろしいんですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 例えばフリーランスの問題というものにつきましては、政府の受託事業といたしましてフリーランス一一〇番というものを設けておりまして、これは、弁護士会が受託をいたしまして相談に対応しておるというところであります。

 そして、そういう行為につきまして先ほど申し上げました法律に基づきまして指導を希望するということでありますと、我々公正取引委員会に情報提供をいただく、それを踏まえまして、問題がございましたら指導等を行うということも可能でございます。

佐原委員 なかなか一般人が公取に情報提供とかというのは難しいんですけれども、いろいろ周知をお願いしたいと思っております。

 次に、米国による関税の問題で日本の大企業も影響を被ることになった場合に、そのリスクを下請事業者との取引条件に押しつける可能性があるのではないかと危惧いたしますが、そのときに、この下請法は、下請事業者の経営者だけではなく、働く人たちの待遇を守ることができますか。その担保はあるでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 昨今の関税の問題ということで、いろいろ発注者が大変だというような事情があった場合に、それを受注者にそのまま一方的に負わせるということになりますと、今回改正法で新たに設けようとする、協議によらない一方的な価格決定、そういうものにも該当し得るということになりますので、その場合には、双方で協議を尽くしていただきまして、納得をした取引条件を設定していただくということが重要なわけですが、受注者の事情は全く知らない、私が苦しいんだということで一方的に価格を決めるというような場合には、新しい規定の禁止行為にも該当し得るということでございますので、仮にこの改正法が成立したという後には、その規定につきまして厳正に執行をしていく所存でございます。

佐原委員 ありがとうございます。

 実効性のある制度とするには、常に法令の効果、課題を調査、評価、改善をしなければならないと思います。時限的にそれを行っていかれますか。

向井政府参考人 お答えします。

 本法案につきましては、附則におきまして、施行後五年を目途として、施行の状況を踏まえ、本法案の規定について検討を加え、必要な措置を講じる旨を定めておるところでございまして、本法案が仮に成立して施行をされたというところですと、この規定に基づきまして、取引環境を注視しながら、見直しが必要なものがあるのかどうかというところにつきましては、政府といたしまして検討をしていきたいということでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 経営者を守るだけでは、まさに仏作って魂入れずです。働く人たちを守り、働く人たちが安心して活用できる制度となることを求めて、質問をここで終わらせていただきます。本当にありがとうございました。

 今日は武藤大臣とお話しできなくて残念でした。

宮崎委員長 次回にお願いいたします。

佐原委員 はい。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。

 まず、トランプ関税の影響についてお聞きしたいと思います。

 トヨタ自動車の幹部は、まずは原価をどう低減できるか考える、こういうふうにメディアの取材にも答えております。前回、私は、ルネサスの違法性の高い指名解雇の問題も取り上げましたけれども、このままですと、取引先企業へのコストカット圧力、リストラ、非正規切り、賃金抑制が大規模に起きかねないと思うんですね。

 大臣にやはり確認したいと思うんですが、やはり、こんなことをやれば、日本の内需は冷え込む、大臣も反省しているコストカット経済のまさに再来になってしまう懸念があります。大臣、そういうことはあってはならないし、させてはならないと思いますけれども、いかがですか。

武藤国務大臣 辰巳委員と問題意識は共有するところでございます。米国の関税措置が発動される中でも、取引適正化の取組に影響を与えないようにすることが重要だ、全く委員と同じであります。

 今月八日に、私自身も自動車業界各社のトップと面会をし、雇用維持や賃上げの原資の確保のため、直接の取引先の更に先まで価格転嫁が可能となるような価格決定をすること、本取組について、自動車メーカーやティア1から、ティア2以下の中小部品メーカーへの情報発信を継続すること、さらに、今回の関税措置で厳しい状況に直面する中でも適正取引に配慮することについて直接要請をしてきたところです。

 さらに、短期の支援策として、特別相談窓口の設置ですとか、資金繰りや資金調達への支援、また中堅・中小企業の事業強化のための支援を開始しているところです。

 こうした取組を着実に実施することで、特に中小・小規模事業者の不安にきめ細かく対応しつつ、国内産業や雇用を守るために必要な支援に万全を期してまいりたいと思っております。

辰巳委員 今大臣おっしゃっていただいた、今日から始まった委員会での審議の、価格転嫁がどうできていくのかというような文脈の中でも、対策ということでおっしゃっていただいたかと思います。

 今法案は、運送委託を下請代金法の対象に追加することにより、これまで物流特殊指定の告示で対応してきた問題行為を法的に対処するというものであります。実際に禁止行為の防止に役立ち、下請事業者の保護に資するものになるか、これが問われているというふうに思います。

 幾つか確認をしていきたいと思います。この下請二法の改正案なんですが、ポイントの一つとして取り上げられるのが物流問題への対応です。運送委託取引を下請二法の対象としていくわけであります。

 確認しますけれども、中小企業庁の二〇二四年十一月二十九日に公表された価格交渉促進月間フォローアップ調査によりますと、価格交渉は行われたが全く価格に転嫁できなかった企業の割合が高い業種は、トラック運送、広告、放送コンテンツ、金融・保険とされております。

 なぜこういう業種が、価格交渉は行われたけれども転嫁ができなかったのか、どういうふうに考えておられますか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 価格交渉促進月間フォローアップ調査結果におきましては、業種ごとの転嫁状況のばらつきが見られるとともに、サプライチェーンの取引段階が深くなるほど転嫁割合が低くなる傾向が見られるところでございます。

 委員御指摘のトラックや放送コンテンツのような労務費の割合が比較的高い業種におきましては価格転嫁率に課題が残るものと認識しておりまして、やはり労務費につきましては、賃上げをしたければ効率化努力で費用を捻出せよといった取引慣行が長年にわたって根づき、値上げ要求しづらいといった側面があることも原因かと認識しております。

辰巳委員 なるほど。一般的な資材であれば、どの業種であっても高くなっているのは一目瞭然なので、じゃ価格転嫁しようかというふうにもなってくれるんだが、労務費、人件費となりますと、なかなかそういうことのやり方が、交渉がしづらいと。それこそ、人件費のところはおまえのところで見ておけと元請に言われがちだという話も現場から聞いております。そういう労務費の割合が高いところで価格転嫁がしづらいという話でございました。

 重ねて確認したいと思うんですけれども、この調査では、一次下請から四次など下に行けば行くほど価格の転嫁ができないという現状があるということが分かります。なぜこのようなことになるのか。一般的に、ある意味では一目瞭然といいますか、そうかなとも思うんですけれども、なぜこういうふうになるのかを説明いただけますか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど触れましたように、例えば賃上げ分の原資は合理化努力で賄うべきとの認識が取引段階が深い段階ほど根強く残るといったことや、サプライチェーンの頂点から深い取引段階へ価格転嫁が行き渡らないケースがあることなどが考えられると存じます。

 今回の下請法の改正を通じて更なる価格交渉を促す、これを狙ってまいります。加えまして、下請振興法の改正を通じて、多段階の取引から成るサプライチェーンの連携を促し、深い階層でより一層交渉、転嫁が進む環境を整備してまいりたいと考えてございます。

 加えまして、現在、関係業界に対しまして、直接の取引先の更に先を意識した価格決定を含め、更なる価格転嫁、取引適正化を要請しております。先日、自動車業界に対しましても武藤大臣の方から要請をさせていただきました。

 こうしたことを含め、様々な手段で、深い取引段階でも価格転嫁が促進されるよう施策を講じてまいる所存でございます。

辰巳委員 それが実効性あるものになるかどうかというのが、これから更に問われていくというふうに思いますね。

 全国商工団体連合会附属の中小商工業研究所の調査によりますと、親事業者から価格、単価に関する話合いの申入れがあったか否かという質問に対して、あったは二三・八%、なかったが七六・二%となっております。このあったと回答した下請事業者の価格が、親事業者との話合いの結果、どうなったかという問いに対して、要望どおり上がった、一部上がった、これが合わせて八三・三%、変わらなかった、下がった、その他が一六・七%となっております。

 また、親事業者から価格に関する話合いの申入れがなかったと答えた下請事業者が、自ら親事業者に価格転嫁を申し入れるつもりがあるかどうかを問うたところ、ないが六割に上りました。そこで、なぜないのかということを問うたところ、最も多かった回答は、仕事の量が減ると困る、取引が停止されると困る、交渉しても価格は上がらないと諦めている、親事業者の機嫌を損ねるというものがありました。

 実際はまだまだ弱い立場に立たされているということがこの調査でも明らかだというふうに思います。

 そこで、改めて法文そのものの条文を確認をしていきたいと思うんですね。

 労務費や人件費を上げてくれと言っても、それこそ人件費はおまえのところで見ろと言われたりするという話を今少ししましたけれども、確認します。

 価格やコストが上昇する中で、下請業者が委託料、代金の変更を求めるための協議を持ちかけても、それに応じなかったり一方的に代金を決めてしまうことに対しては、どのような措置が取られるのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法案におきましては、発注者が受注者に対しまして、協議に応じることなく一方的に取引価格を設定することを禁止しておりますので、今御指摘のあったような行為がございますと、この規定に違反するおそれがあるということでございます。

 仮に違反するという認定をいたしますと、改正後の第十条第一項に基づきまして公正取引委員会は勧告というものをいたしまして、今後の再発防止等を求める、そして勧告の内容につきましては、事業者名、そして勧告の内容は公表するということとなるわけでございます。

辰巳委員 ただ、懸念されるのは、協議に応じたからいいだろうということで、本来上げなければならない代金を据え置いたり引き下げてしまうということだと思うんですけれども。

 確認します。これは協議に応じたらええという話なんでしょうか、どうですか。

伊東国務大臣 形式的協議についてでありますけれども、御指摘のとおり、形式的な協議を行うのみで、実質的な協議を行わず一方的に価格を決定する行為も懸念されるところではございますけれども、実質的に協議に応じていないと認められる場合は、先ほど答弁がありましたように、改正法に違反すると認定されるわけであります。

 こうした懸念に対して、例えば改正後の運用基準などによって、形式的な協議のみで必要な説明などを行わずに一方的に価格を決定することや、受注者に対し取引の打切りを示唆した上で協議に応じずに一方的に価格を決定することなど、想定される問題事例を示すことを検討しております。これらを通じて、違反行為の未然防止のために十分な周知を図ってまいりたいと考えております。

辰巳委員 ここでも改めて実効性が問われるということだと思うんですね。

 さて、元請、下請という関係ではないのですが、いわゆるグループ会社内における取引の事例で少し取り上げていきたいと思うんですね。重要なケースはほかにもいろいろあると思いますので、取り上げたいと思います。

 今日の資料にもおつけしましたけれども、見ていただくと、まず製造業である荷主というのがいるわけですね。その荷主の荷物の輸送を委託された、これは一〇〇%子会社のロジスティック会社、ロジ社としましょう、これがある。その荷物を実際に運ぶ、これは実際はロジ会社が株式の半分以上を持っている、これも言ったらグループ会社、子会社ということになるかと思いますが、実運送事業者というのがあるわけですね。ですから、この三つの会社というのはグループ会社ということであります。この最後の実運送会社に支払われる代金あるいは賃金が低い、上がらないということで、今現場の労働者などから声が上がっているということで、私も実際に話を聞いてきました。

 念のため確認するんですけれども、このグループ会社の取引というのは下請法の対象にならないということでよろしいですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 親会社が議決権の過半を所有する子会社と取引する、いわゆる親子会社間の取引、これは一般的に、実質的に同一会社内での、組織内での取引というふうに見られるため、下請法上の運用上は、こういうものに対しましては法を適用しないという運用をしておりまして、その解釈を明らかにしておるところでございます。

辰巳委員 ということなんですが、実際には、こういうグループ会社の中でも、元請や下請の関係と同様に、価格転嫁ができないというケースがあるわけですね。

 大臣の基本認識として伺いたいんですが、この実運送会社で働く労働者が賃上げできる環境をつくっていく、これが重要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 御指摘のとおり、下請法の対象か否かにかかわらず、サプライチェーン全体で価格転嫁が行われ、中小企業でも物価上昇を上回る賃上げが実現できる、この環境整備が必要と認識しているところです。

辰巳委員 処遇がグループ会社の中でも当然違ってきたりはするわけなんですけれども、このグループ会社の取引でも、内閣官房と公取が連名で作成をされた労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針、これに沿った労務費の価格転嫁、これが重要、必要だと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 子会社がその先の受注者との取引においても適切な価格交渉ができるように、サプライチェーン全体で労務費の価格転嫁、そういうものに取り組むことというのは極めて重要でございます。

 そのため、独占禁止法や下請法上はなかなか同一会社内の行為といたしまして問題とならないというような場合でありましても、このような取引におきましても、労務指針の趣旨に沿って行動していただくということが望まれるということでございます。

辰巳委員 この指針の趣旨に沿って行動することが望ましいということであります。

 実運送会社が不当に安い代金で運送せざるを得なくなりますと、もちろんそこで働く労働者の賃上げもできない、大臣が賃上げは大事だと言いますけれども、これができないということになります。実運送会社と取引している別の会社との関係、つまり、サプライチェーン全体に適切な価格転嫁が行われる環境というものが損なわれてしまうということであります。

 ここで改めて確認しますけれども、この指針、発注者として取るべき行動、求められるべき行動において、労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合についてどのように示されているか、紹介していただけますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 内閣官房と公正取引委員会で取りまとめて令和五年十一月に公表いたしました労務費転嫁指針では、発注者として取るべき行動といたしまして、労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料に基づくものとして、それを合理的な根拠があるものとして尊重すべきこととしております。

 ここで言う合理的な根拠がある公表資料といたしましては、指針にも書いてございますが、一例を紹介いたしますと、都道府県別の最低賃金やその上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率、そして一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃、そういうものが挙げられておるところでございます。

辰巳委員 国交省に確認します。

 この標準的な運賃とは何か、簡潔に説明していただけますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 トラック運送業におきましては、コストの上昇分を適切に運賃・料金に転嫁するということが基本でございます。このため、トラック運送事業者が適切な運賃を収受できる環境の整備というのが非常に重要となっております。

 このため、国土交通省では、荷主、元請事業者に対するトラック運送事業者の交渉力が弱い等の事情を踏まえまして、平成三十年に改正されましたトラック法に基づきまして、運賃交渉に臨む際の参考指標として、標準的運賃を大臣告示をしておるというところでございます。

 また、昨年三月には、燃料高騰分なども踏まえまして、運賃水準を平均八%引き上げるということと、燃料サーチャージ制度を盛り込むなどとした新たな標準的運賃を告示し、周知啓発に取り組んでいるところでございます。

辰巳委員 では、公取に確認します。

 荷主から輸送を託されたロジ会社は、子会社である実運送事業者に、この標準的な運賃はこうなっていますよと示されれば、これを合理的な根拠のあるものとして尊重して交渉しなければならない、こういう理解でよろしいですね。

古谷政府特別補佐人 先ほど答弁がありましたように、親子会社間取引におきましても、労務費転嫁指針の趣旨に沿って行動していただくことが望ましいと考えております。

 したがいまして、親子会社間取引におきましても、受注者である子会社が、一般貨物自動車運送業に係る標準的な運賃を交渉の中で提示した場合には、合理的な根拠がある資料として、発注者側にそれを尊重していただくのが望ましいというふうに考えております。

辰巳委員 それでは、続けて聞いていきます。

 この指針の「発注者としての行動4」には、「労務費をはじめとする価格転嫁に係る交渉においては、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁による適正な価格設定を行うため、直接の取引先である受注者がその先の取引先との取引価格を適正化すべき立場にいる」、つまり、このことを意識をして、そのことを要請額の妥当性の判断に反映させることというふうにあるわけですね。

 つまり、荷主の方も、ロジ会社との価格交渉においては、実際に運送をする実運送会社に標準的な運賃に見合う金額が渡ることを意識しなければならない、こういう理解でよろしいでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁というものを実現するためには、親子会社間取引における価格交渉についても、受注者である子会社が、その先の取引先との関係で価格転嫁を受ける立場であることを意識いたしまして、価格交渉をしていただくということが望ましいというのがこの指針の考え方でございます。

辰巳委員 そうなんです。これで三つがつながったということですよね。

 ただ、運賃を上げると荷主がほかの運送会社に逃げてしまうんだというようなことも言っている、実運送会社の方が言っている。ですから、親子会社の間でもそういうことで労働者の賃金が抑えつけられている、そういう経過があるということも現場から聞いております。ですから、法改正や指針の徹底でどこまで実効性のあるものにできるかということが問われていると思います。

 さて、実は、今日つけた資料にありますけれども、この荷主ですね、荷主はどこの会社なのかということなんですが、実は、この会社は、経団連会長の十倉さんが会長を務める企業、住友化学なんですね。私は、この住友化学の荷物を運んでいる実運送会社の賃金が上がらないという話を聞いてきたわけなんですよね。

 パートナーシップ構築宣言がありますわね。これは、サプライチェーン全体が共存共栄と新たな連携、価格決定方法など下請企業との望ましい取引慣行の遵守を掲げて宣言をするというものであります。

 十倉氏は、二〇二四年十月二十二日の定例会見で、パートナーシップ構築宣言の持続性の向上が非常に大事である、労務費を含む適切な価格転嫁が重要であるという認識をソーシャルノルム、社会規範として普及させていく必要があると、ある意味、大号令をかけてきたわけなんですね。ところが、この実運送会社が求める価格の引上げというのは、なかなか、ほとんど実現をしていない、こういうことなんですね。

 パートナーシップ構築宣言のひな形では、直接の取引先を通じてその先の取引先に働きかけること、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針に掲げられた行動を適切に取った上で決定ということを掲げているわけなんですよ。ただ、それが実際にはなかなかできてへんぞというのが現場では出ているということなんですね。

 大臣、これはやはり、住友化学は、パートナーシップ構築宣言、この企業でもあります、特に、この実運送事業者に標準的な運賃がやはり支払われるようにしなければならないと思いますけれども、大臣、いかがでしょう。

武藤国務大臣 そのSさんというのは存じていないですけれども、まず、一般論でちょっと申し上げさせていただきますけれども、パートナーシップ構築宣言、これは、サプライチェーン全体の付加価値向上ですとか価格転嫁を含む望ましい取引慣行の遵守等について、自主的に宣言、公表を行い、サプライチェーン全体の共存共栄を図ることを目的としたものであります。

 そのため、宣言企業には、一般論として、適切に価格転嫁するというあるべき取引慣行に沿って対応することが望ましいと考えているところです。

辰巳委員 やはりパートナーシップ構築宣言企業は、減税や補助金加点などの恩恵もあるわけですね。効果が発揮されているのかどうかという疑問符もやはりあります。宣言した企業に対してはしっかりと守らせるということを経産省自身がやる、住友化学へやはり話を聞く、指導するということをやるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、残りの時間で大阪万博をやりたいというふうに思います。

 スタートしたわけですね、十三日。かなりの混乱ということでありましたけれども、私は、やはり命に関わる問題ですので、非常にメタンガス対策を重要視しております。

 昨年の三月、メタンガス爆発事故の後に、万博協会は、その対策とガス濃度の毎日測定というのを行ってまいりました。そして、この万博会期中は、ガス濃度の測定結果を毎日お知らせすることを検討します、なお来場者に分かりやすいように公表しますということとしていたわけですね。

 それで、始まったわけなんですけれども、確かに、毎日、気象・安全情報ということで、ホームページをクリックしますと出ているんですね、天気はどうや、ガスの安全確認状況はどうだと。要するに、あしたは安全に御来場いただけますということが載っているわけなんです。

 経産省に確認したいんですが、この安全だという根拠とされているガスの濃度は、どれぐらいの範囲を測定をして、いつ測られたものなのか、示していただけますでしょうか。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、昨年の六月二十四日に公表しました会期中の安全対策、今委員から御紹介をいただきましたが、これに基づいて、メタンガスの計測結果を公表しております。

 それで、開催日である四月十三日からは、会場内のガス濃度の測定結果をガス安全確認情報として、協会のホームページの中で、前日の夕方と当日の朝に測定をいたしまして、その濃度に基づきまして結果を公表しているというところでございます。

辰巳委員 前日の夕方、当日の朝。何時かというのは分かりますか、朝。

茂木政府参考人 まず、計測の時間ですけれども、これは、朝は、時間については、ちょっと済みません、私、今、正確な時間を持っていませんが、これは開場前です、開場前の時間ということになります。

 それから、計測箇所については、夕方と朝については、グリーンワールド工区の中の建物、これは自動検知器で計測しておりますし、それからピットについても、これは朝計測をしておるというところであります。(辰巳委員「マンホール」と呼ぶ)ピット、マンホールです。

辰巳委員 分かりました。

 四月六日のテストランのときに、爆発濃度のメタンガスというのが検知をされて一騒動になったわけなんですけれども、あのときに、朝測った同じ場所はメタンガスは出ていなかったんです。ところが、数時間たって、爆発濃度のガスというのが滞留していたという話なんですよ。

 ですから、朝測っていようが、ガスというのは出続けていますから、それは夕方の四時か五時か分かりませんけれども、それはもう、数時間たったら、あるいは数十分か分かりませんが、たまっちゃうんですよね。だから、それで対策、安全だというのは私はおかしいというふうに思います。これは本当の対策にはならないということを改めて言いたいと思います。

 そして、武藤大臣、もう一つ、メディアの排除ということなんですけれども、先日は、赤旗あるいは大阪民主新報、フリーランスが、記者会見や、あるいはAD証、通行証がまだ出されていない、許されていないよという話をさせてもらいました。大臣は、ほかのイベントの事例も含めて確認をして、それを踏まえた対応をしていきますという話を、答弁をされております。

 いかがですか、赤旗含めた、フリーランスを含めた、認めていただけますか。

武藤国務大臣 その後の状況ということで、御報告をさせていただければと思います。

 前回、四月十一日金曜日ということで、質問の後、事務方で類似事例での対応を整理しているところであります。正確を期する観点から、もう少し時間を要することを御理解いただきたいと思います。十三日にスタートということで、事務方の方も大変な混乱をある意味でしているところですので、もうしばらくお時間をいただきたいと思います。

 また、博覧会協会の方は、ガイドラインはもうよろしいですね。(辰巳委員「はい」と呼ぶ)はい。

 以上でございます。

辰巳委員 大臣、私が指摘したガスの話はすぐに対応していましたよ。金具が今ついているんですよ。何かボルトが入っていましたわ。それで安全ではないんですけれども。

 これは別に、調べるとおっしゃるんですけれども、フリーランスや赤旗、やはり今回の万博というのは多様性でしょう、多様性じゃないですか。それは、ガイドラインがどう書いていようが、何か万博にとってええことだけ報道してくれる人だけを記者会見にちゃんと入れる、やはりそれはおかしいと思う。それはプロパガンダですから。厳しいことを言うからこそ対策がされてきたわけですよね。

 これは当然、表現の自由、報道の自由、知る権利に関わる問題ですので、大臣、あさってまた委員会がありますので、是非このことも早急に結論を出していただきたいということを申し上げて、質問といたします。

 以上です。

宮崎委員長 皆さん、お疲れさまでした。

 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会


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