衆議院

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第11号 令和7年4月18日(金曜日)

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令和七年四月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮崎 政久君

   理事 小泉進次郎君 理事 新谷 正義君

   理事 山下 貴司君 理事 荒井  優君

   理事 山岡 達丸君 理事 山崎  誠君

   理事 斉木 武志君 理事 丹野みどり君

      岩田 和親君    鬼木  誠君

      小池 正昭君    坂本竜太郎君

      島田 智明君    鈴木 英敬君

      関  芳弘君    世耕 弘成君

      西村 康稔君    福田かおる君

      細野 豪志君    松本 洋平君

      宮内 秀樹君    向山  淳君

      東  克哉君    大島  敦君

      岡田 克也君    落合 貴之君

      小山 展弘君    鈴木 岳幸君

      田嶋  要君    福森和歌子君

      吉田はるみ君    東   徹君

      村上 智信君    岡野 純子君

      平岩 征樹君    福重 隆浩君

      山口 良治君    佐原 若子君

      辰巳孝太郎君    吉良 州司君

    …………………………………

   経済産業大臣       武藤 容治君

   国務大臣         伊東 良孝君

   経済産業副大臣      大串 正樹君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 古谷 一之君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房審議官)       向井 康二君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        大胡  勝君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房新事業・食品産業部長)    小林 大樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小見山康二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省イノベーション・環境局長)      菊川 人吾君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    山下 隆一君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           堀 真之助君

   経済産業委員会専門員   花島 克臣君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  向山  淳君     福田かおる君

同日

 辞任         補欠選任

  福田かおる君     向山  淳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

宮崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官南亮君外十二名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山岡達丸君。

山岡委員 質問の機会をいただきました。ありがとうございます。山岡達丸です。

 本日は、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案ということであります。

 今回の法案は、特に大企業と中小企業の取引において、例えば、価格を話し合う場を設けないとか、あるいは価格を乗せることの中小企業からの要請に応じないとか、一方的に説明をしないで代金を決める、そういうことを明確に規制するといいますか、禁止することを定めていますので、更に言えば、手形等の支払いの禁止や、運送委託の対象拡大ということで、保護する対象を拡大していく。人数で区分も、また保護する対象を更に広げていくということで。

 振興法ももちろん改正するわけでありますが、昨今、賃上げという流れが大きく広がっていく中で、特に中小企業、様々、受注、発注の大手企業との間で力関係に差があって、自分たちの労務費とかを乗せた価格請求がなかなかできない社会を変えていこうということで、非常に大きな一歩になる、踏み込んだ中身になるということを思っておりますので、この法律、法案の趣旨について、私たちも非常にこの意義、賛同するところでもあります。

 その上で伺いたいんですが、やはり、大きな役割を果たす法律だと思っていますから、その効果は早く、できるだけ早く効果が出ていただかなければいけないということであります。

 折しも今、春季生活闘争という中で、日本の様々な慣習の中で、賃金を上げるというのは春闘を通じてというのが大きな流れの中で、それぞれ各企業がいろいろ、四月は年度の切り替わりでもありますけれども、そうした中で採用者もまたいろいろ出入りがある中で、人件費を定めていくという時期に、まさにここが賃金アップの流れをつくる大きな鍵となる時期なわけであります。

 ただ、この法案の施行日は、いわゆる議会で採決を終わってから一年を超えない範囲内で政令で改めて定めるということになっています。

 私たちはまた、これは春闘に間に合わせるべきだということを常に申し上げている中で、そのことは念頭に置いていただくということは、公正取引委員長、今日もお越しいただいておりますが、念頭には置くという御発言はいただいているわけであります。

 今回、技術的なこととして確認させていただきたいんですけれども、この法案で、改めて施行日を決めていく、一年を超えない範囲内で政令で定めるということでありますが、では、春闘に間に合わせるということかどうかということを、施行日を明らかにする日、閣議決定をする日というのはいつになりますでしょうか、伺います。

古谷政府特別補佐人 具体的な施行日を検討するに当たりましては、改正法の適用基準等を具体的に示す政令等の下位法令や運用基準を準備をいたしまして、それをパブリックコメントに付す等の手続に必要な期間、これを踏まえる必要があると考えております。

 また、改正法案は、御指摘にありましたように、新たな適用対象を広げるなど広範な改正内容となっておりますので、施行までの間に事業者の皆さんへしっかりと改正内容を御理解いただくための周知広報期間、これを踏まえる必要もあると思っておりまして、これらの期間がある程度具体的に見えてきた段階で施行日を決めて、周知をさせていただきたいと思っております。

 こうした事情がございますものですから、現時点で、施行期日ですとか、その施行期日をお示しする時期、これを申し上げることはなかなか難しゅうございますけれども、来年の春闘に間に合わせるべきであるといった国会での御議論なども踏まえまして、速やかに施行ができますように、迅速な施行準備を進めた上で、適切なタイミングで施行期日を決めさせていただきたいというふうに考えております。

山岡委員 政府のお立場からは、これは当たり前なんですけれども、改めて政令で公示、政令で定める日というのを今この段階で言えないというのは当然だと思います。昨日、若い担当の皆様ともいろいろお話しする中で、一般的には、一か月前とか二か月前に閣議決定して、閣議決定をすることをもって施行日を示すというのが基本であるということであります。

 仮に、公取さんの今のお話を踏まえて、結果的に最終的に春闘に間に合う時期に決めていただくにしても、そのことが事業者たちにとって明らかになるのはかなりぎりぎりになる。一か月、二か月前ぐらいになるまでこれは明らかにされない、予見性が持てないという状況があるわけであります。

 だからこそ、私は、議会として、法案に修正をかけて、施行日は一月一日とする。一月一日とする理由はまた後で趣旨を説明しますが、このことを明確に定めることによって、事業者にとっても、働き手、労働者にとっても、あるいは公正取引委員会にとっても、来年の春闘には確実にこの法律が効果を発揮していくんだ、そのことに向けて進んでいくんだということを、政治の意思でこの場できちんと決めさせていただきたいという思いで、与野党の立場を超えて、思いを共にする会派の皆様とともに、この審議の終結の後に修正案を提出させていただいて、皆様と一緒に、政治の意思を持って、来年の春闘にこの効果を確実に発揮させるし、そのことをこの場で改めてまた世間に周知していく、その思いで提出をさせていただきたいと思います。

 その上で、法案の名称についても伺いたいと思います。

 法律名を分かりやすく伝えることは、法案を社会に理解を広げていく上で非常に重要だと思っていますが、これまで下請という言葉を使ってきたことを、この下請という言葉をなくすということになっております。

 ただ、一般の報道では、どこどこの企業が下請法違反の疑いでなどの報道がありますと、今となっては、世間で、一体どういうことをしたのか、中小企業との取引の中できっと何かしたのだろうなということはすぐ分かるというわけでありますが、名称が変わるということは、それを一からまたしっかり伝えていかなきゃいけないことになります。

 正式名称は、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律という名前になるわけでありますが、これではなかなか世間には伝わらない。下請法違反に代わる、違反という言葉をつけるのも、報道で一般的によく聞かれるのは下請法違反でありますので、どのような略称で、あるいは通称をもって分かりやすく社会全体に浸透させていくか。

 この改正後の略称についても、分かりやすいものにするべきということで、そうした声は公正取引委員会は聞いていたと思いますし、アイデアは温めてきておられると思うんですが、どういう名称をもって周知していくのか、この場でまた御披露いただければと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法の周知に当たりましては、政府が積極的になじみやすい適切な略称を使用するというのは重要というふうに考えてございます。

 公正取引委員会といたしましては、この改正法、この法律の趣旨といいますと、受託事業者に不利益を与える行為を禁止する、そして、取引条件の明確化のために取引条件を明示する義務を課すというような、取引の適正化を目的とする法律ということでございますので、そのような趣旨を踏まえまして、例えば、中小受託取引適正化法、取引適正化法、更に略しまして取適法というような略称や通称を用いて周知活動を徹底したいというのが一つのアイデアでございます。

山岡委員 取適法というのが皆様の耳になじむかというのは、これからの御努力だと思っております。是非、本当にきちんと世間になじむような周知、それはしっかりと取組を進めていただきたいと思います。

 さて、中小企業と大企業の取引ということで、企業間取引に関係する質疑として今日は伺いたいと思いますが、私の立場から、また物流のことについても伺いたいと思います。

 今回の法案でも様々踏み込んだ中身もあり、特に、トラックの輸送に関する業界の皆様は、この法案をてこにいろいろ変えていきたいという思いを持っていますが、私がここで取り上げたいのは、陸ではなく海に関わる物流の事業者のことについてであります。

 船舶輸送についても、発荷主、着荷主と物を届ける間に、発荷主から利用運送事業者に委託、利用運送事業者から、海の輸送のためですが、船会社に委託、船も、港湾に到着した後、コンテナの積卸し、運送業務等もありますから、船会社から港湾運送事業者、港の積卸しとかですね、に委託するわけであります。まさにここも多重委託構造というのが、外形的に見れば見られるわけであります。

 この状況で、私は最後の港の積卸しの港湾運送事業者について取り上げるわけでありますが、まさに港の状況も、なかなか人手不足で、人件費含めて価格転嫁ができない、特に地方港湾の問題が、これはもう顕在化してきているわけであります。

 そもそも、船会社は全国、全世界にビジネスをするわけでありますが、港湾運送事業者は港湾の取扱量に収入源がよりますから、昨今、円安で国内市場は消費力が冷え込み、さらに、中国ではホタテ等の問題もあって取扱量が減り、今後はトランプの追加関税の影響で、これも影響を受ける。外交、国際情勢の中で取扱量も大きく減っていく中で、社会全体の人件費は上がり、港湾の働き手、特に夜中の荷降ろしとかもありますから、慢性的な人手不足で、地方港湾は非常に厳しい。

 人材確保のため賃金アップはもちろんなんですけれども、本来なら職場環境の改善のための投資もしたい、もちろん燃料費、建材費も高騰する、こうした中で、現実、価格転嫁をできていない、多重委託構造の中でですね。

 具体的に言えば、船会社がまともに応じていかないという状況があって、私も地元、北海道苫小牧で活動していますが、苫小牧港で港湾運送事業者が一団となって、先日、四月二日、いよいよ地方港湾が、事業の継続がもう本当にできないぐらいになっているんだ、交渉にも応じてもらえないんだというような必死の思いで、国交省に直接の申入れをされていると思います。

 こうした件について、どういうふうに受け止めておられるか、まず国交省から御答弁いただきます。

堀政府参考人 お答えいたします。

 個別の事業者の方についてはコメントはちょっと差し控えたいと思いますけれども、港湾運送事業の運賃・料金というのは届出制となっておるところでございまして、御指摘のコンテナ貨物も含めまして、港湾運送事業者は適正な原価を計算し、そして、船会社などとの相対契約で運賃・料金を設定しております。

 港湾運送事業者においては、労務費を含めた価格転嫁を行うために船会社などとの交渉が必要になってくるわけですけれども、苫小牧港を含む港湾運送事業者の方々へヒアリングなどを行っておりまして、船会社などの十分な理解を得ることは難しいという声がございます。価格転嫁が十分なものとは言い難い状況になっているというふうに認識しております。

 このため、四月三日に、港湾運送事業の運賃・料金における適切な価格転嫁に向けたお願いという文書を、一般社団法人日本港運協会と国土交通省の連名で発出いたしました。

 引き続き、労務費などの適切な転嫁を通じた取引適正化を船会社などに呼びかける対応を行ってまいります。

 以上でございます。

山岡委員 今、お願いを発出していただいたということなんですけれども、それは去年もやっているんですね。でも、応じてくれないからという必死の思いで、国交省に一団となって行ったというのが今回の事案なわけであります。

 取引価格というのは、かつては認可制であった。過去に二度、二〇〇〇年から二〇〇五年、規制緩和の中で届出制になって、事実上の自由運賃ですね。自由競争となって市場に任せる、価格は安い方向に進む、それをよしとしてきた時代なんだと思うんですよ、当時は。

 しかし、コストカット経済が今の日本の低迷を招いて、一度下がることになった価格は、結局のところ上げられなくなる、立場が弱ければ弱いほどその交渉ができなくなる、その反省を含めて、今回の法案で、人件費も含めて必要な費用、また、きちんと価格に乗せられるようにしようということもそうですし、公正取引委員会も含めて、中小企業庁も含めて、様々な施策を打ってきたという今の流れになっているわけであります。

 伊東大臣に伺います。

 大臣は、北海道でも御一緒に活動させていただいておりますが、釧路の市長も務められていました。政治活動の中で、釧路港も同じような現状であられると思います。釧路港でも港湾運送事業者の実情にも触れてこられたと思います。

 今、お立場、公正取引委員会の担当大臣ということで、是非、大臣、また関心を更に深めていただいて、お立場から是正を進めていただきたい、その思いなんですが、大臣、お願いいたします。

伊東国務大臣 おはようございます。

 山岡委員には、北海道のみならず各地域におきまして本当にいろいろ御心配いただき、ありがとうございます。

 私も確かに釧路市長をしていたところでありますけれども、その当時から、例えば苫小牧港と釧路港の荷役手数料の違いとか、様々条件がまた港によって違うことがありまして、なかなかそう簡単に価格転嫁という一言では片づけられない部分もあるわけであります。

 ただ、この港湾運送事業におきましても、待機料金やあるいはキャンセル料金、貨物の保管料、これらが十分に支払われていない、また、人件費、設備費、燃料費等の原価に見合った適切な料金が設定されていないという声があることは承知をしているところであります。

 そうした声も念頭に置きながら、公正取引委員会におきまして、適正な価格転嫁が進むよう、この法律や優越的地位の濫用規制を引き続き厳正に執行していくことに加え、担当大臣としても、労務費転嫁指針の周知など普及啓発活動につきまして、中小企業庁や事業所管省庁とも連携して引き続き取り組んでいきたい、このように考えております。

山岡委員 大臣から、公正取引委員会として大きな、大所高所のお話をいただきました。

 最後お話がありましたけれども、やはり、各業界のことは、その所管する省庁のそれぞれが御努力いただくことということになってきます。同じ国交省でも自動車運輸局、これは陸送とかですね、平成三十年の法改正に基づいて、運転者の労務費の確保とか、安全性を確保するための投資、持続的な経営を行っていくための平均的な価格として標準的運賃を定めて告示して、それは令和二年に告示したんですが、令和六年に更に物価高騰を踏まえたまた新たな告示もして、少しずつ状況改善も図っておられるという国交省の中の動きもあります。

 また、同じ国交省で航空局ですが、先日、一月三十日、航空業界の労働組合の皆様が、これも航空局含めて、公取の皆様、中小企業の皆様のところにも行ったんですが、いわゆる空港ハンドリング業務という飛行機の陸上側の受け、お客様への対応とか貨物とか、あるいは飛行機の誘導とか、そうしたところもまた多重の受託構造になっていて、なかなか反映しない。何とかこれを、ガイドラインを作ってほしいということで、具体的に、次の春闘に間に合わせるために、ガイドライン作成で動いていただいているということも始まっています。

 国交省の中でも各部局、御努力していただいている中で、是非、港湾局、港湾運送事業者、企業だけの努力ではなかなか厳しいという中で、取り得る対策、対応をしていただきたいんです。適正取引のためのガイドラインの作成や、あるいは標準的運賃を改めて定めて、これぐらいは必要だということを是非お示しいただきたいという思いです。

 国交省、もう一度御答弁いただければと思います。

堀政府参考人 お答えいたします。

 港湾運送の運賃・料金の適正な設定というのは、港湾運送事業の健全な発達と、それによります港湾運送サービスの安定的な提供を確保する観点からも重要であるというふうに考えております。

 今後も取引適正化を船会社に呼びかけるなどの対応はもちろん進めるんですけれども、実態をしっかりまず調べます。実態調査等を行って取引実態の把握に努めてまいりたいと思いますし、関係省庁と連携して、今回の下請法の改正の趣旨なども踏まえた取組も視野に入れて、改善に取り組んでまいりたいと思います。

 先ほど御指摘のガイドラインも含めまして、どういった方法により対応を行うことが適切かについて検討してまいります。

山岡委員 ガイドラインを含めて検討いただくというお話もいただきました。やはり、所管省庁がしっかりと示していくことで、この数年、各業界が変わってきているという状況であります。二十一ですか、二十一の業界で、今、ガイドラインが、国が策定するガイドラインを業界に下ろすという形になっております。

 是非、今お話しいただきましたけれども、港湾局の方でも対応いただきたいということを重ね重ね申し上げますし、これは本当に深刻な問題だと思っております。その場所だけ取り残されるわけにいかないと思っていますので、引き続き委員会でも、私、また進捗も確認もさせていただきたいという思いであります。

 最後、経済産業大臣に伺いますけれども、一連のお話もあります。経済産業大臣も重要な役割です。是非、公正取引委員会や国交省の皆様とも連携していただきながら、この価格転嫁を適切に進めていくという流れを大いに進めていただきたいと思いますが、大臣の、最後、御答弁いただきたいと思います。

武藤国務大臣 私の地元も、物の世界とのやり取りは九割以上が海運であります。ですから、経済ということを考えれば、海運の先生の今の御指摘も、これは各省、今回の法の成立とともに、しっかりとこれからももう一度掘り下げながら、皆さんがちゃんと経済好循環ができるように、価格転嫁というものを進めるために、是非またお知恵を拝借したいと思います。

山岡委員 質問を終わります。ありがとうございます。

宮崎委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。

 今日は、下請法改め取適法に関しまして御質問をしたいと思います。

 まずなんですけれども、下請Gメンが人数を増やしているということで、これは頼もしいなと思ったんですが、実際、一人当たりの下請Gメンの方が、すごく増えている相談件数に何件ぐらい対応しているんだろうということで、昨日、経産省の方から数字をいただきました。これは、始まりました二〇一七年でしょうか、そのときには一人当たり二十五・五件の相談件数ですね。それが、最高に多かったのが二〇二〇年の七十三・六件。これは多いですね。でも、これじゃいかぬということになったのではないかなと思うんですが、最近三百三十人まで増やしまして、二〇二四年は二十九・五人という形になっています。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、大体三十人ぐらいが目安であるというふうに考えてよろしいでしょうか。この後、相談件数が増えていったときに、更なる下請Gメンの増員も考え得るということでしょうか。ちょっと基準も含めて教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員お示しのとおり、下請Gメンは増員を図ってきておりまして、設立当初の八十名から、現在では三百三十名体制となってございます。年間一万件を超えるヒアリングを実施しておりまして、ヒアリングは二人一組で実施しておりますことから、一組が年間に実施するヒアリングは約八十件となってございます。

 また、下請Gメンに加えまして、全国各地で小規模事業者も含めた取引実態を把握するべく、四十七都道府県に下請かけこみ寺が設置されておりますけれども、この下請かけこみ寺の調査員も活用した情報収集体制も強化してまいる所存でございます。

 さらに、年二回の価格交渉促進月間におきましては、約三十万社の中小企業へアンケート調査を行い、価格交渉、転嫁の状況を幅広く把握することに努めておりまして、下請Gメンの今後の体制につきましては、これらの取組の効果も踏まえながら適切に対応してまいる所存であります。

 引き続き、こうした様々な取組を徹底し、一社でも多くの中小企業の実態を把握し、更なる価格転嫁、取引適正化につなげてまいります。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 二人一組で年間八十件。結構、同時にやると、かなり大変なんじゃないかなという感じをいたしました。

 前回の質疑の中で立憲民主党の鈴木委員もおっしゃっていたかと思うんですけれども、麻取みたいな感じで、少し権限を強化したらいいんじゃないかという御提案もありました。私もそれはちょっと賛成なんですけれども、下請Gメンから連絡が来たよ、うわ、まずい、うちはちゃんとやっているかなということで、何回も同じ会社に出入りしなくても、ある意味、一つにらみを利かしているよ、こういうメッセージになるのは、一つ効率化の上でもいいんじゃないかなと思うんですけれども、武藤大臣、いかがですか。

 ちょっと権限強化に関して御検討いただけるかどうか。そういう案はいかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 下請Gメンにつきましては、主として、取引関係の受注側の中小企業に取引の状況についてお伺いすることが主となってございます。そのため、取引先の相手方、発注方がこんな取引適正化の関係でいいことをしているというような情報も集め、これをまた横展開していく。また、こういうやや不適切なことをしているという情報については、中身を十分精査いたしまして、場合によっては下請法に基づく対応にも結びつけていく。そのような対応をしております。

 そのような中で、やはり取引先、受注側の中小企業に下請Gメンがヒアリングに入ったということが、発注先の事業者さんに対するある種のメッセージとして受け止められているという実態は耳にすることはございます。

 ありがとうございます。

吉田(は)委員 ちょっとまとめて大臣には後で聞こうと思うんですけれども。

 なるほど、受注側に入ったということが発注先に行くと、うわ、まずいな、うちもおかしなことはできないな、こういう歯止めになるということはいいかなと思います。

 では、具体的に、今回、この法律の趣旨は、賃上げのための原資である価格転嫁、徹底的に価格転嫁を進めるんだ、そして賃金を上げていくんだというところが主眼ではないかなというふうに思うんですけれども、武藤大臣に、これは前回も聞いたような気がするんですが、今現在の価格転嫁率から、どのぐらいこの法律を施行することによって上げていくのか、これをお伺いしたい。

 なぜなら、やはり漫然としても余り効果がないと思うんですよ。政府として、今の目標から例えば一〇%上げるんだとか、そういう具体的な数字、いつまでというものを示すからこそ、これは政府も本気だぞというのが伝わる。民間企業でも、何かを成し遂げるときには、いつまで、何%、こういう目標値を持っていきます。これは私は当然じゃないかなというふうに思うんですけれども、改めて伺いたい。

 特に今、トランプ関税で現場は冷や冷やしているんですよ。昨日のニュースにもありました。日本商工会議所の小林会頭は、トランプ政権の関税政策が中小企業の賃上げ機運に水を差しかねないという発言もされています。みんなちょっと不安になっている中、いやいや、これで、この取適法できちんと価格転嫁を進めていく、その決意だよ、賃上げの決意だよというところを、やはり目標値、そして期限、こういうものも持っていくべきだと思いますが、武藤大臣の見解をお伺いします。

武藤国務大臣 吉田委員から御指摘いただきました。

 取適がいいのか、適取がいいのかよく分からないんですけれども、何か焼き鳥をイメージしちゃってしようがないんですけれども、御議論をまたいただきたいというふうに思います。

 今、転嫁率の話をいただきました。これは今、事務方からもお話ございましたように、直近データは、発注側からの声かけで価格交渉できた割合が増加してきておりますけれども、雰囲気は醸成されつつありますが、残念ですが価格転嫁率は四九%です。これは今までも答弁させていただいたとおりで、道半ばであります。

 どこまで価格転嫁するか、この目標をしっかり示すべきではないかという御指摘だというふうに思います。ただ、民間事業者同士でやはり十分な協議を経ながらこれは決定されるべきものでありまして、具体的な、政府が価格転嫁率を目標として設定することは、いささか、現状では想定をしておりません。

 他方で、望ましい取引の方針を示す振興基準、これは経済産業省の所管ですけれども、原材料費とかエネルギー費について適切なコスト上昇分の全額転嫁を目指す、こういうものは盛り込んでおりまして、業界団体や企業に対して、これらを参照するよう促してまいりたいと思っています。

 また、労務費について、これが一番難しいところだと思いますけれども、労務費転嫁指針というものにおいて、最低賃金の上昇率や春闘の妥結額を合理的な根拠資料とする旨を定めております。更なる周知に取り組んで活用を促していきますけれども、こういった取組を通じて、コスト上昇分を価格に転嫁できるように、転嫁対策を講じてまいりたいと思っています。

 今委員おっしゃられるように、関税の問題で、全国いろいろ御懸念が、御不安、御心配もあると承知をしていますので、我が省としても、プッシュ型の調査をやったり、各局にも指示を出しまして、今調査中であります。できるだけ速やかな対応を必要であれば早速やっていきたいと思いますし、またいろいろ御指摘いただければと思います。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 大臣から御指摘あったように、今、全額転嫁でエネルギーと労務費というところがあったと思うんですが、仮に、では、エネルギーと労務費を全部価格転嫁したら、今の価格転嫁率はどのぐらいよくなるんでしょうか。政府参考人でも構わないので、御参考に教えていただければと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今、労務費と委員御指摘ありましたけれども、大臣から御答弁申し上げたとおり、振興基準には、原材料費とエネルギー費につきまして、適切な価格の全額転嫁を目指すということで規定をしております。

 このエネルギー費及び原材料費につきましては、どの程度事業活動において原価として必要とされるかということについては業種ごとに様々でございますので、恐れ入りますが、一概に、例えば平均の今四九%がどのくらいまで上がるかというような算定はなかなか難しいことは御理解いただければ幸いであります。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 もちろん、全業種平均ということで出しているのは承知しているんですが、今回アンケートを取られたのも、様々な業種ごとにアンケートを取っていらっしゃると思うので、是非そこは、仮にこうできたらこんなに価格転嫁できるという、やはり未来を示すということは私は必要かなと思うので、是非ちょっとそこは計算していただきたいなというふうに思います。

 さて、今日はちょっといっぱい質問がありますので、次に行きたいと思います。

 先ほど山岡委員の方からもありました、来年の一月、春闘までに間に合わせるようにという強い我々の希望でもあるわけですが、やはり、この賃上げ機運を冷やさないという意味で、政治の意思としてこれを示してほしいという山岡議員の御指摘もありました。

 先ほど、いろいろなパブコメをしなきゃいけない、周知期間が必要、実際に事業者の方に分かるのが一、二か月前と直前になってしまうという、それも十分承知した上でなんですが、武藤大臣に、是非ここははっきりと、賃上げ機運を冷やさないためにも、それを目指すんだということをおっしゃっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 この法案の目的というものは、中小の受注者が価格交渉、転嫁しやすくなる環境を整備して賃上げにつなげることというのが趣旨であります、もう御承知のとおりですが。ですから、来年の春闘に間に合わせるべきとの意見があることも、私もよく理解するところであります。

 一方、下請法の改正案というものは、発注者に対する規制を強化をし、また、規制対象を増やすものであります。政令、運用基準などの下位法令も含めた経済界全体への丁寧な周知というものも当然不可欠なもので、これは丁寧にやっておかなきゃいけないなという思いがあります。

 この下請法、下請振興法の改正法案が可決、成立した場合には、このような事情を勘案しながら、公正取引委員会、今委員長からもお話ありましたけれども、適切な施行期日を判断していくということになると思います。私も気持ちは共有しておりますので、速やかな施行に向けて、周知、広報の徹底等に努めてまいりたいと思います。

吉田(は)委員 なかなか政府という立場で言いづらいのは理解しております。でも、武藤大臣が今、我々の気持ちを受け取っていただいたなというふうに感じました。ありがとうございます。

 特に、今、価格転嫁の上でちょっと一番私は心配な業種、これが自動車関連です。

 部品を含め、今皆様のお手元にあります資料一を御覧いただきたいんですが、現在のところ、この自動車・自動車部品の価格転嫁率は五一・九と全業種平均よりは上なんですが、今回、トランプ関税によってかなり打撃を受けるだろうという懸念が出ています。

 自動車部品は、一車当たり二万から三万、部品がある。親会社があって、下請、孫請、その先まである、すごいサプライチェーンがあるわけなんですけれども、やはり、この方々が今相当ナーバスになっていると思うんですね。

 実際、私も、これはイギリスに留学していたときに、イギリス郊外にある日本の、会社名はやめておきますけれども、製造業の現地の通訳をアルバイトとしてやらせていただいて、ラインに入って、どんなふうに製造しているかというのを実際見て経験することがあって、すごいコスト意識ですよ。一円とかじゃない。もう一銭単位ですごい厳しいコスト管理をしています。トヨタ生産方式なんかでも有名なジャスト・イン・タイムですとか、いや、やはり日本の製造業ってすごいなと私は思ったんですね。

 ということは、もう本当に、関税がかけられ、生産がどうなっていくか、やはり現場は戦々恐々しているというふうに思うんですけれども、特に自動車、自動車関連企業、ここの価格転嫁が進まないんじゃないかという御懸念に対して、武藤大臣、どんな分析をし、対策を講じられるか、教えてください。

武藤国務大臣 米国の関税措置が発動される中でも、取引適正化の取組に影響を与えさせないようにすることが重要と認識をしているところであります。

 今月の八日でしたか、私自身、自動車業界各トップと面会をさせていただいて、雇用維持や賃上げの原資の確保のために、直接取引先の更に先までちゃんと価格転嫁が可能となるような価格決定をすること、また、本取組について、自動車メーカーやティア1、ティア2以下の中小部品のメーカーさんへの情報発信を継続すること、さらに、この関税措置で厳しい状況に直面する中でも、適正取引に配慮してくださいということをお願いしてきたところであります。

 経済産業省としては、既に相談窓口、これは設置をもうしております、全国一千か所。これはもう今までも出ていますが、資金繰りの支援ですとか、中小自動車部品サプライヤーの事業強化といった支援策を開始して通知をしているところであります。今後もプッシュ型で影響把握というものを切れ目なく続け、産業に及ぼす影響をしっかり精査をしながら、それらの状況を踏まえて、自動車産業を始めとする我が国産業を守るために、追加の対応の検討もしていきたいというふうに思っているところであります。

 本当に、できるだけ早くまとめていきたいんですけれども、ここも正直申し上げて、中間まとめの前にいろいろな話を聞いていますと、いろいろ不安はあります。ただ、現実、今直面しているというところはそう多くない。ただ、やはりアメリカとの交渉の間で何が起きるか分かりませんので、自動車部品も五月三日だったかな、部品の方も関税がかかってきますので、できるだけ早く赤澤大臣との調整もしながら、頑張っていきたいというふうに思っています。

吉田(は)委員 武藤大臣、済みません、私がちゃんとニュースを追いかけられていないのかもしれないので、ちょっと教えていただきたいんですけれども、何かアメリカとの交渉の期限が七月みたいなニュースをちらっと見たんですけれども、逆にそこまでは詳しいことが分かっていかない、そこはちょっと我慢して様子を見ながらいかなきゃいけないというような理解でよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のあった一定期間という話は、恐らく相殺関税、これが追加で日本には二四%と言われていまして、これが一定期間停止すると言われているのが恐らく九十日、そのことだと思っています。

 ただ、自動車及び鉄、アルミはもう二五%かかっておりますし、自動車部品は五月三日からですけれども、ベースの相殺関税につきましても一〇%はもうかかっておりますので、我々が今対策をいろいろなことで考えていかなければいけないというのは事実だと思います。

吉田(は)委員 非常によく分かりました。ありがとうございます。

 何か、ちょっとトランプ大統領が昨日、急げ急げみたいな感じのことを言っていたので、いや、そんなに急ぐ必要あるのかななんて、ちょっと、そこはやはり交渉のテーブルにのるときには気をつけた方がいいところもあるのかなというふうに私自身は感じました。

田中政府参考人 私、ちょっと言い間違えたかもしれませんけれども、二四%は相互関税、レシプロカルタリフです。済みません。

吉田(は)委員 ありがとうございます。特に、やはり自動車・自動車部品は、日本の経済の中でも大変重要なところだと思います。

 自動車関連の企業は、やはり子会社ですとか、今でいう下請、孫請の方々を大事にしているのがよく分かります。逆に言うと、EVの産業に出遅れたのは、部品がEVになると二万点から何か一万点ぐらいになるんですか、半減するということで、それは部品を扱っているこういった企業にも影響があるからということで考えられていたというのは私も承知していますので、この自動車関連に関わる企業を本当に支えなきゃいけない。

 そして、市場も、今アメリカというところを見ていると思うんですが、ほかの国も含め、やはり持続していかなきゃいけないと思いますので、ちょっと多面的に是非支援策を、武藤大臣、講じていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 現状のいわゆる燃料を使った自動車からEV化にすると、大体、部品点数、たしか二割から三割ぐらいに減ってしまうというふうに聞いています。こういう背景があったので、それぞれ事業再構築といって、中の機械を入れ替えるということの支援もやっていたり、いろいろやってきました。

 今回、この関税が入ってきました。今言わせていただいたように、今調査をしていますけれども、中には、これはアメリカに依存していちゃいかぬというので、新しいものに事業転換をする方々も、これは報道でもちょこちょこちょこちょこ出てき始めています。

 ただ、今我々が調べているところでは、全体的な中では大きな変化はまだできていません。ですから、そこを精査をしながら、また、アメリカ依存が強過ぎるというところも確かにあります。いわゆるサプライチェーンという意味合いからすると、大手さんのメーカーがいて、ティア1、ティア2、ティア3と来て、裾野がわあっと広がってきますので、そこをきめ細かく一応対応していくということで。

 ただ、今こういう形で、私も地元にいますと、本当に皆さんが元気で、やはり気持ちを前向きに捉えて頑張っていらっしゃるところも見ています。だから、いろいろなところで気持ちの持ち方の違う、こういうところもあるというふうに認識をしています。

 原則、そこでちゃんとしっかりもうけてもらうということになると、やはりこの法律がしっかり生きてこないといけないと思っていますので、ありとあらゆる角度からしっかり中小企業を支えていく、これが私どもの経産省の役目だというふうに思っています。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 やはり経営の基本というのは、変化を一歩先に感じ取って、そして動くということかなと思いますので、この自動車産業も、それこそ前回の質問でありました、ラピダス社が、半導体、二ナノで最先端を行く。そこに、自動車業界では今、自動運転というところもかなり進んでいると思うんですね。いろいろな形でちょっとシナジーをつくっていただいて、是非トータルの産業として戦略を持って、そして政府の側も後押しするということをお願いしたいと思います。

 次に、残り時間がちょっと短くなってしまったので、済みません、問い六に飛ばせていただきます。

 私、おじいちゃんが八百屋で、父の代に、小さいんですけれども食品スーパーにしたというバックグラウンドなんですね。今、価格転嫁という話をすると、私は自分の生い立ちからも、食品スーパーさんはできないんですよ、正直。お客様には一円でも安く売りたい。でも、仕入れが高くなると、それを価格転嫁できない。でも、パートやアルバイトの方の賃金は上がっていく。結構サンドイッチ状態できついんですね。

 食品スーパーさんの価格転嫁率が三六・四%ということなんですけれども、実際、こういう価格転嫁を見たとき、今回はちょっと業種的に余り注目されていないのかなと思うんですが、今、物価高で、特に食料品が高いというやはり国民の声が強くあるときに、無策だということは私はちょっとあり得ないというふうに思っています。

 もしかしてもう大臣も御存じかもしれませんけれども、実は食品スーパーの利益形態というのはすごく複雑です。というのは、日配品があります。豆腐とか牛乳とか、日配品があって、生鮮食品、これは鮮魚、青果、生肉、こういうものもまた利益率が違います。利益率では一番高いと言われる総菜の部門があって、そして安定的な利益を得られる食品、こういうものがあって、では、スーパーはどうやってもうけを出しているかというと、特売品、これはマイナスを出して売るんですよ。でも、そのほかの利益率の高いところで何とかカバーして、全体として売上げ、利益を確保しているという、実はすごく複雑な利益形態なんです。

 だから、一つ一つの商品に価格転嫁はできないんです。こういう業種の皆さんに対して、大臣、どのような支援策ができるでしょうか。

 やはり賃上げ圧力も、我々労働者としてはそれはかけますよね。人が本当に足りないんです。DX使っています。かなり省力化しているんですけれども、厳しい。

 特に、でも、国民の食を支える食品スーパー、食品関連、この業界の価格転嫁に関して、大臣、どのようなことができるか、対策、そして今後の方針、教えてください。

武藤国務大臣 小売屋さんというか食料品のスーパーさんというか、野菜屋さんもそうですけれども、私も家内に毎日のように叱られています、今日もまた上がった、どうしてくれるのといって。だから、その実情というのは、本当にコロナのときからずっと続いている中で、大変厳しさを持っていらっしゃると思います。

 私どもの、今回、価格転嫁というものにこれがどういうふうにあれするというのは、そういう難しい、一つの物流の一環としてもそうだと思うんですけれども、システム、それぞれの業態のシステムというものの中でどうやって入っていくのかなというところは正直、思っています。

 できるだけ、今までやってきているのは、中小企業の省力化投資補助金ですとか、IT導入補助金とかいって、レジを新しくしてもらったり、いろいろなことをやってきていますけれども、本質的な賃上げの実現を図るという意味では、なかなか、正直言って、システム、それぞれのお店によって違うでしょうし、難しさがあるんだと思います。

 是非、私どもとしても、全都道府県によろず支援拠点なんかもつくっていますし、そういうところの窓口を利用していただいて、いろいろなアドバイスをしていただくとか。

 それから、正直言って成功していらっしゃるところもあるので、やはりそこの経営者の方々の考え方あるいは店長さんの考え方、それぞれ、報道でもたまに見ておりますけれども、これだけ苦労されて、今日は、今月は伸ばしたとかいう、いいところの話も聞いているのも事実ですから、是非、そういう意味で、寄り添いながら、伴走支援をまたこれからもやっていきたいというふうに思っています。

吉田(は)委員 ここを是非、経産省としても、今、国民が不安なのは米の値段。農業のやはり大事さ。そして、食料品が高い。こういう食料品スーパーの方々、すごく身近なんですよ。そこに対して、やはり、こういう施策をするんだ、こういうメッセージを届けていただくということが、今の国民の不安や、それからやはりお金が、もう本当に手取りが増えない中で物価だけ上がっていく、こういう不安に寄り添う政治が私はとても大事だなというふうに思っていますので、今まで価格転嫁からはちょっと見過ごされてしまったような農業、それから食料品、ここに是非御注目をいただきたいということを申し上げまして、私の質問、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、東克哉君。

東(克)委員 立憲民主党、東克哉と申します。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の法案審議に当たりまして、私も改めていろいろなところを確認したところ、初当選したのが昨年の十月なんですけれども、今、一期目なんですが、私の初めての委員会質疑で価格転嫁のことについてお話しさせていただきまして、そのとき、汗だくで余り覚えてはいないんですけれども、初めての質問をさせていただいたのが武藤大臣で、優しいまなざしで答えていただきましたので、今日も優しいまなざしで答えていただければなというふうに思いますし。そこから各先輩議員方に質問をやってみないかということをどんどんどんどん言っていただいて、何となく雰囲気は分かりながら、そしてやってみないかと言われたときに、これは答えとして、はいかイエスかということをこういうところで使うんだなということを改めて気づいた次第でございます。

 ですので、質問は本当に回数を重ねさせていただきましたけれども、先輩議員の方々と、更に鋭い質問をこうやって聞くんだなというのを見ながら、またこれからもいろいろな質問をさせていただきたいなというふうに思います。本日もよろしくお願いいたします。

 先ほどいたしました私の初めての質問のときの、大臣からの質問に、価格交渉促進月間、労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針について、価格交渉が困難である事業者さんの支援についてお尋ねをさせていただきました。大臣からは、一三・六%と、これは昨年九月に行われた価格交渉促進月間のフォローアップ調査において、価格交渉のテーブルに着くことができなかった、交渉すらできなかった企業の割合です、これをできるだけ改善していきたいという旨の力強い答弁をいただいております。

 加えて、先日の、四月十一日の当委員会の一般質疑においては、サプライチェーン全体での価格転嫁に対する取組についてお尋ねしたところ、業界ごとに存在する価格転嫁を阻害する商習慣の一掃も必要で、武藤大臣が自動車関係業界各社と面会されて、取引階層の深いサプライヤー等も参加するセミナーの実施などで情報発信の依頼、そして、アメリカの追加関税で厳しい現状に直面する中でも適切に取引を引き続き配慮することなどを要請されたという旨を、こちらは政府参考人から御答弁をいただいた次第でございます。

 そこで、今回の法の改正を踏まえて、賃上げ、労務費の適切な価格転嫁取組について、まず経産大臣から意気込みを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

武藤国務大臣 ありがとうございます。持ち上げていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 政府としては、成長と分配の好循環、この実現をするためには、賃上げこそが成長戦略の要だ、これが我々の認識であります。中小企業の賃上げ実現には価格転嫁が鍵となっておりますので、特に賃上げした分の価格転嫁が遅れている、労務費を含めたコスト上昇分、これを売上げに適切に反映をして収益を上げなければ、成長への投資や賃上げの原資を確保できないわけです、これは当たり前の話なんですけれども。

 こういう形の中で、価格交渉、価格転嫁をする取引慣行の定着を目指して、今お話もいただきましたけれども、毎年三月と九月、これを価格交渉促進月間と設定をしてきたところです。新聞、ウェブ、こういうものの広報に加えて、交渉、転嫁の状況を社名入りを含めて広く公表してきているところであります。

 いわゆる周知を本当にどうしていったらいいのかというところは、もう先生方からもいろいろ御意見を今までもいただいて一つ一つやってきておりますが、この中でも、労務費の転嫁指針というものが、経済界へ周知徹底、これが、労務費がなかなか遅れてきてしまっています。材料費は認めてくれました、電力代も認めてくれました、でも労務費は無理ですというところがアンケートの中でも多かったのも事実でして、こういう形で、今回、この法改正を伴って公正取引委員会と連携をしながら、下請法の執行強化、様々な施策に更にまた取り組んでいかなくてはいけないということだろうと思います。

 今先生おっしゃっていただいたように、関係業界に対して価格転嫁を阻害する商習慣の一掃に向けても、更なる価格転嫁、取引適正化を要請してきているところでもあります。この商習慣の一掃というのも、これもなかなか奥の深い話で、難しいところもありますし、業界によってもいろいろ多様化を持っているところでありますので、相当今回、これ以上、丁寧にこれからも進めていかなきゃいけない話だと思います。

 また、今回、協議に応じない、一方的な価格決定の禁止等を措置する下請法の改正案も提出をさせていただきました。ある意味で相当これでインパクトがあるのかなと思っております。

 転嫁なくして中小企業の賃上げは実現しないという考えの下で、適切な価格転嫁を今後とも推進してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

東(克)委員 ありがとうございます。

 特に中小企業の賃上げは成長の要だと本当に私も実感しておりますし、それに向けて、このあしき商習慣の一掃をしていかなければならないというふうにも思っております。

 その商習慣の一掃というところで、今回、私も実際に見聞きして、知り合いにも聞くところであります、少し物流の方を聞いていきたいと思います。

 今般の法改正により、物品の運送の委託について下請法の規制の対象となることが新たに想定をされています。これは、立場の弱い物流業者が荷役や荷待ちを無償で行わされているなど、荷主、物流事業間の問題が顕在化していることが背景にあるということを承知しております。

 実際にこれは私も聞いた話です。とある上場企業で起こった話なんですけれども、納品場所以外で業務を無償で行わせている、運送業務に関わる附帯業務を無償で行わせている疑いがあるということ、当該行為が、特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法、いわゆる物流特殊指定に該当し、独占禁止法の違反のおそれがあるとして行政指導を受けたという事例です。日本の商習慣を踏まえれば、あしき商習慣ですね、本当にこのようなことは氷山の一角であるというふうにお訪ねした先では言われておりました。

 さらに、このような事例を解決するためには、これまで独占禁止法において禁止されている優越的地位の濫用を示す証拠固めが必要で、証拠固めに多くの時間と労力を費やさなければならなかったというふうに言われておりました。だから、荷主に比べ立場の弱い物流事業者を救済するために、今回の下請法ではなく取適法ですね、失礼しました、今回の取適法の改正に期待をしているというお話をされておられました。

 そこで、今般の法改正により物品の輸送の委託を下請法の対象とされておりますが、独禁法の物流特殊指定との関連性、済みません、下請法と言わせていただきます、下請法による規制の在り方について、これは公正取引員会にお尋ねさせていただきます。お願いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 荷主と物流事業者間の取引につきましては、御指摘のとおり物流特殊指定というものがありまして、こちらで従来は対応してきておるということでございます。これは、独占禁止法の十九条で禁止しております不公正な取引方法というものでございます。不公正な取引方法は、公正取引委員会が指定をするものと法定化するというものがありますが、この特殊指定につきましては、公正取引委員会が指定いたしまして告示をするというものでございます。これにつきましては、荷主と物流事業者全般の委託取引が対象となるということでございます。

 今般の法改正によりまして新たに対象としようとするものにつきましては、取引の流れといたしましては、着荷主と発荷主、物流事業者という取引があるといたしますと、今回対象にいたしますのは発荷主と物流事業者、この間の取引につきまして新たに特定運送委託ということでこの取適法の対象に加えようとするものでございます。

 これが対象になることによりましてどのような違いがあるかといいますと、委員御指摘のとおりでございまして、不公正な取引方法ということになりますと、独占禁止法で、出口といたしましては、最終的には排除措置命令、行政処分ということになるわけでございまして、比較的手続に時間を要するということでございます。

 一方で、この法律の対象となりますと、適用対象というのが資本金区分というものや従業員で確定されるということでございまして、比較的迅速な処理ができまして、勧告、公表というような行政指導による迅速な措置ができる。そして、それによりまして、違反行為の是正とか運送事業者が被った被害、そういうものの原状回復が迅速に達成できるということでございます。

 さらに、この法律ですと、荷主に対しまして、取引条件を明確化するために、運賃とか業務の内容、そういうものを記載した文書というものを通知をするという義務もございます。

 そしてさらには、国土交通省を始めといたしました事業所管省庁においても今回直接指導ができるというような権限を付与するということでありまして、関係機関との間で相互に連携をしながら対応ができるということでございます。

 このように、特殊指定と新しい法律につきましてはお互いに補完関係にあるということでございまして、この法律で対応できないものは特殊指定で対応するということにいたしまして、荷主と物流事業者の取引の適正化を図っていくということでございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 発荷主から物流業者への取適法の委託で、それに合わない形については物流特殊指定で網羅していくというふうに認識いたしました。

 本当に、私の知り合いも、一人で運転、物流をしている、数人で、ほとんどそういう書類のやり取りもない中でやっているというところがあしき習慣としてまだ残っていますので、それをやはり改善していかないといけないなということ。今回の法案の改定も踏まえて、その辺りの事業所さんたちにも周知していかなければならない、私もやはり周知の一翼を担わないといけないなということを改めて痛感させていただきました。

 そして、物流の事業所管庁さんから行政指導ができる権限が移るという話はありましたが、例えば、トラック・物流Gメンという方々に申告をした場合に、これまでの下請法では報復措置の禁止というものは対象にはなっていなかったと把握をしていますが、今回、法改定をされることで、事業所管省庁の主務大臣に指導助言の権限を付与して、そして中小受託事業者が申告しやすい環境、それを目指しているというふうに認識をしております。

 こうした新しい仕組みを安心して活用していただくためには、発注側と、それを受注する側と、両方に対する周知が必要だというふうに考えておりますが、今後、この法改正がなされた場合において、制度の周知徹底についてどのようにされているのか、お取組を教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、改正法では事業所管省庁に対しましても指導権限を付与するとともに、執行機関に申告をしたことを理由といたしまして、報復措置の禁止というものも新たに追加をしているということでございまして、これによりまして、保護される申告先として事業所管省庁が新たに追加をされているということでございます。

 公正取引委員会や中小企業庁では、申告した事業者が発注者に特定されることがないよう、情報を厳重に管理するということはもちろんでございますが、毎年、発注者、受注者の双方に対しまして大規模な書面調査を実施しておりまして、そこで積極的に情報の収集に当たっているということでございます。そして、この定期調査におきましては、回答内容について発注者には一切知らせることがないということを、注書きを書いておりますし、さらには報復措置の禁止についての設問も設けておるということでございまして、このような形での周知も行っておるところでございます。

 仮に、この改正法案が成立した場合には、引き続き、事業者の皆様に対しまして、報復措置の禁止の規定も含めた制度の周知、そしてパンフレットやウェブサイト等での申告窓口の周知というものに取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 是非、本当にこれも、先ほど何回も言われていますが、一月一日にやはり私たちは実施していきたいという思いがありますので、周知の方を力を入れていただき、私たちも本当に周知の情報発信をしていかないといけないと思いますので、是非とも、そこに向けてお願いできればというふうに思います。

 また、続いて、改定案においてなんですけれども、今まで資本金で区分されていたことが、新たに、従業員で三百人、役務提供については百人の区分導入を新設することにもなっております。

 一昨日も同様の質問があったと思いますが、これは、意図的に減資をして資本金を区分から外すというような、いわゆる下請逃れのような実態に対処するための規制の範囲を広げるものだというふうに理解をしておりますが、答弁によると、この人数の新たな区分を加えたことにより、改定の取適法の適用範囲が約四%から一二%程度増えると見込まれているということでしたが、一方で、やはり、従業員が三百一人とか百二人とかになってくると、意図的に従業員を基準未満に抑えようとする事業所が出てくると思うんですけれども、そういうマイナスなインセンティブが働かないか、若しくは、そういう対策がもしあれば教えていただけませんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような懸念があるということは、我々も重々承知しておるところでございます。

 他方で、従業員につきましては、企業の事業活動に必要な人的リソースということでございまして、従業員数を減らすことは事業活動を縮小するということも意味するということでございます。そのため、単に、この法律の適用を逃れるためだけに、従業員数、ひいては事業活動を縮小するというものはなかなか想定し難いのではないかと考えてございます。

 一方で、そういうような事業者も出てくる可能性ということもございますので、その場合は、独占禁止法の優越的地位の濫用に該当するということでございますと、そちらに基づきまして厳正に対処していくということでございまして、この法律と独占禁止法、両方の運用を通じまして取引の適正化を図っていきたいと考えてございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 是非、やはり独禁法が対応できるということは何よりも強い権限だと思いますので、そういうふうに逃れられないように、あしき習慣を少しでも一掃していただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

 続いて、中小企業庁さんにお伺いしたいと思います。サプライチェーンの価格転嫁のことについてお伺いさせてください。

 先々月の二月十二日、広島県において、予算委員会地方公聴会が開催されました。その際に、参考人として、連合広島の大野会長に意見陳述をしていただきまして、広島県では、本年一月三十一日に、いわゆる政労使会議ということで、湯崎広島県知事も交えて意見交換がされて、この意見交換の場においても、やはり賃上げの必要性、労務費を含めた価格転嫁が必要だということは全会一致であったというふうに聞いております。そして、その価格転嫁が大企業と一次下請ではおおむね進んでいるが、その先に課題があるという認識も強調されていました。

 今般の改定案について、新しく従業員数の基準を設けて、そして規律の範囲を広げていただける一方で、一次、二次、三次と深くなっていくところの関係性に、サプライチェーンでより深くなっていくところですね、価格転嫁がうまくいっていない実態があると指摘をされている中で、サプライチェーンでの価格転嫁を目指すために、中企庁さんはこの改定案についてどのように対策をしていくのか、教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、今回の下請振興法の改正におきまして、複数の取引段階にある事業者が共同で効率化や投資等を行う事業に対し承認、支援できる旨を盛り込んでおるところでございます。

 具体的に申し上げれば、例えば、ティア1のみならず、ティア2、ティア3、さらにはその先といった、サプライチェーンの深い段階の事業者も含む事業者が共同で製品の改善や生産効率化に取り組む計画に対し、国が承認し、債務保証等で支援するものでございます。これにより、直接の取引先との関係を超えて、深い段階も含めたサプライチェーン全体で連携した取組を促してまいりたいと考えます。

 加えまして、発注側の企業へのアプローチとしては、当委員会において大臣からも御答弁がありましたけれども、現在、関係業界に対し、価格転嫁を阻害する商習慣の一掃に向けて、直接の取引先の更に先を意識した価格決定を含めて、更なる価格転嫁、取引適正化を要請しておるところでございます。

 また、受注側の企業へのサポートとして、全国に四十七あるよろず支援拠点に価格転嫁に関する相談窓口を設置し、中小企業が効果的に価格交渉を進められるよう、原価計算方法等の習得の支援なども行ってきているところでございます。

 こうした、発注側、受注側それぞれに対し、様々な手段で支援を申し上げることで、サプライチェーン全体での価格転嫁を促進してまいる所存であります。

東(克)委員 ありがとうございます。

 よろず支援拠点は、本当にいつも出てくる大事なところでありますけれども、昨晩ですかね、私も一応、ミラサポプラスといってぴんとこられている方はどれぐらいおられるか分かりませんが、中小企業庁が発行しているメールマガジンですね。宣伝しておきます、ミラサポプラスです、登録していない方は是非登録をしてください。私も中小企業の経営者だったので、そこからいろいろな情報をもらっていました。

 昨日、多分夜だったのでちょっと答弁には間に合わなかったんですけれども、昨日のメルマガのタイトルが、取引先との価格交渉、価格転嫁対策に組合を活用しよう、団体協約の活用に関する御案内ということで、ちょうどこの内容については、この後、小山委員が質問されますので。こういうふうな情報発信は本当にされていて、私も、やはりやっているんだなという言い方はちょっと上から目線になってしまいますけれども、これをやはりキャッチする事業者をたくさん増やさないといけないなというふうに思いますし。

 おとといは、e―中小企業メルマガというところですね、また別のところが発信している、そこで補助金の情報をたくさん流しましたので、やはりこの辺りの情報をキャッチできる経営者がこれから伸びていかないといけない、伸びるところだと思いますし、伸びるようにサポートしていかないといけないなというふうには本当に改めて強く思いました。ちょっと宣伝みたいにはなりましたけれども、本当に、シートなんかの添付資料もありましたので、あれを使って是非価格転嫁の交渉に臨んでいってもらいたいなというふうに改めて痛感をしております。

 価格転嫁についてなんですけれども、続いては、ちょっとフリーランスの方のことでお話をお聞かせください。

 昨年の十一月にフリーランス法が施行されて、これは、発注者と、そして企業と受注する個人、いわゆるフリーランス、そして規模や交渉力などの格差があることなどから、優越的地位の濫用によって買いたたき、各種のハラスメントに遭いやすい、被害に遭いやすいということの実態を踏まえて、フリーランスの労働環境を保護することを目的とした法律だというふうに理解をしております。

 下請法よりも幅広く法律の対象を定めていることから、基本的には、フリーランスで働く方々にはこちらの法律が適用されるだろうと認識をしておりますが、これは、今回改定される取適法とフリーランス法、両法がもし適用される場合に、公正取引委員会さんに聞きたいんですけれども、どちらが規定として優先されるのか、教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 同一の行為が両法に違反するということにつきましては、令和六年五月に、公正取引委員会といたしましては、適用関係等の考え方というものを出しておるところでございまして、その中で、いずれにも違反する行為については、原則としてこちらのフリーランス・事業者間取引適正化法を適用するという考え方を示しておるところでございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 ということは、フリーランス法を優先して、そして、そこから漏れるところは今回の取適法に対応するというふうに認識をさせていただきました。ありがとうございます。

 そしてまた、これは同様の話になりますが、先ほど言った取適法、そしてフリーランス法の取引適正化に関連がある中小企業庁さんと、フリーランス法のハラスメントに関連がしてくる厚生労働省さんと、そして独禁法その他に関連してくる公正取引委員会さんと、その三者の間で関連するような事案がもしあった場合、どのような執行、連携、調整になるのか、その辺りも教えていただけますでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 このフリーランス・事業者間取引適正化法につきましては、法律の中に特定受託事業者、いわゆるフリーランスの方は、法第六条及び第十七条に基づきまして、公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省に対しましてその旨を申し出て、そして、それに対しまして適当な措置を取るべきことを求めることができるという規定がございます。そして、この申出がありますと、公正取引委員会等は、当該申出に対しまして、必要な調査を行いまして、その申出の内容が事実であると認められるときには、この法律に基づく措置その他適当な措置を取らなければならないというものが規定をされておるということでございます。

 このような観点から、このような申出が円滑に進むように、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省で共通のオンラインの申出フォームを設けておるところでございます。申出がなされた情報につきましては、これら三つの省庁に同時に共有をされるということでありまして、省庁間で必要な調整を行った上で必要な調査を行うということとなるわけでございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 申出があった時点で、三つ同時に、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に同時に発信が行って、どこの事案になるかということが、一つの窓口でそれができるというのは本当に、申出をする側にとってもメリットがあることだと思いますので、やはりその辺りの情報発信も是非お願いできればと思います。

 一昨日ですけれども、佐原議員の質問にもありましたが、フリーランスで仕事をしている方々にとって、困っているときにどこに相談していけばいいのかという話が出ていましたが、そのときに答弁として、フリーランス一一〇番というものが、窓口があるということも、私も恥ずかしながら初めて知りまして、こういう取組があることも知りましたし、こうした取組の周知について考え方をお尋ねしたいとともに、これはちょっと通告していないんですけれども、もし公正取引委員会さんでも、メールマガジンとか、そういう情報発信をしているものがあればちょっと教えていただければというふうに思いますので、お願いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 フリーランス・トラブル一一〇番は、フリーランスと発注者等の取引上のトラブルにつきまして、フリーランスの方が弁護士にワンストップで相談できる窓口といたしまして、政府から委託を受けて設置されているものでございます。

 このフリーランス・トラブル一一〇番につきましては、受託している団体におきまして専用のウェブサイトを設けておるということでございます。そして、そのウェブサイトの情報につきましては、公正取引委員会等の関係省庁のウェブサイトというところにも掲載しておりますし、我々の方からSNSで発信をする、こういうサイトがあるということを発信をする、そして、フリーランス向けの説明会というものがありますとそこでも紹介するということで、様々な方法で周知活動を行っておるということでございます。

 そして、フリーランス全般につきましては、公正取引委員会におきましては、例えば分かりやすい動画とか、そういうもので積極的に発信をしておるところでございまして、フリーランス法の内容、そして、こういうような窓口があるということにつきましても積極的に周知活動を行っておるところでございます。

東(克)委員 ありがとうございます。

 ということは、公正取引委員会さんでもSNSを発信しているということなんですね。ちなみに、メールマガジンはされておられますでしょうか。もし分かればでいいです。分かりますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 過去にはメールマガジンという形で発信しておりましたが、現在ですと、メールマガジンよりはSNSを活用する方が有効ではないかということで、メールマガジンについては、たしかそういうサービスを廃止しておるというふうに認識しております。

東(克)委員 ありがとうございます。

 是非フォローさせていただきますので。これから、フォローさせていただいて、私自身の、情報を取ることもそうなんですけれども、その情報を地元の中小企業さんとかフリーランスの方々にやはり発信しなければならないというふうに思いますので、そして、何回も出てきています、価格転嫁に使うことや、あしき商習慣を少しでも改善できるようにしていかなければならないなというふうに感じておりますので、また拝見させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 そして、今般の法改正によって、先ほど、何回も出てきていますけれども、取適法の対象となるのが四%から一二%程度になると、一昨日の質疑があったことを踏まえて、発注側で新たに規制を受ける企業も恐らく中小企業であり、書面の交付義務の追加や法改正の趣旨について、従業員の周知徹底による適切な企業内での対応など、ある種の負担が新たに発生し得るのではないかというふうに、中小企業の中では考えられます。

 こうした中小企業への支援について中企庁さんから教えていただければと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正で、中小企業でも下請法の対象となり得ることは委員御指摘のとおりでございまして、法令遵守に必要な情報収集や体制整備を実施していただくことが必要となります。

 そのため、改正案の内容につきまして、関係する業界の中で周知を行い、成立、施行前から自主的に対応を進めていただくよう、事業所管省庁とも連携いたしまして、現在、幅広い業界団体に要請を行ってきているところでございます。

 また、業界団体に所属していない中小企業、小規模事業者の皆さんにも情報が届きますよう、下請法に関するオンライン講習会も開催しております。昨年度は計四十五回開催しておりまして、発注者である企業の調達担当の方も含め、延べ五千名以上に御参加いただいております。今年度も継続してこのような取組を実施してまいる所存であります。

東(克)委員 済みません、時間になりましたので、残余の質問を残してしまいまして申し訳ございませんでした。またこれからもよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、小山展弘君。

小山(展)委員 静岡県中東遠地域選出、出身の小山展弘です。

 先日は、本会議でも趣旨説明に対する質疑、質問に立たせていただきまして、また大臣からも、特に武藤大臣から、中小企業憲章や、あるいは中小企業組合につきまして、大変前向きな答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、質問させていただきたいと思います。

 今回の法改正の質問に入る前に、米国トランプ大統領の関税措置のことをお尋ねしたいと思います。

 赤澤大臣も今ちょうどアメリカの方に行かれていまして、大変厳しい交渉を頑張っておられることと思いますし、また、日々刻々、今交渉の途中ということで、変化もある中でございますけれども。今まで、アメリカ・トランプ大統領による急遽の、突然の関税措置に対しまして、日本政府関係者、日本だけはと言ってもいいかもしれませんが、関税措置の対象から外してもらいたい、そういうことで米国と協議しているというような答弁とか発言というものがあったと思うんですけれども、日本だけ、日本が除外、あるいは日本だけが除外、それが当然なんだというようなふうな主張にも聞こえるわけですけれども、その主張の根拠というものを、日本の特殊性、そこを政府はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

武藤国務大臣 御質問いただきました。

 ただ、小山先生、米国の関税措置について、米国に対して、これまで日本の立場を私自身も伝えてまいりました。適用の除外というものを求めてきたのはそのとおりなんですけれども、日本だけ除外してよと言ったような覚えは、正直言ってございません。

 他国と異なる点として、日本は五年連続でアメリカに対して世界最大の対米投資国ですよ、そして、米国の産業ですとか雇用、たしか製造業が多いんですけれども、最も給料の多いのも我が日本の給与体系になっています。こういう貢献をしてきたということをお話も申し上げてきましたし、これは事実というものに基づいて主張してきたところで、ここは米国側によく理解をしてもらうということが大変大事だというふうに思っているところです。

 各国とも必要な情報交換をやっておりますし、他国との協力を含めたあらゆる選択肢の中で、何が日本の国益に資するのかというところが、何が最も効果的な方法かを考えながら、これからも取り組んでいかなきゃいけないというふうに思っております。

小山(展)委員 二国間関係と特徴に基づいて、できる限り日本側の意向を伝えて、その実現に向けて取り組んでいくということは自然なところだと思います。また、アメリカがかなり脅威感を持っている中国に比べれば、日本というのはかなり特殊性もあったり、あるいは、今大臣おっしゃられたとおり、アメリカの経済にも日本の投資や製造業も立地をしたりということで貢献をしているのはそのとおりだと思います。

 ただ一方で、例えば安全保障の面などでいえば、NATOは、日米同盟と同じか、それ以上の関係がやはりあると思いますし、また、イギリスなどは、アメリカにとっても歴史的、文化的に関係も深いということからしますと、確かに日本だけと言っているわけではないというのはおっしゃるとおりだと思いますが、ほかの国が関税がある中で、全部考え直していただくというのが一番自然な、本来であれば自然なことだと思うんですけれども、その中で日本の特殊性ということを認めさせていくというのは、今、元々分かって、そのことを御理解いただいているのであればこのような関税措置というのはしないのではないかと思いますと、なかなか難しいところもあるのではないかなとも推測するんですが。

 トランプ大統領に、こういった取決めや国際ルールを守ることや、あるいは関税の、打ち出した前に、どうやってトランプ大統領に主張をのんでいただく、あるいは我々との合意点を見つけていただくように、どのような手段を政府としては考えていますでしょうか。

小見山政府参考人 先ほど大臣からの御答弁にもあったとおり、日本は五年連続で世界最大の対米投資国であるという中で、米国の関税措置は、日本企業の投資余力を減退させ、米国への投資、雇用にも好ましくない影響を及ぼし得るという懸念を伝え、一方的な関税ではなく、投資拡大も含め、日米双方の利益になる幅広い協力の在り方を追求していくことが重要だと考えております。

 その上で、交渉事でもございますので、この場で具体的な検討状況をつまびらかにするということは差し控えますが、米国との意思疎通をしっかり重ねていく中で、米国の側の主張も踏まえつつ、あらゆる措置の中で、何が日本の国益にかなうのか、何が最も効果的なのか、よく見極めながら、粘り強く協議を進めていきたいと考えているところであります。

小山(展)委員 もちろん、今起きた二国間関係、できる限り改善をしていく、また足下のところでは、交渉経緯のことをなかなか話せないことがあるというのはそのとおりだと思っており、私は、どちらかというと、むしろ足下のことよりも中長期的なことを、今日、全てではないんですが、この質問時間の全てではないにしても、お話ししたいと思っているんですけれども。

 なかなか超大国であって、経済的にも軍事的にも超大国の米国に対して、日本やミドルパワーの、我々の国の意図をのませる強制力というものは余り存在しないと思うんですね。今までの議論の中でも、国債の売却をにおわせようとか、EUとの連携なんというようなことが議論でも出てきて、それはアイデアとしては考えられますけれども、それを日本がすることでまた報復を受ける可能性もあるわけですね。

 アメリカの行動変容を確実にもたらせるかどうかというのは未知数でありまして、もちろん、多国間連携とか、そういったことは必要だと思いますけれども、先ほども申し上げましたけれども、そういった話ができて、合理的な話合いができる政権であれば、そもそもこのようなことをするのかという話もあろうかと思います。

 それともう一つ、別な見方で、これはよく外務省のOBの方もおっしゃっていますけれども、トランプ大統領というのは、最初にぼんとぶち上げて相手を驚かせて、それでアメリカにみんな訪問してきたり寄ってくる、そういうところでまた、最初にぶち上げたものは本気じゃなくて、ディールで交渉をして、得たいものを取っていく。

 最初からその得たいものがあって、ぼんとぶち上げるのか、出てきた中で、出たとこ勝負で得るものを得られればいいというようなことか。両方だ、だから驚いてはいけないということが一方で言えつつ、でも、よく考えてみれば、我々にしてみると、元々の合意は、これは協議を重ねて重ねてお互いに犠牲を出し合った上で達した二国間合意というものを、突然のぼんとしたぶち上げで、そこの均衡点がずれてしまうわけですね。

 これは、言い換えると、例えば、ある国が例えば何らかの問題を起こしたり、ロシアのウクライナ侵攻のときもありましたね。侵攻させたと、その国に他の国々が意図をのませようとしたときに、何が手段があるか。軍事的手段もあるし、もう一つの手段として経済制裁がある。これは効果としては、まさに何らかの利益を得るために、相手国に対して関税引上げという経済制裁を行って自国の意図をのませるというようなのと同じような効果がもたらされているんじゃないか。我々からすると、経済制裁をやられたんだというような解釈も、解釈というか認識も、ある意味どこかに持っていてもいいんじゃないかなと思っております。

 そういう国際的な取決めとか二国間の合意を一方的に変更してしまった米国に対しては、私は、輸出のリスクがあると言わざるを得ないと思っておりますし、今後もアメリカが一方的にこれまでの合意を破るということはないとは言い切れないと思っております。

 これは貿易管理部なんかはよく御存じだと思うんですけれども、昔、ソ連がアフガン侵攻というのをやったんですね。このときに西側諸国は、特にアメリカが主導して、対ソ穀物制裁といってぶち上げたわけですよ。最初に穀物制裁を破ったのはどこか、アメリカなんですね。アメリカの農家の方々から突き上げを受けて。一方で、日本にはココム違反事件で、あれは実際にはスクリューの研磨機は使われていなかった、日本語がよく分からなかったというようなことが落ちなんですけれども、だけれども、当時は大変な圧力をかけられたわけですね。

 時として国というのは約束を遵守しない。特に超大国であって、相手からのしっぺ返しを受けても大したことない、あるいはしっぺ返しがないというようなときには、約束を遵守しない。これは国際政治学の新自由主義制度論とか、ネオリアリズムの大きなテーマ、コンプライアンスプロブレムであると思いますけれども。

 そういう中で、私は、足下のところは、一生懸命交渉してとにかく緩和するということが大事だと思います。ただ、中長期的には、日本も米国依存度を下げていく、やはりこういうことが起こり得るわけですから。ある意味、メーカーさんで、これを意図していたのか意図していないか分からないですけれども、今回のようなアメリカのようなことが起きて、例えば自動車メーカーさんでも、アメリカに対する輸出依存度が高いところとリスク分散をうまくやっているメーカーさんがあると思いますけれども。

 こういったような、私は、リスク分散の意味も含めて、アメリカとけんかするとか報復するなんて言わずに、我々は我々で、日本製品を買ってくれる市場を開拓していく、米国依存度を下げていくべきじゃないかと思いますけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

武藤国務大臣 ありがとうございます。

 元農林中金さんなんですね、さすがその辺はよくお詳しいなと思いまして。

 まず、総輸出額に占める我々のウェートなんですけれども、二四年につきまして、日本の各国・地域への輸出額の割合ですけれども、アメリカが二〇%あります。そして中国がほぼ匹敵する一八%。ASEANが一四%です。そして欧州一三%となっておりまして、現在でも米国以外の多岐にわたる市場が我々の輸出先になっているところです。

 どの国を輸出先にするかというところは、基本的には、民間企業が各国・地域の市場としての魅力ですとか、またビジネス的なリスクなどを考慮した上で、ビジネス上の合理性に基づき判断してきているものと承知をしているところです。

 政府としても、民間企業が予見性を持てる環境を整えていく、これが重要だというふうに考えておりまして、こうした観点からも、米国に関税措置の見直しを求めるとともに、CPTPPを始めとした経済連携の推進などを通じて、ルールに基づく自由で公正な貿易・投資環境の確保に取り組むというところだというふうに思います。

 私も、AZECにも去年伺いましたし、またグローバルサウス諸国の取組ですとか、ポテンシャルの高い新たな市場、これを開拓していくのは大変重要なことだという視点だと思っています。

 是非こういう形で、日本企業の発展のためにも、我々としても全力を尽くしていきたいというふうに思っています。

小山(展)委員 もちろん、短期的なところでは、貿易比率に占める輸出の比率二〇%、これは重要ということですし、みんなが大変な御尽力をされて協議をしていくというのはもちろん大事なことだと思っております。

 ただ、中長期的に考えたときのことでございまして、短期のところでも、私、実は大学院は、修士課程は山本武彦という経済制裁の、貿易管理の研究室におりまして、実は元々は国際政治が専門でございまして、それで少し昔の話で申し上げているようなところはあるんですけれども。

 シンガポールのリー・シェンロン首相が、これはまだこんな問題が出る前ですけれども、フォーリン・アフェアーズに、アメリカを取るか中国を取るかみたいなことを、二者択一を迫るなということをフォーリン・アフェアーズに論文を載っけたんですね。このことでアメリカが譲歩したというようなこともありまして、どちらかというと、日本は、全てがそうだとは申し上げませんけれども、いかにアメリカとの関係を強化することで日本の意図あるいは日本の要求というものを受け入れてもらおうというような外交姿勢が強かったと思うんですけれども、むしろ、このシンガポールのリー・シェンロン首相のような、どちらかを迫るなというような、そういう手法というものもヒントになるのではないかなということもちょっと思います。

 実は、石破総理も入られている石橋湛山議連で、最初に野党系で出発したときには私が設立趣旨を実は書いておりまして、その意味では、某篠原孝衆議院議員が今の内閣は石橋湛山研究会内閣だなと申しておりますけれども、私も、その意味では大変共感するところや、頑張ってほしいと個人的に思うところもございます。

 その石橋湛山、何と言っているかといいますと、アメリカへの精神的な依存、あるいは依存心が生まれるということを大変懸念しておられたんですね。だからアメリカからのMSA援助を受けるべきではないという主張もしております。

 当時は、アメリカとの関係を切ってしまえと、一方では、核武装であったり、あるいは非同盟中立であったり、そういうことではなくて、また一方で、岡崎久彦さんに代表されるような、これは岡崎さんもそこに行くまでにはいろいろな思考の遍歴があったとは伺っておりますが、アメリカとの関係さえしっかりしていればほかの問題は方程式が解けるように解けるんだという時代でもなくなってきているんじゃないかなと。

 そういう、対米協調といえば協調と言うべきでしょうけれども、悪く言うと対米従属というか思考停止というか、そうではなくて、アメリカの覇権、パクス・アメリカーナを容認した上で、日本の自立や自主性を確保していこうとする対米自主と。これは、岸内閣であったり、石橋内閣であったり、鳩山一郎内閣であったりというところに共通していたということは、添谷芳秀という当時は慶応大学の教授の三分類をちょっと引用させていただいているんですけれども、今求められているのは対米自主の姿勢ではないかなと。

 決してアメリカに報復するだとかそういうことではなくて、ただ、国家というのは時としてこういう行動を取るんだということを前提に、我々も自主性や自立性を確保したり、ほかに、二割もの貿易の相手国になっていれば、こういうことが起きたときにある意味経済制裁のような効果は受けるので、もう少し、もちろんこれは民間が貿易先は決めるわけですけれども、政府としても、誘導であったり他国へのリスク分散、このことをもっと進めていくということが必要ではないかなというようなことを思っております。

 そこで、米国以外への市場を求める動きのある企業があったときに、その企業に対して政府はどのような支援策を検討していますか。

大串副大臣 販路開拓を希望する企業への支援につきましては、経済産業省、中小企業庁、ジェトロ、中小機構が一体となって実施いたします新規輸出一万者支援プログラム等を通じまして新たな国・地域への海外展開を支援しておりまして、専門家による伴走支援や国内輸出商社とのマッチング、越境ECの活用などを組み合わせまして、輸出実現を後押ししているところでございます。

 また、今般の一連の米国による関税措置を踏まえましては、商工会議所の関係機関に全国千二百か所の相談窓口を設置し、広く日本企業からの個別相談に対応しているほか、ジェトロにおきまして、本日でありますけれども、特別オンラインセミナーを開催するなど、米国の措置の解説を始め、積極的な情報発信を行っております。

 代替市場を求める企業への支援を含めて、引き続き、このような事業者に寄り添った丁寧な対応を進めてまいりたいと考えております。

小山(展)委員 是非これからも強化していっていただきたい、代替市場ですね。

 先日亡くなった鈴木修さんの語録の中に、これはお別れの会のときにあったんですけれども、市場は無限にある、歩け歩けというものがあって、ユーモアも交えてだったんですが。

 そう思いますのは、ウクライナ戦争が始まったときに、ロシアに対しては、経済制裁、金融制裁もかなり強烈なものが今も科されているわけですけれども、これでロシア経済は早晩崩壊するというふうに予測していた大学の教授なんかもいっぱいいたんですね。ところが、実際には、今もこのとおりでございまして、これは余りいい例ではないかもしれないですが。

 ただ、それだけ、G7以外の国々のGDPとG7のGDPは、もうほぼ拮抗しているか、たしか逆転しているんですね。あるいはBRICS。いろいろ安全保障上のほかの制約もあろうかと思いますけれども、我々G7の中だけを見ていてはいけない、それ以外のところにやはりもっと市場を、今こそ目を向けていくべきではないかと思っております。

 このテーマでは最後の質問で、これまでの国際交渉なんかでは、製造業の利益のために、国内の農業などの他の産業の不利益を容認するというパターンが繰り返されてきたように思います。今回も、トランプ大統領は日本の農産品に七〇〇%の関税がかけられているなどという主張もありますけれども、農業など他の国内産業を犠牲にして輸出産業を守るような意図は今の政府にあるんでしょうか。

大串副大臣 貿易分野の国際交渉に当たりましては、政府一丸となって、守るべきものは守り、我が国にとって最大限のメリットを獲得するため、強力に交渉していく必要があるということは言うまでもございません。我が国にとりましては、自動車産業も農林水産業も非常に重要であり、いずれかを優先するということは考えておりません。

 いずれにせよ、あらゆる選択肢の中で、何が日本の国益に資するのか、何が最も効果的なのかよく見極める必要があると考えております。

小山(展)委員 是非お願いいたします。

 私、実は農林水産委員でもございまして、経産委員をちょっと兼務していることもありまして、是非お願いしたいと思います。

 それでは、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、本改正案についてお尋ねしたいと思います。

 中小企業組合のことでは、先ほども申し上げて、重ねて申し上げますが、大変、武藤大臣から、いい前向きな答弁をいただきまして、恐縮しております。

 中小企業組合の機能強化について、例えば、価格転嫁請負人のようなアドバイザーを派遣するとか、国が指導して価格転嫁とか対等な企業関係の構築を促していくとか、あるいは、特定の受託企業、サプライチェーンの裾野に位置するような小規模企業に対しても組合への加盟を勧めて、不当な価格での取引がないかなど、中小企業の役割強化によって価格転嫁とか下請法の政策の実効を担保していくというようなこと、一つのツールとして役立てていくということもできるんじゃないかとも考えますけれども、政府の認識はいかがでしょうか。

武藤国務大臣 中小企業組合の関係ですけれども、中小企業というか、個々のいわゆる小規模事業者の方々が価格転嫁をなかなか解決できない課題というのは当然あるんだと思います。ですから、こういう形で中小組合というものが設立をされて団結して取り組む、これはすばらしいことじゃないか、私はそう思っています。

 それで、経済産業省としては、全国の中小企業団体中央会ですが、ここを通じて、中小企業組合の設立ですとか運営に係る指導、また専門家派遣ですとか補助金による中小企業組合の課題解決支援などを行ってきているところですけれども、組合が主体となって事業者と交渉を行うことで価格交渉力を強化する、いわゆる団体協約制度、この活用に向けて、制度のいわゆる周知、これはなかなか進んでいかないというところだと思いますので、やってはいますけれども、引き続いて、これらの取組を通じて中小企業組合の活動を後押ししてまいりたいと思っています。

小山(展)委員 よく勤労者の方々は、団結権が認められて労働組合をつくって団体交渉をしてというような、それと同様まではいかなくても、今まさに大臣がおっしゃっていただいたとおり、中小企業さん、小規模事業者さんも、まさに組合をつくって、団体協約権で交渉をしたりというようなことは、ここは多少の緊張関係があって、今とてもいい関係でやっていらっしゃるところからするとちょっと心がささくれるようなところがあるかもしれないですけれども、やはりそこはもう少し緊張関係がある組合が増えてきた方が、価格転嫁とか対等なパートナーシップというところの面からはやはりいいんじゃないかと思いますし、ほかにも、本会議の趣旨説明質問でも申し上げましたが、共同購買とか共同販売の規模のメリットというのも得られる部分もあるのではないかなと思っております。

 今お話のあった団体協約制度の認知度、これについてお尋ねしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘になりました団体協約は、中小企業等協同組合法に基づきまして、組合が取引先の事業者と締結するものであります。独占禁止法の適用除外となることで、本来はカルテルとして認められない最低製品価格の設定などが可能となります。このため、中小企業の価格交渉力の向上につながることが期待されます。

 お尋ねの認知度でございます。

 昨年七月に、全国約三万の事業協同組合等のうち三千四十四組合を対象に行った調査におきましては、団体協約を知らないと回答した組合は、回答のあった千七百六十五件のうち四百九十五件となっております。回答があった組合のうち七割程度は団体協約について認知をしておるということでございますけれども、本制度の活用に向けて更なる周知が重要でありまして、経済産業省では、団体協約に関し、全国中小企業団体中央会と連携し、パンフレットを活用した各地域の組合への普及、商工関連団体を通じた普及、団体協約制度の活用に向けたQアンドAの作成等に取り組んできておりますけれども、引き続きしっかり周知を行ってまいりたいと存じます。

小山(展)委員 実は、意外にこの認知度、高かったなと。認知しているのが七割ということなので。ただ、今御答弁を伺っていてちょっと思ったんですけれども、多分組合さんは知っているんですね、団体協約制度というのがあるのは。ところが、組合員たる中小企業さんが、ひょっとしたら、中小企業組合はそんなことできるのかというのを御存じない可能性もあるかなとも思いまして。

 いずれにしましても、今年は国際協同組合年でもありまして、協同組合のこういった認知度を上げたり、法律や制度を整えていくときでもありますので、時宜にかなっているとも思いますので、この団体協約制度や中小企業組合の活用ということに是非経産省さんも取り組んでいただければと思いますし、それが、結果として中小受託企業さんとの価格転嫁、あるいは対等な企業パートナーシップの向上につながればと思っております。

 もう一つ、ちょっと趣旨説明で質問させていただいたことに関連しまして、二〇一三年から二〇二二年までのデフレと言われた時代、時期でも、名目の為替レートも円安に振れていた、いわゆるアベノミクスと言われた時代、時期ですけれども、それ以上に、やはり、海外の物価が上がって日本の物価が上がっていなかったわけですが、日本から輸出したもの、これも一概には言えないんですけれども、海外の物価上昇に合わせて価格を引き上げていたんじゃないかと思うんですね。

 何が申し上げたいかというと、このときに、実は、特に輸出企業さん、収益を上げているんですね。増収になっているんですね。ということは、価格転嫁できたんじゃないか、賃上げできたんじゃないか、何でこのときにやれなかったのかと。当時の内閣府も、輸出企業を中心に業績は改善ということで、分析を内閣府が出しております。ただ、この時期どうやっていたかというと、コストダウンを要求しています。まだまだ乾いたタオルを絞ってコストダウンせよというような、もちろん工夫は否定しませんけれども、そういった飽くなき工夫は否定しませんが、二〇二二年以前の、この時期の自動車産業、輸送機器メーカーを始めとする輸出企業の収益の状況と価格転嫁の動向について、政府の認識をお尋ねしたいと思います。

山本政府参考人 お答えをいたします。

 輸出関連産業も含めて、経済全体で取引適正化を進めるという認識が、今委員御指摘のあった時期にも政府としては認識されております。価格転嫁も含めて、重点課題と位置づけ、転嫁対策に取り組んできているところでございますが、二〇一六年に「未来志向型の取引慣行に向けて」という政策パッケージを取りまとめ、進めてきておるところでございます。

 それ以降、下請Gメンによる取引実態の把握、下請Gメンの増員も含めた対応、また、価格交渉促進月間に基づく企業リストの公表、事業所管大臣名での指導助言の実施、また、取引適正化に向けた業界ごとの自主行動計画の策定や見直しの要請などを行ってきておりますけれども、委員御指摘のとおり、価格転嫁率は、輸出産業も含めて、全体で四九・七%まで上昇してきたとはいえ、まだ道半ばと認識しております。

小山(展)委員 もう一つ、この下請法、今回法律の名前が変わりますけれども、これが、実は、結構、さっきの中小企業組合の話じゃないですが、受託企業さんでも委託企業さんでも、十分に周知、理解されていないんじゃないか。特に、一次のところとティア1の会社さんではそうでもなくても、二次、三次、四次といくと、これまでの慣習が踏襲されている取引も、ケースも少なくない。

 今の四九・七%の価格転嫁率の話もそうですが、今回の改正内容と、そもそもの本法則そのものも含めて、政府はこの周知徹底について、その方法をどのように考えていますでしょうか。

古谷政府特別補佐人 今回の改正法案には、新たな禁止類型の追加ですとか、運送委託取引を適用対象に追加する、あるいは手形払いの禁止など、取引に大きな影響を与える改正項目が多くございます。そのため、ある意味で幅広く、丁寧に周知広報活動をやっていく必要があるというふうに思っております。

 これまでも、下請法の関係では、パンフレット等分かりやすい説明資料を作って配布をするとか、事業所管省庁、中小企業庁とも連携をして事業者団体に周知をするとか、あるいは、いろいろな電話等での相談体制を整備するとか、努力はしてきておりますけれども。

 今回、改正法案に、事業所管省庁にも指導助言権限を新たに付与するといったような連携の強化という規定も盛り込んでおりますので、改正法案の周知の活動をする段階から、これまで以上に事業所管省庁とも連携をして、周知広報活動を強化していきたいと思っておりますし、これから、成立しました後になりますけれども、政府広報の活用などといったことも政府内で検討しながら、積極的な周知広報活動ということに取り組んでまいりたいというふうに思っております。

小山(展)委員 時間が来ましたので、終わります。

宮崎委員長 次に、村上智信君。

村上(智)委員 日本維新の会の村上智信でございます。

 本日も質問の時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

 さて、法律の審議をさせていただいておりますが、法改正の実行に当たって、これは大変なところがあるんじゃないかなというふうに思うようなことがあります。今回の法案でいいますと、協議というふうに書いておりますけれども、協議というのは何だろうかということになるんですね。

 協議が必要というのは、代金の決定、大企業と中小企業が価格を決める、その協議をするということになっているんですけれども、その協議というのは何なんだろうか。それを事業者の方に分かっていただかなければならないんですけれども、それがなかなかイメージをしにくいんじゃないか。具体的に何が必要なのか、こういうことをしっかりこの場所でも確認させていただいて、そして、最終的には周知を図っていただかなければならないというふうに思っております。

 そこで質問をいたしますけれども、協議というと、そもそも昨今では、直接会ってやる協議以外にも電子メールでもやり取りをいたします。質問しますが、協議の要件を教えてください。メールのやり取りでも協議になるのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、発注者が受注者に対しまして、協議に応じることなく一方的に価格を押しつけるという行為を禁止をしておるところでございます。

 この協議に応じない一方的な代金決定というものは、実質的な協議を行わずに価格を決定することをいいまして、協議の求めを拒む、無視する、又は繰り返し先延ばしにしたりして協議に応じずに価格を決定をするということや、形式的な協議のみで必要な説明などを行わずに価格を決定する、そういうものが考えられるわけでございます。

 このような考え方に基づきまして、御質問のあった電子メールでのやり取りにつきましても、発注者と受注者の間で実質的な協議を行っていると言えるものでありますと、こちらは協議の方法としては認められるというふうに考えておるところでございます。

 いずれにしても、協議に応じない一方的な代金決定というものにつきましてはどういうものかということにつきまして、仮に改正法案が成立いたしましたら、改正後の運用基準などによりまして、想定される問題事例などを示すということを検討しておりまして、これらを通じまして、違反行為の未然防止のための十分な周知を図ってまいりたいと考えてございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 協議をしっかりやっていかなければならないんでしょうけれども、やったというふうに言っても、形式的にやっても、多分、実際には反映されないわけですね、反映されない可能性があるわけです。中小企業の方が思ったとおりには価格が上がらないかもしれない。

 そういうふうなときには、中小企業の方、中小の事業者の方は、いやいや、おかしい、これは自分たちの言い分が全く反映されなかったから協議じゃなかったというふうなことを言って、もしかしたら公正取引委員会さんに申告をしようとしたりするかもしれませんし、あるいは逆に、大企業の方はそういうことで非常に恐れてしまって、なかなか協議も恐る恐るやってしまうような、そんなことになって世の中がなかなか円滑にならない、そんなことも想像されるわけです。

 そこで、特に協議が調わなかった場合、これが必ずしも協議はしなかったことにはならない、こういうことを確認させていただきたいと思います。大企業にとっては非常に大切な論点だというふうに思います。

 中小受託事業者の要求が通らなかった場合は、協議に応じなかったことになるのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法案における協議に応じない一方的な代金決定の禁止規定、これはあくまで、事業者間の取引で当然に行われるべき取引価格に関する当事者同士の話合いなどを求めるものでございます。

 このため、受注者が希望する条件を提示した場合に、発注者が受注者の希望どおりの価格を受け入れない、それのみをもって直ちに協議に応じなかったこととなるものではございませんで、違反となるかどうかにつきましては、実質的な協議を行っているか否かを個別に判断していくことが重要でございます。

 一方で、例えば、受注者がコストの上昇を理由に取引価格への反映を求めたにもかかわらず、発注者において、これに対して明確な回答もすることなく従来の取引価格を据え置くような場合には、この新しい規定に違反するということでございまして、いずれにいたしましても、実質的な協議をやっているかどうかということを個別に判断をしていくということになろうかと思います。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 協議の要件が大分見えてきた感じがいたしました。しっかり価格転嫁をしてほしいという話を受けて、それに対してしっかり答える、理由を答える、多分そこがポイントかなというふうに私は理解をいたしました。

 この協議、どういう中身になるのか、そういうふうに理由をしっかり説明する、その理由というのは、もちろん真実でないといけないし、理論的じゃないといけないと思います。そういう話をしっかりしなければならない、こういうことをこれから法の施行に当たって様々な形で周知をすると思いますけれども、その中で是非丁寧に説明をしていただけたらというふうに思います。

 さて、次の質問に移ります。

 次は、下請振興法に話題を変えます。

 おとといの経産委でも話をさせていただきましたけれども、下請振興法を通しまして、是非賃上げを全国に広げていただきたいなというふうに思います。下請振興法でもこの点は是非、賃上げを狙っているんじゃないかと思うぐらいの話です。やはりサプライチェーンというのがありますので、大企業がもうけても、大企業だけが賃上げをしても、全国的には広がりません。それをサプライチェーンを通じて下の階層まで関連業者にその利益が供与されるように、価格転嫁が行われるように、是非そのように法の運用をやっていただきたいなというふうに思っております。

 そこで、質問いたします。

 サプライチェーンの取引段階が深くなるにつれて価格転嫁割合が低いのが現状ですけれども、どのような取組によって価格転嫁率を高めるのでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、多段階から成るサプライチェーンの取引構造におきましては、深い取引段階ほど転嫁割合が低くなる傾向がございまして、この問題への対策は大変重要であります。このため、下請振興法の改正におきましても、振興事業計画の追加、拡充をさせていただくところであります。

 ただ、粘り強い対応が必要と考えておりまして、年二回の価格交渉促進月間に基づく発注企業ごとの交渉、転嫁の状況の公表や、事業所管大臣名での指導助言を引き続き行い、取引慣行の改善に努めてまいります。

 また、サプライチェーンの深い層にある小規模事業者も含めて取引実態を把握し、取引適正化を徹底するべく、下請Gメンに加えて、四十七都道府県の下請かけこみ寺の調査員も含めて、情報収集体制の強化も行ってまいります。さらには、パートナーシップ構築宣言の普及も含めて取り組んでまいる所存であります。

 あわせまして、現在、関係業界に対しましては、ハイレベルで取引適正化を要請しております。先日、武藤経済産業大臣からも、自動車業界、産業機械業界に対して業界挙げての取引の適正化を要請しているところでございまして、こうした取組を含め、サプライチェーン全体での価格転嫁を粘り強く推進してまいる所存であります。

村上(智)委員 ありがとうございました。様々な取組をされているということがよく分かりました。

 おとといの質問でも話をさせていただきましたけれども、私が特に注目しておりますのは、この下請Gメン、今後どういう略称になるのか分からないという話でしたけれども、三百三十人もいるということで、一万件以上のヒアリングをされているという話をお聞きしておりますけれども、この一万件もヒアリングをする中で、このような価格転嫁に関する啓蒙活動に是非取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 さて、また話題を変えたいと思います。現在の物価高に関してです。

 物価高の中でも特に多くの声を寄せられるのは、米の値上がりですね。この米の値上がり、どうして値段が上がっているのか。これは量の供給が減っているからということは、大体皆さん、分析としては一致しているようなんですけれども、ではどうして量が減ったのかについては諸説あるなというふうに私は感じております。そもそも、おととしの収穫が少なかった、非常に不作だったということを農水省は説明をしておりまして、去年は少し回復したけれども、それでも足らなかったんじゃないか、そのような分析をしておりました。

 そもそも、流通量が二十万トンほど少なかったので、その分は政府の備蓄米から出しましたけれども、それでもまだ米の値段は、値上がりが収まっていない、少しずつ上がっているような、そんなふうな感じを受けます。

 このような米の値上がりに関連しまして、問題点が二つあります。その問題というのは、独占禁止法に関係する問題なんですけれども、二つあるんですけれども、一つずつお聞きします。

 一つ目は、米の最終的な販売価格は上がっているんですけれども、農家が卸売業者に売る価格、これがそれほど上がっていないというふうに聞いておりまして、私も選挙区内の農家の方から実際にその話を聞きました。

 このことに関連しましては、卸売業者というとやはり規模が大きくて、農家の方が小さい、何十、何百という農家から米を集めて、卸の業者の方がまたスーパーなどに売っているようなイメージで思っております。独禁法で言うところの優先的な地位というのがこの卸の方に適用される感じがいたします。それをいいことに卸が農家の米を買いたたいていたら、それは問題だと思うんですね。

 そこで、質問いたします。

 米農家を卸売業者が買いたたいている状況は、独占禁止法違反にならないのでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のございました案件につきましては、個別事案ということでございまして、お答えは差し控えさせていただきますので、一般論として説明させていただきたいと思います。

 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、その取引の相手方に対しまして一方的に著しく低い対価での取引を要請する場合、その取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念いたしましてその要請を受け入れざるを得ない場合には、優越的地位の濫用といたしまして、独占禁止法上の問題となるということでございます。

 この判断に当たりましては、対価の決定に当たりまして取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか、他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか、取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか、通常の購入価格との乖離状況、そして対象となる商品の需給関係、このような要素を総合的に勘案して判断をするということになるものでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 一般論をお聞きしましたけれども、実際に米農家が卸に売っている価格は上がっておりませんし、この乖離状況、卸の方が著しくもうけているというふうに見受けられますけれども、そのような乖離があることを考えますと、これは調査する意義はあるのかなというふうには思います。調査した結果がどうなるかは、もちろん判断はあるかもしれませんけれども、是非そういうふうな調査を考えていただければというふうに思います。

 さて、二つ目の問題ですけれども、これは米の値上がりに関係することです。

 米の値段が上がった理由というのは、米の流通量が抑えられたということですけれども、この流通量を抑えることと独占禁止法の関係について質問をさせていただきます。

 米の卸売業者が米の流通を滞らせて値段が上がるように仕向けている場合には、独占禁止法で取り締まれないのでしょうか。

大胡政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げさせていただきますけれども、商品の卸売業者がどのような条件で小売業者と商品を取引するかは、基本的には事業者の経済活動の自由でございまして、結果として商品の価格が値上がりしたとしても、その行為自体を独禁法上問題にすることは難しいと考えております。

 ただ、他方、卸売業者が、例えばでございますけれども、共同して小売業者に供給する商品の価格や流通量を取り決めたりしていることは、独占禁止法上の不当な取引制限として問題となり得るものでございまして、公正取引委員会としましては、そのような事案に接した場合には、独禁法に基づき適切に対処してまいりたいと考えております。

村上(智)委員 ありがとうございました。独占禁止法に抵触する可能性もある、そういうふうな場合があり得るという話をいただいたと思います。

 一方で、確かにそうですね、普通の商売行為として、流通をしながらもうけるのが卸でしょうから、全てのものを正直に全部出さなくても確かにいいとは思います。値上がりを待って在庫を増やすというのは一般的に行われているというのは、私も聞いております。

 実際に水産卸の会社の方から聞いたら、大体、水産物は大量に捕れると値段が下がってしまうので、そういうときに大量に買って冷凍しておいて、そして値段が上がったらまた売る、そのようなことをするからもうける、相場師みたいなのが水産の卸なんだ、そういうふうな説明をされた方もいました。

 しかし、独占禁止法に抵触する場合もあるわけですから、そのようなことが実際にないのか、特にこの米の問題、多くの方が困っておりますし、注目されていますので、是非このことを調査するように考えていただけたらなというふうに思います。

 そして、その調査に当たっては、内々に調査するというのが一番利くのかもしれませんけれども、しかし、この卸の方たちに対する警告の意味を込めて、是非事前に、この調査を始めるというのを、記者会見でも開いて、そして、全国の卸の方、変なことをしている人がそこで気持ちを変えてちゃんと流通させるように仕向けるためにも、是非、会見を開いてでも、ちょっと全国の卸の方に圧力をかけていただけたらな、そのように思います。

 さて、また話題を変えさせていただきますが、また独占禁止法に関係することになります。

 最近ニュースに出たことですけれども、東京のホテルで十五社ほどが警告を受けたというふうなニュースを拝見しました。何で受けたかといいますと、内部情報を共有したという話です。どういうふうな内部情報かというと、客室の稼働率や客室単価などの情報、これをしばらく前から、その十五社が集まって情報を共有していた。こういうふうな共有をやることによって価格カルテル的なことが起こったんじゃないのか、こういうようなことを心配しまして、公正取引委員会さんから警告をしたというふうなことがニュースになっておりました。

 このようなことを見ると、まだまだ世の中、こうやって、談合といいますか、価格カルテル的なことというのはあるんだなというふうに思います。そして、東京でもこのようなことがやられるぐらいですから、地方では更にいろいろなことが起こっているんじゃないのかなというふうに私は心配をします。

 私の勝手なイメージですけれども、世の中、悪い慣習があっても、大体中央の方からこれは改めようというふうになって、そしてコンプライアンス意識から真面目にやり始めて、それがだんだん地方に広がっていくというふうな、そんな印象を勝手に持っておりまして、そう思うと、地方というのはまだまだいろいろなことがあるんじゃないかというふうに思ってしまいます。

 そういうふうなことで、関連してその質問をしたいんですけれども、私の選挙区ではないんですけれども、ほかの地方の話ですけれども、具体的な話を聞きました。地方にもいろいろ、何とか工事組合とか何とか業協同組合とかありますけれども、そういうふうな場所でそういう情報交換をしているんじゃないかという話ですね。

 そういうふうな工事組合でも何とか業協同組合でも、業界の方が集まって政治の話をして、そしてみんなで陳情活動をしよう、そういうふうな分にはいいんですけれども、やはり集まってしまうと、先ほどの東京のホテルのように価格の話になってしまうんじゃないか、そういうところがやはり価格カルテルの温床になるんじゃないかというふうなことが疑われます。

 とある地方では、水道工事に関連しまして、疑いでしかないので地名は言いませんけれども、水道工事に関連して、公共工事だけじゃなくて民間の工事まで、そういうふうな価格カルテル的なこと、需給調整的なことをしているというふうな話を伺っております。

 とあるお宅の方が水道工事をしてほしいと言ったら、一社目はしっかり高めの見積りを持ってくるけれども、高いなと思って別の会社に行くと、その会社は見積りを出してくれない、そんなことが起こるというふうに聞いております。

 このような具体的な話、また私から公正取引委員会さんには情報をちょっと提供をしたいんですけれども、そのような話を是非調査していただきたいんですけれども、関連して質問をいたします。

 地方の建設業者や水道工事業者などが需給調整や価格カルテルなどを結んでいたことに対処した実績を教えてください。

大胡政府参考人 お答え申し上げます。

 公正取引委員会におきましては、これまでも、地方における入札談合や受注調整、カルテルなどの事件について厳正に対処してきているところでございます。

 地方におけるこれらの事件は、必ずしも建設事業者等に限らないものでございますけれども、また、多岐の分野の事業者によるものを含む数字となりますけれども、この十五年間で約四十件の事件につき排除措置命令等を行っているところでございます。

 最近の建設業者等の事件について例を申し上げますと、令和五年九月に、高知県が発注する地質調査業務の入札参加業者が入札談合事件を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行ったという事案もございます。

 公正取引委員会におきましては、引き続き、地方における入札談合事件等にも厳正に対処してまいりたいと考えております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 四十件ほどということですけれども、こうやって東京で一件見つけると、経済規模から考えても、ほかの地方で見つかるのはまだまだ多くていいかなという感じもします。なかなか情報が集まってこないのが、一つ、数が増えない理由なのかもしれませんけれども、是非また力を入れて、このような調査、続けていただきたいなというふうに思います。

 それでは、最後の質問に移らせていただきます。

 最後は大臣にお聞きしたい質問になってきますけれども、独占禁止法も今回改正する下請法も、一般の方が違反事例を申告する方法があります。公正取引委員会のホームページからそのような情報を提供できるようになっているんですけれども、知名度が低いために、やはりなかなかそういう申告案件が集まらないということだというふうに考えます。

 そこで、質問いたします。

 下請法も独占禁止法も、違反が疑われる事案を申告する制度について更に周知を図るべきと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

伊東国務大臣 村上委員の質問にお答えしてまいります。

 公正取引委員会におきましては、独占禁止法や下請法に違反する疑いがある事実についての申告を、電話あるいはウェブサイト上の情報提供フォームから受付をいたしております。

 独占禁止法に関しましては、令和五年度には三千件を超える申告が寄せられたところであり、こうした申告制度を事業者団体への講師派遣等を通じた積極的な広報により更に周知を図ってまいりたい、こう思うところでございます。

村上(智)委員 誠にありがとうございました。周知活動を是非よろしくお願いいたします。

 以上をもちまして、私からの質問を終わります。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、斉木武志君。

斉木委員 斉木武志でございます。

 私は、今、日本の下請も親メーカーも一番気にしているトランプ関税の状況と戦略に関して、まず武藤大臣にお聞きをしたいというふうに思います。

 昨日、赤澤担当大臣と、トランプ大統領がいきなりお出ましになって、会談がスタートいたしました。二十二日には加藤財務大臣がワシントンで財務相会合を開く、相手方は多分ベッセント・アメリカ財務長官だと思いますけれども、ことで調整に入ったというふうに報道もされております。

 いよいよ本格化するこの対米交渉、どのように臨むおつもりか、まずお聞かせください。

武藤国務大臣 私はまだ赤澤大臣とはお会いしていないんですけれども、この対米交渉にどう臨むかという御質問であります。

 今般の協議の結果、双方が率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるように目指すことということがまず一つ、向こうと、握るという表現はいけないと思いますけれども、そういう形になった。そして二つ目、次回の協議を今月中に実施すべく日程調整すること、そして三つ目が閣僚レベルに加えて事務レベルでの協議も継続していくこと、この三つが一致したというふうに伺っています。

 何が日本の国益に資するのか、これはもう今までも申し上げていますけれども、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのか、今回の協議結果を踏まえて政府全体で検討し、適切に取り組んでまいろうと思っております。

斉木委員 私は、トランプ大統領がサプライズでお出ましになったこと自体が、トランプ大統領の焦りの表れではないかなというふうに感じております。

 昨日、トランプ大統領がSNSにFRB議長の退任要求を書き込みました。パウエルさんですね。パウエル議長は一刻も早く解雇すべきだというふうに投稿されております。ジェローム・パウエルはいつも遅過ぎるし、間違っている、パウエルはECBのようにずっと前に利下げすべきだった、今こそ下げるべきだと。

 要するに、長期金利を下げないFRB議長は交代させるべし、長期金利、利下げを今すぐ行えということをSNSで発信されている。これはまさに、私が前回申し上げました、国債とアメリカの長期金利市場、ここの不安定化を非常に気にされているなというふうに思います。

 やはりマーケットにとってみると、まず、株式市場は利下げをすれば上がるという法則がございます。やはり金融を引き締める長期金利の上昇は株式市場にとってはネガティブですので、株価は下がる。株価が今不安定化しているから、トランプさんとしては何としてもここで底支えをしたい、だから長期金利を下げろと言うけれども、なかなかFRB議長が、パウエルさんが言うことを聞かないので、首を切れというふうにいきなりSNSに投稿されている。

 だから、それだけ今の株価の下落、ドルの下落、そして米国債の値下がり、このトリプル安に関して非常にトランプさんは焦りを深めているなというふうに所感を持ちますが、トランプさんの心中、どのように思われますか。

武藤国務大臣 斉木委員の御指摘をそのまま受け取るというわけには私はちょっといかないと思っています。心中というのは正直言ってどういうものを、あの方の本意というところもあるだろうし、いわゆる様々な形で政策について、いろいろな形でテクニックをやはりお持ちになっていらっしゃるようですので、何が、それが本当なのかというのは正直言って、我々からすると、いずれにしても、赤澤大臣のまた御報告も承りながら、トランプさんとじかに直接お会いをしてきているので、その話も伺いながら、また進めていきたいというふうに思っています。

斉木委員 私は、大臣と赤澤大臣を援護射撃しているつもりなんですよ。

 米国債のことを前回の質疑でも申し上げました。後ろに座っている経産省の職員の方々も、やはり国会でこういった本当のことを議論していただけるのは非常にありがたいと。世界一米国債を保有してアメリカの財政赤字を支えているのは日本なんだ、二位が中国なんだと。中国や日本が入札に参加しなかったらどうなるのか。それこそがまさに米国債の今の値下がりを招いておりますし、中国が入札に参加しないといううわさだけであれだけ下がった、長期金利が急上昇した。

 まさに、こういった強みですね。心中は分からない、そのとおりです。ただ、交渉が始まったわけじゃないですか。相手のやはり心中を推し量って、何が我々の強みなのか、相手が今焦っているのか、それとも焦っていないのか。これは交渉の肝だと私は思うんですが、交渉術としてどのようにお考えでしょうか。

武藤国務大臣 相手が焦っているかどうか、焦っていると思ってこっちが動くことが、それが正になるのか。これは正直言って、今の状況だけではちょっと判断はしづらいんだと思います。

 いずれにしましても、私どもとしても、何が国益、いろいろな、ありとあらゆる選択肢があります。委員がおっしゃられるように、国債のカードも、それは確かにあるんだと思います。ただ、日本が何かそういう動きをすることによって世界的な動きがまた出てくると思いますので、そういうことも踏まえて、これがまたブーメランで日本に返ってくると、それはろくなことにならないこともあり得ますから、そういうものも踏まえながらやはり検討していかなきゃいけない話だと思っています。

斉木委員 是非、そういった戦略的な視野というんですか、を持っていただきたいなと。前回、米国債の質疑をした後も、ほかの委員の方々への答弁でも米国債のことに言及され始めまして、一定程度、カードですから、交渉というのは。いかに日本がカードを、いいものを複数持っていくか、これが交渉に臨む上での準備として絶対必要なものだと思います。

 言わなくてもいいです、相手に米国債のことは。ただ、やはり一番相手にとっては嫌なこと、背筋が寒くなるようなことというものも、こっち側としては隠し持っていますよということが、こういった質疑を国会でやることによって、それとなく、雰囲気としてでもホワイトハウスに伝わっていただければ、それはやはり交渉に臨む上でも非常に有利じゃないですか。

 なかなか表立って大臣が言うわけにはいきませんので、そこは、こういった国会の平場の議論で、是非、カードをどんどん御提供させていただきますので、二十二日、まさに為替と米国債は所管外だと思いますので、加藤財務大臣が恐らく所管大臣ですから、そういった会合にも是非臨んでいただきたいなと思います。

 もう一つ、前回の質疑で、九日の質疑でしたかね、商売する相手はアメリカでなくてもいろいろありますよということを、鯖江とドイツの例を取り上げさせていただきました。医療器具の話です。

 日本の医療器具というのは、私、ジョンソン・エンド・ジョンソンを例に出しましたけれども、ほかにもメドトロニックであるとか様々な、アボットであるとか、米国系の企業が圧倒的なシェアを日本では取っているんですね。実は、日本の貿易赤字が医療器具の分野なんですよ。

 大臣、医療器具の日本の貿易赤字額というのは年どれぐらいあるか、把握されていますでしょうか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 貿易収支でございますが、世界全体で、日本の医療機器産業の貿易収支は約九千百六十三億円の赤字でありますと承知しております。

斉木委員 南さんにお答えいただきましたが、厚生労働省の資料ですともっと大きくて、輸入超過は、一・八兆円の輸入超過になっているというふうに厚生労働省でははじいております。恐らく、医療機器をどこまで取るかということだと思うんですけれども、大臣、それほどかように、一・八兆円規模と厚生労働省ははじいておりますけれども、日本は赤字なんですよ、この部分。外資に握られているんです。

 だから、そこの部分で、ほとんど実はその赤字は、アボットもそうですし、ジョンソン・エンド・ジョンソンもそうですし、メドトロニックもそうですし、これは米系の企業ですね。やはり、こういったところ、トランプさんが自動車に関税をかけますというふうに今言っていますけれども、だったら、医療機器の部分で日本が関税をかけることもできますし、そうでなくても、国内の、鯖江の例も出しましたけれども、ほかに、テルモさんとか有力なプレーヤーもいますので。

 そういった、心臓カテーテルの、カテーテルの外側の部分はテルモさんが強いけれども、中側の部分はほとんどがやはりジョンソン・エンド・ジョンソンであるとか、ペースメーカーはメドトロニックさんであるとか、ほとんど米系に、寡占市場になってしまっている。

 やはりこういったところを国内の優れた企業にどんどん参入してきてもらって、日本の医療機器製造業を日本の主力産業にしていく。一・八兆円も赤字になっているわけですから、私は、ここの部分を国内で埋めていく好機でもあると。調達先を、国産をどんどん国内の大学病院とかにも使っていただいて、医大生の方にも手に取っていただいて、そして今もう現業で、開業していらっしゃる方にも手に取っていただく。

 やはり医療の部分というのは、命を扱う業種ですから、何よりもエビデンスが求められるんです。何で米系が強いかというと、そこに巨額の投資をしているんですね。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンとかアボットとかメドトロニックなどは、やはり新しい知見、例えば心臓冠動脈のことなんかがありますけれども、昔は冷温だったり温感だったりして、心臓、いわゆる心筋梗塞と狭心症、これに対して今米系が新しく出してきているのが、電磁波でそこの患部を焼いて取り除くであるとか。やはり、温度を高めたり冷やしたりすると周りに負担がかかるじゃないですか、心臓の周りに。だから、狙い撃ちにして、電磁波でいわゆる焼き切るようなものをセットで提案して、周りの器具も全部ごそっと納入してくださいみたいなビジネスモデルで、ほとんど日本の市場というのはどんどん占有されていっているんです。

 こういったエビデンスを含めた開発力というのはやはりすごいものがありますので、日本の企業、テルモを始めとした、また鯖江の眼鏡企業を始めとした、やはり異業種参入を促していくということが私は必要だと思うんですが、これに対する政府の取組状況はいかがですか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりですが、先ほどありましたように、日本の医療機器産業は輸入超過の状況であります。私たちもこうした状況を打開したいと思っておりまして、日本企業が成長し、またさらには、大きな成長が期待される海外市場へも展開するということが大事だと思っております。

 そうしたこともありまして、経済産業省では、医療現場から生まれた技術等を革新的な医療機器へ育てるための研究開発を支援しております。また、海外展開のためのネットワーク構築の支援も強化しているところであります。

 こうしたことを通じまして、先生の御指摘のように、日本医療機器産業の拡大、さらには国際競争力の強化、こうしたところに努めてまいりたいと思っております。

斉木委員 ただ、状況はおっしゃっていることと真逆ですね。

 日本の医療機器市場というのは、今、三兆円から四兆円市場になろうとしている。でも、赤字が一・八兆ですよ。どんどんどんどん年々赤字が増えていっているんです。なので、どんどんどんどん国産が縮小して海外産に占有されていっているのが、残念ながら我が国の市場です。

 私がこのことを指摘したのは、実は五年前の本委員会でも、鯖江の、医療器具を作っているから、是非大学病院とかでエビデンスを積み上げて参入できるようにしたらいかがですかということを申し上げました。当時の経産大臣も非常に前向きな御答弁をされていたんですが、いわゆる羊頭狗肉といいますか、進んでいないんですね。

 文部科学省とそして厚生労働省にもレクに来てもらいました、やはり医療課程といいますと文部科学省ですので。文部科学省がいわゆる医療設備に対して補助金を出し始めたのが、令和五年度補正が初めてですね。厚生労働省がいわゆる大学病院など十五拠点を特出しして、そこで伴走支援していこうみたいなことを始めたのが、令和六年度補正です。まだ直近なんですよ。

 これは非常に、五年前にもう既に経産大臣は前向きな答弁をされていたのに、こういった文科省や厚生労働省と組んで、やはり、使ってもらわなかったら意味がないんですよ。幾らいいものを作っても使われないから、国内の中小企業やテルモさんなど大企業が今非常に不満を持っている。

 だから、医療というのはエビデンス、実績が物を言う世界ですから、ここを取っていくというのは非常に大変です。だからこそ、資本力で日本の中小企業もテルモさんも劣っているわけですから、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどに比べれば、そこでどうやって市場を勝ち取っていくかといったら、政府が主導してエビデンスをつくってあげるしかないじゃないですか。

 何で、この令和六年なんて直近で、補正でちょろちょろと始めただけで、その間にどんどんどんどん米系に取られていっている。これは私は憂慮すべき事態だと思うんですが、産業の応援団として、どうですか、大臣。

武藤国務大臣 委員が医療機器についての御関心が高いのは、大変私自身はありがたいと思います。

 鯖江は、私の県の隣の県なんですけれども、たしか私どもも刃物というのは案外やっている業界があるんですね。メスというのは何かたしかあったような気がしたんですけれども、福井県の方がそういう意味で先を行っているということであれば、正直言ってもっと出ているかと思っておりました。

 刃物というか、うちの刃物は、例のコロナがあったときに、包丁ということで相当世界へ出ていきました。ですから、そういう意味でいうと、もっと、五年前、そういう形で委員から御指摘があって、そのときの大臣はここにいらっしゃるのか分かりませんけれども、そういう意味で、前向きというのは当然のことかと思います。

 ただ、ここの業界というのは、正直、私も余り詳しくはありませんけれども、いわゆる治験制度とか様々な形で医療機器というのは縛られ、そして、その治験制度の下にお医者さんが使ってくれるかどうか、今委員がおっしゃっているように、周知されるとか知っていただくということも大事だと思います。その中で、治験制度という形の中で、命を預かるというところの厚労省のたてつけからいうと非常に難しいところもあるのかもしれませんけれども、そういう意味で、日本の産業として、是非いい機会としてどんどん捉えていただいて先に進めていただくのは、委員のそういう御指摘もある中で、やはり議員の先生方の応援もある中で我々も動ける立場もあると思いますので、是非今後とも前向きに私も扱っていきたいと思います。

 ある意味で、アメリカがどうという話もありますけれども、やはり日本の国内の命を守る、国民の命を守るという意味で、すばらしいものが日本である、それを育てていくというたてつけは大変大事なことかというふうに思います。

斉木委員 大臣、その医療器具にもレベルがあるわけですよ。おっしゃった刃物というのはメスですね。メスの分野は、実は日本系が多いんです。国内市場二十四億で、国産が二十一億、海外産が三億なんですよ。

 ですので、おっしゃっているような、貝印の刃物がありますね、貝さんであるとか、フェザー剃刀さんであるとか、こういったところがトップシェアを持っていて、要するに、レベルの低いメスとかの刃物の分野は、それは我々も日本刀の文化がありますので強いんですが、一歩、カテーテルであるとかペースメーカーであるとか、より高度なものになっていくと、ほとんど米系が持っていくというのが今の医療器具の市場なんです。

 是非、そこのところは把握していただいて、強い、そこを押さえているのはやはりエビデンスなんですよ。新しいモデルごとセットで売って市場ごと取っていくというやり方をアメリカの企業はしていますので、ここのところ、日本の国内の有望なベンチャーはあると聞いていますので、そこに対する目くばせというんですかね。やはり、おっしゃっているような治験というのは、だって、米系の方が圧倒的に資本力を持っているから、治験例も多いじゃないですか。日本政府がそここそ工夫してあげて、使っていただく機会をつくっていただくこと。

 まあ、遅きに失しているけれども、厚労省も始めました、そういった拠点化事業、いわゆる伴走支援みたいなものをね。共に大学病院等で使っていただいて開発していきましょう、症例を、エビデンスを積み上げましょうみたいな、それが重要なんじゃないですか。そこに対する御認識はいかがですか。

武藤国務大臣 その意味で、厚労省とも、昔よく言われましたけれども、厚労省のお尻をひっぱたくのは経産省だとよく言われていましたけれども、しっかりそういう形で後押しをしていきたいと思っています。

斉木委員 最後に、ちょっと政策論議をしたいと思います。景気にも敏感に関わってくる減税に関してです。

 先般、我が党の共同代表を務めております前原共同代表が、先週の金曜日、ちょうど一週間前に官邸に伺いました。林官房長官に対して、食品消費税をゼロ%にするべきだという対策を、トランプ関税に対する、そして物価高騰対策として、申入れ、御提案をさせていただきました。

 私は、実は、昨年の衆議院選挙のときに自分の公約として、党は関係ありませんで、自分の公約として、食品消費税ゼロ%を恒久減税としてやるべきじゃないかということをずっと申し上げて、党内でも、両院総会であるとか代議士会であるとか、度々申し上げて、九日だったと思いますけれども、我が党の吉村代表がやるということを知事定例会見で発表されて、党の公約に今なりました。

 政党として食品消費税ゼロ%を初めて公約として掲げた状況でありますが、そのことに対する、まず、伊東大臣、食の安全と、そして消費者担当大臣として、一番食品の高騰に関して御不満を聞く機会も多いと思います、食品消費税をゼロ%に下げることの効果など、評価、どのようにお考えですか。

伊東国務大臣 お答えしてまいります。

 ただ、これは私にとりましても所管外であるために、消費者及び食品安全担当大臣としてお答えすることは難しい、こういうことでございます。

斉木委員 武藤大臣はいかがでしょう。

武藤国務大臣 ここは今、大臣として立たせていただいているので、伊東大臣と同じように所管外ですから、そのことについてコメントすることはできないと思っています。

斉木委員 ただ、今、トランプ関税によって物価が今後どういうふうに、世界が関税戦争に陥って、アメリカ、中国だけではなくて、日本も物価が高騰していくんじゃないのか。

 そして、お米が今、五キロ四千円を超えていますけれども、更に上がったりしたらもう食べられないよ、うちも実は麦を混ぜて食べているんですけれども、そういった消費者の状況だと思います。三人子育て中ですので、よく食べるんですね。

 ただ、本当に五キロ四千円というのは、消費者にとっては手の届かないような価格になってきている。まあ、皆さん、御不満は聞いていると思います、選挙区で。それに対して、やはり何らか、私は農林水産省がちょっと当てにならないなと思っているんですよ。昨日も党の勉強会で備蓄米の放出に関していろいろヒアリングしたんですが、価格を下げるためにやっているわけじゃありませんということをはっきり言うんですね。ですので、価格高騰対策ではなくて、供給制約を解消するために適宜行っていくとおっしゃっている。

 ですので、消費者側は、価格を何とかしてくれというふうに、第一は、高いね、買えないね、麦を混ぜて食べるしかないねという状況なのに、いやいや、供給が足りなくなったらちょろっと出します、でも、全部全中さんと各県の全農さんが買い上げちゃいますというようなこの状況に対して、消費者の不満が今高まっているわけですよ。

 それに対してやはりダイレクトに、農林水産省や農林水産大臣が当てにならない、米価を下げる考えはないというのであれば、だったら、食品消費税を、八%をなくしてしまえば、四千円台の米だって三千円台に下がるじゃないですか。

 こういったダイレクトな政策効果というのは、私は、霞が関の利害対立や既得権の保持を超えて、今消費者が求めている政策だと思うんですが、武藤大臣、いかがですか。

武藤国務大臣 先ほど申したとおり、産業振興の立場で私はここに来ておりますものですから、経済の好循環といっても、それはちょっと違うかなと思いますし、私自身も、委員も今おっしゃっていただいたように、米が何でこんなに高いのというところはいつも問題意識を持っています。

 ただ、報道を見ている限りで、今、私もこの立場で農水省から話を聞くという時間が余り、なかなかないものですから、正直申し上げて、江藤大臣の方も大変御苦労されながら備蓄米放出の決断までされて、ところがなかなか物流価格が下がらないというのは、何か問題がいろいろあるんだろう。

 私もいつも家内に怒られていますから、そういう意味でいうと、何で野菜がこれだけ上がっちゃっているのと。これはもう、まさに、皆さんも記憶に新しい、去年もおととしも気候が非常におかしいというところが、やはり農産物の生産というところにはいろいろ結果が出ているということで物価高になっちゃっているわけで、これは、農水の物流というところも含めてやはり対策を打っていかなきゃいけないと思いますし、食料安全保障という概念も来ていますから、そういう意味の中で、農水省の方でしっかり対応していただけるものと思っています。

斉木委員 実は、こういうことを申し上げているのは我が党だけではないんですよ。各党から、今、この十日間ぐらいですかね、どんどんどんどん声が上がってきました。

 例えば同じ野党側でいいますと、立憲民主党さんは、江田憲司議員の勉強会を中心にして、食品消費税、特出しして下げるべきじゃないか。まあ、四・八兆円、これは財源が必要ですけれども、もっと経済効果が出るんじゃないかというような民間のシンクタンク等の試算もあるやに聞いております。

 また、御党、自民党さんの勉強会でも、昨日の報道でしたかね、食品消費税を恒久減税すべきじゃないか、ゼロにすべきじゃないか。世耕元経産大臣も参加されていましたけれども、まあ、自民会派からこういう声も自民党内に、世耕元経産大臣も会派の勉強会に参加されて、自民党さんからも、与党からも声が上がっている。公明党さんなんかは、赤字国債を発行してでも減税すべきじゃないかという声も上がっている。

 だから、それだけ食品価格の高騰に対する御不満の声というのは、党派を超えて、与党側からも今こうやって上がり始めていますので、経産大臣経験者も言っているわけですよ。いかがですか。必要だと思いませんか。必要か必要でないか、政治家としての御判断はいかがですか。

武藤国務大臣 また、では元大臣からお聞きしておきます。

斉木委員 お聞きじゃなくて、政治家としての武藤大臣の御所感を、例えば、財源が足りなくなるから、社会保障がどうこうとか、何らか御所感はあると思うんですが、いかがですか。世耕元大臣にお聞きになる前に、武藤大臣として、食品消費減税を。

 これは私、公党として林官房長官には申入れしているわけです、官邸に。申し上げたじゃないですか、一週間前ですよ。官邸に出かけて、党の政策として、これは二年の時限減税ですけれども、食品消費税をゼロ%にすべきだという経済対策を申入れしているんです、公式に。林官房長官も受け取って、そのときは補正もやりたいみたいなことをおっしゃっていました。

 こういう申入れをしていますので、同じ内閣の一員じゃないですか、武藤大臣。経済担当大臣なんですから、そこでおっしゃっているので、自民党の経産大臣経験者も。武藤大臣の御所感、必要か必要でないか、前向きか後ろ向きか、いかがですか。

武藤国務大臣 詳細な答弁は控えますけれども、これはもう、全世代型社会保障制度というものの中でこの消費税が上がってきているということは承知をしていますし、社会保障制度の貴重な財源であるということの中で今まで来ているんだと思っています。

 一般論としてですけれども、政治家としてというよりは、今この立場ですから、改めてコメントは差し控えさせていただきますけれども、軽減税率をやったときの形の中では、たしか経産省の中でも、現場ということで考えれば、しょっちゅう税率が変わるといろいろ大変な手間があるとか等々の問題があったということも承知をしているところです。

 いずれにしましても、社会保障の貴重な財源でありますので、今この時点で私どもから下げるという話についてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

斉木委員 確かに、総理ではありませんので、そういうことをおっしゃれる立場でもないというのは理解いたします。

 かように党派を超えて、与党側からも野党側からも、食品消費減税をゼロ%、ここまで下げて、生きること、食べることから税金を取りませんという、こういった、かまどの煙が上がるようにすべきじゃないのかという声が上がっておりますので、党としても申入れをしておりますので、是非真剣に御検討いただくことをお願い申し上げまして、本日、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、丹野みどり君。

丹野委員 こんにちは。国民民主党、丹野みどりです。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。今日もよろしくお願いいたします。

 私は、今回、豊田市にあります製造業の下請現場で本当に頑張っていらっしゃる社長さんのお話を伺ってまいりました。たくさん見て、聞いてまいりましたので、大臣、是非最後までお聞きください。

 この会社はティア3です。資本金が一千万円、従業員が二十人、労働組合はありません。まずは現状からお伝えします。

 生産を開始してから価格は決まる。加工費に対していろいろなコストの上昇分が加味されない。金型保管費は補給品になった型しか対象にならない。加工費の七%を輸送費として徴収される。一部労務費やエネルギー費の補填はあるけれども、現状全く足りない。材料を無理に買わされる。急に生産中止で余った製品を買い取るのを渋る。金を払ってやっているから当然、うちは客だと言われ、断ると仕事がもらえない。上記の理由から利益が出ず、設備投資や賃上げが行えない。補助金の申請をしたが、大変難しく、五回もNGだった。設備投資をするため、つなぎ融資があるが、それといっても手元にお金がなければできない。こういうお声でございました。

 次に、私は倉庫を見せてもらいました。工場みたいな大きな倉庫が二つありまして、その倉庫の中にびっしりと金型が保管されておりました。その一つ一つを見ると、ほこりがかぶっていて、これはもう多分動かないよなと思うような金型だったんですね。それを聞いたら、三十年、四十年この状態ですと。金型を置くラックというか棚があるんですけれども、この棚が一つ二十万、三十万すると。引き出すタイプもあるんですね、そうなると二百万ぐらいすると。でも、そういうのがうわあっとありますと。

 あと、丸い円柱形の材料がありまして、これも、最初注文があって、買って、三百ぐらい作ったんだけれども、その後注文がなくて、本当は三千ぐらい取れるんだけれども、その材料が余っている。その材料を置くラックというものがまたあるんですね。そういう感じで、事ほどさように、本当に枚挙にいとまがないほどすごい厳しい状況でございました。

 この社長がおっしゃった言葉が、毎日が私は有事である、トランプ関税のこともあるんだけれども本当に厳しい、銀行さんからは、このまま何もしないともう二年間もたないんじゃないか、そういうことも言われてしまっているという、そんなお声でございました。

 この会社はティア3なんですね。取引先がティア2になるわけですけれども、取引先も資本金が一千万円以下、従業員も三百人以下で、今回の改正においても下請法の対象外になります。ティアの奥深くに行くと価格転嫁が難しい、これは承知をしていたんですけれども、ティア2、ティア3という結構浅い段階でこういった取引の実態があるんだなというのがすごくよく分かりました。

 そこで、大臣にお伺いします。

 これが本当に偽らざる現実かと思うんですけれども、大臣の受け止めなど、是非御見解をお聞かせください。

武藤国務大臣 懐かしい現場の声を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、ただ、どうでしょう、私もこの世界に入ってもうそろそろ二十年、その前はずっと地元にいましたので、いろいろな会社のそういう裏を見てきましたし。ただ、中には自慢しておっしゃられる社長さんもたくさんいらっしゃいまして、俺はこういうふうにやって、こういうふうにやっているんだと言って、本当にもうかっていらっしゃる方もいらっしゃるのは事実。

 今回、この中小企業の下請法が出てきたときに、今までも先輩方がいろいろこういう形で議論をしながらここまで来てはいるんですけれども、なかなか正直言って、サプライチェーンのティア2とかティア3とか、階層が下に行くほど、なかなか商慣習があったり、今おっしゃる社長さんの話もあって、進んでいなかったんですよ。そういう極めて厳しい取引実態というものは私もよく分かっているつもりです。

 経産省も今までもいろいろな形でやっていただいて、今日もずっとありました下請Gメンの話とか、これも年間一万件以上のヒアリングですとか、毎年二回、三十万社からの価格交渉、転嫁できたかを調査している。昔はほとんどGメンも三十人ちょっとぐらいしかいなかったはずですから、そういう意味では一つずつ進んできてはいると思います。自分の客先から転嫁、値上げしてもらえないので自分も取引先に転嫁できないなどの声を伺っているところの中で、だけれども、残念ですけれども、まだ価格転嫁率四九%ですよね。これはなかなか正直言ってまだ本当に道半ば、これは根本的にまだまだ問題があるんだと思います。

 したがって、今回、こういう形の中で法改正をやりながら、サプライチェーン全体でとにかく取引適正化を強力に推進していこうじゃないかということで改正を提案をさせていただいて、一方的な価格設定を禁じるとか、法改正の周知、また厳正な法執行に加えて、引き続いて年二回の価格交渉促進月間を続けていく、その中で社名公表をどんどんやれという形で機運醸成、これはもうずっとまだこれからもやっていかなきゃいけない話です。

 長年本当にしみついたこういう商慣習というものを一掃するという意味でも、これを契機に引き続いて価格適正化を図っていかなきゃいけないんだと思います。

 ちょうど名前も変わるそうですから、皆さんでお決めいただいて、これはこっちが決めるのか、ということであれですけれども、いい形で周知をしていかなきゃいけないんだろうと思います。なかなか御理解いただいていないところが多いと思いますので、また引き続き社長さんによろしくお伝えいただけるようにお願いします。

    〔委員長退席、新谷委員長代理着席〕

丹野委員 ありがとうございます。本当に引き続き力強く継続してほしいと思っております。

 現行法で下請法の対象になっている企業の割合と、今回三百人という基準が加わりましたけれども、この対象基準がこれに加わったことによって何%になるのか、教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 ある事業者がこの法律の適用対象となるか否かにつきましては、その事業者の資本金の額のみによって決まるものではございませんで、製造委託等の特定の委託取引を行っているか次第であるということでございますので、正確な数字というのはなかなか難しいということでございます。

 一方で、法案の検討に当たりまして、信用調査会社が保有する取引データのサンプルから推計したところでございますと、業種によるものの、我が国における製造委託や役務提供委託といった取引のうち、おおむね三割から五割程度、これが現行の資本基準によって規制の対象になっていると考えられます。

 今回、従業員基準を導入することによりまして、同じく業種によってまちまちでございますが、おおむね一割前後の取引が新たに規制の対象となるものと思われます。

丹野委員 ありがとうございます。

 お話を伺った社長のように、下請法の基準外だった場合、これはどうなるんでしょうか。

向井政府参考人 この法律の適用対象を受けない取引におきましても、発注者が受注者に対しまして、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合には、優越的地位の濫用といたしまして、独禁法上の問題となるところでございます。

丹野委員 ありがとうございます。

 ということは、独禁法の対象にはなるということで、独占禁止法と下請法の関係性をちょっと整理したいんですけれども。

 一本線があるとして、一番左端に一番大きい大企業があります、その真ん中に下請法があって、三億円と一千万円の区切りがあります。その三億円以上か以下かという組合せか、三億円と一千万円の間と一千万円以下という組合せか、今回の三百人という、その以上、以下の組合せ、この三パターンが対象になるのかなと思うんですけれども。独占禁止法、下請法があって、また独占禁止法が出てくるみたいな、だから全部カバーできることはよく分かったんですけれども、とはいっても、小さ過ぎても大き過ぎても対象外になって、そこは独禁法が生きてくるというのは分かったんですが。

 とはいえ、下請法の基準自体が適正なのかなというのは少し疑問に感じておりまして、例えば基準の中であっても、二億円と一億円の組合せとか、やはりこれも対象外になるわけですね。どこまでいっても対象から外れる取引は当然出てくると思いますし、切りがないと思うんですけれども、基準とかメッシュをどうするかとか、その辺についてはいかがお考えでしょうか。

    〔新谷委員長代理退席、委員長着席〕

古谷政府特別補佐人 下請法は、先ほど答弁がございましたけれども、独占禁止法の優越的地位の濫用規制というのがありまして、これを補完をしまして、取引上の立場の弱い受注者の利益保護をできるだけ簡易迅速に図ろうという趣旨でできている特別法でございます。

 そのため、この法律では、中小企業基本法の中小企業の定義などを参考にしまして、発注者と受注者の関係を、資本金とか、今度、改正法によって従業員基準が入りますけれども、外形的にあるいは定型的に割り切って定めてやっているというたてつけになっております。

 委員の御指摘のように、資本金基準とか従業員基準をより細かく設定することになりますと、特に小さいところの、中小・中小の場合が特にそうだと思いますが、この法律の対象になると、発注者側に書面を作って保存をしてといったような義務だとかいろいろな禁止事項がかかる、負担が増えていくことになりますので、その点、慎重に考えるべきではないかという御指摘もあります。

 下請法は簡易迅速に保護を図るんだという趣旨からすると、基準が余り複雑になってしまうと、取引をやっている皆さん方にとっても、誰が下請法の対象になるのか分からなくなるといった、取引の予測可能性を低めるといったような議論もあるものですから、ここは、今回の改正法では、従業員基準につきましても、中小企業基本法の基準を取らせていただいて、三百人、百人と定めさせていただいたということでございます。

 下請法の適用にならない場合も、先ほど答弁がありましたように、独占禁止法の優越的地位濫用の規制で対処することができますので、またサプライチェーン全体でいろいろな取組をやろうという振興法の改正とも併せまして、今回の下請法の趣旨を踏まえて、独占禁止法の執行の方もいろいろな工夫をしながら対応していきたいと思っております。

丹野委員 ありがとうございます。

 委員長、御退任前に御答弁ありがとうございます。

 確かに、本当におっしゃるとおり、どこかで線引きしなきゃいけないと思いますし、いろいろな負荷も逆にかかってしまうという御意見もよく分かりました。なので、確かにある程度で区切りをつけて、それ以外は独禁法で包括していくというのはよく分かりました。

 では、関係性をちょっと整理したいんですけれども、それ以外に、今回の振興法ですとか、あと労務費ガイドライン、この位置づけを教えてほしいなと思っております。公正取引委員会と中小企業庁、お願いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会では、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させていくため、令和五年十一月に、内閣官房と連名で、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を策定しております。

 この指針につきましては、価格交渉を行う際に発注者と受注者の双方が気をつけるべきポイント、行動指針といたしまして具体的にそれを示すものでございまして、指針に基づいて適切な価格交渉を行っているという場合には、通常は独占禁止法や今審議中のこの法律でございますが、それへの問題は生じないという考えを示しているものでございます。

 そのため、本指針は、会社の規模や特定の業種に限定したものではありませんで、価格交渉を行う事業者に共通して当てはまる内容となっているものでございます。

山本政府参考人 下請振興法についてお答えいたします。

 下請振興法は、下請法が発注者を規制する法律であるのに対しまして、受注者である中小企業の振興を図るための法律が下請振興法となります。事業者同士の望ましい取引慣行を振興基準として経済産業大臣が定めるとともに、受注者と発注者が連携した取組に対し、支援措置などを講じております。

 振興法の対象としては、中小企業である受注者と、それに比べて資本金が一円でも大きい、又は、今回導入いたします従業員基準に基づいて、従業員数が一人でも多い発注者との取引関係を対象としております。したがって、少しでも差のある大企業と中小企業の取引や中小企業同士の取引も振興法では対象となり得ることとなります。

 これらに対しまして、調査や指導助言及び新たに設けさせていただく勧奨等を事業所管大臣は実施することができるものでございます。

丹野委員 ありがとうございます。

 伺っていると、適正取引に関する法律というのは、私は北風と太陽があるなとすごく感じておりまして、厳しい法律、北風が独禁法とか下請法である、いいことを促す取組が、振興法が太陽かなというイメージがあります。そういう中で、今のお話だと、太陽である振興法は、下請法から始まって、ずっと右の方、中小零細企業はずっともう関係なくいく、ガイドラインの方は大小関係なく、規模に関係なく全てを覆っている、そういうイメージかなと思ったんですけれども。

 では、次の質問に行きたいと思います。

 この独禁法とか下請法とか振興法がある中で、なぜ法律ではない労務費のガイドラインを出したのでしょうか。お願いします。

伊東国務大臣 丹野委員の御質問にお答えしてまいります。

 これまで、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を進めるべく、政府一体となって取り組んできたところでありますが、コストの中でも特に労務費について価格の転嫁がしにくいという実態が見られており、公正取引委員会の令和五年度における特別調査でもそうした結果が示されております。

 そこで、労務費などの適切な価格転嫁に向けた考え方を取りまとめ、価格交渉に対する体系的な行動指針を具体的に示すことで、事業者間のより実効的な価格交渉につなげたいという考えで作ったものであります。

丹野委員 ありがとうございます。

 では、次に振興法の改正について伺いたいと思います。

 今回の改正で、例えば直接の取引よりも先を見越した取引の計画を打ち出した場合は支援するとありますけれども、これは具体的にどのように支援をしていくのか、お願いします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今回の下請振興法の改正には、複数の取引段階にある事業者が共同で効率化や投資等を行う事業に対し、承認、支援できる旨を盛り込んでおります。

 具体的には、例えばティア1、ティア2、ティア3に当たるような事業者が共同で製品の改善や生産効率化に取り組む計画に対しまして、国が承認し、債務保証等で支援することといたします。これにより、直接の取引先との関係を超えて、サプライチェーン全体で連携した取組を促してまいりたいと考えております。

 加えまして、先ほど申し上げました事業者の望ましい取引慣行を定めた振興基準におきましても、直接の取引先の更に先の事業者との連携を促す旨を反映することといたしたいと考えておりまして、事業者にサプライチェーン全体の取引適正化を促してまいる所存であります。

丹野委員 ありがとうございます。

 その次なんですけれども、同じ振興法の改正なんですが、今回、地方公共団体も適正取引の推進に努めるとありますけれども、これはどのように関わって取組を進めていくのか、教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 全国で価格転嫁を浸透させるには、各地域の事業者に身近な存在であり、その取引実態を詳細に把握することのできる地方公共団体の役割は重要でございます。そうした観点から、今回の下請振興法の改正におきましては、地方公共団体の責務や、国と地方公共団体との連携規定を盛り込ませていただいております。

 地方公共団体との連携につきまして、例えば、労務費転嫁指針を始めとする取引適正化に関する国の施策、様々ございます、これらを自治体から地域企業へ周知をいただくこと、また、下請Gメンを活用した都道府県ごとの施策認知度の調査、さらには、地方公共団体が収集した取引情報を国にも共有していただいて、取引適正化に関する施策の立案や法執行へ活用することなどを想定しているところでございます。

 さらには、各都道府県が独自に実施している価格転嫁促進に係る先進的な取組もございます。これらを地方経済産業局などを通じまして、全国の自治体に横展開するなど、連携を深め、全国津々浦々で価格転嫁を浸透させていただくこととしたいと存じます。

丹野委員 もう一つ振興法の改正についてあるんですけれども、所管の大臣がより改善を促すようにできるとあるんですけれども、これはそもそもどういったフローで行われて、どういう内容になるんでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省では、下請Gメンによるヒアリングや、年二回の価格交渉促進月間に基づく調査により、取引実態の把握に努めておるところであります。こうした調査の中で見つかった価格交渉また価格転嫁の状況が芳しくない事業者に対しましては、各事業所管の大臣から経営トップに対しまして指導助言を行っております。これによりまして、価格交渉、転嫁の定着に一定の成果を上げてきていると存じます。

 一方で、何度か指導助言を受けても取引方針が改善されない事業者も一部には存在しております。こうした事業者に対しましては、具体的な改善内容は事業者に委ねるのが指導助言でありますけれども、これを一歩進めまして、改善いただきたい具体的な措置内容を明示し、より具体的に取引方針の改善を促す勧奨を行うことで、その事業者の取引方針の改善を図ることとしたいと考えております。

 具体的な運用につきましては、取引実態を踏まえてまいりたいと存じますが、例えば下請Gメンによる深掘り調査などで交渉方法に課題が見つかった事業者に対しましては、取引先に対し、記入しやすい価格交渉のフォーマットを用意して、発注者の方から書面で交渉を申し入れるといった具体的な改善の取組をお示しして、その取組が企業内で定着するよう促してまいりたいと存じます。

丹野委員 ありがとうございます。

 なので、下請Gメンの調査でひっかかってきた悪質な事例とか、フォローアップ調査で分かってきた声とか、そういうものをフックにして、きっかけにして調べていって、かなり具体的な行為をされるんだなというのは分かりましたけれども、事業者の方からすると、やはり監督省庁からそうやって言われるというのが、すごい重いなというか、結構厳しい印象を受けると思うんですね。しっかりしなきゃいけないと思うと思うんですけれども。

 今ずっと御説明いただいたみたいに、地方公共団体も関わってくる、各省庁も関わってくるという、幅を広げていくという感じがしますけれども、そうすると、最初、北風と太陽と言いまして、太陽の振興法の方は結構優しいのかなと思ったんですけれども、意外と厳しい側面もあるんだなというところを私なんかは感じるんですけれども、今回のこの振興法の改正において、こういう厳しい面も踏み込んできた、こういった辺りの意図をお願いします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 構造的な価格転嫁の実現のためには、下請法の対象外の取引も含めて、サプライチェーン全体での取引適正化が重要と認識しております。

 下請振興法は、先ほど申し上げましたとおり、受注者である中小企業の振興を図る法律でございますけれども、事業者の望ましい取引慣行を定めた振興基準の遵守を広く業界団体に促したり、受注者への支援だけにとどまらず、事業所管大臣による個別指導への指導助言など、発注者による取引方針の改善も促すなど、サプライチェーン全体での取引適正化のために活用してきているところでございます。

 今回の振興法の改正によりまして、地方公共団体との連携や、事業所管大臣による更なる改善の働きかけなど、下請振興法におきましても取引適正化の取組を強化することで、より一層サプライチェーン全体での取引適正化を進めてまいりたいと存じます。

丹野委員 ありがとうございます。

 本当にいろいろな形で、面で広げていって、最初武藤大臣にもお答えいただきましたけれども、本当にこの機運を力強く、根こそぎやっていきたいというのを、本当に願っております。

 ちょっと時間が余っておりますので、実は質問通告では落としていたんですけれども、お聞きしても大丈夫でしょうか。

 今回下請法の名前を変えるということで、取適法とか適取法とか、何かいろいろな案も出ておりますけれども、私もかつてマスコミで働いておりましたので、よくニュースを読むときに、何とか何とか下請法、いわゆる下請法みたいな感じで、昔の名前を言い換える、そっちの方が分かりやすいからみたいなことがやはりあって、この辺はやはりマスコミの報道の仕方の責任もあるかとは思うんですけれども。

 名前を変える、発信する側が、やはりしっかり周知も含めて、価値観も含めて言っていかなきゃいけないかなと思っているんですが、この辺りの、名称変更についての、価値観の変化を伴う、どういう浸透をさせていくかということについて、最後、お願いいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案では、価格転嫁、取引適正化をより一層推進させることを目的としているところでございます。下請などの用語も見直すことで、取引の当事者間、当事者同士が対等な関係として十分な協議を行うという意識改革も促していきたいと考えてございます。

 このような機運を醸成するために、改正法の名前につきましても、なじみやすいような適切な略称を用いて周知をしていくということが重要でございます。具体的には、この法律は取引の適正化を進めるという目的がございますので、例えば中小受託取引適正化法や取引適正化法、更に略しまして取適法といったような通称を用いてまいりたいと考えてございます。

 新たな用語を含めた改正法の法律の趣旨が社会全体に浸透するよう、周知活動に努めてまいりたいと考えてございます。

丹野委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣からも、取適法がちょっとおいしそうに聞こえるというお話もありましたので、そこは本当に要検討だなと思いますけれども、繰り返しになりますが、大事なことは、やはり言葉の奥にある価値観そのものとか、深い商慣習を本当に日本全国で見直していくことだと思っておりますので、そこに結びつくような言葉選び、そして我々も周知徹底をしていきたいなと思っております。

 お昼休憩を挟んで、前後に私、今回質問をまたぎますが、前半はこちらで失礼いたします。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 この際、暫時休憩とし、本会議散会後に委員会を再開いたしますので、皆様の御協力をよろしくお願いします。

 休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十一分開議

宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。丹野みどり君。

丹野委員 お願いいたします。

 前半戦、冒頭御紹介した社長なんですけれども、御本人は下請法の対象じゃないということは御存じだったんですけれども、先ほどの御説明で、下請法の対象じゃないんだけれども独禁法が生きてくるんだよとか、振興法もあるんですよとか、そういうことを実際御存じじゃないような感じでした。

 でも本当は、こういう方にこそ、こういういろいろな法律やガイドラインがあるということを知っておいてほしいなと思うんですね。なので、この周知、広報、徹底というところをこういった方にどうリーチするのか。実際、この方は本当に頑張っていらっしゃって、例えばセミナーとかあっても、本人が行く時間がないとか出す人もいないとか、車通勤していて車内広告を見ないとか、いろいろなことがあるんですけれども、こういう方にこそ届けるためにどう周知をしていくのか、教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、きめ細かい普及啓発というのは極めて重要というふうに考えてございます。

 公正取引委員会といたしましては、例えば法の趣旨や規制内容を分かりやすく説明した動画を作成しておりまして、ウェブ上でも公開しておるところでございます。そして、事業者団体が開催する研修会、いろいろなものがあるわけですが、職員を講師として派遣いたしまして周知を図っているところでございます。これについては、小規模の会合でありましても、申出がありましたら職員を派遣するということでございます。そして、電話相談にも丁寧に対応しておりまして、令和六年度には二万件を超える相談にも対応しておるということでございます。

 今回の改正法では、事業所管省庁の指導助言権限が新たに付与されるなど、関係省庁間での執行連携が強化されるということもございますので、関係省庁、中小企業庁や事業所管省庁と連携いたしまして、改正法などにつきまして理解を深めていただくように努めてまいりたいと考えてございます。

丹野委員 ありがとうございます。

 私もしっかりと発信をするお役に立ちたいなと思っております。

 さて、冒頭で御紹介した社長さんは組合がない会社でございましたけれども、自動車産業の労働組合が集まっている自動車総連さんにもお話を伺ってまいりました。いわく、価格転嫁が大分進んでいるからこそ、三大費目、すなわち原材料費、エネルギー費、労務費、これ以外に関する課題の声がいっぱい上がってきているということでした。

 例えば、設備投資の回収をどうするのかとか、物を作るときに欠かせない副資材、例えば、何種類もある軍手をどうするかとか、部品の滑りをよくするグリスをどうするかとか、緩衝材とか接着剤とかもいろいろあって、こういったものも含めて価格転嫁したいとか。あと、国土交通省が発表した標準的運賃というものですと、全国を十のブロックにくくっているので、都道府県の実態が反映されずに、県によっては不当に低い値で交渉が進んでしまっているとか。あと、これはかなり理想な話なんですがという注釈がつきましたけれども、例えば、過去の不当な買いたたきなど、遡っての支払いも認めてほしいとか、いろいろなお声がございました。

 自動車の方だけじゃなく、食品業界の方にもお話を伺いました。教えてくださったのがフード連合の皆様なんですけれども、幾つかこちらも声を御紹介します。

 例えば、メーカーは小売店側よりも立場が弱くて、頼まれると断れない状態。食品は他社競合の製品にすぐ切り替えられてしまうので、だったらいいよ、ほかに変えるからと言われてしまい、値上げが言いにくい。商品棚をメーカーに買わせる。新店舗の開店手伝いで駐車場の整理をすることもある。プライベートブランド、そもそもは安くて手に入りやすいものとして小売店側が開発したものだったけれども、最近はプライベートブランドの方がプレミア感を出すようなつくりになっていて、よい原料を使うこともあるのに価格は安く設定されたままになっている。それから、恵方巻き、クリスマスケーキ、お節、スーツ、こういったものの押しつけ販売がある、こういった押しつけ販売は、大手などは改善傾向にあるものの、まだ残っているところもあるというお声。こちらも厳しい現実が浮き彫りになってまいりました。

 食品業界に関しては、今回、農水省さんの方で、食品等の流通や適正化に関する法律の一部を改正する動き、それからガイドラインも出ておりまして、こういった動きは公正取引委員会さんと中小企業庁、農水省が連携した取組なのかなと思うわけですけれども、現状は、何でもかんでも公正取引委員会という状況があって、本当に業務過多だなと推察しておりまして、これはやはり、今のお声からも分かるように、業種とか分野ごとに本当にお声がたくさんあって、様々あると思うんですね。

 そこで提案がございます。ガイドライン、もちろん省庁で出しているところもありますけれども、まだまだ足りないガイドラインを、各省庁が業界ごとの指針をきめ細やかにすくい取って、しっかり書き込んで作っていくべきではないでしょうか。

 先ほどの質疑の中で、法律と違ってガイドラインという、意義があるというお話がありましたけれども、やはり法律には書き込める限度があると思うんですね。それに比べて、ガイドラインというのは、さっき、労務費ガイドラインという、抽出して、取り出して書いたぐらいですから、やはりガイドラインというのはかなり詳しく書き込めると思っております。そういう利点を生かして、各省庁がガイドラインを作るべきだと思うんですが、これはいかがでしょうか。

武藤国務大臣 委員御指摘のとおり、取引における課題というものは業種ごとに異なるところであります。価格交渉、価格転嫁の状況も業種によって差がありますので、業種ごとの特性に即した取組が重要だというふうに思います。このため、各事業を所管する省庁において、業種ごとに下請適正取引等の推進のためのガイドラインを策定しているところであります。

 ガイドラインでは、下請法等に抵触するおそれのある留意すべき取引事例や、また望ましい取引事例などを具体的に示しているところであります。食品産業を含めて、今年三月時点で二十一業種が策定済みでありますが、また、各業界団体においても、業種ガイドラインや振興基準も踏まえて取引適正化に係る自主行動計画を策定しており、業種に応じた取引適正化の取組を進めてきているところであります。

 先生おっしゃられるように、引き続き、関係省庁と連携をしながら、業種ごとの取引実態を踏まえた適正取引を進めるため、今後もガイドラインや自主行動計画の策定、改定、徹底などに取り組んでまいりたいと思っております。

丹野委員 やはり、当事者の事業者にとっては、いろいろな方法があると思っていて、当然下請法の範疇内である、それから、下請法の範疇ではないけれども独禁法の対象にはなっているとか、振興法の方がかなり今回広がっているので、そういう地方自治体ですとか関係省庁の取組、そういった踏み込んだものもある、それからガイドラインもある、こういう形で多面的に狭めていくことによって当事者が取りこぼされることのないように、かなりこの価格転嫁を賃上げの原資にしたいなというところが願うところです。

 最後の質問になるんですけれども、最後は、この法律案の施行期日について伺いたいと思います。

 委員からも、冒頭、山岡筆頭理事からお話ありました、やはり春闘に生かしたいというのが一番でございます。組合がある会社ない会社、全ての企業においてなんですけれども、やはり春闘というのは賃上げですとか労働環境の整備を主眼にしているものでございますから、価格転嫁というのはどうしても項目には上がりません。

 ですので、春闘の前の、一か月前、二か月前ぐらいの、環境整備として議題にのせたいということになりますと、逆算しますと、大体三月ぐらいから春闘が始まるとすると、一月ぐらいからはこの法律が機能していて、やはりそこにしっかり担保されているというのが理想かなと思うわけでございます。なので、今回、春闘よりも前の一月には法律が施行されていることが望ましいと思っております。

 今回、まだ改正案というところでありますけれども、施行期日についてはどのようにお考えでしょうか。お願いします。

伊東国務大臣 今回の改正法案によりまして、取引上の立場の弱い中小の受注者が、価格交渉をしやすくなり、賃上げをするための原資の確保につながることから、改正法の施行は来年の春闘に合わせるべきであるという委員の御意見、またほかの皆様からも御意見があることは我々も認識をしているところであります。

 一方で、改正法案については、今後、政令、規則、運用基準といった下位法令などを整備し、その内容について、一定の期間をかけてしっかりと周知、広報していくことも必要であります。

 改正法案が可決、成立した場合には、このような事情も勘案しながら適切な施行期日を判断することとし、速やかな施行に向けて尽力していきたいと考えております。

丹野委員 ありがとうございます。

 本当に周知徹底が必要かなと思っておりまして、先ほどの、今回、下請法という名前を見直すということもそうですし、独禁法と下請法の関係性とか、振興法がある、ガイドラインがある、こういったいろいろな兼ね合いも、実際頑張っていらっしゃる社長さんは知らないんですよね。知らなくて、すごく困っている。

 お話を伺ったら、補助金なんかもいっぱいあるんだけれども、申請もやはり難しくて五回も駄目になったとか、いろいろなことがあって、当然、地元の商工会議所の方も一生懸命いろいろなセミナーをやったりとかしているんですけれども、なかなかそこのセミナーに行ける方も限られていたりとか、本当にリテラシーの差があるなというのを感じています。

 本当に必要な人にしっかり届くというためには、私も、微力ながら、地元に帰ったときに、そういう中小企業の方始め、今回の改正を踏まえて、しっかり法律の用立てを御説明したいと思っていますし、ささやかながら自分のSNSでもしっかり発信していきたいと思っておりますけれども、是非皆さんもそれぞれ皆さんのお立場でしっかりと発信をしていただいて、物価高に負けない賃上げをしていくんだという、トランプ関税に負けないで、このムーブメントを本当に日本全国でやっていきたいなと心から強く強く思っております。

 本当にこの機運醸成が最近されてきまして、価格転嫁をしてもいいんだとか、声を上げてもいいんだ、そういう価値観はかなり変わってきたと本当に思っております。それは、公正取引委員会さん始め、皆さんの取組のおかげと思っておりますけれども、社長さんにお聞きすると、でも、やはりうちのところには回ってこない、その回ってくる、しみ渡ってくる時間を待っている時間はなくて、その前に倒れちゃうんだという話があります。

 物価高倒産も年間六百件以上あるということで、そういう厳しい状況もある中で、やはり今回の法改正が、様々な取引の裏に必ずある、働く人一人一人の生み出す価値が適正に評価される、そんな社会につながることを願いまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、佐原若子君。

佐原委員 れいわ新選組、佐原若子です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。前々回も同様の質問をいたしまして、また今日もかと思われるかもしれませんが、確認ということでお許しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 下請法の対象外の取引、例えば、元請が二百九十九人の企業が下請事業者に不当行為を行った場合は独禁法での対応と伺いました。独禁法には罰則があり、下請法は努力義務や勧告といった傾向が強いと思いますが、例えば、元請が対象事業者あるいは対象事業者で下請事業者に対して同様の不当行為があった場合、下請法での措置、独禁法での措置に違いがありますか。お伺いします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、資本金基準に加えまして、従業員基準の導入も盛り込んでおるところでございますが、今委員御指摘のとおり、小規模な事業者間同士の取引につきましては、引き続き、この法律の規制の対象とはならないということでございます。

 これにつきましては、本法律、この法律でございますが、独占禁止法の優越的地位の濫用規制を補完するという位置づけがございまして、簡易迅速に取引適正化を図るというような制度でございまして、取引上の立場の弱い受注者を保護するよう、対象となる取引につきましては形式的に資本金や従業員といった基準で定めておりまして、そこでこの法律の適用関係が決まってくるということでございます。

 一方で、こうした本法律の対象外の取引でありましても、価格転嫁を進めていくということは当然望ましいということでございまして、独占禁止法の優越的地位の濫用が認められる事例がございましたら、同法の規定に基づき、これまでも公正取引委員会におきまして厳正に対処しているところでございます。

 委員から、本法律の対象になり、どのような措置が取られ、本法律の対象外である独禁法に基づく措置の違いについてお尋ねがあったと思います。

 これにつきましては、本法律につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、簡易迅速に取引適正化を図るという趣旨から、行政処分や罰則ではなく、行政指導ということを基本としておるところでございます。

 そのため、違反があった場合には、受注者に対しまして、違反行為の取りやめを勧告をする、指導するというだけではなく、例えば、減額した分を遡って受注者に支払うというものであったり、未払い金額がありまして支払い期日にはまだお金が払われていないという場合には、支払いを遅延した期間の利息、遅延利息、それを乗じて支払う、そして、社内体制の整備など再発防止を講ずるというような内容のものにつきまして勧告をするということでございます。そして、勧告の内容につきましては、全て、事業者の名前、どういう違反行為があったかというものも公表をしておるということでございます。

 一方で、独占禁止法に基づきます優越的地位の濫用、こちらにつきましては、行政処分という形で対応をするということでございます。行政処分ということで、具体的には、独占禁止法に基づきまして排除措置命令や課徴金納付命令というようなことになるわけでございますが、これにつきましては、命令が確定した場合に、それに従わないという場合には罰則が科されるというような体系になっておるということでございます。

 このように、それぞれの法律につきましては、措置の内容につきまして差異があるわけでございまして、手続についても違いがあるということでございますが、公正取引委員会といたしましては、この二つの法律というものを適切に運用することで、引き続き取引の適正化を図ってまいりたいと考えてございます。

佐原委員 同様の不当な行為に対して、法律が、違ったような罰則あるいは措置があるということがないようにお願いしたいと思っております。

 次に、小規模な事業者が不当行為を受けた際に救済を求める連絡の方法についてお尋ねします。

 分かりやすく連絡しやすいよう広報、周知と、より幅広い方法での窓口の設置が必要だと思いますということは前回もお尋ねしたんですけれども、特に、規模の小さな事業所や個人では、連絡ができる時間にも制限があります。電話のホットラインだけでなく、幅広い手段に対応できるようにしてほしいと思います。多様な受付方法はありますか。

武藤国務大臣 事業者が下請法違反の疑いがある行為を受けた際の窓口の御質問だと思いますけれども、中小企業庁と公正取引委員会で、今のお話ですと、オンラインというものがまた別にありまして、オンラインや電話、郵送により事業者からの申告を受け付けているところです。

 事業者からの申告に対しては、その一件一件を確認をして、必要な場合には、情報源を秘匿した上で発注者へ立入検査を行うなど、下請法の執行の端緒情報として活用しているところであります。

 また、全国四十七都道府県下にあります下請かけこみ寺、ここも、中小企業が抱える取引上のトラブルというものを専門の相談員が御相談に応じているところであります。お伺いもしているところです。トラブルの解決に向けまして、相談員が価格交渉のサポートですとか、また、弁護士への無料相談等の支援も行っております。

 下請法や価格交渉に関しましては、オンライン、対面での講習会も開催しておりまして、昨年度は合わせて二百六十七回の開催をしております。約一万五千名以上の方々に御参加をいただきまして、申告、相談窓口についての情報提供を行ってまいりました。

 支援を必要とする方にこれらの窓口を使っていただけるように、引き続き、また広報、周知に徹底してまいります。

佐原委員 大臣、ありがとうございます。お忙しいところ、本当に。お顔を見られて、うれしく思っています。

 大企業の貿易での利潤が大変上がっておりますが、それを支えてきたのは、やはり、日本的な技術、そして、性格上、完璧を目指すという大和の心というんでしょうか、自分たちの利益だけではなくて親会社のこともよく考えるという。前回お話ししたときに、ラピダスのときも、大和の心を持つということに対して、大臣と共通の何か感覚があったように記憶しておりまして、うれしく思いました。是非、大臣がおっしゃったように、分かりやすく周知、広報していただけますようお願いいたします。

 一昨日の御答弁で、下請Gメンは三百三十人体制で八千件以上、一万件余りの対応があったということを伺いました。それで十分なのかなと思います。Gメンの数、足りていないんじゃないかな、適正な調査、評価を追求されている下請Gメンの方々の負担も大きく、また調査が行き渡らないのではないかと懸念いたします。体制を拡大する計画はおありでしょうか。

 また、済みません、つい下請と言ってしまって。取適と言えばいいんですけれども、何か焼き鳥とトンテキが一緒になったような感じがして、言いにくくて、済みません。

武藤国務大臣 今のこの委員会では、下請で結構だと思います。

 下請Gメンなんですけれども、これも、二〇一七年ですけれども、設置当初というのは約八十名からスタートしているんです。現在、おかげさまで、先生方の御協力もあって、三百三十名まで増員をさせていただきました。全国の中小企業の取引実態については、年間で約一万件を超えるヒアリングを行っているところでもあります。

 また、この下請Gメンに加えまして、全国各地で、小規模事業者を含めた取引実態を把握すべく、四十七都道府県に設置をされた下請かけこみ寺というのがありますが、ここの調査員も活用した情報収集体制も強化をしてきているところであります。

 さらに、今日もずっと出ていますけれども、年二回の価格交渉促進月間では、約三十万社、これも、中小企業へのアンケート調査も行っておりますし、価格交渉、価格転嫁の状況を幅広く把握してきているところでもあります。

 ただ、下請Gメンの今後の体制、これはある意味で予算も絡むことでありますので、これらの取組の効果も踏まえながら、今回の改正も併せて、適切に今後対応していかなくてはいけないと思います。

 引き続き、様々な取組を行いながら、一社でも多くの中小企業の実態をこれからも把握をしながら、更なる価格転嫁、取引適正化を実行していきたいというふうに思っています。

佐原委員 ありがとうございました。

 また、通報への報復は、公正取引委員会など各部署で情報源の厳守は徹底されるということでした。しかし、やはり規模が小さい企業間なら通報者の推測は可能と危惧されます。例えば、価格は原価の何%以上とするなどの明確な規定を設け、例えば抜き打ち調査など、事務的な手段の調査で違反行為が明らかに分かる仕組みが必要ではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えします。

 本法律では、受注者が安心して情報を提供することができる環境を整備するために、受注者が申告したことを理由に取引を打ち切るなど、報復措置を禁止をしておるということでございます。また、改正法案では、事業所管省庁に対して申告したことを理由とする報復措置の禁止も新たに規定をするということでございます。

 加えて、公正取引委員会及び中小企業庁におきましては、毎年、発注者、受注者の双方に対しまして大規模な定期書面調査を実施しているところでございます。そして、この中でこの法律に違反する行為の端緒に接した場合には、公正取引委員会、中小企業庁は積極的に情報収集を行いまして、違反行為がありますと、その違反行為を是正をさせたり、先ほども説明いたしましたが、いわゆる原状回復ということを求めるということでございます。

 このような定期調査以外にも、匿名の情報提供を可能とするような、ウェブサイトに窓口を設けておるということでございます。

 このような対応をしておるところでございますが、委員からは、さらに、価格は原価の何%以上とするというルールを作りまして、発注者側に価格に係る情報を提供させるということで、形式的に違反が認定できるようにすべきではないかというような御提案があったかと思います。

 これにつきましては、いろいろな課題があるのかなと思っております。

 具体的には、費用と取引費用のみで一律に違反を認定するという仕組みにいたしますと、事業者サイドにとりましては、生産性を向上させるインセンティブがそがれるといった問題や、製品、サービスの質、競争力を反映した価格設定も難しくなるというような問題もあるのではないか。また、やはり価格は重要な競争手段でありますので、生産性や質を高め、自らの価格を決めようという事業者の意欲をそぐことになるのではないかということでございます。

 さらに、原価の何%以上を取引価格にしようとすると、相手方に対しまして原価の開示を求めるということになります。原価というのは営業の秘密に該当することもございまして、それが求められることは拒絶感を持つような中小企業の方もいらっしゃるということでございまして、このようなルールがもし導入されますと、かえって中小事業者の利益を損なうおそれもあるということでございます。

 このような問題点もございまして、今回の改正法案では、適切な価格転嫁を実現するために、企業間の積極的な交渉に基づき、合理的な価格決定を促すような、新たな禁止行為というものを設けたということでございます。

 いずれにいたしましても、公正取引委員会は、誰が情報提供者であるのかということが発注者に明らかにならないように工夫して引き続き調査をするところでございますが、このようなノウハウにつきましても、改正法が成立いたしますと、事業所管省庁とも共有をするということも踏まえまして、今後とも、情報提供をした、それが報復措置につながるというようなことがないように運用する、そして、そのような制度になっているということも周知徹底をするということを通じまして、安心して情報が提供されるような環境づくりに努めてまいりたいと考えてございます。

佐原委員 ありがとうございます。今、向井さんがおっしゃったことが徹底されれば安心かなと思いますけれども。

 先ほどおっしゃったんですけれども、企業間での交渉というのはなかなか難しいのではないかなと思うんですよ。下請の方が親会社に対して物申すということは、本当に難しいような感じがいたします。

 広島県の中小企業家同友会が行った会員企業アンケートでは、価格転嫁が進まない理由として、取引業者からの理解が得られにくいという声が複数上がっています。今回の下請法改正案のように商習慣の改善を促すだけではなく、価格転嫁を進める政策はほかにもあるのでしょうか。

武藤国務大臣 価格転嫁を進める政策というものはほかにもあるかという問題、案外非常に難しい問題だと思います。

 これまでも、いろいろな意味で、中小企業が賃上げすることのできる環境整備というものを、価格転嫁が鍵だと思って我々も進めてきているところです。

 経済産業省では、関係省庁とも連携しながら、下請法とか下請振興法の改正をやってきているわけですけれども、これ以外に、これから様々な対策も進めていかなきゃいけないんだろうと思います。

 例示を言うならば、先ほどから申し上げているとおり、価格促進月間のアンケートもそうでしょうし、ここによる社名公表ですとか指導助言、また、さっきのよろず支援拠点に設置をしました価格転嫁サポート窓口における支援ですとか、業界団体による自主行動計画の策定の促進など、様々なこともあるわけだと思います。

 要は、商習慣もそうだと思いますけれども、やはり社会構造としての価格というものに対する考え方、これは我々、我々というか、私は商売をやっていたのであれですけれども、作る側から、また売る側、そして消費者の方々、ここが、やはり皆さんが、社会の通念というものを、こういうものを一つ一つ実効性あるものに仕上げながら、やはりこれからも浸透していかなきゃいけないことなんだろうと思っています。

 こうした取組を通じて雰囲気は醸成されてくると思いますけれども、今日の議論でもありました、価格転嫁率、まだ四九・七%で、五〇%も行っていない。今後とも、こういうものを頭に入れながら、先生方のまた御意見をいただきながら、着実に前に進めることがやはり大事なことだろうなというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。

佐原委員 ありがとうございました。

 先ほど御紹介した広島の中小企業家同友会のアンケートには、中小企業間が共に生き残るためにも、政府が経営しやすい環境を積極的に整えてほしいということがありました。

 日本の企業の九九・七%が中小企業です。日本の大企業の空前の利益も、やはり下請と言われる、いわゆる芸術的な職人の技術とか、それから性格とか、そういったものが、日本のプロダクトというんですか、生み出した製品の優位性というのを生み出していっているんだと思うんですよね。それが、今まで正当な評価、そして報酬がなかったと私は思うんですよ。大企業はそういったところに甘えずに、例えば、イーロン・マスクの電気自動車も、日本の企業のシステムを使っております。それは、彼が言うには、日本の企業というのはすばらしいと、るるいろいろ言っております。

 ですから、誇りを持って下請の方が働いているそのことを、是非、実効性のある政策を早急に進めてほしいと思うんですよね。すばらしい日本の、メイド・イン・ジャパンをこれからつくっていく上にも、中小企業がなくなってしまったのでは元も子もないと思うんです。

 ですから、大企業はある程度優遇されています、内部留保もあります。どうかそのことを、やはり下請というか従業員とか、そういうところに還元していってくだされば経済も活性化していくんじゃないのかなと思うんですね。是非、中小企業が生き残り、同時に、そこで働く人たちの待遇の改善がされていくことを願っています。

 働く人たちの待遇改善のために、今後予定されている経済産業省の政策はありますか。また、大臣の構想がおありでしたらお聞かせください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどの質問も含めてですが、先生おっしゃるように、この国の大事な中小企業がつくってきた技術、これは非常に重要で、一度失われると本当に厳しい状況になっていくというのはそのとおりでございます。

 そういう中で、まず国内に投資を進めるということがやはり非常に重要でございまして、日本は、国内への投資も人材への投資も、やはりこの三十年ぐらい非常に少なかったということがございまして、その中で、ラピダスも一つの例ではございますが、TSMCもそうですが、最近、国内の投資が非常に増えてございます。

 こういう形で、国内の投資を増やしていき、そこで人々に働く場を与えて、そこで高い給与をどんどん増やしていく、こういう形で進めることが、全体としての、デフレからの脱却を含め、この国の経済を好循環に回す最も重要な政策だというふうに理解をしてございます。

佐原委員 おっしゃることはよく分かるんですけれども、やはり、資本主義が余りに、配当とか、そういう、投資をする人はやはり利益が欲しいなと思って投資するわけですよね。配当金とかそういうところに行ってしまうと、会社自体の力がそがれていくということもあるのではないかなと思うんですけれども。例えば、今、公益資本主義というんですかね、その会社が発展していくこと自体が社会を幸せにしていくというような、そういう会社の経営であってほしいんですよね。それが今までは余り反映されてこなかった。

 そこのところを、やはり、これからの経済産業省のお仕事としては、そこら辺を、そこにいる人々、ここで働く人々、そして生活者、それを是非、積極財政出動で、公費でそういうところには力を入れていってほしいなというふうに思うんです。それがきっとこの国の失われた三十年を取り戻すことになるのではないかなと思っています。

 今伺って、皆さんが、日本の技術というものを継承していく、失われてはいけないというお気持ちであることも分かりましたので、大臣もきっとそう思っていらっしゃると思います。

 私は、今までぐちゃぐちゃ言ってきましたけれども、結局、大企業だけがいいのではなくて、そこから、いわゆるトリクルダウンというのはなかったわけですけれども、もっともっとやはり還元していく方法があると思うんですよね。そこで、日本の技術、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代に培ってきた技術の継承、そして、それがまた海外に流出してしまわないような様々な方法をもって、そのためにも、中小零細企業にきちんとしたメリットが動いていくような、そういう経営というんですか、行政を行っていただきたいなと思うんです。

 日本の技術、その底力を守るということは、結局のところ、それに値するような経済的な余裕を持ってもらわなければならないし、それが新しい日本をつくっていくんだなと思うんですよ。なので、いろいろ御質問をさせていただいたんですけれども、これから、皆様の御活躍、Gメンも含めて、適切な、いわゆる企業形態が小さいからといって不利を被らないように、これからも皆様のお仕事を頑張っていただきたいと思います。

 これで質問を終わらせていただきます。今日はありがとうございました。

宮崎委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。

 今日は、まず最初に、新しい技術やビジネスモデルを開発して成長を目指す新興企業、いわゆるスタートアップに関わって質問をしたいと思います。

 政府は、二〇二二年をスタートアップ創出元年と銘打ち、政策を推進してまいりました。スタートアップ育成五か年計画とスタートアップへの投資額の目標について、政府は何と言っているのか、そしてスタートアップの数が足下でどのようになっているのか、お示しいただけますでしょうか。

菊川政府参考人 委員御指摘のスタートアップ育成五か年計画でございますが、二〇二二年の十一月に作成をいたしました。経済産業省でも様々な政策を進めてきたところでございますが、目標といたしましては、投資額を十倍超える規模にするでありますとか、将来においては、ユニコーン百社、スタートアップを十万社創出すること、こういったような目標を掲げております。

 そうした中で、スタートアップの資金調達額、これは地政学リスクの高まり等によりまして、米国等では近年落ち込んでおりますが、我が国におきましては、政策効果も相まっておりまして、近年約八千億円前後と、相対的に堅調に推移をしておるところでございます。

 また、スタートアップの数、目標にも入っておりますが、二〇二三年には約二万二千社ということで、二〇二一年に比べて約一・五倍に増加しておりまして、その裾野は広がっているところであります。

 スタートアップエコシステムの整備に向けて、諸外国と比べて、資金調達額の規模感、またいわゆるユニコーンの数が少ないなどまだ課題が残っているところでございますが、引き続き政策支援を進めていきたいと思っております。

 以上です。

辰巳委員 課題はあるということではありますけれども、スタートアップの数そのものは増えているということでありました。

 しかし一方で、大企業とスタートアップとの取引では、大企業などがスタートアップに対して、知財の無償提供など不当に要求をしたり、共同研究で重要な資料の開示をさせられたり、類似のサービスを勝手に立ち上げられたりと、スタートアップいじめともいうべき劣悪な実態というのが問題になってまいりました。

 日本経済新聞二〇二〇年十一月二十六日付ですけれども、「大企業、新興の知財搾取」と強い言葉で批判もされているほどであります。

 公正取引委員会に確認をしたいと思いますけれども、二〇二〇年十一月二十七日のスタートアップ取引慣行に関する実態調査報告書において、公取は「投資が先行し、資金力も乏しいベンチャー企業においては、取引先との関係で劣位に陥りやすくなる場合もある」と述べています。そして、それに関するスタートアップの意見が紹介をされているんですけれども、どのようなものか紹介していただけますか。

古谷政府特別補佐人 お答えいたします。

 御指摘の実態調査報告書には、スタートアップの取引上の地位についてのヒアリング結果を載せております。

 例えば、スタートアップは、連携事業者との契約に対する依存度が大きく不利な契約条件でも契約せざるを得ない、連携事業者との共同事業について、多額のコストがかかるため取引先の変更が難しい、大企業との取引実績は信用につながるため不利な条件であっても大企業と取引せざるを得ない、スタートアップと大企業では事業規模が違い過ぎて、交渉力は比較にならないくらい大企業の方が強いといった意見がスタートアップから寄せられたところでございます。

 これらの意見やアンケート結果を踏まえますと、実態調査報告では、連携事業者又は出資者から納得できない行為を受けた取引、契約においては、連携事業者及び出資者がスタートアップに対して優越的地位にあると認められる場合が多いのではないかと記載をいたしております。

辰巳委員 ということなんですよね。大企業や出資者との関係で、スタートアップがいかに弱い立場にあるのかということがよく分かる記述だというふうに思います。決して公正な取引環境とは言えない劣悪な状態だということだと思うんですね。

 この実態調査の結果を踏まえて、公正取引委員会と経産省の連名で、スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針、これが二〇二二年三月に策定をされました。

 この指針では、実態調査でも明らかになった問題について、公正取引委員会が独禁法上の考え方等を示し、経産省が解決の方向性等を示すとされたんですね。ただ、公取は、この様々な問題についての、この行為は優越的地位の濫用として問題となるおそれ、この行為は競争者に対する取引妨害のおそれ、この行為は排他条件付取引又は拘束条件付取引のおそれと、独禁法上の考え方を整理をしたんですけれども、その執行強化には踏み出したわけではありません。

 また、今回の下請法改定案の前提となっている、公正取引委員会と中企庁の企業取引研究会、これは、二〇二五年二月二十一日の報告でも、解決の方向性等を示すとされていたにもかかわらず、驚いたことに、全ての問題の背景について、スタートアップ側の法的リテラシーの不足、若しくはオープンイノベーションに関するリテラシーの不足と説明されておりまして、まるで、スタートアップが知識不足だから悪いんだ、こう言わんばかりの記述になっているんですね。これでは、こういう姿勢では、なかなか、問題の解決はできるのか、私は甚だ疑問だというふうに思うんですね。

 知的財産取引適正化に関する論点というのがこの中にあるんですけれども、この中の「課題」のうち、「こうした取組にもかかわらず、」以降の部分を、公取の委員長、読み上げていただけますか。

古谷政府特別補佐人 失礼をいたしました。

 「こうした取組にもかかわらず、なお、知的財産権の不当な侵害が生じているとの報告がある。知的財産権は商品やサービスの差別化を図る上での貴重な経営資源である。こうした資源が不当に侵害されている商慣習があるのであれば看過することはできない。」(辰巳委員「そこまででいいです。ありがとうございます」と呼ぶ)はい。

辰巳委員 公取委員長、看過することができないとまで言っているんですよね。だったら、今のやり方のままでは事態がなかなか打開できないということは私は明らかだと思うんですね。直ちに厳正な対処、執行強化というのが私は必要ではないかと思うんですけれども、委員長、いかがですか。

古谷政府特別補佐人 御指摘をいただきました有識者研究会では、先ほど読み上げました後に、解決の方向性ということで、具体的な知的財産権やノウハウの取引適正化に関する行動規範を示す必要があること、そういった提言をいただいております。

 これからの私どもの執行強化ということで御指摘がありましたけれども、具体的な方針については今後検討していくことになりますけれども、この有識者検討会でも提言をいただいているように、改めて知的財産の取引に関する実態調査を行うとともに、この調査結果を踏まえ、現在ございますガイドラインの見直し等、考えられる対応を検討してまいりたいと思います。

 また、引き続き、問題となる行為の情報収集に努め、例えば、取引先から、営業秘密を不当に開示させられる、ライセンスを無償で提供させられる、共同研究にもかかわらず知的財産を一方的に帰属させられる、こういった事実に接した場合には、しっかりと調査した上で、下請法や独禁法に基づき対処をしてまいりたいと考えております。

辰巳委員 非常に前向きな答弁というふうに私は受け止めました。

 武藤経産大臣、スタートアップが法律の知識をつければいいという、いわば自己責任論だけでは私は解決しないと思うんですね。真に求められるのは、スタートアップに対して圧倒的に強い立場に立っている大企業あるいは出資者に対する実効性のある規制だと私は思います。是非、大企業や出資者によるスタートアップいじめは許さない、実効ある規制に取り組むというふうに、大臣の方から宣言をしていただけませんか。

武藤国務大臣 今、公取の委員長からもお話ありましたけれども、問題の指摘を私もいただきました。

 大企業とスタートアップの企業の間では、共同研究開発における権利の帰属の問題ですとか、知的財産権の無償譲渡の強要が問題となることがあるということであります。

 中小企業庁では、令和三年に、さっき先生おっしゃられたと思いますけれども、知財取引ガイドラインを定めました。その普及に努めることで、大企業と中小企業の知財、知的財産取引の適正化を図ってきているところであります。

 また、スタートアップと出資者の双方における公平で継続的な関係の構築を目的として、スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針を公正取引委員会と連携をして策定をしてきておりますが、例えば、スタートアップ側の所有する知的財産を無償で大企業側に一方的に譲渡させられる場合などは、独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当するおそれがあることを示しております。

 経済産業省といたしまして、下請法や下請振興法の執行に加えて、公正取引委員会と連携をしつつ、大企業とスタートアップ企業の間で適正な取引が行われる環境、これは私としても必要だと思っておりますので、今後とも整えてまいりたいと思っております。

辰巳委員 是非、不当な知財搾取と言われるような現状に対しては厳しく対処していただきたい。大臣もうなずいていただいていますけれども、この打開のためには、当事者任せでは駄目だということも改めて言っておきたいというふうに思います。

 続けて、このスタートアップをめぐる重大な問題があります。それは、スタートアップ企業に対する深刻なハラスメント問題なんですね。女性起業家に対するハラスメント問題であります。

 これは実態調査などでも指摘をされているんですが、例えば、愛人になったら投資をしてやるとか、突然キスをされたなどの考えられない卑劣なセクハラや性加害の実態があります。

 武藤大臣、まず、ベンチャーキャピタルあるいはファンドなどから女性起業家に対するセクハラあるいは性加害、この現状をどう認識しているのか、どう把握しているのか、お答えいただけますか。

武藤国務大臣 報道を承知をしているところであります。

 女性起業家に対する投資家等からのハラスメントが発生している、まさにこういう調査やまた報道があるということは、私も正直言って、これは起業家に限らずですけれども、ハラスメントは絶対にあってはならないと考えているところで、女性起業家が事業を継続し成長させていくためには、前提として、個人の尊厳と安全、安心等が守られるビジネス環境というものが整備されていないといけないことだろう、不可欠であるというふうに承知をしているところです。

辰巳委員 相手の尊厳を傷つけ、不利益を与えるこういったハラスメントは、業態を問わずに絶対にあってはならないことだということだと思うんですね。

 日本のスタートアップにおけるセクシュアルハラスメント調査が研究者の方によって行われました。二〇二四年七月にその結果が公表されているんですね。女性起業家では、過去一年間に五二・四%もの方がセクハラ被害を受けているんです。半分以上の方が受けているんですね。加害者は、投資家やベンチャーキャピタルの関係者、これが四割で最も多かったということであります。

 この調査では、被害者の約三割が見返りを求める対価型のハラスメントの被害に遭っております。つまり、権力側の人間が、その立場を利用して、これをしなければ投資しないよ、出資しないよ、こういうふうに脅しつけるわけですね。まさに、弱い立場にある女性起業家への加害を行っているということで、非常に悪質だと私は言わなければならないと思います。こうした構造が背景にあって、報復が怖いというなどの理由で、被害を周囲に訴えたのは一四・八%にとどまっているということも分かっております。

 大臣、このスタートアップ業界でのハラスメント、これが本当に深刻になっている、その背景の一つに、こうした出資者と起業家をめぐる構造的な問題、これがあるという認識はございますでしょうか。

武藤国務大臣 起業家の中、女性というだけにこだわらず、一般的に言って、出資者と出資を受けるスタートアップとの力関係、ここのことだと思いますけれども、スタートアップの技術的な優位性ですとか事業の進捗状況、また資金調達の環境等によるため、一概にいずれが強いというものではないんだと思いますけれども、一方で、特に起業する段階では、事業の見通しが立っていない中で資金が必要となることから、出資側であるベンチャーキャピタル等の立場が強くなるということは、これは起こり得るんだろうと思います。

 ハラスメント防止を含めたコンプライアンスの確保、これは責任ある企業であるための前提でありますので、スタートアップエコシステムの健全な発展に向けては、官民で連携をしながらハラスメント防止に取り組んでまいりたいというふうに思います。

辰巳委員 この女性起業家へのセクハラは、個人が対応、対策をすればいいということではなくて、政治としてどう防ぐのか、そして、加害が起きたときにどう処罰するのか、あるいは救済をしていくのかということが重要な課題となってくると思うんですね。

 今、世界では、国連ビジネスと人権に関する指導原則、これが二〇一一年に国連人権理事会で全会一致で支持をされて、国家だけではなくて、企業にも人権尊重する責任があるという考えの下、その企業で働いている従業員だけではなくて、顧客あるいは投資先の人権も守るべきだというふうにされているわけなんです。

 起業家の働く環境是正のために取り組んでいるスタートアップユニオンは、日本でユニコーン企業が誕生しないのはなぜか、資金が充足していないからなどの理由だけではなくて、セクハラを受けて撤退を余儀なくされたり、性差別を受けてビジネスチャンスを逃したり、育児の両立が経営の弊害となるような様々な問題があります、まずは安心して起業することができるような環境整備をする必要があります、こう述べているんですね。

 その上で、五つの要求をされています。ちょっと読み上げますね。

 一つ目は、ハラスメントの禁止。特に起業家特有の問題、これを明示しての禁止をしてほしいということ。二つ目は、起業家の権力構造を考慮した対策、これをやってほしい。三つ目は、育休問題の具体的な解決策、これをやってほしい。四つ目は、予防策、教育の強化。研修の導入とか相談窓口の設置とかストレスチェックの導入、これをやってほしい。五つ目は、加害者に有利な社会構造の変革。隠蔽企業の公表であるとかハラスメント対策企業の優遇であるとか、こういうことをやってほしいという五つの要望をユニオンはされています。

 いずれも私はもっともなことやというふうに思うんですが、裏を返せば、今申し上げたようなことはどれも実現がされていないということだと思うんですね。

 日本にはハラスメントそのものを禁止する法律がないという重大な弱点があるんですけれども、それでも、企業の中においてハラスメントを起こさない雇用管理上の措置というのは、この間つくられてまいりました。例えば男女雇用機会均等法、事業主には、労働者がセクハラの被害を受けないように措置を講じることが義務づけられております。二〇二四年十一月施行のフリーランス新法でも、フリーランスに対するハラスメント防止が企業に義務づけられております。しかし、これらは、あくまで企業の中、企業への義務づけなんですね。労働者ではない起業家に対するセクハラなどは、これは対象にはなっておりません。

 ですから、私、実態をお聞きしましたけれども、ベンチャーキャピタル、会社を起こしておられる方で、自分のところの従業員に対してはセクハラはしないわけですよ。だけれども、女性起業家に対してはセクハラしまくるわけですね。こんな卑劣な実態、これはやはり変えていかなければならないと思うんですね。

 一方で、私が注目をしたのは、経済産業省所管の官民ファンド、産業革新投資機構、JICですね、二〇二四年十二月四日に、このベンチャーキャピタルに出資する際の要件にハラスメント防止規程というものを盛り込みました、追加したんですね。これはなぜ追加したのか、理由を説明していただけますか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二四年三月になりますけれども、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会が公表したDEアンドIガイドラインにおいてハラスメントや差別の根絶に向けた方針が示されるなど、スタートアップ業界においてハラスメント対策が喫緊の課題と認識されていたというふうに承知をしております。

 そういった中、産業革新投資機構、JICとしても、DEアンドIを推進する取組の検討を開始していた中、国内ファンドの成長支援を行う官民ファンドとして、率先してこのような取組を進めることはスタートアップ業界の健全な発展において重要であるとの考えの下、出資要件の見直しに至ったというふうに認識してございます。

辰巳委員 これ自体はある意味では当然のことなんですよね。対応が遅過ぎたぐらいだと私は思うんです。

 ただ、問題は、このJICが投資する先という話だけではなくて、やはり業界全体を所管する経済産業省の姿勢だと思うんですね。

 二〇二四年十月十七日、経産省は金融庁とともに、ベンチャーキャピタル向けの新指針、ベンチャーキャピタルにおける推奨・期待される事項というのを発表をいたしました。この中には、コンプライアンスという言葉は出てくるんですけれども、ハラスメントという言葉は出てこないんですね。

 大臣、これは何でハラスメントという言葉が出てこないんでしょうか。経産省でも、いかがですか。

菊川政府参考人 ハラスメントの防止含めてコンプライアンスの確保は、政府も責任を持って取り組まなきゃいけない課題としております。

 今御指摘のあった昨年十月に金融庁とともに取りまとめたものですけれども、この中で、ハラスメント防止を含めコンプライアンス管理の体制確保を推奨し、その遵守を働きかけているところでございます。

 そういった意味で、ハラスメントの中身は、この中に入っているというふうに理解をしてございます。

辰巳委員 ちょっと整理しますね。

 この新指針ですよ、ベンチャーキャピタルにおける推奨・期待される事項、これが発表されていますわね、この中にはハラスメントという言葉はないでしょう。コンプライアンスという言葉しかないですわね。そこだけお答えいただけますか。

菊川政府参考人 文言としては盛り込まれていないというところでございます。

辰巳委員 これは、大臣、ないんですよ。

 恐らく経産省が言いたいのは、コンプライアンスの中にハラスメントの防止というのも含まれているんですということは言いたいというのが先ほどの答弁だと思うんですけれども、大臣、これはやはり書かなきゃ分かんないですわ、書かなきゃ分かんない。

 なぜなら、実は、このコンプライアンスという言葉だけしかないこの指針が出される前に、いわゆるパブコメがされているんですよ。パブコメがされておりまして、このパブコメにこういうのがあるんですよ。投資家によるスタートアップ、特に女性起業家へのハラスメントが大きな問題となっている、最近公開された調査では、半数以上の女性起業家が被害に遭っているということが明らかになった、こうしたハラスメント発生を防止することが不可欠である、投資先のハラスメントを禁ずる規定を必須とすべきではないか。これはパブコメの意見なんです。

 だから、コンプライアンスと書いているだけでは分からないよ、ハラスメントということをちゃんと、セクハラでもいいですけれども、ちゃんと書いてくれということがパブコメに寄せられているわけですね。

 大臣、次の指針はいつになるか分かりませんけれども、これはやはり、セクハラ、とりわけ女性起業家に対するセクハラ、半分の女性起業家がセクハラに遭っている、性被害に遭っているわけですから、これはやはり、セクハラ、ハラスメント、この文言を用いて、駄目だよ、許されないよ、こういう方針をちゃんと入れ込んでいただきたい。大臣、いかがですか。

武藤国務大臣 足りない部分、もしあれでしたら、また後で補足させていただきます。

 先ほどの、菊川局長からもちょっと御説明いただきましたけれども、ハラスメントの防止規程の中での、今の、ハラスメントが入っていないじゃないかと。

 ですから、委員御指摘のとおりだと思います。そういう意味の中で分かりやすい表記への修正を検討するように今後働きかけていきますし、このハラスメントの防止というのは、コンプライアンスの確保というものとハラスメントの防止、これはもう責任を持って政府がやっていかなきゃいけない話だというふうには私も思います。その課題と認識は共有するところです。

 経済産業省で昨年十月に、ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項、これは金融庁とともにまとめてきているところだと思いますが、この中で、ハラスメント防止を含めてコンプライアンス管理という観点での体制確保を推奨し、その遵守を働きかけているところでもあると思っています。

 業界団体であるJVCAにおいて、多様性、公平性、包摂性を実現するためのガイドラインを策定した上で、研修の実施を含め、ベンチャーキャピタルの業界におけるハラスメントを根絶するための取組も強化をしているところだと承知をしたところであります。

 ハラスメントはいかなる組織においても許されない行為でありますので、こういう認識の下、スタートアップエコシステムの健全な発展に向けて、官民で連携しながら、ハラスメント防止をこれからも進めてまいりたいというふうに思います。

辰巳委員 是非これはきちんと文言を入れ込んで、セクハラ、ハラスメントは絶対許さない、企業の中でのハラスメント防止、これは当然なんですけれども、企業を離れて、女性起業家に対するハラスメントは絶対許さないという、これを言葉で示していただきたいというふうに思います。

 さて、大臣、万博、いいですか。

 一週間たちました。我が党の機関紙である赤旗あるいは大阪民主新報、フリーランスが、この間、記者会見が許されない、あるいは通行証、これが発行されていないという問題があるわけなんですが、大臣、この間いろいろな調査も、過去の事例も調べてということでありましたけれども、一週間たちましたので、是非認めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 御質問いただいて一週間たったのですかね。おとといの委員会でも、失礼いたしました、もうちょこっとお時間をいただきたいということでお話をしました。

 事務方に類似事例の対応を整理をするように指示をしたところでありますけれども、過去の例を調査をしますと、二〇〇五年の愛・地球博、愛知県ですけれども、当時の博覧会協会が策定した基準に基づき、しんぶん赤旗の求めに応じて、一時的なメディア入場許可証が発行されておりました。そして、東京オリパラですけれども、ここはしんぶん赤旗への開催期間中のAD証発行は確認されなかったものの、会期前の組織委員会の記者会見には出席をされていたことが確認できました。

 メディア関係者用の入場証の発行を含めたメディア対応についてですけれども、一義的には博覧会協会の裁量にこれは委ねられるべきものでございますが、こうした点を踏まえた上で、具体的にどのような対応が可能であるのか、事務方を通じて、博覧会協会において実務的な検討を行わせることといたしました。

辰巳委員 今の答弁は過去あるんだという答弁ですから、当然それに倣って、申請があればそういう対応をしていただけるものだというふうに受け取りました。

 大臣、来週水曜日にも委員会があるそうなんですよね。それまでには、赤旗、フリーランス含めた記者会見と、そしてAD証発行ができているように私の方からも期待をして、私の質問とさせていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 今日は、やはりトランプ関税対応、そして、しつこいですけれども、電力の安定供給、そして本題である下請法改正について質問させていただきたいと思います。

 最初のトランプ関税については、自ら言うのもなんですけれども、いかなる環境変化もビジネスチャンスと捉える商社出身者としての経験とビジネス感覚を生かして、トランプ関税対応に少しでも役立つ提案をさせていただきたいと思っています。

 その経験を少し話させていただきますと、私はニューヨークに五年半駐在していましたけれども、専門は電力プラントというか電力事業ということで、実際、メキシコ電力庁、CFE向けに二件、八百億円ぐらいの商談を決めたことがあるんですけれども、それは我々にとってマンモス、マンモスゾウ。けれども、マンモスゾウは毎年毎年仕留められるわけではないので、独立採算の採算責任者としては、常に黒字を出せるように鹿を追いかけ、そしてウサギも追いかけていくわけなんですね。

 そのウサギの一つとして、実は私、日産メキシコ工場がありますけれども、日本でいうとサニーに当たる車をそこで造っておったんですけれども、その車を南米チリに輸出するという三国間貿易をやっておりました。もちろん、自分たちの会社がリスクを負っての話です。

 なぜそうなのかというと、日本から直接輸出するとチリの関税が高いんです。けれども、南米南部は御承知のとおりメルコスルという貿易協定があって、メキシコは準加盟国なので、メキシコから輸出すると関税がぐっと下がって競争力がつくんですね。それでそういうことをやって輸出していました。

 少し車種がよくなる、高級車になると、これはまあ時効なので今言っていいんだろうと思うんですけれども、実際は日本でほとんど、九九%造っているんだけれども、メキシコにあえて輸出して、そこでよくやるのは、ボルトを一本、二本つけて、そして原産地をメキシコにしてメキシコから売る、そうするとまた関税が安くなる、こういうようなことを経験しておりました。

 このことについて、私がこの後ちょっと提案したいと思っているんですけれども、その前に一点、赤澤大臣が渡米され、そしてまた武藤大臣もカウンターパートとこれから交渉を重ねていくと思うんですけれども、私のちょっとまた経験を踏まえて、正規の交渉のテーブルにのる話ではないんですけれども、ちょっとコーヒーブレークだとか軽く食事をしたりする際に是非使ってもらいたいという話です。

 それは、さっきマンモスのほかに鹿とウサギと言いましたけれども、鹿も必要だということで、私は、南米コロンビアとかペルーとかアルゼンチンに、米国製のキャタピラー、それを南米の鉱山会社向けに売っておりました。アメリカの会社というのは南米リスクを取らないですから、私の会社がそのファイナンスリスクを取って、南米リスクとその信用リスクを両方取るわけですね。ですから、キャタピラー社は売り渡しておしまい、リスクフリーでお金が入ってくる、こういうことをやっていたんです。

 九〇年代の半ばでありますけれども、大臣も御存じのとおり、米国の中西部の州というのは日本からの企業誘致を一生懸命求めていることがあって、ちょっと何州だったか忘れましたけれども、カンザスシティーで、三つぐらいの州が一緒になって日本からの誘致を促進しようというセミナーがあって、私、まだ会社員時代ですけれども参加していて、その話をしたんです、実は。日本企業の対米投資もあるけれども、実は米国企業の製品を我々日本企業がリスクを取って海外に売っているんだという話をしたら、会場から拍手が起こりましてね。

 ですから、今言った対米投資だとか関税を下げることに比べたらすごく小さな話かもしれませんけれども、さっき言ったコーヒーブレークのときとかに、そうやって日本企業がアメリカ企業のために貢献している、こういう話もあるんだという話は是非一つのネタにしていただきたい、このように思います。

 それで、先ほどの、今度は鹿の話に関わってくるんですけれども、さっき言いましたように、商社もあらゆる環境変化をビジネスチャンスと捉える。ですから、商社のみならず多くの民間会社が、この変化を必ず自分の利益に変えてやる、そう思いながら今検討していると思うんですね。

 私、誰からも話を聞いたわけじゃなくて、私自身が思いついた一つの方法があるんです。

 それは、現在カナダに自動車を輸出するとたしか六・一%で、今TPPに入っているから段階的に下がっている最中ですよね。正確に今何%か知りませんけれども、少なくとも六・一から五年間でゼロになる、その過程にあるというふうに思っていますが、日本から、本来アメリカに輸出してもいい車をカナダに輸出するんです。

 そして、米国の例えばトヨタならトヨタのディーラーとカナダにあるトヨタのディーラーとで、場合によってはジョイントベンチャーをつくってもいい、連携をするでもいい。アメリカ人が米国の自動車販売店に行って車を買いたいと思ったら、えらい高い、関税で。そのクレームを受けたアメリカのディーラーがカナダのディーラーに連絡して、うちのお客にカナダのおたくを紹介したから、そこで求める車を売ってくれと。

 輸入しないんです。カナダからアメリカに輸入しない。日本みたいに車庫証明もないし。なので、カナダで買って、例えばオレゴン州とかワシントン州の人は、バンクーバーに行って、カナダのブリティッシュコロンビアのナンバープレートをつけたまま、ニューヨーク州とかミシガン州の、カナダのオンタリオ州と隣接したところは、オンタリオ州のプレートをつけたまま三年間でも四年間でも十年間でもアメリカ国内で使い続ければいいんです。そうすると関税はゼロなんです。だから、行くときだけツアーにするか。それは、二五%分、日本円でいえば百万、百五十万に比べたら、十万そこらの話です、カナダに行くまで。そうやると、多分これは合法だと思うんです。

 同じように、カリフォルニア南部であれば、今度はメキシコのティファナならティファナに行って買って、メキシコ・ナンバーのまま乗り続ける。

 そうすると、今言った六%以下、場合によってはゼロで事実上アメリカに輸出ができる、こういうことになるんですね。

 もしかすると、そういう動きが出てきたら、それはトランプ政権として冗談じゃないということになるかもしれない。一方で、いろいろな理屈をトランプ政権に対してぶつける、これももちろん当然やらなきゃいけない。けれども、一方で、そうやって米国民は、この関税に辟易として、少しでも安い方法で、合法的な方法で車を求めているんだ、それがトランプ政権に対する圧力になるというふうに思っています。

 それと、マキラドーラの話をしようかと思ったんですけれども、御承知のとおり、アメリカ、メキシコの国境では、マキラドーラという、メキシコ側にあって、保税加工地域がありますけれども、恐らく、トランプ関税が二五%のまま下りなければ、マキラドーラが事実上、今言った、米国のディーラーが結託した車の販売地域になってくると思います。

 こういう具合に、これは私の思いつきではあるんですけれども、民間はありとあらゆる方法を検討してやってくると思っています。

 いい意味で、政府として米国政府ににらまれるわけにはいかないというのは分かりますけれども、国と民間、いい役割分担をさせながら、時には、これは民間が勝手にやって、利益のため、生きていくためには仕方ないのでというようなことも踏まえながら、是非官民でスクラムを組んで交渉に臨んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 大変奇抜な御提案をいただきまして、ありがとうございます。アメリカのディーラー、それぞれがやはり、外国というか、アメリカ人が多いので、そこまで彼らが本気でやるのかなという正直な気持ちはありますけれども。

 委員のように、日本の商社マンというのは、我々の若い時代、大体同じ世代ですからあれなんですけれども、本当に世界を駆け巡って、日本の通商をめぐって日本のポジションをずっとつくってきた。私も三井何とかというところに一回行ったことがあります。入社試験の希望に行こうかなと思ったんですけれども、やめちゃいましたけれども。

 本当に、ある意味で、こういう今の世界の中で日本の礎をつくってくれたのはまさに商社マンだと思うし、私が経産副大臣をやったときも外務をやったときも、商社の方々とは地元でいろいろお会いしながらいろいろな意見交換をしました。ですから、本当にたくましさもよく分かっているところですし、今回の関税問題というのは、商社の方々がどういう形で今後また考えてやられるのか、ある意味でたくましさはありますけれども、やはり日本の政府としてどういう応援ができるかも考えていかなきゃいけない話だと思っています。

 そして、今の、マエラドーラでしたっけ、メキシコの保税地区、私の地元でも出ている会社があります。本当に心配していました。一体これから先どうなるのというところは言っていらしたので、我々としても、できるだけ先見性を取れるように、向こうとももちろん交渉はしますし、そういう形で今後の対応を考えていきたいというお話で、いつでもまた困ったことがあれば聞きますよという話はしてあるので。

 また、委員、これからもいろいろなお知恵を拝借しながら、その局面局面、今、本当にしょっちゅう変わっている状況ですので、赤澤大臣も今日帰ってこられると思いますので、また対策を打ちながら今後とも進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

吉良委員 ありがとうございます。前向きなコメントをいただきました。

 あと一点だけ、このトランプ関税について、これを最後にしますけれども。

 いろいろなカウンターパート、トランプ政権に対する交渉というのがありますが、私、急がば回れで、結構影響力のあるのは、一年半後に中間選挙があります。誰もが分かっている、トランプさんだけ分かっていない。つまり、アメリカがずっとこの関税でインフレになってみんなが困る、その国民の不満が、正直言って、次の下院議員選挙、改選上院議員選挙に向かうんですよね。

 ですから、安定した、必ずブルーが勝つ、必ずレッドが勝つというのはありますけれども、中で、やはり激戦区というのはありますので、その激戦区を戦う共和党の下院議員、それも有力議員、そして改選上院議員を中心に、是非、その方々に、正論と、こうなりますよ、また少なくともそうなる傾向は既にデータで出ていますよということをロビーイングしていただきたいと思います。

 それに、もしあれば。

武藤国務大臣 この前もアメリカの議員さんたちが私どものところにも参りました。当然、委員の御指摘のとおり、お話をさせていただきました。

 今、私ども政府もそうなんですけれども、今日これだけ先生方がいらっしゃるので、やはり、日米議連とか、様々な形で今までのおつき合いもある先生方は多いわけで、今言った企業のいわゆるロビイスト活動も当然大事だと思うし、先生方にも是非そこら辺は御協力をいただきながら、今のアメリカが間違った方向に行かないように、これは是非またこれからもお導きをいただかなきゃいけないと思いますので。もちろん、我々もしっかり頑張ってまいります。

吉良委員 ありがとうございました。

 次の電力安定供給の話をさせてもらいたいと思います。

 前回の質疑の中で、国策民営化ではないか、国と東京電力、あの福島事故について、共同責任ではないかという提起をさせてもらったところ、大きな反響がありました。特に、国策民営というのは分かっていたけれども、その次に私が言った許認可、いわゆる防潮堤をこの高さにします、それから非常電源は地下に置きます、それを国は最初、通産省は許可したんでしょう、その許可って何なのということでその許認可の話をしたら、共同責任だということがよく分かったという反響でした。

 もう前回のことは繰り返しませんけれども、共同責任ということについては今経産省も十分認識していると思います。それゆえ、前回私が言いました、一つは、共同責任として廃炉を国の責任においてやったらどうだという話をさせてもらいました。

 改めて、今、東京電力は、廃炉、補償、そして電力の安定供給ということをやっているわけですけれども、この三つを全部しょいながらということであれば、あえて厳しい言葉を使わせてもらうと、国有化状態ですから、生かさず殺さずなんです。今も下請というか受注企業に対しての議論がずっとやられていますけれども、よく言われる、頑張ったら報われる、これがない組織、企業に実は夢はないんですね。

 一方、世間から見れば、あれだけの事故を起こしたんだから、それはもう一生その十字架をしょって歩き続けろ、これはこれで、世間のある種そういう社会的制裁とでもいいますか、これは分からぬでもありません。

 しかし、私がこれまでずっと言ってきているように、エネルギーの安全保障、そして国内での電力の安定供給、このことを考えたときに、やはり東京電力も、生かさず殺さずではなくて、きちっと社員が頑張ったら報われる、頑張ったら業績を上げられる、業績が上がればそれは社員の待遇に反映できる。今、世の中、賃上げ賃上げとなっていますけれども、恐らく東京電力だけは、上がったとしても、大きく賃上げをしたら批判されるだろうと思います。

 それを考えると、私は、繰り返しますけれども、今、東京電力が負っている廃炉と補償と安定供給の中で、国が代わってやれるものはこの前言った廃炉、そして補償もやれます。実質、お金については交付国債で事実上今は国が出しているわけですから。そういう意味で、普通の企業として、生かさず殺さずではなくて、頑張れば報われる企業というふうに変えていくためにも、廃炉と補償について国が引き受けて、そして電力の安定供給に専念させるべきだ。これを、この前と重複するんですけれども、あえてもう一度大臣の見解を問いたいと思います。

武藤国務大臣 今からいうと七年前になりますか、副大臣をさせていただいたときに原子力災害対策本部長をいただきまして、福島、一Fに行って、東電の方々とお会いしました。大変そういう意味では頑張っていただかなきゃいけません、そして、東電の責任、これはもう十分御理解をいただいているところなんですけれども、国としても一生懸命応援するから、しっかりまず廃炉をやっつけようよという檄を一応飛ばしてきました。

 そういう中で、何回となくそれからも一Fに行っていますけれども、東電のある姿というのは、先生おっしゃられるような点もございますし、いろいろな皆さんの御意見もあるわけです。

 ただ、今の日本の安定した電力の供給の確保という意味では、やはり東電にもしっかり、これはやり直していかなきゃいけません。その意味では、記録というのも大事ですし、最近、脱炭素電源オークション等で、いろいろファイナンスの問題も、我々としても新しい仕組みをつくりながら、その一環として、東電にもこれからも頑張ってもらわなきゃいけないとは思っています。

 しかし、やはりその責任というものは大変重いものがあり、これは政府としても当然ですけれども、同じ責任をしょって頑張っていかなきゃいけない、それが今の日本の状況だと思っていますので、また先生から知見をこれからもいただきたいというふうに思っています。

吉良委員 ありがとうございます。

 東電に電力の安定供給をというときに、今やはりひっかかっているのが、柏崎が動いていないということです。

 沖縄に米軍基地が集中しているということについて、これは自民党の皆さん方も、沖縄の皆さんの気持ちを考えて何とかしたいと思っている。そういう意味で、沖縄だけ見たときの部分最適を見れば、本当にそのように、米軍基地を全部グアムに、ハワイにと思うけれども、日米同盟というか、よく言われる厳しい安全保障環境、国全体の全体最適を考えたときには、沖縄の皆さん、最大限国として寄り添ってサポートしますからお願いしますというのが、今の沖縄、米軍基地の関係だというふうに思っています。

 だから、そういう意味で、柏崎についても、部分最適というより、ずっと言っていますけれども、電力の安定供給という国の全体最適を考えたときに、この柏崎の再稼働についても国がやはり前面に出ていくということをお願いしたいと思います。ただ、これはもう答弁しづらいというのは分かっていますから、お願いだけして、次に移りたいと思います。

 下請法の改正、これまでも、前回また今日も議論がほぼ出尽くしていると思っています。私自身も、この法律の目的やよし、趣旨やよし、内容やよしと思っています。

 問題は、先ほど大臣も商慣習という言葉を使っておられましたし、今日、どなたかの質問の中で協議というものについての定義の議論もありました。私は、今言った、法律の目的やよし、内容やよし、ただ、その実効ある運用、この目的どおりに元請も下請もしていくという、そこが一番難しいと思っているんですね。

 商慣習という意味では、ちょっと私、古い感覚の人間かもしれないですけれども、実は、日本のある意味ではビジネス慣習というのは、例えばの話、昼間、会議室に行って話をすることは何かというと、三十分の会議室での話の内容というのはゴルフの話です。いや、ムトウ部長、この前、何とかカントリーの五番のロングホールのあのティーショット、すごかったですね、キャリーで二百五十は飛んでいたんじゃないですかという話をして、いやいや、あれはまぐれですよと言いながら、そうまぐれと言うときに、おっ、いかなる要求も俺は応えてやるぞという気になっているわけですよね。

 その会議で決まることというのは、じゃ、次また何とかクラブで、日曜日行きませんかと。ああ、それはいいですねと言って会議は終わるんです。そして、実際、日曜日か何かでゴルフ場に行って、一緒にムトウ部長と歩きながら、ムトウ部長、この前お願いしていた件ですねと言って、ゴルフ場で事実上の協議が、商談が行われるわけですね。

 購買担当が、ちょっとこういう場で言っていいか、すごくきれいな女性がたくさんいらっしゃるお店が好きだという場合は、そういうところにお誘いをして、実質的にそこが協議の場になるわけですよね。

 これが実は日本のビジネス慣習なんですよね。まず、こういうところも果たして本当は協議になるのかと思っているんですけれども、ちょっとそこはもうあえて問いません。

 そういう日本の接待する側、される側、これが実は上下関係そのものです。これがある中で、今言った目的やよしのこの法律を実効あらしめる、その具体策がどういうものであるか、具体案というものについてお聞きしたいと思います。

武藤国務大臣 昔、植木等さんという人がいて、サラリーマン何とかという映画があったのを何か今思い出しちゃいましたけれども。

 委員御指摘のとおり、企業の取引実態は、これは今はもう様々になってきていると思います。例えば、価格交渉のタイミング、場所にしても、これは業種ごと、企業ごとに違いがありますので、下請法の執行についても、こうした実態、違いを踏まえて適切に行われなきゃいけないんだろうというふうに思っています。

 下請Gメンが把握した各業種ごとに整理した取引実態の情報については下請法の執行にも活用してまいりますし、また、今回の下請法改正で、各事業所の所管庁、ここに対しても事業者へ指導する権限を付与することとした、これも案外大きいんだと思います。また、各省との連携によって、業界ごと、それぞれ先ほど委員がおっしゃられたように様々なパターンがあると思いますので、商慣行に即して適切に執行されなければいけないんだと思います。

 また、下請の名称、この変更のみならず、取引担当者の意識改革、ここが一番難しいんだと思いますけれども、実際に価格交渉、転嫁が行われる取引慣行をしっかり定着させていかなきゃいけない、これがまさに重要なことだろうと思っています。

 あとは、周知の問題がありますけれども、ここはもう今までも何回となく皆様からも御指摘をいただいているので、ありとあらゆる形で、リーフレットなども含めて、価格交渉を後押ししていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

吉良委員 具体的手段としては、まず考えられるのはおっしゃるとおりGメンだと思うんですけれども、でも、陣容はやはり圧倒的に足りないですよね。その拡充、コストとのバランスを考えながらやっていかないといけないと思いますけれども、私、実は、今大臣もいみじくもおっしゃった、最終的には意識なんだと思うんです。

 今回も、発注者とか受託者とか、名称は変えていますけれども、変えただけでは、意識が変わらなければ実態は変わらないと私は思っています。

 実は私、ウクライナ戦争で、絶対キーウと言わないんです。キエフと言い続けています。別に、ロシアの方が大事なんだ、そんなことじゃないんです。平安時代から続く言霊思想の中で、じゃ、キーウと言い換えたら停戦に持ち込めるのか、ウクライナの人たちの犠牲者が減るのか。そういう、言葉を換えて、何かウクライナに寄り添っている感といいますか、何かやっている感を出して逆に具体的なことをしないということを私は危惧しますので。

 かといって、さっき法案の中身やよしと言っていますので、これは名称変更も私はいいことだと思っていますけれども、最終的には意識の改革が大事だというふうに思っています。

 そういう意味で、もう時間がなくなってきたので、実は先日、地・こ・デジの委員会で、伊東大臣にではなかったですけれども、私は、地方の国立大学を、維新さんには申し訳ないけれども、今維新が提起している私立も含めた高校の無償化ではなくて、高校については公立を前提とした無償化で十分、私立の人たちは自己責任で、私立に行きたいんだったらそうすればいい、そこに国があえて税金を使って後押しする必要はないというのが私の考え方です。一方、やはり経済的に貧しい家庭の人たちは地方の国立大学は入学金も授業料もゼロだという状況をつくり出す必要があって、貧しい人たちのための最後のラストリゾートの高等教育機関にすべきだということを申し上げました。

 その際、もう一つ言ったのは、そして、地方の国立大学、あえて、上から目線とかじゃなくて、本当に大事だと思って、職業訓練校にしろと。やはり職業に直結したことを教えていく場にすべきだ、そしてそれはその地域の人材を育てていく場にすべきだということ。

 そして、今日申し上げたいのは、意識を変えていくためには、やはり中小企業の人たちの、いろいろな意味での広い視野を持ってもらう必要があると思っていまして、というのは、大企業の発注者で困るのは、気持ちは分かるけれども、幾ら上げる、どういう背景、どういうデータ、どういう理由なの、稟議を上げて、稟議を通して決裁を得なきゃいけない、その稟議に必要な情報をもらえないというのがあるんですね。

 ですから、そういうような日本のビジネス慣習というか、大手の社内の仕組みだとか含めて、受託者の方にいろいろな意味でのビジネス的な知識を、誰でもが無料でそれを受講できてという中で意識改革が双方とも行われるようにすべきだというふうに思っていますが、時間が終わったので、もう答弁は無理ですかね。

 では、終わります。ありがとうございました。

宮崎委員長 経済産業大臣は御退席いただいて結構でございます。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 この際、本案に対し、小泉進次郎君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び有志の会の六派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山岡達丸君。

    ―――――――――――――

 下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山岡委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び概要について御説明をいたします。

 近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、発注者、受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる構造的な価格転嫁の実現を図っていくことは大変重要であります。中小企業の価格転嫁が道半ばの中で、本法律案の意義及び趣旨については大きく評価をいたします。

 一方で、春季生活闘争の労使協議は通例、毎年一月の経済団体及び労働団体との懇談会から始まっており、施行日を公布から一年以内の政令で定める日としている本法律案の効力が、令和八年の春闘の労使協議に間に合うかどうかは微妙な日程となっています。むしろ、本法律案の施行期日を明確に定め、その効力の予見性を高めることにより、施行日前後の企業間の価格交渉にもその影響が及ぶことが期待でき、来年の春闘を見据えた中小企業の賃上げ原資の確保に着実につなげていくことができるものと考えます。

 折しも米国トランプ政権による一律関税や相互関税措置が進められている現下の状況は、日本国内の成長マインドに水を差しかねず、価格転嫁を着実に行う環境を少しでも早期に整備することは、日本の産業のサプライチェーン全体が支え合い、困難な状況を乗り切って適正な賃金につなげていくためにも重要であります。

 本修正案は、施行期日を更に明らかにすることで、令和八年一月から行われる見込みの春季生活闘争での本法律の実効性を確保するため、所要の規定の整備を図るものであります。

 次に、本修正案の内容について御説明申し上げます。

 本修正案は、附則第一条の施行期日について、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」から「令和八年一月一日」に改めることとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及びその内容の概要でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をいただけますようお願いいたします。

宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、小泉進次郎君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、新谷正義君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山崎誠君。

山崎(誠)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 一 困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていくとの中小企業憲章の理念を踏まえ、我が国の経済活力の源泉である中小企業が、その力を最大限発揮できるよう、労務費や原材料費、エネルギーコストの価格転嫁を更に推進するため、必要な措置を検討すること。

 二 取引の適正化による価格転嫁から賃上げにつながる好循環が継続する社会の実現に、国民全体の理解の醸成が図られるよう、取組を進めること。

 三 協議を適切に行わない代金額の決定等の禁止について、その違反に対して迅速かつ的確に対処するために必要な措置を講ずること。特に、該当する違反行為については、具体的な基準を示すこと。さらに、委託事業者と中小受託事業者の代金に係る協議が形骸化することのないよう、必要な措置についても併せて検討すること。

 四 本法において、適用基準として従業員数の基準を追加したが、今後も適用対象の見直しを検討し、本法の効果を高めるよう努めること。

 五 本法施行後に、新たな手段による適用逃れなどの事例が起こらぬよう、中小事業者や中小企業団体などとの情報共有や連携強化に更に努めること。また、適用逃れと見られる事例が発生した場合には、速やかに対策を講ずること。

 六 本法に基づく検査等が実効的に行われ、あまねく全国において適正な取引の確保が図られるよう、公正取引委員会の体制の抜本的な強化を図ること。また、本法施行後三年を目途に、執行体制について、人員の増員や更なる関係省庁間の連携の強化を含めた必要な見直しに努めること。

 七 本法をはじめとする価格転嫁等の取引適正化推進に関する諸施策や「下請」等の用語の見直しについて、委託事業者及び中小受託事業者に対する一層の広報等の充実に努め、周知徹底を図ること。

 八 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針は、価格転嫁の促進に効果が認められているものの、その認知度は低い状況であることから、政府を挙げて周知徹底を図ること。

 九 中小受託事業者まで適正な労務費を確保する等の観点から、本法の施行と並行して、各業界における理解の醸成に努めるとともに、現時点で二十一業種に限られている「下請適正取引等推進のためのガイドライン」の策定を幅広い業種に拡大するよう努めること。各省庁にあっては、所管する業界についてガイドラインの策定を進めること。あわせて、既に策定されているガイドラインにおいても、本法の趣旨が反映されているかどうかを点検し、適宜更新をすること。

 十 サプライチェーン全体で価格転嫁等の取引適正化を推進するため、本法の対象とならない取引における優越的地位の濫用行為に対しても、引き続き独占禁止法に基づき、厳正に対処すること。

 十一 中小企業・小規模事業者が個々では解決できない課題に対応するため、全国中小企業団体中央会を通じた中小企業組合の設立指導や運営指導に取り組むこと。また、中小企業組合が主体となって、事業者と交渉を行うことで価格交渉力を強化できる団体協約の活用について周知を図ること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、伊東国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊東国務大臣。

伊東国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいります。

 よろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮崎委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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