衆議院

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第14号 令和7年5月14日(水曜日)

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令和七年五月十四日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 井上 貴博君

   理事 勝俣 孝明君 理事 加藤 鮎子君

   理事 中谷 真一君 理事 城井  崇君

   理事 神津たけし君 理事 森山 浩行君

   理事 奥下 剛光君 理事 西岡 秀子君

      石橋林太郎君    大空 幸星君

      大西 洋平君    鬼木  誠君

      梶山 弘志君    加藤 竜祥君

      金子 恭之君    工藤 彰三君

      国定 勇人君    栗原  渉君

      小寺 裕雄君    小森 卓郎君

      高見 康裕君    田所 嘉徳君

      谷  公一君    土田  慎君

      土屋 品子君    西田 昭二君

      平井 卓也君    広瀬  建君

      三反園 訓君    森下 千里君

      山本 大地君    阿久津幸彦君

      尾辻かな子君    小宮山泰子君

      齋藤 裕喜君    篠田奈保子君

      下条 みつ君    白石 洋一君

      津村 啓介君   長友よしひろ君

      西川 将人君    伴野  豊君

      松田  功君    馬淵 澄夫君

      矢崎堅太郎君    谷田川 元君

      阿部 弘樹君    井上 英孝君

      徳安 淳子君    中司  宏君

      鳩山紀一郎君    古川 元久君

      赤羽 一嘉君    中川 康洋君

      たがや 亮君    堀川あきこ君

      福島 伸享君

    …………………………………

   国土交通大臣       中野 洋昌君

   法務副大臣        高村 正大君

   国土交通副大臣      高橋 克法君

   国土交通大臣政務官    高見 康裕君

   国土交通大臣政務官    国定 勇人君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  栗原 秀忠君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (林野庁次長)      小坂善太郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        佐藤 由美君

   政府参考人

   (国土交通省不動産・建設経済局長)        平田  研君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  内田 欽也君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  楠田 幹人君

   国土交通委員会専門員   國廣 勇人君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  大西 洋平君     大空 幸星君

  金子 恭之君     鬼木  誠君

  小森 卓郎君     山本 大地君

  西田 昭二君     栗原  渉君

  阿久津幸彦君     矢崎堅太郎君

  下条 みつ君     篠田奈保子君

  谷田川 元君     西川 将人君

  奥下 剛光君     中司  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  大空 幸星君     広瀬  建君

  鬼木  誠君     平井 卓也君

  栗原  渉君     西田 昭二君

  山本 大地君     土田  慎君

  篠田奈保子君     下条 みつ君

  西川 将人君     齋藤 裕喜君

  矢崎堅太郎君     阿久津幸彦君

  中司  宏君     奥下 剛光君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     森下 千里君

  平井 卓也君     金子 恭之君

  広瀬  建君     大西 洋平君

  齋藤 裕喜君     谷田川 元君

同日

 辞任         補欠選任

  森下 千里君     小森 卓郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま本委員会において審査中の内閣提出、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、法務委員会から連合審査会開会の申入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び会計検査院当局並びに参考人から説明又は意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、お諮りいたします。

 連合審査会において、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会は、本日午前九時から本委員室において開会いたしますので、御了承願います。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前八時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、城井崇君外一名から、立憲民主党・無所属提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。城井崇君。

    ―――――――――――――

 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

城井委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 マンションの共用部分に係る損害賠償請求権に関し、平成十四年の建物の区分所有等に関する法律の改正により、管理者は、損害保険契約に基づく保険金額、共用部分について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関し、区分所有者を代理し、規約又は集会の決議により、原告又は被告となることができることとされています。

 しかし、一件でも区分所有権の転売があったマンションでは、その全ての損害賠償請求権等の譲受けがない限り、管理者が一括して損害賠償請求を行うことができないとされています。

 政府案では、旧区分所有者も含めて、管理者が一括して損害賠償請求を行うことが可能となりますが、旧区分所有者が別段の意思表示をすれば、管理者は、その部分の請求、受領が不可能となります。また、管理者が勝訴して損害賠償金を得たとしても、旧区分所有者が損害賠償金の取り分を要求すれば、これを拒否することができません。これらの場合、結果的に共用部分の完全な補修ができないおそれがあります。

 政府は、この問題に対し、管理組合の管理規約において、共用部分について生じた損害賠償金の使途をあらかじめ定めることで、旧区分所有者が有する賠償金を確実に修繕費用に充当することが可能とし、また、国土交通省において、標準管理規約の改定を実施するとともに、各管理組合に周知徹底を図っていくとしています。

 こういった実務的対応に一定の効果があるとしても、各管理組合において個別に規約の改正が必要となるなど、様々な問題が依然として残ることは、否定できません。

 このようなことから、本修正案を提出するものであります。

 次に、修正案の内容について御説明申し上げます。

 本法の附則に、政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の建物の区分所有等に関する法律第二十六条第二項の別段の意思表示等に係る規約の設定又は変更の状況並びに同項に規定する保険金等の請求及び受領の状況等を勘案し、管理者又は区分所有者若しくは区分所有者であった者からの相談に的確に応じることができる体制の整備その他分譲マンション等の共用部分の補修等に係る紛争の予防及び解決のための方策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨の規定を追加することとしております。

 以上が本修正案の趣旨であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井上委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、国土交通省大臣官房官庁営繕部長佐藤由美君外六名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 久しぶりの質問でございます。勉強の機会を与えていただいた委員長、また各理事の皆さんに感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、時間が十五分でございますので、答弁は可能な限り簡潔で、結論だけで結構ですので、よろしくお願いいたします。

 質問は三点あります。一つは、今、修正案の、城井委員から提案がありましたが、その件について、それで二つ目はタワーマンションについて、三つ目は木造の中高層ビルの建設について、その三点であります。

 まず第一点目、二つの老いが進行している現状から、管理運営の現状を踏まえた新たな管理体制、再生推進体制の充実等の必要性は十分理解できるところであります。ただ、この前の公聴会だけではなくて、今日も午前中の合同審査でも様々な指摘がされているような、共用部分の損害賠償請求権の行使の円滑化について確認をしたいと思います。

 現行法でぎりぎりと可能な限りの対応を、ベストと言わないにしても、ベターだというのが提出された案かと思いますが、改めて、そうした対応を取った理由、これを簡潔にお尋ねしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行の区分所有法におきましては、管理者が区分所有者を代理して共用部分に係る損害賠償請求権を行使できるという規定がございますが、現行法の下での裁判例におきまして、一人でも元の区分所有者が区分所有権を譲渡いたしますと、全体について代理ができなくなるという裁判例がありまして、それに沿って実務が生じておったところでございます。

 改正法では、これを改めるために、管理者は、現区分所有者、あるいは元区分所有者、区分所有権を譲渡した方についても代理行使ができるということで、共用部分に係る損害賠償請求権行使の円滑化を図ろうとするものでございます。

谷委員 今までの答弁で聞いたことでございますけれども、私は、今回は今回として、じゃ、将来このままでいいのか。管理費の滞納あるいは不足、所有者の無関心、建物、設備の劣化、また、所有者が大変グローバル化している、そういったことを考えるならば、今後、例えばフランスの荒廃マンション対策のように、今まで以上の行政、国なり自治体の関与、介入、そして居住者対策も含めた住宅対策も必要と思われますが、中長期的な課題として、しっかりと国の方でも取り組んでいただきたいということを要望しまして、二つ目のタワーマンションに移ります。

 お手元の資料にございますように、民間の調査によれば、二十階以上の超高層マンションが全国で一千五百六十一棟、そのうち東京都は約五百棟、そして六割以上が首都圏だと。また、東京都の建築統計年報によれば、六十メートルを超えるマンションも含む超高層建築物は、何と一千四百五十もあるということであります。我々の住まいの赤坂の宿舎も、これも二十階以上ですから超高層マンション。あるいは全国的にも、例えば、委員長の地元の福岡では五十四棟あるということでございます。

 立地がよく、より人気のあるエリア、例えば、東京ではスリーAと言われているということですが、麻布、赤坂、青山など、あるいは地方では、都心であり、駅前であり、駅に近いということであれば、ディベロッパーが採算が取れるということでタワーマンションを建設する状況が引き続き続いている。

 では、こういうことを放置していいのかということであります。神戸市を始め幾つかの自治体で、特別用途地区とか高度地区、あるいは地区計画の手法で、住宅や高層建築物の規制を強めているところでございます。

 私は、東京一極集中を少しでも是正して、安全、安心なまちづくり、町並み景観の保持、保護、また、災害時の避難場所あるいは備蓄の確保のためにも、国の施策として、このまま放置をせずに、タワーマンションの規制、抑制に取り組むべきではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中野国務大臣 谷委員にお答えを申し上げます。

 御指摘のような東京一極集中の是正というか、その一極集中でありますとか、災害時の避難場所、備蓄の確保でございますとか、様々、重要な課題を御指摘いただいたというふうに思っております。

 当然、例えば、東京一極集中については、地方への移住につながる空き家、空き地の利活用の促進ですとか、それに応じた様々な施策をやっているところでもございますし、また他方で、安全、安心なまちづくりということでいえば、自治体が、地域ニーズに応じて、こうした都市開発事業等を通じて、そうした防災の関連の施設等の整備を促進をするということもございますけれども、確かに、委員御指摘のとおり、いろいろな都市計画の制度を活用しまして、タワーマンションの立地を調整をするということは可能でございます。

 御指摘いただきました神戸市、そうしたところを始め、いろいろな自治体が、それぞれのニーズに応じて取り組んでいるというところでございますので、まちづくりは地方公共団体が自治事務として、現場に近いということでやっているわけでありますけれども、国土交通省においては、こうしたいろいろな事例をしっかり横展開をするなどにより、適切な運用をしていくということを促しているところでございます。

 住まいは生活の基盤であり、今日、委員の御指摘も、様々重要な御指摘があったかというふうに思いますので、また安全、安心で快適なまちづくり、住まいづくりということで、引き続き取り組んでまいりたいというふうに思います。

谷委員 ありがとうございます。

 大臣のお答えも分からないわけではないんですけれども、ただ、今までが、都市計画は都市計画の手法で対応できるんじゃないかと。現にしているところもある。しかし、全体から見れば、ごく一部です。

 例えば東京であれば、国際的な都市を目指すということで、どんどん緩和をして、今なお超高層マンションが、あるいは商業ビルがいろいろできてきている。そういうものを、何とかやはりここは歯止めをかけるように、新たな法制度の仕組みも含めて考えることが大事ではないかというふうに思います。

 東京の一極集中を是正するということは、様々なやり方を駆使してやらなければならないかと思いますが、再度、大臣、何らかの方策について、幅広く、日本の国土形成全体が今後どうあるべきかということを含めて考えていただきたいと思いますが、どうでしょう。

中野国務大臣 やはり、今、地方創生ということも大きく政府全体で議論をしているわけであります。この東京一極集中という問題をどうしていくのか。

 先ほど私、地域の活力の維持等も含めてやっていかないといけないということで申し上げたつもりではございましたけれども、いずれにしても、様々な政策手法というのは駆使してやっていかないといけないというところであります。

 他方で、都市の国際競争力をどうしていくのかというのは、それはそれでまたある問題でございます。いろいろな地域、また御意見も伺いながら、まちづくりの在り方、住まいづくりの在り方、しっかり検討してまいりたいというふうに思います。

谷委員 ありがとうございます。

 最後に、木造の中高層ビルの問題についてお尋ねしたいと思います。

 皆さん方のお手元の資料の三ページ目ですか、これは大林組の研修所です。日本初の十一階建て純木造高層ビルです。その次のページ、これも前に党の方で、議連の関係かと思いますが、たしか金子先生なども一緒に行かせていただいたんですけれども、宮城の純木造ビルも視察に行かせていただきました。

 国の方の低層の公共建築物の木造化というのは、我が党のみならず超党派の皆さん方の御努力により、ほとんど二階建てまでは基本的に木造にするということが徹底されてきたように思いますが、ただ、中高層の建築物については、今、皆様方のお手元にあるように、民間が先行している。その取組に比べて国の取組というのは、古い言葉で言うと隔靴掻痒の感があると私は思います。

 私は万博に二回行きまして、今月もあと二回、いろいろ行く予定があるんですけれども、あそこで一番評判がいいのは大屋根リングであります。万博の象徴、最大の木造建築物と言われておりますけれども、そのうち三分の一の資材は福島県浪江町の企業グループが納入しており、納入したうち半分ぐらいは福島県産材だというふうに承知をしています。

 したがって、私は、CO2の削減対策で木造化あるいは木質化を進める、都市の景観保持、あるいは日本らしい風景の創出、森林資源の活用、福島の復興支援、そういうことなどのためにも、国が率先して福島県産材を使って、木造の中高層建築物を造るべきではないか、そういう心意気を是非示していただきたいと思いますが、霞が関の各省庁の中でも、こういったことに一番熱心に取り組まなければならない林野庁の小坂次長が来られておりますので、まず決意を聞かせていただいて、その後、大臣の方、お願いいたします。

小坂政府参考人 お答えさせていただきます。

 議員御指摘のとおり、中高層建築物を含め、公共建築物の木材利用を推進するため、令和三年に改正された都市の木造化推進法に基づき、関係省庁一体となった取組を進めているところでございます。

 農林水産省におきましては、中規模ビルの標準的な木造モデルの作成、普及であるとか、高層になりますので、耐火性とか強度に優れた製品の開発、実証、さらにモデル的な取組の支援等々を進めているところでございます。

 さらには、議員御指摘のとおり、福島の森林・林業、木材産業の再生に向けては、福島県産材を使って、こうした中高層建築物を建てることは、非常に有意義な、有用な取組と考えています。先ほどお話がありましたように、福島県には、こうした中高層建築物に必要な大断面の集成材を造る施設、工場がございます。こうした福島県の大断面の集成材の情報を、公共建築物を建てる関係省庁にも提供させていただいて、使われるようなことも進めていきたいというふうに思っています。

 いずれにしましても、農林水産省といたしましては、関係省庁と連携して、国の整備する中高層建築物における福島県産材を始め木材の利用促進、進めていきたいというふうに考えているところでございます。

井上委員長 中野国土交通大臣、時間が経過しておりますので、端的にお願いいたします。

中野国務大臣 国が率先して建築物の木造化を進めていくことは重要であります。

 都市の木造化推進法、令和三年に改正をされまして、国が整備する公共建築物における木造化の推進対象が、低層小規模から中高層まで、これはまさに拡大しましたので、積極的に取り組んでまいりますし、また、政府調達協定等との整合性は当然留意しないといけないんですが、この福島県を含め、それぞれの地域で流通をしている木材が活用され、地域の活性化等に貢献をできるよう、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

谷委員 ありがとうございます。

 これで質問を終えさせていただきます。

井上委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 立民の馬淵です。質問させていただきます。

 まず、このマンション関連法ですが、午前中の連合審査で、当然承継について、これは本法案は取らないことについての、法理論上については何度も確認がなされておりましたので、今回重複いたしますので、これは問いを省きます。

 その上で、今までの検討経緯を振り返ってみますと、私は法制審のいわゆる区分所有法制部会、こちらを調査させていただきましたが、ここでは佐久間部会長が、当然承継の問題については、「この場合の契約不適合に基づく請求権というのは、売買契約が各区分所有者と分譲業者との間でされておりますから、個々人の権利なんですね。別個独立の権利なわけです。 そうだとすると、契約上は個々人の権利を行使することが、本来的には各人に任されているというしか言いようがないんだと思うんです。」このように佐久間部会長が述べられております。まさにこの発言に、この議論というのは集約されているんだと思います。

 加えて、この区分所有の法制部会での意見の大勢も、まさに共用部分の契約不適合を原因とする損害賠償請求権というのは発生した当時の各区分所有者に帰属するという理解で固まっていた、このように、この法制審の議事録を見ると確認ができます。

 そこで、この法理論はよく私も理解をいたしましたが、法務省にお尋ねいたします。

 いわゆる当然承継、これが否定されるという部分で、実務上、これはどういう部分で否定される理由があるのか、これをお答えいただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 仮に、区分所有権の譲渡に伴いまして、区分所有者の意思にかかわらずに、その処分や移転を一律に強制する特別の規律を設けますと、例えば、共用部分に瑕疵があった場合、ひとまず管理組合において修繕を行うこともあると考えられるところ、修繕費用を負担した旧区分所有者から損害賠償請求権が移転してしまい、旧区分所有者が修繕費用を損害賠償金から回収できないという著しく不合理な事態が生じかねない。

 また、ただいま申し上げましたように、旧区分所有者は先に修繕費用を負担しても分譲業者から回収することができないため、旧区分所有者にとって、区分所有権を譲渡する可能性がある状況では建物を修繕しないことが合理的な判断とされてしまう可能性があるといった実務上の問題点が考えられるところであります。

馬淵委員 つまり、実務上、このような状況で瑕疵が見つかるとすると、先に修繕を行った後に、その物件売却後、損害賠償請求が行われるとなると、元区分所有者の補修費用の回収が困難になる。結局は、だったらもう修繕は見送ろうということで、自分がやる必要はないということで、全体としてでも放置するということになって、いわゆる管理不全、これを誘発してしまうということだと思います。

 したがって、連合審査の議論でもそうでしたが、法理論上も実務上も、やはりこの当然承継説を採用するというのは非常に困難だという状況が今日までの審議にあったんだというふうに私は理解をしています。

 そして、その上で、この当然承継説を採用しない場合でも、区分所有権の転売があったマンションは、管理者が一貫して損害賠償請求を行えないという不都合が残ります。この場合、この不都合に対して、政府は管理規約での対応、これによるとのことでしたが、この管理規約による対応でどのような不都合の解消が行われるのか、これについても法務省、お願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正法案におきましては、区分所有権の譲渡がされた場合でも、管理者は、当該請求権を有する現区分所有者を代理等することができ、また、別段の意思表示がされない限り、当該請求権を有する旧区分所有者も代理等することができることとしております。

 その上で、各区分所有建物における規約又は集会の決議により、旧区分所有者は共用部分について生じた損害賠償請求権の管理者による代理行使につき別段の意思表示をすることができないものとすること、及び、旧区分所有者は共用部分について生じた損害賠償金につき個別に受領することはできず、管理者が代理受領した損害賠償金は建物の瑕疵の修補のために用いられるものとすることが可能であると考えております。

 あらかじめこのような規約を定めておくこと等によりまして、旧区分所有者による別段の意思表示を制限し、損害賠償金の使途を制限することは可能でありまして、管理者が一括して損害賠償請求をすることが可能になると考えております。

馬淵委員 これは一貫して政府は、管理規約によるこのような形での縛りができるということを繰り返し述べられているわけです。

 しかしながら、そうであっても、別段の意思表示をすれば、管理者はその部分の請求、受領が困難になるということ。そしてまた、管理者が勝訴しても、元区分所有者が賠償金を渡せと要求すれば、これを拒否できないということ。結果的に共用部分の完全な補修はできない可能性が残るといった問題があるわけですね。

 管理規約ということを、これは法務省も、そして、その法務省から相談を受けた国交省も同意をして進めてきているわけでありますが、そもそも、なぜ、管理規約で対応するという、こうした結論が導かれたのか。管理規約で対応することを決めた経緯はどういったものでしょうか。法務省、お願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、法制審議会区分所有法制部会におきましては、管理者が旧区分所有者を代理するに当たって、旧区分所有者が別段の意思表示をすることを規約によって制限することはできないかという意見があったところでありまして、規約により別段の意思表示を制限することについて議論がされていたところであります。

 このような議論も踏まえまして、法務省においても検討を重ねて、有識者にも相談の上で、あらかじめ規約で定めておくことによって、旧区分所有者による別段の意思表示を制限することが可能であると判断をいたしました。

 改正法を円滑に施行し、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るためには、改正法の十分な周知、広報をする必要があるところ、申し上げましたような規約の定めを各管理組合において一から作成することは困難な側面もあると考えられます。

 そこで、管理規約のひな形として実務上広く普及をしております標準管理規約に、共用部分に係る損害賠償請求権に関する点についても盛り込むことが、このような定めを含む管理規約の周知徹底を図ることに、より資するものと考えられることから、法案提出の準備と並行いたしまして、国土交通省との協議を重ねた上で、標準管理規約の改定を行うこととしたものであります。

馬淵委員 つまり、区分所有法の法制部会でこれが、区分所有法の法制部会というのは、これは令和四年の十月から令和六年の一月まで、一年以上かけて議論されているわけですね。そこでの議論として上がってきたということです。

 私もこの議事録を確認をしてみたんですが、例えば、これは令和五年の十二月七日の第十五回部会、ここでは、大桐委員が述べられている、規約や集会決議において、個別行為禁止というような趣旨のものを設けてある場合に、その後に離脱した者についても拘束が及ぶということについても、理解を示していただけるような補足説明をしていただければなと思います、こんなように述べられている。また、同大桐委員は、こうした規約を取り入れて、管理組合においては、この規約の存在をもって、団体的規制に服させると解せるというふうに、要するに、個別行為禁止と解することができるのではないかと思っております、第十五回でこう述べられております。

 そして、あわせて、同年の十二月二十一日の第十六回の区分所有法制部会、ここでも同じように大桐委員が、この標準管理規約を既に定めてある区分所有建物、管理組合においては、こうした規定が設けてあると解釈することもできると、これは前回のを引いて再度述べられているんですね。

 この第十五回、第十六回、令和五年の十二月の段階で法制部会で、これは弁護士の先生でいらっしゃいます、皆さんの議論の中で当然承継も議論されていたんですが、管理規約というものが一定の拘束を持つ形でできるのではないかということを発言され、それを受けて、この当時、望月参事官ですね、法務省の望月参事官、現民事第一課長が幹事として出席されておりまして、この規約の解釈の問題については今後の解釈問題として委ねるということで整理をさせていただいております、こう述べられております。

 つまり、法務省としても、こうした委員の発言によって、管理規約によって十分制限できるのではないかということを法の解釈として受け止めておられるんですね。これを受けて、法務省が議論をしていかれたわけであります。

 こうした指摘のあった中で、今、局長が答弁された中では、この管理規約、まさに法務省がこれを受け止めて、解釈でどう判断できるかというところを、議論を省内で検討するということでありましたが、先ほど局長の答弁の中には、有識者に相談をされたとございました。

 この管理規約での対応について有識者に相談したということでありますが、法理論上、専門家の御意見というのは、どういうものでしたでしょうか。局長、お願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 規約において、旧区分所有者による共用部分等について生じた損害賠償金の請求権の個別行使を制限することなどを定めることができることについては、十分な理論的な根拠づけがあると考えておりまして、有識者にも意見を伺ったところでございます。

 その検討に当たりましては、複数の民法等の研究者に意見を伺ったところでございますが、その概要といたしましては、最高裁判決、平成二十七年の九月十八日というものですが、ここにおきましては、共用部分の管理と密接に関連する事項について、区分所有者の団体のみが請求権を行使できる旨を集会で決議し、規約で定めることができるとしたものがございます。

 この最高裁判決を踏まえますと、共用部分の修繕は共用部分の管理に関する事項に当たりますところ、共用部分等について生じた損害賠償金の請求権は共用部分の管理に密接に関連するものと言えるため、その請求権の行使方法につきまして、管理に関する事項として規約で定めることができるというものでございました。

馬淵委員 つまり、このような議論が法制部会でなされ、そして、それについて法務省が受け止め、また、専門家の御意見を個別にも確認をされている。その中で、最高裁判決も用いながら、共用部分の管理に関する事項であると。すなわち、共用部分の修繕というのは管理に関わることだということ、かつ、損害賠償金に係る請求権、これも管理に密接に関連するもの。関わり、かつ、密接に関連するということから、請求権の行使方法にまで及んで管理に関する規約で定めるということが可能だという結論を導いておられるわけです。これが、先ほど申し上げた令和五年十二月の大桐委員の指摘から始まって、それを受け止めた法務省が詰めてきた見解ということであります。

 したがって、管理規約で定めるというのは、安易に決めたことではなく、法制審における大変深い議論を重ねた結果、また、有識者の皆さん方にも確認をしてきた結果の判断だということです。

 このような状況で、法理論上も実務上も管理規約で対応が可能という結論を持つに至った。ここは、法務省がこうした判断をするというところで、当然ながら、国交省とも協議をしているはずです。

 これはもうイエス・オア・ノーで結構なんですが、楠田局長、こうした形で法務省の一つの見解があって、これ、ごめんなさい、通告はしていませんから。しかし、事実関係なのでお答えいただけると思いますが、これは法務省の見解をもって国土交通省もそれを受け止めて、管理規約での対応の意思決定を受けて、国交省としても標準管理規約への反映について検討したということでよろしいですか。

楠田政府参考人 お答えをいたします。

 法務省の方からお話がございまして、国土交通省としても、標準管理規約を持っている立場から、それを一緒にやっていこうということでお話をさせていただいたところでございます。

馬淵委員 そのことによって、今回のこの法案が、成立を目指して閣法として出されたということだと思います。しかしながら、私は、先ほど申し上げたように、確実に解決できるかといったら、まだ疑問が残るところなんです。

 ただし、その上で、大臣、お答えいただきたいんですが、法理論上、問題ないことが分かりました。そして、国交省において標準管理規約の改正を行って、縛りをかけていくんだということ、これもよく理解をいたします。

 しかしながら、その場合でも、別段の意思表示、これを制限をする旨を記載が可能になるということでありますが、これで本当に実務上可能になるのかですね、制限が。また、賠償金の使途に関しても、これを制限する旨を記載するということが可能になるということで、法務省としても、これを国交省と協議して決めてきたわけですが、実務上、これで本当に可能になるのか。

 この二点、大臣、お答えいただけませんでしょうか。

中野国務大臣 標準管理規約の対応で実務上の対応が可能なのかという御指摘だと思いますので、ちょっとそこに絞って答弁させていただきますと、共用部分の損害賠償請求権の行使につきましては、管理組合の管理規約におきまして、区分所有者間の規律といたしまして、あらかじめこの二点を定めようということで、対応が可能だと思っています。

 一点目は、共用部分に生じた損害賠償金について、これを修補費用に優先的に充当する旨を定める、もう一つは、旧区分所有者が共用部分に生じた損害賠償請求権の管理者による代理行使について別段の意思表示をすることができない旨、この二点をあらかじめ定めることによりまして、委員の御指摘の、実務での不都合が生じないように対応を図ることが可能であるというふうに考えている次第でございます。

馬淵委員 実務上も、これを標準管理規約に定めることによって可能だという御答弁です。

 マンション標準管理規約、これは令和六年六月七日改正版というのが最新のものなんですが、これを見ますと、恐らく該当する部分というのは、これはもうお配りもしていませんが、九ページにあります損害保険、第二十四条の部分だと思います。第二十四条に、いわゆる損害保険として、いわゆる請求権の部分が書かれています。恐らく、この第二十四条のところに付加する形で、代理権、代理の付加、あるいは別段の意思表示をしない、そして、いわゆる瑕疵修補の優先充当という部分が書き込まれることになるんだろうと思います。

 これによって実務上も縛ることができるという大臣の御答弁でありますが、先ほど来、私もちょっと申し上げましたが、どうしてもこれで完全に法的な拘束力を持つとは思えないというところがあるんですが、大臣、ここに関しては、それをどうやっていくかという意味における、更に徹底してやるんだというところにおける御意思の部分というのを、ちょっとお答えを述べていただくことは可能でしょうか。

中野国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、共用部分の損害賠償請求権の行使のところをどうやっていくかというところを、法務省とずっと議論をしてきたところでございます。区分所有法の改正もございますし、標準管理規約であらかじめこれを定めておくというところもございます。

 この標準管理規約、令和五年度のマンションの総合調査によりますと、九割以上の管理組合において、この標準管理規約を踏まえて管理規約が作成をされているということでございますので、この標準管理規約を改正をし、それを反映をした管理規約の見直しをしていただくということで対応をしっかり図っていく。

 これは実行の面でもそれが適切ではないかと考えておりまして、特に共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容も含めまして、やはり標準管理規約をできるだけ早く改正をさせていただいた上で、管理組合に対する様々、リーフレットや説明会等も含めまして丁寧な周知、そして、マンションの管理業者、マンション管理士などを通じた働きかけにより、管理規約への反映ということについても、しっかり徹底させてまいりたいというふうに考えております。

馬淵委員 大臣としても、これはもう周知徹底をしていくんだという強い決意をお持ちだということだと思います。

 ただ、連合審査では、我が党の議員も指摘していたように、いや、これが今まで十分できていなかったじゃないか、こんな指摘も午前中にはありました。でも、もう省を挙げて、今回の法改正に基づいて徹底してこれを周知していき、かつ、この標準管理規約に基づいた管理規約へと改正をしていただくということをお思いだということ、その意思を確認はさせていただきました。

 その上で、九割に及ぶという話がありましたが、やはり、これはちょっと確認をさせていただかなきゃいかぬのですが、局長、これは九割と大臣も答弁されています。また、再三この場でも九割というふうに述べられていますが、実際には、九割という数字は、おおむね準拠と一部準拠、これを合わせた数字なんですね、九二%という数字。直近の令和五年のマンション総合調査の結果ですけれども。

 やはり、これはちょっと私は言い過ぎではないかと思っていまして、実際には、おおむね準拠というのは、割合は三五・九%ですから、三分の一だという御意見も当然一方あるわけですね。ですから、国土交通省としての意思を明確に示すという意味では、九割、九割ということを殊更におっしゃると、いや、これは数字を膨らましてごまかしているんじゃないか、やるやると言っても、はなから現実の数字をちゃんと意識して、広く国民の皆さんに見ていただく場なわけですから、国会でも正直な答弁をするべきじゃないかという、こんなお声が寄せられるのも、私は仕方ないのかな、むべなるかなという気がいたします。

 局長、改めてですけれども、僅か三六%というのが、五・九ですが、標準管理規約におおむね準拠ということなんですけれども、これはイエス・オア・ノーで結構ですから、僅かそれだけの数字でしかないということは事実ですよね。

楠田政府参考人 委員御指摘のとおり、おおむね準拠ということでいいますと三六%ということでございます。

 おおむね準拠、一部準拠というのがございまして、おおむね準拠というのは、標準管理規約の方のコメントの中で、実情に合わせて別段の定めをするという例示部分がありまして、その例示を除いて基本的には準拠しているものを、おおむね準拠と言っております。それ以外に、一部準拠というのがございまして、一部準拠というのは、語感的にはちょっと、物すごく幅が狭いように見えますけれども、必ずしもそういうことではないというふうに思っております。

 ただ、九割ということだけが、数字だけが独り歩きするというのは我々もよくないと思っていますし、九割で十分だとも思っていませんで、しっかり徹底をしてまいりたいと思っています。

馬淵委員 これは、令和五年のマンション総合調査の設問の置き方にも私は問題があると思っているんですね。

 このような課題が当時認識されていなかった、したがって、マンション管理規約によって厳しく制限するんだということを今回立法すれば、当然、マンション総合調査での設問の仕方も変わるわけですから、ここはより具体的になって、ある意味、本当に縛りがかけられるような管理規約、標準管理規約に基づく管理規約になるということを、やはりエビデンスとして、次の総合調査で実態を確実に確認した上で対応していただかなければならないということを、改めて申し上げておきたいと思います。

 こうした、今、政府の御答弁をいただきましたが、その上で、立民の法案提出者の方々にお聞きしたいんですが、政府の見解を私は今確認しました。やはりこれは、実態把握を行わないと適切な対応というのはできないんじゃないかと思っています。

 そこで、提出者に質問をさせていただきますが、この本修正案、先ほど修正案の趣旨説明をいただきましたが、新区分所有法二十六条二項に関して、法施行後に検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしていますが、この法案提出の目的についてお答えいただけますでしょうか。

城井委員 お答え申し上げます。

 まず、今回の政府案においては、マンションについて、建物と区分所有者の二つの老いが進行し、外壁の剥落等の危険や集会決議の困難化などの課題が顕在化してきている。こうした問題意識の下、修繕等に係る決議を出席者の多数決によることとするなど、現在、実際にマンションに居住している区分所有者による管理を容易にする内容が盛り込まれています。この問題意識と改正の方向性については、おおむね同感であります。

 しかし、法案の新区分所有法二十六条二項には、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求の場面で、旧区分所有者に独自の権利行使に関する意思表示を認めるなど、先ほどの方向性と逆行するような内容も含まれており、かえって適切な管理が難しくなるマンションや、そこで不利益を被る区分所有者が出てくるのではないかとの懸念もあります。

 他方、実際にマンションに居住している区分所有者によるマンションの管理を容易にするため、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求は、旧区分所有者ではなく、当然に現在の区分所有者ができるようにすべきであるとの提案もあります。しかし、この案についても、新旧の区分所有者の間に不公平が生じないか、財産権の制約につながらないかなどの懸念が指摘をされているところであります。

 そこで、本修正案におきましては、新区分所有法二十六条二項に基づく、旧区分所有者による独自の権利行使に対処するための規約の設定状況や、マンションの管理者による損害賠償請求の状況、賠償金の受領の状況などをしっかり見て、この問題について困る方が一人でも少なくなるように、こぼれる方がないように検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるよう、法律をもって政府に義務づけようとするものであります。

馬淵委員 まさに今提案者がおっしゃった二つの老い、所有者の方々も当然老いてくる、建物も老いてくるという状況の中で、やはり実際に発生している問題というのをもう無視はできないんだという中での、提出者の皆さん方の提案だということを理解いたします。

 そして、その上で、新区分所有法二十六条二項の規定によって、実際にはどのような問題が発生するということを想定されていますか。それを御答弁をお願いいたします。

森山(浩)委員 お答えします。

 現行法では、外壁などマンションの共用部分に欠陥があった場合は、全ての区分所有者に損害賠償請求権が帰属する場合に限り、管理者が一括して分譲業者などに損害賠償請求を行うことができるとされています。この損害賠償請求権は、区分所有権の譲渡に伴って当然に買主に移転するというわけではないので、区分所有権の売買があったマンションでは、管理者が一括して損害賠償請求を行うことができない事態が生じます。

 そこで、今回の政府案では、この点について、元区分所有者も含めて、管理者が一括して損害賠償請求を行うことが可能となるよう法改正が行われているところです。

 しかしながら、政府案の区分所有法第二十六条の改正案には、元区分所有者が自分で請求するという別段の意思表示をすることができるという規定が盛り込まれているため、この別段の意思表示があれば、管理者はその部分の損害賠償請求などが不可能になります。また、管理者が勝訴して損害賠償を得たとしても、元区分所有者が賠償金を渡せと要求すれば、これを拒否できない。このような事態が生じると、補修のための費用が不足をし、結果的に共用部分の完全な補修ができないというおそれがあります。

馬淵委員 まさに我々が一番危惧しているところでもあるんですね。

 繰り返しになりますけれども、政府側は、管理規約でということでおっしゃっていますが、どうしてもこの問題が置き去りにされてしまうということ、こうした実務上の不具合というのがあるということであります。

 私が今こうして政府側にも尋ね、提出者にも聞いておりますが、改めて、政府案に対する、この管理規約改正、不足している部分、これについて提出者としての御意見をお答えいただけますでしょうか。

城井委員 お答え申し上げます。

 新区分所有法二十六条二項の問題点について、政府からは、管理組合の管理規約において、共用部分について生じた損害賠償金の使途をあらかじめ定めることで、元区分所有者が有する賠償金を確実に修繕費用に充当することが可能であるとの事前の説明がありました。また、国土交通省において標準管理規約の改定を実施するとともに、各管理組合に周知徹底を図っていくという話もあったところであります。

 しかし、この案は、それぞれのマンションの管理組合が、個別に改定後の標準管理規約を参照して、その規約を改正することを前提とするものであります。先ほどのこの委員会でもやり取りもありましたが、規約の法理論上の扱いというのはあるんでしょう。一方、そのことを踏まえても、現在、標準管理規約をおおむね参照して管理規約を作成しているマンションは三分の一程度であり、標準管理規約を改定しても、これがどの程度参照されるかは未知数であるというふうに考えます。

 また、広報等により標準管理規約の周知を図ったとしても、個々のマンションの管理規約の改正には管理組合の決議など相当の労力が必要であることから、どれだけのマンションで実際に規約改正ができるのか、不透明であります。

 このように、政府の説明による管理規約の改正による内容では、仮に一定の効果があるとしても、様々な問題が依然として残ると言わざるを得ないと考えています。

馬淵委員 ここは、言い方は悪いんですけれども、本当にやってみないと分からないというふうに我々も聞こえてくるんですよね。政府側としては、これは繰り返しになりますけれども、法制審での議論があり、専門家の議論も重ねながら、この管理規約ということが一つの大きな、ある意味、解決策だとして作った立法だとは思うんですが、それに対しての疑問、疑義というのは拭えないという状況です。

 やはり今、提出者のお話でありましたように、ここはもう完全にそのような状況で補修できるかというと、そこは極めて心配だということをおっしゃっていただいているわけでありますが、こうした状況で、それでも我々としては修正案で、政府にこうしたことに対する対応を強く求めていくということで、この法案の審議を少しでも前に進めたいという趣旨での修正案の提示だというふうに思います。

 そうした状況で、提出案には、紛争処理や相談に係る体制等の在り方について、これは検討を加えるのを法施行後五年とされています。私も、当初の議論の中では、より短い期間という話をされていたのを記憶しておりますが、これを五年という期間にされたことについて、これはどういった理由なのか、御答弁いただけますでしょうか。

森山(浩)委員 二年や三年というようなお話もございましたけれども、先ほど委員からもお示しをいただきました、マンション紛争の実態等を把握するための根本資料でありますマンション総合調査、これは五年ごとに実施されております。直近は令和五年度に実施をされ、結果が公表されたのは令和六年度でございます。次回の調査実施は令和十年度で、公表は十一年度になりますため、本法案施行後の紛争の実態や管理規約改正の推移を見極め、更なる改正の検討を行うための期間としては、施行後五年をめどとするのが適当であると考えました。

馬淵委員 通常、見直し規定というのは、三年というのが短い期間ではありますね。これは、いわゆる審議会を回していく期間として一年ないし二年を見るということで、三年というのが大体見直し規定では短い方だと思います。しかし、この三年では、今、それこそ提出者からは、マンション総合調査のタイミングに合わないんだということであります。

 ここは少し実務的なことで、済みません、国交省にはこれは質問通告していませんが、今の答弁を私は聞いていてちょっと思ったんですけれども、楠田局長、お答えいただければお答えいただきたいんですが、分かる範囲で結構ですが、五年に一回ということでマンション総合調査がなされています。これは法定なんでしょうか。これは、例えば短期的に回していくということは可能なんでしょうか。これは、お答えいただければ、お願いいたします。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 マンション総合調査、これまで継続的にやってきておりますが、五年という期間を何かの法律とかで決められているというものではありませんので、それは、その時々の判断でどうするかということだと思いますが、やはり、定点的にこれまでやってきているところとの関係もありますので、そういうことも考慮しながらということかと思います。

馬淵委員 ありがとうございます。法定ではないけれども、一定、大規模の調査を行うということであるので、五年という期間だというお話でありました。当然、私もよく理解できますのは、定点で観測しているので、やはり同じタイミングでということを行うというのは、これはあることだと思います。

 もう一つ、これも、済みません、通告していないんですが、御存じでしたらお答えいただきたいんですけれども、この国交省が行うマンション総合調査以外に、民間の様々なディベロッパーの方々がいろいろな調査を発表されています。名前を出していいのか分かりませんが、いわゆる大手ディベロッパーでいう長谷工さんなんというのは独自の調査結果を出されたりしていますが、こういったものを参考にするということは可能なんでしょうか。これも通告していませんので、お答えできる範囲で結構ですが。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、マンションについては様々な調査があると思っております。マンション総合調査で今やっているようなものが、民間の方でも直接そういうものがあるかどうかということについては、あるものもないものもあるかなとは思っておりますが、参考になるようなものについては積極的に参考にして、政策の検討に生かしてまいりたいと思っております。

馬淵委員 済みません、ためにする議論ではないんですが、民間の調査も、当然ながら、住宅局としてはずっとウォッチしているわけですよね。チェックもされているわけです。

 その意味では、このマンション総合調査の結果のみならず、民間調査も含めて照らし合わせたときに、大きなそごというのを感じられたことはありますかね。これも、ごめんなさい、先ほどの提出者の答弁をいただいている中で浮かんだものですから、これは全く通告外なんですけれども、お答えできる範囲で。

 そういったものを御覧になっている中で、住宅局として専門家の皆さんが集まっているわけですから、なるほど、こういった部分はもっと取り入れた方がいいなというようなことは、お考えの中に浮かんでくるかどうかも含めて、お答えいただけますか。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 マンションについては様々な調査があると思っておりまして、我々も、先生御指摘のとおり、日々、その辺もウォッチしながら考えているというところがございます。

 大きな方向性として、物すごくそごがあるとかいうようなこと自体は余り感じたことはありませんけれども、マンションは、築年数とか立地とか性能とか、いろいろなことで物が変わってきますし、管理の問題もありますれば、いろいろな修繕とかの問題もありますので、その辺の中で様々な調査があるというふうに考えております。

馬淵委員 大臣、楠田局長の答弁を、私、今聞いていて、先ほど来、このマンション総合調査、そのときの設問、より細かく、また、今回の目的を達成できるような設問、これも作り込んで、とにかく漏れのないように実態を把握するんだということで御答弁をいただいてきたわけでありますが、今の局長の答弁なんかを聞きますと、これは、今までのマンション総合調査、国交省がやってきたということだけではなくて、民間調査も含めて、まさに総合的に網羅した形で調査を行っていくという必要性があるのではないかと思いますが、これも通告はしていませんが、今のやり取りの中で大臣がお感じになったことをお答えいただけますか。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 通告がありませんでしたので、詳細はやはり、検討は今後していくことになろうと思いますが、ただ、様々御指摘もいただく中で、今回は、特に、やはり標準管理規約というところで、こういう対応を特にしていくんだというふうな、そういうところがかなり集中的に議論をされたところでございますので、フォローアップに関しては、やはりこれはしっかりと丁寧に漏れなくということは、委員御指摘のとおりかというふうに思います。

 マンション総合調査の中の在り方については、今までの連続性ということも当然あろうかと思いますので、様々これは議論をしていくことかと思いますが、いろいろな民間の調査、先ほど御指摘いただいたことも含めて、やはり今回しっかりと改正をしたことの実効性がどうなっているのかであるとか、実態がどうなっているのかであるとか、できる限り把握できるような、そういうフォローアップということを心がけていきたい、また検討していきたいというふうに感じたところでございます。

馬淵委員 済みません、通告外のことをお聞きして。ただ、これは重要なことですから、今までの、既定どおりでやるということではない中で、本当に網羅的に、かつ、先ほど来、提出者が言っているように、本当に困っている方々、これを徹底的に少なくするんだという強い意思を持って、この調査、設問を作って、そして標準管理規約に基づく管理規約に改正させていくということが重要だというふうに思います。

 そして提出者に、では改めて質問させていただきますが、紛争処理や相談に係る体制等の整備、これをこの修正案でも求められておりますが、これは例えばどのような仕組みというのを考えておられるんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

城井委員 お答え申し上げます。

 いわゆるADR、裁判外紛争解決手続機関として認定を受けた日本マンション管理士会連合会を始めとして、そのほかにも、弁護士会による相談なども含んだ体制づくりが考えられると思っております。

馬淵委員 ありがとうございます。こうした体制整備も、これも政府に求めるということであります。

 その上で、このマンション共用部分の補修等に関する紛争の予防及び解決の方策として所要の措置を講ずるということであります。修正案に書かれている。この所要の措置とは、具体的にどのようなものを想定されているんでしょうか。お答えいただけますか。

森山(浩)委員 紛争の予防のための方策としては、先ほどの標準管理規約の改定とその普及、広報、個別のマンションの管理規約改正の支援などのほか、より根本的な方策として、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求権を、旧区分所有者ではなく、当然に現在の区分所有者に帰属させる制度などが考えられます。

 本修正案における検討に際しては、こうした制度の導入の是非や、この制度を既存の区分所有者にも適用する遡及適用の是非も含め、緻密な検討がなされることを想定をしています。

 また、紛争解決のための方策としては、裁判外紛争解決手続の導入や、弁護士会等による相談支援体制の整備が挙げられますけれども、これらを含め、幅広く様々な検討がなされることを想定しています。

 いずれにせよ、本件は人の住まいに関わる問題でありますことから、マンションの規模や管理の態様に関わりなく、一人でもこぼれることがないよう、適切な方策を検討していただきたいと考えております。

馬淵委員 ありがとうございます。

 こうした、具体的にどういった形でということについても、今答弁いただいたように、この修正案でしっかりと求めていくんだということだと思います。

 その上で、必要があるときという文言もございます。この「必要があると認めるとき」というのは、どのような基準でその必要性を認定するお考えなのでしょうか。これも、提出者、お答えいただけますでしょうか。

城井委員 お答え申し上げます。

 新区分所有法二十六条二項の、別段の意思表示等に関する規約の設定状況や、管理者による損害賠償請求や賠償金の受領の状況をきちんと見るならば、この問題について、どのくらいの数の紛争が生じているか、その原因は何かといった問題状況や、その問題への対処の必要性は、客観的に明らかになるものと考えられます。

 本委員会の審議におきましても、多くの残る懸念が示されております。今日、例えば、いわゆる投資目的の購入者の件、あるいは別段の意思表示の確認の通知の件、あるいは標準管理規約の改定や普及、そして、いわゆる塩漬け問題、最初の区分所有権者の権利行使や、また、改正法の施行時の、従前の例による部分の取扱い云々、こうした、今日の審議だけでも問題提起は随分といただいています。こうしたものも踏まえるものだというふうに考えています。

 必要があると認める主体は政府でございますが、政府においては、このような客観的状況等を踏まえて、措置の必要性や取るべき措置の内容について、適切に、そして速やかに判断されるものと考えます。

馬淵委員 ありがとうございます。

 つまり、この審議を通じて問題とされると指摘された部分に関して、これは政府が主体的にこのことに対して取組をしていくということ、これを求める修正案ということなんですね。

 大臣、これは当然、我々、この立法府における、立法府の我々の中での修正の案であり協議なわけですが、政府としては閣法を提出されていますが、今、提出者から説明がありましたように、この修正案、政府に対して、立法事実というものを明確にさせていく必要があるんだということで、このエビデンスを明確にしろというのが、今回、この修正案の趣旨です。

 繰り返し、この委員会でも、この法律の議論の中で出てきましたように、様々な課題があって、そして、そこに取り残されてしまう方々がいらっしゃるという現実がある、それに向けて事実を把握していく、これは単にマンション総合調査だけということで委ねるのではなくて、実態把握ということを、これは政府の責任で、五年ということでありますから、これは長い期間のように見えるかもしれませんが、やはり現状を知らなければなりませんので、そうしたことに対して必要な修正だということを、我々はこの質疑でも明らかにさせていただいたと思っておりますけれども、大臣、最後に、こうした実態把握ということに対する決意をお述べいただきたいと思います。いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 議員提出の修正案そのものについての政府としてのコメントというのは、少し差し控えさせていただければと思いますが、いずれにしましても、改正法の施行後の実態把握等々も含めたということの御質問かと承知をしておりますので、様々、標準管理規約等、今御議論ありましたものの反映の状況もそうでございますし、また、マンション総合調査は当然そうですが、これら以外の様々なものも活用しながら、実態把握はしっかり取り組んでまいりますし、また、取り残されるマンションがないようにという御指摘もございました。法務省との緊密な連携の下、これは様々な関係者による支援体制の構築ということも必要かと思います。しっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。

馬淵委員 ありがとうございました。

 本修正案が極めて重要な修正案であるということを確認させていただいたことで、私の質問を終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、長友よしひろ君。

長友(よ)委員 立憲民主党、長友よしひろです。どうぞよろしくお願いいたします。

 今、修正案についての議論を聞いていまして、これまで私自身も何度となく質疑を行ってきた疑念などについて、それを補い得る内容であったなというふうに感じたところでございます。

 その上で、政府に対しまして、改めて、これまでの本会議での議論や委員会、あるいは参考人の先生方からいただいた御意見、これらを踏まえたことで、以下、区分所有法の二十六条に関することと、地方公共団体、自治体ですね、との関係、関連する事項に絞って、いま一度、確認の意味も含めて幾つか伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最初に、区分所有法に関連することなんですけれども、今も少しあったんですけれども、これまでの議論を受けまして、現状、困られている方々の全て、あるいはその多くの方々を救えるものなのか、この改正案が。こう考えられていらっしゃるのかを確認したいと思います。

 そもそも、この改正案は、現状、抱えている課題の全ての解決を前提としているものなのでしょうかということです。それとも、一部だけでも解決ができればよいという考えの下にできているものなのか。この点を伺いたいと思います。

高村副大臣 お答え申し上げます。

 本改正案では、共用部分等について生じた損害賠償金等の請求権の行使の円滑化を図る観点から、管理者は、当該請求権を有する区分所有者又は旧区分所有者を代理し、訴訟追行を行うことができるとしております。

 本改正案は、平成二十八年の東京地裁の判決が、共用部分等について生じた損害賠償請求権の発生後に、一部でも区分所有権が譲渡された場合には、管理者において訴訟追行をすることが一切認められない旨判断したことに関して、管理者による代理行使、訴訟追行を認めた趣旨が没却されるとの指摘がされていたことについて、解決を図っているものであります。

 その上で、あらかじめ規約等により、共用部分等について生じた損害賠償金について、その使途を建物の瑕疵の修補のために用いる旨等を定めておくことなどで、管理者は、代理して受領した損害賠償金を、規約の定め等に基づき、建物の修補費用に充てることが可能となると考えております。

 法務省といたしましては、本改正法案について、しっかりと周知、広報することはもちろん、各マンションの実情に応じて対応いただけるよう、国土交通省との緊密な連携を図りながら、標準管理規約について、損害賠償金の使途の制限等の定めを含むものに速やかに改定し、その周知徹底を図るなどしてまいりたいと考えております。

長友(よ)委員 高村副大臣、ありがとうございます。

 後ほど、これに関連して伺いたいと思いますけれども、御答弁いただきましたとおり、平成二十八年七月の東京地裁の判決によって改正されて、そこの部分が救われる、対応できるということで、この点は評価をするところです。

 これも繰り返しになりますが、一方で、損害賠償請求について、それにより課題解決されない方が残るというのも事実であって、あるいは、さらには新たに重大な課題が生じることが容易に想定されることは、繰り返し述べてきたところであります。このことについては、後ほどまたやり取りさせていただきたいと思います。

 次に、地方公共団体との関連性についてもこれまで取り上げてきたところでありますけれども、この改正案によって、負担はどの程度増えるものなんでしょうか。新たに自治体、地方公共団体にも活躍していただく場面というものが容易に想定されるところなんですけれども、人的、予算的な部分で負担が増えるんじゃないかと。これについてどういうふうに考えられているのか。実は本会議でこれは伺ったんですけれども、ちょっと本会議の答弁では理解ができなかった、納得ができなかったものですから、改めて伺いたいと思います。

中野国務大臣 長友委員にお答えを申し上げます。

 本改正法案では、これは地方公共団体からの御要望ということもあったんですけれども、これを踏まえて、危険なマンションに対する報告徴収や指導、勧告などを可能とするという措置を講じることとしているところでございます。

 もちろん、こうした地方公共団体に関する措置に伴いまして、人的、予算的にどのくらい負担が増加をするかということにつきましては、当然、区域内のマンションの数や立地ですとか管理状況の実態ですとか、あるいは、地方公共団体におけるマンション管理、再生の円滑化に向けた取組の方針自体も異なるところではございますので、そういう意味では一概に申し上げることは難しいんですけれども、ただ、いずれにしても、本改正法案も契機に、マンション政策に積極的に取り組んでいきたいと考えている地方公共団体の業務の負担が増えるということに対しまして、やはり技術的、財政的に支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 地方公共団体における業務につきましては、本改正法案で創設をしますマンション管理適正化支援法人の協力を得ることによりまして、職員の業務を大きく増加させないように努めていくということも重要であろうかと思いますし、また、財政的な支援も行いながら、地域全体で管理組合の活動を支援をする体制を構築できるように、国土交通省といたしましても、しっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

長友(よ)委員 ありがとうございます。

 少し分かりやすかったですし、前向きに捉えた上でのこの提案だということが今の答弁から分かったところなんですね。

 つまり、やる気のある自治体があるし、やる気があるといいますか、実際に課題に直面しているということが正しいんでしょうか、いずれにしましても、積極的に捉えているところ、やらざるを得ないところというのが存在しているわけですね。

 その上でなんですけれども、このやり取りを、通告をするに当たって、御担当の方との質疑内容の確認をする作業の中であったことを少し述べたいと思います。

 私は、本会議のときから申し上げているんですけれども、今の大臣の答弁のとおりだと思っているんですが、地方公共団体の業務量や、そのやる中身によってですけれども、支出が増える、つまり、負担が増える可能性が十分あるでしょう、これについてしっかり支援していくべきじゃないか、こういう見解で述べていて、それを今回も聞きますよというときに、増えるところもあるかもしれないが一概にそうではない、努力義務なので、基本的には自治体のマンパワーの問題であり、人員増は必要ない、業務増にはならず、予算、支出も増えない、その御担当の方は、この質疑の通告の確認作業のときにこう述べられていました。

 聞き間違いかと思いましたし、あるいは、私の説明の仕方が悪かったのかというふうにも思ったものですから、何度となく伺ったんですけれども、そのことを繰り返すんですね。

 つまり、増えるところがあるかもしれないというのが大前提なように述べられていたので、いや、それって本当にそうですか、担当はそんな考え方なんですかということを申し上げた次第であります。

 こうとも私は受け止めました。つまり、自治体さんは既存の予算や人員内で、やれる範囲でやっていただければいいんですという前提としか受け止められない発言を繰り返していました。

 これって違いますよね。私の受け止め方だということかもしれませんが、この前提って多分間違いだと思うんですよね。そうじゃないですよね。もしよければ。

楠田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘については、本当に真摯に受け止めたいと思います。

 我々の方ではそういうのは本意ではございませんで、今回、自治体の要望も受けて、自治体がマンション政策に取り組むに当たって、いろいろなことが、きちっとやれることがやれるようにという観点から法改正で御提案させていただいているところでございまして、しっかりマンション政策を充実をさせていくということを考えておりますし、それに伴って、やるべきこと、業務量ということは増加するというのは一般的に考えられるというふうには思っております。

 ただ、それ自体がすぐに業務量の増加、職員の負担増になるということがないようにということも併せてやっていきたいというふうに思っておりまして、様々、マニュアルとか、合理的にこの業務がさばけるような環境づくりでありますとか、マンション政策に詳しい人材の育成ということを御支援を申し上げるとか、あるいは、さっき大臣も申し上げましたけれども、支援法人というようなことで、民間の登録団体ということもきちんと制度化をしまして、そういう方々に対して、いろいろな専門家の派遣とか、いろいろ様々な業務を外に出していくというようなことも含めて、自治体の方の負担をできるだけ抑えつつ、マンション政策を充実をさせていくということで取り組んでまいりたいと思っていまして、引き続き、そういう方向で是非進めてまいりたいというふうに考えております。

長友(よ)委員 先ほどの大臣の御答弁と今の局長の答弁で理解をしましたので、最後にもう一言だけ言って、このことは終わりたいと思いますけれども。

 これ、御担当者の方が省内でどういう立場の方かは、私、存じ上げません。分かりませんが、これからこの法律が通って、さらに、自治体が、先ほどの大臣の答弁のとおり、積極的にマンションの適正管理というものをやっていくんだというときに、お金がかかっちゃうよ、だから、それは相談をさせてくれみたいな話が、どういう形なのか手続は知りませんけれども、あったときに、いやいや、予算はかからないんですよ、増えるところはあるかもしれませんが、基本的に増えないんですなんということを、もし私に対応された方が同じように述べられたら、その瞬間、自治体は萎縮しますよ、本省、上級省庁の方がそう述べられたら。そうしたら、せっかくいい内容で進めようと思われたとしても、その瞬間に、その自治体は、積極的なことをやめることにつながりかねないということです。

 マンションの適正管理をこれから更に拡大していこう、KPIもそうですね、管理計画の認定の取得の割合も増やしていくだとか、いろいろなことをやっていただくわけですから、それというのは地方公共団体がまさに現場で積極的にやっていただかなければ、国交省本省だけだったら把握なんかできるわけがないじゃないですか。

 ということで、この点、是非、省内を徹底していただきたいということを求めておきたいと思います。

 その上で、先ほどの答弁の中で、予算の面からもということで、支援をしていくというふうに言っていただきました。本会議でも、一部そういう御答弁をいただいたところであります。

 これからどれぐらい増えるか、マンションストックによっても、あるいは管理不全マンションの数によっても、いろいろ状況は変わると思います。変わると思いますけれども、予算措置というものを具体的に考えていただけるんじゃないかというふうに、答弁を受けて思いました。それは補助金なのかなというふうには想像しているんですけれども、この点、具体的にいかがでしょうか。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど私からも、そういう積極的に取り組んでいきたいという地方公共団体の業務の負担増加に対しては、技術的、財政的に支援をということで申し上げさせていただきました。

 当然、技術的支援ということで、先ほど局長から答弁していただきました、いろいろな専門家の育成ですとかガイドライン等々の話はあるんですけれども、予算の面で申しますと、例えば、令和七年度の予算において創設をさせていただきましたマンション総合対策モデル事業というのがございます。この中では、地方公共団体が行いますマンションの管理状況等の把握でありますとか、あるいは管理組合の合意形成のための専門家の派遣といった取組を、これは予算面からまさに支援をしていくというものでございますし、先ほど申し上げたマンション管理適正化支援法人というのを創設をいたしますので、これの協力を得ていくということもあろうかというふうに思います。

 いずれにしても、今後も、こうした予算の執行も行いながら、地方公共団体からの御意見も丁寧に伺いながら、今後の取組も含めて、様々な面でその取組を積極的に支援をしてまいりたいというふうに考えております。

長友(よ)委員 分かりました。是非よろしくお願いいたします。

 次になんですけれども、除却に関する議決権の緩和、何度かの議論で福島委員の方から取り上げられていたところなんですけれども、ちょっとそこに関連して一つだけ、私からも質問させていただきたいと思います。

 意に反して住居を失わざるを得ない方々が出てしまう可能性があるわけですね、これによって。これについての対応をどうしていくかというやり取りがあったところなんですけれども、そのときの答弁の中に、地方公共団体が中心となって公営住宅などの手当てで対応するような旨の答弁があったんですね。

 一瞬、聞くと、なるほど、そうかという気もしなくはないんですけれども、いや、ちょっと待ってくださいよと。住居を失わざるを得ない方々が想定された中で、では、新たに住居の手当て、地方公共団体が必ずそれはできるんですかと。それって私はそうじゃないと思うんですよね。もちろん、その方々の希望というのに沿う、沿わないというのはいろいろあるかもしれませんけれども、あの話を聞いていると、あたかも、除却に対する議決権の緩和がされた場合、住む場所がなくなってしまった方が公営住宅に優先的に入れるみたいな、しかもそれは地方公共団体が手当てしなきゃいけないみたいなというふうに捉えかねないような内容だったんですが、確認をしたいと思います。

楠田政府参考人 お答え申し上げます。

 除却事業を含めまして、マンション再生等の事業を進めるに当たりましては、再生等に反対する区分所有者、賃借人など、結果的に転出をされる方々に対しましても丁寧な対応を行うことが極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 このような観点から、この改正法案におきましては、区分所有法で適切な補償額による金銭的補償を行うということをまず規定をさせていただいていることに加えまして、マンション再生法の中で、国土交通大臣が策定をいたします基本方針の中で、転出をする区分所有者の方、賃借人の方々の居住の安定確保に関する取組を位置づけるということを行いますとともに、これらの取組について地方公共団体や事業の施行者などが努力義務を負うということを明記をしているところでございます。

 また、これらの規定の趣旨というものを受けて、高齢者世帯など、特に配慮が必要な方々に対しまして、地方公共団体や関係団体と連携をし、それぞれの方々の事情に応じた形での居住の安定確保に取り組んでまいりたいというふうなことで考えております。その中には、先生御指摘のとおり、公営住宅等の公的賃貸住宅もございますし、民間のセーフティーネット住宅もございます。あるいは、家賃の債務保証制度だとか、居住支援法人による相談といったこともございます。住宅金融支援機構によります、いわゆるリバースモーゲージ型のローンの提供というのもございます。そういう様々な形で、それぞれの事情に応じた居住の安定確保ということをしっかり図ってまいりたいというふうに考えております。

長友(よ)委員 分かりました。

 つまり、そこはそれぞれの事情に対して支援策を一緒になって考えていくよ、こういうこと、それで、その中の一つとしてそういうものもあるだろうね、こういうことなわけですよね。そこはそうだろうと思います。

 やはり、ここは大切なところだと思うんですよ、大臣、とても。どういう事例が出てくるかというのは、確かに想定することはできても、超える話もあるかもしれません。ここを絶対的に、居住者の余りにも不利益になる、居住環境が著しく変わってしまうようなことがないようにしなきゃいけないですよね。この点も、現状今あるわけじゃないので、しっかりこの点は漏れがないように、引き続き、体制強化といいますか、忘れることなく取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。また、公共住宅に必ず入れるわけではないということもはっきりしたと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、区分所有権の譲渡に伴う関係です。

 共用部分に生じた損害賠償請求権、譲受人に当然承継される制度はないわけですね。駄目なわけですね。財産権の保障の観点から正当化が困難である上、個別の事案によっては不当な結論を招くおそれがあるということなわけであります。つまり、繰り返しになりますが、譲受人である現居住者は、法改正でも損害賠償請求ができない事態が続くことになります。そのような方々は、どのように対処したらよろしいんでしょうか。改めて伺いたいと思います。

高村副大臣 お答え申し上げます。

 お尋ねは、先ほど申し上げたような規約が定められる前に区分所有権が譲渡されたような事案であれば、現区分所有者はどのように修繕費用を確保すればよいのかというものと理解させていただきました。

 そのような事案では、例えば、法律上は、現区分所有者は、売買契約の契約不適合責任に基づき、旧区分所有者に対して損害賠償請求をすることになると考えております。また、区分所有建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるような場合には、特段の事情がない限り、現区分所有者は、不法行為に基づき、マンションの設計、施工業者に対して損害賠償請求をすることが可能だと考えております。

長友(よ)委員 先ほど来の議論ですし、連合審査の中でもあった中身でもございます。課題の解決、現居住者の方々というのは、原始居住者の方に自分で請求、裁判しなきゃいけなくなる、こういうこともあり得るわけですね。

 やはり、これは非常に大変ですよね。当たり前の話なんですけれども、大変なんですよね。ただでさえ大変な話に更に大変なことをやっていかなきゃいけない、しかも大変な住宅に住まなきゃいけない、大変ずくめでどうしていいか分からなくなっちゃうというのが実態だと思います。これも、この後、解決のための方策というものの必要があるのではないかというふうに思いますので、この点も同じ認識でいていただければと思います。

 標準管理規約のお話がありましたので、そのことについて一つ。

 課題解決にやはり至っていないわけじゃないですか。どこまでいっても、この後の話はいいにしても、これまでのところで課題解決に至っていないということ。これもやはり同じように、結局裁判せざるを得ないことになってくるわけですよね。

 これもちょっと質問しようかと思ったんですけれども、同じ回答になると思いますので質問はしませんが、同じように、予防と解決のための方策というものを、改めてしっかり検討、検証をしていただきたいと思います。ここは求めておきたいと思います。

 次に、参考人の先生方からいろいろな御意見を伺ったときに、こう述べられている方がいました。本改正案が招く不都合な事態ということをしきりに述べられていた先生がいらっしゃいました。もっと言うならば、そうであるならば、この改正案を、改正しない方がいいという御意見まで述べられている内容がありました。

 これはとても重たいことだと思うんですよね。まさに現場で戦っていらっしゃる方々なわけですから、その言葉としては非常に重たいなと思ったんですね。参考人の方々の御意見を一緒に多分聞かれていたと思いますし、内容は御理解いただけているんじゃないかと思います。

 対応できるとお考えでしょうか、不都合な事態に。対応できるとするならば、手法はどのようなものと考えていらっしゃいますでしょうか。副大臣、お願いします。

高村副大臣 お答え申し上げます。

 本月九日の衆議院国土交通委員会の参考人質疑では、一定の不都合な事態が生じかねないとの懸念を表明された方もおられたと承知をしているところでございます。

 もっとも、損害賠償金の個別受領を禁止し、その使途を制限することなどを内容とする規約の定め又は集会の決議をしておけば、御懸念のような不都合が生じる事態は極めて限られると考えております。

 また、そのような規約の定め等がされていない場合でも、個別具体的な事案によっては、旧区分所有者と現区分所有者の間の売買契約の内容の合意に至る経緯や、旧区分所有者及び現区分所有者の利害状況等の個別具体的な事案における事情を総合的に考慮した上で、旧区分所有者による損害賠償金の引渡しを求める主張が、極めて合理性に乏しい行動として、社会通念上、不適当であると考えられる場合もあり得ると考えております。

 このような場合には、当該主張が権利濫用として認められない事案もあり得ると考えられ、最終的には、裁判所において個別の事案に応じた適切な解決が図られるものだと考えております。

 我々法務省としては、国土交通省との緊密な連携を図りながら、管理規約のひな形として実用上広く普及している標準管理規約を速やかに改定し、先ほど申し上げたような定めを含む標準管理規約の周知徹底を図るなどしてまいりたいと考えております。

長友(よ)委員 寝ている子を起こすようなことだというような発言、議論もありました。決してそういう、この改正案によって新たに重大な局面が、事案がないことを願っていますし、そうでありたいと思っていますが、そうなってしまう可能性があるということを、しきりに指摘が出ていたわけであります。是非、この点は十分に留意をしていただかなければいけないと思います。

 これは所管する国交大臣に、是非、最後に伺いたいんですが、これも本会議で言いましたが、憲法で保障されている国民の生存権である住環境を守るお立場でございます。

 この改正案でも、住環境の保持の危機に迫られている方々への対応、あるいは、新たに重大な課題が生じることが想定される方々への対応、抜け落ちている方、こぼれ落ちる方という言い方がよろしいんでしょうか、その解決のために、起きたら必ず解決していくんだ、方策を検討していくんだということを最後に答えていただきたいと思います。お願いします。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 このやり取りの間でも、幾つかいろいろな論点はあったかというふうに思います。

 どうしても、マンションは区分所有という形でございますので、マンションの再生を進めるという中での合意形成ということがあります。どうしても、住民の安全や良好な居住環境を守るという公益性の観点から、厳格な手続を規定した上での多数決ということはございます。

 ただ、とはいえ、当然、合意形成をしっかりと後押しをしていくということも必要でありますし、先ほど申し上げたような、局長から居住の安定確保という話もございました。これは当然、地方公共団体等ともしっかり連携をしながらというふうな形になろうかと思います。いろいろな形でそういう居住の安定の確保も図っていく。そして、標準管理規約の話もございました。

 こうした措置もやっていく中で、いろいろな御懸念の点もあろうかというのは重々、指摘もございますので、しっかりとフォローアップもさせていただきながら、取り残される方がいないようにというふうなことでしっかり進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

長友(よ)委員 ありがとうございました。

 終わります。

井上委員長 次に、神津たけし君。

神津委員 立憲民主党の神津たけしです。

 今日は質問時間が短いので、なるべく端的に御答弁いただきたいなと思います。

 まず、質問通告していないので、ちょっと質問というところではないんですが、今回の法案の束ね方について、私はやはりちょっと疑問があるんですね。

 今回、五本の法案というものを一つにしているというところがありますけれども、やはり財産権にも、人権にも、衣食住の住にも関わるような非常に重要な法案というところで、そうした法案にもかかわらず、個別に法案に賛否を示せないというのは、私はやはり立法府の軽視であるというふうに思っておりますので、束ね方というものについては是非とも気をつけて提出していただきたいなというふうに思います。

 早速ですが、質問一番については先ほど長友議員が既に聞いたので、私は二番の方から伺いたいと思います。

 今回、区分所有法の第十五条第一項では「共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。」、第二項では「共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」としております。

 この文を真正面から読んだ方、国民の皆様は、恐らく、マンションの所有権に付随して損害賠償権についても共用部分についても一緒に処分されるんだというふうに思われると思うんですが、この解釈についてなんですが、私は不可分一体だと考えるんですが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の区分所有法第十五条でございますが、共用部分という建物の部分等の持分という物権の処分の在り方について規律をしているものでございます。

 御指摘の損害賠償請求権でございますが、分譲事業者と旧区分所有者の間の売買契約等に基づいて各区分所有者に個別に発生し、それぞれに帰属する債権でございまして、共用部分の持分の処分に関する規律の対象ではないと考えております。したがいまして、区分所有法第十五条が適用されるものではなく、専有部分の処分に随伴することはないと考えております。また、専有部分と分離して処分することができないということもないと考えております。

神津委員 この解釈なんですけれども、これは平成二十八年の七月二十九日の東京地裁の判決、分割帰属すると認めたような裁判があったと思うんですが、これに基づいて今回そういう解釈にしているのか、これはいつからそういう解釈になっているのか、教えていただけますか。

竹内政府参考人 平成十四年に区分所有法が改正されておりますが、そのときからということになります。

神津委員 承知しました。

 今の現時点においては、区分所有については、所有権と損害賠償権については別々に取り扱うというところで理解したんですが、今回、こうしたところについて、別段の意思表示をした場合には規約の改正によってカバーしていくというところがあると思うんですが、規約が改正されないようなケースも想定されると、漏れる人がないようにやはりしていかなくちゃいけないと思うんですね。というところで、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 第三者の方が債権、損害賠償権を誰かから購入した、あるいは担保として受け取ったということがあるかと思います。そのときに、じゃ、どれだけこの債権というのが価値があるのかということを知りたいときに、管理規約の内容を知る必要があると思うんですが、これはどうやって管理規約を見ることができるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 区分所有法におきましては、規約の保管者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならないこととされております。どのような者がこの利害関係人に該当するかは、個別の事案における具体的な事情に応じまして裁判所が判断することにはなりますが、一般的には、区分所有権を取得しようとする者や、区分所有権等について抵当権等の担保権を有し、又はその設定を受けようとする者なども利害関係人に該当すると考えられております。

 そのため、区分所有権の購入を検討している者は、一般論として、利害関係人に該当し、管理規約を閲覧することが可能であると考えられます。また、そのような者は、売買契約をするに当たり、売主に対して管理規約について説明を求めることなども考えられるところでございます。

神津委員 今回、規約の改正によって制限していくようなところがありますので、事前にやはりこの規約を見られないといけないというところがあると思います。それによって、住宅の価格さえもやはり変わっていくことがあると思うんですね。

 例えば、今、築から二十年以上超えているものについては、住宅瑕疵保険を掛けて、皆さん、何かしらマンションに、住宅に瑕疵があったときには保険でカバーしてもらうというようなことがあると思います。

 例えば、この値段のところを言いますと、これはURILABOというサイトのマンション売却マガジンというところなんですが、一千万円の保険を掛けて、既存住宅瑕疵保険というのを、例えば五年間で掛ける場合には、おおよそ三・一万円プラス現場検査手数料と。現場検査手数料というのが、私が見たところ、大体六万円から十万円ぐらいかかってくる。もしこれを、マンションを五十年ぐらい持っているという中において、じゃ、どれぐらいかかるかというと、五年間で十万円掛ける五回ということで、百万円ぐらいかかってくるというところにおいては、マンションの価格にさえもやはり影響してくるというところがあると思っています。

 今回の改正によって、私は、もしかしたらば、もしこの改正の規約が機能していかなかった場合には誰が一番得をするかというふうに考えると、この住宅瑕疵保険を売っていらっしゃる方々。もしかしたら消費者は、二番目以降に買った方は、住宅の瑕疵があった場合には補償されないというところで、この住宅瑕疵保険を買う必要があるというところにおいて、ここについて私は心配しているところなんですけれども、住宅瑕疵担保責任法人は五社指定されていらっしゃいまして、再保険を受けていらっしゃるのが住宅支援機構でもございます。

 この住宅支援機構についても、それから住宅瑕疵担保責任法人の五社についても、国交省の住宅局の方がトップを務めていらっしゃるような会社もあるというところについては、じゃ、この瑕疵保険は、これは邪推ですけれども、本当に、改定した規定がうまくいかなかった場合には、もしかしたら国交省の住宅瑕疵保険を売るためにやったんじゃないかとか言われかねないと思うので、ここについては是非とも留意しながらやっていただきたいというふうに思います。

 ちょっと大臣にお伺いしますけれども、私は、今回、消費者を守っていくという意味においては、物件の価値に関わるというところでは、宅建業法第三十五条において、物件の売買時の重要説明事項の中で、説明として、損害賠償権の譲渡があるかどうかというのをちゃんと契約書類に記載するように義務づけるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 宅建業法三十五条に基づく重要事項説明は、不動産取引に際しまして、購入者等の利益の保護や取引の公正の確保の観点から、最低限必要な重要事項について、宅建業者に書面を交付した上での説明を義務づけるというところでございます。

 委員御指摘の分譲事業者に対する損害賠償請求権の譲渡につきましては、不動産の売買契約とは別個の債権譲渡契約によってなされるものでございますので、必ずしもこの売買契約に関する重要事項説明にはなじまないのではないかと考えておりますけれども、他方で、損害賠償請求権の譲渡の有無に関して、本法案による改正を契機に、今後、購入の希望者が関心を示すことも考えられます。そうした場合、宅建業者が把握できる内容については、宅建業法第四十七条に基づき、購入希望者に告知をすることになるものと認識をしております。

 こうした対応を丁寧に行うには、宅建業者の理解が重要でございますので、管理者による一括賠償請求の制度の趣旨や内容、効果を丁寧に周知してまいりたいと思いますし、また、その際には、分譲事業者に対する損害賠償請求権の帰属が購入希望者の関心事項となり得るということに留意をして媒介業務に当たるようにということで、しっかり伝えてまいりたいというふうに考えております。

神津委員 時間が来てしまいましたので終わりますが、是非とも検討していただければと思います。

 以上です。ありがとうございました。

井上委員長 次に、徳安淳子君。

徳安委員 維新の徳安です。

 会派に与えられた持ち時間は三十四分ということで、本来でしたら、私ともう一人が分けて質問するところだったんですけれども、もう一人がいなくなりましたので、急遽私一人が三十四分頑張ることになりましたので、どうかよろしくお願いをいたします。

 一問目は、共用部分等に係る請求権の行使の円滑化に関する区分所有法改正案についてお聞きをいたします。

 先週の九日金曜日に、参考人の意見陳述の中でも多々質疑がございました。本件について、どうしても中野大臣に質問してほしい、答弁が欲しいという、たっての願いを預かりましたので、がっつり、重複しますが、質問させていただきます。中野大臣へは終わりの方で、よろしくお願いをいたします。

 現在の区分所有マンションについて、管理不全や老朽化したマンションの急増等ということが社会問題となっており、この問題への対処が急務であることは共通認識です。マンション建て替え要件の緩和など、この問題への対応策が今般の区分所有法関連改正法案の大きな目的であったはずです。

 その中で、マンションの適正な維持管理を図るという観点からすれば、マンション共用部分の修繕や欠陥補修など、共用部分の欠陥に対する損害賠償請求を容易にして、欠陥の万全な補修を実現することは非常に重要な課題と考えますが、参考人にその重要性の認識をまずお尋ねをいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 マンションの共用部分に瑕疵があった場合におきまして、それを放置したときは、そのマンションの居住者の安全が脅かされるのはもとより、近隣住民や通行人にも危険を生じさせ得るものであります。そのため、法務省としても、共用部分の瑕疵に係る損害賠償請求を容易にし、その瑕疵の万全な修補を実現できるようにすることは非常に重要であると認識をしております。

 この点、現行の区分所有法におきましても、共用部分について生じた損害賠償金等の請求権につきましては、管理者による代理行使等ができることとされておりますが、平成二十八年の東京地裁の判決で、当該請求権の発生後に一部でも区分所有権が譲渡されますと、その譲渡した区分所有者のみならず、他の区分所有者も含め、管理者において訴訟追行することが一切認められないという判断がされました。このような判断に対しては、管理者による代理行使等を認めた趣旨が没却されているとの指摘がされております。

 そこで、本改正法案におきましては、管理者は当該請求権を有する現区分所有者を代理等することができ、また、当該請求権を有する旧区分所有者も基本的に代理等することができるものとして、区分所有権の譲渡がされた場合でも、当該請求権について、管理者による代理行使、訴訟追行が可能であることを明確にしております。

 これにより、共用部分の瑕疵に係る損害賠償請求権の円滑な行使が可能となり、ひいては共用部分の修補にも資するものと考えております。

徳安委員 今、現区分所有者、旧というのがあったんですけれども、マンションの建て替え円滑化におきましては、区分所有者の利益を一定の範囲で制限してでもマンションの健全化を図るという、そのような方向性が打ち出されている中で、参考人、法務省の方は、次の二つのうち、どちらの対処が先だとお考えなんでしょうか。

 一つ目は、転売した旧区分所有者が欠陥のために売却代金が安くなったという問題への対処、二つ目は、耐震強度が不足していたりタイルの剥離落下の危険性があるといった共用部分の欠陥を補修するための対処と、どちらが優先順位が高いとお考えでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の今の二つの点でございますが、どちらかが優先するというものではなく、どちらも非常に大切なものというふうに認識をしております。事案によって、どういう解決を図っていくかということを考えていくべきものかと思います。

徳安委員 しかしながら、先ほど触れましたとおり、打ち出されている方向性から見ますと、マンションの健全化を図る、区分所有者の利益を制限してでもと明記されているので、当然、剥離落下や、そういった近隣の安全を守るためにも、共用部分の欠陥の補修対応が先だというふうに考えるのが筋かなというふうに思っております。

 現に、マンションに居住する区分所有者で反対者がいても、多数決でマンションの健全化を優先しようという改正法案の考え方からすれば、ここは、旧区分所有者の僅かな財産上の不利益よりも、マンションの適正な維持管理を優先すべきであり、それが一貫した政策判断と思うのですが、法務省の方、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 契約不適合に基づく損害賠償請求権は、売買契約に基づいて発生するものでございます。したがいまして、個々の契約当事者、この場合には旧区分所有者と呼ばれる方ですが、その方が請求権を持っているというようなことになってまいります。

 したがいまして、区分所有権が譲渡されたとしても、損害賠償請求権が随伴するわけではなく、元々、物権と債権で別の権利というふうに理解をしておりますので、そのことを前提にして、今回の損害賠償請求権の解決を図るということを考えたものでございます。

徳安委員 それでは、もう一つちょっと教えていただきたいんですけれども、壁やタイルが剥がれて落ちてきた場合、それによってけがをしたときには一体どなたの責任になるんでしょうか。教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 マンションの共用部分のタイルあるいは壁が剥がれて落下し、通行人等がけがをされた場合というようなことを念頭に置きますと、民法に工作物責任という条文がございます。基本的には、その工作物、土地の工作物の占有者、占有者が管理を怠らなかったときは所有者が責任を負うという規定になっております。

徳安委員 占有者というのは管理組合ということなんでしょうか。それとも、その建物のオーナーですか。

竹内政府参考人 共用部分ということを前提にいたしますと、共用部分は、そのマンションの区分所有者の共有に係るものでございますので、そのマンションの区分所有者が責任を負う可能性がある、こういうことでございます。

徳安委員 そうしますと、そのときに住んでいるマンションのそれぞれの家庭がそれを補償するということなんでしょうか。そのときに、旧区分所有者には特にはかからないという理解でいいんですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの事例で、その事故が発生した際に既に区分所有権が譲渡をされているということになりますと、その旧区分所有者と言われる方は、そのマンションの占有者でも所有者でもなくなっておりますので、今の工作物責任ということに関しては責任は問われないということになるかと思います。

徳安委員 それでは、次に、二十六条改正案についてお尋ねいたします。

 政府提案の区分所有法二十六条の改正案は、共用部分の欠陥に関する損害賠償請求権は転売後も旧区分所有者が有するという前提に立った上で、管理者が旧区分所有者を代理することを認める案ですが、その例外として、別段の意思表示を認めています。そして、管理者が旧区分所有者を代理して原告又は被告になった場合、管理者は、遅滞なく、旧区分所有者にその旨を通知しなければならないとしています。

 このような改正案が実現したら、旧区分所有者は、自分の持分は自分で請求すると別段の意思表示をしたり、あるいは、別段の意思表示をしなかったとしても、賠償金が得られたら自分の持分をよこせと要求することが十分に考えられます。

 損害賠償請求権を転売後も旧所有者が有するという前提自体が、その前提でよいのか、別段の意思表示を認める必要が本当にあるのかどうか、法務省に伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、本改正法案におきましては、管理者は共用部分等について生じた損害賠償請求権を有する旧区分所有者についても代理をし、又は訴訟追行をすることができることとする一方で、旧区分所有者が別段の意思表示をした場合には、管理者は当該旧区分所有者を代理等することができないこととしております。

 旧区分所有者は、規約の変更や決議に参加できる立場にはないため、管理者の代理権の制限を提案することができず、また、集会の決議による管理者の解任や裁判所への解任請求をすることもできない状態にあります。このように管理者の監督方法を持たない旧区分所有者について、法律により一律に管理者による代理や訴訟追行を強制することは適切でないと考えられました。

 そのため、旧区分所有者は別段の意思表示をすることができ、このような意思表示がされた場合には、管理者は当該旧区分所有者を代理等することはできないこととしております。

徳安委員 今お尋ねしたのは、請求権を転売後も旧所有者が有するという前提自体に問題はないということなんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の請求権ですが、売買契約に基づく契約不適合を理由とする損害賠償請求権でございまして、売買契約から発生する権利でございます。したがいまして、買主であります元区分所有者の方が権利を取得するということになります。

 この方が区分所有権を譲渡するということは、物権である区分建物をどなたかに譲渡するということになりますが、この物権を譲渡したとしても、損害賠償請求権はこれとは別の財産権、すなわち債権でございますので、元の区分所有者に残るという、法律上の性質がそうなっているということでございます。

徳安委員 例えば、先ほど午前中からも言われております、債権買取り業者というものが旧区分所有者の請求権を買い集めたりするという危険性もあると考えられます。そういったときに、やはり結局そのマンションが完全には補修できないのではないかというふうに危惧するところもあります。

 そこで、先ほどの話で、旧区分所有者に請求権を残すという必要性について再度お聞きいたします。

 法制審議会では、欠陥判明後に減額して転売せざるを得なかった旧区分所有者の財産権を保護する必要があるということが民法学者から主張されており、それが有力な理由とされていたようですが、他方、欠陥判明前に通常の市場価格で転売した場合には、旧区分所有者には瑕疵による損害が一切ありません。

 この場合、何ら損害を被っていない旧区分所有者に損害賠償請求権があるんでしょうか。現在の区分所有者こそが損害賠償請求権を有するべきと考えますが、改めて参考人に伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 分譲事業者から購入したマンションの共用部分に瑕疵があった場合には、買主である区分所有者は、それが売買契約の内容に不適合であるとして、当該売買契約の契約不適合責任に基づき、分譲事業者に対し、その瑕疵を修理するために必要な費用相当額の損害賠償請求権を有しております。

 この損害賠償請求権は、売主である分譲業者と買主である区分所有者との間の契約関係により、買主が取得する損害賠償請求権でありまして、区分所有権や共用部分に係る持分とは別個の債権でありますので、区分所有権が譲渡されたとしても、それに伴い当然に当該請求権まで移転するものではないと考えます。

 仮に、区分所有権の譲渡に伴いまして損害賠償請求権も当然に移転するということになりますと、例えば、共用部分に瑕疵があった場合、ひとまず管理組合において修繕を行うことがあると考えられますところ、修繕費用を負担した旧区分所有者から現区分所有者に当該損害賠償請求権が移転してしまい、修繕費用を負担した旧区分所有者が損害賠償金からの回収ができないという著しく不合理な事態が生じかねないと考えております。

 そのため、本改正案では、区分所有権の譲渡がされた場合に、その譲渡人が有していた共用部分等に係る損害賠償請求権を譲受人に当然移転させる規律を設けることとはしていないところでございます。

徳安委員 いろいろ売主と買主の売買契約に関してということもあるかと思います。

 先ほどの質疑の中でも、不動産取引のときに、やはり内容をもう少し変えるべきじゃないか、現実に合ったようにというようなお話もあったかと思うんですけれども、まさにそういう時期に来ているのではないかなというふうに聞いておりました。

 例えば、代金減額による損害を考慮する考え方に立つのであれば、代金減額分が補修の費用の共有持分よりも少ない場合、新区分所有者も損害を受けることになり、損害賠償請求権を旧区分所有者に全額保有させるということは、非常に不公平だと感じております。

 そもそも、代金減額分は補修の費用から正確に計算されたものなんでしょうか。正確かどうか疑問があるとすると、旧区分所有者と新区分所有者の転売価格の高い安いによって損害賠償請求権が移転したりしなかったりと、決めること自体が合理的でなく、欠陥による売却価格低下の問題は、損害賠償請求権が誰に帰属するかの問題と切り離すべきと思われます。

 欠陥によって転売価格が下がるという場面が生じた場合、転売当事者間の契約において、将来賠償が得られた場合に精算するという特約をつければ済む話だと思いますが、改めて参考人の見解をお聞きいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような特約による解決でございますが、やはり、その前提が、新区分所有者に損害賠償請求権が当然承継をされた上で、当事者間の合意によって解決をするということになってしまいます。

 先ほど来申し上げておりますとおり、損害賠償請求権は売買契約に基づいて発生する権利でございまして、区分所有権の譲渡によっては移転しないということになります。

 したがいまして、移転するという前提で当事者間の合意による解決を考えるという方向性については、私どもの考えているところとは少し異なるところかなと感じております。

徳安委員 前回、国交省側からの説明では、旧区分所有者が自ら費用負担をして欠陥を補修した後に転売した場合、市場価格で売れたとしても、旧区分所有者には修理の費用負担額の損害が残るということでした。

 しかし、共用部分の欠陥について、旧区分所有者個人が費用を支出して補償することなどあり得ません。そもそも、共用部分の工事は管理組合が決定して実施を行いますし、その工事費用は修繕積立金から支出されます。又は、管理組合が借入れをすることが通常です。それは、雨漏りのような緊急性を要する場合の応急措置の修繕でも変わりません。

 一体、旧区分所有者が修繕費用を支出して欠陥を補修する場合というのは、どのような場面を想定しているのでしょうか。具体的に御回答いただければと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 旧区分所有者という言葉になりますと、既に区分所有権を譲渡されて、マンションの区分所有者ではなくなっている方ということになりますので、その方が費用負担をするというよりは、その方が区分所有者であった時代にマンションの瑕疵の修補費用を支出をされて、その後、区分所有権を譲渡されて旧区分所有者になる、こういうような仮定を想定しているものでございます。

徳安委員 それでは次に、当然承継についてお尋ねいたします。

 るる話も出ておりますけれども、改めて、国交省側からの説明では、当然承継を法改正前の法律関係に適用すれば法律関係が混乱するから、当然承継は採用できないということでした。

 しかし、先週の五月九日の参考人質疑では、実務を知る弁護士から、転売した旧区分所有権が、共用部分の欠陥について補修費用相当の損害賠償請求権を個別行使して賠償金を取得したなどという事案は聞いたことがないとの説明を受けました。

 一体どのような混乱や不都合が生じるのか、実際あったのかどうか、具体的に説明をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 具体的には、例えば、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、現区分所有者から損害賠償金の引渡しを求められるという事態が生じる可能性がございます。また、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、分譲業者から損害賠償金の返還を求められるという事態が生じる可能性もあるところでございます。

 さらに、既に損害賠償金を多数の旧区分所有者らに支払い済みであった分譲業者におきましても、当該支払いは無効であるとして、現区分所有者から改めて損害賠償金の支払いを求められる可能性もございまして、このように、当然承継の規律を遡及適用とすることは、国民の権利義務に影響を及ぼすことに加えまして、社会経済に著しい混乱をもたらすものと考えられるため、認められないと考えておるところでございます。

徳安委員 当然承継説というのは、現在の区分所有法の共用部分に関する考え方からも十分に解釈として成り立つ考え方だと主張されているところもあります。もしそうだとすると、既存マンションに適用されますのは、元々現行法の解釈からも当たり前ということになりますが、例えば、改正法で当然承継を定めた場合の効力に関する附則の規定の仕方については、改正法施行時に既に存する区分所有建物について適用するという遡及適用を明示する方法以外にも、改正法施行時に既に存する区分所有建物については、なお従前の例によるという規定の仕方も考えられます。これは午前中もお尋ねがありました。

 これであれば、遡及効の有無が争いになった場合に裁判所で決着をつけることになって、混乱は少ないのではありませんか。参考人、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、区分所有権の譲渡に伴いまして、法律上、一律に共用部分等について生じる損害賠償請求権も譲受人に当然承継させるという制度は、財産権の保障の観点から特に慎重な検討が必要である上、個別の事案によっては不当な結論を招くおそれもあると考えられます。

 また、現行法の解釈といたしましては、一般的には、共用部分等について生じる損害賠償請求権は、区分所有権の移転とともに当然に承継されるのではなく、当該請求権が譲渡されない限り、区分所有権の譲渡後も旧区分所有者に帰属していると考えられていると承知をしております。

 このような状況におきまして、御指摘のような、なお従前の例によるという規律を設けたといたしましても、改正法施行時までに区分所有権の転売がされた場合の共用部分等について生じる損害賠償金の請求権の帰属につきまして、当然承継を前提とする判断がされることは考え難いことから、御指摘のような規律を設ける意義は乏しいものと考えております。

徳安委員 それでは、今回、先ほども管理規約で対応可能というお話が出ておりまして、その判断理由についてお尋ねをしたいと思います。

 国交省の説明によりますと、当然承継案を採用しなくても、改正法案にプラスして標準管理規約の改定という実務対応で十分対応できると説明しています。これまでもいろいろ質疑もございました。しかし、国交省住宅局の令和五年度マンション総合調査結果によりますと、マンション標準管理規約の認知状況というのは、先ほどもいろいろと御紹介もありましたとおり、全く知らないというのが三割、そして、名前ぐらいは聞いたことがあるというのも三割ぐらいと、ほとんど普及していない今の段階でございます。また、マンション標準管理規約への準拠状況についても、令和三年度改正後の標準管理規約におおむね準拠しているが三五・九%であり、約三分の二程度の管理組合では標準管理規約に対応しておりません。

 このような実態であるにもかかわらず、標準管理規約の改定という実務対応で十分対応できると言えるのかどうかと疑問に感じております。それができるくらいなら、管理不全の老朽化マンションなどとっくに解消されており、今回の区分所有法改正など不要なのではありませんかという声も聞かれます。

 標準管理規約の改定で十分対応できるという根拠を参考人にお聞きします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 国交省からもお話がありましたが、管理組合を対象に標準管理規約への準拠状況についても調査をしており、九割以上の管理組合において標準管理規約を踏まえて管理規約が定められているとの結果も示されているところでございます。

 そして、本改正法案は、損害賠償請求権の行使の円滑化に係る点以外にも、出席者の多数決の仕組みを導入し、一定の事由がある場合に建て替え決議に係る多数決割合を引き下げ、建て替え以外の再生手法に関する決議も設けるなど、幅広い内容の改正でございますため、規約においても多くの改定が必要になると考えております。

 法務省といたしましては、損害賠償金を修繕費用に充当する旨の管理規約の定めにつきましても、各マンションの実態に応じて設けていただけるように、このような定めを含む標準管理規約の周知徹底にも取り組む必要があると考えておりますし、マンション法を所管する国土交通省との緊密な連携の下、関係団体の協力も得ながら、全国各地で説明会を開催するなどして、改正法の施行までの間にその趣旨、内容が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

徳安委員 今、管理組合の九割がというお話なんですけれども、その九割の分母というのはどれぐらいなんでしょうか。

 と申しますのも、管理組合自体がもう今機能していないとか、なかなか人が集まらないとか、これからどうしようとか、第三者管理に委ねようかというところの管理組合の状態の中で、その九割の分母がどれぐらいなのか、お分かりだったら教えていただきたいと思います。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 数にしますと千三百六十九組合でございます。

徳安委員 済みません、私の聞き方がまずかったのかもしれませんけれども、その千三百六十九組合というのは分母ということなんでしょうか。それとも、全体の中の九割が千三百六十九ということですか。もし千三百六十九が全体でなければ、全体の組合の数を教えてください。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 分母でございます。

徳安委員 七百万戸以上マンションがあるという中で、普通、考えますと、管理組合もほぼほぼそれぐらいの数があってもおかしくないという状況の中で、分母がたったの千三百六十九組合の九割の管理組合がこれをやっているということを提示するということ自体が、非常に信じられないというか、だまされているのかなという、何か数字のトリックに惑わされているような実感がしてならないんですけれども。

 それで、次の話に行きますが、現実的に、管理組合で管理規約を改正するには区分所有者の四分の三以上の賛成が必要で、標準管理規約どおりに改正されるとも限りません。

 例えば都心部では、いろいろとお話が出ているとおり、外国人が購入者の二から四割以上のマンションが七割程度に及んでおり、多くは投資目的や将来転売予定で、少なくともついの住みかとする意思は乏しいと考えられます。自分たちの利益、損失には敏感であってもマンションの将来に無関心な、そのような区分所有者がこのような規約改正には賛成しないのではないか。標準管理規約が現実とは乖離し、机上の論を呈していると思われてなりません。

 管理規約を改正する前に転売した旧区分所有者には、改正された管理規約の効力は及びません。そのような遡及しない規約改正では手当てになりませんから、結局救われない人は切捨てと感じます。

 法改正によって全国一律に当然承継を定めるという施策と比べますと、管理規約改正は全国の管理組合で個々に規約改正を行うというのは、膨大な時間と労力の無駄ですし、ばらつきが生じて不合理ですが、それぞれの管理組合がしっかりと標準管理規約どおりに改正されるのか、それが正当に運用されるのか、今数字が出ました千三百、それぐらいの数ではなくて、実態に合う、マンションの数どおりに、正当に運用されるのか、見解をお聞きいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、当然承継の点でございますが、共用部分に係る損害賠償請求権が区分所有権等とは別個の財産権でありますことからすれば、区分所有者の意思にかかわらずにその処分や移転を一律に強制する特別の規律を求めるということは、財産権保障等の観点から、その必要性、合理性について特に慎重な検討が必要であると考えておるところでございます。

 規約の改正の点でございますが、共用部分等について生じる損害賠償金の使途を限定することなどを内容とする規約の改正でございますが、損害金を修補費用に充てようとしている区分所有建物にとりましては、修繕の実現に資するものでございますので、区分所有者の利益であると考えられ、賛同を得られることが多いと考えられるところでございます。

 現行の区分所有法において、規約の変更は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議によってすることとしておりますが、この決議に必要な多数決割合は、区分所有者全員の頭数と議決権を母数として定められているところでございます。

 本改正案におきましては、この規約の変更決議は出席者を母数とする多数決によることとしておりまして、改正法案では規約の変更手続の円滑化も図っているところでございますので、従来に比べまして規約の変更手続は容易になるものと考えておるところでございます。

徳安委員 規約の変更の手続は順調にいくかもしれませんけれども、問題はその後だと私は思うんです。

 先ほどの話のとおり、何か二〇%ぐらいに、管理組合の規約の改正もちゃんとやるというふうな、何か目標の数字があったように思うんですが、二〇%と言わずに、もっともっと増やさないことには、老朽化マンションをどうするかという話にもつながってくる話です。是非、もっともっと、今の手続上の話はいいんです、ありがとうございます、本当に運用が前に進むのかということをしっかりと確認していただきたいと思っております。

 そこで、お待たせいたしました、中野大臣、これまでの議論をお聞きいただいて、最初の質問で触れましたように、いろいろな管理不全や老朽化したマンションの急増というのが社会問題となっています。現在の区分所有者が不公平なく居住できて、さらに、修繕や建て替えなど、将来に向けた人生設計が明るく可能となる改正法案であるべきと考えますが、中野大臣の所見を伺います。

中野国務大臣 徳安委員にお答えを申し上げます。

 今まで、特に共用部分に生じた瑕疵に対する対応ということで、るる、法務省等、様々御指摘いただきました。

 私は、マンションにおける良好な居住環境を確保するためには、やはりこうした共用部分に生じた瑕疵も含めて、必要な修繕というものが適時適切に行われるということは非常に重要であるというふうに考えております。

 そういう意味では、今回、共用部分の損害賠償請求権の行使の円滑化を図ろうということで、区分所有法の改正と、あとは標準管理規約の改定による実務的な対応を図ろうということを決めた法律案でございます。

 この共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容も含めて、標準管理規約を国土交通省としてはできるだけ早く改正をした上で、本当にこれは、管理組合の皆さん、改正できるんですかという御指摘もございました、丁寧な周知、そしてマンション管理業者やマンション管理士などを通じた働きかけにより、管理規約への反映を徹底をしてまいりたいというふうに思います。

 また、様々御指摘もございます、改正法の施行後、やはり、こうした管理規約への反映の状況も含めてしっかり把握をすることも大事だと思っております。マンション総合調査なども含めて様々活用して実態把握に取り組むとともに、これはやはり、いろいろな御懸念の御指摘もいただきましたので、取り残されるマンションがないように、法務省ともしっかり緊密に連携をしまして、関係者による支援の体制も構築をしながら、しっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

徳安委員 中野大臣は地元でマンション暮らしでおられるかと思うんですけれども、その当事者となって、もし自分に不利なそのような話がその身に降りかかった場合、こんな法律、誰が作ったんだと思ったりしないでしょうか。お尋ねしたいと思います。

中野国務大臣 マンション管理、私もマンションに住んでおりますので、管理組合のいろいろな事務は承知をしているというところでございます。

 やはり、区分所有形態というものでございますので、管理組合内の合意形成、いろいろな意見の住民の方がいらっしゃいますので、やはり合意形成が非常に大事なんだということを、私も自分で住んでおりますので、よくそれも承知をしております。

 そういう意味では、やはり、住民の安全で良好な居住環境を守る、こういう観点も当然必要ですし、他方で、全員が賛成するわけではないこともありますから、しかし、そうした方に対しても財産権への必要な配慮を厳格な手続の下に図るという、やはりバランスがどうしても必要になってこようかというふうに思います。

 必要な修繕が適時適切に行われるように、財産権への配慮を行いながら、やはりそれを進めていくということであろうかというふうに考えております。

徳安委員 中野大臣のお住まいのマンションはまだ新しくて、まだまだそのような状況にはならないのではないかなと思っておりますし、しかしながら、一番実体験でお分かりだと思っておりますので、老朽化、修繕しなきゃとか、いろいろなる前に、是非率先して取り組んでいただいて、やっていただければなと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、鳩山紀一郎君。

鳩山(紀)委員 国民民主党・無所属クラブの鳩山紀一郎でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきたいと思います。

 分譲マンションストックの総数、これは何度も皆さん聞いていらっしゃるかもしれませんが、二〇二三年末時点で七百万戸以上だということで、人口減少社会にもかかわらず、依然としてマンションストックは増え続けている。ということは、おのずと、外国人の方の区分所有者も増えてきているということになろうかと思います。

 実際、私の選挙区がございます東京都中央区においてもタワーマンションが増え続けておりまして、それで、地域によっては外国人のコミュニティーもできているというふうに聞きます。これ自体がいい悪いという話ではございませんけれども。一方で、二〇五〇年にかけて七十五歳以上の高齢者の増加率が最も高くなるというのも東京都中央区というふうに言われてもおりまして、マンションの所有者たちの高齢化ですとか多国籍化というものが今後ますます進んでいくことになるのかなということが予想されるわけでございます。

 そこで、まず、外国人の区分所有者の増加に関連して、幾つか課題についてお伺いをしたいと思っておるんです。

 都市部のタワーマンションなどについて、先ほど申し上げたとおり、海外在住の外国人区分所有者の比率というのも高まってきておりまして、管理組合の総会に出席せずに、議決権も行使しないというような所有者も増えているということで、その結果として、議決が困難になりまして、重要な意思決定が先送りされてしまうといったケースも増えているというふうに聞いております。

 こうした実情を踏まえますと、海外居住の区分所有者に対する管理組合の対応を支援するような行政の政策、方策も必要というふうに考えておりますけれども、政府の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 マンションには、外国人も含めまして、様々な方々が居住をしていらっしゃいます。多言語対応などの取組を行いながら、適切な維持管理に努めていただくことが大変大事だというふうに考えております。

 本改正法案におきましては、外国人を含めた区分所有者の間で、管理について円滑に合意形成を図れますように、修繕等の日常の管理行為に係る決議を集会出席者による多数決で行えることとするほか、国内に住所を有しない区分所有者が、国内管理人を選任できる制度を創設するなどの措置を講じることといたしております。

 また、外国人区分所有者への対応につきましては、例えば、マンション管理センターの方で、標準管理規約の外国語版を作成をいたしておりますほか、マンション管理業協会の方で、共用部分の使い方などについて、多言語での文例集やピクトグラムを作成するなど、関係団体におきましても様々な取組が行われているものというふうに承知をしております。

 引き続き、これら関係団体とも連携をいたしまして、外国人区分所有者への対応に取り組む団体や管理組合を積極的に支援をするなど、多様な居住者が暮らすマンションにおきましても良好な居住環境の確保が図られるよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 標準管理規約などに多言語対応をするということも含めて支援をされているということでございます。

 このような対応は当然やっていただくべきと思いますけれども、さらに、例えばですけれども、電子議決ですとか電子投票の標準化を国として支援するなどということも考えられると思いますが、こちらについてはいかがお考えでしょうか。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、外国人対応という意味では様々な取組が考えられると思います。

 現在、それ以外でやっております取組として、先ほども少し申し上げましたような標準管理規約の外国語版の作成でありますとか、それ以外にも、マンション管理士の方で外国人居住者が多いマンションでの管理規約の外国語翻訳、こういったものを支援するというようなことについても、予算的に支援を行っているところであります。

 御指摘のように、今後、外国人居住者の増加が見込まれるところでございます。関係団体とも連携をいたしまして、委員が御指摘をされました電子投票システムの導入促進といったことについても検討するといったことも含めまして、更なる取組、どういうものが実施できるかということを積極的に検討してまいりたいと思っております。それを通じて、多様な居住者が暮らすマンションで良好な居住環境が確保されるように取り組んでまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 是非、増加している多国籍管理組合とでも申しましょうか、そういったもの向けの相談窓口を開設するですとか、現場の困難に寄り添った御支援をいただきたい、そのようにお願いを申し上げます。

 さて、私の知人には、タワーマンションの管理組合の理事長さんもいらっしゃるんですけれども、その方からもお伺いしたんですが、外国人区分所有者の一部の方が理事への就任を忌避なさって、連絡や応答もなく、事実上運営に関与されないといったケースも増えているんだそうでございます。

 これは、外国人に限らず、実は御高齢の方、区分所有者にも当てはまるようなお話だと思っておりますが、理事のなり手が不足をして、一部の住民に過度な負担が集中してしまいまして、円滑な組織運営というのが困難となるような、そういったケースも多いというふうに伺っております。少ない人数で全戸の意見を聞いて回ったりしなければいけないわけですので、当然といえば当然なんですけれども。

 このような状態が続きますと、管理組合の活動が持続可能ではなくなってしまいます。こうした問題に対して、やはり何らかの制度的対処というものが必要と考えますが、いかがでございますでしょうか。

楠田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような外国籍の区分所有者の増加、さらには高齢化、共働き世帯の増加など、様々な要因を背景といたしまして、管理組合役員の担い手不足などの課題が生じているということにつきましては、マンション管理上の課題であるというふうに認識をいたしております。

 こうした課題に対しましては、外部専門家などを適切に活用して対処するということが有効であるというふうに考えておりまして、これまで、ガイドラインを整備をし、外部専門家を管理組合役員に活用する場合の留意事項などをお示しをすることによりまして、適正な管理を促してきたところでございます。

 また、本改正法案におきましては、管理業者が管理組合の管理者を兼ねる方式において、自社等との取引を行う場合には区分所有者への事前説明を義務づけるなど、このような方式を安心して活用できる環境の整備を図りますとともに、マンション管理の適正化の推進に取り組む民間団体の登録制度を創設をいたしまして、その法人が地方公共団体と連携して管理組合の活動を支援をするということによって、区分所有者が管理組合の役員になりやすい環境づくりというのに少しでもつなげていくといったことの措置も講じることといたしております。

 引き続き、管理組合におきまして、外部専門家なども活用しながら、役員の担い手を適切に確保し、組合の適正な運営が図られますよう、地方公共団体や関係団体等とも連携をいたしまして、しっかり支援をしてまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 外部の専門家の方にお願いするといったようなことも当然考えられると思っておりますし、現実的な制度的対処の一つの案としては、これは外国人に限らずともよいと思いますけれども、理事を辞退をする際に一定の負担金を納付して、それを専門家など、外部の理事などの委託費用に充てるという、有償免責制度とでも申しましょうか、そういったものを求めるような声もあるのでありますけれども、御検討は可能でございますでしょうか。

楠田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のような、管理組合の理事就任を辞退する者に対し一定の負担金を求める運用につきましては、実際、行っている管理組合も存在しているというふうに承知をしております。

 役員の選任も含めまして、管理組合の運営手法につきましては、区分所有者の特性、事情等々を踏まえながら、それぞれの管理組合において判断されているところでございますが、御指摘のような運用につきましても、区分所有者間の公平性の確保や役員の担い手不足の解消を図るための一つの方策として取り組まれているものというふうに理解をしておるところでございます。

 管理組合の役員の担い手不足の問題につきましては、引き続き、関係団体等と連携をし、今申し上げた取組も含めまして、各管理組合の状況でありますとかニーズなどを丁寧に把握をした上で、さらに、どのような対策が考えられるか、しっかり検討を行ってまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 例えば、年に数万円程度の一定の負担金を管理組合に納付してもらって、それを財源に第三者の専門家委託費用に充当するなんという制度は是非御検討いただければなというふうに思うところでございます。

 もう一点、区分所有者の購入時の契約に、不応答時、応答しないときですね、不応答時の一任規定というのを盛り込むことを義務化するべきというような御意見もいただいているんですが、こうした、いわば黙示的同意といいますか、そういった制度を認めるということの法的妥当性ですとか運用上の課題について、政府の御見解をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の点でございますが、管理組合で決議がされ、管理者への就任依頼があった場合において区分所有者が何らの反応も示さないというときには、管理者への就任依頼に黙示的に同意したものとみなすというような制度を想定しているものと考えます。

 ただ、黙示的同意があったものとみなせるかどうかは、その意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると評価することも許容されるかどうかによると考えられるところでございます。

 また、管理者への就任依頼があった場合において、区分所有者がこの依頼に対して何らの反応も示さないというときは、むしろ依頼を拒絶していると考えることが合理的な事案もあるというふうに考えられる上、そのような就任意欲の乏しい者が管理者になったとしても、適切に職務が執行されることを期待することは、なかなか難しいところもあるかなというふうに考えるところでございます。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 実際に制度化するのは、それなりに難しさもあるということは理解いたしましたが、何らかの方法によって管理の停滞を回避したりとか、緊急時の迅速対応というのが可能になるためのルール作りというのは、是非、御検討を引き続きいただきたいと思います。

 先ほど来、外国人の区分所有者の増加に関連するマンション管理上の諸課題を取り上げてまいりましたけれども、そもそも論として、外国人区分所有者が増えることに対する安全保障上の懸念が叫ばれるということが増えてきていると認識をしております。例えば、管理組合において外国人の所有者の方たちが多数を占めた結果として、日本人所有者に不利益な議決がなされるといったような懸念ですね。

 こういった懸念に対して、今後、国としてはどのように対処していくべきというふうにお考えでしょうか。中野大臣にお伺いいたします。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 外国人のマンション購入等に関して、様々な報道、様々な御指摘も頂戴をしたところでございます。

 御指摘のようなことがあるかどうかも含めて、実態把握にはしっかり努めてまいりたいというふうに思いますが、他方で、先ほど来、ずっと答弁も事務方でさせていただいているとおり、外国人も含めて、安心で良好な居住環境や住まいの確保を図っていくことは非常に重要であるということで、今回の法改正もさせていただいているわけでございます。

 国外に居住する区分所有者が専有部分の管理のために国内管理人を選任できる制度でございますとか、あるいは、修繕等の日常の管理行為については、全区分所有者ではなく、集会出席者の多数決によることができるなどでございますとか、外国籍の区分所有者の方が多い場合でも、関係団体と連携をして、管理組合がマンションをめぐる様々な課題に対して適切に対処できるようにということで、必要な支援にはしっかり努めてまいりたいというふうに考えております。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 こういった議論は、今はマンションの内部に関するものだというふうな認識をしておりますけれども、マンション内部にとどまる話ではなくて、例えば、マンションが立地している土地が、当初はいわゆる重要土地ではなかったものが重要土地に変化するといったようなこともあり得るわけですから、おっしゃってはいましたけれども、その実態の把握も含めて、適切な対処をお願いしていきたいというふうに思います。

 いつ損害賠償請求の話をするんだと思っておられる方も多いかもしれません。もうちょっと続けさせてください。

 話題を変えまして、マンションの防災対策についての話題をお伺いしたいと思います。

 地震などの災害リスクが高まっております中で、マンション単位の防災体制の整備というのが急務になっていることは論をまたないと思うんですが、しかし、現状ですと、管理規約に防災条項が必ずしも標準化されておりません。国として、モデルとなる防災条項を提示して、防災訓練ですとか備蓄体制の整備を管理規約に明記することですとか、マンションの防災計画を地方自治体に届け出ることを努力義務化するといったことなどが今後必要なのではないかと考えられますが、政府の御見解をお聞かせください。

楠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 管理組合におきまして、いつ起こるか分からない災害の発生に備えて、平時から防災備蓄や避難訓練の実施など、必要な準備を行っておくことは大変重要であるというふうに考えております。

 このため、マンションの管理規約のひな形であります標準管理規約において、管理組合の業務の一つとして、マンション及びその周辺の防災等に関する業務というのを位置づけているところでございます。

 また、昨年六月、有識者検討会を開催をいたしまして、管理組合が平時から進めるべき防災対策として、防災マニュアルや防災用の名簿の作成、周知、それから、防災訓練の実施や防災物資などの備蓄などの取組を取りまとめますとともに、シンポジウムなどあらゆる機会を通じまして、その周知に努めているところでございます。

 さらに、地方公共団体におきましても、例えば東京都では、防災マニュアルを策定いたしているなど、災害による停電時でも自宅での生活を継続しやすいマンションを東京とどまるマンションという形で登録、公表いたしまして、防災備蓄資機材の購入の支援というのも行っていらっしゃるというふうに承知をしております。

 引き続き、地方公共団体等とも連携をいたしまして、防災対策に取り組む管理組合を積極的に支援をいたしますとともに、御指摘もございましたが、標準管理規約における防災対策の内容の充実についても検討するなど、マンションにおける防災対策の促進にしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 防災に関して、規約の中に入れる取組はなされているということであるとしますと、周知をもっと徹底していただくということなのかなというふうに理解いたします。

 もっとも、管理規約に防災条項が入ったからといって、住民側の関心とか参加意欲というのが低ければ、計画の実効性が確保できずに意味がないということになってしまうので、当然ですけれども、マンション内での備蓄や訓練の実施は理事会の努力だけだと難しいところがございますので、防災対策というのは、理事会だけの業務ではなくて、全住民で共同責任というような認識がなされなければいけないというふうに思っています。

 これには一定程度の制度的な後押しが必要だと私は考えておりまして、例えば、備蓄品を購入する際に助成金で補助をする制度ですとか、防災訓練を定期的に実施した管理組合に対してポイント還元するだとか、あるいは、防災体制を備えた管理組合を防災協力管理組合とかそんな形で認定をして、それで、防災予算ですとか住民サービスでの優遇措置を付与する制度ですとか、こういったようなインセンティブ設計というのができれば住民の関与も引き出しやすくなるのではないかと考えますが、政府として、こうした助成ですとか認定の制度の導入に向けたお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど局長の方から、管理組合において様々な防災の取組、非常に大事だという答弁をさせていただきました。平時から管理組合が進めるべき対策も取りまとめて周知をしたということも答弁をさせていただきましたが、やはりもっと後押しがあった方がいいんじゃないかというふうな御指摘かと思います。

 例えばなんですけれども、防災備蓄倉庫の設置など、防災改修によってマンションの長寿命化を進める取組については予算上の支援も行っておりますし、また、地方公共団体との間で災害時の帰宅困難者の受入れに関する協定を締結したマンションなどにおいて、受入れに必要な防災備蓄倉庫等を整備する取組に関しても、予算上の支援も行っているというところもございます。

 引き続き、管理組合における防災対策の取組を支援をするとともに、例えばマンション管理計画認定制度に防災の観点を加える等につきましても、今後、必要な検討については行ってまいりたいというふうに思っております。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。大臣を指名しておりました。失礼いたしました。ありがとうございます。

 以上、マンションの管理の中に防災の観点も入れるということが重要だという観点で御質問させていただきました。

 最後に、今回、法改正において最大の論点となっております共用部分における損害賠償請求権に関連いたしまして、法務副大臣にお伺いをしたいと思っております。

 今回の法改正において、元区分所有者が別段の意思表示をすれば損害賠償請求権を個別に行使できるということで、これを管理組合の管理規約の改定で防げばよいという整理がなされているというふうに認識をしております。

 管理規約できちんと対応できるのかどうかに大きな懸念が指摘されているということは承知をしておりますけれども、これは先日の参考人質疑の際にも齊藤広子参考人から聞かせていただいたことでありますが、既存のマンションの中には、頑張れないマンション、つまり、管理不全であったり、管理が放棄されてしまっているというマンションもあるわけであります。管理組合がないマンションもございます。

 この点に関して、国民民主党の中でも懸念をしている議員が私も含めておりまして、つまり、既存の管理不全マンション、とりわけ管理組合のないマンションにおいては、旧区分所有者の別段の意思表示の確認手段がないわけでありまして、本改正案は、こういったマンションの救済にはなっていないのではないかという懸念であります。

 この点について、どのような御認識か、あるいはどのような御検討がなされたのか、お伺いできればと思います。

高村副大臣 お答え申し上げます。

 まず、法務省として、各政党における御意見について、その評価を申し上げる立場にないことは御理解いただければと思います。

 そして、本改正法案では、管理者は、共用部分について生じた損害賠償金等の請求権を有する区分所有者又は旧区分所有者を代理等することができるとしております。

 この規律は、前提として、管理者が選任されている場合の規律であり、管理組合が十分に機能していない状況、すなわち管理者がいない場合には、管理者に対して別段の意思表示がなされることはなく、委員御懸念の事態は生じないと考えております。

 その上で、委員御指摘の管理不全マンションに対しては、国交省と連携の上、必要な措置を講じるように努めてまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 いわゆる頑張れないマンションに関しても十分御配慮いただいた上で、住民の安全、安心を守るということができるような伴走支援ですとか、そういったことを考えるべきなのではないかなというふうに思った次第でございます。

 もう一点、今回の法改正により、国内外問わずに、元区分所有者が別段の意思表示をすれば損害賠償請求ができるようになるということで、つまり、これまでグレーゾーンだったものが、明文化によって明確化されるということになります。これによって、かなりの数の元区分所有者の方たちが権利主張をし始める、いわゆる寝た子を起こすような事態になる可能性が高まるというような懸念がございますが、これについては、どのような御認識でいらっしゃいますでしょうか。

高村副大臣 お答え申し上げます。

 本改正法案では、管理者は、共用部分等について生じた損害賠償金の請求権を有する旧区分所有者を代理等することができることとしつつ、旧区分所有者が別段の意思表示をした場合には、当該旧区分所有者を代理等することができないとしております。

 本改正法案は、旧区分所有者が有する上記請求権を管理者が代理することができることを規定するものであり、新たに旧区分所有者に損害賠償請求権を発生させるなどするものではありません。旧区分所有者が自ら有する権利を行使することについては、現行法の下でも可能であり、基本的には問題はないものと認識をしております。

 なお、改正後における実務上の対応として、各区分所有建物における規約の定め又は集会の決議により、別段の意思表示をすることができないものとすることが可能であると考えており、御指摘のような懸念もなくなっていくと考えられます。

 法務省としては、国土交通省との緊密な連携を図りながら、管理規約のひな形として実務上広く普及している標準管理規約を速やかに改定し、ただいま申し上げたような定めを含む管理規約の周知徹底を図るなどしてまいりたいと思います。

鳩山(紀)委員 時間が参りましたのでやめますが、現改正案にしろ、当然承継案にしろ、住民本位を前提に、紛争が最小限に収まると考えられる法律はどのようなものか、引き続き考えてまいりたいと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

井上委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。

 今日も質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 大臣、今日も私だけ通告しておりませんので、もしよろしければ中座していただいて結構かと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 前回は、特に、主にマンションの管理に関して質問をさせていただきましたが、今回は特にマンションの再生に関連して何点か御質問をさせていただきたいと思いますので、また局長、ひとつよろしくお願いをいたします。

 最初に、マンションの再生等の件数における国交省が示しておるKPIについてお伺いをします。

 国交省の推計によれば、令和五年末時点でのマンションストック総数は約七百四万戸というふうに、これは多くの方がおっしゃっています、とされ、このうち、旧耐震基準で建築されたマンションストックは約百三万戸あるというふうにされております。結構多いです。しかし、これらのマンションでは、居住者の高齢化とか所在不明者の増加、さらには管理組合の総会運営の困難化等で適切な建て替えが進んでいない、こういった現状があると思います。

 そこで、今回の改正案では、これまでの建て替えの手法によるマンションの再生に加え、新たに、建物と敷地の一括売却、さらには一棟リノベーションなどの取組についても多数決決議により可能となるため、今後はマンションの再生が進むこと、これを私は期待をするところでございます。

 国交省においては、マンションの再生数等のKPIについて、令和六年度段階までで四百七十二件だったものを、法施行後五年間で一千件との目標を設定しておりますが、初めに、この目標件数を一千件とした根拠、これについて答弁願いたい。

 また、マンションの老朽化の実態として、令和五年末時点においては、築四十年以上の高経年マンションは既に百三十七万戸ありまして、その数が、十年後には約二倍の二百七十四万戸、二十年後には約三・四倍の四百六十四万戸というふうに急増をしていくことを考えると、この法施行後五年間で一千件との目標、これは私は、少し過小な数字、小さい数字ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。ここもお伺いしたい。

 また、三点目に、今回国交省より示された資料には、この一千件の目標数については、小さい文字で資料にこう書いてあった。外壁剥落等の危険なマンションを十年後におおむね解消できる水準であるとも示しておりますが、国交省としては、いかなる考え方、基準をもって、この十年後におおむね解消できる水準という考え方を示しているのか。

 この三点、お伺いします。

    〔委員長退席、中谷(真)委員長代理着席〕

楠田政府参考人 お答えいたします。

 マンションの再生等を進めるためには、合意形成の促進と保留床の確保等による負担軽減の両方に取り組むことが重要だと考えております。

 このため、先生御指摘のとおり、本改正法案におきましては、建物、敷地の一括売却等を多数決決議で行うこと、また、隣接地の権利を再生後マンションの区分所有権に変換することなどを可能といたしますとともに、一棟リノベーションの実施等に対する予算支援や住宅金融公庫による融資など、様々な支援を総合的に実施することとしております。

 また、これらの取組によりまして、施行後五年間で、マンションの再生等の件数を累計千件まで増加させることをKPIとして設定をしたところでございます。

 私どもの方で問題意識を持っておりますのは危険なマンションということでございまして、御指摘のとおり、高経年マンションは今後大きく増えていくわけでございますが、それが危険マンションにならないようにきちっと維持管理、修繕等を行うということをまずはやった上で、危険マンションをいかに再生するかということかというふうに思っております。

 そういう意味で、施行後五年間で累計千件というふうに申し上げましたけれども、そのペースでマンションの再生等が進みますと、十年後には外壁剥落等の危険なマンションをおおむね解消できる状況になるというふうに考えているところでございまして、そういう意味でこの目標を設定をしたところでございますし、この目標の達成に向けまして、しっかりと取組を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 法施行後一千件というのは、今の高経年マンション、これから増えていくマンションも含めると、私は、やはりちょっと少ないんじゃないかなというふうに思っております。しかし、これは、法施行されてから加速度的に増えていくということも考えると、また増やしていく取組をしていただくということが大事かなと思っていますし、さらには、外壁剥落等の危険なマンションというところで、十年後におおむね解消できるというところ、確かに、千件というのは、基本的には千棟ということでしょうから、一棟五十戸と考えても五万戸、外壁剥落等の危険なマンションは大体今三・八万戸あるというふうに言われていますから、ここは確かに解消できるのかなと。

 加えて、ここについては、本当に危険なマンションについては何としてでも対応するんだという国交省の強い意思を私は感じましたので、そこはしっかりとやっていただきたいということもお願いをしながら、このKPIの確認をさせていただきました。

 そうしたら、具体的なところで、次に、新たな再生手法等による決議反対者等への配慮についてお伺いしたいと思います。ここは何人か既に各委員の先生も質問しておりますが、確認いたします。

 耐震性不足やバリアフリーの観点等から、老朽化マンションの再生を進めること、これは重要な課題であります。そこで、今回は、区分所有法とかマンション再生法の改正によって、従来の建て替えに加えて、新たな手法での取組もあり、さらには、その決議要件についても、五分の四とか四分の三以上といった多数決で決議をすることも可能であるために、これまで以上にマンションの再生が進むこと、これが予想されます。

 しかし、同時に、今回の改正は、区分所有者全員の同意を必要としないために、結果的に、決議に反対した所有者への配慮も必要なのではないかと私は考えます。これは何点か、多くの先生も提案をしております。

 そこで、国交省に伺いますが、今回の改正では、例えば高齢のため、建て替え費用の拠出が難しく反対に回らざるを得ないといった所有者など、結果的に決議に反対した区分所有者に対してどのような配慮が考えられているのか。この具体的な配慮、大変に重要かと思いますが、この点、御答弁いただきたいと思います。

楠田政府参考人 先ほどの答弁で、住宅金融支援機構のことを公庫と申し上げました。大変申し訳ありません、修正させていただきたいと思います。昔の名前でございました。失礼いたしました。

 それでは、お答え申し上げます。

 マンションの再生等の事業を進めるに当たりましては、様々な事情で転出をされる区分所有者等の方々に対しましても丁寧な対応を行うことが極めて重要であるというふうに認識をしております。

 このため、本改正法案におきましては、こうした転出者の方々に対しまして、まず区分所有法において、適切な補償額による金銭的補償を行うということを規定をすることに加えまして、マンション再生法において、居住の安定確保に関する取組を基本方針に位置づけますとともに、これらの取組について、事業組合や地方公共団体などが努力義務を負うということを規定をすることとしております。

 この規定に基づきまして、高齢者など特に配慮が必要な方々に対しまして、地方公共団体や関係団体とも連携をして、それぞれの事情に応じた居住の安定確保をしっかり図ってまいりたいと考えております。具体的には、公営住宅等の公的賃貸住宅、セーフティーネット住宅等を活用するとか、家賃等の債務保証制度や、居住支援法人による相談対応等の利用、さらには、住宅金融支援機構によるいわゆるリバースモーゲージ型の住宅ローンの提供等々でございます。

 引き続き、これら制度的な面、予算、税制、金融など、あらゆる政策ツールを活用いたしまして、居住の安定確保等にしっかりと取り組むことによりまして、マンション再生事業を適切かつ円滑に進めてまいりたいというふうに考えてございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 ここの部分を本当に、より具体的に丁寧にやっていただくことが大事だと思いますし、今日午前中には、資金的な問題も含めて、税制的な問題なんかの提案をされた方もおられました。そういったところを、やはり幅広にやっていただきたいと思います。私は、反対されていても、決議された後には賛成に回る方もいるんじゃないかと思うんですが、そういった方に対しても、やはり資金面での措置というのも大事かなと。

 そういった意味においては、まさしく住宅金融支援機構、ここの役割について、もう少し掘り下げてお伺いしたいと思うんです。

 マンションの建て替えとか再生といっても、やはり多額の資金がかかるのは事実であります。ここが一つの壁になることもある。確かに、マンションの管理組合では、それらの取組に向けて積立金の積立てなどを行っていると承知しますが、管理組合や区分所有者個人が積立てや自己資金以外の資金を調達することは、マンションの再生を円滑に進める意味においても重要な課題だと私も感じております。

 マンションの建て替えなど再生への支援機関としては、まさしく独立行政法人住宅金融支援機構の提供する各種サービスが一般的ですが、管理組合などが主体となってマンションの建て替えなどを進める場合、住宅金融支援機構では今回の法改正も含めてどのようなメニューがあるのか、ここを答弁いただきたいのと、また、特に高齢者世帯等が建て替え費用などを拠出する場合どのような支援メニューがあるのか、また、それらのメニューのこれまでの活用実績、この点についても御答弁願いたいと思います。

楠田政府参考人 お答えをいたします。

 住宅金融支援機構におきましては、マンションの建て替えや共用部分の改修を行う組合に対しまして、工事費等の資金の融資などを行っております。また、本改正法案におきまして、一棟リノベーションや建物、敷地の一括売却などの再生手法が創設されることに伴いまして、これらの新たに追加される事業につきましても融資の対象とすることといたしております。

 また、特に高齢者に対しましては、建て替え費用等の返済負担の軽減を図るために、毎月の返済額を金利負担のみとするリバースモーゲージ型の融資を行っているところでございまして、令和六年度末までの直近十年間で三百七件の活用実績がございます。

 また、委員御指摘のとおり、マンションすまい・る債ということでの積立金の制度も設けて、積立ての支援もいたしております。

 引き続き、これらの制度を通じまして、マンション再生等の事業の円滑な実施を、金融の面からもしっかりと支援をしてまいりたいと存じます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 この金融面における支援、しっかりと周知を図っていただきたいと思いますし、特にやはり高経年化しているマンションには高齢者が多いということで、リバースモーゲージ、これをやはり、より円滑に使用していただく。相続人がいないとか、さらには相続人において相続の意思がないということであれば、これは非常に有効だと思うんですね。十年間で三百七件、私はまだちょっと少ないんじゃないかと思っていますので、安心の材料として、これをやはりしっかりと周知していくこと、このこともお願いをしたいと思います。

 最後、一点、民間団体の新たな登録制度について確認します。

 現在、地方公共団体が、管理不全マンションに対し、助言、指導、勧告できる制度がありますけれども、この実績は非常に乏しいというふうに聞いております。また、全国における多くの地方公共団体においては、マンションの適切な管理や再生に対応する専任担当者、これが不足をしておって、そういった経験や知識を有する専門家や専門機関との連携というのがこれからは求められているというふうに伺っております。

 そのような中、本改正案では、区分所有者の意向把握や合意形成支援、さらには、地方公共団体に対してマンション計画の作成の提案等を行う民間団体の登録制度として、新たにマンション管理適正化支援法人制度、これを創設するとなっておりますが、国交省としては、この新たな制度に登録できる民間団体として具体的にどのような団体を想定しているのか、また、具体的な登録数の目標の設定などがあるのか、さらには、マンション管理適正化支援法人制度の制度創設の意義及び効果、この点についてお伺いします。

楠田政府参考人 お答え申し上げます。

 マンションの適正な管理を実現するためには、地方公共団体だけではなく、マンション管理に取り組む民間団体と連携し、その協力も得て、地域全体で管理組合の活動を支援する体制を構築することが重要であると考えております。

 このため、本改正法案におきましては、地方公共団体が、マンション管理に取り組む民間団体を、マンション管理適正化支援法人として登録できる制度を創設をすることとしております。

 各地域で活動しておりますマンション管理士や管理組合の団体などにとっても、この法人に登録されることによりまして、認知度や信頼感が高まり、活動の充実や地方公共団体と連携した取組の強化などにもつながるものと考えております。

 また、その活動の資金につきましては、支援法人は民間団体でございますので、自律的に活動することが基本ではございますけれども、地方公共団体の方から、区分所有者向けのセミナーの開催や相談対応、あるいは管理組合の活動支援等の業務を受託するといったことなどによりまして、一定の収益を上げていただくというようなことも想定いたしております。

 その意味で、例えば、地方公共団体が、令和七年度予算で創設をいたしましたマンション総合対策モデル事業を活用していただきまして、管理組合への専門家派遣などの業務を支援法人に委託するというようなことなども考えられるところでございます。

 今後、これらの取組に加えまして、マンションの適正な管理への社会的な関心の向上などにも積極的に取り組みまして、支援法人の活動の機会を増やすということにも積極的に取り組んでまいります。支援法人が自律的かつ主体的に活躍できる環境の整備、そしてまた、御指摘いただきましたが、できるだけ多くの登録をいただけるような制度の周知や働きかけにも力を入れてまいりたいと存じます。

    〔中谷(真)委員長代理退席、委員長着席〕

中川(康)委員 ありがとうございました。

 これから地方公共団体の専任担当者を増やしていくのは、現実的には少し難しいのではないかと思っています。そういった意味においては、この法人の登録というのは期待できるところでありますし、そこに対しての資金支援というお話もいただいたところであります。そういったところも含めて、主体的また自律的にこの法人が登録をされ、制度として機能していくこと、こういったことも願いながら、今日の質問を終わらせていただきます。

 本日は、再生に関しての質問をさせていただきました。

 以上で公明党の質問を終わります。大変にありがとうございました。

井上委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 前半に引き続きまして、れいわ新選組を管理し切れない管理人、たがや亮と申します。

 道路局長、ずっと座りっ放しで、おトイレ、大変だということなので、遠慮なく行っていただければと思いますので。

 前半の、午前中の最後の質問における法務省答弁で、新区分所有者が旧区分所有者に請求ができるとおっしゃっていましたが、そんな面倒なことを新区分所有者に課すことを常態化させることが今回の改正法案の目指すところなのか、改めてちょっと法務省にお伺いをしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今回の区分所有法二十六条の改正でございますが、共用部分に係る損害賠償請求権の行使の円滑化を図るということが最大の目的でございます。

 現在の実務におきましては、今日も何度か出ております平成二十八年の東京地裁の判決によって、一部の、あるいは一人でも区分所有者が区分所有権を譲渡してしまうと、管理者は全体について代理をできないというようなことで実務が動いてしまっておりました。それを解決したいということで、今回の改正法では、現区分所有者に加えまして、旧区分所有者も一括して代理行使ができる、こういうことで請求権行使の円滑化を図ろうとしているものでございます。

たがや委員 結果的にわざわざ新所有者が裁判をしなきゃいけないような、そういうことを常態化させてはならない、そういうふうに思いますので、その辺、考えていただきたいなと思います。

 損害賠償請求権を旧区分所有者の下に残す必要性について、法制審議会では、欠陥判明後に減額して転売せざるを得なくなった旧区分所有者の財産権を保護する必要があるということが民法学者から主張されて、それが有力な理由とされていたようですが、他方、欠陥判明前に通常の市場価格で転売した場合には、旧区分所有者には欠陥による損害が一切ないと思います。

 この場合、何ら損害を被っていない旧区分所有者に損害賠償請求権がなぜあるのか、現在の区分所有者こそが損害賠償請求権を有するべきではないのか、法務省にお伺いをします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 分譲契約の契約不適合責任に基づく損害賠償請求権が認められるというためには、買主である旧区分所有者に損害が認められる必要がございます。例えば、旧区分所有者が現区分所有者との間の売買契約の契約不適合責任に基づく損害賠償責任を負うという場合には、旧区分所有者にも損害があるというふうに考えられるところでございます。

 また、区分所有建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるという場合には、特段の事情がない限り、現区分所有者はマンションの設計、施工業者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をすることも可能であると考えられます。

たがや委員 ありがとうございます。

 今、法務省は旧所有者に損害があると言われましたけれども、その旧所有者が売買前に瑕疵が見つからなかった場合で売却した場合は損害がないと思います。例えば、当然承継にしたとして、旧所有者の売買前に瑕疵が見つかり、先出しして修繕を行った場合、この場合は売買契約書にてその旨をうたって担保すればいいだけだと思いますが、それが可能かどうかだけ、イエスかノーかで、法務省、お答えいただけるでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 イエスかノーかでお答えするのはちょっと難しいところもございますが、元々の損害賠償請求権の性質として、区分所有権の譲渡に伴っては移転をいたしませんので、移転することを前提にして当事者の合意で解決するという方向性はなかなか難しいというふうに私どもとしては考えております。

たがや委員 でも、これは、法務省、イエスなんじゃないですか。違いますか。立場上言えない。イエスかノーかで答えてほしいんですけれども、どちらかというとどっちですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 前提が違うということになりますので、イエスかノーかで答えろと言われれば、私どもとしてはノーの方になります。

たがや委員 分かりました。

 いずれにしても、この法案が通ってしまうと分属帰属を確定してしまうということなので、現在、今ある七百四万戸、今後のトラブルが、それを助長していくということになると思いますので、とんでもないことだと思うんです。

 そもそも、瑕疵が見つかったことによる代金減額分は、修繕費用から正確に計算されたものじゃないと思うんです。旧区分所有者と新区分所有者の転売価格の高い安いによって損害賠償請求権が移転したりしなかったりと、決めること自体が合理的ではなくて、欠陥による売却価格低下の問題は、損害賠償請求権が誰に帰属するかの問題とは切り離すべきと思いますが、欠陥によって転売価格が下がるという場面が生じた場合、転売当事者間の契約において、将来賠償が得られた場合に精算するという、ある意味、特約事項をつければ済む話だと思いますが、見解をお伺いをいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の点でございますが、いわゆる当然承継の考え方によった場合には、旧区分所有者から現区分所有者に区分所有権等を譲渡する際に委員御指摘のような合意をしておくことで、この考え方の問題点を解消することができるんじゃないかという御趣旨というふうに捉えたところでございます。

 しかしながら、委員御指摘のような合意をしたといたしましても、旧区分所有者はその意思にかかわらずに損害賠償請求権という財産権を新区分所有者に移転させることを強制させられるという規律が前提となっておりますことからすれば、やはり財産権の保障ということの観点から特に慎重な検討が必要であると考えるところでございます。

 また、委員御指摘のような考え方の下では、分譲業者に対する損害賠償金の請求は現区分所有者又は管理者が行うことになると思われますが、旧区分所有者は自らの不利益を回復するための分譲業者に対する請求を自らが監督することができない者に委ねざるを得ないということにもなってしまいまして、このような点は問題として残るものと考えるところでございます。

 したがいまして、御指摘のような合意をする前提といたしましても、損害賠償請求権を新区分所有者に当然に承継させるという規律を設けることは慎重な検討が必要であると考えておるところでございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 区分所有権、それに対する損害賠償ということ、財産権ということは分かるんですけれども、ある種、共用部分に関するというのはちょっと特殊な場合だと思うんですよね。要するに、ケーキを分けるように分けられないものと考えたときに、果たしてそれでいいのかという考えがあると思うんですけれども、法務省、その辺はどうですか。

 要は、空気を分けるようなものだと思うんですね、マンションの共用部分というのは。ケーキを分けるようには分けられないんだから、そこを、財産権を一緒くたにするというのはどうなのかと。あえて分けて考えるという、特殊な場合として。ほかにも多分、マンション以外にもそういうケースはあると思うんですけれども、それは個別にやっていけばいいんじゃないのかなと思うんですけれども、その辺はどうでしょう。

竹内政府参考人 今回問題になっております損害賠償請求権自体は共用部分に瑕疵があるために発生するものということになりますが、大本をたどってみますと、マンションの分譲契約ですね、売買契約に基づいて、その契約の内容が、合意した内容と実際のマンションにそごがある、契約内容が不適合だったということで生じる損害賠償請求権でございまして、売買契約をしたことに起因して発生する、こういうことになりますので、売買契約の当事者である、今回の言葉で言いますと旧区分所有者が持っていらっしゃる権利ということになります。

 他方で、マンションの一室は区分所有という所有権でございまして、所有権は物権でございますので、物権を譲渡するということとこの損害賠償の債権というのは、これは別な権利でございますので、必ずしも物権の譲渡に従って損害賠償請求権、この債権が一緒に譲渡されるということにはならないという意味で、分けて考えているものでございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 これ以上言ってもちょっと時間もないので、次に行かせていただきますけれども。

 現区分所有者で反対者がいても多数決でマンションの健全化を優先しようとする改正法案の考え方からすれば、ここは、旧区分所有者の僅かな財産上の不利益よりも、マンションの適正な維持管理、これを優先すべきであって、それが一貫した政策判断だと思うんですけれども、法務省の考え、先ほど述べられたとおりなんですけれども、ここは国交大臣、中野大臣にお伺いをしたいと思います。どうでしょう。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 るる答弁差し上げている中身ではありますが、マンションはやはり区分所有形態という性質がございますので、管理や再生を適切に進めるには管理組合内の合意形成が不可欠ということであります。仮に、反対者がいるということもございます。そのときも、住民の安全や良好な居住環境を守るという公益性の観点から、適切な補償額による金銭的補償を行うなどの、財産権への必要な配慮を厳格な手続の下で規定した上での多数決での意思決定を行うということが今回の法律であると思います。

 このように、法制度の中で個人の財産権が尊重されるということは重要ではございまして、財産権への必要な配慮を行いながら、マンションの適切な維持管理が図られることが重要だというふうに思っておりますので、やはり、個人の財産権の保護とマンションの適正な維持管理のバランスを取る必要がある、そういう内容であるというふうに理解をしております。

たがや委員 ありがとうございます。

 午前中も質問させていただいたんですけれども、究極の選択になるんですけれども、財産が大事なのか命が大事なのかという問題で、やはり、補修、保全、そういったことができなくなると、タイルが剥がれて落ちて人が亡くなるというケースだったり、崖が崩れるとか外壁が崩れるとか、そういうこともあろうかと思うので、やはり、大臣、ここはもう一回ちょっとお伺いしたいんですけれども、究極の選択になって申し訳ないけれども、財産という部分、お金の部分と、人の命という部分、これはどっちも大事だというのは分かるんですけれども、どちらかといえばでもいいですから、大臣の思いを聞かせていただきたいなと思います。

中野国務大臣 午前中に法務大臣と答弁をどちらもさせていただいて、それはどちらも同じような内容だったかと思うんですけれども、我々は、マンションの適正な維持管理を図るということは当然重要であるというふうに考えておりますけれども、その中でも、財産権への必要な配慮を行いながら、そうしたマンションの適正な維持管理を図ることが重要であるのだということは、先ほど来申し上げたとおりであるというふうに思います。

たがや委員 ありがとうございます。

 法務省側からの説明では、当然承継を法改正前の法律関係に適用すれば法律関係が混乱するから、当然承継は採用できないということでした。しかし、五月九日の参考人質疑では、実務を知る弁護士から、転売した旧区分所有権が、共用部分の欠陥について修繕費用相当の損害賠償請求権を個別行使して賠償金を取得したなどということは今まで聞いたことがないというのは、先ほども徳安委員も言われていました。

 一体どのような法律的混乱や不都合が生じるのか、改めて具体的に説明していただけると助かります。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正法案の施行の前に区分所有権が譲渡されていた事案についても遡って分譲業者と旧区分所有者の間の分譲契約に基づく損害賠償請求権を移転させるということになりますと、改正法の施行前に区分所有権を譲渡した旧区分所有者から債権という権利を強制的に取り上げるということになるため、財産権侵害のおそれがあるというふうに考えられるところでございます。

 また、既に成立した法律関係を覆滅することにもなりまして、社会経済に著しい混乱が生ずるおそれがあると考えております。すなわち、既に旧区分所有者と分譲業者との間の訴訟が係属していたという場合には、旧区分所有者の従前の訴訟行為が無駄になったり、改めて現区分所有者を原告とする訴訟を提起せざるを得ないという事態が生じたりするなど、大きな混乱が生ずると考えられます。

 更に具体的に申し上げますと、例えば、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、現区分所有者から損害賠償金の引渡しを求められるという事態が生じる可能性がございますし、また、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、分譲業者から損害賠償金の返還を求められるという事態が生じる可能性もございます。さらに、既に損害賠償金を多数の旧区分所有者らに支払い済みであった分譲業者におきましても、当該支払いは無効であるとして、現区分所有者から改めて損害賠償金の支払いを求められる可能性もございます。

 このように、当然承継の規律を遡及適用とすることは、国民の権利義務に影響を及ぼすことに加えまして、社会経済に著しい混乱をもたらすものと考えられるため、認められないと考えているところでございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 先ほど来ずっと申し上げていますけれども、何で、旧区分所有者が売買時に契約書にそれをうたって、それで済む話を、わざわざ分属帰属にして、今ある七百四万戸を救わないような、切り捨てるような、そういう法案を通していくのかなというのは、いまだにちょっと、ずっとはてななんですよね。

 ちょっとここで、時間ももう五分を切っちゃったので、立憲さんの修正案、これを質問しないと失礼なので、先に、飛ばしてそちらから質問させていただきたいと思いますが、立憲民主党の修正案について伺います。資料を御覧ください。

 現状、分属帰属か当然承継かグレーであり、解釈に委ねられてきましたが、推測するに、グレーがゆえに裁判で決着せざるを得ず、一般的には、裁判費用等々、いろいろなことを考えたら費用対効果が悪くて、問題なく今まで承継されてきたとも言える中、今まで問題は起こったことがないと参考人質疑で神崎さんも言っていましたが、それが、今回の改正法案を基にした立憲の修正案では、分属帰属を法的に正しいものであると確定させてしまうものであって、その結果、これまで請求権などを持っていないと思っていた人たちは、自分に権利があるんだから支払ってくれということや、今後の規約改定にも応じない、特に投資家などは利益の最大化を図るのが当たり前ですから、現区分所有者は旧区分所有者にその修繕費用の一部の返還義務を負うことになって、結果的に遡及的に権利行使を認めたことと同じになって大混乱を招く、そんなおそれがあると思いますが、それでも、この与党の改正法案に賛成の上、立憲の修正案でこの問題を回避できる、そう考えているか、見解を伺いたいのと、立憲案の考えには、当然承継にすると旧所有者が先出しした修繕費を売却後に受け取れない、すなわち旧所有者の権利を守れないと考えていると思うんですけれども、当然承継にした上で、売買契約書にてその旨をうたえばいいことではないかと思いますが、なぜ五年後の見直し案でいいと考えるのかも併せて伺いたいと思います。

森山(浩)委員 お答えします。

 政府案の新区分所有法二十六条二項、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求の場面で、旧区分所有者に独自の権利行使に関する意思表示を認めることとしており、損害賠償請求権が旧区分所有者に残ってしまうという問題があることについては、御指摘のとおりであると考えております。

 なお、五月九日の参考人質疑では、共用部分に関する損害賠償請求権の法的な位置づけについて、神崎参考人と沖野参考人とで見解が異なるものでありました。

 この点、沖野参考人の、転売があっても旧区分所有者に賠償請求権は帰属するという説は、区分所有法の基本書や地裁の裁判例で採用されている考え方であり、これによれば、全ての区分所有者に共用部分等に係る損害賠償請求権が帰属する場合に限り、管理者が一括して損害賠償請求を行うことができるとされております。

 政府案は、この考え方を前提に、旧区分所有者も含めて、管理者が一括して損害賠償請求を行うことを可能とするものであり、これにより解決できる紛争もあると考えております。

 他方、神崎参考人の、現行の区分所有法も当然承継説を前提に運用されているとの見解は、マンションの訴訟実務に詳しいお立場からの示唆に富んだ御指摘であったと受け止めています。ただ、これについても、新旧の区分所有者の間に不公平が生じないかなどの懸念が指摘をされているところでもあります。

 そこで、本修正案においては、この問題について、一人でもこぼれることがないよう、マンションの実務においてどのような状況が生じているのかをしっかりと実態把握した上で、当然承継案も含め、マンションの共用部分の補修等に係る紛争の予防及び解決のための方策の検討と、その結果に基づく措置を政府に義務づけることとしたものでございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 もう時間が来たので終わりますけれども、立憲さんとはある程度、問題意識というのは共有はしているんですが、この法案を通して、通過させちゃうことで、分属帰属というのがやはり固定化される。現状、七百四万戸ある旧区分所有者がその財産権を主張しちゃったら、これは収拾がつかなくて、もう取り返しがつかないんじゃないかという私は危機感を持っていますので、最低でも採択は延期、私的には本当にこれは廃案に値する法案だと思っていますので、その辺、立憲さんももう一回、もう時間もないですけれども、考えていただければなと思って、質問を終わります。

 ありがとうございます。

井上委員長 次に、堀川あきこ君。

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。

 ちょっとこれまでの質問と重なるところも多々あるかと思いますけれども、重大なことだと思いますので、お尋ねをしていきたいというふうに思います。

 まず最初に、焦点になっています損害賠償請求権についてお尋ねをしていきたいと思います。

 旧区分所有者が損害賠償請求権を持ち続けると今回の改正でなると、十分な補修ができなくなるという懸念に対して、国交省の方は、管理規約の改定で対応するというふうなことで答弁をされておられます。

 先日の参考人質疑で、ただ、規約を改定しても、改定前にマンションを売った旧区分所有者を拘束することはできないため、多くの場合、問題は解決しないというふうな意見がございました。

 規約の改正前に既にマンションを売却している旧区分所有者には規約の改定で対応できないというのは、法務省もそういう理解でよろしいでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 共用部分について生じた損害賠償金の使途等を定める規約が定められる前に区分所有権が譲渡されたという場合には、その旧区分所有者は規約で定められた義務を負っていないため、管理者が受領した損害賠償金の返金を求めることについても制約を受けないと考えられます。

堀川委員 そういう認識だということです。

 続いて、国交省の対応として、標準管理規約で対応していくというふうなことなんですが、規約改定の普及状況についてはちょっと飛ばさせていただいて、普及の対応についてお聞きをしていきたいと思います。

 この標準管理規約の普及、これまでも大臣はいろいろ答弁されておりますけれども、どう努めていくおつもりかということを最初にお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 先ほど来、共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容につきまして、区分所有法の改正とともに、標準管理規約の改定によって対応をしていくということをるる答弁をさせていただきました。

 今回の内容につきましては、あらかじめ規約の定めをしておくことで、損害賠償金を旧区分所有者に渡さずに建物の修補費用に充てることが可能になり、区分所有者全体の利益につながるものでもあることから、マンションの管理上、影響の大きい事項でもあるというふうに考えております。

 各管理組合に対しましても、標準管理規約の改正内容の管理規約への反映が進むよう、先ほど来、様々な手段を用いて周知、普及に取り組んでいきたいということはるる答弁させていただいておりましたけれども、しっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。

堀川委員 先ほど来から、周知徹底に取り組んでいきたいというふうな、決意も含めてあるんですけれども、鳩山委員からも指摘がありました、頑張れないマンションというのが今回大きな課題になっているというふうに思うんですね。

 管理規約の改正自体がなかなか自分たちの力量ではできないというふうなマンションであったり、マンション管理士の力をかりるんだというふうなこともあると思うんですけれども、そもそも、このマンション管理士が関わるマンションというのがそんなに多いわけでもないというふうな中で、そういう中で、具体的に、こういう頑張れないマンションの規約改正についてどういうふうに進めていくのか、計画や目標なんかを持っておられるのか、ちょっとそこら辺の措置をお聞きしたいと思います。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 標準管理規約の改正、何らかの形でということで、先ほど来、九割という数字も出させていただきました。その九割が本当に一番最新のものではないではないかとか、いろいろな御指摘はあったところではありますけれども、ただ、いずれにしても、この標準管理規約、できるだけ今回の内容については早く改正をさせていただき、リーフレットの作成、説明会の開催等、また、マンション管理業者、マンション管理士などを通じた働きかけということで、反映を徹底をしてまいるということは一つございます。

 その上で、やはり管理規約への反映状況などを把握をしていくということも大事だと思いますので、マンション総合調査などを活用して実態把握などに取り組むとともに、これは、取り残されるマンションがないように、法務省との緊密な連携の下で、関係者による支援体制も構築をしながら、しっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

堀川委員 なかなか具体的な対策について答弁がないというふうに思います。なかなか、その実効性が担保されているのかどうかということが本当に懸念として残らざるを得ないような答弁が、先ほど来から繰り返されているというふうに思います。

 参考人質疑で、旧区分所有者が損害賠償請求権を持ち続けるというふうなことになってくると、現区分所有者の住まいの権利というのが侵害されかねないというふうな指摘が幾つもあったわけなんですけれども、これは私、重大な指摘だというふうに思うんですね。その対応として、国交省は管理規約で対応していくんだというふうなことをおっしゃるんだけれども、それをどうやって担保するのかというふうな具体的なお答えがないということで、本当に懸念が残るものだということは指摘をしておきたいというふうに思います。

 続いて、賃借権の終了請求権の創設についてお伺いをしていきたいと思います。

 借地借家法では、賃借権契約を終了させるためには、正当の事由を要件としています。これは、社会的政策でもって借主が保護されるべきという認識でよろしいでしょうか。法務省、お願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の借地借家法でございますが、二十八条におきまして、建物賃貸借契約の更新拒絶や解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、諸般の事情を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができないこととされております。

 このような建物賃貸借契約の更新拒絶や解約申入れの規定は、賃貸人側の事情と賃借人側の建物を必要とする事情のほか、諸般の事情を併せてしんしゃくして、両者の利害を総合的に調整するものとして設けられたと承知をしております。

 このような規定によって、賃貸人による建物賃貸借契約の更新拒絶や解約申入れが認められない事例もあると承知をしております。

堀川委員 まあ、でも、あくまでこれは借主の保護というのが主体だというふうに理解をしております。

 本改正案では、建て替えの決議があれば、建て替えに参加する区分所有者によって賃貸借の終了を請求することが可能になります。

 現行でも、先ほどありましたように、正当の事由があれば、借主に退去を求めることができるようになってはいます。

 建て替え決議が上がれば、その決議自体が正当の事由になり得るというふうに私は思うんですけれども、なぜあえて今回のこの賃貸借終了請求権の創設、この規定が必要なのか、説明をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行の区分所有法では、建て替え決議がされた場合でも、直ちに当該賃貸借契約が終了するわけではなく、賃借人が合意解除に応じたり、賃貸人による賃貸借契約を更新しない旨の通知又は解約の申入れに正当の事由があると認められたりするなどしない限り、賃貸借は継続をし、賃借人に専有部分の明渡しを求めることができず、そのため、建て替え工事の円滑な実施が困難になるおそれがございます。

 区分所有者でも、建て替え決議に賛成せず参加しないという場合には、売渡し請求がされて区分所有権を失うこととなり、このような区分所有権についての権利調整の在り方との均衡に照らせば、建て替え決議があった場合に一定の補償の下で賃貸借を終了させることも許容されると考えられるところでございます。

 そこで、本改正法案におきましては、建て替え決議があった場合の賃貸借の終了請求の規定を設けることとしたものでございます。

 ここでは、賃貸借契約が終了することによる賃借人の損失を補償するために、賃貸されている専有部分の区分所有者は、専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならないこととするなどしておるところでございます。

堀川委員 建て替えを進めること自体は、私は必要だというふうに思いますし、否定をしません。ただ、やはり賃借人の住まいの権利というのも当然保護されるべきだというふうに思うんです。

 今起きている実態として、契約どおり家賃をきちんと払っているにもかかわらず、賃借人に対して正当の事由がないまま立ち退きを強いるというケースが多発しているわけなんです。

 賃貸物件をめぐるトラブルの相談などをされている団体から、この間、たくさんの事例を紹介していただきました。

 一つだけなんですけれども、都内の事例を紹介させていただきたいんですが、管理事業者やコンサル会社から、正当事由を示されないまま高圧的な態度で立ち退きを数回にわたって要求をされ、心身を病んでしまっているというふうな事例もあります。

 この団体の方にお話を聞いていますと、明渡しの正当事由など存在しない明渡し請求が圧倒的で、僅かな立ち退き料で多くの賃借人は泣き寝入りしているのが実態だというふうなお話をされていました。

 国交省は、こうした不当な立ち退きの実態、把握しておられるのか。住まいを追われるという不当な実態なんですけれども、国交省としての対応をお聞きをしたいと思います。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 借地借家法におきましては、賃貸人が建物賃貸借契約の解約を申し入れる際は、賃貸借契約の当事者が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の利用状況、賃貸人が明渡しの条件として財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、解約の申入れをすることができない旨の規律がございます。このような事由が認められない建物賃貸借契約の解約申入れは、基本的に認められないものであるというふうに承知をしております。

 法務省からは、訴訟等においては正当事由がないにもかかわらず建物明渡し判決が出されることはなく、これにより、賃借人の利益の保護が図られているものと聞いております。

 国土交通省としても、借地借家法の適切な運用により、賃借人の利益の保護が図られることが重要だと考えております。ちょっと個別のケースについてのコメントは差し控えますが、仮に国土交通省に対しまして賃貸物件の明渡しをめぐる紛争等について御相談があった場合には、法務省とも相談をしながら、適切な相談先につなぐなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

堀川委員 これは国交省としても関わらなければならない問題だと思います。

 今回の法案の関係では突っ込んでお聞きすることは差し控えますけれども、また引き続き取り上げていきたいというふうに思っております。

 今回の改正によって、賃借人は、自分の住まいのことなのに建て替え決議には関与をできないわけですね。賃借権の終了をそのまま受け入れなければならないというふうなことになります。

 先ほど御紹介したように、不当で悪質な追い出しのケースというのが絶えないのに、ただでさえ弱い立場の借主の地位をより一層不安定なものにしかねないというふうに思うんですけれども、大臣、そうした認識をお持ちでしょうか。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 区分所有法の改正法案におきましては、賃貸借終了請求がされた場合には、当該請求の六か月後に賃貸借契約が終了するものとされているところ、適切な補償額による金銭的補償を受けるまでは専有部分の明渡しを拒めることとされるなど、賃借人の利益を保護するための規定が設けられているものと法務省から伺っております。

 また、賃貸借の終了請求は、借地借家法における正当事由の規律とは異なりまして、マンションを含む区分所有建物の円滑な再生を実現をするという政策目的の下、認められたものでございます。申し上げたような賃借人の利益保護の規定もあることからすれば、賃貸借終了請求の創設が賃借人の地位をより不安定にするおそれがあるという指摘は当たらないものと法務省から聞いているところでございます。

 実務的には、建て替えの検討から決議までに平均四年半程度要しているということでございます。当該期間において、様々な意向確認や利害調整などが行われる中で、賃借人の希望等も確認をし、代替居住先の確保に向けた準備を行うということは十分可能であるというふうに考えております。

堀川委員 そうであれば、なぜ六月という期限をあえて設けられたのかということが疑問だというふうに思います。不当な立ち退きが相次いでいる中で、この賃借権の終了請求権というのはやはり危険なものだというふうに私は思います。

 続いて、建て替え要件の緩和に伴う少数反対者への保護について最後にお聞きをしていきたいと思います。

 今回の改正で、一定の客観的要件が認められる場合は、建て替えの決議要件が五分の四から四分の三に緩和されることになっています。さらに、所有者不明の区分所有者は議決から取り除くことができるというふうな規定も作られました。

 次の質問はちょっと飛ばさせていただいて、続いての質問に移りたいんですけれども、建物の老朽化の対策というのはもちろん対応を急がれるものだというふうに思うんですが、同時に、居住者もやはり高齢化をしているというふうな問題があります。

 ある事例を紹介をしますと、賃貸マンションで四十年間住み続けた部屋を建て替えが決まったということで退去することになった七十五歳の方、この方は、現役時代の稼ぎもあって、家賃を払うお金というのはあるんだけれども、新居を探そうとしたときに、入居審査まで行った物件でも五回連続で審査落ちになったそうです。結局、退去期限ぎりぎりになって入居先が決まったんだけれども、元々住んでいた町を離れるというふうなことになったそうです。今の賃貸市場では、高齢であるということがリスクとして見られてしまうのが実情です。

 補償の話が先ほどあったんですけれども、お金で幾ら補償しても、高齢の方ほど新たな居住先を見つけるというのは本当に今困難になっているわけなんですね。

 こうした方々にどう対応していくのか、これは法務省と国交大臣にそれぞれお答えをお願いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 区分所有法の中では、今回の改正法としては、委員御指摘のように、金銭的な補償を設けているところではございますが、本改正法案全体として、改正後のマンション再生法におきましては、マンション再生事業の施行者や、国及び地方公共団体において、居住の安定確保にもしっかりと取り組むということとしているところでございまして、再生前マンションに居住していた借家権者及び転出する区分所有者の代替住居の手配についても配慮がされているところでございます。

 このように、本改正法案では、建て替え等に反対をいたしました所有者の少数の方々の居住の安定ですとか財産権の保障に適切な配慮がされているものと考えております。

中野国務大臣 御指摘のとおり、マンション再生等の事業を進めるに当たっては、再生等に反対をされる区分所有者や賃借人など転出される方々に対する丁寧な対応、これは極めて重要であると思います。

 法律上の措置として、法務省は先ほど金銭的補償を行うという規定のお話をされましたが、マンション再生法におきましても、国土交通大臣が作成する基本方針に定めなければならない事項として、売却マンションなどに居住していた区分所有者や賃借人の居住の安定確保に関する取組を位置づけるとともに、地方公共団体や事業の施行者など、これらの取組に努力義務を負うという明記をさせていただきます。

 そして、御指摘の高齢者世帯など特に配慮が必要な方々に対しましては、地方公共団体や関係団体と連携をいたしまして、公営住宅等の公的賃貸住宅やセーフティーネット住宅等の活用の促進もございます。居住支援法人による相談対応等の施策もございます。また、リバースモーゲージ型の住宅ローンの提供、住宅金融支援機構が行っております。様々な取組を通じて、居住の安定の確保ということにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

堀川委員 いろいろおっしゃるんですけれども、そうしたセーフティーネット対策がやはりほとんど周知もされていないし普及もされていないというのが地方自治体の実態かというふうに思います。

 私は、以前、この問題を質問させていただいたときに、そもそも国交省には、この住宅セーフティーネットによって高齢者などの要配慮者が住居に入居できたかどうか把握する仕組みすらないというふうなことが明らかになっていると思います。

 今回の法案、二つの老いに対応するというふうなことですが、マンションの老朽化、高経年化に対しては様々な措置がされているんですけれども、居住者の老いに配慮をして安定した住まいを確保するという視点がやはり欠けているというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

井上委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 中野大臣、ちょっとお疲れのようでございますけれども、最後の質疑者でありますので、あと少し、気合を入れて頑張っていただければというふうに思います。

 さて、私も、焦点となっている、区分所有法改正法案第二十六条第二項に定める、旧区分所有者に損害賠償請求権が存在することを明確にする、この規定について議論してまいりたいというふうに思います。

 まず一つ目は、参考人質疑でも問題にしました立法の過程なんですけれども、この議論は、法制審議会区分所有法制部会で精力的に議論が行われたわけでありますけれども、私も霞が関にいて、審議会でこれだけ取りまとめ役の部会長がとうとうと自説を語るという、そうした審議会は初めて見ました。京大の民法の大家でありますから、部会長が言ったら恐らく誰も意見を言えないと思うんですよね。

 それに対して、参考人にも来ていただいた中野弁護士が訴訟現場の観点から意見を言い、弁護士会から来ている大桐弁護士が同様の観点から意見を言って、佐久間部会長の反論を、やはり参考人で来た沖野東大教授が補強するという構図で、あと、時々、加毛東大教授が中立的な議事進行役のような意見を、逆に部会長じゃないかというようなことを言って、あと誰も発言がないんですよ。中野弁護士が、御発言いただいていない委員、幹事の先生方がどういう意見を持っているかは分からないとおっしゃっていて、これは非常に偏っていると思うんですね。

 政府の審議会というのは、マンションを利用している人、分譲をする人、訴訟に関わっている人、消費者、様々な立場の人の意見を聞いて初めて政府の意見を取りまとめるべきものであるのに、本当に何か問題で、だから、この委員会の審議の間、様々な方が多くの意見を、必死の、血を振り絞るような、そんな意見を皆さんが上げていらっしゃるのは、この審議会において多様な意見がすくい取られて合意をされていないからだと私は思わざるを得ないんですね。

 この区分所有法制部会には、国土交通省の神谷住宅経済・法制課長や、高山土地政策課長、下村マンション・賃貸住宅担当参事官が、メンバーとして、幹事として加わっていますけれども、議事録を読む限り、何ら国土交通省的な観点が反映されているようには思えないんですけれども、どう反映されたのか。議事録に載っていない以上、私は反映されていないと言わざるを得ないんですけれども、その点についての答弁をお願いします。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 法制審議会の議論の点でございます。マンションを始めとする区分所有建物の二つの老いが進行するということで、法制審議会の区分所有法制部会におきまして、区分所有法制の見直しの検討というものが行われております。これは御紹介のとおり、国土交通省から担当課長等が幹事として参加をさせていただきました。

 これは、ある意味、二つの老いに対応するというのは、マンション政策、住宅政策を所管する我々の問題意識と同一でありますので、本部会には政策的な観点から意見を述べてきております。マンション政策の観点からの考え得る論点は検討の俎上にのっていると認識をしております。

 共用部分の損害賠償請求権に係る論点のところにつきましては、財産権への必要な配慮を行いながらマンションの修繕が円滑に進められるという方向で議論が進められていたことから、国土交通省の幹事からは特段の意見を申し上げていないということでございます。

福島委員 特段の意見は申し上げていないんですよ。だって、これだけ両論分かれている中で、住宅政策、マンション政策の所管から何も意見を言わない、一緒だったら意見を言う必要はないですよ、分かれている論点に対して何も言わないということでは、やはり、それは行政の在り方としていかがなものかな、立法過程の正当性に疑義が生じても仕方がないというふうに私はまず冒頭申し上げさせていただきたいと思っております。

 これはずっと議事録を追ったり資料を追ったりすると、みんな嫌になると思うんですよ、こんな分厚い法律を読んで。議事録だって苦痛です。私にとっては苦痛ですよ。法学者と弁護士の議論なんていうのは読んでいるだけで眠くなってくる。だから、みんな、まあいいやと専門家に任せちゃいけないんですね。私は、この区分所有制度部会の議論は法理論に偏り過ぎていると思います。

 我々立法府の役割は、実際の社会において起こる様々な事象に対してどのように役に立つ法律を作るか。法律の解釈が問題じゃないんですよ。誰の権利を優先的に守ることが公共的な福祉のためになるのかという価値判断を行って、それに見合う法律を作るのが立法府。法律を作るのは我々なんですよ。そうなんですね。だから、法学者の議論というのをうのみにしては私はいけないというふうに思っております。

 これは、法理論上も、私も何本も毎年法律を作っておりましたけれども、例えば、おっしゃるように、法務省が言うように、物権と債権は別で、物権が移ったからといって債権が自動的に移るという法制をそのまま前提にするのは、これは様々な問題があると思います。ただ、ちゃんと比較考量した上で、債権に生じる財産権、さっきから財産権は慎重な検討が必要ということを何度も答弁で繰り返しておりますけれども、そうであっても得られる利益がある、そうであれば、それを比較考量した上で、得られる利益であるならば、財産権を制約したとしても、この損害賠償請求権が移るという立法は当然可能だと思うんですよね。

 そこで私は内閣法制局にお伺いするんですけれども、今の条文が合憲かどうかというのは問いません。一般論として、こうした憲法上定められる財産権が守られるべきものであっても、様々な比較考量の結果、公共の福祉のためにはその財産権を制約するという立法をすることは可能なのかどうか、その点をお答えいただければと思います。

栗原政府参考人 お答えいたします。

 一般論でというお尋ねですので、私からは一般論を申し上げますが、憲法第二十九条第二項に、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とありますように、憲法が保障する財産権でありましても、法律により、公共の福祉のために必要な場合に、合理的な限度において制約を受けることはあり得るものと解されます。

 この公共の福祉による制約につきましては、その具体的な内容や制約の可能な範囲等につきまして、個別の立法の目的等に応じて、その必要性や合理性の面から具体的に判断する必要があるものと認識しております。

福島委員 まさにそういうことなんですよ。民法学者に聞いたら、それは財産権が大事と言うに決まっているんですよ。マンションの関係の人から見たら、マンションを適正に管理することが大事だと言うに決まっているんですよ。そのどちらが公共の福祉にかなうかというのは、それは我々が判断することであって、佐久間部会長が判断することではないと私は思いますよ。

 沖野参考人も、参考人質疑のときに、修理を実現するためには財産権ぐらい踏みつけてもいいんだという議論であると、それはかなり正当化が非常に困難と言っていますけれども、これはまさに民法学者としての見解であって、私は、一般的な法理論ではない、価値判断であって、価値判断するのは我々だということをまず前提にしなきゃならないんです。

 その上で見たときに、なぜこの法案がなかなか難しいなと思うかというのは、具体的に、誰がどのように得して、あるいは誰の権利がどのように侵害されるかというイメージが湧かないからなんですね。

 お聞きをしますけれども、区分所有法改正法案第二十六条第二項で、別段の意思表示を示した区分所有者であった者を除くとしていますけれども、元区分所有者が別段に損害賠償請求権を行使できることになっていますけれども、これで守ろうとしている区分所有者の利益というのは一体何なのか。その点について、まず明確にお答えください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現区分所有者は、規約又は集会の決議により管理者の代理権の範囲や行使方法を制限することができます。また、現区分所有者は、集会の決議により管理者を解任することができ、管理者に不正な行為などがあったときは、各区分所有者が裁判所に解任を請求することもできます。そのため、現区分所有者は、これらを通じて管理者を監督することができることになります。

 これに対し、旧区分所有者は、規約の変更や決議に参加することができる立場にはないため、管理者の代理権の制限を提案することができず、また、集会の決議による管理者の解任や裁判所への解任請求をすることもできません。

 このように、管理者の監督方法を持たない旧区分所有者について、法律により一律に管理者による代理や訴訟追行を強制することは適切でないと考えられたことから、改正法案においては、旧区分所有者が別段の意思表示をすることができることとしているものであります。

福島委員 ありがとうございます。

 一見、これを聞くと、もっともらしく聞こえるでしょう。違うんですよ。これは、旧区分所有者に損害賠償請求権があるとするから、実際の取引とかマンションに住む人の実態と違う、そごが生じているからこそ、そうした措置を講じなきゃならないんですよ。住んでいない人が管理組合の管理者の規律に服することができないし、その管理者を監督することもできないから、だから入れたというんですけれども、それは本来、損害賠償請求権が移っているのであればそんな問題は起きないわけですね。

 これは、だから、トートロジーというか、裏側みたいな論理であって、そうした矛盾が生じること自体が、この所有権にこだわった考えによるその結果なんだというふうに私は思うんです。

 もう一つ、先ほど来もう何度も、馬淵委員や徳安議員の議論に答えていらっしゃいますけれども、新たな区分所有者へ損害賠償請求権が当然継承されるという制度をつくった場合、具体的に旧区分所有者のどういう権利が侵害されるのか。今まで、瑕疵が分かって、それで組合で修補をして、それに対して負担をして、その後引っ越してしまったらそれが請求できないという例は何度も何度も挙げていますけれども、でも、それ以外の例を私は聞いたことがないんですよ。ほかに何か守るべき例というのが、あればある、なければない、想定され得るけれども今では具体的には分からないというのは分からない、それでお答えください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、大前提といたしまして、分譲契約の契約不適合に基づく損害賠償請求権でございますが、買主である区分所有者が売買契約に基づいて取得する損害賠償請求権でありまして、区分所有権や共有持分に係る持分権とは別個の債権、すなわち財産権の一内容となっております。

 したがいまして、財産権の保障の観点から、当然承継については特に慎重な検討が要るというふうに考えておるところでございます。

 具体的には、共用部分に瑕疵がありました場合に、ひとまず管理組合において修繕を行うこともあると考えられるところ、修繕費用を負担した旧区分所有者から現区分所有者に当該損害賠償請求権が移転してしまい、修繕費用を負担した旧区分所有者が損害賠償金からの回収ができないという不合理な事態が生じかねないことや、旧区分所有者が、瑕疵の修繕は完了していないものの、瑕疵がある状態で区分所有権を売却しなければならなかったような場合などには、共用部分等が毀損していることを前提とした価格で区分所有権をいわば買いたたかれた上で、損害賠償請求権を行使することもできないなどといった不利益が生じると考えられます。

福島委員 もうそれしかないんですよ。それも大事な話ですよ。大事な話ですけれども、私は、それは、仮に当然承継という法律を作った場合に、当然、商行為はそれを前提に行われるわけですから、そこでおのずと契約の中で、どういうふうに、そこの、お互い発生する、損害賠償請求で得たお金と、マンションの払うお金と、それをどう精算していくかというのは、おのずとそれは、ルールができれば、一般の民間の商行為の中で解決はおのずとされるべきであるし、それは疑義が生じる場合もあるでしょう。それは、訴訟の中で次第に規範がつくられていくのであって、それが、こうした問題、今おっしゃったような問題があるから当然承継はできないというところまでいかないんじゃないかなというふうに私は思います。

 損害賠償請求権、今、共用部分の修補の話をしておりますけれども、それ以外で、旧区分所有者が損害賠償請求権を持っていなければ旧区分所有者の財産権が著しく侵害される、そうした事例は想定されるんでしょうか。端的にお願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げたとおりになりますが、ひとまず修繕を行って、修繕費用を負担した旧区分所有者が回収を図るという必要がある場合ですとか、共用部分に瑕疵がある状態や、区分所有権を売却しなければならず、共用部分等が毀損していることを前提とした価格で区分所有権を買いたたかれた旧区分所有者が損害賠償金で損害の補填を図る必要がある場合などにおいて、区分所有権を譲渡した後の旧区分所有者が損害賠償請求権を行使することが必要であると考えられるところでございます。

福島委員 いや、私が聞いているのは、損害賠償請求権は瑕疵のある部分の修補以外でも理論上はあり得るんですけれども、実際にそうした事例は想定し得るんですかと。今言ったのは、全部、共用部分の修補の話ですよね。それ以外で、あるのかないのか、端的に、あるなし、あるいは、具体的に考えられない。御答弁を端的に。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 私どもが念頭に置いておりましたのは、先ほどの二つの事例において旧区分所有者と新区分所有者との間の利害調整を図る必要がある、こういうことでございます。

福島委員 ないんですね。だから、結局、旧区分所有者が守られるべき権利というのは、瑕疵が見つかって、その後に何らかの負担をして売らなきゃならないというごく限界事例だけであって、それ以上の、財産権を守るといったって、その程度の、その程度と言うのも失礼ですけれども、そのレベルの財産権を守るということなんですね。

 一方、旧区分所有者に損害賠償権が移ることで生じる問題というのも幾つかあります。これまでも議論でいろいろ出ておりますけれども、区分所有法第二十六条第二項の、元区分所有者が別段に損害賠償請求権を行使できる規定、これは、これまで分譲された全てのマンション区分所有者に適用されると考えていいですね。端的にお答えください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正法案の二十六条二項の規定でございますが、これまで分譲された全ての既存マンション、共用部分に瑕疵のあるマンションということになりますが、これの区分所有者にも適用されます。

福島委員 だから、全ての過去の今までの取引にわたって適用されるというのが一番のポイントなんです。それと、マンション管理規約との差なんですけれども。

 区分所有法改正法案二十六条第五項第二号に基づき、共用部分の契約不適合に係る損害賠償請求に関する訴訟を起こしたとき、それは、保険金の請求権を有する者、つまり、旧区分所有者に通知しなきゃならないんですよ。古いマンションにずっと昔に住んでいた人とか、国内に居住していない外国人とか、あるいは相続されちゃっている場合とか、いろいろな場合があっても通知しなきゃならないって、私、本当にこれは問題、困難だと思いますよ。でも、今回、それを新たにやらなきゃならないという、そうした困難な、管理者がやらなきゃならないという難しさがあります。

 通知が来て初めて、契約不適合が発生したんだ、二十年前に住んでいたマンションだけれども、契約不適合が見つかったんだと。それを見たら、自分に損害賠償請求権があるじゃないかと知って、ああ、これは金になるなと思って、別段の意思表示をする場合だってあるわけですね。この規定を併せて見れば、今まで、まさか自分が昔住んでいたマンションの瑕疵に対する損害賠償請求権があるなんて想像もしなかった人が、改めて、これがある、こう思っちゃうわけですね。

 こうしたこの別段の意思表示というのは、まず、いつまでになされる必要があるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 改正法案二十六条二項の別段の意思表示は、法律上これをすることができる期限が定められているものではございません。

 したがいまして、共用部分等について生じた損害賠償金の請求権について、管理者が訴訟追行し、管理者と分譲業者との訴訟の係属中でも別段の意思表示をすることができます。

 もっとも、別段の意思表示をする前に管理者がした訴訟追行の効果は否定はされませんので、例えば判決が確定したり、あるいは裁判上の和解が成立するなどした後に別段の意思表示をしても、判決や和解の内容を覆すことはできないと考えております。

福島委員 だから、例えばニュースで、瑕疵のあるマンションがあって、修繕に何億かかるとニュースがわあっと流れるじゃないですか。そうしたら、昔そこに住んでいた人が、あっ、自分に損害賠償請求権があるといって、私なら、けちなので、意思表示を留保してお金を楽しみにすると思うし、もっと悪い人は、前も言っているように、そうした、例えばタワマンだったら、何十戸も所有権が移転している、区分所有権が移転しているとしたら、それを集めて、じゃ、私が代理して賠償権を集めて、一定の手数料は私に下さい、じゃ、あなたに現金で渡しますというビジネスをやる人が現れるわけですね。

 更に言えば、外国人が多数の投資用のマンションなんかだと、別段の損害賠償請求権の行使を求める旧区分所有者が多数となって、仮に修補をしたいと思っても、別段の意思表示をみんなするから十分な修補資金が得られないという場合、今の住んでいる人だけで、更に賠償に加えて払わなきゃならないなんて場合も出るわけですね。そうなるんじゃないかと思うんですが、どうですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたような理由で、今回、別段の意思表示をすることができるということにしておりますが、実務上の対応として、管理規約に別段の意思表示の制限を定めることによって、相当程度、委員御指摘のような御懸念は防止できると考えております。

福島委員 でも、このマンション管理規約は、この規約を改定する前に所有していた人には適用されないんですよ。つまり、今生じている旧区分所有者には全く適用されないわけですよ。だから、ほとんど私は意味がないと言わざるを得ないと思います。

 以上、見てきたように、旧区分所有者に損害賠償請求権を残す法案は、マンション購入者や住んでいる人から見れば、守られるべき利益というのはほとんどないんですよ。仮に旧区分所有者に損害賠償請求権を認めなかったとしても、私は十分、商行為、契約で対応可能なものだと考えます。

 一方、今回の法改正で初めて、旧区分所有者に損害賠償権が存続することを法文上明確にしたわけですね。今はグレーだと弁護士の皆さんは言っていましたけれども。

 そもそも、旧区分所有者への通知などに膨大な負担がかかります。旧区分所有者の権利意識が芽生えて、通知が来れば、今まで以上にその権利を行使する者が増大して、現在住んでいる人たちの修補に係る負担が増える可能性がある。第三者にこの損害賠償請求権が譲渡されると、不適切な、もうまさにこれは金融ビジネスになっていっちゃって、そうしたものが生まれる可能性がある。これはあえて聞かないですけれどもね。

 大きな弊害があることが明らかだし、マンション管理規約も、さっき言ったように、これから所有権を移転する旧区分者には適用されるけれども、これまで既に区分所有権を移転した人たちには適用されないというのは、全く意味がないんですね。

 ですから、法務省とか学者の先生が財産権を守るともっともらしく言っているけれども、その財産権、守られるべき財産権の具体的なのは、先ほど来言われているような、瑕疵が見つかった後に自分でお金を出して修繕して、その後移転するという、その場合だけなんですよ。そのときの手当てさえやれば、私は、所有権の移転に伴って損害賠償請求権が移るとやっても、法律上、公共の福祉にむしろかなうんじゃないかというふうに思うんですね。

 それを見るには、やはりこれは価値観なんですよ。法律上の権利があるんだから、その権利は守らなければならない、これは学者の論理です。実際に欠陥マンションを十分な損害賠償金を得てしっかりと直したいという、実経済上の利害の対立なんですね。

 先ほど来、たがや議員の質問に答えて、大臣は、財産権への必要な配慮を行いながら、適法なマンション管理を行うと答弁しました。その答弁書は読まないでくださいね。

 なぜなら、私がなぜこの話をしたかといったら、今回、当然承継を取らなかった場合に、法務省が答弁してきた利益と、それとこの当然承継を入れなかったことに伴って生じる被害を考えたときに、どっちが大事ですか。誰の権利を守りますか。端的に、大臣、お答えください。両方というのは私はあり得ないと思うんです。比較して、もう明らかなんです。具体的な、今申し上げたことについて、どっちが大事だか、お答えいただけませんでしょうか。

中野国務大臣 これは午前中からもずっと議論が続いている論点かと思いますけれども、一般論として、やはり法制度の中で個人の財産権が尊重されるということは重要なんだろうというふうに思っております。なので、何ら手続的担保もなく、異議を申し立てる機会もないような形でそれが奪われるというような制度設計というのは、やはり極めて慎重な検討が必要なのではないかというふうに考えております。

 他方で、やはり、マンションの修繕が円滑に進められ、ストックの長寿命化と良好な居住環境の維持というのが政策目的でありますから、これの実現を図るということは当然重要であるわけでございますけれども、それは、分譲事業者からマンションを購入した旧区分所有者の権利を含めて、やはり財産権への必要十分な配慮ということは必要なのであろうというふうに考えております。

福島委員 私が申し上げているのは、守るべき財産権の価値というのは、さっき言った、瑕疵が見つかって、その後自分で負担した後に譲るという場合ぐらいなんですよ。大きな財産権の大層な話じゃないんですよ。学者のその大層な話を信じているから、そういう答弁になっちゃうんですね。

 私は、この法案は大きな欠陥があると思います。欠陥を直すためには、区分所有法、今の改正法の、又は区分所有者であった者とか、書面又は電磁的方法による別段の意思表示をした区分者であった者を除くという規定を削除すればいいと思います。その上で立憲民主党の修正案が加わっていれば、私は賛成します、それに。でも、立憲民主党の改正案の最大の欠点は、その本文が直っていないんですよ。

 これは、さっきも言ったように、遡及されて適用されるんですよ。区分所有者、旧区分所有者に損害賠償請求権があるというのは、全てのこれまでの所有者に係ってくるんですよ。だから、一回これを改正したら、どんな立派な附帯決議の検討条項を置こうが、取れる対策というのは極めて限定されたものになってしまう。

 なぜこんな修正案で、これまで多くの皆さんも議論を聞いてきたと思うけれども、この法案に賛成することになったのか、私は大いに疑問であると思います。その点について、最後、御答弁をお願いいたします。

城井委員 お答え申し上げます。

 本日も含めて、この法案質疑で、今回の政府改正案並びに実務的対応で、手が届かない、こぼれる方々がいる、そこに手だてがないというのが明らかになっています。それで、我々からも、じゃ、この方法はどうか、この方法はどうかということを議論を重ねてきていますけれども、その方法を取ることでこぼれる方々がいる。

 先ほど、選択のように申したんですが、そこで切り捨てるという形でいいのかを含めて、そこは議論を、きちんと実態確認をし、そして議論を深掘りしていく必要がある。だからこそ、今回の、一人でもこぼれる方がいなくなるように、実務についてきちんと実態把握をした上で、当然承継案や、あるいはそのほかの手段も含めて、マンションの共用部分の補修等に係る紛争の予防及び解決のための方策の検討と、その結果に基づく措置を政府に義務づけることとしたわけであります。

 政府の取組、検討を逃がさないために、立法府としてくぎを刺す、こういう内容だということを御理解いただければと思います。

福島委員 理解はできません。

 それは、やはり区分所有権に伴う損害賠償権がどこにあるかというのがグレーだから今までのものが成り立って、もう一回そこに戻さないと、検討する余地がないんですよ。決まっちゃうんですよ。区分所有権に伴う損害賠償権が旧区分所有者にあるということを確定してしまったら取れる方策がなくなる方がいるからおっしゃるのであって、そう答弁するのであれば、私は、しっかりと法律の条文に忠実に勉強していただければということを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

井上委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 この際、本案に対し、徳安淳子君から、日本維新の会提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。徳安淳子君。

    ―――――――――――――

 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

徳安委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 共用部分等に係る損害賠償請求権の行使について、政府案では、旧区分所有者も含めて、管理者が一括して損害賠償請求を行うことが可能となりますが、旧区分所有者が別段の意思表示をすれば、管理者は、その部分の請求、受領が不可能となります。

 この問題の背景としては、各区分所有者が有する共用部分等に係る損害賠償請求権が、専有部分の譲渡があった場合でも、旧区分所有者に帰属し続けることにあります。この点、政府案は、共用部分等に係る損害賠償請求権について、旧区分所有者がその持分に応じて、個別行使できるということを正面から認めることとなります。

 この問題について、政府は、管理組合の管理規約において、共用部分等に係る損害賠償金の使途をあらかじめ定めることで、旧区分所有者の共有持分に係る賠償金を確実に修繕費用に充当することが可能としていますが、管理規約を改正しても、その規約の効力は改正前に専有部分を譲渡した旧区分所有者には及ばず、既に存する欠陥被害の問題は解消されません。

 そこで、このような問題を根本的に解消するためには、分譲マンションについて、共用部分等に係る損害賠償請求権などの権利は、専有部分の譲渡に伴い、旧区分所有者から新区分所有者に当然に承継されるという考え方に立つ必要があると考えます。

 このようなことから、本修正案を提出するものであります。

 次に、修正案の内容について御説明申し上げます。

 本法の附則に、政府は、区分所有者、区分所有者であった者その他の関係者の置かれている状況を踏まえ、速やかに、この法律による改正後の建物の区分所有等に関する法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨の規定を追加することとしています。なお、その際、建物等の共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求権は、その共用部分等の共有者たる区分所有者の特定承継人が承継するものとすること、共用部分等に係る損害賠償金等については、各共有者がその持分に応じて個別にこれを請求し及び受領すること等はできないものとすること、また、これらの事項は、既に存する区分所有建物についても適用するものとすること、これらの三点を含めて検討を加えるべきことを、特に明記することとしています。

 以上が本修正案の趣旨であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。堀川あきこ君。

堀川委員 私は、日本共産党を代表して、マンションの管理、再生の円滑化等のための改正案に反対の討論を行います。

 マンションの老朽化への対応は急がれます。しかし、本法案は、二つの老いへの対策と言いながら、根本的な解決を図るものになっておらず、現居住者の居住の安定を担保する施策が不十分です。必要な施策を講じないままに、老朽化マンションや管理不全マンションを増加させてきた政府の責任は重大です。

 第一に、本法案は、建て替え等の決議要件の緩和等を盛り込む一方で、少数反対者への保護がほとんど講じられていません。

 これまで政府は、区分所有者法が成立して以来、建て替え決議の要件を緩和してきました。建て替えが待ったなしとなっている老朽化マンションに対しては、その要件緩和もやむを得ないと理解はします。

 しかし、その一方で、建て替えの反対少数者の保護の支援策は、ほとんど講じられてきませんでした。本法案は、こうしたこれまでのマンション政策に対する反省もなく、反対少数者を置き去りにしたまま建て替えだけが進められる危険をはらんだものです。

 そもそも、老朽化マンションの建て替えが進まない要因の多くは、建て替えによる区分所有者の負担金が重く、合意形成が進まないことにあります。強引な建て替え推進は、区分所有者同士の対立を深め、適切なマンションの建て替えを一層困難にしかねません。

 第二は、区分所有建物の共用部分の欠陥について十分な補修ができないものになっているからです。

 本法案は、区分所有権が転売により移転しても、損害賠償請求権は旧区分所有者に帰属するとの解釈に基づいています。管理者が区分所有者と旧区分所有者を代理して訴訟が行えるよう改正するとしていますが、旧区分所有者が別段の意思表示を示した場合は、旧区分所有者を代理することはできず、その分の賠償金も得られません。

 政府は、あらかじめマンション管理規約を改定することで賠償金を補修に充てられるようにすると言いますが、規約を変更するだけの力量を持っていない管理組合には根本的な改善策にはなりません。今住んでいる区分所有者の生活の安定を侵害しかねないものです。

 第三は、本法案が新たに賃借権の終了請求制度を盛り込むものだからです。

 現行では、賃借権の終了は、借地借家法の正当事由が必要であり、賃借人の権利が社会的に保護されています。一方で、本法案は、正当事由以外による新たな賃借権消滅手段を創設し、賃借権の終了を容易にします。現行でも横行している賃借人への強引な立ち退き被害を増長するリスクを高めるものです。

 なお、立憲民主党及び日本維新の会の修正案については、見解を異にするものであり、賛成できません。

 以上、討論を終わります。

井上委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 何度も済みません。有志の会の福島伸享です。

 ただいま採決に付されようとしている法案について、反対の立場から討論を行います。

 老朽マンション等の管理や再生を円滑にするために本法案で定められている多くの事項は、喫緊の課題を解決するために有効なものとして基本的には賛成です。しかし、共用部分に係る損害賠償請求権の行使の円滑化については問題が多く、一度今回のように改正してしまえば、以降の法改正では対応できない深刻な問題が生ずるおそれがあるため、法案には反対せざるを得ません。

 当初、法務省、国交省とマンション問題に取り組む弁護士グループの双方から意見を聞いて、この間、ゴールデンウィーク中も条文や審議会の議事録と取っ組み合いをして私なりに考えてきましたけれども、先日の参考人質疑での議論を受けて、反対すべき法案であると腹にすっと落ちました。

 まず、立法過程に大きな問題があります。法制審議会区分所有法制部会は、様々な立場の人がメンバーに入っているにもかかわらず、民法学者と実務家弁護士との対立のまま進みました。難しい法理論を駆使していますが、そこに、今マンションに住んでいる人の権利をどう守るかというマンション政策からの議論はほとんどなかったように見えます。そして、政府の審議会では異例のことですけれども、佐久間部会長自身が長広舌を振るい、自説を強引に押しつける姿が目立ちました。このような異常なプロセスで作られた法案だからこそ、今なお大きな反対の声が上がっているんです。

 今日、賛成の起立をしようとしている委員諸君に訴えたいと思います。私たち立法府の役割は何なのか。それは、正しい法理論を追求することではありません。法理論上存在する権利を守ることでもありません。選挙で国民の負託を受けている私たちの役割は、本当に困っている人、幸せに生きるための権利を侵害されている人を守るために、憲法の下での実際に生きた法律を作ることです。

 今回の法改正で、今住んでもいない旧区分所有者の損害賠償請求権を守ることがそこまで大事ですか。投資目的で購入する外国人が増えたり、マンションをめぐる環境が根本的に変わる中で、学者では想定し得ないような利益を追求した新たな行動が出てくることも容易に予測されます。先日の参考人が指摘したような現場の実務からの問題点には説得力があると皆さん思いませんでしたか。

 今回、これまで法律上曖昧であったため大きな問題とはならなかったことが、この法案で旧区分所有者に損害賠償請求権があることを明記したことで顕示化され、修正が利かなくなってしまいます。にもかかわらず、附則の検討事項を追加する修正案を出して、それを実現したことをもって賛成するということも、私は、その修正案の害悪が分からずにやっているんだとすれば、きちんともうちょっと自分の出された法律を読んでいただきたいと思いますし、もし分かってやっているんだとすれば、私は、反対者に理解したふりをするだけの詐欺的な、まさに野党しぐさと言わざるを得ません。本文を修正しなければ何の意味もないんです。

 与党は政府案に黙って賛成、野党は害悪のある条文であっても修正をかち取れれば賛成という国会の論理ではなく、政治家として国民のために何が必要なのかという価値判断を行うべきです。国民のための法律にするなら、政府案の本文を修正することにちゅうちょしない姿勢を改めて求めまして、反対討論といたします。

 以上です。

井上委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、徳安淳子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、城井崇君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、勝俣孝明君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会及び国民民主党・無所属クラブの四会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。森山浩行君。

森山(浩)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読して代えさせていただきたいと存じます。

    老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 一 管理者による共用部分に関する損害賠償請求権の代理行使に当たり、旧区分所有者の取り分も含む損害賠償金を確実に修繕費用に充当することができるよう、損害賠償金の使途を定めることを内容とする標準管理規約の改訂を早期に行い、各管理組合において管理規約の改訂が速やかに行われるよう関連団体等を通じて働きかけを行うこと。一方で、そもそも管理組合自体がない等、管理不全マンションの区分所有者に対しても必要な措置を講じること。

 二 標準管理規約の改訂を踏まえ、各管理組合の管理規約において共用部分について生じた損害賠償金の使途を定める規定の制定状況の把握に努めること。また、管理規約に同内容が規定されなかったこと等により、旧区分所有者による別段の意思表示が行われた結果、損害賠償金の一部が修繕費用に充当できなかった事例の実態把握に努め、必要に応じ所要の措置を講じること。

 三 マンションの管理や再生が円滑に行われるよう、地方公共団体、管理組合、区分所有者等に対し、本法により、区分所有権の処分を伴わない決議が集会への出席者による多数決で可能となることや、マンションの再生等に活用可能な事業手法が増加すること等について、周知徹底を図ること。

 四 管理不全マンションの増加を防ぐため、マンションの管理水準向上に資する管理計画認定制度が新築時から積極的に活用されるよう、分譲事業者に対し、管理計画の作成を積極的に促すこと。また、管理水準の高いマンションの資産価値が適正に評価されるよう、市場環境の整備に努めること。

 五 管理組合自体がないような既存の管理不全マンションについては、管理組合の設立から、管理計画の策定及び実施に至るまで、地方公共団体が伴走支援を行うよう働きかけを行うこと。

 六 マンション管理業者が管理事務及び管理者事務の双方の委託を受けている場合、利益相反により区分所有者が不利益を被ることのないよう、本法に規定された事前説明の確実な実施に加え、マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドラインを踏まえた対応を行うことについて、関連団体等を通じて周知徹底を図ること。

 七 マンションの再生事業等により新たに住まいを確保する必要がある場合には、高齢の区分所有者や借家権者など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を十分に図ること。また、公営住宅等の公的賃貸住宅の活用が図られるよう、地方公共団体への的確な支援に努めること。

 八 マンションの管理及び再生に当たっての助言指導や勧告、再生事業等の認可などに当たっては、地方公共団体が担うマンション関連事務が増加することから、マニュアルの整備やマンション政策の担当者の育成支援など、その負担軽減のために必要な措置を講じること。

 九 マンションの管理及び再生に当たっては、知識や経験を有する民間団体を積極的に活用するため、十分な数のマンション管理適正化支援法人が確保されるよう、関連団体に対し、登録の働きかけを行うこと。また、管理組合等に対し、マンション管理適正化支援法人の活用方法等について分かりやすく情報発信を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣中野洋昌君。

中野国務大臣 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、本法の施行に当たりましては、審議における委員各位の御意見や、ただいまの附帯決議におきまして提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を始め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 誠にありがとうございました。

    ―――――――――――――

井上委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

井上委員長 次回は、来る十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十八分散会


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