第1号 令和7年5月14日(水曜日)
令和七年五月十四日(水曜日)午前九時開議
出席委員
国土交通委員会
委員長 井上 貴博君
理事 勝俣 孝明君 理事 加藤 鮎子君
理事 中谷 真一君 理事 城井 崇君
理事 神津たけし君 理事 森山 浩行君
理事 奥下 剛光君 理事 西岡 秀子君
石橋林太郎君 大西 洋平君
梶山 弘志君 加藤 竜祥君
金子 恭之君 工藤 彰三君
国定 勇人君 小寺 裕雄君
小森 卓郎君 高見 康裕君
田所 嘉徳君 谷 公一君
土屋 品子君 西田 昭二君
平井 卓也君 三反園 訓君
阿久津幸彦君 尾辻かな子君
小宮山泰子君 下条 みつ君
白石 洋一君 津村 啓介君
長友よしひろ君 伴野 豊君
松田 功君 馬淵 澄夫君
谷田川 元君 阿部 弘樹君
井上 英孝君 徳安 淳子君
鳩山紀一郎君 古川 元久君
赤羽 一嘉君 中川 康洋君
たがや 亮君 堀川あきこ君
福島 伸享君
法務委員会
委員長 西村智奈美君
理事 小泉 龍司君 理事 津島 淳君
理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君
理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君
理事 金村 龍那君 理事 円 より子君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上田 英俊君 大空 幸星君
上川 陽子君 神田 潤一君
棚橋 泰文君 寺田 稔君
平沢 勝栄君 若山 慎司君
有田 芳生君 篠田奈保子君
柴田 勝之君 平岡 秀夫君
藤原 規眞君 松下 玲子君
萩原 佳君 藤田 文武君
小竹 凱君 大森江里子君
平林 晃君 本村 伸子君
吉川 里奈君 島田 洋一君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
国土交通大臣 中野 洋昌君
国土交通副大臣 高橋 克法君
法務大臣政務官 神田 潤一君
国土交通大臣政務官 高見 康裕君
国土交通大臣政務官 国定 勇人君
政府参考人
(消防庁審議官) 鳥井 陽一君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(国土交通省不動産・建設経済局長) 平田 研君
政府参考人
(国土交通省住宅局長) 楠田 幹人君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
国土交通委員会専門員 國廣 勇人君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)
――――◇―――――
○井上委員長 これより国土交通委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。
先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
内閣提出、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明に代えさせていただきますので、御了承願います。
これより質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。若山慎司君。
○若山委員 おはようございます。自由民主党の若山でございます。
本日は、建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案における建物の共用部分の損害賠償請求権の行使の円滑化について、これまでそれぞれの委員会で議論が交わされておりますが、伺っておりますと、政府案に対する御指摘がある一方で、その対案である当然承継案についての議論という点では余り深まっていないのではないかなと印象として持っておりまして、この際、当然承継案の、これに対する政府の見解を確認をさせていただきたいと思います。
おおむね、当然承継案ということは、分譲事業者と旧区分所有者の間で分譲契約の契約不適合に基づく損害賠償請求権が、旧区分所有者が区分所有権を新区分所有者に譲渡した場合に、当然に新区分所有者に損害賠償請求権も移転するということを法律で規定するというものであると理解をしております。
そうした中で、当然承継案では、改正法が施行される前に区分所有権が譲渡されていた場合でも、法律で規定することにより、当然承継がなされていたものということとして扱うことが可能になるということが優位性として挙げられておりますが、これはすなわち、法改正前の事案に法律を遡及適用するという御主張、考え方であるというふうに理解をいたします。
そうしたとき、現行の区分所有法の解釈では、そのような当然承継という扱いはなされていないと承知をしておりますが、現行法の解釈としてそのような当然承継がなされていないのであれば、遡及効は、まさに既に生じた法律関係をひっくり返すようなことになる可能性はないか、様々な問題が想定されると思いますが、この点について政府参考人から伺いたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
分譲業者と旧区分所有者の間の分譲契約の契約不適合に基づく損害賠償請求権は、売主である分譲業者と買主である区分所有者との間の契約関係に基づきまして買主である区分所有者が取得する債権であり、物権である区分所有権とは全く別個の財産権であります。
御指摘のとおり、現行法の下で区分所有権が譲渡されたといたしましても、分譲契約の契約不適合に基づく損害賠償請求権が当然に移転するものではないと考えております。
そのため、御指摘の当然承継を遡及適用する場合には、旧区分所有者は遡って権利者ではなかったこととなりますので、例えば、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、現区分所有者から損害賠償金の引渡しを求められる事態が生じる可能性があります。
また、既に分譲業者から損害賠償金の支払いを受けていた旧区分所有者が、分譲業者から損害賠償金の返還を求められる事態が生じる可能性があります。
さらに、既に損害賠償金を多数の旧区分所有者らに支払い済みであった分譲業者におきましても、現区分所有者から改めて損害賠償金の支払いを求められる事態が生じる可能性があります。
このように、御指摘の当然承継を遡及適用することは、国民の権利義務に影響を及ぼすことに加え、社会経済に著しい混乱をもたらすものであるため、認められないと考えているところでございます。
○若山委員 私も秘書歴が長うございましたが、いろいろな御相談を受けるんですけれども、こういった分譲のマンションの買った際のトラブルみたいなことは多く耳にいたしました。実際には、不正常な施工を行う事業者とか悪意ある旧区分所有者というものがあって、多くのトラブルが引き起こされているというのが実情であろうというふうに私は受け止めております。
そうしたときに、新区分所有者が旧区分所有者に対して損害賠償請求する権利を移転されてしまったら、当然承継されてしまった場合、施工業者が倒産した場合とか、それから、悪意ある旧区分所有者に対しての請求権というものが失われる可能性があるのではないかということを懸念するものであります。新区分所有者が不利益を被ることがあり得るようなことは、これはあってはならないのではないかなと。
他方で、今回の法改正の目的が、現在の新区分所有権、区分所有権を現在有している人たちが建物の修繕をしやすい環境を整えることにあるということに鑑みると、政府案では、区分所有権が新区分所有者に譲渡される前にあらかじめ規約で定めておけば、旧区分所有者に帰属する損害賠償金についても、その使い道を制限してマンション修繕に充てることが可能であるというふうにしておられると承知しております。
では、規約が定められる前に区分所有権が譲渡された場合には、修繕費用相当額を得るために、新区分所有者、つまり現在の区分所有者はどのような対応をすることが考えられるでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のような場合には、例えば、現区分所有者が修補費用を負担するなどして修補することになると考えられるところ、その現区分所有者は、その負担する修補費用相当額について、法律上は、売買契約の契約不適合責任に基づき、旧区分所有者に対して損害賠償請求をすることが考えられます。
また、区分所有建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるような場合には、特段の事情がない限り、現区分所有者は、不法行為に基づき、マンションの設計、施工業者に対して損害賠償請求をすることが可能であると考えております。
○若山委員 今の御答弁ですと、制度上、新区分所有者が旧区分所有者に対して損害賠償請求することも考えられるということですが、マンションを転売する場合に、契約不適合責任を免除する特約が付されている場合が多いということも伺っております。このような特約がある場合でも、新区分所有者は旧区分所有者に損害賠償を請求することができるのでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、法律上は、新区分所有者は売買契約の契約不適合責任に基づき旧区分所有者に対して損害賠償請求が可能であるといたしましても、実際上は、当該売買契約において、売主である旧区分所有者の契約不適合責任を免除するという特約がされている場合があると承知をしております。一般論としては、そのような特約も、私的自治の原則に基づく合意として基本的に尊重されるべきものと考えられます。
他方、一般論として、契約内容の合意に至る経緯や、旧区分所有者及び現区分所有者の利害状況等の個別具体的な事案における事情を総合的に考慮した上で、旧区分所有者による契約不適合責任を免除する特約の主張が極めて合理性に乏しい行動として社会通念上不適当であると考えられる場合には、当該主張が権利濫用として認められない事案もあり得ると考えております。
法務省といたしましては、本改正案が成立した場合には、どのような場合に旧区分所有者による契約不適合責任を免除する特約の主張が極めて合理性に乏しい行動として社会通念上不適当であるかについても、周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
○若山委員 これらの話は、実に法律的な、またテクニカルな側面があると承知をしております。規約の定め一つ取っても、やはり、法律の専門家であるとは限らない各管理組合の皆さんにとってはハードルが高いのかなという感じを受けます。
建物の実情を踏まえて、住まう人々の生活に沿う形で安心できる場になるためには、今回の改正内容を広く理解されることが必要であり、また、規約の改定についても、具体的に世に示される必要があるのではないかと思います。また、マンション管理士さんや行政書士さんのような、身近な相談できる窓口というものが必要になってくるのではないかと思います。
最後に、法務大臣に、こういった改正の周知、広報、そして規約の適切な改定に向けた取組について、思いを伺えればと思います。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘のように、この法案、老朽化したマンションの管理、再生を円滑化する観点から極めて大事でありますけれども、同時に、区分所有者の権利利益に大きく影響する内容が含まれています。したがって、やはり十分な周知、広報、これは極めて大事だと思っております。
同時に、損害賠償金を修繕費用に充当する旨の管理規約の定め、これも各マンションの実態に応じて設けていただけるように、こうした定めを含む標準管理規約の周知の徹底、ここにもしっかりと取組を進めていく必要があると思っております。
施行日令和八年四月一日ということで御提案させていただいておりますけれども、このマンション法を所管する国交省との緊密な連携の下で、関係団体の協力も得ながら、全国各地で説明会を開催するなどして、この施行までの間に、この趣旨、内容が正しく理解されるようにしっかりと周知徹底を行ってまいりたいと思っております。
○若山委員 ありがとうございました。
終わります。
○井上委員長 次に、米山隆一君。
○米山委員 それでは、会派を代表して質問をいたします。
焦点は第二十六条ということで、時間も限られておりますので、区分所有法第二十六条について御質問させていただきます。
この区分所有法二十六条二項、この条文は非常に括弧が多くて読みづらいんですけれども、実は括弧を外していくと、書いてあることは、管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。共用部分について生じた損害賠償金の請求については損害賠償請求権を有する者を代理する、非常にシンプルな条文になっております。
これは、マンションというものはあくまで個々人が区分所有しているものの集合体であって、マンションとして一つの法人なわけではないので、二十五条に定める管理者というものは、法人としてのマンションを代表しているのではなくて、個々人の権利を代理している。なので、こういう規定ぶりになっているんだと思いますけれども、その理解でよろしいのか、政府参考人に伺います。
また、あわせて、マンションを法人にするということではないんですけれども、第二十七条一項という規定がございまして、この規定によりますと、規約により共用部分を管理者の所有と定めた場合、管理者が本人として損害賠償請求できるということですので、運用としては、法人のために代表者が権利を行使するのとほぼ同様の形態になると思いますが、そのような理解でいいのか、政府参考人に伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
いずれのお尋ねも、委員御指摘のとおりです。
○米山委員 そういうことですよね。
それで、二十六条の二項を使う場合には、それは個々人の集合体で代理しているということになるし、それが嫌で、ある種法人的な共有ということで考えたいんだったら、それは二十七条一項を使えばいいということなんだろうと思います。
そして、二十七条一項を使わない場合には、区分所有者個々人の損害賠償請求権はどのように生じるかといいますと、御案内のとおり、原則的には販売者、すなわち分譲事業者との契約による債務不履行若しくは住宅品質管理法による瑕疵担保責任として、分譲事業者との間で生じることになろうかと思います。
ここで、原始区分所有者がマンションをほかの人に売りますと、AさんからBさんに売りますと、新区分所有者のBさんは、あくまで原始区分所有者との間に契約関係があるだけになります。
ここで、売買後、つまり、新区分所有者Bさんがマンションに住んでいる段階でマンションの欠陥、例えば共用部分に雨漏り等が生じた場合、新区分所有者は、Bさんですね、分譲事業者に対して損害賠償を求めることができますか。
また、管理人は、この区分所有者が持っている持分の分まで含めて損害賠償請求できますか。政府参考人に伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、新区分所有者でございますが、分譲事業者に対しては契約不適合責任に基づく損害賠償請求権を持っておりませんので、管理者もこれを代理して行使することはできません。
ただ、管理者は、原始区分所有者が有している損害賠償請求権を代理行使することはできます。
○米山委員 そうですね。これが二十六条の二項、この資料の一ページにある、まさにこれによって、譲受人、新たに新区分所有者となった者が損害賠償請求権はなくても、管理人はそれをできるということになったわけでございます。
そこで、質問なんですけれども、そうして、無事、管理人が損害賠償請求権を得て、そして裁判に勝って損害賠償を得ることができたということになった場合に、管理人若しくは新区分所有者はその損害賠償を修繕に使うことができるでしょうか。また、できないとしたら、それを使うためにはどのようにしたらいいか。これも政府参考人に伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
管理者は、現区分所有者又は旧区分所有者を代理して賠償金を受領しておりますので、その承諾なく修繕に使うことはできません。したがって、管理人が修繕費等に使用するためには、現区分所有者又は旧区分所有者の承諾を得たり、規約でその旨を定めておくなどの必要があると考えております。
○米山委員 これもそのとおりといいますか、これも一見、何か迂遠なようにも見えるといいますか、雨漏りの分を損害賠償で請求しておきながら、それは使えないようにも見えるといえば見えるんですけれども。最初に御質問したとおり、マンションというのは結局いろいろな区分所有者の集合体で、管理人はあくまでそれを代理しているだけなので、それは法律として、こういうたてつけになるのはやむを得ないということになろうかと思いますね。
この場合、旧区分所有者が、いや、それを修繕に使えませんよ、やはり私、そのお金欲しいです、私が損害を受けているんだから欲しいですと言った場合には、それは確かに、新区分所有者はそれを受け取れない、修繕にも使えないということになろうかと思います。それは確かに気の毒といいますか、気の毒であったり、実際そのお金を受けられないものだから修繕ができないということもあろうかとは思います。
それを補うために、売買契約において区分所有権が譲渡されると、これに付随する潜在的な分譲事業者に対する損害賠償請求権も当然に承継されるという立法が、先ほどお話もありましたけれども、そういう立法が提案されております。
そこで、仮にそのような立法がなされたとして、今もう既にマンションというのは、当然ですけれども、いろいろな方々の間で転売されているわけなんですが、仮にこの当然承継の立法がなされた場合に、今既にマンションを買っている方、もう既に売買をしている方は、潜在的な分譲事業者に対する損害賠償請求権、これを得ることができるでしょうか。政府参考人にお伺いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法令の効力ですが、原則として法施行時点以後の事象に対して生ずるものでございます。したがいまして、お尋ねのような立法がされたといたしましても、直ちに法施行以前に区分所有権を譲り受けた区分所有者が、譲渡人たる旧区分所有者の有する損害賠償請求権を取得するものではないと考えております。
○米山委員 これもある種当然といいますか、遡及効という別の条項を定めれば別だとは思うんですけれども、当然承継という規定を作っただけで新区分所有者が何か保護されるようになるということではないということですよね。この当然承継という規定が作られた場合には、その後に、法が施行された後に新しくマンションを所有した人はそれは適用されるけれども、当然その前の人は適用されないということを確認いたしました。
そこで、この点については、これも先ほど若山委員からお話があったように、遡及効ということが、ある種、別の条項が定めた遡及効ということが提案されているんですけれども、それは次の次で質問するとして。
次に、原始区分所有者が既に住んでいるときに共用部分に雨漏りがした。それは当然あるわけですよね、共用部分に雨漏りがした。そこで、原始区分所有者Aさんを含めて、マンションの住人が取りあえず急いで費用を出し合って、雨漏りを修理した。その後、分譲事業者に修理代を請求しようということになったが、分譲事業者となかなか折り合いがつかないし、交渉が成立しない。
仕方ないから訴訟にしようと思ったら、またこれを、区分所有者同士で訴訟をするかどうか、するとしてもどの弁護士事務所に頼むかで、すったもんだでいつまでたっても話が進まない間に、原始区分所有者のAさんは転勤を命じられた。なので、AさんはBさんにもうマンションを売りました。Bさんが現在の新区分所有者になりました。ということになって、しばらくたった後に結局訴訟が提起されて、勝訴して修理費用が得られたとします。
このときに、仮に、区分所有権が譲渡されるとこれに付随する潜在的な分譲事業者に対する損害賠償請求も当然に承継されるという当然承継の立法がなされていて、その後にBさんにマンションを売却した。このときの、Bさんにマンションを売却したAさんは、既に自分が負担していた修理費用を管理人からもらって回収することができるか、これを政府参考人にお伺いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような立法がされた後に区分所有権の譲渡がされたという場合には、譲渡人の損害賠償請求権は、当然に譲受人、Bさんに移転することとなります。したがって、譲渡人であるAさんは、管理人が受領した損害賠償金の引渡しを求めることはできず、そこから既に負担した修理費用を回収することはできないと考えられます。
○米山委員 そうなんです。当然承継ということにしますと、このような場合には先に修繕費用を払ったAさんは回収できないので、逆に、さらには、先に払っちゃいけないなということになってしまう。延々すったもんだを待たなければならないということも考えられるわけです。
また、では割り引いて売ればいいと考えるかもしれませんけれども、訴訟で幾ら取れるかというのは分かりませんから、割り引いて売ることもなかなか難しいということになり得るのかなと思います。
一方、現在、政府から提案されている改正案であるならば、このケースでは、原始所有者が、管理人が訴訟に勝ったら、損害賠償金のうち持分分は自分のものだということで、修理代を管理人から振り込んでもらって回収できるということになろうかと思います、先ほどの答弁にもございましたとおり。それで安心して売却できるということになります。
ところで、今度は、まず先に原始所有者のAさんが修理代を払い、その後、訴訟前にマンションをBさんに売り、その後に管理人が訴訟に勝って損害賠償を得て、Aさんに払った修理代を振り込んでくれたその後に、先ほどの当然承継に加えて更に遡及効があるという法律が成立した場合には、Aさんに振り込まれた修理代、これはどうなりますか。政府参考人に伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような立法がされた場合には、旧区分所有者、Aさんですが、Aさんは、既に修理代金相当額の損害賠償金の支払いを受けていたのですが、遡って権利者ではなかったこととなりますので、不当利得として損害賠償金の返還を求められる可能性があると考えます。
○米山委員 そういうことで、遡及効というのはなかなか大変な法律だということになろうかと思います。
そこで、政府からは、現在の改正法、すなわち当然承継や遡及はなしで、標準管理規約において、共用部分の損害賠償は修繕費用にしか使えないとすることを提案されております。
この場合、AさんからBさんにマンションを売却後に雨漏りが見つかって損害賠償を得た場合は、Bさんの分も含めて修繕に使われることになると思われます。
また、雨漏りが発覚して修繕費用を払った後にAさんからBさんにマンションを売却し、その後に損害賠償を得た場合には、規約の内容次第ではありますけれども、恐らく立替え修繕費用の支払いということで、Aさんは修繕費を回収できるということになろうかと考えられます。
一方、管理規約はあくまで管理規約ですので、本当に多くのマンションで標準管理規約が採用されるか分かりませんし、標準管理規約前にマンションを原始所有者から買い、修繕費用に困る人がやはり出るかもしれません。
そういった様々な状況について、本改正案施行後、十分な調査を行い、適切な対応を講ずるべきだと考えますが、法務大臣、国交大臣にそれぞれの御所見を伺います。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘の標準管理規約、これは極めて大事になってくると思います。
別段の意思表示、この禁止等々ということになると思いますけれども、そういった中で、それがどう、こういった標準管理規約等も含めてしっかりと対応していただいているのか、これは改正法の施行後も、この運用の意味で極めて大事ですので、国交省も恐らくこれはマンション総合調査等々されていると思いますので、そこをしっかり連携した上で、調査、把握をした上で対応していきたいと思っております。
○中野国務大臣 お答え申し上げます。
今回、共用部分の損害賠償請求権の行使の円滑化ということで、区分所有法の改正と標準管理規約改定による実務的な対応ということでございますけれども、この標準管理規約をできるだけ早く改正ができるようにということで、管理組合に対する様々な周知や、あるいは各マンション管理業者、マンション管理士などを通じた働きかけ等々、管理規約への反映をまずは徹底をしてまいりたいと思いますし、また施行後、その反映状況などの把握ということも大変重要でございまして、マンション総合調査などの活用で実態把握に取り組むとともに、取り残されるマンションがないように、これは法務省ともしっかり連携させていただきまして、関係者による支援体制も構築しながら、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
○米山委員 質問を終わります。
ありがとうございました。
〔井上委員長退席、西村委員長着席〕
○西村委員長 次に、篠田奈保子さん。
○篠田委員 立憲民主党・無所属の篠田奈保子でございます。
米山議員の質問を受けまして、質問をさせていただきます。同じ論点についてでございます。
今、政府の方から、今回の法改正で、不都合があることはお認めになっているから、標準管理規約により対応をするというような御趣旨で御答弁がされていると思うんですが、不都合があり、何らかの対応が必要であることを認めているのであれば、標準管理規約の改定という現場に手間や労力を丸投げするのではなくて、立法府として、それこそ法改正により行うことが適切ではないのか、それが立法府の責務ではないのかなと思うんですが、この辺りについて、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
○鈴木国務大臣 今御指摘の点でありますけれども、当然承継案といったような形、これを法定すべきではないかという、そういった御趣旨かと思いますけれども、まず、こうした損害賠償請求権、これにつきましては、売主であります分譲業者と買主である区分所有者との間の契約関係によって買主である区分所有者が取得をする区分所有者とは別個の債権でありますので、その譲渡に伴って、区分所有者の意思にかかわらずに、法律上、その処分や移転を一律に強制をする特別の規律を設けるということ、これは憲法第二十九条の財産権の保障等との観点から、やはり慎重な検討が必要であろうかと考えております。
同時に、御指摘のような規律を設けた場合、例えば共用部分に瑕疵があった場合、ひとまず管理組合において修繕を行うこともあると考えられますので、そうした場合、修繕費用を負担した旧区分所有者から損害賠償請求権は移転してしまいますので、旧区分所有者が修繕費用を損害賠償金から回収できない、こういった不合理な事態が生じかねない等々のそうした実務上の問題点も考えられるところであります。
そうしたことから、我々としては、管理規約においてということで今回考えているところであります。
○篠田委員 それでは、標準管理規約による対応で十分であるという前提に立って御質問をさせていただくんですけれども、外国人が最近、投資目的で首都圏のマンションを購入をしているということ自体は多く報道されているところでございます。例えば都心部では、外国人が購入者の二割から四割以上のマンションが七割程度に及んでいるということが、先日の神崎参考人の資料にもございました。
こういった外国人購入者の大半は、投資目的であると思われます。自分の利益、損失に特に極めて敏感な投資目的の購入者が、自分の損害賠償請求権を無にするような規約改正に賛成することはあり得ないのではないかというふうにも思うところです。
投資目的の購入者が管理規約の改定の決議に対してこういったスタンスで臨んできた場合には、管理規約を改正するには区分所有者の四分の三以上の賛成が必要になりますけれども、こういった管理規約の改正ができないという事態も生じるのではないでしょうか。それに対する対応について、法務大臣、いかがお考えになっておられますか。
○鈴木国務大臣 今の管理規約の変更ということでありますけれども、現行法におきましては、規約の変更、これは区分所有者全員の頭数及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってなされるということとなっております。
本改正案におきましては、これを出席者を母数とする多数決で決するということとしておりまして、そういった意味においても、管理規約、こうした変更手続、この円滑化も併せて図っているところであります。
まさにこうした、管理規約でありますけれども、お尋ねのような定めについては、損害金を修繕に充てようとする区分所有建物においては、その実現に資する区分所有者に利益があるというふうに考えられまして、基本的には賛同を得られるケースが多いと私どもとしては考えているところであります。
○篠田委員 投資目的で購入されている外国人の方ですから、自分がそこに住み続けるという前提に立った考え方とはまた別な考え方をお持ちの方々だというふうに思っております。ですので、標準管理規約において改定で対応するというのは、現実的な利害得失を考えている外国人投資家にとってはなかなかそういった投票行動にはならないのではないかという懸念がありますので、そのことを本委員会で指摘をさせていただきます。
それから、管理規約を改正する前に転売をした旧区分所有者には改正された管理規約の効力は及ばない、これは国交省も認めているところでございます。そのような遡及しない管理規約の改正では、修繕費用の不足という問題の対策にはなり得ません。
今回の改正案が成立し、管理規約が改正されるまでの間に、築後七、八年経過しているマンションにおいては、転売した旧区分所有者の割合は五割を超える場合もあるのではないかと思います。そのようなマンションに現に住んでいる人の利益は切り捨てることになってしまいますが、それについての法務大臣の見解を伺います。
○鈴木国務大臣 そうしたケースについて申し上げれば、確かに、各区分所有者におきまして、規約の変更がされる前に、区分所有者、これを転売した者については、変更後の規約、この義務を負うこと、当然これはないわけであります。
そして、旧区分所有者が規約に拘束をされない場合には、例えば現区分所有者が修繕費を負担するなどして補修をすることとなると考えられるわけでありますけれども、その現区分所有者につきましては、その負担する補修費用相当額について、法律上ということで申し上げれば、売買契約の契約不適合責任に基づいて旧区分所有者に対して損害賠償請求をする、そうしたたてつけとなると考えています。
○篠田委員 中古マンションを購入する場合には、基本的に中古だから安かろう悪かろうということで、その後生じた瑕疵については責任を負いませんよという売買契約を結んでいるのが通常だと思うので、そのような対応が現実にできるのかということは、私は実務の立場からして大変不安に思うところでございます。
それから、今回、原始所有者に請求権があるということで、通知をするということで、別段の意思表示をするかどうかの確認で通知をするということになっていますけれども、既に売却をしてしまった原始所有者が外国に住んでいる外国人の場合、どのようにその方の転居先などを調べて通知を行うことになるのでしょうか。
○鈴木国務大臣 外国にいる場合ということでありますけれども、こうした転居先の調査について、一般的に通常アクセスできる公簿、すなわち、それは登記簿であったりあるいは住民票等ということになると思いますが、そうした公的記録の調査は必要であると考えられておりますけれども、旧区分所有者の所在、これが不明である場合には、民法九十八条に規定する公示、この方法により通知をするということが可能であると我々としては考えているところであります。
○篠田委員 実務家の立場から言わせてもらえば、閉鎖登記を調べて、原始所有者を調べて、そこにその当時の住所は書いてあると思うんですけれども、果たして、外国人の転居先、住民票を調べるということの御指摘ですけれども、様々な諸外国によって住民票登録の制度がどうなっているのかということは、大変各国様々でございますし、最後は公示送達という形を取るということなんですけれども、裁判所の実務で公示送達を認めてくれといっても、実際にその現場に行って、水道メーターが回っているのか、電気が使われているのか、そういったことを調査して、それでも、もうそこにいないということが確約できるような証拠を持ってこないと公示送達は許しませんよみたいなのが実際の裁判所の実務のありようなので、なかなかそういった、公示送達を簡単にできますよということは現実的にはならないということは指摘をさせていただきたいというふうに思います。
最後に、標準管理規約で対応するという政府の答弁ですが、標準管理規約はこれまで七回改正されております。これまでの改正については、普及にどのように国交省として尽力をしてきたのか。そして、今回の改正による不都合を回避するための標準管理規約の普及に具体的にどのような努力を行う予定なのか、国交大臣に最後にお伺いをいたします。
○中野国務大臣 お答えを申し上げます。
これまで、標準管理規約の改定を行った場合には、関係団体などにその内容を通知をし、同団体を通じて各管理組合に周知をするとともに、シンポジウム等、様々な機会を活用して、その周知に努めてきたというところでございます。
今までの実績でいいますと、九割以上の管理組合におきまして、標準管理規約を踏まえて管理規約が作成をされているものというふうに今承知をしております。
特に、本改正法案では、マンションの管理や再生の円滑化等を図るため様々な措置を講じることとしておりますので、その実施に当たりまして、今回の共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容以外にも、かなり管理規約の改定を検討いただくべき事項というのは今回ございますので、この共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容を含めまして、標準管理規約をできるだけ早く改正をした上で、管理組合に対しまして、法改正とそれに伴う標準管理規約の改正の趣旨、内容、これは当然様々な媒体を活用した広報、リーフレットの作成、説明会の開催などにより丁寧に周知をしてまいります。
加えて、管理組合に対して、日常的に管理組合と接するマンションの管理業者あるいはマンション管理の専門家であるマンション管理士等々、具体的な助言や提案もしていただけるように、関係団体等を通じまして、マンション管理業者やマンション管理士等に周知をして、この管理規約への反映をより一層徹底をしてまいりたいというふうに思います。
○篠田委員 様々な不都合が指摘されております。標準管理規約で対応するという政府の方針であるというのであれば、そこをしっかりと責任を持って対応いただきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、鎌田さゆりさん。
○鎌田委員 おはようございます。
今日は、連合審査の開催、ありがとうございます。法務委員の一人として質問に立たせていただきます。
先ほど来質問が続いていまして、私の一問目はほぼ重なっておりますので、二問目の方から行きたいと思います。
標準管理規約ということなんですけれども、この標準管理規約の改正で果たしてどこまで問題が解決するのかということの疑問はまだ払拭されていないと私は考えています。
国土交通省のホームページによりますと、二〇一三年から二〇二三年の十年間でおよそ百万戸のマンションが供給されています。百万戸の供給増なんです。これらの百万戸のマンションでも相当数の転売が行われていると思います。
管理規約は遡及されませんから、どんなに標準管理規約を国交省が新しく改正されても、この管理規約は遡及されませんからね。ですので、じゃ、管理規約の改正前に転売をした原始区分所有者が損害賠償請求権を個別行使して一〇〇%の修繕ができなくなるという問題にはどのように対処をするというお考えなのでしょうか。
つまり、これ、一〇〇%の補修が、共用部分のですよ、共用部分の一〇〇%の補修ができずに危険なマンションが放置をされて、今そこにお住まいの住民が不利益を被って、付近を通行する近隣住民の安全が担保されないという問題、ここにどう対応していくのか、どう手当てをするのか、伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今御指摘のように、当然のことながら、管理規約、これは遡及はしない、それはそのとおりであります。
その上で、そうした意味で、旧区分所有者、原始区分所有者に規約等で定めた義務を負わせることができない場合ということでありますけれども、例えば、その場合というのは、恐らく現区分所有者、これが修補費用を負担をするなどして修補をするのであろうと思います。
その区分所有者につきましては、現区分所有者につきましては、その負担をした修補費用相当額について、今の法律上、制度上ということでありますけれども、売買契約の契約不適合責任に基づいて、旧区分所有者に対して損害賠償請求をするということとなると考えております。
○鎌田委員 大臣はそのようにおっしゃいますけれども、じゃ、そうだとして、実際に実務の現場で、今、篠田さんも、弁護士で、実務の現場のことをお話ししましたけれども、もう民事局長とは法務委員会でさんざんやり取りしてきましたので、法務委員会でも聞いてきました、この問題。改めてまた聞きます。塩漬けの問題です、塩漬け。
例えばなんですけれども、管理組合が原始区分所有者の分も含めて損害賠償金の全額を取得できたとします。でも、原始区分所有者は自分の分の損害賠償金をよこせという別段の意思表示をしたら、これは請求することができますよね、今回の法律で。できるかできないかで。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
引渡しといいますか、得た賠償金の引渡しを管理者に請求できると思います。
○鎌田委員 そうなんですよ。原始区分所有者は、自分の分をよこせと言うことができるんですよ。
その自分の分の損害賠償請求権、この請求権の消滅時効期間は何年ですか。
○竹内政府参考人 権利を行使することができるときから十年、あるいは権利を行使することをできることを知ったときから五年となります。
○鎌田委員 最低でも五年間、塩漬けになるんですよ。共用部分の修繕には使えないんです。原始区分所有者が、それは自分の分だからお金ちょうだいと言ったら、共用部分の修繕にそのお金は使えない。取っておかなくちゃいけない。だって、最低でも五年間の間、起算の日から五年間、原始区分所有者がやはりそれは自分の分だからちょうだいよといつ言い出すか分からないんだから。これは五年間塩漬けになったままになるんですよ。
そうすると、先ほど法務大臣の答弁にもあったように、今そこに住んでいる人が自腹でお金を払わなきゃいけない。こんなことってありますか。おかしいでしょう。この塩漬けの問題、どのように法務省として釈明されますか、解決されますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のような場合には、恐らく新区分所有者、現在の区分所有者が修補費用をまず支出をして修補するということになろうかと思いますが、新区分所有者は旧区分所有者に対して契約不適合責任に基づく損害賠償請求権を有しておりますので、それを行使して回収するということが考えられます。
○鎌田委員 今住んでいる人が何でそんな手間を負わなきゃいけないんですかね。
原始区分所有者と私はあえて言っています。転売なんて一回に限りませんよ。二回、三回と転売されることがあるんだ。だから、原始区分所有者。なのに、今そこにお住まいの方が何で、原始区分所有者が自分の分をちょうだいと言ったから、それは損害賠償請求で、いや、駄目駄目、私自腹で払ったんだから、やはり私の分だからちょうだいよと、それを裁判に訴えるんですか。今住んでいる人にそんな手間をかけさせるんですか。おかしいですよ。
そして、さっきも言ったとおり、今、七百四万戸が、この日本にはストックマンション数がある。そして、この十年間で百万戸のマンションが供給されている。篠田さんの質問では、外国人が投資目的で買っていることもある。なのに、今住んでいる人にそんな手間を負わせて、ましてや自腹まで払わせて、そんなことをさせちゃ私はいけないと思っています。
そこは、中野国交大臣、済みません、これは通告していませんが、これまでのやり取りを聞いて、国交大臣の、政治家として、でも行政の長としてのお立場は分かります、今そこにお住まいの方の安全、近隣を通行される方の安全、これは担保するべきだという考えは、どこにもおかしな点はありませんよね。国交大臣、済みません、いかがですか。突然ですけれども。
○中野国務大臣 済みません、御通告がございませんでしたので、ちょっと考え方もまとめたいと思いますけれども。
これはあくまで一般論なんですけれども、個人の財産権が尊重されるということは一般的には重要だというふうに思っております。そういう意味では、分譲事業者からマンションを購入をした、これは当然、旧区分所有者の権利も含めということなんですけれども、そうした財産権への配慮ということも行いながら、しかし、マンションの修繕が円滑に進められ、ストックの長寿命化、そして良好な居住環境の維持というのが政策目的でありますから、こうした配慮の中でこの政策目的が実現をしていくということが重要なのであろうというふうに考えております。
○鎌田委員 突然の質問にも精いっぱい、そして、国交大臣として今住んでいる方々の安全を守らなきゃいけないというメッセージは伝わってきましたので、ありがとうございます。
それで、標準管理規約、先ほどから話題になっていますけれども、令和三年度、これは国土交通省、マンションの総合調査、標準管理規約におおむね準拠しているというのは三〇・九%、それから令和三年度改正前の標準管理規約におおむね準拠しているが三五%だったんですよ。標準管理規約の認知状況、名前ぐらいは聞いたことがあるというのが三〇%、全く知らないというのもこれまた三〇%なんですよ。
ですので、一生懸命、標準管理規約を改正して、法務省と連携して全国のマンションの方々にお知らせをするといっても、これが実情なんです。ですので、私は、国土交通省さんが頑張る、そこは応援したいです。でも、標準管理規約への準拠を一生懸命推奨しても、この管理規約への準拠がなかなか進まなかったというのがこれまでの実像なんです。
そこで、改めて伺います。
私、参考人質疑も傍聴したんですけれども、まさに現場で対応している弁護士の説明によれば、紛争の現場においては原始区分所有者が損害賠償請求権を行使することはない、そういうことはないということを明言されていらっしゃいました。
この点について、法務省として、統計、資料などございますか、お持ちですか。
○竹内政府参考人 お尋ねの点は、元区分所有者が損害賠償請求権を行使した例がどのぐらいあるかということでしょうか。(鎌田委員「原始」と呼ぶ)原始ですね、はい。
統計としては特に持っておりません。
○鎌田委員 法務省としてはこの統計を持っていないと。でも、実務の現場にいる、紛争の現場にいる弁護士の方々は、原始区分所有者が損害賠償請求権を行使することなどないと言っているんですよ。なのに、この統計も資料もない中で今回のこの法改正をやっていくと、皆様は、当然承継する、認めると、更にそれを遡及されると権利の混乱が生じると言っているけれども、今回のこの二十六条改正をやっちゃうと、更に現場で混乱しますよ。これから先、三年、五年、十年、更に混乱していきますよ。
というのは、今までは、現在の区分所有法でやってきていますから、大体、一般市井の国民の多くの皆様は、現場で、マンションを売れば、ああ、自分の損害賠償請求権も一緒に移っているんだなと思うのが普通ですよ。だけれども、今回この法律で、原始区分所有者に損害賠償請求権が残っているということを明記、明言してしまうと、これから先、現場でどれだけ混乱するか、想像していますか。
法務大臣、いかがですか。
○鈴木国務大臣 御指摘の懸念というか、そういった、当然承継というところでそういったこと、分からなくもありません。
ただ、それで私の方から申し上げなきゃいけないというのは、例えば東京地裁判決で、元区分所有者、そして、かつ、全員が債権者でないと管理人は代理できないということの中で、なかなかそういった問題があるということでスタックしちゃっているところ、これをどう解決するかというのが今回の法案の一番の趣旨であります。そういったところをどうしっかり進めるかというところ。
もう一つは、先ほど来申し上げていますけれども、当然承継した場合、やはり旧区分所有者が修繕をやっていた場合それは回収できない、これはもう対応ができなくなっちゃいますから。であるとすれば、そこは管理規約という形の中で、こういった今の私どもの提案の中で回していくということが、これがやはり我々としては最善だというふうに考えている。それが私どもの今の立場でございますし、そこの点は是非御理解をいただきたいと思います。
○鎌田委員 済みません、理解できません。
あと五分なので、あと二問にします。
局長、当然承継は旧区分所有者の権利を害すると、法務委員会でさんざん私は否定されてきました、法務委員会で。でも、今、ここは連合審査なので、法務委員会でのやり取りはちょっと一旦置いておいて、当然承継は旧区分所有者、原始区分所有者の権利を害するのかという疑問を私はまだ抱いているんですね。
例えば、瑕疵が判明する前にいわゆる市場価格で譲渡がなされた場合、原始区分所有者に損害はありませんよね。これ、イエスかノーでお答えいただきたい。
それから、瑕疵が判明した後、結局、瑕疵があったんだから安く売らなくちゃいけなくなったということですよ、瑕疵が判明した後に安価で譲渡した場合、転売時の特約や不当利得法理でこれは解決可能ですよね。これもイエスかノーでお答えください。両方イエスだと思うけれども。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
済みません、前段が……(鎌田委員「前段が、瑕疵が判明する前、市場価格で譲渡した場合は損害がない」と呼ぶ)はい。
市場価格で売買ができたとすれば、旧区分所有者には損害はないと考えられます。
後者の方が……(鎌田委員「判明後安く売っちゃった」と呼ぶ)判明後安く売ったということになりますと、その分損害が生じているということになろうかとは思いますが……(鎌田委員「でも、特約や不当利得法理で解決できるよね」と呼ぶ)特約での解決……
○西村委員長 鎌田さん、質問は指名を受けてからやってください。
局長、答弁を続けてください。
○竹内政府参考人 特約での解決というのはあり得るところかと思います。
○鎌田委員 ありがとうございました。
今私が二つ質問したことについては、民事局長としては、旧区分所有者には損害が出ないし、それから、もし瑕疵が判明した後でも転売時の特約とか不当利得法理で解決できるということの御答弁でありました。
残りもう僅かなので、最後にします。
とにかく、私たちの会派の中でもいろいろ議論してきて、そして、ここ、親委員会の国交の方々の御理解の下の連合審査ですから、今理事の方々がいろいろな議論をされているということも承知の上で、私個人としては、法務委員会でもう今日合わせればこの問題四回目ですから、質問するの。四回目。
なので、今日ここでは、もし一万歩譲ったとして、区分所有法の解釈についてなんですけれども、これは通告していますからね、改正法の施行時に存在するマンションについては、なお従前の例によるという解釈の余地を含むということでよろしいんじゃないでしょうか。なぜなら、これは改正法の施行時に存在する建物にもこれまでと同様の取扱いが認められれば、最終的には司法判断になりますから、裁判所の判断になりますから、そうすると、現場の混乱は最小限に食い止められると私は思っています。通告しています。これはいかがでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、現行法の解釈として、一般的には、共用部分等について生じる損害賠償金の請求権について、区分所有権の移転とともに当然に承継されるのではなく、区分所有権の譲渡後も旧区分所有者に帰属していると考えられていると承知をしておりますが、本改正法案は、共用部分等について生じる損害賠償金の請求権が誰に帰属するかについての現行法の解釈に変更を加えるものではございません。
委員御指摘の、なお従前の例によるという意味がこのようなものであれば御認識のとおりなんですが、ただいま申し上げた一般的な考え方からいたしまして、本改正案の施行にかかわらず、共用部分について生じる損害賠償請求権は区分所有権の譲渡後も旧区分所有者に帰属しているものと考えております。
○鎌田委員 局長、ありがとうございました。
○西村委員長 時間ですので、終わってください。
○鎌田委員 解釈の余地があるという答弁だったと理解しました。
以上で終わります。
○西村委員長 次に、萩原佳さん。
○萩原委員 日本維新の会の萩原佳でございます。
私の方から質問させていただきます。
本法案、建物の老朽化と入居者の高齢化が進む中で、管理や再生の円滑化を図るというものであって、改正に意義があると考えております。私も、市議時代、マンションの老朽化に関する建て替えに対する相談を住民さんからよく受けておりましたので、この改正を進めることは非常にいいことかなと思っております。
今るる皆様質疑されておりましたが、共用部分の損害賠償請求権の行使権、これを中心に委員会でも議論がなされてきたと存じ上げております。本日は、様々な議論がありながらも、これまで私としては議論がやや少なかった点について質疑を行いたいと考えております。
改正案では、共用部分の変更決議要件が、区分所有者及び議決権の四分の三以上の多数から、出席した区分所有者及びその議決権の四分の三以上と緩和されています。これによりマンションの大規模化が進むことが期待されます。もっとも、これによりどの程度改修が進むのかという点に関しては疑問も生じておるところでございます。
まずは、このように変更する理由についてお伺いいたします。また、委員会でも議論がありましたが、招集通知、これは一週間前までに行うこととなっておりますが、一週間という短期間にしている理由、これも併せてお示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現行の区分所有法におきましては、集会の決議をするために必要な多数決割合は、区分所有者全員の頭数と議決権を母数として定められております。そのため、集会に出席せず、議決権も行使しない区分所有者の存在は、必要な決議を行うための支障になっているとの指摘がされております。
一方で、そのような区分所有者は、建物の管理に関する事項については、その内容が自らの区分所有権の帰属には影響を与えないものであることなどを踏まえますと、事柄の性質上、決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると評価することも許容されると考えられます。
そこで、本改正法案では、区分所有権の処分を伴う決議を除く決議につきまして、出席した区分所有者及びその議決権の多数で決することとして、決議の円滑化を図っているものでございます。
また、現行法におきましては、建て替え決議等を別にしまして、基本的に集会の招集通知は少なくとも一週間前までに発しなければならないとされ、この期間は規約で伸長又は短縮することができるとされておりました。
本改正法案では、集会の招集通知を少なくとも会日の一週間前までに発するという現行法の規律は維持した上で、この期間は規約によっても短縮することはできず、伸長のみすることができることとして、通知の期間を現行法よりも確保することができるようにしております。
法務省としては、本改正法案の趣旨とともに、各管理組合の実情に応じて規約で一週間よりも長い期間を定めることができることをしっかり周知、広報してまいりたいと考えております。
○萩原委員 ありがとうございます。
変更の趣旨、理由に関しては理解はしたんですけれども、それを前提にすると、やはり一週間という期限はどうなのかなという気はしております。
株主総会、会社の場合、公開会社の場合は二週間前、非公開会社の場合は一週間前を招集通知の期限とされておりますけれども、今回のマンションの建て替えとか、非常に大きな問題ですね、また、所有者が外国人である場合等々を考えると、昔の、全員がそこに住んでいた時代とは大分変わってきている。
そういう中で、規約において伸長しかできないとはしていても、ベースを一週間とするところに関しては、時代にそぐわないんじゃないのかなという気もしております。実際、実務を回していって、そういうトラブルというのは今後多く出てくるというのは勝手に予想しているんですけれども、そのような場合は、是非、改定というところも適宜やっていただければなと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
また、るる聞いていきますけれども、二点目として、管理計画認定に関してお伺いいたします。
マンション管理計画、これを分譲事業者が作成し管理組合に引き継ぐ仕組み、これを導入することになっています。現在、三%にとどまっているマンション管理認定の取得割合、これを施行後五年間で二〇%まで増加することを目標として掲げられております。国土交通省としては、管理計画認定を取得すれば金融支援や税制特例等のインセンティブを設けていて、新築マンションを認定の対象に追加することなどで認定の取得割合を高めようとしております。
新築マンションについては、予備認定を取得してきていて、予備認定の取得率は五〇%程度まで達していると承知しておりますが、新築マンションについては、インセンティブもあり、管理計画認定を取得するケースが多いと思われます。
ただ、認定マンションは築二十年未満のマンションが約半数を占めており、より建築年数の長いマンションでは少なくなっています。さらに、管理委託マンションが九割を占め、自主管理マンションでの認定が少ない状況です。認証マークを作成し表示することができるようにすることで、管理認定により管理水準の高いマンションを資産価格に反映されていこうとする方向性は望ましいと言えますが、二〇%という高い目標、これを達成するためには、今後、築年数の古いマンションや自主管理マンションに向けた管理認定計画策定に向けた支援というターゲットを絞ったインセンティブ、これが必要だと考えておりますが、どのように考えられているのか、お考えをお示しください。
○楠田政府参考人 お答えをいたします。
先生御指摘の管理計画認定制度につきましては、令和四年の開始以降、認定取得件数は毎年着実に増加をしてきております。本改正法案におきまして、新築マンションを認定の対象に追加するなどの措置を講ずることによりまして、施行後五年間で管理計画認定の取得割合を二〇%まで増加をさせることとしております。
この管理計画認定を取得したマンションにおきましては、修繕積立金の適切な積立てや大規模修繕工事の計画的な実施など、適正な管理に向けた管理組合の自主的な取組が推進をされますとともに、市場において高い評価を受けるなどの効果が期待をされているところでございます。
また、御指摘のとおり、税制や金融などの面におきましても、認定を受けたマンションについては、大規模修繕工事を実施した場合の固定資産税の減額や、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資等の金利の引下げ、マンションすまい・る債の利率の上乗せなどのメリットが受けられることといたしております。
これらに加えまして、本改正法案におきましては、管理計画の認定を取得したマンションに関する表示制度も創設をすることといたしております。今後は、認定を受けている旨を表示した広告等が行われることを通じまして、認定を受けていないマンションとの差別化が図られ、認定マンションが市場で高く評価されますよう、環境整備にしっかり力を入れてまいりたいと考えております。
○萩原委員 差別化をしていくことで市場で高い評価を期待ということですね。
期待はいいんですけれども、本当に期待どおりになっているのかというところで、管理認定計画、これを受けているマンションについて資産価値が上がっているかどうかという実態、是非把握していただいて、顧客の評価、市場での評価というのを確認いただければと考えております。
それが取得へのまたモチベーションというところで目標率達成につながっていくのかなと考えておりますし、とはいえ、築年数の古いマンション、自主管理マンションに向けたところの支援というところも、なかなか今のお話ではどこまで効果があるのかなというところも感じますので、またそれに的を絞ったような対応もしていただければと考えておりますので、その点、お願いしたいと思っております。
続きまして、マンション管理適正化支援法人に関してお伺いいたします。
管理認定計画、これに関して、認定取得の働きかけや普及啓発等を行うマンション管理適正化支援法人制度、これを創設するなど措置を講じていて、これにより管理認定計画を増やそうとされております。
民間団体と連携を強化することも望ましいと思います。しかし、マンション管理適正化支援法人としての登録を受けて、働きかけを行っていく団体がどれほどあるんだろうかなという気もしております。制度をつくっても活用する団体が少なければ意味がありません。マンション管理適正化支援法人のニーズは、現状どの程度ニーズがあると認識しているのでしょうか。地方公共団体が、管理組合向けのセミナーの開催や相談対応、専門家の派遣など、業務を支援法人に委託するなどの取組について積極的に支援をしていくこととされておりますが、登録をすることで団体にとって具体的にどのようなメリットがあるのか。
以上、お示しいただければと思います。
○楠田政府参考人 お答えをいたします。
地域のマンション政策を担うのは地方公共団体でございますけれども、そのマンパワーには限りがありますことから、マンション管理に取り組む民間団体と連携し、その協力も得て、地域全体で管理組合の活動をきめ細かく支援をする体制を構築することが大変重要だと考えております。
このため、本改正法案におきましては、地方公共団体などからの要望も踏まえまして、マンション管理に取り組む民間団体をマンション管理適正化支援法人として登録できる制度を創設することとしたところでございます。
この支援法人の登録を受ける主体といたしましては、各地域で活動しておりますマンション管理士や管理組合の団体などを想定しているところでございます。こうした団体にとっても、本法人に登録されることによりまして、認知度や信頼感が高まり、活動の充実でありますとか地方公共団体と連携した取組の強化などにつながるメリットがあるのではないかというふうに思っております。
こうしたメリットも含めまして、まずはこの制度のことを関係者の方々によく知っていただくということが重要であるというふうに考えておりまして、関係団体等と連携をし、様々な媒体を活用した分かりやすい広報に努めますとともに、管理組合向けの説明会の開催など丁寧な周知を行うことによりまして、支援法人の登録の促進と、この団体が主体的に活躍ができる環境の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
○萩原委員 今のお答え、総合的に考えると、細かなニーズというのは把握できていないのかなと感じております。結局、どれだけニーズがあって、それでこそ、そこをまず把握してから二〇%という目標に対して達成に向けて歩いていくべきじゃないのかなと考えておりますので、是非、周知活動、種々されるということですけれども、詳細なニーズを把握していただいて、あと、その際、されるとは思いますけれども、具体的なメリット等を開示して協力団体というのを増やしていただければなと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、一棟リノベーションに関してお伺いいたします。
マンションの新たな再生手法として一棟リノベーション、これが法的に位置づけられることになりました。建物建て替えに比べて安価で行えるというメリットがあります。耐震性に問題がある場合、四分の三以上の多数決により建て替えができるところ、一棟リノベーションでもできることになります。ただ、建て替えとは異なるため、耐震性等における既存不適格、これが改善されない可能性というのは残っていくんじゃないかと考えております。
他方、これを厳密にすると、この一棟リノベーションというところが進まないということにもなりかねないと考えています。リノベーションという手法からするとそれは仕方ないように思いますが、既存不適格の建物、これに関してはどのように今後対応していく予定なのか、お考えをお示しいただければと思います。
○楠田政府参考人 お答えをいたします。
先生御指摘のとおり、一棟リノベーションにつきましては、躯体を生かして再生を図る手法でございます。建て替えと比較をいたしまして、費用の面、時間の面などで負担が小さい、あるいは再生に向けた合意形成を図りやすいなどの特徴がございます。今回の改正法案によりまして、今後の活用の拡大が期待されるところであります。
また、一棟リノベーションにつきましては、共用部分と全ての専有部分の変更を伴う工事を行うものでございますので、一旦躯体のみの状態とし、必要に応じて耐震改修などの躯体の補強を行った上で、全ての専有部分の改修を進めていくということも可能でございます。
このため、耐震性が不足しているマンションで一棟リノベーションを行う場合には、その機会を捉えて耐震改修をしっかりと進めていただくということが大変重要であるというふうに考えているところであります。
国土交通省におきましては、マンションを含めました住宅全体の耐震化を加速させるために、地方公共団体を通じて耐震改修に対する予算上の支援を行っておりますし、耐震改修工事を行った住宅に対する税制上の優遇措置、あるいは住宅金融支援機構の融資など、所有者の負担軽減のための様々な支援措置を講じさせていただいているところであります。
今後、本改正法案によりまして、一棟リノベーションによる再生というものを推進をしていく中で、このような耐震改修に関する様々な支援措置についても、管理組合等にしっかりと周知をし、活用を働きかけていきたい、それによってマンションの耐震化を更に進めてまいりたいと考えております。
○萩原委員 今の、居住者にとって建て替えということだけじゃなくてリノベーション、これが選択できることになったことは好ましいと思いますが、ただ、今のお話でも、それを躯体まで戻してその後耐震工事をしていただくのを期待ということですので、余り対応になっているのかどうなのかというところは不明だなと考えておりますので、その点、是非御配慮いただきたいなというところ。
最後、これは結局、一棟リノベーションとはいいながらも、できる事業者というのは非常に限られているんじゃないのかなと思っておりますが、対応できる事業者、これはどの程度いるのか、想定されているのか、把握されているのであれば是非お示しいただければと思います。
○西村委員長 楠田住宅局長、時間が参りますので、簡潔にお願いいたします。
○楠田政府参考人 お答えいたします。
集合住宅における一棟リノベーションにつきましては、現行制度では、マンションは区分所有者全員の合意がないと実施をできませんので、合意形成の必要がない賃貸住宅とか社宅などで取り組まれているところでございます。現在把握しているところで、少なくとも約二十社の事業者が事業に参画をし、約二百棟の事業実績が確認をされております。
今回の法改正で多数決決議での実施が可能になりますので、マンションにつきましても、今後は参画する事業者、事業実績共に出てくるのではないかというふうに見込んでおります。
引き続き、この法改正の趣旨、内容の周知をして、一棟リノベーションによる再生がしっかり実施されるように環境整備に努めてまいりたいと思います。
○萩原委員 今の二十社、二百棟という、非常に数としては少ないのかなと考えておりますので、是非、狙っている意図というのが発揮されるように、事業者にとって利用しやすい制度、そして事業者が新規参入できるような形を促していただければと考えております。
済みません、時間が過ぎておりますので、私の質問は以上といたします。ありがとうございます。
○西村委員長 次に、小竹凱さん。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。
本日は、会派を代表して質疑の機会をいただき、ありがとうございます。
限られた時間ですので、早速質問に入らせていただきます。
本法案では、老朽化したマンションの建て替えや一括売却、これまでの全員一致や五分の四以上の賛成から、一定の条件を緩和、四分の三あるいは三分の二といった多数決によって決議が可能になるというふうに承知しております。
確認させていただきますが、こうした建て替え決議に反対した区分所有者への対応として、現行制度に設けられている売渡し請求権は引き続き維持されるという認識でよいかということと、また、今回の制度変更により、仮に建て替え決議が成立した場合、建て替えに伴う負担金や自己資金を捻出できない高齢者や低所得の方々が住み慣れた場所から立ち退かざるを得ない、そういったケース、これまで以上に生じてくる場合があると想定しております。この点について、政府としてどのような認識をお持ちなのか、支援策や対策については検討されているのか、御答弁いただきたいというふうに思います。
○竹内政府参考人 委員御指摘のとおり、現行の区分所有法におきましては、建て替え決議が成立した場合には、建て替えに参加する区分所有者等は、建て替えに参加しない区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができることとされております。この売渡し請求の規律は今般の改正後も維持されております。
また、今般の改正で創設する新たな再生手法に関する決議、具体的には建物更新決議、建物敷地売却決議等でございますが、これについても売渡し請求の規律を準用することとしております。
法務省としても、決議に反対するなどしたものの転居を余儀なくされる方々への配慮は重要であると認識をしておるところでございまして、区分所有法におきましては、売渡し請求により時価が支払われることとされております。
この時価とは、売渡し請求がされた時点の当該建物及び敷地の客観的取引価格をいうとされておりますが、当該敷地の更地価格から現存建物の取壊しに要する費用を控除した額を基礎とすると考えられているため、仮に建物が老朽化している場合であっても、好立地にあるようなときには、区分所有者に相当額の時価が支払われることになると考えられます。
そして、反対者に時価による資本回収の手段を確保するため、売渡し請求の仕組みを設けた上で、時価相当額の支払いを受けるまでは専有部分を明け渡す必要がないこととするとともに、一定の場合には、裁判所が一年を超えない範囲内でその明渡しを猶予することも可能としております。
法務省としては、建て替え決議や今般の改正で創設する決議について、売渡し請求等の手続が適切に行われるよう、今般の改正の趣旨、内容の周知、広報にしっかりと努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
そうなんですよね。売渡し請求権がありまして、区分所有法とはそういったもの、マンションをついの住みかにして考える方もいらっしゃるかと思いますけれども、そういった法律には全て認められるわけじゃないということを認識しました。
次に、マンションの管理に関する点について伺います。
法案には、マンションの管理業者が管理組合の管理者を兼ねて工事の受発注者となる場合、自己取引等についての区分所有者への事前説明を義務化する規定が盛り込まれました。
もちろん、利益相反への懸念があるため事前説明を義務づけるという趣旨と理解しておりますが、確かに、透明性の向上、一歩ではありますが、単に事前説明を義務づけるだけでは、管理者側が説明をしたとしても、なかなか、専門知識の乏しい区分所有者は、内容を十分に理解できなかったり、事実上追認をせざるを得なかったり、そういった状況が考えられます。
こうした利益相反防止策の実効性を更に高めるために、政府としてどのようなフォローアップ、監督体制の整備をお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○平田政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の管理業者管理者方式において自己取引等を行う際の事前説明につきましては、区分所有者がその説明内容を十分に理解した上で取引の可否を判断することができるよう、説明事項を記載した書面を説明会の一週間前に区分所有者全員に対して交付すべきことを省令において規定するほか、取引の可否を決議する総会に先立つ別日に説明会を開催することが望ましい旨を周知することを検討しております。
また、事前説明の適切な実施を含めた管理業者管理者方式の適正な運営が図られるよう、管理業者に対する定期的な立入検査やアンケート調査等を通じ、新制度の運用に係る実態把握に努めるとともに、管理業者に対する必要な指導等を行ってまいります。
なお、管理業者がその業務を適切に実施せず、区分所有者等に損害を与えた場合は、マンション管理法に基づき業務停止命令等の監督処分の対象となります。
管理業者管理者方式の適正な運用を含めたマンション管理をめぐる課題について、管理業者が区分所有者に適切に対応できるよう、引き続き管理業者に対する指導に努めてまいります。
○小竹委員 ありがとうございます。
かなり専門的な分野にも及びますので、こういったところの説明をしっかりしていただいて、利益相反にならないようにお願いしたいというふうに思っています。
次に、マンションの消火設備と水道関係の問題について伺います。
老朽化の問題は、マンションに関わる水道インフラ、消火設備などについても同様でありまして、全国的に人口が減少する中、私の住んでいる石川県などでも、地方では、水道の使用量の減少を適切に予測しダウンサイジングしていく水道管の更新が取られています。これによって、水道管の更新費用や維持管理費用を削減できます。
消防水利の基準では、一般的に、直径百五十ミリ以上の管に消火栓を取り付けなければならないため、結果として、細管化、小さくしていくことによって、消火栓が設けられなくなるといったような現象が各地で発生していると聞いています。
消火栓が設けられないような水圧、水量の乏しい地域では、防火水槽であったり、マンションの場合は貯水槽、あと、場合によっては川や海も消火水利として利用できるというふうに伺っていまして、今回の法案に多様なニーズに対応した建て替えの推進が盛り込まれており、隣接地を取り込む建て替えなどについても合意形成を促進する様々な措置が取られており、これ自体はいいものと思うのですが、隣接地を取り込む建て替え、増築というふうに考えますと、例えば、マンションにおける屋内消火栓の設置基準は、延べ床面積が七百平米以上、また、地階、無窓階、四階以上の床面積が百五十平米以上の場合のマンションにおける屋内消火栓の設置義務、また、十一階以上になる場合はスプリンクラーの設置義務など、新たな消火設備が必要になる場合があります。
今回の法改正をして進めやすくなったとしても、全国的に見る水道管の管径の問題で、なかなか現行の消防設備や消防水利を確保できないことによる建て替えそのものができないというリスク、こういったことをどう考えているか。また、あくまでも消火活動を妨げないことを基本に捉えつつも、水理計算システム等により水量が十分に確保できるという場合にとっては、今後の人口予測や地域の状況に応じて消防の水利基準を柔軟に見直していくべきと考えますが、これらについて見解を伺いたいと思います。
○鳥井政府参考人 消防の観点からお答えいたします。
消防水利にいたしましては、消防庁において、消防法第二十条に基づき消防水利の基準を設定しておりまして、その中で、必要な取水量を確保するため消火栓を設置できる水道管の口径を定めておりますが、地域によっては、人口減少により、効率的な水道の維持管理のため、水道管を減径する、すなわち口径を小さくする場合もあると承知しています。
その際、消火栓からでは必要な取水量が確保できないことも想定されますが、そのような場合には、消火栓のほかに防火水槽や河川等の自然水利など、様々な消防水利について、地方自治体が地方の事情について配置を進めるものと認識いたしております。
また、消防水利の基準そのものにつきましても、消火栓を設置できる水道管の口径につきまして、関係者からの意見聴取や実地調査による検証を行った上で、令和六年四月に見直しを行ったところでございます。具体的には、消火栓からの取水量について一定以上であることが解析及び実測で確認できる場合には、それまでよりも小さい口径の水道管にも消火栓を設置することを可能といたしております。
引き続き、各市町村における消防水利の整備が適切に図られるように取り組んでまいります。
○小竹委員 ありがとうございます。
最近また水利の基準というのが見直されたということは承知しておりますが、また直近からの枝状配管であったら大丈夫にするなど、柔軟な見直しをこれからもしていただきたいというふうに考えております。
そして、最後に、建築基準法と民法のセットバックの相違について伺います。
本法案の中に、先ほども申したとおり、隣接地を取り込む建て替えなども盛り込まれており、取り込まれた場合は新たな敷地境界線が生まれることになります。
建築基準法では、基本的に道路後退、安全、防災の目的からセットバックが義務づけられておりますが、同法六十三条では、防火地域また準防火地域内にある建物では、耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができると定めており、一方、民法の二百三十四条では、隣地境界線から五十センチ以上離す必要があるというような義務がされており、これが、両者が相反しており、隣地所有者が民法違反を理由に損害賠償や工事差押えを請求した事案がこれまで複数回にわたって確認されています。
過去の判例等を見ても、基本的には特別法が優先されるわけでありますが、問題は、建築基準法に適合していても民事トラブルが発生する可能性があるという点でありまして、今回のマンションのことに関しましても、特に都市部における集合住宅、マンション等では敷地を最大限に活用する設計が多く、結果として、この民法規定が開発の不確実性や法的リスクを高める要因となっているというふうに考えております。
今後、集合住宅やマンションにおける民法上のセットバック規定の運用について、隣地所有者への事前協議モデルであったり、境界線管理に関する丁寧な説明の指針の作成など、こういったところでトラブルが起きないような検討をしてはいかがと考えますが、国土交通省の見解をお聞かせください。
○楠田政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、民法第二百三十四条におきましては、建築を築造する場合には、境界線から五十センチ以上の距離を保たなければならない旨が規定をされております。
また、建築基準法第六十三条では、防火地域等にある建築物で、外壁が耐火構造の場合には、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨を規定しているところでございます。
これらの規定に関しましては、平成元年の最高裁判決におきまして、建築基準法第六十三条は、当該規定が適用される建築物について、民法第二百三十四条第一項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当というふうにされたところでございます。
御指摘のとおり、マンションの開発等に関しますトラブルを抑制して建築活動を円滑に行っていくためには、事業者の方々、住民の方々に建築に関する条件がきちんと周知をされているということが大変重要であるというふうに考えております。
今申し上げた最高裁判決を含めまして、建築基準法に基づく基準などの建築条件に関する情報の提供につきまして、しっかり行っていただけるように、特定行政庁への働きかけ等を行ってまいりたいと思います。
○小竹委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、大森江里子さん。
○大森委員 公明党の大森江里子でございます。
本日は、連合審査会での質問の機会をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
初めに、マンションの修繕等の決議に関してお伺いいたします。
今回の改正により、区分所有権の処分を伴わない決議に関する集会の議事は、集会に出席した区分所有者及び議決権による多数決で決議をすることができるようになります。しかし、その場合、集会へ出席しなかった場合の影響は従来よりも大きいものとなりますので、その旨を各区分所有者へ丁寧に周知する必要があると考えますが、御見解をお伺いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、本改正法案では、区分所有建物の管理の円滑化の観点から、区分所有権の処分を伴わない決議について、出席者の多数で決する仕組みなどを盛り込んでいるところでございます。
本改正法案を円滑に施行し、区分所有建物の管理の円滑化等を図るためには、御指摘のとおり、出席しなかった区分所有者が決議の母数から除外されることなど、出席者の多数で決する仕組みについて十分な周知、広報をする必要があると考えております。
法務省としては、マンション法を所管する国土交通省との緊密な連携の下、関係団体の協力も得ながら、全国各地で説明会を開催するなどして、改正法の施行までの間に、その趣旨、内容が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報にしっかりと努めてまいりたいと考えております。
○大森委員 ありがとうございます。
マンションの適切な管理や修繕は、各区分所有者の財産であるマンションの価値を保つことにもつながりますので、区分所有者が集会へ出席して議決権を行使するかの判断ができるよう、丁寧な周知をお願いいたします。
質問の順番を少し変えまして、一つ飛ばして、次の質問をさせていただきます。
マンション再生事業に関する税務についてお伺いいたします。
今回の改正案により、建物規模を確保するために隣接地を取り込んで建て替えを行った場合、隣接地の権利者は、権利変換により、建て替え後のマンションの区分所有権を取得することができるようになりました。隣接地の所有者は、個人だけでなく、法人の場合も考えられますが、今回は、一般的に多いと思われる個人に限定してお伺いいたします。
税務上は、個人が所有する不動産の移転があった場合は、資産の譲渡として所得税の対象となります。ただし、マンションの従来の所有者に関しては、建て替え前の区分所有権と建て替え後の区分所有権の権利変換があった場合は、租税特別措置法により譲渡がなかったものとみなされ、課税が繰り延べられるようになっています。
今回の改正案にある隣接地の権利変換に対しても、隣接地の所有者は、マンションの従来の所有者と同様に、譲渡がなかったものとみなされ、課税の繰延べの特例が受けられるのか、お伺いいたします。
○楠田政府参考人 お答えいたします。
現行のマンション建替え円滑化法におきましては、建て替え前のマンションの権利を建て替え後のマンションの権利に変換することを可能としております。御指摘のとおり、マンション建て替えに参加する区分所有者の経済的負担を軽減する観点から、建て替え前のマンションの権利を権利変換によって譲渡する場合に生ずる譲渡所得課税につきましては、建て替え前のマンションの権利の譲渡がなかったものとみなす、課税の繰延べ措置が講じられているところでございます。
隣接地の権利を建て替え後のマンションの権利に変換する仕組みにつきましては、今回の法改正の中で新たに創設をするものでございますので、現行の税制措置の適用はありませんけれども、マンションの隣接地の所有者等の経済的負担を軽減し、建て替え事業に参加してもらいやすくするというふうな観点から、大変重要なことだと思っております。今後、関係者の御意見も伺いながら、税制措置の要望も含めまして、必要な検討についてしっかり検討してまいりたいと思います。
○大森委員 マンション再生事業を円滑に進めるためにも、税法の措置というのはとても大切になると思いますので、是非、法律の施行日までに税法の整備も完了していただきますようにお願い申し上げます。
続きまして、工事費や資材費は近年急騰しており、修繕計画の見直し、修繕積立金の見直しも必要なマンションは増えています。令和五年度マンション総合調査によりますと、長期修繕計画において修繕積立金の積立てを行っているマンションのうち、現在の修繕積立金の残高が長期修繕計画の予定積立残高に対して不足していないと回答したマンションは、三六・六%にとどまっております。
現在の取組と、今回の改正による改善の見込みについて、既存のマンションと新築のマンション、それぞれに対する御見解をお聞かせください。
○楠田政府参考人 お答えいたします。
マンションの長寿命化と良好な居住環境の確保を実現するためには、区分所有者一人一人の管理意識を醸成をいたしまして、円滑な合意形成を通じて、修繕積立金を適切に積み立て、修繕工事を計画的に実施していくことが重要だと考えております。
このため、令和四年の四月から、修繕積立金の確保など、適正な管理がなされているマンションの管理計画を認定する制度を開始をいたしますとともに、マンションの修繕積立金や長期修繕計画の作成についてのガイドラインを作成をいたしまして、その周知に取り組むといったことに取り組んでいるところでございます。これによって、計画的な修繕についての区分所有者の意識の醸成を図りますとともに、管理組合による適正管理への自主的な取組を促してきたところでございます。
また、本改正法案におきましては、既存のマンションにおいて適切な修繕積立金の確保に向けた取組がより一層進みますように、修繕積立金の引上げも含めまして、管理に係る決議を集会の出席者による多数決で行えるようにいたしますとともに、民間団体の登録制度を創設をいたしまして、修繕を含む管理組合の様々な活動を地域全体で支援する体制を構築するといった措置を講じることといたしております。
さらに、新築という御指摘もございましたが、本改正法案におきましては、新築時から適切な修繕積立金の額等を設定し、適切な管理や修繕につなげていくために、管理計画の認定対象に新築マンションを追加をすることといたしております。
引き続き、地方公共団体等と連携をいたしまして、管理組合が外部専門家などの支援も受けながら、区分所有者の管理意識の醸成でありますとか適切な修繕積立金の確保等にしっかりと取り組んでいけますよう、丁寧な支援に努めてまいりたいと存じます。
○大森委員 ありがとうございます。
将来的に工事費などの大幅な上昇が予想されますので、定期的に長期修繕計画を見直して修繕積立金を設定し直すことが大切であると思っておりますので、引き続きのお取組をお願いいたします。
続きまして、マンション建て替え事業においては、建て替え前のマンションの資産額を算定する評価基準日を設定した上で、建て替え前のマンションの権利を建て替え後のマンションの権利に変換する権利変換計画を定める必要があります。
現行のマンション建替え円滑化法では、評価基準日から六か月以内に権利変換計画の認可が行われない場合には、新たな評価基準日を設定して再度資産額を評価する必要がありました。今回の改正では、六か月以内に権利変換計画の認可の申請をすれば評価基準日が移動しないことになりましたが、認可ではなく申請をすれば評価基準日を移動しないこととした理由をお聞かせください。
○楠田政府参考人 お答えいたします。
マンション建て替え事業では、建て替え前のマンションの資産額を算定する評価基準日を設定し、建て替え前のマンションの権利を建て替え後のマンションの権利に変換する権利変換計画を定める必要がございます。
現行法では、評価基準日から六か月以内に権利変換計画の認可が行われない場合には、新たな評価基準日を設定して資産額を再評価する必要がありましたけれども、この点について、今回の法改正の検討の中で、現場の事業者等からいろいろな意見を聞く中で、権利変換計画の認可に要する時間は地方公共団体によって様々である、長い時間を要する自治体もある一方で、権利変換計画の申請を事業者の努力で更に早くするということについては限界があるといったような声でありますとか、仮に六か月以内に認可が行われない場合、施行者にとって大変大きな負担になるといったような意見をいただきました。
それを受けまして、今回の法改正の中で、マンションの建て替えを円滑に進める観点から、評価基準日から六か月以内に権利変換計画の認可ではなく申請を行えばよしとするような仕組みに改めまして、施行者の負担の軽減と事業手続の円滑化を図ることとしたところでございます。
○大森委員 現場の声を反映した改正をありがとうございました。
以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
〔西村委員長退席、井上委員長着席〕
○井上委員長 次に、たがや亮君。
○たがや委員 れいわ新選組を管理し切れない管理人、たがや亮と申します。
本当に皆様方には大変御迷惑がかかっていると思いますが、何とぞよろしくお願いします。
今日は連合審査会ということで、両大臣、よろしくお願いを申し上げます。
まず冒頭、この改正法案には大きな穴があると思っております。少なくとも、採決は延期、そして廃案にすべき法案だと思っておりますので、そういうことを申し上げて質問に入らせていただきたいと思います。
現在の区分所有マンションについて、管理不全や老朽化したマンションの急増などが社会問題となっており、この問題への対処が急務であることは共通認識です。マンションの建て替え要件の緩和など、この問題への対応策が今般の区分所有法関連法改正法案の大きな目的であったはずです。
その中で、マンションの適正な維持管理を図るという観点からすれば、マンション共用部分の修繕や欠陥補修など、共用部分の欠陥に対する損害賠償請求を容易にして、欠陥の万全な補修を実現することは非常に重要な課題だと思いますが、中野国交大臣、鈴木法務大臣も同じ考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
○中野国務大臣 私の方から答弁させていただきます。
委員御指摘のとおり、マンションにおける良好な居住の環境を確保するためにも、共用部分に生じた瑕疵に対しまして、必要な修繕が適時適切に行われるということは極めて重要であるというふうに考えております。
政府としましては、共用部分に生じた損害賠償請求権の行使の円滑が図られるよう、今回、区分所有法の改正とともに、我々、標準管理規約による実務的な対応を図るということで、しっかりとマンションの修繕が進むよう取り組んでまいる所存でございます。
○鈴木国務大臣 今御指摘の共用部分の欠陥に対する損害賠償請求、これを容易にして、欠陥の補修を実現することの重要性ということでありますけれども、まさにそれは極めて重要であると考えております。
この点については、ただ、先ほども別のところで御答弁申し上げましたが、平成二十八年の東京地裁の判決におきまして、共用部分について生じた損害賠償請求権の発生後に一部でも区分所有権が譲渡されていると、その譲渡をした区分所有者のみならず、ほかの区分所有者も含めて、管理者において訴訟追行することが一切認められない、そういった判断がされていたところでありまして、まさにそこにおいて、管理者による代理行使、訴訟追行を認めた趣旨が没却をされている、そういった指摘がされている中での今回の法改正であります。
まさに、そういった意味で、管理者が、当該請求権を有する現区分所有者を代理等することができ、また、当該請求権を有する旧区分所有者、これについても基本的に代理することができるとしたことで、区分所有権が譲渡された場合でも当該請求権について管理者による代理行使、訴訟追行が可能である、これを明確にしたのが今回の趣旨であります。
そういった意味で、我々としては、先ほど申し上げたように、重要性がある、こうした損害賠償金等の請求権の行使の円滑化、これに資すると考えております。
○たがや委員 ありがとうございます。両大臣とも重要だということだと思います。
マンションの建て替えの円滑化においては、区分所有者の利益を一定の範囲で制限してでもマンションの健全化を図るという方向性が打ち出されている中において、転売した旧区分所有者が欠陥のために売却代金が安くなったという問題の対処と、耐震強度が不足していたり、タイルの剥離、落下の危険性があるなどといった命に関わる共用部分の欠陥を補修するための対処と、どちらが大事でしょうか。中野国交大臣、鈴木法務大臣に、各々に端的にお伺いします。
○中野国務大臣 答弁申し上げます。
マンションは、区分所有形態という性質上、管理や再生を適切に進めるためには管理組合内の合意形成が不可欠でございます。仮に反対者などがいる場合にも、住民の安全や良好な居住環境を守るという公益性の観点から、これは、しかし、適切な補償額による金銭的補償を行うなどの財産権への必要な配慮を厳格な手続の下、規定をした上で、多数決で意思決定を行うことができるとしております。
このように、法制度の中で、個人の財産権が尊重されることは重要でございまして、こうした財産権への必要な配慮を行いながら、しかし、マンションの修繕が円滑に進められるということが重要であるというふうに考えております。
そうした観点から、本改正法案の内容につきましては、個人の財産権の保護とマンションの修繕の円滑化とのバランスを取った、そういう内容であるという認識でございます。
○鈴木国務大臣 どちらも共に大事だと考えております。
○たがや委員 どちらも大事だというのは大体そうだと思ったんですが、財産もこれは大事なんですけれども、財産以上にやはり大事なというのは、当たり前ですけれども命ですよね。命の方がやはり大事だと思います。そういったことを曖昧に、両方大事だと言いたい気持ちは分かりますが、やはり命が大事だと私は申し上げておきます。
それでは、政府提案の区分所有法二十六条の改正案は、共用部分の欠陥に関する損害賠償請求権は転売後も旧区分所有者が有するという前提に立った上で、管理者が旧区分所有者を代理して原告又は被告になった場合、管理者は遅滞なく旧区分所有者にその旨を通知しなければならないとしています。
このような改正案が実現したら、旧区分所有者は、自分の持分は自分で請求すると別段の意思表示をしたり、あるいは、別段の意思表示をしないにしても、賠償金が得られたら自分の持分をよこせと要求することが十分に考えられると思うんですが、更に言えば、例えば、旧区分所有者の請求権を買い集めたりする債権買取り業者も新たに生まれかねないような事態になり、混乱を来すのではないか。そうなれば、マンションが完全に修繕できない事態も想定できますが、そういった見解、鈴木法務大臣、どう思うでしょうか。お伺いします。
○鈴木国務大臣 旧区分所有者の別段の意思表示、これを認めているということについては、管理者の監督方法を持たない旧区分所有者について、法律によって一律に管理者による代理等を強制をするということは適切ではないと考えられたことによると考えております。
また、管理者は、本改正法案による改正後の区分所有法第二十六条第二項に基づいて、旧区分所有者が分譲業者に対して有する契約不適合責任に基づく損害賠償請求権、これを代理して行使した場合には、旧区分所有者を代理してその損害賠償金を受領することになります。そのため、管理者、これは本人である旧区分所有者からその損害賠償金の引渡しを求められた場合には、これを引き渡さなければならない、これが原則であります。
ただ、あらかじめ規約等によって別段の意思表示を制限をし、禁止をすることで、損害賠償金の使途を建物の瑕疵の補修のために用いるものとする旨を定めておくことで、旧区分所有者による別段の意思表示を制限をして、損害賠償金を旧区分所有者に引き渡さずに、建物の補修費用に充てるということも可能になる、私どもとしてはそう考えております。
○たがや委員 今大臣が言われたのは、法改正をした後の話ですよね。
この改正法案が通ってしまうと、今七百四万戸あるマンションの、そういういろいろな様々な問題がこれから、要するに、分属帰属ということが認められてしまうことで、権利を主張される方がいっぱい出てくると思うんですよね。
そういった場合に、だって、遡って請求できないですよね。法改正した後、その後のことだったらできるかもしれないですけれども、今既に七百四万戸ある人たちは救えないというふうに思いますけれども、どうですか。
○鈴木国務大臣 基本的には、そういった意味でいうと、損害賠償請求権について言うと、原始区分所有者に対してそれを今の区分者がしていく、そういったたてつけになっていくと思います。
○たがや委員 規約じゃ変えられないですよね。遡ってそれは損害賠償できないはずですけれどもね。
もう一回ちょっとちゃんと答えてもらって、今曖昧で、ちょっと何言っているのか分からなかった。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
規約改正前に区分所有権を譲渡された場合の法律関係ということでお尋ねと理解をいたしました。
その場合には、例えば、修繕を優先するということで、新区分所有者の方が修繕費用をまずお支払いした上で、新区分所有者から旧区分所有者に対して、売買契約に基づく契約不適合責任による損害賠償請求、これをするということで調整ができると考えております。
○たがや委員 時間が来たから終わりますけれども、また午後の質疑でしっかりと質問したいと思います。
ありがとうございます。
○井上委員長 次に、本村伸子君。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
まず、マンションなどを借りている方の保護について伺いたいと思います。
マンションなどで建て替え等の決議があった場合、建て替え等に参加をする区分所有者は専有部分の賃貸借の終了を請求できるというふうにしていますけれども、現行法では、賃借権契約を終了するためには借地借家法の正当事由が必要で、借主、借りている人の利益が強く保護をされる、そういう仕組みになっております。
本法案による賃貸借終了請求権の創設によって、正当事由以外に、貸している側からの新たな賃借権の消滅の手段を創設することになります。賃貸借終了請求権は、請求があった日から六か月を経過することによって賃借権が終了するとしていますが、六か月は余りにも短い期間だというふうに考えます。また、賃借人の生活の安定を不当に脅かすリスクも高まるのではないかというふうに考えますけれども、法務大臣の見解を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今回の改正法案でありますけれども、建て替え決議があった場合において賃貸借の終了請求がされたときには、請求があった日から六か月、これが経過をすることによって賃貸借が終了されることとなっております。これは御指摘のとおりであります。
これは、借地借家法上の正当事由がある解約申入れによる建物賃貸借の終了期間、これが六か月とされていること、これを参考にしたところであります。加えて、この改正法案におきましては、賃借人に対して賃貸借の終了によって通常生ずる損失の補償金が払われるとした上で、補償金の支払いと専有部分の明渡し、これは同時履行ということとなっております。
まさにそういった意味で、この改正法案におきましては、相応の期間の専有部分の利用を保障した上で、適切な補償額による金銭的補償を確保しているということから、私どもといたしましては、賃借人の利益保護に適切に配慮をしているものと考えているところであります。
○本村委員 法案の賃貸借終了請求権の創設によって、正当事由以外に貸し手側から新たな賃借権消滅手段を創設することになるということですけれども、その六十四条の二第三項の賃貸借の終了により生ずる通常の補償金は、賃借人が建て替え決議に際して議決権を行使できません。自ら関与できない手続によって一方的に賃借権の消滅を甘受しなければならないことを踏まえますと、賃借人の利益を十分に保護する観点から、この補償金の額ですね、これは相当程度補償しなければならないというふうに考えますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘のように、賃借人の保護、この観点は極めて大事だと思っておりまして、この法案においても賃貸借終了請求の制度を設けているところであります。
この改正案におきまして、賃借人の利益保護の観点から、賃貸借の終了請求があったときには、賃借人に対して賃貸借の終了によって通常生ずる損失の補償金を払わなければならないということとしております。
この具体的な補償金額、これは裁判所が制度の趣旨を踏まえまして個別の事案によって具体的な事情に応じて適切に判断をすると考えておりますけれども、一般論として申し上げれば、公共用地の取得の際に用いられる基準において借家人が受ける補償と同水準となることが想定をされるところであります。公共用地の取得の場合との異同を踏まえた上で、適切な金額が算定をされることになると私どもとしては考えているところであります。
○本村委員 六か月たったからといって、早く立ち退けというような、借りている方の保護に欠ける対応があってはならないというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 そこについても、先ほども申し上げましたように、この法案においては、建て替え決議があった場合において賃貸借の終了請求がされた場合には、それは六か月が経過をすることによって賃貸借は終了されるということとしております。
まさにそういった中において、この法案においては、賃借人に対して賃貸借の終了によって通常生じる損失の補償金が払われる、その代わりに、補償金の支払いと専有部分の明渡し、これは同時履行とされているところでありますので、そこは御理解をいただきたいと思います。
○本村委員 補償金を払わなければ立ち退きは強いてはならないということでよろしいですね。局長、お願いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
大臣も御答弁されたとおりですが、本改正法案では、賃借人に対して賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金が支払われるとした上で、補償金の支払いと専有部分の明渡しは同時履行とされておりますので、補償金の支払いの提供がなければ明渡しはしなくていい、こういう規律になっております。
○本村委員 借りている方の保護がしっかりと図られるようにということも強調させていただきたいと思います。
次に、先ほど来議論がございます損害賠償請求を旧区分所有者ができるということに関してですけれども、マンションの共用部分の欠陥について分譲業者に対して損害賠償請求を行おうとする場合、管理者が現在の区分所有者と元々の旧区分所有者を代理して訴訟が行えるということが改定案としてございます。
管理者が旧区分所有者の分も代理をするということで、損害賠償金がかち取られた場合、訴訟をして損害賠償金をかち取った場合でも、旧区分所有者に行くお金というのは、代理をしているわけですから、もうあるということになるというふうに思いますし、別段の意思表示があった場合、旧区分所有者分は請求できない額でありますので、損害賠償金では補修が一〇〇%、賠償金によって補修しようと思っていたんですけれども、それができないということになるのではないか。
それは結局、損害賠償を求める訴訟自体をもう諦める、たくさん旧区分所有者がいた場合に、そういう、のかないといけない金額があるということで、それでは補修ができないということで、損害賠償金を求める訴訟自体を諦めることになるのではないか。それは結局、そういう欠陥の原因者を利するということになるのではないかというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、一般論といたしましては、管理者が受領する損害賠償金は、現区分所有者又は旧区分所有者が受領すべき損害賠償金を代理して受領するものでございますので、旧区分所有者からその引渡しを求められた場合には、これを引き渡さなければならないのが原則となっております。
また、旧区分所者が管理者に対して別段の意思表示をした場合には、管理者において旧区分所有者の有する損害賠償請求権を代理することができないことは、御指摘のとおりでございます。
そこで、実務上の対応として、先ほどから問題になっております標準管理規約の改定により対応しようということになっておりまして、旧区分所有者は、共用部分について生じた損害賠償請求権の管理者による代理行使につき、本改正法案の区分所有法第二十六条二項に規定する別段の意思表示をすることができないものとすることや、旧区分所有者は共用部分について生じた損害賠償金につき個別に受領することはできず、管理者が代理受領した損害賠償金は建物の瑕疵の修補のため用いられるものとすることが可能であると考えております。
そのため、このような規約での対応によりまして、委員御指摘のような御懸念に対応することができると考えております。
○本村委員 この規約での対応というのは、遡及の関係で様々な問題があるということが先ほど来ずっと議論をされてきたわけです。
やはり、不適切な工事をした、させた、そうした欠陥の原因者、これを、責任を果たさないということがあってはならないというふうに考えますけれども、大臣、最後にお願いしたいと思います。
○鈴木国務大臣 御趣旨としてはそのとおりであろうと思います。
○本村委員 終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、吉川里奈君。
○吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。
本日は、マンション関連法令に関して質問をしてまいります。
現在、都心の新築マンションの二から四割が外国人に購入され、その数は前年比で約四〇%増加していると報じられています。建築コストの上昇に加え、外国人を含む投資需要の高まりも価格上昇の一因とされています。こうした中、実際に住む人に向けて短期転売を防ぐ特約を設ける事業者も出ております。
不動産は単なる資産ではなく、私たち国民が祖先から受け継いだかけがえのない国土であり、主権や安全保障にも関わります。しかし、日本では、他国と異なり、外国人による不動産取得にほとんど制限がありません。買収の拡大が続けば、地域の秩序や国民の生活基盤が脅かされることを強く懸念をしております。住民は国民生活の根幹です。本来の居住目的から外れ、投資や商用利用が優先されれば、必要とする人々の手に届かなくなるおそれもあります。
海外では既に対策が進んでいます。カナダでは、住宅価格の高騰を受け、外国人の住宅購入を二年間禁止をしています。オーストラリアも、深刻な価格上昇を背景に、今年の四月から既存住宅の外国人購入を禁じました。いずれも、住宅は住む人のためのものという原点に立ち返った措置であります。一方、日本ではこうした規制はなく、外国人需要の拡大は看過できません。
こうした状況を踏まえれば、外国人による不動産取得の拡大が住宅市場や国民の居住環境に与える影響を的確に把握することが不可欠です。しかし、国交省では、その実態の把握や分析が行われていないと伺いました。
ここで、外国人に対する不動産取得の実態について、国交省として把握と分析を行うべきではないか、また、カナダやオーストラリアの例を踏まえ、外国人による居住を伴わない投資目的の取得について、必要に応じたルールを設ける考えがあるのか、以上二点、大臣に見解を伺います。
○中野国務大臣 お答えを申し上げます。
まず、住宅、不動産政策を所管する国土交通省としましては、居住の安定確保や良質な住宅ストックの形成等を図る観点、そして、不動産市場における取引が適正に行われているか把握する観点などから、日頃から不動産取引の主体や価格、頻度など、不動産市場の動向の把握を進めていくことは必要であるというふうに認識をしております。
不動産市場においては、我が国に居住し、あるいは経済活動を営む方々に対しまして、住居やオフィスなどの社会経済活動の基盤となる不動産が適切に提供されることも重要でございます。
こうしたことから、現在のように不動産価格が上昇する局面におきましては、不動産取引の分析を深めていくことは一層重要になっていると考えておりまして、例えば、実需に基づかない投機的な取引が横行する状況になっていないかなど、これは御指摘の外国人の取引の状況も含めまして不動産市場の動向把握に努めているところでございまして、住宅市場における居住の実態やニーズの変化などの把握にまずはしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。
○吉川(里)委員 是非早急に対応をよろしくお願いいたします。
また、外国人所有の増加が進むマンションでは、管理上の課題も顕在化しています。例えば、海外在住の所有者との連絡は容易ではなく、言語の壁も存在します。さらに、裁判手続においては国際的なやり取りが必要となり、管理組合にとって大きな負担となっております。
今回の法改正はこうした課題にどのように対応しているのかをお聞かせください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、本改正法案でございますが、区分所有建物の管理の円滑化等を図るものでありますが、御指摘のような裁判手続に関する特別の規定を設けるものではないことを御理解いただきたいと思います。
他方で、委員御指摘のとおり、区分所有者が国内に住所を有しない場合には、区分所有建物の管理に支障が生じるおそれがあります。そこで、本改正法案では、区分所有者は、国内に住所等を有せず、又は有しないこととなる場合には、その専有部分及び共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所等を有する者のうちから国内管理人を選任することができることとしております。本改正法案では、国内管理人の権限が明確にされておりまして、管理者等においても建物の管理を円滑に行うことが可能になると考えられます。
法務省といたしましては、各管理組合の実情に応じて関連諸制度を利用していただけるよう、その制度内容等を適切に周知、広報してまいりたいと考えております。
○吉川(里)委員 国外在住者区分所有者が管理人を選任できるとはいえ、任意となっておりますので、住宅は住む人のためのものと思います。取得目的に応じた規制の導入を強く求め、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、島田洋一君。
○島田(洋)委員 日本保守党の島田です。
この法案は、住民の合意要件の緩和によって、共用部分の修繕、改造あるいはリノベーション等が迅速に行えるようになると期待できる点で評価するんですけれども、一方で、特に外国勢力による悪用を防ぐための様々な法整備が必要になってくる。特に、昨今、区分所有者の相当割合が外国人であるというマンションも増えてきております。
例えば、アメリカにおいては、反米的な外国人が所有する土地だとか集合住宅の共用部分に、軍用機や迎撃ミサイルに不具合を生じさせるような電波発信装置、あるいは高性能の盗聴装置、また人体に被害を与えるような特殊な音波の発信装置、そういうものの設置あるいは設置が試みられたという事例が報告されていて、その結果、テキサス州あたりが主導して、国家情報長官が安全保障上の脅威と指定した国の国民が土地を買う、建物を買うということは禁止するという方向に行っております。具体的には、中国、北朝鮮、イラン、ロシアが指定されているんですが、そうしたちょっと安全保障上の問題は後で聞くとして。
まず、国際法の常識である相互主義に基づけば、中国のように、日本人を含む外国人が土地を購入できない、こういう国の国民には日本の土地、建物、分譲マンションなんかも買えないようにするというのが一つの常識的な発想だと思いますが、鈴木大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 そのような認識については、私も共感をするところもあります。
その一方で、やはり、これまでの国際約束、これはGATSであったりRCEPだったり、いろいろ様々、これは御承知のところでありますけれども、そういった中で、こうした国際約束における内国民待遇等におけるそういった様々な留保、これまでもありましたので、そういったところがどうなっているのか、こういったところも同時に考えていかなくてはいけないと思っています。
同時に、先ほど安全保障ということでおっしゃいました。これは外国人に限らず、当然それは外国人の代理をしている日本人もいるわけで、そういったところも含めて、そこはしっかりと対応をするのであればそういったことでも考えていかなくてはいけない、その必要はある可能性はありますけれども。
私どもといたしましては、まずは、そうした意味において、土地、こういったことを所管をする、不動産取得等の制限を検討する場合には、民事基本法制を所管する立場から、我々としてはそういった対応については誠実に対応していきたいと思っております。
○島田(洋)委員 特に中国の場合は、二〇一〇年に施行された国防動員法によって、有事の際には海外在住の中国人も国防任務に就かないといけない、それから、二〇一七年施行の国家情報法によって、有事、平時を問わず、海外在住の中国人は国家情報機関の指示に基づいて情報工作活動に従事しないといけない。こういう、小野寺五典自民党政調会長の言葉をかりれば、非常に恐ろしい、国際社会から見てあり得ない法律だと、そういうものを制定している国の国民の場合は、特にやはり安全保障上の脅威と認識して、土地やマンションの購入に関しては禁止ないし強い制約を課すべきだと私は思いますけれども、鈴木大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、法令で、特定の行政目的に基づいて一定の範囲で不動産取得、これを制限するということはあり得ると思います。もちろん、先ほど私申し上げましたけれども、当然、これは中国の脅威ということ、それは我々としても、政府としてもそれは認識をしております。
そういった対応として、これは当然その国籍の人だけを対象とすればいいということでは必ずしもないと思います。まさに、その中でどう最適な対応をしていくことができるのか、その点についてはしっかりと検討したいと思います。
○島田(洋)委員 時間が来たので終わりますけれども、非常に厳しい状況認識を持って、大臣、事に当たっていただきたいと思います。
では、これで終わります。
○井上委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。
これにて散会いたします。
午前十一時四分散会
――――◇―――――
〔参照〕
老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案は国土交通委員会議録第十一号に掲載