衆議院

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第7号 平成30年5月21日(月曜日)

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平成三十年五月二十一日(月曜日)

    午後一時四分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 穴見 陽一君 理事 伊藤信太郎君

   理事 勝俣 孝明君 理事 永岡 桂子君

   理事 堀内 詔子君 理事 大河原雅子君

   理事 柚木 道義君 理事 濱村  進君

      岩田 和親君    木村 弥生君

      小島 敏文君    佐藤 明男君

      鈴木 貴子君    鈴木 隼人君

      武村 展英君    中山 展宏君

      原田 憲治君    百武 公親君

      藤井比早之君    船田  元君

      松本 洋平君    宮路 拓馬君

      尾辻かな子君    篠原  豪君

      森山 浩行君    関 健一郎君

      西岡 秀子君    鰐淵 洋子君

      黒岩 宇洋君    畑野 君枝君

      森  夏枝君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            福井  照君

   内閣府副大臣       あかま二郎君

   内閣府大臣政務官     山下 雄平君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     川口 康裕君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          井内 正敏君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事伊藤治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として消費者庁次長川口康裕君、消費者庁政策立案総括審議官井内正敏君、法務省大臣官房審議官筒井健夫君、文部科学省大臣官房審議官下間康行君及び国土交通省大臣官房審議官山口敏彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。篠原豪君。

篠原(豪)委員 篠原豪でございます。

 早速質問させていただきます。

 社会生活上の経験が乏しいからの文言を置いたことによって、さまざまな問題点がこれまでも指摘されています。特に高齢者等の被害救済との関係についてだと思います。私も幾つか御質問させていただきますので、まず、よろしくお願いします。

 消費者契約法の検討を行うために設置された専門調査会で、現行法において救済対象とならない被害事例への対応策として、事業者による不安をあおる告知、それと恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用という不当勧誘行為の契約に対する取消権を新たに設けることが適当とされたことを受け、政府は、それぞれの場合について、当該消費者契約を取り消すことができるとする規定を追加しました。そうしたところ、両規定に対し、専門調査会でも議論されていない「社会生活上の経験が乏しいことから」という文言が要件として追加され、これは問題じゃないかとここまでの質疑でもずっと言われてきています。

 これは、どのような経緯で、誰がこうした文言を追加したのか。そもそも、専門調査会で議論もされていない要件が追加されたことは適法な措置と言えるのか。これについて、まずは教えていただければと思います。

福井国務大臣 ありがとうございます。

 篠原先生にはいつもお世話になりまして、ありがとうございます。

 いきなりの、この肝中の肝の、前回もそうでしたけれども、社会生活上の経験が乏しいという要件が入った経緯、理由でございます。

 消費者契約法専門調査会では、明示的に、今先生おっしゃいましたように、この表現についての言及はございませんでした。しかしながら、知識、経験の不足など、合理的な判断をすることができないような事情につけ込む被害事例について検討が行われまして、その上で、「できる限り客観的な要件をもって明確に定める必要がある。」とされまして、昨年八月に報告書が取りまとめられたものでございます。

 本要件は、この報告書が、政府内における法制的な見地からさらなる検討を行うものとされていたこと等を踏まえまして、政府部内におきまして原案作成をし、そして他省庁協議をして、そのような政府の中の過程で加えられたものであるということでございます。

篠原(豪)委員 だから、適法な措置だというふうに思われているということでよろしいんですね。

 これは本当に、どこで誰が文言を追加したのかというところが、全く書いていないことなので、政府内で検討しました、各省庁とも話しましたといっても、ここが問題になっているので、やはりここはしっかりと、どういった経緯があったのかということはしっかりと明らかにする必要が、ちゃんと説明する必要が私はあると思いますので、ぜひその説明をしていただきたいと思います。

 次、福井大臣がこれまで答弁したことについて、特に高齢者についてお伺いしたいんです。

 「社会生活上の経験が乏しいことから」の要件を追加した理由については、これまでも、今もお話ありましたけれども、被害事例を適切に捉えるため、経験の有無という客観的な要素により、要件の該当性の判断が可能となるよう法制化したものであります、総じて経験が少ない若年者は本要件に該当する場合が多くなりますけれども、高齢者であっても該当し得るものでございますと述べ、この要件が高齢者の救済にも適用されると述べられています。

 他方で、この要件を設けたとしても、高齢者の被害事例を含め、消費者委員会において検討されていた具体的な被害事例は基本的に適用対象となるものと考えられます、あるいは、総じて経験の積み重ねが少ない若年者は本要件に該当する場合が多くなりますけれども、高齢者であっても、契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で、本要件に該当する場合があります、例えば、霊感商法のように、勧誘の態様に特殊性があり、積み重ねてきた社会生活上の経験による対応が困難な事案では、高齢者でも、本要件に該当をし、救済され得るものでございますと述べています。

 つまり、高齢者が救済される要件は契約の目的となるものや勧誘の態様の特殊性であって、決して経験の有無という客観的要素ではないということを実は述べられているんです。

 なので、この「社会生活上の経験が乏しいことから」という要件は専ら若年者を対象とした規定で、高齢者であっても該当し得るとした答弁は、これは矛盾があるんだというふうに断じざるを得ないと思っています。ですので、これは、福井大臣、お認めになり、取消しをされた方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。

福井国務大臣 済みません、ちょっと、では、最初、整理をさせていただきたいと存じます。

 社会生活上の経験が乏しいとの要件は、主として若年者層を消費者契約による被害から保護することを念頭に、保護すべき対象者の属性として規定したものでございます。総じて社会生活上の経験の積み重ねが少ない若年者への適用には支障はございません。また、若年者でない場合であっても、就労経験等がなく、外出することもめったになく、他者との交流はほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、本要件に該当し得るものと考えられているわけでございます。

 もっとも、今先生おっしゃいましたように、悪質な霊感商法などは、民法上の不法行為や公序良俗違反によって、障害者、高齢者を対象とする事例で、重要事項についての不実の告知や不退去や監禁、あるいは過量な内容の消費者契約などに該当する場合には、救済され得るということでございます。

 繰り返しになりますけれども、高齢者につきましては、就労経験等がなく、外出することもめったになく、他者との交流がほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、救済され得るわけでございます。

 一方、今先生ずっと、るる御指摘のとおり、それ以外の場合は、今御提出させていただいている法の四条三項三号と四号では一般的に救済されるものではないということで、もう一度整理をさせていただきたいと思います。

篠原(豪)委員 ここがわかりづらいんですよね。契約の目的となるものや勧誘の態様の特殊性だって、これは社会生活上の経験が乏しいからという要件は本当にそうなのかというところは、しっかりと議論した方がいいと思いますよね。

 ですので、次がありますから言いますけれども、この専門調査会でも、検討を進める中で、事業者側の委員から、「実態を見ると、消費生活相談件数は高齢者は増えている。」「一方、若年層については、増えているということではなくて、減っている。」「いずれにしても成年年齢引下げの影響がどうなるのかということについて実証的なデータがなく、それを報告書に書くということについての根拠はないのではないか」と指摘がなされています。

 消費者契約法の改正にかかわる立法事実は、高齢者の消費者契約にかかわる被害であることが僕は明白だと思うんです。したがって、この社会生活上の経験が乏しいからという要件を全ての今回の前提にしてしまうと、肝心の高齢者が外されて、若年者の救済法案になってしまうのではないか。いや、なんですよね。なので、これは立法事実と真逆の法案がつくられているんじゃないかと思うんですよ、立法事実と。そういうことになると思いますが、このことについての御見解をいただければと思います。

福井国務大臣 御指摘の点、よくわかります。

 社会生活上の経験が乏しいという要件はどうして必要なのか、むしろない方がいいのではないかという御指摘と受けとめさせていただいた上で御答弁させていただきますと、この要件は、取消権の適用される範囲についてもう一度整理をさせていただくと、取消権というのは法律上大変重い権限でございます。取消権の適用される範囲について、既に規定をされている不退去、監禁と同様に、消費者に類型的に、類型的に困惑をもたらす不当性の高い事業者の行為を特定し、明確化するためのものでございます。

 したがいまして、社会生活上の経験が乏しいという要件を置かなければ、本来法が想定していない場合についてまで取消しが主張されてしまうおそれがございます。このことから、社会生活上の経験が乏しいという要件を設けているということでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、この社会生活上の経験が乏しいとの要件は、主として若年者層を消費者契約による被害から保護することを念頭に、保護すべき対象者の属性として規定したものでございます。

 先ほどおっしゃいました五月十一日の本会議場の答弁との関係でございますけれども、先ほどの前の前の問いでございますけれども、先生が御指摘されました契約の目的となるものや勧誘の態様との関係は、例えば、社会生活上の経験が乏しいことと過大な不安をあおることとの間の、その二つの間の因果関係の有無等を判断する際に参考となるものと考えているわけでございます。

 以上でございます。

篠原(豪)委員 私が伺っているのは、専門調査会で、消費者生活相談件数は、高齢者はふえていて、若い人は減っているんです。減っているし、成年年齢引下げの影響がどうなるかということについて実証的なデータがなく、それを報告書に書くということについての根拠はないのではないかという指摘なんです。ところが、書き込んでいるわけですよ。

 なので、これは、そういった話から考えれば、立法事実がないのではないか。この事実を踏まえるのであれば、社会生活上の経験が乏しいという要件を削除することが立法事実に一致すると思うんですが、間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。

福井国務大臣 データでございますけれども、例えば二十歳代の若年層の相談件数を商品、品目別で見ますと、願望の実現に対する不安をあおる告知に該当する可能性のあるもの、例えば、タレント教室、内職、副業、ビジネス教室等を合計すると、過去三年ですけれども、一万九千九百四十八件となり、デジタルコンテンツ、主として架空請求に次ぐ件数となってございます。

 また、二十歳代の若年層の相談件数を商法で見ますと、人間関係の濫用に該当するデート商法が六百七十六件存在しているわけでございます。

 主として、こういうデータ、こういう現実に対応するための法律を提出させていただいたわけでございます。

篠原(豪)委員 一部を取り出して、そこのところは手当てをした、こういう話なんですよ。

 仮に、社会生活上の経験が乏しいという要件を削除しないのであれば、社会生活上の経験の解釈については、契約を締結するか否かに当たって適切な判断を行うための経験をいうものとすれば、年齢にかかわらず当該経験に乏しい場合があることを明確にするとともに、そうした法解釈について、消費者、事業者及び消費生活センター等の関係機関に対し、十分に周知をこれからしていくことが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。

 また、本規定がより実効性のあるものになるように、何でこれが書き込まれたかわからないわけですよ。皆心配していることは、皆さん一様に同じことをおっしゃっていて、我々議員の側だけが言っているわけではなくて、これは関係団体の方々もそういうことをおっしゃっているわけですね。

 何かこだわる必要がそこまで私はないと思うんですよね。ないと思うし、よっぽど消したくない何かがあるんじゃないかということで、その消さない理由も証明されていませんが、これは一たび本規定ができてしまえば、実効性があるものとなるように、これは今後検証を行わなければいけないし、この要件の見直しその他の必要な措置を講ずることも必要だと思います。

 そのことについて、政府の御認識を伺います。

福井国務大臣 ちょっと整理をさせていただきますと、今回の法律は、成年年齢の引下げに伴いました若年層の消費者被害から若年者を保護するということを主として念頭に考えていたわけでございます。

 したがいまして、この「社会生活上の経験が乏しい」という記述は、保護すべき対象者の属性として規定したものでございます。まず、それが確認すべき基盤でございます。

 もちろん、今先生ずっと御指摘の高齢者の問題ももちろん重要でございます。今回のお願いしている改正以外のいろいろな手当て、制度、法律を援用しまして、もちろん高齢者の消費者被害のゼロに向かって、政府としてもさまざまな検討を重ねてまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 特に若者に書いていますが、年齢にかかわらず当該経験の乏しい場合があることを明確にするために、消費者生活センターとか、法解釈をどういうふうにされていくかというのが、実際これから大事になっていきますよね。なので、そこのところはくれぐれも誤解を生まないような形で、そして、できる限り、それは皆さんが入れたわけじゃないですから、きっと。ですので、ここのところを、大臣は担当の一番トップですから責任はありますけれども、これはしっかりと関係機関に十分周知することが必要だと考えますので、そのことはやっていただけますか。

福井国務大臣 今、前提ばかり御説明して申しわけございません。

 今、先生の御指摘、大変大変重要で、そのとおりだと思いますので、しっかり周知をさせていただいて、高齢者にも被害が拡大しないように、しっかりと手当てをさせていただきたいと思います。(篠原(豪)委員「年齢にかかわらずということですね」と呼ぶ)年齢にかかわらずでございます。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 では、次は、この問題はここにして、年齢にかかわらず、しっかりと、こういうことがあるんだということを全国に向けて周知していただくということで、よろしくお願いします。

 平均的な額の立証責任、これも、このあり方も、ここまでるる議論になりました。

 現行法は、契約の解約時に消費者が求められるキャンセル料に関しましては、当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効とすると規定しています。最高裁判決では、この当該事業者に生ずべき平均的な損害の額及びこれを超える部分については、事実上、推定の働く余地があるとしても、基本的には消費者に立証責任があるということにしています。

 しかし、平均的な損害額の算定をするための根拠資料が、主として事業者に保有されている状況があります。その中で、これらの資料が当該事業者から積極的に提出されない状況に鑑み、消費者による平均的な損害の額に関する根拠の提出が困難な場合があるとして、専門調査会では、平均的な損害の額の立証の困難を緩和するための手だてとして、消費者が、事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額とすることが取りまとめられました。しかし、本改正案には、この平均的な額の推定規定が盛り込まれていません。いないですね。これも問題。

 なので、伺ってまいります。

 まず初めに、平均的な損害の額の推定規定は、専門調査会における消費者団体、事業者団体及び有識者から得た合意の内容です。専門調査会の報告書を踏まえた消費者委員会の答申でも、法改正を行うべきとされた事項であるが、ここですね、なぜこの推定規定が本改正案に盛り込まれなかったのかを、理由をお述べいただければと思います。

福井国務大臣 事実経過といたしまして、消費者委員会専門調査会報告書におきまして、「事業の内容の類似性を要件として規定する際には、事業活動の内容や事業規模その他の類似性判断の基礎となり得る要因を精査し、その判断が明確に行われるようにすることが適当であると考えられる。」というふうにありましたけれども、この平均的な損害の額の推定規定を設けるに当たり、消費者契約一般に通ずる事業の内容の類似性判断の基礎となる要因、これを見出すことが困難であったことなどから、更に精査が必要でございました。このため、改正事項とはしなかったものでございます。

 そこで、推定規定は今回の改正の対象とはいたしませず、引き続き、重要な検討課題として、類似性判断の基礎となり得る要因を精査することとしたわけでございます。

 今後は、裁判例のさらなる調査、標準約款における損害賠償の額を予定する条項の作成過程に関する業界ヒアリングなどなどに取り組みまして、推定規定を設けることに関する検討を進めることにしたわけでございます。

篠原(豪)委員 推定規定を見送りましたので、平均的なこの損害額の立証の困難さを、消費者によるものを解消する必要があるので、本当にこれは、政府は、今後、しっかりと方策を講じていかなければいけないので、これはくれぐれもしっかりとやっていただきたいと思います。

 消費者委員会が提案をいたしました平均的な損害の額の推定規定は、消費者が負う立証責任を軽減するものではあるんですよ。いざこれを消費者が立証するということになると、事業の内容の類似性について、事業規模、事業経営状況、参入時期の違いなど、要件をクリアすることは極めて難しいと思われています。

 したがって、当該事業者に生ずべき平均的な損害の額の立証に必要な資料は、先ほども言いましたけれども、事業者が持っていますから、主として。なので、これは消費者にとって損害額の立証が困難となっている場合が多いというふうに思いますので、消費者団体等からは、事業者が平均的な損害の額の立証責任を負うべきだということの意見がありますが、このことについてはどうですか。方策を講じるのは、まあ、それで講じていただいて。ただ、根本的な問題ですので、事業者が平均的な損害額の立証責任を負うべき、ここまでも聞かれていますけれども、一応確認します。

福井国務大臣 平均的損害額の立証責任でございます。

 今先生おっしゃるように、立証責任を転換することにつきましては、消費者契約法専門調査会における検討ではコンセンサスが得られませんでしたが、これは先ほど申し上げたとおりでございます。したがって、改正事項として提案されなかったものでございます。

 ただし、裁判や消費生活相談において、消費者による平均的な損害の額の立証が困難な場合があると考えられることから、立証に関する規律のあり方について、引き続き検討を進めてまいりたいということでございます。

篠原(豪)委員 そうですね、事業者の方にやはり出していただくのがよろしいんじゃないかと思いますよ。

 それで、これは法文化するのが難しかったということでいろいろと今おっしゃっていますが、これは立証責任を、ちょっと済みません、大臣の率直な御意見をいただきたいんですけれども、一般人である消費者に押しつけることになっていますけれども、これはやはりおかしいと思いませんか。どうでしょう。

福井国務大臣 現行法の規定は、平成十三年の法施行以来、裁判上又は裁判外の紛争において積極的に活用されております。実際に、事業者のキャンセル料条項が無効とされた事例も多数存在をしております。

 こうしたことから、この国会においては、その他の改正事項に関する消費者被害の救済を優先させまして、改正案をお願いをしているところでございます。

 今申し上げました事業者のキャンセル料条項が無効とされた事例を三つ申し上げますと、インターネットの接続サービスの解約料条項の一部無効でありますとか、中古車販売契約の解約金条項の無効、そして、結婚式場の利用契約の解約料条項の一部無効ということで、原理原則からいきますと、その規定によって得をするといいましょうかの者の方に立証責任があるというのがユニバーサルな法律の考え方だと承知をしております。(篠原(豪)委員「どちらにですか」と呼ぶ)得をする者の方に立証責任があるというのがユニバーサルでございます。

篠原(豪)委員 どちらも得を争うわけで、それをやった方が得をするという話ではありませんので、やはり一般人の方にこれを押しつけるのはおかしいんじゃないかということですので。

 この立証責任の転換に対しては、先ほどもおっしゃっていましたけれども、コンセンサスが得られず、改正事項としては提案されなかったということなんですが、これは何でコンセンサスを得られなかったんでしょうか。そこのところを教えてください、具体的に。

川口政府参考人 大臣答弁を少し補足させていただきます。

 立証責任の原則は、そもそも、その法規の当てはめによって、その事実があるということによって利益を得る者が負うというのが民事訴訟の大原則でございます。それについて、実際の裁判では、基本的には、両当事者があれこれ自分に有利な主張、立証を行って、その上で裁判所が判断をするということでございますが、その過程で、いろいろ経験則を使って、直接それが証明できなくても、ほかの同業他社の平均的な損害ということから経験則が働くねということで、柔軟に認定される場合もあり得るということでございます。

 ただ、それを、ありとあらゆる消費者契約について、これを今度は法律上、推定を義務づけることになりますので、そこまでやるのだということになるには、相当な経験則、それも、ありとあらゆる商品、サービス、ありとあらゆる取引形態についてその経験則が妥当するということが必要になります。

 ですから、特定の裁判で経験則が妥当するだけではなくて、ありとあらゆる消費者契約にあまねく経験則が妥当するというところまでの経験則を、これは消費者委員会も、それは政府でしっかりつくって、それで立法をしなさいということになっておりますので、そこの検証は我々政府に委ねられていたわけです。

 努力いたしました。ただ、法案を出すまでには間に合いませんでした。

 その際に、それができてから、もう一年待って次の通常国会に出すのかどうかという点がございます。ただ、ほかの法案については、部分についてはもうできておりますので、この平均的損害のところをおいて、将来課題にして、それでほかのところについて法案を出させていただいたということでございます。

篠原(豪)委員 平均的な損害の額のところはこの段階ではなかなかまとめるのが難しいから、とりあえずその他のところを優先をして、消費者を少しでも守っていきたいんだということでお出しになられたということですね。わかりました。

 それはそうであって、じゃ、引き続きそこのところも検討していくということだというふうに理解してよろしいですね。

川口政府参考人 先生御指摘のとおりでございます。

 今回の法案提出には間に合いませんでしたけれども、消費者委員会専門調査会の検討方向に沿って、しっかりヒアリングをするなり、既に具体的に事実上の推定を使って救済された場合などについて精査していきたいと思います。

 また、約款の中で業界独自の基準を定めているものなども精査をして、何とかユニバーサルな、あらゆる消費者契約に基づくものを見つけたいと思っております。

篠原(豪)委員 そのときに、まず簡単に検討ができるものとして、例えば、事業者に少なくとも根拠資料の提出を求めるということは制度的に担保するということができるのかどうか、これはやはりしっかり考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

川口政府参考人 個別の場合、訴訟におきましては、実際には、訴訟指揮の中で事業者からも資料を出させるということがあるように思います。それに協力をしつつ結論に近づいていった場合というものが割と認められやすいということですが、それを制度的に、義務として、命令として制度でつくっていくということになりますと、民事訴訟全体との整合性なども精査をする必要があろうかというふうに思います。

篠原(豪)委員 制度的に担保する方法はいろいろとあると思うんですよ。ですので、しっかりとそこのところを検討してください。それをお願いをしておきます。

 不利益事実の不告知に関する問題についても少し伺います。

 現行法では、不利益事実の不告知の取消しの要件の一部として、当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、不利益となる事実を故意に告げなかったことが規定されています。

 しかし、専門調査会では、不利益事実の不告知の故意要件、これが定められていることで、仮にそれが事業者として知っていてしかるべきと思われる事項であったとしても、知らなかった、わざとではなかった、何かちょっと今の政権の他の問題に私は頭が行っちゃうこともあるんですが、話を戻しますが、知らなかった、わざとではなかったと言われると、それ以上交渉が進まず、あっせん交渉の支障になっているという指摘があります。

 消費者団体等からも、故意要件を削除すべきとの意見があり、また、多くの消費生活相談員からも、現行の故意要件の認定判断が困難であるとの認識が示されました。しかし、専門調査会では、故意要件を削除することについて合意が得られず、不利益事実の不告知の要件としては、故意だけでなく重大な過失も要件に追加する方法が適当であるとされました。

 以上を踏まえ、法改正案では、故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、消費者が誤認をし、契約の意思表示等を行ったときは、これを取り消すことができるとしましたが、重大な過失の要件が追加されても、取消し要件に係る立証の困難性がどれだけ解消できるのかが不透明です。

 政府は、重大な過失とはほとんど故意に近い著しい注意欠如と説明をしていますけれども、そうであるならば、立証困難な故意要件だけの現行と余り変わらないのではないのか、そういった問いがありますが、いかがだと思いますか。

福井国務大臣 例えばということで、そちらの方から説明をさせていただきますと、マンションでございますが、日照良好と説明しながら、隣地にマンションが建つことを告げずにマンションを販売した事例で申し上げれば、隣地のマンションの建設計画に関する説明会が当該事業者も参加可能な形で実施されていたという状況、あるいは、隣地のマンションの建設計画が少なくとも近隣の不動産業者において共有されていたという状況であれば、事業者はマンションが建つことを容易に知り得た状況にあったと言え、重過失が認められると考えられます。

 したがって、重大な過失とは、わずかの注意をすれば容易に有害な結果を予見することができるのに、漫然と看過したというような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如、今先生御指摘ありました、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をいうわけではございますけれども、故意というのは、当該事実が当該消費者の不利益となるものであることを知っていながら、あえてという意味でございますので、事業者から知らなかったと言われて故意を否定された場合もあり得たわけですけれども、この故意を否定された場合であっても、消費者の側で事業者の重大な過失を基礎づける客観的な状況を示すことができますので、不利益事実の不告知による取消しを可能としたわけでございます。

篠原(豪)委員 今の言ったようなケースを踏まえて、どれだけ消費者の立証が本当に容易にできるようになっていくのかという話だとすると、この解釈の問題なんだと思うんですけれども、現場の解釈が現場における運用のあり方に大きく影響していくんだろうと思います。

 ですので、具体的に、今言ったようなケースも含めて、その解釈をどういうふうに示していく予定なのか。あるのかどうかも含めて、政府の御見解を伺えればと思います。

福井国務大臣 先ほど御説明すればよかったんですけれども、全国の消費生活相談員に対するアンケート調査によりますと、不利益事実の不告知の規定が利用しにくいと思うと回答した相談員の多数が、その理由として、故意の要件の認定判断が困難であるということを挙げていたわけでございます。したがいまして、故意を否定された場合であっても不利益事実の不告知による取消しを可能とするために、重過失という文言をつけ加えさせていただいたわけでございます。

 その立法趣旨についての周知徹底につきましては、今先生の御指摘のとおり、周知徹底を図らせていただきたいと思います。

井内政府参考人 お答え申し上げます。

 相談員の方の御意見なども聞きながら、わかりやすいケースをコンメンタールに書いたり、あるいは相談員の方に国民生活センター等を通じて研修をしっかり進めるということで、周知徹底を図っていきたいと考えております。

篠原(豪)委員 しっかりとお願いします。

 時間も間もなくになってきましたので、違うことをお伺いしますが、約款の事前開示の必要性に関する問題がありまして、専門調査会の報告書では、契約に先立って、消費者が契約内容を定められた契約条項を容易に知ることができる状態に置くことが事業者の抽象的な努力義務として求められること自体には、一定のコンセンサスがあったとされています。政府改正案には盛り込まれませんでした。

 容易に知ることができる状態に置くということについて、今日では、インターネット等を通じて不特定多数の者に対して定型約款の内容を公表することが容易である上、事業者が、契約締結に先立って、消費者に対してみずからが取引に当たってしようとする約款を示すことは通常のことだと思いますので、それを義務とすることに特段の弊害が想定されていないんですが、政府はどういう見解をお持ちでありますか、このことについては。

福井国務大臣 事前開示の義務づけでございます。

 参考人質疑におきましても、明文で事前開示の必要性を明らかにしておくことが望ましいという御意見もございました。

 これは認識してございますけれども、この論点につきましては専門調査会において検討が行われまして、そして、消費者が契約の締結に先立ち容易に知ることができる状態に置くことが事業者の抽象的な努力義務として求められること自体には、一定のコンセンサスがあったと言えるわけでございますけれども、しかし、そのような状態を確保するために、具体的に事業者にどこまでの行為が求められるべきであるかという点につきまして、意見が分かれました。意見が分かれましたので、改正事項として提案されるには至らなかったものと認識をしておるわけでございます。

 今後は、消費者に対する契約条件の開示の実態等や答申の付言も踏まえまして、引き続き政府で検討してまいりたいというふうに思っております。

篠原(豪)委員 特段の弊害は余りないと思うことなので、そこもしっかりとやっていっていただきたいなと思いますし、消費者ファーストの立場に立ってやっていくのが大事なんだろうというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 最後にします。

 成年年齢を十八歳に引き下げる民法改正案が成立しますと、これは、十八歳、十九歳の未成年者取消権がなくなるということです。二十歳になると急増するマルチ取引やカードローンなどの消費者被害が、十八歳以上の新成人に拡大することが見込まれます。

 消費者の被害の拡大防止の対策が急務となっていて、このことは、平成二十一年の法務省法制審議会の答申、専門調査会報告書、消費者委員会答申等でもずっと指摘されていることであります。しかし、政府の今回の改正案には、不安をあおる告知、恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用などの限られた場合の取消権しか盛り込まれていません。

 政府は、これまでの検討状況、並びに本問題についてどのような対策を考えているのかを伺います。

福井国務大臣 総合対策ということで受けとめさせていただいて、総合的な対策、全て御説明させていただきます。

 短くさせていただきますと、消費者庁といたしましては、本法案において不当勧誘行為に対する取消権の追加を今御審議をいただいております。そして、消費者教育も大事だと思っております。そして、消費生活相談窓口の充実、周知、これも取り組みたいというふうに思っております。このように、総合的な対応に取り組んでまいりたいと思っております。もちろん、この法案で議論のあった結果、そして積み残した項目についても、取り急ぎ検討させていただくつもりでございます。

 そして、消費者教育につきましては、消費者庁、文部科学省の関係省庁の局長で構成される連絡会議を発足させました。二〇一八年から二〇二〇年までの三年間を集中強化期間として、「社会への扉」を活用した事業が全ての都道府県の全高校で行われることを目指して頑張ってまいります。そして、消費者教育のコーディネーターを全都道府県に配置すること、そして実践的な消費者教育を推進するための目標を掲げたアクションプログラムの実践等を頑張ってまいりたいと思っております。

 このような対応、対策を通じまして、成年年齢の引下げを見据えた環境整備に全力を挙げてまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 時間ですので終わりますけれども、若い方々から御年配の方々まで、そしていろいろな状態の方々がいらっしゃいます。そういった方々を守るのが国の責務であります。ですので、残された問題、そして先送りになっている課題、それをしっかりと前向きに、そして真摯に、消費者の立場で、ぜひ行政の皆さんがやっていただけることを切にお願いをしまして、きょうの質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・市民クラブの尾辻かな子です。

 先週に引き続きということで、質問に立たせていただきたいと思います。

 まず、先週の委員会の質疑なんですけれども、一言申し上げます。

 消費者庁の答弁というのは、非常に私から見るとはぐらかしが多い、そしてわかりにくかったと言わざるを得ない、そういう質疑だったと思います。特に、事業者の予見可能性については、一般の事業者は予見可能性がなくてもよいかのような答弁で、これも非常に驚いたところであります。

 議員の質問にはっきりわかりやすく答えていただくというのは、それをもってやはり消費者の皆さんにも届くものでありますから、本日は、先週のようなものではなくて、きっちり明快に御答弁をいただくように、まず冒頭お願いをしておきたいと思います。

 そして、今、篠原委員の方からもるる質問がありました「社会生活上の経験が乏しいことから」ということ、ここはずっと、多くの委員の皆さんが本当にこの要件は大丈夫なのかと心配をしているところであります。ですので、私もまずこの確認からいきたいと思うんです。

 まず、五月十七日、先週ですね、福井大臣は私の質問に、「私は、若年者に限定する趣旨ではないですよねという確認をしておりますので、それに対してお答えをいただければと思います。」ということで、「もちろん、年齢によることはないわけでございまして、高齢者も含まれているということでございます。」と答弁をしていただいております。

 この答弁のままということ、この確認だけ、イエスかノーでお答えください。

福井国務大臣 今の私のコメントを含めまして、もう一度最初から整理をさせていただきますと、社会生活上の経験が乏しいという要件は、主として若年者層を消費者契約による被害から保護することを念頭に、主として若年者層を念頭に保護すべき対象者の属性として規定したものでございます。まずこれが基盤でございます。

 そして、総じて社会生活上の経験の積み重ねが少ない若者は当然ながら適用されるわけでございますけれども、若年者じゃなくても、年齢にかかわらず、高齢者であっても、就労経験等がなく、外出や他者との交流がほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、年齢にかかわらず本要件に該当し得るものと考えられる、これが整理した御答弁でございます。

尾辻委員 そうしますと、やはりこの十七日の私の答弁とも違いますし、五月十一日の代表質問の答弁とも変わってきますよね。

 代表質問の答弁のときに、若年者だけが該当するのか、それとも高齢者も該当するのかといったときのお答えは、高齢者であっても、契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で、本要件に該当する場合があるというふうに答えられています。これはどうなるんでしょうか。この大臣答弁というのは撤回されたということですか。

福井国務大臣 ありがとうございます。

 五月十一日の衆議院の本会議で、高齢者であっても該当し得るという答弁をさせていただいた。

 もう一度整理をさせていただきますと、霊感商法については、消費者が若年者である場合には本要件に該当し得るというふうにお話をさせていただいております。

 他方、霊感商法の被害者となった消費者でも、その者が若年者でない場合には、総じて社会生活上の経験の積み重ねが少ないとは言えないことから、一般的には本要件に該当しないと考えられる。

 もう一度言いますと、他方、霊感商法の被害者となった消費者でも、その者が若年者でない場合には、総じて社会生活上の経験の積み重ねが少ないとは言えないことから、一般的には本要件に該当しないと考えられるということでございます。

 もっとも、しかし、就労経験がなく、自宅に引きこもり、他者との交流がほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、本要件に該当し得るということでございますので、そういう条件がついた高齢者について該当し得るというふうに御答弁させていただいたわけでございます。

尾辻委員 大臣、申しわけないんですけれども、私の時間は非常に限られておりますので、簡潔な答弁をぜひともぜひともお願いしたいと思います。今、同じことを何度も繰り返されております。

 指摘しておきますが、大臣、代表質問ではこういうふうに答えているんですよ。高齢者であっても、契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で、本要件に該当する場合があります。今回、これをわざと抜いておられるわけですね。何でここを抜くのか。代表答弁から委員会の答弁で変わるというのは、これはあり得ないことだと思いますよ。

 なので、この答弁を維持されるのか、撤回されるのか、この発言のみで、イエスかノーでお答えください。それ以上長い答えは要りません。

福井国務大臣 今、契約の目的となるものや勧誘の態様についてでございますけれども、これは、社会生活上の経験が乏しいことと過大な不安をあおること、この二つを結ぶ因果関係の有無等を判断する際に参考となるというふうに考えているわけでございます。

尾辻委員 それは篠原さんの答弁と一緒なんですよね。もうずっと聞いているんですけれども、ちゃんとお答えいただけないということで、今度は、このことで一体どういうことが起こるのかで、一個一個確認をしていきたいと思います。

 まず、皆さんもおっしゃっているように、専門調査会でも消費者委員会でも議論されていない言葉がいきなり条文化されたというのは、非常に唐突感と違和感しかないわけです。これで本当に救済される人たちが狭まってしまうんじゃないか、これが一番私たちが危惧しているわけです。ですからここについて聞いていきますけれども、中高年のデート商法、私はこれが入らなくなるんじゃないかと非常に危惧しております。

 皆さんのお手持ちに配らせていただきました添付資料の一番目を見ていただきたいんですけれども、今回のデート商法というのは困惑類型の二に当たるわけですね。人間関係の濫用だという部分です。

 グラフを見ていただきたいんです。デート商法の契約者の年齢別割合ということで、これは年齢を見ると、青い部分が二十歳代なわけです。わざわざここにだけ四九・七%というふうに数字が書かれています。では、他方、反対を見ていただいたら、四九・七%以外は、三十代、四十代、五十代、六十代、こういう方もデート商法の被害に遭っているという、今、事実があります。

 では、この人たちも、若者だけじゃない、添付資料がありますか。(福井国務大臣「ある」と呼ぶ)この人たちも同様に救わなければいけない、救済対象にならなければいけないと思いますが、こちらはいかがですか。

福井国務大臣 今ちょっと照合しようと思ったんですけれども、こちらのデータは、二十代までで約五割を占めている、四十代においては一二・七、五十代については五・三、六十代は二・三ということでございますので、中高年においては必ずしも、事業者の行為により類型的に困惑する消費者とは言えないというふうに考えたわけでございます。

尾辻委員 ということは、確認ですけれども、二十代は救われますけれども、三十代から上は救われないという、今、答弁ですか。

福井国務大臣 この同号の対象とすべき者は、類型的に合理的な判断ができない状況に陥る消費者でございますので、中高年については自立した消費者というふうに考えているわけでございます。

尾辻委員 いや、驚きましたよ。「社会生活上の経験が乏しいことから」が入ってしまったことによって二十代しか救えないと大臣はおっしゃったわけですよ。いいんですか、この答弁で。

福井国務大臣 全く救わないということではございません。もっとも、中高年を対象とする事例について勧誘態様が悪質な事例においては、民法上の不法行為等により救済される場合があり得るわけでございます。

 答弁を短くしましたのでちょっと省略し過ぎたかもしれませんけれども、いずれにしても、同号の対象とすべき者は、類型的に合理的な判断ができない状況に陥る消費者を救おうとするものでございます。

尾辻委員 次の確認に行きますけれども、第四条第三項第四号で、これは確認したいんですが、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛その他の好意の感情を抱きというのがあります。その他の好意の感情というのはどのようなものがあるのか。例えば、親しい友人関係、親子や孫同然のつき合いなどは入るかどうか、簡潔にお答えください。

福井国務大臣 代表的なものは恋愛感情でございますけれども、それ以外の好意の感情であっても、よい印象や好感を超えて恋愛感情と同程度に親密な感情であれば、本規定の対象となり得ると考えてございます。

 本号における好意の感情というためには相当程度に親密である必要があり、単なる友情といった感情は含まれないわけでございます。

尾辻委員 単なる友情と親密な友情をどうやって客観的にはかるのか、私には全然わかりません。

 例えばでいきますよ。大学の同じサークルの後輩に対し、商品販売の目的を隠して親切に世話をやいている先輩後輩の関係を築いた後、そのような人間関係を今後も続けるために必要であるということで高価な商品を買わせるような事案、これは保護されますか。親しい友人関係です。

福井国務大臣 ちょっとそのものずばりじゃありませんけれども、同じ寮で生活し、出身地や出身高校も同じである大学の先輩後輩の親密な関係や、大学のサークルに入り、学生生活のほとんどの時間をサークル活動を中心にして過ごしている消費者が日ごろから家族同然の関係にある同じサークルの先輩への感情については、該当し得るということでございます。

尾辻委員 次に、その好意というのが、高齢者の好意の感情につけ込む勧誘ということで聞きたいと思います。

 先ほどから申し上げている恋愛感情だけじゃない好意の感情、そしてそれにつけ込む勧誘ということですけれども、今、高齢者の方が非常にこのような商法に遭っているわけですね。親族、近所のつき合いの少ない寂しい独居の高齢者が、販売員を孫や子供のように思い、親密な関係となり、投資商品や健康食品、医療器具などを売りつけられる例ということで、こちらにも添付の新聞記事をつけさせていただいております。

 この新聞記事を見ても、日本消費経済新聞の一月十五日号ですけれども、これはジャパンライフの例でございます。「地方に住む高齢者の買い物や通院の送り迎えをして信頼させ、定期預金や保険を解約させ、老後のために蓄えた資産のほとんどをジャパンライフにつぎ込まさせる悪質な手口も明らかになってきた。」ということで、ここに書かれているのは、「ジャパンライフの担当者が、高齢者の足替わりになって、車で買い物や通院の送迎をし、薬をもらい終わるまでそばで待ち付き添っていた。親切な対応に、担当者を信じ切ってしまっていた。」など、こういう好意の感情というものをどうも利用しているんじゃないか。

 もう一枚おめくりいただきまして、「だまされる心理からみる高齢者トラブル」ということで、これは「国民生活」の二〇一三年八月号のところでございます。

 黄色い線、ハイライトがあるかと思いますが、そこの最初から読み上げますと、だまされる高齢者の心理はこういうものですよと。「また、一人暮らしは孤独と向き合うことにもなります。親切に話しかけてきたり、話をじっくり聞いてくれる他者は孤独を癒やしてくれる存在です。こうした親切な他者に対して好意を抱くようにもなります。」つまり、条文上で言われる好意が、このようにして抱くようになるとここで言っているわけですね。

 「このような傾向は若齢者であっても同様です。ただし、高齢者においては、他者からの親切や好意に対して、こちらも好意をもって対応することの重要性を歳を重ねるなかで学んでいます。他者からの好意に対して、誠実に対応する傾向があだになるように悪質商法のシナリオが作られていることも高齢者にとって不利といえます。」ということで、親切な他者に好意を抱く、高齢者の他者からの好意に対して誠実に対応する傾向がある、こういったことにつけ込むいわば親切商法、この高齢者の好意というのは、その他の好意という今回の条文上の中に入りますでしょうか。

福井国務大臣 親切商法の事例でございますけれども、高齢者については、今先生御指摘のとおり、総じて社会生活上の経験の積み重ねが少ないとは言えないことから、一般的には本要件に該当しないと考えられますけれども、消費者が若年者でない場合にあっても、就労経験等がなく、自宅に引きこもり、他者との交流がほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、本要件に該当し得るわけでございます。

尾辻委員 大臣、申しわけないです、答弁がすれ違っております。好意の感情に入るか入らないかということを聞いております。解釈でございます。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 好意の感情でございますけれども、ここについては、他者に対する親密な感情をいうということでございます。

 ただ、この条文では、その例示として恋愛感情を例示しておりますので、それ以外の好意の感情でありましても、よい印象あるいは好感では足りません。ただし、恋愛感情と同程度に親密な感情であれば本規定の対象となり得るということでございまして、御指摘のケース、同じジャパンライフでもいろいろなケースがあり得ると思います。

 そういう意味において、全てが入るとか入らないとかということはちょっと申し上げにくいというふうに思います。恋愛感情と同程度に相当程度に親密である、恋愛感情と同程度に親密な感情であるというふうになった場合には入り得るということでございます。

 大臣が申し上げましたのは、それはそれとして、その前の社会生活上の経験が乏しいというところ、これも満たさないと取消しにはなりませんということを申し上げたわけでございまして、それぞれ要件がございます。これらの要件を全て満たしたときに取消しが認められるというふうになっているということでございます。

尾辻委員 私は好意の感情のところを聞いたわけです。

 ジャパンライフのことを言いますと、今、すごい被害額になっているわけですよね。お手元に資料があるかと思います。円グラフでカラーになっているものがあるかと思います。これは、ジャパンライフの被害、消費生活センターとかに寄せられた相談件数と被害額なんですね。

 平成二十七年から二十九年度で五百十五件起こっている。そして、右、相談件数の既に払っている金額の内訳ですけれども、最高額は五億円、そして平均額でも一千八百六十万円被害に遭っているわけです。左下を見ていただきたいんですが、相談件数の年齢別内訳でいくと、七十歳代が三四%、八十歳代が三九%ということで、高齢者をやはり狙われているわけです。相談の性別でいうと女性が多いし、無職の方が多いということなんですね。

 こういう被害に遭っている人たち、こういう人たちにこそ取消権が私は与えられるべきだと思います。こういう問題を、もし今回の消費者の改正でもだめだよということになったら、何のための、誰を救うための消費者契約法の改正なのかわからないというふうに思うんですね。ですので今回聞かせていただいたわけであります。

 本当にこれが救われるのかどうか。消費者契約法が誰のためにあるのか。そして、今、高齢者の被害が非常にふえている中で、このことについて私は取消権が認められるべきだと思います。

 次に行きます。

 第四条三項三号の例の方で聞いていきたいと思います。

 具体例でまたお聞きいたします。ネットに詳しくない中高年者の不安をあおる商法はどうなるかということです。例示をいたします。

 例えば、企業の勤務経験はあるがインターネット環境に余り触れてこなかった中高年者が、ネットを使用中に突然、ウイルスに感染するおそれがありますという警告表示が出たため、慌てて表示の番号に電話したところ、セキュリティーソフトを販売されたといった事例については、社会生活上の経験が乏しいという第四条第三項第三号の適用がされますでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣がお示しした基準によりますと、就労経験がある等の場合に、社会生活上の経験が乏しいということは言いにくいのではないか、言える場合は極めて限られているのではないかというふうに思っております。

尾辻委員 当てはまるのか、当てはまらないのかというのはどちらでございましょう。

川口政府参考人 基本的に当てはまらないというふうに思います。

尾辻委員 これも当てはまらないんですか。

 インターネットになれていない方というのは、社会生活上のインターネットの経験が乏しい方ですよね。そして、インターネットを使いたいという希望、願望がある人ですよね。その人に対して、この取消権ができないという答え。これは私、本当にいいのか、誰のための取消権になるのか。

 そして、先ほどから、一番最初に言っているように、「社会生活上の経験が乏しいことから」で余りに要件が狭くなってしまうんじゃないですかといったときに、いや、高齢者も中に入りますよ、そして年齢だけじゃないですよという話だったと私は思うんですよね。

 これはよくある話です。多分大臣も見たことがあるし、皆さん見たことがあると思うんですよ。こうやって画面を見ていたら、ウイルスに感染するおそれがあるといきなり言われて。これも守れないという答弁で本当にいいのかということで、私、これは非常に驚きです。

 次に参ります。

 あと、不安をあおる行為というものの解釈も聞いていきたいと思います。

 不安をあおる行為というものは、専門調査会の議論では、明示による場合に限らない、黙示による場合も含まれるという議論であったというふうに聞いております。

 不安をあおること、願望を実現するために必要であると告げること、これは別の行為なんでしょうか。不安をあおることと、願望を実現するために必要であると告げること、これが別の行為なのかどうか。

 例えば、病気を治すためにこのサプリが必要、これは不安をあおっていますよね。こちらについての解釈をお聞かせください。

福井国務大臣 不安をあおり、告げるというふうに修飾語句になっております。不安をあおり、告げることとは、消費者に将来生じ得る不利益を強調して告げる場合をいいます。不安をあおるような内容を直接的に告げなくても、契約の目的となるものが必要である旨の告知を繰り返したり、強い口調で告げたりして強調する態様でも該当するわけでございます。

 例えば、過大な不安を抱く学生に対して、そのことを知りながら、このセミナーを受講すればあなたでも就職できますなどと繰り返して告げる場合も、不安をあおるものとして取消しの対象としております。

尾辻委員 今の答弁でいうと、必ずしも別々でなくてもいいというお答えですかね、不安をあおることと、願望を実現するために必要であるということを告げること。

 では、お答えください、もう一度。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 行為自体は一つであっても、評価として、この条文の個々の、御指摘の二つについて評価できるということが必要。だから、行為は一つでも、一体のものであってもよいという解釈をとっております。

尾辻委員 一体であってもよいということであります。

 そして、もう少し解釈を聞きますけれども、不安をあおるということが、これは本人の不安だけなのかという部分であります。

 イの部分では「進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項」というふうにありまして、消費者の不安をあおって契約させる、そのあおった不安は消費者自身の不安ということに限定なのかどうか。

 例えば、娘の健康、つまり家族の健康に関する不安をあおった場合とか、親の健康に関する不安をあおったという場合も、これは不安をあおるという類型に入るのかどうか、取消しの対象とされるべき解釈になるのかどうか、お聞かせください。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、その不安、これは当該消費者、契約をした消費者の不安である必要がございます。ただ、不安の対象が、さまざま、自分のことに限らず、社会生活上の重要な事項というところに入る必要があります。

 その場合に、御指摘のような場合に、イの方の社会生活上の重要な事項と読めるということであれば、あとは当該消費者が不安を持っているという必要がありますが、そうであれば対象になるということでございます。

 その他、先ほど大臣から申し上げている「社会生活上の経験が乏しいことから」、それは別の要件でございますので、その点についてはお答え申し上げません。

尾辻委員 ということで、確認ですけれども、娘の健康に関する不安をあおった、親の健康に関する不安をあおったというのは当てはまるということでよろしいですか。

川口政府参考人 主体の問題はございます。消費者はどうかという話はあります。それを別にすれば、娘の健康に対する当該消費者の不安というふうに不安をあおったということになれば、これは入り得る、そこについてだけ言えばですね、ということになろうかと思います。

尾辻委員 今ちょっとるる聞いてきたんですけれども、結局、これは非常に要件が狭まっているし、こういう例えばジャパンライフの件も救われるんですかと言っても、何か微妙なお答えがいっぱい出てくるわけですね。本当に、「社会生活上の経験が乏しいことから」ということで、消費者のためになったのかということについて、私、やはり今のこの質疑を聞いていても、これが入ったことで非常に態様が狭まってしまったんじゃないかなと思わざるを得ないと思うんです。

 きょうは消費者庁の長官をぜひ呼んでいただきたいということで、お願いを申し上げておりました。

 といいますのも、お聞きしたいことがあったんですね。添付のところをおめくりいただきまして、三月二十日、消費者庁長官がこのようにおっしゃっているわけなんですね。どうおっしゃっているかというと、この下線の部分をごらんください。

 消費者委員会の答申には含まれていない二つの契約取消権について、消費者委員会の答申には全くなかった社会生活上の経験が乏しいという要件を消費者庁が追加しています、これについて、日弁連の会長声明では削除を求め、消費者委員会からは、こういう手続上、答申内容を変更する場合は、事前に連絡があって、相談をすることがしかるべきではないかという意見が出ていますが、これについても御見解を教えてくださいということで、消費者庁長官はこう答えているわけですね。

 それぞれのお立場からいろいろな御意見があることは当然かと思いますが、政府として法案を閣議決定いただいたものでございますので、消費者庁が全てについて自由にできるということではないのだと思いますというふうにお答えをされているわけですね。

 この法律というのは、消費者に不必要な契約をさせる悪質な事業者を排除して、健全な事業者の経済活動を促進して、日本経済の発展に資するというふうに言っているわけですよね。若年者から高齢者まで、全ての人々が安全、安心な生活を営んでいける社会を本来目指していくべきもの。これは、事業者庁でない消費者庁だからできること。そこに消費者や国民は期待をしているわけです。

 この発言というのは一体何なのかということで、私は長官に、自分の意思で、この文言は今でも絶対に必要だ、つまり、この二つの文言が必要だと思っているのかということを聞きたかったんですよ。

 そして、後で言っておられる、消費者庁が全てについて自由にできるということではないのだ、消費者庁が消費者契約法を自由にできるということではないのだとお答えになっているわけですね。

 これは大問題な発言で、一体何なんですかということになるわけで、この答弁についての消費者庁長官の発言を求めたんですが、残念ながら、きょう来ていただくことができませんでした。このことについてお答えをいただきたいと思います。

福井国務大臣 ちょっと逆読みといいましょうか、消費者庁長官が言いたかったことは、政府として法案を閣議決定いたしました、つまり、文責は、法案を提出した責任は政府にあるということで、消費者庁一人が法案を練って消費者庁だけで出したものではない、消費者庁は全てについて自由に、一人だけで勝手にできるということではないということを解説したわけでございます。

 この法益といいましょうか、法律を出させていただいた目的も、専門調査会の意見を経て、そして専門調査会の事例について、ほとんど原則として取り消すことができる場合になるような法文として提出をさせていただいたということで、私どもはできることをきちんと確実にやっていきたいと思っております、そういう文言になったと解釈をしております。

尾辻委員 どういうことかちょっとわからないので、ちょっと質問の仕方を変えます。

 消費者庁が消費者を守るということを自由にできないということを言っていること自身がおかしくて、そして、今の御答弁にもあったように、専門調査会でも消費者委員会でもこの文言は入っていないわけですよね。

 ですから、消費者庁の中でこの話が一体どこから出てきて、そして、最後に言っているわけですよ、消費者庁が全てにおいて自由にできるということではないんだ。これがどういう意味なのか。消費者庁が消費者保護について、消費者委員会の言うこと、異例の付言をつけたこと、こういうことを聞けないとしたら一体どうなるのかということですよ。

川口政府参考人 通常、私ども、消費者法を消費者庁ができる前から何度もつくっておりますけれども、消費者委員会あるいは審議会などの答申を十分尊重します。ただ、出た後、法制的な見地からよく検討します。

 今回、取消しが効果です。そうすると、政府部内の、日本の法律の中で、取消しという効果を与えるべきものはどういう水準なのか、精査をいたします。その精査をいたしまして、過去の経緯、原始消費者契約法が平成十二年にできたとき、どういう考え方で取消しを決めたかということを確認をいたします。そのときに示しているコンメンタールに出しているものについては、例えば困惑を要件とした取消し事由については、契約成立についての合意の瑕疵があり、それが重大で決定的であるため、民法九十六条の強迫に当たらなくても消費者が当該契約の効力否定を主張し得るという趣旨であります。

 ですから、この水準までいくまでのものかどうかということを我々は精緻に検討します。ですから、消費者委員会の報告書の中にも、「政府内における法制的な見地から更なる検討を行い、」ということがございました。これを消費者庁内で、少なくとも半年以上にかけて精緻な検討を行った上で条文をしております。

 ですから、消費者委員会の検討は、私ども、諮問したものでございますので尊重はいたしますけれども、そこにある表現の一言一句がそのまま条文になるものではない、条文にしていないということについては、これまでもそのような例はございます。そのようにしておりますので、今回もそういうものでございます。

 なお、法案は、当然ながら閣議決定をして提出をしておりますので、消費者庁長官、消費者庁だけのものではございませんけれども、基本的には、この内容については消費者庁で検討して、それを閣議決定をお願いをして、それで提出をさせていただいたという経緯がございます。

尾辻委員 次の質問へ行きますね。

 付言を盛り込んだ答申の趣旨を十分に踏まえている法律案か、ここも大事なところでありますから、先ほどの質問ともかかわって、お答えともかかわってきますので、お答えいただきたいと思います。

 先ほどから申し上げているとおり、これは消費者委員会が、異例とも言える三つの付言がつけ加えられたわけですよね。これは、消費者委員会が、現在の立法的な動向であるとか社会情勢を考えて、親の委員会として、喫緊の課題だろうというものを政策的に評価して加えたものだと説明しておられます。

 喫緊の課題として消費者委員会から示された三つの付言について、消費者庁はどのようにこれを検討して、どのように対処したのか。検討の期間、その内容とその結論、具体的に本当は示してほしいんですよ。

 だって、答申からわずか十日余りで意見募集をして、専門調査会でさえ結論が得られなかった内容を検討して結論を出した。

 この消費者庁の検討経緯、これは大臣、どのように認識をされているんですか。お伺いします。

福井国務大臣 詳細は次長の方から答弁させますけれども、この法律案は、消費者委員会の答申で法改正を行うべきとされた事項につきまして、法制的な見地から検討を行い、先ほど申し上げましたように、政府全体として検討して、そして盛り込むべきものは消費者庁の責任において盛り込んで、そして全てのケースについて消費者が守られるようにしたつもりでございます。

 しかし、今回の法改正とすることを見送ったもの、例えば平均的な損害の額につきましては、引き続き検討を進めていくということでございます。

 答申の付言につきましても、重要な課題と考えておりますので、引き続き検討してまいりたいと思っております。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣から御答弁したとおりでございますけれども、報告書にあるものにつきましては、措置すべき内容を含むとされた論点でございます。そこから更に、法制的な見地から、条文のつくり方、果たして本当に条文のとおり条文をつくれるかなど、あるいは、消費者委員会の宿題にきっちり政府として答えられるかなどを検討した上で条文化をしております。

 他方、この答申の付言でございますが、一つ一つお答えいたしますと時間を要するわけでございますが、これにつきましては、基本的な方向性が検討会の報告書の段階で出なかったものでございます。

 ただ、それだけで終わりますと、委員会としては、この論点が重要だということについて見過ごされて、今後の検討が進まないのではないかというふうにお考えになったのではないかというふうに受けとめております。

 ここでしっかりとして付言いただいた三点について、いずれも重要ということでございますが、この通常国会に提出するまでに、内容、方向性を更に精緻化して、それを法制的見地も含めて条文化するということはできなかったということでございます。

 いずれにせよ、重要な方向、視点、論点であるということは消費者委員会答申において指摘されたところでございますので、消費者庁においては、引き続き、この点について将来課題として検討していきたいというふうに考えております。

尾辻委員 ちょっとずれているんですけれども、とにかく、何で消費者委員会の付言が意見募集されなかったのかということを聞いているわけですね。専門調査会の答申だけ意見募集して、なぜ消費者委員会の付言はされなかったのか、ここは私は問題だと思っています。

 もう時間がないので言っておきますが、この消費者契約法、今いろいろ、これは入るか、これは入らないかということをるる聞いてきました。

 もともとの最初に戻ると、これは包括的な民事ルール、民法などに次いで適用範囲の広い包括的な民事立法というのがもともとの消費者契約法の性質なんですよね。特定商取引法のような、ワンポイントで何かを規制したり取り締まったりするタイプの法律ではないわけですが、今回、こうしてさまざまな解釈を聞いてきて、類型化とか明示すること、これによって、それ以外の行為はやっても構わないというメッセージにならないか、私は非常に不安を持っております。

 本当は、相手の弱みにつけ込んで不当な利益を追求するような勧誘行為は許されないという広い受皿的なルールが必要なんだと思います。ですから、今後、バスケット条項の規定などは早急に、スケジュール感を持って検討されることを要望しておきたいと思います。

 河上前消費者委員会委員長も参考人質疑で、消費者契約法が二〇〇〇年にできて十八年になる、この間、小さく産んで大きく育てるというふうに言われながら、小さいままほっておかれてしまったとおっしゃっておられました。私たちはこの消費者契約法を大きく育てなければいけない義務があるということを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋です。

 きょう、消費者庁の方が、きょうの昼ごろ私のもとに、せんだっての五月十一日の衆院本会議、この代表質問での大臣答弁について、答弁を修正したいと、修正案というものを持っていらっしゃいました。(発言する者あり)あれ、僕だけ。

 この内容について何点か確認させていただきたいので、これは大臣の答弁ですので、当然、大臣は責任を持って、当然、この修正についても、大臣の同意がなければ修正できるわけありませんので、この修正案についても大臣に確認をさせていただきたいと思います。

 では、ここに大臣答弁の一部抜粋、特にこの社会生活上の経験が乏しいという要件について触れられて、それについての修正というものが見え消しで私のところに届いています。

 確認しますけれども、大臣、五月十一日のこの答弁の時点で、ここでは、「例えば、霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、勧誘の態様に特殊性があり、」と、この後、「通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、」要は、社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、「一般的には、本要件に該当するものと考えます。」と。その後に、この件においては、「被害者の救済に差はなく、本要件が被害者の分断を招くなどして消費者保護に逆行し、悪徳事業者を利する結果とはならないと考えてございます。」と。

 ここで確認ですけれども、この「一般的には、本要件に該当するものと考えます。」これは、要は、社会生活上の経験を積んできた消費者も、すなわち高齢者、中高年も、これも含まれますと。これだけ素直に読むと、経験が乏しいというと、若年者に特化しているんじゃないのですかというのが我々の今までの問題意識だったので、そうではありませんよ、積んできた人であっても含まれる、すなわち中高年だって含まれますよということですね。

 ですから、これは条文でいうと、四条三項の三号、四号に書いてある「社会生活上の経験が乏しいことから」は、この文言からは、高齢者も、そして若年者も、まさに差がなく読めるということでよろしいですね。

福井国務大臣 申しわけございませんが、もとむら賢太郎議員に私の方からお答えをした五月十一日、衆議院の本会議の答弁につきまして、訂正をさせていただきたいと存じます。

 今議員お読み上げいただきました、もう一度私の方からもそこだけ申し上げさせていただきますと、「勧誘の態様に特殊性があり、通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、一般的には、」というふうに、そのまま続けていたわけですけれども、「勧誘の態様に特殊性があり、通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、」というのを削除させていただいて、その上で、最初から申し上げますと、「例えば、霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、若年者であれば一般的には、」というふうに続けさせていただきたいと思います。「勧誘の態様に特殊性があり、通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、」というところ、約三行ぐらいを削除させていただきたいと思います。

 最初からもう一度申し上げますと、「例えば、霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、若年者であれば一般的には、本要件に該当するものと考えます。」

 「また、若年者でない場合でも民法により救済されることがあります。」これは追加をさせていただきたいと思います。

 「このように、悪徳事業者との関係では、被害者の救済に差はなく、本要件が被害者の分断を招くなどして消費者保護に逆行し、悪徳事業者を利する結果とはならないと考えてございます。」ここは一緒ですけれども。経緯……(黒岩委員「もういいですよ、大臣、そこまでですよ」と呼ぶ)いいですか。はい。

黒岩委員 ちょっと、大臣、確認ですけれども、今野党の筆頭にお聞きしたら、このペーパーはもらっていないと。これは、どうなんですか。与野党ともに、大臣答弁修正ですので、これ、私しかもらっていないんですか。

 ちょっと確認ですけれども、大臣、お答えください。これは当然、大臣の指示でやっていると思いますよ。勝手に事務方だけで、他の理事、私だけ渡すとか……

櫻田委員長 黒岩君、暫時時間をとめています。時間をとめてください。速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 暫時休憩とします。

    午後二時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十七分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十八分散会


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