衆議院

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第6号 令和2年5月21日(木曜日)

会議録本文へ
令和二年五月二十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 穴見 陽一君 理事 勝俣 孝明君

   理事 武村 展英君 理事 冨岡  勉君

   理事 永岡 桂子君 理事 青山 大人君

   理事 尾辻かな子君 理事 古屋 範子君

      畦元 将吾君    安藤  裕君

      伊藤信太郎君    小倉 將信君

      門山 宏哲君    小泉 龍司君

      佐藤 明男君    鈴木 隼人君

      西田 昭二君    百武 公親君

      藤丸  敏君    船田  元君

      堀内 詔子君    宮路 拓馬君

      山際大志郎君    吉川  赳君

      石川 香織君    大河原雅子君

      下条 みつ君    西岡 秀子君

      堀越 啓仁君    宮川  伸君

      山本和嘉子君    浮島 智子君

      畑野 君枝君    串田 誠一君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            衛藤 晟一君

   内閣府副大臣       大塚  拓君

   内閣府大臣政務官     藤原  崇君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     高田  潔君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    坂田  進君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁次長高田潔君、消費者庁審議官坂田進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速ではございますが、先日の質疑も踏まえまして、まず、公益通報者保護法が平成十八年に施行いたしました。それから十四年の月日がたったわけでありますが、その間、これまで公益通報者保護制度が果たしてきた成果、そしてその十四年間の間に把握した課題について、まずは大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

衛藤国務大臣 消費者庁としては、やはり法制定以来、制度の実効性を向上させるために、事業者及び行政機関向けのガイドラインの策定、改正や、制度の周知、広報、施行状況の調査による課題の分析等の対応を行ってきたところであります。

 こうした取組もありまして、労働者においては公益通報者保護法の認知度が向上するとともに、事業者においても内部通報制度の導入が進められるなど、制度の定着は一定程度図られてきました。

 しかし、残念ながら、昨今においても、通報制度が十分機能していれば違反行為を早期に是正することができた不祥事がまだ見られるところであります。

 改正法においては、こうした不祥事の現状も踏まえて、事業者に対する体制整備義務や公益通報対応業務従事者に対する刑事罰つきの守秘義務を課すことにより、不利益取扱いの防止や通報に関する情報の管理に関する取組を促すことといたしております。

 今回のこれらのことによりまして、事業者の自浄作用を十分に発揮してもらうことなどにより、法令違反行為が早期に是正される環境を確保するとともに、公益通報者保護制度をより使いやすいものとすることができるというぐあいに考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 ただいま大臣の答弁もありましたとおり、やはり事業者の自浄作用を強めるということが肝要なのであろうと思います。

 先般、消費者庁の方に確認をいたしましたところ、この十四年間で、公益通報者保護法が施行された後、不利益取扱い、いわば内部通報を契機とした解雇等が訴訟の場に行って、そしてそれがこの現行法のもと対応されたものが二件ほどあったというふうにお伺いをしております。

 見方によればたった二件かということかもしれませんが、この十四年間の間にしっかりと内部通報の制度が整い、それが従業者にしっかり周知が図られ、そして何よりも、訴訟に行くことが望ましいことではありません、一番やはり求められるのは、もともと企業の不祥事が起こらないのが一番いいわけでありますが、しかし、それが行われている際は、内部通報が行われることによって早期にその望ましくない状態が是正されるということ、これが一番望ましいわけであります。

 その意味では、この公益通報者保護法ができて、そうした意味での改善がしっかり図られてきたのであろう、あくまでもそこにのらずに、最後、訴訟まで行ってしまったケースが二件だというふうに私は捉えておりますので、今般の法改正によりまして、内部通報の体制整備がしっかりと図られる、そしてそれによって早期の是正が図られるということが今般の法改正の趣旨なんだろうというふうに理解をしているところでございます。

 先ほど大臣の御答弁の中にも言及をいただきました守秘義務の導入についてでございます。

 これは、この制度を議論した専門調査会の中でも大変議論になった点であり、また、私も末席に座らせていただきました我が党におけるプロジェクトチームの中でも議論になった点でございました。その結果、守秘義務が導入されることになったわけでありますが、しかし、その過程にはいろいろな議論があったのは周知のところだろうと思います。

 この点については、まず、事業者が過度に萎縮することなく事業者内部において内部調査や是正活動を実施することができるように、その範囲を明確化することが重要であるというふうな指摘がなされたところであります。もっともなところでありまして、特に刑事罰の対象となる場合はどのような場合があるのか。これについては、公益通報対応業務従事者が故意に通報者を特定させる情報を漏えいするような行為であると。

 したがって、例えば過失や重過失によって予期せずに通報者が特定されてしまったような場合、あるいはさまざまな周辺情報から通報者が推測されてしまったような場合、よく言われているのが、例えば、内部通報従事者がパソコンで作業していた、そのパソコンを開いたままちょっと席を外してしまった、たまたま通りかかった方がそれを見て内部通報者が特定される事態に陥ってしまった、そういうケースはどうなるのか。守秘義務違反になってしまうのか、そういうことが懸念されてきたわけでありますけれども、先ほど申し上げたような過失や重過失の場合、あるいは、さまざまな周辺情報から通報者が推測されてしまったような場合、これが刑事罰の対象とならないということでよろしいのか、改めて伺いたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案による守秘義務は、公益通報者に対する不利益取扱いの契機を抑止するために重要である一方、御指摘のとおり、事業者における必要な調査が過度に妨げられないようにすることも必要であり、そのため、解釈の明確化が必要であると考えております。

 この点、まず、改正法案の守秘義務には過失犯の規定はありませんので、御指摘のとおり、故意による漏えいのみが処罰の対象であって、重過失の場合も含め、過失による漏えいは処罰の対象にはなりません。

 また、処罰の対象は情報を漏えいした場合でございます。周囲の状況から通報者が推知されてしまった場合には漏えいはありませんので、処罰の対象にはならないと考えられます。

宮路委員 ただいま故意のみだということで、過失はさることながら、重過失についても対象とならないというふうな明確な御答弁がありました。

 先ほど私が申し上げた、あるいは今ほど御答弁いただいたとおり、従事者が過度に萎縮すると、かえって内部通報による是正、不適切な状態の是正というのが埋もれてしまうという懸念もありますので、ここはしっかり明確にして、そして、先ほど来申し上げているとおり、自浄作用を発揮するのは、その体制の整備、それに伴う従事者がしっかりとワークするということであろうと思いますので、改めて、成立後の法施行までの間にそうした懸念をしっかりと払拭して、内部通報の従事者が、対応業務従事者が萎縮することなくその業務に当たれるように周知を図っていただきたいというふうに思います。

 あわせまして、この議論につきましては、先般、この御時世ですので参考人質疑が行われず、かわりに意見書の提出をいただいたところでありますが、その中で、経団連を始めとして、経済界の意見として、公益通報対応業務従事者の範囲については、原則として、公益通報の受け付け、調査又は是正の業務に直接かかわる者に限定し、かつ、その範囲を客観的に特定可能なものにすべきということが言われたところでございます。また、守秘義務の対象外となる正当な理由については具体的な解釈を明示してほしい、そういった要望もあったところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、今般の改正法の解釈について、今後定める指針や逐条解説等もおつくりになると思います。その逐条解説の中でしっかりと明らかに、わかりやすくすべきというふうに考えますが、御所見をお伺いしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案では、内部通報体制の整備義務及び守秘義務を新たに定めており、内部通報体制の整備義務違反には、勧告、公表等の行政措置を、また、守秘義務の違反には刑事罰をそれぞれ付しております。これらの解釈については、御指摘のとおり、明確化を図る必要があると考えております。

 この点に関し、内部通報体制の整備義務については法案成立後に指針を策定する予定ですので、その中で御指摘の点も含めて具体的内容を検討し、明らかにしたいと考えております。正当な理由についても、逐条解説等で解釈の明確化を図る予定でございます。

宮路委員 施行までの間、ありますでしょうから、しっかりとその解釈を示し、それが浸透するように努めていただきたいというふうに思っております。

 続いて、先般の質疑でも大変議論の対象になりました、不利益取扱いに対する行政措置を講じるか講じないかという点についてでございます。

 これまでの審議でさまざまな課題があるというふうな答弁がなされておりますが、一方で、不利益取扱いがされるということを恐れて、先般の企業不祥事、昨今の日産であるとか、あるいはスルガ銀行等々、やはり、内部通報しても結局何も変わらないのではないか、あるいは報復される可能性があると思ったという点が、実際アンケートの中でもそういう声が多かったというふうに聞いております。

 したがいまして、そういう意味から、不利益取扱いに対する行政措置をしっかりと講じるべきだという議論があったというのは私も承知をしているところであります。

 一方で、そうした点については、これまでの質疑における答弁にもありましたとおり、体制整備がなかなか現実的に難しいであるとか、あるいは、そうした認定行為、これが、結局は裁判所の方で精細な、精緻な事実認定等を行っていってその白黒を決めるわけでありますが、それを行政機関が行うというのはなかなか難しいというところもある。したがって、司法の最終決定の場ということになるんでしょうけれども、そうした課題があるんだろうなというふうには思っておりますが、一方で、やはり不利益取扱いを抑制していくということは大変重要なことだろうと思います。

 不利益取扱いに対する行政措置以外でも、この不利益取扱いを抑制するための仕組みがあり得るのではないかというふうに考えておりますが、今般の法改正におきまして、そうしたことを制度的に担保できるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、不利益取扱いに対する行政措置の導入についてはさまざまな課題があり、今回の改正において導入することは見送り、従業員等に対する守秘義務の導入のほか、不利益取扱いを防止する体制の整備等も通じて不利益取扱いの抑止を図っていくことを想定しております。

 すなわち、今回の改正において導入される事業者の内部通報体制整備義務は、個別の事業者の自浄作用を向上させ、不祥事の未然防止や不利益取扱いの禁止等の一般予防を促すことを趣旨としており、公益通報を行った個別の労働者等に対する取扱いについては、事業者において整備した体制を実際に運用していくことで適切な取扱いにつながっていくものと考えております。

 もっとも、不利益取扱いであったことを事業者みずからが認めている場合や、民事ないし刑事裁判が確定した場合など不利益取扱いがあったことが明らかなときは、内部通報体制整備義務違反をあわせて認定できる場合があり得ると考えられます。

 その場合には、不利益取扱いを禁止する社内規程が機能するよう再発防止策をとること、不利益取扱いを行った者に対して社内規程に基づき懲戒その他適切な措置をとることを勧告するとともに、是正がなされない場合には、違反した企業の名称を公表することになります。

 これらの取組を通じても、不利益取扱いの抑止にも尽力してまいりたいと考えております。

宮路委員 先般の質疑におきまして、穴見先生の質疑の中で、裁判において不利益取扱いであったということが認定された場合にはその旨公表するという規定が、十八条でしたでしょうか、設けられることになったわけでありますが、しかし、冒頭申し上げたとおり、裁判に進まずとも物事が対処されていく、自浄作用が働くということが最も、より望ましいことでありますので、ただいま御答弁いただいたとおり、それがないにこしたことはないんですが、内部通報の結果、それが不利益取扱いのような形になった際には、助言、指導、勧告、そして勧告に従わない場合の公表という仕組みがとられることになるわけです。

 その公表というのは企業にとっては非常に大きな、ある意味、刑罰とまでは言いませんが、サンクションというか、負担あるいはその抑止力につながる動機づけになるわけですので、そうしたものの運用をしっかり行うことによって、不利益取扱いに対する行政措置を講ずべきだといった、そうしたニーズに対しても応えていく必要があるのかなというふうに考えております。

 続いて、また、この法案の質疑の場で議論になっております立証責任についてお伺いをしたいと思います。

 この立証責任の転換につきましても、これまでの審議で今後の検討課題であるという旨の答弁がなされておりますけれども、この法案の策定過程の中で、関係者の意見としてこれまでどのような課題が示されているのか、それについて伺いたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益通報を理由とした解雇その他不利益な取扱いに関する立証責任の緩和については、関係者の意見の隔たりが大きく、消費者委員会の答申においても今後の検討課題とされたものでございます。

 具体的には、解雇も含めて、悪意のある労働者による濫用的な通報が誘発されるおそれがあるほか、無用な争いを避けるために通報者に対する措置を一時的に凍結するなど、立証責任の転換により円滑な労務管理等を阻害されるという懸念が示されています。特に、使用者側に広い裁量が認められている配置転換については、不利益取扱いに該当するかどうかが明らかでない場合もあるという意見もあり、労働関係法令における一般の法運用を超える効果を生じさせるため、労務管理実務への影響の程度等についてさらなる検討が必要とされたところでございます。

 また、解雇については、裁判実務では事業者にも一定の立証の負担があり、現状においても一定程度労働者側の立証負担が軽減されていると理解しています。

 こうしたことから、改正法案に直接立証責任の転換について規定することは見送ったものの、消費者庁において裁判例を整理するなどの取組を行い、その周知を通じて通報者の負担が軽減されるよう努めてまいりたいと考えております。

宮路委員 これまでの質疑にもありましたとおり、裁判ということになるとすれば、やはり事業者側とそして通報者側の、立場的に大きな隔たりがありますので、その意味で、今御答弁いただきましたとおり、これまでの労働法分野の裁判実務で事実上の推定というのが行われているということですので、それをしっかり踏襲していく、これは裁判所の問題かもしれませんが、とともに、通報者側を萎縮させないような取組についてしっかりと対応していただくように、よろしくお願いしたいと思います。

 最後にお尋ねをいたします。

 公益通報者保護制度につきましては、通報者が制度の内容を認知して安心して通報を行いやすくすることにより、通報者の保護を図るとともに、事業者に法令遵守を求めるということが可能になるというふうに考えております。

 その意味からは、改正法案が成立した場合について、事業者、公益通報業務従事者を始めとする、そうしたいわゆる管理側だけではなく、従業員全員、全体に、その制度の内容、今回の改正法案の内容について周知を図ることが非常に大事である。

 つまり、それが知られなければ、そもそも内部通報がより行われやすくなる、それを契機として自浄作用がより働くようになるということが実現しないわけでありますので、この内容をしっかりと周知をする、徹底するということが非常に重要だと思いますけれども、その点について、最後、御見解をお伺いしたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、制度の実効性を向上させることにより、通報者が安心して通報を行いやすくするため、公益通報者保護制度の内容について事業者の従業員等に広く周知していくことは非常に重要であると考えております。

 消費者庁といたしましては、この法律の成立以降これまで、公益通報者保護制度についてのハンドブックの作成、配布、相談ダイヤルの開設、運用、制度の概要をわかりやすく説明する動画の作成、配信など、従業員個人に対する周知も念頭に置いた取組を進めてきたところでございます。

 引き続きこうした取組を推進するとともに、改正法が成立した暁には、今般の法改正の内容を説明会等において周知するほか、SNSの活用などにより従業員等に対する直接的な普及啓発を図り、改正法の内容を含め、制度の認知度向上につなげてまいりたいと考えております。

宮路委員 動画やSNSの活用、今般、この新型コロナの影響で、在宅、リモートワーク、いわゆるオンラインによる業務遂行などが、ある意味世間一般に普及してきたところであります。

 そうした機を捉えて、この法改正の内容につきまして、公益通報者保護制度の改正につきましても、そうしたオンラインでもしっかり学べるように、SNS、動画等を使った効果的な周知を図っていただくようにお願いを申し上げ、質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 一昨日に引き続きまして、公益通報者保護法改正案の質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 一昨日は、今回の改正案提出の意義ですとか、また、通報者の保護、不利益取扱いについて、また、公益通報者保護の対象拡大などについて、質疑をさせていただきました。

 続きまして、守秘義務に関して、きょうはお伺いをしてまいりたいと思います。

 この守秘義務ということに関しても、党内でかなり議論をいたしました。現行法に規定がない守秘義務、今回の改正案では措置がされるということになっております。

 公明党といたしましても、消費者対策本部として、衛藤大臣宛ての申入れといたしまして、秘密が守られなければ通報者が通報をちゅうちょするため、守秘義務の導入は重要であり、通報の受付窓口、また、調査、是正等の業務に従事する者を対象に罰則つきの守秘義務を課すことということを申入れをいたしました。

 消費者庁、平成二十八年度、労働者における公益通報者保護制度に関する意識調査、インターネット調査報告書によりますと、やはり、不利益を恐れて、匿名で通報するという回答が多くございました。全体の六七%の方が匿名での通報を望むということでございました。また、その理由に関しましては、不利益な取扱いを受けるおそれがある、これが六六・九%ということで、最も大きな理由となっておりました。やはり、不利益取扱いを恐れて匿名で通報したいというのが皆様の正直な御意見でございます。

 通報に関する秘密の保護に対する懸念が通報をちゅうちょさせる。通報者個人の特定につながる情報について厳格な秘密保持を行うことは、通報者が安心して通報を行うその前提条件になってくると考えられます。

 守秘義務を盛り込むということは法律の実効性の確保に不可欠であると考えますけれども、この守秘義務を導入した意義、またその効果についてお伺いをしてまいります。

 さらに、本改正案において、守秘義務違反について、公益通報対応業務の担当となったその個人に対して刑事罰を科しておりますけれども、事業者に対して刑事罰は科さないということになっております。担当者だけではなくて、内部通報体制の整備義務を負う事業者に対しても通報の秘密を保護する義務を課す必要があるのではないかと思います。これに対しての見解をお伺いしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 誰が通報をしたのかという情報が漏えいされることにより不利益取扱いにつながる事案が見られることから、不利益取扱いを抑止する観点からは、公益通報者に関する情報漏えいの防止が極めて重要でございます。

 消費者庁の調査によれば、通報をためらう理由として、誰が通報したかが知られてしまうことへの懸念が多く挙げられております。公益通報者が安心して通報する環境を整備する観点からも、情報漏えいの防止を十分図る必要があります。

 このような実態を踏まえ、公益通報対応業務従事者に守秘義務を課すことにより、公益通報者が不利益取扱いを受けることなく安心して通報できる環境を確保することとしたものでございます。

 また、事業者については、今般の改正によって、事業者内部の公益通報に対応するための体制整備等を行う義務を負い、その義務には、通報に関する情報を適切に管理することも含まれます。

 なお、この義務に違反した場合、最終的には事業者名が公表され得ることになっております。事業者名の公表は事業者の社会的評価や信頼に大きく影響するため、公益通報に対応するための体制整備等を行う義務によって事業者の秘密の漏えいに対する抑止を図ることができると考えられます。

古屋(範)委員 今回の改正案、この守秘義務が盛り込まれたことは大いに評価をしたいと思います。成立の後、しっかりとこれが実効性あるものになっていくよう、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、制度の周知徹底と中小また小規模事業者について質問してまいりたいと思います。

 公益通報者保護制度に関する民間事業者、労働者の実態調査につきまして、これは平成二十九年一月の調査でありますけれども、中小企業及び労働者の法の認知度につきまして、大企業の方は九五%ということなんですが、中小企業は六〇%、また中小企業の労働者は四三%ということで、やはり、中小企業においても、またその労働者においても、この公益通報者保護制度に関して認知度は十分とは言えない状況であります。

 事業者における内部通報制度の実効的な整備、運用は、企業価値の向上とか、また事業者の、長い目で見た場合に、持続的発展に資するものだと思います。さらには、社会経済全体の利益確保のためにも大変重要な意義がありますので、ぜひとも事業者、労働者にこの制度の意義、役割の周知を図る必要があると思っております。

 今後は、この公益通報者保護法が、改正内容等について、これまでより充実した広報また周知が必要と考えます。この取組について、まずお伺いをしたいと思います。

 また、今般、各団体よりこの消費者問題特別委員会にいただいた御意見の中で、全国商工会連合会からも御意見を頂戴いたしました。やはり、ここはもうほとんどが中小企業ですので、この中で、これは消費者庁が実施した平成二十八年度の調査なんですけれども、公益通報者保護法及び公益通報者保護法に関する民間事業者に向けたガイドラインをいずれも知っていると回答した企業の割合は、従業員五十人以下ではわずか一三・二%だった、また、それ以下の、中小企業、小規模事業者はまだまだ普及していないという御意見をいただいております。

 さらに、中小企業、小規模事業者は、従業員規模が当然小さいので、管理部門が設置されていないということが多い、実質的に機能する内部通報制度を設けることは容易ではない、企業外部に通報窓口を設けることについても、コスト面の負担が大きい、ハードルが高い、こういう御意見をいただいているところでございます。

 その中でも、商工会の会員の九八%が従業員五十人以下ということなんですけれども、今回の改正案の中で、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等を義務づけられているものの、従業員三百人以下については努力義務となっていることについては、整備するために時間的な余裕が与えられたということで評価をしたいという意見をいただいております。

 この全国商工会連合会の御意見にもございますように、中小企業、小規模事業者に特化したガイドラインの策定をしてほしいという希望をいただいております。また、その取組事例の提供、経営者に対する啓発の実施等、支援をしてほしいという御意見を伺っております。

 こうした中小・小規模事業者に対する支援についてお伺いしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者の安全、安心を守るためには、事業者による不正行為の防止と是正を図ることが極めて重要でございます。このため、中小事業者においても、内部通報に適切に対応していただくことが望ましいと考えます。このため、消費者庁においては、本法の制定後、中小事業者も含め、民間事業者に向けたガイドラインを策定、改正し、広く周知活動を行うなど、制度の周知に努めてきたところでございます。

 今回の改正法案が成立した暁には、必要に応じ中小事業者に対して助言等を行うほか、引き続き制度の周知、広報に努めるとともに、中小事業者にも体制整備に取り組んでいただけるよう、中小事業者団体と調整をしてまいりたいと考えております。具体的には、中小事業者向け説明会の開催や、モデル内規の策定等の中小事業者向け支援策を検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 消費者庁におかれましても、中小事業者へのさまざまな取組を用意していらっしゃるようでございますけれども、やはり、党内においても、中小事業者への配慮、支援ということがかなり議論となりました。ぜひともこうした中小・小規模事業者への手厚い支援をよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、相談窓口の設置促進についてお伺いをしてまいります。

 公益通報者保護制度では、自治体にも職員からの通報、市民からの相談を受ける窓口の設置をするよう求めてきました。行政機関における通報相談窓口の設置状況を見ますと、内部の職員等や外部の労働者からの通報、相談を受ける窓口の設置につきましては、中央の府省庁、また都道府県においては一〇〇%であります。しかし、市区町村におきましては、窓口の設置率五四・八%、また外部労働者からの通報窓口設置率については三五・四%ということで、いまだ低い水準にとどまっております。

 こうした相談窓口の設置が促進されますよう、その取組についてお伺いをしたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁におきましては、市町村を含む行政機関向けガイドラインを策定、改正し、周知に努めてきたところでございます。また、行政機関に対する外部からの通報に関する相談窓口については、ガイドラインにおいてその設置を求めてまいりましたが、今般の法改正により、市町村を含む行政機関には、外部からの通報に対応する体制整備義務を課すこととしております。

 今後とも、法改正を踏まえ、更に制度の周知に努めるとともに、現行のガイドラインを見直すほか、地方消費者行政強化交付金を活用することや、徳島県における消費者行政新未来創造オフィスの取組の展開などにより、窓口の設置促進や、その適切な運用に向けた市町村の取組を推進してまいります。

古屋(範)委員 ぜひ市町村の窓口設置への取組の支援をよろしくお願いしたいと思います。

 今回の公益通報者保護法改正案の審議につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の緊急事態宣言下で、理事の皆様と知恵を出し合いながら、各団体から御意見をいただく、また、それぞれが真剣な質疑をするということで質疑を進めてまいりました。これは国民生活の安全、安心を守るためにぜひとも成立をさせなければならない法案でございますので、与野党一致をして早期成立を目指してまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 会派立国社、国民民主党、西岡秀子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は公益通報者保護法改正案についての質疑でございますけれども、法案の質疑に先立ちまして、一問、大臣にお尋ねをいたします。

 十四日に改正特別措置法に基づく三十九県の緊急事態宣言が解除をされまして、残り八県のうち、きょうにでも一部都道府県の解除の方向ということで聞いております。新型コロナウイルス感染症拡大防止と経済活動の両立を図っていくという、大変困難で、大変重要な局面に入ったと認識をいたしております。

 一方で、給付金などを狙った消費者被害も多発をいたしておりまして、国民が大変困難な状況の中で許されない行為であると思いますし、国民に対して十分な注意喚起と具体的な事例を挙げての周知徹底が大変重要だと考えます。

 それと同時に、各業界においてガイドラインが策定をされ、いわゆる新しい生活様式というものが我々消費者にも求められる中で、消費者庁として、新しい社会変革の中で、消費者を守り、消費者行政を進めていく上で、どのように取り組んでいかれるのかということにつきまして、大臣から御所見をいただきたいと思います。

衛藤国務大臣 新型コロナウイルス感染症をめぐっては、新規感染者数が限定的となっても、再度感染を拡大する可能性があり、長丁場に備えまして、感染拡大を予防するための新しい生活様式を踏まえた新しい日常に移行する必要があります。この新しい生活様式を実践し、感染予防と経済活動との両立を図るためには、消費者の協力は欠かせません。

 このため、緊急事態宣言が一部地域で解除された先週十四日に、消費者庁としては、関係省庁や各業界団体とも連携し、スーパーなどの店舗でのお買物の際に消費者の方に協力をいただきたいお買物エチケットや、おいしく、楽しく、そして安全に外食をするための注意事項について、協力をお願いする啓発資料を作成、公表したところであります。

 また、消費者は買物や外食以外にもさまざまな経済活動の主体となることを踏まえ、各業界団体が作成しているガイドラインを参考とし、関係省庁とも連携し、消費者が新しい生活様式を踏まえた新しい日常において知っておくべきことや注意いただきたいことについて、情報発信を行ってまいりたいと考えています。

 このほか、インターネット通販等の需要の拡大など、新しい生活様式によって消費行政が変化し、それに伴って消費者トラブルの状況も変化していくことが想定されます。消費生活相談等の情報から消費者トラブルの状況を迅速に把握し、適切に対応策を講じてまいります。

西岡委員 大臣、ありがとうございます。

 しっかりと新しい環境の中で消費者行政、消費者を守るという立場で進めていただきたいと思います。

 それでは、公益通報者保護法改正案につきまして、質問に入らせていただきます。

 きのう、きょうと大変質疑の重なる部分も多いかと思いますけれども、お許しをいただきまして、特に今回の法改正に盛り込まれなかった項目を中心に質問をさせていただきます。

 今回の改正は、法が施行されましてから五年後の見直しがうたわれていながら、十四年もの時間が経過をいたしました。企業の不祥事が頻発する中で待ちに待った改正とも言え、大きな一歩であると捉えております。

 これまで私も、消費者団体の皆様の会合において、また部会におきまして、社会正義のためにみずからの身を顧みず通報して、長年にわたり誹謗中傷に耐え、長い間裁判を闘わざるを得ない苦難の道を歩まれた当事者の方のお話をお伺いいたしました。

 通報者を不利益取扱いから守るということは、きょう御出席の先生方共通の思いだと考えております。

 そもそもこの法律は、組織の不正を告発する人を不利益から守るということが重要な趣旨だと言えますけれども、その肝とも言える不利益取扱いに対する行政措置の導入は、今回、見送られました。今回、この措置が見送られた理由につきまして、お尋ねをいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益通報者に対する不利益取扱いは、通報をちゅうちょさせ、事業者が法令遵守を図る機会を失わせるものであり、あってはならないと考えております。

 改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課すとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることとしております。このように、公益通報者に対する不利益取扱いを事後的にではなく事前に抑止することがまずは重要と考えております。

 他方、公益通報をしたことを理由とする不利益取扱いに関する事実認定については、当事者間で争われた場合、当事者双方の主張や証拠に照らして判断しなければならず、行政機関にとっては非常に困難であることなどから、今回は、不利益取扱いが生じた場合の事後的な行政措置ではなく、不利益取扱いの事前抑止に資する刑事罰つきの守秘義務を設けることとしたところでございます。

 今般の改正によって不利益取扱いを抑止する効果がどの程度高まったかについては、施行後の実態も十分踏まえ検証していきたいと考えており、改正法案の附則第五条にもこの趣旨を規定しているところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 今言及がございました附則第五条につきまして、関連して質問をさせていただきます。

 今御説明をいただきましたように、今回の法改正の考え方である事前抑止ということも大変重要な視点だというふうに考えておりますけれども、今回、理事の先生方の御尽力で提出をされました意見書の中でも、一般社団法人全国消費者団体連絡会の浦郷事務局長が、不利益取扱いの抑止ということであれば、行政措置を設けることが一番効果的であると指摘をされております。このことが盛り込まれなければ、社会正義のために勇気を持って通報した方を真の意味で守るためには大変不十分であると言わざるを得ません。

 今回見送られましたが、附則第五条において施行後三年を目途に見直すということが記載されております。今後、明確な道筋をつけて取り組むことが大変重要だと考えますけれども、大臣の見解をお尋ねいたします。

衛藤国務大臣 今回の改正法案では、制度の実効性確保のために、事後的な行政措置ではなく、不利益取扱いを事前に抑止することが重要と考えたところであります。この観点から、今回の改正法案では、刑事罰つきの守秘義務や事業者の体制整備義務を導入することといたしました。

 施行後、こうした措置の運用状況について事例を収集、分析し、制度が実効的に運用されているか吟味した上で、関係者の意見も聞くなどしながら、施行後三年を目途に検討をしてまいりたいと考えています。

西岡委員 今回の改正に大変長い時間を要したということを考えますと、明確な道筋をぜひつけまして取り組んでいただきたいというふうに考えます。

 また、今後の検討課題として、通報しようとする方が通報による不利益取扱いを恐れてちゅうちょすることがないように、刑事罰についても導入を検討していくべきであるというふうに考えますけれども、このことについての見解をお尋ねいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 不利益取扱いに対する刑事罰を設けることについては、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、消費者委員会の答申においても、「今後、必要に応じて検討を行うべき」とされていたことから、今般の改正法案には含めておりません。

 今後、今般の改正によって不利益取扱いを抑止する効果がどの程度高まったかを、施行後の実態も十分踏まえつつ検証していきたいと考えております。その際には、委員の御指摘も踏まえて、刑事罰の要否についても検討してまいりたいと考えております。

西岡委員 実態を検証するということを今言及をされましたけれども、大変重要だというふうに思いますので、その状況というものをしっかり把握した上で、今後、ぜひ検討を進めていただきたいと考えております。

 昨日の御答弁、またきょうの御答弁の中でも、事前抑止に力を入れるというお言葉がたびたび出てまいりますけれども、行政機関の体制整備、マンパワーの問題や財政的な体制の整備というものが大変必要だと思っております。

 法案の中に、権限を有する行政機関における公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備ということが盛り込まれましたけれども、このことを進めていくには衛藤大臣の強い決意とリーダーシップというものが大変重要だと考えておりますけれども、大臣のこのことについての決意についてお尋ねをいたします。

衛藤国務大臣 御承知のとおり、事業者の自浄作用が十分に機能しない場合には行政機関が不正の是正を図る必要があり、外部通報対応体制の整備は制度の実効性向上のためには極めて重要であります。

 この点、外部通報対応体制については、現時点においても、国の行政機関や地方公共団体向けのガイドラインを策定、改正し、広く周知活動を行うなど、制度の周知に努めてきたところであります。

 今後、今般の法改正を踏まえ、制度の周知に努めるとともに、国の行政機関に対しては、関係省庁連絡会議の場を活用し、国の行政機関向けガイドラインを見直し、地方公共団体に対しては、地方公共団体向けガイドラインの内容を見直すほか、地方消費者行政強化交付金を活用し、通報窓口の設置促進等を行うなどの取組によって、行政機関への通報の実効性向上に向けた取組を支援してまいります。

西岡委員 ぜひ、大臣の強いリーダーシップを発揮していただきたいということを心からお願いをいたしたいと思います。

 次に、立証責任の転換についてお尋ねをいたします。

 解雇や不利益取扱い、例えば降格や減給、配置転換などが行われたことを通報者が立証することは、先ほどの質疑でもございましたけれども、その情報や証拠となる資料が事業者側にあることがほとんどであり、通報者にとって負担が重く、極めて困難な現状があると認識をいたしております。通報者の立証責任を軽減する規定を設けるべきという意見が、専門調査会報告書でもございました。

 不利益取扱いが行われた場合の立証責任を事業者に転換するというこのことは、大変重要なことであると認識しており、ぜひ今回の法改正にも盛り込むべきであると考えますけれども、見解についてお伺いをいたします。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いについて、立証責任の緩和又は転換を求める意見があることは承知しております。

 他方、消費者委員会においては、解雇も含めて、悪意ある労働者に制度が利用される、無用な争いを避けるために通報者に対する措置を一時的に凍結するなど、立証責任の転換により円滑な労務管理等を阻害するとの懸念が示され、消費者委員会の答申においても今後の検討課題とされておるところでございます。

 また、解雇以外の不利益取扱いについて、配置転換などについては一般に事業者に広い裁量が認められており、そうした中で立証責任を転換することは、労務管理実務への影響の内容、程度等についてさらなる検討が必要と考えられます。

 こうしたことから、改正法案において、解雇以外も含め、直接立証責任の緩和又は転換について規定することは見送ったところでございます。

 なお、改正法案の附則第五条では、公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方について検討規定を設けておりますが、これは、立証責任の緩和又は転換についても含めて検討を行う趣旨でございます。

西岡委員 ありがとうございます。極めて重要な視点であると思いますので、ぜひ取り入れていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、通報対象事実の範囲についてお尋ねをいたします。

 今回の改正におきましては、過料の対象となる規則違反行為の事実が追加をされました。一方で、行政処分の対象となる規制違反行為の事実の追加は盛り込まれませんでした。盛り込むべきであると考えますけれども、ぜひ、なぜ今回盛り込まれなかったのか、そのことについての御説明をお願いいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正においては、公益通報者の範囲の拡大や保護要件の緩和、守秘義務違反に対する罰則の導入など、大幅に制度の見直しを行うこととしております。そのような見直しに相応するものとして、通報対象事実の範囲の拡大については一定の慎重さが求められるところでございます。

 もっとも、通報対象事実の範囲の拡大も、不正の是正といった観点からは重要な課題であり、今般の改正では、行政罰が科される違反行為も含まれることとしております。

 さらに、消費者利益の擁護等にかかわる行政処分の対象となる違反行為のほとんどは刑事罰や行政罰の対象であることから、委員御指摘の行政処分の対象となる規制違反行為の事実は、そのほとんどが通報対象事実に含まれているものと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 関連いたしまして、きょう、資料をお配りいたしておりますけれども、海外の事例からも、法目的による限定の方式ではなくて、もっと社会全体の利益を優先して対象事実を広く考えるべきではないかと考えますけれども、このことについての大臣の御所見をお伺いいたします。

衛藤国務大臣 御指摘のように、法目的による通報対象事実の限定を見直すべきとの議論があることは承知をいたしております。

 これについて、消費者委員会の専門調査会の調査審議の中でも、対象となる法律がどの程度広がるか不明瞭であるという意見や、行政機関等の負担増大による体制面の懸念があるという意見があったところであり、法目的の限定を外した場合、公益通報と消費者の生活や利益の関係性が希薄となることの妥当性が問題となることなどが今後の課題であると認識をしております。

 政府としては、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

西岡委員 大臣、ありがとうございます。

 日本のように法目的による限定方式というものは、海外では珍しい、海外ではない考え方であるというふうに聞いておりますけれども、ぜひ、とにかく多くの方が対象となるということが大変重要だと思いますので、引き続きのお取組をお願い申し上げます。

 次に、通報者の範囲についてお尋ねをいたします。

 今回の改正で、通報者の範囲が拡大をされまして、退職者と役員が追加をされました。今回、退職者については退職後一年以内というふうに規定をされましたけれども、消費者委員会の報告書によりますと、期間は限定されないことが望ましいとされておりました。なぜ一年以内と規定をされたのか、その根拠について、また、報告書でも言及をされておりましたように、少なくとも三年とすべきではないかと考えますけれども、このことについて見解をお尋ねいたします。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正法案は、法令違反行為の早期是正を促すことをその目的の一つとしております。そのような観点からは、保護される通報を退職後一定の期間内のものに限定し、早期の通報を促していく必要がございます。

 また、実際に退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報された事案であり、このため、退職後一年以内にされた通報を保護すれば、実際に不利益取扱いが想定される通報のほとんどを対象とすることができると考えられます。

 さらに、退職から長期間経過後の通報については、証拠の散逸等により、通報を受けた事業者が適切に対応することが困難であるとの指摘もありました。

 このような考え方により、まずは退職後一年以内に通報した者を保護の対象としたものでございますが、今後の改正法の施行状況を踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

西岡委員 一年という時間は、大変長いようで短い時間だというふうに考えますので、今回施行された後にどういう状況かということを十分見きわめていただいて、三年とすべき方向も含めて、ぜひ検討を進めていただきたいと考えております。

 次に、関連をいたしまして、役員についてお尋ねをいたします。

 今回、通報者の範囲として追加をされましたけれども、役員については、内部の事情に精通しており、通報者として告発をする、通報する事例というものが多く見られております。

 役員が外部通報の際には、事業者内部で是正の措置に努めることが前置きとされております。前置きを外す例外として、例えば組織ぐるみで不正が行われた場合も含めて検討すべきであるというふうに考えますけれども、このことについての見解をお尋ねいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 役員は、不正のおそれに気がついた場合、みずからその調査、是正に当たる義務を負っております。

 今般の改正法案では、個人の生命身体への危害や財産に対する重大な損害が生じる場合に限って、この調査是正措置の例外を設けておりますが、このような例外は、事案の緊急性に着目して設けられたものでございます。

 これに対し、組織ぐるみで不正が行われている場合、例えば、多くの役員が共謀して不正が行われているようなときであっても、役員としては、社外取締役と連携するなどして、調査是正措置に努めることが考えられるため、例外的な取扱いについては慎重な検討を要すると考え、調査是正措置を前置すべきことといたしました。

西岡委員 ありがとうございます。

 また、海外の事例でございますけれども、通報者の範囲について、例えばEU指令などにおきましては、大変その通報者の範囲というものが幅広く規定をされております。

 その中でも、取引先の事業者につきましても含めるべきではないかと考えますけれども、この取引先の事業者を範囲とすることにつきましての見解についてお尋ねをいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先事業者に関しては、消費者委員会の答申において、事業者間取引には基本的に契約自由の原則が妥当する中で、契約解除等における不利益取扱いの判断や公益通報を理由とすることの判断が困難であること、保護の対象とする取引先事業者の範囲を画する合理的な基準を策定することなどが今後の課題であると指摘され、今後、必要に応じて検討することとされております。

 これらの点から、取引先事業者を保護の対象に含めることについては、慎重な検討が必要と考えられます。

西岡委員 保護の対象者につきましても、引き続き検討を進めていただきたいと考えます。

 次に、報道機関等に通報した場合の保護要件の拡充についてお尋ねをいたします。

 特定事由に、通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高い場合、個人の財産に対する損害がある場合が、今回、追加をされました。専門調査会報告書で追加が求められておりました、事業者が内部通報体制整備義務を履行されていない場合という項目も追加すべきではないかと考えますが、このことについて見解をお尋ねいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 内部通報体制整備義務の内容にはさまざまなものが含まれておりますが、特に重要なものは、まず第一に、通報者に対する不利益取扱いの禁止、第二に、通報者に関する情報漏えいの禁止、第三に、窓口に通報があった場合の適切な調査の実施の三点であると考えられます。

 この三点のうち、一点目の不利益取扱いの禁止については、現行法でも、不利益取扱いを受けるおそれがある場合が報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけられております。

 三点目の適切な調査についても、現行法では、事業者に通報してから二十日経過しても事業者から調査を行う旨の通知がなかったり、正当な理由なく調査をしなかったりする場合が報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけられております。

 他方、二点目の情報漏えいの禁止については、報道機関等への通報が保護される場合に位置づけられておりませんでしたので、今般の改正において、通報に関する情報が漏えいするおそれがある場合を報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけることといたしました。

西岡委員 ありがとうございます。

 内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備についてお尋ねをいたします。

 公益通報を受けて対象事実の調査、是正に必要な措置をとる体制整備が義務化されることとなりました。その内容について、もっと明確に具体化して、通報者保護の観点から体制整備が図られるようにすべきではないかと考えますが、このことについて見解をお尋ねいたします。

 ちょっと時間の関係がございまして、引き続いてもう一問、まとめて質問をさせていただきます。

 三百人以下の中小事業者については努力義務とされました。今回、義務化された三百人以上の事業者というものは、全体の〇・四%にすぎず、実効性を確保するためにも、三百人以下の中小事業者の体制整備というものは極めて重要だと考えております。

 しかし、実際、体制整備を進めることも大変困難な状況が想定されることも事実でございます。このことにどのように支援体制を整備されるお考えなのか。このこともあわせて、二問質問をさせていただきます。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 まず、第一点目の御質問でございますが、改正法案においては、事業者に義務づける体制整備の内容について指針を策定することとしております。

 指針に定める体制整備の具体的な内容としては、通報の窓口整備のみならず、窓口に通報があった場合の調査や情報漏えいなどの通報に関する内規の違反者に対する懲戒等のほか、安心して通報できるよう、通報者に対する不利益取扱いや通報者に関する情報漏えいの禁止を社内規程に定め、その規程に基づき適切に運用するよう求めることを想定しております。

 なお、実際に指針を定める際には、通報制度が実効的に機能するよう、関係者の意見を踏まえるとともに、改正法案に基づき消費者委員会の意見を聞いた上で検討してまいりたいと考えております。

 次に、第二点目の御質問でございますが、中小事業者においても内部通報に適切に対応していただくことが重要でございます。

 そのため、中小事業者についても、努めなければならないという形ではあるものの、義務規定を設け、必要に応じて助言等を行えることとし、中小事業者における体制整備の実効性の確保を図っております。

 もっとも、中小事業者において自発的に体制を整備していただくことが望ましいため、消費者庁としては、法改正の後、中小事業者から理解が得られるよう、中小事業者団体との調整や積極的な周知啓発活動に取り組んでまいりたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 ちょっと質問が残りましたけれども、時間となりました。

 今回の改正について、足らざるところについては、法案修正も含め、また、今後検討されることについてもスケジュール感を持ってぜひ取組を進めていただきたいと思いますし、裁判事例の集積や指針、ガイドラインにより法律の実効性をぜひ担保していただくようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 石川香織です。よろしくお願いします。

 では、早速質問させていただきたいと思います。

 今ちょうど西岡委員からも質問がありましたけれども、私も、公益通報をした際に保護される人として労働者のみだったというのが、今回、退職者と役員が追加になったということですけれども、果たしてこれらの方々で十分なのかということを、ちょっと具体的に例を挙げてお伺いをしたいと思います。

 西宮冷蔵という業者の事案で御質問させていただきたいと思います。

 この西宮冷蔵の事案というのが、BSE対策として国による国産牛の買取りが行われていた際に、雪印食品が輸入牛を国産牛と偽って申請して国から買取り代金を詐取していたという事実を、雪印食品と取引のある倉庫業者、これが西宮冷蔵という業者ですけれども、ここが農林水産省に通報したということがありました。

 これは西宮冷蔵という会社が勇気を持って農林水産省に通報したということですけれども、ただ、当時はもちろん、今の法案と照らし合わせても、公益通報者として守られることはありません。正義感を持って内部告発したわけですけれども、あくまで、この不正があった雪印食品側の人間ではなくて、内部告発した人が取引業者の西宮冷蔵の人であったということがその理由になるからです。

 ただ、はっきり調べたわけではありませんけれども、こういうケースはこの一件だけではなかったのではないかなと思っています。公益通報者になり得る人として取引業者を入れる可能性、この必要性についてもう一度お伺いをしたいと思います。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのケースは、取引先事業者が違法行為であるとして通報した事例と承知をしております。

 取引先事業者を公益通報者保護法による保護の対象に含めることは、まず第一に、事業者間取引には基本的に契約自由の原則が妥当する中で、契約解除における不利益取扱いの判断や公益通報を理由とすることの判断が困難であること、第二に、保護の対象とする取引先事業者の範囲を画する合理的な基準を策定することなどが課題であるため、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討することとされました。

 もっとも、今回の改正に伴い、公益通報に関して適切に秘密保持がされるとともに不利益取扱いが禁止される体制が整備されることにより、その結果として、取引先事業者からの通報についても適切な対応がされることが期待できます。そのため、取引先事業者が不利益取扱いをこうむることを未然に防ぐことにもつながると考えられます。

石川(香)委員 この西宮冷蔵のその後のてんまつを御紹介しますと、この後、この倉庫事業者は、みずからも偽装に加担していたということで業務停止命令の処分を受けるとともに、この雪印食品以外の取引先からも取引を打ち切られて営業継続が困難になったということで、非常にこういう事実があったということで重く受けとめなくてはいけないのではないかと思います。

 もう一つ同様に、労働者の家族が通報するというケースもあると思います。この場合は、労働者の代行として通報するケースと、若しくは、家族が労働者から依頼はあったわけではないですけれども通報するという場合があると思います。

 家族が通報するという場合であっても、その後、労働者が不利益をこうむるケースということもあり得るのではないかと思いますけれども、この場合の対応はいかがでしょうか。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 労働者の家族が労働者本人の意思に基づいて代行したと認められる場合には、その労働者が通報したものと言えるため、不利益な取扱いを受けた労働者はこの法律による保護の対象となり得ます。

 これとは異なり、労働者の家族が労働者本人の意思とは無関係に通報した場合は、仮に保護の対象とするのであれば、どういう範囲の者からの通報について保護の対象とすべきか等について、実際にどのような不利益取扱いを受けているかも踏まえて検討する必要があると考えられますが、現時点における立法事実の蓄積が十分ではなく、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討することとされたところでございます。

 なお、労働者の家族が労働者本人の意思とは無関係に通報しただけで不利益な取扱いを受けた場合は、労働者本人は事業者に不利益となる行為を何も行っていないことから、労働者が不利益取扱いを受ける理由はなく、労働者に対する不利益な取扱いはこの法律の適用がなかったとしても許されないものと考えられます。

石川(香)委員 いわば家族が勝手に通報した際には、労働者は公益通報に関与していないということで、不利益をこうむるということにならず、保護される対象にならないということですけれども、そういうことはあってはならないということで、それは当然だと思います。

 でも、私は、家族からの通報というのは時にはすごく重要なのではないかと思います。例えば、家族は一緒にいる時間が多いわけですから、最近ちょっと家族の様子がおかしい、精神的に不安定だとか、そういうことに一番最初に気づくのが家族ではないかなと思います。精神状態など、会社に対してのいろいろな不安も相まって、なかなか自分から公益通報するという思いに、行動を起こせないというケースもあると思いますので、家族がこういった場合に通報するというケースも非常に大事な観点ではないかなと思っております。

 今、公益通報をした際に保護される人として、こういった取引業者それから家族ということについて質問いたしましたけれども、これらのことについて大臣はどうお考えでしょうか。

衛藤国務大臣 先ほど政府参考人からも答弁したとおりでございますが、取引先事業者を公益通報者に含めることについては、いろいろな意見がございますが、必要だという意見もあります。そういう中で、さまざまな取引先があること等から、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きい論点の一つであります。

 また、労働者の家族などその他の通報者を公益通報者に含めることは、実際にどのような不利益取扱いを受けているか等、現時点における立法事実の蓄積が十分ではなく、取引先とあわせ、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討すべき論点とされています。

 政府としては、公益通報を行いやすくし、公益通報者保護制度の実効性を高めることが重要と考えております。今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、通報者の範囲の拡大も含めて、必要な対応を検討してまいります。

石川(香)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次の質問に参りたいと思います。

 今回、三百人以上いる事業者に対しては窓口などの整備を義務づけましたけれども、問題は、この窓口がしっかり機能しているかだと思います。その実効性や信頼性について、望ましい機能がきちんとなされていない場合は、その窓口のあり方について改良していくということは当然必要になってくると思います。

 この窓口の機能の実効性などを定期的に確認できる機会は必要ではないかということについてと、その際、この作業はどこがチェックしていくかということについてもお答えいただきたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 内部通報体制整備義務の実効性を確保するためには、事業者において適切に通報窓口が整備されている状態が確保されていることが必要でございます。

 適切に通報窓口を整備しているかを確認する責任は、一義的には義務を負う各事業者にありますが、消費者庁としては、窓口の整備に関する端緒情報をしっかりと入手し、調査等に活用し、助言や指導をしていくことが重要であると考えております。

 具体的には、消費者の安全、安心を損なう事業者の重大な不祥事については常に注視し、それらの事案に接した場合には、必要に応じ、法律上の権限も用いて事業者から報告を求めるなど、体制のあり方に問題がなかったかについて確認していくことを想定しております。

 このほか、消費者庁に設置する一元的相談窓口において体制整備義務違反に関する端緒情報も受け付けることとし、必要な情報収集を行っていくことを想定しております。

 さらに、定例的な調査の実施、活用という観点からは、消費者庁が実施している労働者に対するこの制度の調査を活用し、勤務先の内部通報体制の整備状況に関する情報を収集するなどにより、幅広く情報収集することも検討してまいります。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 事業者側からのいろいろな状況も含めて確認していくということも大事ですけれども、通報した本人ですとか働いている方々にとって本当に有益なものになっているかということを、情報をしっかり吸い上げてチェックしていくということが必ず大事だと思います。

 会社内に窓口を設置する場合は、当然、同じ会社に勤めている人がその担当者になります。この担当者は、通報者の情報を聞き、さらに、守秘義務があり、それを破ってしまうと罰金三十万円が科されるということです。

 仮の話ですけれども、会社の従業員であるこの窓口の担当者が、その会社の社長に何か情報を教えてほしいというふうに詰め寄られた場合にノーと絶対言えるかということを考えるだけでも、非常に責任が重い仕事だと思います。かつ、通報する側の立場に立ってみれば、本当にこの人なら話せるのか、ほかの人には絶対言わないのか、人格面でも信頼できる人、正義感がある人が一番望ましいと思いますけれども、あくまで誰をこの担当者に配置するかというのは会社次第であります。

 この担当者の質をしっかり担保していくといいますか、担当者が正しく行動できるような研修制度であったりマニュアルというものは必要ではないかなと思いますが、この点についても御質問したいと思います。

 また、この担当者にとっては非常に責任が重い役割でありますので、この担当者を支援するという方法も必要ではないでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 通報窓口をより適切に機能させるためには、窓口の担当者が正しく行動し、また、担当者の負担を緩和していくことが重要と考えております。

 消費者庁において策定、公表しているガイドラインにおきましては、担当者の配置、育成について、例えば、必要な能力、適性を有する担当者を配置するとともに、十分な教育、研修を行うことが必要である旨を定めているところでございます。また、担当者への支援については、内部通報制度の運営を支える担当者の意欲、士気を発揚する人事考課を行う等、コンプライアンス経営推進に対する担当者の貢献を積極的に評価することが適当である旨を定めているところでございます。

 消費者庁としては、引き続きこうしたガイドラインの内容について周知啓発を進めていく予定でございます。

石川(香)委員 会社に設置された窓口の質の向上といいますか質の担保、それから担当者自身に対しての支援ということもあわせて必要だと思いますので、この点、あわせて申し上げたいと思います。

 次の質問は、報道機関への告発ということについてお伺いします。

 報道機関への告発は、いわば最後のとりでのような扱いになっていると思います。そもそも、報道機関に通報するまでの道のりとして、まず、不正があると信じるに足りる相当の理由があり、かつ、内部通報では解雇されそうな事由、生命身体への危害が発生する事由などがあって通報しないと、公益通報者として保護してもらえる対象にはなりません。信じるに足りる相当というこの理由は極めて曖昧だと思いますし、条件をこうやって細かく追加、設定していくということは、内部通報の選択肢の幅を狭めることになるのではないかと思います。

 報道機関に通報するときはこういうときにしてくださいねというのを示すべきで、事業者がそもそも公益通報対応業務従事者を定めていない場合、若しくは、書面によって二号通報した日から二十日を経過しても行政機関から調査を行う旨の通知がない、また、行政機関が調査を、不当な、理由なく調査をしないなど、こういうふうな形で、より明確な基準、更にその選択肢の幅を広げる、内部通報のハードルを下げるということが必要ではないかと思いますけれども、このことについて、いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 報道機関等に対する通報における信じるに足りるという相当な理由の要件は客観的、外形的に判断されるものでありまして、必ずしも曖昧というものではなくて、報道機関等への通報を保護するために必要なものであるというぐあいに考えております。

 今回の改正法案で報道機関等への公益通報が保護されるための事由として、財産に対する損害がある場合と通報者が特定される可能性が高い場合を追加し、報道機関等に対する通報要件をより広くしております。

 政府としては、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいります。

石川(香)委員 報道機関にもしこの事案が取り上げられることになれば、社会的に物すごいインパクトになるわけですよね。いろいろな社会のルールを変えることにもなり得ると思いますし、告発する人はそれぐらいの覚悟で対峙していると思います。

 ただ、報道機関が取り上げるのは、ある程度会社が知名度があるということや、かなり悪質であるというような、社会的なインパクトが強いケースでないと取り上げないのではないかなということもあります。

 とにかく、選択肢を広げていく、そして通報者を守るということがこの法案の大事なところだと思いますので、しっかり、このことを一番大事なものとして対応していくべきだと思います。

 次の質問ですけれども、先ほどの質問の中にもありました通報者の退職者の範囲ということで、退職後一年以内はやはり短いのではないかということについても再度聞きたいと思います。

 自分自身の例えば再就職のタイミングでありましたり、家族の都合、それから病気になったとか、さまざま予期せぬ都合がこの人生の中で起こる中で、一年以内にどうしても行動に起こせなかったという理由がそれぞれあるのではないかなと思います。

 先ほどのほかの委員の御答弁の中でも、早い方がいいと。それで、実際、早く、一年以内に行動を起こす人が割合的にも多いということもありました。確かに早いことにこしたことはありません。証拠なども集めるなどということも考えれば、なおさらだと思います。

 しかし、時間がたってからこそ知る知識ですとか新しい情報というものもあるでしょうし、わざわざ短く設定する必要はないのかなと改めて思ったんですけれども、このことについて再度お答えをお願いいたします。

衛藤国務大臣 この法律の目的であります事業者による法令遵守を早期に実現するためには、できる限り早期の通報を促していく必要があります。

 また、通報を受けた事業者が適切に対応することを可能とする観点を踏まえる必要もあります。

 そのため、保護される通報を退職後一定期間内のものに限定したものであります。

 具体的な時期については、実際に退職後の通報を理由とした不利益取扱いを受けた事例のほとんどは、退職後一年以内というよりも、むしろ半年以内ぐらいにほとんどが集中しておりますので、調査の結果。そういう意味では、退職後一年以内に通報された事例が、今もおっしゃいましたように、ほとんどでございました。

 今回の改正法案では、退職後一年以内に通報した者を保護の対象ということにさせていただきました。実態においては、ほとんどこれで通報の時期については対応できるのではないのかというぐあいに思っております。

石川(香)委員 一年以内でもなく半年以内が非常に多いという話もありましたけれども、早くに、退職後一年以内という期間を設定すれば早く通報しなきゃという気持ちになるかもしれませんけれども、一年以内に設定したせいで通報できなかったということもたくさんあるのではないかなと思います。

 ここはやはり、理想は退職から五年、せめて経過措置として三年とるべきではないかということを主張させていただきたいと思います。

 次の質問ですけれども、今回、事業者が不利益取扱いに対する行政措置というものが残念ながら創設されませんでした。最終的に決着をつけるとなると裁判になってしまいます。裁判となったときに、公益通報者となった個人と企業が闘うことになります。

 トナミ運輸という有名な事案がありますけれども、この事案では、提訴まで二十七年間の時間を要して、会社と和解するまで三十年間年月を要しました。オリンパスの件では最終的な和解に至るまで九年、金沢大学の医学部では十一年かかって損害賠償をかち取ったということもありまして、人生の大切な時間をこれほど長く使うことになります。

 しかも、その会社に籍を置きながらその会社と裁判をするという心労はもういかばかりか。また、転職などしていたとしても、心理的な負担はもちろんですけれども、加えてこの裁判費用というものが物すごく重くのしかかるわけです。

 この裁判費用はあくまで個人持ちということになりますけれども、弁護士費用というものは個人に負担させないような工夫、そういう対応が必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、公益通報者保護制度の実効性の確保のため、不利益取扱いを事前に抑止する観点から、公益通報者に関する情報の漏えい防止のための刑事罰つきの守秘義務を導入するほか、不利益取扱いの禁止を定めるなどの通報体制整備義務を事業者に課すこととし、不利益取扱いを事前に防止することで、そもそも裁判を起こさなければならないことのないようにするための措置をとっております。

 また、不利益取扱いを受けた場合においても、第三者が介在して個別の労働紛争解決のあっせんや調停をする制度として、労働審判のほか、厚生労働省、各都道府県の関係機関や社会保険労務士会におけるあっせん制度などが存在し、裁判を経ずに解決する方策がございます。

 今後、これらの制度を運用する機関との連携を図ることで、裁判を経ずに不利益取扱いの救済がされやすくなる取組を進めてまいります。

 さらに、裁判を受ける必要がある場合でも、法テラスでは資力のない方が裁判を受ける際の民事法律扶助を用意しております。

 不利益取扱いを受けてしまった通報者が裁判を起こそうとする場面において、今後、消費者庁において整備する予定である一元的相談窓口において、通報者の御意向を確認しながら法テラスの民事法律扶助を御紹介する等の連携に努めてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 裁判に持ち込まなければ一番それはいいんですけれども、また、法テラスなどの窓口も案内することもできるということですけれども、個人と企業との闘いですから、これを個人と企業のただの係争だというふうに扱ってはいけないと思います。

 次に、この通報というものが、そもそも告げ口という悪いイメージがまだあるのではないかと思います。この通報ということについて、社会としての受けとめを変える必要があると思いますけれども、どのように変えていきますか。

衛藤国務大臣 公益通報者保護制度の実効性を高めていくためには、公益通報の意義や有用性に関する理解を社会に広めていくことが不可欠です。

 こうした観点から、これまで、政府としては、公益通報の意義や有用性について継続的に周知をしてきております。その結果、事業者において内部通報制度の導入が広がるなど、公益通報に関する理解が社会に広まってきたものと理解をいたしております。

 他方で、御指摘のとおり、依然として通報に対して告げ口、裏切り、後ろめたい等悪いイメージを持つ方がおられることも承知いたしております。

 このようなイメージを払拭し、公益通報がコンプライアンス意識の向上を通じて企業価値の向上にも資する点などを含め、今後も公益通報者保護制度の周知を徹底していきたいと思っています。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 では、次の質問ですけれども、平成二十八年度の民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書というものがありますけれども、この中では、設置窓口に寄せられた通報の内容として最も多かったのはパワハラ、セクハラなどの職場環境を害する行為ということで、五五%を占めていました。

 こういった行為は特定の人物、個人からの行為が多いのではないかなと思いますけれども、そうすると、誰が通報したか、調査した段階で特定されてしまう可能性が高くなるのではないかと思います。

 こういったパワハラ、セクハラなどを含む職場環境を害する行為を通報したということで不利益をこうむることも当然あろうかと思います。このときの対応としてはどのようなものになるでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 事業者の内部通報窓口に対してパワハラやセクハラに関する通報が多く寄せられているという調査結果があることは承知しております。

 この法律では、どのような行為が通報対象事実として保護の対象になるかは通報者と事業者の双方にとって明確であることが必要であるため、刑事罰で担保されている行為を通報対象事実としているところ、御指摘のパワハラやセクハラは、例えば強制わいせつ罪や暴行罪等の刑事罰に結びつく場合であれば公益通報としてこの法律による保護の対象となり、不利益取扱いから保護されるほか、通報に係る秘密が守られます。

 また、この法律による保護の対象とならない場合であっても、パワハラやセクハラに関する通報に関する秘密を保持することは、公益通報者保護制度の実効性を向上するに当たって重要であると考えられます。

 そうした観点から、消費者庁において策定、公表している民間事業者向けガイドラインにおいては、例えば、法令違反のほかにも内部規程違反等についても幅広く通報を受け付けることが適当であるとした上で、不利益取扱いの禁止や寄せられた通報に係る秘密保持の徹底を図ることが重要である旨を定めているところでございます。

 消費者庁としては、引き続き、こうした不利益取扱いの禁止や通報に係る秘密保持の徹底について、周知啓発を進めていく予定でございます。

 なお、パワハラやセクハラについては、その相談を理由とする不利益取扱いが男女雇用機会均等法などの他の法律で禁止されているところであり、全体として相応に保護する制度が存在していると理解しております。

石川(香)委員 公益通報者として保護されるためには、パワハラ、セクハラが刑事罰になるかどうかというものがこの基準になるということでありました。

 この法案の中では、窓口設置業務ということがあって、そこから先、会社がその後その事案にどう向き合って解決していくかというプロセスはその会社に委ねられているわけです。企業の窓口が、担当者が事案を受け取って、通報された後に、その後人事部に行って、これ以上調査すると特定される可能性もありますよということを言う。それも配慮の一つなのかもしれませんけれども、それだったら、内部通報者に最大限配慮していくというこの法案の一番大事なところがやはりできていないのではないかなと思います。

 このパワハラ、セクハラというものが現に割合として非常に多いことと、また誰が通報したか特定されやすいということであれば、その性質も含めて、男女雇用機会均等法の適用なども言っていましたけれども、今後も、内部通報者をいかにして守るかというのは、窓口をつくったということだけではなくて、この法案の中でしっかり明らかにしていくべき今後の課題ではないかなと思っています。

 次の質問をさせていただきます。

 もう何人もの方が質問されてきましたけれども、やはり今回のこの法案の一番の肝、一番大事なところは、事業者側が不利益取扱いに対する行政措置の創設がなされなかったということ、ここが非常に残念だったということだと思います。

 不当な取扱いが、公益通報者だから受けたのか、それとも能力とかそのほかの問題のことだったのかということが判断しかねるということなのだと思います。でも、それぞれの職場の人間関係や仕事の内容の専門性であったり、全てを消費者庁が判断するというのは難しいというのは理解できますけれども、しかし、ここは絶対に大事なところでありまして、むしろ事業者に勧告や助言ができないのであれば、公益通報者にとっては、メリットはもちろんないですけれども、リスクだらけで公益通報後も過ごさなくてはなりません。

 ここは、通報経験者、日弁連、消費者団体などが最も求めてきたところでありまして、もうこの委員会でもたくさんの方がここを指摘されております。

 大臣、改めてこの必要性について御認識をお伺いしたいと思います。

衛藤国務大臣 今回の改正案で、まず、不利益取扱いの事前抑止を通じて制度の実効性を高めることが重要と考えまして、通報者に関する刑事罰つきの守秘義務、あるいは体制整備等の導入で対応することとしたところであります。

 御指摘のとおり、先日の委員会及び各会派にお寄せいただいた有識者等の意見等においても、不利益取扱いに対する行政措置を導入すべきとの御指摘をいただきました。消費者庁としても、先生の御指摘をしっかりと受けとめる必要があると考えています。

 この点については、改正法の施行後、この運用状況について事例を収集、分析し、制度が実効的に運用されているか吟味した上で、関係者の意見も聞くなどしながら、施行後三年を目途に検討してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 終わります。

土屋委員長 次に、堀越啓仁君。

堀越委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの堀越啓仁でございます。

 本日は、諸先輩方に格段の御配慮をいただきまして、再び公益通報者保護法の一部を改正する法律案についての質疑に立たせていただきます。まことにありがとうございます。

 まず冒頭、ちょっと所感を述べさせていただきたいんですが、今回の新型コロナウイルス感染症に関することであります。

 五月十四日、東京などの八都道府県を除く三十九県で、新型インフルエンザ等対策特別法に基づいて発令された緊急事態宣言が解除されるというところで、今ようやく第一波の収束に向かって動いているんだろうというふうに思っています。

 本当にこの新型コロナウイルスの影響というのは、いわゆる感染症の防護策という、いわゆる人体に及ぼす影響だけではなく、本当に多くの場面にその影響が出ているということは、消費者庁も実感されておられることだと思っております。

 マスクの転売の件であるとか、あるいは給付金の詐欺であるとか、あるいはアルコール手指消毒薬の偽造の件についても、これは消費者庁がやはりしっかり目を光らせていかなければいけないということであると同時に、これからもまだまだこの事態は私は続くというふうに思っておりますので、ぜひ、省庁では、更に、消費者の皆さんに必要な場面に必要なものが届くように、御協力、発信を力強く進めていただきたいというふうに思うわけであります。

 私の地元は群馬県でございまして、ここでもやはり有料老人ホームでクラスターが発生をしてしまいました。地元の介護施設あるいは訪問・通所系の事業所では本当に風評被害が深刻で、その地域から別の地域に診療あるいは訪問の介護、訪問リハビリ、こういうのに伺うだけでも、あそこから来たのか、検査してから来いというようなことを言われてしまうというような、本当に深刻な事態が起こっています。

 現在行われている、国が行っている、あるいは地域で行っている新型コロナウイルス感染症に対するいわゆる防護策として講じられているのは、いわゆるハンマー・アンド・ダンシング戦略、そしてクラスター戦略、この両輪を進めているんだろうというふうに思っています。一定の行動様式をハンマーによって制限をして、その後、いわゆる感染経路が不明なものに関して減少してきたならば、更にクラスターに対しての対応を行う、こうすることによって集団免疫を獲得していくという防護策、戦略であるというふうに私は認識しております。

 これについては本当に必要なことなんだろうと思いますが、これから日本はある意味ではダンシングのタイミングに入ってくるわけですから、このダンシングのタイミングに入ってきたときに、また再び感染症が拡大するということは十分想定できますし、諸外国ではもう既に起こっているわけですから、そうしたことを先に見越して、先ほども申し上げたとおり、やはり必要なところに必要なものが届くということが何よりも重要なことだと思っています。

 特に、私は、作業療法士として医療と介護の現場で十二年間働いてまいりました。今どうしても手薄になっているのは、訪問系の事業所ですね。訪問介護、訪問看護、それから訪問リハビリテーション、こういったところにまだまだ必要な物品が足りていないという状況がありますし、生活の場ですから、これは医療機関という箱の中で起こっていることではなくて生活の場ですから、この生活の場でやはりこれからダンシングを迎えると、拡大していくということが十分可能性としては考えられる。

 そうすると、在宅で療養されておられる、あるいは介護を受けておられる方々は、基礎疾患を当然お持ちですから、こうしたウイルスに対する脆弱性は非常に高いわけでありますので、こういったところに、消費者庁としても、もう既にLINEアカウント等では発信していただいているわけですが、消費動向として、必要なものが必要なところに届くようにということを強く発信をしていただきたいというふうに思っていますので、まず冒頭、お願いを申し上げさせていただきたいと思います。

 それではちょっと本題の方に入らせていただきますが、これまでの質疑で大分、私も質問させていただこうと思うところが重複しております。このことについては多少おわびをしなければいけないところもありますが、所感として述べさせていただくところもあると思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 これも各委員の方からもありますが、やはり不利益取扱いを行った事業者に対する行政措置、これを規定をしていなかった点について改めて伺いたいと思いますが、衛藤大臣の方から、本会議での答弁で、制度の実効性確保のためには、行政措置による事後的な不利益取扱いの是正ではなく公益通報者への不利益取扱いを事前抑止することが重要であるため、改正案では、公益通報者に関する情報が漏えいしないよう、公益通報対応業務従事者に対する守秘義務や事業者の体制整備を規定することとしているというふうにお答えになっております。

 しかし、これも本会議場の方でも述べさせていただきましたが、通報経験者それから日弁連、さらに消費者団体の皆さんが強く求めていたのは、この行政措置の導入ということであります。不利益取扱いをした事業者に対して行政措置を行う、これをぜひ、強く、入れてくれということでありました。

 この行政措置は事後的な是正であるというふうにおっしゃっておりましたが、これは、行政措置を導入することによって、事前の抑止効果も十分私は期待されるものだというふうに思っています。

 これまで不正が発覚して社会問題となってきた大企業、日本郵政、スルガ銀行、これは立派ないわゆる公益通報の窓口があるんですよね。通報体制としては整っていたと思うんですが、しかし、実際にはその窓口が不正の事前の抑止として機能していなかった、違反行為をとめられなかったわけでありますので、こうしたところから考えても、行政措置の導入、これはもう何よりも重要なことだと私は思っています。

 この事態を踏まえて、いわゆるその事前抑止という観点からすると、不利益取扱いをした事業者に対する行政措置あるいは刑事罰といった社会的制裁が与えられることがやはり最も効果的なのではないかと思っております。

 まさにこれは、消費者庁自身がそのことを認識されているからこそ、改正案の附則、これは第五条ですね、施行後三年を目途として不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方を検討する旨の規定を置かれたのではないかと思っております。

 そこで、基本的なところなんですけれども、この附則の第五条に検討規定を設けた理由を衛藤大臣にお答えいただきたいんです。

衛藤国務大臣 不利益取扱いに対する行政措置の導入については、まだまだ事実認定、執行体制に関して多くの課題がありまして、現時点において導入することはちょっと困難が伴うというぐあいに判断をしたものであります。

 しかし、その前に、今回の改正法案は、刑事罰つきの守秘義務や事業者の通報体制整備義務の導入を含めまして、この公益通報保護制度を大きく充実するものだというぐあいに認識いたしております。この不利益取扱いの抑止効果が大幅に向上することを期待しておりますが、施行後の実態については十分に検証してまいりたいと思っています。

 なお、この不利益取扱いの是正に関する措置としては、通報者の立証責任の緩和、行政命令や刑事罰の導入など、不利益取扱いに対する行政措置以外にもさまざまな論点が考えられているところであります。

 このような観点から、そのような整備をまずやっていきながら、そして附則第五条における検討内容として、不利益取扱いに対する行政措置を含む不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方というぐあいに明記をし、三年以内に結論を出そうとするものであります。

 以上です。

堀越委員 ありがとうございます。真摯にお答えいただきまして、本当にありがとうございます。

 執行体制がやはり整っていない現状において導入するのは難しいところは、私も十分承知はしているつもりです。しかし、これが、法施行後の動向を見て、やはり是正をしていかなきゃいけないということはもう明らかな事実であると思いますので、この点については、法施行後確実に、着実に導入していただければというふうに思っております。

 今回、その行政措置を導入する検討の上で、やはりそれが至らなかったという点については、いろいろ理由はあるとは思います。しかし、大きな理由としては、消費者庁のマンパワー不足、これはやはり否めないのではないかなというふうに思っています。現状の体制では執行体制にかなり懸念があること、これは私も理解しているところでありますが、やはり、その行政措置の前提となる事実認定が困難と先ほど大臣も御答弁いただきましたけれども、消費者庁自身も行政措置の導入について若干後ろ向きだったのはこういうところもあるんだろうというふうに思っています。

 実際は、これも本会議場でも述べさせていただきましたが、やはり各関連の省庁との連携は何よりも必要なことだろうと思っています。この通報のほとんどが、九七%が厚生労働省に寄せられている関係のところから鑑みれば、やはり厚生労働省との連携の強化というのは何よりも重要だというふうに思っています。

 行政措置を行う上でも、法令違反があったか否かは、通報対象事実に当たるかどうかという点に関して言えば各法令を所管する省庁しか判断できないと思いますし、いわゆる二号通報や三号通報と呼ばれる外部の機関等への通報の要件に当たるかなどは消費者庁自身が解釈を示す必要があると考えられる。それぞれ判断するのに適した省庁が異なっていることを考えれば、行政措置導入、運用、当然厳しいというふうに思いますので、この厚生労働省を始めとする関係省庁からの協力を得なければ適切に執行していくことは不可能であるというふうに思っています。

 また、公益通報によって寄せられる情報は消費者問題に関連するものに限りません。国民の生命、身体、財産等にかかわる重要な情報が含まれていれば、通報者を守ることによって最終的に国民が守られることにつながるわけです。

 公益通報者保護制度をよりよいものにしていくに当たっては、そうしたことも踏まえて、今後、省庁間の縦割りを超えて推し進めていただくべきと考えますが、消費者庁の見解を伺いたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、改正法成立後の施行状況等を分析しつつ、附則第五条の規定に基づき、公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方その他新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な対応を講ずるものとしております。実際にどのような施行体制が必要になるかについては、本法案の施行状況や検討結果に基づき講じようとする内容等にもよるものと考えております。

 いずれにせよ、改正法の施行に当たっては、先生御指摘のような縦割りの解消といった観点も踏まえながら、必要に応じて関係機関にも連携協力をいただき、実効性の確保を図ってまいりたいと考えております。

堀越委員 ありがとうございます。

 消費者庁には本当に頑張っていただきたいというふうに思っていますし、この内部通報をすることの難しさ、内部通報の大切さ、これは、働いておられる労働者の皆さんだけではなくて、企業の自浄作用を促すことにとっても非常に重要なことになると思います。その観点から、消費者庁には頑張ってもらいたいんですが、やはり労働関係の関係行政は厚生労働省ですから、そことの連携強化は何よりも重要なので、縦割りの解消、本当に先ほど御答弁いただいたとおりだと思います、ぜひそれを念頭に置いた上で取り組んでいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それから、ちょっとごめんなさい、一問飛ばさせていただいて、これも質問をさせていただこうと思っていたんですけれども、各委員の方から質問がありましたので所感として述べさせていただきますが、いわゆる公益通報者の範囲の拡大、これが、退職をされた方々が盛り込まれる、これは非常に評価するべきものだと思いますが、一年に限ったところについては、やはり私は若干懸念が残るところであります。

 この一年を定めたいわゆる調査結果は、恐らく平成二十八年に実施された調査結果に基づく立法事実であると思いますけれども、実際に調査されたのは、調査対象三千人のうち、退職後に不利益取扱いを受けた五十七人の方々、さらに、追加調査に協力を得られた十人のみなんですね。十人のうち九人が一年以内に通報したことをもってほとんどが退職後一年以内に通報されるものだとするのは、私は、余りに母数が少な過ぎて、立法事実とするデータとしては根拠が薄いんじゃないかなと思います。

 また、この十人のうち残る一人は、一年以上たってから通報したと回答している。やはり、仕事をやめたからといって、不正をすぐに報告するというのはかなり厳しいと思います。

 私も、もともと医療、介護の現場で十二年間仕事をしていましたが、そこで不正があったとは言いません、そういうことはありませんでしたけれども、仮にそこであったとして、退職後にそれを、あそこの医療機関がということを言えるかと言われると、相当ハードルは高いと思いますね。

 この方々、十人のうち九人の方々は一年以内に報告をしているということでもありますが、ある程度、現職から、例えば定年をして隠居生活であるとか、御家庭に入って、仕事と一線を完全に離れたような状況であるとするならばもしかすると可能性としてはあるのかもしれませんが、いずれにしてもかなりハードルとしては高いということだと思いますし、立法事実のデータとしてこの母数が非常に少ないということは、これは指摘をしなければいけない。

 もちろん、これで全てこのままずっといくんだということではありませんが、これが、三年あるいは五年というふうに、これから法施行後の動向を見ていって検討されていくことだとは承知をしておりますが、例えば、先進的なのは、西岡議員の方からも法制度の概要について韓国の例を取り上げていますけれども、公益申告者保護法に関しては期限、EU指令ですね。EUの指令ではそもそも期限を設けていないというのもありますし、そうした先進的なところを含めて御検討いただくとするならば、今回の改正案でも、せめて三年というのは盛り込まれてもよかったのではないかというふうに思います。

 このあたりについては、さらに、法施行後、悩みに悩んでようやく申告する人がいるんだということを前提として、幅広い期限を設けていただくことをお願いをしたいと思います。

 こちらに関して質問というふうに用意しておりますが、所感として述べさせていただきます。もうこれまでの質疑でもありましたので、ちょっと飛ばさせていただきたいと思います。

 それから、これも石川議員の方からも先ほどお話がありましたけれども、やはり公益通報者の対象に取引先の事業者も含めるべきではないかというふうに思うんですね。

 例として、先ほども、西宮冷蔵の告発、雪印食品の牛肉偽装の問題を取り上げてもらいましたけれども、こういう事例が実際あるわけですから、ここは取り入れるべきだというふうに思うんですね。

 ここは、ちょっと再び確認したいんですけれども、事業者における法令違反行為の是正を図り、国民の生命、身体、財産を守る、利益を守るという観点からは、取引先の事業者についても公益通報者保護法の対象とすべきというふうに思いますが、消費者庁の見解、再度ですが、伺いたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先事業者を公益通報者に含めることについては、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討することとされております。

 具体的には、まず第一に、事業者間取引には基本的に契約自由の原則が妥当する中で、契約解除等における不利益取扱いの判断や公益通報を理由とすることの判断が困難であること、第二に、保護の対象とする取引先事業者の範囲を画する合理的な基準を策定することなどが今後の課題であると指摘されております。

 政府としては、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

堀越委員 これも法施行後、検討を進めていくということでありますけれども、取引先の事業者が先に責任感を持って通報するということも事例としてあるわけですので、そこはやはり、勇気を持ってその勇気を示してくれた方々を守るための法律でなければ意味がないわけですから、ぜひここはまた再度御検討というか、しなくちゃいけないことだと私は思っていますので、消費者庁で議論が更に進むことを私の方からもお願いをしたいと思います。

 次に、役員における報道機関等の外部への通報についてお聞きしていきたいと思います。

 今回の改正案では、通報者の範囲に役員が含まれることとなっておりますが、役員が行政機関や報道機関等の外部に通報する場合には組織の内部でみずからが是正措置を講じることが必要とされ、労働者や退職者が通報するよりも更に要件が課せられることとなっております。

 役員は基本的に経営にかかわる身という立場であることを考慮すれば、まずはみずからが是正措置を講じるべきだという、理屈の上では理解できるところではありますけれども、一方で、役員だからこそ知り得る情報というものも存在すると思いますし、そもそも組織ぐるみで不正が行われているような場合には、役員が是正措置を講じようとしても自浄作用が働かない場合もあるのではないかというふうに思います。

 スルガ銀行の不正融資事件では圧倒的な力を持つ役員の方が不正を主導していたとの報道もありましたし、かんぽ生命による保険の不適切販売では日本郵政の、郵便の内部通報制度が全く信用されていなかったとの報道もあって、自浄作用が期待できなかったと考えられます。

 余りに厳格に内部での是正措置を求めることは必ずしも適切ではなく、役員が組織の外部に通報する場合の要件について、調査是正措置を必須としない場合をより多く想定しておくことが必要だというふうに思っております。

 そこで、役員における通報の実効性を高めるため、内部での是正措置をとれば、事業者内で証拠が隠滅されるような場合についても役員による調査是正措置を不要とすべきと考えておりますが、消費者庁のお考えをお聞かせください。

    〔委員長退席、冨岡委員長代理着席〕

坂田政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正法案において役員を公益通報者に加える措置が講じられており、役員は、不正のおそれに気がついた場合、みずからその調査、是正に当たる義務を負っております。

 今般の改正法案では、個人の生命身体への危害や財産に対する重大な損害が生じる場合に限ってこの調査是正措置の例外を設けており、このような例外は事案の緊急性に着目して設けられたものでございます。

 これに対し、御指摘の証拠隠滅等のおそれがある場合については、役員としては本来証拠隠滅等が生じないように注意して調査、是正に当たるべきであり、例外的な取扱いについては慎重な検討を要すると考え、証拠隠滅等のおそれがある場合については調査是正措置を前置すべきことといたしました。

 なお、御指摘のとおり、事業者の不祥事の原因として、当該事業者における通報制度が機能していないことが指摘されるケースも見られるため、今般の改正法案では事業者の体制整備義務を設けるとともに行政機関への通報の保護要件を緩和しているところであり、この措置を通じて法令遵守が図られるものと考えております。

堀越委員 体制整備、これも当然必要ですし、やっていかなければいけないことだというふうに思いますが、しかし、スルガ銀行の例えば不正融資事件であるとか、これまでかんぽ生命による不適切販売等で内部通報制度が信用されていなかった、これらが体制整備の強化で本当に図られるのかどうかというのは、特に前者ですね、スルガ銀行の不正融資に関しては非常に疑問が残ります。

 やはり役員ですから、その役員が圧倒的な力を持っているわけなので、隠滅されるようなことも当然可能性としてはありますから、このあたりについては引き続き御検討いただきたいなというところであります。

 ちょっと時間もなくなってきたので淡々といきたいと思いますが、次に、事業者における内部通報体制の整備について伺いたいと思います。

 今回の改正案では、内部通報体制の詳細について、法律にはメーンとなる部分のみを規定し、それ以外の詳細な点については、新たに定める指針において詳細が示されることになります。

 各事業者の実態に合わせた形で体制整備を行うことはもちろん必要ですが、形だけの窓口の設置や担当者の配置となることは避けなくてはなりません。

 保険の不正販売で総務省や金融庁からの行政処分を受けたかんぽ生命においても、内部通報制度が設けられていたものの、従業員からは全く信頼が得られておらず、寄せられた通報を是正措置に生かすこともできませんでした。

 内部通報に適切に対応できるようにするためには、形だけではなく、実態として、適切かつ有効に機能する通報体制が整備されることが必要不可欠であるというふうに思っております。消費者庁は実効性をどう確保していくつもりなのか、御説明をいただきたい。

 そして、さらに、従業員三百人以下の事業者については、この体制整備が努力義務とされているにとどまっております。適切な体制整備がなされずに、誰が通報したのかが安易に推測可能である状況が放置されかねません。こうした中小企業の事業者における通報体制のあり方についてどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 まず、内部通報体制整備義務の実効性確保に関しましては、御指摘のとおり、内部通報体制を、形式面だけでなく、実態面においても機能させる必要があります。

 このため、義務の具体的内容を示す指針において、通報の受け付けから調査及び違法行為の是正に至る過程について社内規程を定めるのはもとより、それに沿って運用しなければならないこと等について、関係者の意見も踏まえつつ、盛り込むことを検討する必要があると考えております。

 また、改正案においては、指針を定めようとするときは、あらかじめ消費者委員会の意見を聞かなければならないこととしております。

 御指摘のことも踏まえまして、通報体制を実効的に機能させる指針となるよう、しっかりと検討してまいります。

 次に、中小事業者でございますけれども、御指摘のとおり、中小事業者につきましては、内部通報体制の整備は努力義務としておりますが、消費者の安全、安心を守るためには、中小事業者においても内部通報に適切に対応していただくことが望ましいと考えております。

 このため、消費者庁においては、これまで、民間事業者向けの説明会を開催するなど、制度の周知、広報に取り組んできたところでございます。

 今回の改正法案が成立した暁には、その内容を中小事業者にも御理解いただけるよう、引き続き制度の周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

堀越委員 中小規模の事業者の周知徹底、これまでもされてきたことだと思いますが、まだまだ、先ほども数値で示されていた委員の方もいらっしゃいましたけれども、不十分なところはまだあります。

 今回、法改正を受けて注目が集まっているところでありますので、これを契機として、更に消費者庁の方からしっかりと発信をしていっていただいて、このいわゆる内部通報体制の整備、これが重要なんだということをあわせて発信をお願いしたいと思います。

 そのまさに周知が、これは消費者庁だけではないと思うんですけれども、周知徹底、これが何よりも重要なので、このあたりについてちょっと触れさせていただきたいと思いますが、やはり、昨今起きている企業不祥事などを考えると、国民の生命、身体、財産に極めて大きな影響を与えかねない悪質なものも見られるわけです。

 このような悪質な不正行為について、国民を守るために通報したにもかかわらず事業者から不利益な取扱いをされることを許すような制度は改善していかなければならないと思いますし、このような現状に対して、政府も、我々国会議員も、真剣に危機感を持って対応しなければならないというふうに思っています。

 また、企業としても、多くの被害を引き起こしてから問題が明るみに出るというのは最悪の事態なのであって、この内部通報によって早期に是正措置が図られることができるというのは、そういう意味では、内部通報制度は非常に重要なものであると認識することが企業側にも求められるというふうに思います。

 企業自身の意識改革も、当然、これにあわせて必要になってくるんだというふうに思っております。法律の制定から十六年が経過しているのに、いまだにこういった意識が根づいていないとも言えるわけですから、公益通報者制度の趣旨についてより一層周知を図っていかなければならないと考えております。

 そこで、特に公益通報の主体となる労働者等において制度に対する認知度が高くないことを踏まえると、従来のような、説明会の開催、啓発資料の作成、公表といった手法にとらわれずに、労働者にも直接届くように効果的な周知をするべきだと考えておりますが、今後どのように取組をされていこうと考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、制度の実効性を向上させることにより、通報者が安心して通報を行いやすくするため、公益通報者保護制度の内容について事業者の従業員等に広く周知していくことは非常に重要であると考えております。

 消費者庁としては、この法律の成立以降これまで、公益通報者保護制度についてのハンドブックの作成、配布、相談ダイヤルの開設、運用、制度の概要をわかりやすく説明する動画の作成、配信など、従業員個人に対する周知も念頭に置いた取組を進めてきたところでございます。

 引き続きこうした取組を推進するとともに、改正法が成立した暁には、今般の法改正の内容を説明会等において周知するほか、SNSの活用などにより従業員等に対する直接的な普及啓発を図り、改正法の内容を含め、制度の認知度向上につなげてまいりたいと考えております。

堀越委員 先ほども、動画の作成であるとか、従業員の皆さんにしっかり届くようにということでSNSの活用等々を挙げていただきました。

 今回、新型コロナウイルス感染症を経て、やはり、オンラインでいろいろな情報を収集しようとされる皆さんがふえてきていると思います。消費者庁も、私もフォローさせていただいておりますが、ツイッターアカウント、それからLINEのアカウントも、今回、LINEアカウントに関しては、新型コロナウイルス感染症に関するということで立ち上げたという認識でいいですよね。皆さんうなずかれているので多分そうだと思いますが、これは、もうちょっとLINEの活用も考えていただいた方がいいんじゃないかと思うんですね。

 つまり、消費者問題というのは非常に多岐にわたる。消費者庁というのは何をやっているところなのか一般の消費者がキャッチしやすくするためには、今回、一律十万円給付以外も、例えば、いろいろな給付や助成制度が経産省の方で出されて、それをLINEアカウントで見ると非常にわかりやすく案内をしてくれる、そういうのもありますので、これを有効に活用していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに消費者庁のも思います。

 ツイッターも、ほかのところのフォローはどれぐらいあるのかなとちょっと調べたんですが、消費者庁は二十七万人、これもすごい数だとは思うんですが、ほかの、例えば防衛省なんかは百万人ですし、厚生労働省だと七十九万人、環境省も三十一万人がフォローしているので、そういう意味では、まだまだこのツイッターでの発信というのが必要な数字なんじゃないかなと思います。

 特に今回の、内容を見てみますと、今、新型コロナウイルス感染症の件についてが当然多くなっていて、アルコール手指消毒薬の偽造の問題だとか、一律十万円給付の詐欺のことであるとか、そういったことが主になるのは当然だと思いますが、やはり、どんな議論が国会の中で、今度新しい法改正がこういった形で進んでいますよというようなことについてもあわせて発信していただいて、公益通報者保護法というものがどういうものなのかということについてもまだまだ知らない方々も多いので、こういったツイッター、LINEアカウントを十分活用していただいて、周知徹底していただければと思います。

 特にLINEアカウントについては、働いておられる方々や消費者の皆さんが実際気軽に手にとれる情報ツールとして非常に有効なものだと思いますので、ぜひこのあたりは御活用いただいて、周知徹底と、そして、公益通報者保護法というのが企業にとっても自浄作用を生み、健全な運営ができるんだということもあわせて発信していただけるとありがたいと思います。

 最後になんですが、先日の我が会派の山本和嘉子委員の条文第十二条に係る質問の中で、公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者の守秘義務に関して、過失犯の規定を設けていない改正法案では、過失による漏えいは処罰の対象外となりますと消費者庁は答弁されておりましたけれども、これはやはり、私は抜け穴になってしまうのではないかというふうに思うんですね。

 いわゆる、例えば自動車の交通事故でも、過失で死亡事故を起こした場合、罪は免れず過失致死となるわけですから、たとえ過失漏えいであってもやはり事業者側に何らかの行政措置等の罰則をかけることは合理性があると私は思っております。その点を改めてちょっと指摘をさせていただいて、消費者庁に対する要望とさせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長代理 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 引き続き、公益通報者保護法の一部を改正する法律案について伺います。

 まず、内部通報体制整備義務の実効化について伺います。

 現在、大企業の多くでは、内部通報を受け付ける窓口を設置するなど、取組が行われております。しかし、体制が整備されている企業でも不祥事が頻発している。これは内部通報体制が形式的なものになっているからではないかと思います。

 内部通報体制の形式的な整備、導入ではなく、実際に通報者が安心して通報できる実効ある体制、運用にすべきだと思います。そのために、公益通報者に対する不利益取扱いを禁止し、予防する仕組みを明確にして、通報者保護を最優先に位置づけるべきだと思います。

 法案第十一条四項では、内閣総理大臣は、第一項、第二項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるとしています。この指針に具体的な形で盛り込んでいくべきだと思いますが、いかがですか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 指針に定める体制整備の具体的な内容としては、単なる通報の窓口整備のみならず、通報者が安心して通報することができるよう、御指摘のような通報者に対する不利益取扱いや通報者に関する情報漏えいの禁止を社内規程に定め、その規程に基づき適切に運用するよう求めることを想定しているところでございます。

 もっとも、違法行為を是正し、法令遵守を促進するためには調査を適切に実施する必要があり、実際に指針を定める際には、通報者の保護の観点のみならず、法令遵守の促進の観点からも、通報制度が実効的に機能するようにする必要があると考えられます。

 指針については、こうした観点から、消費者委員会を始め関係者の御意見を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 消費者委員会などで聞くということなんですけれども、その際に、この間本当に御苦労されてきた、その方たちの意見を丁寧に、具体的に組み入れるようにしていただきたいと思うんですが、衛藤晟一大臣、いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 そういう方向のところを検討するということをやっています。

 だから、まず体制を整えるべきところを整えて、そして具体的にそういうことについても検討してまいりたいということでこの五条を入れたところでございまして、この検討については、さらに、有識者やいろいろな方々からの御意見、そして先生方の指摘を踏まえてこの検討を実行してまいりたいというふうに思っております。

畑野委員 ぜひ、よろしくお願いをいたします。

 次に、内部通報の体制や運用に関する具体的な記録の作成や保管などを事業者に求めることが重要だと思います。内部通報制度の利用状況や公益通報者保護の状況を検証する上でも、これが本当に大事だと思うんです。こういったことをきちんと指針に盛り込むべきだと思いますが、いかがですか。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のございました内部通報制度の利用状況等の検証につきましては、内部通報制度の実効性向上の観点からは有用であり、民間事業者向けガイドラインにおいても、窓口の整備、運用の状況、実績について評価、点検することを現在でも推奨しているところでございます。

 他方、現在ガイドラインにおいて推奨されている事項につきましては、各事業者の実態等を踏まえた対応が望ましいものもあることから、法律で定める指針の内容とすべきかについては改めて検討する必要があると考えております。

 今般の改正法案が成立した暁には、御指摘の記録の作成、保管などの点も含め、消費者委員会を始め関係者の御意見を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 やはり状況がこの間ずっとわからない。それは制度上そういうこともあるんですけれども、やはり、きちっとそういったものを記録をしておく、保管をしておく、そのときどうだったのかということを明らかにしておくことが私は今後の、次の改正に向けても大事だというふうに思いますので、衛藤大臣、ぜひそのことについてもきちっと検討していただきたいと思いますが、念押しで申しわけありません、よろしくお願いします。

衛藤国務大臣 まさにこういう議論もずっと行われてきましたので、よく我々も存じ上げています。そして、先生からも御指摘いただきましたように、そういうことでございますので、今後、これは検討していくという方向で頑張ってまいりたいと思っております。

畑野委員 ぜひ進めていただきたいと思います。

 次に、公益通報対応業務従事者の守秘義務について伺います。

 法案第十二条では、正当な理由がなくということが書かれて、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないというふうにされております。

 正当な理由とは何かというのは、今ほども議論になりましたけれども、この間の答弁でも言われているように、通報者本人の同意がある場合などなど言われています。こういうことが正当な理由だというふうにされてしまうと守秘義務が解除されてしまうのではないか、こういう懸念があります。

 そこで、ちょっと確認なんですが、この点については慎重、厳格な解釈指針を示すべきではありませんか。まずこのことを伺います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 秘密保持に関し通報者が与える同意は、その有無や範囲について紛争が生じるおそれがあり、そうした紛争の未然防止の観点からは、委員御指摘のような措置をとることは望ましいものと考えられます。

 消費者庁が策定、公表している民間事業者向けガイドラインでは事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を種々挙げておりますが、その中で、秘密保持に関し同意を取得する際には、開示する目的、範囲、開示することによって生じ得る不利益について説明することや、書面等の明示の同意がない限り、情報共有が許される範囲外には開示しないことの重要性についても触れております。

 ただし、御指摘の改正法案十二条に係る同意は刑事罰に関するものであり、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項のとおりにしなかったからといって、刑事罰に処すべきほどに行為の悪性が認められるとまでは言えないものと考えられます。

 したがって、御指摘のように、同意の際に説明や書面がない限り刑事罰としての守秘義務違反に当たるとすることについては慎重な検討が必要であると考えられます。

 なお、委員から御指摘いただいたこうした課題につきましては、通報対応において推奨される事項を検討する際には有益と考えられますので、制度の周知啓発に向けた取組を検討する中で生かしてまいりたいと考えております。

畑野委員 例えば、この間委員会でも取り上げられているオリンパスの事件、浜田さんの訴えですけれども、社内のコンプライアンスヘルプライン運用規程で、通報が法律の第一条に定める目的の趣旨に沿った内容でないと判断した場合には情報が開示されるようにされてしまったということがありました。これでは、まさに守秘義務が骨抜きになりかねないわけですね。

 ですから、先ほどおっしゃったような、本人の承諾を正当な理由とするというのであれば、想定される事態を説明し、理解させた上で書面による確認を行うというのは最低限の必要なことですけれども、こういったことは、今の話だと、何か玉虫色というか、それぞれの状況がありますねということなので、これは、公益通報者をしっかりと保護すると、事例もいろいろありますけれども、そういうことでしっかりと指針で明確にしないと、本当に、法の抜け穴、実施の中での守秘義務が骨抜きになりかねないと思うんですが、改めて、どうですか。

    〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕

坂田政府参考人 先生の御指摘の点につきましては、法律の逐条解説書などに検討した結果を載せてまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 わかるように、逐条解説も含めて、幅広く徹底していただきたいと思います。

 次に、報道機関等への通報の保護要件について伺います。

 私たちは、外部通報の要件を行政機関への通報と同等にして、外部通報をしやすくするべきだとかねてから考えてまいりました。現在の法律では保護要件が五要件だということで、狭過ぎるのではないかという声が寄せられております。

 内部通報体制に、事業者が内部通報対応業務従事者を定めていない場合や、通報を理由とする不利益取扱い禁止等について定めがない場合や、通報処理に従事する者の利益相反関係排除を定めていない場合や、通報に関する情報共有範囲の限定を定めていない場合など、内部通報処理規程に重大な不備がある場合についても特定事由に加えることを検討すべきではないかという御意見も伺っております。

 この点についてはどうお考えになりますか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案では、公益通報対応業務従事者の守秘義務や事業者に対する内部通報体制整備義務を新たに定めているところでございますが、事業者の規模によっては公益通報への対応業務に従事する恒常的な人員が確保されているとは限らないため、一定規模以下の事業者については、公益通報対応業務従事者を定めることや内部通報体制の整備を努力義務にとどめることとしております。

 そうであるにもかかわらず、御指摘のように、公益通報対応業務従事者を定めていない場合や、御指摘のような内部規程の不備がある場合にまで報道機関等への通報を保護することとしますと、中小企業においても、実質上、公益通報対応業務従事者を定めることや内部通報体制を整備することが努力義務を超えて義務化されてしまうことになるのではないかと懸念をしております。

 したがって、御指摘の場合における報道機関等への通報を保護の対象とすることについては、慎重な検討が必要と考えております。

畑野委員 通報経験者の方からは、外部通報こそ、ハードルを下げて通報しやすいように充実強化してほしいという声が相次いでいるわけです。これは、ぜひ、こうした声に応える対策を進めていただきたいということを申し上げておきます。

 次に、通報対象事実の範囲についてです。

 現行法では、税法、補助金適正化法、公職選挙法、政治資金規正法など、重要な法律が対象に含まれておりません。法令違反一般に拡大すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 御指摘のように、法目的の限定を解除して法令一般を保護の対象とすべきとの議論があることは承知をいたしております。

 しかしながら、消費者委員会の専門調査会の調査審議の中でも、対象となる法律がどの程度広がるのか不明瞭であるという意見や、行政機関等の負担増大による体制面の懸念があるという意見があったところでございまして、法目的の限定を外した場合、公益通報と消費者の生活や利益との関連性が希薄となることの妥当性が問題となります。

 政府としては、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいります。

畑野委員 大臣おっしゃったように、答申の中では、法目的による限定をしない場合には対象法律を列挙する方式をやめるべきだという意見もあったわけですね。

 現在の法律が議論された当時、国会での参考人として来られた企業の代表者の方からは、企業の法令違反を是正する上でも全ての法令に関する通報を対象にすべきだという意見もあったということを我が党の議員も紹介しながら、政治の役割を含めてしっかりやるべきだということを申し上げたわけです。そういう点では、しっかりと今後の議論を進めていただきたいと思います。

 公益通報者の範囲について、退職者の範囲、これは期間制限をつけないようにすべきではないかと思います。そのことはこの間議論されてきているんですが、この点についてはいかがでしょうか。

衛藤国務大臣 今回の改正法案につきまして、委員の皆様方から御指摘をいただきました。しかし、法令違反行為を早期に是正することが重要との観点から、退職後一年以内の通報者を保護することとしています。

 これは、違法行為の早期是正のためには早期の通報を促す必要があるため、保護される通報を退職後一定の期間内のものに限定する必要があると考えられるためであります。

 加えて、退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報された事案でございました。そのため、退職後一年以内にされた通報を保護すれば実際に不利益取扱いの想定される通報のほとんどを対象とすることができるというぐあいに考えることから、一年の期間制限としているところであります。

 これも、実際の運用を見ながらやはり検討しなければいけないというぐあいに考えております。

畑野委員 実際の運用を見て検討をしなくてはいけないというふうに衛藤大臣がおっしゃいました。これは速やかな検討をしていただきたいというふうに思います。

 消費者委員会の答申でも、期間制限を設けないことが望ましいとして、限定する場合には、法制的、法技術的な観点から整理を行い、実態等に照らして合理的な期間を設定するべきだとしておりまして、一年などとは限定しなかったわけですね。どこから出てきたのかというと、経団連から出てきたのではないかということですから、これはしっかりと進めていただきたいと思います。

 次に、役員が外部通報を行う場合の事業者内部での是正に努めるという前置措置を外すべきではありませんか。いかがでしょうか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 不正行為は事業者みずからが自浄作用を発揮して早期に是正されるのが望ましいところでございますが、役員は、不正のおそれに気づいた場合、本来はみずからその調査、是正に当たる義務を負っております。

 そのため、役員については、まずはみずから不正行為の調査、是正に当たるよう、原則として、事業者内部において調査是正措置に努めたにもかかわらず、なお不正行為のおそれがある場合には事業者外部への通報が認められることとしたところでございます。

畑野委員 あのオリンパスの事件で言われてきたように、当時の社長が損失隠し、粉飾決算を知って、本人がやっているんじゃないんです、会長や副社長がやっていたその責任を問い、その辞任を求めたのに、訴えた社長が逆に解任されてしまった。もう一つのオリンパス事件です。

 また、食品加工卸会社ミートホープの食肉偽装事件でも、告発者は同社の常務取締役でした。同社は、結局、自己破産し、従業員は全員解雇になってしまった。

 前置措置があることで、これは法改正後も妨げてはならない、救済を妨げてはならないというふうに私は思います。

 幾つかのこの間不祥事の中で、どんなような体制になっているのかということを聞いてまいりました。

 例えば、日産のゴーン氏のあの事件では、ガバナンス改善特別委員会の報告書というのがありまして、日産には内部通報制度は存在するが、本件不正行為等の防止のために必ずしも有効に機能しなかった、これは、通報内容についてCEO傘下の組織が取り扱う体制になっており、最終的にはCEOが通報内容を知り得るかのような外観となっていたため、CEO自身による不正には効果がないと考えられているためである、このような事態を改善するため、内部通報制度の最終的な通報先を監査委員会として、執行役が通報者及び通報内容を知り得ない体制とすることを提言とするということも言われている。

 それから、内部通報制度が機能しなかった例として、東京医大に設置されていた内部通報、外部の法律事務所への通報をも含む、の制度においては、通報内容が理事長に伝達される仕組みがとられていたと。

 ですから、これは今回の役員の外部通報の問題だけではないんですけれども、こういう内部の体制がしっかりとできていない、言ったらそれは大問題になってしまう、こういうことをやはり阻止するためには、外部通報を行う場合のこの前置措置、これを外すべきだと私は思います。これは更に検討していただきたいと思います。

 次に、取引先や下請等の事業者を加える、このことを検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先事業者を公益通報者に含めることについては、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討することとされました。

 具体的には、事業者間取引には基本的に契約自由の原則が妥当する中で、契約解除等における不利益取扱いの判断や公益通報を理由とすることの判断が困難であること、二点目に、保護の対象とする取引先事業者の範囲を画する合理的な基準を策定することなどが今後の課題であると指摘されております。

 政府としては、今後、改正法案の成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 雪印食品の牛肉偽装事件については先ほどもお話がありました。不正を知り告発したのは、取引先事業者である食肉冷蔵倉庫の会社、西宮冷蔵の社長でした。本当に御苦労された。

 企業、業界自身が自浄能力を発揮して、相互に社会的責任を自覚した経営を行うためには、保護対象とする通報者に取引先、下請等事業者を私は含む必要があると。これもぜひ進めていただきたいと思います。やはり、親事業者による契約の解除とかその他いろいろな不利益な取扱いというのがあるわけですから、これを禁止していくということを求めます。

 第八条では、他人への正当な利益等の尊重というのが現行法で盛り込まれております。これは公益通報することを萎縮させるのではないか、削除するべきではないかとこの間考えてまいりましたが、いかがでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 公益通報に際して、例えば取引先の営業秘密や国の安全にかかわる情報などがあわせて通報された場合は、他人の正当な利益や公共の利益が害されることもあります。また、軽率に報道機関等の事業者外部に通報した場合には、その内容や通報先の対処の仕方によっては、名指しされた事業者やその従業員に回復しがたい信用上の損害を与える可能性もあります。

 このため、公益通報者といえども可能な限り他人の正当な利益や公共の利益にも配慮すべきと考えられ、現行法の第八条が規定されております。

 この規定を削除するかどうかは、このような立法趣旨を踏まえた丁寧な議論を要するものと考えられます。

畑野委員 済みません、時間が来ていたということで、時間を勘違いしておりました。

 立証責任の転換を含めた修正をこの間求めてまいりました。更に今後の体制を進めていただきたいということを求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 本法案は、与野党の筆頭理事の力添えも含めまして、与野党が一丸となってすばらしい法案へと変わっていくようなことでありますし、本当に必要な法案ではないかなと思っているんです。

 先ほどから委員の質問にもありましたように、まさにこの法案を生かしていくためには、民間事業者へのガイドラインというのが使いやすいものになっていなければならないんだろうなというふうに思っています。そういう意味で、今公表されている民間事業者へのガイドラインというのは、いささか、ちょっと大企業目線のような気がしているわけでございます。大きな上場会社もあれば、そうでない会社もある中で、ちょっとハードルが高いような内容になっているのではないかなと思いますので、きょうはガイドラインを中心にして質問をさせていただきたいと思うんです。

 といいますのは、本当に、粉飾決算というような世間を騒がすようなこともあれば、消費期限を書きかえるとか、今であれば新型コロナの衛生手順を手抜きをしているとかいうような小さなことまで、いろいろな問題がある。そういう中で、従業員がこれはまずいなというのは、いち早く企業も知って、例えばそれが店長なりの末端の部分で行われているのであれば、すぐにそれを解消していくということができるわけですから、いかに簡単にといいますか、小さなことも含めまして、速やかに通報していくということが望まれるわけでございます。

 普通に考えてみますと、自分が従業員で店長から何か指示がされた、これは手を抜いていいぞとか何か言われたときに、自分は一体どうなるだろうかというのを考えたときに、じゃ、誰に相談しに行くのかというようなことなんですが、そこが非常にハードルが高くなると、情報がだだ漏れになっていくということになるんだと思うんですよ。

 例えば、低いのであればすぐに一人で連絡をすることができるわけですけれども、ハードルが高くなると自分一人ですぐにということにならなくて、例えば同僚に相談するとか、いろいろな人に相談をしながらと。そうすると、その情報がどんどんどんどんだだ漏れになって、Aという人間はこういうことを言っているよなんという話が伝わっていってしまうわけですよね。

 そういう中で、今回、そのガイドラインを見ますと、通報しやすいこととして、通報窓口には、「敷居が低く、利用しやすい環境を整備することが必要である。」こう書いてあるんですが、その例として適当なものとして、法律事務所や民間の専門機関等を挙げているんですね。

 「敷居が低く、利用しやすい環境を整備することが必要である。」といいながら、法律事務所や民間の専門機関等をガイドラインとして挙げているということ自体が、果たしてこれは世間的に敷居が低いと言えるんだろうか。たった一人でいきなり法律事務所に相談に行くということが、簡単にできる、これが敷居が低いという書き方の中で例として挙げられていることが適切なんだろうかということをお伺いしたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 外部の通報窓口については、通報者の匿名性を確保できることから、これらを設けることにより、職場内部の窓口に通報するよりも心理的な負担が少なくなり、通報しやすくなる場合もあると考えております。

 なお、外部の通報窓口の候補として、法律事務所や民間の専門機関等を民間事業者向けガイドラインで挙げているのは、秘密保持等が強く求められるその業務の性質上、一定の専門性を必要とすることをその理由としているところでございます。

串田委員 そこの法律事務所なんですが、利益相反にならないようにということになっているわけですけれども、会社の顧問弁護士というのはここで言う利益相反には当たらないんでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、ガイドラインでは、中立性、公平性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがあるものを通報の外部窓口として起用することは避けるべきとしております。

 いわゆる顧問弁護士が顧問先企業の外部窓口を受任することが利益相反等に該当するか否かは、個別の事案ごとに判断する必要がありますが、外部窓口の利用者である従業員の立場からは、中立性等に疑義が生じ得る委託先か否かが判断できることが重要です。

 そのような観点からは、顧問弁護士への委託である場合には、その旨を従業員向けに明示するなどにより、外部窓口の利用者である従業員が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供することが望ましいと考えられます。

串田委員 今聞いても、ちっとも実はわからないと思いますよ。

 本当に、じゃ、いいのかどうかというのはどうなのかといったときに、従業員からすれば、経営者と相談をして企業を防御していく立場にある法律事務所というのは利益相反にならないのかどうかというのをはっきりと今も言明されていない上に、小さな企業はそもそも顧問弁護士一つを外部委託するというのも大変な中で、二つも、複数の公益通報用専用の弁護士事務所と契約をするなんというのは、これは本来的に考えると具体的にはすごく難しいと思うんですよ。

 だから、ガイドラインとして書いてあるのはいいけれども、もう絵に描いた餅で、果たして本当にこんなことをやっていけるのかどうか。さらに、専用回線なども指摘されているわけですよ。そんなことを本当にできるんだろうか。

 だから、こういったような本当に大事な法案であるし、与野党が一致してこういう法律をつくろうとしている以上は、大企業はそういうこともできると思いますよ、だけれども、中小企業、特に今、新型コロナのこういう状況の中で、会社経営もどうなるかというときにつくる法律なわけですから、何か上から目線的な、ちょっと言い過ぎかもしれないけれども、大企業目線的な、大企業ならできるようなガイドラインのままにしていってしまうのであれば、ちょっと現実的でない。

 先ほど委員からの御指摘の中で、このガイドラインもつくり直すようなこともおっしゃっておられましたので、ぜひ、中小企業、そういう負担もできないようなところの中で、どうやって通報しやすくしていくのかということの手助けになるようなガイドラインというものをつくっていただきたいと思うんです。

 ちょっと今、答弁の中で、法律事務所以外に民間の専門機関ということが書いてありました。これはガイドラインにも専門機関としか書いてないんですけれども、そういう専門機関というのは、例えばどういうものがあるんですか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 事業者の通報を事業者外部で受け付けるサービスを提供する専門の事業者があると承知しております。

串田委員 その公益通報を受け得る専門の機関が、現実に日本に幾つかあるということではないんですか。どういうことなんですか。もう一度ちょっとそこを詳しく教えていただけますか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 幾つかの会社を把握しておりまして、コンプライアンスのホットラインのサービスですとか、CSRのための推進とか、あるいはヘルプラインというようなものを設ける、そういうサービスを提供している会社があると承知しております。

串田委員 そういう機関があるということであれば、その機関があるということを企業が従業員に告知していくというのがガイドライン的には推奨しているのかなというふうに思うんですけれども。

 先ほどほかの委員からもありましたように、その通報の仕方が、専用回線というぐらいですから、電話というのもあるでしょうし、メールというのもあるでしょうし、手紙というのもあるわけですけれども、匿名性、匿名の通報もいいということであるんですが、その場合、企業が匿名という状況のときに誰が通報したのかということを探知すること自体も、この法案によっては禁止されているという理解でよろしいですか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 ガイドラインにおきましては、通報者保護の観点から匿名の通報も受け付けることが必要であり、かつ、匿名の通報の場合でも、通報者と通報窓口担当者が双方向で情報伝達を行い得る仕組みを導入することが望ましいとしております。

 また、匿名の通報がなされた場合に通報者を探索することは、一般論としては通報者保護の観点から控えるべきであると考えておりますが、事業者の利益が不当に害されているケースなど、一定の例外があると認識しております。

串田委員 最後の部分がよくわからないんですけれども、通報が匿名だと企業に害を生じる場合があるということなんですが、イメージとしてどんなことがあるんですか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 例えば、虚実織りまぜた情報をSNSを用いて頻繁に情報発信する、報道機関に繰り返し投書する等の行為が考えられると思っております。

串田委員 それは全く今回の通報の保護法とは関係がなくて、要するに、通報窓口が一元化して決まっているのであれば、匿名であるということで害が生じるということは私はないと思うんですよ。

 要するに、ほかの方法で企業側の不利益になるようなことを情報発信するということ自体が問題だというのはよくわかるんですけれども、匿名性をもって企業に害を生じる場合があるということを言ってしまうと、非常に匿名性というものをちゅうちょする、そういう方向性を私は感じるんです。

 このガイドラインの中には、通報することも許されるかのような形なんだけれども、むしろ、企業としては、匿名性でも構わないということを従業員に告知するということ自体の方が、本来、通報が受けられやすい形になるんじゃないですか。そのかわり、窓口はここに速やかに行っていただきたいと。それ以外のところに拡散することによって世間の誤解を招いてしまうということを避けるためにも、いち早く企業にその事情を知らせてほしいと。そのための、匿名性でも構わないから窓口はここにしてくれと言うんだったらわかるんだけれども、匿名性だから害がある、その理由としてSNSとかを挙げるというのは、SNSでそんなことをやること自体、匿名であろうと何だろうと、それは企業としては問題なわけで、今回の法案というのは公益通報者が窓口に通報することを前提としていないと、今の回答は私はおかしいと思うんですが、いかがですか。

高田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、匿名の通報を受け付けることは必要でございますし、そういう場合にはこういう窓口があって、こういうような仕組みにするということをきちんと定めることが重要でございます。

 先ほど申し上げましたのは、匿名の場合に通報者を探索することが、一般論としては控えるべきであるということでございまして、その場合の例外がどういう場合があり得るかということでございまして、御説明申し上げました。それはもうもちろん、御指摘のとおり、この法律で保護するような公益通報ではございません。もちろん、委員の御指摘のとおりでございます。

串田委員 匿名というものを例外として捉えるのではなくて、一形態として、正々堂々と、匿名でも構わないということを企業として明記するような形のガイドラインというのが私は必要なんだろうなと思うんです。

 もう一つ、このガイドラインでおやっと思ったのが一つありまして、通報によって推進に寄与した場合は、経営トップ等からの感謝を伝えることが適当であると書いてあるんですよね。これは必要ですか。

 ということは、この感謝がなかったということは推進されていなかったということで、自分自身、これは言ってよくなかったんじゃないかとか思うと思うんですけれども、感謝というのがあるということ自体が、何か特定されていくような、周りからも、何かおまえ感謝されたみたいだなとか、通報すること自体を後で会社側が特定するようなこと自体、必要なのかどうか。

 もし必要だったら、私は、聞いて納得すればあれなんですけれども、ちょっとガイドラインに書いてあったものですから、おやっと思ったんですが、どういうこれで書かれたんでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 ガイドラインでは、内部通報がコンプライアンス経営の推進に寄与した場合には、通報者の組織への貢献を正当に評価することが適当としており、例示として、経営トップ等からの感謝を伝えることに言及しております。

 これは、組織のためにあえてリスクを冒してまで警鐘を鳴らした従業員の貢献を経営トップ等が正当に評価することが、コンプライアンス経営の促進や組織内における通報しやすい環境の醸成につながると考えられることから、記載しているものでございます。

 ただし、この趣旨は、みんなの前で名前を明らかにして伝えるということを意味しているものではございません。当然、守秘義務という観点から、通報者の秘密を守るべき場合でございますので、そういう場合は、その人だけにわかるように感謝を伝えるとか、いろいろな工夫のやり方はあると考えております。

串田委員 私も、目の前で、よくぞ通報してくれたと言って渡すとは思っていないんですけれども、何かこういったようなことが本当に必要なのかどうかということも、今度、ガイドラインをつくるときにもう少し検討していただければなと。

 大企業であれば別ですけれども、中小企業の場合にはもうかなり限られているわけですから、こういったようなことで、わざわざ保護をして漏えいしないようにすると言っておきながら、通報された人に対して後々会社側から何かこう接触をしていく、その通報に対してアクションを起こしていくということ自体が漏えいをしていく一つの端緒になってしまうのではないかというような危惧というか懸念も感じていただきながら、ガイドラインをつくっていただきたいと思います。

 今度、ガイドラインをつくるに当たっては、今言ったような形で、敷居というのが法律事務所だとかいろいろ言っている。これはまあ皆さんにとっては敷居が低いのかもしれないけれども、一般的にはちょっと敷居が高いのかなというふうに思います。

 そういう場合に、同僚だとか店長だとか、とにかく相談をするということ自体が十分予見できる。それは今回の保護法益の担当者じゃないわけですよ。担当者じゃないところにまずは相談に行ってしまうという流れが起きやすいということを十分に念頭に入れていただきながら、このガイドラインをつくっていただきたいんですが、最後に、大臣、その点について御所見をいただければと思います。

衛藤国務大臣 組織の自浄作用を健全に発揮するためには、経営トップの関与が極めて重要でありまして、民間事業者向けのガイドラインでは、内部通報制度の整備に関する経営幹部の役割を明文化することの重要性について記載をしていきます。そういう意味では、企業文化も変える必要があるというぐあいに思っておりますので、それを徹底することがまず必要であるというぐあいに思っております。

 そういう意味で、実効的な内部通報制度とするためには、多岐にわたり得る通報内容や再発防止策等を経営に反映させるということが重要でございますので、こうした観点から、経営幹部を通報制度の責任者とする必要性をガイドラインにおいて記載をいたしております。

 もっとも、経営幹部自身が違法行為に関与している場合など、経営幹部に対する通報が隠蔽されてしまう可能性もないわけではありません。そうした場合に備えまして、経営幹部から独立した通報窓口の設置をガイドラインにおいて推奨しているほか、隠蔽のおそれがある場合には外部の報道機関等への通報についても保護される法的枠組みとするなどの手当てを行っているところであります。

串田委員 時間になりました。

 非常にいい法律だと思いますので、魂を入れるという意味で使いやすいガイドラインにしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 この際、本案に対し、穴見陽一君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党、日本共産党及び日本維新の会・無所属の会の五派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。青山大人君。

    ―――――――――――――

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

青山(大)委員 ただいま議題となりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 本修正案は、政府がこの法律の施行後三年を目途として検討を加える対象として、公益通報をしたことを理由とする公益通報者に対する不利益な取扱いの「裁判手続における請求の取扱い」を明記するものであります。これは、立証責任の転換に関する規定の創設も視野に入れて検討することを政府に義務づける趣旨であります。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。畑野君枝君。

畑野委員 私は、公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案への賛成討論を行います。

 現行法の抜本改正は、国民生活の安心、安全を損なう企業の不祥事が相次いで発覚し、また、通報したことを理由に不利益な取扱いを受ける人が後を絶たないもとで、喫緊の課題とされてきました。

 十四年もの年月がかかって提出された改正案は、二〇一八年十二月の消費者委員会専門調査会の答申を踏まえたとしていますが、答申に盛り込まれ、日本弁護士連合会や全国消費者団体連絡会などが何よりも求めていた不利益取扱いに対する行政措置の導入が、そっくり抜け落ちています。また、通報者が解雇などの不利益取扱いを受けて提訴した場合の立証責任を事業者に転換することについては、何ら盛り込まれていません。

 改正案は、事業者への規制を限定しようと経団連などが抵抗するもとで、消費者委員会での議論や答申に照らし、不十分なものにとどまっています。

 一方、新たに盛り込まれた改正点としては、事業者に内部通報体制の整備を義務づけ、通報窓口の担当者等に刑罰つきの守秘義務を規定したことや、不利益な取扱いから保護する通報者の範囲を拡大し、保護の対象となる通報の範囲を拡大するなどの条項において、現行法より、部分的ではあるが、改善と評価できるものです。

 修正案は、法施行後三年を目途として検討を加える対象として、公益通報をしたことを理由とする公益通報者に対する不利益な取扱いを裁判における請求の取扱いとして明記するものです。

 これは、改正案で不十分となっていた立証責任の転換に関する規定の創設も視野に入れて検討することを政府に義務づけるという趣旨であることを強調して、賛成討論といたします。

土屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、穴見陽一君外六名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、青山大人君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党、日本共産党及び日本維新の会・無所属の会の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。尾辻かな子君。

尾辻委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 本法の改正趣旨や各条項の解釈等について、現行の公益通報者保護法及び公益通報窓口とともに、労働者、退職者、役員、事業者、地方公共団体、関係行政機関等に十分周知徹底すること。周知に当たっては、公益通報者保護法の認知度が低いことを踏まえて、認知度が上がらなかった要因を分析すること。

 二 本法に基づき内閣総理大臣が定める指針において内部通報体制整備義務の内容を定めるに当たっては、法令遵守の促進の観点に加え、通報者への不利益取扱いの防止や通報者の氏名等の秘密の保持など通報者保護の観点を明確化するほか、内部通報に関する具体的な記録の作成・保管など内部通報制度の利用状況や通報者保護の状況を事後的に検証できるよう、内部通報体制整備の在り方について検討を行うこと。

 三 消費者庁は、内部通報体制整備義務の履行を徹底するため、同庁内部の人材育成・人員増強を行うとともに、将来的に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を十分に担うことのできる体制を整えるための組織的基盤の強化を図ること。

 四 消費者庁は、内部通報体制整備義務の履行に関する行政措置を行うに当たり、その円滑・確実な実施に向けて、関係行政機関の協力を得つつ運用すること。

 五 公益通報対応業務従事者等の守秘義務が解除される「正当な理由」については、事業者がとるべき措置に関して考え方を明らかにするとともに、通報者の氏名等が不要に漏らされることのないよう、公益通報対応体制の整備の促進に努めること。

 六 本法に基づき事業者が定めなければならない公益通報対応業務従事者に対する研修・教育を十分に行うこと。

 七 通報をしようとする者が事前に相談する場が必要であることから、民間における通報・相談の受付窓口の更なる充実に関し、日本弁護士連合会等に協力を要請すること。

 八 本法附則第五条に基づく検討に当たっては、行政処分等を含む不利益取扱いに対する行政措置の導入、立証責任の緩和、退職者の期間制限の在り方、通報対象事実の範囲等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。衛藤国務大臣。

衛藤国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

土屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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