衆議院

メインへスキップ



第5号 令和4年12月7日(水曜日)

会議録本文へ
令和四年十二月七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 稲田 朋美君

   理事 井原  巧君 理事 牧原 秀樹君

   理事 宮崎 政久君 理事 宮下 一郎君

   理事 山井 和則君 理事 吉田 統彦君

   理事 池畑浩太朗君 理事 古屋 範子君

      上杉謙太郎君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    小林 鷹之君

      田畑 裕明君    武村 展英君

      土田  慎君    中山 展宏君

      西野 太亮君    長谷川淳二君

      鳩山 二郎君    平沼正二郎君

      船田  元君    堀内 詔子君

      松島みどり君    松本  尚君

      保岡 宏武君    井坂 信彦君

      石川 香織君   大河原まさこ君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      柚木 道義君    早稲田ゆき君

      浅川 義治君    沢田  良君

      堀場 幸子君    前川 清成君

      國重  徹君    吉田久美子君

      田中  健君    本村 伸子君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   財務副大臣        井上 貴博君

   文部科学副大臣      簗  和生君

   政府参考人

   (内閣官房こども家庭庁設立準備室審議官)     長田 浩志君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     黒田 岳士君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    植田 広信君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     小林万里子君

   参考人

   (中央大学大学院法務研究科教授)         宮下 修一君

   参考人

   (全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長)     川井 康雄君

   衆議院調査局第一特別調査室長           菅野  亨君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月七日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     川崎ひでと君

  長谷川淳二君     西野 太亮君

  青山 大人君     長妻  昭君

  井坂 信彦君     西村智奈美君

  浅川 義治君     前川 清成君

同日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     上田 英俊君

  西野 太亮君     長谷川淳二君

  長妻  昭君     青山 大人君

  西村智奈美君     柚木 道義君

  前川 清成君     堀場 幸子君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     松本  尚君

  柚木 道義君     井坂 信彦君

  堀場 幸子君     浅川 義治君

同日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     上杉謙太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出第二二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

稲田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、中央大学大学院法務研究科教授宮下修一さん、全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長川井康雄さん、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただければと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず宮下参考人にお願いいたします。

宮下参考人 ただいま御紹介にあずかりました中央大学大学院法務研究科の宮下修一と申します。

 本日は、このような貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私の方からは、本日、二つの法案について審議されるということでございますが、そちらに対して意見を述べさせていただきます。

 私は、専門は民法と消費者法というのをやっておりまして、先般、消費者庁において開催されました霊感商法等の悪質商法への対策検討会では、座長代理を拝命しておりました。その関係で、本日は、私の資料、一枚紙でございますが、こちらをお配りさせていただくと同時に、霊感商法等の悪質商法への対策検討会の報告書を資料として添付させていただいております。

 この霊感商法等の悪質商法への対策検討会、七回にわたって、大変密度の濃い議論をさせていただきました。その議論の中で、いろいろな御意見がありましたし、私もいろいろな意見を述べさせていただきましたが、最終的にまとまりました提言というのが、もう先生方御承知かと思いますが、報告書四ページのところにまとめられているところでございます。

 その中で、本日関係するところは2及び3であるというふうに承知しておりますけれども、こちらについて若干の意見を述べさせていただきます。

 まず、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案についてでございます。

 こちらについては、中心となりますのは消費者契約法の改正案かと存じますけれども、四条三項六号、これは現行でございまして、二〇二二年、本年改正されました消費者契約法では八号になる予定でございますが、この対象範囲につきまして、今般の改正では、当該消費者だけではなく、親族の生命、身体、財産その他の重要事項、そして、将来生じる可能性があるものだけではなく、現在生じている重大な不利益、さらに、将来の不安をあおるだけではなく、現在の不安を抱いていることに乗じた状況にまで拡大した、この点は、被害者救済の観点から、私は評価すべきであるというふうに思っております。

 まさに相手方の弱みにつけ込むという、この乗じたという言葉が入るということが、今回は非常に大きな意味を持っているのではないかなと個人的には考えているところであります。

 ただ、御承知のように、この条文は、多少いろいろなことを盛り込んでおりますので、読みにくくなっているところがございます。消費者契約法の逐条解説と言われるものが消費者庁から公表されておりますけれども、その内容については、丁寧に解説するとともに、周知徹底していくということが必要であろうかと思います。

 特に、必要不可欠という言葉についていろいろ議論があるというふうに承知しておりますけれども、消費者契約法では、これまでも逐条解説において、例えば、事業者の不退去というようなところで、退去すべき意思表示をせよ、こういうようなことが条文には書かれておりますけれども、これは、口頭で帰りなさいと言わなくても、身ぶり手ぶりでも構わない、あるいは契約はもう結ばないと言うことでも構わない、こういったような形で、広く逐条解説というところで解釈をされているところでございます。そういったことを考えると、逐条解説で丁寧に解説をするということによっていろいろな誤解というのも解けるのではないかなというふうに考えております。

 それから、続きまして、取消権の行使期間の伸長につきまして、短期については一年から三年、長期については五年から十年への伸長がなされました。この点については、やはり、短期というところも大事でございますが、長期というところが非常に大事であるというふうに認識しております。

 こちらは検討会の議論でもございましたけれども、短期のところは、いわば困惑から脱したときというところを少し広げて考えることによって比較的救済の幅は広がるわけでありますが、やはり、消費者契約から五年ということでは余りにも短過ぎるのでないか、こういった議論が検討会でもあったところでございます。

 その点について、今般、十年まで広げていただいているということで、これも被害者救済の観点からは一定の評価をすべきであるというふうに考えております。

 また、二〇一八年に、この消費者契約法四条三項六号というのが改正法によって導入されましたが、それが施行された後のものにも遡って、網を広げてカバーしていこうという点については、これもやはり被害者救済の観点からは評価すべきだろうというふうに思います。

 それから、もう一つ、国民生活センター法の一部を改正する法律案というのもございますが、こちらについては、重要消費者紛争解決手続、いわゆるADRの迅速化、あるいは事業者名の公表、それから適格消費者団体への支援、こういったことについて、予算も措置をしながら強化していくということでございますので、こちらについてはまさに早期の実現を期待しているところでございます。

 ただ、検討会の報告書では、詳しく見ますと、報告書六ページのところでございますが、そちらの上から五行目のところに、いわゆるつけ込み型の不当勧誘に対する取消権というものについても法制化に向けた検討が必要であるという提言をさせていただいております。こちらについては、私も、なお引き続き国会の場で議論をいただいて、是非実現をしていただきたいというふうに考えております。

 ただ、こちらについては、二〇一六年、二〇一八年、二〇二二年と、三回の改正に際して様々な場で議論をいただいてきたところですが、なかなか成案というのを得られなかったという状況もございますので、今般、拙速に議論するのではなく、時間をかけて議論して、より使い勝手のいい法律になるようにしていただければというふうに考えているところでございます。

 続きまして、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案というものがございますが、こちらは、いずれも非常に重要な提案がなされているというふうに考えております。

 契約だけではなく単独行為というものも対象としていること、また、寄附者への配慮義務というものを新設したこと、そして、不当勧誘行為を禁止行為として明確化した上で取消権というものも、それに伴って取消しをできるように新設をしていること、そして、借入れ等による資金調達の要求の禁止、さらに、債権者代位権というものを使うことを前提にした特例の新設ということで、こちらはいずれも、被害者救済の観点からは一歩前進であるというふうに評価すべきであると考えております。

 ただ、今後、いろいろな状況というのが起こることも予想されますので、具体的な運用状況というものを踏まえた上で、必要に応じて見直しを検討していく必要があろうかというふうに思っております。

 それから、この法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案を一読いたしますと、とりわけ、債権者代位権等、一般の方々には少し分かりにくい概念というか、そういった法律の用語が使われているということでございます。こういったことについては、一般市民の皆様に向けて丁寧な説明、それから啓発というのをして、被害の防止というものにつなげていく必要があろうかというふうに考えております。

 私ども、私を含めまして、検討会では委員が全員、それぞれの立場から意見を交わしまして、そして忌憚のない、まさに先ほど委員長からもありましたが、検討会の場でも忌憚のない意見をぶつけ合って、その成果として出た報告書というものを、今回、法案という形でいろいろ取り入れていただいているというところについては、私としては、座長代理という立場にあった者として、心から感謝申し上げます。

 それと同時に、先ほど申し上げました、つけ込み型の不当勧誘等のまだ残された課題があるということは、私も指摘をさせていただければというふうに考えております。この検討課題を含めて、今般のこの改正案というものにおいて提案されたことだけで終わりということにするのではなく、この後、またいろいろな形で、恐らく世の中でも問題が生じてくるかと思いますが、そうした問題について皆様にもいろいろと議論をいただいて、また更に使い勝手のよい法律にしていただくというようなことが必要かとは思います。

 ただ、その第一歩として、何もなかったところから法律を作るということも、これは大変な、大事な作業かと存じます。いろいろな御議論があることは私も検討会の最中から承知をしておりますけれども、まずは、大きな第一歩、立法という形でこの第一歩を踏み出した上で、更にその内容を精査して、そしてよりよいものに発展させていくということが大事かと思います。

 その意味では、今回、様々な形で被害を受けている皆様の救済ということを考えたときに、是非とも、この法律案というものを制定していただければというふうに考えております。

 以上、拙い意見でございますが、私の意見とさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

稲田委員長 ありがとうございました。

 次に、川井参考人にお願いいたします。

川井参考人 全国霊感商法対策弁護士連絡会の事務局長をさせていただいております弁護士の川井と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、私の資料の一番最初のレジュメのところからお話をさせていただきたいと思いますけれども、今回の審議の契機となりました安倍元首相の銃撃事件から五か月が経過しました。この短い期間、与野党の先生方には本当に御尽力いただいたと思っております。特に、被害者からのヒアリングを多数行っていただいた先生方の正義感、熱意に対しては、心より敬意を表したいと思います。

 ただ、残念ながら、現在の新法、私どもが言っているこの新法というのは、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案、これを新法というふうに言いますけれども、こちらの方は、少なくとも統一教会の被害実態からすると、不足している点が幾つもあると言わざるを得ません。

 統一教会が行っている加害の中核は、正体を隠して知らないうちに教義を教え込んで信者に仕立て上げるという、信教の自由の侵害行為にあります。高額献金、これは非常に大変な被害ではありますけれども、これはその植え付けられた教義によって生じる被害の一側面にすぎません。したがって、本来は、この正体隠しの違法な伝道活動、こちらを正面から規制する立法が検討されるべきと考えております。この点は、本日以降、是非速やかに検討を開始していただきたいと考えているところです。

 以下では、新法の不足点全部について言及することは難しいので、重要なポイントに絞ってお話をさせていただきます。

 なお、新法の問題点を一覧にしたものについては、私の資料の四ページ以下、四ページ、五ページの方でまとめておりますので、併せて御参照いただければと思います。

 まず最初に、新法の配慮義務という点についてお話をさせていただきます。

 今回、配慮義務として置かれている新法三条の一号、自由な意思の抑圧、それから二号、生活の維持、三号は法人等の明示あるいは寄附の使途の誤認防止というところですが、これらはいずれも統一教会の加害実態からすると非常に重要な内容を含んでいると考えております。

 ただ、これが配慮義務というだけでは、では、実際に違反した場合にどうなのかというと、これが裁判所で不法行為と判断されるかどうかは、正直言って極めて不透明と言わざるを得ません。そもそも一号と三号前段は、判例上も違法性の判断に組み込まれている要素でして、これを配慮義務として規定するだけではほとんど役に立たない、意味がないと言わざるを得ないのです。こうした判例がある以上は、禁止行為にすべき立法事実が十分にあるというふうに考えております。

 また、特に三号の規定なんですけれども、こちらは寄附の際に寄附をする団体あるいは使途を明らかにせよという内容ですから、非常に明確な規定になっております。したがって、これを禁止行為にできない理由はないのではないかというふうに考えております。

 そして、この配慮義務に違反した場合の効果について、こちらは、与党の修正案の方では配慮義務に違反した場合に勧告、公表の対象となるというふうにされております。ただ、その要件が、配慮義務の遵守がなされていないため個人の権利保護に著しい支障が生じていると明らかに認められるという、非常にハードルの高いものになっております。この規定では、相当に深刻な違反がない限り適用されないのではないかという懸念を持っております。

 また、では、具体的に勧告が出されたときにどういった内容の勧告になるのか。これは、新法の七条の方では、「当該行為の停止その他の必要な措置」というふうに元々規定としては置かれておりますけれども、配慮義務違反の寄附がなされた場合、この「その他の必要な措置」の中に当該寄附の返金まで含まれるのであれば救済につながるなというふうに思っておりますが、この点が現在の案では不明なままです。

 あくまで配慮義務のために、配慮義務に違反しただけでお金を返せとまで言えるのかどうか。禁止行為であればお金を返せというのは素直な解釈だと思いますが、この点が不明だということで、明らかにしていただきたいと思っておりますし、先ほどの厳しい要件についても緩和をいただきたいと思っております。

 次に、禁止行為についてです。

 まず、困惑についてお話をさせていただきます。

 新法の四条の禁止行為、こちらはいわゆる困惑類型ということで、一号から六号の各行為をしたことによって寄附者が困惑させられることが必要となっております。

 しかしながら、少なくとも統一教会における被害のうちかなりの部分は、信仰による責任感や義務感から、その外形上だけを見れば進んでお金を出しているように見える、こういうものがかなりあるんです。最大の問題は、その信仰を本人の意思に反して不当に持たされたということにあるわけです。

 この点、岸田首相は、昨日、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、取消権の対象となる、このように答弁をされました。この答弁の内容は、教義を植え付けられる入信時までの勧誘が不安を抱いていることに乗じたものであれば、その後、その教義、信仰に基づく使命感や義務感で出された寄附であっても、不安に乗じたものと言えるというものとも思われます。

 これは非常に時的な問題がありまして、入信勧誘のときから実際に寄附をするときというのは何年もかかることが幾らでもあるわけです。その場合も含むのかどうか。もしそのように含むとすれば、現在の法文上は第四条の柱書きで、寄附の勧誘をするに際し、そういう禁止行為があって困惑するという規定ぶりになっているものですから、そうした何年もの長さを想定しているものとは正直読み取れない。したがって、ここは、先ほどあった逐条解説で丁寧にというところもあるかと思いますが、解釈の疑義を生じないという意味でも、法文の方を修正していただきたいなというふうに考えているところです。

 また、必要不可欠というところですけれども、統一教会の被害に限らず、違法に献金をさせられるような被害では、不安をあおったり不安に乗じた上で、その献金や祈祷などのサービスを受けることが必要であるという程度の言い方、これはされますけれども、不可欠だ、あるいはこれと同程度の必要性あるいは切迫性が示されるケースというのは多くありません。

 不安をあおったり不安に乗じて献金が必要だ、そしてそれによって相手が困惑させられていれば、これは十分に違法だと言えるはずです。不可欠という文言は、いたずらに救済範囲を狭めるだけのものというふうに考えています。逆に、こうした、不安をあおったり不安に乗じて寄附を必要だとして困惑させて寄附をさせることを是とする団体が仮にあるとすれば、それはその団体が問題だということになると思います。

 不可欠という文言、これは是非、被害救済のためにも削除していただきたいと思います。

 ここで、ここまでの問題について、具体的な被害事例に即して少し解説をしたいと思います。

 資料三と資料四の一、四の二、こちらはページ数でいいますと六ページ以下になるんですけれども、こちらを御参照ください。

 まず、資料三、パワーポイントのスライドになっておりますが、こちらの方は、一ページ目、二ページ目、こちらが、東京高等裁判所、平成二十九年十二月二十六日付で出された裁判例の事案をポイントに絞ってまとめたものです。その後つけられている、ページ数でいいますと九ページ以降は、その東京高等裁判所の判決文。そして、ちょっと長いんですが、三十四ページに支払い一覧表というのがついていると思います。支払い一覧表の方は、その東京高裁の原審、東京地裁での判決に付されていた、被害者がどういうお金をどういう時系列で出させられたのかが明らかになっている資料となっております。

 まず、先ほどのパワーポイントの方のスライドをちょっと見ていただきたいと思います。平成十三年九月に路上で正体隠しの勧誘をされて、平成十三年十一月二十七日に、統一教会と明かされる前に献金の勧誘をされているというものなんです。

 判決で認められた事実経過は、一審原告が、家庭で情的に満たされていないということで、散財したり男性に情に流されたりする、先祖に色情因縁があるので絶家になっている、結婚運がない、母と娘との間の情関係に代々課題がある、こういうことを言われて、一審原告の先祖の罪は重くて、一審原告は子孫を代表して救わなければならない、一審原告は出家するか、出家したつもりで二百十万円浄財をしなければいけない、このように言って献金をさせているわけです。

 これを、新法についてどうかというふうに考えてみますと、出家するか、あるいは出家したつもりで二百十万円浄財をしなければいけない、出家という選択肢が示されているわけです。これについて、先ほどの必要不可欠と言えるのかどうか。必要だということは言っていますけれども、不可欠というふうに評価できるのかどうか、これは非常に判断が分かれるところではないかと思います。こういった救済されない可能性を残すことはよくないんじゃないかというふうに考えております。

 また、この時点では、統一教会と明かされる前、寄附をする相手方が明かされていないわけなので、今の配慮義務で言うところの三号の前段、こちらにひっかかってくるわけですけれども、先ほど申し上げたとおり、配慮義務にとどまっているものですから、そのことが直ちに不法行為とは言えない。したがって、救済されない可能性があるということになってしまいます。

 一枚、次のページに行っていただきまして、同じ事案で、次に、この事案では、平成十六年四月に主証、統一教会であることを明かされて、その後、平成十七年三月に百五十万円の献金をさせられているわけですけれども、どういうことでお金を出させられたのかといいますと、一審原告は、平成十七年三月に、世田谷区内にある世田谷教会において行われた礼拝に参加して、教会長が涙を流して説教をする姿を見て、自分の上位の信者に対して、自分に何かできないかと尋ねて、百五十万円の祝福献金をしている、こういう認定になっているんです。

 見ていただければ分かるとおり、これは、正体を隠して抱かれた教義に基づいて自ら進んで献金をしているような形になっていますから、例えば、不安を抱いていることに乗じた、あるいは困惑した結果献金したとは言えないと思われます。したがって、この点が救済されない。しかも、この点、家庭連合という団体名を明らかにした後の寄附ですから、これは配慮義務違反とも言えない、したがって救済されない、こういうことになってくるわけです。

 ちなみに、先ほどお伝えした三十四ページの支払い一覧表、こちらをちょっと見ていただきたいんですけれども、ちょっと印刷の程度が悪くて申し訳ないんですが、損害項目としては、三ページの最後にありますが、百四十三項目、損害項目がございます。最初にお伝えした、正体を明かされる前の献金、これは損害項目六番のところを抜き出したものですけれども、その次、正体を明かされた後で払わされた祝福献金、これは三十三項目めなんです。

 何が言いたいかというと、統一教会であることを明かされて、信仰を持たされた後、出させられる献金というのが非常に多いということなんです。もちろん、信仰を持った後でも、その信仰を維持するために不安をあおられたり、その不安に乗じた話をされることもありますが、先ほど言ったとおり、全くそうした事象がない、持たされた教義によって払わされる献金というのがあるということを御理解いただければなというふうに思っております。

 レジュメの方に少し戻ります。

 次に、新法の第五条、借入れ等による資金調達の要求の禁止の点です。

 居住用不動産や事業用不動産などを処分して寄附の原資を調達することを要求してはならない、こういう規定ですけれども、この趣旨は、配慮義務の二号、本人あるいは親族の生活に支障を生じさせてはいけないということですが、これと趣旨としては基本的に同じ、生活基盤となる重要財産を奪ってはいけないというものだと思われます。

 そうだとすると、居住用不動産や事業用不動産、これそのものを寄附してしまう、こういう要求行為も併せて禁止しなければ、容易にこの規定の潜脱ができてしまいます。統一教会では、実際に不動産そのものを寄附させるという被害事例がございますので、少なくともこの点は追加して禁止すべきと思います。

 次に、債権者代位権についてです。

 我々全国弁連、あるいは事件後に設置された各種窓口への統一教会に関する相談のうち半分近くは、実は信者本人ではなく、信者の家族からの相談なんです。その中で一番多いのは脱会相談ですが、脱会相談の端緒というのは、多くは、家族が自分の知らない間に財産の多くを統一教会に献金してしまった、どうやら信者らしいということで発覚して、何とか脱会させたい、こういう御相談が多いのです。

 また、二世問題のうち、貧困に関する問題は、親である一世が財産のほとんどを献金してしまう結果、生じるものと言えます。

 ところが、その家族からの被害回復の手段が債権者代位という構成になってしまいますと、二世が未成年の場合、親権者である親が信者であることからしてその同意が得られない、したがって債権者代位の申立て自体がそもそもできないということになります。また、その結果取り戻せる範囲も、この点は明らかに新法の救済から外れていると思われますが、この点、どう考えるのか。

 結局、二世問題は非常に重要なポイントだと思いますが、その二世問題が解決されないということだと、これは救済としてはやはり足りないのではないか。この点を議員の皆さんに是非お聞きしたいというふうに考えております。

 以上が、新法の抱える問題のうち、特に指摘させていただきたい点となります。

 最後になりますが、今回の新法、本当に時間が極めて限られている中で作成されたものである以上は、不足する部分があること自体、やむを得ないというふうに考えております。その不足する点、特に、正体を隠して教義を植え付けて献金させるという被害、それから、二世を始めとする家族被害の救済については、協議会あるいは検討会を立ち上げるなどして、本当に一刻も早く検討を開始していただきたいと思います。

 これとの関係で、現状、附則の見直し期間が三年から二年ということになっておるようですけれども、これを是非一年に短縮していただきたいと思います。

 私からの御説明は以上になります。

 ありがとうございました。(拍手)

稲田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井原巧さん。

井原委員 おはようございます。自由民主党の井原巧でございます。

 今日は、宮下先生、川井先生、大変貴重な時間をお割きいただきまして御出席いただき、誠にありがとうございました。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、宮下参考人にお尋ねをいたします。

 まず、法体系の観点ということからお尋ねするわけですけれども、言うまでもなく、法律は、憲法や他の法律との整合性とか、あるいは公平性、そして何より実効性が必要だというふうに思います。

 先ほど先生からは、何もなかったところから踏み込んできたということで、ある一定の評価もいただいたというふうにも思っておりますが、これまで政府は答弁において、新法案では、現行の日本の法体系の中で許される限りの中で最大限実効的な法案とすべく、禁止行為とか、あるいは取消権の対象というふうにしておりまして、さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を規定するという二段階の構成を取っているというふうに説明をされております。

 この点につきまして、配慮義務では救済につながらないことから、禁止規定にすべきではないか、そういう意見もあるとお伺いいたしておりますが、我が国の法体系の観点から先生はいかがお考えでしょうか。

    〔委員長退席、牧原委員長代理着席〕

宮下参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 ただいまの点に関しましては、私ども検討会でも、まず、信教の自由というのは必ず保障されなければいけない非常に大事な権利であるということを前提にしてお話をさせていただいたところでございます。

 その上で、今回、配慮義務ということについてでございますが、検討会の席上では、宗教団体あるいは宗教法人というところを念頭に置いて、そこに限定した形での議論というのをしておりました。

 しかしながら、今回の法案というのは、法人というもの全体に網をかける、こういう法案となってございます。そういたしますと、やはり法体系ということもさることながら、全体のバランスということを考えますと、特定の何か団体だけに規制をするということではなくて、全ての法人あるいは団体というのが網にかかる。そうすると、この配慮義務で書かれていることが、直ちに全てこれを禁止ということにしてしまうと、やはりいろいろなところでひずみやあつれきが生じる可能性もある。

 そういうことであれば、今回、配慮義務ということで、これはかなり踏み込んだ御提案はされているのかなというふうに思います。もちろん、禁止行為というふうにするということも一つの方法なのかもしれませんが、そういったことをあえてしないで、配慮義務という形でとどめてあるということは、法人あるいは団体というものの活動の自由というものを保障するという意味では、私はこれはぎりぎり大事なところを守っていただいているのかなというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

井原委員 同様に川井参考人にもお伺いしたいと思います。

 今お話があったように、個人の財産権とか信教の自由に抵触するような規制を設けることについても、一方では極めて慎重であるべきという意見もあるそうでありますが、先生はいかがお考えでしょうか。

川井参考人 ありがとうございます。

 この配慮義務を禁止行為にできるかどうかというところですけれども、一つは公益法人認定法との関係で考える必要があるかなというふうに思っております。

 公益法人認定法に関しては、お配りしている資料の三十七ページに資料がございます。ポイントだけ申し上げますと、こちらの十七条の方で、四号の規定、「寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為」、こちらについて禁止規定、禁止行為になっておりまして、行政措置そして罰則も定められているということですので、現状の新法の規定、これが抽象的で禁止行為にすることは難しいという声も聞いたことがありますけれども、この十七条四号との比較で申し上げますと、今のままでも十分禁止行為にできるだろうというのが一つです。

 それから、配慮義務の中でも一号、二号、三号があるわけですが、特に私どもが申し上げたいのは三号の規定なんです。三号の規定というのは、寄附をするに当たって、その団体を明らかにしないとか使途について誤認がないようにすると。

 これは定めの仕方として明確だということもそうですし、何よりも、寄附を受けようとする団体が自分たちの団体を明らかにしない、あるいはその使途に誤認が生じないようにするのは私は当たり前のことではないかと思っています。これはどんな寄附を受ける団体でも共通することではないかと思っておりまして、もちろん、宗教法人に特化した話ではなく様々な団体について配慮する必要がある、これはそのとおりだと思いますが、少なくとも三号については、今申し上げたこととの兼ね合いで、禁止行為にしないというのは妥当ではないのではないかというふうに考えている次第です。

 以上です。

    〔牧原委員長代理退席、委員長着席〕

井原委員 ありがとうございます。

 続きまして、マインドコントロール、家族救済について、宮下参考人にお伺いしたいと思います。

 政府案に対しまして、マインドコントロールへの対応や家族の救済が不十分などの批判もあるとも聞いております。他方で、消費者契約法改正及び新法におきましては、例えば、霊感等による知見を用いた告知により、不安に乗じて寄附の勧誘を行うことを禁止行為、取消権の対象とするなど、適切に対応しているとも思うわけでありますが、どのようにお考えでしょうか。

宮下参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 私どもの検討会でも、マインドコントロールという状況にある被害者の皆様については、いろいろな議論というのを重ねまして、マインドコントロールという言葉も報告書では使わせていただいたところでございます。

 ただ、大変難しいところもございまして、私自身は、検討会での提案では、マインドコントロールを直接規制するということではなくて、むしろ、そういう状況にある方に対する勧誘行為とか、そういったものを規制するということが重要ではないか。というのは、マインドコントロールにあるかどうかという判断自体も大変難しいところもございますし、その判断に時間がかかってしまっては、かえって救済というのができないのではないか。これはあくまで、私が個人の意見として検討会で提案をさせていただいたときには、そういうことを考えて、いろいろな行為規制というものをできないかという御提案をさせていただいたところでございます。

 決してマインドコントロールにあるということ自体を軽視するということではなくて、それを直接規制するというのはちょっと個人的には難しいのではないかなというふうに考えたので、そういう提案をさせていただきましたし、また、検討会でも、そういったマインドコントロールにある方が置かれた状況というのを前提にしながら、いろいろな行為規制というのを考えてきたということで、最後、提言にまとめさせていただいたものと考えておりますので、そのようにお答えさせていただきます。

 以上でございます。

井原委員 ありがとうございました。

 続きまして、関係機関との連携につきまして、両参考人にお伺いしたいと思います。

 債権者の代位権ということがありますが、自らの権利を守るために、必要な限度で他者の権利の行使を認めるという制度でございます。

 今回の政府案では、これを活用しやすくするということで家族の被害救済につながることになる、こういう説明になっております。一方で、救済範囲が非常に狭く、被害者の救済には不十分だという議論もあることも承知いたしております。

 そのため、第十一条で、関係機関及び団体等との連携の強化を図り、相談体制を整備する等必要な支援に関する施策を講ずるよう努めるとされております。この点、非常に私も重要だというふうに思っておりまして、この点につきまして、どのような支援が必要と先生方はお考えになっていらっしゃるのか、お伺いをさせてください。

宮下参考人 ありがとうございます。

 今、債権者代位権のお話も出ましたけれども、やはり、そもそも、いろいろな形で個別にいろいろな事情がございますので、そうした事情というのを把握した上で、いろいろな定期金債権とかも計算していく必要があろうと。

 ところが、そういった被害に遭っている方というのは、目の前の被害に遭って、それだけでは、もうとても、自分のことだけで手いっぱいで、そこまで頭が回らないという方も多いのではないかと思います。そういうときに、今いろいろな、国では法テラスを中心として支援体制を整えていただいておりますけれども、そうした手を積極的に差し伸べるということが必要かと思います。

 検討会の席上でも、こちらは、今、消費生活センター等だけでは不十分であるということで、積極的にいろいろな機関を活用した相談体制を整備するということを提言させていただきましたので、そういったことを是非、国としても、予算措置も含めて積極的に進めていただければというふうに考えております。

 取りあえず、以上でございます。

川井参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいた問題意識については、私も本当にそのとおりだなというふうに思っております。

 先ほどの私のお話で、最後の方で二つ、正体隠しに対する規制とそれから二世問題を始めとする家族の救済、これについて、是非、協議会等を立ち上げてお願いしたいというふうに申し上げたところでありますけれども、今の債権者代位について、二世の救済にならないという話を先ほどさせていただきました。

 これは結局、今信者になっておられる、例えば二世の事例であれば親御さん、親御さんが目を覚ましてこちらに戻ってくるということがあれば、親御さんがその団体、もっと言えば、教団に対してお金を取り返してということで被害回復につながるわけです。したがって、関係機関との協力あるいはその強化というのは非常に重要な部分だと思っております。

 一点、教団から脱会をする場合の現場です。

 これは、我々弁護士としては直接タッチはできていないですけれども、例えば牧師さんだとかカウンセラーの方なんかが、無償に近しいような形で、無理に脱会させるわけではなくて、家族の間の対話、会話、コミュニケーションを取り戻すということで活動されているわけですけれども、本当に、時間もかかるし、手間暇かかるし、大変な作業です。家庭連合、統一教会について言えば、そういった話合い自体を信者の側にさせないようにする、逃げるようにする、話合いの機会を持たせないようにするということがありますから、本当に大変な苦労をされている。

 この点の支援というのは今後非常に重要になっていきますし、ここが充実してくれば、先ほど言った債権者代位権の問題点というのもある程度解消されてくるのではないかなというふうに考えているところです。

 以上です。

井原委員 ありがとうございます。

 やはり、相談窓口の敷居を低くするということは非常に私も重要だと思っております。

 続きまして、運用上の配慮についてお伺いをしたいと思います。

 法人等の不当な寄附の勧誘を禁止する一方で、第十二条では、この法律の運用に当たっては、寄附が果たす役割の重要性に留意しつつ、個人及び法人等の信教の自由等に十分配慮しなければならないとされております。

 寄附文化の醸成に対する不当な抑制につながっては、これは本当に元も子もございません。例えば、NPO法人や宗教法人等の実態に即した十分な配慮が行政には求められると考えられます。具体的にはどのような運用上の配慮が必要とお考えでしょうか。両参考人にお願いいたします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身、実はNPO法人の理事長とかをやっておりますので、活動自体が会員の善意だけでは支えられないという中で、いろいろな方に寄附を求めるということの重要性というのは大変認識しております。

 また、それが、学問の自由、信教の自由ということはもとよりでございますが、やはりこういう、今、寄附というものを中心にしていろいろな活動をするということがむしろ一般的になっている中で、そういったものが過度に制約されることになってはいけないであろうというふうに思います。

 そういう中で、運用というのを確かに慎重にするというところはあるのかもしれませんけれども、ただしかし、一方で、被害に遭っている方、そういった方を救済するというところではちゅうちょしないということも大事かなというふうに考えております。

 そこのところで、今回、いろいろな形で御提案していただいておりますけれども、ぎりぎりのところでその両方のバランスが取れているのかなというふうに思っておりますので、まずは、こういったいろいろな法人等の活動の自由というものを尊重しつつ、しかし、その中で、活動の自由にいわば乗じていろいろなことをしてくるということについては、これはきちっと監視していくということも必要かなというふうに思いますので、その意味では、運用というものの体制について、恐らく消費者庁あるいはほかの関係各省庁で連携を密に取りながらやっていくことになると思いますけれども、その辺りはもっと国の方でいろいろ整えていく必要があるかなというふうに考えております。

 以上でございます。

川井参考人 ありがとうございます。

 これは線引きをきちんとするということが非常に重要なんだと思っております。もちろん、寄附を受ける側あるいは献金を受ける側の自由も大事ですけれども、それを求められる、勧誘される側の自由も非常に大事だと。これは、公共の福祉というところでどこまでであれば許されるのかという線引きを明確にすることが、被勧誘者側の自由、そして寄附を受ける側の自由、双方に対する配慮になる、このように考えておりますので。

 例えば、先ほどちょっと申し上げました配慮義務の三号のところですね。団体名を明らかにしないで寄附を受けるということが、今言った線引きとの兼ね合いでどうなのか。これは、私個人としては、一般的な団体、それこそNPO法人などであっても、そうした団体を言わないで寄附を募るということは適切ではない、それはそういう線引きが妥当だというふうに考えておりますので、その線引きをいかに妥当に図るかが非常に重要だろうというふうに考えております。

 以上です。

井原委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、早稲田ゆきさん。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 それでは、参考人の方々に御質問させていただきます。

 宮下参考人、そして川井参考人におかれましては、本委員会への御出席、そしてまた、これまで被害者の救済、それから新法案に対しても様々御尽力を賜っておりますこと、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、川井参考人にまず御質問させていただきます。

 まず、新法の第十条でございますが、債権者代位権についてであります。こちらについては、要件が厳しく、先ほども御質疑がありましたが、効果も乏しいため、家族や宗教二世の被害の救済にならないということを懸念しております。この二世の方それから家族の被害を救済するためにはどのような制度が望ましいとお考えか、教えていただきたいと思います。

川井参考人 ありがとうございます。

 二点申し上げたいと思います。

 一点目は、先ほど申し上げました、脱会にまつわる支援、これを充実させることだろうと思います。これが充実していくことによって、先ほど言った、家族被害の関係がおのずと減ってくるということは一つあると思います。

 もう一つは、従前は、準禁治産者制度時代は浪費がその対象となっていたということがございます。これは本人の財産権との兼ね合いで、それはよろしくないだろうということでなくなったわけですけれども、やはりマインドコントロール的な被害というのが実際に存在するということが明らかになっているこの状態において、パターナリスティックな、国の方で一定程度、適切な判断ができない、自由な意思が抑圧されているという状況の方については、これは家庭裁判所の監督の下という条件が必須だと思いますけれども、そういう中で、補助あるいはそれに類似の制度をすることで御本人の財産管理を適切に図っていく、こういう制度が必要だろうと思います。これによって、家族の方でも、過度な献金がされて生活に支障が生じる、そういった被害が減ってくるだろう、このように考えております。

早稲田委員 続けて、債権者代位権についてでありますが、信者が教団に対して有している取消権、これを家族が代わって行使をすることになるわけですけれども、その取消権があることを家族が立証することができるのかどうか、これが大変懸念されますが、いかがでしょうか。

川井参考人 ありがとうございます。

 全く御懸念のとおりだというふうに思っております。

 この構成は、分かりやすく二世の例で御説明すると、親御さんが信者で二世がいらっしゃる、二世の方が親御さんが教団側に持っている取消権を親御さんに代わって行使するというわけですけれども、親御さんがまだ信者なわけですね。そうすると、取消権で規定されている、教団側、寄附を受ける側からの具体的にどういった行為があったのか、これを立証するすべというのは、基本的に、我々がこれまで経験してきた裁判からいいますと、御本人、信者になった方が脱会された後、自分がどういう働きかけをされたんだということをお話しいただいて立証するというのが基本になってきますので、基本的には、立証することは不可能に近いほど難しいと言わざるを得ないというふうに考えております。

 以上です。

早稲田委員 なかなか御本人が言わない限り立証するのが難しいということも伺いました。

 それでは、今お話が出ております宗教二世の問題についてでありますが、私たちもこの間、様々な、この二世の方からもお話を伺いました。また、先生からも、相談のあるのは半分近くがその御家族であるというお話も伺っているところでございますが、この宗教二世が親御さんなどから受ける信仰を理由とした児童虐待やその他の人権侵害、それから生きづらさなどを宗教二世問題というのだと思いますけれども、この点については、今国会の寄附の規制、この法案では対処し切れない部分でございます。

 そうしますと、この宗教二世問題についてはどのような問題が主にあり、そしてまた、この宗教二世問題をなくしていくためにはどのような法整備が今後必要になってくるとお考えでしょうか。

川井参考人 お答えさせていただきます。

 二世の問題というのは本当に様々な問題があるというふうに私どもも受け取っております。私どもも何人かの二世から話は聞いておりますけれども、それでも、必ずしも全貌がつかめたということではないだろうと思います。したがって、引き続いて、実態を把握するために、被害者、二世の方からの話をよく聞く、実態把握に努めるということがまずスタートだと思います。

 その上で、今日の資料でいいますと、五十五ページ以下で、二世の方の具体的な被害事例が書いてある資料がございます。この方も自分が親御さんから虐待を受けたということで児童相談所などに御相談に行かれたそうですけれども、宗教絡みだということで、タッチしていただくことができなかった、放置されてしまったということが実態としてあるようですし、同じような事例はほかの二世の方々からも聞いているところです。

 したがって、一つには、現状の虐待概念に当たるものについて児童相談所等で適切に対処する、宗教問題であってもそれは虐待かどうかの判断とは別なんだと切り分けて対応いただくことが重要だと思いますし、現実的には、本当に児童相談所が今、人員的にも非常に厳しいという実態も伺っておりますので、そういった人員あるいは予算的なところも含めた見直しが必要なんじゃないかなというふうに思っておるところです。

 それから、児相の方も宗教的な虐待の実態についてはまだ知らないところがきっとあると思いますから、そこは専門家からのお話を聞くなどして知見を広げていただく必要もあるだろうというふうに思っております。

 また、学校等の教育現場では、こういった問題があるということを教育の現場で少しお話ししていただいて、例えば二世問題としてのいじめであるだとか、そういった周辺の環境を改善していくということも必要だと思います。

 ちょっと申し落としてしまいました。先ほど虐待の話で、今言われるのは、やはり宗教的な虐待だという声を二世の方からよく聞きます。これが現状の概念で対応できるのかどうか。これは、専門家を交えてきちんと検討した上で、場合によって、今の概念で対応し切れないということであれば、その部分は法改正の必要もあるのかなというふうに考えております。

 今考えられるところはこういうところですけれども、本当に二世の問題は様々ですので、引き続き、皆様、本当に声を聞いていただければありがたいなというふうに思っている所存です。

 以上です。

早稲田委員 今お答えいただきましたが、児童相談所と、それからまた教育現場と、もちろん連携は不可欠でございますが、今まではなかなかそういうふうになっていなかったということは非常に重大な問題だろうと私も認識をいたしました。本当に、この間、宗教の二世という方から壮絶な人生、生活の実態を伺って、新たに法改正が必要であればやっていかなければならないのではないかということも考えております。

 それでは次にでございますが、この法案で三年以内の見直しとなっているわけですけれども、具体的な運用状況を踏まえてもっと短くすべきではないかという声もありますが、この点についてはいかがでしょうか。川井参考人、お願いします。

川井参考人 御指摘のとおりだというふうに考えております。

 先ほど指摘させていただきました新法の問題点、幾つもございますし、運用していく中でまたいろいろと問題点が明らかになってくると思いますが、一方で、同じような被害がどうしても拡大しつつあるというところがあります。特に、二世の方々にとっては、一年あるいは数か月、一日単位で本当に大事な期間だと思われるんです。

 したがって、少しでも早くその被害防止あるいは救済につながるような法案が必要だと思いますので、その観点から、見直しの期間を是非一年にしていただきたいというふうに考えているところです。

 以上です。

早稲田委員 ありがとうございます。

 それから、新法の三条について伺います。

 配慮義務についてでありますが、その遵守がなされていないため、個人の権利保障に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合、勧告、公表を行うとの修正案を与党は提案をしているわけですけれども、この勧告、またそれのための報告、これが被害者救済の実効性についてどうであるか、このことについて教えていただきたいと思います。川井参考人、お願いいたします。

川井参考人 ありがとうございます。

 被害救済という観点からしますと、行政が対応いただくというのは、被害救済の迅速性という意味では非常に大きいというふうに考えておりますし、先ほど申し上げた二世の問題で親御さんはまだ信者という場合でも、例えば親族の方が被害実態を行政に通知することで行政が対応いただく、そしてそれが措置なんかにつながるという意味では、被害救済につながり得るものだとは思っております。

 しかしながら、冒頭申し上げたとおり、まず、その要件が余りに厳しいという点が一つ。それから、救済につながるという意味でいうと、やはり、行政の勧告の中で、受け取った寄附、献金を返すという内容が含まれないと、なかなか端的に救済にはつながってこないというふうに考えておりますので、その点を明確にしていただきたい。要件を下げるのと、措置の内容を明確にしていただきたい、これがこちらの要望ということでございます。

 以上です。

早稲田委員 要件を明確にというお答えをいただきました。ありがとうございます。

 それでは、宮下参考人にも伺わせていただきます。

 参考人は消費者庁の霊感商法検討会の座長代理をされておったわけでございますが、その報告書では、寄附の要求等に関する規制については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第十七条、寄附の募集に関する、寄附行為の規定も参考としつつ、そして、正体隠しの伝道等の本人の自由な意思決定の前提を奪うような活動手法やマインドコントロール下にあって合理的な判断ができないような状況が問題となる寄附の要求等への対応も念頭に、より幅広く一般的な禁止規範を規定すべきであると報告書には書かれております。

 しかし、本法律案におきましては、当該法律の第十七条で禁止をされた行為は、禁止行為としては盛り込まれませんでした。そしてまた、この禁止行為の範囲が狭過ぎるとの声も上がっております。

 この点について、どのようにお考えでしょうか。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、報告書の段階では、私も公益法人法十七条の活用というのは可能性があるのではないかという御報告をさせていただいて、そのことが検討会の報告書に盛り込まれたというふうに承知しております。

 ただ、その後、国会で御議論をいただく中で、実際に提出された法律案というのは、先ほど申し上げましたように、法人あるいは団体全体に網をかけるというものになってきている。

 そういうところで、例えば公益法人という形で非常に厳しい認定というのを前提にしている団体、あるいは宗教法人、そういう団体、やはり主務官庁というのがきちっとあって、監督をかなりきちんとされているというような状況の、そういう団体というのを想定して私どもも提案をしたところでございますけれども、今般、非常に広い形での規制になった。

 広い形での規制になったというのは、網を幅広くかけるという意味で、私自身は非常にこれは前向きに捉えるべきだなと思いつつ、一方で、規制ということを厳格にしてしまうと、やはり法人あるいは団体の活動に制約が過度にかかる可能性もある。そういうぎりぎりのところで、配慮義務という形になったのではないかなというふうに承知しております。

 ですから、今後、議論の中で、またいろいろな御指摘、御意見というのもあって、ブラッシュアップされていくようには思いますけれども、差し当たり、今回まだ新しくまさにできた法律ですので、そこのところで、取りあえず配慮義務という方法を取るというのは一つの方法かなというふうに拝見したところでございます。

 以上でございます。

早稲田委員 両参考人より大変貴重な御意見を承りました。しっかりと受け止めさせていただきまして、審査に生かしてまいりたいと思います。

 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、前川清成さん。

前川委員 日本維新の会の前川清成と申します。

 両先生におかれましては、御多忙の中、また、急な日程だったと思います。今日は、様々に御指導いただきまして、ありがとうございます。

 ところで、私も、二〇〇四年に参議院に来る前は、大阪弁護士会の消費者保護委員会におりまして、多重債務、サラ金、高利貸しの問題に取り組んでまいりました。

 その当時、大阪に中坊公平という弁護士さんがいて、中坊先生は、消費者被害について、被害に始まって立法に終わるというふうにおっしゃっていました。そのときの法律では救済できない被害者がいる、だから、その被害に応じた新しい法律が必要だ、こういう御趣旨だったと思います。

 この点で、岸田総理も、この旧統一教会の問題について、同じような御認識で、十月十七日、現状の法制度では救済されない方々がいることを踏まえて、こういうふうに御発言になった上で、消費者契約法の改正などを示唆されました。

 私も、これからのことだけではなくて、過去の被害者、そして現在の被害者、この方を救済することが重要だと思っています。

 ただ、今回の政府案、新法も消費者契約法の改正案も、公布の日から二十日を経過した日から施行される、新法については若干例外がありますけれども、いずれにしても、将来に向かって、将来効が発生する、こういうことになっておりまして、遡及されません。そうであれば、今の被害者の皆さん方、これは、新しい法律は適用されないので、結局ほったらかしになってしまうのではないか、これでは被害者救済とは言えないのではないかと私は考えております。

 この点、被害者救済に携わっておられた川井弁護士に御意見を承りたいと思います。

川井参考人 御質問ありがとうございます。

 問題意識としては、全く先生おっしゃるとおりだと思っております。

 今、我々の方で考えているのは、今まさに新しく立ち上がった弁護団というのがございまして、そちらに現状の被害者の声が寄せられております。その中で、少しでも早い救済ができるようにということで、今回の新法はこれからの話、そして、既に起きてしまった被害については今言った弁護団を中心とした被害救済活動というふうに考えております。

 新法の方で遡及できれば、非常にこれはありがたいお話だと思ってはおります。しかしながら、一般的には、罰則を伴うものはもちろんそうでしょうけれども、今回の話というのは、先ほど来ちょっとお話がありました、例えば寄附について言うと、寄附を受ける側と寄附を出す側、双方の人権の調整という部分があるかと思います。非常にデリケートで、線引きが簡単ではない部分だと思っておりますので、それを遡及させるというのは一般的な法律の作り方としては非常に難しいんじゃないかと思っておりましたので、申し上げてこなかったところでありますけれども、もし遡及ができるのであれば、これは本当にありがたい話だと率直に思ってはおります。

 以上です。

前川委員 日本維新の会でも、旧統一教会の問題に関してタスクフォースをつくりまして、現行法について検討させていただきました。例えば消費者契約法で、例えば民法九十六条の詐欺や強迫で、あるいは民法九十条の公序良俗で救済できるのか。それぞれやはり限界がある。だから、今の実務では、民法七百九条の不法行為、これに基づく損害賠償が大勢を占めているのではないかなと考えました。

 ただ、不法行為ですので、結局、過失と違法性の相関関係で判断されますので、この新しい分野というのは、やってみないと、金と暇をかけて裁判をやってみないと、勝つか負けるか分からない。そうなると、ほとんどの被害者の皆さん方が泣き寝入りをしてしまうんじゃないのかな。やはり、今の被害者の皆さん方が救済されるためには、今の法律では足りないというふうに私は考えておるんですが、この点、宮下教授あるいは川井弁護士は同じ思いということでよろしいでしょうか。お二人にお尋ねをいたします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに現行の法律では足りないというところで、今回、新法ということで検討されているかと思いますし、また消費者契約法の改正案というのが提案されているかと思います。今回いろいろな形で提案されているということについては、これは非常に踏み込んだものであるというふうに私自身は考えておりますので、現行の法律では足りない、ですから今まさに提案されているというふうに私自身は承知しております。

 よろしくお願いいたします。

川井参考人 ありがとうございます。おっしゃっていただいた問題意識はまず共有しているものだというところです。

 そして、具体的に申し上げると、まず、配慮義務を禁止行為にする。そして、取消権の範囲を広げるということは、やはり、不法行為を一からやることに比べると、大分、被害者側の負担というのは下がってきます。実務をやっていると、やはりクーリングオフまで使える特商法は本当に救済としては非常に活用がよくて、それに準じて今度は取消権も不法行為に比べればかなり負担が軽くなるというところがありますので、その観点からも、我々は、禁止行為、そして取消権の付与を求めてきたというところでございます。

 以上です。

前川委員 両先生とも、今の被害者救済のためには今の法律では足りない、こういう御認識であれば、是非この施行時期について私は考えるべきではないかと思っています。

 川井弁護士からもありましたけれども、刑事法については、行為のときに適法だった行為が後になって違法、犯罪になってしまうと、これは自由や人権を侵害してしまうので、いわゆる罪刑法定主義の適用があります。しかし、今回の民事法、とりわけ取消しの部分については、一方では今の被害者の皆さん方を救済するか、他方では法的安定性、言い換えれば、旧統一教会が既に受け取っているお金、寄附、これを守ってやるかどうか、この利益衡量じゃないのかなと思うんです。

 そうであれば、私は、この施行時期について、新法成立後じゃなくて、遡及するべきだと考えるんですが、この点、宮下教授の御意見を承ってよろしいでしょうか。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 今、まさに法律の遡及ということについて貴重な御提案があったかと思いますが、やはり、法律の場合、不遡及というのがどうしても原則で来てしまうところがございます。そこのところを拡大していくというところが、今回の法律、確かに、取消権というようなところで消費者契約法の方はある程度遡及するという形を取っておりますが、こちら新法の方はなかなかそれが難しいというのは、ほかのところで罰則とかそういったものを科されているということもやはり大きいのかなというふうに考えております。

 ただ、一方で、こういった法律ができますと、先ほど不法行為というお話もありましたが、消費者契約法は、制定前の事案で制定後の消費者契約法というものを参考にしながら違法性を認定したケースもございますので、そういった意味で、間接的ですが、過去の事例にも影響はあるんじゃないかなというふうに考えております。

前川委員 今の先生のお話だったら、施行時期を民事法の部分と刑罰の部分と分けて制定すればいいのかなというふうに思います。

 その上で、ちょっと次のお尋ねしたい点に移りたいんですが、例えば山上容疑者のように、親が統一教会に多額の寄附をしてしまった、その結果、子供たちが困窮した。私たち日本維新の会のタスクフォースでは、かつて浪費が準禁治産宣告の宣告理由になっていたことを参考にして、成年後見類似の制度を考えました。特別補佐という制度を考えました。この点は、立憲民主党の皆さん方にも御理解をいただいて、共同提案をさせていただきました。

 ところが、政府は、この成年後見類似の仕組みはあかん、財産権を侵害するからということで、今回、債権者代位の仕組みを拡張しようとしています。

 しかし、未成年の子供、例えば十七歳の高校生が、大学に行きたい、そのためにはお金が要ると親の寄附を取り消そうとしても、民法の五条で、裁判を起こすためには親の同意が要ります。親が同意するのか。しないと思います。本来であれば、親と子供が利益相反の場合は、民法八百二十六条で、特別代理人の選任を親が請求しなければなりませんが、親は請求しません。結局、新法の第十条、これは機能する場合、使える場合があるのかどうか、こういう疑問を持っております。

 この点、川井弁護士の御意見を承りたいと思います。

川井参考人 この点も本当におっしゃっているとおりだと思っております。

 先ほど申し上げたとおり、少なくとも、今一番問題と考えられる二世問題についてはほとんど救済に役立たないというふうに考えておりますし、先ほど、その前におっしゃられた特別補佐の制度、こちらについても、先ほども少しお話ししましたが、財産権といっても、本当に生活も困難になるような、そういった献金の仕方まで財産権として保障するのか。やはり一定程度は、国家の側、あるいは家庭裁判所の方で監督する中で、そこをきちんとコントロールしてあげないと、こういった被害というのはなくなってこないんじゃないかというふうに考えているところなので、そういった制度を是非検討して、なるべく早期にそれが動き出すようにしていただきたいなというふうに考えております。

前川委員 その上で、宮下教授にお尋ねしたいんですが、この新法の十条に基づいて十七歳の子供が債権者代位権を行使しようとする、親が同意してくれない、特別代理人の選任を家裁にも請求してくれない、十七歳の子供はどうしたらいいんでしょうか。手続的なところを教えていただきたいんです。

宮下参考人 今御指摘いただいた点ですが、済みません、今、私、にわかに思いつかないところではございます。

 ただ、今おっしゃったように、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないという形になっておりますので、ここのところを運用の中で何か生かしていく方法はないだろうかというふうに思います。

 今回、いろいろな議論がある中で、こういった代位権というものが活用できるのではないかという一つの御提案というのは、これは私自身も重く受け止めておりますが、今言ったような運用の問題というのはやはりまだ議論としては残るところかと思いますので、そこのところはもう少し詰めていく必要があろうかと思います。

 今おっしゃっていただいたところでは、請求しなければならないというところを実効化する方法というのを考えていく必要があるだろうというふうに思います。

前川委員 私、実際に実務で特別代理人の請求をしたことがありませんので、親が請求しない場合どうしたらいいのかと思って、お尋ねしました。

 恐らくできないんだろうと思います。

 片や、私たちが考えた案では、配偶者あるいは四親等内の親族が請求して、補佐人を選ぶことになっています。そうしたら、十七歳の子供にそんなことをさせなくても、おじさん、おばさんが請求をして、しかも、裁判所が選んだ補佐人が、多くの場合は弁護士とかそういう専門家が財産管理をするので、むしろ本人の財産保護になるのではないかと考えますが、この点、川井先生はいかがでしょうか。

川井参考人 先ほども申し上げましたとおり、それが本人の保護として適切だと思いますし、ひいては、その家族の被害救済ということにもつながる妥当な方策ではないかというふうに考えております。

 以上です。

前川委員 債権者代位権についてもう一点お尋ねしたいのは、債権者代位権であれば、債務者、つまりは、寄附をした親の無資力が要件になります。そこまで行く手前でもっと救済できないのか、この点でも私は債権者代位権の制度というのは適当ではないと考えるんですが、宮下教授はいかがでしょうか。

宮下参考人 御意見ありがとうございます。

 今回の提案というのは、私自身、先ほど先生から、被害に始まり法案に終わるということがありましたが、今回の法案というのは、あくまで、終わりではなく、やはり新しい始まりであるというふうに認識しております。

 この債権者代位権という方法は、取りあえず、今、現段階で考えられている方法として一つ挙げられただけであるというふうに思いますので、今後、議論の中で、ほかの方法というのは考えていくところがあると思いますし、また、実効性云々についても、こちらについては運用状況というのをやはり確認していかなきゃいけないというところもあると思いますので、今回の議論をきっかけに、また先に進んでいくという一つのきっかけになるのではないかなというふうに考えているところでございます。

前川委員 終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、國重徹さん。

國重委員 公明党の國重徹です。

 今日は、宮下先生、また川井先生には、御多用な中、本委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって、心より感謝と御礼を申し上げます。

 また、宮下先生には、我が党の消費者問題対策本部にお越しいただきまして、御講演をいただきました。重ねて御礼申し上げます。

 また、川井先生は全国霊感商法対策弁護士連絡会の事務局長として、また宮下先生は消費者庁の霊感商法等の悪質商法への対策検討会の座長代理として、被害者の方々の救済、また新たな被害防止のために様々御尽力されてきたことに心より敬意を表したいと思います。

 早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 いわゆる二世の方たちの保護という観点で、今回の法案では債権者代位権の特例を設けております。これは、憲法の財産権との関わりの中から、今できることとして債権者代位権の特例ということで設けているわけでありますけれども、一方で、先ほど前川委員の方からありましたのは、特別補助の審判ということで、立憲民主党また維新の会の皆様が御提案をされております。

 これについて、特別補助の審判の制度について宮下先生はどのようにお考えか、お伺いいたします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 今、特別補助というお話がございました。私も、提出された法律案を拝見いたしまして、検討会でも成年後見制度の活用ということは提言の中にも盛り込まれて、提言の中ではございません、こちらはその他の指摘事項というようなところでもいろいろ御指摘をさせていただいて、大変失礼しました、こちらではないですね、検討会の議論の中でいろいろ議論をしたところでございます。大変失礼しました。

 その中で、成年後見制度というのを活用する、そういう類似の制度をつくるということについては、私自身は一定の知見に基づいたものとしては評価できるとしつつも、ただ、一つ非常に問題があるのは、やはり難しいところは、御本人の意思をできるだけ尊重しようというのが成年後見制度の流れでございまして、今まさに成年後見制度については見直しの動きも進んでおりますけれども、そういったところとの関係性というのが一つ問題になろうかと思います。

 それから、もう一つ、成年後見制度というのは、やはり御本人の精神状態というのを確認するという方法が取られます。鑑定というのが一応原則ではございますが、最近、鑑定省略というのもありますけれども、その場合には、主治医の診断書、それも、長谷川式スケールとか、そういった客観的な形で検証できる診断書というものが必要だということになっております。

 そうすると、今回、マインドコントロールにあるという方を、客観的にどういうふうにしてそういう状況にあるのかというのはやはり判断が難しいのかなというふうに思っておりますので、非常に魅力的な提案ではあるんですけれども、ちょっと現状難しいのかなというふうには認識しております。

國重委員 ありがとうございました。

 では、今回の被害防止、救済法案では、禁止規定に違反した場合の効果として、消費者契約法にはない行政措置また罰則まで設けております。これに関してどのように評価をされているのか、宮下参考人、また川井参考人、両人にお伺いいたします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、罰則あるいは行政措置にまで踏み込んでいるというのは、大変踏み込んでいるのかな、実効性確保という意味ではまさに重要なポイントではないかなというふうに認識しております。

 以上でございます。

川井参考人 ありがとうございます。

 基本的に今のお話と同様であります。

 少しお話しさせていただきますと、統一教会の場合は、二〇〇七年から二〇一〇年まで、主に特定商取引法違反で刑事摘発が相次いだ。それによって、被害の数はある程度収まった、あるいはコンプライアンス宣言というものが引き出されるまでに至ったということがありますので、我々としては、実効性を確保する一つとして、刑事罰まであるというところ、行政罰もそうですけれども、非常に重要なポイントだと思っておりますので、そこは評価できるポイントだというふうに考えております。

國重委員 ありがとうございました。

 今般の新法の中で行政措置また罰則が設けられたことは、抑止効果が高まって実効性の観点から評価できるというようなことで、お二人の参考人から御意見をいただきました。

 では、続きまして、川井参考人にお伺いいたします。

 先ほど、配慮義務を禁止行為にすべきじゃないかという御意見を賜りました。では、配慮義務を禁止行為とした場合に、それに違反した場合の効果として、報告とか勧告、命令、また罰則、様々ありますけれども、どこまでそれを設けることが適切とお考えか、お伺いいたします。

川井参考人 ありがとうございます。

 現状ですと、一号、二号、三号の配慮義務の中で、二号がやや抽象的な規定になっているかなというふうに思っております。

 したがって、今のままで、二号を禁止規定、さらに行政そして刑事罰というところまでは難しいのではないかと思っておりますけれども、私どもとしてお願いしたいのは、より具体的な規定に変えた上で、禁止行為そして行政罰を付すところまではお願いしたいというふうに考えておりますので、その点は今の規定を前提とすると簡単ではないというところで、具体化した上でお願いしたいというふうに考えているところです。

 それから、先ほどの、評価させていただくというところですけれども、行政罰、刑事罰までというところ自体は評価させていただくんですが、その範囲の問題ですね、どこまでがそういった対象になるか、この範囲についてはまだまだ足りない部分があるんじゃないかというふうに考えていることも併せて申し上げたいと思います。

 以上です。

國重委員 ありがとうございました。

 では、今、川井参考人が、今の配慮義務をそのまま禁止行為にすると、やはりこれは少し懸念があるんじゃないかというようなことを、特に二号に関してはというようなことでおっしゃいましたけれども、では、一号に関しては、勧告、命令、罰則、どこまでこれを可能とすべきだとお考えか、お伺いします。

川井参考人 ありがとうございます。

 私は、三号が配慮義務の中で最も明確というふうに考えておりまして、二号が中では一番抽象的かなと。一号は、ある程度具体化はされているものの、どういう場合に自由意思が抑圧されて適切な判断ができないのかというところについては、なお検討の余地があるのではないかというふうに考えております。

 ただ、考え方としては、自由な意思が抑圧された結果、適切な判断ができない状態にある寄附、そのような寄附を求める行為は、やはり禁止行為、そして行政罰、刑事罰、必要な部分だというふうに考えております。

 以上です。

國重委員 ありがとうございます。

 恐らく共通しているところがあると思うんですけれども、今の配慮義務の一号とは、いわば結果の状態に着目した規定になっていて、そこに至る、適切な判断ができない状態に至る過程というのは、様々な行為、様々な働きかけがある、行為規範としてはなかなか明確になっていないという点があるので、私は、この段階でこれを禁止規範にしてそのまま罰則等までつけていくということは極めて危険であると考えておりますけれども、これについての見解をお伺いいたします。

川井参考人 ありがとうございます。

 私ども、この議論はどこまでいっても、統一教会問題をまずどういう形で対処すべきかというのが議論の出発点だと思っておりますので、統一教会問題に関してこう考えるというお話をさせていただきたいと思っております。

 その観点で申し上げますと、今おっしゃられた一号の状態というのは、確かに、具体的な寄附を求める側からの行為ではなくて、それを受けた側に着目している部分があると思います。

 したがって、この部分は、統一教会に対して出された裁判例が幾つも積み上がっておりまして、具体的に、どういった行為によって人がそういう形で自由な意思を抑圧されて適切な判断ができなくなるのかという具体的な内容が示されておりますから、そういった具体的な行為に着目した形で禁止行為に昇格、格上げさせるべき、そのように考えております。

 以上です。

國重委員 ありがとうございます。

 今回の法案は旧統一教会をめぐる様々な問題に端を発して作られておりますけれども、法律としてできれば当然、もう釈迦に説法ですけれども、法律は広く一般に適用されますので、やはりこれは明確な行為規範でないと不当な萎縮効果を与えかねない、副作用が余りにも大き過ぎるというような観点で、私は、やはり、配慮義務違反を禁止行為にして、そこからダイレクトに様々な、行政が一方的に判断をして、行政措置、また勧告、命令、罰則、こういったことを科していくということは謙抑的であるべきではないかなというふうに考えております。

 宮下先生にお伺いいたします。

 今の、配慮義務の規定、これを禁止行為にして、そして行政措置、また罰則まで科していくという意見に対してどのようにお考えか、お伺いいたします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 私、先ほど早稲田委員のときにも申し上げましたけれども、今般の法律というのは、法人あるいは団体一般、全体に網がかかっている法律である。そういう中で、やはり法人あるいは団体の活動の自由というのを最大限保障しつつ、こういった形で、配慮義務というようなことで、これは団体、法人として配慮しなければいけないというところで、ぎりぎりのところで行われているのかなというふうに認識しておりますので、罰則等については、今後運用の中でもう一回考えるということはあるにしても、差し当たりこれがぎりぎりのところかなというふうには考えております。

國重委員 ありがとうございます。

 先ほど川井参考人が、公益法人認定法十七条、これを引用されてお話をいただきました。その上で、この法律というのは、公益認定という一定の認定を受けられるかどうかという要件であって、狭いものを対象にしている。一方で、今回の法案というのは広く一般に法人等を対象にしておりまして、対象とするものが大きく違う。こういった観点で、今、NPO法人等が私のところにもお越しになられて、配慮義務を落としてくれというようなことの御意見まで言われるほど懸念をされております。

 さらに、公益法人認定法は、これに反しては、ただ認定が受けられないということになる効果であって、法人格が取られるわけではないわけです。

 ただ、一方、新法は、命令とか罰則につながるような中身を禁止行為としています。この点でも大きく異なりますけれども、それでも、公益法人認定法、これを引用して配慮義務を禁止行為とすることが適切とお考えか、お伺いいたします。

川井参考人 公益法人認定法の問題と今回の新法、場面が違うことは重々承知です。

 ここで私が申し上げたのは、お声の中で、抽象的な規定だと禁止行為にそぐわないというお話があったことに対して、公益法人認定法でも、ある程度抽象的な規定でも禁止行為の対象になっているということを申し上げた次第です。

 そして、この点はこの場で申し上げるのが適切かどうか分かりませんけれども、我々全国弁連として繰り返し申し上げているのは、残念ながら、この新法のたてつけ自体がやはり問題があるというふうに考えておるわけです。

 端を発したのは、あくまでもやはり統一教会の問題です。したがって、それをどうやって規制するかを議論する中で、最終的に、統一教会の問題の被害救済が不十分で、だけれども、ほかの団体に対してある程度規制できるからいいねということでは、これは本末転倒だということを言わざるを得ないと思っています。

 その意味では、この寄附の部分だけに限って、かつ、対象が広く、寄附を受ける団体に広がっているというのは、やはりたてつけとしては非常に難しい部分がある、そういう問題も今のお話には絡んでいるんだというふうに理解しているところです。

 以上です。

國重委員 ありがとうございました。

 公益法人認定法と、やはり効果が今回の新法とは違うということをしっかりと明らかにしておく必要があるかと思いましたので、質問させていただきました。

 様々確認はさせていただきましたけれども、両参考人のこれまでの活動に敬意を表していることは全く変わりはありませんので、これからもしっかり勉強させていただきたいと思いますし、我々としても、少しでも現場で御奮闘される先生方に適切な武器を提供できるようにという思いで、今回、配慮義務も設けさせていただきましたので、また、今後の審議の中で、少しでも実効性を高めるように、我々としても力を尽くしていきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、田中健さん。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いします。

 本日は、宮下先生、川井先生、朝からお越しいただきまして、ありがとうございます。是非よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず、宮下参考人にお伺いしたいと思います。

 これまで霊感商法等の悪質商法への対策検討会に携わり、二か月弱でまとめたということ、大変感謝を申し上げます。これはZoomでオープンで議論をされておりまして、私も何度か見せていただきました。

 この報告書を出されたときに、宮下参考人は、いろいろと御意見はあったけれども、現状を踏まえればかなり踏み込んだ提言になったというふうに発言をされておりました。これは、どこがかなり踏み込んだというふうに指すのか、また、それがどこまでこの新法に取り入れられたか、まずお聞きをします。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 今般の問題には直接関係いたしませんけれども、やはり、解散権行使を前提にした質問権というところ、まずここは非常に踏み込んでいたというところですが、今般の改正に関して申し上げますと、やはり、取消権の対象機関の拡大、それから行使期間の延長ということは、これまで消費者契約法の改正の中でも、行使期間なんかは、例えば半年が一年になったということはあっても、その先がなかなか踏み込めなかったというところで、かなり踏み込んだかなというふうに思います。

 また、今回の提言の中では、三項、提言の三つ目のところで、寄附の要求に対する一般的な禁止規範、効果を定めるための法制化に向けた検討を行うという提言、これもかなり踏み込んだところでさせていただいたところでございますけれども、こちらについては、禁止行為ということと、それから配慮義務という形ではありますが、ある程度私どもの提言というのを受け入れていただいたのかなというふうに考えております。

 以上でございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 寄附の禁止について、禁止行為を入れて、更に刑事罰等を取り入れられたということでありますが、まさに、その中で、川井参考人が先ほど来おっしゃった、たてつけという話をさせていただきたいと思うんです。私も、今回の法律、配慮義務と禁止行為、これが何か、二つ別のものであるかのような議論がされてしまっていますので、なかなか分かりづらい、そして本来の姿が見えてこないと思っています。

 それは、先ほど来少し川井先生言っていただいたように、元々が旧統一教会の問題があり、その悪質な献金を何とかしなきゃならない、その違法行為を定め、しかしながら、それに配慮義務というものができて、そしてさらに、それが宗教団体だけでなく一般の寄附を受けるNPO等の団体にも含まれるということで、私たち、順番が逆になってしまったような気を受けています。

 本来なら、配慮義務というのも、してはいけないことですから、配慮義務がありまして、その中で特に悪質なものを第四条で定め、それが刑事罰になるというふうな順番になって、それが、しかも宗教法人団体の寄附ということで適用すれば分かりやすかったんじゃないかなと思っていますが、先ほど少しおっしゃってもらった、たてつけということの問題点について、川井先生からお話しいただければと思います。

川井参考人 ありがとうございます。

 たてつけの問題についてですけれども、冒頭で申し上げたとおり、統一教会の問題について言えば、一番の問題は、本人の意に反した信仰を持たされる。これはなかなかにわかには信じていただけない部分はありますが、実際に裁判例で認められてきた事実でございます。そうしたことがその人の信教の自由を侵害するんだ、これが一番の問題点なわけです。

 特に、宗教というのは、その人の価値観に大きな影響を及ぼす。特に統一教会の場合は、それが、全財産を収奪されるような、万物復帰と言われるような教義があったりですとか、あるいは、一旦入った後は、そこから出ようとすると地獄に落ちるということを言われます。したがって、一旦入ると非常に困難である上に、中で行われる内容は非常に過酷なわけです。

 そうであるとするならば、逆に言うと、そういう団体であるからこそ、入口できちんと規制する必要があるんだ、こういう整理になるんだと私は思っております。

 したがって、それは、例えば、寄附を受ける団体一般に対してお話をする内容では全くないと思っておりますし、正直言って、少なくとも私個人としては、宗教団体、宗教法人以外についての立法事実について把握もできておりませんので、申し上げる立場でもないんじゃないかな、このように思っているわけです。

 したがって、本来は、今言った入口の勧誘、しかも、そういった宗教団体の特性に着目した規制が行われるべきだったのではないかと思っております。ただ、これは、この新法で終わったわけではもちろんないと思っておりますから、その点に着目した規制の在り方、これは簡単な内容ではないので、本当に検討会を重ねてやらざるを得ない部分だと思いますが、それを是非お願いしたい、このように考えているのが、たてつけの部分についての私の認識です。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 その中で、今回、配慮義務の中身について、先ほど川井先生の方から、三号の法人等の明示、寄附の使途誤認防止が大切だということがありました。

 私もこれについて大変大切だと思っていまして、総理も予算委員会の答弁で、この配慮義務に反する行為というのは、不法行為に基づく損害賠償請求による裁判が容易になると考える、よって、これは正体隠しの件を聞かれたんですけれども、正体隠しというのはこれに反するということを明確に述べておりましたので、まさにこれは配慮義務違反だというふうに私は認識をしております。

 更に言えば、正体隠しや身分を偽っての伝道というのは、悪質であり、法令に違反しますので、宗教法人法の八十一条の一項一号にも私は反するんじゃないかという思いを持っていますが、これについて、川井先生、また宮下先生、それぞれの認識をお聞きをさせていただければと思います。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに正体隠しというようなことは検討会の席上でも議論がされたところでございますし、そのことについては、今、法案の三条三号のところで、こういったことについても反映された条文というのができてきているかなというふうに思っておりますので、この点については、運用というのをしっかりしながらやっていただければというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

川井参考人 ありがとうございます。

 正体隠しと私どもが言っているところは、この三条の三号、その要素が少し表れているなとは思っておりますけれども、かなり限定的、正体隠しという実情からすると、かなり限定的だというふうに言わざるを得ません。

 これは一つには、寄附との関係で、その寄附をする団体を明らかにしないという話ですので、先ほども少しお話しした入信、信仰を持たせる段階と寄附をさせられる時期というのは、かなり広い時期的な離れがあるものですから、その意味でいうと、寄附をする段階では、逆にもう正体は分かっている、教団は分かっているということが非常に多いわけです。したがって、実際、正体隠しの実情ということとの関係でいうと、今の点がまず少し乖離があるかなというふうに思っております。

 そしてまた、正体隠しと言っているのは、ただ単に宗教団体、団体名を明らかにすればいいという話では全くなくて、これは判例の中で認められている内容としましては、一つは、もちろん今言った団体名を明らかにする、それから、それが宗教勧誘であること、教えている内容が宗教教義であること、更に言えば、入信した後に行われる中核的な行為、中核的な活動、こういったものが明らかにされなければ、インフォームド・コンセントと同じような考え方だと思いますけれども、先ほど言った、それこそ人生を棒に振りかねない大きな問題なわけですから、それに対する説明としては足りないだろうと。

 こういったものを総称して正体隠しと言っているわけなので、三号は、エッセンスの一部は取り入れられているとは思いますけれども、それだけでは足りないのかなというふうには思っております。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 これは禁止行為ではないにせよ、まさに今、配慮義務の中の特に第三号においては大変に問題がある行為でありまして、具体的にこれから更にしていかなきゃならないというふうに思っています。

 もう一つ重要なのは、やはり家族の人たちの救済であります。その中で、川井参考人の方から配慮義務の違反の効果ということのお話がありました。

 私は、先ほど来話がありますように、被害家族さんの救済というのは、民法七百九条の不法行為責任による損害賠償請求が、直接的なこれまでの献金を取り戻すという方法ではないかという思いがありましたけれども、先ほどの御説明の中では、七条の中の当該行為の停止その他の必要な措置においてこれを認めたらどうだという提案をされておりました。

 これは、裁判を経ることなく、行政権だけでの判断でこれをするという理解かと思いますが、それでよろしかったでしょうか、川井参考人。

川井参考人 はい。おっしゃるとおりです。

田中(健)委員 なかなか、私は、行政権だけで行為を停止して、さらに、被害者に対する、献金を回収するというのが現実的なのかなというふうにちょっと聞いていて思ったんですけれども、これは現実的であるんでしょうか。川井先生、お願いします。

川井参考人 今回の法案のたてつけであれば、まず最初にそういった措置がなされて、応じなければ公表されるというサンクションもついておりますので、これは先に進めば進むほど実効性が出てくる。最初は対応していなくても、公表まですると、少なくとも、広く寄附を募ろうとする団体であればそういった事態を避けようとするでしょうから、実効性はそれなりにあるんじゃないかなというふうに考えています。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 さらに、そこから進ませていただきますと、次は、先ほどの無資力の話になります。

 川井先生の方から先ほど御指摘がありましたけれども、親が信者で、二世が債権者代位権を行使しようとしても、親権者である親はこれに同意しないため救済にならない、先ほどその議論がされておりました。なかなか、特別代理人を立てても現実的じゃないんじゃないかというお話が出たんですけれども。さらに、親が無資力で、全ての財産をささげたような事例でなければ対象とならない上、その場合に取り消せるのが扶養義務の範囲にとどまるので、範囲が狭過ぎるということがありました。

 確かにそうだと思うので、今回の法案自体が特例で認めたものですから、この無資力要件を緩和をして、特例を設けて救済を広げるというようなことができないかと思ったんですけれども、これはそれぞれ、川井先生とまた宮下先生、御見解を伺えればと思います。

川井参考人 ありがとうございます。

 無資力要件について取っていただくというのは非常にありがたい前進にはなるかなとは思いますけれども、ただ、その話と、さっきの、二世が自分の親権者が同意しないがために申立てできないということ、これはまた別の問題なので、その点はやはり乗り越えなきゃいけないので、やはりこの制度、枠組みでは難しいというのが私の現状の見解になります。

 以上です。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 私、今回の制度は、やはり、まず債権者代位権という制度が使えるんだぞということを世に知らしめた、こういうだけでも非常に大きな意味があるのかな、更に特例がついたということで、これも一つ大きな意味があるのかなと思っております。

 もちろん、いろいろな、まだ運用の中で足りない点というのはあるかと思いますけれども、まずは、一番最初に申し上げましたが、第一歩を踏み出すという点で、これが決して終わりではないというふうに私は思いますので、今回まず第一歩を踏み出していただいて、次にまた進んでいただくということは次のステップとして大事である、そのまさに第一歩として、今回の法案というのをまず通すということが大事かなというふうに思っております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 このところで、あと大事なのは、子供の扶養の金額、また、それまでのを回収する場合に、これは何歳まで、幾らというような基準を定めておくのが必要かと思っています。そうでなければ、なかなか、裁判で申し立てようとか、また、今の自分の置かれている状況、しっかりと回収を求めるということができないかと思っているんですけれども、そのような基準をつくることについては、それぞれ、宮下参考人、川井参考人、どのようにお考えでしょうか。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、その基準というものについては議論の中でしていく必要があると思いますし、また、そういった、個別にどうしてもいろいろ違いが出てくるところもございますので、先ほども申し上げましたが、やはりいろいろな形で支援をする、そういう仕組みづくりが大事かというふうに思っております。

 以上でございます。

川井参考人 どうしても、このたてつけ自体の問題点を申し上げているので、その中でというところにはなるわけですけれども、その中での運用という意味でいえば、基準を作る方が利用のしやすさというのは恐らくあるんだろうとは思います。

 ただ、先ほど言った問題点があるので、その点を乗り越えないといけないのでという限定つきですが。

田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 宮下参考人、そして川井参考人、今日は、お忙しい中貴重なお話をいただき、本当にありがとうございます。

 まず、川井参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 長年、被害者救済のために御尽力をいただいていることに、心から敬意を申し上げたいというふうに思います。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の皆様が修正案を四条の六号のところで出されているというふうに思いますけれども、川井先生の資料の四十ページ、四十一ページのところに具体的に御提案があるわけですけれども、その御提案の理由など、是非お話をいただけたらというふうに思っております。

川井参考人 ありがとうございます。

 この点、四十一ページのところの上の方の下線部のところを言ってくださっているんだというふうに思います。こちらは、一つは冒頭の方で申し上げた困惑類型との兼ね合いでいいますと、統一教会の被害では困惑をしていない被害がかなりあるというところとの関係で、これは困惑類型とは別にしなきゃいけないのが一つ。その意味で、この下線部の少し下のところに、困惑類型とは別に規定したらどうかということがまず書いてあります。それから、必要不可欠の中の不可欠を取るべきだというお話をさせていただいたところが、下線部の最後の方に書かれている、必要というところになっております。

 この中のところは、配慮義務の一号とかなり近しい内容ですけれども、マインドコントロール的なものを具体的に、実態に即した内容にするべきだということで、個人の自由な意思を抑圧し、あるいはゆがめてと。抑圧しに加えてゆがめてを入れたのは、信仰を持たせられる過程が全て自由な意思の抑圧と言えるのかというところがやや疑問だったものですから、抑圧しないでゆがめるという部分もあるだろうということで入れさせていただいた部分です。

 ほかは、基本的に、一号の考え方にやや即して、それを禁止行為に入れるべきだということで修正案を出した、そういう内容になっております。

 以上です。

本村委員 この御提案は、やはりこれまでの裁判の判決を踏まえた規定になっているのでしょうか。

川井参考人 御指摘のとおりで、こういう形で自由な意思を抑圧したことでさせられる寄附ないし献金ということで、裁判例を参考にして作られたものでございます。

本村委員 ありがとうございます。

 昨日の質疑の中で、新法の第三条の配慮義務につきまして、消費者庁の審議官の答弁なんですけれども、先ほども少し御議論がありましたけれども、この第三条の配慮義務についてですけれども、自由な意思の抑圧、それから、適切な判断をすることが困難な状態、生活の維持を困難にするというのは、いずれも勧誘によってもたらされる結果としての個人側の状況というものを規定しておりまして、配慮義務においては、必ずしも法人等がなすべき行為や、してはならない行為を規定しているというわけではございません。禁止行為としてこの対象となる法人の行為を規定してしまいますと、これに当てはまらない行為については、同様の結果をもたらされたとしても配慮義務の対象外となるということになってしまいますので、それは適切ではないのではないかということで考えております。したがいまして、規定が困難だということであるとともに、不適切だというふうに考えているというような答弁があったんです。

 これについて、川井弁護士、どのようにお考えでしょうか。

川井参考人 まず、結論から端的に申し上げますと、一号、二号のいずれについても、寄附を受ける側からの行為の形で規制することは可能だというふうに考えております。

 一つは、借入れ等でその原資を要求してはいけないという規定、これも、生活の維持を困難にするという趣旨の中で、それを勧誘者側の行為に着目してできた規定だというふうに理解しておりますけれども、一号、二号、いずれについても、そういう形で、寄附を受ける側からの客観的な勧誘行為に着目した形で規制する、つくることは可能だというふうに考えています。

 恐らくは、それは、具体的な行為にまで落とし込む検討の時間がなかったということなのではないかなというふうに今のお話を聞いて思いました。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 もう一つ配慮義務についてお伺いをしたいんですけれども、政府は、配慮義務を規定することで、これに反するような不当な勧誘行為が行われた場合には、民法上の不法行為の認定、それに基づく損害賠償請求が容易になるというふうに言いますけれども、その不法行為の損害賠償と、禁止にした場合の裁判などでの闘い、立証の問題ですとか、被害者側ではどういう差が出てくるのかという点について、川井弁護士にお伺いしたいと思います。

川井参考人 お答えさせていただきます。

 禁止行為であっても、禁止行為に違反したことが直ちに不法行為と認定されるわけではまずありません。ただ、これは幾つかの事案で、そういう形で不法行為を判断する一つの要素として用いられているものもありますので、その意味で、我々は、禁止行為にすることで救済の可能性が広がるというふうに申し上げています。

 一方で、配慮義務ということですと、これはまさに、配慮したということで言い訳ができてしまう。例えば、生活の支障がないように配慮しなさいと教団側が表向き信者に対して指導していましたよという形をつくられてしまうだけでも、この配慮義務違反、信者が配慮義務に違反したと言えたとしても、教団側にそれを問うことは難しい。

 そういう問題もありますので、これは、救済の可能性という意味でいうと、配慮義務と禁止行為にするのは大きな差がある、このように考えていますし、更に言えば、やはり取消権まで付与していただくことが迅速な救済につながる、このように考えております。

 以上です。

本村委員 本当に迅速な救済につながるように、私たちも法の修正が必要だというふうに考えております。

 今、この配慮義務の規定について、十分な配慮という方向で修正するというような報道もあるんですけれども、十分な配慮義務と普通の配慮義務というのは何か法的に効果が違うのかという点を宮下参考人と川井参考人にお願いしたいと思います。

宮下参考人 御質問ありがとうございます。

 この配慮義務というのは、不法行為等の認定において、その違法性の認定を容易化するという意味合いがある。そういう中で、単に配慮しなければならないというところと十分に配慮しなければならないというところであれば、やはり十分にというところで一段重い配慮義務が課されている、そういうふうに捉えることはできるんじゃないかなというふうに思いますので、その点については意味があるというふうには思います。

 以上でございます。

川井参考人 一つは、抑止的な効果といいますか、被害防止という観点からは、配慮義務であっても、十分にという文言がついた方がやや前進なのかなという印象は持ちます。

 ただ、実際、裁判の現場で、配慮義務違反を不法行為として構成した場合にどの程度の効果があるかと言われると、少なくとも現時点ではさほど差は生じないのかなというふうに受け止めております。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 次に、新法の五条についてなんですけれども、借入れ等による資金の調達の要求の禁止についてなんですけれども、この要求というものが狭く取られてはならないというふうに思いますし、法改正の提案もあるかというふうに思いますけれども、明示、黙示、様々あると思いますけれども、その点についてお二人にお伺いをしたいというふうに思っております。

宮下参考人 五条のところでございますけれども、まさに御指摘ありましたけれども、ただ、こちらについては、やはり法人その他団体が広く対象となっているというところでございますので、こういった規定ぶりというのが今のところはぎりぎりなのかなというふうに思います。今後、運用の中で変えていくということはもちろんあり得るかなというふうに思っております。

 以上でございます。

川井参考人 ありがとうございます。

 今の点、私のレジュメの四ページ以下で、新法の問題点一覧、その二ページ目のところの五条のところでも書かせていただきました。五条の弊害のところで、要求だけでなく勧誘も禁止しないと意味がないと。

 これは、やはり、統一教会に限った話になってしまいますけれども、ありとあらゆる手を正直言って使ってきますから、要求はいけないということになれば、要求に見られない程度の勧誘を必ずしてくるというふうに考えられます。

 したがって、この点は、要求だけじゃ駄目なんだというふうに申し上げているところになっております。

本村委員 ありがとうございます。

 宮下参考人は、霊感商法等の悪質商法への対策検討会でも様々、被害者救済のために法的な提案も積極的にしていただいたというふうに思うんですけれども、無効の関係ですとかあるいは包括的な取消権の導入なども御提案いただいたというふうに思うんですけれども、その点を御紹介いただければというふうに思っております。

宮下参考人 ありがとうございます。

 本日の意見でも申し上げましたけれども、やはり、つけ込み型と言われるものについてもう少し幅広く取消しというものの対象にする、そういう法整備というのが必要ではないかということと、それからもう一つは、寄附というものをいわば強要するような形になるような、そういうことにつながる勧誘行為というのを規制するというような提案というのをさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

本村委員 ありがとうございます。

 次に、報告徴収、勧告、命令、罰則についてお伺いをしたいんですけれども、虚偽の報告等は五十万円以下の罰金、そして命令違反は一年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金というふうになっているんですけれども、これは例えば統一協会でいいますと効果があるのかという点をお伺いしたいというふうに思っております。

川井参考人 ありがとうございます。

 先ほども少し申し上げたとおり、やはり刑事罰が科されるというのは非常に大きなダメージになると考えられますので、最終的にそうしたサンクションが設けられていることは非常に大きいところだというふうに考えております。

本村委員 ありがとうございます。

 もう一度、済みません、新法の五条のところなんですけれども、統一協会では、自己破産に至るまでの被害が相次いでいるというふうに思います。法務省が取りまとめております合同電話相談窓口にもやはり自己破産という事例が出ておりますけれども、この点について、政府は、今回の合同電話相談窓口の案件で知ったというようなことを法務省も言っていたんですけれども、やはり改めて、被害者本人ですとか御家族からの聞き取り、そして全国霊感商法対策弁護士連絡会の皆様からの詳しい聞き取り調査など、実態調査が必要ではないかというふうに思いますけれども、お伺いできればと思います。

川井参考人 ありがとうございます。

 今の点は本当におっしゃるとおりだと思っております。統一教会の問題については、きちんとした実態の把握、実態の調査をきちんとしていただいて、それをちゃんと調査報告書の形でまとめていただくことが、今後同様の被害が生じないために非常に重要なものになると思いますので、是非その点はお願いしたいなというふうに思っております。

本村委員 貴重な御意見、本当にありがとうございました。質疑にも生かしていきたいというふうに思っております。

 本当にありがとうございました。

稲田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

稲田委員長 引き続き、内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房こども家庭庁設立準備室審議官長田浩志さん、消費者庁次長黒田岳士さん、消費者庁審議官植田広信さん、法務省大臣官房審議官松井信憲さん、法務省大臣官房司法法制部長竹内努さん、文化庁審議官小林万里子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西村智奈美さん。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。

 政府提出法案の質疑が始まりまして、昨日は与党の質疑、この委員会で。今日は参考人質疑を経て、今日、私どもが質問をさせていただくということになりました。

 午前中の、先ほどまでの参考人質疑は、本当に充実した中身の濃かったものだというふうに存じます。民法の先生である宮下先生、政府の検討会の座長代理でもあられました。また、全国霊感商法対策弁護士連絡会の川井先生、事務局長、本当に、三十年に及ぶ被害者との向き合いの中で蓄積してきた様々な経験やお考えからお話をいただきました。より一層これから充実した審議を行えるものというふうに期待をしておりますので、河野大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 幾つか通告をしておりますけれども、細かい点もございますので、その場合は政府参考人からの御答弁でも結構でございます。

 第一に、禁止行為について伺いたいと思います。第四条です。

 この禁止行為についてなんですけれども、「寄附の勧誘をするに際し、」という、柱書きとでも申しましょうか、記載がございます。

 これは一体どのくらいの期間になるのか、まず、そこのところから伺いたいんですけれども、これまでに、昨日の本会議での答弁などでは、時間的な概念も含むということで答弁があったところですけれども、これは、加害側といいましょうか、勧誘する側が最初に接触をしてから寄附をするまでの間、こういう解釈でよろしいでしょうか。

 また、その場合に、先ほどの川井弁護士のお話にもあったんですけれども、最初に接触してから寄附をするまで数年、間が空くというようなケースもあるそうですけれども、そういったふうに数年に及ぶような場合でも規制対象となるのか、そこを伺いたいと思います。

植田政府参考人 御質問いただきました「寄附の勧誘をするに際し、」でございますけれども、「寄附の勧誘をするに際し、」とは、法人が当該寄附の勧誘を行う場合に、個人と接触してからその個人が寄附を行うまでの間にという趣旨でございます。例えば入信後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であるというふうに判断できる場合は対象となるということでございます。

 また、御質問の事案において、個別具体の事情によりますけれども、例えば、過去に不安をあおられたことによって生じた不安をその後も抱き続けている者に対して、これに乗じて複数回、長期にわたって寄附を勧誘するという行為につきましては禁止行為に該当し、これにより、困惑して行った寄附は、その都度、寄附の勧誘をするに際して、不当な勧誘を受け、困惑した寄附の意思表示として取り消すことが可能となるというふうに考えております。数年というか、そういった単位においても、因果関係が認められる場合には対象になるというふうに考えております。

西村(智)委員 ビデオセンターで教義を教え込まれて、その数年後に教義に基づくものとして献金を勧誘される場合、ビデオセンターの時点で受けた不安をあおるような行為、それも献金に結びついていれば規制対象となるということで確認してよろしいでしょうか。イエスかノーかでお答えください。

植田政府参考人 対象となるというふうに考えております。

西村(智)委員 ビデオセンターで、今度は正体を隠して不当に教義を教え込まれて、その数年後にその教義に基づくものとして献金を勧誘される場合も規制対象となるという理解でよろしいでしょうか。イエスかノーかでお答えください。

植田政府参考人 対象になるというふうに考えております。

西村(智)委員 次に、法人等の問題です。

 これは、団体、個人、どこまで入るんでしょうか。団体の幹部である個人は含むのか。例えば同一法人の別の人間が入れ替わり立ち替わりで勧誘する場合、最初に接触するというのは、各人について判断をするのか、それとも法人単位で判断することになるのか、いずれでしょうか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 個人の行為でございましても、その行為が法人等の行為とみなされる場合には法人の行為ということとなりますので、また、個人の責任も当然ございます。

 したがいまして、立ち替わり立ち替わり勧誘する者が替わったといたしましても、それが法人の行為とみなされる場合には法人としての勧誘でございますし、かつ、その個人個人の責任も生じているということと理解しております。

西村(智)委員 今御答弁いただいたとおり、それぞれ対象となり得るということなんですけれども、であれば、先ほどの参考人質疑の中でもあったんですけれども、やはり、例えば「寄附の勧誘をするに際し、」というのは、言葉だけ見ていたら、時間的な概念が含まれていて、数年間、間があっても大丈夫だというふうにはなかなか読み取れないわけなんですよ。

 ですから、解釈の余地を生じないように、そこは条文に書き込むべきではないかというふうに考えるんですけれども、これは大臣、いかがですか。ここのところは政治判断だと思うんですけれども。

河野国務大臣 政府案で特に問題ないと思います。

西村(智)委員 先ほどの参考人の御意見を河野大臣はお聞きになっておられないと思うんですけれども、移動中か何かで。ですけれども、やはり、例えば、「寄附の勧誘をするに際し、」という文言だけからでは条文上は読み取れないということだったんですよ。そこはやはり、立法府というか立法者の、提案者の意思として書き込むべきではないかと。今御答弁いただいたとおりですから。どうですか。どなたでも結構です。

植田政府参考人 大臣の御発言のとおりでございますけれども、政府部内で検討いたしまして、この「際し、」という表現でそこについては十分読めるという判断でございます。そういった、なかなか分かりにくいということにつきましては、しっかりと説明をしていきたい、個別の逐条の解説でもしっかりその辺については明らかにしていきたいと考えております。

西村(智)委員 逐条解説は、言ってみれば、裁判のときにどのくらいの力となるのかということは、これもまたいろいろ解釈のあるところだというふうに思うんですよ。私は、司法に言ってみれば影響を与えることができるとすれば、やはり書いてある条文だと思うんですよね。皆さん、立法府だから、そのことを分かった上で立法作業をしているわけですから、そこのところはやはり書き込むべきだということは重ねて申し上げたいと思っております。

 次に、困惑について伺いたいと思います。

 先ほどもお話があったんですけれども、旧統一教会の被害事例というのは、困惑という言葉だけでは一般的には捕捉し難いということです。外形的には困惑していないけれども行う寄附というものが実はほとんどなんだというようなお話なんですよ。

 ここは、政府のまさに逐条解説に記載があるんですけれども、精神的に自由な判断ができない状態、こういった逐条解説もありますけれども、こうした政府答弁、政府答弁は今までにも繰り返し繰り返しありますが、そういったことを含めた条文とすべきではないかと。これは昨日の総理答弁もありましたので、条文に書いていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

植田政府参考人 ただいま逐条解説について言及いただきましたけれども、逐条解説では、「「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。畏怖をも含む、広い概念」というふうにされております。今回のケースでございますけれども、いわゆるマインドコントロールにより起きます寄附については、多くの場合は、不安を抱いていることに乗じて勧誘されて困惑したものであるというふうに考えることができるのではないかというふうに考えておりまして、困惑のままでも十分問題ないのではないかというふうに考えております。

西村(智)委員 そうでしょうかね。寄附者が困惑させられるということがどうしたって必要になってくるということですけれども、繰り返しですけれども、先ほども参考人の方がおっしゃっておりました、少なくとも、統一教会における被害のうち、かなりの部分は、信仰による責任感や義務感から外形上は進んでお金を出すように見えるということなんですよね。ここは、この困惑ということが条件になっているというのは私はやはり問題だというふうに思うんです。

 具体的に伺いたいと思います。

 正体を隠して教義を教え込んで、その教義に基づく責任感や義務感に基づいて支払わされる献金、その場合には、献金をする場合に既に植え付けられた教義に基づいて進んで献金をしているという外形になりますけれども、それでも困惑に該当することはあるでしょうか。あるとすれば、それはどういう場合に該当するでしょうか。

植田政府参考人 今おっしゃいました外形上、見て、義務感とか責任感、使命感、信仰からといったことで、外形的には自ら進んで献金、寄附をされている場合について困惑があるのかということかと思いますけれども、その場面では本人はお気づきでなかったかもしれないけれども、後から考えてみればあのときは困惑をしていて献金を行っていたんだなというふうに気づかれるという場面はあるのではないかというふうに考えております。

西村(智)委員 つまり、それは御本人のマインドコントロールが解けた場合ということですね。

 そのような勧誘行為による困惑というのが立証されている、そういった裁判例はこれまであるんでしょうか。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 今直ちにどの裁判例ということを申し上げられませんけれども、基本的に、マインドコントロールなり信仰から脱退されて訴えておられる方々は、入信された間には何らかのことを信じて献金なり寄附をされていたけれども、脱退された場合に、それはやはり違ったのではないかというふうにお考えになっているのではないかと思いますが、ちょっと裁判例で申し上げることができなくて恐縮ですけれども、脱退されてお金を取り返したいというふうに思っておられる方々はそういうふうにお考えなのではないかなというふうに推察されるのではないかと思います。

西村(智)委員 裁判例はないんですね、旧統一教会のものに関して申し上げると。それ以外のところで、脅されてちょっと震え上がってお金を出しちゃったというケースは一例だけあったんですけれども、これは別に霊感商法とかマインドコントロール下とは関係のない事例でありました。

 先ほどの御答弁ですと、結局、信者御本人を言ってみれば救済するという意欲が政府にはないのかな、こういうふうに思わざるを得ません。信者御本人もやはり被害者だというふうに思うんですよ。先ほど川井弁護士もおっしゃっておられました。まさに信教の自由、本人の意に反した信教をあてがわれているということがやはりこの問題の本質なのであって、それも実際に裁判でも認められているということなんですけれども、政府法案の方に、信者御本人を言ってみれば救済する、そういう視点が欠けているんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは大臣の方からお答えいただきたいと思います。いかがでしょうか。

河野国務大臣 旧統一教会問題に関しましては、被害者の救済とその再発防止を図ることが急務であるということから、できる限り速やかに法案としてまとめました。もちろん、御本人も被害に遭っている、その救済が必要なケースというのは多々あると思います。

西村(智)委員 私は今の御答弁を聞いても、被害者本人の保護が必要だという視点は政府の法案にはやはり欠けているというふうに申し上げざるを得ません。

 新法のたてつけそのものに問題があるのではないかという御指摘もあったんです。つまり、寄附に限って規制をしようということになってしまっている今の法案なので、例えば、学問の自由、信教の自由、それからもう一つは政治活動の自由、これについては配慮しなければいけないという規定もあるんですけれども、では、先ほども質問がありましたけれども、特定非営利活動法人などはどうかというと、これは言ってみれば、先ほど言った三つの自由の中には含まれないものも多々あるということでありますよね。他方でそういう問題を残しながら、一方では本来守らなければいけない、本来救済しなければいけない方々が対象から外れてしまうというのは、やはり大きな欠陥なんじゃないかと私は思っているんですね。

 次に伺いたいと思います。

 困惑について更に伺います。

 合理的な判断ができなくさせられたような場合も困惑という言葉には含むと考えられるでしょうか。その場合に、合理的な判断かどうかということについては、寄附をした当時の本人の認識ではなくて、通常、一般人の認識に照らして合理的かどうかという判断、解釈でよろしいでしょうか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 困惑と合理的な判断ができないというのが同義かというお尋ねかと思いますけれども、そこはケース・バイ・ケースで、同じ場合もあると思いますけれども、さらに、消費者契約法の逐条解説では、畏怖をも含む広い概念としておりますので、実際、一対一で重なる場合もあるし、ケース・バイ・ケースかなというふうに考えております。

 それから、判断の基準が一般の方でよろしいかということかと思いますけれども、まず、第四条の禁止行為の規定で、仮に違反があった場合に、行政処分を行うようなときには、そのときには行政庁の判断が行われるということになりますので、一般の方が通常困惑するような状況ということが基準になるというふうに考えております。

 一方、取消権を行使するという場合につきましては、当該個人の認識で困惑したかどうかということをまずは主張されるのだと思いますけれども、それに基づいて裁判所が判断するということになるのかと考えております。

西村(智)委員 私、ここはやはり、困惑という言葉がある以上は、合理的な判断ができない状況という新たな類型をつくるということが適当ではないかというふうに考えています。そこについては、政府の方からは同じ御答弁だと思いますので答弁は求めませんけれども、やはり、困惑しないと寄附にまで結びつかない、まさに、違法な勧誘行為と、困惑と、それから寄附の意思表示、このパターンがある限りは、困惑がないと絶対に結びつかないわけですから、そこは、私は新たな類型をやはりつくる必要があるのではないかというふうに考えております。

 次に、新法では、霊感商法、これが対象に含まれておりません。本会議でも質問がありましたけれども、これは霊感商法を入れませんと、刑事罰には結びつかないということなんですね。不十分ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

 黒田次長。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの消費者契約法第四条三項六号、霊感商法についてなぜ行政措置や罰則を適用しないのかというふうにお尋ねだと理解しておりますが、高額な献金による被害が特に重大な問題として指摘されている中で、今回の法案では、悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、行政措置や罰則を規定するということにしたものでございます。

 商取引に該当する契約については、現行の消費者契約法により取引の対象とするほか、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求の対象となりますが、勧告、命令等の行政措置や罰則を導入する場合には、寄附よりも更に広い事業主体に影響を及ぼすものであることから、慎重な検討があり、現段階では、勧告、命令等の行政措置や罰則の導入を行わないということとしたものでございます。

 また、余り知られていない法律ではございますが、この消費者契約法の第四条の三項の六号で取り消し得るような霊感商法が仮に行われておりまして、多数の消費者被害が行われていたような場合につきまして、さらに、どの事業法等でも規制できないような場合におきましては、消費者安全法という法律がございまして、その安全法に基づきまして、消費者庁がいわゆる勧告等を行うような規定もございます。

 以上でございます。

西村(智)委員 今長く御答弁いただいたんですけれども、要は、寄附も対象にすると対象が広くなってしまうので今回は入れなかったということなんですかね。ちょっと、どうなんでしょうか。もう既に寄附も明らかに幅広い主体が対象になっていると私は思うんですけれども、これは、新たに霊感商法まで入れるということで何か本当に問題がありますか。やはり、霊感商法が入っていないというのは本当にちょっと、不足だと思うんですけれども、どうでしょうか。もう一回お願いします。

黒田政府参考人 同じような答弁になって恐縮でございますけれども、寄附自体を事業活動の主な収入源とされている主体よりも、霊感商法ということで実際に商取引をやられている主体の方がかなり幅広いものというふうに認識しております。

 また、先ほども申し上げましたように、直ちにここで行政措置、罰則という形で新たに立法しなくても、消費者安全法というような法律で対象にできる場合もございますので、まずはそういった立法事実、今回は、高額な献金による被害が特に重大な問題として指摘されたということで、そこを立法したということでございますので、そういったことで霊感商法について広く問題が広がれば、また検討していくといったこともあろうかとも思います。

西村(智)委員 私たち、これまでにも多くの方から被害実態をヒアリングしてまいりましたけれども、やはり、霊感商法といいますか、物品の購入ということで多額のお金を払っている方も本当に多くいらっしゃいました。私は、やはりこれを何で対象にしないのかというのが本当に不思議でならないんですけれども、この後また質疑もあられるかというふうに思いますので、今のところはちょっと問題提起にとどめておきたいというふうに思います。

 次に、必要不可欠という言葉について伺いたいと思います。

 何度も問題になってまいりましたけれども、現行の消費者契約法、こちらの方は、確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げるということなんですけれども、改正法案と新法では、必要不可欠という言葉に変わっております。こちらの方が要件を緩和した、そういう理解でよろしいんでしょうか、伺います。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 緩和というよりも、明確化という方が適当かというふうに考えております。

 簡単に御説明させていただきますと、確実にを必要不可欠と変更した理由でございますけれども、現行の規定では、消費者契約を締結することによって消費者の重大な不利益の回避が確実に可能であるといったことを告げるということが要件になっております。すなわち、締結という、必要な契約を結べば不利益の回避という結果が確実に生じるということを告げるということが現行の法律では要件になっております。

 一方、今回の改正につきましては、消費者の重大な不利益を回避するための手段として消費者契約の締結が必要不可欠であるということでございまして、契約が必要であるということは告げる必要があるわけですけれども、その結果が伴うかどうかということまでは聞かなくていいということでございます。

 すなわち、現行は、契約を結ぶことで、結果、不利益の回避ということを保証されるわけですけれども、こういった場合、検討会でも指摘がありましたけれども、確実ではないけれどもというような一言を加えると確実じゃなくなっちゃうじゃないかというような抜け道があるので、ここは、確実なというのはなかなか聞きにくいというような御指摘がありました。

 一方、契約の締結が必要不可欠といいますと、そこは、契約を結ぶことが必要不可欠ではありませんというような勧誘は、普通、統一教会のような例では考えられませんので、かなり必要性、切迫性を強く告げて勧誘してくると思いますので、そこについては、消費者契約の締結が必要不可欠というふうに言われたということは後々立証しやすいということで、現行の規定に比べて要件の明確化を図ったということでございます。

西村(智)委員 確認させていただきたいんですけれども、でも、現行法の、確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げるということは、例えば、水晶を買えば病気が完治しますというふうに言う、その言い方は含まれますか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 水晶を購入すれば病気が完治しますという言葉の中に、確実に病気が完治するというニュアンスで、そういった意図で言われたのであれば該当するということかと思いますけれども、その点、例えば曖昧に言ったり、後から言った言わないとかいうようなことで検証が難しいということであれば、なかなか、直ちに適用するのは難しいということかと思います。

西村(智)委員 そうしますと、必要不可欠という規定になることによって、水晶を購入した結果、病気が完治するというところまでは言わなくてもよくなった、こういう理解でしょうか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 その場合、ちょっと極端な例かもしれませんけれども、水晶の購入をしたら完治するとは限らないけれども、買わないと治らないわよというような勧誘の仕方があるかと思います。買わないと治らないわよということで必要不可欠だと思って購入する場合ですけれども、その場合は、購入したら治る、確実に治るとまでは言っていないというようなケースがあるかと思います。

西村(智)委員 例えば、水晶を購入する必要がある、こういう言い方ではどうでしょうか。病気が治るとか治らないとかではなく。

植田政府参考人 水晶を購入する必要があると言って、それは必要不可欠であるということであれば、改正法の方では該当すると思いますけれども、現行法の方では該当するかどうか曖昧なのではないかというふうに思っております。

西村(智)委員 必要不可欠と同等程度の必要性や切迫性があれば取消権の対象になると考えている、こういう答弁を繰り返しお聞きしているんですけれども、旧統一教会の被害実態に即して、例えば、どういう言い方であれば同等と認められるんでしょうか。

植田政府参考人 済みません、ちょっと直ちにいい例が思いつかないかもしれないですけれども、契約を結ばなければ大変なことになる、契約を結ぶことが必要不可欠であるというふうなことを思わされる言動を受けてそう信じたといった場合には、という勧誘が対象になるのかなというふうに考えております。

西村(智)委員 何もお答えにならないんですね。

 これまでに、旧統一教会の不法行為について、必要不可欠ないしは同等程度の必要性と切迫性といったものが、裁判で、判決で認められた例というのはありますか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 裁判例については確認をしたいと思いますけれども、例えば、あなたが現在不幸なのは先祖の霊が地獄で苦しんでいるからであって、この苦しみから逃れるためには先祖の除霊をするしかないというような言い方はあったと記憶しております。

西村(智)委員 ちょっと今のお話を伺っていても、具体的な判決例もありませんし、何がその必要不可欠に当たるのかということについての具体的な答弁もありませんでした。

 必要不可欠という言葉は、現行の消費者契約法よりも、また、実際の民法のこれまでの不法行為で積み上げられてきた判例の基準よりも、救済の立証が難しくなるという指摘があります。必要不可欠といううち、不可欠をなぜ削除しなかったんでしょうか。これは、大臣、お答えください。なぜ不可欠を削除しなかったんですか。

河野国務大臣 単に必要とするだけですと、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動にまで対象が広がってしまいかねないということから、こういう文言にしたものでございます。

西村(智)委員 堂々巡りの議論になってしまうんですけれども、この法案は、たてつけの時点から、ちょっとやはり、本来であれば、川井先生がおっしゃるように、正体隠しの違法な伝道行為、これを正面から規制する、そういう立法とすべきだったところを、まさに寄附というものに絞っちゃったがゆえに、今大臣が言われたような問題も起きてくるということだと思うんですよ。

 同じことの繰り返しになると思いますので、更に具体的に聞きますけれども、厄払いというのはどういうものを含みますか。これは、必要不可欠というのを入れると、厄払いが対象になっちゃうというようなやり取りもあったんですけれども、厄払いなどというのはどういうものを含むのでしょうか。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、例えの例で恐縮ですけれども、例えば、厄年の方がいらして、今年は運勢はどうなんだろうと心配されている方がいらしたとして、神社なりでそのお話をされたところ、おはらいをされてはどうですかという勧誘を受けましたというときに、そのときに勧誘をした方が厄払いが必要だというふうにおっしゃったのは、さすがに社会通念上禁止行為にはならないのではないかということ。しかし、厄年なんだからあなたは絶対に厄払いをしないといけないですよ、必要不可欠ですよというような言い方を仮にしたとすれば、それは社会通念上よろしくない、不当な勧誘ではないかということかと存じます。

西村(智)委員 何か、不可欠という言葉を入れるための詭弁にしか私には聞こえないんですね、先ほどのお答えを聞いていて。

 ちょっと時間が限られてきましたので、先に進みたいと思います。

 昨日、本会議で、我が党の柚木議員への答弁でこういう答弁がありました。多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くは、そのような必要性や切迫性を有しているものと考えられるということでしたけれども、これはどういう意味でしょうか。多額の献金をしていることは必要不可欠と告げられた立証となる、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 多額の寄附をされる場合にも、いろいろな方がいらっしゃいますので、すごく資産家で余裕を持ってされる場合の多額という意味と、そこはちょっと違う意味でおっしゃったのではないかと思いますけれども、生活に支障を及ぼすような、その人にとって多額の献金をする場合に、なぜそこまで献金をしなければいけないのか、この人の生活水準から比べてそこまで本当になぜやるのかというふうに思われるような金額の献金をされた場合には、やはりそういった必要不可欠と思われた何か要因があるのではないかというふうに考えるのは自然なことかというふうに思います。

西村(智)委員 ごめんなさい。ちょっと今の答弁もよく分からなかったんですけれども。だって、総理は、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くは、必要性や切迫性を有しているものと考えられる、何というか、本当にそのとおりにおっしゃったんですけれども、これはそういうことだ、必要不可欠と告げられたという立証につながるということ、そういうことでよろしいでしょうか。

植田政府参考人 お答えいたします。

 不当な勧誘によって多額の寄附をしたということは、本来その方は多額の寄附をしたくなかったのであれば、なぜそのような寄附をしたのかということを考えると、そういった必要性、切迫性を訴えられて寄附をされたということは推察できるのではないか。それがちょっと立証になっているかどうかまでは難しいかもしれないですけれども、少なくともそういったことは推察できるのではないかと考えます。

西村(智)委員 つまりは、一般論としておっしゃったということですかね。やはり条文としてその旨が分かるように書き込まないと、これは本当によくないなというふうに思いました。

 ちょっと時間がなくなりました。配慮義務について。

 いろいろ聞きたいことはあるんですけれども、配慮義務について、今、与党の方から、配慮義務を履行していなかった場合は、報告、勧告、公表を適用するというような提案がなされているやに伺っております。

 そうしますと、行政権の行使というのが極めて重要になってくるというふうに思うんですけれども、いわゆるジャパンライフの事件について、これは、特定商取引法では明確に禁止規定になっているものに基づいて行政指導等が行われてまいりました。これは特定商取引法に、配慮義務じゃないですよ、禁止規定が明確にあって、それで行政権が行使されて。

 ところが、これはすごく時間がかかっているんですよ。一番最初にこのジャパンライフをめぐる問題、国会で議論が行われたのが一九八五年、ここでマルチ商法について集中審議があったと。その後、施行令が改正されたりもしているんですけれども、消費者庁が一番最初に行政指導に入ったのが二〇一四年です。結構、ここに来るまでにも時間がかかっています。それで、行政指導が二回行われています。その後、翌年にやっと立入検査になっています。その翌年にようやく命令。命令が何回か繰り返されて、それで二〇二〇年に容疑者らが詐欺容疑で逮捕されているということなんですね。

 本当に迅速に消費者庁が、済みません、行政権の行使ができるのかどうか。私は、禁止規定になっていてもこれだけ時間がかかっちゃっているんだから、いわんや、配慮義務においてはもっともっと行使が難しくなってくるんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは、大臣、いかがお考えですか。

河野国務大臣 配慮義務の違反に関しては、政府案では行政措置の対象にはしておりませんが、個別事案の行政措置の発動に要する期間は、それぞれの事案の軽重、特質に応じて様々であると考えております。

 一方で、新法の執行体制に関しては、機動的に行政措置等で対応できるよう、各省庁の協力を得つつ、消費者庁において必要な体制の整備を講じてまいりたいと思います。

西村(智)委員 やりますと言われても、結局、これまでにあった実例がこういうことですからね。行政指導から逮捕まで六年もかかっているということはよく踏まえていただかないと、執行体制にもかなりの懸念が残るということだと思います。

 最後、大臣、つけ込み型。

 私、十一月十五日にこの委員会で、つけ込み型については、検討会の報告書にも法制化を早急に検討すべきというふうに書かれていると質問しましたところ、大臣は、それは最終調整中ですので、お答えできませんというふうに答弁されました。

 午前中の参考人質疑で宮下参考人が、このつけ込み型の法制化について言及をされました。なぜこれは法制化されなかったんですか。

河野国務大臣 つけ込み型の不当勧誘については、いまだ明確な定義があるわけではございません。さきの消費者契約法の改正に係る検討の中でも、消費者の心理状態に着目して、困惑とは別の取消権を考えるべきではないかといった議論もございましたが、具体的な条文の規定の仕方までの提言には至りませんでした。

西村(智)委員 終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、吉田統彦さん。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は野党のみで五時間の質疑ということですが、この法案については様々な問題点が取り沙汰されております。

 立憲民主党と日本維新の会は被害者救済のための法案を共同提出しており、本来であれば、この点を速やかに審議していただいていれば、今頃は法案がもう成立して、いち早く被害者救済や将来の被害の防止が図られつつあったと思います。

 被害者の皆さんは、被害者救済のための法案をまさに三十年待っておられたと言っても過言ではありません。この方々の期待に応えるためにも、政府並びに河野大臣におかれましては、質問に対し簡潔に、かつ真摯にお答えいただくとともに、野党案からも取り入れるべきは取り入れ、被害者、そして長く被害者救済のために活動されてきた、先ほど参考人として意見を述べられた全国霊感商法対策弁護士連絡会やその他の弁護士の方々が納得するような法案を成立させることが政治の責任であるということを冒頭あえて申し上げて、質問に入りたいと思います。

 十一月十五日の大臣所信に対する質疑におきまして、私は、法案を最終調整中であるとおっしゃっている大臣に対して、私たちが提出した法案の目的は、何よりも現在被害を受けている方々の救済と今後の被害の防止が重要であると考えています、しかし、ヒアリングの様子を見る限り、消費者庁の姿勢は、関係者の処罰など、法の執行に重点があるように思います、関係者の処罰はもちろん重要であると思いますが、同順位かそれ以上に、将来の被害防止が重要ではないでしょうかと問いかけました。これに対し、大臣は、政府の改正案は、被害者の救済、それから将来の被害の防止というものを目的として検討しているところでございますと御答弁されました。

 しかし、情報の開示などを見ると、どうもそのように見えない。実際に、消費者庁は、そういった全てのこういった被害者、様々な消費者庁関連の被害者の情報開示に常に後ろ向きな答弁を我が党立憲民主党の会議等ではされているんです。これを拝見すると、法人、団体などが犯罪行為をしている、違法行為をしているという情報をやはりいち早く提供、そして共有することが極めて重要だと思いますし、そういった指摘を度々させていただいております。そして、その中で、今回、政府より、消費者契約法及び国民センター法の改正案と、そして新法が提出されたわけであります。

 あえて再度お聞きしたいと思いますが、今回提出の法案は、悪質な寄附を勧誘する法人に対する規制に主眼が置かれているのか、あるいは、取消権など被害者の救済に主眼があるのか、大臣、お答えください。

河野国務大臣 今般の法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案につきましては、法人等による不当な勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法と相まって、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的としております。

 したがって、悪質な寄附勧誘行為をする法人に対する行政規制と、取消権など民事ルールによる被害者の救済の双方が相まって、被害の救済、防止に寄与することを目指すものでございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 よく分かったんですが、大臣、一般的に、本法案はもちろんそうなんですが、消費者庁が所管するそういった被害者救済において、前回もお問いかけをさせていただいたんですが、やはり、被害に遭わないこと、遭うことを未然に防ぐ、あるいは早期に被害を最小限に食い止める、そういった意味では、何かしら悪質なことをやっている法人、様々な法人があるとすれば、それを、消費者庁が情報を持った時点でいち早くやはり情報開示をして、国民に広く共有するということが極めて重要ではないかと思うんですが、消費者庁はそういった態度を取らない。

 要は、のさばらせておいて、後で一斉に検挙するんだ、後で処罰するんだ、そういったスタンスを変えないんですが、大臣、ここは前回同内容に関して御答弁いただいたんですが、この消費者庁の現在のスタンスに関して、所管大臣としてどのようにお考えになられますか。

河野国務大臣 おっしゃっていることが余りよく理解できておりませんが、消費者庁として、消費者の被害を未然に防止する、これは非常に重要なことだと思っております。

吉田(統)委員 では、役所に伺いますね、今のを。

 大臣は今そう答弁されていますね。今回の法律の趣旨も、先ほど大臣が申し述べられている、そうでございますが、消費者庁はいつも、消費者被害に関して、今回のこういった立法の趣旨もそうですが、自分たちが持っている情報を早く、未然に、そういった被害に遭わないため、ないしは被害を早期に食い止めるために情報を広く国民に提供すべきではないか、国民に共有すべきではないかということを我々から問いかけると、自分たちの手のうちを明かしたくないと、悪質団体や悪質業者に対して。だから明かさないんだ、明かせないんだと。

 だから、それに対して我々が、では、被害が拡大してもいいのかというと、それには何も答えずに、とにかく彼らを厳罰に処することが大事だ、一斉に摘発することが大事だという趣旨をいつもおっしゃるんですが、それは大臣の今の趣旨とは違うんじゃないですか、消費者庁さん。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者庁が情報を扱う場合というのは、まさにケース・バイ・ケースでございます。その悪質な手口について、つかんだ情報をいち早く出すという場合もございますし、何らかの事故等が起こった場合には速やかに出すということもございます。

 他方、消費者庁が、例えば個別の事業者名などを挙げて、その事業者についての行為について公表するということにつきましては、やはりしっかり要件を当てはめた上で正確性に基づいていなければ、逆にその企業にとって被害を及ぼすという場合もございます。

 そういったこともありますので、かつ、今委員の御指摘のように、実際に、一般論で申し上げますと、消費者庁が情報を持っていない場合も実はございます。そういったことを逆に明らかにしてしまえば、消費者庁の情報収集能力についてまたつけ込まれて、またその被害が広がっていくということになりかねないと思っております。

 ということで、消費者庁が情報を扱う場合というのは本当にケース・バイ・ケースでございまして、ただ一つ、一貫してありますのは、未然に被害を防ぎたい、又は被害をできる限り拡大させたくないということで、いつも行政を行っているところでございます。

吉田(統)委員 どうもいつもとトーンがちょっと違うようですが、またそこはしっかり整理したいと思います。

 それでは、またちょっと法案に沿って。

 今回、寄附については、私が先ほど申し述べたように、新法が提出されています。今回は、消費者契約法及び国民生活センター法の改正案が先に提出されて、新法が十二月に入ってから提出されるという、政府の御対応としては極めて異例な形で進められていると感じるところがございます。

 なぜ新法を制定する必要があったのか、大臣、お答えください。

河野国務大臣 さきに消費者契約法の改正案を提出いたしましたが、それでカバーできないものもございますので、それに対応する新法でございます。

吉田(統)委員 では、役所からも。

 これだけ時期がずれたわけですが、その理由は。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 実際、新法を検討するということについては、後ろにずれたというよりは、かなり前に倒したということが実態でございます。

 政府として、この統一教会の問題に対応する中で、できるものからどんどん手をつけていくという一般的な、そういった指示もございましたこともあり、今御指摘のような形で、二段階に分けて法律を提出したという形になっております。

吉田(統)委員 国民一般、我々もそう思いますが、これで前倒しにされたとおっしゃっていますけれども、かなり遅い状況だったと思いますよね。我々、かなり早くから対策会議を開いて、しっかりと野党で立法作業を進めさせていただく中で、やはり与党の動きが少し遅かった印象を感じざるを得ません。

 それでは、次に行きますね。

 十一月十五日の答弁でも、また先ほどの答弁でも、大臣は、被害者の救済が最も重要であるという趣旨の発言をしてくださっています。しかし、基本的に法律は将来に向かって効力を持ちますので、過去の事象で、今現実に被害を受けておられる方々の救済には直接にはつながらないと思います。

 今回の新法によって、現時点でお困りになっている被害者の救済につながるような部分はあるのでしょうか、大臣、お答えください。

河野国務大臣 法律というのは、原則として施行日以降が対象になるもので、この法律案も施行日以降に行われる寄附の勧誘について適用されるものですが、配慮義務につきまして、それ自体が遡って適用されるということはありませんけれども、寄附の勧誘に当たっての規範を示すものになりますので、こうした規範は、過去の寄附に関する被害についての民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求の裁判の実務においても考慮される可能性というのがあるんだろうと思います。

吉田(統)委員 なかなか、そうすると、大臣、今の現状では、確定的に、過去の事象に対して現在困っていることをお救いするという部分に関しては、はっきりと確たることが言えないというように聞こえたんですが、役所から同じ内容で追加でお答えいただけますか。

黒田政府参考人 追加して答弁するものはございません。

吉田(統)委員 では、今の段階では、過去の被害を救うことができないという理解でいいですね。いいですね。今大臣がおっしゃった以上のものはないということですね。

 追加することはないと言ったじゃないですか。追加するんですか。(黒田政府参考人「追加しません」と呼ぶ)

 それでは、追加でお伺いしていきますが、消費者契約法では対象とならず、新規提出の新法だけで適用対象となるのがどういった事例であるかを、大臣、御説明いただけますでしょうか。

河野国務大臣 消費者契約には該当しない単独行為で、遺贈、債務免除といったものが具体的にはございます。

吉田(統)委員 もう少し詳しい例示をしていただきたいんですけれども、役所の方、いかがですか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 詳しいと申しましても、遺贈、要は、亡くなるときに遺言で、あなたに全財産をお贈りしますというような話。元々、契約かどうかというのがポイントになるんですけれども、基本的に寄附というものは、贈与契約ということで、差し上げますよという意思と受け取りますという意思、両方があって、それで契約というふうに位置づけておりますが、先ほど申し上げたような遺贈ということであれば、受け取る方は最初は全然知らないわけでありますので、そういったことについても今回の新法については含まれるということであります。

吉田(統)委員 ちょっとよく分からないんですけれども。

 それでは、ちょっと時間が、あと三分で一旦やめなきゃいけないので。

 将来的な被害を出さないようにする、あるいは、被害者を救済するために、今後、将来に関しては、今回のこの新法が示しているような事後的な取消しを認めることも、確かに一定の効果はあると考えられます。

 しかし、取消権の行使をしたとしても、実際に相手、今回の場合であれば加害者が、簡単に取消しに応じて寄附されたお金を返還するということは考えにくく、結局、裁判での争いになるということが一般的になると思うんですが、消費者庁の、役所の御見解を伺いたいと思います。

黒田政府参考人 取消権の方については、最終的に裁判で争っていただくということになろうかと思います。

吉田(統)委員 つまり、次長、取消権の行使をしたとしても、それだけでは解決にはならないだろうと。結局は、やはりもう司法の場での解決になるのがほぼ一般的に予想される、そういった上でこの法案が出ているという理解でよろしいですか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 この新しい法律の最大のポイントにつきましては、消費者契約法では取消権といったような部分につきまして、そこを禁止して、事業者によるそういった勧誘を未然に防止するといったところが主眼でございます。

吉田(統)委員 だから、私の聞いたことに答えてください。

 だから、そんなことは全然聞いていないじゃないですか、今。いいですか。取消権の行使をしたとしても、結局は司法の場での決着になるということだと予想されますと次長はおっしゃったじゃないですか。

 ちょっと、よく聞いてくださいね。ちょっと、私の話をよく聞いてください、さっきから変な答弁をされているから。だから、横からそういうことを言うから、余計そういう変な答弁になるんですよね。

 ですから、私が聞いている趣旨は、今回、取消権の行使をしたとしても、結局、次長は一般的には裁判の場で、司法の場で争うことになるという御答弁をされたんですね。つまり、そこをもう見越した上でこの法案が今議論されているということでいいですかということを聞いているんです。次長、これをお答えいただいて、一旦終わります。

稲田委員長 黒田次長、簡潔にお答えください。

黒田政府参考人 取消権を行使して、相手が応じない場合について、その取消権を完全に履行したいというふうに思えば、裁判で争っていただくということになろうかと思います。

吉田(統)委員 全然答えていないので、また後でやりましょう。お願いします。

稲田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

稲田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田統彦さん。

吉田(統)委員 引き続きよろしくお願いいたします。

 黒田次長と午前にやり取りしたんですが、取消権が実効性を持たずに結局裁判になるということですと、やはり不当行為を包括的に禁止することがより被害者の救済に資すると考えます。

 消費者庁において開催されていた検討会、霊感商法等の悪質商法への対策検討会が取りまとめた報告書では、「寄附の要求等に関する規制については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第十七条(寄附の募集に関する禁止行為)の規定も参考としつつ、」中略しますが、「より幅広く一般的な禁止規範を規定すべきである。」とされています。消費者契約法の規定を参考にすることは提言されていなかったとも承知をしております。

 公益法人法第十七条では、再勧誘の禁止などのほかに、寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為をすることを禁止して、不当な行為を包括的に禁止していますが、本法律案においてこのような不当行為を包括的に禁止しなかった理由は何でしょうか、大臣。

河野国務大臣 禁止行為は、法人などがどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定するべきものだと思います。

 配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態など、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しております。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示しているものですが、禁止対象行為を規定する禁止行為とする場合よりも、そういう結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為の認定とそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いというふうに思っております。

 そういうことで、この御提案となったものでございます。

吉田(統)委員 では、役所にもう一度確認しますけれども、次長に。結局、検討会は、繰り返しになりますが、こちらの公益法人法第十七条の方を参考にすべきとなったんですが、消費者契約法の方を別に参考にするとは提言されていなかったんですが、ここに関しては、今大臣からも御答弁いただきましたが、何で公益財団法人法の方を参考にしなかったのか、もう少しはっきりと説明いただけますか。

黒田政府参考人 趣旨につきましては先ほどの大臣の答弁に尽きるところでございますが、公益財団法人法の禁止規定ですと、禁止行為とするには、客観性とかそういったことで禁止行為の類型とまではなかなかできないということで、実際に参考にして入れているのは、配慮義務において、例えば寄附の使途について誤認をさせないようにするとか、そういったことで実際には参考にして配慮義務にはしておりますが、そういったことで、禁止行為とするにはやや記述について明確性が足りないということで、禁止行為としては取り上げておりません。

吉田(統)委員 ちょっとあれですけれども、時間がないので先に進みます。

 先ほど来一貫した話ではあるんですけれども、本法律案では、第四条各号に掲げる行為により困惑して行った寄附の意思表示については、取り消すことができるとしていますね。取消しでは、救済がいわば事後的になるわけです。先ほど来ありましたが、裁判での立証など様々な問題が生じる可能性があるわけです。

 この点、霊感商法等の悪質商法への対策検討会の座長を務めた有識者から、禁止行為に違反した寄附は元から無効にした方がよかったのではないかと指摘されていますね。

 今申し上げたように、不当な行為を禁止し、それらを含めて、本法律案において禁止行為に違反した寄附をそもそも無効とすれば、より被害者救済に資すると考えられますが、なぜそのようにしなかったのか、その理由を、大臣、お答えください。

河野国務大臣 一般に、法律行為が公序良俗違反等で無効となるのは、その内容が社会的相当性を欠く場合であると承知をしております。

 寄附をするという法律行為そのものは、仮にそれが高額な財産の移転を目的とするものであっても、それだけでは直ちに社会的相当性を欠くとは言い難いものであります。

 したがって、不当な勧誘行為によって寄附をした個人の意思表示に瑕疵がある場合に、新たに取消権を創設することが適当と考えております。

吉田(統)委員 そうすると、大臣が今おっしゃったように、今回の件は、社会的相当性を欠く、その一点をもって無効にするほどではないということですね。

 では、公序良俗という言葉が大臣からありましたが、なかなか、この社会的相当性という表現は非常に難しいんですが、ちょっと具体的な例示を含めて御説明をいただきたい。これは役所からでも結構です。お答えいただけますか。これは大事ですよ、極めて大事な質問。

 止めてください、答えられないんだったら。

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

 黒田次長。

黒田政府参考人 済みません、事例ということで、ちょっとなかなかにわかに思い浮かばないんですけれども、無効となるということは、例えば、そもそもその行為自体が違法なことを行った……(吉田(統)委員「今回もバックグラウンドで違法なことをやっているでしょう。答えにならないじゃない」と呼ぶ)はい。

 違法な行為、法律に反するような行為といったことをしたような場合は無効となり得るということだと思います。

吉田(統)委員 ちょっとそれ、全く理解せずに言っているじゃないですか。

 社会的相当性、大臣、ここは大事なことなんですよ。そもそも無効にしてしまえば、いろいろな裁判とかそんな負担もなく、無効は無効なんです。ただ、大臣の答弁は分かりますよ。社会的相当性、これは大事です。極めて重要なポイントですよ。社会的相当性が適当であれば、大臣がおっしゃるように無効にするという判断になるわけじゃないですか。

 では、何で今回、社会的相当性がないのか、社会的相当性というのは、どういう状態からそれが社会的相当性だということが御判断いただけるか、一定程度の説明がなければ、こんな答弁、成り立たないじゃないですか。次長、どうぞ。

 止めてください。貴重な時間です。

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

 黒田次長。

黒田政府参考人 例えば、寄附をすることそのものが社会的に許容できないというようなことではなくて、約束する、例えばこういう内容そのものが許容できないといった場合に、社会的相当性を欠くということになろうかと思います。

吉田(統)委員 全然説明になっていない。それは、さっき大臣が言ったことを、適当に言葉を換えているだけだから。

 社会的相当性、後で聞きますから、ちょっともう一回答弁を整理してくださいよ。これは大事じゃないですか。だって、社会的相当性が伴えば、大臣が無効にすべきだとおっしゃっているわけだから。そこが極めて大事だ。では、どこから社会的相当性というふうな判断をするのか。今回はそこまでの重大な事案じゃないんだということを消費者庁が言っていることになりますよ。

 それでは、次へ行きます。

 西村委員からも指摘されましたが、霊感商法ですね。なぜ、寄附だけが対象となって、売買契約などが対象にならないんでしょうか。百万円の寄附をさせるのと無価値なつぼを百万円で売りつけるのとで何が違うのか。なぜ対象にしなかったのか、簡潔にお答えください。大臣、お願いします。

河野国務大臣 新法は、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、法人等に対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法と相まって、寄附の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的としております。

 このように、新法と消費者契約法により、被害救済、再発防止に資するものとしているところ、新法は、消費者契約法が対象としていない寄附の取消しを可能とするものです。

 例えば、無価値なつぼを百万円で売りつける場合は、個人がそれを知っている場合、実質的には寄附であると考えられます。また、個人が百万円のつぼが実は無価値であることを知らない場合は、詐欺の疑いがございます。そのように、見かけ上売買契約を装っているにすぎず、無償で相手方に財産に関する権利を移転し又は財産上の利益を供与するという本質において寄附と評価し得る場合には、新法の適用対象になり得ると思っております。

 さきに述べましたように、新法は、消費者契約法と相まって、寄附の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的としているものでございます。

吉田(統)委員 大臣、一定程度整理していただいてありがとうございます。

 では、ちょっとこの後、テクニカルなことなので、役所に聞いていきますね。

 霊感商法の被害の場合、後ほどお聞きする債権者代位権での特例が使えないなど、寄附と差異が生じることに合理的な説明ができますか。

黒田政府参考人 ちょっと済みません、最後のところがよく理解できませんでしたので、もう一度お願いいたします。

吉田(統)委員 だから、霊感商法の被害の場合、後ほどお聞きする債権者代位権での特例が使えないということで、寄附と差異が生じるわけですよね。ここに合理的な理由があるのか聞いているんです。

黒田政府参考人 寄附と霊感商法の違いということについてお尋ねということ……(吉田(統)委員「違う。ちゃんと理解できませんか、言ったとおりなんですけれども」と呼ぶ)霊感商法について債権者代位権が使えない理由ということでありますでしょうか。(吉田(統)委員「はい」と呼ぶ)

 それは、先ほど申し上げた、今回、霊感商法をこの新法の対象としていないということに尽きるんですけれども、今回の新法につきましては、高額な寄附について社会問題があったから、その問題に対応するために債権者代位権の特例なども設けて、そういった寄附の問題について解決するということで作ったということでありまして、霊感商法についてはそこまでの立法事実がなかったということで、今回の新法の対象とはしていないということでございます。

吉田(統)委員 多分、ちょっと次長、法案、これは相当生煮えで提出していないですかね。御理解されているのかがかなり疑問になってきました、先ほどからの質疑で。ちょっと、これは大丈夫ですかね。

 では、次に行きます。

 霊感商法は、先ほど来、消費者契約法で対応できると大臣がおっしゃってくださっています。

 消費者契約法は、広く契約一般について対応ができるはずです。確かに、単独行為としての寄附の場合、契約と言えない場合もあるかもしれない。ただ、先ほど大臣がおっしゃったように、しかし、契約とは当事者間の合意、約束であって、当事者間に法律関係の権利義務の関係を生じさせるものですよね。これは書面の有無にかかわらず成立します。

 とすれば、多くの場合、寄附は、さっき大臣が例示していただいたように、契約となる場合もあるわけですよね。消費者契約法で対応が可能であると考えるわけですが、では、なぜ今回あえて新法で対応しているのか。霊感商法が契約であり、消費者契約法で対応できるという発言をされているわけですけれども、そこと矛盾しないのかということを私はずっと疑問に思うんですが、次長、どうですか。

黒田政府参考人 まず、新法の……(吉田(統)委員「答弁台で考えないように。注意してください」と呼ぶ)済みません。対象としているのがなぜ寄附だけなのかということ……(吉田(統)委員「違う。言ったとおりに」と呼ぶ)済みません、質問の内容をちゃんとまた理解できていない感じがするのですが、恐縮ですが、もう一度お願いいたします。

吉田(統)委員 政府参考人としての務めを果たしていないですよ。もういいです。多分、法律自体をちゃんと確実に理解されていないんじゃないですか。ちょっと話にならないので、またこの後やっていただくということで、聞きたいことはいっぱいあるので。

 逆に、では、大臣にちょっと聞きますけれども、霊感商法もやはり今回の新法に取り込んだ方がより広く救済をできたんじゃないかとも思うんですが、大臣はそうは思われないわけでしょうか。

河野国務大臣 今般の新法については、旧統一教会の被害実態に即し、寄附を対象として、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、こうした勧誘を行う法人等に対する行政上の措置を講じたものでございます。

 霊感商法について同様の問題があるようでしたら、必要に応じて適切な対応を検討してまいりたいと思います。

吉田(統)委員 大臣、霊感商法に関しては、先ほど次長からの御発言で、消費者安全法で救済されるという御答弁を、次長だったと記憶しておりますが、していただいていますね。

 逆に、霊感商法で、この消費者安全法で、大臣、救われた事例というのがあるんですか。

河野国務大臣 御通告いただいていないので、手元に資料がございません。

吉田(統)委員 そうですね。これは更問いですから。

 では、次長、あるんですか、これ。

黒田政府参考人 消費者安全法の施行が二〇〇九年九月以降でございます。その二〇〇九年九月以降において、先ほど申し上げたような形で、霊感商法で多数の消費者に被害を与えたということでもって、消費者安全法を発動して勧告等を行った事例はございません。

吉田(統)委員 ただ、霊感商法でやはり様々な問題が起こっているのは、消費者庁、御存じなわけじゃないですか。なぜ適用にならなかったんですか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 私が先ほど申し上げた事例につきましては、多数の被害者が出た場合の行政措置がどこまでできるかといった形で全てのメニューを申し上げたわけでございますが、霊感商法につきましては、そこの多数被害者という形で発動していなくても、どういった手口で霊感商法が行われているかとかいった形の注意喚起といった形で対応はしてきているところでございます。全く対応してきていないということではございません。

吉田(統)委員 ちょっと今日は時間がないのであれですが、またそれは事例を教えてくださいね。

 では、寄附の勧誘に関する規制について、特にマインドコントロール下の事例について、困惑類型に関してですが、これまでの消費者契約法のいわゆる困惑類型について、旧統一教会関係の訴訟で困惑類型に当たることが認められた事例はありますか。念のため、大臣、確認です。

河野国務大臣 承知しておりません。

吉田(統)委員 マインドコントロール下の献金について、今までの政府答弁では、入信時に困惑し、その困惑状態が継続していたなら、寄附のときに義務感や高揚感から寄附しても取消しの対象になるということでした。

 確認ですが、困惑については、消費者契約法の逐条解説においては、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう、畏怖を含む広い概念であるとされています。寄附の被害実態を踏まえ、困惑について、正常な判断がされていない場合を広く含むものと捉えるように政府解釈を広げるという理解でよろしいのでしょうか、大臣。

河野国務大臣 そういうわけではなくて、明確にしたというふうに捉えていただければよろしいかと思います。

吉田(統)委員 分かりました。明確にしたということですね。

 しかしながら、入信時の勧誘においても、この新法第四条第六号に当たるような勧誘をしなければ、この要件に当たらないのではないでしょうか。すなわち、入信時に、あなたの家族が不幸になる、それを避けるためには献金しなければならないといった、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、それを回避するためには、重大な不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠である旨を告げるというような勧誘をする必要があるのではないでしょうか。どうでしょうか。

河野国務大臣 いわゆる霊感などを用いたマインドコントロール下で生じる被害に対応するため、不安を抱いていることに乗じて、霊感等による知見として、重大な不利益を回避するために寄附が必要不可欠であることを告げる場合を、消費者契約法の改正及び新法で取消権の対象といたしました。

 入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できるか否かにかかわらず、過去に教義を教え込むなど、寄附の勧誘とは切り離してあおった不安を個人がその後も抱き続けている場合に、これに乗じる行為、あるいは、当該法人等が直接引き起こした不安でなくても、個人がそのような不安を抱いていることを知りながら、これに乗じる行為があった場合に取消しの対象となります。

 必ずしも勧誘を入信時に行う必要はないというふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、引き続きちょっと確認をしていきますが、旧統一教会のような場合、寄附を繰り返し求められて、それに応じてしまった、そういった例が多数報告されています。今回の法案に関する政府答弁に従うと、法人からの禁止行為がないケースであっても、繰り返される寄附等の全てを明確に対象として取消しが可能になるということでよろしいでしょうか。

河野国務大臣 不安に乗じて繰り返し勧誘が行われている場合には、当然対象になると思います。

吉田(統)委員 加えて、寄附者が積極的に寄附を行った場合にも、困惑状態が継続していた場合として取消し可能であるという理解でよろしいでしょうか。

河野国務大臣 そのときは積極的に寄附をしているように見えても、後から振り返って自分は困惑していたということであるならば、取消しの対象になると思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。大事な御答弁をいただきました。

 いずれにせよ、大臣、これらが裁判上立証される必要があるわけですね、結局。

 今回の法案で、被害者の立証責任について何か配慮されていることはあるのでしょうか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 最終的には裁判で金銭のトラブルについては解決していただく必要があると思いますが、そういったこともありますので、法テラスを中心に相談体制をしっかり構築するとともに、関係機関が協力してそういった方々を支援できるように、政府として取り組んでいるところでございます。

吉田(統)委員 後段は具体的に何をされるのかをもうちょっと詳しく教えてほしいところですが、ちょっと時間がないので、次に行きます。

 本法律案では、借入れ又は居住用の建物等若しくは生活の維持に欠くことのできない事業用の資産で事業の継続に欠くことのできないものの処分により、寄附のための資金を調達することを要求してはならないこととしています。

 生活の維持に欠くことのできない、事業の継続に欠くことのできないとは具体的にどういう意味か、大臣、教えていただけますか。役所からでも結構です。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 実際にその要求をされた方の生活なり事業の実態によってそれぞれケース・バイ・ケースだと思いますが、文字どおり、そういった寄附を勧誘された方の生活を脅かすような、また、事業の継続を脅かすような要求ということでございます。

吉田(統)委員 全く答えになっていないですけれども、大丈夫ですか。

 では、次に行きますね。

 資金の調達を要求してはならないとの文言ですが、それでは、建物などの不動産そのものや資産そのものの寄附は認められているという理解でいいですか、次長。

黒田政府参考人 確かに、今御指摘の点については禁止行為とはされておりません。必ずしも今回取消しの対象ともしていない理由につきましては、今回の法案では取消しにしているのは意思表示に瑕疵があったような場合でございます。仮に、その要求自体、要求があったとして、本人が同意していれば禁止するところまではいかないという観点から、禁止にしておりません。

 生活の維持を脅かすような形で土地を差し出すということであれば、配慮義務の方にひっかかってくるということになろうかと思います。

吉田(統)委員 聞いたことだけ答えてくだされば結構です。

 本法律案では、寄附額の具体的な上限についての規定を定めることはしていません。借入れ等による資金調達の要求の禁止の規定を定めることとしていますね。

 寄附額の上限を設けて、超過分を無効にする仕組みを求める意見もありました。本法律案において寄附額の上限の規定をなぜ定めなかったのか、ごく簡潔に答えてください、聞かれたことだけ。

黒田政府参考人 まず、上限を定めた場合に、その額をめぐって、寄附を集める側に相手側の所得について把握されるといったような口実を与えるようなことが行われてはならないとか、例えば、一定の金額を切るにしても、人によって全然価値も違うなど、財産権の処分についていろいろな考え方があるといった議論を踏まえまして、特に上限額を設けるということはしませんでした。

吉田(統)委員 では、次長、例えば、個人経営の株式会社で、その株式を処分するなどして寄附してしまった場合、現実には会社の経営権を他人に取られてしまうということになりますね。この場合、事業の継続に欠くことのできないとまで言えますか、次長。

黒田政府参考人 済みません、いただいた事例だけでは判断できませんので、ケース・バイ・ケースとしか言いようがございませんが、そのようなケースで生活の維持に支障を来すようなものであれば、配慮義務違反になろうかと思います。

吉田(統)委員 分かりました。それで結構です。

 では、もう少しですので最後になっちゃうかもしれませんが、他人の資産を処分して寄附のための資金を調達した場合、生活の維持に欠くことのできないとか事業の継続に欠くことのできないという判断は、寄附者についてはできませんよね。この場合は、資産を処分された人、資産を所有した人について判断をするということでよろしいでしょうか、次長。

黒田政府参考人 他人のものという部分についての意味が必ずしも明らかではございませんが、土地や建物については、寄附者やその家族が現に居住の用に供している不動産や事業の用に供している事業用資産として規定しているところでありまして、必ずしも寄附者自身の所有物に限定しているものではございません。

吉田(統)委員 もうあと一分だけありますので、では、ちょっともう略して確認しますが、債権者代位権について確認しますが、未成年者の債権者代位権の行使が本当に可能だと政府が思っているのかどうかということと、未成年が親を訴える場合は親権が停止されていることが前提になるのか、この二点、簡潔にお答えください。

黒田政府参考人 債権者代位権の適切な行使のためには様々な手続が必要だということは認識しておりまして、そういった方々が円滑にその手続を行えるように支援をしていくことが重要だということと考えております。(吉田(統)委員「もう一点」と呼ぶ)

 未成年者が自分自身で親権を持たれる方と利益が相反する形で使用する場合には、その親権について、まず別の方に代理を立てていただく必要があろうかと思います。

吉田(統)委員 もう時間が来たので終わりますが、ちょっと政府参考人の御答弁が不安定過ぎると思います。もう少ししっかりとした御答弁をいただかないと、法案を最終的に上程していく上で難しいんじゃないかと思いますので、しっかりとした真摯な答弁を希望いたしまして、終わります。

 ありがとうございました。

稲田委員長 次に、柚木道義さん。

柚木委員 立憲民主党の柚木道義でございます。

 昨日の本会議に続きまして質疑の機会をいただき、ありがとうございます。河野大臣、よろしくお願いいたします。

 昨日、岸田総理、もちろん河野大臣も答弁に立たれたわけですが、私自身も、岸田総理に対しましては、本当にこの間、与野党協議、そして、河野大臣も検討会、あれもとても重要な取組だったと思いますし、もう一歩、いま一歩のところまで来ているということでの御答弁をお願いをさせていただいたわけであります。

 そういった中で、かなり岸田総理からも、具体例をお示しいただきながら、総理答弁が、条文にまで及ばずとも、かなりのいろいろな場面で当然効力を発揮するという前提で御答弁をいただけたものとは受け止めております。岡田幹事長は、四十点が五十点になった、あと十点とかいうこともおっしゃったみたいですけれども、私の中では、もう一歩と言わずもう半歩ぐらい、この質疑の中で是非、河野大臣にリーダーシップを発揮いただいて、御答弁をいただいて。

 何とかここまで来れたのも、もちろんここにおられる与野党の皆さんの御尽力、あるいは河野大臣、岸田総理の、本当にこの国会での成立を期すという決意、覚悟ももちろんあったわけですが、やはり何よりもの力は、被害者の方々、宗教二世の方々。昨日も消費者庁に申入れに行かれたということです。そしてまた、それに寄り添って、今日午前中、全国霊感商法対策弁護士連絡会、こういった被害者に寄り添ってこられた皆さんの力でここまで来ていると思います。

 是非、今日の質疑の中で、三十分しかありませんが、河野大臣におかれましては、もう半歩というか、これはざる法と言われていましたが、ざる法ではなくなってきていると思います。是非、本当に被害者が実際に救われる法律になるべく、御答弁をお願いいたします。

 本当に直近で通告をお願いして、追加で御対応いただいていて恐縮なんですが、そこから入らせていただきたいと思います。大臣、念書の部分です。

 昨日、岸田総理の御答弁で、要は悪質勧誘によって献金をした、その献金の返金封じ、返金逃れのために、自主的に献金しましたと念書を無理やり書かせて、深夜まで、ある意味監禁ですよ、家族とも電話ができなくなって。そんなことで書かされた念書は、公序良俗違反で無効になり得ると総理答弁。そして、民法の不法行為が認定されやすくなり、損害賠償請求が認められやすくなる、さらに、不法行為を隠蔽する証拠隠滅や被害回復の妨害行為、まさに返金封じ、返金逃れなわけですね、こういったことは社会的に許容し難い、そこまで御答弁をいただきました。

 そこで、是非、河野大臣に、まさにもう半歩の答弁をお願いしたいわけでありますが、そこまで総理もおっしゃっていただいたからには、旧統一教会に悪質勧誘に基づく献金の返金を求めない旨の念書やビデオ撮影自体を行わないように指導していただきたいんです。答弁だけじゃなくて、指導を。

 なぜならば、昨日の答弁に対しても、私は、いろいろな専門家の方の見解も伺いましたら、やはりそうはいっても、最終的に、裁判官、裁判でそれぞれの判断、念書、ビデオがあることによって分かれるケースもあるので、本来ならば、条文にやはりそのことを書いた方がいいんじゃないか。そういった中で、条文に書けば一番いいんですが、ここでしっかりと、この旧統一教会、まだ宗教法人で、解散命令は出ていませんからね、こういう念書やビデオ撮影を行うこと自体をやめるようにと指導しておくことで、仮に今後、念書やビデオ撮影が行われた場合、より不法行為認定や損害賠償請求が認められやすくなると思うんです。

 大臣、是非、半歩前進の答弁をお願いします。

河野国務大臣 宗教法人への指導につきまして、一義的には所管官庁であります文化庁が適切に行っていくものと思っております。

柚木委員 もちろん、指導監督権は文化庁なんですが、これはまさにこの新法の実効性を高めるという上におきまして、この後続けてそれに関わるところを聞いていくんですが、この法律の実効性をより担保されるということのために、この法律の所管の河野大臣、消費者庁と、まさに宗教法人、現状では旧統一教会は宗教法人ですから、この所管の文化庁とで連携をして、今の総理答弁、まさに念書、ビデオ撮影は無効であるからこそ、そういった念書、ビデオ撮影自体を行わないようにということを文化庁から指導していただくべく連携をすると、そこは半歩前進の答弁をお願いします。

河野国務大臣 この統一教会の問題につきましては、法務省を中心に関係省庁の連絡会議も設けられたところでございます。消費者庁が今回提出をいたしました法案につきましては所管をしておりますが、この問題につきましては、消費者庁だけでなく、政府の関係省庁が連携しながら当たっていかなければならないものと認識をしておりますので、今後、この問題について、消費者庁も他省庁としっかり連携をして適切に対応してまいりたいと思います。

柚木委員 半歩なのか〇・二五歩なのか、前進の答弁だと思いますので、これは本当に、今後も念書、ビデオ撮影が続いて、この間、ある県で、A子さんという例を私も出させてもらいましたが、初めて、問題になって以降、やはりあの山井委員への総理答弁ですよ、念書は無効だと。あれによって、返還を求めたら返ってきたんですよね。返ってくるということだけでなくて、やはり、そういうことをさせない。ですから、それを継続して、まだ念書、ビデオ撮影の事例を把握された場合には連携をして、やはり指導していただく、そこを是非強く求めます。

 配慮義務について伺います。

 これは、禁止規定にしていただきたい。まさにそれこそ、一歩前進なんです。

 禁止行為というのは客観的に明確なものであるべきと、昨日、総理が答弁されました。私も申し上げたんですが、公益法人認定法十七条四号では、この新法の三条の三項以上に曖昧というか抽象的な文言の規定でも禁止行為にしているわけです。

 したがって、こういった、契約法との対比からしても、この新法の三条、特に三項、当該寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を明らかにするとともに云々、これは本当に明確な規定だから禁止規定にできますし、一項についてもできます。二項はちょっと曖昧だという意見を今日も全国弁連の方が言われていたと思いますが、公益法人認定法はより曖昧な文言でも禁止行為となっているわけですから、なおさら、この新法の三条、これを禁止行為としない、できない理由は見当たらないと思います。

 是非、河野大臣、禁止行為にすると言い切れなくても、今後それに向けて、それこそ例えば検討会を再起動させて検討していくとか、そういったことも含めて、ちょっと善処いただけるような答弁をお願いできませんでしょうか。

河野国務大臣 公益法人認定法の今お話のありました第十七条三項、これは、遵守していない場合に所管の行政庁が公益認定を取り消すことができるという行為につながるにとどまるもので、最終的に刑事罰にもつながる禁止行為の規定に直ちに参考にすることはできないというふうに思っております。総理からもいろいろ御答弁がございました。

 ただ、今後、新法を成立させていただければ、消費者契約法その他様々な法律を使って政府は対応していくわけでございますが、その状況を見ながら、これは将来的に当然見直しをしていかなければならないものでございます。ここで終わりになるというものではないわけでございますので、しっかりと現実の情報を集めながら、今後また対応を考えていくということは不断に行わなければいかぬと思います。

柚木委員 半歩に近い前進の御答弁だと私は受け止めたいんですね。

 と申しますのが、やはり、河野大臣、まさに全国弁連の紀藤弁護士も入られてのあの検討会の果たした役割というのは私は大きかったと思っておりますし、それと全く同じものかどうかは別として、まさに見直し規定、我々は三年を待たずに一年、それから二年というような案も出ているようですが、いずれにいたしましても、その見直し規定が発動するまでに準備しておかなきゃ間に合わないわけですから、もう直ちにまさに河野検討会を、再起動なのか立ち上げるかは別として。

 そういった中で、この禁止規定、それから、この後議論もさせていただきます特別補助制度ですね。これも、まさに財産権の問題はあるといえども、債権者代位権、この後通告しておりますが、三つの壁を私は申し上げているわけですね。本人が困惑を立証する、そして無資力問題、さらには親権停止、親権喪失の壁なんですよ。

 なかなか実効性が伴わない中で、私は、この禁止規定の問題とか、債権者代位権ではなくて特別補助制度、これを、まさに今大臣が御答弁いただいたように、運用、実情を踏まえつつ、見直し規定三年を前倒ししつつ、すぐに河野検討会再起動、あるいは新たに立ち上げるでも結構です、そこでこの禁止規定あるいは特別補助制度等を議論する、その場を設けていただくということまでおっしゃっていただけませんか。

河野国務大臣 この法案につきまして、施行日がいろいろと規定をされることになると思います。法律が実際に施行され、運用される、その状況を見ながら今後のことをいろいろ考えていかなければならないんだろうと思っておりますし、この法案で一〇〇%全ていいとは思っておりません。

 どういうことになるかというのは、少しお時間をいただいて、いろいろなことを考えながら進めてまいりたいと思います。

柚木委員 最後の、いろいろなことを考えながら進めてまいりたいの中に、まさに河野検討会再起動なり場を設けていただけるというふうに私は受け止めます。そうじゃないと答弁に実効性がないので。

 それで、一つ、先ほど午前中の質疑、全国弁連の川井事務局長さんへの質疑、答弁を聞いていて私も気になったので、これは可能なら大臣に御答弁いただきたいんですが、まさにこの法案の実効性を高めるという意味において、この配慮義務規定に違反をすると、もちろん、七条、そしてそれに違反すれば罰金刑、懲役刑というたてりはあるんですが、そもそも、違反をしたときに、七条の当該行為の停止の中に、まさに悪質勧誘によって献金、寄附をさせられた、この返金まで七条には含まれると読めるのかどうなのか。これによって非常に今後この法案の実効性も変わってくると思うんですね。

 禁止行為なら当然、返金なわけですよ。しかし、配慮義務規定違反で七条が発動する場合に、当該行為の停止の中に寄附の返金まで含まれるのか。これによって本当に救われる、救われないが大きく変わってくると思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 政府提出しました法案、配慮義務、これに違反をすれば不法行為の認定が容易になり、損害賠償が受けやすくなる、そういう効果があるものというふうに思っております。

柚木委員 これは間接的には当然、配慮義務規定違反で勧告、命令権、七条が発動する、そしてその先には民法の不法行為認定がしやすくなることによって返金につながるというふうに私は理解するんですが、端的に、七条の、当該行為の停止その他の必要な措置を取るべき旨の勧告をすることができるの中に、返金をする、こういうことまで含まれるかどうかまでお答えいただくことは可能ですか。

河野国務大臣 今委員がおっしゃった七条は、これは政府が提案をした法案の七条ではないのではないかと思うんですが、これは与野党で協議されているものでしょうか。(柚木委員「いやいや、政府提出の法案ですよ。七条の一号の最終行ですよ」と呼ぶ)

 ここで言っている七条については、今の四条の禁止行為、それから五条の資金調達の要求の禁止に係ると認められるときにおいて、当該法人に対して当該行為の停止その他の必要な措置を取るべき旨の勧告をすることができるということになっておりまして、文字どおり、当該行為の停止ということだと思います。

柚木委員 ちょっと時間がないので、今後また答弁の機会、質疑の機会なりで私も更問いしたいんですけれども、配慮義務規定違反で七条における勧告、命令権が行使をされ、寄附返金まで含まれれば実効性が上がるということ、これは全国弁連の方がそういう見解を述べておられますので、ちょっとそこは整理をいただいて、私はそうなれば非常に実効性も高まると思っておりますので、その上で、また私にも教えていただければと思います。

 ちょっと時間がないので、次に行きます。

 債権者代位権それから特別補助制度について、特に未成年の債権者代位権の行使についての、非常に大きな、先ほど三つの壁ということを申し上げました。これについて伺います。

 まさに小川さゆりさんのケースを具体的に挙げながら通告をさせていただいておりますけれども、まず、二問通告しておりますけれども、債権者代位権の要件、これは未成年によらず、非常に厳し過ぎるということでございます。法テラスなどの支援体制を強化するという御答弁、これはもちろん結構なんですが、要件が厳しいものを法テラスに行って弁護士さんに相談しても、実際、弁護士さんに伺うと、いや、要件が厳しいものを持ってこられても、そもそも適用することが難しいので困ってしまいますというようなのが実態なのです。したがって、私たち、今回、野党案として、特別補助制度の提案をしています。

 まさに先ほど申し上げた三つの壁、これは、親に困惑しているということを立証させる、親が献金している場合に。もっと言うと、未成年の場合に、無資力規定もあれば、家裁に対して代理人を申請、請求することを親が認めなきゃいけないとか。小川さゆりさんの場合なんかは、御両親は熱心な信者さんで、教区長だったり、選挙の応援で車に乗ってマイクを持ったりされるぐらいの熱心な信者さんですから、認めるはずもありません。そしてまた、親権停止、親権喪失という壁もあるということですから、是非、野党案の特別補助制度についても、これは見直し規定前倒しの中で、先ほど申し上げた河野検討会なり検討する場所を設置していただいて、特別補助制度の導入についても検討する、債権者代位権の運用状況を見ながら、是非そういう御答弁をいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 御党を始め野党から国会に提出された法案につきましては、まずは国会で議論されるべきだろうと思っております。

 政府提案の法案につきまして、自らの権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める債権者代位権を活用しやすくしているところでございます。これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含め、家族らの被害救済につなげることができるのではないかと思います。

 家族を含めた第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとするのは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。規定の施行状況あるいは社会経済情勢の変化を今後勘案の上、いかにして被害救済の実効性を確保できるか、そういう観点から今後必要な見直しを考えてまいりたいと思います。

柚木委員 これは本当に、私は正直、代位権ではますます家族分断が進みかねないと思っています。これは是非、特別補助制度で、四親等以内の親族の同意で代理人を立てて、そして、これ以上分断が進まない形でのやり取りをしていただける。まさに、そういう意味では、被害者保護の観点からも、特別補助制度の導入検討をお願いしたいと思います。

 時間がないので、必要不可欠の部分について問います。

 これは、昨日も岸田総理にお尋ねをした場合に、必要不可欠である、勧誘、困惑されて、献金をするということが必要不可欠である、今日も西村委員が水晶玉のことを例に聞かれていましたけれども、そういうようなことが必要不可欠であるということの条件を入れると、私への総理答弁は厄払いなどが対象になり得る可能性があるとおっしゃったんですけれども、一般的に厄払いなどは、霊感によりとか、不安をあおりとか、困惑させという要件から外れるわけでありますので、心配に当たらないんです。もっと言えば、皆さん、厄払いとか合格祈願とか交通安全とかで、五千万円、一億円払いますか。あり得ないんですよ、そんなことは。

 ですから、この一般的な厄払いなどと同列でこれを論ずるのではなくて、やはり、霊感によって、不安をあおり、困惑させなどの要件を満たす悪質な勧誘については、必要であると、不可欠を取る。不可欠を取ることこそが不可欠なんです、大臣。不可欠を取っていただいて、救済可能性を高めていただく。御答弁、お願いできませんか。

河野国務大臣 一般的に行われている厄払いですとか交通安全祈願、あるいは試験の合格祈願、これは、霊感などによる知見として、厄年ですとか交通事故ですとか不合格といった不安を抱いている者に対して、そうした不利益を回避するための祈願として寄附などを勧める行為と捉えることができます。ですから、霊感等による知見として、不安をあおり、あるいは不安に乗じ、困惑させといった各要件にも該当し得るケースはあるんだろうと思います。

 ですから、この必要不可欠要件を単に必要としてしまうと、このような一般的に許容される宗教活動などにまで対象が広がってしまいかねず、不当な勧誘行為を適切に捉えることは困難になってしまうと思っております。

柚木委員 そこはちょっと今後、これはまさに全国弁連の方々、これまでの判例で救われていた事例すらも救われなくなってしまうという懸念も示されておりますので、これまで救われていたものが救われなくなるようだと前進どころか後退になっちゃいますので、まさに運用の実態を見ていただいて、必要な検討をお願いいたします。

 時間がないので、次に行きます。代位権の話です。

 返金対象を、扶養家族以外の元扶養家族、例えば、私たちもこの間お話を伺っています、献金をした親を一生懸命介護をされておられる元扶養家族であるとか、いろいろなケースがあるわけですから、拡大をしていただきたい。

 それから、返金の金額も、養育費の範囲内でなくて、これは、一億円寄附して一体幾ら戻ってくるのか、そういう問題もあるわけですね。是非、全額返金可能な仕組みにしていただきたいと思うんです。

 代位権では限界があると思いますので特別補助制度を提案していますが、その中で、ちょっともう時間がないので、この中の四の一、二だけまとめて伺います。

 債権者代位権の行使者が、献金が行われた当時は扶養家族、それで現在も扶養家族である場合と、私たちも多くの方に聞いているのは、現在、独立していて扶養家族でない場合があるんですね。政府案では、献金した金額が分かりやすく言って仮に一億円だったとして、そういう事例もたくさんあるわけです、私たちも聞いている。献金した金額が仮に一億円だとして、大体月額幾らぐらい返金されると想定されているんでしょうか、この政府案で。

河野国務大臣 元扶養家族については、期限が到来した扶養請求権を有していれば、これは民法上の通常の債権者代位権を行使することが可能でございます。さすがに確定期限の到来していないものについては、その債権を有していない者は特例の対象にはならないということを御承知いただきたいと思います。

 また、全額の返金ということについては、扶養請求権の範囲を超えて返金可能とすることは、第三者、家族といえども第三者が本人の行った財産行為に介入することを認めることになりますので、個人の財産権の観点から適当でないと思っております。

 また、実際月々どれぐらいの金額になるのかというのは、これはもう個別具体的な事案となりますので、なかなか、幾らでございますとお答えするのは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

柚木委員 裁判所が示している平成三十年度司法研究、養育費や婚姻費用の算定に関する実証的研究の報告によれば、それこそ、私たちも、一億円献金して三千万円しか返さないのに念書を書けとか合意しろとか言われたという鈴木みらいさんのお話も聞きましたけれども、一体幾ら返ってくるのかというのは、いろいろなケースがもちろんありますよ、いろいろなケースが今回出ていますけれども、月数万円、三万円とか四万円とか、そういうケースが出ているわけですよ。

 一億円献金してもその程度しか返ってこないような、そういう代位権が行使をされても、本当に養育費どころか、どこまで実効性のある、そして、親御さんがもう年金も全部献金しちゃって生活保護に陥る、それを支給する場合、税金から支給するわけですよ。

 旧統一教会が悪質な献金をやって、本当に家族破壊、家庭崩壊、自己破産、老後が崩壊して生活保護、こうなった部分を国民が補填をする、こういうことであっては意味がないわけですから、是非、政府案で、実際に献金した金額がどれぐらい返金されるのかということもしっかりと分析をしていただいて、それも含めて、やはり特別補助制度を導入していただいて、金額についても全額返金ということが可能になるような仕組みにしていただきたいということをお願いしたいと思っています。

 時間がないので、最後の質問に入ります。

 そもそも、私も昨日の答弁もお聞きをしていて、河野大臣も熱心に御答弁いただいているんですが、全般的に、法文を修正、条文を修正するというよりは、様々な解釈を、具体例を述べていただいて、それによって対応が可能だ、そういうふうな答弁が非常に多いという印象を持っております。ただ、実際の裁判になったときに、それでどこまで実効性があるのか、これはなかなか裁判では答弁どおりに認められない可能性が多々あるわけでございます。

 したがって、そういった今日それぞれお聞きをしてきたことについて、まさに、実際、法が施行されてからしっかりと検討したいということをおっしゃったんですが、具体的に、法施行後に、そういった様々な運用状況を含めての検討会、これを設置したい、そういうことを是非、河野大臣に言っていただくことによって、文字どおりこの新法の実効性も高まっていくんだろう。だろうというふうに私たちは思いたいし、思わせていただきたいんですよ。

 是非、せっかく河野検討会、紀藤弁護士さんも入って立ち上げたんだから、それを再起動させるなり拡充するなり、そういう場を設けるということを、何とか、大臣、半歩前進の御答弁をいただけませんか。いかがですか。

河野国務大臣 この法案が施行された後、やはり状況の確認というのは、これは必要だと思います。

 どのようなメンバー構成になるかは別として、そういう検討会が必要だという委員のお考え、それは私もなるほどそのとおりだと思いますので、ちょっと今どういう形とは申し上げられませんが、何らかの検討会、しっかりやってまいりたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 何とか最後、これで質問は終わりと通告が来ましたが、半歩前進の御答弁を今いただけたと思っております、一歩前進ですか。河野大臣、それは大臣が、まさに河野検討会を再起動させていただいたときの、その検討会がどういう形で私たちの提案を、ちゃんと見直し規定、前倒しで実現していただけるかによって、半歩前進が一歩前進になる、そう信じて、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

稲田委員長 次に、長妻昭さん。

長妻委員 立憲民主党の長妻昭でございます。

 これだけ日本人が食い物にされたということで、与野党を超えて、国会議員、怒りを持ってやはり対処しなきゃいけない。野党の国会議員も怒っていますが、与党の国会議員もみんな怒っていると思うんですね。やはり実効性のある法律を作るということが何よりのものだというふうに思います。

 いろいろ専門家の方と議論しておりますと、先進国の中で日本がカルト天国である、取締りが非常に、カルトに対する取締りが弱いというか、ない国であると。かつてフランスも日本と並んでそういうふうに言われていたんですが、フランスは二〇〇一年に刑法を改正しまして、無知・脆弱性不当利用罪、こういう罪を作って、いわゆるマインドコントロールを取り締まるということで一定の効果を上げております。

 そこで、今日、河野大臣にお尋ねをいたします。ちょっと具体的、詳細にわたる質問もあると思いますので、一問一答でお願いをできればと思います。

 まず、岸田総理が昨日、こんな御答弁をされておられました。いわゆるマインドコントロールによる寄附は、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法の取消権の対象となると。一部繰り返しますが、いわゆるマインドコントロールによる寄附は、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言えると、禁止の、取消権の対象となると御答弁されたということであります。

 これは相当、これまでの困惑の解釈を深めていったというふうに理解してよろしいんでしょうか。

河野国務大臣 新法の第四条第六号では、いわゆる霊感等を用いたマインドコントロール下で生じる被害に対応するため、霊感等の知見に基づく告知に関し、不安をあおる場合のみならず、不安を抱いていることに乗じる場合をも取消権の対象としております。

 寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後に、冷静になって考えると、当時、不安に乗じられ困惑をして寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って取消権を行使することは可能であると考えられます。

 このような事案であっても、勧誘により困惑し、それにより寄附をしたという因果関係が認められる限り、取消権を行使することが可能であり、御指摘の総理の答弁はこの点を明確化したものと考えていただきたいと思います。

長妻委員 明確化したと。

 ということは、河野大臣も、マインドコントロールによる寄附は、多くの場合は不安に乗じているものだ、これは当然、統一教会の案件だと思いますが、そういう現状認識でおられるということですね。

河野国務大臣 総理の御答弁のとおりでございます。

長妻委員 そしてもう一点、四条の六号の不安に乗じてという条文がございますよね。この「不安を抱いていることに乗じて、」の不安、ここの部分の不安というのは、これは別に統一教会からもたらされたものでなくても、元々自分が持っている不安でもいいんでしょうか。

河野国務大臣 そのとおりでございます。

長妻委員 そうすると、ある意味で、いろいろなことがあって、例えば自分のお子さんを亡くされてしまった、そして、もう非常に悲嘆に暮れている、そしていろいろ不吉なことが起こって不安に感じているということで、外部からの働きかけがないけれども、御自身が現に不安に思っている。この不安に乗じる、そういう状況に乗じてくるというのも入るということですね。

河野国務大臣 そのとおりでございます。

長妻委員 そして、岸田首相の先ほどの答弁にも関連するんですが、四条に「勧誘をするに際し、」というのが柱書きにあるんですね。この「際し、」というのはどこまでの時間軸なのかということなんですが、これは要件次第では、例えば十年、十年ぐらいの射程も入るというふうにも考えられるわけですか。

河野国務大臣 「寄附の勧誘をするに際し、」というのは、法人が当該寄附の勧誘を行う場合に、個人と接触してからその個人が寄附を行うまでの間にという趣旨でございます。入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合には、対象になります。ですから、年月、時間軸というよりは、まあ時間軸なんですが、一連の寄附勧誘であるかどうか、それが判断されるかどうかということで決まると思います。

長妻委員 そうすると、今の御答弁では、第一回目の、時間軸ですね、勧誘を受けて第一回目の寄附までは「際し、」だと。その時間の長さは関係なくという話だと思うんですが、では、その一回目の寄附の次、二回目、三回目がある意味では自動的に寄附した場合、二回目、三回目、四回目、五回目の寄附も、それも「際し、」の射程に入るというふうに理解してよろしいんでしょうか。

河野国務大臣 不安に乗じ困惑している状況で、都度、勧誘があれば、そういうことになると思います。

長妻委員 都度、悪質な勧誘はないんですね。都度、単なる振り込み用紙を送っただけ、その場合も「際し、」の射程に、二回目、三回目、四回目、五回目も入りますか。

河野国務大臣 必ずしも対面で勧誘されるだけでなく、個人が寄附を勧誘されていると認識される方法であるならば、それは入るだろうと思います。

長妻委員 そうすると、その都度、悪質な勧誘が、その都度その都度、寄附の都度、二回目、三回目、四回目、その都度、悪質な勧誘がそれぞれなくても、「際し、」ということで読めるということでよろしいでしょうか、後ろの官僚の方。

河野国務大臣 要するに、不安に乗じて勧誘をしていれば、そういうことでございます。

長妻委員 不安に乗じて勧誘していれば、そういうことというふうに今おっしゃっていただいたということです。

 次に、ちょっと個別のことに入りますが、いわゆる新法、今ここで議論している、改正法じゃなくて新法の「法人等」は、これは大学のサークルも入りますか。

河野国務大臣 新法は、「法人等」につきまして、「法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるものをいう。」としており、権利能力なき社団も含まれます。

 大学のサークルについて、これは個別の団体の様子によるんだろうと思いますが、団体としての、組織としての体を成し、代表者が存在するなどの要件が認められる場合には、権利能力なき社団として対象になると思いますが、単なる飲み会とか仲間内の集まりで代表者の定めも特にないようなものについては、これはなかなか対象にはならないと思います。

長妻委員 原理研など、いろいろあると思いますが、信徒会という統一教会の信者さんが自主的に集まる会、ここはどうでしょう。

河野国務大臣 信徒会と呼ばれているものも、組織の体を成していて、例えば代表者がいるというようなことであれば、これは当然に含まれると思います。

長妻委員 そして、ここでも議論になっている霊感商法の件なんですが、結局、この新法には霊感商法は入っていないということなので、もしかすると、統一教会等が、この新法の適用は受けたくないということで、今までは純粋寄附だったものに、例えば千円ぐらいのつぼをつけるとか、一万円か千円か分かりませんが、ちょっと安いつぼをつけて、それで五百万円ちょうだいというような、つまり、物品の販売に偽装してというか、実際、物品の販売とも言えなくもないと思うんですよね。一万円のつぼだけれども、相当高い金額で売るというような、その五百万、一千万、事実上ちょっとあり得ないようなものは、やはりこれは寄附とみなすというような考え方というのは、どこまで取っていただけるんですか。

河野国務大臣 今の御指摘はごもっともだと思いまして、安いものを法外な高額で売買するような契約については、個別具体的に見なければいけませんけれども、明らかにこの法の適用を逃れるために、外形上、売買契約の体裁を取ったものにすぎないと判断される場合は、これはもう実態は寄附でございます。新法の適用対象となり得ると考えます。

 また、無価値のものを体裁を取るために売買をしたというのは、今のことでございますが、本来無価値のつぼが実は高額なものだと誤信させて多額のお金を取るような場合には、これはもう詐欺に該当するのだろうと思います。

長妻委員 そうすると、ちょっと消費者庁もこれまでの姿勢を是非変えていただきたいんですが、いわゆる霊感商法、これまでの霊感商法も、どう考えても、そんなもの五、六百万円も一千万円もしないつぼを売っているわけですけれども、そういうような場合も、今までやられているいわゆる霊感商法と言われているものも、よくよく精査していけば、これは献金か、あるいは詐欺か、そういうものとしてみなす余地はあるということですか。

河野国務大臣 もちろん、個別具体的に見なければなりませんが、そういうものも当然にあるのだろうと思います。

長妻委員 そして、新法の第五条を御覧いただくと、これは、借金、借入れして献金しろ、こういう要求は駄目だということなんですが、これは、どこまで明確に言うかということなんですね。

 つまり、あなた借金して献金しなさいよと、明確に言えば確かにこの要求に当たると思うんですが、そうじゃなくて、ただ、献金してくださいということで、その方は、その法人等から予想すると、お金がないから、恐らくこの金額であれば借金せざるを得ないなというふうにある程度理解をしているけれども、確証は持てないけれども、献金しろというような要求というのも、明示的な言葉がなくても認められるということですか。

河野国務大臣 当該の個人が、その金額の寄附をするためには借金するしかないような場合に、法人がそれでも寄附を要求する行為は、明示的に借金をするようにと言っていなくても、第五条違反に該当すると考えます。

 また、仮に第五条違反に該当しない場合でも、そのような寄附の勧誘は、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないように定めている配慮義務に違反をしていると考えます。

長妻委員 ちょっと今配慮義務の話があったのでそっちに行きますが、第三条の二項ですね、今おっしゃっていただいた配慮義務が書いてあります。そうすると、生活の維持を困難にするというのは、借金というのも含まれるという理解ですか。

河野国務大臣 寄附の勧誘を行う相手方である御本人のみならず、その配偶者ですとか扶養すべき親族の生活の維持が困難となることがないように配慮する措置を講ずるということが配慮義務でございます。

 個別の事案で、生活の維持が困難な状態というのは異なるものですが、法案成立後、個別の事例に即して、可能な法文の意味を明らかにしてまいりたいと思います。

長妻委員 いや、河野大臣が先ほど、この前の答弁で、私が借金の件で聞いたらば、三条の二項の生活の維持を困難にすることに当たるので、そちらでも使えますよ、配慮義務でもいけますよというお話があったので、お伺いしたんですが。

 もう一回聞くと、生活の維持を困難にするというのは、借金をする、そして寄附をする、これも入るということをちょっと明確に御答弁をいただけますか。

河野国務大臣 借金しなければならないということが分かっていて寄附を求めるというのは、これは配慮義務に違反するというふうに思います。

長妻委員 あるいは、借金以外で生活の維持を困難にするというのは、もうちょっと具体的に言うと、生活費も上げちゃうとか、どういうような、具体的に何かイメージはありますか。

河野国務大臣 本人あるいは親族の生活の維持が困難になるという状況でございますので、個々の事案によりますが、様々な、民事執行法ですとか、その施行令ですとか、そうしたものが示す基準などを参考にしながら判断されるものではないかと思います。

長妻委員 今、民事執行法という法律を出していただきました。

 民事執行法を見ますと、それらしきものが二つあるんですね。つまり、差押禁止です。つまり、民事執行法は差押えがありますけれども、生活が立ち行かなくなるほどの差押えはできませんよ、こういう条文があるんですね。さすがに、その人が生活できなくて路頭に迷うと問題なので。

 それは二つあるんですね、メルクマールが。

 一つは、標準世帯の可処分所得の四分の一以上。つまり、差押えするときに、四分の三以上は残しておけというような、可処分所得の。つまり、逆に言えば、可処分所得の四分の一以上を献金されるとなかなか厳しいということ。そして、もう一つは、標準的な世帯の二か月分の必要生計費、ここは残さなきゃいかぬということなので、ここも食い込むというのも一つの基準の考え方であるということをちょっと明言いただければありがたいんですが。

河野国務大臣 様々、御家庭の生計の事情も違うんだろうと思いますし、保有されている財産の状況も違うんだろうと思いますので、一概に申し上げるのは困難でございますが、今委員からお話がありました民事執行法の基準なども参考にされるということになると思います。

長妻委員 今私が申し上げたのも、民事執行法によると、標準的な世帯についてはということがありますので、今の御答弁ということで確認をいたしました。

 そして、ここでもるる問題になっておりますが、必要不可欠という四条の六号についての文言なんですが、「必要不可欠である旨を告げる」ということなんですけれども、必要不可欠と告げるということなんですが、これは当然、言葉で、対面で、あなた、必要不可欠ですよと告げるということではなくて、例えば、いわゆる統一教会のビデオ、宣伝用ビデオとかあるいはパンフレット、先祖解怨をしないと大変なことになりますよみたいな、つまり、一般的に勧誘するための広報ツール、そこにそういうような類いのことが書いてあれば、それは必要不可欠である旨を告げるというように解釈できるというふうに考えてもよろしいのでしょうか。

河野国務大臣 告げるというのは、必ずしも口頭によることを必要といたしません。書面に記載して、本人が実際それによって認識できるということでもそうなりますし、今おっしゃいましたように、様々、印刷物、ビデオ、いろいろな方法があろうかと思いますが、個人が実際にそれによって認識し得る方法であるならば含まれると思います。

長妻委員 それと、今日午前中の参考人もちょっと御示唆ありましたけれども、身ぶり手ぶり、つまり、言葉で必要不可欠、あるいは印刷物、ビデオで必要不可欠ではなく、言葉では優しいけれども、身ぶりとか手ぶり、そういうようなものも勘案できるというような趣旨の、今日、参考人からお話があったやに聞いているんですが、そういうことも、全体の雰囲気も含めた勘案ということになるわけですか、必要不可欠は。

河野国務大臣 個人がそれによってそう認識するということであるならば、身ぶり手ぶりを含め、全体的なことというふうに御理解いただいてよろしいと思います。

長妻委員 そして、この条文には三年の見直しというのがあります。これは修正案で二年の見直しが出てくると思うんですが、これは何を見直すのかということなんですが、これは、やはり世間、この委員会も含め、国会も含め、被害者弁護団の方も含め、やはり家族の取り消すためのツール、マインドコントロールから解けない御本人を、何とか行き過ぎた献金を止めさせたい、もう身ぐるみ剥がされるのを見ていられない、こういうようなことをどうやるのか。

 債権者代位権というのはもちろん政府から御提案いただいていますけれども、二年の見直し規定では、債権者代位権の実効性、果たしてこれはちゃんと機能しているのかどうか、これもちゃんとチェックするということでよろしいんですか。

河野国務大臣 法案では三年の見直し規定というのを今、置かせているところでございます。いろいろ与野党の御協議はあると思いますが、それについては申し上げるのを差し控えます。

 先ほどからの質疑でありましたように、実際に法が施行された状況の中で、実際にどういう状況にあるのか、また社会経済情勢がどのように変化しているのか、何らかの形の検討会で御議論をいただいていくということを先ほど申し上げましたが、そこで御議論をいただくことになるんだろうと思います。この債権者代位権の状況についても、具体例、しっかりと見てまいりたいと思います。

長妻委員 恐らく、債権者代位権、特例を一定程度入れていただきましたが、なかなか使えない。実際に、仮に施行された後も、使用例がないし、使えないといういろいろな意見が相当寄せられるのではないかと推察するんですが、仮にそういうような状況になれば、やはりそれ以外の御家族に権限を付与するような、御本人を身ぐるみ剥がされるのを見ていられない、それを止めるような手だて、これを検討するというようなこともあり得るということですね。

河野国務大臣 何をやらないということは申し上げませんが、御本人の財産権の問題もあって、今回、債権者代位権の特例を設けるということにしたわけでございます。実際の状況をしっかり見極めないといかぬと思いますが、この御本人の財産権の問題をどう考えるかということもあるということを是非御承知おきいただきたいと思います。

長妻委員 これは当然御本人の財産権もありますが、御本人の財産権で逆の見方をすれば、いわゆるマインドコントロールにかけられて、一見自由意思に見えるものの、身ぐるみ剥がされて生活保護に陥っている方もおられるわけですよ。あるいは、自己破産されておられる方もいるわけですね。ですから、一見自由意思に見えるけれども、その人の財産権だというようなことではない別の意味の財産権、その人の真の財産権を守る、こういうようなこともあると思うんですよね。

 やはり、憲法では財産権が書いてありますが、二項に、公共の福祉においては法律で制限できると書いてあるわけでございますので、是非、ここは非常に、一番ある意味では大きいところではないか。

 繰り返しますが、家族が、お母さんが身ぐるみ剥がされている、どんどんどんどん、果樹園も寄附しながら、何を寄附しながら、そして生活保護や自己破産になっている、どんどんどんどん止まらない、これは一体どうするのかというようなことについて、債権者代位権がなかなか難しいとなれば、次の手だてをやはり検討するというようなことも、この二年、三年の中でそれもあり得るんだよというようなことを是非明言していただきたいんですよ。

河野国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、何を検討しないということはないんだろうと思います。

 しっかりと施行後の状況を見極めながら必要なことを議論しなければならぬと思いますし、これは消費者庁でもしっかり議論を、先ほど申し上げました検討会などを通じてしっかり議論をさせますが、政治の場面でも御議論いただくことが重要ではないかと思います。

長妻委員 ちょっとこの点は私もこだわるんですけれども、河野大臣の見解をお伺いしたいんですが、つまり、本人が、一見自由意思に見えるけれども、この法律に基づく取消権が、本人がマインドコントロールを抜ければ御本人はそういう手続ができるのに、マインドコントロール下にあるのでその手続をしていない、この法律の要件に合っているのに。その場合、いかに御本人を止めていくのかというようなことについて、やはりこれはやらなきゃいかぬというふうに河野大臣も思われるんだと思いますが、そこら辺のお考えをちょっと聞かせていただければ。

河野国務大臣 不当な寄附の勧誘によって被害を受けるというのは防止をしなければいけませんし、被害の救済というのはしっかりやらなければならないと思いますが、内面の、内心の問題というのはなかなか外見からは難しいというのも現実にございますので、そこは、信教の自由ですとか財産権の問題といった、かなり根本的なことを御議論していただく必要も当然に出てくるんだろうと思います。

 必ずしもこの法案で全ての物事が解決できるかといえば、そうでもないのかもしれません。だからといって法案が機能しないというつもりもございませんが、施行後の状況をしっかり見た上で、何が必要なのかということは、今後皆さんとしっかり考えてまいりたいと思います。

長妻委員 私はこの問題は本当にこだわるんですけれども、いわゆる、一九九九年までは準禁治産者の中に浪費という条項がありまして、親が浪費が止まらない場合、それを取り消せるというようなものがありましたが、一九九九年に、これは自己決定権ということもあり、廃止になりました。ただ、その準禁治産者が争われた最高裁の判決では、憲法違反ではないという判決は出ているんです。

 そして、その後、御存じのように成年後見制度ができて、これは三つの類型があります。御本人の了解がなくても、代理人が家庭裁判所で選任をされれば同意権が必要になる、そして取消権もある、代理権もある、こういうようなこともございました。

 こういう制度に倣って新たな制度をつくるということも私は検討に値すると思うんですが、河野大臣の見解はいかがでしょうか。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、何を検討しないということは申し上げておりません。

 ただ、先ほどから申し上げておりますように、財産権の問題ですとか信教の自由ですとか、かなり根本的な議論が必要になってまいりますので、そこは状況をしっかり見ながら議論をしていくことが肝要かと思います。

長妻委員 是非検討をお願いしたいと思うんですね。

 次に、もう一度、この三条の配慮義務のところに行きますが、この配慮義務、三つございますけれども、この一番は、これはいわゆるマインドコントロールを指していると考えてよろしいんですか。

河野国務大臣 そういうことも想定していると思います。

長妻委員 本当はこれは禁止規定にしていただきたいということをもうずっと申し上げているんですが、是非お願いしたいんですけれども。

 これは一、二、三がございますけれども、仮にこの法律が施行された場合、一に反している法人があったとしましょう。統一教会がそういうことをこの法案施行後もやったとしましょう。あるいは二でも三でもいいんですけれども。そうすると、これについて我々が、あるいは国民の皆さんが察知したときは、これは当然、消費者庁に通報するというか、こういう配慮義務を欠いている行為がありますよということを通報すれば、何らかのアクションを起こしていただくというようなことなんでございましょうか。

河野国務大臣 配慮義務でございますから、これは、法人にこの配慮義務をしっかり守っていただくということだと思います。

長妻委員 今日、本当は、与党から出てきた改正案についてもお伺いできるという理解で私はこの質疑に立っているんですが、では、こういう聞き方をいたしましょう。

 大臣もよく御存じだと思いますけれども、自民党の茂木幹事長の方から、我々が前からいろいろ申し上げていたうちの、全体ではないんですが一部の回答が参りまして、今配付資料につけてございますが、お手元にありますでしょうか。この配付資料の二ページ目が、十二月五日、今週の与野党幹事長会談において、自公から、こういうのをやりますという形で示されたペーパーでございます。

 となると、これは政府も絡んでくるわけですね。単なる配慮義務、裁判で使うのみならず、一番上、「三条に規定する「配慮義務」について、その遵守がなされていないため個人の権利保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合等に、「勧告」さらに「公表」を行う」と。勧告というのは行政処分ですからね。公表も行政処分ですから、これは法律を所管する消費者庁の仕事だというふうに思います。

 そこで聞くんですが、この法案の解釈は聞きません。これは改正案ですので。そうでなくて、仮にこういうような状況になったら、仮になるというか、与党ですから、なるのではないかと思いますけれども、なった場合、では、この三条の配慮義務に反していると国民の皆さんが察知をすれば、消費者庁の窓口に言って、配慮義務に違反しているんだ、こういうような通報をしていけば、何らかのアクションを検討あるいは起こす、こういうことはしていただけるということで、これはよろしいんですよね。

河野国務大臣 法案の修正について与野党でいろいろ御協議があると思いますが、政府として見解を申し上げるのは差し控えたいと思います。(長妻委員「ちょっと理事で。執行状況、仮にこれが成立したら執行をどうするかというのは聞かないと。委員長、一回時計止めてください」と呼ぶ)

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 それでは、速記を起こしてください。

 長妻さん。

長妻委員 では、一般論で聞きますと、例えば勧告がついている配慮義務というのがあるとしましょう。その配慮義務に反しているというふうに国民から通報があれば、例えばそれが所管が消費者庁であれば、それは動いていただく、検討して動いていただくということは、もう当然だと思うんですが。

河野国務大臣 一般論で申し上げますと、消費者庁は、消費者の問題について何か御相談があれば、それをお受けして真摯に対応してまいりましたし、これからもそういうつもりでございます。

長妻委員 そして、この三条の一項の自由な意思の抑圧という文言がございますが、これは例えば、自由な意思の抑圧というのは、一旦ある行為を受けて自由な意思の抑圧というのがあった場合、これが例えば十年続くということもあり得るということでよろしいですよね。

河野国務大臣 御指摘の個人の自由な意思を抑圧する場合は、法人が何らかの行為によって個人の自由な意思を抑えつけ、自由な意思に基づかずに寄附させるような場合が考えられますが、これもまた個別具体の事例次第ではありますが、このような状態が長期間継続することもあると考えられます。第三条第一号は、自由な意思の抑圧状態が長期間継続することを要件とはしておりません。

 また、「寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態」とは、個人の自由な意思の抑圧と併せて、寄附の勧誘をする法人等は、寄附が本来基づくべき個人の自由な意思を抑圧し、寄附という専ら一方的な負担を負うことになる無償、片務の行為をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせないよう配慮すべきとの行為規範を定めるものでございます。

長妻委員 そして、この同じ一号で、「適切な判断をすることが困難」というのは、具体的にどんな状況でございますか。

河野国務大臣 「適切な判断をすることが困難な状態」とは、個人の自由な意思の抑圧と併せて、寄附の勧誘をする法人等が、寄附が本来基づくべき個人の自由な意思を抑圧し、寄附という一方的な負担を負うこととなる無償、片務の行為をするか否か、これについて判断ができない、することが困難という状況でございます。

長妻委員 その判断が困難というのは、一般常識的な人ならばしないだろう行為をしてしまうということも含まれるということなんですか。

河野国務大臣 そういうこともあり得るんだろうと思います。

長妻委員 そして、この三条の三号ですが、「寄附される財産の使途について誤認させるおそれがないように」、誤認させるというのはどういうことなのかということなんですね。

 あなたの御先祖、先祖解怨というのもありますけれども、御先祖の地獄に落ちている霊を鎮めていくというようなことというのは、これは誤認させることになるんでしょうか。どういうのが誤認なんでしょうか。

河野国務大臣 例えば、寄附の目的と使い道がおよそ異なるような場合ですとか、寄附金の帰属先を偽っていたような場合が該当するということになろうかと思います。

長妻委員 そうすると、先祖解怨をしますということで、その組織の先祖解怨の儀式にのっとって先祖解怨はする、でも、その金は別の何か建物を建てるところに使う。ただ、先祖解怨は献金したことによってするというのは、誤認はさせていないということになるわけですか。

河野国務大臣 それは、恐らく使い道をどこまで説明をしているのかということになろうかと思いますので、個々個別の状況によるのではないかと思います。

長妻委員 そして、その三号の前段の、「当該寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を明らかにする」ということは、当然、その教団名を隠したらここに当てはまると思うんですが、教団名を言っていれば基本的にはここはクリアできる、そういう理解なんですか。

河野国務大臣 「当該寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項」とは、具体的には、法人の名称ですとか、主な事務所の所在地ということが考えられるのかなと思います。

長妻委員 ということは、教団名だけではなくて、目的と所在地もセットでないと、足りる事項を明らかにしていないということになるという解釈でよろしいですか。

河野国務大臣 法人名を言って所在地を言わなきゃ駄目かとか、そこは、個々いろいろなことがあるんだろうと思います。

 また、目的について、寄附される財産の使途について誤認をさせないようにということでございますので、説明の仕方はいろいろあるんだろうと思います。およそ、言った目的と実際の使い道が違っているということがあれば、これは駄目なんだろうと思いますが、どこまで説明をするのか。

 これは、一般の寄附の場合も、例えば、福祉に使いますと言って、一部はNGOのランニングコストに充てるというようなこともあるわけでございますから、それはなかなか、個々のケースで、具体的にどこまでの説明をされていたのかというところはあろうかと思います。

長妻委員 そして、今日午前中も川井弁護士が参考人でおっしゃっておられたわけですが、この三条三項についてなんですけれども、やはり旧統一教会は、教団名を隠して、いわゆるマインドコントロールをかける。専門家によると、早い方は三か月ぐらいでマインドコントロール状態に陥らせることができ、長い方は一年ぐらいかけて、いわゆるマインドコントロールの状況に陥らせる。そして、その後、教団名を明かして、そして献金を勧誘する。基本的にこういうケースが結構あるということなんですね。

 つまり、初め、マインドコントロールにかける前提、かけている最中は教団名を言わないわけですね。ところが、その後、マインドコントロールにかかって、献金をお願いするときには、もちろん、振り込み先とかがありますから、教団名を言う。ということについてお尋ねするんですが、この前後関係、時間軸なんですけれども、例えば、教団名を隠してはいけない、明らかにしなさいと書いてあるんですね。これは、初め隠して、いざ、一年たってマインドコントロールにかかり、献金するときには教団名を明かすということは、これは三項違反にはならないという理解になっちゃうんですか。

河野国務大臣 当初は正体を隠しながら洗脳していって、その後、初めて正体を明かして寄附の勧誘をする場合、これは第三条三号に該当するんだと思います。

長妻委員 該当するというのは、問題ないということですか。配慮義務違反ということですか。

河野国務大臣 三号の配慮義務違反ということになると思います。

長妻委員 なるほど、深みにはめるときには教団名を明かさずに、深みにはまったときに、マインドコントロールにかけた後に初めて言ったとしても、これは三項の配慮義務違反になるという明確な御答弁ですね。よろしいですね。

 それで、次に、最後の質問になろうかと思いますが、これも、山井議員も、首相からいろいろな答弁がありましたけれども、念書とビデオなんですね。

 これは、私もいろいろな団体にお話を聞くと、献金を受けている団体にお話を聞くと、念書を取ったりビデオを撮ったりというのは尋常じゃない、普通はやらないと言うんですね。我々も、国会議員も献金をもらっていますよね、個人献金。ビデオとか念書を書くなんてあり得ないですよね。どう考えてもこれはおかしいじゃないですか。

 これは、総理の答弁は修飾語がついているんですよ。つまり、禁止行為、そして困惑の下、念書とビデオは無効ですよと修飾語がついているんです。そうじゃなくて、献金を返しませんとか、私は自由意思なので献金を返しません、ビデオとか念書単独で、修飾語なしで、そういうことをやるようなものは消費者庁として駄目だと、この法律を所管する消費者庁として。そういう見解というのは出していただけないんでしょうか。

河野国務大臣 様々な場面で念書を書くという場面はあるんだろうと思いますが、困惑状態で作成された寄附の返金を求めないというような念書やビデオというのは、これはもう公序良俗に反するとして無効になるというふうに考えておりますし、総理の御答弁にもあったとおりでございます。

長妻委員 確かに、これはレアケースなんです。不法行為裁判で、念書を書かせて、これは公序良俗に反するというふうに無効になったケースはありますが、レアケースです。

 是非、最後一問だけですが、河野大臣、公証役場に行かされて、公正証書を書かされると、結構裁判で重要な証拠になっちゃうんですよね。ですから、公証役場の立会人の方々がおられるので、そういう方々に注意喚起を消費者庁からもしていただきたいと思うんですが、最後、前向きに。

河野国務大臣 法務省や日弁連と連携をしっかりやりまして、公証役場、しっかりと周知していきたいと思います。

長妻委員 これで終わります。しっかりやってください。

稲田委員長 次に、沢田良さん。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、初めてこの消費者問題に関する特別委員会で質疑をさせていただきます。河野大臣、稲田委員長、関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日はよろしくお願いいたします。

 まずは、今回委員会が開かれるまでの慌ただしさにかなり違和感を覚えました。

 本日議題になっている新法は、大きな注目を浴び、今も苦しんでいる被害者の皆様を早く救出したい、少しでも安心していただきたい、そのような思いで与野党が議論を重ねてまいりました。本来なら、しっかり日程を確保して、委員会で質疑を重ねることが大切ではないかと考えています。しかし、何とか今臨時国会で成立を目指すという与野党の思いが、今回の開会につながったと理解をしております。

 ただ、消費者庁の皆様、関係省庁の皆様、委員部の皆様の大きな御負担、御尽力なくして本日は開会できませんでした。冒頭、皆様に御感謝を申し上げて、質問に入りたいと思います。

 本年七月八日、街頭演説中に凶弾に倒れた安倍晋三元内閣総理大臣。この銃撃事件は、いまだに多くの国民の記憶に残っています。実行犯の旧統一教会への恨みが大きく影響していると報道されてから、いわゆる旧統一教会問題に関心が集まってきました。

 日本維新の会は、八月中に法制局と打合せに入り、九月七日には宗教団体等に関わる議員立法タスクフォースを立ち上げ、この問題に取り組んでまいりました。

 旧統一教会問題が世論を大きく騒がせ始めてからの政府・与党の動きについて、公表に消極的であったり、公表が遅れたり、どんどん新たな事実が出て、多くの与党議員が旧統一教会に関わりがあったことが明るみに出ました。山際大臣に至っては、辞任にまでつながったことから、本来は今の法体系の中で救われない方々を一日でも早く守るため、救うために行動しようという国会議員としての矜持よりも、身内への守りに重きを置き、なるべくこの問題を抑え、関心をそらしたいのかと疑うほどに、問題と向き合うことを避けていたように感じたことが正直何度もありました。

 ちなみに、我が日本維新の会は、早急に関係のあった議員の公表を行いました。公表した全ての国会議員が寄附や組織的な選挙応援をいただけていませんでしたが、国民の皆様に不信感を持たれないためにも全てを公表していくという党の姿勢を、私は誠実と感じております。

 私自身も公表された一人ですが、私は、教会へチラシを持っていく、ポスター設置依頼をしただけです。ポスターについては断られております。それでも、関係があった議員として新聞にも載りましたし、地域からの問合せ、駅に立ったときに対する苦情、インターネット、ツイッターによる誹謗中傷、これはいまだに続いております。

 政府・与党が事実関係の調査、公表を党全体で徹底的にやれば、旧統一教会問題がこのように長引いたとは思えませんし、法案議論にじっくりと集中できたのではないのかと今更ながら痛感しております。

 我が党は、先ほど説明したタスクフォースで党内議論を重ね、九月二十一日には、報道では水と油なんて言われてしまいますが、立憲民主党の皆様と政策合意をし、実務者協議を繰り返し、十月十七日に特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済等に関する法律案を提出しました。

 この十七日に政府・与党にも動きがありました。消費者庁の霊感商法等の悪質商法への対策検討会が法規制を求める報告書を発表しております。しかし、与党は、法改正について、提言を年内にまとめ政府に申し入れるとし、翌十八日に総理は、議論を深めたいとおっしゃられております。我々が法案提出した後、十九日、ようやく与野党協議会が設置されました。

 やり取りだけを見れば、そもそも政府は検討すらしないで済まそうとしていたのではないかと感じてしまいますし、この時点で、新法は作らない、又は来年の通常国会に先送りしようという意図を感じずにはいられませんでした。実際に、臨時国会のこのぎりぎりまで議論が続いている状況を考えれば、臨時国会中に法案成立を目指したのであれば、スタートが遅いようにも感じます。

 河野大臣は、十月十九日までの政府の動きについてどのように御評価なさっていますでしょうか。

河野国務大臣 積極的に法案作成いたしました。

沢田委員 臨時国会において、十一月八日の大臣所信では「十月に取りまとめられた霊感商法等の悪質商法への対策検討会の報告書を踏まえ、」とおっしゃっておりますが、大臣の御就任は八月十日です。

 大臣御就任時の霊感商法等の悪質商法への迅速、緊急的な対応が必要という問題意識はどのようにあったのか、教えてください。

河野国務大臣 検討会で丁寧に御議論いただきました。

沢田委員 ありがとうございます。問題意識はあったということと、丁寧に議論をされたということをおっしゃっていただきました。

 十月十九日より、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会で、与野党協議会で何とか前へ進めたいと思っていたところ、相変わらず与党の消極的姿勢は変わらないように感じました。十一月一日の第四回協議会では、マインドコントロールの扱い等で課題が残るなどと言い、成立を先送りするような発言も出ていたと伺っております。我が党、そして立憲民主党の強い働きかけで、総理が今臨時国会で提出することを表明したのが十一月七日です。

 ちなみに、十一月十二日、十三日等の週末に行われた産経・FNN合同、朝日新聞、NHKの各世論調査で軒並み内閣支持率が下落し、三〇%台。時事通信の調査では二七%。産経・FNN合同では、救済法案を今国会で成立させるべきとの回答が七〇%を超えるタイミングでもございました。

 我が党、そして立憲民主党の強い働きかけが続きまして、総理が今国会で作ると表明したのが十一月七日です。本日は十二月七日。表明は一か月前です。

 大臣にお伺いしたいのですが、一か月で、今日に至るまで、法案の進捗、煮詰めについて、どのように評価なさっていますか。

河野国務大臣 法案の準備作業は、その前から進んでおります。

沢田委員 ちなみになんですけれども、法案の準備作業というところで、検討会というものがあったと存じております。この検討会の報告書というものが出てから動いていたようにも感じますが、この報告書についてなんですけれども、この報告書が遅れた場合、この臨時国会では対応できないということも想定なさっていたんでしょうか。

河野国務大臣 報告書が遅れるとは思っておりませんでした。

沢田委員 少し時間、戻りますが、十一月十五日に消費者契約法等改正案、十八日には新法の概要が示されましたが、内容についてはまだまだ議論の余地は大いにあると感じました。与野党協議会、数度にわたる幹事長会談でも、内容をしっかり精査するよう日本維新の会からは強く指摘をさせていただきました。そこで示されたのが、配慮義務を加えた案です。

 ただ、提案なさった法人の配慮義務規定については、民法の不法行為としてこれまでより容易に訴えられるという内容のものであり、行政措置や刑事罰につながる新法の適用拡大を求める弁護団や我々の要望には必ずしも応えられていないと思っております。むしろ、行政処分や刑事罰のない配慮義務規定違反の方に宗教法人が逃げ込んでしまい、新法が骨抜きになることを懸念しております。

 一方で、自民党の茂木幹事長は、現行法体系上、最大限のものを盛り込んでいる、野党の御提案等についても、でき得るものは全て取り入れたと会見でおっしゃっていました。

 今回の新法が審議されるまでの与野党におけるプロセスは、ここ最近では余り見たことのない、私自身、異例だとも感じます。委員会審議に入るまでに、先ほども申し上げましたが、与野党協議会や幹事長会談と、ある意味、与野党が同じ目標、被害者を救済することに向けて議論を深めてまいりました。

 当初、消極的だった政府・与党に論点整理を促し、臨時国会中に政府原案を提示させ、改善を決意させた流れとして、被害者、そしてその御家族、弁護団等の関係者の皆様、そして多くの国民の皆様の声と向き合い、一日でも早く救済をしなければならない、繰り返してはいけないと問題意識を持って、議員立法の用意、議論を諦めず、与党への働きかけを続けた日本維新の会と立憲民主党の純粋な思いであると自負しております。

 消費者庁にお伺いいたします。

 与野党協議会や幹事長会談において、我々から伝えた要望、また我々が自身の法案に盛り込んだ趣旨、意味等について、具体的にどの項目についてどのように政府法案に反映したのか、お答えいただけますでしょうか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案は、十一月十八日に既存の消費者契約法等の改正法、十二月一日に新法と、二段階で閣議決定しておりますが、その過程におきまして、九回にわたる四党の与野党協議会に私自身がオブザーバーとして参加させていただき、既に御提出されていた特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済等に関する法律案をめぐる御議論も拝聴するとともに、政府が検討しているこの二つの法案の内容につきまして、閣議決定以前に三度も説明するという貴重な機会をいただきました。

 こうした中で、特に新法につきましては、不当な勧誘行為を禁止し、当該不当な寄附勧誘を行う法人等に対する行政措置、刑罰を科すといった法案全体の骨格、また借入れ等による資金調達の要求の禁止、これは事実上の上限規制とも位置づけておりますが、また子や配偶者が婚姻費用、養育費等を保全するための特例、相談体制の整備といった規定につきまして、これを閣法として形成していきました。

 また、先ほど来御紹介されております様々な御意見、提言、要請等を踏まえまして、三年の見直し規定、また自由な意思を抑圧しない、生活の維持を困難にしないといった配慮義務規定を盛り込むことといたしました。

 この新法の形式は、閣法という形式ではございますが、こういう表現が適切かどうか分かりませんが、いわば閣法と議員立法とのハイブリッドなところが大きな特徴だと言えるのではないかと思います。

沢田委員 次長、丁寧にありがとうございます。

 日本維新の会と立憲民主党の法案では、刑罰を用意し、実効性を担保したところ、政府案でも罰則がつきました。マインドコントロール下での行為について規制しなければならないと指摘をさせていただきました部分についても、政府案には、自由意思を抑圧しないよう、配慮義務が入りました。寄附金額に上限を設けよと主張したことで、政府案では借入れや不動産等の処分による資金調達が禁止され、我々の家族による取消しの主張、債権者代位権として条文化もされました。そのほかにも改善すべき点を何度も指摘、提案をさせていただき、見直し規定も加わりました。

 もちろん、多くの困っている方、そういうものは、朝から聞かせていただいても、これだけ多くまだ誤解をしたり分からないところがあるのだなというところも含めれば、これは十分であるかといえば、まだまだ議論する余地はあると思います。ただし、我々と与党が議論をする上で、多少なりとも改善が図られてきたことは間違いないと理解をしております。

 河野大臣、今の黒田次長の答弁を聞いて、大臣としてはこのような与党と野党のやり取りをどのように感じているか、教えてください。

河野国務大臣 今回、極めて特例的なプロセスであったんだろうと思いますが、最終的に被害者の救済あるいは被害の未然防止につながる法案となることを期待したいと思います。

沢田委員 ありがとうございます。全く同じ気持ちです。

 本当に、私たちが通常暮らしている中では、こういった統一教会のようなところと関わるということが普通の人は少ないのかもしれません。けれども、私たちは、ここにいる全ての方が、ほとんどが政治に関わる人間で、一般の方よりはより多くの方と、人とつき合っているということがあると思います。ですので、今大臣おっしゃったように、一人でも多くの方の声をできるだけこの議論の中に取り入れていくということを今回やれたことは、私は大きな一歩だというふうに考えております。

 岸田総理の決断が遅かったのではという意見も当然ありますが、ただし、リーダーシップを発揮していただいたからこそ今この方向性になったということは、評価をしていかなければいけない部分でもございます。そのリーダーシップを発揮するに当たり、我々の動きが大きな刺激になったのであれば、まさに与野党の役割が正しく機能していると考えます。

 私たち日本維新の会は、今までも、日程調整や、又は批判や反対だけのやり取りということを批判してきました。できる限り与党と野党で議論をし、より多くの価値観を盛り込んだ、そういった国会、委員会運営になるように、引き続き、国民の皆様の命や暮らしをしっかりと胸に秘め、批判や反対より、提案をよりよいものにしていくということに働きかけ、これからも動いてまいります。

 次に、今後の見直しについて質問をさせていただきます。

 昨日の本会議で、我が党の漆間議員が、法施行後三年をめどとして検討を加えるというこの三年は長いのではないのかと問うたところ、大臣は、一定の法運用の実績を確保する必要、必要に応じて見直しに着手することも考えなくてはいけないと御答弁なさっておりました。

 見直しの年数については、当然、様々な考えがあることは承知をしております。ただ、大事なのは、継続的に実効性を図るための検討材料を集めることではないでしょうか。被害者等、当事者の声はもちろん、必要な修正は迅速に行い、絶えず見直しをすべきと考えますが、まさにデジタル庁も所管する河野大臣の今までの発言、私は、一番この動きに即した動きをしてくださる大臣だと考えております。どうでしょうか。

河野国務大臣 この法案は、デジタル庁ではなくて消費者庁の所管でございますが、大臣は同じでございます。

 御指摘いただきましたように、政府案では、施行後三年をめどとしての見直しということにしてございますが、先ほどから答弁申し上げておりますように、法が施行された後の施行状況、あるいは社会経済情勢がどのように変わっているか、そうしたことをしっかり見ながら、今後のことを考えていかなければならないと思っておりまして、それに関する情報はしっかり収集していくことが大事だと思っております。

 また、先ほどから何回か申し上げましたように、消費者庁に何らかの形の検討会をつくりまして、そこでしっかり状況を見ながら議論をしていかなければいかぬというふうに思っております。

 また、関係する各省庁とも連携をしながら、情報を共有し、しっかり対応できるような体制は整えてまいりたいと思います。

沢田委員 ちょっと済みません、通告をしていないんですけれども、今、大臣から検討会のお話が出たので。

 今、消費者庁の方では、第三者機関として、検討会と消費者委員会というものがあると思うんです。この消費者委員会というのは、今回余り動いていないように感じたんですけれども、黒田次長、なぜ動かなかったか、理由とかというのはあるんですか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者委員会は、正確には内閣府に所属しております。

 消費者庁として、他省庁がなぜ動かなかったかということについて、ここでお答えすることはできませんが、我々としては、迅速に検討する必要があったということで検討会をすぐに設置して検討したということでございます。

沢田委員 済みません、次長、突然。ありがとうございました。

 続いて、ガイドラインやロードマップの必要性について伺わせていただきます。

 本法案の条文については、これまでも予算委員会、本会議、また本日の当特別委員会でも、一言一句の解釈をめぐる議論がなされてきました。裏を返せば、これらの条文は、いまだに曖昧な部分を残しているということになります。

 しかし、被害者の方々の一刻も早い救済を期すためには、裁判をつかさどる裁判所や行政措置を行う消費者庁が明確に、またできるだけスムーズに判断を下せるよう、活用しやすい条文にしていく必要があるのではないかと考えております。

 参議院予算委員会における我が党の高木かおり議員の質問に対し、総理は、条文の解釈の明文化を図るなどにより、万全を尽くしたいと御答弁なさっておりました。

 本会議における総理の答弁でも、逐条解説等について幾度となく言及されており、この対応自体は歓迎すべきものですが、今まさに、こうした不当な勧誘で被害を受けている人がいることを考えれば、具体的な道筋を早急に示すことが必要であるのは言うまでもありません。

 解釈基準の通達、QアンドAや逐条解説の作成はもちろん必須ですが、今回、特に重要なのは行政措置の規定が盛り込まれたことです。被害者救済を実効性のあるスムーズなものにするためには、消費者庁自身が解釈の基準を明確に持っていかなければならないというふうに考えております。

 消費者庁にお伺いいたします。

 河野大臣からは、昨日の本会議で、行政措置や刑事罰に関わる規定は、相当程度の周知期間を設ける必要があるため、公布から一年以内の政令で定める日を施行期日とする旨の答弁がありました。周知のための時間を置くことは必要ですが、できるだけ速やかにこれらの運用を軌道に乗せたいという意識は共有いただいているものと思います。

 法案が成立すれば、すぐにでも動き出していただきたいと思っておりますが、法律の公布に向けて、行政措置の判断基準は既に検討をしておられますでしょうか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的に、どういうふうに行政庁として命令等の行政措置を執行していくかといった執行基準の策定につきましては、施行期日までの間に十分検討して、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 今申し上げた判断基準等については、かつて金融庁が金融機関の検査の際に用いた、いわゆる金融検査マニュアルのように、その基準を公開して、対象となる各団体に自主的なルール作りを期待するという方法もあると思います。

 今現在、先ほど来議論しております行政措置の判断基準等について、公開するということはそちらの方で考えていらっしゃいますでしょうか、教えてください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 そういった基準を策定した際に公表するかどうかということも含めまして、検討していきたいと思います。

沢田委員 ちなみに、大臣、こうした公開についてはどのようにお考えでしょうか。

河野国務大臣 法案を成立させていただきましたら、施行期日までの間に決定をし、適切に対応してまいりたいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 先ほども、同じことになるんですけれども、金融庁が、金融機関の検査の際に、金融検査マニュアルというものを公開して、対象となる各団体に自主的なルール作りを期待するという方法、私は大変上手につくられた仕組みだなというふうに考えております。

 是非、情報公開、そしてスピード感につきましては、私自身、日本維新の会の政党でありますが、河野大臣の強いリーダーシップを期待しておりますので、是非前に進めていっていただければと思います。

 続きまして、消費者庁の体制強化について、大臣にお伺いいたします。

 消費者庁は、今回の法案策定を急ぐために担当職員の増員をしたと伺っておりますが、今後、この法律を運用していくためにはどのような対策をお考えなのか、教えてください。

河野国務大臣 この一連の法案の提出のために、各省庁の協力をいただいたところでございます。

 この法案を成立させていただきましたら、消費者庁において、必要な体制の整備を講じることとしたいと思っております。

 まずは、関係省庁の協力も得ながら、所要の人員を確保する方向で準備には入っているところでございます。質、量の観点から、必要な体制を整備できるよう適切に対応していきたいと思います。

沢田委員 是非、よろしくお願いいたします。

 省庁の体制強化というと、すなわち定員増加であると思われる方もいらっしゃると思いますが、何でもかんでも人数を増やせばいいというものではもちろんありませんし、まず考えるべきは、どう合理的に物事を進めていくかということだと感じております。

 例えば、今回の法案が成立し、実効性のある運用がなされていけば、そもそも被害の防止にもなり、寄附の取消しの認定も得やすくなり、少なくともこれまでより事務負担が軽減されることが予想されます。

 こうした合理化、また、河野大臣の御担当でもありますデジタル化を率先して取り入れていくことで、定員増加に頼らない体制強化とともに、やはり、被害に苦しむ方々に、より便利で、いろいろな手段をもって助けられる環境設定、これをしていただければというふうに思っております。

 また、周知、広報の重要性は大変に高くなります。

 違う話とはなりますが、オレオレ詐欺という言葉がずっと前からあって、二〇〇四年には振り込め詐欺と命名されてからもう二十年近くたつんですね。私が住むさいたま市南区でも、いまだ車が、オレオレ詐欺というものに気をつけてねという周知活動を自治体の方でやっていただいております。ただ、この被害に遭う方は一向に減っていない、又は、減っていてもまだこういうことが続いている状況があります。

 今回の法案が施行されても、広く国民の皆様に周知徹底できなければ、被害防止、救済は難しいというふうにも考えております。

 この部分については、重ね重ねとなりますが、デジタル大臣も兼任されている河野大臣には、既存のやり方だけにとどまらず、新しい効果的なやり方、方法も是非実行していただけるようお願い申し上げます。

 最後になりますが、今回の法案につきまして、これまでに様々な御指摘があったように、不十分な点も多く残されています。被害者救済や実効性の観点からしても、改善や明確化の余地はまだまだ残されているようにも思います。

 また、政府・与党の決断と実行におけるスピード感の欠如については、やはり厳しく指摘せざるを得ません。例えば、いまだ世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスについても、我が党は、中国の春節が始まる二〇二〇年一月二十四日より前に対策本部を立ち上げ、頻繁に勉強会を開くとともに、累次にわたって政府に提言をしてまいりました。これは決して政治的なアピールではなく、国民生活が未知のウイルスにより多大な影響を受ける可能性を看過することはできないという我が党の強い思いにより決断され、実行されたものです。

 今回は、被害者救済についても、これまで見過ごされてきた様々な被害をこれ以上放置することなく対処すべきとの思いから先陣を切って動き出し、その結果、立憲民主党、そして日本維新の会が合同で歩を進め、そして、それに対して、先ほど大臣からもいただきました異例の措置として、自民党、そして公明党を含めた政府とも議論を重ねて、徐々に徐々にいろいろと煮詰めをつないできた。これは大変貴重であり、私はすばらしい現象だというふうにも思っております。

 けれども、実際に法が施行され、その中で、今まさに救済を必要としている方々、そして、これからそういったことが起こらないようにしていく、この両面でしっかりと私たちが結果を出して、国民の不安や、安全を確保していく、この動きは必要だというふうに思っております。

 冒頭にも指摘しましたように、政府・与党のこの問題への対応、私は、客観的に積極性を感じられない。大臣の方では、しっかりと実務的に動いていただいたという御答弁、一番最初にいただきました。大臣の今までの、大臣以外の動き方も含めてです、私はそれは事実だというふうにも考えます。けれども、これに対して、国民世論の大きな後押しや職員の皆様の御尽力、与野党が互いに協力して、まさにぎりぎりの議論をこれからもしていかなければ、この話はやはりどこかで消えてしまう部分もあるのではないかなという危機感も持っております。

 常に国民の皆様を第一に、この法案を実効性のあるものにすべく、日本維新の会は諦めずに汗をかいていくことを国民の皆様にお誓い申し上げ、また、最前線で法律の策定を進めてくださった消費者庁の職員の皆様、会期末の混沌とした日程の中でこの質疑を成立させてくださった皆様には、改めまして感謝を申し上げて、質疑とさせていただきます。

 本日は、どうもありがとうございました。

稲田委員長 次に、堀場幸子さん。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子と申します。

 私、ふだんは文科の方と内閣の委員会に所属をしております。本日は、消費者特別委員会の方にも質疑をさせていただきまして、本当にありがとうございます。この課題、本当に、文部科学省そして内閣も非常に関わりが深いところでございますので、是非是非御質問させていただきたいなと思っております。

 一番最初にちょっと、これは通告していないんですけれども、この法律の、改正案の方はいいんですが、法人等による寄附の不当な勧誘の防止に関する法律案という名前になっております。そもそも、我が日本維新の会と立憲民主党さんと一緒に出させていただきました法律案の方では、救済という文字が入っています。救済をするという強い意思の表れということで、法のタイトルの方にも救済という文字を入れさせていただいております。そして、与野党協議会の名前も、悪質献金等の被害救済のための協議会だと認識をしています。

 しかし、この法律、救済という文字が抜けてしまって、防止、ここまでにとどまってしまったのかなというふうに思っているんですけれども、河野大臣、この点少し、通告がなくて申し訳ないんですが、感想でいいので、一言お願いします。

河野国務大臣 被害の未然防止、そして救済を目的とした法案であることに変わりございません。

堀場委員 ありがとうございます。

 そうなんだとは思うんですけれども、やはりタイトルというのは、法律の名前というのは非常にそこに意思があるのではないかと私は思っておりますので、ちょっと残念だなというふうに思っているところでございます。

 一番最初の質問にさせていただきます。

 政府案、この法律ですね、本人がマインドコントロール下に置かれている場合に意思表示の取消しができるのは、本人がマインドコントロールから覚めた後のみとなっております。本人がマインドコントロール下にある状態では取消しができず、家族は苦しみ続けなければならないという内容です。

 本法案は、苦しむ家族は、本人がマインドコントロールから解けるまで救えないという理解でよろしいでしょうか。大臣、お願いいたします。

河野国務大臣 消費者契約法の改正法案あるいは新法案では、不当な勧誘行為によって困惑した中で行われた意思表示について取消しを可能としております。

 個別の事案においては、マインドコントロール下にある状態から脱するまでは、寄附をした個人が自ら取消権を行使することが事実上困難な場合もあり得るわけでございます。新法案では、このような場合を含め、債権者代位権という自らの権利を守るために必要な限度で他者の権利の行使を認める制度を活用しやすくする、そういうことで家族の被害救済を図るということにしております。

堀場委員 ありがとうございます。

 政府案では、子供や配偶者を救済する手段として、債権者代位権の特例ということを新設していただきました。婚姻費用や養育費等の定期金の債権について、履行期が到来していなくても債権者代位権の行使を可能としたというふうに、特例を新設してくださいました。

 しかし、これでは、私たち野党案、特別補助人という制度なんですが、特別補助人が本人に代わって、寄附した額そのものが取り消せるとした法案だったんですが、これに比べると余りにも救済できる額が少ないのではないかというふうに感じているんですが、河野大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 家族といえども、第三者が幅広く、本人の意に反してあるいは本人の同意なく、本人が行った意思表示を取り消せるというのは、これは、個人の財産権の保護という観点から、なかなか難しいんだろうと思います。

 今回、自らの権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める、そういう制度であります債権者代位権を活用しやすくするということで、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権を含め家族の被害を救済する、こういうことにつなげる、それができるようにしたものでございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 確かに、画期的な部分というのは私はあると思っています。少なくとも、お金が、違う方法で、取消権であったり不法行為による裁判によってお金を取り戻すだけではないという新しい選択肢が提示されたというふうにも理解しているところではありますけれども、債権者代位権では、極めて限定的な例でしか成立しないのではないかなというふうに考えているところでございます。救済される事案というのはどのような事案なのかなとちょっと考えても、ほぼないのではないかと危惧しているところであります。

 債権者代位権の行使のためには、債務者が無資力で債権を行使していないということが条件の一つとなっていると承知しておりますけれども、家や土地はあるが金銭的な財産が全くない、つまり無資力という状況ではないとみなされた場合、この条文では救済されますか。河野大臣、お願いします。

河野国務大臣 債権者代位権は、他者の権利の行使を認める制度でございますから、債務者が無資力であるというのが、そういう場合に限ってこれは認めるということにしております。無資力でない以上は債権者代位権の行使は認められないことになります。

 ただ、他方、家族の住居や生活維持のために欠くことのできない事業用資産を処分して寄附資金を調達することを求める行為を禁止し、寄附者あるいはその配偶者、扶養家族の生活の維持を困難にすることがないようにすることを配慮義務として規定をしておりますので、そうした場合には、家族自身が法人の不法行為に基づく損害賠償請求を容易に行うことができるようになる、そう考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 そうなんです。だから、やはり損害賠償請求が簡単にできるようになるということなんだと私も思います。つまり、この債権者代位権をどのようなときに行使するのかなというのを考えています。

 ちゃんと、配慮義務、これは禁止事項にするとか様々議論はありますけれども、配慮義務、第三条に入っていますよね。生活の維持を困難にすることがないようにしましょうであり、また、五条の部分でも、借入れ若しくは建物とかを売って、借金とかをして、建物を売ってとか、そうやってお金をつくってはいけませんよというふうになっているわけですから、家や土地がある場合というのは非常に多いんじゃないかな、そこで売ったら駄目なんですから、多いんじゃないかなというふうに考えています。

 だから、それで金銭的なものを全部やりました、借金はないけれども生活費はありませんという状況の人は、実は債権者代位権ではなかなか救うことができないという課題があるというふうに思っています。この条文で救われる人が本当に少ないのであれば、本当にこの条文がどのような意味があったのかなということを考えているところです。

 家族の生計に影響が出る場合、配慮義務違反で損害賠償の裁判を行うことができます。本来なら、そもそも配慮義務それ自体に行政処分をつけるようにするべきだと思うんですけれども、河野大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 新法案では、禁止行為について、勧告、命令などの行政措置の対象としております。禁止行為は、法人がどのような行為をしてはならないのかを的確に認識できるように、その類型と要件を可能な限り客観的に明確なものとして規定しなければならないというふうに思っております。

 配慮義務につきましては、適切な判断をすることが困難な状態といった、法人の勧誘によって個人にもたらされる結果の状況を規定しているわけでございます。ですから、どのような行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそういう結果をもたらしてはいかぬという規範を示しておりますので、法人がこれをやってはいかぬという明確な要件、類型を定めている禁止行為よりも、こういう結果をもたらしてはいけないという配慮義務の方がより幅広く行為を捉えることができると思っております。ですから、配慮義務を置くことによって、民法上の不法行為の認定とそれに基づく損害賠償の請求、この対象が広がる、容易になるということがあるんだろうと思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 私もそのように思っています。配慮義務になっているということ、確かに禁止する方がもしかしたらいいのかもしれないですけれども、大臣のおっしゃるとおり、こういう結果をもたらすというような観点から考えて配慮義務で幅広く取るという考え方も、一定、私自身は理解をしているつもりです。だからこそ、そういったところにも何かしらの行政処分というものがついてもいいんじゃないかなというふうに考えているところでございます。

 次に移らせていただきたいと思います。宗教二世と言われている子供たちの救済についてお尋ねさせていただきたいと思います。

 配慮義務違反で損害賠償の裁判を行うことができる、そして幅が広くなる、そしてしやすくなるというのは、今お話を伺ったところでございます。

 民法の不法行為ですが、今既に不法行為というところでの裁判の事例というのは実は非常に多くあるのが旧統一教会だと理解しています。ほかの宗教団体さんも含めますけれども、裁判というのが実は余り抑止になっていないんじゃないかなという現状があるというふうに理解をしています。

 その上で、いわゆる宗教二世と呼ばれる子供たちがこの法案の債権者代位権を行使するとき、救済できるのかなというのが、先ほど立憲民主党の柚木委員もおっしゃっていましたけれども、これは本当に疑問なところだと思います。

 未成年の子供たちが被害に気がついたとして、これはまた後でちょっと出てくるんですけれども、まず、自分が被害を受けていると気がついたとして、親の意思に反して裁判を起こすということが本当に可能だと思いますか。河野大臣、お願いいたします。

河野国務大臣 今回の新法案は、債権者代位権の活用をしやすくしておりますので、未成年者を含めた家族の救済につながると思っております。

 ただ、個別の事案において、心理的なハードルですとか法的な対応の難しさというのは、これはある場合はあるんだろうと思いますので、法テラスあるいは関係団体ともしっかり連携をして、適切にそうした権利が行使できるよう現場で最大限の支援をしていくということは、これは当然に重要になってくると思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 未成年が裁判を起こすには、制度上、特別代理人が必要だというふうになっています。この特別代理人なんですけれども、ふだん子供たちの支援に関わっているような人物、例えば児童相談所の職員であったり、カウンセラーさんであったり、ソーシャルワーカーさんであったり、様々な方がきっと子供たちには支援をしていると思います。その支援の人たちは、行政官がなれないということで、これもまた一つ大きなハードルなのではないかなというふうに思っています。

 私たち日本維新の会が、私、タスクフォースに最初から入っていましたので、ずっと関わっておりましたが、この補助人制度、特別補助制度というのは、確かに、財産権の問題、自己決定権の問題があるという議論は多々してまいりました。でも、やはりそれでも、子供の生存権であったり、教育を受ける権利であったり、まず子供たちの信教の自由という観点から考えても、やはり伴走支援が必要なのではないか、そしてそれはふだん支援をしている人の方がいいんじゃないかということを議論させていただきまして、日本維新の会の案として、立憲民主党さんにのんでいただいたという経緯があります。

 なので、私どもとしてはやはり、代理人という人たちが、もう少し幅を広げてあげないと、ちょっとハードルが高いのかなというふうに思っているんですが、消費者庁さん、これについてはいかがでしょうか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 未成年者の権利行使につきましては、親権者による適切な親権の行使が期待できないなどの場合、親権の停止、未成年後見人の選任、親権者と子の利益が相反するときの特別代理人の選任など、各種の手続が存在しております。

 もっとも、困窮している未成年者が自ら訴訟等の手続を行うことは実際上困難な場合もあり得ると考えられます上、例えば、今回の新法案による債権者代位権の行使等を行おうとする場合には、特に法的な支援を含めた支援が重要になるものと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、ちょっと難しいんじゃないかなということは御理解いただけているというふうに理解をしました。

 河野大臣、この場合、何かほかに方策はありますか。

河野国務大臣 法律上の仕組みを設けるというより、現場でどれだけきちんと支援ができるか、その体制を組めるか、具体的にどこへ行ったらいいのかといったところを含め、現場でどれだけ手厚く支援できるかということが大事になってくると思いますので、そこは、消費者庁を中心に、関係各省ともしっかり御協力をいただいて、関係団体の御協力もいただいて、実効性のあるような支援をしっかりとまずはやっていきたいというふうに思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣は少し法テラスのお話をされておりましたけれども、やはり、未成年の子供たちに法テラスというのはちょっとハードルが高いのかなと思っています。

 やはり、今まだ、法テラスというのはお金がかかったときに償還しなければならない制度です。利子はないにしても、やはり裁判にかかったお金は返さないといけないですよね。だから、未成年の子供たち、そして、ただでさえ虐待を受けて、本当に殻にこもっていてどうしようというふうな未成年の子供たちにとって、法テラスで裁判をしろという、大人には何か、ちょっと冷たいんじゃないかなというふうに私自身は感じているところです。

 そもそも、この法体系一本で子供を助けようというのは難しいんじゃないかというふうに私自身は感じています。やはり、先ほど申し上げました財産権、本人の自己決定権、こういったものも当然重要ですし、一方で、子供たちの生きる権利、そして生存権、学ぶ権利、そういったものも非常に重要だ、これをてんびんにかけるのは非常に難しいですし、そういったものではないところで規制をしていかなければならないということのジレンマ、今回のこの法律を作る上でのジレンマ、とても私自身も感じています。

 そして、一方で、宗教二世の皆さんの、子供たちの、そして子供だった頃のいろいろな御経験を聞かせていただくことによって、私自身も、やはりここの救済は現場でしかできないというふうに考えているところでございます。

 そもそも、親がギャンブルとかアルコール等、何かに強く依存するほど深くのめり込んで、破産するほど使い込み、そして虐待やネグレクト、そういったことが起こっている事案、ほかにもたくさんあると思います。そういった大きな枠組みの中でこの宗教二世の皆さんの問題を捉えた場合、こども家庭庁が、これからできるんですが、こども家庭庁が中心となって、幅広い支援策を早急に考える必要があると思いますけれども、和田副大臣、いかがでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 宗教等を要因とした虐待につきましては、今年の十月に、厚生労働省より、虐待防止法第二条に該当する行為を保護者が行った場合は、宗教の信仰等保護者の意図にかかわらず虐待に該当し得ること、また、保護者の信仰に関連することをもって消極的な対応を取らずに、子供の側に立って判断するべきであること等を児童相談所や市町村に周知されたものと承知をしております。

 加えまして、厚生労働省において、児童相談所等が相談において適切に対応できるようにするため、QアンドAを当事者や支援者の方々の御意見も伺いながら年内を目途に作成するものと承知をしております。

 来年四月に創設されますこども家庭庁においては、こうした厚生労働省の取組を引き継ぐことになりますが、常に子供の最善の利益を第一に考えて、子供の立場に立って、困難を抱える子供や家庭をどのようにサポートしていくことができるか、しっかりと検討してまいります。

堀場委員 それで本当に子供たちを救うことができる、その現場を支える、その文言になっていると私は全然思えないんですね。

 これは文部科学委員会の方でもさせていただきました。十月に紙をぺろっと出して、では、今までそういった対応をしなかった現場の先生たちが、急にそれをやりなさいと言われてできると思いますかと、私は文部科学省の委員会でも聞きました。児相でもそうだと思います。

 今まで、宗教を理由に、それを配慮するということがなかったわけですよね。それで児相に通告をするとか、虐待の危険性があるとか、もっと言うならば、運動会で出られない科目があるとか、できない行事があるとか、そういった子供たちが、そういうこと一つ一つで心に傷を負うんですよね。

 私たちは、そういった子供たちにちゃんと寄り添える人材を、文部科学省の予算ではもう無理なので、福祉という観点から、厚生労働省さん若しくはこども家庭庁さんがそれを担うべきだというふうに主張しています。それが教育と福祉の一体化ということで、日本維新の会で言わせていただいているものでございます。

 なぜ必要なのか。学校の先生たちにその作られたQアンドAを全部読めと言っているように私には聞こえるんですね、ただでさえ多忙な先生方に対して。厚生労働省の方がレクでもおっしゃっていました。とても胸が痛むようなお話を聞いて、それを是非解決したいと思って、今QアンドAを一生懸命作っていますとおっしゃっていました。でも、その大量にできたQアンドAを、学校の先生たちはどうすればいいんですか。それを受けた現場の人たち、忙しい児相の人たちはどうすればいいのか。

 今、国会で議論されるべきことは、そこに予算を割いて、人を増やして、そうやって助けていく、そういった気づきを増やして、子供たちに伴走支援してあげられるよと言ってあげられる体制をつくることだと私ども日本維新の会は考えております。

 スキームをつくる、まず、それがないです。チームをつくる。こちら側から、国から、こうやりなさいと紙をぺらっと出して、そしてその後に、大量のQアンドAを読んで現場で何とかしなさいと放り投げるのではなくて、しっかり子供たちの、支援要求ができない子供にどうしたのと声をかけてあげられるスクールカウンセラーさん、その子供たちを福祉につないであげられるスクールソーシャルワーカーさん、そしてそこで児童相談所の皆さん、こういった人たちがこういうスキームでやるんですよと、支援のスキームをつくっていただきたいと思っています。

 そして、私はずっと主張しておりますが、スクールローヤーに被害者の弁護団若しくは全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士の皆さんに入っていただいて、学校で何か起きたときにはすぐ相談できるというような体制を今すぐつくってほしいというふうに主張をしているところでございます。こういったことも含めて、子供たちに対する支援をしっかりと充実していってほしいなと思っているところでございます。

 次に、宗教法人法の改正についてお尋ねさせていただきたいと思います。

 和田副大臣はここで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 この法案により、実質的に宗教法人にも報告、勧告、命令、公表等の行政措置が適用されることになります。一方、現行の宗教法人法には、そもそも報告、勧告、命令、公表等の行政措置の規定がありません。それは信教の自由というふうな概念からだとお聞きしております。それは、ほかの法人、学校法人とか公益社団法人といったほかの法人ではあるのに宗教法人にはないという点は、様々なところで指摘されているとおりです。でも、今回、この法律によって、そういった勧告の対象になります。

 これは、信教の自由の観点からできないと答えていたという点から、この法案との整合性はいかがでしょうか、この点について。そしてもう一点、今後、こうした宗教法人法の改正も行っていくということでよろしいでしょうか。簗副大臣、お願いしていいですか。

簗副大臣 お答えいたします。

 宗教法人法第八十六条では、宗教団体が公共の福祉に反する行為をした場合において他の法令の規定が適用されることを妨げるものと解釈してはならない旨を規定しています。

 このように、宗教法人法以外の法令において、各法令に定める目的を達成する観点から法人等全般を通じて行われる規制等については、宗教法人法についても他の法人等と同じように規定が適用されます。

 新法案は、寄附の勧誘の結果として個人の権利が侵害されることを防止するため、対象となる法人の類型を限定せず、各法人が寄附の勧誘のためにする行為に着目して不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、そのような法人等に対する行政上の措置等を定めるものと承知をしており、宗教法人についても他の法人等と同じように規定の適用を受けることとなります。

 したがいまして、現行の宗教法人法が新法案の実施に影響を与えるものではなく、御指摘の点に関しては、宗教法人法の改正が必要になることはないものと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 この点に関しての宗教法人法の改正は必要ないという理解ではいいんですが、今やっと、消費者、この辺の議論ができました。その次のステップとして、宗教法人法の改正というのは、取り組む御意思はありますか。

簗副大臣 当委員会において、今、新法についての審議ということでこの席にも私も呼ばれておりますので、今のこの法案に関すること以外の点についての御質問につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 河野大臣にもお尋ねしたいと思っています。

 対策検討会の方で、宗教法人法に関する改正等の議論もされているかと承知しております。そういったところからの観点から考えて、確かに省庁が違うので言えないかもしれないですけれども、宗教法人法の改正というのは、まさかここでこの法律ができただけで助けられるわけじゃない、検討を続けていく、その検討の中には宗教法人法の改正若しくは新法を作るといったことも念頭に置かれているのでしょうか。お願いいたします。

河野国務大臣 検討会は当初の答申、提言書を出していただきましたので、今後は、消費者庁は、この新法及び消費者契約法の改正法について、執行状況を見極めながら、その実効性を高める、その努力をしてまいりたいと思っております。

 宗教法人法の改正云々につきましては、所管官庁であります文科省、文化庁、ここで議論されるべきだと思いますので、私から何か申し上げるのは差し控えたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。その文科委員会がなかなか開かれないので、困っているんですけれども。

 宗教法人法の寄附に関して言えば、現在の税制の優遇制度の在り方についても引き続き検討していくことが必要ではないかというふうに考えております。やはり国民の皆さんの関心事、それはここにあるかなと思っています。

 海外では、宗教法人の認定基準と税制優遇の基準をしっかりと分けて制定している例もあります。禁止行為や配慮義務違反を繰り返す宗教法人が仮にあったとして、優遇税制は今のままでいいとお考えかどうか、井上財務副大臣、お願いします。

井上副大臣 ありがとうございます。お答えいたします。

 宗教法人は、その公益性に鑑み、法人税法上、収益事業から生じる所得に対してのみ課税をするものとされております。宗教法人を含む公益法人等は、我が国の法制上、公益的な活動を目的とする組織と位置づけられており、法人税法上、営利活動を営む一般の法人とは異なる扱いになっております。

 税務当局の立場から申し上げれば、宗教法人については、所管官庁が根拠法令に従って与えた法人格の存在を前提に、課税上、その他の公益法人等々と同等の扱いを今行っております。

 したがって、当該の法人格の取扱いについては、一義的には、所管庁において根拠法令に基づいて対応していくのが正しいというふうに考えております。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、解散命令の請求をするかどうかというところで、質問権を行使している最中だと思います。厚生労働省さんが養子縁組について質問した件に関しては五日ということで期日は過ぎておりますが、文部科学省、つまり宗務課の皆さんがされた質問権の行使に関しては、まだお答えが返ってきていないものと分かっているんですが、そういったことをやって、向こうがちゃんと答えてくれるのかなというのは、皆さんが思っていることだと思うんです。

 皆さんが、答えてくれるかどうか分からないと。けれども、質問権を行使するほどの宗教団体がある。けれども、やはりこの税制優遇というのは今のままでいいとお考えかどうか、簗文部科学副大臣、お願いします。

簗副大臣 新法案では、宗教法人も含め、禁止行為を繰り返すような法人等に対して、勧告、命令等の措置が規定されていると承知をしており、まずは、新法案に基づく対応により、寄附の不当な勧誘の防止に努められるものと考えています。

 他方で、御指摘の税制優遇につきましては、宗教法人が他の公益法人等と同様に、公益的な活動を目的とする組織と位置づけられていることから措置されているものと考えられます。

 こうした仕組みの中で、仮に宗教法人のみを別に取り扱うことは、こうした現状の取扱いも踏まえた上で、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように、特に留意して議論する必要があると考えております。

堀場委員 ごめんなさい、議論する必要はあると思いますとおっしゃったということは、議論はするということでよろしかったでしょうか。

簗副大臣 そういった趣旨ではなくて、もしそうした議論を御提起されるということであれば、先ほど申したように、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように、特に留意する必要がある、そういう旨で申したまででございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 ということは、要約すると、宗教法人法の改正もするつもりはないし、税制優遇についても考えることはないという御理解でよろしかったでしょうか。

簗副大臣 先ほども申しましたけれども、この新法の審議においての質疑ということで、私ども文部科学省が呼ばれて今答弁をしております。ですから、ここを超えての事象に対しての答弁につきましては、お答えは差し控えさせていただくべきものと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 ちゃんと通告しているので、それで答えていただけないというのは、通告したら全て答えるわけじゃないというわけも分かるんですけれども、でも、この問題はもっとしっかり考えてほしいんです。

 さっき言いました子供のことも文部科学省さんです。そして、この宗務課のことも文部科学省さんですよね。そして、委員会がこれだけやらないのも文部科学省さんですよね。そうしたら、私がこうやって出てきたのは、別に文部科学省さんに対していろいろ言うために来たわけではないですけれども、一連のこの問題をしっかりと解決しようという意思が今あれば、私たちは、ここはちゃんと、より適切な改正、若しくは多様化する宗教の活動についてしっかりと可視化していくこと、若しくは情報を開示するとか。

 今ある公共性については、当然大切なことですから。私も、大事にしている宗教もありますよ、大事にしているお寺もあるし、しっかりと行かなきゃいけない神社もあります。私たちの日常の中で、宗教というのは非常に重要なんです。心の安寧を持ってくる人もあるし、助けられたと思う人もいると思います。そういった私たちの公共性の中にある宗教というものを十二分に理解して、それでもこういう問題が起きたということ、それも適切に処理をしなければならないんじゃないですかというふうに問いかけをさせていただいている。そして、この次は宗教法人法の改正という形で動いていくんですよねという確認をさせていただいているんです。

 でも、政府は、今の御答弁では、それはやるつもりはない、そして、宗教法人法に関しての税制優遇、こういったものに関しても手をつける気はないという理解でよかったですか。もう一回だけ聞かせてください、ごめんなさい。

簗副大臣 繰り返しになりますけれども、宗教法人法の改正等々につきましては、今、新法の所管のこの委員会において、文部科学省として呼ばれて答弁をしているという立場にもあります。したがいまして、新法に関連することとしての答弁以外のことにつきましては、予断を持って今この場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 また、税制優遇等についても、先ほど申しましたけれども、そうした御議論を提起されるのであれば、先ほど申した事項については慎重な検討が必要である、そのように答弁をさせていただいたということで御理解をいただきたいと思います。

堀場委員 消費者庁さんがやっている対策検討会の中でも宗教法人法の改正という話は出ているんですよね、実際に。だから、私は、消費者庁さんのこの会でお話をすることが決して駄目なことだというふうな認識は持っていませんし、もっと積極的に、これは子供の人権の問題です。そして教育を受ける権利、そして虐待、そしていろいろなことを皆さんだって報道等で聞かれていると思います。直接聞かれた方もいると思います。これは本当にやばい、まずいと思って周りの大人が動かなければ、こどもまんなか社会は絶対にやってこないと思います。

 私たち日本維新の会は、立憲民主党さんと、先ほど水と油なんて言っていましたけれども、一点でちゃんとつながったんですよ、これは助けなきゃいけない。だから私たちは、対案を、最初に法案も出させていただきました。そして言いました。救済したいという強い思いを持って出したんだと言わせていただきました。そして、今政府案が出てきて、様々御配慮いただいていると思います。上限規定、私たちは言いました。だけれども、なかなか難しかったんだと思います。でも、政府は、やはり借金するほどはやっちゃいけないよねと、形は変わったけれども、こういうふうに上限規制もしてくれました。

 私たちは、確かに法には限界がある、であるならば、周りの大人がしっかりとサポートするスキームをつくらないといけないと思っています。それをやるのは現場を持つべき文部科学省さんであり、子供対策をやられている内閣府さんであり、今は厚生労働省さんもいるんだと思います。そういったところがしっかりとスキームをつくって、現場が困らないような、そういった体制を一刻も早く構築していただきたいと強くお願い申し上げ、私からの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲田委員長 次に、田中健さん。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。よろしくお願いをいたします。

 今回の法案の制定においては、私たち国民民主党も、これまで独自に提案を続けてまいりました。

 当初から、心理的な支配利用に伴う暴利行為による寄附の募集を禁じる規定を定めるべきであるということや、また、家族による損害賠償を可能とする民法の特例を創設することを提案してまいりました。それが、今回の中でいえば、配慮義務の三条の一項、二項に盛り込まれているんじゃないかなというふうに理解をしております。

 今回の新法で求められるのは、悪質寄附の勧誘を禁止し、防止することとともに、過度な献金によって苦しむ被害者、また家族をどうやって救っていけるかということであると思っておりますので、その観点でお尋ねをしたいと思います。

 まず、議論に上がっています配慮義務についてからお伺いをいたします。

 第三条の二項、配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることのないようにというふうにありますが、寄附によって生活が困難になった家族、これは配偶者や扶養親族も、被害者として民法の七百九条の不法行為による損害賠償の当事者になり得るということでよろしいか、まず確認をさせていただきたいと思います。

河野国務大臣 新法案では、寄附の勧誘に当たって、寄附者、その配偶者、扶養親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることを配慮義務として規定をしております。

 これに違反するような不当な勧誘行為が行われたことを主張、立証することによって、寄附者本人だけでなく、その家族についても、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性を高めることができるようになると考えております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 民法の七百九条の不法行為の損害賠償請求、これまでも行われてきたわけでありますが、これも先ほど来議論がありました、過失と違反性を一件一件認めさせるというのは本当に大変なことで、損害賠償を認めさせるまでが大変困難だということでありました。

 今回、寄附の勧誘に関する禁止行為を定めて、違反法人には刑事罰や行政罰も科されることになりましたけれども、それはやはり被害者の救済と直接にはつながらないということでありまして、やはり大切なのは、この第三条に定めた配慮義務に違反して寄附を求めることが民法の第七百九条の不法行為に当たるということを明確にし、その上で、先ほど言った、これが家族も、配偶者、扶養家族も含め当事者ともなるということが私は大事だと思っています。

 旧統一教会の被害者においては、様々な事例というのが上がってきていますし、家族への配慮義務違反ということで、損害賠償請求によって違法献金の取戻しが進むことを期待したいと思っています。

 その中で、配慮義務について、先ほど来の質問の中で幾つか、私も絡んでいたと思うんですけれども、配慮義務違反の効果ということが話されていました。

 午前中の川井参考人のペーパーの中に、ちょうどこの配慮義務の効果について、第七条で、必要な措置の中に当該寄附の返金までが含まれれば救済につながるということが書かれておりまして、私もちょっとここに触れさせてもらったんですけれども、これは実現性がどうなんだろうということで質問させてもらったんです。

 これを先ほど来ちょっと取り上げて、議論が少し進んでいたところもありましたが、あくまでこれは与党の修正案ではという括弧書きがございましたので、改めて確認をしておきたいんですけれども、第七条における勧告、当該行為の停止その他の必要な措置における勧告というのは、あくまで第四条、五条の規定に違反する行為、つまり禁止行為に定められたことによるものであるということでいいか、改めて、済みません、ここで確認だけしておきます。

河野国務大臣 政府案はそのとおりでございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 修正案等の議論も進んでいるようでございますが、今のところは、認められているのは、あくまで、配慮義務に違反した場合は七百九条の不法行為の損害賠償請求をしっかりと使うようにする、そして、これが使えるようにしていくということであるということを改めて確認をさせていただきました。ありがとうございます。

 その中で、家族への配慮義務違反というのは宗教法人法の第八十一条一項一号の法令違反に当たるのではないかと思いますが、この見解を伺いたいと思います。

簗副大臣 御指摘の、新法の案の第三条の配慮義務違反の行為があった場合、宗教法人法八十一条一項一号の「法令に違反し」に該当し得ることとなると考えられます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 それでは、同じく、配慮義務の中にあります正体隠しや身分を偽っての伝道などということは、三条三項における配慮義務違反になりますでしょうか。

河野国務大臣 法人などが寄附の勧誘を行うに当たって正体を隠していた場合、あるいは、寄附される財産の使途に関して虚偽の内容を述べた場合には、第三条三号の配慮義務に反するということになると思います。

 また、寄附の勧誘であることを告げずに、退去困難な場所に同行し勧誘する場合には、第四条第三号の禁止行為に該当いたします。

田中(健)委員 それでは、今の正体隠し、身分隠しの配慮義務違反が、今度は、宗教法人法の八十一条一項二号におきます「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」に当たりますでしょうか。

簗副大臣 三条の配慮義務違反の行為があった場合、個別事案に応じて判断していくこととなりますが、その結果や影響、動機等を踏まえた上で、宗教法人法八十一条一項二号前段の「目的を著しく逸脱した行為」と認められることもあり得ると考えられます。

田中(健)委員 これまで、違法行為又は脱法行為が認められるには、組織的であって、継続的であって、悪質な違反というものも基準として定められておりましたが、今の配慮義務違反の流れをまとめますと、第三条の配慮義務に違反し、そしてそれで、寄附を求めることが組織的であって、また継続的であって、さらに悪質的な違反の場合というのは、宗教法人法の八十一条一項の法令違反に当たり、最終的には解散命令の対象というものになり得るのか、伺います。

簗副大臣 お答えいたします。

 三条の配慮義務については、法人等に対して、寄附の勧誘を行うに当たっての法律上の義務を定めたものと承知をしております。このため、新法案三条の配慮義務に違反する行為は、宗教法人法八十一条一項一号の「法令に違反して、」に該当し得ると考えられます。

 宗教法人の解散命令は裁判所が行うものですが、個別の宗教法人について解散命令請求を検討するに当たっては、所轄庁等において把握した事実関係を踏まえ、宗教法人法に基づき、行為の組織性、悪質性、継続性等をその個別事案に応じて判断していくこととなり、その上で、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる場合には解散命令の要件に該当すると考えられます。

田中(健)委員 今、ヒアリングをして、この解散命令、どのような、組織的、継続的、悪質的だということを調べている最中かと思いますが、これらの配慮義務違反も一つの宗教法人法の法令違反に当たるということを確認できましたので、是非、この解散命令、最終的には司法が判断いたしますけれども、進めていただければと思っております。

 こちらで副大臣の方は、ありがとうございます。

 引き続き……(簗副大臣「ちょっと済みません、誤解があるといけないので、少しだけ」と呼ぶ)

簗副大臣 少し補足をしますけれども、今、最後、御指摘がありましたので。本法律案は、原則として施行日以降に行われる寄附の勧誘について適用されるものであるということは留意としてお伝えしておきたいと思います。

田中(健)委員 これまでのものは、今、ヒアリングをしていまして、この法案がもちろん通った後にこれらが適用されるということでございますが、それでも、これらが違法であるということはしっかりと明示されるということでありますので、それに沿って対応いただければと思っています。ありがとうございます。

 簗文科副大臣はこちらで、ありがとうございます。

 更に質問を続けさせていただきます。

 被害者救済という意味で、債権者代位権の特例、これもこの委員会で何度も議論が進んでいます。家族の救済措置を広げたということは、私も評価に値するとは思っています。将来の教育費などについても返金を求めることができるようになることも大事なことでありますが、実際は、午前中の参考人からもありましたが、扶養義務の範囲が狭いことや無資力要件があるため、取り戻せる額が限定されるのではないかという指摘がされています。実際、参考人からもこの発言がありました。

 これについては、大臣はどのように認識をして、問題意識を持って取り組んでいこうと考えておりますでしょうか。

河野国務大臣 債権者代位権は、自らの権利を守るために、必要な限度で他者の権利の行使を認める制度でございます。今回の法案でこれを活用しやすくすることで、家族らの被害救済につながると考えております。

 債権者代位権の適切な行使により被害回復を図ることができるようにするための支援は非常に重要だと考えておりまして、法テラス、あるいは関係機関、関係団体と連携した体制の整備、こうしたことをやっていきたいと思っております。

 ただ、債権者代位権は、債務者の権利を債権者が代わりに行使する点で、債務者の財産管理に介入をするということでございますので、債務者の財産権への不当な侵害とならないようにする観点から、現行法上、自己の債権を保全する必要があるという要件の解釈として、債務者が無資力であることが必要であるというふうに考えているところでございます。

田中(健)委員 最後の方で無資力というお話がありましたけれども、今回、そもそも、債権者代位権の特例でございますから、この無資力要件というのも緩和をして、特例を設けることで柔軟に対応できるような体制というのができないだろうかというふうに考えますが、見解を伺いたいと思います。

河野国務大臣 債務者に資力がないとは言えない場合には、代位権の行使を認めなくても債権者は債務者の有している財産から履行を受けることができます。ですから、債権者代位権の行使を認めると債務者の財産権に対する不当な侵害となるおそれがあるというふうに考えておりまして、新法において無資力要件を緩和しなかったのはそういうことからでございます。

田中(健)委員 それぞれ家族の状況や資産状況も違うんですけれども、やはり家族の状況等を踏まえて、柔軟に対応できるような体制というのを是非考えていただければと思っています。

 その中で、今、先ほど大臣、法テラスという言葉がありましたが、被害者支援について次に質問させていただきます。

 霊感商法等の被害に関して、日本弁護士会が、九月五日から日弁連のフリーダイヤル及びオンラインでの無料相談受付を行って、十二月二日までで九百三十九件の受付があったということであります。十一月二十四日までの三百八十二件の相談結果を発表した中で、旧統一教会に関する相談は八割、親族からの相談が五割、一千万円以上の財産的被害を報告する相談は実に四割だと。そして、相談者は四十七都道府県全てにおりまして、被害の大きさを感じております。

 そして、新法案の中では、被害の回復、このような相談があった人たちのためには、まさにおっしゃった、法テラスと関係機関、関係団体等の連携による利用しやすい相談体制の整備等、必要な支援に備えるということが書かれています。

 しかし、法テラスを利用する場合、では、みんな法テラスを使って進められるかといいますと、やはり、法テラスには民事法律扶助制度というものがありまして、経済的に余裕のない方、どうしても今回は、寄附をして、そして家族が皆さん困窮しているわけですから、まさに経済的に余裕がない人が法的トラブルに遭ったときには無料で法律相談は受けられますけれども、必要な場合、さらに、民事裁判等のための弁護士や司法書士の費用は立替えというものであります。

 ですから、この相談者、たくさんの相談者が、では、法テラスに行けばいいじゃないかということも言えるんですけれども、法テラスに行くことで、被害者の方がその時点で債務を負ってしまうということにもなりかねません。

 これについては、被害者支援や救済につながらないという視点や、また、この立替えや償還制度というのが利用の障害となっているんじゃないかといった指摘がされておりますが、大臣の考えを伺います。

河野国務大臣 この法律が施行された後、現場でいかに被害者あるいはその家族を支援することができるか、その体制をどう組むことができるかというのが非常に大事なことだと思っております。

 消費者庁がもちろん中心になりますが、関係各省庁の協力を得て、法テラスを中心に、関係機関あるいは関係諸団体とも連携をしながら、実効性ある支援を現場で行うことができるように努めてまいりたいというふうに考えております。

田中(健)委員 同じように、法務省からも部長に来ていただいておりますので、法務省としての考えを伺いたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法テラスでは、民事法律扶助業務として、資力の乏しい方に対して無料法律相談あるいは弁護士費用等の立替え等を実施しておりますところ、立替金の償還を求める償還制につきまして、被援助者に債務を負わせることになるとの指摘があることは承知をしております。

 この民事法律扶助制度が償還制を採用しておりますのは、限られた財源を用いてより多くの困難を抱えた方を支援するためでございます。他方で、法テラスにおきましては、被援助者の立替金の償還について、その資力状況に応じ、免除を含めた柔軟かつ適切な運用を行っているものと承知をしております。

 法務省といたしましては、この旧統一教会問題でお困りの方につきましても、その資力状況に応じて民事法律扶助制度を積極的に活用していただき、被害者の実効的な救済が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 免除は、制度としてはあるんですけれども、なかなかその免除がされないということも問題としてお話を聞いています。

 この全額償還原則による弊害ということでお話を聞いて挙げられているのが、例えば、夫から養育費の減額の調停申請があり、法テラスを利用して対応し、結果、減額幅を抑えることができたものの、減額になった毎月の養育費から更に法テラスの毎月の償還があって、家計が破綻したというような例もあるということでありますし、また、ほかの例では、法テラスを利用して夫に対して離婚を申し立て、離婚は認められてDVからも解放されたんですが、積み立ててきた学資保険が法テラスへの償還に充てられるということで子供の進学に支障が生じたと。

 私たち、この統一教会の問題においては、二世の皆さんをどのようにして救っていくのか、また救済していくのかという中で、やはり未成年や、また子供たちの問題が多く挙げられています。このように、同じように、やはり養育費や、ないしは学資保険まで法テラスの返済に充てられるというのでは、なかなかこれは解決に向かいづらいという思いがあります。

 実際、弁護士の先生から話を聞いても、相談までは来るんですけれども、返済ができるか不安だったり、民事裁判等に踏み込めない、幾ら回収できるか、返金できるか分からない中で、なかなか踏み込めない例もあったということも聞いています。

 是非、先ほどは免除というお話がありましたけれども、全て給付にするというのは、もちろん財源の面もあるかもしれませんが、特に今回の統一教会をめぐる霊感商法においては、特例をつくって、つくるのがいいのかという議論もありますけれども、給付制、ないしは、もちろんある程度の資産がある方は一部の負担制など、返済が要らない給付制の導入というのも是非検討をしていただけないかと思いますが、法務省、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の民事法律扶助を給付制にするべきではないかという点につきましては、本来当事者が負担すべき弁護士費用等を国民の負担とするということが合理的と言えるかという観点からの慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

 もっとも、我が国の実情に即しまして、より利用しやすい民事法律扶助制度となるよう、委員御指摘のような償還制であることによる実際上の障害の有無、あるいは程度を含めまして、現行制度の課題の有無や内容等について、更に必要な調査検討を行ってまいりたいと考えております。

田中(健)委員 是非お願いしたいと思います。

 世界の中では、日本がリーガルローンと言われているんですけれども、アメリカやイギリス、韓国はリーガルエードということで、包括的、総合的な支援を実現しているということも学びました。

 是非利用者の経済的負担を軽減して、お願いをしに弁護士の先生に相談に行ったら負債を負うなんということが、やはりどうしても、それを聞いてしまうと、何とかしたいな、しなきゃなという思いがありましたので、是非対策を望みます。よろしくお願いします。

 それでは、次に進みます。

 正当な寄附についてです。今回の法案が、たてつけの話がありましたけれども、当初は、統一教会の悪質な勧誘行為や寄附行為を何とかしようと。さらに、それに配慮義務が課され、ちょっと分かりづらい形になってしまったということであるんですが、やはり、一番これについて懸念をしているのがNPO法人の皆さんであります。

 これは、昨日の質問の中でも取り上げられておりましたが、その中で、公布後二十日で、新法の施行を踏まえて、NPOや寄附者双方に丁寧な周知をするということも述べられました。

 しかし、やはりまだまだ懸念がありまして、新法の内容を誤認した寄附者から、正当な寄附についても返金を求められるんじゃないかとか、それに対してどのように答えたらいいんだろうと、NPOの皆さん自体から具体的な解釈や適用というのも聞きたいという声もあります。

 もちろん、今回、急いでこの新法を作りましたから、皆さんの声を聞いたり、また、それまでの説明や解釈の説明もできていないかと思っておりますので、是非、こういった懸念や疑問に対して相談できるような対応、具体的には、NPOの皆さんからは、フリーダイヤルで相談ダイヤルを設けてもらったり、ネットで相談できるとか、そういった体制を整えてほしいという声が上がっていますが、この現状を踏まえてどのような対応を考えられるか、大臣に伺います。

河野国務大臣 新法案の運用に当たっては、NPO法人等、様々な法人の活動において寄附が果たす役割の重要性に留意しなければならない旨を規定しております。本法案における禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられるものであって、配慮義務についても、真っ当に寄附を募っている法人等であれば当然に配慮されているものに限っております。

 そのため、通常のNPO法人であれば、寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないと思っております。むしろ反対に、不当な寄附の勧誘行為が防止されるということで、寄附への理解や寄附の勧誘への安心感が高まることにもつなげていきたいというふうに思っております。

 NPOの法人の皆さん、関係者、それから広く世の中に対して、この法案の趣旨、それから具体的な不当な寄附行為について、しっかりと説明を尽くしていきたいというふうに思っております。

 フリーダイヤルを設置する予定は現時点ではございません。しかし、理解しやすい解説資料をホームページで公開をしたり、法案の趣旨について正しい理解を促進するため、できる取組は何でもやってまいりたいと思いますので、何か御提案があれば、また後日承って、しっかり対応を考えていきたいと思っております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 対応していただけるということでお願いをしたいと思いますし、大臣がお話しすれば、寄附文化の醸成や寄附文化が大事であるということ、また、今の不当寄附を排除して、逆に言えば、正しい寄附文化を醸成していくんだということが分かるんですが、どうしても今回が、当初のイメージが寄附の一律規制というふうに捉えられてしまって、すごく皆さんに、まだまだ法案も通っていませんから、現実、伝えるのが難しいんですけれども、お互いの情報がまだ十分届いていないという現状があるかと思っています。

 ですので、大臣からは、寄附が果たす役割の重要性ということを、昨日の委員会でも今もおっしゃってもらったんですけれども、是非これを、十二条の中には留意しつつということがあるんですけれども、更に踏み込んで、今おっしゃってもらった、不当寄附を排除して正しい寄附文化を醸成していくんだというメッセージをこの十二条等に盛り込んで、安心して皆さんが、今回の法案に対して、NPOの人たちも賛成することができる、またそれに取り組んでいくことができるというような提案をさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 様々メッセージをしっかり出していくということが大事だと思っておりますので、誤解を得ることがないような働きかけ、広報の努力というのはしっかりやっていきたいと思います。

田中(健)委員 NPOの皆さんは心配していて、何度も事務所にも来ていただきましたけれども、やはり、地域の活性化に取り組んでいたり、また、社会活動の解決に、今、NPOは必要不可欠でありますし、なかなか寄附文化が根づいていないといった日本の中で、これが足かせになってしまったり衰退につながるなんということがゆめゆめないようにしなければならないと思っておりますので、是非、大臣はよく理解をしておりますし、NPOも応援していただいていると思いますので、今後も、当事者の声を聞いていただき、不安解消に対する対策というのに努めていっていただければと思っております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

稲田委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、法人等による寄附の不当勧誘防止法案について質問をさせていただきたいと思います。

 統一協会への多額の献金によって人生がめちゃくちゃにされ、そして家庭崩壊などが起きております。この法案でそうした問題が本当に防止されるのかということが問われております。

 不当な寄附の勧誘の禁止を規定した法案の四条六号について質問をしたいというふうに思うんです。

 資料の一を御覧いただきたいんですけれども、この四条六号の禁止行為と認定される要件の中には、四つはあるというふうに思っております。一つは、寄附の勧誘に際し、そして二つ目が、不安をあおり、不安に乗じて、そして三つ目が、必要不可欠であることを告げ、そして四つ目が、困惑させるということだというふうに思いますけれども、まず確認をさせていただきたいと思います。

黒田政府参考人 御指摘のとおりだと思いますが、ただし、不安をあおりと不安に乗じてというのは、又はということでありまして、どちらかということになりますので。

本村委員 ありがとうございます。

 この四つの要件は、全て、挙証、立証する責任は被害者にあるのでしょうか。

黒田政府参考人 御指摘のとおり、取消権等を行使する場合には、挙証責任は被害者側にあると考えております。

本村委員 ここにかなりのハードルがまずあるわけでございます。

 この四条六号の四要件について、総理の答弁の根拠を含めて一つ一つ見ていきたいんですけれども、まず、不安をあおり、又は不安に乗じてということについて、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 速記録も資料として出させていただいたんですけれども、速記録の二ページ目の中段の最初なんですけれども、六日の本会議、宮本徹衆議院議員が総理に質問をしたわけですけれども、そのときに総理は、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法案による取消権の対象となると考えられますというふうに答弁をいたしました。

 まずお伺いしたいんですけれども、マインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言えるとなぜ言えるのか、お伺いしたいと思います。

黒田政府参考人 マインドコントロール自体の定義がはっきりしないということもありますが、まずは、何らかの形で本人が抱いている不安につけ込むというような形で本人の自由な意思を奪っているような状況ということが多いのではないかということで、不安に乗じるといった場合が多く当てはまるのではないかというふうに答弁されているものと理解しております。

本村委員 多くの場合は言えるというふうに書かれておりますけれども、言える場合はどれで、言えない場合はどういうケースでしょうか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 マインドコントロール自体の定義がはっきりしませんので、ちょっと、個別にどういう場合がどうで、どういう場合がどうでないかというのはなかなか言いづらいんですけれども。

 先ほど申し上げたのと重なりますが、ここで言う不安ということにつきましては、当該寄附を勧誘する法人が必ずしもあおった不安でなくてもいいわけなんですけれども、若しくは個人が元々有した不安であったとしても、そういった不安に乗じるということなんですが、不安に当てはまる場合というのは、最終的には不安に乗じて困惑させるということにつながっていくかどうかということなんですが、不安の中身を当該法人が実際に植え付けた若しくはそもそも知りながらつけ込むといった場合には当たるんですけれども、当たらない場合といいますのは、済みません、当たらない場合は当たらないという言い方になってしまうんですが。

 とにかく、不安に当たらない場合というのは、何といいますか、例えば、本人が信念で、マインドコントロールというよりは、宗教の教えなりを心の底から信じて、その教えに従って行動しているような場合というのは、必ずしもマインドコントロール、不安に乗じてという状態には当たらないということが言えるのではないかと思います。

本村委員 もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、マインドコントロールによる寄附であれば、不安を抱いていることに乗じてというふうに認定するのかどうか、お願いします。

黒田政府参考人 先ほども申し上げて、ちょっと繰り返しになってしまいますが、マインドコントロールという言葉自体が定義がはっきりしませんので、マインドコントロールが全て不安に乗じてに当たるというわけではありませんが、先ほどから申し上げておりますように、本人が元々感じていた不安若しくは当該法人があおったような不安であること、不安があるということを当該法人が知りながらそれにつけ込んで、例えば、寄附をしなければ地獄に落ちるといったような言い方で不安を更にあおった、困惑させて寄附をさせたような場合は当たるということでございます。

本村委員 今日も川井弁護士の方から、この条文についても、答弁についても、もっと法文の方に分かりやすく書いてほしい、修正してほしいという要望があります。その点も是非加味して、よりよい法律にしていただきたいというふうに思っております。

 さらに、総理の答弁では、速記録の二ページの中段の次のところなんですけれども、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後に、冷静になって考えると、当時、不安に乗じて困惑して寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って、取消権を行使することが可能というふうにおっしゃっております。

 具体的に、どのような事実を主張、立証することが必要なのでしょうか。

黒田政府参考人 御指摘の、入信時に抱かされた不安が継続しているという場合とは、例えば、入信当初の身内の不幸などを挙げて不安をあおられ、そのような不安を継続して抱いている状態という趣旨でございまして、仮にそれが何十年継続いたしたとしても、そのような不安に乗じて勧誘される場合には取消権の適用対象になり得るものと考えております。

本村委員 取消権を行使することが可能と言いますけれども、必ずお金が返ってくるというわけではないんですか。

黒田政府参考人 まさにケース・バイ・ケースでございますが、そういった、ここの要件に当たる、つまり、勧誘するに際し、霊感等の知見を用いて、不安に乗じて、必要不可欠といったようなことを告げて困惑させるというような状態が仮にあった、それで、御本人がそういったことを立証したいというふうに思った場合でも、それがうまく例えば立証できないような場合には、所期の目的が達成できない場合もあり得るということでございます。

本村委員 資料などがなかなか集まらずに、立証がかなり困難だというケースもあるというふうに思います。

 先ほど四要件と申し上げましたけれども、この総理の答弁は不安に乗じて困惑ということしか言っていないということで、ほかの要件で取消権の行使ができないということにもなってしまうので、総理は結構、できるできるという答弁をしているんですけれども、実際は使いづらいということがあるのではないかというふうに思っております。

 次に、困惑についてお伺いをしたいんですけれども、改めて、「困惑させてはならない。」の困惑とはどういうものでしょうか。

黒田政府参考人 困惑につきましては、消費者契約法の逐条解説によりますと、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう、畏怖、それはすなわち、恐れおののくこと、怖がることも含む広い概念とされておるところでございます。

本村委員 ありがとうございます。

 同じく十二月六日の本会議、宮本徹議員がこういうふうに主張をしております。

 総理は、答弁で、入信当初に不安をあおられる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に取消権を行使することが可能な場合があると述べています。どういう場合が可能で、どういう場合が不可能なのか。四条六号は行政措置の対象ですから、判断基準を責任を持って示していただきたいということで、それに対する総理の答弁は、判断基準が明らかになっておりません。

 ですので、明確に基準を示していただきたいと思いますけれども、次長、お願いします。

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

 黒田次長。

黒田政府参考人 御指摘の当時困惑していたことの立証については、献金に至るまでの悪質な勧誘行為を具体的に示しながら、入信当時にあおられた不安が根底にあったことや、被害者本人が献金当時の状況を客観的に振り返れば困惑していたと考えられることを主張することで、その被害者本人が当時困惑していた蓋然性が立証し得るものと考えられます。

本村委員 立証は、具体的にどのような証拠が必要でしょうか。

黒田政府参考人 それは、まさに自分がその当時困惑していたということを証明することなんですが、例えば様々ございます。必要不可欠と言われた状況についての例えば音声データなんかがあれば非常に確実ですし、そういったビデオを見せられたとか、紙が、そういったチラシがあったとか、そういった具体的に、客観的なものがあればより立証がしやすいということだと思います。

本村委員 なかなかハードルがあるなというふうに思うんですけれども。

 事後的に、寄附当時困惑していたと判断するのは、被害者本人でよろしいんでしょうか。

黒田政府参考人 基本的には、事後的に本人が覚めて、そのような状況にあったということに気づいていただく必要がございます。

本村委員 結局、いろいろ資料とかもあって、総合的に認められる場合ということであるわけですけれども、具体的にどのような場合でしょうか。

黒田政府参考人 ちょっと先ほどの御答弁とも重なる部分がございますが、勧誘者、実際に寄附を募る勧誘者が持参した資料や当時の記録、又はその周囲の供述などに基づいて総合的に判断されるということでございますので、様々なケースが考えられるために、具体的にどのような証明かというのは困難でありますが、先ほど申し上げたように、記録としての音声データといったようなものを録音しておくことなどが立証に当たって大変有効だというふうに考えております。

本村委員 総理の答弁でできると言われても、なかなか難しいなということを感じるわけですけれども、続いては、寄附の勧誘をするに際しの総理の答弁について伺いたいというふうに思います。

 速記の二ページ目の一番下の段ですけれども、総理の答弁は、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合等の取消権の取扱いについてお尋ねがありました、御指摘のような場合でも、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断でき、また、事後的に、寄附当時困惑していたと考えた場合には、取消権の対象になると考えています、また、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法案の第四条第六号の「不安を抱いていることに乗じて、」の要件を満たすことから、取消権の適用対象になると考えますというふうに御答弁されました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、まず、前段、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できるのはどのような場合でしょうか。

黒田政府参考人 先ほどから申し上げていますように、基本的にはいわゆるケース・バイ・ケースなので、一般論として答えることは非常に難しいんですけれども。

 繰り返しになります、トートロジーのように聞こえるかもしれませんが、一連の、関係があるというふうに判断できるようなつながりを持っている、何らかの形で証明できるという場合にはそれが一連の寄附勧誘であるということなんですけれども、むしろ、そういったことについて、例えば、実際に勧誘を受けたことと実際に支払ったことについて、これはどう見てもつながらないだろうといった場合には、一連の寄附勧誘とみなすことはできないといったことでございます。

本村委員 一連の寄附勧誘と判断するのは誰でしょうか。

黒田政府参考人 実際に取消権を行使して裁判等で行う場合にはその裁判官ということになるんでしょうし、この四条違反について行政府として何らかの措置を取るという場合には、実際には、具体的には消費者庁ということになると思います。

本村委員 次に、後段についてお伺いしますけれども、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断できない場合であって、入信時に抱かされた不安が継続している場合とはどのような場合でしょうか。何十年たった場合でも認められるのか、確認したいと思います。

黒田政府参考人 先ほどもお答えしたと思いますが、入信当初に身内の不幸などを挙げて不安をあおられ、そのような不安が継続している、抱いている状態というような趣旨でございまして、何十年続いたとしても、そのような不安に乗じて勧誘される場合には、適用対象となり得るものと考えられます。

 ただ、個々の寄附の意思表示をしたときから十年が経過した場合には、時効により取消権は行使できないという仕組みになっております。

本村委員 ありがとうございました。

 ここでもいろいろハードルがあるわけですけれども、一番ハードルが高いというふうに言われている、次に、必要不可欠についてお伺いをしたいというふうに思います。

 六日の柚木議員の質問の速記録、一番最後のページに載っているんですけれども、法文では、その重要な不利益を回避するためには、当該寄附をすることが必要不可欠である旨を告げることというふうになっております。この総理の答弁なんですけれども、必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合というふうに答弁されているんですけれども、先ほども議論がありましたけれども、具体的にはどのような場合でしょうか。

黒田政府参考人 なかなか個別のケースというのを具体例で挙げるのは難しいんですが、何度も申し上げますけれども、不可欠という単語を言う必要はございませんが、例えば、寄附をしなければ地獄から免れられないとか、かなり断定的な形で、寄附こそがその不安なりの解消、自己の不利益の解消にとってはほかに道がないといったような形での執拗な勧誘とか、そういったことがこの必要不可欠という場合の具体例に当たるものというふうに考えられます。

本村委員 結局、必要不可欠という言葉を使わなくても、実質的に同様の趣旨を言うことになるんじゃないですか。

黒田政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、むしろ、逆に言うと、そこまでの執拗な勧誘ではなく、勧誘された本人にとって、まだほかの道を選ぶような選択の余地があるような形での勧誘といったような場合には、必要不可欠とまで言ったとは言えないんじゃないかということだと思います。

 議論でもありますように、このぐらいのことは必要ですよと言ったぐらいの勧誘で、でも、ほかにも必要なことはあり得るような程度の勧誘では、さすがに必要不可欠とまで勧誘したということではないのではないか。基本的には、かなり、ほかにもう選択肢がないというふうに思い込まされるような執拗な勧誘といったものを想定しておるところでございます。

本村委員 かなり、ここの部分で取消権が使えないというふうになってしまうのではないかというふうに大変懸念をしております。

 もう一つ、総理の答弁の中で、多額の寄附に至るような悪質の勧誘事例の多くは、そのような必要性や逼迫性を有しているものと考えられるというふうに答弁をされておりますけれども、なぜそう言えるのか、お示しをいただきたいと思います。

黒田政府参考人 繰り返しになるかもしれませんが、基本的には、困惑した状況ということでございますので、困り戸惑う、自由な思考ができないという状態に人を陥らせるためには、やはりそれなりのアクションといいますか勧誘、言葉、そういったものがないと、そういうふうに逆に不安に陥りやすい方、これも人によってケースが本当に全然違いますので、必ずしも、ケース・バイ・ケースになろうかと思いますが、一般論で申し上げれば、ちょっとぐらいで、寄附したらどうですかと言ったぐらいでは、一般的に考えれば、それしかもう道はないんじゃないかというふうになかなかならないんじゃないかといった意味で答弁されたというふうに認識しております。

本村委員 今、四つの要件を見てまいりましたけれども、総理の答弁は、それぞれ取消権が使えるというふうに言っているんですけれども、四つの要件全てについて言っているわけではなく、結局、必要不可欠だと告げると、要件が合わずに禁止行為に当たらない、取消権が行使できないということになってしまうということだというふうに思います。

 これで本当に被害者が救われるのか。今、国会に求められている仕事で本当にあるのかということが問われているというふうに思います。やはり、被害実態に見合った法改正が必要なのだというふうに思っております。

 今日も川井弁護士がいらっしゃいましたけれども、被害者支援に長年尽力をされてこられた全国霊感商法対策弁護士連絡会の皆さんが修正案を出しておられます。四条六号の部分ですけれども、当該個人に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、当該個人又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおるなどの方法によって個人の自由な意思を抑圧し、ないし歪めて、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状況を作出し、あるいはその状況に乗じて、寄附をすることが必要である旨を告げることと規定をしております。

 法案を修正し、実効ある法規定にするべきだというふうに考えますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

河野国務大臣 禁止行為に関して申し上げれば、法人などが、どのような行為をしてはいけないのか、的確に認識ができなければなりません。類型ですとか要件を可能な限り客観的に明確なものとして規定をしていく必要があると思います。

 政府案では、配慮義務において、適切な判断をすることが困難な状態、これは、勧誘によってもたらされる個人の状態を規定しております。これは、法人のいかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきであるという規範を示しております。

 禁止行為とすると、かなり要件を具体的に明確に示さなければならなくなりますので、禁止行為とするよりも、結果を招く、より幅広い行為を捉えるということができるわけですので、民法上の不法行為の認定とそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果は高いというふうに思っております。

本村委員 今、四要件を申し上げましたけれども、全く明確ではないということが、大臣も分かっていただけるというふうに思います。

 やはり、法案の修正が必要ですし、あしたでこの議論を終局させるのではなく、議論を続けていただきたいということも重ねてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そして、今日も、先ほども川井弁護士から御意見を伺ったんですけれども、統一協会では、自己破産にまで至る被害が相次いでいる、それは合同電話相談窓口にもあるわけで、被害者本人ですとか家族ですとか、あるいは全国弁連の皆さんから詳しい聞き取りを行って、そして実態調査をこの分野でも行うべきだ、そして、統一協会の全体の被害について調査報告書を作ってほしいということを川井弁護士はおっしゃいました。そのことも是非政府としてやっていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

河野国務大臣 政府といたしまして、旧統一教会による霊感商法あるいは高額献金による被害者の方々が多く存在するということを深刻に受け止めており、適切な方法により被害実態を把握することは重要だと認識をしております。

 旧統一教会について、現に生じている被害に対応するため、政府としては、まず、被害救済の最前線に立たれている弁護士の皆さんからの聞き取りを行うとともに、消費者庁に設置した検討会の委員にこうした弁護士の方に入っていただきました。また、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使などを通じた事実把握、実態解明を進めるとともに、被害者の救済に向けた相談体制を強化しているところでございます。

 消費者庁といたしましても、各地の消費生活センターに寄せられました相談事例などを踏まえて、実態把握に努めてまいりたいと思います。

本村委員 実効ある法律の修正を求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲田委員長 次回は、明八日木曜日午前八時十五分理事会、午前八時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.