衆議院

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第6号 令和4年12月8日(木曜日)

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令和四年十二月八日(木曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 稲田 朋美君

   理事 井原  巧君 理事 牧原 秀樹君

   理事 宮崎 政久君 理事 宮下 一郎君

   理事 山井 和則君 理事 吉田 統彦君

   理事 池畑浩太朗君 理事 古屋 範子君

      石橋林太郎君    石原 正敬君

      上杉謙太郎君    柿沢 未途君

      勝目  康君    小林 鷹之君

      島尻安伊子君    田畑 裕明君

      武村 展英君    土田  慎君

      土屋 品子君    中川 郁子君

      中山 展宏君    長谷川淳二君

      鳩山 二郎君    平沼正二郎君

      船田  元君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    松島みどり君

      保岡 宏武君    青山 大人君

      井坂 信彦君    石川 香織君

      おおつき紅葉君   大河原まさこ君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      早稲田ゆき君    青柳 仁士君

      浅川 義治君    沢田  良君

      國重  徹君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      本村 伸子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   内閣府副大臣       大串 正樹君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     小林万里子君

   衆議院調査局第一特別調査室長           菅野  亨君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月八日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     本田 太郎君

  田畑 裕明君     島尻安伊子君

  平沼正二郎君     石橋林太郎君

  堀内 詔子君     石原 正敬君

  松島みどり君     土屋 品子君

  石川 香織君     西村智奈美君

  大河原まさこ君    長妻  昭君

  山井 和則君     山田 勝彦君

  沢田  良君     青柳 仁士君

  本村 伸子君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     平沼正二郎君

  石原 正敬君     堀内 詔子君

  島尻安伊子君     中川 郁子君

  土屋 品子君     松島みどり君

  本田 太郎君     小林 鷹之君

  長妻  昭君     大河原まさこ君

  西村智奈美君     おおつき紅葉君

  青柳 仁士君     沢田  良君

  宮本  徹君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     田畑 裕明君

  おおつき紅葉君    石川 香織君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

稲田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努さん、文化庁審議官小林万里子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎さん。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案と法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問させていただきます。

 両法案の提出の経緯を振り返ってみますと、本年七月八日に安倍晋三元総理に対する銃撃事件が発生し、容疑者の供述を契機に、旧統一教会をめぐる問題が報道されたことが端緒となりまして、岸田総理はこれまでに様々な対応をされてこられました。

 八月十日、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の設置に向けた指示を出され、八月二十六日には消費者庁に霊感商法等の悪質商法への対策検討会を設置されております。また、九月五日からは合同電話相談窓口が開設され、相談の約七割が金銭トラブルであるということも明らかになってまいりました。

 十月十七日には消費者庁の検討会の報告書が公表され、十一月八日の総理会見では、消費者契約法と国民生活センター法の改正案の今国会提出と悪質な献金等の被害者救済のための新法の提出に努力することを表明され、このうち、改正法案については十一月十八日に衆議院に提出されたところであります。同日、自民、公明、立憲、維新、国民、共産の六党の幹事長、書記局長の会談において新規立法に関する概要が示され、与野党間で協議が行われました。翌十九日には、岸田総理から、被害者救済、再発防止に実効性のある仕組みをつくるため、政府として法案を今国会に提出したい旨を表明されました。

 また一方、同時並行で、文部科学省、文化庁の手続も進められ、十一月二十二日には宗教法人法に基づく質問権の行使がなされたところであります。

 そして、今日審議となる新法については、十二月一日に国会に提出されたということであります。この新法は、与野党の意見を取り入れて作られた法律であるとともに、総理のリーダーシップによって非常に短時間でまとめ上げられ、そして今国会への提出が実現したという点で、特筆すべき法律だと感じております。

 こうした経緯を振り返って、旧統一教会の問題に総理として、また政府としてどのような方針で取り組んでおられるのか、岸田総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 旧統一教会については、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使により事実把握と実態解明を進める、そして被害者の救済に向けた相談体制を強化する、そして今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しにしっかり取り組んでいく、この三点を政府としての基本的な方針として取り組んでおります。

 政府としては、改正法案及び新法案の国会審議において、法案の趣旨や目的について説明を尽くし、早期の成立に向け努力していくとともに、これらの法律がより実効的に運用されるよう、相談体制の強化等にも引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

宮下委員 本日審議します二つの法案ですが、今後の新たな契約や寄附などによる被害の防止に役立つ一方で、現在被害を受けている人の救済につながるのかという疑問を持たれる方もあるのではないかと思います。

 そこで、現在被害を受けている人への対応について、改正法案、新法案によるものも含めた全体の構図について御説明をいただくとともに、今後の対応についてもお示しをいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 関係省庁連絡会議における旧統一教会問題に関する相談窓口については、先般法テラスに対応窓口を継承し、法テラスでは併せて心理専門職を配置した対応部署を新設するなどして、宗教二世を含む、お困りの方からの相談に対応しています。

 政府としては、こうした法テラスの取組を予算面、体制面から強力に後押しをし、さらに、関係機関、団体等との緊密な連携の下、被害者の多様かつ複合的なニーズに応じて支援の一層の充実を図るなどして、実効的な救済に万全を尽くしてまいりたいと考えています。

 また、改正法案では、霊感等による告知を用いた勧誘に対する取消権に関し、現行の取消権について時効が完成していないものには適用するほか、ADRの機能を強化することなどによって、現在の被害者の救済を図ることとしております。

 さらに、新法案では、寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務を規定いたしますが、これは過去の不法行為の認定に当たっても考慮される可能性があると考えており、この点においても、現在の被害者の救済に資するものであると考えています。

宮下委員 この新法に関しまして、これまでの委員会質疑で多く取り上げられたテーマに、この配慮義務の規定を禁止行為の規定とすべきではないかという論点がございます。

 そこで、改めて河野大臣に、この新法において配慮義務と禁止規定を分けて定めている理由についてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 禁止行為の対象とする場合、命令等の行政処分あるいは刑事罰が適用されることにもなりますから、現行の日本の法体系に照らせば、要件の明確性が必要となってまいります。

 新法において、禁止行為の規定は、法人が何をしてはならないのかを明確に認識できるようにするために、また、取消権の規定は、それが十全に機能するものとなるために、法人等の行為の類型を可能な限り客観的に、かつ明確なものとして規定をいたしました。

 第三条の配慮義務にあります、自由な意思の抑圧、あるいは適切な判断をすることが困難な状態、生活の維持を困難にする、これらはいずれも、勧誘によってもたらされる個人の側の結果としての状態でございます。そのため、そのような結果をもたらす法人の不適当な寄附の勧誘行為につきましては、これはもう様々なものが想定されますので、それらを客観的かつ明確な要件として規定することは難しいと思います。

 したがって、配慮義務の規定を禁止行為や取消権の規定にすることは困難であると同時に不適切であると考え、禁止行為そして配慮義務の二段構成を取ることで実効性を高めていきたいと考えております。

宮下委員 この新法につきましては、民事ルールだけではなくて、禁止行為とこれに対する勧告、命令、公表といった行政措置が盛り込まれている点が重要なポイントであると考えております。

 また、与野党の修正協議の中では、配慮義務についても勧告や公表といった行政措置の対象にした方がよいのではないかといった議論もされているところであります。

 そこで、そもそも新法に行政措置を盛り込んだ意図とその期待される効果はどういったものなのかについて、河野大臣にお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 新法案は、行政処分を導入している点が重要でありまして、これによって、消費者契約法と相まって、被害の防止、救済に資することを期待しております。

 具体的には、寄附者の家族から法人などによる禁止行為の情報提供がなされることにより、勧告、命令につながり、法人名が公表されることで、御本人に対して不当な寄附勧誘を行う法人などからの脱会を働きかけやすくなり、本人が自身の被害に気づいて、寄附金を取り戻し、被害を回復する行動を起こす契機となることを期待したいと思います。

 民事ルールを定める消費者契約法と相まって、寄附の勧誘を受ける者の保護を図り、被害の救済とともに被害の未然防止、拡大防止につながるというふうに考えております。

宮下委員 こうしたことで新たな被害の未然防止にもつながるという点で、こういった行政措置が盛り込まれている点は特に重要だなということを再確認させていただきました。

 また、もう一つ、この旧統一問題に対する論点としては、安倍元総理銃撃事件以来、多くの二世被害者の皆様をどう救うかという点がクローズアップされております。

 多くの二世の皆様が様々な悲痛な訴えをされています。私も報道等を通じて、二世の皆様が、貧困や孤独にさいなまれている現状、また、自由な恋愛とか結婚も認められない、自らいろいろなことを選び取ることができない、そういった状況に置かれているということを知って、大きなショックを受けているところでございます。

 そこで、二世の皆様の苛烈な状況を少しでも救うために、今回の二つの法律でできることは何なのか、その点について河野大臣にお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 この法案では、債権者代位権という自らの権利を守るために必要な限度で他者の権利の行使を認める制度を活用しやすくするということで、家族らの被害の救済を図ることとしております。

 また、この債権者代位権の適切な行使のために、法テラスと関係機関が連携した相談体制を整備していくなど、被害者、その家族の支援を行っていきたいと思います。

 また、家族の住居や生活の維持のために欠くことのできない事業用資産を処分して寄附資金を調達することを求める行為を禁止し、これに抵触する場合は勧告、命令の行政措置の対象となります。さらに、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持を困難にすることがないようにするということを配慮規定として規定をし、これらの禁止規定や配慮義務の規定は、これによって将来に向けて被害の発生、拡大防止に資すると考えております。

 また、これらに違反するような不当な勧誘行為が行われたことを主張、立証することによって、御家族についても、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性を高めることができると考えております。

 また、法人等が故意に不当な勧誘等によって本人に家族の財産を無断で寄附させた場合など、法人等が不法行為によって家族自身の権利利益を侵害したと評価されるときには、家族は、当然、当事者として当該法人に対して損害賠償を請求することが可能になると思います。

 こうして、新法案は、行政処分を導入している点が重要であり、これによって、消費者契約法と相まって、被害の防止、救済に資すると期待しております。

宮下委員 最後に、寄附文化の醸成に関連して、総理のお考えを伺いたいと思います。

 現在、多くのNPO法人、学校法人などの活動が寄附によって支えられております。また、岸田総理が掲げられている新たな資本主義には、お互いに支え合うという理念も含まれているものと理解しております。一方、欧米に比べて日本は、寄附を通じて皆で支え合うという共助の取組が遅れていると感じています。まさに寄附文化の醸成が今の日本に求められているのではないかと思います。

 一方、今回の法律が寄附文化に悪影響を与えるようでは困る。新法によって寄附文化の醸成が阻害されることはない、この点について御説明をいただければと思います。

岸田内閣総理大臣 今の御質問にお答えする前に、先ほどの答弁で、改正法案につきまして、現行の取消権について時効が完成していないものにも時効期間の伸長を適用するほかとお答えすべきところ、時効期間の伸長という文言が抜けておりました。ちょっと文言を追加させていただきます。

 その上で、今の御質問にお答えいたしますと、新法案におきましては、法の運用に当たっては、NPO法人等様々な法人の活動における寄附の重要性に留意しなければならない、この旨規定をしております。また、本法案における禁止規定や配慮義務は、社会通念上不当な勧誘行為と考えられるものに限っているものです。

 そのため、通常のNPO法人等であれば、寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化への醸成に対する不当な抑制にはつながらないと考えています。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得る、このように考えております。

 なお、今後とも、NPO法人等の関係者に御懸念があるようであれば、本法案の趣旨についてしっかりと説明を尽くしてまいりたいと考えます。

宮下委員 終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、國重徹さん。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

 今回の新法案、多くの方の御尽力による、そして思いのこもった法案でありますけれども、その上で、総理の決断が法案成立に向けた流れを加速させたこと、これは間違いありません。

 総理は十一月八日、被害者救済と被害防止のため、新たな法制度実現に取り組む決意をした、今国会を視野にできる限り早く法案を国会に提出すべく最大限努力をすると、新法制定への思いを強く訴えられました。そして、十一月二十五日、総理は更に踏み込んで、この国会に提出し、早期の成立に努めていきたい、そうおっしゃいました。

 今国会で何としてもこの新法を成立させるんだ、その決断に至った思い、そして法案が現実に国会に提出をされ、そして審議に臨まれている現在の思い、まず総理の思いをお伺いさせていただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 私自身、旧統一教会の被害者の方々と内々お会いをして、凄惨な御経験を直接伺い、被害者の救済及び再発防止を図るために、今国会で被害者救済法案の実現に取り組む決意、これを新たにいたしました。このため、消費者庁に対し、総力を挙げて法制度の検討を進め、可能な限り早急に国会に提出するよう指示をしてきたところです。こうした思い、これは現在も変わっておりません。

 法案について、国会において丁寧に説明し、成立に向けて最大限努力をしていきたいと考えています。

國重委員 総理の思い、よく分かりました。

 その上で、法案を作ったとしても、その実効性がなければいけません。今般の新法案は、新たな被害を防止し、被害者救済に資する、家族の救済にも資する、そういった実効性ある法案となっているのか。衆議院の委員会質疑もこれで最後になります。いま一度しっかりと河野大臣から御説明をいただきたいと思います。お願いします。

河野国務大臣 消費者契約法の改正法案は、旧統一教会問題などのいわゆる霊感商法や契約に当たる寄附について、取消権の対象範囲の拡大や取消権の行使期間の伸長等の措置を講じ、被害防止及び救済の可能性を高めるものとなっております。

 新法案では、日本の現行の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから取消しを認める制度としております。

 加えて、新法案では、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定めており、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求が容易になるものと考えております。さらに、こうしたことは抑止効果にもつながると考えているところでございます。

 また、御家族については、新法案で被保全債権が扶養義務などに係る定期金債権である場合について、債権者代位権の特例として、履行期が到来していなくとも債権者代位権の行使を可能とし、債権者代位権を活用しやすくすることで被害救済を図るということにしてございます。

 新法案の禁止規定や配慮義務の規定により、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求も容易となり、被害救済の実効性を高めることができると考えているところでございます。

 このように、今回の法案は、これまで救済できなかった被害をより幅広く救済をするとともに、将来に向けて被害の防止にも役立つものであると思います。そういう意味で非常に実効的なものと考えております。

國重委員 河野大臣、ありがとうございました。

 禁止行為、また取消権、配慮義務、行政措置や刑事罰を始め、様々な規定を組み合わせた被害防止、被害救済に資する実効性ある法案なんだということの御説明をいただきました。

 今、旧統一教会をめぐる様々な問題がクローズアップをされておりますけれども、宗教はどこまでも人間のためのものであって、最優先されるべきは人間の尊厳であります。いかなる団体であっても、人の自律、尊厳を奪って、人を食い物にするような極めて悪質なもの、法に抵触するような行為があれば、これは法律に基づいて厳正に対処していかなければなりません。

 この新法を成立させて、まずはしっかりと運用していく、運用する中で課題があれば、改善、バージョンアップをしていく、こういったことが重要だと思います。

 次に、許容性の観点でお伺いいたします。

 寄附やその勧誘行為は、思想、良心の自由、信教の自由、学問の自由、政治活動の自由などとも関わる重要な権利になります。不明確、過剰な規制によって、これらの権利に行政が不当に介入するようなことがあってはなりません。また、正当な寄附勧誘をしている団体を不当に萎縮させるようなことがあってもなりません。この観点で、新法案ではどのような設計、配慮がなされているのか、河野大臣にお伺いいたします。

河野国務大臣 寄附の勧誘に際しましては、正当な勧誘行為を不当に萎縮させることがないようにするためにも、禁止行為は、法人がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定をすることが必要だと考えております。

 そこで、この新法案につきましては、そのような類型の行為を禁止行為として定める一方、勧誘を受ける者が適切な判断をすることが困難な状態に陥ることなどについては、それをもたらす行為を禁止するのではなく、配慮義務として定めております。また、報告徴収、勧告、命令に関しては、新法案が多くの法人に影響が及ぶことなどを踏まえ、特に必要と認めるときなどの要件を求めているところでございます。

 また、この運用に当たりましては、社会において寄附が果たす役割の重要性への留意と、学問の自由、信教の自由、政治活動の自由への十分な配慮が必要である旨の規定も設けさせていただいております。

國重委員 実効性と許容性、このバランスの取れた法案になっているというような答弁だったと思います。

 その上で、旧統一教会のように社会的相当性を逸脱した方法で寄附を集めてきた団体なんかじゃない、公益のためにきちんと活動してきた団体の関係者の皆様から、新法が成立すると、自分たちが寄附を集めたり活動したりすることに新たな規制が課されるんじゃないか、こういった不安や懸念の声が上がっております。

 今回、消費者庁は多くの団体を対象に大きな権限を持つことになります。その権限が適正に行使をされ、公益を担っている様々な団体の不安や懸念を払拭していくためにも、例えば、消費者委員会の下、有識者で構成される専門委員会を設置して、法務省や文科省を始め関係行政機関の職員の参画も得ながら、新法施行のためのガイドラインを作成する、こういったことも検討すべきではないかと思います。そして、逐条解説やQAもしっかりと作っていく、そしてそれらを周知していく、こういったことが大切になってくると思いますけれども、河野大臣の御見解をお伺いいたします。

河野国務大臣 今般の法案成立後、要件や趣旨などについて疑義が生じることがないように、逐条解説等で分かりやすく解説をしていきたいと思っております。

 また、行政庁として、新法で規定する命令等の行政措置を行うかどうかに当たって執行基準を策定する、策定する場合に公表が必要かどうか、こうしたことにつきまして、施行期日までの間に十分検討して、適切に対応してまいります。

國重委員 法案は、成立させるまでも大事ですけれども、それをいかに円滑に運用していくかということもまた大事になりますので、是非、河野大臣、よろしくお願いいたします。

 次に、今般の新法によって、先ほど申し上げましたとおり、消費者庁は多くの団体を対象に大きな権限を持つことになりますけれども、この新法が、単に寄附の規制だけではなくて、寄附への理解、また寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得る、そういうものであれば、その意味でも本法案というのは積極的な意義があると思います。これに対する河野大臣の御見解をお伺いいたします。

河野国務大臣 今回の法案では、禁止規定やそれらに対する行政上の措置を設けております。これらの禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられているものでございまして、配慮義務に関しても、真っ当に寄附を募っている法人であれば、当然にもう既に配慮されているものに限っております。

 通常のNPO法人その他であれば、寄附の勧誘に支障があることはないと思っておりまして、寄附文化の醸成への不当な抑制にはつながることはないと思います。反対に、この不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附の勧誘に対する安心感とか寄附への理解が高まる、そういうことがあるのではないかと期待をしているところでございます。

國重委員 そういった積極的な意義がある法案になるよう、運用も、そういったことも見据えて適切な運用になるよう、是非しっかりとやっていただきたいと思います。

 最後に、総理にお伺いいたします。

 悪質、不当な寄附勧誘には厳正に対処していく、他方で、正当な寄附勧誘をしている団体にはその活動に支障を生じさせないようにする、新法を適正に運用、執行していく、これに関する総理の御決意を最後にお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、悪質な献金による被害の防止、救済に向けて、新法案は非常に重要な制度になると考えています。

 そして、本法案が成立した際には、国会での議論も踏まえ、法律の解釈の明確化や法テラス等の相談体制の充実など、法の適正な執行、また実効性の向上に向けて最大限取り組んでいきたいと考えています。

國重委員 ありがとうございます。

 実効性と許容性のあるバランスの取れた法律を作ること、また適正に運用をしていくこと、また被害者の方をしっかりと支えていく相談支援体制、これを充実強化をさせていく、こういったことが非常に重要だと思います。

 それとともに、やはり私は、より根本的には、リテラシー教育、こういったことで、知性、理性をつけていくというのも非常に大事なことなのではないかというふうに思っております。

 今回、相談体制をつくっておりますけれども、そういった中で、様々浮かび上がってくるものはあるかと思います。このリテラシー教育、一口でそう言っても、なかなか、どのようなことをやればいいのか難しいところはあるかもしれませんけれども、是非、こういった知性、理性がないと、いろいろな苦しみに直面しても、相談窓口にさえ行けないという事態にもなりかねません。しっかりとこのリテラシー教育も併せて進めていっていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

稲田委員長 次に、長妻昭さん。

長妻委員 岸田総理、おはようございます。立憲民主党、長妻昭でございます。

 今日は、特に新法に絞って、総理にお伺いをしたいというふうに思います。

 私も、恥ずかしながら、ここまで日本人が食い物にされていたということは、今回の事件をきっかけとした報道等で深く知ることになりました。本当に与野党を超えて、深い憤りを皆さん持っておられるというふうに思うんですね。総理も、被害者の皆さんともお会いをされておられます。

 やはり、これは多岐にわたる問題がありますし、なかなか、短時間、短期間で今回法律ができましたが、これで全て網羅されているわけでは当然ございません。この法律で終わりにしてはならないと思いますので、状況を見て、今後、更に有効な法律も作らなければならないと思うんですが、総理も同意いただけますね。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘の新法案において、現在の我が国の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、禁止行為、取消権、配慮義務、行政措置、あるいは刑事罰など、様々な規定を組み合わせて立法作業を行いました。法案は実効的なものになったと考えておりますが、その中で、更に実効性を高めるべく、修正案が検討されているということも承知しております。

 また、政府としては、法案について御審議いただく中で、条文化は困難な具体的事例への法律の適用などについて、政府見解、丁寧にお答えすることで、法解釈の明文化が進み、一層法律の実効性が高まる、こうしたことに向けて努力をしていかなければならないと思いますし、そして、成立した際には、審議の内容を踏まえ、法律の解釈の更なる明確化、相談体制の充実等により、法律の実効性を高める努力を続けていきたいと思います。

 その上で、御質問の見直しについては、その後の法の執行状況、社会の変化等もしっかり見た上で、必要な見直しということについて考えていかなければならない、このように思っております。

長妻委員 やはり、この法律は、先ほど与党の質問でも、何か過剰な規制を心配するような御発言がありましたが、過剰どころか規制が弱過ぎる、不十分だと思っています、一歩前進ではありますけれども。さらに、その法律的な、今回、修正案を含めた法律の採決があると思いますが、そうではなくて、二年以内に更に新たな法律あるいはこの改正案、これを私はしないといけないと思うんですね。

 総理が三人の被害者の方と面談されたということでございますが、その被害者の方々は、政府にどういうことをしてほしい、どういう要望があったのか、お聞かせいただけませんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 先日、旧統一教会の被害者の方々と内々にお会いをし、三名の方から約一時間半にわたり、献金などによる財産被害あるいは周囲からの孤立、あるいはDV被害など、凄惨な御経験を承りました。

 それぞれ大変な経験をされた、それについてお話を丁寧に聞かせていただいた次第でして、御質問は、その際にどうしてもらいたいかという御要望があったのかということでありますが、そうした具体的な経験をお話しをいただいたということで、その場で、具体的に、例えば法律についてこうしてもらいたいというような要望までは承ることはありませんでした。

 私自身として、その凄惨な経験を聞かせていただき、それに対して、被害を生じさせず、救済できるよう、政府として最大限努力をしなければならない、こういった思いを新たにさせていただいた、そうした一時間半の時間であったと振り返っております。

長妻委員 これは、被害者弁護団の皆さんの御意見というのもいろいろなルートで入ってきていると思うんですが、被害者弁護団の皆さんの、この新法、修正案も含めた新法に対する評価というのは、総理は、どういう問題点を指摘されているというふうに理解されておられますか。

岸田内閣総理大臣 被害者弁護団の皆様など関係者の皆様方から様々な御指摘をいただいていると承知をしておりますが、特に、配慮義務規定を禁止行為に格上げすべきであるとか、必要不可欠という規定が厳格過ぎるとか、さらには、取消し可能期間が短いとか、あるいは、債権者代位権による救済では救済の範囲が狭いといった御指摘をいただいているということは承知をしております。

長妻委員 そうなんですね。総理は明確に御理解いただいていると思うんです。この法律の足らざるところなんですね。

 そういう意味では、この法律にも二年以内の見直し規定があるので、今おっしゃっていただいたことは、法律を変えないと、二年以内に、なかなか実効性が高まらない重要ポイントだと思うんです。

 そういう意味では、法律改正も含めて二年以内にしっかり見直しをするんだということをおっしゃっていただけませんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 もちろん、先ほど御指摘をいただいたことについては、政府として、この法律においてどのように適用することによって対応していくのか、こうしたことについては丁寧に説明をさせていただいております。

 そういった、この法律において、御指摘の点についても対応をしていくんだという説明はさせていただいておりますが、その上で、法律執行後の見直しに当たっては、この法律の執行の状況あるいは社会経済情勢の変化などを勘案すべく、一定の法運用の実績を確保する必要があると考えておりますが、その上で、この見直しということについても考えていかなければならないと認識をしております。

長妻委員 これは、やはり、二年以内の見直しの中で、ここにおられる宮崎代議士、そして、ここにはおられませんが、音喜多日本維新の会の政調会長、そして私などと、与野党四党協議というのをやって、九回やりましたね。ちょっとなかなか宮崎さんも渋かったんですけれども、まあ、一定のもの、なかなか不十分ですが、一歩前進のものはできたんですが、まだまだ足りないというのが共通認識なんですね。

 そこで、岸田首相は自民党の総裁でもあられるので、この与野党の協議を、四党協議でもいいんですけれども、二年の見直し期間にやはりそれをやらないといけないんだ、こういうようなことを御発言いただければと思うんですが。

岸田内閣総理大臣 お尋ねの四党協議、これは他党にも関わる話ですから、私の立場から、その協議についてどうあるべきだと言うことは、直接発言することは控えたいと思いますが、いずれにせよ、これは与野党の御意見を伺いながら、実効性のある制度とするべく努力を続けること、これは大切なことであります。是非、与野党を通じて、被害者救済に向けて更なる努力を続けていく、こういった姿勢は大事にしていきたいと思います。

長妻委員 失礼、公明党の大口代議士も参加をしておりました。そして若宮代議士も参加をしておりました。四党協議でございます。

 そして、次に、三条ですね、新法の。ここに配慮義務規定が入ったわけでございますけれども、これは、運用を、本当に実効性が高いように運用していただきたいというふうに総理に思うんですが、一項はマインドコントロールそのものが規定されているんですね。それで、二項、三項も一定程度幅広い規定がある。

 配慮義務ではあるものの、これに反していると思われるようなものを、今後、消費者庁が主管官庁ですから、情報収集しないといけないわけですよ。現実に世の中で、旧統一教会を含め、こういうような、違反しているだろう、疑いのある実態を情報収集するという仕事も消費者庁に新たに加わってくるんですね。

 これは、情報収集しないで分からなければ、これは絵に描いた餅になりますので、是非、総理から御指示をいただきたいのは、この三条の一、二、三の配慮義務規定、これは、明確に解釈を後日規定するという答弁はいただいているんですが、では、それに反した疑いのある情報収集の窓口や、あるいは、積極的にパトロールのようなものも、人的資源は限られていますが、そういうような情報収集を積極的にやるんだ、そういう窓口を消費者庁かどこか分かりませんが設けるんだ、配慮義務違反に対する情報収集をきちっとやるということ、窓口を含めて御答弁いただければありがたい。

岸田内閣総理大臣 御質問の、法人等が配慮義務違反に該当する行為をしているという情報については、全国の消費生活センターによる消費生活相談窓口、あるいは法テラスにおいて、最近移管をし充実した相談窓口、こうしたものを通じて適切に把握する体制を、政府としましても、横の連携をしっかり徹底させることによって充実させていきたいと考えています。

 この法の趣旨についても、あらゆるツールを活用してしっかり周知させる、このことと併せて、今申し上げた情報収集体制、政府として充実をさせていきたいと考えます。

長妻委員 そうすると、消費者庁に直接の窓口はつくらないんですか。

河野国務大臣 既に全国各地において幅広く消費者からの相談を受けているセンターがございますので、消費者生活センターにおいて相談を受け付けることが利便性、実効性の観点から適していると考えております。

長妻委員 もっと体制をつくっていただきたいと思うんですけれども、今の答弁を基にすると、全国の消費者生活センター、センターですね、プラス、法テラス、ここに広く是非呼びかけていただきたいんですね。この法律が施行されれば、第三条の一項、二項、三項の配慮義務に反している疑いがある情報をどんどんお寄せくださいというようなことで、積極的に情報収集を求めていく、そして、そういう条文があることをアピールしていくということを、総理、是非トップダウンでここで宣言いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 先ほど、新法の趣旨についても、あらゆるツールを活用してしっかり周知を行ってまいりたいと申し上げましたが、これは、御指摘の相談窓口の対応ということにおいても新法の趣旨を徹底するということでもありますし、また、国民の皆さんに対しても、こうした新法の趣旨の徹底を図っていくべく努力したい、こういった趣旨で申し上げました。

 両方につきまして、あらゆるツールを活用して周知を行ってまいりたいと考えています。(長妻委員「情報収集体制」と呼ぶ)

 情報収集体制として御説明させていただいた窓口、その窓口の対応としても、法律の趣旨の徹底を図りたいと思っております。

長妻委員 そして、次に、被害者弁護団の方々が御心配されている点があるんですね。例の、第四条の六項にあります必要不可欠という条文の文言なんですね。

 これが入ることによって、規範が新たに厳しくなる規範、法律によって規定されますので、できることによって、現在行われている不法行為裁判で、必要不可欠でなくても違法性が認められるケースがあるんですけれども、それまでも認められなくなってしまうんじゃないのか。つまり、新たな厳しい規範ができることで、別の不法行為裁判にもマイナスの影響が出てくるのではないかという懸念があるんですが、総理、いかが考えますか。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘の必要不可欠という要件ですが、これは、従来からお答えしているように、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くは、そのような必要性や切迫性を有しているものと考えております。

 そして、必要不可欠に該当するためには、唯一の選択肢しか示さない場合のみということではなくして、例えば、重要な不利益を回避するために、一千万円の献金、一千万円のつぼの購入、一千万円の教典の購入のいずれかが必要といった形で勧誘する場合も該当し得ると考えております。

 今回の改正の趣旨ですが、法人等の勧誘行為を一層明確化することで取消権の行使を容易にすること、これが趣旨であります。具体的な例において不法行為の認定をより困難にする、こうしたことを意図するものではありません。この点については、法律の解釈などでも周知徹底をしていきたいと考えています。

長妻委員 そして、先ほども、被害者の方三人と面談されたということなんですが、やはり、法律の原則として、残念ながら過去に遡及ができないという原則がございます。ですから、現に被害に遭われた方は救済できる可能性もあるんですが、過去に被害に遭われた方々で今も苦しんでおられる方々に対する対応というのも、やはり十分考えなければならないというふうに思います。

 相談窓口とかいろいろ総理はおっしゃっていただきましたが、もう一つ、金銭的、財政的支援というのを、過去の被害者に対する生活支援という意味なんですけれども、これは総理、御検討いただけませんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今、現に被害に遭われている方に対する対応として、法テラス等における相談窓口において法律的な支援をもちろん行うわけでありますが、その際に、裁判費用等の金銭的な支援等についても充実させることによって現実的な支援に結びつけていきたいと考えております。

 是非、政府として、そういった支援の体制の充実を図っていきたいと考えます。

長妻委員 裁判費用のみならず、例えば、生活保護に陥る寸前の方々や、精神的ケアが必要な方々や、更にいろいろな働きかけをいまだに引き続き受けている方々とか、いろいろな方々がおられて、生活支援の全面的な、裁判支援だけではなくて、そういうようなことについても政府としてお考えいただきたいと思うんですが、特に財政的支援ですけれども、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のような支援も重要であると考えるからこそ、法テラスのみならず関係機関との連携が重要であるということを申し上げております。

 是非、具体的にどのような支援が必要なのか、生活支援についても、また児童相談所等を通じてどのような支援が子供さんたちに必要なのか等、具体的な事例は様々だと思いますが、その事例に即して支援ができるようなことを考えていかなければならない。

 そういったことから、法テラスを始めとする関係機関の連携が大事であるということを申し上げた次第であります。

長妻委員 そして、十二月六日に、我が党の柚木議員の本会議での質問で総理が御答弁されました。配付資料の八ページにございますけれども、こういう御答弁でございました。いわゆるマインドコントロールによる寄附は、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法の取消権の対象となる、このように明確に御答弁されたわけでございます。

 当然、その取消権の対象となるには、困惑要件を通過しないと、クリアしないといけないわけでございますが、そうすると、困惑という、ある意味ではこれまでの解釈、定義が少し延びたというか延伸したというか、そういうような理解でよろしいんでございますか。

岸田内閣総理大臣 新法案では、いわゆる霊感等を用いたマインドコントロール下で生じる被害に対応するために、霊感等の知見に基づく告知に関し、不安をあおる場合のみならず、不安を抱いていることに乗じる場合をも取消権の対象としております。

 また、いわゆるマインドコントロールは、その状態では困惑しているか判断できずとも、脱会した後に冷静になって考えると、当時、不安に乗じた勧誘を受け、困惑して寄附をしたと考えるようになることも多いと考えられます。

 そして、御指摘の答弁についてですが、不安をあおる行為がない場合も、不安に乗じる行為があれば取消権の対象となり得ること、また、寄附の勧誘を受けた時点と冷静になった時点での認識が変わる可能性があるが、冷静になった時点での判断に基づき取消権が行使できることを丁寧に説明したものであり、困惑の考え方を明確化したものであると考えています。困惑の解釈を広げたものではないと考えます。

長妻委員 困惑の解釈を広げたものではないということですが、そうとも言えるかもしれないと思うんですけれどもね。

 つまり、総理、今、乗じてとおっしゃっていただいて、この乗じてというのは今までにない概念なんですね。今までに消費者契約法でもない概念ですね。乗じてというのは相当時間軸が長いと。国会答弁でも、乗じてというのは、十年とか、別に時間的な制約はないので、乗じては、ずっと不安に乗じてという状態であれば、時間軸ではないということなんですね。それは初めて入った概念です。

 ということは、乗じてという長いスパン、長い射程の概念に対応した困惑概念、これは新たに今回解釈しないといけなくなるんですね。これまでの困惑類型というのは短期なんですね。今、恐怖をあおって、不安をあおって、困惑させる、そういうような解釈だったんですが、今度は長いスパンの困惑というのが初めて出てきたので、それに伴って困惑の定義が、広げるというよりは、今までにない状況においての困惑ということについて定義せざるを得なくなる、こういうようなことだと思うんですが、そういう理解でよろしいんでございますか。

岸田内閣総理大臣 困惑の定義自体は変わってはおりません。ただ、タイムラグが生じるケースが実際には多いということも踏まえて、タイムラグについてもしっかり考慮していくということを申し上げております。定義自体が変わったものではないと考えています。

長妻委員 そういう意味では、乗じてということがあることによって、例えばでいうと、十年の間でも、乗じてという要件が引き続きあれば、それは乗じてになる概念でありますので、そういう意味では、困惑というのは短期ではなくて、十年困惑状態が続くということもあり得る、こういう解釈でないと、冷静に後から振り返ったときに救済されないので、そういう理解で。つまり、例えば十年困惑が続くという状態もあり得る、こういうことでよろしいんですね。

岸田内閣総理大臣 時間的な問題はケース・バイ・ケースだと思いますが、そうしたタイムラグが生じる場合に対しても法律として対応していく、こういった説明をさせていただいています。十年という例を挙げられましたが、一定の期間以内でなければならないとか、そういうものではないと考えています。

長妻委員 そして最後に、総理もるるいろいろ御答弁されている、今、念書やビデオ撮影で、献金を返還しませんというのを書かせたりビデオ撮影したりということが発生をしているわけですけれども、総理の答弁、若干はっきりしないので、ちょっと明確に最後言っていただければと思うんです。

 つまり、当たり前の話ですけれども、禁止行為である、禁止行為として認定され、かつ、困惑という状況下でビデオ撮影とか念書を書かされた場合、これは無効ですよね。当たり前です。法律の要件に合致して、取消しできるわけですから。それはもう当たり前の話なので、それはいいんですけれども。そうでなくて、やはり感じますのは、真っ当な団体が献金をされた方に、あなた、献金を取り戻さない、自由意思でやったのでもう取り戻しませんなんという念書を書かせますかね、真っ当な団体が。あるいは、真っ当な団体がビデオを撮らせますかね。

 例えば、我々国会議員だって政治献金をもらっているわけですよね、個人献金とか。そのときに、そんなのを書かせたりビデオを撮らせるというのは、どう考えてもこれは真っ当じゃないですよ、その行為自体が。何か修飾語がついて、禁止行為とかなんとかでなくても、その行為自体真っ当じゃないですよね。

 これは、総理、是非、やはり行政府のトップとして、献金した後に、献金はもう返しません、自由意思でやったのでと、ビデオを撮らせたり念書を取るということは、これはどう考えても真っ当ではないんだというようなことを、是非ここでおっしゃっていただきたいと思うんですが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、困惑状態で作成された寄附の返金を求めない旨の念書や、その旨発言する様子のビデオ撮影、これは公序良俗に反するものとして無効となり得るものと考えられます。

 個別具体の事例によっては、むしろ、法人が寄附の勧誘に際して、個人に対して念書を作成させ、あるいはビデオ撮影をしているということ自体が法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素の一つとなり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められやすくなる、この可能性もあると考えています。

 当然のことながら、不法行為を隠蔽する証拠隠滅や被害回復の妨害行為、これは社会的に許容し難いものであり、これは新法案の趣旨に反すると考えております。

長妻委員 もうちょっと明確に御答弁いただきたいんですが、当然、今の不法行為裁判でも、念書とかビデオが公序良俗に反するという判決は、レアケースですけれども、あるんですね。ですから、それはレアケースですがあるし、今総理がおっしゃった、困惑状態という修飾語をつけていただいたので、困惑状態で禁止行為であればそれは無効なんですよ、取消しできますから。

 そうでなくて、私が言っているのは、そういう提案をするようなこと、献金を一回いただいて、それをもう返還しませんという念書を書いてくださいという、書く書かない、本人は別にして、そういう提案をするような行為、団体、あるいは、ビデオを撮らせてください、一回、献金いただきましたけれども、それを返還しないというビデオを撮らせてくださいという提案をする、御本人は断るかもしれないけれども、そういう提案をすること自体は、これはおかしなことだ、これは真っ当なことではないというふうに、総理、思いませんか。

岸田内閣総理大臣 これは個別具体の事例によって判断しなければならないと思いますが、委員のような、御提案自体が真っ当なことではないという御指摘ですが、個別の事案によりますが、委員の基本的に真っ当なことではないという御指摘は、そのとおりではないかと考えます。

長妻委員 一国の総理、行政府のトップの発言というのは、やはり一定程度裁判でも、争いがあったときは、一つの考慮材料になる場合もあるということでありますので、いろいろな発言というのは大変重いわけでございます。

 我々といたしましては、今日、衆議院の採決ということだと思いますけれども、この法案が、二十日後ですかね、施行されるということは、仮に成立をしたとしたら今月末からですかね。ですから、今月中に配慮義務なども実施されるわけでございますので、国民の皆さんにも広く呼びかけたいと思うんですね。あの配慮義務はかなり広い範囲で捉えておりますので、統一教会のみならず、あれは真っ当な団体はしませんから、あの配慮義務の一、二、三というのは。

 ですから、国民の皆さんに広く呼びかけて、そういう行為があって被害を受けた方、あるいはそれを見聞きした方は、どんどん政府、今の段階では法テラスに、三条の違反の可能性がある、配慮義務違反の可能性がある、あるいは地域の消費者のセンターにどんどん情報を寄せていただいて、それを、消費者庁が主務官庁ですので、消費者庁がほったらかしにしないで、それを一元的に集めていただいて、黒田次長のような優秀な方もいますから、集めていただいて、そして、断固とした姿勢を取るんだと。分析して、そして断固とした姿勢を取るということは、私たちも、来年の通常国会でもチェックをして、質疑しますので。いっぱいありますから、そういう情報が。

 被害者弁護団と協力して、配慮義務違反のものをどんどん集めて、そして行政が動いていく、こういうようなことで、この法律を少しでも実効性を高めるようなことを私たちも協力していきたいと思いますので、総理も是非そういう思いでしっかりと取り組んでいただきたい。まだまだこれは終わりじゃありませんので、是非よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

稲田委員長 次に、西村智奈美さん。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。

 今日は、総理と、消契法の改正案、それから新法について質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほど長妻委員が質問されましたときに、やはり、旧統一教会の献金勧誘、あるいはその行為によって、日本人がいかにカルト集団の食い物になってきたかというお話がございました。

 私も、言ってみれば、カルトに対する規制、日本は、全体を見てみると、これが法律としては皆無だということに改めて気がついたんです。それで、七月以降、私たちは、旧統一教会被害対策本部というのを立憲民主党の中にいち早く立ち上げまして、規制する法律が必要だということで、二か月以上かけて議論を行ってまいりました。本当に多くの被害者の方からもお話を伺ったり、学者の皆さんからもお話を伺ったり、社会福祉士の方からもお話を伺いました。

 そのことによって、いろいろな議論があったんですけれども、団体に対する規制もあり得るけれども、やはり違法、悪質な献金を勧誘するというその行為、あるいは、昨日、参考人の川井先生がおっしゃったような、植え付けられた教義によって、正体隠しの違法な伝道行為、これを正面から規制する法律が必要なのではないかということで検討してまいりまして、それで結果としてできたのが、特定財産損害誘導行為というものの定義、それを禁止するという法律だったわけなんです。

 今回、政府が提出してきた消契法、それから新法を見ますと、どちらかというと消契法の枠組みからは余り出ていない。新法といえども、やはり消契法の中の類型を使っていて、その中で、寄附というものに限って取り出して、それを規制するという法律になっているように見えるんですね。

 総理にお尋ねいたしますけれども、今回の法制は、いわゆるカルト行為、カルト的な行為に対する規制法なのか、それとも寄附に絞って規制する法律なのか、どちらなんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のいわゆるカルト行為に関しては、様々な行為が考えられることから、法律において一律に規定することは困難ですが、新法においては、そのような行為を受けて寄附が行われることを防止するため、法人等が寄附の勧誘を行うに当たって、個人が適切な判断をすることが困難な状態に陥るという結果を招かないよう、包括的な配慮義務、これを設けております。

 このような配慮義務を規定することで、配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易になり、被害救済の実効性が高まると考えております。

 ということで、この法律、寄附に焦点を当てた法律になっているということであります。

西村(智)委員 今ほどの御答弁ですと、新法の中の配慮義務、これがいわゆるカルト的な行為を反映しているということだと思うんですけれども、後でちょっとまたこれは確認をさせていただきたいと思います。

 それで、先ほどの質問で、自民党の方からも公明党の方からも、いわゆる寄附の文化、これについて影響があるのではないかという質問もありました。

 私も、この条文を見まして、学問の自由、信教の自由、そして政治活動の自由、これは脅かさないという条文は確かにあったんですけれども、特定非営利活動法人、NPO法人ですね、この活動のカテゴリーでいえば、その三つに当てはまらないものもあるというふうに思うんです。逆に言うと、当てはまらないものが非常に多いというふうに思うんです。

 寄附文化に対する萎縮になるのではないか、こういったことについて、政府の中ではこの新法制定の中で議論されてきたんでしょうか、伺います。

河野国務大臣 今回、配慮義務で規定をしているものは、NPO法人を始めとする真っ当な団体はそうしたことを行っていない、そうしたものを規定したものでございますから、抑圧につながることはないというふうに思っております。

 また、こうした法律によりまして、不当な寄附の勧誘行為というものが明らかになり、またそれが抑制されるということになれば、真っ当な寄附の勧誘行為に対する信頼というのも高まってくる、そういうふうに考えております。

西村(智)委員 次に、相談体制についてです。

 今回、法案の中で相談体制と見ますと、言ってみれば債権者代位権に結びつくための相談体制というものは、例えば法テラスなどでは見受けられるんですけれども、それ以外の相談体制がやはり不備じゃないかなというふうに思うんですね。

 既に厚生労働省の方ではQアンドAを策定したりということはあるようなんですけれども、まず一つは、そういった例えば虐待の問題、生活困窮の問題、こういったものに対応するために省庁挙げての相談体制を取り組む必要があるのではないかということ。

 それから、これも昨日、参考人質疑の中であったんですけれども、相談体制といった場合に、本当に現場で取り組んでおられる例えば弁護士の先生などからすると、例えば牧師さんとかカウンセラーの方とか、そういった方が寄り添って、例えば親子の間の話合いをするようにしているとか、あるいは脱会支援、こういったもののサポートをするというようなお話があって、ひとつ、相談体制と言われたときには、そうした寄り添っている方々に対する支援があると、それは非常に意味があるんじゃないかというお話があったんです。

 これは、私も、消費者庁の検討会の中で当初そういったお話があったということは承知しているんですけれども、この間、委員会の中でもなかなか議論ができませんでしたし、条文の中には入っていないというふうに思うんですけれども、総理、どうでしょうか。例えば、そういった外部の相談の方々への支援、こういったものも一つの課題であるということはお考えになりますでしょうか。

岸田内閣総理大臣 ただいま御審議いただいている法律の実効性を高めるためにも、御指摘のような相談体制の充実、大変重要であると政府としても認識をしております。

 相談体制の強化については、先般、関係省庁連絡会議において、法テラスに新設した対応窓口、心理の専門家も含めた対応人員を充実した上で、この新設した窓口において、霊感商法等の金銭的トラブルに限らず、二世信者の悩み、心の悩み、生活困窮者に関する相談、これに広く対応する、このようにしておりますし、また、法テラスを中核とした関係機関、関係団体のネットワーク化による総合的な相談体制の構築のための法テラスの抜本的な充実強化、さらには、生活困窮者自立支援等の精神的、福祉的支援の充実、また、虐待、いじめ、貧困等の具体的事象の発見等の子供、若者救済等の被害者救済に向けた総合的な相談体制の充実の強化のための方策、これを関係省庁連絡会議において取りまとめた次第です。

 こうしたものを具体化していくことによって、相談体制の充実をしていきたいと考えています。

西村(智)委員 後段部分についてはどうですか。

 つまり、牧師さんとかカウンセラーの方が本当に無償に近い形でそういった、例えば家族の間での話合いに入る、あるいは脱会支援を行う、コミュニケーションを取り戻すというようなことで、脱会支援といっても無理に脱会させるということではなくて、本当にコミュニケーションを取りながらということで活動している。これは、非常に手間もかかるし、時間もかかるし、無償に近い形でやっておられるというようなことなんですけれども、やはり旧統一教会の被害実態などを考えてみれば、そういった支援する方々に対する支援、これについては、総理、一つの課題だというふうにはお考えにならないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のような、牧師の方ですとかカウンセラーの方の寄り添った支援が大事だということについて、やはり同じ問題意識を持っているからこそ、今回、法テラスにおいて、心理の専門家を始めとする、法律の専門家だけではなくして、できるだけ寄り添った対応ができるための体制を用意したということだと思います。

 御指摘の点については、重要であるという問題意識は共有いたします。政府においても、先ほど申し上げた形で、相談体制の充実、是非スタートさせ、拡充していきたいと思っておりますが、その中で、より具体的に、寄り添った対応が何かという議論の中で、どこまで御指摘の点についても対応をしていくのか、これは考えていかなければならないと思います。

西村(智)委員 非常に重要なことだと思うんですね。

 先ほど法テラスというふうにおっしゃった。では、法テラスで働いている方々がどういう方々かというと、大体が非正規の方であったり、任期が来れば終わったり、また、先生方も異動があったりする。長期間の寄り添い、話合いのパートナーというふうになっていれば、総理の今の答弁で結構なんですけれども、やはりそうなっていないという実態がありますので、ここは是非問題意識を共有していただいて、今後の課題ということで受け止めていただきたいと思っております。

 次に、配慮義務についてです。

 先ほどの総理の方の御答弁でもありましたけれども、配慮義務が、言ってみれば、私が持っているような問題意識、カルト的な行為についての規制ということを考えながら作られたものであるということでお話がありました。

 確認をさせていただきたいんですけれども、これは河野大臣に御答弁いただいた方がいいかと思うんですが、配慮義務の第三条の第一項ですね。これは、いわゆるマインドコントロール下での献金を表しているということで理解してよろしいでしょうか。

河野国務大臣 そうしたことも念頭に置いているということでございます。

西村(智)委員 それで、そういたしますと、まさにこの配慮義務の実効性をどうやって担保していくかということが非常に重要だというふうに考えております。

 新法の第四条と第五条、こちらの方は禁止行為になっていて、禁止ですから明確にいろいろなことが書かれているんですけれども、もし今日、衆議院を通過して、近日、参議院へ送られるということになりますと、二十日以内の施行ですから、本当に施行準備を急がなきゃいけないところだと思うんですけれども、四条、五条について、報告、勧告、命令、公表ですね、これについて基準をお聞かせいただきたいと思います。

 つまり、どういう場合に報告を求めるのか。必要と認めるとき報告を求めるとなっていますけれども、その基準は何なのか。勧告はどういう場合に行うのか。おそれが著しいと認めるときというのは、何をもっておそれが著しいと認めるのか。例えば被害者の人数なのか、献金を求めた回数なのか、困惑の内容なのか、あるいは寄附額の規模なのか。どういった場合に命令を行うのか。勧告に係る措置をとらなかったときというのは、勧告全部の措置なのか、勧告一部についての措置なのか。勧告からどのくらいの時間軸で命令を判断するのか。お答えをお願いいたします。

河野国務大臣 法案が成立させていただいた場合におきましては、施行期日までの間に、実効的な行政措置等を行うことができるよう、しっかり基準を定めてまいりたいと思います。

西村(智)委員 決まっていないということですね。実行体制、やはりちょっと心配だと思います。あらかじめ検討しておく必要があると思います。

 更に問題というか重大なのが第三条の配慮義務についてということなんですけれども、今日は、私、与党の修正案が出てきているものというふうに考えまして、それについての質問ができるかと思ったんですけれども、まだ出ていないということですので、本当に残念ですけれども、与党に対する質問ができません。

 ですので、成立するという前提で、提出されている、これが成立する可能性があるという前提で政府にお答えをいただきたいと思うんですけれども、配慮義務が履行されなかった場合の勧告、これはどういう場合に行うのか。認められる場合において、おそれが著しいと認めるときというのは、どういった現認があった場合にどういうプロセスを経て勧告を行うことになるのか。また、勧告までの時間はどこからどこまでというふうに、どの程度というふうに見込んでいるのか。遵守すべき事項は消費者庁が決定するのか。お答えをいただきたい。

 また、どのような場合に公表を行うのか。勧告全部に従わなかったときか、勧告一部に従わなかったときか。勧告からどのくらいの時間軸で公表を判断するのか。お願いをします。

河野国務大臣 提出されていない修正についてお答えするのは差し控えます。

西村(智)委員 いや、これなので与党の方に質問させていただきたかったんですけれどもね。

 ただ、とはいえ、先ほどの禁止規定についてもまだその基準等は決まっていないということですと、これは消費者庁としては本当に検討をあらかじめして急がないといけないというふうに思うんですけれども、河野大臣、時間がない、急がなきゃいけない、ここはしっかりと作らなければいけないということは言っていただけますよね。

河野国務大臣 政府案で禁止規定あるいは配慮義務、いろいろございますので、施行までにしっかりと基準その他、実効的に行えるように準備をしてまいります。

西村(智)委員 なぜ私がこういうことを申し上げるかといいますと、やはりこれまでも消費者庁は、いろいろな禁止規定を持っている法律があるんですけれども、それによってもなお、例えば勧告とか命令とか行政指導を行うまでにすごく時間がかかっているということなんです。

 一番分かりやすい例は、ジャパンライフの事件です。ジャパンライフは、特定商取引法では明確に禁止規定があります。一九八五年にマルチ商法について国会で集中審議が行われたんですけれども、一回目の行政指導が行われるまで約三十年、二〇一四年までかかっています。行政指導も一回では終わらなかった。二回行われました。その後、立入検査が行われて、命令が四回行われて、詐欺容疑で元幹部が逮捕されたのが二〇二〇年。実に三十五、六年かかって、一つのジャパンライフ事件という形で終結を迎えたということなんですね。

 消費者庁の迅速な行政権の行使が本当に行われるかどうかというのは、禁止規定そして配慮義務、これが閣法でいうと第六条、七条に結びついたということから、本当に重要なことだと思っております。

 大臣、ジャパンライフ事件ほどには時間はかけませんというふうには言っていただけますか。

河野国務大臣 今委員御指摘をいただきましたが、私としても、これまでの対応にじくじたるものがございます。

 この法案に関しまして、成立させていただいた場合には、きっちりと、実効性のあるしっかりとした早い対応ができるようにやってまいりたいと思います。

西村(智)委員 今度は、国民生活センター法の改正案についてです。

 この間、例えば解散命令請求とかあるいは旧統一教会の被害実態について、私たちも閉会中にもいろいろヒアリングを行ってまいりました。その中で分かったのは、消費者庁自体が、例えば解散命令請求の根拠になり得べき事件、民事とか刑事についても情報を把握しておらず、文化庁宗務課への連携というのは全く取れていなかったということです。また、旧統一教会について、例えば文科省とか、あるいは虐待の案件について厚労省とか、それから警察などへの通知等も行ってはいなかったということなんですね。

 やはり、先ほども長妻委員とのやり取りでありましたけれども、全国にセンターがありますと大臣はおっしゃいました。センターの活用、もうちょっと、もうちょっとじゃない、もっとしっかりとやらないと全国から情報は集まってこないですよね。集めたものをどう生かすかということも、やはりこれまでのことを考えると本当に不十分だというふうに思うんです。

 今回、国民生活センター法の四十二条第二項が改正されます。私たちも、旧統一教会の被害実態について全国の国民生活センターが情報を持っているだろうから出してくれと言ったら、出てこなかったんですよ。二か月出てこなかったですよ、二か月。九月の二日に、あの大串副大臣のところに私たちも要請に行って、そのときもお願いして、それから一か月かかっていますから、本当に、こういう意味では、国民生活センター法が改正されても、やはり執行体制は不安があるというふうに言わざるを得ません。

 いち早い被害情報の公表が相談現場での対応力の強化と被害の防止に役立つというふうに考えているんですけれども、この国民生活センター法第四十二条第二項、特に必要がある場合にということになっているんですけれども、それはどういう場合なのか。それから、この条文でいうと内閣府令を作ることになっているんですけれども、これはどういう準備をされているのか。それから、国民生活センター法の下にといいますか、情報提供規定というのがあるんですけれども、これはちょっと弱いというふうに思うんですね。

 こういったものもやはりトータルで見直しをして、きちんと情報収集ができる、そして、消費者庁にも情報が行くし、あるいは他の関係行政機関にも情報が行く、こういうことをしっかりとやれる体制にしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 重要な利益を保護するために特に必要があると認めるときとは、具体的には、消費者被害が既に生じ、又は生じるおそれがある中で、消費者被害の防止の実効性を確保するためには、悪質商法の被害の情報として一般化した形で公表するだけでは被害防止が不十分であって、当該事業者名や消費者被害の対応を含む情報を公表する必要がある場合が考えられると思っております。

 その他、内閣府令で定める事項としては、事業者の名称、住所といった事業者の属性に関する事項に加え、その事業者による消費者被害の状況等を規定することを想定しております。

 また、今般の改正におきまして、国民生活センターの役割を強化するために事業者名の公表等の規定が国民生活センター法に整備されることになりますので、国民生活センターが、事業者に対する再発防止の取組の働きかけ、消費者の利益を守るために必要な事項の公表など、より積極的な対応ができるように、私としてもしっかり見てまいりたいと思います。

西村(智)委員 次に、必要不可欠について伺いたいと思います。

 必要不可欠について、私どもの主張は、やはり、必要というところまではいいけれども、不可欠というのは削除すべきではないかということなんですね。

 先ほどの長妻委員とのやり取りの中で総理が、例えば不法行為の裁判の基準を下げるとか、より困難にすることを意図するものではないというふうに答弁をされました。ある意味当たり前のことだと思うんですね。これまであった不法行為認定の基準が新しくできる法律によって下がっちゃうとか立証が難しくなっちゃうといったら、これは法律の意味も何にもないし、逆の効果になっちゃいますから、それは当然の答弁だというふうに思うんですけれども。

 私は、総理、これはやはり引き続きの課題じゃないかというふうに思うんです。例えば、今後、不法行為の裁判がどうなるのか、本来であればそこまで長く時間をかけて見るというのではなくて、昨日、河野大臣も、今後の残された課題、主には債権者代位権ということなんだと思うんですけれども、残された課題があるので、検討会などをまた再び動かして、そこでやっていこうというふうに決意を述べられました。

 ここのところは、やはり引き続きの課題だということは認めていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、必要不可欠の要件については先ほども答弁させていただきました。

 そして、法律の解釈について、その全てを条文化することは困難ですが、法案が成立した際には、個別の事例に即して条文の適用可能性を示し、法律の周知を図り、そしてその適切な活用を促進してまいります。

 ただ、単にこれを必要としますと、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、真に取消しに値する程度に不当な勧誘行為を適切に捉えることが困難になる、このように政府として考えております。

 いずれにせよ、法律が成立した後、社会の状況、そして法律の適用の状況等を踏まえながら、見直しの必要があるならば適切に対応していく、こういった姿勢は政府としても大事にしていきたいと思っています。

西村(智)委員 霊感商法のことについて伺います。

 先ほども河野大臣から御答弁いただいたとおり、新法第三条第一項、これはマインドコントロール下での献金を表しているというか、含んでいるというか、そういった答弁がありました。ですけれども、大変残念ですが、消費者契約法の改正案の方に、この配慮義務規定、まさにその三条一項ですね、これに該当する条文がないんです。他方で、消費者契約法で霊感商法の取消権は対応しているということで、新法からは霊感商法が今度は除外されているんです。

 この二つの法律とも、私は、マインドコントロール下での献金勧誘行為、これを防ぐためには本当に大事なものだというふうに思うので、新法には霊感商法を入れるべきであって、他方で消費者契約法には配慮義務、これを入れるべきではないかというふうに考えるんですけれども、これはどちらから御答弁いただけますでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の点ですが、まず、高額な献金による被害が特に重大な問題として指摘されている中で、今般の法案では、悪質な寄附の勧誘行為を禁止行為とし、そして行政措置や罰則を規定することといたしました。

 一方、御指摘の消費者契約法の改正案の方ですが、これは、商取引に該当する契約については、現行の消費者契約法により取消権の対象となるほか、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の対象となります。

 そして、こちらに配慮義務を導入する場合には、寄附よりも更に幅広い事業主体に影響を及ぼすものであることから、慎重な検討が必要であり、現段階では配慮義務の導入は行わない、このように判断した次第です。

西村(智)委員 ここのところは、私たちも引き続き注目してウォッチしていきたいというふうに思います。

 最後に、つけ込み型について伺います。

 昨日、参考人質疑で、与党推薦の宮下先生、消費者庁の検討会の座長代理の先生ですが、つけ込み型についてもう少し幅広く取消しというものの対象にする法整備について、やはりこれは必要なんじゃないか、そういう言及がありました。私は、これは、河野大臣、やはり法制化したらできたんじゃないかというふうに思っているんです。

 立憲民主党は、今年の通常国会に消費者の権利実現法案というのを提出いたしておりまして、消費者契約法の意思表示を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型に、つけ込み型の包括な類型として、消費者が合理的な判断をすることが困難な事情を有することを知りながら、社会通念に照らして当該消費者契約を締結しない旨の判断を困難にするそういう行為、新たな類型、これを追加するなどの法案を提出しています。

 今後検討会も更に動かしていくということですので、ここはもう一回、このつけ込み型の類型、これをきちんと法制化すべきだというふうに考えるんですけれども、事業者との合意が困難だということで政府はこの間見送ってきているようなんですけれども、是非ここは、今後の課題として検討会の中でも議論していくと、大臣、お答えいただけませんでしょうか。

河野国務大臣 今般の改正及び新法において、霊感等による知見を用いた告知による勧誘に関し、不安を抱いていることに乗じた場合を取消しの対象としており、検討会の御指摘にはある程度の対応をしているものと考えております。

 ただ、この合理的に判断することのできない消費者への対応は検討すべき課題であると思っておりまして、既存の枠組みにとらわれない抜本的かつ網羅的なルール整備の在り方、これは消費者契約法の改正の附帯決議にも出ております。このような抜本的な検討の中で議論は行っていきたいと思います。

西村(智)委員 残された課題は多いです。非常に、何といいますか、法律のたてつけ自体に困難があるところを、本当にいろいろな、これまでの政府の答弁で、例えば、寄附の勧誘に際しという時間軸の話とか、三条一項の解釈ですとか、そういったことについていろいろ御答弁をいただきました。今後も、やはり引き続き国会全体で政府の取組を注視し、また、必要な対応を私たちは取っていく決意であります。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。

稲田委員長 次に、山井和則さん。

山井委員 では、三十三分間、質問をさせていただきます。

 最初に私は申し上げたいんですけれども、やはり人間にとって宗教というのは非常に大切だと思います。私も仏教の高校で学びまして、私が政治や福祉を志した原点も宗教であります。ですから、宗教は非常に大切であると思いますけれども、しかし、残念ながら、今回法案の対象となっている統一教会はカルトであります。本来、人間を幸せにするべき宗教が、カルトとして、今日もお話しするように、高額献金を不当に要求する、家庭を崩壊させる、そういうことがあってはならない。そういう思いで今日は、被害者の方々からお聞きした生の声を中心に岸田総理に質問をさせていただきたいと思います。ほとんど質問通告をしておりますので、そのとおり質問しますので、岸田総理にお答えをいただければと思います。

 思い返せば、十月十七日、予算委員会で、当日、私たち、日本維新の会と立憲民主党で、ここにあります悪質献金被害救済法案というのを出しました。そのとき、予算委員会で、私、岸田総理に質問をさせていただきまして、二つのお願いをしました。一つは、是非、被害者の方に会って、直接お話を聞いていただきたい。それともう一つは、この立憲民主党と日本維新の会を一つのベース、きっかけとして、今国会中に被害者救済法を成立させようではありませんかということを言いました。

 そういう中で、あれから四十二日たちまして、実際、岸田総理が被害者の話を聞いていただき、また、政府案という形になりましたけれども、与党の方々にも大変な御尽力をいただきまして、こうやって被害者救済法が成立しつつあること、そのことについては、岸田総理の決断、与党の皆さん、もちろん野党の頑張り、本当に私は関係者の方々に心より感謝を申し上げたいと思います。もちろん、西村議員が指摘されましたように、不十分な部分は多々あります。多々あります。一歩前進の法案でありますが、私は歴史的な一歩だと思っております。

 また、この間御尽力いただきました、徹夜でこの法案作りをしてくださった役所の皆さん方、また、この法案、野党案を作っていただきました衆議院法制局の皆さん方にも心より御礼を申し上げたいと思います。

 一言で言いますと、今審議しているこの政府案というのは、被害者の方々が命懸けで声を上げて作った法案ではないかと私は思っております。

 そこで、お伺いをいたします。

 私が十一月二十九日に岸田総理に質問をしましたが、そこで、先ほど長妻議員からも念書の問題がありましたけれども、岸田総理は、困惑状況での念書の無効性というものを答弁をされました。何と岸田総理が答弁された翌日に初めて、統一教会はある信者さんに念書を返還しました。確認されている初めての例です。今までは、念書を取って、これを一つの証拠にして裁判を闘い、献金を返さないと言っていたのを、これは多くの皆さんのお力もあると思いますけれども、やはり一つのきっかけは、私は、総理が念書は無効の疑いが強い、そういう趣旨の答弁をされた、そのことによって、翌日、統一教会側は念書を返してきたわけであります。

 そこで、お伺いをしたいんですけれども、先ほど長妻委員もおっしゃいましたけれども、念書やビデオが無効になるだけではなく、問題は、二千五百万円、私もこの方にお目にかかってきました、この念書の方に、二千五百万円の献金。それで、当然、マインドコントロール、困惑して献金をさせられて念書も書かされた。だから、当然、全額返金をこれから求めていかれることになると思います。

 そこで、岸田総理にお伺いしますが、不法性を隠すための念書を書かせること自体悪質なので、念書などで不法性隠しをしたような統一教会の献金については全額返金すべきと考えるが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 公序良俗に反する念書等が無効となり得るものであること、また、そうした念書等の作成自体が勧誘の違法性を基礎づける要素の一つとなり得ること、これは先日、国会にてお答えしたとおりです。

 そして、念書等を作成するきっかけとなった寄附勧誘行為が禁止行為に該当する場合、これは、寄附は取消権に基づき全額返金されるものであります。そして、配慮義務違反に該当する場合、これは、損害賠償請求の際にそうした点も考慮され、司法における判断がなされるものであると考えます。

山井委員 これはもう、全国で、統一教会は、高額献金の方々などに、マニュアルも作って、返金要求してくる可能性がある人には念書を取るように、ビデオを撮影するようにと、先ほど長妻議員もおっしゃったように、これはもう証拠隠しみたいなものです。それについては、困惑状態であれば全額返金可能であるという重要な答弁をいただきました。

 それともう一点、私もこの被害者の方、二千五百万円の被害の方に直接お目にかかりましたが、私もびっくりしたんですけれども、約百回、数年間で百回に分けて献金をされているんです。それで、更に驚くのは、一応、統一教会の言い分もその一覧表に書いてあるんですけれども、統一教会の言い分は、自らの意思で献金した、自らの意思でささげたとずっと書いてあるんですよ、百回。

 つまり、岸田総理、今、全額返金の可能性があるということをおっしゃいましたけれども、もし、百回分、一回ずつ、困惑していましたか、困惑していましたかと言われたら、十年前の二百万円、百回中の三十三回目、困惑していましたかなんて立証できないんですよ、これは。百回献金しているわけですから。

 ついては、そういうことではなくて、もう悪質性、不法性、不当性は明らかなんですから、結局、このような不当な献金については一括して全額取消し可能とすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のような事例において、百回にわたる献金の一回一回について不当な勧誘行為を立証することは大変な負担になると理解をしています。個別の寄附の意思表示という性質上、一回一回の寄附について立証することが原則となりますが、裁判では、寄附の一覧表の作成や時系列の整理などにより、簡易に不当性が審理されることもあると考えています。

 また、例えば、当初不安をあおり、困惑し、定期的に献金を行うといった契約を結んだ場合など、当初の不当勧誘行為のみを立証すれば取り消せる場合もあると考えられます。

 そして、このような取消権の立証に限らず、裁判実務上で最も活用されている民法の不法行為であれば、一連の勧誘行為をまとめて不法行為と認定することも可能であり、それに基づく損害賠償もできると考えられます。

 こういった権利の行使を支援するため、法テラスと関係機関、関係団体との連携を強化し、支援体制の充実を図ることと政府としてはしているところであります。

山井委員 今の答弁、重要だと思います。やはり、一回一回じゃなくて、一連として、一括して、そういう困惑していたと立証することも可能であるという答弁でありました。

 もちろん、法文は現時点では変えられないわけですけれども、総理の答弁によって、いかに被害者が救済されやすくなるか、そのことが重要だと思います。

 また、柚木議員に対してですかね、マインドコントロール下での寄附の多くが取消しにということを、一昨日の衆議院本会議で答弁をされました。これも非常に重要な答弁だと思います。つまり、マインドコントロール下での献金は、多くの場合取消し可能と。

 しかし、岸田総理、統一教会の献金の多くはマインドコントロール下の献金なんです。ということであれば、統一教会の献金の多くは取消し可能と理解してよいですか。

岸田内閣総理大臣 報道されているような旧統一教会の献金被害の多くは、自発的に献金しているように見えても、不安に乗じて教義等を教え込まれ、困惑させられて献金をしているものではないかと考えています。

 こうした献金については、脱会等で困惑状態から脱して、献金当時は困惑していたことを主張、立証することで取り消し得るものであると考えています。

山井委員 つまり、今回の法案の対象は、事実上、統一教会でありますけれども、統一教会の献金の多くは、マインドコントロールされているから返金要求が出ないわけであって、基本的には、不当、そういう不法行為の疑いがあるということであります。

 皆さん考えていただきたいんですけれども、この国会、この法案を作るために、本当に大変な苦労を与野党、政府を挙げて、岸田総理もリーダーシップを取っていただいて、やっているんです。ということは、ストレートに言うと、統一教会というのは、こういう不当な献金勧誘の、あえて言うと、常習的にそういうことをやっている宗教法人じゃないんですか。

 それで、私たちは、西村本部長を先頭に、被害者の方々からヒアリングをさせていただきました。私個人は、一人平均二時間、二十三人から話をお聞きしました。

 例えば、ここにパネルを出しますが、橋田達夫さん。御存じのように、奥様が一億円の献金を合計でされました。それで、家庭も崩壊し、離婚もされ、結果的には息子さんは自ら命を絶ってしまわれました。橋田さんはおっしゃっていました。田んぼを売ったり、いろいろなものを売って、五百万、一千万、二千万と、どんどんどんどん献金をする。やめてくれ、やめてくれと、夫婦で取っ組み合いのけんかになった。お金があったら献金すると。それは、私でも取っ組み合いのけんかをしますよ。その結果、息子さんまでお亡くなりになられた。

 私、高知に三回行ってお話をお聞きしましたけれども、私聞いたんです、橋田達夫さんに。実名出して、顔出して、リスクがあるんじゃないんですか、向こうは統一教会ですよと。そのときに、橋田達夫さんはこうおっしゃったんです。山井さん、自分はもう先の人生短いんです、自分のことはどうでもいい、でも、自分の息子のように、統一教会に関係して亡くなる、あるいはつらい思いをする子供はもうなくしたいんです、子供の統一教会の被害者をなくすために、自分はもうどうなってもいいから、顔出して、名前出して、発言しますということを橋田達夫さんはおっしゃいました。

 さらに、今日も朝から傍聴にお越しになっておられますが、小川さゆりさんも声を上げておられます。小さいときから、例えば給食費も払ってもらえない、もちろん服も買ってもらえない。献金、献金と親はやる。アルバイトで稼いだ二百万円も親に没収され、その時期、親は献金、献金をしている。それで、二十歳を過ぎて脱会をされたわけですけれども、岸田総理、脱会するということはただごとじゃないんです。事実上、親子の縁を切るということなんです。

 それで、私は、初めて会った被害者の方が小川さんでしたけれども、その後、与党でも小川さんのヒアリングをしてくださいました、法務大臣も小川さんと会ってくださいました、私たちも様々な被害者からヒアリングをしましたけれども、小川さんも、小さなお子さんを抱えて、統一教会から、あるいは現役の信者さんから壮絶な嫌がらせ、迫害を受けながらも、声を上げておられるわけです。私にもしものことがあったら後は頼むからと言って、小川さんだけじゃありません、多くの被害者の方は命懸けで声を上げておられるんです。それも、自分のためじゃない、もうこれ以上自分たちのように苦しむ子供たちをつくりたくないという思いで、多くの二世の方々が体を壊しながら声を上げておられます。

 私は思うんですね。橋田達夫さんも、本当は離婚したくなくて、円満な家庭を築きたかった。小川さゆりさんも、両親と事実上もう今は断絶状態ですよ。でも、本当はみんな家庭円満に暮らしたかったわけですよ。それを壊したのが統一教会なんです。

 そこで、岸田総理、お伺いします。

 この資料も見てください。今までの膨大な被害。皆さん、十七ページ。昨日も川井弁護士が配られました。過去三十数年間、被害相談が三万四千件、被害の額が千二百三十七億円。次のページを見たら、一億円以上の被害がいっぱいありますよ。これは、被害相談が三万件ということは、恐らく数十万家庭の被害があるんじゃないんですか。今言ったような橋田さんや小川さんのような、一家庭一家庭、高額献金で家庭が崩壊したとか子供が不登校になった。私も聞きました。子供が不登校になってしまった、あるいは信者さんの高校生が自殺をした。それは、自分たちは神の子だ、サタン、悪魔のほかの子とは余り仲よくしては駄目よ、そんな教えを受けたらきついですよ。私は、もちろん、統一教会で幸せなお子さんもおられると思いますよ。でも、これだけの被害者を出している、これだけの被害者を。家庭を崩壊したり自殺者さえ出ている。

 そこで、岸田総理にお伺いしますが、ここまで被害を三十年以上出して、この国会でここまで苦労して取締りをする法律を作らねばならない、そういう統一教会というカルトの宗教法人を宗教法人として税制で優遇して国が支援するというのは、岸田総理、おかしくないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、政治の立場から、委員御指摘のような被害を受けられた方、また、大変つらい思いをされた家族の皆さん方に思いを巡らすこと、これは大変重要なことだと思います。

 そして、だからこそ、立法府として、日本の法体系の中で、こうした実態に、どこまで被害者を救済し、そして再発を防止するための法律を作ることができるのか、最大限努力をしなければならないということで、政府としても法律の作成を急ぎ、そして与野党の協力によってこれをさらに修正すべきものを修正し、そしてさらには法律成立後も実効性を高めていかなければならないと思います。

 そして、こうした団体を宗教法人法の下で宗教法人として認め、税制優遇を行うことはおかしいと思いませんかという御質問でありましたが、この御質問に対しては、だからこそ、宗教法人法に基づいて、これを今、政府として、報告徴収、質問権の行使等を通じて実態把握に努めています。そして、それと併せて、様々な関係者の協力を得ながら、実態を把握した上で、法律に基づいて適切に対応しなければいけない、こうした手続を進めているところです。

 法律に基づいて、適切にこの当該団体を扱うべく、立法府として最大限努力を続けていかなければならない、このように思っています。

山井委員 岸田総理の今の答弁は、心の中ではおかしいと思っているから今質問権を行使しているんだ、そういうことだと思うんです。今、うなずいていただきました。

 統一教会からの第一回目の回答があした九日に来ると言われています。残念ながら、今日一日でも新たな被害者は増え続けているんです。献金されている方もいます。新たに入信をされている方もおられます。一日でも解散請求が遅れたら、被害者は増えるんです。最大の被害者救済策は予防なんです。もちろん、解散命令は時間がかかります。でも、政府にできる、岸田総理にできる一番重要なことは、一刻も早く解散請求を出すことです。ついては、あした回答が来ます。こう言ったら何ですけれども、それほど誠実な回答は私は返ってこない可能性があると思います。それを何回もやっていたら、その間に被害者は増えるんです。

 岸田総理、もう私たちも懲り懲りですよ。こういうカルトの、国民を不幸にする法人のために国会が、ある意味でみんながこれだけの労力と時間を使って、三十年間放置されてきた、やはり、もうこれはピリオドを打つべきときだと思うんです。

 あした回答が返ってきます。速やかに解散請求をしてほしいと思います。いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 政府としては、この法治国家において、法律に基づいて最大限のスピード感を持って対応していかなければならないと考えています。

 十一月二十二日に文部科学大臣が、宗教法人法に基づき、宗教法人審議会の答申を踏まえて報告徴収、質問権を行使いたしました。そして、十二月九日を期限として報告をするように求めたところですが、こうした報告徴収、質問権の行使を通じて、旧統一教会の業務等に関して、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにした上で、法律にのっとり必要な対応を取っていく、これが政府の方針ですが、最大限のスピード感を持って適切に対応していかなければならない、このように考えます。

山井委員 今の最大限のスピード感を持ってという総理の答弁、私は、本当に重く受け止め、期待をしたいと思います。二か月も三か月もかかっていたら、その間にまた献金をし、その間に家庭崩壊し、その間に、申し訳ないけれども、自ら命を絶たれる方も出てくるかもしれないんです。

 これは、残念ながら昨日、今日の話じゃないんです。私も国会議員の一人として恥じねばなりませんけれども、三十数年間、行政と立法が、放置するどころか、結果的には、税制優遇でこの多くの家庭を不幸にしている団体を応援してきてしまったわけですよ。応援しているんです、今も。今日も応援しているんですよ、税制優遇で。

 おかしいじゃないですか。統一教会の献金がおかしいからこの法案の審査をやっているんでしょう。でも、セットで税制優遇で応援しているんですよ、私たちは。ですから、法律の範囲で、最大限のスピードで、岸田総理に解散請求をしていただきたいと思います。

 そして、こういう中で、岸田首相の決断もあって、私は、不十分な点は多々あるけれども、歴史的な法案だと思います。そのことに関して、被害者の方々は大変喜んでおられます。

 昨日も、今日の配付資料にありますけれども、宗教二世の方々が当事者団体を設立されまして、問題の根絶を目指すとおっしゃっておられます。今日もインターネットで声を上げて、いろいろ統一教会の問題点を指摘してきたけれども、様々な嫌がらせとかに遭って、今日も体調が悪くて寝ながらこのインターネット中継を見てくださっている、そういう方々もおられるんです。

 でも、その方々の共通の思いは、もちろん、法律に不十分な点もあるけれども、やはり、岸田総理を中心に、閣法で、政府の法律でこの法案を作ってくれてありがたい、感謝したいと、皆さん大変喜んでおられます。

 ついては、もし可能であれば、無事法案が成立した暁には、その被害者の方々も、一言、岸田総理にお礼を言いたいとおっしゃっているんです。会う形はどういう形でも構いませんが、是非、そういう被害者の方々が岸田総理にお礼を言いたいとおっしゃっている。どういう形でもいいですけれども、会っていただけませんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 そういったお気持ちを持っていただいていることは大変重たいことであると受け止めます。

 会ってもらえないかということですが、では具体的にどなたに会うか、いつ会うか等は調整をしなければならないとは思いますが、そういった機会を持てるように検討したいと思います。

山井委員 これはよく、入信する人、献金する人が悪いじゃないかと。山井、こんなのはほっておいたらいいじゃないかと言う人がいるんですよ。でも、子供には罪はないでしょう、子供には。全く子供には罪はないでしょう。

 残念ながら、ゼロ歳、一歳、それで教義に基づいて、ほかの子はサタン、悪魔です、自分は神の子です、恋愛したら駄目です、まあ言い出したら切りがないですけれども、子供にかけるお金よりも献金する方が大切ですと。やはりそういう教えは、一言で言うと児童虐待ですよ、はっきり言って。幸せなお子さんもいることも否定しません。でも、やはりこれだけ多くの被害者が出ているんですから。

 その方々が、岸田総理には本当に感謝しているとおっしゃっているので、是非会って、お願いということじゃなくて、お礼を言いたいとおっしゃっていますので、是非会っていただければと思います。

 そのことにも関係して、今回の法案審議の中で、岸田総理からは、不法行為で裁判したら勝ちやすくなりますよ、今回の法案でという答弁がありました。私は、あの答弁を聞くたびに心が痛むんです。何でかというと、二世の方々は、言っちゃ悪いけれども、親の献金で貧しいんですよ。

 ある人は、娘さんのカードローンで、献金を勝手にされて、その親の献金の借金を今返している方もたくさんおられるんですよ。それと、統一教会では、年金保険料も払わなくていい、そんなお金があったら献金しなさいという教えだから、親は無年金な人が多いんですよ。その自分を献金まみれで不幸にしたとも思われる親が無年金で老後自己破産したりして、その介護をさせられる、これはやはりきついんですね。裁判もできないんです。お金もかかります。親の献金の立証もできません。

 この間御尽力いただいた弁護団の方々が二百人規模の統一教会被害者救済の弁護団をつくられるんです。今後、恐らく集団交渉されることになります。

 ついては、岸田総理に要望があります。といいますのは、二世などの家族の被害者の救済のため、法テラスや弁護士への相談費用の無償化、集団交渉への参加を政府が支援、あっせんすべきと考えますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、宗教二世を始めとする旧統一教会問題の被害者の方々が弁護士に相談するなどして被害回復を図ること、これは重要であると認識をいたします。

 そして、法テラスでは、旧統一教会問題の対応窓口や心理専門職を配置した対応部署を新設するなどして、宗教二世を含むお困りの方からの相談に対応するとともに、資力の乏しい方に対して弁護士による無料法律相談等を実施する民事法律扶助を積極的に活用し、そして、日本弁護士連合会等と連携して、経験や理解のある弁護士を紹介するなど、取組を行っています。

 政府としては、こうした法テラスの取組を予算面、そして体制面から強力に後押しし、さらに、関係機関、団体等との緊密な連携の下、被害者の多様かつ複合的なニーズに応じて支援の一層の充実を図るなどして、効果的な救済に万全を尽くしていきたいと考えております。

山井委員 では、最後に質問をいたします。

 今回、債権者代位権などは残念ながら実効性が乏しいとの懸念があるため、私たちが提案している特別補助人制度や家族による取消権の創設を含め、法案が成立した後に、被害者の二世や家族の救済や支援のための検討会を立ち上げて、その検討会の中では被害者の方々からのヒアリングも行い、今後も議論、検討を続けるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 法律施行後の見直しに当たっては、法律の執行の状況及び社会経済情勢の変化などを勘案すべく、一定の法運用の実績を確保する必要があります。そして、見直しの検討の形式は様々あると思いますが、いずれにせよ、被害防止、救済のために更に実効的な政策を講ずるべく、検討内容を充実させるとともに、スピード感を持って取り組んでいきたいと考えます。

山井委員 以上で終わります。ありがとうございます。

稲田委員長 次に、青柳仁士さん。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今回、この旧統一教会の被害の防止の問題、これは三十年前から発覚していた問題であります。あの当時から言われていた問題に対して、三十年前に政治がしっかりした答えを出さなかった、そのことが、今、今日この場を迎えている最大の理由であるというふうに思っております。当初の三十年前にしっかりとした答えを政治が出していれば、今日の被害者の方々もいらっしゃらなかったでしょうし、安倍総理ももしかしたら御存命だったかもしれません。

 今、国民の多くの方々が求めているのは、もうこの問題に政治が決着をつけてくれ、そういうことなのではないかと思っております。昨日も、総理の元に国家安全保障戦略の提言書をお出しさせていただきました。その前には、経済対策についても申入れを行わせていただきました。様々な重要な問題がある、なぜこの問題だけをそんなに重視するのかという声があるのも承知しております。しかし、こうした問題にしっかりと答えを出せないような政治に一体国民は何を期待すればいいんですか。そういう思いで、我が党は、犬猿の仲と言われた立憲民主党と協力をしてでもこの問題についてはしっかりとした答えを出す、また、対立関係にある与野党を超えて、与党の皆さんともしっかりとした協議を行った結果、今日このような一定の法案ができ上がってきている、そのように感じております。

 総理の方からも、本会議において、我が党の漆間議員の質問に対して、与野党において新規立法に向けて精力的な協議を重ねてきており、その議論も踏まえて政府としての新法を決定し、今国会に提出したと、一定の御評価をいただいております。また、この委員会における我が党、沢田議員の質問に対して、河野大臣からも、今回は特別なプロセスであったということ、そして、消費者庁の黒田次長からは、閣法と議員立法のハイブリッドな法案であった、こういう認識が示されております。

 与野党の枠を超えて、政治として答えを出さなければならない問題にしっかりと取り組む、こういう姿勢が一定程度機能した国会であったのではないかと思っております。

 こうした中で、今回の法案提出に至るプロセスにおいて、日本維新の会及び立憲民主党を中心とした野党の貢献について、また、それらを含む与野党の協力について、岸田総理の受け止めを教えてください。

岸田内閣総理大臣 本年十月から九回にわたり、霊感商法等の被害防止や救済を目的とする与野党間の実務者レベルの協議が行われたほか、幹事長レベルでの協議も行われてきたと承知をしております。

 政府としては、本年十月十七日の消費者庁の検討会報告書の取りまとめ後、消費者契約法等の改正案や新法案を今国会に提出すべく、最大限の努力で準備を進めてきたところです。

 そして、その新法案には、特に配慮義務規定など、与野党間の議論を踏まえた規定も盛り込ませていただきました。

 そうした経緯を経て、今、改正案そして新法案につきまして御審議をいただいていると認識をしております。

青柳(仁)委員 今御答弁いただいたとおり、様々な努力を我が党としても行ってまいりました。一方で、やはりこれまでの議論の過程においては、与党、自民党、公明党の方からは、非常に消極的で後ろ向きな姿勢というのも感じる場面が多々ありました。また、できれば次の国会に先送りをする、あるいは、法案の実効性を高める努力において我々の言っている要求を聞いていただけない、そういう点もあったことは事実と思います。

 一方で、そうした政治の抱える難しい問題の中で、十一月七日に総理の示された、この法案をしっかりと作り上げるように、こういう一定のトップからの声というのは、この問題を動かすに当たって一定の力があったのではないかというふうに考えております。

 そういった中で、我々としては、やはり全ての要求が通ったわけではもちろんありません。しかし、一定程度、我々としても知恵を絞って、できる限り被害者救済につながるように、また、日本の法体系の許す限りでできる限りの答えを出せるように、一生懸命取り組んできました。そうした一定のやってきたことに対する責任は、果たしていかなければならないと思います。

 したがいまして、この質疑を通しまして、法案の足らざるところは明らかにしていきたいと思いますし、また、この委員会を通じて、条文修正、附帯決議、また採決にしっかりと臨んで、仮に法案が成立したとしても、今後、より一層効果の高い法案となるよう、見直しにも尽力していきたいと思います。

 さらには、政府・与党としては、行政努力で実効性を高める方策を最大限追求すべきだと思っております。その動きを加速させていくにおいても、野党としてしっかりと足らざるところを追求し続ける、こういう姿勢をこれからもしっかりと担っていきたいと思っております。

 そのような思いで今日の質問をさせていただきますが、まず冒頭、今回の法案の目的についてですが、昨日、我が党の堀場議員の質問の中で、今回の法案の名前は、法人等による寄附の不当な勧誘の防止に関する法律案ということになっております。そして、与野党協議会の名前は、悪質献金等の被害のための協議会という名前でありまして、救済という言葉はこの中には含まれておりません。

 このことに関して、河野大臣から、被害の未然防止、そして救済を目的とした法案であることに変わりはございません、こういう旨の答弁をいただいております。岸田総理としても同様の認識であるかどうか、まずはお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 結論から言いますと、同様の認識であります。

 宗教法人を対象とするか否かに関係なく、新法案において、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為について、現行の日本の法制度の下で最大限の措置を講じている、これがこの法律のありようであると考えております。

青柳(仁)委員 まさに、名前はどうあれ、被害の未然防止、そして救済を目的とした法案であるということは間違いないと思います。このことは、被害者の方々あるいは被害者弁護団の方々がずっと求めてきたことであります。

 一方で、我々も消費者庁等と議論をしている中で非常に感じましたのは、やはり政府側としては、法治国家として、限られた法体系の許す限り、法技術の許す限りにおいて最大限の配慮、検討を行った、こういうことでありましたが、これはデジタル庁を所管する河野大臣はよくお分かりだと思いますが、市場において、誰も使えないアプリを作ってもしようがないということです。アプリの開発、プログラムの限界があるんだ、機械の限界があるんだ、それは作る側の言い訳です。最終的にでき上がったものが使われる側にとって使えないものであったら、これはやはり失敗であると言わざるを得ないわけです。

 ですので、最大限の努力を行うということは当然なのでありますけれども、もしも、その中に、おかしな政治的な配慮であるとか、そういうものが入っているとすれば、これは非常に問題があるのではないかと私は思っております。

 消費者庁の皆様とも議論させていただく中で、法技術の許す範囲でできる限り検討を行っていただいているということは承知しておりますが、我々政治家としては、この問題については、できる限り合理的に考えてどのような救済策が可能か、こう考えていくべきだと思っております。

 その上で質問させていただきますが、今回の法律の第四条にあります禁止行為、そして第三条の配慮義務についてです。

 これまでも繰り返し質問がされてまいりましたけれども、法案によると、この六つの禁止行為のいずれかが行われて、そしてそれによって寄附者が困惑をし、そして困惑をした上で寄附を行った場合にのみ行政措置が取れる、こういう内容になっております。

 しかし、旧統一教会の例を見ますと、正体を隠して、かつ不安をあおって信仰を抱かせ、その状態を利用して数年又は数十年にわたって献金をさせ続けるのが被害の実態です。こういった中においては、ほとんどの被害者は寄附に当たって困惑はしていないので、この法案では救済できないのではないか、こういう指摘が委員会でも本会議でも度々されてまいりました。

 その中の答弁では、マインドコントロールなどにより、教義を信じて、進んで喜んで寄附していたとしても、目が覚めて、これは冷静な判断ができるようになってから、振り返って、寄附の前は困惑していたと三年以内に本人が認めれば寄附の取消しが行えるという内容だと思っております。

 基本的に、困惑をしていないというケースは非常に少ないというのが消費者庁の見方だと思いますが、不法行為として、客観的な事実として立証できるのではないかということを言っています。

 しかしながら、教義を信じ続ける人、つまり目が覚めない人、それから二世の方のように、そもそも物心ついたときから教義を当たり前と思っているような場合は目が覚めることはないので、意思決定における瑕疵は認定されないということで、本法案では救済できないのではないかと思いますが、この点についてお伺いいたします。

河野国務大臣 御指摘のような事案につきましては相談体制の整備も必要となるわけでございますので、関係省庁連絡会議において、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策というのを取りまとめております。

 そこでは、法テラスの抜本的な充実強化、あるいは宗教二世も念頭に置いた精神的、福祉的支援の充実、及び、子供、若者の救済について、各関係機関で実施する具体的な諸施策を明記し、これについてそれぞれが連携して取り組んでいくということが確認をされております。

 政府として、引き続き、こうした取組を通じて被害者の救済に万全を尽くしてまいりたいと思います。

青柳(仁)委員 法案がこのまま成立したとしても、政府として努力を最大限行うという御答弁をいただいたものだと思いますが、それ以前に、やはりこの法案に関して、そもそも旧統一教会の献金被害の実態からすれば、禁止行為ではなくて配慮義務規定の対象行為、自由な意思の抑圧、本人や家族の生活維持を困難にすること、そして正体を隠して寄附の使途を誤認させること、これが核心ではないか、こういうふうに思うわけです。やはりここは、配慮義務を禁止事項というところで扱うべきではないかと思っております。

 それに際して、明確な定義ができないというようなお話がありましたが、昨日の参考人質疑の中でも、旧統一教会に関して言えば、どのようなやり方で、行為で本人に配慮義務に書いてあるような状態をつくっているかというその被害実態は、もうほぼ完璧に書き出すことができるというふうにおっしゃっているわけなんです。

 ですから、外形的にこれを捉えて、明確な団体の行為として認定することも可能だと思うんですけれども、この点についてお伺いいたします。

河野国務大臣 禁止行為というのは、法人がどのような行為をしてはならないのかを的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定するべきと考えております。

 配慮義務につきましては、適切な判断をすることが困難な状態など、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態の方を規定しております。

 これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止対象行為を規定する禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為の認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果は高いというふうに考えております。

青柳(仁)委員 幅広い行為を捉えることよりも、捉えた行為をしっかり不法行為として認定することの方が大事ではないかということを申し上げているんです。今の配慮義務の幅広く捉えた行為では、裁判において民法上の不法行為に認定され、そして損害賠償の請求に直結するものではないという見解は、これは様々な、参考人を含む弁護士の方々からも示されております。

 この配慮義務の部分は、幅広く捉えることよりも、捉えた行為をきちんと裁判において不法行為に認定すべきである、そこをしっかりと法律で担保すべきだと思うんですけれども、この点について、いかがでしょうか。

河野国務大臣 今の配慮義務の方は、個人がどのような状況になるかという、結果としての個人の状態を規定しております。その状況に個人が陥るためには法人側の様々な行為があるわけでございまして、それを規定していくと今よりも幅が狭くなってしまって救済できないケースも出てくると思いますので、政府案、適当だと考えております。

青柳(仁)委員 ここはもう完全に見解の違いだと思います。そして、我々は我々の考え方の方が合理的だということを自信を持って考えております。幅広く行為を捉えることではなくて、幅広く旧統一教会がやってきたことというのはもう全て書き出せる。

 そして、先ほど来から河野大臣お話ありましたけれども、これは個人の状態を示しています。それは今の条文はそうです。今の条文のまま禁止行為にしてくださいとは申し上げていません。そうではなくて、団体がそのような状態に個人を陥らせるための行為というのは全て書き出すことができるのだから、そこをやるべきだ。

 おっしゃるとおり、今の配慮義務の書き方の方が幅は広いかもしれません。しかし、幅を広げることではなく、不法行為としての認定の可能性を高めることがまさに被害者救済につながるのではないかということを申し上げているわけです。

 そういった意味でも、この点はこれ以上話をしても見解が近づくことはないと思いますが、そういった観点からも、やはり今の配慮義務に関しては一定の行政措置を取る、こういうことを、でき得ればやはり刑事罰までつけるというところが非常に重要だと思います。刑事罰の内容が何であれ、刑事罰を受けた団体というのは当然、解散命令の対象として極めて大きな影響を受けるわけですし、それに類するような報告や勧告あるいは命令といったものも、一定の効果があるのであれば、やはりそれはでき得る限りつけていくべきだ、このように考えております。

 続きまして、これも何度かお話が上がっておりますが、第四条の禁止行為の六における必要不可欠についてお伺いいたします。

 今、第四条の六において禁止行為として認定されるには、不安をあおるとかそういった行為をされた上で、これは必要不可欠だというふうに言われる必要がある。この必要不可欠の不可欠というのが余りにも重過ぎて、対象が狭くなり過ぎるんじゃないかという指摘は様々な党からあるわけですけれども、我々もそのように思います。しかも、その上で、必要不可欠な上で困惑をしていないと禁止行為にならないわけです。

 つまり、必要不可欠で困惑をするという二重の要件を満たす事例というのは、これは弁護団の方々の御意見を聞いておりましても、こういう事例は非常に少なくて、大半の被害者というのは対象とならずに救済できないのではないか、こういう懸念が示されておりますが、この点についてお伺いいたします。

河野国務大臣 繰り返し申し上げているわけでございますが、必ずしも必要不可欠という言葉をそのままに告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能だと考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くは、そのような必要性や切迫性を有していると考えております。

 また、寄附をする際に困惑していたと認められるか否かは、個別具体的な事案における事実関係にもよりますが、本人が困惑した、あるいは困惑していたと主張することにより立証することが可能だと考えられます。例えば、寄附に至るまでの経緯、状況等の諸事情から困惑していたと主張し、それが認められる場合には寄附者の取消権が生ずると考えられます。

 以上のことから、悪質な寄附の勧誘にあっては、いずれの要件も満たす事例として該当することが多いと考えております。

青柳(仁)委員 ちょっと今、説明が幾つか混在していたんですが、困惑に関しては先ほど申し上げたとおりです。目が覚めない以上は困惑としては認定されないわけですから、そこは対象は除外になるということです。また、必要不可欠についても、今はこれまでの御答弁を繰り返されただけだと思います。

 ただ、その答弁自体が一定意味があるものだとは思っておりますが、しかし、やはり何が必要不可欠なのか。これは、必要不可欠の言葉を出さなくてもいい、それはそれだけの切迫性があれば大丈夫だという話なんですが、そこはやはり、どういう場合が必要不可欠に当たるのか、そうでないケースはどういうものなのかというのをきちんと明文化して、一定のガイドラインをやはり示すべきだと思います。

 そこで、本会議において、岸田総理が我が党の漆間議員の答弁において、必要不可欠の規定の趣旨については、法成立後、法律の解釈においても明確にしてまいりますということをおっしゃいました。

 これは具体的にどのように明確にするのかということをお伺いしたいのと、もう一つ、やるんでしょうから、そのやるときに、もう少し分かりやすくしたらどうかと思うんです、この条文を。この重大な不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠である旨を告げるという文言は、非常に曖昧です。これはなぜ曖昧かというと、必要不可欠なという形容詞ですね。程度をどう表していいのか。形容詞の程度を表そうとすると、なかなかこれは難しいと思うわけです。

 ですから、例えば、その重大な不利益を回避する重要な手段と称して寄附を要求することとしてはどうかと思うわけです。この重要な手段というのは名詞ですから、これに対して具体的な場合分けをした方が、岸田総理が本会議でおっしゃっていたような、法律の解釈において明確にしていくという趣旨の中でより容易なのではないかと思いますが、この点についてお伺いいたします。

河野国務大臣 総理の答弁にありました法律の解釈につきましては、理解しやすい解説資料を消費者庁のホームページで公開するなど、正しい理解に資するものとするために可能な取組を行っていきたいと思っております。

 繰り返しですが、必要不可欠と同程度の必要性や切迫性を示すものとしては、例えば、絶対に必要、この方法以外にはない、そういったものが適用されると考えられており、それらが必要性や切迫性を示しているかどうかについては、その勧誘行為全体で判断されるべきものであります。

 また、重要な手段というふうにする場合には、一般に許容されている宗教活動などにまで対象が広がってしまいかねず、必要不可欠とまで告げて寄附を迫るものは、その分、真に取り消すに値する程度に悪質性が高いと考えております。

青柳(仁)委員 まず法案成立後の努力をしっかりして、明文化するなりQアンドAを作るなりで、この必要不可欠なという言葉について、より裁判、あるいは団体に対する抑止の観点でも、何をやっちゃいけないのかというのが明確になるように、そこは政府の努力を引き続き求めていきたいと思っております。

 加えて、今御答弁あったように、重要な手段としてしまうと一般的な宗教行為が全部含まれてしまうのではないかという問題なんですが、ちょっとここは、私はそうは思わなくて、私もこの件、地元の神社とかお寺とかをたくさん回って、皆さんのお話を聞いてみました。

 そうしたら、ほとんどの方が、非常に我々は我々のやっていることに誇りを持っていると。宗教といっても神道だとか仏教だとか、キリスト教もそうだと思いますが、文化と伝統に根差した、歴史に根差した宗教として、その教義が皆さんの、多くの人の幸せを願って本当に活動していらっしゃる宗教団体の活動と、それと、今回のはカルトですよね、カルト集団の、カルト教団の活動というのをやはり一緒くたにされたくない、逆にということをおっしゃっているわけです。ですから、少なくとも配慮行為がある中で、禁止行為についてもそうですが、こういう不安をあおって寄附をやるとか、そんなことはやったことないという方がほとんどでした。

 様々な業界団体の声は、自民党、政府として聞いていると思いますが、必ずしも業界団体の偉い人の声がその業界団体の全ての人の総意というわけではないと思いますので、その辺りはやはり実態を踏まえた上で、今回はこの旧統一教会のような、こういったカルトに対する規制をしっかりと、カルト規制ではありませんが、カルトのやる行為に対する規制をしっかりとかけるというところをやはり重視していくべきではないかと考えておりますし、これまでも訴えてきたところであります。

 次に、宗教二世の方の救済についてお伺いしたいんですけれども、今回、未成年者が、宗教二世の方が、もし、今回の法案に基づき債権者代位権の特例措置というのを行使する場合には、特別代理人というのが必要になります、未成年ですので。その際に、行政官というのは特別代理人にはなれません。

 つまり、実際のケースを考えると、宗教二世の方が未成年だった場合、まず、親の意思に反して裁判を起こすということをやらなきゃいけないんですね。しかも、親の意思に反して、大体、相談に乗ってくださっている児童相談所の職員だとか、そういう行政の方々ではない誰かを見つけてきて、その人に特別代理人になっていただいた上に、訴訟を起こさないといけない。能力とか環境が許さないとそもそも思うんですが、その上で更に特別代理人をという二重のハードルになっているわけです。

 これに関しては非常に問題だと思っておりまして、この二重のハードルを越えられる未成年、子供というのは一体何人いるんだろうか。ほとんど思い当たらないんですけれども、この法案では今苦しんでいる宗教二世は救われないと率直に思うんですが、政府としてその点についてはどのようにお考えでしょうか。また、これは総理にお伺いしたいんですけれども、どんな手だてが考えられると総理はお考えでしょうか。

河野国務大臣 債権者代位権の行使の前提として、扶養義務等に関する定期金債権を確定するための裁判手続を取る場合、あるいは債権者代位権を訴訟で行使する場合には、親権者と子との利益が相反する行為に該当すると認められれば特別代理人が選任されることになります。

 その際、扶養義務を果たしておらず、ネグレクトに当たるような場合には、児童養護施設や児童相談所の職員において、特別代理人に選任されることは想定されませんが、事実行為として、特別代理人の選任の手続を紹介したり、法テラスの利用をサポートすることが考えられます。こうした点についてもQアンドAの作成などの対応を行ってまいります。

 このように、法テラスを中心に、児童相談所などの関係機関との連携を強化し、未成年者に対する支援の充実を図ってまいります。

 また、新法や改正法は、原則として施行日以降の寄附の勧誘について適用されるものでありますが、消費者契約法の改正法案では、霊感等による知見を用いた告知の場合の取消権の行使期間を延ばした上で、時効が完成していない現行の取消権の行使期間も延ばすこととしております。これにより、現在、被害に遭っている方の救済範囲を広げることができると考えております。

 さらに、新法案の配慮義務につきましては、それ自体が遡って適用されることはありませんが、寄附行為に当たっての規範を示すものであり、こうした規範は、過去の寄附に関する被害についての民法上の不法行為の認定あるいはそれに基づく損害賠償請求の裁判の実務においても考慮される可能性があると考えております。過去、いわゆるマインドコントロールを受け、現在も不安を抱いている方に対し、その不安に乗じ寄附勧誘を行うことを禁止行為とすることで、新たな被害の発生を抑制する効果もあると考えているところでございます。

岸田内閣総理大臣 政府としてどう対応するかという御質問ですが、具体的な対応は、まず今河野大臣から説明させていただいたとおりであります。そうした、今説明させていただいた対応が今度は適切に行われるために、法テラスを中心に、児童相談所等の関係機関との連携を強化し、未成年の宗教二世の方等に対する支援、政府としても充実をさせていくことは重要であると認識をしております。

青柳(仁)委員 政府としての努力というのは最大限やっていただきたいと思うんですが、河野大臣の答弁の半分以上は私の質問に対するものではありませんでしたので。内容に関しては、やはり私が申し上げたとおりで、二重のハードルがあるという、この点については認めているということだと思います。

 これは法律として、未成年者であるから、親の意思に反した訴訟を起こさなければならないという状況で、また、親ではない外部の、行政官でもない特別代理人がいないと訴訟を起こせない。恐らくほとんどの子供は不可能だろうと思うわけですけれども、ここがまさに冒頭申し上げた話で、被害者の救済を行うという目的が果たされなければ、やはり法律の意味はないと思うんです。

 限られた法技術の中で、法治国家としての法律の枠組みの中で最大限の努力をしましたと。それは、先ほどのアプリの例ではありませんが、私の持ち得る技術と、そして今の世界のテクノロジーによって最大限のアプリを作りました、でも誰もこれを使いませんねとユーザーに評価されたらおしまいなわけです。ですから、そういうところをまさに感じるのがこの点にあります。

 この点は、今後の法の実効性を、今河野大臣からも様々な政府の努力、今後の努力というのをお聞かせいただきましたが、そういったことを含めて最大限行っていくべきだと思っております。

 それから、法案のたてつけについてお伺いします。

 これも、そもそもという話なんですが、今回の法案は、あらゆる寄附の一律の規制案になっております。これは主語が法人等なんですね。ここが私は最大の問題だと思っておりまして、旧統一教会のようなカルトの組織、団体の行為を規制することがやはり主眼にあるわけです、被害者の救済ということを考えれば。であれば、本来は、なぜ宗教法人に限らず、寄附が活動資金となっている様々な団体が対象になってしまうのか。そうすると、当然、法技術的には様々な制約が生まれてきてしまうわけです。

 宗教法人でもない、カルトでもない通常の教団、通常の宗教団体に対してもそこを配慮しなきゃいけなくなるわけですけれども、もう少し、やはり本来ではカルトというところを定義して、そこを規制する法律にすべきだったと思いますが、そうでなかったとしても、救済範囲が狭く使いにくいものに今なっていると思うんですが、ここは宗教法人に規制対象を絞っていれば、ある程度、もう少し深く規制をかけられたのではないかと思いますが、なぜそうしなかったのか、理由についてお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 新法案は、宗教法人以外が行う不当な寄附勧誘も対象とすべきものであり、宗教法人に絞る必要はない、このように政府としては考えました。

 宗教法人を対象とするか否かに関係なく、新法案においては、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為について、現行の日本の法制度の下で最大限措置を講じております。このことによって、救済の範囲が狭くなったという御指摘は当たらないと考えております。

青柳(仁)委員 救済の範囲が狭くなったという言葉はちょっと語弊があるかもしれません。救済の仕方が浅くなったと言った方がいいと思います。

 もう少し、裁判における不法行為、先ほど来から議論させていただいております困惑の定義、あるいは必要不可欠の話、それから債権者代位権の特例の行使の話、これは今まで御指摘してきたとおりです。非常に問題があると私は思っております、法律の実効性ということを考えれば。

 ですから、そういった実効性の難しさ、これは、先ほど来から言っているとおり、法技術、法体系の中で最大限の努力がここだということなんだとは思うんですが、そういう難しさを発生させてしまっているのは、そもそもが、主語が法人等、全ての、広く、あまねく様々な団体を規制対象にしたからだと思っているんです。

 そして、今、岸田総理の方から、政府がそういうふうに思っているということ、なぜ今回、宗教法人に限らず、広く、あまねく様々な団体を規制対象にしたのか、それは政府がそう思ったからですというだけの答弁だったんですが、ただ、それは、今回、冒頭、総理と大臣と二人にお伺いしたとおり、救済を目的とした法案なんだ。何の救済ですか。この議論は何で今やっているんですか。旧統一教会を中心としたカルトに対する被害者ですよね。であれば、本来は、主語はカルトであるべきです。

 それから、そうでなくても宗教法人であれば、これは様々な言い分があると思いますが、我々、法律を検討する中で、この主語を限っていれば、もっともっと、裁判において不法行為の認定は容易であったと思いますし、今言われているような法律上の問題は、こういった議論もなかったというふうに思っておりますので、この点はしっかりと考えていく必要があると思います。

 最後に、冒頭申し上げたとおり、今回の審議、今の私の指摘の中でも、やはり解決されていないこの法案の問題というのはたくさんあります。ですから、こういった明らかになった法案の足らざる点については、条文の修正、附帯決議を最大限、これは日本維新の会、立憲民主党始め野党の方からも出させていただいておりますので、これを可能な限り取り込んでいただいて、そして、仮に法律が成立したならば、今後も必要な見直しを行っていくと同時に、最大限の行政努力、先ほど来から繰り返し述べられておりますけれども、実効性を高める努力を政府として行うべきではないかと考えております。

 今日は、被害者の方も傍聴席にいらっしゃっているということですが、やはり、救われるべき対象の被害者の方々は、行政のリーダーであり責任者である総理大臣、そしてその担当大臣である河野大臣、こういったお二方の決意といいますか、コミットメントの一言が非常に、心を安定させる上で、そしてまた、これからの希望を持つ上で重要なんじゃないかと思いますが、お二人から一言ずついただければと思います。

河野国務大臣 消費者庁としても、この法案が実効性あるようになるものをしっかりやってまいります。

岸田内閣総理大臣 まず、法律施行後の見直しについては、法律の執行の状況及び経済社会情勢の変化を勘案し、しっかりと検討を行ってまいります。

 また、法律の実効性を高めなければならない、これは御指摘のとおりであります。法律の実効性を高めるべく、法律の解釈の明確化、あるいは相談体制の充実、こうしたものに政府としてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

青柳(仁)委員 今回、様々な法案作成のプロセスにおいて、総理を始め与党の皆さんとともに様々な議論をさせていただいてきましたが、そういった中で、一定の共通する思いというのはあったのではないかと思っておりまして、総理から、この法案をしっかりと今国会で成立させるように、こういう指示が下ったことも、与党内を動かした非常に大きな力だという意味で我々は大変高く評価をしておるところですが、それに対して、今の河野大臣の答弁は大変残念です。せめて主語は、私はというふうに言っていただきたかった。消費者庁はこうしますということではなくて、やはり、行政のトップ、リーダーとして、その決意をお伺いしたわけですから、そのようなお言葉を聞きたかったなと思います。

 もう一点、あと二分ほど残っておりますので、もう一つだけちょっとお伺いすると、今回の、ここに至りますと、最終的に、答弁の中で政府がどのような事例は救済の対象になるのかということを言っていただける、そういうことが非常に重要だというふうに考えております。

 そういった中で、これは協議の中で出てきた言葉なんですけれども、この場で確認をさせていただきたいんですけれども、第四条六の必要不可欠が対象としているのは、当該個人又は親族に対するものというふうになっております。これについては、まだ生まれていない子供の不幸とか、あるいは親族でない恋人の不幸、あるいは先祖が苦しんでいると言われた場合、こういうことが実際に旧統一教会の事例では出てくるわけなんですが、これは、親族とかあなたじゃないから駄目だということではなく、それが自分の不幸だと感じるなら適用されると考えてよいか。

 この点は、消費者庁との内々の協議の中では、そうだというお答えを聞いておりますが、改めて、ちょっとこの場でお伺いいたします。

河野国務大臣 勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えております。

青柳(仁)委員 適用可能だということで確認させていただきました。

 引き続き、我が党としては、冒頭申し上げたとおり、最後まで被害者救済につながるような実効性の担保ということに向けて、最大限の努力を行っていきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、田中健さん。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 この間、与野党の協議の中で議論が進んでまいりまして、新法案がまとまり、今日採決に至ることになりました。これまで関わられた多くの関係者の皆さんに感謝申し上げるとともに、私も、この間、本会議またこの委員会でも質疑をさせていただきました。確認も含めて、総理にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、配慮義務違反と被害者の家族の救済についてです。

 新法案の第三条に定める配慮義務に違反して寄附を集めることが、これは民法七百九条の不法行為に当たり、損害賠償請求の対象となるということが議論をされてきました。

 さらに、寄附により生活が困難になった家族、配偶者やお子さん、扶養親族も、被害者として民法七百九条の不法行為による損害賠償の今度は当事者となり得るということでまずよろしいかということを、総理に確認をいたします。

岸田内閣総理大臣 配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定や、それに基づく損害賠償請求が容易になると考えています。

 また、配慮義務の規定では、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。これによって、家族自身を当事者とした民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、家族の被害救済の実効性を高めることができると考えております。

田中(健)委員 今回、寄附の勧誘に関する禁止行為も定めまして、違反する法人には刑事罰や行政罰も科されることにはなりましたけれども、なかなかそれが直接被害者の救済につながるのは難しいということでありまして、やはり、民法七百九条の不法行為による損害賠償請求を活用していく、また、それがしやすくなるようにと今総理からありましたけれども、それが大変重要なことだと思っています。

 損害賠償請求自体は、議論がありました過失と違反性、これを一件一件認めていくというのは大変なことではあるんですけれども、旧統一教会の被害者に関しては様々な事例が今積み重なってきていますので、三条に求める家族への配慮義務違反、これに対して損害賠償請求が有効に働いて、違法献金の取戻しが一件でも進むことを期待するところであります。

 引き続きまして、新法と宗教法人法との関連について伺います。

 新法案の第三条二項、家族への配慮義務違反というのは宗教法人法の第八十一条一項一号の法令違反に当たること、また、正体隠し、身分を偽っての伝道、これも大きな問題として議論されてきましたが、これも、第三条の三項、配慮義務違反になると同時に、宗教法人法の第八十一条一項二号の「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」に当たる。これは昨日の委員会でも確認をさせていただきました。

 これらを加味しますと、新法の第三条に定める配慮義務に違反して寄附を集めることが、一つは組織的であり、また一つは継続的であり、さらに悪質な形で行われていた場合には、宗教法人法の八十一条第一項に基づく解散命令の対象になり得るということでよろしいでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日も副大臣の方からお答え申し上げましたが、新法案三条の配慮義務につきましては、法人等に対して、寄附の勧誘を行うに当たっての法律上の義務を定めたものと承知しております。このため、新法案三条の配慮義務に違反する行為は、宗教法人法八十一条一項一号の「法令に違反して、」に該当し得ると考えております。

 宗教法人法の解散命令は裁判所が行うものでございますが、個別の宗教法人について解散命令請求を検討するに当たりましては、所轄庁等において把握した事実関係を踏まえ、宗教法人法に基づき、行為の組織性、悪質性、継続性等をその個別事案に応じて判断していくこととなり、その上で、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる場合には解散命令の要件に該当すると考えられます。

田中(健)委員 昨日、副大臣の方にも文部省から来ていただきまして、お答え願いましたが、これは、本会議でも私、総理に質問をさせていただいたときは、この組織的、継続的、悪質な形という前提の下の質問をしなかったものですから、これがしっかりと認められた場合には解散の対象になると今お話がありましたけれども、総理にも同じようにお聞きしますが、その認識でよろしいでしょうか。

岸田内閣総理大臣 もちろん、個別の事案に応じて判断するものでありますが、基本的な考え方は、今政府委員の方から答弁させていただいたところが政府の方針であります。

田中(健)委員 新法と宗教法人法とが連携しているというか、関係があるということの確認をさせていただきました。

 引き続きまして、今度は本法七条における勧告、命令、公表であります。

 これは、先ほど、長妻議員を始め、ほかの議員の皆さんからも、寄附に対し禁止行為があった場合、どこに報告や相談をするのかということが聞かれておりまして、御答弁の中には、国民生活センター、法テラス、また各都道府県にあります消費生活センターということでありました。

 この勧告、命令、公表は、第四条及び五条の禁止行為の実効性担保のために行政庁における行政措置を位置づけるということで、強い権限でもあります。だからこそ、しっかりとした確認をさせていただきたいと思っておりますが、そもそも、これは禁止行為である上に、更に勧告を出す場合に、何を判断基準とされるのか。被害人数や被害額等の事実を積み上げるのか。今現時点でこの基準等があれば伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 禁止行為に該当する行為の通報や相談については、消費生活センター等の消費生活相談窓口や法テラスにおける対応窓口などを通じて、関係機関で連携して把握してまいります。

 そして、こうした通報を通じ、禁止行為が不特定又は多数の者に対して繰り返し組織的に行われており、社会的な影響が大きいものと考えられれば、報告徴収を行うということとなります。

 さらに、報告徴収を通じ、法人等が不特定又は多数の個人に対して禁止行為をしており、引き続き禁止行為をするおそれが著しいと認められるときは、勧告の対象となります。

 また、勧告を受けた法人等が正当な理由なく勧告に係る措置を取らなかったときは、命令、公表の対象となる。

 このように、通報等も端緒として、報告徴収を活用しつつ、違反事実を積み上げ、勧告等の措置を講じていくことになると考えます。

田中(健)委員 そうでありますと、今回の新法案は施行後からの適用になりますけれども、仮に、法律施行後に、旧統一教会の問題、今、様々な違反行為の報告が上がっていますが、この違反行為というものが積み上がれば、今お話ありました、不特定多数であって、また継続的であって、禁止行為であると現状の報告を私は感じておりますけれども、仮にこの法案が通ったとするならば、統一教会においても、勧告、命令、公表という対象となり得るのかどうか、お伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 これは、まず法律を適用して、様々な報告、通報ですとか、あるいは相談を受けるなど、様々な情報を収集していくことになると思います。

 その上で、委員の御質問は、宗教法人法の解散請求の理由になるかということでありますが、これは基本的に、様々な事案を積み上げることによって、事実を集積した上での対応であります。具体的な事案の集まり具合等を勘案して、法律に従って対応していくということになると考えます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 宗教法人法の解散の関係ではなく、本法七条における勧告、命令、公表というのが、仮に旧統一教会の今の様々な課題を当てはめるならば適用対象となるのかということでありますけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 その点を先ほどお答えしたつもりでありますが、禁止行為が不特定又は多数の者に対して繰り返し組織的に行われており、社会的に影響が大きいものと考えられれば報告徴収になり、そしてさらに、それによって様々な禁止行為をするおそれが著しいと認められるときは勧告対象になり、そして、勧告を受けた法人が正当な理由なく勧告に係る措置を取らなかったときは命令、公表の対象となる。

 このように、報告と勧告と命令、公表、それぞれを法律に従って適切に当てはめていく、こうした仕組みになっておりますので、法律に従って政府として対応するということであります。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 これまで、宗教法人法ですと質問権がなかなか発動されませんでしたけれども、本法七条においても、同じように、課題があるならば報告、命令、公表という手順を取っていくということを確認させていただきました。

 今回、司法や第三者を入れないということで、強い権限になりますし、同時に、これが有効に働くかということ、他の委員からも意見がございました。是非、これを適切に行使するための体制整備、また法執行の実効性を高めるということ、河野大臣からは、今までのじくじたる思いもあったということでありますので、期待をしたいと思います。

 引き続きまして、この七条に関してなんですけれども、与党の修正案においては、配慮義務違反においても勧告、公表の対象となるというふうにしております。勧告内容というのは、新法案においては、七条では、「当該行為の停止」と「その他の必要な措置」とされています。

 まず、この七条においての「その他の必要な措置」というのは、いわゆる取消権によって寄附の返金が可能となる行政措置が含まれているのか、そして、それが今回の修正案においては配慮義務にも適用されるという考えでいいのか、お聞かせください。

河野国務大臣 修正案でございますので、修正案に基づいて政府から見解を申し上げるのは避けたいと思います。

田中(健)委員 それでは、現状における新法案の七条において、その他必要な措置というものであれば、事実上の取消しである行政指導をして、そして返金をすることが可能だということでよろしいでしょうか。

河野国務大臣 適切に法の執行をしてまいりたいと思いますが、一般論として申し上げますと、民事不介入の原則がございますので、返金まで行政指導することは困難と思いますが、法人に対して、返金その他の相談があった場合には真摯に対応するようにということまでは考えられるのではないかと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、冒頭で確認させてもらいました、配慮義務違反による、七百九条の不法行為による損害賠償請求がまず一番の近道であり、これを有効に活用できるように、是非進めていっていただければと思っています。

 引き続きまして、霊感商法について伺います。

 新法案は、寄附を対象としたことで、つぼを売る等の売買には適用とならず、霊感商法は現行の消費者契約法の取消しでしか対応ができません。この議論も、先ほど来、委員の方から出ておりましたが、一部、配慮義務違反の不法行為による損害賠償請求でも当てはまるんじゃないかという答弁もありました。しかしながら、現状では、消費者契約法には配慮義務は課さないということであります。

 是非、これは課題として、包括規制を入れるかどうか、消契法の中でいろいろ議論がこれまでもされてきましたけれども、今後の見直しの際には、更に違った視点で、広く心理的支配を作出及び利用することを禁ずる規定を、これは消契法ではなく刑法にも定めることも視野に入れて、霊感商法対策というのを検討すべきではないかというふうに考えているんですが、総理の見解を伺います。

岸田内閣総理大臣 刑事罰の対象とする場合、構成要件の明確性が必要となるなど、現行の日本の法制度の下、どのような措置が許容されるかについては検討が必要となります。

 ただ、いずれにせよ、法律の執行状況及び経済社会情勢の変化、これらを勘案し、被害救済の実効性を確保する観点から、必要な見直しは行ってまいりたいと考えます。

田中(健)委員 まさに今回の法律に基づく、立法事実としましては、旧統一教会における霊感商法の問題、大変大きな課題でありまして、なかなかそこにまで今回議論が最終的にまとまらなかったわけですけれども、しかしながら、今後も見直しを進めていくということでありますし、まさに今様々な課題があるけれども、検討に値するというふうな私は理解をさせていただきました。

 さらに、私たち、参考にし、現在、党の中でも研究をしておりますのが、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、この法律であります。これが、今まさに霊感商法を組織的に、また大々的に行う、そしてそれが犯罪的な収益の規制も含めているという法律を、これは関連づけて新しい対策が検討できないかというふうに考えておりますけれども、これについて総理の考えを伺えればと思います。

河野国務大臣 刑事罰を対象とする場合には構成要件の明確性が必要になる、あるいは、その他様々、現行の法制度でどのような措置が許容されるかというのは、これは検討が必要だと思います。

田中(健)委員 まさに、刑法への適用というのは大変ハードルが高いことは承知をしております。だからこそ、今、現行法でできることを今回の法案の中には盛り込んだと理解をしておりますけれども、今後、是非、見直しをする際にはこういった観点も取り入れてもらい、ないしは検討に値すると私は考えておりますので、是非参考にしていただければと思っています。

 最後は、法テラスの機能強化であります。

 これは昨日も法務省の方に質問をさせていただいたのでございますが、また、先ほど来、ほかの委員からもお話がありました。法テラスを機能強化する、さらには関係機関と連携をする、利用しやすくする。それは大変いいことでありまして、是非そうあってほしいとは思うんですけれども、先ほど総理からも答弁がありました、法テラスを利用する場合というのは、民事法律扶助制度を使うことになります。その場合は民事裁判の費用は立替えということになり、被害救済を求めてきた方が同時に債務を負うということになりかねません。それでありますと、どうしても一歩踏み出せない、ないしは裁判に持っていけないというようなことも現状で聞いています。

 立替え償還制度というものでは、困窮者の方やまた未成年の信者二世の方が利用しにくいということです。給付制の導入など、利用者の経済的負担を軽減するための実効的な対策、もちろんこれは税金を使いますから、国民の税金をどのように使うかというのは大変難しい課題などありますけれども、是非、この対策に向けての取組を検討していただきたいと思っておりますが、総理の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法テラスの民事法律扶助制度でございますが、限られた財源を用いてより多くの困難を抱えた方を支援するために、立替えによりまして弁護士費用等を援助しているものでございます。この立替金の償還につきましては、被援助者の資力状況に応じまして、免除を含めた柔軟かつ適切な運用が行われているものと承知をしております。

 他方で、委員御指摘の給付制の導入につきましては、本来当事者が負担すべき弁護士費用等を国民の負担とすることが合理的と言えるかという観点から、慎重な検討が必要であると考えております。

 いずれにいたしましても、法務省としては、未成年の信者二世など利用者のニーズを十分把握をいたしまして、現行制度上の課題の有無、内容等について必要な調査検討を行うなどして、支援の充実強化を更に図ってまいりたいと考えております。

田中(健)委員 部長からの答弁、昨日もお聞かせいただきましたので、今の話を聞いて、是非、総理としても、これに前向きに対策、取り組んでいただきたいと思いますが、一言、決意のほどをいただければと思います。

岸田内閣総理大臣 政府としては、未成年の信者二世など利用者のニーズを十分把握し、現行制度上の課題の有無、内容等について必要な調査検討を行うなどして、支援の充実強化を図ってまいりたいと考えます。

田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。

稲田委員長 次に、宮本徹さん。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 昨日、参考人の川井弁護士からは、配慮義務の規定は、統一協会の加害実態から重要な内容を含んだものであり、禁止行為にすべきだと提案がございました。

 配慮義務を禁止行為にすることについて、総理は、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのかを的確に認識できるよう、客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます、こう答弁されてきました。

 総理、この配慮義務の内容というのは、客観的で明確なものとして規定することは可能なんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 委員御指摘のように、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか、これを的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきであると考えています。

 そして、一方、配慮義務の方ですが、行為ではなくして、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果、これに着目をして、個人の状態を規定しているものであります。

 これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とするよりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができると考えています。そして、それを、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償を容易とする効果が高いと考えております。

 要は、禁止行為においては、可能な限り客観的で明確なものとして規定することが必要だということを申し上げた上で、配慮義務については、今言ったように、結果に着目することによってより幅広い行為を捉えることができる、こういった考え方に基づいて二段階の体制を用意したというのが政府の考え方であります。

宮本(徹)委員 配慮義務の内容を客観的な明確なものとして規定することは可能かと聞いたんですけれども、否定はされないわけですよね。

 私たち、今日、修正案を出しております。企業が何をやってはならないのかを明確にして、禁止行為として法案を作ることは十分可能であります。

 加えて言えば、総理は予算委員会で伺ったときは、禁止規定にすると行政措置や刑事罰の適用につながるので明確性が必要だと言っていたんですよね。ところが、今日この後出される、与党も含めた修正案では、配慮義務も行政措置の対象にするわけですよ。となると、裏を返せば、このままでも明確性があるということになるじゃないですか。本当に随分ずさんな答弁になってきていると思いますよ。

 加えて、川井参考人は、配慮義務だけでは裁判所で不法行為と判断されるかは極めて不透明、ほとんど役立たない、こう述べておられます。ところが、先ほど総理は、禁止行為とする場合よりもより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及び損害賠償請求を容易にする効果が高いと、全く反対のことをお述べになったわけです。

 一体何を根拠に総理は、統一協会相手に長年裁判で闘ってきた弁護士とまるっきり反対のことをおっしゃるんですか。

岸田内閣総理大臣 先ほども答弁させていただきましたように、禁止行為は、個人の寄附の意思表示をゆがめる法人等の具体的な勧誘行為を規定しています。他方で、配慮義務については、個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥るなどの結果を招かないよう、寄附勧誘の際の配慮義務を課す、このように法律を用意いたしました。このような配慮義務を規定することで、不当な寄附行為についてより広く包括的に捉えることができ、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償が容易となり、被害救済の実効性が高まる、このように考えた次第です。

 そして、法律の施行後、法律の執行の状況等も勘案し、必要な見直しを行うこととしており、この中でこうした効果についても確認してまいりたいと考えます。

宮本(徹)委員 同じことを繰り返されているだけなんですけれども、総理は、では、統一協会の被害にピンポイントを当てた場合でも、禁止行為よりも配慮義務の方が民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果が高い、こうお考えなんですか。

岸田内閣総理大臣 これは先ほどから言っておりますように、禁止行為は、具体的な行為を禁止するものであります。それに対して配慮義務は、寄附勧誘を受ける個人が適切な判断ができないような状態に陥るという結果を招かないようにするものであります。配慮義務の規定は、こうした結果を招く様々な寄附勧誘行為を包括的に捉えることができるからこそ、被害の救済、防止に資するものであると考えています。

 被害の回復、救済の手段として裁判実務において最も活用されているのは、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求であるからして、その活用を容易にすること、これが被害救済実務の実効性に寄与することになると考えております。

宮本(徹)委員 全く説得力を欠く説明だと私は思いますよ。禁止規定にした方が被害防止効果は高い、そして裁判でも闘える、これは弁連の皆さんが言っていることなんですから。それを、根拠も示さずに、逆立ちのことを言わないでいただきたいと思います。

 四条六号について伺います。

 寄附に際して、不安をあおり、又は不安に乗じて、不利益の回避のためには寄附が必要不可欠と告げることで困惑をさせてはならないということなんですけれども、念のために確認しますけれども、四条六号は、この四要素、時系列と因果関係を満たさなければならない、こういうことでよろしいですか。

稲田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

稲田委員長 速記を起こしてください。

 岸田総理大臣。

岸田内閣総理大臣 今、委員の言う質問は、時系列的に因果関係があると……(宮本(徹)委員「時系列と因果関係と、それぞれありますよね、四要素の」と呼ぶ)

稲田委員長 もう一度、では、宮本委員、質問してください。

宮本(徹)委員 いえいえ、この四条六号の四要素というのは、時系列も入っていますし因果関係も入っていると思うんですけれども、これは満たさなきゃいけないということでいいですねと。それはそうですと言ってもらえればいいだけです。

岸田内閣総理大臣 因果関係、これはもちろん必要であります。ただ、時系列というのは、要するに順番に来ないと満たさないというような御指摘であるならば、それは必要はないと思います。

宮本(徹)委員 いや、因果関係はあるわけですよね、必要不可欠と告げることで困惑させてはならないというのは因果関係があるんだから、時系列も入っているわけですよ、ここには。

 その上で、川井参考人からは、入信から寄附の勧誘までタイムラグがあり、献金するときは必要不可欠とも言われず、困惑もなく、進んで献金している事例の紹介がありました。

 本会議での、入信と寄附勧誘のタイムラグがあるケースの私の質問に対して、総理から答弁で、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附の勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附を勧誘すれば取消権の対象になる、こう答弁がありました。

 不利益の回避のために寄附が必要不可欠と告げることで困惑させてはならない、この条件はこの総理の答弁のどこに入っているんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の答弁は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できない場合であっても、寄附時点で不安を抱いており、それに乗じる形で寄附の勧誘を受けた場合には取消権の対象となり得るという立法の趣旨を端的に述べたものであります。

 そして、御指摘の、不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠である旨告げ、困惑させてはならない、これは条文に定められた要件でありますので、これは当然必要なものであると認識をしております。

宮本(徹)委員 そうなんですよ。

 ですから、取消権の対象になるというふうに説明する際は、当然、四要件を因果関係も含めて全て満たす必要があるのに、四要件を説明をちゃんとせずに、取消しの対象になるという答弁をするのは、大変誤解を招く答弁だと思いますよ。必要不可欠と告げることで困惑させてはならない、これがあるために救済の対象はぐっと狭まるわけですよ。それを言わずに、何かそれを抜いて、取消しの対象になります、なりますなんて、本当に甘い答弁だと思います。

 もう一点お伺いします。

 総理は本会議の答弁で、事後的に寄附当時に困惑していたと考えた場合には取消権の対象になると述べておりますが、四条六号は禁止行為で、行政措置、刑事罰の対象でございます。行われた客観的行為は同じなのに、事後に困惑したと考えれば行政措置、刑事罰の対象となり、マインドコントロール状況のままでは行政措置、刑事罰の対象とならないということなんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 勧誘等の行政措置に当たっては、被害者がマインドコントロールにかかっていたかどうかにかかわらず、相談窓口への情報提供なども端緒とし、国として報告徴収を行い、法人等がこうした禁止行為に該当する行為を不特定多数に対して行っていないか、確認を行うこととなります。

 このため、例えば、寄附者本人がいわゆるマインドコントロール状況のままにあり、取消権を行使しない場合であっても、家族等からの情報提供を基に、法人等への報告徴収を経て、不特定多数への禁止行為を行っていることが明らかとなった場合には、行政措置等を行うことはあると考えています。

宮本(徹)委員 そういうケースもあるということですね。

 ただ、同時に、この取消権ということでいえば、本人が事後で言えば取消権の対象になり、事後に言わなければ取消権の対象にならないというのは、これは大変法的安定性を欠くと思います。

 この間、この委員会でも、寄附に際して、困惑、必要不可欠、これが議論になってきたわけですけれども、私、困惑類型にこだわるから、弁連の皆さんが言うように、救済の範囲が狭く、そして後に解釈に疑義が生じかねない答弁、法文からそのまますっきりは読めないような答弁、こういうのが続いているというふうに思います。

 そこで、私たち、会派として修正案を提出させていただきました。衆議院法制局に本当に御尽力もいただきまして、配慮義務規定を禁止規定にして、困惑類型でない類型を盛り込みました。

 少し略して紹介しますが、法人等は、当該個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は当該個人がそのような状態に陥っていることに乗じ、寄附の勧誘はしてはならない、こういう文言でございます。

 統一協会のマインドコントロール下の献金をこの方が的確に禁止して、被害防止、被害救済につなげられるというふうに私は思うんですね。総理、そう思いませんか。

岸田内閣総理大臣 新法案では、いわゆるマインドコントロールによる寄附について、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限禁止行為や取消権の対象としております。具体的には、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため取消しを認めるという考え方に基づき、条文の整理を行ったものです。

 なお、利益の追求のための寄附については、これは信教の自由や幸福追求権との兼ね合いで、禁止行為にまで規定することは困難だと考えます。他方で、それが意思決定の自由を損なうような勧誘の方法であれば、今回政府案で盛り込む配慮義務規定に反する、こうしたことになると考えております。

宮本(徹)委員 困惑類型では対象が狭過ぎる、しかし、配慮義務規定を設けたといっても、配慮義務規定では禁止行為にはなっていない、抑止効果が弱い、だから修正してほしいということを弁連の皆さんはこの委員会にも来ておっしゃったわけですよね。

 私たちが今回法案で提出している中身というのは、何もとっぴなことを言っているわけじゃないんですよ。消費者庁の報告書の中でも、マインドコントロール下にあって合理的に判断できない状況が問題となる寄附、こういうものについては、一般的な禁止規定を設けるべきだ、こういうことを河野大臣の下での検討会の報告書でも書かれているわけですよ。それを素直に法案化すればいいわけですよ。なぜそれを素直に法案化しないんですか。

 総理、統一協会は半世紀にわたって被害を広げてきました。そして、長年、自民党の政治家の皆さんは、残念ながらこの統一協会の広告塔の役割を果たしてきたわけですよ。その中でこの被害が広がってきたわけですよ。それだけに、私は、総理には統一協会の被害を防止する実効ある法案を作る責任があると思いますよ。長年闘ってきた弁連の皆さんが言っていることは、本当に裁判で闘う上でもこの配慮義務規定は禁止規定にする必要がある、こう言っているわけですから。

 やはり、この間の政治的な責任も踏まえて、私は、配慮義務規定の中身は禁止規定にしていく、そういう責任が総理にあると思いますよ。そうお考えになりませんか。

岸田内閣総理大臣 まず、政治の立場から、現実にこれだけ多くの被害者がおられるということは重く受け止めなければならないと思います。だからこそ、今の日本の法体系の中で最大限どのような法律を作ることができるのか、様々な手法を駆使して法律を作成したということであります。

 いろいろな議論があり、意見の違いはあるとは思いますが、こうした禁止行為と配慮義務規定、二段階の法律を用意したということについても、先ほどから申し上げておりますように、できるだけ現実に即して、多くの方々を救うために、より幅広く行為を捉えるためにこうした工夫をしたということであります。

 是非、現実にしっかり対応できる法律を用意し、更に実効性を高めるために、政府として、様々な解釈について明らかにするとともに、様々な支援を、環境整備を行っていかなければならないと考えています。そういった思いで、政府として引き続き努力をしていきたいと考えます。

宮本(徹)委員 しかし、残念ながら、弁連の皆さんからは、防止効果は弱い、救える対象は狭いと。

 本当だったら、もっと努力すればいいわけですよ。現在の法体系の下でのぎりぎりの対応とおっしゃいますけれども、ぎりぎりじゃないですよ、総理がやっていることは。ぎりぎりじゃないですよ。私たち、衆議院法制局の力を得て、今の法体系に合う形で、憲法の枠内で、しっかりと禁止行為にできるということも示しているわけですから。ぎりぎりという考え方は、私は大きな誤りだと思いますよ。

 本当にこれで実効あるものになっているのかということを是非考えていただいて、私たちの修正を丸のみしていただきたい、私は、そのことを申し上げまして、質問を終わります。

稲田委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 この際、内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案に対し、本村伸子さんから、日本共産党提案による修正案が、また、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対し、宮崎政久さん外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による修正案及び本村伸子さんから、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。本村伸子さん。

    ―――――――――――――

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案に対する修正案

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

本村委員 ただいま議題となりました法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する修正案及び消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 統一協会側の悪質な献金の勧誘行為や、いわゆる統一協会二世の方々を含むその被害者の悲惨な実態が浮き彫りになっています。長年放置されてきたこの問題の一刻も早い解決は、まさに党派を超えて取り組むべき喫緊の課題です。

 しかし、政府提出の両法律案は、これまでの審議で明らかになったとおり、統一協会による悪質な献金勧誘行為の特徴であるいわゆるマインドコントロールに適切に対処できていないなど、被害者救済や被害の防止にとって極めて不十分です。

 そこで、政府提出の法律案を被害者救済などにつながる実効あるものとし、さらには、見直し期間に家族や二世の方々の救済を検討することを進めるために、この二本の修正案を提出した次第です。

 次に、二本の修正案の主な内容について御説明を申し上げます。

 まず、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する修正案について申し上げます。

 第一の修正項目は、法人等が寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務に関するものであります。

 政府提出の原案では、第三条として、法人等が寄附の勧誘を行うに当たって、個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすること等、同条各号に掲げられた事項に配慮しなければならないとの旨の規定が設けられていますが、このような悪質な行為は、配慮義務などにとどめるべきではなく、端的に禁止をするべきです。本修正案では、この規定を禁止規定に修正することとしております。

 また、この禁止規定の施行に関し必要と認められる場合には、法人等に対し、寄附の勧誘に関する業務の状況に関して必要な報告を求めることができるようにするとともに、禁止規定に違反する場合のうち、一定の場合には、勧告、命令の措置を取ることができるようにすることとの修正をしております。

 第二の修正項目として、生命保険契約の解除により寄附のための資金調達をするよう要求することが禁止されることを明らかにするとともに、寄附のために処分を要求することが禁止される財産の範囲を拡大し、個人等の生活を維持するために必要な財産が含まれるよう修正することといたしております。

 第三の修正項目は、寄附の意思表示の取消権です。

 まず、法人等が寄附の勧誘をするに際して、寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を告げないこと等により個人が誤認をした場合は、これによってなされた寄附の意思表示を取り消すことができることといたしました。

 次に、個人を寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は個人がそのような状態に陥っていることに乗じ、寄附の勧誘をしてはならないとの規定に違反して寄附の勧誘が行われた場合にも、これによってなされた寄附の意思表示を取り消すことができるようにするとともに、この取消権については、時効の特例を定める第九条の規定の対象から除き、民法の規定どおり、追認をすることができるときから五年、行為のときから二十年に伸長する修正を行っております。

 第四の修正項目として、この法律の規定についての検討につき、この法律の施行後三年を目途とする部分を改め、一年を目途に改める修正もしております。

 続いて、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案に対する修正案ですが、本修正案は、先ほど一本目の修正案の中で申し上げた、個人を寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は個人がそのような状態に陥っていることに乗じ、寄附の勧誘をした場合の取消権と同様の規定を消費者契約法の中に盛り込むことを主な内容とするものです。

 なお、両修正案につきましては、いずれも、以上の修正に伴って生ずる条文整理等、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

稲田委員長 次に、宮崎政久さん。

    ―――――――――――――

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

宮崎委員 ただいま議題となりました法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 本修正案は、今国会における質疑の状況はもちろんのこと、これに先立ち開始され、今日まで続いてきた与野党の枠を超えた建設的で、粘り強い、熱心な協議の成果を踏まえて、与野党における真摯な修正協議を行い、被害者救済と被害の再発防止の見地に立った迅速かつ柔軟な合意形成に基づいて、取りまとめたものです。すなわち、この修正は、政府提出の原案における寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務について、その遵守を図るための規定を加えるべしとの御意見等を踏まえ、被害者の救済と被害の再発防止のために、原案を前提に、その実効性と不当な寄附勧誘への抑止力を更にもう一段引き上げたいとの思いに基づいております。

 次に、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、法人等が寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務を定める第三条の規定について、「配慮しなければならない。」とあるのを「十分に配慮しなければならない。」に改めるとともに、同条を第一章の総則から第二章の寄附の不当な勧誘の防止に位置づけるものとしております。

 第二に、配慮義務の遵守に係る勧告等に係る規定を創設しております。

 すなわち、内閣総理大臣は、法人等が配慮義務を遵守していないため、当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合において、更に同様の支障が生ずるおそれが著しいと認めるときは、当該法人等に対し、遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨を勧告することができることとしております。

 そして、内閣総理大臣は、勧告をした場合において、その勧告を受けた法人等がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしております。

 さらに、内閣総理大臣は、勧告をするために必要な限度において、法人等に対し、配慮義務として掲げる事項に係る配慮の状況に関し、必要な報告を求めることができることとしております。

 第三に、この法律の規定についての検討に関して、この法律の施行後三年を目途とあるのを二年を目途に改めることとしております。

 このほか、以上の修正に伴って生ずる条文整理等、所要の規定の整備を行うこととしております。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

稲田委員長 これにて各修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 これより両案及び各修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。本村伸子さん。

本村委員 私は、日本共産党を代表して、消費者契約法等一部改正案に賛成、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対し反対の討論を行います。

 統一協会は、半世紀にわたり、違法な霊感商法、高額献金で人々の財産を収奪し、一人一人の人生を壊すなど、被害を広げてきました。これを放置してきた政府の責任は重大です。被害者の救済、被害の根絶のための新法を作ることは、統一協会の癒着の徹底解明とともに今国会の重要な責務です。

 新法に求められたのは、統一協会の被害の中心であるマインドコントロール下で行われる献金を禁止する法律を作るかどうかでした。

 ところが、政府が提出した法案は、極めて不十分です。昨日の参考人質疑で、被害者救済に携わってきた川井康雄弁護士も、被害実態からすると不足しているところが幾つもあると指摘しました。この意見を受け止め、審議を尽くし、被害救済と再発防止のための実効あるものに修正するのが当委員会の責務ではありませんか。

 そのため、日本共産党は、本日、朝の理事会で修正案を提出いたしました。

 第一に、マインドコントロール下で献金した場合に適用する規制を設けることです。

 統一協会は、高額献金を求めることも秘匿をして、正体を隠し、自由な意思決定ができない状態にし、教義の実践として献金などをさせます。信者は困惑せず、教義への確信、使命感から進んで寄附を行っているように見えるケースが少なくありません。

 また、この間の質疑の中で、政府案では必要不可欠要件によって規制を逃れることが容易となってしまうのではないかとの指摘に応えられていません。

 第二に、配慮義務規定全体を禁止規定にすることです。

 配慮義務として、寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることや、正体を隠して寄附金の使途を誤解させることは、当然禁止されるべきです。

 第三に、法案では、統一協会信者の家族を救済することが困難です。

 債権者代位権の特例は、扶養家族の範囲で、無資力要件があるため、財産を取り戻せるケースは極めて限られています。さらには、禁止される資金調達要求について、生命保険の解除など生活の維持に重要な財産に広げるべきです。

 また、取消権の行使期間は二十年とするべきです。

 被害者や被害救済に取り組む弁護団、統一協会二世の方々の声に応えていくためには、少なくとも我が党の修正案の実現が必要です。極めて不十分な法律をそのまま採決することは認められません。

 以上を指摘し、反対討論といたします。

稲田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、本村伸子さん提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、本村伸子さん提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、宮崎政久さん外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、宮崎政久さん外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。吉田統彦さん。

吉田(統)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案並びに法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、両法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律附則第五条の検討に当たっては、国会における審議において実効性に課題が示された点について検討し、必要な措置を講ずること。

 二 円滑な法運用を可能とすべく、法施行後、政府は速やかに行政措置の基準を示すとともに、配慮義務の内容についても具体例を示すなどして周知すること。

 三 効果的に取消権の行使や配慮義務規定の活用ができるようにするため、政府は、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(以下「新法」という)及び消費者契約法改正案の国会における審議を踏まえて、その解釈について、十分な周知をすること。

 四 禁止行為の違反に対する法人等への勧告・命令を実効あるものとするため、罰則の適用に当たっては、実行者のみが制裁対象となることがないよう併科規定を設けた趣旨を踏まえ、新法の規定内容・趣旨について、関係機関等に対して周知すること。

 五 悪質な勧誘行為を受けたことにより、取消権又は債権者代位権を有している者が、実際にはその取消権又は債権者代位権を行使することができない事態が生じないよう、きめ細かな相談体制を構築するとともに、相談体制の整備に留まらず、権利行使の実効性確保に必要な支援措置を十分に講ずること。

 六 親権者が寄附をしている場合には未成年の子が債権者代位権を行使することは困難であることから、未成年者の子の援助を充実すること。

 七 法テラスの活用については、相談体制を整備するとともに、被害回復に向けた返還請求訴訟等につなげるよう、利用者にとって必要な支援措置を十分講ずること。

 八 親族間の問題、心の悩み、宗教二世を含むこどもが抱える問題等の解決に向け、法的支援にとどまらず、心理専門によるカウンセリング等の精神的支援、児童虐待や生活困窮問題の解決に向けた支援等を一体的・迅速に提供するなどの支援体制を構築すること。

 九 円滑な法運用を可能とすべく、法施行後、政府は速やかに条文解説、Q&Aなどを作成し、ホームページ等において公表すること。また、禁止行為の違反に対する行政措置については、当該措置が十分に機能するよう体制を整備すること。

 十 消費者契約法については、行政措置を導入して民事ルールと相まって被害の防止・救済を実現しようとする新法の意義や配慮義務その他の規定に係る新法の成立過程における国会での議論も踏まえて、第二百八回国会における附帯決議で求められた、同法の消費者法令における役割を多角的見地から整理し直した上で、既存の枠組みに捉われない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方についての検討をすすめること。

 十一 消費者契約法第四十条により、独立行政法人国民生活センター及び地方公共団体が、適格消費者団体に対し提供する消費者紛争に関する情報を内閣府令で定める際には、消費者取引に関連する幅広い情報が提供できるよう検討すること。

 十二 独立行政法人国民生活センターは、独立行政法人国民生活センター法第四十二条第二項による公表について、消費者被害の拡大を防ぐため、事業者の名称を迅速に公表することができるよう体制を整備すること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

稲田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲田委員長 起立総員。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。河野国務大臣。

河野国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

稲田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

稲田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十五分散会


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