衆議院

メインへスキップ



第7号 令和7年4月23日(水曜日)

会議録本文へ
令和七年四月二十三日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 浦野 靖人君

   理事 勝俣 孝明君 理事 中野 英幸君

   理事 松島みどり君 理事 青山 大人君

   理事 大西 健介君 理事 尾辻かな子君

   理事 梅村  聡君 理事 丹野みどり君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上野賢一郎君    尾崎 正直君

      加藤 鮎子君    小池 正昭君

      小森 卓郎君    塩崎 彰久君

      高木  啓君    高見 康裕君

      武村 展英君    中西 健治君

      福田かおる君    三反園 訓君

      若山 慎司君    井坂 信彦君

      石川 香織君   大河原まさこ君

      大島  敦君    酒井なつみ君

      下野 幸助君    松田  功君

      山田 勝彦君    阿部 弘樹君

      西岡 義高君    中川 宏昌君

      沼崎 満子君    たがや 亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            伊東 良孝君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          藤本 武士君

   衆議院調査局第一特別調査室長           松本 邦義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     稲田 朋美君

  野田 聖子君     尾崎 正直君

  福原 淳嗣君     小森 卓郎君

  おおつき紅葉君    下野 幸助君

  山井 和則君     酒井なつみ君

  伊東 信久君     阿部 弘樹君

  角田 秀穂君     中川 宏昌君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     塩崎 彰久君

  尾崎 正直君     福田かおる君

  小森 卓郎君     高見 康裕君

  酒井なつみ君     山井 和則君

  下野 幸助君     おおつき紅葉君

  阿部 弘樹君     伊東 信久君

  中川 宏昌君     角田 秀穂君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     永岡 桂子君

  高見 康裕君     福原 淳嗣君

  福田かおる君     野田 聖子君

同日

 理事伊東信久君同日委員辞任につき、その補欠として梅村聡君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

浦野委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に梅村聡君を指名いたします。

     ――――◇―――――

浦野委員長 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、大西健介君外一名から、立憲民主党・無所属提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。

    ―――――――――――――

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石川委員 ただいま議題となりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、本修正案の趣旨について御説明申し上げます。

 私たちが直面する企業の不祥事や組織の不正は、時に人々の生命や財産を脅かします。さらに、その不祥事や不正を内部から告発する公益通報者が適切に保護されなければ、真実は闇に葬られてしまい、是正される機会を失います。

 反対に、通報者を保護することで、企業や組織が不祥事や不正を早期に改善することができます。つまり、通報者の保護は、個人の権利の保護にとどまらず、社会全体の利益の確保につながるのです。

 こうした意味で公益通報者保護法は、通報者が解雇や降格、減給などの不利益を受けることを明確に禁止し、社会的正義を守る盾となる法律です。

 この法律の実効性を担保するためには、通報者を保護することが何よりも必要です。通報した後に生じるリスクを排除して、通報者がためらわずに通報できるように措置する必要があります。

 今回の改正案では、公益通報を理由とする懲戒や解雇を無効とし、事業者に刑罰を科すとともに、通報後一年以内の立証責任を転換することとしました。この改正自体には、もろ手を挙げて賛成するものです。一方で、消費者庁のアンケートでは、通報した場合の不利益な取扱いとして、解雇や懲戒よりも、配置転換や人事評価上の減点が多くを占めていました。この事業所の花形の部署である営業部にいたのに、一人だけの小部屋に移動させられ、草むしりをするくらいしか仕事を与えられないようなケースもあったと聞きます。現場で多く起きているのは嫌がらせのような配置転換です。現場でまさに直面している通報者保護の課題に真摯に対処すべきです。

 また、政府における今般の検討会では、多くの重要な論点が積み残しとなりました。事例の積み重ねを待つのではなく、速やかに検討を進めるべきです。

 通報者を保護し、ひいては社会全体の利益を確保するという公益通報者保護法の本来の目的を実現するため、これらの課題を解決する必要があります。こうした思いで、本修正案を提出した次第でございます。

 次に、本修正案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、公益通報者の保護の拡大です。

 無効となり、立証責任が転換され、罰則の対象となる解雇等特定不利益取扱いに、不当な配置転換を加えることとしています。

 また、公益通報をするために必要な行為をしたことを理由とする不利益な取扱いを禁止することとしています。

 第二に、事業者が取るべき措置の対象事業者の範囲の拡大等です。

 事業者が取るべき措置に係る義務について、対象事業者の範囲を、常時使用する労働者の数が三百一人以上の事業者から、常時使用する労働者の数が百一人以上の事業者に拡大することとしています。

 また、内閣総理大臣は、通報妨害の禁止及び通報者探索の禁止に関し、事業者が適切に対処するために必要な指針を定めることとしています。

 さらに、事業者が取るべき措置に係る助言及び指導、事業者が取るべき措置に係る違反を是正するための勧告等について、国及び地方公共団体の適用除外の規定を削除することとしています。

 第三に、検討規定について、施行後五年と定められている検討の目途を施行後三年とするとともに、通報対象事実の範囲の抜本的な見直し、公益通報者保護法により保護される者の範囲の更なる拡大、公益通報及び当該公益通報をするために必要な行為に係る刑事上の責任の免除、正当な理由のない通報者探索に対する規制の在り方、公益通報に関する紛争の迅速かつ適正な解決に資する制度の在り方、以上の五つの項目を検討事項として明記することとしています。

 第四に、所要の規定を整備することとしています。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容です。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

浦野委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁政策立案総括審議官藤本武士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中野英幸君。

中野(英)委員 自由民主党の中野英幸でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、本当にありがとうございます。

 本日審議いたします公益通報者保護法は、国民生活の安全と安心を損なうような企業の不祥事による国民への被害拡大を防止するために制定された法律であり、公益通報者を保護するために重要な役割を果たしてきたと認識をいたしております。

 その上で、質問をさせていただきたいと存じます。

 政府参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 公益通報者保護法も、令和二年に改正をさせていただいてから五年がたとうとしておりますが、今回の法改正の必要な理由又は現段階で認識をされている課題があれば教えていただきたいと存じます。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 近年の事業者の不祥事や実態調査結果等から、常時使用する労働者数が三百名超の義務事業者であっても、公益通報に適切に対応するための体制の不徹底や実効性の課題が明らかとなっております。また、近年の裁判例におきましても、労働者に対する不利益な取扱いが通報を理由とするものと認定された事案があります。依然として労働者が通報をちゅうちょする大きな要因となっています。

 一方で、多くの主要先進国では、人権意識の高まり等を背景に、例えば、通報を理由とする不利益な取扱いをした事業者や個人に対する制裁や、不利益な取扱いをした理由の立証責任の転換につきまして法律上の措置がなされる等、通報者の保護の強化が進んでいると認識をしております。

 今回の法改正は、こうした国内外の動向を立法事実として、必要な法整備を行うものであります。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 いろいろなこういった課題もあって、今般の改正案が提出されたものと理解をさせていただきました。

 引き続き、政府参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 従業員数が数千人を超えるような大きな事業所において、内部通報者制度が十二分に機能せず、外部通報によって国民生活の安全と安心を脅かす重大な不祥事が発覚をいたしております。今回の法改正により、事業者や労働者にとってどのような効果が認められるのか、お伺いしたいと存じます。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正によりまして、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備義務が徹底され、公益通報者の保護が強化されることとなります。その結果、労働者等の公益通報が促進をされ、事業者の自浄機能発揮につながることや、行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待されます。これによりまして、不正行為が早期に発見、是正され、国民の生命、身体、財産等の保護が更に図られるようになると考えております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 働く労働者の皆様方の喚起と、また、事業者の自浄能力を更に高めていくような改正の狙いがあるということについて、理解をさせていただいたと思います。

 次に、今般の改正では、事業者が、正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等を禁止するとともに、公益通報者を特定することを目的とする行為、つまり通報者探索を禁止しておりますが、その意義について教えていただければと存じます。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 誓約書や契約によって労働者に公益通報をしないことを約束させるなど、公益通報を妨害する行為は、公益通報者の保護を図るとともに、事業者の法令の規定の遵守を図るという本法の趣旨に大きく反する行為であると認識しております。

 そのような契約や合意を締結するよう要求された場合、民法等の一般法理により無効となると考えられますが、労働者にとっては必ずしも明らかではなく、公益通報をちゅうちょする要因となっていると認識をしております。

 また、公益通報者を探索する行為は、公益通報者自身にとって脅威となるほか、公益通報を行うことを検討しているほかの労働者を萎縮させるものであります。

 このため、今回の法改正では、公益通報の妨害行為及び公益通報者の探索行為を禁止することとしております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 公益通報が適切に行われるようにしていくこと、また、働く方々にとって、こういったことを通じて脅威となるようなことがないこと、またさらには、萎縮をさせないで、そういった中での今の状況というものをしっかりと意義を理解をして進めていくということだと思いますので、御理解をさせていただきます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 その上で、また政府参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 では、その正当な理由の解釈について、消費者庁としてはどのように明確にし、周知徹底していくつもりなのか、教えていただければと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報を妨げる行為や公益通報者を探索する行為は原則許容されるものではなく、正当な理由は例外的かつ限定的な場合にとどめるべきであると考えております。

 公益通報の妨害行為とならない正当な理由の具体例としましては、労働者に対して、不正行為について、特段の根拠なく報道機関や取引先などに通報しないよう文書又は口頭で求めることが考えられます。

 また、通報者探索とならない正当な理由の具体例としましては、匿名の通報につきまして、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したのか等を特定した上でなければ必要な調査や是正ができない場合に、公益通報に対応する従事者が通報者の特定につながる事項を問うことが考えられます。

 このような正当な理由につきましては、労働者と事業者の双方が十分に理解できるよう、例えば、消費者庁の逐条解説ですとかウェブサイト上のQアンドA等によりまして解釈の明確化を図ってまいりたいと考えております。

中野(英)委員 ありがとうございます。

 ある意味、公益通報者保護法については、やはり何といいましても、今回の改正を通じて多くの皆様方に理解をいただく。これはウェブのみならずいろいろな形で公開をしていきませんと、なかなか法律的には難しい点もたくさんあると思いますので、改正をされたということに対する御理解が多くの国民に広まっていかないという状況も生まれてまいりますので、是非、引き続き御努力をいただいて、多くの国民の皆様方に周知徹底を図っていただいて、この改正案がやはり円滑に進んでいくことを私自身も望んでまいりますので、どうぞよろしくお願いをさせていただきたいと存じます。

 次に、政府参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 自己の人事上の処遇を有利にする等、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報、いわゆる濫用的な通報があるのではないのかということも危惧されていると言われております。今回の改正案では、そのような濫用的な通報に対して禁止規定や罰則規定の導入はないようですが、その理由をお聞かせいただければと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、公益通報者保護制度の課題につきまして議論いただいた有識者検討会におきましては、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報が少なからずあるとの御指摘がございました。

 濫用的通報として考えられる行為につきましては、刑法での犯罪の成立には条件があり、濫用的通報に効果的に対応するには限界がある、あるいは、確実に抑止するため、法の中に罰則規定を設けることは検討に値するといった意見がございました。

 一方で、濫用的通報につきまして罰則を設けることで通報者の萎縮につながることが懸念される、あるいは、態様が深刻であれば現在でも刑事罰の対象となるといったようなことを踏まえまして、罰則の導入には慎重な意見もございました。

 このように様々な意見があり、その実態も明らかではないため、今回の改正では禁止規定や刑事罰を導入していないということであります。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 濫用的通報というものについては、やはり、どこまでが信憑性があるのかということについては非常に判断をつけるのに御苦労をされる点が多々あるかと思いますが、しかしながら、自己の利益のためにこういった濫用的な通報をされることはやはりあってはならないことだと思いますので、そういった意味では、今御答弁いただいたとおり、やはり刑法ではどうしても話を進めていくには非常に厳しいものがあるということは十二分に理解をいたしました。

 また、この件については、やはり何といいましても、これから施行を通じて、状況によってはいろいろと御判断をいただき、また改めての法改正ですとか、そういったことに向けて御尽力いただきますように、お願いをさせていただきたいと存じます。

 もう一点、質問させていただきたいと存じます。

 また、消費者庁では、この濫用的通報に対しては今後どのように対応していくのか、御答弁いただければと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、事業者の適切な内部通報対応を阻害し、風評被害などの損害を生じさせるおそれがある濫用的通報につきましては、一定の抑止が必要であると考えております。

 一方、そのような濫用的通報の実態は必ずしも明らかではないため、まずは事例を幅広く集め、実態を調査する必要があると考えております。その上で、実態調査結果を踏まえまして、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

中野(英)委員 ありがとうございます。

 このような濫用のようなことが横行しますと、本当に必要な通報まで疑念を持たれるようなこともあると考えられますので、そのようなことがないようにこれからも引き続きお力添えいただきますように、お願いをさせていただきたいと存じます。

 次の質問に移らせていただきたいと存じます。

 今般の改正では、公益通報を理由とする解雇や懲戒に対して刑事罰を導入するなど、事業者にとって厳しい内容となっておりますが、消費者庁は、それらの内容について、どのような形で全国の事業者やまた国民の皆様方に周知をしていくおつもりか、お聞かせをいただければと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正では、公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対する刑事罰や立証責任の転換を導入するなど、事業者において適切な対応を求められる項目が多いと認識をしております。また、改正内容につきまして、全国の従事者や国民への周知が極めて重要になると考えております。

 このため、改正後の制度の解説動画やリーフレットを作成しまして、新聞、雑誌、ラジオによる広告、インターネット上の広告、公共交通機関におけるデジタルサイネージ広告等を通じまして、広く国民に周知してまいりたいと考えております。

 また、各所管省庁とも連携をしまして、各業界団体を通じて民間の事業者に対する周知、広報を行うほか、国の行政機関や地方公共団体に対しましては、実態調査の実施や説明会の開催等を通じて理解を促し、制度の普及と浸透に努めてまいりたいと考えております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 動画、デジタルサイネージを始め、また、いろいろと広報物を通じて多くの方々に進めていくということだと思います。やはり国の機関や地方公共団体等を通じてフェース・ツー・フェースでお話をいただく、こういった機会が一番理解をしやすいでしょうし、疑問点だとかそういったことが早期にいろいろと話をできて、理解をしやすいという状況ができると思いますので、できる限りフェース・ツー・フェースの機関を通じての、いろいろな会議を通じての周知をしていただくということによって、丁寧で分かりやすい周知を是非心がけていただければと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 また、刑事罰等の導入ということですので、警察を始めとする関係行政機関にも周知を図ることがスムーズな法運用のためには大切なことだと思いますので、是非、警察等に対する、機関に対しても十二分な周知を進めさせていただきながら、特に刑事罰等になっていったときには、その窓口になってくるのはどうしても警察が窓口になってくると思いますので、そこで目詰まりですとかそういったことのないような体制づくりをしていただければと思いますので、是非よろしくお願いをさせていただきたいと存じます。

 もう一問、政府参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 常時使用する労働者が三百人を超える事業者につきましては、公益通報に適切に対応するための体制整備が必要となってくると思われますが、消費者庁としては何か支援策をお考えなのかどうか、お伺いしたいと存じます。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁の実態調査等の結果、従業員数三百人超の義務対象事業者であっても、体制整備の不徹底と実効性の課題が明らかとなりました。こうした中、まずはこうした義務対象事業者が、公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性向上を図る必要があると考えております。また、事業者の体制整備を促すには、消費者庁が適切に法執行を行うとともに、事業者の経営者が内部通報制度の重要性や必要性、また導入方法について理解することも重要になると考えております。

 このため、消費者庁におきましては、経営者向けの啓発動画やパンフレットを作成しまして、従業員や従事者向けの研修動画や内部規程、通報受付票のサンプル等と併せて、内部通報制度導入支援キットと称して消費者庁のホームページ上で提供し、新聞、雑誌、ラジオ等を通じて広く周知をしております。

 加えまして、消費者庁に設置をしました公益通報者保護制度相談ダイヤルにおきまして事業者からの相談に応じる等して、事業者の体制整備を支援しております。

 引き続き、このような取組を行うとともに、地方自治体に対して地方消費者行政強化交付金の活用を促し、地域の事業者に対する制度の周知を図ることなどにより、公益通報者保護制度の普及と浸透に努めてまいりたいと考えております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 是非、事業者によっては体制整備をすることが不慣れであったり負担となる場合もありますので、しっかりとした支援策を進めていただければありがたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 是非、これからも消費者行政に向けて一生懸命に頑張っていただければと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

浦野委員長 次に、松田功君。

松田委員 本日四月二十三日、お誕生日を迎えられた皆様、おめでとうございます。

 立憲民主党の松田功でございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 消費者庁がウェブサイトに掲載をしている公益通報ハンドブックには、公益通報者保護法とは、労働者等が、公益のために通報を行ったことを理由として解雇など不利益な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという制度的なルールを明確にするものであるとトップページにうたっております。

 そこで、本法が、今回の改正法により、通報者にとって、公益通報をしても不利益な取扱いから保護され、事業者にとっても、公益通報により自社の不正が早期に是正され、持続可能な事業活動が行える制度になっているかという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 令和二年改正は、背景に、企業の不祥事が絶えなかったところ、公益通報により、早期是正による被害の防止を図ることが必要であるとして、事業者内で公益通報に適切に対応するため、必要な体制整備の義務づけなどが規定されたわけです。

 一方で、この必要な体制整備の具体的な内容は、本法ではなく、本法に基づく内閣総理大臣が定める法定指針に定められるとされていますから、この法定指針が、いかに疑義が生じないよう明確かつ具体的に定めていなければ、法制度が機能しないということにもなります。事業者側で考えますと、公益通報対応業務を行う従事者は何を基準に義務の履行を図るかというと、法的拘束力のあるこの法定指針というわけであります。指定従事者にとっては、指針が不明確であれば、何をもって義務違反になるか、はらはらしながら対応することになります。

 他方で、本改正案では、従事者指定義務以外については何ら実効性を担保する措置が導入されませんでしたから、この法定指針が不明確であれば、通報者は、意を決して事業者の不正を正そうと公益通報をしても、適正に調査、是正措置がされるのか、不当な扱いはされないか、非常に不安になるところであります。こんなに規制の弱い改正案ですから、事業者の怠慢で何ら対策さえ取られないケースも出てくるのではないかと懸念されるところであります。

 それゆえ、法定指針は、疑義が生じないよう明確かつ具体的に定めなければならないと考えます。法律の実効性の確保の観点から、法定指針に規定する公益通報体制整備義務の内容について、疑義が生じないように明確かつ具体的に定める必要があると考えます。

 また、公益通報対応業務従事者が不安を生じることなく公益通報対応業務に臨めるよう、法定指針の解釈や具体的な必要な措置に関わる留意事項なども明確に定める必要があると考えますが、大臣の御見解を伺います。

伊東国務大臣 ただいまの松田委員の御質問にお答えしてまいります。

 委員御指摘のとおり、当事者が不安を感じることなく公益通報対応業務に従事する観点から、体制整備義務の内容につきまして、明確かつ具体的に定めることは重要と考えております。

 このため、消費者庁は、公益通報者保護法に基づく指針の解説におきまして、指針を遵守するために参考となる考え方や指針が求める措置に関する具体例、また、事業者が自主的に取り組むことが期待される推奨事項の具体例、これらを示すことによりまして、当事者ができるだけ具体的なイメージを持って業務に取り組めるよう後押しをしてきたところであります。

 今回の法改正後におきましても、公益通報への対応につきまして、事業者の運用の実態を調査し、その結果を踏まえて指針の解説等の内容の充実を図ってまいりたいと考えております。

松田委員 制度の実効性がやはり重要であると思います。その意味において、法定指針などをどのように見直しをされていくのか、確認をさせていただきたいと思います。

 昨今の兵庫県や大手中古車販売店などの事案では、組織内における公益通報対応業務の独立性が問題の一つにあったと考えますが、法的拘束力のある現行の法定指針を見ますと、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者から独立性を確保する措置を取る程度しか記載がありません。この程度の義務規定で、独立した窓口が厳格に整備されるとは到底思えません。

 また、事業者において法定指針で求められる事項は、内部規程や要綱など、運用規定を定める義務となっていますが、この指針規定では体制の独立性の重大さが伝わるとは思えません。事業者にとっても、具体的にどう措置することが独立性を確保したことになるのか、規定を遵守したことになるのか、理解できるのかと疑問に思うところであります。

 本改正後、組織内における公益通報対応業務の独立性を確保するため、現行の法定指針をどのように見直しをされるつもりか、大臣にお伺いをいたします。

伊東国務大臣 現行の法定指針におきましても、事業者内部からの公益通報への対応体制として、組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置を取ること、また、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置を取ることが規定をされております。

 また、公益通報者保護法に基づく指針の解説では、これらの措置の実効性確保のため、内部公益通報受付窓口を外部委託先また親会社等の事業者外部に設置すること、中小企業の場合には、何社かが共同して事業者の外部に内部公益通報窓口を委託すること等を具体例として記載をいたしております。

 消費者庁といたしましては、こうした内容の周知啓発を一層強化するとともに、独立性の確保を含めた事業者における公益通報対応業務の運用については、その実態を踏まえまして、法定指針の見直しを含め、必要な対応を今後検討してまいりたいと思う次第であります。

松田委員 兵庫県が策定した実施要綱では、調査の実施、調査の必要性を知事が検討することになっていたり、知事が被通報者となった場合の除外規定もないなど、これで独立性のある通報窓口、調査部門が整備されるとは思えないものでありました。極めてずさんで不十分な公益通報体制であり、これで通報者を保護する機能が果たせるとは思えませんが、そもそも法定指針の規定の在り方にも問題があるのではないかと思います。

 法定指針とは、法定指針の解説によると、事業者が取るべき措置の大要、すなわち、個別具体的な内容ではなく、大きなところ、大事な点ということになります。

 そこで、法的拘束力のある法定指針には、独立性を徹底した体制を整備するため、その必要な措置として、本改正案で盛り込まれた探索行為の禁止を含め、公益通報対応業務従事者の守秘義務及び範囲外共有の禁止を徹底した体制を整備することを明確に示すよう見直す必要があると考えますが、大臣、いかがでしょうか。

伊東国務大臣 現行の法定指針におきまして、事業者は、通報者の探索を行うことを防ぐための措置を取ることや、あるいは、通報者を特定させる情報の範囲外共有の防止に関する措置を取ること等が規定されております。しかしながら、これらの措置の必要性や重要性について十分に理解しておらず、措置を講じていない事業者も一定程度存在しているものと考えております。

 このため、消費者庁としては、公益通報対応業務の独立性の確保も含め、これらの措置が事業者に求められている理由についてできるだけ丁寧に説明するなど、指針の解説の内容や事業者に対する周知の在り方を工夫してまいりたいと考えております。

松田委員 公益通報対応の体制を実効的に機能させるということが重要であるので、行政機関を含めた事業者の公益通報内部規程、要綱を調査をして、適切な規定等が作成されるように指導と助言を行うことが必要だと考えますが、大臣の御見解をお願いします。

伊東国務大臣 松田委員御指摘のとおり、事業者の体制が実効的に機能するには、公益通報対応の内部規程が法定指針の内容に沿った形で策定され、事業者内で十分に周知されることが必要と考えられております。

 このため、消費者庁の民間事業者に対する法執行におきましては、事業者の内部規程の内容についても確認の上、必要な指導や助言を行っております。また、行政機関につきましては、地方自治法に基づく技術的助言の範囲内で必要な対応を行っているところであります。

 今回の法改正後は、法執行体制を強化すること等により、適切な内部規程の策定も含めた事業者の体制整備の徹底を図ってまいりたいと考えております。

松田委員 是非、調査を進めていただきたいと思います。

 公益通報者保護制度検討会でも議論になりましたが、本改正案では、通報妨害及び通報者探索に対して禁止規定が導入されました。他方、これら禁止が解除される正当な理由について、本会議の大臣答弁において、通報妨害であれば、労働者に対し、特段の根拠なく違反事実を事業者外部に口外しないように求めることであると答弁されましたが、一旦通報窓口で受けて、例えば、口外しない合意書に署名捺印をさせて放置した場合、二号通報や三号通報を封じることになり、まさに通報妨害行為になり得ることも考えられるのではないかと思います。

 通報者探索についても同様で、正当な理由の例示の在り方によっては、これがあたかも通報妨害、通報者探索を行う正当な理由に誤認されないようにしなければならないと考えます。

 したがいまして、これら正当な理由については、潜脱行為が行われ、禁止規定の実効性が損なわれることがないよう、極めて限定的な場合に限り法定指針に規定し、その解釈も詳細に示す必要があると思いますが、大臣の御見解をお伺いします。

伊東国務大臣 松田委員御指摘のとおり、禁止規定の実効性を確保する観点から、公益通報を妨げる行為や、また公益通報者を探索する行為が認められる正当な理由は、例外的かつ限定的な場合にとどめるべきであります。

 公益通報の妨害行為とならない正当な理由の具体例としては、労働者に対し、不正行為について、特段の根拠なく報道機関や取引先などに通報しないよう文書又は口頭で求めることが考えられるところであります。

 また、通報者探索とならない正当な理由の具体例としては、匿名の通報について、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したのか等を特定した上でなければ必要な調査や是正ができない場合に、公益通報に対する従事者が通報者の特定につながる事項を問うことが考えられます。

 このような正当な理由の解釈につきましては、労働者と事業者の双方が十分に理解できるよう、例えば、消費者庁の逐条解説やウェブサイト上のQアンドA等により明確化を図ってまいりたいと考えております。

松田委員 公益通報者保護制度検討会報告書では、法改正が行われた場合にはその実効性を確保するため速やかに法定指針を見直すと提言をしていますが、消費者庁は、通報者にとっても事業者にとっても公益通報制度の実効性が確保される法定指針となるよう、いつまでにどのような検討をして策定をしていくのか、また、策定に当たってはパブリックコメントなどの国民の意見を踏まえて策定されるのか、大臣にお伺いします。

伊東国務大臣 法定指針の改定に当たりましては、公益通報者保護法の規定に基づき消費者委員会の意見を聞く必要があるほか、行政手続法の規定に基づきパブリックコメントを実施する必要があります。

 改正法案におきまして、法の施行は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲で政令で定める日と規定をされております。法定指針には、事業者が労働者等に周知することが求められる内部公益通報対応体制の内容や不利益取扱いに含まれ得る措置の例などを規定することを検討しており、事業者が法の施行までに適切に対応できるよう、可能な限り早期に改定作業に着手をしてまいりたいと考えております。

松田委員 通報者だけでなくて事業者側にも、通報されないような会社になればいいだけの話ですから、そういったことの原点を踏まえる意味で、やはりこの法案というのは非常に重要な法案になっていくわけであります。

 やはり、意を決して通報する人の、せんだっての串岡さんの話じゃありませんが、人生が大きく変わってしまう。根本は、そういった問題点が何かということをなくしていくことが非常に重要であるというふうに私は考えておりますので、引き続きこの問題について取組をさせていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

浦野委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党の尾辻かな子です。

 マイクの音量がちょっと小さいようなので、済みません、マイクの音量を上げてください。恐れ入ります。

 まず冒頭に、確認の質問をさせていただきたいと思います。

 今、兵庫県庁では、公益通報者保護法の解釈をめぐっての混乱が起こっているというふうに認識をしております。

 そこで、確認のためにお聞きをしたいと思いますけれども、法律の有権解釈権についてであります。自治体の首長、例えば知事や市長などに公益通報者保護法の有権解釈権はあるのかどうか、確かめたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護法の第一義的な解釈は、同法を所管し、その執行の任に当たる消費者庁が行っております。

尾辻委員 ということは、公益通報者保護法の有権解釈権というのは、知事や市長ではないということで、首長ではないということでよろしいですか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁が有権解釈権を持っていると御理解いただければと思います。

尾辻委員 ありがとうございました。確認いたしました。

 それでは質疑に入っていきたいと思いますが、今回の法改正、私たちも修正案を提出をさせていただいておりますとおり、やはりまだ様々な課題があるというふうに認識をしております。そして、今回の法改正の評価というところでいきますと、例えば、二〇一九年六月に採択をされました、日本が議長国となったG20大阪サミットにおいて効果的な公益通報者保護のためのG20ハイレベル原則が採択されたわけですが、このG20ハイレベル原則をこの法改正によって満たすことができたと考えておられるのか、若しくは足りない点があると考えておられるのか、大臣にお聞きします。

伊東国務大臣 御指摘のG20ハイレベル原則では、各国がそれぞれの法体系に沿ってこの原則を柔軟かつ効果的に適用することを求めております。

 今回の法改正につきましては、御指摘の原則に沿ったものであり、不足する点はないというふうに考えております。

尾辻委員 私は、まずちょっとこの認識が大臣と私では違うなというふうに思うわけですね。

 例えば、原則の二とかでは、保護対象となる通報の範囲を広範かつ明確に定義するとなっておりまして、じゃ、今、五百法令余りのこのポジティブリストで本当に広範になっているのかとか、原則三、可能な限り広範な通報者に保護を提供するというのも、私も本会議で指摘をさせていただきました、取引先事業者、そしてそれを支援する人なども入っておりません。また、原則七でいきますと、公益通報者に強固かつ包括的な保護が提供されることを確保するというところについても、懲戒と解雇は刑事罰になりましたけれども、その他不利益のところはそのままですし、原則の十二、公益通報者保護を主導し、範を示すという、じゃ、日本がモデルになれているのかというと、EU指令や韓国の法制度の状況に比べて、やはりここはまだまだ足りないところがあるんじゃないかというふうに思っているわけです。

 昨年も、国連人権委員会の方で、ビジネスと人権作業部会が、訪日調査の最終報告書、公益通報者の範囲拡大、報復措置に対する制裁の導入、こういう更なる強化を求めているというところでいくと、大臣の満たしているというような評価、これはちょっと違うんじゃないかなというふうに思います。

 順次、その他、詳細なところをお聞きしてまいりたいと思いますが、私は二〇二〇年も公益通報者保護法改正案を議論させていただきました。その際にも確認をいたしましたけれども、要は、公益通報者として保護されるためには、通報者が民事裁判を会社として、そして、司法が、そうですよ、あなたは公益通報したことによって不利益があった、だからそれを保護するよということは裁判が認定することになるわけです。

 じゃ、現在まで、二〇〇六年からこれは施行されているわけですけれども、裁判で公益通報者保護が認められた件数というのは何件なのか、お聞かせください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 裁判事案につきまして網羅的に把握することは困難ではありますが、消費者庁が把握可能な裁判例のうち、原始法が施行されました平成十八年四月から現在までのもので、公益通報者保護法により通報者が保護された事案は三件でございます。

尾辻委員 大臣、三件なんですよ。二〇〇六年に施行され、そして、今回二度目の改正ですけれども、そこまでで司法が認めたのは僅か三件。私は、これが今の公益通報者保護法の大きなやはり課題を示していると思っています。

 この三件という状況を大臣はどう認識されているのか、多いと思われているのか、少ないと思われているのか、また、その要因は何なのか、お聞かせをいただけたらと思います。

伊東国務大臣 三件という数字を聞くと、少ないのではないかな、こう思うところであります。

 ただ、この要因といたしましては、裁判以外で解決に至る事案も一定程度あるのではないかと言われておりますし、また、労働者が公益通報の通報対象事実となる違反行為を目撃する機会が少ないこと、また、公益通報者保護制度が十分に認知されていない、不利益な取扱いを受けた労働者は労働契約法に基づく主張を行うことが多いこと等が考えられております。

 今回の法改正は公益通報者保護制度を大幅に見直すものであり、消費者庁は今後制度の周知啓発を一層積極的に行っていくこととしております。これにより、裁判における公益通報者保護法の活用が進むことが期待をされるところであります。

尾辻委員 大臣から、少ないという認識があるということを、ここはやはり思っておいていただかなければいけないと思います。そして、じゃ、何で裁判が少ないのかというところは、これからの議論のところでしていきたいと思います。

 ちなみに、昨日、参考人で来られましたトナミ運輸で公益通報された串岡弘昭さん、私どもも党の消費者部会の方でヒアリングをさせていただきました。冒頭に串岡さんが公益通報者保護法を何とおっしゃったかというと、公益通報規制法だ、そして公益通報制限法ではないかと。これが通報された当事者の方の評価ということなんですね。

 そして、今日、お手元に資料をちょっとお配りをさせていただきました。公益通報といえば、トナミの串岡さんやオリンパスの浜田正晴さんが非常に有名であるわけですけれども、実は、最近になっても、やはり、公益通報したことで結局仕事を干されてしまった、配置転換されたという事象は様々起こっております。私の元にも複数そういう案件が相談として寄せられている状況であります。

 まず、これは、製薬会社で配置転換をされて仕事干しの状況になっている、小林まるさんという方ですけれども、消費者庁に公益通報者を守る法改正を求めて、二万五千人の署名を集めて消費者庁に送ったということで報道されております。

 大臣、この署名を受け取られたかどうか、そして、このように多くの署名が集まっていることをどう認識されているのか、お聞きいたします。

伊東国務大臣 御指摘の署名につきましては、本年二月十九日付で消費者庁が郵便で受領しておりまして、内容としては、製薬会社の不正を厚生労働省に公益通報した方が、同省がこの会社に厳しい措置をした直後に配置転換され、翌年には一人だけの部署に再配転され、五年も仕事を干され続け、苦しんでいるというものであったと承知をしております。

 また、署名では、公益通報者保護法につきまして、内部調査が不適切であった場合の罰則規定や、あるいは公益通報者に対する配置転換や嫌がらせ等を含む不利益な取扱いについての立証責任の転換又は緩和規定の追加を求めている、このように理解をしているところであります。

尾辻委員 このような案件が、署名として受け取られたわけですけれども、二万五千人集まっているわけです。これをどういうふうに大臣として受け止められているのかということをお聞かせください。

伊東国務大臣 たくさんの心ある方々の御署名でありますので、これは真剣にやはり受け止めなければならない、このように思うところであります。

尾辻委員 是非、真剣に受け止めていただきたいと思います。

 私も、この案件、小林さんからもヒアリングをさせていただいて、聞きました。どういう案件かは先ほど大臣からも少し御説明がありましたが、製薬会社に勤めておられるMRの方が、薬が効かない病気の方たちにもその薬が効くのだという宣伝をされていたということで、企業は、結局、薬の利用拡大というのは利益になるわけです。ところが、実際はどうかというと、薬の適応外使用により患者が亡くなっておられたということなんですね。それで、この方は、患者の命を守るために会社に内部通報して、そして会社が対応しなかったので親会社に通報したけれども、これも対応しなかった。これが二〇一六年のことなのですが、要は一号通報ですよね。一号通報でどうにもならなかったから、今度、二号通報で厚生労働省に通報されて、厚生労働省から製薬会社に指導が入ったということなんです。これが、大体二〇一八年から一九年ぐらいなんです。

 先ほど大臣も御紹介いただいたとおり、厚生労働省からの指導の直後に、この方は配置転換をされるわけです。そして、次に、二回目の配置転換。これで、彼女は、五年間、一人だけの部署、ほとんど仕事がない状態に置かれている。

 それで、これを裁判をされるわけです。そうしたら、裁判所はどういうふうに判断したかというと、確かにこれは公益通報であるということは認められました。ところが、配置転換については、結局、立証責任は訴訟を起こした方にあるわけですから、ここがやはり証明できないんですね。小林さんいわく、結局、会社が公益通報したから配置転換したと言わない限りは立証できないんだということで、敗訴されているんです。まさに今回、この法案の一番の課題のところで彼女は壁にぶつかっているわけなんですね。

 結局、今回の法改正でも、配置転換の立証責任の転換や推定規定がないために、こういった状況を救うことが全くできない。まさに正直者がばかを見る、命を守ろうと思って公益通報した方が結局こうして徹底的に追い込まれるという状況がいまだにあるんです。

 会社相手の裁判、この方は御自分で、自腹で数百万の弁護士費用を出して闘っているんです。こんな人はいますか。ここのハードルをやはりどうにかしなきゃいけないということだと思います。

 そして、これは本会議でも質問しましたけれども、日本弁護士連合会が全国の弁護士会に公益通報に関する相談があった事案を集計した資料を見ますと、通報者に対する不利益取扱いの最も多いのが嫌がらせ、次に多いのが配置転換。解雇や懲戒と比べて、やはりここが多いのが実態なんですね。そして、先ほどのように、裁判で配置転換の不当性を訴えても、結局、会社の裁量だと言われて、どうにもならない。

 この現状は、結局、配置転換への手当てがされなかったら、公益通報をみんなしませんよ。そして、それはどうなるかというと、企業の不正が正されない、そして、国民の命、利益が守られない状況になるということだと思います。

 ですので、やはり配置転換された公益通報者の保護が喫緊の課題だと思いますけれども、まず、大臣の認識として、日弁連さんが行ったように、実は不利益取扱いの中で嫌がらせと配置転換が解雇、懲戒よりも多いんだというこの実態については、御存じだ、御理解される、認識されているということでよろしいですか。

伊東国務大臣 日本弁護士連合会が二〇二二年九月から二四年三月に全国七つの弁護士会で受付をしたお話、我々も聞いておるところでありますけれども、集計した公益通報に関する相談事案の集計結果におきまして、通報者が通報後に受けた不利益な取扱いの内容として、今お話にありますように、嫌がらせや配置転換が多かったことは承知をしているところであります。

 ただ一方、今回のこの法案の中で、懲戒、解雇のみをもってして罰則規定を設けているわけでありますけれども、日本の国内の企業において、配置転換に当たるかどうかは別として、配置転換及び地方への転勤その他、これはもう無数に行われているわけでありまして、ここの立証とか、これもまたなかなか厳しい、苦しいところがあるかなという、そんな思いも同時にしているところであります。

尾辻委員 これは会社側が結局いろいろな情報を持っているわけですよね。労働者側は、これは立証はできないわけです。その配置転換を、どうして配置転換したんですかということについては、これを労働者側にさせている限り、この状況は変わらないわけです。

 大臣、だから、お聞きしたいんですが、公益通報後に配置転換をされてしまった、今もたくさんある、じゃ、この人たちは今の法制度でどうやったら保護されるというふうに大臣はお考えなのか、お聞かせください。

伊東国務大臣 解雇、懲戒以外の不利益な取扱いにつきましては、これは現行法で禁止をされているところでありまして、やはり、こうした法案の整備、事例の整備と同時に、消費者庁の方でも、それぞれの企業にそういうお話をするわけでありますから、不利益な取扱いについて、これはやはり厳しく指摘をして、指導していくようでなければならない、このように思っております。

 ただ、そこで、全てその当事者の言うがままに企業にそれを訴えていけるかどうかというのは、これまた難しいところもあるのかなと思っております。

尾辻委員 今回、刑事罰を解雇、懲戒に導入しただけで、体制整備義務違反とかであれば確かに消費者庁からできると思いますけれども。

 じゃ、もう一度聞きますね。配置転換された労働者はどうやって保護されるんですか。もう一度お願いします。

伊東国務大臣 どうやったら保護できるかというお尋ねでありましたけれども、既に、先ほども申し上げましたけれども、公益通報を理由とする不利益取扱いについては現行法で禁止をされております。

 また、裁判におきましては、立証責任のある一方の当事者からの主張だけではなく、当事者双方の主張を踏まえつつ、中立的な立場で認定判断が行われているものと認識をいたしております。裁判例におきましても、配置転換を含む不利益な取扱いが不正に関する通報を理由とするものであると認定されているものが現実には一定程度あるものと承知をしているところであります。

 加えて、消費者庁といたしましては、制度の実効性を確保する観点から、公益通報を理由とする解雇及び懲戒以外の不利益取扱いが現行法で禁止されている旨を事業者に周知徹底することが重要と考えております。そのため、御指摘の配置転換も含め、禁止されている不利益な取扱いに含まれ得る措置の例を法定指針に明示し周知することを検討しているところであります。

 これにより、事業者に対する抑止力が働くほか、民事裁判で参照されやすくなることなどにより、公益通報者の保護につながる、このように考えております。

尾辻委員 刑事罰を懲戒と解雇のところだけやったら抑止力が働くというのは、ちょっと、余りにも理想論というか、ただの仮定かなというふうに思います。これは後で聞きますけれども。

 まず、一個確認をしておきたいと思います。

 私は、やはり、配置転換については立証責任の転換をしっかり図らなければいけないという立場です。消費者庁がそれをしない理由としてお答えになっていたのは、雇用体系、雇用の形態が、例えばメンバーシップ型とジョブ型で雇用体系が違うからそぐわないというようなお答えを本会議の答弁でもされております。

 そこで、ちょっと確認をしておきますけれども、例えばEUや韓国でも、別にメンバーシップ型雇用はあるわけです。こういった外国の法制は、ジョブ型雇用だから公益通報したことを理由として不利益措置を受けたものを推定する、メンバーシップ型雇用だから推定しなくていいと言っているわけではないということ、これはちゃんと確認をしておきたいと思います。お願いします。

伊東国務大臣 先生御指摘のとおり、EUや韓国におきましては、ジョブ型雇用に限定して不利益な取扱いが公益通報を理由とすることの立証責任を転換しているものではない、こう認識をいたしております。

 日本におきましては、ジョブ型雇用も、メンバーシップ型であっても、何ら違いはありません。

尾辻委員 だから、そこで、ジョブ型雇用だからこっちはできて、日本はメンバーシップ型雇用だから立証責任の転換をしないというのは、ちょっと私は理屈としてはおかしいと思うんですけれども、いかがですか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、やはりジョブ型雇用よりもメンバーシップ型雇用が主流であるという実態がございます。

 ただ、それだけで配置転換について措置を取らないと申しているわけではございませんで、労働法制におきましても配置転換はすなわち不利益な取扱いとはなっておらず、もちろん権利濫用的な配置転換はございますが、ここについても労働者に対して立証を求めているということだと認識をしております。

 こうした労働法制との平仄を考えますと、公益通報制度について、配置転換を、立証責任の転換を行うというところは難しいと考えているところです。

尾辻委員 私はその理由には納得できないわけですけれども。

 先ほど、ちょっとやはり認識の相違があるなと思うんですが、解雇と懲戒について刑事罰が導入されるということがどういう結果を及ぼすのかというところで、今、現場の、例えば公益通報の相談を受けている弁護士さんたちから聞く話というのは、これによって、結局、解雇と懲戒を避ければいいんでしょう、解雇、懲戒以外だったら別に罰則はないんだから、配置転換や嫌がらせを今以上にやっていくという、促進する効果が実は表れてしまうんじゃないですかと。

 ここを大臣はどのようにお考えになるんでしょうか。

伊東国務大臣 私も全く同様の考え方を、会議の中で、こういう心配が生じるのではないか、そういうお話もさせていただいたところであります。

 既に法律で解雇、懲戒以外は禁止されていること、また、今回の法改正は、公益通報を理由とする解雇又は懲戒に対する刑事罰の導入、あるいは立証責任の転換等、制度について大幅な見直しを行うものでありまして、消費者庁といたしましては、周知啓発を一層強化し、制度の認知度の更なる改善を図ることといたしております。

 これにより、公益通報を理由とする不利益な取扱い全般について事業者に対する抑止力が一層働くようになることや、公益通報者保護法が裁判で参照されやすくなるといったことにより、制度の実効性が向上すると考えられております。

尾辻委員 その認識が私はちょっと甘いんじゃないかと言わざるを得ないと思います。

 逆に言うと、そういったことが増えないか懸念がありますので、しっかりと、この法改正後、調査、把握をいただきたいと思いますが、いかがですか。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 法改正の後、実際に法改正がどういう効果をもたらしていくかというところを検証することは極めて重要だと考えております。そこは、施行後の状況はしっかり見ていきたいと考えています。

尾辻委員 これから、結局、解雇と懲戒、解雇というのは本当にやはり難しいですから、ここによって、どんどんどんどん、声を上げた通報者の皆さんは結局やはり報復に遭って、こんなことを言わなきゃよかったというような、泣き寝入りになるか、退職に追い込まれるか、転職するか。この状態を続ける限り、公益通報者保護法は本当に通報した人を保護できる制度にはなりません。そこはしっかりと申し上げておきたい。

 そして、私たちの修正案のように、そして世界のグローバルスタンダードというのは、不利益取扱いについてはしっかりと推定規定を入れるんだ、立証責任を転換するんだ、ここが大事だということも再度申し上げておきます。

 小林さんのケースでちょっと気になったところがありますので、確認をしておきたいと思います。

 小林さんのケースは、実は、内部通報した窓口というのは、会社が委託した弁護士事務所だったわけですね、これは第三者機関というふうに言っていますけれども、そこに、弁護士事務所に相談をされた。その後、二号通報されたわけですね、厚生労働省に。配置転換を受けることで、会社相手に訴訟をします。そうすると、会社の顧問弁護士、そして会社の代理人が、内部通報を受けた弁護士事務所だったわけです。

 内部通報をした先が、今度は自分の訴訟相手の代理人になっているというのは、これは公益通報者にとって利益相反関係にあるというふうに思いますけれども、この状況になっていることをどう消費者庁として考えるのか、お聞かせください。

藤本政府参考人 個別の事案についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、消費者庁では、法定指針におきまして、事業者に対して、公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置を求めております。指針の解説におきましては、この措置について、推奨される考え方や具体例を示しております。具体的には、「事実関係の調査等通報対応に係る業務を外部委託する場合には、事案の内容を踏まえて、中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが適当である。」と記載をしております。

 消費者庁としましては、事業者がこうした考え方を踏まえ、労働者等が安心して通報ができる体制を構築することを期待しております。

尾辻委員 そのガイドライン、指針に違反していたとして、じゃ、消費者庁はそれを是正させる権限はあるんでしょうか。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 指針に違反している事項につきましては、我々には指導等を行う権限があると理解をしております。

尾辻委員 そうしたら、これからこういったことがあったときに、しっかりと消費者庁として指導いただきたいというふうに思います。こんなことがされていたら、誰も公益通報しません。これは二〇一九年とかに起こった話ですから、しっかりとお願いしたいと思います。

 そして、不利益取扱いのことをもう一つ議論していきたいと思います。

 結局、私、直罰だけが導入されている、刑事罰だけが導入されているということには、これはやはりちょっと違和感があるわけですね。日弁連さんも意見書で言われていますけれども、本来、不利益取扱いされたということであれば、新たな行政措置、指導や勧告や是正命令があって、それでもどうにもならないときは刑事罰を科すというふうな、本来こういう順序でやっていかなければいけないものじゃないかというふうに、私もそう思います。

 だから、間接罰のところを完全にスキップしたんじゃないか、本来、やはりこれは間接罰の制度導入を検討すべきではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

伊東国務大臣 間接罰を導入するのには、違反行為に対しまして行政機関が指導や命令等を行う必要がありますが、公益通報を理由とする不利益な取扱いに関する事実認定につきましては、当事者双方の主張や証拠に照らして判断しなければならず、行政機関にとっては非常に困難なことであります。また、そうした事実認定は司法の場で行われるべきものと考えているところであります。

尾辻委員 間接罰を導入できない理由の一つは、これは前回改正のときも議論になりましたけれども、やはり消費者庁のマンパワー不足というところに私は尽きると思っていまして、本会議でも、公益通報に当たっている職員は何人かと聞いたところ、十四人ということですから、この十四人でこうした行政措置、間接罰というのはなかなか困難であるというふうに考えます。

 ですので、本来これは、厚生労働省といかに協力をしてやっていくのか。例えば厚生労働省の労働局の力をかりるとか、やはりこういったことを本当は検討していかなければいけないというふうに思いますけれども、ここは大臣としてどのようにお考えでしょうか。

伊東国務大臣 先ほども答弁をさせていただきましたが、消費者庁といたしましては、公益通報を理由とする不利益な取扱いが禁止されていることを事業者に周知徹底することが重要と考えており、不利益な取扱いに含まれ得る措置の例を、法定指針、これは内閣府の告示でありますけれども、これに明示し周知することを検討をいたしているところであります。

 制度の実効性を確保する、これが大事であろう、こう思うところでもございます。今年度、法執行のための新たな定員や予算を確保をしておりまして、今回の法改正後、引き続き法執行体制の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

尾辻委員 これは根本的な課題として、本当に消費者庁だけではなかなか無理だというふうに思うんですね。ここはしっかりと、やはり労働問題でもありますから、厚生労働省との協力関係というのは模索するべきだと思います。

 そして、時間がありませんのでちょっと飛ばしまして、一点確認をしておきたいと思いますが、周知義務違反のことについてお聞きしたいと思います。

 周知義務違反というのは、今回制裁は設けておりませんが、将来的には法的義務として行政措置や行政命令の対象に私はすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正では、事業者が整備した体制につきまして、労働者等への周知義務を法律で明示することとしております。

 一方で、我が国で、幅広い事業者に周知義務を課し、その違反に罰則を規定した法律は、労働者の労働条件に関わる法律等に限定されておりまして、また、周知の内容は法令の内容とされております。

 こうした中、事業者が整備した公益通報への対応体制の周知義務につきまして、消費者庁の命令権や命令違反時の刑事罰の対象とすることは、企業活動に対する公権力の過剰な介入となるおそれもあり、ほかの法令との並びを勘案しても困難ではないかと考えております。

尾辻委員 いろいろ議論してきました。まだまだ課題が多くありますので、これはしっかりと、今回から更にやはり法改正を考えていただく必要があるということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浦野委員長 次回は、明二十四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.