衆議院

メインへスキップ



第8号 令和7年4月24日(木曜日)

会議録本文へ
令和七年四月二十四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浦野 靖人君

   理事 勝俣 孝明君 理事 中野 英幸君

   理事 松島みどり君 理事 青山 大人君

   理事 大西 健介君 理事 尾辻かな子君

   理事 伊東 信久君 理事 梅村  聡君

   理事 丹野みどり君

      今枝宗一郎君    上野賢一郎君

      勝目  康君    加藤 鮎子君

      栗原  渉君    小池 正昭君

      高木  啓君    武村 展英君

      永岡 桂子君    中西 健治君

      野田 聖子君    福田かおる君

      福原 淳嗣君    三反園 訓君

      若山 慎司君    井坂 信彦君

      石川 香織君   大河原まさこ君

      大島  敦君    福森和歌子君

      松田  功君    山田 勝彦君

      山井 和則君    西岡 義高君

      角田 秀穂君    沼崎 満子君

      たがや 亮君    本村 伸子君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            伊東 良孝君

   内閣府副大臣       鳩山 二郎君

   内閣府大臣政務官     今井絵理子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           重松 弘教君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          藤本 武士君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮崎 敦文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           尾田  進君

   衆議院調査局第一特別調査室長           松本 邦義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  野田 聖子君     勝目  康君

  福原 淳嗣君     福田かおる君

  おおつき紅葉君    福森和歌子君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     野田 聖子君

  福田かおる君     栗原  渉君

  福森和歌子君     おおつき紅葉君

同日

 辞任         補欠選任

  栗原  渉君     福原 淳嗣君

同日

 理事梅村聡君同日理事辞任につき、その補欠として伊東信久君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

浦野委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事梅村聡君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に伊東信久君を指名いたします。

     ――――◇―――――

浦野委員長 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する大西健介君外一名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、警察庁長官官房総括審議官重松弘教君外三名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦です。おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 立憲民主党から修正案が提出されています。早速、提案者の方に伺います。

 現行の公益通報者保護法と今般の一般改正法案の課題は何なのか、そして、立憲民主党の修正案によって期待される効果を御説明ください。

石川委員 お答えいたします。

 公益通報者保護法は、通報者が解雇や降格、減給などの不利益を受けることを明確に禁止し、社会的正義を守る盾となる法律です。しかし、残念ながら、通報した後のリスクが根強く残っているのが現状です。

 今回の改正案で、公益通報を理由とする解雇等特定不利益取扱いは無効とし、事業者に刑罰を科すとともに、通報後一年以内の立証責任を転換することとなりました。しかし、これは解雇と懲戒のみであって、配置転換は含まれていません。

 立憲民主党では、修正案をまとめるに当たりまして、実際に内部告発を行い、御本人が望まない配置転換をされた経験をした方のお話を伺いました。三十年以上にわたって草むしりなどの雑務を強制をされ、昇給もせず、それどころか暴力団が退職を強要するなど、私たちには想像することが難しい立場に追い詰められたほどです。正しいことを告発し、所属する企業に是正してほしいと期待をしたにもかかわらず、かなわず、御自身の決断によって負担をかけつつも、支えてくださる御家族への思いをお話しをいただきました。

 御自身が信頼する企業だからこそ、是正してくれるに違いないと期待をして、しかし、是正されるどころか、望まぬ配置転換や嫌がらせを受ける。現行法や改正案では、この点を解決することができません。

 立憲民主党の修正案では、公益通報をする人が保護をされ、企業や組織の自浄作用を促進するために、現場で多く起きていると報告されております不利益な取扱いである配置転換について、立証責任の転換及び刑事罰の対象にすることを提案をしております。

 これによって、企業や組織が、公益通報を都合の悪い情報として扱うのではなく、正面から向き合って企業や組織の信頼性の向上につなげること、また、従業員等が企業や組織の不祥事に接した際にためらうことなく公益通報することができる、これをもって社会全体の利益の確保につながると期待をしています。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 政府案と立憲民主党案の決定的な違い、それは立法プロセスにあると思っております。高額療養費の自己負担引上げの議論のときもそうでした。常に私たちは当事者の声を何よりも大切にしてきました。

 大臣も当然、先日の参考人質疑、御視聴いただいていることと思います。特に、串岡参考人に来てもらい、社会正義のために公益通報をしたにもかかわらず、会社から報復人事により耐え難い労働環境に追い込まれながら、それでも決して屈することなく闘い続けた御本人の言葉には、何よりもの説得力がありました。

 だからこそ、公益通報者保護制度検討会に、串岡さんのような公益通報により不利益を受けた当事者がなぜ入っていなかったのか、もし委員に入っていたとすれば、間違いなく最終報告書の内容は変わっていたはずだと思っています。

 事前に消費者庁に尋ねると、担当者の方からは、委員について、労使双方を含む様々な立場からの意見をいただくことを踏まえて、消費者庁内で検討の上決定したと回答がありました。

 私は、串岡さんのような当事者の声を改正案に反映させるべきだったと強く思っております。私たち政治家は、現場の声、当事者の声を何よりも大切にしないといけないですし、伊東大臣もその思いは同じだと思います。

 大臣に、通告はしていないんですけれども、この点、イエスかノーかでもいいのでお答えいただきたいと思います。この大事な検討会、公益通報により不利益を被った当事者を委員に入れるべきだったと思われませんか。

伊東国務大臣 おはようございます。

 山田委員の御質問でございますが、消費者庁の方から、今も御紹介ありましたように、各界を代表する方々にお入りいただいております。もちろん、連合も、日弁連も含めた全ての組織を代表する方々にお入りいただき検討された結果である、このように認識をしているところでありまして、個々の事情等々につきましては、それぞれ、胸を打つもの、そしてまた、これはひどいなという、そんな感想を持つ部分もありますけれども、組織全体として、あるいは委員会としてという話になりますと、もう少し広範囲な形の中でこれが人選されるべきもの、こう思っております。

山田(勝)委員 大臣の消費者庁側の答弁は、私はやはり政治家として違うと思うんですよね。今回の法律の目的は、あくまで、公益通報をした方を保護するための改正案であって、現行法では、兵庫県の事例を踏まえても、十分救い切れなかったという反省の上に今回改正があるわけです。であれば、何よりも、現行法で救い切れていない、被害を受けた方々の声をやはり聞くという姿勢が政治に問われていると思っております。

 そういった意思を聞けなかったのは非常に残念なんですけれども、是非、大臣、この法案が改正されたとしても、やはり大きな問題点が、課題が残ったままですので、早急にまた改正に動かないといけないと思っております。大臣、是非、こういった当事者の方々の声を直接聞く機会をつくっていただけませんか。

伊東国務大臣 実態に即した形で対応されるべきものというふうに私も考えているところでございまして、山田委員の今の御提言も踏まえて、我々も感ずるところはありますので、しっかり検討してまいりたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 是非、前向きに検討いただいて、しっかりと直接当事者の声を聞いていただきたいと思っております。

 そして、今回の委員の選定もそうなんですが、私、国会議員になってまだ三年数か月ですが、常々思うのが、こうやって重要な法案や制度に大きな影響を与える専門家会議のメンバーの選定、これが、政府が一方的に決めています。これは問題だなと本当に日頃から感じているところです。選挙で選ばれた政治家が選考過程にやはり民意を反映させる仕組みが必要だと考えます。

 本法案、次回以降の改正に向けた検討会の委員メンバーについて、消費者庁が一方的に選任するのではなく、事前に本委員会にその選出案を提出すべきと考えております。

 委員長、是非お取り計りいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

浦野委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

山田(勝)委員 そして、ここまでの審議、議論を聞いていてすごく違和感を感じていたのは、なぜ不利益を被る通報者側に立って法改正されてこなかったのか、なぜ企業に負担をかけないことが優先されているのか、これまでの政府の説明では全く納得できません。

 そこで、立憲民主党の提案者の方に伺います。

 立証責任の転換、刑事罰などの対象となる解雇等特定不利益取扱いに不当な配置転換を含む理由について御説明ください。また、不当な配置転換を加えた場合、事業者の人事権を狭めることになるのではないかと懸念もされているようですが、提案者はどう考えられますか。

大西(健)委員 おはようございます。山田勝彦委員の御質問にお答えしたいと思います。

 先ほど山田委員からも、やはり当事者の声をしっかり聞くことが重要だというお話がありました。その意味においては、消費者庁のアンケートでは、実際に通報した場合に受けた不利益な取扱いとして、解雇や懲戒よりも配置転換や人事評価上の減点が多くを占めていました。

 公益通報をしたことを理由とする配置転換は現行法でも禁止はされていますけれども、その規定に違反した場合に事業者側に立証責任を転換すること、刑事罰の対象とすることは、政府の検討会でも合意が得られずに、今回の一部改正案には入りませんでした。現場で最も報告されている不利益な取扱いである配置転換に対応しなければ、この法改正というのは実効性を確保することができないのではないかというふうに思っております。

 反対する事業者側からは、配置転換を追加することは事業者の人事権を狭めることになるという意見があったように伺いました。しかし、立憲民主党でヒアリングをした有識者からは、事業者が持つ人事評価のルールに沿って配置転換をしているのであれば、公益通報を行ったことを理由とする配置転換とはみなされないとの指摘がありました。また、そもそも人事評価に関する情報は事業者が持っているのであって、被雇用者等が自身の配置転換が公益通報によるものなのか通常の人事評価によるものなのかを立証することは事実上非常に難しいという実情も伺いました。

 事業者が実施する通常の配置転換であっても、山田委員は御自身も福祉事業所を経営されているというふうに伺いましたけれども、通常の配置転換であっても、労働者の求めがあった場合には配置転換の理由を説明する責任というのがあるというふうに思いますし、その説明というのも一般に行われているのではないかと思います。そうであるならば、異例の配置転換に対しても事業者側が説明の準備をしておくことはそれほど負担が大きいとは言えず、過度に人事権を狭めることにはならないと思われます。

 事業者がその保有している人事評価情報に基づいて適正に人事権を行使すれば何ら問題がないのであり、また、その人事情報は事業者側が当然に保有しているはずのものであること、配置転換の理由を説明することが一般化していることから、事業者が立証する負担も大きくないはずです。不当な配置転換の立証責任を事業者側に転換したからといって、繰り返しになりますが、人事権を狭めることにはならないと考えております。

 以上です。

山田(勝)委員 ありがとうございます。今の御説明、すごく納得がいきました。

 今、大西委員も言っていただいたように、私も実際、経営している立場。企業の人事権を狭めることにはならないと思います。むしろ、不当な配置転換の立証責任を労働者に負わせることの方が明らかにおかしい、公益通報者を全く保護していないと思います。

 私は、社員約八十人、十二の障害福祉事業所を運営しているんですけれども、確かに、人手不足とか会社都合で人事異動をお願いすることはあります。しかし、その際は必ず、当たり前に説明をします。なぜあなたに別の事業所に異動してもらわないといけなくなったのか、あなたのキャリアや能力を他の事業所で生かしてほしい、そういう説明は必ず行うんです。それは会社であれば当たり前に行われていること、むしろ、辞令一枚で来月から、再来月から別の職場環境に異動しなさいという方がよっぽどイレギュラーだと思いますし、そういう会社こそ是正すべきだと思います。

 労働環境が変わるということは、大きな変化を与えることですので、大西提案者が言われたように、そもそも会社にも説明責任があるんです、公益通報者であろうがなかろうが。なので、会社の経営戦略を実現するために必要な配置転換であると堂々と説明すれば、それでいいんじゃないですか。

 当たり前のことを当たり前にやって、企業側が配置転換の立証責任を十分に果たし得ると考えますが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 民事訴訟におきましては、立証責任を負う者は、裁判所にその事実の存在又は不存在について確信を得させるよう、高度の蓋然性を持って証明する必要があると認識をしております。このため、不利益な取扱いが公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換した場合には、事業者は、不利益な取扱いが公益通報を理由とするものではないことを高度の蓋然性を持って証明する必要があると考えます。

 我が国におきましてはメンバーシップ型雇用が一般的で、適材適所の配置や人材育成等の観点から、事業者の広い裁量の下、人事異動が頻繁に行われており、必ずしも、全ての事業者において、労働者一人一人の異動理由について詳細な説明を行っているものではないと承知をしております。

 こうした中、事業者が会社の経営戦略を実現するために必要な配置転換であると説明をしたとしても、それのみでは、配置転換が公益通報を理由とするものではないことについて、高度の蓋然性を持って証明したことにはならないものと考えている次第であります。

山田(勝)委員 今の御説明を聞いても、全く理解に苦しむんですよね。今、もう消費者庁自らお認めになったとおり、立証責任を負う側はかなりハードルが高いんですよね、それを説明するのは。裁判所で高度の蓋然性をというお話をされました。ここがポイントなんですよ。というように、企業側にはしっかりと説明する情報は幾らでもある、そして、その正当性を企業側が説明する責任もあるはずです。

 こんなに裁判所でハードルが高くて、実際、本当に、不利益を配置転換によって受けた多くの人たちは、その異議申立てをしてもなかなかそれが通ってこなかった、そういう判例も事実も積み上がっているんですね。その上で今回改正になるにもかかわらず、こうやって、消費者庁でありながら、まるで企業庁かのように、企業側の立場に立ってこういう改正案を出してきたことに強い違和感を感じます。

 今御説明いただきましたが、じゃ、どうやって、立証責任を負った方は高度の蓋然性を要求されているにもかかわらず、労働者はそれを満たせると、裁判所でなぜ一社員が高度の蓋然性をしっかりと説明できると思われているんでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされておりまして、立証責任の転換は、その例外を設けるものであります。

 今回の法改正におきましては、我が国の労働訴訟実務や公益性を踏まえまして、解雇や懲戒について、公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換することとしております。

 実際に、裁判におきましては、立証責任のある一方当事者からの主張だけではなく、当事者双方の主張を踏まえつつ、中立的な立場から認定判断が行われているものと認識をしています。裁判例におきましても、事業者が通報を理由とするものとは認めていないものの、配置転換が不正に関する通報を理由とするものであると認定されたものが一定程度あると承知をしております。

山田(勝)委員 高度な蓋然性を要求されるので企業側に負担をかけたくないと言いつつも、一方で、中立にちゃんと裁判では行われているんだと。そうであれば、より立場の弱い労働者側にしっかりと、そういった要求が通りやすいような、不利益を主張しやすいような環境をつくることが政治、行政の役割だと改めて主張させていただきます。

 そして、立憲民主党の提案者の答弁にもあったように、そもそも、労働者に立証責任を負わせる、このことが余りにも理不尽だと大臣もお感じいただいているんじゃないかと思います。会社が公益通報を理由に配置転換したと認めない限り、不当性がこれまで認められてこなかったんです。つまり、本当にハードルが高い。一方、会社側には、人事異動の正当性を伝える情報がたくさんあるということなんです。どう考えてもこれは不公平じゃないでしょうか。

 大臣に伺います。政治決断として、公益通報者の労働環境を守るために、労働者側ではなく事業者側に立証責任を転換すべきではないでしょうか。

伊東国務大臣 公益通報者保護法では、事業者内部、行政機関、あるいは報道機関等、様々な通報先がまずあるわけでございます。対象法律も約五百本ありまして、通報対象事実には、直接の刑事罰の対象となる法令違反行為のみならず、間接罰の対象となる違反行為や過料の対象となる違反行為も多く含まれております。幅広く公益通報を認め、保護する仕組みに現在もなっているところであります。

 このような状況におきまして、配置転換を立証責任の転換の対象とすると、労働者が希望しない配置転換を回避することを目的として虚偽の通報を頻繁に行う懸念があることや、あるいは、事業者が労働者一人一人の異動理由について詳細な説明を準備する必要があるなど、事業者の経営判断や、あるいは人事労務管理が大きく制約されるおそれがあるということもございますので、その点を勘案してのお話であります。

山田(勝)委員 本当に残念です。それはもう本当に、政府側のいわゆる官僚答弁であると思います。大臣には、政治家としてどうなのかという質問の趣旨でした。

 改めて昨日、うちの会社の社労士とも話をしてみました。通常の人事異動であっても、やはりそれは、場合によっては家族と離れ離れになったり、労働環境が大きくなることによってすごいストレスを感じたり、通勤の距離も変わったり、それは、当たり前に日常的にやっているからといって、そんな説明もしっかりせずに人事異動していいものじゃないんですよね。現行法でも労働法でも、その辺りの労働者としての権利は守られているわけなんです。

 会社が社員に配置転換を命じる際は、その正当性、それを説明する義務が会社側にあって、配置転換される側には会社から説明を受ける権利があります。にもかかわらず、公益通報者が会社の配置転換の不当性を訴えたときに、その通報者に立証責任が課されるんです。おかしくないですか、大臣、どう考えても。

 これは、本当に皆さん、この議論で違和感を感じるのは、先ほど大臣からもあったように、通報者を守って企業側に立証責任を転換した場合に、虚偽の通報があるんじゃないかとか、そういう懸念があるというのは、それは想像の話ですよね。今起こっているのは、実際に配置転換によって不利益を被って、人生を本当に苦労された人たちの壮大なるストーリーがずっと積み上がってきているわけですよね。どっちを立法事実として重要視すべきなんですか。

 そもそも、虚偽の通報をするような社員さんとは、正直、会社側がコミュニケーションをうまく取れていない、それは会社と社員の信頼関係なんじゃないですか。そういった、あり得ないというか、妄想の世界で、働く人たちが虚偽の通報をするから、だから立証責任は企業側に負わせないんだというのは、これは到底納得できないと思います。

 今日はもうこれをやってもどうせ答えは一緒でしょうから、大臣、是非この問題は引き続き課題として捉えていただきたいと思っています。どうですか、今後の検討課題にしていただけますか。

伊東国務大臣 先ほども答弁させていただきましたけれども、この原案につきましては、各界各層、かなり幅広い方々の御意見を伺ってのお話であります。もちろん、ですから、山田先生の親しくおつき合いされている社労士さんであり、あるいは弁護士さんであり、有識者の皆さん方、ことごとく入っている話でありまして、企業者側、事業者側の人間ばかりでこれを作ったものではありません。

 そういう、公の機関の中で、また是非山田先生の御主張を聞いてもらうような、そういう場面も是非実現していただきたいというふうに思う次第であります。我々も不断の検討をしてまいりたい、こう思う次第であります。

山田(勝)委員 今大臣から、働く側の立場の、連合さんも入っていましたし、そういった公益通報者を保護するための活動を長年されていた弁護士さんも、確かにこの委員のメンバーには入っています。しかし、その双方が、最後まで納得いかなかったと言っているんですよ。自分たちは、立証責任は企業側に転換すべきだと最後まで主張したけれども、議論が平行線のまま終わってしまったと言っているので、決してそういう人たちが納得してこの改正案が出されたわけではないということもしっかりと大臣は踏まえて、今後の検討課題に向き合ってほしいと思っております。

 続いて、次のテーマに入るんですが、立憲民主党の提案者の方々に伺います。

 通報妨害の禁止及び通報者探索の禁止について、立憲民主党の修正案では、内閣総理大臣が、事業者が適切に対処するために必要な指針を定めることとしています。なぜそのような指針を定めることとされたのでしょうか。

石川委員 今回の改正案では、通報妨害の禁止や通報者探索の禁止が新たに設けられました。しかしながら、これらは、正当な理由がなく何々してはならないという規定になっておりまして、この正当な理由が事業者によって融通無碍に解釈されてしまいますと、禁止とは言いつつ、実効性が全くない規定となってしまいます。

 どのような場合であれば正当な理由に当たると言えるのか、事業者が誤解することのないように、言葉を尽くして十分に配慮した上で説明することが求められるということから、法律において、内閣総理大臣が指針を定めるものとしたものです。

山田(勝)委員 ありがとうございます。大切な御指摘かと思います。

 兵庫県の齋藤知事の内部告発文書をめぐり事実関係を調査してきた第三者委員会は、報告書を公表しています。齋藤知事にはパワハラ行為があったと認め、文書をめぐる県の対応は公益通報者保護の観点から違法や不当なものだったと指摘されています。

 なぜ兵庫県で公益通報者を保護できなかったのか。現行法が機能しなかった大いなる反省に立ち、もう二度とこのような悲劇を繰り返さない決意が私たち立法府に求められていると思っております。

 大臣、兵庫県において、不当な探索行為によって命を落とされた方もいらっしゃいます。なぜ、本改正案でこの探索行為を刑事罰の対象にしなかったのでしょうか。

伊東国務大臣 公益通報がなされた後に、事業者内で公益通報者の探索行為が行われることにつきましては、公益通報者自身が脅威に感じることはもちろん、公益通報を行うことを検討している他の労働者の皆さんを萎縮させるなどの悪影響があり、公益通報をちゅうちょする要因となっているところであります。

 このため、今回の法改正では、法律上、公益通報者を探索する行為を禁止することとしており、これにより、労働者等が法律の規定を根拠に通報者探索による被害を回復したりすることができるようになるという民事上の効果も期待しているところであります。

 また、今回の法改正では、公益通報者を特定し解雇又は懲戒を行った法人及び個人は罰則の対象となり得る話であります。一方、探索行為自体の違法性の高さについて客観的な判断が必ずしも容易でないこと、また、事業者による正当な調査を阻害する要因になり得ることなどの懸念も踏まえると、刑事罰の規定を置くことは適当ではないと考えているところであります。

山田(勝)委員 御答弁いただいたんですけれども、こういった社会問題にまで発展して、それを受けてこの国会で議論がなされ、法改正されるに当たって、やはり、こういった探索行為自体が刑事罰の対象なんだというメッセージを国会として、政府として発信していくことが抑止力になると思います。本当に残念です。

 大臣から今御答弁があったとおり、確かに、一方で、探索行為というものの客観的な判断、ここは問われるポイントだと思います。だからこそ、立憲民主党の提案者からあった、正当な理由について、事業者が誤解することのないような、法律において内閣総理大臣が指針を定めるということはとても大切なことだと思います。

 この辺りの立憲民主党修正案に対する政府見解を、消費者庁の方からお聞かせください。

藤本政府参考人 正当な理由につきましては、これは限定的に運用されるべきものと考えております。ここが広く取られますと、今回の法改正の趣旨も損なわれるものというふうに考えております。

 一方で、例えば、こういった事由については正当な理由に当たりますということを限定列挙をするようなことになりますと、これはこれで、ある意味そこを狙った行為が出てくるといったような悪影響もあり得るというふうに考えているところです。

 ただ、この正当な理由が限定的に理解されるべきものであることですとかいうことは、広く世の中に知っていただく必要があると思っていまして、ここの周知については考えていきたいと考えています。

山田(勝)委員 是非、立憲民主党の案について前向きな検討をいただきたいと思っております。

 そして、ちょっと時間の関係で最後の質問になるかもしれませんが、先ほどから議論しているとおり、これまで、内部通報をした方を保護し切れずに、不利益を被って、嫌がらせや配置転換によって、人生もう本当に苦悩の連続で、闘い続けてきた方々が、裁判によって、様々な判決、そういう判例が積み上がってきています。

 この配置転換の不当性という定義について、もう少し具体的に特出ししていってもいいんじゃないかと。もうそういう判例も出てきているわけですし、例えば、先日の参考人の串岡さんのケースなんて、誰が見ても不当な嫌がらせで、そういうことをする企業こそ罰せられるべきだと。誰がどう見ても客観的に分かるわけですよ。やはり、多くある例としては、孤立させられる、個室に入れられるとか、会社の同僚と隔離させられたり、取引関係者の人とも一切接点を持たせられないとか、そういうふうに事例がもう積み上がってきているので、是非、法改正後には、こういった法定指針の中に不当な配置転換の具体例を記載すべきと考えますが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 解雇、懲戒以外の不利益取扱いにつきましても、公益通報を理由とするものは現行法でも禁止をされております。

 消費者庁といたしましては、制度の実効性を確保する観点から、禁止されていることを事業者に周知徹底することが重要と考えております。法律上禁止される不利益な取扱いに含まれ得る措置の例を内閣府告示である指針に明示し、事業者に改めて周知徹底することを検討しております。

 法定指針の改正につきましては、公益通報者保護法の規定に基づき消費者委員会の意見を聞くほか、行政手続法の規定に基づきパブリックコメントを実施することとしております。

 このようなプロセスを通して、広く国民の意見を聞き、指針の内容を検討してまいりたいと考えています。

山田(勝)委員 是非、そういった方向で進めていただきたいと思います。

 時間がやってまいりました。あくまで、公益通報をした方を保護するための改正案であるべきだと主張して、終わります。

 ありがとうございました。

浦野委員長 次に、青山大人君。

青山委員 立憲民主党の青山大人でございます。

 まずは、内閣提出の公益通報者保護法の一部を改正する法律案について何件か伺います。

 まずは、第十一条の三に定める通報者探索禁止のところですけれども、公益通報の探索行為とならない正当な理由とは具体的に何か、まずは教えてください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 事業者が公益通報者を探索する行為は原則許容されるものではなく、正当な理由は例外的かつ限定的な場合にとどめるべきであると考えております。

 例えば、匿名の通報につきまして、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したかなどの特定をした上でなければ必要な調査や是正ができない場合に、公益通報に対応する従事者が通報者の特定につながる事項を問うようなことは正当な理由に該当し得ると考えております。

青山委員 これは消費者庁さんが実施した内部通報に関する意識調査ですけれども、これによると、勤務先へ通報する際に、実名、匿名の選択について、六割以上が匿名との回答でございました。通報者が内部通報をする際に自身の名前を知られることを恐れており、匿名通報のニーズが非常に高いことが分かります。

 従事者が必要な調査のためであれば通報者を特定し得る情報を聞くことが一般的に許されるとなると、これを逆手に取り、正当な理由に当たるという名目での探索行為が行われることも考えられます。内部通報において匿名通報が難しくなる可能性もあり得ます。そのような懸念はいかがでしょうか。政府として、この懸念に対してどのように対応していくおつもりでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、事業者が公益通報者を探索する行為は原則許容されるものではなく、正当な理由は例外的かつ限定的な場合にとどめるべきだと考えております。委員御指摘のとおり、従事者が必要な調査のためなどと主張をして匿名の通報者を探索することは、あってはならないものと考えております。

 今回の法改正の施行に向けまして、消費者庁では、新聞、雑誌、ラジオ、ネット広告などによりまして事業者及び労働者等に広く周知をして、正当な理由の解釈を始めとする法改正の内容についての理解促進を図ってまいりたいと考えております。

青山委員 更に聞きたいんですけれども、今回、探索行為について、罰則規定、これを導入しなかった理由とは何か。やはり、抑止力、実効性を担保するには、そういった罰則規定を導入すべきじゃなかったのかなと思いますけれども、どうでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正では、労働者等が法律の規定を根拠に通報者探索による被害を回復することができるようになるという民事上の効果を期待しております。また、今回の法改正では、公益通報者を特定して、その上で解雇、懲戒を行った法人又は個人は罰則の対象になり得ることになります。

 一方で、探索行為自体の違法性の高さにつきましては客観的な判断が必ずしも容易ではないこと、事業者による正当な調査を阻害する要因にもなり得ることなどの懸念も踏まえますと、探索行為自体に刑事罰の規定を置くことは適当ではないと考えております。

 通報者探索の抑止の実効性につきましては、公益通報に対応する従事者として指定されていない者が、公益通報者を探索する目的で従事者から公益通報者を特定させる情報を聞くことは、これは従事者の守秘義務違反の教唆犯として罰則の対象になり得るものと考えています。

 加えまして、生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、公益通報者であることを認めさせようとした者は、これは刑法の規定により、強要未遂罪や強要罪で罰則対象となり得るものと認識しています。

 これらに加えまして、今回の法改正で通報者探索の禁止規定を設けることによって、公益通報者の探索行為に対する抑止の実効性が担保されると考えております。

青山委員 これまでの質問は、いわゆる通報者側からの懸念のことだったんですけれども、一方、立場を変えて、事業者側の立場になった場合、事業者側が通報に対応した調査を適切に行うに当たって、探索行為と誤認されないかという懸念も逆にございます。

 そもそも、正当な理由が認められる前提として、通報対応業務に当たる者の守秘義務の徹底や、調査に当たる者自身が利益相反関係にないことなど、事業者の側で体制がきちんと確保されていることが必要でございますが、適切に制度が運用できるよう、事業者へはどのような取組を講じていくのか、お伺いいたします。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 通報者探索の禁止につきましては、法文上、公益通報者を特定することを目的とする行為を禁止するものであります。通報された事案に関する正当な調査は、仮に、結果的に公益通報者が特定されたとしても、公益通報者を特定することを目的とする行為に該当しないものと考えております。

 一方で、委員御指摘のとおり、正当な調査であるにもかかわらず、労働者等から通報者を探索していると誤認されることも想定をされます。この点につきましては、法定指針におきまして、事業者には、公益通報への対応業務における組織の長その他幹部からの独立性の確保ですとか、あるいは利益相反の排除が求められております。これらの措置が確保されることによって、通報者を探索しているとの誤認も生じにくくなると考えております。

 法改正の施行に向けまして、消費者庁としましては、このような点も含めて、事業者及び労働者等に広く周知をし、制度が適切に運用されるよう、理解の促進を図ってまいりたいと考えております。

青山委員 それでは、次の質問に行きます。

 見直しの規定について、まずは、閣法について伺います。

 今回の改正法の附則では、五年後の見直しが書かれております。その理由について、先日の本会議における大臣答弁では、不利益な取扱いについて、刑事罰を導入することや立証責任の転換といった一定の措置を講ずることとしており、今後の見直しの検討に当たっては、施行後の裁判事例の蓄積を踏まえる必要があるとのことでございました。

 しかし、例えば刑事罰については、まずは抑止効果に期待すべきものですし、見直し検討に当たっては裁判での適用事例を待つ必要はないと考えますが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 昨年末に取りまとめられました消費者庁の有識者検討会の報告書で引き続き検討課題とされた論点につきましては、今回の法改正による効果や影響など、施行後の状況について、立法事実の蓄積を踏まえて検討する必要があると考えております。

 立法事実の蓄積としましては、委員御指摘の、刑事事件、また民事事件の適用事例、さらには消費者庁の事業者及び労働者等に対する実態調査の結果などが考えられます。これらを収集して分析をするには、施行後五年程度は必要だと考えております。

青山委員 今回の改正、刑事罰の導入ですとか立証責任の転換にとどまらず、重要な点として、体制整備義務の強化とか通報者の範囲拡大などが盛り込まれて、私も正直、評価しています。

 実は私、この法案はとても思い入れがあるんですよ。二〇二〇年、あの新型コロナがはやり始めたときですね。私は当時まだ一期生だったんですけれども、たまたまこの委員会の野党の筆頭理事をやらせてもらって、この公益通報者保護法の初めての改正、二〇〇四年に公布されて、二〇〇六年に施行されて、それからずっと改正されないで、本当に、法律はあるけれども、全然実態にそぐわない。ようやくの初めての改正に私がこの国会の場で携われた、非常に私の中では思い入れのある法案なんです。

 あのときに、当時は、自民党の法案修正の担当が穴見先生でした。今はいませんけれども、本当に、私、あの方の言葉を覚えているんですよ。やはり、法律を作る以上は実態に合うように変えていかなければならない、時代に応じて変わっていくに合わせて法律も変えていかなければいけない。そして、何より、消費者問題、消費者庁というのは非常に予算が少ない省庁だ。だからこそ、この委員会においては、与党、野党関係なく、消費者の利益、もちろん事業者のこともあるので、なかなか消費者だけとは言えません。ただ、そのバランスを考えながら、与野党でいい法律を作っていく。それがこの委員会だということを、当時の自民党の穴見議員さんに教えてもらったことを私は非常に覚えているんです。

 そういう中で、前回、与野党一致で、立証責任の転換を法案の附則に盛り込んだわけでございます。先日の参考人質疑でも、立証責任の転換というワードがどんどん出てきたじゃないですか。あのときに与野党で法律を改正したことによって、もう立証責任の転換が前提ということで、多分、今回の法改正も、有識者の検討委員会もあったと思うんです。

 そういうのを踏まえまして、とはいえ、この間も、あのビッグモーターの事件とか、兵庫県知事の事件とか、あったわけでございます。

 五年後見直しというと、施行されるまで約二年、プラス五年、いわゆる七年後になるんですよ。七年後、時代は大きく変わっているかもしれません。

 この法案の目的は、そもそも、公益通報になるものが企業に発生しなければいいわけじゃないですか。ある意味、そういうことがないように抑止力と。仮に公益通報になるような事案があった場合、内部の人間が勇気を振り絞って公益通報をした場合に、守る法律だと私は思っているんです。だからこそ、私は、よりよい法案をみんなで議論しながら作っていこうと思っているんです。

 ですから、そんな、刑事罰がむしろない方がいいじゃないですか、はっきり言いまして。だから、私は、そういう、今後の裁判とかの状況を待つとかじゃなくて、従来どおり三年見直しにした方がいいということでずっと言っているわけでございますけれども、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 制度につきまして、時代の情勢に合わせて不断の見直しを行うべきであるという点は、我々も同じように考えているところであります。

 令和二年の法改正時におきましては、有識者検討会で、公益通報を理由とする不利益な取扱いへの対応が必要とされましたが、対応の具体的方向性について結論が出ず、法律案には反映されなかった、引き続き検討するということとなりました。このため、施行後早期に対応を検討し、必要な措置を講ずる必要があったというふうに認識をしております。よってもって施行後三年の見直しということになったと認識をしております。

 一方で、今回の法改正では、公益通報者保護制度検討会で具体的な方向性が得られた事項につきましては、いずれも改正案に反映をしているところであります。相当程度、通報者の保護の強化ですとか、あるいは通報しやすい体制の整備ですとか、改正が進められるものと思っております。また、不利益な取扱いにつきまして、刑事罰の導入、あるいは立証責任の転換といった一定の措置を講ずることとしております。

 今後の見直しの検討に当たっては、施行後の裁判事例の蓄積を踏まえて、こうした刑事罰の導入なり立証責任の転換が期待どおりに効果を発するかどうか、しっかり見る必要があると考えています。

 我が国では、訴訟の準備を始めてから一審判決までに二年程度かかることも珍しくなく、当事者の一方が控訴、上告した場合には、判決が確定するまでに更に長い時間を要します。このため、法の見直しの検討には施行後五年程度が必要だと考えているところであります。

青山委員 では、済みません、質問の順番を変えて、逆に、ちょっと、我が党の修正案についての方の質問をいたします。

 我が党の修正案では、見直し規定について、施行後三年としていますが、三年とする意図について、改めてお伺いします。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 今回の公益通報者保護法改正は、前回の二〇二〇年の改正時に積み残された課題について改正が行われており、先ほど青山委員も言われたように、私もその点は評価をしております。

 しかしながら、国際的な動向を見れば、まだまだ十分とは言えませんし、実際これまでに不利益な取扱いを受けた方々の事例からも、現行法及び改正案では十分に対応できないことは明らかであると考えております。そのため、今回の改正に向けて実施された検討会での積み残しの論点は、早急な解決が必要だと考えております。

 先ほど、立法事実として、刑事罰の適用事例が生じるのを待つという話がありましたけれども、私は、むしろ逆ではないかと。

 特に、今回の改正では解雇、懲戒のみを直罰の対象としていることから、ともすれば、企業や組織は、公益通報者に対する報復として、解雇ではなくて不当な配置転換等、法の網をくぐる形でこれをやってくる、それが増えていく、そういう懸念もあるのではないかというふうに思います。

 そう考えると、状況をつぶさに捉えて、実態に合わせた早期の改定が必要ではないでしょうか。これも先ほど青山委員が御指摘をされていましたけれども、公布から一年半の施行ということになりますと、そこから五年ということで、おおむね今後七年間改正が入らないことを意味して、新たに現出する課題への対応も遅れてしまうというふうに思います。

 また、消費者庁の実施する検討会は、他の省庁と比べても丁寧に実施をされているとは受け止めておりますけれども、今回は、残念ながら、通報当事者の声を聞く機会がないまま結論が出されてしまいました。現場で最も横行している配置転換への対応が不十分な改正案になっていることも考えますと、このため、次回の改正までに更に五年待つのではなくて、今度こそ当事者の声を聞いて、通報者を保護し、ひいては社会全体の利益を確保するという、真の意味での、与野党あるいは多くの関係者の意見を入れた、公益通報者を保護する本来の目的を実現していただきたいというふうに期待をしております。

青山委員 以上で質問を終わります。

 正当な理由の外観を取った探索行為や通報者への不利益取扱い、これらは公益通報者保護法の趣旨を理解していれば起こり得ないことであって、今後も、事業者のみならず、社会に法の周知や制度の理解が進むよう、政府による情報発信を重ねてお願いし、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

浦野委員長 次に、梅村聡君。

梅村委員 日本維新の会の梅村聡です。

 本日は、公益通報者保護法改正案について質問させていただきたいと思います。

 まず、この法律の原案そして今回の改正案含めて、我が党の部会でも様々な意見が出ました。今回の改正案につきましても、方向性としては我が党も必要性を非常に重要視しておりますので、そういった前提の中で、一方で、我々の部会の中で、様々な疑問であるとか、あるいは懸念点であるとか、そういったものも出されましたので、その点を中心に今日は質問をさせていただきたいと思っております。

 それで、まずは大臣にお伺いをしたいと思いますが、一つは、公益通報者保護法のいわゆる認知度、理解度の問題です。

 消費者庁が令和六年二月に発表された就労者一万人アンケートによれば、全従業員のうち、内部通報制度をよく知っていると答えた従業員の方が一一・九%、そして、ある程度知っているという方が二六・七%ということで、これは公益通報ではなくて内部通報に限った理解度、認知度ということになりますので、実際には、外部通報、二号通報、三号通報というものもございますから、それを含めるとまだ四割に満たない方しかこれを認知されていない、こういう状況が現在あるわけなんです。

 こういったことを今後どのように改善を目指していくのか、今の現状の認識も含めて教えていただきたいと思います。

伊東国務大臣 梅村委員の御質問にお答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、消費者庁が行いました就労者に対する実態調査によりますと、就労者全体の、お話にありました約四割しか内部通報制度について理解していないこと、また、約三割しか窓口の設置を認知していないこととの結果が出ており、制度の浸透が道半ばである、このように考えております。

 今回の法改正は、公益通報を理由とする解雇又は懲戒に対する刑事罰の導入等、制度について大幅な見直しを行うものであり、消費者庁としては、周知啓発を更に一層強化し、制度の認知度の更なる改善を図る必要がある、このように考えております。

 これまでも、様々な媒体を通じて広く事業者及び労働者に周知に努めてきたところでありますが、今後も周知方法を工夫しながら取り組んでまいりたいと考えております。

梅村委員 私の周りでも、比較的大きな企業にお勤めの方、すなわち、この体制ができているであろう社員の方でも、今回の兵庫県の知事の問題を通じて初めてそういう課題を知ったという方も結構おられますので、これは改正案に含めて是非周知をする手だてを考えていただきたいと思っております。

 それで、さらに、この就労者一万人アンケートの結果をもう少し深掘りをしていきたいと思うんですけれども、まず、消費者庁の公益通報者保護法QアンドA、基本的事項、ここを見させていただきますと、公益通報とみなされるかどうかは、その通報が不正の目的でないことが判断基準になります、不正に利益を得る目的や、利益を得たり、他人に損害を加えたりする目的がある場合は、不正の目的でないことには当たらず、公益通報とはみなされませんと。こういう記述がありますから、公益通報になるためには条件があるんだということがここに書かれているかと思います。

 それで、一方で、このアンケート調査によりますと、内部通報制度を利用して相談、通報した人の三〇・四%は後悔をしていると。後悔をしていると答えた方が一七・二%で、そして、よかったことも後悔したこともあるが一三・二%、この二つを足して、合計三〇・四%の方が何らかの形で後悔をしている、こういう答えをされているんですね。後悔した理由は何ですかと聞くと、通報、相談をしたが不正に関する調査や是正が行われなかったからが五七・二%と、一番大きな答えになっているわけなんです。

 調査や是正が行われなかったというのは、もちろん、内部通報窓口側の問題点があるという考え方と、そしてもう一つは、先ほどQアンドAで御紹介したように、いやいや、そもそも通報したものが公益通報には当たらないよと、こういう中身も私はかなり含まれているんじゃないかなと思いますが、調査や是正をされなかったものの中に公益通報とはみなされない事案というのがどれぐらい含まれているのか。消費者庁は、今、この辺りに関する把握とか、そういったものがもしたくさん届出がされているんだったら、これをどのように是正していくのか、この辺りを教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 昨年実施をした有識者検討会の中でも、濫用的通報が相当程度あるというような声がございました。

 一方で、我々としても、じゃ、どのぐらいそういったような案件が含まれているのか、何%ぐらいあるのかといったような実態については、申し訳ございませんが把握をしておりませんで、まずはその実態把握のための調査から始めることが大事だと思っております。実態を把握した上で対応を検討するということが重要かと考えています。

梅村委員 まだ調査が未実施ということですので、是非計画をまた立てていただければなというふうに思います。

 そして、もう一つは、今回、三百人を超える従業員を雇用している事業者に対しては、内部通報の体制整備義務、これはもう既に課されているわけなんですけれども、内部通報窓口で勤務している公益通報対応業務従事者の方々は、刑事罰を規定された守秘義務を負いながら日々業務に従事をしているんだと思います。

 なぜこの従事者の方のことにスポットを当てるかというと、ちょっと私ごとなんですけれども、私も日本維新の会のハラスメント委員会の委員長をしておりまして、通報ではないんですけれどもいろいろな相談等も受ける立場になりますけれども、やはり受ける側も相当負担があるわけなんですね。

 後ほどちょっとまた別の観点での質問もありますけれども、今回、就労者側へのアンケートということをされたかと思うんですけれども、相談を実際に受けて業務に従事をされている、こういった方々が感じている問題点ですとかあるいは課題、こういったことも是非吸い上げていただきたいなと思いますけれども、こうした意識調査であるとかアンケート調査、これは行われたことがあるのか、あるいはこれから計画をされているのか、教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 事業者側に対する調査というのは改正に当たっても実施をしましたけれども、通報対応を行われる従事者に対する調査は、今回は実施をしておりませんし、これまでも、私の知る限り実施をされてきたことはないと認識をしています。

 委員御指摘のとおり、従事者の方の状況というのを把握することは、我々にとっても、あるいは制度を考える上でも大事なことと思いますので、今後、対応については検討したいと考えます。

梅村委員 是非その点も、体制整備、後ほどまた法整備のことも含めてお伺いしたいと思いますが、是非、実態調査をお願いをしたいなというふうに思います。

 そして、先ほどから議論が続いておりますけれども、今回の公益通報を実際に悪用された場合にどう対応するのか、この論点も私は非常に重要だと思います。

 先ほど、実際にそれはなかなかあり得ないことじゃないか、完全に虚偽の通報をするというのは、それは本当にあるのかどうか、あるいはそれは妄想に近いんじゃないかという指摘もあったかと思いますけれども、濫用的通報にもつながると思いますけれども、全てが全くの虚偽の通報だったら、これは比較的証明がしやすいと思います。そういうことがなかったとかそういう事実はなかったということが証明できれば、それは虚偽の通報だということが言えると思いますけれども、実際に虚偽の通報が、事業者の側から、濫用的通報も含めて起こっているんだという話の中には、ストーリーとしてはあるんだけれども、その中の一部が虚偽であったりとか、あるいは通報した人が勘違いをしていたとか、そういったことで、実は事実とは違うんだ、こういうパターンも当然中にあるわけなんですね。

 そういうものがもし通報されてきたらどうなるかというと、調査する側も、事実を全部最初から見ていって、どの部分が虚偽になっているのか、どの条件が違っているのかと調べるのは、膨大な作業量が必要になってくるわけなんです。

 ですから、何も、立証責任がどっちにあるかではなくて、やはりそこは通報する側の方も一定きちんと事実を把握した上で、気楽にとは言わないですけれども、それを使うということについてはしっかり責任を持ってやっていただくということが大事だと思うんです。

 今回、虚偽の通報に対する罰則規定は定められなかったんですけれども、じゃ、どういう形で今申し上げたような問題に対応することができるのか、これをちょっと教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 昨年、消費者庁に設置しました有識者検討会におきまして、民間事業者の方から、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報が少なからずあるといった指摘がございました。

 濫用的通報の例としまして、通報内容が虚偽であると知りながら行う通報もあると承知をしております。これには刑法の偽計業務妨害罪や虚偽告訴罪が成立し得ると考えますけれども、一方で、刑法での犯罪の成立には条件があり、濫用的通報に効果的に対応するには限界がある、あるいは、確実に抑止するため、法の中に罰則規定を設けることは検討に値するといった意見もございます。

 消費者庁といたしましては、公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、虚偽であると知りながら行う通報を含めまして、濫用的通報につきまして、まずは、事例を幅広く集め、実態を調査する必要があると考えております。その上で、対応を検討してまいりたいと考えております。

梅村委員 こちらの検討も非常に大事なことだと思います。

 私からの提案は、それであるならば、通報を行う側にも良心とかあるいは一定の責任というものを持ってもらう、そういったことがきちんと伝わるように、こっちの方のしっかりした周知もしていただきたいと思いますが、これもお願いできますでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護法では、不正の目的ではないことを公益通報の要件の一つとしております。不正の目的の通報は保護の対象とはならないということであります。

 また、法の中では、公益通報をする者が他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めることを求めております。しかしながら、事業者からは、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報が少なからずあるといった指摘があるのが現状であります。

 繰り返しになりますけれども、消費者庁としましては、事業者の公益通報への適切な対応を阻害したり風評被害などの損害を生じさせたりする濫用的通報につきまして、まずは、事例を幅広く集め、実態を調査する必要があると考えております。その上で、公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、必要な対応を検討してまいりたいと考えています。

梅村委員 是非前向きにお取組をお願いしたいなというふうに思っております。

 そして、先ほどから少し話題に出ておりますけれども、公益通報対応業務従事者、これは、事業主側から、会社の方から、あなた、この窓口の対応従事者をやってくださいと実際にはお願いすることになるかと思いますけれども、現在の公益通報者保護法では、第十二条で、公益通報対応業務従事者と公益対応業務従事者であった者、ですから、もう役職は外れている方、その両者に対して守秘義務を課していると承知をしております。

 そして、第二十一条で、この守秘義務に違反した者に刑事罰を科すということが定められているんだと思いますけれども、しかしながら、現行法では、刑事罰として守秘義務を負う期間、これは定められていないんですね。

 定められていないということはどういうことかというと、一度その業務に従事をすれば、その会社を辞めるまでか定年退職になるまでか分かりませんけれども、永遠にこの守秘義務がその個人にかかってくる、こういう仕組みに実はなっているわけなんですね。だから、例えば十年たったらもうそれは外れますよということにはならないわけです。

 そうしますと、この期間を定めていないことによって、対応従事者をやってくれますかと言われても、いやいや、辞めた後も刑事罰がかかるかもしれないのにそんな重大な役は受けることができません、当然こういう反応が出てくるということも僕は想定されると思うんです。

 ですから、やはり永遠に刑事罰としての守秘義務を負い続けるということではなくて、守秘義務を負う期間、これを定める必要性があるんじゃないかなと考えますが、そういった議論が今まであったのか、あるいはその必要性について教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、従事者は公益通報者を特定する情報について知り得る立場にありますが、不利益取扱いを抑止する観点から、法律上の守秘義務と守秘義務違反時の刑事罰が規定をされております。

 こちらについては、従事者にとっては大変重い措置とは考えますが、一定期間が経過しても従事者が公益通報者を特定する情報を漏えいした場合には、これは不利益な取扱いが生じるおそれがあるということだと考えます。また、従事者の守秘義務を解除することが許容される合理的な期間を定めることは、これはなかなか難しいというのが実態だと考えます。したがいまして、守秘義務を負う期間は設けていないところであります。

 これまでは、この論点を中心に、例えば有識者検討会で議論がなされたといったようなことはなかったと記憶しております。

梅村委員 今まで論点に挙げられていなかったという答弁だったんですけれども、是非、この点は、今後、体制整備をしていく中で、従業員側からすると、いやいや、刑事罰まで背負って、背負ってというのは言い方が変ですけれども、やらないといけないのか、こういう反応は当然出てくると思いますので、是非機会がありましたらこれは検討の中に入れていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 そして、次、パワハラとの関連も質問をしたいと思います。

 元々の公益通報者保護法では、第二条三項一号に、公益通報として通報できる対象事実が規定されているというふうに思います。第二条三項一号は、この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に挙げるものに規定する罪の犯罪行為の事実又はこの法律及び同表に挙げる法律に規定する過料の理由とされている事実、こういうふうに書かれておるわけなんです。

 つまり、パワハラというものが、これは私はいつも扱っていますけれども、伝統的には六類型に分けられて規定をされているわけなんですけれども、パワハラは公益通報として通報できる対象事実に当たるのか当たらないのかというこの論点だと思います。

 私の認識は、パワハラ防止法では、パワハラ行為自体に刑事罰や行政罰を定めているわけではありませんので、パワハラと一般的にパワハラ防止法で定められているということだけでは、これは公益通報の対象にはならない。そして、そのパワハラの中でも、例えば傷害罪や脅迫罪あるいは名誉毀損罪、こういうものに当たる部分のところだけが公益通報に当たる可能性があるんだ、これを改めて確認をしておきたいと思いますが、その認識でよろしいでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護法における通報対象事実は、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として公益通報者保護法や政令で定められた法律に違反する行為のうち刑事罰若しくは過料の対象となる行為、最終的に刑事罰若しくは過料につながる行為をいいます。

 委員の御指摘のとおり、一般にパワーハラスメントは刑事罰若しくは過料の対象となる行為又は最終的に刑事罰若しくは過料につながる法令違反ではないため、暴行、脅迫等の刑事罰の対象となる行為に該当する場合を除きまして通報対象事実には該当しないと認識をしております。

梅村委員 この点も何らか周知をしていただく方法を検討いただきたいと思います。

 特に、兵庫県の知事の一連の報道では、公益通報という言葉とパワハラという言葉が余りにも前に出過ぎておりますので、一般の方々から見ると、パワハラそのものが公益通報の対象になるんだということ、こうなってきますと、これは大混乱になってくると思いますので、この点も是非何らかの対応を御検討いただければなというふうに思います。

 それでは、ここからは、いわゆる今回の改正案での、当委員会でもよく議論になっておりますけれども、公益通報を理由とした解雇又は懲戒に対する罰則規定ということになります。

 もちろん、いわゆる公益通報を理由とした罰則や懲戒、これはとんでもないということが前提でありながら、一方で、これも非常に、悪用という言い方が正しいかどうか分かりませんけれども、もし、自分の勤務不良とか態度が悪いとかあるいは成績不振とか、ひょっとするとこれは懲戒を受けるのではないかといった労働者の方が先に公益通報に届出をして、それは判定はどうなるか分かりませんけれども、そういうことをしておけば、現実的にはその処分が保留になってしまう。懲戒や解雇、まあ解雇は少しきついかもしれませんが、懲戒に関しても、先に公益通報しておけば保留になる、こういう使い方ということも懸念としてはあるのではないかなと思いますが、この点に関してまずどう整理されているのか、教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 解雇又は懲戒は、労働者の職業人生や雇用への影響の観点から、不利益の程度が比較的大きく、事業者として特に慎重な判断が求められているものであります。

 このため、今回の法改正によって、労働者が制度を悪用する目的で公益通報した場合であっても、事業者は正当な理由を十分に説明できることが期待されており、御指摘のような懸念は大きくないと考えております。

梅村委員 またこれは、懸念は少ないということかもしれませんけれども、実際にこの改正案がもし始まった場合にどういった状況があるのかということ、実態調査は是非何らかの形でしていただきたいなというふうに思います。

 それでは、今からの二問は仮の話になりますけれども、今回は、公益通報に伴う報復的人事異動に関しては罰則が改正案では見送られたということになりますけれども、じゃ、仮に罰則が導入された場合に、今度、これは人事異動ですから、何が起こるかというと、実際には、もしこの公益通報が事前にされていた場合、これに関して刑事罰が科せられた場合には、その人事担当者の方々は相当プレッシャーになるんじゃないかなというふうに思います。

 ですから、その通報が公益通報に当たるか否かにかかわらず、あるいは報復であるか否かにかかわらず、それを証明しないといけませんから、相当人事異動に対して担当者はプレッシャー、企業にとっては非常に、人材の流動化あるいは企業の活性化にとっては一つ懸念材料にはなるかと思いますが、こういった論点については今どう整理されているのか、教えてください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましてはメンバーシップ型雇用が一般的で、配置転換につきましては、適材適所の配置ですとか人材育成等の観点から、事業者の広い裁量の下、頻繁に行われており、これは必ずしも不利益な取扱いとは言えないものと認識しています。また、配置転換の態様は様々でありまして、不利益性は個人の主観や事情に依存する部分が大きいものと考えております。

 一般論としまして、犯罪の構成要件は明確で、また、対象となる行為は罰則に値するものでなければならず、仮に公益通報を理由とする配置転換を罰則の対象とした場合には、経済活動の過度な萎縮につながる懸念があると考えているところであります。

梅村委員 ですから、報復的人事が駄目だよということは当然のことなんですけれども、これが果たして刑事罰というやり方じゃなければそこのところが担保できないのかどうか、このことについても私は慎重に考えるべきじゃないかなという立場ですので、申し上げておきたいと思います。

 そして、もう一つ、仮の話なんですが、今回は、公益通報のための資料収集や持ち出しに関する刑事免責、これは改正案には盛り込まれませんでした。

 でも、これをもし仮に盛り込むという方向性になった場合に、そうしますと、現行法、例えば持ち出すことそのものが罪になる場合、これも当然あるかと思います。例えば、それは窃盗であったり、横領であったり、背任であったり、あるいは、私なんかも医療機関を運営していますから、そこで、公益通報に当たるけれども、カルテを持ち出しました、我々には守秘義務があります、じゃ、その守秘義務は公益通報という名の下では破られても刑事免責なんですかとか。

 今回盛り込まれなかったですけれども、仮にこの持ち出し等に刑事免責が導入された場合には、今の現行法、持ち出すことそのものに罪が成立する場合との整理というのはどのようにこれから整理していこうと考えられていたのか、教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 昨年、消費者庁に設置しました有識者検討会では、公益通報のために必要で社会的相当性を逸脱せず、目的外で利用しない限り、資料収集、持ち出し行為が免責されるよう規定を設けるべきとの意見がございました。

 この論点につきまして、有識者検討会の報告書では、「今後の立法事実を踏まえ、窃盗罪、横領罪、背任罪、不正アクセス禁止法違反、建造物侵入罪、個人情報保護法違反などの犯罪の構成要件との関係を整理し、免責のための具体的な要件や事業者の免責の必要性について、引き続き、検討すべきである。」と提言をしております。

 なお、ここでの事業者の免責の必要性とは、仮に公益通報者の資料収集、持ち出し行為が免責された場合に、事業者が関係する顧客から損害賠償請求やクレームを受けたり、あるいは個人情報漏えい等により監督官庁から処分を受けたりする可能性があって、事業者の免責についても併せて検討する必要があるという事業者からの意見を踏まえたものであります。

 現状では、免責のための具体的な要件ですとかあるいは事業者の免責の必要性につきまして、検討に必要な立法事実の蓄積が十分にないことから、整理を行うには施行後の状況を踏まえる必要があると考えております。

梅村委員 この点も、是非慎重に検討いただければなというふうに思います。

 そして、最後になりますけれども、これまでの質疑は主に内部通報が舞台になることが多かったんですけれども、外部通報を行われた場合、今回の兵庫県の齋藤知事なんかもそういうことだと思いますけれども、例えば週刊誌の記事になる、それからSNSに掲載をされる、これも外部通報としては、特に、アンケート結果を見ると、若い世代の方はSNSに通報するという方が多かったんですけれども。

 私たち政治家も含めて、これはもちろん公益通報ではないかもしれませんけれども、そういったものに通報されて、雑誌が販売されました、SNSはリツイートされてどんどん広がっていきますといったときに、いやいや、これは公益通報なんだよと通報者が言い張れば、それは公益通報かもしれませんが、その一部にでも虚偽が含まれていた場合、名誉回復は一体どうすることが正しいやり方なんでしょうか。

 私が思いつくのは、週刊誌の販売元を訴えるのか、SNSの情報を開示してその人にアクセスするのかということだと思いますけれども、それはとてもお金も時間もかかって、回復した頃には例えば選挙が終わっていたりとか、とんでもないことになるわけで、こうした、公益通報であると通報者が言い張った場合でも、その名誉が傷つけられたり被害を被った方々はどういった方法で回復するのか。あるいは、その通報を行った者には責任を負わせることができないのか。これの整理を最後に教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のケースには公益通報に当たる場合と当たらない場合とがあろうかと思いますけれども、公益通報が事業者又は被通報者の社会的評価を低下させる内容であって、通報先について公然性がある場合は、名誉毀損罪が成立し得るものと考えます。また、通報内容が虚偽であると知りながら行う通報につきましては、偽計業務妨害罪や虚偽告訴罪が成立し得るものと考えております。

梅村委員 これで終わりますけれども、公益通報というものが社会にとって必要な制度である、これは別に我が党も何も異論はないわけですけれども、今日申し上げたような様々な影響が出てくることになるかと思いますので、それに対する対応を我々も考えていきたいと思いますし、また、消費者庁の皆さんにもしっかり考えていただく一助になればと思います。

 今日はありがとうございました。

浦野委員長 次に、丹野みどり君。

丹野委員 国民民主党、丹野みどりです。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 近年、企業や行政のガバナンスが本当に問われていると思います。勇気を出して組織の不正に声を上げた人をしっかり守る、その仕組みがきちんと機能していることはとても重要だと思います。兵庫県の元県民局長の取扱いをめぐっても、国民の関心は高まっていると感じています。正義の心を持って告発した人が命をもって抗議する、そういう社会はあってはならないと思います。そのようなことは本当に終わりにしなくてはいけません。

 日本の組織の風土を健全なものにしていく、そのためにも、今回の法改正は大変意義深いと思っております。しかし、まだまだ完成形ではありません。議論が必要だと思っています。

 そこで、最初の質問です。

 公益通報者保護制度検討会の報告書では、どういった点が課題とされ、そして、どう法改正すべきだと提案されたのか、まずは教えてください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護制度検討会の報告書は、制度をめぐる国内外の動向を踏まえまして、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備とその実効性や、公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止、救済といった公益通報者の保護に関して、引き続き課題が多いと指摘をしております。

 その上で、報告書は、事業者の従事者指定義務違反に対する消費者庁の行政措置権限を強化すること、公益通報者の探索行為や公益通報の妨害行為を禁止すること、公益通報を理由とする解雇及び懲戒について、行為者に対する刑事罰を設けるとともに、民事訴訟における立証責任を事業者に転換すること等、法改正を含めた対応を早急に検討するよう政府に要請をしております。

 消費者庁といたしましては、このような報告書の提言を踏まえ、今回の法改正によって必要な法整備を行うこととしております。

丹野委員 ありがとうございました。

 今伺っていて、たくさん審議官から課題点を伺いましたけれども、そういった課題全て、今回の法改正で解決したと思われていますでしょうか。今回の法改正をどのように評価をされているか、教えてください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護制度検討会で具体的な方向性が得られた事項につきましては、いずれも今回の改正案に反映をしております。

 今回の法改正によって、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備が徹底され、公益通報者の保護が強化されることになると考えております。その結果、労働者等の公益通報が促進され、事業者の自浄機能発揮につながることや、行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待をされます。これにより、不正行為が早期に発見、是正され、国民の生命、身体、財産等の保護が更に図られるようになると考えております。

丹野委員 ありがとうございます。

 解決したところ、いいところを数えるとそうなるのかなと思うんですけれども、まだまだ足りない点もあると思っています。

 今回の法改正では、今のお話にもありました、体制整備の徹底というのがございます。指定義務に違反する事業者に対して、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰を新設しております。これは、具体的にどういった場合に指定義務に違反するとみなすのでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 事業者は、内部からの公益通報を受け、並びに、当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及び、その是正に必要な措置を取る業務に従事する者を公益通報対応業務従事者として定めなければならないとされております。常時使用する労働者数が三百人超の事業者がこの従事者を指定していない場合には、従事者指定義務違反となると認識をしております。

丹野委員 立入検査権限というのも新しく設けるとあるんですけれども、今回つくられる立入検査とは具体的にどういった内容になるでしょうか。

藤本政府参考人 本改正法により導入されます立入検査では、義務対象事業者における従事者指定義務の施行に必要な範囲で各事業者の事業所へ立ち入り、従事者指定に関係する資料などの物件を検査することができるものとしております。この権限は消費者庁長官に委任をされておりまして、立入検査は消費者庁の職員が実施することになります。

丹野委員 その体制がちゃんとあるかどうかという立入検査なわけですね。分かりました。

 今回の改正によってかなり前進した部分もあると感じております。例えば、公益通報者の範囲にフリーランスを追加すること、探索する行為を禁止すると明文化をしたこと、それから、解雇や懲戒といった不利益な取扱いに対しては刑事罰が導入された、裁判のときには立証責任の転換をした、そういうことにおいては本当に前進したと思っております。

 この中で、公益通報者の範囲について次に質問をいたします。

 フリーランスが加わったことは評価できるんですけれども、証言を実際してほしいんだけれども、口をつぐんでしまったと。証言してくれる同僚とか取引先、そういった方も守られる、そういう範囲に加えるべきではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 通報者本人以外の同僚等の、公益通報者の周辺の方々の状況につきましては、その実態が現状明らかではないことから、その状況を注視してまいりたいと考えています。

 また、公益通報者保護法は、労働者等、事業者に対して弱い立場にある個人を、公益通報者として、公益通報を理由とする不利益な取扱いから保護する法律となっております。このため、取引先の労働者等は、公益通報を理由とする取引先事業者による不利益な取扱いから保護されてはおりますが、取引先事業者自体は、個人ではないことから、公益通報者として保護の対象とはなっていないというものであります。

丹野委員 こういった証言をしてくれる人の範囲を増やすというのも今後の検討課題にしてほしいなと思っております。

 次の質問は、事業者の規模について伺います。

 現在、三百人以下の事業所は内部通報の対応をする体制整備が努力義務となっておりますが、今後の議論次第ではありますけれども、事業所の範囲を広げていくため、労働者の人数要件を引き下げていく場合、例えば社員が少なくなればなるほど、問題が二つあって、そもそも少ないと内部通報の体制をつくるのが大変というのもあると思うし、あと二つ目は、社員が少ないとどうしてもばれやすい、そういう状況もあると思うんですね。

 そこで、提案をします。

 こうした、例えば百人以下と規模が小さくなってくる場合、現在、通報先として三つあります。社内の内部通報、それから二番目が行政機関、三つ目がマスコミとあるんですけれども、この二番の行政機関に通報する要件をもうちょっと緩和して、小規模事業者の通報者が内部だけにかかわらず行政にもっと容易に通報できるよみたいな、そういう改善も必要かなと思っているんです。

 繰り返しになりますが、小規模事業者の場合、必ずしも社内で体制をつくらなくてもいいとか、通報先は行政機関の方にしやすくするとか、そういった対応についてはいかがお考えでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護法では、常時使用する労働者数が三百人以下の事業者に、公益通報に適切に対応するための体制整備の努力義務が規定されております。しかしながら、これらの事業者につきましては、公益通報の件数が少ないことから、公益通報対応のノウハウを蓄積することが難しいといったような指摘ですとか、あるいは、内部通報窓口の導入支援を行う民間サービス等も少ない中で、実効的な体制整備を行うことのハードルが高いといったような指摘がなされております。

 このような指摘も踏まえまして、消費者庁ではこれまで、中小規模事業者など、内部通報制度を導入していない事業者の経営者向けに内部通報制度の重要性や導入方法について周知を行ってきたところであります。

 また、御提案の小規模事業者に対する保護要件の緩和につきましては、令和二年の改正におきまして、二号通報の保護要件が一定程度緩和されております。信ずるに足りる相当な理由がなくても、思料し、かつ、公益通報者の氏名等を記載した書面を提出した場合には保護要件を満たすこととなりました。

 更に保護要件を緩和した場合には、信憑性に欠ける通報が増加し、通報者が公益通報者に該当することの確認が困難となるといった、行政機関の対応負担が増大する懸念があるかと考えます。このため、保護要件を更に緩和することは難しいと考えております。

丹野委員 保護要件の緩和の線引きというのは難しいと思いますけれども、小規模事業者が通報しやすくするというのが課題感でありますので、ここも今後の検討ポイントにしてほしいなと思います。

 続いて、今回の改正案、更なる実効性を高めるため、探索行為、すなわち犯人捜しについて、それから配置転換への罰則、立証責任の転換についても伺っていきたいと思っております。

 通報者が恐れていることとして、犯人捜しをされること、そして窓際に追いやられること、不当な配置転換があると思っております。

 まずは、この犯人捜しについてです。

 法案には以下のように書かれています。事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることを禁止するとあります。これは御指摘もありましたけれども、この文章の中で、正当な理由がなくという文言は、やはり私も漠然と、これは幅広過ぎると思っております。

 この一文を事業者側が、いやいや、犯人捜しをするのには正当な理由があるんですよみたいな感じで逆に利用するケースも考えられるわけですね。なので、この幅広な書き方をしてしまうと歯止めになりにくいと感じております。

 なので、犯人捜しを抑制的にするのであれば、解釈の幅を持たせずに、なるべく犯人捜しができないようにできないようにするような、抑制的にいくことが趣旨に沿っているのかなと感じております。そのため、この正当な理由という部分を具体的に明示をするのも一つかなと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 事業者が公益通報者を探索する行為は原則許容されるものではなく、正当な理由は、御指摘のとおり、例外的かつ限定的な場合にとどめるべきと考えております。

 事業者による適切な制度の運用を確保する観点から、法令違反とならない正当な理由については、例えば、逐条解説ですとか当庁のウェブサイト上のQアンドA等により解釈の明確化を図っていく必要があると考えております。

 今回の法改正の施行に向けまして、制度の概要に関する説明会を実施するほか、新聞、雑誌、ラジオ、ネット広告などによりまして事業者及び労働者等に広く周知をし、正当な理由の解釈を始めとする法改正の内容についての理解促進を図ってまいりたいと考えております。

丹野委員 様々なところを含めて、周知は大事だと思います。

 加えて、犯人捜しに対して罰則もないんですね。公益通報者を特定することに対して罰則を設けるということについては、どういったふうにお考えでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正によりまして、労働者等が法律の規定を根拠に通報者探索による被害を回復することができるようになるという民事上の効果を期待しているところです。

 また、今回の法改正によりまして、公益通報者を探索して、その上で公益通報をしたことを理由とする解雇又は懲戒を行った法人及び個人は罰則の対象となるということになります。

 一方で、不利益な取扱いには至らない探索行為自体に罰則を科した場合には、事業者による正当な調査を阻害する要因にもなり得るなどの懸念もあり、慎重に検討する必要があると考えているところです。

丹野委員 ありがとうございました。

 次に、配置転換です。今回の改正でも、本当に大きな議論のポイントと思っています。

 公益通報者が最も恐れているのが、通報したことにより報復的な人事異動を受けること、不当な配置転換だと思います。この配置換えに対して罰則を設けたり立証責任の転換を企業側に課すことによって、反対意見で大変多いのは、日本の人事異動だと、やはり、様々な職場を経験させて成長させるのであるから、ひとえに不当な配置転換とは言えないという意見。

 欧米に多くあるジョブ型雇用、すなわち職務内容とかスキルや経験、これを限定して採用する、雇用する形態だと、確かに配置転換はこの雇用形態に反すると思います。しかし、それとは逆に、日本の多くはメンバーシップ型雇用で、そもそも、最初、業務内容などを限定しない雇用であるから、異動や転勤、ジョブローテーションを重ねて社員を育成していく。なので、人事異動に罰則を設けたり立証責任を転換するというのはそぐわないんだという意見があります。

 本当にそのとおりだと思います。私もそれは否定するつもりはなくて、日本のこの人事異動を通しての社員の育成方法、これを否定するつもりは全くありません。ただ、ゆえに、全ての人事異動が対象になるんだとか、全ての人事異動でそんなことを言ったら全部言い訳をつくらなきゃいけないとか、そんなことも必要ないと私は思っております。

 おととい、五人の参考人の方がいらっしゃいました。その中に、元トナミ運輸の社員で内部告発をしたという、それによって三十年以上壮絶な報復人事を受けて、それでも辞めなかった、裁判にも勝った、串岡弘昭さんにお話を伺いました。

 私が串岡さんに、不当な配置転換の、不当なというのが本当に定義が難しいと言われているんだけれども、当事者としてはいかがですかとお聞きしました。すると、串岡さんはこう答えました、人事部は分かっていると。もう明らかに、不当な配置転換を行えば、これはみんな分かるんだと。本当にそうなんです。串岡さんの場合は、一日中草むしりをしたりとかペンキ塗りしかない、いろいろな人からシャットダウンされる、そういう明らかなものでした。

 これは、現在、日本全国で起きている、いろいろ不満も渦巻いている普通の人事異動において、遠くに転勤になったとか、仕事内容が何か物足りなくなったとか、そんなものじゃないんですよね。やはり、追い出し部屋みたいなものが設けられて誰とも接触できなかったりとか、本当に人権侵害みたいな、そういうことが行われている、これを指しています。

 なので、公益通報をしたんだ、かつ、その通報者が一年以内に人事異動になった、かつ、その内容が今言ったみたいに不当であると明らかに感じて、それに不服を申し立てた、そういう限定するような要件を満たした場合に罰則を設けたりとか立証責任を転換する、こういった限定した形にすることはできないんでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 人事異動が不当であると感じ、不服を申し立てたことを要件とすることの御提案につきましては、個人の主観や事情によって要件を満たすか否かがどうしても左右されることになると考えます。

 この点、罰則の対象につきましては、一般論としまして、犯罪の構成要件は明確で、また、対象となる行為は罰則に値するものでなければならないと考えます。御提案のような形で、個人の主観ですとか事情に依存する要件の下で罰則を設けることは適当ではないのではないかと考えているところです。

 次に、立証責任の転換につきましてですが、民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされています。立証責任の転換は、この例外を設けるものであります。線引きをするところで、個人の主観や事情に依存してこのような例外が適用されるか否かが左右されることも適切ではないのではないかと考えているところであります。

丹野委員 本当にこのポイントはどこまでいっても平行線だなと思うんですけれども、でも、本当にここを、みんなの立場で、背けることなく、議論と実態を重ねていって、議論を続けていくべきと思っています。

 不当な配置転換に対して通報者が立証しなくてはいけないとなると、その資料を集めなくてはいけませんし、そもそもどういった資料が必要かも分からない状況になっていると思います。先ほども指摘がありましたけれども、情報を収集するために資料を持ち出そうとする場合、窃盗罪、横領罪、背任罪、個人情報保護法と、いろいろその他の法律も合わせて、こうした罪から免責されるんだ、そういう担保がなければ通報者が証拠を集めるのは困難だと思います。

 加えて、通報を裏づける資料を収集したことを理由として解雇した場合、これは解雇無効と明示されていないんですね。この点も大変疑問に感じます。どこまでいっても、通報者が守られる法律にはなっていないように感じます。

 証拠資料の持ち出し行為について罪を免責されることについてはいかがお考えでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報の証拠となる資料は、事実関係を調査するために重要な位置づけを占めるものであります。

 一方で、通報者による内部資料の収集や持ち出しは、事業者の情報管理や組織秩序に悪影響を及ぼす場合があるということだと思います。

 裁判例におきましては、通報に伴う資料持ち出し行為を事由とする懲戒処分を無効としたものが複数見受けられますけれども、通報との関連性や、通報者の動機、行為の態様、影響などを総合的に勘案したものと承知をしております。

 このため、公益通報を理由とする資料収集、持ち出し行為を一定の要件の下免責とする規定を設けることは現状困難と考えておりまして、事案ごとに事情を総合勘案の上、判断することが妥当であると考えているところです。

丹野委員 これも是非検討課題にしてほしいと思います。

 コンプライアンス意識を高めるということは、あれも駄目、これも駄目とがんじがらめになることではないと思っておりまして、企業の価値を高めることにつながると思っております。

 この公益通報者保護法、これは一体誰のための法律なんでしょうか。私は三つあると思っていまして、自浄作用がきちんと働く、企業のため、それから、自分の会社や業務に誇りを持って生き生きと仕事ができる、働く人のため、そして、正直者がばかを見ないような真っ当な社会をつくるため、この三つのために今回の法律があると私は感じています。

 本当に、正直な心を持った人がなぜこんなに苦しまなくてはいけないのか。今回の法改正がまずは通過点として、よりよい社会になっていくことを願いながら、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浦野委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 公益通報者保護法について、前回の質疑の続きとして伺っていきたいと思います。

 前回質疑では、法施行から二十年余りたった今においてもその趣旨、目的の理解が十分に広がっていない、その背景として、まずは肝腎の事業者自身の理解不足があって、コンプライアンスのための法令が遵守をされていないという現状、これを改善するための取組こそが最優先で求められております。そのために、事業者に対する、法制度の趣旨、目的の理解を広める取組にこれから更に力を入れていくべきと指摘をさせていただきました。事業者の理解と取組を促して、従事者の指定、窓口の明確化など体制整備を促進した上で、労働者等への周知を図っていく、このような流れになると思います。

 その労働者等への周知について、法案においては、事業者の体制整備義務の例示として、公益通報対応体制の周知義務を明示をしております。これは、現行の法定指針においても規定をされているものの、体制が整備されていても労働者等に十分認知されていないとの調査結果から、今回法律に明記しようとするものですけれども、その具体的な周知方法については明らかにされておりません。周知すべき事項やその周知の方法はどのように考えればよいのか。

 使用者の法令等の周知義務を規定した労働基準法百六条には、周知すべき事項とともに、周知の方法についても、「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」と規定をしております。

 これは具体的には、事業場に掲示、又は閲覧できるように備え付けるほか、各労働者に書面をもって交付をする、また、社内のイントラネットに掲載をしたりUSBメモリー等で配付しPC端末で閲覧できるようにする、このいずれかの方法でなければならず、単に口頭で説明しただけでは周知したことにはならないとされておりますが、公益通報者保護法も、同様な方法を用いれば周知したことになるのか。公益通報者保護法の周知の考え方について確認したいと思います。

 また、フリーランスに対しては、労働基準法に規定された方法では周知したことにはならないと判断をされる場合もあると考えます。公益通報者保護法に明示する周知について、具体的な内容、方法について伺いたいと思います。

 そして、この周知の内容、方法についてはできるだけ具体的に法定指針にも明示をすべきと考えますが、この点についても見解をお伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正では、内部通報窓口の設置等、事業者が整備した体制について、労働者及び派遣労働者に対する周知義務を明示することとしております。これによりまして、事業者の体制について、就労者の認知度の向上を図ることとしているところです。

 具体的な周知事項につきましては、例えば、内部通報窓口の担当部署や連絡方法、是正措置等の通知、不利益な取扱いの禁止等が考えられます。

 また、具体的な周知の方法につきましては、事業形態や働き方が多様化する中で、効果的な方法は組織や労働者等によって異なることから、画一的に定めることは考えていないところであります。

 加えまして、今回の法改正で明示する周知義務は、労働者及び派遣労働者に対するものでありまして、フリーランスは法律上の周知の対象には含まれておりませんが、推奨されるフリーランスに対する周知の方法について、指針の解説等で例示することを検討してまいりたいと考えています。

角田委員 次に、二号通報についてですけれども、消費者庁の意識調査では、勤務先で重大な法令違反を知り、勤務先に相談、通報しても状況が改善しそうにない場合、勤務先に「相談・通報する」又は「たぶん相談・通報する」と回答した人の八割が行政機関等の外部に「相談・通報する」又は「たぶん相談・通報する」と回答をしている一方で、約四割の市区町村がこうした外部通報に対応する窓口を設置しておらず、半数以上の市区町村では外部通報に対応するための内部規程を整備していない。こうしたことから、市区町村の体制整備の義務が履行されていない状況を改善する取組を進めていただきたいと前回の質問では求めさせていただきました。

 一方で、府省庁や都道府県ではほぼ一〇〇%、外部通報に対応する窓口が設置をされていますが、このうち府省庁の通報受理件数は、令和四年度の数字では二万四千四百六十件となっております。各府省庁で受理する通報は処分、監督の権限を有しているものに限られますが、通報する側にしてみれば、そもそもどの法律に違反をしていて、その法律をどこの府省庁が所管しているかが分からないという場合が多いと思われます。

 都道府県など地方行政機関は、総合行政でありますから、窓口で担当する部署等を調べて案内をしてくれる、こうした対応が多いと思いますが、府省庁への通報の場合は、まずは消費者庁が最初の窓口になっていると思います。

 公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドラインでは、「通報内容となる事実について、当該行政機関が権限を有しないときは、権限を有する行政機関を、通報者に対し、遅滞なく教示する。」とあります。

 労働者等が職場で不正なことが行われることを知ったとき、その事実が公益通報の対象となるのか、五百五本の法律に該当するのか、どこに通報すべきかという、いわば入口の相談件数について、消費者庁のホームページを見ますと、公益通報者保護制度相談ダイヤルへの相談件数として令和六年度は五千八百五十七件とありますが、他の府省庁に係るものはどの程度あるのか、また、相談に対する対応の体制、そして、年々相談件数も増加していることや、法改正により通報者の対象が拡大をされることを踏まえて、今後この体制を強化することも必要と考えますが、改善を図ろうとしていることがあれば、併せてお伺いをしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁に設置をしました公益通報者保護制度相談ダイヤルでは、一般の国民のほか、事業者や行政機関から、法令の解釈や消費者庁が策定したガイドライン等に関する照会を受け付けております。また、権限を有する行政機関につきまして、適切な通報先を労働者等に教示することなども行っているところです。

 相談内容は多岐にわたりまして、相談件数の内訳についてはお示しできませんが、適切な行政機関の通報先に関する相談も一定程度を占めているところであります。このほか、公益通報とは直接関係のない御相談も一定程度ございまして、制度が正しく理解されるよう周知を工夫してまいりたいと考えているところです。

角田委員 府省庁の令和四年度の通報受理件数、全体として二万四千四百六十件のうち、厚生労働省が二万四千百三十三件と約九九%を占めております。

 そこで、最も通報を受理している厚労省にお伺いをしたいと思いますけれども、外部通報受付体制やその対応についてお伺いしたいというのとともに、また、公益通報対象事実でない場合の対応、例えば医療機関で診療報酬の不正請求など、通報の事実が刑罰が科されるものでないため受理できないというものや、処分、監督権限を有するものではないため他の府省庁の所管に係るものと思われる場合にどのような対応を現状行っているのか、お伺いしたいと思います。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきまして、公益通報に関しては、ホームページ上の公益通報入力フォーム、書面あるいはファクスによりまして受理をさせていただいているところでございます。

 この中で、公益通報の要件に該当しない、公益通報としては受理できない事案につきましては、内容を確認した上で、公益通報には該当しない旨を教示をさせていただきまして、その上で、事案に応じて、通報内容に応じて適切な相談窓口をお伝えをするということ、あるいは、事案によりましては、担当部局につなぎまして、公益通報の手続外ではございますけれども、各部局において必要な対応を行うといったような対応を行っているところでございます。

 また、厚生労働省に届いた公益通報の中で、他省庁が処分等の権限を有する事案につきましては、公益通報者保護法及び厚生労働省で関連の訓令を定めております、この法律及び訓令に基づきまして、通報者に対して処分等の権限を有する適切な行政機関をお伝えをする、教示をさせていただいているという状況でございます。

角田委員 次に、公益通報を理由として行った解雇又は懲戒を無効として、解雇又は懲戒が公益通報後一年以内になされたときは、公益通報を理由としてされたものと推定するという規定を追加して、解雇又は懲戒が公益通報を理由とするものではないとの立証責任を事業者に転換することについて、特に、立証責任の事業者への転換は、労働関係法令の中では、男女雇用機会均等法九条四項に、「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」として、「ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由」、これは妊娠、出産のほか、産前産後休業などを請求した場合等になりますけれども、「を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。」という規定が置かれていて、解雇についてのみ立証責任を事業主に転換をしておりますが、ここでは懲戒は含まれておらず、懲戒についての立証責任転換は公益通報者保護法が初めての制度となります。

 雇用機会均等法の場合、懲戒処分といっても、戒告、減給、停職など様々な段階や種類があって、解雇ほど一律には判断しづらいという考えが背景にあったと思いますが、今回法案に懲戒を含めた理由について、まずお伺いをしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国の労働法制で立証責任の転換をしている例は、男女雇用機会均等法の妊娠中又は出産後一年以内の解雇のみであると承知をしております。

 今回の改正で公益通報を理由とすることの立証責任の転換を規定するに当たりまして、通報の公益性等に加え、我が国の労働訴訟実務との平仄を踏まえております。具体的には、労働者が解雇無効や懲戒無効を主張する場合には、解雇、懲戒事由について事実上事業者に重い立証負担があることを踏まえ、解雇、懲戒を対象としたところであります。

角田委員 その他の、解雇や懲戒以外の不利益取扱いに対する立証責任の転換、これについても、今後の司法判断、そうしたものの積み重ねなども踏まえながら、前向きに検討していっていただきたいということを私からも要望をさせていただきます。

 次に、改正案では、事業者の従事者指定義務違反に対して、新たに、立入検査、勧告に従わない場合の命令権を規定をして、行政措置の権限を強化をしておりますけれども、公益通報者の保護の徹底を図っていくためには、通報を理由とする不利益取扱いに対する行政措置、これも検討していくべきだと考えますが、今回の法改正に当たってこの点については検討されたのか、見解を伺いたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 公益通報を理由とする不利益な取扱いは、法の趣旨を損なう加害行為であり、かつ、事業者内部のみならず、社会全体において、不正を覚知した者が通報することに萎縮が生じてしまう点において違法性が高いと考えております。

 このため、公益通報に対する報復や不正を隠蔽する等の目的で公益通報者の職業人生や生活に悪影響を与えた事業者及び個人に対する厳しい制裁として、違反行為に対する刑事罰を規定する必要があると考えたところであります。従事者の守秘義務違反には刑事罰が規定されていることや、そのような行為の悪質性の高さ、社会的な影響の大きさを踏まえまして、今回の法改正では、公益通報を理由とする解雇又は懲戒への制裁手段としまして、行政措置ではなく、罰則、直罰を規定したところであります。

角田委員 公益通報者保護法の目指すところ、これは、国民生活の安心と安全を守るとともに、企業のコンプライアンスの促進、法令遵守の組織文化の醸成、これを進めていくことにあると考えます。そのために、企業が公益通報者を守るという姿勢を示すように促していくこと、こうした取組も重要と考えます。

 この点、指針において、事業者は公益通報者を保護する体制の整備として次の措置を取らなければならないとして、不利益な取扱いの防止のために、不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為の態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置を取るというふうに規定をされております。

 公益通報制度が健全に機能するためには、公益通報を理由とした事実上の嫌がらせも含め、不利益取扱いに対しては懲戒処分の対象となるということを就業規則等に明文化して周知を図るようにすることなどを事業者に積極的に指導していく必要があると考えますが、この点について見解をお伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 現行の法定指針におきまして、公益通報者を保護する体制の整備として、事業者には、不利益な取扱いの防止に関する措置が求められております。具体的には、公益通報を理由として不利益な取扱いが行われた場合には、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置を取ることとしております。

 このような法定指針の内容は、事業者の内部規程に反映され、労働者等に周知されることが必要と考えており、事業者に対しては、消費者庁の法執行業務の中で必要に応じて指導してまいりたいと考えております。

角田委員 公益通報者保護法の趣旨、目的の達成のためには、まずは理解の浸透を図っていく、その取組とともに、より実効性を高めるための検討をしっかりと進めていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浦野委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組の難破船、たがや亮です。

 冒頭、附帯決議に関しまして、与野党の理事の皆様におかれましては、我が党の案をぎりぎりまで取り入れていただける、そういう努力をされましたこと、本当に感謝を申し上げます。残念ながら取り入れられることはなかったんですけれども、我が党としては、大事な要件、そう思っておりますので、是非とも、また引き続き御検討いただければなと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 先日の参考人質疑で、公益通報者保護法について串岡参考人から、最も信頼を置いて通報できる通報先が最も通報しにくい法律として成立してしまっている、例外なく報復を受けてきた事業者への通報が、あたかも最も通報しやすい、通報すべき通報先とされてしまったとの陳述がありました。

 現行のまま事業所に内部窓口をつくる体制整備を進めることが公益通報者の保護につながると考えたのはなぜでしょうか。大臣の認識をお伺いいたします。

伊東国務大臣 たがや委員の御質問にお答えしてまいります。

 内部通報窓口につきましては、事業者の判断によりまして、外部委託先、親会社等の事業者外部に設置することも可能でありまして、外部に窓口を設置している事業者も一定程度存在すると承知をいたしております。また、事業者におきまして、公益通報に対応する業務を行う従事者に対し、公益通報者を特定させる情報について罰則つきの守秘義務を課しているところでもあります。

 このことによりまして、委員御指摘の内部窓口であっても安心して公益通報することができる体制、制度となっております。

 一方で、現状では、事業者の当事者指定義務の履行は徹底されておらず、通報者が安心して事業者内部に公益通報できる環境が十分に整備されていない場合もあります。

 このため、今回の法改正では、従事者指定義務に違反した事業者に対する行政措置権限を強化し、義務の履行徹底を図ることといたしているところであります。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。

 るる述べられていましたけれども、そもそも、法案を作った初期の段階でちょっと企業側に忖度というか配慮し過ぎた結果なんじゃないかなというふうにも思えるんです。

 繰り返しになりますけれども、先日の参考人質疑で串岡参考人から、日本の企業風土から見て、公益通報者に報復しかないようなところ、つまり当該事業者へまずは訴えるように規定してしまったことは甚だ問題であると伺いましたが、私もそうだと思うんです。

 そこで、これまでの質疑で私から、三百一人以上の事業者よりも、より小さな規模の事業者も、紛争前のADRをイメージした互助会のような第三者機関を弁護士で構成して、各事業者が一定の費用を負担すれば、各事業者が自前で窓口を整備するよりも安価で、公平性を担保でき、透明性の高い仕組みができるのではないか、刑事裁判の国選弁護人のように国も一定の財政的な援助をすれば、通報者の金銭的な負担も限りなく小さくなり、更に実効性が高まると考えますが、このような仕組みづくりを推奨するのはいかがかという質問を私からさせていただきました。

 伊東大臣からは、行政機関以外で事業者に対して調査権限がある民間の第三者機関を設置する必要性については各事業者の判断により検討されるべきだと考えているとの答弁をいただいていますが、先日の参考人質疑で、商工会連合会研究所所長の土井参考人からも、相談できるだけでも内部告発者あるいは企業の側としても助かる、中立な立場で携わっていただける方がいらっしゃるというのは双方にとって心強いとの意見もいただきました。また志水参考人からも、信頼され、かつ法律の知識を持った者が対応することで、前向きに検討すべきものとの意見もいただきました。

 消費者庁としても、企業内での体制整備も結構なんですけれども、提案のような第三者機関の体制整備を推奨し、かつその体制整備を支援することこそまさに必要と思うんですけれども、改めて大臣に見解をお伺いします。

伊東国務大臣 委員御指摘のとおり、事業者が内部通報窓口を外部に委託するには一定の費用がかかるところであります。このため、費用負担を抑えるため、複数の事業者が共同して外部に窓口業務を委託することが考えられるわけであります。

 消費者庁の指針の解説におきましても、推奨される考え方や具体例として、中小企業の場合には、何社かが共同して、例えば、法律事務所やあるいは民間の専門機関といった事業者の外部に内部公益通報受付窓口を委託することを記載し事業者に周知しているところもありますし、また消費者庁としては、事業者が大きな負担なく内部の労働者等からの通報に適切に対応するための体制を構築できるよう、好事例を収集し、それを広く周知してまいりたいと考えております。

たがや委員 ありがとうございます。

 今大臣が述べられたのは、企業が主体的になるということだと思うんですけれども、やはり企業側が主体的になっていくと利益相反というのはどうしても起こりがちなので、そういった観点じゃなく、今私が述べた公平中立な立場の機関という部分をつくれば、事業者側もよしだし、通報者側もよしということですので、事業者側の参考人も日弁連の参考人も賛成していますので、是非大臣には前向きに御検討いただければなと思います。

 次の質問に参ります。

 公益通報の対象範囲を政治や行政にも拡大する提案について、四月三日の本委員会で、伊東大臣からは、なるほど、またそうだなと納得できるものもたくさんあるとの答弁をいただきました。先日の参考人質疑でも、参考人からは、間接的にも国民生活の安心、安全に関わっている法律について今後広げていくようなことは必要ではないか、また、政治資金規正法違反については、公益通報者保護法の対象法令に含めてもよいのではないかとの御意見をいただきました。

 森友問題や自民党の裏金問題、兵庫県知事のスキャンダルが相次いでいる政治、行政の信頼を回復する意味でも、対象範囲の拡大について検討すべきだと思いますが、改めて大臣に見解をお伺いします。

伊東国務大臣 同様の提案あるいは問題意識等につきましては、たくさんの議員の皆さんからお示しいただいているところであります。

 同じ答弁になって大変恐縮でございますけれども、公益通報者保護法は、食品偽装やリコール隠しなど、国民生活の安全、安心を損なう企業不祥事を端緒として制定されたものであります。このため、現在の法目的では、消費者保護という観点に重点を置き、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接の目的とする法律を対象法律といたしております。

 現在の法目的の範囲におきましても、事業者の体制整備や不利益取扱いの抑止、救済などについて、制度の実効性に課題があると承知しており、まずはそれらの課題に適切に対処し、制度の充実強化を図ってまいりたい、このように考えております。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。

 李下に冠を正さずということわざ、格言がありますので、民間に厳しくて政治、行政に甘いというふうに国民の皆さんから取られないように、しっかりとお願いをしたいと思います。

 時間の関係上、四問目はちょっと飛ばさせていただきます。

 今後の検討スケジュールについて、改正案では五年以内を検討の目途としていますが、先日の大臣の答弁では、裁判の判例の蓄積が必要なので五年としているとのことですが、配置転換の取扱い、公益通報に付随する行為の取扱い、第三者機関による体制整備、対象法令の拡大等、判例の蓄積を必要としない検討課題はたくさんあると思います。

 あしたからでも検討を再開すべきだと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

伊東国務大臣 今回の法改正は、制度をめぐる国内外の動向を踏まえ、公益通報を理由とする解雇及び懲戒への罰則の導入や立証責任の転換など、法律の大幅な見直しを行うことといたしているわけであります。

 法改正の見直しにつきましては、いわゆるパッチワーク的に見直しをするのではなく、制度の一部の変更による他の部分への影響を見ながら、制度全体としてバランスを維持する必要があると考えております。

 したがいまして、今回改正しない論点でありましても、今後見直しや検討をするに当たりましては、今回の法改正による効果や影響を踏まえる必要があると考えております。このため、今回の改正後の法の施行状況やその他の立法事実を注視してまいりたい、このように考えております。

たがや委員 ありがとうございます。

 今、大臣、パッチワーク的な一部の改正にしないとおっしゃいましたけれども、まさにこの改正案が私はパッチワークだと思っています。配置転換の取扱い、公益通報に付随する行為の取扱い、第三者機関による体制整備、対象法令の拡大等、積み残しがあると思うので、是非それらも含めた形で今後も考えていただければと思います。よろしくお願いします。

 質問をちょっと飛ばします。

 せっかく修正案の提出者に座っていただいていますので質問させていただきますが、今回の修正案で検討目途を五年から三年とした理由として、法律の施行から裁判事例が三件しかないということで、五年から三年にしたとしても検討期間に影響がないという理解でよろしいでしょうか、お伺いします。

大西(健)委員 御質問ありがとうございます。

 まず、今回の法改正、二〇二〇年の前回改正時に積み残された課題について改正が行われているという点は我々も評価をしております。

 しかしながら、国際的な動向を見ればまだまだ十分とは言えませんし、また、参考人として出席をいただいた串岡さんのように実際にこれまでの不利益扱いを受けた事例からも、現行法や改正案ではまだ十分に対応できない点があるということは明らかだというふうに思います。

 さらに、本委員会では質疑を通して様々な課題や論点が示されておりまして、例えば、今たがや委員からお示しのあった、内部通報者を守り、かつ事業者の負担軽減にもつながるような第三者的な中立の外部窓口の設置の検討なども、私は重要な残された課題ではないかというふうに思っています。こうした積み残しの論点の早急な解決が必要だというふうに思っています。

 今回の改正では解雇、懲戒のみを刑事罰の対象としていることから、ともすれば、今度は逆に、報復的な人事、不当な配置転換の方に事例が流れていく、こういう可能性もあるというふうに思っています。

 そう考えると、状況をつぶさに捉えて、実態に合わせて、早期にこうしたことに対応できるようにしておくことが必要で、公布から施行一年半ということになると、これは合わせるとおおむね七年間改正が入らないことになりますので、こうした課題への対応が遅れることになると思います。

 また、今回、残念ながら通報当事者の声を聞く機会がないままに結論が出されてしまいましたけれども、現場で最も横行している配置転換への対応が不十分な改正案になってしまっているのもそのためだというふうに思っています。次回改正まで更に五年を待つのではなくて、今度こそ当事者の声を聞いて、通報者を保護して、ひいては社会全体の利益を確保するという法律の本来の目的を実現するため、この法律をきちんとよいものにしていくためにも、次の法改正の機会をできるだけ早く持てることを期待したいというふうに思っております。

たがや委員 時間が来たので終わりますけれども、やはり、この公益通報者保護法というのは与野党を超えてしっかりと一致できる部分が多くあると思いますので、今回のこの積み残しというのは非常に大事な要件だと思いますから、次の改正に向けてあしたからでも検討していただければなと思います。

 質問を終わります。ありがとうございます。

浦野委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 闇カルテルを公益通報した串岡弘昭さんを始め、参考人質疑がございましたけれども、長期にわたって壮絶な人生を送られた串岡さんの涙の陳述、これについて大臣は御覧いただけたでしょうかという点、まずお伺いをしたいというふうに思います。

伊東国務大臣 私も、録画したビデオで全部つぶさに見ております。

本村委員 ありがとうございます。

 公益通報を行った串岡さんへの壮絶な人権侵害、それは御家族にも影響が及んだということですけれども、二度と同じようなことが起きないようにということで、だからこそ、配置転換も罰則、立証責任の事業者への転換を求めているわけです。

 しかし今回の改正案には入らなかったということで、じゃ、早く改正をできるように一刻も早く検討してほしいということを申し上げているわけですけれども、しかし、それは施行後五年めどの改正検討、結局、七年後からの検討ということになっているわけです。

 それは一刻も早く、今回、改正を、修正をしていただきたいんですけれども、少なくとも今からすぐ検討していただいて、すぐ次の改正に結びつけていただきたいということを強く思うわけですけれども、ちょっと順番が変わっておりますけれども、消費者庁の方にお伺いをしたいというふうに思います。これは一刻も早く、すぐ改正するべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度の見直しを議論しました消費者庁の有識者検討会は、消費者庁の様々な実態調査結果等を基に、労使の立場や専門家の見解等を踏まえて昨年五月から十二月まで議論を行い、制度の課題と対応について報告書を取りまとめました。今回の改正法案は報告書の内容を踏まえたものであり、制度の実効性向上に向けて大幅な見直しを行うものであります。

 今後の検討に当たりましては、今回の法改正による効果あるいは影響など、施行後の状況について、立法事実の蓄積を踏まえる必要があると考えております。このため、今すぐに新たな検討会を開催することは困難であると考えているところです。

本村委員 それですと、今回の配置転換の部分が全然手当てが取られていないということになってしまいます。配置命令権の濫用という部分は、串岡さんの場合は全く明らかだというふうに思うんです。

 配置命令権の濫用に関する判決の到達点、判決の内容について、厚生労働省にお示しをいただきたいというふうに思います。

尾田政府参考人 お答えいたします。

 裁判例におきましては、転勤を含む配置の変更につきまして、就業規則等に根拠があれば、使用者はその裁量により配置の変更を命ずることができるとする一方で、業務上の必要性がない場合や、業務上の必要性が認められる場合であっても他の不当な動機、目的をもってなされたものであるときや、労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなどには、権利の濫用になると解されているものと承知しております。

本村委員 これまでの判決の中でもこういう整理がされてきたわけです。配転命令権の濫用というところで、業務上の必要性がない、不当な動機、目的がある、そして労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの、明らかな濫用のケースがあるわけです。

 こうしたことをしっかりと明記をして、ここであれば濫用であるので、分かりやすい例でございますので、こうやって書いて、今回、そのことだけでもせめて改正をするべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

伊東国務大臣 昨日、録画を見ておりまして、串岡さんの、なかなか厳しい、壮絶な人生であった、このように感じたところであります。

 一般論としての話をさせていただきますけれども、刑事罰につきましては、犯罪の構成要件は明確で、また、対象となる行為は罰則に値するものでなければならないという点、この点、委員御指摘の明らかに配転命令権の濫用と考えられるような行為につきまして、配置転換は個別の事案ごとに状況が異なることから、客観的に明確な定義を定めることがなかなか難しく、刑事罰の対象とすることはこれまでも困難でありました。

 また、民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされておりまして、立証責任の転換は、その例外を設けるものであります。

 また、我が国におきましては、配置転換が労働契約法上の権利濫用と認められるためには労働者に相応の立証負担があり、このような労働訴訟実務の平仄や、あるいは事業者の人事異動への影響を踏まえますと、配置転換につきまして、御指摘のように立証責任を事業者に転換することは、現状では困難と考えております。

 ただ、昨日のお話、多くのテレビを見ておりました国民の皆さんには相当伝わるものがあったのではないかなと感じているところであります。

本村委員 是非、二度と串岡さんのような事例が出ないようにということで、やはり、立法する力を持った大臣が、そして私たち国会が立法措置をして、二度と同じようなことが起こらないようにというふうに手だてを取るのが国会議員としての責任だというふうに思っております。

 立証責任を事業者に転換しなければ、本当に立証するのが労働者側としては難しいんだということを、参考人の串岡さんもそうですし、志水さんからも言われたというふうに思います。だからこそ求めているわけです。

 先日も尾辻議員が取り上げておられましたけれども、外資系の製薬会社で、指定難病の治療薬について、本来認められていない適応外の患者さんにも使用するように促す不適切なプロモーション活動を行っている実態を、仮名の小林まるさんが厚生労働省に公益通報をいたしました。会社内で通報をしたけれどもそれが是正をされなかったので、厚生労働省に公益通報をしたわけです。

 厚生労働省は、二〇一九年の二月一日、薬剤の使用上の注意の改訂も指示をするということで、実際にそういう是正措置が図られるということになったわけですけれども、そういうアクションを起こしていただいたわけですけれども、その直後、配置転換がなされた。一人だけの部署で、ほぼ仕事がない状態に置かれた。裁判に訴えても、内部通報に対する報復だと認めるに足りる証拠はないというふうに言われてしまったわけです。

 内部通報者はどのように証拠を出せばよかったんでしょうか。どう立証すればよかったんでしょうか。消費者庁にお伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 委員御指摘のように、明らかに配転命令権の濫用と認められるような行為については、実際に民事訴訟で無効になっている事例もあるというふうに考えております。実際の裁判実務におきましても、仮に立証責任が転換されていなくとも、立証責任のある方だけから話を聞くわけではなくて、双方の主張を聞いた上で中立的な判断がなされているものと考えます。

 かつ、労働法制全体におきまして、立証責任の転換がなされている、原則ではなく例外措置が設けられていることにつきましては、マタハラの解雇の事例のみというふうに認識をしています。

 こうした制度との平仄を考えますと、公益通報者保護制度について、配置転換も立証責任の転換の対象とすることは、現状困難ではないかと考えているところであります。

本村委員 個別の事情ですとか個人の主観とか言うわけですけれども、不当な配転は、個人が不当と考える背景、原因、客観的な事実があるわけです。その客観的な事実にしっかりと目を向けていただき、法修正をしていただきたいというふうに思っております。

 闇カルテルを公益通報した串岡さんのように、暴力団を使った退職強要、これは明らかに配転命令権の濫用の場合があるわけです。その場合は、やはり解雇と同様に解釈をし、少なくとも立証責任の事業者への転換を行うべきだというふうに裁判所が判断できるように、是非QアンドAを出すべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

伊東国務大臣 御指摘の明らかな配転命令権の濫用と認められるような行為につきましては、民事訴訟で無効となると考えられ、裁判において勝訴している実例も一定程度あると承知をいたしております。

 また、民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされており、立証責任の転換はその例外を設けるものであるため、QアンドAで対処することは困難であると考えております。

本村委員 裁判に訴えるということは本当に大変なんだということを串岡さんの事例からもお分かりいただけるというふうに思います。串岡さんは、三百万円くらいかかった、そして法律扶助をつけてやっと裁判をすることができたというふうにおっしゃっておりまして、金銭的な負担もあるわけです。そういう事態にならないためにも、法的にしっかりと規定をして、そして、まずは未然に防止をする。

 今回、解雇、懲戒が、罰則、立証責任の転換ということになりましたので、配置転換の方にシフトをしていくんじゃないか、公益通報をされた方の不利益取扱いの部分、不利益取扱いなんですけれども、罰則などが入っておりませんので、配置転換の方に嫌がらせが行くんじゃないかということが言われている下で、是非とも、そういう点からも、本当に早く、今回できないというのであれば一刻も早く、検討を今すぐ行っていただき、法改正を是非していただきたいというふうに思いますけれども、改めて大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

伊東国務大臣 今回の制度の見直しを議論した消費者庁の有識者検討会は、消費者庁の様々な実態調査結果等を基に、労使の立場や専門家の見解等を踏まえて昨年五月から十二月まで議論を行い、制度の課題と対応について報告書を取りまとめ、今回の改正法案につきましては、報告書の内容を踏まえたものであり、制度の実効性向上に向けて大幅な見直しを行うものであります。先ほども御答弁させていただきましたけれども、各界各層の意見を集約したもの、このように認識をいたしております。

本村委員 是非、一刻も早い検討、改正を求めて、質問を終わらせていただきます。

 大臣、よろしくお願いいたします。

浦野委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 この際、お諮りいたします。

 ただいま議題となっております大西健介君外一名提出の修正案について、提出者全員から撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 この際、本案に対し、松島みどり君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の六派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大西健介君。

    ―――――――――――――

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

大西(健)委員 ただいま議題となりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その内容を御説明申し上げます。

 本修正案では、検討規定について、施行後五年と定められている検討の目途を施行後三年とすることとしています。

 以上が、本修正案の内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

浦野委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、松島みどり君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浦野委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浦野委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

浦野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、勝俣孝明君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。尾辻かな子君。

尾辻委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    公益通報者保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 公益通報を理由とした不利益取扱いに関し、解雇・懲戒に加え、通報に対する報復を目的とした配置転換についても無効とした上で、民事裁判において事業者側に立証責任を負わせること及び当該配置転換を行った者に対する刑事罰の適用についての検討を行うこと。

 二 公益通報を行おうとする者が躊躇することのないよう、資料の持ち出し等のいわゆる「公益通報に付随する行為」に関しても、公益通報を理由とした不利益取扱いと同様に解雇・懲戒について禁止するとともに、これを無効とした上で、民事裁判において事業者に立証責任を負わせること及び「公益通報に付随する行為」を理由に解雇・懲戒を行った者に対する刑事罰の適用についての検討を行うこと。

 三 公益通報の通報先である内部通報窓口の充実を図るため、公益通報対応体制整備義務の対象事業者の拡大についての検討を行うこと。

 四 事業者における通報の妨害及び通報者探索の禁止対象とならない「正当な理由」について、考え方を明らかにするとともに、内閣総理大臣が定める指針等において、潜脱的な行為を防ぐため、その範囲を限定して規定した上で適切な周知を行うこと。

 五 昨今の地方公共団体における公益通報制度に係る事案を念頭に、消費者庁は地方公共団体に対する地方自治法に基づく技術的助言を行うとともに、地方自治の本旨を踏まえ、本法第二十条にある国及び地方公共団体への除外規定の在り方についての検討を行うこと。

 六 濫用的通報が公益通報対応業務従事者等の内部通報担当者の負担となることに鑑み、消費者庁は法が適正に運用されることを目的として濫用的通報の実態を調査し、その結果を踏まえ必要な措置を検討すること。

 七 消費者庁は、内部通報体制整備義務の履行を徹底し、新設された立入検査権を実効性あるものとするため、同庁内部の人材育成・人員増強・必要な予算の確保を行うとともに、将来的に本法の規定に違反した事業者に対する行政措置を十分に担うことのできる体制を整えるための組織的基盤の強化を図ること。

 八 本法附則第九条に基づく本法の見直しは、本委員会での審議を踏まえ、「公益通報者保護制度検討会報告書」に挙げられた検討項目等の諸課題について、速やかに随時立法事実の収集に努め、必要に応じて改正についての具体的な検討を行うこと。

 九 本法附則第九条に基づく検討に当たっては前述したものに加え、正当な理由のない通報者探索に対する規制の在り方、保護される者の範囲の更なる拡大、公益通報に該当する行為に係る刑事上の責任の免除、公益通報に関する紛争の迅速かつ適正な解決に資する制度の在り方、通報対象事実の範囲の抜本的な見直し、事業者の内部通報窓口の設置に係る負担軽減等についても検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

浦野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浦野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。伊東国務大臣。

伊東国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

浦野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

浦野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.