衆議院

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第2号 令和6年4月11日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年四月十一日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      大串 正樹君    木村 次郎君

      黄川田仁志君    熊田 裕通君

      中西 健治君    長島 昭久君

      藤井比早之君    藤丸  敏君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    三谷 英弘君

      山口  晋君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      大島  敦君    奥野総一郎君

      城井  崇君    近藤 昭一君

      篠原  孝君    牧  義夫君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      青柳 仁士君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    國重  徹君

      福重 隆浩君    赤嶺 政賢君

      玉木雄一郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     山口  晋君

  大串 正樹君     藤井比早之君

  城内  実君     青山 周平君

  河西 宏一君     福重 隆浩君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     城内  実君

  藤井比早之君     大串 正樹君

  山口  晋君     木村 次郎君

  福重 隆浩君     河西 宏一君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

四月五日

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九九三号)

 同(笠井亮君紹介)(第九九四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九九五号)

 同(志位和夫君紹介)(第九九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九九七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第九九八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九九九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇〇〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一〇〇一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇〇二号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷(元)委員 おはようございます。

 本日から国会で憲法議論の実質的な協議が開始されますが、これまでの議論の到達点につきまして述べてみます。

 第一に、緊急事態条項、特に国会機能維持についてです。

 我が国を取り巻く安全保障環境の緊迫化や、大地震、新型コロナの蔓延などを背景といたしまして、国民の間には、緊急事態においても国民の声が国政に届く仕組みをあらかじめ憲法に構築しておいてもらいたいとの世論が高まっており、この最重要課題に応えようとするのが、議員任期延長を始めとする国民の生命財産を守るための国会機能維持であります。

 衆議院での議論は参議院の緊急集会を軽視しているのではないかとの誤解があるようですけれども、そのようなことは全くありません。現行の憲法の定める参議院の緊急集会は、あくまで衆議院解散による総選挙が実施される見通しがついているということが大前提になっているものでありまして、そのような場合には今後とも参議院の緊急集会で対応するということは当然のことであります。

 これに対して、私たちが提案している任期延長というのは、衆議院の総選挙のみならず、参議院の通常選挙も含めまして、その実施が全国の広範な地域で困難であり、かつ、それが相当程度長期間に及ぶ場合の措置、つまり、参議院の緊急集会の規定すら想定していなかった憲法の空白にどう対応していくかという問題でございます。

 また、議員任期延長はお手盛りだ、身分保持のための憲法改正だという声につきましても、これは任期延長が目的なのではなくて、あくまでも国会機能の維持が目的であります。緊急時においてこそ、被災者、国民の切実な思いを国政に反映しなければなりませんが、そのためには、二院制国会をフルに機能させる措置がこの国会機能維持策なのであります。

 だからこそ、任期延長だけではなくて、閉会禁止、また解散禁止の措置も講じることとしておりまして、これらをセットにした緊急事態条項は十分に合理性が認められると識者からも評価をされております。

 第二に、憲法における自衛隊の明記が必要であるということについてです。

 有事という典型的な国家緊急の場合における実力組織について国家の基本法に定めておくことは世界各国憲法の常識でありまして、最近の国際情勢に鑑みましたら、その重要性はますます高まっております。

 自民党は、平成三十年に自衛隊明記の条文イメージを発表いたしましたが、これは現行九条一項、二項を維持するものであり、自衛権の行使は必要最小限度という現在の解釈に全く変更はありません。

 憲法に自衛隊を明記するということは多くの会派においてほぼ合意が形成されつつありますが、残る論点といたしましては、戦争放棄、戦力不保持を定める九条付近に規定をするのか、それとも、シビリアンコントロールの観点から七十三条の「内閣」の章に規定をするのか、いずれの主張にもそれぞれの思いがあることでありますが、目的は憲法に自衛隊を明記することでありまして、憲法改正という国家国民にとっての一大事業を成し遂げるには、自説にこだわるのではなくて、大同団結が必要であります。

 いずれにしましても、違憲状態のままで自衛隊に任務を与えているように思う国民がいまだいる状態は早く解消すべきであります。諸外国の憲法改正をつぶさに見てこられた憲法調査会長の中山太郎先生は、多様な国民の基本法となる憲法だからこそ偉大なる妥協が必要だと言っておられることを改めて思い起こす次第でございます。

 第三のテーマは、教育の充実についてです。

 日本維新の会が既に平成二十八年に教育無償化の憲法改正案を発表されていますが、最大の課題は経済格差による教育格差でありまして、誰でも、能力や意欲、適性、個性に合った教育が受けられる環境を整備しなければなりません。自民党のたたき台素案におきましても、国は、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保できる教育環境の整備に努めなければならないとしております。

 教育の格差の是正、子育て支援、またデジタル化など、教育立国を目指す我が国にとって喫緊の課題でありまして、今こそ国民の教育を受ける権利を実質化をし、そして、国の教育環境整備の責務を憲法に規定をして、教育立国を宣言する必要があると思います。また、私学助成を禁止しているかのように読まれる八十九条の改正も行う必要がありまして、今後、条文化に向けて議論を進めていければと思っております。

 四番目のテーマは、デジタル時代の新しい人権についてであります。

 昨年の理事会で立憲民主党の階幹事から、党の憲法調査会のワーキングチームの議論を踏まえて、国民投票法の問題とは切り離して、情報化時代の新しい人権として、自己情報コントロール権、情報アクセス権、情報環境権の三つのデジタル人権を議論しようという提案をいただきました。衆議院憲法審査会としても、山本龍彦慶応大学教授を参考人として招くなど、関心を持って取り組んできたところでありますが、立憲民主党側からの積極的な提案として懐広く受け止めておりまして、更に議論を深めてまいりたいと思います。

 最後に、今後の議論の展開につきまして、各党の条文起草作業に向けて提案を申し上げます。

 緊急時の国会機能の維持につきましては、いつでも条文起草作業に入っていけるところまで議論は進んでおります。そのほかにも、条文起草作業に入る一歩手前のところまで来ているテーマもあります。

 この状況を踏まえまして、今後の審議のためには、幅広い会派間で憲法改正原案作成の協議を行う環境を早期に整備することを提案をいたします。もちろん反対の意見もお持ちの会派もあろうと思いますが、その場合でも、是非協議のテーブルに着いていただきまして、御意見を述べていただきたいと考えます。

 憲法審査会におきましては、国民に開かれ、率直で、そして透明性のある丁寧な議論をしてまいりたいと思いますので、引き続き委員各位の御協力をお願い申し上げまして、自民党の意見発表といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 皆さん、おはようございます。逢坂誠二でございます。よろしくお願いいたします。

 日本国憲法といえども、決してすり減ることのない不磨の大典ではないと考えております。したがいまして、一字一句変えてはならないというものではありません。社会の変化に応じて不断の見直しを行うことが求められていると考えております。ただ、その見直しを行う主体、これは憲法で命令される側の国会ではなく、主権者である国民自身です。ここに立憲政治の核心があると考えています。ところが、最近の憲法議論を見ていると、この立憲政治の核心が揺らいでいると感じております。

 一月三十日、岸田総理は施政方針演説で次のように述べました。総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。

 本来まないたの上のコイである公権力の側の総理自身が、期限を区切った上で条文案の具体化と議論を加速することに言及したことに、私は大変驚きました。

 三月二日の衆議院予算委員会で、この総理発言に対する私の質問に、岸田総理は次のように答弁しました。昨年十二月、自民党総裁として、衆参の憲法審査会の幹事など関係者に対して、国会の発議に向けて、各党と共有できるようなたたき台、案について是非議論を進めてもらいたい、党総裁としてはそういった要請をした。国会において条文案の具体化を加速していくためにも、我々自民党として、そういった議論をリードするべく、まずは自らの考え方を整理し、その議論に臨んでいかなければならない。

 私は、岸田総理のこうした姿勢や答弁に触れ、憲法を変えること自体が目的化していると危惧しております。これは極めて危ういことであり、こんなことをすれば憲法の価値を毀損させてしまいます。

 立憲主義を深化させる観点から憲法議論を真面目にひたむきに行うことは、憲法の役割、その意義を常に確認する観点からも極めて大切なことです。しかし、とにかく憲法を変えたい、どこか変えやすいところから取りあえず変える、こうしたことが目的化する議論は不見識です。特に、数の力でその議論を押し切る姿勢は慎まねばなりません。

 さて、自民党の裏金問題、そのお金の使い道も含め、全容は全く明らかになっておりません。法律を犯しているかもしれない議員を多く抱える自民党及びその総裁が、国会議員を縛るともいうべき憲法改正を声高に叫ぶ節度のなさに驚きを禁じ得ません。裏金問題の解決もできず、自浄作用のない自民党が憲法改正を論ずることに正当性があるのでしょうか。一刻も早く裏金問題にけりをつけていただくことを強く要請します。

 私は、本来の当事者である国民自身の議論を喚起することこそが重要であり、そのための素材を提供するという謙虚な姿勢で憲法議論に臨みたいと思っています。

 次に、立憲民主党の綱領の話をさせていただきます。

 「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。」。これは立憲民主党の綱領の一文です。綱領の素案は私が書きましたが、この一文も私が書いたものです。

 立憲主義とは、権力者、国会議員、公務員、裁判官などの権力濫用を抑えるために憲法を制定するという考え方です。立憲主義を深化させるとは、権力者の権力の濫用を抑制する方向で考えを深めることです。

 次に、未来志向。この言葉は難しいのですが、幾つかの思いを込めています。未来志向といえば、過去を一切不問に付すかのように聞こえるかもしれませんが、もちろんそうではありません。日本国憲法の国民主権、基本的人権、平和主義、この三大原則を守ることは当然です。日本国憲法の平和主義は、さきの戦争への反省に基づいて基本原則として採用されたものです。三大原則を守るということは、過去への反省を前提にした未来志向であることは言うまでもありません。

 また、日本国憲法の成り立ちについていろいろな御意見があることは十分承知しております。一方、今の日本国憲法は、施行後七十年以上が経過し、この憲法の下で日本の様々な営みが行われてきたのは厳然たる事実です。その事実を消し去ることはできません。したがって、成り立ち云々に言及してはならないとは考えておりませんが、殊更強調するのは意味を成さないとも言えます。

 未来は過去の積み重ねと今の延長線上にあり、時代や社会は動いています。過去を踏まえた上で、時代の変化などに合わせて憲法をよりよくするために、変えるべきところがあれば積極的に対応する、これが私の思う未来志向の憲法議論です。

 私は、立法事実の存在と国民の納得があれば、いずれかの日には憲法改正をすべき時期を迎えると思っています。しかし、その際には、多くの国民が納得する結果となるように私たちは努める必要があると考えます。よもや、国民の対立をあおり、国民が分断されるようなことはしてはなりません。憲法に関する議論を落ち着いて進めたいと思います。

 なお、先ほど中谷幹事から発言のありました議論の到達点については、到達点とは何かも含め、今後、その内容を丁寧に点検させていただきたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の馬場伸幸です。

 本日、ようやく今国会初となる本審査会の実質討議の場が持たれました。昨年の通常国会では、三月二日に最初の実質討議がなされました。それでも遅いくらいでしたが、今国会では、輪をかけて、一か月以上も空費されました。誠に遺憾です。

 去る四日に開かれた本審査会は、幹事選任の手続のみで、僅か数分で終わりました。この非生産的であられもない立法府の姿を国民の皆さんはどのように御覧になっていらっしゃるでしょうか。

 審査会開催自体に反対している共産党は論外として、立憲民主党の醜態は目に余ります。国家の根幹たる憲法を議論する場に、関係のない自民党派閥による裏金問題を持ち出し、本審査会の開催にブレーキをかけ続けてきたことは不見識の極みだと断じざるを得ません。

 国民の命と暮らしを守るための基本法たる憲法に不断に向き合い、時代に即したものに作り上げていくことは、国会議員に課せられた重大な責務であり、臆面もなく難癖をつけて拒否を決め込むのは言語道断です。

 我が師中山太郎先生が憲法調査会長時代に会長代理を務めた中野寛成元衆議院副議長は、往年、憲法論議に対して、あるべき与野党の姿勢をこう喝破されました。すなわち、与党には野党を包み込む度量が、野党にはそれに応える良識が必要だと。

 野党筆頭幹事の逢坂委員に伺います。

 逢坂委員にとって民主党の先達の炯眼と存じますが、その言葉をどのように受け止めますか。今国会での憲法審査会をめぐる立憲民主党の対応は良識にかなったものであると胸を張れますか。改憲に反対の立場であっても、議論のテーブルに着き、堂々と反対の論陣を張るのが筋ですが、牽強付会にすぎない反対論をぶっても国民に支持、理解を得る自信がないため議論から逃げ回っているのが実態ではありませんか。逃げないでお答えください。

 平成二十三年十月に衆参両院で憲法審査会が始動してから十二年半がたちました。西修駒沢大学名誉教授の調べだと、スタートから令和四年までの約十一年間における本審査会の運営経費総額は約十九億円、参議院憲法審査会のそれは約十四億円、両院トータルで三十三億円超に上りました。ちなみに、この金額には二十三年度から二十五年度の職員の給与関係費は含まれていません。

 一体、これほどの国税を使って、どれだけの成果があったのでしょうか。国費の無駄遣い以外の何物でもありません。もはや不毛な意見発表会に憂き身をやつしているいとまはありません。

 岸田総理は、今年九月末の自民党総裁任期までの憲法改正実現を目指すと明言されています。国民投票の実施には国会発議後六十日から百八十日間必要なため、この国民への重い約束を果たすには今国会終盤までに発議をしなければなりません。直ちに、条文案の起草機関を設け、改憲項目を絞り込み、憲法改正原案の策定に着手すべきです。

 本審査会を会期末まで毎週定例日に開催しても、あと十回です。時間が足りなければ定例日以外の開催は当然ですし、衆議院憲法審査会規程によると、閉会中も手続の必要なく開催し、付託された憲法改正原案を審査できます。永田町のあしき前例主義に拘泥せず、ゴールに向かってギアを上げ、作業を進めていくことが不可欠です。

 本審査会では、これまで、大規模災害など有事に対応する緊急事態条項の創設をめぐり、自民党、公明党、国民民主党、有志の会、そして日本維新の会の五党派が、緊急時には必要に応じて議員任期を延長できる条項を設けることなどの必要性で一致し、国民民主党、有志の会、日本維新の会の三党派は独自に条文案をまとめました。

 喫緊の改正項目は、元日に襲った能登半島地震で改めて浮き彫りになったように、緊急事態条項の創設はもちろんのこと、憲法九条への自衛隊明記や教育無償化の明記などがあります。それらを軸に、遅滞なく改正原案の合意形成を図るべきです。

 とはいえ、やるやると威勢よく叫びながら、えてして抵抗勢力の立憲民主党となれ合い、共闘している自民党、そして指揮官たる総理自身の本気度は疑わざるを得ません。自民党には、これ以上特定野党の妨害行為を許さず、改憲を党是とする与党として、議論をリードしていく責任があります。

 与党筆頭幹事である自民党の中谷委員にお尋ねします。

 総理が掲げる改憲目標の実現に向け、いつまでに改正原案を仕上げ、いつまでに国会発議に持ち込むかなど、具体的にどのようなスケジュール感で当審査会での議論を進めていくお考えでしょうか。

 衆議院において、憲法改正原案は、提出者を含む百一人の賛成で提出できます。立憲民主党がまた審議を妨害するような愚行に走れば、同党抜きで審査を進め、最後は多数決で民主的に改正原案を策定すべきだと考えますが、いかがですか。

 公明党の北側幹事にも伺います。

 状況によっては、立憲民主党抜きで憲法改正をめぐる審査を進めることもやぶさかではないとお考えでしょうか。

 また、改正原案の集約に向け、公明党幹部は、参議院側との党内調整が難しい旨発言されていますが、周回遅れの参議院憲法審査会を動かすためにも、是非とも党内の合意形成に御尽力をいただけませんでしょうか。

 さて、昨今、今国会会期中の衆議院解散がささやかれています。まさか岸田総理が国会発議をほったらかしたまま解散に踏み切ることはないと存じますが、解散するなら、九月の総裁任期までの改憲実現の前提となる国会発議をなし得た上で総選挙に臨むべきだと考えます。選挙後、たとえ総理・総裁が替わっても国民投票は実施されます。

 そもそも憲法は、主権があって初めて制定、改正されるべきものですが、戦後、GHQ側が、天皇の一身の保障はできないという脅し文句で、急ごしらえした草案を日本政府に押しつけました。帝国議会での修正もGHQの許可が必要でした。今こそ、主権喪失の下で作られた現憲法が抱える諸問題を乗り越え、憲法を国民の手に取り戻すときです。

 我が会派は、改憲論議の先頭に立ち、一日も早く国民投票が実施されるよう全力を傾けることをお約束し、意見表明を終わります。

 ありがとうございました。

森会長 ただいま馬場伸幸君の御発言の中で、逢坂誠二君、中谷元君、北側一雄君の三君に対して御質問がありましたけれども、馬場君の質疑時間を終了しておりますので、後ほど、自由討議の中で、お答えになる方は適宜御発言を願いたいと思います。

 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 衆議院の憲法審査会では、一昨年、二〇二二年一年間で二十回、昨年、二〇二三年一年間で十九回、この二年で計三十九回の実質討議を行ってまいりました。委員の皆様の活発な憲法論議に心から敬意を申し上げたいと思います。これからも、毎週の定例日には憲法審査会を開催し、憲法論議を推し進めていくべきと思います。

 この三十九回の討議の中では様々なテーマが取り上げられましたが、特に、緊急事態における議員任期延長問題については、多くの会派の委員から発言がありました。議員任期延長について議論となった審査会の回数は、この三十九回のうち三十三回に及びます。論点は既に出尽くしていると言わなければなりません。

 この間、緊急事態条項の論点について、衆議院法制局において、一昨年十二月一日、昨年六月十五日の二度にわたって論点整理をしていただきました。この論点整理を見ても分かるとおり、自民、公明、維新、国民、有志の会の五会派においては、参議院の緊急集会の意義と適用範囲、議員任期延長の必要性、議員任期延長の具体的な要件と効果等について、若干の意見の相違点はあっても、基本的な考え方はほぼ一致しています。

 今後の憲法審査会では、緊急事態における議員任期の延長というテーマについて、改正条項案のたたき台を作成し、これを基に議論を深めていくべきと考えます。内容の賛否は別として、その方がより建設的な議論となりますし、仮に懸念される点があっても、より具体的、的確な討議ができるのではないかと思います。

 一方、緊急事態における議員任期延長問題に関連して、立憲民主党の考え方について、私からの質問を受けまして、昨年十二月七日の憲法審査会で、今日も御出席をされておられます奥野委員からお答えをいただきました。奥野委員からは、おおむね次のような発言がありました。

 議員任期延長問題について、党内にワーキングチームを設置し、一応の結論を得たとされ、その概要が紹介をされました。公職選挙法に定められた繰延べ投票制度には四つの問題点があることを指摘された上で、被災地以外も含め、一体性が確保できる程度の地域で選挙が実施できる時点まで選挙を延期する。また、衆議院総選挙が延期されている間、参議院の緊急集会での対応を可能とするとともに、従来限定的に解されてきた緊急集会の権限、案件を拡充し、選挙困難事態制度を創設して、参議院の緊急集会に完全な国会機能を与える。

 繰り返しますと、第一に、衆議院解散から七十日を超えて選挙の適正な実施が困難な選挙困難事態にはその地域で選挙を延期すること、これは、私どもの言う選挙困難事態があり得ることを認められたと理解できます。そして、第二に、緊急集会の権能を拡充して完全な国会機能を与えることの二点を提案をされています。

 これは、衆議院が解散されたときは解散の日から四十日以内に衆議院議員の総選挙を行うとした憲法五十四条一項や、また、二院制を定めた憲法四十二条、両議院の同時活動の原則を定めた五十四条二項などに明らかにそごするもので、私には、共に憲法改正が必要な提案と受け止められます。

 以上の私の受け止め、認識は間違っていないのかどうか、その後、この取りまとめはどうなったのか、また、改正の具体的な内容の検討状況について更にどのように進んでいるのか、この審査会に是非お示しをいただきたいというふうに思います。

 さきに述べましたように、今後の憲法審査会では、緊急事態における議員任期の延長については、改正条項案のたたき台を作成し、これを基に議論を深めていくべきと考えますが、その作成に当たりましては、他の会派の皆さんとも協議、調整をしまして、たたき台となる案を具体的に提示できるようにしてまいりたいと考えます。その基本的な内容については、二〇二三年六月十五日審査会での論点整理にあるとおりで、詳細は省きますが、五会派間の幾つかの相違点、例えば選挙困難事態の認定に当たっての国会承認の議決要件や司法の関与等については、同じく昨年六月十五日の審査会で私が提案している内容で調整できればと考えております。

 さらに、改正条項案の項目に、緊急事態における国会機能の維持という観点から、次の二点を追加できないかと提案をします。共に、憲法解釈が分かれていると思われている事項を憲法に明文化する内容です。

 一つは、衆議院議員の任期満了後に総選挙が行われる場合においても、国に緊急の必要があるときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができると明記することです。

 もう一つは、オンライン国会です。国会議員が議場に参集することが困難なときは、情報通信技術を利用する方法等で会議に出席することができると明記することです。

 各会派においても検討をしていただければと思います。

 国民投票制度に関連し、国民投票広報協議会の役割を充実強化していくべきとの意見は、これまでも多くの委員から発言をされているところです。まずは広報協議会規程を策定しなければなりません。昨年十一月二十一日の衆議院憲法審査会の幹事懇で規程案等について協議をいたしましたが、最終的には、両議院の憲法審査会幹事会で協議し、広報協議会規程の成案を得る必要があります。

 特に、憲法改正国民投票法が制定された当時はインターネットが現在のように普及されていなかったこともあり、インターネットを活用した情報発信やインターネット広告について国民投票法等には何も書かれておりません。国民投票に当たって、国民に正確な情報を提供することは必要不可欠であり、また、偽情報や誤情報を排除するためにも広報協議会の役割は極めて重要です。憲法審査会の幹事会の下に広報協議会規程の起草委員会を設けて早急に議論を開始すべきと改めて提案をいたします。

 以上、私の意見表明といたします。

森会長 ただいまの北側君の御発言の中で、立憲民主党奥野委員に対する御要請がございましたけれども、質問時間が終了いたしておりますので、いずれかの機会に立憲民主党からお答えを願います。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、改憲のための憲法審査会は動かすべきではないという立場を表明してきました。それは、国民の多数が改憲を求めていないからです。国民の中から改憲の要求がないのに、政治権力を持つ側が改憲を喧伝し、雰囲気をつくり出し、国民に改憲を押しつけるのは、本末転倒と言わなければなりません。

 加えて重大なことは、裏金事件で自民党政権が国民の信を失った下で、改憲を議論する前提そのものを欠いているということです。

 裏金事件は、自民党の主要派閥が政治資金パーティー収入を派閥ぐるみで裏金化するという政治資金規正法違反を長年にわたって行ってきたものであります。前代未聞の極めて悪質な組織的犯罪行為であり、自民党全体が問われているのであります。

 政治資金規正法は、政治資金の収支の状況を国民の不断の監視と批判の下に置くことで、政治活動の公明と公正を確保すると強調しています。長年にわたって国民を欺き、議会制民主主義の土台を踏みにじってきた自民党に、改憲を語る資格はありません。自民党がやるべきは、いつ、誰が裏金システムをつくり、裏金を何に使ったのか、その内容、全容を明らかにすることです。

 ところが、政倫審に出席した安倍派幹部らは、秘書に任せていた、分からないなどと何も語らず、疑惑は深まるばかりです。にもかかわらず、岸田首相は、真相解明に蓋をし、党内処分で幕引きしようとしています。絶対に認められません。

 今、国会が果たすべき使命は、関係者を証人喚問し、真相解明をすることです。改憲のための議論を進めることではありません。

 もう一つ重大なことは、岸田政権が、憲法に基づく平和国家としての理念を次々に破壊しようとしていることです。現実の憲法理念の破壊を放置して改憲を議論することは、まさに立憲主義をじゅうりんするものであり、断じて許されません。

 今、沖縄県うるま市では、政府が陸上自衛隊の新たな訓練場の整備を住民に一切の説明なく決めたことに、怒りが沸き上がっています。自治体、住民は党派を超えて計画の断念を強く求めていますが、政府は整備を強行する構えです。国が決めたことには黙って従えと言わんばかりの姿勢で、民主主義も地方自治もないがしろにするものであります。

 武器輸出の問題も、岸田政権は、昨年十二月、殺傷能力のあるライセンス兵器などの輸出を、今年三月には、殺傷兵器の最たるものである次期戦闘機の輸出を、一片の閣議決定で容認しました。国際紛争を助長し、憲法の平和主義を投げ捨てる暴挙です。

 さらに、今回の日米首脳会談では、日米の指揮統制の連携を強化することで合意しました。台湾有事などを想定し、自衛隊を米軍の指揮下に一層深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃を行うための体制強化にほかなりません。日米の軍事産業の連携を強化する協議体を立ち上げ、アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟、AUKUSとの先端軍事技術での協力を検討することも確認しました。自衛隊も軍需産業も全てをアメリカの戦略に組み込み、利用しようとするものです。

 アメリカのエマニュエル駐日大使は、岸田政権は七十年来の安全保障政策を根底から覆したと称賛しています。

 アメリカの軍事戦略に追従し、憲法を踏みにじり続けているのが岸田政権です。この憲法じゅうりんの政治を正す議論こそ私たち国会議員に求められているということを強調し、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 先ほど、維新の馬場代表から中山太郎先生と中野寛成先生のお話がありましたけれども、ずっと同じような議論になっていて、もう少し与野党を超えた建設的な議論はできないものかなと思います。

 その観点から今から申し上げますけれども、皆さん、前回この憲法審査会が開かれたのはいつか覚えていらっしゃいますか。去年の十二月七日です。あれから四か月たっていますが、憲法改正の具体的な議論は一ミリも進んでいません。

 前回、最終回だったと思いますが、中谷元筆頭幹事から起草に向けた機関を創設する旨の発言がありましたけれども、発言があっただけですね。衆議院の憲法審査会規程第八条では閉会中にも開かれるという規定がありますが、開かれませんでした。

 でも一方で、岸田総理は、総裁は、施政方針演説や自民党の党大会で威勢のいいかけ声だけは続けています。残念ながら、私にはパフォーマンスにしか見えません。

 そこで、まず中谷筆頭幹事に確認したいのは、岸田総裁として、三月十七日の党大会で、総裁任期中に実現するとの思いの下、今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいりますと述べられましたけれども、これはどういう意味なんでしょうか。九月までの現在の総裁任期中の憲法改正はもう諦めて、総裁選で再選されることを前提に、年内、つまり秋の臨時国会で条文案の具体化を進める、そういう趣旨を宣言されたのか、それとも、あくまで九月までの今の任期中の憲法改正を考えておられるのか、この発言の意味が分からないので、真意を教えていただきたいと思います。

 もし今の任期中に憲法改正を目指すのであれば、今国会はあと十回の審査会しかありません。既に先ほどの幹事会で次の審査会も自由討論と決まりましたので、間に合わないと思います。憲法改正のテーマを絞り込み条文案を作り上げるということが果たしてできるのか。正直、絶望的だと言わざるを得ないと思います。明確なスケジュールや戦略もなくだらだらと時間を浪費するべきではないと思いますので、具体的なスケジュールと戦略を与党筆頭幹事として明確にお示しをいただきたいと思います。

 九月までの任期中に改憲したいならば、もう選択肢は一つしかないと思います。これはもう既にいろいろな方々から意見が出ていますが、これまで丁寧な議論を重ねて五会派でおおむね意見の集約が図られてきた、緊急事態における議員任期の特例延長規定を中心とした憲法改正だと思います。日本維新の会、有志の会、そして我が党国民民主党の二党一会派による共通条文案はもう既にありますので、会長にもお願いしたいのは、中谷筆頭幹事がおっしゃった起草に向けた機関を具体的に動かしてもらいたいと思います。

 もう一つ自民党に申し上げたいのは、今から余りテーマを広げないでほしいということです。テーマを広げても、本年九月にはますます間に合わなくなります。特に、九条の二を創設して自衛隊を明記する、いわゆる自衛隊明記論については、これは何度も申し上げていますが、違憲論を解消することのできない、法律的にはほとんど意味のないものであって、労多くして益なしの改憲案です。個人的な意見を申し上げれば、まだ二〇一二年の自民党改憲案の国防軍の創設の方が、法律的には筋が通っています。

 自民党の自衛隊明記案の最大の課題は、仮に自衛隊という組織名が明記されたとしても、その自衛隊の行使する自衛権の範囲については、これまで同様に、解釈に委ねるとしています。条文の改正案を議論するときに、その条文を解釈に委ねるという条文改正案は意味が分かりません。もしその解釈があるとすれば、その解釈を明示すべきではないでしょうか。

 条文上、戦力不保持を定めた九条二項との関係で違憲論争が、特に、共産党さんからの違憲の指摘に対して答えられないような改正案ほど私は意味のないものはないと思っていますので、そこは自民党も一度、安倍総理のときのいろいろな背景があったと思います、まさにゴールデンウィークを迎える中で読売新聞に発表したあの四項目案は一つの妥協点だったと思いますが、一旦、原点に返って、本来やるべき九条改正案、自衛隊の、組織として、あるいは行使する自衛権についてどうするのかという議論を党内でもしっかりやっていただきたいと思います。それが責任与党としての私は役割だと思います。

 我が党は、自衛隊の行使できる自衛権を戦力不保持を定めた九条二項の例外として明確に位置づけるなど本質的な議論が必要だと考えておりますが、繰り返しになりますが、この議論は九月までには間に合いません。粗い議論もすべきではないと思っていますので、この点については改めて申し上げたい。

 その上で、中谷筆頭幹事に質問なのは、自民党として、改憲テーマの範囲、スコープ、これはつまり、最初の憲法発議というのは一つの項目では駄目なのか、複数項目を必ず提示しなければならないのか、そのことについてどう考えているのかも併せて教えていただきたいと思います。

 次に、野党第一党の立憲民主党さんにもこれはお願いです。先ほど逢坂さんから大きな方針が示されましたけれども、是非、憲法改正絶対反対ではなくて、前向きに議論に参加をしていただきたい。特に、有事における権力統治の在り方については、イデオロギーを超えて、国会中心主義の観点から合意が得られるテーマだと考えます。

 能登半島地震が本年一月一日に発災しました。あれから実はもう百日以上たっています。先日、珠洲市、七尾市、各地域を私も訪問しましたが、現時点において、倒壊家屋はそのままです。敦賀に北陸新幹線が延伸して、金沢はもうまるで震災がなかったかのようなにぎわいを取り戻していますが、逆に、県内での格差をすごく感じました。

 今、仮に発災直後に任期満了を衆議院が迎えたとして、私は、今の石川三区では円滑に選挙ができない可能性が高いと思います。水も通っていません。やはり、七十日を超えて選挙ができない事態に備えた議員任期の特例延長規定が必要だと改めて思います。もし今、近藤和也さんや西田昭二さんが国会にいなかったとしたら、被災地の実態を踏まえた議論はできたでしょうか。金沢では先ほど申し上げたように震災の痕跡もないので、全県の参議院議員だけでは私は不十分だと思います。

 立憲民主党は、長期間選挙ができない場合には参議院の緊急集会を活用すればよくて、議員任期の延長規定は必要ないという立場だと承知していますけれども、奥野さんはちょっと違うと思いますが、その対応をやるときには、これはやはり違憲の可能性は否定できないと思います。これは北側幹事がおっしゃったとおり。

 特に、これは何度も私申し上げていますが、二つです。暫定予算だけではなくて、本予算の審議も緊急集会に担わすことができるのか、あと、相手国のある条約の承認、これもできるのか。この点については、具体的にどう考えるのか、立憲民主党の考えを知りたいと思います。

 仮に本予算の議決や条約の承認を参議院の緊急集会に認めることになれば、それは、少なくとも現行憲法下では、一時的、暫定的、限定的である緊急集会の本来の権限を変えることになります。予算と条約には衆議院の優越が認められていますし、現行憲法にも、例えば衆参同時活動の原則もあります。七十日を大きく超えて、しかも本予算や条約といった範囲まで権限を広げるのであれば、その場合には、我々とは違った憲法改正案が必要ではないでしょうか。立憲民主党の考えを伺いたいと思います。

 なお、立憲民主党さんは憲法改正の条文作りよりも国民投票法の議論を先にやるべきと主張されているとも承知しておりますが、これは両方並行してやればいいと思います。私たちも、立憲民主党さんがおっしゃっているような広報協議会の強化やネット対策などには賛同できる部分も多いので、我が党としても、国民投票法の改正案には協力していきたいと思います。

 いずれにせよ、憲法改正をやるやると言ってやらない与党自民党と憲法を変えてはならないとこだわる野党との間の奇妙な共闘関係の続くネオ五五年体制が続く限り、憲法改正をめぐって、これは実は、野党側が割れ続け、結果、政権交代が実現しないのではないでしょうか。逆説的に聞こえるかもしれませんが、今の硬直した状況を打破するためには、野党第一党である立憲民主党が、幅広く合意が得られるテーマ、具体的には議員任期の特例延長規定の創設で改憲議論をリードする必要があるのではないでしょうか。

 立憲民主党には、野党第一党として建設的な憲法改正議論をリードされることを期待すると同時に、自民党には、スケジュールと改正項目の対象を明確にする審査会運営をお願いしたいと思います。

 最後に、会長には本審査会のNHK中継を是非導入することを求めて、発言を終わりたいと思います。

森会長 ただいまの御発言の中で、自民党あるいは立憲民主党に対して御質問、御要請がございましたけれども、それも後ほど、適宜、自由討議の中で御答弁願いたいと思います。

 また、私に御要請のあったNHK中継の件については、既にいろいろと各党にお願いをしているところで、しっかりと受け止めて進めたいと思います。

玉木委員 お願いします。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私は、議員として四期目に入るんですけれども、一期目の頃から憲法審査会に所属をしてまいりました。

 前回、寂しい浪人時代を経て、国政に戻って辺りを見回すと、顔ぶれや議論の風景もすっかり変わったなと、浦島太郎のような気持ちでありました。憲法審査会もさぞかし、改正案くらいできていて、自分にもついていけるかなと不安を抱えておりましたが、顔ぶれは変われども、相変わらず議論ばかり、いや、開催にすら至らないこともあり、これぞ憲法審査会と妙に懐かしさを感じた記憶があります。

 あれから二年四か月もたちました。非常時において国会の機能をいかに守るのかという議論を中心に、自由討議、集中討議は三十五回、参考人質疑は五回開催されました。しかし、いまだに条文の作成すらされていません。

 昨年の春頃には、既に、議員の任期延長については、少なくとも五会派の間でほぼ共通の認識が得られております。有志の会としては、維新の会、国民民主党とともに既に条文案も作成しております。これに対し、立憲民主党と共産党は条文の審議に反対をされています。

 私は、健全な民主主義のためには、少数の意見をできるだけ尊重することにより数の暴力を避けなければいけないとは思います。ただ、本件に関しては、議論を尽くした上で多くの会派が一定の結論に達している以上は、審査会としてはどこかで決断をする必要があるのではないでしょうか。そうしなければ、単なる意見交換の場で終わってしまいます。

 今私は議論を尽くしたと申しましたが、これは単に時間を費やしたということだけではありません。実際、これにとどまらず、立憲民主党からの御意見を参考にするとともに、我々の案に具体的に取り入れているくらいであります。つまり、少数派の意見を聞いて、はい、そうですかと終わらせていないことを、是非強調をしたいというふうに思います。

 例えば、令和五年十二月七日の本審査会において、立憲民主党の奥野委員より、いかなる事態においても憲法が国会中心主義を維持できるよう選挙困難事態への対応を検討したとして、繰延べ投票について、広範な地域において長期間投票が困難な事態についてまでこれを利用することは総選挙の一体性の欠如をもたらすのではないかと指摘をされました。

 我々三会派の案では、その趣旨をも酌んで、選挙実施困難事態を、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかなものとして定義づけております。同委員が強調された国会中心主義についても、我々の案は、非常時においていかに国会の機能を維持することに主眼を置いています。

 また、同委員よりは、議員自らその任期を延長することはお手盛りになるという危険性を指摘をし、憲法裁判所を含む司法の関与を早々に提案をされておりました。我々の案にも司法に一定の役割を課しているのは、決して偶然ではありません。

 立憲民主党の中川前幹事よりは、令和五年六月一日に、選挙困難事態を理由とする権力の維持、暴走の危険性をいかに防ぐかという観点が大切、また、選挙困難事態をでき得る限り早急に解消し選挙を実施すること、さらに、選挙の延期や実施の決定は国会の関与が必要であること等について御発言がありました。

 こうした御意見をも踏まえ、我々の案においても、一つは、選挙困難事態の認定は内閣ではなく国会が行うこと、二つには、その認定には厳しく三分の二以上の国会の議決を要すること、他方、三つは、任期延長を解除する議決は過半数と緩い条件にすることにより、恣意的な先延ばしや権力の暴走を防ぐこととしています。

 また、同前幹事からは、令和五年四月六日に、憲法五十三条をめぐり、臨時国会の召集の期限を法定化すべし旨発言がありました。その思いを引き継いで、我々の案には、臨時会召集要求に係る召集期限を二十日以内と明記しております。

 同日に、立憲民主党の城井委員からは、議員任期延長の議論と合わせて、閉会禁止、解散禁止等の憲法改正事項の検討を提案されました。この点も我々の案では取り入れており、閉会禁止、解散禁止に加え、さらに、憲法改正禁止も含めております。

 以上、立場が異なる立憲民主党さんの提言の相当部分を案の中に組み込んでまいりました。決して議論を平行線に終わらせることなく、虚心坦懐に、よい意見はよい意見として採用するように心がけてきたつもりであります。

 一方で、それでも依然として、立憲民主党と共産党が条文案の作成に一貫として反対をされていることも、これもまた事実でございます。結果、今るる皆さんからお話があった膠着状態が続いています。それでも中谷筆頭幹事は、反対派をも巻き込んで、丁寧に、粘り強く運営をされようとしています。その涙ぐましい努力には敬意を表します。表しますが、これは仮に定例日に毎回開いても、もはや、私はお互いの時間の浪費にしかならないというふうに考えます。

 これは厳しい言葉かもしれませんけれども、このまま条文案なしに同じ論点を、乾いた雑巾を代わりばんこに繰り返し繰り返し絞り合うのか、それとも、指導教授のいない大学のゼミのように、憲法のあらゆる論点についてそれぞれの個人的な見解を発表し合うのか。これを時間の浪費と言わずして、何と言うのでしょうか。

 ここまで少数派の意見を聞くだけでなく具体案に取り入れてきている以上、多数派の横暴のそしりを恐れる必要はないと思います。条文に関する起草委員会を立ち上げるなどして、決断の上、結論を出す憲法審査会にかじを切ることを要請します。

 森会長の差配もお願いをして、私の発言を終わります。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

中谷(元)委員 各党から大変貴重な御意見と、また御質問、御指摘をいただきまして、誠にありがとうございました。

 まず、馬場幹事から御指摘のように、定例日だけでは日程がタイトであるので、従来、全会派が参加するような幹事懇談会を定例日の前々日である火曜日に開くことが多かったために、このような場を用いまして議論を進めてみたいと思います。それから、定例日以外の開催の方も、協議の上、お願いをいたしたいというふうに思っております。

 そこで、起草委員会をつくるべきだという御意見もありましたけれども、幹事懇談会の場で、多くの会派の間で合意が得られる、まず、緊急事態における国会機能維持を中心とした緊急事態条項について起草委員会をつくりまして条文作成作業が進めていかれるように、この場をかりて、各会派に御提案を申し上げます。

 憲法は国民のものでありますから、反対の立場の御意見もございますが、その方の意見も大変貴重でございますので、是非、御参加をいただきまして堂々と御意見をお述べになっていただきまして、各党で協議をすることが肝要だというふうに思います。

 スケジュールにつきましては、各党の議論を踏まえた上でございますが、この国会中には一定の節目が迎えられますように努力をしてまいりたいというふうに思います。

 そして、玉木幹事からのテーマにつきましては、緊急事態条項と自衛隊の明記、これは先ほど私が発言をいたしましたけれども、審査会での議論の中で、ある程度の近づいてきた合意、重なる部分が深まってきておりますので、条文作成を含めて、起草委員会の場におきまして最大限の努力を払ってまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

逢坂委員 逢坂でございます。

 馬場幹事、それから北側幹事始め、幾人かの皆さんから我が党に対する質問がございました。加えて、過去の奥野委員、それから中川委員の発言に対する質問もございましたけれども、これらの質問、御要望などにつきましては、今日の議事録を改めて精査をさせていただいて、次回以降の憲法審の中で、答えるべきものがあれば対応をさせていただきたいというふうに思います。

 なお、中谷幹事から突然、起草委員会ですか、の御提案がございましたけれども、この憲法審、基本的には筆頭間で協議をしてという話をしておりますので、改めて中谷幹事から御提案をいただいた上で、筆頭間で取りあえずの整理をさせていただきたいと思います。

 私からは以上です。

船田委員 自民党の船田元であります。

 この国会で初めての実質討議が始まったことを歓迎をいたしたいと思います。今後、精力的に議論を進め、改正原案の策定に向けての道筋が明らかになることを心から期待をいたしております。

 自民党が考えております憲法改正の方向性については先ほど中谷筆頭幹事から述べられましたが、私は主に、国民投票の環境整備を中心に述べたいと思います。

 かつて、公選法の改正の見合いとして七項目の国民投票法改正の際に、一つは投票環境の整備、二つ目には投票の公平公正の確保、この二点について三年を目途に検討することが条項で決められましたが、その期限が実は今年の九月に迫っております。そのため、できるだけ速やかにこのことを検討すべきでありますが、申すまでもなく、憲法改正の中身の議論の前提であったり、あるいは障害となったりということでは決してございません、同時並行的に進めるべき議論だと思っています。

 まず、1、投票環境の整備に関しましては、公選法で整備されている三項目案、すなわち、開票立会人の選任規定の整備、投票立会人の選任要件の緩和、FM放送を広報のための放送に追加する、この点につきましては、令和四年、一昨年の四月に当審査会で趣旨説明がされておりまして、まず、これらは国民投票法にも反映すべきでありまして、速やかに処理すべきものと思っております。

 次に、2、投票の公平公正の確保につきましては、運動資金の上限規制など有力な意見もあることは承知をしております。しかし、国民投票運動は原則自由と考えるのであれば、放送CMについては、直接の数量規制ではなく、民放各社がCM考査を行っており、その考査の報告や、広告費がどのぐらいかかったかということについての報告を広報協議会が受けた後、特に不適切な案件については是正を求めるなど、間接的な方法で規制をすることが妥当であると思っています。

 また、近年、ネットの広告、意見表明、様々議論が出ておりますけれども、これを直接規制に加えるということは、物理的にも、また表現、言論の自由の観点からも、現実的には不可能であると思っています。そこで、主なプラットフォーマーに対しまして運動期間中の広告、意見表明の回数や広告費などを広報協議会に報告をさせることによりまして一定の歯止めを利かせたいと考えております。しかし、今後、個人的には、何らかの法的規制も含めて幅広く検討していきたいなと思っております。

 なお、これまで多くの同僚議員からも指摘されたフェイクニュースなどのファクトチェックにつきましては、やはりこれも広報協議会によるフェイクニュースの典型例やガイドラインの提示を行うこと、あるいは外部のファクトチェック機関との連携も有効な手段であると考えております。

 最後に、国民投票広報協議会は、今申しましたように、国民投票運動の公平公正を確保する上で極めて重要な役割を持っております。その諸規程の整備につきましては、昨年十一月、幹事懇で事務方から聴取をいたしました。公明党北側幹事からも御指摘がございました。今後、着実に、幹事会の下にチームなりをつくりまして、その整備を進めていっていただきたい、このように切に願っております。

 以上であります。

近藤(昭)委員 おはようございます。立憲民主党の近藤昭一でございます。

 私からは、地方自治法改正案が閣議決定され、三月一日、国会に提出されました、このことについて申し述べたいと思います。

 この法案については総務委員会でしっかりと議論されるものと思っておりますけれども、私は、憲法九十二条に定めた地方自治の保障の観点から、国会法百二条の六に規定されているこの審査会の目的のうち、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うことに関連した問題と考えて発言をさせていただくわけであります。

 そもそも、日本国憲法に、大日本帝国憲法には定めのなかった地方自治の制度の規定を設け、これを保障した意義は、第一に、中央政府から独立した地方公共団体が地方の事務を処理することによって強大な中央政府の権限を抑制すること、第二に、地域の特性に応じて処理されるべき事務は、そこに居住し、生活する住民の意思に基づいて決定し、住民の権利を保障することと言われています。前者が地方自治の分権的側面を示す団体自治であり、後者が地方自治の民主主義的側面を示す住民自治であります。こうした意義をよりよく果たしていくために重要なことは、強大な中央政府と地方自治体が対等、平等な関係に立つことであります。

 ところが、今回の地方自治法の改正案は、強大な中央政府の権限をより強大にし、中央政府と地方自治体との関係に上下関係を持ち込むことになるのではないかという危惧を抱かざるを得ません。

 具体的に地方自治法改正案の条文を見ていきたいと思います。改正の中心は、第十四章、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と地方公共団体との関係等の特例を新設することであります。二百五十二条の二十六の三から二百五十二条の二十六の十まででありますけれども、いずれも、大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合に適用されるわけであります。

 災害や感染症に限らず、その他に適用もされるものでありますけれども、適用される事由は無制限であります。戦争や内乱なども含まれるわけでありましょう。また、被害の程度が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態というのは、一般抽象的で、恣意的運用の可能性が大であります。しかも、そのおそれがある場合、つまり、現実の被害が生じていなくても適用され、運用の恣意性は無制限に膨らむのではないでしょうか。

 こうした恣意的運用の危険が大きい、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に生じる法律効果は、国が地方公共団体に対し、必要な措置を講ずる指示ができる二百五十二条の二十六の四、五というものであります。この必要な措置の指示にも限定、制約がありません。

 しかも、以上の第十四章の規定は現行法の特例として新設されるもので、新設される指示、ただし、これは法定事務に限られるわけであります、二百四十五の七であります、への地方公共団体の義務違反に基づいて代執行、これは二百四十五の八でありますが、のできる範囲も大きく広がるものではないでしょうか。

 以上、見てまいりましたように、地方自治法改正案は、適用事由、要件、国に与える権限、いずれについても具体的、客観的な制約がなく、地方自治体に対する国の指示権を無制限に認めるもので、国と地方自治体の関係を大きく変容させ、憲法九十二条の地方自治権の保障を壊しかねない重大な問題をはらんでいます。また、立憲主義の見地からも到底容認できるものではありません。

 玉城沖縄県知事は、代執行の乱発を招くものではないかと懸念を示し、元鳥取県知事の片山善博氏は、時代を逆行するものと断じ、日本弁護士連合会は、地方自治法改正案の原案となった答申に反対する立場から意見書を提出し、国の指示権を認める法改正案文の削除等を求める会長声明を発表しています。

 第九十二条、地方自治体の本旨の原点に立ち返った真摯な調査と検討が必要だと思っております。

 以上です。

小野委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。

 今日、冒頭、中谷筆頭幹事から、従来のように憲法改正項目についての様々な列挙があって、私は、それで終わってしまうのかな、今日もそういう形なのかなというように思っていたんですが、その後に、具体的に条文の起草作業を進めていきたい、そしてまた先ほどの質疑の御答弁でも、起草委員会もつくりたいというような御発言もあって、やはりそういった形で、具体的に我々がちゃんと議論する物ができ上がってくるということが必要なんだという御認識を示されたことは、私は、これは評価させていただきたいというふうに思っています。

 ただ、馬場代表からも申し上げたように、やはりスケジュールの提示というのが必要だと思います。これは、この憲法審査会の中でもさんざん、いろいろな議論がありました。岸田総理がおっしゃっている、自らの総裁任期中の間に憲法改正を実現するという御発言があって、その意図は何なのか、それはこの任期中なのか、それともその次まで含むのかというような議論がされていましたが、こんなことはビジネスの世界では普通あり得ないことで、例えば、私も地方自治をやっていましたが、自分の任期中、まさに選挙で負託された中で何をやるのかをはっきり示すのが当たり前のことだと思うんですね。

 ですから、中谷筆頭幹事には是非、総理に改めてそのことを確認をされた上で、この憲法審査会の動かし方は総理の考えによって与党の動き方も変わるわけでありますので、是非、この秋の総裁の任期中までにどこまでやるのか、馬場幹事からも先ほどありましたけれども、仮に解散をする、あるいはしないということ関係なく、この任期中で政治家として自分が約束したことをどこまでやるのかということをしっかり明示した上で、それをスケジュールに落とし込んでいただきたいということをお願いをしたいと思います。今日はもう答弁はいただかなくて結構ですが、直接岸田総理にこのことを是非御相談をされて、そして、どういうスケジュールでやっていくのかというのを明らかにしていただきたいと思います。

 先ほど、玉木委員から、この憲法審査会、四か月ぐらいずっと動かなかったと。我々は国民に対してサボってきたと思うんですね。ですから、やはりサボった分は取り返さなければいけないというふうに思いますので、これは先ほど中谷幹事からも御発言がありましたけれども、その分をキャッチアップするために、これはもう定例の毎週木曜日以外でも開くべきだと思いますし、そして、この審査会の外でも作業はできるわけですから、急速にキャッチアップをして、この秋までに何ができるのかということを是非、幹事間で協議もしてお示しをいただきたいというふうに思います。

 先ほど、逢坂委員から、不磨の大典ではないというような御発言もありました。非常に重い御発言だというふうに思います。条文の具体化の加速化というのは、やはりそれは本当に拙速なのではないかというようなこともありましたけれども、ただ、私は、初当選以来この憲法審査会に参加をさせていただいておりますが、いまだに大きな違和感を持っていることがあります。

 我々は、政治家として自分がどういう法律を作りたいのか、そのことを党内でも議論し、そして会派として自由に提案して、それを徹底的に議論する、そして最終的にそれが是か非なのかということを採決して決める、それが私は民主主義だと思っていますが、この空間はそういったことは全く許されず、多くの議員が、会派が合意して、こういった形で憲法の改正を国民に見せる、決を採るかどうかという道のりよりも前のですね、そういったものが果たして是か非なのかということを国民の皆さんにも考えていただく材料すら提供できないということに大きな違和感を持っていまして、今国会での憲法審査会、残りの時間は非常に少ないですけれども、そのことをちゃんと国民の前に示すような場にしていきたいというふうに思っております。

 今までのように各委員の皆さんがそれぞれの憲法改正項目について自説を述べるだけであれば、本当にこれは、時間の浪費にすぎないと北神委員がおっしゃったとおりで、これは全く、落選している議員の人たちも、こんな状況を見たら、今の負託されている議員が一体仕事をしているのかどうかということを問われても仕方がないというふうに思っています。

 最後に、憲法起草委員会に加えまして、北側幹事もおっしゃったように、広報協議会の規程の起草委員会の方も同時につくって進めるべきだと思います。

 この点に関しては、私もこの憲法審査会の事務局にも、昨年は、夏休みの宿題ということで、具体的な案を作ってくださいということもお願いして、やはり、この国会の事務局の皆さん、本当に真摯にやっておられます。我々がギアチェンジをして本当に憲法改正をするというようなスピード感に乗っていけるように、いつでも準備をされているんですね。

 ですから、今度は我々が本当に頑張らなければいけないということで、今日はもうあと時間はありませんけれども、来週からは、今までのような、同じような議論の繰り返しにならず、具体的な条文がこのテーブルの上にのってくるということを目指して行動すべきだということを申し上げて、私の発言とさせていただきます。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 ようやく実質審議が始まりました。本日は、議員任期延長を始めとする緊急事態における国会機能の維持について発言をさせていただきたいと思います。

 昨年十二月七日の憲法審査会では、中谷筆頭幹事から、緊急事態における国会機能の維持の憲法改正について、具体的な条文の起草作業のステージに入るという御提案がございました。そして、本日、起草委員会を設けたい、こういう御発言もあったところでございます。

 また、我が党におきましても、北側幹事始め委員から、これまでの議論も踏まえた条文案のたたき台を作成し、そのような具体的な案を基に審査会で議論を更に積み重ねていくことが必要ではないかという発言をさせていただきましたし、本日も北側幹事から同様の発言をさせていただきまして、私どももそう思っておるところでございます。

 そこで、その条文のたたき台作成に向けて、改めて議論を整理したいと思います。

 まず、参議院の緊急集会の位置づけについてでございます。

 日本国憲法には、衆議院不在時に国に緊急の必要があるときへの対応として参議院の緊急集会制度が設けられており、七十日程度の期間内に総選挙実施が見通せる場合には最大限これを活用することが現行憲法の求めるところと考えております。

 この点に関し、憲法五十四条二項では、参議院の緊急集会の開催は「衆議院が解散されたとき」とされていますが、衆議院議員の任期満了後に総選挙が行われるときも、類推適用により、参議院の緊急集会は開催可能という解釈が多数説とされています。

 そこで、条文案のたたき台には、この解釈を明文化する憲法改正に関しても書き込むことを提案いたします。こうすることで、衆議院解散、任期満了を問わず、七十日程度の期間内の総選挙実施が見通せる場合は参議院の緊急集会で対応し、長期にわたって総選挙実施が見通せない場合は議員任期延長で対応するという両制度のすみ分けがより明確になると考えます。

 このように、議員任期延長を始めとする緊急事態における国会機能の維持に関する憲法改正が行われたとしても、参議院の緊急集会の役割はなお引き続き重要であり、その権限や権能が縮小されるようなことはありません。

 次に、これまで余り議論されてこなかった選挙期日の延期に関する論点です。

 この間の憲法審査会の議論では、広範かつ長期間にわたって国政選挙の適正な実施が困難であることが明らかであるとき等という要件で、議員任期延長という効果が生ずると考えられてきました。

 しかしながら、国政選挙の実施の困難性を要件としていることを考えると、まず、選挙が困難な事態であることを認定した上で、その効果として、その事態が収拾した後まで国政選挙の選挙期日を延期するとすることがより自然な構成となるのではないでしょうか。すなわち、国政選挙の実施が困難であるからその選挙を延期せざるを得ないという前提の上で、選挙が延期されている間は国会議員が不在となってしまうため、新しい議員が選ばれるまでの間、議員任期延長により対応する必要があるということが論理的であると考えます。

 つまり、私たちの議論の筋道を適切に表現すると、緊急事態発生時に議員任期を延長するのではなく、選挙期日を延期するものだということでございます。実際に、東日本大震災の際には、被災地自治体の議会の議員と首長の選挙を延期した上で、選挙期日まで当該議員と首長の任期を延長することが特例法でなされております。

 また、選挙期日の延期、議員任期延長のほか、緊急事態における解散権の制限や国会閉会の禁止、オンライン国会という論点も条文案のたたき台に書き込むことにより、緊急事態における国会機能維持がより総合的なものとなると考えます。

 以上、これまでの議論を踏まえ、条文案のたたき台に書き込むべき事項の整理をしてみました。条文案のたたき台を作成することにより、これまでの議論の内容がより可視化され、建設的な議論ができるようになるとともに、国会における議論の内容が国民にも理解しやすくなると考えます。

 条文のたたき台の作成を是非進めていただきますようお願い申し上げまして、私の発言とさせていただきます。

小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。

 私は、いついかなるときも国家機能を維持し、国民の生命財産を守り抜くために、憲法に緊急政令制度を設ける必要があると考えています。

 緊急政令制度とは、国会が立法機能を行使することができない状況に陥ったり、立法措置を講ずる時間的余裕さえないような極限的な状況において、一時的、暫定的に内閣が政令によって必要な措置を講ずる制度であります。あくまでも一時的、暫定的に必要な限度で内閣が措置を行うものであって、国会が事後的に民主的統制を果たすことは当然であります。

 本日は、この緊急政令制度創設の議論に資するものとして、諸外国の憲法典における緊急命令規定と明治憲法下の緊急勅令制度について述べたいと思います。

 まず、諸外国の憲法典におきましてどのように位置づけられているかを確認したいと思います。

 昨年九月に国立国会図書館が発表した、OECDに加盟している三十八か国についての緊急事態条項に関する調査によりますと、緊急事態条項の発動の効果としては、憲法上の機関の権限配分の変更を規定するものが多いです。その中でも最も多く見られるものは、行政府への例外的な権限付与、つまり、法律の効力を有する緊急命令を発する権限の付与であります。

 具体的には、緊急事態条項がある三十か国のうち過半数の十六か国に、緊急命令に関する規定があります。例えばイタリアでは、緊急の必要がある非常の場合には政府が法律の効力を有する暫定措置を取ることができるとされており、この暫定措置、すなわち緊急命令に基づきまして、今般、コロナ対策が行われております。また、スペインでは、特別かつ緊急の必要がある場合には内閣は代行命令の形式を取る暫定法を発することができるとされております。さらに、このような緊急命令の規定がなくとも、例えばフランス憲法の大統領の非常措置権のように、類似する法的効果を有する規定がある場合もございます。

 こうした調査結果に鑑みますと、約六割の国が、国会機能が維持できなくなるような緊急事態をも見据えて万全の体制を整えているとも言えます。

 昨年の憲法審査会の海外調査報告書にも、フランスの憲法学者の方が、たとえ実際にはほとんど使われなかったとしても、緊急事態に関する憲法規定は有用であり、万が一例外的事態が発生したときに、これに対処するためには必要不可欠なものという説明をしたことが記録されております。

 他方、フランスのように大統領の広範な裁量権を認める条文には懸念も示されているところでありまして、直ちにこれに倣うことには正直ちゅうちょも覚えます。

 そうしますと、より要件を具体化した、個別的な緊急政令制度の明文化の道を模索するのが適切ではないかと考えます。我が党が条文イメージとして示している緊急政令制度は、そのような条文化の一つの形となっていると考えます。

 次に、明治憲法に規定されていた緊急勅令について取り上げたいと思います。

 日本国憲法に緊急政令制度を設けることには、明治憲法下における緊急勅令を持ち出して、その濫用のおそれを指摘する声も少なくありません。確かに、緊急勅令の手続によって治安維持法が改正されるなど、濫用としか評価することができない例もあります。

 しかし、関東大震災の際に発せられた緊急勅令は十六件ありますが、その内容を見ますと、被災者の金銭債務の支払い延期、いわゆるモラトリアムや、生活必需品の買占めや売惜しみなどへの対応、さらには府県会議員の任期延長などでありまして、緊急事態対応として必要不可欠なものであったことが分かります。

 さらに、これらの措置は、現在の災対法などにおける緊急政令規定におおむね取り込まれておりまして、緊急政令の必要性は、むしろ歴史的に証明されているとも考えてよいと私は思います。

 現在、緊急事態における国会機能維持に関する議論が進展しているところでございますが、私は、更に一歩進んで、緊急政令の議論も深めていくべきであると考えます。

 以上で私の発言を終わります。

北側委員 先ほど、馬場幹事から御質問がありました。

 いずれにいたしましても、憲法改正に向けて、幅広い合意形成をしていくことを目指さないといけないと思います。

 やはり、当然のことながら、いろいろな慎重論、反対論があるのは当然ですし、それも大事ですし、それは尊重されなければならないと思います。大事なことは、この審査会に御出席をいただいて、堂々とその主張をしていただくということが大事なんだろうというふうに思っております。

 それから、参議院との関係についても御質問がございました。

 特に議員任期延長の問題は、参議院の緊急集会の権能をどう考えるのかというところが大きな論点になります。したがって、参議院側の方で、これは参議院側の権能なので、参議院の憲法審査会の方で、是非、この緊急集会の適用範囲がどこにあるのかということは、しっかり参議院の憲法審査会でも議論をしていただかなければならない。我が党の中でも、しっかりそのことは申し上げたいと思っておりますし、また、我が党内については、もちろん党内の中にもいろいろな意見がありますが、しっかりこれは合意できるというふうに私は考えておるところでございます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十八分散会


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