第6号 令和6年5月16日(木曜日)
令和六年五月十六日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君
幹事 寺田 稔君 幹事 中谷 元君
幹事 船田 元君 幹事 逢坂 誠二君
幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 北側 一雄君
井出 庸生君 井野 俊郎君
井上 貴博君 石破 茂君
稲田 朋美君 岩屋 毅君
越智 隆雄君 大串 正樹君
黄川田仁志君 熊田 裕通君
斎藤 洋明君 中西 健治君
長島 昭久君 古川 禎久君
古屋 圭司君 細野 豪志君
三谷 英弘君 山下 貴司君
山田 賢司君 山本 有二君
吉田 真次君 大島 敦君
奥野総一郎君 城井 崇君
近藤 昭一君 階 猛君
篠原 孝君 堤 かなめ君
谷田川 元君 吉田はるみ君
青柳 仁士君 岩谷 良平君
小野 泰輔君 三木 圭恵君
大口 善徳君 河西 宏一君
國重 徹君 赤嶺 政賢君
玉木雄一郎君 吉良 州司君
…………………………………
衆議院法制局長 橘 幸信君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
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委員の異動
五月十六日
辞任 補欠選任
岩屋 毅君 吉田 真次君
城内 実君 斎藤 洋明君
牧 義夫君 堤 かなめ君
北神 圭朗君 吉良 州司君
同日
辞任 補欠選任
斎藤 洋明君 城内 実君
吉田 真次君 岩屋 毅君
堤 かなめ君 牧 義夫君
吉良 州司君 北神 圭朗君
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五月十五日
憲法改悪を許さないことに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三五五号)
は本憲法審査会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)
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○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内といたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元君。
○船田委員 会長、ありがとうございます。
自由民主党の船田元でございます。
自民会派を代表しまして、一巡目の意見を述べさせていただきます。
今国会におきましても、御承知のように、自由討議が毎週実施をされ、活発な議論が展開されておりますことを心から歓迎をしたいと思っております。
憲法改正の必要な箇所というのは数多く挙げられておりますが、我々自民党におきましても、九条の自衛隊明記、それから緊急事態条項、教育の無償化、あるいは参議院の合区問題、この四項目が検討の対象となってまいりました。
その中でも、緊急事態における国会機能の維持あるいは議員任期の延長については、これまでの憲法審査会でかなり議論が煮詰まってまいりました。各党の考え方も収れんをしてきております。この際、具体的な要綱形式の資料を討議資料として憲法審査会に提示をして議論を進めるべきである、このように主張したいと思っております。
自民党は、平成三十年に、他の三項目とともに、緊急事態に関するたたき台の素案を取りまとめて発表いたしました。それをちょっと御紹介いたします。「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。」といたしたわけであります。
私どもは、これを念頭に入れつつ、憲法審査会において鋭意それぞれの立場で発言をしてきたのでありますが、各党からはこの点について様々な観点から意見が活発に出されまして、適切な修正や変更あるいは肉づけが実現しておりまして、よりよい充実した内容になってきたのかな、このように思っております。
自民党の今申し上げました条文イメージから変更されていると思われる点は、次のとおりと考えております。
1、対象とする緊急事態について、大規模災害から、感染症蔓延や武力攻撃事態など四事態と、これらに匹敵する事態に拡大をすること。
2としては、国政選挙の適正実施困難要件については、選挙の一体性が害されるほどの広範性、それから七十日を超えるほどの長期性が具体的に加わった点であります。
3としましては、認定の主体について、国会という表現から、内閣の発議に加え、国会の事前承認に変更すること。なお、議決要件は三分の二以上のままとすることが大体議論として交わされました。
4、任期の特例の内容については、上限を六か月又は一年に設定すること。さらに、議員として身分の復活も規定をすることが議論されました。
5としましては、国会機能の維持の観点から、選挙困難事態を認定された後は、解散の禁止あるいは閉会の禁止を盛り込んでいくということが議論されました。
6番目には、裁判所の関与につきましては、現行法による客観訴訟で対応することとなると思います。
7、参議院の緊急集会につきましては、衆議院解散後一定期間で開催をできることになっておりますけれども、加えまして、衆議院議員の任期満了による総選挙が行われる場合においても、国に緊急の必要があるときには、内閣はそれを求めることができるということをつけ加えることになると思います。
8、国会議員が議場に参集することが物理的に困難なときについては、既に憲法審査会で議論を尽くし、衆議院議長に報告を行ったように、いわゆるオンラインなどにより出席できることを明記することが考えられます。
なお、いわゆる緊急政令や緊急財政措置を盛り込むことにつきましては、合意形成までなおしばらくの時間を要することから、引き続きの検討課題としたらどうかと思っております。
今後は、憲法審査会の現場で形成されている合意を基にしまして条文案の作成作業を進め、完成した条文案を各党がそれぞれ持ち帰って党内手続を進めていただくことが想定されております。
なお、事務局から幹事懇で既に一度聴取をしております広報協議会の規程でありますが、これを改めてオーソライズをすることや、さらには、私も度々問題提起をしておりますが、国民投票法の改正についても取りまとめを行い、同時並行的に行っていきたいと考えています。
以上述べたように、我々憲法審査会の役割は、憲法改正の方向について、賛否も含めて国民の皆様に論点を明らかにすることであると思います。最近の読売新聞の世論調査におきましても、六三%の国民の皆様から何らかの憲法改正の必要性を認識しているとの結果が出ておりまして、ますます我々の役割、その責任は高まっていると思います。反対の立場の会派の方々もおられると思いますが、条文起草作業の議論に是非とも加わっていただき、御意見をお述べいただきたいと心から願っている次第でございます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○森会長 次に、逢坂誠二君。
○逢坂委員 おはようございます。逢坂誠二でございます。よろしくお願いいたします。
明治維新以降、日本では、富国強兵を一つの方向として国づくりが進みました。第二次世界大戦以降は、経済成長が国づくりの基本でした。ところが、この高度経済成長が終えんした後の日本の国の在り方に対する議論は必ずしも十分ではなかったと感じております。そのため、現在、日本がどのような国であるべきなのかに関し、イメージし難い状況になっていると私は感じています。これは、国づくりを考える上で大きな弱点だと感じます。
一九七八年、大平内閣は、その組閣直後に、二十一世紀を展望した中長期の政策ビジョンを検討、立案するために、九つのグループから成る政策研究会を発足させました。この研究会の目的は、一内閣を超えて二十一世紀において我が国が活力ある存在であり続けるための政策ビジョンを明らかにすることだったと私は認識しています。一九八〇年七月までに九つの研究会の全ての報告書が提出されたのですが、大平総理が亡くなったことにより、その後、この報告書が十分に生かされなかったことを私は残念に思っております。
それ以来四十年以上が経過しますが、国の在り方について地に足のついた議論は十分ではなく、目先や足下の課題にきゅうきゅうとしてきたのが現実ではないでしょうか。特に、今だけよければ、自分さえよければ、金さえもうかればよい、こんな価値観が日本を席巻し、場当たり的な対応に終始してしまったのではないでしょうか。
多くの方々が、日本のこの三十年は失われた三十年だと指摘しております。人口減少、食料自給率向上の難しさ、教育力の低下など、日本の大きな危機です。しかし、今ここでも、再度目先の課題だけに心を奪われていたのでは、日本の未来は失われ続けるのは必然であります。私は、未来を見据えた憲法議論を行うためにも、失われた三十年を取り戻すためにも、今こそ党派を超えて日本の大きな在り方を考えることが必要だと確信しております。
かつて、憲法調査会において、二十一世紀の日本のあるべき姿についての調査を行ったことがあると承知しております。その調査は、憲法や統治機構にとどまらず、教育、IT、ゲノムなど、幅広く各界の識者の皆さんから話を伺うという極めて貴重な調査でした。ただし、今、その経過を振り返ってみて、残念に思うことがあります。それら識者の話を聞いた後に、その内容を踏まえた日本のあるべき姿に関する議員間、政党間の議論がなかったことです。
もちろん、そのような議論を行わなかった理由やその当時の時代背景は、何となく理解できる気がします。政治には、もしはあり得ませんが、もし当時そのような議論を行えば、百花繚乱の意見が乱れ飛び、議論百出、まとまりのない様々な内容になったものと思います。しかし、この議論過程を少しでも国民の皆様に共有いただき、日本の在り方を考えるよすがにしていただくことが重要だったと考えます。こうした議論の先に国家のあるべき姿が見えてくるものと思うからです。
このときの識者の発言は、今もなるほどと思うものが多々あります。また、二十年近い時を経て少し違和感のあるものもありますが、この二十年前の議論からバトンを引き継いで、我々も日本の在り方を議論する、その先に憲法の姿もおのずと見えてくるのではないでしょうか。
憲法九条も同様です。自衛隊は合憲です。私たちはこの姿勢に揺るぎはありません。したがって、現時点で九条を変える必要はないと考えています。しかし、平和主義、専守防衛を前提としながら、主権国家としての日本の防衛をどうするかを不断に考えなければなりません。切れ間なく考えたその先に、日本の在り方が浮かび上がってくるものと私は考えています。
以上、私の問題意識を申し上げましたが、今後の議論の進め方については、更に中谷筆頭と丁寧に協議をさせていただきます。
なお、前回までに私に対する質問などがございましたけれども、これは今日の二回目以降の発言の中で対応させていただきます。
以上です。
○森会長 次に、岩谷良平君。
○岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いします。
まず、立憲民主党にお伺いをいたします。
前回、逢坂幹事から、議員任期については、任期を延長する事由や期間、タイミングなどを誰がどのように判断するかによって立憲主義を大きく毀損する可能性もあるとの御指摘がありました。
確かに、今議論されている議員任期延長については、国会議員自身が判断することになるため、お手盛りの危険はあります。それゆえ、議決要件を三分の二にすること、また裁判所によるチェックを入れることを提案し、議論させていただいております。
逢坂幹事が先週おっしゃったように、できる限り有事においても選挙ができるように準備を整えることは必要であるし、そのためにも我が党もインターネット投票の実現を目指しておりますが、一方で、それでも選挙実施が困難な場合を想定し、憲法を改正することも同時に進めるべきで、両立しない課題ではありません。
立憲民主党においても、さきの逢坂幹事の御発言から、議員任期延長におけるお手盛りの危険について認識が共有されていると理解しましたので、これをいかに回避していくか等について、是非議論に参加していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、自民党にお伺いをいたします。
先月二十五日、このお手盛りの危険を回避又は低減するために議決要件については三分の二とすべきとの私の発言に対して、中谷幹事から、それも一つの考え方としてあり得るもので、条文起草作業において結論を出すべきとのお答えがありました。しかし、起草作業の場はいまだ設けられておりません。そうであるならば、この審査会の場で、残された論点について結論を出していくべきだと考えます。
まずは、この議決要件について、先ほど船田幹事からも言及があったと思いますが、改めて、三分の二とすることについて是か非か、お答えをお聞かせいただきたいと思います。
次に、自民党と公明党にお伺いをいたします。
同じく、お手盛りを防止するための裁判所の関与については、自民、公明は、内閣、国会で判断すべきものであるが、客観訴訟を活用することは検討できるとのお立場だと思います。しかしながら、この客観訴訟については、一票の格差訴訟を見てもお分かりいただけるとおり、あくまで事後的な救済を図るもので、結果が出るまで時間がかかり過ぎることから、お手盛り防止の観点からは不十分ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
また、より根本的には、憲法で議員任期延長を規定するのに対し、その歯止めとして裁判所の関与が法律により規定されることは、釣合いが取れないのではないでしょうか。すなわち、憲法の規定に対する歯止めであるならば、やはり憲法に規定すること、それは、維新案であれば憲法裁判所の関与、国民や有志の案であれば最高裁の関与を憲法上明記し、いわば歯止め措置としての、憲法上の任期延長規定にビルドインすることが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
公明党にお伺いをいたします。
議員任期延長以外の国会機能維持策として、内閣不信任の禁止が必要か否かが論点として残っておりますが、この点はいかにお考えでしょうか。
維新、国民、有志は、内閣不信任の禁止規定は不要との考えです。また、この点、これまで必要とされてきた自民党も、先週、中谷幹事から、不要と考える旨の御発言がありました。公明党はいかに考えるか、お聞かせいただければと思います。
また、同じく公明党にお伺いをいたします。
五月九日の当審査会で、北側幹事は、繰延べ投票に関して、一部省略いたしますが、例えば東日本大震災のときに、あの広範な地域で繰延べ投票ができるかというと、できるわけありません、繰延べ投票の範囲をはるかに超えている事態が発生している、繰延べ投票制度には極めて限界がある、大災害等の緊急時にも国会の機能を維持するために、議員任期の延長というのを議論しましょう等とおっしゃっておりまして、全くそのとおりだと思います。
ところが、その前日の五月八日、参議院の憲法審査会において、同じ公明党の西田委員から、繰延べ投票ではなぜ駄目なのか、なぜ全国一律の投票でなければならないのか、必ずしも判然としません、参議院の通常選挙において仮に選挙実施困難事態となっても、任期の延長は不要、繰延べ投票の活用によりできるだけ早期の選挙実施とすればよいと考えます等の御発言があり、衆参で発言が矛盾しているのではないでしょうか。
改めてお伺いしますが、公明党は、参議院も含めて党として、議員任期延長を含む国会機能維持の憲法改正に賛成でしょうか。賛成だとすれば、参議院の任期延長は不要で、衆議院の任期延長のみに賛成ということなのでしょうか。また、参議院の任期延長が不要とした場合、選挙実施困難事態が長期間続くと、半数の任期終了後、更に三年たつと残りの半数も任期終了を迎え、参議院議員が存在しなくなることもあり得ると思いますが、それでよいのでしょうか。また、この点、公明党の考えでは、任期延長は最長一年までとしていると思いますが、それを超えて選挙困難事態が発生している場合はどう対応するのか、お伺いいたします。
自民党にお伺いいたします。
この先、緊急時の国会機能維持規定についての条文化作業等が進んだ場合、これだけで国民投票に臨むのか、それともその他の改正項目と併せて国民の皆様の判断を仰ぐのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
最後に、自民党は、繰り返し立憲民主党や共産党などにも、この緊急時の国会機能維持策の条文化を行う起草委員会への参加を求めていらっしゃいます。しかし、起草委員会は、決まったことについて条文に文言として落とし込む実務的な作業の場と考えます。そうであれば、そもそも国会機能維持の憲法改正に反対している党を入れて作業を行おうとすると、条文化以前のそもそも論について議論が繰り返されて、生産的ではないと思われます。
賛成、反対のそもそも論の議論はこの審査会の場で行うこととし、起草委員会は国会機能維持の憲法改正に賛成の党派だけで粛々と実務的に進めることを提案いたします。
また、起草委員会が開かれずとも、先ほど自民党の船田幹事からもありましたが、せめて改正案の要綱は作成していくべきと考えますので、賛成派の各党及び森会長に御協議をお願いいたします。
以上で終わります。ありがとうございました。
○森会長 ただいま岩谷君から、立憲民主党、自民党、公明党にそれぞれ御質問がございましたけれども、二巡目あるいは適切なときに各党から御答弁を願います。
次に、大口善徳君。
○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
本日は、選挙困難事態における国会機能の維持と国民投票広報協議会における広報の在り方について発言をいたします。
まず、選挙困難事態における国会機能の維持のための憲法改正についてです。
これまでの議論を聞いていますと、例えば、選挙困難事態の具体的な内容、特に広範性要件について、各委員それぞれの問題意識に基づいて活発な議論がなされているように思います。その上で、更にかみ合った議論を展開できるよう、具体的な条文案のイメージを示した要綱案を討議資料としてこの審査会の場に提示していただくことを提案いたします。要綱案を共通の土台とすることにより、建設的な議論を深めるものと考えます。
その上で、本日は、前議員の身分復活の必要性、合理性について意見を述べたいと思います。
選挙期日及び議員任期の特例を設けたとしても、衆議院の解散や任期満了後に選挙の実施が困難な事態が発生した場合、国会議員が不在となってしまいます。国会議員が不在となる事態を回避しなければならないのは、選挙困難事態が任期中に発生した場合でも、任期終了後また解散後に発生した場合でも、同様であるはずです。このような場合においても二院制国会を維持し機能させるためには、前議員の身分復活、つまり、事態発生の直前まで議員であった者に再び議員の身分を与えることが最も合理的な手段であると考えます。
この前議員の身分復活の必要性について、我が党の北側幹事も繰り返し発言をしているところであります。特に、衆議院においては、戦後、任期満了による総選挙はたった一回しかなく、解散により議員の身分を失うことが常態化していることを踏まえると、この仕組みがなければ衆議院の不在はほぼ回避できないことになってしまいます。これでは、選挙困難事態における国会機能の維持という本来の目的を達成することはできません。
結局、議員任期の特例と前議員の身分復活の違いは、選挙の実施が困難となる事態の発生のタイミングという偶然の事情によるものにすぎず、緊急時において国会がその役割を十分に果たすことができるよう、これらをセットで制度化する必要があると考えます。
なお、この前議員の身分復活については、民主的正統性に欠けるとの指摘もあります。しかし、憲法を改正した後は、国民が身分復活制度の適用があり得ることを前提に国会議員を選出し、これに民主的な正統性を付与することになるので、身分復活した議員であっても民主的正統性の観点で問題はないと考えます。
次に、国民投票広報協議会の広報の在り方について意見を申し上げます。
昨年の憲法審査会の海外派遣報告書では、EUの基本条約を変更するリスボン条約の批准承認に係る憲法改正について、アイルランドでは、国民投票で否決がされた僅か一年四か月後に再度国民投票に付され、可決されたという事例が紹介されています。この二回の国民投票の間に憲法改正案の内容が大きく変わったというわけではなく、条約そのものに変更があったわけでもありません。政府がアイルランド国民の懸念を把握し、それを踏まえて、リスボン条約の内容がより明確になるよう説明し、憲法改正案を微修正した結果、可決に至ったと説明されています。
憲法改正案の広報においては、国民の中で広がる懸念に対して適切に対応することの重要性が見て取れるのではないでしょうか。国民投票において、憲法改正案に対する国民の懸念に対し応えることができる唯一の公的機関が広報協議会です。広報協議会は、国民の疑問に応えるべく、憲法改正の意義や必要性、懸念点などを適時適切に、かつ十分に説明していくことが求められます。
当審査会でも、各会派から広報協議会の広報の充実強化の必要性について意見が述べられています。国民投票法に広報協議会の事務として規定されている国民投票公報の発行や広告放送、新聞広告のほか、インターネットを利用した広報も当然実施する必要があります。SNS、インターネット広告などを利用した、国民に分かりやすく、かつ効果的な広報の手法も検討すべきです。
加えて、適時適切な広報を行う重要性も指摘したいと思います。憲法改正案の発議から国民投票までの期間は最長百八十日間で、国民の間で議論になれば争点は移り変わっていくことも考えられます。広報協議会も、国民投票公報を複数回にわたって発行するなどして、その時々の国民の懸念に応える、時宜にかなった広報を行えるようにすべきです。
フェイクニュース対策も喫緊の課題の一つです。国民が広報協議会が行う情報発信に容易にアクセスできるよう、プラットフォーム事業者に対し、インターネットの検索結果について広報協議会の情報発信が優先的に表示されるよう要請することが考えられます。
また、ファクトチェックについては、広報協議会自身も行うべきとの意見が述べられていますが、公権力の表現の自由への介入という面もあることから、広報協議会は、民間ファクトチェック団体と緊密に連携をするなどの対応にとどめるべきと考えます。
そして、広報協議会がこうした多様な広報活動の実務をこなしていくためには、それを下支えする事務局の体制の整備が必要であり、広報協議会規程の条文化の検討も進めるべきでございます。
以上、私の発言といたします。
○森会長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
沖縄と憲法について意見を述べます。
沖縄が本土に復帰してから、昨日、五月十五日で五十二年を迎えました。凄惨な沖縄戦を経験し、戦後の米軍統治下で虫けらのように扱われてきた県民が復帰に際して望んだものは何であったか。
琉球政府の屋良朝苗主席がまとめた建議書は、次のように述べています。
県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからにほかなりません。復帰に当たっては、やはり従来どおりの基地の島としてではなく、基地のない平和な島としての復帰を強く望んでいます。
これが県民の強い思いでありました。
しかし、この五十二年間、県民の願いは踏みにじられてきました。広大な米軍基地は復帰後もほとんどそのまま温存され、政府が打ち出す基地の整理縮小は県内移設が条件とされました。その下で、米軍機の墜落や部品落下、米軍関係者による殺人、レイプや暴行、ひき逃げ、基地からの爆音や異臭、りゅう弾や原野火災などによって県民の人権はじゅうりんされ続けてきたのです。その上、今、民主主義も地方自治も無視して、新たな米軍基地の拡大強化が進められています。
政府は、沖縄県民の圧倒的多数の民意を一顧だにせず、日米合意ありきで辺野古新基地建設を推し進めています。法律の濫用を繰り返し、代執行によって県知事の権限を奪い、埋立工事を強行しています。
一方、政府は、世界一危険と言われる普天間基地の固定化は避けなければならないと言いながら、その普天間基地への世界一危険なオスプレイの配備を容認しました。二〇一二年の配備以降、県内外で墜落や不時着、部品落下を繰り返し、そのたびに米軍は原因を明らかにしないまま飛行再開を強行し、学校や保育園、住宅地の上空を我が物顔に飛び回っています。
米軍は、嘉手納基地でもF22戦闘機や大型無人機の配備を強行しています。伊江島で実施するとしてきたパラシュート降下訓練も毎月のように行われています。SACOの最終報告に対して、基地機能を強化するものです。危険なパラシュート降下訓練はどこにあっても絶対に認められません。玉城デニー知事は嘉手納基地での訓練中止を要請しています。しかし、政府は全く聞く耳を持たず、米軍の傍若無人なやり方を容認しているのです。
米軍基地だけではありません。安保三文書に基づき、自衛隊の増強も推し進めています。
今年三月には、石垣島や宮古島に続き、本島のうるま市にもミサイル部隊の配備を強行しました。敵基地攻撃のための長射程ミサイルの配備も狙われています。石垣島や宮古島では米軍の使用の計画はないと説明していたにもかかわらず、基地ができるとすぐに米軍が訓練を強行しました。沿岸監視隊を配備した与那国島でも、当初の説明にはなかったミサイル部隊を配備しようとしています。
公共インフラの軍事利用も進められています。
先月、那覇空港や石垣港を自衛隊が優先して利用するための特定利用空港、港湾に指定しました。既に米軍や自衛隊は、沖縄県の自粛要請や県民の反対にもかかわらず、空港や港湾での訓練を強行し、戦闘車などの軍用車両が公道を繰り返し走行しています。基地の縮小どころか、日米一体で沖縄を軍事要塞化しようとしているのであります。
この軍事優先の政治の下で、県民の命と暮らしは脅かされ続けております。
嘉手納基地や普天間基地などの周辺から発がん性のある有機フッ素化合物、PFASが検出されている問題で、沖縄県は水道水のPFAS処理に係る莫大な費用のために水道料金を改定せざるを得ない状況に追い込まれています。ところが、当事者である米軍は、県が水道水を処理していることを理由に立入調査を拒み続けています。なぜ基地被害に苦しむ県民が更なる負担を強いられなければならないのか、余りにも理不尽であります。
政府が県民の願いを踏みにじって基地を強化し、人権をじゅうりんし続けている現実を、国会は正面から議論すべきです。憲法の原則が適用されない沖縄の実態を変えることこそ私たち政治家の責任であることを強調して、発言を終わります。
○森会長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
憲法審査会も、今国会、今日を除けば残り五回となりました。今週からは起草委員会を設置すべきと先週提案をいたしましたが、まだ設置されていません。もう論点は出尽くしていると思いますので、来週からは是非、起草委員会を設置をし、緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正について条文案作りに着手することを改めて提案をいたします。
議論の分かれる論点についても、具体的な条文案をベースに議論した方が国民にも分かりやすいですし、書いてもいないことで誤解や不安が膨らむことを防止することもできます。起草委員会で条文案を作成し、その上で、本審査会において要綱形式で議論することを提案いたします。
特に、選挙困難事態に選挙期日を延期し、議員任期を延長することについてルールと手続を明確に定めることは、多くの国民が理解を示してくれるはずであります。今後は、憲法改正の必要性について、国民の皆さんの理解を丁寧に得ていくことが必要だと思います。
その意味で、今日は、ネットなどで時々見かける、憲法九十九条の憲法尊重擁護義務、すなわち、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあることを理由に、国会議員が憲法改正を議論するのは憲法違反であるとの言説を見かけますけれども、これは正しくないということを明確にしておきたいと思います。
そこで、まず法制局に伺います。
私たち国会議員が憲法改正に取り組むことは憲法九十九条の憲法尊重擁護義務に反するのか、また、国会議員たる内閣総理大臣が憲法改正について発言することは憲法九十九条の憲法尊重擁護義務に反するのか、過去の当審査会での議論も踏まえてお答えをいただきたいと思います。お願いします。
○橘法制局長 玉木先生にお答え申し上げます。
特に議論となっている、総理を始めとする国務大臣の憲法改正に関する発言と憲法九十九条に定める憲法尊重擁護義務との関係については、学説上は諸説あるようですけれども、御指摘になられたように、当審査会において表明された一般的な御見解を御紹介申し上げたいと思います。
第百九十三回国会、平成二十九年六月一日の本審査会において、参考人として御出席されていた東京大学の宍戸常寿先生は、赤嶺先生からの御質問、憲法尊重擁護義務を負う現職の首相が改憲を主張することについてどのように思われるかとの御質問に対して、政党の党首である方が同時に内閣総理大臣を務めるということが想定されている日本国憲法の議院内閣制の下においては、与党党首でもある総理が憲法改正をしかるべき場でしかるべきやり方で述べることは、一般的に憲法尊重擁護義務に反しないといった趣旨の見解を述べておられるところです。
これに続けて、同じく参考人として御出席されていた慶応義塾大学の小山剛先生も、宍戸参考人がおっしゃったことにほぼ尽きますと述べられています。
なお、学説上においては、憲法改正原案の提出、発案権限を国会議員だけが持つという解釈を取った場合、国会議員が憲法改正について発言されることは当然ですけれども、その際に御留意しなければいけないのは、大臣としての資格において憲法改正を主張することはできない、そのような見解もあることを付言しておきたいと思います。
以上です。
○玉木委員 ありがとうございます。
今説明があったように、私の隣に座っております赤嶺先生が、二〇一七年六月一日の憲法審査会で、この前の選挙の前ですね、参考人の、皆様も御存じの宍戸先生、小山先生に質問されたときに、両先生とも、憲法尊重擁護義務に反しないと明確に答弁をされています。私もこれは問題ないと考えます。ここは明確に確認をしておきたいというふうに思います。
そもそも、日本国憲法は九十六条で憲法改正手続を定めており、しかも、国会、国会議員に独占的な発議権を付与しています。つまり、憲法改正手続を定めた九十六条も含めて擁護する義務がかかっているし、国会が必要に応じて憲法をアップデートし、国民の権利保護に万全を期すことこそ、憲法保障の一環になっていると考えます。
この点はいろいろな誤解があると思いますので、改めて、冷静な議論のために確認をさせていただきました。
次に、前回議論があった、選挙期日の延期と議員任期の延長は繰延べ投票で可能という意見について、改めて反論しておきたいと思います。
一九五〇年の公選法制定後の国政選挙では、戦後二回、昭和四十年と昭和四十九年の参議院通常選挙で繰延べ投票が行われています。しかし、これはいずれも、集中豪雨のため、ごく一部の投票所において、一週間だけ投票が繰り延べられています。地方選挙においても幾つか例がありますが、一週間を超えて繰り延べられた例はございません。五日間というケースもあります。日曜日に駄目なので、その週の金曜日にやったケースはございます。
このように、繰延べ投票は、その要件や実施例から見ても、ごく限られた投票所で投票が実施できない場合に一週間程度行われるものであって、七十日を超えるような長期にわたって広範に行われることを想定しておりません。何より、仮に投票期日を長期に繰り延べたとしても、その間、議員任期の延長が行われるわけではなく、長期にわたって議員がいなくなる事態は避けられません。
なお、法律の制定によって国会議員の投票を繰り延べるとともに任期延長を行うことができないということは、先週も申し上げたとおり、野田内閣の閣議決定でこれは決められております。
やはり、長期にわたって選挙の一体性が害されるほど広範に選挙が困難な事態、すなわち選挙困難事態が発生したときに国会機能を適切に維持するためには、憲法を改正して、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長に関する規定を創設することが必要だと考えます。
最後に残るのは、選挙困難事態が発生するかどうかの判断であります。これは正直、誰にも分かりません。しかし、私たちは、東日本大震災の発災の四十四日後に予定していた市議会議員選挙などが実施できず、特例法を制定して議員任期を延長する経験をしております。同じことが国政選挙の任期満了時や解散時に発生することは十分想定し得ます。こうした場合に備えた憲法改正は必要だと考えます。
前回も述べましたが、私たち国会議員は、学者や評論家ではなく立法者であって、国民の生命や権利を守るために、その可能性がある限り、あるべき法制度を構築する責任を負っていると思います。危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではありません。国民から負託を受けた私たち国会議員が決めなければ、答えは出ません。改めてこのことを申し上げて、委員各位の御理解を求めたいと思います。
以上です。
○森会長 次に、吉良州司君。
○吉良委員 有志の会、吉良州司です。
まず冒頭、皆様にお礼を申し上げたいと思います。少数会派ゆえ、一度は本審査会枠を失うことになりましたが、各会派、各委員の御配慮により、このように再び本審査会への参加を許されることになりました。厚く御礼を申し上げます。
本日、私は、憲法の「地方自治」について論じたいと思います。
我が国は、失われた三十年と言われる長期経済低迷により国力が大きく減衰していますが、その大きな原因の一つは、東京が機関車、地方は自動的に引っ張られる、自力走行できない客車という中央と地方の関係にもあったと認識しています。東京一極集中と地方の衰退がそのことを如実に物語っています。
我が国が国力を回復するには、地方も自力走行できる新幹線型に変革する必要があります。そのためには、地方の自主自立、独立自尊が担保される憲法上の規定が必要であると考えています。
二年前の二〇二二年五月二十六日、地方自治その他のテーマで開かれた本審査会の会議録を読むと、憲法九十二条の「地方自治の本旨」の文言の曖昧さを指摘し、そこから導かれる住民自治及び団体自治の理念の憲法への明記が必要とする意見が、我が会派の北神委員のほか、各会派から述べられております。また、補完性の原則並びに地方の課税自主権を明記すべきだという点も、おおむね同じ方向であります。
私は、これら共通の方向性の先に、より具体的な地方の在り方を示し、それを憲法に明確に規定する必要があるという観点から、意見を述べます。
私は、地域の課題は千差万別であり、これに対処していくためには、地方自治体は地方政府であるべきだと考えます。
例えば、自治体において、学校、橋、道路、福祉施設など、関係省庁をまたぐ建設要望がある場合、本来なら、限られた財源の中で明確な優先順位をつけ、建設すべきもの、断念すべきものを取捨選択する政治判断が求められます。しかし、現実に自治体は、優先順位づけの政治判断を行っているでしょうか。所管省庁や族議員に対し陳情し、各省庁管轄内の予算づけが行われているだけで、省庁をまたぐ要望の優先順位づけや取捨選択などの政治判断は行われていません。これは、地方の抱える問題の解決に資さないのみならず、国の財政規律が緩み切っている現状にもつながっています。
地方制度の歴史を見ると、明治憲法には地方自治に関する定めはなく、府県制、市制町村制といった地方制度の中で、特に府県は中央政府の出先の色彩が強かったと承知しています。
日本国憲法制定の過程で、地方制度に関するGHQ案の章の名称は「地方政治」であり、現行九十四条に当たる部分について、自治体の権限は、その「財産、事務及政治ヲ処理」とされていました。これは、自己完結した統治権限の付与を意図したもので、私がさきに述べた地方政府に近いものです。これに対し、当時の日本政府は、GHQと折衝する過程で、新たに現行九十二条の規定を追加し、地方自治の制度を法律に委任することで、明治地方制度の大部分を温存することが可能になりました。その意思は、現行九十四条で、自治体の権限に関するGHQ案の「政治ヲ処理」を「行政を執行」に置き換えたことにも端的に表れていると思います。
戦後復興から経済大国へと発展していった発展途上国時代に限れば、中央集権的仕組みを残したことは間違っていなかったかもしれません。しかし、国民の生活の一定水準のナショナルミニマムが整備されてからも、いまだ自治体は、会社で言うところの経営判断を行う取締役ではなく、方針に従った事業運営に責任を負う執行役員でしかない状況は変わっていません。これでは、地方が抱える様々な問題に抜本的な対応は望めません。
では、自己完結型の地方政治を行う地方政府の単位とはどのようにあるべきか。ここからは様々な意見があると思います。
私は、道州制については、三大都市圏を始めとする相当規模の経済的一体性がある地域には有効だと思っています。しかし、その他について言えば、例えば九州州や東北州を想定すれば、それぞれ福岡や仙台への一極集中が進むだけで、有効に機能しないと考えます。
私の考える地方政府たる自治体の確定基準としては、一、生活圏、経済圏がほぼ同じであること、二、歴史的、文化的一体性があること、三、地域内に経済を牽引する中核都市があること、この三つを挙げたいと思います。この基準に従った具体的なイメージは、奈良時代の律令制時代の律令国のような領域です。例えば、中核都市浜松市がある静岡県の遠江、同じく静岡市がある駿河といった各領域が基礎自治体としての地方政府になるというイメージです。
そして、これらの地域において、自治体が自己完結型の政治を行う地方政府としての権限、財源を備えた上、その独立性は江戸時代の藩のように高度である、いわばユナイテッド・藩ズ・オブ・ジャパン的体制が、私の考える新しい国と地方の姿です。
このような地方制度の具体論に至ると、意見は様々あろうかと思います。しかし、強固に根づいている中央集権的明治地方制度の流れから脱却するためには、あるべき地方制度の具体論と、そのための国と地方の権限配分、財源配分を明確に憲法上規定するような、地方自治の在り方の再デザインが必要と考えます。
最初に御紹介したとおり、審査会での地方自治に関する憲法改正の議論は、入口においては各会派の方向性は共通しています。今後、具体論を出し合った上で、更に集中的に討議する機会を設けることをお願いいたします。
なお、これまで本会にて積極的に発言をしてきた我が会派の北神圭朗委員より、国会機能維持の条文起草委員会を早急に立ち上げるべしとの意見を言づかっておりますことも併せ報告させていただき、私の発言を終わります。
―――――――――――――
○森会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○長島委員 自由民主党の長島昭久です。
岸田総理は、九月の自民党総裁任期までの憲法改正実現を目指すと明言しておられます。ということは、逆算をいたしますと、今国会終盤までに発議をしなければなりません。ここは、自民党として、憲法改正に対する覚悟が問われているというふうに思います。
そこで、今回の憲法改正では、余り欲張らず、もちろん私は憲法九条の改正を実現したいというのが本音でありますが、これまでにほぼ論点が出尽くし、自民、公明、維新、国民、有志の五会派で認識を一にしている緊急事態条項、正確には議員任期延長による緊急時の国会機能の維持に改憲のテーマを絞ることを提案したいと思います。
したがいまして、審査会長におかれましては、直ちにこの五会派によって起草委員会を立ち上げ、本審査会では、その進捗状況を毎回報告させ、それに基づいて、反対政党も含めて具体的な詰めの議論を行い、今国会中に憲法改正の発議が行えるよう、格段のリーダーシップを発揮していただくことを強く求めたいというふうに思います。
次に、前々回の審査会で、立憲民主党の牧義夫議員、今日は残念ながらおられませんけれども、牧議員からお尋ねがありました、日米安保条約地位協定を見直してから九条二項を見直すといった議論について、保守政治家としてどう考えるのかという点についてお答えしたいと思います。
まず、立憲民主党のお立場で九条二項改正を主張していただいた牧先生の勇気と御見識に敬意を表したいと思います。
ただ、率直に申し上げて、話の順序が逆なのではないかと思います。
もちろん、日米安保条約の改定も、地位協定の見直しも、九条二項の改正も、そして、それによって真の主権を回復するという究極目標についても、大いに賛同いたします。ただ、その究極目標を達成するためには、冷静で現実的な段取りが必要です。
結論から申し上げれば、憲法九条二項の改正なくして、日米安保条約の改正も、地位協定の見直しも、ほぼ不可能だと考えます。なぜでしょうか。それは、日米同盟が相互防衛の構造になっていないからです。
日米の共同防衛が発動されるのは、我が国が攻撃を受けた場合に限られます。米国が攻撃を受けた場合に、日本が対米防衛協力をする条約上の義務はありません。これを米側は不公平だと認識しているのです。この不公平を放置したままで地位協定などの不平等を是正しようとしても、恐らく、米国に対しては説得力が乏しいというふうに思います。
実際、一九五五年の八月に、時の重光葵外務大臣がダレス米国務長官に直談判をして、不平等な安保条約を改正して対等な日米関係を築こうと訴えましたが、日本はグアムが攻撃されたら米国を守れるのかと一蹴されてしまいました。それは、日米安保条約と他の米国の同盟条約とを比較すれば、一目瞭然であります。
すなわち、NATOであれば北米及びヨーロッパにおいて、あるいは米韓、米豪、米比同盟であれば太平洋地域において、締約国のいずれかが攻撃を受けた場合には共同して対処すると条約に明記しております。つまり、一定の地域において相互に防衛し合う関係なのです。
このような他の同盟条約とは異質の、不公平と不平等によって成り立つ日米同盟固有の基本構造を変えられない根本原因が憲法九条二項にあることは、説明を要しないと思います。
すなわち、九条二項の戦力不保持の規定のゆえに、我が国の自衛のために保有できる自衛力は必要最小限度にとどめられ、交戦権の否認によって、許容される自衛の措置は、国際法上広く認められている均衡性と必要性ではなく、あえて必要最小限度に抑え込まれることになったのです。
つまり、牧議員のおっしゃる真の主権回復のためには、まず、憲法九条二項を改正して必要最小限度の縛りを解いて、フルスペックの集団的自衛権行使を可能にした上で、日米が相互に防衛できる体制を整えて、初めて日米安保条約の改正が可能となり、地位協定の改定を米国議会に迫ることができる、これが現実です。
是非、牧先生とは、そのための九条二項改正を一緒に実現してまいりたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお伝えください。
以上です。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
先週に続きまして、本日も、選挙困難事態と議員任期延長の問題について意見を申し述べます。
まず、前回の審査会で、国民民主党の玉木委員より、繰延べ投票に関する私の発言と、野田内閣で閣議決定した質問主意書に対する答弁書との整合性について御質問いただきましたので、この点についてお答えします。
改めて確認しましたが、野田内閣で閣議決定した答弁書には、東日本大震災のときのような特例法を制定することにより、国政選挙の期日を延期することとともに、国会議員の任期を延長することはできないとあります。これは、私の事実認識と全く相違ありません。
今日も玉木委員から言及がありましたが、私は、繰延べ投票で選挙期日を延期できるとか、議員任期を延長できるとは一言も申し上げておりません。繰延べ投票は、議員任期の延長でも選挙期日の延期でもありません。あくまで投票の一部延期です。その点も十分理解しています。
ただし、繰延べ投票は、要件を満たせば、地域的な範囲や繰延べ期間に法律上の制限はありません。あるいは再繰延べ、繰延べの繰延べも法律上は可能です。短期間、限定的な延期しかできないとの一部委員の御意見は、単に過去の事例を踏襲しているだけであり、何ら根拠がありません。
その上で、私は、この繰延べ投票と参議院の緊急集会でも対応できないような、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙が実施できない選挙困難事態というのは一体いかなる状況なのか、いまだ説得力ある科学的検証は示されていないし、他にも多くの基本的な論点が積み残されているということを繰り返し申し述べています。
以上のとおり、私の発言と野田内閣で閣議決定した答弁書には、そごや矛盾はありません。
次に、関連して、三点付言します。
第一に、被災地選出の国会議員が国会にいなくてよいのかとの御発言が中谷筆頭幹事始め何人かの委員からありました。
しかし、憲法上、国会議員は、特定の選挙区の代表ではなく、全国民の代表です。また、衆議院議員が存在しなくても、参議院議員は存在するでしょう。
さらに、公職選挙法でいえば、補欠選挙は半年に一度であり、制度的には最長で七か月強、国会議員の欠員が生じる可能性があります。したがって、公選法が違憲立法でない限り、憲法上も少なくとも七か月あるいはそれ以上の欠員を許容していると考えるべきであり、被災地の国会議員が不在でいいのかとの批判は憲法上は当たらないと考えます。
第二に、被災地以外の大多数の有権者の参政権、選挙権についてです。
昨年、本審査会事務局が作成した、東日本大震災後の地方議員選挙と首長選挙の実施状況を前回衆議院選挙に当てはめた場合の試算があります。この試算によると、本来の期日に選挙が実施できず、選出されない議員の数は六十九名、定員の一五%です。一五%が全国の広範な範囲という要件に合致すると言えるのかはさておき、いずれにせよ、残りの八五%は選挙が実施可能ということです。さらに、千葉県や茨城県でも繰延べ投票が実施をされれば、一か月程度で九五%まで投票可能となります。
公明党の北側幹事のように、長期間投票できる環境にないという被災地の有権者の視点を強調する御意見もありますが、選挙困難事態を理由に全国で選挙を実施せず、議員任期を延長すれば、こういった被災地以外の大多数の有権者が本来行使できる選挙権を行使できなくなります。議員任期延長論の中で、この点について十分な比較衡量はなされているのか、私は甚だ疑問です。
第三に、中谷筆頭幹事ほか何名かの委員からあった、繰延べ投票では選挙の一体性が損なわれるとの意見についてです。
確かに選挙は、期日、地域、いずれも一体的に実施されることが望ましい、それは事実です。しかし、選挙の一体性は、国民の基本的人権である参政権、選挙権を制限してまでも優先される憲法上の要請なのでしょうか。この点についても、いまだ明確な御説明はありません。
以上申し述べましたが、そもそも、現行憲法下の七十年間、衆議院の任期満了選挙は一回、任期満了を超えた期日での総選挙が一回あるにすぎません。残りは全て任期途中の解散・総選挙です。
緊急事態における国会機能の維持は、国会議員の任期中、任期切れに関わらない課題ですが、可能性や優先順位からいえば、むしろ任期中の対応こそまず議論すべきです。しかし、政府の中でも国会でも、この種の議論は皆無です。にもかかわらず、任期切れの場合のみを殊更に取り上げて議論していることに、私は強い違和感を覚えています。
議員任期の延長は、裏金問題で地に落ちた今の政治状況にかんがえれば、緊急事態にかこつけた政治家の延命としか国民には受け取られないでしょう。最後にこのことを申し上げて、私の発言を終わります。
○小野委員 今日は、我が党の岩谷委員からたくさんの質問がありましたので、私は、毎週毎週、憲法審査会でちゃんと詰めるべきことを前に進めるべきだと思っていますので、私の時間を使って、できる限り多く御答弁をいただきたいと思います。
まず、自民党にお伺いいたします。
先ほど、議員任期延長の議決の要件として特別多数三分の二を要するのか、それとも、新藤幹事の時代には過半数というふうにもおっしゃっていましたが、ここは自民党として今どういうお立場なのかということ、船田幹事も今、三分の二というような御発言もあったようですが、ここを改めて確認させてください。
○中谷(元)委員 議決要件を三分の二ということにつきましては、先ほど船田幹事の発言もあったように、三分の二以上との考え方に合理性があると考えておりまして、こういった論点を深められるように、反対の立場の方にも議論に加わっていただいて、起草作業を進めていきたいと思っております。
○小野委員 明確な御答弁、ありがとうございます。
先ほど本庄幹事もおっしゃっていた、お手盛りで議員が自らの任期を延長するということを歯止めをかけるという意味では、今、中谷幹事がおっしゃったような、歯止め策として特別多数を要するというのは非常に大事なことだろうと思っていますので、この点、改正を推進すべきだという立場ではもう一致が取れたのかなというふうに思っております。ありがとうございます。
次に、ここが結構大変なんですけれども、自民党に引き続きお伺いをいたしますが、任期延長に関する裁判所の関与についてどうお考えなのかというところをお伺いしたいと思います。
客観訴訟という話も、以前私もこの点についても、これは新藤幹事、それから公明党の北側幹事からもいただきまして、その議論もしたことがありましたが、やはり裁判所の関与というのが私は必要なんじゃないかと思っていますが、この点に関して改めて、今日なかなか難しければまた次回、改めて自民党の今のお考えをお聞きしたいと思います。
○中谷(元)委員 客観訴訟ではお手盛りに、不十分だという意見もありますが、選挙困難事態の認定というのは、政治部門である内閣と国会、これが責任を負うべき政治的な判断でありまして、お手盛り防止については、国会の議決の要件が衆参両院共に三分の二と、多数とすることによって担保できるのではないか。
他方、第三者機関の司法のチェックについては、極めて貴重な提案でありますが、そのような要素を入れることも十分な意味がありますが、私どもは、政治部門が判断することを基本としつつも、現行の司法制度を前提とした客観訴訟の仕組みを設けていくことによって、恣意的な判断を防止する効果はあるというふうに考えております。
○小野委員 ありがとうございます。
この辺は各会派でまだちょっとまとまっていないなというふうに思うんですね。私どもも、憲法改正の案の中で、憲法裁判所を定めるべきだ、設けるべきだというふうに申し上げておりますが、この点、国民民主党さんなどは、通常の現在の裁判所で判断すべきだというようなこともあります。
ただ、おっしゃるとおり政治的な判断も含む中で、今の裁判所の構成で果たしていいのかという議論は我が党内にも非常にありまして、ここは、条文起草作業に入る前に要綱の案でしっかり、憲法改正案を作ろうという、その前で固める必要があると思いますので、そのことも是非お願いをしたいと思います。
そして、先ほど長島委員から御発言がありましたが、憲法改正の改正項目案として、緊急事態条項一点だけで絞るのがいいのかどうかということについて、自民党のお考えをお伺いしたいと思います。
○中谷(元)委員 論点としてはほかにも多数ございますが、自民党としては、自衛隊の明記、また教育充実など他の項目についても議論を積み重ねて、論点整理、そして条文化に進んでいければと考えております。
しかし、最大公約数を得るという意味におきましては、やはり、国会機能の維持という点をもう少し議論を進めて、具体的な国民への発議につながっていければというふうに考えております。
○小野委員 ありがとうございます。
もう終わっていますか。
○森会長 はい。
○小野委員 では、最後に一言。
私どもも党の公約として憲法改正の五項目というのをお示しをしておりますので、私たちも、憲法改正の項目についてはやはりそれをベースにして、どれだけの幅広い合意ができるのかということで進めたいというふうに思います。
あと、公明党の北側幹事に、次に是非私たちとしてお伺いしたいのは、先ほど岩谷委員が申し上げたように、衆参での考えの違いというのをやはり解消した上で、しっかり改正に向けた具体的な作業を進めていきたいと思いますが、この点も是非御言及をいただければというふうに思います。私の時間は終わりだそうですので、是非、この後、もし可能であればよろしくお願いいたします。
以上です。
○北側委員 幾つか御質問をいただきましたので、時間の範囲内でお答えしたいと思います。
まず、今日もいろいろな方から御指摘があったんですが、選挙困難事態の認定、ここがやはり明確でなければいけないというのは、全くそのとおりだと思います。濫用防止、防がないといけない、それは全くそのとおり、お手盛りになってはいけないわけでございまして。
そういう意味で、この選挙困難事態、私どもはどう定義をしているかというと、選挙の一体性が害されるほどの広範性、そして七十日を超えるほどの長期性、憲法の仮に改正条項を作るとするとこういう言葉が入るんですが、その上で、更に詳細な選挙困難事態の基準といいますか、そこはより明確にしていかねばならない。これは多分、法律の中で書いていくことになるんだろうというふうに思っております。
そのときに、やはり極めて参考になるのは、私たちが経験した東日本大震災だというふうに私は思っています。あの二〇一一年の三・一一のときを思い起こしますと、これは被災地はもちろんなんですけれども、被災地以外の地域においても大変な状況になっていたんです。そのことは多分、御理解いただけるんじゃないかと思うんですね。そして、被災地の復旧復興のために全国の自治体から、全国の多くの団体の方々が被災地に入り込んで、これはかなり長期間入り込んで復旧復興に全力を尽くしたというのが、あのときの私の記憶でございます。
そういう中で本当に国政選挙を実施できるのかというと、これは容易でないというのがあのときの私の実感です。先ほども玉木さんからも話がありましたが、東北の被災三県で小選挙区は十二あるんですね。当然、東北ブロックは全部確定をしない。そして北関東ブロックも、一部小選挙区と比例区が確定しない。こういう結果になります。そして、被災地の議員を含めて六十九人が選出されない状況。これはやはり、まあ、ここは評価の問題かもしれません、被災地の選出の議員がいないという状況が長期間続くというのは、私は、いいとはとても思えないんですね。
以前にもお話があったとおり、この間に、議員立法を含めて、東日本大震災の復旧復興のための法律を、また予算をたくさん作っているんですね。当たり前の話です。そして、議員立法もたくさんある。こういう状況下で、被災地の方を中心として六十九名の議員がいないという状況は、果たして本当に、国の唯一の立法機関として国民の権利、財産を守っていくということが的確にできるのかということは、やはり考えないといけないのではないかと私は思います。
それから、司法の関与の話がありました。
客観訴訟。客観訴訟というのは、現行の選挙のときの一票の価値の平等についての訴訟ですけれども、これは別に法律で要件とか手続を定めて、選挙制度が適正に適用されることを保障していく、憲法の下での選挙制度が適正に運用されることを保障していく、これが客観訴訟なんですね。
仮に、選挙期日の延期をする、そして議員任期の延長をするということを内閣、国会で決めたときに、そこに明らかに問題がある場合に客観訴訟ができるような制度の仕組みをつくっていく。これは制度設計の問題です。例えば、訴訟を起こしたならば何日以内に裁判所は判断をしなけりゃいけないだとか、これは制度設計でできることですので、更にしっかり法律の中で、この客観訴訟のありようを是非議論をさせていただきたいというふうに思います。
それから、任期延長の上限についても、一年と定めた方がいいんじゃないかというふうに我々提案しておりますが、これはまさしく濫用防止との関係でも、十分、この一年の上限というのは妥当性があるんじゃないかと思っているんですね。あの東日本大震災のときでさえ、最長九か月ぐらいでしょうか、には選挙ができています。
それと、実際は、大災害があったときと、それからその一年後の状況というのは違うと思うんです。違う。一年後にきちんと選挙ができるように、じゃ、どう地元でやっていくかということは当然できるわけでして、ここは、民主的に議員を選んでいくという意味、そちらの方を優先して一年という上限を求めていくというのは、濫用防止の観点からも、現実的にも可能ではないかというふうに思っております。
それから、内閣不信任案の提出を禁止をしている、ここはいろいろ議論があるんだろうと思います。内閣不信任案の提出を認めてしまいますと、原則は解散ができるはずなんですね、ところが、解散禁止規定があるわけですよ。そうすると、内閣総辞職をすぐにしないといけない。これだけの効果になってしまって、果たして三権分立の観点からどうなんだ、ここの議論はあると思うんです。
ただ、確かに、選挙期日が延期をしている間に不信任案を出さないといけないような状況が全くないかというと、それはあり得るわけで、ここは十分議論の余地があるというか、内閣不信任案の提出についてもできるという判断もあり得るのかなというふうに考えております。
それから、うちの党の参議院側との調整の話が幾つか出ておりましたが、やはり参議院側からすると、参議院の重要な権能である緊急集会の権限が制約されてしまうんじゃないか、こういう気持ちが当然あるわけなんですよ。そして一方で、先ほどの選挙困難事態というのが濫用されていくんじゃないか、そういうことも当然懸念しています。
そういう中でいろいろな意見があるのはむしろ当たり前でございまして、ここはしっかり党内でも意見調整、私はできると思っておるんですけれども、しっかり合意が形成できるように今後努めていきたいというふうに思っています。
以上です。
○赤嶺委員 赤嶺政賢です。
長島先生の議論に触発をされまして、安保条約、それから地位協定、憲法九条というお話がありました。それと、先ほど橘局長からの専門家の御見解というのもありましたが、やはり一番国民が懸念しているのは、現行憲法がありながら現行憲法が守られていない現実、そこに対する不安は非常に強いと思うんですよね。
先ほど憲法と沖縄について申し上げましたが、やはり、米軍の直接統治下で沖縄県民が味わってきた屈辱、これは相互防衛とか日本を守ってあげるとかというものじゃなかったですよ、本当に虫けらのように人権が扱われていた。そういう状態が今日復帰後も続いていることに非常に私たちは怒りを持っているわけですね。それを私、今日の自由討議で申し上げたかったことです。
それで、九条二項を変えなければ日本は主権が回復されないという御趣旨の発言が長島先生からありましたが、自民党はサ条約の三条を契機に数えて、結局、サ条約で日本の主権は回復したんだということで、四月二十八日、これは私たち沖縄県民からすれば屈辱の日として見ているんですが、安倍首相は主権回復の日として式典をやったわけですね。当時、保守系の沖縄の副知事も出てきて、本当にこれで主権回復としていいのかということを言ったんですが。
今の九条二項を変えなければ主権が回復できないという話と、以前にやった主権回復の日というのとどんなふうに考えればいいのか、私、ちょっと分からなくなったものですから。
○森会長 傍聴人の方に申し上げます。御静粛に願います。
○赤嶺委員 分からなくなったものですから、ちょっと、長島先生の御意見は日頃いろいろ聞いておりますが、この審査会の場では初めてですので。
それで、私は玉木代表とよくお話をするんですけれども、玉木代表と共通しているのが一点あるんですよね。玉木代表は沖縄に来られて、地位協定の抜本改定だという演説を必ずなさるんですよ。本会議場でも、地位協定、なさるんですが。
そうすると、九条二項と地位協定の改定と一緒におっしゃったことはないんですよね、玉木代表が。(玉木委員「私、両方言っているんです」と呼ぶ)
○森会長 会長の許可を得てください。(玉木委員「矛盾していないんですよ、両方言っているから」と呼ぶ)
○赤嶺委員 玉木代表の中でこれが何で矛盾していないかよく分からないんですが、その辺もやはり、地位協定というのは、憲法を変えなければできないというものではなくて、ずっと国民的な世論になってきているわけですから、九条二項で自衛隊の明文化と地位協定の抜本改定、そういうことを玉木代表はおっしゃってきたのかなという思いもしておりますので、よろしくお願いします。
○玉木委員 当てていただいて、ありがとうございます。
私は、その意味では非常に整合性が取れていて、九条二項を見直しすべきだし、地位協定も見直しすべきだということを言っているんです。だからそれは矛盾がないということは、改めて申し上げておきたいなということです。
それで、本庄幹事からありましたので、ちょっと私からお答えしたいと思うんです。
繰延べ投票を、あらゆる地域に、そして長期間にわたってもやればいいと。何回も延期できるし、法律上制限がないからやったらいいということになると、そうすると、東日本大震災のときの地方選挙ができなかったことも、あれも繰延べ投票をやったらよかったんですよ。
そうじゃなくて、実は、繰延べ投票はできますけれども任期の延長はできないのでやはり空白期間ができてしまうということで、あのときいろいろな議論がありましたし、当時、逢坂政務官のところにも陳情にいっぱい行って、やはり繰り延べてもらったんですね、議会機能を維持するために。
実は、余りこれは意識がないので、さっき言った昭和四十年と四十九年の二回の参議院選挙で、その二回、国政選挙で繰延べしていますが、繰り延べたことによって、実は、余り知られていない、空白期間が、つまり任期が切れている期間が、それぞれ一週間と六日あるんですよ。短期だから目立たないんですけれども、これは今、本庄幹事が言ったように、物すごく広い範囲で、しかも物すごく繰り延べていけば、議員がいないという期間が相当期間続くわけですよ。
しかも、この大事な決定を誰がするかというと、市町村の選挙管理委員会がやるんですよ。今この場であったように、そういった特殊な事態の招来を内閣が判断するのか、憲法裁判所が判断するのか、司法が判断するのか、国会が三分の二で判断するのかと議論している中で、この大事な決定を基本的には市町村の選挙管理委員会に委ねるという仕組みが果たしていいのかということですよ。そこはやはり考えた方がいい。
ただ、本庄幹事が言ったことが唯一成り立つことが一つあって、それは、スーパー緊急集会を憲法改正で認めることです。地方議会に唯一ないのは、参議院の緊急集会でバックアップ的な機能を果たせるということが書いてあるんですが、それは、何度もこの審査会であったように、一時的、暫定的、限定的な権能しか与えられていないんです。それをかなり、特に、七十日を超えた長期にわたって、衆議院の優越性が認められる本予算やあるいは条約の承認まで含めて何でもできるオールマイティーなスーパー緊急集会を認めるという憲法改正をすれば、今言ったようなスーパー繰延べ投票でできると思うんです。
だから、それはトレードオフの関係にあって、そこをきっちり埋めない限りは、なかなかちょっと無理があるなと。だから、平時においてきちんとそういうルールを定めておこうということを提案しているので。
これは何度も繰り返しになりますけれども、立憲民主党の中でも、選挙困難事態ということはやはり一定あり得る、それを法律でできるのか憲法でできるのか検討しようということで、奥野さんのところでも中間報告でまとめておられるので、そこを是非、建設的な議論で深掘りしていければなと。
私も、法律でできることは法律でできたらいい、やみくもに憲法改正を目的化する必要はないと思うんですけれども、私も、この二年、三年やってきていろいろ思考実験した中で、やはり、衆議院の四年、参議院の六年は憲法に書いてあるので、さすがに、この憲法にあることの特例を認めるためには憲法をいじらないと仕方がないんじゃないかということに行き着き、それに対しての制約とルールと明確な事前の手続を定めておこうということで提案しているので、是非これは立憲民主党さんにも御理解いただきたいなと。
あと、最後に、赤嶺先生が二〇一七年六月一日に発言されたときに、自分たちの政党の意にかなったら拍手するとかしないとか、こういうのはもうちょっと冷静にしていただいた方がよろしいんじゃないでしょうかとおっしゃっているので、是非冷静に、傍聴人の方もお願いしたいなと思います。
以上です。
○山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。
緊急時の国会機能維持に関しまして、先週、逢坂委員は、緊急時にも選挙ができるような工夫を最大限行うことが必要だとおっしゃっておられます。全くそのとおりだと考えております。その努力を最大限行うことと、実際の大災害が発生した際に何を優先するかということは別だと考えております。
御存じのように、選挙の投開票を行う公民館や学校の体育館は避難所になります。選挙事務を行う自治体職員は、被災者支援を含めた災害対応が最優先となります。近隣自治体の応援というお話もありましたけれども、国政選挙は全国で行われます。現実には、これまでも被災地支援として、各自治体から災害のときには職員を派遣しております。その中で、避難所から被災者を一旦退出させて、そして近隣自治体から応援をもらって選挙を行うことが本当に現実的なのか。これは、逢坂委員自身も町長を経験されていらっしゃったので本当は十分御理解されているのではないかというふうに考えております。
先週引用された記事にも、首長や議員の不在による行政の停滞などを招来させないという考慮の下という記事を引用されておられました。それが、まさに今我々が手当てしておくべきだと言っている、緊急時における国会機能の維持です。いざというときに適切かつ迅速な判断が自治体においてもできるよう、それを延期という選択肢をあらかじめ憲法で選択しておくこと、これを平時から準備しておくべき工夫だというふうに考えております。
また、先週、吉田委員が前回、選択的夫婦別姓あるいは同性婚について取り上げてほしいと要請をされておられました。吉田委員は、同性婚を可能にするように、憲法二十四条、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」という部分を、例えば、両者のとするなどの改正案を条文案として提出するつもりがあるか、私の時間の範囲でお答えください。
○吉田(は)委員 山田委員、ありがとうございます。
私は、この二十四条は変える必要がないと思います。現行法でも、さきの憲法審査会でも自民党の筆頭それから北側幹事もおっしゃっているように、この中で禁止はされていない、十分に対応できると思っております。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
であれば、法律事項であれば、これは憲法審査会の議論ではなくて、民法の改正という観点から、例えば法務委員会等で議論していただければというふうに思っています。
なぜこの話をしているかというと、重要な論点であります、重要な論点なんだけれども、いろいろな問題提起をされるんだけれども、いざ、憲法の改正の条文、憲法改正草案を作ろうとなったら、いや、こういう論点がある、まだまだ議論が必要だといって全く進まなくなっていることに、我々自由民主党自身ももどかしい思いを持っております。どんな項目であれ改正原案の作成には反対というお立場であれば、その政党を入れて改正原案を作成するということは、やや現実的ではないと考えます。
通常の議員立法ですと、例えば、与党である程度法案をまとめるとか、賛成会派を含めた議員連盟などで法案をまとめて、各党各会派に根回しをして御説明に伺って、御理解、御賛同いただいて国会提出がなされます。まとめた上で、御意見をいただいて修正するということはあっても、初めから反対をされていらっしゃる政党と一緒に条文改正作業を行うというのは非現実的ではないかと考えております。
我々は、緊急時における国会機能維持として議員任期の延長を提案しておりますが、先ほど来、立憲民主党の皆様からは、緊急集会の機能を充実すべきだという御意見であれば、例えば、六十条の「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」とか、六十一条で条約も準用されております、こういった規定を改正するという憲法改正原案をおまとめいただいて、それらを併せてこの憲法審査会で御議論いただくようにしてはどうかということを御提案させていただきたいと思っております。
中谷筆頭には、速やかに、五会派で、議員任期の延長を中心とする国会機能維持に関する憲法改正原案を取りまとめていただいて本審査会に御提出をいただいて、反対意見はこの審査会で伺うように作業を加速化させていただきたいと思っております。
大災害の緊急事態下の国会機能維持のための議員任期の延長については、既に五会派で認識が一致しておるので進めていただくとして、また、自衛隊明記について一言申し上げたいと思っております。
自由民主党、それから日本維新の会、また有志の会では、明記には賛成されているものと認識しております。もし違っていれば、その御意見もいただきたいと思います。
また、公明党さんにおきましても、自衛隊明記という言い方はされていないにしても、自衛隊の民主的統制を内閣の権能のところで記載すべきではないかという御議論をされていると伺っております。どこに書くかという場所は別として、方向性には反対をされていないと理解しておりますので、次はこの自衛隊の明記についても改正原案の作業項目に入れていただきたいと思っております。
国民民主党さんにおかれては、二項の見直しということを主張されておりますので、これも、二項の見直しを含めた九条の改正原案、これを是非御提示いただき、議論をさせていただければと思っております。
以上です。
○逢坂委員 逢坂でございます。二回目の発言をさせていただきます。
前回、北側幹事から選挙困難事態について発言がございましたけれども、今日の本庄幹事からの発言でおおよそ答えは出ているのかなというふうに思いますが、私からも言及させていただきます。
まず一つは、全国の広範な地域で選挙が実施できないというのはどのような基準で判断するのか、これが今の時点では曖昧ではないか、それから、選挙ができない期間の長短についてもどのような基準で判断するのか、いずれもその基準は曖昧だというふうに思います。すなわち、現時点で、立法事実に対する認識が確定しているとは言えないというふうに私は認識しております。
それから、選挙の原則として、期日の決められた選挙はそのとおり実施する、それから、議員、首長の任期は延長しない、これが選挙の原則であり、この期日、任期を最大限に守ることが民主主義の大前提だというふうに思っています。今回の議員任期の延長論は、この民主主義を支える選挙の原則を変更するものでありますから、慎重の上にも慎重を重ねて議論すべきだと私は考えております。
他方、立法府の機能を維持すること、これは極めて大事なことだというふうに認識しております。そのためにまず必要なことは、現行憲法下でどうやって立法府の機能を最大限維持できるのか、八方手を尽くしてその方策を検討することが大事だというふうに思っております。
前回、北側幹事から二つの論点が出されました。一つは、被災された有権者の投票権の問題。北側幹事からこれを出されましたけれども、これについて、過去の議論を今いろいろ調べているんですけれども、十分な考察があった形跡がなかなか見つかりませんでした。この点は、しかし、私は極めて重要な指摘だというふうに思いますので、今後どのような選挙制度にするのかをしっかりと検討すべきだと思っております。
それから二つ目として、選挙事務に携わる職員体制について課題が提起されました。この点も、一点目の有権者側の視点と同様に、これまで十分に議論、検討されておりません。
以前私は、一九九三年の七月、衆議院選挙の真っ最中に発生した北海道南西沖地震のとき、これは総選挙の真っ最中でしたけれども、その選挙に言及しました。あの選挙中に被災し亡くなった選管職員がいたにもかかわらず、奥尻町の職員だけで選挙を執行しました。本来であれば、こうした経験やその後の東日本大震災も踏まえて、被災時の選挙について、自治体間の応援体制などについて議論すべきだったというふうに思うのですが、それはいまだに十分な検討とはなっておりません。
それから、国会機能の維持に関してもう一つ重要な論点があります。衆議院、参議院両方の議員もしっかりいるにもかかわらず、仮に首都直下型地震などによって国会の建物が物理的損傷を受けて本会議場が使えないことなど、これは当然に想定されます。もちろん、このことに関して、この憲法審でもオンラインでという話が出ていたことは私自身も承知しておりますが、それがまだ十分に詰め切れている状況というふうには思われません。
国会は少なくとも年間百五十日以上は開会されており、選挙実施期間に比較すると長期にわたっていることは明らかです。つまり、災害などによって選挙が実施できないケース以上に、国会が物理的に使えない場面が発生する可能性が高いのかもしれません。災害によって国会が物理的に使えない場合、国会機能を維持するためにどのように対応すべきか、これも重要な検討項目だと考えられます。
国会機能を維持するために、災害時に選挙を実施するための対策、それから国会が物理的に利用できない場合の対策、現行憲法の下でこれらについて八方手を尽くされた状態とは、今私は感じてはおりません。
こうした問題をまず早急に検討すること、それからさらに、現行憲法下での緊急集会の役割をどの程度拡充強化できるのか、これらへの対応を踏まえて初めて、憲法をどうすべきかの立法事実が見えてくるのだというふうに思っております。現時点では、現行憲法下で国会機能を維持するための方策を急いで検討することが必要だというふうに思っております。
それから、前回、青柳委員からこのような発言がありました。立憲民主党だけが憲法を一字一句変えないことそのものが自己目的化しているといった指摘があったわけですが、それは事実と違っております。私たちの立場は、憲法といえども、決してすり減ることのない不磨の大典ではない。したがって、一字一句変えてはならないというものではありません。社会の変化に応じて不断の見直しが求められているということであります。
「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。」、これは立憲民主党の綱領です。すなわち、国民主権、基本的人権、平和主義という日本国憲法の原則を確実に守り、立憲主義を深化させるという観点を大切にしながら、時代の変化などに合わせて憲法をよりよくするために、変えるべきところがあればしっかりと対応する、これが私たちの立場であります。
それから、青柳委員からNHKの中継に関する発言もございました。
以前も申し上げましたけれども、一般論として、国会での議論が多くの国民に共有されるということは非常に大事なことだと思っています。それから、事務局に調べてもらったところ、過去に一度、憲法関連委員会がNHKで中継された、それから、過去に三度、録画が放送された実績もある。こういうことを考えてみますと、憲法審査会の議論がNHKで中継されることはあり得ることだと考えています。ただし、電波には限りがありますので、どのような条件、どのような場面で中継するかをしっかりと検討することも必要なことだと考えております。
以上です。
○森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。
この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十二分散会