衆議院

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第7号 令和6年5月23日(木曜日)

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令和六年五月二十三日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    大串 正樹君

      黄川田仁志君    熊田 裕通君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      中村 裕之君    長島 昭久君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    三谷 英弘君

      山口  晋君    山田 賢司君

      山本 有二君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    階   猛君

      篠原  孝君    馬場 雄基君

      牧  義夫君    谷田川 元君

      岩谷 良平君    小野 泰輔君

      三木 圭恵君    和田有一朗君

      大口 善徳君    河西 宏一君

      國重  徹君    赤嶺 政賢君

      玉木雄一郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     山口  晋君

  城内  実君     泉田 裕彦君

  中西 健治君     高木  啓君

  山下 貴司君     中村 裕之君

  吉田はるみ君     馬場 雄基君

  青柳 仁士君     和田有一朗君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     青山 周平君

  高木  啓君     中西 健治君

  中村 裕之君     杉田 水脈君

  山口  晋君     越智 隆雄君

  馬場 雄基君     吉田はるみ君

  和田有一朗君     青柳 仁士君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     城内  実君

  杉田 水脈君     山下 貴司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。小林鷹之君。

小林(鷹)委員 おはようございます。自由民主党の小林鷹之です。

 本日は、私からは、選挙困難事態における国会機能維持と広報協議会規程を始めとする国民投票法について発言をいたします。

 選挙困難事態における国会機能維持につきましては、制度設計の枠組みとしてはもはや大部分が固まっていて、いつでも条文化に入れる段階まで来ています。そこで、本日は、よりよい制度設計を目指して、これまで提起されていない、やや技術的な論点を指摘させていただきたいと思います。

 これまでの丁寧な議論を通じて、参議院の緊急集会は二院制の例外として設けられた暫定的な制度であって、一定の期間内に総選挙の実施が見通せる場合に対応する仕組みであることが明らかとなっています。

 憲法五十四条一項は、解散後四十日以内に総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に国会を召集しなければならないことを定めておりますことから、衆議院不在の際に参議院の緊急集会が対応する期間として想定しているのは最大七十日程度と考えられます。このことを踏まえまして、国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかである場合については、選挙期日、議員任期特例により対応すべきであるとするのが五会派の共通認識であります。

 その上で問題となるのが、解散後七十日以内の総選挙実施は見通せるけれども、解散後四十日以内という憲法が明文で定めている期間内には困難だという場合であります。

 仮に、現行憲法の下でこのような事態が発生した場合には、恐らく、総選挙の実施が結果として解散から四十日を超えて、憲法の明文の規定に反することになっても、法は不可能を強いるものではないことから、その総選挙は憲法違反で無効だとはならないと考えられます。そして、この場合、解散から総選挙までの衆議院不在の期間は参議院の緊急集会で対応することになると考えられます。しかし、この点については明文の根拠規定はありません。あくまでも解釈に委ねられております。

 そこで、今後、七十日を超えて総選挙の適正な実施が困難な場合について、選挙期日、議員任期特例により対応するための憲法改正原案を作成するに当たっては、このような場合の対応についても憲法に明記しておくことが望ましいと私は考えます。

 具体的には、五会派の間では、総選挙の実施が七十日以内に見通せる場合は参議院の緊急集会で対応するという共通認識が形成されています。そこで、この認識を前提に、七十日以内には総選挙を実施できるが四十日は超えてしまう場合には、まず一点目として、解散から四十日以内の総選挙実施を原則としつつも、その間に総選挙が実施できないときは、一定の要件の下で例外的に総選挙実施の期限を解散から七十日以内とすること、そして二点目として、この衆議院不在の間は参議院の緊急集会で対応すること、この二点を明記することが考えられます。

 これによって、総選挙が四十日以内に実施できないものの七十日以内には実施できる場合は参議院の緊急集会で対応することとし、そして、七十日を超えて実施できない場合は選挙期日、議員任期特例で対応することとすれば、条文上もすっきりと整理ができて、選挙期日、議員任期特例と参議院の緊急集会とのすみ分けが明確になると考えます。

 本日の私の提案は、立法技術的観点に関わるものであって、ややテクニカルな印象を与えたかもしれません。しかし、現状では、このような制度設計の詳細にわたる議論をすべき段階にもはや至っているように思います。

 前回の審査会では、我が党の船田幹事から、具体的な要綱形式の資料を討議資料として憲法審査会に提示をして議論を進めるべきとの提案があって、また、多くの会派からも賛同の御発言がございました。議論を建設的に進めるためには、私からも、討議資料として審査会の場に具体的な要綱案を提示して議論を進めることを希望いたします。

 そして、要綱案作成の際には、先ほど私が申し上げた、これまでの審査会における論点整理や議論においても明確になっていない、すなわち、解散後七十日以内の総選挙実施は見通せるけれども解散後四十日以内には困難である場合の対応についても、これを明確にする規定を設けるよう御検討いただきますことをお願い申し上げます。

 次に、広報協議会規程を始めとする国民投票法について意見を述べます。

 私は、昨年十一月の二十一日に、幹事懇の場で、広報協議会の関係規程の内容や整備の状況について事務方から説明を受けました。説明を聞いて、広報協議会の関係法令の整備には事務的に作業を進められる部分も少なくないことは理解をしております。その一方で、広報活動の内容や量をどうするか、また、ネットCMやネット一般に関して広報協議会に付加する事務など、政治レベルで判断しなければならない論点も残されていると考えます。今後は、こういった残された論点について、憲法審査会として議論した上で結論を出していかなければなりません。

 さらに、広報協議会の活動と関連する面もありますが、放送CMの問題や、フェイクニュース、ファクトチェックといったネット問題等、国民投票法そのものに関わる論点として従来から問題提起されている論点もあります。

 まずは、次回以降の審査会において、広報協議会規程を始めとする国民投票法について、事務方から、残された論点の説明を求めることを提案させていただきます。

 以上、憲法改正原案の起草作業の進展のための討議資料、要綱案の提示と、広報協議会規程等の整備のための事務方からのヒアリング、この二点につきまして提案申し上げまして、私の冒頭発言とさせていただきます。

 以上です。

森会長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 おはようございます。逢坂誠二でございます。

 前回の憲法審査会で、日本の主権に関する議論がありました。それに触発されて、今日は、二〇一九年の三月に毎日新聞に依頼されて私が書いた文章を紹介したいと思います。タイトルは「米国の制限下にある日本 真の独立国ではない」です。これは私の見解でありまして、党で認められた見解ではありませんが、多くの方が認識されている、あらかじめ分かっていることだというふうに思います。しかしながら、国の在り方を考える問題提起の意味も含めて、紹介をさせていただきます。

 以下、抜粋、引用です。

  昨年十二月二十日、ロシアのプーチン大統領はモスクワで年末恒例の記者会見を行った。この会見でプーチン大統領はロシアが北方領土を日本に返還した場合、北方領土に米軍基地が置かれる可能性について、「日本の決定権に疑問がある」と述べ、「日本が決められるのか、日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘した。日本の決定権を疑う例として「知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに、基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」と沖縄の米軍基地問題を挙げた。

  このプーチン大統領の日本の主権に関する指摘は極めて重く、日本の現実を鋭く突いている。

  日本への外国人の入国の条件は、日本自身が自由に決められるはず、これが独立国として当然のことだ。だが日本はそうなってはいない。

  通常、外国人が日本に入国する際は、国際空港などでパスポートなどの必要な書類を提示し、所定の入国手続きを行なうことが求められる。ところが米国軍人は、このルールに縛られないことが認められている。根拠は、日米地位協定第九条だ。同条二項に、「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」との規定がある。

  これによって米国軍人であれば、日本の数多くの港から、あるいは横田などの米軍管理の空港から、米国当局に対し身分証明書などの提示があれば日本への入国が可能なのだ。本来は外国人に求められる入国の手続きをしなくとも、米国軍人は日本に入国することができる。

次に、

  日本の航空機が日本国内で墜落した場合、日本の警察が現場に出向き、現場の検証を行う。他方、日本の航空機が他国で墜落した場合、他国の警察が実施する。これはそれぞれが独立国として当然のことと思われる。

  ところが日本の場合、米国軍機が、日本のどこかの市街地で墜落しても、日本の警察が現場の検証に出向くことはできない。日米地位協定に関する合意議事録で、米軍機のような米軍財産は、原則として米軍がこれを取り扱い、日本側当局は米軍の同意がない限り捜索、差し押さえ等を行えない旨を定めており、これが根拠だ。

  例えば米軍ヘリが銀座に墜落した場合、日本の警察は当然、現場に急行するだろう。しかし、米軍の同意がない限り日本の警察は捜査できないルールになっている。事故後、米軍から日本の警察が情報提供を受けて、日本の警察として事故の検証を行うことはあろうが、それはあくまでも米軍が認めることが前提になっている。

  独立国は、本来、その領域内のすべての人および物を支配する最高の権力を持ち、その組織、国民の権利、外国人の入国条件などを自由に定めることができる。つまりいかなる外部の支配からも自由であるのが独立国だ。ところが例示したように、日本は出入国、警察など、米国の制限のもとにある。

  私はこのように制限された日本の主権の全てを日本国が完全に行使できる、そんな状態を取り戻し、真の独立国、主権国家となるべきだと考えている。

  もちろん現状から脱却するのは、簡単なことではないし、相当に長い年限がかかるだろう。また正面から米国とこのことを交渉しても、それが首尾よく進むとは到底考え難い。もちろん日米同盟は重要なものである。また日本の防衛力をどう位置づけるかという問題もある。しかし、日本の政治家として百年先の日本を見据え、覚悟を持って、日本が真の独立国家となるために、中長期的目線で取り組むべき問題だと考えている。

以上、引用を終了します。

 これは、二〇一九年に毎日新聞のホームページ、政治プレミアに掲載されたものであります。

 お聞きになった皆さんは、現実を知らない、青臭い考えだと受け止める方もいるかもしれません。また、単に日米地位協定を改定すればよいわけでもありません。しかし、私は、日本がしっかりと自立した真の独立国家であるべきであり、日本の文化や伝統を踏まえつつ、個々人の尊厳を大切にした、誇りある日本人でありたいと考えています。

 私は、こうした国の実現は、戦後百年を迎える二〇四五年が目標と以前は思っていたのですが、そのためにはあと二十一年しかありません。時間が足りません。しかし、日本の将来を見据えて論ずるべきことではないでしょうか。憲法議論の前提として、どのようなことを意識して国づくりを進めるのか、今後も真摯に考えてまいりたいと思います。

 以上、これは党で認められた見解ではありません、私個人の見解ではありますが、以上、終了させていただきます。

森会長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。

 先週、自民党の船田幹事や我が党の岩谷委員を始め複数会派の委員から、具体的な条文をイメージできる要綱形式の資料を討議資料として本審査会に提示をして議論を進めるべきとの発言がありました。先ほど小林幹事からも改めてありました。憲法審査会も定例日が残り少なくなってきましたので、是非、来週には実現できるよう、森会長、各幹事のお取り計らいをよろしくお願いいたします。

 先々週、先週の議論では、選挙困難事態とはどういう事態なのか、その期間についてもどのような基準で判断するのかといった議論がなされました。

 原則的に任期を延長しない、でき得る限り選挙を行うべきという逢坂幹事の御指摘は、原理原則としてそのとおりです。本庄幹事からも、選挙可能な地域が例えば八五%ある場合には、その地域において選挙権を行使できるようにすべきであり、被災するなどして選挙が困難となった地域では繰延べ投票を行えばよいという御発言があり、衆議院の総選挙の一体性と選挙が困難でない地域の選挙権の保障のどちらが大切なのかという疑問も呈されました。

 私は、選挙困難な地域の範囲や期間の長短によっては、できるだけ選挙を行うべきという原則を貫くことができない状況があり得ると考えます。

 繰り返し北側幹事が指摘されておりますが、東日本大震災の際に衆議院が任期満了となった場合には、東北の多くの小選挙区と比例ブロック、そして北関東の一部の選挙区と比例ブロックの選挙が行えず、多くの当選者が確定できないということになります。本庄幹事の、できる限り繰延べ投票制度を用いつつ、選挙可能な地域においては選挙を行うべきという見解に従っても、理想どおりにはいかないケースがあります。

 例えば、参議院の半数が任期満了となる日の付近で大規模災害が起き、広範な地域で選挙実施が困難となった場合において、選挙可能な地域のみで選挙を行うとすれば、全国比例について、選挙困難な地域の投票がない形で議員を選んでしまってよいのかという問題が生じます。それでもよいのだという考えもありますが、それでは全国の民意を反映できていないではないかという考え方もできます。

 後者の場合は、我々が提案しているように、改選分について任期延長し、直近の国民の総意が示した結果を継続するということになります。いずれの方法を取るかで参議院において与党が過半数を取るのか取らないかの結果が異なってくる可能性があり、国民にとって重大な関心事です。

 もっとも、参議院においては、任期満了するに任せればよく、議員任期延長など不要であり、非改選の片肺飛行でもよいのだという考え方もありますが、先週岩谷委員が申し上げたとおり、最短で三年間選挙困難事態が続いた場合には参議院議員全員がいなくなりますので、やはり参議院においても任期延長は必要となるものと考えます。

 選挙可能な地域の選挙権の行使を尊重することは、できるだけ多くの国民の権利行使を保障することになるように思えますが、国民の総意としてどういう政治勢力、政党に国政を託すのかについての意思決定としては不完全なものとなります。被災した上に選挙権の行使が困難となった国民にとってみれば、自らの投票意思が反映されずに新しい議席配分が決定されてしまうのは、国民の総意の形成方法としてよいのだろうかと考えるものと思います。

 議員任期の延長に反対する立場からは、現政権が居座る危険性や任期延長議員の民主的正統性が指摘されているわけですが、特に被災地の国民から見た場合、一部の地域のみで選挙を行って選ばれた国会議員が果たして民主的正統性を持つかどうかというと、そうは思えないということになるのではないかと思います。

 また、立憲民主党の委員の皆様は、先々週あたりから、そもそも選挙困難事態があり得るのかという議論を展開されていますが、それ以前の主な御主張は、議員任期延長によらず、参議院の緊急集会で対応可能というものでした。

 国会機能を参議院がある程度の期間代替する場合、緊急集会で予算や条約の議決も行うことが可能になるようにする必要があり、これは玉木委員が言われるところのスーパー緊急集会ですが、これを可能とするためには憲法改正が必要なのではないかという質問が北側幹事などから繰り返しなされております。これに対する回答をまだ立憲民主党からいただいておりません。

 スーパー緊急集会を認めるためには憲法改正をしなければきついなということで、最近は、選挙困難事態がそもそもあり得るのかという点にフォーカスして議論をされているのかなというふうに感じておりますが、もし可能でしたら、スーパー緊急集会には憲法改正が必要かどうか、御答弁をお願いいたします。

 先週、逢坂幹事からは、憲法は決して不磨の大典ではない、立憲主義を深化させる観点から、社会の変化などに合わせて、変えるところがあればしっかりと対応する旨の御発言がありました。玉木委員が先週おっしゃったように、選挙困難事態はやはりあり得るのだと考えますし、それに備えることは政治の責任だと思います。

 選挙が可能なところでできる限り行っていくというやり方を取った場合には、国民の総意をうまく代表できないという問題があり、憲法を改正し、緊急事態における議員任期延長制度の整備をすることは必要であるとの実感を持つ国民は多いと考えます。この議論はもうかなり尽くされたと考えておりますので、改めて申し上げますが、条文起草委員会を立ち上げ、改正原案の作成作業を進めていくことを要望いたします。

 一方、先ほど小林幹事からもありましたが、国民投票法について詳細を詰めていくことも必要です。国民投票広報協議会の組織の在り方や規程の詳細を決めていくとともに、国民投票運動の規制的措置の内容について各会派の考えをテーブルにのせ、成案を得ることが必要です。

 本日は時間の関係で詳細には述べませんが、我が党の考えは非常にシンプルで、国民投票運動は基本的に自由になされるべきであり、民放連やネット事業者の自主的な取組により広告の取扱いを判断する際には、その参考となるよう、国民投票広報協議会がガイドラインを定めることとします。

 ネット規制については、国民投票に限った問題ではない上、規制自体に困難が伴いますので、先週公明党の大口議員からも御指摘があったように、国民投票広報協議会が民間ファクトチェック団体と緊密に連携して対応すべきと考えます。かつて階委員がこの点について各会派の考えを整理した幻の一覧表があったように記憶をしておりますが、あのような検討材料を基に議論して結論を出していくべきであると考えます。

 最後に、森会長にお願いですが、国民投票運動や広報協議会の在り方に関し、執行可能性や現実的な体制整備の観点も考慮すべく、当審査会事務局からヒアリングを行うよう求め、私の発言といたします。

森会長 御要請のあった件については、幹事懇等で協議をいたします。

 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

 前回の審査会において、本庄幹事から、繰延べ投票と参議院の緊急集会でも対応できないような、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙ができない選挙困難事態というのは一体いかなる状況なのか、説得力ある科学的検証は示されていないとの問題提起がありました。そこで今日は、その御指摘のうち、全国の広範な地域で選挙ができない事態とはどのようなものなのか、広範性に着目をして深掘りをしてみたいと思います。

 我が国において、全国の広範な地域で選挙ができない事態といえば、まず自然災害、とりわけ地震が考えられます。この点、政府の地震調査委員会の予測によりますと、今後三十年以内に南海トラフ沿いでマグニチュード八から九クラスの地震が発生する確率は七〇から八〇%とされています。また、南海トラフ沿いで最大クラスの地震、いわゆる南海トラフ巨大地震が発生した場合には、九州から関東にかけた広範な地域で震度六弱以上の強い揺れが想定されています。

 具体的には、東日本大震災において震度七が観測されたのは宮城県栗原市の一市のみでありましたが、南海トラフ巨大地震では、震度七が何と百二十七市町村にまで及ぶ、都道府県で見ると、静岡県、愛知県、三重県、兵庫県、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、宮崎県と十県にも及ぶと予測されています。

 また、震度六強を基準としますと、東日本大震災においては宮城県、福島県、茨城県、栃木県の四県であったのに対し、南海トラフ巨大地震では二十一府県にも及び、さらに、震度六弱を基準にすると、東日本大震災においては岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県の八県であったのに対し、南海トラフ巨大地震では二十一府県に及ぶと予想されています。

 これを震度面積で見ますと、東日本大震災と比較して、南海トラフ巨大地震は震度七で九十六倍、震度六強で十一倍、震度六弱で四倍になると推定をされています。南海トラフ巨大地震がいかに広範な地域に影響を及ぼすか。被害エリアの広範性、被害の深刻度は、未曽有の被害をもたらした東日本大震災をはるかに上回ります。

 東日本大震災後の地方選挙の実施状況を前回の衆院選に当てはめた憲法審査会事務局の試算によりますと、本来の期日に選挙が実施されず、選出されない議員は六十九名、定員の一五%となりますが、南海トラフ巨大地震が国政選挙と重なった場合には、より広範な地域で選挙困難事態に陥る蓋然性が極めて高く、選出されない国会議員は一五%を大きく上回るであろうことは明白と言えます。

 そして、少なくとも、これだけの府県に影響が及んだ場合には、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙ができない選挙困難事態に当たると思われますので、国政選挙と重なった場合には、選挙期日の延期が必要になると考えられます。

 一方、濫用防止の観点から、その判断基準を明確にする必要があります。

 この点、前回の審査会で本庄幹事から、議員任期を延長すれば被災地以外の大多数の有権者が本来行使できる選挙権を行使できなくなる、議員任期延長論の中で、この点についての十分な比較衡量はなされているのかとの問題提起がありましたが、本質的な指摘であり、選挙期日の延期の判断基準を考えるに当たって、被災地以外の有権者の選挙権を考慮しなければならないことは当然です。

 他方で、選挙期日を延期した場合、被災地以外の有権者は本来行使できる選挙権が行使できないことにはなりますが、その場合でも、選挙期日の延期に伴って議員任期が延長されれば、前回の選挙における民意を反映した国会議員は存在することになります。そして、選挙が可能となった時点で速やかに選挙を実施すれば、選挙権は回復できます。

 これに対し、被災地においては繰延べ投票で対応するとされた場合、大規模災害のときにこそ被災者の意思を反映した施策が求められるにもかかわらず、被災地の有権者は選挙権を行使できないばかりか、被災地には前回の選挙時の民意を反映した国会議員も存在しないことになります。この場合、被災地の有権者は、被災地以外の有権者に比べて、いわば二重の不利益を被っていると言えます。

 この点、国会議員は全国民の代表であるところ、この全国民の代表は、伝統的には、議員は、選挙区など特定の選挙母体の代表ではなく全国民の代表であること、また、選挙母体である選挙区などの命令には拘束されないことを意味するものと解されてきました。しかし、現在では、国民の意思と代表者の意思の事実上の類似が重視されるようになり、国民の多様な意思ができる限り公正かつ忠実に国会に反映されなければならないことを意味すると解されています。

 このように考えますと、被災地選出の議員を中心に多数の議員が選出されないという状況は、国民の多様な意思をできる限り公正かつ忠実に国会に反映するという全国民の代表の要請を満たしていないと考えられます。

 繰り返しになりますが、被災地以外の選挙区の有権者の選挙権が阻害されるという指摘はもっともであり、十分に考慮しなければなりません。ただ、選挙期日の延期の判断基準の問題は、あちらを立てればこちらが立たず的なところがあるため、その考慮要素一つ一つを単独で考えていくのではなく、様々な事情を総合的に勘案して、合理的な制度を仕組む必要があると考えます。

 本庄委員の問題提起に敬意を表し、今後、これに関する議論も活発に行われることを期待し、私の発言といたします。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 前回に続いて、沖縄と憲法について意見を述べます。

 前回、私は、復帰から五十二年が経過した今なお、米軍、自衛隊基地の強化が進められ、憲法の原則が適用されない沖縄の実態を変えるべきだと指摘しました。日本国憲法と矛盾する日米安保体制の下で日本の主権が脅かされ、県民の人権が踏みにじられていることに私たちは目を向けるべきであります。

 先週十七日には、エマニュエル駐日米国大使が米軍のターナー四軍調整官とともに与那国島や石垣島を訪問しました。米国大使が在沖米軍トップを引き連れて自治体の首長と直接会談するなど、極めて異例のことです。日本最西端の碑の前では日米の連携強化をアピールし、陸自駐屯地も訪問し、米軍の展開強化に意欲を示す発言まで行っています。単なる親善などではなく、政治的、軍事的な狙いを持った訪問だったことは明らかであります。地元紙は、二十日の台湾の新総統の就任式を前に中国を牽制したものだと報じています。

 緊張の最前線に立たされ、戦争に巻き込まれることへの不安が広がる島々で、更に緊張をあおる言動は絶対に認められるものではありません。平和的な対話と外交による問題解決を進める県や県民の努力を全くむげにする、余りにも横暴な振る舞いであります。

 その上、沖縄県が軍用機の空港使用を自粛するよう求めたにもかかわらず、海兵隊の輸送機による与那国空港や石垣空港の使用を強行しています。米軍基地の整理縮小や運用の改善を求める県民の願いを無視し、更なる米軍の展開強化を公言してはばからない態度に、沖縄は軍事植民地ではないと批判の声が上がっています。このような横暴な振る舞いをなぜ日本政府は認めているのか。極めて従属的だと言わなければなりません。

 三月十四日には、米軍は、昨年十一月の墜落事故を契機に停止していたオスプレイの飛行を再開させました。事故原因は調査中であるにもかかわらず、日本政府は、安全が確認されたと容認しました。

 ところが、米軍が飛行再開に当たって運用に制限をかけていることが、アメリカや沖縄のメディアで報じられました。緊急着陸などの対応が可能な飛行場から三十分以内の範囲に制限するというものです。米軍も議会で証言しています。

 しかし、これまで米軍から運用制限に関する説明は一切ありません。自治体や住民には何も明らかにしないまま、まさに欠陥機であるオスプレイを飛ばし続けているのです。住民の安全など全く顧みない姿勢は、まさに占領軍の振る舞いそのものです。一体、日本政府はオスプレイの運用制限を知っていて飛行再開を認めたのか。その責任も問われます。

 日本政府と米軍は、普天間基地や嘉手納基地での午後十時から午前六時までの運用を制限する騒音防止協定を結んでいます。昼夜を問わない米軍機の爆音に苦しめられている自治体、住民が少しでも平穏を取り戻したいと政府に強く働きかけ、九六年に合意したものです。

 これまで日本政府は、曲がりなりにも、協定を米軍に守らせる立場に立っていました。

 ところが、今では、そんな合意などなかったかのように、深夜、早朝の運用を常態化させています。嘉手納基地では、昨年十月に無人機MQ9が配備されましたが、当初から、深夜、早朝の飛行が前提でした。実際、全体の離着陸の半分近くが深夜、早朝になっています。米軍が今月二十日に新たに配備した無人機MQ4も、深夜、早朝の運用が前提になっています。

 さらに、日米両政府は、米軍インディア・インディア訓練区域の使用時間を十一時から二十三時までに変更することを合意しています。深夜の基地への飛来を当然視するものです。日本政府は、米軍の意向だなどと開き直り、協定を守らせる責任さえ放棄しているのです。

 こうした米軍の傍若無人なやり方が繰り返されるのは、日米地位協定があるからにほかなりません。地位協定は、基地の自由使用を保障し、国内法の適用を免除しています。日本政府は、米軍が事件、事故を起こしても、基地内に立ち入って調査することも、機体を捜索、検証することもできないのです。

 国会は、日米地位協定の改定にこそ正面から取り組むべきであります。憲法と矛盾する日米安保体制を根本から問い直すべきことを指摘して、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 会長にまずお願いしたいんですが、傍聴の方が特定の政党の発言に対して拍手をしたり発言するということについては、これは是非、ルールなので、傍聴券の裏にも注意書きが書いていると思うので、これは徹底をいただきたいというふうに思います。皆さんにとって冷静で落ち着いた議論をしていくということは、傍聴されている国民の皆さんも含めた共同作業だと思っていますので、その点は是非お願いしたいと、まず冒頭申し上げます。

 憲法審査会も、今国会、今日を除けばもう残り四回となりました。また改めて申し上げるのは大変心苦しいんですが、やはり起草委員会を速やかに設置をして条文案作りに着手することを改めて求めます。

 そして、本審査会において、過去の申合せ等で、条文ベースでの議論がどうしても受け入れていただけないということであれば、せめて要綱形式で議論することを提案したい。来週は広報協議会の規程について議論ということで聞いておりますので、再来週からは要綱形式での議論を是非行っていただきたいということを改めて求めます。

 緊急事態における国会機能を維持すること、このことを可能とする憲法改正については、もはや論点が出尽くしておりまして、私はもうこれ以上発言することが正直ありません。有効な反論が今日あればそれに答えていきますけれども、もう二年間、この議論を私はこっちでやっていますので、条文案も維新の皆さんと有志の皆さんと示していますので、是非次に行きたいと思います。

 ただ、先週、立憲民主党の本庄幹事から繰延べ投票で対応できると意見が出ましたので、今日はこの繰延べ投票に絞って何点か質問させていただきたいんですが、今日はいらっしゃらないので、ほかの方か、場合によっては次回、お答えいただきたいと思います。

 まず、改めてでありますが、公職選挙法五十七条に規定する繰延べ投票とは、天災その他避けることのできない事故により投票を行うことができない場合に、選挙管理委員会は、更に選挙期日、まあ、分かりやすく言えば投票日ですね、新たな投票日を定めて投票を行わせなければならないと定めています。

 現行の公職選挙法の下で行われた国政選挙の繰延べ投票は、前回も申し上げましたが、一九六五年と一九七四年の参議院選挙の二回だけで、いずれも一週間の延期でありまして、長期にわたり広範に投票期日が繰り延べられた事実はありません。

 立憲民主党さんが言うように、選挙ができるようになるまで投票期日を何度でも延期すればいいということなんですけれども、少なくとも三点疑問があるので、質問します。

 まず、繰延べ投票とは、選挙期日に、投票日に投票所で投票ができないために、投票ができると思われる別の日を各地の選挙管理委員会が定めて行われる投票です。

 そもそも、今私たちが議論しているのは、大規模災害等によって七十日を超えて長期にわたって広範に選挙ができないケースであって、台風や集中豪雨のように短期で終わる事象を相手にしていません。

 長期かつ広範に選挙ができない事態に陥ったときに、その時点で、選挙が可能と思われる別の選挙期日を正しく決めることができるのか。そもそも、繰延べ投票で何日間までなら延期できると考えているのか。その法的な根拠を含めてお答えをいただきたいと思います。これが一点です。

 二点目に、繰延べ投票に係るこれまでの政府答弁は、最初の選挙期日さえ、衆議院の場合、解散から四十日以内に設定されていれば、繰り延べられた投票期日が四十日を過ぎてもいいという立場であります。逆に言えば、解散から四十日以内に公示されていなければ憲法違反になる可能性もあるということです。つまり、大規模災害が発生しても、形式的には選挙をスタートさせておかなければならないということだと思います。

 これが、一九六五年や七四年のときは私はぎりぎり成り立ったと思うんです。何でかというと、期日前投票がなかったからです。

 平成十五年、二〇〇三年に期日前投票が導入されて、投票というのは、投票期日、つまり投開票日だけではなくて、公示又は告示の翌日から投票ができます。ですから、幾ら投票期日、投票日を延期しても、期日前投票はできますし、選挙運動も可能なんですね。

 投票ができないから選挙期日を延期しているのに期日前投票ができるというのは、これは矛盾です。また、選挙困難事態に選挙活動を認めること自体も矛盾です。

 仮に、例えば文書違反とかいろいろ選挙のときにありますけれども、違反行為があっても、災害で職員も被災していますから、警告などもできないんですよ。それでも繰延べ投票で対応が可能と考えているのか、その点を明確にお答えをいただきたいと思います。

 今のままだと、延ばしていくと、その間ずっと期日前投票ができますし、ある種の選挙活動もずっと、例えば東日本大震災の場合は二百三日間延ばしていますから、ねえ、馬場代表、十二日間の衆議院選挙じゃなくて二百日間の衆議院選挙をやれといったら、ちょっときついんじゃないですか、みんな。そんなことを予定しているのかということなんですよ。お答えいただきたいと思います。

 最後に、仮に法律で選挙期日の延期はできたとしても、その間の議員任期はやはり延長できないと思います。これは二〇一一年の野田内閣で閣議決定されているということは何度も申し上げています。仮に七十日を超える長期にわたって選挙期日を延期する場合、その間、国会議員が不在になりますけれども、長期にわたって参議院の緊急集会で対応するにはやはり憲法上の限界があると何度も申し上げておりますし、もし、先ほど小野委員からも言いましたスーパー緊急集会を認めるのであれば、私は、やはりこれは憲法改正が必要だ、新たな射程を現在の緊急集会に付与する憲法改正が不可欠だと思います。

 そして、こうした長期にわたる議員不在の状況を生み出す判断を、場合によっては憲法違反の可能性がある判断を選挙管理委員会に委ねていいのかという根本的な問題もありますので、併せてお答えをいただきたいと思います。

 最後に、やはり、長期にわたって選挙の一体性が害されるほど広範に選挙が困難な事態、すなわち選挙困難事態が発生した場合には、国会機能を適切に維持するために、選挙期日の延期とその間の議員任期の特例延長を定める憲法改正が必要だと考えます。

 最後に出てくる反論はやはり、いや、そんな選挙困難事態は発生しない、あるいは確率が低いということになると思いますが、何回も述べているとおり、危機に備えるかどうかを決めるのは、もう私たちしかいません。憲法の発議は独占的に国会及び国会議員のみにしか与えられていませんので、国民から負託を受けた私たち国会議員が決めなければ、答えは出ません。

 しかも、立憲民主党所属の議員の多くの皆さんは、東日本大震災発災の際、選挙ができずに、特例法を制定して、二百日を超える長期にわたり選挙期日を延期し、その間、地方自治体議員の任期を延長するといった経験をしたはずであります。逆に、繰延べ投票で可能であれば、あのときなぜ繰延べ投票で対応しなかったのか。やはり繰延べ投票では問題があるとして、選挙期日の延期と議員任期の延長を認める特例法を作ったのではないでしょうか。

 是非、立憲民主党さんが政権与党を目指すのであれば、危機に備える意思と能力を備えていることを示した方が私は得策だと思いますので、あえてこのことを申し上げて、発言を終えたいと思います。

森会長 玉木君から主に本庄知史君に対して御質問がございましたけれども、御本人が欠席でありますので、後日、適切な時期に答弁を願います。

 次に、北神圭朗君。

北神委員 お懐かしゅうございます。約一か月ぶりでございます。この間、本審査会での議論を一人寂しく会館のテレビで眺めていました。体調不良の少年が教室の窓から校庭で遊ぶ仲間たちを眺める、そんな気持ちで眺めておりました。再び参加できることを心から感謝を申し上げたいと思います。

 正直、もう今頃は起草委員会も立ち上がり、国会機能の維持の条文をめぐる議論が進んでいるかなと期待をしておりました。残念ながら、そんな状況には至っておりません。早急に起草委員会を立ち上げ具体的な条文を作成することを今回も要請したいというふうに思います。このままでは、今国会も意見交換の場で終わってしまいます。

 実際、しゃべる順番が最後なのは時にはつらいものでして、もう既に國重委員の御意見とほぼ同じような話をしますが、これもまた議論が、少なくともこの国会機能維持についてはもう煮詰まりに煮詰まっている、その表れだというふうに思います。

 選挙困難事態の立法事実については、私は四月二十五日に、これは単なる生のデータの話ではなく、そこから抽象的な事実を抽出、構成した理論的、規範的なものだと申し上げました。その後、本庄幹事からは、この考え方そのものには異論がなく、選挙困難事態は理論上、観念上あり得るとしながらも、ただ、広範な地域で相当程度長期間、選挙が実施困難な事態ということが現実問題としてあり得るのか、あり得るとしてそれはどのぐらいの可能性なのか、いまだ説得力ある科学的検証が示されていませんとの発言がありました。

 繰り返しになりますけれども、東日本大震災では選挙が八か月近く実施できませんでした。既に示された試算によりますと、比例代表を含めて六十九人の議席、定数全体の一四・八%が欠けてしまうことはもう御理解いただいていると思います。逆に八五%議員がいるんだから問題ないという指摘については、後ほど触れます。

 今後については、地震学者は、三十年以内に七、八〇%の確率で南海トラフ、首都直下型地震が起こり得るという予測を科学的に示しております。これらは東日本大震災の規模を上回る地震、津波の可能性が高いというふうにされております。

 事務局の試算の結果、前者の場合は総定数の二八・六%、後者の場合は二三・九%の議員が欠員となります。少なくとも、選挙の一体性が損なわれる可能性は高いと言えるのではないでしょうか。逆に、これでも説得力がないと言うなら、どういう検証が示されたら説得をされるのか、問いたいところでございます。

 また、先週、逢坂幹事より、災害によって国会が物理的に使えない場合どのように対応すべきか、これも重要な検討項目だと考えられますとの御提案がありました。

 我々が御提示しているように、オンライン国会を憲法上明記することは一つの対策になるのではないかと思います。ただ、危機管理というのは想定外の事態を一つ一つ潰していく作業でありますので、議論することには大いに賛同したいと思います。

 しかし同時に、危機管理はできることから進めていくことも大事です。是非とも、様々な議論をしつつも、一定の合意を得られたものから決めていきましょう。

 もう一つ大きな論点は、議員任期の延長は国民の選挙権を制限し、国会議員の民主的正統性の根拠が乏しくなるというものです。確かにそのとおりで、できるだけこういう事態は避けるべきであります。

 しかし、危機管理というのは、平時の恵まれた環境がない中で、有事の備えに伴うコストと、備えた結果得られるメリットとの厳しい比較考量が求められます。

 仮に、このまま民主的正統性を優先して国会機能の維持がなされない場合、どうなるのか。東日本大震災の試算では、六十九人の地元代表の議員がいない中で、国会や内閣で様々な救済対策や復旧復興事業が決まってしまいます。南海トラフ、首都直下型地震の場合は、それぞれ百三十三人、百十一人と試算上なります。

 いや、国会議員は地域の代表ではないんだ、全国民の代表だから問題がないとの指摘もございます。

 確かに、代表制の趣旨として、国会議員は選挙民の意思に拘束されず、地元利益を国益に優先すべきではないという考え方は、私も同感であります。しかし、私が問題にしているのは、より実際的な話であります。

 災害などが発生した地元の国会議員は、少なくともほかの議員よりは、被災地の地理、地形、文化、歴史、住民の慣習などをよく理解しているはずです。被災地の首長、自治体議員、経済界、地域の指導者などとの人脈や信頼関係も、ほかの議員よりは持っているはずであります。

 有事の際、そういう議員がいるのといないのとでは、国会での議論、あるいは内閣に対する提案も、おのずと異なると思います。取りまとめられる対策、予算の内容も変わるでしょうし、それが効果的に実施されるか否かにも大きく影響するでしょう。幾ら被災地外の国会議員が抽象的に全国民の代表であっても、こうした役割を効果的に果たせるとは、とても私は思えません。

 整理をしますと、国会機能の維持のメリットは、有事において、地元の議員が国会に残ることによって、残らない場合に比べて被災地の声をより的確に行政に届けられる可能性が高まることです。デメリットは、本庄幹事がおっしゃるように、国民の選挙権が制限され、民主的正統性の根拠が乏しくなることです。

 ただ、ここで考慮すべきことは、少なくとも、我々、維新、それから国民民主党さんの案でいうと、その発動については厳格な要件が、事前にも、そして事後にも課されています。また、運用面では、立憲民主党さんが主張されているような繰延べ投票や緊急集会も、法律の常識的な解釈の範囲内で可能な限り活用することとしています。もっと言えば、こうした制度を設けること自体、国会議員の三分の二以上の発議と国民投票を経なければ成立しません。民主的正統性の問題を十分考慮した上でも、やはり私はメリットの方が勝るというふうに考えております。

 以上、こうした議論はもう何度もやってきております。そろそろ憲法審査会として次の段階に進んで、条文なのか要綱なのかこだわりませんけれども、より具体的な議論に移ることを再度求めて、私の意見とします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

細野委員 自民党の細野豪志でございます。

 発言の機会、ありがとうございます。

 私は、与えられた時間の中で、逢坂誠二筆頭幹事と議論をさせていただきたいと思います。

 具体的な質問に入る前に、私は、今回の憲法改正の条文改正における項目の呼び方について一言申し上げたいと思います。

 私自身は、この項目を選挙困難事態と呼びたいと考えております。

 なぜなら、緊急事態ということを議論する場合に、内閣が権限を持つという意味で、緊急政令という議論があります。この議論は何度かこの憲法審査会でも出てきましたけれども、まだ論点が煮詰まっているとは言えません。

 また、同じく緊急事態の中でも、先ほど小林幹事がおっしゃったように、七十日以内に総選挙ができる場合の災害、さらにはテロや内乱などのケースにおいて、できる限り民意を問うという意味で選挙を行うべきことは、もちろん明確であります。

 それでも、様々な条件を勘案したときにどうしても選挙ができないときに限って選挙困難事態と定義をし、そしてそれについての備えをするというのが、今の時点での憲法審査会の一つの議論の達成点ではないかというふうに思っております。

 緊急事態という言葉を殊更に使うことによって非常に定義が不明確になる可能性がありますので、私自身は、選挙困難事態と言うことによって、国民にもしっかりと説明できる環境をつくりたいと思っております。

 それでは、逢坂幹事に質問いたします。

 逢坂幹事は、東日本大震災のときに、総務大臣政務官として内閣の中で仕事をされていました。しかも、選挙実務にも自治体の職員として関わられた経験をお持ちであります。

 簡潔にお聞きをしますが、あの東日本大震災が起こったときに、仮に衆議院が解散をしていた場合、若しくは、衆議院若しくは参議院で任期満了で選挙が迫っていた場合に、実際に選挙ができたのかどうか。それについてどのようにお考えになっているか、お聞きをしたいと思います。

逢坂委員 あのときは、実は、選挙時に災害が起きたときにどういう対応をするかということは全く議論がなかったんですね。

 私は一九九三年の奥尻の地震の例を出しましたが、ああいう事態があったにもかかわらず、その後、災害が起きたときにどういう選挙体制を講ずるんだという全国的な議論がない中で東日本大震災が起きています。だから、災害が起きて選挙をどうするかなんということは誰も考えちゃいないんですね。そういう中で取らざるを得なかったのがあのときの対策だと思っています。

 だから私は、東日本大震災を踏まえて、強い選挙の在り方、それを徹底的に議論すべきだったと思っているんです。ところが、それがいまだになされていない。だから、まず第一点、そこをしっかりやることが大事だというのが、私の今の時点の考え方です。

細野委員 全ての議員が災害に強い選挙の在り方を考えるということについては、党派を超えてコンセンサスだというふうに思います。

 ただ、私の質問は、立法事実としてお聞きをしているわけであります。つまり、立憲民主党の方々の中からは、立法事実が不明確である、そういう主張が何回かなされてきたわけですけれども、東日本大震災というのは、まさに全ての国民が経験した事実であり、そして、我々がそういったことが起こり得るという意味で認識をしなければならない立法事実そのものですね。しかも、逢坂幹事は政府の中でそれを経験をされた。つまり、あのときに国政選挙の任期が来ている若しくは解散をしていた場合どうだったかというのは、想定をすべきだし、政治家としてしっかりと見解を出すべきまさに問題だというふうに思うんですね。

 ですから、その部分についてどのようにお考えになっているか、それをお聞きをしております。

逢坂委員 私の基本姿勢は、まず現行憲法下で最大限の対策を講ずる、それをやった上でなお乗り越えられないということがあるのであれば、初めて憲法改正の立法事実が出てくるというふうに思っているんですね。だから、今仮にあの東日本大震災の時点で衆議院が解散していたらどうであったかという質問には非常に答えづらいですね、あの時点では対策を講じていないわけですから。

 それから、今の時点でも、どういう対策が必要なのかということについてはほとんど議論されていないわけですよ。先ほども選挙期日の延長について話がありましたけれども、それもまだ確定した議論にはなっていないわけですから。

 そういう対策を八方手を尽くした上で、それでもなおどういう事実が残るのかという議論をすべきだと私は思っているんです。

細野委員 その議論をもう二年以上やってきているわけですね。

 憲法上取り得る措置というのは、もはやこの憲法審査会で十分議論されています。参議院による緊急集会によるのか、若しくは繰延べ投票によるのか。逢坂幹事は十分それを分かっていらっしゃると思うので、現行憲法上取り得る措置として、仮に逢坂さんがその場面の判断権者であればどういう判断をするのかというのは、逢坂さん、長い友人関係ですがあえて申し上げますが、そこはもう逃げられないところまで来ていると思いますよ。

 ですから、責任を持って判断する立場に当時もあられたわけですから、現行憲法上どういう対応をするのかということについて、現時点でのお考えを是非開陳をしていただきたいというふうに思います。

森会長 細野君の発言時間が終了しておりますので、逢坂君、簡潔に御答弁願います。

逢坂委員 次回以降にします。

森会長 それでは、次回、適切な時期に。

細野委員 では、最後に一言だけ。

 私は、二年前に全く同じ質問を当時の奥野幹事にさせていただきました。全く議論が進んでいないですね。私は、まさにこの二年間を単なる時間の浪費で済ませてはならない、要綱なり条文案なりをきっちり出して議論すべき時期が来ているということを最後に申し上げたいと思います。

 以上です。

大島委員 立憲民主党、大島です。

 私の意見であり、会派を代表しての意見ではありません。

 米国による対ウクライナ追加支援は、二〇二三年十月十九日に大統領が六百十億ドルを含む一括予算を議会に要求してから六か月後の二〇二四年四月二十三日夜にようやく決まりました。

 米国大統領は、閣僚、最高裁判所判事等の指名、任命権、条約の締結権、連邦議会の上下院を通過した法案の拒否権のほか、米軍の最高司令官としての指揮権を持っています。

 ところが、大統領には、予算関連法案を含めて、法案を提出する権限はありません。法案提出権限は連邦議会の上下両院議員だけにしかなく、大統領は、年次教書演説を通して、上下両院議員に大統領の方針に沿った法案を提出するように促すことができるだけなのです。法案の拒否権も、上下両院が三分の二の多数で再可決、再度可決した場合、覆されてしまいます。また、条約の批准や閣僚、最高裁判所判事等の任命に当たり、上院の助言と承認を得る必要があります。

 それでも、米国大統領は最高司令官として世界最強の米軍を自由に動かせる指揮権を持っていることから、他国からは強い指導者と映るのでしょう。

 一方、我が国はどうでしょうか。一九九四年の政治改革で、小選挙区制と、政党運営を国費によって賄う政党助成金制度が導入されたことによって、候補者の公認権と党の資金の配分権が派閥や労働組合から党執行部に移りました。会社もそうですが、金と人事を握ることが組織を掌握する要諦です。特に政権与党の場合、党執行部のトップが首相なので、党、つまり与党議員に対して強いリーダーシップを発揮できるようになりました。

 次が、二〇〇一年に官邸に直属する内閣府が設置されたことです。内閣府には、複数の省庁が関係する問題に対して、各省庁よりも一段高い立場から政策の企画立案、総合調整を行うという権限が与えられました。その目的であった、いわゆる縦割り行政の弊害は確かに緩和されたものの、一方で、首相官邸による政治主導も実質的により強化されたのです。

 最後が、二〇一四年に内閣官房に内閣人事局が設けられたことです。従来は実質的に各府省内でその幹部の人事を決めていましたが、首相官邸が省庁の幹部人事を直接動かせるようになりました。内閣人事局の設置は、日本政治における静かな革命とも言われています。

 日本の首相の権限の強さは、米国大統領以上と思えます。もっとも、ここまでならば、政治主導という点で肯定されるでしょう。日進月歩で先端技術が発展し、国際環境も大きく変わってきた今日においては、政治が迅速に意思決定をしていくことは当然でもあります。

 しかし、首相の権限が強くなったからこそ、政府を監視し、国民の権利を守る議会としての権能強化も必要になってきたと言えます。一連の政治改革で強くなった首相の権力を牽制するために、首相の解散権を制限することも必要ではないかと思うのです。

 衆議院では、内閣不信任決議案が可決されると、首相は解散か内閣総辞職のどちらかを選ぶことになります。この場合の解散は、首相の恣意的な判断での解散ではありません。

 ところが、現実には、憲法七条で、内閣の助言と承認により天皇が行う国事行為の一つとして、衆議院を解散することができます。この規定を見直して、衆議院の自律解散という考え方が成り立ち得るのではないかと考えます。衆議院議員の一定割合、例えば三分の二あるいは過半数の賛成で自律的に解散できる制度を導入するということです。

 首相の解散権を限定して、衆議院自らが解散権を持つことは、立法府と行政府との関係を質的に変化させます。立法府の権能が強化され、政府への監視機能が強まり、国民の権利を守ることにつながると考えます。

 衆議院自らが解散権を持つことは、立法府と行政府との関係を質的に変化させます。

 以上です。ありがとうございました。

三木委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の三木圭恵です。

 皆さん、大規模災害のときのケースを想定してお話をされておりますが、私は、日本が例えば戦争に巻き込まれたとき、侵略されたときのケースについてお話ししてみたいと思います。

 二〇二二年二月二十四日にウクライナがロシアに侵攻されて、あしたで二年三か月がたとうとしています。報道によると、ロシア軍は、五月上旬に、ウクライナ北東部ハルキウ州を北方から急襲し、主戦場だった東・南部に続く新たな戦場を開き、砲弾や人員不足に苦しむウクライナ軍は、兵力分散を狙ったロシア軍の多方面攻撃にさらされ、厳しい状況に追い込まれたとされています。新聞の紙面には、ロシア軍のミサイル攻撃を受けたハリコフ州で消火活動に当たる消防士と、無残に破壊された建造物が掲載されていました。

 毎日のように戦況が伝えられているウクライナですが、現在でも停戦などにはほど遠い状況と言わざるを得ません。

 死者は、ウクライナでは、二〇二四年二月二十六日のゼレンスキー大統領の発表では三万一千人、ロシアでは、二〇二四年四月十八日の報道によると、確認できた死者は五万人を超えると言われています。お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、一日も早く平和が訪れることを願わずにはいられません。

 そのような中、ゼレンスキー大統領の任期が五月二十日に満了しました。ロシアの侵略に伴う戒厳令下では選挙は禁じられており、ゼレンスキー政権が継続することになりました。戒厳令に伴い昨秋の国会議員選挙や三月の大統領選挙が見送られましたが、キーウ国際社会学研究所が二月に行った調査では、国民の六九%が、戒厳令が終わるまでゼレンスキー氏が大統領を務めるべきだと回答しました。

 私たちが任期の再延期を司法の関与の下で可能とすることとしているのは、戦火に見舞われたこのようなケースを想定しているものです。

 先週、北側幹事の方から、災害対応であれば任期延長は一年間という期間を区切ることでお手盛りを心配することがなくできるのではないかという御発言がございましたが、このようなウクライナのケースでは一年間では平時に戻っていないことを明確に証明しておりますので、そういった意味で、私たちは、任期の再延期というものを司法の関与の下で可能とすることとしているということをまず述べさせていただきたいと思います。

 ここで、もう一点申し上げますと、ウクライナでは、戒厳令下での国政選挙は禁じられているものの、憲法では、大統領選については、戒厳令下の記述がありません。

 選挙実施が不可能であることは、ロシアが現在、ウクライナの国土の二割を占領し、東部ハリコフ州などで攻勢を強めていることや、戦火を逃れて国内外の各地へ避難している市民が、国民が多数であること等々で明らかでありますけれども、もし仮に実施した場合は、投票機会の平等、公正性や安全確保の面で課題が多いと考えられます。先ほどの調査でも、選挙をした方がよいと答えた人は一五%にとどまっています。

 このような条件でゼレンスキー氏が暫定大統領となるため、ロシアは既に、その正統性や合法性に疑問を投げかけるプロパガンダを始め、ウクライナを揺さぶろうとしています。ウクライナにおける緊急事態条項が大統領の任期について記述がなく不完全であったために、戦時に国民を分断させるプロパガンダに利用されること等を考えると、想定外、想定外と慌てずに済むように、憲法や法をしっかりと整えておくことがいかに大切か考えさせられます。

 また、もし仮に、このような戦況の下、国政選挙や大統領選挙を行ったとすれば、敵国であるロシアからのフェイクニュース等を使用した情報戦は避けられず、武力での攻勢を強められた際には一層不利になることは大いにあり得ます。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ側と何らかの合意に至ることがあっても、我々は合法な政権との間で文書に署名しなければならないと発言をしています。万が一にもプロパガンダに染められた選挙結果になれば、ウクライナが国家として存亡の危機に瀕することは火を見るより明らかではないでしょうか。

 日本も、いつ何どき台湾有事が起き、緊急事態に陥るやもしれません。このことを想定できるのに想定しないのは不作為ではないでしょうか。もちろん、想定していても戦争が起きないのに、侵略されないことにも、こしたことはありませんが、日本は今、そうした危機に対して万全の備えができていると言えるでしょうか。緊急時における議員の任期延長、能動的サイバーディフェンス、フェイクニュースなどによる外国勢力の選挙介入からの防護、情報戦への備え等、どれを取っても不完全であり、諸外国に後れを取っている状態と言わざるを得ません。一日も早く、一つ一つ課題を解決し、日本国のためになる政治を行っていかなければなりません。

 中谷筆頭幹事、起草委員会の設置はまだでしょうか。いつまでも立ち止まっていては、いざというときに国民を守れません。御決断をお願いしまして、私の意見表明といたします。

 御清聴ありがとうございました。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 先ほどの細野さんの質問で、東日本大震災当時、逢坂さんが総務大臣政務官でいらっしゃったと聞きまして、初めてそのことを知りました。

 あのとき、二〇一一年三月十一日ですよね、震災は。一番最初に総務省が、当時、急いでやった特別立法というのは何かというと、まさしく選挙期日を延ばす法律だったんですよね。

 ちょっと調べてみましたら、三月十一日に震災があったんですが、統一選は四月十日が前半の投票日だったんです。四月十日が投票日ということは、知事選の告示は三月の二十四日だったんですよ。もうあと、震災の日から十三日後に知事選の告示日がある。さらに、引き続き政令市の告示、それから県会、政令市会の告示と、ずっと続くわけですね。

 だから、総務省が、あの震災があったときに、様々な対応をしないといけないんですが、この統一地方選挙がもう迫っているわけですね。これをこのままやっていいのかということが当然総務省内で議論になって、これはできないということで、特別立法を国会の方に提出をされるんですね。

 この特別立法が成立するのが早いんですよ。それはもう告示が迫っていますから。三月の十八日、三・一一の一週間後にはこの特別措置法が参議院で可決されて成立をして、三月の二十二日に公布されているんです。それで何とか二十四日の知事選の告示に間に合わせたということなんですね。

 当時、総務大臣は片山さんですよね。片山さんが、この法案の質疑のときに、こういう答弁をしているんです。繰延べ投票というのは、これはちょっと趣旨が異なりまして、告示をして既に選挙が走っている間に、その選挙期間中に何か不測の事態が生じて投票できないといったときに投票日を延ばす、これが繰延べ投票ですと大臣は答弁されて、この法案、今申し上げた東日本大震災に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例法案は、もう目前に迫った四月の選挙で今月中にも告示が始まったりしますので、これは急いで手当てをしないといけないということでこの法案を出したんです、こういう答弁を当時されているわけです。

 まさしく逢坂さんは、大臣政務官であれば、当然、この法案の立案、作成にも関わっていらっしゃったと思うんですよ。だから、こういう事態には、繰延べ投票ではなくて、選挙期日を延ばすという形で新たな法律を、被災地全体で適用になるようにしたわけですね。

 これがもし衆議院議員選挙であったり参議院議員選挙であったならば、これも同様に、繰延べ投票ではこれは困難であって、長期間、選挙実施が困難、見通せないわけですから、その場合にやはり特別な措置を取らないといけないというのは、私は、当時そういう政務官をされていらっしゃったのならば、それはそういう問題意識を持っていらっしゃったというふうに思うんですけれども、いかがですか。

逢坂委員 当時、私も、片山大臣と随分この問題、話をしました。そのときの大原則は、選挙期日はなるべく変えない、それから、決められた選挙というのはなるべくそのとおりやるんだ、これが民主主義の大原則であるという議論を相当大臣室でもやりまして、しかしながら、この事態の中では、もう一週間後、十日後に迫っているものについては何の対策も講じられていない、だから、必要最小限で何をすべきかということで、ああいう結果になったと承知をしています。

 それから、繰延べ投票についても今るるお話がございましたけれども、繰延べ投票そのものについても、現行制度でいいのかどうかという議論もありました。ただ、あの時点で、繰延べ投票を変えるというようなタイミングではありませんでしたので、そのことについての深い議論というのは残念ながらなかったということであります。

 以上です。

北側委員 私は、阪神・淡路の震災の経験者です。そのときに、やはり同じような法律を作っているんですね。作っているんですよ。選挙期日を延期する、任期を延長するという法律を阪神で作っている。東日本は、初めてじゃないんです、二回目なんですね。そういう意味では、実績があったわけですよ。こういう大震災、巨大地震が起こったときにはこういう仕組みで、やり方でやるしかないという御判断が総務省には私はあったと思いますよ。

森会長 発言時間が終了いたしました。

逢坂委員 一言だけ。

森会長 手短に御答弁願います。

逢坂委員 私も繰り返し言っているんですけれども、九三年の奥尻、それから九五年の阪神・淡路、それから二〇一一年の東日本、こういう大震災があって、そのときに選挙をどうするんだという議論はあったことは私も十分承知はしています。特に、九三年の奥尻は、解散の真っ最中でありましたので。

 ただ、私が何度も指摘しているのは、そういうことがあったにもかかわらず、災害に強い選挙の在り方について、問題点は指摘するけれども、それじゃ具体的な対応、対策が取られているかというと、十分ではないと思うんですね。だから、そこの対策をまずしっかりやろうと。

 例えば、選挙時の自治体間協力なんかも、これは十分議論されているわけではないし、その対応がつくられているわけではないんですよ。消防でいうならば、例えば緊急消防援助隊なるものがあって、災害時にお互い協力し合おうということをやっているわけですよ。

 だから、そういったことも頭に置きながら、どうやって災害時に選挙が執行できるかということを、八方手を尽くそうというのが私の今の思いです。

北側委員 一言だけ。

森会長 どうぞ。

北側委員 今おっしゃっていることに反論、誰もしないですよ。みんなそう思っているわけです。

 そうじゃなくて、東日本大震災のような、そういう震災が例えば衆議院の解散の直後にあった場合に、その場合にどう対応するのかという話をしているわけでして。奥尻のお話がありました。今年も能登の地震がありました。そういうことを想定しているわけじゃないんです。今回の法改正というのは、憲法を、条項を触ろうというのは、そういうことじゃなくて、東日本大震災のような巨大地震、広範な、長期間、そういう、選挙が困難だというふうに認められる場合にどうするか、その場合に国会機能をどう維持するんだということを問うているわけです。是非御理解いただきたいと思います。

森会長 議論はまだ続きますが、時間が経過していますので、後日、逢坂君には御答弁願います。

山本(有)委員 自民党の山本有二でございます。

 緊急時、選挙困難事態における衆議院議員任期延長論に賛成の立場から発言させていただきます。

 この憲法審査会で早急な合意、これをお願い申し上げたいと思います。

 そこで、幾つか皆様に御教示いただきたいことがございます。

 まず、第一番に、選挙の延期と衆議院任期の延長のそもそも論について申し上げます。

 衆議院は、選挙によって国民主権的契機を付与されます。もし選挙がなければ、国民主権とは無関係の存在となってしまいます。その任期延長手続は、内閣が提案し、国会が承認するわけであります。

 この内閣の提案は、より具体的で、議員の権能についても限定列挙していなければならないと思います。国会の三分の二の特別決議で承認されるといたしましても、国民主権的契機を付与できるものではないからであります。あくまでも例外的措置であるとの原理原則にのっとった趣旨であるべきであります。

 特に、ワイマールなどの、少しの隙間から民主主義は崩壊する歴史の教訓に鑑み、この期間や延期した議員の権能の制限も憲法にしっかりと明記すべきではないかと思うのであります。つまり、内閣の提案において、法律や政令での委任事項はできる限り禁止すべきであろうと思っております。

 次に、選挙の一体性についての御教示を賜りたいと思います。

 選挙実施が困難という事実が日本国の国政選挙における一体性を損なうこと、つまり、比例区などの選挙の結果が決まらないというようなことを具体的にどうするかという議論でございます。

 選挙が困難という事態は、災害の大小、被災者の人数、各県にまたがるか否かの事情もさることながら、選挙事務において必須の条件としては、選挙人名簿の確定が必要でございます。選挙人名簿に登録される条件は、その市町村の住民票が作られて三か月以上たっている十八歳以上の方々のことでございます。災害による死亡、行方不明など、生存、安否の確認が取れなければ、名簿は確定できません。もし名簿が確定できたならば、むしろ選挙を施行しないことの方が行政の不作為になってしまうのではないかと思っております。

 ところで、東日本大震災、原発災害のありました福島県大熊町の町民は、震災前、一万一千五百五人の人口でありました。死者百三十六名、津波による全壊家屋四十八棟、地震による全壊家屋二百七十二棟などの被害でございます。特に、原発立地地域であるため、全町域が避難指示区域、警戒区域となって、全町民が大熊町から離れざるを得ませんでした。いわき市に四千六百七十二人、郡山市に一千七十二人、会津若松市に七百七十八人と、住民はいや応なくふるさとを後にしました。

 それでも、現在は、帰還困難区域、一部指定解除となって、徐々に帰還できるようになりました。町の公表によりますと、現在の住民登録は一万三百七十二人、うち帰還できた者は六百九十四人、町民の僅か六・七%しか帰ることができておりません。しかし、自治体として、町長も議員も選挙で選ばれています。また、衆議院選挙、参議院選挙も実施されているのであります。では、投票しているのはどこで投票しているかといえば、いわき市であったり、最寄りの被災者、避難者が投票可能な投票所で投票しているのであります。つまり、必ずしも被災地で投票するという常識は不要としているのであります。

 被災者の皆様に寄り添いながら、その方々の参政権という人権を守り抜く必要があります。被災地域の方々を全国民が支援、協力して、一日でも早く選挙ができるような体制、すなわち選挙人名簿を作ることに協力をしてあげる必要がございます。そうであるならば、選挙人名簿が確定されるまでの間、衆議院議員任期の延長も可能とするという理解が正しいのではないかと思っております。皆様からの御教示をよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 緊急事態条項について、本審査会での討議の状況を振り返りますと、昨年の臨時国会までに総計三十三回、延べ二百七十九人の委員による発言、そして討議がなされております。既に十分な討議がなされ、昨年の臨時国会の終わりに、中谷筆頭幹事から、具体的な条文案の起草のための機関を本審査会につくることが提案され、今国会においても、同様の提案が多くの委員からなされております。

 論点整理についても、前々回の審査会、令和六年五月九日において中谷筆頭理事から詳細に説明がなされましたし、前回も船田幹事から、自民党たたき台素案からの主な変更点を提示いただいたところです。

 まず、本審査会では、緊急事態においても国会機能を維持することが必要であるとの観点から、選挙実施が困難な事態に任期延長できるように改正するための議論がなされ、論点整理が行われました。

 論点は既にほとんど出尽くしており、例えば広範性、すなわち、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において選挙が困難な事態についての具体的な基準は選挙延期の法律において定めることや、七十日を超えて選挙が困難な事態という長期性の要件についての考え方を始めとする議員任期の特例の枠組みのほか、議員任期延長中については内閣不信任決議を禁止しないこと、また閉会禁止、解散禁止についても異論がないと思います。

 既に、緊急事態における議員の任期延長についての議論は尽くされ、機は熟しています。反対のための反対ではなく、早急に条文起草に入り、具体的な条文案を基に議論を行うべきです。

 以下、緊急事態条項全般についての意見を申し述べます。

 まず、日本国憲法は占領下に制定され、そもそも主権のなかった日本に、主権に基づく緊急権を認めておりません。

 当時、日本政府は、緊急事態条項の創設を主張いたしました。衆議院の解散等の国会召集ができない場合で、特に緊急の必要があるときに、国会の事後承認を条件として、国会による法律の制定、予算の議決に代わる、政府による閣令の制定を可能とする規定を憲法に設けることを主張したのです。しかし、GHQに拒否されたため、妥協して、参議院の緊急集会のみ規定されました。そういう意味では、主権回復後に緊急事態条項を定めるべきでありました。

 そもそも、緊急事態における国家緊急権とは、芦部信喜先生によりますと、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限のことです。

 憲法は国家権力を縛るものであり、それこそが立憲主義であるという考え方がありますが、国家の存立なくして憲法は効力を持ち得ないし、国家が消滅すれば憲法も終わる、そうだとすれば、国家の存続が危うくなっている事態において国家緊急権を認めることは、立憲主義の前提としての国家の存立を維持するために必要です。

 緊急事態条項を論ずる場合、政府による緊急対応措置ができるようにしておくことと、議会によって民主的統制を可能にしていくことは必須です。通常の立法手続では対応が困難な場合、事後の国会承認を条件に、臨時で必要な政令を作ることや緊急財政処分ができるようにすべきです。どのような場合にどのような手続で緊急事態条項を発動するかを憲法に定め、その濫用の危険がないように、国会による関与を定めることが立憲主義からの要請だと思います。

 また、事前に想定できる緊急事態への対応は、法律で定め、委任命令の対象範囲を具体的に指定することが可能です。しかし、あらかじめ想定できない緊急事態への対応については、事前の立法では対応できないので、一時的に緊急政令制定権を内閣に与える憲法条項を定め、国会の関与についても憲法上規定する必要があります。

 さらに、緊急時における人権の制約については公共の福祉の解釈で対応するという考えは、その内容が曖昧ゆえに、かえって立憲主義に違反するおそれがあります。緊急時における基本的人権の制約についての考え方も憲法に明記することが望ましいと考えます。

 いずれにしても、緊急事態対応における議会のチェックは極めて重要であり、そのためにも、緊急時の国会機能維持のための議員任期延長を可能にする憲法改正は早急に行うべきであり、この点に限定した条文策定作業を早急に行い、その上で、緊急事態措置についての議論を深めるべきと考えます。

 以上です。

逢坂委員 会長にお許しいただいて、最後に短く。

 まず一つ、災害に強い選挙を実現しなきゃならないというのは、多くの人は誰も反対しない、これは全くそのとおりだと思います。

 それから、もう一点、両議員がいるにもかかわらず、震災などによって国会機能が失われるという場合、これの対策もしなければならないというのは、多くの人は全く同感だというふうに思います。

 私が問題視しているのは、この問題点二つは、みんな、そうなんだと言いながらも、じゃ、それに対する具体論をやっているか、具体的対策が今講じられているかというと、そこが講じられていないところが問題だと。それで、八方手を尽くしてやってみて、それでもなお穴があるというときになって初めて、私は、憲法改正の立法事実というのは出てくるんだと思うんですね。

 だから、まだそこまでいっていない中で条文案を考えるというのは、私は、今の段階は早いのではないかという思いを持っています。

 それから、もう一点ですが、これは一般論としてよく言われることですが、緊急時に備えるということは、これはもう本当に大事なことで、大変重要なことで、まさに国会議員がやらなきゃならないことなんですが、ただ、危機をあおってあおって、緊急時対応が、過去の歴史を見ると、過大になり過ぎて悲惨なことを招いた歴史もあるのも事実であります。

 だから、緊急時の対応をするということについては、慎重の上にも慎重さを持ってやるべきだというのが私の基本的な思いです。

 以上です。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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