第10号 令和6年6月13日(木曜日)
令和六年六月十三日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君
幹事 寺田 稔君 幹事 中谷 元君
幹事 船田 元君 幹事 逢坂 誠二君
幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君
井出 庸生君 井野 俊郎君
井上 貴博君 伊藤 達也君
石破 茂君 稲田 朋美君
岩屋 毅君 越智 隆雄君
大串 正樹君 城内 実君
黄川田仁志君 熊田 裕通君
中西 健治君 長島 昭久君
古川 禎久君 古屋 圭司君
細野 豪志君 三谷 英弘君
山下 貴司君 山田 賢司君
山本 有二君 大島 敦君
奥野総一郎君 城井 崇君
近藤 昭一君 階 猛君
篠原 孝君 牧 義夫君
谷田川 元君 吉田はるみ君
青柳 仁士君 岩谷 良平君
小野 泰輔君 三木 圭恵君
大口 善徳君 河西 宏一君
國重 徹君 赤嶺 政賢君
玉木雄一郎君 北神 圭朗君
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衆議院法制局長 橘 幸信君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
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六月十日
憲法改悪を許さないことに関する請願(志位和夫君紹介)(第二〇九七号)
同月十二日
憲法改悪を許さないことに関する請願(笠井亮君紹介)(第二三五八号)
同(志位和夫君紹介)(第二六一七号)
は本憲法審査会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)
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○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内といたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
○中谷(元)委員 自由民主党の中谷元であります。
本日は、選挙困難事態における国会機能の維持につきまして、お手元配付の資料に基づいて発言したいと思いますので、資料を御覧ください。
この資料は、昨年六月十五日の論点整理と、その後の各委員の発言を踏まえて、国会機能維持条項に盛り込むことが考えられる事項の骨格を私なりに整理したものであります。
この資料の作成に当たりましては、公明党北側幹事、日本維新の会馬場幹事、国民民主党玉木委員、有志の会北神委員から、詳細かつ丁寧なアドバイスをいただきました。心から感謝を申し上げます。
まず第一は、選挙困難事態における選挙期日・議員任期の特例であります。
最初の、選挙困難事態の認定の(1)につきましては、対象となる緊急事態の範囲は、1自然災害、2感染症の蔓延、3武力攻撃、4テロ・内乱の四つの事態に加えて、その他これらに匹敵する事態と、考えられる全ての事態を含んだものといたしました。
その上で、実質的な要件は二つです。
一つは、これらの事態により、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において、衆参議員の総選挙、通常選挙の適正実施が困難なことが明らかであるということ。もう一つは、解散や任期満了日から七十日を超えて、その選挙の適正実施の見通しが立たないということであります。
この二つの要件を満たす場合には、まず、選挙の実施の可否に関する情報を把握している内閣が、選挙困難事態と、それが継続する期間の見通しについての認定を行います。その期間は、最長でも六か月と制限をしております。
次に、この認定については、(2)で、衆参両院の三分の二以上の特別多数による事前承認、これを必要といたしました。できるだけ多くの国会議員の英知を結集してその適否を判断させるために、解散や任期満了によって任期が終了している国会議員もこれに関与させることといたしております。
次に、選挙困難事態の期間は、延長、再延長が可能ですが、通算で一年を上限といたしました。東日本大震災の際も一年以内には選挙実施が可能になったという立法事実を参考にしたものでありますが、これによりまして濫用を防止することになると考えました。
また、濫用防止に関しては、複数の会派から御提案をいただいております司法の関与がありますが、これについては、客観訴訟の創設といった形で対応したいと考えております。
また、選挙困難事態の認定があった場合の一つの効果が、2の選挙期日の特例、すなわち選挙の延期です。
ここでは、選挙は選挙困難事態の期間の経過後速やかに行うとするとともに、期間の経過前であっても選挙の適正実施が可能と認められるに至ったときは速やかに選挙を行わなければならないということといたしました。早期の選挙の実施は民主主義の根幹だからであります。
その上で、その選挙が延期されている期間に議員が不在となる穴を埋めるためには、二つ目の効果として、3の(1)、議員任期の特例について定めることになります。
ここでは、阪神・淡路大震災や東日本大震災のときの地方選挙の特例法を参考にして、その任期は、延期された選挙期日の前日まで延長するといたしました。
なお、解散又は任期満了によりまして既に任期が終了している国会議員は、当該認定の日に再び国会議員となったものとみなして、その任期を延長することといたしましたのは、衆議院の場合は解散による任期終了がほとんどですから、このような手当てをしないと意味がないということでございます。
なお、国難に対処するに当たって、どうしてもこの総理の下では国が沈没してしまうという場合もあり得ますから、いろいろとこれは御議論があるところでございますが、内閣不信任決議は禁止しないということといたしました。
また、選挙ができないということは国民投票もできませんから、(3)のように、憲法改正も禁止されるということになります。
第二は、参議院の緊急集会の機能拡充です。
憲法五十四条では、衆議院総選挙は解散から四十日以内に実施しなければならないことになっておりますが、四十日以内の実施は困難だが七十日以内には実施できる見通しがあるときにはどうするのかということに対しましては、四十日を超えた総選挙が憲法違反にならないようにするとともに、このような場合も参議院の緊急集会で対応ができるということを明確にいたしました。
また、任期満了による衆議院不在の場合の緊急集会の開催につきましても、憲法五十四条の類推適用といった不安定な解釈に任せておくのではなくて、明文でこれを認めるということにしました。
これらのことを正確に御理解いただければ、私たちが決して参議院を軽視していないということ、むしろ参議院の緊急集会の機能を充実させたいと思っていることがお分かりになると思います。
最後に、第三のオンライン国会につきまして、国会議員が議場に参集することが困難なときその他特別の事情があるときはオンライン出席ができるということも憲法に明記することといたしました。
以上が、私なりの総括的な論点整理であります。
本日私が整理した各項目につきましては、既に幾つかの課題も指摘をされておりますが、これらの点につきましては、賛成でも反対でも結構ですので、是非、委員各位から率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。それがこの憲法審査会での使命であり、国民の声を代弁をするということになります。
そして最後に、私の発言と補足資料によりまして、お互いの議論が建設的なものになりまして、この論点がますます深掘りをされて、最終的に、全会派が参加する条文案の作成につながることを心から期待をいたします。
引き続き、各委員の御協力をお願い申し上げまして、私の冒頭発言を終わります。
ありがとうございました。
○森会長 次に、逢坂誠二君。
○逢坂委員 おはようございます。立憲民主党の逢坂誠二でございます。
先週、憲法五十三条に関し発言がありました。憲法五十三条には、いつまでに臨時国会を召集しなければならないのかの期限の定めがありません。我々は、この期限は法律で定めることができるとの認識の下、臨時国会の召集期限を定める国会法の改正案を、日本維新の会など五党一会派共同で衆議院に提出をしました。
一方、この期限の定めについては、先週玉木委員が指摘されましたとおり、憲法で定めるべきとの考えもあります。この指摘も踏まえ、法律でよいのか、憲法でよいのか、この点について、今後更に議論を深めたいと考えております。
次に、国民投票に関し、憲法審査会事務局にお尋ねします。
国民投票法に関連し、今後、法律、規程の制定、改正など、どのような法整備が必要となるのか、お知らせいただきたいと思います。
○橘法制局長 逢坂先生、御質問ありがとうございます。
国民投票実施のための法整備として、まず挙げられるのは、令和三年の国民投票法改正案、いわゆる七項目案の改正法附則四条に規定されております二つの事項、すなわち、一つ、投票環境整備に関する事項と、二つ、国民投票の公平公正の確保に関する事項、これらについて検討し、その結果、法整備が必要と判断された場合には、そのための措置を講ずることが想定されております。
もう一つ、国民投票実施のために最低限必要な法整備としては、憲法改正の発議がなされた場合に国会に設置される国民投票広報協議会に関する諸規程の整備が挙げられます。
国民投票法において具体的に明示されている規程としては、広報協議会とその事務局の組織に関する広報協議会規程と事務局規程、そして広報協議会が行う放送CMや新聞広告等に関する広報実施規程、この三つのものがあります。
なお、これらの規程の整備に併せて、その事務局職員を国会職員に追加するための国会職員法や国会職員育児休業法などの法律改正も必要となるかと存じます。
以上です。
○逢坂委員 これらの法改正や規程の整備、これは、衆議院の憲法審査会のみで議論し決定するものではなく、別の場での議論や決定が必要なものがあるというふうに承知をしておりますが、これらの法改正や規程の整備に関し必要な手続とはどのようなものか、事務局としての見解をお示しください。
○橘法制局長 お答え申し上げます。
まず、国民投票法や国会職員法等といった法律の改正につきましては、通常の議員立法の立案、審議手続と変わるところはございません。その法案の所管については、国会法第百二条の六の規定によりまして、国民投票法改正案は憲法審査会、本審査会の所管となりますが、国会職員法等の改正案につきましては議院運営委員会との御協議が必要となるかと存じます。
次に、広報協議会に関する諸規程につきましては、両院の議長が協議して定める、いわゆる両院議長協議決定と呼ばれる法形式で定めることとされております。これは、原則として、両院の議長がそれぞれの議院運営委員会又はその理事会に諮って定めることとされているものでございます。したがいまして、これらの規程の制定に当たっては、衆参の憲法審査会の間での御協議、そしてそれぞれの議院運営委員会との調整、これが必要となってくるものと思料いたします。
なお、この両院議長協議決定は、通常の法律案の制定手続とは異なり、衆議院と参議院が先議、後議の関係に立つものではございません。それぞれの議院で同一の案文を決定し、それを両院議長が決裁するという手続になってくる点にも御留意が必要かと存じます。
以上です。
○逢坂委員 ありがとうございました。
それでは次に、常々私が指摘しております災害に強い選挙の確立については総務大臣や政治改革特別委員長に、また、あらゆる場面における国会機能の維持強化については議院運営委員長に、これらの検討について憲法審査会としてお願いすべきではないかと考えております。今後、これらの点に関しても議論を深めてまいりたいと思います。
以上で私の発言は終了しますが、篠原委員から、先週の御自身の発言に関し補足説明をしたいとの申出があり、中谷筆頭の御了解をいただき、私の持ち時間の範囲で発言させていただきます。
○森会長 では、逢坂誠二君の残り時間の範囲内でこれを許します。篠原孝君。
○篠原(孝)委員 立憲民主党の篠原です。
御質問とか御指摘とかがあったらと思っていたんですが、先にさせていただきます。
ちょっと、山田委員の方からちょっと誤解、ほかの方もちょっと誤解、わざと誤解されているような気がしないでもないので申し上げますと、私、緊急命令が一番いいなんて一言も言っていません。緊急命令もないのに議員の任期だけ延長するというのは急ぎ過ぎじゃないかということだけです。それだけですから、そこは誤解のないように。この点だけは一言だけ申し上げておきたいと思います。
その後、御質問とか御指摘があったら、また後ほど答えさせていただきます。
以上です。
○森会長 次に、岩谷良平君。
○岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。
本日、自民党の中谷筆頭幹事からメモが示されました。議論のたたき台として有用なものであると思いますので、このメモも参照しつつ、自民党を中心に、公明党、立憲民主党にも質問させていただきますので、二巡目以降で結構ですのでお答えいただきたく、お願いいたします。
まず、裁判所の関与について、自民党にお伺いをいたします。
先週の審査会で自民党の中谷筆頭から、前々回の私の客観訴訟の具体的制度設計についての質問に対しましてお答えを頂戴しました。原告を一定数以上の国会議員に限ることや、最高裁のみの一審制とすることなどを一案として示されました。
客観訴訟であれば法律で規定することになりますが、議員任期延長の歯止め措置であるため、詳細な制度設計は憲法改正条項と同時に内容を詰めていく必要があると考えます。
そこで、もう一点お伺いしておりました判決の効力について、拘束力を持たせるのか等についても御検討いただき、お答えを頂戴できればと思います。
また、同様の質問を公明党にもさせていただいておりますので、引き続き御回答をお待ちしております。
なお、その制度設計を、仮に、最高裁のみの一審制で、衆参の各四分の一以上の国会議員が訴えを起こすことができ、さらに、判決の効力に拘束力を持たせないとすれば、国民民主党、有志の会の案とほぼ同じ内容になると思います。
自民党にお伺いをいたしますが、そうすると、異なる点は、裁判所の関与を憲法に規定するか、あるいは法律で規定するかということになると思いますが、国民や有志の案のように、最高裁の関与を憲法で規定することに問題があるとすればどのような問題があるとお考えなのか、お伺いをいたします。
この点、我々が主張する憲法裁判所による審査は、そもそも憲法裁判所を新たに設置することになり、その是非自体に多くの論点があり、多大な時間を要するとの御指摘もいただいているところでありますので、その御指摘も踏まえて、党内で議論を行ってまいりたいと思います。
次に、議員任期延長期間の上限について、自民党と公明党にお伺いをいたします。
お手盛りの危険を回避し、選挙権を守りつつ、国会機能を維持するために、自民党、公明党御提案のように、一年を上限とすることも意義があると考えます。
一方で、先日我が党の三木委員も指摘したとおり、例えば、仮に我が国が軍事侵攻された場合はどうかと考えますと、実際にロシアのウクライナ侵攻は既に三年目に入っております。あるいは、例えば新型コロナをも上回るような強毒性で感染性の極めて強い感染症が一年以上にわたって蔓延するような事態になると、任期延長の上限を超える可能性もあります。
そこで、自民党、公明党にお伺いしますが、その場合は、一年の経過後は衆議院議員が存在しなくなりますので、その後は参議院の緊急集会で対応するということになるのか、あるいは何か別のお考えがあるのか、お尋ねいたします。
次に、憲法改正の本気度について、自民党にお伺いをいたします。
先週、我が党の小野委員から、自民党の憲法改正の本気度を問われ、中谷筆頭は、私は本気ですと御答弁されました。自民党は本気ですではなく、私は本気ですとおっしゃったことに若干の違和感は覚えましたが、少なくとも中谷筆頭は本気だというように受け止めさせていただきました。
本日も、全会派が参加する条文案作成につながることを心から期待するとの御発言がありましたが、本日のメモをたたき台にして要綱案や条文案の作成を早急に行うことを求めてまいりたいと思います。
また、繰り返し求めてきたことでありますが、反対する立憲民主党、共産党が要綱案や条文案作成作業に参加されない場合、賛成会派のみでの条文案の起草を行うことを改めて提案をいたします。
次に、閉会中審査について、自民党及び立憲民主党にお伺いをいたします。
閉会中審査について、先週、中谷筆頭は、検討すると述べられ、また、閉会中も含めて全力で取り組んでいくともおっしゃいました。もう来週で今国会での当審査会は最終回でありますが、憲法議論に夏休みは必要ありません。議論を深めていくために、繰り返し提案しているとおり、我々は閉会中審査を行うべきと考えます。中谷筆頭の御発言から、自民党も閉会中審査を求めるということで理解させていただきましたが、間違いありませんでしょうか。確認させていただきたいと思います。
また、立憲民主党にもお伺いいたします。
国民投票法附則四条について、期限は九月十八日であるので、先に議論して結論を得るべきと主張されておられますが、先か同時並行かは別として、議論し、早期に結論を出すべきとの御主張には賛同いたします。そのためには、もうあと一回しかないわけですから、閉会中審査にも当然賛成していただけると考えますが、いかがでしょうか。
引き続き、立憲民主党にお伺いいたします。
緊急時における国会機能維持条項のうち、議員任期延長規定創設には反対だと理解しておりますが、その他の緊急時における国会機能維持規定、例えば閉会禁止や解散禁止、憲法改正禁止などについても反対なのでしょうか。
もう一点、立憲民主党にお伺いいたします。
現在、緊急時の国会機能維持策として、現行の参議院の緊急集会と繰延べ投票を活用し、できるところから選挙を行い民意を問うべきとの立憲案と、民意を問うことと国会機能の維持のバランスを図るために、議員任期延長を厳しい要件の下で認めるとの我々の案の二案があります。
徹底的に民意を問う努力を尽くそうとの立憲民主党の御主張には敬意を表するとともに、それだけ民意を大事にされる立憲民主党でありますから、国民の皆様に国民投票でまさに民意を問うことには反対されないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、公明党さんにお伺いいたします。
五月十六日の当審査会における私からの質問に対しまして、北側幹事から、解散を禁止しながら不信任を認めることは三権分立の観点から議論があるとされつつも、内閣不信任案の提出についてもできるという判断もあり得るのかなというお答えがありました。
私は、緊急時において、解散を禁止しつつも内閣不信任を認めることも、三権分立の中で認め得る制度だと考えます。この点について、公明党内で議論がなされ、内閣不信任を認めないとの従来のお考えに変化があったのであれば教えていただきたいと思います。
以上、閉会中も当審査会を開催し、賛成会派のみでも条文案を起草し、国民の皆様に国民投票で御判断いただく、すなわち民意を問うべきであることを申し上げまして、私の発言を終わります。
ありがとうございました。
○森会長 ただいま岩谷君から自民党、公明党、立憲民主党に対しまして御質問がございましたけれども、二巡目以降に折を見て御答弁を願います。
次に、北側一雄君。
○北側委員 公明党の北側一雄です。
自民党の中谷幹事から、選挙困難事態における国会機能維持条項について御発言がありました。これまで二年半にわたりまして衆議院憲法審査会で最も集中的に議論されてきたテーマの論点について、自民、公明、維新、国民、有志の会の五会派の意見を集約したもので、中谷幹事の発言内容に全面的に賛同申し上げたいと思います。
私からは、当審査会で指摘された幾つかの課題について、補足の意見を申し述べます。
まず、緊急時でも、国政選挙期日の延期ではなく、繰延べ投票で対応できるとの意見があります。
公職選挙法五十七条は、天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、繰り返しますが、投票所において、投票を行うことができないときは、選挙管理委員会は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない、この場合において、当該選管は、直ちにその旨を告示するとともに、更に定めた期日を少なくとも二日前に告示しなければならないと規定しております。
しかしながら、この繰延べ投票制度の想定しているのは、集中豪雨などで地域の限られた投票所で投票できない場合に短期間投票を繰り延べるというものです。
私どもの言う選挙困難事態とは、巨大地震の発生など国難とも言える緊急事態時に、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかであると認められる事態をいいます。
二〇一一年三月の東日本大震災の際は、被災地の岩手県、宮城県、福島県と茨城県水戸市において、四月に予定された統一地方選挙が、繰延べ投票ではなく、特例法の制定により選挙期日が延期されました。当時の投票所の数は、岩手県三十四市町村で一千百三十一か所、宮城県三十五市町村で九百七十三か所、福島県六十市町村で一千三百二十一か所、茨城県水戸市で七十六か所に及びました。合計三千五百一か所の投票所で、選挙期日が最長二百十日延期されたものです。
また、選挙人である有権者数は、二〇一一年九月当時で、岩手県で百九万七千五十三人、宮城県で百八十九万八千三百十七人、福島県で百六十四万八千百八十七人、茨城県水戸市で二十一万八千七百三十六人、合計四百八十六万二千二百九十三人の有権者数です。これは、繰延べ投票制度の想定する範囲をはるかに超えるものと言わなければなりません。
ちなみに、選挙困難事態において繰延べ投票を行うとした場合、選挙の告示の日は維持されますから、選挙運動期間は極めて長期となり、選挙運動や政治活動の制限が適用されることになります。これに対して、先週の審査会では、制度の法律改正で対応できるとの意見がありました。しかしながら、長期間投票を繰り延べる場合に選挙運動期間を短縮する旨の法律改正を行うとすれば、それはもはや繰延べ投票ではなく、国政選挙の一部を延期する法律改正であり、憲法五十四条一項との関係でやはり問題があると言わなければなりません。
次に、国政選挙の一体性について述べます。
国政選挙は、衆議院選挙、参議院選挙を問わず、同時期に全国で一斉に実施されるのが大原則です。国政選挙の一斉実施原則の趣旨は、その時々の選挙時において、国政に係る重要な争点について国民の審判を仰ぐことになるからです。衆議院選挙であれば、そもそも政権の選択が争われますし、国民生活に大きな影響を与える経済政策、税制改正、社会保障改革などの個別の重要政策が争点にもなるでしょう。大災害時には、当然のことながら、災害復旧復興に向けての政府の取組、政策についての評価も争点になります。
私どもの言う広範な地域で選挙の適正な実施が困難な場合、その地域の選挙期日だけを長期間延期されると、選挙困難な広範な地域の多くの有権者にとって、そのときの争点について投票機会を失うことになり、公平公正な選挙と言えなくなるのではないでしょうか。また、民意を十分に反映した選挙と言えるのかも問題になります。
国政選挙全国一斉の原則に反し、選挙の一体性を欠くような状態で実施された国政選挙は、憲法四十四条、十四条一項、十五条から求められる公平公正な選挙の保障に反するおそれがあるとも考えられます。
次に、選挙困難事態の広範性要件について述べます。
選挙の一体性が害されるほどの広範な地域の判断基準は、明確に規定しなければなりません。その具体的な基準については、選挙延期の手続を定める法律において規定することになります。
ここでも、東日本大震災の震災地域の広範さが一つの基準になると思われます。東日本大震災の被災地域では、現在の衆議院選挙制度を前提にすると、比例東北ブロック、比例北関東ブロック、比例南関東ブロックの複数ブロックにまたがる地域で選挙が困難となり、さらに、選挙区選挙では十五選挙区で選挙が困難となります。試算では、総定数の一割を大きく超える六十九名が選出されないという結果となります。
南海トラフ地震、首都圏直下地震では、東日本大震災に比べ、はるかに広範な地域で選挙が困難となることが想定されます。投票できない有権者数、選出できない議員数も更に多大になります。また、南海トラフ地震、首都圏直下地震のような巨大地震の発生があると、直接の被災地域以外でも、相当な期間、経済活動、社会活動、国民生活等に多大な混乱、影響を与えることも考慮しなければなりません。被災地以外の地域だからといって、適正な選挙が実施できるとは限らないと思われます。
これまでの当審査会で何度も議論されてきましたが、参議院の緊急集会の意義について申し述べます。
国会は、二院制が憲法上の大原則です。参議院の緊急集会は、その例外となるものです。憲法五十四条二項、三項に定められた参議院の緊急集会は、参議院の極めて重要な権能ですが、ただ、同条の一項にあるとおり、衆議院解散後四十日以内に総選挙が実施され、その後の三十日以内に召集される国会で新たな衆議院が構成されるまでの一時的、暫定的な権能です。その性格から、当初予算案の議決や条約の承認、内閣総理大臣の指名などはできないと考えられます。
選挙困難事態が認定されるような国難とも言える緊急事態時には、国民の命と生活を守るために、国会は、平時以上に、必要な予算と法律を速やかに成立させるとともに、政府を監視する機能、役割を十全に果たさなければなりません。そのためには、フルスペックの国会であることが求められます。
そのためには、選挙困難事態における国会機能維持のため、厳格な要件と手続の下、国政選挙の実施を一定期間延期し、その間、国会議員の任期を延長することが必要です。
この改正条項要綱案を当審査会に示し、具体的にその課題、問題点を検討する時期に至っていると申し上げ、私の意見表明といたします。
○森会長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私はこれまで、現実の憲法破壊の政治を放置して改憲議論をすることは許されないと主張してきました。今国会でも、岸田政権は、憲法の原則をじゅうりんする法案を強行しています。とりわけ、憲法の平和国家としての理念を次々と破壊しようとしていることは極めて重大です。
まず、大軍拡予算の問題です。
政府は、五年間の軍事費を四十三兆円とする安保三文書の下で、今年度は、過去最大となる八兆円もの軍事予算を計上しました。防衛省の有識者会議では、四十三兆円にとどまらず、更に増額することまで議論されています。
財政制度等審議会が五月二十一日に政府に提出した建議書は、軍事費の増額を前提に、社会保障費や教育費など、国民の生活に不可欠な予算の削減を求めています。軍事最優先で、国民の暮らしを犠牲にするものであります。
この大軍拡予算を保障するため、いわゆる長期契約法を時限立法から恒久法に改定しました。自衛隊の兵器などの調達は、特例として、国庫債務負担行為の年限を十年まで可能とするものです。国会の予算審議権を侵害し、憲法の財政民主主義に真っ向から反するものです。
次に、武器輸出の問題です。
政府は、次期戦闘機をイギリスやイタリアと共同開発することを決め、その前提として、第三国への輸出を認めました。世界の紛争を助長し、武器輸出によってもうける死の商人国家への道を突き進むものです。そもそも、武器輸出禁止の原則は、衆参両院の全会一致の国会決議で確立した、憲法の平和主義に基づく国是です。一片の閣議決定で覆すなど、到底許されるものではありません。
さらに、政府は、アメリカとの最新鋭のミサイルの共同開発や、米英豪の軍事的な枠組み、AUKUSとの先端軍事技術の協力を進めようとしています。そのために、政府が指定する秘密を経済分野にまで拡大し、広範な民間労働者や技術者、研究者を政府の秘密保護体制に組み込み監視、処罰する制度の導入を推し進めています。軍事兵器の開発のために、憲法で保障された国民の知る権利や、思想、良心の自由、プライバシー権をじゅうりんするなど、断じて認められません。
米軍と自衛隊の一体化も重大です。アメリカのオースティン国防長官は、在日米軍司令官を大将に格上げし、作戦指揮権限を付与することを検討していると述べています。日本は、自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を創設する計画です。日米の司令部機能を統合し、自衛隊を米軍の指揮下に一層深く組み込んで、兵たん支援から敵基地攻撃に至るまで日米の一体化を推し進めようとしています。
公共インフラの軍事利用の強化も進められています。政府が空港や港湾の整備に予算を出すのと引換えに、地方自治体に確認書を結ばせ、米軍や自衛隊の優先利用を確保する仕組みがつくられています。その上、地方自治法を改定し、軍事利用を拒否する自治体には政府が指示を出して強制させることまで可能にしようとしています。地方自治を破壊し、自治体を国に従属させるものです。さらに、政府が食料の供給を確保できないと判断すれば、農家に増産や生産物の転換を強制する法案まで押し通そうとしています。まさにありとあらゆるものを軍事に動員しようとしているのが、岸田政権のやっていることです。
この憲法審査会では、いついかなるときも国会機能を維持するために改憲が必要だという主張が繰り返されています。しかし、今実際に政府・与党が進めているのは、国会の立法権も行政監視機能も形骸化させるやり方で、地方自治体も国民経済も強権的に動員する体制づくりです。国会機能の維持などというのは全くのまやかしであります。
今必要なのは、軍事力の拡大ではなく、憲法九条を生かした対話による外交努力です。戦争の準備ではなく、平和の準備こそ求められています。平和を希求する多くの国民と連帯し、憲法破壊の政治を転換させることに全力を尽くすことを述べて、発言とします。
○森会長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
憲法審査会は、本日、事実上、今国会の最終回だと思います。来週は不信任案も出るかもしれませんので、今日、最後だと思って発言をいたします。
結局、今国会では条文案どころか起草委員会も設置されず、岸田総理の今の総裁任期中の発議は不可能となりました。今、猛烈な徒労感を覚えています。これは岸田総理の政治責任が問われる事態だと思います。
また、条文案を出したらほかの法案審議を止めると言う立憲民主党さん、そのことに唯々諾々と従う自民党にも苦言を申し上げたいと思います。憲法審査会は本来、政局を持ち込まないという理念だったと思いますが、それが形骸化しています。この停滞する憲法議論は、停滞する日本、決められない日本を象徴しているように感じるのは私だけではないと思います。
他方、先ほど自民党の中谷幹事から御説明をいただいた内容にはおおむね賛成です。自民党に少しでもやる気があるなら、せめて起草委員会の設置だけでも今国会中に決めて、閉会中も憲法審査会を開き、本日御提出をいただいたメモや我々三会派の条文案を踏まえた条文化作業を進めることを求めます。
なお、篠原委員が緊急政令をここに加えたいのであれば、是非条文化作業に加わっていただきたいというふうに思います。
これまでの議論で、選挙困難事態に対応するには憲法改正が必要であることはもう明らかになったと思います。
本日も、前回の審査会で立憲民主党の本庄幹事の繰延べ投票で対応できるという発言に今日は反論しようと思ったんですが、いらっしゃらないので残念なんですけれども、反論したいと思います。あわせて、自民党の山田委員の質問にも答えたいと思います。
まず、本庄委員が提起した幾つかの論点について反論いたします。
まず、東日本大震災の発災の六日後の平成二十三年三月十七日、地方議員の任期延長特例法を審議した国会において、任期満了時に選挙を適正に行うことが困難な場合に、繰延べ投票の適用の可否が問われました。このことに対して、当時の片山総務大臣は次のように答弁しています。「御指摘の繰り延べ投票というのは、これはちょっと趣旨が異なりまして、告示をして既に選挙が走っている間に、その選挙期間中に何か不測の事態が生じて投票できないといったときに投票日を延ばすということであります。」と。
これは公選法を所管する総務大臣の答弁でありますけれども、まず、繰延べ投票は原則、総選挙の公示後や参議院通常選挙の告示後に緊急事態が発生した場合にしか適用できません。もし公示や告示の直前に大規模災害等が発生したときに繰延べ投票をあえて適用する場合は、選挙実施困難だと分かっているのに、いわばダミーの選挙期日を公示又は告示した上で投票を繰延べすることになります。しかし、これは、選挙や繰延べ投票の在り方の本来の制度趣旨に反するものだと言わざるを得ません。
その上で、前回の最初の答弁について反論したいと思います。
本庄委員は、公選法第三十三条の二によって、衆議院議員の補欠選挙では、任期満了に係る場合では最長約一年間、任期満了に係らない場合でも最長で七か月、欠員が生じ得ることを想定している、だから、憲法上も、少なくとも七か月強ないし一年は繰延べ投票が認められると答弁されましたが、しかし、数選挙区のみで行われる補欠選挙と、全ての衆議院議員や半数の参議院議員が対象となる総選挙や参議院通常選挙において広範かつ長期に繰延べ投票を実施することを同列に論ずることは不適切です。
そもそも、繰延べ投票は、ごく限られた投票所で投票ができない場合に短期間投票を、選挙期日を繰り延べるものであって、多くの、まさに一体性が損なわれるような形で選挙ができないときに繰り延べるということを想定しておりません。また、総選挙や参議院通常選挙で長期にわたって順次繰延べ投票が行われると、比例代表選出議員の選出がなされず、議席数が長期間確定しません。それに対して、補欠選挙では、先般も行われましたが、比例がございませんので、そのようなことは生じない点でも状況は大きく異なります。当てはめるべきではない事案に無理やり繰延べ選挙を当てはめていると言わざるを得ません。
次に、選挙困難事態において、繰延べ期間中の選挙運動に関して、本庄幹事から法律改正で対応できるという反論がありましたが、これは先ほど北側幹事からもありましたが、長期間にわたって投票を繰り延べる場合、選挙運動期間を制限あるいは短縮する旨の法律改正を行うとすれば、それはもはや繰延べ投票ではなくて、事実上、国政選挙そのものを延期する制度になります。そのような法律による国政選挙の延期は、衆議院の解散から四十日以内に総選挙を行わなければならないと定めた憲法五十四条に違反します。
三つ目に、長期間にわたって議員が不在となるような判断を選挙管理委員会に委ねても問題ないと主張されましたが、であれば、東日本大震災の際に、民主党政権は繰延べ投票ではなく、なぜ特例法で対応したんでしょうか。しかも、前回紹介したように、特例法は再延長されましたが、それは発災後四か月たっても選管業務に人が割けないとする福島県選挙管理委員会等の要請によって行われています。広範な地域において長期間選挙の適正な実施が困難な、統治機構の根幹に関わるような事態の判断を選挙管理委員会に委ねるのは適切ではなく、内閣と国会で責任を持って選挙の適正実施についての判断を行うべきであります。
最後に、スーパー緊急集会を認めても憲法上の制約がないと主張されましたが、それは明らかに立憲主義をないがしろにする発言であります。
まず、解散に起因する衆議院の不在期間が最長七十日であることは、文言上、一義的に明白です。次に、参議院の緊急集会は、憲法が定める両院同時活動の原則に対する例外であって、厳格に解釈すべきであります。さらに、七十日を超えた場合にどこまでが限度かが分からず、その濫用を止める手だてが憲法上用意されていません。
以上を踏まえると、参議院の緊急集会はあくまで、最大七十日程度の期間に次の国会が召集されることを前提とした一時的、暫定的、限定的な制度であって、これを超えて対応することは憲法違反であり、権力の濫用の危険を否定できません。
以上のことから、選挙困難事態に繰延べ投票で対応することはできず、憲法違反のおそれすらあることを改めて指摘したいと思います。やはり、七十日を超える長期にわたり選挙の一体性を害するほど広範に選挙実施が困難な場合に備えて、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長を可能とする憲法改正が不可欠であります。
次に、自民党の山田委員の質問に答えたいと思います。
七十日を超えないが、四十日を超えて選挙実施が困難なケースでは選挙困難事態にならず、任期延長はできないのではないかとの質問をいただきましたが、この場合はむしろ緊急集会で対応すべき射程だと考えます。
ただし、解散から四十日を超えて選挙を実施することは現行憲法の条文上は認められませんので、憲法五十四条一項を改正し、解散から四十日以内に総選挙を実施できないときは、七十日以内に総選挙を行い、その後速やかに国会を召集する旨の規定を新たに新設すべきだと考えます。その上で、さらに、七十日を超えて選挙が困難な場合については議員任期の延長の特例を認めるといったすみ分けを憲法上明確にすることが適切だと考えます。
次に、解散で一旦失職した衆議院議員が自らの身分を復活させる決議に加わるべきではなく、参議院の緊急集会で身分復活手続を踏むべきだとの意見をいただきました。
これは一案だと思いますが、解散によって衆議員の身分を失わしめた内閣自身が選挙困難を認定する以上、自ら行った行為を撤回したと理論構成できるので、内閣の認定をもって身分が復活するとしても、民主的統制に問題はないと考えます。そもそも、議員任期の延長のような統治機構に関わる事柄は、衆参のできるだけ多くの議員が決することが適切だと考えます。
最後に、解散の禁止と内閣不信任案の禁止はセットではないかとの質問ですが、平時におけるチェック・アンド・バランスとして、解散と内閣不信任をセットで考えるのは当然だと思います。
他方で、緊急時においてこそ、立法府が一義的に責任を持ち、行政府はその権限の範囲内で対応するという国会中心主義を徹底することで国民の権利保護に万全を期すとの考えもあり得ると思います。緊急時において、与党も含めた大半の議員がどうしてもこの総理大臣やこの内閣は緊急時の対応を任せられないと考える場合もあり得ることから、最終手段として内閣不信任案を残しておくべきだと考えます。
以上、立憲民主党及び自民党の委員からの質問に返答させていただきましたが、もう論点は出尽くしていると思いますので、閉会中も憲法審査会を開いて条文化作業を進めることを求めたいと思います。もし九月までに条文化作業が全く進まないのであれば、それは岸田総理の約束違反であって、総裁の職を辞すべきではないかと思います。
このことを最後に申し上げ、今国会最後の発言といたします。
○森会長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
冒頭、中谷幹事が御提案された論点整理については、おおむね我々三会派の提案と共通していますので、基本的に賛意を示したいというふうに思います。
反対派からは、参議院の緊急集会が七十日を超えて平時と同じような活動ができ、こうした特例は要らないとの御意見がございます。
しかし、一つは、憲法五十四条一項を素直に読むと、解散による衆議院の不在期間が最長七十日であることは明白であること、二つ目には、緊急集会は同条二項の両院同時活動の原則の例外であるということ、三つ目には、七十日を超えるとした場合に、今、玉木委員からもありましたが、どこまでが限度か、合理的な基準がございません。その濫用のおそれがあります。
この濫用というのはどういうことかといいますと、一九四八年、第三回国会において吉田茂総理が、思いどおりにならない衆議院を解散して、緊急集会で何と予算の議決を図ろうとしたことを思い出すべきではないでしょうか。
他方、司法の客観訴訟については、有志の会は、最高裁判所が国会機能の維持の妥当性を判断する勧告制度をつくるべきだと提案させていただきました。何らかの司法の関与が必要だと思いますが、今の最高裁判所の体制やその意思の現状を踏まえると、次善の策として客観訴訟というものを検討するのも一案というふうに考えます。
もう一つ、憲法第五十三条について。三会派の案には、国会の臨時会の召集を要求した場合に係る期限を憲法上二十日以内と明記することとしています。我々の目指している改正の目的は、緊急時にいかに国会を機能させて、行政の暴走に歯止めをかけることであります。その意味では、国会議員が求めたら召集の期限を切ってちゃんと国会が開けるようにするのは当然と考えますので、引き続き議論をする必要があります。
いずれにせよ、中谷筆頭幹事から五会派の考えを整理していただいたことは一歩前進だと評価します。今後は、閉会中審査も視野に、起草委員会を早急に立ち上げていただき、具体的な条文案の作成に入ることを要望します。
反対派にも是非御参加をいただきたいと思います。思いますが、議論ももう尽くされています。参加がかなわなくても、憲法審査会の閉会中審査については全会一致の前例というものはないというふうに伺っておりますので、関係者にしかるべき決断を求めたいというふうに思います。
次に、ファクトチェックの話に移りますが、ファクトチェックと表現の自由の関係について意見を述べます。
言うまでもなく、表現の自由が極めて重要なのは、個人の自己実現のみならず、選挙などの民主的な意思決定の健全性を図るために、自由な情報流通に基づく対話が不可欠だからです。この考えの前提には、公の場で自由に議論をすることにより、必ず真理が虚偽に打ちかち、最後には最も合理的な結論に到達するというアングロサクソン的な信念があります。
これに必ずしも異を唱えるものではありませんが、しかし一方で、巨大プラットフォーマーの運営するSNS等の技術発展により、情報の自由流通、この前提が危機に瀕している現実にも目を向ける必要があります。
ソーシャルメディアを活用する者は、世界人口の六二%に相当する五十億人の大台を超えました。その多くがSNS等のニューメディアから情報収集を行っており、我が国でも、広告費はニューメディアがオールドメディアを上回っています。
その際、注意しなければならないのは、SNS等を運営するプラットフォーマーは、単に情報を右から左へと伝えるのではありません。彼らは、広告を効果的に利用者に届けるために、アルゴリズムに従って情報の流れを操作しています。つまり、SNS利用者にはその思想や思考によって特定の情報が集まるようになっています。これは表現の自由と民主的決定を結ぶ前提となる情報の自由流通とは言い難い状態です。
また、既存の報道機関では、少なくとも建前上は情報の客観性を求めるフィルターがかかっていましたが、ネットの情報はこうしたフィルターは必ずしもかかりません。信頼度の低い情報がリツイート等により大量に拡散しています。
この点、マサチューセッツ工科大学の研究チームが二〇〇六年から二〇一七年にツイッターで広がった約十二万六千件のニュースを調べたところ、いわゆる誤った情報、誤情報は正しい情報に比べて、リツイートされる可能性が七〇%高い、十回リツイートされるのが二十倍速かったとの結果が出ています。こういう誤情報の方が事実より新奇性が強く、面白いと分析されています。
こうした状況の中、言論の自由に重きを置く欧米諸国の当局が、我が国に比べてファクトチェック団体が数多く活動し、また、我が国にはないプラットフォーマーに対する巨額の罰金等の制裁型の法制度が整っているにもかかわらず、なぜ自らファクトチェックを行っているのか、考える必要があるのではないでしょうか。
私が思うに、一つは、そもそもプラットフォーマーのビジネスモデルが、アルゴリズムにより利用者に大量の情報とそれに伴う広告を届けることにあり、情報の客観性を保証する動機が低いこと。もう一つは、先ほど申し上げたとおり、SNS等の特徴として、偽情報は正しい情報に比較して拡散の速度が速く、同時に、これを訂正する情報の拡散は遅いこと。三つ目には、このようなSNSの隙をついて、中国やロシア等の権威主義国家が相手国の社会分断を謀る情報発信を助長していること。こうした事情により、偽情報の氾濫を放置すれば自国の民意が権威主義国家に操作されかねないとの危機感から、各国当局が自ら対策を講じているのではないでしょうか。
今後、国民投票広報協議会が事実を検証するという行為に値するファクトチェックを行うための議論を更に期待します。特に、いかなる事実検証の在り方であれば言論の自由への関与やその可能性が生じるのかについて検討を加える必要があると思います。国民投票広報協議会自らも責任を持って偽情報対策の有効性を高めることが重要であると申し上げて、私の意見を終わります。
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○森会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○船田委員 自由民主党の船田でございます。
冒頭におきまして、中谷筆頭から、緊急事態の条項、とりわけ議員任期の延長につきまして総括的な論点整理を行っていただきました。我々が議論してきたことをかなり明確に示していただきまして、全面的に賛成であります。是非、この中谷議員の発言を基に要綱案あるいは条文案を今後詰めていく必要があると思いますので、しっかりと進めていきたいと思っております。
組織的には、やはりこの憲法審査会において起草委員会をしっかりとつくる、あるいは衆議院法制局にその原案の作成を求める、そして提出を求める、こういう段取りが必要であろうかと思っております。これをしっかりと踏まえてやっていきたいと思っています。
これまで五つの会派が、これらの意見におおむね賛成、こういう意見を出していただきました。二会派につきましてはそれとは異なる態度でありますけれども、ここはやはり幅広い合意を得るということが大事でありまして、その合意をいただくための努力は惜しんではいけないというふうに思っております。
なお、これから進める上で、ポイントを二つだけ申し上げたいと思います。
一つは、参議院の緊急集会というものをやはりしっかりと位置づけるということであります。権限の明確化、それから、中谷筆頭からは、緊急集会の機能の充実を図るということで相当な配慮をしてくれたと思います。これによりまして、是非、参議院側の理解が必要であるというふうに思っておりますが、これは、各党間の参議院の皆さんにこのような状況であるということを認めていただく、理解をいただくことが極めて重要だ、このように思っております。
もう一つは、一部の会派からは、選挙困難地域においては繰延べ投票を行うことによってこの状況に対応することが可能である、こういう話でありますが、これにつきまして、やはり国政レベルの選挙におきましては一体化ということが極めて重要である、こう思っております。一部の選挙区において選挙困難なときには、やはり比例というものは確定しない、比例代表における選挙の結果は確定をしないということになってしまいます。また、五月雨に実施をされた場合、一部の選挙の結果が当然公表されることになると思いますが、このことが残された選挙区の投票行動に非常に大きな影響を与えるということでありますので、これは理念上も制度上も、繰延べ投票による対応というのは極めて難しい、こう思わざるを得ません。
そして、最後に申し上げたいのは、国民投票制度のまだ決まっていない部分であります。テレビCMあるいはネットの規制の在り方、あるいは総量規制の在り方、この点についてはまだ結論が出ておりません。
令和三年に行われました国民投票法の改正におきましての附則では、法施行後、つまりこれは、法施行は令和三年九月十八日でございましたが、それから三年を目途としてこれを検討する、こうなっておりますが、その時期が令和六年、今年の九月十八日に迫っている、こういう状況であります。
このような要請を考えますと、我々憲法審査会は、当然のこととして、閉会中審査を開くということを私は強く望みたいと思っております。私自身、これまで憲法改正の様々な議論を担当してまいりましたけれども、この憲法審査会は、国会が開かれようと開かれていないと、これはしっかりと議論をするんだということがたてつけとして、前提としてあります。そういったことを考えますと、今申し上げたような、いわゆるテレビCM等の取り残された問題と併せ、条文審査と併せて閉会中審査を開く、このことを是非決定をしていただきたいと心からお願いいたします。
以上でございます。
○城井委員 立憲民主党の城井崇です。
私は、参議院の緊急集会について意見を述べます。
緊急事態への対応を議論する際、参議院の緊急集会の権能については、当事者である参議院議員の意見も尊重すべきです。昨年六月に本審査会で行われた参議院の緊急集会に関する論点を含む緊急事態に関する論点整理など、本審査会での議論と今国会の参議院憲法審査会における議論を比較すると、参議院の緊急集会の案件及び権限を中心に、参議院の自民、公明両党の委員に衆議院側と異なる意見が少なからず見受けられます。
これらに関して、自民党及び公明党に具体的に伺います。お答えは次回以降にお願いします。
まず、自民党です。
昨年六月十五日の本審査会で、当時の新藤筆頭幹事は、参議院の緊急集会は、有事を含むあらゆる事態に対応することを想定しておらず、このことは、中略、権限の限定や、中略、案件の限定があることといった二重の限定が付されていることに端的に表れていますと述べています。
一方で、先月二十九日、参議院で、自民党の佐藤正久筆頭幹事は、案件に関して、参議院の緊急集会において議員が発議できる議案の範囲に関しても、国会法に規定する内閣総理大臣から示された案件に関連のあるものという要件を幅広く解釈し、緊急の必要がある限り、予算関連法案を含め広く発議を行うことができると述べておられます。
臼井正一委員も同じ趣旨の発言をされています。
また、権限についても、佐藤筆頭幹事は、仮に、参議院の緊急集会であるがゆえに審議対象法案や予算に制限をかけ緊急の対応が停滞すれば、民主政治を徹底させて、生命、自由及び身体の安全に対する権利を含む国民の権利を十分に擁護するという憲法の趣旨に反するとして、参議院の緊急集会における審議の対象となる法案や予算の範囲は、緊急の必要がある限り、制限はないと考えますと述べています。
参議院のこれらの意見は、首都直下地震という大規模災害を想定した議論の中で出てきたものです。案件にしても権限にしても、衆議院での意見と参議院での意見、自民党内での議論の集約結果はどちらでしょうか。国民に分かりやすく教えてください。
次に、公明党です。
まず、案件について、昨年五月十一日の本審査会で浜地委員が、緊急集会で議論すべき案件も内閣の示したものに限られ、議員立法や行政監視機能といった一般の議員権能は制限されると発言されています。これに対し、先月二十九日、参議院で、公明党の西田実仁幹事は、大規模な自然災害等の緊急事態においては、内閣が開催要求時に示すべき案件も包括的なものにするほかなく、それに応じて参議院議員の議案発議権等が及ぶ範囲も広範になりましょうと述べています。
次に、権限について、昨年十二月七日の本審査会で、また本日の本審査会で北側幹事が、参議院の緊急集会で本予算の審議はできない趣旨の発言をされているのに対し、先月二十九日、参議院で西田幹事は、本予算についても、内閣の専断を抑制し、衆議院が構成されていない間にあっても民主的統制を及ぼすため、全国民の代表と位置づけられている参議院の緊急集会によって決めていかざるを得ないと述べ、本予算の議決も可能との立場を明確にされています。
五月十六日の本審査会で北側幹事は、党内でも意見調整、私はできると思っているんですけれども、しっかり合意が形成できるように今後努めていきたいと述べておられましたが、参議院の西田幹事の御発言は、その約二週間後です。案件、権限、それぞれに、公明党の意見集約結果はどちらでしょうか。国民に分かりやすく教えてください。
このように、緊急事態への対応を議論する大前提となる参議院の緊急集会に関する解釈が、与党両党内の衆議院と参議院で一致しない現状です。条文化の議論を求める声もありますが、そのような段階に至っていないことが明らかであることを申し上げて、私の発言といたします。
○青柳(仁)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青柳仁士です。
まず、今日、「中谷の個人的メモ」というのが出てきました。これは、岸田総理が、元々、自分の任期中に憲法改正を行うというある種の公約をされたことに対して、今まで様々な議論がありましたが、その任期中というのは今回の任期中であるということも中谷筆頭幹事は明言されておりましたし、それは当然今国会中なんだろうというふうに考えていたところ、条文案が出てくるというのが当然ゴールだったわけで、そのゴールに向かって、その一歩手前の条文の起草委員会すらできない。
そして、その代わりになんですかね、このメモが出てきたというのが、今日、先ほどほかの委員からも発言がありましたが、実質的に今日が最後であるということを考えると、これは、この到達点で、少なくとも日本維新の会・教育無償化を実現する会の会派として求めていたものとは違うわけですけれども、この到達点で、中谷筆頭幹事としては、十分である、満足されている、そういう御認識かどうか、まずお聞かせいただけますか。
○森会長 後でまとめて答弁することにしたいと思います。
○青柳(仁)委員 分かりました。
では、ほかにもありますので、もう一つ。
それから、そのお答え次第ではあるんですが、必ず答えてください、今お時間もお与えしたわけですから。
それで、昨日の新聞を見てみますと、報道を見てみますと、今国会中の憲法改正原案の提出を自民党が見送るというふうに書いてあるわけです。今回見送ってしまったら、当然条文案もできないわけです。
先週、我が党の小野議員の方から問いを立てさせていただいて、中谷筆頭幹事、本気でやるみたいな話、先ほどもやり取りがありましたが、これは実は、問いをちゃんと見てみますと、本気で閉会中も開催をして、ちゃんと今までの遅れを取り戻すのか、そのことは本気で言っていただきたいというふうに聞いているんです。これに対して本気で行うと言っているということは、これは閉会中審査をやると言っているに等しいと思うんですけれども、そういった御理解でよろしいかどうか、これもお答えいただければと思います。
それから、その問いをしたときに、中谷筆頭幹事の方から、最終的に対応は古屋本部長に一任を自民党としてはいたしましたというような、ある意味、少し逃げの御答弁をされていますので、古屋委員の方からも、もし補足があれば御発言いただければなと思っております。それから、今、この時間でもしお答えいただけないようでしたら、ほかの会派にちょっと質問があるので、させていただきます。
今日、まず篠原委員に、先ほど少しお話がありましたけれども、これは、さっきの御発言と先週の御発言を聞いても、ちょっと私の中でよく理解できないんですが、篠原委員としては、憲法で定められている議員任期、これを延長するのに法律や政令で行うべき、こういう御意見なんですか。これは今お答えいただけますか。
○篠原(孝)委員 どちらでやってもいいと思います、憲法でやるんだったらやってもいいと思います。だけれども、そういう段階じゃないと思う。
○青柳(仁)委員 ありがとうございます。
憲法でやってもいいということですから、私は、やはり憲法で定められている議員任期を延長するのは憲法でないとできないと思いますので、これは是非、一緒に議論させていただきたいなというふうに思っております。
それから、もう一つ。
逢坂幹事にお伺いしますけれども、先ほど御発言がありました憲法五十三条の改正、つまり、国会議員の四分の一の賛成によって臨時国会を二十日以内に召集しなければならないということで、これは、おととしですかね、私も法案の提出者に入らせていただいたと思うんですが、法案提出を各党各会派で行いました。
元々自民党の憲法改正原案にもありまして、当時は、何で憲法改正原案に入っているのに自民党は賛成しないんだということを各野党で意見を申し述べたところだったと思うんですが、それを、経緯も踏まえますと、あと先ほどの御発言も踏まえますと、この憲法五十三条の改正に関しては、立憲民主党会派として反対ではないということでよろしいですか。
○逢坂委員 我々が法案を提出したときは、法律改正でできるというふうに認識をしておりました。ただ、玉木委員から、憲法改正の方がよいのではないかという話もありましたので、その点については今後勉強させていただきたい、そういう立場です。
○青柳(仁)委員 ありがとうございます。
ということは、少なくとも反対ではないということですので、今回、中谷筆頭幹事、このメモをお作りいただきましたが、各党各会派を入れた条文の案というのであれば、今おっしゃっていた二点、これは少なくとも立憲民主党会派も反対ではないわけですから、憲法五十三条の改正の件と、それから緊急政令のお話ですかね、議員任期延長するのを憲法で定める、この点については、論点として入れれば、これは立憲民主党会派としてもきちんと議論に応じていただけるのではないかと思いますので、その点、まず申し上げておきたいと思います。
それから、最後に、繰延べ投票に関しては、もう既にほかの委員から御指摘がありましたので、私は同じことを考えておりますというだけなんですが、立憲民主党会派さんのおっしゃっていることは、これは論理的に破綻しているんじゃないかなというふうに思っていて。繰延べ投票、選挙のこういった、おっしゃっているやり方というのは、本来の制度趣旨にかなうものではない。やはり繰延べ投票は、ごく限られた投票所で投票ができない場合に短期間投票を繰り延べるものということで、これまでも国政選挙の実施例は二例だけ。集中豪雨のために、ごく一部の投票所において僅か一週間行われただけということなんですね。
特に問題だと思ったのが、先週の本庄委員の発言の中で、繰延べ投票における選挙運動期間については、公選法第百二十九条により公示日から繰延べ投票の期日の前日まで選挙運動ができると解されており、この点は私も制度上の不備だと思います、ただ、これは法律改正事項であり、憲法改正事項ではありませんと言っているんですが、これは、こういうことを言ってしまったら、そもそも選挙の実施が憲法で定められているわけじゃないですか、これは、繰延べ投票を法律でいじるというよりも、選挙制度そのものをいじる話ですから、これを法律ではやはり絶対できないと思います。
それから、繰延べ投票の前日まで選挙運動できるんですよ。ダミーの投票日をセットして、その日まで選挙運動して、またそれが繰り延べられた場合は、永久に選挙運動をやるんですか。
これは、どういうイメージで考えておられるのか全く私は想像ができないので、この点についても御指摘させていただきます。
以上です。
○國重委員 公明党の國重徹です。
我が党に対して幾つか質問がございました。今日の私の発言以降、必要に応じてお答えをさせていただきたいと思います。
まず、中谷筆頭幹事にお伺いをいたします。
先ほど中谷筆頭幹事から、選挙困難事態における国会機能維持条項に関する具体的なメモに基づいた発言がありました。これまでの議論をリードされてきたことに、まずは敬意を表したいと思います。
その上で、更に深掘りをした議論をするためには、有識者を参考人招致して意見を聞く必要も生じてくるんだろうと思います。また、この問題は、先ほど城井委員の方からも指摘がありましたとおり、参議院の緊急集会に関する論点を含むものである以上、参議院側の議論も非常に重要になります。参議院の憲法審査会の議論を注視するとともに、衆参を含めた幅広い合意を目指してお互いに議論を深めていく必要もあります。
中谷筆頭幹事に、今後の選挙困難事態における国会機能維持に関する議論の進め方について、御見解をお伺いしたいと思います。
○中谷(元)委員 先ほどの青柳議員の御質問も併せまして。ここまで、今日メモを出させていただきましたけれども、審査会においていろいろな意見がありました、各党からも真剣に意見を聞きまして調整をさせていただきまして、現時点におきまして、審査会の意見の一つの論点整理として発表したわけでありますので、一つの到達点としては節目にあろうかと思います。
今後は、これを基にやはり条文化を進めて、そして、国会において憲法改正のための条文として取りまとめをしていかなければなりませんので、引き続き全力でやってまいりたいと思いますし、先ほど参議院との意見の調整の話もありましたので、これは、各党でも憲法改正本部がございますので、そこでの議論とともに、衆と参の意見調整も行っていきたいというふうに思っております。
○國重委員 ここ数年の憲法審では、選挙困難事態における国会機能維持に議論が集中をして、かみ合った、課題解決に向けた議論が展開されてきたことは、私は非常にいい流れ、傾向だと思います。他方で、それ以外の重要な憲法テーマが軽視されるようなことがあってはならない、社会の中で起きている問題に憲法の規定を通して光を当てるような議論も忘れてはならないと思います。
NHKの朝ドラの「虎に翼」、御覧になっている委員の方もいらっしゃるかと思いますけれども、女性初の弁護士、判事、裁判所所長になった三淵嘉子さんをモデルにしたドラマです。戦争で夫を亡くし、兄や父も亡くし、砕けそうになった主人公の心に、前を向いて生きる力、希望を与えたのが、制定されたばかりの日本国憲法でした。彼女が、条文の文言を一つ一つかみしめながら暗唱し、自分を取り巻く環境は今までと何も変わらない、でも、この憲法がある、私が私でいるためにやれるだけ努力してみるか、よしと決意して立ち上がる、そういった時代背景を伴ったシーンを見て、改めて、憲法十三条の個人の尊厳、憲法十四条の法の下の平等などが持つ価値、すばらしさに感銘を受けました。一人一人にとって日本国憲法がいかに大きな意味、役割を持つものなのか、改めて感じました。
このような、憲法の規定を通して国民が求める国家の姿が実現できているのか、憲法で保障されている国民の権利がきちんと守られているのか、こういったことを議論することも、この憲法審の重要な役割だと思います。
とりわけ、ある問題、法律について、司法で憲法に違反するという違憲判決が出されたとき、司法から立法府にボールが投げられたときには、具体の制度は所管委員会の議論に委ねるべきであるとしても、憲法問題についてはこの審査会で真摯に議論し、委員間で問題意識を共有していく、そしてその議論を国民に知らせていくことは必要なことだと思います。
中谷筆頭幹事を始め幹事の皆さんには、こういった視点を取り入れた議論のテーマ設定も今後の憲法審の運営において是非考えていただきたいと思いますし、特定のテーマに限定されない自由討議においては、議論を拡散させないという視点だけではなく、重要な憲法問題をバランスよく取り上げるという観点も含めて、委員間で引き続き真摯に議論していきたいということを申し上げまして、私の発言といたします。
○加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。
前回も発言をさせていただきましたが、ここでの議論を更に深めていくためにも、条文案あるいは要綱等の案を具体的に示しながらしていく必要がある、そのために起草委員会等が必要だということを申し上げました。この数回の審議を経る中で、一層その思いを強くしているところでありますし、その御意見が多数出ている、そのことを改めて申し上げたいと思います。
その上で、今日は、私どもの中谷筆頭幹事が、メモという形でありますけれども、踏み込んだ案を、これまでの他党のアドバイス等もいただきながら出されたということでございますので、具体的な中身について一、二、質問させていただきたいと思います。
前回、山田委員が、また先ほど玉木委員が発言をされた件でありますけれども、まず、選挙困難事態の認定そのものは政府が行う、では、それを承認する、その承認の国会をどういうふうに位置づけるかというのは大変大事な問題だと思います。
それを議論するまず前提として、そもそも、私どものたたき台の段階では、任期の延長ということを前提に自民党案は出させていただきました。しかし、実際、中谷筆頭からもお話がありましたように、これまでもほとんどのケースは解散を伴うものでありますから、解散を想定していないこうした仕組みそのものは余り意味がない、それはそのとおりだと思いますけれども、しかし、その上に立って、やはり一度失った資格を選挙を経ることなく戻すということ、これはある意味では非常に異常な状況でありますから、そこのところを、しっかりとその正当性を整理しておく必要があると思います。これは答えを求めるわけではありません。
その上に立って、では、最初の国会承認の、政府の選挙困難事態に対する認定を国会が承認する際に、一体、緊急集会で今やるのか、あるいは、元々我々が、失った衆議院議員が、例えば身分を戻してやるのか、これは一つのポイントであったというふうに思います。
その際に、できるだけ多くの国会議員の英知を結集してその適否を反映させるという説明を先ほどされました。また、玉木委員からは、そもそも内閣がそうした認定をするということは、解散権は取消しをした、したがって、それに係る議員を復活させるのは正当だという趣旨のたしか説明だったというふうに認識をしておりますけれども、この点を含めて、今回メモを出された中谷委員としてはどういうふうに整理をされているのか。
まさに、今回のメモでは、その承認に当たっては、国会議員の身分を一度復活させてやる、こういう整理をされているわけでありますから、そこの説明と、それから、結果とすると、二回身分が復活されるということになります。承認をする際の身分復活と、そして、それが決定された後の、要するに今回の選挙困難事態が終わるまでの身分復活、こういう二つの身分復活がいわばなされなければならない、こういう整理なんだろうと思いますけれども、その点を改めて確認をさせていただきたいと思います。
それから、参議院の緊急集会の件は、たしか、去年の参議院の緊急集会に関する資料、これは憲法審査会事務局がまとめられておりますけれども、その際も、実は四十日説と七十日説とそれぞれがあったというふうに認識をしております。
今回は、選挙困難事態を七十日としたという関係で、七十日をベースに作られているんだろうと思いますけれども、ただ、この際にも議論になったのは、あくまでも、選挙が終われば、その新しい選挙によって認定された、いわば特別国会を早くやって、そしてそれで対応すべきだという議論だったと思います。
そうすると、今回も、例えば、七十日終わった、選挙の後、そこをどこまで参議院の緊急集会に委ねるのか、あるいは、それは委ねずに、改めて特別国会を早くやって、そこに委ねるのか、こういった整理も併せてやっておく必要があるのではないかなと。ただ、特別国会は、選挙結果によっては相当いろいろな事案があると思いますから、そういったことも想定しながら進めていく必要があるかなと。
それからもう一点は、選挙困難事態が解消するというときの判断であります。これは国会に委ねられているように書かれていると思いますけれども、では、具体的に、一体誰がどうそれを起案して進めていくのか、こういった問題もあるのではないかな。これは問題の指摘にとどめさせていただきたいと思います。
いずれにしても、これまでいろいろ議論を積み重ねさせていただいておりますけれども、こうした、まさに要綱あるいは条文、そういった案、具体的なたたき台があって、もっと議論を進めるべきだと思います。
先ほど國重委員からも有識者のお話がありましたが、やはり有識者を呼ぶに当たっても、もう少し我々の議論を整理した上でお話を聞くということが、更に議論を深めることにつながるのではないかなというふうに思っております。
○森会長 ただいま、加藤勝信君から中谷元君に対する質問がありました。これまでの岩谷君あるいは青柳君からのものも含めまして、答えられるものについて、ここで中谷君から御答弁願います。
○中谷(元)委員 冒頭ですけれども、私の発言で発言漏れがありましたので補足させていただきます。
表にあります、その他の国会機能の維持策に関して、その表で記載しておりますけれども、任期延長はあくまでも国会機能維持のためですから、3の(2)の国会の閉会禁止及び衆議院の解散の禁止の規定も設けることといたしております。国難対処のために国会議員はフルで働けということでございますので、この部分を発言の補足とさせていただきます。
次に、岩谷委員からの質問で、客観訴訟の判決の効力の質問がありました。これは、客観訴訟という訴訟形式を取る以上、普通に考えればその判決は法的拘束力を持つということになりますが、その上で、任期延長期間中に国会で取られた措置が効力を失うという意味では、遡及効、これを持つとした場合は大きな混乱をもたらすことになりかねませんので、遡及効とすることについては慎重な検討が必要でございますが、そのことも踏まえて、提訴権者そして提訴期間といった制度全体を合理的に設計する必要があろうかと思います。
次に、客観訴訟の構想につきまして、法律か憲法かということでありますが、選挙期日の延期の効果として、議員任期の延長は、衆議院四年、参議院六年という憲法上の任期規定の例外として憲法に規定する必要があります。岩谷委員は、本体が憲法に規定される以上、歯止めも憲法に規定されていることが望ましいと発言されていたと記憶しておりますが、これは論理必然ではないと思います。
すなわち、憲法上の国会、内閣の権限行使に関して、法律を根拠として司法府にチェック機能を与える場合には、その範囲は限定的にならざるを得ません。一方で、チェック機能の根拠が憲法にある場合は、その趣旨の範囲内で幅広い立法の裁量の下に制度設計が可能と考えられます。ただ、後者の場合、司法府が内閣、国会の決定に広範に介入することとなるため、現在の最高裁判所の人的構成でよいのか、民主的基盤について抜本的な検討が必要になります。
いずれにしましても、御党の主張の憲法裁判所の設定という非常に魅力的な制度の設計とともに、共通する問題と考えられますので、引き続き検討が必要であります。
以上のことから、本件に関しては既存の客観訴訟という類型を活用することがより合理的ではないかと提案したものであります。
質問の第三点で、一年の任期延長経過後は参議院の緊急集会で対応するかということでございますが、これは、一年としたのは、国難ともいうべき事態だからこそ国民の信任というものが不可欠でありますので、この場合に、任期延長することなく、議会の民主的正統性の確保、国民の参政権の保障、二院制国会の維持による万全の対応という間のバランスを取って決定したものでございます。
四点目で、本気かどうかということで、もちろん本気でやっていますが、党は私以上に本気でありまして、党の中に憲法改正実現本部を設けまして日夜検討を続けております。全国でも、憲法改正を早く実現するために全力を挙げて取り組んでおりますが、要は、この審査会で憲法改正の原案、これを作って国会に提出をして、そして三分の二をもらうということが何よりも必要でありますので、そのための努力を全力で取り組んでおります。
今日もたくさんの御質問をいただきました。とても会期中の時期では足りませんので、今日も幹事懇で、閉会中審査を立憲民主党そして共産党の方にも検討していただくようにお願いをいたしております。これだけのたくさんの課題のある中で、やはり国民に代わってしっかりいい憲法を作っていく、そして反対なら反対の意見を述べていただく、これが必要でございますので、是非、閉会中審査に応じていただけるように、そしてまた、起草委員会、これも、条文を作るための、もう論点整理もほどほどにしまして、もう論点も尽きておりますので、条文を見て具体的に意見を言う時期に来ておりますので、これも是非よろしくお願いを申し上げたいというふうに思っております。
それから、城井さん、衆参でいろいろな意見が出ておりますが、一致している点は、緊急集会の権限、案件の範囲について様々な意見があるということでありますので、緊急集会と議員任期の特例のすみ分け、憲法上明確にするべき点について、もっともっと真剣に議論をしたいと思いますので、引き続きの議論をよろしくお願いを申し上げます。
加藤議員につきましては、四十日、七十日を超える場合ということでありますが、このような状態は望ましくありません。原則としては四十日以内、例外的には七十日以内とし、その期間は参議院の緊急集会で対応する旨憲法上規定を設けて明記すべきであると考えております。
その他、玉木さんから、もっともっとしっかりやれということでございますので、本気で閉中審査、立憲民主党や共産党の方にも入っていただいてやる必要がございます。やはりこの憲法審査会というのは、与野党が参加して、意見を交わしながら憲法のあるべきものを考えていかなければなりませんので、閉会中審査も必要だと思いますので、是非御参加いただきますように、この場をもちましても改めてお願いさせていただきます。
○森会長 それでは、最後に、北側一雄君、御答弁だと思いますから、お願いいたします。
○北側委員 簡潔にお答えいたしたいと思います。
幾つか御質問が出ました。
まず、司法の関与については、先ほども中谷さんからお話がありましたが、これは法的拘束力があるというふうに考えております。選挙困難事態の認定、そしてその承認、手続要件と実体要件について、一見極めて明白にこれは違憲であるという場合には無効として判断される、これは法的拘束力があるというふうに考えております。
任期延長の期限を一年と限ったのはなぜかという御質問でございますが、緊急事態が発生した当初と一年たった後では、やはり状況は、有権者にとっても、それから選挙事務を執行する立場からも、そしてまた選挙に立候補しようとする方々にとっても、緊急事態の発生時と一年後とでは状況は大分違う。緊急事態の状況が続いていたとしても、やはり一年以内には選挙を実施していくということは、逆に、民主的正統性を図るという観点からは重要ではないかという趣旨でございます。
解散禁止が規定をされているわけでございますが、一方で、内閣不信任案の提出並びに可決はできるのかという御質問でした。これについては、今日冒頭の中谷さんの話にもあるとおり、内閣不信任案の提出ができないというふうなことにはしないという結論に現時点ではしております。これは内閣不信任案の提出というよりも、むしろ、解散できないわけですから、内閣総辞職決定というか、内閣総辞職の提出、内閣総辞職をすべきという提出案になるのかなというふうには思っております。
最後に、我が党の衆参の意見の違いのことがございました。参議院側は当然、緊急集会という重要な権能を有しているわけでして、これをしっかりと活用していきたいという立場であるわけで、そこに意見の違いがあるのはこれはやむを得ないと私は思っておりますが、十分に、今も参議院側とは頻繁に意見交換しておりますけれども、十分に意見調整はできるというふうに考えております。
以上です。
○森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。
この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会