衆議院

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第9号 令和7年6月12日(木曜日)

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令和七年六月十二日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 枝野 幸男君

   幹事 上川 陽子君 幹事 寺田  稔君

   幹事 船田  元君 幹事 山下 貴司君

   幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君

   幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 浅野  哲君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      井野 俊郎君    大野敬太郎君

      小林 鷹之君    柴山 昌彦君

      新藤 義孝君    高市 早苗君

      葉梨 康弘君    平沢 勝栄君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    三谷 英弘君

      森  英介君    山口  壯君

      山田 賢司君    五十嵐えり君

      岡田  悟君    奥野総一郎君

      階   猛君    柴田 勝之君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    青柳 仁士君

      阿部 圭史君    和田有一朗君

      岸田 光広君    福田  徹君

      河西 宏一君    浜地 雅一君

      平林  晃君    大石あきこ君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(今国会の振り返りと今後の進め方)


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     ――――◇―――――

枝野会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、今国会の振り返りと今後の進め方について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内となっております。

 質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて七分以内となりますので、御留意願います。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせをいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元さん。

船田委員 会長、ありがとうございます。

 自由民主党の船田元です。

 本日は、今国会の審査会運営の振り返りと課題、そしてこれを踏まえた今後の進め方について発言いたします。あわせて、選挙困難事態における国会機能維持条項の現在の到達点につきましても、整理をして述べてみたいと思います。

 今国会は、その日暮らしではなくて、数か月先を見越してテーマを決める方式で運営をしてまいりました。事前に考え方や質問を準備できたということで、より議論が深まったことに寄与したと思います。こうした計画的な運営によりまして、選挙困難事態における国会機能維持や国民投票の議論が一歩前進したと考えております。

 ただ、相互に質問をぶつけ合うということで議論が深まる面もあった一方で、しばしば発言時間のオーバーが起こったり、また、個人攻撃、やゆがあるなど、品位を欠く場面もありました。今後は、こうした課題を改善しながら、定例日開催を継続したいと思っております。

 選挙困難事態における国会機能維持につきましては、新藤元筆頭幹事の下で、令和四年十二月一日、翌五年六月十五日の二回にわたり論点整理が行われ、さらに、昨年六月十三日には、中谷前筆頭幹事から、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の共通認識を整理した、国会機能維持条項の骨格メモが示されました。

 そして、これを基に更に議論を深め、五会派の現場の責任者が共同で作成した、選挙困難事態における国会機能維持条項の骨子案と更に深掘りすべき検討課題について、幹事会の御理解をいただいた下、本日の幹事会で配付することができました。これは、衆議院憲法審査会の現場における五会派の幹事、オブザーバーの共通認識を整理し、より条文案に近い形に一歩深掘りしたものでありまして、次のステップに向けた大きな前進と言えます。

 残念でありますが、審査会での配付が認められなかったために、以下、その概要を口頭で説明いたします。

 第一に、選挙困難事態とはどのような事態か、つまり、その認定要件についてであります。

 まず一つは自然災害、二つ目に感染症の蔓延、いわゆるパンデミック、三番目に武力攻撃事態、四番目にテロや内乱、五番目にこれらに匹敵する緊急事態、それによりまして、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において、国政選挙の適正な実施が相当程度長期間にわたり困難であることが明らかであると認められるときに、内閣は選挙困難事態を認定します。すなわち、広範性と長期性の二要件で厳密に判断をします。

 特に長期性要件については、従前は、憲法五十四条一項に定める、総選挙までの四十日と特別会召集までの三十日を合わせた七十日間としていましたが、参議院での議論も踏まえ、この七十日間は参議院の緊急集会の活動期間を厳格に限定するものではないことを明確にするため、相当程度長期間と表現を改めました。これは七十日程度が目安となると考えておりますが、必ずしもそれに縛られるものではございません。

 広範性と長期性の二要件の具体化については、更に深掘りの検討を行っていきます。

 また、内閣による選挙困難事態の認定の濫用を防止するために、一つは、認定に必要な国会の事前承認の表決数をどうするか、二つ目には、客観訴訟の制度を創設する方向で検討してはどうか、三つ目には、選挙困難事態の期間について延長期間を含めて一定の上限を設けることがどうかといった点については、更に議論を進めていきたいと思います。

 第二に、選挙困難事態の認定による効果であります。

 選挙困難事態を認定したときは、選挙期日を選挙困難事態の期間の経過後まで延期した上で、その間に議員が不在となる事態を避けるために、国会議員の任期を、延長後の選挙期日の前日まで延長します。ただし、期間の経過前でも、選挙を適正に実施できるときは、国会の議決に基づき、速やかに選挙を行わなければいけません。

 なお、解散や任期満了により任期が終了している議員の身分を復活させて国難対処に当たらせるかどうかという点については、更に議論が必要だと思います。

 そのほか、選挙困難事態下での国会の閉会禁止、衆議院解散の禁止や憲法改正の禁止の規定を設ける予定でございます。

 第三に、参議院の緊急集会の機能拡充等でございますが、これについては、深掘りするに当たって参議院との調整も必要になることは言うまでもありません。

 第四に、オンライン国会であります。国会議員が議場に参集することが困難などのときはオンラインで会議に出席できることを明記いたします。

 終わりに。我々五会派の現場の責任者の共通認識を整理した骨子案と更に深掘りすべき検討課題の概要です。以上がそれに当たります。今後は、この国会機能維持条項を始めとして、改正項目となり得るテーマの議論を深め、改正原案に近づけていきたいと考えております。

 さらに、SNS対策も含め、国民投票と広報協議会の在り方の議論もかなり深まってきておりますので、できる限り早く成案を得たいと考えております。

 また、公選法並びの投票環境改善のための法案を再提出し、速やかに成立させたいと考えております。

 引き続き委員各位の御協力をお願い申し上げて、発言を終わります。

枝野会長 次に、武正公一さん。

武正委員 武正公一です。

 国会機能強化並びに国民投票法について、全体スケジュールをあらかじめ示せたことにより党内議論の充実が図られ、原則党を代表して発言することにより議論の拡散を防ぐことができました。また、これまで扱っていないテーマとして選挙困難事態の立法事実、臨時会召集期限を取り上げ、議論を深めることができました。

 国民投票法については、広報協議会について幹事会、意見交換会などを通じ議論を進めることができ、フェイクニュースについて参考人質疑を行うことができましたが、さらに、海外からのサイバー攻撃など、参考人から意見を聞くことが必要であると考えます。

 憲法審査会事務局の調べでも、東日本大震災と同じ規模の震災が衆議院選挙前に起きても八割以上の選挙区で選挙が行えることから、被害を受けている選挙区は繰延べ投票を行い、できるだけ速やかに議員の選出を目指すことで対応可能と考えます。また、選挙の一体性はないと言ってよいと思います。

 それよりも、インターネット投票の導入や、当該選挙区を離れて避難所でも投票できるような対応が必要です。選挙名簿のバックアップ並びに郵便投票の拡充や期日前投票の充実は今できることです。とりわけ、政令市では横浜市が先駆けて検討している共通投票所は、避難所での投票を想定した準備にも活用できると考えます。

 選挙困難事態において議員任期を延長するということは、ルールを変更するというだけでなく、選挙権を行使し得る期間について制限を加えるということになりますから、参考人によれば、ルールと原理が交錯する問題と言うことができます。

 選挙困難事態として議論すべき事象について、我々は、立憲的統制が可能な非常事態に関わるものであり、大規模災害と感染症の爆発的流行を対象とすべきであり、いわゆる緊急事態の場合、国家緊急権として議論されるような場合については、除外するべきと考えています。

 国家緊急権として議論される事態は、革命、クーデター、内乱、戦争などでありますが、立憲的統制の可能性についてはグラデーションがあること、すなわち、カール・シュミットが憲法破棄だとか憲法停止などと分析したように、革命、クーデター、内乱が既遂に至れば、権力の実効支配の変動が生じてしまうことから、憲法が破棄ないし停止される事態に至ります。

 ただし、それ以前の段階であれば、完全な立憲的統制は不可能でありますが、部分的に憲法を遵守できる段階、ほぼ憲法は遵守できるが部分的に遵守が不可能となる段階があり得ます。それぞれの段階においては、選挙の執行が不可能である場合もあれば、選挙の執行も可能である場合もあり得ます。

 そもそも、立憲的統制が困難である以上、想定外を想定して憲法改正ということは意味を成さないと考えます。最も極端なケースでいえば、革命やクーデター、内乱が既遂に至ってしまう場合を想定して憲法のルールを作っても意味を成さないからです。

 以上のように、選挙困難事態の立法事実はないと改めて申し上げます。

 臨時会召集期限の明記は、権力の抑制に関するテーマであることから、他の論点と切り離して行うのであれば、憲法改正の検討の余地があるものと考えます。

 衆議院解散権の制約は、法律若しくは憲法で検討を進めるべきと考えます。去る十日、立憲民主党は解散権濫用防止法案を衆議院に提出しました。なお、法案提出が憲法の議論を妨げるものでないと考えています。

 ほか、党憲法論議の指針項目の国政調査権、国民の知る権利などに加え、性同一性障害特例法に関する最高裁違憲判決、同性婚高裁違憲判決、そして予算、財政等の国会の権限強化などは、憲法審査会での議論を深めるべきと考えます。

 今後の進め方について述べます。

 二〇二一年、可決、成立した憲法改正国民投票法案には、附則四条に検討条項として、国民投票運動の広告、ネット広告制限、資金制限、並びにネットの適正利用が盛り込まれています。この検討条項がある間は憲法改正の発議はできないと発言してまいりました。

 我が党は、民放連が法成立時に示していた自主規制がなくなってしまったことから、全運動期間の放送広告規制の強化を求めています。また、資金規制、有料ネット広告規制、ネットの適正利用を提起してきました。また、アーカイブ化などの有料ネット広告規制や、付随的情報提供などフェイク対策も求めてきました。これら党内の議論を深めていきます。

 秋の臨時会以降、公選法の投票環境整備に関する三項目の憲法改正国民投票法改正案の審議については、党の考え方をもって協議に臨みたいと考えます。衆議院政治改革に関する与野党各会派の協議会の議論も踏まえて臨むことは論をまちません。

 また、自民党を始め複数の政党から、議員任期延長案をもって憲法改正条文起草委員会設置の提案があるようですが、憲法改正には衆参両院の三分の二以上の賛成がなければ発議できないので、我が党などが立法事実はないとしていることから、あり得ないと考えます。

 自民党のみならず、複数の政党の参議院から、緊急集会についての見解が、今日幹事会で示された任期延長骨子案と異なるとの声が聞こえてきます。憲法改正の議論は、衆議院だけ議論が進むことがないように、両院足並みをそろえることが肝要ではないでしょうか。幹事懇談会で議論を始めた広報協議会規程の議論などもその一つです。幅広い政党の賛同が得られるテーマについて議論を深めることを御提案します。

 そのためにも、憲法審査会規程にある、憲法、憲法に密接に関わる基本法制の広範かつ総合的な調査は、回り道のように見えても、多くの政党の賛同を得る項目を見出すためにも大事な手続であると考えます。

枝野会長 次に、馬場伸幸さん。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 今国会で、本審査会は数回分の日程やテーマをあらかじめ決定した上で開催されてきましたが、相も変わらぬ自由討議というお題目の下、各会派による放談会から脱却できていないというのが率直な受け止めです。本審査会が活動を始めて十四年の歳月がたとうというのに、一体いつまで自由討議に憂き身をやつすのか。多くの国民があきれていると思います。

 立憲主義、民主主義の根幹に国民主権があります。国民主権を具現化することこそ、憲法改正国民投票です。主権喪失の下で作られた現行憲法が抱える諸課題を乗り越え、憲法を国民の手に取り戻さなければなりません。

 そのために、ここで向き合う私たちの責務は、民主的プロセスによって一刻も早く成案を得て、国会の憲法改正の発議を行い、主権者たる国民に判断を仰ぐこと、つまり、初めて国民に国民主権を行使していただくことに尽きます。その点をいま一度肝に銘じるべきであります。

 今国会では、枝野会長の主導で、緊急事態条項で想定される選挙困難事態時の国会機能維持について、選挙困難事態の立法事実と参議院の緊急集会の射程に絞って自由討議がなされましたが、案の定、堂々巡りが繰り返されました。この三年間、本審査会の議論の大半が緊急事態条項に費やされ、論点は出尽くしています。合意形成に最も近づいているテーマですが、やたら討議の領域を拡散させ、これまでの積み上げを塩漬けにするような特定会派の対応は容認できません。

 他国による武力攻撃が生起する深刻な危機に目を背け、選挙困難事態の立法事実はないと牽強付会な言説を繰り返す立憲民主党などの姿勢は、石原慎太郎さんの言葉をかりれば、亡国の徒です。

 三月十三日の本審査会で、私は、ロシアに侵略されたウクライナの現実に触れ苦言を呈しましたが、武正野党筆頭幹事は、五月十八日付産経新聞で、「現在の緊急時の国家機能維持の議論は、あくまでも大規模自然災害などに焦点を当てたものだ。」と、相変わらず浮世離れした見解を示されました。神戸学院大学の岡部芳彦教授は、日本の国会議員は命懸けでウクライナを視察すればいい、ドローンや巡航ミサイルが飛んでくるさなか、投票や街頭演説ができないことは火を見るより明らかだと一蹴されていましたが、そのとおりです。

 ともあれ、本日の幹事会において、自民、維新、国民民主、公明、有志の会の五会派による、選挙困難事態における国会機能維持条項の骨子案が提示されました。立憲民主党の反対により本審査会での提示に至らなかったことは遺憾ですが、ようやくここまでたどり着きました。今後、開かれた審査会の場で各会派がこうした骨子案や条文案を提示し、議論を加速させるべきです。

 骨子案の概要については船田与党筆頭幹事から御説明がありましたが、一昨年六月に我が党が国民民主党、有志の会とともに策定した緊急事態条項の条文案がベースになっている点を歓迎します。内閣による選挙困難事態の認定要件に、自民党が平成三十年に発表した改憲四項目条文素案の緊急事態条項に入っていなかった武力攻撃やテロ、内乱等が明記されたことも評価します。また、内閣による認定や国会承認の適正性を担保するために我が党は憲法裁判所によるチェックを主張してきましたが、骨子案にはそれが明記されなくとも、司法の関与として客観的訴訟制度の創設の方向性が盛り込まれたことは、前進であると受け止めています。

 さいは投げられました。秋の臨時国会では、速やかに起草委員会を設置し、緊急政令や緊急財政処分等の議論と併せ、この骨子案を土台に憲法改正原案の作成に入るべきです。

 一方、今国会で憲法九条に絞った議論が行われなかった点は残念でなりません。我が党は既に自衛隊を明記する条文案を発表していますが、日本を取り巻く安全保障環境は日ごと厳しさを増しており、更なる抑止力の強化や日米同盟の深化のための議論が必要なことは言うまでもありません。

 そこで、我が党は、憲法改正調査会で九条二項を削除する方針を決定し、本格的に党内議論を進めているところです。秋の臨時国会では、九条をめぐる議論も加速させ、起草委員会で憲法改正原案の作成に着手すべきだと考えます。

 枝野会長はいわゆる中山方式に心酔されていますが、我が師中山太郎先生は、平成十九年四月の衆議院憲法調査特別委員会での憲法改正国民投票案の採決に当たり、特別委員長として毅然と差配されました。中山先生が著書「実録 憲法改正国民投票への道」で回想されているとおり、当時、社民党の女性議員が何度も詰め寄り、他の野党議員がマイクを床に放り投げるなど騒然とする中で、中山先生は委員長職権で起立を求め、法案は可決されました。国民が本当の主権者になる日へ第一歩を踏み出したのです。

 枝野会長は当時の証人の一人であると存じますが、中山先生から真に学ぶべき教訓は、審議をだらだらと引き延ばさないこと、そして決めるときは決めることだと強く申し上げます。

 最後に、参議院の緊急集会に関する衆議院の事務方資料や橘法制局長の説明に対し立憲民主の一部議員が明らかなる事実誤認に基づく誹謗中傷を繰り返してきたことに触れざるを得ません。

 事務方の資料や説明は、審査会での議論について公平に両論を紹介するバランスの取れたものであり、また、憲法解釈や改憲論については議員同士で議論すべきことです。にもかかわらず、自身の考え方こそが正しいと言わんばかりに、意に沿わない記述や説明を誤りと決めつけ、反論権のない事務方を攻撃するとは言語道断です。

 今国会を振り返る本日の審査会でしっかりとけじめをつけることが不可欠であり、二巡目の発言で山花幹事らに質問することとし、発言を終わります。

枝野会長 次に、浅野哲さん。

浅野委員 国民民主党の浅野哲です。

 本日は、今国会における憲法審査会の議論を振り返るとともに、次期国会に向けた進め方について、国民民主党を代表して意見を申し上げます。

 今国会では、憲法審査会が原則として毎週開催され、継続的かつ安定的な議論が積み上げられたことをまず評価したいと思います。

 とりわけ、AI技術などの急速な発展に伴い、ネット上の言論空間におけるフィルターバブル、エコーチェンバー効果やマイクロターゲティングなどの新たな現象を始め、誤情報・偽情報対策などのデジタル時代固有の新たな課題について、委員各位や参考人から積極的に問題提起が行われました。こうした実社会の変化を見据えた議論が展開されたことは、憲法審査会の機能を国民に示す上でも非常に意義深かったと考えています。

 国民投票法の見直しに関しても、ネット空間における政党等によるCMの取扱い、広告主の明示義務、公的広報のデジタル対応、プレバンキングなどの偽情報・誤情報対策の提案、さらには外国資本による干渉防止など、複数の論点に関し多角的な意見が交わされました。

 その中で、国民民主党は、投票日前二週間のCM禁止、公的広報の強化、広告主の身元確認制度、外国からの資金流入の排除など、実効性ある制度設計を行うことが重要だと主張してきました。

 今後は、当審査会として、国民投票法の改正に向けた具体的な成果物が求められると思います。枝野会長を始め与野党筆頭には、積極的な審査会開催と具体的成果の創出に向けたリーダーシップ発揮を期待いたします。

 他方で、運営面には改善すべき課題もあったと感じます。

 例えば、今国会を通じて、審査会のテーマに関するスケジュールがあらかじめ決められた点はよかったものの、結果的に、議論が収れんするには十分な議論が重ねられたとは言えず、国民投票法に関する各種審査では、抽象的な課題提起にとどまり、成果の可視化が不十分なままとなっていると感じます。

 また、本日の幹事会で示された選挙困難事態における国会機能維持条項の骨子案についても、その内容は先ほど船田幹事から御説明があったとおりですが、この骨子案をベースにした条文化作業など、今後は、単なる意見交換にとどまらず、中間整理や条文化案の提示といった具体的な成果物を出していくステージに入るべきと考えています。

 それらを踏まえ、今後の当審査会の運営について、以下四点、提案いたします。

 第一に、議論成果の具現化を念頭に置いたテーマ設定です。

 当該国会会期中に議論すべきテーマについて、あらかじめ論点とゴールを明確化し、委員間で共通認識を持った上で議論を行うことが重要です。さらに、各回の議論を簡潔に記録し中間整理として定期的に共有することで、審査会の活動の透明性と蓄積性が高まると考えます。

 第二に、具体的な議論テーマとして私たちが重視しているのは、選挙困難事態における国会機能維持条項に関する条文化作業です。

 本日、五会派による骨子案についてその内容を示せたことは前進と評価いたしますが、これを機に、条文化案のたたき台を早期に提示し、更なる協議に進むべきと考えております。感染症の蔓延、自然災害の頻発化、国際情勢の不安定化など、立法府の機能を維持すべきリスク要因が顕在化している現代において、現実的で柔軟な制度構築を行うことが必要です。

 第三に、社会実態との乖離が大きいテーマも、引き続き議論を重ねる必要があると考えます。

 例えば、安全保障環境の急速な変化を受けた憲法九条の在り方、デジタル時代に対応した人権保障のアップデート、財政の持続可能性や地方自治の強化といった、現行憲法が必ずしも十分に対応できていない領域について、率直かつ建設的な議論を求めます。特に、AIによる情報フィルタリングが当たり前となる時代の社会実態を踏まえた国民投票法のアップデートといった、現行憲法の健全な運用を支える制度面の補強は急務です。これらは憲法の現代的意義と機能を損なうことなく発展させるために必要不可欠なテーマであり、来国会でも優先的に審査会で取り上げるべきと考えます。

 第四に、国民理解への貢献です。

 憲法論議に対する国民の信頼を得るためには、広く国民の意見を聞く機会も必要です。例えば、地方公聴会の開催や参考人質疑の積極開催、さらにはインターネットやSNSなどを活用した広報活動の更なる充実等を通じて、国民の理解促進と、多様な視点を踏まえた充実審議のための双方向コミュニケーションを励行していくことも重要と考えます。

 以上、国民民主党は、憲法審査会を建設的かつ成果志向の議論の場とすべく、引き続き、積極的な提案と協議を重ねてまいります。国民の皆様の信頼に応えるべく、実効性のある議論を共に積み上げていく決意を申し述べて、私の発言を終わります。

枝野会長 次に、河西宏一さん。

河西委員 公明党の河西宏一です。

 本日のテーマであります今国会の振り返りと今後の進め方として、私の方からは、国民投票法、また選挙困難事態における国会機能維持条項について申し上げます。

 まず、国民投票法です。

 令和四年に我が党を含む四会派が提出をした国民投票法改正案、いわゆる三項目案につきましては、公職選挙法並びの改正案であり、投票環境の向上などの観点から、各会派、異論のない内容でありましたけれども、昨年の衆議院解散で廃案となった経緯がございます。結果として、現在、国民投票法の投票環境整備は公職選挙法よりも遅れている状態にあります。

 憲法九十六条に規定された国民投票は、主権者たる国民が国の政治の在り方を最終的に決定するとの国民主権の原理を顕現させた国民の権利でございます。したがいまして、その手続を規定する国民投票法の必要な整備を行うことは、改憲派、護憲派などの立場を超えて、国会議員として当然の責務であるため、速やかに三項目案を再提出し、成立させるべきだと考えます。

 なお、国民投票法に関するCM規制やフェイクニュース対策をめぐる議論もなされておりますが、これを理由に投票環境整備のための三項目案の提出を遅らせるべきではないことを付言をいたします。

 今触れたネットCMを含めたCM規制の在り方につきましては、今国会でも議論がなされました。

 まず、基本的な考え方として、国民投票運動はできるだけ自由に行われるべきであるという理念は今後も堅持していくべきであります。

 国民投票における放送CMについては、民放連が、従前の放送基準に加えて、国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢、考査ガイドラインを示し、事業者が一定の自主規制を行うことが公表されております。

 また、ネットCMに関しましては、事業者団体であるJIAAが、国民投票には特化はしていないものの、広告掲載基準ガイドラインを策定し、広告主体者の明示や広告であることの明示等を定めております。特にネットCMにつきましては、主体の多様さ、また出稿の複雑さなどを踏まえますと、法規制は容易ではないというふうに考えます。

 まずは、こうした事業者団体による自主規制を尊重すべきであります。そして、出稿者である政党等の自主的取組も必要であります。いずれにしましても、CM規制に関しましては、こうした自主規制等を中心に対応すべきと考えます。

 次に、フェイクニュース対策についてであります。

 その方策の一つとして、広報協議会によるファクトチェックの是非が議論されましたが、各会派、また参考人の意見等を踏まえると、表現の自由等の観点から、ファクトチェックは民間に委託すべきとの方向性が確認をされたのではないかと思っております。

 他方、鳥海参考人、また平参考人も指摘をされたように、フェイクニュース対策においても広報協議会が果たすべき役割は極めて重要であります。フェイクニュース対策は、ゼロフェイクよりもウィズフェイクを前提として考えるべきであり、鳥海参考人や慶応義塾大学の山本龍彦教授らが提唱されたいわゆる情報的健康の観点から、自分とは反対の意見も含めバランスよく情報に触れる機会を充実させることが求められます。

 このような観点から、私は、オンライン空間の諸対応に加えまして、オフライン空間の、いわゆるリアルな空間での対話の価値も見直されるべきであり、広報協議会が公開討論会等を活発に行うべきとの意見を述べてまいりました。広報協議会によるオンライン、オフラインのハイブリッドな広報を充実したものとすべく、その具体的な在り方につきましては、次国会において議論を詰めていくべきと考えております。

 そして、広報協議会が実際に機能するためには、事務の内容や事務局の組織の在り方等を具体化し、関係する規程を整備する必要があります。今国会では幹事会メンバーの皆様を中心に議論が進められておりましたけれども、引き続き、速やかに規程を整備するという明確な方向性の下に議論を進めるべきだというふうに思っております。

 次に、選挙困難事態における国会機能維持条項についてであります。

 本日の幹事会では、我が党を含む五会派の幹事、オブザーバーによる骨子案が配付をされ、先ほど自由民主党の船田幹事からその概要についての御発言がございました。

 これは、衆議院憲法審査会の現場における議論を踏まえたものでありますし、条文案の一歩手前のものとなっております。既に論点が出尽くしているにもかかわらず具体案のない状態では、延々とブレーンストーミングが続くだけでありますので、今秋の臨時会では、起草委員会を設置し、条文案のたたき台を基に賛否を交わし、生産的な議論へと移行すべきではないかというふうに考えております。

 以上、本日は、国民投票法と選挙困難事態における国会機能維持条項をめぐる今国会の振り返りと今後の進め方について意見を申し上げました。次国会におきまして建設的な議論が進められることを期待をいたしまして、私の発言を終わります。

枝野会長 次に、大石あきこさん。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 まず、本日、幹事会が九時四十分から行われましたが、そこで提案された衆議院憲法審査会五会派、自民、維新、国民、公明、有志の幹事、オブザーバーによる改憲の骨子案というメモが出されたことは絶対に許されません。

 まず、この中身、これはとんでも改憲で、ずっと申し上げていましたけれども、緊急事態条項の任期延長の中身なんですね。これは絶対やっちゃいけないんです。憲法違反なんですね。このような、衆議院議員の居座りを許す、そして内閣の居座りを許すことは絶対やっちゃいけないよというのが今の憲法の趣旨なんですよ。

 というのも、一九四一年に唯一、衆議院の任期延長がされて、その直後にアメリカとの開戦をやっていますから、やはり戦争をやるときに内閣は選挙があったら困るんですね、腰を据えて戦争をやらなきゃいけないから。だから任期延長というのが行われたということに鑑み、任期延長というのはそういうことを狙って行われるものですから、憲法違反で、まずやっちゃいけないんです。

 それで、憲法の……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらっていいですか。憲法の前文に、そういう今の憲法に反するものは排除しなきゃいけないと書いてあるんですよね。そして、憲法九十九条の憲法擁護義務に基づいて、私たちはこのような間違った改憲を排除しなければいけないんです。なのに、このようなものを最終の最終になって五会派で出してくるというのは本当に万死に値します。

 それで、出されてきたやつ、これなんですけれども、こんなもの、生煮えで出してきて、本当にばかさ加減が露呈していますからね。

 それで、お伺いします。

 幹事会でも私は聞きましたが、自民党の船田幹事、これを出されましたけれども、結局、党内手続は取れなかったんですよね。これは会派としての意見でよろしいですか。

 というのも、参議院の緊急集会に関して、七十日限定説というところが改憲する立法事実として大きな点だったんですよね。そこが今回のこのメモでは崩れていますから、立法事実もない。

 その背景には、自民党の中で衆議院と参議院で意見が整っていませんよね。前々から指摘していましたが、整っていないままだから、衆議院の五会派でと断って出してこられたんですね。

 幹事会で私はそれを質問しました。自民党の中で衆参でこれはまとまっているのか、会派としての意見でよろしいんですかと聞いたら、そこは正式には党内手続は取れなかったんだ、大きく言えば会派の意見ですというふうにおっしゃっていて、それはどういう意味ですか。具体的に教えていただきたいんです。党内手続を取れなかった理由を誠実に教えてください。

 それで、そのときに、枝野審査会長にもお伺いしますが、私が幹事会でそのように質問しました、これは自民党の会派としての提出なのかと。そうしたら、枝野審査会長も、それは確認しますと、幹事会のその場で、私が質問した後におっしゃいました。

 すなわち、枝野審査会長は、これを出していいよと言いましたけれども、自民党の会派としての意見なのかという確認は、私の質問後の確認だったので、事前には確認されていなかったはずです。でも、枝野審査会長は、ここでの意見は会派としての意見をするようにと冒頭にもおっしゃっていましたので、なぜそのような確認をせずにこの重大な改憲骨子案を出させたのか、そこは説明を求めます。

 それで、このように、もう崩れているんだと。党内手続も取れないままに出してきたから、衆議院の憲法審査会五会派というふうに銘打って、二回ほどそういうふうに説明されたという状況なんですね。

 なぜ崩れたかというと、これはもう論理的に体を成していないからですよ。つまり、この衆議院の憲法審査会でも、参議院緊急集会の七十日限定説というのは、改憲の大きな立法事実として、テーマとして限定してこの会でも議論しましたよね。先ほど維新の馬場さんが言及しましたけれども、争点になった参議院の緊急集会七十日限定説というものが議論されて、七十日限定だからこそ、改憲しなきゃ選挙困難事態に備えられないんだというのが改憲五会派の理屈だったんですね。

 しかし、今回出してきた骨子では、船田幹事は明確におっしゃっています、七十日に限定せずに、相当程度長期間にと先ほども説明されました。すなわち、参議院の緊急集会の七十日限定説というのは崩した形で今回の改憲五会派のこのメモを出されているので、改憲の大きな立法事実であった、参議院緊急集会が七十日以上開けないんだ、現憲法はそのようにしか解釈できないから憲法を変えざるを得ないんだという改憲五会派の立法事実というのが崩れて、改憲理由がないんですよ。そんな生煮えのものを自民党が会派をまとめずに出してきたというのが本日です。

 このような審査会はやはり開かれるべきではなかったということを申し上げます。

 これは質問を入れて七分でしたら、一旦これで止めます。

枝野会長 まず、私に対するお尋ねですが、幹事会の中で、まさに大石議員から、この紙の主体は誰なのかという議論がありましたので、確認を取ったものであります。

船田委員 今の大石委員の御質問でございますが、私ども自民党として、昨年夏に長いこと、ワーキングチームをつくりまして、衆参両院の間での意見の調整をさせていただきました。

 その結果、選挙困難事態があるということ、そして、その際は議員任期を延長するということ自体は合意をいたしておりますし、また、参議院の緊急集会がいつまでも緊急集会として存続をする、あるいは権限を持っているということではなくて、一定の限界があるということについても衆参で合意をいたしております。

 ただ、参議院の方で、緊急集会の射程について、あるいはその権限について意見の食い違いが若干ございましたので、そういう意味で、今回は、衆議院の現場の幹事、オブザーバーで決定をした、そういう合意の内容という形で、念のための措置をいたしました。

 しかし、これは生煮えということでは全くございませんし、それから、私どもとしては、憲法改正実現本部、党の正式機関であります、総裁直属機関でございますが、今日は古屋本部長もおられますが、その実現本部で了承されたものでありますので、これはほぼ自民党の考え方と言っても差し支えないと思っております。

 以上です。

枝野会長 次に、赤嶺政賢さん。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、これまで、憲法審査会で改憲のための議論はやるべきではないと主張してきました。それは、何よりも、国民の多くが改憲を求めていないからです。今日も、国会議員の任期を延長する改憲が必要という主張がありますが、そのような声は国民の中から全く沸き上がっていません。

 そもそも、議員任期延長の改憲は、国民の選挙権を停止し、恣意的な権力の延命につながるものです。国民が改憲を求めていないにもかかわらず、憲法を尊重し擁護する義務を負う国会議員が改憲を喧伝し、国民に押しつけることは、本末転倒であり、許されません。

 さらに、前回の審査会では、憲法九条を変えて自衛隊を明記すべきだとか国防規定を入れるべきだという意見がありました。しかし、今問われているのは、自民党政権が大軍拡を推し進め、憲法を破壊していることであり、九条を変えることではありません。

 安倍政権は、二〇一四年に、それまで歴代の自民党政権も憲法九条の下で認められないとしてきた集団的自衛権の行使を一片の閣議決定で容認しました。この審査会でも、参考人として出席した三人の憲法学者が憲法違反だと断じたものです。

 さらに、岸田政権は、二〇二二年に策定した安保三文書で、二七年度までの軍事費を四十三兆円とし、敵基地攻撃能力の保有を明記しました。今年度にも長射程ミサイルを配備する計画です。軍事予算は八兆円を超え、国民生活に不可欠な予算を圧迫しています。

 その上、政府は、空港や港湾など公共インフラや学術研究まで軍事に動員しようとしています。ありとあらゆるものを動員して侵略戦争に突き進んだ過去の過ちを繰り返し、日本国憲法の精神を根底から踏みにじるものです。度重なる憲法じゅうりんを推し進め、その上、改憲を主張するなど、断じて許されません。

 今、国会がやるべきは、改憲の議論ではなく、憲法を現実の政治に生かすための議論です。今国会も、選択的夫婦別姓や同性婚、教育の無償化など、憲法に関わる多くの政治課題が浮き彫りになりました。同時に、憲法の原理原則に反する現実を変える議論が国会に求められています。

 その中で、私は、憲法の上に日米安保条約地位協定がある下で、沖縄県民の人権がじゅうりんされ続けている問題を繰り返し取り上げてきました。この沖縄の実態は変わらないどころか、いよいよ深刻になっています。

 今年三月には、海兵隊員が米軍基地内で基地従業員の日本人女性に性的暴行をし、助けに入った女性にまでけがを負わせる事件が起きました。一月にも、海兵隊員が日本人女性に性的暴行をしていたことが明らかになっています。相次ぐ性的暴行事件に対し、日本政府は、米軍に実効性のある再発防止策を取らせることができないばかりか、米軍人の身柄を拘束することさえできません。

 性犯罪だけではありません。昨年一年間の沖縄での米軍関係者による刑法犯の検挙数は七十三件、八十人と、過去二十年で最悪となっています。先月も、米軍によるひき逃げや不法侵入、飲酒運転が立て続けに起こりました。

 事故も頻発しています。一月には、パラシュート降下訓練中のオスプレイが重さ四百キログラムの貨物を提供区域外に落下させました。先月は、米軍ヘリが発火物の入った八キロのバッグを落下させています。

 戦後八十年たった今なお、米軍が最優先され、県民の命や暮らしが脅かされ続けています。米軍占領下と何も変わっていません。日本国憲法に反する沖縄の現実を変えることこそ、私たち政治家が果たすべき責務です。日米安保条約を根本から見直し、地位協定を抜本的に改定することが求められています。そのための議論を大いにやるべきだと申し上げて、発言を終わります。

枝野会長 次に、北神圭朗さん。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 憲法審査会も終わりに近づきましたが、会派多数のほぼ一致している選挙困難事態における国会機能の維持については、いまだに具体案の審議がなされていません。「あはれ今年の秋もいぬめり」という感をいたしております。

 我々は、船田筆頭幹事からあった骨子案を踏まえて、大規模災害などにより選挙ができない事態に対し、今から立法府として備えておく必要があると考えます。ほかの先進国でも、明文上あるいは事実上やっていることであります。

 こうした問題は、数学と違って、論理的に絶対正しいということはあり得ないと思います。学界にも、多数説、少数説というものがあります。しかし、だからといって、納得しない人がいるから未来永劫先送りするのはどうかと思います。憲法の性質上、通常の法案よりは広い合意を探ることは大事ですが、最後は、採決により、本審査会としての決断が求められます。民主主義や手順を踏んだ上で、最後は多数決で決めることが求められます。

 こう言っても、皆さん、確信犯が多いので、今日は少し質問をしたいと思います。主に、長谷部先生の理論で言うところの、平常時と非常時を明確に分ける非常事態の法理をめぐってお聞きしたいと思います。

 まず、自民党さん。

 選挙困難事態における国会機能の維持のための憲法改正、これは諦めたらどうでしょうか。ヒトラー呼ばわりをされるだけです。護憲派に転じて、いざというときには内閣が何でもできる非常事態の法理で対応したらどうなのか。私、不思議で涙ぐましい、立憲主義のイバラの道をなぜそこまで歩もうとされているのか、お聞きしたいというふうに思います。

 次に、立憲民主党に対して。

 七十日を超えて緊急集会が開催できるとしても、どこまで延長が可能なのか、その限度に関する合理的な基準をどう考えるのか、教えていただきたいと思います。

 また、衆議院の解散時また任期満了時に非常時となる場合、首相を始め多くの閣僚が衆議院議員の身分を失います。その場合、憲法六十八条一項の、国務大臣の過半数は国会議員の中から選ばなければならないとの規定との関係はどう考えますか。全員参議院議員にするということでしょうか。

 さらに、そもそも選挙困難事態なぞ起こり得ないんだという考えかもしれません。少なくとも、立法事実はないと。しかし、現実は、能登半島の災害あるいは東日本大震災の原発事故を始め、我が国は想定外のことがこれまでもありました。万が一こうした事態が発生したら、長谷部先生の言う緊急事態の法理、つまり内閣に一任するということでよいとお考えでしょうか。

 以上、質問いたします。

船田委員 北神委員の御質問にお答えいたします。

 確かに、長谷部先生は非常事態の法理という考え方もあるということで御提示をいただきましたが、これはまさに、国会の関与なしで政府が恣意的に、あるいは超法規的に物事に対応していくということだと思います。

 そうなりますと、やはり、時の政府の様々な判断、あるいはそういうことについて、国会が物申すことができない。これはちょうど、ワイマール憲法下のナチス・ドイツが、まさに国会を何度も何度も解散をしたりして、そして政府の権限をどんどん強めていったということにつながる。

 そういう歴史を我々は学んでおりますので、やはりそこは、どんなに緊急事態であっても、国会機能がきちんと存続している、維持できている、そして、国会がきちんと物を決められるという状況をつくっておくことがまさに民主主義の根底である、こういう考え方でこの骨子案を出させていただいた次第でございます。

 以上です。

山花委員 三問いただきました。

 立憲的統制が利いているという前提で、七十日を少し超える可能性がある場合として考えられるのが、将来効判決が出たにもかかわらず一票の格差の是正が行われなかったという場合でありまして、参議院の緊急集会においてこれは可及的速やかに結論を得るべきだとしか、ちょっと言いようがないかと思います。

 六十八条一項の関係について御質問がありました。

 参議院の緊急集会については、衆議院の解散の場合に限られず、任期満了の場合にも類推されるという学説が有力です。衆議院の解散の場合に、既に閣僚は衆議院議員の身分は失っておりますけれども、選挙後に新内閣が成立するまでは職務執行内閣が存続すると七十一条に規定がありますので、これと同様のことになるのかなと思っております。

 長谷部、高橋先生の学説についての指摘がありました。

 先ほど、原則的な考え方については武正幹事から申し上げましたが、その上で、全面的に選挙を停止しなければいけないという事態があるんだとすると、最長で四年以内に行使できるという衆議院議員の選挙権の主観的内容との比較考量という観点からすると、半数以上の地域で選挙が実施できない場合と考えられるところ、これは国家緊急権として論じられる非常事態の中でも相当に深刻な事態でありますので、長谷部、高橋両教授が、内閣に一任ということなんでしょうか、私の理解では、可能な限り守る、ルールを遵守するように努めるということだと理解をしております。

 このような状況の下では、そもそも憲法の全てのルールを守ることがもう困難な事態になっていますので、例えば居住移転の自由だとか財産権などについても、もしかするとオーバーライドしなければいけないような事態ですから、教科書的にも、そもそも法の世界ではないとか必要は法を知らないと呼ばれるような事態ですので、したがって、議員任期のみを取り上げて法の世界に封じ込めようとするのはいささか無理筋なことではないかと考えています。

北神委員 ありがとうございました。

 だから、結局、内閣に一任、もちろん、一任するというのはちょっと大げさな表現かもしれませんけれども、できるだけ守るようにする、しかし、最終的には、守れないところは内閣がやらざるを得ないというのが緊急事態の法理だというふうに理解しております。

 高橋先生の、本審査会でもお話ししましたけれども、彼は、超法規的な措置をやはりやらざるを得ないんだろうということをおっしゃっています。ですから、立憲主義の観点からいうと、やはり手続を明記する方がより行政権の濫用を防げるということが明らかになったと思いますので、是非、起草委員会を立ち上げて具体案で議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

枝野会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は三分以内となります。質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は全ての答弁時間を含めて五分以内となりますので、御留意ください。

 発言時間の経過につきましては、それぞれおおむね三分経過時、五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせをいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

上川委員 自由民主党の上川陽子です。

 今国会は、審査会の運営について、会長、会長代理、野党筆頭の三者による協議を踏まえ、具体的には幹事会メンバーに諮って決定をしてきました。これを前提として、審査会の外では、与野党の枠を離れ、会派間で協議、調整を行う場面もありました。このように公式、非公式の枠組みを組み合わせることにより、会派間の調整が進んでいきました。幹事会メンバーで問題意識を共有しつつ、丁寧な合意形成の手続を経て審査会の運営が進められたことは、評価すべきと考えます。また、向こう数回分の日程やテーマを余裕を持って決定するなど、計画的な審査会の開催により、各会派が事前に準備した上で審査会に臨むことができました。

 そうした運営の下、今国会では、選挙困難事態における国会機能維持に関して、立法事実と、参議院の緊急集会の射程という二つの論点に分けるとともに、新たに臨時会召集期限、解散権制限というテーマを設定するなど、各会派が譲歩しつつ、毎回のテーマを個別具体的に設定してきました。多くの論点が煮詰まりつつある選挙困難事態における国会機能維持については、次のステップに向けて建設的な議論を行っていくことを提案いたします。

 また、国民投票法については、審査会での自由討議や参考人質疑、そして幹事懇談会や意見交換会を含めて、今国会では実質的に五回の議論を行うことができました。ネットの問題やファクトチェック等の広報協議会の機能といった点について、各会派からの建設的な議論を通じて論点が明確になり、また、議論の概要を整理して共有することにより、多くの会派において共通認識を得ることができたものと考えます。

 今後の進め方についてですが、次期国会以降におきましても、このような審査会運営を継続し、中期的な見通しの下、毎週定例日に審査会を開催し、議論を積み重ねていくべきと考えます。公開の場でありますこの審査会を継続的に開くことにより、憲法論議の内容を国民に示すことが非常に重要です。多くの会派で共通点を見出していき、一致できるところから具体的な形にし、憲法改正の実現に向けて進んでいくことが肝要だと申し上げ、発言を終わります。

五十嵐(え)委員 立憲民主党・無所属の五十嵐えりです。

 私は、今回初めて憲法審査会の委員となりましたけれども、国会議員の任期延長改憲を主張される方々は、議論は尽くした、条文起草委員会を設置せよと繰り返されるばかりで、正直、任期延長の主張の根幹たる選挙の一体性についてはほぼ議論がなされず、全く理解できませんでした。

 改憲派はこう主張されています。災害等により一部の被災地で選挙ができない、それは選挙の一体性を害する、だから全国会議員の任期を延長して、全国の選挙を全て延期すべきというものです。

 しかし、そこまでして守ろうとする選挙の一体性なるものに憲法上の価値はあるのでしょうか。仮にあるとして、そこまで重要な利益なのか、よく分かりません。

 選挙が延期されると、私たち国民は、憲法で保障された選挙の機会を一律に制限されることになります。

 在外邦人選挙権制限違憲判決で最高裁は、国民の代表者である議員を選挙によって選定する権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹を成すものであり、国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、例外的にそのような制限をしなければ選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合にのみ制限できる、この例外要件に当たらないのに選挙権を制限することは、憲法十五条一項及び三項、四十三条一項並びに四十四条ただし書に違反すると判示しています。

 民主主義の根幹を成す選挙権の保障より、なぜ選挙の一体性が優先するのでしょうか。それはこの例外要件を満たすのでしょうか。仮に選挙の一体性がそこまで重要なら、なぜ補欠選挙や繰延べ投票、選挙の一部無効判決が可能なのでしょうか。疑問は尽きません。

 五月七日の参議院憲法審査会での参考人質疑では、災害時に選挙を実施してきた選挙管理委員会の方々から、災害時にこそ自分たちの代表者を選ぶという民主主義における選挙の重みがあったとの力強いお言葉がありました。立法府に求められていることは、災害が起きても選挙できる体制の整備です。

 なお、本日、幹事会で五会派案が提示されておりますけれども、どんなにこれを議論したところで、現状、我が党及び反対する野党の議席の数を考慮しますと、衆議院での三分の二以上の賛成は得られず、任期延長の改憲発議は絶対にあり得ませんが、そうだとしても、この選挙一体性についての理解を深めずに、今後これ以上の議論は進められません。

 よって、憲法上、選挙の一体性なるものについて議論を深めるため、参考人を招き、意見を聴取することを御提案いたします。

 以上です。

葉梨委員 自由民主党の葉梨康弘です。

 私、憲法の議論に国会で入りましたのは、平成十六年に中山調査会の一員になって、翌年、二〇〇五年の憲法調査会の期限とともに、調査会の報告書が作成されました。そして、その後、中山調査会は中山委員会に名前を変えて、平成十九年、私も提出者になりまして、国民投票法の成立に至りました。

 このように、公平公正な運営の下、中山調査会、中山委員会においては、しっかりと成果を出してまいりました。枝野審査会においても、しっかりと成果を出していただくように強く希望いたします。

 その意味で、私は、この審査会で起草委員会が設置されなかったことは残念に思います。なぜならば、そういった案を基に議論をすることは、決して分断を招くわけではなくて、その立法事実の有無も含めて、しっかりと精査をして討論することが可能だからです。ですから、今後は、本来だったら起草委員会の案を基に議論をしなければいけない。

 けれども、設置をされていないわけですから、次回に向けて提案をさせていただきたいと思います。

 一つは、先ほど船田幹事がおっしゃられた骨子案、これについて、今後いろいろなことを議論しなければいけないということを言われました。認定要件、濫用防止、さらには効力、緊急集会の拡充、そういったことについて議題を持って議論をしていくということも大事だと思います。

 また、自衛隊の明記についても、自衛隊にどのような任務や権限を付与するのか、そういったことについてもしっかりと次回の審査会においては議論をしていくことが大切だというふうに思います。

 案がなくても、先に進めることはできます。是非とも前向きな議論を期待して、私の発言を終わります。

馬場(伸)委員 日本維新の会、馬場伸幸です。

 先ほども申し上げましたが、今国会で立憲民主党の一部議員が事務方に対して繰り返し行っている誹謗中傷について、今国会中にけじめをつけなければなりません。

 そこで、立憲民主党の憲法調査会長でもある山花幹事にお伺いします。

 三月二十七日の本審査会において、藤原委員が、参議院の緊急集会に関する事務方資料や橘局長の説明を学説の捏造などとする誹謗中傷を行いました。これに対しては、枝野会長から注意がなされたほか、武正幹事からも不適切との評価や叱責がなされましたが、藤原議員はその後も、「「学説の捏造」発言顛末」と題してXで二十回近くの投稿を行うなど、執拗に誹謗中傷を続けています。

 これに輪をかけているのが、小西洋之参議院議員の言動です。

 小西議員は、参議院の憲法審査会において、参議院の緊急集会に関する七十日限定説、無限定説を分類、整理して紹介する衆議院憲法審査会事務局の資料や橘局長の説明について、事実と法理に反する見解とか、曲解、暴論などと口を極めて罵った上で、我々五会派の誤った見解を支えていると非難し、Xでも同様の誹謗中傷を続けています。

 そこで、山花幹事に質問します。

 まず、小西、藤原両議員の主張は、党の見解なのでしょうか。

 次に、参議院の緊急集会に関する具体的な論点について、二点お考えをお伺いします。

 一つ目は、七十日限定説は法令解釈ですらないとする主張について、立憲民主党としてどのようにお考えでしょうか。二つ目、長谷部参考人の学説に関する橘局長の理解や説明について、どのように評価されているのでしょうか。

 最後に、橘局長にもお伺いします。

 小西議員は、三月二十七日の本審査会における橘局長の長谷部参考人の無限定説の説明について、四月十六日の参議院憲法審査会で、参議院の法制局長に「御指摘の文言どおりの発言をし、あるいは全体として御指摘のような見解を述べている箇所は、見当たりませんでした。」と答弁させた上で、橘局長の説明は事実と法理に反する見解であると言わなければならないなどと述べています。

 橘局長の説明の根拠あるいは背景は、どのようなものでしょうか。

 以上、よろしくお願いいたします。

山花委員 今国会、私どもとしては、発言のラインについてはできるだけそろえるよう、事前に調整をしてまいりましたけれども、両名の発言については、これに倣ったものではございませんので、立憲民主党としての見解ではございません。

 先日、党として憲法調査会の役員会を開催し、長谷部教授の見解に対する誤解に基づく意見であると整理をいたしました。

 令和五年五月十八日、長谷部教授は、「今議論の対象となっておりますのは、国家の存立に関わるような非常の事態でございまして、通常時の論理がそのままの形で通用すると考えるべきではないとも思われます。」という前提で、いわゆる七十日非限定説を初めて公にされました。

 両名が問題だとする衆憲資百二号は、それに先立つ令和五年五月十一日の憲法審査会において配付されたものであり、学説を捏造するということは時系列的にはあり得ないことであるということも確認をいたしました。

 両名には、私からコンメンタールなども示した上で、上限七十日、最長七十日という記述がある旨も指摘をしたところでございますが、聞き入れられなかったことは、私の不徳の致すところでございます。

 橘法制局長には、不愉快な思いをさせたこと、監督不行き届きを党の調査会の責任者としておわび申し上げます。申し訳ありませんでした。

 長谷部教授の学説に対する橘局長の理解や説明についての評価ということですが、極めて正確なものであると認識をいたしております。

 なお、長谷部教授の御見解については、長谷部教授御自身に御確認いただくことをお願いし、御確認いただいているということを申し添えます。

橘法制局長 馬場先生、御質問ありがとうございます。

 御指摘の私の発言は、次のような発言だったかと存じます。繰り返します。

 総選挙実施が見通せるような場合には、条文の姿形を前提とすれば、原則として期間限定はあるのだろう、しかし、そのようなことは言っていられない場合には、期間限定はないということになるはずである、その結果、全体として煎じ詰めれば、期間限定はないということになる。

 これは、憲法五十四条の解釈に関して、七十日限定説、無限定説が大きな争点となっていたことを踏まえて、私から長谷部先生に直接にそのお考えをお伺いし、長谷部先生からメールで御教示いただいた文章をそのまま御紹介させてもらったものです。長谷部先生の解釈のロジックが一番よく分かると考えたからです。

 衆参の憲法審査会の会議録を丹念にお読みになれば、同趣旨のことを長谷部先生がおっしゃっていることは十分に御理解いただけるとは存じますが、私の発言自体はメールからの引用であって、会議録での長谷部先生の御発言の要約ではございません。したがって、会議録を幾ら探しても文言どおりの発言がないのは当然かと思います。

 以上です。

福田(徹)委員 国民民主党、福田徹です。

 我が国の最高法規である憲法を議論させていただけることを、まず、心から光栄に思います。同時に、多くの議員が何年も前の憲法審査会での発言や議論の内容を踏まえて御意見を述べられているのを拝見し、議員の皆様の憲法に対する思い、御努力に感嘆しております。そして、本会は極めて連続性のある会なのだと驚いております。

 その本会をよりよいものにできるかもしれないと私が考えている提案をさせていただきます。それは、国民の声を反映させることです。

 この通常国会における憲法審査会では、様々な論点について多くの議員の御発言を伺うことができました。憲法を熟知された皆様のどの御発言も大変勉強になりました。一方で、常日頃から憲法を意識しているわけではない国民はどう考えているのかという視点は多くなかったように感じます。

 例えば、選挙困難事態は起こり得るのかという論点における、どれだけの割合の選挙区で選挙が行われれば民主的正統性があるのかといった議論を始め、共通した客観的な指標がなく、価値観の違いによって意見が平行線をたどることが少なくないと感じました。客観的な定義や指標がないのであれば、憲法が示す主権者たる国民の声を基に議論するべきだと私は考えます。

 私たち政治家は国民によって選ばれておりますので、私たちの意見が民意だという考えもあるかもしれません。しかし、毎回の選挙で私たちが憲法への考え方だけで選ばれているわけではないと思います。本会においては、世論調査でこういうデータがあるという民意の根拠を基に議論がなされてもよいのではないかと考えます。

 毎年、憲法記念日には多くのメディアが世論調査を行っています。そして、アカデミアからの研究報告もあります。もちろん、細かい論点までは到底足りていませんが、それであれば、何が足りないのか、それを得るためには何が必要なのかを考え、民意を捉える努力をする必要があると思います。

 憲法を議論する上で欠かすことができないデータが今ないのであれば、全党、全議員が協力して、私たちが調査して作ることも必要だと思います。

 本会が各政党の意見を表明する会にとどまらず、国民の憲法を、国民のために、国民の意思を反映しながら議論できる会になること、国民のために働く会になることを期待して、発言とさせていただきます。

 ありがとうございます。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司です。

 前回の憲法審査会におきまして、憲法と現実の乖離について議論が行われました。私は、一番の乖離は、本審査会の議論と国民の期待との乖離ではないかと考えております。改憲派、改憲阻止派、双方です。

 当然ながら、国民の声は一つではなく、多様であります。改憲を進めてほしいという声、改憲させないでほしいという声、様々な声があると承知しております。

 私を含め、改憲を進めようという議員は、賛成もあるけれども反対もあるということは承知しております。一方、改憲阻止派の方は、よく、国民は憲法改正を望んでいないと言い切られることがあります。改憲を進めてほしいという国民は、改憲阻止派の方々にとって国民ではないのでしょうか。

 改憲阻止派の方はもっと自信を持った方がいいと思っています。御承知のとおり、憲法改正は国会が決めるのではなく、国民投票で国民が決定するものです。もし国民の多くが改憲を望んでいないと考えておられるのであれば、国民の半数が賛成することはありません。本当は、国民投票にかけたら過半数の国民が賛成して改憲が実現してしまうから、発議に反対されているのではないでしょうか。改正原案に反対でもいいので、是非、国民が反対の意思を示せるよう、国会発議、国民投票の実施には自信を持って賛同していただきたいと思います。

 反対に、改憲会派、とりわけ自民党の責任は大きいと考えております。特に、自衛隊の明記、これにつきましては、自民党の幹事は本当に重要だと考えているんでしょうか。自民党は、従来から改憲四項目を挙げて自衛隊明記の必要を訴えておりますが、なぜ憲法審査会の議題に上げて深掘りした議論を進めないのでしょうか。重要と考えるのであれば、率先して議題に上げて議論を尽くし、審議し、条文化手続を進めるべきであり、進めないのであれば、自民党は自衛隊明記に関する必要性、緊急性が高いと考えていないと評価されても仕方ありません。

 様々な論点があると言って議論を拡散させて、何も結論を出さず先延ばしにするのではなく、速やかに方向性を固めて改正原案を作成し、国民に示すことを求めます。

 以上です。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 私は、再審法の改正、これを絶対にかち取りたい、この国会でやるしかないんだということを上川委員に質問したいんですけれども、それの前段に、先ほどの別の話で、維新が法制局長のこと、藤原委員のことで許し難いと言って、それで立憲の方がわざわざ立ち上がって謝って、法制局長が出てきたというのが、どうも振りつけ臭いなと思って、ちょっと一言言及しておきたいんですけれどもね。

 というのが、私は、橘法制局長に、この件で直接お電話で事情説明、伺うことができたんですよね。でも、橘法制局長は非常に主体的で、小西洋之議員のことをすごい怒っていて、あの小西洋之がと呼び捨てにして怒ってはったんですよね。やはりそういう主観的な部分が入り込みますので、やはり私は、これは公正な論評であって……(発言する者あり)

枝野会長 不規則発言はおやめください。

大石委員 法制局長に、官僚をいじめたみたいな構図ではありませんし、そのやり取りの中でもいろいろ言いたいことがありますので、何かこの形で、次の審査会からその論はなくなったみたいな話になるのには牽制を入れたいので、このような付言を行いました。誰にもこれには質問はいたしません。

 再審法の改正についてなんです。この国会で再審法の改正を成し遂げる必要があります。

 それで、これは憲法遵守そのものでして、超党派で去年から議連をつくって、これはもう本当に多角的に、専門家、弁護士も入れて議員立法を作ってきたんですよ。その作ってきた会長の方もここに、自民党の方ですけれども、いらっしゃるし、自民党主導で、もうこれは過半数の議員が議連に所属していて、この国会で成立するしかないんだと。産経新聞も含めて、あらゆるメディアがこの国会で成立をということを求めているんですよね。そのぐらい、これはもう人道上、国際社会にとっても不可欠である再審法の改正というのが日本は遅れているんです。

 それで、憲法でも、自白強要したら駄目だとか、証拠捏造とか証拠隠しは駄目だ、不当な拘束は駄目だと定めていますよね。だけれども、そうならないで、犠牲になった方が少なからずいらっしゃるんですよね。袴田巌さん、もう今八十九歳で、四十七年間拘束されて、これは世界一長い拘束だとされています。石川一雄さんは、六十年間無罪を求めて闘って、この三月に亡くなられました。

 時間がないとずっと言い続けていたのにこの国会で成立しないということに、上川委員にお伺いしたいのが、上川委員は、自民党の司法制度調査会として、私に言わせれば最悪のタイミング、六月二日に、もう議員立法が手続に入ろうとしているのに、議員立法ではなく法制審で再審法の改正を検討するということをわざわざ鈴木法務大臣に言いに行ったじゃないですか、自民党として。でも、自民党の中でも、再審法は議員立法で……

枝野会長 持ち時間が終了しておりますので、まとめてください。

大石委員 はい。

 改正しようという動きがあって、これを邪魔しないでいただきたいんです。

 やはり、時間がないです。上川委員、お答えいただけないですか。議員立法を通していただきたいんですよ。

枝野会長 憲法審のテーマかどうか、若干微妙ですが、関連がないわけではないので、上川さん、お答えになりますでしょうか。

上川委員 今、再審制ということでのテーマの提起がございましたが、憲法におきましても三審制という制度が導入されている中におきまして再審をどう考えるかということについて、今、議員立法が提出の運びになっているということは存じ上げております。

 この憲法審査会における議論ということよりも、むしろ法務委員会においての議論というふうに思っておりますが、私は、法務大臣にという御言及がございましたけれども、このことについて申し上げに行ったわけではございませんで、犯罪被害者等基本法に基づく犯罪の被害者に対しての支援に対しての提言ということで伺わせていただきましたので、今、大石委員が言ったような趣旨で大臣にお会いしたということではございません。そのことを申し上げたいというふうに思っております。

 あくまで、議員立法で今審議を行うという段階にあるということは承知しておりますが、そのことについて私が申し上げに行ったということについては、ちょっと事実と反するということを申し上げたいと思います。

大石委員 是非、議員立法に協力してください。お願いします。

枝野会長 橘さん、御発言になりますか。いいですか、今の件について。(橘法制局長「遠慮します」と呼ぶ)よろしいですか。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 先ほどの大石さんの御発言というのは、非常に問題があると思いますね。最終の審査会になる可能性があるここで、この通常国会で発言された議員の方の最終的な整理を行うという意味で私が質問させていただいた、それを受けて、立憲民主党の憲法審査会の会長が党を代表するお立場で謝罪をされた、それのどこが振りつけなんですか。あなた、自分の言うことが通らなければそうやって難癖つけるのはもうやめた方がいいと思います。(大石委員「あの……」と呼ぶ)私の発言中です。

枝野会長 不規則発言はおやめください。(大石委員「聞いたじゃないですか、私に」と呼ぶ)不規則発言はおやめください。

馬場(伸)委員 そして、橘局長に対しても、再度、議員を呼び捨てにしていたとか、そういうことを、この場でおっしゃることではないのではないですか。橘さんは先ほどから、控えめな方ですから御発言されませんけれども、首をお振りになって否定をされています。あなたはそういう、反論ができない人間に対して、そういう立場で、議員という立場でそういうことをおっしゃるというのは今後お控えになられた方がいいと思います。(発言する者あり)

枝野会長 不規則発言はおやめください。

津村委員 立憲民主党の津村啓介です。

 昨年末の臨時国会から初めて憲法審査会に参加させていただきました。

 今国会の憲法審査会では、枝野会長の下、日本国憲法の普遍的な価値に様々な角度から光が当てられました。議論を経て明らかになったのは、制定から八十年近くを経た今日も憲法改正を必要とする立法事実は確認されなかったという重い事実です。

 本日、幹事会において五会派から骨子案が配付をされました。しかし、これは自民党総務会の了承を経ることなく、十分な党内手続を経たものではありません。参議院選挙を控え、参議院選挙向けのむなしい政治的パフォーマンスにすぎず、本審査会の六か月の議論を踏まえたものとは到底言えないものであることを冒頭明確にしておきたいと思います。

 選挙困難事態の立法事実が認められないという点について、私から一点申し添えます。

 憲法四十三条一項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定めています。

 ここに言う全国民の代表の解釈について、一部会派は、いわゆる社会学的代表論に立ち、一定の範囲の被災地域において議員が不在となれば四十三条の要請が満たされないとの主張を行いました。

 いわゆる社会学的代表とは、実在する民意を忠実に反映しつつ、同時に、自ら統一的な国家意思形成を行うことを目指す代表観を指します。ここでの民意とは、選挙区の地域のみを対象としたものではありません。

 また、公職選挙法十六条で、議員が、「行政区画その他の区域の変更によりその選挙区に異動があつても、その職を失うことはない。」としているのも、議員の全国民の代表性、選挙区の選挙人に対する法的独立性を受けてのものだと解されています。

 被災地選出議員が一時的に不在となった場合に社会学的代表の観念に反するとの主張は、そもそも社会学的代表概念に対する理解が誤っていると言わざるを得ません。

 改めて申し上げますが、本日幹事会で配付された骨子案は、自民党総務会の了承を得たものではありません。党内手続が不完全なものであるということを幹事会で確認させていただきました。

 また、昨年十二月十九日の衆議院憲法審査会において、日本維新の会の阿部委員から、厚生労働省の職員、国連職員として、危機管理政策を専門として仕事をされてきた経験から、緊急事態と非常事態、これは全く異なる概念で、それらに相当する緊急事態条項と国家緊急権も全く異なる概念だということを強調されておられました。非常事態の一例であります戦争の例を挙げて議員任期延長の話をされるのは、この阿部委員の指摘と矛盾した主張となっています。

 こうした各会派の党内不一致の骨子案をこのような形で幹事会で配付をされたことは、大変遺憾でございます。憲法審査会の権威に関わる大変遺憾な事態だというふうに考えてございます。

 憲法の理念を生かす議論、憲法が遵守されていない実態こそ徹底的に議論をし、憲法に基づく政治を取り戻す議論こそが憲法審査会に求められています。

 以上です。

浅野委員 この審査会の運営について、一言申し上げたいと思います。

 私からも、先ほどの大石委員の橘局長に関する発言は非常に問題があると思います。立法府に属する我々議員と立法府に勤めている職員の皆様との信頼関係、これなくして、この国会内での審議に公益性は生まれないと思います。

 本人が発言は遠慮いたしましたけれども、ここは議事録に載る正式な場であります。是非、後刻、会長の方でしっかり取り計らいをいただき、必要に応じて、議事録の削除も含めた適正な対応を求めたいと思います。

 以上です。

枝野会長 ただいまの浅野幹事からのお申出に基づき、後刻、幹事会で協議をいたします。御本人、橘さんに確認の上、事実と違う部分については削除する方向で、幹事会で協議をいたします。

 予定していた時間が経過をいたしました。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十五分散会


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