衆議院

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第1号 令和元年11月7日(木曜日)

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令和元年十一月七日(木曜日)

    午後三時三十二分開議

 出席委員

  外務委員会

   委員長 松本 剛明君

   理事 岩屋  毅君 理事 木原 誠二君

   理事 鈴木 憲和君 理事 中山 泰秀君

   理事 山田 賢司君 理事 下条 みつ君

   理事 山内 康一君 理事 竹内  譲君

      井野 俊郎君    小野寺五典君

      尾身 朝子君    城内  実君

      黄川田仁志君    佐藤 明男君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      中曽根康隆君    中山 展宏君

      本田 太郎君    小熊 慎司君

      岡田 克也君    玄葉光一郎君

      森山 浩行君    山川百合子君

      早稲田夕季君    岡本 三成君

      穀田 恵二君    杉本 和巳君

      井上 一徳君

  農林水産委員会

   委員長 吉野 正芳君

   理事 池田 道孝君 理事 齋藤  健君

   理事 武部  新君 理事 谷  公一君

   理事 細田 健一君 理事 石川 香織君

   理事 近藤 和也君 理事 濱村  進君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      金子 俊平君    神谷  昇君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      坂本 哲志君    笹川 博義君

      高鳥 修一君    永岡 桂子君

      西田 昭二君    野中  厚君

      福山  守君    古川  康君

      宮腰 光寛君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    大串 博志君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      佐々木隆博君    佐藤 公治君

      重徳 和彦君    長谷川嘉一君

      緑川 貴士君    石田 祝稔君

      田村 貴昭君

  経済産業委員会

   委員長 富田 茂之君

   理事 神山 佐市君 理事 小林 鷹之君

   理事 鈴木 淳司君 理事 武藤 容治君

   理事 田嶋  要君 理事 山岡 達丸君

   理事 鰐淵 洋子君

      畦元 将吾君    穴見 陽一君

      石川 昭政君    石崎  徹君

      岡下 昌平君    門山 宏哲君

      神田  裕君    高村 正大君

      國場幸之助君    長尾  敬君

      福田 達夫君    穂坂  泰君

      星野 剛士君    細田 健一君

      三原 朝彦君    宮澤 博行君

      山下 貴司君    吉川  赳君

      和田 義明君    浅野  哲君

      落合 貴之君    柿沢 未途君

      菅  直人君    斉木 武志君

      宮川  伸君    山崎  誠君

      笠井  亮君    足立 康史君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   農林水産大臣       江藤  拓君

   経済産業大臣       梶山 弘志君

   内閣府副大臣       宮下 一郎君

   外務大臣政務官      尾身 朝子君

   外務大臣政務官      中山 展宏君

   経済産業大臣政務官    宮本 周司君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山上 信吾君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山名 規雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         浅川 京子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  横山  紳君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           春日原大樹君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       黒田淳一郎君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

   経済産業委員会専門員   佐野圭以子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより外務委員会農林水産委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件及びデジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 両件の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 共同会派の玄葉光一郎です。

 昨日、外務大臣に四十分間、日米貿易協定について質問させていただきましたけれども、きょうは連合審査ということで、数分だけいただいて、農林水産大臣に質問をさせていただきたいと思います。極めて限られた時間なので、二問ずつ二回聞きますので、できれば端的にお答えをいただければ、しかも前向きなですね、そう思います。

 冒頭二問は、かなり甚大な被害だったものですから、台風十九号関連でお聞かせをいただきたいと思います。

 河川改修について、改良復旧という言葉がしばしば使われるようになってきたわけであります。よりよいものに改良しながら復旧していく、災害復旧の枠組みでそれをやっていく、これはもう大変いいことだと思いますけれども、これは河川改修に限らず、例えば農業用ハウスにしてもそうでありますし、あるいは圃場とか水利施設などもそうだというふうに思います。こういった改良復旧という考え方をぜひ農業関連にも適用してもらいたいということが一つであります。

 もう一つは、私、本会議で質問させていただいたときに、農林水産大臣から、台風十五号のときの対策をベースにというお答えがあったんですけれども、結論から申し上げると、それでは私は足りないというふうに思っておりまして、今回の災害、大変甚大だし、このままいくと、農業から相当リタイアというか、離農者がたくさん出てくるという心配をしています。

 特に、例えば、農業用ハウスとか農業用機械とかがやられて、今までだったら十分の三の補助率で、自治体が上乗せして一割ぐらいの農家負担ということのようでありますけれども、千葉県のような財政力の比較的ある自治体ならいいんですけれども、今回被災を受けた自治体の中には、大変自治体の財政力指数が弱いところも多いものですから、やはり国の補助率をしっかりと上げて、農家負担がほとんどなくなるようにしてもらいたいと思いますけれども、いかがでしょう。

江藤国務大臣 大変大切な御指摘をいただいたと思っております。

 災害復旧は原形復旧がもちろん基本ではありますけれども、この際、いろいろ見させていただくと、例えば千葉、茨城あたりは、十九ミリという大変細いパイプの経路のハウス等でできていたり、いろいろな現場がありました。

 昨年の西日本豪雨災害においては、愛媛県において、いわゆる原形復旧にとどまらずに、改良復旧、そして面的な再編整備、いわゆる、被災を受けていないミカン園も含めて団地化するような整備も行った実績がございます。

 ですから、将来につながるような災害復旧工事になるようなことを目指していきたいというふうに思っております。

 それから補助率につきましては、もう御指摘のとおりでございまして、十分の三では足りない、確実にそう思っております。財政力の強いところについてはそうかもしれませんが、我々が三割出した分について更に七割交付税措置というルールがありますので、それが重くのしかかるということであれば、この十分の三の部分を更に上げることが必要だということで、その方向で取りまとめをさせていただいたというふうに考えております。

玄葉委員 御答弁ありがとうございます。

 それでは、日米貿易交渉関連でありますけれども、これもできる限り端的に質問いたします。

 一番心配していることの一つは、牛肉のセーフガードでございます。つまりは、牛肉のセーフガードで、TPP11の発動基準数量が修正されないまま、いわば米国の関税を発効時に一気に二六%に下げる。米国の枠は枠でつくったのでありますけれども、別途TPP11枠はきちっとあるわけでありまして、このままいくと、米国産以外の牛肉、例えば豪州、カナダ、ニュージーランド、こういったところから牛肉がどっと入ってきたときのセーフガードが事実上きかないというふうに思います。この点をまずお認めいただけますかという質問です。

 もう一つは、さまざま議論があるところでありますけれども、協定の附属書1、附属書は協定と一体不可分ということでありますけれども、B節の一款の5、米国は将来交渉で農産物に関する特恵的な待遇を追求する、この言葉について。

 茂木大臣からは何回か御答弁をいただいているところでありますけれども、私心配しているのは、TPP12でも確かにこういう言葉はあるのでありますけれども、今回の日米貿易交渉は、次にすぐ交渉が来ます。今までのEPAとかTPP11はそういうわけではなかったので、そういう意味で、ちょっと今までと同様に扱うわけにもいかないな、心配はあるなというふうに思っていまして、今後の交渉について、農林水産大臣は、農産物の関税の問題が再び対象になるということは絶対にない、そういう御認識かどうか、お聞かせいただきたいと思います。

松本委員長 江藤農林水産大臣、申合せの時間を過ぎておりますので、恐れ入りますが、できる限り簡潔に御答弁いただければ幸いです。

江藤国務大臣 まずSGにつきましては、認めます。おっしゃるとおりだと思います。

 それから、もう一つのやつは何でしたか……(発言する者あり)再交渉については、私のこの職責をかけて、我々の国益に反するようなものは決して受け付けるつもりはありません。

玄葉委員 もう終わりますけれども、端的な御答弁をいただいたと思っています。

 後者の方は、私も心配ということで申し上げているわけでございまして、絶対に国益に沿わない合意をしないように、またそれを対象にしないようにということを要望して、短い時間でありましたけれども、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたので、これから約二十分間質疑をさせていただきたいと思います。

 私、所属は経済産業委員会の方になりまして、本日、質疑では、主に日米貿易協定、とりわけ自動車そして自動車部品関係のこれまでの交渉の中身、そして今後の見通しなどについて、これまで各委員会でもやりとりがされてまいりましたけれども、改めて、その整理も含めて、茂木大臣の方にお伺いをさせていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 自動車産業、言うまでもなく、日本の基幹産業であります。そして、今回の貿易交渉の現時点での合意内容、これまでの質疑の内容を踏まえて、業界の方々の声を聞けば、大きく三つのことをおっしゃっていただきました。

 一つは、追加関税がされないという旨で合意されているようなので安心しましたというのが一つ。二つ目は、今後、関税撤廃に向けて交渉がされるようですね、それも安心しました。最後、三つ目、ただ、その交渉がいつ行われるのか、そして結論はどこまで期待できるのか、そこについてはよくわからないので、できればはっきりさせてほしい、こういうことを言われております。

 きょうは、この観点から、これまでの質疑内容での大臣の発言も踏まえて、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 まず、最初の質問なんですけれども、日米貿易協定に関する交渉、現状については、これまで大臣は日米双方ウイン・ウインの結論であるというような旨の発言をされておりますが、このウイン・ウイン、何をもってウイン・ウインというふうに表現をされているのか、できる限り具体的に、その表現の理由、根拠を教えていただきたいと思います。

茂木国務大臣 御説明いたします。

 今回の日米貿易協定、まず、合意の結果から申し上げますと、日本の農産品については全て過去の経済連携協定の範囲内でありまして、これまで貿易交渉でも常に焦点となってきた米につきましては、調製品も含めて完全除外、また、林産品、水産品、さらにはTPPワイド関税割当て対象の三十三品目など、全く譲許いたしておりません。一方、工業品については、日本企業の輸出関心が高く貿易量も多い品目を中心に、早期の関税撤廃、削減が実現いたします。

 米国にとっても、TPP11、そして日・EU・EPAが既に発効している中で、他国に劣後した状況を早期に解消したい、こういう強い要望を持っておりまして、我が国の過去の経済連携協定の範囲内で、主要な米国の農産品について、オーストラリアであったりとか他国に劣後している状況が解消されることになったわけであります。

 そして、自動車についてでありますが、先生の方から三点御指摘いただきましたが、まずは、自動車及び自動車部品については、単なる交渉の継続ではなくて、さらなる交渉による関税撤廃で合意をしております。

 さらに、御指摘いただきましたように、米通商拡大法二三二条の追加関税を発動しないこと、これについても明確に確認をいたしております。

 自動車業界、更に大きく二つの私は関心があったと思っておりますが、一つは、USMCA、さらには韓国との間の新KORUS、ここでも課された数量規制、これはぜひ回避をしたいということでありまして、今回、数量規制のような管理貿易的措置は求めないことを米側に明確に確認をしております。

 そして、最後、もう一つでありますが、厳しい原産地規則、グローバルサプライチェーンをゆがめるような措置を幅広く排除をした、日本が主張する自由で公正な貿易体制を維持した点でも大きな意義があったと。

 この原産地規則の問題も、例えばUSMCAをごらんいただきますと、非常に高い原産地規則がかかる。具体名は申し上げませんが、日本のメーカーによっては、大型のSUVをカナダで例えばつくるというときに、基幹部品を日本から持っていっているわけです。そうなると、原産地規則にひっかかってしまいまして、生産ライン全体を世界的に見直さなくちゃならない、こういう状況は回避をできたんだ、そんなふうに思っております。

 ですから、このような交渉結果につきまして、自動車工業会も、我が国の自動車産業にとっても、日本の貿易を安定的に発展させるものと評価をしてもらっている、また、農家の皆さんにとっても、JA全中の談話にもありますように、生産現場は安心できる、そのように評価してもらえる内容になっている。

 このような観点から、日米双方にとってウイン・ウインな結果になったと考えております。

浅野委員 ちょっと時間も限られておりますので、できるだけ簡潔な答弁をお願いします。

 今大臣がおっしゃった中で、二点、非常に関心が高いのは、さらなる交渉による関税撤廃というところが一つ目、もう一つは、二百三十二条の適用、発動はないというところで合意をしたというところですね。この二点について、少し深掘り、質問させていただきたいと思います。

 これまで予算委員会を始めとする各委員会の中で、この二百三十二条の発動はしないという首脳間そして閣僚間の合意というのがたびたび答弁されてまいりましたが、この発言を担保するような物的証拠、言いかえれば議事録になりますけれども、会見記録、その記録といったものはいまだ提出されておりませんが、これについては提出できない理由が何かあるのでしょうか。これは事務方でも構いませんので、答弁をよろしくお願いいたします。

茂木国務大臣 まず、二三二条の追加関税は発動されない、これは首脳間の合意事項であります。

 一方、先ほど申し上げた数量規制を課さない、これは私とライトハイザー通商代表との間で合意をした内容でありまして、このことについて課さないということについて、五月、八月と二回にわたって確認をいたしておりますが、最終八月二十三日に確認をした後、このことは対外的に発表しますと米側にもしっかりと了解をとっております。

 一方、二三二条の扱いにつきましては、共同声明におきまして、両国は、協定が誠実な履行がなされている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動はとらない旨が共同声明に明記をされております。そして、この趣旨は、日本の自動車・自動車部品に対して追加関税を課さないということである、このことは、首脳会談におきまして、安倍総理からトランプ大統領に明確に確認をいたしております。

 日本として、協定発効後、この協定を誠実に履行していくということでありますから、追加関税が課されることはないと考えておりまして、同時に、これは同盟関係にあります日米の首脳間のやりとりであります。しっかりした約束でありますので、そのことを日本としてきちんと発表しているということで、このことは明確になっていると思っております。

浅野委員 その言葉を信じたいというふうに思いますけれども、やはり重要な、日本の基幹産業に関する重要な取決めでありますから、そういったしっかりとした記録というのはぜひ提示をしていただきたいというふうに思います。

 これに関連して、この輸入制限的措置は、今回、五月十七日の大統領布告の中で、百八十日判断を延長されている状況であると。この間に合意がされた場合には発動はしないというようなことなんですけれども、この百八十日が経過した時点で発動しないという判断が仮にされたとしても、今後、二百三十二条の適用がもう金輪際されないというわけでは、言い切れない状況であるというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

澁谷政府参考人 御指摘の大統領令でございますが、五月に出されました。確かに、百八十日後、日本、EU等との協定の交渉について、その進捗状況を報告するようにという大統領の指示が、USTR、ライトハイザー代表に出されたところでございます。

 そのことも含めまして、この協定が発効し、協定が誠実に履行されている間は二百三十二条の発動はないということを首脳同士で確認をしておりますので、そういう心配はないというふうに考えております。

浅野委員 ありがとうございます。

 続いて、二百三十二条の話からちょっと話をかえまして、今後の自動車・同部品の貿易交渉について、少し認識を確認させていただきたいというふうに思います。

 まず、貿易協定の五条の一項には「市場アクセスを改善する。」という表現がございます。これは附属書1及び附属書2の規定に従ってという前文がありますけれども、この「市場アクセスを改善する。」という言葉の解釈、これまでの答弁を聞いておりますと、附属書1又は附属書2の規定に従って改善する、つまり、この附属書に書いてある内容を忠実に実現するというような解釈もできる一方で、附属書に書いてある内容を一つの目標として、そこにできるだけ近づけていくというような解釈もできる、読める文章になっておりまして、政府の見解としてはどちらなのか。附属書の内容を忠実に実現しなければいけないのか、それとも、それをある種目標として、そこに近づけていく努力をすればよいのか。そのどちらの解釈が政府の見解に近いのか、御答弁を求めたいと思います。

茂木国務大臣 これは協定に書いてあるとおりでありまして、この附属書の規定に従って市場アクセスを改善する。市場アクセスは改善をされるわけであります。そして、その具体的な改善のやり方が附属書の方に書かれている、こういう構成であります。

浅野委員 今の答弁であれば、例えば自動車の場合、同部品の場合は、アメリカ、英文で書かれた附属書2の方に記載がございますが、この英文もこれまで何度もやりとりされていますので、ここではあえて読み上げませんけれども、関税撤廃に関して更に交渉するというのが日本語訳になります。これは附属書2の中に記載されているんですが、それは、市場アクセスを改善するための具体的方法の決め方をこの附属書には書いてあるわけですね。ですから、具体的に関税撤廃という方法で市場アクセスを改善するとはここには書いていないわけです。

 ですから、きょう、ここで確認させていただきたいのは、これも何度もやりとりをしてまいりましたけれども、関税撤廃というものを一つの目標にして日本側は交渉していくわけですけれども、現時点では、交渉という方法によって関税撤廃を目指すのであって、関税撤廃そのものが合意されているわけではない、それは両国間の前提にはなっていないという理解でよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、附属書には具体的な市場アクセスの改善の仕方というのが書いてあるわけでありまして、そして、米国の附属書には、「ファーザー ネゴシエーションズ ウイズ リスペクト ツー ザ エリミネーション オブ カスタムズ デューティーズ」と。エリミネーション、「ウイズ リスペクト ツー ザ エリミネーション」ですから、関税撤廃について、関税の撤廃に関して更に交渉する。ですから、市場改善のやり方というのは関税撤廃であります。関税の削減ではなくて、関税の撤廃であります。

 そして、関税の撤廃について、その時期が例えば何年になるかとか、TPP12の場合は、御案内のとおり、自動車で二十五年、トラックで三十年と、長いステージングでありましたが、それをできるだけ短縮できるように交渉してまいりたいと思っております。

浅野委員 関税撤廃というのがやり方だという御答弁がありましたけれども、ぜひそれは絶対に譲らないでいただきたいというのはありますが、これまでのやりとりですと、どうやら日米間の共通認識ではなさそうだと。日本側がそういうマインドで交渉に臨むというのはわかりますが、これが日米間で本当に合意されているのかというところについては、今、エリミネーションという言葉が入っているので日米間の共通認識だというような趣旨の御説明を受けたと感じたわけですけれども、本当にそれがそうなのかというところについては、少しまだ納得ができかねるところがあります。

 ちょっと時間がありませんので、もう一点伺わせていただきたいのは、今後、この交渉がどのタイミングで行われるのかというところについても改めて確認をしていきたいと思いますが、ファーザーネゴシエーションズという言葉を使われていますので、今後行われる交渉、幾つかの交渉の中でこれが交渉されるということになりますけれども、決して、この文章を読むと、次回の交渉において協議をすることというのは担保されていない文章になっておりまして、やはりそこも産業現場の不安を生んでいるところであります。

 ここに関して、次回の交渉のときにこの関税撤廃については協議をする、そういうことで、理解でよろしかったんでしょうか。改めて確認いたします。

茂木国務大臣 今後の交渉につきましては、この協定発効後に行われます協議におきまして、さまざまな分野について、どの分野について交渉を行うか、その対象等を含め、米側とまず協議をして、その協議によって決まった内容について交渉が行われると考えておりますが、そこの中で、本協定に更に協議をする内容として明確に書かれていること、これはまさに自動車及び自動車部品の関税の撤廃でありますので、当然、今後の交渉で、まず、交渉がどのタイミングで始まるか、こういう問題がありますし、どういう範囲でやるかという問題もありますが、そこの中に自動車・自動車部品は入ってくる、このように考えております。

浅野委員 次回の交渉において協議されるかどうかも含めてこれからの交渉次第だという御答弁だったと思いますけれども。

 あと、もう時間が来てしまいましたので、最後に、質問ではないですが、これは意見として申し伝えますが、最後におっしゃっていた、今後の協議する中で、自動車そして自動車部品、どの部品、どの自動車が、どういう関税撤廃、どういう内容が適用になるのか、これについては、今後、業界動向を見きわめながらという発言を以前大臣はされていらっしゃいました。

 ただ、今、御存じのように、CASEあるいはMaaSと呼ばれているような、自動運転、コネクテッドカー、その他カーシェアリングや電動化、いろいろな業界の変革が既に起こっておりまして、経済産業省を始めとして、業界動向、これからの成長分野の検討というのは既に始まっております。業界の現場にも多くの知識が蓄積をされております。

 その場になってから考える、あるいはこれから数年かけて考えていくのでは、これは交渉上非常に遅いと言わざるを得ませんので、この自動車産業、日本の基幹産業でありますから、先手先手を打って、政府の中においても戦略的にこれは手を打っていただきたい。

 本来はこれは質問もさせていただきたかったんですが、最後、時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 共同会派の佐々木でございます。

 連合審査で質問の機会を与えていただきました。感謝を申し上げます。二十五分という限られた時間でありますので、できるだけ簡潔に御答弁をいただければというふうに思ってございます。

 最初に、茂木外務大臣というより、この交渉をずっと担当してこられたわけでありますので、誰よりも一番この経過について詳しいんだというふうに思いますが、まず気になるのは、この交渉の経過でありまして、日米首脳の会談が昨年の九月、そこからスタートをしてと言ってもいいんだと思いますが、その後わずか一年でここに至っているわけであります。先ほどもちょっとお話がありましたが、この発効後も更に続くわけですよね。なぜこの部分だけで協定を発効しなければならなかったのか、なぜこんなに急ぐ必要があったのかということが一つであります。

 それともう一つ、これは委員長にもお願いしておきたいと思うんですが、TPPの12のときは百三十三時間四十一分、特別委員会まで設置をして論議をしてきました。それから、CPTPPのときは四十七時間五十分、日豪EPAのときは十六時間十五分、日欧EPAでも十四時間二十五分、だんだんだんだん縮まってきているんですけれども、このときは連合審査もなかったわけでありますけれども、ぜひしっかりとした議論、情報を共有をするということが何よりもやはりここで議論をする上で必要なのでありますので、そういった意味でも時間をしっかりとっていただきたいということ、これは委員長にお願いをしておきます。

 まず、なぜこんなに急いでやらなければならなかったのか。今までの協定に比べてはるかに短い時間で署名に至っているんですが、その点についてお伺いいたします。

    〔松本委員長退席、吉野委員長着席〕

茂木国務大臣 まず、今回の日米貿易協定に至ります過程で申し上げますと、昨年四月のマーラ・ラゴにおけます日米首脳会談におきまして、私、そして米側がライトハイザー通商代表との間で、日米の貿易、通商問題等について話し合う枠組みをつくろう。当時は、FFR、フリー・フェア・アンド・レシプロカル・トレード、こういう枠組みを始めまして、そして、昨年の九月の二十六日に、共同声明によりまして、この貿易交渉を始める。そして、この段階から二段階で行うということにしておりまして、まずは物品貿易、同時に、早期に成果が得られる分野について協議をする。結果的には、この早期に結果が得られる分野ということでは、日米が先端を行っておりますデジタル貿易のルールづくり、この日米デジタル貿易協定について合意をしたという形であります。

 本格的な交渉、ことしの四月から始まっておりますが、八月の二十三日にライトハイザー通商代表と主要項目について意見の一致、リーチコンセンサスといいますが、そこに至りますまで八回にわたって協議を行いまして、毎回相当な時間をかけて議論を行いました。特に八月二十一日から三日の協議は、三日間にわたって閣僚協議だけでも十一時間という形でありまして、決して拙速な形で行ったわけではないと思っております。

 非常に国益と国益がぶつかる難しい交渉でありましたが、結果的にはウイン・ウインな合意をすることができたと考えております。

佐々木(隆)委員 茂木大臣が当時担当大臣としてそういう交渉をしてきたということは理解をしないわけではありませんが、我々議員はもちろんですし、一般の国民にほとんど情報が入ってこないまま進んじゃっているわけですよね。そこが一番問題だと僕は思うんですよ。情報はやはり共有して進んでいかないと、本当に何が問題なのか、何をどうしなけりゃいけないのかというところをしっかりと共有することができないと思うんですね。そこのところを改めて指摘をしておきたいと思います。

 今お話がありましたが、本協定をなぜ二つの協定にしたのかということについて、私はいまだ理解をしておりません。この後も交渉は続くんですが、私はずっと、TPP12が始まったときから、日米FTAの隠れみのだという表現をさせていただいていたんですが、本来であれば日米FTAですよ、これは。FTAなのに、FTAの一部がこの二つだというのならわかるんです、何で日米FTAじゃなくてこの一つ一つの協定にしたのかというのが理解できないんですが、この点、お伺いします。

茂木国務大臣 御案内のとおり、この三十年、世界的にグローバル化が大きく進んでおります。しかし、その反動として、世界各地で保護主義の動きが起こっていく。日本としては、自由貿易の旗手として、自由貿易体制を守り、さらには二十一世紀型の新しいルールを世界に広げていきたい、こういった思いで、TPP11も主導的な立場でまとめ、そして日・EU・EPAもまとめてきたところであります。

 御案内のとおり、今、米国、さまざまな国との間で通商交渉を進めておりますが、まさにこれは、日米でこういう自由な貿易を守っていく、世界のGDPの第一位と第三位の国がこういった自由な貿易の合意をするという意味は極めて大きい、こういう観点から、今回の物品貿易さらにはデジタル貿易についての合意をさせていただきました。

 そして、今後どういう分野を交渉するか。これは、昨年九月二十六日の共同声明においても、ことしの九月二十五日の共同声明におきましても、その分野が特定をされているわけではありません。あらゆる投資であったりとかあらゆるサービス、これを交渉の対象にしますということは決まっておりません。そういった意味において、今後FTAの交渉を行うということが決まっているわけではない。先ほど申し上げたように、この協定が発効後に日米間で行われます協議の中で、どの分野を対象にするか、このことが決まっていくと考えております。

佐々木(隆)委員 私にはちょっとそこのところが解せないんですけれども。FTAであれば、御案内のように、TPP11も12もそうですけれども、二十一分野、もっと細かく分ければもっと細かくなるんですが、二十一の分野があるわけですよね。その中には、例えばTBT、貿易の技術的障害、あるいはSPS、衛生植物防疫、あるいはISDS、紛争解決、こうしたものとセットでなければ、物品だけ協定したって、実際に交渉するときにさまざまな事象が起きてくると思うんですよ。だからこそTPPでも二十一分野一括でやってきたわけですよ。それを、貿易のためのそうした必要な基本的な交渉のルールというものは今回決めていなくて、物品の貿易だけ決めるというのは、これは実際には交渉にならないと思うんです、実際に交渉を始めたって。ほかのルールが決まっていないんだから。

 だから、私は、FTAの一環としてこれがあるんだという位置づけならわかるんですけれども、これだけが協定で進んでみても、実際に技術的な基本的な部分が決まっていないんだから、実際には何にも進まないということになるのではないのかと。そこが全く今まで説明もありませんので、二十一一括でやるというのが、まあ二十一の分野になるかどうかは別にして、二十一一括でやるというのが、今まで、先ほど茂木大臣が二十一世紀型のルールをつくるリーダーになるんだと言うのであれば、そうでなければ新しいルール、新しい協定というのはつくる意味がないというふうに思うんですが、その点についてお伺いします。

茂木国務大臣 先生の御主張は理解をしているつもりであります。

 その上で、では、日米で物品貿易を行っていく上でルールがないかといいますと、ルールはきちんとWTO上も定められているというわけでありまして、そのルールにのっとってお互いの市場アクセスを改善する、こういった内容が今回の貿易協定でありまして、今回の貿易協定ができてもルールがないから貿易はできない、こういう状態ではないと理解しております。

佐々木(隆)委員 WTOのルールはあります、もちろん。それは普遍のものとしてあります。だけれども、TPPはTPPで、それとは別に、ここの部分はもっとこうしましょうということを決めているわけですよね。だとするならば、アメリカとの間はずっとWTOまで戻る、WTOのルールをあくまでも基準にするんだ、TPPや何かで決めたことはここでは参酌しないんだということになるわけでありますけれども、そういう解釈でいいんでしょうか。

茂木国務大臣 今回、二段階での交渉を進め、そして、物品貿易につきましては、またデジタル貿易につきましては、協定という形で国会の方に今お諮りをしている段階であります。

 そして、日本の基本的な立場、これは日本だけではなくて、TPPの参加国もそうでありますが、将来的にアメリカにTPPに戻ってほしい、この余地も残したいというところであります。

 TPP12と今回の日米貿易協定、比べてみた場合に、投資であったりとか知的財産の保護であったりサービスであったり、さまざまな分野で、TPP12では得られていたのに、この日米貿易協定で得られていない分野がある。さらには、TPPワイドの三十三品目、これについても全く日本は今回譲許をしていない。そういった意味におきまして、アメリカがTPP12に復帰をする、こういう余地も残っているものだと考えております。

佐々木(隆)委員 だとするならば、それをずっと言い続ければいいのであって、ずっとそれは言ってきているわけですよね、いずれ12に戻すんだと。それで、ここで協定二つだけ、つまみ食いという表現をしたら申しわけないですけれども、この日本だけ協定するというのは、ちょっとその話は大臣としては矛盾しているんじゃないかと私は思っております。

 そのことについてもまた時間があればお伺いしたいと思うんですが、今、デジタル貿易の話がありました。

 デジタル協定ですが、これも二十一分野に電子商取引というのがありますよね、TPP12の中に。この分野があるんですが、これの中でそこだけ、デジタル協定だけやるということの意味がよく理解できない。

 トランプ大統領が発信をしているところによると、日本のデジタル市場を四兆円、ドル規模で開放させた、世界を支配するのはドルだ。要するに、今、デジタル通貨、リブラなんかについては、ルールづくりが必要だからといってG20で決められなかったんですよ。

 そういう中にあって、日米だけが先行してここを決める、世界の通商貿易をリードすると言っている割にはここだけ日米で突出して先に行っちゃうというのは、これは世界の貿易ということを訴えている日本としては私は矛盾だと思います。その点についてお伺いします。

茂木国務大臣 トランプ大統領の発言一つ一つについて私が余り注釈を加えるのもあれなんですが、恐らく、先生がおっしゃった部分につきましては、デジタル貿易の市場規模、これは世界的に見ますと四百億ドル、これに相当している、この趣旨で述べられたものだと考えておりまして、確かに、デジタル貿易の市場規模、今後も大きな拡大が期待をされるわけであります。

 ただ、この分野につきましては、電子商取引、ルールは決まっておりますけれども、このデジタル貿易の進展、これが非常に速いわけでありまして、御案内のとおり、今回の協定で規定しておりますこと、例えば、電子的な送信に対して関税を賦課しないことであったりとかデジタルプロダクトの無差別待遇等はTPPと同様の規定が定められておりますが、一方で、アルゴリズムの開示要求禁止であったりとか暗号の開示要求禁止などについては、この分野の最新の状況に対応して、TPPのいわゆる規制を強化しております。さらには、SNS等のサービス提供者に対する民事上の責任に関する規定等、新たな要素も盛り込んでいるところであります。

 この分野をどうして取り上げたか。先ほど申し上げたように、昨年九月二十六日の共同声明におきまして、物品貿易と並んで、早期に成果が期待できる分野について交渉しましょう、そして、早期に成果が期待できる分野としてデジタル貿易というのをお互いが合意をして交渉したということであります。

 御案内のとおり、ことしのG20大阪サミットにおきましても、新しいこういう分野における大阪トラック、日本が主導してスタートをさせることになったわけでありまして、まさに拡大していくデジタル貿易、ここにおける新しいルールづくりを日米がリードをしていく、こういう基盤になる協定だ、このように考えております。

佐々木(隆)委員 いや、だからこそ、G20でもこのことが取り上げられて、世界的なルールをつくりましょうと今言っているときに、日米が先行して決めちゃう。

 トランプさんのつぶやきに私も一々反応するつもりはありませんが、交渉プロセスはほとんどトランプのつぶやきどおりになっていますので、そういった意味でも今取り上げさせていただいたんですが、今、リブラをどうするか、あるいはデジタル協定をどうするかというのは世界が注目をしているからこそ、日米が先行することの意味というのは、私は逆に世界に対して悪い発信になってしまうのではないのかということを懸念しているわけなんですが、そういうことはありませんか。

茂木国務大臣 恐らく、こういった分野、誰かが引っ張っていって、最終的には共通のルールを世界的に共有していくということが必要だと思っております。

 暗号資産の問題についてもそうであります。そして、巨大プラットフォーマーに対する規制のあり方等々の問題もそうでありますけれども、この分野について先進的な取組をしている国がまず一つのルールなりの模範、こういったものを示して、それを共有していくことによって世界的な共有財産にしていく、このことが重要なプロセスだと思っております。

佐々木(隆)委員 世界的にやはり信頼される仕組みを日米で先行するということには、私は若干疑義を持ってございます。

 きょう、経済再生大臣にも来ていただこうと思ったんですが、連合審査には三大臣以外はだめだと言われましたので、担当者で結構なんですが、西村大臣が、北海道の知事が来年度の予算をしっかりやってほしいということで要請に来たときに、乳製品はさわっていないというふうに知事に言って、大変知事はがっかりして帰っていったという話があります。

 乳製品も結局、先ほどのセーフガードの話とかホエーの話とか、さわっていないわけではないんですよね。それを、さわっていないという表現は、余りにも私は現地の人たちに対して不親切な話だと思うんですが、これは西村大臣の言った話ですので、所管の方、お願いします。

澁谷政府参考人 私も、その鈴木知事が来られたときに西村大臣と御一緒させていただきまして、確かに大臣、そのようにお話しされて、ただ、ちょうど伺ったところ、御存じのように、今回、北海道の方も含めて、国内で相当懸念をされていた脱脂粉乳、バター、TPPワイド品目の一つでありますけれども、この脱脂粉乳、バターについてアメリカ枠を設けるといったようなことが懸念されていたわけですが、そうしたことはしていない、TPPワイド三十三品目は一切さわっていない、こういう趣旨でおっしゃったというふうに伺っております。

 大臣も、そういう意味では、ちょっと言葉足らずだったら申しわけないなというふうにおっしゃっておりました。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので最後にしたいと思いますが、余りにも地元の皆さん方にとっては不親切なお話だったというふうに思いますので、そこはよく伝えておいていただきたいと思います。

 最後にします。トウモロコシの話です。

 トウモロコシの約束というのは、どこでどんな議論になって、どんな約束になっているのかというのが全くわかりません。首脳会談の後に突然その話が出てきて、ツマジロクサヨトウというのは、ことし七月に初めてこの被害が発見をされて、まだ被害額もわかっていない。これを理由にしているわけでありますが、言い方によっては、また例によってトランプさんのひとり言だという話もあるんですが、一体どうしてこんな話が突然出てきたのかというのが一つは知りたいのと、国際的な約束だとしたら、当然のことながら、何らかの約束が、いわゆる誓約書、契約書みたいなものがなけりゃいけないと思うんですが、これは一体あるのかないのか。

 一部によりますと、これは、トランプ大統領がオバマ大統領が進めてきた自然エネルギーを否定したいがためにやった話ではないかという、ある種本当かなと思うような話が出てきておりまして、いわゆるトウモロコシでバイオエタノールをつくろうとしていたわけですよね、オバマが。それを否定したいがために、全部これをやめさせて、日本に買ってもらおう、そういう戦略の中にこれがあるのではないかというふうに言われていて、これは多少私はうなずける話だというふうに思っているんですが、この約束というのは、どこでどういうふうに交わされて、どこにその約束事があるのかということについて、お伺いします。

茂木国務大臣 八月の日米首脳会談、私も同席しておりますので、その概要はどうだったかということを御説明したいと思うんですが。

 首脳会談におきましては、安倍総理からトランプ大統領に対して、我が国では、本年に入り、トウモロコシ等に寄生する害虫の被害対策の一環として、海外のトウモロコシの前倒し購入を含む代替飼料の確保対策を実施することとしている、これは民間企業が購入するものであるが、飼料用トウモロコシの多くが米国から買われていることから、この対策の実施によって米国のトウモロコシが前倒しで購入されることを期待している、このように説明しておりまして、米国との間で何らかの約束とか合意をしたという事実はございません。

 同時に、バイオエタノール等々の話はその場では全く出ておりません。

佐々木(隆)委員 そこでトランプがアンチ・オバマだなどということを言うわけもなく、そんなことは言わないと思うんですが。どうも、約束をしたと言っていながら、約束した文書も何もないというのは、やはり私は不自然な話だというふうに思うんですね。

 協定としては、先ほど申し上げたように、全体のFTAとしての一環として進めるべきだということからすると、一部分だけの協定というのは非常に不自然でありますし、先ほど来、効果や影響について、何度我々が言っても根拠が示されていないというようなことからすると、私としてはこの協定は認められないということを申し上げて、時間が参りましたので終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、石川県能登半島の近藤和也でございます。

 このたび、農林水産委員の私も理事をさせていただいておりますが、谷筆頭を始めさまざまな委員会の皆様に、今回の連合審査に至ったことを心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 特に日米との協定については、やはり農林水産がある意味主役でございますから、どんどんどんどんよい意味で議論を重ねていって、国益にかなう結論というものに至ればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、ぜひとも、きょう、お三方、大臣にお越しいただいておりますが、簡潔に、そしてわかりやすい答えをその都度いただければと思います。

 といいますのは、私は五年間浪人をしておりました、二〇一二年から。その間に、TPP12、TPP11であったり、また日欧のEPAであったり、こういう議論をテレビやラジオ、ネットなどで見ていましたが、わかりにくいですよね、特にラジオだと。そして、すぐ細部に行ってしまうとか、堂々めぐりの議論がされているということがございます。

 政治家でない一般の方々、対象者ですね、農家の方々であったり自動車産業の方々であったり、専門用語にもなれておられない方のが圧倒的に多いわけですから、ぜひとも、私の後ろにはそういう有権者の方々がたくさんいるんだという思いで答弁をしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは時間がありませんので、少し早足で行かせていただければと思います。

 まず、現状確認についてです。

 資料一、お配りをしていますが、政府の言い分と野党の我々の言い分、それぞれのすれ違いはあるんだろうなというふうに思っています。その上で、お米については、実際には、こちらにも書いてあります、調製品を含め完全除外。これは、日本はかち得たということが現状では言えるんだろうなというふうに思います。そして、自動車の分野では、追加関税の脅威から現状においては逃れている。これも正しいというふうに思います。

 一方、特に牛肉についてなんですけれども、セーフガードの議論が先ほどの玄葉委員のところでもございました。そして、今までたくさん議論をしてきましたが、やはり牛肉のセーフガードはTPP11とは別枠だよねといった部分については、これはTPPから劣後してしまっているということは、これは私の見方でございます。

 一方で、アメリカに関しては、トランプ大統領が言うように、農産物では大勝利だということを喧伝をされておられます。そして、自動車に関しては、関税撤廃の結論は先延ばしに成功しているというような見方もございます。

 この世の中一般の、私の見方でもありますけれども、このことについての認識、茂木大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 今回の日米貿易協定、これは日米双方にとってウイン・ウイン、ですから、両方にとって利益になるような協定になったと考えております。

 そして、日本の農林水産品、これまでの貿易交渉でも、常に農家の皆さんが一番心配されてきたのはお米がどうなるかということであったのは間違いないと思っておりますが、米につきましては、調製品についても全て完全除外ということになりました。また、お魚、そして木材を始め、こういった水産品、林産品についても、全く我々としては譲許をしていない、何にも出していない。

 そして、過去の経済連携協定、特に今TPPでありますが、これを超えてしまうのではないか、こういう心配をされていた方もあるわけですが、全て、このTPP、過去の経済連携の協定の範囲内におさまっている、こういう状態であります。

 一方、自動車につきましては、業界の皆さんにお話を伺っていただいてもそうだと思うんですが、まずはやはり、二五%の追加関税がかかるということは脅威です。これについては完全に回避をすることができた。

 同時に、これから更に自動車産業を発展させていくためには、数量を規制されてしまう、これまで日本もさまざまな、鉄鋼そして半導体、いろいろな日米の構造協議等々を行ってきましたけれども、数量規制がかかるということは非常に貿易がゆがむことになる、これも課さないということが確認をされました。

 さらに、今、自動車メーカー、日本でつくる車にしても、部品の一部をタイでつくったりベトナムでつくったり、いわゆるサプライチェーンをグローバルに展開する、世界的に展開しているわけでありますけれども、そういった、全世界からの部品を集めて車をつくる。これに対して、原産地の規則が厳しくなりますと、そういうやり方ができなくなる。そのことについても排除しているという意味でも、大きな成果になっていると思っております。

近藤(和)委員 できるだけ短目にお願いいたします。私の考えについての答えということを欲しかったんですけれども。

 今、自動車で関税撤廃へ向けて進んでいるんだということは、先ほど浅野委員とのやりとりの中でありました。一方で、私たちからの見方では、農産品などでは譲ったものがたくさんあるのに、自動車等では手にするはずのものが手にできていない、このことについて事実確認です。

 関税撤廃へ向けて交渉をしていくという見方が現時点では確定的であり、関税撤廃が決まったということではないということの事実確認をお願いいたします。

茂木国務大臣 できるだけわかりやすく説明させていただきたいと思うんですが、これはちょっと協定にかかわる分野でありますので、若干構成の話をさせていただきますと、これは協定本文と附属書の1、2からできておりまして、本文におきまして、各締約国、ここでは日本とアメリカになるわけですが、これは、附属書の規定に従って市場アクセスを改善する、市場アクセスをよくするわけですね、そういったことが書いてありまして、そして、では具体的にどう改善するんですか、このやり方が附属書に書いてあるわけであります。

 そして、米国の附属書の自動車・自動車部品につきましては、関税の撤廃に関して更に交渉するということでありまして、ここでは、関税について更に交渉するではなくて、関税の撤廃について更に交渉するということでありますので、当然、関税撤廃を前提として、その時期を何年にするか等々について交渉が行われることになります。

近藤(和)委員 ここで認識の違いがはっきりしていると思います。政府は、関税撤廃へ向けて、関税撤廃になるんだと。一方、我々からしてみれば、関税撤廃はかち得ていない、こういうそれぞれの見方が現状あるということは御理解をいただければというふうに思います。

 これは茂木大臣、見方ですけれども、大学入試でいけば、大学入試合格へ向けて頑張れと言っているようなもので、合格をかち得ているわけじゃないんですよね。そこはぜひとも認識をしてほしいと思います。しかも、TPP12、もともとのところでいけば、もともと関税撤廃すると、長かろうがですね。それが消えたわけですから、いわば推薦入試の合格通知を一度もらったけれども、それがなくなって、また同じ大学に受かるんだというその意気やよしですけれども、まだ合格していないということだけははっきりと、世の中の皆様にも御理解をいただければというふうに思います。

 次へ参ります。

 そして、今回の共同声明、三を見てください。

 右側がことしの共同声明、左側が一年前ということですけれども、こちらについて、やはり四番目、日米共同声明の四番目の「これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。また、日米両国は、他の関税関連問題の早期解決に努める。」とございますが、これも皆さんも穴があくほど目を通されておられると思いますが、この「誠実に履行」というのは、日米両国にとってどのようなことを指すのでしょうか。

 具体的に短くお願いいたします。

茂木国務大臣 これは、左側の二〇一八年の共同声明と二〇一九年の共同声明を見ていただきますと、工夫が凝らされておりまして、二〇一八年のものは、この「協議が行われている間、」と書いてあります。一方、二〇一九年の四番目を見ていただきますと、「これらの協定が誠実に履行されている間、」こういう表現になっております。そして、この協定が発効しましたら、日本としては、その協定を誠実に守って履行していくということですから、この協定に反するようなことは犯さないということは当然のことで、日本がきちんとこの協定に従って貿易を進めている限りにおいては、二三二は課されない。

 こういったことで、より安定した文脈になっていると考えております。

近藤(和)委員 二三二のことまで出していただきまして、ありがとうございます。

 それでは、この後段の部分の「精神に反する行動を取らない。」とは、具体的にどういうことでしょうか。反対に言いかえれば、精神に反する行動をとるというのは、日米両国にとってどのような行動なんでしょうか。

茂木国務大臣 日米が自由で互恵的な貿易を発展させていく、こういう精神のもとで今回の交渉を行い、また合意に至ったわけでありますから、そういった精神に反する行動はとらない。当然、そこの中には大きな項目として、貿易制限的な措置、二三二の発動等が含まれてくると思っております。

近藤(和)委員 そうなんですよね。

 私はこれは、改めて不平等条約と言ってもいいんじゃないかと。

 アメリカは、この二三二を、場合によっては精神に反する行動をとる、いわば殴りかかるようなことができるわけですよ。一方で、日本は、精神に反するような行動を想定するものがないわけですよね。私はこれは、この文章がここにあることそのものが、日本が、よくてイーブン、悪ければ負けるということを大変懸念をしています。

 ここからは本論に行きたいと思います。牛肉についてです。

 牛肉のセーフガードについて、江藤農林水産大臣、現状の評価をお願いいたします。

江藤国務大臣 セーフガードについては、大変大事な課題だと思っております。

 二〇一八年実績でいきますと、アメリカが二十五万五千トンの対日輸出実績を持っております。それに対して、今回、発動基準を二十四万二千トンに抑えることができました。

 最初にこのSGがかかるとすれば二〇二〇年になりますので、これをTPP11、先行している国の実績と合わせますと、SGが発動される、12の水準ですよ、今の11が持っている水準に照らし合わせると、大体八千トンの枠があいておりますので、譲許の枠の中に入ったというふうに評価しております。

近藤(和)委員 現状ではその見方ができると思いますが、それでは、セーフガードが発動した場合のその後の、大臣はどのような対処をとられる可能性があるかということを、意気込みを含めて、可能性も含めてお願いいたします。

江藤国務大臣 それは、アメリカの方から要求があった場合の話をお聞きになっているんですか。(近藤(和)委員「はい」と呼ぶ)

 アメリカから言ってくるかもしれません、SGが発動したら、これを更に上げてくれとか。しかし、それを受けるか受けないかはこちらの問題でありまして、私としては、こちらの国として受け入れられないものについては受け入れないということでございます。

近藤(和)委員 断固とした決意を示していただきまして、ありがとうございます。

 私は、今回のこの甘目のセーフガードが、むしろわななんじゃないかなと思うんです。

 何かといいますと、去年の輸入量よりも低い水準でセーフガードがなっている。これは、何となく、抑えられるようでよいように見えるかもしれませんが、逆に、セーフガードにかかりやすくなる。では、かかりやすくなったときに、アメリカ側から、この枠を変えようと。十日後、そして九十日以内にこの結論を出すということですよね。結論を出さないとなった場合には、そういった場合には、誠実に履行しているということに当たらない可能性が出てくるわけです。

 この件については茂木大臣でしょうか、お願いいたします。

茂木国務大臣 甘目に設定をしたというお話をいただきましたが、すごい議論でしたよ、二十四万二千トンにするのに、ライトハイザー代表との間で。相当な日にちもかけて、違う数字から始まって、どうしてもここに死守をする。こうなれば、アメリカとTPP11を加えても、アメリカの輸入量が全体の牛肉の三九%で抑えられる、四一までいかないということで、どうにかこちらとして説得をしてつくった枠でありますから、甘目の枠でアメリカが軟化というのは、本当に自分がやってきたことがむなしくなることなので、そこはぜひ御理解いただきたい、そんなふうに思っております。

近藤(和)委員 むなしく感じられるかどうかというのは、実際は日本国民ですから、そこは冷静にお答えいただきたいと思います。

 特に大事なのが、セーフガードにひっかかりやすくなるということは、アメリカが枠の拡大を求めてくる、当然そうですよね。その場合に、今のTPP11の国とこの枠を二〇二三年までにくっつけていこうという交渉は厳しいですよねという答弁は、江藤大臣がきょうの議論の中でお話しされましたが、米国の枠がふえるのであれば、当然、オーストラリアやカナダなどは、この枠を一緒にしていこうという話はもっともっと困難な道になるはずです。それは間違いありません。

 一方で、では、高目のボールはもうのみません、断固とした決意で臨む、断るということも、近いようなことも江藤大臣は言われたわけですけれども、ただ、そうすると、日本がのめないようなセーフガードの額を提示されると、この日米貿易協定そのものが、協定が誠実に履行されていないということになってしまえば、二三二が出てくる可能性がありますよね。

 私は、これは改めて、牛肉を失うのか、車を失うのかぐらいの思いだと思っています。特に、二三二の話を出された場合に、そもそもが、車の関税撤廃の話が吹っ飛んでしまいました。これは過去の経緯を見れば一目瞭然です。

 資料の二をお願いいたします。

 どうすれば一般の方々が、TPP12から今回の協定に至るまで、何を得て何を失っているのかをわかりやすい資料がないかなと思いまして、私の方で作成をいたしましたが、横軸はTPP12からの時間軸でございます。去年の共同声明、今回の協定ということで、米そして調製品については、先ほどの議論の中で、現状では丸、これもいずれ変わってくる可能性があるということも議論をしたいんですけれども。牛肉は、セーフガードの点ではバツ。

 そして、今申し上げたいのは、自動車・自動車部品について関税撤廃をこれからしていくんだということを、さもよかった、そしてさらには、二三二について、これは下段の方ですけれども、二三二について上げた拳をおさめてもらったということを、さもよかったかというように見られていますけれども、TPP12のところから見てみれば、関税撤廃をそもそも約束しようとしていたわけですから、現状で関税撤廃がなされるという確約を得て、時間軸でもしっかりとそれを得ることができて初めてイーブンなのであって、現状ではバッテンをつけざるを得ません。

 そして、米国通商拡大法二三二につきましても、三角ですね。下手をすれば、あれやこれやと言いわけをつけられて、バツを、追加関税を課される可能性があるわけですから、こういったことも、私は、冷静に日本国民みんなでこの議論をしっかりとしていくべきだと思っています。

 そして、この表の中で、その他、ワイド枠三十三品目、こちらについては米国枠を設けずということは、これは茂木大臣が、日本がかち得たものなんだということも言われておりました。

 ただ、よくよく考えてみれば、ワイド枠から米国枠を設けるということはTPP水準を超えるということですから、TPP水準を超えなかったことをさも何か手柄を得たんだと言うことそのものが、私は、認識が誤っているのではないかなというふうに思っています。

 改めて、きょうは時間がもう参りますので、今回の日米貿易協定については、これまでの議論の中で、例えば、試算が明確ではない、そして、農家の方々に対しての対策も予算もついていないのに甘目の計算が出ているのではないかといったことであったり、また、茂木大臣そして安倍総理が米国との、首脳間との間で交わされた文書、これらについて出されていない、不確定である。

 私も今、二三二についてはかなり一方的な持論を述べさせていただいておりますけれども、さまざまな形で、いや、ネガティブな部分もたくさんあるけれども、日本にとって明らかにプラスなんだということを正々堂々と、私は、わかりやすく、逃げずにするのが政府・与党の使命だというふうに思っています。

 この点について、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 これからも丁寧な説明、そしてわかりやすい説明に努めてまいりたいと考えております。

 資料二にお示しいただきました評価につきましては、近藤先生の評価でありますから、私の評価とは違っております。先生が、自分がやればもっとうまく交渉できたということでありましたら、そういった御意見も甘んじて受けますが、全力で、国益をかけて交渉には努めさせていただいたつもりであります。

近藤(和)委員 ありがとうございます。協力を求められましたら一緒にやりたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 そして、本当はこの通商拡大法二三二条についても更にきょうは議論をしていきたかったんですけれども、ただ一点だけ。

 この二三二条、車は今回は大丈夫。しかし、鉄鋼とアルミニウムの部分、これが結果として残ってしまっているのが気持ち悪いんです。これをなぜなくすことができなかったのかということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 日米貿易協定について質問します。

 まず最初に、協定案、審議の土台になる資料についてお尋ねします。

 協定案が閣議決定されたのが十月二十三日で、この時点で、一番大きな影響を与える農業の影響試算は暫定値でしか示されませんでした。同日の外務委員会で、我が党の穀田恵二議員が正式な影響試算の公表を求めたところであります。

 その後、影響試算は出されました。しかし、農水省、江藤大臣、これでおしまいじゃないですよね。あくまでもこれは暫定値であって、正式版はこの後に出されるというふうに伺っています。

 政策大綱、いわゆる影響への対策の提出とこの関係において、正式版はいつ出されるんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

    〔吉野委員長退席、富田委員長着席〕

江藤国務大臣 年末に向けまして、総合的なTPP等関連政策大綱を改定する考えであります、もう何度も申し上げましたが。

 影響試算についても、改定後に、最終版となるものを出す考えでありますが、その改定の時期等については内閣官房の方にお尋ねいただかないと、私の方では確定的なことは申し上げられません。

澁谷政府参考人 政策大綱につきましては、十月一日に改定に向けた基本方針を決定いたしまして、現在、関係省庁と調整を行っているところでございます。

 担当の西村大臣、国会でもこの秋を目途にと言っておりますので、この秋ということですから、もう間もなくだというふうに考えております。

田村(貴)委員 今、国会で審議しているんですよね。まさにこの最中なんですよね。そのときに、一番大打撃を受ける日本農業については対策はできていない、その対策ができていないと正式な影響試算も出されない。これでは、やはりまともな審議ができないと私は思いますよ。出るころにもし国会が終わっていたら、何のための国会だったのかということになるわけです。

 江藤大臣にお伺いした方がいいですかね。やはりこれは国会軽視じゃないですかね。出されるべき資料が出されていない。これはどうですか。

江藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 私は、国会軽視には当たっていないと考えております。大変、これは賛否があるかもしれませんが、今回、共同声明から合意に至るまで、きょうまでのこの過程が非常に速いスピードで進んだということは、これまでの経済連携協定とは全く違うということがまずあると思います。

 しかし、それにしても、影響試算についてちゃんとした数字を出しなさいという御指摘をたびたび、与党、野党限らず、垣根を越えていただきましたので、十月の十八日にまず暫定的な数字を出していただいて、二十九日に品目ごとの詳細な資料についても丁寧にお示しをさせていただいておりますので、私は、国会の御要望には応えてきましたから、国会軽視はしていないというふうに考えております。

田村(貴)委員 やはり審議の土台がないと言わざるを得ません。

 委員長にお願いします。審議を行っているこの国会に直ちに正式な影響試算を提出するように要求していただきたいと思います。いかがですか。

富田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 牛肉のセーフガードについて質問します。

 お尋ねします。そもそも、セーフガードというのは何のために設けられている制度なんでしょうか。

江藤国務大臣 抑制的に、輸入を抑えるという効果を狙ったものでございます。

 国内の輸入商社の方々が、大体、三月の三十一日に年度末を迎えるわけでありますが、十二月から一月、二月になってくると、SGの水準を超えるかどうかは必ず意識をされます。今までは三八・五%の一本税率でしたから、アメリカの牛肉が欲しい人は欲しいだけ買いますけれども、今度、業者の方々は、やはり商売、お金をもうけなきゃなりませんから、年度が近づいて、あと一カ月待てば年度がかわって、またSGを超えずに二六%台の関税で買えるということであれば、私は抑制的な効果を発揮すると思っておりますから、SGは、国内に入ってくる牛肉の総量を抑える効果があるものだと考えております。

田村(貴)委員 意義についてお伺いしたんですけれども、やはり国内産業に重大な影響を与えていく、そして、そういう損害を防止するために、当該輸入国が発動する関税の引上げ、輸入数量の制限の緊急措置ということですよね。

 政府は、二〇一八年の牛肉輸入量が二十五万五千トンで、セーフガードは二十四万二千トンに抑えたとしています。何度も議論になっています。しかし、二〇一五年に十六万五千トンだったものが、翌年には十九万一千トン、二〇一七年には二十三・九万トン、そして二〇一八年には二十五・五万トン。急増している状況から見たら、すぐにでも発動しかねない輸入量となっている。そういう可能性があると思います。

 しかし、セーフガードが発動されたとしても、アメリカにとっては、この協定はいいとこだらけだというふうに私は見ました。

 まず、セーフガードの税率を定めたので、セーフガードの発効のもとでも、アメリカの関税は、二六・六%から、緊急関税税率の五〇%には上がりません。もともとの三八・五%に戻るだけです。

 次に、交換公文で、両国が約束した発動水準を一層高いものにするための協議が開始されます。これがうたわれています。高い発動水準、つまり、二十四・二万トンをはるかに超えるセーフガード発動基準をつくって、日本への輸出量をふやすこともできるわけです。

 さらに、交換公文では、セーフガードが発動すれば、十日以内に協議を開始し、九十日以内に結論を得るとしているわけであります。これは、痛みを伴わず、日本への輸出量をふやすことができる仕組み、これだけの仕組みをつくってしまっている。

 よくこういう協定に合意したものだなというふうに思うんですけれども、先ほど江藤大臣が御説明いただいたセーフガードの目的にも反している、逆行するものではないですか。それから、なぜ、十日以内に協議を開始して、九十日以内に発動基準を引き上げることを約束してきたのか。このことについて、茂木大臣、説明していただけますか。

江藤国務大臣 何度も申し上げますが、SGは、国内に入ってくる牛肉を抑制する効果は確実にあると私は考えております。

 そして、この九十日の話でありますけれども、それから、十日以内に協議を開始するという話でありますが、必ず結論を得なければならないものだというふうに私は全く理解をしておりません。米国から到底受け入れられないような要求が来た場合は、九十日を超えても合意に至らないということは当然あるというふうに考えております。

田村(貴)委員 十日以内、九十日以内と非常に具体的で、しかも交換公文でこれは約束しているわけですよ。それは、大臣が幾ら強弁されたとしても、相手あってのことですよ。

 アメリカは自国の利益を優先したいから、こういう規定になっているんじゃないんですか。こうした約束をやはり巧みに利用して、日本への牛肉の輸出拡大をしてくるんじゃないんですか。SGの発動後に、わずか九十日後にはこういう制度をすぐに立てることもできるんじゃないですか、制度的には。九十日たって、そして一つの決まりが決まったら、すぐに高い発動基準が、もうその時点で出すこともできるんじゃないんですか。どうなんですか、これは。

茂木国務大臣 今回の日米の貿易協議で、アメリカ側、TPP11、日・EU・EPAが発効する中で、牛肉等におきましてオーストラリア等に劣後している状況、これを一刻も早く解消したい、これが大きな要望でありました。

 ですから、牛肉の税率についても二六%に下がる。それが三八・五に戻ったら、アメリカにとっては元も子もないわけでありますよ。一二%以上上がるということですから、それがきかないということはない、そんなふうに思っております。

 同時に、セーフガード措置がとられた場合には協議を行うことになりますが、協議結果に関して予断をしているものではありません。

 いずれにせよ、今後の交渉を含め、我が国の国益に反するような合意、これを行うつもりはございません。

田村(貴)委員 江藤大臣にもお伺いします。

 大臣は、先般の農林水産委員会で、SGをいきなり三十万トンに引き上げろと言ってきた場合は協議には応じないというふうに発言されました。しかし、これは交換公文で約束されているんですよね。拒否できないんじゃないんですか。協議をやることについて拒否はできないんじゃないですか、協議自体は。いかがですか。

澁谷政府参考人 サイドレター、交換公文で、御指摘のような場合になった場合には協議を開始することは約束をしております。ただ、その結果を予断しないというのは先ほど大臣が答弁したとおりでございまして、協議をした結果、合意に至らないということは当然想定しているということでございます。

田村(貴)委員 協議は開始するんですよ。拒否できますかと聞いているんですよ。断固拒否すると言われていますけれども、拒否することになるんですか。できるんですか、それは。

江藤国務大臣 それは、私の素っ首なんというのはチョウチョウの羽よりも軽いかもしれませんので、私の職責をかけても、なかなかこれだけの国際交渉の場では難しいかもしれません、正直、先生。しかし、私も一政治家として覚悟を決めて発言をさせていただいておりますし、茂木大臣のことも信頼いたしておりますので、もしそういう場合に至ったとしても堂々と交渉していただけるし、その後ろにあって外務大臣を支えていきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 SGの仕組みは、やはりよく読まないとわからない。私は、アメリカにとってみたらすごく有利な約束になっているというふうに読み解きました。

 ですから、こうしたことを今決めてきたんだということを生産者に、それから酪農の農家の方に、畜産をやっている方には、やはり知らせるべきじゃないでしょうか、詳しく。そして、お話を聞くべきじゃないでしょうか。

 国内産業に、SGの発動基準が引き上げられれば、重大な影響が出てまいります。生産者や業者を始め、広く国民に周知して意見を聞く必要があると思いますけれども、そういうことはなさいますか。

澁谷政府参考人 最終合意に達した直後でございますが、全国知事会において、都道府県の担当の方に、私の方から合意内容を、牛肉のセーフガードも含めて説明をさせていただきました。今、政策大綱の改定に当たりまして、各都道府県から御意見を頂戴しているところでございます。

 また、先月二十七日には、私どもの主催で一般の方向けに説明会を開催させていただきました。

 また、農水省を始め関係省庁においても説明会を開催しているところでございまして、そうした場を通じまして、幅広く情報を提供して、丁寧な説明を行うとともに、御意見を聴取していきたいと考えております。

江藤国務大臣 多分これを言うと先生から怒られるんだろうということを覚悟の上で申し上げますが、JA全中の中家会長が、非常にこの内容についての評価をするコメントをいただきました。

 中家会長の個人の意見だと私は思っておりません。JA全中の役割というのは、全国の農業組織を基盤として、その地域にある農業者の意見を集約して、それを政治に伝えるということが大変大事な役割でありますが、そこの会長さんから言っていただいた言葉でもありますから、もちろん不安に思っている方もたくさんいらっしゃいますし、私たちの説明が足りない部分、反省すべき点はあると思いますけれども、これからもあらゆる機会を捉えながら説明の努力は尽くしていきたいと考えております。

田村(貴)委員 江藤農水大臣、安倍総理と同じ答弁したらだめですよ。その話は今度、農水委員会でやりましょう。やはり、九州から、宮崎の生産者からも不安の声はいっぱい出ていますよ。これは農水委員会でやりましょう。

 再交渉について質問します。

 十月二十九日に発表された日米貿易協定の経済効果分析は、実質GDPを四兆円、〇・八%押し上げるとしています。これは、自動車・自動車部品の撤廃を前提とするものになっているわけでありますけれども、関税撤廃は決まっていない。きょうも議論していますけれども、関税撤廃は決まっていないのに、なぜ算入したんですか、茂木大臣。

澁谷政府参考人 経済効果分析、私ども内閣官房の方で行っておりますけれども、先ほどから大臣の方から御説明しているとおり、日米貿易協定では、自動車・自動車部品について、単なる交渉の継続ではなく、さらなる交渉による関税撤廃を明記した、撤廃がなされることが前提となっておりますので、これをもとに計算を行ったところでございます。

田村(貴)委員 関税撤廃が前提といいますけれども、本当にそうでしょうか。やはり、ここはじっくり議論した方がいいと思いますよ。

 茂木大臣も、予算委員会で、附属文書2、アメリカの英文のやつですね、これを読まれましたね。「カスタムズ デューティーズ オン オートモービル アンド オート パーツ」、ここから始まる文章ですね。

 これは何と書いているかというと、英文ですけれども、訳しますと、自動車と自動車部品の関税撤廃に関しては、将来の交渉次第あるいは将来交渉することになっていると。この先、交渉事項だと言うにとどまっている話なんですよ。これ以上に訳しようがないんですよ、これは。

 しかも、この政府の交渉合意後から協定案提出に至るまでに、政府の説明資料には大きな問題があります。配付している資料をごらんいただきたいと思います。

 左と右、よく似ているんですけれども、違うんですよね。自動車と自動車部品の説明が、いつの間にか変わっているんです。左側の文書は、日米貿易交渉が最終合意に至った直後の九月二十六日に外務省が我々に示した文書で、ここにおられる多くの議員の皆さんはごらんになった文書であります。右の文書は、協定署名後の十月十八日、ここに至って持ってきた文書であります。

 同じように見えますけれども、右肩のところを見ていただきたいと思います。左側は「米国譲許表に「更なる交渉による関税撤廃」」と書いています。右側は「米国附属書に「関税の撤廃に関して更に交渉」」となって、変わっているんですよ。

 茂木大臣、いつ、何でこのように変わったのか、説明していただけますか。

茂木国務大臣 まず、アメリカの附属書についてでありますが、「ファーザー ネゴシエーションズ ウイズ リスペクト ツー ザ エリミネーション オブ カスタムズ デューティーズ」と書いてありまして、ファーザーです、フューチャーじゃありませんから、将来ではなくて、さらなる交渉ということに解される、このように考えております。

 その上で、御指摘の、関税撤廃に関して更に交渉する、これは、日米貿易協定に関する説明書におきまして、米国附属書の英文テキストの該当部分を日本語として説明したものであります。

 一方、さらなる交渉による関税撤廃との説明は、九月二十五日の日米首脳会談における最終合意の確認に際して、私からその要旨、これを簡潔に述べたものでありまして、若干簡潔になっておりますが、内容については日本語として変わっていないと思っております。

田村(貴)委員 日本語として全然変わっていますよ。

 これ、「更なる交渉による関税撤廃」というのは、撤廃が前提の話なんです。右側の「関税の撤廃に関して更に交渉」というのは、撤廃は交渉次第というふうに読み取れるわけですよ。これは全然違うんですよ。

 十月十八日で、それまでに変えた、これは認めますね、変えたんですよ。九月二十五日の最終合意のことについて記載している外務省のホームページ、この資料にまで右側のこの部分のところが差しかえられているんですよ。これ、おかしいじゃないですか。

 九月二十五日の最終合意について記載されている。だから、左側の文書があってしかるべきなのに、いつの間にかホームページまで変わっている。これ、改ざんですか。また私たちに説明もなく変えてしまったんですか。変更したのであれば、一番大事な資料ですよ、これ、何で説明に来られないんですか。私たち、何度もTPP本部からレクを受けてきたけれども、こういうことは聞いておりません。左と右では全く意味が異なってまいります。

 附属書の中の譲許表自体、ここには、自動車それから自動車部品、オートモービル アンド オート パーツ、これはこの譲許表の表には載っていないんです、載っていない。ところが、協定自体がまだ公表されていないときには、譲許表に関税撤廃と記載したと説明しているわけですよ。関税撤廃があたかも約束されているかのように見せかけて、これ、国民や私たち国会を、まさかだまそうと思ったんじゃないですか。そうであったら、これはひどい話ですよ。いかがですか。

澁谷政府参考人 先生お示しの左側は、ニューヨークで九月二十五日に最終合意が確認されたときの、その直後の発表資料でございます。この時点では署名ができておりませんで、協定の構成も含めてまだ条文が固まっていない状況でしたので、合意された内容の趣旨を簡潔に書いたものでございます。

 一方、十月十五日に、この協定につきまして、その承認議案を国会に提出をさせていただきました。その際、外務省の方から協定の説明書というものをあわせてお届けしているところでございまして、その中で、最終的に固まった条文、それから構成も附属書という形で書かれたということも固まっておりましたので、その説明書に記載している内容に改めたということでございます。したがって、これは時系列に伴う修正というふうに理解をしております。

 ホームページの中でその部分について差しかえましたということをお知らせしていないじゃないかという御批判をいただいております。それは甘んじてお受けさせていただきます。

田村(貴)委員 変えたんですね。黙っていたんですね。そして、断りもやっていないじゃないですか。これ、一番基本な部分なんですよ。それで、交渉の過程で要旨を書いたと言うけれども、「譲許表に「更なる交渉による関税撤廃」」、こういう文言で入れた、明記したと。これは重大ですよ。うそじゃないですか、事実は。この表にはないんですから。

 そういうことを、過程だからとか、要旨だからとか、入れたというのは、これはやはり、私たち、だまされたことになるんですよ。だめですよ、こんなことしたら。

 委員長にお願いします。

 なぜ政府の説明文書に譲許表に関税撤廃と記載したと書いたのか、なぜ表現を変更したのか、さかのぼってホームページまで差しかえたのかについて、説明できる、納得できる説明を、委員会に、各委員会に対して報告するよう、理事会で取り計らっていただきたいと思いますが、いかがですか。

富田委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

田村(貴)委員 結局、譲許の対象でないのが事実だったんです。そのような表現をしたというんだけれども、関税の撤廃に関しては将来の交渉次第、撤廃の約束はされていません。今の文章は、これは右側の文書ですよね、「関税の撤廃に関して更に交渉」と。それは、私が先ほど言ったところです。大臣、いろいろ言われましたけれども、やはりこれは、自動車と自動車部品の関税撤廃に関しては、その先ですよ、その先の交渉次第ということで、関税撤廃は何も確約されていないわけなんです。

 茂木大臣にお伺いします。

 自動車の関税撤廃がこの文書によっても前提になっていないことが明らかになった以上、関税撤廃が前提になっているGDP〇・八%増の経済効果分析はやり直すべきじゃありませんか。だって前提が違うんだから、変えるべきですよ。

茂木国務大臣 アメリカの附属書、英語でできておりますけれども、「ファーザー ネゴシエーションズ ウイズ リスペクト ツー ザ エリミネーション オブ カスタムズ デューティーズ」となっております。これは関税撤廃です。先生の御趣旨でしたら、恐らく、英文とすると、ファーザー ネゴシエーションズ、まあ、ウイズ リスペクト ツーを使うか、ほかの言葉を使うかは別にして、ウイズ リスペクト ツー カスタム デューティーズ、こういう言葉になりますので、エリミネーションは入らなくなると思います。

田村(貴)委員 何を言っているかよくわからないんですけれどもね。

 経済効果分析、これをやり直すべきじゃないですかと。だって、関税撤廃が決まっていないんだから。(茂木国務大臣「いや、決まっていると説明したじゃない、今」と呼ぶ)いや、だから納得できない。これはやはり要求します。

 これは、やはりやり直すべきですよ。この期に及んで、そんなこと言わないでくださいよ、こんな文章を変えとって。今、ここに書いているじゃないですか、「関税の撤廃に関して更に交渉」って、全然違うじゃないですか。こういうごまかしがあるから、こういうごまかしが透けて見えるから、生産者は不安の声を上げているわけですよ。

 江藤大臣、さっき全中の会長の発言をされたんだけれども、いろいろな声が聞かれているはずですよ。例えば、一番打撃をこうむる農家、生産者は、日米貿易協定を評価していません。

 日本農業新聞のモニター調査では、日米双方に有利と回答した方は八%ですよ、わずか。アメリカ有利と答えた方が六六%おられる。生産者は誰も、とてもウイン・ウインなどと考えていないんです。TPP11、日欧EPAに続いて悪影響が強まる、この回答は七九%まで達しているわけですよ。日農新聞の地方版を読んだら、地方からは懸念の声がいっぱい書かれていますよね。そこを大臣もわかっているんだったら、やはり、こんな国会でこんな短期間でこういう大事なことは決めてはいけません。

 大臣、やはり、先ほど言いましたように、生産者の声をもっと聞くべきです。農業関係者と生産者、畜産の生産に携わっている人たちの方に、実はこういう協定を結んできたんだ、中身はこうだ、セーフガードはこんな仕組みになっている、そして国会ではこんな意見も出ていると、ちゃんと説明して、生産者はわからないという人がいっぱいいるわけですよ。

 一般の方はもっとわからない。時事通信が世論調査を行ったところ、どちらとも言えない、わからないは三九・八%だった。しかし、やはり、評価しないが評価するを上回っているんですよ、この日米貿易協定について。それはやはり、何か秘密めいたものがあるんじゃないか、ごまかしはないか、日本は屈したんじゃないか、そういう意識がここにあるわけです。

 実態実態を私は今示してお話ししているんです。もうちょっと声を聞くべきじゃないですか。

江藤国務大臣 農政の基本は現場の声を聞くことでありますので、委員の御指摘はごもっともだと思います。

 私はかなり、現場の方、特に宮崎県の、私の地元の方とは対話を重ねてまいりました。余り宣伝すると嫌かもしれませんが、決して、牛肉については、SGについてはそういう水準になりましたし、それから、今ニカラグアが使っている六万五千五トンの枠、これは、ニカラグアとアメリカはFTAが来年発効します。これは無税になりますので、彼らが七割か八割、この枠を使っていますので、日本はかなり有利な条件でアクセスできます。日本は二百トンしか、今、キロ当たり四・四セントの枠を持っておりません。今度は六万五千五トン。

 宮崎は畜産県でありますので、ミヤチクという、すばらしい食肉処理場が完成したこともあって、EUにもこの間第一便が行きました。ぜひ、今度はアメリカにも、二百トンぐらい出していますけれども、もう二百トンと言わず、桁を超えてもっと出していこうという生産意欲も盛り上がっていることもまた事実でございます。

 そしてまた、中国にもまた出していこうということもありますけれども、委員のおっしゃるように、しっかり意見を聞いて説明する責任はもっと果たしていきたい、そう考えております。

田村(貴)委員 時間となりました。

 審議の土台となる資料は提出されない、しない。それから、約束が交わされていないにもかかわらず、自動車の関税は撤廃すると強弁なさる。日本の農産物は、牛肉、セーフガード一つとっても大打撃を受ける。審議の土台となるこうした大事な文書をごまかして、そして書きかえてしまう。これはやはりだめですよ。日米貿易協定は、トランプ大統領の要求に日本側が一方的に譲歩するものにほかなりません。日米貿易協定、これを撤回すべきだと思います。

 以上のことを要求し、きょうの質問を終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、足立康史君。

    〔富田委員長退席、松本委員長着席〕

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。松本委員長、よろしくお願いします。

 今、これまでの各委員会での議論、あるいはきょうのこの連合審査会の議論も拝見をしていますが、余りフィットしないというか、ぴんとこない議論が多いです。

 特に今、共産党の委員の方から、ごまかしとか国会をだますとか、そういう何か不穏当な発言がありましたが、私は霞が関にいたこともあるのでわかりますが、日米交渉をやっているときに、国会をどうやってだますかとか考える暇なんか政府・与党にないと思うんですけれども、茂木大臣、どうですか。

茂木国務大臣 当然、日本国民そして国会も含め、国益を常に考えて全力で交渉に臨んできたつもりです。

足立委員 まず、ちょっと順番を変えて、江藤大臣に申し上げますが、私は、今回の合意、評価しています。それはどういうことかというと、やはり大変な日米交渉、私も、雅子皇后陛下が外務省の北米局にいらっしゃったちょうどそのころに、当時の通産省の米州課というところの末席みたいなことをやっていました。大変な厳しい交渉。だってアメリカは、我々は日米同盟でアメリカの核の傘のもとにあるわけですからね。関係ない、関係ないというか、きょうはそういう議論をするつもりはありませんが、大変厳しい交渉を強いられる。

 その中で、農業についても、今回のような内容でまとめることができた背景には、私はTPPがあると思います。TPPを日本がリードしてきた、そしてTPPを多国間、マルチでそれをセットしてきたことが、今回の日米合意のある種の相場観をつくり、ある種の規範をつくり、それが今回の交渉をこういう形でまとめることができたと私は思っています。

 そういう意味で、農業を、農林水産業を所管されている江藤大臣は、これまでTPPに携わってきた全ての関係者に感謝をするべきだと思いますが、どうですか。

江藤国務大臣 私は農政ばかでありますので、やはり今回、内容が非常に政治家としても農水大臣としても受けとめられる、そして地元でもしっかり説明のできる内容になったことは茂木大臣に感謝したいと思いますが、しかし、SGがかかっているとはいえ、ジャンプインで関税が下がることは、決して国内の畜産に対してポジティブではありません。

 ですから、これについて、ありがとうとか、感謝をするつもりはありませんが、しかし、TPP12というマルチの厳しい交渉をしてきたからこそ、今回、譲許の内容をキャップがはめられたというのは委員の御指摘のとおりだと思います。

足立委員 私があえてこういうことを申し上げるのは、国益のために命をかけて働いてきた、たくさんの政治家とたくさんの官僚の皆さんがいたからであります。

 私が大学時代、一緒に図書館で机を並べて勉強した親友に松田誠さんという方がいらっしゃいます。四十九歳で急逝されましたが、外務省の経済連携課長をされて、このTPPの交渉の真っ最中に命を落とされた方です。彼は外交官試験を目指し、私は国家公務員試験を目指し、一緒に国のために働こうなと言っていた仲間であります。それはともかくとして、まあ国会でもこれは取り上げたことがありますが。

 そういった意味で、私は、この一連の日・EU経済連携協定であれ、TPPであれ、これをしっかりとまとめた上で日米交渉に入ったこのタイミング、アメリカの大統領選挙が本格化するまさに一年前、アメリカの大統領選挙がいよいよあと一年だというその前にこれを妥結することができた。

 また、もう少し言えば、これからアメリカをTPPにまた入れないといけないかもしれませんね。いやいや、それが本当は本来の姿でしょう。さらには、TPPというのはマルチですから、そのマルチの場に、アメリカのみならず中国だって巻き込んでいかないといけない。そういうこれからの通商交渉の大きな道のりのことを考えると、今回、さっき申し上げたタイミングに加えて、限定的な内容で取りまとめることができた、日米をですね。これはもう、私はもう称賛する以外に言葉はありません。

 外務大臣、どうでしょう。

茂木国務大臣 どうもありがとうございます。

 国会議員の先生方でもさまざまな形で御指導いただき、そして、自分としても、交渉に当たって、TPP11以来、梅本首席、そしてまた澁谷政策調整統括官、そして若手のチーム、本当にいいチームに恵まれて、この交渉を進めることができた。

 そして、TPP11そして日・EU・EPA、先生おっしゃるように、発効していたということによって、アメリカは、残念ながら他国に、オーストラリアだったりとか、劣後してしまう状況が起こっていた。この劣後した状況を一刻も早く解消したい、これがアメリカの要望であって、一方、日本としては、これまでの過去の経済連携協定で譲許した内容が最高なんだ、最大なんだ、この一致点が今回の合意であると考えております。

 同時に、日本としては、アメリカがTPPに復帰をする、このことが今でも最善だと思っておりまして、今回、例えばTPPワイドの三十三品目、全く譲許しておりませんし、さらに、知財の問題、サービスの問題、全く取り上げていません。そういった意味では、アメリカがTPPに戻ってくる、こういうインセンティブは残っていると思っております。

足立委員 本当に、今外務大臣がおっしゃったように、大変なパズルの中で、私は、ベストな合意ができたと評価をしています。もう茂木大臣を国民栄誉賞に表彰しないといけないぐらいですよね。ちょっと言い過ぎですね。

 もう時間が来ますので、最後、一つだけ、もう一つ。ちょっと経産大臣にもいろいろ伺いたかったんですが、ちょっと時間がないので、また経済産業委員会で伺いたいと思いますが、茂木大臣にもう一つ。

 国会審議を見ていると、まあ、何といいますか、どこの国の議員かわからないような質問がたくさんあります。

 要すれば、国際交渉というのは、ルールがあってないような世界の中で、国と国とが国益をかけてぶつかり合っている。当然、私は、同床異夢というのはつきものだと思うんですね。その中で、そのぎりぎりかち取ってきた文書の隅々、隅っこを探してきて、それで揚げ足取りをして国会で足を引っ張って、何かいいことあるんですかね、共産党は。いや、共産党だけじゃないや。

 ちょっと外務大臣に……(発言する者あり)いや、野党批判以外もやっていますよ。あしたも野党批判しますけれども。まあいいや。

 同床異夢。外務大臣、これは、このよくわからない、通商交渉をやったこと、あ、こちらはやったことありますね、やったことない皆さんに、同床異夢というのは、はっきり、あると言った方がいいと思うんですよ。これからの時代は、これからの国会は、国民の皆様に本当のことを言う、建前じゃなくて本当のことを言って議論していくことが価値があると思いますので、同床異夢、あると言っちゃってください。

茂木国務大臣 今回の交渉、確かに本当に国益と国益がぶつかる交渉でありまして、四月からでも七回だったか八回だったか、ライトハイザー通商代表とは交渉を重ねました。

 違う国益を一致させる、これはなかなか難しい作業でありまして、合意したと思ってもなかなかできていない、これをもう一回戻す、こういったことを繰り返しながら、最終的にはしっかりした合意点を見出せたと思っております。

 いろいろな御意見はあると思いますが、丁寧に御説明をしていきたいと思っています。

足立委員 以上で終わりますが、一部、不規則発言で、何か足立は野党批判しかできないとかいうことがありましたが、本当の意味で自民党に本質的なチャレンジをしていく、税と社会保障と労働市場はどうあるべきか、本当に自民党に対する、自民党とは違う経済社会のビジョンを示そうとしているのは日本維新の会だけですよ。

 それから、身を切る改革と我々は言っていますけれども、きょうも本会議で給与法、いろいろ採択されましたよ。日本維新の会だけですよ、反対しているのは。自民党と共産党は一緒に賛成しているんです。

 ちょっと、その辺のレッテル張りはやめていただいて、本当の意味での政権を樹立するため、ポスト安倍は一体どういう政権をつくるのかということを議論し合える、価値のある国会をつくっていくべきであると申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

松本委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 井上一徳です。

 私も、日米関係の重要性というのはよく理解しておりますので、その観点から、この日米貿易協定もよく見ていかないといけないというふうに思っています。

 ただ、やはり正しい情報を国民の皆さんに伝えて、よく理解していただいた上でこの協定を運用していくということが非常に大事だと思っております。

 それで、私、そういう観点から、やはり政府が持っている情報は正しく伝えてほしいという観点から、きのうも聞いたんですけれども、この資料を見ていただきまして、関税がどうなっていくかという資料なんですが、関税の収入減少額、これは最終年度には約一千億円、それから、こっちから支払う額、これは二千百二十八億円ということで、これだけ見ると日本側が一千億得しているような感じはあるわけですが、ただ、ここには当然、自動車・自動車部品が入っているわけです。これを除いた額は大体どのぐらいになるんですかと聞いても、これは答えられないと言われるわけです。けれども、これは試算ができるわけですから、これはやはり私、出した方がいいと思うんですけれども、きのうから変わりませんか。

澁谷政府参考人 きのうの答弁と同じでございます。

 自動車と自動車部品を除いて計算することは今回の交渉結果に反するものでございまして、差し控えさせていただきたいと思います。

井上(一)委員 これはちょっと事実関係だけ確認しておきたいんですが、この資料二の参考のところに、仮に通商拡大法二百三十二条に基づいて追加関税が支払われた場合ということで、額が出ておりますので、これを二五%で割り戻すと七兆七千六百八十四億円、これが自動車と自動車部品の対象額になる。これはお認めになっていただけますでしょうか。

澁谷政府参考人 先生の計算でございますので、コメントは差し控えさせていただきます。

井上(一)委員 いや、それはちょっと不誠実だと思うんですけれども。

 これは、だって、出しているわけですよね。単純に額に二五%を掛ければ一兆九千四百二十一億円になるわけですから、この七兆七千六百八十四億円は認めていただきたいと思いますけれども。

澁谷政府参考人 正確に言いますと、二五%から二・五%を引いた分が追加分ということであると思います。

井上(一)委員 わかりました。

 ちょっと、これだけやっていても時間が、あと農業、農林水産大臣にちょっと一問だけ質問したいと思います。

 資料をつけておりまして、一番最後の資料ですけれども、「高齢化・減少する農業従事者」これは農林水産省の資料であります。

 これを見ていただけると一目瞭然で、非常にアンバランスな年齢構成になっておりまして、平成元年から三百二十四万人がもう百四十五万人になり、そして、今でも平均年齢六十七歳で、四十代以下が約一割ということで、これは恐らく十年たつと、もっとここの右の方がおられなくなる可能性があるので、そうすると、極端に農業従事者が減っていくという状況になってくるというのは、もうこれは自明です。

 そういう中でやっていくとすれば、最新技術を用いてやはり効率化していく。それから、もっと農地を集積化する。それから、やはり農業をやりたいと思っている人に、農業に多くの人に従事してもらうということが大事だと思っているんです。

 そういう観点から、私は一度、兵庫県の養父というところに、これは国家戦略特区になっていますので、そこに伺っていろいろ話を聞きました。そうしたら、特に農業委員会との関係では、市の方が連携をとって農地を流動化させるようにしているとか、それから農業法人、株式会社に参入してもらうようにする。そういうことで、できる限り耕作地をふやしていく、それから農業従事者をふやしていく、そういうような取組をしているということで、こういった規制の改革、これを今のうちにやはり農林水産省で積極的にやっていかないと、本当に今の日本の農業は大変な状況になるんじゃないかと思っています。

 そういうことで、ぜひ、今後の農業の強化に向けて、一言大臣のお言葉をいただきたいと思います。

江藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 全国の四百四十二万ヘクタールの農地は、国民のかけがえのない財産だと思っております。食料安全保障の観点からも、やはり農地法でしっかり管理をすることが大事で、しっかり担い手に渡していくということが大事だと思っております。

 新規就農の方々も一定の要件はあります。取得した農地をフルに活用しなければいけないとか、そういうのは当たり前の話ですから、そういうことであれば新規就農者でも農地を取得することができます。

 ただ、この養父市の件については、なかなか、これは戦略特区でやったわけでありますが、現時点では非常に活用状況が低調でありまして、やはり法人に渡すと、もうからなくなるとその土地を投げ出して、農地として戻らないのではないか、国民の財産が毀損されるのではないかという危険がありますので、これについては、農地法に基づいて国がしっかりコミットすることも大切だと考えております。

井上(一)委員 ちょっと養父に行った私の認識とは少し違うんですけれども、いずれにしても、やはり規制改革、規制緩和を積極的にやっていただきたいと思います。

 以上です。

松本委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後五時三十四分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件

 デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

は外務委員会議録第三号に掲載


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