第19号 令和6年5月16日(木曜日)
令和六年五月十六日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 谷 公一君
理事 井上 信治君 理事 小林 史明君
理事 田中 英之君 理事 牧島かれん君
理事 岡本あき子君 理事 藤岡 隆雄君
理事 赤木 正幸君 理事 河西 宏一君
今村 雅弘君 上杉謙太郎君
勝目 康君 黄川田仁志君
小寺 裕雄君 杉田 水脈君
鈴木 英敬君 橘 慶一郎君
谷川 とむ君 土田 慎君
土井 亨君 中川 郁子君
橋本 岳君 福田 達夫君
藤丸 敏君 堀井 学君
保岡 宏武君 柳本 顕君
城井 崇君 坂本祐之輔君
中谷 一馬君 福田 昭夫君
早稲田ゆき君 伊東 信久君
小野 泰輔君 堀場 幸子君
伊佐 進一君 浮島 智子君
高橋千鶴子君 田中 健君
…………………………………
国務大臣
(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当) 加藤 鮎子君
デジタル大臣政務官
兼内閣府大臣政務官 土田 慎君
政府参考人
(こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君
政府参考人
(法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官) 中村 功一君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 小山 定明君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 浅野 敦行君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 田中佐智子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 辺見 聡君
参考人
(東京学芸大学名誉教授) 渡邉 正樹君
参考人
(弁護士)
(社会福祉士)
(保育士) 寺町 東子君
参考人
(日本大学文理学部教授) 末冨 芳君
参考人
(早稲田大学教授) 嶋田 洋徳君
衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君
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委員の異動
五月十六日
辞任 補欠選任
谷川 とむ君 杉田 水脈君
保岡 宏武君 勝目 康君
一谷勇一郎君 小野 泰輔君
同日
辞任 補欠選任
勝目 康君 保岡 宏武君
杉田 水脈君 鈴木 英敬君
小野 泰輔君 堀場 幸子君
同日
辞任 補欠選任
鈴木 英敬君 谷川 とむ君
堀場 幸子君 一谷勇一郎君
同日
理事一谷勇一郎君同日委員辞任につき、その補欠として赤木正幸君が理事に当選した。
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五月十五日
現行の健康保険証を残すことに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三五一号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第一四五一号)
同(奥野総一郎君紹介)(第一四五二号)
同(笠井亮君紹介)(第一四五三号)
同(穀田恵二君紹介)(第一四五四号)
同(志位和夫君紹介)(第一四五五号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一四五六号)
同(田村貴昭君紹介)(第一四五七号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一四五八号)
同(中谷一馬君紹介)(第一四五九号)
同(古川元久君紹介)(第一四六〇号)
同(牧義夫君紹介)(第一四六一号)
同(宮本岳志君紹介)(第一四六二号)
同(宮本徹君紹介)(第一四六三号)
同(本村伸子君紹介)(第一四六四号)
同(山崎誠君紹介)(第一四六五号)
同(米山隆一君紹介)(第一四六六号)
同(青柳陽一郎君紹介)(第一五〇〇号)
同(青山大人君紹介)(第一五〇一号)
同(大西健介君紹介)(第一五〇二号)
同(後藤祐一君紹介)(第一五〇三号)
同(鈴木義弘君紹介)(第一五〇四号)
同(谷田川元君紹介)(第一五〇五号)
同(神田憲次君紹介)(第一五二六号)
同(田嶋要君紹介)(第一五二七号)
同(伴野豊君紹介)(第一五二八号)
同(吉田統彦君紹介)(第一五四一号)
同(菊田真紀子君紹介)(第一五四四号)
健康保険証廃止の中止を求め、マイナンバーカード取得の強制に反対することに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三五二号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第一四六七号)
同(笠井亮君紹介)(第一四六八号)
同(穀田恵二君紹介)(第一四六九号)
同(志位和夫君紹介)(第一四七〇号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一四七一号)
同(田村貴昭君紹介)(第一四七二号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一四七三号)
同(宮本岳志君紹介)(第一四七四号)
同(宮本徹君紹介)(第一四七五号)
同(本村伸子君紹介)(第一四七六号)
子供のための予算を大幅に増やし、保育・学童保育の基準・施策の抜本的改善を求めることに関する請願(坂本祐之輔君紹介)(第一三五三号)
同(宮本岳志君紹介)(第一三五四号)
同(本村伸子君紹介)(第一三九六号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一五二九号)
同(中谷元君紹介)(第一五三〇号)
健康保険証の廃止はやめ、マイナンバーカード運用中止、全面的な点検を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四四一号)
同(笠井亮君紹介)(第一四四二号)
同(穀田恵二君紹介)(第一四四三号)
同(志位和夫君紹介)(第一四四四号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一四四五号)
同(田村貴昭君紹介)(第一四四六号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一四四七号)
同(宮本岳志君紹介)(第一四四八号)
同(宮本徹君紹介)(第一四四九号)
同(本村伸子君紹介)(第一四五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(内閣提出第六一号)
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○谷委員長 これより会議を開きます。
この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
それでは、理事に赤木正幸君を指名いたします。
――――◇―――――
○谷委員長 内閣提出、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案、いわゆる子供性暴力防止法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、東京学芸大学名誉教授渡邉正樹君、弁護士、社会福祉士、保育士寺町東子さん、日本大学文理学部教授末冨芳さん及び早稲田大学教授嶋田洋徳君、以上四名の方々に御出席いただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、まず渡邉参考人、どうかよろしくお願いいたします。
○渡邉参考人 おはようございます。
本日は、意見陳述の機会を与えていただき、ありがとうございました。渡邉正樹と申します。
私自身のことについては、一番最後につけておりますので、ちょっと省略させていただきまして、早速内容に入りたいと思います。
二ページ目になりますが、今日の私の方からお話しする内容ですけれども、三点になります。
一番最初に、教員養成の視点から、この子供性暴力防止法についての意見を述べさせていただきます。これは私自身がずっと教員養成に関わってきたということもありますので、そういう点からお話ししていきたいと思います。
そして二番目に、学校環境、学校の中での問題、特に学校環境について、性暴力の未然防止に関する内容をお話しいたします。
そして最後に、子供への性犯罪、性暴力防止教育、これは生命の安全教育というものですけれども、これについてお話ししていきたいと思います。
それでは、次のページになりますけれども、教員養成における課題ということなんですが、ここに挙がっていますのは令和四年にもう施行されております教員による児童生徒性暴力防止法と言われているものから写したものですけれども、十三条に、現職の教職員に対しての研修、啓発のこと、そして、教員養成の課程における児童生徒性暴力の防止に関する教育の充実、そして、それを教員養成大学が、学生が理解を深めるための措置を行うということが書かれております。
ここは非常に重要なことでして、特に教員養成から見ますと、今回の子供性暴力防止法は、再犯を防ぐというのがかなり大きな目的であると思うんですが、初犯、最初の犯罪を防ごうということであれば、やはり教員養成の段階から取り組んでいくということがこの法律の中でも非常にはっきりと書かれているということになります。
それでは、次のページをお願いします。
これは、教員養成課程で性犯罪、性暴力の内容をどこで位置づけるかということなんですが、ここに挙がっているのは教職課程コアカリキュラムというもので、平成二十九年の十一月に作られていますが、私もこのコアカリキュラムの作成に関わっておりました。
ここでは、大学ではいわゆる教職科目とかいうふうに呼んでいるものですけれども、教科ではなくて、先生になる方が全員学ぶという内容、それについてのコアカリキュラムを作ったということなんですが、その中で、今回の審議されている法律の内容とかそういったことを学ぶとしたらここではないかなというふうに思いました。
一つは、教職の意義及び教員の役割、職務内容のところの中に、教員に課せられる服務上、身分上の義務ということで、教員はこうあるべきだということで、子供に対する例えば体罰のこととかそういったことなどは含まれているんですけれども、性暴力についてはここではまだ明記はされておりませんでした。
それともう一つは、どちらかといえば生命の安全教育の方に関わることですけれども、教育に関する社会的、制度的又は経営的事項で、学校安全への対応というのがございます。そこのところで扱うのかなというふうに思います。
ただ、平成二十九年の段階では、まだ性暴力、性犯罪のことについて議論が盛り上がっていなかったということもありまして、具体的にここに記載するということがなかったんですね。ですから、今後、大学の教員養成課程の中で取り上げるというのはこの部分だと思いますけれども、現在は、ここについてそういったことが書かれていませんので、何かこの辺を、性暴力防止の内容を反映させていただければというふうには思っております。
今のところ、このコアカリキュラムの改定とかそういう話は伺ってはいないんですけれども、やはり、全員、教員を目指す全学生たちが学ぶということ、その工夫が必要ではないかというふうに考えております。
その次のページになります。
これは、先月、内閣府の男女共同参画局の、女性に対する暴力に関する専門調査会の資料なんですけれども、私もこの委員をしておりますので、そこからちょっと引用させていただきました。
文部科学省の取組として、今お話ししたような教職課程における科目だけではなくて、教職課程内外の活動を通じて、性暴力防止の重要性を、学生の理解を深めるということを促進する、そういうことが文部科学省から述べられております。先ほど申したのは、私は教職課程の科目として話したんですけれども、そこだけではなくて、大学教育全体で、教育課程全体を通じて行うということが出ています。
この方向性は大変すばらしいと思うんですけれども、それを具現化するといいますか、具体的にどういうことをしていくかというところはこれからだと思うんですけれども、それを考えていかなければいけないというふうに私は思っております。
と申しますのは、それぞれの大学で、もちろん、どういう科目を取らないと教員免許を取れないというのは決まっておりますけれども、その中身ですね。中身というのは、やはり、指導、教育する教員側に任せられているという部分はかなりあります。シラバスを出しますので、どういう内容を扱っているかというのは分かりますけれども、でも、やはり、かなり大学によって濃淡があるのかなというふうには思います。そこのところで、共通してこれはやはり是非教えてほしい、今回の法律のことについてもしっかり学んでほしいということであれば、そういったことを、例えば文科省とか、そこで資料を作って、これは必ずやってくださいみたいな、そういう具体的な取組があってもいいのかなというふうには思っております。
それでは、先に進みます。
現職教員のことについてなんですが、六ページ目に出ていますのは、これは文科省の調査で、学校安全の推進に関する計画の取組状況の調査、これは令和三年度の実績ということになります。学校の先生方の研修の中で、あくまでも学校安全計画の中ということになっていますけれども、どんなことをやっているかというのを見てみますと、例えば、従来からやられている災害安全、防災なども非常に高い率でやっているんですが、性犯罪、性暴力防止に関する研修に関しては三割程度というか三割前後ですね。まだ余り行われていないという状況です。
この研修は、例えば教職員支援機構が行っているとかそういうのもあるんですけれども、やはりそれぞれ都道府県で行うものであるとか、あるいは、研修ではどうしても漏れがちなんですけれども、私学ですね、私立学校に対しての研修というものも充実させていくということが必要かと思います。
以上が教員養成課程に関するものですが、二番目、次のページになりますが、学校環境における課題ということをお話しします。
この学校環境については、新聞記事を載せてありますけれども、三年前の記事ですけれども、教員によるわいせつ行為というのはどこで行われてきたかということについての内容でした。この中で、子供たちが減ってきて空き教室ができるということで、そういう場所がわいせつ行為の現場になっているということが分かってきました。
目が届きにくい学校の死角ということで、こういった報道があったんですが、この後、この読売新聞からは、このような内容をまとめた「わいせつ教員の闇」という本も出ております。その中では、例えば、高校のある教師が、空き教室を自分の指導している部の部屋として私物化しているという例、そこでわいせつ行為を行っていたなんということが出ていました。ですので、そういったところをどう改善していくかというようなことなんですね。
こういう犯罪というのは、一般的な考え方なんですけれども、次のページを見ていただきますと、犯罪の引き金になる条件というのがありまして、これがルーティンアクティビティー理論というふうに言われています。これは一九七〇年頃から言われているものでして、一般的な犯罪が起こる条件についてよく使われているものなんですけれども、これは犯罪の被害者、加害者がいるのと、もう一つは監視者の不在、要するに、目が届かないということがやはり犯罪が起きやすくしているということになります。
そうしますと、こういうわいせつ行為、性犯罪というのは、やはり、人に見られないところでするというのがありますので、そういう場所を学校の中からできるだけ減らさなきゃいけない、なくしていかなきゃいけないということになります。空き教室というのをやたらとそのままにしておかないということですけれども、かといって施錠しますと、先生は鍵を持っているということになりますので、かえって危なくなる。ですから、例えば、空き教室は外から中が見えるような状態に常にしておくとか、オープンスペースにしてしまうとかなども考えられるかと思います。また、できる限り児童生徒と教員が一対一にならないようにしていくというのも学校の取組として求められるのではないかなというふうに思っております。
三つ目、最後になりますけれども、生命の安全教育についてお話しいたします。次のページになります。
これは、令和二年六月の性犯罪・性暴力対策の強化の方針の柱の一つとして挙がっていた「教育・啓発活動を通じた社会の意識改革と暴力予防」という、その中に立てられたものでして、幼児期から高校、そして高校卒業まで子供たちを性犯罪から守る、そのために作成された教材となっています。
具体的なものはその次のページに挙がっていますけれども、目的としては、資料の真ん中になりますが、生命の安全教育の概要のところにありますけれども、生命を大切にする、そして加害者にならない、被害者にならない、傍観者にならないという教育、そういったことを行うという目的で作られた教材となります。
この教材の具体的なものは、また更に次のページになりますけれども、ここに挙がっていますけれども、各発達段階に応じて作られております。
幼児期、そして小学校は、これは一年生、二年生、三年生のものと四、五、六年生用と分かれているんですけれども、幼児期と小学校の場合は、水着で隠れる部分は大切なところだという、そういったことを学ぶという内容ですね。いわゆるプライベートゾーンというふうに言われたりしますけれども、そのことです。それが、発達が進むにつれて、例えば小学校高学年の方からは、SNSに関わって犯罪に巻き込まれるというようなケースというようなこと。中学校になりますと、デートDVとか、高校は更に、具体的な事例などもあるんですけれども、アルバイト先で性暴力を受けたなんというような、そういう具体的な例なども学ぶようになっております。
これはもう既に令和二年の段階ではパワーポイントが、教材ができております。さらに、翌年だったかな、映像教材もできております。また、令和四年度、そして昨年度、五年度ですね、実際の取組に関する実践事例集ですね、まだ令和五年度のが出ていないかと思いますけれども、そういったものが作られております。ですから、これを見て全国の学校が取り組んでいくということが望まれているわけです。
次のページをお願いします。
次のページは、こども家庭庁のこども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージということなんですが、今申し上げた生命の安全教育をする、先ほどの目標、目的の部分に具体的に書いていなかったんですが、子供が性被害に遭っても性被害と認識できないケースがよくあるということは皆さん御存じだと思いますけれども、少し大人になってから、あれは性暴力だったんだということが分かるということなんですね。そういうことがないように、性被害に子供のときから遭わないために、生命の安全教育を指導していくという、その重要性というのがここでは書かれております。
また、小学生、未就学児は特に、先ほどのプライベートゾーンに関しての指導のキャンペーンを、活動を行っていくというようなこともここでは書かれております。
性暴力、性犯罪に関する教育の実際の状況なんですが、これが次のページに載っておりますけれども、これは先ほどと同じ令和三年度の実績調査、文科省調査ですけれども、ここで、これは安全教育の中身だけなんですけれども、生活安全、災害安全、生活安全には防犯も入っておりますけれども、災害安全、交通安全、先ほどのSNSのこととか、そういった指導に比べてやはり性犯罪、性暴力に関するものというのは現在でも指導の割合というのがかなりまだ低いということになります。
まだこれは令和三年度で、生命の安全教育がスタートして間もない頃なので、まだそれが十分に周知されていないということがあったのかもしれませんので、今後、この調査は引き続き行われておりますので、今はまだこれが最新なんですけれども、もう少し進んでくるかもしれませんが、やはり子供たちへの指導というのはもっと力を入れていかなければいけないというふうに考えております。
私の方からは以上なんですが、最後にまとめということで、更にページをめくっていただければと思います。
ここで審議されています日本版DBSというのは、これはもう非常に重要で、すばらしい取組として見ていくことができると思うんですが、やはり初犯をどう防ぐかということも併せてこれからは考えていく必要があるかなと思います。
そのためには、現職教員はもちろんなんですけれども、教員養成課程においてどんなことを学生たちに指導していくか、また、その指導内容と指導する機会、それを明確にしていく必要があるのではないかというふうに考えます。
そして、生命の安全教育ですが、このように教材も作られております。そして、いろいろ取組も、事例集なども少しずつ出てきているんですが、私も教員養成をやってきて分かるんですけれども、やはり学習指導要領の中に書かれるかどうかということは重要かと思うんですね。これから、今年、今年度、来年度あたりに学習指導要領の改訂の作業が始まるんじゃないかと思うんですけれども、学習指導要領の中に性犯罪、性暴力防止という部分を何か盛り込めないかと。
これが盛り込めますと、教科書にまず書かれます。そして、必ず授業で取り上げるということがありますので。過去に、防犯のことについて、指導要領に入って全国の小学校で指導されているというのがありますので、こういったこと、指導要領に書き入れる内容という、位置づけということも検討する必要があるかと思います。
以上で、私の話はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○谷委員長 どうもありがとうございました。
次に、寺町参考人、お願いいたします。
○寺町参考人 本日は、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。
私は、東京で三十年ちょっと弁護士をしております、寺町東子と申します。
この二十年余り、子供が被害者となる様々な事件、事故、例えば教育、保育中の死亡事故や虐待、あるいは性暴力被害の事件などを担当してまいりました。また、その経験から、教育、保育現場での安全対策に関する仕事などもしてまいりました。そのような中で、昨年成立いたしました刑法の性犯罪規定の改正に向けて、一般社団法人Springの理事としても活動してまいりました。
今日は、子供に関わる仕事から性犯罪等の前科前歴のある者を排除する仕組みを提言してきた立場から意見を述べさせていただきます。
なお、時間の関係もありますので、この子供に関わる仕事から性犯罪等の前科前歴のある者を排除する仕組みを、いわゆる日本版DBSという用語を用いて意見を述べさせていただきます。
また、本法案については、児童の安全を確保するための措置として、従業員の研修や子供への被害の早期把握の措置、相談を容易にする措置、事実調査、保護、支援の措置についても規定するものであり、その部分についても非常に重要な規定だと思っておりますが、時間の関係上、日本版DBSの部分に集中して意見を述べさせていただきます。
まず、日本版DBSの必要性について、お手元の資料の一ページ、二枚目のスライドを御覧ください。
この制度の目的は、究極的には子供を性被害から守るということにありますが、そのためには加害者の再犯を防止することが必要であるということです。加害者の再犯防止に資する制度であるからこそこの制度を導入するんだということを冒頭で確認させていただきたいと思います。
一部、この制度について、既に刑罰を受けた加害者について二重の不利益を課す制度であって、日本国憲法三十九条の二重処罰の禁止に抵触するかのような御意見もございますが、そうではなくて、あくまでも加害者の再犯防止の制度だということを最初に確認したいと思います。
続きまして、スライドの三枚目を御覧ください。
まず、前提認識として、性犯罪の累犯性の高さが挙げられます。有識者会議において、再犯率や再入所率の指摘がございましたが、検挙されて処罰された者に関するデータ以上に実際には累犯性が高いということは、我々法律実務家にとっては、日々見ているところでございます。
例えば、性犯罪の捜査過程において捜索、押収された大量の写真であるとか動画であるとか、そういうものから、余罪がたくさんあるということが明らかになります。しかし、この余罪の中から、証拠上、被害者が特定できて、犯行日時が特定できて、かつ被害者の捜査協力が得られて、なおかつ公訴時効の経過していない事案のみが立件されて、処罰の対象になっているということで、再犯率、再入所率以上に累犯性が高い犯罪なんだというところをまず申し述べさせていただきます。
この点については、やはり法務省や警察庁の方できちんと実証的なデータを積み上げていく、そういう調査研究を行っていただきたいところでございます。
その上で、現在でも、刑務所や民間の治療機関で、性犯罪の再犯防止プログラムが実施されております。この再犯防止プログラムは、認知行動療法をベースにして、トリガーを特定し、トリガーを避けるということが中核になっています。
性犯罪のトリガーとして、子供などの脆弱な人というのがトリガーの一つになっているということです。性犯罪歴のある人を子供に関わる仕事から排除するということは、トリガーを避けることを制度的に担保するということですので、まさに犯歴者の方の社会内での更生、再犯を起こさないということに資する制度ということが言えるかと思います。
スライドの四枚目になります。
日本版DBSの制度が憲法二十二条の職業選択の自由に対する侵害であるという指摘がございます。
一定、制約があるということは事実でありますけれども、他方で、性暴力は被害者の性的自由や個人の尊厳を根こそぎ傷つけるものでもございます。これは、被害者の人生に重大な影響を及ぼす、憲法十三条で保障された個人の尊厳を傷つける、そういう犯罪でありますので、加害者の職業選択の自由の対立利益は、被害者の個人の尊厳、憲法十三条であるということで、規制の必要性や手段の合理性が認められれば、この規制自体は許されるというふうに理解をしております。
今回、日本版DBSの制度は、先ほど申し述べました、性犯罪の累犯性の高さ、子供に与える性被害の重大性、再犯防止プログラムの有効性に照らして、導入自体は合理的な制約として許されるものと考えております。他方で、後に申し述べますが、手段の相当性については、幾つか問題点もございますので後に述べさせていただきます。
スライドの五枚目を御覧ください。
日本版DBSの対象犯罪等の照会期間に関して、刑法三十四条の二の刑の消滅の規定に反するのではないかという指摘がなされています。
これにつきましては、拘禁刑について、刑の執行の終了等から十年、罰金刑の場合に五年の経過で刑が効力を失うということに抵触するんじゃないかという御指摘であります。
しかしながら、さきに述べたとおり、日本版DBSは、認知行動療法ベースの再犯防止プログラムの一環として、トリガーに触れさせない、そういう制度です。なので、刑罰ではないということが大前提でありますので、この刑法三十四条の二の射程範囲外であるというふうに考えております。
そして、性犯罪加害者の方のインタビュー等を拝見しておりますと、やはり、十年、二十年経過したから再犯のリスクがなくなるものではなくて、日々、一日、一生、再犯をしないように日々を積み重ねていっているということをおっしゃっておられます。
そういう観点から申しますと、十年、二十年で終わらせるということではなくて、できるだけ長期に子供に関わる仕事に就けないようにすることが、加害者自身が社会の中で更生していくということの利益にかなうものだと考えております。
その際に、参考になるものといたしましては、判決書の保存期間が、刑事確定訴訟記録法で、有期拘禁刑について五十年、罰金刑について二十年の保存期間とされております。これに合わせていくということは、一つ、現段階で可能なことなのではないかというふうに考えております。
スライドの六枚目を御覧ください。
この制度についての立法事実は何だったのかということを振り返っておきたいというふうに思います。
二〇一四年に起きたベビーシッターによる強制わいせつ及び殺人の事件がございました。また、二〇一五年には、神奈川県平塚で、認可外保育施設で子供にわいせつを繰り返していた人が、実は前に都内の方で強制わいせつでの処罰歴があった、前科があったということが分かっております。この辺りから日本版DBSの導入ということが議論されるようになってきたというふうに私は認識しておりますが、最近も、ベビーシッターのマッチングアプリの大手での事件や、あるいは大手学習塾での事件などが問題になって、非常に関心が高まってきているということだと認識しております。
そうしますと、本法案は立法事実となった事案をカバーできているのかということです。
法案の対象としましては、学校教育法一条校や、幼保連携型認定こども園、あるいは児童福祉法の対象施設等が挙げられています。加えて、一定の要件の下で認定を受けた民間事業者が対象とされています。
しかし、認定を受けようとしない事業者、先ほど申し上げたような、認可外保育施設で、一人で夜中に子供を見ていたというような事案は対象になってこないと思われます。
また、一定の要件の下で認定を受けた民間事業者については、第二条五項三号のニで、政令で定める人数以上の従業員がいることとされておりまして、一人でやっている事業、ベビーシッターであるとか、ピアノ教師であるとか、ファミリーサポートであるとか、個人塾であるとか、そういうものについては対象外というふうになっています。本来立法事実だったはずの事案というのが全て漏れてしまう、全てとは言いませんけれども、訂正します、漏れてしまうのではないかということが非常に懸念されます。
この点について、認定を受けている事業者かどうかを保護者がチェックするという仕組みでは、保護者のリテラシー、あるいは選ぶ可能性があるかどうか、切迫した方が選べないということもありますので、そういう、保護者によって子供の安全が脅かされる、子供に責任がないにもかかわらず子供に自己責任を押しつけるような結果になるのではないかということが非常に問題だと思います。これについては今後の見直しの中で検討していただきたいというふうに思います。
スライドの七枚目を御覧ください。
私どもの方で内閣府やこども庁に対して対案としてお示ししてきた、日本版OFSTEDの考え方をお示ししております。
私どもとしましては、子供に関わる仕事に就く人、個人を全員登録することを義務づけていただきたい、その要件として犯歴照会や研修等を義務づけることが必要ではないかというふうに申し上げてきました。それによって、ホワイトリスト化することで、犯歴を国家の外に出さないという制度を御提案してきました。
しかし、今回の法案では、事業者を認定し、認定した事業者には犯歴そのものを出すんだというたてつけになってしまっています。このことから、認定事業者という枠組みにこだわらなきゃいけなくなって、そのことによって個人事業主が排除されてしまっているという結果になっています。そういう意味で、立法事実となった事件をカバーできる制度にするために、今後見直しをしていただきたいというふうに考えております。
続いて、スライドの八枚目です。
トリガーを避ける必要がある人たちをこの法案でカバーできているのかというところで、今後検討していただきたい類型について申し述べます。
まず一つは、不起訴事案です。不起訴事案には三種類ございます。嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予です。嫌疑なし、嫌疑不十分を入れてはいけないというのは当然のことでございますが、犯罪事実を認めて示談をして、そして起訴猶予になった事案というのは、この制度に入れていく必要性がある類型ではないかというふうに考えます。
また、児童生徒性暴力によって懲戒解雇となって教員資格が失効した者、これについては、別の法律で、懲戒処分歴を四十年間、官報検索情報ツールで遡れるようになっています。また、文科省の方にもデータベースがございます。これについても対象にしていくことを検討すべきではないか。
あるいは、今回の法案の第二条五項三号で、技芸又は知識の教授を行う事業ということで、習い事等が入れていただけています。そこのことについては大変ありがたいというふうに思うんですけれども、他方で、標準的修業期間が六か月以上のものということで、サマーキャンプであるとか、一日の教室であるとか、そういうものがみんな外れてしまうということが問題だと思っております。
さらに、昨日、おとといですかね、ストーカー規制法や下着窃盗、あるいは、私どもが見聞きするものでいいますと、制服等に精液をかけたものが器物損壊罪になるというような辺りが対象となっていないことについて再考していただくことが望ましいのではないかと思います。
続きまして、スライドの九枚目に移ります。
濫用のおそれが除外できていないのではないかというところです。
冒頭で、日本版DBSの導入自体は合理的な制約として許されるものと考えるけれども、手段の相当性について問題があるのではないかということを申し上げました。
今回の法案は、犯罪事実確認として、生の犯歴を出すことを前提にしています。しかし、最高裁判例では、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するというふうにされています。また、個人情報保護法も、犯歴については、自ら、本人に関する情報であっても開示されないということになっております。これは、犯歴情報が濫用のおそれがある、自らのことであっても、犯歴があることを他人に知られることによって、それが脅迫の材料に使われたりということが容易に想定されるため、究極の個人情報として外に出さないということでたてつけているものでございます。
そこで、今回の法案を拝見いたしますと、第四条、第三十三条などで、特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認というふうにされています。該当者であるか否かということなので、ある場合には、該当していますというその犯罪の事実が、犯歴自体が生のものが外に出てしまうというたてつけです。
ここについては、特定性犯罪事実該当者でないことの確認というたてつけに文言をちょっと変えることによって、犯歴そのものが出るということは避けられるのではないかということを申し上げます。
それから、二点目、第三十五条の五項ですけれども、犯罪事実確認書を交付するときは、あらかじめ通知して、その上で、三十七条で規定する期間を経過するまで開示を行わないということになっています。三十七条の期間、二週間なんですけれども、これを経過すると自動的に開示されてしまうというたてつけなんですね。
やはり、次に述べる成り済ましの危険との関係では、この二週間の間に申請従事者からの積極回答がなければ交付しないというようなたてつけに改めるべきではないかというふうに考えます。
そして、最後のスライドになりますけれども、仮に犯歴を出すという仕組みを維持する場合であっても、犯歴の事実の確認手続において、三十三条七項で、事業者による代理申請を可能としております。しかも、その申請書に記載する住所は、住民票上の住所でもなく、居所でも足りることになっておりまして、かつ本人確認書類が戸籍抄本等で足りるということになっています。
居所で戸籍抄本を取って成り済ますということができてしまうと、濫用のおそれが防げていないのではないかというのが非常に危惧するところでございます。これに対する対応として、代理申請を認めない、三十三条七項の削除か、あるいは、本人確認の手段を、戸籍抄本ではなく、より厳格なものに変えるということを御検討いただくべきではないかというふうに思います。
ちょっとオーバーしてしまいました。申し訳ございません。
引き続き、子供たちを守るためのいい制度をつくっていっていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。(拍手)
○谷委員長 どうもありがとうございました。
次に、末冨参考人、お願いいたします。
○末冨参考人 それでは、お手元の資料、「こども性暴力防止法の効果的運用のために―英国に学ぶこどもの安全保護法制・政策の展望」という資料を基に、参考人として意見を申し述べさせていただきます。
私は、子供政策、教育政策の研究者として、例えばですけれども、著書の中で日本版DBSについても取り扱ってまいりました。また、ヤフーで執筆権を持ちますエキスパートという、記事を公開できる立場におりますけれども、今日の意見陳述の内容にもなりますが、日本版DBSというのはより広い子供の安全保護法制、政策として進化するべきであるという意見も発信してまいりました。
二枚目に参ります。
なぜそのような発信をしているのかと申しますと、私も二十年にわたって日英の教育政策の比較分析をしております。その中で、子供たちを守るということの英国での進化というものを見てまいりました。
例えば、この資料は二〇二四年三月のイギリスの独立学校での写真ですけれども、エントランスの非常に分かりやすい場所に、この学校の子供の安全保護チームはこの人ですよというのが明示されてございます。そして、右側の方に参りますけれども、子供の安全保護チーム、そして特に校長は、英国の子供基本法、教育基本法等や関連ガイドライン等により、DBSチェックは無論のこと、子供たちに何かあったというときには自治体、警察、児童相談所等に通告、報告義務があるということで、非常にしっかりとした責任体制を取って子供たちの守られる権利を実現しているということでございます。
それでは、次のスライドに参ります。
本報告では、英国の事例の概要、そして子供性暴力防止法の効果的な運用のためにという、主に二点について申し述べさせていただきます。
四ページ、「一、英国におけるDBS こどもの安全保護法制・政策の概要」ということですが、本セクションの作成に関しましては、英国リーズ大学講師のドロシー・ファイナン博士の情報提供と助言をいただいております。
五ページに参ります。
まず最初に強調しておきたいのは、英国におけるDBSは、子供の安全保護政策、セーフガードチルドレンという政策パッケージの一つなんですね、ある部分にすぎないということです。本法案に基づいて申し上げますと、第五条から第八条関係の安全確保策の中でDBSが運用されているということになります。
例えばなんですが、どのように運用されているかというと、地域スポーツクラブの事例で申しますと、日常的に子供たちに関わるコーチや審判等は、最も厳しいDBSチェックを受けた上に、安全保護研修の受講義務があるということです。逆に、右側の方を見ていただきまして、例えばなんですが、試合のときにワゴン販売者ですとか、あるいは、ふだん子供に接しないけれども、事務局の担当者やグラウンド整備員も含めて、やはり基礎的なDBSチェックと安全保護研修を受けてねと推奨もされているんですよね。つまり、子供に関わるあらゆる大人たちが、DBSチェックを受けると同時に、安全保護の知識を得て実践をするという枠組みになっております。
六ページに参ります。
英国におけるDBSについては、このように非常に包括する職が広いんですが、右下を御覧ください。先ほど寺町先生もおっしゃいましたけれども、英国でも個人間の契約はDBS利用できないので、この点については英国政府も繰り返し、そうなんですよ、気をつけてくださいねということを発信しておられます。
七ページ目に参ります。
英国では四段階のDBSが運用されておりますが、基本、標準、拡張DBS、就業禁止者リストチェックつき拡張DBSという四段階になっておりますが、日本の今次法案は、拡張DBSというのは一番根幹に関わるDBSチェックに相当するものであり、まずここを起点としていくということについては大変重要な構成になっております。
ただ、網羅される犯歴の範囲は確かに日本の今次法案とは比較にならないぐらい広いということで、今後、この点を、どのように子供を守るための仕組みとして拡張し、かつ、犯歴がある方の尊厳や人権を守るということと両立していくかということが重要かと思われます。
では、八ページに参ります。
八ページですけれども、実は、英国のセーフガーディングシステムは、子供だけではなく、障害者や高齢者など社会的に脆弱な立場の人たちに対しても運用されています。
その上で、子供については、英国子供基本法や子どもの権利条約、そして膨大な関連法制を逐次改正しながら、子供、若者に特化したセーフガーディングチルドレンの政策パッケージが作られているということです。
特に重要な起点となっておりますのが、二〇〇四年の英国子供基本法です。次のページにそのことを詳しく説明してございます。
九ページに参ります。
二〇〇四年に英国子供基本法が改正されまして、これは特に守られる権利の実現のために体系的に整備されたものでございますが、そこから二〇一二年のDBS運用までには八年の時間を要しました。特にその大きな転機となったのが、英国版のジャニーズ事件とも言われる、サビル事件という大変深刻な子供の性暴力事件でございます。その後に、英国教育省が、学校園に対して十八歳未満の子供、若者の安全保護ガイドラインを導入して、校長や教職員の責務を明確化しているということです。
ただし、それも本当に良好に機能していますかということで、二〇二一年にOFSTEDが特別監査を実施し、英国の子供コミッショナー等の勧告も踏まえて、二〇二三年に子供たちの安全保護のためのガイドラインが改定されるというふうに、DBSだけではなく、子供の安全保護の仕組みが子供たちの課題に対応してどんどん進化してきているんですよね。
私たちは、今次法案を起点にして、英国の取組に学びながら、同じように子供たちの守られる権利のための取組を積み重ねていくということが最も重要なことかと存じます。
次のページに参ります。
こちらですけれども、簡単に申しますと、DBSチェックというのは入口部分にすぎず、日々の安全保護チームの活動ですとか、あるいは、もしも何かあったときの際の連携協働体制、そしてOFSTEDの監査等が組み合わさって行われていますが、特に重要なのが赤字で示しました政府ガイドライン、そして右側、政府系機関、国の推進体制、そして赤い吹き出しの下側、基礎自治体の推進体制といったものが重要になってまいります。以下、この赤い部分を中心に説明してまいります。
十一ページに参ります。
英国の、子供たちの安全保護のための協働、政府ガイドラインでは、十八歳未満の子供、若者を主な対象としておりますが、十八歳以上についても積極対応していこうということになっております。家族内だけではなく、家族外の第三者からの性暴力、虐待等にも対応していくということになっております。
あわせまして、示唆的でございますのは、下に示しましたように、性的虐待、児童虐待だけではなくて、例えば、インターネットの影響ですとか、子供、若者間の性暴力、日本ではいじめと称されがちですけれども、これも安全保護の一環であるということで、毅然とした対応が取られているという点が日本も学ぶべきところかなと思います。
そして、十二ページ、政府の推進体制としましては、英国子供虐待防止協会、NSPCCという団体がございまして、例えば子供の安全保護教育、これは英国版の生命の安全教育とでも称するべきものでして、英国の学習指導要領等にも人間関係と性の教育が記載されており、かつ、幼少期から継続的に安全保護ができるように、子供たちも一緒に学びましょうということが当たり前になってございます。下のかわいらしい絵は、歌をユーチューブで公開されていまして、子供たちも大変分かりやすい、覚えやすい歌でプライベートゾーンのことを学んだりしておられます。
あわせまして、安全保護主任育成コースの情報提供等もされています。ただし、英国ではこれが基本有料になっておりますけれども、日本は、できれば無料でアクセスできる良質なコンテンツをたくさん提供いただきたいなと思います。
十三ページに参ります。
こちらが、安全保護主任、DSLと略されますが、研修コースの事例でございます。この責任者は、例えば教員で申しますと、ほかの教員と比べて一割から二割程度給与が高いんですよね。安全保護に責任を果たす教職員ですとか事業所の方たちの処遇の改善といったものも日本でも必要になろうかと思います。
十四ページですけれども、英国では、実は、芸能界、エンターテインメント産業に対しても基礎自治体が立入調査権を持っているんですね。ただし、日本の場合、芸能界における性暴力被害を防ぐというためには、どの機関がどのような責任体制を持って業界を支援していくのかということを考えなければならないという状況でございます。
十五ページに参りますけれども、このように継続的な取組を進めておられる英国ですけれども、やはり百点満点というわけではございません。特に、最も最近の課題といたしましては、教育機関による性的虐待の報告義務の不履行、隠蔽が起きているという事案が大変多うございます。そのために、英国における児童虐待防止法に報告義務不履行への罰則を設ける議論も行われております。この点は、直ちに罰則というのは日本にはなじみませんけれども、適切に、各学校園、事業者様が、何か起きましたというときに連携、報告義務を果たしていただけるような支援体制というものを整備する必要がございます。
ただ、こうした様々な不具合もあるからこそ継続的な政府ガイドライン、関連法制の見直しが行われてきたという点が、やはり私たちが最も学ぶべきことの一つであろうと存じます。
それでは、「二、こども性暴力防止法の効果的運用のために」ということで、十六ページ、そして次の十七ページに参ります。
十七ページに要点は六点まとめておりますので、その具体的な内容を十八ページ以降で簡単に説明をさせていただきます。
まずは、日本版DBSの運用開始というものがとにかく急がれます。私も教員養成の現場におりますが、わいせつ教員対策法とは比較にならないぐらい、子供性暴力防止法の効力、そしてその範囲は大きいんですよね。私自身はそのことをずっと教えているんですけれども、子供性暴力防止法案について話をすると、やはり学生たちは、そんなに厳しくなるのか、絶対に性暴力なんかしては駄目だというふうな意識が高まる効果が把握されております。だからこそ運用は急がれるなと思っております。
そして、次、(2)番目ですね。英国の取組に学ぶべきものの一つとしては、学校園等における安全保護チームといったような責任体制の整備、そして責任に見合った国の支援体制が必要かと思います。
特に学校現場では養護教諭の方の御負担が大きくなることが想定されますけれども、複数配置できる学校をもっと大きくしたり、あるいは、その方たちの処遇に報いられるような国費補助、そして私学助成増額等の措置も必要かと存じます。
そして、日本では、校長等による性暴力事案も起きておりまして、こうした最悪の事態を想定した責任体制といったものもガイドライン化される必要があると存じます。
(3)番。国による子供、若者安全保護研修の提供と適切な連携体制の実現をということで、先ほどの英国の取組にもございましたけれども、無料でアクセスできる、例えば安全保護主任研修あるいは安全保護のボランティアの人向けの研修等も整備いただければと存じます。
十九ページに参ります。
十九ページ、(4)。こちらは、渡邉参考人も先ほどおっしゃられましたけれども、教員養成課程の改革、そして保育士等の養成課程の改革というものが必要になります。
あわせて、五番目ですね。生命の安全教育の周知徹底、そして活動横断的な学習も含めて、その基盤にあるのは、人権教育、性教育、法教育、そして加害防止プログラムであるというふうに考えています。
私は、私立学校向けの、子供の権利、こども基本法研修もしておりますが、実は、私立学校さんで、私が関わったところで、生命の安全教育を知っていますという方自体がゼロだったんですね。やってくださいというふうにお願いしておりますが、私立学校でも取り組みやすくしていただく工夫は必要です。
かつ、実施していますという学校でも、被害予防プログラムに偏重しておられる学校が非常に多いです。被害者は悪くないと今政府を挙げてメッセージを発していただいているのに、被害者自己責任論の温床になりかねないという意味でいうと、適切な生命の安全教育が実施されなければなりません。
最後のページに参ります。二十ページですね。
その他としまして、やはり、加害者の方の治療ですとか社会復帰の支援、私が把握しております中で最も継続的に取り組まれてきたのは大阪府でございますが、どの自治体でも同じように丁寧な取組が必要かと思います。
それから、警察、司法の専門性の向上というのが大変重要でして、性暴力被害を受けた子供、若者とその家族が、捜査、そしてその後のプロセスでも何度も傷つけられる、二次加害の事案に私もたくさん出会ってきています。こうしたものをゼロにしていっていただくことも重要かと思います。
それから、子供の貧困対策団体の理事として申し上げたいのは、子供食堂、フリースクール、サマーキャンプ等の、一時的にせよ、子供たちと関わり、その大切な命を預かる立場にいる人たち全てがDBSにアクセスできるような、更なる法改正あるいは政策の整備をお願いいたしたく存じます。
あわせて、日本では○○対策、○○対策などが重ねられてきてはいるんですが、こども基本法、そして本法案を起点として、より大きな子供の安全保護の仕組みをつくっていくんだということについて国を挙げて取り組んでいただくと、学校園の負担というものも、またこれか、またこれかではなくて、子供たちが守られるための権利を実現する大きな仕組みの中で、私たちの学校、ここを頑張ろうというふうに前向きな取組が進むというふうに考えております。
最後になりますけれども、私も、研究者として以上に一人の親として、日本版DBS、そして子供の安全保護法制、政策の展開を願っております。
以上で参考人としての意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○谷委員長 どうもありがとうございました。
次に、嶋田参考人、お願いいたします。
○嶋田参考人 失礼いたします。早稲田大学の嶋田と申します。
本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、臨床心理学、特にその中の認知行動療法という心理療法を専門としておりまして、現在は公認心理師の立場で活動を行っております。
私の方からは、性犯罪の加害者に対する治療的支援のあらましについてお話しさせていただきたいと思っております。
スライドの二番を御覧ください。
現在のところは、性犯罪加害者に対する再犯防止としては、先ほども出てまいりました認知行動療法に基づく治療的支援が最も有効であるとされています。これは、心理療法、非薬物療法の一つでありまして、行動科学に基づいた、広い分野にわたって比較的エビデンスの蓄積が多い心理療法になっています。
我が国におきましては、二〇〇四年の秋に発生した事件を背景とした法改正が行われておりまして、主に法務省の方で、カナダあるいはイギリスの実践を先例としながらプログラムが策定されまして、刑務所や保護観察所で認知行動療法に基づく再犯防止指導が行われているところです。
次のページのスライド三番を御覧ください。
これらの国の取組を背景としまして、民間の方にも大きな影響がございまして、民間の医療施設等においても認知行動療法に基づく治療的支援が行われるようになってきました。それまでは、クリニックや相談施設における個別の心理相談や、いわゆる自助グループと呼ばれるグループミーティングが重立ったものでしたけれども、国が採用した認知行動療法に基づくものが有効であるということが民間にも徐々に伝わりまして、医療施設で行われるに至っています。ただし、全国的にはこの治療が行われるのはまだまだ少ないというところがございます。
諸外国におきましては、いわゆる、性欲をコントロールするために薬物療法、ホルモン療法と言われるようなものも認知行動療法と併用することがあるようです。
我が国におきましては、人権的側面などからこういったことを懲罰的に利用することは余り現実的ではないと考えられておりまして、薬事承認等の問題もありまして、一部の医療施設等で任意の治療法の一つとして紹介されるにとどまっています。また、元となる何らかの疾患や障害があって結果的に性加害を行っている場合には、その元の疾患や障害に対する薬物療法が用いられることがあるようです。
また、諸外国におきましては、治療的支援の効果として、プレシスモグラフィー、ファロメトリックといった、体の膨張等を計測する機器等を用いることがあります。例えば、大分以前の話にはなるんですけれども、私がカナダの刑務所等で視察してきたものの中には、男性の陰茎にゴムのようなものをはめまして、女児がプールで水着を着て戯れるようなほほ笑ましい映像を見せて、それによって陰茎が勃起するかどうかというのを測定して、本当に対象者が安全な状態であるのかということを測るような仕組みも導入されているようです。
しかし、我が国におきましては、質問票、御自身が評価したり、あるいはその方をよく知る他者が評価する、あるいは専門の心理技官等が評価する等にとどまっているというところでございます。
スライドの四番を御覧ください。
性犯罪加害におきましては、その心理的機制を考慮した働きかけというのが行われておりまして、一般に思われているように、性欲の充足という側面は確かに共通しているんですけれども、認知行動療法に基づく支援の場合には、性加害行動がどのような機能を有しているのかというアセスメント、そして、それに見合った治療的支援を行うことが重要だと言われています。すなわち、性的加害は、性欲の充足のためだけに行われているのではなくて、生活の中でその方にもたらされる様々な刺激や環境が影響しているというふうに考えます。この点に関しましては後ほどまた例示いたします。
また、性犯罪者に対しては一般に厳罰をもって処遇を望む声が強いのですけれども、厳罰で再犯が抑止されるというエビデンスが残念ながら余りないというのが現状です。そこで、現在では、対象者の特徴に見合った手続が用いられていまして、これはこの領域では比較的有名な考え方なんですが、RNRの原則というのに従っています。これは、ごく簡潔に申し上げますと、重症度の程度が軽い方には相対的に軽い処遇を、重たい方には密度の濃い処遇をといったように、その方に合った密度、回数に従うように処遇を決定するという考え方です。我が国においても、法務省においてこの考え方が採用されております。
次のページのスライド五を御覧ください。
先ほど申し上げた機能という側面の説明を簡単にさせていただきます。
行動科学の理解の仕方では、ちょうど中央の四角にございます、手を伸ばして触る、これは性加害行為、例えば痴漢等と思っていただければよいのですけれども、それがどのような状況で起きるのかという先行事象、そしてどのような結果が起きるのかという後続事象という、真ん中に行動と、時間的に前後する三つの枠組みから捉えることが基本になります。
したがいまして、例えば上下を見比べていただきたいのですが、左から、すぐ目の前に好みの女性がいるときに、手を伸ばして触るというところだけを取り上げるのであれば、上下同じですので加害者に対して同じ理解が可能かと思いますが、上でいいますと、手を伸ばして触るというときには、いつ騒がれるかのスリルがたまりませんという、快の状態の出現を経験する方がいますし、逆に、下でいいますと、いらいら感やストレスが解消する、不快の状態が消失することを経験する方がいます。すなわち、性加害行為を続ける理由、機能という側面は個人によって結構異なるということになります。
この時間的に後に生じる後続事象の方の分析を丁寧にやりますと、例えば、手を伸ばして触るということを別の行動に置き換えられないかと考えます。行動科学では、何々しないということは困難であると考えていますので、ある条件が整ったときに性加害行為をするという行動を、別の何々をするという、より適応的な行動に置き換えることを考えていきます。
したがいまして、例えば、上のパターンで理解される方は、別の行動、例えば、宝くじを買うですとか、勝ち負けがあるスポーツをしたりするなどの、生活の中でスリルを味わうといったような行動に置き換わる可能性が高いのではないかと考えます。下のパターンの例でいいますと、ストレスの解消する方法というのを性加害以外のもので身につけることができれば、性加害をする確率は下がっていくだろうという理解をしていきます。
一般に、犯罪はストレスによって生じるように言われていますけれども、それはこの絵でいいますと下のパターンに当てはまりますが、確かにそういう方が多い一方で、ストレスがなくても刺激を目にしてしまうと加害する方は多くいるように思います。特に性加害の場合はそれが顕著だと言ってもいいのかもしれません。
スライド六を御覧ください。
認知行動療法に基づく支援では、このような枠組みの理解を、性加害をする直前の行動だけではなく、生活のどのようなことに端を発して、どのようなプロセスをたどって性加害に至るのかということを一連のプロセスで検討することを行っています。
少し絵が小さくて、見にくくて申し訳ございません。丸の形の、右上から時計回りに、性加害に至る行動の連鎖を分析していきます。このような行動の連鎖でその方の性加害行為を理解することができれば、それを生活のどこかで断ち切ることによって性加害まで至らないようにすることができると考えます。
次のページのスライド七を御覧ください。
これが先ほど申し上げた先行事象と後続事象で理解する枠組みになりまして、前のスライドで説明いたしました不適切な行動を減らすということは、他の行動に置き換えるという中央の赤字のところになります。そして、先ほどトリガーと御紹介されていましたけれども、そのきっかけとなる先行事象を取り去ること、そしてそれに加えて、適切な行動を増やすという赤字のところが中心的な支援になっていきます。
一般に、不適切な行動を減らすという方向性だけではなかなか再犯防止につながりません。再犯防止のためには、この適切な行動を増やすといった支援を同時に行っていく必要があります。すなわち、事件と同じような状況に出くわした際に適切な行動が取れるようになれば、結果的に性加害を抑止すること、予防することができるのではないかというふうに考えています。
次のスライド八を御覧ください。
認知行動療法に基づく支援では、このように、再犯防止計画として、最終的には自分専用の計画を作ります。再犯防止計画は個人によって違いまして、ある方の自分のパターンに従ってこのようにやるといった行動の連鎖は別の方にも同じような行動の連鎖になるとは限りませんので、個々に違ったものを作るということになります。
その中に、先ほど申し上げたような、きっかけを減らす、トリガーを減らすという先行事象のコントロールをする、刺激を避けるという手続がありまして、性加害を行うに至るきっかけから遠ざかるという内容が元々治療的支援の一部に含まれています。したがいまして、性加害者を子供から遠ざけるということは、決して更生の機会を奪うものではなく、再犯防止の施策の方向性ともかなりの程度一致しているのではないかと考えています。
具体的には、子供に対する性加害を行った者の場合には、通勤手段や経路を変えたり、子供に関わる職業に就いている場合には転職等の勧奨をしたりします。これは、あくまでも加害者自身から、犯罪から遠ざかるための一つの選択肢として提案するにとどまっているのですが、実際に再犯するかどうかに関しましてはここのところが非常に大きなポイントとなっていると考えられます。
そして、いわゆる性的嗜好に関しましては、短期的変容、例えば小さな子供が好きであるといったようなことを短い期間で変えるということはやはり困難でありまして、性犯罪にならないように、すなわち社会的に容認される方法を用いて自分の特徴とうまくつき合っていきましょうということが当面の支援の目標になります。そして、当面の目標を続けていくうちに性的嗜好の長期的変容を目指していくというのが前提となる考え方になります。
次のページのスライド九を御覧ください。
被害者が子供である加害者の特徴は、大きく分けて二つございます。被害者が子供である場合には、十三歳以下の被害者がいる場合には医学的診断である小児性愛症を念頭に置いて関わることが多いのですけれども、これは医学的表現で余りよくない感じがするんですけれども、専従型あるいは非専従型というふうに言われています。専従型というのは子供だけを対象とするもの、非専従型はそうでなくて、子供も成人も対象とすることということになります。このような対象者の方の医学的な理解と併用して、先ほど申し上げた性加害行動の機能の理解を併せて治療プログラムが行われているということになります。
子供も対象の場合は性的嗜好が子供であるというのに加わりますけれども、私たちが留意していることはもう一つの場合で、性的嗜好は成人女性なのですけれども、通報等をされることを回避したり、心理的な優位な立場に立ったりするために、結果的に子供を加害対象としている場合が結構あるということでございます。
次に、スライド十を御覧ください。
これは再犯の可能性に関する考え方をまとめたものになります。再犯の予測ができるかということは研究も多く進んでおりまして、どちらかといいますと、上の静的なリスク、スタティックというんですけれども、その方の元々の属性や今からでは変容不可能な過去の履歴等に基づくと、その方の再犯の予測ができると考えられています。
もう一つは、二番目の、今からでも変容可能な動的リスクというところがあります。現在の認知行動療法に基づく支援は二つ目の方に働きかけておりまして、一つ目の変えられない過去の特徴を踏まえて、どのように二つ目の動的リスクに働きかけるのかということをもって治療的支援を行っていく、こんなことが行われております。
次のページのスライド十一を御覧ください。
もう一つ、私どもにいただく御意見の中には、再犯をしてしまった方の特徴を調べていくときに、この方はプログラムを受けたんでしょう、なのにどうしてというようなものがございます。
現時点では、先ほど申し上げました静的リスク、動的リスクの考え方に基づいて、現在、最大限の努力がなされておりまして、法務省の方で大きなサンプルの有効性の統計値を公表していただいているのですが、相応の効果は上げております。ただし、逆に申し上げますと、その方を十分に治してから社会内に出しているというわけではなく、決められた刑期、決められた支援回数の中で、その方にできる最大限の支援を行っているというふうに考えていただければと思います。
最も体系的に行われておりますのは矯正局のプログラムで、一回百分間が約七十回程度行われているものが最大のものです。民間の方では八回から十二回、十五回程度の支援になっています。保護局の方は五回という、ちょっと回数が少ないのですけれども、このようなものが混在して処遇プログラムを受けたと表現されています。
したがって、民間医療施設ですと、これを複数回、同じプログラムを繰り返すことなどもできますので、プログラムを受講したと同じように表現されても、実際にはかなりの中身の違いがあります。そして、何よりも、学校教育と同じように全員が満点で受講を修了するわけではありませんので、性犯防止プログラムを受けたからといって、その方が再犯しないということは残念ながら言い切れないというのが現状でございます。
次のページのスライド十二を御覧ください。
これが法務省によって公表されているプログラムの効果ということになりまして、おおむね再犯率は二〇から二五%程度下げられているとされています。一方で、痴漢等の頻度の高い習慣的行動とみなせる場合や被害者が小児である場合などは、効果が少なかったため、支援方法を工夫する必要があると考えられています。そのほか、矯正施設収容中から出所後までの一貫性を持たせること、指導担当者のスキルアップの必要性などが提言されており、今現在もプログラムの改定が法務省で行われております。
次のページのスライド十三を御覧ください。
これは、さきに私どもが行った厚生労働省の厚生労働行政推進調査事業の研究結果の一部です。現在はあくまでも公表準備中ということになりまして、恐らくそのまま報告書に盛り込まれるのではないかというところの内容になります。
国内では、認知行動療法を中心とした心理社会的支援を軸にした治療的支援が行われていること、いわゆる薬物療法の適用には、多様な意見があり、十分なコンセンサスが得られていない状況であること、何をもって改善したと判断するのかについても意見が分かれておりまして、治療的支援の体系化は十分になされていないこと、社会的リソースとして支援の場が非常に不足しており、機能的な施設間の連携や情報共有に問題があることなどが確かめられています。
また、性犯罪加害者の連続的な支援の際に大きな障壁になっていますのが、法務省管轄の各施設と厚生労働省管轄の各施設の違いというところがあります。
最近は、法務省内の施設同士は様々な連携がなされるようになったと承知しています。しかしながら、あくまでも疾患かどうかという観点とは独立して再犯の防止を目指す法務省施設と、あくまでも再犯ではなくて疾患の治療等を目指す厚生労働省管轄の医療施設等とは、大分隔たりがあるように感じております。
スライド十四を御覧ください。
これは、法務省の大臣官房秘書課が策定いたしました性犯罪再犯防止に向けた地域ガイドラインの概要になります。この検討には私も参加させていただいておりました。
さきに述べたような施設内処遇と社会内処遇のつながり、特に、保護観察所の指導等を終えた後に、主に地方公共団体へのつながりを意識して、認知行動療法に基づくSTEPs―Rというプログラムを公開しています。
このような連携の際に最も懸念されるのは情報共有の問題なのですが、先ほども御紹介がありましたとおり、大阪府との間には特別な連携を行って運用しているという好事例もあるやに聞いております。このような仕組みが各地域で次第に整うようになれば、民間の医療機関等にも波及し、国を挙げての効果も期待できるのではないかと思います。
次に、スライド十五を御覧ください。
事前にいただきました若草色の参考資料、冊子の中で、主な論点につきまして、私の方で意見を申し上げられそうなものを挙げております。
まず、対象犯罪の類型に関しまして、量刑という観点から見ますと、どのような内容の性犯罪なのかを参照することは当然なことかと思いますけれども、認知行動療法の機能という観点から見ますと、その内容や手口が必ずしも一対一対応をしていないと考えられます。したがいまして、本件がどのような内容かに狭く縛られて理解して対応をしてしまうことには少し懸念を感じております。
被害者の年齢に関しましては、先ほど述べたような専従型、非専従型という考え方がありますので、年齢を問わないということは妥当なように感じております。
また、保護事件の扱いに関しましては、原理は成人か少年かに余り関係はございませんので、もしかすると、より年長の特定少年くらいには同等の手続を用いることもよいように思います。少年の性非行の支援の考え方にも、まずは刺激となるものから遠ざかり、別の生活上の出来事や楽しみに目を向けさせるというものがあります。
三の、その他の安全確保措置では、スライド十六にございますとおり、埼玉県の不祥事研修プログラムの策定に関わったことがあります。その際に、関連して多くの教員の意見を収集したのですが、学校の先生方の中には条例違反というのを刑務所等に収監されることのない軽犯罪のように捉えている方が結構多いということが分かりました。また、小学低学年の児童が先生の膝の上に乗ることが不適切であるということにも異論がある方も非常に多かったため、現在の子供に関わる際の考え方をしっかりと研修していく必要性はあるように思います。
四の、その他、再犯防止に関しましては、先ほど述べました、加害者の側のみに対しても、切れ目のない、シームレスな、包括的な支援の枠組みの構築が理想であるように思います。
長くなって申し訳ございません。私からは以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
○谷委員長 ありがとうございます。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。田中英之君。
○田中(英)委員 おはようございます。自民党の田中英之でございます。
本当に限られた時間でございますので、早速参考人の皆様方にお伺いしたいと思います。全ての皆さんに聞ければいいんですが、時間の加減で聞けなかった際は御容赦いただきたいと思います。
まずは渡邉参考人にお伺いしたいんですが、生命の安全教育という形でこれまで先進的にお取り組みをいただき、教材を作ったり、いろいろなこともこの間はしてきていただいたものだというふうに認識をいたしております。
子供たちにいろいろなことを性犯罪のことで学んでいただくために、自分自身が加害者にならないこと、さらには被害者にもならないこと、そしてやはり傍観者にならないこと、こういったことを年代別にいろいろと分かりやすく知っていただいて、知識にして、それが最終的には大きなものになっていくことによって、性犯罪の防止に自分たちがなる要素をつくるということ。
さらには、現役の先生方、教員、さらには養成、これから大学等々で学校の先生として学ぼうという方々には、先ほども聞いていると、なかなか、教育課程の中には含まれていないんだということがあったので、そこは本当に、含めていくことによって、今度は指導する立場の者にもそういう要素をつくるということ。
恐らく、もう一つの要素として、後ほどお伺いしますけれども、地域社会とかそういうところの要素というのはあるんだと思います。
と申しますのは、もう十五、六年前になるんですが、小学校の子供たちが、学校から、知らない人に声をかけられたら、一メーター半若しくは二メーター、距離を置いて逃げなさいというのが実は私の地元であって、当時のPTA会長の方が、そういうことを言われたんやけれどもどうしたらいいという、ちょっと困惑をしたのがやはりあったようです。でも、今から考えますと、そうすることが一番自分たちの身を守る方法なんだということを恐らく学校で教え、そして、我々地域にいる人間がそれを知って、理解をするということが必要だったんだというふうに思いますので、今になると、よくよくそういったことが分かるようになりました。
まずは、じゃ、子供たちにどのようにしてそういったことを教えていくかという過程ですけれども、学習指導要領の中に日本では入っていないということもあって、ただでさえ今、時間を物すごく、働き方改革なんかで学校の中では指導する時間というのが狭まっているというふうに思っていますので、その点をどのようにクリアするのかということ。
渡邉先生の場合は、学校施設全体の安全ということにも取り組んできていただきました。先ほども、死角になるところ、ガラスを外してオープンスペースにする等々ありますが、施設を改善していこうとするとやはり予算もかかってきて大変だと思いますので、完璧だと言われること自体、なかなかないんだと思いますね。ただ、でも、性犯罪を起こしにくい、起こせない環境をつくるということは絶対必要だと思いますので、その辺りについてどのような対策ができるか、まずお伺いしたいと思います。
○渡邉参考人 ありがとうございました。
今お話を伺っていてまず浮かんだのが、生命の安全教育のベースになっている部分というのは防犯教育のところというのがかなりあると思うんですね。ですけれども、知らない人に声をかけられたらと、本当は知らない人だけじゃ駄目なんですけれども、性犯罪は知っている人が加害者としては多いので、その辺のところというのは、やはりそこも考えないといけないと思うんですけれども。
どこにそういうものをやっていくかということを考えたときに、先ほど、学習指導要領に明確に入ればということなんですけれども、もちろん、入れるときには今度は何か外すとか縮小するということが出てくるので、そこが難しいところなんですけれども。
ただ、学習指導要領で示された内容以外のものをやろうとすると、先生方のかなり負担になるというのは逆にあると思うんですね。指導要領に入るといいのは、一つは、やはり教科書なんです、書き込まれるということ。それに対して、指導方法とかにも、いろいろ研究されますし、資料も作られるということがあります。そうすると、先生方の負担というのはそんなに増えるということではないかと思うんですね。ただ、もちろん、新しいことを教えなきゃいけないので難しいとは思いますけれども、既に防犯教育というのはある程度定着していますので、そこを発展させるというような形でまずは入っていくということができるのではないかというふうに思います。
それと、環境の問題なんですけれども、まさに御指摘のとおりで、これは、今回の性犯罪だけではなくて、一般的な施設設備の改善というようなことを考えますと、毎年、学校保健安全法で施設設備の安全点検をやるんですけれども、安全点検をすると不備がいっぱい見つかる。見つかるんだけれども、それが改善されないままになっているというようなことというのはあるんですね。
それは、やはり学校設置者の予算の問題というのもあって、学校だけじゃなくて学校設置者の。そこのところというのはなかなか、今回の性犯罪、性暴力の問題だけじゃなくて、全般的に学校施設設備の問題というのは根強く残っているというのがあるので、ちょっとすぐには改善策というのはできないと思いますけれども、是非それぞれの自治体には頑張っていただいて、学校の安全な環境づくりを進めていただきたいというふうに思っております。
○田中(英)委員 ありがとうございます。
私自身もよく学校やPTAの方から言われたのは、いろいろな事件が起こったときは、学校の正門なんかも閉め、なかなか他人が入れないようになっていましたが、実は、こういう名札をつけたりしながら職員室に行って、授業を自由に見てくださいなんという時期もあった、まだそうなんでしょうね。という意味では、人的な要員としては、そういう地域の、PTAの皆さんも仕事をしていますからしょっちゅうは行けませんけれども、スクールガードなんかをやっていただいているような方々も含めて、地域社会で人が入っていって見るということも一つの抑止になるんじゃないかなというふうに思ったりするなということを私自身は考えておりましたので、施設にお金をかけるだけじゃなくて、人的要素、そんなことも考えてできればなという思いがあります。先生、ありがとうございました。
次、済みません、嶋田先生にちょっとお伺いしたいんですが、認知行動療法、今お話を聞かせていただくと、いろいろな要素があるんだなというふうに思いながら聞いていますが、我々が普通に風邪を引いたりして病院に行って薬を飲んで治すというようなものではなく、やはり心理療法となってくると、これは、アルコール依存症であったり、ギャンブル依存症であったり、たばこを吸われる方にはあれですけれども、そういう依存症的な部分があるとなると、人によって物すごく差があると思うんですよね。その治療をしっかりとやっていただいても、すぐに即効性があって解消されたという人もいれば、いやいや、物すごく時間がかかってしまうというような、したがって、本当に気の長い治療をしていくということだと思うんです。
渡邉先生の方は、施設であったり、実は学ぶというところで一つのものをつくるんですが、犯罪を犯された方々を治すということによっての部分で、実はこの双方が整ってこそ、まずはそういう再犯が起きないということで子供たちが安全、安心に、要するに子供の関わるようなところで生き生きと過ごしていけるということだと思うんですが。
ここは、恐らく長くかかってしまうという部分では気長にやはりやっていかなければならないところ。結果として、今お話がございましたとおり、子供に関わるところはちょっと距離を置いてしまわなければならないなんということは、これは一番効果があるともおっしゃっておりましたので、そういうことをしていただかなきゃならないんだと思いますが。
今、渡邉先生たちが取り組んでこられたこと、そして嶋田先生の取り組んでおられること、さらに、再犯を防止するためにどんな協力が治療以外の部分で必要か、お伺いしたいと思います。
○嶋田参考人 御質問をありがとうございます。
心理療法の中でも認知行動療法は、どちらかというと心理教育的と言われるんですけれども、自分自身をよく理解してそれにつき合っていこうという考え方を持っています。ですので、渡邉参考人等のお話を伺いますと、入口といいましょうか、最初のところと、それから、してしまった方のケア、この両面がやはり必要なのではないかと考えます。
特に、再犯を防止するためには、最後の方に私が申し上げました、やはり治療施設、支援施設というのがまだ社会には十分に整っていないところですとか、それから、個人情報の共有等の難しい問題がございまして、なかなか官の支援と民の支援がつながりにくいというところが問題かと思っております。
そういったことが、整えて、関わる関係の方々皆さんが同じ方向を向いて支援していくということがやはり必要なのではないかと考えております。
以上です。
○田中(英)委員 ありがとうございます。
治療の部分、それから施設や教育の部分、さあ、ここが整えばということでありますが、それでも補えない部分があって、恐らくこの法制度の中で、四人の先生方、参考人の皆さんにはいろいろと御意見もあるし、実は我々、ここの委員の中でもいろいろな意見があるのが事実で、この委員会でもかんかんがくがくの議論をこの間してまいりましたし、我が党でもそうでございました。
それで、先ほど寺町参考人がおっしゃっておられた、トリガーを避ける必要性は十年、二十年で終わらないというところです。
役所の方にこの話を聞くと、まず一つは職業選択の自由の話も当然ございましたし、今ここにある刑法の三十四条の二、二項ですか、このこともあって、恐らく、役所の方は憲法違反やその法のルールを守るぎりぎりのところで何とかやろうとしてきたわけでありますけれども、実は、この十年、二十年の照会期間に関しては、我々の党でも本当にいろいろな議論が当然ありました。でも、最終的には、いろいろな議論をする中で、やはり我が国は、これは遅れているのでまずは作ることを優先的にしなければならないということで、参考人の先生方も総論的には理解をいただいているものだというふうに思っております。
そこで、寺町先生にあえてお伺いしますけれども、拘禁刑の二十年、それから罰金刑十年というところ、ここに関して、先生の方は、我々もわいせつ教員の件に取り組んだ経緯がございますので、それに比べたら短いんじゃないのというのも正直あります。でも、やはり憲法上の問題、さらには法律上の問題で、なかなかぐっと踏み込んでいくことが難しいのかなという思いもありますので、先ほども少しそのお話はいただきましたが、再度ちょっと、クリアできるかどうか、そこをお伺いしたいと思います。
○寺町参考人 御質問ありがとうございます。寺町でございます。
今の点についてですが、取りあえず導入するためにここの二十年、十年で手を打ったということについては理解をする気持ちであります。
他方で、先ほども申し上げましたとおり、加害者の更生についての調査研究というものが非常に薄いというのが最大の問題点だと思います。やはり、加害者向けの治療プログラムに対してきちんと公費が使われている部分が少ない、その結果、民間の治療機関とかも少ない、支援する人も少ないということで、なかなか、加害者の方が捕まった後でどういうふうなプロセスをたどっていっているのかというところが、エビデンスベースの話になっていっていないというところが最大の問題だと思います。
エビデンスが整ってくれば、それに基づいてやはり二十年、十年じゃ足りないですよねという話になれば、関係各所の理解も得られるんだと思うんですね。そういう意味で、科研であるとか、医療機関に対する保険の適用であるとか、様々、どういうふうにお金を出していって、加害者に対する治療を発展させていくのか、それについてどういうふうにデータを残していくのかというところが今最も欠けているところなのではないかというふうに思います。なので、今後のデータの蓄積を期待したいというふうに思います。
○田中(英)委員 そういったデータがなかなか整っていないという、エビデンスが整えば、更にそういった意味では法自体も進化をさせていくことができるんだというふうに思っております。
我々がよく話したのは、やはり実は短いよねという話。でも、役所と話をすると、なかなか乗り越えられないところがある。これは痛しかゆしで、板挟みになる話なんですが。そこも理解をした上で、我々自身も、まず本当にこの法案を通すということ、その中でいかに進化させるかということだというふうに思っておりますので、そこは共有できているものだというふうに思っております。
時間が限られて、最後になります。
とはいえど、そういったことが整っても、いろいろな仕事は、今回、義務になる部分があったり、手挙げ方式で認定をしてもらったりというところです。でも、手をぱっと、乗ると、ここから漏れ落ちるような仕事というのがあるというのは二人の先生からもお伺いしてまいりました。
そこで、最後に末冨先生にお伺いしたいんですが、今日は直接的にそこをメインじゃなくて、イギリスの話が多かったので大変恐縮でありますが、いろいろなところでお話しされているのを事前に読み込ませていただいた上で、やはり、認定事業者であったり義務化をするところであったりというのは、どうしても漏れが出てしまうんですよね。そこに懸念を皆さんお持ちだというふうに思います。とはいえど、全て拾い込んでいくかということが果たして今の状況でできるかというと、難しいのもこれは事実だと思います。
先ほどイギリスの事例でお示しをいただきましたけれども、右側に、スライドの五番になりますが、ワゴン販売者とかチケットの窓口販売員、ちょっとイギリスではこんなところまでそういうのをかけておられるということでありますが、じゃ、どのようにしてそこのいろいろな仕事のところ、子供が少しでも関わるところに含めて、そういったことが、我が国でやろうと思ったらできるのかということをお伺いしたいと思います。
○末冨参考人 御質問ありがとうございます。
まず、ボランティアも含めてDBSチェックですとか安全保護研修の受講が可能になっておりますのは、英国の政府DX化の推進によるところが大きゅうございます。特にDBSの申請自体はもう完全にオンライン化されております。IDチェックもオンラインできちんとするということになっておりますので、そうした意味では迅速な手続が可能だということです。
ただ、漏れ落ちる職の可能性はイギリスでもあるからこそ、英国政府がしていることは、まず、個人間の契約には適用されないからそこは気をつけてねということ、とにかくここは対象外ですよと繰り返し発信されておられるんですよね。
そこを明確にしつつも、より多くの、例えば子供食堂ですとかフリースクール等でも利用できるためには、恐らく、国として、そうした子供食堂とかフリースクールさん、幾つかネットワークがあるんですけれども、子供たちの安全保護のためのネットワークというものを全国化していただいて、そこのところで手続等を一元化できるような仕組みというものもあると、全くアクセスのしやすさが違うだろうというふうに構想もしております。
ただ、それも一足飛びにはいかない話ではございますけれども、これを機会に、たとえ一時的に子供を預かるようなボランティアあるいは非営利セクターであっても、いかに多くの大人たちがDBSチェックを受けられて、安全保護の知識を得て適切に実施できる仕組みをつくるかということの検討も始められてよいかと存じます。
以上でございます。
○田中(英)委員 おっしゃるとおり、一足飛びには確かに無理なんだというふうに思います。
ただ、ガイドラインの中にどの範囲をやるかということを決める一方で、今おっしゃっていただいたようにいろいろ、今おっしゃっていただいた子供食堂とかそういう事業をされている方々が、ネットワーク化をすることによって、そういうつながりの中でそういう登録を、認定をするために登録事業者になれる、そういうことができるのであれば、それは一つの要素だというふうに思いますし、それが可能であれば、ある意味では業種が、漏れるものがちょっとずつ少なくなっていくということでありますので。
そんなことも含めながら、その事業者、どの範囲まで含めていくのかということを、これはあくまでも進化をしていく法律だと、三年でということもありますので。そういった意味では、まずはこの委員会で我々はこの議論を深めさせていただいて、そして参考人の今日の先生方の御意見をも含めて更に議論を深めさせていただきたいというふうに思いますので、引き続き、いろいろな形での御助言や御指導を賜りたいというふうに思います。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、藤岡隆雄君。
○藤岡委員 立憲民主党・無所属の藤岡隆雄でございます。
まず、本日は、四人の参考人の先生方、本当に専門的な見地から貴重な御意見、陳述をいただいたことに、僭越ながら、心から感謝を申し上げたいと思います。
お聞きをしておりまして、本当に先生方、皆さん、子供たちを守るんだという熱い思いが非常に伝わってくるような意見陳述であったというふうに私は思っておりますので、この後、御質問を更にさせていただいて、ちょっといろいろ勉強させていただきたいというふうに思っております。私も、十三歳未満といいますか、娘がおりまして、本当に私も、この子供たちを守るということをしっかりやっていかないといけないというふうに改めて思っております。
その中で、まず、寺町参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、五月十四日の我が党の早稲田ゆき委員の質問に対する答弁を踏まえて、今、署名活動というのが開始されていると思います。それは、いわゆる日本版DBSの法案の対象に下着の窃盗やストーカーを含めてくださいというふうな署名が一日で約二万筆を超えたということについて、寺町参考人の御見解をお伺いできたらと思います。
○寺町参考人 御質問ありがとうございます。
下着窃盗については財産犯であるとか、あるいは、ストーカー規制法については特定個人に向けられたものであるとかいうことでの御答弁があったように伺っております。
これにつきましては、むしろ加害者臨床をやっていらっしゃる方の専門的知見を私自身もお伺いしたいところではございますが、他方で、やはりストーカー規制法違反の場合などですと、被害者に対して支配の感情を持って、言うとおりにならないから、それをストーカー行為にぶつけていくという意味では、ターゲットが変われば、人に対して攻撃をしていくという意味で類似性があるのではないかとか、あるいは、下着窃盗の場合にも、盗んだ下着を用いて性的な自慰行為をしたりとか、あるいは、これに関わってですけれども、性犯罪として処罰されない類型で、電車内で制服に精液をかけられるような事案が器物損壊罪にしかならないということで対象になっていないとかいうところでは、実質は性犯罪なのに対象外になっているものということについて、やはり、犯罪を犯した方の心理と、子供に関わる仕事から外していくことの必要性というところについてきちんと調査をして、今後、範囲を拡大していくべきではないかというふうに考えております。
以上です。ありがとうございます。
○藤岡委員 ありがとうございます。
先ほど田中委員からもありましたけれども、ある意味、早急に進化をさせていく必要があるところなのかなというふうにも今感じます。
嶋田参考人にも今の点をお聞きしたいんですが、最後にある犯罪類型というところ、いろいろな治療支援をされているその専門的な見地からも、こうしたいわゆるストーカー、下着窃盗等、やはりこれを含めていくということ、今、本当に署名が急速に集まっているという状況ですけれども、これについて嶋田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
今、ただいま御質問をいただきました点につきましては、一般的には、個人の性的嗜好の個人差が結構ございますので、簡単に言いますと、そういった同様の手口だけを行っているものと、それが様々やる中の一形態であるということが実際には難しいところでございます。
最後の方に先ほども申し上げさせていただいたんですが、立件された本件がどのような内容かによってDBSの対象になったりならなかったりするというのは若干懸念がございまして、その方の、可能であれば、立件された内容だけではなくて、そういった履歴、可能であれば暗数も含めてということになるんですけれども、そういったことを調べることができれば。その危険性というのはあるのかなと思います。
簡単に言うと、痴漢だけをされる方もいらっしゃれば、痴漢と強姦をされる、そういう方もいらっしゃる。そういった方の中で、どれによって適用が行われるかどうかというのは少し懸念がございます。そのようなところです。
○藤岡委員 本当に、早急に進化をさせていかないといけないのかなというふうに改めて感じました。
末冨参考人にお伺いしたいと思うんですが、本日もイギリスの例、本当に参考に、非常に専門的な見地からの御意見に感謝を申し上げたいと思うんですが、今回の法案で、まさに例えば進化をさせていくべきところ、ある意味、早急に検討していく優先順位が高いところという点ですね。
例えば、先ほど、子供食堂、フリースクール、サマーキャンプ、まさにこういうところ。サマーキャンプは本当に入るのか。こういう運営、ボランティア団体もDBSを活用をという点も先ほど、ここにも書かれておりますけれども、更に検討を早急に進めていく優先順位が高いもの、このイギリスの例も参考にして、末冨参考人の御意見を伺えればと思います。
○末冨参考人 御質問ありがとうございます。
優先順位が高いのは、やはり子供の安全保護の責任体制の明確化であると存じます。
英国の仕組みにおきまして最も特徴的であるのは、DBSとともに、子供安全保護主任、子供安全保護チームの設置、任命が、学校、園だけではなくて、網羅できるあらゆる種類の事業主さん、非営利団体に義務づけられているという点にございます。
その点につきましては、まだ今回の法案は最初の法案であるということで、ここから取り組むために必要な規定はされていると存じますけれども、今後の取組を踏まえて、是非とも安全保護の責任体制というものも法規定に明示し、かつ、国としての支援体制というものも明記いただきたく存じます。
以上でございます。
○藤岡委員 国としての支援体制というところまで含めてというところの貴重な御意見、ありがとうございます。
続きまして、渡邉参考人にお伺いさせていただきたいと思うんですが、先ほど、いろいろな教職課程のコアカリキュラムの話や学校における空き教室の問題等々、本当に、まさに参考になる大変貴重な御意見をいただいたと思っておりまして、本当に感謝申し上げたいと思っております。
今回、学校だけでなくて、僭越ですけれども、いわゆる認定対象となる、民間の様々な事業者等々に、そういう認定を受けることができるということになるわけですけれども、学校における今までの取り組んできたことを参考に、改めて、認定を受けるところに対して、こうしてまさにある意味初犯を起こさせないような対応として、参考人の、こういうところを特に措置を取った方がいいんじゃないかというところなどにつきまして、御意見を伺えれば幸いでございます。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
私も、この日本版DBSについて、学校とか保育所は対象になっているけれども、例えば塾とか、そういったところというのが認定という形で全てが対象になっていないというのを最初見たときに、大丈夫かなと正直思いました。
実際、塾で性被害に遭っているケースというのがありましたから、そういうところというのは果たしてどうすればいいかということですけれども、学校は、例えば文科省がいろいろ管轄下の中で取組をしていますけれども、恐らく塾になると、教育機関ではないので、たしか経産省の対象になりますよね。ですから、そういうところからも実は取り組んでいただけないかなというふうに思っております。
性犯罪に関するこういう会議ですと、大体、文科省とこども家庭庁と、そして警察庁とあるんですけれども、経産省の方が入っていないのがちょっと気になっていて、ですから、そういうところから取り組んでいただくと、より広くいろいろなのが対象に入るんじゃないかなというふうに思っておりますので、もしそういうことがありましたら、是非進めていただきたいと思っております。
○藤岡委員 本当に、各省庁の連携という面で、大変、今本当に貴重な示唆に富む御意見をいただき、ありがとうございます。また、義務化のところ、いろいろな塾等、大丈夫なのかというところにつきましても、いただいたところに本当に感謝申し上げたいと思います。
続いて、寺町参考人に改めてまたお伺いさせていただきたいと思うんですが、さっき田中委員からも触れられました、確認の対象の期間の問題、いわゆる二十年、十年の問題ですね。私も、これはやはり延ばす必要があるのではないかというふうに、今後早急な検討ということが必要ではないかと思っているんですけれども。
その中で、まさに職業選択の自由の保障との兼ね合いというところで、ちょっと更に突っ込んでお伺いをしたいと思っているんですけれども、政府の方では、いわゆる実証データに基づくものとして、二十年以内の再犯というところで約九四%とか、九二%とか、ある意味、捉えられるんだというような話の中での今回の二十年、十年と。ただ、山田賢司委員から先日もあったように、じゃ、執行猶予の場合は七十何%になっていて、二十何%がまだできていないという異論がありました。
この中で、私、非常に、累犯性、刑法上の用語じゃない累犯性という意味だと思っているんですけれども、例えば、お一人の方が、じゃ、捜査に入った、いっぱい何か写真が出てきたとか、余罪があるとかというところが、やはり、先生、指摘されているじゃないですか。
その中で、例えば、九二%で、じゃ、残り八%は入っていない、でも、その八%の中で何人にも被害を及ぼすとなったら、これは当然、もっともっと年限を延ばしていくということの必要性、合理性は高まっていくと思うんですね。だからこそ、ある意味、こういったところをきちっと詰めていって、さらに、職業選択の自由の保障をクリアできるような、やはり実証研究をもっともっとやっていく必要があると思っているんですけれども。
その意味で、やはり、この年限を延ばしていく上での職業選択の自由をクリアする上で、そういう考え方、改めて、ちょっと、弁護士でもあられる先生に、どうやって必要性、合理性をクリアにしていくというところにつきましての専門的な御知見をいただければと思います。
○寺町参考人 そうですね、政府の方で出しておられるデータについては、やはり、処罰された人のデータしかない、処罰された者についてだけですね。性犯罪というか、処罰されていない部分も含めた累犯性のところについて、加害者臨床というものがきちんとエビデンスを持った形で発展していないということがやはり重要な問題なのではないかというふうに思っています。
アメリカの報告を御紹介されている加害者臨床の専門家の方の御著書などを拝見しますと、やはり、一人の性犯罪をした方が一生涯で三百八十件、平均的に被害者を生み出していたという御報告があるとか、あるいは、その当該の臨床の方の施設で、それについて再犯防止プログラムをやっている方がどういうふうに受け止めたかといったら、えっ、そんなに少なくないよというふうにおっしゃっているとか、そういうお話を伺いますと、そこら辺の、加害者が実際にどういうふうに、一番知っているのは加害者ですから、その人たちの認識をちゃんと調べた方がいいんじゃないか。
もちろん、人権がありますので、そういう研究に対して参加することに同意してくれた方に限定されるとは思いますけれども、再犯したくないと思っている加害者もいっぱいいるはずですから、そういう方たちに協力を求めて調査研究をしていくということは可能なのではないかというふうに思っております。
いずれにしても、データが少な過ぎるということ、調査をしていないということが、現在、この期間、感覚的にはもっと長く必要なんじゃないかとか、あるいは、どういう要件がある人が繰り返し行っていくのか。例えば、職業があって、住む場所があって、安定した生活ができていくということが再犯しない上では重要な要素だということは言われておりますけれども、そこについてどういうサポートが、どういうときに離職してしまうのか、どういうときにまた再犯に至ってしまうのかということについてもっと細かく調べていく、的確な再犯防止策を取っていくということが必要なんじゃないかというふうに思っております。
ちょっと、お答えが直接になっていないですが。申し訳ありません。
○藤岡委員 ありがとうございます。
本当に、またちょっとこの期間を更に延ばしていく必要があるんじゃないかということに対して、今また、政府ともきちっと、そういう更に進化をという面で大変貴重となる御意見、ありがとうございます。
続きまして、末冨参考人にも、今の期間のところについて、確認対象、もしちょっと何か御意見ありましたら、お伺いしたいんですけれども。
○末冨参考人 期間につきましては、英国のDBSにおきましても、やはり十年、二十年等の上限期間を設けられております。これはやはり、元々の基盤となっております法規が、DBSの場合、自由権保護法という、自由権を制限する特殊な事例としてDBSが構築されているという理由にもよるものと思われます。
しかしながら、英国のDBSというのは、その犯歴記録の範囲に特に注意すべき事項を、まあ、十年、二十年の後も、例えばですけれども、子供への声かけをしたことがあるですとか、あるいは学校の安全保護チームからの相談歴があるといったことも含めて、OFSTEDのデータベースに登録される仕組みにはなっております。
したがいまして、私個人といたしましては、寺町参考人もおっしゃられましたように、加害者がもう加害を繰り返さなくて済むのが一体何年ぐらいかかるのか、あるいは、その証明のために何が必要なのかという実証を積み重ねつつ、まあ、十年、二十年という今の区切りは確かに重要なものではございますけれども、検討を重ねられていくべきだとも思います。
あわせて、登載される犯歴のほかの記録のありようにつきましても、今後の日本での子供の安全保護の仕組みの運用、特にDBSの運用を検証しながら充実をさせていくことが、社会の中で最も守られるべき存在なのが子供なんですよね、だからこそ、その子供たちを守るために必要な記録を収集するという立場が英国政府の立場でございますから、そのような日本政府のありようにもなっていただきたいなというふうに考えております。
以上でございます。
○藤岡委員 本当に、更にまた実証研究等々、いろいろな加害者のことを含めて、やはり更に調査を進めていかなければいけないなということをまた感じました。
それでは、寺町参考人、ちょっとまた改めてお伺いしたいんですけれども、ちょっと法案の話になってしまうんですけれども、今日の話というか、今回認定を受けることができる、対象となる事業者の範囲ということにつきまして、いわゆる個人事業者がまさに抜かれてしまうとか、先ほどもあれですけれども、そこで、技芸の習得というところで半年以上という要件等、そういうものがあって、やはり半年というふうにしてしまうと、この対象になってこないところが結構出てきてしまうと思うんですよね。
私、懸念しているのは、認定しましたと言って、認定が出ていますと言っているんだけれども、実は、何か、やはり漏れているところが結構あるのに、子供さん、保護者としたら安心かなと思ったら、実は、さっきのストーカーや下着窃盗や、そんな人がまさか入っているということになると、認定の信頼性にも関わってきてしまうと思うものですから、やはりこの半年以上の要件等、こういうところ、ちょっと寺町参考人、もしお考えがございましたら、お伺いしたいと思うんですけれども。
○寺町参考人 御質問ありがとうございます。
末冨先生の御指摘の中に、イギリスの制度のお話がございました。私どもも、二〇一八年に性犯罪の関係でイギリスに視察に行っておりまして、その際に、現場の小学校であるとか幼稚園であるとか、あるいは学童保育の経営者の方たちにもヒアリング、見学させていただいたりしたんですけれども、そこでやはり、子供に関わる仕事の事業者がOFSTEDに登録することが義務になっていて、その事業者さんが従業員に対してのDBSチェックをするというたてつけになっているんですけれども、その中で、二時間以上とか子供に接する場合には、必ずそれをチェックしなきゃいけないというような、二〇一八年当時、そういうふうになっているということでした。
末冨先生の資料の五ページとかに、範囲が非常に広くなっているということがございますけれども、そのように、子供に接する正当性がある仕事に就く人であれば、短くても、例えば、ピアノレッスンとかで一時間ですよとか三十分ですよとかいっても、そこでグルーミングをしていくということは幾らでもできるわけです。
あるいは、夏休みの一週間のプログラムで習いますとかいうことであれば、それも対象にしなければいけないんじゃないかということで、六か月というのは、もうちょっと見直していただく必要があるのではないかと思っております。
○藤岡委員 ありがとうございました。
私も全く同じ、改めて、すごく参考にさせていただきまして、ありがとうございます。
では、済みません、時間が来ましたので。四人の参考人の先生方、本当に今日はありがとうございます。
○谷委員長 次に、赤木正幸君。
○赤木委員 日本維新の会の赤木と申します。
本日は、参考人の先生方から貴重な御意見をいただきまして、感謝しております。本当にありがとうございました。
早速ですが、今日、たくさんお聞きしたいことがありますので、まず、全参考人の皆様にお聞きしたいことを、たどり着けなくなると困るので、お聞きします。
これは何かというと、まず、予算、つまりお金のことです。冒頭からお金の話かと思われるかもしれないんですが、実際、やはりかかるものはかかりますし、もっと言えば、子供を性犯罪から守るために必要な予算というのは、今後確保すべきと考えております。更に言うと、特にこども家庭庁さんは、決して、人員を含めて、リソースが十分にあるとは言える状況ではないと認識しています。
そこで、順番に渡邉参考人からお答えいただければと思うんですが、今回の法案に関しても含めて、予算のかけ方に関して、どのような部分にお金がかかると想定されて、若しくは、どういった部分の予算をもっと拡充しなければいけないかということについて御意見をいただけますでしょうか。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
私は、なかなかそういう予算のことというのは余り詳しくはないので、今回の日本版DBSに関して、どこにそれだけのお金がかかるのかというところはなかなか申し上げられないんですけれども、私が今日お話しした中では、それに関して、例えば研修を行うとか、そういうような部分だと思うんですね。
そうなりますと、例えば、国でやっている教職員支援機構の方では、人を集めてやるというと、最近お金がかかるものですから、オンライン研修にして、また、ビデオ映像教材を作ってというやり方をしています。こういったところで、できるだけ、今、オンラインがもうどこでもできるようになってきましたので、人を呼んだり研修したりすると、やはり謝金だけではなくて、交通費、旅費が相当かかりますので、そういう点からすると、かなり削減できているのではないかなというふうには思います。
あとは、例えば、いろいろな教材とか資料とかも、最近はもう印刷しないでPDFで公開して使うという形になっていますので、そういう点からすると、私どもが関わる領域に関しては、予算のことはそこまで考えなくても大丈夫かなというふうに思っております。
○寺町参考人 ありがとうございます。
まず、本法案の中の四条以下ですかね、全体的な総合政策の中で研修等の体制をつくっていくとか、あるいは、先ほど末冨先生の方から御報告がありましたけれども、子供安全主任みたいな形で、防火責任者とかいうものと同じように、一定の研修を受けてその資格を取った人を必ず一定規模以上の施設には何人以上だと何人とかいうふうに配置していくとか、そういうところをシステム化していくということが、まず一つ大切だと思います。
それから、加えて、その場合に、イギリスでやっていらっしゃったのは、やはり、それをやっていることによってインセンティブを与えるということが行われていました。
そのインセンティブの与え方として、お金で与える方法もあれば、OFSTEDの場合には、アウトスタンディングとかグッドとかランクづけがされるので、それによって生徒を集めやすくするとかいうところでのインセンティブもあったりということで、いろいろな組合せがあるかと思います。
今回の日本版DBSの部分でのコストということでいいますと、認定のコスト、誰が認定するのかというところで、事業者さんからの、要件を満たしていますというものに対しての認定のコスト、それから、データベース作りというところでのコストがかかってくるかと思います。
データベースの作り方として、シンプルなものを作れば、その方がコストは安く済むんですよね。インボイスのシステムのような簡単な形、とにかく個人が全員登録するという形にしていく方が、実はシステムとしての開発コストは安く済む、運用コストも安く済むということではないかというふうに思っております。
以上です。
○末冨参考人 まず、必要なコストということで申し上げますと、私の資料の七ページにございますが、英国では、DBSのチェック料、基本的には就業希望者の方が負担することになっておりますが、ボランティアは無料ということになっております。できれば、日本でも理想は無料で、あるいは可能な限り安価な価格で、一人でも多くの就業希望者がアクセスしやすくするということが、一つは重要であろうかと思います。
あわせまして、特に学校、園での体制整備ということに関わりますと、私自身は、学校、園で責任があるお立場にある方たちが、安全保護、特に子供たちを性暴力から守るという趣旨が今回の法案の重要なところですけれども、それに責任を負う主任に対しては、設置主体が自治体、国、国立大学附属系であれ、私立学校であれ、適切な手当を支出するという原則を確立していただくことが重要かと思います。
それが、他職種においても、やはりこうした責任ある立場の人たちの処遇はよくして、より優秀で子供たちの権利への意識が高い方が登用されるということにもなろうかと考えますので、そうした部分について、まず、学校、園の主任に対しての投資が必要であるというふうに考えます。
仮に、それを月三万円と仮定した場合ですけれども、数百億単位の予算はかかってまいりますけれども、こうしたことも是非、子供、子育て予算倍増に政府を挙げて取り組まれている今だからこそ、御検討を進めていただきたく存じます。
以上でございます。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
予算的な規模というのは私の門外漢でございまして、なかなか想像がつかないところではございますが、心理士の立場といたしましては、先ほど御質問いただきましたとおり、この犯罪を犯したからこうなるという一対一対応というのがなかなか難しくございますので、実際の認知行動療法の支援の現場では、社会的に立件されたものだけではなくて、ふだんどういった行動パターンを取っているのか、別にどんなことをやっていたのかということを十分に聞き取って調べる、そして、その方に応じた支援計画を立てるということをやってございます。
したがいまして、リスクアセスメント、その方の行動パターン、思考パターンを丁寧にアセスメントする仕組み、あるいは、その方がどの程度のリスクがあるのかというところを調べる人的な費用、そういったものに割いていただければ、加害者臨床の立場から大変うれしく思います。
以上でございます。
○赤木委員 ありがとうございます。
まさに、それぞれの御専門の立場からリアルな、いい意味でリアルに、本当に実現していく上で、ここは人も手間もかかるということを教えていただき、本当にありがとうございます。
では、次に、末冨参考人への質問になります。
今回もそうですけれども、イギリスの事例を非常に詳しくお伝えいただき、ありがとうございます。本法案自体がイギリスのDBSを参考にしていると考えていますが、やはり日本とイギリスの法社会的というか、社会風土がそもそも違うと考えています。
例えば、イギリスでは犯歴を開示することはそこまでタブー視されていないけれども、日本では、そもそも最高裁で犯歴が特に配慮の必要な個人情報になっていたりとか、あとは、よく日本版DBSは、何か小さく始めて大きくするとかと言われますけれども、実際は何か、いきなりすごくピンポイントに、むちゃくちゃ厳格なところから始まっているんじゃないかなというふうにも感じてもいます。
そこで質問になりますが、日本にDBSを適用する前提として、考慮すべき海外と日本の重要な違いについて教えていただけますでしょうか。
○末冨参考人 まず、日英の前提の違いといたしましては、犯罪者の権利利益の視点からいうと、再犯を防ぐことこそが犯罪者の権利利益につながるんだと。あるいは、その家族も含めて非常に苦しまれる課題でありますので、社会としてのウェルビーイングの向上にもつながるという前提の違いがございます。
あわせまして、率直に申し上げると、人権教育の厚みが全く違います。私も、実はFNNで、こども家庭庁の有識者会議の委員でいらっしゃいました磯谷弁護士と対談したことがあったんですけれども、二人とも、やはり、犯歴が開示されるということについては、日本ではかなりの波紋を呼び起こすであろうということで一致しております。
それはなぜかというと、犯罪者にもまた権利があり、尊厳があり、この方たちの再犯を防ぐことも社会にとって大切なことなんだよ、でも、それ以上に子供たちを被害から防ぐことが大事なんだよというような二つの前提を持っていないと、必ず加害者の方のバッシングあるいはその家族への心ないバッシングにつながるからです。
であればこそ、その前提の違いを乗り越えるためにも、渡邉参考人もおっしゃられましたけれども、学習指導要領の様々な部分に、子供の権利、それから人権教育というものを厚みを持って学んでいけるということ、あわせて、子供たちを被害から防ぐとともに、加害自体もよくない、だけれども、加害をした人をバッシングするということもまた、非常に息苦しい、つらい社会をつくってしまうんだよということについて、物すごい時間をかける必要はないと思います、要所要所で学んでいく仕組みができればと願っております。
以上でございます。
○赤木委員 ありがとうございます。
まさに今おっしゃっていただいたとおり、今回の法案は子供を守る法案であって、加害者を責め立てる法案ではないというところは非常に重要なところかなと考えております。
次は、寺町参考人への質問になりますが、犯罪事実の確認の在り方、言い換えると、犯罪歴の証明方法に関してなんですが、今回は犯歴を確認する方式が取られているわけなんですが、海外なんかでは、先ほど末冨先生からもいただいたこの四段階のDBSにもあるように、無犯罪証明を使っている国もあると認識しています。
従業員が自ら無犯罪を証明するライセンスみたいなものを使っていくような方式と今回の法案のような犯歴を確認する方式、これはそれぞれのメリット、デメリットとあると思うんですけれども、これについて御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。
○寺町参考人 御質問ありがとうございます。
イギリスのDBSの四段階の無犯罪証明ということで、範囲が細かく定められているということなんですが、やはり、今し方、末冨参考人の方でおっしゃられたとおり、人権意識というところがベースにあって、そういう犯罪に関しての無犯罪証明を出していくということが可能になっているのではないかという部分は、大分違うのかなというふうに思っております。
メリット、デメリットということでいいますと、犯罪があったことの証明を出すことのメリットが何なのかというのは、私にはちょっと正直理解できません。無犯罪の証明でいいんじゃないかということと、あともう一つは、私の方は、本当に、登録をさせるときに、国家の中で、こども庁と法務省との間で、この人は犯歴についての要件を満たしていますかということを確認して、犯歴がある、ないということを国の外部に出すべきではないんじゃないかというふうに思っていますので、やはりそこは、日本の文化という、文化と言っていいのか分からないですけれども、犯罪をした人を徹底的にたたくというような、社会に復帰することがなかなか難しいというようなところがデメリットとして挙げられるのではないかというふうに思います。
以上です。
○赤木委員 ありがとうございます。
これは本当に、まずは犯歴を確認するところから始まるのかもしれないんですけれども、先ほどちょっと予算の件でも言われましたが、無犯罪を証明していく方が恐らくシステム的にはコストを余りかけずにいけるのかなと。一方で、今回、犯歴を確認するシステムを、そこに、無犯罪を証明するシステムに変えていくというのがどれぐらいの追加のコストになるか等々という部分は、これから我々も、こども家庭庁さんと議論していくべきかなと考えております。
では、次に、渡邉参考人への質問になります。
今日は、教員養成とか教職課程で、子供に対する犯罪防止の重要性とか環境整備の重要性を教えていただきましたが、一方で、やはり、自己防衛したりとか犯罪の認識をちゃんとしていけるような、そういった子供に対する教育も重要だということを理解させていただきました。
私も、支援者というか、実際に教員をしている人間なんかにもよく聞かれるんですけれども、果たしてどこまでそれを子供に教えてしまっていいのかという悩ましさはあるみたいで、やり過ぎてしまうと、やり過ぎということはないのかもしれないんですけれども、大人に対する不信感がどんどんどんどん広がっていってしまうのかな、そういう懸念が私自身にもあるんですが、どのレベル感まで教育として教えるべきなのかについて、御意見あれば、いただけますでしょうか。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
実際、生命の安全教育の中身、特に、低年齢、幼児期と、あと小学校低学年の頃というのは、かなり内容としては絞っていて、例えば、先ほど言った、プライベートゾーンという言葉は使ってはいないですけれども、水着で隠れるところと、あと顔、口を守ろうねと。そこを触られたりとか、あるいは、そういうところを見せたりとかしたら駄目だというようなこと、そこにかなりターゲットを絞っているんですね。
そういったことというのは、確かに不信感、かつて防犯教育なんかでもあったんですけれども、人から道を聞かれたらすぐ逃げろというふうなこととかあったんですけれども、確かにそういう部分というのは危惧される部分ですが、ただ、人の体に触るとか、見せたり、また見ようとしたりということ自体がもう駄目なことなので、それは大人であろうが、同じ同級生であろうが、それは絶対駄目だというところに絞って教えているということですね。
それが、もう少し年齢が高くなってくると、今度は、例えば距離感の問題があって、人と人の距離感というのは自分で決めていいんだと。だから、自分がこれは駄目だといったら、それは主張していいんだよというような、そういう教え方をしています。
ですから、ほかの人がそういうことをやってきたら、それは自分が嫌だということをちゃんと言っていいというようなことをしていますので、今危惧されているようなことというのは起きないのではないかなというふうには思っております。
○赤木委員 ありがとうございます。
非常に参考になりました。ある意味、ルールとしてそこは見せないものなんだよとか、あとは、さっき言われた距離感なんかは本当に個人個人の問題なので、そこは自分で判断していいんだよというようなことを伝えていけばいいというのは非常に参考になりました。
もう一問、質問をさせていただきたいんですけれども、恐らく時間が過ぎてしまうので、嶋田参考人への質問になるんですけれども。
これも、実際、私の支援者からも問いかけられた質問で、ちょっと乱暴な質問になってしまうんですが、治療ができるというお話だったんですけれども、子供に対する性暴力の加害者は、基本的に病気というふうにみなしてしまってもいいものなんでしょうか。ちょっと乱暴な聞き方かもしれないんですけれども、御意見いただけますでしょうか。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
実は、非常に難しい御質問をいただいているんですけれども、診断基準、例えばDSMというものの中には小児性愛症という診断カテゴリーがあります。ICD等にも以前はあったりして、決められているんですけれども、なかなか、現場の医師の先生方に伺っても、それにぴったりと当てはまるケースは余りないという。これは、一つ、社会的な機能障害というんですけれども、症状だけではなくて、それによって生活が崩れている、そういったようなニュアンスが含まれていて、診断上はすごく難しいとされております。
ですので、病気かどうかというところを判断していくこと自体が現在の困難さにつながっているところがございます。
以上でございます。
○赤木委員 ありがとうございました。
非常に貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。時間も参りましたので、私からの質問は終わりとさせていただきます。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、浮島智子さん。
○浮島委員 公明党の浮島智子です。
本日は、四人の先生方にお越しいただき、心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
我々公明党も、子供たちを性暴力から守る、必ず、絶対に、二度とそういうものを繰り返してはいけない、そういう観点から党内にPTを立ち上げさせていただき、私も座長として、約十四回、様々な方から御意見をいただき、そして勉強をさせていただいてまいりました。
今日は、四人の参考人の皆様方から忌憚のない御意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず初めに、嶋田参考人にお伺いさせていただきたいんですけれども、今の質問ともちょっとかぶると思うんですけれども、私は、性暴力というのは魂の殺人だと思っております。子供たちに対する性犯罪というのは絶対に許してはいけないものであって、子供たちに性犯罪を繰り返す方がいるのはとても残念で、悔しい気持ちでいっぱいですけれども、なぜこうしたことを繰り返してしまうのか、これはある種の疾患なのであるのか、そして、これを治療、そして回復をさせていくのは可能なのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
今ほどいただきました質問も、大変、一言で答えるのが難しいところではございますけれども、先ほど私の意見で申し上げましたとおり、性欲の充足というところは少なからず共通しているんですけれども、それとともに、別の機能、例えば、自分が支配的に上に立ちたいという気持ちですとか、ストレスを解消したいですとか、そういった様々な、それに付随する機能というのが個人によって随分異なります。
したがいまして、認知行動療法が有効だとされている理由は、自分の特徴に気がついて、自覚的になって、それに対して自ら手を打っていくというところがかなう方は、むしろ、変容、いわゆる治療的な効果が期待できます。
一方で、中には、やはり、体といいましょうか、性的な、体の仕組みからもたらされる衝動がある方がいらっしゃるのは事実で、そういった方々には、例えば、落ち着いて心理療法を受けるときには自分のことは分かるんだけれども、はたと目の前にそういった方が、対象が現れると、そんなのはどこかに飛んでいってしまうという方がいるのも事実です。
ですので、まあ、曖昧なことになってしまうんですが、治ることが期待できる方もいれば、実は困難な方もいるというのが現状でございます。
以上です。
○浮島委員 ありがとうございます。
我々公明党の中でも様々議論がありましたけれども、一旦道を踏み外した人、再びそれを受け入れなければいけないということは言うまでもないと思うんです。
でも、例えばアルコール依存症の方、この方もしっかりと治療をしていかなければいけない、ケアをしていかなければいけないと思いますけれども、最もやってはいけないことは、その方をまた職場でも酒場で働かせることであり、社会復帰をするためには、そういうところで働かせない上で、しっかりと社会復帰を目指してやっていかなければならないというのは当然のことだと思っております。
今回の日本版DBSも、私は同じ発想であるべきだと思います。本当に、先ほどからも、十年、二十年、期間の話がありましたけれども、本来は、期間の制限なくして子供たちから引き離すべきものだ、必要があると私は思っております。
今回、WHOの判断基準のICD10、これがバージョンアップされて、ICD11においては、性嗜好障害という大まかな診断概念に加えて、強迫的性行動症という診断概念が追加されているということでございますけれども、我が国においては、小児性愛などの性嗜好に関する蓄積がまだまだ不十分であると思います。
私たちも、党の中でPTで様々議論をさせていただき、ドクターの方にも来ていただき、議論をさせていただきましたけれども、海外では治療が進んでいて、保険適用にもなっているということでありましたけれども、まだまだ日本では治療も進んでいないし、まだまだ保険適用のところにも行っておりません。これが現状であります。
そこで、もう一回、嶋田参考人にお伺いさせていただきたいんですけれども、性暴力、特に子供たちに対する性暴力を行った者に対する治療やケアの現状と課題をお聞かせいただきたいと思います。
それと同時に、全ての参考人の方々に、子供たちを守り抜くと同時に、加害者の治療と回復のために特に国が力を入れるべき政策についての御提言をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
現在の私が理解しております加害者臨床におきましては、子供に対するものが確認された場合には、やはり、なるべく刺激、トリガーから遠ざかるというような手法を取っています。先ほど意見陳述の中で申し上げましたとおり、子供から遠ざかるということは、実は加害者、あなたのためでもある、そういったことを二度とせずに社会的に立ち直る重要な要素だということをお伝えは必ずいたします。
その中で、実際には、選んでいただくのは御本人なので、そこまでのことはできないんですけれども、そういったことを丁寧に説明しながら、結構心変わりといいましょうか、例えば学校の先生ですと、もう多分戻れないので塾でもやりますという方がいらっしゃるんですけれども、でも、そういった方々も、実はそれってリスクじゃないですかということは必ず問いかけをいたします。
その中で、可能な限りそういったところから遠ざかるというところがございまして、先ほど、DBSの問題と絡んできますけれども、遠ざかるというところが自主性に任されている。そして、それが医師や心理士等の治療的支援の中で説得されているといいましょうか、心理的教育されているというのが現状でございますので、そういったことが法的にできなくなるというのも重要な要素ではないかと私自身は考えております。
以上です。
○渡邉参考人 特に重要だと考えることというふうにお答えしてよろしいでしょうか。日本版DBSとそれに関わる様々な取組について、私自身は、やはり最も重視しなきゃいけないのはスピード感だと思うんですね。
このようなことが少し遅れていくと、更に被害者が増えていく可能性があると思いますので、法律に関しては、やはり慎重に検討していくということも大事だとは思いますけれども、やはり早く施行していただいて、被害者が増えないということ、それが一番求められることではないかなというふうに思っております。
○寺町参考人 ありがとうございます。
やはり、再犯防止に関しての取組が始まってはいるわけですけれども、出所のときの出口支援というのが、非常に短い一つの場面だけになっている部分というのがございます。
そういう意味では、立ち直りの支援のところで、仕事がちゃんと見つけられるようにする、取りあえず出所したときに住む場所があるようにするとか、あるいは、ピアカウンセリングといいますか、出所した人と一緒に再犯をしないようにしていくためのグループであるとか、そういう再犯防止プログラムが受けられる場所であるとか、そういうものを、大阪府は非常に進んでいる部分はありますけれども、全国で、どこにいてもそれが行われる、受けられるというような体制を整備していただく必要があるのではないかというふうに思っております。
○末冨参考人 まず、加害者の治療ですとか社会復帰に際しては、浮島先生がおっしゃられたように、最終的には、保険適用で継続的に治療が受け続けられるということが最も重要であろうかと思います。
ただし、それ以外にも、そもそも、性犯罪あるいは性加害をしてしまうということ自体が治療できる、治療すべきことであるという基礎的な認識が日本社会において余りにも欠如しております。その点につきましては、生命の安全教育だけでなく、大人向けの啓発活動というものも極めて重要になってこようかと存じます。
以上でございます。
○浮島委員 ありがとうございました。
やはり、お話ありましたように、スピード感を持ってということもそうですし、しっかりとした治療を確立をしていかなければいけないと思いました。
次に、渡邉参考人にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、先ほど来から生命の安全教育のお話がございました。先ほどのお話の中にも、各発達段階において分けて発信をしているということでありまして、私もこれを見させていただきましたけれども、とても、非常に分かりやすい、すばらしいものであると思います。
この生命の安全教育につきまして、性犯罪、性暴力を根絶していくためには、やはり、加害者にならない、被害者にならない、傍観者にならないという教育、この啓発を行っていくことが極めて重要で大切であると思います。
そのためには、子供たち、そして社会にしっかりと強力に発信していかなければならないと私は思っておりますけれども、なかなか、まだ国民的に、社会のいろいろな方に聞いてみると、ああ、そんなのあるんですかというお話になってしまうんですけれども。
そこで、生命の教育というのは、子供たちはもちろんですけれども、教師など子供たちと向き合う大人、全ての大人を含めてしっかりと発信していく必要があると思いますけれども、社会全体で共有し、認識をどうやったら深められるのか、渡邉参考人にお伺いしたいと思います。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
やはり、まだ日本全体に十分に周知されていないというのは、おっしゃられるとおりだと思うんですね。まずは、学校で実施するということは、それを指導できる先生方に知っていただいて、どのようにそれを指導していくか。教材とか指導本もできていますので、それに沿って指導していただければいいと思うんですけれども。
その際、この教材を作るときに、保護者への手紙といいますか、保護者に対して説明するものも作っているんですよ。実施に当たっては、保護者にこれを配って、学校ではこういうことを実施しますというようなことをして、保護者の方にも理解をいただくというような努力をしております。
ですので、一般的に知っていただく、例えば、学校にお子さんが行っている人ではない場合は、なかなかその辺のところというのは、知っていただくのは難しいかなという部分は確かにあるかと思いますけれども、まず学校、そしてお子さん、そして保護者という流れの中でしっかりやっていくというのが、これからの、今現在もそうですけれども、今後もそれを続けていただければというふうに思っております。
そのためには、やはり研修も必要ですし、更なる教材開発、また、先ほど動画もあるという話をしましたけれども、今年はまた作るという話を伺っていますので、そういったものをできるだけ普及していくということ、それがやはり大きな課題かと思っております。
○浮島委員 ありがとうございます。
もう一点、渡邉参考人に、今ありましたけれども、この生命の安全教育の観点から、根絶するために重要な視点とポイント、これについて教えていただければと思います。
○渡邉参考人 生命の安全教育は、基本的に子供たちに対して指導するものですけれども、もちろん、それに合わせて現職の教員、そして、先ほどから申していますように、これから教員になる大学生たちに対して同時にやっていかなきゃいけないというふうに思うんですね。
生命の安全教育をどういうふうに進めていくかというようなことも、これから、まだ入ってはいませんけれども、養成課程の中で全ての教員になる人たちが学ぶ、そういう形になっていくというのがまず必要かと思います。それを先ほど申し上げたようなコアカリキュラムの中に盛り込んでいく。そうすると、確実にみんな学ぶということになりますので、それを更に、子供たち、先生方に対して両輪でやっていくという形が必要かと思っております。
○浮島委員 次に、弁護士でもあり、かつ保育士でもある寺町参考人にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、寺町参考人におかれましては、カメラの設置の件とか、あるいは、性教育は、女の子の子供たちだけではなくて男性の子供たちも、何をしたら犯罪になるか等々、様々な角度から取組をしていただいているということであります。
そこで、男性の子供たちに対して、また保護者、そして学校、地域、自治体、国などが、大人が相手の意思に反して性行為をしたら犯罪だという点をしっかりと伝え、社会全体の共通認識とするためにどのような取組が有効であるか、教えていただきたいと思います。
○寺町参考人 御質問ありがとうございます。
私は、保育施設等での安全の対策の仕事もしておりまして、保育施設に関しては、ドライブレコーダーのようなカメラの設置について補助金がついたりということもございましたので、そういうことで施設の安全性、透明性を高めていくためのビデオの設置とか、先ほど渡邉先生もおっしゃっていたような施設の透明化といいますか、見通しをよくするとかいうことも含めて必要ではないかというふうに思います。
また、男児が、今ちょっと聞き漏らしたかもしれないんですが、男の子も被害に遭うということも含めて、加害者が男性だけではないということも含めて、そこはきちんと踏まえた教育が必要だろうというふうに思っております。
ジャニーズの事案なども多く報道されていますので、そういう認識は広がってきているとは思いますが、やはり、子供が何をされたか分からないという状態を改善していくのが、生命の安全教育を含め、プライベートゾーンの教育だと思うんですけれども、あわせて、生命の安全教育から更に高校生版とかになりますと、バウンダリーを大事にするんだということを教えるという形になっています。
昨年の刑法改正の中で、相手の意思に反するといいますか、同意しない意思の形成、表明若しくは全うすることが困難な状態にさせという文言が入りました。同意があるかないかというところをきちんと確認しないといけないんだということが性犯罪の本質だというところをやはり子供たちにもっと教えていく必要があると思います。
学校の中での保健ニュースとかありますよね、ああいうものに載せていくことも必要でしょうし、また、末冨先生の資料の中にあった、イギリスなんかですと、パンツザウルスというアニメと歌の軽快な、ポップな感じの動画が流されているんですけれども、そういうものを政府広報、ACというようなところに流していくというようなこともできるでしょうし、様々な形で性的同意について、あるいはプライベートゾーンについて、あるいはバウンダリーについてということを社会の中に知らせていく必要があるのではないかというふうに考えております。よろしくお願いいたします。
○浮島委員 ありがとうございました。
最後に、末冨参考人に一つお伺いさせていただきたいんですけれども、英国版のDBSも、よいところもたくさんあると思います、でも、課題もあると思うんですけれども、そのよいところと、特に課題のところを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○末冨参考人 ありがとうございます。
まず、学校等の現場では、DBS自体にはそれほど課題は指摘されておりません。
ただし、やはり、本日の資料でも紹介させていただいたように、せっかく安全保護チームをつくり、DBSを運用したとしても、いざ学校や園あるいは事業者さんの営まれる事業や活動等の中で性暴力が起きてしまったというときに、その報告義務が遂行されないということが、特に心ある学校の教職員たちが非常に心配していることであり、だからこそ、その点も今政府を挙げて改善に取り組んでおられるということでございます。
御質問、大変ありがとうございました。
○浮島委員 ありがとうございました。
子供たちを性暴力から守っていく、これは立法府の我々の責任だと思っておりますし、これからも皆様の忌憚のない御意見をいただきながら、絶対に魂の殺人は起こさない、そういう観点から仕事をしてまいりたいと思いますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。
○谷委員長 次に、高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、参考人の皆さん、貴重な御意見、本当にありがとうございました。
子供の性暴力被害は絶対あってはならない、この点では誰しも一致できると思うんですが、そのプロセスにいろいろ悩ましいことがございます。是非、知恵を出し合って、よいものを作っていきたい、このように思っております。
まず、渡邉参考人に伺います。
生命の安全教育の教材作りに先生が関わったということであります。加害者にならない、被害者にならない、傍観者にもならない、このスローガンはとても大事だと思います。
今、子供の自死が過去最多であったり、いじめの中身も、SNSを媒体としたいじめや性的ないじめが大変多いと感じます。一方、なぜ、包括的性教育といえば、日本の文科省は消極的になるのでしょうか。どちらが大事かではなく、どちらも大事だと私は思うんですが、先生の見解を伺います。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
包括的性教育については、世界的に今そういう動きがありまして、たしか、例えば、一つの例としてアメリカのカリフォルニア州では、学校で包括的性教育を実施しなければいけないという州法ができたのではなかったかなと思います。
日本ではそれが進まないということですけれども、一つは、包括的性教育というのが、非常に内容が多いというか、たくさんのことを、性に関することを全て盛り込んでいるというところがあると思うんですね。そうなりますと、例えば、学校でどこでやるかというと、もしかしたら何か新しい教科が必要かもというふうになってしまうかもしれないんですけれども、そうなりますと、なかなか進まないという感じがあるかと思います。
この生命の安全教育は、性犯罪、性暴力の防止だけに絞っているというところで、もう既に教材もできているわけで、そういう包括的性教育という形で導入してやっていくというのも一つの方法としてあるのかもしれませんけれども、恐らく、今、日本でやろうとすると、ちょっと遠回りになってしまう。やはり、緊急性の高い課題ですので、まず、ここの性犯罪、性暴力防止というところにターゲットを絞って、そこで今できる時間帯を使ってやっていくという形が現実的なのかなというふうに思っています。
ですが、その上に加えて、例えば、この部分の要素なり、ほかのところも含めて、学習指導要領の検討とか、そういうところでまた進めていっていただければいいと思うんですけれども、まずは、この性暴力、性犯罪防止というところに絞ったものをすぐに取り組んで推進していくということを考えていければというふうに考えております。
○高橋(千)委員 やはり、性暴力が、子供のときはそれが何を意味するのか分からないということがあるわけですけれども、なぜ駄目と言わなきゃいけないのか、相談しなくちゃいけないのか、その背景にあるもの、妊娠や出産やあるいは性感染症などのことも含めて併せて教えなければ、今、歯止め規定がありますので、やはり併せて教えなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。
もちろん、包括的と言っている以上は、ユネスコのガイドラインなどを見ても、人権そのものを、多様性そのものを教えていくということで、確かに時間がかかるプログラムかもしれないけれども、一つずつ組み込んでいくということは大事だと思っておりますが、もしもう一言あれば、お願いします。
○渡邉参考人 今御指摘された、例えば歯止め規定のことですよね、そこのところと性に関しての基になっているようなことを指導するかどうかということなんですけれども、なかなか、ここ、すぐにはちょっと結論が出せないんですけれども、この生命の安全教育については、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、既に実践した取組事例集などが出ていまして、二年間、出ています。
特に実践が多いのが、割と、幼児期と、あと小学校の低学年が多いんですね。それを見てみますと、必ずしも、その歯止め規定のこととか、そこのところをやらなければできないということにはなっていないというか、実践を見ても、それでもちゃんと実践できているので、そこでやはりつまずいてなかなか進まないということではなくて、やはり、まずは、この問題、目の前の問題を解決するという方向で行って、今のところ、それが足かせになっているというふうにはないのではないかなというふうに私は思っております。
○高橋(千)委員 この後の参考人の皆さんに別の質問を用意しておりますが、是非、この点で御意見ありましたら、一言加えていただければありがたいと思います。
それで、寺町参考人に伺いたいのは、寺町先生、何といっても、保育施設における子供の重大事故に取り組んでおられました。私も、御遺族から話を伺ったり、うつ伏せになったまま亡くなった赤ちゃんのことを黙っていなさいと園側から言われた保育士さんの証言を読んだときの衝撃は、今も忘れられません。こうした問題を繰り返し取り上げてまいりました。今回の、性暴力被害から子供を守るという点では、この問題と共通することがあると思うんですね。
先生、二〇一六年に提言も出されておりますが、一つは、大人の目を増やすということ。言うまでもなく、保育士は少な過ぎ、忙し過ぎる。誰にも気づかれずに性加害に及ぶことがないように、やはり複数の目をつくるということ、そういう環境をつくることが政治の責任ではないか。それからもう一つは、今言った事案のように、もみ消しを許さないということ。是非、先生に御意見をいただきたいと思います。
○寺町参考人 ありがとうございます。
性犯罪の防止というところで、やはり、密室をつくらないということが非常に大切だというふうに考えております。そういう意味で、園の中での虐待的な保育などの事案があったからこそ、今、保育の基準として、一人で見てはいけない、園児が一人しかいないときでも二人以上いなきゃいけないということに基準が変わってきておりますけれども、そういう意味で、犯罪機会を減らすという意味では、複数の目がいつもあるということ自体はとても大切なことだというふうに考えております。
また、先ほど申し上げたようなドライブレコーダーとしてのビデオというものも、これは、加害の防止だけではなくて、保育の質の向上とかにも非常に役立っておりますので、これを、手挙げ方式ではなくて、全ての園で基本的に設置することを義務づけていくということも必要ではないかというふうに考えております。
また、もみ消しを許さないということについては、やはり、事案が起こったときに報告義務を課しているわけですけれども、その報告義務に違反したときに罰則がないというところは、意識がなかなか高まっていかないという部分になるのではないかというふうに思います。
それから、先ほどの性教育の関係なんですけれども、やはり、先日、AVをまねして犯行に至ったというような事案の報道がございましたけれども、きちんと、同意のある性行為で、また安全な性行為というものについて、中高生に対して正規の課程の中で教えていくことをしないことがむしろ、知らないうちに、法律を知りませんでしたで、いつの間にか犯罪をしちゃっているというような子供たちを生んでしまっていると思いますので、そういう意味では、性犯罪が改正になったことも併せて、あるいは、動画についての関係の規定も増えましたので、そういうところ、犯罪になるんだよというところを含めて、性教育も含めて、学校できちんと教えていただきたいなというふうに思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
もう一つ聞きたいんですが、ちょっと時間の関係もありますので、まず末冨参考人に伺いたいと思います。
イギリスのDBS制度について詳しく御紹介をいただきました。本法案も、元々、イギリス型を念頭に検討が始まったと承知をしています。やはり、そこまでいかなかった理由というのは、政府の答弁を聞いていますと、OFSTEDとは人員体制が全く違う、日本が足りないということをおっしゃっていたのと、個人情報保護法などとの整合性だとかというのでも、イギリスはきちっと整合性が取れている、問題がないというふうなことがおっしゃっていたことなのかなと思うんですね。あと、先生に紹介していただいたように、イギリスも、最初から今の制度ではなかった。逆に言えば、もっと早い時期から問題視をして取り組んできたというところの違いもあると思うんですね。
私は、やはり、日本の政府には、そこまで徹底する覚悟が今はないような気がしますし、覚悟がなければできないんじゃないか、こういう思いもあるんですね。御意見を伺いたいと思います。
○末冨参考人 ありがとうございます。
私も思いは同じでございまして、こども基本法の最大の意義の一つが、第三条第四号に、子供の最善の利益を優先して考慮するとの規定が明記されたことでございます。
私自身も、日本版DBSの最大の障壁が、犯罪者の職業選択の自由を優先するという、主に法務省や司法がそれまで持っておられた価値観をいかに突破するかというところに懸かっていることは承知しておりました。であればこそ、こども基本法が成立し、子供の尊厳、利益、あるいは最善の利益が特に優先されるんだと明記されたことによって、やっとこども家庭庁がその壁を突破してくださったということは大変高く評価しております。
しかしながら、ここまで積み重ねてこられた大人の犯罪者真ん中の価値観というものをいかに転換していくかということについては、とりわけ、こども家庭庁の司令塔組織を活用した、全関連省庁そして司法も含めた意識改革を、子供安全保護法制、政策をつくり上げるプロセスを通じて徹底していくということに懸かっていると存じます。であればこそ、こども家庭庁の人員、体制の拡充は必須です。
なお、OFSTEDの予算定員は現在二千人強となっております。こども家庭庁の官僚の定員は三百八十名にすぎません。こうした意味からも、こども家庭庁の体制整備というものをしっかりと、かつ迅速に実現していただいた上で、子供たちの守られる権利を一刻も早く実現していただきたいと願っております。
あわせまして、おっしゃっておられた包括的性教育につきましては、国際的なガイドライン自体もやはり多岐にわたる中で、私自身は、教育基本法の規定の実現というのが特に重要かと思っております。教育基本法は、第一条、人格の完成規定もとても大事なんですけれども、第二条に、正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を尊重するという教育をしていきましょうという目標が掲げられておりまして、生命の安全教育自体の進化、そして教科横断的に様々な、やはり、例えばですけれども、同意がない性行為は我が国の刑法上犯罪なんですよねといったことも含めて、体系的に心身の発達に応じて学ぶということが大事であると思います。
あわせて、渡邉先生がおっしゃっておられましたけれども、保護者への案内というのが極めて重要になってきまして、実は、学校が教育をすることで自らが被害当事者であると気づく子供たちが出ます。そのケアの体制もさることながら、保護者にそうしたことをしてはいけないんだよと間接的なメッセージを送ることにもなりますので、そのような取組がなるべく早くに実現していくとよいと考えております。
以上でございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。貴重な御提言だったと思います。
それで、嶋田参考人にも伺いたいと思うんですが、有識者会議で先生がプレゼンをされておりまして、興味深く読みました。本日もありがとうございます。
性嗜好障害という言葉は今回の法案準備を通して初めて聞いたわけですけれども、加害者が子供だけをターゲットにしているのか、あるいは、たまたまいたからなのか、あるいは、そうじゃないんだけれども弱い立場だからちょうどよいと思って加害に及んだのかとか、そういう加害者の特性に合わせた治療的支援というのを、現場では研究が進んでいるんだと思います。
それで、私は、更生プログラムの可能性について先生がどう思っていらっしゃるか伺いたい。つまり、再犯は避けられないという前提に立った制度設計をするのか。もちろんゼロにはできないと思いますが、治療的支援が適切にできれば、立派に更生し、再び社会貢献できるのであって、受け入れる社会の側も理解して共生していくことも大事ではないか、このように考えますが、御意見を伺います。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
加害者の更生プログラムにつきましては、先ほども申し上げましたように様々な内容があるんですけれども、現在も、データを収集しながら、より効果の高いものというのを作成、改定しているところでございます。そういったことに鑑みますと、ある程度のこういった方々への更生あるいは再犯防止というのはできるのではないかと考えております。
一方で、先ほども申し上げましたとおり、やはり、体の反応といいましょうか、自分の意思ではどうにもできないような方々がいらっしゃるのも事実でございますので、そういったことを含めますと、現在の心理療法を中心とした働きかけだけでは限界があると理解しております。
ただ、内容的にも、法務省の発表している治療効果のデータもあるんですけれども、その中で、やはり、小児を相手にした場合にというのが比較的成績がよくないということもございまして、それを今もなお内容的に検討しているところでございます。
以上でございます。
○高橋(千)委員 そうなんですよね。効果があるというデータは見せてもらったんだけれども、減っているというだけであってまだまだ課題があるし、今先生御指摘あったように、小児においてはちょっと成果が悪いということは非常に重要なことかなと思っております。
末冨参考人にもう一度伺いますが、先生には子供の貧困議連で大変お世話になっております。一人親家庭も大変だけれども、多子世帯の困難をデータで明らかにされたことなど、今の貧困の基本法の大事な力になってきてくださったと思っています。
その活動の中で、学生たちが自らの体験を語り、政策提言をする機会にも参加をさせていただきましたが、その経験の中で、面前DVとか性虐待などもあったと思います。そのときに強く感じたのは、どこにも相談する場がなかった、いよいよ命の危険にさらされ、初めて交番に駆け込んだけれども、それまでは学校も相手にしてくれない、そういう指摘が非常に印象に残ったんですね。
それで、今回の法案が子供の目から見て本当に役に立つのか、そこが一番問われると思うんですね。例えば、いじめのアンケートさえ取らないとか、取っても公表しない、そういう学校の体質などは問題外であると思うんですが、そうした体質を転換させること、子供が相談しやすい環境を第三者も含めて本気でつくっていかなければならないと思うのですが、その点、是非御意見をいただきたい。
○末冨参考人 今回の法案を子供の視点に立って考えますと、やはり重要なのが第五条から第八条の安全確保策に尽きると存じます。
私自身は、本日、安全保護主任それから安全保護チームの重要性を強調してまいりましたけれども、今、自治体もそうなんですけれども、相談体制が細かく分かれているんです。いじめはいじめ、性暴力は性暴力、虐待は虐待ですよね。そうではなくて、一元化した相談窓口をつくっていくということが極めて重要かと思います。
もちろん、目の前の先生たちが信頼できるということも極めて重要で、だからこそ、例えば養護教諭の方たちの複数配置で、たとえ一人が忙しくしていてももう一人、あるいはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーも常勤化することで、その課題に相談できる、信頼できる人が何人もいるんだという状態をつくっていくことが理想かとは存じます。
ただし、子供自身が、これって相談した方がいいんじゃないかと思えるようになるためには、何よりも、生命の安全教育等を通じて、これってやはりおかしいから言ってもいいんだよねということが認識できることが極めて重要であって、その点についてはガイドライン等でも、その責務をより、こういうふうに子供たちに伝えてくださいねというような方針が明確化されれば、子供たちに届く法になっていくと存じます。
御質問、大変ありがとうございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
寺町参考人に一言伺います。先ほど、事業者にやはり渡すべきではないというお話がありました。だからホワイトリストの問題が非常に提案が多いのかなと思うんですが、実際、渡すものが判決の確定日と区分ですよね、拘禁刑なのか罰金刑なのか、それを渡すことになるので、下手すれば推測できちゃうということもあるわけですよね。そういう意味では、やはりそれはやらない方がいいと思うし、本当に自らが何もないですということが証明できれば一番いいなと思うんですが、もう一言お願いします。
○寺町参考人 ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおりで、やはり日付と区分でニュース検索等すれば分かってしまうということは多々あろうかと思います。なので、少なくとも、四条とか三十三条とかの特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認ではなくて、でないことの確認という形に修正していただくことで、この問題点は、取りあえずは、完全にではないですけれども、回避し得るのではないかというふうに考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
時間が来ましたので、終わります。
○谷委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。
今日は、参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございます。最後の質問となりますので、是非ともよろしくお願いをいたします。
子供の安全を守るというのは、委員も、また国も、誰もがそう思っていますが、その手段やまたその内容を更に精度を高めていくために、今日は質問させていただきたいと思います。
まず、寺町参考人、末冨参考人、嶋田参考人、三人に伺いたいと思うんですけれども、対象となる犯罪についてです。
今回、不同意わいせつ罪等の刑法に加えて、自治体条例違反も対象となりました。当初はこれも入っていないということで大変懸念があったんですけれども、これについては、わいせつ罪で処分される教員のうち約八割が痴漢や盗撮だということで、末冨参考人も、記事の中で、何とか当初案に比べてよくなったという評価をしていました。しかしながら、同様の罪であっても、示談等により不起訴になった場合は、今回、対象には含まれません。
同時に、私たちは、公然わいせつ罪、わいせつ目的略取及び誘拐罪、さらには、下着などの性的欲求を満たす場合の窃盗罪、こういった犯罪類型も特定性犯罪に指定すべきではないかというふうな意見を持っておりますが、犯罪類型の拡大の必要性というのをどのように考えていらっしゃるか、御意見をお聞かせいただければと思います。
○寺町参考人 ありがとうございます。
不起訴事案についてなんですけれども、やはり起訴猶予という形で猶予をしています。その中には、検察庁の方で、この人は再犯の可能性はどうなのかというところも含めて判断をしているはずなので、そこで、検察官の方で同意を取って登録をすることができるような形というのは、取りあえずの取っかかりとして考えられてよいのではないかというふうに思います。
それ以外の、条例違反はもう判決が出ている案件ですので、条例だから軽いということでは一切ありませんので、そこは当然対象になるべきだろうというふうに思っております。また、そのほかのおっしゃられた罪に関しても、私としても、それを含めていくことについては賛成の立場でおります。
ありがとうございます。
○末冨参考人 お答えいたします。
まず、本法案に自治体条例違反が含まれているということは、実は、法として大変画期的なことでございます。地方自治の垣根を越えて子供たちを守る法案になっているということは、恐らくですけれども、我が国の法体系の中でも異例に近いことである。この点、こども家庭庁の大変な御努力というものを、私自身は心の底から感謝しております。
しかしながら、であればこそ、おっしゃられたように、不起訴ですとか公然わいせつ罪等につきましても、犯歴に類するものとして記録され、かつ、DBS運用の対象となっていくべきであろうというふうに考えております。
以上でございます。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
対象犯罪につきましては、先ほども申し上げましたとおり、立件されたもの、起訴されたものが中心となるということがその方の全てを表しているわけではないということがございますので、広く拾っていく方がよいのではないかと私自身は考えております。
一方で、意見陳述のところで申し上げましたとおり、リスクのアセスメントという考え方がありまして、例えば、今例示していただいたものですと、いわゆる盗撮とかそういった非接触のものは、実は再犯率が高いということが分かっていたりします。ですので、犯罪の態様、内容によって、再犯率が高い、低いというのが一概に決められないところがあります。
一方で、リスクアセスメントツールというのが法務省の方でも開発されていますし、民間の方でも幾つかございますので、そういったものでアセスメントしていく、調べていくということも一つの抜け方ではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
続きまして、今度は認可の民間団体の件でございます。
認可外保育施設や個人事業主が対象外ということで、この議論も今日されておりましたが、これについては寺町参考人と末冨参考人に改めて伺いたいと思います。
寺町参考人からは、危険性が最も高い場所が対象外だということを指摘されていますし、また、認定制度自体が事業者に立ったものであって、子供ファーストじゃないという指摘がありました。さらに、末冨参考人には、わいせつ教員が、学校から排除された人たちが、個人また放デイとかに行ってしまうんじゃないかという懸念が残るということもありました。
先ほど、末冨参考人からは、業界団体等で何か力を合わせてできるんじゃないかといった少し指摘もいただいたんですけれども、このままですと、子供の安全も守れない、一方で、個人の方も、しっかりと安全であるということを示したいけれども示せない、両方にとっても、私はこのままでは法として不十分ではないかと考えておるんですけれども、ここをクリアするためには、今回の日本版DBSで無理ならば、何かこういった形の手だてがあるんじゃないかといったような指摘があれば、お二人からお聞きできればと思います。
○寺町参考人 ありがとうございます。
私の方の資料の七ページの図を御覧いただけますでしょうか。先ほども申し上げましたとおり、やはり認定事業者という枠組みを使っていることと、それから犯歴自体を外に出すというたてつけになっていることが、個人事業主を除外せざるを得ない原因になっています。末冨先生の方もおっしゃっていたとおり、イギリスでも個人事業主が対象になれないのはそこですよね。
ただ、イギリスの場合はOFSTEDに個人でも登録するということが可能ですので、そこは、そういう意味で、私は、OFSTEDのようなものを設置して、子供に関わる一定の事業者についてはそこに登録することを義務づけることが望ましいのではないかというふうに考えています。
この図に挙げましたとおり、就業希望者が登録を申請をする、その申請があったらこども家庭庁から法務省に照会が行くというような形であれば、国家の外に犯歴が出ませんし、就業希望者が登録されましたという登録証ですよね、登録証なので、犯歴ではなくてホワイトリストです。
犯歴だけを登録要件にしてしまうと、登録ができなかったということによって犯歴があることが分かってしまうという問題がありますので、そういう意味で、先ほどのセーフガーディングのような研修等を義務づけて、その研修を受けていることなども登録要件の一つに挙げていくということにすれば、登録ができなかったから直ちに犯歴者ということにはならないので、そういう形で登録制度をつくっていくことを御検討いただければというふうに思っております。
以上です。
○末冨参考人 ありがとうございます。
既に申し述べたことの繰り返しになりますけれども、やはり、今実際にそうしたアイデアが出ているのは子供食堂を営まれる団体さん等からなんですが、中間団体を組織して、そこで各地域の子供食堂が登録できるようにして、その中間団体を経由して国からの認可事業者の認可をもらうという仕組みではどうだろうかということを考えております。
なぜこれを私が提案するかというと、実は子供の安全保護のやり方というのはその場その場によって違うんですよね。例えば、園には園の、学校には学校のですし、子供食堂は子供食堂の、あるいは夏休み等に体験的活動を保障されておられる場ではやはりそうしたやり方もあるはずなんですよね。
国からのルールがこうだからこれでいいんですで終わるものではなくて、私たちの活動に合った子供の安全保護のやり方は何だろう、どうやったら性暴力をゼロにできるんだという視点から、分野ごとに全国的な団体を組織する、あるいはそうしたことにつながるような仕組みをつくっていくということが、実効性がある日本版DBSの上では極めて重要ではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
やはり、今のままでは個人事業主を両方の立場から守れないということでありまして、今、OFSTEDのような第三者機関の必要性も私も大変理解しておりますし、また、末冨参考人からは、中間団体を各事業ごとにつくるというのは、これは現実的な話かと思っていますので、やはり、個人事業主の人たちもしっかりと対応できるように私たちでしっかり考えていかなきゃならないということを思いました。
引き続きまして、嶋田参考人に伺いたいと思います。
先ほど来出ております小児性犯罪のことについてなんですけれども、日本では厚労省がまだ依存症として治療の対象にしていない、また保険対象になっていないということで、先ほど末冨参考人からは、これを保険適用で治療として受けることをすべきであるということも提言がありました。
嶋田参考人の先ほどのお話の中では、性的嗜好の変容というのは短期ではなかなか困難である、長期の時間がかかると。そうしますと、今、法務省が三か月で五回ほどの性犯罪防止プログラムを義務づけていますが、これではなかなか対応ができないと思います。先ほどの質問では、それ自体が効果があるのかということも、これから検証だということがあるんだと思うんですけれども、やはりしっかり治療として認めて、そして社会的復帰支援につなげて、最終的には就労支援というふうにつなげていかなきゃならないと思っています。
午後の質問でしようと思っているんですけれども、法務省は、その処遇プログラムを終わった場合はハローワークと連携して、ハローワークから職業紹介をすると言っているんですけれども、しかしそこでは、子供と関わる仕事、ないしは子供、先ほど言ったリスクですね、トリガーから遠ざけるということはできない、そこまでは、アドバイスやまた誘導はできないということなんです。治療、社会復帰支援、そして就労支援というふうにつなげていくためには何が必要で、今も足りなくて、これからどういった対応が考えられるかというか必要と思っていらっしゃるか。まとめてになってしまいますけれども、お伺いできればと思います。
○嶋田参考人 御質問ありがとうございます。
性加害者に対する治療という側面になりますと、なかなかこれは、治療というのは医師がやるものでございまして、私どもはあくまでもそれに基づく心理支援を行うということでございます。
先ほども申し上げましたとおり、診断そのものが非常に難しいということもございまして、何をもって治癒とするかというところもコンセンサスが得られているとは言えない状況でございます。
そんな中、今、私が承知しておりますのは、法務省も民間の方々も、治療機関、支援機関においても、最大限その中でできることをやっているというのが事実でございまして、その中でカバーできない方、漏れてしまう方がいるのは仕方のないことなのかもしれません。
一方で、先ほども申し上げましたとおり、あなたにとってのリスクですよということを十分に自己理解するということが非常に核なんですけれども、その後の行動選択は、実は何の強制力もないというところが今現時点の問題で、そんなところをカバーするために、加害者に対するシームレスな支援、切れ目のない支援というのを考えていく必要があると思っています。
先ほど意見陳述でも申し上げましたが、性犯罪の地域ガイドラインというのが法務省の方でも作られておりまして、それというのは、法務省でやった官主導の支援から、まずは地方公共団体なんですけれども、地方公共団体や地域の治療施設、支援施設とうまく連携をしながら、どこかにつながることができるということがあれば、職業選択に関してもアドバイスができるのではないか。
あるいは、法務省の中で行ったものは、持ち出せるものが幾つかありまして、例えば自己理解に関するシートみたいなことが例外的に許容されています。そういったものを、実は同じ治療法、支援方法を知っている民間の医師や心理士がそれを見ることによって、この方がどんな指導を受けてきたのかといったことをボトムアップに共有することは可能だと考えています。
したがいまして、それがかなうような情報共有の法的な整備ですとか、そういったことを整えていただければ、これからも非常に有用な施策に結びつくのではないかと考えております。
以上でございます。
○田中(健)委員 ありがとうございました。
今、法務省の地域ガイドラインですね、地方公共団体との連携や、また民間との連携ということで、まだこれは始まったばかりということなので、是非これを私も国の方に進めるように訴えていきたいと思っています。ありがとうございます。
さらに、学校環境における課題、これも各委員から質疑が出ましたが、是非またお聞かせいただきたいと思います。
今回の法案では、事業者が犯罪の防止策としては何をすればいいのかという具体的な中身は特に示されていません。その中で、渡邉参考人からは空き教室の課題をいただきまして、ルーティンアクティビティー理論ということで、監視の不在ということで、監視の目を入れる。また、一人にしないということ、これも先ほど来出ておりましたが、これは従来の、初犯を防ぐための取組かと思っています。
しかしながら、複数の大人の目を入れるという中で、残念ながら、今回、四谷大塚さんの事件というのは大人二人が結託をしてしまったということで、これもこの取組だけでは足りないといった議論が今出ています。
そんな中で、渡邉参考人、また、実際に担当されております寺町参考人、末冨参考人に、まあ、末冨参考人は先ほど安全確保策として安全保障チームが絶対必要だということをおっしゃっていただいたんですけれども、ハードとソフト面では何が、今回は特に具体例としては示されませんでしたが、必要かということをもう一度、渡邉参考人からお聞かせいただければと思います。
○渡邉参考人 ありがとうございます。
なかなか学校でどう取り組んでいくかというのは非常に難しい課題だと思いますけれども、今回のこの性犯罪、性暴力のものだけではなくて、今学校では、やはり管理職がどう考えてどう進めていくかというところが大きく学校全体に影響を与えるということがあります。ですので、具体的に、その学校の状況によって多分取組方は違うと思うんですけれども、まずはその管理職の意識を変えるということが最優先なのかなというふうに思います。
ですから、管理職向けの研修会というのが例えば先ほども申し上げたような教職員支援機構などでやられていますけれども、そういった中に今回の内容を是非入れていただいて、もしそういう事件が起きたらやはり管理職の責任、管理責任が生じますから、そういう、重大なんだという認識をまず持ってもらって、それで御自身の学校の中で、先ほどの空き教室の問題とかもありますし、いろいろその学校が抱えている課題を解決できるような、そういう体制をまずつくるということが必要かなというふうに考えております。
○寺町参考人 ありがとうございます。
大事なこととしては、やはり人権教育がなされていないということだと思います。
ただ、学習指導要領の改訂などで、主体的で対話的な深い学びを得ていくんだというようなことになってきていますので、やはり、一人一人の子供の主体性を尊重するというようなことが、一人一人を大事にするというのは憲法十三条で言うところの個人の尊厳ですので、まさにそこがまず根幹なのではないかというふうに思います。
ありがとうございます。
○末冨参考人 より実効性を高めるために必要であるのが、恐らく就業時の雇用契約、公務員の場合には服務の宣誓の部分を、この子供性暴力等防止法の趣旨にのっとったものを具体に入れ込んでいくことであろうと存じます。
研修は確かに大事なんですけれども、雇用の時点で、特に子供に関する職については、子供性暴力防止法の規定を遵守しますよね、私たちの職場のルールを遵守しますよねということを特に明記しておくことで、就業時の緊張感はかなり高まると存じます。
なぜならば、私、日本大学に奉職するときに、やはり雇用契約を結んだんですけれども、その中で、私個人の行為で日大に損害を与えたら賠償しなければならないと書いてあって、物すごい緊張感高く今も仕事をしております。
同じことでして、子供に関する団体では、そうしたことはしてはならない、そのことによって損害を与えた場合にはあなたに賠償責任が生じるといったようなひな形を国で御準備いただいて、どの事業主さん、どの団体さんでも、そのひな形を基に、あなたはこういうことを絶対守ってくださいよねという契約ができるということが極めて重要なことになろうかと思います。
以上です。
○田中(健)委員 大変参考になりました。
時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。
○谷委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
参考人各位におかれましては、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。大変熱の入った、現場の実態なども踏まえた大変示唆に富む御意見、我々もしっかり受け止めてまいりたいと思います。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時十六分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁成育局長藤原朋子さん、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官中村功一君、法務省大臣官房審議官小山定明君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官浅野敦行君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官田中佐智子さん及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。城井崇君。
○城井委員 立憲民主党の城井崇です。
本会議質問に続き、子供性暴力防止法案について質問します。加藤大臣、今日もよろしくお願いいたします。
まず、学校における教職員以外の対象について伺います。
ボランティア、学校ボランティアは大変重要な担い手だと考えますが、対象に入るでしょうか。学校ボランティア、改めて調べてみますと活動内容が大変多様です。皆様、資料を御覧ください。
学習支援活動や、また部活動の指導、環境整備、登下校中の安全指導、学校行事の開催などという、大変多様であります。関わる時間や内容や種類も随分と異なるわけでありますが、ここでは五点例示をさせていただきましたが、このような活動に携わる人は、今回の日本版DBS、対象に入るか。今日の末冨参考人からも、ボランティアへのDBS活用をという意見もありました。
さて、大臣、いかがでしょうか。御答弁願えますか。
○加藤国務大臣 ボランティアについてでございます。お答え申し上げます。
学校における職につきましては、その業務が子供に対する支配性、継続性、閉鎖性を満たすものについて対象にしたいと考えております。また、その判断に当たりましては、子供から見て当該業務が支配的、優越的であるかという観点も踏まえて検討をしてまいります。なお、業務が支配性、継続性、閉鎖性の要件を満たしている場合であれば、その業務について有償で行っていることを必要とするものではなく、無償のボランティアであっても対象になり得ます。
対象とすべき職種は、下位法令で規定した上で本法律案の対象とする必要があることなどから、子供と接する状態など、学校の実務を踏まえつつ下位法令を適切に整備できるよう、法施行までに関係省庁と協議をしながら検討をしてまいります。
○城井委員 下位法令、そのほかの質問であればガイドラインなんてことになるわけですが、もう少し具体的に方針を示していただかないとなかなか国民の皆さんに説明がつかないと思っていまして、先ほど挙げました五つの事例で、下位法令に書かれそうな可能性がある活動はありますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
今後関係省庁と協議の上検討する必要がありますが、一から五までのお示しをいただいた職種につきまして、まず学習支援活動ですとか部活動指導、これにつきましては、実態として日常的に児童等と接することが想定され得ることから、支配性、継続性、閉鎖性を満たす場合には対象にしたいと考えております。
他方で、環境整備ですとか登下校中の安全指導、また学校行事等の開催等につきましては、必ずしも児童等との接触を前提とする業務に限らないと考えられ、一般論としてではありますが対象とならないのではないかと考えられますが、日常的に児童と接する者については、実務として支配性、継続性、閉鎖性のある業務を行う場合にこれを対象としたいと考えております。
○城井委員 三要件の部分については理解をしているつもりなんですが、先ほど言及いただいた、例えば登下校中の安全指導。過去の事件、事故などの事例に照らしますと、実際に、登下校の見守り安全に当たっていたとされる方が子供に対する性犯罪に至ったという事例が過去にあったりします。ですので、三要件だけに縛られると、そうした事例を見逃す可能性があるというふうに思っています。是非、少なくとも過去の事例はきちんと洗っていただいた上で、三要件も重要な部分でありますが、そうでない部分の見逃しがないように、お取組をお願いしたいと思います。
続いて、学校活動を支援する専門家についても確認をさせてください。
ここでは、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールローヤーを事例として挙げたいと思いますが、それぞれ対象となりますでしょうか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーにつきましては、実態として児童等と接することが想定される職種でありますので、支配性、継続性、閉鎖性も満たすと考えられることから対象にしたいと考えております。
他方で、スクールローヤーにつきましては、学校や教育委員会への助言等を行う弁護士であり、一般的に児童等との接触を前提とする業務ではないことが想定され、一般論として対象とならないのではないかと考えられますが、先ほどと同様、実務を踏まえつつ、関係省庁と協議しながら検討してまいります。
○城井委員 続きまして、民間教育保育等事業者の対象について伺います。
認定へのハードルは小規模事業者ほど高いというふうに考えます。その場合には、認定されなかった事業者が生まれてきます。認定されなかった事業者での子供への性暴力をどのように防ぐか、この点は本日の参考人質疑でも指摘がありました。わいせつ行為で学校等を懲戒免職になった人が無認定の事業者や施設へ流れ込むリスクも想定しなければなりません。
支配性、継続性、閉鎖性、先ほどからの三要件を満たさないんですが、子供と直接関わる、子供と距離が近い事業者の職員での再犯をどのように防ぐか、大臣、お答えください。
○加藤国務大臣 本法律案におきましては、認定要件として、犯罪事実確認を適切に実施するための体制を備えていること、対象業務に従事させないなどの確認結果等を踏まえた措置等を記載した規程を作成していること、性犯罪歴の情報を適正に管理するための措置を講じていること等を定めてございます。そして、その認定基準としては、例えば情報管理等のための措置について申し上げますと、管理者、確認担当者の設定などを想定をしております。
今後、認定基準等を定めていくに当たりまして、御指摘のように、基準を厳しくし過ぎることでハードルが上がって無用な負担が生じないよう、現場の声も聞きながら具体的な内容を検討してまいります。
また、もとより、本法案だけで全ての性被害を防止できるわけではありませんので、子供たちを性犯罪から守るためには、本法案の対象事業に該当しないものも含めまして、関係省庁が連携して総合的な対策、これを進めていくことが必要であります。
このため、四月二十五日に開催をした関係省庁合同会議におきましては、子供、若者の性被害防止、これに向けて四つの柱を設定しました。加害防止をする取組、二つ目、相談、被害申告をしやすくする取組、被害者支援の取組、性嗜好障害などの治療や加害者更生に関する取組、こういった四つの柱から成る、関係省庁で取り組むべき総合的な対策を新たに取りまとめました。
これに基づきまして、業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための先進事例の把握、また、指針のひな形作成、さらに、ワンストップ支援センター等における被害者支援の強化など、各種取組の推進、充実を図ってまいります。
また、研修で用いるコンテンツ等につきましては、今後、先行事例や有識者の意見も踏まえながら、国として、研修で用いるコンテンツ等の素材を策定し、認定を受けた事業者に限らず、教育、保育等を提供する事業者の皆様に広く御提供をしていこうと考えております。
引き続き、本法案とともにこういった取組を推進することで、子供の性被害の防止を進めてまいりたいと考えております。
○城井委員 大臣おっしゃるように、全てを防ぐのは難しいと私も思います。ただ、想定できるものは防ぎたいとも思うわけであります。
そもそも、今回の法案について、立法事実となった事件があったんじゃないか。本日も参考人質疑で寺町参考人から言及があった事件でありますが、例えば、性犯罪の逮捕歴のあるベビーシッターによる強制わいせつの再犯ですとか、性犯罪前科のある保育士が他の認可外保育施設で再犯、傷害致死、こうした事件があったということでありましたが、本法案の内容ではこうした事件が対象外となるのではないかと子供関係団体から指摘があり、私もその点は懸念もしています。
法案の対象は、学校教育法一条校、幼保連携型認定こども園、児童福祉法の対象施設等であり、また、一定の要件の下で認定を受けた民間事業者です。そもそも認定を受けない事業者は対象外となり、認定が複数の職員等を教育保育等事業に従事させる事業者に限定されているため、個人で行うベビーシッター、個人塾、ピアノ教師、ファミサポなど、個人事業主が対象外となるのではないかという懸念も子供関係団体から示されています。本日の寺町参考人からも指摘がありました。
大臣、こうした個人事業主は対象に入りますか。もし対象に入らないなら、日本版DBSによる事前チェックは使えませんが、どのように対応するのか。先ほど多く御説明いただいた総合対策が個人事業主における性暴力防止にどのように貢献するか、具体的にお答えいただけますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
個人が一人で行っている事業につきましては、従業員の研修や相談窓口の設置といった、事業者が児童対象性暴力等の防止等をするために講ずべき措置を講ずることが通常困難であること、また、事業主が犯罪歴を取得することができてしまうと、個人でありますとその事業主は本人に当たりますので、対象事業とは無関係の第三者から犯罪歴の提出を求められるなどの、対象事業以外のところでその犯罪歴を悪用されるおそれがあることから、純粋に個人のみで行っている形態については本法律案の認定対象事業に含めることは困難であると整理をしてございます。
この点、個人が一人で行っている事業につきましても対象にすべきという御意見もありましたので、検討を進めまして、例えばベビーシッターにつきましては、個人が一人で事業主としてベビーシッターを行っている場合でも性犯罪前科の有無の確認等の措置を及ぼすことが可能となるよう、認可外保育事業所の取扱いを一部見直すこととしてございます。現在の事業形態が個人が一人で行っている事業であるからといって、一律、本法律案の対象としないということではなくて、現在個人が一人で行っている事業について、新たに事業化することにより対象とすることができるかといった点も含めて、施行までに検討を進めてまいりたいと考えております。
また、総合的対策についての貢献についてですけれども、子供たちを性犯罪から守るためには、本法案の対象事業に該当しないものも含めて、関係省庁が連携して総合的な対策を進めていくことが必要であります。
このため、繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げたような子供、若者の性被害防止に向けた四つの柱から成る取組、加害を防止する取組、相談や被害申告をしやすくする取組、被害者支援の取組、また、性嗜好障害などの治療や加害者更生に関する取組、こういった関係省庁で取り組むべき総合的な対策を取りまとめました。
これに基づきまして、業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための先進事例の把握や指針のひな形作成、ワンストップ支援センター等における被害者支援の強化など、各種取組の推進、充実を図ってまいります。
引き続き、本法案とともにこういった総合的な取組も一緒に推進していくことで、子供の性被害を防止をしてまいりたいと考えております。
○城井委員 では、大臣、先ほど私が紹介いたしました立法事実につながる二つの事件は、今大臣がおっしゃった対策で防げるという認識でいいですか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
防いでいけると考えております。
○城井委員 続いて、そのほかの事例について伺いたいと思います。
テーマパークや子供の遊び場、子供対象のイベントのスタッフにはどのように対応しますか。三要件に照らしますと、子供との関わりは継続的ではないですが、そして、支配性も閉鎖性も一時的ではあります。でも、多くの子供たちに直接触れる仕事です。どのように対応しますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
一般的に、一度だけ遊びに行くことが想定されるような施設は対象とはならないと考えております。
他方、児童等に技芸又は知識の教授を行っている場合であって一定の要件に該当すれば、対象になり得ます。
継続性につきましては、六か月以上民間教育事業が継続をされ、児童が複数回参加することが可能であり、参加することで何らかの技芸又は知識を習得することができる事業であれば、対象になり得ると考えております。
本法案だけで全ての性被害を防止できるわけではありませんので、繰り返しになりますけれども、総合的対策、これを推進して、性被害を防止をしてまいります。
○城井委員 違う子供たちに連続で性犯罪というケース、あるんじゃないかと思いますので、この点は対応すべきだということを申し上げたいと思います。
もう一点、確認をします。
子供食堂のスタッフにはどのように対応しますか。三要件に照らしますと、子供との関わりは継続的なケースがあり得ます。支配性も閉鎖性も一時的ではありますが、多くの子供たちと直接触れる仕事です。どのように対応しますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
いわゆる子供食堂につきましては、児童等に知識又は技芸の教授を全く行っておらず、居場所や食事の提供のみを行っているような場合は、その事業者は対象とすることは難しいと考えますが、居場所や食事を提供しつつ、学習サポートを行ったり、物づくり、スポーツなど体験学習を提供している場合など、児童等に知識又は技芸の教授を行っており、一定の要件を満たす場合は、民間教育事業者として認定の対象になり得ると考えております。
対象とならない運営形態につきましても、総合的対策において、教育、保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための指針のひな形や事例集、こういったことを今年度作成することを盛り込んでおりますので、こうしたものを活用いただきながら、子供食堂さんのようなところも、是非、児童への性暴力防止を実施いただけるように取り組んでまいりたいと考えております。
○城井委員 本日の末冨参考人からも、事業ごとの中間団体を通じて対応する方法の提起がありました。大臣、これを検討してはいかがでしょうか。(発言する者あり)
止めてください。
○谷委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○谷委員長 速記を起こしてください。
加藤国務大臣。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
中間団体もいろいろあろうかとは思いますが、仮に、児童等に知識又は技芸の教授を行っていて、一定の要件を満たす場合は、民間教育事業として認定の対象となり得ると考えておりますが、そうでなかったら難しい、対象とならない場合もあろうかと思います。
また、そういった場合においても、繰り返しになりますけれども、総合的対策においてしっかりと対策をすることによって、児童への性暴力防止を、性暴力が行われないような、防止に対して取り組んでまいりたいと考えております。
○城井委員 是非、参考人質疑の議事録も見ていただきながら検討いただければと思います。
通告を一問飛ばしまして、対象となる犯罪について確認をさせてください。
性的な行為による器物損壊、性的な暴行、公然わいせつ、わいせつ目的略取及び誘拐、これはそれぞれ対象に入るでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案の対象犯罪は、その前科を有する者の事実上の就業制限の根拠となるものであります。そのため、その範囲につきましては、児童等の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与える性犯罪として、人の性的自由を侵害する性犯罪や性暴力の罪等に限定することとしてございます。
これに対しまして、御指摘の犯罪につきましては、犯罪の類型としては、本法案が列挙している不同意性交罪ですとか不同意わいせつ罪、児童ポルノ禁止法違反や痴漢、盗撮といった犯罪と同じ性質の犯罪であるとまでは言い難いと考えられますため、本法案の対象とはしないこととしております。
これらの罪に当たるものにも、確かに性的な動機に基づいて行われる場合があり得ますが、例えば、性的目的の下に行われたものだけを対象にするといったように、特定の犯罪の一部だけを抜き出して対象にしようといたしますと、対象となる行為がなされたか否かを誰がどのように判断するのか、また、その判断についての不服申立ての手続をどのようにするのかといった点が別途問題となりますため、特定の犯罪の一部だけを対象に含めることも難しいと考えているところでございます。
○城井委員 子供に重大な影響を与える性暴力と解される行為は当然防止すべきだというふうに考えます。今の御説明ですと、日本版DBSの対象には入らないということであります。ただ、総合対策の手が届かない犯罪も含まれるというふうに思います。どのように対応されますか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案におきましては、前科があることを理由として防止措置を講ずべきこととなる場合以外でも、事業者に対しまして、児童との面談等の日頃からの措置を行った上で、そのような児童との面談等を通じまして、御指摘のような行為等が判明をし、児童対象性暴力が行われるおそれがあると認められるときは、それを防止するために必要な措置を講ずることとなり、これにより適切な対応がなされていくこととなります。
児童性暴力等に該当することがあり得、そのおそれがある場合には、これらの措置の対象となり、適切な対応がなされるものと考えております。
○城井委員 先ほど挙げた性犯罪はおそれありの場合の措置の対象になり得る、こういう御答弁だと思いますが、それで間違いないですね。
○加藤国務大臣 そのとおりでございます。
○城井委員 確認させていただきました。
続きまして、性犯罪歴等の照会期間について伺います。
政府案では、犯歴について、禁錮刑以上なら執行終了後十年、罰金刑以下なら五年の間に再び刑を科されなければ刑の言渡しが効力を失う、刑の消滅という刑法の規定を上回って照会できるようにされます。ただ、この根拠が曖昧です。
この根拠について五月九日の本会議にて大臣に質問いたしましたが、御答弁に含まれませんでした。
五月十四日の本委員会での高橋委員への法務省答弁では、合理性があるとのことでした。ただ、どう合理的なのか言及がなく、理屈が理解できませんでした。
刑の消滅という刑法の規定を上回って照会できる根拠、そして、どのように合理的なのか、大臣から改めて御答弁いただきたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案における確認の結果につきましては、事業者が子供の安全を確保するための措置を講ずる際の考慮要素として位置づけており、性犯罪により刑に処せられたことを欠格事由としてそれを事業者が確認するための制度ではないため、刑法三十四条の二が直接適用されることにはなりません。
一方、犯歴確認の対象期間につきましては、この仕組みが事実上の就業制限であることから、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理や、前科を有する者の更生を促すといった刑法の規定の趣旨等も踏まえ、子供の安全を確保するという目的に照らして許容される範囲とすべきと考えております。
このため、その期間としましては、再犯に至った者の実証データに照らし、再犯の蓋然性が高い期間を設定することとしており、拘禁刑につきましては刑の執行終了等から二十年が経過するまで、罰金につきましては刑の執行終了等から十年が経過するまでの期間を確認の対象とすることとしております。
本法案により一定の性犯罪前科の有無を事業者に確認させる理由は、性犯罪前科を有する者について同種の性犯罪の再犯に及ぶ可能性がそのような前科を有しない者に比べて高いという再犯リスクに基づくものであると考えておりますので、その確認の対象期間につきましても、こういった再犯リスクに着目して設定するという考え方、これには合理性があるものと考えております。
○城井委員 続きまして、児童対象性暴力のおそれありの場合の措置について伺います。
通告を一問飛ばしまして、国立国会図書館の調査によりますと、英国では、通報に基づくリスト登録もあるということでしたが、数か月かけて調査、確認した上で行うとのことでした。調査の客観性の確保など、同様に慎重な対応が必要ではないか。特に、学校がわいせつ教員だった身内をかばって被害の申告が長年放置された場合や、小規模の対象事業者のように内部調査に限界がある場合も踏まえつつ、第三者による実施も含めた対応が不可欠だと考えます。どのような形で調査を行うことを求めますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
本法律案では、教員等による児童対象性暴力等が行われた疑いがあるときは、適切に対処するため、事実の有無及び内容について調査を行うことを義務づけています。
対象事業者が行う調査の具体的な方法は、事実の有無及び内容を把握するために必要な方法であることが求められるわけですが、事業の内容、実施形態、児童等の年齢、対象者の従事状況等は多種多様でありますので、調査として行うことも様々となることが考えられます。
そのため、本法律案において調査の方法について一律に定めて義務づけるということはしておりませんが、調査をより実効的なものとするため、他分野も含めた先行的な取組も把握しながら、よりよい調査方法について検討してまいりたいと考えております。
○城井委員 是非、調査の第三者性、客観性の確保をお願いしたいと思います。
もう一点、確認します。
このおそれありの場合の措置ですが、解雇が認められる場合もありますか。具体的にはどのような場合が該当するか、お答えいただけますか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
本法律案において、事業者は、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときは、施行時の現職者も含め、本来の業務に従事させないことその他の児童対象性暴力等を防止するために必要な措置を講ずることが義務づけられますが、本法律案は、労働契約法等の労働法制の整理を変更するものではないため、雇用管理上の措置につきましては労働法制に従うものと認識をしてございます。
その上で、施行時点の現職者であって、本法律案による犯罪事実確認によって性犯罪歴が明らかとなった者への対応、これにつきましては、昨年取りまとめた有識者会議報告書、こちらにおきましても、ちょっと引用が長くなりますが、対象となる性犯罪履歴を有することが明らかとなった者について、性犯罪歴があるという一事をもって配置転換等を考慮することなく直ちに解雇することについて、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められるとは考えにくいとされておりまして、このような解雇は一般的には解雇権の濫用に当たるとして無効になるものと認識をしてございます。
法の施行に当たりましては、事業者が講ずる措置について、こうした留意点も含めてガイドライン等で分かりやすく示していくことを想定をしており、労働法制を所管する厚生労働省とも相談をしつつ、労働法制の専門家や関係団体の御協力も得て検討してまいりたいと考えております。
○城井委員 最後に、急な欠員等の対応について伺います。
本法案では、対象事業者が、急な欠員等のやむを得ない事情として内閣府令で定めるものにより、業務運営に著しい支障を生ずる場合において、特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じた上で、犯罪事実確認より前に緊急に児童等と接する業務に従事させる特例を設けています。この場合とはどんな場合でしょうか。また、認められる際に必要な措置は具体的に何でしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
法第四条第二項におきまして、教員等に急な欠員を生じた場合などのやむを得ない事情により、業務を行わせるまでに犯罪事実確認を行ういとまがない場合で、直ちにその者に当該業務を行わせなければ学校等又は児童福祉事業の運営に著しい支障が生ずるときは、その者の犯罪事実確認については、その者を当該業務に従事させた日から六月以内で政令で定める期間内に行うことができるとしてございます。
このやむを得ない場合とは、例えば、病休などで教員等に急な欠員が出てしまい、急遽免許保有者等に代替者として入ってもらう場合ですとか、産休代替配置の予定が急遽早まった場合などを想定をしておりまして、本法案の各対象業種の実情も踏まえながら、今後、内閣府令で定めることとしてございます。
また、必要な防止措置につきましてですが、やむを得ない欠員が生じた場合であり、時間的な余裕がない場合であったとしても、犯罪事実確認の結果が分かっていない者を何らの措置も講ずることのないままに対象業務に従事させることは望ましくないと考えられます。
このため、犯罪事実確認を行うまでの間は一定の措置を講ずる必要があると考えておりまして、同じく法第四条第二項のただし書において、ただし、学校設置者等は、犯罪事実確認を行うまでの間は、その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならないと規定をしているところでございます。
このときに講じる措置は、例えば当該教員等と児童等を極力一対一の状況にさせないように留意しながら従事をさせるなどの対応を求めていく方向で考えております。
○城井委員 もう時間ですので、まとめます。
急な欠員対応のためとはいえ、そもそも、日本版DBSで調べもせずに特定性犯罪事実該当者とみなされる。これは、言い換えますと、調べもせずに性犯罪歴ありとのレッテルを貼られる、そういうふうに受け止められる可能性があると。そういう職場で働く人はいるのだろうか。全国学習塾協会に聞きましたら、この条件で雇うのは難しいとのことでした。この事実は重たいと思います。十分に受け止めていただいての取組をお願いいたしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、藤岡隆雄君。
○藤岡委員 イチゴ王国の栃木県から参りました、立憲民主党・無所属の藤岡隆雄でございます。
本日も、まず地元の皆様に感謝を申し上げ、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。
早速質問に入らせていただきますが、性犯罪歴の確認対象期間の限定の関係で、私もやはりこれは延ばした方がいいというふうに思っております。
藤原局長にお聞きしたいと思うんですけれども、まず、この対象期間を限定されたことは、刑法三十四条の二の規定とは、ある意味、直接な関係は有さないという理解でよろしいですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法律案における確認の結果につきましては、事業者が子供の安全を確保するための措置を講ずる際の考慮要素として位置づけております。性犯罪により刑に処せられたことを欠格事由としそれを事業者が確認するための制度ではございませんので、刑法三十四条の二を直接適用するということはございません。
一方、犯歴確認の対象期間でございますけれども、この仕組みが事実上の就業制限になること、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理ですとか、前科を有する者の更生を促すといった刑法の規定の趣旨も踏まえて、子供の安全を確保するという目的に照らして許容される範囲とすべきというふうな要請もございます。
このようなことから、今回、再犯に至った者の実証データを使いまして、再犯の蓋然性が高い期間を設定をするということにいたし、刑法三十四条の二の期間を超える二十年若しくは十年、そういった期間の設定をしたところでございます。
○藤岡委員 改めて、別に欠格事由にするわけではないと。本当に、子供たちを守るためにどうするかということだと思うんですけれども。
加藤大臣にお伺いしたいと思うんですが、あくまで、本法案で示された性犯罪歴の確認の対象期間、これは、これを延ばしていくことについて、いわゆる職業選択の自由の保障に抵触して、今後全くできないということではないという理解でよろしいですか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
若干局長からの答弁と重なるところもございますが、犯歴確認の対象期間につきましては、この仕組みが事実上の就業制限であることから、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理や、前科を有する者の更生を促すといった刑法規定の趣旨等も踏まえて、子供の安全を確保するという目的に照らして許容される範囲とすべきと考えております。
このため、今般の法案においては、再犯に至った者の実証データに照らし、再犯の蓋然性が高い期間を設定することとしております。
犯歴確認の対象期間を延ばすということが今後一切不可能であるというものではありませんが、子供の安全を確保するための必要性と合理性が認められる範囲としていく必要があると考えております。
○藤岡委員 今、不可能でないというふうにおっしゃっていただきました。ありがとうございます。
その意味で、この必要性、合理性のところだと思うんですね。私、今後早急にやはり詰めてほしいなというふうに思っております。
その意味で、今回、期間を設定するとき等に、ある意味、子供に対する性犯罪の再犯性だとか、あるいはちょっと言葉が、刑法の累犯性とはちょっと違うと思いますけれども、例えば、一人の犯罪をした方が何人もに、よく、捜索をしたら何人も写真が出てきたとか、お一人の方が何人もに犯罪をしてしまうということもあると思うんですね。
こういうところの、子供に対する性犯罪の再犯性だとか累犯性とか、こういうデータというのをやはりもっと私は分析した方がいいと思うんですけれども、こうしたデータを直近において十分把握、分析しているでしょうか。藤原局長にお伺いしたいと思います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
今般、本法律案の対象期間を検討するに当たりましては、こども家庭庁におきまして、法務省の協力を得て、過去五年度分、直近五年度分の性犯罪の再犯に至った者の実証データを分析をさせてもらいまして、その上で、再犯に至るまでの期間の分布を確認をした上で期間の設定をいたしました。この分布を基に、先ほど御回答申し上げているとおりですけれども、集団としての再犯の蓋然性が高い期間を本法律案の対象期間として設定をするということにしております。
こういった点も含めまして、引き続き、法務省等の協力を得ながら、データの把握、分析に努めてまいりたいというふうに考えております。
また、累犯という言葉もございましたけれども、やはり、現在、加害者の方の治療などの研究、まだ道半ばというふうな御指摘も、午前中の参考人の御発表の中にもあったかと思います。四月の二十五日の総合的な対策の中には、四番目の柱をつけ加えまして、「治療・更生に関する取組」として治療に対する調査研究というものも盛り込んでおりまして、これは今、厚生労働省の方で調査をいただいているというふうに承知をしております。
○藤岡委員 このところをもうちょっと詰めて、今後、調査研究を進めていただきたいと思うんですけれども。
大臣にお伺いしたいと思うんです。法案の附則の六条の検討規定があると思うんですけれども、ここは、今後、対象期間についても当然検討に含まれるという理解でよろしいですよね。大臣にお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案の附則第六条の検討規定では、政府は、この法律案の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案しつつ、学校設置者等、教員等、民間教育保育等事業者、教育保育等従事者及び特定性犯罪事実該当者の範囲を含め、児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると定めてございまして、ここにおける特定性犯罪事実該当者は所定の期間内の特定性犯罪前科を有する者でありますので、その言葉の範囲の中には期間も含まれていると考えております。
○藤岡委員 検討規定に含まれるということで、これは早急に、施行は二年半以内、また更に三年後で、五年半もたっちゃうと、本当にすごく時間がかかってしまうので、そういうことを待たずに、今後、速やかに、早急に検討していただきたいと思うんですけれども、その中で、特に必要性や合理性、あるいは許容性を高めていくということを、やはりそのために詰めていっていただきたいなと思うんですね。
先日、山田賢司委員、私、朝の参考人質疑のときにも申し上げましたけれども、いわゆる再犯の期間というところで、九四%、九二%、あるいは執行猶予ですと七六%。残りのところが、じゃ、例えば六%、八%、また再犯に至るというところのデータが、七六だと残りは二四%ですけれども、このところを、多いか少ないかというところも当然あるのかもしれませんけれども、その六%、八%でも、例えばそこで再犯をされる方が、何人も、またお子さんにも犯罪を犯すとかとなるということも十分、よくよく本当に注意しておかなくちゃいけないというふうに私はやはり思うんですね。
だからこそ、ある意味、ちょっと累犯という言葉が正しいかどうかは別として、一人の方が何人にも及ぼしているんじゃないかとかそういうことも含めて、よくきちっと、子供に対する性犯罪の累犯性、再犯性などの調査研究、分析をやはり更に進めていく必要があると思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
本法律案の仕組みは、確認の対象となる者の特性といった個別の具体的な事情によることなく、本法律案が定める二十年や十年といった一定の年数内の性犯罪歴がある者全てを一律に確認の対象にするものでございます。
このため、本法案の犯罪確認の対象期間を決めるに当たりましても、個別の具体的なリスクではなく、あくまで集団としての再犯の蓋然性の高さを捉えるべきと考えております。
したがいまして、被害者の人数や再犯回数といった個別の具体的な事案に応じた調査をすることは、現時点では考えておりません。
○藤岡委員 それですと、ちょっとなかなかこの期間の問題が進まないなというふうな懸念を有するんですね。やはり、ある意味、集団としてという、その集団の、どういう集団の言い方かはちょっとよく分からなかったんですけれども、集団というときに、例えば非常に多くの方が余罪をたくさんするというふうな特性があるとか、そういうところも含めて、ある意味、集団と言えるのであれば、きちんとそういうところも調査研究、分析、これを私はする必要があると思うんですよね。
これはもうちょっとしっかり詰めて、子供たちを守るという意味で、やはり六%、八%のところで何人ものお子さんが被害に遭ったら、大臣、これは大変ですよね。私はそれを絶対守るべきだと思うので、大臣、是非これはきちっと調査研究をやりましょうよ。集団のところという、特性でもいいし、その集団の考え方はちょっとあるかもしれませんけれども、これはやった方がいいですよ、ちゃんと本当に。
別に今、答弁書云々じゃなくて、これはやらないと、六パー、八パー、二四パー、そこから何人もの被害というところがある程度出てくる可能性は出てきますので、これはちゃんと調査しましょうよ、だから。少なくとも調査、分析して、それで期間をやはり決めていきましょうよ、大臣。どうですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御回答申し上げたところと重なりますけれども、今回の期間の設定につきましては、過去五年分の性犯罪の再犯に至った者の実証データに照らして期間設定を行いました。この実証データに基づく分布につきましては、今後も、将来的にも、更に多くの年度分の実証データを分析をすることとしたいと思っておりまして、その過程で、再犯に至るまでの期間の傾向に変化があるかどうか、そういったことを把握をすることができるのではないかというふうに考えております。
○藤岡委員 ちょっと済みません、今、まだ足りないと思うんですね。期間の経過だけじゃなくて、その特性ですよ、その犯罪の中身、特性も含めてちゃんと分析しましょうと。多分、これはそんな変なことを言っているわけじゃなくて、犯罪の中身、どういう犯罪の特性があったか、そういうところも含めて、これは、だって調査しないと子供を守れません。大臣、これは別に何かむちゃな追及じゃありません。これは、調査して、やりませんか、本当に。
私も、まだ十三歳未満の子供がおりますけれども、やはり子供たちを守るために、その犯罪の特性をもっと調査、分析して、本当にこの期間で足りるのかと。これでもし六%、八%、二四%のところで被害が起きたら、それは私、もう本当に許し難い話ですから、これは是非、大臣、やりませんか。これは大臣の答弁を求めたいと思います。
○加藤国務大臣 犯歴確認の対象期間を延ばすということが今後一切不可能であるというものではないと先ほど申し上げたとおりでございます。
また、子供の安全の確保をするための必要性と合理性が認められる範囲ということにつきましては、これは、引き続き、必要はもちろんあると考えておりまして、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理や、また一方で、当然ながら子供の安全、安心をしっかり守っていくということのバランスを踏まえながら、この対象期間について、必要性、合理性が認められる範囲の中でしっかりと検討していきたいと考えております。
○藤岡委員 ちょっと、あえてこれはこだわらせていただきたいと思う、やはり子供の安全に関わるので。
調査、やはりやるべきじゃないですか。だって、分かっていなくて、期間が決まっていて、それが妥当かどうかだって分からないですよね。その犯罪の特性もよく見なくちゃいけなくて、本当に六%、八%、二四%の方がある意味置き去りになって、ところが犯罪としては何人もになっているんだったら、そういう特性を有する者であれば、これはとんでもないことですよね。
だから、大臣、これは、調査、現時点で考えていないではなくて、検討しましょうよ、少なくとも。これは調査することを検討しましょう。是非、これは大臣、よろしくお願いします。
これは大臣でお願いします。
○谷委員長 まず藤原成育局長、その後に、大臣、お願いします。
○藤原政府参考人 まずお答えさせていただければと思います。
今回の期間設定につきましては、度々同じ回答で恐縮ですが、集団としての蓋然性というものを把握をする必要があるということで、有識者会議の刑法の専門家の先生から、刑法三十四条の二を超えるためには、その必要性を実証データを基に設定をすべきであるというふうな御助言をいただきました。
その手法を踏まえて今回決定をしたものでございますので、こういった手法を超えて個別の犯罪者の状況などを調査をすることが、一体、その蓋然性を把握するためにどのように実証データに反映することができるのかといったことについて、そういうことについて今の時点では検討するという状況にはないと思って、先ほどのような答弁を申し上げました。
ですので、実証データにおける個別のリスクというものをどのように勘案することができるのか、そういったことも含めてということで限定をさせていただけるのであれば、検討するということは可能ではないかと思いますし、大臣ともよくよく御相談したいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
実証データとしてどのようなものが意味があるかということも含めて検討していきたいと考えております。
○藤岡委員 本当に、これは是非検討してくださいね。
要は、今、私も、昨日も法務省さんにも聞いて、こども家庭庁さんともいろいろ話したときに、結局、この辺の詳しいところを、まだ調査されていないというか、把握されていないわけですよ。その中で、実証データという、この十年、二十年の、いわゆる、子供に限らず、再犯性のところの、何年以内にというところを、ある意味それだけのように見えますけれども、それで必要性、合理性等を見出していると思うんですけれども、本当に、必要性、どうなんだというところがまだ、私、完全に詰め切れていないと思うんですよ。
別に私そんな、すごく今日、責めるつもりというか、もっと前向きに、本当に速やかに進化させていきましょうよという気持ちでいるものですから、ある意味、ちょっとこれだと本当に子供を守れるのかどうか、私、すごく心配です。だから、是非、本当に、大臣、速やかに検討して進めていっていただければと思いますので、よろしくお願いします。
続きまして、法案の第二条第五項の民間教育事業の定義に関しまして、いわゆる技芸又は知識を習得するための標準的な修業期間が六月以上であることという要件、これは何で六月に絞っているんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
民間教育事業の中には、学習塾のように毎週定期的に児童に指導を行うものもあれば、夏季、冬季の一定期間に体験学習を提供するようなものもあり得るなど、その事業形態は様々であるというふうに承知をしております。
御指摘の標準期間の要件ですけれども、そういった中で、児童等との継続的な関わりといった学校や児童福祉施設等と類似の環境にあること、この法律に基づく措置を講ずるに当たり最低限求められる組織体制を有することを確保のための要件の一つとして定めているものでございます。
標準的な修業期間を検討するに当たっては、学校教育法で定められている各種学校の修業期間が原則一年以上であること、認可外保育施設の届出対象施設が半年以上設置するものであることとされていることなど、学校や児童福祉施設における例も参照しながら、本法案では六か月というふうに設定をいたしました。
○藤岡委員 局長、また続けてお聞きしたいんですけれども、子供たちにとっては、いわゆる夏限りの参加で、アウトドア体験の、例えば宿泊を含むいわゆるサマースクールとかサマーキャンプとか、夏だけ参加ということがありますけれども、こういう事業というのは含まれるんですかね。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
民間教育事業の認定につきまして、例えば夏休み以外には一切児童に技芸又は知識を教授しない、そういった場合には継続性の要件を満たさないため対象外となるというふうに考えます。
ただ、一方で、児童に自然体験学習等の提供を行うなど、児童等に技芸又は知識を教授する、そういった事業者の方々は、夏休みだけではなく通年で実施をされているところが多いということも認識をしておりまして、当該事業を六か月以上継続している場合には対象になり得ると考えます。
具体的には、半年以上民間教育事業を実施をし、例えば、児童が複数回参加をできるですとか、参加をすることで何らかの技芸、知識を習得することができる、そういった事業であれば対象となるというふうに考えております。
○藤岡委員 継続的にやっていればということであると思うんですけれども、いわゆる一日だけの交流とか、宿泊を伴うサマーキャンプとか、短期間であることが、ある意味、隠蔽に都合がよいと考えて性犯罪が発生する事件というのも発生しているとも聞くわけなんですよね。今後、この六月以上の要件、やはり撤廃、短縮した方がよいんじゃないでしょうかね。
大臣、そういう方向でやはり検討をした方がいいと思うんですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案におきましては、先ほど局長が申し上げたとおり、まずは学校、児童福祉施設等と類似の環境であり、かつ、この法律に基づく措置を講ずるに当たり最低限求められる組織体制を表す要件として、標準的な修業期間が六月以上であることを求めています。
なお、一日だけでも実施するものは対象とすべきという委員の御指摘がございましたが、例えばホテルが行っている子供向けのプログラムなど、年に一回だけやるような、そういったものと同様の性質を有する様々な事業がありまして、どのような考え方で対象事業を整理することができるかにつきましては慎重に判断すべきものと考えてございます。
当該要件を満たすことができないため認定を受けることができない事業者につきましては、新たに取りまとめた総合対策においてしっかりと網羅していけるように、総合的対策も進めてまいります。
○藤岡委員 少し残念な御答弁ではあるんですけれども、やはり、もう少し広く、半年とかだけじゃなくて、短期間ということでそっちに流れて犯罪を犯してしまうということがあると思うので、よく今後検討していただきたいなということは強く申し上げておきたいなということを思います。
続いて、いわゆる、政令で定める人数以上という要件、認定対象、認定を受けることができる対象のところの要件ですけれども、何人以上になる見込みでしょうか。少なくともこれは数人という理解でよいんでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
御指摘の、政令で定める人数以上であることとは、民間教育事業の要件の一つでございまして、現状、何ら業法のない学習塾等民間事業者を対象とするに当たりまして、学校、児童福祉施設等と類似の環境であり、かつ、この法律に基づく措置を講ずるに当たり最低限求められる組織体制を表す要件として、一定の人数以上であることを求めているものでございます。
学校教育関連法規におきましては必要最低限の教員等の数を置くことを求めておりますけれども、こうした規定の内容を踏まえつつ、児童対象性暴力等を防止し、児童対象性暴力等が行われた場合に児童等を保護するための措置を講ずるために必要な体制として、どのぐらいの規模の人数が必要なのか、こういったことも今後検討し、政令で定めてまいります。
○藤岡委員 本当は私は個人も対象になるように今後検討していただきたいと思いますけれども、それは本当に、極めて少ない人数を設定していただいた方がいいということは強く申し上げておきたいなということを思います。
続いて、認定を受けることが可能な民間教育保育等事業者、このいわゆる審査の体制ということなんですけれども、藤原局長にまずお伺いしますけれども、これは全国で最大数どのぐらいを見込んでいるでしょうか。
そして、これは、私は法案を見ていたら、何か地方支分局とか、何か委任とか、地方支分局、今ないですものね。どういう審査体制でやるのかなと思っていたら、特に委任規定もないので、これは、どれぐらいを見込み、それを全てこども家庭庁本庁で担うという予定なんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
認定につきまして、民間教育保育等事業者の数あるいは規模についてお尋ねがございました。
現在ある統計調査では、事業所数のみで集計されているものが多く、一事業者が複数の施設を有しているということも一定程度ありますので、推計値としての正確なものというものは申し上げられないのですけれども、主な事業の事業所数の統計を見ますと、例えば、学習塾でいいますと約五万三千事業所、放課後児童クラブ約二万五千か所、放課後子供教室一万七千教室ですとか、認可外の保育施設約二万施設、こういった方々が対象になり得るというふうに考えております。今申し上げた数を単純に足し合わせれば十一万五千か所ぐらいという箇所数になります。
体制の方なんですけれども、認定の審査につきましては、公権力の行使に当たるような、認定の判断といった事務についてはやはりこども家庭庁の職員が実施することになると考えておりますけれども、ただ、認定申請のチェックですとか、マニュアルに基づいた何らかの業務委託について、民間団体への委託ということを活用するということは是非検討していきたいというふうに考えております。
また、対象となる事業者の方々からすると、認定の申請をしたり、犯歴照会の犯罪事実確認書の交付申請をしたり、あるいは定期の報告をしたりというふうな業務があるわけですから、そういった事業者の方々の業務についても、オンラインで申請、提出できるような、そういったシステムを構築するなど、効率的、適切な執行体制になるように、今後詳細を検討していきたいと考えております。
○藤岡委員 十一万五千ですから相当な体制ですよね。普通であれば、北海道から沖縄まで、分からないことがあったら、当然いろいろな、各地方支分局とかということもあると思うんですけれども、それはなかなか難しくて。また、機微情報の話もあったので。
加藤大臣、これはやはり、認定審査を本当に円滑に進めるために、場合によっては法改正もいとわずに体制整備をきちっと行う必要があると思うんですけれども、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
認定審査等の事務につきましては、先ほど局長が申し上げたとおり、適切なシステム構築ですとか業務委託の検討をしっかり行いながら、必要な業務を効率的かつ適切に処理できる体制、これを整備してまいります。
その中で、こども家庭庁におきましても相応の体制が必要になると考えておりまして、必要な体制確保に向けて、こども家庭庁として精いっぱい尽力をしてまいりたいと考えております。
○藤岡委員 本当に体制整備は急務だと思います。機微情報を扱うということも含めて、慎重によく検討していただきたいと思います。
最後に、第二条四項に規定されるいわゆる対象従事者や六項の教育保育等従事者について、内閣府令やガイドラインにおいてこれもいろいろなことを決めていくと思うんですけれども、形式的な肩書ではなくて、実態的に子供に関わることができることがきちんと対象になるように明確化をしていただきたいと思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案の対象事業者における対象業務につきましては、子供たちに対して支配的、優越的関係に立ついわゆる支配性、それから継続性、閉鎖性、こういったものがあるものを対象としたいと考えておりまして、その判断に当たりましては、子供から見て当該業務が支配的、優越的であるかという観点も踏まえて、関係省庁と更に詳細を検討し、施行までにお示しすることを予定しております。
済みません、先ほど、ここも大事だと思いますが、支配性については、子供に対して支配的、優越的関係に立つということ、また、継続性については、子供と継続的に直接密接な人間関係を持つ者、また、閉鎖性につきましては、親等の監視が届かない状況の下で預かり、養護等をする者というふうに考えております。
また、先ほど、そういった対象業務についての検討に当たりましては、議員御指摘のように、教育、保育業務の実務の実態を踏まえつつ、そういった三要件を満たす業務について、下位法令を適切に整備し、対象とできるよう、関係省庁と協議をしつつ検討をしてまいります。
○藤岡委員 時間が来ましたので終わりますけれども、これは早急にいろいろまだ詰めなくちゃいけないことがあると思うので、子供を守るために是非どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、堀場幸子さん。
○堀場委員 日本維新の会、そして教育無償化を実現する会の堀場幸子です。
私はいつもは内閣委員会と文部科学委員会の方に所属をさせていただいているんですが、子供に関すること、そして学校に関することということで、本日、質疑の時間を頂戴いたしました。
まず、大臣、この法律、私がここに立つのも、もうちょっと前だったと思うんですが、私がこの委員会に所属をしていたときに、その頃からDBS法案は出るんじゃないかということを、当時、小倉大臣でしたが、ずっと言われておりまして、自民党さん、与党さんの方で様々議論があったということも重々承知をしておりまして、今回出されたことは本当に素直に敬意を表したいと思いますし、絶対子供たちの性被害をなくすんだという強い思いを持ってこの質疑に立たせていただきたいなと思っています。そして、この委員会にいらっしゃる皆さんは絶対に一人も性被害を出さないんだという強い思いでこの委員会に臨んでいらっしゃると信じて、やらせていただきたいなと思っております。
今回、この法案でやっていることというのは、初犯の対策ということと性犯罪の前科の有無を確認するというところが、大きく二つに分けられるのかなというふうに考えています。やはり、この法律ができた以上、初犯を抑止することができる、これは非常に重要なんだと思っています。そして、性被害に気づいていない子供たちがいるということも念頭に置いた上で、よりよい法律を作っていくために質疑をさせていただきたいと思います。
まず、初犯対策、危険の早期把握のための児童等との面接、これは第五条の第一項ですね、というのは誰がやることを想定しているのか、お答えください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法律案では、犯歴の確認のみならず、教員等による児童対象性暴力が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置として、学校設置者等の方から能動的に端緒を把握しにいくための措置の実施を講じることを求めております。具体的には定期的な面談がこれに当たると考えておりますが、能動的に端緒を把握する方法であれば必ずしも面談に限定する必要がないことから、面談に代わるものとしては現時点でアンケート調査なども念頭に置いてございます。
その上で、その端緒を把握するために、面談についてどのような方にやっていただくかというふうなお尋ねだったと思いますけれども、その面談については、特定の立場の者で行われることが必要とは考えておりませんで、何らかの義務づけというものを行うということは考えておりません。
○堀場委員 ちょっとよく分からないんですけれども、誰がやるかということは決めないという御答弁でよろしいですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
面談を行っていただく者については、この法律案で限定をされるものではなく、実態を踏まえて、各学校設置者等において、早期に端緒を把握するのに適した者を適切に御判断いただくというふうに考えております。
○堀場委員 我が党も、この法律案が出てきたときに、まず、法律の解説をいただくレクをこども家庭庁さんにしていただきまして、その後、法案の質問をするときにもレクをさせていただいたんです。次も、相談を行いやすくするための措置というのはどういうものですかという質問なんですが、私がその二つの質問をこども家庭庁さんにしたとき、学校現場では誰に当たりますかと聞いたときに、養護教員ですとお答えになられました。その後に、新しい分掌をつくってやることを一定義務づけますというようなお答えをされていたので、私は今回この質問を入れているんですね。
やはり、学校の現場で養護教諭の先生たちがこれをやることが考えられる、想定されているということではないということでいいですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
事前に先生のところに御質問の御照会に伺ったときにもそのような御指摘をいただいたとお聞きしました。
こども家庭庁の職員が御説明したときに申し上げたということは、恐らく、実際にどのような職員が担当するのかということについて、例示ということで、養護教諭が行うということも考えられるのではないかということですとか、学校の中での役割分担を考えていただくというようなことを例示として申し上げたというふうに認識をしておりますけれども、ただいま委員から正式にこのように明確にお聞きいただきましたのではっきりここで改めて御回答を申し上げますと、具体的にこの法律に基づいてどういう職員がやらなければいけないというふうに義務づけるということではなく、各学校の実情に応じて適切な方に対応していただくということをお願いをしたいというふうに考えております。
○堀場委員 やはり、学校現場の中で子供たちが誰に相談しやすいのかなというふうに考えると、学校の先生というのは非常に大きいと思いますし、学校で日常的に接している先生というのは安全性が高いというふうに認識するパターンが多いですから、その方を相談相手にするというのは一定考えられるんだろうなというふうに思っております。
では、被害が疑われるときの対応が調査と保護となっているんですけれども、今回、この法律に通告若しくは通報がないのはなぜですかということを大臣にお尋ねしたいと思います。
既にある、児童虐待法では第六条、児童福祉法第二十五条、教員わいせつ法では第十八条、十九条にて規定はされているんですけれども、なぜこのDBS法案には通報若しくは通告の義務がないのか、教えてください。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案におきましては、学校設置者等の対象事業者に対して、児童対象性暴力等が行われるおそれがあるときは防止措置を講じること等を義務づけるとともに、そのようなおそれを早期に把握するための措置などを義務づけています。
そして、教育、保育等の各現場が子供に対する性暴力の防止のための措置をより適切に取ることができるようにしていくためには、まずは、教育、保育等の現場において、性暴力の発生について、未然に予防のための措置を講じるとともに、その端緒を把握、調査し、対応策を主体的に考え、対応を図ることが重要であるとの考えに基づくものです。
また、性暴力等が発生したと思われる場合の通報義務を法律に規定すべきとの御指摘につきましては、まずは教育、保育等の現場において適切な性暴力の防止や児童の保護が図られる状況をつくり出していくことが重要であるという本法律案の制度目的を踏まえる必要があると考えております。
これに加えまして、学校や、例えば児童養護施設などの行政の措置によって児童が入所する施設につきましては、施設内で性暴力等が発生したと思われる場合の通報義務があると承知をしてございますが、本法律案では、そうした施設のみならず、民間事業者や小規模の事業者まで幅広い事業者を対象としており、対象事業者の業態や規模、関係する子供の状況であるとか事案の様態も様々であることから、子供や保護者の意向にかかわらず一律に通報を義務として求めることまでは、学校等と同列に考えることはできないこと、また、特に小規模の事業所では通報によって容易に被害児童が特定されてしまうような場合もあり得ることなどを踏まえまして、通報を法律上義務づけるということまではしなかったところでございます。
○堀場委員 現場の先生とか現場の方が通報若しくは通告をするというのは、思っている以上に勇気が要ることなんですよね。私は、通告をするという行為に対して、やはり法律に書いていないと、しない又は傍観してしまうというパターンが出てしまうんじゃないかなということを大きく懸念しています。
例えば児童の虐待を発見したとき、発見した人は通告をするという義務がありますよね。それは、別に一般の方であっても、見かけた場合は、恐らく、発見した場合は通告をするということになっていると思うんです。何で、事業者がたくさんあって事業形態が様々だから通告若しくは通報をすることが義務ではないというふうにしているのかということが分からないんですね。
やはり、性被害があったことを通報、通告をするということをしっかりと法律上に書かないと、その事業者さんたちはやりづらいんだと思うんですよね。通告する人、通報する人は、やはり強い思いを持っていないとなかなかできないと思うんですよ。性被害ですから、それを通告する、通報するという行為は非常に勇気が要りますよね。
ちなみに、大臣は通告とか通報とかというのはしたことありますか。通告とかしたことはありますか。
○加藤国務大臣 私自身はしたことはございません。
○堀場委員 済みません。いや、通告するというのは結構勇気が要るんですよね。だから、法律に書いていないと傍観者になってしまう危険性がありますよね。
もう一つは、ジャニーズの問題がありました。前かな、この委員会での質疑でも、本当に、立憲民主党さん、多くの時間を割いてジャニーズ問題を取り上げていらっしゃいましたけれども、今、じゃ、ジャニーズのような民間の会社が、この法律で様々なことが、やらなきゃいけないことが増えたとしても、もしそれが発見されても通告の義務はないということになるんですよね。
だから、それをやはりかけるという必要性を私はすごく強く感じていますし、法律に明記されているということの重要性をすごく感じるんですけれども、大臣は、それは余り、どのようにお感じになられますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
今般のこの法律案でございますけれども、性暴力が発生したと思われる場合の通告義務、そういったものを法律に規定していないということについて、規定すべきではないか、通報を推進するために規定をすべきではないかというお尋ね。
一方で、今般のこの法律案というのは、事前に防止をするということを第一の趣旨として、様々な義務をかけ、担保をするというふうな実効性のある仕組みにしております。
その上で、学校ですとか児童養護施設などについては既に法律上の通告義務、通報義務があるということですが、今般のこの法律案を導入するに当たっては、対象の方々が、学校や児童の入所施設だけではなく、様々、塾ですとか小規模の事業者まで幅広く対象としているので、一律に義務をかけるということはしませんでした。
ただ、さはさりながら、性犯罪が起きているということが合理的に考えられる場合に、例えば警察の機関に通報して判断を仰ぐ、支援を仰ぐというふうなことも有効な手だての一つになりますので、そういった状況になれば是非通報していただき、また一方で、これまでも安易に示談を進めるべきではないというふうなお尋ねもございましたので、そういったことのないようにというふうな、そういった配慮事項については是非周知をしていきたいというふうに考えております。
○堀場委員 通報は配慮事項なんですか。配慮するんじゃなくて、するべきことだと思うんですね。被害に遭っている人たちの立場に立ったら、やはり自分ではもちろん、多分できないですから、周りが通報するんですよね。
じゃ、何で、教員わいせつ法、データベースを基にする類似の法案ですよ、内容は少し違いますけれども。でも、そこにはきっちりと通報義務が書かれているんですよね。事業者が変わったら、対象が変わったら何でその通報義務を書かないのかという質問にはお答えされていないというふうに私自身は認識しています。
児童虐待は、誰が見ても、知ってしまったときには恐らく通報するでしょう。性被害だって知ったら通報するんだよ、これが法律に明記されているということの重要性をやはりもう一度考えていただきたいなと思いまして、ちょっと次の質問に行きたいと思います。
ちょっと文部科学省さんにお尋ねをしたいんですけれども、学校現場で、先ほど、新しい分掌ができたりとか相談体制を構築するとか、それは教育委員会の中にできるかちょっとその辺はまだ分からないにしても、様々な対応が生じることになると思うんですね。これを、今の学校現場の中で、さっきの参考人質疑の中で、安全保護主任という名前だったかと思うんですが、そういったような新たな人材の配置がされないとちょっと難しいんじゃないかなというふうに思っています。
そういう配置を考えているのか、若しくは、配置されないのであれば、これはちょっと今やっている働き方改革に逆行しないですかということについて、文部科学省さん、お願いいたします。
○浅野政府参考人 お答えいたします。
本法律案では、学校設置者等が児童対象性暴力等を把握するための措置として、児童等との面談その他の教員等による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置、児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置を実施することが規定されているところでございます。
この点に関して、既に学校関係については、委員御指摘のように、教員性暴力等防止法におきまして、学校の設置者及び学校が早期発見のための定期的な調査等を行うこと、国及び地方公共団体は相談体制整備等に必要な措置を講ずることが規定されており、さらに、同法に基づく基本的な指針におきましては、それぞれに関して、児童生徒等や教職員等に対する定期的なアンケート調査等の実施、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等による教育相談体制の整備や、電話やSNS等を活用した通報、相談を受け付ける体制の整備などを求めております。
本法律案に基づく具体的な措置は、今後、こども家庭庁で策定するガイドライン等で示されることになりますが、校務分掌は実情に応じて各学校の権限において定められるものであることも踏まえ、既に施行されている教員性暴力等防止法に基づく対応との整合性等も図りつつ、委員御指摘のように、教育現場の負担や混乱がないよう、文部科学省としてもこども家庭庁における検討に協力してまいりたいと思います。
○堀場委員 ありがとうございます。
要するに、教員わいせつ法の十七条の中に既に規定されているようなことを、それがイコールであれば更に何か新しく加える必要はないというふうな認識だということで、分かりました。
今度は、学校の相談業務というのは超勤四項目の中に入っていないんですけれども、相談業務において残業が発生したときにはどのように考えていらっしゃるのか、教えてください。
○浅野政府参考人 いわゆる給特法の規定によって、公立学校の教師を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、いわゆる超勤四項目に従事する場合であって、臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られております。
そのため、通常の相談業務につきましては、原則として、正規の勤務時間の割り振りを適切に行って、正規の勤務時間内に対応していくことが望ましいと考えられますが、一方で、児童生徒性暴力等に関する相談が、内容によっては、超勤四項目の、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合や、その他やむを得ない場合に必要な業務などに該当すると判断される場合もあり得ると考えております。
いずれにせよ、個々の職務命令については、個別具体の内容や状況等に応じて校長が判断することとなりますので、どのような形で相談を受け付けるべきかなど、法制的な観点も踏まえつつ、こども家庭庁の検討に協力し、教育現場が混乱しないよう適切に示してまいりたいと考えております。
○堀場委員 ありがとうございます。
これは学校現場の方は気にされていたので、ちょっとお聞きをさせていただきました。多分、四番目の、非常災害等のやむを得ない場合に該当する可能性はあるので、随時、学校長若しくは教育委員会の判断によるものだというふうに理解をさせていただきました。
大臣、子供の安全を守るために、この法案、すごくいい法案なんですけれども、一歩前に進む、大きな一歩だとは思うんですけれども、予算を考える上でも、やはりもう少したくさんの人が関わるものなんじゃないかな、後半でちょっと組織のことをやらせていただきますが、になるんじゃないかなと思っているんですね。なので、やはり、今のこの法律に規定はしないで、ふわっと、府令でやりますというような部分ということは、書けることは書いていただきたいなと思うんですね。それが現場の混乱を防ぐ一番重要な点になると思います。
私自身は、子供の安全を守るための専門の人材というものは必要だと思っています。例えば、学校の先生が、養護教諭の先生が相談を受けるとか、学級担任の誰かが受けるとか、支援員の人が受けるとか、SCとかSSWとか、いろいろな可能性はあると思いますけれども、相談を受けるというのは、受ける人のメンタルにも非常にダメージがあるんですよね。やはり、知ってしまうということ、そして、守ってあげられなかった罪悪感とか、気づいてあげられなかったとか、何か、すごく先生たちは責任感が強いですし、そういう相談体制の人たちというのは、被害がもし生まれたら、気づけなかったということに対してすごく大きな責任感を感じることだと思うので。
そういう専門のスキルを身につけた方が学校に配置されるべきではないかと思っていますし、こういった子供の安全を守るための専門の人材が必要だと思っているんですけれども、大臣、それについてはいかがですか。
○加藤国務大臣 本法律案では、犯罪歴の確認のみならず、児童対象性暴力等が行われる端緒を早期に把握するために、児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置として、内閣府令で定める措置について講じることを求めております。具体的な措置としましては、例えば、相談窓口の設置等の体制整備や、保護者及び児童等への周知等を想定しております。
加えまして、現在、教育、保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための先進事例について把握する調査を開始しておりまして、この中におきましても、相談体制等について有識者から情報収集を行いたいと考えているところでございますし、また、収集した先進的な取組を周知し、推奨していくことも考えているところでございます。
英国の学校におきましても、性暴力に限らず、虐待、いじめ等も含めた危険から子供を守るための安全保護に特化した職があったりします。英国においては、学校及び公立の保育所では配置が義務になっており、その他子供の関連施設では配置が推奨されているものと認識をしてございます。
各事業者が児童対象性暴力等の防止に取り組んでいく上では、子供の安全保護を支援する専門的な機能の確保、こういったことが必要ということは大変重要な指摘でありまして、既存の取組も踏まえながら、こういった機能が、どのように確保していけるかということを踏まえ、どのような取組を入れるかということ、また、どのような方策があるかについて検討してまいりたいと考えております。
○堀場委員 ありがとうございます。
では、次に、性犯罪前科の有無の確認の作業、この法律の一番注目されている点だと思うんですが、これの部分。
まず、事業者というのは、教員職員等による児童生徒性暴力防止に関する法律又は児童福祉法に基づくデータベースと照合して、DBSのシステムによる、データベースが今あって、DBですよね、保育の方ではDBがありますよ。今度、DBSのシステムができると、一応ダブルのチェックになってしまうんですけれども、これによって負担が増えることが想定されているということで、これは、本会議登壇の、本会議の質問でも、うちの、我が党の浦野議員がやらせていただいたんですが、やはり、利便性の向上のために、工夫をしたいというふうに答弁いただいたんですが、具体的にどのような制度設計の工夫をする予定なのか、教えてください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法案の成立後におきましては、議員から御指摘いただきましたように、本法案による確認と、児童福祉法に基づく確認など、いずれの確認も行う事業者が、認定こども園などでございますけれども、あり得るところでございます。
これらについては、確認の手続あるいはその結果の取扱方法が大きく異なりますので、二つのデータベースの確認を完全に一本化するということはなかなか、直ちに実現することは難しいと考えております。
ただ、一方で、児童福祉法に基づくデータベースも本年四月に運用が開始されたばかりの段階でございますし、本法案の基となりました有識者の会議の報告書におきましても、双方の仕組みを活用することによって、より効果的に子供の性犯罪、性暴力の未然防止に資するというふうにされております。
利便性について、よく現場の御意見を聞きながら、運用上の工夫としてできることがあるかどうか、関係省庁ともよく連携して検討していきたいと考えております。
○堀場委員 やはり、検討していただかないと困るんですよね。これは事業者さんが非常に困っていらっしゃるので、そこの部分を積極的に検討すると是非言っていただきたいなと思っているところが一つ目です。
次、二番目ですね。
個人情報の保管というものが適切に行われているかどうかというものをどうやってチェックするのかなというふうに私自身は思っています。要配慮個人情報で、犯罪の経歴ですし、より厳格な取扱いができて、本人にも非開示という、非常に、情報保管の厳格性をもってこの法律が成立していると思うんですね。だけれども、具体的に、個人情報が適切に保管されているかをどうやってチェックするのかなと思っています。それについてお願いします。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
個人情報の適切な管理、非常に重要な課題と考えております。
本法律案におきまして、犯罪歴を含み得る犯罪事実確認記録等の管理につきましては、事業者に対しまして管理責任者の設置など適正管理措置を義務づけることとしております。
その実効性を確保するために、事業者に対しまして情報の管理状況の定期報告を義務づけるとともに、こども家庭庁が必要に応じて立入検査等の監督を行うこととしており、仮に情報の適正管理義務違反があった場合には、是正命令の対象としております。
さらに、命令を受けた事業者が是正措置を講じるまでの間は犯罪事実確認書の交付を受けられないというふうに規定をしております。この場合、必要な犯罪事実確認ができない者を対象業務に従事させることはできませんので、逆に言えば、事業の実施が困難となるために、そういうことにならないように命令の実効性が担保をされるということが期待されます。
あわせて、情報漏示等につきましては罰則を設けているところでございまして、これらの仕組みによりまして、情報の適正管理を担保をし、情報漏えいの防止を徹底していきたいというふうに考えております。
○堀場委員 ありがとうございます。
だから、結局、報告があって、それをチェックするということだと思うんですけれども、それも結構大変な作業ですよね。
私たち、この法案を見たときに、DBSに関する部署の設立というのは、こども家庭庁の中で、どんな組織になって、どんな大きさになるのかなというのを、さっきの、組織の在り方という御質問もありましたけれども、イギリスだと千二百五十八人体制で運営部門がやられているというふうにこども家庭庁さんの資料に書かれておりますけれども、一体どのぐらいの規模になるのか、ちょっと端的にお答えいただけますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法律案をお認めいただいた暁には、こども家庭庁におきまして、この法の施行後には、民間教育保育事業者の認定、これらに対する監督、犯罪事実確認書の交付、情報管理の監督、こういった業務が新規に我々に課されるということになります。
その体制につきましては、現時点で、精査が必要ではありますけれども、例えば学校設置者については、従事者の数でいえば約二百三十万人ぐらいいらっしゃいます。これを三年間で犯歴の確認を行うということが必要になります。それ以外にも、先ほどの御回答でも申し上げましたが、学習塾ですとか放課後児童クラブですとか認可外の保育施設、こういったところに従事をされている方々については、学習塾であれば四十万人、放課後児童クラブであれば約二十万人、認可外保育施設であれば約十万人、こういう方が認定事業の対象の従事者ということでいらっしゃいます。
また、事業者の数ということで申し上げますと、認定対象になり得る事業者の数、これは非常に、正確な数字が言いにくいんですけれども、数万者ぐらいに上るだろうと思っております。
こういった、かなりの規模の業務になりますので、制度の詳細な設計を踏まえまして、こうした見込みを更に精査をし、適切なシステムの構築、業務委託の検討、こういったことを行いながら、必要な業務を適切に処理できる体制の整備を検討をしてまいります。
○堀場委員 やはり、これだけ大きな法案なんですよね。こんなにたくさんの人で、たくさんの業務が新たに発生する非常に大きな法案。そして、憲法との兼ね合いがあって、非常にデリケートな部分もある法案ですし、個人情報という、それを守っていかなきゃいけないということに関しても非常にハードルが高いものなんですけれども、子供たちのために絶対やらなきゃいけないという思いで今やっていると思うんですね。
ちょっと、立憲さんの方から期間が二十年ということの質問が先ほどもあったかと思うんですね。もうちょっと、この長さというのはどうなのかという質問があって、議論があったと思うんですけれども、やはり、二十年というものというのと教員わいせつ法の四十年というのは結構、倍ぐらい差があって、内容が違うということは重々承知しているんですけれども、子供たちを安全に守るんだとなったときに、これから、この運用が始まって、いろいろなことを検討していかなきゃいけなくなってくると思うんです。こういった期間が本当に適切なのか。例えば、一体化はどういうふうに、利便性の向上はどういうふうに考えるのかとか、この在り方自体はどうなのかとかと、様々検討していくことが、この三年の中に行われると思うんですけれども、やはり、こういったこともしっかりと法律に明記していただいて、私たちは、こういう法律で、こういう思いでやっているということをお伝えさせていただきたいんですね。
なので、最後に、大臣、この期間についてどのようにお考えか、お願いいたします。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
犯歴確認の対象期間は、子供の安全確保を第一としつつ、その仕組みが事実上の就業制限であることから、憲法上の職業選択の自由を制約することとの整理や、前科を有する者の更生を促す刑法の規定の趣旨等を踏まえつつ、子供への性暴力防止の目的に照らして許容される範囲とすべきと考えております。
このため、犯歴確認の対象期間としましては、再犯に至った者の実証データに照らし、再犯の蓋然性が高い期間を設定することとしておりまして、拘禁刑については刑の執行終了後等から二十年が経過するまでの期間を確認の対象とすることとしてございます。
○堀場委員 非常に重要な法案ですので、皆さんと議論を重ねて、よりよいものにしていただければなと思います。
本日はありがとうございました。
○谷委員長 次に、高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
早速質問します。
犯罪事実確認の対象とする性犯罪歴の対象期間について、先ほど来ずっと議論がされているわけですけれども、政府は、子供の安全を確保するため必要性と合理性が認められる範囲と説明をしています。二十年、十年の話です。それは、平たく言うと、拘禁刑を受けた者の場合は、再犯を犯すまでの間、大体二十年間の中、九四%収まっている、そこから導いた二十年ということで、これは逆に言うと、前科のある者はすべからく再犯を犯すリスクがある、そういう考えなんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法案の対象期間につきましては、再犯に至った者の実証データに照らして、再犯の蓋然性が高い期間を犯歴確認の対象期間として設定をしたものでございます。すなわち、過去五年度分の各年度、性犯罪で有罪判決が確定した者のうち、同種の前科があった者について、その直前の前科の判決確定から今回の判決確定までの期間がどの程度であったかといった分布に基づきまして、拘禁刑については刑の執行終了等から二十年、罰金については刑の執行終了等から十年経過するまでの期間を確認の対象としたということでございます。
したがいまして、対象期間内の対象前科を有する者は、集団として類型的に再犯の蓋然性が高いということで、今回の犯歴の確認の対象と判断をするということでございます。ですので、個人としてのリスクを評価をする、そういったことをこの仕組みの中に介在させるものではありません。
○高橋(千)委員 何か九四%が独り歩きして、六%がみんな犯罪を起こす危険性があると。確かに、そういう資料を示されればそうなんですよね。でも、九四%の上の数字は約五・八%の再犯、そこから始まっているわけですから、みんなが再犯を犯すという考えではないと思うんですが、そこをはっきりさせてください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
今回のこの五年分の実証データ、二十年、十年という期間設定をした根拠に使いますこのデータでございますが、全体が一万五千四百九十六人でございます。このうち前科があったという方々の分布を見たと言っている方々は全体の五・八%でございました。逆に言うと、その残りの九割ぐらいが初犯であったということでございます。
ですので、今回のこの法律案につきましては、犯罪事実の確認という仕組み、ある意味再犯に注目をした対策、これに加えまして、やはり九割を占める初犯をしっかり対応するということで、面談とか相談とかそういったことを日頃からしっかりやっていただいた上で、性暴力が行われているおそれがあると認められている場合にも安全措置を講じていただく、そういった初犯対策についても今回この法律案の中に入れているということでございまして、この大きな二つの柱が相まって子供たちを性犯罪から守っていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
もちろん五・八%だからいいんだと言っているわけではありません。今、九割が初犯だということで、その対策も取らなきゃいけない、全体として総合的な対策が求められているんだということで伺いました。
そこで、現職の教職員等についても犯罪事実確認を施行後三年以内、それ以降は五年以内に行うこととされています。犯罪事実確認書に書かれているのは何か、これを簡単にお答えください。その上で、前科はあり、データもあるが、もう何年もたっていて、その後何事もなく働いていて子供たちにも信頼されている、そういう教員がいたとして、それでも、あっ、前科があった、じゃ、これもおそれがあるということで子供から遠ざける、そういう法案なんでしょうか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
まず、犯罪事実確認書の記載内容につきましてでございますが、犯罪事実確認書には、対象事業者が児童対象性暴力等を防止するために必要な措置の実施に必要最小限の情報を記載することとしてございます。
具体的には、申請に係る従事者が特定性犯罪事実該当者であると認められない場合は、その認められないというその旨を、また、特定性犯罪事実該当者であると認められる場合は、特定犯罪事実該当者の区分、拘禁刑なのか罰金刑なのか執行猶予なのかというその区分及びその特定性犯罪の裁判が確定した日などを記載することとしておりますが、対象前科に係る犯罪行為の具体的な内容や当該前科に係る裁判における具体的な量刑、こういったことについては記載しないこととしてございます。
また、子供たちからも信頼をされているような現職者への対応につきましてですが、本法律案において、対象前科ありとされる者、特定性犯罪事実該当者に当たる者の範囲は、過去の性犯罪の再犯状況等のエビデンスに着目し、再犯の蓋然性が高いと判断される者であり、その者をそのまま対象業務に従事させることは望ましくないことから、現職者であって、御指摘のような事情があったとしても、前科ありの旨の回答がなされているときは、基本的には、法律上に例示として規定をしております、その者を教員等としてその本来の業務に従事させないことを講ずることが必要になるものと考えてございます。
○高橋(千)委員 二つ重要な答弁だったと思うんですね。
犯罪事実確認書には、区分と、それから判決が確定した日のみを書くんだと言っているわけですけれども、ただ、採用している者にとっては、その者のいわゆる履歴書など、つまり犯罪とかは別ですよ、履歴書などは持っているわけですよね。そのことと、確定した日と、区分、拘禁刑だったかどうかなどが分かれば、例えば、ニュースですとか判例集ですとか、そういうのを見れば特定できるおそれがある、私はこのことを言いたいと思う。午前中に参考人にも伺いましたし、昨日、法務省にも聞きました。それだけの情報だということを指摘をさせていただきたいと思います。
それから、現場の皆さんが、もう何年も、それは何回も再犯しているというのは別ですよ、何年も頑張っているけれども、そして、子供たちの信頼もかち得て問題がないという人でも、たった一度でも前科があればそういう対応をするんだということは、やはりこれは問題があると思います。
そういうところに、前回質問したように、代わりに入ってくる人も結局同じ、犯罪事実確認ができるまでは特定性犯罪該当者としてみなすわけですから、誰もそれだったら、これだけ人が足りない、教員も足りないと言っているときに、誰もやりたいという人が出てこなくなりますよ。そのことを真剣に考えるべきだと思っています。ここは今日は指摘にします。
それで、再犯を完全に防ぐことはできないかもしれませんが、性犯罪を犯して刑事施設に入所した者や保護観察の者に対して、検討会も行って、性犯罪者処遇プログラムを充実させてきたと思いますが、その基本的理念について伺います。簡潔にお願いします。
○小山政府参考人 お答えいたします。
刑事施設及び保護観察所の性犯罪処遇プログラムにつきましては、効果検証の結果や性犯罪者処遇プログラム検討会の提言などを踏まえまして、その内容を改定し、令和四年度から実施してございます。
改定いたしましたプログラムでは、例えば、夜出歩かないといったような、再犯をしないといったための取組を実行させる指導だけではなく、将来なりたい自分や達成したい目標とその実現に向けた取組を受講者に考えさせ、受講者の前向きな意欲を喚起する内容を加えてございます。
また、このプログラムの受講者自らが再び性犯罪をしないために作成いたします再発防止計画につきまして、刑事施設とそれから保護観察所の様式を共通化するなどいたしまして、刑事施設収容中から出所後までの一貫性のある指導を実施いたしまして、より効果が上がるような改善を図ってございます。
○高橋(千)委員 直近の数字で、性犯罪で入所した者のうちどのくらいの者が更生プログラムを受講しているのか。また、その受講者を選ぶ基準、どのようにやっているのか。簡単にお答えください。
○小山政府参考人 令和四年の新受刑者数は一万四千四百六十人でございまして、そのうち、性犯罪再犯防止指導の受講が必要とされた人数は五百三十四人でございます。
受講が必要とされます者の選定につきましては、入所いたしました全ての受刑者に対しまして、その犯罪事実の内容や常習性の有無、性犯罪につながる問題の大きさなどにつきましてスクリーニングを実施いたしまして、詳細な専門的な調査が必要だと判定された者につきましては、さらに、再犯につながる問題性の大きさや性犯罪の原因となる認知の偏り、自己統制力の不足等を評価して選定をしております。
なお、この性犯罪再犯防止指導の受講の対象とならない者でございましても、必要な者に対しましては、別途認知行動療法に基づくプログラム等を実施いたしまして、問題行動を起こさないように対処する方法を身につけさせるなどしてございます。
○高橋(千)委員 とても大事なことだと思うんですね。今までは直線的に、再犯を起こさないために夜出歩かないとか、そういう指導だったものが、そうでなくて、その人自身の立ち直っていく姿を想像させながらしっかりと寄り添っていくプログラムであるということ。それから、新受刑者のトータルから、まず、いわゆる強制性交とかそういうはっきりしたもの以外の、例えばこの間議論されてきた下着泥棒とかも、窃盗罪になっているから対象にならないみたいにカウントされているけれども、そういうものも含めてちゃんと見ていくという、そういう思想というのはとても大事だと思うんですね。それがしっかりとワークしていけばもっと違う対処方法ができるのではないか、このように思って、更生プログラムを大切にするべきだというふうに思っています。後で大臣にも一つ、そのことを伺いますので。
その前に、一つ飛ばしまして、少年院における性非行防止指導において、一般の成人に対する更生プログラムとは違う特徴があれば伺いたいと思うんです。
特に少年の性非行においては、その非行を行った少年自身が、幼児期の性被害や虐待など、あるいは貧困などにより教育が十分に受けられていないことなど様々な背景がある、こう思うんですよね。この点も含めてお願いいたします。
○小山政府参考人 お答えいたします。
少年院におきましては、まず、少年院に参ります前に、在院者は少年鑑別所というところで鑑別というのを受けてまいります。この結果などを踏まえまして、性非行の原因となります認知の癖や偏りなどが認められる、こういった在院者を対象といたしまして、性非行防止指導を実施しております。
その特徴といたしましては、個々の在院者の特性に柔軟に対応できますように、集団とそれから個別の指導を組み合わせて実施することとしておりますほか、少年院在院中という発達の途上の者であるということを踏まえまして、性非行をしている現在の自分とそれから本来自分がこうありたいといったような姿のギャップに気づかせまして、自分自身の自己理解を深めさせますとともに、性非行に代わる健全な行動を獲得させることなどを通じまして再非行を防止しようとしていることが特徴として挙げられようかと思います。
また、少年院には、知的に制約のあるお子さんなどが少なからずおりまして、その特性に対応いたしましたプログラムを別途実施しておりますほか、このような在院者に対しましては、個別面接などにより個々の理解度を測りながら、必要に応じてフォローアップを行うなど、より丁寧な指導を行っておるところでございます。
○高橋(千)委員 残念ながら、今日とても時間がなくて、時間が来てしまいました。大臣に要望だけをしたいと思います。
今のお話の中で、少年院に入る方の半分は、自身が被害者であった、そういう性被害の経験を持っている、あるいは虐待などの。やはり、子供が子供同士傷つけ合っているという現実もあって、加害者を生まないためにどんなことをするのかということに、やはり多様な選択肢というかアプローチが必要だ、そういう立場からお話をさせていただきました。
ですから、先ほどお話ししたように、更生プログラムの可能性をしっかり伸ばしていく、そうでなければ、やはりどこかに漏れがあって、次から次と犯罪はどこかで起きてしまうということになるので、そういうこともしっかりと踏まえて、もちろん、こども家庭庁だけでなく、法務省だけでなく、連携も取りながら取り組んでいっていただきたいということで、今日はここまでにいたします。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。
本日、最後の質問になります。よろしくお願いします。
今日午前中の参考人質疑の中で、今回の法案に対しての、対象となる犯罪についてお聞きしました。先ほどの委員の質問の中にも多々出ていました。
自治体条例を加えたということ、違反の対象としたことは大変画期的だという一方、私からは、公然わいせつ罪やわいせつ目的略取誘拐罪、また下着などの性的欲求を満たすための窃盗罪、これらも特定性犯罪に指定すべきじゃないかということに対して、参考人の皆さんからは、日本でも実態に即した罪状を加えることも必要じゃないかと。さらに、非接触は再犯率が高いということも特徴として挙げられるということがありました。
いま一度、今回、これらの罪を特定性犯罪に指定すべきではないかと思いますが、大臣の見解を伺います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案の対象犯罪は、その前科を有する者の事実上の就業制限の根拠となるものであります。そのため、その範囲につきましては、児童等の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与える性犯罪として、人の性的自由を侵害する性犯罪や性暴力の罪等に限定することとしてございます。
これに対しまして、御指摘の犯罪につきましては、犯罪の類型としては、本法案が列挙している不同意性交罪や不同意わいせつ罪、児童ポルノ禁止法違反や痴漢、盗撮といった犯罪と同じ性質の犯罪であるとは言い難いと考えられたため、本法案の対象とはしないこととしてございます。
これらの罪に当たるものにも性的な動機に基づいて行われる場合がありますが、例えば、性的目的の下に行われたものだけを対象にするといったように、特定の犯罪の一部だけを抜き出して対象にしようといたしますと、対象となる行為がなされたか否かを誰がどのように判断をするのか、また、その判断についての不服申立ての手続をどのようにするのかといった点が別途問題となってくるため、特定の犯罪の一部だけを対象に含めることは難しいものと考えております。
本法律案におきましては、前科があることを理由として防止措置を講ずべきこととなる場合以外でも、事業者に対しまして、児童との面談等の日頃からの措置を行った上で、児童との面談等を通じて、御指摘のような行為があることが判明をし、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められるときは、これを防止するために必要な措置を講ずることとなりますので、これにより適切な対応がなされていくこととなると考えてございます。
○田中(健)委員 ちょっと矛盾していると思うんですよ、まさに。
今言った、公然わいせつや誘拐罪、窃盗罪は特定性犯罪に指定しない、関係性が認められないし、さらには、性的なものだけを取り出すのは難しいと。しかしながら、それらは、おそれとはみなすということですよね。
そうしますと、これらは性的犯罪ではないんですけれども、おそれのあったときは措置の対象となりますから、教員などの本来の目的から従事させないということが可能になるといいますと、これは矛盾をしないでしょうか。
○加藤国務大臣 今回の確認のプロセスの中で犯罪の類型として特定の罪名を列挙していくわけですが、罪名だけからは、それが性犯罪、性的な目的の下に行われたものかどうかを判断するのは非常に難しくなってまいりますので、そこで拾えなかった場合にも、そのような端緒があるということを面談等を通じて発見し、そのような行為があると判明をした場合におきましては、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められる可能性が高いわけでありますので、そういった場合に、防止するために必要な措置をしっかりと講ずることとなりまして、それによって適切な対応がなされていくことを期待するものでございます。(発言する者あり)
○田中(健)委員 そうなんですよ。窃盗罪、誘拐罪はもう罪として認められていますから事実確認ができるんですけれども、それらのおそれがある場合でも今回は対象にするということですよね。
ですから、それですと、どちらの方が、窃盗罪や誘拐罪は罪として認められて、しかし、特定性犯罪には今回入らない。しかし、罪でございますから。しかし、今回、おそれの場合でも適用になると今大臣おっしゃったので。面接して、これがおそれがあれば、学校の先生たちはその仕事から外されるということでよろしいんでしょうか。
○加藤国務大臣 過去に、例えば性的な目的を理由として窃盗を行った前科があるという場合でありましても、今回に関しまして、罪名は確認をしますし、区分については表示をいたしますが、その罪名の具体的な内容までは通知をするということにはならないという組立てになってございます。
また、面談等を通じて端緒を発見をしていく、端緒を捉まえていくということに関しては、例えばそういう、下着の窃盗などをしているというような端緒が発見をされた場合は、様々な要素を踏まえてでありますけれども、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められる場合は、それを防止するために必要な措置を講ずるということとなりますので、それによって適切な対応がなされていくことを期待するものでございます。
○田中(健)委員 もう一度確認しますけれども、わいせつ罪や誘拐罪、窃盗罪は、今回、特定性犯罪には指定されませんので、照会をかけたときにはその犯罪は出てこないわけですよね。しかしながら、おそれのときは、それらを確認できるんですか、私が面談して。おそれは適用すると言いましたので。ちょっとそこが答弁ではっきりしないんですけれども、大事なところだと思うので、お願いいたします。
○加藤国務大臣 おそれというところは、児童との面談等、日頃の面談等を積極的に行うようにするという措置を行った上で、児童との面談等を通じてそういった端緒が発見された場合は、そういうおそれがあるというふうに認められる場合がありますので、そういった場合には、防止するために必要な措置を講ずるということでございます。
○田中(健)委員 違います。面談は、あくまで子供さんたちから、こういうことがあるということで。それをしっかり確定する場合は、先ほど大臣は、過去に窃盗罪があったりほかのものがあれば、それをしっかりと措置と認めると言ったので、それはどうやって確認ができるんですか。
○加藤国務大臣 済みません、ちょっと誤解を生じさせるような言い回しになってしまったのなら申し訳ないと思うのですが、例えば、面談等を通じた中で、学校の先生とかが自分の下着を盗んでいったとか、面談等を通じてそういう事実がありそうだという端緒のようなものが判明をしたりした場合は、おそれがあるというふうに、もちろん直ちにではありませんけれども、調査等をしながら、おそれがあると認められるときは、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められるとなって、それを防止するために必要な措置を講ずるということになるということでございます。
○田中(健)委員 先ほど、特定性犯罪に指定しない理由は、性的なものと取り上げるのが難しい、さらに、不服申立ての対応を言われたんですけれども、そうしますと、おそれがある場合も、そのような、ありそうだと、端緒で不服申立てをすれば、では、それは同じように認めないということで、若しくは措置ができないということでよろしいんでしょうか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
済みません、おそれのところで申し上げているのは、あくまでも児童対象性暴力等が行われるおそれがあるということを申し上げておりまして、端緒で例としていろいろ挙げましたけれども、何のおそれかというところで、必ずしも窃盗罪のおそれがあるということに限定しているわけではございません。
○田中(健)委員 もちろん窃盗罪だけを言っているんじゃないんですけれども、それらが措置として認められると先ほど大臣、城井委員のときも言ったんですけれども、おそれとして認めると言ったので、窃盗罪はもちろん一つです。それらのほかの罪は、特定性犯罪じゃないけれども、おそれの中でありそうだと端緒が認められれば、これは今回の措置として適用されるということですよね。そう答えていたんですけれども。それで、はいと言ってもらえれば。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
確認の対象の犯罪の中に窃盗罪は入りませんけれども、児童等との面談等を通じて様々な端緒があって、その端緒から児童対象性暴力が行われるおそれがあると認められるときには、防止措置を講ずるということでございます。
○田中(健)委員 じゃ、それらの犯罪歴はこのデータベースには入っていないということでよろしいんでしょうか。それを出すことは、照会できることは、できないということでよろしいんでしょうか。
○藤原政府参考人 ただいま申し上げた下着の窃盗などは、犯歴照会の対象にはなりません。
○田中(健)委員 そうしますと、事実があったかどうかが分からないのに、今言った面接と、ありそうなのと、端緒で、それでは、学校やないしは事業者はその方を判断していいということなんですね。そして、その措置をしていいということなんですね。そういうことですよね。民間事業者は自分たちで判断して、先生たちを排除していいと。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
例えば、下着の窃盗で逮捕されて、それをきっかけとして、端緒として、学校や福祉施設の中でその先生がどのようなことが行われていたかということを、例えば、面談を行ったり、相談をやったりというふうなことを通じて、児童対象性暴力が行われるおそれがあるような客観的な事実が出てきたということになれば、六条の防止措置の対象になる、そういうことだと思います。
○田中(健)委員 じゃ、それは、証明と判断は、全て事業者に任せるということでよろしいんでしょうか。
○藤原政府参考人 本法案における六条は、犯罪歴の照会だけではなく、面談、相談、日頃からの相談から端緒を導き出して、おそれがあるという場合には防止措置というふうな仕組みになっている。そのときのおそれの判断ですとか、どのようなプロセスでおそれを判断するのか、そういったことについては、度々申し上げているガイドラインで、しっかり関係者の意見を聞きながら、整理をしていきたいというふうに考えております。
○田中(健)委員 なかなか人の職業ないしは配置を民間の人が自分たちの判断でするというのは大変重い責任を負うものでありますので、ガイドラインがどのようなものになるかというのはしっかりチェックをしていきたいと思うんですけれども。本来なら法案と一緒に議論したかったんですけれども、次の質問に移りたいと思います。
もう一つ、これも城井さんからありました事業主、個人の方ですね。事業主は対象となっていないけれども、大臣は答弁の中で、ベビーシッターは個人でも対象となるようにできるというふうに言ったんですけれども、どうやって個人の方がやられるんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
まずもって、本法律案におきましての対象事業でございますけれども、民間教育保育事業といたしましての実態があるということなので、完全な一人でやっていらっしゃるような個人の事業主については入らないということでございます。
ただ、ベビーシッターにつきまして、例えばマッチングサイトに登録をされているというふうなベビーシッターがおられる。今般、認可外の保育事業者として、これまではマッチング事業者自体は認可外の保育施設としての届出の対象ではございませんでしたが、マッチング事業者に対して、個々のベビーシッターさんと委託契約を結んでいただくなど、そういうふうな工夫をしていただくことによりまして、マッチング事業者についてこの法案の対象の事業に取り入れるというふうな工夫をしたいというふうに考えておりまして、そういった工夫を通じまして、マッチング事業のベビーシッター事業につきましてこの法律の対象事業と含むというふうにしていきたいというふうに考えております。
○田中(健)委員 済みません、最後になりますが、そうしますと、マッチングサイト、例えば介護においても派遣事業とかマッチングするサイトがありますけれども、その場合は、事業者には今回課さないということだったんですけれども、そことの整合性はどうなるんでしょうか。
○藤原政府参考人 当該マッチング事業者がこの法案における教育保育事業の提供事業者であるという実態があるかどうかということが非常に重要なメルクマールになると思っておりまして、そういう意味では、認可外保育施設の見直しを行いまして、マッチング事業者が各ベビーシッターと委託契約を締結していただくことによって、マッチング事業者自体がこの保育提供事業者であるというふうにみなすことによって本法案の対象事業にする、そういうふうな工夫を考えているということでございます。
○田中(健)委員 残念ですが、時間になりましたので終わります。
ありがとうございました。
○谷委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時七分散会