衆議院

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第6号 令和6年5月27日(月曜日)

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令和六年五月二十七日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 大野敬太郎君 理事 鳩山 二郎君

   理事 平口  洋君 理事 藤井比早之君

   理事 落合 貴之君 理事 笠  浩史君

   理事 浦野 靖人君 理事 中川 康洋君

      石原 正敬君    上田 英俊君

      小倉 將信君    大串 正樹君

      奥野 信亮君    勝目  康君

      木原 誠二君    岸 信千世君

      鈴木 馨祐君    高木  啓君

      寺田  稔君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    中川 郁子君

      中曽根康隆君    中西 健治君

      中山 展宏君    古川 直季君

      牧原 秀樹君    宮路 拓馬君

      森 由起子君    山下 貴司君

      青山 大人君    太  栄志君

      本庄 知史君    山岸 一生君

      柚木 道義君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    青柳 仁士君

      金村 龍那君  斎藤アレックス君

      河西 宏一君    輿水 恵一君

      塩川 鉄也君    長友 慎治君

      福島 伸享君

    …………………………………

   参考人

   (東京大学教授)     谷口 将紀君

   参考人

   (駿河台大学名誉教授)  成田 憲彦君

   参考人

   (麗澤大学教授)     川上 和久君

   参考人

   (元参議院議員)     平野 貞夫君

   衆議院調査局第二特別調査室長           森  源二君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     牧原 秀樹君

  川崎ひでと君     森 由起子君

  木原 誠二君     高木  啓君

  斎藤 洋明君     中山 展宏君

  古川 直季君     上田 英俊君

  野田 佳彦君     青山 大人君

  吉田はるみ君     米山 隆一君

  中野 洋昌君     河西 宏一君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     古川 直季君

  高木  啓君     木原 誠二君

  中山 展宏君     中曽根康隆君

  牧原 秀樹君     石原 正敬君

  森 由起子君     川崎ひでと君

  青山 大人君     野田 佳彦君

  米山 隆一君     吉田はるみ君

  河西 宏一君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     中川 貴元君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     斎藤 洋明君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 金権腐敗政治を一掃することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五七〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五七一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五七二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五七三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五七四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一五七五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五七六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五七七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五七八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五七九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六六一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政治資金規正法の一部を改正する法律案(鈴木馨祐君外五名提出、衆法第一三号)

 政治資金規正法等の一部を改正する法律案(落合貴之君外十名提出、衆法第一四号)

 政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(落合貴之君外四名提出、第二百八回国会衆法第四八号)

 政治資金パーティーの開催の禁止に関する法律案(落合貴之君外七名提出、衆法第一五号)

 政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(青柳仁士君外一名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 鈴木馨祐君外五名提出、政治資金規正法の一部を改正する法律案、落合貴之君外十名提出、政治資金規正法等の一部を改正する法律案、第二百八回国会、落合貴之君外四名提出、政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案、落合貴之君外七名提出、政治資金パーティーの開催の禁止に関する法律案及び青柳仁士君外一名提出、政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として東京大学教授谷口将紀君、駿河台大学名誉教授成田憲彦君、麗澤大学教授川上和久君及び元参議院議員平野貞夫君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 谷口参考人、成田参考人、川上参考人、平野参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。

 それでは、まず谷口参考人にお願いいたします。

谷口参考人 東京大学の谷口将紀でございます。

 長年政治改革を研究してきた者として、また、三期九年にわたりまして総務省政治資金適正化委員を務めさせていただいた経験も踏まえまして、この度提出をされました政治資金規正法の一部を改正する法律案等につきまして、意見を申し述べさせていただきます。

 本日は、今国会において是非実現していただきたい事項と、本委員会を始めとする皆様の御議論を通じて今国会中に実現に向けたロードマップを描いていただきたい事項に分けて申し上げることにいたします。

 まず、今国会において是非実現をしていただきたい、すなわち、事件の直接的な再発防止策に関わる事項について申し上げます。

 一般に、政治資金パーティーの来場者数は政治資金パーティー券の売上枚数を下回ると言われております。このため、政治資金パーティーを開催した者が故意又は過失により政治資金パーティーの収入額を実際よりも過少に政治資金収支報告書に記載したとしても、外部からは誤記載又は虚偽記載を気づきにくい問題がございました。パーティー券購入者の公開基準が一回につき二十万円と寄附に比べて高く設定をされていることも、自分はパーティー券を購入したけれども該当する収入が収支報告書に計上されていないという形で、問題が明らかになるのを妨げている側面がございました。

 また、今般の事件の捜査の過程においては、東京地検特捜部による取調べに対して、議員秘書等が、政治資金収支報告書の不記載に関しては、当該政治団体の代表又は事実上の幹部である政治家からは会計者任せにしていて知らなかったという弁解がなされたことや、過去の同種事件とのバランスが考慮されたとはいえ、不記載額が三千万円を超えた議員は立件をされた一方、それを下回った場合は、不記載額が五百万円を超えた議員に対しては党内処分が行われたのみで、あとは政治資金収支報告書の訂正にとどまったことも、国民の疑念を招いたところでございます。

 かかる事態の再発を防止するためには、第一に、政治資金パーティーを開催する者に対して、預貯金口座への振り込み以外の方法による政治資金パーティーの対価の受領を禁止することにより、会計帳簿の記載と客観的な政治資金パーティーの対価の支払い記録を突合できるようにすることが必要です。

 第二に、パーティー券購入者の公開基準を引き下げることにより、購入者が自らの購入履歴が正しく収支報告書に記載されていることを確認できるようにし、特に、購入者が政治団体である場合は、当該団体における支出に関する記載と政治資金パーティーを開催した政治団体における収入に関する記載が一致しているかどうかを広く国民が監視できるようにすることが必要であります。

 第三に、政治団体の代表又は事実上の幹部である政治家及び会計責任者に対してより正確な収支報告書の記載を促すために、現行法においては、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠ったときは罰金に処すると、政治家本人の責任を問いにくい規定になっているものを、少なくとも国会議員関係政治団体に対しては、政治家本人に過失責任を問いやすい仕組みに改めることが必要と考えます。

 そして第四に、政党が行う組織活動費、なかんずく政策活動費の使途が明らかでないことは、一九九四年に政治資金規正法の改革が行われた当初から繰り返し指摘をされてまいりました。政策活動費の原資に政党交付金が充てられていないとしても、政党交付金があるからこそ寄附収入等を政策活動費の支出に充てられるとも言えます。

 また、個人による政治献金には課税上の優遇措置が講じられており、また、法人が行う政治献金についても、一定の範囲内で損金算入が認められております。さらには、政治資金は原則非課税となっております。

 自由民主党においては、かつて、いわゆるそうめん代や餅代等を組織活動費として支出していたところ、指摘を受けて、寄附、交付金とすることに改めた前例がございます。

 今般の問題を受けて、自民党、立憲民主党・国民民主党・有志の会、日本維新の会からそれぞれ、政策活動費改革に係る提案がなされておりますが、各会派御協議の上、政策活動費の透明性を向上させる、実効性のある措置が講じられることを望みます。

 ただし、以上の策を講じただけでは、政治不信を回復することは難しいかと考えます。国民はもはや、政治資金パーティーだけではなく、政党、政治家による金の集め方、使い方全体に不信感を持っているからであります。この際、長らく指摘されてきた政治資金制度の問題を一掃なさる御覚悟で、今国会における政治資金規正法の一部を改正する法律案等の審査を通じて、以下の事項につきましても、改革の方向性を明らかにしていただくことを希望いたします。

 まずは、収支報告書のオープンデータ化です。

 総務省が提供しております収支報告書等作成ソフトはそれなりに利用されているようでございますが、領収書の処理の煩雑さなどから、結局は、プリントアウトした紙版での提出が多いと聞きます。また、国と多くの都道府県選挙管理委員会においては収支報告書がインターネットで公開されているものの、利活用しにくいPDFデータであったり、公開対象が国会議員関係政治団体にとどまっていたり、中には、いまだにインターネット公表を行っていない選管も存在しております。公職の候補者による収支報告書の作成及び提出並びに国及び都道府県選挙管理委員会による報告書の公表のそれぞれにおいて、国民の範となる取組をお願いしたく存じます。

 次に、企業・団体献金に対する規制の強化であります。

 企業・団体献金の廃止につきましては、必要がございましたら後ほど御質問いただくことにいたしまして、政治資金規正法第二十一条は、会社、労働組合、職員団体その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に政治献金をしてはならないと定め、同条第四項において、一以上の市町村、特別区の区域又は選挙区域を単位として設けられる支部は、それぞれ企業・団体献金を受けられる政党とされております。

 ところが、この一以上の市町村、特別区の区域を単位として設けられる支部の定義につきましては、一九九三年十月二十日の衆議院政治改革に関する調査特別委員会及び一九九四年一月六日の参議院政治改革に関する特別委員会での担当閣僚の答弁等を通じて、一以上の市町村の単位さえ守れば、第一支部、第二支部、青年支部、女性支部等々、それぞれが企業・団体献金を受け取ることができると解されたところでございます。

 もとより、どのように支部組織をつくるかは各政党の自主的な判断に委ねるべきことではありますが、同じ市町村内に何百何千、企業・団体献金を受けられる支部をつくり得るというのは、政治資金の透明性を著しく引き下げ、行き過ぎではないかと思われ、各会派においては御検討いただきたいと考えます。

 第三は、政治資金、政党助成金等を監督する、独立性の高い第三者委員会、内閣府設置法第六十四条に基づく、いわゆる三条委員会の設置を御検討いただきたく存じます。国会指名、実質的には、与野党が共に委員を推薦をしている総務省政治資金適正化委員会を格上げするイメージであります。

 現在の政治資金監査は、収支報告書における支出の記載と領収書の突合を外形的に行うだけにとどまっておりますが、収支報告書の記載に疑義が生じた場合、収入の監査や収支の妥当性を含めて質問や監査、現地調査などの実質的調査を行ったり、違反行為には行政罰を科したりする権限を持つ、超党派で、行政からの独立性が高い機関の設置が必要であります。

 第四に、政党助成制度の点検と見直しであります。

 国会議員が政治資金規正法に違反した場合には、当該議員が所属する政党に対する政党助成金を減額すること、さらに、今回のように重大な違反があったときには翌年の政党助成金を不交付とすることも含めて、制度の見直しを求めます。

 現在、自民党からは、収支報告書の不記載、虚偽記入に係る金額を国庫に寄附できるように公選法の特例をつくること、立憲民主党、国民民主党、有志の会からは、政党交付金の交付停止の制度の創設が提案されておりますが、こうした、政治家本人が罰金刑に処せられ公民権を停止することと、収支報告書の訂正で済ませられてしまうことの落差を埋め、過失の程度に応じた適切な処分を行うためにも、独立性の高い第三者委員会の設置が有用と考えます。

 我が国の政治は、これまでも失敗から多くを学んでまいりました。ロッキード事件を受けて、一九七五年に政治資金規正法を改正し、同事件一審判決後の一九八五年には衆参両院が政治倫理綱領を定めました。リクルート事件を繰り返さないため、自民党は一九八九年に政治改革大綱を党議決定し、一九九四年に政治改革関連法を成立させました。

 今般の政治資金問題からは何を学び、そしてどのような成果を世に問うことができるでしょうか。現在生きている国民はもちろんのことながら、令和の政治家の見識と良心を、将来の国民、すなわち歴史が注視しております。

 今国会において、各会派の皆様の建設的な御議論により我が国民主政治の健全性を内外に宣明していただくことをお願いいたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 ありがとうございました。

 次に、成田参考人にお願いいたします。

成田参考人 駿河台大学の成田でございます。

 政治改革特別委員会にお招きをいただきまして、ありがとうございます。

 衆議院に政治改革の語を冠する特別委員会が設置されましたのは、平成六年の政治改革調査特別委員会以来三十年ぶりではないかと思います。是非実りの多い改革が実現いたしますよう祈念いたしております。

 時間が限られていますので、冒頭では三点、企業献金、政策活動費、政治資金規正法の特徴についてのみ、私の考えを述べさせていただきます。

 まず、企業献金についてであります。

 私は、長いこと企業献金容認論者でした。その理由は、個人献金に比べて安定的で寛容な資金源と言えるからです。寛容という意味は、金を出しても余りあれこれ細かいことは言ってこないという意味です。

 しかし、私は、近年の日本の様々な指標での世界順位の低下、端的に言って日本の衰退の原因の一つは、長期的な日本の資源配分の偏りにあり、その要因の一つが企業献金だったのではないかと考えるようになりました。

 例えば、公的資金の投入先で日本が世界に比べて突出して多い分野があります。道路です。一方、自民党に最も献金の多い業界は建設業界であります。

 これに対して、例えば教育は、最近は、岸田総理が看板にし、教育を冠する政党も現れてはいますが、それでも、日本ではまだ、教育費は親あるいは家庭が出すのが当然だという考え方が強く残っています。しかし、世界を見ますと、どの国でも教育への公的資金の投入量が多いことに驚かされます。日本で教育に資源配分がなされてこなかったのは、教育業界の献金量が少なかったことも背景にあるように思っています。

 企業も政治献金の自由を有しているというのは、よく知られた一九七〇年の八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決です。その後、最高裁は、一九九六年の南九州税理士会事件で、強制加入の税理士会の政治献金を目的外行為とし、献金のための特別会費の徴収の総会決議を無効とする判断を示しました。これが最高裁による八幡判決の見直しにつながるかは、肯定と否定の両説があります。しかし、八幡判決が今なお盤石だとは必ずしも言えないことは、政治も心しておく必要があるのではないかと思います。

 世界でも、企業献金に対しては、禁止や、禁止に至らないまでも規制を強化する国が増えており、日本も再考の時期になっているのではないかと考えております。

 次に、政策活動費について申し上げます。政策活動費は多くの党にありますが、ここでは主に、問題になっております自民党の幹事長の政策活動費を念頭に申し上げます。

 自民党の政策活動費は、自民党自身が、党勢拡大、政策立案、調査研究のために党役職者に職責に応じて支出されているものと説明しており、メディアでは、政党から議員個人に支給される、使途を明らかにしなくてよいお金と報じられています。しかし、このような説明、特にメディアの説明では、要するにどういうお金かイメージが湧きませんし、このお金の本質を捉えることはできないのではないかと思っています。

 政策活動費は、要するに政党の機密費であります。したがって、議論の枠組みとしては、政党は機密費を持つことが許されるか、あるいは、日本の政治資金制度の中に政党の機密費を適切に位置づけることができるかということになると考えています。

 なお、機密費というのは、組織がその活動のために使途を公開しないことを前提に有している資金のことで、国に内閣官房機密費や外交機密費があるように、私は機密費という語を否定的に使っているわけではありません。

 政策活動費の問題が取り上げられた初期の頃、政策活動費は、政治資金規正法第二十一条の二第二項により、政党から議員個人に寄附されたお金という説明が流布しました。しかし、報じられているその実態は、規正法第四条第三項の寄附の定義に当てはまりませんし、岸田総理を始め自民党も、寄附でないと明言しています。

 もし寄附なら、幹事長に渡った後は幹事長個人のお金ですが、寄附ではないので、幹事長に渡っても党のお金です。

 こう申し上げると、党から幹事長へは党内部の資金移動で支出にならないという指摘がありますが、この問題を解くのが、会計処理方法の渡し切りというものです。渡し切りの語は、立憲民主党、国民民主党共同案でも、日本維新の会案でも使われていますので、説明は省略しますが、要するに、事後の精算を必要とせず、受領者が受け取った時点で支出が完了し、受領者が書くのは預かり証ではなく領収書です。なので、それだけで収支報告書を作成することができます。この渡し切りは、かつては国の会計法にもありましたが、二〇〇二年に廃止されました。

 政策活動費の使途が幹事長から先は不明となるのは、議員個人や収支報告書の提出義務のない団体などに渡っているためと思われ、別に、元々制度的に公開しないことが認められているものというわけではありません。自民党が、公開しないで済むように、その時々の規正法の規定を巧みに使ってきたということなのだと思います。

 政策活動費はどのように管理されているのでしょう。もちろん私には知る由もありませんが、幹事長が何千万から一億円のお金を机の引き出しにしまっているとは考えにくいのではないでしょうか。

 そこで、モデルとして考えられるのが、官邸の官房長官室で管理されている官房機密費です。私は、旧官邸ですが、官邸で勤務した経験がありますが、正直、官房機密費については知る機会がほとんどありませんでした。ただ、うわさ話に出てくるように、官房長官室に金庫があったことは自分の目で見ました。もしかしたら、同様の金庫が自民党本部四階の幹事長室にあるのかもしれません。

 無責任なことを言うなとお叱りを受けるかもしれませんが、しかし、長年政権を担当している自民党が、官邸では官房機密費を、党本部では政策活動費という名の党の機密費を使って政治を行ってきたと考えることは、合理的な推論ではないかと思っています。

 そこで、政党の機密費の評価ですが、官房機密費についても国民から様々な批判がありますが、それでも、国の機密費については、その必要性を認める意見もあります。しかし、国民は、政党が機密費を持つこと、ましてや制度的にこれを承認することを許してくれるでしょうか。

 そこで、様々な工夫もなされています。維新案の特定支出もその一つで、秘匿と公開の間でいろいろ苦労されたことがうかがえる案になっていると思います。この案では、十年間秘匿し、十年後に総務大臣か都道府県の選管がインターネット公開することになっています。

 御承知のとおり、国の外交文書は三十年後公開となっていますが、国と政党では全く事情が異なります。国は永続的な組織ですから、担当者が替わったり政権交代があっても、三十年後にも国はあり、また、万一、三十年後にも公開が適当でないものは、非公開にすることができます。しかし、政党は、十年後どうなっているか不確かであるばかりでなく、立場も変わります。野党だったものが与党になったり、敵対して攻撃し合っていた同士が友党になっているかもしれません。

 十年後に機械的に公開されてしまう領収書を政党が残すことは、極めてリスクの高いことではないでしょうか。公開されると騒ぎになるかもしれず、また、それを恐れて見え透いた工作をすれば、やはり公開された時点で騒ぎになるでしょう。

 結局、政党が機密費を持つことは、国民の理解を得るのが難しいばかりか、むしろ政治の安定を損なうことになるのではないでしょうか。機密費は公開すれば存在しなくなりますから、完全公開にするのがよいのではないかと考えています。

 最後に、政治資金規正法の特徴について、一点だけ申し上げさせていただきます。

 今回の政治資金規正法改正問題を通じて岸田首相及び自民党の関係者から最もしばしば耳にする言葉は、政治活動の自由です。しかし、国民は、政治活動の自由が政治資金改革に当たって最も大切なことだと考えているでしょうか。

 例えば、日本の選挙法では、選挙運動期間が極端に短く、べからず選挙と言われるように、運動は世界で最も不自由と言われる細かなルールで縛られています。しかし、選挙に関して、政治からは、最近検挙された政党を除いて、政治活動の自由という言葉は聞こえてきません。政治資金については政治活動の自由を言い、選挙では沈黙する政治の態度からは、金をできるだけ自由に集め、できるだけ少ししか使いたくないという政治の御都合主義が見えてきます。

 私は、政治資金制度を含む政治制度の研究者として確信を持って申し上げますが、日本の政治資金規正法の最大の特徴の一つは、政治活動の自由を余りにも強調した制度になっているということです。その具体的特徴の一つは、政治資金規正法にはいろいろなルールが書かれているものの、罰則以外にそのルールを守らせる仕組みがないことです。罰則のみということは、検察以外に監視、監督する機関がないということです。

 これに対して、例えば道路交通法は、車両や歩行者にルールを守らせるために、公安委員会や警察の権限や任務を詳しく規定しています。他にも、社会のルールを定めるあらゆる法律には、必ずそのルールを守らせるための工夫が盛り込まれています。

 政治資金規正法にそのような工夫がないのは、自民党だけとは申しません、与野党併せて政治が、政治活動の自由を大義名分にしてきたからです。

 政治資金のルールを守らせる最も効果的な方法は、最近各国でもなされているように、監視のための第三者機関を設置することです。第三者機関を設置すれば、政治資金の公正化と透明化を飛躍的に進めることができます。

 例えば、立憲、国民案では百五十万円超の不記載を罰金刑にしていますが、そういうのは反則金の青切符にするのがいいと思います。青切符は無過失ですから、金額の少ない不記載にもどんどん切ることができます。メディアは議員ごとの青切符の枚数を報道するでしょう。

 その他、立入検査、改善勧告、収支報告書の訂正命令、助成金の減額支給、政治団体としての資格停止など、第三者機関ができることは幾らでもあります。第三者機関は、各党案でも附則で様々な形で触れられていますが、独立性のある、行政権限のある機関として設置すれば政治資金改革の切り札となり得るものですので、是非実現していただきたいと思います。

 以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 ありがとうございました。

 次に、川上参考人にお願いいたします。

川上参考人 麗澤大学の川上和久と申します。

 今回は、政治改革に関する特別委員会で参考人としての陳述をさせていただくことを心より感謝申し上げ、一国民として、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 お手元に資料を用意いたしましたけれども、初めに、私は世論研究の立場で研究をしておりますので、国民の世論と政治の在り方という立場、そういったことを中心にしながら、やや精神論に堕するかもしれませんけれども、私の考えを申し述べさせていただきます。

 言うまでもなく、半年前、こういう裏金問題が発覚して、政治不信がかつてなく高まっている。そういう中で、私は、大学の政治学の授業で毎回のように学生たちに言い聞かせている言葉がございます。関係の方々もこの中におられるので、屋上屋を架すような言い方になりますけれども、松下幸之助氏の言葉、これを私は非常に大事にしておるわけであります。これは、松下幸之助さんが、民主主義国家においては、国民はその程度に応じた政府しか持ち得ないんだと。とても重い言葉であるというふうに私は思います。

 政治資金規正法の理念は、国民の不断の監視と批判、それを可能にしなければいけない。そのために、基本的に私は、この政治資金規正法の透明化ということを是非皆さんのお知恵で前進させていっていただきたいというふうに思います。しかし一方で、様々な政治家の方々の活動を見ておりますと、政治にお金をかけていけないのか、それは悪なのかということについては、そうじゃないんじゃないかなというふうに私は思います。

 というのは、真面目に政治活動をやればやろうとするほどお金がかかるというのもまた現実ではないでしょうか、異議のある方がいらっしゃるかもしれませんけれども。俺はお金を全然かけていないというような方も中にはいらっしゃいますけれども、それはごく少数であります。

 これは例えば、有権者の声を聞くために選挙区回りをする。ガソリン代もかかりますね。事務所を運営する。私設秘書を雇用する。情報発信にも経費がかかる。真面目に政治活動をしようとする人ほど、これは政治資金がかかる。しかしそれは、では、政党助成金だけで賄うことができるのかという現実もあります。

 いろいろな新聞社が世論調査をやっているので、特定の新聞社の世論調査を御紹介するというのは申し訳ありませんけれども、四月にちょっと目につく世論調査の記事がございました。朝日新聞、四月十二日付ですけれども、郵送世論調査であります。

 企業・団体献金について、利益誘導につながりかねないから認めない方がよい、七九%に及んでおります。認めた方がよいは一五%にすぎない。そうであるならば、では、政党交付金を増やしてもいいか。増やしてもいいは一七%、そうは思わないが七八%。何か、政治家がどういう活動をして、どういうふうに有権者の支持を得ようとしているのかということにはちょっと目が向いていない部分が、ひょっとしたらこの結果にはあるのかもしれません。

 ですから、適正な政治活動にお金がかかっているという現実を政治家が、より不断の公開、自分の活動の公開とコミュニケーション活動によって活性化させていく責任があるのではないかということを感じております。国民の理解を得ようとする努力が足りないということですね。

 それから、政治資金を得る手段としての企業・団体献金について、先ほどお話がございました。

 企業・団体献金があることによって、日本における経済活動が活性化し、そしていい政治ができているという実感が国民にあるのであれば、企業・団体献金についてもそんなに抵抗感はないと思うんですね。ただ、それに対する国民の不信が強いから、企業・団体献金についても異論が出てくるのではないかというふうに思います。

 ですから、これについても、透明化を徹底していくということによって有権者の判断に資するというような方向を是非各会派で御議論いただけたらなというふうに思っております。

 政治資金パーティーについて申し上げたいと思います。

 今回の特別委員会が設置される原因となった、自民党の派閥の資金集め、ノルマ、ノルマ超の裏金化、全く論外であります。言い訳のしようがございません。こういった慣れ、甘え、行き過ぎ、こういったことは二度とあってはなりません。言うまでもないことであります。

 一方で、幅広く支援を得る、この人にだったら浄財をパーティーに寄附をして、そしていい政治をやってもらおうというふうに、政治家が努力して思ってもらう。政治家側が支援者とコミュニケーションを取りながら一定の資金集めをする努力、これは、政治資金パーティーが私は必要ではないか、もちろん透明化は必要ですけれどもね。金持ちしか政治活動できない、何億円も自由に使えるような金持ちしか政治活動ができないということは、これは日本の政治にとって幸福なことではないというふうに私は思います。

 しかし、ブラックボックス化をできるだけ避けるために、野党からも五万円という公開基準の引下げが提案されていますから、これは、各会派が真摯に議論をして、なるべく透明化を図っていただくということを尊重していただければというふうに思っております。

 議員本人の罰則強化について申し上げます。

 これは各会派ともそんなに差はないというふうに思っております。会計責任者だけでなく議員にも責任を持ってもらうことで、議員の側にも緊張感が生まれてきます。ただ、自民党案では不十分ではないかという質疑があったことも承知しております。その意味で、連座制の適用は一つの前進ではあります。不十分という指摘もありますから、十分各会派ですり合わせをしていただくということを私は望みたいと思います。

 政策活動費について申し上げます。

 使途不明ということは、やはり有権者の疑念を生じさせるというふうに思います。この現状は当然変えるべきだというふうに思います。しかし、廃止してしまうと、これは政治活動に支障が出る現実もあると思います。なるべく透明化していくことによって国民の理解を得るということも必要であります。

 例えば、先ほど内閣の官房機密費に言及がありましたけれども、安全保障上も、一定の官房機密費のような部分も必要ではないかというふうに思いました。

 今は、AI化が御承知のように進展しております。AI技術の進歩で、機微にわたる情報の漏えい、そして、悪意を持った第三国、我が国の固有領土を不法占拠している国がウクライナを侵略したり、あるいは、近くの国が、大使が我が国の国民を恫喝する、こんなようなことが起きている。こういう非常に緊迫した情勢の中で、第三国が我が国の政治活動を監視、制限する、そういう可能性も指摘できると思います。

 私、個人的に剣術をやっておるんですね、余りうまくないですけれども。手のうちを見せると、師範にすごく怒られるんです。手のうちを見せた瞬間にやられるんだぞと。外国との関係においては、手のうちを見せるということが、即、我が国の安全保障、要は、国民の方々の安心、安全に危害を及ぼす、そういう危険性もあると思います。

 ただし、これは、だからそういう透明化ができないんだという理屈というのは、国民から見ると、安全保障とかそういったことを理由にして、政治家がそういうことを、それを理由にして何か避けているんじゃないか、都合が悪いことを隠したいから、安全保障を表に出して言っているんだという疑念を持たれている部分があると思うんですね。

 政治家はそうあってはいけないと思います。十分に説明を尽くして、こうだからということで、透明化については、延期をするということではなくて、まず、できる透明化をしてみて、そして不都合があったら国民に説明をして、こういう不都合があるからこういうふうなところは機密にさせてください、私たちを信じてくださいと。

 でも、最後に申し上げたいのは、終わりに、国民の怒りのゆえんは、政治と金の問題に今とどまっていないと思います。どういうことか。これは逆説的ですけれども、政治資金規正法の改正が実現しても、政治家自身が不断の改革をしていかなければ、この政治資金規正法の改正も絵に描いた餅になってしまうというふうに私は危惧しております。

 朝日新聞の結果を引用しますけれども、日本の政治を信頼していない、この割合がここ数年より大幅に増えている。「信頼していない」は、「あまり」と「全く」を合わせると七一%に及んでいる。では、なぜ信頼できないのか。なぜ信頼できない。「政治家にモラルが欠けている」。皆さんはそうじゃないかもしれませんけれども、政治家にモラルが欠けているという、この不信感が圧倒的に大きいですね。七六%であります。これは政治家の方々が大いに自戒しなければいけない。政治資金改正法だけでは何とかならないわけですね。

 そこで、最後に。私は大学のとき、地味なクラブでした、座禅クラブという。座禅クラブだと言うとみんなに笑われちゃうんですけれどもね。その座禅クラブの老師が師事した方は、昭和の名僧と言われた山本玄峰という方でありました。御存じないかもしれません。その方が、私、柏の大学ですけれども、鈴木貫太郎さんですね、首相になる、その前に、自分は首相にされそうだ、大命降下しそうだということで、この禅僧に相談に行ったわけです。そのときに印象的なことを言っておられます。力で立つ者は力で滅びる、金で立つ者は金で滅びる、しかし、徳をもって立つ者は永遠です、あなたには徳がおありだから、徳をもってお立ちなさい。そう言ってもらえる政治家が、今、どれほどいらっしゃるでしょうか。

 また、私、剣術ですから、山岡鉄舟もちょっと引用させてください。山岡鉄舟の本はたくさん読んでいるんですけれども、人を治むるはまず我を修む、すなわち修身斉家の道にほかならずして万物一理これなり、興味がある方は調べていただきたいと思うんですけれども、こういうふうに言っておられる。

 だから、徳を積んでいくということは、人から信頼される、国民から信頼される。あ、この人にだったら、例えば官房機密費のような機密があったって、透明化しなくたって任せられるんだなと思われるぐらいの身の処し方を政治家諸氏にしていただきたいというふうに私は強く思うわけであります。

 今、政治不信の負債が積み重なっております。しかし、これは、政治家一人一人の徳で、大死一番、信頼の貯金をつくっていっていただく。各会派一致して、信頼の貯金をつくっていこう、そういう思いを持っていただく。今の政治家の、将来への責任があるのかどうかということが今問われているのではないでしょうか。

 私は一民間人でありますから、選挙で当選して、こうやって国政を担っておられる先生方の皆さんに大変失礼な物言いをしたかもしれません。したでしょう。しかし、こうやって政治改革を実現して、徳を積んでいただいて、日本の将来を安定したものにしていただきたい、そういう思いで、失礼なことも申し上げました。そのことは深くおわび申し上げたいと思います。日本の将来を何とかしてほしいという熱意でもって、ちょっと言葉が過ぎたかもしれませんけれども、御海容いただきたいと思います。

 私の意見陳述をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

石田委員長 ありがとうございました。

 次に、平野参考人にお願いいたします。

平野参考人 私は、昭和三十年代から三十三年、この衆議院事務局に勤めておりまして、皆さんのおじいさんの代から大変お世話になっております。

 十二年間、参議院議員をやりまして、最初の政党は、自民党に三か月いましたんですが、後、新生党、新進党、自由党、そして民主党で引退いたしました。したがいまして、今日は党派を超えて率直な意見を申し上げたいと思います。そういうわけで、大変、これはというような話をするかも分かりませんけれども、お許しいただきたいと思います。

 五法案が提出されました直接の動機というのは裏金キックバック事件だったと思いますね。この事件の本質といいますか、これをやはり理解し究明しなければ、本格的な政策、立法、体制はつくれないと思います。その本質は、どうもやはり、基本的に政治家の皆さんの前段で止まっているんじゃないかと。だから、そういう中途半端な状況の中で、果たして適切な立案、立法ができるかどうかという問題があります。まず、そういう意味で、そこのところに大きな問題があると思います。

 したがいまして、率直に言いまして、自民党の国会議員の八十人以上の人が関わった集団犯罪の疑いがあるんですよ。これをうやむやにしておること、これは日本の議会の歴史で初めてですよ。もしかして検察や国税がまともなことをやっていたら自由民主党という政党の存在そのものにも関わる問題なんですよ。そういう認識をやはり国民は非常にしているものですから、なかなか世論の一つの合意ができない状況があると思うんですね。

 私は、この問題を取り上げるスタートに、政治倫理審査会から始めたことに問題があると思います。それは、私、政治倫理審査会を事務局で立案した人間だからですよ。そういう残念さもあるんですが、それはともかく、こういう形で審議が始まりましたので、率直に意見を言わせていただきます。

 お三人の参考人からも話が出ましたんですが、この問題の根本は、政治資金規正法の、政治資金の、個人の献金も含めまして、個人、企業、団体献金あるいはパーティーの資金、こういったものの法律での、あるいは憲法と言ってもいいですが、基本的位置づけが何かということが、当然皆さん御理解なさっていると思いますけれども、お三人の方の指摘がありましたんですけれども、ここの認識をきちっとしておかなきゃ駄目と思います。

 それは、資金規正法の第二条に、民主政治の健全な発達を希求して提出される国民の浄財であるということなんですよ。ですから、政治資金の法上の、あるいは憲法上の位置づけは浄財ということなんです、基本的性格は。

 議会政治というのは、歴史的に、有権者の方から出てくる浄財が元でできているものですから、しかし、その浄財が賄賂だとか悪い金だとかというふうに国民のほとんどの方が思われている、ここが問題でございまして、そこの食い違いが、調整するのは何か。それは法律や政治じゃないと思うんですよ。国民の政治教育だと思うんですよ、この問題に対する、議会に対する。それが我が国は一番遅れているんですよ、世界で。私は、自分の経験から言って申し訳ないと思っているんですが、国民の健全な政治教育ができていないというところにこの問題の根本があるということを申し上げておきます。

 それから、この五法案の取扱いの問題なんですが、私は、結論を先に申しますと、各会派が話し合って、五法案の審議を継続して、結論を出すべきじゃないと思うんです。

 国民は、提出されたスケールでの政治改革を期待しておりません。様々な根源になる問題の究明を期待しております。そして、国会だけじゃなくて、検察や国税のこれまでのやり方に強い不満を持っております。国会不信もあります。

 なものですから、私は、国民にこれ以上の不信を募らせないようにするためには、両院議長の下に、国民が期待する新しい時代に対応できる国会となる、議会政治改革協議会という大きなものを設置して議論すべきだと思います。そこで一定の整理、一つの考え方の共有性を持って各党皆さんが具体論を考えていくような、そういう大きな問題だと思っております。今度、この問題で両院議長の顔が見えないというのは誠に残念ですよ。世界的に見ても、そう思っているんじゃないかと思います。

 なぜ私がそういうことを言うかといいますと、実は、三十年前の政治改革、これでは、このときの目的というのは、冷戦が終わったという大きな変化もあったんですが、お金の問題について言えば、大バブルですね、一九八〇年代から始まった。その金権バブルの政治と金の汚れを、国民が、リクルート事件なんかが起こったものですから、不満を持って、どうそれを、政治資金の問題を整理するかということで始まったわけなんです。そういう歴史的背景があったわけなんです。そして、三十年たってそれが非常に問題になっているわけですね。

 では、三十年たった今の世界あるいは日本の社会の状況は何かというと、高度情報化社会の資本主義で、とんでもなく当時と変わっておるわけなんですね。高度情報化社会の特徴というのは、御承知のように、すごい格差ですよ。しかも、行政の民営化ということで、民間に行政のできる仕事をどんどん下ろす。これは、いいこと、いい面もあると思いますよ。しかし同時に、これは金権カルト政権になりやすい。なったわけですね、我が国の場合には、宗教団体がいろいろ関わってきましたから。そうすると、これは政権交代も何もくそもないんですよ。

 したがって、何のことはない、パーティーの裏金というのは、実質的に、そういう民営化したものの、税金のキックバックだったかもしれません。そういうことに対して国民は、ちょうど納税の時期と重なったものですから、すごい実感的なものを持ったと思います。

 さて、皆さん、我々の今住んでいるこの日本の社会の状況がどういうものかということをよく認識された上で改革は進めなきゃ駄目だと。それは申し上げればそれだけじゃございませんですね。恐らく、消費税の増税がいろいろうわさされる中で、社会保険料の値上げの問題なんかもあって、税金をキックバックされて懐の暖かくなる上級国民と、税金を収奪される、あるいはいろいろなものを、税金と同じものを収奪される一般の庶民との格差が出た、大変な事態になっておると思いますよ。そこの上でこの問題を、国民をどう教育して、どう新しい制度をつくるかということでございますね。

 それから、この問題のポイントは、収支報告に対する虚偽記載をどうするかということなんですが、実は、そのことについては、十五年前の陸山会事件が、ちょうど、虚偽報告を検察が捏造した事件なんです。私はこのときの捜査の対象になったものですから言わせていただきますが、果たしてそのときに政治も行政も正しいことをやったかどうか、ここを総括しなければ、私はやはり、この問題の本当の解決、国民が納得しないんじゃないかと思うわけでございます。

 この場合、麻生政権の民主党への政権交代を阻止するということで始まった問題なんです。そして、民主党に政権が替わった後、菅政権が、その当時発生しました法務省それから最高裁、司法のある問題を使って、いわゆる小沢一郎という政治家の政界追放を図った事件です。

 そして、それは、裁判になって、秘書三人は有罪になり、共謀罪を問われた小沢一郎は、検察審査会に強制捜査されて、無罪になりましたが、最終的に、いわゆる代表弁護士の弘中惇一郎さんがどういうふうな判断をしたかといいますと、彼は、あれは事件として成立しない幻の事件だったということを刑事裁判の季刊誌で述べております。そういう問題をほったらかしにしておいて新しい制度をつくるかどうかということについては、私は、やはりどうかと思います。

 そのためには、やはり、大きく変わる、変わった、例えば資本主義の変わり方というのは極めて大変でございまして、私は、今の資本主義は戦争をビジネス化しているといいますか、戦争が資本主義を継続させるというような、そういうことになっておりまして、そのことの影響が様々な形で我が国の方々で出ておりまして、そのためにも、例えば政治と金の国民の信頼というのは、こんなことじゃ、やはりおかしくなると思います。

 お三人から第三者機関の話がございました。そのとおりでございます。

 しかし、その第三者機関も、今までも議論したんですが、行政権から独立したものじゃないと駄目だと思います。いわゆる行政権と議会というものは、ある意味で緊張があるべきものでございまして、そういう形での第三者機関であってほしいということと、それから、選挙管理もそうあるべきだと思います。それから、国政調査権の適切な機能が非常に行われていませんので、これの強化。そして、やはり多数決原理の一つの規制といいますか限界といいますか、そういうものの認識が非常に足りないようでございますので、これを十分持つ。そういう大きな政治改革の中で問題を解決していただきたいと思います。

 それから、最後に申し上げたいのは、実は、今年は、議会開設建白書、自由民権運動が始まって百五十年です。これのイベントというんですか、これを国会も政党もマスコミも、高知新聞が一つやったんですけれども、やっていません。忘れています。

 私は、そういう意味で、やはり国権の最高機関という憲法を作った基は、この自由民権運動をやった方たちの血と汗、そして昭和の戦争で亡くなった方たちの僕は魂だと思いますが、別の言い方をすれば、集合的無意識と言ってもいいんですが、これが作った憲法だと思いますよ。

 したがって、私は、歴史に学ぶということが、日本の国民、特に議会政治教育というのがほとんどなされていないという現状が、今回のような本の、根本の原因だと思いますので、歴史に学ばない民族は滅びるということを申し上げて、終わりたいと思います。

 失礼いたしました。(拍手)

石田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 まず、参考人の先生方、本当に貴重な御意見をありがとうございます。それぞれの先生から、今の問題だけではなく、歴史的な深い御見識や、あるいは私たち自民党が起こした問題に対しての根深さ、そして国民の不信の深刻さ、こういうことも御指摘をいただき、改めて、胸がえぐられる、本当に申し訳ないという思いでいっぱいでございます。

 その上で、私も二〇〇五年に初当選をさせていただいてから、いろいろな問題が起きました。そして、その中ではいろいろな改革をやってきました。例えば、一円から領収書を見せるようにするとか、外部監査を義務づけるとかですね。こういう改革をやってきてもなおこういう問題が起きたということについては、本当に申し訳ない、じくじたる思いもあります。

 一方で、例えば議員年金の廃止ということを私が一期目のときにやりました。これは余り国会で議論はしなかったんですけれども、当時、小泉総理が御決断をされて、廃止だ、こうなったわけですね。ところが、そのときに、余り意識していなかったんですけれども、地方議員の方の議員年金も廃止をされて、そして、代わりに例えば厚生年金をつくるとか共済年金をつくるとかいうことなく、いきなり国民年金をという形になったので、これが一説には議員がなかなか引退しなくなった理由にもなっているとかいう話もあったりして、あるいは、地方では議員のなり手が少なくなってしまった、こういう原因にもつながっているなんということがあります。

 他方で、我々、回っていても、議員年金を廃止したよねということは国民の皆さんは余り知らないで、議員はいいよね、年金たっぷりもらってとか言う人が結構います。

 それぞれの改革が、今の時代だけじゃなくて、今後政治家になろうという人とか、政治家そのものの活動にどう影響するのかということは、私は、やはりよく考えて、どういう政治が正しいのか、どういう政治活動を国民は期待しているのか、こういうところはちゃんと考えなければいけない、こう思っています。

 その意味で、平野参考人がこの国会ではやるべきじゃないと言ったのはちょっと衝撃的だったんですけれども、他方で、谷口参考人は、この国会でやるべきこと、これは、今回の問題が起きた、この再発防止をやらなければいけないということについてはやはりこの国会でやらなければいけないだろう、そして、より長期にわたることについては中長期で、与野党を超えて、しっかり政治のあるべき姿を考えながら議論しろという話だったというふうに思います。

 このように、この国会でやるべきこと、そして、もう少し中長期に、今後の政治の在り方、これから政治家になろうとする人たちへの影響を与えることも含めて、二段階的にやっていくという考え方についてどうお考えか、これは成田参考人と川上参考人にお伺いをしたいと思います。

成田参考人 突然の御指名で、ちょっと頭の整理がついておりませんが。

 今回、岸田総理は是非とも今国会でというふうにおっしゃっておりますけれども、果たして、国民が批判をしている政治資金制度というものが今国会で解決がつくかということを考えれば、非常にそれは難しいと思うんですね。

 それで、考えてみますれば、平成の政治改革というものは六年かかりました。五つの内閣が関わり、政治改革を原因に二つの内閣が潰れました。さらに、自民党が仕上げることができなくて、政権交代をやって初めて実現したわけですね。それほど大きな課題であると思います。

 それで、あのときは選挙制度でございまして、今回は政治資金が中心ですが、政治資金はまた難しいといえば難しい点もいろいろございます。取りあえず、自民党の方では再発防止という言葉をお使いですが、そのための改革をやる、あるいは、各党それぞれありますけれども、共通するところは今回で仕上げるということがあってもよろしいかと思いますけれども、やはり、長期的にどのように政治資金の問題を改革していくかということは、各党合意で御検討されるのがよろしいのではないか。谷口参考人からもロードマップというお言葉がございました。是非、そういうロードマップを各党合意で描いて、政治資金問題を今後このように解決していくという道筋を国民に示していただきたいというふうに思います。

川上参考人 御質問ありがとうございます。

 今やるべきことは何なのか。

 これだけ各党のいろいろな案が出そろっている中で、やはり、国民が疑念を持っている部分の透明化をできる限り図っていく。その中でも、やはり透明化が図りにくい、国益の点からですね、それは私も当然承知しているんですけれども、国民の不信がある以上、やはり透明化を図っていくということはやるべきである。連座制も当然ですね。

 中長期的にやるべきことは何なのかという御質問がございました。

 先ほど私申し上げたように、政治資金規正法だけでは中長期的には不十分であるというふうに思います。国民がもっと政治に関心を持って、民主主義を自分事にしていかなければ、これは、政治家だけが孤立して、私はいい政治をやっているよと言っても、国民は信用しない。

 ですから、国民のやはり監視と、そして国民の関心というものを政治に対してどういうふうに惹起していくかということについて、政治資金規正法だけでなくて、政治家の方々の努力も必要でしょう、情報発信も必要でしょう、そういうことを、いわば主権者教育に近いですけれども、そこに中長期的に力を入れていくことによって、政治参加も活性化し、政治に対する監視もきちんと行われ、そして政治の中に緊張感が生まれてくる、それが一丁目一番地かなというふうに私は思っております。

 ありがとうございます。

牧原委員 ありがとうございます。

 そうすると、四名の参考人の皆様とも、やはり、この国会でやるべきことと、それから中長期に、政治の在り方、本質を問いながら、我々与野党を超えてやり続けなきゃいけないことがあるんだというふうに意見が出そろわれたものと思います。

 その上で、まず、連座制という話がありましたけれども、連座制では法律用語として私は正しくないとは思っているんですが、大きく言うと、確認書を提出するということで、いわゆる先ほどの選任、監督権のうちの多分監督権の方ですね、こちらの義務を明確化するという案と、それから、政治資金報告書に名前を連記するという案が出ているわけです。

 私、弁護士でもあるんですが、連記すると、当然ながら、同じ義務を会計責任者の方と負うことになってしまう。つまり、一々、一つ一つを全部チェックして、政治資金報告書を、かなりの時間をかけて作っています。うちの事務所でいえば、二人の方が関わり、税理士の方が関わり、社労士の方が関わって、一か月丸々時間をかけて作っていくぐらい、大変な時間をかけて作っている。これは各事務所ともそうだと思いますが。それを同じように政治家がやると、一か月間は会計報告書を作るためにちょっと政治活動ができないということになりかねないかと私は思いますし、逆に、それだけのチェックをしないでサインをしたら、そのこと自体で過失が問われることに法的にはなってしまうのではないかと私は思いますが、この点について、谷口参考人に、この二つの案についてどういうふうにお考えか、お伺いをしたいと思います。

谷口参考人 お答えをいたします。

 いわゆる狭義の連座制、すなわち公職選挙法と同様に、国会議員関係政治団体の会計責任者が虚偽記載罪に問われた場合に、当該団体の代表者も罪に問われるようにすべきかどうかという点につきましては、これまでも種々御議論のあったところでございます。

 しかるに、今般の立憲民主党、国民民主党、有志の会案は、政治団体の代表者が自ら政治資金収支報告書の記載及び提出に関与することを定めるとともに、第二十七条三項におきまして、一定額を超える寄附を政治資金収支報告書に記載しなかった者は罰金刑に処すると。国会議員関係政治団体の代表者の過失を問いやすくしている、過失に対して責任を負わせることとしているという枠組みが取られているものと承知をいたしております。

 政治家本人の過失を要件とする点では、大きな方向性は、自民党案と方向性を同じくしておるというふうに認識をしておるところでございますので、政治家本人のどのような過失に対して責任を負わせるのかという点につきましては、各会派間のなお協議を通じて合意を見出されることを期待しております。

牧原委員 次に、例えばパーティーの問題とか問題になっておりますけれども、私、透明化の議論と、それから入りを制限をするという議論は別々の議論だというふうに思っております。

 透明化は、できるだけ高めるべきだと川上参考人からも繰り返し主張がありました。他方で、入りを余りに制限をすると、先ほどあったように、お金持ちしか政治家になれないというふうになる可能性があります。あるいは、有名人で、そもそも知名度をやる必要がない、そういう人に新人の無名の人が挑むという構図がすごく難しくなってしまうのではないかと思います。

 あるいは、今例外とされた部分、例えば、今回、政治団体は例外とされているというのが野党の案だと思うんですけれども、私、いろいろな政治団体を調べました。政治団体って、例えば、個別の名前を出していいか分からないですけれども、アピール21という団体があるんですけれども、これは何の団体かみんな分からないと思うんですけれども、これはNTTの労働組合の団体でございました。物すごい多額の資金を出しています。というのは、企業、団体の場合には政党支部にしか寄附は駄目で、政治団体には寄附が駄目なんですけれども、政治団体から政治団体へは五千万まで寄附ができるんですね。したがって、上限もずっと大きいし、数千万単位で寄附がなされているという事例もざらにあるという状況でございます。

 あるいは、機関紙収入については、これは全く、機関紙収入しかありませんので、例えば、ある企業の方がぼんと百部、二百部買ってやるということもこれから可能になります。ですから、こういうようなところに流れてしまうという可能性もあるわけですね。

 私は、こういう意味で、やはり政治資金というのは広く、薄く、透明に得られるようにしていくというのが重要だというふうに思いますけれども、これは四人の先生に、余り入りを厳しくするとお金持ちの人が有利になってしまう、あるいは、一部の有名な人しか、初めから知名度がある人しかなかなか勝てなくなってしまう、こういう政治で方向性としてはいいのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。

谷口参考人 野党の皆さんは、企業・団体献金を禁止すべきだとおっしゃる。これに対して、自民党の皆さんは、出版、機関紙販売事業や労働組合の政治活動及び政治資金の透明性の在り方を議論の俎上にのせられようとしております。

 ある方が糧道を断つという表現をされましたが、お互いが相手の糧道を断とうとして泥仕合になり、我が国の政党政治全体に対する国民の不信感をあおる結果になることを、私は何よりも恐れるものであります。

 今般の政治資金をめぐる問題を受けて、しかるべき規制強化は当然必要でございますが、それと並んで、政治資金の透明化に何よりも力を注いでいただきたいと存じます。

成田参考人 お答え申し上げます。

 政治資金の入りを規制しようとすると、必ず、政治にはお金がかかるということが言われるわけです。

 それで、政治にはお金がかかるとおっしゃっている先生を調べてみますと、非常に、その先生の政治団体というのは収入が多いんですね。お金をいっぱい集めている先生方が、政治にはお金がかかるとおっしゃっていまして、少ししか集めていらっしゃらない、それでつつましく、それでも何回も当選されて活動されている先生は、政治にお金がかかるということは言わないんですね。

 そうしますと、お金をかけると切りがありませんから、やはり全体として政治にお金をかけないようにする、そういう政治をつくっていく、それは結局、欧米のようにボランティア中心の政治に日本の政治を変えていくという大きな方向性が必要ではないかというふうに思っておりまして、政治にお金がかかるということを入りの制限をしないことの口実に使わないようにしていただきたいというのが私の意見でございます。

川上参考人 ありがとうございます。

 私、政治にはお金がかかる、真面目に政治活動をしようとすればお金もかかるということを申し上げました。でも、私は、それでよしとしているわけではございません。お金はかかるんだけれども、こういうふうに使っているんですよということを国民が何か分かっていないのではないか。政治団体から政治団体へとか、各種団体からお金が流れるということを駄目だとは言いませんけれども、そういう現状があるということを国民がどれだけ情報公開で分かっているかということは問題だと思うんです。

 あとは、これは国民の判断だと思います。そういう政治はよくないと思えば、そういう政治について声を上げていくということだと思うんですね。

 私はやはり、ずっと申し上げているのは、透明化を図ることによって国民の判断に資するという姿勢が重要であるというふうに思います。これは駄目だというふうに判断するのも国民であって、そういったことに対してきちんと情報公開をしていくという政治家の姿勢こそが求められるのかなというふうに私は考えます。

 ありがとうございます。

平野参考人 この問題は現実と理想の隔離があり過ぎて、なかなかうまい運営はできないと思いますが、基本的には、やはり自由主義社会ですから、その人の能力と状況を尊重するのが基本ですが、ただ、最小限の政治競争の公平さというのは必要だと思います。

 気がつきますのは、二世、三世問題が出ているわけですが、政治資金団体の継承が、まるで事実上の相続権のように、そのように行われていること、これは与野党とも一緒、同じ問題だと思いますが、ここら辺は、全然そういう背景がない人が政治に出てくる場合との余りにも不公平な差があると思いますので、それは何らかの制度的な規制が要るんじゃないかと思います。

 以上でございます。

石田委員長 時間が参っております。

牧原委員 終わります。

石田委員長 次に、太栄志君。

太委員 太栄志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 四名の参考人の先生方におかれましては、本当に大変貴重な御助言をいただきまして、ありがとうございます。

 私、政治改革を進めるには大きなエネルギーが必要だと思っています。国民を巻き込んだ大きなうねりをつくっていくためにも、是非とも本日の質疑で先生方からまた御助言いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 早速、質問に移ります。

 まず、最初に谷口先生にお伺いいたします。

 先生は、平成の政治改革で中心的な役割を果たされた佐々木毅先生の東京大学における後継者であられます。また、御自身も平成の政治改革に関する御著書をお書きになられています。

 そこでお伺いいたしますが、政治資金に関して、平成の政治改革の意義と、そこで積み残された課題は何だったのか。そして、今回の各党の案で、その課題はどう解決されているのか、あるいは解決されていないのか。その点、総論的な話ですが、簡潔に教えてください。お願いいたします。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 平成の政治改革の一大コンセプトは、候補者個人の政治から政党、政策本位の政治。そのコンセプトの下に選挙制度改革が行われ、併せて政治資金制度改革も行われたわけであります。

 今般の一連の問題は、そうでありながらも政党のガバナンスが今なお不十分であるということが示されたものでございますが、ただ、今国会の短期日におきましてそれを全て一掃するというのはなかなか難しいということもありまして、取りあえずは事件の再発防止に今国会は集中をされ、しかし、ただ、それで十分となさらずに、政党政治の立て直しというところまで展望を示していただきたいというふうに申し上げている次第でございます。

太委員 ありがとうございます。

 それでは、次に成田先生にお伺いいたします。

 令和の政治改革の審議の進め方といいますか、落としどころですね、その点に関して先生にお伺いします。

 まだこの委員会での審議というのは始まったばかりですが、今回提出されています各党の案は隔たりが大きく、かつ、単独で法案を成立させることのできる会派もありません。そうすると、全ての法案が不成立となり、結局何も実現しないという事態も懸念されます。

 そういう事態は何としても避けなければならないというふうに思っておりますが、成田先生は、まさに平成の政治改革において、総理大臣首席補佐官として細川総理を助けられて、あの困難な状況の中で政治改革を実現に導かれました。

 そこで、今の、令和の政治改革を実現に導く何かいい知恵はないものか、御経験からアドバイスがありましたら是非とも教えてください。お願いいたします。

成田参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮するお言葉をいただきましたが、平成の政治改革を実現したのは、細川総理を始め、当時の連立の先生方のみならず、自民党の河野総裁を始め、自民党の多くの先生方の英知と努力と熱意によって実現されたものでございまして、私はちょっとそのお手伝いをさせていただいたというだけでございます。

 やはり、平成の政治改革を参考として幾つか申し上げられることがあるかと思いますけれども、先ほど、平成の政治改革は非常に長期に、時間をかけて行われたということを申し上げました。それで、それと同時に、政治資金問題も、今国会ということで簡単に片づけられる問題ではないので、長期にロードマップを立ててやるべきだということを申し上げましたが、もう一つ、平成の政治改革の教訓としては、有識者会議とか選挙制度審議会とか、外部の専門家の助言をいただきまして、それを生かして政治改革を実現したということがございます。

 それで、今回の、令和の政治改革におきましても、先ほど来話が出ておりますが、再発防止ということで、できることを今国会で成立させるということがありますが、同時に、長期間かけて政治資金問題を解決していくべきだ、こういう意見もございましたので、そのために、三十年間開かれていない選挙制度審議会、選挙制度審議会と言っておりますが、担当としては選挙制度と政治資金制度がございますので、この選挙制度審議会、第九次になりますが、これを発足させて、そこで公正な議論をしてもらいまして、それによって長期的な改革案を検討していくということが、各党合意で改革を成し遂げていく一つの方策になるのではないかと思います。

 また、政治改革だけをやっておいて国政を停滞させるわけにはいきませんから、ダブルトラックにしまして、政治改革の議論はやるけれども、同時に国政の課題は停滞させることなく進めていくということをやって、選挙制度審議会の答申などを生かして、最終的に政治資金制度の問題の改革を図っていくというのが、恐らく合意に達し得る一つのやり方ではないかと思いますので、御参考までに申し上げさせていただきました。

太委員 成田先生、本当にありがとうございます。全く想定していませんでしたが、具体的な、有識者の助言をいただけるような選挙制度審議会の設置ということを御提案いただきまして、ありがとうございます。

 もちろん、今国会で実現させることは実現していく、一方で長期的な視点を持ちながらこういった審議会を設けてということで、しかも、先生おっしゃった、これも大事なポイントだと思います、政治改革も大事です、ですけれども、政治の停滞を招かないためにもこういった審議会ということなんです。

 ここでお伺いしたいんですが、谷口先生、ほかの参考人の先生方にもお伺いさせてください。

 今、成田先生から御提案がありました。今後の進め方ということも含めてなんですが、有識者からの助言をいただくための選挙制度審議会、今度は第九次になるんでしょうか、こういった審議会を設けて審議を進めていく、この点に関して、先生、先ほども、ロードマップを持って、長期的な視点も大事だということをおっしゃられましたが、この点に関して御見解を教えてください。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 九次審いかんというお尋ねでございますが、その前に、一つ言葉を補っておきたいと思います。と申しますのは、先ほど来二段階方式というのが議題になっておりますが、私が申し上げておりますのは、今国会においても、中長期的なビジョンに対してはロードマップまで描いてくださいということであって、二段階目は決して先送りではないということは強く申し上げておきたいと思います。ですので、もしこの九次審なるものが組織をされたとしても、それが単なる先送り、すなわち七次審までのような、結果が出ないというようなことであれば、これは何の意味もないものであります。

 ですので、先生方におかれましても、九次審を設置した場合においても、それがどういう結論を得て、それによって何をすべきかというところまで含めるのであれば、九次審の設置というのもあり得るかと思います。

 しかしながら、正直申し上げまして、政治改革に対するアイデアというものは、この三十年間、既に出尽くしていると言っても過言ではないと思います。すべきかすべきでないか、やるかやらないかという議論に達しているのではないかというふうに思われますので、中長期的な部分という課題というのもありますけれども、その間に先生方がおできになることは山ほどあるというふうに御期待を申しておる次第でございます。

川上参考人 ありがとうございます。

 九次審について御質問をいただきましたけれども、それは私は意味のあることであるというふうに思っています。

 しかし、九次審で議論できることとそうでないことがある。冒頭も私が参考人の陳述で申し上げたように、政治家に徳を積んでもらうということは、九次審をやったって、これはどうにもならないですね。

 しかも、今、新しい政治の動きがあり、そして、若い人たちが、選挙妨害と思われるようなものをテレビのニュースで見る。政治ってこんなもんなんじゃない、政治家ってこういうことをやるの、そういう声がたくさん学生からも聞こえてまいります。そうじゃないんだ、政治はそうじゃないんだ、一人一人が徳を積んで、そして有権者に、国民に対して本当に真摯に向き合うんだということは、九次審で有識者が幾らアドバイスをしたとしても、どうにもなるものではありません。

 ですから、基本として、皆さん方が自分たちを磨いていく。磨いたら磨いただけの光あり、性根玉でも何の玉でもという言葉、私大好きなんですけれども、そこを中心にして九次審があるということを、ちょっと精神論になりますけれども、私は苦言を呈させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

平野参考人 お尋ねのポイントというのは、前回の政治改革の反省といいますか問題点のことだと思いますが、私は、率直に言いまして、前回の場合、外国の制度をどうやって参考にするかということが主体で、肝腎な日本人の物の考え方、それから日本での改革の歴史、議員も我々も関心が薄かったところに問題があると思います。

 私は、はっきり言いまして、根本的に、明治、大正に振り返って、政治改革、政治と金、選挙制度の問題は、根本的に見直すべき、勉強し直すべきだと思います。大正の原敬が改革したときに、小選挙区を吉野作造が主張し、美濃部達吉は比例区で論争しましたからね。そういう論争をやらなきゃ駄目だ。

 最後に、この法案の取扱いを一つ間違えて早くやりますと、政局が後ろにありますから、そこら辺は十分に考えておかにゃいかぬと思いますよ。政局に利用されないようにしてください。

太委員 先生方、どうもありがとうございました。

 まさに我々政治家の覚悟が問われている。もちろん、今国会でしっかりと結果を残さなきゃいけないと私は思っていますし、決して先延ばしであってはならないという覚悟を持って取り組んでいきたいと思っていますので、先生方の御助言、本当にありがとうございました。

 では、次に移ります。ちょっと時間がないですね。

 先ほど来、先生方からもありましたが、まさに第三者機関ですね。私も地元の方たちからやはり言われるのが、今回法律を改正したとしても、どうせ政治家はまた抜け道をつくって同じことを繰り返すのではないかというところで、やはり、常に政治家の資金を監視する第三者機関、これはイギリス、アメリカ、フランスもありますね。

 そういった意味で、先ほど谷口先生、三期九年、総務省の現行の政治資金適正化委員会ですか、務められたということ、所属されたということもありましたが、先生、これをどう改革をしていくのか。先生は先ほど、これをバージョンアップするという形でお話しされたと思うんですが、この機関というのは、現在、登録政治資金監査人の研修の企画とかマニュアルを作ったりとかそういった形で、相当規制が弱い形で、ほとんど何か実効性のない形じゃないかと私は認識しているんですが、それをどう実効性のある監査機関にしていくのか。その点、もう少し御見解を教えてください。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。時間が短うございますので、端的にお答えさせていただきます。

 先ほども若干申し上げましたけれども、私の意見といたしましては、総務省政治資金適正化委員会を、内閣府設置法第六十四条に基づく、いわゆる第三条機関に格上げをする、要するに、公正取引委員会のような権限を持たせるということでございます。

太委員 最後に、成田先生からも、この点、先生の御見解、第三者機関に関して、御見解を含めてちょっとお伝えいただけますか。先生、お願いします。

成田参考人 現在、政治資金規正法の所管官庁は総務省になっておりますが、総務省は全く、何の権限もないんですね。政治団体の届出を受理したり、政治資金収支報告を受け付けるというだけで、しかし、何か疑問があっても、名前が書いてないのはこれを書いてくださいと言えますけれども、中身に疑義があっても、訂正してもらうことも何もできない。

 今回の闇金事件で、自民党の多くの議員で、政治資金収支報告の訂正というのが出ました。インターネット公開の収支報告書に訂正版が出ております。その訂正版には総務省の判こが押してありまして、願いにより訂正すると書いてあるんですね。ですから、あれだけのことがあっても、総務省は訂正してくださいと言う権限はないんですね。

 ですから、こういうことではやはり政治資金の透明化ということは十分に達成できないと思いますので、谷口参考人も言われましたような、内閣府に設置するような委員会として、もっと強力な行政権限、立入り権限だとか修正命令だとか、そういうことが言えるような機関として設置する必要が是非ともあるのではないか。各国ではそれで十分な成果を上げているということなので、参考にすべきではないかというふうに考えております。

太委員 どうもありがとうございました。

 時間になりましたので、これで終わりたいと思います。

 御指摘いただいたとおり、今国会でしっかりと、我々も妥協せずに政治改革を進めていく、その思いで臨んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

石田委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 教育無償化を実現する会の斎藤アレックスでございます。

 日本維新の会との統一会派を代表して、参考人の皆様に質問をさせていただきます。

 本日は、お忙しい中、四名の参考人の皆様、本当に、来ていただきましてありがとうございます。

 今回の国会で大変な問題となっている政治と金の問題、平野先生から、最後、これは八十名以上の自民党の議員が関わっていた組織犯罪の可能性がある重要な問題であって、それがおざなりになったまま、解明されないまま政治改革の議論がなされてもしっかりとした改革は実現できないのではないかという趣旨の問題提起があったと思いますけれども、私もそのとおりだと思います。まずその点、谷口先生と川上先生にお伺いをしたいと思うんです。

 今、自民党が出された改革案に対しては国民、有権者の評価が大変低くなっていると思いますけれども、その最大の原因は、その中身ではなくて、一体全体、裏金問題、キックバック問題はどうなったのか、責任を取るべき人は取ったのかと。納税の時期が過ぎて、皆様納税をされて、これはちょうど納税の申告の時期にありましたけれども、これは、懐に入れていたんだったら、税金だったら脱税に当たって追徴課税をされて、悪質な場合は刑務所に入るわけでございます。何もなくて、一部の数人だけ起訴されて、あとは秘書だけ取調べを受けてと、そういったことで本当に済ませていいのか、済ませちゃいけないだろうという、その根本にある怒りが国民の間で収まっていない。これは当然だと思います。

 全容解明が全くなされないまま改革案を議論したとしても、どのような改革案であっても、有権者の政治改革に対する理解は広がらないと思うんですけれども、今回の発端となった裏金キックバック問題、これはどのようにして、今後、全容解明であったり、国民、有権者の理解を得られるような解決を果たしていくことができるのだろうか。そういったところをまずお伺いをしたいと思いますので、谷口先生そして川上先生の順でお願いできればと思います。

谷口参考人 お答え申し上げます。

 検察当局が明らかにし切れなかったものを国会の場で全てを全容解明するというのは、残念ながら、なかなか難しいかと存じます。

 というわけでございまして、政府・与党においては、ここの部分は、国民に対する説明責任と、選挙での国民の評価を仰ぐという判断をしたものと私は判断をいたしておりますので、私自身も、その説明責任、それからそれに対する再発防止策の提示、これがどれほど実効性を伴うものかというのを判断をして、しかるべき次の機会で一票を投じたいというふうに考えている次第でございます。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 今回の事例、私は、参考人の陳述の中で、甘えと行き過ぎ、慣れ、とんでもないということを申し上げ、その思いというのは変わっておりませんけれども、しかし、こういったことについて、国民が何てモラルがないんだというふうに怒っているというのが現実ですよね。でも、じゃ、検察当局がここからどこまでできるのかということも限界があると思うんです。

 それで、さっき谷口参考人がおっしゃられたように、国会の場でそれを明らかにしていくというのもなかなか難しい。そうすると、こういうことで政治不信の負債を増幅させましたという事実が残ると思います。ですから、そういうことをもって、こういう裏金づくりをして、まあ、おとがめなしと言ったらちょっと失礼かもしれませんけれども、そういう議員がいたんだということをもって判断をしていく。これは民主主義の中での一つの政治過程だと思うんですね。だけれども、それを、喉元過ぎたら熱さ忘れるではなくて、そのことをしっかりと、国民は、こういう負債があったんだ、政治不信の負債が積み重なった、じゃ、信頼の回復をやっていくのかどうかということを国民が厳しく見ていくべきだというふうに私は思います。

 ありがとうございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございました。

 お二方とも、国民の審判、選挙での国民の判断が、最後、それが最も重要ですし、それしかこの問題の、解決とは言わないですけれども、今後どうしていくのかといったら、選挙に問うしかないというような御意見だったと思いますので、しっかりと私たちも受け止めて、そのことを、有権者の皆様には是非ともしっかりと選挙の際には判断基準にしていただきたいというふうに考えております。

 関連してなんですけれども、次、平野参考人にお伺いをしたいと思います。

 最後、参考人がおっしゃったように、今年、一八七四年の板垣退助さんらの民撰議院設立建白書から百五十年という節目になるわけでございます。当時は、大久保利通卿を始め、当然、選挙で選ばれていない、いわば官僚の方々が政治を握っていたけれども、それに対して、ちゃんと選挙で選ばれた政治家が国の方針を決めようということで、新たな方向性を板垣退助さんらが出されて、それを基に議会ができて、今この状態で議院、議会があるわけでございます。

 それを踏まえると、今の状況を大変、平野参考人は危機感を持っていらっしゃるんだと思います。この組織的な犯罪が行われるような状態で、それがうやむやにされて、そして、解決策がしっかりとできるかどうか。なかなか今の状態では、不透明な状況になっていると思います。

 先ほどの陳述で興味深かったのが、政倫審で物事を解決しようとした、政倫審で進めようとしたということがそもそもの間違いなんだというお話がありましたけれども、では、国会は、この裏金問題、キックバック問題、どのようにして取り組んでいくべきだったのか、あるいはこれからいくべきなのか、そういったところを、まずお話を伺えればというふうに思います。

平野参考人 政倫審というのは、基本的に、個人の議員、政治家の政治的、倫理的責任を問うところでございます。ですから、このような大変構造的な問題について、政倫審ではちょっと扱える場所じゃございません。

 ですから、本当は、予算委員会なら予算委員会で、そこで野党が一致して真相究明の要求をして、予算の審議というものよりこっちの方の結末をつけるのを国民は期待しているし、それじゃないとこれは議会の崩壊の問題などという腹を据えた国会運営をやるべきだったと思います。そうすると、与党も応じざるを得ません。そこで議長が出て一つの政治的な判断が出たと思いますが、そういう形を取るべきだったと思います。

 ですから、あそこで、浜田自民党国対委員長が政倫審でやる、それで野党第一党の国対委員長が五十人ぐらい出そうというところで、私は、ああ、これでこの問題の真相究明はできないというふうに感じたわけでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 平野先生からは、今国会での真相究明に当たっては野党側も迫力が足りなかった、しっかりとするべきだったというお叱りを受けたというふうに思っておりますけれども、この点も踏まえて、しっかりと取組を続けていきたいというふうに考えております。

 今回の政治資金の議論の中では、透明性をいかに持たせるのかということが重要だというお話がありました。

 先ほど、成田参考人からは内閣官房機密費のお話もありました。金庫があることは知っているけれども、直接取扱いをされたことであったり取扱いを見たことはないというお話だったというふうに思います。

 一方で、平野参考人におかれましては、官房機密費を実際に取り扱われた経験がおありだということを伺っております。

 先日、中国地方のとある元官房長官の証言として、選挙対策として官房機密費を使ったという報道がありました。その後、こちらの委員でもいらっしゃいます自民党の鈴木委員はテレビで、そういったふうに使われていることはないと断言をするということをおっしゃいましたけれども、実際に鈴木委員も内閣官房機密費の取扱いに関わったことはないでしょうし、見られたこともないと思います。

 こういった選挙対策に使われていたり、あるいは国会対策、与党の国会対策の費用として、内閣官房機密費から、野党の国会対策委員長であったりそういったところに、議長に会ったりとか、お金が渡されるということがあったというような証言も繰り返し繰り返し出されているわけでありまして、この内閣官房機密費に対する疑念というのは国民の間でも依然として極めて高い状態になっていると思います。

 実際に内閣官房機密費は何に使われていたのか、それは問題だと思いますけれども、じゃ、どういったふうにこの内閣官房機密費の改革をしていくべきだとお考えなのか。その点、平野参考人からお伺いしたいと思います。

平野参考人 私は内閣の職員をやったことがございませんので、機密費そのものを主体的に扱ったことはございません。

 ただ、私が承知していますのは、佐藤内閣の初めまでは、内閣の機密費というのはほんの僅かだったんですよ。したがって、国会対策とかなんとかというので与党が使うのは、派閥の資金とか、そういうものだったんです。

 日韓条約で、非常に、対外的な、韓国での活動で要ったものですから、そのときに、機密費がないんですから銀行から借金したということは承知しております。

 その翌年の四十一年から、これはやはり国会対策にも要るなというので、国会の中に、個別の国会対策をやる議員にそれを入れ始めたというように承知しております。私は園田副議長の事務局の秘書をやっていましたので、私もそれに関わっておりました。

 しかし、八年たちまして、私が前尾繁三郎衆議院議長の秘書をやったときには、突然、官房長官が議長の私邸に、一定の額の、盆暮れの対策として機密費を持ってきて、それで、前尾繁三郎という宏池会をつくった人は非常に保守本流の厳格な人で、これを受け取らぬわけですから、官房長官が帰った後、私が呼ばれて、廊下にほっぽり出されて、こういうことをするから民主主義が育たないんだと。そう言われたって私は困りますので、集めて袋に入れて院内に持って帰って、事務総長に相談して、いや、四、五年前からそんなことがあるらしいから、やらぬわけにはいかぬから、おまえ、袋にそれぞれ入れて配れと、そういう体験をしたことがございます。(発言する者あり)それが今続いているかどうかは知りません。

 私も政治家をやりましたものですから、いただいたり、それから渡したりしたことも経験がございます。しかし、悪かったと思ったことは一つもありません。これが普通だと思いましたので、そこは申しませんが。ただ、これはほっとくもんじゃない、アメリカなら二十年ですか、絶対に公開する仕組みをつくるべきだという意見はかねがね持っておりました。

 以上でございます。

斎藤(ア)委員 平野参考人、ありがとうございます。

 先ほどのお話だと、日韓の国交正常化のときに対策費が必要で、外交案件、こういったところにお金が必要だというのは、これは有権者の皆様に堂々と説明ができる使途だと思いますけれども、一方で、選挙のことなんて言語道断ですけれども、国会の中で物事を円滑に進めるために札束を渡すみたいなことも、これはとても有権者に説明できないし、説明できない使い方は、機密費であってもしてはいけないと思いますので。

 今二十年後といったお話がありましたけれども、例えば、日本では、先ほどの話では、三十年たったら外交文書は公開をされるかされないかということがあるみたいですけれども、そういったところで、何年かたった後にしっかりと公開をするということを機密費でもしていかないと、これは政治全体のお金の在り方に対する疑念が残る要因になると思っていますので、そういった今の証言なども参考にさせていただきながら、自民党の皆様にも、そういったふうに使われていないと断言できるということは、これはないと思いますので、しっかりとこの機密費の議論にも応じていただきたいというふうに考えております。

 最後になるんですけれども、川上参考人にお伺いをしたいと思うんです。

 今回、政治的な疑念が大変高まっている中で、我々政治家自身に徳が求められているということをおっしゃっていました。我々に徳があるのかないのかというのは、これこそ選挙で判断していただくしかないわけでございますけれども。

 今回の議論の中で、先ほど私が申し上げたように、真相究明であったり、国民、有権者が一番気にしているところが明らかにされないと、どのような厳しい改革案を出したとしても、有権者に納得されずに、どんどん政治に対する不信が高まっていくということにつながっていくというふうに考えております。

 ちょっと繰り返しみたいな質問になってしまって恐縮、私も松下政経塾で先生に御指導いただいていたわけで、先ほど松下幸之助先生のお話も何回も伺っておりますけれども、政治改革というか、我々、日本の政治、これから議会政治をどういうふうに発展させていくべきなのか。かなりざっくりしたお話になりますけれども、改めてお伺いできればというふうに思います。

川上参考人 ありがとうございます。

 政治改革というのは、一回たりともとどまってはいけない、止まってはいけないというふうに思います。常に、国民の皆さんがこれはおかしいんじゃないか、ここはこうしなきゃいけないんじゃないかということを真摯に受け止めながら、もう政治改革特別委員会があるからということではなくて、毎日、今もうインターネットの時代ですから、メディアを通してもいろいろなことが語られる、それに対して政治家には是非敏感になっていただきたい。

 アメリカだって、毎日のようにインターネットで世論調査をやっていますよね、ここが悪いからこうだ、あそこが悪いからこうだ。昔と違います。ですから、政治家には是非国民の声に敏感になっていただく。別にポピュリズムの必要はありませんけれども、その敏感に捉えたことについて、自分はこう思うということを積極的に発信していただく。それで自分も変わっていくんだ、そういう気持ちを持って政治に臨んでいただきたいというふうに私は願ってやまないものであります。

 ありがとうございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございました。

 皆様、本当にありがとうございました。

 私も、この事件が起きた後、野党である我々にも選挙区の有権者から大変厳しい声をいただいていますので、国会、日本の議会制の危機だと思って、しっかりとした改革を実現できるよう、会派一丸となって取り組んでいきたいと思います。

 本日は誠にありがとうございました。

石田委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。

 本日は、四名の参考人の先生方、本当に貴重な時間をいただきまして、心より御礼を申し上げます。

 それで、今日は大変に貴重な機会でございますので、私は、具体的な内容について各先生方の御見解をこの特別委員会の場で是非お伺いさせていただきたいということで、何点か御質問をさせていただきます。

 最初に、現行法への認識及び自公取りまとめと、自民党案における、特に代表者である政治家の監督責任の強化と罰則の強化について、これは谷口先生と川上先生にお伺いしたいと思います。

 今回の自民党の派閥を中心とした政治と金の問題においては、検察による立件は、派閥の会計責任者、さらには議員、また秘書のみにとどまって、いわゆる、この検察の捜査結果については、甘かったのではないか、こういった指摘も聞かれたところであります。

 しかし、私は、今回の問題の本質は、決してこの検察の捜査に問題があったのではなくて、その根拠法である、まさしく政治資金規正法の不完全性、これが大きな問題があったというふうに認識しています。これはもう既にいろいろな論調がありますが。

 そして、この規正法の不完全性について、谷口先生は、昨年の十二月二十一日の読売新聞の記事を拝見させていただきましたが、このようにおっしゃっています。緩い法規制を温存させてきたのは政治家自身であり、抜本的な改革が必要だというふうに述べられ、また川上先生も、本年三月の月刊誌の中で、政治資金規正法は政治家が自分たちに都合がいいように作ったざる法だという批判があるというふうに述べていただいております。

 そこで、両参考人に改めて伺いますが、先生方が考える現行法への改めての御認識をお伺いしたいのと、あわせて、今月、五月の九日に、自民、公明の案が取りまとめられました。さらには、その取りまとめを基に本委員会に提出された自民党案に盛り込まれた、特に代表者である政治家の監督責任の強化と罰則の強化につきまして、その認識と評価、ここを是非お伺いさせていただきたいと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、政治資金規正法、現行法の全体的な評価につきましては、もちろん、一九九四年の政治資金規正法の大改正によって、ざるの目が大分小さくなった、細かくなったということは確実に言えようかというふうに思います。

 実際問題も、政治資金団体、総務大臣届出分それから地方選管届出分、総収入額というのはピークの大体六割の水準に落ちてきているということもそれを客観的に物語っているかと思いますが、ただ、当時から、先ほど来申し上げておりますようないろいろな問題点というのは残されてきたわけでありまして、なかなか着手する機会というのがなかったということでございますので、この際、是非、御一掃をお願いしたいというふうに存じ上げるところでございます。

 その上で、政治家に対して責任を問う仕組みについての評価いかんということでございますが、自民党案に限って申し上げますと、事件の再発防止という観点から申し上げますと、還付金や留保金は当該国会議員関係政治団体に係る収入とみなされるということ、かつ、会計帳簿には当該国会議員関係政治団体に係る収支の状況が記載され、この法律の規定に従って収支報告書が作成されていることの確認とは、ほかに会計帳簿や収支報告書に記載すべき収支が存在しない旨を代表者が会計責任者に明示的に確認できることと解釈できるのであれば、今般、国会議員が還付金や留保金の存在を会計責任者から知らされていなかったと説明したケースのうち、会計責任者は代表者から質問されなかったから知らせなかったという部分については、代表者に対する責任を一定程度問いやすくしたものと言えるかと思います。

 これらの点の一部につきましては既に先週の本委員会でも質疑がなされたところでございますが、かような解釈が法案提出者の意思に合致しているかどうか、また、合致したとしてそれで十分とするかどうかは、今後の審査を通じてより明確にしていただければと存じます。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 二点御質問をいただきました。

 現行の政治資金規正法に対する認識、私がざる法であるというふうに月刊誌で申し上げたということを引用していただきましたけれども、ただ、谷口参考人がおっしゃったように、最初に比べると、大分規制はかかるようになったとは思うんです。

 しかし、政治家を信用していないわけではないんだけれども、政治資金規正法の裏をかいてというか、政治資金規正法が及ばないようなところで何かやろうとしているんじゃないかという疑念を国民が持っている、それが私が御紹介した世論調査に表れているんですね。政治家にはモラルがないからこういうことになるんだ、それはお金の問題だけじゃないわけです。ほかの問題についても、スキャンダルがあったりとかいろいろなことがあったり、政治家というのはろくなことをしないんじゃないかというような、そういう認識を国民から持たれていて、その一環として、政治資金規正法も、やはりざるの部分があるからこうやって政治家が問題を起こすんだというふうに、私の世論調査を見た部分では、思われているんですね。

 であれば、襟を正して、こういう部分については再発防止のためにきちんとやりますということを各会派で御相談をしてきちんと前進させるということが、今国会における政治改革特別委員会の責任ではないかなというふうに一つは思っております。

 それから、二点目の御質問でございます。代表者の監督責任についてどうなのかということであります。

 先週、質疑の中で、自民党案では不十分であるというような質疑がなされたことも承知しております。そうであるならば、これは各会派が歩み寄って、やはりこれは会計責任者の責任にするのではなくて、先ほど牧原委員から、そればかりで政治活動ができなくなるというような、そういうような御指摘もありました。でも、それは各会派が御相談をきちんとされて、国民の政治不信を解消するためには、政治家本人がこういう責任の取り方をしなければいけないということについてきちんとした成案を得ていくということも、やはり政治家の責任なのかなというふうに思います。

 その点については、自民党案で不十分であるという指摘をされたところについて、より厳格な野党案との歩み寄りを私自身は期待したいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 次に、二点目に、第三者機関の設置の必要性について、これは意見表明等からもありました。ここを谷口参考人とまた川上参考人にお伺いしたいと思うんです。

 第三者機関の設置の必要性及び検討は、私ども公明党も、一月に発表した政治改革ビジョンの段階からこれは強く求めてきた一つでありまして、自公取りまとめにもその内容を入れたという形になっております。

 この必要性について、谷口参考人は本年五月五日の読売新聞などにおいて、独立性の高い第三者機関の設置が重要というふうに述べるとともに、その機関には、一つには、政治資金収支報告書に疑義がある場合に調査を行い、捜査当局の立件に至らないケースでも、課徴金や政党交付金の減額などを科す権限を与える、これにより、少額の違反行為でも責任が明確にできる、このようにおっしゃっています。

 また、二つには、これは二つ目が私は大事だと思っておるんですが、政策活動費の使途の公開にも第三者機関が有効であると。具体的には、政策活動費の使途は原則公開とする一方、もし国益上明らかにできない使途があるのであれば、第三者機関が審査して認める仕組みをつくればよいと述べられております。

 また、川上参考人も月刊誌で、政府から独立した形で政治資金を監督する第三者機関を設置することは最大の肝になると思う、きちんと制度面で透明化を図り、政治家に緊張感を持ってもらうためには第三者機関の設置が最も効果的、このように述べていただいております。

 改めて、この政治と金の問題及び政治改革における第三者機関の設置の必要性、ここでも参考人からお伺いしたいと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 第三者機関の要諦は、現行の政治資金監査が国会議員関係政治団体の収支報告書の支出の記載と領収書の突合を外形的に行うだけにとどまっているところ、超党派で、国会指名人事とする政治資金適正化委員の第三者性を引き継ぎつつ、より行政から独立性の高い委員会を設立することによって、収入に対する効果的な政治資金監査や収支の妥当性を含めて質問や監査、現地調査など実質的な調査を行ったり、違反行為に行政罰を科したりできるようにすることであります。

 このため、私としては、先ほど来申し上げておりますとおり、総務省政治資金適正化委員会を内閣府設置法第六十四条に基づくいわゆる第三者委員会に改組するのが適当であると考えておりますところ、今般、自民党案においては、改正案の施行の状況等を勘案して必要があると認められるときは、独立性が確保された政治資金に関する機関の活用も含めて検討が加えられること、また、立憲民主党、国民民主党、有志の会提出法案においては、附則第十六条において、政治資金に関する政策の提言、衆議院議員又は参議院議員に関係する政治団体の政治資金に関する法令の遵守の状況の監視及び当該規定の違反があった場合における勧告等を行う機関を国会に設置をするということが提案をされております。

 設置形態や権限については違いがございますけれども、大きな方向性は与野党同じであるというふうに私認識しておりますので、是非、与野党協議の成案に取り込んでいただいて、今国会以降速やかに検討が始められることを期待申し上げる次第でございます。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 私も、月刊誌上において、第三者機関の設置というのが今回の政治改革の一つの肝であるというふうに申し上げました。

 これはもう与野党合意されると思いますけれども、やはりこの時代ですから、別の点から申し上げますと、政治資金収支報告書はデータベース化する。今AIも進歩していますから、銀行の審査と一緒で、これはちょっとおかしいなというのはすぐ察知できるような時代になってくると思うんですね。ですから、そういった、省力化という意味も込めて、AIを使ってきちんとした監視をやっていくということをこれから目指していくということはあっていいかなというふうに思っていますが、でも、AIの落とし穴というのは、これは言うまでもありません。筒抜けになる可能性がありますよね、ハッキング等によって。じゃ、それをどう防いでいったらいいのかということに非常に問題があるのかなと。

 透明化そしてAIの活用ということが、同時に、第三国にも筒抜けになったり、そういったことがまた日本における政治活動の自由を制限するようなことにつながらないような形で第三者機関がしっかりとした監視を行うということについては、私は大賛成であります。

 どうもありがとうございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今回、谷口参考人が本当に、この記事の中で、政策活動費の使途公開にもこの第三者機関が有効なんだという発言がありました。今、川上参考人からも同趣旨の話がありまして、私、ここは非常に意味のあるお言葉をいただいたというふうに思っております。

 最後に谷口参考人にお伺いして終わりたいと思うんですが、政治資金パーティーの公開基準及び現金によるやり取りの禁止についてお伺いします。

 谷口参考人は、一月十二日の朝日新聞、また二月三日の産経新聞において、パーティー券購入者の公開基準を現行の二十万円超から五万円超に引き下げることが最低限必要というふうに述べていただいていますのとともに、今日は引き下げるというようなお話でしたけれども、また、先生が主査を務める令和臨調は、その緊急提言の中で、「パーティー券の売買を含む現金による政治資金の拠出・収受の禁止」、これを提起されております。

 私も重要な視点かと思いますが、この先生がおっしゃっておりますパーティー券の公開基準の五万円超に引下げ、さらには現金による収受の禁止等を述べられておるその理由的背景、また思い、ここを最後にお伺いしたいと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 政治資金の対価の支払いをした者の氏名等の公開基準につきましては、一九九四年の政治改革関連法案の審議過程におきまして、当時の連立与党は五万円超、自民党案が五十万円超となっておりましたところ、各党協議の結果、現行の二十万円超とされたところでございます。また、このとき、寄附を行った者の氏名等の公開基準も五万円超に引き下げられております。

 このような経緯に照らしますと、この度、政治資金パーティーの対価の支払いをした者の氏名等の公開基準を五万円超に引き下げる案は、一九九四年当時の連立与党案を引き継ぎ、また、現行の寄附者の公開基準にそろえるという点におきまして、合理性を有すると考えられます。

 ただし、寄附は原則として、寄附された金額の全てが政治団体の実質的な収入になるのに対して、政治資金パーティーの場合は、会場借り上げ費、記念品代、講演諸経費等の開催事業費がかかりますので、パーティー券の売上げが全額当該政治団体の利益にはなりません。また、現在、政治資金パーティー券は一枚二万円が相場と言われておりますが、公開基準も五万円超というのは、パーティー券二・五枚超と、いささか半端が生じるわけでございます。

 かような諸点も含めまして、各会派御協議の上、よきところに合意点を見出していただきたく存じます。

中川(康)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 先生方、大変ありがとうございました。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は四人の参考人の皆様に貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に、四人の皆さんに御質問をしたいと思っておりますが、自民党の今回の裏金問題とは何なのかということであります。

 平野参考人は陳述の中で、裏金問題の本質の解明、これが中途半端にとどまっているのではないのかというお話をされ、これでまともな判断ができるのかということもおっしゃっておられました。谷口参考人の大手紙へのコメントなども拝見しますと、リクルート事件よりも根が深いということをおっしゃっておられたと承知をしております。

 そこで、自民党の裏金問題とは何なのか、その本質について、過去の政治と金の事件との違いを踏まえた特徴などについて、それぞれ御意見を賜りたいと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 今般の事件に対する率直な感想としては、やはりとまさかの両面がございます。

 まず、やはりと申しますところは、冒頭の意見陳述で申し述べさせていただきましたとおり、従来から、この政治資金パーティー制度には抜け穴がある、つくろうと思えば裏金がつくれてしまうというような制度になっているという危惧は、かねてより、私も含めて様々な研究者が指摘をしてまいったところでございます。ですので、今般、このようなパーティーを利用した裏金づくり、いわゆる裏金づくりが行われたということは、やはりそうであったかという思いがしておるところでございます。

 他方で、それが当時の安倍派、二階派という権力の中枢にある政策集団において組織的に行われているということに関しては私も全く想定をしておらなかったわけでありまして、このような点については想定外、まさかという印象を抱いて、ここは早急に法律の所要の改正が必要であるというふうに感じておるところでございます。

成田参考人 お答え申し上げます。

 私は制度の専門家でありまして、実態は、特に最近は永田町から離れておりますので、承知をしておりません。

 ただ、政治と金の問題というのは、古くは贈収賄だったわけですね。ところが、最近は贈収賄という言葉はほとんど姿を消しまして、最も頻繁に行われているのは不記載の問題になりました。裏金問題というのも不記載のことで起きているのだと思います。

 どうして贈収賄ではなく不記載が増えているかというと、やはり、ざる法と言われながら、いろいろな規制制度ができてきて、贈収賄に至る手前のところで法律で規制ができ網にひっかかるようになっている、そのせいではないかというふうに考えています。

 しかし、贈収賄にしても不記載にしましても、やはり基本は、政治に金がかかる、あるいは政治に金をかけている先生方がいらっしゃるということが根本にあるんだと思いまして、それで、やはり金のかからない政治を実現するということが基本ではないかというふうに考えております。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 私は、参考人の陳述でも申し上げたように、慣れと甘えと行き過ぎ、これに驚いているところであります。

 先ほど成田参考人からありましたが、昔でいうと、もうちょっとざくっと、リクルート事件とか未公開株を受け取るとか、そういう贈収賄に近いような形が多かったわけですけれども、曲がりなりにも政治資金規正法ができて、でも、派閥はお金を集めなければいけない、そうすると、各国会議員にノルマを課す。このぐらいはやってもいいだろう、大丈夫だろうという慣れがあった。甘えですよね、パーティー券をこれだけ売れば自分のものにしていいよねという甘え。そして、それが、多い人であれば何千万。行き過ぎであります。

 だから、私は、前のリクルート事件だとか、そういう政治とお金の問題と違うのは、政治資金規正法はできたんだけれども、やはり政権政党の中に、特に派閥に、慣れと甘えと行き過ぎがあったのかなと。こういう慣れと甘えと行き過ぎは二度とあってはいけないのではないかというふうに考えております。

 ありがとうございます。

平野参考人 私は、細川改革が抜け道をつくったとかいろいろ批判は多いんですけれども、それなりに効果があって、やはり政治資金が、企業から寄附をなかなか集めにくくなった。そして、ちょうど二十年ぐらい前になりますと、日本のやはり経済、景気がよくない、非常に経済が停滞した。そうすると、各企業から、経費で落とせるものをパーティー券として買うようになる。それを裏金にするのにつくられたのが裏金キックバックの原理じゃないかと思います。

 何のためにつくったかといいますと、ちょうどその頃、小泉政権がずっと続くわけですが、一時替わりますが、基本的にこの安倍派の政策の、政治は、私、一言で言えば金権カルト政治だったと思います。政治改革をさせない、政治改革を妨害するための資金づくりではなかったかと、僕はそこに本質があると思っております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、成田参考人と平野参考人にお尋ねをいたします。

 岸田総理、自民党総裁は、自民党裏金問題の真相解明の努力は続けなければならないと述べておりますが、自民党の法案提出者に、裏金問題は、誰がいつから何のために行ったのか、こういう問いをしましても、知る立場にないというにべもない答弁だったわけであります。自民党の聞き取り調査報告書の聴取事項にも、誰がいつから何のために、こういったことは問いにもなっておりません。

 そういう点でも、自民党として裏金問題のそもそもについて真相解明の努力を行っていないことについてどのようにお考えなのか、この点についてお答えいただければと思います。

成田参考人 自民党が真相解明の努力を行っているか行っていないかということについては、私は、ちょっと全く見当がつきませんので、その点についてはお答えを申し上げることはできません。

 ただ、先ほど平野参考人が言われましたように、政倫審というのは事実を解明するためのものではないというところは私も全く同感でございますが、平野参考人と少し意見を異にするところは、事実の解明のために予算委員会を使うというのは私は反対でございまして、やはり、国政の課題を停滞なく遂行していくというためには、予算委員会及びそのほかの委員会であっても、この第一委員室を使うような委員会の場は避けた方が適当であろう。

 そういうためには、やはり調査会をつくりまして、そこで別トラックで真相解明をやっていくというのは欧米では普通のやり方でございまして、かなりの長期間、何年もかけて、なおかつ二十冊、三十冊の報告書を作るという努力をやって事実の解明をやるわけでございます。日本は、予算委員会でやって、それで混乱して、すぐ忘れて終わりということになりますけれども、やはり別トラックで調査会を設置して事実を究明していくというやり方を、今回のことに限らず、日本の国会も身につけることが適当ではないかというふうに考えております。

平野参考人 予算委員会を止めてというのはちょっと極端なんですけれども、私は、予算の審議と、この日本の議会の崩壊の問題とを比べた場合に、国民の納得する範囲でそれはできると思います。そこのところは、一つの、私は多少暴言的なところもあったんですが、そこはやはり、民意、国民の意思、世論調査等も含めて、総合的な判断ができたと思う、この問題は。ロッキード事件とか、そのほかのあらゆる事件の中で、戦後の最大の日本の議会の崩壊の問題だったと私は思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、谷口参考人と成田参考人にお伺いいたします。

 三十年前のリクルート事件を機にした様々な政治と金の問題についての対処があったわけですけれども、そういった中で、谷口参考人から政党支部の問題の意見陳述をいただきました、成田参考人からは企業・団体献金によって日本の資源配分はゆがめられているという御発言もいただきました。

 私はやはり、三十年前の政治改革と称するもので、政治と金の問題について、特に企業・団体献金について、政党支部への献金と政治資金パーティー券の購入という二つの抜け道をつくることで企業・団体献金を温存してきた、そこに今回の裏金問題にも通じる点があると考えます。

 裏金問題の解決のためには、政党支部への献金、政治資金パーティー券の購入という企業・団体献金の二つの抜け道を塞ぐことが必要ではないかと考えますが、御意見を伺わせてください。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 政治資金パーティーと企業・団体献金、二つについて御質問をいただきましたが、一つにまとめてお答えを申し上げたいというふうに思います。特に企業・団体献金についてでございます。

 企業・団体献金につきましては、先ほど来、再三言及がなされておりますとおり、八幡製鉄事件の最高裁判決において、政治資金を寄附することは会社の権利能力の範囲内とされておるところでございますが、同判決の、会社は自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治行為をなす自由を有するなどとされた部分につきましては、行き過ぎであるという評価が憲法学の通説であります。判決自体も、企業・団体献金の弊害防止については立法に委ねておるというところは、本委員会においても既に指摘のあったところでございます。

 恐らく、このような観点も含めて、平成の政治改革においては、企業・団体献金に対する規制を強化し、個人献金と政党助成をもってこれに代えるという方向性が打ち出されたものというふうに承知をいたしておりますので、その延長線上にあって、この際、企業・団体献金を禁止しようという主張も理解をできるものであります。

 ただし、直ちに企業・団体献金を禁止いたしますと、例えば、従来、一つの企業から百万円の寄附がなされていたものが、当該企業の幹部二十名が個人として五万円ずつ寄附をするようになる、いわゆる個人献金への迂回が発生するものと予想をされます。実質的に当該企業から百万円の寄附がなされているのにもかかわらず、それが現在よりも見えにくくなってしまう、政治資金の流れの透明性をかえって妨げるおそれがあるわけでございます。

 したがいまして、企業・団体献金を禁止する場合においては、更なる個人献金の促進策、政党交付金の在り方、あるいは政治資金の支出の在り方等を総合的に検討した上で、激変緩和のための経過措置も含めて実効性のあるロードマップを描かないと、副作用が主作用を上回る事態になりかねないことを懸念する次第でございます。

成田参考人 まず、政党支部も政党として企業が献金ができるというのは、規正法二十一条第四項でございます。それで、この規定は、細川内閣の政府案で、政治献金は政党及び政党の政治資金団体に限るということにいたしましたときに、そうすると地方議員には政治資金が入らなくなるということで、地方議員が政党に対する企業献金を得られるようにということで挿入をされた規定でございます。

 あのとき、自民党は、議員の政治団体にも企業献金を認めるという規定をしておりましたから、政党支部を政党にするという規定は不要ということで、随分あのときは自民党に攻撃されました。こういう規定はおかしいということで盛んに言われましたけれども、今、自民党が大変その恩恵を受けているのではないか、こういうふうに思っております。

 それから、パーティーと企業献金と二つという問題は、まさに非常に日本の政治資金制度のゆがみ、つまり、モグラたたきを繰り返してきた結果、至った姿ではないかというふうに思っておりまして、要するに、企業献金を是認するのか否定するのか非常にはっきりしないということで、少なくとも、パーティーと寄附というものはやはり統一的に扱うのがいいんじゃないかというふうに思っておりまして。

 諸外国ではパーティーは全て寄附なんです。それで、今回の提案の中では、立憲、国民共同提案がパーティー禁止ということになっておりますが、全てのパーティーが禁止になっておりますが、やはりパーティーというのは寄附を集めるのに最も適切なやり方であり、政治以外の一般の世界でもパーティーを使って寄附を集めるということはやっておりますから、パーティーを禁止するということはしないで、パーティーは寄附と同じである、したがって、寄附で企業献金を禁止するならパーティーの対価の支払いも企業は禁止するという統一的な扱いにするのが現実的ではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

塩川委員 時間が参りました。終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 まずは、企業・団体献金につきまして、四人の参考人の皆様にお話を伺いたいというふうに思います。

 先週からこの審議が行われておりまして、その中で、企業・団体献金につきましては、政治をゆがめたり政策をゆがめる、また癒着につながるんじゃないかという指摘も上がっているところです。

 また、今日、川上先生がお示しいただいた新聞社のアンケート調査、世論調査についても、企業・団体献金については、利益誘導につながりかねないから認めない方がよいと答えた方が七九%いるということも上がっております。

 そこで、四人の参考人にお伺いしたいんですが、企業・団体献金が政治をゆがめたり政策をゆがめる、また癒着につながるということに関してどのような見解をお持ちか、伺いたいと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 端的に申し上げれば、ケース・バイ・ケースということになろうかと思います。

 企業、団体の中には見返りを求めずに献金をなされているところもあろうかと思いますし、いわゆる賄賂性と申しましょうか、暗黙裏に見返りを求めているというところもあろうかと存じます。これは個人献金についても実は同じだろうというふうに思いますので、まずは受け取る側の政治家の方の倫理性というのが強く求められているというのは議論の大前提であるということに変わりはございません。

 この先は、先ほど申し上げたことの要旨の繰り返しということになりますが、かような総合的な判断といたしまして、平成の政治改革においては、個人献金あるいは政党助成金によって企業・団体献金を置き換えていくという方向性を打ち出したということでありまして、この度、その方向性を更に強化をしていくということであれば、これはこれで一つの御判断かというふうに思われるわけでございますが、ただ、先ほど来強調させていただいておりますとおり、その場合の副作用が主作用を上回らないような様々な総合的な措置というのも併せて取られることが必要かというふうに考えております。

成田参考人 個別のケースを見ていきますと、利益誘導を求めている、見返りを求めている求めていない、いろいろありますが、やはりマクロに観察すると、企業献金と資源配分というもののゆがみという間には相関関係があるということは間違いのないことだろうというふうに思っております。

 それで、一九七〇年の八幡判決のときには、あのときには、経済界は自由主義経済体制を守るためという理由で企業献金をしたわけですが、今、自由主義経済体制を守るためということが必要になっているわけではありませんで、そこで、企業も社会貢献という言い方をしておりますが、社会貢献で意見が割れる中の政治の一方に資金を提供するというのはやはりおかしいわけで、そろそろ企業献金は廃止にする時期にかかっているのではないか、諸外国でもそういう傾向は明らかに存在するわけですから、日本もそうすべきではないかというふうに考えております。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 企業・団体献金についてどう考えるかということですけれども、ゆがめている部分は確かにあるかもしれません。しかし、いろいろなレベルがあると思うんですよね。

 自分の企業に利益をもたらすような政治家だからということで献金をするというのはもちろん論外であります。政治家の皆さん、皆さんそうだと思うんですけれども、献金を受けるということと、それを自分の政治活動で私的な利益と関わらないようにどういうふうに公益として政治をやるか、これは政治家をやっている以上ずっと悩まれていることだと思うんですね。私の高校の先輩の政治家の方もずっとそれに悩み続けて政治家をやってきたというふうにおっしゃっています。

 ですから、これは、要は、私もるる申し上げておりますように、透明化が図られることによって、国民は、こういったことについて、この企業、団体は献金したんだけれども、でも、それは、その企業、団体にもろに有利になるようなことをやっているじゃないかというふうなことになれば、国民の評価を落とすわけですよね。

 だから、そういうような意味において、企業・団体献金を一律禁止しているのに、じゃ、先ほど谷口参考人からもあったように、個人の役員が、例えば、個人の立場で献金をするんだけれども実際には企業献金がばらけているにすぎないというような、目に見えない形になっていくと国民も判断しにくくなると思います。あるいは、強制的に徴収されて、それがやはり勝手に、これは企業のガバナンスの問題ですけれども、勝手に使われるということになると、個人としても納得できないことは出てきますよね。

 いろいろな意味での透明化を図りながら、それが、その企業だけのための利益に資しているのか、あるいは、献金していることによってこういう活発な日本における経済活動が守られているのか。そういう、献金に余り縁がないようなところというのはどうしても目が届きにくくなってしまいますよね、そこに目を届かせるのも一つの政治家の責任かなというふうに私は考えています。そのバランス、そしてそれを見る国民の目を養っていくということが何より大事なのかなというふうに私自身は考えます。

 ありがとうございます。

平野参考人 私は、個人献金も企業献金も団体献金も、これはやはり本質的には同じものでございますので、それをばっさりと法律で禁止することはやるべきでない。本質は浄財なんですよ。そのまた本質は、それを浄財として扱わない候補者、有権者、そっちの方に立候補の権利とか投票権を与える方がおかしいんですよ。

 だから、国民にまず政治資金というのはこういうものだという本質を一切教えずして、ばっさりとした法律でつくることは慎重であるべきだと。

 アメリカだって禁止していると言われていますけれども、柔軟な、いわゆる浄財に当たる方法はたしかあると思います。そういうことについてはやはり慎重、議会政治の基本ですから、慎重でなくてはならないという意見でございます。

長友委員 ありがとうございます。

 続きまして、政治資金パーティーについて同じく四人の参考人にお聞きしたいと思うんですが、我が党は、政治資金パーティーについては、現行の政治資金規正法の範囲においてきちんと収支報告書を記載するというルールを守るということで、政治資金パーティーをやって政治活動費を自分で稼ぐということは必要であるという立場でございますが、我が党だけが主張していることが一つございまして、それは、パーティー券を外国の方に販売してはならないということになります。

 この外国人や外国企業に、パーティー券を購入することを禁止するということを是非実現をしたいと私どもは思っているんですが、この点につきまして四人の参考人の見解を伺います。

谷口参考人 ただいま委員御指摘の点につきましては、私も賛成をするところでございます。

 関連をいたしまして、企業・団体献金につきましても、外資系企業による寄附というのは、併せて、この際、再検討に付されるべきであろうというふうに思われるわけでございます。

 かつての政治資金規正法は、株式五〇%以上を外国人や外資が保有する株式会社による寄附を禁止しておりましたところ、二〇〇六年に自民党が提出をし、公明党、民主党も賛成をして、日本国内の法人で連続五年以上上場している外資系企業は寄附できるというような改正が行われたわけであります。

 当時、各党から意見を問われた際に、これはやめておいた方がよいのではないかというふうに私申し上げたわけでございますが、そのようになったということでございます。

 この是非はともかくといたしまして、これは二〇〇六年のことでございます。委員御存じのとおり、その後の国際情勢の激変というものを鑑みますれば、この措置を続けるというのが果たして適当であるかどうかというところも併せて御検討賜りたいというふうに存じます。

成田参考人 私の意見は、先ほども申し上げましたが、寄附規制とパーティーを統一するということでありますが、具体的にはパーティーも寄附規制の中に繰り込むということでございます。そうしますと、外国人の寄附の規制がそのままかぶるということでございまして、その具体的な外国人の寄附の問題をどうすべきかというのは谷口参考人と同じ見解でございます。

川上参考人 ありがとうございます。

 私も、国民民主党の外国人によるパーティー券の購入を禁止するのは妥当であるというふうに思います。また、やはり、今非常に、国際情勢の変化の中で、どこの企業が五〇%以上の株を持った外資系なのかということについて判断がなかなかつかなくて、うっかり一定の時期に五〇%を超えているところから献金を受け取っちゃった、うっかりミスとは言いたくないですけれども、そういうことも起こり得ます。

 そういうような、グローバル化している中で外国から寄附金をもらうということは、これは企業・団体献金以上にゆがめてしまう危険性があるのではないか。ただ、これは政治家の側もどうやってチェックするのかという問題がありますよね。

 それについては、きちっとした、ここは該当しない、あるいは、ちょっとプライバシーの問題はあるかもしれないけれども、ここは外国人だから駄目ですよとか、そういうような、うっかりして献金を受け取っちゃったというような国会議員の方、前にいらっしゃいましたけれども、悪気はなかったと思うと言ったら失礼なんですけれども、そういうようなうっかりミスが起きないような、AIとかいろいろなことを活用して、うっかりミスが起きないようなことをきちんと整備していくというのを同時にやっていただきたいなというのが私の意見であります。

 どうもありがとうございます。

平野参考人 外国人からの、企業でも何でも、パーティーでも、寄附、これを禁止すべきだという話は、実は、ロッキード事件を契機に多国籍企業が非常に警戒された日本の時代の話でございます。

 その後、グローバル化でより警戒が必要な部分と、それから、いや、そんなことを言っちゃ駄目だぞという時期と、それが起こったのは、特に朝鮮半島の人たちからの寄附がいろいろ様々な形で問題になったわけですが。私は、当面は今の基準で仕方がないと思いますが、やはり、国際協調の時代になったら、ある種の新しい基準を作るべきじゃないかという意見でございます。

長友委員 御答弁ありがとうございます。

 続けて平野参考人にもう一つお聞きしたいのが、これは国会議員でいらっしゃった平野先生だからこそ答えていただけるのかなと思うんですが、外国人にパーティー券を買ってもらっている国会議員、どのくらいいるような感覚でしょうか。私がちょっと分からないんですけれども、全体としては。でも、平野先生だったら何となく把握されているんじゃないかなと思いまして、お話しいただける範囲でお願いしたいと思います。

平野参考人 私、国会議員を辞めまして二十年過ぎまして、最近のことは全く知りません。

 しかし、私、パーティー券を買う資金の問題ばかり議論されますが、実は、外国人の人も、あるいは特定の宗教の人も、ある意味で、本人の意思じゃなくて強制的に使われているという実情があると思いますが、これはやはり資金の提供と同じでございまして、総合的にやはり考えていかなきゃいけないと思います。

長友委員 それでは、最後の質問になりますが、この間、自民党案に対して野党案ということで協議をしているんですが、どうやってこれを成立させていくのかということを与野党一緒に取り組んでいくことになるんですが、これは川上先生に世論研究の立場ということでお聞きしたいと思います。

 野党案が共通している項目、それから、それぞれの野党で独立して出している法案がありますけれども、自民党として、やはりこの点は取り込んでいくべきじゃないか、国民の政治不信を払拭するためにもですね、その項目はどれかということにつきまして、最後、お話を伺いたいと思います。

川上参考人 では、簡潔に申し上げます、時間のことがございますので。

 やはり政治家自身が、会計責任者だけでなくて、責任を持つということについては、与野党、随分歩み寄っていると思うんですね。その点は是非実現していただきたいということと、やはり、私自身は、企業・団体献金とか政治資金パーティーというのは、なかなかなくすのは難しいというふうに思います。

 その点でいうと、透明化をして、国民の判断に資するような透明化を、与野党、歩み寄れるところで是非図っていただく。政治活動費についてもそうです。他国に悪用されない程度に透明化を図って、国民の理解を得るというところでは、是非、各会派で歩み寄っていただきたいなというふうに考えております。

 以上です。ありがとうございます。

長友委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 有志の会は、この委員会で唯一、無所属の議員でございまして、したがって、企業・団体献金は受け取れませんし、政党助成金もいただかないで、何とか、かつかつですけれども、活動させていただいております。

 今日の四人の先生方のお話をお伺いして、まず、共通していることは、五本の法案、今回の自民党の派閥パーティーの裏金問題での穴を埋めるだけの、矮小化することなく、もっと本質的な政治改革をやるべきだという点では、四人の先生方は一致しているんじゃないかというふうに思います。

 そうした意味では、私はやはり、先ほど来話になっております平成の政治改革というのをしっかりと見詰め直した上で、積み残したこと、あるいは想定していなかったようなことが起きたこと、あるいは足らざる点、そうしたことを埋めていくような大きな議論が必要なんだと思います。

 その上で、まず成田先生にお伺いしたいと思うんです。

 平成の政治改革というのは、結局のところ、リクルート事件で始まったわけでありますけれども、選挙制度を小選挙区制度にすることによって政権交代が起きれば、いろいろな情報も出てくるし、政策間競争も起きるし、政治と金の問題もある程度解決するということだったと思うんです。しかし、この間、見ておりますと、一強多弱と言われるように、政権交代が起こり得るような状況になく、先ほど来出ている例えば企業・団体献金、私、五月二十日の予算委員会で岸田首相と議論いたしましたけれども、自民党は、二〇一〇年、野党時代から、二〇二二年、与党になって、一・五倍に増えているんですね。多くの企業は、野党時代にはゼロ円だったのが、与党になった途端に数千万、ぽっと出すというのは、やはりこれは浄財と言えない部分もあるんじゃないかと思うんですね。

 私は、そうした選挙制度の問題と、政治資金の問題と、あともう一つは国会の運営の問題、その三点はセットであるべきだと思いますし、選挙制度に終始した平成の政治改革によって、それが未全になっている部分があると思うんですけれども、その点についての御認識をお伺いしたいと思います。

成田参考人 平成の政治改革が選挙制度しかやらなかったということはございませんで、いろいろなことをやらせていただきました。それから、これで全てが解決したというふうには全然考えていたわけではございません。

 ただ、平成の政治改革の最大のテーマは何であったかというと、確かに選挙制度なんですけれども、選挙制度というのは、非常に誤解されていますのは、小選挙区制導入というふうに言われていますけれども、実際は並立制で、小選挙区制と比例代表制を導入したわけです。じゃ、目的は何であったかといいますと、中選挙区制の廃止なんですよ。

 中選挙区制というのはどういう選挙制度であったかといいますと、それは、高度経済成長下の経済成長の果実を分配する政治的システムというのが中選挙区制でございました。ところが、右肩上がりの経済が終わり、保守対革新のイデオロギー対決が終わって、これからは政策で競い合う時代だということで、中選挙区制がその非常に大きな足かせになっているということで、政党本位の選挙にするということで改革したのが平成の政治改革でございます。

 それと、もう一つは、非常にしばしば言われることですが、政権交代があると言ったけれども政権交代は起きていないじゃないかということをよく言われます。イギリスをモデルにしたのに起きていないじゃないかと。

 しかし、一九七二年でしたか、サッチャー保守党政権が成立して、保守党は十八年間続きました。その後、トニー・ブレアの労働党で十三年間続きました。現在は、保守党が十三年間やっております。自公に政権が戻って、まだ十二年しかたっておりません。まだ十二年たっていないんじゃないかと思います。ですから、イギリスをまねたのに政治改革が起きていないじゃないかというのは少し短兵急な御意見ではないかと思いますので、一応申し上げさせていただきます。これからの野党の奮起次第ではないかというふうに思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 次に、同じような趣旨で平野先生にお伺いするんですけれども、今回の政治改革を見ても、こっち側はみんな一緒なんですね、大体。多分、議論すればまとまるんです。やはりこっち側が違うんですね。

 つまり、私は、これは別に、自民党の一人一人の先生方は立派な方が多いと思いますけれども、結局、自民党という政治システムがまずいんじゃないか、それを戦後の日本が壊すことができなかった、それを超えるシステムをつくることができなかったことが今の停滞につながっているんじゃないかという議論を、この間も国会でやっているんですけれども。

 結局、国民にとってみたら、自民党は大丈夫、自民党に任せておけば大丈夫という、ある意味権威主義的なお任せ民主主義の現状になって、先ほど野党も奮起をという話もあって、我々奮起しなければならないんですけれども、やはり、平成の政治改革でそうした政治のシステム面も変わらなきゃならなかったのが、今回の派閥のパーティー裏金問題でも見えるように、結局まだ温存されているのが、今やらなきゃならないことじゃないかと思うんですけれども、その点について、いかがでしょうか。

平野参考人 実は、私もこっち側にいた人間でございまして。

 私は、今一番悲しいと思うのは、日本の議会というのはできてから百三十四年ぐらい続いているんですが、これを一つで言いますと、政権交代の政治をやるか、それを潰すか、この闘いなんですよ。戦時中はちょっと除いて。

 ですから、大隈重信先生が、明治十四年の変で、福沢先生の書かれたもので、国会開設の意見書を出しましたよね。その中には、イギリスをモデルにして、混乱のない、政党による交代といいますか、更迭と書いていましたかね、更迭をできる議会政治をつくれというのが、山県有朋さんなんかによって潰されて、ずっと闘いがそこで続いているわけですよ。

 しかし、保守本流もその意見を持っていたんですよね。そこで、私は、何で早稲田大学を出た人、慶応大学を出た人が両先生の思想を知らないかなと思って、教育されていないかなと思っているんですが。

 実は、それが平成の改革でできそうになって、それで、二〇〇九年ですか、民主党政権ができて、これでやっと私は日本に議会が定着すると思った途端、大変なことになったわけですよ。そこから始まったのが、本質的に金権カルトによる政権交代阻止の政治だったんじゃないですか。その挙げ句の果てがこの裏金、いわゆるキックバックの問題になったんですよ。ここのところを私は言いたいわけなんです。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。私も全くの同感であります。

 谷口先生にお聞きをしたいんですけれども、先ほど塩川委員が引用した二月二日の産経新聞の記事で、リクルート事件より根が深いと。先ほど、やはりとまさかという話がありましたけれども、もうちょっと掘り下げてお聞きしたいんです。

 まさかが、権力中枢で組織的に行われていたということなんですけれども、これは、単にルール違反という以上の、何でそういうことをやったのかという動機に立ち返ると、私は構造的な問題というのは見えてくるんだと思うんですよ。

 どういう動機、あるいはどういう背景があってこうした派閥ぐるみの裏金つくりというのをやらなければならなかったか、そこから導かれる今の政治の課題とは何かということについて、教えていただけませんでしょうか。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 私がリクルート事件よりも場合によっては根が深いというふうに再三申し上げておりますのは、委員御指摘のとおり、その裏金がどこに使われたのかということでございます。

 これは必ずしも明らかになっているわけではありませんが、世上、報道等されているところによっては、地方に流れていると。選挙の際に地方の議員であったり有力者に渡されているということになってまいりますと、リクルート事件は政界の有力者の間のお金の話であったわけですけれども、もしこれが、地方のところで金がかかるから、そういうものの原資に充てられていたということになると、これは政党の地方組織の問題にもなってくるということで、まさしく根が深い問題であるというふうに申し上げておるところでございます。

 かような観点から申し上げますと、本来は、今般の政治資金規正法改正案というのは、何も国会議員関係政治団体に対する規制を強化するだけではなくて、本来は地方の問題にもメスを入れておかなくてはいけないのでございますが、まずは国会議員の皆様から範を示していただきたいということで、第一段階をお願いをしておる次第でございます。

福島委員 相変わらずの鋭い御指摘、ありがとうございます。

 次に、川上先生、浪人中もお酒につき合っていただいて、どうもありがとうございます。

 ちょっと違う観点からなんですけれども、やはり政権交代を起こすような政治をやらなきゃならないと思って、いつも私は落選していましたけれども、ずっと歯を食いしばって野党に身を置いていたんですけれども、今回残念なのは、一緒に私たち、立憲民主党、国民民主党、有志の会で法案を出しているんですけれども、政治資金パーティー禁止法だけ、立憲民主党さん単独で出して、出されるのはそれぞれの党の考え方だからいいんですけれども、この一、二日の動きを見ていると、本当に残念だなと思うんですね。

 政治、コミュニケーションの専門家として、どうすればよかったのか、今起きていることをどう判断するか、その点について教えていただけませんでしょうか。

川上参考人 ありがとうございます。

 全くの私見で申し訳ありませんけれども、私も、政治、コミュニケーションをやっていて、やはり、選挙もそうなんですけれども、自分たちの政党で何とか受かりたい、これは分かるんですよね、政党本位の政治ですから。

 私は、中選挙区がなくなってつくづくよかったなと思うのは、今でも議員をやっていらっしゃる方が、昔、私が一番国会で気にするのは同じ政党の議員である、同じ選挙区の。いないと、どこかのお葬式があるのかな、大事な支援者の結婚式があるのかな、それが気になるということです。中選挙区ってそんなに根が深いものなんだというふうに思いました。

 それを考えますと、それは歯を食いしばって無所属でやっていらっしゃるというのはあるんだけれども、やはり政権政党に対して対峙している政党があるということは健全な民主主義であるというふうに私は思います。

 そういう意味で、小さい違いがあるからといって野党がまとまっていかない、こういう政治改革の法案一つ取っても。野党がある意味で、ここでまとまる、自民党はこういうふうなところをのんでほしいというところを希望していくというのが、やはり一つの望ましい民主主義なんじゃないか。それがないと、それぞれの野党もばらばら、自民党案とも隔たりがある。国民はどう思うのか。お任せ民主主義ですよ。どうせまとまらないんだろうな、きちんとやってくれないんだろうな、変な選挙妨害もあるし、政治って所詮こんなもんじゃないかということが、私が参考人としての陳述で申し上げたような世論調査の結果に結びついているんじゃないかと思うんですね。

 その点では、各会派で、自民党案と野党案は隔たりがありますけれども、野党案を是非それはすり合わせていただいて、福島委員には坂本竜馬になっていただいて、薩長同盟をちゃんと結びつけて対峙していただくというような勢い、無所属で苦労してそこまでやっていらっしゃるわけですから、そのぐらいの気概を持ってやっていただく。それを有権者、国民の皆さんは見ているんじゃないかというふうに思います。是非頑張っていただきたいと思います。

 失礼しました。

福島委員 私個人への激励、ありがとうございます。

 最後に、四人の先生方にお伺いしたいんですけれども、今日まで審議日程が明らかになっていて、これから与野党間で、理事懇なりで様々な調整を行うということが今日の理事会でも決まっておりますけれども、ただ、正直、さっき言ったように、こっちからこっちは話せばまとまるんだと思うんですよ、やはりこっちからこっちの溝をどう埋めるかだと思いますし、さらに、それを大きな本質的な政治改革につなげていくための仕掛けというのも与野党間で合意しなきゃならないと思うんですけれども、今後のこの委員会に対して期待すること、あるいは注意すべきこと、そうしたことについて、四人の先生方からそれぞれ端的にお伺いできればと思います。

谷口参考人 御質問ありがとうございます。

 一言で申し上げますと、くれぐれも政局は絡めないでいただきたいということでございます。

 今、国民が問うておるのは、日本の民主主義の信頼性でございます。与党案、野党案、これからすり合わせが行われるかと思いますが、これは、与党が勝った、野党が勝ったというような問題ではありません。日本の民主主義が勝つか負けるか、日本の民主主義はこんなものだと世界からばかにされずに済むか済まないかというのが、全世界の注視を受けているというふうに思われますので、今後始まるでありましょう与野党協議に私は大いに期待をしておるところでございます。

成田参考人 四人の参考人の比較的共通した意見として、抜本的な制度改革のためには第三者委員会の設置が必要だという意見がございました。

 それに関して申し上げておきますが、第三者委員会を例えば内閣府などに設置するためには選挙制度審議会での審議が必要でございます。その理由は、そういう機関をつくる法案は政府提出にならざるを得ないからでございます。

 それで、今回の法案でも、各党の提案の中に、附則に、そういう独立の機関を……(福島委員「立法府です、国会にです」と呼ぶ)はい。国会は、設置すると、権限と、それから、一般の政治団体はできませんから、国会の委員会は。だから、非常に制約が多いんですよ。権限とそれから扱える対象が国会設置の機関ですと限られますので、やはり政府、具体的には、独立性の強い行政機関として設置するほかはないと私は思っております。

 そういう機関として設置するためには政府法案にならざるを得ず、政府法案で出すためには総理大臣は選挙制度審議会に諮問しなければならないという仕組みになっているというふうに理解しておりますから、したがいまして、第三者委員会を設置するためには選挙制度審議会の設置と審議が欠かすことができないというのが私の意見でございまして、そういう点も含めまして、ロードマップを各党合意でお作りいただきたいというふうに思っております。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 私の所見を申し述べたいと思います。

 今回の政治改革特別委員会で、与野党がある程度歩み寄っての成案を得られなかったとしたならば、国民はどう思うでしょうね。そんなことぐらいも歩み寄れないのか、日本の政治ってこんなものなのかと思われるんじゃないでしょうか。これだけ裏金問題があって、与党と野党がそれぞれの思惑で主張して、きちんと歩み寄って成案を得なければ、国民の政治不信というのはますます高まっていくんじゃないかと思います。やっぱり今の日本の政治家って徳がないんだな、私が言っているんじゃないですよ、国民がそう思うんじゃないか。

 だから、そこは胸襟を開いて、妥協できるところは妥協、妥協というのは嫌な言い方だけれども、まさに福島委員も坂本竜馬になっていただいて、与党、野党の接着剤になっていただいて、是非成案を得ていただきたい。与野党が話し合って成案を得ていただきたい。そうでないと、国民の政治不信はますます高まるのではないか。そのことを是非心していただきたいというふうに私は願うものであります。

 ありがとうございます。

平野参考人 私は、今の野党は、何とかやはり小異を捨てて大同にまとまっていただきたいということ。

 それから、自民党は、私は、一番やはり恩師とするのは、宏池会をつくった池田先生、前尾繁三郎先生に直接薫陶を受けています。ですから、私が今日、随分乱暴なことを言ったのは、この人たちが言わせているんだとお聞きください。

 やはり、自由民権運動から自民党が生まれているんですよ。改進党が生まれているんですよ。保守の本流の魂というのはこんなもんじゃない、今のこんなもんじゃなかったということを申し上げて、どうかひとつ頑張ってください。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。

 時間なので終わりにします。

石田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会


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