第3号 令和7年2月20日(木曜日)
令和七年二月二十日(木曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 渡辺 周君
理事 小泉進次郎君 理事 齋藤 健君
理事 長谷川淳二君 理事 落合 貴之君
理事 後藤 祐一君 理事 櫻井 周君
理事 池下 卓君 理事 長友 慎治君
東 国幹君 石田 真敏君
井出 庸生君 川崎ひでと君
草間 剛君 栗原 渉君
小池 正昭君 小林 茂樹君
小森 卓郎君 坂本竜太郎君
塩崎 彰久君 島田 智明君
土田 慎君 中曽根康隆君
中西 健治君 平口 洋君
広瀬 建君 福田かおる君
三反園 訓君 向山 淳君
山本 大地君 江田 憲司君
鎌田さゆり君 黒岩 宇洋君
源馬謙太郎君 篠原 孝君
手塚 仁雄君 馬淵 澄夫君
矢崎堅太郎君 青柳 仁士君
斎藤アレックス君 岸田 光広君
福田 玄君 森ようすけ君
中川 康洋君 山口 良治君
高井 崇志君 塩川 鉄也君
福島 伸享君
…………………………………
議員 大野敬太郎君
参考人
(東京都選挙管理委員会事務局選挙課長) 織田 祐輔君
参考人
(兵庫県選挙管理委員会委員長) 永田 秀一君
参考人
(一般社団法人選挙制度実務研究会会長) 大泉 淳一君
衆議院調査局第二特別調査室長 森 源二君
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委員の異動
二月二十日
辞任 補欠選任
井出 庸生君 東 国幹君
国光あやの君 栗原 渉君
塩崎 彰久君 小森 卓郎君
中曽根康隆君 三反園 訓君
森ようすけ君 岸田 光広君
同日
辞任 補欠選任
東 国幹君 川崎ひでと君
栗原 渉君 中西 健治君
小森 卓郎君 土田 慎君
三反園 訓君 小池 正昭君
岸田 光広君 森ようすけ君
同日
辞任 補欠選任
川崎ひでと君 井出 庸生君
小池 正昭君 中曽根康隆君
土田 慎君 塩崎 彰久君
中西 健治君 草間 剛君
同日
辞任 補欠選任
草間 剛君 国光あやの君
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二月二十日
公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十一名提出、衆法第九号)
公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十名提出、衆法第一〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十一名提出、衆法第九号)
公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十名提出、衆法第一〇号)
政治改革に関する件(選挙運動等について)
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○渡辺委員長 これより会議を開きます。
政治改革に関する件、特に選挙運動等について調査を進めます。
本日は、本件調査のため、参考人として東京都選挙管理委員会事務局選挙課長織田祐輔君、兵庫県選挙管理委員会委員長永田秀一君及び一般社団法人選挙制度実務研究会会長大泉淳一君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。今日はよろしくお願いいたします。それでは着席させてもらいます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。
それでは、まず織田参考人にお願いいたします。
○織田参考人 東京都選挙管理委員会事務局選挙課長の織田でございます。本日は、現場の声をお伝えできる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
東京都選挙管理委員会は、昨年七月七日に東京都知事選挙及び都議会議員補欠選挙を執行いたしました。その直前に行われました衆議院議員補欠選挙等におきましては、街頭演説等における選挙の自由妨害や、SNS等の発信による選挙運動が盛んに展開されておりました。また、都知事選に向けましても、ポスター掲示場を活用してSNSの閲覧数、再生数を稼げるなどと宣伝し、ネットを活用して候補者を募る動き等もあり、最終的に候補者は、都知事選の過去最多立候補者数である令和二年の二十二名を大幅に上回る五十六名に上りました。
都知事選挙の立候補者数は全国的に見ても多く、前回選挙では二十二人、前々回は二十一人でございまして、これに合わせて、ポスター掲示場の区画数も、共に三十区画で予定をして設置したところでございます。
立候補者が告示日直前の期間に大きく増加をし、五十六名という規模となったことは、過去の推移から見ましても、合理的な予測の範囲を大きく超えるものでございました。この際、候補者や有権者の間に混乱が生じていただけでなく、このような動きに対して、全国から照会や御意見等が殺到いたしました。選挙を執行する都選管や区市町村選挙管理委員会におきましても、選挙事務を執行する上で、困難かつ逼迫した対応に追われていたところでございます。
都選管といたしましては、これらの過去に例を見ない状況の中で、選挙を公正公平に執行するため、法令所管官庁である総務省にも度々照会を行わせていただき、御助言を得ながら対応してまいりました。
また、投票所やポスター掲示場の設置、管理を行う区市町村選管や、取締りを行う警視庁など、関係機関の御苦労も大変なものでございました。ただ、多大なる御尽力により、何とか適正に執行することができたところでございます。
このように、ネット社会のビジネスモデル、例えば、SNS等による資金調達などに現行の選挙制度が対応できていない状況があると考えてございます。また、選挙自体が、資金調達、売名等、候補者等による選挙のビジネス化に利用されている側面も出てきているところでございます。
現行の公選法において想定されていない新たな選挙運動等が展開される中で、民主主義の根幹を成す公正公平な選挙を堅持するためには、まさに今、喫緊の課題として、実態に即した対応が求められていると考えております。
そこで、具体的に、都知事選及びそこに至る直前の衆院補選等の選挙運動における課題と、その解決に向けた検討をお願いしたい事項につきまして御説明をいたします。
まず第一点目は、ポスター掲示場の設置に関する課題でございます。
ポスター掲示場は、公選法に基づき、立候補届出が受理された後速やかに各候補者が選挙運動用ポスターを掲示することができるよう、候補者数が確定していない告示日以前において設置する必要がございます。都内全域では、ポスター掲示場の設置、管理を行う区市町村選管により一万四千か所を超える掲示場が設置されます。特別区、多摩地域、島嶼部など、特性が異なる全ての地域におきまして大規模な区画数の掲示場を設置するためには、一定の準備及び設置期間が必要となります。
昨年七月の都知事選におきましては、区市町村選管より、三月までに設置区画数を例示することを求められておりました。そのような中、さきに御説明したような、当選を目的としないような候補者を含む立候補が見込まれたことから、区市町村選管に対し、当初の設置区画数は四十八区画として例示を行っております。その後の経過によりまして、今回の都知事選では、真に当選を目的としないような多数の立候補や告示日直前の候補者増によりまして、過去最大五十六名となった立候補に対して、当初設置のポスター掲示場の区画枠が不足し、同材質による増設が困難となる状況が生じたところでございます。
次に、二点目としまして、選挙運動用ポスターの内容についてでございます。
同様に、真に当選を目的としているようには思えないと指摘される点として、ポスター掲示場に掲示する権利の有償による候補者以外への提供や、公序良俗に反する内容、営利目的の内容のポスターが大量に掲示されました。
具体的には、一般的な選挙運動用ポスターに記載されている立候補者の氏名や顔写真、政策等の情報が全く掲載されず、全裸の人物や誹謗中傷との指摘を受けるような内容、風俗店の紹介や営利目的のホームページ等にリンクするQRコードが表示されたもの、又は同一デザインのポスターを複数の区画枠に大量に掲示するものなどがございました。これらに対して、公序良俗に反するのではないか、公選法やその他法令で取り締まるべきである、子供の通学路などにもあるポスター掲示場にこのような不健全な内容の掲示を許すな、同じデザインのポスターが大量に掲示されているが違反ではないのか等の多くの声をいただき、有権者に多大な混乱を招きました。
最後に、三点目として、選挙の自由妨害等についてでございます。
街頭演説等における選挙の自由妨害や、候補者等の個人宅等に押しかけ近隣を巻き込み騒ぎを起こすような行為等により、候補者や有権者に混乱を招き、一部には有権者が恐怖感を覚えるケースもあるなど、有権者が候補者の情報を適切に得る機会が阻害されるとともに、安全かつ自由な選挙運動が困難となるような状況が生じておりました。駅前の街頭演説等におきまして、演説中の候補者に対して他の候補者が大音量で演説をかぶせ、有権者が演説を聴取することが困難な状況も生じておりました。また、候補者の選挙運動用自動車を他の候補者が車で執拗に追跡したり、候補者や関係者等の事務所や住宅街にある個人宅等にまで行き、拡声機を使用し又は大声を上げるなどの行為もございました。
いずれの行為も、候補者等のSNS等において中継や録画された動画等の形式で公開され、候補者等及びその家族など周囲の人々の日常生活に影響を及ぼすような個人情報や、根拠が曖昧な情報等も含めて拡散されるなど、公選法にとどまらず他の法令への抵触等を含め指摘がありまして、社会に及ぼす影響の大きさが報道されたところでございます。
これらの行為の一部は、選挙中にも警察より警告を受け、被害者の告発を受けた捜査等により選挙後に摘発されておりますけれども、選挙期間中においてこのような行為を防止し、また取り締まることができるよう、法への抵触の具体的な基準を示していただけるようお願い申し上げます。
このほか、当選を目的としない候補者の乱立にもつながる、候補者が発信するSNS等に対しての投げ銭や寄附、再生数稼ぎによるSNSプラットフォームからの報酬等の問題につきましても、具体的事例に対する法令解釈や取扱いなど、整理する必要があると考えてございます。
このような、現行の法制度では対応が困難な課題が解決されず、選挙における混乱が継続した場合、有権者による選挙自体に対する忌避感が生じるとともに、公正公平かつ安全、安心な選挙が損なわれる危惧を感じております。
都選管といたしましては、こうした課題を解決するために、必要な法令改正や、その運用における具体的な基準を明示いただくことが重要だと考えてございます。重ねての御検討をお願い申し上げます。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、永田参考人にお願いいたします。
○永田参考人 失礼いたします、大変お騒がせをしております兵庫県でございます。兵庫県の選挙管理委員会の委員長を務めております永田秀一と申します。本日は、いろいろとお世話になりますが、どうかよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
この度、この政治改革に関する特別委員会に出席させていただきまして、私ども地方自治体の選挙管理委員会に対し、このような国政の場におきまして意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことにつきまして、誠に光栄であるとともに身の引き締まる思いでございます。本当に本日はどうもありがとうございます。
本日は、昨年執行されました兵庫県知事選挙を受けまして、その管理、執行を担った立場から、現在考えております私どもの問題意識につきまして意見を申し述べさせていただきたいというふうに思います。
さて、先般の兵庫県知事選挙は、昨年、兵庫県庁において発生をしました内部告発文書問題により、前職が県議会から不信任決議を受けて、任期満了を経ることなく急遽執行されることとなったところでございます。選挙に至った経緯も含めまして、告示前から県内外の衆目を集める選挙となり、最終的には投票率が一四・五五ポイント増となるなど、有権者の関心の高さが表れた選挙となりました。
また、選挙期間中にはSNSを中心に、インターネット上で激しい選挙運動が展開をされました。これが投票率の向上に大きな影響を与えた一因と考えられますが、こうしたSNSやインターネットを使った選挙運動が昨今の選挙運動の主役となってきたという印象を強く受けた選挙でございました。
その一方で、候補者が他の候補者の当選に資する選挙運動を行っているとの疑念を抱かせる事案であるとか、支援者による他候補者への誹謗中傷とか真偽不明の情報の拡散などが見られる状況が発生するなど、現行の公職選挙法が想定していないと思われる事象も生じたところでございます。
特に、自らの当選を目的としない候補者による他の候補者の当選に資する選挙運動、いわゆる二馬力選挙というふうに言われておりますが、公職選挙法上問題があるのではないか、こういう御指摘が私どもに数多く寄せられたところでございます。私どもといたしましては、候補者の選挙運動の全てを把握しているものでもないものですから、個別具体的に、どの選挙運動が他の候補者の当選に資する行為となったのか断定することはできません。
しかしながら、ある特定の候補者につきましては、立候補に至った経緯及び選挙期間中の選挙運動の態様を見れば、結果として他の候補者の当選に資するものとなったという見方が多くあったものと考えているところでございます。
現行の公職選挙法では、選挙の公正、候補者間の平等を確保するために、選挙運動期間中に行われる文書図画の配布であるとか掲示その他の選挙運動について一定の規制が行われているところでございます。
そして、選挙運動につきましては、公職選挙法上候補者のみが可能な選挙運動としまして、ポスターの掲示であるとか、あるいは選挙公報、選挙カーの使用、政見放送、街頭演説が規定をされているところでございます。これらは、その規格とともに数量の制限があるところ、仮に二馬力選挙が許容されることとなりますと、こうした数量制限を規定している法の趣旨が没却されて、候補者間の平等を確保できないものとなってしまいます。
公職選挙法第一条におきましては、選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする、こういう規定をされているところでありますが、二馬力選挙はこうした公職選挙法の趣旨、目的を損なうものである、このように考えているところでございます。
こうした問題意識を踏まえまして、私どもといたしましては、先月十七日に、二馬力選挙について、これを規制するような法の整備を国に求める要望を行ったところでございます。
次に、今回の兵庫県知事選挙におきましてSNS上で誹謗中傷や真偽不明の情報が出回るような状況となったことにつきまして、私たちの問題意識を述べさせていただきたいというふうに思います。
知事選挙におきましては、SNSを中心にインターネット上で激しい選挙運動が展開され、真偽の不確かな情報も含め、様々な情報の拡散が見られました。
こうした状況の中、情報の真実性が容易に判別できず、何を信じて誰に投票すべきか、判断に迷った有権者も少なくなかったというふうに思われます。実際に、私どもに対しては、こうした情報が氾濫し統制が取れない状況について数多くの意見や御批判をいただいたところでございます。
例えば、SNS上の特定の書き込みにつきまして、この書き込みは事実に反する内容であるから選挙管理委員会が指導すべきといったようなことも指摘をいただきました。インターネット上にあふれる候補者等に関する情報について、選挙管理委員会としてファクトチェックを行うことは現実的には困難であるというところでございます。
また、私どもに対し、誹謗中傷や真偽不明の情報について、名誉毀損罪や虚偽事項公表罪に当たらないのかとの問合せも多くいただきました。罰則の適用に関する話ですので、私ども選挙管理委員会ではなく警察の権限の話になりますが、選挙期間中の限られた短い時間の中で事実確認をして名誉毀損罪であるとか虚偽事項公表罪などを認定するというのは警察におきましても対応が困難だったのではないか、このように認識をしているところでございます。
選挙運動におけるSNS利用は効果的な投票を得る手段として活用が進んできたところでございますが、こうしたSNSの利用について一定の規制を設けることは、これまで自由にやれていたプラスの部分の制約にもつながり得るものであります。したがいまして、表現の自由と選挙運動のバランスについて、国会においても広く議論をされるべき問題と考えているところでございます。しかしながら、今回の兵庫県知事選挙においてSNS上で誹謗中傷や真偽不明の情報が出回るような状況になったことにつきましては、私どもとしても重く受け止めているところでございます。選挙運動におけるSNS利用がこれだけ普及している状況においては、これまで以上に有権者が正しい情報に基づき投票先を決定できるような、積極的な環境づくりが求められているのではないかと考えているところでございます。
私ども地方自治体の選挙管理委員会の使命は、長から独立した機関として、公正かつ中立な立場で選挙を管理、執行するというところにございます。
これは、客観的見地から公正中立な選挙の管理、執行が求められるのみならず、有権者に対しましても選挙が不公平に行われたのではないかとの印象を与えることなく、選挙結果について有権者の納得を得ることが求められているのではないかというふうに考えているところでございます。
先般の兵庫県知事選挙におきましては、私どもといたしましては、現行法の範囲内で最大限対応をしてまいりました。しかしながら、選挙後も有権者や各種団体の方々から、選挙結果や選挙における私どもの対応に対して数多くの意見、批判をいただいているという状況にございます。こうした状況を踏まえますと、今回の兵庫県知事選挙で問題となった点につきましては、大変僭越ではありますが、やはり現行法では限界があり、所要の法整備が必要となるのではないか、このように考えているところでございます。
今般の公職選挙法の改正案の附則には、いわゆる二馬力選挙やSNSに関する対応策を念頭に必要な措置が講ぜられるとした規定が盛り込まれているとのことでございますが、私どもといたしましては、是非ともこの法案を一刻も早く成立させていただきたい、そのように要望をする次第でございます。
どうぞ本委員会の委員各位におかれましては私どもの意のあるところをお酌み取りいただきまして、いわゆる二馬力選挙の是正とSNSを活用した選挙運動の改善のために更に御尽力をいただき、また、私ども選挙管理委員会に対しましても今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。よろしくお願いします。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、大泉参考人にお願いいたします。
○大泉参考人 選挙制度実務研究会の大泉淳一と申します。
本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。
私は、一昨年夏まで第二特別調査室におりましたが、現在は、選挙制度実務研究会において、選管の経験者らとともに、会員の選管からの質疑に答えたり研修を行ったりしている立場におります。
本日は、先ほどから取り上げられている題材を中心にお話をしてまいりたいと思います。
まずは、選挙運動用ポスターについてでございます。ポスター掲示場が公選法に最初に出たのは昭和三十七年で、三十八年からはそこに一枚しか貼れなくなりまして、三十九年に恒久化されて基本的には現在に至っております。
選挙運動用ポスターには、掲示責任者及び印刷者の氏名、住所、これの記載義務はありますが、その他のポスターの記載内容については、刑法、風営法、迷惑行為防止条例などの別制度による規制の対象になるほかは、公選法においては制限は規定されておりません。これは、選挙公報などと同じく決められた枠内ではありますけれども、その中で各候補者が当選を争うために自由に競う場となっていただきたい、そういうことをつくるというような基本的な考え方によっていると思います。
しかし、昨年の都知事選では、この自由さを逆手に取られて、選挙に関係のないポスターを貼る場となってしまいました。これをいかに防ぐべきか。都知事選では風営法や迷惑行為防止条例などにより対処がされましたけれども、公選法でどうすべきか。
例えば、ポスターを見て、百人の人が百人とも選挙に全く関係ないポスターだと認識できればポスターは排除できるんでしょうけれども、だんだん九十九人、九十八人と減っていって、八十人、七十人ぐらいになっていったときに、ポスターの中身によっては価値判断が異なってくる。切り分けが難しくなります。片方で表現の自由というものがございますので、誰がどこまで判断するのかという難しい問題が生じます。
かつて、ポスターの中身について選管が判断し、訂正させたという事例がありました。このポスターは規格オーバーで違反をしていたという点もあったんですけれども、さらに、このポスターに記載したスローガンの内容について市民から苦情があったり、あるいはスローガンに関する事項を所管する市の担当課から善処を求める意見が出されたりしていたために、選管は、スローガンの文言、すなわちポスターの内容についての取消し、修正を求めました。候補者はこれに応じて対応したようですが、これの事件の判決が参考資料にお配りしています一ページ目の判決でございます。
この判決はこうした状況に対し、政見その他の主張に関係するポスターの記載内容について選管がその当否を審査し、その取消し又は修正を命ずるなどのことは、選挙管理委員会が候補者の政見その他の主張そのものに介入、干渉することになり、ひいては選挙の自由公正を害するものであるとして、選挙無効という判断をしました。
この判決は公選法の撤去命令についても言及しておりまして、撤去命令というのは資料の二ページ目に記載しましたけれども、判決では、ポスターの枚数、規格、掲示場所など、撤去命令もポスターの掲示が形式的事項に関する定めに違反する場合になし得るものとされているにすぎないというふうに書いてありまして、このように、最高裁はポスターの内容への選管の関与について極めて限定されるべきと考えているのではないかと思われる節があります。
二番目に、都知事選挙でございましたポスターの枠の不足についてでございます。
これについては、参考資料の三ページ目ですけれども、そこで先日出ました判決を載せております。都選管は掲示場のへりに外周区画というものを設置し、四十九番以降の方については外周区画を割り当てたということで判決が言っておりまして、ある意味エア掲示板みたいなことなんですけれども、これを割り当てたからというようなこと、告示当日にならないと立候補者数が確定しないことなどから、この判決では選挙の公平を害するとまでは言えないと判断しております。
ただ、前例としては、平成七年の参議院選挙では七十六人分の枠を作って立候補者数七十二人という実績もあります。
候補者に公平に戦ってもらうという意味ではちょっと疑問符かなと思います。判決を見て、少しぐらい足りなくてもいい、エア掲示板でいいというようなことに発展することを恐れます。
ただ、判決の結果、選挙のやり直しをしないという点では、それは判決のとおりだと思います。公選法には選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に限り選挙無効となるというふうに規定がありますので、この面から見れば、得票差などを見て、当然だと思います。
次は、二馬力選挙運動について申し上げたいと思います。
自らの当選を目指さずに立候補している候補者がいたかというと、過去にもありました。参考資料四ページに、かつてこんなこともありましたという例を掲げさせていただいております。ただ、今回は、これに加えて他人の選挙を応援することを公言して出てくる候補者が現れました。
これについては、二馬力選挙というのは理屈では許されないことは当然だと思います。それは分かるんですけれども、永田参考人からもありましたとおり、具体的にどの行為が駄目なのか不明な点もあります。
そこで、今の法律でもどういう対応をするかということでございますけれども、さっきの最高裁判決ではないですけれども、形式的に違反していれば取締りは可能と思われます。例えば、A候補を応援すると言ったB候補がAのビラにBの証紙を貼ったとか、こういうことでしたら、形式的に違反しているということは分かると思います。ただ、Bのビラのような体裁を取りながらAを応援しているような、ぎりぎりを追求されるような内容になりますとこれはどう判断するのか。また、証拠が残りにくいものについてもなかなか判断が困難かもしれません。
そもそも二馬力選挙運動というものが具体的にどのような運動を念頭に置いているかということになりますけれども、もしもその候補者が実は当選を私も目指していますと言ったらどうなるのかとか、そういうような話への対処も含めて規制を行うのであれば、具体的な違反事例が分かるようにして立法されるのが対策になるのではないかと思います。
先ほどの最高裁判決によれば、選管による実質判断は難しいということだったんですけれども、判断するのは誰になるのか。例えば、インターネット選挙運動のときにございましたけれども、各党協議会がガイドラインのようなものを作られております。ガイドラインを作られておりまして、そういった方法も参考になるのかなと思います。ただ、そうしたとしても、解釈が分かれるような事例について誰が具体的に当てはめの判断をするかという問題は残ると思います。
それから、SNSの選挙運動についての話もございました。
インターネット選挙運動解禁時の議論、これについては、参考資料の四、三ページ目ですけれども、にも当時の議論をまとめたものを載せました。虚偽事項が流布されたとき等には公選法の虚偽事項公表罪、誹謗中傷などについては刑法の名誉毀損罪、侮辱罪といった、既存の罰則で対応するというのは当時の基本線でございました。
SNSで本当に選挙運動をしたい人を排除することは、これはよくないことでありますけれども、選挙関係の話題で注目を集め、これに対して、先ほど織田参考人からもありましたけれども、お金が動いているというようなことであれば、それにより収益を得るというのであれば、本来の選挙運動からかけ離れているように思います。これをSNSの内容によって迅速に判断するというのは、これも先ほどありましたとおり、なかなか難しいことだと思います。
あえて言えば、公選法の建前からいうと、当選を得又は得しむるための財産上の利益の供与、交付は選挙の公正をゆがめるという意味で買収罪を構成しております。もし先ほどのようなSNS上の金銭授受など真偽不明のものがあるというものが仮に選挙の公正をゆがめるという判断あるいはその証明ができるのであれば、その手法をヒントにして何らかの手だてはできないのかなと思います。この観点からのアプローチであれば、SNSの内容やその是非の判断ということに踏み込まずにやるのがいいんじゃないかと思います。
最後に、品位保持規定についてお話を申し上げます。
現在あるのは、選挙公報と政見放送の品位保持規定がございまして、罰則は、特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をした者に対してのみ適用されます。それ以外については、公序良俗違反になったとしても罰則はかからない。ただ、やはりこれも、先ほど申し上げた百人のうち九十九人が公序良俗違反と判断するような場合ですけれども、八十人、七十人となった場合に、価値判断が違ってきた場合に実質判断しなきゃいけないということになります。
この辺については、政見放送の品位保持規定について、かつてNHKが政見放送の一部を、差別用語ですけれども、これを削除して放送し訴えられたことがありまして、その最高裁判決は参考資料の二ページの二で述べているとおりでございます。賠償請求を棄却しました。削除されたような言動は法的保護に値しないといって賠償を棄却しました。棄却はされましたが、この裁判に要した期間が約七年で、大変な労力を要したものでございます。
ポスターはどうかというと、先ほどの一の判例から見て、選管に内容を審査させるのは判例上なかなか問題があるのではないかというようになると思いますけれども、一方、実効性を持たせようとして行政権などの関与を強めていけば、そのときはいいんだと思います。しかし、時を経て、権限を持った者がこれは使えるといって強権発動したり、そうでなくとも周りの人が忖度して過度に権限を行使するというおそれがあったら、民主主義国家として厳しくなっていくんじゃないかというふうに思います。我が国の戦前とかあるいは一部の諸外国を見ておりますと、民主主義の脆弱性という言葉が浮かばざるを得ません。
最後に、長く制度づくりに携わってきた者としてそういうことを申し上げて、意見を終わりたいと思います。どうもありがとうございます。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○渡辺委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。坂本竜太郎君。
○坂本(竜)委員 自由民主党の坂本竜太郎であります。
本日は、早速の質問の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
また、参考人の先生方におかれましては、大変お忙しい中、遠方からの御足労も含めまして、お時間を頂戴いたしておりますこと、心から御礼を申し上げる次第であります。
今、それぞれから大変な御苦労話をいただいたところでございます。この短期間に想定し得なかったような事象が起きて、その対応に本当に、対応し切れない状況、もうこれは立法措置を求める以外にないんだという痛切なお言葉を賜ったものと思っております。
実際、昨年の大きな選挙で、我々も総選挙で選んでいただいた側でございますけれども、東京都さんと兵庫県におかれましては、全国の皆さんの注目を集めた知事選挙が行われました。その前の選挙と比較いたしますと、それぞれ投票率が向上した。恐らく、東京都知事選挙は五・五五ぐらい上昇された。兵庫県知事選挙におかれましては一四・五五ぐらいですか、相当上昇された。
この原因は、要因は何なんだと。それはもちろん選管の皆様方の大変な投票率向上の啓発のお取組もあったでしょうし、当然、当事者の方々の熱心な選挙展開、あるいは報道関係の皆様方の早いお取上げも功を奏したと思いますが、一番結果として威力というか効力を発揮したのは、やはりお話があったとおりSNSの存在であったと思います。
SNSの公益性が最も投票率の向上に貢献したとすれば、それが発揮されたと受け止めはできますが、その正反対で、全く私的な収益あるいは一部の政治団体の利益、経済的な利益になるような状況にあったということであれば、これは全く本来の形ではありません。お話にありましたように、本質的な政策論議にも全く貢献できていない側面があったとすれば、不健全極まりない状況があったんじゃないかと思います。
その中で具体的に、東京都選管の方からは、具体的な規制の在り方について、SNSについてお示しもありましたし、それぞれからは表現の自由や立候補の自由との兼ね合いについてのお話もありました。
そこで、まず永田参考人にお尋ねさせていただきますけれども、永田委員長は、地方議会においても長らく御活躍されてこられて、御自身も選挙経験が豊富であります。そういった経験を踏まえながら、今回の兵庫県知事選挙におきましてのSNS上の課題と、それを克服していくための、我々が取り組むに当たっての、表現の自由、立候補の自由とのバランスが難しいところについてのお考えを、もう一段踏み込んで御開陳いただければ大変ありがたく存じます。
○永田参考人 いろいろ御意見をいただきまして、ありがとうございます。
私も、兵庫県議会議員を八期三十二年間やらせていただきまして、いろいろな選挙をやってきました。そして、選挙のたびに、今おっしゃるとおり、SNSなんかが、今までそういう選挙がなかった形のものが次から次へと出てきて、そしてそれに対応していかないけない、こういうようなことが出てきました。
特に、今回の知事選挙におきましてはこのSNSの問題が非常に大きな問題として出てきまして、現知事が当選した一つの大きな趣旨といいますか、一つの大きなことは、SNSをうまく活用した、こういうことになると思うんですね。SNSの誹謗中傷とか、いろいろなものが次々と出されてきまして、対応が非常に難しかったというのも事実なんですが。このSNSの中でやはり何か問題があって対応しなきゃいけないというのは、一つは、私どももいろいろ対応もしていかなきゃいけませんが、もう一つはやはり警察の問題にもなってくるんですね。ですから、警察が刑罰に当たる問題だというふうに、こういうふうなことが、警察が考えれば、警察が対応していく、こういうことになると思うんですが。
しかし、今回の選挙は、立候補して自分が当選する目的ではなくして、他の候補を応援するために選挙に出た、こんなことが、今まで本当になかったことだろうと思うんですけれども、そういうことが起こりまして、SNSとそういう問題、二馬力の選挙ですけれども、こういうことが非常に選挙に混乱を招いたということになるんです。
一番の問題は、有権者の方が何を信用して何を信用しなくていいのかということ、その判断材料が、余りにも多くのSNSの情報が出てきたものですから、判断ができなかったと思うんですよ。ですから、特に若い二十歳代あるいは三十代ぐらいの有権者の方はそういうことで、そういうふうに踊らされて投票したという人が非常に多かったというふうに、そういう結果も出ていると思うんです。
ですから、その辺が非常に難しいところで、本当に何が正しくて何が正しくないか、特に若い人の場合はそういう判断材料の基礎的なものを持ち合わせていない方も非常に多いように思うんです。ですから、言われたことをみんな本当のように受け止めて投票してしまった、そういうことが結果として出たというようなことも非常にあったのではないか、そのように考えているところでございます。
○渡辺委員長 参考人の皆様と各位に申し上げたいと思います。参考人の方々の御答弁は、お立ちになられても、お座りのままでも、答えやすい、お話ししやすい姿勢のままで結構でございますので、どちらでも御選択ください。
○坂本(竜)委員 ありがとうございます。
とにかく有権者の皆さん方が正しい判断ができる環境づくりを求めてくださいましたし、その対応に当たられる選管の皆さん方も判断に迷わないような事前の法整備、あるいはガイドラインを策定すべきだというお話もいただきました。
東京都の織田参考人からは具体的な御提案をいただきました。例えば、プラットフォーム事業者であるプロバイダー等とかに対する規制といいますか、働きかけについての言及がありました。真偽不明な情報を氾濫させる要因となっております報酬獲得ができる在り方についての疑問だと思われます。そもそも報酬を獲得できないようにする、選挙に関してはですね、するような在り方とか、あるいは巡回してそういったものがないかというものを見回るような在り方とか、いろいろなあるべき形が想定されますが、その辺の在り方についてより具体的な御提案とかをいただければありがたいんですが、お願いいたします。
○織田参考人 御質問についてでございますけれども、既に国の方でもいろいろ御検討いただいているというふうに伺っておりますが、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法の見直しなどを含めまして、運営事業者による虚偽情報の確認、削除、これを迅速化を図るというのは一つあるかなというふうに考えてございます。
また、第三者によるファクトチェック、こういったものが必要だと考えておりまして、今あるSNSの中には、特定の、ある程度信頼性のあるアカウントが背景情報を記載することができる、疑義のあるポストに対して単なるコメントではなくて背景情報というのを記載して、その幾つか出た背景情報の中で確からしいものが表示されるというような手段を取っているものもございます。こういったところの、より洗練された対応というのが必要かなと思っております。
また、投げ銭や寄附、再生数稼ぎによるSNSプラットフォームからの報酬、こういったものを目的として選挙を資金調達に利用するビジネスモデル、こういったものについても対応を検討する必要があると考えてございます。
先ほど、文書図画の総量規制のお話などもございましたけれども、SNSを規制するということよりは、例えば、ある程度アカウントを数を限定して公平に候補者が使えるようにしたり、選挙に関するようなものを発信するものだということがちゃんと明確化するというようなことにしたり、そういったところから収益につながるようなものへのリンクは除外するなど、こういったプラットフォーム事業者との協力も踏まえて、いろいろな方策の御検討をいただければというふうに考えてございます。
SNS上の選挙運動による情報発信については、先ほど来ございますけれども、公序良俗に反するもの、誹謗中傷や虚偽情報等、これがまず法令に抵触するものであるのかどうか、そういった事例の積み上げが明らかになることによって、有権者も判断がしやすく、また選管も適正な運営に資することができると考えてございますので、重ねてお願い申し上げます。
以上でございます。
○坂本(竜)委員 ありがとうございます。
そもそも、誹謗中傷とかがかなってしまっているということは、お話がありましたように、アカウントの在り方、本人認証が担保されていないものも自由な状況にあるということでございますので、その辺の本人認証について厳しく精査して、そういったことがかなう状況であるべきだという法規制の在り方もあろうと思いますので、その辺の踏み込んだ在り方について、あるべき形をお伺いさせていただきたいと思います。
○織田参考人 SNSのアカウントの個人を特定するような情報の在り方というのは、非常に難しい問題もはらんでいるというふうに思われます。匿名性があることゆえに今のプラットフォームが成り立っているという部分もあるかと思いますけれども。
もし、御検討の中で、選挙運動というものの区分をある程度確定し、そういったものの情報の発信についてだけそういう条件を付すようなことができるのであれば、それも一つの方策であるかなというふうには考えてございますが、基本的に選挙運動ありきでSNSのプラットフォームにそういったものを課すことができるのかどうかまでは、選管の立場としてはまだお答えできるものはございませんので、国の議論について我々としても注視させていただきたいと考えてございます。
○坂本(竜)委員 ありがとうございます。それぞれのお立場の中で精いっぱいお話しいただきまして、ありがとうございます。
では、そういった部分について、もう時間もありませんので、我々立法府はどうあれ、毅然として、我々が担い手である以上、この問題に立ち向かって立法措置を施さなければ、国民の皆さんに対する責任を果たすことはできません。自由と民主主義の飽くなき追求をしているわけですけれども、今、自由と民主主義が、矛盾しているわけじゃないですけれども、非常にバランスが難しくなってしまっている、この件に関して。非常に歴史的な局面にあると思いますし、なおさらその責任は重大だと思っています。
そういった意味では、数々の選挙制度の法整備にも関わってこられまして、現在は民間のお立場で様々なアドバイスを賜っております大泉参考人にお尋ねしますが、我々立法府に求められるそういったものも全て含めて、もう一段踏み込んだ御助言を賜れればと思います。よろしくお願いします。
○大泉参考人 今、織田参考人、永田参考人からもいろいろ提案がございましたし、そういうものを含めて、憲法の中で法律としてきちっと組み立てていくのがいいのではないかと思います。
ただ、そのときに、抽象的にこうやって決めたとしても、現場で運用する身としては非常に困ってしまうというところがありますので、そこら辺も踏まえて、実効性のある対策を取って、制度化されていただければありがたいと思います。一方で余り厳しくやると自由が失われるということにも配慮しながらやっていただけること、まさに国会の裁量の範囲でやっていただくことがありがたいと思います。
○坂本(竜)委員 しっかりと、今朝も法案提出に至ったと伺っておりますので、各党各会派でこれから熟議を重ねて検討事項についても深めていきたいと思いますので、引き続きの御指導をよろしくお願い申し上げます。
以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、鎌田さゆり君。
○鎌田委員 立憲民主党の鎌田さゆりでございます。
本日は、お三方の皆様、参考人として御意見の陳述をありがとうございました。貴重な御意見を賜りました。
まず、大泉参考人にお伺いをしたいのですけれども、今回の公職選挙法の改正につきまして、ポスター掲示場のポスターの記載に関する義務として、百四十四条の四の二の関係のところに、公職の候補者は、その責任を自覚し、品位を損なう内容を記載してはならないということを規定しております。
この品位という言葉なんですけれども、解釈が非常に広くて、このポスターは品位があるのか、これは品位に欠けるのか、その判断というものは誰がするのか、非常に難しい、曖昧な表現でもあると私は感じているんですね。そこで、第三者機関的なところでの判断の必要性はないのか。公正な基準などについて、大泉参考人は何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
○大泉参考人 非常に難しいところで、品位という、現行法では先ほど申しましたとおり政見放送と選挙公報にはあります、それで運用されてきているというところでございますが、政見放送についても都知事選の内容でどうだというような議論がございます。
ただ、それを、どこまでが表現の自由の範囲なのかということと、一方で許されないところというのが、先ほど言いましたけれども、分かれるようなものになってまいりますと、判断は難しい。それをこの短期間に選管に求めるというのはなかなか難しいということだと思いますが、最高裁もそんな立場にあるんじゃないかと思います。
第三者機関ということですけれども、迅速にきちっと動ければ可能なんですけれども、余りに選挙期間が短い中で実効性があるのかなというのは大体気になるところでございます。
さらに、事前審査が要るんじゃないかというと、これは検閲の話につながってしまいますので、その中で、判例とか、ガイドラインとかが示されればですけれども、そういうものを作った中で実際にやっていって、それで判例の水準というものが皆さんが分かっていけば、それなりに制度として定着していくんじゃないかと思います。
○鎌田委員 ありがとうございました。
非常にここのところは難しい今回の法改正であるという認識については共有できたのではないかなと思っています。ましてや、それを選管に判断を求めるというのは、私たちもそれはおかしいというふうに考えておりますので。
続いてなんですが、織田参考人にお伺いをしたいと思います。
最近における選挙をめぐる状況として、選挙がビジネス化している現状があります。先ほど織田参考人からも御意見の陳述がございました。ポスターに何を掲示するかは表現の自由の範囲という考えの一方で、選挙は行政長などを選ぶ政治的な機能しか想定していない、選挙とビジネスは切り分けるべきだという政治学の観点からの指摘もございます。
この点につきまして改めて、先ほど、事例の積み上げでもってそれが必要なんだという御発言もございましたけれども、改めて、選挙が今ビジネス化しているということについての織田参考人の御意見を賜れればと思います。
○織田参考人 選管の立場としましては大変難しいお話でございまして、選管としては、公選法に基づく選挙の執行というところが基本ではございます。
そういった中で、お金の話になりますと、当然、選挙運動で得た収入については、選挙運動収支報告書というものに記載をいただくことによって、どういった流れかというのが確認できるものでございます。一方で、そこに記載されない、選挙運動ではないというふうに主張されるようなお金の動きというものもあるかと思われます。
そういったものについて、どういった形で適正にお金の流れが有権者の方々にも見える形になるのか、そういったところがポイントになると思いますので、一概に選挙とビジネスを分けるということではなく、何の目的でどういったお金が、どのように収支があり、どのように使われていくのか、それが有権者の方々にちゃんと理解をされる、そして認められるような方策であれば、どちらかを択一するというお話ではなく、選管の立場でいいますと、選挙運動に関わるものがしっかりと明らかになるということで、公選法の趣旨に沿うものではないかと考えてございます。
以上でございます。
○鎌田委員 ありがとうございました。参考にさせていただきます。
続いて、永田参考人にお伺いをいたします。
昨年の兵庫県の知事選挙、大変な御苦労をされたということは先ほどの御意見で伝わってまいりました。
お座りのままで結構でございますので、いわゆる二馬力の選挙について伺います。
各候補者の公平性を担保するために、我々は、ビラですとかポスターですとかあるいは拡声機、そういったものの数量の制限が規定されているわけですけれども、昨年の御県の知事選におきましては、告示前、選挙が用意ドンと始まる前に、ある候補者は公共の電波でもって、私の発信力を使ってある候補者を、私じゃないある候補者をサポートするということを公言されているんですね。まさにこれは、自分の当選の目的のために選挙に出るんじゃなくて、自分の発信力を使って誰かを応援するということを公言しているわけで、選挙に入る前の時点で、御県の知事選においてはこれは二馬力だということは誰もが感じ取ることができた状態にあったというふうに私は考えております。
今回の我々の議論しております公職選挙法の改正につきましては、附則の検討というところで、引き続き検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすることとなっているんですね、二馬力の選挙のことについても。
附則の検討に入っているということについて永田参考人に率直なところを御意見を伺いたいんですが、出馬の理由をどう見極めるのか。内心まで把握をすることは困難であるという御意見もあります。ですけれども、選挙運動の有様、態様、これを客観的に見て公選法上の数量制限に違反している判断基準や判断機関を法的に規定することは私は可能だと考えています。永田参考人にその点について御意見を伺いたいと思います。
○永田参考人 今いろいろと御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
先般も、私ども、総務省の方にお伺いしまして要望書を提出させていただきました。それは、今言われる二馬力の選挙とかSNSが公職選挙法に、違法というか、そういうようなことで公職選挙法の趣旨を損なうような事案が発生したということで、総務省の選挙部長に対しまして要望書を提出したんですね。
そこで、要望書を提出した根本的なことは、私ども県の選挙管理委員会としましてもいろいろな対応を今回の問題でやったんですけれども、我々の県の条例では、ある程度、限度があるというとおかしいんですけれども、どこまでどういうふうにしたらどうなるかということを我々県として出すということだけでは、なかなか今のこの大きな問題が解決しないんじゃないかということをすごく感じまして、そうであればどうしたらいいかといえば、先生方にお願いして、国の法的な形で何らかの形をかっちりと決めていただかないと私どもとしてはどうすることもできないというようなことを、先般も総務省の方にお伺いしてお話もさせていただきました。
今回の選挙につきまして、ある特定の候補者を、他の候補者の当選に資することにするために応援をする、こういうことがあったわけなんですが、ここも非常に難しいところもいろいろあるんですが、今言われるように、立候補する前に、前の知事をサポートするということを、本当に発言を、事前に確かにされているんですよね。そういう発言とともに、今回の選挙につきましては、非常に、ある候補者が他の候補者のためにいろいろな発言をして、プラスになるようなことをどんどんどんどんやっていったというような、本当に事実があるんですね。
ですから、こういう状況の中で、前の知事の当選に資するためにいろいろなことをしたというのは、これは本当に事実なんですが、ここが非常に私は難しいところだと思うんですが、これは公職選挙法には何も違反していないと思うんですよ。一応、選挙制度に沿ってやっていることなので、法的には何も違反をしているということではないと思うんです。ですから、我々選挙管理委員会としてどうせいこうせいなんというようなことを言う、そういうことのできる立場にも私どももないわけなんですね。
そうなってきますと、今回の選挙はいろいろな意味で、二馬力選挙そしてSNSの選挙を通じて今までになかったことが起こってきていますので、私どもとしましてもその辺の意見は十分に聞いておりますので、またそれを生かしながら、今後の選挙に何とかプラスになる方向に持っていきたいというふうに思うんです。
それで、これは兵庫県だけの一過性の問題では私はないんじゃないかなと思うんです。今、千葉県の知事選挙にもそういうような話もあったりとか、兵庫県以外の、大阪の市長選挙にも出るとか、いろいろなことでどんどんどんどん広がってきていると思うんです、そういう活動が。だから、これを先生方の力で今何とか法的に規制をかけないと、全国にこの問題がどんどんと広がっていきますと、選挙そのものが混乱を起こしてしまって、どの選挙も、何が正しくて何が正しくないかということが判断できる材料が本当になくなってしまう、そういうことになると思うんです。
ですから、私どもも、そういう意味では兵庫県として今回このような問題を起こしたことは非常に残念であるし、またある意味で恥ずかしいことだと思うんですが、しかし、そうかといって、それをしっかりと私どもとしては受け止めて、そして全国にある程度法的に規制をかけて縛っていく、そういうことを是非やってほしいということを、先般も総務省の方でそういうお願いもさせていただきましたので、その辺も御理解いただいて、今、各党の先生方が今日はお集まりなんですが、全会派一致でその辺のかちっとした方向性を出していただいて、そして今後そのような選挙が行えないようにする法的な整備を是非お願いしたいということをちょっと申し上げておきたい、そんなことを思っております。
○鎌田委員 ありがとうございました。
本当に御苦労されてきたんですよね、分かります、伝わってきます。私たちも、遠方からですけれども、それは実感しておりました。
最後に大泉参考人にお伺いしたいんですけれども、二馬力については石破総理も、これはおかしい、どこからどう見てもおかしいということは衆議院の予算委員会で答弁されています。二馬力について簡単に一言、もし、いや駄目だとか、もうちょっと様子を見てもいいんじゃないかとか、ちょっと踏み込んだところで御発言をいただければありがたいんですが。時間が来ましたので、そのことについて伺います。
私としては、今とにかくSNSが、アテンションエコノミーということが言われていまして、情報の質はどうあれ、とにかく再生回数が多ければ多いほどいい、だからどんどん過激になっていくという状況がありますので、これは私たちは何とか手を加えていかなければならないというふうに考えを持っております。大泉参考人の答弁をいただいて、終わりにします。
○大泉参考人 やはり二馬力選挙というのはルール違反なので、それは駄目だと思います、私も。それは駄目なんだけれども、どうだったら駄目なのかというところが、やはり取締り法規とかになっていくときちっとしないと、恣意的に解釈できたり、あるいは厳しい解釈をし過ぎたり、そういうことがまたあるので、そこはどのようにバランスを取って法制化していくか、あるいは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、ガイドラインみたいなものを作って、もうちょっと使い勝手のいい制度にしていくか。それで正しい状態にまた戻していくというようなことにしていただければありがたいと思います。
○鎌田委員 終わります。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、斎藤アレックス君。
○斎藤(ア)委員 日本維新の会の斎藤アレックスでございます。
まず、参考人の皆様、本日はお忙しいところをお越しいただき、御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、私の方からは、ポスターの公営掲示板の問題について皆様にお伺いをしていきたいというふうに考えております。
昨年の東京都知事選挙で様々問題があるポスターが掲示をされたことは、織田参考人からもお話をいただきました。仮にこの委員会で、この国会で品位規制が新たに設けられた場合、これらのポスターを選挙管理委員会が品位を理由に指導すること、外せとか、これは掲示をしてはいけないということを選挙が始まってから指導するようなことが可能だったと思われるか。ちょっと仮定の質問になってしまいますけれども、御所見をいただきたいというふうに思います。
○織田参考人 実際に掲示されたポスターを品位保持規定を基に選管が指摘又は何らかの措置を取れるかどうか、そちらについては、先ほど来御意見が出ているように、具体的に指摘をして、候補者の方に理解いただけるような基準、具体例というものありきではないかと考えてございます。
実際に、外形的な規格が合わなければ、各区市町村選管においてポスター掲示場を巡回してみたりもしております。その中で、また通報があった場合も含めて指摘をして実際に修正したり剥がしたりしている事例がございますので、何らかのアクションを取るということまではできるんですが、それを候補者の方が理解できて、その指摘のとおりに是正をすることができる、その具体的な事例の積み上げなしには難しいかなと考えてございます。
品位保持という言葉でいいますと、公選法の中では政見放送の規定の中に既に入っているものでございますが、実際には品位保持という言葉だけでは是正できないような、公序良俗に反するのではないかと思われるような映像も過去に流れたものもございます。聞いている範囲によりますと、放送局の方も、品位保持ではできないので、その局の放送コードに反するのでということで説得をする、そういうのが精いっぱいというお話も聞いておりますので、より具体的な事例が必要というふうに考えてございます。
○斎藤(ア)委員 大変参考になるというか、これから委員会質疑なども行われますけれども、具体的にこういった例は駄目だろうということを、できるだけ具体的に国会の方でも示していけるようなことが重要かなと思いますし、それが具体例の積み上げを速やかに行っていくことにもつながっていくと思いますので、そういった気持ちで取り組んでまいりたいというふうに思います。
同じ問題で兵庫県の選挙管理委員会の永田先生にお伺いをしたいと思います。また、昨今は大変御迷惑をおかけしておりまして、失礼をいたしました。
この掲示板についてはデジタルサイネージに替える、つまり、今、板を設置してそこに紙のポスターを貼っていくという作業があるわけですけれども、これをデジタルサイネージにすることが必要なのではないか、有効なのではないのかということを日本維新の会としては度々提言させていただいております。
デジタルサイネージの質問をまずちょっと織田先生に追加で聞かせていただきたいと思うんですけれども、東京都知事選挙でも掲示場所が足りなくてクリアファイルでポスターを掲示するということがありましたし、そういったことを防ぐためにもデジタルのサイネージになっていて、速やかに掲示、掲示方法が柔軟に変えられたり、あるいは問題があった掲示物については即座に取り下げたりするようなことができるような工夫をするためにも、このデジタルサイネージというのが大変有効だというふうに思うんですね。
今、東京都内であれば、かなり、公共のものも含めて、あるいはコンビニであったり民間のものを含めて、デジタルサイネージを掲示、デジタルサイネージというか、デジタルの掲示板のような活用ができる画面というのはたくさんあるわけでございまして、そういったデジタルサイネージの活用というのは、東京都のようなところでは特にやると決めたら結構できる部分があるのではないかなというふうに思いますけれども、こういう掲示板をデジタル化する可能性についてどのような考えをお持ちなのか。
また、現状ではすぐには難しいのかもしれませんけれども、こういった昨今の問題を再発防止をしていくためにも、また品位規定の問題をスムーズにしっかりと履行していくためにも、再発防止のためには重要だと思うんですが、研究の方向性などがあれば教えていただければと思います。
○織田参考人 掲示場に掲示をするポスターのデジタルサイネージ化ということにつきましては、都においても都議会等で幾つか御提案や御質問をいただいた経緯もございまして、その是非についてはやはり先生方の御議論の中に、というのは選挙運動に大きく関わるものでございますので、その御議論によるものがあると思いますが、まず、それが今すぐにできない、課題というところだけ御説明しますと、特に東京都では先ほど御説明した一万四千か所の掲示場がございまして、公選法に基づいて、投票区に相当して人口や地域に応じた設置数というのが決められております。
それだけの数のデジタルサイネージというものに移行するのが、コストもそうですし、立地もそうです。掲示場についても、地権者の方の御理解を得て、過去の歴史を踏まえて積み上げて設置されておりますので、そういったところを公平なところで掲示できるのかどうか。そしてまた、ポスターの区画の面積等の大きさについても規定がございますので、候補者の数に応じてそれを変更するようなことも可能なのかどうか、そういった諸条件を全てクリアしていくことがデジタルサイネージの活用というところにつながるために必要と思っておりますので、そういったところも含めて御検討をいただければと考えてございます。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。大変参考になります。
これとちょっと関連してというか、同じような質問を永田先生にさせていただきたいと思うんですけれども、デジタルサイネージについて先生はどう思われるかということで、これまでたくさんの選挙をされてきて、それぞれが掲示板に支援者の方にポスターを割り振って貼っていただくというのは選挙の初日の一大イベントでありまして、そこで盛り上がってやっていくということで、悪いことばかりではないと思うんですけれども、それが悪用されたり、紙の掲示板ではなかなか追いつかなかったり、また労力が大変かかるということもやはり事実だと思うので、デジタルサイネージにしていく、デジタルにしていくということも、案としてはいろいろな方から出ている状況でございます。
兵庫県選挙管理委員会の方で検討されているかどうかというのはちょっと承知をしていないんですけれども、兵庫県選挙管理委員会の御意見であれば、あるいは永田先生の御所見でも構わないんですけれども、公営掲示板のデジタル化についてどのように思われるか、御所見をいただければと思います。
○永田参考人 時代とともにデジタルサイネージも我々が考えていかないかぬ一つの方向性であるということは、我々も認識をしております。
私も何回か選挙をやりましたので、掲示板に紙を貼るというのも選挙運動等を盛り上げる一つの方向性には違いないというふうに思っておりますが、今回の知事選挙では非常にそこが問題になりましてね。
選挙の告示の直前に、ある候補者が、自分のところから十人の候補者を立てる、こういうことを県の選管に言ってきたんですよ。それで、我々は慌てまして、もう選挙が始まるのに、それだけのことを結局準備せないけませんでしょう。ですから、急に掲示板を立ててと言われましても、どうしようもない状況になったんですが、しかし、そうかといってほっておくわけにはいきませんので、我々としましても、各市あるいは町の選管にお願いして掲示板を立てていただいて、そして、数だけ、それだけ立ててくださいということ、お願いをしまして立てていただいたというような経過があるんですが。
結局、十人立てると言ったのが一人だけしか立てなかったということで、私どもは有権者の方にすごく叱られたんですが、全く無駄なこういうこと、何をやっているんだということでね。掲示板はずっとあるのに、結局、最終的に立候補した人は七人だったんですよね。ですから、七人の候補者のポスターは貼りましたけれども、それ以外は全く貼らずにそのままになってしまった。
こういうこともありますので、その辺も含めまして、今後、そういう選挙がまた次々と起こってくれば大変な、言ったら時間と金の無駄ですよね。ですから、これをどこかで何か規制の方法も考えないといけないし、万が一、候補者の数だけポスターの掲示板ができていなければ、これはまた法的な問題で訴えられる可能性も十分ありますので。
ですから、何が何でも候補者が出るという数だけの準備は私どもとしてもしっかりとしていかないといけませんので、結果は大変な無駄になりましたけれども、しかし、ほっておくわけにもいかない。そういうようなことを踏まえますと、今後のポスターの在り方というのが、デジタルサイネージも含めまして、どんなふうにしてやっていくかということを我々は課題として非常に大きく取り上げていかないといけない、そういう認識をすごくした選挙になったというふうに思っております。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。
各選管で悩みも大きくなっているということだと思いますので、公営掲示板の在り方についてもしっかりと国会の方で議論をしていかなければならないなと改めて感じました。
大泉先生にお伺いをしたいのは、インターネット、SNSのフェイクニュース、デマに対する対策といったところを次にお伺いしていきたいと考えております。
私としては、確かに、フェイクニュースや誹謗中傷、これは選挙関係なく規制をしていくというか対処をしていかなければならない問題であるという私たちは認識を持っているので、選挙だから特別な対応をどこまでするということが認められるのかということは慎重でなければならないというふうに思っています。
確かに、民主主義の危機だと言われますけれども、それはSNSのせいで民主主義が危機に陥っているのではなくて、やはり政治が、あるいは行政が特に経済問題で国民、有権者の悩みに応えてこなかったという、そういった課題、問題、生活の苦しさというものが今の政治に対する不信の根源にあると思っていますので、SNSのせいにするのではなくて、しっかりと経済政策、国の立て直しをやっていかなければならないと思いつつも、確かに、フェイクニュース、デマの情報などが出回っていて、これはこれで大変な問題でございますので、どう適切な規制をしていくのかということが大変重要になってきます。
大泉先生は、本日もお話しいただいたとおり選挙制度の実務の専門の方でありまして、実務研究会としても、SNSや動画配信サイトのプラットフォーマーと意見交換を行ったりして、どういった規制の在り方がふさわしいのかとか、そういった調査研究を行うといったこともあるのかな、された方がいいのかなとは思うんですけれども、そういったことをされているのか、あるいはそういった御予定はあるのかといったところを教えていただければというふうに思います。
○大泉参考人 今御指摘のありました意見交換とかは、正直言ってやっておりません。むしろ、私どもの考え方からいうと、選管あるいは選挙関係者としてどのように適正な選挙あるいは表現の自由を守った上での選挙をしていくかというふうな観点からアドバイスを行っているので、制度づくりのところまでちょっと手が回らないかなと。そこら辺は、総務省の中、情報通信関係のプラットフォーマーも含めましての議論をしている最中だと思いますので、そちらを見ながらきちっと対応していきたいと思います。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。
では、また大泉先生にもう一つ御質問させていただきたいと思います。
妨害行為に関する御意見も本日は参考人からいただきました。日本維新の会としましては、議員立法で、妨害行為の厳罰化や、妨害行為の中身に聴衆の聞く権利を侵害することなどを明記する法改正などを求めていたりします。実際に、我が党の候補者が衆議院選挙で妨害行為を受けるということがあったというふうに我々も問題意識を持っております。現状の公職選挙法の自由妨害罪は、当選を目的としない者が他の候補者の演説を妨害する行為に適切に対応することができていないのではないかなというふうに考えております。
本日の様々な御意見と重なるかもしれませんけれども、妨害内容を具体化して、これが妨害に当たるんだということを具体化して、行政機関が迅速に指導、取締りに動けるようにすることが重要だと考えていますけれども、選挙制度の研究者としての大泉先生の御意見を最後にお伺いできればというふうに思います。
○大泉参考人 選挙妨害については、捜査当局が今回の都知事選挙でも対応されたということで、やはり実力行為が伴ったりするものですから、それについては行政機関というよりも刑事罰の対象でやってきているというのが今までの選挙関係者の対応だと思います。
ですから、厳罰化あるいはそういうことを、制度を変えていくというのは国会の中で決めていただければと思いますけれども、具体的に、行政が出てきていいのかとなると、前にあった札幌でのいろいろな、演説中のこととか、様々な具体例に当てはめるとたくさん出てきますので、そこは、何をもって対応するかということは、基本的には刑事の部分だと思いますけれども、行政のところはなかなか出ていけないかなと思っております。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございました。
なかなか警察が動けない部分もあるのではないかなということが問題意識だとありますので、またいろいろ御指導いただければと思います。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、長友慎治君。
○長友(慎)委員 国民民主党の長友慎治でございます。
参考人の皆様には、現場の貴重な御意見をいただきまして、大変参考になっております。
まずは、東京都知事選のことを織田参考人にお聞きしたいと思います。
今回、候補者が四十八枠を上回る五十六人の立候補があったということで、掲示板が八枠足りなくなった、その対応に非常に御苦労されたということを伺っているんですが、結局、都内には一万四千か所あるポスター掲示板、これをまた、足りなくなった八人、立てるわけにはいかない、なかなか費用、時間の問題もあるということで、今回はクリアファイルで対応されたということをお聞きしました。実際、クリアファイルを使われて、候補者一人にかかる費用、幾らぐらい必要になったのか。もし数字が分かれば教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
○織田参考人 先ほどの、四十八区画設置したポスター掲示場の外周区画と我々は呼んでおります、先ほどエアというお名前もいただいたんですけれども。そちらについては実際にその八名の方の御希望があれば掲示できるようにということで用品等を用意したところでございますが、実際に使われた方と使われなかった方とございます。ですので、お一人当たりにかかったコストというのは算出しているものがございません、申し訳ありません。
○長友(慎)委員 トータルで、今回、本当はかかる必要がなかったのにかかった費用という意味では出てきますか。
○織田参考人 申し訳ありません、余り公表はしておりませんけれども、およそ四百万程度のコストをかけて用品等を用意いたしました。クリアフォルダだけではなくて、それを貼り付けるようなテープ、そして台紙になるようなもの、クリアフォルダを重ねる台紙もございましたけれども、しっかりとポスターが掲示できるようにするための様々な用品を用意いたしまして、実際の候補者の方には御不便をおかけするので無償で、御希望があるだけ幾らでも御提供するという形を取っておりました。実際に使われた後に使わなかった分を御返却されるような事例もございましたので、お一人当たりという数字を持ち合わせておりません。
○長友(慎)委員 余りにも大きな負担がかかっているといけないなと思ってお聞きしたんですけれども。
今回、五十六人が立候補されて、供託金を皆さんそれぞれ払われていると思うんですけれども、最終的に没収された方というのは何人いたのか分かりますか。
○織田参考人 今回、供託金について没収の取扱いになりましたのは、五十六名の候補者中五十三名でございます。
○長友(慎)委員 理解いたしました。
供託金は一人三百万ですかね。三百万掛ける五十六人、そうすると一・六億ぐらいになるわけですよね。それは、都の方に没収したのは入っているということですかね。
○織田参考人 そちらは一応都の一般会計の方の収入という取扱いになりますので、選挙というカテゴリーではございませんけれども、御指摘のとおりでございます。
○長友(慎)委員 分かりました。
なぜ供託金のことをお聞きしたかというと、これだけ当選を目的としない人がたくさん立候補するようなことが起きている中で、供託金が例えば三百万よりもっと高ければ数が減るのかどうか、若しくは、ほかの海外に比べれば日本の供託金は高いよという声もあるんですけれども、その点について、まず織田参考人、そして大泉参考人にもお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
○織田参考人 大変難しい問題でございまして、選管としてというよりは一担当としてのお答えにさせていただきたいんですが、金額の多寡にもよりますが、先ほど来のSNS等による収入等、その金額と比した場合については、実際には数割程度上がっても余り意味はないというか、効果は変わらないと思います。また、逆にそれにより立候補のハードルが上がるということで、様々な議論もあるのではないかというふうに考えてございます。
ただ、先ほどクリアフォルダにかかる費用についてのお話がございましたけれども、ポスター掲示場の増設ということをした場合につきましては、区画にもよりますけれども、場合によっては当初設置とほぼ同じぐらいのコストがかかる場合もございますので、そういったところを避ける意味でも、今お話があったようなお金の問題というところも踏まえて、現実的な御検討の御提案をいただけると大変ありがたいと存じます。
○大泉参考人 供託金の問題については、かなり今でも高いということで、これだけ高いのは日本だけだということで、御批判が多いところだと承知しております。それ以上に上げるといって、不適性みたいな立候補を避けるために更に上げるというふうになりますと、政治の場に出てきたいという方を排除するという、そっちの側面の方が強くなってはいけないことだと思いますので、そこはなかなか上げればいいというようなものではないと思います。
○長友(慎)委員 分かりました。まずどのようなお考えをお持ちなのかをちょっと確認したかったんですけれども、また私たちも議論をしていきたいと思います。
今回の都知事選の対応について、枠がもらえなかった方が異議を申し立てられているかと思います、ポスター掲示板が不平等だったと。例えば、その中の一人の方は恐らく異議申立てだけじゃなくて都を相手取った損害賠償請求訴訟も起こされていると思うんですが、損害賠償請求訴訟の結果、今どういう対応になっているのか教えていただけますか。
○織田参考人 今、特定の方というお話ではないのであれですけれども、一応ポスター掲示場に関係をする損害賠償請求の訴訟については係争中ということでございます。
○長友(慎)委員 本来、都の方がこういう訴訟を受けるということが起きてはいけないというか、本来なら起きないはずなんですけれども、こういうことを起こした原因は恐らく、当選目的じゃなく出てきた政治団体、またその方たちが原因なんですよね。
私は、都に落ち度はないのにこういう、落ち度がないと言い切っていいかどうかはまだ係争中だから分かりませんけれども、都の選管の皆様が訴えられてしまうというようなことが起きないようにしなければならないというふうに思うんですが、東京都の選管としても非常に迷惑を被っているし、むしろ逆に損害賠償をしたいぐらいじゃないかと私は思うんですけれども。こういうふうな、当選を目的としない政治団体に対する選管からの損害賠償請求みたいなのが逆にできたりしないのかということを大泉先生にお聞きしたいんです。そういうことは、今後、検討の余地はあるんでしょうか。
○大泉参考人 損害賠償ができるかどうかというのはそこに不法行為責任があるかどうかということなので、そこは、そういうことを認定ができるという、都の方でそういうところまで言えるとしたら訴訟はできるかもしれませんけれども、どうも私はそこまで詳しくないのであれです。そういうことなので、損害賠償できるかどうかというのは、なかなか確たる答えはできないと思います。
○長友(慎)委員 次の質問に行きたいと思います。
これは全ての参考人の皆様に最後にお聞きしたいことなんですけれども、東京の衆議院選挙十五区の補欠選挙のところでは、つばさの党の黒川さんという方が出られて、その後、今度は千代田区の区長選にも出られております。今度また千葉知事選にも出られるということで、実際、当選目的なのか、何が目的なのか、ちょっとよく理解ができない。それは、関西の方にもそういう事例があるわけなんですけれども。
こういう当選目的ではなく二馬力でという方もいたかもしれませんが、選挙に何度も出馬をされる、それが果たして本当に、当選を目的とするではなく選挙を混乱させる、正直、信義則という部分では誰がどう見ても不快であったりとか理解に苦しむような立候補というのが今後これからも続くということがあった場合に、これをどのように私たちは規制していくというか防いでいくことができるのかということを、三人の参考人の皆様の御意見をお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○織田参考人 選管の立場としてお答えすることは非常に難しい課題であるというふうに考えてございます。選挙を連続して立候補される方というのは従来からいらっしゃいまして、その方の当選を目的としているかどうかという判断は外形的には難しいものでございますので、法令の中でそういったものの判断ができるような材料がなければ、選管としてそういったものに対してのアクションを起こすことは難しいというのが現状かと存じております。
○永田参考人 私どもも、先ほど申し上げましたように総務省の方にこの問題につきまして申入れをしたんですが、法的に、他の候補者を応援するために選挙に出るということを法律的にも禁止してほしいという条項を入れさせていただいたんです。そんな選挙は普通あり得ないことなので、何の目的でそういうことになるのか分かりませんけれども。金の目的か、知名度を上げるためにやるのか分かりませんが。
しかし、いずれにしましても、他の候補者を応援するために選挙に出るということは法的には絶対に認めませんという法律を先生方の方で是非検討していただいて、法律として決めていただく、それでないと私どもは、県あたりの条例ではそこまで踏み込んだことはできませんのでね。そういうことも含めて、これから是非、それぞれの各会派の先生方も今日はお集まりですので、皆さんで相談していただいて、一致してそういう方向づけをしっかりとしていただければ、正しい選挙がこれからできていくんじゃないかな。私どもはそういうことを特に今回の知事選挙で思っておりますので、是非先生方も御理解いただいて、法案を通していただけるようにお力添えをいただければありがたいな、そのように思っているところでございます。
○大泉参考人 当選を目的としない候補者というのは、先ほど織田参考人からもありましたとおり、これまでもいたし、今日の参考資料の五でもそういう例が載っていたところでございます。
こういう機会でございましたので、私も条文をもう一回見てみると、立候補の条文が公職の候補者になろうとする者が立候補を届け出るというふうになっておりまして、公職に就きたい者が届け出るというふうな条文にはなっていないことに気がつきました。これは、公選法制定前の衆議院議員選挙法時代でも議員候補者たらんとする者ということになっていたようなので、それが生きているんだと思いますけれども。かつ、かつては当選承諾という制度がありまして、当選しても承諾しなくていいというようなことでございました。そういうのもあって、当選と公職に就くということは別な時代もあったということでございまして。
したがって、選挙に全然出なくていいというふうにするのは、片方で立候補の自由、あるいは立候補の権利というのは重い権利ですので、中身をそういうふうにしてあなたは当選しないでしょうとすることはなかなか難しいと思います。
○長友(慎)委員 現場のリアリティーのあるお声をいただきましたので、しっかりと法案審議に臨んでまいりますので、今後ともよろしくお願いします。
どうもありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、中川康洋君。
○中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。
各先生方には、今日、本当に忙しい中、お越しをいただき、参考人としての様々な御見解をいただきまして、本当にありがとうございます。もう何人か続いていますので、お疲れのことかと思いますが、端的に端的にお答えをいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
最初に、兵庫県さんも要望を出されたということでございますが、ほぼ同じタイミングで十九府県の知事が緊急アピールを出されております。ここの件についてお伺いしたいんですが、二馬力選挙が展開されたりとか、さらにはポスター掲示枠を販売したりする事例が相次いできた中で、そこに対して様々な危機をお感じになられて、それで二月の十七日に鳥取県とか宮城県また三重県など十九府県の知事が、民主主義と地方自治を守るための緊急アピール、これを総務省にお出しになられています。
この取りまとめ役である鳥取県の平井知事が、その声明の発表の場でこんなふうにおっしゃっているんですね。それは、日本の民主主義を守り育ててきたものが、この一年ほどの間に音を立てて、その土台である選挙が崩れようとしていると。民主主義を育ててきたんだけれども、その土台である選挙そのものが崩れようとしているという強い危機感を示しておるわけです。
我々がこれから法改正をしていく中で、立法事実とか、何をもってというところがすごく大事になるわけですが、そういった意味においては、織田参考人と永田参考人、まさしく選挙を執行した立場として、またその責任者として、今回の選挙を通じて、平井知事と同じように、日本の民主主義の土台である選挙が今や崩れようとしている、こういった強い危機感を同じくお持ちになられているかどうか、ここをまずお聞かせ願いたいと思います。
○織田参考人 先ほど冒頭でも御説明しましたように、様々な、当選を目的としていないかのような選挙運動、こういったものを含めまして、選挙の自由妨害もそうですけれども、選管としても一番懸念していますのは、一般の有権者の方々が選挙自体に危機感を持ってしまうということ。
先ほど、都知事選を含め投票率が上がったというお話がありましたけれども、投票率というのはそれぞれ様々な要因で上下する部分がございますが、端的に興味本位だけで上がったのであれば、これはやはり民主主義制度の根幹を成す選挙としては適切ではないように感じております。また、それ以外の、一〇〇%に満たないサイレントマジョリティーの有権者の方々が自分たちの民意を反映するために選挙に参加しやすいようにするという意味では、そういった危機感を持たれてしまうような行為が正しい姿であるとは感じておりません。
○永田参考人 今、平井知事のお話もありましたとおり、私どもも同じような方向で考えております。
そして、この度の知事選挙におきまして、県下の二十二の市長が今の現職の知事に対抗する候補者に支持をするということを表明しました。これは、公務員等の地位利用による選挙運動の禁止、こういうことに抵触するのではないかということを言われておりまして、いろいろと私どもも検討をしたところでありますが、禁止事項に当てはまるかどうかということにつきましては、非常に個別的な問題にもなってきますので、私ども選管としてどうせいこうせいというような、そういうことが立場上できない、そういう立場にありまして、どちらかといえば警察が関係して、警察が公職選挙法に違反するかしないかということを判断していく、そういう方向でも検討をしていかなければいけない、そういうようなことになるのではないかなと思っております。
私どもとしましても、今回の二十二市長のある候補者に対する支援ということが違法かどうかということは、そういう判断を私ども選管としてはできない、そういうふうな立場にございます。
○中川(康)委員 ありがとうございました。
私は、本来選挙というものは、有権者の皆さんが落ち着いた環境の下で候補者の政策とか訴えをしっかりと聞いて、その上で投票行動や支持すべき候補者を決めるという、この環境をしっかりと醸成することが大事だと思っていまして、そういった意味においては、今回の、皆さんも要望を出されておる、また、平井知事がおっしゃった民主主義の土台である選挙が崩れようとしているというこの危機感、これはやはり改正に向けての一つの立法事実になるんじゃないかなというふうに私は感じております。それを選挙を執行された両参考人にまずは確認させていただきたいという思いで聞かせていただきました。
次に、そうはいうものの、現行の法令でしっかりと措置できるものもあるのではないかというふうにも思っておる一人でございます。今、二馬力選挙がすごく言われておるんですが、これが今の公選法の数量制限に抵触するかどうかというところ、既に大泉先生からは、具体的な違反事例を明確にすべきである、さらには積み上げていくことによってここはより明確になるんじゃないかなというお話もいただいたところであります。
東京都並びに兵庫県の各選管に伺いたいんですが、具体的に考えると、ビラであるとかポスターであるとか選挙運動用自動車のところにおいて、いわゆる二馬力選挙でやっていくと、自動車を並べたりとか、ビラもほとんど同じような内容を作ってやると、私はこれは現行の法令において数量制限に抵触するではないかというふうに考える一人でございますけれども、ここは執行されておる両選管のお立場として改めてお伺いしたいと思います。
○織田参考人 御指摘のように、現行法の法令の中で指摘して是正を求めることができないかというものを我々選管としてもさんざん検討させていただき、所管官庁である総務省様にもお問合せをしたり、ありとあらゆる努力をいたしましたが、済みません、力不足でそこまで届かなかったところで、申し訳ございません、先生方のお力をおかりして是非、今後の法令を我々がしっかりと頼れる力強いものにしていただきたいということで、本日、お願いに参った次第でございます。
○永田参考人 今回の知事選挙なんですが、ある候補者の二馬力選挙に対して県選管としてどういった対応をすべきかということは、これは非常に、いろいろなところから意見が確かに出てきて、私どももいろいろな検討もしたわけなんです。
二馬力選挙ということで、例えば街頭演説とか選挙運動用ポスターだとかあるいは政見放送、選挙公報、SNS、こういうことの二馬力ということが疑われる行為を行っていたというのは確かに事実だと思うんですけれども、外形上は現行の公職選挙法で認められた態様の選挙で行っておったと思うんです。ですから、県の選挙管理委員会としてどう対応すべきかというようなことを言う立場にもないというか、言うことも非常に難しいことだというふうに私どもは思っておりまして。
現行の公職選挙法には何も違反はしていないという、この事実がありますので、その辺を含めまして、今後いろいろ検討を重ねながら、こういうことを規制して、二馬力選挙なんかへの対応はこれからしていかなきゃいけない、私どもはそのように考えておりますが、現状では県の選管としてどうせいこうせいと言える立場にもないということも御理解をいただければありがたいというふうに思います。
○中川(康)委員 ありがとうございました。執行する側の難しさ、さらには選挙期間というのは限られているというところで、今、本当に大変な思いというのを伺わせていただきました。
私は、現状を積み上げていく中で現行法令でどこまでできるかというところもしっかりと見極めていきながら、しかしそこでは限界だというところについては新たなる法改正というところも必要であるなというのを、今お話を伺いながら感じたところであります。そして、公平性の観点というのをしっかりと担保していくというお話をいただいたと思います。
そこで、何度も重なっちゃって本当に恐縮なんですが、大泉先生にお伺いしたいんですが、今みたいな話も総合する中で、現状の公選法でできるもの、例えば選挙の自由妨害罪とか虚偽事項公開、誹謗中傷、こういったものもある、さらには新たなる立法の必要性、中でも可及的速やかにここはやはり我々立法府としてやるべきだというところを改めて少し整理いただいてお話しいただけるとというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○大泉参考人 済みません、私の頭の中も整理されていないので恐縮ですけれども、二馬力選挙というのは今回私も初めて見たというか、そういうことは、泡沫的な候補者がいて当選しないというのはありましたけれども、他の候補者を応援するというのはなかなかなかったと思います。これまでも、複数人が当選する選挙で両方頑張ろうとか、どちらかに集中しようとかいうふうなもので他人の運動的なことをやったことはあると思うんですけれども、それらが全然問題にならなかった。今回のような初めての、全く純粋に他人のことだけやるというようなことについては初めてですので、そういうところは立法措置、ただ、先ほどから申しましたとおり、余り抽象的にやっても難しいかなというふうなことでございます。
あと、SNSも、インターネット導入当時はブログとかそういうものが中心で、その後、フェイスブックとかがだんだん広がっていったというような経緯がありますので、ここまでは皆さん予想していなかったことですので、そこはまた新たな対応が要るのではないかと思います。
○中川(康)委員 改めて、整理できていないとおっしゃっていただきながら整理されていたと思うんですが、結構これも収れんされてきたなというふうに感じながら、今お伺いさせていただきました。
大泉先生にちょっと観点を変えて聞きたいんですが、鳥取県さんの対応で、鳥取県はポスター掲示板問題などを受けて昨年の十月に、選挙運動目的以外のポスターを掲示場に貼ることを禁ずる条例を可決しているんですね。また、今回の二馬力選挙への対応についても、条例改正か、規則を制定することによって対応しているというふうにおっしゃっているんです。平井知事がおっしゃっているんですけれども。
当然、我々は国としての法改正をやる立場として物事を考えるんですが、その前段と言っていいのか分からないんだけれども、自治体独自の取組として国との関連性とか必要性なんかも考えながらですけれども、自治体独自のこういった取組、これを先生はどう評価されるか、そこをお願いします。
○大泉参考人 平井知事も選挙に詳しいということなので、いろいろ考えられているんだと思います。
私も、詳しくは知りませんけれども、条例などを見て、あくまで印象的なものでございますけれども、あるべき選挙運動の姿とかあるいは主権者教育なんかも含めて、あとはSNSに対するリテラシーの言及などもあり、中身的には問題意識があって、選挙運動の姿も示しているし、立派な、すばらしい条例だと思います。ただ、一個一個を見ていきますと、例えば選挙運動と認められないポスターとか、候補者以外の者が掲示したポスターなどについては撤去命令などの措置がかけられるというふうに書いてあるようですけれども、実際にトラブルが起こったときの対処はどうするのかというのはちょっと疑問になりました。
先ほどから言っていますとおり、みんなが、衆目の一致するものだったらいけるんでしょうけれども、判断が分かれるものについてどうするのか。特に、今日の資料一に出している最高裁判決などもございますので、条例によると選管が判断するようですけれども、選挙無効と裏腹の重い判断になると思われます。だけれども、全体としては課題に対して正面から向き合った条例だと思います。
○中川(康)委員 私も、県の条例において、課題に対し向き合って、攻める姿勢というか、様々な抑止効果を狙っていくという部分においては一定程度評価させていただいているんですね。だからといって国がしなくていいという話じゃなくて、こういった事例もあるということで、少し私も意識を持ちながら紹介させていただきました。
今、その中の話でも出ましたけれども、我々はこれから可及的速やかにしっかりと、今回も公選法の改正案が出されるところでありますし、しっかりとやっていかなあかん。これは短期的な取組として絶対的に必要だと思います。
長い目で見ていくと、今お話がありましたけれども、日本の民主主義を育てるという意味においては、我々も国会に立場を置いている者として、我が国における主権者教育の必要性であるとか、これは総務省の側かもしれませんが、リテラシーの向上というのも本気になって取り組まないかぬという、そんなことも感じながら今日は参考人の先生方の御意見を賜ったところでございます。
大変にありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、高井崇志君。
○高井委員 れいわ新選組の高井と申します。
今日は、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、まず大泉参考人にお伺いしたいんですが、大泉参考人は、総務省の選挙部長それから選挙課長も経験されたオーソリティーでございますが、その更に大先輩の、片木現在弁護士で元選挙部長で、いろいろなメディアとかでも非常に一家言を持っていろいろな発言をされていますが、私は非常に共感することが多くて。例えば東京新聞の記事なんですが、「「自由で楽しい」選挙に」という表題で片木さんがこう書いています。
本来自由である選挙ポスターの掲示が、なぜ役所の提供するお仕着せの掲示板に限られなければならないのか。このような規制がなければ、候補者枠の希少価値を利用した今回のようなこともなかったのではないか。日本のように選挙運動を厳しく規制している国は、民主主義の先進国にはありません。候補者討論会やテレビの討論番組が盛んで、各種の文書にも制限はなく、インターネットの利用も活発です。
確かに、海外の選挙、アメリカの大統領選挙なんかもそうですし、あと韓国とか台湾、非常にお祭りのように、そして若い人も楽しく参加する、そういうのを見ると、日本の選挙は何か本当に評判が悪いなと私は思うわけです。
また、こうも述べています。ポスターに関する規制はかなり時代遅れだ。公設の掲示板以外で貼ることを禁止する規制をしているのは民主主義の先進国では日本だけで、ガラパゴス選挙制度と言える。ポスターのことはこう書いています。
それともう一つ、ここもちょっとお聞きしたいんですけれども、こうも言っています。供託金制度は諸外国で例が少なく、あっても少額だ。署名の提出を義務づける制度の方が有効だ。
これも実はれいわ新選組はずっと訴えていることで、全くこの片木弁護士、元選挙部長の考えに共感するんですが、後輩というか選挙部長を経験された大泉さんの、今私が申したこの片木弁護士の見解についてどのようにお考えか、御意見をお聞かせください。
○大泉参考人 私も片木先生の下で勤めていたこともございますので、そういうわけですけれども。
公選法の中では理論とか経緯というものが非常に積み重ねられておりまして、例えばポスター掲示場でしたら、昭和三十七年に初めて出てきました。公選法に初めてポスター掲示場というものが出てきまして、このときは、ポスター掲示場は一か所、投票区ごとに一か所置かれて、それに貼れるのと、ほかにも貼れたということでございました。
ただ、その翌年、昭和三十八年の衆議院議員の特別措置法で、ポスター掲示場にしか貼れないということになりました。そうしたら、当時の論調を見ますと、それまで一万何千枚かな、というような上限があって、みんな貼っていたんですけれどもね、証紙とか検印をもらって貼っていたんですが、それが何百枚とか、二千枚ぐらいかな、上限、それですごく選挙が盛り上がらなくなって大変だったというような当時の記録があったりします。
ただ、その翌年、昭和三十九年ですかね、七、八、九に至りまして、やはりこっちの方がいいというふうに政策判断がありまして、ポスター掲示場にしか貼れないような制度ができまして、それが恒久化していった。それで今まで続いているということですので、それは時代の流れが変わって、こうすべきだというようなことがあればまた変えていいということだと思いますが、逆に言えば当時は、ポスターが多過ぎる、金がかかるというようなことで、ポスター掲示場に統一した方がいいんじゃないかという論調があったというふうに、そういうような話を聞いていますので、そういう状況に応じて、また立法を変えるのなら変えるというような余地はあるし、そこはまさに国会の裁量だ、余地だと思います。
それから、供託金でございますけれども、これもなかなか、先ほどありましたとおり、余り評判のいい制度ではないというか、これが重いんじゃないか、立候補を制限しているんじゃないかというのは十分ございます。
ただ、それに代わるような、諸外国でやっているような制度として署名を求める。署名を求めたら求めたで、誰が審査するのかとか、それが正しいかどうか、今直接請求でいろいろやって問題が生じたりしていますけれども、またそのような問題が出てくる。それらを含めて、やはりどれがいいかということを判断していっていただければありがたいと思います。
○高井委員 ありがとうございます。
供託金は、もうちょっと中期的な課題というか、また議論したいと思うんですが。
この公営掲示板、そもそもポスターはふだんは皆さん政治家は貼っていますよね。それが選挙になると急に剥がさなきゃいけないとか、証紙を貼って千枚までとか、プラス公営掲示板という、非常にやはり制限が多過ぎて、また、ただ一方で、公営掲示板があることによって、結構新人議員はそれで顔と政策と名前が訴えられるというメリットもあるとは思うんですね。
そう考えると、次は織田参考人と、あと大泉参考人ももう一度、お二人に聞きたいんですが、公営掲示板がとにかく貼るのが大変なんですよね、東京都一万四千か所ってね。これはもうどれだけの人が要るか。私なんかは、衆議院の小選挙区ですら大体五十人ぐらい。しかも、平日なんですよ、衆議院は始まるのが。そうすると、平日に五十人集めるって本当に大変で、これがある意味参入障壁というか、立候補するための大きな支援団体がある皆さんはいいですけれども、れいわ新選組なんかは本当にボランティアだけでやっているので、集めるのは本当に大変です。
これなんかはデジタルサイネージも一案ですけれども、ただ、それはやはりいろいろな課題もお金もかかるだろうということで、だけれども、例えば、立候補の届出を八時から夕方五時までにしないで、十時で二時間ぐらいで締め切ってですね。前の日にポスターを事前に出しておいていただいて、朝の十時に締め切ったら、市区町村の方々が、申し訳ないけれども、各掲示板に全員分をぺたぺた貼っていったらよっぽど効率的だと思います。例えば、事前にポスターを出さなかった、ぎりぎりで立候補するような人は、それは自分で貼ってくださいでもいいじゃないですか。だけれども、ちゃんと準備している人は前日までに出せばそれは選挙管理委員会が貼ってくれるというような制度も私はいいんじゃないかなと思います。
あと、証紙貼りですね。これもビラに、衆議院だったら七万枚ぺたぺたと。これも平日に五十人ぐらいボランティアを集めないとその日のうちに貼り終わらないんですね。これも参入障壁です。
こういったことを、私たちは、各党の選挙に関する協議会というのがあって、れいわから提案して今後の論点に入れていただきましたけれども。
あともう一つ、ちょっと細かい話ですけれども、選挙人名簿の書き写しというのができるんですけれども、これも、せっかく認めてもらっているのに、すごく何かもう、直筆で、しかも一人しか、役場によっては一人が、しかも限られた時間しかできないみたいな、そんな制限するぐらいだったらそもそもやめた方がいいんじゃないかと。認めている以上、どんどんそれがやれるようにすべきじゃないかと。
この三つをれいわ新選組は各党に、皆さんに呼びかけているんですけれども、公営掲示板の方式、選挙ビラの証紙貼り、それから選挙人名簿の書き写し、この三つについて、織田参考人と大泉参考人の御意見を聞かせてください。
○織田参考人 その三点につきましては、まず、東京都のように都市部、そして候補者がたくさん出るところとそうでないところによって、その執行に影響をどれだけ及ぼすのかというところがそれぞれ差があるかと考えております。
ただ、公選法の根本にございます公平公正なという考え方の下に各制度や運用というのが今まで練り込まれてきたというところがございますので、選管の立場としては、当然その法令が改正されましたらそれに基づいて一生懸命執行するという、これに尽きることでございます。
ただ、今お話があったように、例えば選挙の掲示板にポスターを貼る、こういった行為については、昨今では、昨年の都知事選では、ある候補者はSNSでボランティアを募って、SNSでエンジニアも募って、自分たちでデジタルマップ化をしてゲームのような形でポスターを貼るという形で、どんどんどんどん埋めていくという楽しさを持ってかなりの数を貼ったということを公表したりしております。
ただ、それを、御存じかと思いますけれども、選挙管理委員会というのは、年がら年中選挙はございませんので、どこかの課の兼務とか、兼務であっても二、三人しかいないとかという脆弱な組織でございます。
ポスター掲示板の設置、管理というのは区市町村の選管になりまして、当然それを区市町村の選管がやるとなると、委託をかけないとできないようなことになりますので、選挙にどれだけお金をかけるのか、そして短期間の選挙の中でそれが実施できるのか、そういったところを含めて、全体としての法改正の有無については御検討いただけるとありがたいなというふうに考えてございます。
選挙人名簿についても同様に、個人情報を選挙の名目で閲覧できるという制度で今の形は成り立っているというふうに私としては承知しておりますので、それの是非について選管がお話しする立場ではございませんが、今後、より有権者の方の理解が得られる形でこの閲覧という方式が変わるのであれば、選管としては法令に従って対応するという所存でございます。
○大泉参考人 いずれのことについても、私が昔、総務省とかに勤めているときにはそういう話があるというふうなことはあったものです。
ポスター掲示場につきましては、最初のときに申し上げましたとおり、場所は選管が提供する、そのスペースの区画の中は自由にやってくれというようなことですので、そこの中では自由にやってくれということでございます。
仮に選管がそれを貼ったりすると、今度は、よく、先ほど言った委託しないと貼れないというので、責任をどこまで持てるかということなんですけれども、例えばちょっと曲がっているとか、そういうような話が出たときに誰が責任を取るかということになって、公平じゃないんじゃないかというようなので、結構細部が実際にやってみると大変なんじゃないかというふうなことは、直感として感じられます。
それから、証紙貼りですけれども、これも大変な作業だと伺っております。これについてもどのようにかして廃止できないかと。ただ、廃止するということイコール枚数制限しないということです。そうしますと、また、たくさんビラを配れる政党、あるいはお金がたくさんある政党、その政党間あるいは候補者間で差が出てしまうんじゃないかというようなことがございまして、ずっとこれも来ている。
ただ、ほかの方法があるのかというと、例えば年賀はがきなどの番号制にしたらどうだとか。ただ、それもかつてちょっと勉強したことがありましたけれども、そういう印刷技術はちょっとある意味特殊でございまして、そんなにできるところがあるわけじゃないというようなことを伺っておりました。そういう中で、今の証紙が、何というか、ほかのところを潰していって、これしかないのかなというので、今ずっと続いているものだと認識しております。
それから、選挙人名簿については、郵便はがきによる選挙運動ができる以上、やはりどこかで公開しなければいけないということで、選挙人名簿が見られるようになって、法律的にもそうなっていますけれども、これもやはり個人情報、プライバシー保護の高まりがありますので、その中でどこが着地点になるかというような観点から今そういうふうなことになっているんだと思います。これがコピーとかでできますと、また広まるんじゃないかとか、そういう不安が出てきたりしますので、そういうことだと思います。
○高井委員 証紙貼りは、ちょっと言い忘れましたけれども、例えば電子透かしとか、今の技術でできると思うんですよね。だから、七万枚に限定して印刷をするということは十分できると思うので。あと、いろいろ課題は選挙部長の頃からあったということですけれども、そんなに大きな課題じゃないと今思いましたので、是非皆さんで決めましょうよ、この委員会で。
最後の質問ですが、永田参考人にお聞きします。
兵庫県は本当に大変な選挙で、本当にじくじたる思いだったんじゃないかと思います。私は、メディアの責任を問いたいと思うんです、テレビ。テレビがあれだけ選挙前にあおって、齋藤知事のニュースばかりでしたよ、本当に。国政のことなんかよりも兵庫県のニュースばかりだったんですよ。その方が視聴率がいいらしいんですよ、ワイドショーなんかでは。だからみんなそれを報道して、ところが選挙になったら一切報道しなくなって、それは今までの私は反動だと思います。あれだけテレビでやっちゃったから、それに反対する意見が来たらわっと盛り上がって、それをしかも打ち消す報道が選挙中に地上波で、テレビで流れなかった、これが私は兵庫県にとって本当に不幸だったと思うんですが、選挙管理委員長として、このメディアの責任、特にテレビの責任、どう考えますか。
○永田参考人 おっしゃるとおり、既存のメディアとそれからSNSとの関係、これが今回の選挙でも非常に大きな問題に確かになりました。
既存のメディアが何も報道しないじゃないか、SNSがいろいろな報道をどんどんどんどんしている一方で既存のテレビにしても新聞にしても余り報道していないじゃないかというような、そういう指摘は確かにおっしゃるとおりあったと思うんですね。
しかし、既存のメディアにしますと、放送する、あるいはマスコミが表へ出すということになると、これはもう大変な過程が要るわけですね。例えば新聞なんかでも、記者が書くことを誰がチェックする、それをまた誰がチェックするということで、中で、それが本当なのかどうかという、真実であるかどうかということを非常に慎重に判断して、それでそれが正しいことだということであれば既存のメディアも報道していたと思うんです。
ところが、SNS関係は、一人が、俺はこういう報道をしたいんだということでばっと流してやるものですからね。ですから、一般の有権者の方からすると、何や、SNSばかり流れて何にも既存のメディアが言わないじゃないか、一体何をやっているんだ、こういうような指摘があるんですが、これはちょっと違うと思うんです、そういう流れというか、趣旨ということが。
今回の兵庫県の知事選挙においては、既存メディアと新しいSNSとの対決というような、そういうことがよく言われました。
ですから、私は、何も既存のメディアがサボっておったわけでも何でもないんですけれども、それだけ慎重に慎重に検討をして、そして報道していっているものですから、余り表に出る記事も少なかったということが、何もしていないというふうに逆に取られて、非常にその辺の対決が大きな問題になったと思うんですけれども、その辺も是非有権者の皆さんの御理解をいただいて、それぞれのSNSがばっと報道していることが正しいか正しくないかは自分の判断でしっかりとして、そして投票していく、そういうことにつなげていただければいいので、既存メディアが、何も私は批判するつもりもありませんし、慎重に対応した結果がそういうふうになったんじゃないかな、そのように思っています。
○高井委員 終わりますが、既存メディアも、終わった後、反省していましたから、変わっていくことを期待して。皆さん、今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
参考人のお三方には貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
最初に、三人の参考人の皆さんにそれぞれお答えいただきたいと思います。
日本の公職選挙法ですけれども、べからず法と言われますように、立候補や選挙運動に様々な規制が設けられており、民主主義や国民の参政権の保障の点から重大な問題があると考えております。選挙運動を包括的に禁止して、例外的に許容するという体系になっております。そのため、選挙の主体が候補者、政党となり、選挙運動を行うための手段や方法が厳しく制限され、複雑で、いわばプロでなければ選挙運動ができないような仕組みになっている現状です。
だからこそ、国民、有権者が主体的に選挙、政治に関わりやすくする、国民、有権者の自由な選挙活動を妨げている規制をなくす、国民が主権者として自らの代表を選び、政治に積極的に参加をし、選挙に気軽に多面的に参加できるよう、複雑な現行公選法を抜本的に見直すことが必要だと考えますが、それぞれのお考えをお聞かせください。織田参考人、永田参考人、大泉参考人の順番でお願いをいたします。
○織田参考人 先ほども申し上げたとおり、選挙管理委員会の一員でございまして、公職選挙法に基づき執行しております。また、大変申し訳ございませんが、諸先輩方に比べて、私、まだ浅いものでございますので、全体像を把握できていない部分もあるかもしれません。
ただ、いろいろと勉強して、選挙を執行していく中で、公職選挙法もいろいろ過去に見直しが行われ、インターネット選挙についてもガイドラインが出るなど、時代に即しての見直しというのが行われてきているというところを我々も感じ取っているところでございます。
先ほどと繰り返しになりますけれども、時代にそぐわない部分というのは、昨今のSNSを始めとしたインターネットの普及に対しては、非常にスピードが速いので、追いかけている部分もあると思いますので、是非先生方のお力で、必要な見直しがあれば是非していただき、また、その運用がしっかりとできるように、具体的な事例、対象となるものを明示いただければありがたいというふうに考えてございます。
○永田参考人 今回、SNSを発信した候補者なんですが、これの立候補を認めないようにしたらどうかというような、そんな意見もあったんですけれども、我々としましては、立候補の届出に必要な書類をちゃんとそろえて出してくれば受理せざるを得ないというようなことになっていますので、内面的なことで、例えば他の候補を応援するために出るんだというようなことは、我々としてもちょっと分かりませんので、その辺も含めまして、立候補をどういうふうに制限するかということは非常に難しい問題だ、そのように考えておるところでございます。
しかし、そういうことにつきましても、今回の選挙ではいろいろな方から批判もいただきましたし、そういう中で我々もしっかりとそれを受け止めて今後対応していきたいというふうに思っているところでございますが、現行法ではそれがやはり限界があると思うんですよ。ですから、やはり法の整備をしっかりしていただいて、我々は条例を制定、おとつい本会議が始まっていますけれども、そこでもいろいろな意見の開陳がなされておりますし、我々としてもちゃんとした選挙ができるようにということで、県としても例えば今回の補正予算の中でも一千万ほどの補正を積むということで、知事からそういう提案も出されております。
ですから、そういうようなことも含めまして、我々独自として兵庫県としても条例としてどういうことをしたらいいかということをずっと検討して、大学の先生とか弁護士の方とか四人ほど入っていただいてそういう検討委員会も設けておりまして、その中でいろいろな、今後どういうふうな形で選挙ができるのかというような話合いを今していただいているところですので、まだ具体的な形のものが出ていませんが、しかし、今、定例の県議会も開かれていますので、そういう中でおいおいそういう回答が出てくるんじゃないかな、そのように思っておりますし、また、そういうふうにしていかないと今後の選挙にプラスにならないというふうに思っていますので、まずそういう方向づけに我々も一生懸命努力したいと思っております。
○大泉参考人 今の選挙法が制限だらけではないかということで、いろいろ御批判があることは十分承知しております。
教科書的になってしまいますけれども、選挙運動に制限が課せられているのは、財力の差によって力が変わってきてはいけないということとか、金のかからない選挙制度にするためにこういうふうになっていたんだと説明されておりますし、それぞれの候補者あるいは政治団体などの持っている資源が違う、人がたくさんいるところもあれば、お金がたくさん、たくさんはないかもしれませんけれども、お金でやるのを面倒が見られるというようなところがある、いろいろな中での、その均衡を取ったところで現在の公選法があるんじゃないか。ただ、ちょっと古い時代にできたものではございますけれども、そういうもので今の公選法があるんじゃないかと認識をしております。
その中で、SNS、インターネットによる選挙運動は、そこは風穴を空けてほぼ自由になったわけでございますけれども、今度は逆に今回のような規制の必要性が語られてきているようなところもありますので、そこら辺は最終的には全てを含めて国会、立法府の中でお決めいただければ一番いいんじゃないかと思います。
○塩川委員 ありがとうございます。
次に、都知事選のポスターに関連して織田参考人と大泉参考人にお尋ねいたします。
都知事選において、ポスター掲示板の区画が足りない、クリアファイルによって掲示をするということが起こりました。事前に区画が足りないということは指摘をされていたところですけれども、このような対応になったということで、そうしますと、元々アクリル板という話も報道で聞きましたけれども、それがクリアファイルになったというような経緯として説明を聞きましたが、立候補の公平の点からいった場合にやはり差があったんじゃないのか、有権者に候補者の情報や政策がきちんと伝わったと言えるのか、その点についてお考えをお聞かせください。
○織田参考人 ポスター掲示場の外周区画を活用したということにつきましては、今御指摘にあったものというのは、先ほど私の説明には入っていなかった内容もございましたけれども、端的に言いますと、候補者数が大幅に増加した理由としては、特定の団体が候補者を大量に立てようとしたというところも大きく影響してございます。その立てる数については、古くは、最初は二百と言ったり、百と言ったり、五十と言ったり、その後も二転三転して数字が変わる中で実際の候補者の名前が出ない、ただのつかみ数字だけを弄した、そういうようなお話で聞きました。また、別の団体も五十名くらいの候補者を立てるというような情報もありまして、選管としましては、ありとあらゆる情報をしっかりと吟味して備えてまいったところでございます。
また、SNSで事実に基づかないような情報が流布されておりますけれども、実際に増設をする判断ができる段階では、それを超えるというような情報は我々は知り得なかった。その後になってしまったことによって、緊急避難措置としてああいった用品を使った対応をしたというところでございます。
そして、一般の有権者の方々に対してそれが情報としてどのように捉えられたかというところにつきましては、緊急避難措置であるということで、全く同じような態様で貼られたというふうには、裁判の判決の中でも、そこまでは言えないかもしれないというようなお話をいただいております。
ただ、そもそもポスター掲示場というのは、ポスターを貼れる人と貼れない人がいる、そういったものをちゃんと皆さんが平等に貼れるようにするということで備えられた、そういう設備でございますので、逐条解説の中でも、同じ一面にポスターを貼ることができるようにというような表現になっております。そこをしっかりと担保するという形で我々としては外周区画というものを設置させていただいた、そして、下地となるような用品を用意して少しでも遜色ないように見えるようにということをやりましたので、法令の範囲内で、ぎりぎり許容される範囲内の最善の策を取ったというふうに考えてございます。
○大泉参考人 今、織田参考人から大変な御苦労があったというふうに伺いました。ただ、御苦労を顧みずに言いますと、一般的に言えば、公選法の建前といいますのは、候補者が同様な条件で争うということになります、それを求められていると思いますので、そういう意味ではポスター掲示場は全員の分がなければいけないのかなと思っております。今、裁判になって判断を受けておりますが、また上告されているようでございますので、そういう中で、緊急避難であったかもしれませんけれども、基本的には候補者が平等に争えるように環境を整えていくのがまた求められるのかなと思っております。
○塩川委員 ありがとうございます。
選管が公正な選挙を確保する、また候補者の選挙活動の自由も保障していく、それをもって有権者の参政権を保障する、そういう取組で日常的な活動も大変重要だと思っております。そういう点での選管による日常的な啓発の活動ですとか周知徹底の重要性というのが大変求められているところであります。
そこで、お三方に、一言ずつで結構ですけれども、選挙の正当性や公正性を担保するためにも、管理や執行や啓発に係る経費と選挙事務に従事する人員を十分に確保すべきだと考えております。特に、人員の面でいきまして、都道府県選管がどれだけの体制かというのもありますし、市町村選管などはなかなかこれは人の確保も困難だということも聞いております。そういった選管における人員の確保の現状というのはどんな課題があるのか。我々としては、それをより拡充することこそ選挙をしっかりとしたものとしていく上でも欠かせないと思っているんですが、その点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。順番でお願いいたします。
○織田参考人 人員の配置というのはなかなか難しいものでございまして、行政委員会でございますけれども、基本的には行政組織の一部ということで、全体の人員配置の考え方等も踏まえて配置されているものというふうに存じております。
今お話があったように、例えば区市町村の選管においては、専任の職員がいるところ、専任プラス兼任がいるところ、ほぼ全員兼任になっているところ、そういったところは様々でございます。それはやはり年間の中で選挙又はその選挙に関わる事務に従事するというボリュームにもよりますので、一概には言えないことかなというふうに考えてございます。
選挙の執行だけではなくて、政治団体の管理であるとか、都道府県であればそういったこともやっておりますし、一般の有権者の方に対する啓発などもやっておりますので、そういった業務量に応じて必要な人員が配置されるものと考えてございます。
○永田参考人 私どもの選挙で、今回は急な選挙だったものですからね。ですから、元々人員が足らないというか、ふだんは、別に選挙を毎日やっておるわけでもありませんので、人員の方も確かに足らないというふうに、私どももそのように認識をしております。しかし、今回の場合はそこへもってきて急な選挙ということになりましたので、誠に対応に苦労したんですが、しかし、そういう中でも、今回、人員のある程度の増加を私どもとしてしまして、一応、今回の選挙に対応したということになるんですが。
全般的に言いますと、おっしゃるとおり本当に選挙管理委員会の委員というのは数が少なくて足りないというので、これはやはり今後何らかの形で増やしていかないといけないんじゃないか、そういう認識を私どもはしているところでございます。
○大泉参考人 今お二人の参考人からあったとおりが現状だと思いますし、私どもも、耳に入ってくる話は、選挙がいつもあるわけではないのでなかなか人員的に確保するのは難しいというような話は入ってまいります。また、特に最近では昔たくさんいたようなベテランの職員が大分減ってきて、人事ローテーションでなかなか難しくなってきているというようなお話も聞きますので、公選法の知識、プラスアルファの知識を備えた職員がちゃんといるようにしなければいけないと考えております。
そういう中で、私どもの一般社団法人も選管からの質問の受付先みたいになっておりまして、そういう中で一助を、少しでもお助けになればというふうに活動しております。
○塩川委員 執行経費基準法の議論もありますので、参考にさせていただきたいと思います。
本当にありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 有志の会の福島伸享でございます。
今日は本当に、三人の参考人の先生方、ありがとうございます。最後の質問ですので、気楽にお答えいただければというふうに思います。
私だけがこの中で無所属で立候補いたしておりまして、選挙期間になりますといわゆるA全と言われるポスターを、掲示板以外に名前と顔をやったような写真を私たちは貼れませんで、それまでいわゆる二連ポスターというのを貼っている中、解散になると全部、原則剥がさなければならないということになっておりまして、非常に不公平だなと思っております。相手の陣営もその弱さを分かっていまして、徹底して貼り替えていないポスターをチェックして、選管の方から、ここを貼り替えろ、ここを貼り替えろと。それだけで一人か二人の要員が必要になって、その分、活動ができないという。そうした選挙戦を戦ってまいりましたし、政見放送もありません、ビラの枚数も少ない、選挙事務所の数も少ないという中で戦っております。
衆議院は小選挙区比例代表並立制ですけれども、小選挙区と比例代表はまた別の選挙だと思うんですね。小選挙区の無所属の候補者が掲示板以外に個人の名前が入ったポスターを掲げられないというのは選挙の公平性の点で問題があるんじゃないかと思うんですけれども、大泉参考人、いかがお考えでしょうか。
○大泉参考人 かつて、衆議院の選挙制度が変わったときに、政党本位の選挙にするということで、そういうふうにつくって制度化がされていったわけでございますけれども、そういう中で政党の選挙の運動も認める。それまでは今の参議院と同様に確認団体ということで、直接選挙運動はできない政治活動をやっていたわけでございますけれども、政党本位の選挙ということで、政党も選挙運動ができる。政党中心なので、無所属の方はなかなか乗ってこないということでございます。
この点については、最高裁でも違憲ではないと。政党本位、そういうような制度趣旨からいって、差があっても違憲ではないというような、政見放送が政党にしかないということなどについても違憲ではないというような判決が出ておりますので、それになっているのかなと認識しております。
○福島委員 にわかに納得し難いんですけれども。
ただ、どうやって工夫するかというと、皆さんがA全を貼っているポスターのところに私が、党より人物と書いた文字だけのポスターを貼るんですね。これは恐らく、政治活動の一環として公示前に貼るポスターであれば許されるんだと思っております。
今日提出された法案では、当該ポスターを使用する候補者の氏名を選挙人に見やすいよう記載しなければならないとなっているんですね。これは余計なお世話なんじゃないかと私は思うんですよ。片方で文字のポスターしか貼らせてもらえない、そのイメージと統一するために文字だけのポスターを貼ることは許されていいと思うんですね。今回の改正案で、名前を見えるようにしろとか、見やすいように記載しろとかというのは選挙活動の自由を侵害すると思われるんですけれども、大泉参考人、いかがでしょうか。
○大泉参考人 そこまで法律のことを勉強していなかったので、ちょっとお答えは差し控えさせていただいて、事前に貼るポスターについても……(福島委員「掲示板に貼るポスターに、選挙人に見やすいように名前を掲示しなければならないと。今回、改正案で」と呼ぶ)掲示板に貼るポスターは、その中で戦っていただくわけですから、何を書いていただくかというのは、そこはお決めいただければと思います。ほかのポスターについてどう書くかということについては、今回はないのではないかと思っています。
○福島委員 それでも、掲示板のポスターも、そのデザインは私は原則自由だと思うし、それそのものが選挙戦略だと思うんですね。名前を書かなければならないということは、私にとっては、余計なおせっかいと言ったらおかしいですけれども、そう思えるんです。
もう一つ、今回の法改正でこういう条文になっております。公職の候補者は、他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけるようなポスターとしての品位を損なう内容を記載してはいけないと。他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけと。
仮に、ポスターに、例えば、私でも誰でもいいんですけれども、裏金議員追放と書いたポスターを掲げますね。裏金議員追放。今までですと国会で、この前までの国会ですと、今はいなくなっちゃいましたけれども、鷲尾議員がそそっと本会議場で議長のところへ行って、裏金議員と言っただけで、けしからぬと言ったわけですね。つまり、裏金議員を擁している政党は、裏金議員と言うことは名誉を傷つけるものだと思っているわけですね。当然、選挙になれば、裏金議員追放というポスターを貼れば、その議員の名誉を傷つけているじゃないか、選管さん、取り締まってくれと言われるわけですけれども、この条文の下、そう訴えられたときに、織田参考人、永田参考人、どう対応いたしますか。
○織田参考人 先ほど来御回答したように、法令の改正があった場合については、その具体的な対象や事例についても明示いただきたいというお願いをしておりまして、選管としましては、そういったものによってでしか判断ができないというのが正直なところでございます。
○永田参考人 非常に難しい問題だろうというふうに思っておるんですが、私ども、今回の知事選挙でもそういうような、いろいろな問題もとにかく出てきておりますのでね。おっしゃるとおり、今いろいろなことを私どもは検討もしておりますので、検討しながら選管としても考えたいというふうに思います。そのぐらいしか私は答弁できないんですけれども。
○福島委員 今の答弁でも分かるように、恐らく、名誉を傷つけ品位を損なう内容とやると、皆さん現場で物すごく困ると思うんですよ。だって、選挙ではあらゆることで、私もそうですけれども、名誉を傷つける言動を連日、毎日のように吐かれているわけですよ。相手の人の演説とかも含めてですね。それで言われると恐らく、条文になっちゃったらね。私は、ここは本当は、団体の名誉を著しく傷つけと。著しくを入れるべきだと私は思っているんですけれども、非常にこれは運用が、現場の皆さん方は苦しむんじゃないかなと思っておりますので、もし御意見があればこの後にでも是非、御意見をおっしゃっていただければというふうに思っております。
その上で、また公営掲示板の問題に戻るんですけれども、私は、田舎にいると公営掲示板は五人とか六人だから、すぐ、ぱっと分かるんですよ、落選中に江東区に住んでおりまして、江東区議会議員選挙が行われると、定数は四十九人なんですね。立候補者は六十人とか七十人いるんですよ。七十枚、ばっとポスターが並ぶとまず見ません。一生懸命ポスターを掲示板へ貼るけれども、逆に本当にこんな掲示板なんて意味があるのかなと思うんですよ。私は、それを一々、全部一つ一つ貼って回ってというのはむなしくて、そもそもこの掲示板自体が要らないんじゃないかなと思うんですけれども、織田参考人、いかがでしょうか。
○織田参考人 ポスター掲示場の必要性というところまでは、選管としてお答えできるのは非常に難しいというふうに考えてございます。
ですので、選管ではなくて、若干個人的な見解になりますと、先ほどお話にもあったように、選挙が始まったんだなというふうに、風物詩的な盛り上げという効果もあるかと思いますし、実際に、選挙が始まったということをホームページなどで、又は区市町村とかでも、チラシも含めていろいろ、ティッシュを配ったり、啓発してもなかなかそれを認識していただけない場合もあります。それが、法の中では一定の人口や地域の中で決められた数が実際に町を歩けば目につくという効果がありますので、そのような認識まではしているところでございます。
○福島委員 ありがとうございます。
私は、今回こういう問題が起きたというのは、公職選挙法の仕組みの根幹にあると思っているんですね。公職選挙法上、選挙活動と政治活動を明確に分けていて、選挙活動になると物すごく規制が厳しくなるんですよ。逆に言えば、選挙活動中にできる人というのは、これはある意味特権的な位置にあるから、だから立候補するインセンティブになるわけですね。選挙は、売名をしなきゃ、名前を売らなきゃ選挙にならないんです。でも、公職選挙法上、売名行為ができるのは選挙期間中だけなんですよ。事前にはできないんですよ。
だから、そこを逆手に取って、立花孝志さんのような頭のいい方は、それを使った、選挙期間中の希少性を生かした活動をしているのが私は今の現状じゃないかなと思っているので、私は、選挙活動と政治活動、この活動で厳密に区別して規制を分けているのを変えた方がいいんじゃないかなと思っております。時間がないのでこの点については答弁をいただきませんけれども、是非その点も皆さんに御認識をいただければありがたいと思っています。
次に、SNS上で、そうした中、様々な問題が出ております。
私は、公職選挙法というのは候補者が何かをやることを規制することはできると思うんです。候補者が虚偽の情報をSNS上に書くとか、候補者が相手の名誉を傷つけるような情報を出すというのは規制ができると思いますけれども、問題は、SNSはそうじゃないと思うんですね。誰が書いたか分からない匿名の情報が出回る、あるいは、誰が書いたか分からないようにして匿名性を持って情報を流す、しかも、それが日本国内だけじゃなくて、海外から発信して、日本の国内法規が及ばない可能性のある場合にやるといった形で流れることがあるというふうに思っているんです。そこが一番難しい問題。
先ほど来、現場の感覚からしたら何らかの法規制を入れてくれとおっしゃるんですけれども、私は非常に難しいんじゃないかと思っているんです。昨年の夏、ドイツとイギリスに視察にも行ってまいりましたけれども、どこの国もそこは悩んでいる問題なんですね。発想を恐らく変えなきゃ駄目です。何かの規制を入れよう、候補者に対しては規制を入れることはできますよ。それ以外の有権者に対する表現活動に規制を入れることができないということを前提にした制度にしないと、現実的にそうした制度が成り立たないと思われるんですけれども、それぞれ三人の参考人はどうお考えか、お聞かせいただければと思います。
○織田参考人 SNSのコンテンツ又は発信情報に関する規制というお話については、先ほど冒頭で陳述させていただいた際にも、我々としては、規制ありきというお願いをしたいということは考えておりませんで、公選法に基づく、例えば、抵触するかどうかということを具体的な基準、対象等を明示していただくようにお願いしたいという趣旨でございます。
あくまで、規制ありきではなくて、それが本当に何らかに抵触するのかどうか、また、SNS等も含めたインターネットのところで報酬等が得られた場合には、それはちゃんと選挙運動収支報告、政治資金収支報告等にちゃんと計上されるべきものなのかどうか、まずそういったところが曖昧になっているところを具体的にしていただきたいというのがまずはお願いでございます。
○永田参考人 御指摘のとおり、表現の自由と選挙運動、このバランスをどういうふうに取っていくかということは本当に難しいところなんですが、今後、国会におきましても、その点につきまして今一番大きな問題として議論をされていると思うんです、ですからここをうまく議論していただいてですね。余り表現の自由を束縛するということもこれはできませんので、ですから、その辺のバランスをどこでどういうふうにするかということが非常に大きな問題になっていくんじゃないかなというふうに思っております。
今回の場合は、私どもの知事選挙におきましては、SNS上で誹謗中傷とか真偽不明の情報が非常にたくさん出回りましたので、ですから、有権者の方にとったら本当に迷ったという話をよく聞くんです。何が正しくて何が正しくないか、ここが非常に難しいところなんですが、それに対してどういう規制をかけるかということになりますと、なかなかこれは非常に難しいところだというふうに思うんですけれども。
だけれども、余りにも今回の私どもの場合はひど過ぎたものですから、その辺が有権者の皆さんから一体どうなっているんだと。SNSでもいろいろな問題が次から次へと発信されていく。特に若い人には、それを判断する材料が十分に持ち合わせていない。だから、SNSでばっと出された、それが正しいと思い込まざるを得ないというような、そんな問題が出てきていますので、その辺のことも含めて、SNSの規制をこれからどういうふうにしていくかということが大きな課題にはなるんじゃないか、そのように思っております。
○大泉参考人 現在のインターネット選挙運動の規制は、選挙運動をする人は名前なり連絡先なりを表示しなきゃいけないこと、虚偽事項公表罪は今の公選法で処理するというようなことで今インターネット選挙運動が始まったのですけれども、それ以上に……(福島委員「候補者に対してですね」と呼ぶ)いや、候補者でなくても、虚偽事項公表罪をした人は罰則の対象になっています。ただ、それ以上にSNSなどが発達して本当にいろいろな情報が出てきた、さらに、真偽不明、それも短期間、選挙運動期間中という短期間で処理しなきゃいけないのかどうかというような問題も含めて非常に難しい問題だと思います。ここはまさに立法府としていろいろ御検討いただければありがたいと思います。
○福島委員 なかなかSNS規制というのは難しいものだなというのを改めて実感いたしました。
終わります。ありがとうございました。
○渡辺委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。それぞれのお立場からの御発言を今後の質疑に役立ててまいりたいと存じます。皆様方の御健勝をお祈り申し上げます。委員会を代表しての御礼の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
なお、参考人の方々はどうぞ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
――――◇―――――
○渡辺委員長 次に、本日付託となりました逢沢一郎君外十一名提出、公職選挙法の一部を改正する法律案及び逢沢一郎君外十名提出、公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。大野敬太郎君。
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公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十一名提出)
公職選挙法の一部を改正する法律案(逢沢一郎君外十名提出)
〔本号末尾に掲載〕
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○大野議員 ただいま議題となりましたポスターの品位保持に係る公職選挙法の一部を改正する法律案及び選挙運動に関する規格の簡素化に係る公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
まず、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、参政党及び日本保守党共同提出のポスターの品位保持に係る公職選挙法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
昨年七月の東京都知事選挙では、ポスター掲示場に、品位を著しく欠くものや、選挙と関係のない営業宣伝用と思われるものなど、選挙運動のために使用されるものと言い難いポスターが掲示される問題が生じました。本法律案は、このような最近における選挙運動用ポスターをめぐる状況に鑑み、選挙の適正な実施の確保に資するための措置を講ずるものであります。
以下、本法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
第一に、ポスター掲示場に掲示するポスターの記載に関する義務の新設についてであります。ポスター掲示場に掲示する個人演説会告知用ポスター及び選挙運動用ポスターには、その表面に、ポスターを使用する公職の候補者の氏名を、選挙人に見やすいように記載しなければならないこととしております。
また、公職の候補者は、その責任を自覚し、ポスター掲示場に掲示する個人演説会告知用ポスター及び選挙運動用ポスターには、他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくもポスター掲示場に掲示されるポスターとしての品位を損なう内容を記載してはならないこととしております。
第二に、ポスター掲示場に掲示したポスターその他の文書図画において特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をした者は、百万円以下の罰金に処することとしております。
このほか、選挙に関するインターネット等の利用の状況、公職の候補者間の公平の確保の状況その他の最近における選挙をめぐる状況に対応するための施策の在り方については、引き続き検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする旨の検討条項を設けております。
続きまして、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び日本保守党共同提出の選挙運動に関する規格の簡素化に係る公職選挙法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
令和四年十二月七日及び令和五年四月二十六日に、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会において、二十六年ぶりの自由討議が行われ、これを基に、令和五年六月に選挙運動等のあり方に関する報告書がまとめられました。
本法律案は、この報告書において、公職選挙法の改正に向けて、おおむね認識の一致が見られた項目として挙げられた、選挙運動に関する規格の簡素化を図るための措置を講ずるものであります。
以下、本法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
第一に、公職の候補者の選挙運動用自動車の規格制限の簡素化についてであります。公職の候補者が主として選挙運動のために使用することができる自動車については、現行法上、複雑な車種制限や構造制限が定められております。そこで、規制の簡素化を図る観点から、その規格を、全ての選挙について、普通免許で運転することができる普通自動車の規格を参考に、乗車定員十人以下で車両総重量三・五トン未満とすることとしております。
第二に、公職の候補者の選挙運動用ポスターの規格の統一についてであります。公職の候補者の選挙運動用ポスターの規格については、現行法上、衆議院小選挙区、参議院選挙区及び都道府県知事の選挙にあっては、長さ四十二センチ、幅四十センチ以内、このうち長さ四十二センチ、幅十センチは個人演説会告知用ポスターとされている一方で、参議院名簿登載者、都道府県議会議員や市町村の選挙にあっては、長さ四十二センチ、幅三十センチ以内とされており、規格が異なっております。そこで、公職の候補者が使用する選挙運動用ポスターの規格を、個人演説会の告知の記載の有無にかかわらず、長さ四十二センチ、幅四十センチ以内に統一することとし、これに伴い、個人演説会告知用ポスターを廃止することとしております。
以上が、両案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いいたします。
○渡辺委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。
次回は、来る二十五日火曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時五十分散会