衆議院

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第3号 平成20年3月26日(水曜日)

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平成二十年三月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 山口 泰明君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      木原  稔君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    鈴木 馨祐君

      中山 泰秀君    西本 勝子君

      原田 憲治君    三原 朝彦君

      御法川信英君    山内 康一君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      野田 佳彦君    鉢呂 吉雄君

      松原  仁君    上田  勇君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小野 正博君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   林  景一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 渡邉 正人君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      木寺 昌人君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   藤岡  博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 平工 奉文君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十一日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同月二十六日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     西本 勝子君

  木村 隆秀君     原田 憲治君

  御法川信英君     木原  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     御法川信英君

  西本 勝子君     猪口 邦子君

  原田 憲治君     木村 隆秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長林景一君、大臣官房参事官小原雅博君、大臣官房参事官渡邉正人君、北米局長西宮伸一君、中東アフリカ局アフリカ審議官木寺昌人君、警察庁長官官房審議官小野正博君、法務省大臣官房審議官三浦守君、資源エネルギー庁次長平工奉文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。

三原委員 おはようございます。きょうはアフリカのことについて少し質問したいと思うんですが、大臣も副大臣も御苦労さまでした。ガボンにいらっしゃって、今度の五月のTICAD4の成功のためにいろいろ御苦労いただいていることだと思います。

 まずは、大臣か副大臣か、四十数カ国の向こうのリーダーたちが来てくれるということになっているようですけれども、私たちは本当に、これまた四回目の成功を得て、我々ができる限りのことをアフリカ諸国との協調でやっていきたいと思っているんですけれども、向こうの方の印象はどうでしたか。

 中国は、もう昨年なかなか大きなことをやって、そしてなおかつ、中国のプレゼンスがかなりこのところ、当然のことですが自分の利益のことも考えながらやっていますが、我が国に対する期待感とか、日本と一緒になって自分の国も開発するというような気概とか、そういうたぐいのこと、雰囲気はどうだったでしょう。その点をまずちょっとお聞きしたいと思います。

高村国務大臣 TICADのキーワードはオーナーシップ、自助努力ということでありますが、かなり、自分たちが積極的に何をしていこう、こういう姿勢が見えてきたように思いました。

 積極的に、具体的にどういうふうにしていこうと、過大とも思えるようないろいろなものが出てきた。それはそれで、全部こたえられるかどうかは別として、結構なことだ、こういうふうに思っております。

三原委員 私も何度かアフリカに行ってきました。そして、我が国の国民の皆さんの税金を使った政府の援助、技術援助、いろいろなところを見てきましたけれども、実は、ほぼ二十年前、ザンビアに行ったときに、ちょうどそこで、我が国がそれこそハード、箱物を建てて、つまりザンビアのザンビア大学に獣医学部をつくって、ただ校舎を建てるだけじゃなくて、遠大な計画をその当時立てておりました。

 何かといいますと、それは我が国の、日本の獣医学会が、では、ザンビアの大学で自分たちと同じレベルの博士を取るまで生徒を育てよう、それには十年、二十年はかかるだろう、そして、できたところで自分たちがすべてをバトンタッチできるまで頑張ってみようじゃないか、そういう計画を立てて、その後、もうほぼ二十年たちましたよ、あのころは僕も若かったけれども。

 そして、つい先日、ザンビアから帰ってきた日本の大使に聞いたんですね。その後あそこはどうなっただろうと言ったら、いや三原さん、あそこの学部長は、実は日本の人が行って教えた人が博士も取って学部長になって今ザンビアの獣医学部をリードしているんですと言って、僕はえらい感激したんですね。まさに、我が国の援助の成功物語の私は最も誇るべきものの一つじゃないかと。建物を建ててやるだけじゃなかった。

 そして、二十年前、私がそれもすごいと思ったのは、ここの学生たちは自分たちをエリートと思うから、実験室で解剖実験なんかをすると、後は、言わなきゃ、雑役夫のおじさん、おばさんが来て、その人たちが片づけて、それで自分たちはただ図書館へ行って勉強すればいいと思っている。そういうことはいけないことだ、教室の清掃からすべてのことを自分でやるんだということも教えた、それが真の意味での教育だということを二十年前に言われて、ただただ学問的な知識を教えるだけじゃないんです、学者としての生きざま、人間としての生きざままで教えているんですと言ったら、そういうこともやはりちゃんと伝播されて今日に至っておるようなんですね。これが本当の、まさに援助の基本である、知識だけじゃない、人間としての生きざままでも教える、そのことが私は大切だと思う。

 それでまた、その帰ってきた大使に聞きましたら、日本の大学の中では、いろいろ実験もやりやすいから、鳥インフルエンザの研究施設あたりも現場につくろうかというふうに思っているんですというようなことまで言われて、だから、世界の第一線の学術的なところまでもやれるようなところまでなっておる。私は、こんなすばらしいことはないと思う。そういうところから、私は、援助というものをむしろ我が国の役所も学ぶべきだと思うんですね。

 そのことを十二分に把握して、これから先のアフリカへの援助の原点になり得るかどうか、そこのところをちょっと、どこまでぐらい学んできておられるかというのを聞きたいなと思いまして、問題提起させてもらったんですけれども。

    〔委員長退席、山口(泰)委員長代理着席〕

小野寺副大臣 三原先生の御指摘がありましたザンビア大学獣医学部、これはルサカ市にございますが、ここは、一九八五年一月から九七年七月まで、日本が、専門家九十七名の派遣、研修生五十八名の受け入れ等をやってまいりました。

 御指摘がありました今ザンビア大学獣医学部長ムウィーネ氏ですが、これはこの医学部の第一期の卒業生ということになります。北海道大学で博士号を取得されまして、ことし一月からこの獣医学部長に就任されました。

 御指摘がありましたように、我が国の協力を通じた人材が途上国において中核的な人材として活躍している技術協力の成功例として、大変私どもも注目しておりまして、今後ともこうした協力を途上国に対して推進していきたい、そのような考えにあります。

三原委員 今、小野寺副大臣がおっしゃったような、そういう物の考え方で、医学部といったら大きいかもしらぬが、例えば、僕がこれもまた二十年ぐらい前に行ったところでは、ニジェールのニアメに大学があるんです、医学部。そこでもやはり小児科に先生が来ておられて、マシンか何か持ってこられたけれども、私が帰ったら、このマシンは壊れちゃったら使い物にならぬでしょうとか言ったんだけれども、では例えば、一歩踏み込んで、アフリカのどこかの医学部の科か何かでそういうことをチャレンジ的にやってみようかというような、そういう考えあたりを、このザンビアの獣医学部から学んで、何の学部でもいいけれども、ここはもう私たちの十二分に教えられるところだから、種から育てて、ついに実がなって、実がなったところで我々はもう帰ります、あなた、自分で今度は実をつくりなさいというような、そういう意識で十年、二十年、今あなたが言われたように、二十年以上かかってそこまでなったんだけれども、そういう中長期に考えて、三年、五年じゃなくて、まずは人材をつくるというような方向性を持った経済援助をやっている場面がほかにありますか、今、我が外務省やJICAで。どうでしょう。そういうのはありますか。

渡邉政府参考人 先生の御指摘の、特にアフリカにおきます国際的な医療協力といたしましては、既に御案内のことと思いますけれども、ザンビアにおきます感染症プロジェクトであるとか、タンザニアにおきます母子保健プロジェクトでありますとか、ガーナの野口研などのプロジェクト等がこれまでの実績としてはございます。

 御指摘も踏まえまして、こういったプロジェクトをできるだけ積み上げていくように努力してまいりたいと思います。

三原委員 我が国が医学的な援助をしておるのは、ガーナの野口研と、あとKEMRI、ケニアにありますね。ああいうところに、アフリカで今問題になっているエイズの問題、感染症、それから小児の下痢とか寄生虫とか、ただただ日本人が行って一緒に研究するだけじゃなくて、もし我が国のレベルが明らかに向こうより高いというようなことになったとしたならば、まさに向こうに行って教えることもできる。連れてきて、三年、五年、十年ぐらい、ザンビア大学の農獣医学の博士じゃないけれども、ずっとこっちで育てるぐらいの、もうこのごろ、いろいろな大学の医学部の先生あたりだって英語で全部教育できるようになってきているから。日本語でということになると向こうの人は困っちゃうけれども。

 それぐらいの、やはり五年、十年、二十年で我が国の知識や学術的なものが伝播できるような、これからそういう長期の計画で、医学だけじゃないですよ、ほかのものでもそうだけれども、やることを大きな視点の一つにすることは大切だと思いますね。私は、そのことをいま一遍政府の方に喚起したいと思います。

 短期ですぐ結果が出るのも大切だけれども、そういうことをやることがやはりこれから先大いに望まれることだと思いますので、TICADのところで議論できるのがあったら、私はそれを視点にひとつ入れてもらいたいと思うんだけれども、どうだろう。

小野寺副大臣 今三原委員の御指摘がありましたケニアのKEMRIの問題がございます。先週、ガボンの前にケニアを訪問してまいりまして、そこで直接、この問題に対しては現地の医療機関の方から大変な感謝をいただきました。具体的には、ここを通じて人材育成がなされ、現在、ケニアではエイズの発症率が十数%から五%に落ちた、これはもう世界的にも大変評価される事例であります。このようなことをこれからもどんどん広げていきたいというふうに思っております。

 TICADの場でもこういう医療、保健分野についての議論もなされるというふうに今検討しておりますので、ぜひこういう日本の成果についてはもっと多く広めていき、また、これからも推進するように努力していきたいと思っています。

三原委員 何の学部でも、私は、日本が先進的なことを持っているものがあれば、やはり人材をつくることが実は一番、時間はかかるけれども、日本のプレゼンスを確固としたものにすると思うんですよね。

 つい先日、私はロシアに行く機会があって、行ってきて、帰りの飛行機の中で会った人が偶然、私の、北九州の人だった。それで、あなたたちは何でロシアに行ったと言ったら、いや、北九州は昔、重工業地帯で、洞海湾という湾が汚れちゃって、そのことから今環境都市として我々は一生懸命頑張っていますと。それを聞いて政府から、あなたの都市と同じような百万都市がロシアの中心部にあって、そこでも環境の問題が大変なんだ、アドバイスに行ってくれというので、地元の企業と市の環境局の職員の人が行って、どうすればいいか、下水だけの問題じゃなくてごみ処理の問題あたりで協議してきて、これから先、人材交流して、教えられるところは教えますとか言っていました。

 例えばアフリカの大都市あたりでは、ちょっと郊外に行くとごみがそのまま捨ててありますよ。本当だったらきれいな砂漠だったところに、例の買い物袋、ビニール袋が風に舞って飛びまくっている。ああいうのを見ていると、我が国が環境問題でも先進的であるから、そのことでも、ただ技術を持っていって、下水の出口のところだけきれいにして水を流しますじゃなくて、その前から、やはり人材ですよ。環境問題に興味を持った高校出ぐらいの若者を呼んできて、それを日本の大学にでも入れて教育するぐらいして、十年たって、二十年たったら、今度その人が国に帰って子供たちを教えているという、それぐらいのことをやることがやはり大切だと思うんですね。

 日本の進んでいることをピックアップして、これはいい機会ですから、TICADは五年置きにやっていますけれども、人材資源として成果が出るような、私はそういう方向性もぜひとも今度のことで議論してもらいたい。オーナーシップということを今大臣言われましたけれども、それもやはり、ひとつ自分たちでやろうという、両方の足で立つという、その基本だと思いますから、そのことをいま一遍喚起させてもらいたいと、生意気なようですけれども、申し上げたいと思います。

 話が次に移りますけれども、向こうのリーダーは今のところ何カ国ぐらい来るようになりましたか。頑張って、一生懸命招聘をしておられるようですけれども。

小野寺副大臣 現在、四十数カ国の首脳が来ていただけると私ども認識をしております。

三原委員 このごろ毎年三カ国ずつぐらい苦労して大使館もふやしておられるでしょうけれども、四十数カ国来て、相変わらず、今大使館があるのはまだ二十幾つだったっけ、三十をまだ超えていないよね。ということは、やはり向こうにしてみれば、大使館を置くということは、ある面では、相手国にとっては、それだけ我が国がその国をちゃんと視野の中に入れていますということでもあるんですよね。やはりつき合いが薄ければ大使館も置かない。

 私がおととし行った国で、大使館がもうできたのかな、ブルキナファソはできたんだよね。それ以外の行ったところはみんなないんだ。ニジェールがない、ベナンがない、トーゴがない。今度そっちの方に少しずつでもやっていただけると思いますけれども、やはりそういうことでは、相手にしてみれば、幾らTICAD4へ来てくださいといったって、僕らのことはTICADが終わったら、もうその後はワン・オブ・ゼムのような気持ちなんだろうというふうに思ったとしても無理からぬことですよね。

 だから、その面ではもうちょっと、やはり僕らも頑張って、国の予算もそっちの面に差し向けなければいけないけれども、やはりそういう面でも努力を私はしてもらいたい。それは国民の皆さんにも理解を得なきゃいけないけれども、心から私は役所の方にもお願いしてもらいたいと思います。

 でも、アフリカの国で日本に大使館があるところと、日本が向こうに大使館を持っているのでプラスマイナスしたら、まだ十ぐらいこっちがマイナスなんじゃないかな、どうなんだろう。

林政府参考人 ただいまちょっと具体的な数字はございませんけれども、明らかに向こうの方が多い、十ばかりかと思いますけれども。

三原委員 この前、何かで議論があって聞いていたら、大体十ぐらい違うんでしょう。やはりそれは、残念ながら、大国日本としては、相手に対してある面では失礼な感じもしなくもないですね。向こうは日本のことを理解し何とか協力したいと思って来ているときに、そういうところからまず埋めていこうと。

 こっちにとって、相手の国、大使がこっちに来ておる人たちは、どれだけ日本にとって利害が多いか少ないか、問題もあるかもしれぬけれども、やはり国との関係というのは相互の問題だから、まずそこから全部埋めていく。次のTICAD5までには、今度は小野寺副大臣が小野寺大臣になっておるころまでにはやはり全部埋めるぐらいな覚悟がなければだめだと思うんです。どうですか。

小野寺副大臣 現在、アフリカにおいて我が国の大使館があるのは二十九ということになります。逆に、日本にありますのは四十弱ということになりまして、相互主義の観点からもかなり問題かと思っております。

 私どもも、やはり新設大使館を設けた国に関しては、今回のTICADの場においても、かなり日本に対して感謝の意ということを事前からお言葉をいただいておりまして、ぜひ先生方のお力をおかりしまして、何とか相互主義に見合う形で大使館の増設ということが必要かと思っております。もちろんそのためには、単純に大使館をふやすということではなくて、大使館の効率化ということも必要だと思いますが、相互主義の観点から今はちょっと日本は劣っているということが言えるかと思っております。

三原委員 そこで、これはまた人材の話になるんです。

 例えば大使館が急にふえてくると、そこに行く大使もふえなきゃいけないことはもちろんですけれども、私が思うに、今アフリカに駐箚で行っておる我が国の大使の人で、大使で任命されるまでアフリカに勤務したことが何度かありますというのと、実は全くないんですという人とがいるんじゃないかな。そこのところはどうですか。やはり若いときにちゃんとアフリカを一度か二度か経験して、アフリカの空気を吸い、アフリカの民の気持ちをそんたくして外交がやれるような準備ができておるだろうか。そこのところはどうなんだろう。

小野寺副大臣 現在のところ、アフリカに駐在する日本の大使ですが、この中でアフリカに勤務の経験がある者は十一名ということになります。また、過去に同じ国に赴任した、大使になっている国に赴任した経験がある大使は四名ということになっておりますが、実際、人事の過程におきましては、特に特定地域、特定の場所ということに偏ることなくバランスよく勘案するということでさせていただいておりまして、そういう面では、すべての大使がアフリカに勤務しているということではないかと思います。

 ただ、現在赴任している他の大使につきましても、本省等におきまして、経済協力の経験あるいはアフリカ諸国に対応する部署の経験というのがございますので、現地に駐在した経験があるということも大切かと思いますが、またもう一点では、このような経済協力に関する視点、そしてまたアフリカに対しての本省での勤務、こういう経験もあわせてこれからも必要だと思いますが、先生の御指摘がありますように、やはりその地域の土地カンあるいは風土等が肌身感覚でわかるという視点も大切だと思いますので、それは私どもも重要に受けとめたいと思っております。

三原委員 私はアフリカに行くと、全然文化が違うし、気候も違うし、まして一分一秒のことを考える必要もないから、本当に何か体重が三キロぐらい太って帰ってきちゃうんですけれども。それは短期だからということもあるかもしれぬが。

 大体、普通というか標準的な人は、アフリカに行くというようなことになると余りいい顔をしないですよね、外務省の役人の人みんながそうだとは言わないけれども。私はやはり、アフリカだけとは言わぬが、絶対にLLDCぐらい、後発開発途上国ぐらいのところを一、二度は経験することが大切だと思うね。やはり経験してみて初めて人の気持ちもわかるんです。本で読んだってだめですよね。本省にいて経協の経験があります、時々行きましたじゃ、やはりだめだね。行って目の前で自分の無力なことを知る、そのことがやはり、その人が謙虚に困っておる国のことを考えるもとになると私は思うね。

 だからこそ、感受性の強い、五十過ぎて、官房長やら局長になった後行ってもつまらぬね。ごめんなさいね、林さん、西宮さん。その人たちが初めに行くときには病気のことを心配する、健康で行けるだろうかなんて思っちゃう。二十代ぐらい、三十代ぐらいのときにそれぐらいのことを経験する、一番下から眺めてみるということが、むしろやはりこれから先、我が国が全体的な国際政治をする上では大切だと思います。ましてTICAD4なんていって、我々がイニシアチブをとってアフリカ開発のために一生懸命お手伝いしましょうと言っておるなら、外務省で働く若い人たちを教育する上で、そのことをやはりいま一遍やってもらいたいと私は思います。

 今、副大臣からお聞きしたら、二十九の国があって、十一の人は行ったことがあるけれども、十八の人は直接のあれはありません、こういうことだったけれども、やはりそうじゃなくて、そういうところで、もちろんアメリカにいてもイギリスにいても、ヨーロッパ、どこにいても苦労はしていると思いますよ。思いますけれども、まずは自然環境がひどい、日々の生活が大変だ、そういうことをやはりみずからが学ぶことが私は大切だと思いますから、考慮してもらいたいと思います。

 もう一つちょっと質問したいのは、そろそろ時間になってきたんだけれども、今、オーナーシップのことをまず最初に大臣がおっしゃったけれども、ここにも書いてある中には、やっと、民間と協調して国のODAも頑張って今からやりましょうということを書いてある。当然のことでありまして、ある会社が行くから何か応援しているような感じというのはとんでもないことなんですね。

 この前も甘利経産大臣がボツワナに行かれたけれども、あのときやっと民間の人も一緒に連れていって、では何ができるんだろうということを民間の目から見てということだったんだそうですが、我が国の資源エネルギーの国策からしても、民間の人とやる以外に方法がないわけですというのは当然のことなんですね。民間の人が、ここでなら鉱山を掘ってビジネスができますということになって日本に安定供給ができるなら、では、インフラの、道なんかの援助を円借でやるだとか、その近所にはCSR、つまり会社のレスポンシビリティー、義務みたいなことあたりにあわせて、今度は国の方もODAで援助しましょうとか、そういうことをやはりもうちょっと、さらにより結び合った援助をして、それが国策に通じることだということで、私はどんどんやってもらいたい。

 政府が民間とやると、どうも何だか、会社にもうけさせているんじゃないかというような狭量な感じになるけれども、そうじゃないんですね。結果として会社はもうけて構わないんですよ。ただ、そこで個人が何ももらわなきゃいいだけのことなんだから。

 だって、外国でも、私が防衛政務次官を昔やっているときに、イギリスの代議士がイギリスの練習機を売り込みに来ましたよ。あなた、あんなことやっていいのと言ったら、あなた、何を言っておるんだ、我が国の企業がやっているジェット練習機を売り込みに来て、それは国会議員として当然のことじゃないかと言われて、何も問題になりませんかと言ったら、私はそれでもうけているわけじゃない、国家がもうけて何が悪いと言いましたね。だから、そういうところは、余りにも何だか自分たちの行動範囲みたいなものを狭めることはやはりまずいと思う。

 これから先は民間の人の声もどんどん聞いて、そして我が国の国家百年の大計を考える上での行動をやることが大切だと思います。どうでしょう。

小野寺副大臣 ただいまの御指摘、私どもも大変重要な視点だと取り組ませていただきたいと思っております。

 今回のTICAD4に向けましても、官民の連携パートナーシップの会議ということで、実は私が中心で数度会議を持たせていただきました。かなり民間からの投資の案件についての前向きなお話もいただいております。

 今後とも、民間資金との相乗効果を発揮できるようなODAの案件の形成そしてまた投資環境の整備、これも重要なことだと思いますので、モザンビークのモザールの例もございますので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

三原委員 どうもありがとうございました。

山口(泰)委員長代理 次に、高木毅君。

高木(毅)委員 おはようございます。自民党の高木毅でございます。

 私、去年の十月だったかと思いますが、初めて当委員会に所属をさせていただくことができて、きょう初めて質問をさせていただくわけでございますけれども、大臣、副大臣もそうでございますが、よく国会の健康センターで一緒にトレーニングをさせていただいておりました。ところが、大臣になられてから、大臣はほとんどお見えになっていないかなと思うのでありまして、あるとき大臣に、運動不足は大丈夫ですかとお聞きをいたしましたら、運動不足もさることながら睡眠不足だよというふうにおっしゃったことがございました。

 日常の厳しい業務とあわせてたびたびの外遊ということで、本当にお疲れのことと思いますけれども、ぜひ、それこそ健康に十分御留意をいただいて、しっかりと、世界の安定あるいはまた日本の国益に資する外交を進めていただきたい、心からそうお願いをする次第でございます。

 いろいろな外交案件があるわけでございますけれども、今三原委員もTICADあるいはアフリカについて質問をしていただきました。私も、まずTICAD4について少し御質問させていただきたいと思いますけれども、先ほどもガボンでの準備会合のお話がありました。ぜひ私も、今回のこの準備会合におけるアフリカの要望あるいはまた期待感というものはどのようなものであるのかということ、先ほど大臣から、オーナーシップあるいは自助努力、間々過大と思われるような期待というようなお話がございましたけれども、実際会合に出られたときの具体的な話などもおっしゃっていただきながら、もう少し詳しく教えていただければいいかなというふうに思います。

 といいますのも、当然外務省もそうであります、まさに二カ月後に控えたこのTICAD4に向けて努力をしていただいて、今準備を進めていただいております。まさに佳境に入りつつあるんじゃないかと思いますし、またあわせて、我が党におきましても、数回にわたりましてこのTICAD4に向けたアフリカ支援策というものを策定させていただきました。実は、きのうその取りまとめが行われまして、一両日中にはぜひ大臣のもとにもお届けをさせていただいて、それを参考にもしていただき、このTICAD4に向けて準備をいただきたいという思いがあります。

 そうした意味において、政府においても、あるいはまた我々政治家においても、このTICAD4に対して一生懸命取り組んでいるわけでございますので、先ほど申し上げましたけれども、アフリカ側の期待感あるいは盛り上がり、それが一体どういうものなのか、もう少し具体的にお聞かせいただけたら大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

高村国務大臣 今月の二十日、二十一日、ガボンで開催されたTICAD4閣僚級準備会議に共同議長として参加をしてまいりました。三十名以上の閣僚の参加を得て活発な議論を行って、アフリカ諸国のTICAD4に対する期待の大きさを改めて実感したわけであります。

 具体的にということでありますが、アフリカ諸国からは、我が国とアフリカとの貿易・投資促進策や広域インフラ整備、人材育成や保健衛生等、我が国の技術やノウハウを生かした分野での協力の強化と幅広い分野での支援に高い期待が寄せられたわけであります。

 ガボンの会議では、我が国への期待のみならず、先ほども申しましたように、アフリカ諸国の自助努力の強化、アフリカ域内協力の重要性が各参加者から強調されていたのが印象的であったわけであります。

 我が国は、開発パートナーとして、またG8サミットの議長国として、このようなアフリカ諸国自身の自助努力を後押ししつつ、TICAD4の場で集約されるアフリカ諸国の声を、北海道洞爺湖サミットを視野に入れて国際社会に発信していきたい、そう考えているわけでございます。

高木(毅)委員 本当にしつこいようでありますけれども、副大臣も一日目、議長をなさったかと思いますが、その一日目の議長を通してアフリカの思いというものをどのように受けとめてきたか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

小野寺副大臣 大臣の日程の都合がありまして、私が初日の議長をさせていただきました。

 会議はかなり長時間に、予定の時間をかなり超過して行われまして、アフリカ側のこの会議に関する熱心な期待ということを感じました。特にここで私どもが感じましたのは、このTICAD4が終わった後のフォローアップ・メカニズムについて、かなり御指摘がたくさんありました。ぜひ、このTICADが一過性のものではなくて、継続して続くということを重点に考えていきたいと思います。

 また、今アフリカはかなり経済成長が著しい地域でありまして、今TICADというのは五年のタームでやらせていただいておりますが、アフリカの変化というものに合わせまして、このフォローアップも含めて、毎年ごとのいろいろな対策の考え方も今後必要ではないかと私自身は感じてまいりました。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 アフリカ側も大きな期待を持っていただいている、しっかりそれにこたえることだというふうに思いますが、一方で、ことしはサミットが七月にあるわけでございます。国内向けといいましょうか、国内での盛り上がり、これも私はやはり大切なことだというふうに思っております。

 例えば、ことしサミットがあるということを国民百人が知っているとするならば、もしかしたら、このTICAD4があるということを知っている国民は二、三人ぐらいではないかな、あるいはもっと、それ以下かもしれないなとさえ思うわけでございます。

 いろいろな取り組みをやっていただいているわけでもございますし、例えば、開催地横浜の学校でアフリカの学習をしていただくとかあるようでありますけれども、いよいよあと二カ月後に迫ったこのTICAD4に向けて、国内での盛り上がり、これも私は本当に大切だと思いますが、今後、国内での盛り上がりについてどのような思いを持っていらっしゃるか、あるいは具体的にどんなことをしていくのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 TICAD4、多くの首脳が集まる中で、これからそれをどのように周知していくかということが大切だと思っております。

 昨年には、横浜の市長においでいただき、このTICADのロゴの発表を外務省でさせていただきました。また、ことしになりましては、女優の鶴田真由さんをTICAD4の親善大使ということに大臣の方から任命していただき、各種メディアへの働きかけをしております。また、昨日でありますが、NGOの皆様との協議をさせていただき、この周知というのをぜひ民間からも広げていきたい、そのようなことをやらせていただきたいと思います。

 まだ期間がございますが、残る期間、精いっぱい、私ども、横浜市を含めた各関係機関、NGO、スポーツ・文化イベント、広報用のポスター、パンフレット、あらゆる手を尽くしましてこの広報に努めていきたいというふうに思っております。

高木(毅)委員 一定の取り組みは評価をさせていただくところでございますけれども、やはり今どき、先ほども副大臣、メディアという言葉が出ましたけれども、これが一番大きいんだろうというふうに思いますので、積極的に活用していただいて、国民の税金も使うわけでありますし、これから支援ということになりますとまたそういうことになりますので、ぜひ国民の理解を得るということは大切かと思いますので、さらによろしくお願いしたいと思います。

 それでは、少し中身について御議論させていただきたいと思うわけでございますが、先ほども申し上げたとおり、我が党内におきましても、たびたび会合を持って、取りまとめをさせていただきました。その議論の中で幾つか出てきたことでもありますし、またその議論を踏まえて少し御質問させていただきたいと思います。

 それは支援の選択と集中ということでございまして、先ほど来出ているとおり、アフリカには五十三カ国ある。そうはいうものの、その五十三カ国すべてを、言葉はどうかわかりませんけれども、離陸させる、あるいは上昇させていくというのはなかなか難しいのではないか。もちろん、そういった考え方も必要なんでしょうけれども、難しいのではないか。

 ですから、一定の選択と集中というものをもって、例えば資源だとか、あるいは国際場裏での我が国への支援だとか、そういう我が国益に資する国。あるいはまた、成果主義というんでしょうか、要するに成果が上がったところに対してさらに支援をすることによって、モデルプランというんでしょうか、モデル国というようなものをつくって、そこがほかの国のモデルになっていく。あるいはまた、さらにはその国がまた別の国を支援していく、いわゆる南南協力、あるいは日本を含めた三角協力というんでしょうか、そういったようなことをしていく。

 ですから、すべての国をボトムアップさせていくことは必要だけれども、そういう選択と集中という考え方もあり得るのではないかというふうに思うのでありますけれども、その点について少しお聞かせをいただきたいというふうに思います。

小野寺副大臣 先生御指摘のように、アフリカの国、同じく五十三カ国といいましても、経済発展の度合い、その国の持っている資源の度合い、それから言語、文化、宗教、さまざまな国がございます。なかなかモデルプランということで画一的には難しいかと思いますが、御指摘ありましたように、それぞれの国に合った形で、選択と集中も含めて考えていくことが大切だと思っております。

 そういった中、私ども、やはり日本が今まで経験した中で、例えば、地域振興の中では一村一品運動というのが大分県でございましたが、こういうものも取り入れて、アフリカの皆さんが自助努力ができる、そういう道筋をつくっていきたいというふうに思っております。

 また、先ほど、三角的な経済支援ということがございました。このような南南の経済支援ということも大変重要な意味があります。今一部取り入れられておりますが、今後、それぞれの国の要求あるいは状況に合わせて、このようなことも考えていきたいと思っております。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 次の質問は、もしかすると今の選択と集中と少し相矛盾するのかなというふうに思いながらも、これも必要ではないかなということでお聞かせをいただきたいと思うのでありますけれども、それは円借款の積極的活用という観点でございまして、これまで債務免除実績のある国も含めて円借款をしていく必要があるのではないかというようなことも議論がなされたわけでございます。

 アフリカの円借款供与適格国として二十一カ国、私、これは外務省からいただいたのだと思いますけれども、表を持っております。我が国単独でも供与可能な国十二カ国、アフリカ開発銀行、世銀との協調融資であれば可能な国が九カ国、今後供与が可能となることが期待される国三カ国ということでございます。

 今、開発銀行、世銀との協調融資であればという国があるという話をしましたけれども、例えばマダガスカルあたりはもう日本企業が進出をしているということで、単独でも支援できないのかというようなことも思いますし、あるいはまた、債務救済をした国においても、だからそれでもうだめだというわけにもいかないのではないかというようなことも思うわけでございます。

 そういったところについて、これからのアフリカ支援、外務省としてどのようにお考えになっているのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

    〔山口(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

小野寺副大臣 今御指摘になりました円借款の活用ということでございますが、特に債務免除実績のある国ということ、ここに特化して考えますと、今、アフリカはかなり変化をしております。過去に債務免除の実績があったという国に関しましても、これはやはり、必要上、内容を勘案しつつ、円借款の供与ということが必要ではないかと考えております。

 このような中、債務救済の実績のある国に関しても、アフリカ開発銀行グループとともに二〇〇五年に立ち上げましたアフリカの民間セクター開発のための共同イニシアチブ、EPSAと呼んでおりますが、ここによりまして協調融資による円借款供与を再開しております。具体的には、セネガルを初めとする債務救済実績のある国に関しまして、現在、合計四カ国、計百四十六億円の円借款の供与を実施しております。

 本年五月のTICAD4におきまして、アフリカ開発をさまざまな側面から議論する予定でありまして、我が国としましても、そうした議論に向けて、今後とも効果的な円借款の活用に心がけてまいりたいというふうに思っております。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 次に、また違う観点からでございますけれども、党の議論の中でも、科学技術の積極的な活用によってしっかりとアフリカを上昇させていくんだという議論がございました。もちろん、それはそうであります。高度な技術というものを供与していくということも、あるいはまた研修といいますか、育てていく、人材育成していく、大切だと思いますけれども、中小企業育成というんでしょうか、要するに、適正技術と表現すればいいのかなと思いますけれども、余り高い技術ではなくて、本当に、まさに日本が戦後復興してきたころのノウハウ、あるいはまたそういった技術というものをしっかりアフリカに持っていただいてアフリカを発展させていくという考え方、こういう議論もあったわけでございます。

 ぜひそのような観点でもこれからの支援をしていただけると思いますが、いかがでございましょうか。

小野寺副大臣 御指摘のように、アフリカ、それぞれ国によってさまざまな経済発展の度合いがありますし、また必要な援助ということも多岐にわたるのかと思っております。

 中小企業の育成を含めた、地に足がついた経済支援ということを考えます中で、例えば、先ほどお話しさせていただきました一村一品運動、これを現在、マラウイやガーナで実施しております。さらに拡大をしていきたいと思っております。また、チュニジアにおきましては中小企業の生産性向上のための技術協力を行っておりますし、農業分野におきましては、マラウイで村落レベルでの整備ができます小規模のかんがいに関する技術協力を行うなど、現地の人々が導入しやすい技術の普及ということが大切かと思っております。

 それから、先ほど委員の方から御指摘がございました三角あるいは南南協力ということですが、これはまさしく重要な役割だと思っておりまして、例えば、マダガスカルにおきましては、インドネシア人の専門家がインドネシアの農業技術を応用して、現地の人が低コストで導入できる農業技術の普及ということ、これを日本が支援していくということだと思っております。

 我が国が今後ともアフリカで支援する場合には、やはり現地に根づく技術の普及ということ、委員御指摘の方法でこれからもやっていく必要があると私どもも考えております。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 これでTICAD4は最後の質問とさせていただくところでございます。

 過去三回のTICADでございますが、それぞれに、TICAD1については羽田副総理兼外務大臣、そしてまた、TICAD2におきましては当時高村外務大臣でございます。そして、TICAD3、前回は小泉総理基調講演と私の資料の中にあるわけでございます。それぞれに、いわゆる数値目標というんでしょうか、金額も公表しながら、今後の、五年なんでしょう、もしかしたら次のTICAD5はもっと早いのかもしれませんけれども、例えば次なる五年間に向けてどのような具体的な支援をしていくのかということ、これは今回、このTICAD4でも明示をするべきなのだろうというふうに思いますけれども、それであるとするならば、それをどのように、あるいはまたどのような規模で考えていらっしゃるのか、お聞きをしたいというふうに思います。

小野寺副大臣 このTICAD4の成果につきましては、その成果文書の一つであります横浜宣言ということを今作成させていただいております。今回のガボンでの準備会合でも、この宣言の中身について特に関係国から意見を伺う、あるいはNGOから一部意見を聴取する、そのようなことで今成果文書をまとめさせていただいております。

 それぞれの国との合意ということもございますので、まだつまびらかにこの内容をここで明確には出すことができませんが、今委員の御指摘もあります中で、ぜひインパクトのある形でこの支援策を具体的に入れていきたいというふうに思っております。

高木(毅)委員 ODAは、ずっと減少傾向にあるわけでございます。アフリカの支援策、これから、我が党の国家戦略本部では三倍増などと言ってもおりますが、それはなかなか難しいのだろうというふうに思いますが、いずれにしても、上昇させるためには、ODAの総枠というんですか、もうこれ以上アフリカばかりに向けるわけにはいかないという現状もあろうかというふうに思いますので、私どももそうした観点でこのODAを見ていきたいというふうに思いますし、ぜひODAの総枠、いわゆる財政削減というんでしょうか、歳出削減の問題があるわけでございますけれども、私どももまた、別枠というんでしょうか、そういった中で考えてもいければというふうに思っておるところでございます。

 以上、TICAD4に向けて少し御質問させていただいたところでございます。

 それでは、最初にも少し申し上げましたけれども、今いろいろな外交案件がございます。きょうは一般質疑でございますので、何点かについてお聞かせをいただきたいというふうに思うわけでございます。

 先ごろ、横須賀でタクシー運転手が殺害されるという事件が起きたわけでございます。もちろん、アメリカ兵がどのようにかかわっているか、これはまだわからないところではございますが、事実とすれば、はっきりしていることは、要するに、そのアメリカ兵は基地から出たというか逃れたというか、脱走という表現をしておりますけれども、脱走したというふうに報道等がされております。

 問題だと思うのは、日本政府がそういった、例えば米兵が基地から脱走したというようなことを知ることができるのか。もちろん、必ずしも犯罪を犯すわけではないでしょうけれども、その出ていった人も当然生活をしなきゃいけませんし、犯罪を犯す可能性は高いというか、可能性もあるわけでございますので、私は、しっかりと日本政府としてそういったようなことを把握するべきだというふうに思っているわけであります。

 その中で、もしかしたらほかにもいる可能性があるわけでありますけれども、今、日本政府としてそのことをしっかりと把握しているのか。あるいはまた、把握するすべというんでしょうか、その取り決めというものはどうなっているのか。地位協定にはこういった取り決めはないと私は認識しているのでありますけれども、そのあたりはどうなっているかということ。それからさらに、こういった事案が起きたということで、運用を改善していく、そういうような考えも必要かというふうに思うわけでありますけれども、まず実態と、それから今後の対応というようなところをお聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 これまで、米軍人が脱走した場合に、米側が必要と判断した際に事案に応じて都道府県警察に逮捕要請がなされる場合があった、こういうふうに承知をしておりますが、脱走の状態が生じた場合に、直ちに我が国の関係当局に連絡がされてきたわけではないわけであります。

 今般の事例を踏まえて、米軍人が行方不明となった場合の情報共有のあり方について、情報共有の範囲等を含めて米側及び関係省庁で検討したい、こう考えているところでございます。

高木(毅)委員 それはよくわかりましたけれども、ということは、今の時点で、もしかしているかもしれない、いないかもしれない、いわゆる脱走兵、行方不明の米軍兵士、それを日本政府としては把握はしていない、今現在していないということでございますか。

高村国務大臣 今現在、把握をしておりません。

高木(毅)委員 ぜひ、運用の改善等を通してやはりしっかりと把握できるように、先ほど御答弁いただきましたけれども、これからそんなようなことをやっていただきたいというふうに思います。

 それから、ちょっと順序が逆になったかもしれませんけれども、要請があれば、日本の警察は逮捕、拘束、こういったことはできるんでしょうか。

小野政府参考人 米軍側から逮捕の要請がございました場合には、いわゆる刑事特別法の規定に基づきまして当該脱走米兵を逮捕することが可能になります。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 今はまだ取り調べ中というんでしょうか、そういう状況で、どういうことになっていくかまだわからないわけでございますが、いずれにしても、結果というんでしょうか、それはどういう形であろうと把握を、どのような結果になっても、しっかりと日本政府としてその結果というものを知っていただきたいというか、はっきりさせていただきたいと私は思っておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 もう時間がなくなりました。最後に、中国ギョーザの話でございます。

 随分時間もたったわけでございますけれども、何やらうやむやになってしまっているのではないかというような、もちろん、報道もされないからそうなのかもしれません。実際は決してうやむやではないのかもしれませんけれども、国民は、何やらこのままうやむやになってしまうんじゃないかというふうに思っているわけでございます。

 もう時間もないので簡単で結構でございますけれども、現在どういう状況にあるのか。あるいは、これは要望になるかもしれませんけれども、最終的にはしっかりと真相を究明していただきたい。改めてそういう思いというものを御答弁いただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 食の安全は、日中両国国民共通の重要な関心事でございます。本件問題につきましては、両国国民の不安を解消するためには、日中が協力して一日も早く真相を究明し、両国国民の前に真実を明らかにすることが何よりも重要であると考えております。日中間でも、そうした問題意識を共有し、緊密な協力を行っていくことで一致しております。

 中国政府においては、内外の消費者に対し責任ある態度をとり、真相解明のため調査活動を引き続き行っていくとの姿勢を明らかにしてきております。

 双方の捜査当局間におきましては、現在、中国公安当局より鑑定の専門家等七名が来日しております。二十五日から二十七日の予定で、警察庁科学警察研究所等におきまして情報交換会議を行うなど、本事案の真相究明のための協力が進められているところでございます。

 外務省といたしましては、こうした協力を通じて一日も早く本事案が解決するよう引き続き努力をしていく考えでございます。

高木(毅)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 特に我が国としても、中国からいろいろなものが入ってこない、食料が入ってこないということはいろいろ支障を来すわけでありますけれども、やはり私は、どちらかというと、本当に困るのは中国側なんだろうと思っております。

 大連でしたか、どこかの工場などもとまってしまっているという話も聞きますし、ぜひ我が国からは、中国のためにしっかりとお互いに協力をして真相を究明するようにということを強く働きかけていただいて、もちろん、国民の不安を払拭するためにこれからもしっかりとやっていただきたい、そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 先に質問をされました自民党のお二人の委員はアフリカ中心の御質問でございましたけれども、私は、身近な東アジアの情勢について質問をさせていただきたいと思います。

 鉄砲から権力が生まれると言ったのはたしか毛沢東だと思いますが、最近は、間違いなく、選挙から権力が生まれる時代になりました。その中で、韓国では十年ぶりの政権交代、そして台湾では八年ぶりの政権交代が行われました。新しいリーダーが生まれた韓国と台湾、この日本との関係について質問をしたいと思っております。

 まずは日韓関係でございますが、二月二十五日に、李明博新大統領の就任式がソウルで行われました。日本からも数多くの議員の方が参加をされておりましたけれども、私も、中曽根元内閣総理大臣が四十年来主宰をされている日韓協力委員会の一団に入りまして、ある面、中曽根元総理のボディーガードみたいな形で就任式に行ってまいりました。その日のソウルはとても寒くて、就任式は午前中だったんですが、ちょうど午後からは雪が降り始めるという、大変印象深い就任式でございました。

 韓国の国会前の広場に、約六万人ぐらいの方が集まっていらっしゃったと思います。その中で、新大統領がおもむろに演説を始めました。最初にびっくりしましたのは、歴代の大統領、盧武鉉さん、それから金大中さん、金泳三さん、盧泰愚さんは御病気で出席ではありませんでしたが、全斗煥さん、歴代の生存されている四人の大統領の方が出席をされていて、そのお名前を一人一人読み上げて謝意を述べるというところからスタートしまして、今までの韓国の大統領の交代劇ではちょっと見られない場面だなというふうに思いました。

 四十分ほど、マニフェストに掲げた公約を中心に決意の表明をされたんですが、一番結びに近いところで御自身の生い立ちを述べられまして、へんぴな田舎の貧しい家庭に育った、苦学をした、そして日雇いもやった、露天商もやった、サラリーマンになった、経営者になった、国会議員になった、ソウル市長になった、そして今、大韓民国の大統領になることができましたと。韓国は、夢と希望がある国です、倒れても立ち上がれる国ですというメッセージを言われたんですね。このときが多分一番、六万人の皆さんの拍手が多かった場面でございまして、これはなかなかの大統領が生まれたなと思いました。

 ただ、最近は、きのうから韓国の総選挙が始まりましたけれども、ハンナラ党の公認調整の混乱であるとか、あるいは閣僚人事でも迷走したようでございまして、スタートダッシュは余りうまくいっていないようでありますが、未来志向の、実利主義の、大変注目すべきリーダーが生まれたと私は思っています。

 そこで、高村大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、李明博政権の発足によって、日韓関係が以前に比べて改善されると思うかどうか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

高村国務大臣 中曽根元総理のボディーガードをやっていただきまして、ありがとうございました。

 日本と韓国は、自由、民主主義、市場経済といった価値を共有し、北朝鮮問題を含む課題を共有する最も重要な隣国であります。過去五年間の盧武鉉政権下においても、当初、首脳間の頻繁な往来に合意する等、未来志向の関係構築に取り組んだわけでございますけれども、二〇〇四年を最後に、盧武鉉大統領の訪日が行われなかったわけであります。

 李明博大統領は、大統領選挙の公約の中で、韓米同盟の強化とともにアジア外交の拡大をうたい、アジア外交の拡大の中で日本との関係強化を真っ先に挙げるなど、当初から日本重視の姿勢を示されていました。また、当選直後に両首脳で電話会談が行われましたが、その後、特使の交換が行われるなど、大統領就任前から緊密な対話が行われていたこともあり、二月二十五日の李明博大統領就任式直後の日韓首脳会談では、シャトル首脳外交の再開に合意するなど、非常によい会談となりました。

 政府としては、李明博政権との間では、二国間の緊密な協力関係を一層強化するとともに、互いに協力しながら国際社会に貢献する日韓新時代をつくっていきたい、いける、こう思っております。

野田(佳)委員 盧武鉉前政権の総括のようなお話もございましたけれども、二〇〇四年から交流が途絶えてしまったというお話がございました。私も、そのころから、どうしてしまったんだろうという気がしていたんですが、たしか二〇〇四年の三月、親日反民族行為真相究明法、これは超党派の議員立法で成立をし、大統領直属のもとで委員会をつくって、日本統治時代の親日家、あるいは協力者というんですか、そういう人たちを裁いていくというか、一九一〇年の日韓併合当時の総理の子孫が私有財産を没収されるとか、事後法によって人民裁判的に、随分後ろ向きなことが二〇〇四年からやられるようになっておりました。

 随分とこれは日韓関係が冷え込む原因だったと思うんですが、その前政権に比べると、大臣がおっしゃったように、未来志向で、実利主義で、たしか過去の問題についてもあえて謝罪や反省は求めないという御発言もあったようでございますので、ぜひ、この未来志向の関係をお互いに持ちながら日韓関係が強化されていくことを強く望んでいきたいと思います。

 先ほど大臣のお話にもありましたとおり、二月二十五日にソウルで日韓の首脳会議があって、シャトル外交を展開していこうだとか、あるいは日韓EPAの予備的な交渉を再開するとか、いろいろな合意があったようでございますが、今度、四月の二十日、二十一日に、韓国の新大統領が日本に来られる予定だというふうに思います。二月二十五日の一回目の協議を踏まえて、今度、来月の日韓の首脳における協議は具体的にどういうテーマで議論されるのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

小野寺副大臣 今御指摘ありました、このシャトル首脳外交の第一回目としまして、四月二十日、二十一日に大統領が訪日をしまして、首脳会談が行われます。この会談につきましては、日韓新時代を具体化すべく、日韓間の交流や協力をさらに強化するための施策のほか、北朝鮮問題、グローバルな課題に関する協力などについて、しっかり意見交換を行う予定にしております。

野田(佳)委員 ぜひ成功裏に終わりまして、日韓関係の強化に弾みがつくような、そういう協議が行われることを期待していきたいと思います。

 経済大統領を自任されている新大統領でございますので、特に経済政策についてはさまざまな関心があるだろうと思います。その関係でいうと、さっき申し上げました日韓EPA、これについては二〇〇四年の十一月から中断をしております。さきの首脳会談で予備協議が合意されたということでありますが、東アジアで最も深い経済統合をつくれる可能性のあるEPAであると思いますので、障害はいろいろあるかもしれませんが、締結に至るならば、まさに世界のGDPの一七%を占める経済圏をつくれるわけであります。さまざまな障害を乗り越えて、お互いがウイン・ウインの関係になれるようなEPAの締結をぜひ私は目指すべきだと思いますけれども、日韓EPAについてどのような展望をお持ちでございますか。

小野寺副大臣 我が国としましては、早期に本件交渉を再開すべく、韓国側と具体的な検討を今進めております。

 また、韓国側としましても、日経新聞、韓国毎日経済新聞等による最近の共同インタビューに対しまして、李明博新大統領は、両国間の未来志向的な友好関係発展のためにFTA交渉再開は望ましく、日韓FTAは長期的に両国経済と産業に肯定的な影響を及ぼすだろうと考える、先方の話ですが、韓日FTAはいつかは締結されなければならないということで、この必要性を再認識する発言をしております。

 このような韓国側の立場も踏まえまして、我が国としましては、早期に本件交渉を再開すべく、韓国政府と具体的な検討を進めていきたいというふうに思っております。

野田(佳)委員 昨年の大統領選挙のときのハンナラ党のいわゆるマニフェストというのがあるんです。これは慶応大学の曽根先生が訳していただいているんですが、大変すばらしいマニフェストでございまして、日本がマニフェスト選挙を入れてもう五年ぐらいたちますか、韓国はまだ三、四年だと思うんです、後発なんですけれども、かなり具体的に数字も入ったすばらしいマニフェストがあるんです。

 その中で、特に経済については詳細に書いてあって、特に新大統領の目玉は七四七政策といって、経済成長率を七%、国民所得を一人当たり四万ドル、そして世界第七位の経済大国を目指すという七四七とか、具体的に数字がいっぱい出てきています。そういう七四七政策を実現したときに、まさに未来志向、実利主義の新大統領も韓国も実利を得ることができるし、そして、さっき申し上げたEPAを踏まえて、日本もその経済的な交流の中から力をさらにつけていくことができるのではないかなと思いますので、ぜひEPAについては前向きにお互い取り組んでいくべきだろうと思います。

 そういうことも含めて、経済だけではなくて文化的な交流も含めて、お互いの関係を強化するためのアクションプログラム、行動計画を早急につくっていくべきではないかと思います。かつて、たしか小渕政権のときですか、相手は多分、金大中政権だったと思います、そのときに行動計画をつくった経緯があると思うんですが、その後いろいろあって、特にさきの政権とはちょっと冷え込み過ぎましたので、改めて、こういう新政権誕生と同時に、我が国はきっちりと行動計画をつくっていくべきではないかと思いますが、お考えをお聞かせください。

小野寺副大臣 委員御指摘ありました行動計画ですが、日韓間では、平成十年の金大中大統領の訪日の際に行動計画を作成いたしました。その後、行動計画はなされておりません。

 李明博大統領との間でも日韓新時代を築いていくことで一致しております。来る日韓首脳会談におきましては、日韓間の交流や協力をさらに強化するための施策のほか、北朝鮮、グローバルな課題といった協力についてしっかりと意見交換を行いたいと考えております。

 今後、日韓新時代に向けた取り組みを具体化していくに当たりまして、委員の御指摘を踏まえつつ、日韓間で十分協議をしつつ取り組んでいきたいというふうに思っています。

野田(佳)委員 来月の大統領の訪日を踏まえて、またこれからさまざまな場面で意見交換をする、シャトル外交を展開しようということでございますので、そういう機会があると思いますので、しっかり早急に行動計画をつくっていく。私は、経済のみならず、さまざまな分野での日韓の緊密な連携は大事だと思っておりますので、ぜひ強く要望をさせていただきたいと思います。

 今は主に日本との関係をお話しさせていただきました。やはり焦点となるのは、韓国と北朝鮮の関係、南北関係にどういう変化が出てくるかだと思うんです。金大中政権、盧武鉉政権以来の太陽政策がございました。これまでのこうした基本姿勢とは新政権は一線を画すのではないか、対北融和政策とはちょっと一線を画すような感じを私は受けているんですが、新政権で南北関係はどうなると思われますか。

小野寺副大臣 今お話ありましたように、新政権では、南北関係、前の政権に比べて慎重な姿勢になるのではないかと感じております。

 李明博政権はこれまで、非核・開放・三〇〇〇政策を表明しまして、北朝鮮における核放棄と対北朝鮮支援を比較的明確に位置づける立場をとっております。この政策に関連しまして、韓国の金夏中統一部長官は、十九日、南北経済協力事業の一つであります開城工業団地につきまして、核問題がこのまま妥協せずに問題が残るのであれば事業の拡大は困難である旨明らかにしつつ、北朝鮮が核問題の解決に向け誠意を持って条件を整えることが何よりも重要であるということを指摘しております。

 このような李明博政権の立場に対して、北朝鮮は、現在のところ、明確な反応を示しておりません。

 我が国としましては、北朝鮮が核放棄に向けて具体的な行動をとり、地域の平和と安定に資する形で南北関係が進展することが望ましいと考えておりまして、今後とも引き続き南北関係の動向を注視していく考えにあります。

野田(佳)委員 御指摘のように、従来の路線とは少し変わってくるだろうと。人道支援は引き続き行うようなお話は聞いております。ただ、従来と違うのは、北との政策の司令塔だった統一省を廃止するということを言われています。それから、去年の十月の盧武鉉そして金正日両首脳会談でさまざまな合意がなされてありますけれども、それらも一つ一つ精査をし、見直しをしていくということもお話をされています。また、北朝鮮の人権問題についても積極的に対応していくと。

 これらの点から見ると、よく一つ一つ精査をしながら、やるべきことはやるけれども、無原則に融和でいくのではないという路線だと思います。私はこれはあるべき姿だろうと思っていますので、この点においても、六者協議などでも十分に連携ができる国になるのではないかという期待を持ちながら、注視をしていきたいと思います。

 その中で、今副大臣がお話をされました選挙公約の非核・開放・三〇〇〇構想なんですね。これもこのマニフェストの中に出ておりまして、読ませていただきました。

 非核・開放・三〇〇〇というのは、北朝鮮の核放棄を前提にして、北朝鮮の国民所得を十年間で三千ドルに引き上げる、今が五百ドルだと思いますので、十年間で大体六倍に引き上げるために支援をしていこうと。支援をするためのいろいろなパッケージの政策が出ているんですが、五大分野、経済、教育、財政、インフラ、福祉、これにおける包括的な支援を行うということなんですね。

 それで、より一層見ていったんですが、その中の財政のところがございまして、四百億ドル相当の国際協力資金の投入、世銀から借款とかいろいろ出ているんです、南北交流協力基金をつくるとか。そこに日本が出てくるんです。「日朝関係改善による日本の対北支援」となっているんですね。

 これは、聞くところによると、四百億ドル相当の資金をつくるときの百億ドルぐらいは日本に支援をしてもらうという中身らしいんですね。これはマニフェストには書いてありません。ただ、内情を言うと、日本の支援を前提にしているわけです。他国の大統領のマニフェストに日本の支援まで入れられるとちょっといかがなものかという気はするんですが、百億ドルというと相当ですよね。

 この非核・開放・三〇〇〇構想の前提は北朝鮮の核放棄なんですが、もちろん核放棄も前提にしなければなりませんが、日本の場合は日本人拉致問題の解決もありますので、それが成って日朝国交正常化した暁には、ここに協力する可能性があるとは思います。可能性はなくはないと思いますが、その意味で、この非核・開放・三〇〇〇構想を外務省はどのように評価されているのか、お尋ねをしたいと思います。

小野寺副大臣 この非核・開放・三〇〇〇政策といいますのは、北朝鮮の核放棄を重視するという李明博政権の姿勢だというふうに思っております。この姿勢につきましては、もちろん我が国も、それから国際社会も賛同できるものだと思っております。その後の支援のことにつきましては、当然我が国としましては、過去、拉致問題につきましての重要な視点を持っておりますので、それを踏まえつつ今後も考えていくということになると思います。

野田(佳)委員 その拉致問題でありますけれども、なかなか打開できない状況が続いております。

 六者協議の中でも、日本が核問題と拉致問題を強く関連づけて議論しようとすると、少なくとも前政権はこの姿勢に対して批判的であったのではないかと思うんですね。新政権は、日本人拉致問題の解決について前政権より連携ができるパートナーになるかどうか、よく注視をしなければいけないと思うんですが、これはどこかのメディアとの会見の中で、日本単独で解決するより助け合って解決する方がいいという、多国間の枠組みの中で拉致問題解決に向けてある種汗をかく用意があるような発言がありました。

 その意味で、拉致問題解決に向けての連携が可能になるのではないかと思うんですが、その辺の見通しはいかがでしょうか。

高村国務大臣 おっしゃったように、李明博大統領でありますが、最近の日経新聞あるいは韓国毎日経済新聞等による共同インタビューに対して、拉致問題は韓国、北朝鮮、米国、日本、中国が互いに協力しなければならない問題である、こういうことを言っておられます。拉致問題の解決に向けた協力の必要性を認識しているという旨の発言をしているわけであります。

 二月二十五日に行われた日韓首脳会談におきましても、福田総理が、日朝関係では、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を早期に実現するとの我が国の方針を説明したところ、李明博大統領からは、北朝鮮との関係では、日朝、南北、米朝といった関係があり、日米韓三カ国が力を合わせて協力していきたい、日本の立場は十分理解している、北朝鮮との問題についてはしっかりと意見交換を行い、協力していきたいとの発言があったわけであります。

 拉致問題に関しての日本と韓国の立場はすべて同じというわけではありませんけれども、日本も韓国も、拉致問題を人道的な問題ととらえ、被害者の帰国を願う気持ちに何ら変わりはない、今後緊密に連携していきたいと考えておりますし、連携する余地が十分にある、こういうふうに思っております。

野田(佳)委員 そこで、拉致の問題の連携につながるかどうかにもまた大きいんですが、日韓が連携することだけではなくて、あとは中国、アメリカとのかかわりも出てきます。新政権ができたことによって、韓中関係、韓米関係、ここにどういう変化があらわれると分析をされていますか。

小野寺副大臣 御指摘の韓中、韓米の関係ですが、基本的には、第三国間の関係について政府が正式に述べる立場ではありませんが、私どもの感覚としましては、李明博政権は、米韓関係を基軸とする中で、中国を含むアジア諸国との連携も重視しているというふうに承知をしております。したがって、この新政権、米国や中国との関係の一層の強化に向けて努力を傾注するものと考えておりますし、この方針は、日米同盟とアジア外交の共鳴を目指す福田政権の外交方針とも同じものだというふうに考えております。

野田(佳)委員 盧武鉉政権のときの韓米関係というのはかなり後退をしてしまった感がありますので、それを多分急ピッチで回復をしていく努力を新大統領はされるだろうと私も期待をしたいというふうに思います。

 中国との関係ですが、先ほど、たまたま大統領就任式のときに中曽根元総理と御一緒させていただいたというお話をしました。青瓦台で元総理と新大統領との会談にも陪席をさせていただいたんですが、中曽根元総理がアドバイスをされておりまして、ソウルと北京と東京できっちりと三人の首脳会議を定期的にやりなさい、ASEANプラス3とかどこかで急いで短時間ホテルで会うんじゃなくて、定期的に持ち回りでやりなさい、あなたがリーダーシップを振るいなさいとアドバイスをされていました。その意味でも、環境の問題を含めて日本と韓国と中国の三カ国が連携しながら何かやっていこうという意向もかなり新大統領はお持ちだと思いますので、その辺はぜひ日本も歓迎をしながら進んでいくべきではないかなというふうに私も思っている次第であります。

 それで、韓国の関係では最後なんですが、これも多分、先ほど大臣がお話をされたインタビューとの関係で出てきた発言だと思うんですけれども、天皇陛下の訪韓について質問が出たときに、その時期はもう近づいてきている、熟してきているというような認識を示されたそうなんです。これはなかなか大きな問題で、相当な環境整備が必要だと思うんですが、天皇陛下の訪韓の可能性、これはどうお考えでしょうか。

小野寺副大臣 陛下の外国御訪問につきましては、諸般の事情を考慮して、政府として検討することになっております。

 御指摘の韓国への御訪問につきましては、現時点でまだ具体的に検討はされておりません。

野田(佳)委員 大変大きな問題なので、そう拙速でもいけないですし、きちっと筋道を立てた中で機が熟したかどうかをお互いが判断するときだと思います。ちょっと余りさっぱりした答弁だったので、がくっときましたが。

 では、韓国の方はこれぐらいにいたしまして、もう一つ、台湾なんですが、台湾の総統選挙の結果が先週の土曜日に明らかになりました。

 私は、先々週の週末、十四日から十六日にかけて、総統選挙の現場を見てまいりました。当初から、今回はやはり、陳水扁政権の業績投票、厳しい評価になっていて、国民党の馬英九氏が圧倒的に有利という事前の予想がずっと報道されておりました。そうだろうと思って現場に行ったんですね。この台湾というのは、特に台湾海峡、一日に商船が通過するのが八百隻だったかな、相当な通過です。日本の平和と安定のためには生命線とも言えるところでございますので、この国のリーダーがだれになるかはとても重要だと思いまして、現場を見てこようと思ったんです。

 その折にちょうどチベットの騒乱がありまして、完全に水をあけられていた民進党の謝長廷氏が追い上げていくのではないかと。このチベットの問題だけではなくて、国内的には、立法委員という台湾の国会議員の皆さん、国民党の四人の立法委員が民進党の選挙対策本部に何か賃貸の契約に問題があるというので財務大臣かだれかを連れていって、選挙期間中に小競り合いになってしまったんですね。それで、財務大臣はやめて、そして国対委員長もやめて、四人の立法委員たちは厳しい指弾を受けるという状況がありまして、これも流れを変えるんじゃないかと。四年前に陳水扁さんが〇・二二%で勝ったときというのは、あのときは二発の銃弾で決まった、今度は四人のばかが流れを変えると言われていました、それは現地の人たちが言っているんですが。結果的には、事前の予想のとおりに、やはり馬英九氏が大差をつけて勝ったということになりました。

 この台湾の総統選挙の結果をどのように評価をされているのか。これは、外務大臣は二十二日の夜に談話を出されていると思います。台湾をめぐる問題が両岸当事者の直接対話により平和的に解決され、対話が早期に再開されることを期待する、こういう談話を出されていますが、この談話ももちろん踏まえてでしょうけれども、もう少し詳しくその評価を教えていただければありがたいと思います。

高村国務大臣 民主的な選挙によって生じた新しい状況のもとで、台湾をめぐる問題が両岸当事者の直接の対話により平和的に解決されることを期待しているわけであります。直接の対話により平和的に解決されることを期待する以上、できるだけ早くそういう対話があったらいいな、こういうふうに思っているわけであります。

 日台関係については、今までどおり非政府間の実務関係を維持していく方針であります。こういう枠組みのもとで日台間の経済関係や人的交流が着実に進展していくことを期待しております。

 選挙そのものについて、他国の選挙について余り日本国外務大臣が論評しない方がいいのではないか、こう思っております。

野田(佳)委員 大臣お話しになったように、それはそうですね、その選挙の結果云々という話ではないと思いますが、私は、一人の政治家として、国民党から民進党、民進党から国民党とこの八年間で二回の政権交代があった、しかも、見ていると、争点が、選択の幅が随分縮まってきている感じがありますね、経済の政策でも対中関係でも。その意味では、私は、台湾の民主主義は成熟してきているんではないかなという実感を、結果はどっちが勝ったにしろ、そういう思いを持っておりました。これは確かに大臣がコメントしにくいことだと思いますので、私の感想を申し上げさせていただきます。

 それで、日台関係について今大臣、非政府間の実務関係のお話をされました。外交関係がないということでありますので、非政府間の実務関係をこれまでどおり続けていくというお言葉しかないのかもしれませんが、さはさりながら、国民党政権か民進党政権かによって、やはり日本との姿勢が変わるか変わらないか、これはよく注意しなければいけないと思っています。

 少なくとも中台の関係、両岸の関係については、これは緊張緩和の路線が馬英九氏の路線だと思います。経済的には、中国ともっと活発な交流をしていこうということだと思うんですね。そのことによって、むしろ対日関係よりも対中関係に力点を置いた外交姿勢になるんではないかという懸念を持つ人もいることはいるんです。少なくとも日本の、その分、生命線とも言える台湾における影響力が低下してしまうことは心配だ、その辺の懸念を持つ人はおります。

 その意味で、これからの日台関係、大丈夫かどうか、そのためにはどうしたらいいのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

高村国務大臣 基本的にいえば、中台関係、台湾海峡は波静かな方が、これは日本の国益にもかなうことだ、こう思っております。

 経済関係等、中台関係がどうあろうとも、日本は日本で非政府間の実務関係として発展させていく、こういうことでいいのではないかと思っております。

野田(佳)委員 少なくとも台湾海峡が波静かであることは、基本的にはもう前提中の前提だと思うんです。それ以外の、例えば日本と台湾の問題というのはほかにもあるんです、いろいろ。

 例えば尖閣諸島の問題。私が若干心配しているのは、馬英九氏がアメリカに留学をしているときの研究テーマ、これは尖閣諸島の中華民国への帰属問題なんですよね。領土にかかわるような問題についてはちょっとこれまで以上に日本と厳しく対峙する場面が出てきては困るな、加えて、それが中国と連携をされたらなお困るなというふうに思っていまして、台湾海峡が波静かであるということはもちろん大事ですけれども、ほかの問題でやはり日本と台湾との関係が、緊密な連携を持ちながらお互いを理解する努力を、謝候補は京都大学で学んだことがありましたが、馬英九氏の場合は余り日本との縁がないようですので、これから知日派になりたいとおっしゃっていただいているので、ぜひその辺はしっかりとフォローをしていかなければいけないということを申し添えさせていただきたいと思うんです。

 その馬英九氏が正式に総統に就任するのは五月二十日でございます。総統になると、幾らアメリカとの関係、日本との関係、大事にしようと思って行き来しようと思っても、要人になってしまうと、これは外交関係のないところに勝手に行くことは困難になってしまいます。したがって、福田総理、高村大臣の外交日程もタイトかもしれませんが、総統に就任する前に、やはり馬英九氏が日本に来られるような機会をつくっていくということも、またそういう御意向もあるようでございますので、実現方に御努力をいただけるということはないのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

小野寺副大臣 馬英九氏の訪日については、まだ具体的な意向ということで私どもは受け取っておりませんので、現時点でコメントできる状況ではないと思っております。

 また、台湾の要人の訪日につきましては、台湾に関する我が国政府の基本的な立場を踏まえて適切に対応していきたいというふうに思っております。

野田(佳)委員 後でゆっくり話しましょう。

 それで、馬英九氏もやはり実利主義で、経済を強く考えている方で、むしろ陳水扁政権の経済的には余りうまくいかなかった部分が今回の国民党政権につながったと思うんですが、その中で、これまた選挙の公約の中で、日台FTA締結を公約に掲げているんですね。台湾に行ってみますと、例えば、ASEANプラス3で域内でどんどんFTA、EPAが進んでいって台湾だけ取り残されていくということは台湾の経済成長の足を引っ張るという、すごい危機感を持っています。

 その意味で日台FTA、これは中国大陸との関係もあるかもしれませんが、その可能性はどういうふうにお考えでしょうか。

小野寺副大臣 御指摘のとおり、日台関係、経済関係、人的交流、極めて重要と考えております。台湾との経済関係につきましては、WTO等の多国間の枠組みを含む幅広い経済関係を視野に入れながら、日台関係の枠組みに沿った経済連携のあり方を、検討を進めることが適切だというふうに思っております。

野田(佳)委員 馬英九氏の政策で、三つのノーというのがありまして、ノーというのは、中国と統一しない、二つ目、台湾は独立しない、武力行使はしない、この三つのない、三つのノー。これを基本として、要は政治的には現状維持型ですよね、そういう路線を引きながら、経済的には大陸との関係を、もっと連携を図っていこう、例えば中台の直行便を、チャーター便をつくるとか、定期化していくとか、あるいは観光で大陸からもっとたくさんの人をお迎えしようとか、共同マーケットをつくろうとか、いろいろな構想を持っていらっしゃるようです。そういう構想を踏まえて、台中関係はこれからどうなっていくのか。

 もともとアメリカに留学をされた経験者ですから、むしろ一番、新しい人にレッテルを張っちゃ失礼かもしれませんが、親米派だと思うんです。台米関係はどうなるのか、その辺の情勢分析を教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 まず、台中関係でありますが、私が申し上げられるのは、先ほど申し上げたとおりでありまして、台湾をめぐる問題が両岸当事者間の直接の対話により平和的に解決されること、及びそのために両岸対話が早期に再開されることを期待しているわけであります。

 このような観点から、我が国政府は、いずれの側による、いかなる一方的な現状の変更の試みも支持できないと、一貫した立場であります。比較的安定していくのではないかというふうに期待をしているところであります。

 それから、三月二十二日でありますが、ブッシュ大統領が、台湾海峡の平和と安定は米国にとって重要である、台湾の人々と非公式ながらも緊密な関係を維持する等の声明を発出したと承知しております。米国も我が国と同様に、台湾をめぐる問題が平和的に解決されることを期待し、米台関係をこれまでの枠組みのもとで維持するとの立場であると理解をしております。

野田(佳)委員 特に中台関係については、文章自体は淡々とされていますが、大臣の表情、思いを酌み取り、眼光紙背に徹し、納得をさせていただきたいと思っています。

 以上で、もう時間がほぼ終わりだと思いますので質問を終わります。どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 きょうの質問者は皆、三原さんはアフリカに何度も行かれ、先ほど伺っておりましたら、野田さんも韓国、台湾に行かれて、それで質問されておりまして、私は中国にほとんど行っていませんし、行かせてもらっていないんですが、きょうは中国問題に焦点を当てて質問させていただきたいと思います。

 中国問題といってもいっぱいありまして、特に最近は多くあり過ぎて、本当は三時間ぐらいかかってしまうんですが、三つの問題についてお尋ねしたいと思います。

 一つは、東シナ海の資源開発問題、二つ目は、高木さんも触れられておりましたけれども、中国産の毒ギョーザ問題、三つ目は、前回の委員会でちょっと松原さんが触れられておりましたけれども、チベット騒動問題ですね。

 まず、東シナ海資源開発問題ですけれども、中国は、いつのころからか非常に大国主義的な行動をとるようになりました。今、表裏印刷いたしました資料をお配りしました。その裏側というか、「チベット情勢を巡る主な動き」の方を見ていただきたいんですが、弾圧とかいう方の急先鋒の江沢民国家主席のころからこうなったんではないかと私は思います。しかし、日本側にもいろいろミスがあったというような気がしております。

 ちょっと違う方の表を見ていただきたいんですが、海洋法条約に関係して、生物資源と鉱物資源の管理制度の変遷というのを表をつくってみました。私はいつも外務委員会には表をつくっては説明しております、手前みそな表になるわけですけれども。真ん中の海洋生物資源については、見ていただくとわかるんですが、それなりの準備をしてきた。その後、非常に準備が、準備というか、ぱっぱっと対応しているんですね。海洋法条約を批准したら、すぐ資源の保存及び管理に関する法律というのをつくりました。

 これは、今は議員になっておられますけれども、私はちょっと関係していたのですが、猪口邦子さんに海洋法制度研究会の委員になっていただきまして、そのときに立派なことをいっぱい言っていただきました。どういうことをおっしゃっていただいていたかというと、ほれぼれするようなことでございます。乱獲の海を資源保全の海にと。日本は水産大国として率先垂範して資源管理の見本を示さなければならない、こういうことをおっしゃっていただきまして、それで、こういった資源の保全及び開発の制度ができ上がってきたんです。

 ところが、右側を見てください。海洋鉱物資源の方は、さっぱり何にもしてこなかったんです。そして去年、海洋基本法が議員立法でできました。そして海洋構築物安全水域設定法、これは国土交通省に係る法律ですけれども、でき上がっているということでして、どうも経済産業省資源エネルギー庁は手を抜いていたんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

平工政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしましては、これまでも、鉱業法に基づきまして、海洋を含めたエネルギー・鉱物資源の合理的開発に努めてきたところでございます。

 また、昨年四月に海洋基本法が制定をされまして、これに基づき、今月には海洋基本計画が閣議決定をされました。その中で、エネルギー・鉱物資源の開発につきましては、国が先導的な役割を担うことと位置づけられております。

 これらを踏まえまして、今後、当省といたしましても、海洋を含むエネルギー・鉱物資源の開発を着実に推進してまいりたいというふうに考えております。

篠原委員 立派なお答えですけれども、やはり手を抜いているんですよ。経済産業省や今までの一般の人たちは、鉱物資源だとか石油だとか、そんなものは外国から買えばいいんだ、こういう認識のもとに大体動いてきているんです。ところが、農林水産省の方は、なるべく自前でやろう、自前でやろうという意識があるから、こういうことをするということなんですね。

 先ほど三原さんの質問の中に、イギリスの議員だとか大臣が自分の国のものを売り込みに来たというお話がありました。私は、こういうことを考えますと、外務大臣あるいは外務省の役割として大事なのは何かというと、インド洋上で給油をする、それの手助けが必要だと。必要な部分はあるかと思います。ですけれども、前も申し上げました、防衛省がやることに対しては抑制的に動かなくちゃいけないのが外務省の役割だと。それに対して、こういったこと、資源外交なんかについてこそ外務省は全力を挙げ、外務大臣は全力を挙げて取り組むべきだと思いますけれども、いかがでしょう。

 特に、二百海里問題について、中国の大陸棚の自然延長論というのは国際的には認知されていないんです。中間線なんです。ですから、法律をちゃんとつくって日本できちんとやっていくという意思を示して、そして外交上もそれをぴしっと言っていくというのが大事だと思うんですけれども、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 大陸棚の自然延長論、中国が今主張していることについては、かつてはそういう意見もあったんです。ただ、最近の国際司法裁判所その他の国際的裁判の判決によると、だんだん中間線論が有利になってきている。圧倒的に有利になってきている。ただ、中間線といっても、どこが中間線というのは裁判でもいろいろな考え方がある、そういうのが現状だ、こういうふうにしております。

 そういうことは我が方から中国に対して強く主張をしているところでありますし、我が方は適切に、外交においては主張すべきはきっちり主張しているつもりでございます。

篠原委員 具体的事例は幾らでも転がっているので、きれいごとを言っていては始まらないので、十一回ぐらい協議しているようですけれども、中国は最近、はっきり言って生意気になっていますから、全然日本の言うことなんか聞いていないんじゃないかと思います。

 日韓大陸棚協定というのが三十年前にできているんです。しかし、余り動かなかったんですね。しかし、今度はガス田も、あるいはひょっとすると油田もあるかもしれないというんですから、日中大陸棚協定をつくったっていいんですよ。そういう積極的な提言をぜひしていっていただきたいと思います。

 それから、中国毒ギョーザ事件問題。これは、私がずっとかかわってまいりました食の安全についての問題でして、大問題なんですが、おととし私が外務委員会に所属させていただいているときに、日韓刑事共助条約というのがありました。これは日中なんかもさっさとやらなけりゃいけないんですけれども、どうなっているんでしょうか。その関連で、この関係について警察庁と外務省、ちゃんと連携をとって中国側に対峙しているのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 日中刑事共助条約でございますが、我が国は、昨年一月に中国との間で日中刑事共助条約の交渉を開始いたしまして、昨年四月に温家宝総理が訪日した際に、首脳間で交渉の年内実質合意に向け努力していくことで一致いたしました。そうした首脳間での合意を踏まえまして、計四回にわたりまして鋭意交渉を行った結果、昨年十二月の高村大臣の訪中の際に中国側と署名を行った次第でございます。これを踏まえまして、三月の七日に、政府として、日中刑事共助条約について、締結に必要な御承認を得るために国会に提出したところでございます。

 この条約の締結によりまして、日中双方が刑事共助を一層確実に実施することができるとともに、中央当局間で直接連絡を行うことにより、共助の効率化、迅速化が期待されます。また、この条約の締結は、日中間の刑事司法分野における協力関係を強化していく上で重要な一環でもあります。このため、今次通常国会において御承認を得られるようお願いする次第でございます。

 また、ギョーザ問題に関します警察庁と外務省との連携の状況でございますが、日中両国が協力して早期かつ徹底した真相究明を行うことが重要であり、外務省といたしましては、国内関係省庁と連携しつつ、さまざまなルートや機会を通じて中国側にそうした問題意識を強調し、緊密な協力を行うことで一致しているところでございます。

 警察庁との関係におきましては、情報や意見の交換を適宜行ってきておりますが、特に、日中双方の捜査当局間では、現在、中国公安当局より鑑定の専門家等七名が来日中でございます。二十五日から二十七日の予定で警察庁科学警察研究所等におきまして情報交換会議が行われております。

 外務省は、警察庁と連携しつつ、こうした協力をめぐる中国側との連絡調整等につきまして、必要に応じて外交ルートを通じた支援を行っていく考えでございます。

篠原委員 ちゃんとやっているんですね。大したものです。しかし、中国毒ギョーザ事件問題には間に合わなかったんですね。だから、日中でこんなに緊密になっているんですから、日韓やって日米やって日中と、さっさと三つか四つ一緒にやってしまえばいいわけで、ちゃんとこういうのはさっさと進めていただきたいと思います。

 それで、こういうことをちゃんとやっていないからどうなってくるかというと、中国側は、これは私は、中国に対しては優しい態度をとらなければいけないと思います、しかし、この毒ギョーザ問題についても、とんでもないことを言い出したわけですね。

 メタミドホスというのを皆さん、ちゃんと言える人は何人いるかわかりませんけれども、ジクロルボスとかですね、ああいうのは、日本は純度が一〇〇%だ、中国のは不純物だというのがあるわけですね。それで、日本で実験したら袋の外からは全然メタミドホスはしみ込まない、こういうデータを全部提供し終わって、安藤隆春警察庁次長が中国に行って帰ってきた次の日に何を言い出したかというと、日本のテロ分子、日中関係を悪化させてやろうというテロ分子が中国のメタミドホスを日本に持ち帰って、それを外からぶっかけて、それでしみ通って汚染されたなんてとんでもないことを言い出した。

 私は、幾ら名探偵コナンでもコロンボでもこんな推理はしないと思います。こういったことを黙って言わせておくのはよくないんだろうと思います。科学的な根拠がちゃんとなけりゃいけない。

 もちろん、中国は、何かいろいろな条件のもとでやったら八七%がしみ込んだ、だから中国側で汚染された可能性は極めて低いとか言って、先ほど高木さんが御指摘になったように、この大事な事件をうやむやにしようとしている。何か日本国政府も、胡錦濤さんが来るとかオリンピックとかで、ちょっと遠慮して何にも言わないでいる。

 この点について、ぴしっと言っていくべきだと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 この問題につきましては、現在、双方の警察がそれぞれの根拠をもとに見解を示した中で、究明を、明らかにするという努力をしていると思っております。

 この真相究明について、一刻も早く行い、そして両国国民に責任ある説明を行うべきだということ、これはもう委員御指摘のとおりだと思っております。

 現在、先ほどお話がありましたように、中国公安当局より鑑定の専門家七名が来日中でありますので、この情報交換の会議などによりまして、本件事案の真相究明のことが明確になるのではないかというふうに思っております。

 外務省としましても、このような事案が解決するように、引き続き努力していきたいというふうに思っております。

高村国務大臣 私は、かつて一議員であったときに、両国の外相同士がメディアを通じてののしり合っているような感じがあったときに、それはよくないと思って、現職の外務大臣にそういうことを申し上げたら、そのとおりだと。それから、相手方外務大臣も含めて、お互いにののしり合うようなことがだんだんなくなっていった。私は、非常にいいことだ、こういうふうに思っております。

 少なくとも、相手方外務大臣、ヨウケツチ外相がこの問題について何か言って、日本がやったなんということを言ったということは承知しておりません。そして、向こうの捜査当局の人がそういうことを、今委員が言ったみたいな言い方は私は決してしていないと思いますが、中国で行われた可能性は非常に少ない、こういうことを言ったということは知っていますが、それに対しては、受け入れられないと日本側の捜査当局の責任者が言っている。その後、そういうジャブの応酬がなく、捜査協力が進んでいる。私は、非常にいいことだ、こういうふうに思っております。

篠原委員 今の点は高村外務大臣のおっしゃるとおりであります。品の悪い私が言っていいことと外務大臣が言っていいことは違いますから、そのとおりだと私は思います。

 ただ、この問題はうやむやに絶対すべきじゃないと思います。それは、我々の命にかかわることです。これも、この問題を余り長くやっているとチベット問題の時間がなくなってしまうものですからちょっとだけ触れさせていただきますと、アメリカは厳しいんですよ。きかんしゃトーマスというおもちゃがありますね。あれを塗るのに鉛が入っていて、それでもって四歳児が一人亡くなった。それで、二カ月間で二百五十万個のきかんしゃトーマスを全部リコールして回収している。それから、食品についても輸入禁止だと。

 私は、日本でどうしてこういう声が出てこないのかと不思議なんですが、BSEの変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者が一人も出ていない、もっとも潜伏期間が八年とか二十年ですから当然ですけれども、それでアメリカの牛肉の輸入禁止をしているわけです。

 それを、十人が塗炭の苦しみで病院に行って、五百人ぐらいが苦しんでいる。亡くなられた方は一人もおりませんでしたけれども、こんな重大案件が起きているわけです。これは輸入禁止にすべきなんです、一時的に。何か中川昭一さんが、きのうかおととい、同じことを言っていたようで、気が合うので、同じようなことを考えるのかなと思うんですけれども、なぜそういうふうに論理的に考えないのかというのは私はあるんですよ。

 ですから、これはやはり外務大臣がおっしゃる必要は私はないと思います。外務大臣がおっしゃると大ごとでございますけれども、アメリカやイギリスのIOC、オリンピック選手団団長などはどう言っているかというと、アメリカは、ニューヨーク・タイムズ紙にきちんと書かれていますけれども、北京入りはなるべく遅くする、そして食料は全部外から持ち込むと。イギリス・IOCは、マカオに滞在していて競技の前日北京入りするとか、食料は中国のものは食べないというような、そういうことまで言って警告しているんですよ。これだけ日本は中国から輸入しているんですから、日本もそれらしきことはそれなりの関係者が警告を発していいんじゃないかと私は思います。

 大気汚染の問題なんかもあります。マラソンの世界記録保持者のハイレ・ゲブレセラシェ、エチオピアの選手ですけれども、大気汚染のひどい北京で走るのは嫌だと言って不参加を表明したりしている。こういうのがあるわけですが、こういうことでちょっと警告を発する必要が私はあるんじゃないかと思います。

 では、これはこのぐらいにいたしまして、次に、大事なチベット問題でございます。

 これは非常に悩みが深いんじゃないかと思います。この表のところをちょっと見ていただきたい。チベットをめぐる主な動きのところを見ていただきたいのですが、これは、右と左、左側は中国の弾圧の動きとチベットの反抗です。中国も波があるんですよ。右側、融和の動きというのもあるのです。

 例えば、毛沢東はやはり立派だったんですよね。あのでっかい中国を全部統治するのはなかなか難しいということで、言語は強制しなかったんですね。それから、一九五四年にはダライ・ラマと毛沢東が会っているんですよね。そして、毛沢東は自治を認めるとまで言っているんです。いい方ですね。

 ところが、五九年に動乱が起きまして、ダライ・ラマは御存じのとおりインドに亡命する。そして、中国政府がチベット自治区をつくる。中国が言っていることはうそでして、さっきのギョーザ事件もそうですけれども、結構うそをつく国ですよ。チベットと中国なんかは交流はなかったわけです。右側の方の二〇〇六年のを見ていただくとわかると思いますけれども、鉄道もなくて、鉄道をつくった。毛沢東が、一九五一年、ラサに進駐したときに、道路がなくて、一番最初にしたことは道路をつくっているわけです。道路がなかったということは、交流がなかった。とても中国の一部みたいな感じではなかったということなんです。

 しかし、よく見てみると、胡耀邦総書記、一九八〇年、見てください、チベットを訪問して、共産党の失政を認めております。先ほど野田さんから中曽根さんの話が出ましたのでちょっと触れさせていただきますと、このころ日本はだれだったかというと、中曽根さんが総理になったりされていたんですよ。胡耀邦はチベットを訪問して、共産党の失政を認めるんです。

 この胡耀邦は、改革・開放派、自由化、民主化路線をとっていたわけです。それで、靖国神社問題、一九八五年、中曽根さんは参拝するんです。それで、どうしたらいいかという検討の会議を持ったわけですけれども、やめるわけです。やめた理由に、いろいろあるわけですけれども、その一つに、親日派で民主化、自由化路線を歩み始めた胡耀邦が、日本が困らせると失脚してしまう、それをおもんぱかって中曽根さんはやめられたとも言われているんです。私は直接聞いていないからわかりませんけれども、そうやって物の本に書いてありました。しかし、彼は、残念ながら守旧派に追い詰められて失脚していくんです。そして八九年に死亡して、これが天安門事件に結びついていきます。胡耀邦のような立派な方がいた。

 その反対が二〇〇一年の江沢民です。江沢民国家主席がチベットの独立阻止の方針を示す。このころから、さっき触れましたけれどもおかしくなって、九六年に台湾海峡にミサイルをぶち込んで、さっきの、選挙のところに高村さんは何も言わないという、それが常識なのに、台湾の選挙のところに影響させるためにミサイルをぶち込んだりしている。そういうことをやり出したわけですね。それで、教科書問題とか、歴史的認識が違うと言って日本にも難癖をつけてくる。

 これは、よく見ていると、一事が万事なんです。江沢民は日本に対してもチベットに対しても非常に高圧的な態度をとり、胡耀邦はチベットに対しても日本に対しても非常に穏やかな態度をとっているということですね。

 今、中国がどういう態度をとっているかというのは、よく見ていただくとわかるんです。一九八九年の三月のところを見てください。胡錦濤主席がこのときにチベット自治区のトップだったわけです。そして、軍を動員して鎮圧したんです。ここの働きがもとで国家主席に上り詰めていくわけです。歴史の偶然で、今それで困っているわけです。

 それで、この騒動について日本国政府は一体どのように対応しているのか。各国はいろいろコメントを述べておられます。外務省の報道官談話では、関係者の冷静な対応を求め、今回の事態が早期かつ平和裏に鎮静化することを強く期待すると。福田総理が、憂慮している、双方が冷静に適切な対応をとってほしいというようなことを言っておられますけれども、日本国政府はこれについてもうちょっときちんと言うべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 今委員の御指摘がありましたように、ラサ市におきましての衝突によりまして死傷者が発生した直後の十五日、政府としましては、外務報道官談話ということで出させていただきました。我が国の立場につきましては、外交ルートを通じまして中国側にしかるべく申し入れるとともに、邦人の安全確保を要請してきたところでございます。

 中国側には、この状態についての透明性の確保、それから、状況の改善のために双方が受け入れられる形で関係者間の対話が行われるものであればそれは歓迎すべきものであるということ、これをあらゆる外交ルートを通じて申し述べてきております。

 また、邦人保護につきましては、ラサ市における在留邦人及び短期渡航者について在中国日本大使館を通じて全員の無事を確認するとともに、その他の渡航者の有無についても引き続き確認を続けてきております。

 また、十五日付でチベット自治区ラサ市の治安悪化に伴う注意喚起のスポット情報を、十八日及び二十一日付でチベット自治区周辺地域の治安悪化に伴う注意喚起のスポット情報を出したほか、チベット自治区に対する危険情報を十五日付で「渡航の延期をお勧めします。」というランクに引き上げました。

 外務省としましては、引き続き事態の推移を注視しつつ適正に対処していく所存でございます。

篠原委員 日本はやはり優し過ぎるんじゃないかと思います。

 中国はさっき一事が万事と申し上げました。毒ギョーザ問題でとんでもないことを言い出している。この点についても、いろいろ記者会見でうそを言っているんじゃないかと思います。軍が出ているということに対していつものとおり清掃の手伝いをしていただけだとか、それから、銃声を聞いたという人だらけなのに殺傷性のある武器は使っていないとか、やはりこれはよくないんじゃないかと思います。

 ちょっと前に開かれた全人代では、胡錦濤はチベット問題に触れていたようです。過去五年間投資を盛んにしている、経済成長も著しいと。

 しかし、この経済成長、融和策ということで漢人がどんどん行ってその人たちが豊かになっているだけで、チベット人の懐に直接届くような経済成長はしていないわけです。だから格差があるわけですよ。日本のような格差なんて、人種的な格差は日本にないからいいんです。あちらはすぐそういう問題になるわけです。だから暴動になっているわけですね。僧侶たちが平和的にデモをしている。大体、チベット仏教は平和的です。だからということもあるんだろうと思います、ダライ・ラマ十四世はノーベル平和賞ももらっているわけです。それを中国は非常に変なことをしているわけです。

 それで、この点についてですけれども、日本は非常に軟弱な態度をとっているんじゃないかと思います。

 具体的な例で申し上げますと、ダライ・ラマ十四世に会おうとしない。ここのところに書きましたけれども、表の右側の下から二番目、何かブッシュ大統領と気が合うようでして、四回も会っているわけですね、ブッシュ政権の間に。

 日本では、大平正芳さんの時代に一度会っただけでして、その後、外務大臣も総理も一切会っていないんですね。ほかの国は、新聞報道されているのでおわかりのとおり、今度、例えば五月にイギリスにダライ・ラマが行く、ブラウン首相は会うと言っています。メルケルさんも会っていますし、ストロー外相も何回も会っているということなんです。

 日本国政府は、何でダライ・ラマ十四世と、日本に来たりするのに、会わないんでしょうか。松原仁さんなんかかわりに会ったって、大した影響はないんです。鳩山由紀夫幹事長は多少、多少なんて言ってはあれですが、影響はあろうかと思います。しかし、外務大臣が会って虚心坦懐に話す、そしてダライ・ラマと直接対話すべきだと中国にも言う、準備をしなけりゃいけないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 中国のしかるべき方とダライ・ラマ氏が会って直接話し合うということは非常にいいことだと私は思いますし、そういうことは既に多分国会でも言ったかと思います。それはいいことだ、そういうメッセージは発しているわけであります。

 ただ、私とダライ・ラマさんとの間に紛争があるわけではありませんし、私とダライ・ラマさんがけしからぬと思っているわけでもありませんから、ダライ・ラマさんと会ってどういうお話をしたら中国とダライ・ラマさんとの間のことに役に立つかどうかということは余りはっきりしないな、こういうふうに思います。

 いずれにしても、私は、中国のしかるべき方がダライ・ラマ氏と会うということは、それはそれで大変結構なことだ、こういうふうに思っております。

篠原委員 外務大臣は勘違いされている。今会わなければいけないと私は申し上げているんじゃないんです。歴史的に言って、大平正芳総理が一度会われただけで、後ずうっとだれも日本の政府高官はダライ・ラマと会っていないんです。わざと避けて、中国は一つだというのはほかの国もみんな一緒です。しかし、そうだからといって会わないでいるんじゃなくて、アメリカなどは、ここにも書きましたけれども、二〇〇七年、去年ですけれども、アメリカ議会が黄金章、金メダルを上げたりしている、そうやっていたりする。

 だから、そういったことの関係からすれば、ダライ・ラマが日本へ来て日本の政府高官と会って意見交換する、そういうことをなぜしてこなかったんでしょうか。そんなにおどおどした態度を中国に対してとる必要ないんじゃないでしょうかということを申し上げている。

 今こんな微妙なときに、日本はアメリカと違いますので、そんな出過ぎてやることはないです。そんな力もないわけですから、残念ながら日本外交は。ですから、今までも全然会わないでいたりしている、今後も会わないで避けて通っているというようなことはやめるべきじゃないでしょうかということを申し上げているわけです。

高村国務大臣 それぞれ、総理にしても外務大臣にしても大変忙しいわけでありますから、何か積極的に会う理由がある場合には会うことはあっても、積極的に会う理由がない場合に会う必要はない、こういうふうに思っております。

 大体、日本でも松原仁さんとか有力な方がお会いしているというふうに承知をしております。

篠原委員 外務大臣、それはやはり腰が引けているんです。積極的に来て会いたいと言ったら会って、いろいろ会ったりしていくことが友好関係をつくるのにつながるわけです。

 最後にもう一つです。

 私は、日米関係が大事で、日米は外交上ほとんど同一に動いているわけです、日米同盟関係というのは。イラクにも派兵したりしている、給油までして助けるとかそういうことをしているわけじゃないですか。では、中国問題についてなぜそういう態度をとらないのか。

 アメリカは、ダライ・ラマ十四世と中国とが直接対話すべきだということをちゃんと言い、それからペロシ下院議長が、偶然行っていただけのようですけれどもタイミングがよかったと思います、ダライ・ラマ十四世と会っている。そして、国境なき記者団が入ったりするのを認めさせろということを言っているわけです。

 つまり、人権問題を大事にしているわけです。アメリカは、今非常に中国に対して高飛車ですよ。人権擁護派の議員と対中強硬派が一緒になって同じことを言っている。オリンピックについても厳しい態度をとっている、ボイコットすべきだとか言う人もいますし、輸入規制をどんどんすべきだと言う人もいます。

 こんなところはほっておいてもいいのかもしれませんけれども、ほかの外交面であれだけアメリカに追従しているにもかかわらず、この人権問題、チベット問題についてなぜアメリカと同一歩調をとれないのか、これはおかしいんじゃないかと思います。こういうことこそ手を携えて、中国に、もうちょっと冷静な対応と、ダライ・ラマとも直接対話していくべきだというようなことぐらい言ってもいいんじゃないかと思います。

 そういう点では、おとといの予算委員会で福田総理に山本一太参議院議員が質問をした。この問題について触れないのかというのに対して、福田総理は例の調子で余りはっきりと答えておられない。それに対して高村外務大臣は、楊外相と触れないことなど考えられないとおっしゃっているということだと思います。

 ですから、同じように、アメリカと同一歩調をぜひとっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 何も日本外交はアメリカと一緒にやる必要はない。そういう貴委員のように従米的な考えは、アメリカに何でも従うという考えは私は持っておりません。

 ただ、私が言っているのは、やはり人権の問題というのは大切なことであり、中国もこのことについてはもっと透明性を持ち、オープンにした方がいいですよということは、私は再三申し上げているところでございます。

篠原委員 最後に注文をつけておきます。

 これは大事なことでして、一九三六年のベルリン・オリンピックは、ヒトラーはナチスを国際的に容認させる道具に使ったんですよ。中国も、国威発揚の場、国際的に中国を認知させる場に北京オリンピックを使い、二〇一〇年の上海万博を使おうとしているんです。こういう意図をちゃんと感じ取って、隣国として、こういう機会だからちゃんとした国になれという忠告をしていかれることを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、私どもの野田委員も、李明博大統領の就任式、また、台湾の総統選挙に行かれたという話をされておりました。実は、私は、李明博大統領の就任式には党の代表団ということで参りまして、そして、二十一、二十二、二十三でありましたが、台湾の総統選挙の方も視察に、これは個人的にでありますが、行ってまいりました。

 そこで、政権がかわる、十年ぶり、九年ぶりでしたでしょうか、八年ぶりでしたでしょうか、政権がかわるということの背景には、やはりいろいろなことがある。それは国内の事情も、それぞれの国でのいろいろな政治的な動きあるいは経済的な動き、さまざまなことがあるんだと思います。

 ただ、一方で、非常に世界が、やはりアジアというところで動いているという気がしております。そういう意味で、李明博政権になってどういうふうに変わっていくんだろうか、あるいは、台湾で馬総統が就任をしてどう変わっていくんだろうか、そして、それが日本にどういう影響を与えていくんだろうかということをしっかりと見きわめたいという思いで行ってきたわけであります。

 また、そういう関係の中で日本がどうしていくか、そして、日本がアジアあるいは世界の平和と発展にどう貢献をしていくかということをいろいろと議論してまいりたいと思います。

 そこで、まず大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 昨年の十二月七日の本委員会でありますけれども、私は質問をさせていただきました。それは、二〇〇四年の十二月に、当時の小泉総理と盧武鉉韓国大統領との首脳会談で合意した朝鮮半島出身者の軍人軍属の遺骨問題について、また、これは昨年の十一月二十日、福田総理になられて、福田新総理と盧武鉉大統領との首脳会談で、目黒区の祐天寺にある遺骨、百体ほどだったと思いますけれども、それを返還しようと合意をした、このことを受けて祐天寺で返還追悼式が行われる、このことで高村大臣に質問させていただき、また、政府関係者から非常に前向きな答弁を得た。

 当時の私が触れさせていただいたことは、やはり未来志向でいく、未来志向でいくためにはきちっと歴史の清算をしていかなくちゃいけない、そして、そこには人々の心があるんだ、日本と仲よくしていこう、そのためには、ののしり合うとかけんかをするということではないけれども、しかしながら、やはり、認めることは認める、やることはやってほしい、こういう気持ちがあるんだ、人の気持ちがあるんだ、そのことを政府としても大事にしていただきたい、こういう観点から質問させていただき、そして前向きな答弁をいただきました。

 改めて、当時の高村大臣の答弁を繰り返させていただきますと、

  政府といたしましては、当時多数の方々が不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えておりまして、戦争という異常な状況下とはいえ、多くの方々に耐えがたい苦しみと悲しみを与えたことは極めて遺憾であったと考えております。

  なお、政府としては、過去の歴史に関し、これまでもさまざまな形で繰り返し反省とおわびの気持ちを表明してきております。御遺族の方々への具体的な対応につき検討するに当たっては、今申し上げたような気持ちを踏まえていきたい

という答弁をいただきました。

 ただ、結果的には、一月の二十二日、祐天寺で行われた追悼式では、最終的には少し緩和されたわけでありますけれども、当初、大幅にマスコミの取材が制限され、また、韓国政府側が要望した日本人の関係市民が参列できないという問題が生じた、こういうふうに聞いております。また、これらの問題については、韓国政府側が外交ルートを通じて日本政府に抗議したというか、意見を言ったというふうに聞いております。

 これはいろいろとやりとりがありますし、私は、すべてを精査したわけではありませんし、そのことについてただすつもりはありません。ただ、これは第一回目であります。今後も続くと思われます。今後の式典の進め方について、大臣は改めてどのように考えていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。

高村国務大臣 お尋ねの追悼式でありますが、日韓両政府間で協議した結果、何よりも御遺族の心情を踏まえて静ひつな環境で実施するために、御遺族と政府関係者のみが参加する形で実施することで一致した経緯があるわけであります。その後、追悼式前日の一月二十一日になって、韓国側より突然、市民団体も参列できるようにしてほしいとの要望が在韓国日本大使館経由で寄せられ、我が方として対応ぶりを検討しましたが、直前に対応を変更することは混乱を招きかねないと判断をして、対応は変更しないこととしたい旨韓国側に伝達し、韓国側の理解も得られたものと考えております。

 そういうことでありますが、いずれにしても、祐天寺にはいまだ一千体以上の朝鮮半島出身旧軍人軍属の御遺骨が残されており、政府としては、これらの御遺骨についてもできるだけ早く遺族にお返しできるよう、引き続き日韓両国政府間で協力して全力で取り組む考えでございます。

 また、今後の式典の取り進め方については、韓国側と引き続き調整を行い、適切に対応していく考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 私も、確認ということで申し上げますと、一月の二十一日、韓国政府側は、在韓の日本大使館の関係者にそういう旨を伝えたという話を聞いております。さすがにそれでは遅いわなというふうに思います。ただ、私が申し上げましたように、その間どういうことがあったかとただすつもりはありません。ただすつもりはないというか、それは水かけ論になるだろうという意味でありますけれども、その前に言ったとか言わないとかと言う関係者がいるんですね。

 ただ、そのことよりも、今後、一月の二十一日にはそういう要請があった、そして大臣も、韓国側の政府あるいは関係者の気持ちを大事にして次に向けて進んでいきたいということであります。そうすると、早いうちにきちっとそういう、政府側から公式にこういうふうにやりたいと。例えば、これは祐天寺で随分と身元の不明な遺骨があるということで、市民の関係の方あるいは近くの方が随分と手を合わせたり、関心を持ってこられたということなんですね。

 そういう意味では、韓国政府側から要請があれば、そういう方の参列あるいはマスコミの取材、やはりこれはいいことですから、戦後のことをきちっと清算をして未来に向けていくという意味では、やはり多くの人々が共有していくべきだと思うんですね。そうでありますならば、早いことそういうことがあれば、きちっと対応していただけるということでよろしいでしょうか。

高村国務大臣 静ひつな環境でやりたいという要請と、そして、希望する方へできるだけ参加してもらった方がいいという要請と、いろいろあると思います。それで、そういう中で、韓国側と調整をしていきたいと考えております。

近藤(昭)委員 さまざまな条件を調整しながらということで、それは必要だと思います。そういう意味で、調整、いろいろなバランスは必要だと思いますけれども、ぜひ韓国側の政府あるいは人々の気持ちを大事にしていただければと思います。

 そういう中で、式典では、木村副大臣であったと思いますが、追悼の辞を述べられまして、韓国国民に対し、植民地支配により多大な損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちをということで述べられております。韓国から遺族をお招きして、政府がおわびの言葉を述べた、非常に意義あることだと思います。

 ただ、李明博新大統領、先ほどちょっと就任式に私も参ったという話をしました。李明博大統領は日韓関係、未来志向でいく、そういうことでいうと、歴史認識等々については言わないということはおっしゃっています。一方で、日本政府は大人の対応をするでしょう、こういうことを言っておられる。つまり、先ほど申し上げたように、お互いが言い合うんではなくて、やはりやるべきことはそれぞれがやる、日本政府もきちっと対応してくれるだろう、それは言わずもがな、こういう意味だと思うんですね。

 そういう意味では、木村副大臣、今申し上げたように、出席をしていただいて追悼の辞を述べられたわけでありますが、私は、やはりここは高村大臣、お忙しいとは思いますけれども、高村大臣が御出席いただく、あるいは総理が御出席いただく、高村大臣あるいは総理が出席いただけない場合は、少なくともと言うと大変失礼かもしれませんが、高村大臣名で追悼の辞をどなたかが代読されるような形、少なくともそういう形であるべきだったのではないか。それこそ相手に気持ちが伝わるということではないでしょうか。いかがでしょうか。

高村国務大臣 いろいろな考え方があると思いますが、副大臣というのは認証官でもありますし、極めて高いレベルの方であるわけで、私は副大臣が出席するというのは相当のことだと思います。もちろん私が出席しちゃいけないということではなくて、私は公務との関係で出席できなかったということもありますけれども、かわりに副大臣が出席するということは相当のことだと思っております。

 国会でも副大臣をもっと活用して、私が外国に行けるようにしていただければ大変ありがたいことだと思っています。

近藤(昭)委員 副大臣が何も低いと申し上げているわけではないんです。ただ、歴史的な、本当に戦後六十年、だれもがそういう気持ちになると思うんですが、関連の報道もされておりました。自分の父親が日本へ行った、そして帰ってこなくて、どこで死んだかもわからなかった、そして突然、政府から、そういう遺骨が日本の祐天寺にあって返還をされるということであった、非常にショックを受けたということであります。そして、それがやっと戦後六十数年たって返還される。

 私は、未来志向ということでいうと、本当に重要な第一回の式典だったと思うんです。そういう意味では、やはり先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、大臣が行かれなくても、大臣名で追悼の辞はあるべきだった、私はそうだったと思うんです。

 そうしますと、今後第二回、これからも韓国政府側とも協議をしながら進めていくというお話がありましたが、これからは、どうでしょうか、物理的に時間が合えば出席をされる、こういうことでよろしいでしょうか。

高村国務大臣 委員の御意見も踏まえて検討してみたい、こう思っています。

近藤(昭)委員 私の意見というか、私は、やはりきちっと日本国政府として、もちろん政府の重要なポストにあられる副大臣でありますけれども、やはり外務省あるいは国を代表する外務大臣、いわゆる外交面を代表する大臣御自身、あるいは総理がぜひ御出席をいただきたいというふうに思うわけであります。

 それと、あのときにも確認をさせていただいたことでありますけれども、さまざまな軍人軍属、これは大分進んできたようなところでありますが、民間徴用者の方がなかなか進んでおりません。民間で、韓国側で第三次の強制動員被害者の被害申告の受け付けも始まったわけでありますけれども、民間の徴用者の認定がなかなか進んでいない、これについて日本側のいろいろな資料を出していただきたい。これも大臣の前向きな返答を十二月の委員会でいただきました。

 さらに、この民間徴用者ということでいうと、全国の自治体に随分と戸籍受付帳、ここに朝鮮半島から民間徴用された人たちの資料がかなりある、こういうふうに聞いておりますが、こういったものを具体的に出していくということをぜひもう一度確認させていただきたいんですが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 この旧民間徴用者等の御遺骨に関しましては、現在、千九百九体の御遺骨の所在に関する情報を得ております。これを基礎としまして、これまで十回の日韓共同調査を含む三十一回の実地調査も行っております。

 これまで得られた情報につきましては韓国側に伝達し、韓国側がこれらの情報に基づき御遺族の特定を行っております。

 今後、韓国側より、御遺族を特定するに当たり、追加的な資料の提示を求められれば、関係省庁とも協議して対応していきたいと思っております。

 いずれにしましても、外務省としましては、可能な限り迅速に御遺骨を返還できるよう関係省庁と連携しつつ、また韓国側と協議しつつ、最大限努力してまいりたいと思っております。

近藤(昭)委員 韓国側からそういう要請があればぜひ積極的に、特に戸籍受付帳が非常に有効だというふうに思います、戸籍受付帳の提出も含めてお願いをしたいと思います。

 最後に、余り時間がありませんけれども、冒頭申し上げました台湾の総統選挙、私も行ってまいりました。先ほど、野田委員の質問に対して、台湾の選挙に対して日本政府としてコメントはなかなか難しいというお話がありました。

 ただ、私自身の思いは、台湾というところ、台湾の問題、行ってみて、非常にそれぞれの人たちが悩んでいる。それぞれの人たちが悩んでいると簡単に私が言うようなことではないと思いますが、しかしながら、やはりいい意味でも時代が進んでいく。でも、その中で薄れていくものがある。私もいろいろなところへ行って台湾の若い人なんかとも意見交換をしたんですが、台湾でかつてあった二・二八事件を知らない、こういう若い世代の人たちが出てきているということ。歴史というのは、やはり未来に行くためには過去にきちっと目を向けていかなくちゃいけない。何でもニュートラルで、未来だ未来だということでもなかなか難しい部分がある。そういう意味で、若い人たちが二・二八事件を知らないということを台湾の人たちが嘆いている。

 私は大変にまだまだ浅い知識の中でいうと、もともと国とかなんとかが関係ない先住民族の人たちがいた、その後に来たいわゆる本省人という人たちがいる、そして、外省人という人たちがいる。でも、みんなそこで生きているわけであります。それぞれの人たちが悩んで生きている。そういう中で政権交代とかがあると思うんですね。そういう意味でいうと、私はやはりそういった人たちが悩みながら、自分たちの住んでいる地域をよくしていこう、そういう中で選挙もやってきたと思っているんです。

 そういう意味で、この台湾総統選挙をどういうふうにとらえられて、日本としてどういうふうに交流をしていこうと思われているのか。外交的な孤立というふうによく台湾のことが言われたり、私は非常に危惧したのが、SARSがありました。SARSが、やはり台湾が国際的な組織に所属していないということで、なかなか情報が行かなかった。そういう現実の問題として、そこで暮らす人々がいるということでいうとどういうふうに対応されていかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

高村国務大臣 民主的な選挙の結果として新しい政権ができたわけでありますから、そのことをそのように受けとめて、そして日本国政府とすれば、非政府間の実務的関係ということでやっていきたいと思います。

 それから、SARSの問題、触れられましたけれども、こういう問題については何らかの形で情報共有ができるようにしなければいけないということは、それはそのとおりだと思います。

近藤(昭)委員 時間が参りましたので、きょうはこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 沖縄では、米兵による女性暴行事件を初めとした凶悪犯罪が後を絶ちません。去る二十三日には怒りの県民大会が開かれて、米軍犯罪をなくすには米軍基地の縮小、撤去の問題を避けて通れないという声も高まっております。

 こういう中で、横須賀でタクシー運転手の高橋正昭さんが刺殺されるという事件が起こりました。米兵が関与した可能性は否定できないというのが警察の見方だと言われております。横須賀では、二〇〇六年の一月、空母キティーホークの乗組員が市内で女性にひどい暴行を加えて殺害した事件があった。まさにあったばかりで、記憶に新しいところであります。住民に大きな不安が広がっております。

 そこで、警察庁に伺いますが、今回の事件で、米海軍が脱走の疑いで身柄を確保している米兵からの事情聴取が可能か米海軍に打診したということでありますが、実際に事情聴取を要請したのでしょうか。いかがですか。

小野政府参考人 ただいまの件につきまして、米軍側は、神奈川県警察の捜査に全面的に協力する意向を示していると承知しております。それも踏まえまして、現在、神奈川県警察におきまして、横須賀署に捜査本部を設置し、事件の解明に全力を挙げているところでございます。

 具体的に、事情聴取につきましてどうかという点につきましては、県警の具体的な捜査方針に関することでございますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 今ありましたけれども、米海軍の側からは捜査に協力するということを言っているというので、なぜ要請しないのかということなんですが、それもやはり捜査に関することだから言えないということですか。

小野政府参考人 現在、事件の解明のために努力を続けている途中でございますので、その内容については、申しわけございませんが、コメントを差し控えさせていただきます。

笠井委員 神奈川県警横須賀署は、二十五日までに当該米兵の唾液などの提供を受けたということでありますが、捜査を進める中で、当該米兵から速やかに事情聴取をして事件への関与のあるなしをただすべきだ。本来、これは公務外のことですから、日米地位協定上も、第一次裁判権のある日本側がきちっとやれる問題だと思います。私はこのことを、速やかに事情聴取すべきだということを強く求めておきたいと思います。

 そこで、そもそも脱走米兵が出たことを米側が日本に知らせていなかったということは重大だと思うんです。三週間もの間、基地に戻らずに、脱走した疑いで米軍が捜索していたような米兵を、犯罪防止の上でも日本側に知らせるのは筋だというふうに思います。

 そこで高村大臣、大臣は一昨日の参議院の予算委員会で、そしてまたけさも御答弁ありましたが、米軍人が行方不明になった場合、情報共有のあり方、その範囲も含めて米側及び関係省庁で検討したいということで述べられて、総理も一昨日、問題意識を持って米側及び関係省庁で検討させていきたいと答弁されました。具体的にはどうやって情報を共有するのか、いつまでに検討されるのか、お答えいただきたいと思います。

高村国務大臣 米軍人が行方不明となった場合の情報共有のあり方については、情報共有の範囲等を含め米側及び関係省庁で検討したいと考えていますが、具体的な内容としては、米側から日本側の当局に何らかの連絡が行われるといった手続を考えていきたいと思います。

 他方で、行方がわからなくなるといっても、事故だとか脱走だとか無許可欠勤などさまざまなものがあり得るわけでありまして、どのような範囲で情報共有を行うことが適切かといった点について、米側及び関係省庁とよく相談していきたいと考えております。

 具体的な成果が得られる時期については、現時点ではっきりと申し上げられないわけでありますが、遅いよりは早い方がいいと考えております。

笠井委員 早くやるのは当然だと思うんですが、関係省庁というのはどこになりますか。それから、米側とはすぐ協議に入るのか。どのレベルでやるということになるんでしょうか。

西宮政府参考人 既に、米側から横須賀市への説明に際しましても、そうした必要があるといったことが示唆されておりまして、米側においても基本的にそういう頭で考えておるということでございますので、我々も米側にそういう問題意識というのを伝えておりますので、早急に開始できるのではないかと期待をしているところでございます。

 ただ、関係省庁につきましては、基本的には警察庁、法務省はもちろんだと思いますけれども、具体的にどこまでということについてはもう少し検討が必要だと思います。

笠井委員 米側とはどの場でやるということになるんですか、これをちょっと教えてもらいたいんですが。

西宮政府参考人 場はいろいろな場があると思います。私も、先ほどちょっと申し上げたかと思いますけれども、予備的には米海軍の関係者と話したことがございますし、どういう場を設定するのかというのは、合同委員会の仕組みとかいろいろ、関係者がどういう関係者であるかということを踏まえて決まっていくものではないかと存じます。

笠井委員 大臣も早い方がいいと。悠長な話ではないと思うんです。しかも大臣、先ほど、けさの答弁の中で実態は把握していないということも言われましたけれども、脱走米兵の事件というのは今回が初めてじゃありませんよね。

 それで、警察庁に伺いますけれども、これまでに脱走米兵による犯罪というのは一体何件あったのでしょうか。

小野政府参考人 脱走米兵につきましての犯罪という形で、私ども、十分に統計的に把握をしていないという段階でございまして、十分には承知できておりません。

 ただ、最近、この事件もありましてちょっと調べてみましたところ、例えば十七年から、脱走米兵ということで警察の方に逮捕要請が米軍の方からなされましたものに関しましては、九件あるということを承知しております。

笠井委員 統計をとっていないということで、これはちょっと非常におかしな話だと思うんですね。

 そこで、私、伺いますが、資料に配付させていただきました。警察庁に「脱走米兵の取扱いについて」という通達があります。これは昭和四十三年、お手元にありますが、一九六八年七月十一日に発出されたものでありまして、これは何も私たちが独自に内部文書をどこかから見つけてきたというんじゃなくて、警察庁のホームページに現在も有効な警察庁の訓令、通達としてちゃんと掲載されているものであります。

 これに基づいて、米側から逮捕要請があって逮捕したのが何件何名か、要請があったが依然行方不明は何件何名かというのは、通達を出しているわけですから、これはわかるはずじゃないんですか。

小野政府参考人 まことに恐縮でございます。先ほども答弁させていただきましたように、この件数について、ずっと掌握しているという状況ではございませんので、私どもといたしましては、先ほど申し上げたような最近の数字について把握しているという段階でございます。

笠井委員 この通達を見ますと、さらに、日本の警察として、逮捕要請の有無が不明またはそれが行われていない脱走米兵に関する情報を入手し、米側に照会するというのがありますが、これは何件何名というのも言えないんですか。

小野政府参考人 ただいまそういう数字を把握しておりません。

笠井委員 私、これは非常におかしいと思うんですよ。こういう通達がある中で、つかめていない、把握していないという御答弁しか返ってこない。

 これは通達をごらんいただきたいと思うんですが、この第二項のところには、「合衆国軍隊の現地憲兵司令官から書面により脱走米兵の逮捕要請が行なわれた場合には、それを受理した都道府県警察の本部長は、別添様式によりその脱走米兵の立廻りが予想される地の本部長あて手配を行なうとともに、当庁」、つまり警察庁本庁、「および関係する管区警察局あて報告すること。」と書いてあります。第三項では、照会する方についても、やはり、「当庁および管区警察局あて報告すること。」というふうになっているわけですね。

 ですから、当然これは文書報告ということになりますよね。それをされているはずなんですけれども、されていないんですか。しかも、これは文書報告で何か様式がちゃんとあるんでしょうか、通達があるんですけれども。

小野政府参考人 過去の報告につきましては、これは保存期間が一年未満というものでございますものですから、現時点で集計することは、まことに申しわけございませんが、十分にできない可能性があると思っております。

笠井委員 現時点でと、最近起こったから慌てて調べたという話も先ほどありましたけれども、昭和四十三年からこういうことで通達を出してやってきたので、保存期間とかという以前に、時々に、それがどういうことになってきたかということをきちっと集約して検討する、対策も考えていかなかったら、これはやはり責任を果たせないと思うんですよ。これは保存期間とかという問題じゃないですよね、委員長。こういう問題になると思うんです。警察庁の本庁あてに文書報告というのがされてきたということであれば、これはつかめるはずなわけであります。

 しかも、私、いろいろ新聞報道なども調べましたが、平成十七年以降九件ということを言われましたが、それ以前を見ても、私が見ただけでも、幾つもこういう脱走米兵にかかわる事件があります。

 例えば、一九九二年には横須賀基地の脱走米兵が大阪で窃盗事件を起こしている。それから、九七年には東京の港区で強盗事件。それから、その後、同じ月に、同じ脱走米兵が杉並区でタクシー強盗をやっている。これは、空母インディペンデンスから脱走してきて、米軍当局が、刑事特別法に基づいて身柄拘束を日本の当局に求めていた人物であることがわかったわけです。その後、二〇〇一年にも、公務執行妨害などで沖縄市で捕まった米兵がおります。

 それから、二〇〇二年にも、キャンプ・キンザーで、これは沖縄の浦添市で発生した事件でありますけれども、傷害事件で捕まえてみたら、脱走してからもう七年たっていた、バイトなどで生活していたという脱走米兵が、結局、捕まえてみたらそういう人物が犯罪を犯していた、こういうことになっているわけであります。

 これは、通達を出しておきながら、統計がない、そして捕まえていない、実態はわかりません、文書は保存期間が一年ですということでは済まないと思うんです。これは情報共有以前の問題だと思うんですが、なぜ警察庁は、みずから定めた通達、内規どおりにきちっと仕事をして、それを結果として示すようなことでやってこなかったんですか。

小野政府参考人 私どもといたしましては、先ほど申し上げたような状態で今ございますので、どの程度把握できるかということについて、今後の検討次第でございますけれども、過去のものについての把握についても検討させていただきたいというふうに思います。

笠井委員 高村大臣、現状がどうなっているか、これまでにどういうことがあったかということを正確に把握する、どういう性格でこの脱走米兵が事件を起こしたなら起こした、あるいはこうなったということについて正確につかまずに、これは有効な対応ができないということも大きな問題としてあると私は思うんです。

 それで、この通達が出された昭和四十三年というのは、調べてみますと、ベトナム戦争が激化した時期でありまして、当時、脱走米兵の証言によって、数回ほど十数人のいわゆる反戦脱走米兵がソ連経由で密出国したという事件があって、そういう中でこういう通達が出たという時期であります。

 当時は、むしろ米側から強い協力要請があって、とにかく密出国なんかして反戦米兵が出ていくのはけしからぬという話でできたもので、アメリカ側の都合で、つまりアメリカ側が必要と判断して、言われたら、そういうことは通達も出して一生懸命やるけれども、何か状況がたってきたら、結局は、この間市民への安全が脅かされることが再三あっても、率直に言って不熱心で、ちゃんとそういうことも報告を求めて集約して問題点も明らかにしてこなかったというのが日本政府の対応の中であったんじゃないか。こういうことがあったとしたら、やはりこれは怠慢のそしりは免れないと思うんです。

 ですから、大臣としても、関係省庁で検討するとおっしゃったので、やはり大前提として、私はきょう警察庁の対応問題を申し上げましたけれども、警察庁に対して、検討すると言われましたが、これまでの脱走米兵による事件の実態の把握、そして報告を外務大臣としてもぜひ要請すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 いずれにしても、関係省庁で情報を共有し、アメリカからも情報をまず得る、そういう仕組みをつくっていきたい、こういうふうに思っております。

笠井委員 ぜひ警察庁に対して、これまでどうだったの、あるもの出してよということで、きちっとそれは実態をつかんで、アメリカ側ともやる必要はありますし、そこはやるということで、それは要請ぐらいはしないといけないんじゃないかと思うんです。これだけ事件が起こって、それがやはり関与が言われているわけですから、そこはちょっと踏み込んでおっしゃっていただかないとと思いますが、いかがですか。

高村国務大臣 外務省の仕事は、アメリカ側との折衝をするというのが外務省の仕事なんです。むしろ国内の治安に責任を持つのは、必ずしも直接責任を持つのは外務省ではないわけでありますが、そういう責任を持っている官庁と協力をして、アメリカ側から情報を得る仕組みをつくるべく、外務省としてもこれから一生懸命やる、こういうことを申し上げているわけです。

笠井委員 米側と折衝をする上でも、脱走米兵が実際日本でどんなことを起こしてきたのか、事件があったのか、大臣、知っていただかないと、つかんでいかないと、これは結果どうなったか、これまでつかめていないですけれども、アメリカ側としてこれを考えてくださいと言っても、なかなか話が進みません。

高村国務大臣 関係省庁と協力してやる以上、それは当然、関係省庁とも情報を共有し、そしてアメリカと折衝をし、アメリカ側から情報をもらえた場合には、またその情報を関係省庁で共有する、こういうことでございます。

笠井委員 きちっとやっていただきたいと思います。

 時間になりましたが、今、イラク戦争が長期化して、再び脱走米兵の割合が急増していると、アメリカ軍の実態を聞いております。今回は殺人事件への関与のあるかないかが問題になっておりますが、政府はやはり、基地周辺住民や日本国民の安全を守る立場から、速やかに米側からの情報提供を求めるべきだし、これは当然ですけれども、そもそも日本政府が、こういう問題で、国民、市民の安全を守る立場から毅然とした態度を米側にとるかどうか、これは根本姿勢が問われているということを強く強調して、質問を終わりたいと思います。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 私も脱走米兵問題について尋ねたいと思いますが、先ほどの笠井委員の質問と重複しないようにしたいと思っています。

 去る三月十九日午後九時二十分ごろ、神奈川県横須賀市の路上でタクシー運転手高橋正昭さんが何者かによって殺害されるという凶悪事件が発生しました。犯行現場近くには米海軍横須賀基地があり、脱走米兵による事件ではないかという強い疑いが生じております。犯行態様は極めて残忍であり、一刻も早い犯人逮捕と真相究明が求められております。

 そこで最初に、現段階の捜査状況について警察庁に尋ねます。

小野政府参考人 お尋ねの事案は、本年三月十九日夜間、神奈川県横須賀市においてタクシー運転手の男性六十一歳が刃物様のもので頸部を刺され殺害された事案でございます。

 本事案につきましては、認知した神奈川県警察におきまして横須賀警察署に捜査本部を設置し、事案の全容解明に向けた捜査を推進しているところでございます。

 現段階におきましては、まだ被疑者を特定するには至っていないという報告を受けております。

照屋委員 殺害された高橋運転手の車内から米海軍所属脱走兵のクレジットカードが発見されたと報道されております。そうであれば、犯人特定と結びつく重要な遺留品であると思われますが、車内からの指紋採取など初動捜査は十分であったのか、警察庁、お答えください。

小野政府参考人 捜査の具体的な内容についてはちょっと申し上げるのは避けさせていただきますが、本事案を認知いたしました神奈川県警察におきまして直ちに緊急配備を発令いたしますとともに、現場付近で聞き込み等の実施をしております。

 また、今御指摘のありました点につきましてですが、タクシーの内外に対する鑑識活動を行うなど、初動捜査としては十分行っているというふうに理解しております。

照屋委員 先ほどの笠井委員とのやりとりで脱走米兵からの事情聴取の話はわかりましたが、逆に、日本側の警察で押収したクレジットカードあるいは採取した指紋などの情報提供要請が米側から日本側の警察にありましたか。

小野政府参考人 ちょっと完全に詳細を掌握できておりませんけれども、米軍側とは緊密な連携のもとに、この事件について神奈川県警察で捜査をしているというふうに聞いておりますし、米軍側も全面的に協力するという意向が出ているというふうに承知しております。

照屋委員 私が尋ねているのは、米側から、日本の警察が押収したクレジットカードあるいは採取した指紋の情報提供、そういうのがあったかと聞いているのであって、緊密な連絡体制をとっているのならば、そんな大事な基本的なことをあったかなかったかわからぬというんじゃ、大いに疑問ですよ。

小野政府参考人 大変失礼いたしました。

 私ども、先ほど申し上げましたように、緊密な連携のもとにこの事件捜査をしておりまして、必要な情報については米軍側にも照会をし、米軍側から情報をいただいているという状況でございます。

照屋委員 先ほど質問のやりとりの中で、過去、在日米軍から脱走兵として日本の警察に逮捕要請が九件あった、たしかこういう答えでしたが、そのうち、在沖米軍、これは何件でしょうか。

小野政府参考人 沖縄所属の者と思われますものにつきましては、五名ほどいたというふうに理解しております。

照屋委員 九件のうち、やはり膨大な基地がある沖縄が過半数を超えている、こういう実態が初めてわかりました。

 高村大臣にお伺いしますが、脱走兵であるかどうかというのは、ひとえに合衆国統一軍法典の八十五条や八十六条に基づくアメリカ側の認定でしょう。それは日本政府が関与できるものじゃないと私も思いますが、この脱走米兵が我が国において殺人などの犯罪を惹起した場合、米国と我が国の裁判権の競合が発生すると思われます。その場合、日米地位協定上どのように処理されるのでしょうか。

高村国務大臣 日米地位協定第一条(a)は、「「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」と規定しております。

 米軍当局が米国の統一軍法典に従って特定の米軍人に関して脱走兵としての認定を行うことをもって当該軍人は直ちに米軍に服役中という地位を失うわけではなくて、脱走兵の認定を受けたことのみをもって日米地位協定の適用対象外となることはないわけであります。

 このため、当該軍人が我が国の法令違反を犯した場合には、米軍人として、刑事裁判管轄権に関連するものも含め、日米地位協定の関連規定が適用されることになります。なりますが、当該米軍人が公務外で殺人を行ったような場合には、もちろん、我が国が第一次裁判権を有する事案として、我が国の法と証拠に基づき処理されることになります。

照屋委員 アメリカが軍法典に基づいて脱走兵もしくは無断外泊者という認定をした場合には、それらの者が惹起した犯罪はすべて公務外、そういう認定になるんでしょうか。

西宮政府参考人 お尋ねの点でございますが、基本的にはそういうことではなかろうかと思いますけれども、やはり個別のケースをよく精査して考える必要があると思います。

照屋委員 そうなるのではなかろうかというのは、優秀なあなたの答弁としてはとても了解できませんが。

 要するに、脱走米兵、無断外泊者、これは、逮捕されるまでの間は公務中なのかあるいは公務外なのか、これは非常に重要な問題だと思いますよ。もう一度お答えください。

高村国務大臣 無断外泊している場合、脱走している場合、一般的に言えば公務外だと思います。

 ただ、特殊な事情というのは、ちょっと、いろいろな場合、すべて具体的に調べないで、無断外泊しているからすべて公務外と言えるかどうかというのは、私は現時点で言い切れないんですが、一般的には公務外だと思います。

照屋委員 大臣、くどいようですけれども、大臣が、脱走米兵などについての情報を共有したいと、我が国の国民の安全を確保する意味でそれは積極的に評価をしたいと私は思います。

 ただ、一方で、合衆国の統一軍法典では、脱走兵あるいは無断外泊、この認定というのは、当該米兵が原隊復帰をする意思があるかどうか、そういう主観的なものにかかわらしめておるんですね、どうやら構成要件としては。だから大臣、原則として公務外とおっしゃったけれども、そこら辺は、私は、政府部内で外務省を中心に慎重な議論が必要ではないかと思います。

 それでは法務省にお伺いしますが、一般論で結構です。一般的に、米軍人が、米側のみが裁判権を有する罪を犯し、さらに日本側が第一次裁判権を持つ罪を犯した場合において、米側にのみ裁判権のある罪で当該米軍人を軍事裁判にかけたことによって日本側が第一次裁判権を持つ罪についての公訴時効は停止されるのかどうか、お答えください。

三浦政府参考人 あくまでも一般論として申し上げますが、公訴時効につきましては、刑事訴訟法でその停止事由が定められているところでございまして、その事由がある場合に、その公訴時効の進行が停止するということでございます。

 お尋ねの、米側が日米地位協定によって認められた裁判権に基づきまして軍事裁判を開くということにつきましては、刑事訴訟法の定める公訴時効の停止事由とはされていないところでございます。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官猪俣弘司君、北米局長西宮伸一君、警察庁長官官房審議官小野正博君、財務省理財局次長藤岡博君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、経理装備局長長岡憲宗君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)委員 昨日、理事の方から、この長い名前の協定について質疑を三十分してもいいよという機会をいただきまして、大変貴重な機会なので喜んでお受けしたわけでございますけれども、名前も長いし、内容が、なかなかどこから取りかかっていいのかわからない難しい内容に思いまして、私は、まず入り口の部分で、略称というのを見ましたら、在日米軍駐留経費負担特別協定、どうもこの特別というところに意味がありそうだなという気が一ついたしました。

 またもう一つ、新聞記事をずっと探していましたら、いまだにこの部分の経費については思いやり予算という言葉を使っているわけでございます。この思いやり予算というのは、由来はどこから来たのだろうかと思いましたら、私は山梨から出ている代議士なんですけれども、山梨の代議士に関係があるんだなということに気がつきました。思いやり予算とは、昭和五十三年に金丸信防衛庁長官が、アメリカから要求されるのではなく、信頼性を高めるということであれば、思いやりというものがあってもいいのではないかと答弁したことが始まりだということを知りました。

 地元ですから、金丸先生の、金丸裁定とか金丸語録とかというのは、しばしば地元では残っています。私は年代が違うので、幸か不幸か、直接お言葉を交わさせていただくことはなかったわけでございますけれども、金丸先生の残された言葉というのは、大変意味が深長であって、人の心を、細部じゃなくて全体としてつかむような言葉をよく残されているような気がいたします。ただ、今度、逆に細部を詰めていくと、どこまでを言っているのか、何を言っているのか、また理解しがたい言葉を残されているのも事実でございまして、この思いやり予算なんというネーミングも、まさにそういう感じがいたしました。

 そういうことで、高村大臣、小野寺副大臣、胸をかりさせていただく思いで、きょう、ちょっとのどを痛めているので声は張り上げられませんが、中身でしっかりと質疑をさせていただきたいと思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 最初に、この在日米軍駐留経費負担の意義及び今回日米で合意に至った本特別協定に対する評価についてどのように考えておられるか、大臣にお伺いいたします。

高村国務大臣 在日米軍駐留経費負担は、アジア太平洋地域において依然として不安定で不確実な状況が存在している中で、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしているわけでございます。

 現行特別協定は本年三月末で効力が終了するため、政府としては、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するとの観点から、新たな特別協定について、できる限り速やかに国会で御審議いただき、締結についての御承認をお願いしたいと考えているところでございます。

小野(次)委員 次に、協定に基づく経費負担の経緯と負担の内容について伺いたいわけですが、日本政府が在日米軍の駐留に必要な経費を負担している中に、地位協定上、我が国が当然義務として負っております土地の借料、周辺対策費のほかに、地位協定上、我が国が負担することが可能だということで、提供施設整備だとか労務費の一部だとかあるわけです。さらに、この特別協定で我が国が負担しているというものについて、どういう経緯で、どういう負担の内容を負っているのか、お伺いしたいと思います。

高村国務大臣 我が国は、従来から、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくことは極めて重要との観点から、在日米軍駐留経費負担について努力を払ってきたところでございます。このような努力の一環として、昭和六十二年以降、我が国は、日米地位協定二十四条において米側に負担義務がある経費の一部について、日米両国を取り巻く諸情勢に留意して、在日米軍の効果的な活動を確保するため、日米地位協定の特則を定める特別協定を締結した上で負担してきました。

 具体的に申し上げますと、最初の特別協定から現行の特別協定までの五つの特別協定における経費負担の変遷を申し上げます。

 昭和六十二年六月から約四年間の特別協定では、調整手当等の八項目の労務費につき日本側が負担する内容の協定を締結し、翌年、昭和六十三年には、この協定のもとで日本が負担を増大する内容の改正を行いました。

 平成三年四月から約五年間の特別協定では、今申し上げた八項目に加えて、基本給等四十四項目に係る労務費及び新たに光熱費につき日本側が負担する内容の協定を締結いたしました。

 平成八年四月から五年間の特別協定では、労務費については二万三千五十五人との上限労務者数を設定し、光熱費についても、電気、ガス等それぞれにつき具体的な上限調達量を設定するとともに、新たに訓練移転費につき日本側が負担する内容の協定を締結しました。

 平成十三年四月から五年間の特別協定では、労務費については二万三千五十五人の上限労務者数を維持する一方で、光熱費については、施設・区域外の米軍住宅分は負担しないこととした上で、さらに上限調達量を一〇%削減する内容の協定を締結しました。訓練移転費については、それまでの枠組みを維持いたしました。

 平成十八年四月から二年間の特別協定では、労務費及び光熱費の日本側負担の上限を維持し、また訓練移転費の枠組みも維持する内容の協定を締結したところでございます。

小野(次)委員 伺うところでは、大ざっぱに言えば、最初の一回目を別にすれば、九一年、平成三年以来、五年、五年、五年と来て、前回、つまり今、現行の特別協定は、二年間の暫定延長と当時の新聞記事には出ていますけれども、五年にしようと思ったけれども二年になったというふうに書いてあるわけですね。

 そうだとすると、今度こそまた五年にするのが普通じゃないかなと思うんですが、今度の、今対象になっていますのがまた三年となった。その経緯を教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 政府といたしましては、従来から、日米両国を取り巻くその時々の諸情勢を踏まえ、期間を五年間に限定した暫定的な性格の特別協定を締結してきました。

 現行特別協定については、かかる諸情勢と、平成十七年十月二十九日の2プラス2、日米安全保障協議委員会の共同発表に盛り込まれた在日米軍再編の勧告に関する今後の検討、実施の進展の見通しも十分踏まえる必要があったところ、その時点では在日米軍再編の進展の結果を見きわめることが困難であったとの特殊な事情を踏まえて、従来のような五年ではなく、さらに暫定的な二年間の協定とすることで日米間で基本的に意見の一致を見たわけであります。

 そして、今回は、平成十八年五月一日の2プラス2で発表された在日米軍再編に関する最終報告、ロードマップにある個別の再編計画の詳細が依然として日米間で協議中であり、現時点でもなお在日米軍再編の最終的な経費の全体像が見えていないこと、在日米軍の駐留をより安定的なものとすることが望ましいこと、今回の交渉の結果、今後在日米軍駐留経費負担の包括的見直しを行うこととなったこと、二年の期間である現行特別協定と合わせると従来の五年となること等の諸点を総合的に勘案して、協定の期間を三年とした、こういうことでございます。

小野(次)委員 米国防総省の二〇〇二年の資料によれば、米軍が駐留する国々のうちで我が国は、税金の免除等を含めて、負担割合、負担額とも世界一となっています。我が国の負担割合は約七五%で、韓国の四〇%やドイツの三三%などと比べても群を抜いている。また、負担実額についても、ドイツの十六億ドル、韓国の約八億ドルと比べても、その合算した額のさらに倍に近い四十四億ドル近くになっている。このため、国際水準から見ても我が国は駐留経費を負担し過ぎじゃないかという批判も国内にはあるわけでございます。

 もちろん、駐留する国々それぞれの安全保障環境は違うわけで、単純に比較はできないわけでございますけれども、突出しているという点はぬぐえない事実でございますが、負担割合、負担額とも突出している要因について、政府はどのように分析しておられるか、見解を伺いたいと思います。

高村国務大臣 一般論として申し上げれば、各国が負担している米軍駐留経費は、当該各国を取り巻く安全保障環境等の種々の要因を総合的に勘案して負担されているものであり、この経費の単純な比較及び評価は困難である、こう考えております。

 アジア太平洋地域には、冷戦終了後も、地域紛争、大量破壊兵器やミサイルの拡散等、依然として不安定で不確実な状況が存在しております。このような状況の中で、日米安保条約を引き続き堅持し、米軍の抑止力のもとで日本の安全を確保することが必要であります。高い機動性を有する在日米軍の抑止力は、我が国及び地域の平和と安定にとって不可欠な役割を果たしていると認識をしております。

 このような文脈の中で、在日米軍駐留経費負担は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用のため重要な役割を果たしていると考えております。

 政府としては、厳しい財政事情にも十分配慮しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のため、在日米軍駐留経費につき、今後とも適切に対応していく考えでございます。

小野(次)委員 一般論としては大臣のお答えのようになるのかもしれませんが、当然、予算ですから、予算の費目というのか、何々手当とか何々費用とかというものが積み上げの根拠になるんだと思うんですが、政府参考人で結構ですので、日本の場合に、他国の例と異なって特に日本側が負担するというふうになっている経費にはどのようなものがあるのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国以外の国における米軍の駐留経費負担に関しまして、我が国として詳細を承知しておるわけではございません。したがって、我が国が負担している費用で他の米国の同盟国が負担していない費用について、確実にお答えすることは困難です。

 その上で申し上げますと、米国防省の作成している報告書に基づいて申し上げますと、訓練移転費、我が方で言う訓練移転費については、他国で同様の費用を負担している例は見当たりません。他方、各国が負担している米軍駐留経費は、各国を取り巻く安全保障環境等さまざまな要因を総合的に勘案して負担されているものであり、その単純な比較及び評価は困難であることをぜひ御理解賜りたいと思います。

小野(次)委員 局長、はっきりわかるのは訓練移転費だけだというお答えですか。もう一度確認したいと思います。

西宮政府参考人 この種の情報が載っております最新版の二〇〇二年版の米国防省の報告書によりますと、これは数値は二〇〇〇年の数値で恐縮でございますが、労務費につきましては、我が国のほか、韓国、クウェートなどが負担しておるということ、また光熱水料等について、我が国のほか、ギリシャ、ノルウェー、サウジアラビアなどが負担している旨の記載がございます。

 ただし、二〇〇三年版、二〇〇四年版の、この二〇〇四年版が最新版なんでございますが、国防省の報告書には、この種の各国ごとの負担項目の詳細は記載されておらないことでございます。

小野(次)委員 私も役所に長くいたから、答弁のつくり方の要領というのは知らないわけではありませんけれども、しかし、話のつじつまが合わないですよね。だって、ドイツとどこかの国の合わせた額のさらに倍になる、四十四億ドルになる、どこでその差が出ているんですかということが聞きたい趣旨だということは明確なはずなのに、訓練移転費自体はそんなに大きな金額じゃないわけですから、小をもって大をどうやって説明するんだという、何かもうちょっと誠意のある説明をいただけないかと思うんですけれども。

西宮政府参考人 繰り返しにわたる部分はあるかと思いますが、我が国以外の国におけます米軍の駐留経費負担に関しましては、詳細を申し上げる立場にはございません。

 各国が負担しておる米軍駐留経費は、それぞれの国を取り巻く安全保障環境など種々の要因を総合的に勘案して負担されているということであり、国によって経費の範囲をどのようにとらえるか違いがあることなど、単純な比較及び評価は困難であろうと存じます。

小野(次)委員 ほかの委員からも質問が出るかもしれないので、ちょっとこの辺に私はとどめておきます。

 次に、在日米軍の兵員数というのは、概数で結構なんですけれども、現在どれぐらいになっているのか。私の聞きたい趣旨は、それが減少傾向にあると言えるんじゃないかということなんですが、政府参考人にお伺いしたいと思います。

西宮政府参考人 我が国に駐留する米国軍人数は、短期間に変動いたしますし、算定の方法も種々あるわけでございますけれども、米国防省の統計資料によりますれば、二〇〇七年九月末現在で我が国に駐留していた米国軍人の総数は、三万二千八百三人でございます。二〇〇三年の同時期の四万五百十九人に比べて減少していると理解しております。

小野(次)委員 我が国が人件費のほとんどを負担する状況のもとで、在日米軍の兵員数が、今も政府参考人からお話があったとおり、減少傾向にあると思われるわけです。にもかかわらず、駐留軍労働者の数は逆に増加傾向にある。

 今、国内の方を見れば、国、地方、独立行政法人等、公務員の人件費を含めた厳しい合理化、効率化が行われている中で、国民の税金によって賄われているこの駐留軍労働者の人件費について、労働者数とか負担のあり方について見直しを行うべきだという指摘も現実にあるわけですけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

高村国務大臣 新たな特別協定について、政府としては、厳しい財政事情の中で、この経費負担についても節約合理化の必要があり、経費の効率性について国民の支持を得る必要があることを踏まえ、米側との交渉を行ってきました。

 その結果、過去の協定の単純延長ではなく、実際に一定の削減を達成することができ、大した額ではありませんが、一定の削減を達成することができ、また、新たな特別協定の有効期間中、在日米軍駐留経費負担をより効率的で効果的なものとするために包括的見直しを行うことでも一致しており、その意味では、政府として適切な対応をとったと考えております。

 御指摘の労務費についても、日米間の負担のバランスという総体的な観点から日本側の負担規模を定めたものでございます。

小野(次)委員 二〇〇四年だったと思いますけれども、米軍再編に対して日本政府がどういうふうに対処していくかということを関係大臣で話し合った際に、日本側の対応の方針というのは、米軍による抑止力の維持ということと並んで、基地負担の軽減というのがあったと思うんです。もともと、基地負担の軽減というときに沖縄などとついていましたけれども、いや、基地負担というのは全国どこの基地の周辺でもあるんだということがあって、基地負担の軽減と抑止力の維持というのが二本の柱にされたと理解しています。

 その基地負担の軽減、負担というのは何かというと、一つは航空機事故など安全面の不安ということだと思います。二つ目には、最近もありましたけれども、いろいろな事件が起きるという意味で、周辺に住んでおられる方たちを中心として、人権問題あるいは治安問題というような事件面のことだと思います。三番目には、やはり財政負担の問題だと思うんです。そういった抑止力の維持というのは、それは大変大きな看板ではありますけれども、同時に、我々の、国民意識の中にはこの基地負担の軽減というのも当然常にあるわけであります。

 今大臣からお答えいただきましたけれども、全体のバランスの中でとおっしゃいますけれども、これは新聞から得た話ですから違うんだったら違うと言っていただければいいですけれども、我が方の税金で払っている基地従業員の中に、バーテンダーだとかクラブマネジャーだとか、ボウリングというから、僕は掘る方のボーリングかと思ったら転がす方のボウリングの修理の職員だとか、自販機のサービサーだとか、そういう方まで含まれている。これは日本の自衛隊の場合だってそんな人たちはいないと思うんですが、こういうものも含めてバランスを考えた結果受け入れたということなんでしょうか。もう一度、どなたか政府参考人で結構ですけれども、お答えいただきたいと思います。

西宮政府参考人 日米地位協定に従いまして、我が国は、米軍で仕事をする日本人労働者の方、また、御指摘の職種も含みますいわゆる十五条機関に勤める日本人の方に対する米側の労働需要を満たすという義務を負っておりまして、これに従って所要の支援をしている、労務費の負担をしているということでございます。

 ゴルフ場、ボウリング場と御指摘ございましたけれども、こうした職種というものは米軍の士気を高め、福利厚生を維持するということでございまして、日本に限らず米国内、また世界に展開する米軍のさまざまな施設に同様の施設というものが見られるものでございまして、そういった米軍の所要の労働需要というのを満たすという考え方でございます。

 こういったことがひいては我が国における米軍の安定駐留、効率的、効果的な安保運用にもつながっていくものと認識しております。

小野(次)委員 そういうふうになるんですかね、ちょっとわかりませんが。

 次の問いに移りますけれども、二〇〇六年の今の特別協定を交渉する際にも、我が方政府側は、この負担、予算に切り込む、ダイエットできるところはするんだという意気込みだったと私は理解しています。このとき私は公務員の立場で、若干近いところで見ておりましたけれども、そういう意気込みだったと思います。

 ところが、そのときも、最初の報道では「光熱水料 全廃要求へ」と、これは平成十七年四月六日の報道ですけれども言っていたのが、結局二年間の暫定でというふうに、大した変更はないということで終わってしまったんですね。今度、去年の、二年後の、つまり今かかっている議案であるこの協定のときも、思いやり予算、政府百億円の削減提案、こう出ているんだけれども、最後になると、アメリカに配慮、微減で妥協というふうに終わっちゃっているんですね。

 協定更改のたびに、切り込む意気込みでいくんだけれども、どうも結果はいつも、何かほとんど変わらない状態で終わっているというのが二度繰り返されているような気がするんですが、今回の交渉の際に日米間で、我が方の思いというのは米側にちゃんと伝えて交渉されたんでしょうか。

西宮政府参考人 在日米軍駐留経費負担に係ります新たな特別協定に関する協議におきまして、米側は、これまでの日本側による在日米軍駐留経費負担の経費の支援につき高く評価しつつも、現在の安全保障環境において在日米軍の所要が高まっていること、また、米国側でも国防予算が急増して財政事情も厳しいことなどの事情につき我が国に理解を求めてきた次第であります。

 もちろん、同時に我が国の厳しい財政事情にも配慮を示し、在日米軍駐留経費に係る日本側の負担の現状維持ということを非常に強く期待いたしました。いろいろな議論の中では、非公式ながらも、むしろ日本側の負担を増額するということを要求するといった場面もあったわけでございます。

 これに対しまして、政府といたしましては、在日米軍駐留経費負担が日米安保体制の円滑かつ効果的な運用にとり重要な役割を果たしているということ、及び厳しい財政事情の中で同経費負担についても節約合理化の必要がある、経費の効率性について国民の支持を得る必要があるということを踏まえて、負担の減額を求めて米側と鋭意交渉を行った次第でございます。

 日米の閣僚レベルを含めまして、双方間でさまざまな協議を重ね、またぎりぎりの交渉を行った結果、昨年十二月、現行特別協定の上限労働者数については据え置きをし、訓練移転費についても、現行の負担の枠組みを維持しつつも、光熱費につきましては日本側の負担を一定限度削減するということ、米側がこれらの経費の一層の節約に努めることで日米間の意見の一致を見ました。

 日米双方が置かれている状況のもとで、政府としては最大限適切な対応を行ったものと考えております。

小野(次)委員 最初に触れましたとおり、これは思いやり予算と通称言われていますけれども、普通、我々、思いやりであれ感謝の気持ちであれ、何かお礼なんかを持っていくと、相手と信頼関係があれば、いや、そんなものは受け取れませんというのが普通ですよね。それで最後に、いや、そうは言わず、私の気持ちですから受け取ってくださいと言うと、相手は、ありがたくお気持ちだけは受け取りますというのが普通だと思うんですが、今の政府参考人の話を聞くと、全然思いやりだと向こうは思っていないんじゃないかという気がするんですよね、原点に戻って。お気持ちだけじゃなくてもっとくださいみたいな話をしていると平気で言われると、全然思いやりでもないじゃないかという気がするんです。

 特に、本協定第四条に「アメリカ合衆国は、前三条に規定する経費の節約に一層努める。」と、この「一層」という二文字が加わったわけでございます。しかし一方で、この協定にくっついています交換公文の方で金額が、実額が結構もう二百四十九億円とか提示されているわけですから、実際、「一層努める。」となっているのはどういう効果が期待されるのか。米側が、節約の効果として、私たちが知っている金額よりも安く上がるということも期待できるということなのか、そこをちょっとお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 新たな特別協定における節約努力の規定は、厳しい財政事情のもとで、在日米軍駐留経費負担についても節約合理化の必要があり、経費の効率性について国民の支持を得る必要があるとの我が方の強い主張を踏まえ、協定本文に盛り込まれたものであります。

 第四条は、米側に対して、節約のため直ちに特別の具体的措置を実施することまでも義務づけたものではなくて、また、必ずしも直ちに日本側の経費負担の削減につながるものではありません。その意味では、第四条は新たな特別協定の有効期間中、米国として一層の節約実現に向けて努力していくとの意図を一般的に表明したものであります。

 同時に、新たな特別協定の有効期間中には、より効率的で効果的な在日米軍駐留経費負担とするために包括的な見直しをすることとなっているところ、政府としては、こうした場等を利用して、米側の節約努力につき積極的に米側と協議していきたいと考えております。

 労務費とか光熱費とかあるいは訓練移転費、労務費、光熱費は日本側だけが持っているわけじゃなくて、その上に米側が持っているものがあるわけで、節約努力をしたってその部分が減るだけじゃないかということは言えないわけではないわけでありますが、いずれにしても、全体的に日米両国国民の税金でされているものをじゃぶじゃぶ使っている、そういうのは決していいことじゃありませんから、節約努力をしてもらうというのは、それはそれで一定の意味があると考えております。

小野(次)委員 時間がもうなくなってまいりました。先ほど申し上げたとおり、この問題も、抑止力の維持と並んで基地負担の軽減ということがやはり大きな問題として根底にあるように思います。

 基地負担の軽減という意味でいうと、最近もありました脱走米兵の問題なんかも、不安を与えるという意味ではやはり関係があると思うんですが、二十四日に外務大臣は予算委員会で、脱走した米軍人についての情報が日本側で知ることが必ずしもできていないという現状に対して、改善の方向を考えたいというような趣旨のことをおっしゃったように思います。

 ぜひ、その検討の際には、私、この件が起きて改めてこの刑事特別法というのを読み直してみますと、十八条が関係するんだと思うんですが、検察官、司法警察員は、合衆国軍隊から日本の法令による罪以外の刑事事件で合衆国軍隊の構成員の逮捕要請を受けたときには、これを逮捕し云々となっているんですね、この十八条。

 これだけでは十分じゃない、それ以外の、行方不明についての米軍の情報を日本当局が知るべきだということで改善のことをお考えになるということだと思いますが、この十八条自体が、裁判官の令状なしに捕まえられるという条文があるというのは私は非常に驚いたので、ぜひこの点も検討の一端に加えていただければと思います。

 この法律は、恐らく終戦後、独立回復のときにもとの根っこの法律ができたんだと思いますが、今の日本の法体系で裁判官の令状なしに逮捕できるなどという条文があるというのは、極めておもしろいな、奇異だなと思っていますので、ぜひその点も御検討いただければと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、この協定の内容に入る前に、これも関係してまいりますけれども、まず、今の在日米軍の再編の問題あるいは今の在日米軍基地にかかわる問題などについて、何点かちょっと質問させていただきたいというふうに思います。

 私は地元は神奈川県なんですけれども、神奈川県としては、厚木基地、住宅密集地に隣接しておりますこの厚木基地でのNLPなどの空母艦載機の飛行による騒音というのは、もうこれは本当に長い間にわたる重大な問題となっております。このたび、日米間で移駐について合意をされたということは、これは地元では大変歓迎をしているところでございます。一方で、移駐先の岩国市におきましては、新たに誕生いたしました福田市長が、これは大英断で受け入れを決断されたわけでございます。

 さまざまな難しい点もあったということは十分承知をしておりますが、こうした市長の姿勢にやはりちゃんと国としてもこたえていくためにも、岩国市に対して、再編交付金の交付を初めとする支援を可能な限り実施していただきたいというふうに考えておりますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 去る三月十二日に岩国市長と山口県知事が防衛大臣を訪問されまして、岩国市長から、空母艦載機の岩国飛行場への移駐等に対しまして、基本的に理解し協力すべきものと認識しているとの表明がございました。今後、市民の方々の安心、安全対策については、市議会での議論も踏まえて取りまとめ、国と協議していきたいとの発言とともに、市庁舎補助金や再編交付金についての要望があったところでございます。

 これを踏まえまして、岩国市から御要望がありました市庁舎補助金及び再編交付金につきましては、防衛省として、関係機関との協議等の手続を行ってきたところ、必要な手続を了したことから、先般二十一日に、岩国市に対しまして、平成十九年度の岩国市庁舎補助金の交付に係る内定を通知するとともに、再編関連特定周辺市町村の指定を行ったところでございます。

 また、安心、安全対策につきましては、今後、岩国市において取りまとめられる具体的な内容をお伺いした上で、誠実に協議してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

上田委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。もちろん、それで今の移駐が円滑に進むことも大いに期待しているところでございます。

 今、防衛省から御答弁いただきましたけれども、高村大臣も、御地元のことでもございますので、またいろいろな面でのバックアップをしていただければというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次に、これも今、地元の横浜市にもまだ多数の米軍基地が存在をいたしております。その中で、上瀬谷通信施設あるいは根岸住宅地区など、横浜市内にあります六施設につきまして、平成十六年に返還で合意がなされました。今、さまざまな具体的な交渉や作業が行われているところでありますけれども、そうした米側との交渉や、またいろいろな諸手続等の進捗状況について、現状とそれから今後の予定というんでしょうか、それをお伺いしたいというふうに思います。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 上瀬谷通信所などの横浜市域六施設・区域の返還につきましては、平成十六年に、神奈川県におきます在日米軍施設・区域の整理等として、池子住宅地区及び海軍補助施設の横浜市域における七百戸程度の米軍家族住宅等の整備とともに、日米合同委員会において合意されたところでございます。

 これら六施設・区域のうち、小柴貯油所につきましては、平成十七年十二月にその陸地部分全域等が返還されたところでありますが、残る五施設・区域につきましても、池子住宅地区及び海軍補助施設の横浜市域におきます米軍家族住宅等の整備事業を進めつつ、早期返還を米側に要請しているところでございます。

上田委員 今、交渉あるいはその作業が円滑に進んでいるということはよく理解をいたしました。いずれも非常に密集した市街地の中にある施設がほとんどでございますので、ぜひこれは、早期に、さらに促進をしていただくことをお願い申し上げたいというふうに思います。

 そして、その過程の中でやはり幾つか問題がございます。例えば、返還される土地の中に国有地、これが六カ所の合計で二百ヘクタール以上ございます。そうした国有地を自治体が公園、緑地などに利用する場合には、これは国が、財務省の定められているルールにのっとって、三分の二については無償で貸し付けを行う、一方で、三分の一については時価で売却すると。

 一定の軽減措置ではあるんですが、例えば、上瀬谷通信施設などにおいては国有地が百十ヘクタールもあります。深谷でも七十七ヘクタール、根岸では二十七ヘクタールと非常に膨大な土地なわけでありますし、しかも、周りは全部もう住宅が込み入っているようなところですから、地価も相当な評価になることは間違いがないわけで、このルールでは、地方自治体にとりまして非常に過大な負担になるのではないかということが危惧をされるわけでございます。

 一定の負担の軽減措置ではあるんですが、これはやはり、これまで基地を提供し貢献してきた、そしてまた一方では都市の開発についていろいろな支障もあったということを考えれば、国として一層の軽減措置を講ずるべきではないかというふうに思いますけれども、御検討いただけないでしょうか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地方公共団体に対する返還財産の処分に当たりましては、昭和五十四年の理財局通達によりまして、返還財産をめぐる経緯等を考慮いたしまして、物納財産等の一般の国有財産を処分する場合よりも有利な条件としてきたところでございます。

 特に、国の厳しい財政事情にかんがみまして、平成十八年一月の財政制度等審議会の答申に沿いまして、国有財産の処分に係る地方公共団体等向けの優遇措置を縮小し、公園、緑地等に利用する場合についても全面積時価売り払いとした際におきましても、返還財産につきましてはその見直しの対象外と位置づけ、従来からの優遇措置を維持したところでございます。

 このように、大変厳しい財政事情でございますけれども、返還財産につきましては相当の配慮を行っているところでございまして、そうした中で、返還財産の処分条件につきましてさらなる緩和をすることは困難であるということを御理解賜ればと考えておるところでございます。

上田委員 困難であるということでございましたけれども、ただ、やはり都市化がずっと進んでいく中で、そこに基地があった、それによって自治体としても都市計画に随分支障を来してきたわけでありますし、また周辺の住民の人たちもさまざまな支障があったわけであります。

 そういう意味では、一般の財産とはもう全然違うわけでありますので、一定の軽減措置がとられているということではありますけれども、これまで長年にわたってずっと協力をしてきた地域に対して、地元に対しては、やはり国がもっと責任を持って取り組んでいただきたいというふうに、これは引き続き私の方から御要望させていただきたいというふうに思っております。

 一方で、その返還される土地の中には民有地も結構あるんですね。この民有地の土地所有者は、長年にわたって土地が自由に使えない、利用が制限をされてきたわけであります。返還後は、今度は自由に使えるということにはなるんですが、ただ一方では、これまで受け取ってきました地代収入とかがなくなってしまうわけでありますし、では有効利用するといってもなかなか、それはもう広大な土地でありますので、容易ではないのが現状であります。これまでも、周辺の開発がどんどん進む中で、そういう意味では利用が制限をされてきたわけでありまして、その結果、そういう所有者にとっては、経済的な損失も相当こうむってきているのではないかというふうに思います。

 これまで多大な犠牲を払って協力をいただいてきましたそういった土地所有者の事情も十分考慮して、国として、これは自治体とも当然協力をしていただかなければいけないんだというふうに思いますが、いろいろな形での支援をぜひ行ってもらいたいというふうに思いますが、そのお考えを伺いたいというふうに思います。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 返還の方針が合意されました六施設のうち、上瀬谷通信施設、根岸住宅地区、小柴貯油施設、池子住宅地区及び海軍補助施設の飛び地部分につきましては、それぞれ民有地が所在しているところでございます。

 他方、横浜市におかれましては、返還施設跡地利用構想検討委員会の提言等を踏まえまして、六施設に係る米軍施設返還跡地利用行動計画を策定しているものと承知しております。

 かかる民有地の返還に当たりましては、賃貸借契約に基づく原状回復措置を適切に講じることはもとよりでございますけれども、その跡地利用につきましては、横浜市の米軍施設返還跡地利用行動計画を具体的に踏まえながら、関係機関に同市、横浜市さんの要望をお伝えするなど、当省としてできる限りの措置を講じていきたいというふうに考えている次第でございます。

上田委員 今、可能な限りの協力をしていくという御答弁でございました。今、もちろん地元の横浜市も、土地所有者やまた地域の人たちといろいろと協議をしながら計画を立てているわけでありますけれども、やはりここは防衛省がイニシアチブをとっていただいて、返還がスムーズに進むように、ぜひさらなる御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、きょうは何回かもう既にこの問題は取り上げられておりますけれども、先日横須賀で発生をいたしましたタクシー運転手の殺傷事件について、脱走した米兵が関与していた可能性があると。報道によれば、そうした脱走した事実を事件発生まで日本側としては把握していなかったということでありますが、これは事実とすれば大変遺憾なことでありますし、また、日米で早い段階で協力をして捜索していれば事件を未然に防ぐことができたかもしれないということもあります。

 昨日、大臣、きょうも御答弁いただいておりますけれども、こうした点について改善をして情報を共有していくというお話でございました。そういう方針を明らかにしているわけでありますけれども、具体的に今後どのような内容の協議を行っていくのか、また、どういうような改善をお考えなのか、御所見を伺いたいというふうに思います。

小野寺副大臣 累次御質問ございましたが、このような脱走が生じた場合に、現在の状況では、直ちに我が国の関係当局に連絡がなされてきたというわけではありません。今般の事情を踏まえまして、米国軍人が行方不明になった場合、情報共有のあり方については、情報共有の範囲などを含めて米側及び関係省庁で連絡、検討していきたいというふうに思っております。

上田委員 わかりました。具体的にはこれからだということであるというふうに思いますので、なるべくこういうことが話題に上ったときには、やはり迅速に、そして的確に対応していただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、今回のこの協定の内容について、何点か御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、この協定で我が国が人件費を負担することとなっております労働者の問題についてであります。

 我が国国内の米軍基地で働く労働者は約二万五千人と、極めて多数に上っております。しかも、いろいろと資料を見させていただきますと、米軍が駐留をしている他の国々、韓国やドイツ等でありますけれども、それと比べて、米軍人の人数に対する労働者の割合が二倍近くという人数に上っているという事実が指摘をされております。

 こうした人件費というのは当然国民の税金で賄われているわけでありますので、必要最小限の人数にとどめるというのが当然のことだろうというふうに思います。もちろん、米軍がそれ以上必要なんだということで雇用するのは自由かもしれませんが、それは我が国として負担すべきものではなくて、米側が負担するものなんだろう。我が国はやはり、その機能を維持するために必要最小限の人数は我が方として協力をするというのが自然な形なのではないかというふうに思います。

 そこで、我が国が負担をする必要人員を定めるに当たっては、どういうようなプロセスを経て査定を行っているのか、また、我が国としてはそうした人数を決める検討の中でどういうような形で関与をしているのか、御説明いただけたらと思います。

西宮政府参考人 駐留軍など労働者の雇用につきましては、地位協定第十二条四におきまして、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」というふうに規定されております。これを受けまして、日米で締結した労務提供契約に基づきまして、使用者である在日米軍が必要とする労務の需要に応じて日本国政府が駐留軍等労働者を雇用し、その労働者を米側に提供することにより、労働者の権利保護及び米側労務需要の充足の両立を図っているところでございます。

 お尋ねの点でございますけれども、したがいまして、そもそも、駐留軍等労働者の必要人数につきましては一義的に米側が判断しておるわけでございます。

上田委員 今、一義的に米側が判断をしているというお話だったんですが、ということは、不足しているのか余っているのか、それも日本としてはわからない、そういう認識なんですか。これはやはり、税金で賄っている以上、必要なものでなければ負担すべきではないというのがごく自然のことだと思うんですが、それも、適切なのかどうかも判断する基準すらない、そういう理解でよろしいんですか。

高村国務大臣 今の答弁は誤解があったかもしれないので、ちょっと申し上げますと、労務者の全体の数はアメリカ側が必要と判断してやっているわけですが、その全部を日本が持っているわけではないわけであります。そのうちの上限価格ということについては日米で話し合って決めている、こういうことでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣から御答弁あったように、労務者全部が日本側の負担の対象とはなっていない。もちろん全体は、これはアメリカ側が必要性に応じて必要な人間を雇用するということなんだというふうに思います。ですから、今回の協定の中で我が国が負担をするという人件費、それに該当する人員については、我が国としても、アメリカ側と協議をする中で、それは必要なものである、これは日本の予算として負担をするのに適切なものであるというふうに判断をしてこの数字が決められているというふうに理解をしておりますけれども、今、財政状況も非常に厳しい中であります。公務員もずっと削減をしている中でありますし、まして民間の雇用情勢というのはもっと厳しいのが現状であります。

 そういう意味では、何かアメリカが言っているからこれだけ要るんだよというようなことではなくて、必要な人数は、我が国としてもちゃんとそれを見た上で、検討した上でちゃんと決めているんだということをぜひはっきりさせていただきたいというふうにお願いをいたします。

 それで、労働者の中には、これは国籍要件がございませんので、相当数の外国籍の方もいると承知をいたしております。これはちょっと地元の基地周辺の方からこういう質問があったんですけれども、その中には正規の滞在資格を持たないで違法な就労者がいるのではないかという疑問がございました。事実関係はどうなっているのか、また、それがちゃんと合法的な、正規な就労であるということはどのような方法をもって確認をしているのか、お伺いをいたします。

地引政府参考人 お答えします。

 外国籍の従業員につきましては、雇い入れに当たりまして、まず、外国人登録証明書の写しの提出を求めて就労可能であることを確認しております。また、雇い入れ後におきましても、外国人登録証明書の記載内容に変更があった場合には改めてその写しを提出させることとしているほか、在留期限の到来が近づけば、本人に対して注意喚起を行うことによりまして、違法な就労とならないように努めているところでございます。

上田委員 今ちょっと地元で基地周辺の方からそういう疑念もありましたので、ぜひ、それはちゃんと適正に行われているということをまず確認を徹底していただきたいというふうに思います。

 それで、先ほどもちょっと質問で出ておりましたけれども、今回の協定の第四条に、米側が経費の節約に一層努めると定められております。これは当然のことだというふうに思うんですが、しかし、かけ声というかスローガンだけにとどまるのではなくて、やはり具体的にどういう節約努力を行っていくのかということが重要なんだろうというふうに思います。我が国として必要な経費を負担するというのは協定の中で当然のことなんだというふうに思いますが、やはり、これは国民の税金でありますので、できるだけ効率的に使っていかなければいけないし、必要なものに限定をして使っていくというのが当然のことだというふうに思います。

 経費の節約について、具体的な措置としてどのようなものを実施していくお考えなのか。また、これは米側がやることなのかもしれませんが、どういう考えでその辺を話し合われているのか。また、我が国としても、これは日本の国民の税金が使われているわけでありますので、そうした措置について、努力について、レビューしていくということが当然必要なんだろうというふうに思いますけれども、その辺はどういうふうに対応されるのか、お考えを伺いたいというふうに思います。

高村国務大臣 新たな特別協定における節約努力の規定は、厳しい財政事情の中で、在日米軍駐留経費負担についても節約合理化の必要があり、経費の効率性について国民の支持を得る必要があるとの我が方の主張を踏まえて、協定本文に盛り込まれたものであります。

 他方で、第四条は、米側に対して節約のために直ちに特定の具体的措置を実施することまでも義務づけたものではありません。また、必ずしも直ちに日本側の経費負担の削減につながるものでもないわけであります。その意味で、第四条は、新たな特別協定の有効期間中、米側として一層の節約実現に向けて努力していくとの意図を一般的に表明したものであります。

 同時に、新たな特別協定の有効期間中には、より効率的で効果的な在日米軍駐留経費負担とするために包括的な見直しを行うことになっているところ、政府としては、こういう場等を利用して、米側の節約努力につき積極的に米側と協議していきたいと考えているところであります。

 具体的にと言われて、余り具体的でないことを申し上げて申しわけありません。

上田委員 どうもありがとうございます。

 当然、これは米側が行うことであるので、なかなか個別具体的なところまで立ち入れないというのはよくわかりますけれども、やはりこれは日米双方で不断の努力をしていくということが重要なんじゃないかというふうに思います。

 今、例えば、どこの役所に行っても、電気を節約しようとか、そういうふうなポスターが張ってあったり、市役所に行ったら、何か昼間は電気を消すとか、そういう努力もしております。ぜひ、そういう目に見える形で、お互いに苦しい財政の中で節約努力しているんだということが見えてくることがやはり重要なので、いろいろなそういう方法も、これを強要するのではないにしても、いろいろな御提案はこちらからできることが多いんじゃないかというふうに思いますので、ぜひこれからまた御努力をいただきたいというふうに思います。

 多分、これから日米でいろいろな場面で協議をする場があるというふうに思うんですが、そのときにも、やはりしつこいぐらいに確認をしていただければというふうに思いますけれども、最後にその辺、いかがでございますでしょうか。

西宮政府参考人 既にさまざまな場で、日米間で節約努力の措置につきまして意見交換をいたし、また、どのような節約努力をしたのか、具体例というのを聴取してまいっておりますが、お尋ねの光熱費のあたりで申し上げれば、米側といたしましても、例えば、白熱灯による電灯システムを蛍光灯にかえるであるとか、暖房、換気あるいは空調施設をより効率性の高いシステムにかえるであるとか、あるいは自動販売機なんかで、付近に人がいないときは電気が落ちるといったような自販機を導入するとか、そういった一定の措置は導入してきているというふうに承知しております。

 今後も、引き続きまして、包括的見直しの場などで米側と話していきたいと思います。

上田委員 よろしくお願いいたします。

 日米安保体制は我が国の安全にとり非常に重要なことでありますし、現実に我が国が基地を提供し、また費用を負担することによってそれが実効あるものになっている、そういう意味では、今回の特別協定は必要なものであるし、重要なものだというふうには認識をいたしております。

 ただ、先ほどからほかの委員からもお話がありましたけれども、我が国も財政が非常に厳しいわけでありますので、ぜひ、その中でできるだけ目的を達成しつつ効率的な予算の執行ができるように、さらにまた関係各省で御努力をいただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 特別協定についての質疑を行わせていただきたいと思います。

 まず外務大臣に伺いたいんですが、この特別協定、ちょうどこれから審議が、きょうから質疑が始まったんですけれども、前協定の期限が今月末で切れるということで、政府は、新たな特別協定を日米間で合意し、署名をし、国会に承認を求められたというふうに理解をいたします。ただ、三月三十一日という期限ということも報じられているわけなんですけれども、月末までにこの協定が国会で承認されない場合というのはどんな影響があるのか、お答えをいただければと思います。

高村国務大臣 新たな特別協定は、本年三月末で効力が終了する現行特別協定終了後の措置を規定するものでございます。ですから、仮に新たな特別協定が本年四月一日に効力を生じない場合には、我が国現行特別協定のもとで負担している労務費、光熱費、訓練移転費に係る経費を我が国が負担するための法的な根拠が失われることになります。

 政府としては、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するとの観点から、このような事態が生じることはぜひとも回避すべきと考えており、そのために新たな特別協定の締結についての速やかな承認をお願いしている次第でございます。

武正委員 いや、私が伺ったのは、そうすると、国会承認が三月三十一日を超えた場合の不都合ということについてはどのように理解をされているのか。

 では、具体的にお伺いをいたしますが、資料の二ページをごらんいただきたいんです。

 過去五年間の特別協定に係る在日米軍駐留経費負担の支払い日等を見ていただきたいと思うんですが、光熱水料、四月の十八日、八日、七日、二十八日、十日ということがございますが、聞き及ぶところ、この十八日と二十八日は米側で立てかえをしているというような話も伺っておりますし、また、労務費については、いずれも五月の九日から十二日ということで、これは米側の給与の支払いの形態が四月分を五月の十日に支払うというようなことで行われているということも聞き及んでおりますので、きょうからの質疑が始まったわけですけれども、こうした支払いの状況からかんがみて、ここで国会での承認というものが年度をまたぐということの何か不都合というものがあるのか、それを伺っているんですけれども、いかがですか。

高村国務大臣 過去に特別協定が予定どおり発効しなかった例はないわけでありまして、具体的にいかなる支障が生ずるかをすべて予測することは困難であるわけであります。

 他方、新たな特別協定は、四月一日に発効する必要があることを前提に日米間で合意したものであります。米側は、新たな特別協定が遅滞なく発効し、日本側が労務費、光熱費等を負担することを当然の前提としています。よって、新たな特別協定の発効がおくれるほど、米国の日本政府に対する信頼が損なわれることになります。

 よくわからないんですが、仄聞したところによると、米側は一部訓練移転の予定を先に延ばしているとかいう話も、これは確定的な情報じゃありませんが、ちょっと仄聞したこともあります。

 あるいは、米国の日本政府に対する信頼が損なわれる、そのことと同時に、私たちは日米安保条約の効果というのは抑止力だと思うんですね、抑止力。どこかの国が日本を攻撃しようと思ったときに、それは世界最強の軍隊であるアメリカ軍と戦わなければいけないという決意がないと日本に攻撃できない、そういう抑止力が一番大きいんですが、一片の条約があっても、何か日米関係は余りうまくいっていないらしいぞ、特別協定もちゃんと年度内にできていないぞ、何かがたがたしているよ、本当にいざというときアメリカの若者が血を流して戦うだろうかというようなことをもし第三国が思うことになったら、抑止力は減殺されることになるんですね。

 ですから、今委員がおっしゃった、今までの例、四月何日に払っている、これならそれまでに上げりゃいいんじゃないかというほど簡単なものでない。日米関係が堅固であるということを世界に発信する、そのことが一番大切だ。そういうことを両国で政府がまとめても、国会でずれ込んでできないぞということになると、これは抑止力の点で決していいことではない、私はそう思っています。

武正委員 日米安保条約そのものが、やはり極東条項の範囲をめぐってもその拡大ということが指摘をされておりますし、在日米軍の果たす役割が、今言った日米同盟下での日本の防衛というものをさらにはるかに超える役割を担っている、こういう指摘が当然あるわけでございます。

 そういった中で、例えばこれは一ページ目をごらんいただきたいと思うんですが、在日米軍駐留関連経費の予算額の推移ということで見ますと、大変小さな字で恐縮ですけれども、この上の表の在日米軍駐留関連経費総計ということで見ますと、平成十九年度で、これは地代などの提供国有財産借り上げ試算も含めますと、約六千億円の提供が毎年されている。これは衆議院の調査室作成資料でありますが、これだけやはり日本政府は在日駐留米軍に対しての資金的な貢献をしているということは、今言われた大臣の御懸念を払拭するに余りあるものではないのかなと。

 先ほども、既に与党議員からも、やはり他の駐留各国に比べてのその人数の多さ、あるいはその負担割合、こういったことはもうるる指摘をされてありますので、こうしたことは、今の点は御懸念にすぎないというふうに思うわけであります。

 やはりこの場は国会でありますので、我々国会議員とすれば、やはり税の適正な執行をただしていくということが至上命題の一つでありますので、この日米安全保障条約に基づいた地位協定、そしてそれに基づいた特別協定、いわゆる思いやり予算特別協定でありますが、やはりその肥大化が目に余るのではないかという観点から、十分な質疑を行っていきたいというふうに考えておりますので、先ほど示したこの過去の支払い状況から見ると、私はここで質疑をしっかりと行っていくことがやはり国会としての役割を果たすことになりますし、特に政府におかれましては、外務省、防衛省には、資料の要求、あるいは資料提供、あるいは情報開示、これをやはり徹底して行っていただきたいというふうに、まず冒頭お願いをしたいというふうに思います。

 そこで、先ほど光熱水料の立てかえのことをちょっと触れたんですけれども、これは防衛省になりましょうか。立てかえは、平成十五年度、十八年度、二カ年ということでよろしいのかどうかと、十五年以前はどうだったのか、立てかえの実績があるのか。これは既に外務委員会の理事懇談会でも求めておりますので、お答えをいただきたいというふうに思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 詳しい数字の方のことは今ないんですけれども、立てかえたという実績はございます。

武正委員 では、外務省はお答えいただけますか。外務委員会の理事懇談会で、外務省出席のもとでこれは何度か伺っていまして、そのときの説明では平成十五年度と十八年度は立てかえたと。十五年度以前はどうですかということで、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 済みません、大変申しわけございませんけれども、十五年以前の資料というのは今手元にございませんけれども、十五年から十九年までの間においては、平成十五年と平成十八年の二カ年でございます。

武正委員 これは外務委員会の理事懇談会で求めて、この表を出していただいたのは防衛省だと思うんですね。その説明を受けたときに、十五年以前はどうですかと聞いて、そのとき、わかりません、調べますということだったので、きょうまたこうして質疑が始まって、このことを聞いても今もってわからないというのは大変遺憾でありますが、これは防衛省としてそういうことでよろしいんでしょうか。

 先ほどお願いしたように、日米の信頼関係をしっかりと守る、その中でのやはり質疑の充実ということを行っていきたい。それについては、この特別協定のお金の執行状況、それはやはり国会としてつぶさに精査をしたいんだということで臨んでいるわけなんですが、防衛省、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今委員の御指摘のとおり、資料等をきちんと準備していないということでは大変申しわけなく思っているところでございます。

 理事会でそのような形が行われていたということを私自身聞いていなかったものですから、委員の御質問に対して準備ができていなかったということをおわび申し上げたいと思います。

武正委員 そうすると、いつ出てくるんでしょうか。このときは防衛省がこの資料を持ってきて説明したと、外務委員会の理事懇談会、記憶をしておりますけれども。そのときに聞いたんですね。いかがですか。

 もしかして、十五年以前に立てかえをやったかどうかもわからないんじゃないんですか。この間ちょっと聞いたら、いや、五年間しか資料はありませんとか、そんなような答えだったと思います。それこそ委員長が、そんなことないだろうというようなことを、これは外務省も言ってくれたんですかね、あのときは。いかがですか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 私自身、今の段階で委員に確たることを御答弁することは難しいわけでございまして、役所の方に戻りましてからしっかりと精査させていただきまして、できるだけ速やかにお答えできるような対応をとらせていただきたいと思います。

平沢委員長 副大臣、今調べたら、これは事実関係だからすぐわかると思いますので、ちょっと指示して、すぐ調べてください。

 速記をちょっととめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記をスタートして。

 江渡副大臣。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 大変申しわけございませんけれども、証拠書類等の保存期間が五年間だということですので、その前のものはわからないということでございます。

武正委員 もう既に、守屋前事務次官の案件以来、防衛省には、民主党の外務防衛部門会議で何度となく資料要求をしていますと、もう五年の期限が切れたから資料がありません、わかりません、こういう答えが続いております。

 五年前、これはもう本当に、日米関係ですから調べればわかるだろうということも、既に外務委員会の理事懇談会で委員長からも指摘があったわけなので、今のような答えでは、ちょっと私も質問できません。

平沢委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記を始めてください。

 では、江渡副大臣。

江渡副大臣 済みません、お答えさせていただきたいと思います。

 今の資料、あるかどうかはわからないんですけれども、しっかりと確認させていただきたいと思います。それから委員の方にお答えをさせていただきたいと思います。

武正委員 もうこれは質疑が始まっているわけなんですよ。この間もそういう答えだったんですね。五年前のものは書類の保存義務がありませんから答えられませんと。また今それをいみじくも言って、今訂正はされましたけれども、きょうから質疑に入ることは、準備の中で政府の方も当然想定しているわけですから、ここでお答えいただかないということですと、私は質問できないんです。速やかにお答えをいただきたいと思います。

平沢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記をまたスタートしてください。

 江渡副大臣。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員の御不満というのは非常によくわかるわけでございますけれども、できるだけ速やかに確認させていただきたいと思います。

平沢委員長 速記をちょっととめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記を再開してください。

 後刻、この質疑中に返事が来るということですので、武正君、質問を再開してください。

 江渡君。

江渡副大臣 済みません。お答えさせていただきたいと思います。

 資料等につきましては、もう五年経過しているということで、ないわけですけれども、あったかどうかというのを担当者等々に鋭意、今確認の作業をしているところでございます。

 ただ、当時の担当者の特定もきちんとさせなきゃいけないということですので、委員の質問の間中にお答えが出せるかどうかは難しいところもあるかもしれませんけれども、今鋭意努力させていただいている最中でございます。

武正委員 これはこの後もちょっと質問の中で取り上げるんですが、やはり説明責任が政府として十分果たせていないのではないかというふうに言わざるを得ないんですね。ですから、国会の質疑はもとより、やはり十分な情報を開示していただかないと、この審議が実り多いものになっていかない。それはひいては、もう既にいろいろなところで言われておりますが、日米安保体制を確固たるものにしていくためにも、国民への説明責任、もちろん国会はもとよりですが、これがやはり前提になっていくと思うんですね。

 ですから、特にこの特別協定は、外務委員会で、外務省所管で、条約ということで審議をしておりますけれども、やはり防衛省にかかわるマターが非常に多い条約でもあるわけですから、委員長、改めて、安保委員会との連合審査をお願いしたいというふうに思います。お取り計らいをお願いします。

平沢委員長 連合審査については、後刻また理事会で協議させていただきます。

武正委員 では、速やかに、特にきょうのこの委員会の間には御報告をいただけるということでいいですか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 最大限努力させていただきたいと思います。

武正委員 ぜひ委員会の間に御報告をいただきたいというふうに思います。

 そこで、光熱水料の節約努力ということで、外務大臣も、今回は一層の節約努力ということで、「前三条」ということですから、一条、二条、三条の節約努力をうたっているわけなんですが、やはりそれは、この二年間なり、しっかりとその検証をしないと、当然、条約のあるいは協定の署名、調印に至らなかったというふうに思うわけですが、どういうふうにその節約努力を、ここに一つ挙げておりますが、光熱水料についてチェックをしたのか、外務省としてお答えをいただけますでしょうか。

 特に、私ども部門会議で質疑を行っていますと、前からよく話がありますが、夏の間、米軍人が本国に帰る、その間エアコンをつけっ放しで、そして戻ってくるというようなことが、これは有名な話として指摘をされているわけですが、聞いてみると、一戸一戸の住宅にはいわゆるメーターがついていないらしいんですね。どこのお宅でも、それこそ電力会社がつけて、それでその電力量の使用状況をチェックする。これは当然、支払う側にとっては、その支払いの抑制につながっていく、月々のチェックということにつながるわけですが、これも働いていないということも聞くわけですけれども、この二年間の検証ということで、どのようなチェック、検証を行ったのか、外務大臣、お答えいただけますでしょうか。

高村国務大臣 現行特別協定にも米側の節約努力が規定されており、米側がこの規定の趣旨を踏まえ、節約の努力を払っていると承知をしております。

 例えば、防衛省、旧防衛施設庁でありますが、その担当者が必要に応じて在日米軍司令部の担当者に対して節約努力の具体例につき聴取を行ってきたところによりますと、現行特別協定のもとで在日米軍が実施してきた節約努力には以下のようなものがあると承知をしております。労務費については、組織の統合や業務の合理化による適切な労働者の配置に向けた努力、光熱費については、節約の注意喚起、省エネ機器、器具の設置等に向けた努力、訓練移転費については、人員、物資の輸送方法の工夫等に向けた努力というようなことがあると聞いております。

 私が答えるのが適当かどうかわかりませんが、私が聞いた範囲でお答えすればそういうことでございます。

武正委員 外務省としてそうした、特に例えば光熱水料の節約努力についてしっかりと検証したと。今、私がお答えするのが適当かどうかと言いましたが、その分野については防衛省に任せっきりなのではないのでしょうか。外務省としてしっかりと節約努力ということを交渉担当者として交渉した、このように自負を持っておられますでしょうか。いかがですか、外務省として。

高村国務大臣 過去の検証については旧防衛施設庁が聴取してやっていただいていますが、今度の協定について節約努力をしてもらうべきことについては、そういう防衛施設庁からいろいろ聞いたこと等に基づいて相手方にいろいろと交渉をしている、こういうことでございます。

武正委員 部門会議なんかでやりとりしていると、外務省の方から、この交渉は春から始まって、十二月十一日ですか、合意したのが。前よりも非常に時間もかかった。それから、特に米側からは、米側のいろいろな財政事情からいって、実はもっと特別協定の負担分をふやしてほしいと。そういう圧力が大変だったところを、何とか一・五下げるのでも大変だったんだ、こういうようなことが外務省から聞こえてくると、本当に節約努力ということでやったのかどうか。はなから、やはりアメリカのことも考えるともっといろいろとふやしていかなきゃいけないというようなことで交渉していたんじゃないのか。なかなか節約努力ということの検証が、過去のことは防衛省と言いますが、やはり過去の実績をちゃんと外務省としてもきちっと交渉でチェックをしていく必要というのがあるんじゃないでしょうか。

 というのは、さっきも言ったように、米軍の個々の住宅には例えばメーターがついていないんですよ。こんな状態でどれだけ節約しているのかどうかといったって、防衛省だってわからないじゃないですか。それだったら、ちゃんと外務省が、なぜそういうものをつけていないのかとか、それを外交当局として、やはりこの交渉の中でしっかりと物を申していったのかどうかということを聞きたいわけであります。いかがですか。そういうことはやっていないということですか。それは防衛省にお任せということですか。

 節約努力について、いま一度、どういうことを外務省として主体的にやったのか、それはやっていないのか。あるいは、日米の関係全体を考えて、この特別協定の意義を、先ほど外務大臣が言われたように、それを考えて、それをどうやってお互い合意するのかといったところに外務省は意を砕いていたのかというふうに言わざるを得ないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 全体的なことももちろん考えますし、個々の節約努力ということも米側に要求をしたわけであります。

 メーターがついているかついていないかということについては、これは我が方からの提供施設でありますから、どういう過程でどういうものを提供しているかということになると思いますが、そういうことも含めてこれから政府部内で検討をしていきたい、こういうふうに思っております。

武正委員 防衛省はどうですか。個々の住宅にメーターはついていませんよね。我々はそれを聞いて、やはりこれじゃ、節約努力といったって、なかなか節約できないなというふうに思ったんです。

 今の外務大臣のお話のように、提供施設に、例えば、普通ですと、関東地域でしたら東京電力、そういった電力会社がつけるというふうになっていますから、それは当然電力会社にお願いをするとか、あるいはそれが、全体の電力の、大口需要家ですから当然割引なんかもあるでしょうから、割引の中でその分の施設費も軽減されてコストが決まっているのか。そこは定かではありませんが、我々は、単純に節約努力であれば、個々の住宅にメーターをつけるべきだというふうに思うんですが、そのことも踏まえて、防衛省としては、光熱水料の過去の実績についてどういうチェック、検証を行ったんでしょうか。メーターのことも含めてお答えください。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 メーターのことは今委員の御指摘のとおりであるわけでございますけれども、この辺のところは契約の仕方によって、大型契約になるとそれなりの割引もあるとかいろいろなことがあるわけでございます。

 特に節約に関しましては、委員ももう御承知だと思うんですけれども、特別協定第四条におきまして米側の節約努力について規定しているわけでございまして、我が省といたしましても、従来から機会あるごとにアメリカ側に対して申し入れをさせていただいているわけでございます。

 特に、そのことに対してアメリカ側からは、節約の注意喚起、省エネ機器、器具の設置等に努力してきたものということでのお答えをいただいておりまして、具体的には、暖房、換気、空調施設をより効率性の高いシステムに交換するとか、白熱灯による旧式の電灯システムを蛍光灯に交換するとか、あるいは効率的な自動販売機の導入、家族住宅における人感知センサーの設置とか、暖房エネルギーの損失が少ないスチームバルブ設備の設置、あるいは航空機内に残った燃料をボイラーで燃焼させる等々、こういうようなことをアメリカ側から回答を得ているわけでございます。

 なお、光熱水料等に関しましては、過去五年間におきまして、アメリカ側の支払い実績というものが日本側の負担分を超えております。十八年度実績においては、日本側の負担分というのは全体のうちの七割でありまして、ですからこそ、やはり米側にとっても節約するということは大事なことだということで、私はしっかりとインセンティブが働くような形にはなっているのではないのかなと思っております。

 なお、委員が御指摘のようなことも踏まえて、なお一層節約のための努力ということはさせていただきたいと思っております。

武正委員 随時申し入れているというのは、どこでどのように申し入れているんですか。分科会でやっているのか、あるいは日常の担当者同士でこういったことに触れているのか、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 米側ともいろいろな立場立場において、そのつかさつかさでいろいろな会議等もありますし、特に今回、今まで以上に、交渉の段階においては、特に課長級レベルの段階からも鋭意努力させていただいて、申し入れもさせていただいておりますし、そして、逐一、支払い等々、いろいろな状況下においても申し入れというものはさせていただいているところでございます。

武正委員 分科会では具体的にどの分科会でこういった申し入れをしているのか、あるいは、そうした分科会では申し入れはしていないのか、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 具体的な分科会で、したかどうかというのは、今の段階では確認できませんので、もう一度調べさせていただいてからお答えさせていただきたいと思います。

武正委員 こういうのはもう何度も部門会議でもやっているので、日米合同委員会のもとに各分科会がつくられて、そこで外務省、防衛省の担当者が出て、この駐留米軍のさまざまな案件について協議をしている、こういうふうに理解をしているわけでありまして、当然、特別協定にまつわる執行状況、それから、調印をして署名をして、国会の承認を得て、これから三年間やっていく、それについての取り組みをどの分科会でやっているかわからない、またこれもこういう答えで、防衛省、これはどうなんですか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 どの分科会でどうのこうのという細かいところまで今お答えはできませんけれども、具体的な文書等のやりとりにおきましては、日本側からは、平成十九年でありますと、四月二日において、光熱水料等支出金に係る平成十九年度予算額及び四半期ごとの交付予定額のときにおいて申し入れをさせていただいておりますし、また、その後、四月二十五日においての光熱水料の支払い金に係る平成十八年度の負担額の確定の通知をさせていただく段階においても申し入れをさせていただいております。

 また、その二カ月ほど前ですけれども、その前の年度のことに関しては、米側の方からは平成十九年の二月二十六日において回答をいただいているというところでございます。

武正委員 その申し入れのときにどんなことを言ったんですか。あるいは、そういう文書があるんだったら出していただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 この文書のやりとりのことで今委員の方から提出していただきたいということでございますけれども、一応この提出に関しましては、相手側の米軍のこともあるものですから、当事者であります在日米軍司令部に確認した上で対応させていただきたいと思います。

武正委員 だったら、その申し入れの内容はどういうことを言ったのか、十九年の四月二日とその翌月の五月。お答えをいただけますか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 具体的に余り細かいことを言ってはなんですけれども、特別協定第四条に基づきまして、米側の光熱水料等の節約努力に関しまして、当省としては、先ほど申し上げたとおり、機会あるごとに申し入れておりますけれども、具体的には、米側に対し光熱水料等の予算額及び四半期ごとの交付予定額の通知、光熱水料等の負担額の確定の通知の際に、光熱水料等支出金の使用に当たっては今後とも効率的な使用に努めるようあらゆる措置を講じられることを要望するという旨でお願いしているところでございます。

武正委員 例えばそういうときに、これは我々が当然考えるわけですが、米軍住宅一戸一戸にメーターをつけるなりして、やはり節約努力してくださいよ、こういうことを申し入れるということは可能なんでしょうか。あるいは、そういったことはもうやっちゃいけない、こういうことなんでしょうか。今みたいな、ばくっという言い方しかしないのか、あるいは、今みたいに個別のことをしっかりと米側とやりとりするような場というのはあるんですか。今の申し入れのようなことしかできないのか、個々、個別的な具体的なことを申し入れられないのか、それはいかがですか。あるいは、申し入れたことがあるのかどうか、今言った四回の中で。だとすれば、どういうことを申し入れたのか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今まで具体的にそのようなことを申し入れたかどうかというのは確認をさせていただきたいと思うんですけれども、申し入れができるかどうかということに対しましては、これはできます。

 特に、最近の例で言いますと、平成十九年度当時におきましては、防衛施設庁業務部長から在日米軍第四部長に対して申し入れている。つまり、今現在ではですけれども、現地の地方協力局の調達官から直接申し入れるということはできます。

武正委員 外務省に伺いますけれども、この合同委員会の分科会でこういったことの協議を行う場というのはないんでしょうか。先ほど、どの分科会かわからないということなんですが、これはもう外務省に伺った方がいいと思うんです。

 日米合同委員会の分科会の中で、こうした在日駐留米軍のあり方、特に、こうした節約努力ということは、これはもう二〇〇〇年からうたっているわけですね、外務大臣。それがどの程度できているのかどうかというのは、我々は検証の義務があるわけですよ。当然、担当の外務省、防衛省も同じだと思うので、日米の話し合う場は合同委員会で、そのもとに分科会がつくられているんですが、どこの分科会でこういったことはやるんでしょうか。あるいは、それがちゃんとできているんでしょうか。そういうことを外務省はチェックされていますか。あるいは、外務省は承知されていますか。いかがでしょうか。

高村国務大臣 特に問題があれば施設分科会で取り上げ得るということでございます。

 この規定は、現行協定でもあるいは次期協定でも同じですけれども、アメリカ側に我々が迫って節約をするという決意を表明してもらった、そういう規定なんです。具体的義務を定めた、いわゆる法律的効果とかなんとかいうんじゃなくて、節約努力をしますよという決意を表明してもらった、こういうことなんですね。

 そして、かつてのように、日本が光熱費でも全部負担していたときは、これは節約努力すればすべて、日本のタックスペイヤーがそれだけ払う分が浮くということだったんですが、むしろこのことは、現時点では実効性からいえば、節約努力した結果、上限のものが定まって日本が支払っていますから、その上を負担している米側が助かるというものなんです。そういうものを、みずから助かるものをちゃんとやってくださいよ、我々の税金が直接減らないにしても、余りじゃぶじゃぶやっている姿は日本国民の精神衛生上よくないよ、だからそれはちゃんとやってくださいよ、そういう趣旨の規定なんですよ。

 だから、そこを法律的にごりごりごりごり検証するとか、そういう話と余り直截に結びつくものではないというふうに私は理解をしております。

武正委員 一ページをごらんいただければ、光熱水料というのは、これは負担が始まったのはいつからですかね、平成三年ですか。その前は日本側は負担していないわけですね。ですから、今は米側の使っている全部は払っていないというお話でしたけれども、平成三年前は日本側は負担していないわけですよ。

 それから、今のようなお話ですと、米側が全体でこのぐらい使うから、では日本側はこのぐらいね、多分そういう交渉をされていると思うんですね。ですから、米側のものがもっと圧縮されれば当然日本側の負担も減ってくる、こういう話なんです。

 ですから、今のように、施設分科会でそういう話ができるのに、交渉担当者の外務省が、あるいは外務大臣がそういうような姿勢ですと、しかも、日米間の協定ですよ、条約ですよ。その第四条にしっかりとうたわれているのに、いや、これは決意表明ですみたいなことを外務大臣がおっしゃっていただくと、そうしたら、もう当然、担当の防衛省だって腰が引けますよ、言いたいことだって言えませんよ。

 我々だって、質疑で、これは防衛関係、外務関係だけではありませんよ、全予算を本当に無駄のないように、この国会はもう本当に精査をしていこうという、今はちょうどそういう通常国会ですよ。そういうように国会状況が今大きく変わっている。でも、それはやはり、税金の使い道をはっきりと、国会としてでき得る限り政府の使い方をチェックしようというふうに変わられていることは外務大臣も御認識だと思うんですね。

 ですから、その外務省としての姿勢が、私は、去年の三月、四月からのこの一年間の交渉、本当に、節約努力を初め、交渉で外務省が主体的な役割を担ったのかどうか、それをはっきりと明らかにする必要があると思うんですが、いかがですか。

高村国務大臣 アメリカ側の決意表明というのは決して軽くないので、決意表明をそういうところに文章として入れさせるというのは、これは協定の中で大変意味があることだと思っております。決意表明だから軽いなんて、そういうふうにとってもらったら困ります。その決意はきっちりやってもらわなければいけないわけでありますから、我々はきっちり迫ってまいります。

 それから、先ほど防衛副大臣も言っておられましたけれども、要するに、一戸一戸にメーターをつけた方がいいか、あるいは大口契約の方が安くなるのか。多分、委員がおっしゃるように、一戸一戸にメーターをつけた方が電気料そのものは少なくなるだろうと私も思います。私もそういう気がします。ただ、大口契約と一戸一戸の小口契約にした場合と全体でどっちが安くなるのかというのは、それはまた検証しなければいけない、政府内部で検討してみたい、こう思います。

武正委員 資料四ページをごらんいただきたいんですが、光熱水料の概算交付、支払いなどの図を防衛省に出していただきました。この三番で、支払い関係書類というのが在日米軍司令部から毎月出される。電力会社からの請求書が翌月中旬、そしてそれにちゃんと支払ったという領収書が翌月下旬、日本政府、防衛省に送られるということなんですね。この写しを求めたんですけれども、出せないというお答えでありました。

 あわせて、先ほど言った、基地ごとで努力もあるんだ、電力会社との、あるいはガス会社との契約もあるんだ、今みたいに、メーターはつけなくてコストダウンしている可能性もあるんだということだったんですけれども、きょうもお願いをしたんですけれども、基地ごとのガスとか電気とか、そういう単価がまだ出てきておりません。お願いをしても、まだ出ておりません。

 こういった点ですね。先ほど来、防衛省、質疑に十分供するような材料を出していただかないと、国会としての検証、今言ったように政府でやります、政府でやりますだったら、我々国会議員の役割が必要なくなってしまうわけです。我々はやはり、政府が本当に節約努力をやっているのかどうか、一基地当たりのコストはどうなのか、そういったこともチェックをしようということでやっているわけですから、しっかりとお答えをいただきたいんです。

 防衛副大臣、まず、この写しを出していただけないというふうにお答えがあるんですけれども、速やかに御提出をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 米側から提出されます支払い関係書類というものは、基本的には米側と供給業者間での契約をもとに作成されているものであるわけでございますから、従来から、この当該書類の提出につきまして要望があった都度、当該契約の当事者であるアメリカ側と供給業者に対して提出の可否について確認をとってきたところであります。しかし、これまでのところ、アメリカ側及び供給業者側から書類の提出については了解が得られていないというところで、今の段階では提出するということがかなわないところでございます。

武正委員 外務大臣、どうですか。こういったものも、やはりちゃんと、幾ら払っているのか、国会に対しても毎月の支払いの額というのが教えてもらえないわけですね。今みたいに、では、基地ごとでどういう努力をしているのか、本当にメーターは必要じゃないのか、そういったこともチェックできないわけですから、せめて、公の電力会社と毎月支払っている額、請求書とその領収書、その写しだって、なぜこういう委員会に出せないんでしょうか、国会に出せないんでしょうか。もう不思議でなりません。こんなことを出せないで、さらに、ではこれは、節約努力していますよと、我々どうやってチェックするんでしょうか。

 やはり、これは外交交渉担当の外務省として、米側にちゃんと写しを出してくれと言っていただけませんか。いかがですか。

高村国務大臣 先ほど、政府内部で努力するというのでは、国会が何を、意味がないじゃないかとおっしゃったが、そうじゃないんです。貴委員がそういうことをおっしゃったので私からそういう答弁を引き出しただけで、国会は大変な役割を果たしているんだろう、こういうふうに思います。

 まさに今御指摘になったことも含めて、外務省が直接、電力会社とか何だとかという話ではないと思いますが、今防衛副大臣がおっしゃった話では、国会に知らせていないというよりも政府自体がちょっとわからないみたいなことだったので、ちょっと政府内部で検討してみたいと思います。

武正委員 この四ページ目を見ていただくとわかるように、在日米軍から毎月、その分の光熱水料は翌月の中旬に電力会社などから請求書が来て、払った分の領収書を送っている、毎月防衛省に出しているそうです。それをこういう図で、私もそういう説明を受けました。政府はわかっているんです。ですから、それを、写しを出してくださいと言ったら、アメリカがいいと言わないからだめだと言うので、では、外務大臣、アメリカに言ってくれませんかと言ったんです。

 ぜひそれをお願いしたいのと、三ページもごらんをいただきたいと思うんですが、これは訓練移転費の図であります。この「数量」の下に米印があります。「経費見積りについては、米側から公表の合意が得られていない」というようなこともあります。

 既にこの外務委員会でも、嘉手納の訓練移転が、訓練移転を行ったことによって本当に負担の軽減につながったのかどうか、甚だ疑問だという指摘、十四回中十二回、今までの平均よりも騒音が上回ったという指摘があるわけでして、やはり検証ということですね。あるいは、こういった形で、オープンにできない、あるいは今みたいに、政府でわかっていても、外務大臣は御存じないでしょうけれども、国会に教えてくれない。

 こういったことで、この特別協定、やはり私は、国民からの指摘にたえ得る審議を行うには、政府として、防衛省もそれから外務省も、特に対米関係がありますから、ぜひきちっと資料を国会に出すということでお願いをしたいと思いますが、これは委員長に求めたいと思います。

平沢委員長 今の点は、理事会で協議させていただきます。

 そして、江渡副大臣、先ほどの武正議員の、その回答について。

 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記を起こして。

 江渡副大臣。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員の方に、先ほど、できるだけ委員の質問時間の間にお答えできるようにということですけれども、今まだ確認できていないスタッフがいるということですので、この委員会の終わるまでの間にしっかりと答えを出させていただきたいと思います。申しわけございません。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 幾つか特別協定に関連する質問をさせていただきたいと思います。

 質問通告をさせていただいておるわけでありますが、今、武正議員が質問させていただいた件で、少し関連して、訓練移転費のことについてちょっとお伺いをしたいと思います。

 訓練移転費、日本の基地及び基地周辺の負担を軽減するということで訓練を移転する、そういう軽減するための訓練移転費について日本側が持つ、こういうことになっているんだと思います。

 ただ、今、武正議員の指摘にもありましたように、その訓練移転費の中身が十分情報公開されていないばかりではなく、これは確認をしたいと思うんですが、訓練を移転する、そこの負担を軽減するために違うところに移転して訓練をする、これは、例えば、こっちで一回やっていたら移転したときにも一回だ、こういうふうなことではなくて、上限がないのではないかと思いますけれども、いかがでありましょうか。

猪俣政府参考人 訓練移転費で負担する経費の範囲ということになろうかと思います。

 新たな特別協定で負担いたしますのは、我が国政府の要請に基づきまして在日米軍が訓練を行う施設・区域を変更する場合に、御案内のとおりだと思いますが、その変更に伴って追加的に必要となる経費の一部または全部ということでございます。

 いかなる経費が追加的に必要となる経費に相当するかというのも、当然個々のケースによって違うわけでございますけれども、あえて一般的に言わせていただきますと、特定の施設・区域から他の施設・区域への米軍の移動に要する燃料費ですとか、あるいは他の施設・区域において訓練を実施するために新たに必要となる物資等の輸送費というようなものが考えられているところでございます。

近藤(昭)委員 いや、ですから、移転することによって余分にかかる経費を負担する、その上限がないのではないですかということです。

 その上限の考え方もいろいろとあると思うんですが、だから、あるところからあるところに訓練を移転した、前のところでは一回しかやっていなかったところを二回やることによってふえる経費が多分、一回だったら移転したことによってかかる経費がこれだけだけれども、例えば、それを一回から二回にしても、全然上限が、上限というのはあるんですか。

猪俣政府参考人 後で詳細に同僚の政府参考人の方から御答弁いただきますけれども、特別協定における負担でございます。

 例えば、二十年度予算案の関係で言わせていただきますと、NLP訓練移転費というのは五億円ということで制限させていただいていますし、訓練改善のための事業、これは県道百四号線越えですとかパラシュート降下訓練というもの等、それが十三億円でございますし、訓練移転のための事業として九億円ということで、これは米軍再編との関係での訓練移転に関する経費ということで、そういった意味での上限というものを設けて予算要求をさせていただいているところでございます。

近藤(昭)委員 そうすると、予算としての上限があるということで、ちょっと繰り返しになりますけれども、例えば、移転する前のところで一回訓練していたのを、こっちでは上限の中で二回も三回もやる、こういうことでしょうか。

 先ほど武正議員の質問の中にもありましたけれども、移転することによってかえって騒音が激しくなっているところもあるのではないかというような指摘もありましたけれども、一回だったら移転したところでも一回とか、そういう上限というか規定はありますでしょうか。

西宮政府参考人 御質問の趣旨を必ずしも正確に理解しているかどうか若干自信がございませんが、訓練移転はいろいろございまして、一つは硫黄島のNLPの話などもそうでございますし、県道百四号線越えの射撃などもございまして、基本的に、我々の方から、地元の負担を軽減するために移転して訓練をしてもらうということでございまして、その意味では、究極的には毎年度の予算の範囲ということになるわけでございます。

 戦闘機ということでございますれば、二年前のロードマップにございますけれども、一つの目安として、共同訓練につき、一回につき一から五機の航空機が一から七日間参加するものから始めて、いずれ、六から十二機の航空機が八から十四日間参加するものに発展させるという一般的な考え方はございますけれども、これは特段、上限ということではなくて、一つの考え方、方針というのを示したものであろうかと思います。

近藤(昭)委員 硫黄島で、特に訓練の部分は、上限というか予算の範囲があるようでありますけれども、回数的にはかなりふえているのではないか、それを日本側がかなり経費を負担してやっているのではないかというふうに思うわけでありますが、どうですか、回数的には。

西宮政府参考人 硫黄島も含めまして、できるだけ地元の負担を減らすという趣旨でやっております。

 通告がございませんので今手元に件数は持ち合わせておりませんが、できる限り地元の負担を減らすべく、夜間発着訓練にせよ、射撃訓練にせよ、移転訓練というものをやっていくということでございまして、毎年の予算ということであれば、ふえる傾向にあるということでございます。

近藤(昭)委員 軍事機密というところはあるのかもしれませんけれども、これはちょっと質問通告してありませんでしたけれども、ただ、上限とか、何かそういうものが非常にあいまいなような気がしまして、ぜひ中身をお知らせいただけることはお知らせいただきたいと思うんです。

 それでは、次の質問に行きたいと思います。

 もう既に何人かの方が質問されておりますけれども、改めて少し確認をしたいということで、横須賀のタクシー運転手殺人事件であります。

 三月の十九日、横須賀市内で発生をした、車内に米海軍上等水兵の名義人のクレジットカードが発見された、当初からこのクレジットカードの持ち主が重要参考人として浮かび上がってきた、そして二十二日未明に米海軍の犯罪捜査局によって身柄が確保された、そして今基地内に拘束されている。

 ところで、この事件発生から二十二日未明に拘束されるまでの間、いわゆる神奈川県警と米海軍の間においてどのような連携がとられたのか。部署を含む形で、時系列に沿って簡潔に御説明をいただきたいというふうに思います。

小野政府参考人 御指摘の事件につきましては、事件発生以降、神奈川県警察から米海軍に対しまして脱走兵についての情報提供を求め、米海軍からは立ち回り先に関する情報等の提供を受けるとともに、脱走兵の確保後速やかにその旨の連絡も受けるなど、所要の連携はとれているというふうに思っております。

 具体的な個別の、いついかなるということに関しましては、まことに申しわけございませんが、現在まさに捜査途上でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 既に別の委員からの質問等々でも、連携ということでいろいろと質問が出ております。私の方からは、とにかくきちっとした連携をしていただきたいということなんですね。

 ただ、その中で、既に質問の中にあった、今までにどれだけの米軍の脱走兵がいたかということについては、きちっとした統計がないのでありましょうか。

小野政府参考人 今委員御質問の件につきましては、まさにそのとおりでございます。

 脱走米兵につきましては、米軍側からその逮捕要請がなされるということによりまして警察の方で把握をするということになりますので、必ずしもすべての脱走米兵について私どもが承知しているわけではございません。

 午前にも申し上げましたが、十七年からのデータをとってみましたところ、脱走米兵というのは九人いるという状況がわかっておりまして、そのうち警察の方で逮捕いたしましたのは四人ございます。さらに、米軍の方で逮捕いたしましたのは一人ございます。さらに、自分で、みずから帰隊したという者も二人おります。

 ということから、十七年以降に関しましては、私どもに報告のある限りでございますが、現在二名の者が脱走中というふうに理解をしているところであります。

近藤(昭)委員 現在もなお二名の兵が脱走しているということでありますか。

 十七年までとってみたらということでありますと、そうすると、きちっととればそういったデータが集計できるということであれば、そういうことをこれからやられるのかどうか、教えていただきたいと思います。

小野政府参考人 実は、午前にも申し上げましたが、報告を受けている資料につきましては一年間の保存期間ということでございまして、過去のものにつきましてすべて正確に把握できるかということに関しましては、自信を持って申し上げることはできないかなというふうに思っております。

 今、検討させていただきまして、できる範囲でどのような状況であるかということを把握したいというふうに考えておる次第でございます。

近藤(昭)委員 私の方からも、ぜひできる限り、本来、そんな重要な資料が一年間の保存というのはいかがなものかというふうに思うわけでありますし、しかしながら、現状でそうであれば、そのできる限りの中できちっと数値を明らかにしていただきたい。また、そういった文書の保存について、年数を長くする、あるいは日本の公文書館、保存館というのをきちっとするということだと思いますが、いかがでありましょうか。

小野政府参考人 今回の事件を踏まえまして、今後検討させていただきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ぜひ、検討というか、速やかに実現をしていただきたいと私は思うわけであります。

 続きまして、先般、私も本会議での代表質問でお伺いをさせていただきましたが、改めてもう少し聞かせていただきたいというふうに思います。

 日本国憲法は宗教施設への公金支出を禁じている。ところが、キャンプ・コートニーには、鉄筋コンクリート平家建て、一千百平方メートルの教会が三・六億円で、日本側が負担する形で建設された。

 御承知のとおり、憲法には、信教の自由、国の宗教活動の禁止、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」また、裁判では、宗教施設に対して国、地方自治体が公金を支出することはならない、こういった判決もあるわけであります。

 そういったことで、このキャンプ・コートニーの教会建設についていかがお考えか、改めて聞かせていただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のキャンプ・コートニーにおける教会でありますけれども、米側の要望に基づきまして、昭和五十八年度から五十九年度にかけまして、米軍人、米軍属及びその家族の福祉の増進、士気の高揚等を図るために整備を行ったものでございます。

 御指摘のこの教会用施設は、安全保障条約の効果的運用のため、そしてまた米軍の駐留を円滑ならしめることを目的といたしまして、米軍に対する施設提供の一環として、米軍人軍属等の日常生活に必要不可欠とされる施設である、そういう点に着目をいたしまして、これを建設し、提供したものでございます。

 なお、委員も御承知かとは思いますけれども、昭和五十二年七月十三日の最高裁判所の判決、いわゆる津地鎮祭判決によりますと、国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を禁止しているものではなくて、禁止している宗教的活動とは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になる行為をいうというふうに判示されているわけでございます。

 したがって、先ほど申し上げましたとおり、本施設は、その目的におきまして宗教的意義というものは有しておらず、また、その効果においても、特定の宗教を助長あるいは援助するという、そのような効果を生ずるものとは言えないため、憲法第八十九条の規定との関係でも問題なく、公金その他の財産を宗教上の組織もしくは団体の使用に供したことにはならないというふうに考えているところでございます。

近藤(昭)委員 そういった判決があるということは承知しておりますし、そういう判決の今お話しになったことの趣旨は理解するわけであります。ただ、米軍の福利に資する、ですから、この間非常にいかがなものかという娯楽施設等々もあるわけでありますけれども、そういったものにこれからも支出をされて、娯楽施設については今は建設はされていないというふうに思うんですけれども、特定の宗教の宗教活動ではないということを今おっしゃったわけでありますけれども、そうすると、この教会は何教会になるんでしょうか。

江渡副大臣 委員の御質問の何教会に当たるか云々というその辺のところの意味というか、あくまでも、今回の部分におきましては、先ほどお答えさせていただいたように、米軍人及び米軍属、その家族の福祉の増進、そして士気の高揚等ということで、そのことに着目させていただいて整備を行ったというところでございます。

近藤(昭)委員 福祉の増進という部分でそうした宗教的な施設を、それぞれの隊員の心の問題といいましょうか、宗派を超えて宗教的なそういう施設で敬けんなる祈りをささげるというか、そういう場所を提供したということなんでしょうか。

 ただ、宗教は、それぞれ宗派があって、そんな簡単なものかなと。宗派というか、キリスト教か何かですね、どうかなというふうに思います。

 これは、少なくとも何教会とかというのは全然ないんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 私もちょっと記憶のところで御答弁させていただきますけれども、教会という形で提供しておりますけれども、特定の宗派だけに限定したような使い方をできるようなものではないというふうに私ども理解しているところでございます。

近藤(昭)委員 私は、なかなか微妙なところではないかなというふうに思うわけであります。

 確かに、米軍というのはそういう意味ではすごいなというふうにも思うわけであります。さまざまな施設、その施設もそういった軍のところに付随をしてある、そういったものを総合的につくっている。ただ、そういったものをすべて日本側が負担をするのはいかがなものかなと思うのと、代表質問の中でも触れさせていただきました、本国にもないようなかなり立派な施設があるというのはバランスを欠いているのではないか。そしてそれを、全体でいうと、本当に日本の負担している費用は多いと思うんですね。

 そういう意味で、いろいろなチェックの仕方があると思うんですけれども、私は、ぜひ日本側として、全体でやはりもっと縮めるべきだと思いますし、そういう中で一つ一つのあり方というのをよく御検討いただきたいと思うんです。

 続いて、今の問題と関連してくるんです。

 ですから、一九七九年に提供施設整備費の負担が始まって二十年以上、つまり、一九七九年のときから二十年以上たって初めて案件の採択基準が設けられた。その間に、娯楽性、収益性の高い数々の豪華な施設が日本の経費負担によって建設された。つまり、それまではかなり、いかがなものか、日本の国民の税金でつくられている、しかし、そんなところにそういう税金を使うのと。日本の国内にもないような、あるいはアメリカの国内にもないような、そんなものに。そしてまた、独立採算でやるべきところの人件費も払っている。

 そういう施設が必要でないというわけではありません。アメリカが自分たちの必要性でつくっているのかもしれませんけれども、しかし、そういうところに負担するのはいかがなものかと思いますし、実際、日本の中でもそういった案件の採択の基準ができたということであります。私は、もっと早くに日本政府はこうした案件採択の基準を設けるべきであったと思うんです。

 そういう観点から、一九七九年に施設提供が始まって二〇〇〇年、なぜ二十年以上たって初めて案件採択基準が設けられるようになったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今委員の御指摘の提供施設整備につきましてですけれども、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保する、そういう観点から、従前より、地位協定の範囲内で、米側の希望を聴取するとともに、安保条約の目的達成との関係、あるいは我が国の財政負担との関係、社会経済的影響等を総合的に勘案の上、我が国の自主的判断により措置してきておるわけでございます。

 いたずらに豪華な施設を建設してきたわけではないと思っておりますけれども、一部娯楽性及び収益性の高いと認められるような施設も含め整備してきたということは、まさに委員の御指摘のとおりでございます。

 そこで、平成十三年度、特に二〇〇〇年の十月にこの案件採択基準を設けることになったわけでございますけれども、平成十三年度からの新たな特別協定を改定するこの機会をとらえまして、提供施設整備につきましても案件採択の基準を作成し、より透明性を高めることで国民の皆様方の御理解をしっかりと得よう、そしてまた、御協力をいただきつつ、日米安保条約の信頼性を高めることということで、米側の理解を得させていただいたわけでございます。

 具体的には、委員御指摘のとおり、平成十二年の十月、我が国の極めて厳しい経済財政状況を背景にいたしまして、提供施設整備の案件採択基準というものを作成し、娯楽性及び収益性が高いと認められる施設の新規採択を控えることの確認を行い、その後、かかる施設というものは採択しておりません。

 以上でございます。

近藤(昭)委員 趣旨はよくわかりましたが、二〇〇〇年十月、先ほど申し上げましたように随分と年数がたっているわけでありますが、余りにも遅きに失した、こういうふうには思われませんでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 余りに遅きに失したかどうかということは、これはそれなりの、個々の判断によっていろいろなとらえ方があるかもしれませんけれども、我々は、この協定におきまして、できるだけ日本国民の方々に対して透明性を確保し、また御理解をいただいて、そして日米安保体制というものをしっかりと堅持させていただければ、そういうような考え方を持ってこういう形にしたわけでございます。

 委員の御指摘の、余りに遅きに失したのではないかということ、そのこともある意味では当たるかもしれませんけれども、ここでそうだとも、またお答えは控えさせていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 私は、やはりもっともっと早くあるべきだったというふうに思うんです。

 ただ、案件採択基準を設けることだけが重要ではなくて、もちろんそのことを設ける、しかし一方で、やはりこの間ずっと、御努力はされているということでありますが、全体のいわゆる駐留米軍に関する日本側の負担の経費というのはふえているわけでありますね。なぜここまでとこの間、民主党の部門会議等々で関係の方に質問したこともありますけれども、しかし、総合的に判断をしてと。ドイツあるいは韓国、それぞれ経費は負担している、しかし、光熱水料だって韓国は負担しているわけではないですし、大体、大ざっぱに言えば五分の一以下でありますから、総合的にと言われてもなかなか理解しにくいんですね。

 副大臣、どうですか。全体的にもっともっと削減すべきだと思うわけでありますが、いかがお考えでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 確かに、金額的なことあるいは今の日本の経済情勢ということを考えれば、その辺のところは十二分に勘案していかなければならないだろうなと思っているところでございます。

 委員も御承知のとおり、もしこの新しい協定というものが締結したとしても、今までは五年だったわけですけれども、今回は五年という期間を三年に詰める。しかも、その三年の間においても、包括的にいろいろな協議をしていきましょう、そしてできるだけ節約できるものは節約しということで、さまざまな部分においても協議ができるという形での合意もさせていただいているものですから、その期間を利用しながらいろいろな形の話し合いをさせていただければ、そのように考えているところでございます。

近藤(昭)委員 日本が今、非常に財政赤字にある。財政赤字だから今までやってきたものをやめる、そういう意味ではないんです。もともと財政赤字は厳しいし、それだけではなくて、先ほど申し上げたように非常にバランスが悪い、他国と比べても突出している、こういうことなんですね。

 ただ、先ほどからお話を聞いていても、外務省におかれましても、また与党の議員の方も、これはちょっと多過ぎるんじゃないのという認識は持たれている、そしてそういう努力もされている。しかしながら、結果として数%の削減というか減額しかできなかったということなんです。

 先ほど同僚議員からも質問がありましたが、一体どんな交渉をしていらっしゃるのかということを改めて質問させていただきたいと思います。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍駐留経費負担に係る新たな特別協定に関する協議につきましては、日本側の負担の現状維持、あるいは場合によっては非公式ながらも増額を求めるという米側に対しまして、我が方は負担の減額を目指しまして鋭意交渉をいたした次第でございます。

 もちろんその間、政府といたしましては、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしている協定であるということを念頭に置きつつも、厳しい財政事情の中で同経費負担についても節約合理化の必要があるということ、そして、経費の効率性につき国民の皆様の支持を得る必要があるということを踏まえて、負担の減額を求めて米側と協議、交渉を行った次第でございまして、先ほど来論じられていることではございますが、労務費、訓練移転費につきましては現状を維持しつつも、光熱費につきましては削減を達成したということでございます。

近藤(昭)委員 相手があるとはいえ、日本の国民の税金を使ってやるわけですから、ぜひ交渉の過程を、きちっとその交渉のポイントだけでも明らかにはしていただきたいと思うわけでありますし、この今の額が妥当かということは、きちっと説明をいただきたいというふうに思うんですね。

 それで、安全保障という意味で、それぞれの地域の状況が違うとか、関係がというところでよく御説明があるわけでありますけれども、少しお伺いをしたいんです。

 在日米軍の戦闘機は、三沢にF16が十八機、嘉手納にF15が二十四機だと思います。在日米軍陸軍も米海兵隊も、日本には戦車を一両も持っていない、こういうことだと思います。

 海兵隊は他国へ一番最初に乗り込んでいく部隊だと思いますので、他国へ出動するため、沖縄で訓練を行い、練度を維持しながら待機をしている部隊だということであって、つまり、決して駐留をしている沖縄を守っているわけではないというふうに思うわけであります。何かいざ米国であったときに一番最初に乗り込んでいく、そのために練度を沖縄で保っている。

 陸軍ということで申し上げますと、米陸軍の唯一の戦闘部隊は、沖縄のトリイ・ステーションにいる第一特殊部隊群の第一大隊だと思います。これは三百人だと思います。この部隊の任務、米軍というのはそれぞれはっきりと任務、今回、駐留米軍で働いている人たちの細かい職種がきちっと分かれていて、この仕事はこういう仕事をするんだということで細かい説明をいただきましたけれども、部隊はもちろんのことであります。今、第一特殊部隊群というのは、主にアジア各地での作戦に備え沖縄に駐留している、アジアでの展開に備えている。

 また、海軍、今、陸海空とお話をさせていただいているわけでありますが、海軍は、横須賀を母港とする空母が空母打撃群を、そして佐世保を母港とする強襲揚陸艦が遠征攻撃群を編成し、目的地へ向かう拠点として日本を使っているというふうなことだと思うんです。

 そういった中で、高村大臣からも在日米軍は抑止力というお話がありましたが、今申し上げたような米空軍、陸軍、海軍、こういうようなそれぞれの任務という中で、在日米軍が日本を守っているというふうには言えないと思うんですが、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 米軍は、日米安保条約に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために我が国に駐留しているわけであります。

 米国は、日米安保条約第五条に従って、我が国に対する武力攻撃に際して我が国の防衛に従事する義務を負うとともに、その打撃力をもって日本の防衛力を補完する役割を担うこととなっております。また、平時において、日米安保体制のもと、米軍の前方展開及びこれに伴う抑止力が維持されることで我が国の安全は確保されております。

 日本を守るといっても、日本の自衛隊みたいにいわゆる専守防衛というのではなくて、日本がたたかれたら、たたいた国をたたく、やりの部分もやってくれるからこそ強い抑止力になるんだ、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 そうすると、日米安保条約の目的の部分を今大臣が御指摘をされたわけでありますけれども、ただ、私がお伺いをしたいのは、今申し上げた部隊が日本を守っているとか、いざといったときに、やりの部分ということでいうと、さっき申し上げたF16が十八機、F15が二十四機、こういったもの、そして海兵隊という部隊の特殊性、陸軍は特殊部隊が三百人いるだけということで、それは今大臣が御指摘になったような機能を十分に果たされる、こういう御認識ということでよろしいんでしょうか。

高村国務大臣 そういう機能もありますし、軍隊の特性というのは、移動をすることもあるわけでありまして、よそで何かあった場合に、ふだん日本に駐留している軍隊、部隊がほかに移動するということがあるのと同時に、いざ日本有事のような場合には、よそにいる軍隊がこちらに移動してくるということはあるので、何かそこに張りついているものだけが軍事力を発揮するということではない、そういうふうに認識をしております。

近藤(昭)委員 張りついている部隊が常にそういった機能を果たすという意味ではないというお答えだったと思うんですけれども、もう一つちょっとお伺いをしたいと思うんです。

 横須賀とかを母港とする米国のイージス艦が日本には何隻もいるわけであります。では、日本のミサイル防衛という点から考えて、これは今のようなお答えが出るのかもしれませんけれども、いろいろなお答えがあるんだと思いますが、日本を母港としているイージス艦が、日本のミサイル防衛から考えて日本の防衛に寄与しているのかどうか、どのようにお考えでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 現在、横須賀に配備されております空母機動部隊等は、まさにこの地域の平和と安定に日ごろの海洋活動を通じて寄与をしておるというふうに考えております。ふだんから、単独で訓練をしたり、日米で共同の訓練をしたり、それから、日米防衛協力の指針に基づきましていろいろな協力活動等を行っておるということでございますので、そういう観点で、イージス艦も含めまして、当然日本の防衛に寄与しておるということでございます。

 それから、現在、日本のミサイル防衛ということで申し上げれば、PAC3に合わせまして、私どもの方でもイージス艦の配備がなされ、それでSM3によって対応するような体制をとっております。米側の方もイージス艦を持っておりますし、PAC3も持っております。ですから、そういったそれぞれの部隊を有効的に機能させるような努力を日ごろからしていく、現にしておる、さらにそれを高めていかなければならないというふうに認識をしております。

近藤(昭)委員 日本を母港にしているイージス艦が、そういった今お答えになったような役割を果たしているということですね。わかりました。

 ちょっと参考までに、調べはしたんですが、教えていただきたいんですが、日本を母港にしている米国のイージス艦というのは今何隻でしたか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今、具体的に手元に、何隻ということは申し上げられませんけれども、基本的に、アメリカの空母機動部隊なり艦艇の動向というのは、どの基地に何隻あるかということではなくて、機動運用として、全体として状況に応じて増援したり、いろいろな部隊が来れば、それが第七艦隊なりの隷下で活動をするということでございますので、全体で評価をしていただきたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 また教えていただければいいと思うんですが、確かに移動はしているんですけれども、母港ということでいうと、それなりに特定ができると思うんですね、日本の基地を母港としているというところでいうと。

 それでは、時間もなくなってまいりましたので、最後の質問をしたいと思いますが、本当にいろいろな経費を日本側は負担しているんです。あれもこれも、こんなことまでもというふうに思うことがたくさんこの間出てくるわけでありますが、それぞれがやはり関係は大事にしながら、しかしながら、財政状況等々で米国とも交渉していろいろと改定をしていると思うんです。

 それで、全体の予算の圧縮もさることながら、こういったこともぜひということで申し上げたいと思いますが、米国が使っている基地、その基地の跡地、さまざまな汚染物質といいましょうか、そういったことが出てくるわけであります。これは、日米地位協定第四条によって原状回復というものは免除されていて、日本側が負担をしなくてはならないということですね。

 ただ、こういったようなことはドイツでもあって、ドイツは九三年にNATO軍協定を補足するボン補足協定というものをつくって、第五十四条Aにおいて、環境浄化責任を駐留していた外国軍に課した。そしてまた、そのチェックを、州及び地方自治体で立入検査をして、チェックを認める、こういう内容にした。

 こういうこともやはり相手側にやってもらわないと、まあ何も相手が絶対悪いというわけではありませんが、どんどんどんどんと汚染していっても、あとは日本がやるわということになってしまうと思うんです。そういう意味では、こういった改定をぜひやっていくべきだと思うんですが、いかがかと思います。

 それと、もうそろそろ、先ほどの光熱水料の立てかえの部分は出たでしょうかということで、二つ、最後の質問としたいと思います。

高村国務大臣 環境問題について、日米地位協定よりもボン補足協定の方が進んでいるのではないかという御質問だったと思いますが、日米地位協定と米国が他国と締結している地位協定との比較については、運用のあり方や締結に至った背景等も検討する必要があるため、一概に論じることは困難であります。

 ボン補足協定第五十四条Aは、駐留軍の派遣国が環境保全の重要性を認識し確認する旨規定している等、環境分野についての明示的な規定を有していますが、その一方で、ドイツ国内法令の適用について定めている五十三条には、国際合意や米軍の内部事情に係る場合を適用除外とするなど、実際のドイツでの国内法令の適用状況が必ずしも定かでないわけであります。

 また、五十三条には、ドイツ当局と軍隊の当局は見解の相違について調整すべく協議し協力する旨定められており、あらかじめ駐留軍と独軍との見解の相違を想定しているような規定があったり、これは、本当に進んでいるのかどうか注意深く検討する必要があると思います。

 さらに、環境汚染に関し、米軍の基地への立ち入りについても、米側との関係で必ずしも行われていない場合があるという情報も得ているわけであります。

 ボン協定が進んでいるかどうか、実態がそうなのかどうか、なかなか米側は明らかにしないもので、調べるのが大変なんですが、一概に言えないということだと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 先ほどの武正委員からの光熱水料の立てかえ払いについてですけれども、平成十年から平成十四年の五カ年を対象といたしまして、当時の担当者十二名に確認したところ、いずれも立てかえ払いをしたという記憶を有してはおりませんでした。

 しかし、どちらにしても、さらに調査をしっかりとしてまいりたいと思っておるところでございます。

平沢委員長 防衛省、さらに調べて、次の理事懇までにその詳しい資料を出してください。

近藤(昭)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 昨年十一月に、ちょうど本特別協定の改定交渉の大詰めの時期でありましたが、当委員会で質問いたしました。そして、いよいよ協定そのものについての審議が始まったということであります。

 先ほど来ありましたが、思いやりと称して在日米軍駐留経費の負担が始まって三十年ということでありまして、その総額は五兆円を超えました。これに各省庁が地位協定に基づいて支出する駐留経費や提供国有財産借り上げ試算を含めますと、総額約十四兆円という規模を超える大変な額になります。その上さらに、二〇〇六年五月のロードマップの合意を受けて、米軍再編関係経費が二〇〇六年度補正予算から具体化をされているわけであります。

 そこで、まず防衛省に質問したいと思いますが、二〇〇六年度補正予算以降、二〇〇八年度当初予算まで、この米軍再編の関係経費というのは歳出ベース、契約ベースで幾らになっているでしょうか。お答えください。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

長岡政府参考人 米軍再編関係経費でございますけれども、ただいま先生から御指摘ございましたように、これまでに、地元の負担軽減に関する措置でございますけれども、平成十八年度補正予算、歳出ベースで四十八億円、契約ベースで百十億円、平成十九年度予算につきましては、歳出ベース七十二億円、契約ベース百六十六億円、平成十九年度補正予算につきましては、歳出ベース百七十一億円、契約ベース二百三億円、平成二十年度予算案につきましては、歳出ベース百九十一億円、契約ベース三百七十億円を計上させていただいております。

 累計額について申し上げますけれども、歳出ベースでは五百十八億円、契約ベースで八百五十億円でございます。

笠井委員 それは、二〇〇八年度も入っていましたっけ。済みません。

長岡政府参考人 入れております。

 二〇〇八年度、平成二十年度予算でございますが、歳出ベースで百九十一億円、契約ベースで三百七十億円でございます。

笠井委員 相当な額がわずかの間に措置されてきているわけであります。まさに在日米軍関係の経費の負担が新しい膨張をいよいよ開始しているという事態だと思います。

 そこで、これまでも繰り返しただしてまいりましたけれども、総額三兆円とも言われてきた米軍再編の我が国の経費負担額については、一体これは今幾らぐらいになっているというふうに政府は言われるんでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 駐留軍等の再編案の詳細な計画などにつきましては現在日米間で検討が進められているところでございまして、駐留軍等の再編全体に係る日本側の経費負担について具体的に申し上げる段階にはございません。今後、厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進め、所要の経費を精査してまいります。

 なお、具体的な日本側の経費負担の内容につきましては、政府として、各年度の予算において所要の経費を計上し、国会において審議をお願いすることになると思います。

笠井委員 具体的に申し上げる段階じゃないということをずっと言ってきたわけです。

 私、去年の三月一日の衆議院の予算委員会で質問しまして、当時安倍総理ですが、日米間で検討して詰めている、鋭意検討を進めて、できるだけ早い段階で明らかにしていきたいというふうに言われました。昨年十一月の当委員会でも防衛省は答弁して、現在積み上げた数字はないけれども、わかり次第作業を急ぎたいというふうに言ってきた。

 経過はどうなっているか、一体いつになったらここを明らかにするのかという問題でありまして、今各年度ごとにやってみますみたいな話まで言っていましたけれども、結局、今までは、きちっと出します出しますと言ってきたわけですよ、鋭意やっている、作業をしていると。

 政府は、前回改定では、在日米軍の再編の進展を見きわめることが困難であるとの特殊な事情を踏まえて、従来よりもさらに暫定的な協定ということで説明をして、二年延長にしました。今度も三年の延長ということであります。

 外務大臣、ところが、米軍再編の負担の全体の額あるいは規模については一向に明らかにせずに、今度も特別協定だけはこれまでの枠組みで三年間はやってほしいと。これは余りに虫がいいという話になるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の新たな特別協定が三年になったということの背景に関連いたしまして、平成十八年五月の2プラス2において、在日米軍再編に係る最終報告、いわゆるロードマップが発表されてはおりますが、個別の再編計画の詳細はまだ両国間で議論している最中でございまして、現時点でもなお在日米軍再編の最終的な経費の全体が見えていないことというのが一つの大きな背景でございます。

 ちなみに、そのほか、第二に、在日米軍の駐留をより安定的に実施していくとの観点、第三に、今回の交渉の結果、今後在日米軍駐留経費負担の包括的見直しを行うことを勘案し、さらに第四に、御指摘のとおり、二年の期間である現行特別協定と合わせると二プラス三で五年になることなどを総合的に勘案いたしまして、今回の新しい協定案の有効期間を三年といたした次第でございます。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 結局、全体の額、総額幾らになるか、これは急いで進めます、出しますと言いながら明らかにしないままに、どんどんそうやって改定はする、そして一方では、実態としては、国民の目の前で在日米軍施設の建設がどんどん進められるというのは、到底納得できない事態だと私は思うんです。

 これまで米軍の基地、施設については、政府は、地位協定二十四条によって、提供施設整備費ということで、FIPということで見てきました。そこで防衛省に伺いますが、二〇〇一年以降の提供施設整備費、FIPについて、新規採択案件と継続案件を金額ベースで比較すると、継続案件の比率というのはどのぐらいのものになるか、パーセントで端的にお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 平成十三年度以降、継続事案が占める、申しわけありませんけれども件数で申し上げますと、各年度ごとでお答えいたしますと、平成十三年度は七一%、平成十四年度は八六%、平成十五年度は八二%、平成十六年度は七九%、平成十七年度は八七%、平成十八年度は九四%、平成十九年度は九〇%、平成二十年度の今御審議をいただいているベースでは九五%という状況になっております。

笠井委員 もう九割以上、九五%以上ということで、ほとんど継続案件ばかりです。金額ベースでいったらもっと多いんだと思うんです。九九%を超えているというふうに私は聞いているんですけれども。

 ところが、これまで地位協定二十四条で日本側が負担するといって整備してきた、FIPと実態的には同じような施設です、これを米軍再編関係経費で措置されようとしてきている。例えば、岩国飛行場の建設整備費などが既に措置をされております。

 一方で、国民には、負担全体、米軍再編で幾らになるかを明らかにしないで、提供施設整備、FIPの見かけは減らしてくる、そして、ほとんど継続案件というふうにしながら、実は米軍再編関係経費という新たな枠組みの中でどんどん在日米軍基地、施設の整備費が盛り込まれて整備がされていく、これが、いろいろ名前は変えても実態だということだと思うんです。私は、非常にごまかしのやり方をやっていると思います。

 二〇〇六年五月のロードマップでは、これらの案の実施における、つまり、米軍再編に伴う案の実施における施設整備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日本国政府が負担するものであるというふうに明記をされています。

 そこで、これは外務大臣に伺いたいんですが、政府は、これは沖縄の負担軽減ということなどを求めたことなので日本側が持つのは当然というふうにおっしゃりたいのかもしれませんが、これは結局、名目を変えたりいろいろ装いを変えながらアメリカ側の言いなりのままに日本が忠実に施設整備を請け負っている、これが実際じゃないんですか。外務大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 在日米軍の兵力態勢の個別の再編案については、一昨年五月の再編実施のための日米のロードマップにおいて、再編案の実施における施設整備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日本政府が負担するものである、また、米国政府は、これらの案の実施により生ずる運用上の費用を負担することとなっており、これらの考え方に基づき経費負担することとなっております。このように、日本側が在日米軍の施設整備に係る費用を基本的に負担することとされているのは、日米地位協定二十四条二の規定を踏まえたものであります。

 いずれにしても、在日米軍の兵力態勢再編に係る経費については、関係省庁で検討しているところであり、現時点ではいまだ確定しておりません。

 冒頭、委員が、沖縄の負担軽減のためと言いたいのでしょうが、こうおっしゃいましたが、まさにそう言いたいのであります。

笠井委員 負担軽減どころか、実際は負担がふえているというのが沖縄の実感であるし、実態だということが、この間はっきりしています。

 私は、ここに米国防総省の文書を持ってきまして、これは米国防総省の指令第四二七〇・三四というものでありますけれども、海外基地の建設あるいは施設整備についての方針を示した内規であります。この中に、要するに、何というタイトルかといいますと、米太平洋軍管轄地域における受入国の費用負担による建設計画という文書であります。

 ここでは、国防総省の政策、ポリシーとして、太平洋地域において、つまり日本などにおいて、米国としては、米軍基地、施設を建設整備する場合には、米国の軍事建設予算、MILCONで計画するのではなく、その前にまずは受け入れ国負担を優先させるべきだという形で明記をされております。つまり、日本について言えば、まず日本側にかけ合え、それが第一番だということが書いてあるわけでありまして、これは国防総省の政策方針だというわけであります。

 これを見ますと、二〇〇五年の一月の十二日にこれはつくられたものでありまして、二〇〇七年四月二十四日には最新版でバージョンアップされてあるということになっています。つまり、これは米軍再編に臨むに際して、そういう時期に当たりますが、アメリカ側の生きた方針となり、さらに中間報告、二〇〇五年十一月から、ロードマップ、二〇〇六年五月の合意に向けて、再度米側がこれを確認しているという方針、指示文書だというふうに思うんです。我が国での米軍再編特措法の成立時期にも合致した米国防総省の政策であります。

 当時の、再編の議論をしていたときの安倍総理は、とにかく、さっきも言いましたが、この負担については幾らになるか日米間で詰めているということを繰り返したわけですけれども、外務大臣、この費用負担についてロードマップに明記された、先ほども御説明ありましたが、明示されない限り日本国政府が負担するものであるという規定は、結局この米側の方針があるわけですから、これが反映されたものじゃないかと思うんです。少なくとも、一方の合意相手のアメリカ側にこういう政策があった、その結果として、今、実際に負担増がどんどんふえているということなんじゃないでしょうか。いかがですか。

高村国務大臣 日本側の意図とすれば、第一に、沖縄県民の基地負担を軽減したいという強い願いが日本政府にもありまして、そういう結果でアメリカに強く迫った。そういうこともある中で、まさにそういう施設整備に係る費用については基本的に日本が負担する、そうされたと。だから、アメリカ側にとっても都合がいい面もあったかもしれませんが、日本側にとってもそういう意図があってお願いをして、そういうふうに、負担すべきものは負担するようになった、こういうことでございます。

笠井委員 沖縄の負担軽減どころか負担増というので、それから、負担増ということでは、全国各地でそういう事態が起こっているわけです。岩国だってそうです、それから厚木だってそうです。結局、そういう形でいろいろな負担増がやはり全国各地で展開している。

 もともと、アメリカの方は日本側に持たせろという方針で臨んでいるということでありますから、まさに、そういう点でいいますと、アメリカ側にこういう政策を持たせた、アメリカ側からの費用負担の要求に特別協定までも結んでこたえて、そして改定交渉のたびに負担を拡大してきた我が国の姿勢そのものに起因しているということも言わなきゃいけないと私は思うんです。日本側はこたえるんだということで、アメリカがそういう認識で臨んできているという問題があると思います。

 そして、国会と国民に対しては、在日米軍関係経費の負担がどうなるかということについては全体像、総額も明らかにしない、示さない。これではやはり政府として余りに情けない、私はこういう問題を指摘したいと思います。今後さらに審議で追及したいと思います。

 終わります。

平沢委員長 笠井君、ちょっと待ってください。

 長岡経理装備局長から発言を求められているので、これを許します。

長岡政府参考人 先生、先ほど、冒頭申し上げました米軍再編関係の予算でございますけれども、平成十八年度補正予算、歳出ベース四十八億円と申し上げましたけれども、八十四億円の誤りでございました。おわびして訂正させていただきます。(笠井委員「合計は変わりませんか」と呼ぶ)変わりません。読み間違いでございます。申しわけございません。

笠井委員 ちょっと数字がおかしいと思ったので、さっき聞き直したんですけれども。

 終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 大臣、きょうは朝から御苦労さんでございます。私も、二十三日のあらゆる米兵の事件、事故に抗議する県民大会、大雨と強い風の中参加したら風邪を引いちゃって、聞き苦しいと思いますが、御容赦ください。

 この新特別協定の問題は余りにもたくさんの論点があって、私もただすところが多うございますが、きょうは駐留軍労働者の問題に絞ってお聞きをいたします。

 私は、去る三月十八日、本会議における新特別協定に関する代表質問で、駐留軍労働者のMLC、基本労務契約などにおける法的雇用主について尋ねました。これに対して、石破防衛大臣は、「駐留軍等労働者の法的雇用主は日本国でございます。このことは、当然私は認識をいたしております。」このように答えております。

 外務大臣も、駐留軍労働者の法的雇用主が日本国であるという認識はお持ちでしょうか。

高村国務大臣 十八日の本会議における石破防衛大臣の答弁のとおり、駐留軍等労働者の法的雇用主は日本国であると認識しておりますし、それが客観的な事実でございます。

照屋委員 今、高村大臣おっしゃったとおりで、駐留軍労働者の法的雇用主は日本国、日本政府なんですね。だから、新特別協定で労務費問題を論ずるときに非常に難しいのは、法的雇用主が日本政府であるという事実を踏まえた議論をしないとなかなかうまくいかないんじゃないか、私はこう思うんです。

 私は、弁護士の立場で、駐留軍労働者が日本政府を被告とする裁判を何件も担当しました。その中には、最高裁まで争い、勝訴を確定したものもございます。

 防衛省に尋ねますが、駐留軍労働者の法的雇用主として日本政府はどのような具体的な義務を負っているのでしょうか。負っている義務の内容について詳細に御説明ください。

地引政府参考人 お答えいたします。

 駐留軍等労働者の雇用につきましては、地位協定十二条四におきまして、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」と規定されております。これを受けまして、日米間で締結いたしました労務提供契約に基づきまして、使用者である在日米軍が必要とする労務の需要に応じて日本国政府が駐留軍等労働者の方々を雇用し、その労働者を米側に提供しているところでございます。

 日本国政府は、国が雇用いたしました駐留軍等労働者の方々に対しまして、労働関係法令上の使用者や事業者に課される義務を、その内容に応じ、米側とともに負っているところでございます。具体的には、日本国政府は、例えば、労働条件を決定し誠実に履行する義務、社会的身分等を理由に差別的取り扱いをしてはならない義務などを負っているところでございます。

照屋委員 沖縄では、復帰前の米軍占領下の時代には、駐留軍労働者、当時は基地労働者と言っておりましたが、それは米軍による直接雇用でした。復帰後、間接雇用制度に移行し、今日では、高村大臣から答弁ありましたように、日本政府が法的雇用主となっているんです。

 そうすると、個々の労働者と政府の間における雇用契約と、今議題になっている新特別協定とはいかなる法的関係にあるんでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 昭和四十七年五月に、沖縄の本土復帰によりまして、沖縄の米軍に勤務する駐留軍等労働者の方々につきましては、地位協定第十二条四におきまして、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」と規定されていることを受けまして、日米間で締結している労務提供契約に基づきまして、日本国政府が雇用契約を締結することによりまして、米軍の直接雇用からいわゆる間接雇用に移行し、同契約に定める勤務条件が適用されているところでございます。

 また一方、特別協定第一条は、地位協定第二十四条に定めます経費負担の原則に対する特則でありまして、米軍が使用する労働者の法的雇用主をだれとするかにかかわらず、労働者に支払うべき給与の経費を日米いずれかが負担するということについて定めているものでございます。

 以上のとおり、労務費の負担に係る特別協定は労務に係る日米間の枠組みの重要な要素になっておりますが、その締結や内容によって、雇用主である日本国政府と駐留軍等労働者の個々の雇用契約の内容や効力に直ちに影響を及ぼすわけではないという関係にあるものというふうに理解しておるところでございます。

照屋委員 そうすると、政府は、駐留軍労働者の法的雇用主として、給与、諸手当などのいわゆる労務費の支払い義務を負っているのか、それとも特別協定上の日本政府としての義務なのか、どっちなんでしょうか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 日本国政府は、雇用主といたしまして賃金を支払う法的義務は負っており、日米間で締結いたしました労務提供契約に従い、基本給、諸手当について、米側負担分の立てかえ払い並びに地位協定及び特別協定に基づく日本側負担分の支払いを行っているところでございます。

 なお、米軍も、地位協定、特別協定に基づく日米間の経費の分担や労務提供契約に定める実務の流れとは別に、使用者として、労働基準法上、日本政府とともに個々の労働者に対し賃金の支払い義務を負っているものと解しているところでございます。

照屋委員 新特別協定、今審議をしているこの特別協定が期限どおり発効しない場合、要するに承認が得られぬ場合に、駐留軍労働者の雇用契約はどうなるんでしょうか。

地引政府参考人 先生御承知のとおり、四月稼働分に係ります五月支払い給与等は、例年五月十日前後に支給しているところでございます。協定の発効がおくれるというのはまだ今まで経験したことのないものですから、にわかにその状況を申し上げることはできませんけれども、いずれにしても、賃金等の遅配がないように、政府としてはあらゆる努力をすべきものと考えておる次第でございます。

照屋委員 私の質問は、給与が遅払いになるとかそういうことではなくして、もともとの雇用契約、それは消滅をするのか、それとも存続をするのか、そのことを聞いているんです。

高村国務大臣 地位協定がどうなるかによって雇用契約がなくなるとかなくならないとか、そういうことは関係のないことでございます。

照屋委員 さすがは法律家の大臣だけあって、私は明快な答弁だと思いますね。

 軍事基地を維持する物的、人的設備の中で、基地労働者がいなければ機能しないわけですね。だから、協定の発効時期にかかわらず契約は存続し続ける、このことを防衛省もしっかり認識して労務対策をすべきだと私は思いますよ。

 それから最後に、三月十八日の本会議代表質問で、石破防衛大臣が、我が国の労働関係法令が駐留軍労働者にも適用される、しかし、一部合致していないものがある、日米合同委員会の枠組みの中で精力的に米側と協議をする、こう答えている。一部合致していないものがあるというのは、正確な答弁ではありません。守っていない、使用者たる米側が守っていない。だから、それをどのようにして日米合同委員会の枠組みの中で精力的に米側と協議をするのか、その決意、具体的な方策を、防衛省、お聞かせください。

地引政府参考人 先生御指摘のとおり、日本政府といたしましては、駐留軍労働者の方々に対しまして、雇用主として、労働条件を決定し誠実に履行する義務を負っているわけでございますので、日米合同委員会のもとにあります各枠組みの中で、いろいろな形で労務提供契約に盛り込むべく、今後とも米側と折衝し、入れ込む形で努力させていただきたいというふうに思っております。

照屋委員 時間ですので、しっかり合同委員会で協議をすることを望んで、質問を終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会


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