衆議院

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第8号 平成20年4月16日(水曜日)

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平成二十年四月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 丸谷 佳織君

      井脇ノブ子君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    大塚  拓君

      川条 志嘉君    木村 隆秀君

      北川 知克君    塩崎 恭久君

      篠田 陽介君    鈴木 馨祐君

      土屋 正忠君    中山 泰秀君

      丹羽 秀樹君    馬渡 龍治君

      御法川信英君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      泉  健太君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      上田  勇君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   内閣府副大臣       中川 義雄君

   法務副大臣        河井 克行君

   外務副大臣        小野寺五典君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 二階 尚人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田辺 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片上 慶一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   三輪  昭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     矢野 隆司君

  伊藤信太郎君     丹羽 秀樹君

  猪口 邦子君     井脇ノブ子君

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  御法川信英君     北川 知克君

  山口 泰明君     馬渡 龍治君

  松原  仁君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     猪口 邦子君

  北川 知克君     御法川信英君

  丹羽 秀樹君     伊藤信太郎君

  馬渡 龍治君     山口 泰明君

  矢野 隆司君     川条 志嘉君

  安井潤一郎君     土屋 正忠君

  泉  健太君     松原  仁君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     愛知 和男君

  土屋 正忠君     大塚  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     小野 次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百六十八回国会条約第一号)

 経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百六十八回国会条約第二号)

 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 第百六十八回国会提出、経済上の連携に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び今国会提出、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官新保雅俊君、大臣官房審議官田辺靖雄君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官石川和秀君、北米局長西宮伸一君、中南米局長三輪昭君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、生活安全局長片桐裕君、刑事局長米田壯君、刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、警備局長池田克彦君、法務省大臣官房審議官三浦守君、大臣官房審議官二階尚人君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 おはようございます。自民党の鈴木馨祐でございます。

 本日は、大臣におかれましては、ロシアから戻られてすぐということで、本当にお疲れの中をありがとうございます。

 きょうは、ブルネイとインドネシアのEPA協定、そして日中の刑事共助条約について質疑ということで、順次進めさせていただきたいと思っております。最初のバッターでございますので、非常に概括的なところから伺わせていただければ、そう思っております。

 EPAといえば、日本のある意味非常に大事な大事な外交上のツールの一つでございまして、なかなか安全保障面、国際政治面よりも経済的な力が目立つ日本でございますので、相互間の依存を高めるという意味でも、そして、例えば投資だとかあるいは知財の話、積極的にアジア諸国あるいはいろいろな諸国とそういった基盤づくりという意味での協力を進めていくという意味でも、非常に大事なポイントであるというふうに考えております。

 そういった意味で、一つ最初にお伺いをさせていただきたいのですが、日本の外交戦略、どういった国とどういった関係を築いていくか、そして国際政治の中で日本がどういった動きをしていくかという意味で非常に大事だと思われるこのEPAについてなんですけれども、これまで数カ国との間でのEPAが成立してきました。そして、今交渉中の国も幾つもあるわけでありますけれども、例えば、どの国からこれを進めていくのか、あるいはどういった国と交渉に入るのか、こういったところの判断については、恐らくはこれはきちんとした戦略に基づかれて、例えばこの国とまずやっておこうとか、あるいはいろいろそういった判断というのがあるんだと思いますけれども、ここはどういった御判断で進められているのかについてお伺いできればと思っております。

小野寺副大臣 御指摘ありました、EPAを戦略的に活用するに当たりどのような順位づけをしているかということの基本の方針ですが、平成十六年十二月に策定しました今後の経済連携協定の推進についての基本方針において、東アジアを中心とした経済連携を推進することにしております。政府としては、そのような方針に従ってEPA交渉を進めてまいりました。

 この結果、ASEAN原加盟国六カ国とのEPAについて発効または署名済みとなり、さらに先日、ASEAN全体とのEPAについても署名に至りました。現在は、アジア地域についてはベトナム及びインドとの交渉を推進しております。

 また、東アジア地域以外とのEPAについては、先ほどの基本方針におきまして、我が国にとり有益な国際環境の形成、我が国全体としての経済利益の確保、相手国・地域の状況などを勘案し、この実現可能性を交渉しているところでございます。このようなことを踏まえまして、現在、メキシコ、チリ、オーストラリア、GCC、スイスといった国々と交渉を進めている最中です。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 非常に大事な大事なEPAの交渉でございますので、ぜひともきちんとしたそうした優先順位づけというものを行って、一番長期的な意味で我が国の将来に役に立つ戦略づくりというものをしていっていただければと思っております。

 このEPAの交渉におきましては、確かに、非常に文書の数も多うございまして、いろいろと詰めることも多くて、そして各国ごとにいろいろな差異があるものですから、一つ一つの交渉というものは非常に多くのスタッフとそして多くの時間がかかってしまうというのはやむを得ないことだなと思っておるのですが、しかし同時に、恐らくはこのスピードというか機動性というものも非常に大事なんだというふうに私は考えております。

 いろいろな国でいろいろな方とお話をしますと、例えば、日本においては、EPAというと、経済上の相互関係を深めるだとか、あるいは投資をした場合にきちんとその権利が保護される、いろいろそういった経済的な環境の整備というものが中心の、恐らくは圧倒的な中心の一つなのかと思っておりますが、例えば、中東の国だとかいろいろな国に行って意見交換をしますと、国際政治的な意味でこの国と結びつきがあるから象徴的にFTAを結んでいるんですとか、そういった経済上の実態的な効果ではないところで、いわゆる国際政治的な意味で結んでいるケースというものも多々見られるところであります。

 こうした意味でいえば、今、中国のアフリカへの積極的な進出だとか、いろいろと資源を媒介とした積極的な外交ということがある中で、日本がこれからそういったほかの国々と関係を結んでいくに当たっては、恐らくはスピードというものも非常に大事になってくるんだというふうに私は考えております。

 そうした意味でいえば、EPA、フルパッケージの、サービスから投資から、あるいは人の移動に至るまでのEPAというものをパッケージで結んでしまうと、なかなかこれは、いろいろな点で差異があって、そして時間もかかればコストもかかる。それで、恐らくはスピードが二の次になってしまう状況というものがあるんだと思っております。それがある国にとっては非常に大事なんだと思いますけれども、国際政治上これから日本がどういった生き方をしていくかということを考えれば、スピードというものも恐らくは同時に考えていかなくてはいけない。

 そうであれば、例えばEPAのフルスペックの中で、ある部分だけを取り出して先行的にやるだとか、あるいは、かつて言われていたFTAのような形で積極的にいろいろな国とスピーディーに結んでいく、いろいろそういった考え方もあるのかと思いますけれども、今外務省の方でそういったことについてはどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

小野寺副大臣 このEPA、FTAの条約のことについて、その条文、資料を見ても、大変な分量であること、委員の方も大変よく御認識されていると思います。

 これだけの内容についての精査というのは、やはりそれだけの量、時間がかかるのも通常だと思っておりますが、政府としましては、何とかこれをスピード感を持ちましてできるということを努力していきたいと思っています。既に幾つかのこの条約、経験をしておりますので、その面では、なれてきたということはちょっと言い過ぎかもしれませんが、今、それなりにスピード感を持って対応できる状況になるようにさらに努力をしていきたいと思っております。

 また、経済面ばかりではなくて、例えば象徴的なもの、政治的なものでのFTAというのはどうなのかというような御指摘もありましたが、これは、先ほどお話ししましたが、十六年十二月、今後の経済連携協定の推進についての基本方針及び平成十八年三月に開催されました経済連携促進に関する主要閣僚打ち合わせの結論にありますが、相手国との経済関係に応じて、EPAに加えて、先ほど御指摘あったFTA等の投資環境整備なども必要だということを考えております。

 現在、多分御指摘にあったと思うんですが、GCC等の国ともFTA交渉を行っておりますし、また、できれば、資源エネルギーが大変豊富で重要な地域であります中央アジアほか、多くの地域がこのような対象になるのではないかと思っております。具体的には、ことし二月よりウズベキスタンとの投資協定交渉を今進めておりまして、大変重要な御指摘に当たると思っております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさに、そうした機動性というものと、そうした精密さと、硬軟両様というか状況に応じて使い分けをされていっていただくことを心より熱望いたしまして、ひとまずはEPAに関する質疑を終わらせていただきます。

 次に、日中の刑事共助条約についてでありますけれども、これの私の理解というものは、刑事当局同士できちんとした情報交換をするなり、あるいは捜査に関する共助というものをより円滑に進めていく、そのために今回のこうした条約が結ばれたんだというふうに理解をしておりますが、まさにこの条約の交渉中にあった問題が、例の冷凍ギョーザをめぐる中国との一連のやりとりでありました。

 恐らく、こうした条約というものは、仏像つくって魂入れずということになってしまってはいけないわけで、結局、幾ら機構の整備をしたところで、実際に相互の当局同士が、お互いがきちんと相手に協力するんだといったような誠意というか、そういったものをきちんと持っていることが大前提になるんだ、その上で機関間のそういった円滑なやりとりというものを措置して初めて実効性が高まってくるんだというふうに考えております。

 この冷凍ギョーザの案件に関しましては、二月の二十八日に警察庁の長官の会見というものもございましたが、この中で一番ポイントとなった話というのが、日中間でいろいろと捜査協力をして、日本の警察当局としてはいろいろな資料も出していく中で、突如として中国側の当局から、自分たちで浸透実験をして、これはメタミドホスが浸透するんだ、そして、中国内で混入をした経緯というものは恐らく可能性として極めて低いということが一方的に出てきたということもございまして、その直後、警察庁の長官がいろいろと定例の記者会見でも反論をされていたように覚えております。

 この一連のやりとりについて、さらに言えば、この冷凍ギョーザ事件について、日本の警察当局として、中国側の警察当局の対応ということについて今どのように御判断をされているのか、そして、現状、その後どういった進展があるのかについて、警察庁の方からお伺いできればと思います。

米田政府参考人 冷凍ギョーザの事件につきましては、発覚の当初から、これは日中両国間にまたがる問題であると考えまして、中国側に直ちに連絡窓口の設置を働きかけました。相手も直ちにそれに応じまして、以来、さまざまな情報、資料の交換をしているところでございます。

 証拠物につきましては、これはやはり共助の手続によらなければいけないということで、この日中刑事共助条約が成立すれば、捜査当局間でそのやりとりができますので、より迅速にできると思いますが、私どもは、中国に対して、証拠物の提供の用意がある、現在でも共助の手続はとれるわけですから、そのようにしてくれればいつでも渡すということは再三申し向けておりますが、まだ現在、そういう段階には至っておりません。

 それで、中国との関係では、現在まで四回、向こうから来日、あるいはこちらから訪中をして、捜査幹部あるいは鑑定の専門家同士でかなり突っ込んだ協議をしているところでございます。

 そういう中で、先ほど御指摘の二月二十八日の件があったわけでございますけれども、その中の論点で一つ申し上げておきますと、浸透するかしないかということが、中国国内で発生した可能性がある、ないということとは、私どもは全然結びつくものと考えておりません。

 すなわち、千葉市でまさに人が死にかけたような重篤の健康被害が起こりました事案のメタミドホスは、これはもう定量分析ができておりまして、ギョーザのあんの中からも非常に高濃度のメタミドホスが出ておりまして、これはそもそも、浸透しようがしまいが、そんな高濃度のものが袋を通して入るということはあり得ない。それから、兵庫と千葉の二つの事案につきまして、中国を出てから全く別々のルートをたどって、日本国内では全く接点がないということ。それから、使用されたメタミドホスが、極めて純度が低いといいますか、不純物の多くまじったものでございまして、日本国内ではこれは純度の高い試薬しかございませんので、そういったようなことを総合して、日本国内で混入された可能性は極めて低いと私どもは申し上げているわけで、それは、中国側の見解にこちらは納得しているわけではございません。

 現在、日本国内での捜査というのは、やることはほぼ終了しつつございます。いずれにいたしましても、これは日本だけでどんなに頑張っても解決できる問題ではございませんので、私どもといたしましては、中国当局にさらに働きかけ、緊密な連携を図りながら、事件の早期解決に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさにこのギョーザの問題というのは、食の安全、特に子供たちも口にするような問題でありまして、日本国内の関心も、そして懸念も非常に高かった問題であります。そういった問題について、相当真摯な形で日本側としてはきちんと協力をしたいという話もしていたわけでございますし、そして、いろいろと、今の制度上でも手続をすれば証拠のやりとりというものはできるはずにもかかわらず、それを嫌がっているというような、嫌がっていると言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、余り積極的ではない、そんな現状があるわけであります。

 もともと日中の刑事共助条約というものは、日本国内での犯罪の多発だとか、いろいろそういった我々自身の安全の懸念というものが一番大きな動機になった話であります。そういった中にあって、これは相当我々が肝を据えてこの実効性を担保するような措置というものを考えていかなければ、恐らくは、この条約を結んだところで何の意味もなくなってしまうだろう。もしこうした実効性が担保できなければ、条約をそもそも結ぶ意義すら薄れてしまうのではないかということが非常に大きな懸念としてありますし、何としてでもこの実効性を高めるような方策というものを、条約を結んだからいいですということではなくて、実態面として、運用面として図っていかなくてはいけないんだろうと私は考えておるところでございまして、いろいろそういった声も聞くところであります。

 こうした点について、御見解がございましたらお伺いできればと思います。

高村国務大臣 日中間の人的往来は非常に盛んでありまして、交流の増加に伴い、自国における相手国民による犯罪も増加しております。近年の国際犯罪の増加という背景のもと、日中間で刑事共助をより効果的に行うことが日中関係全体の観点から望まれているわけであります。

 この条約を締結する意義の一つは、我が国と中国との間で共助の実施が条約上の義務となる、一方の国から請求する共助が相手国において一層確実に実施されることを確保できる点にあるわけであります。被請求国は、条約第三条に定める、共助を拒否できる場合に該当しない限り、請求された共助を実施する義務を負うこととなりまして、刑事共助が迅速かつ着実に行われることとなることから、日中間の共助の実効性は高まることとなると思います。

 この条約の締結によって、両国で中央当局を指定し、共助の実施のための連絡を従来の外交ルートではなくて中央当局間で直接行うことが可能になるため、刑事共助の効率化、迅速化が期待できるわけであります。

 そして、この条約の発効後、この条約に基づく共助の実施について日中間で協議をする必要が生ずる場合、条約第二十条に基づいてこのような協議を行うことにより諸問題の解決を図るということになっております。

 このような面からも、この条約の実効的な運用が担保されることになる、そういうふうに考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 条約上の義務になるということで、恐らく一歩進展をする可能性も高いのかと思いますが、同時に、そうした除外の規定という中に、ちょっと細かい文言は忘れましたけれども、いろいろ、国内事情にそれぞれ配慮する、そういったクローズもたしかあったかと思います。そういった中では、相当我々も肝を据えてこの実効性を高める努力というものを引き続き運用ベースでやっていく必要もあると思いますので、ぜひともそういったところについては関係当局にお願いできればと思っております。

 次に、多少これは今回の案件とは外れる話でありますけれども、きのうになりますか、今回の胡錦濤主席の来日に関連してかと思いますが、東シナ海のガス田問題に関する協議というものが行われていたという報道を耳にしております。この中での現在の進捗状況、あったのかないのか、そういった点についてお伺いできればと思います。

高村国務大臣 東シナ海の資源開発問題を解決し、日中間をさらに発展させたいと私は考えているわけであります。昨年末の福田総理訪中時の首脳会談におきましては、この問題を一刻も早く解決するとの断固たる決意のもとで協議を継続していくということが確認されているわけであります。私自身も、二月に訪日したトウカセン国務委員等に対して、中国側の政治決断を求めているところでございます。

 十四日から十五日にかけて薮中次官が訪中し、王毅外交副部長との間で意見交換を行いました。日中関係全般について行ったわけでありますが、とりわけ、来る胡錦濤国家主席訪日の準備について有益な意見交換が行われたわけであります。その中で、東シナ海資源開発問題についても有益な意見交換が行われ、引き続き問題解決に向けた努力をすることで一致した、そういう報告を昨日北京で受けたわけであります。

 私としても、引き続きこのような努力を継続させていく考えでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 非常に難しい交渉だとは思います。そして、関係の皆様の御努力には心より敬意を表するところでございますが、この問題は、恐らく、一致をしているのは共同開発をするということであって、海域については相当な乖離があって、それが埋まりそうな気配が、ここ数年間の交渉で、そこまで盛り上がってきていないのが現状なのかと思っております。

 交渉相手も、王毅さんもずっと日本におられた方でございまして、双方の主張の違い、あるいは何が問題なのかということが、恐らくそこはお互いの理解ということはできているんだろう。ただ、どういう方向に持っていくか、そういった実際の交渉面で政治的な決断が、決着ができていないという状況に恐らくあるんだろうと思っておりますが、ここはさらに一歩、もしお答えをいただければと思うんですが、これまでと同じような条件のもとで、同じコンディションで交渉をしていって、果たしてこの決着ということができるのか。これまで数年間、相当全身全霊を傾けた交渉を皆様でされていて、大臣もそういった形でされているんだと思いますけれども、そうした見通し、めどというものについてどのようにお考えなのか、もし御所見がございましたらお伺いできればと思います。

高村国務大臣 極めて難しい交渉であると。ただ、これは、共同開発ということで、とりあえず妥結しなければいけない話であります。それは精力的にやっていて、私は余り悲観的ではありません。いつまでにということになると、これはまだいろいろありますけれども、できるだけ早くということで、余り悲観的ではありません。ただ、まだ乗り越えなきゃいけない問題が残っている、こういうことであります。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさに非常に難しい問題でございまして、なぜ難しいかといえば、そもそもがEEZの境界の問題にも非常に大きくかかわってくる問題であって、中国の当局としても、ほかの、軍事面とかいろいろな行動を見てみれば、純粋にガスの問題だけではないがゆえに難航している部分もあるんだろうというふうなことは、恐らくは容易に推測ができるところだろうと思っております。

 その境界の画定というところで申し上げれば、一点、これは報道にも出ていた話でありますけれども、一つ興味深い、中国当局もサインをしている文書、外交合意でベトナムと中国の間の境界の画定事例というものが、トンキン湾、海南島の周りの事例であるわけでございます。

 ちょっと私も手元にそのときの合意文書を、中国語から英訳をしたというものがあるんですが、これは二〇〇〇年の十二月二十五日に北京で中国とベトナムの当局が合意をしている文書で、中身というのが、このトンキン湾の境界画定について、長年のいろいろな意見の対立だとか交渉の結果妥結をしたところでありまして、その中に、アーティクルワンというところの中に、第一章のところで、要は、一九八二年の国連の海洋法の会議の見解に基づいて、そしてその見解というのは国際法上あるいは過去の判例上非常に一般的なものであるという言及までつけて、今回はそれに基づいた境界の画定をするんですということをベトナムと中国の双方から言っているわけであります。

 そして、その結果どういった形のものが出てきたかといえば、大体中間線に近いような形で交渉が妥結をしているということがあるわけでありますけれども、この事実関係についてお伺いをできますでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、中国とベトナムとの間では、トンキン湾における境界画定ということを二〇〇〇年に署名がされまして、これは二〇〇四年の六月三十日に発効しております。

 また、御指摘のとおり、同協定の条文、一条でございますけれども、国連の海洋法条約等に基づき、すべての関連する状況を十分に考慮に入れて、衡平の原則に従い境界を画定したという文言も見られます。

 ただ、具体的にどのように境界を画定した、その方法については、この協定の中には盛り込まれていないというふうに承知しております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 ただ、この第二条の中で、実は、これは幾つものポイントを結ぶという形で境界を画定しておりまして、その緯度、経度がばあっと二十一にわたって出ていて、そして、それを結んだ形での境界の画定ということをしているわけであります。これは客観的に見れば、両方からほぼ同じ距離のところでの境界の画定をしておるというところでございまして、これは中国もサインをした公式の文書でありますので、恐らく、今後の日中間の交渉においてもこれは一つの先例として、しかも中国自身がサインをしている文書の中で国際条例に基づけばというようなことを言っておるわけですから、一つ材料になるのかなというふうに思っております。

 そういった意味で考えれば、これから日中間のEEZの画定、非常に大変な交渉だと思いますし、これから一山も二山もある交渉だと思いますが、こうした過去の前例というものも参考にしながら、いろいろと御努力をお願いしたいと思っております。

 最後の問題になりますが、今非常に、聖火リレーの大混乱もございまして、チベット問題に対して、各国、欧米を中心に大きな反発というか、人権問題にしっかり取り組むような形で中国政府に対して対応を求めるような声というものが非常に出てきておるわけであります。

 そうした中で、中国の今度の夏のオリンピックについて言えば、私も実はいろいろとスポーツをやっている人間ですから、オリンピック自体についてはどうこう言うつもりはありませんけれども、その開会式についていろいろな意見が各国から出ているところだと思っております。いろいろな諸外国のスタンスとして一番あるのが、特に何もコメントしないけれどもあらゆる可能性を排除しない、そういった形のことをおっしゃっている首脳も何人かおるようでございますけれども、今、日本の政府として、外交当局として、こうした、あらゆる可能性を排除しないという形の御見解なのかどうかについてお伺いできますでしょうか。

高村国務大臣 我が国としては、北京オリンピックの成功を期待しているということでございます。

 我が国を含む国際社会が懸念を持ってチベット情勢を注視しているところでございますけれども、オリンピックへの影響が出ないようにするためにも、国際社会の関心を踏まえ、透明性を持った対応がなされることを強く期待しているわけであります。

 北京オリンピックの開会式への我が国要人の出席については、現時点で何ら決まっていない、こういうことでございます。

鈴木(馨)委員 現時点で何ら決まっていないと、非常にお含みのあるお答えだというふうにお伺いをいたします。

 本当に、恐らく、外交はいろいろすべて交渉事でございますので、これは非常にセンシティブな問題でもございますし、ただ、一つ私も思いますことは、あらゆる外交交渉において、可能性というものをみずから狭めることは恐らくはないんだろうというふうに思っております。

 そして、それは硬軟両様いろいろな対応というものが未来の条件によっては出てくるわけで、そして、その中のどれを選ぶかというのは、それは最後の最後のタイミングまで恐らくはオープンにするべきではないし、含みを持たせた状況というものが、一番外交的な交渉上は有利に働くことも多いのかなというふうな感覚を、いろいろな研究をする中で持っております。

 これまでも日本政府としてはそうした対応をされてきていると思いますが、そういった形できちんと、長期的な国益に資するような形の外交を今後とも高村大臣の指揮下で続けていっていただきたい、そう思っております。

 どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 大臣におかれましては、大変タイトなスケジュールの中、ロシアを訪問されまして、本当に御苦労さまでございました。本日は条約についての質問の場所ですので、また一般質疑の時間をいただいた際に今回の訪ロの成果等についてぜひお伺いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、本日、当委員会で議題になっております三つの条約につきまして、それぞれ、時間の許す限りでございますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、日中刑事共助条約でございますけれども、日本とほかの国におきましての刑事条約は、アメリカ、そして韓国に続いて、中国が三カ国目ということになります。

 現在、日本と中国におきましては、既に外交ルートを通じました刑事共助というものが行われておりまして、平成十一年から十九年までの八年間のデータでございますけれども、往復二十九件の共助がなされております。この内訳でございますが、中国からの請求によりますものが五件、我が国からの請求によるものが二十四件と、この数を見ても、やはり今回のこの条約を早期に締結するということが我が国の捜査の状況にとって非常に利益になるというふうに思い、賛成の立場から質問をさせていただく次第でございます。

 実際に、現在ある外交ルートを通じた刑事共助と、また、条約を締結した後の刑事共助という実態がどのように変わって、どのようなメリットが出てくるのか、この点についてまず御説明をしていただきたいと思います。

 例えば、具体的に説明をしていただくと大変にわかりやすくてありがたいんですけれども、捜査についてですので、なかなか具体性というのはおっしゃっていただけないものかと思いますが、何といっても、今、日中の間で捜査といえば、やはりギョーザの薬物混入事件でございます。

 報道によりますと、今まで、日中間の捜査において、外交ルートを通じた刑事共助で情報交換が行われていますが、求めた情報がなかなか得られないという実態があるような報道もされておりますし、また、日中間で捜査の加速化ということを合意したわけでございますが、なかなかそこは、実態を見ると、加速度をつけて捜査が行われているというふうには私たちには思えません。

 この刑事共助条約を締結した際にはどのようなメリットが生じてくると考えているのか、この点についてお伺いをさせていただきます。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 日中刑事共助条約を締結することによってどれだけのメリットがあるか、なるべく具体的にという御質問でございました。

 先ほど、鈴木委員からの御質問、日中刑事共助条約の意義についての質問に対して高村大臣の方から答弁いたしましたけれども、この条約の締結によりまして、日中両国で中央当局を指定します。その結果といたしまして、その中央当局間で直接行う、従来であれば今の法律に基づきまして外交ルートで行っていた連絡を直接行うことができるようになるということは、少なくとも、日中間におきまして、共助の要請及び共助の結果得られた証拠の送付など、これらが中央当局間で直接行われることになりますので、刑事共助の効率化、迅速化が期待できるということはおわかりいただけると思います。

 中国との関係で具体的にどうかという点について、なかなかお答えしにくいわけでございまして、過去に日本が結んでおりますアメリカあるいは韓国との刑事共助条約の関係でどうなったかという点で御説明させていただければ少しは参考になろうかという気がいたします。

 日米間及び日韓間双方につきまして、条約締結以降、やはり共助請求の件数というのは条約発効直前の件数を上回っておりまして、日中刑事共助条約につきましても、その発効後につきましては同様の効果が期待されるのではなかろうかというふうに思っております。

丸谷委員 今御説明をしていただいた中から理解をするところ、従来ですと、今までですと、外交ルートを通じていろいろなことから始めなければいけなかった、捜査のお願いをしなければいけなかった、それが、直接やりとりができるようになるので、時間的に短縮化というか迅速化が望めるということであろうかと思います。

 捜査の確実性とか義務の重さについてはいかがなんでしょうか。情報提示を求めたときに、それが、今ではなかなか得られないものが得られるようになると期待していいのかどうか、この点についてはいかがですか。

猪俣政府参考人 先ほど、これも高村大臣の方から、もう一点の説明として、この条約を締結しますと、我が国と中国との間では共助の実施が条約上の義務になるというお答えもしたと思います。ですから、一方の国から請求する共助が相手国において一層確実に実施されるということを確保することができるということは言えると思います。

 ただ、具体的に、この情報について、特定の情報について、この条約を締結したから確実に得られるかどうかというのはまた別の問題だと思いますけれども、ただ、今あるものに比べますと、当然のことながら、条約上の義務ということでございますので、確実性は増すというふうに考えております。

丸谷委員 国会の中で条約の審議が行われている、今国会でもたくさんの条約の審議を行っているわけなんですけれども、国民の皆様の生活と直接、ダイレクトにつながっているものは、条約というものは余り多くございません。ただ、今回、ギョーザの問題がありまして、日中刑事共助条約については本当に関心が高いわけですし、この条約を締結した後の確実性、また迅速性、効率性というのを高めていくために努力をしていただきたいと思います。

 この刑事共助条約につきましては、我が国は、日中で三カ国目ということでございますが、条約を締結している数を見てみますと、ほかの国に比べて少ないなという気がいたします。アメリカにおきましては五十三カ国、韓国では十四カ国、署名済みを含めれば二十カ国になる見込みだそうでございます。中国は三十五カ国、署名済みを含めれば四十三カ国の見込みということでございます。

 我が国としましては、今後、香港ですとかロシアとの間でも刑事共助条約を締結する運びになっているというお話は聞いているところでございますが、我が国で犯罪を犯した犯罪者が逃亡する先として比較的多い地域、例えば東南アジアであったりとか、あとはブラジル等、そういった諸国を中心に積極的にこの刑事共助条約の締結に向けて動いていくべきかと思いますけれども、この点について、御所見はいかがでしょうか。

高村国務大臣 近年の国際犯罪の増加に伴いまして、捜査、訴追その他の刑事手続に関する国際的な協力の重要性が高まっていることにかんがみて、政府としては、米国、韓国及び中国以外の外国等との間の刑事共助条約の締結についても積極的に検討していくこととしております。

 現時点では、御指摘のように、我が国は、香港及びロシアとの間で刑事共助条約の締結に向けた交渉を開始し、締結に向けた作業を行っているところでございます。香港との間の協定につきましては、既に条文テキストについて実質的な合意に達しており、双方において所要の手続が整い次第、署名を行う予定でございます。

 今後、どのような国との交渉を開始するかについてでありますが、各国・地域との間の過去の共助実績、経済的、社会的結びつき、二国間関係等を総合的に勘案の上、判断していくこととしております。これから積極的に検討していきたいと思います。

丸谷委員 ありがとうございます。

 国内での治安対策もそうでございますけれども、やはり、こういった国際的に逃亡犯が逃げてしまった場合、海を越えて逃げてしまった場合の刑事共助条約等は、積極的に結んでいただくことによって国民の安心、安全ということも得られることにつながると思いますので、ぜひ御検討をお願いします。

 では、続きまして、日・インドネシアEPAについてお伺いをいたします。

 このインドネシアのEPAは、フィリピンに続いて人の移動が対象となっているEPAでございます。日・フィリピンのEPAの際にも、私は人の移動について大きな懸念を示してまいりました。インドネシアも介護福祉士また看護師を受け入れる見込みになっておりますけれども、やはり、依然、日本に入国をしていただいてから六カ月の日本語研修を受けて、そして、国家試験を日本語で受けて合格した方が働けるという制度は変わっていないんですね。国家試験に受かるぐらいの日本語の能力の習得が、日本に来てからの六カ月と実地研修でできるものですかという意見を以前フィリピンのときに言わせていただいたわけでございますが、インドネシアに関しても状況は同じでございます。

 今回、この日・インドネシアEPAを結ぶ際に、特に人の移動について、日本語教育の重要性というのをどのように認識して交渉して、そしてこれに反映したのか、この点についてお伺いいたします。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、インドネシアから看護師、介護福祉士の候補者の方々を受け入れる、その場合におきまして、日本に来られてから六カ月間、日本語を中心に研修を受けていただくということになっております。このことにつきましても、EPAの協定の条文において盛り込まれているところでございます。それで、この六カ月間の日本語を中心とする研修の間に、大体今、カリキュラム上、六百七十五時間日本語の研修を実施する、そういう内容になっております。このようなことによりまして日本語の習得が相当程度進むであろうというふうに考えておるところでございます。

 また、その後、受け入れ先の病院ですとか介護施設等におきましても、さらに継続的に日本語の習得というものがなされるということが期待されておるところでございます。

 このような形で、最終的にはそれらの方々が日本の国家試験を合格できるように、そういうふうになっていくということを期待しているところでございます。

丸谷委員 以前、私もポーランドの大学で日本語教師をさせていただいたことがあるんですけれども、非常に語学の才能がある生徒でも、やはり、コミュニケーションツールとしてしゃべることというのと、日本語は漢字も平仮名も片仮名もあるわけで、それを読んで、理解して、自分で書いてという国家試験をパスする能力というのは全然違うわけですね。そう簡単にはいきません。

 また、看護能力というのと、看護に向いている人、向いていない人もいると思いますが、語学の習得に向いている人、向いていない人というのも、実際には、いると思います。ですから、日本に来てから試験を受けて、あなたは介護の能力はあるけれども日本語がだめなので働けませんから帰ってくださいということが、実際に人の移動についてそのようなことを行ってしまえば、お互いの感情に禍根を残すことにつながってしまうおそれが十分にあるわけですね。

 ですから、日本にみんな入れてしまう前に、まずフィリピンなりインドネシアなりでしっかりと日本語教育を、日本語の試験を通るぐらいの能力をつけていただくということが第一段階なのではないかと引き続きインドネシアについても思うわけでございまして、この点は、以降、何ら改正はされていないようでございますので、この点については本当に心配するところでございます。

 フィリピンは既に締結されていますから、ではフィリピンの状況がどうなのかということをお伺いしたいと思っておりましたが、実際にはフィリピンは、日本は締結しましたが、フィリピンの国会で日・フィリピンEPAが承認をされていないので未発効ということになっております。日本における日本語教育の予算もしっかりと来年度予算の中でつけているわけでございますけれども、それも施行されないままに、条約は発効されていないという状況なわけでございます。

 この日・フィリピンEPAについては、何の問題点があって、どのような審議がなされ、今発効されていないのか、この点について御説明願えますか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日・フィリピンEPAにつきまして一昨年の九月に署名をしたわけでございます。日本の方は、おかげさまで一昨年の十二月に国会の御承認をいただいておりますが、フィリピンの方は、上院での承認が必要でございますが、現在までのところ、フィリピンで九回公聴会が開催されておりまして、その中におきまして、貿易と投資全般、人の移動、環境への影響、それから憲法との関係、そういったような論点について議論がなされておるというふうに承知をしております。

 フィリピン政府の方も、このEPAの重要性は認識して、フィリピン上院において承認が得られるよう努力されているというふうに承知をしているところでございます。

 私どもといたしましても、フィリピン国内の手続というものは尊重しなければならないところでございますけれども、フィリピンの上院において速やかに審議、承認が終わる、それによりまして日・フィリピンEPAが早期に発効するということを期待しているところでございます。

丸谷委員 今の御説明の中でございましたけれども、人の移動についても公聴会が行われております。どういった意見が出ているのか、この点と、あと、フィリピン上院での締結の見通しについてお伺いいたします。

田辺政府参考人 フィリピンの上院での議論におきまして、人の移動に関しまして、看護師の方々が日本に入ってこられてからどういう状況で研修がなされるか、そういった研修のときの条件とか状況につきましていろいろ細かな議論があったというふうに聞いておるところでございます。

 それで、フィリピンの上院の承認、そして発効がいつになるであろうかということでございますけれども、これは、フィリピンの国内の政治的な状況によるところでございますので、私ども、なかなか予断を持って予測しにくいわけでございますが、現時点では、四月の下旬にちょうど休みを終えた次の会期が始まるところでございますので、その会期中に審議、承認がなされればということで私どもは期待をしておるというところでございます。

丸谷委員 今の御答弁ですと、見通しが立っているときはもうちょっと積極的な御答弁があるので、今は本当にわからないという状況なのかなというふうに受けとめているわけでございます。

 これはバイでの協定になるわけですので、私たちも、国内でバイの協定、条約について審議をする際に、相手国の思いですとか期待値というものを勘案して議論し、締結することは間々あります。そのとおりに既に日本で締結をしているもの、予算づけもしているものについて、フィリピンに対して、国内での、上院での承認というのを早く求めるような、そういったメッセージは送っているものというふうに思ってよろしいですか。

田辺政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、私どもは一刻も早いフィリピン上院での承認、発効を望んでおるところでございますので、私どもからフィリピン政府に対しましてさまざまな働きかけを行っておるところでございます。現地、在フィリピンの日本大使も、フィリピン政府あるいはフィリピン上院の議員の方々に対して丁寧に説明をして回っておるところでございますし、また、日本にいらっしゃいますフィリピンのシアゾン大使も、これも一生懸命にフィリピンの国内の上院議員の方々や政府の方に働きかけを行っておるというところだというふうに認識しております。

丸谷委員 ありがとうございます。

 日・インドネシアEPAについては最後の質問になるんですけれども、EPAには知的財産保護対策というのが盛り込まれております。特にインドネシアにつきましては、二〇〇五年の国際レコード産業連盟の調べによりますと、海賊版の音楽ディスクが横行する国々という調べの中で、インドネシアがトップになっています、八八%。中国が八五%、次のロシアが六七%ということで、インドネシアでの海賊版のレコード、音楽ディスクというのは非常に多く製造をされているわけでございまして、今回EPAを締結したことによって知的財産保護対策というのが強化されることを願うところでございます。

 既にマレーシアとかタイにおきましてはEPAを締結しているわけでございまして、知的財産保護対策についてどのような効果が期待できるのか、この点についてお伺いいたします。

石川政府参考人 お答えいたします。

 まず、日・インドネシアEPAの知的財産章でございますけれども、この中に、知的財産の十分効果的かつ無差別な保護、知的財産保護制度の効率的な、かつ透明性のある運用、侵害等に対する知的財産権の行使のための措置、こういった措置が盛り込まれております。これによりまして、我が国の国民、企業の保有する知的財産、これがインドネシアにおいて効果的に保護されることがこの協定によって期待されるということでございます。

 それから、協定を離れまして、インドネシア側においてもいろいろな取り組みをしているというふうに聞いております。日本政府といたしましても、個別の知的所有権侵害があった場合には、その都度あらゆる機会をとらえて申し入れを行っております。

 また、日本とインドネシアの間では、官民合同フォーラムというのが二〇〇四年からできております。ここの中でも、いろいろな提言を知的所有権についていただいております。さらにまた、知的所有権制度の拡充のためのJICAの専門家の派遣、あるいはインドネシアからの研修員の受け入れといった形で、日・インドネシアのバイのフォーラム等の中でもいろいろな協力をしているというところでございます。

 最後に、マレーシアにつきましては、日・マレーシアEPAにおきまして、知的財産に関する小委員会というのが盛り込まれております。模造品につきましての意見交換を最近行ったところでございます。それから、タイにおきましても同様の小委員会の規定が設けられておりますので、こういう委員会を活用して知的所有権の保護に万全を期していきたいと思っております。

丸谷委員 インドネシアにおきましては、デザイン創作の特徴の部分を有効に保護していくという意匠制度というものがそもそもありません。今回の日・インドネシアのEPAにおきましては、今までの知的財産保護対策よりももっと厚みのある内容で項目の合意がなされておりますよね。その中で、類似意匠の保護及び部分意匠制度の導入というものがありますが、これをより項目を多くして細やかな知的財産保護対策をとることによってその効果も多くなるから合意をされているわけなんですが、今まで結んできたものですとかこれから結ぶものについて、大体このレベルでやっていこうというお考えをお持ちなのかどうかについてはいかがでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、インドネシアとのEPAにおきまして、知的財産権の保護の範囲につきまして、これは国際的なルールといたしましてはTRIPsというWTOのルールがあるわけでございますが、それ以上の内容のものを日・インドネシアEPAにおいては協定で合意したところでございます。現在交渉中、あるいはこれから交渉を行うEPAがあるわけでございますけれども、そういう中におきましても、可能な限り水準の高い知的財産権の保護というものを協定の中に交渉して合意していきたい、そういうふうに考えております。

丸谷委員 続きまして、最後に日・ブルネイEPAについてお伺いをいたします。

 今国会の提出を検討していました日・ASEAN・EPAにつきましても、近々閣議決定の見込みというふうに聞いております。ブルネイに直接関係ないんですけれども、アジア各国とのEPA、今積極的に我が国としても行っているところでございます。その中で一つ、広域経済連携構想というのが多く出てきているわけでございまして、例えば日・ASEAN・EPAが締結をされるとASEANを中心にしたEPAというものがそれぞれでき上がって、我が国が推進をしています東アジアEPAというのが実質的には実現可能な状況に極めて近づくのではないかと期待するところでございます。

 ASEANは日本と今後EPAを結びますよね。ASEANは既に中国、韓国とEPAを結んでおります。今、交渉中がインド、豪州、ニュージーランドということで、これも近々締結の見込みというふうに聞いておりますので、既に、東アジアEPAというのはASEANプラス6、六カ国、日本、インド、豪州、ニュージーランド、中国、韓国ということですから、東アジアEPA構想が実現しない理由というのがなかなか見つからない状況になっていて、これは我が国にとっても推進をしてきたという自負がありますから大きな成果にはなると思うんですが、この東アジアEPAについての今の検討状況と取り組み状況について政府の説明を求めたいと思います。

高村国務大臣 広域経済連携については、現在さまざまな構想が検討されているところでございます。

 御指摘の東アジアEPA構想については、我が国が提案した東アジア包括的経済連携構想の民間研究の報告書が本年夏に取りまとめられ、関係国首脳、閣僚に提出予定となっているわけであります。さらに、東アジア自由貿易圏構想やアジア太平洋の自由貿易圏構想についても検討が進められているところでございます。

 このような中で、我が国として国際社会の安定的な成長に寄与していくために、東アジア及びアジア太平洋地域における経済連携の枠組みの研究や検討において世界経済、貿易に与える影響や関係各国の考え方を踏まえ、これら各国と協議しつつ、積極的な参加及び貢献を行っていく方針であります。少しずつ近づいている、こういうふうに思っております。

丸谷委員 そこで日・ブルネイのEPAなんですけれども、東アジア共同体というものが近い将来見えてきた。こういった経済活動の中で、今回日・ブルネイEPAの締約を機に、ブルネイを資源国としてだけ見るのではなく、日本にとって物流とか海の安全確保、シーレーンの安全確保等は非常に重要な問題で、このブルネイというところを考えたときに、例えばマレーシアとかインドネシア、フィリピン、さらにベトナムにほぼ等距離にあるのがブルネイですので、ここのブルネイというのを一つのハブとして考える。また、ブルネイは自然災害が少ないところでございますし、深水港を備えているということで非常に海の物流としても日本にとっては有益な地域であることを考え、また今後の東アジアでの経済活動の状況を見きわめ、日・ブルネイEPA締結を機に、このブルネイをハブ化していくということ、それを日本が後押しをしていくということも、日本にとって国益にかなう考え方と私は思うわけでございますけれども、この点についてはいかがお考えでございましょうか。

高村国務大臣 我が国企業が急成長するアジア各国に生産拠点を確立していく中、東アジア全体に切れ目ない物流ネットワークを構築していくことは、我が国とアジア各国双方のさらなる成長にとって重要な課題の一つであると認識をしております。

 一方で、我が国としては、東南アジア各国とのEPAや、先般すべての国による署名が終了した日本・ASEAN包括経済連携協定の早期発効等を通じて、ASEAN諸国との重層的な経済連携の一層の緊密化を進めてきたわけであります。このような経済連携の強化や物流ネットワークの強化に向けた協力を通じて、我が国としては、成長著しいアジアの中にある強みを生かして、アジア、世界との間の人、物、金、情報の流れを拡大しつつ、アジアとともに成長していきたいと考えているわけであります。

 ブルネイだけを特別にどうという、ブルネイを中心としたものもあるかもしれないし、あるいはシンガポールを中心としたものもあるかもしれない、そのほかの国を中心としていろいろあるかもしれない、いろいろ重層的に考えていきたい、こういうふうに思っております。

丸谷委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 本日は議案が三件ありますけれども、私は、日本とインドネシアのEPAについて主に質問をしていきたいと考えています。

 個別の内容に入っていく前に、その前提となる基本的な考え方を中心にまず大臣にお伺いをしていきたいと思うんです。

 このインドネシアとのEPAあるいはブルネイとのEPA、東アジア共同体づくりに資するというお考えを多分持っていらっしゃるんだろうと思うんです。私は、東アジア共同体というイメージがちょっとよくわからないところがあるんです。その理念と範囲をぜひお伺いしたいと思うのは、共同体というのはコミュニティーでございますから、コミュニティーということは、歴史、文化、宗教、あるいは民主主義や人権というような問題の価値観、そういうものが共有できて共同体だと私は思うんです。

 EUの歴史を見ると、さきの大戦の後から、石炭や鉄鉱石で共同体づくりが始まり、EECになり、ECになり、EUになりと、やはり数十年の歩みを持って今のEUができました。しかし、東アジアで考えてみると、民主主義の発達段階も違うし、市場経済の発達段階も違うし、歴史や文化を含めて、共同体まで展望するというのはどうなのかなと。EPAやFTAは、これはどんどんやるべきだと私も思います。その意味での経済における連携強化というのは大いに図るべきだと思うんですが、共同体というのはどういうふうに展望されるのか。

 これは、高村大臣も外交演説で、東アジア共同体を視野に入れとかというお話をたしかされたと思うんです。大臣の東アジア共同体の理念、そしてその範囲。範囲というのは、よくここで議論になるのは、アメリカに対してもオープンにするのかどうかという大事な議論もあると思うんです。この辺の大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 東アジア共同体の形成でありますが、これは極めて長期的な目標というふうに思っております。

 その具体的なあり方については、今後、関係国間で議論を深めていくことになるわけであります。今は、将来の東アジア共同体の形成を、私は「視野に入れ、」という言葉を前も使っているわけでありますが、視野に入れ、地域各国で一致して共通の課題に取り組んで、地域全体の平和、安定、繁栄を目指していくことが重要であります。

 我が国としても、東アジア首脳会議、EAS、あるいはAPEC、ASEANプラス3、各種枠組みを重層的に活用する。環境・気候変動やエネルギー安全保障、青少年交流等の協力を積極的に進めていきます。こうした地域協力の具体的な取り組みを通じて、豊かで安定し、開かれた東アジア地域の実現に貢献していく考えであります。

 委員、経済的な枠組みはよくわかる、こうおっしゃいました。まさに、経済的枠組みからまず始まって、そういう中で、我々は、それぞれの国に、自由主義だとか民主主義だとか基本的人権だとか、あるいは、まさに経済の枠組みですから市場経済とか、そういうものが、だんだんだんだんレベルを各国が上げていくことを期待していますし、そういう中で、最初からこの範囲とかそういうことを余り確定的に言わないで、長期的目標として、できる経済的なことから始めて、そしてつくっていきたい、こういうふうに考えております。

野田(佳)委員 私も、だから、余り肩ひじ張って、制度の枠組みからどんといくよりは、経済や文化の交流を通じて着実にその関係を深化させていくということであるので、むしろ、余り安直に共同体、共同体と使わない方がいいのではないか。それはまさに数十年の展望の話になるんですよね。

 本当に共同体をつくるとするならば、例えば、お互いにミサイルを向き合わせているような関係で共同体なんかつくれるはずがありませんから、これは、あくまでやはり経済に絞りながらそこの機能を強化していくという視点が大事ではないかと思うし、やはり、まだ東アジアの中にも独裁国家もあるわけですから、安易に共同体というのは使えないはずではないかなと私は思っております。

 では、EPA、FTAについては、これからどんどんと、それこそ重層的に、二国間とか多国間で締結を推進させていくべきだと私は思うんですが、これは、基本的には、WTOの交渉が行き詰まっている中で、こういうEPA、FTA、世界各国が懸命に加速させてきていて、世界じゅうで今百四十件ぐらい案件があるんでしょうか、その中で、日本・ブルネイが七番目、日本・インドネシアがたしか八番目ですよね。日本はスピード感から見ると少しおくれているのではないかと思うんですけれども、我が国のEPAそしてFTA、どのように対外経済政策において位置づけておられるのか、御説明をいただきたいと思います。

高村国務大臣 EPA、FTAでありますが、経済のグローバル化が進む中、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制を補完するものとして、我が国の対外経済関係の発展及び経済的利益の確保に寄与するものと位置づけているわけであります。

 すなわち、WTOが世界規模で貿易自由化を推進し、ルールを設定するのに対して、EPA、FTAは、このようなWTOの枠組みを尊重しつつ、二国間あるいは限られた数の国の間でさらなる貿易の自由化や経済連携を進めようとするものでございます。我が国として、WTOとこれを補完するEPA、FTAをともに積極的に推進していく、こういう考えでございます。

野田(佳)委員 その中で、戦略的な位置づけとしてどうしても欠かすことのできない存在は、やはり韓国だと私は思うんです。先進国同士が隣り合わせてEPAを結んでいないのは日本と韓国だけという話でございますので、過去に交渉が頓挫したことはありましたが、新しい大統領も日韓EPAについては理解を示されているようですし、さきに福田総理がソウルに行かれたときも、予備交渉を始めるという合意はされたと聞いていますが、その後どうなっているのか。そしてまた、二十日、二十一日と李明博大統領は来日をされますが、そのことも大きな機会としてとらえて、日韓EPA交渉を本格的に再開させていくべきだと思いますが、見通しを御説明いただきたいと思います。

高村国務大臣 おっしゃるように、隣り合う先進国であります。東アジアの経済リーダーである日韓が経済連携協定を締結することは、両国の関係強化のみならず、東アジア地域の経済連携の促進にとっても重要であるわけであります。

 今月四日の日韓外相会談におきましては、二月の日韓首脳会談で交渉の再開につき検討していくことになったことを受け、予備的な協議を早期に開催しようと、日韓双方で調整していくことを確認しております。現在、両国間でさまざまな方法で日韓EPA交渉の再開について検討を行っているところであります。

 一回頓挫していますので、また本格的交渉が頓挫するなんということにはならないように、きっちり予備的交渉をして本格交渉をすれば、かなりの速度を持っていくような、そういう考えを両国で共有しているところでございます。

野田(佳)委員 特に、これまでの経緯を見ると、農水産物あたりが大きな隔たりがあったようでございますので、細かいことは申し上げませんけれども、やはり今度は、成功裏に導くために、予備交渉をしっかりさせた上で、これはウイン・ウインの円満な関係ができるように、ぜひ御努力をいただきたいというふうに思う次第であります。

 EPAの工程表を見ますと、これから、ベトナムとかインドとかオーストラリア、スイス、GCC、いろいろ、先ほど副大臣が御説明をされたようなスケジュールがあると思うんですが、今申し上げた韓国は、アメリカであるとかあるいは中国であるとかEUであるとか、こういう大きな経済圏を相手に、これは同時多発的FTAの推進という方針らしいんですが、大変大がかりにやっているようですよね。

 例えば、EUと韓国の交渉が妥結をしたような場合、そして発効するような状態になったときに、EUは家電とか自動車等の関税が高いですから、欧州市場においては韓国と日本との競争力に大きな差が出てくる可能性もあるだろうと思うんです。そういう意味からも、日本も大きな経済圏とのこういうEPA、FTAの交渉を、やはり、検討課題から、そろそろ具体的にスタートしていく段階ではないかと思うんです。

 そこで、具体的に、例えば日米、日・EUのEPAの意義を外務大臣としてはどのようにお考えなのか、御認識をお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

高村国務大臣 日米間、日・EU間の経済関係は、貿易や投資はもちろんのこと、人や情報の往来も含めて、全分野において高度に深化したものとなっているわけであります。

 また、経済社会分野の二国間条約は、二国間における成長のための日米経済パートナーシップ、日本・EU間においては、日本・EU規制改革対話等、現在でも日米経済関係、日・EU経済関係をさらに深化させる枠組みが多く存在しているわけであります。

 米国及びEUを含めた大市場国及び投資先国との取り組みについては、諸外国の動向を、これまでの我が国との経済関係及びおのおのの経済規模等を念頭に置きつつ、将来の課題として検討を進めてまいります。

 また、日米、日・EU経済関係のさらなる発展を促すような基盤を整えていく方策は何かについて、民間で行われている議論も踏まえつつ、引き続き真剣に検討を進め、可能なものから米国、EUとともに準備を進めていく考えであります。

 委員がおっしゃったように、韓国はやっているぞ、競争力に差がつくぞ、そういう観点ももちろん頭に入れながら、検討を進めていきたいと思います。

野田(佳)委員 ぜひ力強く推進をしていただきたいと、改めて要請をさせていただきたいと思います。

 そこで、きょうの議案の一つである日本とインドネシアの経済連携協定の質問に入っていきたいと思うんですが、その前に、我が国の外交戦略上インドネシアをどう位置づけているかという基本的なお尋ねをしたいと思うんです。

 確かにインドネシアは、バリ島でテロがあったり、鳥インフルエンザが心配だったり、ガルーダ航空はよく落ちたり、いろいろな心配なことはいっぱいあるんですけれども、二億二千万、三千万という東南アジアでは最大の大国でございますし、世界一のイスラム教国である上に、とても親日的な方が多い国でございます。

 私も民主党の日本インドネシア友好議員連盟の会長をしているんですが、とにかく日本びいきで、ある種、まあ皆さんとこの感情を共有するかどうかはわかりませんが、私の感情とインドネシアの皆さんとの感情を共有できるのは、アメリカに対してもちょっとついていくのはつらいな、中国は脅威だなという国民感情もほぼインドネシアの方と私は共有できるような関係でございまして、その意味では、しっかりとしたパートナーとして深く深くおつき合いをしていきたいなと。

 これまでODA等の経済援助も相当やってきたし、累積の投資は日本は世界一貢献をしているわけでございますし、インドネシアにとっては日本は貿易の最大の相手国でもございます。

 加えて、特にLNGは日本に一番供給をしてきた国ですね。原油は中東からマラッカ海峡を通ってくるものがほとんどという中で、大変地政学的にも重要な位置にあるという意味で、このインドネシアとの友好関係は、特にことしは国交樹立五十周年でありますので、しっかりとした信頼関係を築いていきたいなと個人的には思っているんですが、外務大臣はインドネシアをどのように外交戦略上位置づけていらっしゃいますか。

高村国務大臣 東アジアの大国であるインドネシアは、我が国の主要な市場、投資先であり、重要なエネルギー供給国として、また我が国のシーレーンに位置する国として、我が国の外交戦略上極めて重要な地位を占めているわけであります。我が国は、このような重要性を持つインドネシアと伝統的に友好関係にあり、経済面のみならず、文化、人物交流の面でも幅広い関係を構築しております。

 我が国は、かかる伝統的な友好協力関係を基礎に、インドネシアを、民主主義、人権、市場経済等の基本的価値を共有し、二国間関係はもとより、地域及び国際社会のさまざまな課題への取り組みについて協力し得る戦略的パートナーと位置づけ、関係の強化に努めているわけであります。

 委員と同じように、私はインドネシアの方たちと感情的に極めて近い面がありまして、私の経験でも、アメリカ、IMFから言ってもなかなかインドネシアは聞かなかったことを、日本から言えば同じことでも聞いてくれるというような面も実際に経験しておりますので、本当に近い感情を持って、これからも手を組んでやっていくべき国だと思っています。

野田(佳)委員 日本にとっては拉致問題というのは大変大きな問題ですが、たしか、拉致問題に対しても強く後押しをしようとする姿勢を持っている国でございますし、日本が常任理事国入りを目指していることもよく理解して、これまたサポートしてくれた国であります。その意味では、私もこの信頼関係は大事にしていきたいというふうに思っております。

 そこで、今回のEPAの意義に入るわけでありますけれども、これは、日本にとっては八番目のEPAです。インドネシアにとっては、これまでは、いわゆるマルチのものはかかわってきましたね、ASEANの加盟国の一つとして、中国とか、韓国とか。二国間のバイのEPAというのは日本が初めてなんですね。その意味では、インドネシアにとっても大変期待感のあるEPAだと思うんです。

 ちょうど、去年の八月二十日ですか、安倍総理とユドヨノ大統領がこのEPAの署名をされた直後に、私、ジャカルタに行きました。安倍総理は、その後たしかインドに向かわれたと思うんです。そのインドに向かわれた日にジャカルタに入ったんですが、副大統領のカッラさんとか、あるいはこのEPAの交渉の当事者だったマリ商業大臣とかとお会いをしてまいりました。EPAの署名に至ったことを大変歓迎されていて、大変期待感がございました。

 その意味では、このEPAの締結を契機に、お互いの経済連携がより強化されると同時に、これは余り外務大臣としては口にしにくいことかもしれませんけれども、これは単なる二国間のEPAの意義というよりも、やはり、中国へのある種共通の利害を持っている国同士の連携だと私は思っています。

 中国とインドネシアの貿易構造はよく似ているんですよね。得意な品物もよく似ている、木製品だとか靴だとかいろいろなものが。これは日本とは競合しないんです。今、インドネシアにとっての脅威は、どの国にとってもアジアでは脅威になってきていますが、中国の安い商品が、特にインドネシアの得意とするものがインドネシアにがんがん入って席巻をしたときにどうするか。それは日本にとっても、過去最大の投資をしてきた国が、やはりインドネシアのマーケットを中国製品に席巻される状況というのは余りプラスではないと思うので、日本とインドネシアが、中国は敵ということではないんですが、商売上のライバルとして考えたときに、この二国間のEPAというのは、その意味からも意義があるというふうに私は思っております。

 そこで、今回の日本・インドネシアEPAの意義を高村大臣はどのように、余り中国のことは言いにくいかもしれませんけれども、本音のところをお聞かせいただければと思います。

高村国務大臣 日本・インドネシアEPAは、我が国とインドネシアとの間の経済連携を構築するため、物品・サービスの貿易及び投資の自由化、円滑化、人の移動、エネルギー・鉱物資源分野での関係強化、人材養成等の協力、ビジネス環境の整備等について定めるものであります。日本・インドネシアEPAを通じて、両国の経済関係、ひいては両国関係全体が一層強化されることを期待しているわけであります。

 中国とインドネシアが対日本に対してビジネス上のライバルであるかどうかというのを、私は委員ほどよく存じておりませんが、インドネシアに対して日本と中国はそれほどライバルだと思っておりませんので、日本にとってはそういうメリットよりも、とにかく日本とインドネシアの経済が強化される、そしてそのことが日本、インドネシア、まさにインドネシアというのはASEANの中核の一つの国でありますから、そういう国との関係全体がよくなるということは非常にいいことだ、こう思っております。

野田(佳)委員 では、EPAの具体的な項目、内容に入っていきたいと思っております。

 インドネシア政府が、あるいは政府だけではなくて議会の人もそうでした、民間の人もそうでした、一番切望しているのは日本からの投資の増大なんですね。少なくとも、九七年、これは通貨危機の起こった年ですか、そのときは五十三億ドルあって、それをピークにしてどんどんと日本からの投資が下がっていって、〇六年には四・四億ドル。五十三億ドルから四・四億ドルということは十分の一以下に落ちたということで、何としても日本からの投資の回復を一番切望しているということを強く感じています。

 そこで、今般のEPAによってどの程度投資環境が改善をされるのか、その効果についてお答えをいただければと思います。

田辺政府参考人 委員御指摘のとおり、インドネシアに対しまして、日本は累積ベースで第一位の投資国でございますが、近年は少し減少をしておるというところでございます。

 そこで、このEPAにおきまして投資に関する条文を盛り込みました。この協定の中で、投資家のための投資環境整備に関する法的枠組みを提供するということになるわけでございます。これによりまして、投資家にとっての予見可能性を高めることになりまして、日本とインドネシアとの間の投資活動がさらに促進されるということが目的とされておるわけでございます。

 具体的に申し上げますと、投資部分には自由化という側面と投資保護という側面がございます。自由化という側面からいきますと、投資の許可後の事業活動だけでなく、投資の許可段階を含めた内国民待遇及び最恵国待遇などの規定が置かれております。投資保護という側面からは、収用及び補償、資金の移転等といった投資家及び投資財産の保護。それから、国と投資家、インドネシアと日本企業との間の投資紛争の解決といったことについての規定も置かれておるところでございます。

 実際に投資が増大するかどうかは日本の投資家の動向にもよるわけでございますけれども、この協定の締結を通じまして、インドネシアの投資環境について一定の整備がなされたものというふうに認識しております。

野田(佳)委員 このEPAで合意をしたもののほかに、さらに政府として日本からの投資促進のために、もちろん投資家の判断でありますが、環境整備としてどういうお考えを持っているのかと同時に、これはインドネシア側でも相当に努力が必要なことがあるだろう。大手の自動車、例えばトヨタも日産もホンダもスズキも、あるいは家電のメーカーも、みんなインドネシアに生産拠点を持っていまして、恐らく千以上の企業が進出をされていると思いますが、インフラの問題、道路なんか渋滞がひどいですよね。ソウルも東京も北京も、どこも渋滞しますが、ジャカルタの渋滞というのは並大抵のものではないですね。電力の問題も含めて、そういうインフラの問題、あるいは輸出入の手続とか通関の問題とか、いろいろと煩雑さがあって遅い、そういう不平不満も聞かないわけではありません。

 最近は、ほかのアジア諸国に比べて従業員の賃金コストも上がっている。首切りとか解雇というのもしにくいという労働法上のいろいろな問題もある、いろいろ聞くんです。インドネシアとしてさらに日本の投資がふえるために取り組むべきことというのは、率直に日本からどういうふうに言っているのか、お尋ねをしたいと思います。

石川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、インドネシア側は非常に投資環境の整備ということに危機感を持っておりまして、そのために非常にまじめに取り組んでいるということだと思います。

 今、答弁がございましたように、日本・インドネシアEPAでいろいろな環境整備というのがこれからなされるということになるわけですけれども、それ以前におきましても、日本とインドネシアの間では、先ほどもちょっと御紹介申し上げましたが、ハイレベルの官民合同フォーラムというのがございまして、これでいろいろな民間からの意見、我が方投資家からの意見なども吸い上げて、その要望をインドネシア政府側に伝えてきております。それをもちまして戦略的行動計画というのをインドネシア側で策定しまして、これは二〇〇五年のユドヨノ大統領の訪日の際に発表いたしましたけれども、それによって百十八の項目についてインドネシアの投資環境整備のための行動計画というのが取りまとめられたところでございまして、現在、それのプログレスリポートといいますかフォローアップを行っているということでございます。

 まさに委員御指摘のとおり、課税の問題とか労働法規の問題、それからまさしく渋滞の問題、こういった問題が特に投資家の問題意識として指摘されておりまして、これにつきましても、インドネシア側がきちんと受けとめて改善努力をしているというふうに聞いております。

野田(佳)委員 あと、今回のEPAの特徴的なものとして、先ほど丸谷さんも取り上げられていましたけれども、看護師と介護福祉士の受け入れということです。フィリピンの方は上院での承認が手間取っているようなので、どうやらインドネシアの方が先に入ってくるのではないかなというふうに思いますけれども、確かにいろいろとよく検討しなければならない、さっきの日本語の問題なんかも確かにそうだと思うんです。

 インドネシアからサウジアラビアとか中東には随分もう人材派遣をされているようで、特に今回、日本でこうやって門戸が開かれることに大変期待感を持っているので、優秀な人たちをどんどん送ろうという意欲を示されているようなんです。逆に言うと、そういう期待感を持って向こうが、門戸を開いたことに歓迎の意を持って対応しようというときに、余りがっかりさせちゃだめですよね。

 少なくとも、看護師は全国で今四万人足りないと言われている。そして介護士の方は、コムスンの問題なんかもありましたけれども、いろいろな影響があると思うんですが、二〇一四年には四十万人から五十万人足りなくなるのではないかという大変深刻な人手不足が予想をされています。その中でそろりと、今回は看護、介護合わせて千人、二年間で入るということですが、基本的には温かく迎えて、しかも、受け入れ側がしかるべき医療機関あるいは介護施設をうまくあっせんして、成功事例にしていかないといけないというふうに思うんですね。特にこれはイスラム教の国ですから、こういう宗教に対する配慮も必要だと思うんです。

 そういうケアも含めて、どうしても送り出し機関と受け入れ機関、これがこの問題の肝になるのではないかと思うんですが、政府はどのようにお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

岡崎政府参考人 おっしゃいますように、今回看護師あるいは介護福祉士の候補者で入ってこられる方々が、きちんと日本の医療機関でありますとか福祉施設におきましてちゃんとした研修が受けられ、そしてその後、ちゃんと国家資格を取って、適切な条件で働いていただく、これが非常に重要だろうというふうに考えております。そういう意味で、おっしゃいましたように、それぞれの調整機関、送り出しあるいは受け入れの調整機関が非常に重要というふうに考えています。

 インドネシアにつきましては、政府機関でありますインドネシア海外労働者派遣・保護庁というところがきちっとやるということになっておりますし、日本の方は、これから協定の発効に伴いまして通報することにしておりますが、厚生労働省所管の社団法人国際厚生事業団を予定しております。ここで相手国との調整あるいは国内での受け入れ機関に対しましての指導等がきちっと行われていきますように、厚生労働省としてもきちっとした対応をしていきたい、こういうふうに考えております。

野田(佳)委員 資料を見ますと、今おっしゃった日本の受け入れ機関、社団法人国際厚生事業団、括弧書きで予定と入っていましたが、では、これは間違いなくここがやっていくということですね。ということは、さっき申し上げたように、やはりしっかりとやっていただかないと、まさに両国の関係にひびが入らないように、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 あとは、当然のことながら日本人と同じ賃金水準でやらないと、逆に看護とか介護の人件費全体を下げてしまう可能性があるし、そこからまた離職者がふえるような、日本の労働環境にいろいろな影響が出てしまうと思うんです。その点について、関連の労働市場にどのような影響があるのか、どういう留意をしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

岡崎政府参考人 先ほども委員がおっしゃいましたように、看護師あるいは介護福祉士は、日本国内でも労働力の確保が非常に問題であるというふうに認識しております。

 そういう中で、やはり労働環境そのものがよくなっていかないと、外国人に頼るということではなくて、基本的には日本人がそういう職に喜んでつくようにということが大事だというふうに思っています。

 そういう意味を含めまして、今回入ってこられる方々が、日本人と同等の報酬で、きちんとした待遇で働けるようにということはきちんとやっていかなきゃいかぬ、こういうふうに考えておりますので、それがきちんとなりますように、私どもとしてもきちんとした指導を行っていきたい、こういうふうに考えております。

野田(佳)委員 この問題、もう一点通告していましたけれども、ちょっと時間が足りなくなってきたので飛ばします。御用意いただいていたかもしれませんけれども、フィリピンとの協定との違いのところをお尋ねする予定でしたが、それは飛ばします。

 今回は看護師と介護福祉士の候補者の受け入れということですが、もともと要求としては、例えば、農作業に従事する人を送りたいとか、船員を送りたいとか、あるいはスパサービス、それから飲食業、いろいろ向こうからの御提起はあったようですね。特にその中で観光業、観光分野については強い要請があったと思うんですが、これについては今後どういう対応をされていくのでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、インドネシア側から観光及びホテル分野の人材を受け入れてほしいという要望が交渉の過程であったところでございます。

 これらの分野の人材の受け入れにつきましては、議論を行いました結果、EPA自体には規定をせずに、協定を署名した際の共同声明において言及をいたしました。その声明におきまして、我が国は、インドネシアからの要望に対しまして、研修及び実習に係る制度の対象職種を観光分野に拡大することを前向きに検討する意思を表明しておるところでございます。

 今後は、この共同声明を踏まえまして、インドネシア側の意向も踏まえた上で、日本の国内の研修、実習に係る一般的な制度の整備という中で検討されるよう政府内で調整をしていきたいと思っております。

野田(佳)委員 今までは主に、どちらかというとインドネシアが要望してきた人の移動とか投資についてのお尋ねをしましたけれども、このEPAで日本にとって一番大きなテーマだったのはエネルギーの安定供給だと思うんですね。

 ブルネイとのEPAでもエネルギー・鉱物資源の章、チャプターがあります。インドネシアもこれは入りました。これは今までのEPAとは違う大きな特徴だと思うんです。こういう章を設けて、我が国への特に天然ガス、LNGの安定的な供給を図ろうということなんだろうと思うんですが、実際は、インドネシアの国内の方針としては、国内に優先して回していくと。これまでの生産量も、生産拠点から余り出てこなくなってきているということもあって、いろいろ事情があるようですね。

 今回のEPAで新たにエネルギー・鉱物資源の章を設けて、そしてそのことが我が国に対する安定供給にどれぐらい効果があるのか、ぜひお尋ねをしたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、インドネシアは、日本にとりまして、現在のところLNGの第一位の供給元でございます。日本で六千万トン強のLNGを輸入しておる、そのうちの約二割ぐらいをインドネシアに依存している、そういう関係でございます。

 このようなインドネシアからのLNGなどの供給といったものは、実際は民間の契約を通じて行われるところでございます。この日・インドネシアEPAにおけるエネルギー・鉱物資源章の規定がこうした民間部門による経済活動を拘束するものではございませんで、特にLNGなどの供給に関する契約の更新やそれらの一定量の供給を直接確保するというものではございません。

 一方、このエネルギー・鉱物資源の章は、例えば締約国、インドネシアが、エネルギー・鉱物資源の開発等について新たな規制措置を適用するというような場合に当たりましては、既存の契約関係の混乱を回避するよう努力するといったこと、そのような規制措置が導入されるというときに、その規制措置の透明性を確保するといったことを規定しておるところでございます。こうした規定を通じまして、民間における経済活動が安定に進むということが期待をされているところでございます。

 日本にとりまして、インドネシアからのLNGが安定的に供給されるということは重要なことでございますので、我が国としては、そのためにインドネシア側に対しまして種々の形で働きかけを行っていくという考えでございます。

野田(佳)委員 今、インドネシアからの輸入量が年間千五百万トンぐらいではないですか。二〇一〇年、二〇一一年あたりに契約期限が切れるのがそのうち千二百万トン分ぐらい。国内優先の路線でインドネシアがシフトすると、千二百万トンのものが三百万トンぐらいに激減するのではないかという懸念もあるようですが、それは、具体的に何百万トンまで確約できるという話ではなくて、対話の環境が整ったという理解でよろしいですか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘になりましたLNGの契約につきましては、日本の関係する民間企業がインドネシア側と交渉、話し合いを行っているというところであると理解をしております。

 政府ベースといたしましては、このEPAにおけるエネルギーの章に基づきまして、日本とインドネシアの間でエネルギーの政策に関する対話ですとかエネルギーに関する協力といったことも行われることになりますので、こうした両国政府間での対話がこの民間契約に対してよい背景となるということを期待しておるというところでございます。

野田(佳)委員 最後になると思いますけれども、日本とASEANとのEPAが十四日で全部署名が終わったということですよね。ということで、これから発効に向けての秒読みだと思うんですが、二国間のEPAとこういうASEANという地域とのEPA、例えば今回、インドネシアやブルネイと二国間のEPAを結ぶわけで、多分承認をされるだろうと思うんですけれども、こういう多国間のマルチのものとの重層的な関係で、これはどういう意味合いになってくるんでしょうか。その意義をちょっと改めて御説明いただければと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEAN各国との二国間のEPAに加えて日・ASEAN間のEPAを締結することの意義ということでございますが、これは、一つには、ASEANとの戦略的な関係が強化される、そういう意味合いがあろうかと思います。また、もう一つは、日・ASEAN域内全体の日系企業の生産ネットワークの強化といったことが挙げられると思います。

 具体的に申しますと、日本企業はアジアにおきまして、大変複雑な、生産工程を分けた形での生産分業ネットワークをつくっておるわけでございますが、それにこの日・ASEANのEPAというものが資するものになるというふうに考えております。

 具体的に言いますと、例えば日本から部品をインドネシアに持っていきまして、インドネシアにおきましてそれを組み立てて製品にしまして、それをタイに輸出するといったような、こういうビジネスのネットワークがあり得るわけでございますけれども、ASEANの中はASEANのFTAによりまして自由貿易になるわけですけれども、そのASEANの自由貿易のメリットを受けるための原産地規則というのが、付加価値が四〇%ASEANの中でつかなければいけないという原則がございます。

 物によりましては、日本から持っていく部品の付加価値が高いと、インドネシアで組み立てをしましても、その付加価値がASEANの自由貿易の原則を満たさないということがあり得るわけですけれども、この場合には、日本とASEANのEPAができますことによってこの原産地を累積するということが可能になりますので、今申し上げましたような生産分業ネットワークに資する自由貿易の体系ができ上がるという関係になるわけでございます。

野田(佳)委員 よく理解できました。

 時間が参りましたので、松原委員の前座を終わりたいと思います。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 野田委員に続きまして質問を続けたいと思いますが、今、野田委員から御指示をいただきましたので、さらに少し、冒頭、日・インドネシアの、入国、一時滞在、看護師・介護福祉士候補者の国家試験等々に関して御質問したいと思っております。

 こういった交渉の中で、投資環境を整備する問題、さらには、さまざまな物品が出入りすることに対して関税を引き下げる等、そういった部分の議論というのは、これは私は、それ自体、システムも含めて、物理的にも非常に重要だと思っておりますが、私は、特に今回のこういったEPAで顧慮しなければいけないのは、人にかかわる部分は大変に難しいんだと思うんですね。

 物であれば、まあ物であればいいということではありませんが、それは、その問題の解決によって一段落すれば一段落をする。人は感情を持っておりますから、そこでぬぐいがたい、例えばマイナスのイメージを持つとするならば、そのことによるデメリットというのは、金額ベースにそれがカウントされるかどうかは別にして、極めて巨大なものになる、このように思っているわけであります。

 今、野田委員の質問においても指摘があったように、とりわけ日本に対して友好的な認識、感情を持っている国は、その人の部分で当然友好的な認識を持っていて、我々は日本に対して親近感を持っている、まあベトナムなんかもそうだと思いますが、持っているがゆえに、こういったものができたときに、そういった人間は、我々が好意を持っているんだから日本人も好意を持って接してくれるんだろうというふうに思って出したところが、実際は日本の現場がそうではなかったとか、もしくは扱いとして、本人にとっては極めて残念に思うような扱いを受けたということになれば、このことによるデメリットというのは本当に尾を引く問題だというふうに思っております。

 これは通告をしていなかったわけでありますが、こういう日・インドネシアのEPAによって、特に看護師、介護福祉士という方々が日本に入ってくるということが、どういうことになるのか。例えばインドネシアの方々の日本に対する国民感情が極めていいということをも含めて、恐らく日本人は余りそのことを考えてみてこなかったことが今まで多いんじゃないかと思うんですが、そういった日本国民、これから受け入れをする側の我々の国民に対してのある種啓蒙教育みたいなものは今どうなっているのか、もしお答えできるならばお答えいただきたいと思っております。

高村国務大臣 現状の啓蒙教育がどうなっているかということはちょっとわからないんですけれども、委員がおっしゃるように、人の移動の問題は、うまくいけば物すごいメリットがあるし、まずくいくと何だというデメリットもあるし、非常に幅が広くなることだと思います。

 例えばインドネシアで、昔、日本に留学生の人が、あれは正確に賠償留学なのかどうか知りませんが、我々は賠償留学、賠償留学と。我々と同じころたくさん来ていたんですが、そういう人たちは非常にいい感情を持って帰りまして、日本とインドネシアのために大変よくやってくれたということがあります。現実に私は複数の人を知っていて、そういうことはあります。

 一方で、最近来た方たちが必ずしも日本にいい感情を持たないで帰ったということもあるわけでありますから、このEPAの関係で来た方たちが日本について本当にいい感情を持って帰っていただくということが極めて大切だというのは委員御指摘のとおりだと思いますので、そういうことについて努力をしてまいりたいと思います。

松原委員 高村大臣の認識は極めて大事だと思うんですね。

 例えば、我々が海外に対してさまざまな援助をする、ODAという名前で援助する、この額が例えばこれぐらいの額ですよというときに、僕らはよく言った議論でありますが、もちろんそれはそれで評価されるだろうけれども、一番間違いない評価というのは、人に対してお金を出すことではないかと。もちろん、ダムをつくるとか道路をつくるとかというのは大事でありますが、武田信玄が人は石垣、人は城と言った言葉もありますけれども、人に対してお金を出して、その方々が日本に対して好意を持つということほど外交における効果的な武器はないというふうに私は思っているわけでありまして、今の野田さんの質問を聞きながら、これはぜひ御指摘だけしておこうと思って質問している質問であります。

 やはり、そういった意味で、経済協力でお金を出す云々ということで、今まで例えばこれぐらいの額だった、一定額、百あったとしたらば、今回のこういったことによってインドネシアから看護師や介護福祉士がいらっしゃるということであれば、そこに対して一定のお金を別途使うぐらいの、どういう形で使うかは別ですよ、例えば、彼らがコミュニティーをできるようにするのか、何か集まった相談会をやるのか、何かそういうきめ細かなことを、先ほど野田さんがおっしゃったように、成功事例にしなければいけないという部分で、私は今後検討してもいいんじゃないかと思うんですが、既にあるならば、あるということでありますが、大臣、御所見をお伺いしたい。

高村国務大臣 成功事例にしなければいけないということ自体に関しては全く同じ意見でありますので、いろいろ検討してみたいと思います。

松原委員 前向きな御答弁でありますので、ぜひ成功事例とするべく、そんな莫大な費用がかかる話だと私は思っておりません、やはり全体のそういった枠組みの中で考えれば、これは必要経費ということで考えるべきだろうと思います。

 そうした中で、日本・インドネシアEPAに基づいて入国、一時滞在する看護師・介護福祉士候補者が最終的に国家試験に合格するために、どのような日本語研修が重要と考えるのか、どのような研修を実施することを考えているのかということで、お伺いいたしたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、このEPAに基づきまして受け入れる看護師・介護福祉士候補者の方々に対しまして、日本語の研修を施すということが大変重要であろうというふうに思っております。

 そこで、この協定におきまして、それらの方々が入国後六カ月間日本語等の研修を受けるということを規定しております。この日本語につきましては、現在カリキュラムをつくっておるところでございますけれども、それにおきまして、六カ月で六百七十五時間の日本語の研修を実施するということを想定しております。一般的に、やや高度の文法、漢字等を習得して、一般的な事柄について会話や読み書きができるようになるために日本語を六百時間程度学習する必要があるというふうに、これは財団法人の日本国際教育支援協会で言っておるところでございますけれども、こういうことにかんがみますと、現在想定しておりますカリキュラム上の日本語の学習時間というのは適切なものであろうかというふうに考えております。

 また、六カ月の日本語等の研修を行いました後も、実際に病院あるいは介護施設等で受け入れていただくわけですけれども、そこにおきましても継続的に日本語を習得していくということが期待をされておるところでございます。最終的には、そうした方々が日本の国家試験を合格できるようになるということを期待しているところでございます。

松原委員 日本の国家試験は、これは通常の日本人が受けるのと同じものなんですか。一応確認をします。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおり、通常の日本のものと全く同じものを受けていただくということでございます。

松原委員 現実的に、半年研修して六百七十五時間。日本語というのは大変にやはり難しいんですよ。我々はその難しい日本語を非常に固有の文化として誇りを持って見ているわけでありますが、現実に、どれぐらい合格するだろうかというふうなことは御検討はなさっておられますか。

田辺政府参考人 日本の看護師の国家試験、それから介護福祉士の国家試験、それの合格率がどうなっているか、ちょっと手元に資料がございませんのでわかりませんけれども、私どもといたしましては、インドネシアから来られるそうした資格の候補者の方々も、日本語の研修、それから受け入れ施設での実習等を踏まえまして、最終的には日本の国家試験に合格していただく、そういうことを期待しておるというところでございます。

松原委員 これは非常にいろいろな議論があって、例えば、こういうフィリピンの方がヨーロッパのどこかの国、アメリカに行くとかそういうことであれば、それは英語ですから語学の壁というのは極めて低い、制度も全然違うわけですけれども。日本の場合、これで、いや、わからないから聞いているし、そちらもわからないから答えようがないのかもしれぬけれども、例えば合格率が一けた台の下の方とかという話になったときに、これはどういうことになるんだろうか。

 さっき高村さんは、成功事例にしなければいけないと言っていた。成功事例という概念の部分で、三年、四年というところの実習期間を大過なく終われば成功事例というふうにみなすのか。やはり国家試験を通ってそれなりに、彼らにしてみても、ああ、日本でやれるんだというところまでするのが成功事例なのかという議論も一方にあるわけだけれども、これは来る方の能力の問題もあると思いますよ。しかし恐らく優秀な方がいらっしゃるんでしょう。それが極端に一けたの前半とかということになったときに、成功事例と言えるのかなという気が私はするんですが、どうですか。

小野寺副大臣 日本における看護師の国家試験の合格率は九割を超えていると思います。それから、介護士については、たしか今、大ざっぱな数字ですけれども、七割ぐらいだと思っております。

 ただ、大事なことは、恐らく介護、看護の分野で、同じ日本語教育の中でもかなり特殊な分野の言葉あるいは単語も多々あると思っております。こういうことを支援することが大変重要だと思っております。

 また、研修期間においても、看護師、介護士、実はいずれも、ある面では、患者さんあるいは高齢者の方と接することがありますし、場合によっては、もし一人前の研修をするとすれば日本語で日誌をつけなきゃいけない、そういう制度的な要件もございます。

 この語学能力の向上については、研修段階で私どももなるべくしっかりとした体制になるように努力していきたい、そう思っております。

松原委員 いい御答弁だと思います、大事なことです。

 そうしたときに、来日をして三年、四年たって生活もなじんで、いろいろなことがあった、いい国だ、しかし試験は厳しくて受からない。それは、一つの政策としてそういうものが内々あるということであればまた議論は違ってくるわけでありますが、さっき丸谷さんが言ったように、来る段階で、語学に関してどの程度のものが、六カ月の研修の前の段階ですよ、事前にある程度そういった日本の、もちろん日本の文化というのはイスラムではありませんから違いもあるでしょう、そういったことに対しては何らかのガイドラインみたいなものはあるんですか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 来日される看護師、介護福祉士の候補者の方々、これはインドネシア側におきまして調整をして、候補者として日本側に提示があるということでございます。それで、インドネシア側におきまして募集をされるときに、具体的に日本語の要件があるかどうかということでございますけれども、この協定上は日本語の要件というものは予定をしておりません。日本に入ってきた後、先ほど申し上げました六カ月の日本語の研修等を踏まえて習熟していただくということでございます。

 ただ、現実に考えますと、インドネシアにおきましても、日本語の学習熱といいますかそういうものは相当程度あるというふうに聞いておりますし、それから、日本に看護師あるいは介護福祉士として行ってみようと思われる方は日本に関心のある方々であろうと思いますので、現実には、ある程度の日本語に関する関心や素養がある方々が多いのではないかなというふうに想像されます。

松原委員 半年というその時間、六百七十ですか、これはどういうふうにはじき出したのかわかりませんが、やはり成功事例にするという認識からいけば、来られている方々の優秀度というのも必要ですけれども、今、小野寺副大臣の話だと、合格率が、日本の人が七割、インドネシアの人が、実務的には頑張っているよ、しかしやってみたら一割切っちゃったよ、これは決定的に、何がどう理由であろうと、私はやはり成功事例にならないと思うんですよ。それだったらばやらない方がいいとはあえて言わないけれども、それはかえって、先ほど野田委員の質問にもあった、戦略上のメリットを、人間というのは物じゃないですから、感情は残りますから、非常にマイナスにしてしまう可能性があるんですね。

 そうなったときには、例えば、どのタイミングでどうかわからないけれども、やはり、六百八十五ですか、この時間の妥当性も含めて、再検討というのは速やかに行われるんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今回は、いわば事実上初めてのケースということで、二年間で看護師、介護福祉士合わせて千人という人数枠で受け入れる予定にしておるわけでございます。私どもは、現在予定をされておりますようなスキームにおきましてこれが円滑に実施をされ、そして最終的に成功事例につながっていくように、国内での指導といった面も含めまして、万全を期してまいりたいというふうに思っております。

 その後、このスキームの内容を変更する必要があるかどうかといったことでございますけれども、これは、これから実施をいたしまして、その実施をした結果を踏まえまして、国内の制度としてどうするのがいいか、あるいはインドネシアであればインドネシア側でどうすればいいのか、そういったことを、このEPAの協定を見直すことがいいのか、あるいは別の方法によってより実効の上がるスキームにするのがいいか、これはまたその成果を踏まえまして検討していきたいというふうに思っております。

小野寺副大臣 大変重要な指摘だと思っております。

 実は、インドネシア、それから同じような看護師の受け入れをフィリピンの協定でも結ぶことになっておりますが、フィリピンの協定では、実は国家試験が免除される養成施設の制度が残っております。ですから、准介護士という形でフィリピンの場合は残る、研修が終われば無試験で残る可能性があります。ただ、インドネシアの場合にはこの准介護士の制度が適用されません。ですから、すべて試験を受けるということになります。

 インドネシアの方、そしてフィリピンの方、同じく国内でこのような介護士の資格を取ろうと思ってそこに差があるということがあった場合に、これはますますインドネシアの方の感情を害することにもなると思いますので、語学の問題、そしてまたその後の試験、受験の合格の問題については、政府としてもしっかり注視していく必要があると思っております。

松原委員 何か小野寺副大臣からもらったボールをそのままたたいて返すのでは恐縮なんですが、大臣、今の、フィリピンではそういうふうに残る可能性がある、インドネシアは残れないと小野寺副大臣はおっしゃいましたが、これは、さっき野田さんが言ったような、日本とインドネシアの友好性を考えたときに、他の国との比較というのは一番わかりやすいですから、なぜなんだという疑問が出てくると思うんですよ、現実に来た人は。

 それに関して、同じ人に球を打ち返すよりも、高村さんはやはり日本のおとどとしてお答えいただきたいわけでありますが……。では、小野寺さん。

小野寺副大臣 大臣の御指導のもと、しっかり対応していきたい、そう思っております。

松原委員 大臣の御指導のもと、しっかり。

 私は、やはり、フィリピンとインドネシアでどういう経緯で差が、フィリピンは発効されていないから、それはずっと発効されていなきゃ差はわからないけれども、今の副大臣との議論では、発効されたら片っ方は、試験云々は別にしても、三年たったらそのままいられる、レベル的には准介護士であっても。インドネシアはそれがない。これは、どう、丸谷さん、やはり問題だよね。(発言する者あり)だめだと、今こちらの与党席からも話が出ましたが。

 そういうふうなことを、やはりフェアな、特にフィリピンとインドネシアで、フィリピンも日本に対してはなかなか好意的な国ではありますが、インドネシアはある意味では戦略上極めて重要だから、これは何でこういうEPAになったのか、ちょっと教えてくださいよ。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点は、フィリピンの場合におきましては、介護福祉士の候補者が養成校コースという形で日本の養成校に入学をされる、日本の養成校を卒業しますと自動的に資格が与えられる、そういう制度がフィリピンとの間では合意をされたわけでございます。

 インドネシアとの間でこれがなぜ入らなかったのかということですけれども、これは、インドネシア側からそういう要望がなかったということでございます。想像しますに、養成校コースに入りますためには、もちろん学校に入るわけですので、一定の学費がかかるわけでございまして、そういったようなこともインドネシア、フィリピンそれぞれで考え方が違ったのかなというふうに思います。

小野寺副大臣 ちょっと補足をさせていただきます。

 国内法で介護福祉士の養成施設に関する法律が変わりました。フィリピンとの締結の時点では、国内で養成施設というコースが残っておりました。ですが、現時点では制度がもう変わっておりますので、インドネシアとの交渉の段階では国内の介護福祉士の資格要件の取得の中でこの養成コースというのがなくなってしまいましたので、その国内的な制度の差ということもその締結の時点であることを補足させていただきたいと思います。

松原委員 いわゆる養成のための学校はあるわけですよね。今、フィリピンの方がそこを出ればそれは一応大丈夫だと。インドネシアの方がそこを出てもだめだ、こういうことですか。

小野寺副大臣 フィリピンとの交渉をしている最中には、日本では二年間の養成施設をとれば介護福祉士の資格が取れる、そういう国内の制度がありました。ただ、既にその改正が国内で決まっておりますので、インドネシアとの交渉の間においては、日本国内でそのような養成施設を卒業すれば資格が取れるというコースがもう既にないということが決まっておりますので、その時点での差ということになると思います。

松原委員 人間の一般的な感情としてお伺いしたいんですが、当然、小野寺さんも問題意識を共有しているのでそういう答弁になると思うんですが、日本の国内法のそういう理屈というのは非常に厳格にあるのかもしれませんが、このことをインドネシアの方は理解するだろうか、フィリピンと違うというのを納得するかということについて、憶測というか予見をお伺いしたい。

小野寺副大臣 先ほどからお話しさせていただきますように、そのようなことがないように、私どもとしましては、ぜひ、語学研修あるいは国内での研修、そしてまた受験の段階でしっかりとしていきたいと思っております。

 なお、最終的には、やはり介護福祉士という資格を取るためにはインドネシアもフィリピンも受験をしなければいけない、そのような要件がございますので、最終的には介護福祉士という資格で一本化する中でこの制度の適切な形をとっていきたい、そう思っております。

松原委員 現実論としては、語学、日本語は極めて難解ですから、晦渋という難しい表現もありますが、そういう語学であれば、現実には准介護士というふうな形で残るという道があるかどうかで、それは、さっき言ったように、合格率が日本は七割で、インドネシアの方は七割とか六割だったら、これは僕は問題ないと思うんですよ。三割はやはり努力不足だったなとなりますよ。一割だったらどうなるかという話ですよ。一割だったら、六百八十五時間の今のスキームというのはやはり見直さなきゃいけないということでいいですよね。例えばイメージ的に、一割とか二割だったらどうですか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のケースはいわば初めてのケースになるわけでございますので、私どもといたしましては、万全を期した構えで臨みまして、その上で、入ってこられる方々が日本の国家資格に合格されるように最善を期していきたいと思っております。その後、その結果も踏まえた上で、EPAにおけるこのスキームの扱いをどうするかといったことはまた検討をしていきたいと考えております。

松原委員 外務省の皆さんというよりは大臣、副大臣は随分認識は持っておられると思いますから、今みたいななかなか理解を得られない部分は、やはり私たちが見てもちょっとそれは変えた方がいいんじゃないか。ダブルスタンダードのように、実は違っても、時系列上そうなんだという議論があっても、やはりこれはマイナスになるし、冒頭私が申し上げたように、人の出入りというのは、物と違って、マイナスのイメージを払拭するには物すごく時間がかかりますし、これは物すごく慎重にしなければいけないと思うんですよね。やったことがかえってマイナスになるようなことがあってはいけないと思っております。

 特に、日本人が受けるのと同じ試験を、日本で三年、語学研修をして実務をやっている方々に受けさせるというときに、そうした中で、あなた方が三年たって受ける受験のペーパーはこういうペーパーですよというぐらいは、向こうには当然見せていますよね。どうなんですか。

田辺政府参考人 これは、これからEPAを実施していくという過程で重要な要素になりますので、これまでもそのような説明をしておるところでございますけれども、実際に受け入れた後におきましてもそのような情報が周知されるように、政府内で調整をしていきたいと思っております。

松原委員 彼らがどの程度の国家試験かわからずに、どのぐらいの語学力があれば行けるかという認識もなく、予見もなく、この交渉で、日本に対して好意的である、オーケーだ、こうやったと。やはり交渉の途中において、これぐらい難しいんですよ、いいですねという議論をあらかじめ僕はやっておくべきだったと思う。これではちょっと、そうすると向こうも、これだと、そうか、三割かと思うのかどうか。三割ではちょっとね、これはあれじゃないかといって、また何か言ってくるのか。

 さっき、小野寺副大臣の発言と参考人さんの発言はちょっと違って、おっしゃるのは、向こうからそういう要望がなかったということだけれども、うちはかなり優秀なのを出すつもりだけれども、これだったらちょっとフィリピン並みの扱いも入れてくれよというような要望が、ペーパーを見れば出てきた可能性があるわけですよ。漢字が入っている質問用紙でしょう、それは。

 だから、私は、そういうところの細やかな配慮というのは、冒頭言ったように、特に物ではない、人の部分では極めて重要だということで、これは、すぐやってもらえますか。

小野寺副大臣 政府間でもそんなことを今後進めていく検討が必要かと思っておりますし、また、現実的に既に日本に対して介護士、看護師の候補者を送り出したいという現地のいろいろな動きがございます。その中では、日本のこの資格試験の内容について、既に問い合わせを受け、また周知をしているという事実も、私、別なところから伺っております。

 いずれにしても、看護師、介護士の過去の試験につきましては、公表され、市販もされておりますので、これは、インドネシア側がこれからしっかりとした方を送ってくる中で当然検討しているものだと、今、私自身は認識をしております。

高村国務大臣 副大臣が言ったとおりでありますけれども、これは成功事例にしなきゃいけないというのは、日本側にとってもそうだし、インドネシア側にとっても成功事例にしなきゃいけないわけで、これは両方が努力しなきゃいけない。

 日本に入ってからの日本語の研修というのは、日本側がきっちり受け持ちます。そして、どういう人を送り出すか、どの程度の人を送り出すかということは、それはインドネシア側に十分考えてもらわなければいけない。考えてもらうよすがとしては、インドネシア側がどの程度の国家試験が今まで行われていたかというのは知る必要がありますから、これは委員のおっしゃるとおりで、そういうものは今までどの程度示したか、私ははっきり知らないわけでありますが、これからは、インドネシア側が送り出す前に、どの程度の人を送り出していただけるか、試験はこの程度のものなんですよということ、そして、ある程度日本語の素養がある人を送り出していただいて、その上で日本側が研修をきっちりやる。こういう役割分担で、両方が協力をして成功事例にしていかなければいけないことだ、こういうふうに思っております。

松原委員 すばらしい御答弁だと思います。

 ですから、来て云々ではないと思うんですよ。もっと言ってしまえば、成功事例にして、千人の枠がだんだん広がっていったときはどうなるかという議論ですが、冒頭は、どういう人でやってほしいのか。やはり成功事例という一つの姿というのは大事なんですよ、そこで信頼関係が生まれるんだから。だから、物の議論における議論はいろいろな方も接触しているだろうけれども、人の部分は、それの十倍の、同じ金額に関しても、貿易額に換算したら物に関するものの十倍ぐらい配慮しなければ、本当に、禍根を残すというか、もったいないくらい、やらない方がいいみたいな話になってくる。

 そこで、今みたいなことに関して、大臣はそうおっしゃった。つまり、出す段階で日本語のことをほとんど知らないのが来てもらっちゃ困る、もちろんそうだけれども、そこまではこの中に書いてないわけでしょう。それはもう、あうんの呼吸なんだよね。実際、これぐらい難しいから、ある程度のレベルの人が来ないと現実的に難しいですよと、そういうことを水面下で議論をしても、これは握って議論をしなかったらしようがないですよ、成功事例にするためには。その辺は、今どういうふうな御予定なのか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、日本側の受け入れ機関、これは国際厚生事業団を予定しておるところでございますが、そこと、インドネシア側の送り出しの調整機関、これは政府の庁でございますけれども、そことの間で話し合いを持っておりまして、その話し合いを踏まえまして一定程度の覚書を取り交わすことになっておるところでございます。

 そのような中で、委員の御指摘の点なども踏まえまして、日本側から適切にインドネシア側に要請をしていきたいというふうに考えております。

松原委員 これでこの質問はとりあえず終わりますが、合格率が五割を超えるような実績を持たせるために、やはり頑張らなきゃいかぬ。五割か六割か、その議論はいろいろとありますが、それが明らかに、見て、ちょっと待てよというふうな、納得、共感ができない数字であるとかえってマイナスになるというのが第一点と、先ほど副大臣の方からお話があったフィリピンとの相違点、これはやはり解消をする。

 だから、僕は、日本の国内の法制度を国内的な重要性や国内的な考えでつくるというのは国ですから当然ですが、こういうふうな状況の中では、やはり他国のそういったものも見ながら、逆に国内のそういった法制度も検討し、勘案する場合もあっていいんじゃないかと思うんだよね。例えば、今言ったフィリピンとインドネシアの差異を解消するためにはどういうふうにするかとか、そういうふうなことも、私は、それは外務省が突出してやれる作業ではないのは重々承知しておりますけれども、国際関係は重要なので、ぜひとも配慮していただきたいと思っております。

 時間が極めて短くなってまいりましたが……。

高村国務大臣 准介護士の問題については、これは、フィリピンと協定を結ぶときに、こういうことをしようということでつくったような制度でありまして、国内で非常にそれについて批判が高かったので、もうそういう制度をやめよう、こういうことになった。そして、インドネシア側は、そういう経緯も知りながら、それではその点は結構です、こういった経緯があるということでございます。

 そういう中で、もうやめようと言ったんだから、ダブルスタンダードを解消しろというのは、それはわかるので、国内でそういう制度がなくなりましたから、そういうことで今度フィリピン側と話していく、こういうことだと思います。

松原委員 とにかくそこは、共感を得られるようにお願いしたいと思います。

 このFTA、EPAというのは極めて重要でありまして、これは言ってみれば、具体的な、新しい二十一世紀の同盟関係のようなものであろうというふうに私は思っておりますが、そうした中で、日本が、日米基軸というふうに言っているわけでありまして、日本はアメリカと一番緊密な連携がある。なぜ日本とアメリカとの関係のものができないのに韓国が先に行ってしまったのか。この極めて素朴な疑問があるわけですよ。一番最初にこれはやるべきだろう。もちろん、EUも含めてやるべきだろうという先ほどの野田さんのはそのまま至言でありますが、米国との間はどうなっているのか、どういう経緯があったのか、今までやろうとしたことはなかったのか、いや、日米安保があるから大丈夫だと思ってきたのか。これはどういうことでしょう。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 日米間のFTAを結ぶべきではないかというアイデアにつきましては、日米のそれぞれの経済界からそれを求める声がございまして、日米財界人会議においてもそのような議論がなされております。また、日本経団連からもそのような要請が出されておるところでございます。

 一方、アメリカ政府の方は、これまで必ずしもFTAという形には積極的という感じではなく、日米関係、とりわけ日米の経済関係を強化するという仕組みとして、現在もさまざまな仕組みがあるわけでございますけれども、そういったことを前提にこれを強化していこうという考えであろうかというふうに思っております。

 私ども日本政府といたしましても、FTAということにつきましては、将来の課題として検討していきたいというふうに考えておるところでございます。

松原委員 韓国と米国がこれをやったことによって韓国はメリットを受けたかどうかの認識をお伺いしたい。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、米韓FTAにつきましては、アメリカの議会、それから韓国の議会、それぞれの承認が必要でございまして、そのプロセスはまだ終わっていない、したがって、米韓FTAは発効していない現状であるというふうに認識をしております。

 これが発効した暁に日本の産業界にどのような影響があるかということでございます。これはいろいろな見方があるわけでございますけれども、日本の経済界、トータルとして見ますと、直接的に大きな影響があるというふうには認識をされておらないのではないかというふうに考えております。

松原委員 発効された場合に、きっと発効するでしょう、発効された場合に、日本はそれによってメリットはあるんですか、デメリットがあるんですか。

田辺政府参考人 いろいろな面がございまして、もちろん、日本製品と韓国製品で競合するような場合に、韓国製品はアメリカに関税なしで入ることができて、日本製品はアメリカには関税がかかった状態で入るという意味では、日本製品が不利になるといったようなケースもあり得ると思います。

 一方で、実は韓国の中で議論をされておりますのは、韓国の国内にも米韓FTAの反対論は強いんですけれども、アメリカで生産をされた日系企業の製品がアメリカ製品として韓国に関税なしで入ってくるのではないか、したがって、韓国からしますと、日系企業との競争上、米韓FTAは不利になるのではないか、そういう議論もあるやに聞いております。

 そういうことで、トータルとして見ましてどういう影響があるかというのは、なかなか予測しがたいところでございます。

松原委員 同盟関係というのは、こういうものを、本来であれば、喜びもつらさも共有するような部分があるので、私は、どうも、印象として、なぜ韓国が日本より先に行ってしまったのかと。もちろん、米韓関係というのも同盟関係かもしれないけれども、あの盧武鉉さんがやっていたんですよ、三年間。私は、そういうことを考えると、非常に、なぜなんだろうという気がしてならないんですね。

 もう時間がちょっと、きょうは人的な交流の部分で余り多く使い過ぎて、こちらの質問をほとんどできないのが、答弁の御用意をいただいた方に大変に申しわけないんですけれども。

 そういった意味では、私は、やはり日本は、特に貿易立国でありますから、徹底的にこのFTAを、同時多発的と先ほどどなたかおっしゃっておりましたが、そういうようなことをやっていかなければいけないというふうに思っております。

 ASEANとの包括協議も極めて重要であって、ASEANの国々を、いかにして日本との物理的な物流の関係、人の流れの関係で取り込むかというのは大事でありますが、ちょっと時間がないので、これはまた別の機会に譲りたいと思います。

 先ほど言ったように、何はともあれ、人の交流というのは物と違いますので、これに関しては本当に配慮の上に配慮をしていただくようお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝です。

 EPA、FTAの問題、非常に大事な問題でございまして、今、野田さん、松原さんも似たようなところに問題があるということで指摘されておられます。今の、例えば韓国と日本の問題なんというのも大事な問題でして、それもちょっと後で触れさせていただきたいと思います。

 まず最初に、EPA、これは次から次に結んできていますけれども、一体どういうきっかけでというか、どういう基準でこういった国々と次々と交渉を始めてきたのか。この国は何番目でこの国は、何番目というのはいいんでしょうけれども、こういった国と先にやらなければいけないというのはどういうふうに決めてきておられるんでしょうか。

 例えば、松原さんの延長線で言いますと、隣の国韓国、こういったでかい隣の国でEPAがないのは日本と韓国だけだと言われているわけです。それが全然進まない、やり始めてはいるんですけれども。そこへブルネイとインドネシアが七番目と八番目になる、一番最初はシンガポールだ、二番目がメキシコだ、順序がばらばらでよくわからないんですけれども。これはどういう基準でどのようにして始まっているんでしょうか。

高村国務大臣 交渉相手国・地域の決定については、二〇〇四年十二月二十一日の第三回経済連携促進関係閣僚会議にて決定された今後の経済連携協定の推進についての基本方針にのっとり、東アジア諸国とのEPAを中心に推進してきているわけであります。それ以外の各国とのEPAについても、同基本方針にのっとり、我が国にとり有益な国際環境の形成、我が国全体としての経済利益の確保、相手国・地域の状況、EPA、FTAの実現可能性という基準を踏まえ、総合的に勘案してきております。

 我が国の交渉相手は、我が国が選ぶ場合そうですけれども、相手にも事情がありますから、例えば韓国でもかつてやろうとしたけれども結局頓挫した、そういう両方で合わなかった、条件が合わなかったということはありますけれども、我が国は我が国のこういう方針に基づいてやっているわけでございます。

篠原委員 それは、いろいろな国がありますし、首脳同士が気が合わないとか気が合うとかいうのも、例えば、韓国の場合、今度大統領がかわりまして、非常に親日的だという、そういったのでいろいろあるんだろうと思いますけれども、私が見るに、あるいは世界のエコノミスト、あるいはEPAの関係者が見るに、日本はどうもちゃんとした通商戦略がないんじゃないかというふうに言われているんですね。その点はよく考えていっていただきたいと思います。

 それで、資料をつくらせていただいておりますけれども、EPA、FTA、私は、余りこればかり進めるのは反対なんですね、こんなことばかりするのは。もっと日本の国の中できちっとやっていくということを考えたりした方がいいんじゃないかと思っております。

 特に人の問題については、松原さんがしつこくしつこく言っておられましたけれども、本当にそうでして、物の貿易とか行き来だったら、多少、あっちばかりつくってこっちに来てとか、こっちの方つくってあっちにといってもいいんでしょうけれども、人があっち行ったりこっち行ったりするというのは非常に問題が大きくなるんですね。ドイツのトルコ人とか日本の韓国人とかもそうですけれども、慎重でなければいけないんじゃないかと思っております。

 それで、皆さんよく言われるんです、EPAの効果は大きい、大きいというのを。資料の一ページ目をちょっと見ていただけますか。EPAの締約国とEPAの非締約国、インドネシアは今締約していくわけですけれども。貿易量はふえた、ふえたと。もちろん投資というのもあるんですけれども、ちょっと上と下を見ていただきたいんですが、上の方が圧倒的に貿易量がふえているか。シンガポール、メキシコ、マレーシア、まあマレーシアはたった二年ですけれども、シンガポールは二〇〇二年、メキシコが二〇〇五年、大してふえてないんですね。非締約国、タイもインドネシアも今度仲間入りしてきていますけれども、まだ仲間入りする前のところのでやっているわけですが、そんなにふえてないんですよ。

 私は、こんなことからしたら、EPA、FTA、どうしてこんなに急ぐのかなという気がするんです。日本のとるべき道というのはどういう道か。それは、自由貿易の恩恵に一番浴している国というのはよく言われます。それだったら、後追いでちょこまかちょこまかEPA、FTAをするんじゃなくて、今停滞しているWTO、この交渉をきちんとして、そこで発言して、そこをまとめ上げていくというようなことの方が大事なんじゃないかと思います。

 なぜかというと、EPAは二国間でちょろちょろやって自分の国の利益になるようなこと、例えば看護師が足りない、介護福祉士が足りない、だから来てもらう、そういうことでびほう策的にやっているので、それはやはり余り美しくないんじゃないかという気がするんです。

 WTOとの関連でどちらを重視すべきかというと、私は圧倒的にWTOだと思うんですが、WTOは今どういうふうになっていて、EPAとの関係はどのように考えておられるんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国の通商政策の根幹は、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制の維持強化ということでございます。したがいまして、私どもこれまでEPA、FTAを、交渉を進めて合意をしてきておりますけれども、これはあくまでもWTOを中心とする多角的な体制を補完するものとして位置づけているところでございます。

 そして、私ども日本といたしまして、WTO交渉に対しましても全身全霊を掲げて取り組んでおるところでございます。WTOの交渉、現在、年内の妥結ということを目標に、これから近いうちに閣僚レベルで農業及び非農産品の市場アクセスのモダリティー、これは関税削減等の方式についてでございますけれども、これに合意できるかどうかという大変重要な局面に立っておるわけでございます。

 このような中で精力的な交渉、話し合いが行われているところでございますけれども、我が国といたしましては、最終的に積極的かつバランスのとれた合意が得られるように、今後とも主導的な役割を果たして、精力的にこの交渉に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

篠原委員 韓国とアメリカなんかは、WTOの停滞もあるんだろうと思います、しかし、あちらはあちらの事情で、高村外務大臣の答弁の言葉をかりれば、事情があってと。圧倒的に、韓国とアメリカの場合は、盧武鉉大統領が、国内のいろいろな声があるのを承知の上で、自分の政権浮揚のためというのもあったんだろうと思います、非常に強引に進められたというのがあるんじゃないかと私は思います。

 日本の場合は、でっかい国との間のものは、例えば、後でこじつけでいいですけれども、どうしてこういうことを言わないのかなと思うんですが、大国との関係はWTOの共通のルールのもとでやっていく、小さな国はなかなかいろいろ事情がある、近くて大事だ、だからそこはEPAで補完していく、多分そうなんだろうと思います。そういう後づけでいいですから、ちゃんと考えて、答弁できるようにしてください。

 多分そうなんだろうと思います。大国同士のものはWTOの共通のルールでやっていく、しかし近くの小国とは、いろいろな問題がある、それをEPA、FTAで解決していく、こういう方針で私はいいんじゃないかと思います。

 それで、韓国ですけれども、私は日韓というのをすぐやれというわけじゃないんですけれども、次の資料をちょっと見ていただきたいんです。これは、アメリカのいろいろな資料を引っ張り出してまとめたものですけれども、私の説ではありません。日米FTAにもいずれつなげていかなけりゃならないんじゃないかと私は思う、ほかの国もやっているわけですしね。

 ちょっと、ここのところでおもしろいのがあります。「日米FTA構想の歴史」というのがあって、日米でもこういうのがあったんです。これは見ておいてください。それで、何で韓国とか言っていましたけれども、おもしろいんです。これは、USTRの高官の話として載っていたのは、二の「米韓FTA交渉成功の三つの鍵」というもの、これはなかなか傑作なんですよ。

 三つあります。先ほど申し上げましたように、大統領の熱意、それから、盧武鉉大統領と、両方とも金ですけれども、貿易相も首席代表も非常に直結していた、シュワブUSTR代表も同じだと。

 それから、済みません、これは本当に、冗談じゃなくて、字句の修正で、二番「協定草案の軸」、この「軸」は字の句ですから、直しておいてください。

 草案というのをやって、十カ月でやり遂げてしまった。ここからだんだん佳境に入ってくるんですよ。十九分野の交渉チームでやって、通訳必要なのは五チームのみだったと。日本の場合、これは不可能ですね。外務省や経産省だったら大丈夫だろうと思いますけれども、私がおりました農林水産省は、通訳なしでは交渉できないです。これがだめなんです。この辺から韓国の方がインターナショナライズしているんです。

 この次が傑作なんです。韓国官僚は発言の意味がわかりやすい、日韓文化の差があると。次、日本政府の官僚はわかりにくい、何を言いたいのか推測するのに時間がかかり、交渉の腰を折られる、韓国人はストレートできついが、理解しやすいと。これは、今ここのところにある人は、国会答弁でいくと、外務省の官僚はわかりにくい、何を答えているのか推測するのに時間がかかり、質問の腰を折られる、こういうふうになるんじゃないかと思うんです。

 これは非常にストレートに言っているんですね。この三つ、日本は仕組みが違いますから一番はしようがないとして、二番、三番は大事でして、日本がEPAをやっていくときにも、アメリカとやっていくときにも十分私は使えるんじゃないかと思っています。

 韓国のことについては、もう皆さん聞かれたので申し上げません。私は、韓国は二番手ランナーですから、日本の姿を見ながらやっていけばいいので、有利な立場にあるとは思いますよ。それで、米韓やったら、すぐEUともやっている。

 先行きどうなるかはわかりません。先ほど田辺審議官がお答えになったように、それは韓国だって農家は厳しいですよ、日本の農民みたいに従順じゃないですからね。ガットのウルグアイ・ラウンドが決まったときには三百頭の牛をソウルのところへ放したりとか、それから内閣総辞職したりしている激しい国ですから、そんな簡単に韓国議会を通るはずがありませんし、アメリカも、牛肉業界の関係者が怒っています、十五年もかかる、韓国の牛肉の関税撤廃に。それから、自動車業界も、韓国からどんどん入ってきたりするので困っているので、まだ簡単にはいかないと思いますけれども、日本もちゃんと着々と準備していかなければいけないんじゃないかと私は思います。

 御存じだと思いますけれども、中国がなぜかしら韓国に呼びかけたりしていますね。日本だけがのけものになっているわけです。どうも薄気味悪い国だ、さっきのこの、何言っているんだかわからない連中と交渉するのは嫌だとかいうのがあるのかもしれませんけれども、後回しになっているんですよ。

 そんな中で、私は不思議なんですよ。さっきの基準で、発展途上国とかこの近所の国にやっていく、わかりますよ。私がつくった資料がございますけれども、その後、またこれをつくったんですけれども、皆さんのおさらい用に。これは、私がきのうの夜、私の秘書ですけれども、つくらせました。メキシコの場合なんかは、NAFTAとかの発効に伴って日本が不利益になっているというのがある。それから、次のページの四ページは、韓国との場合は、世界で隣り合った先進国間でEPAがないのは日韓のみだ、これは野田さんが言っておられたことですよね。

 それで、外務省にも資料をつくっていただきました。そうしたら、ちょっと迷惑をかけたのでおわびしておきますと、いろいろな資料を、追加の資料ですけれども、月曜日の午前中に要求して、十六日の午前六時に到着いたしました、みんな努力をしていただいているというので。

 もう一枚の方は、これは、済みませんでしたけれども、質問取りに来ていただいたときに、こういうような資料をつくってくれと言いましたら、けさ八時四十六分にこれが届きました。この小さい字のと私のつくったのと比べて見ていただきたい。本当はちゃんとつくっていただいて、この外務省からいただいたものは、一生懸命つくっていただきましたけれども、老境に近くなった人の老眼鏡で、何かわざと見えないような字みたいになっているような気がするんですが、内容は大体同じで、わかりやすいのは前の方になると思います。でも、これはちょっと御迷惑をおかけしました。

 しかし、私が何で資料の説明をしているかというと、こういう資料をつくって我々に出していただきたいということです。スケジュールとかいうのをこうやって出して、何年何月にやったとかいうのをカラー刷りでつくってあるんですけれども、内容がどうか、どこが問題かとか、そういうのがさっぱり見えてこないんですよ。そういうのをきちんとつくっていただけたらと私は思います。

 ですから、毎度、夜中の一時二時までかかって私と秘書でそこそこつくる資料シリーズはもうやめにします。これは外務省の皆さんにちゃんとつくっていただきたい。皆さんもちゃんと早々要求してつくっていただくようにしていただけたらと思います。

 それで、この基準、「交渉のきっかけ」というのをずっと見ていってください。豪州とは何でするんでしょうか。私の資料では、「資源の安定調達」というのがあります。先進国相手では初めてです。いろいろ御高説を述べておられましたけれども、その中で豪州と急ぐ理由は何でしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 オーストラリアとのEPAでございますけれども、これにつきましては、日豪、オーストラリアとの間で包括的な戦略関係を強化するといったメリットが期待されるわけでございます。日本とオーストラリアは、アジア太平洋地域に位置する先進国、そして、さまざまな価値観を共有する戦略的な関係にあるかと思っておりますけれども、そうした関係がさらに強化をされるというメリットがあるというふうに考えておるところでございます。

 もちろん、交渉するに当たりましては、オーストラリアは農業大国でございますので、日本の国内農業への影響というものも十分踏まえまして取り組んでいく必要があるということは認識をしております。

 日本といたしまして、全体として最大限の利益が得られるように守るべきものはしっかりと守る、こういう方針のもとに、オーストラリア側の理解を深め、政府一体となって交渉に取り組んでいきたいと考えております。

篠原委員 まあ半分わかりました。しかし、ちょっと物足りないですね。

 二ページの「日米FTAについて」も見てください。ここのところで、「究極の二国間FTAに向けて」という一番下の三のところを見てください。日米FTA、みんな注目しているんですよ。ドーハ・ラウンドが停滞しているというのは、これはわかるんです。次、アメリカでは、米韓の次は日本というムードが高まりつつあるんです、さっき答えておられたように。その次が大事なんです。「日豪FTAの農業の進展度合いに注目。」と。アメリカも豪州とやっているわけです、砂糖、乳製品は例外にしてというのは。しかし、農業のところはどうなるか。米韓の場合は、米は例外になって、さっき言いましたように、牛肉は十五年間かかって関税撤廃というふうになっているのを、どうやっていくのか。だから、そう簡単に進められるものじゃないと思うんです。

 私がなぜこういうことを申し上げるかというと、皆さん、考え方をちょっと変えていただきたいと思うんです。自由貿易、自由貿易とあっちこっち行ったりするのが徹底的な善だと思っておられるんです。

 ちょっとパネルを持ってきました。私はバラエティー番組に出るときも資料のかわりにパネルをつくっていきますが、見えますか、フードマイレージ、ウッドマイレージ、グッズマイレージ。これは皆、私がつくった言葉なんです。物の輸送距離はなるべく少なくと。JALやANAのマイレージプランは大きいほどいいんですが、これは少ないほどいい。地球環境時代に、なるべく移動を少なくして、輸送に伴う汚染を少なくしなければいけないんです。そういう価値観があってしかるべきなんです。

 その観点に立てば、私は、EU、NAFTAは、それぞれ丸だと思うんです、近所の国ですよ。何でシンガポールやメキシコやチリとやるのか。支離滅裂なんです。私は、何で近所とやらずに遠くとやっているのかというのがさっぱりわからないんですね。こういうところが支離滅裂だということで申し上げているんです。

 貿易額が大きい順でいったら、アメリカとか中国なわけですよ。これとのEPAは真剣に考えなくちゃいけないと思うんですが、これは射程距離にそこそこ入っているんでしょうか、入っていないんでしょうか。教えてください。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカとのFTAについてということでございますが、先ほど来御答弁申し上げているとおり、将来の課題として検討をしていくという立場でございます。また、当然、交渉を行うということは、相手方の意向もあるわけでございますから、相手方が望んでいるかどうかということも気にかけていかなければいけないというふうに考えております。

 それから、中国とはどうかという御指摘でございますが、現在、日中間の経済関係というのは幅広くなっております。そうした中で、日本の産業界にとって重要な点は中国の投資環境がさらに整備されることである、そういう認識がございまして、現在、日中韓、その三カ国の間で投資協定の交渉を進めておるところでございます。

 経済関係を強化するというときに、EPAあるいはFTAという形もあり得るわけですけれども、この投資協定を結ぶということも非常に有効な手だてではないかということで、現在これに取り組んでいるところでございます。

篠原委員 世界の潮流は、ほかのところでも動いているんです。今アメリカでは大統領選の真っただ中ですけれども、民主党の候補者、クリントン、オバマとも、NAFTAを見直すということを公約の一つにしていますね。

 ちょっとアメリカのヤフーで引っ張り出しました。おもしろいことをクリントンは言っていますよ。ビル・クリントンは賢いけれども間違えることもある、間違えてNAFTAを結んだとかと白々しく言っています。どういう意味かわかりませんけれども、見直すと。

 どこで見直すかというと、環境、そして労働。エコダンピングとソーシャルダンピング。特にメキシコが、低賃金、劣悪な社会条件でもって、労働条件でもって安いものをつくっている、労賃の差が価格差になってくるわけです。それはおかしいと。それから、環境のルールがなまくらだ、そんなのでどんどんアメリカに来たらたまらぬと。これは、アメリカと中国の食品の輸入なんかでも同じですけれども。

 ですから、そこのところを見直すと言って、ちゃんとブッシュ大統領もそれを受け入れて直すと言っているんですね。それで、クリントン、オバマ両方とも、NAFTAの改定をする、見直しをする、それにメキシコがオーケーしなかったら脱退する、ウイズドローとかオプトアウトとか言っています。こういう状況にあるんですよ。

 だから、日本もまじめに、この自由貿易が一体善なのかどうかということを考えていかなければいけないんです。こういうことを考えて、もっとほかに大事な国是というか、追求すべき目的があるんじゃないかと思うんですけれども、高村大臣、いかがでしょうか。

 アメリカの大統領候補、マケイン候補はもちろん、これは変なこじつけですけれども、そんなことをすると、テロ対策でもってカナダにいろいろ協力してもらっているのに、うまくいかなくなるからNAFTAは見直さなくていいとかということを言っている。そんなのにまで結びつける必要はないと私は思いますけれども、しかし、二人の民主党の候補者はNAFTAは見直すと明言しているんです。それを日本は、そうじゃなくて、逆の方に逆の方に行っているんです。この点について、どのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 アメリカがNAFTAをどうするかというのは、それは日本が余り論評すべき話でもなくて、自由貿易というものを標榜しながら、一方でいろいろな国益を考えながらやるというのは、それは同じことだと思います。

 基本的には自由貿易というのはいいことだというのは、アメリカもそのとおり思っているし、だけれども、それはすべてがそうではない、国益をいろいろ考えなければいけないというのもそうだし、日本も当然そういうことでやってきているわけであります。

 先ほど、フードマイレージですか、余りたくさん遠くまで運ばない方がいい、地産地消がいいということで、自由民主党もそういう政策でやっているわけでありますが、やはりこれは、マイレージという、遠くまで運ばない方がいいというのは、それは飛行機だけじゃなくて自動車でも同じことでありまして、ぜひ、ガソリン税を下げるなどということはおっしゃらないようにお願いします。

篠原委員 ガソリン税論議は、していいですけれども、まあやめておきますよ、時間がもったいないから。

 この協定内容をぱらぱらめくりました。それぞれ違うわけですね。だから、原産地証明とか間接材料とか、中間財を輸出して、向こうでの労賃が安いのを活用してアウトソーシングで、そして輸入してというので、そういうのでやたら長い条文があります。しかし、日本の場合はもっと違うことを考えていいんじゃないかと思います。

 それで、先ほど申し上げましたけれども、もう一つクリントン候補がしつこく貿易協定で大事にしようと言っているのがあるんです。食の安全なんです。アメリカで初めてBSEなんかで学校給食の関係で、食品の回収というかリコール、こんなに大量に回収したことないぐらいの回収、リコールが行われたんです。それだけこういうふうに問題になっているのに、食品も大事なものになっているのに、片方の工業製品のローカルコンテンツとか何かで、さっき田辺さんの答弁にもありましたけれども、アメリカの日系企業が輸出する、そして韓国に来るとか、そういうことだけに二十条も三十条も使って、食の安全がこれだけ問題になっているのに、食についての特別な規定がさっぱりないんです。これは片手落ちだと思いますよ。

 今これを直すわけにはいかないですけれども、この次のときは絶対考えて入れていただきたいと思いますけれども、副大臣、いかがですか。

小野寺副大臣 御指摘になりました食の安全の問題です。外務省としましては、御指摘のとおり、今食料の約六割を海外に依存しているということですので、この年間五兆円の農産物を輸入する世界最大の農産物純輸入国ということになっています。

 この食の安全を確保するために、より多くの国との間で食の安全に関する共通認識を醸成することが大事だと思っております。ぜひ今、具体的な政策としましては、国際基準の策定の中で、例えば食品規格委員会、コーデックス委員会等の議論において、我が国の食の安全の確保についての観点から、科学的根拠に基づいて積極的な主張等を続けていきたい、そう思っております。

篠原委員 WTOで日本がいきなり具体的な提案をして引っ張っていくというのは、正直言って難しいと思います。

 しかし、EPAで、二国間のところでいろいろな協定をやっているときに、日本が工夫して協定に入れていくというのはあっていいんじゃないかと思います。そして、そういう面でリードできるんじゃないかと私は思います。

 アメリカは今、食の安全を気にし出しました。だから、アメリカでは、食品安全保護貿易主義とか言われています。ブラウンさんという上院議員がこの食の安全をしつこくやっていまして、食の安全を理由に、まじめにアメリカの国民の安全を守るという観点から、FTAにも食品の安全条項を入れるべきだ、労働、環境、食の安全、これをきちんとFTAに盛り込むべきだということを主張しています。私は全くそのとおりだと思います。

 そういう点では、日本は世界に冠たるうるさい国ですよ。だから、日本の考え方をちゃんとEPA、FTAに入れ込んで、相手国に認識してもらう。それでレベル全体を高めるわけですからね、日本だけじゃなくてほかの国も。

 中国なんかは、今度のギョーザの関係のときも、こう思っていたはずですよ。日本は全然輸入を禁止してくれない、ストップしてくれたりしない、あれこれ言ってきてくれないと。あちらは自主的に輸出を禁止していました。中国の当局の立場からすれば、日本からきちんと言ってもらったり禁止してもらったりした方が、中国の中の衛生基準を守らせることがやりやすいのだと。日本が言っているんだ、あっちに輸出しなくちゃいけないんだ、日本があれこれ言っているんだという方が、中国政府が自主的にやるよりは楽なんです。日本も、いろいろ改革するときに、外圧というのがあって、やむを得ず改革してきたのがあるかもしれません、余りいいものばかりでなくて、悪い外圧もいっぱいあったかと思いますけれども、こんなのは明らかに、中国政府の関係者は、日本からもっときつい態度をとってもらいたいと思っているはずなんです。ですから、こういうのは非常に大事な機会ですから、ぜひやっていただきたいと思います。

 次に、人の移動ですけれども、私は、人身売買についてちょっと質問したいと思います。

 自然人の移動ということで、第七章に、インドネシアの場合、五条だけあります。この自然人の中に、人身売買、ヒューマントラフィッキングとか言われていますけれども、その問題、こういう人たちも対象になるんでしょうか、入っているんでしょうか。

 今、何か介護福祉士とか看護師とか、条文には何も書いてありませんけれども、その話ばかりしていますけれども、自然人というのはだれでも入るわけです。こういう人たちにも適用されるのでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 このEPAで規定をしておりますのは、我が国の入国管理におきまして、いわば特別扱いをするということを規定しておるところでございます。そのほかの問題につきましては、我が国の入国管理政策の適切な運営ということで対応していくものというふうに認識をしております。

篠原委員 これは全く不明瞭な答弁で、わけがわからないですね。

 適用になるんですよ。この人たちなんかだってみんな自然人の移動ですから、適用になるんじゃないかと私は思います。

 それで、こっちの方の人身売買についてはどうなっているかといったら、これ、G8の中で締約していないのは日本だけですよ。何でこんなぶざまな状態になっているんでしょうか。日本は何でも輸入している、人まで輸入しているといって、こういう関係者の人たちから指弾されているのです。何でも自由で、取り締まりもしないで、ほったらかしにしておると。

 なぜこういう状態になっているんでしょうか、G8の中で締約国になれないというふうに。

新保政府参考人 申し上げます。

 人身取引に関します議定書につきましては、実は、その親条約がございまして、国際組織犯罪防止条約は、この人身取引議定書の締約国になるためには、国際組織犯罪防止条約の締約国でなければならないと規定しております。しかるに、国際組織犯罪防止条約につきましては、その国内担保法でありますいわゆる条約刑法が国会で成立しておらず、したがって、この国際組織犯罪防止条約につきましては締結されていないということで、そういうことから、外務省といたしましては、国際組織犯罪防止条約をめぐる状況も注視しつつ、この人身取引議定書を締結したいというふうに考えております。

篠原委員 新保審議官、今の答弁は、人の悪いような答弁なわけですね。いや、新保さんを責めているんじゃないんです。いいですか、私がずっと主張し続けています、国内法と条約と、要するに、ここの委員会はアンブレラ委員会だ、だから国内法を担当するところと連携しながら審議していかなければいけないと。共謀罪の関係で国内法がちゃんとできていないから国際組織犯罪防止条約がだめなわけです。その下部にある三つの議定書は、だから締約することができないんです。連携していないからなんです。これは恥ずかしいことですよ。

 ですから、ぜひそういうことを考えてやってください。ほかのことが悪いんじゃなくて、外務省はそういう戦略を持って国会対策をどうするかということもぜひ考えていかなくちゃだめなんで、こういうところでだめになっているんですよ。でも、この関係は、私は、日本国政府は非常にきちんとやったと思いますよ。

 アメリカ国務省が、人身取引、人身売買について各国を分けて、そして日本を、二〇〇四年にティア2ですか、それでウオッチリストで、要するに、よくない国、先進国の中で唯一ですよ。人身売買をほったらかしておく、何でも自由に貿易しているということなんですよ、簡単に言うと。こんなことでいいのかというふうに言われているわけです。これは絶対恥ずかしいことですし、こういうのを直していかなくちゃいけない。ちゃんとこういうのをEPA、FTAのところに、さっきの食の安全と同じですよ、規制的なのをちゃんとここに書き込まなくちゃいけない。

 いいですか、いろいろこれで保護された人たち、かわいそうな人たち、私が調べたのでは、過去五年間で三百九十人。どの国が一位かというと、タイ、百三十三人。フィリピン、八十五人。三番目はインドネシア、六十一人です。しかし、これはだんだん数は減っていると警察庁は言いますけれども、だんだん潜在化して、地下に潜っているだけなんです。だから、介護福祉士、看護師とかこういう人たちのことだけを取り上げていますけれども、今問題になっているこっちの負の部分も取り上げてもらわなくちゃいけないんですよ。

 そういうことは全然議論にならなかったんでしょうか。

猪俣政府参考人 幾つかの点について御答弁させていただかなければいけないと思います。

 まず、国内法の関係、なぜ人身取引議定書が締結できていないかという理由については、先ほど別の政府委員が答弁いたしましたけれども、やはり国内法が整備できなければ、親条約であります国際組織犯罪防止条約というのは締結できない。その締結できないことに伴いまして、下に、子供の条約になります人身取引議定書、さらにはほかにもございまして、三つぐらいございますけれども、密入国議定書、それから銃器議定書、これはまだ国会の御審議をいただいておりませんけれども、それはいずれにしてもできない状況になっているということでございます。

 この問題につきまして、恐らく、篠原委員は連合審査の話を随分前からもされておりますけれども、当然のことながら、同時にできればよかったんでしょうけれども、法務委員会の方で別途これは御議論いただいているものでございますから、もう何国会にもわたって御議論いただいている話でございますので、政府としては、ぜひともその条約刑法について、御審議の上で御承認いただければ、その結果、この条約も締結することができますし、それに伴いまして、人身取引議定書についても締結できるということになろうと思います。

 それからまた、先ほど議員が言いました、自然人の移動の関係でございます。

 インドネシアとの関係でのEPAには附属書に規定がございまして、どういう人が対象になるかというのを書いてございます。ただ、その方たちが人身取引の対象になっているかどうかというのは、この協定との関係とはまた別の問題でございますので、我が国における外国人の受け入れの問題、それから外国人の我が国における行動についてどうやって対応していくかという問題だろうと思っております。

篠原委員 国内でどう対応するかじゃなくて、やはり出入りのところできちんとやらなくちゃいけないんですよ。必要な者だけ来てください来てください、変なふうに来ている人はだめだとさっき言っているでしょう。自由に自由に貿易しましょうというのじゃなくて、そこにブレーキをかける環境、労働、食の安全そして人権、こういうのも考えてEPA交渉をしていただきたい。そうしないと、日本は変なレッテルを張られます。

 この要望をいたしまして、外務大臣の御答弁をお聞きして、質問を終わりにします。

高村国務大臣 人身取引議定書について、日本がこれに加入していないということは非常に残念だというのは、貴委員と全く同感でございます。

 なぜできないかというのは、先ほど政府委員からお話がありましたような事情でありまして、民主党の中で連絡を密にして賛成していただければ、すぐできることでありますから、やっていただきたいと思います。

平沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、政府参考人として外務省大臣官房参事官片上慶一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑を続行いたします。篠田陽介君。

篠田委員 篠田陽介でございます。

 きょうは外務委員会、午後からお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私の担当は、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、いわゆる日中刑事共助条約についてということが担当でありますので、このことを質問させていただきますが、まず、そのこととは余り関係はありませんが、関連になりますが、今回、この共助条約、私もいろいろ勉強させていただくうちに、今、日本が、中国とは三カ国目だ、他方、香港そしてロシアとの交渉が行われているということをまず知りました。

 その中で、私、高村大臣に質問する機会もなかなかないものですから、この際、せっかくですから質問させていただきたいのですが、この間、日ロ外相会談が行われたと聞いております。この刑事共助条約の進捗状況についてもその中で話し合われたかもしれませんが、今、日本とロシアとの関係、私は、何となく雰囲気が変わってきたのじゃないかというような印象を受けておりますので、これを機会に領土問題がどうやって発展していくのかを含めて大変関心があるものですから、先般の日ロ外相会談、どのような成果があったのか、どんな会合だったのかということを教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 今回のロシア訪問では、十四日、ラブロフ外相と外相会談を行うとともに、フリステンコ産業エネルギー大臣との間で貿易経済日ロ政府間委員会共同議長間会合を行いました。

 外相会談では、まず、北海道洞爺湖サミットの機会に日ロ首脳会談を行うことで一致したほか、同サミットの成功に向けて日ロが協力していくことで一致をいたしました。それと、北海道洞爺湖サミットの前に福田総理がロシアを訪問するということでも一致をいたしました。

 北方領土問題については、日ロ関係を高い次元に引き上げていくための努力を行うとともに、領土問題の最終的解決に向け、双方にとり受け入れ可能な解決策を見出すべく一層真剣に交渉を続けていくということで一致いたしました。

 平和条約締結のための環境整備として、北方四島を含む日ロの隣接地域における生態系の保全及び持続可能な利用に関する日ロ専門家会合を五月下旬に開催することで一致しました。また、元島民による北方領土への自由訪問に関し、本年夏の訪問から、これまで同行できなかった元島民の子の配偶者、孫及び孫の配偶者、複数の医師、看護師が同行することができることになりました。

 そのほか、実務案件としてシベリア抑留、非核化協力等について話し合ったほか、国際情勢として六者会合、ミサイル防衛及び中央アジア情勢について意見交換をいたしました。

 それから、二月九日に伊豆諸島上空で発生したロシア空軍機による領空侵犯については、私からイワノフ第一副首相に対しかねて調査を求めていたところ、今回の外相会談でラブロフ外相から、調査の結果として、意図的に行ったものではないとの説明がされました。

 貿易経済日ロ政府間委員会共同議長間会合では、極東・東シベリア・イニシアチブのフォローアップとして、七月のG8サミットの際に予定される日ロ首脳会談の前に、貿易経済日ロ政府間委員会の地域間交流分科会を次官級に格上げした上で開催することで一致しました。また、エネルギー、運輸及び気候変動といった具体的な協力案件についても意見交換を行ったところでございます。

 概要はそんなところでございます。

篠田委員 大臣、ありがとうございます。

 日ロ関係、刑事共助条約もこれから合意に向けて進めていくということでありますので、今まさにいろいろな意味で動き出して、そして経済交流もますます活発になってくると思いますので、ぜひとも実のある前進をお願いしたいと思っています。

 そんな中で、日本と中国との刑事共助条約についての質問でありますが、この条約の意義だとかメリットだとかは午前中に丸谷委員あるいは鈴木委員初め質問がありましたので、私の方からそのことについては質問しませんが、そもそも論をちょっとまずお尋ねしたいと思っております。

 基本的に、条約の発効までには、当然、事務的な合意がなされ、それから署名がなされ、それをそれぞれの国に持ち帰り、今我が国ではこの国会で承認をし批准をする、それから、批准書の交換を得ていわゆる発効というプロセスになると私は理解をしておるんです。

 その中で、今回の日中刑事共助条約については、平成十八年七月に杉浦法務大臣が訪中した際に、先方の司法部長との間で、交渉を早期に開始するということで意見が一致したと承知をしておりますが、この合意については、そもそも、中国からの要請があったのか、我が国からこの共助条約を結びましょうという申し入れをしたのか、そのことについてお尋ねをさせていただきます。

石川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、平成十八年七月の杉浦法務大臣の訪中の際に、締結交渉の早期開始について合意をしておりますが、それ以前に、平成十四年の七月に日中の治安当局間協議というのがございまして、この際に中国側から我が国に対して、この条約の締結交渉の開始の申し入れがあったところでございます。

 その後、御指摘のとおり、杉浦法務大臣の際に早期開始について合意をした上、四回にわたり交渉を行って、昨年の十二月に高村外務大臣の訪中において条約に署名をしたというところでございます。

篠田委員 ありがとうございます。

 取っかかりは、平成十四年七月の日中での事務的会議において中国から申し入れがあったということの理解でよろしいですね。

 それで、そもそも、これら条約についてなんですが、実際、承認をして、そして発効しなきゃ意味がないと私は思っているんですが、そんな中、日本とフィリピンのEPAもありますが、結局、合意をして、それぞれ、日本では承認をしたんですが実際はまだ発効されていないというのが、今、いろいろな条約をめぐる中でどのぐらいあるのか、また具体的にどんなものがあるのかというのをちょっと教えていただきたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 委員先ほど御指摘がございましたように、一般的に条約といいますのは、まず署名をして条文を固めて、それから、効力発生に関する規定というのがその中に置かれておりまして、当事国におきます国内手続の完了など、その条約に規定される発効のための要件が満たされることをもって条約が発効するということになっております。

 二国間の条約につきましては、当事国の数が我が国と相手国の二カ国ですから、国会の御承認をいただきながら長い間発効に至らない条約というのはまれとは言えますが、近年、国会の御承認をいただいた二国間の条約で現時点で発効していない条約としまして、委員が御指摘になりました、平成十八年の臨時国会において御承認いただいた日・フィリピン経済連携協定、それから、昨年、平成十九年の通常国会において御承認をいただいた日・フィリピン租税条約改正議定書、それと日本・オーストラリア社会保障協定の三つの条約がございます。いずれにしましても、発効に必要な一方または双方の国における国内手続が進められているところでございます。

 さらに、多数国間条約について一言触れさせていただきますと、これは条約によって当然異なるわけでございますが、一般に、関係国が多く、発効のためにさまざまな要件が規定されることが通例でございますので、我が国で国会の御承認をいただき、批准書、加入書などを寄託しても、ほかの要件が整わないために発効に至っていない条約というのは現時点で十九本ございます。このうち、昨年、平成十九年の通常国会において御承認いただいた職業安全衛生枠組み条約など、発効要件の満たされた三本につきましては近いうちに発効予定でございますけれども、それ以外のものにつきましては、いずれも、発効に必要な締約国数が満たされていない、あるいは一部の発効要件国の締結が得られていないものでございまして、政府としては、このような条約をできる限り早く発効させるため、関係国に働きかけていく等の努力を行っていく所存でございます。

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、今回の日中刑事共助条約に戻りますが、このように、これまでも批准をしたが発効していないという条約もあるということで、速やかに進めていくということでありますが、今回、中国から申し出があった、そして発効に向けてまさに今、日本の国会で議論をしておるんですが、その中で、本当に発効ができるのか、発効してもいわゆる実効性がどうなのかということが今問われているんだと思います。

 そんな中、タイミングとして、この条約を合意して、そしてまさに批准をして発効しようという中、中国製ギョーザの中毒事件というものが発生をしたということであります。それで、日本の資料要求に対して中国当局はほとんど応じないなど不誠実な対応も一部見受けられるということで、当局間で不信感が募って、そして条約の実効性に影を落とすなど、水を差したんじゃないかなと私自身は考えているんです。

 中国側は国内において当然これから批准に向けて承認がなされていくんだと思うんですが、具体的に、中国側は今、いつ批准する予定であるのか、また、その時期について、その見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答えいたします。

 中国側の批准の見通しでございますけれども、中国におきましては、我が国と同様に、批准に当たって、我が国の国会に相当いたします全国人民代表大会、全人代の承認が必要でございます。現在、中国側は、そのための国内手続を鋭意進めているというところと承知しております。

 この条約の締結は日中間の刑事司法分野における協力関係を強化していくという共通の認識を持っておりますので、中国側も同様に、早期の発効に向けて協力していくように日中間で調整をしていきたい、このように思っています。

篠田委員 ありがとうございます。ぜひ働きかけをお願いしたいと思っています。

 それで、この条約が発効した場合、今回のギョーザ事件に絡めてなんですが、実際どんな効果があるのか。本当に、今回の事件、このままたなざらしになるということはいけないことだと私は思いますので、事件解決に向けて、解明に向けて、せっかくこのタイミングでこの条約を結ぼうとしているんですから、結んだときにどういった効果が具体的に期待ができるのか、これを質問させていただきます。

石川政府参考人 お答えいたします。

 ギョーザの問題でございますけれども、現在、一刻も早い真相究明のための捜査当局間の緊密な連絡調整というのが行われております。これについては、中国側と協力関係ができつつあると思っております。

 この刑事共助条約そのものにつきまして、たとえこれがないからといって不都合があるということではないと思っております。すなわち、通常の外交ルートを通じて証拠の提供が行われるということでございますので、不都合はないということでございますが、他方で、この条約が発効いたしますれば、外交ルートを通さないで、当局間で直接に共助に関する連絡が行えるということでございまして、共助の一層の効率化あるいは迅速化、こういったものが期待されるということになりますし、また、共助の実施が条約上の義務ということになるということも大きな効果だと思っております。

篠田委員 ありがとうございます。

 大臣に質問させていただきます。

 私の感覚なんですが、これは、条約の批准に向けて合意がなされた。それで、我が国について今、この問題について国会で承認を得るための作業を行っている。他方、中国については、実際問題まだ批准はされていない。その中で今回のギョーザ事件が起こったということでありまして、万が一、中国側が、今回日本が国会でこうやって承認されたにもかかわらず、批准をなかなかしてくれないというようなことがあった場合、私は、いわゆる感情として、やはりギョーザ事件があったから、何かやましいことがあるから向こうはおくらせているんじゃないかなというふうに日本の国民感情としてはとらえると思うんですが、そのことについて、大臣の見解というか思いを聞かせてください。

高村国務大臣 中国側に、日中刑事共助条約の批准をおくらせるような動きがあるとは承知しておりません。この条約を批准するために必要な国内手続を鋭意進めているところであると承知をしております。基本的に、万が一のことはないと思っています。万が一のことは、万が一にもないと思っています。

篠田委員 ありがとうございます。

 万が一はないということで、そもそもこれは中国から申し出があった話でありますから、我々としても、日本としても、やはり、日本がもう批准をしたんだということで、改めて中国側に速やかなる批准をお願いしていくのが外交の一つの作業かなというふうに私は思っております。

 それで、きょう資料をちょっとお配りさせていただきました。これは衆議院の調査室の資料なんですが、我が国は現在、刑事共助条約については三カ国目であるということでありまして、他方、中国側は、日本が四十三カ国目の交渉に入っているということであります。アメリカは既に五十カ国以上批准をしているということで、なぜ日本が三カ国目なのかなという単純な疑問があります。

 そんな中、お配りをさせていただいた資料なんですが、これは、我が国日本が外国や地域に対して捜査共助を要請した件数、並びに、逆に受けた件数、各国からどれだけ一年間に共助の実績として受けているのかという表を見た中で、フィリピンを初めいろいろな国から要請があったり、日本からも要請をしたりしているんですが、まず、今の日本の姿勢として、今回が三カ国目だということなんですが、なぜ三カ国目なのかなという素朴な疑問をまず投げかけさせていただきたいのです。

 積極姿勢が余り見られないというのが私の印象でありますが、なぜおくれているのか。これは、交渉されるのは外務省、具体的な、実際に批准し発効してからについては警察なり法務省が事務当局間で交渉するということでありますが、これらスピードが加速していかないのは、そういったいわゆる縦割りみたいなところがあるのかどうなのかというのを私ちょっと疑問に思っているものですから、なぜ今三カ国目なのかというのを、外務省並びに法務省の担当者に質問します。

猪俣政府参考人 まず、外務省の方から御答弁させていただきます。

 午前中の審議でも大臣の方からも何度か答弁がございましたが、近年の国際犯罪の増加に伴いまして、やはり捜査、訴追、その他の刑事手続に関します国際的な協力の必要性は高まっているということの認識は、外務省も、警察庁も、それから法務省も、みんな持っているところでございます。

 そこで、まずはアメリカ、韓国、そして中国という形で進んでおるわけですけれども、さらに、現時点では、香港及びロシアとの間での条約の締結に向けた交渉を開始し、あるいは締結に向けた作業を行っているところでございます。

 これは委員御案内のとおり、我が国は、刑事共助条約を締結していない国との間でも、国際捜査共助法に基づきまして、その相手国との間で相互主義が保証されることを条件に、その国から要請された共助を実施することは可能だということでございますので、これまでも諸外国・地域との間で数多くの共助が実施されてきております。委員御提示の資料にもあるとおりだと思います。

 ただ、今言いましたように、国際犯罪の増加に伴いまして、やはりこういった協力が必要だということもございますので、必要な国、すなわち各国・地域との刑事共助条約の締結の意義、必要性、実施可能性などを総合的に勘案した上で判断し、関係省庁とも協議をしながら、次にどの国と結んでいくかということで今検討を進めているところでございます。

三浦政府参考人 基本的にはただいまの外務省の御説明と同様でございまして、我が国の法制上、現在においても外国からの捜査共助の要請に対応することができる、あるいは逆に我が国から外国に要請ができるということで、現に多くの共助が行われているということがございまして、これまでのところは、そういった条約をぜひ締結しなければならないという必要性が必ずしも大きくはなかったのではないかというふうに考えられるところでございますが、さまざまな国際犯罪の増加、さらには国際協力の必要性の高まりといったことを踏まえまして、刑事共助条約を締結することによって、共助の迅速化、確実化ということを図ることが期待できるということでございます。

 私どもといたしましても、今後とも、具体的な必要性などを勘案いたしまして、関係省庁とも協議の上、その締結拡大について検討してまいりたいと考えているところでございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 日米、日韓が既にこれは締結、発効しておりますが、そのときの国会の答弁でも同じようなことを言っているんですね。結局、それから数年たってまだ三カ国目なのかということ、やはり、やりますやりますと言ってやらないのは今の自民党と余り変わらぬなというような感じもありますので、やると言ったら必ずやるというのが私は大事なことだと思いますので、ぜひやっていただきたいと思っています。

 そんな中、捜査共助を要請した件数の表でありまして、例えばこれまで、これは平成十一年から平成十九年の中でタイが二十件、あるいはフィリピンが十七件等々でありますので、優先順位なんですが、やはり私は、我が国で犯罪を犯した人がその国に逃げる、日本人でも例えばフィリピンに逃げるだとかタイに逃げるだとかそういったこともあるし、また逆もあると思うので、まさにこういった国から、積極的に我が国が働きかけて、優先して捜査共助の条約を締結するための取り組みを進めることが外交上必要なことではないかと思います。

 これらから優先すべきということについて、私の考えについて外務省はどうお考えか、教えてください。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 今後の交渉方針につきましては、先ほども言いましたけれども、いろいろな要素を総合的に勘案の上、判断すると申しました。ただ、その中でも、やはり我が国と相手国・地域との間の過去の捜査共助実績というのは重要な判断基準になると考えております。

 したがいまして、御指摘のタイですとかフィリピンですとかいうような国、あるいはブラジルもそうだと思いますけれども、その他の国に比べまして過去に我が国から共助要請を行った件数が多いので、この点を十分に踏まえて検討していきたいと考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 ぜひ速やかなる条約締結に向けての働きかけ、私はこういった一つ一つをやっていくことがまた相互の国同士の信頼関係につながっていくと思うので、確かに、国際法上もある、外交ルートでやればできるということもわかりますが、果たして、国際社会の流れの中、ほかの国が積極的にこうやって進めている中で日本が三カ国目でいいのかなというのがありますので、それは、その部分のスタッフが足りないのであればその部分をやはりふやすのが政治の仕事だと思うし、またそういったところにもぜひ目を向けていただきたいと思っています。

 その中で、今回の条約について、いわゆる双罰性の欠如について質問させていただきます。

 二国間でお互いの国の中の刑法が異なるということで、例えば今回でも、日本においては犯罪にならないが中国では犯罪というようなケースが想定があるから、双罰性の欠如ということで、自国の法令によれば犯罪を構成しないと認める等の場合には共助を拒否することができると書いております。

 この双罰性の欠如について、対中国、今回の条約と、過去に締結されました韓国との条約は認められている。他方、アメリカについては適用されていなかったということなんですが、素朴に、対米と比べて対韓国、対中国でなぜ双罰性の欠如というのを盛り込んだのかということの質問と、もう一つは、日中間ではどんな事例が具体的に双罰性の欠如に当たる犯罪なのかということを教えていただきたいと思います。

猪俣政府参考人 まず、今お諮りしております日中刑事共助条約の中で、双罰性についての御質問でございます。

 この条約には、第三条一項の(5)におきまして、被請求国が、請求国における捜査、訴追その他の手続の対象となる行為が自国の法令によれば犯罪を構成しないと認める場合には共助を拒否することができるとしておりまして、いわゆる双罰性が成立しない場合には共助を拒否することができるとしております。

 当該規定は、双罰性が成立しない場合でありましても、被請求国の裁量で共助を実施することができることを意味しております。既に発効しております日米刑事共助条約及び日韓刑事共助条約も双罰性について同様の規定がございまして、このような規定によりまして、双罰性が満たされていない場合にも、我が国の裁量で共助を実施することは可能となります。

 それからあと、お尋ねの、具体的にどういう点が違うかということでございます。

 具体的に我が方で承知しておりますのは、中国刑法上、例えば、民族的差別の扇動を行う行為、それから邪教組織の組織などにより法令の実施を害することということを犯罪としていると承知しておりますけれども、我が国の刑法におきましてはこれらに対応する犯罪がなく、双罰性が成立しない可能性があるというふうに考えております。

 他方、双罰性が成立するか否かにつきましては、罪名や条文のみを形式的に比較して判断するのではなくて、やはり、事案の社会的事実関係に着目しまして、その事実関係の中に日本の法令の中で犯罪行為と評価されるような行為が含まれているか否かを検討することによって判断すべきものというふうにされております。

 したがいまして、事実関係によっては、今ちょっと例で挙げました中国でいずれかの犯罪に問われる行為であっても双罰性を肯定し得る場合があるというふうに考えられているところでございます。

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、この双罰性に絡みまして、要するに、捜査共助の要請があった場合、我が国の中央当局は法務大臣、法務省になるんですが、それを拒否するか否かは法務省そして大臣の裁量にゆだねられるということでありまして、どのケースを受け入れ、どのケースを拒否するかということの定義づけというのは非常に難しいと思うんです。

 それで、かつて日韓刑事共助条約の審議の中で当時の大林法務省刑事局長の答弁によると、その判断については多種多様な事案が考えられるので一概に申し上げることはできない、事案の内容や性質、我が国の法秩序との整合性を総合的に考慮して判断すると答弁しておりまして、要するにケース・バイ・ケースで判断をしていくということであります。

 その観点からいって、例えば、双罰性の欠如した犯罪の被害者として、日本人が中国で拘束をされた、日本においてはこれは犯罪じゃないのに中国で捕まってしまった、そして中国から共助の要請があって、何らかの証拠を出しなさい、この人の情報を教えてくださいというようなことがあったとき、果たして、我が国国民を保護する、自国民保護という観点からそれを受け入れるのかあるいは拒否するのかということを迫られてくるケースがこれから出てくると思うんです。

 そういったときに、その基準となるべき基本的な方針みたいなものをきちんと策定しておかないと、私は、結局こういったときに、それぞれそのときの担当者の個性あるいは大臣の個性にゆだねられてしまうというのは、ある意味危険なことかなというふうに思っていますが、基準となるべき基本的な方針というのを今後決めるつもりがあるのか、あるいは、今でもこういった基準ですよというものがあるのであれば教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 御指摘のとおり、日中刑事共助条約におきまして、双罰性が欠ける場合、共助を拒否することができるという規定になっておりまして、そのように双罰性が欠ける場合には、我が国としましては、法務大臣が共助を行うか否かを判断するということになるわけでございます。

 その判断につきましては、今先生の方で御指摘になりましたとおり、前に刑事局長の方で答弁をしたとおりでございますが、現実にそのような事案、共助が請求される事案というものはまさに多種多様でございまして、一概に、こういう場合はこう、ああいう場合はこうという形で申し上げることが非常に難しいというところでございます。

 基本的には、その具体的な事案がどういう内容であるのか、それから、そういったことについての刑事罰則の適用ということと我が国の法秩序との整合性がどのようなことになるのか、さらには、共助を実施する場合、関係者に具体的にどのような負担を負っていただくことになるのかといったさまざまな要素を最終的には総合的に考慮して判断することとなるのではないかというふうに考えておりまして、こういった総合的な判断をするということでありますので、なかなかそれを事前に、こういう基準あるいはこういう方針という形で、抽象的な形で定めるということは難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 そろそろ時間になりますので、もう一問。

 ロス疑惑の一美さん銃撃事件について、日米共助条約との関係で、いわゆる我が国で無罪が確定している三浦和義元被告が今回サイパンで逮捕されたということを契機としまして、この問題、日本で一度裁判を行って無罪であるということについては再び逮捕されることはないという、いわゆる一事不再理の方針との整合性というのがこれから問われてくると思うのです。

 これはそもそも、私も当時幼かった記憶で余り、ロス疑惑という言葉しか知りませんでしたけれども、日本とアメリカとで話し合いの中で日本で裁判をしてくださいということで、日本で裁判をして無罪になったというふうに理解をしておるんですが、今後、アメリカでこの裁判、事件の解明に向けて改めて捜査を行うということでアメリカから捜査の要請があった場合、日本はどういった立場で臨むのかということを最後にお聞かせください。

三浦政府参考人 いわゆるロス疑惑事件に関します捜査共助の要請、それからそれに対する対応につきましては、米国の捜査当局が行っております個別事件の捜査にかかわることでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 あくまでも一般論として申し上げますと、捜査共助の要請がありますれば、法律及び条約の定めに従って適切に対応することになるということでございます。

篠田委員 時間になりましたので終わらせていただきますが、今回の条約、中国から申し出があったということの経緯もありますし、私、今の日中間の状況にかんがみ、まさに速やかに発効に向けて努力をしていただきたいということをお願い申し上げ、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 日中刑事共助条約について中心に質問をさせていただきますが、ただ、一点だけ経済連携協定について確認をしたいということがございますので、よろしくお願いいたします。

 インドネシア及びフィリピンとの経済連携協定、フィリピンは、まだフィリピン側の事情でというか、フィリピン側が批准していないということでありますが、インドネシア、フィリピンとの経済連携協定、こういった協定が締結されると、当初、二年で大体最高で二千人、看護師候補者が八百人、介護福祉士千二百人が入国してくるだろうと。しかしながら、これは午前の議論にもありましたが、日本の中でなかなかこの部分で働き手が不足している、あるいは不足するだろう、あるいは地域によって非常に不足しているところがある、こういう中で、自由な経済という側面と、その中でどうやってそういった職場での雇用、働き手を確保していくのか、こういう側面があると思うんです。

 振り返って国内を見ますと、国内にも、介護また看護分野においては、それぞれの分野で資格を有しながら離職をしてしまった、特に介護ですと職について二〇%ぐらいの人が離職をしてしまっているわけであります。いわゆる潜在的な看護師、潜在的介護福祉士が多数いると考えられている。例えば先ほど御紹介しました介護福祉士でいうと、数でいうと大体二十万人ぐらいではないか、そういう人たちが職を離れている。まあ、いろいろな事情がある。

 ただ、介護福祉士会が行った調査によりますと、潜在的介護福祉士の皆さんのうちの大体五割ぐらいが、介護業務に従事したい、復帰したい、こういう意向を持っていらっしゃる、こういうことのようであります。もちろん将来的なことも見通しながら、しかし、現在やりたいけれどもいろいろな事情があってやれない、もしかしたらそれが経済的な側面もあるのかもしれません。そういうことがよく報道されておるわけであります。

 そうしますと、人材の確保、あるいは今そうした資格を持っている人たち、こういう人たちをどうやって発掘していくか、あるいはこういう人たちが働きたいと思っている潜在的な欲求にどうこたえていくか、これも非常に重要ではないかと思うんです。その点についてどうお考えになっているかをお聞きしたいわけであります。

 それと、余り時間がないのであわせてお聞きをしたいと思うんですが、今回こうして条約という中で議論をされていく、経済的な動きの中で議論をされていく、しかしながら、看護の現場あるいは介護の現場で働いている人たちがいらっしゃる、こういう人たちの声はどういうふうに聞かれたのか。あるいは、働く人たちだけではなくて、施設を運営している方。私が聞くところによりますと、施設を運営している方も、地方はなかなか人材を確保しにくい、そういう中で非常に外国からもそういう人たちに来てほしいという要求もある、都市はちょっと違う、そういうようなことも聞いたことがあります。

 そういったことで、どのようにその点を集約したというか調査をなさったか、お聞きをしたいと思います。

中村政府参考人 お答えさせていただきます。

 今御指摘のございました例えば介護労働者については、委員御指摘のとおり、他の分野と比較して離職率が高い一方で、全産業と比較いたしますと全体として有効求人倍率が高く、地域によって差がございますけれども、特に都市部では事業所においては人材確保が困難な状況が見られているところでございます。また、介護福祉士の資格を持ちながら介護の仕事に従事していないいわゆる潜在的介護福祉士も、御指摘のとおり約二十万というふうに推計されております。

 こうした状況を踏まえれば、国内の介護労働者の状況を改善し、国内において人材の確保を進めていくことが基本であると考えておりまして、私ども、社会福祉法という法律がございまして、それに基づきまして、十四年ぶりに昨年八月に福祉の人材確保指針の見直しを行ったところでございます。

 その中で、少子高齢化が進む中で福祉、介護サービス分野を人材の確保に真剣に取り組んでいかなければならない分野の一つとして位置づけ、特に就職期の若年層を中心とした国民各層から選択される職場にしていかなければならない。委員から御指摘ございました潜在的有資格者も多いわけでございますので、そういった方々がこちらの方に帰っていただけるように、例えば離職の理由の実態調査をするとともに、さまざまな福祉人材の確保のためのセンターなどもございますので、職場復帰を希望する有資格者に対する再研修等をお願いしているところでございます。

 この人材確保指針の見直しに当たりましては、審議会の方に、今委員からお話がございました職能団体でございますとか、養成団体でございますとか、経営者の団体にも入っていただきまして、意見を踏まえ、またパブリックコメントなどもさせていただいてやっておりますので、そういった意味で、これからもこの分野の国内の人材の確保、それから、今回の新しい枠組みによって外国の方が介護福祉士になるべく来られるわけでございますので、そういった方々の受け入れに万全を期してまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 非常に少子化、高齢化の進む日本の状況の中で、中長期的に外国の方にこういう分野にも従事をしてもらわなくちゃいけないだろうというところと、ただ、既に資格を持っているけれどもさまざまな事情で職についていない、そういった方々のケアもきちっとしていっていただかないといけないと思います。今お答えいただきましたので再度質問しませんけれども、やはりこういった日本の介護、看護の職場の人材確保というところにバランスをとってといいましょうか、短期、中期、長期でしっかりと目を配らせていただいて、安心して看護、介護が受けられる状況をつくっていただきたいというふうに思います。

 厚生労働の方は以上でございますから、どうぞ。ありがとうございます。

 それでは、日中刑事共助条約について質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど篠田委員の質問の中にもありましたけれども、刑事共助条約、まだまだこれからだというところだと思うんですね。共助条約を結んでいないところがたくさんあるわけであります。しかしながら、そういうところでも、実際に既に、あるいはこれから捜査の共助をしていかなくちゃいけないということで、必要性があるわけであります。そういう中で、日本は国際捜査共助法というのを制定してやってきた。そこには、国際礼譲に基づいて捜査共助を行う、こういうことになっているわけであります。

 そういう形でずっと長くやってきて、先ほどちょっと質疑を聞いておりましたが、そういう中で必要性も出てきて、日米、日韓と刑事共助条約を結んできた。そして、それは国際礼譲ではなくて、条約上の義務として共助が確実に実施されることを目指してやってきたということであります。

 ただ、まだ条約がないところがあるわけでありますから、そうすると、そういうところとは、この国際礼譲のもとでの国際捜査共助、こういうことになるわけであります。こうした国際礼譲のもとで行われる共助の有効性、信頼性について、政府はどのようにお考えになっているか、また、条約がない中で、それをどうやってより実のあるものにしていかれるおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

猪俣政府参考人 今委員御指摘の国際礼譲といいますと、国際社会におきまして、儀礼的、便宜的または恩恵的考慮に基づき一般的に遵守される慣例であるというふうにされております。

 国際礼譲によります、仮に今回の場合ですと国際捜査共助でございますけれども、それは国際法上の義務として行われるものでないということはそのとおりでございますが、要請された共助を実施するか否かということがあくまでも各国の判断にゆだねられていることになります。

 そうはいいながらも、やはり一般的には、多くの国の間で国際礼譲による国際捜査共助が行われているものというふうに認識しておりまして、我が国も、これまでも捜査共助をやってきておりますし、実際のところは、捜査共助条約を締結していなくとも、我が国に共助を要請してきた国との間で相互主義が保証されることを条件に、それぞれの国から要請された共助を実施することは可能であるということでございます。

近藤(昭)委員 そういう中で、国際礼譲というのは、何か特に概念といいましょうか、大まかな定義とか、国際的な相互の共通認識みたいなものはあるんでしょうか。

猪俣政府参考人 先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でございますけれども、国際礼譲といいますと、国際社会において、儀礼的、便宜的または恩恵的考慮に基づき一般的に遵守される慣例であるというふうに認識されております。

近藤(昭)委員 慣例ですから、それは慣例の積み重ねがあるのかもしれませんけれども、そういった国際礼譲の中で行われてきた。しかしながら、より確実なものにするために、刑事条約を米国、韓国との間で結び、そして今、中国との条約を結ぶことを審議しているわけでありますが、そういう中で、先ほど篠田委員の質問されたこととも関連してくるんですけれども、日本は、この国際捜査共助法の国際礼譲でやってきた。

 この間の審議で、私は政府の認識を少し改めて確認をしたいというふうに思うんですけれども、ヨーロッパは陸続きでもあるわけでありますし、国境を越えた人の移動が盛んだ、そういう中で、一九五九年、欧州評議会で多数国間の刑事共助条約が締結をされた。また米国も、先ほどもちょっと触れられたと思いますが、麻薬犯罪、金融犯罪の国際化に向け、既に五十カ国以上の国と二国間の共助条約。そして国連においても、一九九〇年に刑事に関する共助に関するモデル条約、こういうものを作成している。

 しかし、先ほどちょっと答弁もありましたが、より確実に、そして必要だからということでありましたけれども、刑事共助条約に向けた国際的なこういった取り組みの中で、二〇〇二年三月に行われた国際刑事共助条約の締結推進を求める国会の質疑でも、当時の参議院法務委員会で法務省刑事局長さんが、捜査の協力や証拠の収集について、日本も含め、各国とも条約を必ずしも要件とせず、それぞれ要請があった場合に応じるという体制がほぼでき上がっている旨、これは私が受ける印象と、また発言された方、あるいはほかの方の印象は違うのかもしれませんが、非常に、そういったものができ上がっていると。それでも十分だとは言わないかもしれませんが、かなりの体制ができ上がっている、こういうような言い方をしているような気がするんです。

 そういうものを聞く中で、既に結んでいる米国、韓国との刑事共助条約でも、相手からの要請で始まった、また今度の中国でもそのようであります。そして、先ほどから話がありますように、香港、ロシア等々も進めているということであります。

 そうしますと、先ほど申し上げました二〇〇二年の参議院法務委員会での答弁のときと、政府の考えは今、変化があるのかどうか。あのときとは違って、米国とも韓国ともやった、これからどんどんやっていく、その認識に変化があるのか、あるいはこれからどうしていこうかということをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺副大臣 先ほど答弁がありましたように、その都度必要に応じてこのようなものを結んでいくことが大事だと思っております。

近藤(昭)委員 先ほども答弁あったのは聞いておりましたし、必要があったと。

 ただ、先ほど申し上げたように、韓国が結びつつあった、ヨーロッパあるいはアメリカでも。そしてまだ現在でも日本は、今度やっと三カ国目だということ。そして、二〇〇二年の答弁を聞いていると、ほぼでき上がっていると。そのときの認識を確認したい。そして、そこから何か今の認識が変わっているのかということを確認したいのです。

小野寺副大臣 政府としましては、認識は一貫しておりますが、従前から、米国、韓国及び中国以外の外国との間の刑事共助条約の締結についても、積極的に検討していくという方針がございます。その相手国・地域の選定に当たっては、諸般の要素を総合的に勘案し、判断していくこととしております。

 このような要素のうち、我が国と相手国・地域との過去の共助実績は重要な判断基準となると考え、特に我が国からの共助要請の件数が多い国・地域との間で刑事共助条約が締結されれば、我が国の犯罪捜査がより円滑に行われることになり、我が国にとって意義深いというふうに考えております。

三浦政府参考人 二〇〇二年でございますか、平成十四年の法務省の刑事局長の答弁についてのお尋ねでございました。

 そのときの答弁で、条約を前提としないで、それぞれ求めがあった場合に応じるという体制がほぼでき上がっているという旨を答弁しているわけでございますが、それによって、条約が必要ないということ、そういう認識のもとでの答弁といいますよりも、先ほど来御説明がありますように、我が国におきまして、条約を締結していない国との間でも、実際に国際捜査共助法に基づいて捜査共助の要請に対応することが可能であり、また、我が国からも要請をすることが可能であって、現に、そういった諸外国との間で数多く共助が実施されているという状況を認識として御説明したものというふうに考えております。

 他方で、先生御指摘のとおり、刑事共助条約を締結することによりまして、共助が迅速化、効率化、さらには確実に行われるということが期待できるというところでございますので、私どもといたしましても、今後とも具体的な必要性等を考慮いたしまして、関係省庁とも協力の上、こうした条約の締結拡大について検討していきたいというふうに考えているところでございます。

近藤(昭)委員 認識としては、必要だからこれからやっていく、積極的にやっていくという小野寺副大臣の答弁でもあったと思います。

 そうしますと、少し確認をしたいと思います。

 今も小野寺副大臣のお答えの中にはあったと思いますが、既に捜査共助をやっているところがたくさんある、必要に応じてそういうところをやっていく。そうしますと、今まででも、日本からの共助要請が多いタイとかフィリピン、あるいは相互に多いフランスとかオランダ、やはり、より実態というか事例が多いところからやっていくべきだというふうに私は思うんですが、例えばそういう優先順位についてどういうようにお考えなのか、あるいは、既にそういう優先順位の多いところとは実際に交渉にも入っているのか、そういう状況をお知らせいただければと思います。

小野寺副大臣 委員が御指摘ありましたように、この実績も含めて考えていくことが大事かと思っております。

 共助要請の件数の多い地域ということで御指摘がありましたが、現時点におきましては香港及びロシアとの間で刑事共助条約の締結に向けた交渉を行っております。香港については呼び名が若干違っておりまして、刑事共助協定という名前になっております。

 また、御指摘がありますタイ、フィリピン、フランス、オランダにつきましては、その他の国と比べて過去の共助要請の件数が多いため、この点を十分に踏まえて、積極的に検討していく考えにあります。

近藤(昭)委員 検討ということでありますからこれからなのかもしれませんけれども、そういった優先順位といいましょうか、日本はかなりおくれておりますので、しっかりとスピードまた優先順位を持ってやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 さて、刑事共助条約、先ほども既に質問があったんですが、双罰性が欠如する場合にはケース・バイ・ケースで判断をしていくというようなお答えだったと思うんです。何か特にこうした方針というようなものがあるんだと思うんですが、いかがでありましょうか。

三浦政府参考人 双罰性が欠ける場合に法務大臣におきまして共助を行うか否かを判断することとなるわけでありますが、その判断につきましては、先ほども申し上げましたけれども、共助の請求がなされる事案というものがまさに多種多様であるということでありまして、どういう場合にどういう判断をするということを一概に申し上げることは非常に難しいということでございます。

 被疑者の国籍にかかわらず、事案の内容でありますとか、我が国の法秩序との整合性がどうであるか、あるいは、共助を実施する場合に具体的に関係者にどのような負担をおかけすることになるのかといった要素をさまざま総合的に考慮して判断するということになるものと考えております。

近藤(昭)委員 しっかりとそうした方針を持ってやっていただきたいというふうに思うわけです。

 これも重ねての質問になるわけでありますが、日中の刑事共助条約が結ばれていない中で起こったギョーザの事件でありました。今までの条約がないときと違って、これからは、外交の窓口を通すのではなくて、より現場に近いといいましょうか、現場の責任のあるところから直接、捜査の協力、共助について交渉また現実に行っていける、そこがこの条約の一番のメリットだ、そういうふうに思うんです。

 そうしますと、この共助条約があればより深い捜査ができただろうというさっきのお答えもあったんですけれども、一方で、そうしたものがどうやって担保されるのかという危惧もあるわけでありまして、刑事共助条約があったならば、ギョーザ事件についてこういう形でより捜査ができたのではないかというようなことがあれば、お教えいただきたいと思いますし、これは、もちろん条約で形として担保されて直接やれるということができてきたわけでありますけれども、一方で、信頼関係というものが重要だと思うんですね。

 いっとき、日本側の警察庁長官と中国側の捜査当局がお互いに、それぞれが協力してやっていこうと言った途端に、いや、こちらでは全くないんだ、こちらも、いや、我が国ではない、こう言った。はたから見ていて少しおやと思うようなことがあったんですが、そういった信頼関係、また、信頼関係だけではなくて、それをきちっと担保していく、そういったことについてはどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

米田政府参考人 まず、刑事共助条約が現に発効しておればこのギョーザ事件がどうなったかというお尋ねでございますが、現在まで警察は、外務省からも多大の御支援をいただきまして、中国の方も外交部も動いておりまして、外交ルートを通じるということからしても、かなり活発にいろいろな連携はしておると思います。

 ただ、現在のところ、まだ情報とか資料のやりとりでございまして、私どもは、中国側に対しまして、捜査共助の手続をとってくれれば証拠物を渡すよということは再三申し向けておるんですが、現在のところ、そこまでの捜査の段階には至っていないということでございまして、もしそういう段階になった場合には、外交ルートを通じずに、共助が速やかに行われることになろうかと思います。

 それから、信頼関係ということでございますが、確かに委員御指摘のとおり、いろいろ向こうの見解とこちらの見解が違う部分がございまして、これにつきましては午前中も答弁しましたので繰り返しはいたしませんけれども、私どもとしては、現在もう既に四回、それぞれの捜査の幹部あるいは科学捜査の専門家が行き来をして、さまざまな実務上の協議をして、そして、認識を共通にできるものは共通にしながら、より連携を深めていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 このギョーザ事件は非常に影響が大きい、もちろんギョーザ事件だけではないわけでありますけれども、必要性が出てきて、より直接的にやることによって、また条約ができることによって、今もお答えがありました、そういった証拠物件とか、あるいはさまざまな情報のやりとりがスムーズにいくんだ、そしてまた、そのもとに必要な信頼関係も、これからといいましょうか、つくっていくんだと。ぜひしっかりとやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、先ほどこれも質問があったんですけれども、中国側がこの条約の批准に後ろ向きなことはないという高村大臣の御答弁でもありました。ただ、ちょっと具体的に、中国側はどういうふうな条約の批准手続を行って、いつごろなのかなとか、そんなことを教えていただければと思います。

石川政府参考人 お答えいたします。

 中国の批准でございますけれども、まず、中国は、この分野、刑事司法分野における協力関係を強化していく、このことを非常に重要視しておりまして、両国の共通認識となっておりますので、中国側の条約批准手続もきちんと進めていただくというふうに私どもは期待をしております。

 具体的な手続でございますが、先ほども答弁申し上げましたけれども、我が国の国会に相当いたします全国人民代表大会の承認が必要ということで、そのための手続を進めているというところでございまして、現在、外交部から国務院の方に提出する手続が行われているということだそうでございます。

近藤(昭)委員 国務院に提出する手続、そうすると、全国人民代表大会はいつごろにかかるとか、それは、そこまでは、そうですか、わかりました。まあ向こうでもそういう手続が進んでいるということの理解であります。

 続きまして、犯人の引き渡しということで、ちょっとお伺いをしたいと思います。

 捜査協力に関する国際条約は、今回審議をさせていただいております刑事共助条約に加えて、犯罪人引き渡し条約というものがある、御承知のとおりであります。日本は、刑事共助条約同様、米国と韓国と犯罪人引き渡し条約を結んでいる。ということは、まだ多数の他の国とはそうした引き渡し条約が締結されていないという状況であります。

 こうした状況の中で、日本はそれらの国々とどうやって犯罪人の引き渡しを行っているのか、御説明をいただきたいと思います。

三浦政府参考人 御指摘のとおり、現在、我が国が犯罪人引き渡し条約を締結しておりますのは米国と韓国の二カ国でございます。もっとも、我が国といたしましては、他国から犯罪人の引き渡しを求められて条約がなければできないというわけではございませんで、国内法であります逃亡犯罪人引渡法を根拠といたしまして、相互主義の保証に基づきまして、他国に犯罪人を引き渡すということを行っているところでございます。

 他方、こういった引き渡しを行うことができるということを前提といたしまして、我が国から逆に外国に対しまして逃亡犯罪人の引き渡しを請求し、その引き渡しを受けるという形で、相互に引き渡しが行われているところでございます。

近藤(昭)委員 引き渡し条約がなくても現実的には行っている、相互保証、逃亡犯罪人引渡法があるということでありますけれども、ただ、刑事共助条約もそうですけれども、そうした犯罪人引き渡し条約があった方がよりスムーズというか、スピーディーとかそういうことがあるのではないかと思いますが、そういったことに対する御認識はどうか。

 あと、相互主義の保証といっても、刑事共助条約も双罰性の問題があるわけでありまして、どういう場合でもというわけではないと思うんですが、相互主義の保証のもと、何かこういう場合はできないとかそういうことはあるんでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

猪俣政府参考人 先ほど法務省の方から答弁ございましたけれども、逃亡犯罪人引渡法の第三条に具体的に規定がございます。

 引き渡し条約によらないで引き渡し請求が行われる場合、我が国からの同種の請求に応ずべき旨の保証が相手国から得られることというものが必要になっておりますので、ここの場合は、相手国が同種の請求に応ずることが明らかであるか否かという点につきましては、通例、引き渡し請求書にかかわる口上書などによりまして確認しているところでございます。

 また、法律はございますけれども、国によっては条約前置主義ということをとっている国がございまして、犯罪人引き渡しというものを、実際に渡す場合には条約がなければいけないという国もございますので、そういう国との関係におきましては、やはり条約は必要だろうというふうに考えております。

近藤(昭)委員 そうしますと、犯罪人引き渡し条約についてもこれから大分進めていくというお考えということでよろしいでしょうか。

小野寺副大臣 この引き渡し条約、まずは今回、中国との交渉について検討する必要があるかと思っております。外務省として、逃亡犯罪人の不処罰、いわゆる逃げ得を許さないように、より多くの国との間でこの引き渡し条約を締結する可能性について前向きに検討しております。

 特に中国については、昨年四月の温家宝総理訪日の際に発出されました日中共同プレス発表におきまして、日中間の刑事司法分野における協力関係を強化していく重要な一環として、日中犯罪人引き渡し条約の締結に関する協議を推進していくことで両首脳が一致しております。また、このことは、昨年九月に行われたAPEC閣僚会議の際に日中外相会議においても確認されております。これら両国ハイレベルの共通認識のもと、日中刑事共助条約締結交渉の機会をとらえ、昨年四月、七月、十月に犯罪人引き渡し条約に関する協議を三回行ったところです。

 今後とも、両国ハイレベルの共通認識である刑事分野における協力の強化を実現していくとの観点から、日中犯罪人引き渡し条約のあり方につき検討していく考えであります。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうすると、既に共助条約があるところも、米国、韓国、そして今度中国、そういう中で犯罪人引き渡しの条約についても、中国と既にトップレベルでも合意をし、具体的にも始めている。

 ただ、ほかの国はどうでしょうか。まだまだこれからということでしょうか。

猪俣政府参考人 今、小野寺副大臣から中国の関係の説明がございました。犯罪人引き渡し条約の締結に当たりましては、当然のことながら、我が国から引き渡された者の基本的人権の保護の観点ですとか、相手国の刑事司法制度が十分に整備された民主的なものであるですとか、やはり相手国の政治、法制度が一般的に安定しているかどうかという検討が必要だろうと認識しております。

 相手国の国内法制によっては、犯罪人引き渡し条約を締結したとしても、憲法上の制約等によって自国民の引き渡しが認められない場合などもございますけれども、そういった点もいろいろ考えながら、どういう国とやっていくかということでございますが、人の往来や犯罪の発生状況といった相手国との犯罪人引き渡しの具体的必要性の有無ですとか、相手国の刑事司法制度が一般に整備された民主的な法制度であるか、適切な運用がなされているかといったようなこと、あるいは犯罪人引き渡しにかかわります相手国の国内法制など、諸般の事情を考えながら検討していきたいと考えております。

近藤(昭)委員 諸般の事情をお考えいただき、必要なところ、これも多分、先ほどの、刑事条約の締結の状況を見ながら進めていくんだと思いますが、前向きに進めていただきたいと思います。

 ただ、今、中国とやっているという話がありました。そういう中で、少し教えていただきたいのは、国外逃亡被疑者のうち中国へ逃げ帰ったと考えられる中国人の数、また、中国人被疑者が犯したとされる罪種別人員を教えていただきたいと思います。

宮本政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年末現在における国外逃亡中国人被疑者の人数につきましては、国外へ逃亡していると推定される者の数も含めまして三百人でございます。そのうち、中国へ逃亡している、ないしは逃亡していると推定される中国人被疑者の人数は百七十三人でございます。

 刑法犯の包括罪種別の中身でございますけれども、凶悪犯が六十四人、窃盗犯が五十八人、知能犯が十六人、粗暴犯が三人、その他十四人となっております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうした状況がある中で、共助条約、また引き渡し条約、そして、その締結だけではなくて、その実効性ということをぜひ力を入れてやっていっていただきたいと思います。

 それで、今回、日中の条約を審議しておるわけでありますが、既に結ばれている刑事共助条約でどのように生かされているかをちょっと確認したいというふうに思うわけであります。

 金大中事件であります。昭和四十八年に発生をした。当時の韓国の情報機関中央情報部による組織的犯行であったとする調査報告書を中央情報部の後身である国家情報院が二〇〇七年十月、昨年の十月に公表した。これを受けて我が国の警察庁が、同年十一月二十九日、同事件の真相解明のため、日韓刑事共助条約に基づく捜査共助を要請した、こういうことであります。

 そこで、現在、金大中事件の捜査はどのような体制のもと行われているのか、事件発生から現在に至るまでの間、どのような推移を経たのか、御説明をいただければと思います。

池田政府参考人 御指摘の事件につきましては、昭和四十八年八月、東京都内のホテルにおきまして来日中の金大中元韓国大統領が拉致されたものでございますけれども、警察におきましては、事案の発生以後、警視庁に特別捜査本部を設置するなどして鋭意捜査を継続してきたところでございます。

 この事件につきましては、これまでの捜査から、少なくとも関係被疑者一名に対する公訴時効は完成していないと判断しておりまして、昭和五十八年に特別捜査本部は解散してはおりますけれども、警視庁において引き続き所要の捜査を行っているところでございます。

 このような中で、昨年十月二十四日、韓国の国家情報院過去事件真実究明を通じた発展委員会というところがこの事件に関する報告書を発表しております。警察といたしましては、事案の真相解明のためには、この報告書の内容を踏まえてさらなる捜査を行うことが必要不可欠であるというふうに判断いたしまして、昨年の十一月二十九日に捜査共助の要請を韓国政府に対して行ったものでございます。

 警察としましては、今後とも、事案の全容解明に向けまして鋭意捜査を推進してまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 捜査本部を設置してやってきた、特別捜査本部は昭和五十八年には解散をしているけれども引き続きこの件については継続してやってきている、そういう中で、共助条約、そして韓国側の発表があったので捜査共助を要請したということであります。

 ただ、十一月二十九日に捜査共助要請をして、既に三カ月以上がたっているわけでありますが、韓国側はどのような捜査協力を行っているのか。可能な範囲で結構でございますから、御説明をいただきたいと思います。

池田政府参考人 御指摘のとおり、昨年十一月二十九日、韓国政府に対しまして、関係者に対する事情聴取、あるいは関連場所の見分等を内容といたします捜査共助要請を発出したところでございますけれども、その要請に対する韓国側の具体的な対応につきましては、捜査の内容にかかわる部分がございます、また相手国の関係もございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 捜査のことでありますからあれですが、でも、中身は別として、共助条約もある、そういう中で、これはかなり複雑なというか、政治的な背景もある難しい事件だと思いますが、韓国側はかなり積極的に捜査協力に応じてくれている、こういう理解でよろしいでしょうか。

池田政府参考人 今回の捜査共助に関しまして、韓国側が全く反応がないということではございません。いろいろなやりとりがあるのは事実でございますけれども、その具体的な内容、経過につきましては、現段階では明らかにするのは、相手国の関係もございますので、差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 わかりました。

 さて、今後のことをお聞きしたいと思います。

 実行犯などが特定された場合はどういうふうな対応をされるのか、例えば被疑者の身柄引き渡しを求めるとかそういうこともされるのか、お知らせいただきたいと思います。

池田政府参考人 現在、捜査継続中でもございます、また共助要請中でもございます。そういう時点で、具体的な今後の捜査、お話のありましたような、引き渡しを要求するかというようなことにつきましては、予断をすることになりますので、差し控えたいというふうに思います。

 ただ、今後の方針につきましては、法と証拠に基づいて適切にやってまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 特別捜査本部というか、あれを解散した後も引き続きやられて、きちっと事実を解明していただきたい。日本の主権ということで考えると、あの事件は非常に大きな問題だったというふうに思うわけであります。

 時間もなくなってまいりました。最後に一点だけお伺いをしたいというふうに思います。

 この日中刑事共助条約を審査していて、日米あるいは日韓の刑事共助条約との違いということをちょっとお聞きしたいと思うんですね。

 日米刑事共助条約は、捜査機関同士の捜査共助に限定されている。それに対して、日韓刑事条約においては捜査共助に加え裁判上の文書の送達が含まれている、また、日中刑事共助条約においても刑事手続に関する文書の送達という共助があり、この共助には裁判上の文書の送達が含まれている。

 このように、日米においては含まれていない司法共助が日韓、日中においては含まれている。これはどのような背景があったのか、また、このような違いが発生したのはどういうことなのか、日米間で司法共助が必要とされる場合どのように対応していくのか、このことについてお伺いをしたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、日米刑事共助条約には、日韓刑事条約及び今御審議いただいています日中刑事共助条約に規定されております、裁判上の文書の送達及び刑事手続に関する文書の送達に関する規定はございません。

 これにつきましては、日米間では、従来より、条約の存在を前提としないで、相互主義によりまして送達にかかわる共助を行った実績がございます。また、日米領事条約によって、相手国に駐在する自国の領事官による送達、領事送達と言っておりますけれども、それが認められているため、送達にかかわる共助を日米刑事共助条約の対象範囲に含める必要がなかったという背景がございます。

 日韓刑事共助条約におきましては、韓国側が、やはり刑事事件の裁判において必要となる公式文書の送達は重要な手続であるというような理由から、こうした文書の送達を同条約上の共助の範囲に含めることを強く求めてきたことを踏まえまして、我が国としてこれを受け入れた経緯がございます。

 日中刑事共助条約につきましても、我が国と中国との間でこのような文書の送達を共助の対象とすることで一致した次第でございます。

 それで、最後にお尋ねの、日米間におきまして仮にこういった司法共助を必要とする場合どうするのかという御質問でございますけれども、そのような場合には、日米刑事共助条約に基づくものとしてではなく、相互主義に基づきまして外交ルートを通じてかかる共助が実施されるということになっております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 いろいろと質問させていただきましたが、今までもいろいろと実質的に行われてきた中でこの条約が必要になってきた、必要になってきたというか、条約があった方がいろいろな意味でより進んでいくということだと思います。

 そういう意味で、実際の場面でしっかりと機能していくようにしていただきたいというのと、せっかくですから高村大臣、一言、やはりこのギョーザ事件というものが国内での不安、また日中関係にも非常に大きな影響を与える可能性もあるのではないかと心配しておるんですが、ギョーザ事件、またこの共助条約について、何かお感じになっていることがありますでしょうか。

高村国務大臣 戦略的互恵関係を構築するということは両首脳で一致しているわけでありますが、一つ一つの事件を丁寧に両国で処理していくということが本当に戦略的互恵関係を構築するために必要だ、こういう相互理解を、ヨウケツチ外相が来られますので、そういう理解を一致させてやっていきたい、こういうふうに思っています。

近藤(昭)委員 どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 条約についての質疑、主に日中刑事共助条約について行わせていただきます。

 条約が日中間にかかわる案件でもございますし、今、近藤委員が指摘をしましたように、当外務委員会の理事懇談会で、本条約の質疑を早くすべきだ、こういうことがあったということも御紹介をさせていただきます。

 それは当然、ギョーザ事件というものが発生をして、今なお捜査あるいは原因、真相究明、再発防止策の協議中、立案中ということでありますので、この共助条約の承認がそれに供するのではないかということからきょう審議になっておりますので、事件についても伺ってまいりますし、また、今大臣がおっしゃったように、十七日でしょうか、中国の外相も来日されますし、あるいは胡錦濤主席が五月には来日をされる、日中間でもさまざまなレベルで協議が進んでいる中でのお話も伺いたいと思っております。

 まず冒頭、既に同僚委員からも質問もあったんですが、外相が日ロ外相会談から帰国をされましたので、これについて伺いたいと思います。

 もう既に御紹介はあったんですけれども、やはり領土問題について、外務省からもペーパーをいただきましたし、先ほど外相からもお話があった、双方にとり受け入れ可能な解決を見出すために全力を尽くす旨、これはラブロフ外相が、当時のプーチン大統領が安倍総理に述べたことを繰り返して言っておられます。この双方にとり受け入れ可能な解決策というのが一体どこになっていくのかということでありまして、報道では、外相は日本側の立場を主張した旨も報道されておりますが、領土問題の解決に向けまして、双方にとり受け入れ可能な解決というものの協議が今どういう段階に至っているのか、今回の訪ロでどのような感触を持たれたのか。

 なおかつ、月末には総理が訪ロされる、この中で、どういった形でこの双方にとり受け入れ可能な解決を見出すような方途がこれからとられるのか伺いたいというのが、まず一つでございます。

 あわせて、六者会合についての記述の中に、ラブロフ外相から明るい兆しが見えるという発言があったものですから、それについて高村外相の方は、やはり完全かつ正確な申告、これがもう前提ですよと、ある面、くぎを刺されたのかなというふうに思うんですけれども、この六者会合についてどのようなやりとりがあったのかも、あわせて御披瀝をいただきたいと思います。

高村国務大臣 北方領土問題につきましては、先ほど申し上げたように、日ロ関係を高い次元に引き上げていくための努力を行うとともに、領土問題の最終的解決に向け、双方にとり受け入れ可能な解決策を見出すべく、一層真剣に交渉を続けていくことで一致しました、こういうことであります。

 そこで、御質問が、双方にとり受け入れ可能な見解をどうやって見出すのかと。これはお互いに真剣に考えていかなければいけない話でありますが、私は、ロシア側がやはり高いレベルでの政治決断をしてもらう以外にない、こういうふうなことを申し上げました。ロシア側は、いずれにしても、双方にとって受け入れ可能な案を目指すためにロシア側は真剣に努力をしていくことをお約束する、そういうことなんでしょう、せんじ詰めれば。

 そういうことをいろいろな言葉で、かなり長い時間この問題に費やしましたが、余り一つ一つの言葉を御紹介申し上げるのは外交上得策でない、相手にとっても気にさわる面があるかもしれませんので言いませんけれども、それは双方にとって受け入れ可能な方策というのを見出すというのは、両方とも世論がバックにあるわけでありますから、そう簡単なことではない。ただし、ロシア側はそれを真剣にやる、それはある種の大きな政治決断になると思いますが、それをやってくださいということを強く申し上げてきた、こういうことです。

武正委員 報道では、これまでの日本側の主張である四島の帰属を確認して平和条約の締結をという日本側の主張を述べたという報道もあるんですが、外務省からいただいたペーパーにはちょっとそういう記述がないものですから、改めてそういったことを言われたのか。そして、それについて日本側の主張をして、双方が解決する落としどころという話ですが、それについてラブロフ外相はどう答えられたのか、可能な範囲でお答えをいただきたいのと、先ほど質問したことで六者会談について、これはちょっとお答えがなかったので。

 あわせて、北朝鮮の拉致問題の解決についてもやはり記述がないんですけれども、これについて取り上げられたのか、触れられたのか、お答えをいただきたいと思います。

高村国務大臣 まず、六者会合から申し上げますと、六者会合については、当然のことながら、私の方から、完全かつ正確な申告が必要であるということを申し上げております。ラブロフ外相は、それに対して異議を言ったというようなことは全くありません。一致した、こういうふうに考えております。ただ、全体的に、明るい兆しというのは全体的な印象をラブロフ外相が述べた、こういうことだと思います。具体的な、もうすぐできるとか、そういうことを言ったわけではありません。

 それから、日朝関係の進展のことについては、私の方から申し上げました。

 それから、当然のことながら、領土問題を解決して平和条約を締結することが大切だ、それについては、我が方とロシア側は一致をしているわけでございます。

武正委員 総理が訪ロされるわけなんですけれども、この後ちょっと日中の局長級協議でも聞きますが、やはり合意文書というものが、以前も、あれは小泉総理が訪ロしたときでしょうか、たしか十本ぐらい合意文書があったと記憶をしておりますけれども、今回もやはりそういう合意文書というものは予定をされているんでしょうか。

高村国務大臣 サミット前に訪ロして首脳会談を行いたいということで日ロ間で一致しておりますが、現時点でまだ国会の承認がとれていると承知をしておりませんので、私は承知していないわけでありますが、日程等も詰めてまいりましたが、国会の承認を得た上で、得られたら訪ロする、こういうことでございます。

 それで、主たる目的は、領土問題はもちろん含まれるわけでありますが、それと同時に、サミットが行われますので、サミットの準備ということがかなり大きな課題になると思います。そういう面で、直ちに文書をつくるかどうかということについては現段階ではわかりません。

武正委員 重ねてお伺いしますが、日朝間の懸案について、拉致問題について、今回訪ロのときの外相とのやりとりでは取り上げて、日本側の立場は当然、解決に向けてロシア側の協力を、そういうことになろうかと思うんですが、そういうような趣旨で取り上げられたということで確認をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 拉致問題を含む日朝関係についてはお話をいたしましたが、深い話をこの時点でしたわけではありません。むしろ、日ロ関係ということが主たる課題でありました。

武正委員 それでは次に、日中局長級協議について伺わせていただきます。

 直接北京で交渉されたので、本来であれば総合外交政策局長の河相さんに伺いたかったのですけれども、まだ帰国されていないということで副大臣になるんでしょうか。

 これについて、特に、これもやはりペーパーをいただいておりまして、お手元に資料を配らせていただきました外務省のペーパーでございますが、この中で幾つかちょっと目を引くのが、我が国の安保理常任理事国入りについての中国の積極的な姿勢を求めた、こういうようなフレーズとか、あと、人権理事会等の改革についての意見交換とか、こういったことがここに書いてあるんですけれども、ここら辺を中心に、このペーパーを見ればわかるものですから、さらにどのようなやりとりがあったのか、お答えをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 現時点でもまだこの会議は続いているということですので、現時点でお話しできることをお話しさせていただきたいと思います。

 御指摘がありましたように、十四日、局長級協議が行われておりまして、我が国からは河相総合外交政策局長が、中国側からは呉海竜外交部国際司長が出席しております。

 同協議におきましては、安保理改革に関して、その必要性については日中間の共通の認識があること、改革に当たっては、理事国の拡大と安保理の効率性の向上のバランスをとる必要があること、可能な限り多くの加盟国の支持を得て行うべきこと等について意見が一致をしました。

 また、我が国より、本件に関する取り組みの現状について説明するとともに、我が国の安全保障理事会常任理事国入りについて中国の積極的な姿勢を求めました。

 我が国としましては、今後とも、十七日から訪日されるヨウケツチ外交部長と高村大臣の会談を含め、さまざまなレベルでの協議を積み重ねることにより、中国との間で安保理改革に関する対話を強化し、中国側の理解を促進するとともに、より積極的な態度が得られるように努力していく考えであります。

武正委員 人権理事会についてのやりとりがあるんですけれども、これについては。

小野寺副大臣 人権理事会につきましては、同理事会の機能強化について日中間で意見交換が行われました。

武正委員 お手元のペーパーでは、日中外相協議、それから五月の国家主席の訪日を控えて行われたということでありますが、報道では、主席来日については、これまで三つの文書があるということで、ある面、第四の文書というようなことも言われる。首脳間の合意、これを文書にするというようなことが報じられておりますが、今そうした準備をされているのか、あるいは局長級協議でそういったことも話されたのか、伺えますでしょうか。

小野寺副大臣 胡錦濤国家主席の訪日の際の成果物等の御指摘だと思いますが、ここについては現在検討しているところでありまして、その詳細についてはお答えさせていただくことは差し控えさせていただきたいと思っております。

武正委員 ちょうど今、与党の幹事長が訪中をされているというふうに伺っております。総理の親書をお渡しされたということもきのう報じられておりますが、この外務委員会でも総理にもおいでいただいて、特にあのときには、チベット問題等も踏まえて、日本としての考え方、それをやはり中国首脳に伝えていくべきではないだろうか、こういうやりとりを私も含めて複数の委員と総理もされた折に、タイミングを見てというようなお話がございました。

 このタイミングで親書が与党の幹事長によって手交されたということでありますので、ある面、やはりそうしたことも今回の親書に含まれているのかなというふうに推察する向きもあるんですが、外務大臣、この点、何かお聞きになっておられますか。

小野寺副大臣 済みません、確認したいのですが、今回の協議、今、河相等が行っている協議について、このチベット問題の指摘があったかということの御質問だったでしょうか。

武正委員 先ほど触れたように、総理の親書ですね。ですから、この間も外務委員会で総理は、タイミングを見てしかるべきときにみずから中国首脳に対してしっかりと伝えていくんだ、タイミングを見ているんだ、こういうような発言があったものですから、今回ちょうど与党の幹事長が総理の親書を手交されていますので、こういったタイミングで、そうした親書で総理みずからの考えを中国首脳に伝えられたのかなというふうに推察する向きがあるものですから、外務大臣はその点御存じかなということでお聞きをしたわけでございます。

高村国務大臣 親書の中に書かれていることを、私見ておりませんので、正確には存じません。

 仮に知っていたとしても、総理みずからがおっしゃるか、受け取った方がおっしゃるかされない限りは申し上げることではないだろう、こういうふうに思っております。

武正委員 御存じではあるということがわかったわけでございます。

 では、局長級協議にまた戻らせていただきますけれども、この後また触れてまいりますが、ギョーザ事件については、このときは、特に局長級協議では触れられていないということでしょうか。

小野寺副大臣 今回の局長級協議では行っておりません。

武正委員 それでは、中国製ギョーザ事件について質問を移らせていただきます。

 まず、警察庁もお見えでございますので、つい先日、第四回の日中間の協議が行われたというふうに聞いております。その協議でどのように両国の捜査あるいは調査、あるいは科学的な知見、これの突き合わせをして、何か双方の理解が前進を見たのかどうかも含めまして、第四回の、あるいは第四回までに日中間の警察当局が回を重ねてきて現時点で判明をしたこと、あるいは合意をしたこと、お答えをいただけますでしょうか。

米田政府参考人 既に中国との間では四回にわたりまして捜査幹部が行き来をし、あるいは鑑定、科学捜査の専門家が行き来をしております。

 今御指摘の第四回の情報交換会議、これは中国の方で行いまして、公安部及び物証鑑定センター、我が国でいえば科学警察研究所に当たるところだと思いますが、そこにおきまして鑑定に関するさまざまな協議を行いました。その結果、共通の認識に達したものもございますし、まだまだ引き続き協議が必要なものもあるということでございますが、協議がかなり進展をしたということは間違いないところでございまして、成果があったというように考えております。

武正委員 大体どのぐらいでその成果が結実するというか、発表になっていくのか。やはりみんなが望んでおりますのは、原因が那辺にあるのかといったことが知りたい、こういうことだと思うんですね。それが当然再発防止につながるわけでありますが、この協議の行方あるいはめど、ここら辺についてお答えをいただけますか。

米田政府参考人 確かに、これは犯人を捕まえて事件を解決するというところまでいかなければ、本当に成果があったとは言えないわけでございます。

 その意味で、我が国における捜査につきましては、日本警察としては全力を挙げて取り組んでおりまして、捜査項目のほとんどを終了するという段階に至っております。中国に対しましても、中国の捜査には全面的に協力するということで、さまざまな資料、情報等を提供しております。日中両国間が相連携して初めてこの事件の解決がなされるものと思っておりますが、現在のところでは、いつまでというめどは立ってございません。

武正委員 この共助条約が本事件の解決につながるかといえば、当然、これから承認していくわけですから、同時並行でもう進んでいるわけですが、ただ、やはりこの条約の承認が追い風になっていけばというふうなことで、国会もきょうこうして審議をしているわけでございます。

 ただ、今のめどが立っていないという警察当局の話でございますが、JR東海を利用されると新幹線の中にウエッジという雑誌がありまして、ちょうど四月号ですか、ここに二本、ギョーザ事件あるいは共助条約に関する記事がありまして、おもしろいなということでちょっと御紹介をさせていただきますと、いろいろなところに書かれています土本さんという教授の方が、外国人の犯罪がふえていく中で、代理処罰などを利用して、外国人犯罪、国外に逃亡してもやはりそれについてしっかりと処罰をさせるべきだ、こういうようなことを書かれております。

 ただ、その中で、改正刑法で有期刑が十五年から二十年に延長されたけれども、高村大臣も法務大臣を御経験ですからもう釈迦に説法でありますが、日本の場合は無期懲役といっても禁錮十年で仮出獄してしまう。こういう中で、改正刑法で十五年から二十年に延ばしてはあるけれども、一部外国人の中に、日本は刑が軽いし、刑務所は清潔で居心地がよい、こういうようなことを言っている向きもある。こういったことで果たして外国人犯罪の取り締まりというものが実効性を上げられるだろうか、こういうような指摘の中で、それこそ刑事共助条約、あるいはもうありました引き渡し条約、あるいは代理処罰、いろいろな形で積極的に対応すべしという論調だと私は読んだわけであります。

 法務副大臣、いかがでしょうか。日本は刑が軽いし、刑務所は清潔で居心地がいい、こういうようなことが外国人のそうした犯罪者から言われているのかどうか、私は直接聞いたわけではないんですけれども、ただ、これはやはり日本の、先ほど触れた、無期懲役であっても十年で出てきてしまうというようなことも含めて、外国人の犯罪が二〇〇六年、それこそ四万件を超えておりますし、二万人近くのこうした犯罪があります。犯罪がふえていく中で、さっき、本条約はまだ三カ国目だ、もっとふやさなきゃいけない、こういうような話もある中で、これについて法務副大臣、御所見を伺いたい。

河井副大臣 ただいまの武正公一議員のお尋ねは、中国製ギョーザ事件という個別具体の事件ではないんですね。それでございましたら、具体的な捜査の内容にかかわる事項でございますので、お答えは差し控えさせていただきますとお答えするところでございましたけれども、一般論ということでありますので、お答えをさせていただきます。

 日本も中国も、捜査共助の実施については、それぞれの国内法にのっとって現在でも共助の実施は可能なんですけれども、この条約を締結していただくことによって、共助がより確実かつ迅速に行われることが期待をされておりまして、理由は幾つかあります。

 一つは、この条約の締結によって、日中間、共助の実施が条約上の義務ということになりまして、一層確実に実施されることを確保できる。それから、両国で中央当局というのを指定して、これまでの外交当局、外務省を通じなくて、外務委員会でこういうことを言うのもあれなんですけれども、中央当局間で直接話を行うことが可能になりますので、事務処理の軽減、迅速化も期待できる。それから、請求国における捜査の対象とされている行為、つまり、日本で捜査の対象とされている行為が中国の法令によれば犯罪を構成しない場合でも、中国に対してその共助の実施を請求し得ることになる。また、共助の内容として、受刑者証人移送、すなわち、日中間でいえば、中国の受刑者を日本の刑事手続に証人として出頭させることを可能とするため、一時的に移送することを相互に請求することが可能になるというふうな理由がございまして、期待をしております。

 私も、実際に刑務所等これまで視察を幾つかしてまいりました。所によりましては外国人の受刑者の方が大変多くなっておりまして、通訳の確保とか、それからやはり生活習慣の違い、いろいろな面で現場の刑務官の皆さんには大変苦労しながら仕事を一生懸命していただいております。

 ということで、今議員が御指摘いただきました受刑者の移送の条約の締結についても、やはりしっかりと取り組んでいただいて、できるだけ早く締結をしていただくことによって、日本の行刑施設の負担が軽くなっていく道の一つだろうと期待をさせていただいております。

武正委員 もう一つ記事を御紹介いたしますと、実はタイで、タイ米がおいしいということで、日本と同じように中国に随分売られて、買われているそうなんですが、そのタイ米に、純粋なジャスミン米というんですか、そういうものじゃないものがまぜられて中国で売られた。これがやはり大きな問題になって、タイの農業学術局はサンプル分析とかコンテナ積み前の品質検査とかコンテナの清潔度の点検などを行って、中国とタイの当局もこれについてはお互いに協力をした。中国側当局者は、これはこの指摘ですけれども、いわゆるそらぞらしい弁明もない、それからタイ側もある面冷静であるということで、またぞろあらわれた悪質業者によるインチキ商法と心得ているからだろうということで締めてあります。

 この中で提案をしているのは、今回の日中のギョーザ事件が、ここでも指摘されているんですけれども、高度な政治案件に格上げされてしまっているのではないのか、そういう指摘の中で、割に中・タイは冷静な対応をしているんだということを指摘しているわけであります。

 警察庁お見えですけれども、私は何度か警察庁に言いました。本来であれば冷静に科学的知見にのっとって、これまでだって、国際礼譲で外務省を通じて任意で、例えば天洋食品でしたか、工場を見に行くことだってできるわけですから、いろいろなやり方もあるだろう、そういうようなことも申し上げましたけれども、これがそうした政治案件のような形で格上げされてしまうと、こうした日中間にまたがることが、一つ一つ丁寧にとさっき外相はおっしゃいましたけれども、何か事が大きくなっていってしまわないように、どういうような形でそれができるのかという中で、この中では一つ、日・タイで協力したらどうかというようなことも提案をしているわけです。

 要は、食料品を中国に輸出したり、あるいは中国から食料品が来るそうした国、それについて、やはり多国間の何か枠組みなり協力の中で、ある面冷静な議論ができるようにしよう、あるいはそうした検証ができるようにしようというような提案だと思うんですが、外務大臣、これはいかがでしょうか。

高村国務大臣 高度な政治問題に格上げされた、その指摘が何を言っているのかわかりませんが、そういうことは全くありません。

 全部が全部そうとは言いませんけれども、警察あるいは向こうの公安当局も含めて、日中両政府は相当冷静にこの問題について対応している、こういうふうに思っています。むしろ、冷静なのが気に食わない人たちがそういうことを、政治問題に格上げされていいかげんにしようとしているんじゃないかなどとあらぬ憶測をしているのではないかとすら私は思います。

 日中両政府は、これは特に両国国民、特に日本国民の関心事でありますから、これを、その関心から目をそらせて政治解決ができるなんということは、よほど知能指数の低い政府でない限りそんなことは考えませんよ。そんなこと考えません。この問題については、どうして解決すべきか、冷静に対応しているところでございます。政治問題に格上げなどという、そういうばかな謀略みたいなことはいたしません。

武正委員 ぜひ、そういった対応を関係各省、それから、この提言も一つそこの点はアイデアなのかなと思うんですね。今回のこうした食品の輸出入に関して、もし他国も同じような問題を抱えているとすれば、その相互のやはり情報共有とか連携があっていいんじゃないかという提案だというふうに御理解をいただきたいと思います。

 ただ、今の外相の御発言は、実はチベット問題について私がやはり率直に中国首脳に言うべきだということを申し上げたときに、外相はたしか、いや、実は日中間の国民感情はある面非常に微妙なところがあるんだ、なかなか、こうやって直接言ったことによって、それが明らかになったことによって、変に曲解されたり、ハレーションを起こすようなことがあるんだというようなお話もされたと思うんですね。ですから、それは今の御答弁とまた若干そごがあるのかなと私は思いました。これについては、ちょっとまた後であわせてお答えいただきたいと思います。

 内閣府副大臣、お待たせいたしました。お見えいただきまして、ありがとうございます。

 それで、お手元の資料をちょっと見ていただきたいんですが、まず二ページ目、これは内閣府作成資料、「中国産冷凍ギョウザによる健康被害が公表された日以降に都道府県等にあった相談・報告数について」、これは主に保健所等を通じてということを伺っております。三月末までに五千九百十五件ということであります。

 次のページには、これは農水省の方の資料でございまして、食品表示一一〇番の実績ということで、三月での問い合わせ二千四百十九件。このほかに、特に中国製ギョーザ事件については、消費者の部屋というような意見を集める場所がまたあるということでございます。

 その次が、国民生活センターに寄せられた中国産ギョーザ問題に係る健康被害相談件数でありますが、これは十一件ということで、非常に少ないという印象を受けました。

 五ページ目をごらんいただきますと、リスク評価は内閣府と食品安全委員会、リスク管理は厚生労働省、農林水産省ということで、この事件が起きて以来、ある面、縦割り行政の弊害みたいなもので、たしか総理もしっかりしろと一喝したということも報じられておりますが、やはりこうした関係省庁の縦割り行政を何とか変えられるようにできないかということで、今政府を挙げて、内閣を挙げて取り組んでおられるようであります。

 そこで、六ページに見られるような国民生活センターのあり方ということや、七ページ目の、迷ったらここ、消費者が頼れる一元的窓口のあり方ということを、今見直しをされているというふうに伺っております。六ページ目でも、市場の監視役として、「消費者問題に関する情報の迅速かつ一元的な集約」と書かれておりますし、七ページ目には、「安全など緊急な対応を要する案件について、三百六十五日二十四時間対応し得る体制を検討」「国民生活センターは、各センターの情報のみならず、保健所等関係機関の情報を含め、一元的に集約・分析し、」などなどということであります。

 今国会に法案も出されているようでありますけれども、こうした点ではもっとある面強化しないと、先ほどのギョーザに関しての六千件とか二千四百件と比べての十一件というような現状からいうと、やはりまだまだ、そうした食品にまつわる事件、あるいは消費者にまつわるさまざまな相談機能とすれば弱いのではないかというふうに思うんですけれども、これまでのギョーザ事件の対応も含めて、内閣府として、国民生活センターの強化ということについての御所見を伺いたいと思います。

中川副大臣 ただいま委員が御指摘のように、福田総理も、総理に就任した当時から、消費者問題や、国民生活の目線で行政は考えていかなければならない、それを大事にしなければならないということを常々言っていたわけであります。

 しかし、御承知のように、消費者行政推進会議というものをつくって消費者行政の一元化のため行動を起こしたのは、その動機になったのは、常々総理はそのことを考えていたんですけれども、急いでそういう体制をつくった最大の動機は、総理も言っておりましたが、このギョーザ問題が起きて、全国でいろいろな問題が出てきた、それでは急がぬとならないということで、急遽そういった会議も立ち上げて、それから、準備室も御承知のように急遽開いたわけであります。総理の願いは、やはり消費者行政を一体化することによって、国民生活に少しでも安全で安心な行政サービスを積極的に提供したいという考え方がそこにあるわけであります。

 しかし一方、国民生活センターについては、これもまた、総理ばかりじゃなくて、いろいろなところからいろいろな注文がついていたのも事実であります。

 それで、特に消費センターと国民生活センターとの情報の数が極端に違うということなんです。今回も、ギョーザ事件では十一件だけでありますが、地方にある消費センターにはもっともっと多くの情報が入っておりまして、それは集約してここに数では載っていますが、国民生活センターへの情報の提供が少な過ぎる、これもまた将来の消費生活の安定ということを考えたら問題だということで、今般、国民生活センターについては法的に少し前進させて、いろいろな機能を付加したということを、今審議中でございますが、やっているわけであります。

 しかし、一方ではまた総理からの一元化の問題がございますから、一元化に向けて新たな角度から、これも検討しなければならない。そういう両面から内閣府としてはこの問題について積極的に取り組んでいって、消費者の安全、安心のために大きな貢献をしたい、そう思っている次第であります。

武正委員 ぜひ、二度とこうしたギョーザ事件が起きないためにも、御案内のように、あの事件が起きたのは十二月末、ただ、警察がそのことによって動き出したのは一月二十五日、なおかつ対策本部がつくられたのが一月三十日ということで、結局、丸一カ月遅くなってしまったわけでありますので、二度とこうしたことが起きないように、そしてまた、食品だけに限らずいろいろな案件が、国際的に人、物、お金が移動する中で、国民がそのサービスとかあるいは製品を享受しておりますので、この日中刑事共助条約、この承認、これが発効していく中で、やはり国内の体制整備というものが急務の課題ということを申し上げたいわけでございます。

 では、内閣府副大臣、ここで結構でございます。

 そこで、法務副大臣に伺いたいんですが、最高検察庁も、録画、録音について、これを進めていこうということを発表しておりますし、民主党も十二月四日に、刑事訴訟法の改正案、録画、録音の可視化とか、自白の評価について、やはり強要とかそうしたことが疑われるとすれば、それは認めることはできないなということ、あるいは、手持ち証拠リストの開示を検察には求めるなどの法案を提出しております。

 これは、来年から裁判員制度を始める中で、裁判員である国民にとって、可視化ということが自白の任意性などを立証し得る一つのやり方だろうということで、最高検もそうした方向性を目指しているんでしょうけれども、これをこれから進めていく場合、当然、日中の刑事共助条約で中国側にも、可視化とか、あるいは同様の証拠あるいは自白についての透明性というか、こうしたものを求めていくようになるのか、法務副大臣に御所見を伺いたいと思います。

河井副大臣 質問にお答えをさせていただきます。

 今御指摘をいただきました取り調べのいわゆる可視化ということなんですけれども、一般的に申し上げますと、先日、自民、公明両党から御提言をいただきまして、警察の現場、それから、既に行っている検察の現場におけるいわゆる一部可視化、それから、今議員がおっしゃっていただいた民主党案における取り調べの録音、録画につきまして、議論の対象は被疑者の取り調べということになっております。

 捜査共助におきまして供述が請求されるのは、捜査の対象となっている被疑者以外の第三者なんですね、それが通常であるというふうに承知をしておりますので、したがいまして、国際間の捜査共助におきまして取り調べの録音、録画を求める必要性はもともと必ずしも高くないというふうに考えております。

 いずれにしても、その必要性につきましては、当局がさまざまな観点から判断をすべきものでありまして、なかなか一概にお答えをするのは難しいと考えております。

武正委員 時間も限られておりますが、外務大臣、先ほどお答えも遮ってしまいましたので、先ほど私がちょっとチベットと今回のギョーザと両方を引き合いに出して、そごがあるのではないのかと言ったときに手を挙げられましたので、その点も含めて。

 また、今のこのやりとり、法務大臣も御経験されましたので、要は何が言いたいかというと、やはりこうした共助条約によって日中間の、中国人による犯罪は確かにナンバーワンというか一番多いです。治安について心配する国民の声の第一位に外国人犯罪というものが挙げられているという調査もありますので、やはり共助条約、引き渡し条約、そうした条約をもっともっと締結していくということは、同僚委員同様、必要だと私も思いますし、その中でその実効性をどうやって上げていくのか。当然、公安当局の御努力もありますが、先ほど言ったように事件、事故は多方面でありますので、全省庁挙げたそうした国内の一丸体制も必要でしょう。

 そうしたやりとりも含めて、最後に御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 国民感情が脆弱だ、こう申し上げたのはそのとおりでありまして、だからこそ冷静な対応が必要である。冷静な対応というのは、政府間で意見をきちっと言わないということではないんです。それは首脳間でも外相間でもきっちり言うわけです。ただ、それが、国民感情が脆弱な中で、お互いがメディアを通して言い合う、あるいは公のところで言い合って、それが一方の国民からののしられたと感じるようなことはできるだけ避けていきたいということをこの間申し上げた。今度のギョーザの問題についても、私はそういうふうに、冷静に対応していきたい、こう思っているわけであります。

 まさに、検挙にまさる防犯なしでありますから、ぜひこの事件は捜査当局間で協力をして解決してもらいたい、これが一番大切なことだ、こう思っております。さらに、食品衛生当局間でこういうことが二度と起こらないような対策もきちっととってもらいたい、こういうふうに思っているところでございます。

 可視化の問題については、それはメリット、デメリット両方あるわけでありまして、私の所管外でありますから申し上げませんが、日本で可視化をやるから中国も可視化をやりなさいよ、これは、私が法務大臣時代も、可視化をやっている国からあなたの国も可視化をやれなどと言われたら、これは内政干渉だと突っぱねるところでございます。

武正委員 先ほどの、両国の国民が脆弱と言ったんでしょうか、ある面いろいろナイーブな両国関係に国民のそれぞれの国に対する思いがあるというようなことを外務大臣よくおっしゃるんですけれども、私は決してそうじゃないんじゃないかなというふうに思っております。

 その意味でも、やはり情報開示、これが変な疑念とか疑心暗鬼とか、そうしたものを払拭する最も効果ある方法だというふうに思っております。私も、中国に行ったときには、中国の発展のために情報公開が必要だということはかねてより何度も申し上げておりますので、やはり日本政府においても、特にこのギョーザ問題について情報開示を徹底していただいて、国民のそうした不安が変に対中観の疑念とか何かのそうした違う思いに結びつかないように、一段のお取り組みをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 本日は、この外務委員会の質問の中で、日中の刑事共助条約について主に触れさせていただきたいというふうに思います。

 今、武正議員からも毒入りギョーザの問題について質問がありました。国民の多くの皆さんが、やはり今は情報の多い社会ですから、いつの間にかこういうことも過去のことのように扱われてしまうということで感じられているかもしれませんが、とはいえ、過去のことといっても、やはり食生活の変化には大きなものがありましたし、我が家でも妻は冷凍食品を買う機会がちょっと少なくなったんじゃないのかなというふうにも感じます。現に、冷凍食品の各社、大変な減益の状況も続いておりまして、今後そういった生産もどうしていくんだろうかということも大変心配になるところであります。

 そういった意味でも、プラスの意味での真相究明というのは非常に重要だというふうに思っておりまして、きょうは恐らく我が党も含めて多くの議員がこういったことについてもお伺いをしていると思いますが、米田さんの方からも再三御答弁がございましたが、やはり我々から見ていて、現在の捜査状況、捜査体制、これがどのようになっているのか、なかなか見えてこないというような状況がございます。

 そして、いろいろと御答弁がございましたけれども、まずギョーザの事件の現状についてお伺いをしたいんですが、現在の日本の千葉県警そしてまた兵庫県警の捜査体制というものはどのようなほどのものをとっておられるのか、これを教えてください。

米田政府参考人 現在、実際に人身被害が生じましたのは千葉それから兵庫の両県でございますので、その両県警察におきまして共同捜査本部というのを設置しております。おのおの刑事部長以下、数十名の体制で捜査を進めているところでございます。これ以外に、関係県、これは鑑定に協力をしておりまして、そういう関係都道府県警察とも連携しながら捜査を進めているところでございます。

泉委員 最初、大臣や副大臣をお待たせしている中で大変恐縮なのでございますが、まず警察にさらに確認をしたいのは、先ほどの武正議員の質問の中で、捜査項目のほとんどについては日本国内としては終了している、流通過程における実況見分ですとか事情聴取をほぼ終えているというようなことでございましたが、そうしますと、二つ確認をしたいことがございます。一つは、故意に混入されたという見解そのものは現在も変わっていないのかどうか。そしてまた、それは日本国内での混入の可能性はほぼないという、これもまた変わらないのか。この二点、お伺いしたいと思います。

米田政府参考人 現在まで千葉、兵庫両県警察を中心に捜査を進めてまいりまして、流通経路の解明、関係者からの事情聴取、そしてさまざまなギョーザあるいは包装紙等々の鑑定等を進めてまいりました。

 その結果、まず一つは、千葉県の事案に見られますように、ギョーザのあんの部分から、具といいますか、あんといいますかの部分から、非常に高濃度の、基準農薬値の数万倍という高濃度のメタミドホスが検出されておりまして、かつ、そのことによりまして重大な健康被害が現に生じております。それは到底、包装紙を浸透するというレベルではございませんで、一部に、中国側がそういう発表をしたということもございますが、浸透するとかしないとかが問題になっておりますが、我々は浸透するとかしないとかのレベルではもはやないというようにまず考えております。

 それから、流通ルートを解明いたしました結果、中国の天津新港を出て以降、兵庫の品物、それから千葉県での品物、これは日本国内では全くその流通ルートに接点がございません。

 それから、三つ目といたしまして、使用されたメタミドホスは極めて不純物の多いものでございまして、これは、日本国内で一部出回っております極めて純度の高い試薬、これだけが日本国内に出回っておるわけでございますが、それではないというようなことから、日本国内で混入された可能性は極めて低いという見解でございます。

 故意に入れられたかどうかというのは、さらに捜査を進めてみなければわかりませんけれども、非常にピンポイントで被害があるということから考えますと、一般的な食物汚染というようなものではないというように考えられるところでございます。

泉委員 今御見解をいただきましたが、一方で、今回、日中の共助条約を結ぶに当たって、最近は少し落ちついたというような気がいたしますが、公安当局双方のやりとり、当初は大変混乱をしたというふうに思っております。ようやく意思疎通ができ始めているのかなというふうに思うんですが、やはりその現在においても、例えば日本側の資料要求ですとか情報提供、そういったものの要望に対して、中国側がいまだ応じていないものは果たしてどのようなものなのか。そしてまた、中国側の要望に対してもし我が国が応じていないものがあるとすれば、それは何なのか。これをぜひ、現在の段階の状況を教えていただきたいと思います。

米田政府参考人 これはちょっと、個別の捜査に関します、また両捜査当局間の信頼関係維持の観点から、詳細についてはお答えすることは差し控えますけれども、一時、中国側が記者発表し、日本側が警察庁長官が記者会見でいろいろまたそれに対して述べるというようなことがございました。あの時点から比べますと、中国側から提供されるものは相当に多くなっております。もちろん、まだこちらの要望どおりではございませんけれども、かなりそこは協力姿勢が見えるというところでございます。

 それから、日本側で中国側からの要望に対し協力できないというものは、証拠物自体の提供でございます。これについては、提供しないと言っているのではなくて、捜査共助の手続をとってくれれば提供するということを再三相手に対して申し向けておりますが、これは、捜査がある程度進展しないとなかなか相手も捜査共助の要請を、要するに証拠物の提供を求めるという段階に至りませんので、現在のところ、そこまで至っていないというように理解をしております。

泉委員 ただ、今まで過去四回、せっかく双方の御努力で訪日、訪中がなされているわけですね。もう一度確認ですが、その際に、現物を中国の捜査当局の方には見てはもらっているんでしょうか、その場所においてというか。現物、具と袋ですね、それはどうでしょうか。

米田政府参考人 御指摘のとおりでございます。見てもらっております。

泉委員 現在においてもそういった形で、確かに、証拠物ですから、なかなかすぐさまの提供は難しいということですが、メタミドホスの浸透実験に関するお互いの情報、見解については、まだ多少お互いの相違点があるのかなというふうに感じます。これをぜひ早急に詰めていただきたい。

 今回の共助条約においては、今後になるかもしれませんが、そういった物的証拠のやりとりもスムースになるというのが一つの利点だというふうに言われておりますが、そういったことで、もちろん、この条約そのものについては前向きにとらえていいのかなというふうに思います。

 そういった中で、もう一つ警察の方にお伺いをしたいんですが、後で国外犯規定についてちょっと別なところでお伺いをする予定だったんですけれども、この一連のギョーザ事件の中で、日本の共同通信の記者が中国の公安当局に、メタミドホスを所持していて検問でひっかかって、事情聴取を受けるというようなことがございましたが、この際には、日本政府あるいは日本の警察に何か連絡というのはございましたでしょうか。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

米田政府参考人 ちょっと政府全体でどうなったかは存じませんが、警察には来ておりません。

泉委員 たしか、これは検問で拘束をされて事情聴取されたということだけでありまして、逮捕には至っていないという事案だったと思いますので、実際にはそんなにやりとりはなかったのかもしれませんが、こういった形で、大変社会的にも大きな問題となっていた事件において日本の記者が中国の当局に、現地の法律に触れていたというようなことも聞いておりますので、その辺は拘束をされても仕方がない事例ではございますけれども、その結果というものがいまだ日本には入ってきていないという状況、今警察の方から説明がありました。

 そういったことについても、今回は共助条約ですから、主に裁判手続に関するさまざまな情報交換、そういったことになるかと思いますが、より緊密に、邦人の身柄の安全確保ということについては、これは外務省にも、そしてまた警察の方にもぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、条約の中身についてぜひ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 一つは、この刑事共助条約の中には、基本的には、これは国際的なモデルという条約の中で、それをそれぞれの国ごとに、適用できる範囲でさまざまな法律をつくっている、そしてまた、バイの関係で、それぞれの合意できる範囲でこういった共助条約を結んでいるということでございますが、私が一つ心配をするのは、最近日本でもさまざまな、これは冤罪事件と呼んでいいかどうかわからないことでありましたが、志布志事件ですとか氷見事件というものがございました。

 要は、自白の信頼性、信憑性というものについてどのように考えるのか。それを今回の共助条約に当てはめてみれば、他国の中でさまざまな手法で取り調べが行われる、そういった場合に、果たしてどこまでを日本の捜査機関あるいは裁判所がそれを証拠として採用し得るのかというところについては、やはり、すべての提供された情報を全く疑問なく信頼し、そしてそれをうのみにして採用するということにはならないのではないのかなと私は思うわけなんです。

 これは実は、同じく日韓の共助条約が審議をされた際にもこういったやりとりが行われておりまして、二〇〇六年ですか、四月二十一日、法務大臣官房審議官の答弁で、「その供述が特に信用すべき状況のもとに作成されたことなどの要件が満たされる場合には、証拠として採用され得る」ということになってはいるわけなんですが、これをどうやって検証するかというか、どうやって確認をするかというところは、大変難しいことだというふうに思います。

 まず、法務副大臣にお伺いをしたいわけですけれども、海外から得られた証言あるいは供述、こういったものは、どのような状況で得られたものかというところまで確認をし得るものなんでしょうか。

河井副大臣 お答えをさせていただきます。

 証拠能力につきましては、裁判所が具体的な証拠に関して個別に判断をするということでありますので、ここで一概に述べることは難しゅうございますが、せっかくの泉健太議員のお尋ねでありますので、一般論として言いますと、他国の捜査当局によって得られた供述書等につきましては、日本の刑事訴訟法三百二十一条一項三号に規定される、その供述が特に信用すべき状況のもとで作成されたことなどの要件が満たされる場合には、証拠として採用されることになっております。

泉委員 日本の国内においても、一般的には、例えば氷見や志布志の事件においては、それぞれは、基本的には当初、信憑性の高いものとして採用されていたわけですね。それが、それぞれ被害者側の声によって検証されていく中で、次第に自白の強要があったということが明らかになってきた。

 そういうことでいいますと、基本的には、海外の供述あるいは証言というものは、もちろん、それは公的な捜査機関によって行われるものでありまして、それがまた、その国から正式なルートを通じて流れてくる、そのことの信憑性について、本当に裁判所が問うことそのものができるのかどうかということを、いま一度私は確認をしたいというふうに思います。いかがですか。

河井副大臣 日本国の司法は裁判所がつかさどっておりますので、裁判所が具体的な証拠に関し個別に判断するものであります。

泉委員 そうしますと、裁判所は、その国から公式なルートで証言や供述がもたらされていたとしても、それを採用しないというケースも当然あり得るということでございますか。

三浦政府参考人 先ほど副大臣が答弁されましたように、証拠の証拠能力につきましては、裁判所が、個別具体的な証拠に関しまして、それぞれこれを判断するということでございます。

 委員御指摘の、その供述が特に信用すべき状況のもとに作成されたといった要件につきましても、最終的には裁判所が判断するわけでございますが、検察官がその供述書を外国の捜査当局から入手をして、その点について証拠請求するという場合は、当然、検察官がその点について立証するということになってまいります。

 具体的にどういうふうにやるかというのは、まさに、その請求をする、あるいは立証をする検察官の判断によるところになるわけでありますけれども、ごく一般的に申し上げれば、その供述が得られた外国の手続について、外国の当局からその状況の説明を受ける、あるいはそれを記載した書面を入手するといったような方法もあろうかと思いますし、また場合によっては、捜査共助を要請した場合に、その供述の取得の現場に日本の捜査機関、捜査官が赴いて、その場に立ち会うということによりまして、その状況を日本の法制で明らかにするというやり方もあろうかと思います。それは、それぞれ事案に応じて検察官が個々具体的に判断をするということになろうかと考えております。

泉委員 もちろん、現場に赴いて、そこに立ち会ってということであれば、これは非常に証拠としての信憑性、この要件を満たしているのかなというふうに私は思うんですが、これから恐らくさまざまな国とこういった共助条約を結んでいかれる中で、捜査手法、そういったことについては、もちろん先ほど外務大臣がおっしゃったように、すべての国で例えば取り調べの可視化について同一な手法が採用されているわけがございません、さまざまな手法が採用されているわけですね。

 そういった中で、こういった他国での取り調べ、自白や供述の調書というものについて、それを信頼するかどうかというのは、その都度検察官によって判断をなされるということではございますが、もちろんこれは、その都度その検察官の思い思いの判断ということではなくて、やはり統一の基準なり観点なりということは当然あるというふうに私は思うんですね。そういった場合の統一の基準や観点という中に、他国からこうしてもたらされた自白の調書や供述調書というものそのものの作成過程も、検討項目に含まれているんだ、作成手法も含めてこれは含まれているんだというようなことであるのか、その証言の内容のみを問うものなのか、そこはやはり私は違いがあるというふうに思います。

 ですので、私の結論から申せば、やはり今後さまざまな、いろいろな国とこういった共助条約を結んでいくという中においては、その調書を作成した過程、手法、こういったことについても信頼に足るものなのかということについては判断の要件にすべきだというふうに思いますが、いかがでしょう。

三浦政府参考人 供述書あるいは供述録取書の証拠能力につきましては、あくまでも刑事訴訟法の規定に従って判断されるところでありまして、先ほど来、委員御指摘の、その供述が特に信用すべき状況のもとに作成されたといった要件など所定の要件について裁判所の方で認定がされるという場合に、その証拠能力が認められるということになるわけでございます。

 日本が外国の当局にそういった供述の取得を要請して、それがどのような手続、プロセスで入手されるかというのは、まさにその国その国あるいは事案事案に応じて異なっておりますので、一概にどういう形で行うのがいい悪いということを申し上げるのは難しいわけでありますけれども、それぞれの証拠に応じて検察官の方で必要な立証を行う、また、それに必要な情報を外国の当局からも入手する、あるいは、必要な手続を踏んでもらうように要請をする、いろいろな手段を講じていくことになるのではないかと考えております。

泉委員 今私が言っているのは、統一的な手法をとれということではなくて、観点をしっかりと持つようにということなんですね。他国からもたらされた情報、証言や供述については、その証言や供述がつくられた過程についてもしっかりと目を向けるべきだということを述べておるわけでございます。これをぜひお願いをしたいというふうに私は思います。

 時間がございませんので次にお伺いをしますが、また細かい点で申しわけございませんが、先ほど私が申しました刑事に関する共助に関するモデル条約というものがございます。この中の第十一条というところに「証拠の取得」というのがございまして、その中にコメントというのが書いてございます。このコメントというのは、「締約国は、可能でありかつ国内法の基本原則に合致する場合には、証言、供述その他の共助を、ビデオリンクその他の最新の通信方法により提供することを許可すべきであり、また、そのような状況下で行われる偽証が犯罪となることを確保すべきである。」というふうに書いてあります。

 この「ビデオリンクその他の最新の通信方法により提供することを許可すべきであり、」でございます。現在、日本はそれを許可していますでしょうか。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

三浦政府参考人 委員御指摘の、モデル条約の十一条の、脚注というのでしょうかコメントというのでしょうか、その部分に今委員が読み上げられました記載があるわけでありますが、そこは、ビデオリンクその他、現代的なといいますか、近代的なコミュニケーションの方法で取得するというようなことが書いてございまして、やや表現が抽象的といいますか、幅広い内容を含んでいると理解されるものでございます。したがいまして、こういった証拠の取得、共助の実施の態様としては、非常にさまざまなやり方、態様があり得るのではないかというふうに考えられるところでございます。

 したがいまして、どの範囲について我が国でそれを実施することができ、どの範囲でできないかということにつきましては、さらに具体的に方法を分析して検討する必要があるというふうに考えているところでございます。

泉委員 もう一度わかりやすく確認をお願いしたいんですが、では、現在日本で行われている最新の通信方法で、海外との何かやりとりというのはございますでしょうか。それとも、全く今は何もないということですか。

三浦政府参考人 委員のお尋ねが、例えば、ある供述を取得する場所でその画像を撮って、そのまま直接、例えば外国のしかるべき場所にそれを送信して、向こうでリアルタイムで見るというような形を想定するといたしますれば、現在までのところ、そのような形で例えば証言、証人尋問等を実施しているということは行われてはいないのではないかというふうに承知しております。

泉委員 これを妨げる何か法的な理由はございますか。

三浦政府参考人 その点につきましては、まだ私どもといたしましても、そういった方法について、法律上あるいは実際上どういう問題点があるのかということについては検討をしている段階でございますので、今この時点でかくかくしかじかということで結論を申し上げることが困難であるということを御理解いただければと思います。

泉委員 外務大臣も恐らく国際会議等で他国と映像でやりとりをされたということがあるのではないのかなというふうに思いますが、いきなりですが、大臣、ございますか、そういった今まで他国と映像でお互いにやりとりをしたケースというのは。

高村国務大臣 国際会議というほどのものではありませんが、他国と映像でやりとりしたことはございます。

泉委員 ありがとうございます。

 ぜひここは、法務省の方では検討しているというふうにおっしゃいましたけれども、実は私はなかなかかたい壁ではないのかなというふうに思っておりまして、先ほどの自白の信頼性ということについてもそうなんですが、法務省が検討するに当たっては外務省の方からも、やはり一般的な、常識的なというか、ある意味最新的なというか、そういったノウハウを、できる限り国際的な、その中でも特に最新のものを取り入れながら、こういった共助条約の充実に努めていくために、外務省からはぜひ法務省にアドバイスをさらに強めていただきたいというふうに私は思っております。

 そういう意味では、例えば刑事訴訟法の百五十七条の四というところについて、現在、国内ではこの映像を使ったビデオリンクの手法がとられております。例えば、以前、映画で「それでもボクはやってない」でしたか、痴漢冤罪の映画がございました。そのときには、痴漢の被害者だとされた女性がつい立てを使ってほかの人からは見えないような形で証言をしておりましたが、今はさらにそういったものが進んで、これをほかの部屋でビデオで映像を流しながらやりとりをするというような形がとられている、これがビデオリンクでございますけれども。

 現在は、こういったものについては、被害者保護の観点で行われているということでありまして、例えば、供述するときに圧迫を受け、精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者を保護するための制度として使われているということであります。そしてまた、現在では、裁判官や被告人がおられる同じ構内でこういったビデオリンクのやりとりをしなければならないということが限界でございます。

 この二つを特にクリアをしなければ、例えば、アメリカやあるいは韓国、双方とも先進国でありますから、今後そういった国々とビデオリンクという形でお互いに供述をするというケースも出てくるというふうに思いますので、そういったことをやはりできるようにしていくことが、例えばアメリカや韓国から求められたときにようやく対応するということではなくて、私は、これは日本からの発意としてもぜひ取り組んでいただきたいなというふうに思っているところでございます。

 続きまして、残り少なくなってまいりましたが、ミャンマーにおけるジャーナリストの長井さんの殺害事件についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、警察庁そしてまた外務大臣、このミャンマーの長井氏殺害事件については、やはり今、真相が不明なまま、時ばかりがたっているのではないか。昨年の九月から半年を過ぎるというような、もう既にそういう状況になってきております。

 外務省、現在はこの長井氏の殺害事件について、どのようなことをミャンマー側に申し入れ、あるいは主張しているんでしょうか、お答えください。

石川政府参考人 お答えいたします。

 長井さんが亡くなられたことは極めて遺憾な事件でございまして、政府としては、これまでもミャンマー政府に対しまして、累次にわたって強く抗議してまいりました。それから、両国の専門家を含めた会合を設けるなど、事件の真相究明、それからすべての遺留品の返還というのを強く求めているところでございます。

 具体的にもう少し申し上げますと、本年の二月十九日でございますが、ミャンマーにおきまして、両国の専門家を含めた協議を行ったところでございます。その協議の中で、日本側から、発砲は極めて至近距離であるというのが日本警察の分析であるといったことも示しました。それによってミャンマー側のこれまでの見解の修正を求めたところでございます。それからまた、日本側から、いまだ返還されていないビデオカメラ、これについてさらなる捜索を行うように求めたところでございます。

 ミャンマー側の反応でございますけれども、本件は極めて遺憾な出来事であるという弔意は示されましたが、先方の回答は、発砲は離れた場所から行われたものである、それから、法令に基づいて段階を踏んで行われた合法的なものであったというような説明がございました。もちろん、こういった説明は我々は受け入れられるものではございません。

 また、長井氏の死亡時の現場検証報告書の提出、これを求めたわけですが、これについては、ミャンマー側も政府部内で検討するとしておりますが、いまだ出てきておりません。それから、ビデオカメラにつきましては、引き続き捜索を行っていくということでございました。

 いずれにしましても、累次の機会にミャンマー側に対して、今申し上げたような日本国政府の立場を先方に申し入れを行うとともに、結果を通知するように求めているところでございます。

泉委員 今、現場の対応としてはよくわかりましたが、大臣、今のお話を聞いていますと、せっかくの専門家協議においても残念ながらビデオカメラは戻ってきておらない、しかもビデオカメラを本当に捜しているのかどうかすら正直不透明だ、そしてまた、発砲は合法だと。全く我々日本の国民からすると看過できない見解の相違がございます。

 そういったものが二月十九日の専門家協議でございますから、やはり日本のしかるべき大臣がミャンマーにどのような対応をなされているのかというのを私はぜひこの際お伺いをしたいと思いますが、この長井さんの件については、大臣としてどのような対応をなされていますでしょうか。

高村国務大臣 私自身、ミャンマーのニャン・ウイン外務大臣に、今事務方から説明があったようなことを繰り返し言っているわけであります。お会いしたのは三度だと思いますが、三度ともそのことについてはきちっと申し上げています。

 そのほか、この問題だけを話しているわけじゃなくて、民主化の問題、民主化を促すとか、そのためにガンバリ特使を受け入れろとか、強く言っているところでありますが、現時点ではいい結果が得られていない、こういうことでございます。

泉委員 大臣にもう一つ大事なことをお伺いしたいのですが、まさに今、さまざまなことをお話しになられている。確かに、外交というのは一つの問題だけですべてを、態度を決定するわけにはいきませんから、いろいろな要因があるとは思いますが、一方で、ミャンマーにおいては今民主化のプロセスが、我々から見れば非常に不十分ではありながらも、選挙に向かって歩み始めているという状況の中で、今後日本の政府としてどのような対応をしていくのか。

 例えばODAについて、こういった長井さんの事件がそのまま存在をしている中で、民主化のプロセスが進んでいけばODAについてもまた規模を徐々に拡大をしていくのか。私は、それはやはり納得できるものではないというふうに考えますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 長井さんの問題も含めて、総合的に判断をしてまいりたいと思っています。

 このODAについては、もともと日本は人道的なものに絞ってやってきたわけでありますが、この事件を受けてさらに絞り込んで、人道的といっても間接的なものも含めていろいろあったわけでありますが、本当に直接裨益をするようなもの、例えばポリオのワクチンのような、人民が直接裨益するようなものに限って今やっているわけであります。

 民主化の進展、あるいは長井さんの事件についての進展、そういったことも含めて総合的に判断をしてまいります。

泉委員 最後に、警察庁にお伺いしたいんですが、今回のこういった件も、刑法の国外犯規定というもので、国民以外の者の国外犯、こういったものについても現在徐々に適用が進んでいるというふうに聞いておりますが、最近でも、警視庁が現在五件ですか、この制度ができてから合計でもまだ十件に満たないぐらいかなと思うんですが、最近こういった適用が進んでいるという記事も見かけました。

 ただ、これは、適用する、しないというものを警察がそれぞれ個々の事情に応じて判断するものなのか、傷害や殺人やいわゆる凶悪犯罪、法律に書かれている項目さえ満たせばすべて適用していくものなのかということでいえば、後者の方なのかなというふうに思うわけですが、その確認と、現在は被害者の住民票の所在地でその県警が対応しているというような形かと思うんですが、その確認を最後にさせていただきたいと思います。

宮本政府参考人 国外犯の規定が適用になる事案につきましては、警察としては、必要に応じて積極的に捜査を進めているところであります。

 具体的にどこの県が担当するかということになりますと、それぞれ、国外で行われたときが住所地というのは関係する場所がそこになるからでありますけれども、全く国外だけではなく、何らかの関係する余地があれば、そこが行うこともあり得る。ただ、一般的には住所地を管轄する警察が行っておるというところであります。

 いずれにいたしましても、警察として捜査すべき事案につきましては、積極的に捜査を進めていきたいと考えております。

泉委員 終わります。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、日中の刑事共助条約について伺います。

 本条約は、二〇〇六年七月発効の日米、それから二〇〇七年一月発効の日韓と同じく、近年の国境を越えた犯罪の増加等に伴って、これまで外交ルートを通じて行われた、国際礼譲で行われてきた刑事共助の実施を条約上の義務とするということで共助の確実な実施を担保して、その実施のための連絡を、外交当局間ではなくて、条約が指定する捜査機関等の中央当局間で直接行っていくということによって事務処理の合理化、迅速化を図るためのものだと私も受けとめております。

 そこで、高村大臣に伺いますが、中国を初め、諸外国との人的交流が拡大するということに伴って、外国人による犯罪、凶悪犯罪というのも増加しているという傾向にあるのは事実だと思うんですが、こうしたもとで刑事共助条約を締結するに当たっては、特にどういうことに留意をして交渉を進めてこられたか、伺いたいと思います。

小野寺副大臣 委員御指摘のとおり、国際捜査の増加に伴い、捜査、訴追その他の刑事手続に関する国際的な協力の重要性が高まっているということで、このような刑事共助条約を締結する運びになっております。

 ただ、政府としましては、この条約を結ぶに当たりまして、請求された共助が政治犯罪に関連する場合や自国の安全その他の重要な利益が害される場合に共助を拒否することができるとするなど、共助の実施によって国民の利益や自国の利益が不当に害されることがないように配慮すること、そのことに注意をしております。

笠井委員 警察庁に伺いますが、本条約は、日本にとっては日米それから日韓に続く三つ目の刑事共助に関する二国間条約の締結となるわけですが、既に実施をされている日米と日韓で見た場合、それまで国際礼譲に基づいて行われてきたときに比べて、実際に刑事共助という点ではどういう変化があったということが言えるんでしょうか、お示しいただきたいと思います。

宮本政府参考人 共助の請求そのものは、個々の事件捜査の過程でそれぞれの必要性に応じて行われるものでありまして、こうした刑事共助条約の締結に伴いまして、その請求が必要となる案件の数が直ちに増加するとかいったものではないと考えております。

 しかしながら、こうした条約の締結によりまして、手続面におきまして相当程度の迅速化がなされているというふうに理解しております。

笠井委員 続けて警察庁に伺います。

 先ほど来、中国製のギョーザ中毒事件ということで、これをめぐってはいろいろ議論がありました。そして、こういうこともありながら、今月八日、九日、日中双方の警察当局による第四回目の情報交換会議が行われたということであります。

 この情報交換会議では、けさの質疑でも答弁の中でありましたが、いわゆる浸透の問題とかということでいろいろ意見が違うということはあったということもありました。同時に、その中で、これは警察庁の方から、当日、この会議が終わったということで、これは報道であったんですが、日中間の理解が深まるなど成果を得た、今後、連携をとりながら早期解明に努めることで合意したというようなことが報じられております。

 そういう点でいいますと、この情報交換会議を重ねてきた中で、大きな意味での、日中の間で情報交換をしながら真相解明をするという点での到達点、合意はどこら辺にあるのか、中身でいえば違うというのはいろいろあるんですが、そして、今後どういうふうなことで情報交換を進めていくのかということで、大枠の話で結構なんですが、説明をいただきたいと思います。

米田政府参考人 御指摘のように、四月の八日、九日と会議をやりまして、その前に、三月にも中国から鑑定科学捜査の専門家に来日してもらいまして、やはり同じような会議をやっております。

 必ずしも認識が全部一致したわけではありませんが、共通の認識を持つに至ったという点もいろいろございまして、そういう意味では成果があったと思っております。

 今後どうしていくかという枠組みは、協力して捜査をしようという枠組みは、これは警察庁次長が訪中をしてつくっておりますので、協力してやろうということは変わりませんけれども、それでは今後どういう具体的段取りで事件の解決に向かうかというところは、これはまたいろいろな情勢の中で、捜査の具体的な進行でございますので言えない部分もございますけれども、我々としては、中国と緊密に連携して、事件の解決を目指したいということでございます。

笠井委員 今ありましたけれども、事件の真相解明に向けて、これは本当に大事な問題ですので、引き続き全力を挙げるように求めておきたいと思います。

 刑事共助の関係は以上で終わりますので、警察庁、お忙しいでしょうから、どうぞ、結構です。

 続いて、日本・インドネシア経済連携協定について質問したいと思います。

 この経済連携協定、EPAという問題でいいますと、大きく言うと、私思うのは、一つは、経済のグローバル化が進展をする、こういうもとで、私自身もASEAN諸国に何度か行く機会がありまして、日本とASEANの政治経済の交流というのが相互依存的に活発になっている。そして、一般論でいいますと、そういうもとでEPAということで、その締結の利益というのは、やはり双方の国にとって一番ベストなのは、あらゆる産業分野や国民に利益がもたらされるということがベストなわけですが、なかなかそうはいかないというのが、それぞれの国との間でいいますと、いろいろな経済の段階も違ったり、あるいは分野の得意、不得意があるということでなかなか難しい問題があるというのを一つ感じております。

 同時に、そういうもとで、二国間のEPAということで言いますと、協定案の具体的な諸内容に即して、我が国そして相手方の国、そしてそれぞれの国民経済に及ぼす影響等を長期的な視野かつ多面的な視点から検討して総合的に判断を下すというのが、これは本当に大事なことだというふうに思っているんです。だから、政府もそういう点ではいろいろ考えていらっしゃると思うし、その辺は努力をしているんだろうと思うんですが、しかしながら、やはり幾つか大きな問題があるんだろうと思います。

 まず、本協定に盛り込まれている人の移動をめぐる問題であります。

 先ほど来質疑もありましたが、本協定案には、インドネシアからも看護師と介護福祉士研修生を二年間で合計千名ということで受け入れることになっております。規模でいえば、これはフィリピンの場合と同じということになります。

 そこで、外務省に伺いたいんですが、日本とフィリピンのEPAについては、まだフィリピン国会では批准されていないと朝も質疑がありました。そして、その理由についてもお話があったんですが、その議論の中で、向こう側の国会の中でも人の移動の問題が議論があるということでありました。そして、そういう点では、フィリピンの政府に対しても、ぜひ早くやってもらいたいということで、政府を通じて促すという話もあったわけです。現実に、まだおくれているという状況の中での理由とのかかわりですが、人の移動の問題をめぐってそういうことが議論になっているということ自身については、それはフィリピンのことでありますが、しかし、締結している一方の日本の政府として、あるいは外務省としてそういう問題点についてはどういうふうに見ているかということについて伺いたいんですが、いかがでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 フィリピンの国内におきまして、具体的には上院の承認のプロセスが現在進行中なわけでございますが、その中で人の移動に関しても議論があったというふうに認識しております。

 日本とフィリピンとのEPAは、日本政府とフィリピン政府との間で精力的な交渉をした結果、お互いが合意をした、いわばお互いが納得をして合意をしたという内容だと考えております。そういう意味で、私どもはフィリピン政府側に対して、フィリピン政府がフィリピンの議会に対して適切な説明が十分になされるようにということを期待して、そういうような意思疎通、連絡調整を行っておるというところでございます。

笠井委員 政府間でいえば合意と納得ということで条約を結んだということだと思うんですが、現実には、先方ではおくれていて、その中で人の移動の問題も議論があると。

 もちろん、フィリピンにはフィリピンの政治状況もあるでしょうけれども、例えば、フィリピン側へのメリットの不足の問題とか、あるいは、フィリピン経済への影響の問題とか、交渉の進め方、あるいは国内関係者との調整の問題もさまざま議論になっているというふうに承知をしております。いずれにしても、そういう点で、国民レベル、国会レベルでいうとギャップがある結果ということで向こうは批准がまだできていないということだと思うんです。

 そういう状況の中で、今度はインドネシアと結ぶということで結ばれたわけでありますが、インドネシアと締結するに当たって、フィリピンでの議論といいますか、その論点の一つには人の移動の問題もあるということが言われた、そういうことについては検討にはなったんでしょうか。つまり、フィリピンとは同じような規模、もちろん中身とかが違いますし相手も違いますが、そういう問題は、フィリピンは結んだけれどもまだ批准はされていない、向こうも議論があるということについては、今度新たにインドネシアとやるに当たって検討したのかどうか、その点はどうだったんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 フィリピンとの協定につきましては、一昨年の九月に署名をしたわけでございますが、実質的な交渉担当者同士の合意というものはもう少し前にやったわけでございます。そして、それの後を追う形でインドネシアとの協定の交渉が始まったわけでございます。

 そういう意味におきまして、私ども、日本の国内、日本の政府内におきましても、フィリピンとの合意内容というものを頭に置きながらインドネシアとの交渉に臨んだわけでございますし、また、インドネシア側におきましても、日本とフィリピンがどのような合意をしているかということは知っていましたので、また、我々の方から必要に応じて説明をいたしましたので、そういう形で、インドネシア側も日本とフィリピンとのEPAというものを意識しながら日本側との交渉に当たってきた、そういう経緯がございます。

笠井委員 そういう中で、対インドネシアについて言いますと、二〇〇五年に日本・インドネシアEPA共同検討グループ報告というのがあって、それを見ますと、日本側より、看護師、介護福祉士については、日本、フィリピン間でのみ適用されるスキームであり、他の国から要望があれば改めて相手国ごとに十分検討する必要があると。つまり、フィリピンと日本は、それはそれ、しかし、相手国からまたあれば、それはそれで、新たな相手国との関係で十分検討するというふうに述べております。

 そこで、条約を結んでいくという点でいうと、これは基本的に大きな問題の一つになっていて、大臣にぜひお答えいただきたいんですが、インドネシアの研修生受け入れについては、いかなる十分な検討がなされて、どういう理由で受け入れを決断されたのかということについて、大臣、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 先ほど御指摘がございましたが、この看護師、介護福祉士の受け入れにつきましては、まず、日本及びインドネシアの産学官の代表から成ります共同検討グループにおいて、インドネシア側から、看護師、介護福祉士の受け入れを含めた自然人の移動について関心が示されました。

 実際の協定交渉におきましても、インドネシア側から、インドネシア人看護師、介護福祉士の送り出しについて強い関心が表明されました。これを受けまして、一定の交渉期間を経た後、協定の主要点に関する大筋合意の際には、看護師、介護福祉士の受け入れの枠組みを構築することで合意をしました。

 このようなやりとりを経て、今回、本EPAにおいて看護師、介護福祉士の受け入れの規定が盛り込まれることになりました。

笠井委員 では、もう一つ伺いますが、インドネシアからの医療人材の流出という問題については、現実には、受け入れるということは、向こうから見ればそれだけ外国に出るわけですね。インドネシアの医療体制や医療水準に対して影響を与えるか否か、この点での検討なり議論というのはあったんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 インドネシア側におきまして、人の移動に関してどのような内容を日本に対して要求するかということは、インドネシア側において慎重な検討がなされて、交渉のプロセスで要求がなされてきたものというふうに認識をしております。

 また、そのプロセスにおきまして、当然、インドネシア政府におきましては、インドネシア国内における医療ないし福祉サービスの提供といったことは、インドネシア政府としてインドネシアの国内に対して責任を負っておるということであろうと思いますので、そうしたインドネシア政府の責任を踏まえた上で、日本側に対して一定の要求をしてきたということであろうというふうに認識をしております。

 したがいまして、日本とのEPAによりまして、インドネシア側におきまして、インドネシアの国内の医療ないし福祉のサービスに対してそれが何らかの障害になるというような関係にあるものではないというふうに認識をしております。

笠井委員 要するに、相手の政府が判断して、きちっと責任を持ってやったんだからという話だと思うんですが、しかし、先ほど、フィリピンの場合でいうと、政府間でやっても相手の国の国会や国民との関係では問題が解決しないということがまだ続いているわけですから、それは受け入れる側も、もちろん相手の責任ということはあるんですが、よくこの点はお互いにやはり検討するという問題になってくるんじゃないかと思うんです。

 現実に、これは国際看護師協会というところで、看護師の移住の問題ということで、海外に出ることを含めて言っているわけですが、これがヘルスケアの質に悪影響をもたらす可能性ということも指摘をしております。また、国際公務労連という労働組合ですけれども、保健部門における女性と国際移住ということで、そういう報告書も出ておりまして、その中で、こういう問題にも触れているんですね。

 国際的な移住に関して言うと、看護師の圧倒的多数は、少なくとも生活可能な賃金を得られるならば自国で働くことを望んでいるということだとか、劣悪な労働条件あるいは賃金差別、性差別の問題ということが移住に伴って起こるということも指摘しております。

 また、先ほどの看護師協会の方でも、若干紹介しますと、途上国の中では、看護師の国外移住が重大な影響をもたらす、もともと数が少なく、しかも養成に比較的費用のかかる資源を失うことになる、ケアの水準と質にも問題が生じる、国境を越えて就労する看護師は比較的若く有能な場合が多い、国内の移動でも同様に、看護師がスキルと専門的知識を別種の就職先に持ち去ってしまうという問題が生じることがあるということをあわせて言っているんですね。

 だから、確かに、私、これを見ますと、こういう面というのはよく見ていかなきゃいけない問題だろうなと。相手方の医療水準あるいは人員の確保との関係でも、優秀な人が出てくるとなれば向こうはそれだけ大変になるということでいいますと、専門家からも、こういう相手国の側の医療事情についてもよく吟味するということで、結ぶ以上は、日本方としても、やはりよく念押しをするというか、きちっとその辺もやらないと、相手方の医療水準との関係あるいは人の確保の状況との関係でいろいろなことが起こる。これも慎重の上にも慎重じゃなきゃいけないということを、この辺、強く指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、外務省にさらに聞きたいと思うんです。インドネシアは、フィリピン以上にいわば介護労働者の派遣大国と言われております。そして、台湾など諸外国に多くの介護士が渡っているということでありますが、まず、統計的で結構ですが、そうしたインドネシアの介護士の海外への移動といいますか移住というのが、いつ、どこに対して、何人ぐらいで始まったのか、それが直近でいうと、相手国、どの国で、合計何人ぐらいになっているというふうに掌握しているでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 インドネシアの介護士につきましては、これは、インドネシア政府側の統計によりますと、一九九二年に二万五人を国外に派遣したのを皮切りに、直近時点の二〇〇七年には、インドネシア人介護士は六万百三十九人が海外に派遣されているというふうに承知をしております。

 介護士の派遣先でございますが、最初の年の一九九二年は台湾のみでございましたが、二〇〇七年には、主要な派遣先は、上位から、香港、台湾、シンガポールとなっているというふうに承知をしております。

笠井委員 今ありましたが、実に十五年間で三倍以上にふえているという状況であります。

 今回の場合、一定の資格、ハードルは設けて、そして、これは二年間ということで、それ以降については、やってみた結果を踏まえてと、けさ方もありましたが、検討するということでありますが、そうはいっても、これは、一たん受け入れるということになると、相手側もまたいろいろな要望も出てくることもあると思いますし、逆にマイナス要因も出てくる可能性が大きいわけですが、しかし一たん門戸を開くと、これはふえていくということになっていかないか。現実にインドネシアでは九二年からふえているわけですね、外に対して。そういうことになるという危惧はありませんか。懸念はないでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 インドネシア人の看護師、介護福祉士の候補者の方々の受け入れにつきましては、当初の二年間で千人、その内訳は、看護師四百人、介護福祉士六百人ということを上限とするということをインドネシア側に伝えておるところでございます。

 看護師、介護福祉士の候補者の方々の受け入れは、社会または労働市場に悪影響を及ぼさないように、円滑かつ適正に実施することが重要であろうと考えております。こうした観点から、当初の二年間の受け入れ人数の上限をインドネシア側に伝えまして、それが着実に実施されるということを私どもは期待しております。

 その後の受け入れの人数につきましては、当初の二年間の受け入れの実施状況を見た上で総合的に判断、調整をしてまいるということになろうかと考えております。

笠井委員 着実に実施していくと見ているのであれば、その結果とすれば、またふえていくということになるというふうな流れだと思うんですね。

 それでは、お聞きしたいんですが、受け入れる研修生候補の条件でありますけれども、日本・フィリピンのEPAでは、ここにありますけれども、看護師プラス三年の実務経験ということであり、介護福祉士の場合についても、四年制大学卒プラス、フィリピン政府による介護士認定などがあったわけであります。

 しかし、インドネシアの方を見ますと、看護師の場合は二年の実務経験、介護福祉士は高校卒プラス介護士の認定というふうになっていて、これは、フィリピンの場合に比べて実務経験が一年短く、学歴もそういう意味では大卒から高卒というふうになっておりますが、なぜこういうふうに、フィリピンと比較して、研修生の候補者の条件を緩めるというか低くしたんでしょうか。この点を伺いたいと思います。

岡崎政府参考人 フィリピンとインドネシアにおきます看護師の養成課程の違い等を反映したものでございます。

 フィリピンの方が、実は、初等教育からの学校の就学期限が一年短いというようなこともありますので、初等教育を始めてから実務経験まで全部足したものが同じになるようにということでインドネシアの方は一年実務経験を短くしたというようなことであります。それぞれの国の養成制度の状況を見ながら、基本的に質において同等になるようにということで考えたということでございます。

笠井委員 その辺の説明も、こういう表があるわけですけれども、きちっと伺わないとなかなかわからないわけですね。学校の制度も含めてどうなっているのか、そしてそういう人たちが入ってくるということになるわけですから。

 そういう点も含めて、実際には、これが着実に実施されるようにということでいえば、なるべくそれは緩くしようということになってくるわけですし、いろいろな面でこのハードルという問題が出てくると思うんです。これはまた、やったけれども実際には余り来なかった、どうしようということになるので、そういう問題というのはやはりきちっとわかるようにしなきゃいけない。

 では、実際に、決してハードルは下げないということで言えるんですか、それは。

岡崎政府参考人 看護師にしろ介護福祉士にしろ、それぞれ、我が国の病院の患者さんあるいは福祉施設の利用者の方々、その看護、介護の水準が下がるということは、これは決してあってはならない、こういうふうに考えております。したがいまして、受け入れの段階の基準につきましてもそういうことを考えておりますし、三年、四年の間で我が国の国家資格を取っていただくということをその後就労する条件にしている。

 したがいまして、それは、入ってきたい方の方の要件もありますけれども、やはり、我が国におきます看護、介護の水準、これは非常に重要だというふうに認識しておりますので、そういう観点からこの制度を運用していきたい、こういうふうに考えております。

笠井委員 そこはなかなか難しいところです。

 そこで、大臣、先ほど御答弁があったことのかかわりなので、ぜひ今度はお答えいただきたいと思うんです。

 今、実際に着実に入れるとなればハードルを下げることにならないかということも含めてちょっと議論をしていたんですが、日本とフィリピンのEPAの場合、EPAが結ばれた後、この日本・フィリピンEPAとの整合性を図るということも含めて、准介護福祉士ということで、この制度がつくられて持ち込まれたということがありました。これは昨年の法改正によるものであったわけですね。そのとき、我が党は、これは反対ということをはっきりやったんです。

 というのは、介護福祉士の資格の問題について言うと、こういう形で准ということを設けることによって資質の向上を図るとする趣旨に反するんではないか、そして、介護福祉士の社会的評価や国民の信頼を損ねることになりかねない、この資格への二重構造持ち込みというのは処遇面でもいろいろな混乱、差別を現場に持ち込むことになるということで、結果として安価な外国人労働者の受け入れにつながるんじゃないかという懸念を述べました。そして、それを結局、日比のEPAとの整合性でやってくるということで、この問題というのは、全体として、介護職員全体の労働条件を低い水準に固定化して、ひいては不足しているのに拍車をかけていく、むしろ質確保を困難にするというようなことで、論戦もさせてもらったし、そういう点で反対をしたわけです。

 きょう午前の答弁で、大臣は、この准介護福祉士については批判が高いのでもうやめるんですというふうなことも言われまして、そういうふうに私は聞いたんですけれども。平成二十四年に実施ということになっております、二〇一二年ですが。つまり、大臣としては、批判が高いので制度はやめる方向で見直すということでおっしゃったということでよろしいんでしょうか、そこをちょっと確認したいんです。

高村国務大臣 そういうふうに聞こえたとしたら必ずしも正確ではないので。

 昨年十一月に介護福祉士法が改正されて、准介護福祉士が平成二十四年に導入されることになったのは委員が御指摘のとおりでございます。

 他方、この法律の審議時には准介護福祉士導入への反対論も強かったわけであります。このため、同法には、平成二十四年までの見直し条項が付され、かつフィリピン側との調整等を行った上で介護福祉士への統一化を図る旨の附帯決議が、御党を除く与野党一致で決議されたところでございます。

 松原委員に対する私の答弁でありますが、そのような経緯、そしてこのような法の規定及び附帯決議を踏まえて、今後、日比EPAの発効後にフィリピン側とも必要な調整を行っていくことになる、こういう趣旨を述べたものでございます。

笠井委員 さっきはやめるんですと言ったんですよ、大臣。そこのところは、つまり、見直しということですから、やはりこのままじゃだめだということなんですよ、そういう点では。

 まさに、そういう点で言いますと、つまり、EPAとの整合性で国内制度を変えることもやったんだけれども、結局批判が高いので見直しの方向になっているということになりますと、よほどこういう点は慎重にやらなきゃいけないということは言えると思うんです、いずれにしても。

 ハードルの問題でも、下げるという問題になってくるとすれば、それだけ入りやすくなるからというのと、むしろ入れたいということで下げるというのが当然両方出てくるわけで、そういう点でフィリピン、インドネシアに盛り込まれて、そしてタイとも、この介護福祉士の研修生受け入れについては、たしか二年後に協議するという予定になっているんじゃないかと思うんですけれども、さらにこれは、相手国もふえていきますと日本が受け入れる総人数もどんどんふえていくという懸念は払拭できないんじゃないかということが言えると思うんです。

 そこで、こうした研修生の受け入れと日本国内の医療、介護の現場とのかかわりということは、これは大きな問題として見なきゃいけない。

 今、我が国では、もう申し上げるまでもありませんが、高齢者や障害者の介護福祉サービスが深刻な人材不足、人手不足に直面をして、大きな社会問題になっている。私自身も母を介護しながら、実際にお世話になっている事業所で見ますと、今、人手は足りない、しかし報酬も低いということで、本当に苦労しているということを目の当たりにしております。

 最大の要因は、やはり、利用者に負担増とサービスの利用制限を求める一方で、事業所に対する報酬を引き下げてきたということがあると思うんです。各地の事業所がそういうもとで経営危機に陥って、賃金はカットする、それから正規の職員のパート化など労働条件の切り下げを余儀なくされて、閉鎖に追い込まれた事業所も出ております。

 我が党は、昨年の十二月にこの問題でも緊急提言を出しましたが、国の責任で賃金をアップする、報酬も上げていく、それから事業所自身の報酬も大幅に引き上げる、そして職員のふさわしい身分保障と労働条件、人員配置基準の抜本的改善などの緊急の対策が必要だということを主張しております。まさにそういうことだと私は思うんです。

 舛添厚生労働大臣も、この人材不足の問題について言いますと、国会答弁、参議院予算委員会だと思いますが、二〇〇九年の介護報酬改定を待たずにできるところからやるというふうに言われていると承知しています。

 厚生労働省に伺いたいんですが、この問題、具体的に、何をどうやって、いつから着手しようと思っておられるのか、御答弁ください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護労働者を取り巻く最近の状況につきましては、委員からお話がございましたように、他の雇用状況が改善している中で、全体として離職率が高く、全産業として比較すると有効求人倍率も高いということで、都市部を中心に事業所において人材確保が困難になっている、こういうこともございます。

 昨年八月に、社会福祉法に基づきます、国、地方公共団体、経営者、関係団体が努力しなければならない人材確保指針を十四年ぶりに見直したところでございます。

 大臣からも御答弁いたしましたように、また委員から御指摘ございましたように、介護労働者の七五%以上が介護保険に従事いたしております。その介護保険は、これも委員からお話ありましたように、二十一年四月に介護報酬の改定が予定されておりますが、その前にも私ども、今年度におきましても雇用管理の改善のための取り組みをしていく。それから、潜在的介護福祉士等、資格を持っておられても介護の現場で働いておられない方も二十万人程度おられますので、そういった方々の掘り起こし、就業意向の有無の調査、そういったことをやりながら、福祉人材センターにおける職場復帰を希望する有資格者に対する再研修等を今年度もやってまいりたいと思います。

 もちろん、労働環境の改善、とりわけ賃金の問題が非常に大きいわけでございまして、私ども、この基本指針においても、やはり中核となる新卒の労働者が来ていただける職場にしていかなければならない、そういう意味では、他の産業の賃金水準と比較して適切な賃金水準を確保していかなければならないというふうに考えております。

 その他、労働時間でございますとかさまざまな問題がございますが、それから事務負担の軽減などもございますけれども、そういったことを総合的に取り組んでまいりたいと考えております。

笠井委員 まさに、本当に急いで手を打たなきゃいけない問題です。

 ある東京都内の百一事業所のアンケートの調査結果、集計を私も見ました。介護職員の応募者が少なくて、二〇〇六年の介護保険改定で経営も厳しく、利用者へのサービス、いずれも厳しいということで九割近くの事業所が回答している、まさにがけっ縁という状況に今あるというふうに思います。

 介護事業というのは保険料と税金で賄ういわば公的性格の事業でありまして、自立自助ということを強調して事業者任せにするというのじゃなくて、現場労働者の賃金水準と労働条件の向上について、やはり国の関与、仕組みを早急に検討してやるべきだと私は思うんです、実行すべきだと。

 ところが、そういう状況にあるときに、こういう形で介護福祉士研修生を受け入れていくということになりますとどういうことになるかということなんですが、受け入れる研修生というのは、国内の介護職員と同等の報酬、賃金、それから待遇ということを先ほども言われました。そうすると、全体としては賃金アップということにつながるのか。むしろ、そっちには働かずに、結局、人手不足解消という問題解決を全体としては困難にするのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、賃金等につきましては、委員からお話がございましたように、我が国の介護従事者の賃金と同等の賃金を保障するということがございますし、それから、二年間で千人の受け入れをするわけでございますが、例えば介護職員につきましては、介護福祉士資格を取得する前の方については、介護保険で人員の配置基準が決められておりますが、まだ修行中の方であるということで職員配置基準上の介護職員には含まない、こういう扱いになっておりますので、我が国の介護労働に従事している方のことについて、今度入れて資格を取られるまでの間について影響を及ぼすということは、そういった意味でもないと考えております。

笠井委員 外国からの受け入れの数そのものはこれからふえていかないという保証はないという問題が一つ。

 しかも、医療・介護事業者に対するアンケート調査というのを私も幾つか見てみたんですが、その中でいいますと、例えばこれは大阪府下の介護保険施設三百八十一施設で外国人労働者についてどういうふうに見ていくかということでやったアンケート調査ですが、これを見ますと、外国人の雇用を考える主な動機というのは、まさに今の現場の労働力不足への対応という問題が一つと、もう一つは賃金抑制、賃金の上昇が抑制されると。さらに、日本人介護士への刺激になるということもありますが、つまり、人手が足りないので労働力不足に対して対応するために外国人の人を入れたいねと。それからもう一つは、賃金を上げるのがそのことによって抑制されるということを主な理由に挙げているということで、そういうような形で外国人介護士なりを雇用するメリットということを答えております。しかも、それを三年程度までというような雇用期間を考えるということを言っていますので、結局、事業所ごとに見ますと、人手が足りないので安い労働力としてということで求めて受け入れる。

 そして、そういうことになれば、それが日本人を含む介護職員の労働賃金条件の抜本的改善に向かうんじゃなくて、それをむしろ引き下げる、同時に外国人の研修生候補に対しても低賃金あるいは劣悪労働条件を新たに押しつけるということになっていくんじゃないか。この懸念についてはどうお答えになりますか。

岡崎政府参考人 今回のEPA協定に基づきます受け入れでございますので、それぞれ受け入れ調整機関を設けまして、そこがきちんとした対応をしていくというのが第一でございます。そういう中で、先ほど申しましたように、これは候補者の段階で入ってきますが、基本的には国家資格を取っていただいて、その後働いていただくというのが本来の目的であります。

 受け入れの施設におきましては、国家資格を受け入れるまでの間の労働、安く使うというような発想はあってはならないということだと思っていますし、むしろそこでは日本語を含めましたきちんとした研修ができるところをきちんと選んだ上で、そういうところに候補者の方が入っていくようにして、そして、その研修がきちっと行われているように、これは国際厚生事業団に委託して行うわけでございますが、ここが少なくとも年一回は巡回して指導するというようなことを含めまして、いずれにしましても、安い労働力として使われるというような間違った理解がないように十分努めていきたい、こういうふうに考えております。

笠井委員 あってはならないとか、間違えるような理解があってはならないと言われても、では、それはどういうことで担保されるかということはないわけですよ。あってはならないと言ったって、それは片っ方で、できるだけ人手不足を補いたい、安く使いたいという、事業者自身もみずからが報酬を抑えられていますから経営が大変なのでという中で、あってはならないとか、そういう誤解があってはならない、されてはならないといっても、これは確実な保証になるかというと、ならないんだというふうに思うんです。

 これは大臣、そういう意味では、こうやって一たん介護福祉士とかあるいは看護師などの研修候補などの受け入れを決めていくとなると、またほかの国からも、そういうことでうちもということで手が挙がってくるということが考えられるわけです。ある意味、国際交渉の常というか、そういう傾向があると思うんですけれども、それを、これまではやったけれどもだめよ、あなたの国はだめよと言うのはなかなか難しい話になってくるわけで、つまり、この問題に即して言いますと、介護現場の深刻な人手不足ということで、我が国としての必要な対策と国民への説明というのがいずれにしても大前提としてありますよねということについては、それはよろしいですよね。

高村国務大臣 国民に対する説明はしっかりやっていかなければいけない、そういうふうに思っております。

笠井委員 我が国としての介護の人手不足ということについての対策は大前提としてある、これもいいですよね、当然ですけれども。

高村国務大臣 所管外でありますが、厚生労働省もやるべきことはしっかりやってくれている、こういうふうに思っております。

笠井委員 もう一点だけなんですけれども、今回の日本・インドネシアEPAでいいますと、向こう側の、先方の要望もあって、観光分野に研修、実習制度の対象職種を拡大することを前向きに検討するということで検討課題として合意したということでありますが、これはフィリピンとのEPAの審議の際に、私、外国人の技能研修制度について、外国人実習生が最低賃金以下の労働を強いられたり、賃金未払いとか、労基法違反ということで、そういう事案が発生している事態を徳島や福井の例でただしました。解決を求めたんですが、その後、政府は現行の外国人研修生、実習生受け入れ制度についてどのような検討と対策をとっているのか。そして、今回の問題でいうと、観光分野、新たな分野でやるわけですけれども、労働環境について新たに問題を生じさせないという保証があるのか。いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 現行の研修・技能実習制度についてはさまざまな問題が指摘されているというのは事実でございます。この制度をどういう形できちんとしたものとして運用していくべきかということにつきまして、厚生労働省におきまして、有識者によります検討会を設けております。その検討を進める中で研修・技能実習制度の見直しを含めて対応を考えていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

笠井委員 現行制度の問題点をきちっと解決することなしに新たな受け入れ拡大ということを進めると、これは問題解決というよりも、さらに新たな問題を大きく拡大することになりかねないということがあると思うんです。ここは本当に大事な問題だと私は指摘をしたいと思います。

 このほかにも、農業分野で見ますと、熱帯果実の関税撤廃が繰り返されて、そしてフィリピンの場合の小型パイナップルとともに、インドネシア産のパイナップルの生産、輸出動向によっては沖縄のパイナップル生産に影響を与えることも懸念されます。また、インドネシア側の譲許表にある有害廃棄物の無税条項についても、フィリピンのときと同様に、環境NGOが監視の甘い途上国への廃棄物輸出促進になるんじゃないかというふうに懸念を表明している、こういう問題点もあります。

 こういうふうに、このような問題を具体的に見ていきますと、さまざま問題があるということを言わざるを得ないということです。

 以上の点で、我が党としては日本・インドネシア経済連携協定については賛成しかねるということを申し上げて、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 刑事に関する共助に関する日中間の条約、つまり条約第一〇号に関連して何点か質問をいたします。

 外務調査室が作成した資料によりますと、過去九年間で捜査共助を受託した件数の国別内訳は、米国四十件、ポーランド三十件、ロシア、イギリスが二十三件、韓国二十一件などとなっております。警察庁は、このような捜査共助の国別受託件数の差異にはいかなる背景、事情、理由があるとお考えでしょうか。

宮本政府参考人 外国からのこうした要請につきましては、それぞれ要請国におきますその時々の捜査上の必要、こういったものの有無に応じてなされるものでありまして、個々具体的な背景、要因というのはなかなか判断するのは難しい面があるのではないかと考えております。

照屋委員 ポーランドからの平成十七年度受託件数が十三件と突出をしております。特別な背景、事情等があったんでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘のとおり、平成十七年におきますポーランドからの共助の要請の件数は十三件となっておりまして、この件数は、要請国であるポーランドの判断の結果ということで、その理由について必ずしも判然としないところではございますが、状況としまして、当時、我が国の方からポーランドに対しまして、共助を実施するための要件を審査する上で必要な補充説明を求めていたところ、ポーランドからの回答の時期がその時期にちょうど重なったというような事情もあるのかというふうに考えております。

照屋委員 警察庁と法務省が外国に対し、過去九年間で捜査共助を要請した件数は、米国七十四件、韓国五十二件、中国二十四件、タイ二十件などとなっております。これらの背景、原因、結果の分析などについて、警察庁、法務省、それぞれ所信を伺います。

宮本政府参考人 警察庁の方が平成十一年から平成十九年までにおいて共助を要請した件数、米国につきましては四十四件、中国は十二件となっております。

 その内容、件数は、その時々の捜査の進捗状況によっていろいろ異なります。また、その事案と申しますか、事件名もさまざまでございます。個々具体的な要因を挙げることはなかなか困難であるというふうに考えております。

三浦政府参考人 我が国から米国、中国等に対する共助の要請の件数がほかの国と比べて相対的に多いのではないかという点につきまして、やはり、犯罪や捜査の状況にかかわる事柄でございますので、その原因といったものを具体的に特定するのはなかなか難しいわけでありますけれども、一つの背景といたしましては、そういった国々との間の人的交流が盛んで、それに伴う犯罪の発生というものも少なくないということが関係しているのではないかということも考えられるところでございます。

 こうした国に対する共助の要請の結果につきましては、それぞれ個別の事案ごとに事情を異にする部分がございますので、一概には言えないというふうに考えているところでございます。

照屋委員 資料によると、日中間では、過去九年間に外交ルートを通じた捜査共助が二十九件行われております。そのうち二十四件は、我が国から中国へ要請したものであり、五件のみが中国から我が国への要請によるものであります。双方の要請件数に格段の差があることについて、どのような分析をしておられるんでしょうか。

宮本政府参考人 我が国からの要請件数がたしか二十四件ということでございます。この数字は、米国、韓国に次いで三番目に多い数でございますけれども、平成九年から十九年におきます来日外国人の総検挙人員に占める来日中国人による検挙件数の比率は三八%ということで、これは最も多くなっております。

 こうしたことなども関係しているのかとも思われますけれども、ただ、具体的な捜査の中身により要請をしたり、中国の側からの要請ということについては、また相手国側の事情もあることと考えられますので、個々具体的な要因というのはなかなか判断が難しいというふう考えております。

照屋委員 今回の条約一〇号の発効によって、中国からの共助要請にどのような変化があると予測されますか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 日中間では既に五百万人規模の人の往来がございまして、中国は、我が国にとって最も人的往来が盛んな国の一つでございます。

 その増加に伴いまして、自国における相手国民による犯罪も増加しているということで、先ほど数字の御紹介がありましたけれども、合計二十九件の共助要請実績となっておるわけでございます。

 振り返りまして、日米の刑事共助条約あるいは日韓の刑事共助条約、これを見てみますと、それぞれ発効後は、共助手続における効率化、迅速化が実現しまして、数字的には共助請求件数も増大しているということでございますので、正確にその予測を立てることはなかなか困難でございますけれども、この日中刑事共助条約が発効すれば、同様の効果が生じるのではないかと期待しているところでございます。

 いずれにしても、数字の変化等については注視していきたい、このように考えております。

照屋委員 条約第一〇号が発効していない現段階において、日中間の捜査共助の手続は具体的にどのようになされておるんでしょうか。中国産冷凍ギョーザの事件もありましたので、教えてください。

猪俣政府参考人 午前から何度か御答弁させていただいておりますけれども、現時点におきまして条約はございませんが、国際共助法という法律に基づきまして、捜査共助が必要な場合には、外交ルートを通じてお互いにやり合うということでございまして、外交ルートを通じた形での捜査共助を申し入れ、それについてやっていただけるということは現状でもできるということでございます。

照屋委員 次に、条約第一〇号に直接関連する質問をいたします。

 条約第一条二項八号に、「刑事手続に関する文書の送達」と規定をされておりますが、具体的にはどのような文書を指すのでしょうか。

猪俣政府参考人 今の委員が御指摘になりました日中刑事共助条約第一条二の八でございます。ここにあります刑事手続に関する文書には、裁判上の文書に加えまして、例えば、我が国における証拠品の還付等に関する書類ですとか、あるいは告訴人などに対する起訴、不起訴等の通知等が該当すると考えられております。

照屋委員 それでは、日中間で実際の送達手続に具体的な差異がありますか。

猪俣政府参考人 今、送達手続ということですから、恐らく裁判上の文書についてのやりとりということでお伺いだと思います。

 今ちょっと私が申し上げまして、特に裁判上の文書での送達の手続について差異があるという認識は持っておりません。

 つけ加えて言うべきでしたのは、刑事手続に関する文書ということについて言いますと、中国については、例えば証人尋問のための証人への通知というものが刑事手続に関する文書に該当するということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。

照屋委員 私が知りたいのは、日中間で実際の送達手続、これに差異があるかどうかなので、後ででも教えてください。

 条約第三条一項五号には、被請求国の中央当局が共助を拒否することができる場合の一つとして、いわゆる双罰性の欠如を挙げております。現在、日中間において、双罰性が欠如する犯罪にはどのようなものがあるのでしょうか。具体例を示してお答えください。

三浦政府参考人 日本と中国の刑法、罰則を形式的に単純に比較した場合、例えば、中国の刑法では、民族的差別の扇動でありますとか、現役軍人の配偶者との同居など、日本の罰則には見られないような構成要件の罪があるというふうに承知しているところでございます。

 ただ、双罰性の考え方、判断といいますのは、単にその罪名であるとかあるいは構成要件を比較して判断するということではありませんで、要請に係ります具体的な事案の社会的な事実関係に着目をして、その事実関係の中に我が国の法令のもとで犯罪行為と評価されるような行為が含まれているか否かを検討する、その上で判断するということになっておりますので、どのような場合に双罰性を欠くことになるかということはまさに事実関係によるということでございますので、一概に述べることは困難であるということでございます。

照屋委員 日米刑事共助条約の第三条一項四号では、任意捜査については双罰性は不要と規定しておるようであります。この場合の任意捜査の具体的な範囲について尋ねます。

西宮政府参考人 委員御指摘のとおり、日米刑事共助条約におきましては、同条約上、別段の定めがない限り、つまり拒否事由に当たらない限りということですが、双罰性の有無にかかわらず共助を実施する旨定めておりますが、我が国で犯罪とならない行為についての捜査共助の中に、強制措置が必要である場合には、条約上、我が国は共助を拒否することができるものとされております。

 この場合、強制措置というのは、裁判官の発する令状による捜査あるいは差し押さえ、検証や裁判官による証人尋問等を指すものでございまして、お尋ねの任意捜査とは、このような強制措置を伴わないもの、例えば、同意に基づく被疑者、参考人の取り調べ、犯罪関係箇所の実況見分、公務所または公私の団体に対する照会などが該当するというふうに考えられております。

照屋委員 条約第三条一項一号で言う共助を拒否することができる場合の政治犯罪とは、いかなるものを指すのでしょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 政治犯罪とは、一般に、一国の政治体制の変革を目的とし、あるいはその国家の内外政策に影響を与えることを目的とする行為でありまして、その国の刑罰法規に触れるものとされております。

 他方、特定の犯罪類型を一般的に政治犯罪であるとするのは困難でございまして、具体的に何が政治犯罪であるかについては、個々のケースごとに、犯罪の内容、目的、社会的影響などを総合的に勘案しつつ決めていくことになると考えられます。

照屋委員 日米刑事共助条約第一条三項では、行政機関による犯則調査も相互共助を実施することになっております。条約第一〇号において、行政機関による犯則調査を相互共助に含めなかった理由は何でしょうか。

猪俣政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、日米刑事共助条約第一条三におきましては、他方の締約国の請求に基づいて、一定の条件のもとで、犯罪の疑いのある行為についての行政機関による犯則調査について、同条約の規定に従って共助を実施する旨規定しております。

 これは、日米刑事共助条約の交渉過程におきまして、我が方としては特段の必要性はないと認識していたわけでございますけれども、交渉の結果としまして、米側からの要望もございまして、盛り込まれることになった規定でございます。

 日中刑事共助条約の交渉に当たりまして、我が方としましては、日米刑事共助条約と同様の規定は特段必要ないというふうに考えていたところでございますけれども、中国側からも特段の要望がございませんでしたので、このような規定を設けないこととなった次第でございます。

照屋委員 ブルネイやインドネシアとの間のEPAについても問いただしたいのが多くありますが、時間が足りません。特に、社民党は、インドネシアとのEPAには、看護婦、介護福祉士の受け入れなど無視できない問題があり、結論としては反対せざるを得ないことのみ申し上げておきたいと思います。

 きょうは、十三日に沖縄県北谷町で発生した米憲兵隊による我が国の警察権侵害問題について、何点かお聞きをします。

 去る四月十三日、北谷町美浜の衣料品店で、米海兵隊員の子供二人が窃盗の疑いで現行犯逮捕されました。ところが、沖縄署員が到達前に現場へ駆けつけた憲兵隊員が、容疑少年二人を基地内へ連れ去り、日本の警察権を侵害するという事件が発生したことは、怒りにたえません。

 警察庁に、事件の詳細な内容と見解を伺います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄県警察本部からの報告によれば、事案の概要は次のとおりでございます。

 まず、四月十三日十五時過ぎごろに、沖縄県北谷町にありますある衣料品店内において、店員が外国人少年による万引き事案を認知いたしました。そして、少年が店の外に出たところでこの店員が話しかけましたところ、暴れ出したので、これを取り押さえたということであります。関係少年は三人おりましたけれども、一人は逃走しましたので、店員においてこの少年二人を確保して、一一〇番通報したということでございます。

 その後、沖縄県警察の警察官が到着する前に、米軍の憲兵隊員が到着をいたしまして、少年二人に手錠をかけて、身柄を拘束したということでございます。また、通報を受けた沖縄県警察の警察官は、その後に現場に到着をいたしまして、いまだその現場にいた憲兵隊員に対して、憲兵隊通訳を介して身柄の引き渡しを求めましたが、憲兵隊はこれに応じず、少年二人を基地内に連行したということでございます。

 なお、憲兵隊が連行しました二人につきましては、その後、沖縄県警察におきまして、米軍捜査当局の協力も得て、出頭を求め、四月十四日、十五日の両日にわたって沖縄警察署内で取り調べを行ったというふうに聞いております。

 また、所轄の沖縄警察署におきましては、四月十三日の米軍憲兵隊の対応について、四月十五日に署長名で米憲兵隊司令官あてに文書を発しまして、一つは憲兵隊が本件を認知した経緯、また二つには憲兵隊がとった対応の根拠について文書で回答するよう求めているものというふうに承知をいたしております。

 本件に関する見解ということでございますけれども、現在、沖縄県警察において米軍側に事実関係等を照会しているところでございますので、現時点においてはコメントを差し控えたいというふうに考えております。

照屋委員 外務省に尋ねますが、今回のように日米両国の法律執行員が犯罪の現場にある場合、どのような処理をするというふうに合同委員会合意はなされておりますか。

西宮政府参考人 お尋ねの点でございますが、刑事裁判管轄権に関する合同委員会合意というのがございまして、その八の(一)というのがございまして、「日米両国の法律執行員が犯罪の現場にあって、犯人たる合衆国軍隊の構成員、軍属又はそれらの家族を逮捕する場合には」というくだりがございます。その後に書いてあることは、「合衆国軍隊の法律執行員が逮捕するのを原則とし、この被疑者の身柄はもよりの日本国の警察官公署に連行される。日本国の当局による一応の取調の後、当該被疑者の身柄は原則として引続き合衆国の当局に委ねられるが、当該事件が日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を有する犯罪に係るものである場合には、日米の共同捜査のためいつでも取調の対象となる。」、まだ先がございますけれども。

照屋委員 局長、この日米合同委員会合意にも今回の場合には明確に違反しているんだ。憲兵隊が逮捕の優先権はあっても、その場合、被疑者の身柄は最寄りの日本国の警察署に連行するとなっているでしょう、それを基地内に連行したんだから。

 外務大臣、これは明白な我が国警察権の侵害であり、捜査関係者も、県警をばかにした行為としか言いようがない、こんなことが起きる中で憲兵との共同巡回もできるはずがないと激しく批判しているんだ。大臣の見解を尋ねます。

西宮政府参考人 先ほど申し上げた合同委員会合意がございますけれども、本件がいわゆる共同逮捕と言われている条件に当てはまるかどうか、引き続き事実関係を確認して慎重に判断する必要があると考えています。

 ただ、そもそも、米軍の家族が商店から窃盗をし、現場において沖縄県警と調整がなされずに施設・区域に戻したとされる件でございまして、米軍による施設・区域外の憲兵隊の使用は、米軍の構成員、軍属、家族の間の規律、秩序の維持のための範囲内とするとする日米地位協定及び関連取り決めの関係規定などとの関係で問題があり得るということで、現在、米側に事実関係及び米側としての考え方を照会しているところでございます。

照屋委員 外務省、これは主権国家たる我が国の警察権が侵されているんだ。憲兵隊であれ、悪いことは悪いんだから、もっと毅然と物を言わぬとばかにされるよ。主権が侵害される。

 これと関連して、もう一つびっくりしたのは、去る三月十六日沖縄市で発生したタクシー強盗致傷事件の容疑者である米憲兵隊員のブランソン兵長がきのう書類送検されました。

 警察庁に尋ねますが、かくも重大な犯罪、しかも容疑者は憲兵隊員、これを任意捜査の上、書類送検したのはなぜか、なぜ逮捕しなかったのか、お答えください。

米田政府参考人 それぞれ事件捜査は個別のものでございまして、この事件につきましては任意捜査で足りるという判断を県警察においてなしたものでございます。

照屋委員 捜査中だとか個別事件だとか言い逃れると思っていましたよ。

 この問題で沖縄県警は、憲兵隊員であるブランソン兵長の逮捕状を請求し、起訴前の身柄引き渡しを米軍側に求める方針だったようですが、警察庁の強い意向で書類送検となり、捜査関係者からは強い不満が出ているようであります。警察庁は、なぜこのような政治的配慮をなさったんでしょうか。

米田政府参考人 そのような事実は全くございません。

照屋委員 全くない、まあ恐れ入った答弁だけれども、では、このような場合に、警察庁と地元沖縄県警とは捜査方針をめぐって何らかの調整はなさるんでしょうか。

米田政府参考人 一般に、この種の事件でありますと、すべて都道府県警察において処理されるということになりますが、これは事が米軍関係者ということでございますので、そうしますと、国における日米合同委員会の問題等々になり得ますので、緊密に連絡を図るということになります。

照屋委員 問題は、このブランソン容疑者を任意捜査で取り調べをした。沖縄県警は、任意捜査の期間中、ブランソン容疑者を基地内の拘禁施設、隔離施設に拘禁するよう米軍側に口頭で求めたようですが、それは事実でしょうか。

米田政府参考人 沖縄県警察において、証拠隠滅のおそれということもございますので、当該米兵の拘禁の申し入れを行って、そして、米側からは善処するとの回答を受けたと承知しております。

照屋委員 沖縄県警が身柄を確保している米側に対して、任意捜査であってもちゃんと容疑者を隔離施設、拘禁施設で拘束してほしい、こう要請したのに、ブランソン容疑者は基地内で一定程度自由に行動できる状態にあったと言われております。

 要するに、拘束していないんです。このようなことは過去に何回も起こっているんです。その結果、これは共犯がおりますから、関係者がおりますから、口裏を合わせて証拠隠滅を図る。過去にもそのことが起こっているんです。

 私は、これは日本の警察権、捜査権を無視して、明らかに証拠隠滅を図るようなものだと思いますが、警察庁の見解をお聞かせください。

米田政府参考人 この事件につきましては、当該米兵の任意取り調べを初め、米軍側からは大きな協力を得て進めているところでございまして、御指摘のようなことは当たらないと考えております。

照屋委員 高村大臣、今のやりとりを聞いておられたと思いますが、要するに、強制捜査をして、我が国が逮捕していない段階とはいえ、任意捜査を続けている。ところが、その容疑者が、基地内で一定程度の自由は拘束されても、行動に制限があるわけではない。このことは、何年か前に、宜野湾市でしたか、起こった事件でも、司法の場でも、裁判所でも強く批判をされたんだ。

 要するに、米側が拘束をしていないために共犯者同士口裏を合わせて証拠隠滅を図った、そのことが結果として我が国の捜査権にも悪影響を及ぼし、司法にも影響を与えている。こういう問題がきのうまた繰り返されている。大臣はどのようにお感じになっているでしょうか。

高村国務大臣 警察庁の方から答弁されたとおりだと思いますが、アメリカ側が善処すると言っていることは善処してもらいたい、こういうふうに思いますし、さきの万引きの件については、今事実関係を照会中であるということでありますから現時点で断定的なことは申し上げられませんが、大いに問題があり得る、こう思っておりますので、その照会を得た上で、我々も考えて、それなりの対応をしていきたい、こう思っています。

照屋委員 高村大臣がおっしゃるように、大いに問題がある。主権国家の警察権の行使が非常に妨害をされている。警察庁も、お願いだからもっと毅然としてくださいよ。この国の主権のためにお願いします。

 終わります。

平沢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平沢委員長 次回は、来る十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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