衆議院

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第15号 平成20年5月21日(水曜日)

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平成二十年五月二十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 谷口 和史君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      丹羽 秀樹君    御法川信英君

      山内 康一君    若宮 健嗣君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      野田 佳彦君    鉢呂 吉雄君

      松原  仁君    上田  勇君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   総務大臣政務官      二之湯 智君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鎌形 浩史君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原田 正司君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           岡山  淳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎  純君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           林田 直樹君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局食糧部長)         奥原 正明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           佐々木伸彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        北川 慎介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           西阪  昇君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         金子 節志君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     川条 志嘉君

  伊藤信太郎君     木原 誠二君

  木村 隆秀君     丹羽 秀樹君

  山口 泰明君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     愛知 和男君

  木原 誠二君     伊藤信太郎君

  丹羽 秀樹君     木村 隆秀君

  若宮 健嗣君     山口 泰明君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(亀井静香君紹介)(第三二〇〇号)

 同(中川秀直君紹介)(第三二〇一号)

 同(増原義剛君紹介)(第三二〇二号)

 同(松本大輔君紹介)(第三二〇三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第五号)

 包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官松富重夫君、大臣官房審議官草賀純男君、大臣官房審議官小田克起君、大臣官房参事官石川和秀君、大臣官房参事官山崎純君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長西宮伸一君、内閣官房内閣参事官鎌形浩史君、消防庁国民保護・防災部長岡山淳君、資源エネルギー庁資源・燃料部長北川慎介君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、経理装備局長長岡憲宗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠井亮君。

笠井委員 おはようございます。日本共産党の笠井亮です。

 先週十四日の質問に続きまして、中国四川省で起きました大地震について質問したいと思います。

 中国政府の発表によれば、昨日二十日現在で、四川大地震で亡くなられた方はこれまでに四万七十五人ということであります。負傷者は二十四万七千六百四十五人に上っている。地震発生から一週間以上がたちまして、生存者の救出活動は厳しさを増してきている。被災地では、依然として余震が続いて、土砂崩れや土石流など、二次災害が発生する危険も強く指摘をされております。

 去る十五日に我が党の志位和夫委員長が中国大使館に崔天凱大使を訪ねまして、地震災害に対するお見舞いを伝えた際に、崔大使の方からも、日本の国際緊急援助隊の派遣がその時点で決まって、こうした日本政府の支援に感謝するという表明とともに、地震災害救援で緊急に必要な第一次の物資リストというのが届けられました。

 ここに私もその時点でのリストというのを手にしておりますけれども、多岐にわたるもので、薬品や医療機器などの医薬用品、救助工具や通信設備などの捜索、救援装備など、全二十五項目の緊急物資が列記をされておりました。外務省も既にもうその時点で内容は承知されて、当然政府間でやられていると思うんです。

 そこで、まず高村大臣に伺いますが、こうした中国側の要請を受けて、日本政府としてどのような検討と協議を行って、どのような緊急援助をこれまでに実施されているか、報告をいただきたいと思います。お願いいたします。

小野寺副大臣 十二日に中国四川省におきまして大規模な地震が発生した後に、相当の被害が予想されたことから、地震発生の翌日であります十三日、中国への当面の支援として、日本政府として、五億円相当の緊急援助物資及び無償資金協力の供与を決定いたしました。

 具体的には、まず、六千万円相当の緊急援助物資としまして、中国側の要望を踏まえて、テント、スリーピングマット、毛布、発電機、コードリール、簡易水槽、浄水器、ポリタンク、プラスチックシートを供与することとしました。これらについては、既に十八日までに成都に輸送し、被害地に届けられております。十七日には、被災地の視察から北京に戻った温家宝総理が、被災地で最も必要とされている物資であるとして、血液透析器材等やテントについての強い要望がありました。そのため、十八日、約二億円相当の無償資金協力の一環として、血液透析器材、テント、浄水器、医薬品等を調達するための資金供与を決定いたしました。血液透析器材五十台については、十八日から十九日にかけて、被災地、成都ですが、輸送いたしました。

 このように、中国側への資金供与や緊急援助物資の供与については、中国側の要望を踏まえながら、中国側と協議の上で、しかるべく決定してきているところであります。

笠井委員 さきの日中首脳会談で合意をした戦略的互恵関係の包括的推進を明記した共同声明、これは非常に重要なもので、我が党は歓迎いたしております。我が党の志位委員長が、来日した胡錦濤主席との会談で、そのことも表明したところであります。やはり、その推進を図る上でも、隣国として大いに役割を果たすということで、今回の災害に対する、大地震に対するこの間の日本政府の対応を評価したいと思います。我が党も、募金を呼びかけるなどで、できるだけの努力をしているところであります。

 そういう中でありますが、予定ではけさほどだと思うんですが、帰国をした日本の国際緊急援助隊の救援チームの活動は現地でも高い評価を受けた。中国の新聞、マスコミでも、日本の緊急援助隊は経験が豊富で、先進的な機器や災害救助犬を駆使するなど高い技術を持っていると紹介をいたしております。また、こうした報道を見た一般の中国の方々からは、北京の日本大使館や各地の総領事館に感謝や期待の気持ちをあらわす電話その他が相次いだと伺っております。

 そこで、外務省の団長を初めとして、警察庁、海上保安庁などで構成するこの国際緊急援助隊の主力として国際消防救助隊、これを派遣した消防庁に伺いますけれども、実際に被災地で救助活動に当たった感想といいますか、所見はどういうものでしょうか。そして、今後も、救助技術の先進国としての蓄積を生かして、またこれから二次災害を含めていろいろあり得るということでありますけれども、中国政府の要請があれば現地に赴く用意はあるのかどうか、その点について答弁願いたいと思います。

岡山政府参考人 お答えいたします。

 お話のございました国際消防救助隊、この隊員十七名を初めといたします国際緊急援助隊は、強い余震が続きます厳しい状況のもとで、昼夜を分かたず懸命の救出活動に全力を尽くし、彼らの献身的な活躍は中国国民にも感謝の念を持って受け入れられたものと思っております。隊員の皆様の奮闘に、心から敬意を表するところでございます。

 この国際消防救助隊の制度は、海外での地震など大規模災害への救助活動に資することを目的といたしまして、総務省消防庁、当時は自治省消防庁でございましたけれども、これが昭和六十一年に発足をさせたものでございまして、現在、六十二の消防本部から五百九十九名が隊員として登録をされております。翌昭和六十二年に国際緊急援助隊の派遣に関する法律が成立をいたしましたので、それ以降は、関係各省庁等で構成をいたします国際緊急援助隊救助チームの中核として、海外の災害現場で高度な資機材や技術を活用して捜索救助を行ってまいりました。今回で十六回目の派遣となります。

 国際消防救助隊は、捜索救助のプロとして、その豊富な経験と技術、知識を駆使し、海外の災害現場で人命救助を行うという、困難かつ崇高な任務に当たってまいりました。こうした国際緊急援助活動は、国際社会に対します我が国の顔が見える重要な人的貢献の一つとして、これまでも国内外で高い評価を得ております。

 総務省消防庁といたしましても、今後も、要請がございますれば、いつでも国際緊急援助隊の救助チームとして国際消防救助隊を派遣いたしまして、海外の被災地において果敢に人命救助、救援活動を行ってまいる所存でございます。

笠井委員 引き続き、頑張ってもらいたいと思います。

 現地の状況は、今まさに緊急を要する切実な声が上がっております。我が党も、しんぶん赤旗の北京支局も、十九日に大きな被害を受けた都江堰市に入って、現地も取材いたしました。

 今回の大地震で母親を亡くした女性は、親族には八十代が二人、六十代が六人、避難所では毎日一人当たり水三本、カップめん三個をくれるが、老人たちはもうカップめんがのどを通らない、年寄りが食べられるものが欲しいと訴えていたといいます。都江堰市内の経済開発区では、路上にテント村を設けて被災者を収容しており、四千人が避難をしている、現在同区ではプレハブの仮設住宅を建設中だが、現地の担当者は、被災者の健康状態はそれほど悪くないが、心配なのは薬だ、ボランティアの人が持ってきてくれたものに頼っているけれども、いつまで続くか心配だと語っていたということであります。

 このように、現地では切実な声が上がっております。けさのニュースでも、家を失って避難生活を強いられている被災者が五百万人を超えて、テント、仮設住宅が不足しているということが報じられておりました。

 そこで、高村大臣、これまでやってきたということで、努力をされてきたということだと思うんですが、日本政府として、引き続き中国政府の要請があれば援助物資を要請に応じて協議もしながら送るという考え、用意はございますでしょうか、いかがですか。

高村国務大臣 今、日を追うごとに被害の拡大が確認されておりまして、委員もさっきおっしゃったように、死者は四万人を超えて、負傷者が二十五万人近くに達しております。

 我が国としては、地震発生直後に五億円相当の緊急援助物資及び緊急無償資金協力の供与を決定して、既に一部実施しているということでございます。また、中国側の要請を受けて、国際緊急援助隊の派遣も行っており、十六日から被災地で捜索救助活動を行ってきた救助チームがけさ帰国した一方、昨晩、医療チームを現地に派遣したところでございます。

 日本政府としては、深刻な被災地の状況を踏まえて、中国政府からの追加支援の要請があれば、今後の被害の状況やニーズに応じていかなる支援が可能かどうか、積極的に検討していきたいと考えております。

笠井委員 ぜひ積極的に検討して、具体化をしていただきたいと思います。

 今、四川省では、避難所や仮設テントで避難している数は本当に五百万を超えるという形で、時折気温が三十度前後にまで上がる中で、被災者らは避難所や仮設テントで苦しい生活を余儀なくされている、衛生状態の悪化に伴って感染症が発生することも懸念をされて、消毒や医療体制の強化等の対策が急がれているということであります。

 今、大臣からもありました。これは外務省で結構ですが、日本政府は昨日、国際緊急援助隊の医療チームを現地に派遣して、きょうから活動を開始するということでありますが、その主な任務はどういうことなのか、そして派遣期間はどれぐらいを今予定して派遣されているのか、お答えください。

小田政府参考人 御説明いたします。

 今回派遣されました医療チームでございますけれども、外科、内科、小児科を専門とする医師、それから看護師、薬剤師、また臨床検査やレントゲンを扱う技師などの専門家から構成されておりまして、地震直後の被災者の外傷や整形外科、それから時間的経過に伴う感染症等、広く対応が可能なチームとなっております。

 この医療チームですが、野外テントを設営しまして外部診療を行うことを想定しておりますけれども、可能な限り多くの地域の患者を診療するためにコンパクトな医療器材等も携行しておりまして、小規模での巡回診療を行う体制も整えております。

 派遣期間でございますが、今のところ約二週間というのを一つのめどとしております。

笠井委員 派遣期間は二週間ということですが、もちろんこれは現地の状況を踏まえつつ、派遣期間についてはもちろん柔軟に対応していく、そういうことでよろしいんですよね。

小田政府参考人 派遣期間については、柔軟に対応していきたいというふうに考えております。

笠井委員 現地で現実に深刻な事態が進行している中ですので、ぜひそういう点では、被災者の基本的生活を保障するためにということで、そうした活動を含めて、物資、負傷者の治療の支援など、日本政府として最大限の支援を重ねて要望しておきたいと思います。

 また、現在は人命救助優先、そしてまず緊急のということでありますけれども、今回の震災で住居を奪われた被災者からは、食事、水、トイレを提供してくれた中国政府には感謝している、でも早く家が欲しい、テントでは雨が降れば雨漏りするということで、住宅への切実な要望が出されていると聞いております。

 本格的な復興には、これからさらに数カ月あるいは数年単位を要することになってくるんだろうと思うんです。そういう点では、地震多発国としての我が国の技術あるいは経験、知識の蓄積を生かして、この復興に至るプロセスでも、日本の、あるいは日本ならではのノウハウを生かした、それに基づく支援を行っていくというのが当然必要になってくると思うんですが、大臣、そういう点では、大きな意味での四川省の大地震に対する日本の今後のかかわり方といいますか、支援の方向ということについて、大きな点でいかがお考えでしょうか。

高村国務大臣 中国政府は、今般の震災発生を受けて、温家宝総理をトップとする対策本部を設置して、我が国を含む諸外国、国際機関からの支援も受けながら、人命救助や負傷者の治療等の災害救助に全力で取り組んでいると承知をしております。

 日本政府としては、引き続き、被災地の状況も踏まえつつ、こうした緊急援助の面でできるだけの対応をしていきたいと考えております。

 被害を受けた地域のその後の中長期的な観点からの復興事業でありますが、その被災規模の大きさからして膨大なものとなると予想されますが、中国側の考えを踏まえつつ、我が国としても適切に対応していきたいと考えております。まず中国側がどういう復興計画を立てるか、そういう考えを聞きながら、日本としてできるところは協力していきたい、こう思っております。

笠井委員 大震災という点では、日本もたくさんの経験があると思うんです。私自身も、阪神大震災あるいは中越大震災で現地のボランティアへ行って活動したことがありました。やはり本当に被災地の現実というのは大変で、そういう中でもう政府、国民挙げてということで、全力で救援あるいは復興ということでやってきた、そういう経験をやはり我々日本国民あるいは日本政府自身が持っているということだと思います。

 今大臣言われましたけれども、当然、当事国である中国自身の意向や要望あるいは考えていることを踏まえてかかわっていくということになっていくと思うんですが、日中首脳会談で合意した戦略的互恵関係の推進、こういう大きなやはり共同の方向があるわけですので、その推進を図る上でも、今回の災害で隣国日本の果たす役割は極めて大きいと思うんです。

 ぜひとも日本政府、頑張っていただきたいと思いますし、国民的にもこの問題では本当に、いろいろな立場はありますが、それを超えて努力をし、そして支援をするということが大事だというふうに思っております。このことを強調して、質問を終わりたいと思います。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 去る五月七日の当委員会における質問に引き続き、私は、四月七日に浦添市で発見された化学兵器の可能性のある米国製M57砲弾二十二発の問題について質問をします。

 無事回収作業は終わりました。現在、沖縄県の不発弾保管庫に移送され、保管をされております。

 ところで、今回の砲弾処理は、従来自衛隊が行っている不発弾処理とかなり異なるやり方が行われておりまして、重要だと思いますので尋ねますが、今回発見された化学兵器の可能性のある米国製M57砲弾二十二発は、いわゆる不発弾か、それとも遺棄弾か、どちらでしょうか。また、不発弾と遺棄弾は具体的にどのように区別されるのでしょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生、今、不発弾それから遺棄弾ということをおっしゃられましたけれども、私どもといたしまして、これらの用語につきまして特に厳格な定義があるわけではないというふうに考えておるところでございます。

 したがって、一般論ということで申し上げさせていただきますけれども、不発弾といいますと、信管、すなわち起爆装置をつけまして、安全装置を解除した上で発射あるいは投下されたけれども結果として爆発はしなかった、こういうものをいうというふうに考えております。

 他方、遺棄弾といいますと、これも一般論ではございますけれども、発射されたり、あるいは投下されたということはなくて、単にそのままある特定の場所に残された、置かれたもの、あるいは捨てられたようなものをいうというふうに考えておるところでございます。

照屋委員 厳密な定義はないということでしたが、マスコミ的にも、それから私自身が不発弾と呼べばいいのか遺棄弾と言うべきか非常に迷っておりましたので、あえて尋ねることにしました。

 ところで、前回の委員会における答弁によりますと、自衛隊としての不発弾処理一般の体制、手続などのマニュアルがあるとのことでした。今回の砲弾処理は、そのマニュアルに基づいて行ったのでしょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 通常弾であります不発弾の場合には、通常ですと、その発見者が警察に通報をいたしまして、警察から陸上自衛隊に対して処理の要請がなされて、それから陸上自衛隊の方で市町村、警察あるいは消防などの関係機関と協力いたしまして信管除去などの処理に当たるというふうになっておるわけでございます。

 先般私どもの方から申し上げましたのは、こうした不発弾処理一般につきまして、不発弾の処理、回収なり、あるいは避難区域、そういうものを設ける場合の警戒でありますとか、それから周辺住民等との関係でのいろいろな市町村の役割分担というようなことについて申し上げたわけでございます。

 他方で、今回見つかりましたアメリカ製の砲弾、これは先般も申し上げましたとおり、これが発煙弾であるのか、あるいは化学弾であるのか、これは現在のところわかっておらないわけでございます。

 それで、仮に化学剤が中に入っているものであるというふうに考えますと、これは通常のいわゆる火薬を使います爆弾と違いまして、この処理に極めて特殊な方法を用いるわけでございますので、まさに自衛隊法の附則の第四項に基づく不発弾等の除去あるいは処理といったことにはなじまないものと考えております。

 これにつきましては、先般、内閣官房を中心に関係省庁で協議を経た上で、当面の緊急措置といたしまして、御案内のとおりの沖縄県の一時保管庫までの移送を行った、こういうものでございます。

照屋委員 今の答弁を聞いて私の疑問も晴れましたが、今回発見された砲弾については化学弾の可能性を排除できない、こういう答弁が前回委員会でもありました。

 砲弾発見から回収、保管庫への移送まで約一カ月という長期を要した理由には、今回の砲弾が化学弾の可能性を排除できない、そういうところにどうやら大きな理由があったのではないかと私は思いますが、この通常の不発弾処理にある通報連絡体制のマニュアルが化学弾ではあるのかないのか、沖縄では初めて化学弾の可能性のある砲弾が見つかったのか、そこら辺をお答えください。

鎌形政府参考人 お答え申します。

 化学弾についての御質問でございますけれども、今回のケースとは異なりますけれども、旧日本軍が残した化学弾の処理については、平成十五年十二月に「国内における毒ガス弾等に関する今後の対応方針について」という閣議決定がございます。この閣議決定に従って、毒ガス弾等による被害の未然防止の観点から、今後講ずべき施策や各省庁の事務分担等を明らかにして、国内における毒ガス弾等の問題への迅速な対応を図ることとしているところでございます。

 この中では、陸域で毒ガス弾等が発見された場合には環境省が、あるいは国有地または直轄事業実施地については当該国有地管理省庁または当該事業実施省庁が、防衛省と協力して、警察庁、消防庁と連携しつつ、掘削、運搬、保管、処理等を行う、こういうようなことになっているということでございます。

 以上が、旧軍の残した化学弾の処理についての現行の取り決めということでございます。

照屋委員 外務省に尋ねますが、今回発見された砲弾は米国製、一九四三年につくられたM57迫撃砲弾であることが外観上は確認されたようですが、外務省がアメリカに照会した、アメリカの統合不発弾処理支援チームへの照会結果はどうなったでしょうか。

西宮政府参考人 当該砲弾につきましては、米側と緊密に連絡をとっておりまして、御指摘のとおり、統合不発弾処理チームに対しまして砲弾の特定に必要な情報の収集などの対応を行っているところでございます。

 つい昨今も、一週間ぐらい前だったと思いますけれども連絡をいたしまして、彼らの引き続きの協力を要請しておるところであります。

 米側は、住民の安全が最優先事項であるということ、当該砲弾の確認のために協力する考えであるということを言っておりまして、引き続きまして、外務省といたしましては、関係省庁とも連携しつつ、米側と連携して適切に処理されるように対応していく考えでございます。

照屋委員 今回の砲弾回収、移送に当たり、周辺住民への避難措置等は全くとられておりません。移送ルートも公表しておりませんでした。

 その理由として、防衛省は、信管が作動状態にないことから、爆発する危険性がないとの説明でしたが、それにもかかわらず、今回、処理費用として五百万円の保険料を支払っているのはなぜでしょうか。

長岡政府参考人 お尋ねの砲弾でございます。腐食がありますものの、外部に液体が露出とか漏出するような状態ではございませんで、砲弾の外部からは有毒物質が確認されておらず、周辺、周囲への影響は出ていなかったということでございます。

 ただ、その外形、カタログ等からは、通常弾の可能性もある一方、先ほどから御指摘いただいておりますように、化学弾であるとの可能性も排除できなかったということでございます。そのままの状態で移送することをいたしませんで、密閉容器に収納した上で、より安全な場所に移送、保管することとしたところでございます。これは先生御案内のとおりでございます。

 そのような状況でございましたので、収納や移送等に際しまして、不慮の事故等により、作業に従事する関係者、第三者に損害を与えたような場合に対応するため、保険加入に要する経費といたしまして、五百万円を計上いたしたところでございます。

照屋委員 最後に、今回発見された砲弾は、一時的、暫定的に沖縄県の保管庫に移したと理解をしております。日米どちらが不発弾処理を行うかが決まった時点で、どのような手続を経て処理されるんでしょうか。また、発見された砲弾の処理責任は、何を根拠に決まるのでしょうか。処理責任者が決まらない場合に、一時保管が永久に続くのかどうか、明確にお答えください。

鎌形政府参考人 今回、浦添市で発見された米軍の化学弾の疑いのある砲弾の処理についてのお尋ねでございますけれども、今回発見された砲弾につきましては、現地の海兵隊の調査などによりまして、米国製の砲弾であるということは確認されておりますけれども、先ほどからも御指摘のとおり、現時点では、化学兵器であるとは確認されていないというものでございます。

 今後とも、米国と緊密に連絡、連携をとり合って、砲弾の識別、どういう砲弾であるのかということの作業を行った上で、その上で、どのような処理をするかというのを関係省庁と相談して判断していくことになろうかと思います。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 おはようございます。公明党の谷口和史でございます。

 まず最初に、先ほども御質問がありましたけれども、中国の四川の地震についてお伺いをしたいと思います。

 もう死者が、亡くなられた方が四万人を超して、いまだに不明な方、不明者も三万人いるということで、大変な被害になっているわけであります。そういう中で、日本の緊急援助隊が現地に入って救助活動をしてきたわけでありますけれども、このことについては、中国政府も大変評価をされておりますし、また報道によると、日本に対する感謝の気持ち、または高い評価がネット上でも多く見られるようであります。

 そういう意味で、今回の日本の援助を大変評価するところでありますけれども、ただ、やはりいろいろな事情があったかと思いますけれども、せっかく現地まで入られた援助隊の方々が、結果的には、残念ながら生存者を発見できなかったという中で撤退をされました。

 報道等によりますと、最初に成都に入ってから、現地に行くまで四百キロを超える移動をしなきゃいけなかった、結局、目的地に着いたのは、前日の夜、未明に着いて、翌朝九時過ぎ、また、入った現場も、がけ崩れで百世帯以上のところがのみ込まれた、そういうようなところで、どちらかというと都市災害に能力を発揮する今回の援助隊の人たちにとっては想定し得ないところであったということも伝えられております。

 そのことを踏まえて、相手国の主権の問題もあって、さまざま難しい問題もあるんでしょうけれども、せっかく現場に入った国際緊急援助隊が効率よく作業ができ、それからできる限り実績を上げられる、こういうことをしっかりこれから取り組んでいくべきだというふうに思います。

 そういう意味で、今回の援助隊の派遣の総括も含めて、いかに援助隊が効率よく作業をし、できる限り実績を上げていく、そういう面での御見解をお伺いしておきたいと思います。

高村国務大臣 今次国際緊急援助隊救助チームは、中国からの要請を受けて約六時間後には、救助チームが本邦を出発いたしました。海外の救助チームとして最初に被災地に入りました。

 今回の活動では、残念ながら生存者の救出には至りませんでしたが、隊員たちは、活動時間及び活動場所が限られている中で、その高い技術と経験を生かし、昼夜を分かたず捜索救助活動に携わり、中国政府、国民より多大なる感謝の意が表明されているところでございます。

 今回の経験からは、被災現場における迅速かつ効果的な活動には、適切な活動場所の確保が重要であることを改めて認識しました。今後は、情報収集の一層の強化及び被災国政府との緊密な連携を図り、さらに効果的な活動の実現に向け、努力してまいる所存でございます。

 端的に言えば、もっと早く受け入れてもらえればもっとよかったということは言えるかと思います。それから、適切な活動場所の確保、このことが重要だ、そういうふうに思っております。

谷口(和)委員 さまざまな事情があって、今回なかなか生存者を見つけることが難しかったということも理解できますけれども、今後、想定し得ないこういう大きな災害が起こった直後はさまざまな混乱があるとは思いますけれども、援助について、ぜひ効果が上げられる、実績が上げられる、そういう準備を日ごろからお願いをしたいというふうに思います。

 続いて、来週から横浜で行われるわけでありますけれども、TICAD4についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 このTICADについては、九三年に日本が初めて開催をした1から始まっております。この九三年当時を振り返ると、欧米諸国がどちらかというとアフリカへの援助に対してちょっと援助疲れというか、そういう面もあった中で、日本が主導権を、リーダーシップを発揮して、これをスタートさせたわけであります。そういう意味で大きな役割を果たしたというふうに思っております。

 その次の九八年の2では、開発におけるアフリカのオーナーシップ、それから国際的なパートナーシップを定式化させた点で注目を集めました。

 それから、二〇〇三年の3では、アフリカ統一機構が打ち出したアフリカ開発のための新パートナーシップ、これに対する具体的な協力体制を構築する、こういう面で大きな貢献を果たしてきたというふうに思います。

 そういう意味で、TICADが果たしてきた役割というのは大変大きなものがあったというふうに思いますけれども、ただ、その一方で、現在、中には、TICADの役割は終わったのではないかとか、新しい日本とアフリカとの関係を構築していくべきではないかという声も上がっていることも事実であります。

 まず最初に、大臣にこれまでの三回のTICADの総括、どういうふうに総括されているのか、お伺いをしたいというふうに思います。

高村国務大臣 我が国が、アフリカ諸国だけでなくて、ドナー諸国及び国際機関、アジア諸国、NGO等の市民社会にも広く参加を呼びかけてTICADプロセスを開始したのは、おっしゃるように一九九三年でございます。

 TICADは、冷戦終結後の、当時低下していたアフリカ開発に対する国際社会の関心を再喚起する役割を果たし、アフリカ開発は、今日、国際社会で共通の課題となり、認識されるようになりました。そのための一定の役割を果たしてきたと思っております。

 また、TICADは、アフリカ開発におけるアフリカ諸国自身の自主性、オーナーシップと、国際社会によるパートナーシップの重要性を国際社会に浸透させました。援助コミュニティーにおいて、オーナーシップ、パートナーシップというのはTICADプロセスとともに定着してきた言葉である、こういうふうに思っております。

 さらに、TICADプロセスは、日本とアジア諸国との協力に基づくアジアの開発経験をアフリカ開発にも活用するとの観点から、アジア・アフリカ協力を推進しており、パートナーシップの拡大についても成功をいたしました。

 アジアが発展して、アジアの国々の中でアフリカを助ける国が出てきた。これからは、そのアフリカの中からほかのおくれているアフリカを助ける国が出てきてくれても大変いいことではないか、こういうふうに思っております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 今の総括をいただいた上で、来週からの4でどういう前進を図っていかれるのか、そのことをお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 五月二十八日から開催されるTICAD4では、近年のアフリカにおける政治、経済両面での前向きな変化を後押しするため、「元気なアフリカを目指して」との基本メッセージのもと、成長の加速化、人間の安全保障の確立、環境・気候変動問題への対処、この三点を重点項目として、アフリカ開発のために我が国を含む国際社会の知恵と資金を結集したい、こう考えております。

 具体的な成果をまとめたものとして、以下の文書を取りまとめることを想定しております。

 横浜宣言によって今後のアフリカ開発の取り組み、方向性に関する政治的意思を表明し、横浜行動計画において今後五年間にとられる具体的取り組みを、TICADフォローアップ・メカニズムの設置によって、TICADの貢献策、イニシアチブの着実なフォローを行う枠組みを構築することを目指します。また、TICAD4の議論の成果を集約する議長サマリーを作成する予定でございます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 では、大臣、もうそろそろお時間でしょうから、どうぞ。

 TICAD4が来週行われて、そして七月の洞爺湖サミットへ、こういう流れになっているわけでありますけれども、TICADとサミットが日本で同じ年に行われるというのは本当にまれな、まれなというか、五年に一回と八年に一回ですから、大変貴重なチャンスであるというふうに思っております。

 そういう意味で、アフリカは、恐らくこのTICADで出てきたさまざまな結果をぜひこのサミットの場で、アフリカに対するさまざまな支援、これをG8のほかの先進国にしっかりと伝えてもらいたい、こういう思いがあるというふうに思います。

 特に、国連のミレニアム開発目標、これが二〇一五年がゴールでありまして、ちょうどことしが真ん中の年になるわけでありますけれども、特にサブサハラの地域においてこのミレニアム目標の達成が危ぶまれている、こういう見方も多く出ております。

 そういう意味で、この洞爺湖サミットでミレニアム開発目標、これの達成に向けての強力な働きかけをほかの先進国にもしてほしいというのがアフリカの声ではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点について外務省の見解をお伺いしたいと思います。

小野寺副大臣 御指摘がありましたように、二〇一五年を期限としますMDGs達成に向けた中間年にことしは当たります。TICAD4やG8北海道洞爺湖サミットにおいても、MDGsを初めとする開発課題につきまして踏み込んだ議論を行う予定にしております。

 TICAD4においては、成長の加速化、人間の安全保障の確立及び環境・気候変動問題への対処を重点事項としており、そのもとで、アフリカにおけるMDGs達成の方法について、アフリカ諸国や国際機関の代表らと幅広く議論を行います。

 北海道洞爺湖サミットでは、TICAD4の成果をG8の首脳と共有し、また人間の安全保障の観点から、特に保健、水、教育に焦点を当てて、MDGs達成に向けた力強いメッセージを出したいと考えております。

 政府としては、両会議を通じ、MDGsの開発課題につきまして国際社会と協力して積極的なメッセージを発信すべく、一丸となって取り組む所存でございます。

谷口(和)委員 ぜひ、強力にお願いをしたいというふうに思います。

 TICAD関係で、少し論点がかわりますけれども、ネリカ米というのがございます。アフリカの貧困の問題をどうやって改善していくか、解決していくか。これについては、やはり農業というのが大きなかぎになるだろう。農村人口が七割を超えておりますので、やはり農業生産の向上というのが大きなかぎになる、こういうふうに思っております。

 そういう中で、日本が主導してこのネリカ米という米を開発しました。アフリカの食の安全保障という意味からも、貧困改善という意味からも、このネリカ米というのは大きな役割を果たしていくだろうというふうに思っております。

 日本が主導して開発をやってきたわけでありますけれども、今後、このネリカ米をぜひとも日本の手で普及の拡大を図っていっていただきたい、こういうふうに思っておりますけれども、外務省の見解をお伺いしたいと思います。

小野寺副大臣 近年、アフリカでは米の消費が大きく伸びており、域内での生産が追いつかず、輸入が増加しております。このため、稲作の振興はアフリカにおける食料安全保障や貧困農民の所得向上につながることが期待をされております。

 我が国は、九〇年代より、関係国際機関と協力しつつ、陸稲を中心としましたネリカ米の開発に協力し、その後もJICA等を通じてその普及に努力してまいりました。その結果、ウガンダ等では一定の成果が上がっておりますが、ネリカ米の普及にはまだ多くの課題がございます。

 我が国としては、これまでの経験を生かして、ネリカ米を含む稲作分野での支援を行うとともに、人材育成、かんがい等のインフラ整備、品質管理等を通じた市場アクセスの向上など、アフリカにおける食料増産及び農業生産の向上に必要な幅広い分野での各国の努力を支援していく方針であります。

谷口(和)委員 ぜひ、この点についても全力を挙げていただきたいというふうに思います。

 TICAD4で、最後の質問でありますけれども、きのう発表があったかと思いますけれども、アフリカに対するODAを今後五年間で倍増する決定をしたというふうに伺っておりますが、この点について、今後の取り組みも含めてお伺いしておきたいというふうに思います。

小田政府参考人 御説明いたします。

 TICAD4に向けまして、アフリカ向けODAを増大させ、二〇一二年に日本の対アフリカODAを倍増するということにいたしました。

 具体的には、無償資金協力、技術協力、それから円借款などによりまして、道路網を中心とした広域インフラの整備、四十万人の子供の命を救い、妊産婦のケアを改善する母子保健協力の拡充、また、米倍増を含む農業生産性の向上、安全な飲料水の提供、こういった分野を中心に支援をしていきたいというふうに考えております。

谷口(和)委員 ODAを伸ばすことは大変すばらしいことだと思うんですが、一方で、その中身について、一気に予算がふえたことによってあいまいになる部分もあるという指摘も中にはありますので、しっかりと運用面もやっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっと論点を変えまして、原油高騰についてお伺いしていきたいというふうに思います。

 先日、一バレル百二十七ドルを突破したということで、まず最初に経産省に、直近の動きではなくて、これまでの原油の高騰の背景について改めて確認をさせていただきたいというふうに思います。

 これについては、実需の面、それから産出のコスト、それからまた投機等によるプレミアムの部分、さまざまな側面があると思いますけれども、その点についてまずお伺いします。

北川政府参考人 御説明申し上げます。

 今般の原油高騰につきましては、さまざまな要因が複合的に重なったものと考えてございます。

 初めに、需給面でございます。

 需給につきましては、特に中国あるいはインド、こういった新興国の需要が急増する、こういう中で、一方でコスト高などによります上流開発投資がなかなか進まないということで供給が伸びない、このように需給が基本的にタイト化している、こういう実態がございます。

 それから、価格に影響する要因といたしまして、イラクあるいはナイジェリア、こういった産油国におけるいろいろな政情不安が価格上昇の一因となることもございます。

 さらに、このような需給動向、それから将来の先高感、こういったものを背景といたしまして、金融市場から二つの資金が流れてきていると考えてございます。

 一つは、長期的なリターンをねらった資産運用、これを目的としました投資の資金、年金基金の長期運用、こういった非常に大きなお金が流れ込んできている、これが株や債券のみならず、リスク分散という観点から商品投資へ入ってきているのではないかという点。

 第二は、投機的な資金でございます。ヘッジファンドなど、これが先高だ、すぐ上がるだろう、こういうことで短期的な利ざやをねらって入ってきている、こういう点もあると考えております。

 こういうような複合的な要因が相まって、委員御指摘のような大変な高騰につながっていると考えてございます。

 以上でございます。

谷口(和)委員 今、高騰の原因について、複合的な要因が絡み合っているという御説明がありました。経産省にお伺いしたいと思いますけれども、その中で、政府として、高騰を抑えるためにどういう対策をとってきているのか、その点をお伺いしたいと思います。

北川政府参考人 御説明申し上げます。

 今申し上げましたようなさまざまな要因についてでございますが、一つは、まず需給の側面でございます。

 これは、ダボス会議あるいは産油国、消費国の対話を念頭に置きました国際エネルギーフォーラム、こういった国際会議におきまして、あるいはまた産油国とのバイ会談、こういったところにおきまして、甘利経済産業大臣より、ファンダメンタルズの改善あるいは相互の信頼関係の構築、こういった取り組み強化を産油国、消費国双方に訴えかけてきているところでございます。直近で申し上げれば、四月のローマにおきます国際エネルギーフォーラム、これは甘利大臣から、消費国も産油国も同じ一つの船に乗っている、こういった連携を呼びかけることを行いまして、その必要性につきまして参加国から賛同を得たところでございます。

 次に、このような呼びかけ以外に、金融的側面についてでございます。

 なかなか難しい問題でございますけれども、市場の透明性の確保という観点から、今の原油市場に何が起こっているのか、あるいは投機はどのような影響を与えているのか、さまざまな意見はございます。これにつきまして、甘利大臣の提唱によりまして、国際エネルギー機関、IEAにおきまして専門家会合を行う、これは三月に行いましたけれども、それを踏まえたIEAの調査も現に行われてございます。

 今後とも、六月に青森で開催されます五カ国エネルギー大臣会合あるいはG8プラス三カ国のエネルギー大臣会合、こういった場を活用しながら、国際的な連携を図り、原油市場の安定に向けていろいろ全力で取り組んでまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

谷口(和)委員 今御説明いただきましたように、さまざまな対策をとっているということはよくわかりました。ただ、現実的に高騰が続いている、こういう現状もあります。

 そういう中で、今度、七月に洞爺湖でサミットが開かれるわけでありますけれども、これまでのサミットでも、原油高騰については、さまざまな懸念というか、そういうメッセージが出されておりますけれども、ただ、対策については、どちらかというと中長期的な対応策、これが中心ではなかったかというふうに思っております。

 やはり、この原油の高騰というのは、私はある意味ではもう限界に来ているような感じを持っております。そういう意味で、原油の高騰に対して強いメッセージを次の七月のサミットでぜひ出していくべきではないか、また短期的な対応策も含めてやっていくべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、外務省の見解をお伺いしておきたいと思います。

小野寺副大臣 現在の記録的な原油価格高騰につきましては、需給両面のさまざまな要因が複雑に絡み合っております。この状況を放置すれば世界経済の後退につながりかねず、また現在の食料高騰の一因にもなっていると認識をしております。一つ一つの要因に粘り強く働きかけていかなければならないと思っています。

 我が国は、G8議長国としまして、北海道洞爺湖サミットにおいても、原油価格高騰の問題につき、各国としっかり協議を行いまして、国際社会に向け力強いメッセージを発信したい、そういう決意でございます。

谷口(和)委員 ぜひ、この高騰に対して取り組むという力強いメッセージをお願いしたいというふうに思います。

 最後に、もう時間があと五分ですので、クラスター爆弾について二点ほどお伺いをしておきたいと思います。

 このクラスター爆弾の禁止条約の締結を目指すオスロ・プロセスが、十九日から始まって三十日まで行われるわけでありますけれども、このクラスター爆弾については、御存じのように、子供が大きな被害を受けている。特に、その形状が、傘のようなものがついていたり、おもちゃと間違えて取り上げて爆発してしまったり、死傷者の九八%が民間人、それから三〇%近くが子供だ、こういう、対人地雷と同じように悪魔の兵器というふうにも呼ばれております。

 このオスロ・プロセスの会合が始まったわけでありますけれども、まず最初に、このオスロ・プロセスに日本としてどういう方針で臨んでいるのか、確認させていただきたいというふうに思います。

小野寺副大臣 政府としましては、クラスター弾の不発弾等による人道上の懸念を十分に認識しております。委員御指摘のとおりだと思っております。クラスター弾の主要な生産国及び保有国の参加も得て、人道面と安全保障面のバランスのとれた実効的な国際約束を作成することを支持しております。

 このような立場から、政府としては、CCWの枠組みを重視しつつ、オスロ・プロセスの会議を含むクラスター弾に関する国際的な議論に積極的に参加したところであり、十九日から開催されますダブリン会議においても、引き続き積極的に貢献していく考えであります。

谷口(和)委員 この問題についてはさまざまな事情があって、私は全面禁止に向けて日本が取り組んでもらいたいというふうに思っているわけでありますけれども、なかなかそうはいかない事情もあるというふうに伺っております。

 最後にお伺いしたいんですけれども、九七年の対人地雷禁止条約のことを振り返ると、このときも、当初は、日本はどちらかというと及び腰というか、そういうような状況であったわけでありますけれども、ここは政治決断でこれを締結するということで大きく転換して、そして日本は高い評価を得たわけであります。

 そういう意味で、今回もやはり、先ほども副大臣がおっしゃられたように、大きな人道問題でもありますので、ぜひ日本が全面禁止に向けてイニシアチブをとっていただきたいということを私はお願いしたいわけでありますけれども、最後に見解をお伺いしたいと思います。

小野寺副大臣 政府としましては、クラスター弾の不発弾等による人道上の懸念を十分に認識しております。クラスター弾の主要な生産国及び保有国の参加も得て、実効ある国際的な約束を作成することを支持しております。

 このような立場でありますので、この約束の交渉の結果については、その過程においても積極的に参加していきたいと思っております。

 十九日から開催されるダブリン会議、これは大変重要な会議になりますので、その場で、私ども積極的に参加しつつ、その会議の方向を見定めながら、しっかりとした対応をしていきたい、そう思っております。

谷口(和)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、河野太郎君。

河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 この三十分と次の条約審議の三十分を利用いたしまして、なんちゃって国際機関、日本ASEANセンターについて、小野寺副大臣にお伺いをしたいと思います。今ごろまでにこのようなものが残されていたというのを、私は大変驚きましたし、遺憾でございます。

 まず、このなんちゃって国際機関、日本ASEANセンターでございますが、この協定がかかるということになってから今日まで、このASEANセンターの経費がきちんとわかるような資料を出してくれ、そういう要求を外務省に対して再三いたしました。

 あるとき、とにかくきょう中に何とかしますといって、朝の一時ごろ、外務省が持ってこられた資料がございます。平成十八年度日本ASEANセンターの予算でございます。そんなものはあらかじめあるわけですから、何もそんなもの、夜中までやらぬとも出てきそうなものでございますが、予算では経費の使用実態がわからぬではないかといって、次に外務省が持ってきたのがこの一枚物の資料でございます。これを見ますと、例えば勘定科目コード三〇一〇、常設展示場における展示会及びアセアン出展企業招聘費三千六百六十八万九千円と書いてあります。

 これだけでは中身がわかりませんから、もうちょっと中身のわかるものを出せという要求をいたしますと、出てきたのが元帳でございます。この元帳、何かといいますと、ぱかっとめくってみますと、例えば先ほどの項目で何が書いてあるかというと、コピーサービスの費用五百五十円、郵便代百四十円、受付のテンポラリースタッフの人件費十四万六千八百七十五円、DHLのお金二万五千五百九十四円といったものが延々数百ページにわたって書いてあります。

 その袋いっぱいありますが、外務省の総務課長に、外務省はこれでASEANセンターの経費管理をやっているのかということを尋ねましたら、外務省の総務課長は跳び上がってびっくりされておりました。厳しく、役所に対して、あるいはセンターに対して、経費管理ができるような資料をすぐ出すようにという指示を総務課長からしていただきましたが、きょうに至るまで何もほかに資料が出てきません。

 ということは、外務省は、このわけのわからぬ、常設展示場における何やらかんやら三千六百六十八万九千円という大項目と、数百ページにわたる、郵便代百四十円まで入っている元帳の二種類で、このASEANセンターの経費管理をやっているということになります。こんなもので、まともに経費管理ができるはずがないではありませんか。

 先般、外務委員会でASEANセンターに視察に行ったときに、ASEAN各国の大使においでいただきましたので、大使に対して、このセンターの執行委員会、全く予算マネジメントをしていないではないか、そういうシステムすらこのセンターにはないではないかということを申し上げました。大使からの反論は全く何もありませんでした。何人かの大使は下を向いていらっしゃいました。

 このASEANセンターがやっている事業に本当に意味があるんですか、人もほとんど来ないような展示会を開いていたり、こんないいかげんな予算管理をしていたり、ASEANセンターのやっている事業に意味があるんですかということを伺いましたら、一人の大使が、いや、このセンターの存在が日本とASEANの友好のシンボルなんだ、そういうお答えでございました。それは友好のシンボルかもしれませんが、この八億円の予算の大半を我々日本の納税者が払っているわけで、友好のシンボルですと言うには、八億円は余りに高い。

 このセンターがやっている貿易の展示会、では、どれだけ効果が出ているんだ。今までそういうデータをとったことがなかったそうでございますが、今回、その場で、視察のときに出てきた資料を見ますと、初めてデータをとりましたということですが、四年間で売り上げた金額が約二億円だそうでございます。展示会場の家賃は四年間に三億二千万円かかっていますから、三億二千万円かけて二億円の売り上げなら、家賃を払わずに、家賃で買っちゃった方がいい。

 NGOの中で、シェードグローンのコーヒーやら何やら、いろいろなものをフェアトレードでやろうじゃないかといって努力をされているNGOがありますが、そうしたNGOの売り上げの方が大きいわけであります。

 そして、このASEANセンターは、効果がないだけではありません。これは立派な天下り先であります。外務省の天下りが年収二千万円もらって、秘書さんがついて、自動車がつく、そういう天下り機関であります。天下り機関でありながら、この日本ASEANセンターは、なんちゃって国際機関でありますから、公益法人改革にも独立法人改革にもひっかからずに、きょうまで生き延びてきたわけであります。

 一体、副大臣を初め外務省は、この実態をどこまでおわかりになっていたのか。わかっていてのさばらせていたのか、それともわからなくてこういう事態になってしまったのか。副大臣、いかがですか。

小野寺副大臣 初めに、この日本ASEANセンターの設立の経緯、現在の意義についてだけ、ちょっとお話をさせていただきたいと思っております。

 センターは、一九七七年、当時の福田赳夫総理とASEAN首脳が発出した共同宣言を踏まえまして、一九八一年に設立をされました。過去三十年近く、貿易、投資、観光面でASEANとの協力を具体的に促進する機関として存在し、我が国とASEANの協力関係強化に貢献をするという目的であります。

 また、同センターは、昨年十一月にASEAN首脳が採択したASEAN憲章の中で、ASEAN経済共同体の重要な機関の一つとして位置づけられております。

 このように、共同体の実現に向けて重要な役割を果たすことがASEAN各国首脳から期待をされていると思っております。

 このASEAN域内の経済格差、引き続き大きいものですから、この格差是正を最優先課題として、今後とも同センターは、ASEAN後発構成国、開発のおくれた地域に協力するということを一層重点化した事業を行うことを通じて、ASEAN域内の格差是正、ASEAN統一市場形成に貢献することが期待をされております。

 また、同様の機関を実は中国、韓国も近年スタートするということをいただいておりますので、やはりこの近隣東アジアの諸国に関しては、ASEANとの協力関係ということを大変重要視しているのかなというふうにも私ども思っております。ですから、このセンター、組織自体の存在意義ということは重要だというふうに考えております。

 ただ、今委員の指摘がございました、実際にどのような活動をしているかということに関しては、私ども、当初はやはり、外務省が所轄しております関連団体等に関してどのような状況になっているかということを見ておりましたが、国際機関ということに関しましては、言ってみれば各国の条約から成り立っているということもありますので、その内容につきまして、今まで見てはおりましたが、例えば会計の問題等について微に入り細に入りというところまで目が届かなかったことがあったかとも思っております。これからはそういうことがないようにしっかり対応していきたい、そう思っております。

河野(太)委員 このなんちゃって国際機関には、日本も理事会にメンバーを出しております。外務省のアジア局長でございます。きょう、この条約、協定の審議をやるわけでございますが、理事会に出席しているアジア局長はおりません。海外出張中でございます。こういういいかげんな状況でこの審議をやらなければいかぬということに対して、私は非常に憤りを感じております。

 福田赳夫総理のときには大変立派な目的で設立をされましたが、目的が立派でなくて設立されるものというのは余りありません。要するに、つくったものをいいかげんにして、だれかがそれを食い物にしている、その結果こういうことになるわけで、それは、だれも中身を見ていなければ、だれもチェックできるような体制になっていなければ、そうなるわけであります。

 このASEANセンターのトップでありますが、ことしの十二月に任期が来るというふうに伺っておりますが、同じ人間が再任されるんでしょうか。外務省のお考えをお伺いしたいと思います。

小野寺副大臣 歴代の事務総長、それぞれ識見があり、しっかりとしたお仕事をされていたというふうに私ども信じております。

 そういった中で、今回、さまざまな状況を考えまして、今後、事務総長ポストにつきましては、今までもいろいろな形で候補者を選任しておりましたが、より透明性を高めるという意味で、公募ということをとりたいというふうに考えております。

河野(太)委員 外務省の言う識見のある人間がトップを務めていたがゆえに、現在のていたらくであります。

 公募をやるのは結構でございますが、公募を隠れみのにして天下りを続けられては困るわけで、公募というときの対象に、外務省並びに中央官庁を勧奨退職された人あるいはそれに準ずる人間は対象にならぬということを明確にしてください。

小野寺副大臣 この事務局長の選任に関しましては、これは国際機関ということですので、私ども日本政府が直接いろいろなことを働きかけるということは適当ではないかとは思いますが、日本政府としましては、この事務局長の日本側候補者の選任に当たりましては、例えば勧奨退職として事務局長のポストをあっせんするような、いわゆる天下り的人事と誤解を持たれないように、透明性を確保して広く有能な人材を集めたい、そう思っております。

河野(太)委員 七対一で日本が金を出し、日本に事務所が置かれ、しかも義務的拠出金以外に任意拠出金まで日本が多額に出しているわけですから、国際機関だといいますけれども、それはなんちゃって国際機関であって、日本が出した人材が理事会で拒否されるはずがないのが現状だと思います。

 もちろん勧奨退職で事務局長が外務省から行くなんというのはもってのほかでありますが、本来この機関がやるのは貿易、投資あるいは観光の促進ということであります。それならば、ASEAN関連の貿易、投資並びに観光の業務を民間企業あるいはNGOでやったことがない人間は当然適さない、つまり日本側は推薦しない、そういうことでよろしいですね。

小野寺副大臣 先生の言い方をかりればなんちゃって国際機関ということの話でありますが、このセンターは、きちっと国際条約の中で認められた、しかもASEAN憲章の中にも位置づけられた機関でございますので、私どもとしては、国際機関として機能しているし、していただきたいという気持ちを強く持っております。

 ただ、日本側がこの事務局長の候補者として、今後、いわゆる推薦をする場合におきましては、やはり天下り的人事と誤解を受けないように、透明性を確保して広く人材を募るために、またその業務の内容から、ASEANに関連する貿易、投資、観光に関する業務実績、センターの関連業務、センター加盟国政府・企業との交渉、協議を行うにふさわしい語学等の能力、そして組織のマネジメント実績、また民間企業、国際機関、NGOなど、関連する業務の経験などを含む客観的な基準を設けた上で広く公募し、日本側有識者、在京ASEAN大使から成る選考委員会において選定する、こういう措置が望ましいと思い、このことを進めていきたい、そう思っております。

河野(太)委員 相手国政府と交渉するから外務省だなどということはないと思いますが、それをまず確認していただきたいと思います。

 日本の民間企業は、いろいろなビジネスを海外で展開する上で、日本の外務省の出先機関よりもはるかに綿密な交渉を各国の政府とやっている場合が多々あるわけですから、相手国の政府と交渉しなければいけないから外務省あるいは日本国の政府の人間が出なければいかぬという理屈にはならないということを御確認ください。

小野寺副大臣 委員御指摘のような視点もあるかと思いますが、また他方、例えばASEAN域内国の中には、なかなか民間セクターが十分に発達していない国もございます。こういう場合に、例えば投資の問題等を持ちかける場合には、どうしてもその相手国政府とのそれなりの関係も必要かと思っております。そういういろいろな要因を考えて、やはりこの事務局長、大変重要なポストでありますので、考えていく必要があると思っております。

河野(太)委員 今の発言は、内容がよくわかりません。外務省から事務局長を出すということですか、そうでないのですか。

小野寺副大臣 先ほどからお話をさせていただいておりますが、日本側の候補者としては、天下り的人事と誤解を受けないようにしたいと思います。

 また、この要件としましては、組織マネジメント、そしてまた語学等の能力はもちろん、やはり過去の経験ということで、民間機関、国際機関、NGOなどの関連する業務の経験などを含む客観的な経験がなければいけないという基準で広く公募したいと思いますので、例えば外務省の職員であった経験があった方が同じような経験を有するということであれば、それは候補者として初めから疎外することにはならないのではないかと思っております。

河野(太)委員 これだけ外務省の人間がトップをやっておかしくした機関ですから、ここでこういう議論になった以上、次のトップは外務省から出さぬということでよろしいですか。

小野寺副大臣 これはあくまでも日本側候補者の選出ということになりますので、委員の御指摘は重々私ども認識しておりますが、その中で、今回定めた基準ということを私どもは中心に据え置き、選定に当たって、特に日本側の候補者の選定に当たって話を進めていきたいと思っております。

河野(太)委員 外務省の人間がトップをずっと続けてきてこうしたていたらくになって、ここで、国会でこの問題が議論され、まだ外務省から出すんですか。

小野寺副大臣 先ほどお話をいたしましたが、いわゆる日本側候補者の選出に当たっては、例えば、いわゆる勧奨退職としての事務局長のポストをあっせんするような、いわば天下り的人事と誤解をされないように、透明度を確保してまいります。

 したがって、外務省から出すかどうかというのは、例えば大使がある程度経験を積まれ、そろそろおやめになるときに、このポストがありますねというようなあっせんでこのような事務局の候補の選任に当たるということはないというふうに理解していただければと思っております。

河野(太)委員 大使をやめて外務省を退いた人間が、わたりのような格好でこのセンターに戻ってくる、あるいは外務省をやめてほかのことをやっていた人間が、わたりのような格好であるかないかは別として、また戻ってくるということはないでしょうね。それを確認してください。

小野寺副大臣 いわゆる私どもが通常認識している天下り、わたり、そのようなことは、先ほど答弁させていただきましたように、いわゆる天下り的人事という誤解を受けることがございます。そのような誤解がないように、日本側の候補者の選出には当たっていきたいと思っております。

河野(太)委員 このなんちゃって国際機関には、トップの人間以外に、今度はほかの役所から人間が派遣されております。国土交通省しかり、経済産業省しかり、外務省しかり、それ以外にジェトロからも人材が送り込まれております。政府関係あるいは政府の外郭団体がこれだけ送り込まれていて、こうしたなんちゃって国際機関、しかも管理もろくにできず実効性も上がっていない、そういう機関に現実になっているわけですから、これは当然、外務省を含め、ほかの官公庁から人間が出向することはこの先ないと考えてよろしいですか。

小野寺副大臣 今御指摘がありました職員の問題ですが、お話がありましたように、外務省、経済産業省、国土交通省それからジェトロからも来ております。このような職員の派遣といいますのは、日本が多額の資金、センター拠出金の大部分を負担しているという事実を踏まえまして派遣をしておった状況にあります。

 将来的には、センター職員を極力民間企業での関連業務経験者から採用し、関係各省から派遣される職員はできるだけ抑えたいということ、これをセンターの理事会で提案したいと思っております。

河野(太)委員 極力抑えるというのはどういう意味ですか。

小野寺副大臣 ここの組織への日本政府の出資ということを考えますと、だれも政府関係者がこの組織の中にいないということはやはり問題だと思っております。極力少ない数に抑えたいというふうに思っています。

河野(太)委員 これだけ役所の人間が出ていて、センターの経費管理をする資料はこれですよ。政府から人を出して、経費管理、マネジメントの役に立っていますか。これだけ日本政府が金を出しているからといって政府から人間を送り込んで、四年間で展示会場を使った売り上げが二億円、家賃にも満たないのが現状じゃないですか。何か政府のお金を多額に出しているから政府の人間が行かなきゃいかぬというんですが、行った人間は何をやるんですか、昼寝ですか。

小野寺副大臣 今、商談の件、二億円というお話がありました。これは、一万ドル以上の商談がまとまったことをアンケートで調べたという結果ですので、それ以下の金額も多分あると思いますし、投資の問題等もあると思います。

 役割につきましては、努力されている部分もかなりあるんではないかと思っておりますが、政府からこの組織に派遣するということに関しましては、私ども、できるだけ数を少なくしたい、こう思っております。

河野(太)委員 今、商談の話がありました。この展示会場でこれだけ商談がありましたということを盛んにセンターはおっしゃいます。副大臣は、その商談一件一件がどういうものか、センターに行って御確認をされたと伺っておりますが、一件一件の商談の内容というのはどういうものでしたか、どういう記録が残されておりましたか。

小野寺副大臣 私自身がセンターに行って直接先方の事務方からお話を伺ったことはありません。センターに行ったことはございます。それはあくまでも視察という形です。ただ、事務方を通じまして、センターの方からは、その商談についての資料を見せていただき、私も現物を直接見せていただきました。

 商談につきましては、展示会が一定期間あり、その期間の最後のあたりに何日間かの商談会というのがあります。そこで、それぞれ商談の内容に問い合わせがある場合には各ブースにおいて相談をされるということ、それが受け付け票みたいな状況において件数が累積されていたというふうに私は確認をさせていただいておりました。

河野(太)委員 センターが言っている、何十件だか何百件だかわかりませんが、その商談はすべてまともな商談ですか。

小野寺副大臣 商談の内容については、あくまでもその内容について問い合わせ、あるいは窓口で相談を受けたということで、センター自体は仲介をする立場だということですので、センターがその商談を一つ一つ記録をとっているとか、そういう状況ではなかったというふうに思っております。

河野(太)委員 今副大臣がおっしゃったように、センターは商談があります、商談がありますと言っていますが、その中身がどれほどのものだったのか甚だ疑問が多いのが現実だと思います。

 このセンターが一体全体どういう役に立っているんだということをいいますと、センターからはナタデココがと。ナタデココが売れたのは一体何年前の話だ、ナタデココから先は何も仕事をしておらぬのか、そういうことになるんだろうと思います。

 現に、例えば同じ政府の関連機関であるジェトロも、これは平成十九年度ですが、国内でいろいろな見本市をやっております。その中には、一村一品マーケット空港展、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、インドネシアから商品が出展されております。フーデックスジャパン、六十四小間を使って、ASEAN諸国からはインドネシア、ベトナムの商品が紹介されています。国際オートアフターマーケットEXPO、マレーシアからプロトンほか自動車部品メーカーなども出展されております。インテリアライフスタイル展、これはインドネシアからも出展がございます。

 このなんちゃって国際機関よりもジェトロなどの方がよっぽどいろいろなことをやっているわけでありますし、八千万円もの展示会の家賃を払わなくとも、今インターネットの仮想空間でいろいろなことができます。先ほど申し上げましたように、NGOだってフェアトレードを初めいろいろなことをやっている。民間の展示会、幕張の国際何とかに行けば、それはもうそこらじゅうでそういうのをやっているわけです。

 そういうときに、何だかよくわからないけれども受付に来た人間はみんな商談だといって、何百件商談がありましたみたいな申告をする、そういうことをこのセンターに、銀座のど真ん中でやらせておく必要があるのか。ど真ん中じゃありませんけれども、銀座の中で九時から五時までしか展示会場は開かない。銀座にあって土曜日、日曜日、祝日は休んじゃう展示会場ですから。しかも、年に何回展示会が行われるのかといえば、ほんの数回で、その一回ずつは一カ月以上にわたることだってある。

 本当にこの展示会場を使っていろいろなことをやりたいというならば、もっともっといろいろな展示会が開催をされてしかりだと思いますが、そんなことはない。一つの展示会が終わって次の展示会をやるまでの展示会の内容の変更に四日も五日もかけています。銀座の高い家賃を払って、普通は、展示会場なら夜中のうちに物を入れかえて次の日に別な展示会をやると思いますが、四日も五日も展示会の内容を変えるのに使っている、そういうなんちゃって国際機関であります。この国際機関にこれ以上、銀座のあの場所で高い家賃を払って展示会場を維持している必要は全くない。

 聞くところによりますと、来年三月にASEANセンターのあの場所の契約が切れると伺っております。これは当然に、これだけ問題になっているわけですから、展示会場は閉鎖され、センターそのものも銀座の家賃の高いところからどこかへ移っていく、そう考えてよろしいですか。

小野寺副大臣 ナタデココは、今でも大変重要な産品だと思っております。そういう効果が今まであったということも、また一定の事実かとも思っております。

 この展示会場ですが、委員の先生方、先般御視察をいただいたということを伺っております。

 この会場でございますが、これは、貿易振興のための常設展示場ということで、当初、条約設立のときに、ASEAN各国の要望もありまして、このセンター設立協定の中の第三条第二項に常設展示場の運営を行うことがセンターの活動の一つと明記された、そのような経緯もございます。

 ですが、現在活動しております東銀座において現在の規模の常設展示を有していることが、最近の例えばネット上のいろいろな活動の中で、費用対効果の面から現在においても十分に有効かという点に関しては議論が大分あるというふうに思っております。

 これは、政府としても十分認識しておりますので、今後は、インターネット、他の民間ないしジェトロの展示会などを一層活用しまして、コストがかかる展示スペースについては大幅に縮減するなど一層の合理化を図ることをセンター理事会に提起することを考えております。

河野(太)委員 展示会場を閉めたら、銀座のあの家賃の高いところにセンターの事務所そのものを置いておく必要はないと思いますが、いかがですか。

小野寺副大臣 そこは、利便性、それから今までのASEANの諸国、条約に加盟している国との協議が必要だと思います。

河野(太)委員 つまり、外務省が全く管理をしていなかったがゆえに、このセンターの経費は水膨れをしているわけであります。冗費を削減すれば、センターはもう少し効率的に運営をすることができる。

 今、日本国政府は、センターに対しまして義務的拠出金以外にも多額の任意拠出金を出しております。この任意拠出金は大幅に削減できると思いますが、いかがですか。

小野寺副大臣 先ほどお話ししましたように、日本政府としては、センターの理事会について、展示場を含めた業務についての一層な効率、コストの削減ということを提言していきたいというふうに思っております。もちろん、その提言が理事会で認められればその金額が節約されますので、今後の任意拠出金の額というのは、その業務の内容等もございますが、必要な金額に応じて削減するということも検討課題の一つかと思っております。

     ――――◇―――――

平沢委員長 次に、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事金子節志君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官草賀純男君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官石川和秀君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、北米局長西宮伸一君、内閣府政策統括官原田正司君、警察庁警備局長池田克彦君、農林水産省大臣官房審議官林田直樹君、総合食料局食糧部長奥原正明君、経済産業省大臣官房審議官佐々木伸彦君、国土交通省大臣官房審議官西阪昇君、防衛省人事教育局長渡部厚君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。

河野(太)委員 自民党の河野太郎でございます。先ほどに続きまして、なんちゃって国際機関、日本ASEANセンターに関して質問をさせていただきます。

 先ほど、任意拠出金の話がございました。副大臣は、この任意拠出金をセンターに対してどれぐらいまでカットできるとお考えですか。

小野寺副大臣 それは、あくまでも日本政府として理事会の方にお話をするということになりますが、現在、任意拠出金、たしか一億八千万強だというふうに認識をしております。

 今回、まず、展示会場が今後検討の上で極力縮減する、必要のないものということになれば、そこでの現在払っております家賃は約八千万ということだと思っておりますので、まずはその額については削減できる可能性があるのではないかと検討したいと思っております。

河野(太)委員 展示会場が移転することになればとおっしゃいましたが、これだけ見ていて、まだ移転しない道があるんですか。

小野寺副大臣 展示会場については縮減ということですので、恐らく新たにどこかにまた同規模の展示会場をつくるということにはならないのではないか、そのようなことを理事会の方にお話をしたいと思っています。

河野(太)委員 外務省にこの展示会場はおかしいのではないかと言いますと、外務省は中立的なコンサルタントを雇って調査させますみたいなことを言いますが、あいた口がふさがらぬという気がいたします。まさかそんなことはやられないと思いますが、きちっと展示会場を閉鎖し、事務所を移転し、無駄な冗費を省くことによって、任意拠出金は恐らく半分以上要らなくなると私は思います。

 その際に一つ考えなければいけないのが、今のセンターの事務局長の人件費であります。これは、このなんちゃって国際機関の事務局長が二千万円取っているわけであります。二千万円を超えていると思います。これは、外務省からの天下りがなくなるのであるならば当然にこの人件費は見直されると思っておりますが、そういうことでよろしゅうございますか。副大臣は、事務局長の人件費は一体幾らが適正だとお考えですか。

小野寺副大臣 先ほどの任意拠出金につきましては、委員の発言の趣旨も踏まえて、私どもは、できる限り削減でき、またそれが事業の運営に悪い影響を及ぼさないように努力していきたいというふうに思っております。

 事務局長の給料についてのお話がございました。現在の給料は、年間二千八十九万円ということになっております。これは、これまでは他の同規模の国際機関の長の給料に準拠し決定されるというふうに承知をしております。

河野(太)委員 このなんちゃって国際機関、しかも日本が圧倒的に大多数の拠出を出し、日本政府の意向が理事会を左右する機関であります。これは、日本政府の意向で事務局長の人件費を下げるのは可能だと思いますが、いかがですか。

小野寺副大臣 今回の条約改正におきまして、義務的拠出でございますが、ASEAN諸国の負担がふえるということで、それでも日本政府の拠出がかなりを占めるということは事実であります。このような税金を使っております国際機関でございますので、日本政府としては、しかるべく発言するところは発言していくということも大切かと思っております。

 この給与につきましては、私ども、今回また新たに公募するという中で、現在、この水準が適当なのかどうかということは勘案しながら、その公募に当たっては検討の上、提示をしたいというふうに思っております。

河野(太)委員 副大臣、政治家として、一体全体事務局長は幾らぐらいの水準が適当だとお思いですか。

小野寺副大臣 それは、このセンター、そしてまた事務局長の働きいかんによると思います。

河野(太)委員 これまでのセンターの事務局長なら給料は要らないですよね。ほとんど仕事していないんじゃないですか。

 大体、この日本ASEANセンターのトップが、ASEANの事務総長の給料、私はこれは一千二百万を切っていると思いますが、ASEAN全体の事務総長の給料が千二百万で、その憲章にちょこっと出ているだけのなんちゃって国際機関が二千万もらっているというのは、これは明らかにおかしいですよね。どう考えてもASEANの事務総長以上の給料をこのセンターのトップが取る必要はないと思いますが、いかがですか。

小野寺副大臣 歴代の事務局長はしっかり仕事をされるよう努力されていると思っております。また、展示会場のみならず、投資セミナー、あるいはさまざまな投資環境の整備についても働いていらっしゃるということも認識しております。

 ただ、この給与につきましては、確かに現在、ASEAN、ジャカルタにございますが、その事務局長の給与ということ、今委員御指摘ございましたが、それもやはり一つの基準として検討に入れるべきではないかというふうに、この次の公募につきましては考えていきたいというふうに思っております。

河野(太)委員 外務省に話をすると、ASEANの事務総長はジャカルタにいるので、東京の方が家賃が高いから、物価が高いからみたいなことをしゃあしゃあと言うんですね。それは地域のいろいろな変動がありますというんですが、その地域の変動があるというときの考え方は、東京に住んでいた職員がセンターの都合で物価の高い例えばロンドンに行ったときに、同じ生活水準を維持しなきゃいかぬから、その地域格差の分を補正しますというなら、それはわかります。東京に住んでいた人間がジャカルタに行って、ジャカルタの方が物価が安いから、その分、少し給料が下がります、これはわかります。

 しかし、ASEANというのはジャカルタにある組織で、このセンターというのは東京にしかないわけですから、ジャカルタと東京を比べて、東京の方が物価が高いから、このセンターのトップはASEANの事務総長より給料が高くて当然だみたいなことを言う外務省の職員がおりますが、そういう考えではないと思うんですね。ASEANというのはASEANという組織であって、このセンターはその組織の中のごくごく小さい、しかも、なんちゃって国際機関ですから、それをジャカルタと東京の物価が違うからどうのこうのみたいなことを言って、このセンターのトップの人件費を意図的に高くしようという動きが外務省の中にあります。それは明らかにおかしいと思いますが、政治家として副大臣、どうですか。

小野寺副大臣 この事務局長の給与というのは、人材確保の面でどの程度が必要かということは、この組織自体、そしてまた理事会で考えるべきでありますし、また、主要な拠出国であります日本が、そこに発言をするということは大切かと思っております。

 委員御指摘の、ジャカルタにありますASEANの事務総長でございますが、これに対してどれだけ高額かということ、これはなかなか比較は難しいんですが、今後この部分も勘案しながら、どのぐらいが適当かということは検討していきたいというふうに思っています。

河野(太)委員 これは、何でこういうなんちゃって国際機関がのさばっているかといえば、役所は傷をなめ合っているわけですから、役所に任せたら、それは、なんちゃってはなんちゃってのまま終わります。何のために政治家が大臣、副大臣、政務官で外務省に入っているんですか。政治家が決断せぬで、役所がそのうち考えますみたいな答弁を繰り返すというのはどういうことですか。副大臣、政治家として意思決定をされないのですか。それなら、副大臣として外務省にいる必要はないじゃないですか。どうなんですか。

小野寺副大臣 もちろん私ども、政治家として外務省で、国民の民意を反映するために仕事をさせていただいております。

 今御指摘がありましたASEANの事務総長の給与ということがありますが、私どもとしましては、この事務総長の給与を勘案して、はっきり言わせていただくと、それを上回ることは想定できないだろうなというふうに考えております。

河野(太)委員 政治家らしい答弁、ありがとうございます。

 さて、もう一つ、我が国は国土交通省のもとに観光庁という組織をつくり、日本に入ってくるインバウンドの観光はそこが一生懸命やりますということになりました。当然、ASEANから日本に入ってくるインバウンドの観光も観光庁が一義的には責任を持つ。つまり、この日本ASEANセンターは、なんちゃって国際機関、日本政府の息のかかった国際機関として、ここが先頭に立ってASEANからのインバウンドの観光をやることはないと私は思っております。

 日本に入ってくるASEANからのインバウンドの観光については観光庁が責任を持ってやるわけで、この日本ASEANセンターはそのお手伝いをすることがあっても、ここが一義的に何かやるということはないだろうと思います。つまり、国土交通省からこのセンターに人間が出てくる必要性もないと思いますが、いかがですか。

小野寺副大臣 御指摘の点、観光庁の業務ということ、新たに今、拡大するというふうに伺っておりますので、新設される観光庁の業務の補佐に徹するということでこのセンターの理事会に提起をしたい、そういうふうに思っております。あくまでも補佐の業務に徹するということになります。

河野(太)委員 ありがとうございます。小野寺副大臣の強いリーダーシップのもと、このなんちゃって国際機関が正常化されることを私は望みたいと思いますが、実は外務省が隠しているなんちゃって国際機関、これだけではございません。南太平洋の島嶼国との間のセンターというものもございます。このセンターに副大臣は足をお運びになったことがありますか。まずそれをお伺いさせてください。

小野寺副大臣 恐らく外務省の中で数少ない、もしかしたら唯一かもしれませんが、このセンターに行った一人だと思っております。

河野(太)委員 そのセンターはどういうところか、簡潔に教えていただきたいと思います。

小野寺副大臣 恐らく予算の削減のためだと思いますが、多くの事務所が入るビルの、たしか五階のフロアの一角にあったというふうに思います。

河野(太)委員 島嶼国の国家元首が東京にお出かけになった際、副大臣は、そういう方々をそのセンターにお連れするべきだと思いますか。

小野寺副大臣 それはやめた方がいいと思います。

河野(太)委員 外務省にこの島嶼国との間のセンターの話を伺いましたら、これは日本と南太平洋の島嶼国との友好に非常に役に立っているというのが外務省の答弁でございました。多分その方は、このセンターに足を運んだことがないのだろうと思います。実際に副大臣のように足をお運びになれば、このセンターが役に立っているというようなことは多分言えないだろうと思います。

 しかも、ASEANと日本のセンターがこうした協定、しかも国会で審議をされる協定であるのと比べて、この島嶼国との間のセンターは、島嶼国との間の行政取り決めに基づいて設立をされている。つまり、国会でこの行政取り決めは一切審議もされてこないし、これからも外務省は恐らくする気はないのだろうと思います。

 そんなものをつくっておいて、予算を削減されたからといって、国家元首が来てもお連れできないようなセンターにしておいて、しかも、そのトップは外務省からの天下りであります。何のために島嶼国とのセンターが置いてあるかといえば、外務省が天下りの機関を一つ確保しておきたいがゆえに、副大臣が国家元首をお連れすることも恥ずかしいような場所に移転させ、予算を削ってまでして人件費は残しておいて天下りをさせている。

 こういうなんちゃって国際機関が、恐らくほかにもあるのだろうと思います。これは、予算が削減されて場所もありませんということならば、いっそのこと、外務省の入っている建物の一角をこういうセンターにお貸しをしたらどうかと思いますが、副大臣、いかがですか。

小野寺副大臣 この南太平洋、いわゆる太平洋の島嶼国に関するこういうセンターについては、私はやはり重要だと思っております。ASEANに比べてはるかに、今まで投資環境について、あるいは相互の貿易関係について手薄なところでもありますし、それぞれの国はやはり日本にとっては大切な友好国でもあります。ですから、むしろ私は、こういうセンターの役割をもっとしっかりすべきだと思っております。

 天下りというお話がございました。かなりこの組織、人件費が運営費の中で占めていることは事実ですが、それほど現在の事務局の給料が高いかということは、ほかの国際機関に比べて、そういうレベルではないかというふうにも思っております。

 ただ、やはり今後、このような組織、国際機関といえども我が国が多額のお金を拠出している組織については、一層目を光らせて、その役割が十分機能できるように内部でもしっかり対応していくことが大事だと思っております。

河野(太)委員 外務省の建物を見ますと、まだまだ余裕があるんではないかと思います。そういうところをきちっとお貸しして、少なくとも家賃その他、オーバーヘッドがかからないようにして、人件費をなるべく抑制して事業費を拡大するというのが、そのセンターが本当に必要ならばやるべきことなんだろうというふうに私は思っております。

 副大臣がこのセンターは大事だとおっしゃるならば、ほかのなんちゃって国際機関の無駄な経費を削減されて、必要なところにしっかり回す、そういう予算の管理をするのもこれは政治家の仕事だと思いますので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 これ以外に、恐らくなんちゃって国際機関はまだあると思います。そして、外務省が出しているお金をほとんどずぼらにチェックをしていないというところがあると思いますが、今後そういう問題について外務省としてどういう取り組みをされるおつもりですか。

小野寺副大臣 きょう御指摘の二つの機関がございますが、私自身、この仕事につきまして、今委員が御指摘されない機関につきましても、私自身の問題意識でいろいろな事情を今聞いております。

 また、外務省の中にあります総政局を中心に、この国際機関の役割の洗い直しということを現在進めさせていただいておりますので、やはり私ども、ともすれば外務省の関係の団体ということで、今までは政治レベルで意識を持って見ておりましたが、この国際機関ということ、これもやはり多額の税金が拠出金ということで支出をされておりますので、ここにもこれから重要な注意を払う必要があるというふうに思っております。

河野(太)委員 役所には恐らく自浄作用は余りないんだろうと思います。これまで無駄になっていたこと、おかしいまま放置されていたこと、あるいは実効性がないのに行われていたことをチェックするのは、役所に入る政治家の仕事であります。副大臣は、ODAの担当の副大臣として、与党を代表して今外務省に乗り込んでいっているわけですから、ぜひODAの無駄をしっかり排除する、その作業を続けていただきたいと思います。

 あちこちでODAをふやせという話が出ておりますが、ODAをふやす前に、今、ODAの無駄あるいはほとんど意味のないもの、そうしたものをまずきちんと整理する、そこから始めなければいかぬと思います。

 数年前までは、日本のODAで出していた機械が、スペアパーツがなくなりました、部品がなくなりました、消耗品がなくなりました、それっきりというのが随分ありました。ソニーを初めとする機器メーカーの方が、自分がODAで送ったものが野ざらしにされているのには耐えられぬということで、みずからのイニシアチブで後のメンテをやってくれる、そういう状況でありました。外務省は見て見ぬふりでありました。そういう中でODAをふやせと言っても、これは国民の支持を得られるはずもないわけであります。そこは副大臣のイニシアチブで、しっかりと御判断をいただきたいと思います。

 アジア局長が三時半に成田空港にお着きだということですので、理事の皆さん、そして委員長のお許しをいただいて、私の質問時間、最後の十分を委員会の最後に回させていただきたいと思いますが、その前に一つだけ、後ほど理事会等でお話をしていただければと思いますが、法案が成立をしたときに、外務省の方々がお礼回りを今されております。国会内、あるいは委員会のメンバーの部屋、どこまで回られているのかわかりませんが。

 私は、別に、外務省のために委員会の審議をやって協定を通しているわけではない。それは国会議員の責務としてこの仕事をやっているわけで、法律が成立した後、別に外務省の人間に回ってきてお礼を言われる必要もないし、そんな無駄なことがあるならば、この国の外交のために外務省の人間にはきちんと仕事をしていただきたいと思っているわけでございます。

 いつからこういうお礼回りの風習が始まったかわかりませんが、それは我々外務委員会の方からそういうことはやめることを提案して、むしろ外務省の人間には、まじめに仕事をしっかりやっていただく時間を少しでも多くしていただいた方がいいと思いますので、これは後ほど、理事会でも何でも結構でございますので、そういう無駄な慣習はぜひやめることを提案させていただいて、質疑を終わりにしたいと思います。

小野寺副大臣 外務省の立場に配慮した御発言、ありがとうございます。私ども、ぜひしっかりと仕事をしたいと思います。

 また、きょう、河野議員には、たまたま大臣、参議院での質疑ということで不在、私、副大臣が答弁するということをお許しいただきました。ぜひこういう大臣の活用ということも委員会でさらに御検討いただければ、外務省として大変感謝いたします。ありがとうございました。

平沢委員長 ただいまの河野委員の提言は、後ほど理事会で協議させていただきます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時十二分開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。民主党の篠原でございます。

 私、毎回、私がつくりましたいろいろな資料をお持ちいたしまして、それをもとに質問させていただいておりますけれども、きょうは、外務省作成の資料をたくさんお持ちしまして、これをもとに質問させていただこうと思っております。

 たくさん資料をいただいて、非常に親切なので、要求した資料には、河野議員じゃないけれども、夜中の一時だとかいうのはありましたけれども、例えばこれは英語の表です。このボリューム一の三百九十七ページについて御質問したいと思うんですが、やめます。こういうことをする人はだれもおられないんじゃないかと思います。

 僕は、いっぱいいろいろなものを提案しておりますけれども、これはだれに提案したらいいかわからないんですが、議事録にちゃんと残していただきたいということで申し上げたいんです。

 国会への提出というのは、今、同意人事について省エネでやりましょうというのを、確かに私はどちらかというと、民主党の皆さんに怒られるかもしれませんけれども、あれはあんなにごちゃごちゃする必要ないと思います。これもそのとおりでして、幾ら国会提出だからといって、全議員に配られて、まじめな委員長は全部目を通しておられると思うけれども、だれも読まないと思います。それを形式的に全部に配って、外務省の若手の人もかわいそうですよ。入省早々、カートに載っけて、そしてどうせ見もしない資料を配って歩いている。

 これはやめて、改善してください。これは必要ないです。フロッピーで何とかといっても、法案がちょっと厚くなったり、それはちゃんと見なくちゃいけませんけれども、関税の表云々のところはだれも文句は言わないと思います、こんなの省いていただいても。ですから、この次はこんなの要りません。ですけれども、じいっとちゃんと考えていただくために、わざと私の目の前に置いて、質問を続けさせていただきます。

 次に、資料の一ページを見ていただきたいんです。

 今回またEPA、FTA、インドネシア、ブルネイに続いて今度はASEAN。私は、漁獲努力量と高度回遊性魚についてはしつこく言っています。名称というのは大事なんです。そして今度、このEPA、FTAですよ。これは、どっちかがなくなると、ダボハゼEPA、入れ食いFTAとか言っているのが言えなくなるので寂しいような気がするんですが、よくよく見てみますと、各国がどういう用語を使っているかというのを見てください、一ページ、一番下の方から、EUはほとんどFTAを名称として使用している。アメリカはすべてFTAだ。それで、日本より先にASEANとFTAを結んだ韓国、中国はどうしているかというと、韓国もほとんどFTA、インドとだけコンプリヘンシブEPAというのがある、中国はほとんどFTAだ。日本だけが、EPAとFTAを厳密に分けて使っているというんですね。

 外交政策とかいろいろなものを国民に理解してもらっていくには、やはり簡便な名称でやっていくべきです。外務省の皆さんは英語にも堪能、外国語にも堪能だからいいんでしょうけれども、きょう答弁に来ていただいております農林水産省の皆さんなんというのは、一番苦手な部類の人たちですよ。その人たちにEPAとFTAの違いとかなんとかかんとかごちゃごちゃ言ったって始まらないし、末端の農家のところで言ったってわけがわからないですよ。わかるようにしていただきたいんです。統一する気はないんでしょうか。

草賀政府参考人 お答えいたします。

 FTAとEPA、統一する気はないかという御質問ですけれども、FTAというのは、フリー・トレード・アグリーメント、まさに自由貿易協定、こういうことでございまして、大体名前のとおり、物品の関税及びサービス貿易の障壁などの撤廃を内容とする、こういう協定でございます。

 他方、我が国がよく用いておりますEPAですけれども、これは今申し上げたFTAの要素を含むわけですけれども、それにとどまらず、その先をさらに行くという意味で、経済取引の円滑化、我が国進出企業のビジネス環境の改善、あるいは知的財産権の保護、経済制度の調和、投資協力の促進、特にASEANなんかは日本からの協力を期待しているところもございます。そういうことをひっくるめて、対象分野が非常に幅広いものですから、エコノミックパートナーシップ、経済連携協定というふうに使い分けておるところでございます。

 使い分けておるという意味では、例えば現在交渉中の湾岸諸国、GCC諸国ですけれども、これとは物品・サービスの貿易のみを基本的に対象とする協定交渉をやっておりますものですから、これはFTAと呼んでおります。

 したがいまして、名が体をあらわすべきだという考えに立てば、やはり日本の特徴であります、EPA交渉をやっていく相手と連携を強めていきたい、パートナーシップを強めていきたいという気持ちをあらわすとか、あるいは協力を進めるといったつもりで使ってございますので、にわかに統一をしたらいいというふうには私どもは考えていない次第でございます。

篠原委員 では、アメリカはすべてFTAというのは、内容はみんなフリー・トレード・アグリーメントだけなんですか。EPAの経済連携というかパートナーシップのようなもの、投資だとかサービス貿易だとかは入っていないんですか。EUも入っていないんですか。

草賀政府参考人 アメリカはそうかもしれませんが、例えば、今私どもが交渉しておりますインドですが、インドはCEPAと言っているんですね。コンプリヘンシブ・エコノミック・パートナーシップ・アグリーメントということで、その名前に非常にこだわっておりまして、日印間で一体名前をどうするかということもそのうち決めなきゃいけないと思っております。

 やはりそれぞれの国が、自分のこれでよしとする名前をきちんとつけた協定を交渉しようということでやっているものだと思いますので、日本の特徴を出した名前をつけるということ自体、一概に悪いということではないと思いますし、また国際的に決められたルールがあるわけでもございませんので、これでよろしいのかなと思っております。

篠原委員 そういうふうに日本外交の独自性をちゃんといろいろな面で発揮されているんだったら私は立派だといって後押ししますけれども、名前ぐらいにそんなことを言ったって始まらないんじゃないか、もっと内容の方で言っていただきたいと思います。ともかくわかりやすいように。

 韓国の場合は、それは初めて聞きましたけれども、このコンプリヘンシブEPAというので、インドに押し切られて、インドの名称を韓国も使っているということですね。では、日本とアメリカの場合、日本とEUとの場合、将来どうなるのか楽しみにしています。アメリカに負けて、まさかFTAなんてやらないでしょうね。

草賀政府参考人 まさに委員おっしゃったとおり、交渉でございますので、結果的にどうなるか予断できないところでございますので、よろしくお願いします。

篠原委員 だから、こんなところで意地を張らなくたっていいということです。僕がいつも言っているのは、外交は国民にわかりやすく、語りかけていかなくちゃいけない、だから、単純明快な名称でやってくださいと。連合王国というのをずっと使っていたのがいい例です。やっとこさ、古い頭を変えて、英国大使館というふうになった。連合王国大使館なんてだれもわからない。平成十五年までそれを延々と使っていたんですよ。そういう古ぼけた頭の中を変えていただきたい、その延長線上でこれをやってもらっては困るということです。

 それから次は、なんちゃって国際機関、何かそういう名称のがあるのかと思っていたらそうでもないみたいですが、河野議員からセンターについて質問がありました。私は、ほれぼれして聞いておりました。やはり、ねじれ国会とかそんなものの前に、ちゃんと資質がよければ幾らでも国会の論議は活性化するんだなという気がいたしました。

 しかし、よく見てみますと、与野党逆転とか言われていますし、河野議員は野党になる準備作業を着々とされておられるのかなという気もいたしまして、感心いたしました。そういうのがいろいろあっていいんだろう、与野党も関係なしに、おかしいことは聞くという態度が私は絶対必要だと思っておりまして、ほかの与党の議員も河野議員の後を継いでちゃんと立派な質問をしていただけたらと思います。

 ですから、センターについての質問を私はいっぱい用意していたんですが、ほとんどする必要がなくなってしまいました。ですけれども、この点について、皮肉っぽい質問になりますけれども、それだけちょっとさせていただきたいんです。

 ASEANについては、ASEANプラス3というのでほとんど物事が進んでおるんです。その延長線上でいきますと、日本だけが東京にこういうセンターを持っているというのがあるんです。本当にこれは必要なのかなというのもあるんですけれども、必要だというんだったら、ほかの国にもあってもいいはずなんです。

 韓国、中国は、同じようにEPA、FTAをやっておるわけですね。一体どうなっているんでしょうか。日本をまねして、同じように銀座のど真ん中、私はソウルの銀座がどういうところにあるかは知りません、北京の銀座がどういうところにあるのかは知りませんけれども、そういうところに設けて、外務省の高官がトップになって高給を取ってと、同じような感じになっているんでしょうか。どういうふうに考えられているんでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 ASEANと中国、韓国の同じような組織の御質問と承りました。

 韓国とASEANとの間は、昨年の十一月にシンガポールで韓国とASEANの首脳会議が行われまして、韓国ASEANセンターを設立する覚書が署名されたというふうに聞いております。同センターは、韓国とASEAN双方の貿易、投資、観光及び文化交流の促進を目的とするということで、本年中にソウルに設置される方向で協議が進められているというふうに聞いております。

 それから、中国とASEANとの間でございますけれども、二〇〇六年の十月に中・ASEAN特別首脳会議が開かれまして、その中で、経済協力の一環として中国ASEANセンターを設立するということが確認をされております。今、どのような業務を行うか等、その付託事項につきまして中国とASEANで協議が行われているというふうに承知をしております。

篠原委員 そういうことでしたらそれでいいんだろうと思いますけれども、皆さんこれについてどうお考えになってどう評価されるかということです。日本の動きとか日本が何をするかというのは、日本人の我々が考えている以上に、国際社会は注視して見ているんですよ。日本がやっているから、いいことをやっているに違いない、同じことをしなければというので、韓国、中国もやろうとしているんだろうと思うんです。

 ですから、東アジアのリーディングカントリーとして、やはりビヘーブウエルということで、きちんとやっていっていただきたいと思います。それができた暁には三つの比較なんかしてみてください。私は韓国といろいろなところでつき合ったことがありますけれども、ほとんど日本のまねをしてやりますよ。兄弟みたいな感じで、日本がやっていたらすぐ、ちょっとおくれてやる。だから、いい見本を示していただきたいと思います。

 一つだけ、組織の云々というのを私は聞きたいことがあるんですが、任意拠出なんて何でこんなに多いのかというのも、河野議員がみんな聞かれましたのでやめますけれども、直している直していると言うけれども、直していないなと思うのは、今、きょうこの場で日・ASEAN・EPAを締結せんとしている、経済連携だ、自由貿易を超えているんだと言っているときに、まして貿易なんかは自由化は当然だと言っているときに、新しくする人的交流だとか投資だとか観光は双方向だけれども、貿易だけは片方だ、そんな変な、矛盾する協定をよく一緒に平然と出してくるなと。何で日本からの輸出はなしで、向こうからの輸出だけになっているんですか。こんなの私は反対したいんですよ、こんな矛盾に満ちたのを平気で出してくる感覚がおかしいので。この点についてはどうなんでしょうか。

小野寺副大臣 このASEAN貿易投資観光促進センター設立協定の改定に際して、貿易促進の双方向化を盛り込むことはあり得たところではありますが、一部のASEAN構成国から、センターの目的に日本からASEANへの貿易促進が含まれることになれば、対日貿易収支の赤字がますます増大しかねないという懸念が表明されたことから、日・ASEAN間で協議を行った結果、貿易促進については双方向化しないことで一致した次第です。

 ただし、本件協定改正は、投資、観光の促進を双方向化するとともに、日本側が負担する義務的拠出金の比率を軽減し、全体として、これまでのASEAN側の裨益に主眼を置いた一方的なものから、日・ASEAN両方が裨益するものに規定を変更するものであります。

 こうした要素を総合的に勘案すれば、センター設立協定改正に日本からASEANへの貿易促進が含まれていないことをもって本協定改正が片務的という、日・ASEAN包括的経済連携協定の締結という取り決めと矛盾しているという御指摘は当たらないのではないかと考えております。

篠原委員 小野寺副大臣に申し上げたいんですが、私は、実質的にはそれでいいと思います。ASEAN諸国には、こちらこそ思いやりを持って接すべきだと思います。だから、アメリカに対しての思いやり、思いやり予算じゃなくて私は悪女の深情け予算とか言っていますけれども、あっちの方は削ったっていいと思いますが、こちらはやっていいんですけれども、やはり対等の関係にいくんですから、形式的にはちゃんと対等にしておくべきですよ。実質はそんなにぎちぎちしないんだと。誇りをちゃんと持ってもらうためにもそれをちゃんとして、実質はやっていないけれども、双方向でしょう、同じときにEPAも結ぼうとしているんですから、そういうことを言って主張していくべきですよ。いつでもちょっと下みたいで違うんだというようなのは、やはりよくないんじゃないかと思います。

 私がこれで思い出すのは、高坂正堯教授の国際政治学の授業ですよ。ODA、これから一生懸命やられると思う。ODAは、ただばらまいてやるような、あなたにくれてやるという態度を日本は絶対に示してはいけないと。非常に冗談を言いながら、あの人はきつい冗談も得意でして、授業でも、テレビに出て国民にわかりやすく語りかけるのと同じような言い方をされておられました。誇りを傷つけることは絶対にいけない、返せないとわかっていても、五十年後に返してもらうんだというやり方でやるのがベストなんだ、返さなくたっていいというようなやり方をしてはいけないと言っておられました。

 私は、そのとおりだと思いますよ。それを協定文書からも片務的だというと、何かおんぶにだっこに肩車で、日本にぶら下がっているみたいな感じを受けてしまうわけですね。だから、唯々諾々と、あちらが言ったからといってのむんじゃなくて、形式がどうのこうのじゃなくて、実質的には日本が相当手を引っ張ってやるという姿勢で臨んでいいんだろう。ですから、そういう気配りをやってください。気配りに甚だしく欠ける協定だと私は思います。

 次に、EPAの内容に入っていきます。

 この関係で、ASEANのところでは直接には問題になっていませんけれども、タイなんかとやるときはいつも議論になるわけですけれども、米の国際価格が相当高騰していると聞いておりますけれども、どういう感じになっておりますでしょうか。

奥原政府参考人 お答えいたします。

 米の国際価格の指標となっておりますタイ米の輸出価格につきましては、昨年の秋ごろから高騰しております。特に本年の三月から四月にかけまして激しく上昇しておりまして、現在では、昨年の秋ごろの価格と比較をいたしますと、三・二倍ぐらいになっております。

 これに先立ちまして、ほかの穀物、例えば小麦、大豆といったものも価格が上昇しておりまして、こちらは一昨年の秋ごろから高騰しております。その当時の価格と現在の価格を比較しますと、小麦につきましては二・〇倍、大豆は二・五倍、それからトウモロコシは二・六倍といった形になっておりまして、これに比べましても、最近の米の高騰ぶりはかなり際立っているという感じがございます。

 米につきましては、生産量に占める貿易量の比率が七%と非常に低いということがございますし、最近、インド、ベトナムといった主要な輸出国が、国内での供給不安あるいはインフレの影響を緩和する、そういったことで輸出規制をしている、そういったことがいろいろ影響しているというふうに考えております。

篠原委員 部長にお答えいただきましたけれども、大体その資料をいただいております。大体僕はほとんどの資料を加工してつくってくるんですが、農林水産省はちゃんとしておりまして、いろいろな資料をみんな私のリクエストしたとおりにつくってきていただきましたので、皆さんのお手元にお配りしております。

 これは質問というよりも、見ていただきたいということで、聞いていただきたいんですけれども、米について、これを自由貿易協定、EPAのところに加えるべきか加えなくていいかという問題です。

 まず二ページ、ASEAN諸国の米の生産量を見ていただきたいんですが、みんな相当多いんです。日本は今、八百万トンとかそのぐらいしか消費しないんですが、一千万トンの生産能力がある。インドネシアは三千五百万トンですね。ベトナムは二千三百万トン。ベトナムは輸出国になりまして、四百五十万トンぐらい輸出しています、五分の一ぐらい。タイは生産量がそんなに多くないんです、千八百五十万トン。そのうちの半分近く、九百五十万トンぐらい輸出しています。

 そして次、米の生産、輸出、輸入をちょっと見ていただきたいんですが、これはじっくり見ていただきたいんです。アジアのでっかい国は、もう自分の国を食わせるのに精いっぱいだというのがおわかりいただけるんじゃないかと思います。

 生産量の一、二、三位、四位、五位というのはほとんど変わりません。ところが、輸出量になると結構変わるんですね。タイとベトナムが大体一位、二位ですけれども、たまにインドが、余って輸出することがある。

 輸出量と輸入量のところを見ていただきたい。中国は、二〇〇二年―三年は輸出国、二百六十万トン輸出していたのが、三年―四年になると百十万トン輸入している。最近米不足で困っているフィリピンは、輸入量のところを見てください、三位、百三十万トンから百十万トン。そして、一位の百九十万トンになって、六年―七年は百九十万トンになっている。これはお気づきだろうと思いますけれども、輸出国は非常に限られている。輸入国はちょっとずつ、ぎりぎりのところで百万トンとか二百万トンとか輸入しているんです。

 奥原部長が答えていただいたとおり、五ページを見ていただきたいんですが、米というのは、農産物の中、食料の中でもいろいろな特徴がある作物、商品なんですね。

 貿易率というもの、国際商品、国際貿易の場合にどれだけ出てくるか。大豆というのは油糧種子の原料でして、三割近くが貿易されているんです。国際商品なんです。トウモロコシ、今これは一三・〇%ですけれども、バイオエタノールとか何か言っていますからもっとふえると思います。それに比べて、米というのはわずか七・〇%なんです。自給自足産品なんですね。これを頭の中にたたき込んでおいていただきたい。

 そして四ページ、単純なことですけれども、どこの国も、自国の国民を食べさせないでおいて輸出する国はありません。自国民全員にカメラが渡らなくてもカメラを輸出するでしょう、テレビも輸出するでしょう。しかし、自国の一万人、二万人の人が飢えているときに米を輸出する国はないんです。それが四ページに出ているわけです。インド、輸出国になったりしているのが、もう輸出を禁止しています。バングラデシュなんて輸出力はないはずなのに、高く買ってくれるインドに輸出してしまうとかいうふうになると困りますから、だから国際交易を禁止しているわけです。わかりますか、この重み。

 ですから、日本は輸出規制を規制すべきだというのをWTOの場で主張しているんです、なかなか受け入れられませんけれども。こんなのは絶対受け入れさせるべきです。べきだというよりも、そもそも自由貿易の商品の対象とすべきじゃないと思います。

 そして、賢いことをしているんですね。やはりアジアの国々というのは、アメリカのように硬直的に理屈だけでぎゃあぎゃあ言ってくるというんじゃないんですね。ASEANのEPA、FTAの関係を見ていったら、ハイリー・センシティブ・リストというのがあって、各国がそれをリストに入れると自由貿易の対象にしないというような柔軟な対応をしているんですね。

 日本も、今これだけ食料危機が叫ばれたりしているんですから、そういうことを見習って正々堂々と、対アメリカ、対オーストラリア、そういった国にも主張していくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

林田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま篠原委員が御指摘されましたとおり、ASEAN自由貿易地域協定、AFTAにおきましては、ハイリー・センシティブ・リストに記載された品目につきましては柔軟な対応が認められておりまして、インドネシア、フィリピン、マレーシアの三カ国が米を対象品目としているというふうに承知をいたしております。

 一方、我が国といたしましても、EPA交渉におきましては、米を含む我が国の基幹作物ですとか地域の農林水産業における重要品目につきましては、守るべきものはしっかり守るという方針のもとで交渉に臨んでおりまして、ASEANを初めとするこれまでの交渉において関税撤廃の例外扱いを確保しているというふうに思っております。

 今後とも、守るべきものは守るという方針のもとで交渉に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

篠原委員 ずっと米にはこだわってやってきて、何かそれは見苦しいことだみたいに考える人たちが日本国内でもいるんですけれども、これはもってのほかだと思います。

 外交交渉のときは、農林水産省は下手くそですよ。だから、外務省が上手だとは余り、ほかと比べればだめかもしれませんけれども、やはりなれているんですよ。私が客観的に見ていると、捕鯨については、なぜかしらえらく頑張る姿勢が外務省にも見られるんですね。小野寺さんなんか、地元にもそういう方がおられるし、ずっと捕鯨の問題をやってこられたんだと思いますけれども、ところが、米とか農業になると、もういいやみたいな態度が見られるんです。皆さんはそんなことはないとおっしゃるかもしれませんけれども、明らかに客観的な事実はそういう傾向があるんじゃないかと思います。私は、その点はぜひ改めていただきたい。

 それで、そういう材料が今提供されているわけです。一番好例が、八ページのところを見ていただきたいんです。八ページの二ですよ。ミニマムアクセス米というのをさんざんすったもんだして、ウルグアイ・ラウンドが終わりました。変なルールだと思いますよ。私もこれをやっていましたけれども、こんなルールを何で認めなくちゃいけないんだと、腹立たしくてしようがなかったですよ。政治家になるなどというのは夢にも思いませんけれども、そのとき、僕が農林水産大臣だったらこんなのは絶対認めさせないという自信はありました。早くつけさせていただきたいと思っているんですけれども。

 本当に、ミニマムアクセス、余っているのに、国内消費量の三%とかいって、日本がごちゃごちゃしているからもっと輸入しなくちゃならなくなって、七十六万トン強、毎年輸入しなくちゃならなくなっているんですね。ところが、その国際的な義務を、物が足りなくて輸入できないという皮肉な結果になっているわけです。この事実関係がどうなっているか、御説明いただきたいと思います。

奥原政府参考人 四月二十二日に実施をいたしましたミニマムアクセス米の買い入れ入札につきましては、六万二千五百二トンの全量が落札をされなかったところでございます。

 これは、先ほど申し上げましたように、インド、ベトナムの輸出国の輸出規制が行われる中で、タイ産米を中心とする国際価格が急騰したことを反映したものというふうに考えております。

 今回落札されなかった分の取り扱いにつきましては、関係方面と協議しながら検討しているところでございますけれども、その際には、この米の国際価格の高騰が食料の輸入途上国に深刻な影響を与えていることにも留意する必要があるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、国際約束の誠実な履行それから国際的な食料事情、こういったことを踏まえまして適切に検討してまいりたいと考えております。

篠原委員 日本はまじめですから、これを適切に実行しようとして買い入れようとしたんですけれども、買い入れられなかったんです。これはどうするんですかね。こんなのだったら、アメリカからいっぱい輸入されているはずですから、さんざん国際的な責務として押しつけたんだから、自国には供給できなくても、日本に義務づけた七十六万トンの枠を達成させるために優先的に、一年前と同じ価格で輸出しろと言ったっていいような気がするんですけれども、そういう主張はできないんでしょうか。

奥原政府参考人 実は、この関係では、先週末にアメリカのUSTRの方から声明が出されております。その中では、最近の世界の米市場の状況は特殊であるということが言われておりまして、従来アメリカ側は、日本が輸入したミニマムアクセス米につきましては原則的に日本国内で消費をすべきだという主張をされておりましたけれども、今回の声明の中では、ことしの米市場の特殊状況のもとで、米市場を鎮静化させるための特別な措置を検討することも正当化されるといったことまで、アメリカの方で言われているという状況でございます。

 こういったことを踏まえまして、これから、被援助国あるいは国際機関の方からの要請を踏まえまして、今後どういうことをしていくか、慎重に検討していきたいというふうに考えております。

篠原委員 そんなに優しい態度をとらなくたっていいと思います、こういう状況になってきたので、ミニマムアクセスなんてそんなのをやって、日本が毎年七十六万トンずつ国際市場に参入するというのは。

 先ほどの三ページの輸入量のところを見てください。ここに出ていませんけれども、六年―七年のところで一番多いのがインドネシアの二百万トン、五番目のサウジアラビアが百万トンです。日本は何番目なんですかね。多い方から十番以内には入っているんです。日本が七十六万トン輸入することが、国際価格を高めたりしているはずなんです。

 そしてまた、ミニマムアクセス米で余っているのはいっぱいあるんですよ、九ページに在庫百五十二万トンと。アメリカは勝手なわけですよ。それは絶対援助用に回してはいけないと。これは前から、ウルグアイ・ラウンドのときにもありましたけれども、何構想とか、それぞれの名前をつけて呼ばれていました。二階堂構想とか言われたりしたこともあったような記憶があるんですけれども。ミニマムアクセス米、日本でまずい米なんか食べる人はいないんだから、それを援助に回すと言ったら、アメリカが、だめだ、日本の消費者に食べさせろと。まずいものを輸出しておいて、食べさせろもないものだと思います。

 それで今度は、こういう事態だから特別に援助用に回していいとか言う。それは結構だと言ってもいいと思いますけれども、もうミニマムアクセスなどというのはチャラにしましょうというふうに言っていくべきだと思います。農林水産委員会で若林大臣にきつく言おうと思っていますので、ここでやめておきます。

 こういうときに、日本の役割は何か。草賀審議官が、経済連携だ、自由貿易だけじゃないんだ、国際協力とかそういうのをみんな含んでいるんだ、FTAはただの自由貿易協定だけれども、経済連携なんだと。それだったら、役立ててください。日本の役割というのは幾らでもあるんですよ。これだけ困っている。やはり日本の稲作技術というのは大変なものなんです。それが虐げられて、米がとれ過ぎてよくないというのは、技術陣というか関係者はかわいそうだと私は思います。

 しかし、そういうノウハウを持った技術者あるいはプロの農民が幾らでもいるわけですから、こういう機会にODAをふやす。ODAというと何かお金を与えるみたいになりますが、そうじゃないんです。そうじゃなくて、ちゃんと米のつくり方、東南アジアと日本とちょっと違うと思います。向こうは二期作、三期作です。ちょっと違ったりしますが、基本的に同じです。こういうときこそ、日本が手を差し伸べて、もうちょっと収量を高くする米のつくり方があるんですよということで、積極的に米の生産技術協力を、この新たに設けられる日・ASEAN・EPA、あるいはもう既に各国別で結んでいますね、そういうところで大々的にしていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 今御指摘の食料の問題というのは、今回のTICADそしてサミットの中でもいろいろな議論がなされると思っております。大変重要な課題だと思っております。

 日本ができるさまざまな技術支援がございます。篠原委員は一番造詣が深いお立場でありますが、ぜひそういう日本のいろいろな知識をこういう食料生産の部分に関しても積極的に活用していきたい、そう思っております。

篠原委員 ODAをふやしていただくのは結構ですけれども、こういうところに使っていただきたいと思います。

 米の分野では、皆さん御存じだとは思いますけれども、ネリカ米とかネリカ稲とか呼ばれて、アフリカに合う品種ができて、いろいろなところでつくり始めているはずなんです。そういうことは幾らでもできるんです。お金はそんなにかかっていないんです。やはり、日本は人、技術でもって貢献していくべきだと思いますし、こういう機会にぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 それで、日本の外交姿勢ですけれども、いや、それぞれ違うのでEPAとFTAに分けてやっていくんだ、非常に結構なことだと思いますよ。では、今、日本の食料問題を考えたらどうなるかというと、中国の毒ギョーザ事件、これは地産地消に反して、中国で安い賃金を奇貨として、あちらの皆さんにつくってもらったのを冷凍して日本に持ってきて食べているという、これは非常に見苦しいやり方ですよ。それで、東南アジアが米不足、米飢饉になっている。

 こういうことをやったら、とってつけたようにテレビのコメンテーターなんかが、いや、こんなに自給率が低いとは知らなかった、こんな依存体質になっているとは知らなかった、中国にこれほど依存しているとは知らなかったとか言って、地産地消とかフードマイレージというのは私のつくり出した言葉なんですが、これを何かその辺のテレビタレントがまことしやかに言っている。こういうのに迎合していく必要もないんですけれども、やはりこういうことをよく見て、日本が確固たる姿勢を世界に示していくというのが必要なんじゃないかと思います。

 外務大臣にお伺いしたいと思います。

 外務大臣の地元も農村地帯を多く抱えているところのはずですね。私は、日本の地方と都市の格差がどこから始まっているかといったら、いろいろな原因がありますけれども、一番の要因は、米をないがしろにして、安ければいいんだ、国内でもほかの作物と同じように扱ってやっていけばいいんだといって、米の価格は十年前、一俵当たり二万円を超えていたんですよ。今は一万二千円になっちゃっているんですよ。これが根本原因なんです。こんなところにお金をつぎ込んだって、大したお金じゃないんです。大したお金じゃないというのは国民におしかりを受けるかもしれませんけれども、絶対に、まさかのときに国民は怒らないはずです。

 そういう確固たる姿勢を持って、ありとあらゆる国際会議の場でも、日本は基幹的食料は絶対自国でつくるんだ、それはどんなことを言われたって曲げるつもりはない、こういう姿勢で臨んでいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

高村国務大臣 自民党が政権を失っている間に米を輸入するようになってしまったなということを思い出しながら、委員の言うことを聞いておりました。

 我が国の食料の安定的な供給については、国内の農業生産、輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行う必要があると考えております。このうち農業生産の強化については、日本を含む国際社会の食料安全保障の確立のために重要であります。

 我が国は、かかる考え方をもとに、六月のFAOハイレベル会合、七月の北海道洞爺湖サミットにおいて、現在世界が直面する食料問題に取り組み、議論を深めていきたいと考えております。

篠原委員 先頭に立ってやっていただきたいと思います。大義名分は絶対にありますから、何も恥じることはないんですね。これはほかの国々、発展途上国の共感は完全に得られるはずなんです。だから、それをぜひやっていただきたいと思います。

 なぜかというと、国の役割というのは、地方分権でいろいろ議論されていますけれども、いろいろなものは地方に任せたらいいのだろうと思います。農業政策のいろいろな細かい部分は地方でいいだろうと思います。しかし、食料自給率をきちんと維持していくという根幹に係る政策は、霞が関の農林水産省がやらなければいけないと私は思います。

 国の政策として何が挙げられるかというと、国民の生命、安全を守るということ、これが根幹ですね。あちこち見ていますと、いろいろなものがあるんですが、今、軍事的なそちらの方のばかり何かぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ言う人たちが出てきているんですね。それはそれで私は悪いことではないと思います、大事なことですから。戦後、二十年、三十年、ずっとないがしろにしてきたわけですから、それをきちんとやらなくちゃいけないというのはいいのですが、その一方で、食料についてはもう外国に偏ったっていいんだ、何とかなるわというのは、安全保障のことを考えたら絶対成り立たないんです。

 ところが、日本は軍事的なタカ派みたいな人がいるんですが、この人たちが食料についてどう考えているかというと、びっくら仰天するんですけれども、平気で自由化していいと言うんですね。これは、世界の軍事、安全保障専門家はそんなことを絶対言わないです。エネルギーも食料もいろいろな技術も、軍事的にも全部自分の国内でと。

 国の真価が問われるのはどういうときかというと、私は危機管理のときにきちんとできるかどうかだと思います。ですから、中国の今度の大地震は、中国の国家としての真価が問われているんじゃないかと私は思います。そうした中で、いろいろな動きが日本との間でもあります。

 震災が起きてすぐ緊急援助隊を送ろうということで申し出た国がどれだけあるかというのを聞きましたら、一番最後のページにありますけれども、救助チームを日本、韓国、ロシア、シンガポール、四カ国が申し出ていたそうですけれども、日本に対して初めて中国が緊急援助隊の受け入れを表明した。三日後というのは遅いと思います。かわいそうだと思いますよ、助けたかったのに、三日後に行ってほとんど遺体を発見するだけだというのは。緊急援助隊の皆さんはいらいらされていたのじゃないかと思います。

 しかし、隣の国の韓国、隣の国のロシア、日本も海を隔てて隣かもしれません、シンガポールとかいった国じゃなくて、日本にまず来てくださいと言ったことには重要な意味があると思いますが、外務大臣はこの背景についてどのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 中国側は、近隣国で迅速な派遣が期待できたと説明しておりますが、震災対策に豊富な経験を有する日本の国際緊急援助隊の能力と技術の高さが評価されたということだと考えております。要するに役に立つと思った、外交当局同士で役に立つよということをきっちり伝えて、そういうことを納得した、こういうことだと思います。

篠原委員 それは技術的にというか、表面だけ見るとそうかもしれませんけれども、私はもっと深遠な意義があると思っています。中国は日本を信用しているんだろうと思います。ほかの国々は、大量破壊兵器があるとかいってばんばんばんばん侵攻していったりする。どこか外国に軍隊を送るというときには、何か、へ理屈をつけて行きます。それで居座ったりするというのが歴史的に繰り返されているわけです。そういう邪念のある国は受け入れないだろうと思います。それに対して、日本はそんなことを最もするはずのない国であるというのが中国もわかっているからじゃないかと思います。私は、これは非常に大事なことだと思っております。

 日本の軍事的な脅威に対しては、アジアの近隣諸国は非常に心配しています。心配していますけれども、私は、イラク派兵、これはひょうたんからこまで、これにいい補強証拠を提供したと思っているんです。

 つまり、初めて行ったときに、韓国はいっぱい出していますから何も言いませんでしたけれども、ほかの国はかたずをのんでイラク派兵のとき見守っていたはずです。ところが、行ったはいいが、本当にまじめに、憲法九条の精神を忘れず、武器を携帯せず、軍事的なプレゼンスみたいなものは一切なしで、ほかの国の軍隊に守られながら復興援助だけをしてきている。日本というのは本当にくそまじめな国で、こういう国なんだと世界の軍事専門家はこれで安堵したはずなんです。それが私は背景にあると思っている。つまり、日本はそういう国なんだ、そういう変な軍事的な野心はない国なんだというふうにお墨つきをいただいているんです。

 外務大臣がお答えになりましたとおり、非常に日本の技術力はすぐれているというのが少しずつですけれども定着してきているんじゃないかと思います。インドネシアの津波のときも行ったりしていますしね。ですから、私は、国際的貢献をするのであったら、こういう分野に重点投資をして、訓練して技術を磨いて常に用意しておくというのが一番手っ取り早いという気がするんですけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 今委員がおっしゃったことに、今の部分だけに限れば反対するところは全くございません。そうだと思います。

 東南アジアでも、日本の軍事力というのをそんなに心配している国はないと私は思います。あるとすれば、むしろ国内が火つけ役になって心配だ心配だと言うから心配しているということが多くあるのではないか、こういうふうに思っております。

篠原委員 私に御賛同いただいてありがたく思っていますが、もしそれだったら、海外に自衛隊を派遣できる恒久法をつくるなんというのはやめるべきだと思うんです。つくるんだったら、緊急的に災害援助隊をさっさと送るという法律をつくって、常に準備させておく。

 そういったところに、逆に今度は向こうから要請があったのが、医師団の派遣ですよね。それも、災害復旧援助のための救助隊そして医師団、今ある言葉をかりれば、国境なき緊急援助隊、国境なき医師団を、日本国政府の肝いりで、ASEANセンターにつぎ込んでいるお金と同等ぐらいをつぎ込んでやった方が、国際的にはずっと感謝されるんじゃないかと思う。

 ぜひこういうことを検討してまいりたいと思いますので、私は少なくともそういう法案をちょっと余裕があったら提出していきたいと思っておりますので、そのときは御賛同いただけるようお願いしまして、私の質問を終わります。

高村国務大臣 先ほどおっしゃったことは賛成でありますが、自衛隊が行くということについても国際社会は心配しないということも委員はおっしゃったわけであります。だから、緊急援助隊から自衛隊を排除する必要は毛頭ない、こういうふうに思っています。

篠原委員 質問時間が終わってしまいましたので、その議論はまた次回にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 二之湯総務政務官もおいでいただきまして、ありがとうございます。

 まず、きょうも同僚委員から既に質疑がございましたが、ミャンマー、中国災害支援について伺わせていただきたいと思います。

 国際緊急援助隊の最初の第一陣は、二回に分かれて六十一名派遣、そしてまた帰国の途につかれたということで、本当に大変なお働きをいただいた、心から敬意を表する次第であります。確かに生存者の救出にはつながらなかったとしても、大変な貢献を現地でいただいたことに感謝を申し上げる次第であります。

 国際緊急援助隊の所管省庁は総務省ということでございますので、第一陣帰国ということになって、これを振り返ってどのように見ておられるのか。また、六十一名の内訳を見ますと、警視庁、消防庁、海上保安庁が中心のメンバーでございますが、私は、もうちょっと消防庁がたくさんいてもいいのかなという印象も受けておりますので、そうしたことも踏まえて総務省としての御所見を伺いたいと思います。

二之湯大臣政務官 国際緊急援助隊は、被害を受けた国から外務省に要請がございまして、そして外務省が消防庁にまた要請する、こういうことでございます。この具体的な人数、規模等は外務省が決める、こういうことになっておりますので、消防庁といたしましては、外務省の要請どおり今回派遣した、こういうことになっております。

武正委員 あと、団長のテレビでのコメントなども見ておりますと、きょうも既に外務省からもお話があったように、もうちょっと早く現地に入りたかったというようなこととか、行ってみて、移動時間とかあるいは捜索の場所の選定とか、いろいろとやはり課題があったということを述べておられますが、そうした今回の派遣についての御感想、御所見も触れていただけますでしょうか。

二之湯大臣政務官 御承知のように、地震が発生してから我が国の消防援助隊が中国に行って救助活動を始めたのはかなり時間が経過してから、こういうことでございまして、当然、発生直後に行けば、これは仮定の話でございますけれども、何名かの人命を救助できたんじゃないか、このように言われておるわけでございます。

 しかし、先生も御案内のとおり、テレビ等で見ますと、日本の建物とあの中国の建物は、中国の場合は鉄筋コンクリートではありませんので、すき間がなくて、どさっと一遍に崩れ落ちておるということでございまして、今までの日本の消防レスキュー隊の活動と若干違ったような感じでございます。

 しかし、一生懸命頑張って、たとえ一人の生存者も救出できなかったといたしましても、テレビ等で中国政府が非常に日本のこの消防の活躍に深い敬意と感謝の気持ちをあらわしておるということは、非常に目に見えた国際的な援助活動だったのではないか、このように思うわけでございます。

武正委員 また、二十日から六月二日までの第二陣ということで、これは医療メンバーが中心ということで派遣をされておりますので、またこの医療、看護を中心としたメンバーの皆さんが本当に現地で活躍していただいて、貢献していただくことを御祈念申し上げたいと思います。

 外務省あるいは外務大臣、今の第一陣なんですけれども、資料をいただきましたら、六十一名の構成は、消防庁さん十七名、一番多いのは警視庁二十名、それから海上保安庁十三名、JICA六名、医師四名、外務省一名、合計六十一名。私は、警視庁が多いなというふうに思って、意外だったのです。

 今、総務省さんは、人数の構成は外務省が決めるんだというお話だったのですが、もうちょっと消防庁のレスキューが多くていいんじゃないかなと思ったのです。ここら辺、もしおわかりならば、御感想でもお答えいただければと思うのですが、いかがでしょうか。わかりませんかね。

高村国務大臣 私にはちょっと、正確な答えをしかねます、わかりませんが、衆知を集めていいバランスで送ったのだとは思っておりますが、今コメントするべきことはございません。

武正委員 そこで、政務官、もうちょっといていただけるとありがたいのですが、ミャンマーについても伺いたいと思います。

 先ほども御紹介があったように、先週の金曜日、五月十六日、外務委員会は、ASEANセンターでASEANの大使と意見交換を行いました。私からも、議長役のタイの大使からお答えをいただいたのですが、過去もアチェの津波とか起きているので、そうした災害のときにASEAN十カ国でお互い連携して協力するということはやっているんですかというふうに尋ねましたら、タイの議長さんが、実はASEANレスキューチームというのがあるんだというお答えだったのですね。今度は、高村大臣もきのうですかお会いになっておられますミャンマーの大使に聞きまして、では、ミャンマーはこのASEANレスキューチームは受け入れていますかと言ったら、いや、お医者さんをタイから受け入れていますと。たしかそのときにはインド、バングラデシュ、中国と言われたでしょうか。ということは、お医者さんは受け入れているけれども、ASEANレスキューチームはまだ受け入れていないという話でございました。

 調べてみますと、二〇〇五年七月二十六日にビエンチャンで災害管理緊急対応というASEAN協定を結んでいる。ASEANレスキューチームとタイの大使が言ったことは多分このことじゃないのかなというふうに思うのですが、今、このASEANレスキューチームは受け入れるような可能性もあるという報道もあります。

 その後に、平沢委員長が、もっと早く人をやはりミャンマーは受け入れるべきですよというような話で、かなり突っ込んだ話もミャンマー大使とその場でできたということで、そういう意味では、非常に成果があったなというふうに私も承ったわけであります。

 ミャンマーでの人的な受け入れということで、このASEANレスキューチームあるいはASEANの災害管理緊急対応と日本が何か連携を図っていくこと、こういった可能性がないのかな。きのうは、たしかミャンマーの大使と港の船の引き揚げということで、ああ、これは非常にいいアイデアだなと私も報道で拝見をいたしました。一方、このASEANレスキューチームというのがあるらしいので、そことうまく連携していると、こうしたASEANは非常に災害が多いので、そこにうまく人を出せる可能性があるんじゃないのかなと思うのですが、この点について、あわせて御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 先ほどの、警察十三名はちょっと多過ぎるんじゃないか、消防はもっと多くというのは、これは同じような訓練を平素から受けている人たち、消防十四名、警察十三名、海保十二名が小隊三十九名、同じ隊となって行った、こういうことだそうであります。

 それから、ASEANのレスキューチームと日本のレスキューチームがふだんから訓練するということが必要かどうか、そういうことではなくて、タイの外務大臣と会ったときも、私の方から、タイはミャンマーに対する寛容政策をとっておりますから、タイだけじゃなくてASEANのかなりの国が寛容政策をとっていて、それなりの影響力があるので、国際的にレスキュー隊を、要するに人的支援の受け入れをタイの側から説得してほしいと私の方から申し上げたことがあるわけであります。

 それでそうしたとは申しませんけれども、その後、特使を派遣し、また首相みずからが行って、そういう中からASEANについては受け入れる、それからその前に隣接国については受け入れる、そういうことになっているわけでありますが、昨日私の方から申し上げたヤンゴン港における沈没船の引き揚げに関しては日本の人的支援を受け入れる、こういうことになって、少しずつ、国際的に連携をとりながら、ミャンマーが多くの人的支援を受け入れるように説得していきたい、そう思っております。

武正委員 私も警視庁の皆さんの御尽力に心から敬意を表するわけですが、ただ、中国側のカウンターパートが中国人民解放軍ということで、一部の報道では、やはり日本が来てというようなところの、そうしたアレルギーのようなことも報じられていたところも確かにございます。また、既にアチェの津波、あのときも、特にアメリカの艦船などがやはり現地に入ることに対して非常に抵抗感があったというような報道もございます。それは率直なところだというふうに思いますので、受け入れやすいような、そうしたタイの組織ということで、私はやはり消防庁さんはもうちょっと枠があっていいんじゃないかなというふうに思ったので、それを触れたわけでございます。

 ぜひ、先ほどの、タイの大使がいみじくも提起をされたASEANレスキューチームあるいは災害管理緊急対応、ビエンチャンでのASEAN協定と何かうまく連携を事前に図られるようにお願いをしたいというふうに思います。

 総務政務官、何か一言、御感想があれば。

二之湯大臣政務官 もちろん、今の先生の御指摘のように、そういう被災国があれば進んで日本が目に見える形で日本の高度な技術をもって人命救助に当たるということは、大変重要なことだと思います。

 せんだっても、世界消防団会議、私もこれは余り知らなかったんですが、中国にも五百万人の消防団員がいる、こういうことを伺いました。先週、非常に大きな成果を上げてこの会議が終わったわけでございます。そういう団員レベルでの交流を通じ、あるいはまた政府間同士の公式な緊急援助隊が活動すれば、それはまた非常にASEAN諸国にとっても大きなプラスになるんじゃないか、このように思いますので、消防庁としても前向きに取り組んでまいりたい、このように思います。

武正委員 もう時間になりますので、最後に一言。

 TICADが始まりますが、やはり食料高騰ということで、サミットでも取り上げよう、TICADでも取り上げていくということでございますので、私は、バイオエタノールでやはりトウモロコシはおかしいよということをぜひ日本はアメリカにもサミットで言っていくべきだということをこの間提起し、外務大臣も、研究してみるというか勉強してみるというようなお話でありました。特に、TICADでこうした食料高騰への日本の対応、先ほどネリカ米のこともございましたが、何かメッセージを用意されている、あるいは準備されているのか、御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 アフリカ開発会議、TICAD4に際しましても、本会合や農業分野に係る分科会等を通じて、アフリカ諸国首脳、国際機関代表等参加者よりさまざまな議論が当然行われるものと考えております。特に、この問題に焦点を当てて、世銀、WFP、FAO及びIFAD主催によるハイレベルパネルディスカッションが行われることになっておりまして、我が国も参加し、議論に貢献していく所存でございます。

 我が国は、この世界的な課題に対し、アフリカ開発会議を主催する機会をとらえて国際的な議論に積極的に貢献するとともに、G8議長国として、その成果を踏まえ、七月の北海道洞爺湖サミットにおいて本問題を取り上げて、力強いメッセージを共同で発出できるように各国と協議を行っていく考えでございます。

武正委員 以上で午前中の質疑を終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 午前中に引き続き、質疑を続けさせていただきます。

 宮下財務大臣政務官もお運びいただきまして、ありがとうございます。

 この後、ASEAN・EPA、経済連携協定、それからASEANセンターの条約についての質疑に入らせていただきますが、外務省の方も、ASEANプラス3、五十五項目ぐらい協議事項がある中で、やはり一番成果を上げているのが、チェンマイ・イニシアチブを初めとするASEANプラス3での金融面での連携だろうというようなことを言っておられました。

 ちょうど五月四日、スペインにおきましてASEANプラス3の財務相会合も行われたわけであります。お手元の方には資料として、これは多分財務省さんにおつくりいただいた資料だと思いますので訂正をさせていただきますが、ASEANプラス3の現地通貨建て債券市場の規模も、中国は昨年の九月で一兆五千億ドルを突破しておりますので、多分今ぐらいだともう二兆ドルぐらいいっているんでしょうか。日本が八兆八千億ドル、韓国も一兆一千億ドルということで、現地通貨建て債券市場も拡大をしております。続いて三枚目の、チェンマイ・イニシアチブ、二国間の通貨スワップ取り決めも、さらに大きくというようなことがスペインで協議をし決められたというふうに伺っております。また、そのほか、資金供給の発効条件とか経済情勢などの相互監視、サーベイランスの仕組みについても議論をしたということであります。

 まず、このスペインでのASEANプラス3の財務相会合で決まったこと、あるいは議論をしたこと、課題として挙がったことなどをお答えいただけますでしょうか。

宮下大臣政務官 お答えをいたします。

 今先生御指摘のように、今回のマドリードで行われましたASEANプラス3財務大臣会合において、チェンマイ・イニシアチブまたアジア債券市場育成イニシアチブをさらにどういうふうに発展させていくか、実のある議論がされたというふうに伺っております。

 そもそも、このチェンマイ・イニシアチブやアジア債券市場育成イニシアチブは、九〇年代後半のアジア通貨危機の苦い経験を踏まえて、このような危機は繰り返さないようにということで、安定した資金の調達、運用、投資が行われるようにということで始められてまいりました。

 まず、チェンマイ・イニシアチブにつきましてでございます。きょう先生がお配りいただいた資料にもありますように、二国間でどんどん合意が積み重なってきたということでございますけれども、このたびの会議では、これを一括マルチ化する、多国化するということで、さらにレベルの高い包括的な枠組みにしていこうということが話し合われました。また、拠出総額についても、今、二国間の合意、積み上げますとネットで五百八十億ドルなわけですが、マルチの場合には、それをさらに強化して八百億ドル規模のマルチの仕組みにしていこうということ。また、先生御指摘のように、域内サーベイランスについても、頻度をふやす等でさらに強化していこうということが決まったわけでございます。

 また、アジア債券市場育成イニシアチブにつきましても、ちょうどこれが始まって五年目を迎えるということで、新ロードマップに合意をしたところでございます。この新ロードマップは、現地通貨建て債券発行でありますとか需要の促進などの分野につきまして焦点を当てて、各国が進捗状況を評価するための基準を導入することなどを柱としております。

 このように、アジアにおける地域金融協力は大きな進捗を遂げているところでございますけれども、我が国としても、引き続き、ASEAN諸国また中国、韓国とも協力しつつ、積極的に地域金融協力を推進してまいりたいと考えているところでございます。

武正委員 このASEANプラス3の財務相会談には外務省さんも行っておられたんでしょうか、もしわかれば。財務省さんだけなのか、外務省も一緒なのか。

小野寺副大臣 行っておりません。

武正委員 先般、このことを当委員会で外務大臣に申し上げましたら、これについてはいろいろと研究する、勉強する、そういうような趣旨でたしかお答えになられたと思うんです。

 なぜこのことを申し上げるかというと、ASEAN憲章が去年十一月二十日に署名をされているわけでありまして、民主主義、法の支配、人権尊重、グッドガバナンスなども盛り込まれていますけれども、ただ、やはり国内問題への不干渉原則は維持ということであります。

 民主党の部門会議でも、外務省の方に、ASEANの十カ国のリーダーはどこなんでしょうというような質問が同僚委員からありました。人口でいえばインドネシアでしょうし、例えばGDPの一人当たりの額などの先進性からいうとシンガポールなのかもしれませんし、また、最初の五カ国、そしてブルネイ、そしていわゆるメコン流域の四カ国が参加という、そうしたASEAN域内のある面格差と呼ばれるものもあるということであります。

 ASEANについてはASEANプラス3という枠組みもありますが、これも、ASEANプラス3については、どちらかというと中国が主導しているんだというような認識を外務省で持っておられるような話を伺いました。日本は、それにさらに三カ国ということで、オーストラリア、ニュージーランド、インドだったでしょうか、そうしたことを提案したということでもありました。

 ただ、このASEANプラス3の中では、チェンマイ・イニシアチブとかその前のアジア債券市場構想は日本が非常に主導的な役割を果たし得る分野だというふうに認識をしておりますので、こうして提起をさせていただいております。アジア通貨危機のときに、宮沢ファンド構想などがありながらそれがつぶされたというか、ポシャった経緯がありますが、その後、こうした芽が今非常に伸びている、育っているということでありますので、ぜひ外務省としても、財務相会談でありますけれども、こうしたASEANプラス3の概括のお互いの協力、あるいは現地通貨建て債券市場を大きくしていくということに御関心をお持ちいただきたいというふうに思います。重ねて、大臣のこの取り組みへの御所見を伺いたいというふうに思います。

高村国務大臣 こういう取り組みは専門家である財務省が、日本だけでなくて各国ともそれでやっておりますが、やはり外交の一元化という話もあるので、外務省が関心を持つのは当たり前のことでありまして、財務省と連携をとりながら、日本外交そしてこの地域全体の繁栄のために生かしていきたい、こういうふうに思っております。

武正委員 わかりませんけれども、あちこちで経済大臣のそうした会議とかいろいろありますけれども、そういったところに外務省さんは行っておられないのか、あるいはそういうときでも行く可能性は十分あるということで、行っても構わないのか、行っているのか。そこら辺、ちょっと初歩的な質問ですが、お答えいただけますか。

小野寺副大臣 各省庁と連携しつつ、外務省も出席させていただいております。

武正委員 財務省さんからしてみたら、例えばASEANプラス3の財務相会談に外務省さんが来ると邪魔だというようなことはないということでよろしいですか。

宮下大臣政務官 例えば債券発行でも、国内でのいろいろなプロジェクトはやはり外務省さんがかかわって情報を得られている件も多いでしょうし、お互いやはり連携することがこの市場が発展するためにも非常に重要だと考えております。

武正委員 それでは、政務官、ここでお時間、どうもありがとうございました。

 これは、おわかりになればお答えいただきたいんですが、ASEAN憲章を見ていたら、ASEAN各国代表部をジャカルタに設置、ASEAN内部の意思決定は右代表部間の協議メカニズムを通じて行う、またASEANの域外対話国はASEAN担当大使を任命することができるというのがあります。ASEANの域外対話国にもし日本が入るとASEAN担当大使というのを任命することができるというのをASEANが言うのもおかしいなとは思うんですが、例えば別な観点から、ASEAN重視というようなことで、今それぞれの大使がいますが、ASEAN全体を見る大使というのは今どなたが任命されているのか、お答えいただけますか。

小野寺副大臣 特にASEAN全体を見るASEAN大使みたいなものは、任命をしておりません。

武正委員 この間、ASEANセンターに外務委員会が行きまして、十名のASEAN大使、お二人は代理だったでしょうか、意見交換をしまして、この後触れるASEANセンターのあり方についてもいろいろと意見交換もしましたし、先ほど御質問したように、ミャンマーの大使あるいはミャンマーの受け入れについても突っ込んだやりとりがありました。

 今回のこのASEANセンターの強化というのは、やはり日・ASEANで合意をして、相互の貿易、投資、観光そして人物交流ということをさらに深化させようというねらいというふうに承っているんですが、これは、例えば、ASEANを担当するような大使みたいなものが日本にいてもいいのかなというふうに思うんです。これは思いつきの域で、ほかの国にもしかしたらそういう人がいるのかいないのかも私は承知しておりませんけれども、ASEANに対して日本の積極的な意思を表明するいろいろなやり方があると思うんです。ASEANセンターの強化もその一つなのかもしれませんが、その一つとしてこういうアイデアというのはいかがでしょうか。

小野寺副大臣 ASEAN憲章が来年以降発効する状況になりましたら、日本もASEAN大使というものを任命する検討が必要かというふうに思っております。

武正委員 これはASEANが任命することができると言っているんですね、この日本語からちょっとどういうことかなというふうに思いましたが。ぜひ、そうした積極的な取り組みを日本としていち早く示していただきたいというふうに思います。

 そこで、ASEANセンターの条約改正の、人物交流というのをちょっと伺いたいんです。

 この人物交流が条約にあります。また、人物交流の前に「適当な場合には、」、アズ・アプロプリエートと書いてあるんですね。ちょっとこのアズ・アプロプリエートというのもよくわからないんですけれども。ですから、人物交流の前に何か前提もついているようなんですけれども、今までなかったこの人物交流、これは一体どういうことなのか、お答えをいただけますか、中身について。

小野寺副大臣 近年の日・ASEAN首脳会議等におきまして、日・ASEAN間の相互理解促進の手段としての人物交流の重要性が確認をされております。また、東アジアにおきましては、さまざまな枠組みを活用しまして、環境・気候変動、青少年交流等の分野において具体的な協力が進展しつつあります。

 そのような状況を踏まえまして、我が国とASEAN各国との間でセンターの活動目的に人物交流を加えることで一致し、今回の改正に反映されました。

 どのような活動かといいますと、東アジアにおいては、さまざまな枠組みを活用し、環境・気候変動、青少年交流等の分野において具体的な協力が進展しつつあることを踏まえまして、センターとしては、そのような地域協力の進展も念頭に、センターの活動目的である我が国とASEAN諸国との貿易、観光、投資の促進に資する分野を中心に、日・ASEAN間の相互理解促進の手段として人物交流の促進の具体的な方策について検討を行っているものと承知しております。

 我が国も、センターの加盟国として鋭意検討に努めてまいりたい、そう思っております。

武正委員 第三条の五、六、七の人物交流にはすべて、「適当な場合には、人物交流に関する調査及び研究を行う」「適当な場合には、人物交流に関する情報並びにセンターによる調査及び研究の成果を提供すること。」そして「適当な場合には、人物交流に関する技術協力を促進すること。」、英文ではアズ・アプロプリエートというのがついているんですが、その理由は。逐条の話ですけれども、もしわかればということですが。

小野寺副大臣 まだこれからどのような具体的なアプローチあるいは先方からの提案があるかわかりませんので、現在のところそういう状況でさせていただいております。

武正委員 ということですかね。

 それで、お手元の資料の四ページ目は、日本語研修費用についてということで、昨年承認をしたフィリピンとの経済連携協定もありましたので、既に昨年度から経済産業省さんが予算化をした日本語研修の予算額十六億七千万円、五百人分、そして今年度はフィリピンに加えてインドネシアということで、経産省が十七億円、五百十六人分、外務省さんが六十人分、一・六億円の予算が立てられたという資料でございます。

 また、後で追加した二枚組は、これは厚生労働省さんからいただいた社団法人国際厚生事業団の資料ということで、インドネシア人看護師候補者、介護福祉士候補者の受け入れに関する手数料ということで、それを受け入れる特養とか老健とか、そうしたところが受け入れ機関として幾ら負担をするのかという資料を配らせていただきました。

 そこで伺いたいんですけれども、この人物交流に日本語の教育あるいは日本語研修というものが含まれるのかどうか、あるいは含まれる可能性があるのかどうか、あるいは検討されているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 そのような日本語の研修等のことも想定はされますが、まだ具体的には決まっておりません。

武正委員 それは大体幾らぐらいなのかというのは、割ってみますと、経産省の分で割りますと、一人当たり三百二十九万円、外務省さんですと二百六十六万円。一日当たりにすると、経産省が一万八千円で外務省が一万五千円ということで、上のAOTS、財団法人海外技術者研修協会という経産省の所管する財団法人での日本語等研修費用と比べていただきますと、企業を相手にするところに比べるとやはり経費は安いということになるんでしょうか。今、この海外技術者研修協会というのがありますので、フィリピンについてはここで受け入れるということで去年も予算化をされている。ことしについても、経産省はそのつもりでインドネシアからの受け入れも予算化をしている、外務省もそうであります。

 ただ、日本ASEANセンターがもし日本語研修を受け入れるのであれば、私は、海外技術者研修協会なる財団法人でなければ日本語研修ができないのかなというところもやはり精査がもっと必要なのかなと思っております。半年間の日本語研修、その後三年、四年看護師、介護士さんはそれぞれ現場で働いて、その間もそれぞれ受け入れの場所で日本語のいろいろな研修もやって、そして日本人と同じように看護師、介護士の試験を日本語で受ける、こういう枠組みでありますが、果たして財団法人海外技術者研修協会でなければだめなのかどうか。

 まだASEANセンターについては検討中ということでありますが、ASEANセンターでなければ、今のままですと、この海外技術者研修協会で日本語の研修を受けるということにインドネシアの方々はなろうかと思うんですが、あるいはほかでも大丈夫なのかどうか、外務省さん、おわかりになればお答えいただきたいと思います。

小野寺副大臣 今後の検討課題だと思います。まだ具体的に決まっておりません。

武正委員 この財団法人海外技術者研修協会以外でも、半年間、日本語の研修を受け入れることは可能であるということでよろしいですか。あるいは、それは必ずこの財団法人か、あるいは国がかかわるような施設でなければだめなのか。

小野寺副大臣 現在検討中ですし、可能性としてあり得る場合もありますが、やはり具体的に検討しながら決めて、細目を詰めていくことが一番重要かと思っております。

武正委員 日本にとって外国人の研修生の受け入れというのは、もう既に五省庁所管のJITCOの方もありますし、いろいろと実績はあるのかもしれませんが、さらに今度は介護士、看護師、EPAということでの本格的な受け入れがフィリピンそして今度インドネシアということで始まるわけでありまして、その前提にしている日本語研修のプログラムをどこが担当するのかということで、それについて、例えばこの額なども、先ほど触れたように、国からの予算が十七億、一・六億ということで立てられております。

 これに加えて、もう一つの厚生労働省のペーパーによりますと、例えば日本語研修機関への支払いということで、受け入れる例えば特養なり老健施設は、一枚目の一番下に書いてあるように、一名当たり三十六万円を日本語研修機関へ支払うことになっております。また、二枚目、注の四を見ていただきますと、日本語能力試験二級程度の能力を有する者は六カ月の日本語研修が免除され、入国した際に、JICWELSが手配する研修会場において一週間程度研修を受けなきゃいけない、一人当たり約二十七万円をお支払いいただきますということで、その受け入れについては、もう既にこのような額の決定もホームページでされているわけであります。

 こうした日本語研修機関にも受け入れ先のそれぞれの団体は一名当たり三十六万あるいは二十七万という額も払っていく、なおかつ、国から多くの補助金が、十七億、一・六億ということで出ていく、半年間で一人当たり三百万ぐらい国も補助をするという日本語研修が本当に実を上げないと、その後三年、四年せっかく現場で働いても、日本語の試験を日本人と同じように受けたときにそれがクリアできなかったら大変なことになるだろう、こういう話は既にEPAのときにも出ておりますので、やはり受け入れる場所の選定というのは大変大事だというふうに思うわけであります。

 財団法人海外技術者研修協会については、私もまたさらに、どういう中身を日本語研修でやっておられるのか、経産省の方もお見えいただいて話を聞きたいというふうに思っております。

 ただ、先ほどの同僚委員のやりとりを聞いていても、ASEANセンターで日本語研修のプログラムをよもややっていくというのは、これまでのセンターの運営の状況とか、あるいはこの後触れるスタッフの構成とか、あるいはまた、先ほど大臣はいらっしゃいませんでしたけれども、私もいただいておりますが、勘定元帳という二枚紙とあとは領収書の束というか、ただ打ち込まれた資料しかないというような、そうした会計の状況なども踏まえると、このセンターで日本語研修をやっていくというのはちょっと無理があるんじゃないかなというふうに思うんです。今検討中というお話でしたけれども、この点、外務省さんとしていかがでしょうか。

小野寺副大臣 ASEANセンターは、過去、さまざまな業務にも携わっております。今回の日本語の研修については現在検討中でありますので、済みませんが、まだ何も決まっている状況ではありません。

武正委員 次に、スタッフのことに移らせていただきますが、資料の五ページをごらんください。三十七名の内訳ということで、外務省さん、さっきから事務局長、事務局長と言いますが、事務総長ということでよろしいでしょうか。

小野寺副大臣 事務総長という呼び名を使っております。

武正委員 ASEANも事務総長だから、ちょっとかぶるということなんでしょうが、この事務総長さんがタイの大使を経験された方ということでいきますと、このスタッフの事務局体制からいうと、外務省が二名、経産省が二名、国交省が一名。人件費については、総勘定元帳から、平成十八年度二億七千二百八十三万二千円、そのうち事務総長さんの給与が、先ほど副大臣の御答弁では二千八十九万円ということで、一割弱ということになろうかというふうに思うわけであります。

 このスタッフの構成を見ると、先ほど触れたように、五名の方がそうした省庁から来られているわけでありまして、ASEANの貿易投資観光促進センターの役割が果たしてこういうスタッフ構成で本当に力を発揮できるのかなというふうに思うわけであります。もちろん、そうした省庁から定期的に人が順繰り順繰りというふうにかわっていくとすれば、当然、指摘されるような問題点、それからあとは、今度の条約の改正で、ASEANセンターの役割が本当に双方にとって有益なものになり得るのかということだというふうに思います。

 常設展示場の展示についても、二〇〇八年度につきましては、五月から七月にヘルス・アンド・ウエルネス、十月から十二月が食品、一月から三月がギフト、ファッション、アクセサリーということで、二カ月ずつ三回ということで常設展示を行っています。予算の関係でそれ以上はなかなか難しいというようなお話でありましたが、どういう方々が担当職員になっているのかというのもちょっと定かではありません。

 例えば、貿易、投資それから観光ということだとなかなか難しいのかもしれませんけれども、NGOなどの活動にも精通した人とか、NGOのそうした活動をしている人とか、あるいはそれぞれまた民間の企業の出身の方も、貿易部長代理の方は、前職は外国為替取引の会社に勤務をしていたというようなことも聞いておりますが、そうしたスタッフ体制もやはり工夫があっていいんじゃないのかなというふうに思います。

 もし中央省庁のいすと化すようなことがあったらやはりそれは改める必要と、あわせて、事務総長については公募するんだということも先ほど副大臣からも御回答いただいたというふうに思いますが、広くスタッフを募集する、集める、そしてASEANセンターがより力を発揮できるような体制づくり、中央省庁との関係、以上、お答えをいただけますでしょうか。

小野寺副大臣 まず、事務総長につきましては、広く公募をさせていただき、その中の経験としましては、民間企業あるいは国際機関、NGO等の業務に関連した方々にぜひなっていただきたい、そういうような制限が必要かと思っております。いわゆる天下り的なとらえ方をされないような、日本としてはそのような方を事務総長候補者として推薦したい、そういうふうに思っております。

 また、職員につきましても、現在、どうしても各省庁の人数が多いという御指摘もございます。できるだけ民間の経験者の方がより多く比率を占めるように努力していきたい、そう思っております。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 きょうは、条約ですね、包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定の締結ということであります。この締結が今回こうやって国会で議論されているわけでありますが、この日・ASEANの包括的経済連携の前に、既に中国とASEAN、韓国とASEANのこういったものはできているのかどうか、お伺いいたします。

草賀政府参考人 お答えいたします。

 中・ASEANそれから韓・ASEANですけれども、投資部分につきましての協定は残っております、まだ交渉中ですけれども、物品それからサービスについてはできております。

松原委員 投資部分は日本が先行する、こういう話でありまして、中国の場合はボックス方式というんですか、これと日本の今回の包括の協議の違いという点をちょっと簡単に教えてもらえますか。

草賀政府参考人 今委員御指摘の、いわゆるボックス方式というものですけれども、これは中・ASEANあるいは韓・ASEANが採用しているやり方でございまして、中・ASEAN、韓・ASEANの間で約束する内容として、最終年にある品目について〇%にするとか、あるいは五%にする、あるいは五〇%にするという最終年の税率までは決めるわけですが、その最終年に至る過程の税率についてはその国の裁量にゆだねるという形でございまして、その点が日本の交渉のやり方、つまり、過程においても具体的にどの品目を何%というのを決めていく交渉のやり方と違うというふうに理解しております。

松原委員 日本の交渉のメリットはどういうことでしょうか。

草賀政府参考人 やはり、具体的にどの品目が何年に何%になるということがお互いに約束されているということで、非常に確実かつ明快であるというところは一つ重要な点だろうと思っております。

松原委員 これからASEANがどういうふうな形になるのか。EECからスタートいたしましたEUは、今や一つの大きな家としてその姿をあらわしている。欧州議会のようなものも存在するわけでありますが、こういったASEANとEUというのは、ある意味でそういう類似の動きにこれからなっていくのか。つまり、議会を持ったりするところまでいくと思われるのかどうか。その辺の長期的な判断はどうなっているか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEANは、二〇一五年までに、政治・安全保障、経済、社会・文化、この各共同体から成るASEAN共同体を実現するということを目指してございます。昨年十一月、ASEAN憲章が御承知のように採択をされまして、民主主義、法の支配、人権尊重といった諸原則が確認をされております。

 そういう意味におきまして、欧州との比較において、欧州議会といったような形の機構はまだ想定されておりませんけれども、徐々にASEANの機構の強化、あるいは意思決定過程の明確化といったものがなされていくというふうに理解をしております。

松原委員 日本がこういったASEANとのさまざまな協議をする場合、窓口はラオスである、こういうふうな話を聞いておりますが、ラオスを通してさまざまなことの実現をするということにおいて、ASEANの中ではもっと人口の大きな国とかさまざまあるわけでありますが、ラオスとの関係は今どんな感じで進んでいるか、お伺いしたい。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ラオスは今、対日調整国ということで指定されておりまして、これが三年間にわたって日本との調整を行うということになっておりまして、窓口を務めているということでございます。

松原委員 こういうものは、やはり非常に日本のような国にとっては意味があると思うんですよね。ですから、もちろん、ラオスが調整国でありますが、ASEAN各国との連携、やはり先手必勝というのはこれはすべてのことに言えるわけでして、ASEANの中で私は恐らく、わかりません、しかし、欧州のように議会をつくろうという動きも出てくるかもしれません。ですから、そういうときに備えて、恐らく今のASEANのそれぞれの国の議員の方々が、ASEAN議会というのができれば、それなりに第一義的にそこにさまざまな形で選出をされる可能性が高いと思うんですよね。そういったことも含めて、情報収集しながら、ぜひ、統合ASEAN、二〇一五年という話もありましたが、日本もその中で大きな立場をつくるように頑張ってもらいたいと思います。

 そういったASEANと日本との長期的な展望について、大臣から一言御所見をいただきたいと思います。

高村国務大臣 ASEANと日本との関係は、伝統的に非常にいいものだと思っております。ASEANが統合してどういう形になっていくのかというのは、これはASEAN自身が決めることでありますが、日本もASEANがどう発展していくかということに、情報をとりながら、連携を密にして、日本にとってもASEANにとっても、両方にとっていいような状況をこれからもつくっていきたい、こういうふうに思っております。

松原委員 特に我が国は仏教国でありますので、ASEANの中にはイスラムの国家と仏教の国家があって、私もベトナム等を訪問したとき、極めて親日的でありました。そして、彼らは同じ仏教、仏教もいろいろな種類がありますが、仏教を一つの心のよりどころにしている日本に対しての親近感というのは極めて宗教的にも大きいというのを、我々が思った以上に向こうは思っているように感じましたので、ベトナムとかカンボジアとか、ラオスもそうだと思いますが、ASEANの中のこういった仏教国ですね、強弱をつける必要はありませんが、こういった仏教国とは一つの同じ宗教的部分からの文化的な類似性というのがあるわけですから、やはりここの四カ国、五カ国と、ASEANの中でも特に我々は文化的な部分ではさらに連携を強める必要があろうかと思っているわけであります。これは答弁は結構であります。

 続きまして、実は先般、長野県でオリンピックの聖火が走ったわけであります。長野のオリンピックの聖火が走ったときの状況、その辺について御質問をしたいわけでありますが、きょうは警察庁の方もお越しいただいております。長野においてこのオリンピック聖火リレーは混乱なく行われた、こういう御認識かどうか、まずお伺いしたい。

池田政府参考人 長野県警におきましては、リレーの万全の警備、それから関係者の安全の確保、周辺地域の安全の確保という目標を掲げて警備をしたわけでございますが、リレーに若干の妨害行為、あるいは小競り合い等ございましたけれども、総合的に見ますと、おおむね合格の警備ができたというふうに判断しております。

松原委員 警察の方で把握しているその若干の小競り合いの中身をもうちょっと詳しくお話しいただきたい。

池田政府参考人 聖火リレーをめぐる意見の相違等から小競り合いが発生したわけでございますけれども、両方からそれぞれ何件か被害申告が出ております。

 中国人に暴行を受けた等の被害申告は十二件ほどございますが、そのうち、現在被害届として残っているものは七件でございます。また逆に、中国人の方から、けがをした、暴行を受けたというのは、申告四件出ておりまして、現在残っておるのは二件、被害届を出されている。そういう状況でございます。

松原委員 今回のこの聖火リレーに関して、いろいろなマスメディアの報道がなされております。

 これは北海道新聞の報道であります。北海道新聞で、ここにこう報道されている。これは北海道新聞の女性記者の佐藤千歳さんという方が、現地、長野に行って取材をしているわけであります。

 いろいろと書いてありますが、非常にすごかったのは、この中で、日本人男性に中国女性留学生が襲いかかる。それをやめさせようと女子留学生の左腕をつかむと、何をすると。抵抗する彼女の右手を別の中国人女性もつかみ、私と二人で抑止した。ほかの中国の方もそれはやめろといって抑止したというのがここに書いてありますね。

 それからまた、五分後。私の横を警察官に守られた聖火が何事もなかったように走り過ぎた。立ち上がれ人民よ、敵の砲火をついて前へ進めという、中国の国歌ですか、これは。義勇軍行進曲の合唱が沿道から沸き起こった。中国の国歌の、立ち上がれ人民よ、敵の砲火をついて前へ進めという国歌が勃然と大きな声で歌われた、こう書いてあるわけですね。

 それから、後で時間があればいろいろとあれしますが、彼女のコメントとして、中国人観衆から水の詰まったペットボトルが投げつけられ、また機動隊に隔離された。ここではチベット旗を持つこと自体が危険行為であったというふうに書いてあります。

 北海道新聞の取材ということで長野に行って、彼女自身が三回後頭部を殴られた、こういうふうなことを、私きのうヒアリングをしているわけであります。

 どういう状況で彼女が後頭部を殴られたかというと、聖火が既に走り過ぎた後、聖火が走る前は非常にぴりぴりした緊張状況だったんですが、走り過ぎた後に、そこにいたウイグル人の方、そしてチベット人の方にヒアリングをしていたわけですね。記事の取材ですよね。そのときのウイグル人の方は世界ウイグル会議の方らしいですね、彼女がそこでウイグル人に聞いていた。そのときに、旗を持った中国人の一群が後ろから来て、道はそんなに、その段階はもう聖火が行った後ですから、普通に彼女がこっちで取材していてもこっち側を通れた状況であるけれども、その来た中国人の男性が彼女の後頭部を一発殴った。都合三回やられたということでありますが、こういうふうなことがあったというのは、それは被害届は出ていないと思いますが、出ていますか、北海道新聞。

池田政府参考人 本件につきましては、被害の申告はあったんですが、被害届は出ていないというふうに承知しております。

松原委員 どうなんですか。一般論として、普通に取材をしていて、後ろから後頭部を殴るというのは、これはどういうふうに警察は判断しますか。

池田政府参考人 ちょっと具体的状況がわかりませんので、ここで直ちにお答えするわけにいきませんが、もちろん、そういうことはあってはならない行為だというふうに思います。

松原委員 あと、これはもうテレビでも放映されておりますが、フジテレビのキャスターが、大村アナウンサーですか、これはもう、実況のときに後ろからやはり中国人に殴られていますよね。それはテレビでみんな見ているわけなんですが、こう中国人が殴っているわけですけれども、こういうのもどうなんですか、行き過ぎだと思うかどうか、ちょっと確認。

池田政府参考人 もちろん、決していい行為ではございませんけれども、刑法上犯罪にするかどうかは被害届等を見ながら判断したいということであると思います。

松原委員 決していいことではない、とんでもない話だと思うんだよね。後で、このでかい旗とかの話にこれから行くけれども。

 牧野聖修さんという衆議院議員がいるんですよ、民主党の議員でした、落選していますが。彼が今回これに行って、ポールで三回殴られたと言っていますよね。それは産経新聞に載っています。中国の旗で殴られた。これは、牧野聖修前民主党衆議院議員六十三歳と一面に載っていますよ。「“隠された”チベット旗」。善光寺から三十人のチベット人とともにチベット旗を持って行進した。行く先々で随分と中国国旗のポールでたたかれたり突かれたりしました。幸い仲間に大きなけがはありませんでした。こういう文章なんですよ。結局、かなりたたかれたと。

 私、牧野さんとも話したんですよ。三回ぐらいやられたと。どういう状況でたたかれたんですかと聞いたんです。普通に行進をしていたらば、そこでこっちの、これを見てほしいんですが、これ国旗ですよ、中国の。こういう国旗も、中国の国旗だらけだったんですね、実は。中国の国旗だらけで、この国旗は、目算でも、人の大きさがこれですから、大臣、そこにあるから見てください、人の大きさはこれですから、この国旗はかなりでかいですよね。

 こういう国旗は、長野県警の方で何旗ぐらい出たか把握していますか。ちっちゃいものはもう無数にあると思うんですけれども。

池田政府参考人 大小さまざまな国旗が持ち込まれたということは承知しておるんですけれども、全体の本数については、正確なところは把握しておりません。

松原委員 この一番でかい国旗というのは、警察の方では縦横何メートルと把握していますか。

池田政府参考人 計測はしておりません。

松原委員 これ、産経の記事に書いてあるのは、長野県の主婦。小学校一年生の長女と手づくりの日の丸を持って聖火リレーを見に行った。リレーコースには畳ほどもある中国国旗ばかりで圧倒されちゃったと。これは畳どころじゃないですから、畳のものもたくさんあるんですよ。圧倒されたと。おまけに至るところでどなり声。娘は、なぜ中国の旗ばかりで日本の日の丸はないんだと聞いていました。うまく答えられませんでした。十年前、長野五輪は本当に楽しい思い出しか残っていません。今回もあのときの再現になると期待して行ったのにがっかりしました。やっぱり沿道に五輪旗や日の丸がないのはおかしいんじゃないですか。こう書いてある。これが非常に問題だということですよね。

 やはり、これは聞いたら、こういうでかい中国の旗、この旗はさすがにそれは使わない、これは鉄パイプですから、鉄パイプ。横がこれだけいくというのは、これはやはり鉄パイプ的なものを入れてあると思うんですよ。こっち側でも押さえているんだと思うんですね、これは、見る限り。これは異様にでかいですから。

 どういうふうな状況で牧野聖修さんが殴られたか、ほかの被害者が殴られたかというと、大体パターンは同じなんですよ。だから、これはかなり計画的じゃないかという議論があるんですが、要するに、日本のデモ隊が、デモ隊といったって普通に歩いていくだけなんですよ。日本人というのはそこはおしとやかなんですね、普通に歩いていく。そうすると、一人ずつを隔離して、赤い旗で囲むらしいんですよ。警察にそういう情報は上がっていると思うんですが、一人ずつ隔離して、赤い旗で隔離して、その隔離する旗というのはこんな、ここにあるような、八メートルもあるようなでかい旗じゃないと思うんです、もうちょっと小さいもので、一人をくるっと回るような。隔離した後で、違う旗のポールでたたく、こういうことが大分行われていたことが、きのう何人かにヒアリングして明らかになったわけですよ。

 こういったことは、警察の方は把握していますか。

池田政府参考人 被害届、被害申告が出たものについては、現在、鋭意そうした捜査をしているところでございます。具体的な内容につきましては、答弁を控えさせていただきたいというふうに思っております。

松原委員 これはかなり鉄パイプが、鉄パイプで殴るわけですよ。要するに、旗なんだけれども、旗のこのきれを取ってしまえば鉄パイプですから。鉄パイプが、大小どれだけ長野市に集まったかわからないと。

 私は、聞いたら、行進している人も非常にびびりながら行っているな、そのびびるというのは緊張感の中でね。それは何かというと、歩いていって、何もいないから安心して歩いていくと、こう歩いていきますよね、そうするとそこに赤い旗がわあっと集まってくるというんですよ。何もいないから大丈夫だと思って歩いていくと赤い旗が集まってきて、そしてそのまま進行するのをやめさせ、チベットの旗を落とし、日の丸を落とそうとした、こういう話なんですよね。これはかなりやり過ぎじゃないかと思うんです。

 それで、次のページを見てほしいんですが、これが現場の一部の写真ですけれども、これは、携帯電話で話しているのがいますよね、このぼさぼさ頭の。こういうのがつじつじにいるということですよ、こういう人がつじつじにいる。

 次のページを見てください。次のページは、中国の旗が林立していますが、この電柱の横にサングラスをかけた方がいますよね。見てわかるんですが、これも電話をしているんですよ。こういう中国の方で電話機を持った方々がつじつじにいて、どうも極めて有機的な指示を出していたのではないかということなんですが、つじつじにこういう電話機を持った中国の人がいたことは、これは警察は把握していますか。

池田政府参考人 もちろん、電話をしていた者がいるということは承知しておりますが、それが組織的なものか、あるいは何メートルおきに計画的になされたものか、そのあたりの点については承知しておりません。

松原委員 それで、もう一回、一ページ前に戻りますと、当日歩いた方々に言わせると、明らかに留学生とは思えない中国の人がたくさんおった。この写真のこの人、手袋がどくろの手袋なんですよ、これ。こういう人がところどころにいて、だから、すごい怖い雰囲気があったというんですね。

 それで、恐らくトランシーバーや携帯で、日本人の、チベットの旗と日の丸を持った人間が歩いていくと、何らかの指示があって、そこに、目の前にいないのが急にあらわれてきて、別に大西さんという町田の議員の方が同じように歩いていて、歩いていたときにそういうのが突然集まってきて、大きな中国の国旗を垂らすらしいんですよね、進行妨害みたいな。それを払いのけようとしたあたりから囲んでたたくみたいな、そういうふうな、極めて有機的な連携があったんじゃないかというふうな憶測があって、非常におかしな状況があったのは間違いないと思うんですよ。

 いろいろな写真があるんですが、これはきょうは皆さんに資料を配っていませんが、当日、長野市内を走っていた中国の車であります。中国の国旗、これをわきにおっ立てて、もう行ったり来たり、これが長野市内を走っていたということなんですが、写真で見る限り、これは何ともわからないけれども、こんなふうに旗を両側に立てて走るというのは、これは道交法違反の疑いがあるのかどうか、ちょっとお伺いしたい。

池田政府参考人 個別具体の事案につきましてはちょっとお答えがしかねるんですが、一般論として申し上げれば、進行中の車両からみだりに体とかあるいは物件、これを出す行為は、道路における道路交通の危険を生じさせる行為、これを警察官が発見した場合には、確かに違法として警告等をする行為だろうと思います。

松原委員 当日、これは何回も走っていたらしいんですよ。だから、警察官がこれを見ていないはずがないんですよ、旗を両側に激しく立てて、この国旗を。

 それで、当日行った日本の人がバスの中からちょっと日本の小旗を振ったら、警察官が来て、そんなことをやったらこのバスは行かせませんよと言ったというんだよね。これはどうなっているんだ。だから、中国の旗を振っていれば大丈夫で、日本の旗だと注意するというふうに話がなってしまいますよね。まあ、ちょっとこれは、それ以上は言わないですよ。全部DVDにこういうのをおさめてあるらしいんですよ。それを今度一回お見せしますけれども、DVDに入っている。

 それで、いろいろなケースがあるんですが、旗で囲んで、旗といってもポールは鉄パイプですから凶器ですよ。これでたたくということが行われたり、あとは殴りかかるという行動もあった。

 これはテレビで放映されたものですが、辻村さんという方が殴られているシーンであります。テレビの放送のときは、中国人が日本人を殴っているとは言っていません。しかし、これは殴られたシーンで、皆さんのにも入っていますが、これはDVDにもばっちり入っています。この中国人は、完全に一方的に殴ってきたということであります。

 それで、現場の状況で、私は辻村さんときのう話をしましたら、何と言っているかというと、彼は、なぜ暴力を振るうんだ、話せばわかるのに、なぜいきなりけったりぶったりするのか、これが彼の第一点の指摘。

 もう一つは、何で警察は助けてくれないんだということを言っているわけですよ。ただ、実際は、タイミングを置いて警察は助けに入っているみたいですよね。辻村さんを、この白い服の人間が、これも映像でずっと撮ってあります。状況は、辻村さんが日の丸とチベットの旗を右手と左手に持って、こうやっていたわけですよ。旗を持っていますから、これで殴らないですよ、こうやって。そうしたら中国の人が来て、両旗、その二つのチベットと日本の旗をもぎ取った。それで、取り返そうとしたところでアッパーが入った、これはこういうことでした。

 それで、辻村さんも大きいんですけれども、殴ってきた中国の人間は、背は百八十ぐらいあったというんです。その中国人をとめようとして、日本の長野県警の人が飛びついた。その県警を中国人がぼこぼこに殴っている。県警の被害というのはどうなっていますか。

池田政府参考人 今の具体的事例についてはちょっと私も承知していないんですが、長野県警の方で公務執行妨害に当たる事案はなかったというふうに報告を受けております。

松原委員 この殴っているやつを助けに入ったその警察官、名前がわからないんです。そこを中国の人間が四、五人で、その警察官をけったり殴ったりした。これは公務執行妨害で何で逮捕しないんだという声がそのときもあったらしいんだけれども、そんなの逮捕しようものなら、きっと暴動が起こると思ったんじゃないかと僕は思うんですよ。

 しかし、長野県警の人で、あざだらけになった人とかいるはずなんだけれども、報告ないですか。それは隠ぺいだよ。

池田政府参考人 そのような報告は受けておりません。

松原委員 まあ、後でまたDVDを見ながら、よく見れば、これは特定までできるかもしれないけれども。やはり正直な報告が警察庁に上がっていないということかもしれないけれども、長野県警のその辺の方々は、上の指示だからと言っていたというのも仄聞しています、中国人は捕まえるなと。それは、本当はわからないです。私は、そういうふうに混乱した中での情報としては聞いているわけであります。

 これは、今言ったように、両手で持っているところをやられた。それから、あと、今言ったように、行進をしていたら瞬く間に赤い旗が集まってきて進路をふさいで、大体、やり方としては、一人ずつ隔離してポールでたたくというふうなことが行われた。だから、くどいようだけれども、この表紙にあるような、こんな大きな旗のポールでは、これは振りおろすといったって、三メートルも四メートルもある鉄パイプで殴ることはさすがにできないですから、たたくための旗はもっと小さかったと僕は思うんだよ。でも、それはやり過ぎだよ、やり過ぎ。

 日本の国の長野でやった聖火リレーでこんな旗ばかりがあって、日本の旗を持っていること自体も、チベットの旗はもとより、厳しいぐらいの怖い雰囲気が流れていて、そして、本当にこういうどくろの手袋をしたような人間がたくさんいた。そういう報告は上がっていないですか。当日の長野は、かなり異常だったらしいですよ。

池田政府参考人 先ほども御答弁いたしましたとおり、小競り合いが発生いたしまして、それに伴う被害届等が出ているということについてはよく承知しておりますが、また今お示しになったような事実があったということも、そうであろうとは思いますけれども、総体的には、被害届の状況は先ほど申し上げたとおりでございます。

松原委員 実態は、みんなほとんどの方がそう証言しています、要所要所に携帯電話を持っている人間がいて、携帯電話でずっととり合っていた。場所によっては、中国の方が殴りかかったところをやめろと言う中国の人もいた。しかし一方では、極めて何か雰囲気が強烈な人もいた、怖い、こういう状況だったということであります。だから、産経新聞にあるように、子供が、何で日の丸がないのと。日の丸を振れるような状況じゃない。この横八メートルぐらいのでかい中国の旗がたなびいている。

 そのときに、ある一人が、あの旗は旗だけれども、それを鉄パイプで使うんだったら凶器準備集合罪じゃないか、こういうふうに警察官に言ったら、その警察官は正直に言ったのでしょう、これでそれを取り締まったら暴動が起こるかもしれないと言ったというんだよね。それはもちろん証拠がないんだけれども。

 こういう、旗を旗としてやるよりも、たたくものとして旗のポールを使ったら、これは凶器準備集合罪になるんですか、一般論として。

池田政府参考人 聖火リレーに関しまして、多くの中国の旗等を掲げる者がいたということはよく承知しておるんですけれども、凶器準備集合罪が成立するためには、この旗ざおが武器として使用されるということがみんなに覚知される、それから、あわせまして、集まった人たちに共同加害の目的がある、この要件が必要とされております。

 したがいまして、今御指摘のような状況のみで凶器準備集合罪で検挙するというのは恐らく難しいだろうというふうに思っております。

松原委員 なかなかそれは、実際、共同でやったとか、証拠がないですけれども。

 これは、七十六歳の中島さんという方です。やはり歩いていった、七十六歳のおじいちゃんが。そうしたら、いきなり中国の女子留学生だと思われる二十代の女性に跳びげりを受けた。この方にきのう電話で聞いたら、極めて克明なんですが、相手はベージュ色の整った顔つきの美人だったと。まあ、美人だったと言うんですけれども、けられちゃしようがない、跳びげり。向こうは跳びげりが多いみたいですね、ほかも跳びげりと二、三書いてある。

 彼も言っている、明らかに一つの軍団として動きをしていたと。指導者がいて、トランシーバーでやっていると私も思ったと彼も言っている。牧野聖修も言っているし、ほかの人も言っている。そういうのは警察としては報告が上がってきていません、こういうことですな。

池田政府参考人 先ほども御答弁いたしましたとおり、携帯電話等を持っている者がいたということは承知しておるんですけれども、それが組織性に基づくものかということについては、それを裏づけるものが現在のところないということで、現在捜査中ということでございます。

松原委員 くどいようですけれども、十人ぐらいが歩いていくと、一人ずつ隔離して、旗で囲んでポールで殴った、このことに関しても全然情報は入っていないということですね。

池田政府参考人 先ほど御答弁いたしましたとおり、被害届等につきましては、それをこちらの方で受け取りまして、現在それに基づいて捜査をしているところでございます。

 具体的状況につきましては、御答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。

松原委員 また牧野聖修さんの話に戻りますが、彼は三回ぐらい旗ざおで殴られた。牧野先生はそのことでは余り怒っていないんですよ。その場では、かっとして、恥を知れと中国人に言ったらしいんですが、その日本語を理解したかどうかわからないですけれども、言ったと本人は言っていますよ。やはり囲まれて三回ぐらい旗ざおで頭をたたかれた。

 問題は、ゴール地点というのは中国の旗しかなかったわけですが、牧野さんは、自分たちも一人の日本人として参加して、いろいろな立場があるけれども、そこでやはりゴール地点まで行こうと思ったら、警察官が、絶対こっちへ来るな、あっちだと言って、ゴールから七十メートル離れたところに隔離された。彼はこれを聞いてくれというんです、これは差別じゃないかと。

 オリンピックを成功させたい、中国におもねりたい、その気持ちはいい。しかしながら、だからといって、ゴールにみんな行こうとしているのを、あなた方はそっちに行っちゃだめだと、ゴールから離れたところに隔離された。これはだれの指示ですか。

池田政府参考人 到着式会場のことかと思うんですが、聖火リレーの到着式会場におきましては、たくさんの中国人あるいはチベット支援者が集まっていたということで、警察としては、両当事者の間で不測の事態が起こらないように警備の万全を期したということでございます。このため、会場において、両当事者の集まる場所を分離する措置をとったんですけれども、それによりまして聖火リレーの安全と観客の安全を確保したというふうに考えております。

 なお、当日は、到着式会場の一角においてチベット関係者による集会が行われる予定でございまして、その区画の周辺にチベット関係者の方が集まっていたという事実がございます。このため、逐次集まったチベット関係者については当該区画の方に誘導をしたというふうに聞いております。

松原委員 言っている人は前衆議院議員の牧野聖修さんですよ。彼はゴールに行こうとした、そっちは行かせられない、ほかの中国の旗を持っている人は行ったりしている、あなた方はこっちだ、これはおかしいんじゃないですか。

池田政府参考人 ですから、到着式会場において、チベット関係者の方、支援者の方と中国の方を分離する措置をとった。その場合、チベット関係者の方が一角で集会をされていたので、そちらの方に誘導をした、こういうふうに御理解いただきたいと思います。

松原委員 御理解って、その場に私はいないので何とも言えないんですが、牧野先生はそう言っているわけですよ、それは差別だと。ゴールに入れるのは中国の旗を持っている中国人だけというのは差別だと。

 だから、全体を見て、それは現場にいないからわかりませんし、あなたも現場におられないでしょう。しかし、私が知る限り、日本の国旗とチベットの国旗を両手で持っていて、こうやっている人間に対して、旗を奪うとか、旗を落とすとか、殴るとか、ポールでたたくとかという行為が一方的に行われた経過はあるんですよ。きっと全部じゃないですよ、それは一時的にあったかもしれないけれども、しかし、基本的にそういう状況で、牧野さんなんかはそういう形で歩いていこうとしたら、あなた方はこっちはだめだというふうな話を言われて、極めてそこは納得できない、何でそれだけ差別するんだ、こういうふうに彼は言っていたということです。今の御説明で、私は、例えば、牧野先生、こういう説明でしたよと言って、彼が納得するとは思えないと思います。

 今回のこういう状況で、要するに、いろいろな暴行があったり、殴られたり、例えばDVDも今ここで流せませんよ、この委員会はあくまでもこういった資料を配るだけですけれども、そういう映像があるんですよね。そういう映像の証拠能力というのは、これはあるのかな。現物を見ないとわからないということですか。ちょっとお伺いしたい。

池田政府参考人 DVDの証拠能力につきましては、裁判所が判断することになろうと思いますが、改ざんの可能性とかそのあたりのところが恐らく問題になろうというふうに思います。

 ただ、補強証拠とか証明力を高めるものとしては使えるんではないかと思いますが、ちょっと私も担当ではございませんので、明確にはお答えできません。

松原委員 最初お話ししたように、長野県警の警察官の中には、かなり中国の人間に暴行されている人間はいるんですよ。現場で目撃されているんですよ。その警察内の被害届が出ているかどうか、もう一回長野県警で調べてもらえませんか。

 それと、そのときに、おまえら、被害に遭っても遭ったと言うなよみたいなことじゃなくて、ストレートに、本当に明らかに、我々が知る限りにおいて、長野県警の多くの警察官が中国人に殴られたり、たたかれたりしているんだから、それをもう一回調査してもらえませんか。

池田政府参考人 現時点において被害届が出ていないというのは確かでございます。

 今委員からお話のあった件につきましては再確認をしてみたいというふうに思います。

松原委員 大臣、今回、長野の五輪の聖火リレーというのは無事に終わったというふうに報道がされていて、この間、篠原さんもこのことは質問しましたよね。篠原さんも、極めてこれは異例であったということを言っているわけであります。

 例えば、日経新聞にはこう書いてある。長野県警に二十六日、聖火リレー警備に関する意見や激励が百四十七件寄せられた。よくやったと激励する声がある一方で、中国の旗で聖火が見えなかったなどの苦情が相次いだ。沿道の中国人らに関する苦情が多く、うるさい、旗が大きく聖火が見えないなどの話が多かった。

 こういうふうな長野県警に寄せられた苦情に関しては、警察としてはどういう分析をしていますか。

池田政府参考人 今御指摘のとおり、聖火リレーの当日にメールや電話で意見が寄せられておりまして、その八割弱が中国人がうるさいといった中国人の行動に関する苦情であったというふうに認識しております。

 これにつきましては、当日、インターネットで大体二千人前後の中国人留学生が集まるのではないかというような記事が流れていたんですが、実際にはそれをはるかに上回る人数が集まったということによるんではないかというふうに思っております。このような中国人がたくさん集まったということで、それに伴う苦情も多かったのではないかと考えております。

松原委員 多く集まったからというよりも、それが我が物顔で、中国人は何やっても捕まらないぐらいの感じでやったんじゃないかという気がするんだよね。

 韓国の聖火リレーでは、中国人二人ぐらい捕まっていますよね。韓国のときどうだったか、資料があったらちょっと教えてもらえますか。

池田政府参考人 韓国の資料については、ちょっと現在持ち合わせておりません。

松原委員 やはり日本の警察は、どうも日本人を守ることよりも中国人におもねたという印象を長野の人は随分持っているという感じがします。

 今、篠原さん、そこで気合いを入れて聞いていただいていますが、篠原さんも、それは口に出して言わなくても思っていますよ、どっちの警察なんだと。中国側が殴ったりした者は見て見ぬふり、公務執行妨害でもそれは捕まえない。みんな見ているんだから、何であいつを捕まえないんだと。

 そういうことをやると物すごく警察の信頼感を失うことになると思うんですけれども、それは、そういう事実がなかったと言われてしまうと、ここにあるのは、こういう映像とか、異様に大きな中国の国旗の映像とか、それからあと、DVDでは殴りかかっているとか、さっき言ったように、マスメディアの人間もやられていますよ。フジテレビの大村アナウンサーは後ろからやられていますよ。それから、エルボーでやられたという人もいるし、マスメディアの、例えばさっき言った北海道新聞の女性記者は、聖火が過ぎ去った後、後頭部を三発殴られていますよ。それは被害届が出ていないからと言われればそうかもしれぬけれども、余りあんばいよくないんじゃないかと私は思うんだよね、そういうことは。

 やはりこういう状況というのは、高村大臣、実情を把握した方がいいと思うんですけれども、ちょっと御感想をお伺いできますか。

高村国務大臣 私も現場へ行っておりませんから確たることは申し上げられませんけれども、私はかなり心配性でありますから、ヨウケツチ外交部長に対しては、日本の警察がちゃんとやるから心配するなとここまで言って、その後、本当にやってくれるかどうかと思っていたんですが、全体的には日本の警察はよくやってくれた、こういうふうに思っております。

 これは私だけ思っているんじゃなくて、例えば、国境なき記者団の事務局長がそこに来ておりました。その人は、決して中国寄りの人ではないと思います。その人が、中国人もチベット人も、両方が平和的にデモをやっている、これが民主主義だと言っていた。

 ただ、それを全部見ているかどうか知りませんよ。それぞれの方が見ているのは部分的、部分的に見ているので、その部分的に小競り合いは当然あったと私も思いますし、殴ったり、けったり、こづいたりすること、それは許されることではない。そして、法と証拠によって警察、検察、裁判所、そういうところがしっかりやるべきことはやるだろうと思っていますし、私は、長野県警は公正にやっているだろう、こういうふうに思っております。

 そして、私が知っているのは、現地で見て逮捕された人は、中国人もチベット人も一人もいなかった。残念ながら、外国の方一人おられたけれども、日本人が何人か逮捕された。それから、救急車によって運ばれるほどのけがをした、現実に運ばれた、それを消防署が把握しているのは、中国人が数名そういうけがをした。そういう客観的事実は私は承知しておりますが、個々の場で、だれが、どういうふうに、どうなったかということは、私は把握しようにもできないわけでありますから、そこは御理解をいただきたいと思います。

松原委員 こういう正式な委員会だと余り言えませんが、救急車ということをおっしゃいましたが、これもいろいろな議論があります。被害の実情を考えると、日本の人間ははるかに救急車が呼ばれるべき人間がたくさんいたという議論もあります。

 ただ、それを、あえてその場は呼ばなかったことがよかったかどうかは別でありますが、頭のここから、陥没して血を流している人間が日本では映っています。そういうのもあるわけですよ、被害届が出ていますけれども。そこまでの被害はないはずです、それは恐らく。わからないですよ。はっきり言って、そこはいろいろな要素がある、それ以上この場では言わないけれども。救急車が呼ばれる人間がいたからどうのこうのというだけの議論ということではないと私は思うんですよ、そこは非常に難しい議論だ。

 申し上げたいことは、今回のこういった議論で、聖火そのものに関しては大丈夫だったんですよ。聖火が通り過ぎた後、暴力行為とかが行われているんですよ。単に聖火と無関係に行進しているところで、個別に隔離して暴力行為が行われているんですよ、旗で周りを囲んで見えないようにして。これが問題なんですよ。それは極めて陰湿だと私は思っているんですね。

 私も現地に行っていないですからわかりません。それはいろいろなけが人も出たという状況もあるでしょう。きょうも、けがをした人があそこに傍聴に一人来ていますけれども、彼は軽度の方のけがでしょう。しかし、大事なことは、そういったことの真実を、少なくとも長野県警の人であざを受けたり血を流したりしているのが恐らくいるはずですよ。私が聞く限りではその報告が上がってこないということがまず第一におかしい、現場を見ていて。彼らが公務執行妨害で捕まえないのがおかしい。

 これは、やはりきちっとチェックしてもらわないと、今こうやって局長が、何もありませんでしたと言うと、うそついているなという話になってしまうんですよ。どれぐらいのけががあったのか、殴られた人間が何人いたのか、あるはずですよ。何もありませんでしたなんて言ったら、全部うそになってしまうじゃないですか、みんなそれを見ているんだから。何で公務執行妨害なのに彼らを逮捕しないんだという声があったんだから、そのとき。

 だから、やはり大臣、さっき冒頭言ったように、こんな大きな旗が、これは日本なのか中国なのかわからないですよ、この旗を見たら。こんな旗が振り回され、こんな旗で我が物顔に長野の町中を中国の車が走り、日本の旗やチベットの旗を持っている人間の小旗を、全員がそうだとは言わない、いろいろな質の悪い者がいたというんですよ。中にかなり質の悪いのもいたんじゃないかと言われている。そういうのが旗をたたき落とすとか、好戦的な人がやっていたとするならば、それは日本の警察は日本の治安を守らなきゃいけないので、僕はやはり今回の聖火リレーは、中国人に逮捕者は出なかった、オリンピックをやる国においては、それは事実かもしれぬけれども、日本国内的に見たらかなりマイナスだと思いますよ。

 それは産経の記事が全部本当かどうか、マスメディアもいろいろと書くでしょうけれども、ここで、なぜ中国の旗ばかりで日の丸はないのと娘に聞かれた、これはそのとおりでしょう。異様ですよ、これは。毅然としているというのは、基本的にやはり日本がやるんだと。こういうところが毅然としていないから、例えば、尖閣だってどうなるんだみたいな話になったり、竹島だってどうなるんだという話になってしまう、ガス田だってどうなるんだと。全部これは同じ議論なんですよ。

 結局、日本でやったときに、中国はこうやって旗を振って、車に暴走族みたいに旗を突き刺して走って、これは検挙されていないんでしょう。これがにせものの写真だと言うならそれはそれで結構だけれども、検挙されていない、一人も。私はやはりこれはかなり問題だというふうに指摘をして、時間が過ぎていますから、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 ASEAN包括協定、またASEANセンターに関して質問させていただきますけれども、その前に、ちょっと質問通告をしておりませんので、お答えいただける範囲で結構なんですけれども、きょうの東京新聞を見ておりますと、在日米軍が通行証を発行していた。この通行証は、公務で高速道路を通る場合の通行料が無料になる、こういう証明書でありますが、これが、娯楽に使われていたのではないかと思われるレンタカー、このレンタカーの利用のときにも使われていた、米軍が発行していた、これは日米の地位協定に違反するのではないか、こういう報道がされております。防衛省はその疑いがあるということで在日米軍司令部に事実関係を問い合わせている、こういうことでありますが、外務省としてはどういうふうにお考えで対応されているか、お聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 米側に防衛省を通じて問い合わせております。その返事が既に来たかどうかはまだ私は正確に存じておりません。

近藤(昭)委員 特別協定のときにも私も何回か質問をさせていただきましたけれども、日米関係が重要であり、またその負担をしてきたいろいろ経緯はある、しかし、結果的にというか、今現在で非常にバランスを欠いた、そしてまた、ここまで出すのかというようなことがあったということを改めて思ったわけであります。ぜひしっかりと調査の上、きちっとした対応をしていただきたいと思うわけであります。

 続きまして、ASEANセンターについて質問をさせていただきます。

 このことについては先ほども私どもの同僚議員が質問をした、また河野議員が質問をした。なかなかそれを超えるといいましょうか、多くのことを、私どももここはというようなことをお聞きになっていたということで、それを超えるというか、それ以上というようなことはなかなかないのかなと思うんですが、私からは、まずちょっと私の印象だけをお話しさせていただきたいと思います。

 ASEANとの関係をよくしていく福田ドクトリンに基づいて、当時は大変にASEANとの関係も厳しい状況の中にあった、その中で相互の交流、理解を深めていく、そういう中でつくられたセンターであったと思います。

 ところが、短時間でありましたので、それがすべてではないと私は思うんですけれども、一体あそこの場所は何をする場所なのかなと単純に思いました。いろいろな商品を見せる展示場なのか、それとも研究をするところなのか、一体だれに向かってどういうインフォメーションを発出しているのか、いま一つよくわからないところがあった。

 そしてまた、営業時間というか、オープンをしている時間が月曜日から金曜日。目的がありますから、何も銀座のあそこの場所にあるから必ず土日は開いていろ、こう申し上げるつもりはありません。しかしながら、やはりあの場所で土日にやっていない。そして、読んでいると、広く一般の人にも、市民の皆さんにもまた企業の人にも、多くの人にASEANを理解してもらうためにあると。こういうことであると、ああいうやり方はいかがなものかなと思うところも多かったわけであります。

 先ほど何人かの議員の方も質問されていたように、非常に大きな予算を使っているわけでありますから、それはきっちりとASEANとの理解、私なんかはやはり、先ほども質問がありましたけれども、ミャンマーとの関係の中でも、ミャンマーもASEAN諸国の救援部隊は受け入れてその他のところは受け入れていない、こんなようなところもあった。それならば逆に、ASEANとの連携の中で日本も、本当に被災地の人たちが困っている、そしてまたこれからさらに感染症等とかで被害が広がるようなことがないように、こういった機構を利用してもっともっとこういったことも具体的に支援の突破口にする、そういうことが必要だと思います。

 それで、高村大臣、河野議員の質問のときには残念ながらおられなかったわけでありますけれども、ASEANセンターの今後のあり方というか、ASEANとの関係の中で、ASEANセンターのあるべき形といいましょうか、そのことについてお考えを聞かせていただければというふうに思います。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

高村国務大臣 残念ながら、河野議員の質疑を聞けなかったわけであります。

 このセンターは、一九七七年に当時の福田赳夫総理とASEAN首脳とが発出した共同声明を踏まえ、設立されました。このセンターは、過去三十年近く、貿易、投資、観光面でASEANとの協力を具体的に促進する機関として活動し、我が国とASEANの協力関係強化に大いに貢献しているところでございます。

 具体的には、ASEAN諸国からの我が国への輸出促進事業として、常設展示場における展示会の開催、我が国からのASEAN諸国への投資促進として、ASEAN投資促進セミナーの開催及び投資環境視察ミッションのASEANへの派遣、我が国からASEAN諸国への観光促進として、観光訓練プログラム等の人材育成プログラム及びエコツーリズム事業等の観光商品の企画開発を行っております。

 今後とも、ASEAN後発加盟国を初めとする、ASEANにおいてさらなる開発の可能性の大きい地域への協力、ASEAN経済共同体に向けた協力に一層重点化した事業を行うこと等を通じて、ASEAN域内の格差是正、ASEAN単一市場形成に貢献することを期待しているところでございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 ぜひ、議事録でも結構でございますから、今おっしゃったような目的、それで設立されたものがきちっとその機能を果たしているのか、ここが一番課題だと思うんです。そういう意味で、ぜひそういうきちっとした機能が働くようにさせていただきたいというふうに思うわけです。

 それと、一つだけ、細かいことでありますが、関係の方にお答えいただければと思うんですが、実は、別にこのASEANセンターという意味ではないんです。でも、例えばこういうことをASEANセンターでやってもらえるのかなと思うんです。

 いわゆるEPA等で非課税になる。そうすると、非課税になるようには、生産国ですか産出国ですかの証明を相手の会社が出してもらって、それで初めて非課税になる。しかし、私の友人で、ASEANセンターの話をしていたときにこんなことを言う友人がいました。中小企業をやっています。物を相手国、どこの国だったかちょっと忘れましたけれども、そういった非課税になる、免税措置もあるところから輸入をしている、しかしながら、こちら側も中小企業であり向こうも本当に中小企業であり、どういう経緯かははっきりわからなかったんですが、産出国証明を出せないようなところだと。せっかくいろいろなこういう協定をつくっても、大きな大企業はこの協定のメリットを受けるけれども、なかなか中小企業がそういったものを十分に活用できない、こういうようなことがありました。

 そういったところは、例えばASEANセンターとかそういうところできちっと受けとめてもらえるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 センターの一番大きな目的の一つが、ASEAN構成国から我が国への輸出ということでございます。そういう意味では、私ども、そういう活動を奨励するためのいろいろな活動をセンターとしてやってもらうということが非常に有益だと思っております。

 したがいまして、例えばインターネットあるいは刊行物なんかを通じましてセンターが情報提供活動を強化していくという方向で活動を強化していってもらえばと思っております。

近藤(昭)委員 その広報活動ももちろん大事ですが、例えばそういった、いろいろな事情があると思うんですけれども、大企業は情報も自分たちで集めることもできる、情報収集力もある、あるいは交渉能力もある、しかし、なかなか中小企業が、そういった情報を提供してもらえることはありがたいことですが、あるいは、個別にこういったいろいろな相談を受ける、アドバイスをするというのはどうでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 まさしく委員御指摘のとおり、大企業の方はそもそも自前で情報も収集できるというところがございます。そういう意味では、先ほど申し上げましたとおり、ASEANと我が国との貿易を拡大するというのがこのセンターの趣旨でございますから、そういった形でのいろいろな御相談に乗れるようにセンターも努力をいただければと思っております。

近藤(昭)委員 努力というか、ぜひそういうこともやっていただきたいと思うわけであります。

 それでは、ASEANの包括協定に関して幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 WTOを中心とする多角的自由貿易体制と、特定の国・地域との経済連携協定による自由貿易体制の政策上の相対的な関係についてということであります。

 二〇〇四年の十二月の経済連携促進関係閣僚会議における今後の経済連携協定の推進についての基本方針において、経済連携協定、EPAを、経済のグローバル化が進む中、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制を補完するものとして、日本の対外経済関係の発展及び経済的利益の確保に寄与するものであると位置づけている。また、ことし三月の経済財政諮問会議において、外務省提出資料では、「当面の経済連携協定(EPA)交渉について」の資料では、世界貿易機構、WTOを我が国対外経済対策の基本とする姿勢を堅持し、WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結を目指すと書かれているわけであります。

 このように、経済連携協定に基づく自由貿易体制はWTOを中心とする多角的自由貿易体制を補完するものである、こういうふうに書かれていると読めるわけでありますが、大臣、ここはいかがにお考えでありましょうか。

高村国務大臣 我が国は、経済連携協定を、世界貿易機関を中心とする多角的貿易体制を補完し、相手国・地域との間で貿易自由化等を通じてさらに経済連携を深めるとともに、我が国の経済的利益の確保に寄与するものとして積極的に推進しているところでございます。

 今後とも、二〇〇四年十二月二十一日の第三回経済連携促進閣僚会議にて決定された今後の経済連携協定の推進についての基本方針や本年三月に作成された「当面の経済連携協定交渉について」にのっとり、EPA交渉に積極的かつ戦略的に取り組んでいくとの考えでございます。

近藤(昭)委員 その方針に基づいて交渉していく、ただ、我が国の対外経済対策の基本はWTOがまず基本である、こういう理解でよろしいでしょうか。

高村国務大臣 そういう理解で結構でございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 その基本方針の中、御努力をいただいている。包括的な協定で、どこの国と個別にやっていく、それはお互いの状況を見据えながら、ある意味で現実的に、スピードアップの中で交渉して二国間協定を進めていく。しかしながら、やはり大きな枠組みをつくって、どことやっても平等というか公平の中で対外経済交流をしていく、これが重要だ、そういう中でWTOがあるんだと思うんです。

 ただ、もう一方で、改めてお伺いをしたいわけでありますが、そういった基本方針の中、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結がなかなか難しい状況もある。そういう中で日本は、二〇〇二年のシンガポールとの経済連携協定、その後、メキシコ、マレーシア、チリ、タイと経済連携協定を締結した。また、フィリピン、インドネシア、ブルネイとの協定も近々発効をする。そこで、そのほかの国についてはどういったところと交渉中であり、その進捗状況はどのようなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣が申し上げた基本方針、あるいは当面のEPA交渉についてという方針にのっとりまして、現在の我が方の取り組みでございますが、特に東アジア諸国とのEPA締結を重要な課題と位置づけてございます。

 具体的には、交渉中のものを、現状を申し上げます。

 まず、湾岸諸国、GCC諸国につきましては、二〇〇六年九月に交渉を開始し、二〇〇七年一月に第二回交渉会合を開催しました。

 それから、ベトナムでございますが、二〇〇七年一月に交渉を開始いたしまして、二〇〇八年四月に第七回交渉を行っております。

 次に、インドでございます。二〇〇七年一月に交渉を開始、二〇〇八年五月に第七回交渉でございます。

 次に、オーストラリア。これは、二〇〇七年四月に交渉を開始、今度は二〇〇八年四月に第五回交渉でございます。

 次に、スイス。二〇〇七年五月に交渉開始、二〇〇八年五月、ちょうど一年後でございますが、第六回交渉でございます。

 なお、韓国につきましては、二〇〇三年十二月に交渉を開始して、二〇〇四年の十一月から中断しておりましたが、二〇〇八年、ことしの四月の日韓首脳会談におきまして、交渉の再開に向けた検討及び環境醸成のための実務協議をことしの六月中に開催するということで一致してございます。

 以上でございます。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 大変丁寧に御説明をいただいて、それぞれの国と交渉をしているところである、こういうことであります。

 こうした経済連携協定、EPAは、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制を補完するものであると私は思います。しかし、本来自由貿易体制のかなめとなるべきWTOをめぐる交渉の進展が遅い。

 本来は、やはり自由貿易体制のかなめはWTO、大臣もおっしゃるとおり、WTOを基本方針として取り組んでいく、こういうことだと思うんです。ただ、そういう交渉の進展が遅いこと、なかなか進まない、課題もあるということの中で、比較的結論が出しやすい経済連携協定締結へ向けて現実的な交渉を積極的に行っているんだ、こういうふうに思うわけでありますが、実情を見ると、そういった経済連携協定の締結そして相手国・地域の拡大こそが日本の対外経済対策のかなめになっているようにも、逆に言うと、見えてくるわけであります。

 しかしながら、先ほどの繰り返しになる部分もあるかもしれませんが、あくまで世界貿易機構、WTOを我が国対外経済対策の基本としている、やはり基本とすべきだという理由をもう一度、大臣、お聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 WTOを中核とする多角的な自由貿易体制を維持強化することは、我が国の対外経済政策の基本であります。WTOの存在意義は、世界規模で貿易自由化を進めるとともに、ルールを構築して世界経済に法的安定性や予測可能性をもたらすことにあり、これは今後とも薄れることはないと考えます。

 また、我が国は、経済連携協定はWTOを補完し、我が国と深い経済関係を有する国との間でさらなる貿易や投資の自由化を推進するとの観点から有益であるとの考えでございます。

近藤(昭)委員 先ほどもちょっとお話をしました。大企業だけではなくて中小企業も含めて、私はやはりきちっとそういった枠組みの中で、ルールがはっきりするということが大事だというふうに思います。一方で、どうしてもそれぞれの経済状況あるいはさまざまな状況によって進まないところがある、そういう中で個別の二国間のEPAを結んでいる。

 ぜひ、これは既にやっておられることでありますけれども、きちっとした理想のルールを求めて、しかしながら現実でどんどんどんどん進んでいる中で、柔軟な発想を持ってやっていただきたい。そしてまた、それが一部の企業にだけ、別にそういう意図ではないと思いますけれども、きちっとそこで頑張っている企業に、また、企業だけではなくて、これは現地にさまざまな影響を与えていくわけでありますから、そういったことについても配慮をいただきたいというふうに思うわけであります。

 次に、日本とASEAN加盟諸国との経済連携協定について触れたいと思うんです。

 日本と、ASEAN加盟国であるシンガポール、マレーシア、タイとの間の経済連携協定は既に発効している、こういうことであります。また、フィリピン、ブルネイ、インドネシアとの協定も近々発効する、こう思われるわけであります。これら六カ国もASEAN加盟国として当然、本日の審議の対象であります日本・ASEAN包括的経済連携協定の締約国であるわけであります。

 そこでお尋ねしたいわけでありますけれども、既存の二国間EPAの締約国を地域的に包含する多国間EPAを締結することによって、両者が並立する、併存することになるわけであると思いますが、その意義というものはどういうものなんでしょうか。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたように、日本は今、ASEAN全体との交渉と並行いたしまして、ASEAN各国との二国間のEPA交渉も進めてまいりました。二国間のEPAにおきましては、物品やサービスの貿易の自由化とか円滑化、それに、さらに加えまして、投資などの分野でのルールづくり、あるいはASEANとの場合、人材育成のための協力といった、まさに幅広い分野を対象としてございまして、双方のそういう関心を踏まえた高いレベルの内容を実現できていると考えてございます。

 他方で、この日・ASEAN包括的EPA協定でございますが、これはまさにASEANをグループとしてとらえまして、戦略的関係をそれと強化するということ、さらに、原産地規則におきまして、いわゆる累積規定の適用によりまして、ASEANと日本を全体として面としてとらえまして、その中で生産ネットワークを強化していけるというところに大きな意義があると思います。

 もう少し具体的に申し上げますと、今、日系企業がたくさんASEAN地域に出ておりまして、そこで企業内分業あるいは工程間の分業といった活動を実施しておられます。この日・ASEAN協定の原産地規則における累積規定というのが適用されますと、その結果、これらの企業は、日本も含めて、日・ASEAN域内、どこからでも幅広い材料調達ができる。したがって、そこで生産する産品をこの日・ASEAN協定のもとでの特恵税率の対象とすることが容易となるということで、ますます、今オンゴーイングな生産ネットワークの拡大、強化が期待される、物品の自由な流通が促進されるというふうに期待しております。

近藤(昭)委員 本当にアジア、特にそのアジアの中でもASEAN、非常にこれからさらなる経済発展、経済成長をしていくだろう。今世紀半ばには、アジアの経済のいわゆる生産高が本当に世界の半分近くを占めるんではないか、こんな予想もあるわけであります。

 そういう中で、日本のさらなるといいましょうか、経済成長の維持にとって、本当にASEAN、アジアとの関係は大事である、そういう中でいろいろと、こうした多国間、EPAの累積である本協定、あるいは個別にも努力をしていただいているわけであります。

 少しお尋ねをしたいのは、そういった水平的な分業、日本にとっても非常にメリットがあるんだ、こういうことだと思うんですが、ただ、本協定で、物品貿易において二国間EPAとは一部異なる関税率もあると思うんですね。そうすると、特定の物品の取引において、貿易にかかわる業者の立場から見れば、取引上有利な協定を選択し適用を求めるなど、使い分けが必要になるんではないのかな、こういうふうに思うんですが、有利な税率を受けられる二国間EPAの適用を受けるのか、それとも累積規定の適用が大きな意義となっている本協定の適用を求めるべきなのか、実際的にはどのように対応が求められるのか、お聞かせをいただければと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今委員おっしゃいましたように、この日・ASEAN協定と、それから二国間のEPA協定、その両方の締約国となっている国との間におきましては、ある産品がそれぞれの協定に基づいて原産品として認められる場合には、その輸出者あるいは輸入者がどちらの協定のもとでの税率がより有利かという、税率に着目する場合と、それから今おっしゃったような、どちらの原産地規則の方が原産地資格が得られやすいか。原産地資格が得られやすいのは日・ASEAN協定の方でございますので、そこのところを踏まえて、オプショナルで選択していただけるということになると理解しております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 併存するというメリットと、一方でその判断ですよね。先ほどもちょっとASEANセンターの関係で質問させていただきましたけれども、異なった協定がある。業者、特に中小だと思いますけれども、そういったものを判断する専門の、もちろん現地でやっているわけですから、現地の体験に基づく知識というか経験というか、そういうものがある強みもあるわけでありますけれども、やはりそういう中で、専門的に判断をするようなスタッフを置けない中小、小企業にとって、こういった使い分けの判断をどうしていくか、こういう課題が出てくると思うんです。

 その点は先ほども、そこがASEANセンターなんかも窓口になってもらえればなというふうに私は思うわけでありますけれども、ぜひこの点について周知徹底といいましょうか、きちっと対応していただきたい、こういうふうにお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、農林水産品分野における交渉についてお聞きをしたいと思います。

 交渉については、ASEAN各国との二国間EPAの合意内容を踏まえた内容となっており、守るべきは守りながら、ASEAN側の関心品目について、関税削減等を通じ、日本側として可能な努力を行った、こういうふうに政府は説明をされているわけでありますけれども、守るべきは守るの、守るべきとは何を指していらっしゃるのか、また、守るべき理由をお話しいただければと思います。

林田政府参考人 お答えいたします。

 まず、農業でございますが、農業につきましては、地域の主要な産業として、食料を生産、供給しているだけではありませんで、地域の環境や自然、さらには文化、伝統を支えているなど、多面的な機能を有しておりますことが重要と考えております。このような認識をしっかり持つことが重要と考えております。

 このような認識に立ちまして、我が国といたしましては、米や乳製品などの国家貿易品目を含む我が国の基幹的な作物や地域の農林水産業における重要品目につきまして、守るべきものはしっかりと守るとの方針のもと、EPA交渉に臨んできておりまして、ASEANを初めとするこれまでの交渉におきまして、関税撤廃の例外措置、例外扱いを確保してきたところでございます。

 今後とも、守るべきものは守るという方針のもとで、経営体質の強化に向けた国内農業の構造改革の進みぐあいにも留意しつつ、交渉に取り組んでまいりたいと存じます。

近藤(昭)委員 時間というか経緯というものもあるでしょうし、それぞれの個別の事情もあると思います。日本も貿易国でありますから、貿易をスムーズに行っていくとともに、今おっしゃったような、守るべきものというのはやはり守る。また、これも時間によって経緯があるのかもしれませんけれども、そこはしっかりとやっていただきたいというふうに思うんですね。

 ところで、そういう中で少しお聞かせをいただきたいのは、こうして今、守るべきものは守るというふうにお話があったんですが、本協定が発効した場合、具体的に輸入量が増加する農産物は何と予想していらっしゃるのか、それはどの程度の増加というのを見込んでおられるのか、そして、最近本当に話題というか関心が高まっております食料自給率に与える影響はどのように考えておられるのか。

 先ほどの御答弁の中でも少し触れられたのかもしれませんが、お聞きをしたいと思います。

林田政府参考人 お答えします。

 御質問でございますけれども、ASEANとのEPAが発効した後のASEAN各国から我が国への農林水産物の輸入動向についてでございますけれども、これは、その時々の国内需給ですとか、それから他国からの輸入動向等が常に影響いたしますことから、一概には言えないといいますか、申し上げられない面があるということにつきまして、御理解賜りたいと存じます。

 いずれにいたしましても、守るべきものは守るとの方針のもとで、我が国農林水産業へ悪影響を及ぼさないように交渉をまとめてきたつもりでございまして、我が国の食料自給率に影響を与えるものではないと考えておりますけれども、協定発効後、今後ともASEAN各国からの農林水産物の輸入動向を注視してまいりたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今のお答えの中で、食料自給率への影響は少ないと考えておられる、こういうことでありますけれども、食料自給率そのものについてはどのようにお考えでしょうか。私も、国土審議委員というのをやらせていただきましたけれども、これから農地をどれだけ確保していくのか等々の国土の利用計画の中でも、いや、こういう農地の確保の仕方で大丈夫かなみたいに思ったことがあります。

 ただ、それは、私の質問にお答えの中では、もう今本当に農業人口が減っているんだ、そういう中でここで歯どめをするんだというようなお答えであったと思うんですけれども、私は、あるところで歯どめをする、それ以上減らないようにする、しかし、その点では十分に食料自給率が、もちろん、どの程度を必要な食料自給率とするのかという考えはあると思うんですが、今のお答えの中、今回の協定が発効しても食料自給率への影響は少ない、あるいは食料自給率に影響を余り大きく与えないようにというお答えだったと思うんですが、食料自給率そのものについてはどのようにお考えか、お答えをいただきたいと思います。

林田政府参考人 昨今の穀物需給の逼迫に伴います食料価格の高騰というような状況の中で、途上国だけではなくて、日本を含むような先進各国もすべて、それぞれが持つ農地それから水といったような資源を最大限活用いたしまして、少なくとも現在持っている自給率について維持していくというのが世界各国の責務ではないかというふうに考えております。

近藤(昭)委員 食料自給率、これから食料だけではなくて水も含めて、そういったもの、何でもかんでも一〇〇%ということではないと思いますけれども、ちょっと抽象的な言い方になりますが、必要なものはきちっと考慮に入れながら政策を遂行していただきたいと思うわけであります。

 それでは、この協定、ASEANの包括的な協定を進めていく、ここはぜひ大臣にお聞きをしたいと思うんですけれども、高村大臣も、アジア各国との関係を語られるときに、将来の東アジア共同体の形成を視野に入れという言葉を時々使われているのではないかと思います。そういう中で、本協定の締結へ向けての交渉においても、高村大臣は、東アジア共同体の形成を視野に入れ、陣頭指揮をとられているのではないかと私は思うわけであります。

 そこで、私の質問は、将来の東アジア共同体の形成へ向けて、本協定の意義はいかなるものなのか、また将来の東アジア共同体の形成にどのような展望をお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

高村国務大臣 日本・ASEAN包括的経済連携協定の締結は、ASEANの一体性を尊重した形でASEANの統合を支援し、ASEANとの戦略的パートナーシップを強化する意義があるわけであります。

 また、日本ASEANセンター設立協定の改正により、ASEAN構成国の経済発展に我が国が引き続き協力し、ASEAN構成国と我が国との間の交流がより活発になることが期待されます。これらの取り組みは、東アジアの地域協力において主導的な役割を果たしているASEANの安定と発展に寄与するものであります。

 東アジア共同体の形成というのは長期的目標でありまして、その具体的なあり方は、今後、関係国間で議論を深めていくことになります。今は、将来の東アジア共同体の形成を、私はいつも視野に入れつつという言葉を使うわけでありますが、視野に入れつつ、地域共通の課題につき具体的な協力の実績を積み重ね、地域全体の平和、安定、繁栄を目指していくことが重要だと思います。

 我が国としても、今般の日本・ASEAN包括的経済連携協定締結や日本ASEANセンター設立協定改正を初めとする日本・ASEAN間の取り組みのほか、東アジア首脳会議、EASやAPEC、ASEANプラス3等の各種枠組みを重層的に活用していくことで、豊かで安定し、開かれた東アジア地域の実現に貢献していく考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 現実の問題として、なかなか難しい側面もあるところがあると思います。そういう中で、大臣も、長期的な目標で、一つ一つ実績を積んでいくんだ、視野に入れながら行動しているんだ、こういうことでお答えいただきました。私も、この東アジア共同体は、ゆっくりとした歩みになるかもしれませんが、しっかりと進めていっていただきたい、いきたいというふうに思っているんですね。

 私が改めて申し上げるまでもないかもしれませんけれども、やはり大臣もおっしゃるように、地域各国で一致して共通の課題に取り組んで、平和の部分、安定、繁栄を目指していく、これはやはり地域で一致してやっていくことが非常に重要だと思うんです。

 そういう意味で、欧州、ヨーロッパ、EUですね、EUもそういう観点から始まってきた。お互いが、隣の国同士が非常に資源を奪い合って戦争をしてきた、陸続きの中で戦争をしてきた。そういうものを、お互いに平和のために安定した発展をしていこうというところで形成をされてきた。ただ、アジアにおいては、大臣も御認識のように、国家間における政治体制も大分違う、そういう意味で、すぐに政治的統合も前面に出しての共同体形成は難しい。そういう中で、長期的目標だとおっしゃられていると思うんです。

 そういう意味では、今回のように協定を、包括協定、経済分野における議題を共有する中で共同体をどんどん進めていく、あるいは、余り進められるべききっかけではありませんが、今回のような中国での地震、ミャンマーでの災害、こういった中でお互いに協力をしていく、こういうことで信頼関係を醸成していくことが大事だと思うんです。

 一九九七年には、第一回ASEANプラス3首脳会議がありました。そして、それが常設化された。この枠組みの中で東アジア共同体を形成すべき、こういうふうに私もそのときから考えている。そして、今回の日本・ASEAN包括的経済連携協定の締結、これから非常に大きく進んでいくと期待するとともに、やっていかなくちゃいけないと思います。今後、何らかの形で日本、中国、韓国の東アジア三国とASEANが共通の枠組みの中で経済的連携を図り、そして東アジア共同体が実を結ぶ、こういうふうになっていくんだ、そういう長期的な視野を大臣が持っておられて、頑張っていただいているということに敬意を表するわけであります。

 そこで、ちょっと通告外質問であるんですが、もう一つ高村大臣にお聞かせをいただきたいと思うんです。

 経済連携協定、EPAは、関税引き下げによる市場アクセスの拡大や投資の自由化などによって、日本の対外経済関係の発展及び経済的利益の確保に寄与するものである、それと同時に、我が国及び相手国の構造改革の推進にも資していかなくてはならないと思っていますし、それが経済財政改革の基本方針二〇〇七ということで記載されている。

 拙速、過度の経済自由化が関係国の社会経済構造に急激な変化をもたらし、格差の拡大を生むことは往々にしてあるわけであります。EPAの締結が新たな貧困の発生の原因に決してならないように、先ほどからこの質問の流れの中でそういったことに触れられる部分もありましたけれども、貧困の発生の原因にならないように、日本そして相手国・地域の社会経済構造にしっかり目を向けた上で交渉に取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。

 大臣、改めてこの点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 お互いがウイン・ウインの関係になるように、お互いが、どっちかがどっちかに押しつけるという形でこの経済連携協定を結んでおりませんし、日本にしてもASEAN諸国にしても、余りドラスチックなことを考えてやっているわけではありませんので、これが一気に格差を生むとか、そういうことにはなり得ないと思いますし、ならないように運用をしていきたい、こういうふうに思っております。

近藤(昭)委員 こうしたことが、往々にして一部の人たちだけが恩恵をこうむるというようなことがあるわけであります。そういった意味で、ぜひ、今大臣におかれましても、相手国との関係の中でウイン・ウインになると。ただ、一部の人たちだけのウイン・ウインにならないように、相手国の中でも格差が開かないように、そういった経済交流が、この協定が結ばれる、経済構造が変わっていく、そして、これは相手国のことかもしれませんけれども、やはり相手国の社会経済構造にもしっかり目を向けた上で取り組んでいただきたいというふうに思うんです。国と国のウイン・ウインではなくて、相手国の中の社会経済構造ということも私は課題だと思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 先ほどお答えしたつもりだったんですが、日本にしてもASEAN諸国にしても、それほどドラスチックに今までとさま変わりなことをする、そういうことではなくて、例えば、例えばはちょっと置いておきまして、モデレートに、お互いが裨益し、そして国内でもやはり、例えばASEAN諸国の中でも、発展段階が必ずしも先に行っていないところについても、経済が回っていくと、最初は一見格差がついたようでも、回り回って全体の底上げにつながるということもありますし、経済をよくしていくことによって、その中で格差が生まれるんじゃなくて、格差がなくなるような、そういう経済運営をそれぞれの国もやっていくだろう、こういうふうに期待しているところでございます。

近藤(昭)委員 時間がなくなりましたので、ただ、最後にもう一つだけ。

 いよいよ高村大臣も本当に熱意を込めて、熱情を込めて準備をしていらっしゃるTICAD4であります。今大臣もお答えになったように、全体の経済成長、またその中で、社会構造が変な、おかしな格差を生まないように注意をしながら取り組まれていく、こういうことだと思うんですが、そういう決意を聞かせていただいた。

 私も、そういう中で、すべてではないですが、やはりNGOとか、企業でも中小企業とか、そういうところの声をきちっと聞いていただきたい、そういうふうに思うんですね。

 TICAD4でも、アフリカに対するODA、先般、大臣も、これからしっかりとふやしていくんだ、そういう決意を福田総理も話された。TICAD4、今度の会議の中でそういった方針がしっかりと決定されていくと思うんですが、アフリカを支援した、しかしながら、その中で貧困、格差が大きくなっていったらこれは問題だと思うんです。

 そういう意味では、そういったところにきちっと政府間で目を配っていく、そして、いろいろなところで、私は、やはりNGOとか市民グループ、国際NGO、日本のNGOとかが活動している、そういうところがきちっと連携をしていくことが大事だと思うんですね。

 改めて、大臣、簡単で結構ですから。

高村国務大臣 TICAD4では、成長と人間の安全保障、それから環境、地球温暖化、この三つを主要テーマにしております。

 それで、NGOのほとんどの方たちも理解してくれていますが、一部のNGOは、成長というと格差が生まれるじゃないか、すぐそう言う方もおられますけれども、そうじゃなくて、成長する中で全体的に底上げして、成長ということを抜きにして援助を考えると、やはりそれは百年後も援助し続けなきゃいけない、援助のための援助になりかねないので、やはり成長と人間の安全保障、そして地球全体の課題である環境、地球温暖化の問題、これをバランスよく議題としてやっていきたい、こういうふうに思っております。

近藤(昭)委員 どうもありがとうございました。最後の、バランスよくというか、きちっと包括的にやっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 先ほどの近藤昭一理事に続いてオレンジ色のネクタイの着用ということで、くしくもでございますが、頑張っていきたいと思います。

 きょうは、もう既にこの二つの案件については民主党だけでも四人の質疑者がございまして、私、五人目であります。相当いろいろとテーマも重なってくる可能性があるだろう、でも全く気にしないで進めていきたいと思います。

 まず第一ですが、これは多分、武正議員の質問と少し重なる部分があるかもしれませんけれども、アジアの一体性、特に東アジア、ASEAN諸国の一体性という意味でやはりかぎを握るのは、資本市場あるいは金融というところがあると思うんです。特に九七年、九八年のあのいわゆるアジア通貨危機、その際に一番問題になったのは、資本市場と金融協力強化が不備であった、不足をしていた、そのことがやはり大きな課題として持ち上がったと思います。

 その後、マニラ枠組みであり、チェンマイ・イニシアチブであり、アジア債券市場の育成なり、いろいろな議論がされてきたというふうに認識はしておりますけれども、アジア通貨危機の反省に立って、ASEAN域内の資本市場の整備や金融協力強化はどれだけ改善をされてきたのか、どういう御認識を持っているか、お尋ねをしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、九七年に発生しましたアジア通貨危機の反省に立ちまして、ASEAN、我が国、中国、韓国から成りますASEANプラス3という枠組みのもとで、この地域の金融協力というのを確実に進めてきたところでございます。

 具体的には、御指摘のとおり、二〇〇〇年ですが、短期流動性を確保しようという目的を持ちまして、二国間の通貨スワップ取り決め、これをネットワーク化するということを柱とするチェンマイ・イニシアチブが合意されております。この規模でございますが、これは二〇〇七年四月現在の数字でございますけれども、八百四十億ドルの規模になっているということでございます。今申し上げましたとおり、これは二国間の通貨スワップ取り決めでございまして、今現在、これをマルチ化、いわゆる多国間化するための検討作業が進められていると承知しております。

 それから、アジアの民間貯蓄が投資に、より活発に向けられるようということで、アジア債券市場育成イニシアチブというのが二〇〇三年に合意されております。これによりまして、自国通貨建ての債券の市場の育成を目指そうということになっておりまして、最近におきましても、アジア各国での自国通貨建ての債券の発行というのが増加をしておるところでございます。

 まさしく九七年のアジア通貨危機の反省の上に立ちまして、この二つのイニシアチブを中心にしましてアジア地域の金融協力が着実に進展しているというふうにとらえております。

野田(佳)委員 それでは、きょうの案件の一つでございますASEAN貿易投資観光促進センター設立協定改正についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 このテーマについてもるる質問がありましたが、ポイントは、センターの目的及び活動に関し、投資促進及び観光促進の双方向化を規定、それから二つ目に、人物交流を追加するということと、負担の割合の問題の変更というのが主な改正点だと思いますが、この中で、新たに、センターの目的及び活動に人物交流をこのたび追加されました。この点について具体的にちょっとお話を聞きたいと思うんですが、四月の十六日だったと思いますが、日本とインドネシアのEPAについて私ここで質問をさせていただいて、人の移動の部分、看護師、介護士を二年間で千人受け入れていくという内容についての質問をさせていただきました。

 そのときの受け入れ機関が国際厚生事業団という御説明をいただいたというふうに思いますけれども、この国際厚生事業団が受け入れとして、もう既に、何か報道によりますと、例えば七月あたりから第一団が来るようなお話も聞いておるんですが、今回、センターの目的として人物交流を加えました。センターは、こういう具体的な問題にどうやってかかわっていくんでしょうか、この国際厚生事業団の受け入れ機関と連携があるんでしょうか、御説明をいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の改正によりまして、ASEANのセンターの目的及び活動に、御指摘のとおり人物交流が加えられるわけでございますけれども、今御指摘の国際厚生事業団との連携というのが今直ちに想定されているわけではございませんが、センターといたしましては、新しい環境に対応するように今後その活動を不断に見直していくということになっておりますので、このような分野での取り組みの可能性も含めまして、今後、センターとして、人物交流活動の全体像の中で検討に努めてまいりたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 今後検討するということで、具体的にはまだ何もお手伝いをする予定はないということと理解してよろしいですか。

石川政府参考人 御指摘のとおり、今後の検討課題ということで、現時点では想定はされておりません。

野田(佳)委員 わかりました。わかりましたというか、人物交流が新たに目的にこのタイミングで入ったものですから、恐らくこういう大事な人の移動にかかわるところでは早速かかわりを持つのかなと思っていたんですが、そうじゃないということでしたので、少しテンポが遅いのかなという印象は持っております。せっかく新たな目的にしたわけですから、果敢に、こういう直近の具体的な課題についても、さまざまな関係する機関はありますが、連携をして効果を上げる、そういう改正であってほしいということを願いたいと思います。

 続いての問題は、いわゆる日本・ASEANの包括的経済連携協定についてでございますが、ASEANと言っても、先発のASEAN諸国と後発国があって、相当にその間には大きな経済格差があるというふうに思います。ブルネイのように資源を有する金持ちの国もあるし、タイやあるいはマレーシア、シンガポールといった、もうそれなりに経済的な力を持ち始めている国もある一方で、先ほども出ていたミャンマーであるとかカンボジアとかラオスとかベトナムとか後発の国はまだまだ経済基盤ができていなくてという状況だと思いますし、先発諸国には日本もこれまで相当なODAの供与をしてきましたが、だんだんもう手控えて、むしろこういう後発諸国の方に手厚くODAを供与するような、そういう工夫もされてきているというふうに認識をしています。

 加えて、同じASEANの中でも、例えばタイなどは、カンボジアやラオスにもみずからODAを供与しているというような関係にもなっているというふうに聞いていますので、それだけこういう大きな格差が、ASEANと一言で言いますけれども、あるように思うんですが、そういう状況を踏まえて、今回の日本・ASEAN包括的経済連携協定、その中で、ハンディを負っている後発国に対してどういうような措置を講じているのか、御説明をいただきたいと思います。

草賀政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員がおっしゃいましたとおり、ASEAN各国の一人頭のGDPは随分格差がございます。おっしゃられたような、ミャンマーが一番最低で二百五十五ドルとか、一人頭ですが。一番最高がシンガポールの三万ドルを超えているということで、百倍以上の差があるんですね。それ以外の先発と後発の間でも数十倍ある状況でございます。

 したがいまして、この協定でもその点には着目をしてございまして、新規ASEAN構成国、おっしゃられたような、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムに対しまして、この経済開発の異なる水準を認識し、特別のかつ異なる待遇が与えられるという原則が示されてございます、この協定の中でですね。

 これを受けまして、まず、物品貿易の分野におきましては、ASEANの原加盟国、もともと加盟している六カ国、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイですが、これにつきましては、この協定発効後十年以内に、輸入額及びその品目の数のベースで九〇%以上の自由化を行うということになっておりますが、ベトナムにつきましては、品目数ベースで十五年以内に九〇%というふうにハンディをつけてございます。それから、カンボジア、ラオス、ミャンマーにつきましては、品目数ベースで十八年以内、しかも九〇%ではなくて八五%以上ということで、さらに柔軟性を認められてございます。

 それから、さらには別の経済的協力の分野でございますが、これにつきましても、日・ASEAN協定のもとで、ASEAN構成国間における経済開発の格差の縮小を目指した協力を増進するというための枠組みが設定されているところでございます。

野田(佳)委員 次の質問は、先ほどの近藤さんの質問と少し重なりますけれども、我が国と、例えばタイやマレーシア、シンガポールなどでは二国間のEPAが締結をされ発効しています。加えて、面としてASEANとしての包括的経済連携協定が今回議論をされておるわけですが、バイとマルチが併存をする中で、日本の企業が取り扱う品目とか輸出時期によっては、例えば税率でいうと、二国間の特恵税率がいいのか今回の包括協定に基づく特恵の税率を使った方がいいのか、この二つだけの問題ではなくて、WTOに加盟していれば、最恵国のその特恵の税率もある。どれを使った方が自社ビジネスに有利なのかというのはそれぞれの企業判断、税率だけではなくて、さっきお話が出ていた原産地規則なども加味して総合検討をするということですが、これはやはり各社もちろん研究するでしょうけれども、やはり政府としても、ビジネスの判断材料としてきちんと情報提供したり相談支援をするという取り組みが必要ではないかと思いますが、その点についてお答えをいただければと思います。

草賀政府参考人 今委員おっしゃったとおり、二国間と、マルチといいますか、プルリといいますか、日・ASEANの協定が併存するわけでございます。したがいまして、ある産品につきましても、それぞれの二つの協定のもとで、二国間とこの日・ASEANと、原産と認められる場合には二種類、あるいは実効税率も含めます場合三種類の税率が併存し得るということでございます。

 では、どれが一番有利か、あるいは最も低いかということですけれども、これはまさに時期や品目や国ごとに異なります。したがいまして、商品を輸出する際、輸出業者においてどれが一番有利かということを選択していただくことになるわけでございます。そういたしますと、大事なことは、そういう利用を可能とするようにいかに広報を上手にするかということだと思います。

 政府といたしましては、ホームページ等を使いまして、各税率についてきちんと公表して、輸出者が原産地証明を取得する際、申請する際、我が国におきましてはその発給窓口が日本商工会議所になってございます。そこで申請する際に周知することなども含めて、広報活動に努めていくということが一つでございます。

 それから、逆に輸入国側、相手国の方におきましても、複数の税率が併存するということで、輸入国側の通関において輸入業者に過度な混乱や負担が生じないように、やはりこれはASEAN側とも緊密に連絡をとっていくというふうにしたいと考えてございます。

野田(佳)委員 しっかり広報、情報提供していただきたいと思いますけれども、その上で、特に、今回のいわゆる日本とASEANとの包括協定が発効をする、そしてそれぞれ国内手続を進めるという段階において、これから詰めていくというのが、いわゆる運用、手続のあり方だと思います。

 やはりこの協定が日本の企業にとって本当に使い勝手のよいものになるかどうかというのは、一に多分、この運用そして手続のあり方の詰めの話だと思いますので、政府としてどのように取り組んでいくのか、御決意をお聞きしたいと思います。

草賀政府参考人 御指摘をいただきましたとおり、確かにこの協定が日本企業にとって使い勝手がよいものになるために、やはり運用や手続のあり方は大変重要になると思います。

 したがいまして、二つございまして、一つは、日本とASEAN側との間で調整をしております今おっしゃった運用上の規則というもの、それからあと、日本国内において、あるいはそれぞれの国内におきまして独自に整備を進める関係国内法令というものがございます。

 このうち、運用上の規則につきましては、現在、ASEAN側と鋭意調整をやっているところでございます。

 それから、日本国内における関係政省令の整備につきましては、この協定につきまして国会での御承認をいただいた後に作業を行うことになりますけれども、この作業に当たりましては、ASEAN側あるいは関係省庁と緊密に連絡をいたしまして、日本企業にとっての利便性あるいは円滑な貿易の実施を念頭にぜひ進めてまいりたいと思っております。

 それから、これらの運用上の規則あるいは関係政省令を含めたさまざまな手続の運用については、関係する省庁、機関がございますので、これらが一体となって協力して、利用者にとってわかりやすい形で積極的に広報をやっていきたいというふうに考えてございます。

 運用上の規則の内容は、原産地証明書の様式ですとか、あるいは手続といったものに係る部分、それから、国内独自の関係政省令につきましては、関税暫定措置法の施行令、あるいは原産地証明の発給に係ります省令、政令といったものが関係してまいります。

 以上でございます。

野田(佳)委員 既にASEANは中国と、そして韓国とFTAを締結し、そして発効しているというふうに思います。ということは、ASEANとの関係においては既に中国や韓国は先行をしていて、日本はまあ出おくれていたんだろうと思うんですが、今回締結をされた協定は、タイミングはおくれましたが、内容的には、先行する中国や韓国との協定よりも質的には高いんだ、自由化度は高いんだと、凌駕したと言い切れるのかどうか、御説明をいただきたいと思います。

高村国務大臣 他国の協定と単純に比較することはそんなに簡単なことじゃないわけでありますが、例えば自由化内容という点につきましては、中国・ASEAN・FTAや韓国・ASEAN・FTAのいずれにおいても、中国側とASEAN側、また韓国側とASEAN側の自由化率はそれぞれ九〇%未満であるのに対して、本協定では、日本側の輸入額の約九三%について自由化を実現しておりますし、ASEAN側の輸入額の約九一%について自由化を行うこととなっており、高い自由化を実現することができたと考えております。

 我が国が二国間EPAを締結または署名しているASEAN原加盟国六カ国との間では、二国間EPAのもとで日本側は九二%から九五%、ASEAN各国は九六%から一〇〇%の自由化率を達成しているわけであります。

 また、中国・ASEAN・FTAや韓国・ASEAN・FTAでは、最終税率及びその最終税率に達する年のみを定め、その過程における各年の具体的税率については各国の裁量にゆだねられるというボックス方式を用いております。これに対して本協定では、個別の品目ごとに各年ごとの具体的税率を特定しているという点で、より具体的かつ詳細な内容になっていると言うことができると思います。

野田(佳)委員 どうもありがとうございました。

 では、引き続き大臣に御質問をさせていただきたいと思うのですが、今、たまたま韓国や中国のFTAとの比較の質問をしましたけれども、韓国とASEANのFTA、AKFTA、そこには、北朝鮮の開城工業団地の産品について韓国産と認める条項が含まれているということでございまして、材料費の六割以上、付加価値ベースで四割以上を韓国産で調達すればメード・イン・コリアとして輸出できるという条項でございます。

 開城というのは、御案内のとおり南北の国境の近くにある都市で、かつての高麗と言われていた時代の首都、都であったと思いますが、この開城については、二〇〇〇年に南北間で開城工業地区開発合意書が締結をされ、そして工業団地が造成をされました。そして、もう既に去年の夏の段階では韓国系の企業が四十五社入って、そして雇用は今二万人になっているということでございまして、累積生産額は約二億ドル、去年の夏の段階であります。この開城でつくられた産品が韓国を経由してASEANに輸出できるという条項なんですよね。

 これはある意味、日本は、引き続き北朝鮮については、核の問題のみならず、拉致問題が全く進展をしていないということで、経済制裁をしているわけです。日本は経済制裁をしているけれども、韓国を通じてASEAN各国と事実上北朝鮮は取引をし、貿易ができるということじゃないですか、この条項は。

 この条項について政府はどのような認識、見解を持っているのか、お尋ねしたいと思います。

小野寺副大臣 韓国・ASEAN・FTAには、御指摘のとおり、開城工業団地の製品についても韓国原産品となり得る条項が含まれているものと承知をしております。

 ただ、我が国は同FTAの当事国ではありませんので、同条項の内容について評価することは差し控えさせていただきたいと思っております。

野田(佳)委員 当事国ではありませんが、ASEAN諸国にはこれまで相当にODAを供与してきた実績があるわけです。もちろん、韓国にもこういう開城工業団地を特恵的な扱いにするということはおかしいと言うべきだし、ASEANについても言うべきでした。

 当事国ではないからといってほうっておいたら、後でも触れますけれども、韓国はヨーロッパとも同じようなことを、この事項、開城事項を入れていますよね。今、米韓FTAでもこれは議題になっていますよね。こんなことを認めていたら、WTOにも加盟していない北朝鮮がどんどんどんどん、日本とは関係なく、事実上、貿易できるということじゃないですか。それは当事国でないからといって黙認をしている姿勢はおかしいと思いますが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 この問題については日本も注視をしておりますが、やはり我が国は同FTAの当事国ではないということで、ここの場での内容についての評価については差し控えさせていただきたいと思います。

野田(佳)委員 そうすると、我が国だけひとりよがりで経済制裁しても全く意味がありません。意味のない、そういうひとりよがりになってしまいますよ。やはり国際社会と協力をしながら対話と圧力という政策を実現するということに効果があるわけで、これは、当事国でないから何もしません、注視していますだったら、全く意味がありません。この開城工業団地を通じて北朝鮮はどんどん外貨を取り入れて、そして核開発を続けるかもしれない、ミサイル開発するかもしれないということはストーリーとして描けるわけでございますので、これは韓国経由で何でもできることになります。私は、それは明らかにおかしいと思うんです。

 では、そこでもう一つ質問させていただきますけれども、開城条項は、これは韓国・ASEANのFTAだけではなくて、既にシンガポールとも、二国間で締結したFTAの中で明記されているし、そしてEFTA、欧州自由貿易地域でしたか、そこともFTAでこの開城条項が入っているんです。この開城条項で開城工業団地製品はどれだけ輸出をされているのか、実態を御存じでしょうか。

小野寺副大臣 御指摘のFTAに基づく開城工業団地製品の輸出については対外的に公表された政府統計はないものと承知をしております。韓国とのFTAに基づくシンガポール、EFTAに対する開城工業団地製品の輸出に対する対外的に公表された統計というのは存在しませんが、本年三月の韓国統一部発表によれば、同工業団地が本格的に生産を開始した二〇〇五年から本年二月までの累積の輸出総額は六千七百八十八万ドルということであります。

野田(佳)委員 韓国の統一部が明らかにした内容で、今おっしゃったようなお話なんですが、内訳が出ていまして、開城工業団地製品、二四%が韓国以外に輸出ということになっています。実態を見ると、最大の輸入国は欧州連合、次いで中国、ロシア、中東、豪州となっていまして、これは、いろいろと諸外国にどんどんと事実上の輸出ができている、実績が上がってきているということであります。開城工業団地製品はすべて今メード・イン・コリアと表示して輸出されているということなんですね。

 私はやはり、これはきちんと実態を押さえて、韓国経由で自由にお金を集められる、稼げるという状況は、確かに、金大中そして盧武鉉政権、この開城工業団地は金剛山の観光とともにシンボル的な事業として大事に扱ってきたことはわかりますが、これは事実上のFTAのただ乗りと言ったら言い過ぎでしょうか、ただ乗りだと思うんですね。当該締結国になっていなくて、事実上は第三国として輸出できるというのは、これはただ乗りと同じだというふうに私は思っておりますし、そもそも、WTO非加盟の北朝鮮がそういう形の恩恵を受けることが本当に国際ルールとして許されているのかどうか。私は国際法的にもおかしいのではないかと思うんですが、その辺の法的な関係はどなたか御存じありませんか。

猪俣政府参考人 先ほど副大臣から御答弁しましたように、韓国とほかの国とのEPAあるいはFTAの条文について、あるいはその中身についての話でございますので、そのことと、WTOに加盟していない国との関係で国際法的にどうかという御議論でございますけれども、個別の条約で韓国が開城工業団地の産品についてどう扱うかということについて、韓国とその他の国との間での合意ということになりますので、その点について国際法上おかしいということにはならないと思います。

野田(佳)委員 例えば、開城条項、FTA締結国以外の第三国に事実上権利を与えるということですから、ウィーン条約法の関係で背く可能性もあるという指摘もあります。よく日本も研究をされた上で、論駁できるものは論駁をするという姿勢でぜひ臨んでいただきたいというふうに私は思います。

 加えて、今ちょうど、米韓FTA、これは締結はされたわけですが、開城条項については玉虫色というか、灰色のまま決着を見ていないという状況だと承知をしておりますが、米韓FTA交渉において開城条項は結局今どういう扱いになっているのか。これについても、これは日米同盟がありますので、アメリカにはしっかり物を言っていくべきだと私は思います。テロ支援国家の指定解除の問題で物を言うだけではなくて、開城条項についても我が国の立場を明快に主張するべきだと私は思いますが、いかがでしょう。

小野寺副大臣 米韓のFTAの附属書には朝鮮半島域外加工地域委員会を設置することが規定されており、協定発効一年後及びその後は最低年一回開催される委員会において、域外加工地域として指定され得る地理的区域の決定や、域外加工地域からの商品が原産地商品として認められるための基準等の設定が行われることになっていると承知をしております。

 したがって、開城工業団地が域外加工地域として指定されるか否かも含め、米韓FTAが発効した後にこの委員会で決定がなされるものと承知をしております。

野田(佳)委員 だから、この域外何とか委員会で開城が認められないように、これはきちっと日本がメッセージをアメリカに主張し続ける。また、韓国も政権が変わったわけでありますから、開城工業団地の扱いを李明博政権がどう見ているのか、もちろん変更が出てくるかもしれません。やはり、韓国にも同様に日本のメッセージはきちっと伝えるということを心がけるべきだというふうに思っております。

 これは諸外国同士でしたから、少し奥歯に物が挟まったような言い方があったと思いますが、日韓EPA交渉も、日韓首脳会議などを経て、予備的な交渉に入るとか入らないとかという段階です。この日韓EPA交渉で開城事項を韓国が主張してきた場合、日本はどう対応するんでしょうか。これは我々がまさに当事国ですから、政府の明快な答弁を求めたいと思います。

小野寺副大臣 日韓EPA交渉において、これまで韓国側より開城工業団地の生産品の扱いに関する提案がなされたことはありませんが、一般論として申し上げれば、経済連携協定において原産品として扱うかどうかについては、協定締約国の領域で生産されたものが基本となるべきであると考えております。

 四月の日韓首脳会議の結果、日韓EPA交渉再開に向けた検討及び環境醸成のための実務協議を六月中に開催することになっております。交渉再開後、韓国側より仮に開城工業団地の生産品の扱いに関する提案がなされる場合には、その時点で、前記の基本的な立場、協定締約国の域内で生産されたものが基本となるべきであるという立場を踏まえて対応する考えです。

野田(佳)委員 わかりやすく言うと、では、持ち出してきた場合には、開城でつくったものをメード・イン・コリアとして輸出することは認めませんよと、端的に言うと、日本の立場を言うということでよろしいですか。

小野寺副大臣 あくまでも協定締約国の域内で生産されるものが基本となるべきであるということに尽きると思います。

野田(佳)委員 韓国の域内じゃないから、だから、これは該当しませんということで理解してよろしいですね。

高村国務大臣 基本的にそう考えていただいて結構です。

野田(佳)委員 大臣から御答弁いただきましたので、次に進みたいと思います。

 今ちょっと韓国の関連の質問が多かったんですが、またもとのASEANの経済外交に戻ります。

 先ほど来言ったように、ASEANは、日本、中国、韓国とのASEANプラス1の協定はもう済んで、ことしじゅうにもインドやニュージーランドとかオーストラリアとの協定もまとまるだろうと言われているわけであります。そうすると、ASEANプラス1はほぼ出そろうという状況の中で、だとすると、せっかくASEANプラス1が出そろったわけですから、だったら、ASEANプラス3、ASEANプラス6のいわゆる東アジアEPA、まさにその具体的な段階になると認識をしていますけれども、そう考えてよろしいでしょうか。

高村国務大臣 ASEANと第三国のFTA交渉について我が国が見通しを述べることは控えるべきだと考えますが、その上で、ASEANといわゆるプラス6との間の個別のEPA及びFTA交渉がまとまった後のいわゆる広域経済連携についてのお尋ねだと思います。

 現在、東アジア及び太平洋について幾つかの構想が検討されております。ただいま御指摘のあったいわゆるASEANプラス6のEPA構想は、かかる広域経済連携構想の一つとして、ASEANプラス3のFTA構想やアジア太平洋の自由貿易圏構想とともに研究や検討が進められております。

 我が国としては、グローバル化が進展する国際社会の安定的な成長に寄与していくため、東アジア及びアジア太平洋地域における経済連携の枠組みの研究や検討において、WTO体制を含め、世界経済、貿易に与える影響、関係各国の考え方等を踏まえ、これら各国と協議しつつ、積極的な参加及び貢献を行っていく考えであります。

 したがって、本協定の締結を踏まえ、ASEANプラス6のEPA構想についてもさらなる研究や検討を進めていく考えですが、現時点で実際の交渉開始を予断しているものではないわけであります。

 ちなみに、当たり前のことでありますが、ASEANプラス1という場合とASEANプラス6というのは全然違うわけであります。

 まとめたASEANと一つですね、ASEANプラス1は。ASEANプラス6というのは、ASEANと6をまとめてやるという話じゃなくて、ASEANと6が一つの中で入ることだというので、ASEANプラス1とASEANプラス6というのは、そういう言葉を使いますが、若干意味が違うものだというふうに御理解をいただきたいと思います。

野田(佳)委員 一応通告では日韓、日中ないしは日中韓のFTAをお聞きするということになっていましたが、さっき特に韓国との関係はちょっとしつこく聞きましたから、この通告は取り下げまして、次の質問です。

 一応、日本としてはこれで、ASEANで九つ目ですか、EPAは。随分頑張ってきたと思うんですが、問題はこれからでございます。ある意味、巷間言われているのは、交渉しやすい相手は終わったかなと。これからはどうしても、やはり米、麦などの重要な農産物を聖域化していて、これ以上EPAを加速することができるのかどうか。例えばオーストラリア、農業大国でありますが、こういうことになってくると思うんです。

 通商政策としてはEPA、FTAを加速しなければなりませんが、では農業をどうするんだという、いよいよ避けて通れないところに差しかかったのではないかと思います。農業市場の自由化は避けて通れないとするならば、我が国の農業の強化をどう図っていくかということをまさに考えていかなければならないという時期でありますが、この点の認識はいかがでございますか。

 やはりこれは大臣としての御見解をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 国内農業振興策等の農業政策については、既に農政改革に向けた真摯な取り組みが行われているところと承知をしております。

 今後のEPA交渉に当たっても、我が国の農林水産業における構造改革の進捗状況に配慮しつつ、攻めるところは攻め、譲るところは譲り、守るところは守るという姿勢で、政府一体となって交渉を進めてまいります。

野田(佳)委員 攻めるところは攻める、守るところは守る、大変含蓄があるようには聞こえますが、具体的にはなかなか大変だと思いますけれども。

 ただ、今全体的に、農産物を輸出している食料供給国というのは水の不安を抱えているところも多いですよね。我が国は、その意味、コストではハンディがあったけれども水については諸外国に比べると心配がないので、ハイクオリティーな輸出農業なども含めて、やはり大胆に構想をしていくべきだろうというふうに思います。

 本当はこの後、きょう成立した宇宙基本法を踏まえた宇宙外交についてもお聞きしたかったんですが、時間がなくなりましたので、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょう議論がありましたが、今、東アジアの中でASEANはいわば平和の源泉として存在感を増していて、我が国が、ともに平和、友好そして繁栄ということでその共同な流れをいかに協力しながら発展させるかということが問われている状況だと思います。

 そこで今日、世界とアジアの情勢の進展を考えたときに、世界各地で、平和と繁栄ということで、国際秩序、さまざまな模索と新たな方向ということで、その担い手として自主的な地域共同体という動きが発展していることは重要だと思います。ラテンアメリカそれからアフリカと、さまざまな地域ごとにそういう努力があって、平和の共同体という点では、このアジア大陸でいわば目覚ましい前進が遂げられている。

 そこで、高村大臣に伺いたいのです。

 ASEAN諸国が、国連憲章とバンドン宣言を土台にしながら、紛争の平和解決、武力行使の禁止などをうたって一九七六年に結びました東南アジア友好協力条約、TACには、たしか現在二十四カ国、そして人口では三十七億人という規模で参加をし、日本も、いろいろありました経過を経て加入をしたということだと思うんですが、大臣は、この東南アジアの友好協力条約、この枠組みについてどのように評価をされているでしょうか。全体的な評価で結構ですが、伺いたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、東南アジア友好協力条約、現在の締約国数、四月末現在でございますが、二十四カ国ということになっております。

 この条約でございますけれども、ASEAN各国は、これを東南アジアにおける友好協力関係のコミットメントを象徴する基本文書といたしまして重視しております。これは、条約の形をとっておりますが、むしろ政治的な文書、政治的な宣言という性格の強いものでございます。

 我が国がこの条約に加入していることによりまして、ASEANとの友好協力関係を維持発展させるという前向きな姿勢を示す、非常に象徴的な意義があるもの、このように考えております。

笠井委員 もともとは東南アジアで始まった条約ですが、今や、中国、インド、さらにはパキスタン、韓国、ロシア、そして日本も入って、そしてヨーロッパでもフランスも加入をするということがありまして、世界人口の五七%を擁する国々が加入する平和の共同体として、ユーラシア大陸を覆う形で巨大な発展を遂げているということだと思います。

 そして、二〇〇五年の十二月には、このTACに加盟する十六カ国が集まって第一回の東アジア首脳会議が開かれて、東アジア共同体を展望する宣言が採択をされて以来、毎年三回ですか、首脳会議が開かれている。

 私も、この東アジア共同体をめぐるいろいろな議論の中で、トラック2の会議も何度か出ることがありました。

 先日、当委員会としてASEANセンターを訪問した際にも、ASEAN諸国の駐日大使との懇談で、この東アジア共同体の重要性についても言及があって、私もそれに触発されながら、政府間でのそういう議論とともにやはり国民レベルでも大いに議論を深めていくということがぜひ必要だし、ASEANセンターでもそういう場を設けてはどうかということで話もしまして、シアゾン駐日フィリピン大使が、それは大事だ、大いに検討していきたいということも言われました。

 そこで、この東アジアのそうした共同体あるいはそういうことを、大臣は視野に入れということも先ほど言われましたが、そして平和と繁栄をともに希求してさまざまな連携を強化していくという上で、私は大事だと思いますのは、政治的にも平和的にも経済的にも、まあ、政治的にも経済的にも平和的にもというふうな順序がいいかもしれませんが、互恵といいますか、ウイン・ウインの関係というのを築いていくということが、何よりやはりそういう点では、据えられることの要素としてはきちっと据えられなきゃいけないのじゃないかと思うんです。

 その辺の関係について、これは大臣に認識を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 東アジア共同体の形成は、長期目標であり、その具体的なあり方については、今後、関係国間で議論を深めていくことになります。今は、将来の東アジア共同体の形成を、もう一度使いますが、視野に入れて、地域各国で一致した共通の課題に取り組み、地域全体の平和、安定、繁栄を目指していくことが重要であります。

 我が国としても、東アジア首脳会議やAPEC、ASEANプラス3の各種枠組みを重層的に活用し、環境・気候変動やエネルギー安全保障、青少年交流等での具体的協力を積極的に進めてまいります。こうした地域協力の具体的な取り組みを通じて、豊かで安定し、開かれた東アジア地域の実現に貢献していく考えであります。

 バイでもマルチでも、ウイン・ウインの関係というのは大切なことだと思っております。

笠井委員 具体的にはASEAN諸国との互恵、ウイン・ウインの関係を築いていく、これは大事だというふうに大臣も言われましたが、そういう視点から、今回の日本・ASEAN包括的経済連携協定について質問していきたいと思います。

 今回、政府から承認が求められている日本とASEANの協定は、これまでの二国間の協定がありましたが、それも踏まえながら、その上にASEAN諸国全体と包括的に結ばれた協定であります。これは、日本と相手国の間の関税を相互になくしていくということだけではなくて、とりわけ特定の鉱工業製品については、ASEANに加盟している国々の相互間で、日系企業の取引に対して関税をなくすという仕組みが盛り込まれている、これは大きな特徴だと言われております。

 そこで、まず、農業などの分野についてであります。

 農水産分野では、今回の包括的協定で、即時関税を撤廃される分野というのはドリアンとかエビ、それからエビ調整品等であって、十年以内に段階的に撤廃する品目としては塩蔵ナスそれからカレー調整品、クラゲ等が挙げられております。また、関税を削減する品目として鶏肉と合板などが挙げられているということだと思います。

 そこで、農水省に伺いますけれども、当面はこれまでの二国間協定と基本的には同じ水準なんだけれども、協定発効時に、HSコードですね、品目番号の約九〇%の関税即時撤廃がなされて、残りの品目は今後六年から十年間かけて漸時撤廃がなされることになっているために、十年後には、米などの国家貿易品以外、つまりIQ品目とか除外品目を除いて、それ以外の農産物の関税はゼロになる、そういうことでよろしいわけですか。

林田政府参考人 お答え申し上げます。

 EPAにおきましては、今委員御指摘のとおり、WTO協定において、実質上すべての貿易について関税を撤廃することとされておりまして、これまでに締結したEPAにおいて譲許の対象とした品目につきましては、関税率はゼロとなるか、または下がっていくことになります。

笠井委員 これはOECDの資料ということで、私もいただいたものですけれども、各国の農産物の平均関税率というのを見ますと、これは比較で見ると、米国は五・五%と極めて低いですが、日本はそれに次ぐ一一・七%という形で、これは二〇〇〇年協定税率でありますけれども、最低ランクであります。いわゆる優秀なといいますか、関税開放国の一つになっている。今回の協定で関税がさらに下がっていくというのは必至のわけであります。

 そこで伺いますけれども、この日本・ASEAN協定と今まで日本が結んだ二国間EPAの譲許表に従って関税率を下げていきますと、日本への農林水産物の輸入量というのは、当然これは全体としてはふえていくということになりますよね。それはそういうことでよろしいでしょうか。

林田政府参考人 お答えいたします。

 ASEANとのEPAが発効した後の、ASEAN各国から我が国への農林水産物の輸入動向についてのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、その時々の国内需給ですとか他国からの輸入動向等が影響いたしますので、一概には申し上げられないという面があることを、どうか御理解賜りたいと存じます。

 いずれにいたしましても、守るべきものは守るとの方針のもとで、我が国農林水産業に悪影響を及ぼさないように交渉をまとめてきたところでございまして、我が国の食料自給率に影響を与えるものではないと考えておりますけれども、今後ともASEAN各国からの農林水産物の輸入動向については注視してまいりたいというふうに考えております。

笠井委員 一概に言えないというのは、では何のためにこれをやるのかというふうにちょっと思っちゃうんですけれども。

 では、関税が下がって、日本への農林水産物の輸入量が減ることにはなりますか。

林田政府参考人 お答え申し上げます。

 各国からの輸入動向でございますが、繰り返しになりますけれども、その時々の国内需給ですとか他国からの輸入動向等が影響いたしますので、減るもしくはふえるということについて一概にお答えすることが困難だということにつきまして、御了解賜りたいと思います。

笠井委員 これは、関税を下げていってゼロにする、そうすると入りやすくなる、こういう話で、向こうは、相手国の側でいえば、日本へのそういう品目の輸入をふやしたいということで関税を下げてほしいと。そして、日本の側は日本の側の方でまた、こういう分野でということで交渉してやっていくわけですけれども、それで関税を下げたり撤廃するわけです。

 でも、結局どうなるかは一概に言えないというんじゃ、この協定で何が効果があるのかと向こう側からしても出る、その時々にいろいろありますのでどうなるかわかりませんということでは。大きな意味でやはり流れとしてはふえてくるとかいうことでなければ、これは、結んでいく上でもメリットというか、向こう側にとってもないし、こっち側にとってはそれはどう考えていくのかとなると思うんです。

 では、少なくとも、関税を下げたり撤廃するということになるということになれば、そういう措置というのは日本の自給率向上にはならないということは言えると思うんですが、どうでしょうか。それにつながるものではないと。

林田政府参考人 お尋ねでございますけれども、ASEANとのEPAの締結による輸入動向の予測というものと、国内の自給率の向上の必要性、ないしは自給率の変動等についての特別の関係があるというふうには言えないのではないかというふうに考えております。

笠井委員 非常に苦しいですよね、話は。

 今日、食料をめぐる国際状況の大きな変化というのは、農業政策の根本的転換をやはり各国に迫っている状況だと思うんです。とりわけ、ことしに入って、先ほどもありましたが、食料不足とか食料の高騰などの事態が非常に深刻になって、最近、EUでいえば、いわば日本語的に言えば減反政策を転換するということで、全世界的な流れとしては、自給率確保、向上への努力が一層強まっている。

 一般論として、関税障壁がなくなると、国民に対する食料確保というのが大変になる。平地の少ない国土で農業を営む歴史を考慮するならば、生産条件が大きく異なる外国との競争というのは論外で、関税措置は必要だということだと思うんです。

 EPAというのは、農業について見ますと、双方の国の農業生産が互いに利益となる内容が目指されるべきだと思うんです。国内生産の縮小のままでの関税撤廃というのは、加工食品とか野菜、果実なども含めて、その影響は、我が国の農業と食料、地域経済を初めとした広い分野に及びかねない、農業関係者を初め各界からそうした重大な懸念と反対の声が上がっているのは当然だと私は思います。国民の利益にとって打撃があるなら、やはりこれは困るという話になるんだと思うんです。

 では、経済分野はどうかということですが、経済産業の分野であります。

 今回の協定の大きな特徴は、原産地規則の累積原則を満たした製品の流通にかかわる関税が免税措置になるということであります。ASEANに加盟している国々の相互間で、日系企業の取引に対して関税をなくしていくという仕組みになっているわけです。

 経済産業省に伺いますが、ASEAN域内に進出する日系企業にとって、この免税措置はどういうふうに有利に働きますでしょうか。どういうメリットがあるというふうに、売りとして言えるんでしょうか。お答えください。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 多くの日系企業は、現在、日本国内で高付加価値の部材を生産いたしまして、それをASEANの国に輸出して、そこで完成品を組み立てる、組み立てた完成品をASEANの域内で輸出をする、こういう生産ネットワークを構築しつつあるところでございます。

 従来の二国間のEPAのみですと、日本から高付加価値の部材がASEANに輸出され、その付加価値が大変高いがゆえに、そこで組み立てられた製品が日本製品ということに認定されてしまいまして、ASEANの中での関税の特典が得られない、こういう状況にございましたものを、この日・ASEAN間の経済連携協定ができますと、これが日・ASEAN、十一カ国の中でつくられたというふうに認定されますので、関税の恩典が得られるということになるのが最大の特色だろうというふうに考えております。

笠井委員 今説明がありましたけれども、日本の自動車とか電子・電気分野を初めとして、そういう大企業は、既にASEANの諸国に生産拠点を移して多国籍企業化をいたしております。そのために、ASEAN諸国の貿易のかなりの部分が日系企業の企業内取引で占められるようになっていて、その傾向というのは年々高まっている。これは、日系企業が二国間のEPAやAFTA、ASEANの自由貿易地帯を活用しながら、投資先国の税制優遇などを受けてきた結果でもあります。

 今回の協定というのは、これまでの二国間協定にとどまらず、さらにASEAN域内の日系企業の企業内貿易の関税負担を結果的にはゼロにしていこうというものであって、日系企業は一層大きなメリットを得ることになるというふうに思うんです。今メリットがあるとおっしゃいました。

 そこで、経済産業省にさらに伺いますが、今回、新たな原産地規則の累積規定を適用することによって、日本から輸出をする高付加価値の中間財について、ASEAN諸国の日系子会社間の企業内貿易が増加する。今回の協定が実行に移されれば、日本国内から、例えばエンジンとか液晶のパネルとか、そういうことを初めとした付加価値の高い部品を供給して出していって、そして賃金の安いASEAN諸国では生産、組み立てを行って、それを結局そこで完成品とさせて、また欧米や日本市場などにも輸出していくというような形で、そういうことも含めた生産ネットワークがより高度に形成をされていくということになる、そういう理解でよろしいんでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 この日・ASEANの経済連携協定ができますと、ASEANの域内における日系企業間の取引のみならず、そこで生産された製品が、基本的には関税が撤廃された環境の中でASEANの域内で輸出をされる、そういう新しい環境を生むことができますので、こうした生産ネットワークがさらに強化されることが期待されるものでございます。

笠井委員 そうしますと、この累積規定の無税適用によって、ASEANの域内にある日系企業が、いわばまるで日本国内に存在しているかのような、そういう言い方がいいかどうかはあれですが、そういう機能を発揮していく、こういう意味では、そこに国境がないというか、そういう流れが強くなっていくということだと思うんです。

 そうしますと、結局は、最終消費地に近づくように日本国内の企業が海外に移動する流れが強まって、海外といったって、それはこの分野でいけば国境なく同じところですから、例えば大分県にあるのもASEANのあるA国にあるのも基本的には同じということになって、日本国内ではいわゆる国内の産業の空洞化ということが生じてくるのではないか。

 大企業の生産、組み立て分野を中心にして、下請分野、子企業の単価切り下げとか労働条件の引き下げとか雇用の削減がもたらされて、そういう意味では、国境的には、国でいえば日本の地域経済の衰退など、産業空洞化を加速するという懸念が出てくると思うんですけれども、その点についてはどういうふうに説明されるでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 このEPAは、貿易相手国の関税を原則として撤廃するものでございますので、日本で物をつくって、それを海外に輸出するという企業に対してメリットを与えるものでございます。

 したがって、EPAの締結は、一義的には日本の国内産業の海外進出あるいは産業の空洞化につながるものではないというふうに認識しております。

笠井委員 ところが、実際はそうならなくて、日本総研の調査によりますと、中小の下請企業が挙げる東南アジア連携のデメリットということで、納入先企業の海外展開が加速化をして国内事業は厳しくなるという意見が一番大きい。大企業が日本の下請企業を空洞化させてきた流れが続くという見解が出されて、共通して懸念も出されている。

 それで、日本経団連が二〇〇三年に発表したビジョンの中に、メード・イン・ジャパンというのからメード・バイ・ジャパンへという文書があります。日本企業がつくるけれども、日本国内ではつくらない、むしろ積極的に海外でつくっていくという内容で、海外に進出した大企業は国内経済を見捨てるという、いわば宣言というふうに私は読み取ったんですけれども、そんなことはないというふうに言うなら、では、実際の中小下請の実態はどうなっていくか、そのことについて何か調べたものがあるか、あるいは現状こうなっていて、これがどう変わるか、そういうリアルな実態があるかどうか、示していただきたいんですが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 経済活動でございますので、それぞれ適地で最適の生産をしていくということが進んだ結果、海外に出ざるを得ないという企業は、これは大企業にしましても中小企業にしましても、あるものとは存じております。

 しかしながら、つい最近刊行されました中小企業白書によりますと、中小企業の輸出も、この数年間、日本が経済連携協定を結んで発効するようになってから輸出額が伸びているという統計もございますし、また、今回、日・ASEANの経済連携協定におきまして、自動車部品でございますとか電子・電気の部品でございますとか、そういった日本の中小企業が強みを持っているさまざまな分野で関税撤廃がなされたものについては、輸出が伸びていくのではないかというふうに考えております。

笠井委員 高付加価値のあるもので、中小企業でもそうやって自分たちでつくってやれるところはいいんですよ、中小企業といっても。でも、そういう意味では、今まで高付加価値のあるものを日本国内でつくって、それを組み立てるという下請なんかがあったところがありますけれども、その部分というのは今度出ていくということになっちゃいます、向こうでやりますから。そういうところは大変なことになるというのは間違いないと思うんです。

 大臣、先ほど、互恵、ウイン・ウインということで言われたわけですけれども、そういう立場に立った場合に、この経済連携あるいはその協定ということを考えると、やはり日本国内の農業あるいは産業への影響というのは、いわば慎重に検討されなきゃいけない。先ほど大臣は、ドラスチックじゃなくてモデレートにという話をされたわけですが、では、今回の協定によって、そういう分野に対して重大な影響を与えることはないということを確約できますでしょうか。

高村国務大臣 我が国としては、引き続き、政府全体として発出した今後の経済連携協定の推進についての基本方針等に基づいて、我が国及び国民にとって最大限の利益を実現できるよう、政府一体となってEPAを推進していく所存でございます。

 確かにセンシティブな面もありますけれども、全体として最大限の利益が出てくる、それは我が国にとっても相手方へとっても出てくる、そういう方向を目指して努力をしてまいります。

笠井委員 国民の最大の利益というところは、私もキーワードだと思うんですけれども、そこのところで、私は今、限られた時間ですが、幾つか指摘をさせていただいて議論しましたが、むしろ重大な懸念があるという点で、今回の協定によって、日本国内で農業分野、下請あるいは雇用にマイナスの影響が出ることが懸念をされる、そういう点で今回の協定の承認には賛成しかねることを表明しておきたいと思います。

 さて、協定関連は以上ですが、残された時間、若干の問題について質疑をしたいと思います。

 先日の当委員会で、この外務委員会が開かれるたびに米軍にかかわる事件、事故が起こるということを私は流れの中で申し上げたんですが、またあったという感じで、ちょっと一点、質問をしておきたいと思います。

 といいますのも、去る五月十五日に、米陸軍キャンプ座間の基地内のゴルフ場から飛んできたゴルフボールが、隣接をする相模原の市立新磯野西公園にいた小学六年生男子の顔に当たるという事故が発生をいたしました。

 防衛省、来ていただいていると思うんですが、この事故の概要について説明してください。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 五月十五日午後五時ごろ、キャンプ座間ゴルフ場五番ホール付近におきまして、ゴルフボールがフェンスを越えてワンバウンドした後、近くの公園にいた十一歳の男子の鼻に当たったものでございます。

 男子は少量の鼻血が認められましたが、レントゲン撮影では異常がないということであり、打撲程度であると承知しているところでございます。

 また、キャンプ座間ゴルフ場から施設外へのゴルフボールの飛び出し事故につきましては、機会あるごとに、米側に対しまして再発防止等を申し入れてきたところでございますが、今回このような事件が起きたことはまことに遺憾でございます。

 本件につきましては、同日、南関東防衛局から神奈川県等に情報提供し、また、南関東防衛局から在日米陸軍司令部に対しまして、再発防止策を講じるよう強く申し入れたところでございます。

笠井委員 一歩間違えばこれは大きな事故、大変な事故につながりかねない問題だと思うんです。市民が安心して公園で憩えない、こんな事態があってはならないと思うんです。

 しかも、このキャンプ座間からのゴルフボールの飛び出し事故というのは今回が初めてじゃない。一九八〇年の六月に女性の背中をゴルフボールが直撃するという人身事故が起きて以来、たびたび問題にされてきました。

 防衛省に確認しますが、これまでキャンプ座間のゴルフ場周辺で発生したゴルフボールの飛び出しに伴う事故がどれだけあったと把握していますでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 当省が保有いたしますキャンプ座間ゴルフ場からのゴルフボール飛び出し事故に係ります損害賠償に関する行政文書は、文書管理規定等におきまして保存期間を定めておりますところ、平成十四年度以降のものを保有しているところでございます。

 その資料におきまして、ゴルフボールの飛び出しによる人身事故、人身被害の事故は発生しておりませんが、物損事故で損害賠償を行った支払い年度別で申し上げますと、平成十四年度〇件、平成十五年度二件、平成十六年度二件、平成十七年度一件、平成十八年度二件、平成十九年度二件、計九件でございます。

 また、過去にキャンプ座間ゴルフ場におきまして人身に被害を与えた事故について、当省が保有する行政文書以外の関係書物を調べたところ、昭和五十五年に女性の背中にゴルフボールが当たった事故が一件発生したことを確認しているところでございます。

笠井委員 また五年間しかないという話になりますが、五年間だけでも九件あったと。そして、一九八〇年には直接人身にかかわることがあったわけで、それ以外にもあったということも可能性があるわけです。

 そういう中で、相模原市は今回も、この問題に対して要請を出しました。そして、昨年十一月十九日には、政府に対して、基地問題に関する要請書というのを出しまして、その中で、基地内のゴルフ場からのボール飛び出し事故が再発していることから、コースのレイアウトの見直しとか利用者への注意喚起等の危険防止策を早急に講じることという要請項目があります。

 これを受けて、政府は米軍と何か協議をしたんでしょうか。していれば、どんな協議でどんな結果になったのか、報告してください。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 今般の施設外へのゴルフボールの飛び出し事故につきましては、五月十六日に、相模原市長から南関東防衛局長に対しまして、ゴルフボール飛び出し防止の真に実効性のある万全の対策を講じ、市民の安全、安心への不安を払拭するよう改めて要望しますとの要請がございました。

 南関東防衛局は、事故の発生を受けまして、五月十六日、在日米軍司令部に対しまして再発防止策を講じるよう強く申し入れたところであり、相模原市長からの要請に対し、米側には既に再発防止策を講じるよう強く申している旨をお伝えしているところでございます。

 いずれにいたしましても、このような施設外へのゴルフボールの飛び出し事故により周辺住民の方に安全、安心に不安を与えたことはまことに遺憾でございまして、原因究明と再発防止策について引き続き米側に強く求めてまいる所存でございます。

笠井委員 去年十一月に要請が出ていますが、今から半年以上もたっていますが、その要請に対しては、政府、防衛省としては何をやって、どういうふうなことをやってきていますか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 キャンプ座間ゴルフ場におけます施設外へのゴルフボールの飛び出しに関しまして、防衛省は、累次の機会に米側へ再発防止を申し入れたところであります。

 再発防止のための具体的な措置といたしまして、これまで、ティーグラウンドの位置の変更やグリーンの縮小による打球の方向を変える等のコースレイアウトの変更、施設外にボールが飛び出しやすい部分におけます防球ネット工事など、打球の施設外への飛び出し防止策が講じられてきているところでございます。また、プレー時の注意喚起を促すためにチラシをプレーヤーに配布しているところでございます。

 今般のボールの施設外への飛び出し事故のあった五番ホールにつきましては、防球ネットの工事のほか、防球ネット寄りに新たに池を設置し、打球の方向が施設外に向かないよう工夫するなど再発防止策がとられてきたところでありますけれども、今般の事故を踏まえまして、さらなる再発防止を米側へ申し入れているところでございます。

笠井委員 再々いろいろな措置をやって、フェンスを高くしたとかいっても、また起こったわけですよ。

 それから、もう私は二回も聞いたんですよ、十一月十九日の要請に対して何をやったかと。それに対しては何も結局答えないで避けているわけですね。やっていないんでしょう。そうじゃないんですか。今回については言いましたとか、これまでこう言いましたと答弁されましたけれども、十一月十九日の要請で具体的に市からちゃんと来ているものについてどうしているのかというふうに伺っても、二度聞いても、やはりやられていないんですね、これは。

 極めて怠慢だと私は思うんです。要請を出されてから半年以上たっている。そしてまた、放置してきたことが、いろいろやってきたと言うけれどもまた起こったわけですから、私は、本当に対策が万全だったのか、そして根本にさかのぼってこれは考えられなきゃいけない。住民の生命と安全確保をないがしろにしながら、あそこはまさに、住民の反対を無視しながら、米陸軍の第一軍団の司令部の移転ということで、米軍再編については強硬にやってきたというところでありますので、地元ではいろいろな思いと怒りもある。当然のことだと思います。

 この在日米軍の基地内のゴルフ場というのは、キャンプ座間だけではありませんよね。全国の米軍基地内のゴルフ場というのはどこにあるのか、合計何カ所か、その総面積はどれぐらいになりますか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 キャンプ座間以外のゴルフ場がある米軍の施設・区域でございますけれども、三沢飛行場、多摩サービス補助施設、横田飛行場、厚木海軍飛行場、岩国飛行場、奥間レストセンター、嘉手納飛行場、キャンプ瑞慶覧及び嘉手納弾薬庫地区の九カ所、合わせて十カ所であると承知しております。

 また、総面積につきましては、提供しております施設・区域ごとの面積は承知しておりますけれども、その内訳のゴルフ場等の面積については承知しておりませんので、ゴルフ場のトータルの面積は現在把握しているところではございません。

笠井委員 提供していても面積がわからないと言うんですけれどもね。

 資料でお手元にお配りしまして、一は、これは相模原市のホームページからとったものですけれども、キャンプ座間基地のゴルフ場の配置図で、そこにかなり広い地域ですよね、相当の面積、ゴルフ場であります。基地を提供したら何にどれぐらい使われているかもお任せということで、働いている日本人従業員の給与も日本側負担なのに、在日米軍基地内のゴルフ場の総面積もわからないというのは問題だと思うんですが、これは調べて報告していただきたいと思うんですが、どうですか。

地引政府参考人 米側に対して照会させていただきたいと思います。

笠井委員 きちんと当委員会に報告していただきたいと思います。

 ところで、今国会では自衛隊のゴルフ場の問題が議論となりまして、資料二に、お手元にありますが、防衛省の調査で、自衛隊基地内に十一カ所のゴルフ場施設があって、隊員や関係者が無料か格安料金で使っているということが明らかになりました。これを見ましてもプレーが随分安くできますよね。

 石破防衛大臣が先月末に、この調査結果を受けて、施設の全廃も含めて対策の検討を指示したということが言われておりますけれども、そういうことも含めて検討しているんですか。どうなっているんでしょうか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の、自衛隊施設におきましてゴルフ場があるのではないかという御指摘でございますが、これはゴルフ場として利用する目的で整備し、維持管理しているものではないということでございます。一方、自衛隊の一部基地あるいは駐屯地におきましては、着陸帯または弾薬庫の保安用地、あるいは訓練場等を利用してゴルフの練習施設ということで使用しているということでございますけれども、これにつきましては、今御指摘の点も含めて、現在、防衛省の中で検討を進めているということでございます。

笠井委員 ゴルフ場としてつくったわけじゃないけれども、ゴルフ場として使っているわけですよね。

 米軍基地内のゴルフ場を自衛隊員も利用している、その実態が資料の三であります。防衛省提出の資料でありますけれども、二〇〇六年の一年間で防衛省の職員千四百人が利用して、延べ回数にすると五千二百回にも及ぶということが明らかになっております。今回事故を起こしたキャンプ座間基地も、自衛隊員が利用しているということで含まれています。

 こういう場合の一回当たりの利用料金というのは幾ら払っているんでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 米側から聞いたことを御説明いたしますと、米軍の構成員以外の者がゴルフ場を利用する際の利用料は、すべてのゴルフ場において同一ではなく、平日においては十八ホールでおおむね八千五百円から一万一千円、週末においてはおおむね一万一千円から一万五千円であるというふうに承知しておりまして、自衛隊員が幾らかというところについては把握しているところではございません。

笠井委員 それ自体極めて格安ですが、自衛隊員が使っていても幾らかは知らないということでありまして、これは聞き取り調査をしていて、二十五万人に対してやっているといって、中間的にここまでわかっているというような報告の話だったんです。

 防衛省、こうした防衛省職員による米軍基地内のゴルフ場利用についても当然ながらこれは見直していく、先ほど自衛隊の、ゴルフ場としてつくったわけじゃないけれどもゴルフ場として使っているという話があった部分とあれですが、こっちの方も当然ながら見直して、やめさせるとか、そういうことも含めて検討しているわけですね。どうでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 米軍は、地位協定第三条に基づきまして、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置をとることができることとなっております。

 このため、在日米軍関係者以外の者による米軍ゴルフ場の利用につきましては、在日米軍が、米軍の利用に支障のない範囲に限り、米軍との友好親善の意味合いから認めているものと承知しておりまして、防衛省職員による利用につきましては、今後ともかかる趣旨を踏まえて、節度を保っていくべきものであるというふうに考えている次第でございます。

笠井委員 友好親善とか交流という名前で格安プレーを推奨するということになったらこれは大変な話なので、節度を持ってというのは、では、これはやめるという話じゃないんですね。国民的にはちょっとこういう話というのは到底理解と納得を得られる話じゃないというふうに思うんです。

 それで、高村大臣、米軍基地内のゴルフ場から飛び出したボールで一般市民や子供に被害が繰り返し起こったり、あるいは物損があったりしても一向に根絶されるという話になっていない、再三言っているけれどもという話ですが。そして、そのゴルフ場では、米軍だけじゃなくて、防衛省・自衛隊関係者ならばいわば格安で、プレーもやりたい放題、そこで働いている日本人従業員の給与というのは日本国民の税金で賄っている、こんなことは、地元住民にはもちろん、国民から理解と納得を到底得られないと私は思うんです。

 相模原市もこういう問題に関連して、昨年十一月の要請書ということで、これは相模原市の米軍基地返還促進等市民協議会と並んで、両者の名前で出されている要請書ですが、この中で、「米軍基地の整理・縮小・早期返還の実現に努力されたい。」ということで、ゴルフ場部分約五十二ヘクタールの返還、市民の憩いの場及び防災空間として活用するということでの要請項目が含まれております。

 この中にも地図がありまして、これは市が出している要請書の中の地図ですが、ゴルフ場の部分の返還ということで、地図でも書いてありますけれども、この中には自衛隊の使っているところもありますから、米軍の使っている部分からすると相当な比重を占めていて、この部分をとにかく市民の憩いの場そして防災の空間ということで返還されたいという要請も出しているわけです。

 それから東京でも、多摩のサービス補助施設ということで、先ほどありましたが、そこでも住民は返還ということを要求しているというのがあります。

 この際、米側に対して、米軍基地内のこうしたゴルフ場施設の撤去、返還をやはり求めるというぐらいはやらないといけないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 アジア太平洋地域には、冷戦終了後も、複雑で多様な要因を背景とした地域紛争、大量破壊兵器やミサイルの拡散等、依然として不安定で不確実な状況が存在しております。

 そのような状況の中で、在日米軍は、日米安保条約の目的の達成のために、本国を離れて我が国に駐留し、日々訓練などの活動に当たっております。また、いざ有事の際には、米国の青年たちには血を流してまでも日本を守ってもらわなければなりません。日米安保体制はそうした在日米軍関係者一人一人のたゆまぬ努力により支えられてきております。

 御指摘のゴルフ場などの福利厚生施設は、そのような米軍人軍属の士気及び能力を維持することを目的とし、設けられたものであり、それ自体が問題であるとは考えておりません。したがって、直ちに返還を求めることはありません。

 それと別に、ボールが外に飛び出すなどということはあってはならない、人にぶつかるなどということはあってはならない、それは当然でございます。

笠井委員 幾ら措置をとっても、結局、先ほど防衛省が言いましたけれども、それをやって、フェンスを高めたって、また飛んできて当たっているという現実があるんです。

 それで、私、それ自体問題とは考えていないということも、ちょっとこれは驚きなんですが、余り難しいことを、いつまでもそんな理屈を言っちゃいけないと思うんですよ。冷戦終結後で、日米安保体制が、そして有事のために、目的達成で米軍頑張っています、だからゴルフをやってもいいんですという話にならないですから。士気を高めて、福利厚生を維持するというふうに言われましたけれども、日本国民は、幾ら士気を高めて、福利厚生と願っても、こんなに格安で、こんなにいいところでゴルフができる状況じゃないんですよ。それを、自分たちの税金を出して、結局は米軍、自衛隊の幹部、あるいは自衛隊員や防衛省の職員が安くゴルフを自由にやっているということでありますから、ゴルフ雑誌だって、全国の米軍基地のゴルフ場という特集を出すぐらいです。いいところでやっているよという話が出るぐらいなんで、私は、こういう事故再発防止のためにも、やはりきっぱり撤去、返還を求めるべきだ、このことを強く主張して、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 最初に、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定の改正に関して質問をいたします。

 いわゆるASEANセンターの職員は三十七名で、センター職員の身分は、センターの本部が置かれている国の領域において、既設の他の国際機関とほぼ同等の特権及び免除を与えられるとなっております。

 そこで尋ねます。

 ASEANセンター職員に与えられている特権・免除の具体的な内容について御答弁ください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEAN貿易投資観光促進センター設立協定の第十二条におきまして、センター及びセンターの活動に関係する個人は、センターの本部が置かれている国の領域において特権及び免除を享受する、このように規定をされております。

 お尋ねの事務局の職員の享受する特権・免除につきましては、第十六条ほかに規定されております。

 その内容でございますけれども、例えば、センターの支払う給与及びその他の給与に対する課税を免除される、あるいは配偶者及び扶養家族とともに、出入国制限、外国人登録及び国民的服務義務を免除される、あるいは、最初にセンターにおける地位につく際に自己及び家族の使用のための家具及び日用品を無税で輸入する権利を有する、このようなこと等が定められております。

 他方で、この特権・免除の享受には条件が付されておりまして、例えば、第二項におきまして、接受国は、自国民または自国に通常居住する者である職員に対しては、前述、今の第一項でございますが、規定を適用しないというふうに定めております。

 我が国政府といたしましては、このセンターの日本人職員、これに対しましては、これらの特権・免除を与えないという方針をとっております。したがいまして、先ほどの例で申し上げますと、日本人職員の給与は課税をされているというところでございます。

照屋委員 そうすると、現実にASEANセンターの職員等で特権・免除を与えられているのは、日本人職員を除く、たしか一名でしたか、何名おるのでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEAN各国から合計六名の外国人が来ております。

照屋委員 日米地位協定との関係で、私などは特権・免除と聞くとすぐはっとするのですが、このASEANセンターの特権・免除をめぐる過去に発生したトラブル等があれば、その具体的な内容をお教えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでのところ、特権・免除をめぐりまして職員の間等でトラブルが生じたことというのは聞いておりません。

照屋委員 ところで、ASEANセンターは法人格を有することとなっておるようです。ASEANセンターの活動は、法人が行う収益事業にも該当するのでしょうか。収益事業に該当する場合、事業活動に対する課税はどうなっておるのでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、協定の第十一条におきまして、当センターは法人格を有するというふうに規定をされております。これは、我が国の国内法上、権利能力の主体として契約をする能力などを認める趣旨の規定でございます。

 他方で、センターが実施する事業、これにつきましては非営利ということでございまして、収益事業に該当する事業はないものというふうに承知をしております。

照屋委員 この質問をしましたのは、最近、沖縄でも、みなし法人というか、いわゆる自治会等の法人活動にも収益事業だとの認定で課税をするケースがふえておるということがあって、ただしたわけでございますが、そうすると、ASEANセンターが行う貿易、投資、観光の促進にかかわる紹介あるいは仲介やあっせん等の活動は一切、収益事業には該当しない、このように理解してよろしゅうございますね。

石川政府参考人 御指摘のとおりでございます。

照屋委員 さて、資料によりますと、ASEAN各国への日本人旅行者の数は、二〇〇六年の統計で一千七百五十三万四千五百六十五人となっております。統計資料によれば、一九九八年、二〇〇一年、二〇〇三年がそれぞれ対前年比で大幅に減少しております。それらの年にASEAN各国への日本人旅行者数が減少した要因について、政府はどのように分析をしておられるのでしょうか。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘いただきましたように、一九九八年、二〇〇一年、二〇〇三年にASEAN各国への日本人旅行者数がマイナスとなってございます。

 一九九八年につきましては、この年五月にインドネシアで発生をいたしました暴動や、アジア通貨危機等による政治経済への不安感などがASEAN諸国などへの海外旅行者数の減少に影響したものと思われるところでございます。また、二〇〇一年は、米国同時多発テロ事件、また、二〇〇三年は、イラク戦争、さらにはSARSの発生がございまして、こういうことから、ASEAN諸国などへの海外旅行者数の減少に大きく影響したものと思われるところでございます。

照屋委員 言うまでもなく、観光とは光を観ると書きます。すなわち観光は、私は、平和が前提であり、紛争の発生や戦争の勃発などは、観光、すなわち他の国への国民の旅行とは相入れないものがあると思っております。

 ASEANへの日本人旅行者の推移を見ると、ただいまの答弁のように、米国同時多発テロ、いわゆる九・一一テロが発生した二〇〇一年、イラク戦争が勃発し、SARSが発生した二〇〇三年は、対前年比で大幅に落ち込んでおります。私は、当然のことかな、こう思っております。

 高村大臣にお伺いしますが、大臣は、観光、つまり日本人旅行者数の推移と国際紛争の発生や戦争の勃発との関連をどのようにお考えでしょうか。要するに、大臣として、観光の本質的な意義等についての所信をお聞かせください。

高村国務大臣 海外における国民の安全確保は、政府の最も重要な任務の一つであります。このため、海外において国際紛争やテロ等の緊急事態が発生し、国民の渡航、在留環境に悪化が見られる場合には、迅速かつ的確な渡航情報の発出及び旅行業者への申し入れ等を通じ、国民が事前に危険を察知し十分な安全対策を講じられるよう、必要な注意勧告を行うこととしております。

 したがって、こうした安全確保のため、啓発活動及び報道等の効果により、国民の海外旅行及び旅行業者によるツアー催行が中止されるとともに、情勢が安定するまでの間、短期的に旅行者が減少することはあると考えております。実際にあります。

 いずれにしても、外務省としては、事態が鎮静化し、国民の渡航環境が改善、安定したと判断される場合には、危険情報の引き下げを含め、渡航情報を機動的に改定することとしております。

 だれでも自分の安全というのは大切ですから、外務省がこういうことをするまでもなく、やはり、紛争があればちょっと行くのをやめようか、そういうことはあると思いますが、安全のために外務省としてもいろいろやっている、こういうことでございます。

照屋委員 逆に、九・一一テロが発生した二〇〇一年やイラク戦争が勃発をした二〇〇三年のASEAN各国から我が国への旅行者数は、対前年比、どのような動向であったのでしょうか。

西阪政府参考人 まず、二〇〇一年のASEAN各国から我が国にお越しいただいた訪日旅行者数でございますが、三十九万三千人、対前年度比で二・八%増ということでございまして、その前後の年と比較をいたしますと、やや伸びが鈍化した数字でございます。

 また、二〇〇三年、同じくASEAN各国からの訪日旅行者数は、四十四万九千人で、対前年度比六・九%増ということでございました。二〇〇三年は、御指摘のとおり、三月二十日にイラク戦争が勃発をいたしまして、また、SARSの影響がございまして、四月から五月にかけて訪日旅行者数が大幅に落ち込んだところでございますが、SARS終息後、訪日旅行者数は急速に回復をいたしましたことから、二〇〇三年の訪日旅行者数全体で見ると順調に増加をしているという状況でございます。

照屋委員 やはり、我が国からASEANへの旅行者数、あるいはASEANから我が国への旅行者数の対比で見ると、国際紛争の勃発などと観光とは両立をしないということがはっきりしてくるのではないかと思います。

 さて、沖縄県は観光立県を重要な政策課題として位置づけております。ところが、沖縄には過密で膨大な米軍基地があり、事件、事故が頻発していることは当委員会でも議論を重ねてきているところであります。沖縄県の年間観光客数は五百万人を超えております。その中にあって、二〇〇一年のいわゆる九・一一テロ発生の際は、米軍基地が膨大に存在するがゆえに沖縄観光が大打撃を受けたことは記憶に新しいところであります。

 政府は、沖縄観光の動向、あるいはASEAN各国からの沖縄への旅行者数の推移、基地と観光との関係について、どのようにお考えでしょうか。

原田政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄観光の推移でございますけれども、近年順調に伸びておりますが、先生御指摘のとおり、平成十三年、二〇〇一年の米国同時多発テロの発生の時期におきましては、その前後の年あるいはその後の平成十九年までの推移ではおおむね数%の増で推移しておりますが、平成十三年、二〇〇一年には三角一・九%ということで減少になったわけでございまして、これは同時多発テロの影響を受けたものというふうに認識をいたしております。

 それから、ASEAN諸国からの沖縄への入域観光客でございますが、正確な数字の全体像はつかんでおらないんですけれども、沖縄観光で、先ほど先生の御指摘のとおり、総数は平成十八年では五百六十四万人でございますが、そのうち外国観光客九万三千ということで約二%弱、しかもその大半が台湾からの観光客ということでございまして、いわゆる先ほど先生の御質問のASEAN諸国からは、フィリピンからの定期便がある関係で二千人程度の観光客がございましたが、その他の国は残念ながらそう大きな数字ではございません。平成十八年まで、おおむねそういった状況で推移しているところでございます。

 それから、最後にお尋ねの基地との関係でございますが、先ほどもお答えいたしましたとおり、二〇〇一年に同時多発テロの影響によって観光客数が減少したということは紛れもない事実でございますが、このことと、沖縄の米軍基地の存在による影響がどのように観光客に推移しているのかということにつきましては、確たることを申し上げられない状況でございます。

 以上でございます。

照屋委員 もちろんこれは、確たる因果関係を立証せよといっても難しい問題でしょう。ところが、二〇〇一年の九・一一テロ発生時には、やはり膨大な沖縄の米軍基地がテロからねらわれているんではないか、そんな物騒な沖縄に行くのは大変だ、こういう意識や反応があったことは間違いないと私は思います。

 そこで、次は外務省にお伺いをしますが、今回の改正により、ASEANセンターの活動に人物交流が加えられました。人物交流の推進のための具体的な活動内容を簡潔にお答えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の改正をいただきますと人物交流が加わることになります。その場合には、活動目的でございます我が国とASEAN諸国との貿易、観光、投資、これらの促進に役立つような分野、これを中心に人物交流の促進を図っていきたいというふうに承知をしております。

 有力な候補という意味で申し上げれば、東アジアにおきましては、今いろいろな枠組みを活用しまして、環境とか気候変動とか青少年交流とか、そういったものをさまざまな形で具体的に協力を進めつつありますので、こういった活動も一つの有力候補かというふうに考えております。

照屋委員 現在、ASEAN各国からの我が国への留学生というか、あるいは技術研修と呼ぶべきか、その受け入れはどのような仕組みでなされ、その実績はどのようになっておるんでしょうか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 ことしの五月一日現在で、ASEANの十カ国からの留学生の在籍者数は約一万人ございます。そのうちの約二千八百人がいわゆる日本政府の国費留学ということで来ております。国費留学生の採用は、我が国の大使館による募集、選考、いわゆる大使館推薦というものでございますけれども、そういう方法と、我が国の大学がみずから推薦する、いわゆる大学推薦という二つの方法によって行われております。

 また、国費留学生以外の留学生につきましてもさまざまな奨学金がございまして、例えばASEANでは、政府の拠出金をもとに参加国に設立されています元日本留学生による同窓会組織のネットワークを通じた奨学生制度などもございます。そのほか、日本学生支援機構やさまざまな民間団体が提供する奨学金もございまして、大使館におきましては、これらも含めて日本留学についての広報を積極的に行って、留学生を募集しているところでございます。

照屋委員 今回の改正で追加される人物交流については、JICAや国際交流基金等の機関でも行われております。特に、各都道府県においても国際交流基金による人物交流がなされていると理解をしておりますが、JICA及び国や地方自治体の国際交流基金等による人物交流の実態や動向について御説明ください。

金子参考人 お答え申し上げます。

 JICAにおきましては、開発途上国の中核を担う行政官を中心に、開発に裨益するさまざまな分野の技術や知識の習得を目的とした研修員の受け入れ事業を行っております。

 人物交流の一例といたしまして、沖縄国際センターがJICAの中にあるわけですけれども、このような目的で来日いたしました研修員と地元の人々との交流を促進しております。平成十九年度におきましては、三十九回の交流会を沖縄県内の小中高等学校や老人ホームなどで行うとともに、地元に開かれたセンターとして、一年間で延べ一万人の市民の方々がセンターを訪問されるなど、地域の国際交流にも積極的に取り組んでおります。

 また、JICAといたしましては、研修員と市民の方々との触れ合いの機会をふやすことで親日家の育成に努めるとともに、研修員の受け入れをきっかけとした日本人の開発、協力への参加の促進などを通じて、地域の国際化や開発途上国との人的交流の強化に貢献してまいりたいと考えております。

照屋委員 沖縄県の浦添市にあるJICAの沖縄国際センターに私もお邪魔をしたことがありますし、JICAの国際センターに来ておる研修生と交流を重ねたこともございますが、現在、何カ国ぐらい、何名受け入れているのか、そして今抱えている課題などについてお教えください。

金子参考人 お答え申し上げます。

 沖縄センターにおきましては、沖縄県及び浦添市の協力を得まして、一九八五年に開設いたしましたセンターでございます。

 沖縄の特色を生かしまして、マングローブやサンゴ礁保全等の自然環境保全や、コンピューター、視聴覚技術のIT分野の研修を中心に、毎年七十から八十カ国の研修員、三百人を超える研修員を受け入れております。平成十九年度までの累計では、百五十七の国と地域から七千百人の研修員を受け入れてまいりました。また、ASEAN諸国からの研修員は約三割を占めておりまして、開設以来、二千三十人を受け入れております。

照屋委員 JICAでは、平成七年度から、沖縄国際センターにおいて、国際マングローブ生態系協会、ISMEというんでしょうか、その協力を得て、マングローブ生態系の適切な管理に関する技術研修を実施してきたようです。同事業の目的や実績、成果などについてお答えください。

金子参考人 お答え申し上げます。

 JICAにおきましては、平成七年度より、沖縄センターにおきまして、NPO法人国際マングローブ生態系協会の協力を得まして、マングローブ生態系の適切な管理に関する技術研修を実施しております。研修の目的でございますが、途上国の行政指導者がマングローブ生態系の構造や機能の重要性を理解するとともに、保全や利用のあり方、さらには再生のための育苗の技術などを習得することにございます。

 これまで、世界三十六カ国から八十五人の研修員にこの研修を実施しております。そのうちASEAN諸国からは五カ国、十八人でございます。研修で習得いたしました技術や知識を生かして、帰国して当該分野の政策立案、事業実施を行うことが期待されております。なお、今年度は、五月下旬から二カ月半の予定で、五カ国、五人を受け入れる予定にしております。

照屋委員 私は、マングローブ群生林の生態研究あるいはその管理等に関する技術研修というのは非常に大事なものだと思っております。マングローブ群生林が果たす役割というのは非常に大きなものがあって、今、特に地球温暖化の問題が叫ばれている中で、このマングローブ群生林が地球温暖化防止に果たしている役割というのは非常に大きいわけであります。

 そのマングローブ群生林は沖縄を中心に我が国では分布をしているわけで、JICAにおかれては、ASEAN各国との友好の課題もあるし、今後も力を入れていただきたいと思いますが、決意のほどをお伺いいたします。

金子参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、大変この研修は役立っておりまして、帰国後に自分の技術を生かして、国でそれを生かしていきたいという人がたくさんございます。ですから、この研修につきましては、今後とも強化してまいりたいと考えております。

照屋委員 最後に、ぜひ大臣の決意をお聞きしたいと思いますが、今JICAからも答弁ありましたように、ASEANセンター加盟国であるマレーシアでは、マングローブ群生林を保護しようという機運が高まっております。それは、インド洋津波が襲来した北西部のペナン島の幾つかの漁村で、マングローブの群生林が被害を最小限に抑えたとも報じられているからであります。

 私は、ASEANセンター設立を主導し、現在でもその活動の中心となっている日本として、ASEANセンターの活動の柱として、マングローブ群生林保護や管理に関する技術研修、国際熱帯木材機関、国際マングローブ生態系協会との活動提携を提言すべきだと考えますが、大臣の所信と決意をお聞かせください。

高村国務大臣 おっしゃるようなことを今後センターで検討することも一案だと考えております。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 朝の理事会で、河野理事から、外務省アジア大洋州局長齋木昭隆君に対して質疑をしたいとの申し出があり、質疑時間の変更をいたしましたが、齋木局長は本委員会に間に合いませんでした。今後、一般質疑などで質問してもらうことにしたいと思います。

 次に、河野太郎君。

河野(太)委員 今委員長からお話をいただきましたが、このなんちゃって国際機関、日本ASEANセンターの理事会に我が国政府を代表して出席をしている外務省アジア局長に、一体全体、外務省はなぜこんなていたらくであったのか、こういう事態に気づいておきながら、理事会でなぜ問題提起がなかったのか。あるいは、朝お示ししたように、予算の内訳と言ったらいきなり元帳を持ってくるような機関でありますから、外務省はこの機関の経費管理が全くできずに、こういうていたらくになってしまったのか。あるいは、九分の一の十分の一とはいえ、若干なりとも費用の負担をしているASEAN各国の方から、何かセンターに対して問題提起はなかったのか。そういうことを、理事会に出席されている局長に直接お伺いをしたかったわけでございますが、残念ながら、成田空港から一生懸命走って戻ってきていただいていると思いますが、間に合いませんので、委員長から御示唆いただきましたように、これは、いつの時点か、近いうちに一般質疑で立たせていただきたいと思います。

 一つだけ私は疑問に思っておりますのが、このなんちゃって国際機関、日本ASEANセンターに関して、私と小野寺副大臣の間で、問題解決のためにいろいろと努力を、この何日間か、させていただきました。その際、いろいろなところから、いろいろなところというのはいろいろな政治家からでございますが、いろいろなお話があったり、あるいは、恐らく副大臣のところにいろいろなお話があったりということがあったんだろうと思うんです。

 副大臣と一生懸命努力をしていることがわかっていながら、しかも、この日本ASEANセンターというなんちゃって国際機関に興味を持っていた政治家は、恐らく、この以前にはなかったはずだと思うんですね。なかったはずなのに、いざ、このなんちゃって国際機関、日本ASEANセンターが委員会審議で取り上げられるというときになると、ばたばたといろいろな政治家がいろいろなことを言い出す。

 これは、外務大臣から何かそういう指示を出されたんでしょうか。

高村国務大臣 小野寺副大臣にこの件は全権を一任しておりますので、私から小野寺さんにすら具体的な指示はしたことがありません。信頼して副大臣にお任せしている、こういうことでございます。

河野(太)委員 外務大臣の指示もなく、また、小野寺さんとは私は直接いろいろやりとりをさせていただいていたわけですから、小野寺さんからそういう指示もなかったんだろうと思いますが、外務省の職員が、いわば大臣や副大臣の指示もなく、このなんちゃって国際機関、日本ASEANセンターの質疑に対して、いろいろなところに根回しに行っているわけであります。

 これは、今、国会で議論をしている公務員制度改革の中で、政官接触の制限という項目がありますが、要するに、大臣や副大臣の指示もなく、公務員が勝手に政治家に接触をして、おかしな根回しをするなということでありますが、まさに今回、そういうことが行われているのが如実にあらわになったわけでございます。残り少ない会期ではありますが、この国家公務員制度改革、きっちりとこの国会で仕上げていかなければならぬという思いを新たにするわけでございます。

 局長がお見えになりませんので、せっかく同僚議員から十分間のお時間をいただきましたが、副大臣とは午前中いろいろとやりとりをさせていただきました。まだ何か言い残したことがございますか。

小野寺副大臣 言い残したことということではございませんが、きょうは大変いろいろな御指摘をいただきました。

 大切なのは、より透明性が高く、効率的な会計処理を行うことが望ましいというのはもちろんでありますが、今後、至急このセンターの理事会の開催を要請しまして、本日の外務委員会での議論を伝えるとともに、我が方よりセンターに対して、会計処理方式の改善について問題提起をすることとしたいと思っております。

 また、本年一月より日本側理事に就任しております齋木アジア大洋州局長に対しても、事務局の活動等の勧告を十分に行うように改めて指示したいと思っております。

 物理的に間に合わなかったこと、改めておわびを申し上げます。

河野(太)委員 ありがとうございます。

 早速理事会を開催していただくということでございますので、これは委員長にお願いでございますが、こういうなんちゃって国際機関の疑わしいものについては、その理事会に外務委員会を代表するだれかが陪席できるように、きちんと委員長の方からこの理事会に申し入れをしていただいて、理事会でどういうことが協議をされているのか、理事会がきちんと行われているのか、立法府としてもしっかりと行政監視をする必要があると思います。

 それから、この在京の各国大使は執行委員会のメンバーでもあるわけでございますが、どうもその執行委員会すら機能していないのではないかと思います。これも後ほど理事会でお諮りをしていただきたいと思いますが、外務委員会から各国大使にあてて注意喚起を促すような手紙を出す必要がある。

 これは、確かになんちゃって国際機関であって、日本政府の意思が非常に強い。各国政府からしてみれば、九分の一の十分の一しか負担をしていない、そういうことはあって、物事を言い出しにくいということはあるかもしれませんが、これだけおかしな運営がされているならば、相手国から問題提起があってしかりだと思います。

 そういうことがあるならば遠慮することはなくきっちりと問題提起をしてほしいということを、やはり外務委員会から各国大使に申し入れをすべきだと思いますので、後ほど理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。

 それだけ最後に委員長にお願いを申し上げまして、若干時間を余しますが、これで終わりにさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

平沢委員長 ただいまの河野委員のお申し出の件は、次回の理事会で協議させていただきます。

 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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