衆議院

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第2号 平成20年11月12日(水曜日)

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平成二十年十一月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 上田  勇君

      逢沢 一郎君    秋葉 賢也君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      木原  稔君    篠田 陽介君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      冨岡  勉君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    広津 素子君

      藤田 幹雄君    牧原 秀樹君

      三ッ林隆志君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      山口 泰明君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   内閣官房副長官      松本  純君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    深田 博史君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            宮原 正典君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 関口 幸一君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   枡田 一彦君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     冨岡  勉君

  柴山 昌彦君     牧原 秀樹君

  原田 義昭君     三ッ林隆志君

  御法川信英君     安井潤一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     盛山 正仁君

  牧原 秀樹君     柴山 昌彦君

  三ッ林隆志君     原田 義昭君

  安井潤一郎君     藤田 幹雄君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 幹雄君     秋葉 賢也君

  盛山 正仁君     広津 素子君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     御法川信英君

  広津 素子君     猪口 邦子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官羽田浩二君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房広報文化交流部長門司健次郎君、北米局長西宮伸一君、欧州局長谷崎泰明君、中東アフリカ局長鈴木敏郎君、国際協力局長木寺昌人君、領事局長深田博史君、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、警察庁刑事局長米田壯君、法務省大臣官房審議官三浦守君、水産庁資源管理部審議官宮原正典君、国土交通省航空局次長関口幸一君、防衛省防衛参事官枡田一彦君、防衛参事官岩井良行君、大臣官房長中江公人君、防衛政策局長高見澤將林君、運用企画局長徳地秀士君、経理装備局長長岡憲宗君、地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 おはようございます。

 欠席者が目立って大変寂しい委員会だ、そういうような印象を受けますけれども。

 熱狂的なアメリカの大統領選挙が終わりました。そして、オバマ候補が勝利を手中にされたわけであります。オバマ候補が勝利をされた、このことは我が国との関係についてもいろいろな影響を及ぼすであろうということは容易に想像することができるわけでありますけれども、まず大臣にお尋ねしたいのは、オバマ候補が当選をされた、そのことについて大臣から御感想をいただきたいと存じます。

中曽根国務大臣 過日の米国の大統領選挙におきましては、もう委員皆さん御承知のとおり、オバマ候補が圧勝いたしました。私は、この選挙は、オバマ候補が大変幅広い、各界各層の支援を得て、そして期待を受けて当選したもの、そういうふうに認識をしております。

 今の国際情勢は、御案内のとおり、国際金融の問題、気候変動の問題、テロとの闘い等多くの課題があるわけでありますが、こういう中で、新しい大統領に就任された後は、やはりすぐれたリーダーシップを発揮していただいて国際社会の平和と安定のために活躍をしていただきたい、そういうふうに期待をしているところでございます。

松浪(健四郎)委員 長い間、約八年間、ブッシュ大統領と我が国の関係、これはおおむね良好であった、そして協調しながらいろいろな問題に対応してきた、私はそのような思いを持っておりますけれども、このオバマ候補が当選されたことによって、日本の外交方針、また日本とアメリカのあり方について変わっていくのか、それとも、どのような形で日本とアメリカの同盟関係を維持しながら、また沖縄の問題等いろいろございますけれども、これらについて大臣はどのようなお考えであられるのかをお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 日米同盟は、もう言うまでもありませんけれども、アジア太平洋地域の平和と安定の礎である、そういうふうに思っております。

 オバマ上院議員は、選挙中のキャンペーンのときもそうですけれども、日米関係、日米同盟の重要性というものを、意見を、見解をしておりました。また、日本との協力についても、今後も行っていくというような御発言があったわけであります。我が国といたしましては、この次期政権と力を合わせまして、そして日米同盟をさらに強化するということが必要である、そういうふうに思っております。

 また、先ほど申し上げましたけれども、現在、国際経済の問題や気候変動の問題やテロとの問題とか、いろいろな課題がございますけれども、そういう課題についても、私ども、新政権と協力してやっていかなければならないと思っております。

 日米関係というのは、世界の一番と二番の経済的に大きな国でありますが、パートナーとしても協力をしていく必要があろうかと思っております。そういう意味で、現下のいろいろな困難な状況を打破するために、先ほど申し上げましたけれども、緊密な連絡をとって、さらに同盟関係を強化してやっていく必要がある、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 十四日にワシントンで金融サミットが行われる、そして総理が訪米をされる、このようにお聞きしておるわけでありますけれども、その訪米の折に、総理とオバマ氏との接触があって、そして日米の関係の再構築のためにいろいろなことを話し合われるのかどうなのか、そのことをちょっとお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 さきの麻生首相とオバマ次期大統領との電話の中でも、一刻も早く会談をしよう、そういうような話が行われた、そういうふうに承知をしております。この十一月十五日にはワシントンで会議があるわけで、オバマ氏の出席については私わかりませんけれども、そういう機会、あるいはAPECとかいろいろ会合がありますけれども、一刻も早く会えればということで、この問題については、実現を目指して両方が今後検討していくということになろうかと思います。

 ただ、日程とかそういうものについてはまだ何も決まっていない、そういうふうに承知しております。

松浪(健四郎)委員 日本政府はどちらかといえば共和党側に人脈が豊富であり、また、共和党サイドには知日派と言われるような親日家もたくさんいらっしゃった。オバマ候補陣営の方に日本の理解者がいるのか、そしてそういうような人たちとどういうふうに対話を展開していくのか、この日米関係を考えたときに、相当な戦略が必要になってくる、このように思います。

 そして、金融問題は当然のこととして、オバマ次期大統領はいろいろな面で政策がブッシュ体制と異なってまいります。そうした折に、我々はどのように対応していくのか、また、どのような協力をするのか。

 例えば、ブッシュ政権の折に、国際テロの指定国解除、これが、我々の思いとは裏腹に、違った形になってしまい、多くの日本人が失望した、そういうような思いもいたしますけれども、ブッシュ政権ですら我々の思いがなかなか通じなかった。後では、いや、拉致問題は忘れていない、拉致問題には協力する、そのようなコメントがあったとしても、我々の思いがどうもアメリカ側に伝わっていない、そのような気がしてなりません。

 そこで、日米関係を再構築する、そしてオバマ政権ができたときに、我が国は、外務省はどのような対応をとろうとしておるのか。これはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、その辺のところを大臣にお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 先ほど委員からは、共和党政権から民主党政権にかわった際の我が国の米国とのパイプ等についてのお話もございました。

 選挙期間中と申しますか、ことしの初めごろから、外務省、現地の大使館等を通じまして両党の要人にはコンタクトをしてまいりましたけれども、民主党の主要な政治家等につきましてもコンタクトを行い、また、我が国の考え方等をいろいろと説明してやってまいりました。また、各種セミナー等も開催をいたしまして日本の考え方を説明し、今後の協力についても、どういう場合になっても協力をしていただけるような体制づくりをしてきたわけでございます。

 また、先ほどテロ支援国家指定解除のお話もございましたけれども、この件につきましても、私どもといたしましては、米側とは大変緊密な連絡をとり、特に十月の一日から三日にヒル国務次官補が北朝鮮を訪問し、この非核化についての手順といいますか検証の具体的な枠組みについての話し合いを行ってきた後も、私とライス長官、あるいは私とシーファー大使、あるいは局長レベル等々で再三協議を行ってまいりまして、最終的に米国が米国の国内法に基づいてこの支援国家指定を解除したわけでございます。

 そういう意味で、いろいろマスコミ等でも言われておりますが、私どもとしては、最善の努力をし、また米国とは緊密な連絡をとってきた、そういう認識でございます。

 今後のことにつきましては、重要な課題が山積しておりますので、とにかく、外交の基軸は、日米関係を強化し、同盟というものをしっかりと維持していくということが重要でございますので、そういう考えに基づいて、いろいろな諸課題について、新政権になりましたらのお話ですが、さらに協力をし、やっていきたい、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、大臣がおっしゃられましたように、日米関係を基軸にして外交を展開していかなきゃならない、申すまでもない、このように思います。

 いずれにいたしましても、オバマ政権が誕生した後も、我が国との友好的な関係、これを維持するためにぜひ大臣に御尽力を賜りたいということをお願いしておきたいと思います。

 そこで、ちょっと気になる話でございますが、二〇一六年に東京都がオリンピックに立候補しております。それで、来年の十月のコペンハーゲンで行われますIOC総会で投票が行われ、どこにするか、これを決めるわけであります。

 今立候補しておりますのは、マドリード、東京、それからリオデジャネイロ、シカゴ、この四つの都市になっておるわけでありますけれども、冬のオリンピックを開催するときに、IOC総会に、これはロシアのソチで行われるオリンピックですけれども、当時のプーチン大統領が出てきて、そして招致演説をしたという記憶がございます。

 オバマ大統領はシカゴと深いかかわりのあることは多言をまつまでもございませんけれども、シカゴの招致のために、もしかすればIOC総会に出てくる可能性なきにしもあらず。

 と申しますのは、アメリカも、イラクの問題、アフガニスタンの問題等を抱えて国内的に活力を失っておる。そういう意味において、オリンピックというイベントを開催することが有効ではないかというような思いを持ち、またシカゴと縁の深いオバマ大統領候補ですから、私は、出てくる可能性がある、そういうふうに読まなければいけないだろう。

 我が国も、国際的なイベントから遠ざかっておりますし、八八年は名古屋が敗れました。そして、ことしのオリンピックは北京でしたけれども、実は大阪と争ったわけでありまして、名古屋、大阪と敗れ、そして東京が敗れるということになりますと、我が国の評価、また国際的な存在感を失する、そのような気がしてなりません。

 そこで、五十数年ぶりに東京で開催するためには、何としても我々はシカゴに対抗しなければならないわけでありますけれども、もうオバマ大統領と言っていいんでしょうけれども、IOC総会に出てくる、そうした折に、我が国は総理を出す、または総理に行ってもらう、そういうような考え方は外務省にあるのかないのか、このことについてお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 委員がお話しされましたように、オバマ米国次期大統領はシカゴ出身ということでございまして、二〇一六年のオリンピック開催のことにつきましては、米国の新聞報道等でも、大統領にオバマ氏がなるということによってオリンピック招致を助けるとか、あるいはオリンピック招致に追い風とか、そういう記事も出ているわけでございます。

 東京開催につきましては、御案内のとおり、これは閣議決定によりまして招致というものを決めたわけでございまして、我が国の体制といたしましては、招致委員会の最高顧問に麻生総理、それから特別顧問に全閣僚も就任しておりまして、積極的に我が国として招致に取り組んでいるところでございます。

 総理の出席等につきましては、これは来年の十月のコペンハーゲンにおきますIOC総会で開催が決定されるわけでありまして、現時点では約一年あるわけでございますけれども、このことについては現時点では何ら決定してございません。

 ただ、私もスポーツにいろいろかかわっておる者といたしましては、個人的ということでございますが、国会等の日程等もあろうかと思いますが、できることなら総理にも御出席をしていただきたい、そういうふうに考えております。

松浪(健四郎)委員 ぜひ大臣に協力していただいて、そしてコペンハーゲンでのIOC総会で東京が二〇一六年のオリンピックの開催地になるということを我々は期待しておるわけでございます。

 それで、これは一九六四年の東京オリンピックに次ぐイベントで、五十数年ぶりに開催されるということになるわけですから、国を挙げて、特に外務省には積極的に協力していただいて、東京で開催できるように御尽力をお願いしておきたい、このように思います。

 次に、問題がかわりますけれども、最近、アフガニスタン問題をウオッチングしておる者として気になりますことは、米軍の空爆が相次いで、そして民間人を誤爆するというケースがふえております。これはどういうふうな形になっておるのか詳しくは承知しませんけれども、ちょっとひど過ぎるのではないのかという印象を受けております。

 この誤爆は連日のように伝えられるわけでありまして、ある意味では、米軍あるいはNATO軍はタリバンに手をやいていて、そして空爆をするしか手はない、こういうような思いもするわけでありますけれども、外務大臣としては、この空爆による誤爆、これが多くて民間人が犠牲になられておって、そして民間人たちが反米感情を高めつつあるというような実情についてどのような思いをお持ちであるのか、お尋ねしたいと存じます。

伊藤副大臣 人の命が奪われるというのは大変悲しいことだと思いますし、ましてやそれが誤爆によるものである、その悲しみも本当に筆舌に尽くしがたいと思います。

 アフガニスタンにおいては、反政府勢力が意図的に民間人を巻き込む戦術をとる、そういうこともあって、民間人に大変な犠牲が出ているわけです。一方、テロとの闘いを続けるアフガニスタン政府及び国際部隊の活動によっても市民に犠牲が出ているということは、議員御指摘のとおりでございます。

 アフガニスタンの国民、政府及び国際社会の双方が一日も早いアフガニスタンの安定と復興を望み、懸命な努力を続ける中、こういう無辜の市民、無辜の民間人に犠牲が出てしまうことは本当に心が痛みますし、まさに心から血が流れ出る、そういう遺憾なことだと思います。

 治安、テロ対策が必要であるからこそ、一般市民の被害を最大限回避すべきことは当然であります。米国等各国もこの点を最大限考慮して活動を行っているものとは認識しておりますけれども、引き続き、日本としてもこのことが最小限になるように努力したいと思いますし、また、最近では、九月の米、アフガニスタンの共同声明においてこのことを非常に重んじた姿勢というものも示されているというふうに承知しております。

松浪(健四郎)委員 次に、アフガニスタンで活動されておるNGOの活動についてお尋ねをしたいと思います。

 夏にペシャワール会の伊藤和也さんが犠牲になられました。重ねて哀悼の誠をささげたい、このように思います。

 ボランティア活動をして、それでもって犠牲になられる、これは大変悲しい話であります。けれども、風土が異なる、生活形態が異なる、そういうところでのボランティアというのは大変難しい。

 それで、わかっている範囲内で結構なんですけれども、伊藤さんが犠牲になられたわけですが、タリバンによって殺害されたのか、あるいはだれによって殺害され、そしてその犯人はどのようになったのか。我々は報道で接していないんですが、わかっておることがあれば外務省にお尋ねしたいと存じます。

深田政府参考人 今手元に詳しい資料は持っておりませんけれども、この事件の経緯について私どもがアフガニスタンの当局から聞いておるところでは、犯人のうちの一人は捕まえた、そこからいろいろと現地で事情聴取をしておるということで、その背景について、先生御指摘のようなタリバンが裏にいるんではないかとか、いろいろなことが言われておりますが、まだ現時点で正式にアフガニスタン当局から報告は受けていない、こういうところでございます。

松浪(健四郎)委員 とうとい日本人の若者が犠牲になられたわけでございますから、なぜ犠牲になられたのか、その背後関係をも含めて調査を密にしていただいて、国民の前にお示しいただければ幸いに存じます。

 次に、他のNGOもアフガン国内で活動をされております。大変治安が悪い、厳しい状況下で額に汗して協力していただいていることはありがたいことだ、こういうふうに思います。他方、我が国政府関係者も一生懸命あの厳しい環境下でいろいろと仕事をされております。そして、六日には、我が国が協力をしてつくったカブール空港が新装成り、そしてそこで竣工式がとり行われた、大統領も大変お喜びであったというお話をお聞きしております。

 私は、バーミヤンのあの渓谷で日本の女性がJICAから派遣されていろいろな協力をしておる姿を見て涙したことがありますけれども、日本人には正義感と勇気がある、そしてそれがNGOの活動に結びついているんだろう、このように思ったりもしておるんですけれども、現在アフガニスタンでどのようなNGOがどのような活動をしておるのか、このことについてお尋ねをしたいと存じます。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 日本のNGOが農業関係でありますとか保健衛生とか、さまざまな分野で活動をいただいております。私ども政府からNGOに対する支援ということで、ODAのお金から十八・五億円の資金を提供いたしまして、五十四件の事業について活動を行っているところでございます。

松浪(健四郎)委員 引き続いてこのような支援、協力、これを政府がしてくださいますようにお願いをしておきます。当然のことながら、治安が悪いし、いろいろなところに気を配らなければいけないんでしょうけれども、それらの面に関しても我が国政府は協力をし、民間人がそのような協力をするということに敬意を表しながら協力すべきだ、私はこのように思います。

 次にお尋ねしたいのは、オバマさんが大統領になる、それで劇的な変化があるのか。もちろん、イラクから十六カ月後には撤退をする、そしてアフガニスタンにはたくさんの兵を送るというようなことが言われております。私は、アメリカの外交がまず何をなさなければいけないのかというのは、今も、ブッシュ大統領が悪の枢軸と呼んだ対イランの問題だ、このように存じております。イランの核問題、これはなかなか大変であるかもしれませんけれども、イランとアメリカがうまくいかないと、国交回復をしないと、相互の理解を深めないと、中東での安定また世界の平和のためにはなかなか難しい、このように私は思うものであります。そして、イラン政府もアメリカと何とかうまくやりたい、こういう強い思いを持っておられることは私も存じております。

 そこで、アメリカとうまくいく、イランともうまくいくという国はそれほど多くはありませんで、我が国の存在というもの、またアメリカに対して協力できること、核問題はあるけれども、それらを上手にクリアして、相互の理解を深めて、イランとアメリカの国交回復について日本は仲介の労をとる、存在感を示す、この必要性が私はあると考えております。そこで、大臣にこの問題についてお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 委員が一番あの地域のことはよく御存じでございますが、イランはアフガニスタンと国境を接しておりまして、大変歴史的な、文化的な、昔から密接な関係があるわけでございます。また、米国はアフガニスタン支援、そういう立場にあるわけでございますが、現在、お話のとおり、米国とイランの間には国交、外交関係はございませんけれども、アフガニスタンの安定とそれから復興の支援に向けましては、何といいましてもこれを支援する各国間の協力というのが一番大切であることは言うまでもございません。イラン、アメリカ両国とも、本年六月のパリ復興支援国際会議を初めといたしますさまざまな国際会議にも積極的に参加をし、また貢献をしてきております。

 そこで、米国とイランを含む関係国が一致してアフガニスタンを含むこの地域の安定を実現するために、委員がおっしゃいましたように、米国とイランの両方と良好な関係を有する我が国としては、協力をして役割を果たしていくということが大事である、私もそういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 ぜひ大臣には御活躍をいただいて、そしてイランとアメリカが国交を回復する、そして世界の平和のために、安定のために大きな成果を得ることができる、それが麻生政権の一つの仕事でもあろう、このように私は思っております。

 時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。質問をよろしくお願いいたします。

 当初はオバマ政権下における日米関係のことについてお伺いしようと思っておりましたが、ただいま松浪委員の方から御質問ございましたので、私は、次に、ロシアの原子力潜水艦の事故についてお話を伺いたいというふうに思っております。

 今月八日ですが、日本海を航行しておりましたロシア太平洋艦隊の原子力潜水艦、これはネルパと報道されておりますが、消火装置が誤って作動し、乗組員ら二十人が死亡、二十一名が負傷という、私どもにとっても大変衝撃的な事件が起きました。

 この第一報というのは、政府として、ロシア政府から、いつの時点で、どのような形で伝えられたのでしょうか。

伊藤副大臣 小野寺議員にお答え申し上げます。

 本事故発生後、我が方よりロシア側に対して情報提供を行うよう強く申し入れていたところ、日本時間の十一月十日夜、ロシア外務省より、在ロシア日本大使館を通じ、ロシア政府としての正式な通報が行われたものでございます。

 放射能漏れについては、それに先立つ九日、ロシア海軍は放射能漏れはない旨発表しておりましたけれども、これに加えて、翌十日に、ロシア外務省が公式の情報として同趣旨のことを確認したということでございます。

 また、我が国においても、何らかの異常があるということは確認されておりません。

小野寺委員 確認しますが、我が国の申し入れによって十日の夜にロシア側からモスクワの大使館に連絡があったということで、もし我が国が申し入れしていなければ、ロシア側からは何の通報もないということになるんでしょうか。

伊藤副大臣 現時点で事実関係に照らせばそういうことが言えると思いますけれども、今回の事件、事故にかんがみ、ロシア沿岸で発生し、かつ放射能漏れがなかったので、今回は我が国への影響はなかったわけですけれども、こういう原潜事故はやはり我が国にとって重大な関心事でございますので、こういう原潜の事故への対応につきましては、ロシア側に対して、必要な申し入れを積極的に行ってまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 すぐ隣の場所で、日本海においてこのような事故が起きた。通常であれば、まずロシア側から日本に、タス通信などの報道をされる前に第一報があるのが礼儀ではないかというふうに考えております。

 それから、もう一点お伺いしたいんですが、では、放射能漏れがないということは報道で私ども聞いておりますが、日本政府としてどのような形で本当に放射能漏れがないということを確認されたのか、お伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 ロシア海軍は放射能漏れがない旨発表しており、加えてロシア外務省から公式の情報として同趣旨を確認したところであり、また、我が国においても何らかの異常があるとは確認していないということで、私も詳しい技術的なことを今お答えできる資料を持ち合わせておりませんけれども、我が国としても確認したということだと思います。

小野寺委員 結局、ロシア側が発表しているので、それはそうなんだろうということで、官房長官まで記者会見でそれを追認しているとすれば、本当にそういう体制で大丈夫なのか。あるいは、もし日本海であれば何らか、例えばその上空とかあるいはその海域に日本の船舶を派遣して放射能漏れの有無ということを調査することはできると思うんですが、このようなことは日本政府としてはとられなかったんでしょうか。

伊藤副大臣 細かいやり方、方法について、今、正確を期する答弁ができないわけですけれども、我が国の所定のいろいろな機関、要するに文部科学省であるとか自衛隊であるとかそういう機関、あるいはそういう機材を使って我が国としての情報収集を行って、異常がないということを確認しているということでございます。

小野寺委員 もし、今お話しになったように、我が国の文部科学省なり自衛隊があそこの海域のことをみずから調査して確認したということであれば、それは私どもも安心してこのロシアの情報というのを受け取ることはできると思うんです。基本的に、やはり相手国がこういう発表をしたということだけで政府が見解を述べるということはまずないとは思うんですが、再度、今後こういうことがもしあった場合に、しっかり備える体制ということを整備していただくことをお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員おっしゃいますように、我が国の対応をいかにやるかというのは非常に重要なことでございまして、先方の発表を受けて、今回申し入れ等を行ったわけでありますが、今副大臣からも御答弁いたしましたように、我が国なりの諸機関による放射能の測定というものも行っておりまして、今後、引き続いて、こういうような事故があった際には、ないことを望みますけれども、迅速な対応をするように努めていきたいと思っております。

小野寺委員 ありがとうございます。

 次に、拉致被害者の問題についてお話をお伺いしたいと思います。

 これも報道ですが、拉致被害者松本京子さん、鳥取県米子市の方ですが、この方が北朝鮮で生存している可能性を示す情報というのが一部伝えられた。そしてまた、この御家族、お兄さんですが、政府に再調査を要請したということになっておりますが、この状況については現在どのようなところに来ているんでしょうか。

中曽根国務大臣 松本京子さんの件につきましては、たしか二〇〇二年の十月の日朝国交正常化交渉、十二回目の交渉であったと思いますが、そこで我が方から、拉致の疑いが排除されない事案の一つである、そういうふうに提起をいたし、また関連情報の提供を求めていたところでございます。

 また、その後の二〇〇四年に三回行われました日朝実務者協議におきましても関連情報の提供を求めました。これに対しまして、北朝鮮側からは、同年十一月の日朝実務者協議におきまして、松本京子さんが北朝鮮に入境したことは確認できなかった、そういう旨の回答があったわけでございます。

 また、その後も、二〇〇五年の十一月の日朝政府間協議、それから二〇〇六年の二月の日朝包括並行協議におきましても改めて関連情報の提供を求めましたけれども、北朝鮮側からは返答はございませんでした。

 さらに、二〇〇六年の十一月二十日に松本京子さんが拉致被害者として認定をされました後も、日朝交渉の都度、北朝鮮側に対しまして、我が方からは、松本京子さんを含むそのほかのすべての拉致被害者の安全確保それから即時帰国、真相究明等を求めてきております。

 外務省といたしましては、北朝鮮が八月の日朝実務者協議での合意に従いまして、早期に、権限を与えられました調査委員会を立ち上げて、拉致問題に関する全面的な調査を早く開始し、生存者の帰国につながるような成果が早期に得られるよう、北朝鮮側との折衝を含め、鋭意取り組んでいるところでございます。

小野寺委員 今回の報道によりますと、この松本京子さんの事件、中朝貿易関係者が、十月中旬、北朝鮮にいる松本さんと見られる女性から、人を介して、イナちゃんによろしくという伝言、これは大変信憑性があるんじゃないかというようなことで、かなり御家族が今期待を持っていらっしゃいます。ぜひ、しっかり対応していただければと思っております。

 次に、大陸棚について少し質問をさせていただきたいと思います。

 御存じのとおり、日本は資源がない国だと思われておりますが、日本近海の大陸棚には、熱水鉱床とかコバルトリッチクラスト、石油、天然ガス、メタンハイドレートなど、資源エネルギーがたくさんございます。

 この大陸棚ですが、現在、二百海里という印象を私ども持っておりますが、国連海洋法条約によりますと、この延長ということができる。そして、延長するためには、来年五月までに、地形、地質の限界に関する情報を大陸棚の限界に関する委員会に提出して審査を受ける、そのような要件があると伺っております。そして、このような調査を日本政府はしっかりやってこられましたが、十月三十一日、総合海洋政策本部によりまして、今回、この延長に対する申請を行ったということになります。

 申請面積は七十四万平方キロメートル、これは日本の国土の二倍という大変広大なものですが、この申請について、今後のスケジュール、見通しについて教えていただければと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、十月三十一日、総合海洋政策本部会合において我が国の大陸棚延長申請について決定いたしまして、近くこの申請を国連の大陸棚限界委員会に提出する予定でございます。

 なお、国連海洋法条約上、我が国の申請期限は来年の五月でありますが、この期限を同じくする国が多数あるということもあり、なるべく早く審査が行われるように作業を迅速化してきたということでございます。

 そして、今後のことでございますけれども、今後の審査手続としましては、まずは、来年三月の同委員会会合において我が国の申請に関する説明を行うという予定でございます。その後、同委員会において審査が開始されることになります。

 ただし、現在、同委員会において四件の申請が審査中でありまして、また審査待ちの申請が三件あるため、我が国の申請に関する審査が一体いつ開始されるのか、具体的な時期を申し上げることは現在では困難でございます。

 また、審査に関する期間については、申請によって異なるのでございますが、過去の例から推測いたしますと、少なくとも二年から三年程度はかかるのではないかというふうに考えております。

 日本政府といたしましては、我が国の申請が最大限認められるように、審査に全力を尽くす考えでございます。

小野寺委員 この大陸棚については、日本は相当早く手をつけて調査を始めたんですが、申請が遅くなってしまったために、今、三カ国申請待機中というお話がありました。日本は四カ国目になります。実は、事務作業上、三カ国一緒に、三つが一つのロットで調査検討するということになりますので、今出すと四番目ですので、既に三カ国、その次の順番に待っているということは、日本の審査が始まるのは幾ら早くても三年、四年先のことということになります。

 こういうスケジュール、もっと早くしないと、せっかく日本が広大な大陸棚をこれから確保しよう、ここを資源として活用しようと思う中で、どうも気勢をそがれてしまう。あるいは、各産業界も、これが画定しないうちになかなか新たな、メタンハイドレートへの投資とか、そういうことができなくなる。ぜひ、もっと早く申請あるいは審査が行われるように、これからもこの画定委員会の方に働きかけていただきたいというふうに思っております。

 それでは、直接外交にかかわるかどうか、マグロのことを少し質問させていただきたいと思います。

 これは、今月、十一月八日の宮城県の河北新報というところに載った記事です。ちょっと読み上げさせていただきます。

 台湾漁船が炎上した。十月十二日、インドネシア、スマトラ島沖のインド洋上で、塩竈市、これは伊藤副大臣の御地元になりますが、マグロはえ縄船第八漁安丸が宮城県漁業無線局に通報した。火災を起こしたのは、近くで操業していた玲翰丸、四百九トン。漁安丸への無線連絡で玲翰丸は台湾船と名乗ったが、実は台湾系資本の漁業会社玲豊漁業が、これは静岡市ですが、所有する日本船、登録上は日本船なんです。二〇〇六年、気仙沼を出港し、シンガポールを拠点にメバチマグロを追っていた。二十五人の乗組員は全員漁安丸に救助された。フィリピン人が二十人、中国人が四人、乗組員のうち日本人は漁労長、これは船のトップですが、この方一人だったということです。

 よく見てみたら、この船というのは、日本船籍を持っているけれども、実は乗組員は日本人ただ一人で、しかも炎上した際には、この船の通報は、僕らは台湾の船だ、そういうお話をしている。

 近年、このような台湾系と呼ばれる遠洋マグロはえ縄漁船が日本船として相当存在すると言われておりますが、この台湾漁業、かねてから国際資源管理に非協力的で、日本が減船、船を減らす中、自分の船をどんどんふやしていって、その勢力を伸ばして、今のマグロ資源の減少に拍車をかけてきました。

 こういうことがあって、日本も大変努力をしまして、この減船ということ、これは一部日本もお金を出して、船を減らして何とかしようとやってきたんですが、その結果、大変皮肉な話なんですが、日本漁船は経営的に厳しくなりまして、日本漁船とその操業許可というのを台湾資本が取得をして、成り済ましというふうによく呼んでおりますが、日本船籍に成り済まして台湾勢力がどんどん伸びてきている、こういう実態があると思います。

 このことについては民主党の野田議員も五月の外務委員会で指摘をされておりましたが、現在、日本の遠洋マグロはえ縄漁船の中で、実際、台湾が資本的に支配している漁船はどのぐらいあるか、もし把握していれば教えていただきたいと思います。

宮原政府参考人 お答えします。

 我が国の漁業許可制度におきましては、漁業あるいは労働関係法令に基づく必要な条件を満たしている場合につきましては、外国資本の関与の有無にかかわらず漁業許可を出すということをやってきております。

 その中で、現在のところ、いわゆる外資系と言われる漁船数については、残念ながら正確には把握しておりません。

小野寺委員 外為法によりますと、外国投資家が非上場会社の株式を取得する場合または上場会社の株式の取得をする場合、出資比率が一〇%以上となる場合には、事前届け出あるいは事後報告義務を課しております。

 北朝鮮、イラク等三十カ国からの投資は事前届け出が必要。また、米国、欧州等百六十三カ国からの投資は、大半の業種について事後報告で足りるが、安全保障上必要な業種、農林水産業、鉱業、マイニングですね、それから石油、皮革及び皮革製品製造業、航空運輸等の留保業種については事前届け出が必要であるというふうに外為法には書いてありますが、なぜマグロ漁業というのはこの農林水産業に入らないのか、ちょっと教えていただければと思います。

宮原政府参考人 外為法上の漁業にはもちろん遠洋漁業、遠洋マグロはえ縄漁業は入るわけですが、昨年度、外国からの投資については届け出がゼロ件となっておりまして、その面での把握はできておりません。

小野寺委員 外為法では届けなければいけないが、届け出はゼロになっているというふうに理解していいんでしょうか。

宮原政府参考人 はい、そのとおりです。

小野寺委員 現実的にこのような成り済まし漁船という事例がこうやって発生しているんですが、それでいて、届け出がないから水産庁としてはこういう事案はないというふうに把握するということなんでしょうか。

宮原政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、漁業許可の制度上は、外資の関与の有無にかかわらず許可が出るという状況でございまして、今先生御指摘のとおり、許可をとっているいわゆる外資系というものについては、今後その正確な把握に努めたいというふうに考えているところでございます。

 なお、指定漁業の新規参入を促進する観点から、十三年度末に漁業法を改正いたしまして、許可の承継にかかわる制限が撤廃されたということでございまして、十四年の八月以降、新規参入してくる漁業者というのがふえてまいりました。その十四年八月以降の許可の一斉更新以降入ってきた新しい漁業者というのは七十隻ほどございまして、その中にいわゆる外資系というものがあるというふうに考えておる次第でございます。

小野寺委員 今答弁の中にもありましたが、実際七十隻ほどは恐らくそうであろうと推察できるものがあって、ところが、外為法ではそういうものは事前届け出が必要なんだけれどもそれがないということは、恐らくこの制度の中に相当の不備があるというふうに私は考えております。

 なぜこういうことを細かく追及するかといいますと、例えばことし七月、伊藤副大臣が一生懸命活動されました漁船の燃油高騰対策があります。燃油高騰対策で四十五億円、それから先日補正で成立しました三十三億円の合わせて七十八億円が国際漁業再編対策事業、いわゆる船を減らす、減船補償金ということで確保されております。

 今、実態はどういうことになっているかというと、例えば中古漁船は一隻幾らぐらいするか。多分余り大臣はなじみがないと思いますが、中古マグロ漁船は、標準型の三百七十九トン一隻ですと約三千万円から五千万円ぐらい、これは漁業権つきで取引をされています。これを例えば台湾資本が買う。三千万ぐらいでマグロ漁船を買いました。それで、ほとんど日本人を乗せないで、これは日本の船だよといって、メバチを含めて日本の長年確保した漁業の枠を使ってマグロをとっている。

 これも問題なんですが、もっと問題なのは、今回の減船の補償金は、大体一隻当たり一億円は出ると言われているんです。そうすると、私たちの税金で、どうしても漁業を再編しなきゃいけない、日本の漁業を強くしなきゃいけないということで出すお金、減船の補償金一億円、これが何と、台湾の資本は三千万ぐらいで安く買い集めて何隻も持っていて、七十か八十隻持っていると言っています。これをもし減船だというふうに出してしまったら、これに一億の補償を日本が税金でするわけです。おかしいじゃないですか。

 ですから、こういうほかの国の資本が入っているということを厳しく排除してほしい、そういうことを強く主張しておきたいんですが、今後どうやって例えば減船に対してのハードルを設けるか、そのことについてお伺いしたいと思います。

宮原政府参考人 先生御指摘のとおり、国際漁業再編対策、いわゆる国際減船につきましては、今後の国際会議の動向を踏まえまして、本年度中に関係業界の要望をよく聞きながら実施していこうというふうに考えておりまして、今先生が御指摘された点につきましても、それを踏まえて適切な実施を図りたいと考えております。

 ありがとうございました。

小野寺委員 水産庁は、この減船問題に対しても、あるいは国際漁業再編の問題についても、恐らく外国資本の問題についてもかなり綿密に調査をされているんだと思います。実態として、ぜひこういうことをしっかり排除していただきたいと思うんです。

 さらにもう一つ、恐らく根本の問題だと思います。

 遠洋マグロ漁業あるいはほかの公海上の遠洋漁業というのは、今、国際条約で大体各国に割り当てがなされています、日本は何千トンとっていい、台湾はこのぐらい、中国はこのぐらい、韓国はこのぐらいと。長い漁業交渉の上で、各国の実績、世界の遠洋漁業というのは日本が開拓してきましたから、そういう実績をもとに枠をもらっています。言ってみれば、日本国民が持っている、あるいは日本が持っているいわば公海上での資源の枠というふうに考えていいと思うんです。

 では、同じように、マグロではなくて、もしこの資源の枠というのが石油資源だったらどうでしょうか。外国資本が入っていて、日本の石油資源が外国資本に支配されてどんどんその権益を脅かされているとしたら、恐らく大騒ぎになっていると思うんです。当然、こういう石油資源等いわゆる鉱物、海底の天然資源に関しては、あるいは陸上の天然資源に関しては、鉱業権の資格ということで鉱業法の指定がありまして、第十七条には、この鉱業権の資格というのは、「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。」というふうになっているんです。

 そうすると、この公海上でのマグロ漁業も、実は日本が固有に有している地下資源、天然資源と本来は同じ扱いをすべきではないか。そうすると、それに外国から参入するということは大変おかしいことだ。これは、私どもだけじゃなくて、今おいでになりましたが、野田委員も五月の委員会で、成り済まし日本漁船ということで、この問題を強く指摘していただきました。

 こういう実態があるということで、ぜひ何らかの規制で、特に外為法でも農林水産業は事前届け出が必要だということになっていますし、ましてや公海上の日本のマグロ漁業の権益というのは、いわば日本国民が持っている、日本が持っている固有の資源と考えていいと思う。そうすると、鉱業権と同じ考え方で外国資本の排除ということをさらに検討していただきたいのですが、このことについて御意見を伺いたいと思います。

宮原政府参考人 漁獲枠につきましては、先ほどお話ししたとおり、許可制度上は、外資の関与いかんにかかわらず許可が出ることになっておりまして、実際上、漁獲枠というのは規制という面も持っておりますので、こういった規制、漁獲枠を含めた規制については遵守を強く求め、管理をしていくということで考えております。

 ただ、一部貴重な漁獲枠、クロマグロですとか高いマグロの漁獲枠につきましては実績者本位で配分がなされておりまして、新規参入者にはそれは今のところ行っていないという状況でございます。

小野寺委員 なかなか、現時点での答弁というとそういうことになるのかもしれませんが、ほかにも成り済まし漁船の問題があります。保険の問題です。

 実は、漁船の保険というのは、漁船保険組合ということでそれぞれ保険の契約を結んでいるんですが、最終的に国が保険の中央会と契約を結んでいる、いわゆる国が保証をしているのがこの漁船の保険ということになります。

 今回、この成り済まし漁船が仮に相当の、かなり無理をした操業をしているとどうもわかりますので、この玲翰丸で起きたような火災が起きた、火災が起きて補償が必要だ、こうなったときに、最終的にはこの補償金というのは、国がある面では補償しているということになります。

 そうすると、これはちょっとうがった見方かもしれませんが、安く日本漁船を買って、それがたまたま洋上で火災が起きて、火災の保険というのはかなり、数億円の金額で出ます。それが出たらということで、海の上ですから状況がわかりません。このお金も実は日本の税金で支出されるということになったら、本当に、保険金の何か事件とは言いませんが、ですが、だれもわからない洋上で起きている事件がもし頻発した場合、それがどうも何か日本の資本じゃない、台湾資本の船が主に、今回もその事例が起きたわけですから、そういうことがどんどん起きて、保険金がどんどん支払われる、これは結局日本政府が補償している、こういう事例だって今後起きないとも限りません。ですから、ぜひ、外国資本が入ってきている成り済まし日本漁船ということ、これをしっかり取り締まっていただきたいと思います。

 さらに、もしこの日本漁船と称する船が違法操業をした、あるいは、とても失礼な話ですが、海賊行為を行った、こういうことを行った場合でも、これは日本の船ということになっていますから、その責めは日本政府が負うわけです。でも、ふたをあけてみたら、資本は日本人ではない、乗っているのは、二十人がフィリピン人だ、外国の方で、日本人がほとんど、もしかしたら全然いない可能性もあります。海の上ですから、わかりません。そうすると、日本がこんな違法行為を行った、あるいは日本が違反操業を行った、全部日本政府がその罪を負うわけです。全く理不尽な話です。しかも、これには日本の税金が使われる。さらに、日本が長い間頑張って守ってきたマグロ漁業に関する既得権益というのが逆にそこから食い荒らされていく。

 もっと、こんな指摘をする方もいます。今、日本のマグロじゃないと日本ではなかなか流通をしません。ですから、仲積み船にマグロをある程度移しかえて日本に持ってきます。当然、移しかえるときには、日本の漁船でとった、何々丸でとった船ですよということで来るんですが、もしこの成り済まし日本漁船の経営者が、半分は成り済まし日本漁船、半分は実は台湾の、自国の漁船を持っているといったときに、マグロには色がついていません、名前も書いてありませんので、幾らでもまぜることができるんです。それで、結果的に日本にどおんとたくさんマグロが入ってきて、マグロの値段が下がります。とっている船というのは、一応日本漁船がとっているよというふうに名目上はなりますが、沖の話ですから、チェックすることができません。こういう国際的な漁業規制を抜け穴とする、そういうことにも使われかねない。

 ですから、この成り済まし日本漁船というのは、一つは、ひょっとしたら減船対応で私たちの貴重な税金が、三千万で安く買いたたいた漁船に何と日本政府が一億円の補償をつけて減船させてあげるということになるかもしれない。あるいは、今回起きたような火災が起きた場合、保険は日本が最終的には保証していますから、それでまたたくさん日本の税金がもしかしたら使われる可能性があるかもしれない。まして、日本の船の旗をつけていますから、いろいろな操業違反をした場合には日本政府が責めを負ってしまう。さらには、日本は一生懸命マグロの需給を調整して頑張っている中で、まじめな日本漁業者が頑張っている中で、これを一つの抜け穴として、ある面では、相当数、日本のマグロだということで流通に異常を来していることもあるかもしれない。しかも、この成り済まし漁船というのは外為法でも明らかに問題がある。そしてまた、今後やはり鉱物資源と同じような扱いで考えていただきたい。

 そのようなことを思うと、大変重大な課題だと思っているんですが、最後に、この一連の話を聞いて、大臣、どのような感想をお持ちか、ぜひ御意見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 私は、海なし県で、余りそういう海での漁業のことについては詳しくありませんが、今委員からいろいろと、現在の問題点、それからこれから起こり得る問題点等お話しいただきまして、大変重要なことだな、そういうふうに今認識いたしました。

 いろいろな法律もありますが、今後、関係省庁とよく連絡をとって今後の対応を考えていきたい、そういうふうに思います。また御指導よろしくお願いいたします。

小野寺委員 伊藤副大臣は、この分野でも大変造詣が深い方です。大臣、副大臣の手腕に期待をいたします。

 終わります。

河野委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、日米関係からお伺いをさせていただきます。

 今回の米国の大統領選挙は、世界各国で熱狂的な関心を持って見られていた大統領選挙だったと思います。実際に、オバマ新政権が来年の一月に誕生するわけでございますけれども、早くも評論家の皆さんたちは、オバマ新政権になりましたらジャパン・パッシングではなくて日本ナッシングだとか、あるいは経済的な部分で随分と米国の保守色が強まるのではないか、日本にとっては厳しくなるのではないか等々、マイナスの評論がかなり多く聞こえてきて、懸念ばかりが聞こえてくるわけでございます。

 しかしながら、実際に、世界で唯一の超大国のトップがかわるということは、我が国のみならず、世界に与える、また外交面で国際社会に与える影響というのはかなり大きいものがございます。当然、我が国にとっても懸念ばかりではなく、訪れるであろう好機というものも多くあるものと思う次第でございます。

 まず、その前に、ブッシュ政権八年間が終わりに近づいてまいりました。このアメリカの八年間の外交政策において国際情勢が大きく変化をしてきたと私は感じております。

 冷戦終了後、唯一の超大国アメリカの軍事力によるリーダーシップが大きく発揮されまして、リーダーシップをとってきたわけでございますけれども、それだけでは対応できない状況に変化してまいりました。それがイラク戦争であり、アフガニスタンにおけるテロとの闘いであり、またグルジア紛争というところ。

 国際協調なしには解決できない、アメリカだけでは解決できない、特に、西欧諸国のみならず中国あるいはロシア等も巻き込んで解決しなければいけないような国際情勢が大きく出てきたように思いますけれども、外務大臣にまず現在の国際情勢の変化の認識についてお伺いをいたします。

中曽根国務大臣 委員のお話にありましたように、国際情勢は非常に多様化し、複雑化しておりますし、また環境も大変厳しくなっております。そういうところから、国際的な問題については各国が協調して取り組まなければ解決できない、そういうような大きな課題がたくさんあるわけでございまして、御承知のとおり、気候変動の問題とか今回の国際金融の問題とか、いろいろございます。そうした中で、やはり協調しながら、連携しながら各国が共同で取り組むということは、先ほど申し上げましたとおり、今後の課題の解決方法としては非常に重要であると思っております。

 今回、十一月十五日にはワシントンで金融の問題が話し合われますし、またCOP14も今後開催されるわけでありまして、そういう意味で、委員おっしゃるような形で今後諸課題に取り組まなければならない、そういうふうに思っております。

 そういう中におきまして、我が国もいろいろな、金融の問題でしたらば御案内のように過去に経験もございますし、環境の問題、エネルギーの問題等、我が国の持っている経験とか技術を生かして国際社会の中で協調しながら役割を果たしていくべきだ、そういうふうに思っております。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

丸谷委員 大臣おっしゃいましたように、金融の問題、環境の問題を含めまして、一国の強い軍事力あるいはリーダーシップによって世界が動いていくということではなくて、当然我が国も含めたいろいろな国のいろいろな経験を生かしたものを国際問題の解決に充てていくということが非常に強く求められている時代に入りました。

 その意味では、我が国にとっても今回の大統領、新政権が誕生したことによって訪れるであろう好機というのは幾つもありまして、例えばその一つは、先ほど松浪議員も質問されていましたけれども、イランに対する外交政策であろうと思います。

 このイランの問題というのは、ちょっと質問の順番が変わりまして恐縮でございますけれども、イランの孤立化政策というのではなく、大統領がかわったことによる新政権による対話路線というのを、アメリカとイランの距離感、あるいは我が国とイランの距離感が違うということを考えますと、我が国がこの米、イランの対話路線というのを後押ししていく、促していくということが、我が国にとっても、また国際社会にとっても非常に重要なことだと考えております。

 このイランとの対話の後押しについて、我が国の意気込みといいますか、見解をお伺いさせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 このたび大統領選挙に当選いたしましたオバマ次期大統領も、選挙期間中にイランについて、直接対話を通じた厳しい外交を行っていくんだ、そういうような発言をされていたと承知をしております。

 また、我が国は、御案内のとおり、イランに対しましては、イランの核問題に関しましては、不拡散体制の堅持と、それから北朝鮮の核開発との関係、さらに中東地域の不安定化防止、そういうようないろいろな観点から国際社会として毅然とした対応が求められる、そういうふうに我が国としては認識をしているところでございます。

 そういう中で、この問題が平和的に、また外交的に解決されるということが最もふさわしいと考えておりますが、引き続きまして、米国を初めとする主要各国とこういう問題については連携してやっていかなければならないと思います。

 日本は、イランとの関係におきましては非常に伝統的な友好関係があるわけでございまして、ことしの夏の洞爺湖のG8のサミット、この首脳宣言で言及がありました首脳や外相を含むハイレベルの対話というものを行っておりまして、引き続きましてイランに対して働きかけを継続していきたい、そういうふうに思っております。

丸谷委員 もう一つ、今回、米ロ協調の構築というのができる非常に好機ではないかと思っております。

 一部には、新冷戦の時代が来るのかという懸念もされているわけでございますけれども、最近のグルジア紛争、これが発生した遠因の一つには、ソ連の崩壊後、米国がNATOの東方拡大を図っていった、軍事的にロシアとの対立路線をとってきたことにあるのではないかといった指摘もございます。また、米国上院の元軍事委員長のサム・ナン氏の御発言でございますけれども、このこと自体が根本的な失敗であったのだといった言葉も出てきているわけでございます。

 中央アジアだけにとどまらず、東欧においてもこの米ロの緊張感というのは高まってくる、これを防いでいかなければいけない。また、さきの、メドベージェフ大統領になられまして初めての年次教書演説の中には、ポーランドに隣接しますロシアの飛び地でありますカリーニングラード州に新型ミサイルを配備するといったようなことも表明されていまして、このままほっておきますと、対立路線というのは深まってくるわけでございます。

 今回のオバマ新大統領の誕生とともに、対立から協調へという変革というものも後押しをしていかなければいけない、それをすることによって我が国の国益にもかなうものが多くあると思いますけれども、この点についてはどのようにお考えになっているでしょうか。

伊藤副大臣 丸谷佳織委員にお答えします。

 委員御指摘のとおり、やはり新冷戦に戻ってはいけないわけで、米国とロシアが力を合わせて、よりよい世界のために、また平和的な世界のために協力するということが必要だと思います。

 九・一一のテロ事件以降は、米ロ両国、国際テロ対策、またアフガニスタン問題、核不拡散等、さまざまな国際問題について協調を進めてきたわけでございますけれども、グルジア情勢への対応、このことを契機に、米ロ間の防衛交流の中止、またロシア、NATO間の協力凍結等、米ロ間の協力というのは縮小されているという現実はあります。

 我が国としては、委員御指摘のとおり、国際的な課題への対処においては引き続き米ロ両国の協力というものが必要であるというふうに考えておりまして、そういう観点から、米国、ロシア双方に対して、こういう国際的課題への対処において連携協力していくことの重要性につき、さまざまなレベル、さまざまな機会で働きかけていくという所存でございます。

丸谷委員 もう一つ、大統領選を見ていまして、オバマ候補だった時代にいろいろな公約等々を出していらっしゃいましたけれども、非常に私自身も歓迎をして見ましたのが、核軍縮、また地球温暖化に対する取り組みの姿勢でございます。

 一つ、絶対にオバマ大統領時代になし遂げていただきたいと思うのが、米国のCTBTの批准でございます。これは我が国にとって、外交方針の中で、当然、唯一の被爆国として今までとってきた日本の方向性というのはありまして、米国に対してもぜひCTBTを批准するようにといったような話はございますが、まさか、アメリカ自身がCTBTを批准するわけはないのではないかというような雰囲気というのも実際にあったんだろうと思います。

 クリントン大統領がこれに対して前向きな取り組み、姿勢を示してやっていただきましたけれども、実際には、議会の対応上なし遂げられていないということもございます。今回は、選挙の結果を見ますと、上下院ともに大統領の出身であります党というのが勝っているということも含めまして、オバマ次期大統領がおっしゃいましたイエス・ウイ・キャンというのをこのCTBTの批准というところでぜひ実現していただきたいと期待をしているところでございます。

 また、我が国は国連総会に毎年、核廃絶を求める核軍縮決議案というのを提出しておりまして、実際には賛成多数で採択をされているわけですが、米国の賛成というのは得られていません。このことも含めて、ぜひ米国の賛成が得られるように、またCTBTの批准が可能になるように、これも米国を励ましていくというか促していく、また日本が期待しているということを伝えていくことが非常に重要かと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 我が国としては、これまでも種々の機会をとらえて米国に対してCTBTの早期批准を働きかけてきたところです。残念ながら、まだ決定しておりませんけれども。

 委員御指摘のように、オバマ次期大統領がこの批准に向けて積極的な態度というものを示されているということは大変喜ばしいことだと思いますので、この機会を逃さずに、政府としても、オバマ次期大統領がCTBTの批准に関し具体的な行動が近々とれるように、さまざまなレベルを通じて米国に働きかけを行うとともに、核軍縮、不拡散の分野における米国との協力を一層我が国としても推進していきたいという所存でございます。

丸谷委員 実際に、来年の一月からアメリカでは新政権が誕生をいたします。

 冒頭に申し上げましたけれども、アメリカのトップがかわることによって国際社会に与える影響というのは非常に大きい。その中で、日本がただどうなるのかなと見ているのではなく、日本の国益にかなうように、また国際社会に恩恵が行くような形で仕掛けをしていくことが非常に重要かと思います。

 本日、生意気なようでございますけれども、御答弁を聞いていますと、従来の方針にのっとってさまざまなレベルで働きかけていくといった御答弁が多くございました。実際には、今までもさまざまなレベルで働きかけ続けていただいたわけでございまして、決意というか意気込み自体をもうちょっと感じさせていただければ非常に幸いであったなというふうに思うわけでございます。また、中曽根外交にも非常に大きく期待をしておりますので、頑張っていただきたいと思います。

 では、済みません、大臣の意気込みを聞かせていただきます。

中曽根国務大臣 今、副大臣からも御答弁をいたしましたけれども、この新しい大統領が誕生する機会をまた一つのチャンスととらえまして、我が国としても米国に対し強く働きかけを行っていきたいと思います。

 委員御承知かと思いますが、ことしの九月の二十四日に、ニューヨークにおきまして、カナダ、オランダ、豪州、フィンランド、オーストリア、それからコスタリカ、我が国を含めて七カ国になりますけれども、CTBTフレンズ外相会議というものを主催いたしました。我が国からは、川口政府代表、元外務大臣に団長として出席をいただいて会議をリードしていただきまして、そこで閣僚共同声明というものが採択されたわけでございます。

 CTBTのまだ署名をしていない国、また、まだ批准をしていない国、特に発効要件国、これはアメリカを含むわけでありますが、そういう国々に対して可及的速やかにCTBTを署名、批准することを要請したわけでありまして、こういう会議での議長役などを通じて我が国も今努力しているところですが、さらに努力をしていきたい、そういうふうに思います。

丸谷委員 ありがとうございました。ぜひ努力をしていただきたいと思います。

 まさかアメリカがCTBTを批准するとは思わなかったという、非常に好機なわけですので、日本外交力というのを発揮して、頑張って結果に導くようにしていただきたいと思います。

 次に、米印の原子力協定について、日本の姿勢というのをお伺いさせていただきます。

 当委員会でも幾度か質問をさせていただきました。我が国というのは唯一の被爆国でございますので、この米印の原子力協定について我が国の思うところ、しかしながら、米印の協定ということでございますから、二カ国間協定について我が国がどこまで言えるのかなといったような雰囲気もあったのかと思います。

 実際には、九月の六日、NSG総会がございまして、インドを例外的な扱いとするような投票がございました。このNSG総会の九月六日の結果では、全会一致をもって、我が国も賛成票を投じまして、インドを例外的な扱いとすることが決まったわけでございます。このことについて、我が国がどのような外交政策判断をもって賛成をされたのか、この点についてお伺いをさせていただきたいと思うわけでございます。

 民主党の高木義明議員もこの件について質問主意書を政府に出されました。その答弁書も拝見いたしましたが、政府の答弁書の内容がちょっと私には理解できないものでございますので、改めて政府の見解をお伺いいたします。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

中曽根国務大臣 我が国がNSGの総会におきましてインドの例外化について賛成したことにつきましては、大変重要な問題でございますので、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、丁寧に御説明させていただきたいと思います。

 まず先般の原子力供給国グループ、今のNSGでございますが、これの臨時総会におきまして、我が国は、一つは、核兵器の不拡散に関する条約に、NPT条約に加入をしていないインドへの原子力協力が国際的な核不拡散体制に与える影響、それから二番目は、アジア最大の民主主義国家であり、また新興市場経済国でもあるインドの重要性、それから三番目は、インドによります原子力の平和的利用が地球の温暖化対策に貢献し得るという意義といいましたような観点を踏まえまして、特に唯一の被爆国であります我が国として、インドによる核実験モラトリアムの継続を重視しながら議論に参加をしたということでございます。

 この総会におきます参加各国によりまして大変厳しい議論、交渉が行われたわけでございますけれども、インドとの民生用原子力協力に関するNSG声明の採択につきましては、九月五日に発表されましたムカジー・インド外務大臣の声明におきましても改めて述べられました、インドの核実験モラトリアムの継続を初めといたしまして、民生用の原子力施設への国際原子力機関、IAEAの保障措置の適用、そしてNSGガイドラインの遵守を含む厳格な輸出管理の実施など、インドの約束と行動、これに基づくものであることが明確にされたわけでございます。また、これらの約束と行動を通じまして、インドに対します不拡散措置が現在より強化をされる、そしてインドの原子力活動の透明性が高まるとともに、国際的な核不拡散体制の外にいるインドによるさらなる不拡散への取り組みを促す、そういう契機になると考えたわけでございます。

 このように、過去三十年以上にわたりましてNPTの外側にとどまっていましたインドを、NPTを基礎とする国際的な核不拡散体制に関与をさせて、そして、IAEA保障措置の適用とか、あるいは核実験モラトリアムを含む制約のもとにインドというものを置くことによりまして、この枠組みの中に取り込んでいく、これは大変意義のあることだ、そういうふうに判断をした次第でございます。こうした点を踏まえまして、我が国としては、大局的な観点から、ぎりぎりの判断として、同声明に関するコンセンサスによる採決に加わったところでございます。

 なお、今回の決定は、国際社会がインドの約束と行動を重視した結果でございまして、我が国といたしましても、インドがこの決定の趣旨を重く受けとめて、そして国際的な核不拡散体制の維持それから強化のために責任のある行動をとるよう、引き続いて強く求めていきたいと思っております。

 また、今回の例外化によりまして、インドを核兵器国として認めたわけではございません。我が国としては、インドに対しては、非核兵器国としてのNPTへの早期加入、そして包括的核実験禁止条約への早期署名、批准を求める、そういう従来からの我が国の立場に変わりはございません。

 以上でございます。

丸谷委員 非常に、本当にぎりぎりの御判断であったんだろうなというふうには推察するものでございますけれども、実際にはインドは、核保有国としては認めていないというような御答弁もあったわけですけれども、現実的にはインドは核兵器保有国でございます。しかも、NPTに加盟をしていない国でございます。今回、このNSGの例外的な措置が可決されたこと、世界的に認められたということによりまして、インドというのは、核兵器を持ちながら、またNPTにも入らない国として、変な意味でございますけれども、立場が非常によい、楽な、強い国になってしまったという一面があると私は懸念をしています。

 御答弁にもございましたけれども、インドによるさらなる不拡散への取り組みということが何を言っているのかがちょっと私にはわからないんです。インドによるさらなる不拡散への取り組みを促すもの、これは何か約束がとれたんでしょうか。NPTに加盟しますということで言質がとれているのかどうか、この点はいかがですか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のインドとの民生用原子力協力に関する声明、この中で各国は、インドが自発的にとってきた幾つかのコミットメントに係る措置に留意したところでございます。その一つが、先ほど大臣から申し上げました民生用原子力施設に関する申告をIAEAに対して行うこと、そのほかにも、追加議定書に署名することとか、あるいは輸出管理の制度を制定しているとか、そういうことを各国は留意した、こういうことが書かれております。

 そして、それを受けまして、こういう約束と行動に基づき例外措置が決定されたということが書かれておりまして、今述べましたようなインドが自発的にとってきた措置というものについては非常に重く受けとめられているというふうに考えるところでございます。

丸谷委員 今回、NPT会合がございますけれども、その都度、なかなか具体的な成果が出ないとか、合意が出ない、結果が出てこない、本当にこのままNPT体制は大丈夫なのかといったNPTの弱体化というものも指摘をさせていただいておりました。今回、実際にこのNSGで例外的な措置というものを我が国も認めたということによって、NSGがノンルールになるのではないか。

 今も報道されていますけれども、パキスタンが中国に協力を求めている。では、この扱いはどうするのかといったことを聞きますと、恐らくその都度の判断になりますといったような御答弁しかないのかと思うんですけれどもね。我が国は唯一の被爆国として、核軍縮についてどのような方向性でどう力を発揮していくという戦略が、恐縮でございますけれども、質問するたびにいただく御答弁では全く見えてこないんです。

 このNPT体制の弱体化を防ぐための方策、あるいは中国とパキスタンの協力関係に対して、今後どのように取り組んでいくのか。まだ話が正式なテーブルにのっていないのでお答えになれないのかもしれませんが、この点について何か御答弁していただけますか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生お触れになられましたように、各種の報道で、パキスタンの外相が、原子力発電所の建設に中国政府が協力する計画があるということを明らかにした報道があることは、承知いたしております。ただ、パキスタンと中国の協力の具体的内容といったものがどういうものかということが必ずしも明らかになっていない状況でございますので、では、具体的にどういうことになっていくのか、それに対して我が方がどう対応するのかということについてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、今回のインドの例外化の決定との関係で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、今回のインドの例外化というものは、厳格な輸出管理でございますとか、あるいはIAEAの保障措置の適用、核実験モラトリアム、こういう約束と行動が前提となっているということが明確になっております。こういう約束と行動をとりましたインドに特定された措置としてNSGが決定したものでございまして、パキスタンを初めとするインド以外のNPTの未加入国に適用されるということではないというふうに御理解いただきたく存じます。

 いずれにいたしましても、パキスタンにつきましては、これまでの核不拡散上の取り組みにかんがみまして、NSGにおいてインドと同様の決定が行われるという基礎が存在するとは考えておらないところでございます。

 以上でございます。

丸谷委員 NSGにしても、またNPTにしても、器というか、基礎は当然あって、枠はあるんですけれども、その内容がだんだん薄くなっていくというような状況では困りますので、NPT体制の再構築に当たっても、ぜひ外交政策の中で本当に力を入れて取り組んでいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、最後になりましたけれども、先日、外務大臣は、来日されましたラブロフ・ロシア外相と会談をされました。今までにない形で、外相レベルにおいても、北方領土の帰属の問題を最終的に解決するために前進する決意で一致をしていただきました。非常に大きな、また具体的な一歩だと思いますけれども、実際に会談をされまして、ロシア側の領土解決に対して前向きな姿勢というのを実際に感じられたのか、この点と、また十二月のプーチン首相、もうすぐ十二月になるわけですけれども、まだ決まっていないようでございます。今どのような交渉になっているのか、この点もあわせてお伺いさせていただきます。

中曽根国務大臣 委員お話ありましたように、今月の五日に私はロシアのラブロフ外務大臣と会談をいたしました。私の方からは、領土交渉の現状について率直な評価を述べました。経済の分野等、こちらの分野では両国は非常に進展、発展しているわけですが、それに比べますと領土交渉というのは進展がおくれている、進んでいないということですから、経済分野に見られる、そういう進展に見合うような、領土の問題についても進展をする必要があるということを強くお話をしたところでございます。そしてその上で、首脳レベルではサミットのときもお話し合いがあったわけでありますが、外相レベルでも、北方四島の帰属の問題を最終的に解決するために前進する決意、これで一致をいたしました。

 政府といたしましては、APECが来週行われるわけでありますけれども、その際の日ロ首脳会談を初めとして、今後いろいろあるであろう政治対話の機会をとらえて、首脳間のサミットでの、また私と外相同士の共通の認識に基づいて、領土問題については具体的な進展が図れるように、強い意思を持ってロシアとの交渉を行っていきたいと思っております。

 それで、前向きな対応を感じられたのかということでございますが、ラブロフ大臣からは、この問題の解決を自分たちとしても真に欲している、そして積極的に作業を前進させる決意もあります、そういうような発言がありました。これで私は満足しているわけではございませんけれども、こういう発言があったということを踏まえて、さらにロシアとは北方領土の問題について特に強い意思を持って交渉に臨んでいきたい、そういうふうに思っております。

丸谷委員 中曽根外務大臣時代に非常に多くの結果を出していただけるように期待をさせていただきますので、どうぞ頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 中曽根大臣、就任おめでとうございます。かつて大臣が科学技術庁長官をされておられましたときに私も委員会で質問をさせていただいて以来でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 本委員会で先ほどから、オバマ新大統領が就任が決まったということで、いろいろとお話も出ております。私、今回アメリカの大統領選挙を見ておりまして、今の本当に行き詰まったアメリカの現状に対してアメリカの国民が拒否というかノーという表明をした、こういうことだと思っています。

 そして、私が思いますに、そのノーというのは二つあった。一つは、国際社会において一国主義、単独主義をとってきた。九・一一事件がありました。その後、敵か味方かという非常に単純な敵味方論、二元論をとってきて世界をリードしてきた。その結果、イラク戦争、自国の兵士が四千名以上犠牲になり、そして多くのイラクの市民が犠牲になっている、こういう状況であります。そして、アフガニスタンの状況も出口が見えない、泥沼化している、こういう状況を生んでしまっている。

 経済においても、新自由主義、市場原理主義の中で、行き過ぎた規制緩和だと私は思うんですが、そうしたことを行ってきた。そしてそのツケが今回の金融危機を招いた。こういうことに対してアメリカ国民はノーを突きつけてきた、そしてオバマ新大統領を誕生させた。

 私は、オバマ新大統領というのは、アメリカの国民が新しい価値観のもとに選んだ政権だ、こういうふうに思っています。私は、今回の選挙を見ていて、民主主義の原点というものを感じたわけであります。そして、オバマ新大統領も選挙の勝利演説において、アメリカの人民の人民による人民のための政治、これは滅びていなかった、まさしく人民の政治が皆さんの決定によってよみがえったといいましょうか生きている、こういう証明であった、こういうことを演説の中で言っている。みんなの勝利だ、こういうことを言っているわけであります。

 もちろん、内外の問題というのはなかなか難しい問題が山積しておりまして、新大統領にとっても困難な状況が続くんだと思います。しかし、アメリカの重要なパートナーである日本の国会議員として私も、協調主義のもとしっかりと連携関係をとり、日米両国民にとって、また世界の人々にとって歓迎される、希望に満ちた、そういった関係を築いていきたいと思うわけであります。

 さて、私はそんな思いを持つ中で、この委員会の中でも何回か質問をしてまいりましたクラスター爆弾のことについて、まず質問をさせていただきたいと思います。

 私は、日本の国際貢献、よく国際貢献という言葉が使われるわけでありますが、ある意味、日本の国際貢献というのは、まずこうしたクラスター爆弾の禁止等々のような、平和な状況をつくっていく、このために世界をリードしていく、各国と協調していくということだと思っています。そういう意味では、この委員会で質問させていただいて、クラスター爆弾禁止条約の署名がどうなるか、ぜひ日本はリードして一刻も早く署名を宣言すべきだ、こんな質問もさせていただいてまいったわけであります。

 十二月三日にノルウェーにおいてクラスター爆弾禁止条約の署名式が行われる、こういうふうになっております。日本も同禁止条約に署名すると福田総理が決定をされたわけでありますけれども、表明しておるわけでありますが、当然、当日の署名式に参加し署名するものと私は考えておるわけでありますが、この点いかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 クラスター爆弾禁止条約、これは大変難しいんですけれども、またかつ大事な課題だと思っております。この条約の署名に向けまして、安全保障上必要となる予算の手当てを含めまして、今具体的な検討を進めているところでございます。

 十二月の三日にノルウェーのオスロで署名式が行われるわけでありますけれども、署名についての政府としての正式な決定は、今検討されておりますようなそういう検討を踏まえて、改めて行うことに現時点ではなっております。

近藤(昭)委員 大臣、正式な決定というのは、署名式に参加するかどうか、こういう意味でありましょうか。

中曽根国務大臣 署名をするかどうかも含めて最終的な決定という意味でございます。

近藤(昭)委員 クラスター爆弾の禁止条約に日本は署名しないこともあり得る、こういう意味でしょうか。

中曽根国務大臣 できるだけ前向きにという方向で今考えております。

近藤(昭)委員 私は、福田総理のときに、クラスター爆弾禁止条約については日本も署名をする、こういう決定をした、こういう理解であるわけでありますが、そういうことではない、これから署名をするかどうか決定する、こういうことでしょうか。

中曽根国務大臣 今私が正式な決定と申し上げたのは閣議決定ということでございまして、私どもとしては、前向きに取り組んで、この署名の式典にできれば出席をしたいと思っております。

近藤(昭)委員 では、大臣、確認をしたいと思いますが、署名をすることは決定している、しかしながら、署名式に参加するかどうかというのは、署名をするということは決定しているけれども、まだ閣議決定という正式な手続を経ていない、こういうことで、その上で、なおかつ、署名式に参加するかしないかというのはまだ決めていない、こういう理解でよろしいでしょうか。

河野委員長 外務大臣、明確にお願いします。

中曽根国務大臣 大変失礼いたしました。

 署名する方向でございます。最終決定は閣議で決定ということでございます。

近藤(昭)委員 そうしますと、署名をする方向で閣議決定をする、そして、署名式に出るかどうかはこれからで、それも前向きにとおっしゃるわけでありますが、私はこの間、この委員会でもずっと質問してまいりましたのは、日本はオスロ・プロセスには参加をしておった、ところが、オスロ・プロセスに不参加の米国、中国、ロシアのCCW、こちらの方にも参加、出席をしてきて、どうも、様子を見ながらというか、必ずしも積極的でない印象を私は持っていた。だからこそこの委員会でも、日本はこういった部門でこそ積極的なリードをしていくべきだ、こういう思いで質問をしてきたわけであります。そういう中で、当時の福田総理も決定をされたということであったわけですね。

 ですから、一刻も早く決定をしていただいて、特に、このCCW、今月七日に、専門家会合が開かれましたけれども、そこで交渉が決裂をしているわけであります。何か先が見えにくくなっている。もちろん、オスロ・プロセスは署名が行われる。でも、これも、それぞれの国が正式に署名をしていかなくちゃいけないわけでありますから、私は、まさしくここでもう一度、日本はきちっと、署名もするし署名式に参加をする、そういった立場を明らかにしていただきたいと思いますし、私はぜひ、その席上には外務大臣が御出席をいただき、みずから御参加いただきたい、こう思うわけであります。いかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 もう一度整理して申し上げますが、我が国の方針は署名をする方向でございます。ただし、これは最終的には閣議決定が要るということ、それから出席につきましては、仮に私ということであれば、国会の御承認が要るということで、そのような答弁をさせていただいております。

近藤(昭)委員 大臣にはぜひ御出席をいただき、日本の立場を世界に知らしめていただきたいわけであります。

 ところで、防衛省の方にお伺いをしたいと思います。

 防衛省は、条約に署名し、条約が発効すると履行義務が起きてくる。そうすると、その履行義務をどう実行していくか。処分方法、また安全保障上の代替措置も検討している、こういうふうに聞いておるわけでありますが、現在、クラスター爆弾と定義されている爆弾、兵器、それを四種類、日本の自衛隊は持っている。これは、四種類すべてについて代替兵器を開発、あるいは購入する予定なのか、またどんな代替兵器を検討しているのか、お知らせいただきたいと思います。

武田大臣政務官 今委員が御指摘のとおり、オスロ条約においては、我が自衛隊が保有する四種類すべてが対象とされておるということでございまして、今日まで安全保障上必要な措置というものをずっと検討し続けてきたわけでございますけれども、機能欠落というものを一部補完するために、精密誘導型の装備というものを現在要求しているところでございます。

 具体的には、戦闘機搭載のクラスター爆弾にかわるレーザーJDAM及び多連装ロケットシステム、MLRS用のM26ロケット弾にかわるM31ロケット弾を整備するための経費など、約七十五億円を計上したところでございます。

近藤(昭)委員 私自身は武力では平和はつくれないと思っているわけでありますけれども、ただ、防衛をする、専守防衛という中で、さまざまな検討をしていかなくてはいけないと思うんです。

 そういうことで申し上げますと、私が危惧をしておりますのは、今回の条約を履行するとなると、今御紹介もありましたMLRS、多連装ロケットシステム自走発射機M270だと思いますが、これが装備をするM26ロケット弾、これは廃棄をしなくちゃいけない。

 その中で、今、M31ですか、ほかを、七十五億円とおっしゃいましたでしょうか、非常に大きな費用をかけて代替兵器を整備する、こういうことでありますけれども、私は防衛というものを否定するわけではありません、しかしながら、限られた予算でありますから、効率のいい防衛の仕方というか効率のいい予算執行をして、きちっとした防衛をしていかなくちゃいけない。

 そういうことで申し上げますと、こうしたクラスター爆弾、この委員会でも質問しましたけれども、面の制圧をする、こういうことでよく防衛省は説明するわけでありますが、野戦特科部隊が持つ百五十五ミリりゅう弾砲FH70、九九式自走百五十五ミリりゅう弾砲、こういった武器で十分に面的な制圧能力というのは持っているのではないかと私は思うんです。

 ですから、私は、M26ロケット弾を廃棄する、これは大体一両約二十億円ぐらいだと思いますけれども、このりゅう弾砲があれば代替兵器は必要ない、十分に防衛はできる、こういうふうに思うんですが、いかがでありましょうか。

武田大臣政務官 予算の効率性というものを我々十分に考慮しながら今検討を進めておるところでございますけれども、委員御指摘の百五十五ミリりゅう弾砲用多目的弾及び対戦車ヘリ用七十ミリロケット弾については、現時点のところ、これにかわる装備を導入する具体的な計画はございません。

近藤(昭)委員 済みません、ちょっと私の理解がよくなかったのかもしれませんが、その百五十五ミリりゅう弾砲にかわる兵器を導入する予定はないということでしょうか。りゅう弾砲自体はあるんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生の御質問は、現在自衛隊が持っておりますりゅう弾砲、あるいはそれがクラスターのものもございますけれども、そういう全体の特科火力というものを活用すれば、クラスターによる洋上水際、特に上がってきたところを集中的に面的に制圧するという必要性は、なくても代替可能ではないかという御趣旨だと思います。

 今、政務官から答弁させていただきましたのは、現在四つ保有しているクラスター弾のうち、二つのものについては、先ほど政務官が言われたものについては代替する予定がないということでございまして、今あるクラスター弾がなくなった場合に、その機能をすべて補完するために同じような装備を導入していくというようなことは考えていない、最も効率的な方法ということを追求していくということでございます。その場合、現在のMLRSというのは、単弾頭であっても非常に短期間に集中的に撃てるということでございますので、しかも、誘導性能も高いものがあるということであれば、それは非常に効果的であろう、そういうような趣旨もございまして、MLRSから発射できるM31を装備させていただきたいというふうに検討しているものでございます。

近藤(昭)委員 それぞれいろいろと見解が違ってくるかもしれませんけれども、全部を代替する予定ではないけれどもこのM26のロケット弾についての代替は考えている、やはりそれは必要だというか、決して効率の悪いものではないというお答えでありましたが、私はいささか疑問を持っているわけでありまして、ぜひまた議論をしたいと思いますけれども、効率的なきちっとした防衛をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 それでは、インド洋における補給についてということでお伺いをしたいというふうに思います。

 バーレーンに駐在する連絡官が上申する基準がある、こういうふうに聞いております。航空母艦、海上阻止活動にかかわる任務以外の任務をあわせ有する艦船であって、イラクにおける作戦またはアフガニスタンにおける作戦にかかわる任務に従事中の艦船などに対する補給の要請があった場合、自衛隊司令官を通じて防衛大臣に上申をする、バーレーンの連絡官が上申をする、こういうことであるわけでありますが、これらの艦船に対して補給の要請があった場合、防衛大臣に対して上申が行われた場合、どのような判断を防衛省としては行うことになられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

武田大臣政務官 まず、現地からの情報や関係国から得られた情報などを総合的に勘案した上で、補給支援特措法の趣旨に照らして判断することになる、個別具体の事例に即して適切に判断するということでございます。

近藤(昭)委員 適切に、現地の情報、外国の部隊との連携の上で判断をする、こういうことなんでしょうけれども、先ほど松浪議員も質問というかお話しになっていましたけれども、私もテロ対策特別委員会の委員として何回も質問をさせていただきましたが、やはり現地の状況をもっと我々は知らなくてはいけない。テロ対策は必要だと、今の新法は違いますが、もともとの旧法は、テロ対策とともに現地の状況に対する人道的な支援、国連決議に基づく人道的支援をどうするかということの法案であったわけでありますし、その状況は今も変わっていないと私は認識をしております。

 そういうことでいうと、アフガニスタンは混乱をしているか、出口が見えない、こういう状況になっている。そういう中で、やはり誤爆が続いているということが非常に大きな問題になっていると思うんです。出口が見えない、その中で多くの人々の命が失われていく。

 今月の三日にも、御承知のとおりだと思いますが、報道がありました。アフガニスタン南部において、子供を含む三十七人の人たちが誤爆によって、結婚式の宴会というか結婚式に参加をしていた人たちが命を失う、こういうことがあった。カルザイ大統領も、こうした攻撃、一般の人たちが巻き込まれる攻撃はとにかくやめてほしい、こう言っている。オバマ新大統領が決まったと祝意を述べるとともに、こうした一般市民が巻き込まれる攻撃はやめてほしい、こういうことを言っているわけであります。

 そういう中で、少なくとも旧法のもとでは、残念ながら、アフガニスタンへの攻撃に従事をしていた強襲揚陸艦とか空母打撃群の艦船に対しても海上自衛隊の補給艦が給油を行っていた、こういう事実があったと明らかになっているわけであります。そういう意味では、ぜひ、アフガニスタンやイラクへの攻撃を主たる任務とする艦船への補給は一切行わない、今のお話ですと、状況を見ながら、情報を集めてという話でありましたが、私は、そういったことをきちっと日本は政治的な判断のもとで表明をすべきだ、こういうふうに思っているんですが、いかがでありましょうか。

武田大臣政務官 今委員から御指摘ございましたけれども、補給支援特措法のもとでこれまでに補給を行った艦船は、いずれも自衛隊による補給の時点から我が国が給油した燃料が消費されると見積もられる時点までの間は、イラクやアフガニスタン本土の航空支援作戦といった活動に従事しないことが明確に確認されたものであるということでございます。

 今後も、しっかりとそこのところを見きわめながら判断をしてまいります。

近藤(昭)委員 その議論は委員会の中でもさせていただきましたけれども、少し言葉が適切でないかもしれませんが、何か神学論的というか、ある意味で本質をついていないことではないかと。

 日本が入れた部分ではそんなところには働いていないんだ、こういうことではなくて、やはりそういう現状を見きわめて、日本はそういった給油はしないんだと。ですから、もし、今政務官もおっしゃったみたいに、日本が給油した部分で、それをどうやって証明するのかよくわかりませんけれども、そういったところではやっていない、だから日本はそういう意思がないということであれば、きちっと、先ほどおっしゃった、現地の状況とか外国軍と連携をとって、そのもとで補給をどうするかなんて判断するんじゃなくて、日本はそういうことはやらない、こういうふうに言った方が私はすっきりというか前向きというか、よいというふうに思うわけであります。

 もう一度、いかがでしょうか。

武田大臣政務官 冒頭申しましたように、これは慎重に見きわめて判断しなければならないことでございますので、現地また関係国からの情報というものを慎重に仕入れながら総合的に勘案していかなければならないと思っております。

 紛れもなく、補給支援特措法の趣旨に照らすということは、これは絶対に遵守しなければならないことでございまして、よく肝に銘じてやっていきたいと思います。

近藤(昭)委員 いろいろと心配しますのは、現地におられる調整官が一件、司令官に目的外補給の疑いがあるとして上申しようとした例があったわけです。結果、給油しなかったわけでありますが、目的外使用の疑惑というか疑いがあった、こういうことではないんでしょうか。いかがでありましょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘の点は、恐らく三月の二十八日付の補給調整状況の件かと思いますけれども、これにつきましては、事前の先方との調整段階におきまして相手側が給油の要請を取り消したということのために、結果として上申が行われなかったというものでございます。

近藤(昭)委員 そうではなくて、向こうが取り下げたとしても、そういう疑いがあったのかどうかということをお答えいただきたいと思います。

徳地政府参考人 実際のそのときの先方からの要請の内容につきましては、先方との関係もありますので、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、これは上申が具体的に行われる前に先方からの給油の要請が取り消されたというものでございます。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 近藤昭一君。

近藤(昭)委員 疑義があったのではないかということにきちっと答えていただきたいと思います。

 委員長、今どういうふうに話をされたかわかりませんが、それはやはりきちっと、後でもいいので報告をしていただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。

徳地政府参考人 外国の艦船から補給の要請がございました際には、実際の相手からの補給の支援の要請の内容でありますとか、あるいは給油を受ける相手方の船の任務でありますとか、行動でありますとか、所属といったものについて情報を収集いたしまして、それが上申をする基準に該当するということになりますと、手続に従いまして上申がなされるというものでございます。

 それで、バーレーンの連絡官の方からの情報収集に基づきまして、上申をするということで上がりかけていたものではございますけれども、これが途中で、そもそも先方からの要請が取り消されましたものですから、上申に至らなかった、そういう次第でございます。

近藤(昭)委員 いや、ですから、質問に答えていただきたい。

 取り下げたことで物事が消えたわけではありませんから、そこに給油をしてくれという事実があったわけでありますし、その給油をしてくれと言った給油の目的は、日本が承認している以外の目的であった、そういう疑義があったから上申しようとした、しようとしたわけですから上申しようとした事実があったんじゃないですか、これをちゃんと答えてくださいということであります。

徳地政府参考人 防衛省の方で定めております補給実施基準におきましては、補給時におきましてテロ対策海上阻止活動に係る任務に従事している船でありましても、対象艦船が航空母艦である場合とか、イラクにおける作戦あるいはアフガニスタンにおける作戦に係る任務に従事している場合には、防衛大臣に上申をするということになっておるわけでございます。これに基づきまして、上申をするというような調整状況の紙が書かれたものでございます。

近藤(昭)委員 ですから、その前提は私もお話をしているわけであって、そういう状況のもとでこの上申がされようとした、そしてその中にはそういう疑義が、今言った基準に当てはまるところがあったんじゃないですか、こういうことをお伺いしているので、そこを答えていただきたい。

徳地政府参考人 この当該補給の要請につきましては、先方からの情報収集によりますと、受給艦の任務、行動は海上阻止活動というふうにはなっておりますけれども、先ほど申し上げましたような補給の実施基準についての定めに基づきまして防衛大臣に上申するという内容に当てはまるものであったということから、上申をしたものでございます。

近藤(昭)委員 もう一度だけちょっとお伺いしますけれども、目的外、そういったところがあった、その具体的な事由を教えていただきたいと思うんですけれども。上申をしようとした、上申をするといった理由ですね、事由です。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、これの受給艦の任務、行動は海上阻止活動というふうな報告を受けておるところでございますけれども、ただ、この具体的な調整・処置事項というところの中身につきましては、実際のこの船のオペレーションにかかわることでございますので、先方との関係もありまして、具体的な内容について申し上げることは困難なわけでございますけれども、いずれにいたしましても、防衛大臣に対して上申をするということが適切であるというような中身であったものと承知をいたしております。

近藤(昭)委員 ずっとテロ対策特別措置法の委員会の中では、何かあると相手国のということであるんですが、私が今申し上げたことは別に、事実であって、こういうオペレーション、もう特に過去のことでありますし、なぜそこを明らかにされないのか、おかしいと思うんですね。こういうことだったから、それに対して、日本は防衛大臣に対して上申をするという基準をつくった。それで、そういう基準をつくったけれども、それが何かというものを明らかにしないということは、基準をつくっても意味がないんじゃないかなと思うんですが、いかがでありましょうか。

徳地政府参考人 私どもといたしましては、まさにこの法律の趣旨に基づきまして、相手方の艦船が法律に定められておりますテロ対策海上阻止活動に参加しているものである、そういう任務を持っているものであるということを確認するということが一番重要なことであると考えておりますが、他方において、昨年のいろいろな御議論も踏まえた上で、他のミッションをあわせ有している場合にどうするかということについて明確にするためにこの基準を設けたものでございます。

 それで、できる限りその中身を明らかにせよということではございますけれども、申しわけございませんけれども、まさに具体的に行われている作戦の中身にかかわるものであるということと、相手方との関係もありますので、限界があるということについては御了解をいただきたいと思っております。

河野委員長 この件につきましては、後日、理事会でお諮りをしたいと思います。

 質問を先に進めてください、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 委員長のおっしゃることで次の質問に移りたいと思うんですが、私はもう二点だけ申し上げたいと思うんです。

 やはりはっきり事実は明らかにすべきだということと、もう一つは、この間の議論のあった中でこういう上申の基準をつくった。上申の基準をつくって、上申の中身はまた、防衛大臣に上申をしたことによって防衛大臣が決定をするということだと思うんですが、私は、もう一点この今の質問の中で言ってきたことは、現地の状況が非常に困難な状況にある、そして、旧法の中では残念な事実が明らかになっている。私は、政治的なメッセージとして、航空母艦とか強襲揚陸艦とか随伴艦など、こういったものに対しては補給をしない、こういうことを明確にした方がいい。そういった上申をして、そこで判断する、もちろんそこで判断も必要でありますが、そういった政治的な表明をすべきだ、こういうことを思うわけであります。

 では、次の質問に行きたいと思います。もう時間もなくなってまいりましたので、端的にお答えをいただきたいと思います。

 十月初めに開かれたNATO非公式国防相会合において、海賊行為抑止のためなどにソマリア周辺海域において海上哨戒を行う決定がされた。既に同海域に向けて七隻の艦船が派遣をされている。また、欧州連合の外相・国防相合同理事会が今月の十日に行われました。ブリュッセルであります。そして、同海域に十二月から七隻の艦船を派遣、世界食糧計画の輸送船などを警備することを決定した、こういうことなんですね。報道によりますと、英国に作戦本部が置かれます。同国のジョーンズ海軍少将が司令官役を務めるということであります。

 これらの艦船に対する海上自衛隊の艦船による補給は、現行法のもと可能と解釈されるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 現行法におきましては、海賊対策ということで考えますと、海上における人命、財産の保護あるいは治安の維持につきまして、第一義的には警察機関たる海上保安庁の任務であるというふうに考えておりますけれども、自衛隊につきましては、海上における人命、財産の保護あるいは治安の維持のために、海上保安庁によっては対処が不可能あるいは著しく困難といったような特別の必要がある場合には、自衛隊法の八十二条に基づきまして、海上警備行動によって対処をするということになるわけでございます。

 しかしながら、この海上警備行動の趣旨にかんがみますと、海上警備行動によって、国際協力の観点から、他国の船に対して何らかの物品の提供をするということは想定をされていないものと考えておるところでございます。

中島政府参考人 補給支援特措法のもとでの可能性についての御質問かと思います。

 この特措法のもとで外国の艦船が活動の対象になるためには、御案内のとおり、法の三条第一号に規定いたしますテロ対策の海上阻止活動に係る任務に従事する、それから、当該艦船に対して補給支援活動を実施することがテロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するものと認められることが必要ということでございます。

 その際、当該艦船が実態としてテロ対策海上阻止活動に係る任務に当たっていることが重要であると考えておりまして、そのような艦船である限りにおきまして、テロ対策海上阻止活動に係る任務以外の任務を付与されている場合でありましても、この法律に基づきまして補給を行うことは可能であろうかというふうに思います。

 ただ、いずれにいたしましても、先ほど御議論ございましたが、実際に補給支援活動を行うか否かにつきましては、個別具体的にその適否を検討する必要があると考えておりまして、バーレーンの司令部におけます連絡調整を通じまして、艦船の行動計画、想定される活動内容などを把握しながら総合的に判断する必要があるものというふうに考えております。

近藤(昭)委員 それぞれ、防衛省、外務省からお答えいただきましたけれども、海賊対策という問題は、貿易立国であります日本にとって大変な重要な課題であります。そういった面からして、私自身も、これはきちっとやっていかなくちゃいけないと思っているんです。

 ただ、現実的に、新テロ特措法の中では可能だけれども、この前の質問の中でも私が触れましたようなさまざまな問題があって、現実の問題としてはやっていないということなんだと思いますし、逆に言うと、そういう課題があるんだと私は思います。可能だけれども課題があると思います。そこをきちっと整理しないと、アフガニスタンの問題に対しても、平和をつくっていくという問題に対しても影響があるわけでしょうし、国際的にも影響がある。

 私は、そういう意味では、海賊対策についてはきちっと議論をして対策を打っていかなくてはいけないと思います。

 ただ、一方で、自衛隊を出す、活用するという結論ありきではない、そういう慎重な論議をぜひ望みたいと思いますし、今非常に抑制的なこともおっしゃったわけでありますけれども、ぜひ、安易に現行の解釈を広げていくというようなやり方ではない、きちっとしたやり方をしていただきたいというか、しなくちゃならないということをもう一度お話しして、時間も参りましたので、きょうはこれで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 アメリカで新しくオバマ大統領が、次期大統領でありますが、選挙で選ばれたわけであります。こういった状況を受けて、外交問題、特に北朝鮮問題を中心にして御質問を申し上げたいと思っております。質問は通告した順番と若干変わったりいたしますので、きちっと聞いて御答弁をお願いしたいと思います。

 まず最初に、アメリカの次期大統領にオバマ氏が決定をされました。このことによってアメリカの外交政策は従来よりもさまざまな意味において融和路線になるというふうにされる報道もあります。アメリカの北朝鮮政策はどのように変わるか、全体の、概観の印象といいますか、思いをお伺いいたしたいと思います。

中曽根国務大臣 次期大統領になりますオバマ氏は、かねてから北朝鮮のことや拉致に関することについていろいろ御発言をされておられますけれども、一つは、北朝鮮の核計画の完全、検証可能な廃棄、これを目標として、北朝鮮とは直接的そして積極的な外交が必要である、そういうふうに述べておられます。また、拉致に関しましては、拉致問題に関するすべての問題を解決しなければならない、全面的な協力を北朝鮮に強く求める、そういうふうにも発言をしておられます。

 委員も御承知かと思いますけれども、拉致に関しましては、次期大統領の地元でありますイリノイ州の金東植さんという牧師さんが拉致をされていると言われておりまして、イリノイ州においてもこの拉致の問題は大変な関心がありますし、また、同州出身の連邦両院議員二十名連名による金牧師の生死確認を求める書簡を北朝鮮の国連大使あてに送ったわけですが、オバマ氏もそこに署名をしておりまして、そういう形で、この北朝鮮問題というのは今後、次期大統領の大きな関心事になるのではないか、そういうふうに私としては期待をしております。

 重要なことは、日本としては、拉致の問題、ミサイルの問題、それから核の問題、こういう諸懸案を包括的に解決する、そして日朝正常化に持っていくということでございまして、そのためには、新しい大統領が就任いたしましてからのお話でございますから、新大統領ともよく緊密な連携をとり、また意思疎通を図って、この二つの問題の解決に努めていきたいと思っております。

松原委員 十一月七日にアメリカで開催された全米外交政策協議会主催の韓半島専門家会議において、北朝鮮外務省の李根北米局長とオバマ陣営のジャヌージ上院外交委員会補佐官が意見交換を行ったということでありますが、この協議内容について外務省はどのような情報を把握しておられますか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、全米外交政策協議会主催のセミナーが開催をされまして、そこに北朝鮮の李根北朝鮮外務省北米局長が参加をされたようでございます。それから、アメリカ側も北朝鮮関係のいろいろな関係者が出席をしたようでございまして、バイデン上院外交委員長、次期副大統領でございますけれども、ジャヌージ補佐官も参加したということでございます。

 第三者間のやりとりでございますので、詳細は私の方から申し上げることはできませんが、大使館を通じまして、どのようなやりとりがあったかということは説明を受けております。

松原委員 説明を受けているということは、日本の大使館関係者、日本の外務省関係者がセミナーに参加している、こういうこととして理解してよろしいですか。

石川政府参考人 今回の会議には我が国の政府からの参加はございません。したがいまして、事後に、どのような内容であったかというのを説明を受けたということでございます。

松原委員 この議論の中で、韓国の外務当局者は参加をしていますか。

石川政府参考人 恐らく委員御指摘は、韓国の六者会合の次席代表の黄浚局という北核外交企画団長のことかと思いますけれども、この時期に訪米をしていたということは承知をしておりますが、この会議に出席したということは、私どもは確認をしておりません。

松原委員 いや、そういういいかげんなことを言っちゃいけないので、黄浚局企画団長は、これはほかのマスコミに出ていますよ、ニューヨークで行われた全米外交政策会議、NCAFP主催の朝鮮半島専門家による会議に出席したと一般の報道もなされているので、それを把握していませんと外務省が言うというのは、本当に把握していないんですか。報道にあることに関しても把握していないんですか。

石川政府参考人 そういう報道があることは承知をいたしておりましたけれども、その本人がこの会議に参加をしたかどうかということを私どもは確認していないということでございます。

松原委員 どういうメンバーが参加したかを確認していないで内容がよく確認できたな、こういうふうに思うわけでありますが、その中身で、例えば日本にとっての極めて重要な人権問題である拉致に関しての議論はあったかどうか。参加者も確認できていないんだから、そこも確認できていないということですか。

石川政府参考人 ジャヌージ補佐官ほか説明は受けておりますけれども、我が国政府の参加していないところの会議でございますので、その内容について私どもの方から御説明をすることは控えたいと思います。

松原委員 十一月七日に麻生総理とオバマ次期大統領が電話会談をしたということでありますが、この会談の中で拉致問題についてはどんな意見交換がされたか、お伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 短い会談のようでありましたけれども、大変フランクな、アーティキュレートな意見交換が行われたと聞いております。

 この麻生総理とオバマ次期米大統領との会談においては、麻生総理から、金融不安、世界経済の問題、アフガニスタン、気候変動、拉致問題を含む北朝鮮への対応を初め国際社会が直面する諸課題について、今後、日米で緊密に連絡していきたいという旨を述べましたところ、オバマ次期大統領の方から、そのような課題についてともに取り組み、同盟を強化していきたいという旨の発言がございました。

松原委員 次回の六者協議の開催というのはいつごろに予定されているか、お伺いしたい。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 次回の六者会合でございます。現時点で具体的な開催のめどが立っているわけではございませんが、早期開催に向けて議長国中国を中心に調整が行われているところでございます。

松原委員 北朝鮮の核の無能力化に対して百万トンの重油供給支援を行うということが合意されたということでありますが、このことに関して、日本は合意するということが協議された場におりましたか。

石川政府参考人 これは、北朝鮮の無能力化作業に対応した形で五者側で重油百万トン相当の経済、エネルギー支援を行うということが二〇〇七年の二月それから十月の六者会合において決定をされたところでございますので、委員御指摘の点に関しましては、当然日本代表団もいたということでございます。

松原委員 ということは、日本はこれに合意をしたということですか。

石川政府参考人 北朝鮮の核問題を前進させるという観点から六者で交渉を行った結果、今申し上げました百万トン相当の経済、エネルギー支援を行うということが合意されたところでございまして、日本もその一員でございます。

松原委員 私は、六者は日本以外の国もたくさん入っているわけでありますから、結果としてこの百万トンというものが供給支援されるというのは、多数決であればそれはしようがないと思っておりますが、日本の立場からこれに合意をするということは、日本も当然それに参加をする可能性があるということになるのではないかと思うんですが、どうですか。

石川政府参考人 百万トン相当の経済、エネルギー支援が北朝鮮に対して供給されるということが六者会合の場で決まったところでございますが、その際に、我が国は、拉致問題を含む日朝関係、これで進展が得られない限りはこの経済、エネルギー支援には参加をしないということを当時から明確に主張し、各国の理解も得ていると考えております。

松原委員 百万トンの今回の内訳はどこが何トンずつか、お伺いしたい。

石川政府参考人 六者会合の文書によりますと、百万トン相当の経済、エネルギー支援が供与されるということで、個別具体的にどこの国が何万トン供与するということは書いてはございません。これは各国の相談によっておりますが、これまでのところ、日本を除く四カ国で重油八十万トン相当の経済、エネルギー支援の準備が、一部は実行されておりますし、残りは準備をされているというところでございます。

松原委員 アメリカ、中国、韓国、ロシアの四カ国が二十万トンずつですか、八十万トン。残り二十万トンはだれが出すかは決まっていないということでありますが、いろいろな情報によりますと、オーストラリアもしくはニュージーランドが出す、こういう報道がありますが、これはどういうことでしょう。

石川政府参考人 この重油百万トン相当のエネルギー支援に関しまして、アメリカはオーストラリア等と協議を行っているというふうに承知をしております。

松原委員 オーストラリアにしても六者の中に入っていないのでありますが、この二十万トンをオーストラリアが出して、それは日本の肩がわりだということはないんですね。確認します。

石川政府参考人 重油百万トン相当のエネルギー支援が行われることが決定をされておって、日本が今現在の日朝関係の状況ではこれに参加し得る用意はないという段階において、米国が他の、六者以外の国に対していろいろな可能性を検討しているというところだと思います。

松原委員 大臣、お伺いしたいんですけれども、今回、とりあえずオーストラリア、ニュージーランドが報道ベースで伝わるところの二十万トンを拠出して、将来、その二十万トン分を、どういう形か、肩がわりをしてもらったので日本がそれを出しますと、そういうことはないですね。ちょっと聞きたい。

中曽根国務大臣 今、政府参考人からも答弁いたしましたけれども、このエネルギー支援につきましては、日本としてはまず拉致の問題ということをはっきりと各国に伝えているわけでありますが、油のことに関しましては、肩がわりという言葉がまず適当じゃないんじゃないかな、そういうふうに私は思っておりまして、経済、エネルギー支援につきましては、六者会合の中での無能力化と並行する形でこのエネルギー支援は実施する、そういう了解であると思います。

 また、将来のことにつきましては、今おっしゃった、豪州とどうするかということもまだ決まっているわけではございませんし、六者会合以外の国が供給するということも、これは今お話ありますようにいいわけですから、将来どういう国が協力するかもわかりませんので、我が国もそのときのことについては現在何も決めておりません。

松原委員 我々は北朝鮮に対して制裁を継続している国であって、それは北朝鮮がそのことによって拉致問題でもきちっと対応するというために制裁をかけているわけでありますが、ここで百万トンの重油が供給されれば、日本に対して何も拉致に関して情報を出さなくてもいい、こういうふうな結論が当然導き出されるのはだれだってわかる話であって、少なくとも、この問題に関しては、日本の立場としては、百万トンの重油供給も我々は反対ですと。そうしないと、日本の拉致を解決しない限り重油を出しませんというこの基本的な国家の意思と違う意思表示をしたということになるんじゃないですか。百万トンをいいですよと合意しておいて、しかし、我々は拉致が解決しない限り出しませんというのは、それは矛盾していませんか。

 日本はあくまでも制裁をすることによって北朝鮮から譲歩を受け取ろうとしているんですよ、くどいようですが。そのことを考えたときに、なぜ日本が合意するんですか、ここで。合意はしていないんですか、百万トンに関して。合意をしたとしたら、どういう思いなのか。極めて日本の国益上わけのわからぬことをやっているという話が当然起こるんだけれども、答えてください。

中曽根国務大臣 一つは、拉致の問題とこのエネルギーの供給の問題でありますけれども、エネルギーの供給の問題が、経済協力がされるからといって、拉致の問題については、これは我が国としてはもちろん、供給しなければ拉致の方が解決されない、そういうふうになるとは思っておりません。拉致は拉致で、御案内のように、従来から再調査、調査のやり直しを要求し、そしてそれが進展をしたならば日本なりの制裁を一部解除するという方向が出ているわけであります。

 それから、百万トン供給ということについては、日本としてはこれは合意をしているわけではない、そういうふうに私は承知しております。

松原委員 つまり、日本は百万トンの重油供給に関しては賛成をしていないと。意見保留なのか反対なのか、どっちですか、教えてください。後ろの人に聞かないで答えてください。

中曽根国務大臣 今それはアメリカとオーストラリアの間で話し合いをしている最中でありまして、私どもとしては、この百万トン、あと残りをどうするかということについては、私どもが直接今話をする立場ではございません。

松原委員 質問の趣旨が違うんですよ。

 百万トンを出そうという議論のときに、六者協議でやったんですねとさっき確認したんですよ、彼に。それで、日本はそこにいましたと。いたならば、日本は日本の立場から、私たちは反対です、そう言うのが筋じゃないですかと言っているの。いや、大臣に聞きたい。そこに賛成しておいたら、我々は経済制裁、制裁によって相手から譲歩を出そうとしているのに、もう既に相手に対して与えられるものが出てしまったら、北朝鮮は日本に対して譲歩しますか。現に今していないじゃないか。だからお伺いしているんです。

中曽根国務大臣 米国が核の無力化、こういうプロセスを前に進める、そのために他国との関係で行っております今の経済支援等につきまして、日本としては、先ほどは合意していないという言い方を私しましたけれども、正確には、異議を唱える立場にはない、そういうことでございます。

 また、第二段階の終了までに行われることになっております、先ほどからの重油百万トン相当の経済、エネルギー支援、これの今後の進め方につきましては、引き続いて関係国間で協議していくことになりますけれども、先ほどから申し上げていますが、六者会合以外の国が参加するということについては今何も決まっていないということが事実でございます。

 それから、今申し上げましたように、拉致問題を含む日朝関係で進展がない限り六者会合のもとでの経済、エネルギー支援に我が国は参加しないということは、もう委員十分御承知のことでありますが、そういう立場で協議は今後も行っていくつもりでございます。

 さらに、オーストラリア等の六者会合参加国以外の国が支援をする、そういうことになりましても、この機会にそれらの国からも、拉致問題を含めまして北朝鮮側に対して一層の働きかけを行うことになっていくもの、そういうふうに考えておりまして、いずれにいたしましても、拉致の問題の解決に向けたてこがこれで失われることになる、そういうふうには認識をいたしておりません。

 また、北朝鮮が核施設の無能力化などの措置をとるということは、我が国の安全保障上もこれは大変重要なことでありまして、経済、エネルギー支援をどの国がどれだけ負担するか、そういうことが日朝関係に特段の影響を与えるとは考えておりません。この六者会合のプロセスが進展するということは非常に大事なことであり、これにより核の無能力化が進むということも、我が国にとっては拉致の問題と同様に、これは大事なことでございます。

松原委員 ちょっとがっかりしました。それでは日本の制裁は有効には機能しないだろうと思いますし、北朝鮮が日本に拉致で譲歩することはあり得ないだろう。

 やはり、日本は日本の国益を主張して、一国であっても、それは反対と一応そこで表明するということは、今後の日本の外交を考えたら必要なことであり、そこで反対をしなかったこと自体が日本外交の、福田さんが宋日昊・齋木会談で行った第一の外交の敗北に続く二つ目の敗北だろう、私はこう思います。

 時間がありませんから、先に進みます。

 そうした中で、私は、北朝鮮は核は放棄をしないというふうに思っているわけであります。ちょっと時間がないので幾つか飛ばしますが、KEDO建設等、かつてクリントンの枠組み合意のときに、北朝鮮は、核開発をやめる見返りとしてアメリカから多くの軽水炉建設費用の支援を受け取ったりしました。

 それが、二〇〇二年のケリー・アメリカ国務次官補の訪朝後、北朝鮮への支援を中断した、その理由は何か、それだけ教えてください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御承知のとおり、一九九四年に米朝間で合意された枠組みというのが合意をされまして、その後KEDOが設立をされたわけでございます。二〇〇二年十月に至りまして、北朝鮮側が米国に対してウラン濃縮計画の存在を認めたというふうにされております。これを契機にいたしまして、九〇年代初頭の核問題というのが再び深刻化をしたところでございますし、また、その後、IAEAの査察官を北朝鮮側が追放する、あるいはNPTから脱退表明をする、こういったこともございまして、これはいずれも米朝合意に反する行為であるということでございまして、KEDOは、御承知のとおり、二〇〇六年五月に理事会を開きまして、この軽水炉プロジェクトを終了したということでございます。

松原委員 つまり、北朝鮮は事実上の核開発を、核兵器に転用できる核開発でありますが、続けていたと。つまり、彼らは、アメリカに対して核を開発しませんと言って、おびただしいさまざまな支援を受け取っていたけれども、一方の手で核開発を着実にやっていた、うそをついていた、こういうことでありますね。違いますか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の経緯からいたしますと、ウラン濃縮計画の存在を認めた、あるいはIAEA査察官を追放した、NPTを脱退表明したというような一連の動きというのは、これは明らかに合意違反であったと考えております。

松原委員 ですから、北朝鮮は、約束をしても、大体今までも、横田めぐみにせ遺骨に始まって、これだって、アメリカとの今回のハードルを下げたさまざまな議論も、それは北朝鮮が核開発をやめるというふうに考えるためには、よっぽどもっとほかの要素がなきゃいけない。しかるに、建物の査察も北朝鮮が合意しない限り見ちゃいけません、それでは北朝鮮が核兵器の開発をやめるということはあり得ない。そんなのはわかった上でだまされようとしているのかどうか私はわかりませんが、日本の国益上、それもとんでもない話だということを私ははっきりと発言をしておきます。

 時間がありませんから、先に進みます。

 そうした中で、北朝鮮は、現在、調査結果発表がおくれている、こういう話であります。大変に遺憾なことに、北朝鮮側はいろいろなことを言っているわけですね。例えば、北朝鮮側が言っていることは、仮に調査委員会を立ち上げたところで、どんな結果になっても日本国民が納得するはずがない、結局再調査のメリットは何もない、メリットがないからやらない、こういうことを北朝鮮側は中国の政府高官に言った、こういう話でありますが、北朝鮮は、日朝における再調査委員会、今どうなっていますか。簡潔にお答えください。時間がありません。

石川政府参考人 委員御承知のとおり、まず八月に合意をしたわけでございますが、九月に日本側の新政権が実務者協議の合意事項にどう対応するかを見きわめたいということで、その見きわめるまでは調査開始は見合わせたいという連絡があったところでございますが、その後、麻生内閣におきましても従来と同様の方針であるということは、累次にわたり北朝鮮側に連絡をしております。

 したがって、八月の日朝実務者協議の合意に従って、北朝鮮側が早く調査委員会を立ち上げて調査を開始するように累次にわたって申し入れをしているところでございますが、残念ながら、いまだに調査開始の連絡は来ていないという状況でございます。

松原委員 そうした北朝鮮の極めて不誠実な態度に対して、官房長官もしくは漆間官房副長官が追加制裁の発言をしているわけでありますが、この真意はどういうものでしょうか。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 政府拉致問題対策本部といたしましては、これまでも拉致問題の解決には対話と圧力が必要であるという一貫した考えのもとに、拉致問題の一刻も早い解決に向けて取り組んできたところでございます。

 御指摘の漆間副長官の発言につきまして、その趣旨でございますが、この対話と圧力という姿勢で臨むとの考えを改めて確認し、これまでの圧力が効果があったか否かを検討し、効果がある圧力について研究することの必要性を述べたものでございます。

 政府といたしましては、今回の会議の結果等々も踏まえまして、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく、関係省庁間の連絡を密にし、引き続き政府一体となって全力で取り組んでいく所存でございます。

 以上でございます。

松原委員 そういう中で、追加制裁をしないと、北朝鮮はなかなか日本の拉致問題で譲歩しないだろうという判断があろうかと思っております。

 具体的な追加制裁の中身でお伺いしたいわけでありますが、日本は北朝鮮渡航を、国家公務員は原則禁止、そして国民は原則自粛としておりますが、なぜ国家公務員だけが禁止なのか、お伺いしたい。

石川政府参考人 憲法の認めます旅行の自由というのがございますので、これは国民全般に対して規制をもって渡航を禁止するということはなかなか難しいという観点から、公務員に対する渡航の自粛ということを決めたものでございます。

松原委員 国家公務員を禁止にしているということは、恐らく、国家公務員が行く場合は、政治的な動きをする可能性がある、政治的な部分が発生する、だから国家公務員というふうにしているんだろうと思うのであります。

 そこで、お伺いしたいわけでありますが、先般、日本の和田春樹名誉教授、これは東大ですか、そしてもう一人は准教授の方が行かれました。この二人、和田春樹さんと、もう一人は木宮正史さんが北朝鮮に行きました。彼らは国家公務員ではないということでありますけれども、しかしながら、彼らが北朝鮮に行って交渉してきた中身は、北朝鮮側の宋日昊さんの部下の方に会って話をしてきている。そのときの発言というのは、日本に戻ってきて彼らは発言しているわけでありますが、死亡とした人を実は生存していたとするのは国家の信用にかかわるので難しいのではないか、また、日本側は北朝鮮からの結果を、不満が残る場合でもそれをひとまず受け入れて先に進めるという覚悟が必要だ、あるかないかが問われる、戦勝国と敗戦国の交渉ではない、外交交渉だ、こういうふうなことを言っているわけでありまして、明らかにこの発言は北朝鮮側のスポークスマンのような発言をしているとしか思えないわけであります。

 彼らがこういうふうにして渡航して、北朝鮮の政府高官と拉致問題について話し合うというのは、これは本来禁止するべき中身に入っていないんでしょうか。お伺いしたい。

石川政府参考人 失礼いたしました。

 私ども、和田名誉教授のお話については、中身については承知をしておりませんが、一般に、国立大学の職員は非公務員である国立大学法人の職員ということで、北朝鮮の渡航自粛は要請しているというところでございます。

松原委員 そういうことじゃなくて、時間がないからこっちははしょって聞いているんだから、ちゃんと答えなさいよ。

 私が言っているのは、こういう政治的な動きをするケースというのは、本来は国家公務員の禁止する理由がそれだろうと私は思っているがゆえに、おかしいんじゃないですかと聞いているんですよ。

 内閣官房、答えてください、河内さん。

河内政府参考人 ただいま石川審議官がお答えしたとおりでございます。

松原委員 私が言っているのは、そういうことを言っているんじゃない。独立行政法人だから国家公務員じゃないですよというのは、それはわかっていますよ。しかし、それが単に観光で行くんじゃなくて政治的に行くということ自体は、渡航禁止の目的が本来はそこにあるんじゃないですかと聞いているの。それを答えてください。

石川政府参考人 政府としましては、海外に行った国民の安全確保というのが非常に重要でございますので、そのための有益な情報あるいは具体的な安全確保の手段について、いろいろ措置を適時適切に提供するということが必要でございますので、そういう意味では、その自粛を求めているというところでございます。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 石川大臣官房審議官。

石川政府参考人 失礼いたしました。

 委員御指摘のとおり、この対北朝鮮措置は、全体として、当初はミサイルを発射したこと、それから核実験をやったこと、そういうことに対応した形でやった措置の一環でございますので、北朝鮮に対して、一定の措置で我が国のメッセージを送るということでございます。

 そういう意味におきましては、そのような政治的な発言がそういう訪問者においてなされるということは適当とは考えておりません。

松原委員 つまり、今回の和田春樹さんとか木宮さんですか、こういった方が向こうに行って、日本に戻ってきて発言をした、こういう宋日昊の部下と会話をする、これはいかぬ、不適切だ、こういうことでよろしいですね。

 いや、もう答えなくていい。時間がないから。

石川政府参考人 和田先生ほかとの会話の中身について私ども承知をしておりませんので、今のような、けしからぬとおっしゃいましたけれども、そういうことかどうかというのは、今直ちには判断はしかねます。

松原委員 これは後でちょっと、理事会で発言を精査して、理事会としての判断をいただきたいと思います。

河野委員長 後ほど理事会に諮ります。

松原委員 そうしたときに、渡航禁止が法的に可能かどうか、教えてください、北朝鮮に対する日本国民の渡航禁止。憲法の問題もあるのかもしれませんが、聞きたい。

深田政府参考人 法令上、特定の地域に対して法律をもって渡航を禁止するというのは、現在の渡航の自由を定めた憲法二十二条の解釈からしても難しいと考えております。

松原委員 従来、昔の日本のパスポートは北朝鮮を除くと書いてあったんですが、これはどういうことですか。

深田政府参考人 それは、旅券法で渡航の制限区域として旅券に記載される地域については外務大臣が官報で告示するということになっておりまして、その中で北朝鮮については渡航先から外していた、こういうことでございます。

松原委員 では、できるということじゃないですか。従来できたということは、できるんですよ。もういいです、時間がないから。できるんです。従来、日本のパスポートはそうなっていました。だから、パスポートをそうすればこの渡航禁止は実現できるということであります。

 次に、在日朝鮮人の再入国についてお伺いしたいと思います。

 日本のこの制裁では、当局者はだめだと言っていますが、北朝鮮当局者とはだれですか。どういう人たちですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮当局の職員といいます場合に、北朝鮮政府の当局、例えば、国防委員会でございますとか内閣でございますとか人民軍などでございますけれども、そういう政府当局の職員のほか、朝鮮労働党の党員それから職員、それから最高人民会議の代議員、その職員も含まれると考えております。

松原委員 今まで不許可になった事例はありますか。

石川政府参考人 正確なお答えはちょっと法務省等と協議をする必要がございますが、不許可になった例があるとは聞いておりません。

松原委員 まあ、正確な情報を持ってなきゃしようがないんだけれども。

 そこでお伺いしますが、九日の日に北朝鮮の建国六十周年の祝賀会があった、そのときに、日本の南昇祐在日朝鮮人祝賀団団長、朝鮮総連中央副議長がひな壇に臨席しておりましたが、彼はこの当局者には入らないんですか。

石川政府参考人 南昇祐副議長は最高人民会議代議員資格は有しておりませんので、北朝鮮当局の職員には当たらないというふうに考えております。

松原委員 私が申し上げたいのは、こういうふうな人的往来禁止というのは、現実には全く制裁として機能していない。つまり、東大の和田さんにしても木宮さんにしても、平然と北朝鮮に行き、宋日昊の下にいる人間と議論して、日本に戻ってきて、さっき言ったような声明を堂々と記者会見で発表している。これは極めて不適切だと言いましたが、不適切であります。そして、日本のいわゆる朝鮮総連の副議長は、その六十周年に行って、堂々と祝賀会のひな壇に座っている。

 つまり、人的往来についてある程度の抑制をしているというのはほとんど効果が上がっていない、このように私は思わざるを得ないわけでありますが、一律の在日朝鮮人再入国禁止というのは法理論的にあり得るかどうか、法理論的にお伺いしたい。

河内政府参考人 そもそも、北朝鮮に対する措置につきましては、その経済的効果だけではなく、その政治的意義にも着目しながら、それが、拉致問題はもとより、核そしてミサイル問題といった諸懸案の解決に向けて誠意ある対応を北朝鮮から引き出すという目的に資するかどうかの観点からきちっと考えていかなければならない、評価を検討していくことが重要だというふうに考えております。したがいまして、今議員御指摘の点につきましても検討を深めていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

松原委員 検討を深めていきたいということは、一律再入国禁止も検討するということですね。

河野委員長 松原君、質疑時間は終了しております。手短にお願いします。

松原委員 どちらにしても、今の人的往来のこういった部分も含めて、今の制裁が十分に効果があるならば、北側は再調査委員会をすぐ立ち上げるはずなんですよ。それを立ち上げていないという状況を考えれば、それは漆間さんの言うとおり、追加制裁というのも現実的に行わなければいけない。

 しかも、今行われている制裁そのものが、人的往来の部分でもこれほど極めていいかげんなものであるということをきちっと認識してもらって、やはり制裁に対しても、やることはやった上での譲歩が出るかどうかという議論で、それをやらないで、いいとか悪いとか言ってもしようがないので、しっかりやってもらわなければしようがないということであります。

 ほかにも、対馬の問題等も含めて質問したかったのでありますが、時間が参りましたので以上で終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 中曽根外務大臣、御就任おめでとうございます。外務委員会での質疑を行わせていただきたいと思います。

 外務大臣も文部大臣御就任の経験もおありでございますし、まず、国連の人権規約の中での高等教育無償化条項、唯一、世界で三カ国だけ留保をしている。これについては、文部大臣当時もこのことは御認識があったというふうに思うんですが、一九七九年、七八年ですかね、この批准以来もう丸三十年を経過しても、依然この留保を外すことができない。

 こうした中で、やはりこれは先進国、世界第二位の経済大国として非常に恥ずかしいことであるというふうに考えるわけですが、外務大臣にも御就任されて、文部大臣の経験も有しておられる中曽根外務大臣としての率直な、この高等教育無償化条項の留保という点についてどのようにお考えになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 委員が御承知のとおり、我が国は、いわゆる国際人権A規約第十三条2(c)の高等教育無償化条項の適用に当たりまして、同規定の言っております「特に、無償教育の漸進的な導入により、」に拘束されない、そういう権利を留保しているわけでございます。

 これは、理由は、高等教育の無償化ということにつきましては、まず財政負担が必要といいますか、あるということ。それから、高等教育に進学しない、そういう学生もいるわけでありまして、そういう学生との間の公平性の見地、こういうことも考えなければならないと思います。また、日本の高等教育におきましては私立学校の占める割合も大変大きい、そういうことから、私立学校を含めて無償化の方針をとるということが今のところは困難である。そういうことから留保をしていることでありまして、この留保を撤回するかどうか、そういう御質問はなかったかと思いますが、これは文科省の方の御担当でございますので、私からはその点についての答弁は差し控えさせていただきます。

武正委員 文部大臣も経験されているので、文部大臣当時もやはりこれについては何とかしたいというふうに思っていたということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 それは、できることならば、勉強をしたい、そういう向上心のある学生が高等教育に行く、それはできるだけの支援を政府としてできればと、そういうふうには思っておりますが、今申し上げましたような理由によりまして、なかなか困難が大きいということでございます。

武正委員 文部科学副大臣がお見えですが、今、外務大臣からは、これは文科省であるということだったんですけれども、外交関係の条約締結、これはやはり窓口というか、外務省が担っているわけですので、これは外務省、文科省が協力して、また、他のお話では財務省も出てくるんだと思うんです。

 当時の園田外務大臣が、七九年の批准国会ですか、このように述べておられます。留保なしで批准するのが望ましいが、政府部内の意見統一がとれず恥じている、当然、将来解除する方向で努力をし、その責任もあると。この当時の園田外務大臣が述べてから三十年、附帯決議でも国会で数度、行ってまいりました。

 そうした中、やはり私は、この高等教育無償化条項、残り二カ国、批准をしていないのはルワンダとマダガスカルということでありますし、公的な教育への支出の割合、これが先進国でも最下位、OECDの中でもベネルクス三国を除くと最下位、これは本当に恥ずかしいと思うんですね。

 資源のない国日本、子供は国の宝である、あるいは人材育成に力を入れてきた日本、江戸時代の寺子屋、あるいは明治以来の師範学校、本当に教育に力を入れてきたから今日の日本がある、これはもう委員共有の思いだと思うんですが、文科省として、この高等教育無償化条項の留保を外すということについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松野副大臣 先ほどの外務大臣の答弁と同様の趣旨でございますけれども、国際人権A規約の高等教育無償化条項につきましては、無償化の際の財政負担の問題、そして高等教育段階に進学しない学生との負担の公平の見地の問題、日本におきましては私立学校の占める割合が大きいため、私立学校を含めて無償化の方針をとることが困難であるということから、留保しております。

 しかしながら、能力があるにもかかわらず経済的理由によって就学の機会が奪われないよう、教育の機会の均等を図ることは極めて重要なことでございますので、このため、奨学事業等を通じて支援に努めてまいりたいと思います。

武正委員 二〇〇五年三月の参議院予算委員会での報告ということで政府からありましたのは、国公私立大学の学生の年間の学費が百十六万一千二百円、生活費が八十五万六千五百円、合計二百一万七千七百円で、勤労者の年収平均六百二十九万円の三二%を占めると。これが、二〇〇五年度の数字では、さらに二百四十二万円に上がっている。家計に占める高等教育の支出の割合というのは大変高いわけでございます。

 一方、私学に対する私立学校振興助成法、また国会の附帯決議、経常費の二分の一の補助ということでいきますと、しかし、現在の私学に対する経常費の補助は一二%。国立大学に対する予算は経常費の五三・一%を占めているということからいっても、やはり私学に対してのそういう経常費の補助が目標の二分の一にははるか及ばない、こういった現状もある。

 あわせて、今言われました奨学金については、日本の奨学金が言うまでもなくいわゆるローンであって、すべて上げるという欧米のそうした奨学金とは異なる、こういった現状もあるというわけでありまして、やはりこういったことをかんがみると、留保を続けるということは非常におかしいなというふうに思うわけです。

 一つ、先ほどの公立、私立の公平みたいな話ですけれども、あるいは、大学、高等教育に進んだ方にだけ補助をすることの公平性の原則みたいなことですが、大学の進学率は今何%になっているか、副大臣、お答えいただけますでしょうか。

松野副大臣 大学と短大を合わせまして五五%でございます。

武正委員 五割を超えているわけでありまして、あわせて、高等教育を受けるということが、ひとり個人に帰するというよりも、日本の学術振興とかあるいは科学技術の発展とか、さまざまな効果があることはもう申すまでもないわけでありますので、やはり公平性の原則ということを言うのはいかがなものかなというふうに思うわけであります。

 私立学校についても、無償化は困難ということでありますが、その前にまず、経常費の二分の一以上という振興法あるいは附帯決議でさえまだできていないわけでありますので、この条約については、漸進的というんですか、徐々に無償化ということもあるわけですから、私はやはりこれは無償化条項の留保を取っていくべきだというふうに思うのですが、改めて、文部大臣の経験もある外務大臣、この点についてどのようにお考えになるのか。先ほどの三つの原則で、やはり難しいというふうにお考えでしょうか。

 もう三十年たっているわけですし、園田外務大臣のあの、恥じている、将来解除する方向で努力をし、その責任もあると。また、二〇〇五年には町村外務大臣も検討するというようなことを言ってきているわけでありまして、あわせて、二〇〇六年までに勧告を受け入れるように、いわゆる二〇〇六年問題もそのままだというふうに理解をいたします。やはりここが、日本政府として、外交の姿勢もしっかりと諸外国に対して、あるいは国連の委員会に対して示す必要があるというふうに考えますが、改めて文部大臣の経験も有する外務大臣としてのお考えを伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、種々の制約、理由がありまして、現在は留保したままでございますが、将来的に国の財政状態がどうなるか等々、先行きもありますけれども、私個人的には、やはりそういう高等教育に対する支援というものもしっかりやっていければ、そういうふうに思っておりまして、ここで今、先ほど申し上げましたように、留保について政府としてどうするかということは私の立場で申し上げられませんけれども、できるだけ学生が本当にそういうお金の面を心配しないで勉強できるように、そして一人でも多くの人が高等教育に行けるように、そういうふうに願っております。

 なお、御質問にありませんが、ちょっと余計なことを言わせていただくかもしれませんが、私は幼児教育議員連盟の会長をしておりまして、やはり幼児教育の無償化というものも、委員も御承知と思いますけれども、これも重要と思っておりまして、今の御質問とは全然関係ありませんけれども、無償化ということについては、どの段階から始めたらいいかとか、どの段階でやることが効果があるかとか、そういうこともやはり検討する必要があるのかなと個人的には思っております。

河野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 午前に引き続き質問をさせていただきます。

 この委員会でも何度となく、前国会でも取り上げました、いわゆるギョーザ事件でございます。

 閉会中、たしかこれは読売新聞でしたでしょうか、社説で、「先月の北海道洞爺湖サミットの直前、」ですから八月七日付の読売新聞の社説でありますが、「中国から外交ルートを通じて日本側に伝えられたという。」ということで、要は、中国製の冷凍ギョーザによる中毒事件で、有機燐系殺虫剤メタミドホスが中国で混入されたと見てほぼ間違いない事実ということであります。

 これについては、七月に伝えられていながら、八月のこの報道の前日ですか、兒玉外務報道官がそれを認める対応というか記者会見をされておりますが、伝えられていたとすると、なぜそもそもこうしたことが政府から速やかに発表がなかったのか。この点について、まず内閣官房、お答えをいただけますでしょうか。

松本内閣官房副長官 本件の問題につきましては、一刻も早く真相を究明することが何よりも重要である、中国における捜査の進展と国民の食の安全の確保という二つの観点から、政府としての措置を適切に講じてきたところでございます。

 中国側より提供された情報は、中国での捜査の経過で得られた情報でありまして、中国側からも非公表としてほしい旨要請があったところでございます。これらを踏まえまして、我が国政府として捜査の進展に支障を来さぬよう、公表を差し控えたものでございます。

 現状はこのような手続をとらせていただいたところでございます。

武正委員 警察庁さんもお見えでありますが、中国側からは、生産工程などで混入された状況ではなく作業員の調査でも容疑者は見つからなかったとされて、捜査状況の説明を求めて日本の事件との関連性を確認する方針とされていた日中のそういう警察当局の協議も、四月九日以降中断をしていたわけですね。そうした中、こうしたことが中国側から連絡があったわけでありますが、連絡があった正確な日時をもう一度、副長官、お答えいただけますか。

松本内閣官房副長官 この中国製冷凍ギョーザにつきまして、七月七日に指導部の指示として、中国側から中国での事案につき通報があったということを受けとめたところでございます。

武正委員 七月七日、どちらからどちらに連絡があったんでしょうか。

松本内閣官房副長官 中国外交部が、国内で中毒事件の発生について在中国日本大使館に通報をされたものでございます。

武正委員 外務大臣、そのことは事実としてよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 結構でございます。

武正委員 当委員会でもやはりこうした事実について、日本の警察も、日本の捜査の中では、原因とするそうした農薬などが日本の流通過程で混入した形跡はないということをはっきり言ってきたわけですが、中国側は先ほどのように、生産工程などで混入された状況ではなくということを言い張っていたわけですから、私はこれは事実として、非公表などと言われるまでもなく、やはり事実は事実として、日本政府として、国民の生命、安全を、あるいは財産を預かる日本国の政府として、速やかに公表すべきであったというふうに思うんですが、連絡を受けた当局として、外務大臣はどのようにそのことについてお考えになられますか。非公表で当然だというふうに思われますか。

中曽根国務大臣 まず、この問題について、先ほど松本副長官から御答弁ありましたけれども、私どもにとりましても、国民の利益を第一に考えて、本件の真相解明がまず最優先だと思っております。

 さらに、お話ありましたけれども、中国国内における捜査途中での情報を公表するということになりますと、また捜査に支障も出かねませんので、また、ひいては我が国国民の利益にも合致しないということで、非公表の扱いといたしました。

 九月に私自身が日中外相会談を行いました際にも、ヨウケツチ外交部長に対しましてこの問題の適切な対処を求めましたほか、先月の日中首脳会談におきましても、麻生総理から中国側の取り組みを求めまして、温家宝総理からは、中国政府として責任を負う、日本との協力を引き続き強化したい旨の発言があった、そういうふうに承知をしております。

 以上でございます。

武正委員 警察庁は、捜査状況の説明を求め、日本の事件との関連性を確認する方針というふうに報じられておりますが、引き続きそうしたことを求めているのか、あるいは日中の捜査当局のそうした情報共有はどういうふうになっているのか、あるいは報道では、絞り込み、大詰めとかいろいろありますが、今の現段階、どういう状況になっているのか、お答えいただけますか。

米田政府参考人 今の御指摘の情報につきましては、警察庁はもともと当初から、明確な論拠を挙げて、日本国内での混入の可能性は極めて少ないということを中国当局にも申し向け、国民にも説明してまいりました。したがいまして、中国国内でそういうメタミドホスによる人身被害が生じたということは、警察庁にとりましては、特にそこで捜査方針を変更しなければならないというようなものではございません。

 しかしながら、中国の国内における捜査を、これは中国当局も合意している話でございますが、より強力に加速させなければならない、そのために私どもも協力できるところはさらに協力をしなければならない。現在までさまざまな情報、資料を提供しておりまして、外交ルートも使い、あるいは警察庁と公安部との情報ルートも使い、さまざまな情報交換をしております。

 現在までのところ、中国の捜査においていまだ立件には至っておりませんけれども、そういった協力を続けながら、この問題の一刻も早い解決を目指したいというふうに考えております。

武正委員 今、日中刑事共助条約は国会でも批准をされましたが、まだこれが施行されるには至っていないわけでありまして、当然、過去の事案でありますから、これには日中刑事共助条約は適用されないということでよろしいですか、外務大臣。

中曽根国務大臣 遡及施行はないということでございます。

武正委員 そうしますと、やはり外交当局が交渉の窓口の主体ということで変わりないと思うんですが、既に報道では、八月三十一日付で臨時工を事情聴取とか、九月十七日付で九人が関与濃厚、そして絞り込み、大詰め、そのこともまた日本政府に伝えていたことがわかったということでいろいろ、そうした捜査は大詰めになっているという報道があるんですが、実際、今どういう状況にあるのか、お答えをいただけますでしょうか、外務省。

中曽根国務大臣 今のところ、中国側からも具体的な報告がない状況でございます。

武正委員 それもまた非公表で、言ってくれるなということでしょうか。本当に何も報告がないんですか。

 八月六日に中国外務省報道官談話を発表、製造元の天洋食品が事件後に回収したギョーザが中国国内で流通し、六月中旬、有機燐系殺虫剤メタミドホスによる被害が出ていたことを初めて公式に認めた、中国政府はこれを極めて重視し、公安部門が全力で捜査中と。今までは中国国内に問題はないとされていたところを変えたわけですよ。

 当然、日本側は前から、日本の流通過程で混入の疑いはないと。しかも、原液を直接かけないとあり得ない、農薬、毒性学の専門家が驚くほどの極めて高濃度のメタミドホスが検出されたということも警察庁は言ってきたわけでありまして、日本の警察の捜査の確かさが示されたわけであります。

 そういった意味では、外交当局としてしっかりと捜査の状況を求めていくということも、先ほど言いましたよね、日中首脳会談初め、あるいは外相会談でも求めていながら、相変わらず全然報告がないんですか。そういうことですか。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、たび重なる会談においてこの問題の真相究明あるいは報告等を求めておりますが、現段階では特段の報告はありません。引き続いて中国側には状況等の報告といいますか、そういうものを求めていきたいと思っております。

武正委員 日本で被害を受けた被害者が出て、しかもその原因が中国側にある。刑事共助条約はないけれども、外交当局でさまざまな形で要請履行ができるわけですよね。もっと強く具体的に、外交当局として求めていくべきではないでしょうか。

 あるいは警察庁だって、もう一度どうですか、向こうの警察当局とそうした会議を二月とか三月とかやりましたよね。警察当局もそれをやって、しかもその道案内というか、外務省がそれをちゃんとセッティングして、この点の事実解明を徹底的に求めるべきだというふうに思うんです。

 それはやはり、今条約がまだ施行されないわけですから外務省の役割なんですけれども、外務大臣、いかがですか。それをしっかりとやるというふうに明言をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますけれども、日中首脳会談、十月の二十四日、つい先日でありますけれども、あのときに麻生総理から強く温家宝総理あてにこの問題の解明とまた状況の報告を求めております。あれからもう二十日近くなりますか、そういうことを考えますと、再度、この問題の状況はどうなっているか、また真相解明はどうなっているか等、こちらから求めていきたい、そういうふうに思っております。

武正委員 警察庁は、中国の公安当局との会議というのは何月以来やっていないんでしょうか。

米田政府参考人 複数の者が集まっていわゆる会議という形では、四月の八日、九日、こちらから中国に赴いて会議をして以来、やっておりません。ただ、現在も日常的に、連絡窓口を設けておりますので、それを通じて相手方の捜査状況等についても必要な情報を得るように努力をしております。

 ただ、個々の現在の進展状況とかあるいは細かい話につきましては、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 そうした責任者同士の会議というものが四月九日以来中断をしているわけですので、八月六日の中国外務省報道官談話が出て、ある面、局面が変わったわけですから、私は、国民に対する説明をしっかりする意味でも、また政府としての毅然たる姿勢を示す意味でも、捜査当局、責任者が日中間で協議をする、こういう舞台というのは必要だというふうに思うんです。

 その道をつけるのは外交当局の役割になってくるんですが、そうした点も含めて、また来週APECもあるようですから、日中の外相会談もあるんでしょうか、そうした場をぜひつかまえて、今の点も含めてしっかりと中国側に申していただきたいと思いますが、外務大臣に再度、御質問をしたいと思います。

中曽根国務大臣 これは、国民の食の安全というのは命にもかかわることでありますので、今の委員の御指摘も踏まえて、今後の両国の会談等で強く要請をしていきたいと思っております。

武正委員 ありがとうございます。

 それでは続いて質問を移らせていただきますが、資料をお配りしておりますので、ごらんをいただきたいと思います。

 これは国際海事機関が発表した資料でありまして、最近の海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の発生状況ということであります。日本船の被害というものがそれぞれの括弧で示されておりますので、二〇〇七年では十件中五件ということで、日本船については依然東アジアでの武装強盗事件がふえているということでありますが、ソマリア沖あるいはアデン湾ということで、アフリカでの武装強盗事件がふえているのは御承知のとおりでございます。

 そこで、二ページ目をごらんいただきたいんですが、海上保安庁の東南アジアに対する海賊対策の概要ということでお示しをしました。過去、アロンドラ・レインボー号事件を皮切りに、このように国際会議を開いて、そしてReCAAPと呼ばれる条約を結んだ、こうした経緯が、それを主導してきた日本ということが、これからもわかるわけであります。

 まず一ページ目に戻りまして、東アジアの武装強盗事件が減ってきた、その状況はReCAAP等の対応というものが影響しているのかどうか。これについては、外務大臣、いかがでしょうか。どういう御認識を持っておられるか。

西村大臣政務官 アジアの取り組みですけれども、これまで各海上保安機関とも連携を強化しておりますし、アジア海賊対策地域協力協定、ReCAAPと呼ばれるものの法的枠組みをつくっております。あるいは定期的に海賊対策の専門家会合を開き、また長官級のクラスの会合も開き、我々、海賊対策を実施しているところでございます。

武正委員 認識として、東アジアの件数が減ってきたのはそうした日本側の取り組みも功を奏しているという認識でよろしいでしょうか。

西村大臣政務官 各国連携のもと取り組みを強化しておりますので、これは成果が出ているものと認識をしております。

武正委員 国交省もお見えでございます。岡田政務官もお見えでありますが、たしか海上保安庁も、シンガポールに置かれましたこの情報共有センターに事務局長補ということで人を出しているというふうに聞いております。

 海上警察並びにそうした海上関係の局というんでしょうか、部局の育成というものがこの条約の目的というふうに理解をしているんですけれども、東南アジアでそうした試みがどのように進展をしてどういう効果をもたらしているのか、具体的な国に新たな組織ができたり、そうした動きがあるのか、お答えをいただきたいと思います。

岡田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 ただいま先生御指摘のとおり、新たに設立をされましたアジア海賊対策地域協力協定、それに基づいて情報共有センターがございまして、ここに、伊藤事務局長を支えて我が海上保安庁からも一名、事務局長補が派遣をされてございます。そして、人材の育成、各国の能力向上が大切と考えまして、今通算で十四カ国から、JICAの枠組みを利用いたしまして、研修生を招いて海上犯罪取り締まりの研修をいたしておるところでございます。また、我が国からも海賊対策分野で法律的な専門家等の派遣をいたしておるところでございます。

武正委員 きょうはそれぞれ、官房副長官もお残りをいただいていますが、今、内閣官房に総合海洋政策本部ができて、関係閣僚から成る法制チーム設置ということも聞いておるんですが、海賊対策のための法整備ということも行っているやに聞いておるんですけれども、私は、このReCAAPのような枠組みを、今海賊による事案が横行しているアデン湾、ソマリア沖、ここにその知見をやはり生かしていくべきではないかなというふうに思っております。

 これは、民主党が提出したテロ根絶法の第二十八条にも織り込んでいるわけでありますが、これについて、今、内閣官房の総合海洋政策本部における海賊対策のための法整備の検討状況について、そうした条約等についても検討を行っているのかどうか、見通しも含めてお答えをいただきたいと思います。

松本内閣官房副長官 総合海洋政策本部では、関係閣僚から成る法制チームを設置いたしまして、本年二月八日、海賊に対する取り締まりに関して、関係府省と連携協力して、取り締まりのための法制度上の枠組みについて検討することが決定をされまして、海賊行為を取り締まるため、総合海洋政策本部においては、国連の海洋法条約等に則しまして、船舶の国籍を問わず、海洋上の海賊行為を我が国国内法上の犯罪とするような法整備について検討を行っております。

 また、自衛隊の活用を含めた海賊対策のあり方については、総合海洋政策本部のもと、関係府省が法制面の整備を含め、所要の検討を現在進めているところでございます。

武正委員 外務省に伺いますが、本年十月二十一日、国際海事機関の事務局長が来日された折、御法川政務官がReCAAPの知見を有する協力をしたいというふうに事務局長に申し入れたというふうにホームページで報じられておりますが、これは事実でしょうか。

西村大臣政務官 御法川政務官が対応いたしまして、そのように述べたことは事実であります。

武正委員 これは、ソマリア沖で海賊事案が頻発している、これについて何かしなければならないといった、事務局長とのそうしたやりとりの中で出てきたということでよろしいですか。

西村大臣政務官 そのように理解しております。

武正委員 再び官房副長官にお伺いしますが、先ほど、自衛隊を含めた法整備ということでしたが、特にこうした海上警察について、海上保安庁については、インドとの協力ということで、既にムンバイ沖でのそうした共同での協力の実績もあります。

 また、中東各国について外務省から資料をいただきますと、イエメン、オマーン、サウジアラビアにも、例えばイエメンですと、イエメン沿岸警備隊約千二百人、パトロール及び沿岸警備艇二十一隻、オマーン、王立警察沿岸警備隊四百人、沿岸警備艇五十二隻、サウジアラビアに至っては、沿岸警備隊四千五百人、パトロール及び沿岸警備艇約五百五十一隻ということで、同じく国交省からいただいた資料で、東南アジアの、先ほどのReCAAPの締約国のそうした海上警察と比べても遜色のないこの三カ国の海上警察の状況でもありますので、私はやはり、このReCAAPの知見を生かしたいとIMOの事務局長に外務省の政務官が言ったように、この内閣官房に置かれた総合海洋政策本部における海賊対策のための法整備の中で、日本が既に知見を持っているこの東南アジアでの条約を中東、アフリカ各国に働きかけて、その条約の締結に至るための、まずは資料の二ページにあるような国際会議から進めていくことも含めて積極的な御対応があってしかるべきと考えますが、再度、この条約の知見を生かした対応ということを内閣官房として進められる御意思があるかどうか、お伺いをしたいと思います。

松本内閣官房副長官 いろいろな御提案も含めて御助言を賜っておりますことは承知をしております。

 それを踏まえた上で、現時点については、その内容、詳細についてお答えを申し上げることはできませんが、政府といたしましては、海上交通の安全確保の重要性にかんがみまして、総合海洋政策本部のもと、関係府省が、自衛隊の活用を含めた海賊対策のあり方について、法制面の整備を含めた所要の検討を進めてきているところでありますので、今の御助言に関して受けとめさせていただいて、検討を進めさせていただきたいと思います。

武正委員 あのアチェの大地震のときに、インドネシア、マレーシア、やはり各国の軍隊の艦船が来ることに非常に拒否感を持っていた。そういうこともあって、この東南アジアでReCAAPがうまく成功しているんだというふうに思っておりますので、自衛隊ももちろん大事でありますが、やはりこの日本が海洋国家として、大変海上警察、海保さん頑張っておられます。ただ、この間、予算委員会のやりとりで、海保の長官がなかなか中東まで出張っていくのは難しいと言われたのは、まさに艦船なり予算なりそうした問題点があるからであって、私はやはり海上警察の予算をもっともっと充実させて、そうした取り組みを積極的に進めていくことを求めたいということで、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 篠原でございます。

 中曽根外務大臣に初めて質問させていただきます。御就任おめでとうございます。

 どうでもいいことなんですが、参議院から外務大臣に就任された方は鳩山一郎さん以来三十一年ぶりだそうでして、何か二人とも総理の御子息で、総理の御子息で参議院議員になっていると外務大臣になれるのかなと、同僚の羽田雄一郎参議院議員を励まそうと思っておりますけれども。ここに隣におられる方は、総理の娘で衆議院議員になっているとまた外務大臣になれると。小渕優子さんもなれるのかなというふうな気がいたします。

 冗談はさておきまして、大問題について御質問させていただきたいと思います。

 日米同盟については、既に松浪委員が一番最初に口火を切って質問されておられました。アメリカの一極支配が揺らぎつつあります。ブッシュ政権は武力行使を相当大胆にやったのではないかと思います。それで、世界じゅうにアメリカに対する不信感とか嫌悪感というものをまき散らしてしまったんじゃないかと思います。それから今回もう一つ、経済大国としても、みんなが認めていたような気がするんですけれども、サブプライムローン問題に端を発して金融がぐちゃぐちゃになり、世界じゅうに悪影響を与えている。

 日本では、政治的空白をつくらない、つくってはいけないとかいうことで解散・総選挙を先送りしておりますけれども、本来そうすべきはアメリカでして、大統領選挙も一年ぐらい先送りして自分たちの後始末をすべきだというような気がしますけれども、そんなことをせずに一年間あるいは二年間かけて大統領選挙をやっておりまして、新しい大統領が誕生いたしました。

 もう皆さん、これは明らかなように、オバマ新大統領の誕生というのは、明らかにブッシュ大統領に対するアンチテーゼ、これに尽きるのではないかと思います。私は本当にアメリカの民主主義に感心いたしました。

 外交に詳しい方の中ではよくブラッドリー効果というのが言われておりまして、そんなことを言っていたって、最後にはやはり白人でなくちゃいけないんだと。ブラッドリーさんというロサンゼルスの市長さんがカリフォルニア州知事選に出たときに、世論調査では圧倒的にリードしていたのに、いざふたをあけてみたらそうではなかった、そういうのがあるんじゃないかと言われていましたけれども、全然違って、マンデートと言われていますけれども、三百人以上を獲得するというようなときにそう言われるそうでございますけれども、そうなった。民主党の大統領としては珍しいことだったと思いますけれども、これで大分政治が変わってくる、世界の政治が変わってくるような気がするんです。経済も変わってくるというような気がするんですけれども、どうも日本の対応を見ていると、いや、そんな大して変わりはないというようなことを言われておるのですが、外務大臣、これについてはどのように受けとめておられるでしょうか。

中曽根国務大臣 今、オバマ当時候補でしたけれども、その選挙の分析が委員からなされたわけでありまして、いろいろな見方があろうかと思います。しかし、いずれにしましても、来年一月二十日には新政権が発足するわけでありまして、私たちは、いつも申し上げておりますように、日本外交の基軸であります日米関係、日米同盟をしっかりと強化していくということがまず大切である、そういうふうに思っております。

 まだ新しい政権がスタートしておりませんので、今後どういうような政策を実際おとりになるのかは、今ここで予測することも難しゅうございますし、また適当でないとは思いますが、選挙のキャンペーンの最中から、オバマ候補は、日米関係について、また北朝鮮、拉致の問題等についてもいろいろ述べておられまして、日米関係の重要性、またこれは麻生総理との電話会談の中でもそのようなことも次期大統領はおっしゃっておりました。

 拉致問題についても、午前中の委員会の質疑でも御答弁申し上げましたけれども、これに対しては北朝鮮に積極的に働きかけていくという姿勢の表明もあったわけで、我が国との関係におきましては基本的には大きな変わりはないであろう、そういうふうに思っております。

篠原委員 皆そういうふうに、基本的に変わりはないという答えが出てくるんですが、私はそうじゃないと思いますね。

 確かにオバマさんは、政治的な経験がないので、それからイエス・ウイ・キャンと、そればかりテレビ放映されていまして、ほかの具体的な政策は余り一般大衆には聞こえてきませんけれども、よく見ると相当、言ってみれば、この言葉が適当なんだろうと思いますが、リベラルな政治家である。

 アメリカでは、いろいろな政策についてどのような投票行動をするかということでチェックするシステムがあるようでございまして、国会議員のリベラル度というのを評価する仕組みができているんですね。それによりますと、最もリベラルだったと称されていたエドワード・ケネディ上院議員ですら九〇%、ヒラリー・クリントンさんも八四%とかいうのに対して、オバマさんは一〇〇%リベラルという態度を貫き通してきた。リード上院院内総務もそういう傾向のある方だ、ペロシ下院議長もそうである、そうすると、この三人がセットで立って、相当違った政策を打ち出すと。

 それから、こんなことを言っては悪いんですが、黒人と女性、下院議長ですね、それと黒人の大統領、言ってみれば、今までのマイノリティーですね。こういう人たちが、こういったことを考え、自分たちがそういう立場にあるので、そうした人たちの意向を相当酌んでくる。そうすると、共和党の政権とは大分違う。ロン・ヤス関係というのは、お父さんのあれでありました、共和党政権と日本の自民党の政権で仲よくやっている。日米同盟はそういった生易しい関係ではなくなっていくんじゃないかと私は思います。

 それは、ブッシュ大統領が超保守主義、ネオコンと言われる人たちの意見を入れて、分断政治をした、格差社会が生じた。日本も、小泉、竹中、ホリエモン路線で、同じような状態になっています。アメリカがいち早く、ブッシュの政策に対してアンチテーゼ、国内政策でですね。

 それから、外交はわかりませんけれども、これは外務大臣は触れられませんでしたけれども、イラクからは撤退するというのは公約で言っていますね。十六カ月以内に撤退する、これは言っています、これはみんな知っていることです。そして、アフガンのテロとの闘いを強化する。片っ方で撤退して、片っ方で強化する。そうすると、日本に対しても、アフガンについてはきちんと協力しないと承知しないですよというような、意外に強硬な態度をとってくるかもしれないんですね。

 経済政策について言えば、これは皆さんよく御存じだと思いますけれども、ちょっと違いがあるわけですね、貿易政策なんかについては。明らかに民主党の方が保護主義的な政策をとってくる。そして日本に対して包括経済協議というのを要求してきて、さんざん日本に市場開放を迫りました。

 私は、軍事的な外交上も、それから経済外交上も、かなり日本にはディマンディングというか、強烈なことを言ってくるような気がするんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 新しいオバマ政権の陣容がどうなるか、まだよくわかりません。いずれスタッフの名前も出てくることと思いますが、現下の国際情勢を見ますと、今委員もおっしゃいました、テロとの闘い、イラクの問題もありますが、気候変動の問題や、多くの重要課題がある。特に国際金融の問題が喫緊の課題でありまして、多くの世界的なといいますか、国際的な課題があるわけでありまして、そういう中にあって、米国におきましても各国と協調して取り組んでいかなければこういう課題が解決できない、これはもう言うまでもないことであります。

 そういう中において、我が国との関係は、安全保障の日米同盟がありますけれども、今申し上げましたようないろいろな大きな課題に対しましても、米国としては日本と協力をしてやっていく、日本側としても、日本の持てる能力やいろいろな知見というものも国際問題の解決に役立たせるということで、私は、経済の世界の一番の国と二番の国がパートナーとして協力していくということが大切でありますし、こうすることによって今後の世界の平和と安定にも貢献すると思っております。

 重ねて申し上げますが、どういう政策をおとりになるか今この時点ではわかりませんが、協調してやっていけるように、我が方としてもアメリカに対して強い働きかけ、また努力をしていきたいと思います。

篠原委員 しっかり準備して対応していただきたいと思います。

 なぜかというと、日本の外交を考えたりした場合、日米同盟が基軸というのはしょっちゅう言われるわけですね。これは耳にたこができるほど聞いています。日米同盟、日米同盟と、国会でもこれが基軸だというのを叫ばれております。

 日米同盟についての考え方もいろいろ変わってきたんだろうと私は思います。私の記憶では、大昔、日米同盟を軍事同盟だというふうに外務大臣がおっしゃった、それをけしからぬと言って、外務大臣が更迭されております。あれはかなり昔でしたけれども、鈴木善幸総理と伊東正義外務大臣のころです。しかし、今や日米同盟は軍事同盟だと言ってだれもはばからなくなってきているんじゃないかと思います。しかし、日米同盟、言葉では同じですけれども、内容は変質してきているんじゃないかと思います。

 そういう点で、私は慌てて読んだんですが、実はこれはけさ読んだんです。書評では見ていたんですけれども、選挙が十月二十六日に行われるとか大新聞が書いていたり、そういうことばかり言っている人もいますので、私もずっと長野に帰って選挙活動というか政治活動をしておりましたので、気にはなっていたんですが読めませんでして、質問をするので慌ててけさ買ってきて読みました。これはなかなか立派な本です。

 大臣はもうお忙しくてこんなのは読んでおられないと思いますけれども、全然通告してありませんけれども、官房長ぐらいはちゃんと読んでおられるんでしょうね。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 申しわけございません、私もまだその本を熟読はしておらない状況でございます。

篠原委員 わかりました。読んでおかなくちゃいけないとかいうことは申し上げませんけれども、いずれ必ず熟読していただきたいと思います。

 私は、この村田良平さんという方、お会いしたことはありません。しかし、かねてから、いろいろ書かれた著書を読んでいます。一番古いのは、本棚にあったんですが、「中東という世界」という古いのがありました。それから「OECD」、私はOECDの代表部にいたことがありまして、それから「海洋をめぐる世界と日本」、私は海洋法をアメリカに留学させていただいたときに勉強しましたので、同じ分野をちょっとずつやっておるので親近感を持って読んでおりまして、それで気になっていたんです。

 これは資料で皆さんのところにお配りしてありますけれども、ちょっと見てください。書評のところです。でっかい字でやっておりますから老眼っぽい人でも読めるはずですけれども、見てください。日本経済新聞の「村田良平回想録」、「本流らしくない外交観明かす」というのですね。下段の右側の方から「ドイツ語研修だった著者」のところを見てください。「米国になじめぬものを感じていた。日米同盟は「やむを得ないもの」ではあるが「本来望ましくないもの」」と指摘しておられます。そして「非核三原則と事前協議をめぐる政府の国会答弁を「国民を欺き続けて今日に至っている」」と書いておられる。

 今、田母神航空幕僚長が、現職でありながら日本国政府の大方針に反する論文を書いて、開き直っておられて問題になっています。私は、元事務次官といえどもOBになられたら自由にいろいろなことをおっしゃっていいと思います。私は感心しました。

 読んでおられないということで、大臣もお忙しくて多分読んでおられないだろうと思いますので、その一端をちょっと読ませていただきますと、これは外務省の皆さん、後輩にも読んでほしいということで、第十三章に「後に続く世代への願い」ということで、「外務省の若い世代への伝言」というのが第一節。第二節に「私の内心の葛藤」、その一、その二、その三といって、ここに非常に、村田良平さんの、何というか真情の吐露があるんじゃないかと思います。心の葛藤と言っておられます。

 その中にどういった大胆なことが書いてあるかというと、私はびっくり仰天します。ちょっと紹介させていただきます。

 「米国の日本防衛義務は、条約の主眼ではないし、事前協議、日米安全保障協議委員会等の規定は、日本の主権を一応尊重するとの体裁を整えた内容の空虚なものにすぎない。」そして「日米安保条約は、国際情勢は著しく変ったのに、一度も改正されず、締結時から既に四八年も経っている。一体何時までこの形を続けるのか。」そして問題の「日米同盟の本質」というサブパラグラフのところで、同盟とは騎士と馬から成るとの名言をビスマルクが残した、そして日米同盟の場合は「騎士たる米国に、日本の領土にある基地も、自衛隊も、いいように利用され続けている。」こうやって書いておられます。

 そして、二百八十八ページに、今の問題の書評に引用してある場面があるわけです。日米同盟というのは「「やむを得ないもの」ではあるが「本来望ましくないもの」という当初からの安保条約との心理的葛藤はずっと続いていた。」ということですね。そして、冷戦が終わったりしたら「在日米軍及び日本の自衛隊の態様と任務は正式に日米両国政府間で見直されるべきであった。」日米の完全な平等などはあり得ないとしても、より日本側の発言力が増大して当然である。日米同盟について、第一線にあられた方が非常に率直に述べておられる。それで、「日本側にも自主性が欠けすぎて米軍を甘やかしていたからで、むしろ日本の責任といえよう。」というので、思いやり予算を、簡単に言うとぶった切っております。こんなのをいつまで続けるんだと。

 そして、今の問題のところ、ここはちょっと長いのですが、読ませていただきます。皆さんが触れられているアフガン、それから給油の問題です。

 「アフガニスタン対策としてのインド洋への海上自衛隊艦艇の派遣、イラクへの陸上及び航空自衛隊の派遣は、すべて基本的には米国の意向や希望を容れて行われた。しかし、米国はその後の北朝鮮の核問題のハンドリング一つを見ても、北朝鮮と直接交渉を行って、実質的に日本を裏切った。」と。松原さんが指摘しそうなことですよね。「日本には高価にしてかつ有効度の不明なミサイル防衛体制の導入を求めている。日本自体の核抑止力保持についてはNPTという古証文及び中国、ロシアとの談合の結果として、絶対に認めないとの方針を米国は変える気はないのである。」こういう記述が延々と続くわけです。

 私は、参考人とかで、糾弾する云々じゃなくて、ぜひ村田さんの話をゆっくりじかに聞いてみたい気がいたします。外交のトップにあられた方、私は、これは村田さんだからできたんじゃないかと、余計なことですけれども、思います。なぜかというと、この書評のところにありますように、アメリカ大使館に行って戻って、アメリカ大使館に行って戻って、後でちょっと触れますけれども、河相さんのような超エリートコースを歩んでおられる方じゃなくて、ドイツへ行ったりちょこちょこされていて、そして、ちょっと何か、どこで間違ったか、間違ってはいないんだろうと思いますが、偶然アメリカ大使になられた。だから、斜めから客観的に見られたのです。

 客観的に自分を見られるとか見られないとかいっていろいろ言われた方もありますけれども、やはりポジション、ポジションで客観的に見られるか。アメリカばかりだったら、アメリカにのめり込んで、すっかりそれに洗脳されてしまうような感じになる。しかし、違う立場から見られたんですね。私はそういう偶然の産物だと思うんです。

 今私がかわりに読み上げたような、村田元外務次官、元駐米大使、この日米同盟観について、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。

中曽根国務大臣 私もきょう初めてそういう著作物があるというのを知りまして、まだ読んではおりません。今委員から御紹介がありましたけれども、今お聞きしただけでコメントするということはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、外務省を退職した人でありましても、要職を歴任した方であればそれなりの社会的責任があるということは当然だと思っておりますし、また、それぞれの見識を持ってそういうような著作活動にも当たられるもの、私はそういうふうに期待をしております。

篠原委員 私は、これは問題にするんじゃなくて、村田さんは立派だと思います。

 ごく一部の人しか御存じないかと思いますけれども、私は役人三十年やりましたけれども、役人時代から駄本というか駄筆というか、いっぱいいろいろなことを書いているんです。大体農林水産省の大方針には反するようなことばかりで、お目玉を食らったり左遷をされたりしたこともあります。ですから、同情を非常に、同情というか、こういう人には親近感を持つわけです。全然地位が違って、外務次官まで務めた方ですけれども。

 それで、大臣がおっしゃった気持ちもよくわかります。これはイギリスだったら多分許されないんだろうと思います。イギリスは非常に、国家公務員には年金もきちんと与えて、そのかわり守秘義務というのを、黙っていろというのをきちんと最後まで貫徹させる、ノーブレスオブリージュだか知りませんけれども、そういうふうにしているんですね。そういう点からすればいかがなものかとは思いますけれども、まあお年を召されて、いろいろ考えるにこういうのではないかということを言っていただくのは私はいいのではないかと思う。本当はこういうのは、チャーチルの回顧録じゃないですけれども、立派な政治家がちゃんとやるべきことだと私は思うんです。執筆能力のないような政治家は本当の政治家じゃなかったんじゃないかという気がしますけれども、そういう点では、役人の分際でこういうものというのは、やはり日本の良識からすれば、私はあると思いますが、外れている。

 しかし、もう一つ、これも全然アキューズするつもりはないんですが、小倉和夫さん、この方も現職のころからいっぱいいろいろな本を書いておられます。もっと軽い本を書いたりされていましたけれども、これも率直に言っておられるなと思って、朝日新聞の十月二十日号をちょっと見ていただきたいんです。結論を言うために、前段で、おわびみたいなものなんですが、「アジアと日本」ということで、アジアを大事にしていかなくちゃならないという主張をされるために書かれたものなんですが、その部分は省きましたけれども、この二段目から三段目、あるいは四段目について見ていただきたいんです。

 二段目の左から、第二次大戦後は「日本は、日米同盟を機軸とし、「平和外交」と経済発展に徹し、やがて、その基礎の上に、」ということを書いて、「アジアでの日本の地位は、(欧米中心の)国際秩序における役割に規定された。日本は、アメリカの世界戦略に協力する形で、アジアと向かい合った。日本外交は、アジアの民衆よりも、相手国政府の戦略とアメリカのアジア政策と連携した。」と。これはだれの目にも明らかなので、外務審議官をやられてフランス大使をやられた方がこういうものを書いても何ともないとは思いますけれども、私は、非常に率直に今の外交の現状、そして将来行くべき姿というのをいろいろ示唆されているんじゃないかと思います。

 私は、これは決して悪いことだとは思いませんけれども、今ちらっと大臣がおっしゃったとおり、田母神空幕長の件では、いろいろ安全保障にかかわる問題、それから日本の歴史的問題について問題にされているわけですね。そうすると、外務省の場合は、やはり防衛省と同じように、経済問題であれこれ言うというような、こんなのは甲論乙駁でいろいろあってもいいと思いますけれども、大事な安全保障、外交、安全保障問題についてはある程度、OBといえども倫理、規律があっていいような気がするんですけれども、この点については検討されたりするお考えはおありになりますでしょうか。

中曽根国務大臣 こちらの新聞の投稿記事も、今初めて読ませていただきました。

 先ほども村田元次官のことで答弁させていただきましたけれども、退職をした方でありましても、やはりそういうような、特に要職を歴任した方につきましてはそれなりの社会的責任がある、先ほどと同じ答弁になりますけれども、私はそういうふうに思います。

 ただ、田母神氏の場合は、現職の自衛隊の最高幹部であるということ、そういうことで、これはかなり今国会でも御議論があるわけでありますが、外交というものを長い間経験した方が、退職後、また別のお立場になっていろいろな見解を述べるということは、もちろん秘密に属することは、これはあってはなりませんけれども、そういうものはまたひとつ参考にするということもあるんじゃないか、また、そういう使命といいますか、そういうものもお感じになってこういうものをお書きになっているということもあるんじゃないかと思っております。

 内容にもよりますけれども、先輩がそういう形で外交問題等、見解を述べるということは必ずしも悪いことではない、私はそういうふうに思っております。

篠原委員 私もそのとおりだと思います。

 ついでに、海の向こうの話ですけれども、今度の大統領選のときも、パウエル元国務長官がオバマさんの支持を表明されたんですね。国務長官までやった人が違う党の人を支持すると。人種的に共通だったからとか言われていますけれども、そうじゃないと言っておられます。

 なぜかなと思ったんですが、これは日本と同じ傾向で、チェイニー副大統領とかラムズフェルドさんとか、この人たちが右に行き過ぎた、そういうことで、それに嫌気が差した人たちがいて、そしてオバマさんの方がいいというようなこともあったのではないかと私は思います。やはりアメリカは民主主義的で、そういうことを言って、前、元外務大臣、こちらにも、今水を飲もうとされていますが、いっぱいおられて、ある程度責任があるんだと思いますが、そこは自由に言っていいような気がいたします。

 日本とアメリカは似ていますね。今、日本の政府の、中曽根大臣も含めて、よく言われています、これは新聞論調で私は言っているんですけれども、非常にタカ派的な体質、タカとかハトというのはだれがつけたのか知りませんが、そういう傾向がある。それがよくないんだというようなのがあってオバマさんになったというのがあるんですね。私は、日本もそういう議論が、安全保障について真剣に議論していってしかるべきではないかと思います。

 そして次に、この延長線上ですが、最近大きな動きがあったのは米印原子力協定です。

 今の村田さんの回顧録にも出てまいりましたけれども、核拡散防止条約、NPTに三十年以上入らなかった、だから核技術の供与をほとんど得られなかった、そのインドを、三、四年前からアメリカがいらっしゃい、いらっしゃいといってやり出して、そして例外措置で協定を結んで技術を供与するというようなことが行われています。そして、それに日本が、唯一の被爆国であってNPTを一番きちんと守っていかなければならない日本もしぶしぶ応じている。これはさすがに日本の新聞も、非常に何というかタカ派的な態度をとる産経新聞ですら、支持はしていなかったような気がいたします。

 私は、こういうのはやはり同盟国として、完全な平等ではないけれども対等な立場で、いかがなものかというようなことを言っていくべきだという気がいたしますけれども、外務大臣の御見解はいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国は今までも言うべきときに言うべきことは言ってきた、私はそういうふうに思っております。その上で今般、この問題については委員御承知のような対応をとらせていただいたということでございます。

篠原委員 思いやり予算とかいうのは僕は虚構だと思います。アメリカはそんなに面倒を見てくれていないのに、守ってもらっている、守ってもらっていると思ってそういうことをしているとか、言いにくいところがあるかと思います、そういう点では。しかし、僕は、この核不拡散については、日本はどんなに声を大きくしてわめき散らしても、どこの国からも批判されないような気がするんですけれどもね。だから、こういう点についてはぴしっとした態度をとっていただきたいんです。

 なぜかというと、インドにこういう軟弱な態度をとったということが、すぐ、ならず者国家とアメリカが呼んでいる、さんざんうそをついて口約束だけで何もしない、インドも口約束でもって、核実験はしない、凍結する、北朝鮮も同じ図式ですよ。ヒル国務次官補が行って、口約束で、いやいや核問題についてはちゃんとやるからと言っているわけですね。そしてその一方で、日本が拉致問題はちゃんと解決していかなければならない、テロ支援国家の指定解除というのはやめてくれと言っているのに、それを、言ってみれば、この村田さんの言葉をかりれば裏切って、平然と自分たちの好き勝手なことをしている。ですから、どこかぴしっとするところが一つぐらいあったっていいような気がするんです。

 核問題については日本は終始一貫してぴしっとした姿勢をどこの国に対しても持っていくべきだと思いますけれども、北朝鮮問題についてはどのように対処していかれるつもりでしょうか。

中曽根国務大臣 今回の米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除の問題につきましては、従来から、北朝鮮が核の検証措置に関し十分な協力をした場合にはテロ支援国家指定を解除するという立場をアメリカは以前から明らかにしてきたわけであります。そして、我が国といたしましても、米国がそういう一連の検証措置というものを北朝鮮に受け入れさせるための手段として、このテロ支援国家指定の解除を効果的に利用するということが肝要と考えておりまして、米国との間におきましても相当緊密な協議を今まで行ってきた、そういう経緯がございます。

 いずれにいたしましても、六者会合の声明で確認されておりますとおり、北朝鮮に対しましては、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄させる、そういう目標は日米ともに変わりはないわけでありまして、そのために実効的な検証の具体的枠組みの構築が極めて重要であるということは、これはもう日米一致した見解でございます。

 私どもは、今回の指定解除につきましては、再三国会で御答弁申し上げておりますけれども、一つは、まず拉致問題が我が国にとっては大変大事な問題である、その上で核問題も前進をさせなければならない、そのために、この指定解除が核問題の改善につながるということであれば、先ほどからお話ししておりますように、解除ということも、これはそういう前進という前提で了とする、そういう方針でございました。

 ただし、米朝合意というものが、中身がしっかりしたものでなければならないということで、今回の解除に当たり米国と再三協議した中では、これをしっかりした文書にするようにということを強く要請してきたわけでございます。

篠原委員 済みません、時間がなくなりましたので、次は外務大臣としてではなくてサマータイム制度推進議連の代表世話人として、国会で余り議論されたことがないので、この点をお聞かせいただきたいと思います。

 サマータイムを導入されるというので、大臣は導入をするということでやられましたけれども、私は、これは大問題で、典型的なおせっかいな仕事だと思っております。

 今その一部を資料にしてありますけれども、このペーパーをほぼ全議員に配って歩いたんです。そうしたら、もう一つの資料を見ていただきたいんですが、自民党にも党派を超えてちゃんと、こんなの党派性なんて関係ないですからね、早川忠孝さんが私のこの六ページにわたるペーパーをごらんになって、真ん中辺を見ていただきたいんですが、「私の考えを変えさせたのは、民主党の篠原孝議員の手紙だった。」手紙というのはこれなんです、おわかりになると思いますが。

 国際的にも七十カ国以上がサマータイムを導入している、OECDの中ではやっていないのは日本と韓国とアイスランドだけだ、そんなことで日本にサマータイムを導入されたらたまらぬ。年寄りなじいさんもばあさんもいるし、それからコンピューターをいじくっている人たちは二〇〇〇年問題とかあったんですよ。何でこんなことを急いでやられるかと、私は理解に苦しむんです。

 そして、これはやってもいいと思うんです。手を組めるんです、私と中曽根外務大臣は。いいですか。やるのは時計を変えるんじゃなくて、私がここの、半分冗談を言いながらわかっていただきたいので書いたんですが、新聞なんかでもこの文章を使ってくれていましたけれども、時刻の切りかえではなく頭の切りかえと。そういうことをやろうとするなら、始まる時間、終わる時間を一時間ずつ早めればいいんです。クールビズじゃないですけれども、あんなの法律にも何もないですよ、運動としてやればいいんです。それで目的が達成されると思うんです。

 こういう主張をされれば、私は真っ先に賛成し、推進議連に入って真っ先にわめき散らして、違うペーパーをつくって、さっと通す協力をいたしますけれども、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員がサマータイム制度について大変御関心をお持ちで、いろいろなペーパーをお配りになられているのも十分承知をしております。

 本当は十五分ぐらいお時間をいただきたいんですが、余りないようですから、ポイントだけあえてまたお話しさせていただきたいと思います。

 まず、この制度は、世界のOECD加盟国三十カ国ぐらいの中で導入していないのは、先ほどお話ありましたように、日本と韓国とアイスランドなんですね。夏は白夜のアイスランド、そして韓国は、日本より西にありながら日本と同じ時間帯を使っているということで、時差がありません。それが現状です。そして、世界の七十カ国以上でこれが導入されております。

 日本でも、昭和二十三年から二十六年まで導入しましたけれども、このときは途中から朝鮮戦争になりまして、朝鮮特需で、明るいうちは働け働けと、食べるものもないというときで、サマータイム導入によってではないんですが、結果としてサマータイムと重なったものですから、当時を経験した方々はこれはかなり疲れるというような印象があります。

 なお、今、国際社会ということを考えますと、春の一定の時期になりますと世界じゅうが、まあ中高緯度国ですが、サマータイムになるわけで、日本だけやっていない。そうすると、例えば日本とヨーロッパは従来八時間だった、今度は何時間になるんだろう、七時間になるのかと考えなきゃならない。ヨーロッパの人も、あっ、日本とは何時間になるんだろうと考えなきゃならない。一方、ヨーロッパとアメリカとか、そういうところはみんな一斉に変わるわけですから、そういうようなことを考える必要はないわけで、ビジネスの世界においても、いろいろな世界においても、まずこれに入るということは国際社会のスタンダードに日本も入ることになるということが一つです。

 それから、省エネという意味では、もうあえて数字を申し上げません。先生も御承知のとおりですけれども、この効果は、原油換算で約九十三万キロリットル、CO2削減として百四十七万トン。これは全国民がテレビを六十六日間見ない、そういう場合の電力節約量でありますし、国内の全JRで使用する電力消費量の百十四日分、すべての鉄道で使用する電力消費量の六十八日分、長野県や福島県などの一年分の家庭用エネルギー需要等々、換算すれば幾らでも御説明できるんです。

 いずれにしましても、京都議定書によりまして、日本は原油で五千五百七十万キロリットル削減をしなきゃならない。きょうのニュースでも、マイナス六%どころでなくて、たしかプラス八%になっていたということであります。そういうことを考えますと、民生部門である、つまり国民が時計の針を一時間進めるということによって省エネ効果もあるということでございます。

 そして、私が強調したいのは、経済波及効果が一兆円ぐらい。今こういう時期に一兆円というのは大変大きな財源といいますか、経済の効果になるわけです。

 それからもう一つは、夕方の時間が明るいということは、これは委員は反対でないとおっしゃいましたから、また反論はあろうかと思いますが、明るいということは、体の弱い方、目の弱い方、車いすの方、お年寄りが、帰宅時間が明るいというのはどれだけ助かるか。痴漢の被害も減る、交通事故も減る、実際そういう統計は世界じゅうで出ているわけです。ですから、私は、単なる省エネだけじゃない、単なる国際スタンダードに入ろうということじゃなくて、そういう弱者のためにもなるということも強調したいと思います。

 それから、時計を一時間、全体を変えるんじゃなくて、会社だけやればいいとか、先生はそういうお話のようでございますが、そうなりますと、かえって混乱が起きます。あの会社は何時なんだろう、海外から見ても非常にややこしくなる。世界じゅうが一斉にやることによって大きな効果も出てきますし、混乱も出てこないわけでありまして、そういう意味では、一つの考えとして時差出勤みたいなものもありますし、札幌とか滋賀県でそういうことをやっていますが、これはやはり国際的に一緒にやるということが大事だと思います。

 もちろん、デメリットもありますけれども、ぜひ先生には御理解いただいて、日本も世界の仲間入りをして、省エネ、そして豊かなライフスタイル、お年寄りや弱者のためのサマータイムに御協力いただきたいと思います。

篠原委員 ちょっと時間が過ぎちゃって済みませんけれども、これについては、河野委員長にもこの私の紙を配りましたら、御丁寧にちゃんと意見をいただいておるんです。河野委員長はサマータイムを導入すべきだという方なんです。いろいろあって、アンケート調査をやったんですけれども、調べてみましたら、この今の外務委員のメンバーで反対したのは照屋寛徳先生と私だけでして、あとはみんな、まあ答えていない方もおられるんですけれども、ほとんど賛成されております。

 ですから、いろいろな考えがあるんだろうと思いますけれども、この点については私は承服するわけにはいきませんので、お互いにそれでは反対していこうと思います。

 一つだけ最後に、非常にいいことを外務省はやっていただいているので、その報告だけ河相局長からいただきたいと思います。

 私が前の委員会で、アフリカとか中南米、中東とかそういったところにいろいろな若手の精鋭を送り込まなければならないんだということを申し上げましたが、そういうことをちゃんとされておられる。外務省、そういういいことをしたらちゃんとこういうところにすぐ報告すればいいのに、何とも言ってこなくてやっておられるんで、ちゃんと立派なことをやったと報告する機会を与えますので、堂々と答弁いただきたいと思います。

河相政府参考人 大変貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 この委員会でも委員から御議論いただきまして、そして近年、我が国の外交でいえば、アフガンでございますとかイラクにおける復興支援、それからアフリカの開発というものを大きな目標に掲げて外交活動をやってきておるわけでございまして、そういう意味で、途上国での勤務の重要性というのはますます増大をしている。

 こういう認識のもとで、今御指摘がございましたように、若手の幹部職員を、本年七月二十九日付で片上駐ガーナ大使、それから岡村駐コートジボワール大使、そして本年九月三日付で越川駐アンゴラ大使を特命全権大使に任命いたしたわけでございまして、今後とも、こういう方針、考え方のもとで適切な人事を進めていきたいと思っているところでございます。

篠原委員 ありがとうございます。

 以上で終わります。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 けさほど来議論がありましたけれども、さきの米大統領選挙でバラク・オバマ候補が当選いたしました。これは、アメリカ史上で最初の黒人大統領の誕生ということであって、アメリカ社会が長期にわたる人種差別、人種の壁を乗り越えたことを示す歴史的な出来事だと思います。我が党は、このことが、アメリカ社会が新しい民主的活力を発揮する転機となるということを期待いたしております。

 この選挙結果は、同時に、ブッシュ政権が進めた内外政策、イラク戦争など国連を無視した一国覇権主義、貧困と格差を深刻にして金融危機をもたらした新自由主義の経済政策などに対するアメリカ国民の強い批判を表現していると思います。

 当選したオバマ氏は、ブッシュ政権の諸政策からの変革を掲げて、期限を切ったイラクからの米軍撤退、核兵器廃絶、金融規制の強化などを提起してまいりました。他方で、オバマ氏の政策の中には、アフガニスタン戦争への米軍増派と同盟国の協力取りつけ強化という看過できない主張も含まれており、私たちは、変革の路線がオバマ新政権の政策と行動にどう具体化されるかについて注目をしたいと思います。

 そして、こういう時期こそ日本政府の対応が問われていると思います。自主自立の平和外交への転換が私は必要だ。国際金融・通貨、貿易機関の民主化の問題、あるいは地球温暖化対策を初めとして、グローバルな問題でどういう提起を日本がするのか、新しい日米関係をどうするか等々でありますけれども、きょうは、幾つか問題がありますが、特に被爆国としての核兵器廃絶の問題にかかわって質問をいたします。

 そこで、まず中曽根大臣に伺いたいんですが、オバマ氏は七月十六日に公開討論会で、大統領選挙のさなかですが、世界に明確なメッセージを送るときだ、米国は核兵器のない世界を目指す、すべての核兵器の廃絶という目標を我々の核政策の中心的要素とする、こういう政策を提示しました。そして、八月には、民主党の選挙政策綱領でもそういうことを盛り込んだということであります。

 そこで、大臣、次期米大統領が核兵器廃絶を正面から掲げているということについてどのように受けとめていらっしゃるか、感想を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、オバマ次期米国大統領は、核兵器のない世界を追求するということで、またかつ、アメリカ単独での一方的な核軍縮はしないで、強力な核抑止を維持し続けることを表明されておられるわけで、非常に現実的な核軍縮の考え方を示している、そういうふうに承知をしております。

 アメリカでは、昨年の一月、またことしの一月に、キッシンジャー氏ら元米国の高官であった方々がウォールストリート・ジャーナル紙に対しまして、核兵器の存在しない世界に向けてと題した寄稿を行っております。米国内におきましてもやはり核軍縮をめぐる論議が活発になってきていると思っておりまして、結構なことだと思っています。

 我が国は、ことしの十月、すべての核兵器国に対しまして透明性のある方法で核兵器の削減を実施することを要請する決議を国連総会に提出いたしました。これは十月二十八日、六十三回の国連総会でありますが、そして圧倒的な支持を得ることができました。賛成が百六十三、棄権が六、反対が四ということで、圧倒的な支持を得ることができました。

 我が国といたしましては、このような決議に従いまして、アメリカを含むすべての核兵器国が具体的な核軍縮の措置をとってくれることを強く期待し、また新政権のそのようなお考え、これは政権が本格的に発足してみませんと具体的な政策というものもまだわかりませんが、唯一の被爆国として核兵器の削減に努めていきたい、そういうふうに思います。

笠井委員 結構なことであるということなんですが、大臣が言われた、オバマの考えは、強力で、安全、確実な核抑止を維持するということを一方で言っているということなんですが、よく彼の主張、考えを見ますと、諸国家が核兵器を保有している限り核抑止力を維持するけれども、しかし、力点はそのしかしの後にあって、新しい核開発を認めることはないんだ、そして世界規模で核兵器の廃絶という目標を米国の核政策の中心的な要素にする、そこが結論的に言っている点なので、そこをやはりしっかりと日本としても注目して見ていく必要があると思うんです。

 私は、広島、長崎に原爆投下した最強の核保有国であり、歴代政権が核兵器にしがみついてきたという米国で、核兵器の廃絶を掲げて大統領選挙を戦って勝利したというのは、かつてなかったことだと思います。それだけ、アメリカ国民の世論の変化もある。

 私自身、被爆二世として、一九九〇年代の初めですけれども、ちょうど冷戦後としきりに言われたころですが、アメリカのロッキー山脈をずっと反核の遊説で回りまして、各地で交流をしていたことがあったんです。その体験のときを思い出しますけれども、大体私たちが広島、長崎、核兵器廃絶と言いますと、そうだねと言ってくれる人と同時に、リメンバー・パールハーバーという反応がすっとすぐ返ってくるというのが相当ありました。しばしばあったということであります。

 そういうときから比べても、核兵器廃絶ということを政策の中心に掲げながら、そして大統領選を戦って、しかも勝利する、これは隔世の感を感じるわけであります。そして、そうした変化の根底には、戦後六十三年を経ましたけれども、依然として苦しみ続けている被爆者を先頭にして、日本国民が内外で核兵器廃絶を訴えてきた、そして国際的な世論と運動の前進がありましたし、国際政治の変化があったことは確実だと思うんです。

 そこで、中曽根大臣に伺いたいんですが、大臣は、次期米大統領がなぜ、従来の米国の核政策から見ると大きな転換をして、核兵器廃絶を正面から言うようになったのか、そこに至る背景には何があるというふうに見て分析されているでしょうか、いかがですか。

中曽根国務大臣 オバマ次期米国大統領は、米国のフォーリン・アフェアーズ誌における論文、それから外交の政策のスピーチの中で、テロリストが核兵器を保有してそして使用すると、これは大変危険であるということを指摘されているわけであります。そして、核兵器とそれから核保有国の増大というのはより大きな危険というものを意味するものであって、そういう意味で米国は核兵器のない世界を追求する、そういうふうに述べています。

 しかし、同時に、アメリカ単独での一方的な核軍縮は行わず、委員御承知のとおりですが、世界に核兵器がある限り強い抑止力を維持しつつ、そして核廃絶に向けた、長い道のりとなると思いますが、NPTのコミットメントを遵守する、そういう立場を示している、私はそういうふうに承知をしておるところです。

 こうした点が次期大統領であるオバマ氏の核廃絶に関する考え方の背景にあるんではないか、そういうふうに思っております。

笠井委員 まあ、全世界にある限り維持しつつというところで、抑止力の問題というのは問題点としてはあると思うんですが、しかし、全世界的になくそうじゃないかということを言うようになったという点が大事なポイントだと私は思うんです。

 二つぐらいあると思うんですが、一つは、今大臣も言われましたが、今なお全世界に二万六千発と言われる核兵器が存在をして、世界の平和と安全を脅かしている現実がある。テロや核拡散の防止という理由で、核兵器の保有、ましてや核脅迫や軍事攻撃を正当化するというのは、もはや通用しなくなってきたという背景がある。イラクなどの悲惨な現実は、拡散問題の平和的解決、それから平和の国際秩序とともに、核兵器廃絶こそが進むべき道であることを示している、大きなそういう背景が一つあると思います。

 もう一つは、イラク戦争などでブッシュ政権への批判が高まる中で、やはり核拡散を防ぐためにも核兵器廃絶こそ必要、こういう道理ある声がかつてなく広がっている。大臣も先ほど紹介されましたが、キッシンジャー氏を初めとしてアメリカの元高官四氏などが核兵器のない世界ということを二度にわたって、昨年、ことしと提言をいたしました。

 私、この問題、昨年も提言が出たときに、当時麻生外務大臣で、当委員会で質問して、どう思いますかというふうに質問したら、麻生当時外務大臣は、君子は豹変するな、率直にそう思ったというふうな感想を述べられたわけですが、まさにそういう動きというのが今世界に広がり、ノルウェーとかイギリスとかドイツとか、アメリカの同盟国の政府首脳からもやはりそういう意見が広がって、主張が出てきている、そういう新しい国際的な流れがある。そういう中で、今回のオバマ氏の政策があり、またそれを掲げて当選したと見ることができるんじゃないかと思うんです。

 そこで、具体的に大臣に伺っていきたいんですが、今、二〇一〇年に開かれる次回のNPTの運用検討会議、いわゆる再検討会議があるわけですが、これを核兵器廃絶への展望を開く重要な契機とすべく、それに向けて、国際的にもさまざまなレベルで準備と取り組みが進められております。ことし八月に開かれた二〇〇八年の原水爆禁止世界大会が呼びかけた「核兵器のない世界を 二〇一〇年核不拡散条約(NPT)再検討会議にむけて」という国際署名というのもありまして、内外でそれに取り組んでおります。

 こういう中で、核兵器のない世界を掲げたオバマ氏が勝利をし、今度こそ核兵器廃絶への確かな道を開こうという声が内外で高まって、広島、長崎の被爆地でも期待が広がっている。そういうときこそ、被爆国政府からの明確な、すっきりした発信が必要だろうというふうに私は思うんです。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、オバマ氏は、政策を発表したときにファクトシートという紙も出しまして、その中で、二十一世紀の脅威に対する新プランということで、この拡散問題、核問題に関連して大きく三つぐらいの柱で提言をしております。

 その中で、まず第一に、核兵器のない世界という目標を設定するというふうにしまして、それに向けて、キッシンジャー氏ら四氏が提案した具体的な手段について全面的に支持するというふうに表明しました。また、二つ目の柱で、CTBT、包括的核実験禁止条約の批准を確約するということも掲げております。

 中曽根大臣、このもとで、被爆国として米国に対して、核兵器廃絶に向けて踏み出すという決断、そして積極的な役割を果たせということで、攻勢的な働きかけを今こそすべきじゃないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

西村大臣政務官 委員御指摘のとおり、我が国はこれまで、唯一の被爆国として、核兵器のない平和で安全な世界の一日も早い実現を目指して、現実的な措置を積み重ねてきているところでございます。

 こうした観点から、御案内のとおり、本年も国連総会におきまして核軍縮決議案を提出いたしまして、同決議案は第一委員会において圧倒的な多数で採択をされたところでございます。

 そして、今委員御指摘がありましたとおり、オバマ次期大統領がCTBTの批准に関して非常に積極的な、前向きな発言をしていることを踏まえまして、上院とも協力をするというようなことも発言の中にありますし、ぜひこうした機会をとらまえて、今後ともさまざまなレベルを通じてアメリカに対する働きかけを強化していきたいと思いますし、核軍縮、不拡散分野における米国との協力を一層推進していきたい、こういうふうに考えております。

笠井委員 このオバマ氏の新プランでは、三つ目の柱で、二〇一〇年のNPT運用検討会議を成功させる、そのこと自体を大きな柱に掲げておりまして、私自身、前回の二〇〇五年の会議も傍聴する機会があったんですけれども、この問題をフォローしてきましたが、この間、アメリカのトップというか、そういう主張としてはなかったことだと思うんですね、成功ということを掲げる。

 その中で、こう述べております。二〇〇五年のNPT再検討会議、運用会議はぶざまな失敗だったことが証明された、最大の理由は、ブッシュ政権が二〇〇〇年にすべての締約国が行った廃絶に向けた誓約を話し合うことすら拒否したからだ、次回の会議もこのような失敗に終われば地球的規模の努力を著しく弱めてしまう、ここまでオバマ氏のペーパーは力説をしているわけです。

 ここは肝心な点なので、ぜひ大臣に答弁いただきたいんですが、頑強だったというか頑迷だったアメリカという国の次期大統領自身がここまではっきり言っているのですから、被爆国の政府として、二〇一〇年のNPTの運用検討会議に向けて、核兵器廃絶に関して特別の責任を持っているアメリカを初めとしたすべての核保有国に対して、二〇〇〇年の運用検討会議で行った核兵器廃絶の明確な約束、これをやったわけですけれども、その実行を再確認する、あるいは加速化するように強く日本政府は求めるべきだと思うんですが、これは大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国は、明確な約束を含みます核軍縮の措置が、すべての核兵器国を含める形で二〇〇〇年のNPT運用検討会議において合意されたものであることを踏まえまして、すべての核兵器国に対して、核兵器の削減それから包括的核実験禁止条約の早期批准など、またさらに核軍縮のための具体的措置をとるようにということで求めてきております。

 また、さきに述べました核軍縮決議案には、北海道洞爺湖サミットの成果も踏まえまして、すべての核兵器国に対して透明性のある方法で核兵器の削減を実施するということを要請する、そういう文章を盛り込んでありまして、この決議案は第一委員会において圧倒的賛成多数で採択をされたところでございます。

 二〇一〇年のNPT運用検討会議の成功に向けまして、CTBTの早期批准の働きかけを引き続いて我が国としては行いますとともに、この国連総会決議に従いまして、すべての核兵器国が具体的な核軍縮措置をとることを私どもも強く期待しているところであります。

笠井委員 今言われた中で、二〇〇〇年のときには、廃絶という明確な約束を実行する、これはすべての核保有国を含めてみんな一致したという話だったわけですが、それをアメリカがずっと後景にして、それでこれを守らないと拒否してきた、それが問題だとオバマ氏も言っている経過の流れの中で二〇一〇年ということになるわけです。

 日本の提案した決議の中にも、二〇〇〇年の最終文書を想起してということはありますが、明確な約束ということは、文言としては前あったのが、一たん消えたりもしているわけです。

 二〇一〇年に向けて、私の質問にもう一回お答えいただきたいんですが、やはり一たんアメリカも含めて合意したわけですから、この明確な約束の実行を再確認、加速をするということ自身もきちっと日本はアメリカを含めて核保有国に言っていく。それはよろしいですね、大臣。

中島政府参考人 先生の御指摘は、二〇〇〇年、NPTの運用検討会議において合意された明確な約束、こういう措置を核兵器国に対して強く訴えていくべきではないかということでございます。

 当然のことながら、先ほど大臣が申し述べましたように、唯一の被爆国として、このような、御指摘の明確な約束を含みます二〇〇〇年の十三の核軍縮措置を支持しているところでございます。

 それで、これから二〇一〇年のNPT運用検討会議に向けてでございます。今、準備委員会が行われておりますけれども、この中で、十三の核軍縮措置の実施の進展が必要であるという旨を言及しているところでございます。

笠井委員 いや、大臣、今そういうふうに言われたわけですが、オバマ氏自身もそこが問題だったということも踏まえて政策も出していることを見れば、当然アメリカに対してもそのことは、明確な約束を含めて十三項目、きちっと言いますよ、やりなさいよということをきちっと求めますよということは、いいですね。

中曽根国務大臣 アメリカとの間で、十分にこれを相談していきたいと思っております。

笠井委員 先ほど政府参考人からその問題も含めて言っていくという話があったので、当然アメリカにもそのことを言いますね。

中曽根国務大臣 そのとおりでございます。

笠井委員 すっきり言ってもらえばいいんです、これは。ややこしい話じゃないんです。

 中曽根大臣は、私、九日、日曜日にテレビを拝見していまして、朝出演されていて、アメリカ大統領選挙の結果に関連して、日本の政治も変わらないといけない、日本もしっかり長期的ビジョン、戦略を持って、そして追随外交という批判もあるけれども、そうではなくて、世界の平和と安定のために努力をする、国際社会からも期待があり、責任は重大だということを言われて、それは大事なことだなと私は思ったんです。この核兵器問題でも、やはり従来の政府の姿勢や政策をある意味で見直すいい機会になるというふうに思います。

 大臣、率直に言って、就任のあいさつをこの間なさったときに、核問題に関しては、そっけないという言い方はあれですが、一行あって、「国際的な軍縮、不拡散体制の維持強化に取り組みます。」この一言だったので、こういう新しい状況の中だから、核兵器廃絶のことも含めて踏み込んでという思いを持って伺ったわけです。

 これまで日本政府は、核軍縮、不拡散に取り組むに当たっては、現実的、漸進的アプローチに立って、核兵器国にとって受け入れ不可能な非現実的、急進的要求を提唱することは核兵器国側の反発を招いて結果的に核軍縮を停滞させるので、実現可能な措置を一つ一つ積み上げていく、外務省の不拡散に関する基本的な文献の中にもそういうことが書かれておりますが、そういう立場をとってきました。

 国連でも、そういう意味では、アメリカなどのある意味許容範囲の決議案を出して、それでも結局、CTBTの問題なんかを最大の理由にして反対をされているという結果になってきているわけですが、他方で、かつての新アジェンダ連合提案の「核兵器のない世界に向けて 新アジェンダの必要性」という決議案や、あるいはことしも出された非同盟諸国提案の決議案、核軍縮決議あるいは核兵器条約締結の決議、核兵器使用禁止に関する決議などには、非現実的、急進的であり時期尚早だという形で、一貫して棄権をされるということをやってきました。

 こういう中で、ことしの国連総会を前にして、私自身も、非核の政府を求める会の役員とともに、日本政府、外務省に対して、核兵器廃絶のために積極的な役割を果たすように要請もしてきたところであります。

 そこで、大臣、今、ある意味で、言い方はあれですが、おもんぱかってきた相手のアメリカが、少なくともこの問題で変わるというふうに次期大統領は言っているわけですから、従来の政府の姿勢や対応を大きく見直すということとともに、やはり被爆国政府がまず率先して、速やかに核兵器禁止・廃絶条約の交渉を開始する、締結に向かって歩み始めるということに同意をする、さらに核保有国などすべての国に、そういう条約についても合意して進めようじゃないかと呼びかけるということを今やるタイミングじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 前から申し上げておりますが、唯一の被爆国として、核兵器のない、本当に平和で安全な世界が一日も早く実現するようにということで、この核の問題につきましても積極的な外交努力を行ってきたわけですが、この取り組みにつきましては、核兵器国とそれから非核兵器国との間の対立によりまして核軍縮のプロセスが停滞することのないように、そういうことで、米国を初めとする核兵器国を取り込んでいくということが大変大事ではないか、そういうふうに考えています。

 そういう意味では、オバマ次期大統領が核廃絶に向けて立場を表明したわけですが、これは我が国の取り組みと軌を一にする面もある、そういうふうに考えています。

 我が国といたしましては、今後、特に二〇一〇年のNPT運用検討会議に向けまして、すべての核兵器国に対しまして具体的な核軍縮措置を求めていくほか、オーストラリアなどとともに立ち上げました核軍縮・核不拡散に関する国際委員会が有意義な提言を行えるよう支援していこう、そういうことでございます。

笠井委員 今まで保有国と非保有国が対立してきたという状況があったと言いましたけれども、そこが大きく今変わってきている状況の中で、やはり踏み出すということになるタイミングだと思うんです。

 国連総会開会中の十月二十四日に、潘基文国連事務総長が、国際連合と核兵器のない世界における安全保障という講演を行っております。この講演には、先ほどの四者共同意見の提案者の一人であるキッシンジャー氏らも出席したということでありますけれども、ここで潘基文事務総長は、核兵器のない世界は最上位の地球的な善、グッドですね、公益であってということを明確にしながら、五点にわたって具体的な提案をしているわけです。

 幾つかあるんですけれども、第一にということで、すべてのNPT締約国、とりわけ核兵器国に、核軍縮、廃絶に至る効果的措置についての交渉を行うという条約上の義務を果たすように求める、核兵器条約の交渉を検討する、それから、ジュネーブ軍縮会議の場で積極的にこの問題に関して他の国々と核保有国が協議をすべきだ、こういうことを初めとして五項目の提案を出しているという状況であります。

 そして、この潘基文事務総長がその最後で、そういう軍縮が進んだら世界は進むんだ、それゆえにこそ軍縮は国連において強い支持を受けているんだということを強調している。こういう状況で、新しい段階に来ているところで、今こそ被爆国ならでは、日本ならではの役割発揮という点では、いよいよ核兵器条約に進もうじゃないかというところに踏み出すところにこそ、アメリカも核兵器のない世界と言うようになってきたわけですから、やはり大事なポイントがあるんだろうと思うんです。

 この点にかかわって、これまで歴代政府、首相は、核兵器廃絶の明確な約束の実行をアメリカに迫るということをやるどころか、核の傘の必要というのを一方では主張し続ける。せっかく今動きが出ているときでありますので、他国の核兵器開発は認めないけれども、日本は核の傘に依存し続ける、独自の核兵器保有の議論も必要だという議論があったりしたわけですけれども、そういう立場をとってきたことというのが、核兵器廃絶のイニシアチブに逆行して、拡散問題の解決も阻害することになってしまうだろうと私は思うんです。

 だから、そうしたこれまでの態度もやはり振り返って、核抑止力に依存する態度をきっぱり捨て去って、むしろ先頭に立って、被爆国の体験があります、被爆者がいます、そして六十三年たってきた、世界も変わってきて、オバマ次期大統領も核兵器のない世界というのを政策に掲げて当選するという状況で、いよいよ条約に向かって進もうじゃないかということぐらい次の運用検討会議で日本がばんと提起する、それぐらいのことが今必要なんじゃないでしょうか、いかがですか。これは最後の質問ですので、大臣、ちゃんと答えてください。

中曽根国務大臣 NPTの検討会議のことでございますので、今後十分に検討して対応していきたい、そういうふうに思っております。

笠井委員 ここまで大きく変わってきているという話をさせていただいて、大臣も結構なことだとおっしゃって、明確な約束を言いますというところまで言われた中で、やはりここは、日本がやってきたことを振り返りながら、本当に世界からも、なるほど被爆国日本ならではだな、さすがだなと言われる提案を今しないといけないときになっていると思うんです。

 ブッシュ政権がみずからの安全保障を理由にして強大な核兵器を持ち続ける一方で、核拡散阻止を口実にして、核使用をも選択肢にするような先制攻撃戦略を打ち出してイラク戦争を強行するという最悪の核抑止政策を進めてきて、世界はそうした路線から真の転換を求めているし、アメリカの国民自身も転換すると言っている中での話です。

 国連総会の議論を見ても、大きく今前に向かって進んで、核抑止のドクトリンが危険だということで国連事務総長も言う、キッシンジャー氏などもそれにかわる安全保障ということを掲げる中で、まさに日本の被爆国としての態度が問われていて、世界的な核兵器廃絶への展望を開くためにも、核抑止とか核兵器にしがみつくということと決別をして、まさに核兵器廃絶を中心に据えることこそ今必要なんだと思うんです。日本政府の米国へのそうした確固たる働きかけと決断を強く求めておきたいと思います。

 質問を終わります。

河野委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 中曽根外務大臣は、所信表明において、「我が国としては、日米同盟の一層の強化に向けて、抑止力の維持と地元の負担軽減を図る米軍再編を着実に実施し、日米安保体制のさらなる強化に努める」と述べております。

 大臣は、所信で表明した日米同盟の強化、日米安保体制のさらなる強化をどのように具体的に構想しているのかをお尋ねします。

中曽根国務大臣 今般の米軍の再編は、新たな安全保障上のいろいろな課題に的確に対応するために、在日米軍の抑止力を維持しながら、関係の地方公共団体、そして沖縄の住民の皆様の負担の軽減を図る、そういうことで大変重要な問題でございます。ぜひともこの米軍再編というものは実現しなければならない、そういうふうにまず考えております。

 政府といたしましては、今後も地元の皆様方に十分理解していただくように引き続いて丁寧に説明をさせていただく、地元の声によく耳を傾けて、特に地域の振興策などについてもしっかりと取り組みながら、平成十八年の五月に合意をされました再編実施のための日米のロードマップ、これに基づきまして米軍の再編を着実に進めていきたい、そういうふうに思っております。

照屋委員 大臣は、在日米軍基地が過密に集中をする基地沖縄の実態についてはどのような所信をお持ちでしょうか。

中曽根国務大臣 在日米軍の施設それから区域のたしか約七四%が集中をしている、そういうふうに認識しておりますが、沖縄の県民の皆様には大変大きな御負担をかけている、そういうふうに私は承知をしております。

 政府といたしましては、先ほど申し上げましたけれども、県民の皆様方の御負担を軽減するために、例えばSACO最終報告、これの着実な実施を通じまして、米軍の施設それから区域の整理とか縮小とか、また統合による土地の返還、それから訓練また運用の調整、そして騒音軽減策、また日米地位協定の運用の改善、こういうことなどに取り組んできております。

 また、さらに、在日米軍の兵力態勢の再編に関する平成十八年五月のこのロードマップは、在日米軍の抑止力を維持しつつ、普天間飛行場の移転、返還、そして在沖縄海兵隊要員と家族のグアムへの移転、嘉手納以南の土地の返還等を通じまして沖縄の負担を軽減するものでございますので、これを確実に実現する必要がある、そういうふうに思っております。

 そのために、県及び地元の市町村の御意見にも十分耳を傾けまして、御理解、御協力を得られるよう今後も努力をしていきたい、そういうふうに思っております。

照屋委員 大臣が所信において表明された地元の負担軽減というのは、在日米軍基地あるいは沖縄の米軍基地と米軍再編との関連では、具体的に何を意味するんですか。

西村大臣政務官 米軍の再編につきましては、今大臣から答弁がありましたけれども、新たな安全保障の諸課題に的確に対応するために、在日米軍の抑止力を維持しつつ、かつ関係地方公共団体あるいは地元の住民の皆様の負担軽減を図るために重要である、ぜひとも実現をしなければならないというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、特に沖縄について申し上げれば、米軍再編が仮に実現をすれば、普天間飛行場の移設、返還、在沖縄の米海兵隊要員のグアム移転、嘉手納以南の施設・区域の返還等が実現されることになりますので、沖縄全体としての負担が軽減されるということになります。

 政府といたしましても、今後とも地元の皆様に十分理解をしていただくよう引き続き丁寧に御説明をしてまいりたいと思いますし、地元のいろいろな声によく耳を傾けて、地域振興策などについてもしっかりと取り組みながら、日米合意に従いまして米軍再編を着実に進めてまいりたいと考えているところでございます。

照屋委員 大臣も大臣政務官もいろいろおっしゃいますが、これは通告していないんですが、大臣は、在日米軍軍人軍属、家族がどれぐらい日本におり、そのうち沖縄に駐留する軍人軍属はどれぐいか、おわかりでしょうか。

西宮政府参考人 手元に具体的な数字を今持ち合わせておりませんが、委員も御案内のとおり、基地外居住、基地内居住という調査をいたしましたときの数字、私の記憶しておる限りでは大体半分ぐらいだったかと記憶しております。また後ほど正確な数字を御報告したいと思います。

照屋委員 大臣、先ほどのは通告していなかったのでやむを得ないと思いますが、米軍再編あるいは沖縄の基地負担の軽減といった場合に、在沖米軍人軍属、家族は約四万八千五百人、これだけおるんですよ。そのうち海兵隊が二万一千九百人。在日に占める在沖の海兵隊の割合は九六・一%、陸軍でも六五%なんです。だから、言葉遊びではなくて、本当に真剣になって、基地が過密に存在する沖縄の負担軽減を図っていく、こういう決意をぜひ大臣からお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 ただいま委員からも、軍属また御家族等の沖縄における比率についての御説明がありました。

 私ども再三負担軽減と申し上げておりますけれども、今お示しいただきましたような数字というものをしっかりと認識した上で、今後のこの負担の軽減に努力していきたいと思います。

 昨日でしたか、沖縄県知事初め漁業組合の皆さんが大勢私のところに見えまして、セスナ機の問題やいろいろな問題について御説明をしていただきました。私もそういう皆さんのお気持ちをしっかりと理解した上で今後対応していきたい、そういうふうに思っております。

照屋委員 負担軽減との関係で、大臣、嘉手納飛行場における早朝、未明の軍用機離陸によって周辺住民の安眠が妨げられております。大臣は、嘉手納基地騒音防止協定の遵守や、早朝、未明の離陸の中止をアメリカに求める外交交渉を行う意思がおありでしょうか。

中曽根国務大臣 早朝の離陸による騒音というのは大変地域の住民の皆さんの御迷惑になっている、そういうふうに思いますし、これがまた大変深刻な問題であるというのはもう私も十分理解をしております。

 米側に対しましては、できる限り早朝の離陸が行われないようにと働きかけを行ってきているところでございます。これに対しまして、米側からは、米軍の運用上不可避であるとしつつ、早朝離陸により住民の皆さんへの影響が及ぶことは十分認識をしておりまして、可能な限り早朝離陸を回避しよう、そういうふうにしていると認識をしております。

 私ども政府といたしましては、引き続き米側との協議を通じまして、できるだけ早朝離陸の回数を減らすように、また早朝離陸の実施が仮に真にやむを得ない場合でありましても、可能な限り周辺住民の方々への影響が最小限になるように米側に働きかけをしていく考えでございます。

 引き続きまして働きかけをしっかりやるということですが、私からも必要な指示を出していきたい、そういうふうに思っております。

照屋委員 次に、原潜問題について聞きますが、本日、巡航ミサイルを装備した最大級のアメリカ原子力潜水艦オハイオが初めてホワイトビーチに寄港いたしました。怒りを持って私は抗議をしたいと思います。

 さて、米原子力潜水艦プロビデンスが、十一月十日、日本政府への事前通報をせずにうるま市のホワイトビーチに入港した事件が発生しました。米側は米海軍内の連絡ミスが原因だったと弁解しているようです。二〇〇一年四月にも佐世保港に事前通報なしに入港し、当時の在日米軍報道官が通報は儀礼上の合意と述べるなど、米海軍は事前通報制度を遵守しようとする意思は見られません。

 なぜ大臣みずから強い抗議の姿勢を米側に示さないのでしょうか、お答えください。

中曽根国務大臣 この経緯につきましては、今委員から御指摘がありました、米海軍の内部の連絡ミスが原因である、そういうようなことを先方からは報告があったわけでありますが、これは大変遺憾なことであり、私どもとしてはしっかりと再発防止について米側に要請もしております。米側からも、まことに遺憾なことであり再発防止に努めたい、そういう返答がありました。

 この事態というのは、先ほどお話ありましたように、二〇〇一年に一度ありましたけれども、今回発生したということも私は大変重く受けとめております。実は、もう既に私みずから指示をいたしまして、北米局長から米側に対して強い抗議を行わせました。アメリカ側には、この抗議が私の指示である、大臣の直接の指示であって、こういうようなことが本当に二度と起こらないようにきちっと通報のシステムを点検してほしいということを向こう側には申し入れております。

照屋委員 外務省は、事前通報なしの米原潜寄港によって、国民と国家にとって何が損なわれるとお考えでしょうか。

西宮政府参考人 米原子力軍艦の我が国への寄港に際しましては、昭和三十九年の外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明によりまして、米側は、受け入れ国政府の当局に対しまして、これは外務省でございますが、少なくとも二十四時間前にその原子力軍艦の到着予定時刻などにつき通報することとなっております。

 この通報のあり方を含めまして、米原子力軍艦の運航に関しますコミットメントにつきましては、日米間で累次の機会に確認しておるところでございまして、そうした中、今般のプロビデンスにつきまして入港の通報がなされない形で寄港したということは極めて遺憾でありまして、先ほど大臣からもございましたが、大臣の御指示で私から抗議をいたしまして、米側より、引き続き、先ほど申し上げました、米国政府のコミットメントを守るのであるということにつき回答を得ておるわけでございます。

 私どもといたしましては、こうした事態の発生は、米原子力軍艦の我が国への寄港に対します国民の信頼を確実なものとするとの観点から大事であり、今回のような事態の発生というのは極めて遺憾であると考えておりまして、引き続き米側に対し再発防止の徹底を求めていく考えでございます。

 なお、文科省がやっております放射性に関するモニタリングにつきましては、モニタリングポストにおける港内の定点観測及びモニタリングボートによる測定などを行っておるわけでございますけれども、異常値が検出されたとの報告は受けておりません。

照屋委員 去る四日、沖縄船籍の漁船大幸丸がミクロネシア連邦当局に拿捕され、同国から領海侵犯の容疑で罰金一億円の支払いを求められておるようです。中曽根大臣は、去る十日、ミクロネシア連邦のエマニュエル・モリ大統領に、邦人保護の観点から、迅速な解決を申し出たと報じられております。大臣の迅速な対応に感謝を申し上げたいと思います。

 同大統領の反応、乗組員らの現状、外務省として同国との間でどのような交渉をしているのか、大臣を含めてお答えください。

中曽根国務大臣 この沖縄船籍の大幸丸の拿捕事件につきましては、今委員がお話しになりましたように、先日ミクロネシア連邦のモリ大統領がちょうど来日されて、私、お目にかかりましたものですから、大統領に対しまして直接、本件の迅速な解決を申し入れました。大統領は、そのときはこの件については御存じなかったようでございまして、今初めて聞きました、乗員の安全と、それから漁船の適正な管理を確保して、本国に戻り次第、現状を確認した上で、できる限りの協力をしたい、そういう大統領からのお話がございました。

照屋委員 大幸丸の友井船長は、故意による領海侵犯ではなくGPSの故障が原因だと述べているようですが、今後どのように事態が展開すると思われるか、外務省の考えを尋ねます。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在、ミクロネシア連邦当局によりまして大幸丸が拿捕されておりまして、ヤップ港に係留をされております。現在、既に裁判手続が開始されておりまして、大幸丸側でも弁護人を得て対応しているという状況だと承知をしております。

 外務省の方でも友井船長と直接連絡をとらせていただいております。緊急を要するような健康上の問題はないということでございますし、港内、港の中の行動の自由もあるということでございまして、特に今直ちに衣食住には問題はない、こういう状況と受けとめております。

 いずれにしましても、ミクロネシア連邦政府と、これにつきまして情報の提供を引き続き求めてまいりたいと思いますし、邦人の安全確保ということから、事態を注視しまして、友井船長との連絡も維持していきたい、このように考えております。

照屋委員 次に、セスナ機の事故についてお伺いをいたします。

 嘉手納基地所属のセスナ機が墜落しました。この問題に関して、十月三十日に質問主意書を出しまして、昨日答弁書も出ました。

 それで、何点か補足してお伺いしますが、まず外務省に尋ねたいのは、答弁書によると、嘉手納エアロクラブの入会者はパイロット資格を有する者に限られないということであります。会員であれば、パイロット資格を有しなくてもセスナ機を操縦できるんでしょうか。

西宮政府参考人 嘉手納飛行クラブ、嘉手納エアロクラブでございましょうか、これは米軍関係者に福利厚生の一環として飛行する機会を与えると……(照屋委員「いや、できるかできないかだけ、端的に」と呼ぶ)はい。

 米側の説明を徴しましたところ、嘉手納飛行クラブの入会者はパイロットの資格を有する者に限られないとのことでございますが、同時に、米側の説明によりまして、嘉手納飛行クラブは米空軍規則にのっとって運営されております。したがいまして、同クラブの会員は、飛行時に有効な、米航空当局、アメリカの連邦航空局でございますが、これが発行した操縦免許を携帯することが実際の飛行許可の条件となっているということでございます。

 なお、十月二十四日に発生した嘉手納飛行クラブ所属のセスナ機の事故に関しましては、当該セスナ機のパイロットは、我が方捜査当局に対しまして、みずから操縦免許を所持しているとの説明を行っていると承知しております。

照屋委員 嘉手納エアロクラブのような飛行クラブは、普天間基地にも存在するんでしょうか。

西宮政府参考人 普天間基地にはそのようなクラブは存在しないと理解しております。

照屋委員 このセスナ機の事故に関しては、お昼の理事懇談会で河野太郎委員長が、アメリカに書簡を発するという提案がありました。私は、大変すばらしいことだと思っております。たかがセスナ機の事故じゃないので、この事故処理をめぐって、日本の主権である警察権あるいは裁判権が、日米地位協定の壁の前に十全な行使ができないという問題が潜んでいることを、ぜひ委員各位もおわかりいただきたいと思います。

 ところで、国土交通省に尋ねますが、今回の事故で墜落したセスナ機は、嘉手納飛行場から奄美空港への飛行計画を通報していないことが明らかであります。この場合、航空法上どのような罰則に処せられるのか。また、通報される飛行計画には、操縦者の特定はなされるんでしょうか。

関口政府参考人 お答え申し上げます。

 飛行計画の通報の件でございますけれども、航空法第百五十四条第一項第九号の二において、航空機乗組員が、第九十七条第二項の規定に違反して、飛行計画を通報しないで航空機を運航したときは、五十万円以下の罰金に処するという旨が規定されております。

 本件につきましては、現在警察において捜査を行っておりまして、国土交通省といたしましても必要な協力を行っておりますけれども、この再発防止を図るために、米軍に対して、関係省庁を通じて飛行計画通報の徹底を申し入れたところでございます。

 また、飛行計画におきましてパイロットの特定ができるのかという御質問でございますけれども、飛行計画におきましては、機長の氏名を明らかにするということは定められておりますけれども、操縦者を特定するということは飛行計画からは困難なこととなっております。

照屋委員 法務省に尋ねますが、本件事故に関して、米軍側から公務証明書は発給をされたんでしょうか。また、公務中、公務外を判断する基準、根拠は何に求めるんでしょうか。

三浦政府参考人 本件事故が公務中であるか公務外であるかということにつきましては、個別具体の状況に即して判断する必要がありますので、一概にお答えすることは難しいということを御理解いただければと思います。

 本件事故につきましては、現在警察におきまして捜査中であるというふうに承知しておりまして、公務証明書の提出の有無につきましても、具体的事件に係るものでございますので、お答えすることは差し控えたいと存じます。

照屋委員 大臣は、この事故は公務中、公務外、どっちとお考えでしょうか。

 河野太郎委員長は先ほどの理事懇で、公務外とおっしゃっていますよ。アメリカ総領事も公務外だと。四軍調整官事務所長も公務外だと。防衛省はいまだに公務中、公務外もわからぬ、そんな情けない話はないでしょう。

中曽根国務大臣 事故原因については、今、日米双方で調査中でありますが、私ども外務省といたしましては、現時点では、種々の状況から見まして、パイロットが公務中であったとは思われない、そういう認識に変更はございません。

 いずれにいたしましても、こういうセスナ機の事故のようなものは、住民の皆さんにとって、これはもう本当に大変危険なことでありますし、伺いましたところ、コンビニエンスストア等も近くにあるとか、そういうことも聞いておりまして、二度とこういうことがないように、捜査を厳密にやって、原因究明、再発防止は当然でありますが、私ども、しっかりと住民の皆さんのお立場も考えながら対応していきたいと思っています。

照屋委員 終わります。

河野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時七分散会


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