衆議院

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第2号 平成22年10月27日(水曜日)

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平成二十二年十月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 中野  譲君

   理事 中林美恵子君 理事 長島 昭久君

   理事 西村智奈美君 理事 秋葉 賢也君

   理事 小野寺五典君 理事 赤松 正雄君

      浅野 貴博君    稲富 修二君

      小川 淳也君    小野塚勝俊君

      大泉ひろこ君    柿沼 正明君

      勝又恒一郎君    桑原  功君

      阪口 直人君    首藤 信彦君

      玉木 朝子君    中津川博郷君

      浜本  宏君    伴野  豊君

      平山 泰朗君    福田衣里子君

      松本 剛明君    山花 郁夫君

      若泉 征三君    河井 克行君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      松野 博一君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         前原 誠司君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務副大臣        松本 剛明君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   国土交通副大臣      三井 辨雄君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  古澤 ゆり君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         山縣 宣彦君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     玉木 朝子君

  中津川博郷君     平山 泰朗君

  本多 平直君     稲富 修二君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     柿沼 正明君

  玉木 朝子君     菊田真紀子君

  平山 泰朗君     中津川博郷君

同日

 辞任         補欠選任

  柿沼 正明君     桑原  功君

同日

 辞任         補欠選任

  桑原  功君     小野塚勝俊君

同日

 辞任         補欠選任

  小野塚勝俊君     福田衣里子君

同日

 辞任         補欠選任

  福田衣里子君     本多 平直君

    ―――――――――――――

十月二十六日

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官古澤ゆり君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、資源エネルギー庁長官細野哲弘君、国土交通省大臣官房技術参事官山縣宣彦君、海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中林美恵子君。

中林委員 おはようございます。民主党の中林美恵子でございます。

 今臨時国会最初の質問をさせていただけますこと、本当にありがとうございます。時間が限られておりますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず、前原外務大臣にお伺いいたします。

 日本の外交が長期的に目指すもの、本当の意味で骨太のこれからの日本の外交、それから日本ならではの目標やそして手段について、これはどういうふうに考えるべきなのかといった、本当に日本外交の土台になる部分をお聞かせいただきたいと思います。

 特に、今月二十七日にはハワイにおける日米外相会談を控えていらっしゃいます。日米安保も五十周年という節目の年を迎えております。そして、この年もいよいよ終わりに近づこうとしているわけですけれども、そういった意味では、どのような日米関係を築こうとしているのか、この点も含めて御決意をお伺いできればと思います。

前原国務大臣 中林委員にお答えをいたします。

 大変大きなテーマを簡単に二つ質問をいただきましたけれども、二つとも、恐らく講演で話をすれば一時間ずつぐらい話ができるようなテーマだと思っておりますが、簡単にお話をさせていただきたいと思います。

 外交において必要なのは、まず、今の日本の実力を率直に認識するということが私は大事だというふうに思います。中曽根元総理が中曽根外交四原則というものをおっしゃっておりまして、その一つが、身の丈以上の外交はやらない、こういうことをおっしゃっておりましたのを私は鮮明に覚えておりますけれども、その中にあって、我が恩師の高坂正堯先生は、軍事力、経済力、そして価値、こういった三つの体系というものをおっしゃっていたわけであります。

 価値は横に置いておいて、経済力、軍事力というものを考えたときには、日本は、経済では世界ナンバーツーでありますけれども、大変大きな問題を抱えている。それは何かというと、莫大な財政赤字と人口減少、そして少子高齢化という構造的な問題を抱えている。その中にあって持続的な外交をやっていこうと思えば、まずはやはりサステーナブルな経済の仕組み、社会保障の仕組みというものをつくり、今の諸問題を解決する政治的な意思を示さないと、外で格好いいことをして外交というのはなかなかできない状況に来ているというのが私の基本的な認識でございます。

 したがって、日本の内政の問題を解決し、そして経済力をアップさせるための努力をすることが、まず一つ大きなポイントである。

 そして、二つ目には、防衛力でありますけれども、戦後六十五年たちましたけれども、吉田ドクトリンの考え方は基本的に変わっていない。つまりは、軽軍備、そして経済重視という方向性は変わってなくて、今の日本を取り巻く安全保障環境に日本独自で対処できるような状況ではありません。

 そういう意味では、アメリカとの協力を得なければ、日本の安全、ひいては経済活動の基盤そのものも崩れてしまうということで、外交の大きな方針というのは、国力の増進、そして内政の問題の克服、そして同盟関係の維持強化、こういったものが柱になってくるんじゃないかと考えております。

中林委員 ありがとうございます。

 日米関係ということでは、非常に重い課題も抱えています。例えば基地問題ですね。特に沖縄にこれが集中しているということもありまして、昨今、日本でも大きな大きな問題をいろいろ報道もされております。

 最近では、沖縄政策協議会というものがまた開かれているというふうに伺っています。このメンバーですとか、あるいは議論の進捗状況について、また時間がないので短くで申しわけないんですけれども、お願いしたいと思います。

 といいますのは、やはり沖縄問題や基地問題は、日米関係にとって非常に根幹をなす部分になっているというふうに思うからです。また、日米の同盟関係においては、政治的意思と、そしてそれを支える体制や機構、また財政基盤の改善など、今本当に大きな課題を抱えている中で、やはり沖縄の基地問題というのは重要な問題であるがゆえに、この沖縄政策協議会の行方というのは非常に重要であるというふうに認識しておりますものですから、どうぞよろしくお願いします。

前原国務大臣 この沖縄政策協議会のもとに、沖縄振興部会と今委員が言及された米軍基地負担軽減部会、この二つを設置するということになりました。

 普天間の問題が最大の問題ではありますけれども、現状においては、この米軍基地負担軽減部会では、それは正面から今は取り上げない、こういうことになっているわけでありますが、しかし、どうしてもその問題というのは避けて通れない話だというふうに思っております。

 メンバーにつきましては、官房長官、防衛大臣それから沖縄担当大臣、私外務大臣、そして沖縄からは県知事と那覇市長、あと金武町長に御参加をいただいて議論をしております。

 やはり普天間の問題というのは、一番大きな問題ではありますけれども、沖縄の今のお立場というものは、日本の政府の考え方と相入れないということで、これは粘り強く、また真摯に御理解をいただくように努力をしていかなくてはなりませんが、当面、できることについては率先して政府としてやらせていただくということで、作業部会というものをつくりまして、環境に関する合意というものをしっかりやっていくということと、あとは、地位協定にかかわる話、環境もそうでありますけれども、さまざまな事件、事故についてやれるところからやらせていただいて、小さな成果でも目に見える成果を上げていくということで臨んでまいりたいと考えております。

中林委員 それは今度は頻繁に会議が開かれるようになるということでしょうか。それとも、例えば月一回ですとか、そのようなペースで進むと考えてよろしいでしょうか。

前原国務大臣 先般の議論では、ワーキングチームといいますか事務レベルでの会議をつくろうということになりました。

 といいますのは、知事、那覇市長、金武町長、あるいは四大臣が一堂に会して議論を頻繁にやるというのはなかなか物理的に難しい面もございますので、しかし議論は進めていかなきゃいけないということで、事務レベルでは頻繁にやり、必要に応じてそういった、本会議といいますか、先ほど申し上げたメンバーで行っていこう、こういった議論になっております。

中林委員 ありがとうございます。

 日米同盟にとっては本当に重要なものになろうかと思いますので、これからの御健闘をぜひお願いいたします。

 それから、同じく日米同盟関係ですけれども、九月の二十三日の日米首脳会談でも指摘されていますけれども、同盟関係にとって大事なものは、一、安全保障、二、経済、そして三として文化・人材交流という三本柱が示されたところでございます。これについて、特に文化・人材交流の面につきまして、なかなか具体的な、これぞという妙案というのは出てきていないように思っています。

 一方で、かつてから行われているJETプログラムなど、日本に対する理解を非常に深めてくれる人材を輩出しているプログラムがある。そして、そのプログラム自体が予算の削減などで非常にいろいろな問題を抱えているとも聞いております。

 この人材交流といった部分で、前原大臣ならではの案やお考えをお聞かせいただけたらと思います。

前原国務大臣 長らくアメリカにおられた中林議員にぜひアドバイスをいただきたいと思いますけれども、いろいろな方とお話をしておりまして、やはり日米間の人材交流が先細りしているんではないか、あるいは、日本人がアメリカの例えば大学とか研究所に留学する数も減ってきている、他方で中国や韓国の人はどんどんふえてきているという、日本のプレゼンスの低下というものが、日本を知る、あるいは日本との関係を重視する方々から特に懸念として表明されているということで、それをどのようにバックアップをしていくかということを、今具体的な案を検討しているわけであります。

 ですから、留学生をどうふやしていくかということが一つと、あと、今委員がおっしゃったJETプログラムについては仕分けの対象になりました。このJETプログラム自体ではなくて、仕組みそのものについて、いわゆる非効率性についての仕分けが行われたわけでありますが、JETプログラム自体がだめだという話にはなっておりませんので、これをどう再び拡充をさせていくのかということと、あとは逆JETですね。日本人でアメリカに行って、例えば日本語を教えるというような人たちをふやすということも大事だと思います。

 あとは、この外務委員会のメンバーの皆さん方にぜひ逆にお願いしたいことでありますが、数年前に日米国会議員会議というものを、これは院の正式な交流としてスタートをいたしました。そのときの日本側の代表は中山太郎先生でありました。私も参加をさせていただきましたけれども、これについても、一回往復をしただけで、消滅をしたわけではありませんけれども、これも先細りをしている。アメリカ側の代表はダニエル・イノウエ上院議員でありますけれども、このダニエル・イノウエ上院議員を中心として、ぜひ皆さん方には連絡をとっていただき、ダニエル・イノウエ上院議員から仲間をふやしていただいて、アメリカの連邦議員との交流というものを皆さん方でぜひ拡大をしていただきたい。それがまた人的交流にもつながってくるんではないかと思っております。

 今回、私自身もハワイに行って日系の方々とお話をしてきたいと思っています。このときもダニエル・イノウエ議員にコーディネートしていただきますし、この間も、アメリカの方だけではありませんでしたけれども、日系人の方が来られて、飯倉公館でレセプションをさせていただきましたけれども、とにかく事ある機会を通じて、私は日系の方々にお力をいただくというのも一つの大きな柱だというふうに思っておりますけれども、政府も努力をしてまいりますし、ぜひ委員の皆さん方の御尽力も心からお願いを申し上げたいと思います。

中林委員 我々も頑張っていきたいと思います。ありがとうございます。

 また、日本人が非常に内向きになっているという意味では、日米関係に限らず世界じゅうでもこれは顕著であるというふうに感じております。例えば、先日来から大きな問題になっております尖閣問題ですね。これは海外でこの尖閣問題について聞きつけた人たちが異口同音に言うことというのは、中国の主張はよく聞こえてくるんだけれども、どうも遠く日本からの主張が聞こえてこない、日本の情報発信力は一体どうなっているのだというようなことなんですね。

 やはりこれは、人的交流といったものが先細り、そして日本人自身が内向きになり、余りにも外に対する発信力が弱くなっているということの結果ではないか。これは急に起こったことではなくて、長年かけて起こっていることだというふうに思うんですけれども、この日本の発信力の強化、本当にもうすぐにでも始めて対策を打っていかなければいけない部分だと思います。

 日米に限らず、発信力の強化についてのお考えをぜひお願いいたします。

前原国務大臣 大事な御指摘だと思います。

 ただ、この尖閣の問題については、我々のスタンスは領有権問題は存在しないということでありますので、存在しないものを殊さら声を上げて主張するのもいかがなものかという面もあったことは御理解をいただきたいと思います。

 ただ、事実でないことが広まっている、これについてはしっかりと反論をし、訂正を求めるということをかなり細かくやっておりますし、また、国際会議や外相会談あるいは首脳会談においては、事あるごとに、日本の歴史的な尖閣の立場、法的な立場、そして今回どういう事案であったのかということについては、事細かに説明をしております。また、外務省を通じて、日本にある各国の大使館に対して手分けをして説明するということもやっておりますので、派手ではないかもしれませんけれども、地に足のついた形で、今回の問題についてはしっかり説明をしております。

 ただ、いろいろな委員からも御指摘をいただきまして、ホームページ等でもう少しわかりやすいQアンドAに変えていくとか、あるいは多国語を取り入れるとか、そういった改善についてはさまざまな委員のアドバイスをいただいて行っているところでございまして、委員からも具体にどういう改善点があるかというアドバイスをいただければ、積極的に見直させていただきたい、アドバイスをいただきたいと思います。

中林委員 ありがとうございます。

 けさの外務部門会議でも大きな話題になりました。やはり日本はもっと国際法といったものを踏まえた上での議論を展開していく必要があろうということかと思います。またこの辺はしっかりと議論を詰めていきたいというふうに感じております。

 最後の質問になります。時間が非常に迫っておりますけれども、十一月に横浜でAPECを控えております。自由貿易拡大ということは日本の経済力を高める上でも非常に重要なことではないかというふうに私も思っておりますけれども、これこそ、やはりまだ農業など拙速に進められない問題を抱える日本にとって、政治的意思、ポリティカルウイルというものが非常に大事になってきています。それには国民的な合意形成をしていく必要が何よりも大事だと思うんですけれども、そのために、数値ですとか、あるいはその根拠といったものを、どうしても国民に示して理解をいただく必要があります。その場合の複数にわたる省庁で蓄積された数字だとか分析だとかといったものを外務省がどういうふうにまとめようとしているのか、また、いろいろな省庁のさまざまな問題をどこかがまとめていかなければいけない中で、外務省としての役割をどのようにとらえていらっしゃるか、お願いいたします。

前原国務大臣 逃げるわけではありませんが、外務省がまとめるという立場には恐らくないんだろうと思います。これはやはり内閣官房で各役所の数値の根拠というものはしっかりと整合性をとっていく、あるいは政調会のもとでそういった数値を内閣と与党、すり合わせていくということが大事だと思います。

 でも、これは委員が御指摘のとおり、各役所から出てくる数値というのは各役所の思いが込められた数値でございまして、どことは申し上げませんが、ある役所から出てくる数値と別の役所から出てくる数値というのは全然違うという面がなきにしもあらずでございます。しかし、やはりそれをしっかり統一していくということ、そして内閣としての統一の客観的な分析をするというのは大事なことであります。

 この問題で私が思うのは、国を開くということを行っていくことはだれもが大事だと思っていると同時に、農業をないがしろにしていいと思っている人もだれもいないわけですね。ですから、そこが何か、国を開くということと農業が壊滅的なダメージを受けるということが殊さらリンクをされて、実は両方必要なんだという意味での前向きな議論が余りなされていないというのが私は残念だな。

 逆に言えば、国を開かなくても、今の農業がこのままいって、果たして産業として成り立ち得るかどうかということも客観的に考えていかなくてはならない問題だと思いますので、ぜひ与党の中でも、両巨頭がお二人座っておられますけれども、ぜひ、長島、吉良両委員を中心に、皆さん方でも、国を開くということと農業の再生というものを両立させなければだめなんだということをぜひ御議論いただいて、政府・与党一体となっていい考え方をまとめなくてはいけないと思いますが、余り時間がないということも確かでございますので、力を合わせて国民に対する理解を求めていくための努力もしていきたいと考えております。

中林委員 ありがとうございました。

 私の時間はこれで終了となりました。大変短い時間でしたので、多くの事柄を駆け足で伺いました。本当にありがとうございました。

小平委員長 次に、勝又恒一郎君。

勝又委員 民主党の勝又恒一郎でございます。

 本日は、こうした質問の機会をいただきまして、先輩、同僚委員の皆さん、まことにありがとうございます。そしてまた、個人的にも、二十数年前からともにこの国を憂い、政治の将来を案じ、議論してきた前原大臣に質問できることを大変うれしく思います。ぜひ率直な御答弁を、きょうはよろしくお願いいたします。

 今、日本の外交あるいは日本の行く道というものは、非常に私は岐路に来ているというふうにつくづく感じるわけであります。特に、今回の尖閣諸島の事案を例に挙げるまでもなく、やはり中国の存在の意義が大きく変わってきている。そしてまた、経済においても、グローバリゼーションとともに相互依存が相当に世界じゅうで深まっている。また一方で、日本が抱える、大臣もいつも言っている少子高齢化という非常に厳しい将来の条件。

 こういう中で、日本がこれからどういうふうに国益を守っていくか。そしてまた、私は、日米同盟のことについても新しい段階に入っていかなければならない。それを深化ということで私は表現したいと思いますけれども、そういう思いを持って、きょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、まず最初に、尖閣諸島の事案を含めて伺いたいんですが、大臣は先般の委員会でのあいさつで、中国による透明性を欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化に懸念を有しているということをおっしゃられております。そうした状況認識の中で今回こうした尖閣諸島の事件が起こっているわけですが、そこは、我々政権を担当してまだまだ時間が浅い、経験値も浅い。私は、いろいろな意味で教訓があったのではなかろうかと思います。

 過去のことをどうこうというわけではなく、将来に向けて、やはり民主党も、そしてまたこの政権も、こうした危機管理あるいは安全保障上の意思決定、こういうものをよりブラッシュアップしていく、過去の歴史の教訓に学んでいくということが非常に私は大事ではないかなというふうに思っています。

 そういう意味で、今、この問題についてさまざまな報道がなされている中で、いわゆる官邸あるいは外務省の二元外交などという言葉も使われていますが、私は、外交というのはさまざまなチャネルを使ってやるのは当然であり、官邸、外務省、党、あるいは野党の方々も含めて、あるいは民間の方々も含めて、さまざまなルートを使ってよりよい結論を導き出す、そういう方程式だと思っています。

 そういう中で、今回のこの尖閣諸島の事案ですけれども、いわゆる安全保障上のこういう危機管理、意思決定、そういうところにおいて、大臣は、国土交通大臣としてもこの問題にかかわり、外務大臣としてもかかわっているという立場ですから、相当中枢にいたという中で、どんな教訓を今感じられているのか。そしてまた、その教訓から導かれる、今後のこうした非常に緊張感の高い、危機感の強い問題、あるいは安全保障にかかわる問題、こういうことの意思決定についてどのような改善策があり得ると思われているか。具体的に言えば、いわゆる安全保障と防衛力に関する懇談会は、去年の八月の提言の中で日本版NSCのことに触れています。

 こういうこともいろいろ議論があった中で、今、大臣はどんなことをお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。

前原国務大臣 勝又委員にお答えをいたします。

 尖閣の問題が起きたときは国土交通大臣でありました。海保というものの能力、そしてまた士気、これは私はすばらしいものがあるというふうに思っております。また、もちろん、こういった場で申し上げることのできないようないろいろな規則、内規、それはある意味での実力組織ですから、内規のようなものが存在をしているというのは事実でございますし、そういう意味では、私は、海保については危機管理体制に問題があるという認識は全くありません。

 委員の御指摘の点というのは、やはり各省にまたがることの総合調整というものをどうしていくのかということだと思います。

 その面でいえば、尖閣の問題のみならず、私の今の率直な感想を申し上げれば、やはり統合された情報がなかなか得られないということの問題というのはあるんじゃないかと思います。総理が持っておられたらいいんですよ。もし総理がさまざまな役所の機微に触れる情報を持って判断をされているということなら私はいいわけでありますけれども、それが果たして日常的に全部できているのかどうなのかということは、今の私の立場でもすべて見えないことがあります。

 これはもちろん、総理が意思を持って情報収集、例えばこのテーマについてある情報をできるだけ持ってこいということでおっしゃれば、集まるものでありましょう。また、そうでなければ一国のリーダーというものは私は仕事ができないと思います。ただ、他方で、自動的にそういう情報が上がって分析できる仕組みというものが私は必要ではないかという思いを強く持っております。

 日本版NSCなんということはよく言われますけれども、器の話ではなくて、例えば、あるテーマが決まっていて、各省のそれの機微に触れる情報というのは自動的に上がって分析されて、その分析結果が総理に上がって、総理が政策判断できる、こういう仕組みが、私は、今見ている限りでは万全ではないのではないか、不十分ではないか、こういうふうに思っております。

 もちろん、内調という仕組みがあって、内閣官房というところがあって、いろいろな情報が集まっているようになっていると思いますけれども、例えばアメリカだと、長島筆頭理事なんかは最もお詳しい方でありますけれども、安全保障のブリーフというのをNSCで毎日、大統領に対して十分でも二十分でもするわけですね。それによって機微な情報を含めた、分析を含めた判断ができるようなバックグラウンドがある。私は、そこまで高めるということが必要で、必ずしもそれは仕組みとしてのNSCではなくて、そういういわゆるシステムをしっかり確立するということが必要ではないか、今見ていてそういう思いを持っております。

勝又委員 ぜひ、この事案に深くかかわった大臣としても、今おっしゃったような、自動的に機微に触れる情報が上がり、そして分析され、シミュレーションが行われ、そして意思決定者が判断できるような仕組みというか、その今の体制をつくっていけるように御努力をいただきたいというふうに思います。

 時間がないので次の質問に移らせていただきます。この問題はぜひよろしくお願いします。

 次は、日米同盟も含めた議論に入りたいんですけれども、大臣は、この前のあいさつで、日米同盟は日本外交の基軸であるということもはっきりおっしゃられた。非常に大事なメッセージなので、これはもう、都度発信をしていただきたいということを言いたいと思いますが、同時に、日米同盟を一層深化させる必要がある、これも私は全く同感です。

 そういう観点から一点、安全保障と経済両面にかかわる意味の課題についてお伺いをしたいと思います。それは、防衛分野における日米の技術協力の問題であります。

 言うまでもなく、科学技術の発展における防衛分野は非常に大きな意味を持っているということは、もう今さら私が言うまでもありません。インターネットしかり、GPSしかり、いわゆる軍事分野から出てきた技術が民生分野で世界じゅうの経済発展に活用されてきたことは論をまちません。そういう意味において、単純に軍事か民生かという分け方も、もう今や科学技術の分野においては私はなかなか難しいと思っています。

 そういう状況を考えた中で、やはり世界の技術先進国であるアメリカ、こういう国と日本の産業がどう連携していくかというのは、日本のこれからの成長、あるいは日本が科学技術の分野で世界で一流であるために、私は極めて重要だという認識を持っております。もちろん、防衛力の強化あるいは日米同盟の強化という意味においても大きな意味を持ってくる。

 こういう防衛力、産業技術の二つの意味において極めて重要な意義を持つ日米の防衛分野における産業技術協力、特にこれを共同開発、共同生産という部門まで引き上げていく、あるいはそれを強化していくという考えは今、政府にないかどうか。そしてまた、そういうことを考えた場合に、今の、俗に言う日本における武器輸出三原則、この問題との関係はどのように整理されるか、お答えをいただきたいと思います。

前原国務大臣 私は、水というのは当然のことながら高いところから低いところに流れるというふうに思っておりまして、技術協力が成り立ち得る前提というのは、お互いに与え得る技術がある、あるいは相手側に欲しい技術がある場合のみ技術協力ができる、それは同盟国であるアメリカとの間であったって当然のことだと思います。こちらに技術がないのに、同盟国だから一緒にやりましょうと言っても、それは向こうからすると、何のメリットがあるんだという話になると思うんですね。

 そういう意味では、自民党政権時から、例えばミサイル防衛については、日本のさまざまな先端技術というものが生かされて技術協力というのがなされてきたと私は思っております。その意味では、今までも技術協力というのはされているし、さらに行っていく必要がある。その際に、例えば共同研究、共同開発というところまでいこうと思えば、今の武器輸出三原則をどう考えていくのか。

 今までの自民党政権下では、武器輸出三原則は変えないで、官房長官談話ということで例外を少しずつ拡大してきたというやり方がなされてきたわけでありますけれども、そういうやり方でいいのかどうなのかということと、防衛大綱を今議論しておりますけれども、その中において、武器輸出三原則を基本的な考え方は保ちながらどのように担保していくのか。今お話のあったような共同開発ですね。

 そういったところを今後、防衛大綱の議論も含めて、政府・与党一体となって議論をしていかなくてはいけないテーマではないか、このように思っております。

勝又委員 これは大臣の持論でもあると思うんですけれども、やはり外交、防衛の分野というのは、私は、政権交代をしようがしまいが、国益を追求するわけですから、余り大きく意図を持って変える必要はないと思っているんです。逆に言うと、いいものは引き継げばいいし、まさにこの武器輸出三原則の見直しの問題というのは、政権交代直前の八月に懇談会でも出ている提言でありますね。要するに、なぜそういうものが出てくるかという背景だと思うんです。

 武器輸出三原則というのは、そもそも佐藤内閣のころの、もう今から四十年以上前に出てきた概念、三木さんのときでさえ三十数年前ですよ、それをまたさらに後藤田さんが解釈を加えという形で、じわりじわりと微修正をして何とか世の中の変化に対応してきた。

 しかし、大臣、どうでしょうか。時代の流れが、本当に東西冷戦時代のそういう時代、そしてまた中国の存在が全く違う次元の時代、やはりそういう時代のあり方と、現代の国際環境、日米の環境、アジアの環境を考えたときに、私は、こういう分野において日米がしっかりとタッグを組んでいる、お互いかなり深い次元で技術協力できている。逆に言うと、日米でこの技術をしっかり持たれてしまうとなかなかこれは強いなというふうに諸外国から見て思われる、こういうスタンスというのは、私はこれから極めて重要ではないかというふうに思っています。

 そういう意味においては、決してこれは民主党政権云々というのではなくて、時代の流れとして、私は、微修正ではなくて、こうした技術協力の分野について新しい原則を議論し、考える時期に来ているのは、もうこれは与野党を超えて一つの流れではなかろうかと思うんですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

前原国務大臣 勝又委員と議論をしていると、もう一〇〇%本音で話したくなるので、自分を抑えるのがなかなか大変で、しかも、前に座っておられる理事がいい質問だとあおられるので、なおさら答弁が非常にやりづらくなるわけでありますが、外務大臣という立場と、この武器の問題については、防衛大臣が携われ、また内閣としてどう考えるか、また政府・与党一体となって今、防衛大綱の見直しも行われていて、そしてこの武器輸出三原則についての議論も行っていただいているという認識でございます。

 したがって、私からは、自分の意見というよりは、今の趨勢はどうなのかということの中で申し上げると、特に戦闘機なんかは、共同研究、共同開発というのが大きな流れになってきていると思いますし、これからもその流れというのは、私は変わらないんだろうと思います。

 そうなると、まずは、みずからの技術をみんなで持ち寄ってよりいいものをつくる。そして、よりいいものをつくって共同で開発、生産するから、一機当たりの単価は安くなる。いいものが安くなり、しかも、同じものをみんな共有して持っていて、ほかの国々の軍事のレベル、例えば防空能力なんかは理解できるということで、そういう意味での信頼醸成にもつながってくるという、いろいろな意味でのメリットが私はあると思いますし、それが趨勢になっているというふうに思います。

 その趨勢をどう取り込んでいくのかということについて、今後、防衛大綱の議論を含めた、今委員のおっしゃった武器輸出三原則のあり方も含めて、しっかりと政府と与党の間で、本当におっしゃるように、これは与野党ございませんので、野党の皆さん方の御意見も伺って、しっかりと後世に自信のあるものをまとめるという観点が必要かと私も思っております。

勝又委員 ぜひ、新しい時代に合った議論、結論を出していただきたいと思います。

 次のテーマに行きますが、大臣も大変力を入れているインフラの海外展開なんですけれども、これは非常に大臣も、これから重要な意味を持っているということで力を入れて、外国に行っていただいています。非常にいいことだと思います。同時に、大臣、これはもう政府の頭にもあると思うんですが、さきのレアアース問題を含めて資源外交とも非常に密接にかかわってくる、戦略性が必要だと思っています。

 インフラを我々が供与する、ODAをする、そういうことも含めて、一方で、国内産業のために成長分野として活用する、同時に、その相手国からは、資源という形で日本の足らざるものを得ていく、そういう新しい外交が必要だと思うんですけれども、この点について、今どのあたりに課題を感じていて、どのあたりに重要案件があると認識しておられるか、御答弁をお願いします。

前原国務大臣 大変いい御指摘だと思います。

 今、世界地図をつくって、どの国にどんなインフラ需要があるか、どの国にどんな資源があるか、そして日本がODAを供与しているかしていないか、しているとすればどういう形でODAを供与しているかということをすべて同時に見られるような仕組みをつくると同時に、それを一元的に行えるような体制に、外務省の中をもう変えました。そういう統一して情報が集まる室というか部屋をつくって、部署をつくって、今おっしゃったようなことをもうやり始めております。

 どこにということになると、いろいろな国がございますし、例えばおとついインドのシン首相が来られて、非常にいい果実と、そして議論が行われたという認識を持っておりますが、レアアースの問題でも議論をしたし、インフラもODAをどう絡めていくかという議論もさせていただきましたし、そしてまた同時に、戦略的な対話というもので、さまざまな両国が関心のある問題についても議論していこうということになりました。

 そういったことをいろいろな国に対して、今度ベトナムに行きますけれども、ベトナムでもそういったことを行っていく、いろいろな国々に対してしっかりとやっていく。

 私は、余りダイレクト過ぎてもいけないかもしれませんが、ODA、確かに貧困撲滅とかそういうことも大事ではありますけれども、日本がODAをする以上は、日本にとってどんなメリットがあるのかということも一方では考えながら、あるいは、ODAを行うことによってレアアースの開発が進むとか、円借款というものがSTEPというやり方で日本の企業が受注できるとか、やはり日本の国民の税金を使ってやることですので、そういうさまざまなメリットにつながるようなものを行っていくということで、体系的にしっかりと進めていきたい、このように考えております。

勝又委員 時間が終了いたしました。クリントン長官との会談、頑張ってきてください。ありがとうございました。

小平委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。質問をさせていただきます。

 冒頭、これは外交案件とは少し違いますが、民主党の代表経験者であります、そしてまた枢要な閣僚でもあります前原大臣にお伺いします。

 民主党は企業献金の再開を党の方針として決めたということが報道されております。二〇〇九年のマニフェストでは、企業・団体献金の廃止ということ、これが多くの国民に受け入れられたと思いますし、前原大臣は従前から同じようなお考えをお持ちだと思っております。今回のこの企業献金の再開ということについてどのようなお考えをお持ちか、お伺いいたします。

前原国務大臣 党で決められたことだと思いますが、ただ、民主党の一議員としては、企業・団体献金の廃止という方向で法案まで出すということを決めていたのに、まだ出していないのでそれは法律違反ではありませんけれども、企業・団体献金の再開を決めるということは、国民からすれば、違う方向を向いているととられても仕方がないのではないかと私は思います。

小野寺委員 率直な発言、ありがとうございます。私ども政治家として、みずから正すべきところを正すということ、その姿勢は大変必要だと思っております。

 さて、もう一点お伺いをさせていただきます。

 済みません、通告していなくて恐縮なんですが、ベトナムで今月末にASEANの会議がございますが、この際、私ども大変強い関心を持っているのは、今、日中関係、大変大きな問題になっています。日中首脳会談の開催の見通しについて教えていただきたいと思います。

前原国務大臣 今、日中の外交ルートで調整をしている段階でございます。

小野寺委員 ぜひ、このような機会、そしてまたその後、APECもございます、やはり首脳の対話が大切だと思っております。

 ハワイに行かれるということ。実は、ダニエル・イノウエさんは十一月二日に選挙でございます。ぜひ、選挙の必勝、そして当選お祝いを言っていただければと思っております。

 さて、まず尖閣の問題に入りたいと思いますが、冒頭、これは私ども外務委員会でも盛んにこの話が出ているんですが、ビデオの公開、これをぜひ私どももしていただきたい、そう思っております。

 理由は、中国のメディアが従前からこの問題については、これはむしろ海上保安庁の船が中国漁船に追突したものだ、中国側は被害者だということを世界に向かって喧伝をしております。これを否定するためには、私ども、このビデオの公開というのをぜひ明確にしていただきたい。

 そして、ビデオを見ているのは、実は、大臣でいらっしゃった前原大臣も見ていらっしゃいますし、数人の方しか恐らく見ていないと思うんです。私どもとしては、ぜひこれを、予算委員会の限られた形だけではなくこの外務委員会でも、あるいは多くの国民の皆さんにも見ていただくように働きかけをしていただきたいと思いますが、このビデオの公開についてはどのようにお考えでしょうか。

前原国務大臣 検察が判断をされて、どういう出され方をするのか、されないのか、そこは私が今申し上げる立場にはないというふうに思っておりますが、いずれにしても、先ほど小野寺委員がおっしゃったように、私は国土交通大臣としてビデオを見ました。短縮版、五分ぐらいでありましたけれども、海保がぶつかっているという事実は全くありませんし、中国側の漁船がぶつかってきている、これはもう間違いのないことでございますけれども、そこは国会、委員会でまた御議論をいただければというふうに思っております。

小野寺委員 理事会でも出ておりますが、外務委員会としても、理事の御判断、ぜひ公開というのを私ども委員にもしていただければと思っております。

 さて、尖閣の状況ですが、今回の船長の逮捕事案に関しては、海上保安庁の職員の方が命をかけて、身を挺してこの漁船に乗り移って、そして停止をしたと伺っております。また、近々、中国の漁業監視船が尖閣周辺に来ている、今、ある面では緊張感も走っている海域だと思いますが、現在の中国の漁船並びに漁業監視船の状況について、海上保安庁の長官にお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島周辺海域における中国の漁船、それから漁業監視船の状況でありますが、まず、漁船の方につきましては、十月十八日以降本日朝まで、尖閣諸島周辺の我が国領海内において中国漁船の操業は確認しておりません。

 一方、監視船の方でありますが、中国漁船の衝突事件以降、尖閣諸島周辺海域において三回事案を確認しております。一回目が九月十日から十七日、二回目が九月二十四日から十月六日、それから三回目が十月二十四日から二十五日にかけてでございますが、いずれも、領海が十二海里までですが、領海十二海里から二十四海里までを接続水域と呼んでおりますが、その接続水域のところを航行しておりまして、我が国の領海内には侵入しておりません。これに対しては、我が方の巡視船が無線等で注意喚起をするとともに、動静監視をして領海内に入れないようにということでブロックした事案でございます。

小野寺委員 こういう事案でまたさまざまな緊張感が走らないためには、これはこの漁業監視船なのか、中国のいわゆる取り締まり、警察権のある監視船と日本の海上保安庁の連絡を密にするということが大切だと思うんですが、今どのような形で日中間の、特にこの取り締まり関係の連絡、連携が行われているか、教えてください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 この漁業監視船は、中国のいわば水産庁に当たるようなところの船でありまして、私ども今まで余りおつき合いはございません。来たのも今回初めてであります。むしろ、中国漁船の違法操業などを監視、取り締まりをするために来るのが筋だと思いますが、先ほど答弁しましたように、漁船がいないにもかかわらず監視船がやってくるというのは極めて遺憾でありますので、外交ルートを通じて抗議もしていただいているところでございます。

小野寺委員 おっしゃるとおりで、実は中国は、今私どもが聞いている範囲では、五つぐらいのさまざまなこういう監視船が各省庁でまたがっている。ですから、当然日本は保安庁が中心で対応するわけですが、さまざまルートがないという中で、やはりお互いに今後しっかりと緊張感が走らないように連携をしていくことが大切だと思っております。

 さて、私ども、今回この尖閣の問題で一番危惧をしておりますのは、実は、従前からアメリカが、日米安保条約五条の適用になるという範囲が、これは施政権の及ぶ範囲というお話をされております。ということは、私ども、この尖閣については、常に施政権が及ぶということを想定して対応しなければいけないと思っております。施政権が及ぶというために、事実上、私どもの支配がしっかりできるということをするために、政府は今後どのような方向をお考えなのか、大臣にお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 今回、九月の日米外相会談において、クリントン長官からはもう少しダイレクトな言い方で、尖閣について日米の安保条約第五条の適用というものが表明されたわけでございます。もちろん施政権というものが前提であることは間違いありませんが、より踏み込んだ形での話が行われたと認識をしております。

 一方で、今委員がおっしゃったように、実効支配を続けていくということは大事であります。今、鈴木海保長官もお話をされましたように、海上保安庁が一義的にしっかりあの海域を守って、そして領海内に入れないという努力をされているわけでございまして、実効支配はできているというふうに思っております。

 あと、いろいろな公船、先ほど委員は五つぐらいとおっしゃいました。私が認識しているのは四つぐらい、軍隊を入れると五つになるかもしれませんけれども、そういう意味においては、中国のみならず台湾についてもコーストガードがあの海域にはよく顔を出してまいりますし、一義的には海上保安庁の巡視体制、監視体制というものをしっかり築いて、これからも実効支配を続けていくということがまずは大事なことではないかと考えております。

小野寺委員 昨日、石垣の市長、市議会議員とお会いをさせていただきました。決議文を渡されました。これは、地方税法に基づく固定資産課税の評価をするために、石垣市の一部であります尖閣に上陸をして、そして調査をしたい、上陸をしたい、そういう申し出でありました。

 これは、多分私どもの政権から続く内容だと思います。私どもの反省も踏まえ、やはりこういう上陸に対して、特に、固定資産課税の調査という税法に基づいた市長の行う権限ということに関しては、上陸を認めてもいいのではないかと私どもは思うんですが、この市長並びに市議会の上陸につきまして、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

前原国務大臣 影の内閣の外務大臣の小野寺議員がお会いをいただいたということで、私はきのう、午前中は委員会、午後はREDDプラスの会合で名古屋に行ってまいりまして、残念ながらお会いできませんでしたので、伴野豊副大臣がお会いをさせていただきました。委員と同様のお申し入れを承りました。

 平成十四年の政府の確認によって、何人も今上陸をさせないということが前政権から続いているわけでございまして、基本的に我々はそれを踏襲しようというふうに考えておりますが、ただ、地方税法に基づいて市長からそういう御要望が出されたということについては、我々は真剣に検討しなくてはいけないということで、今、内閣官房を中心に各省との話し合いをさせていただいているところでございまして、少しお時間をいただきたい、このように考えております。

小野寺委員 少しということは、検討の中で可能性もあるというふうに考えさせていただいていいんだと思います。

 実は、昭和三十年代から一度もこの調査が行われていないので、固定資産税の評価は三十一年か二年の評価にとどまっているということでありますので、そこは、国内法も粛々と適用する中での尖閣の問題、大切かと思います。

 また、私ども、やはり海上保安庁がしっかり対応することが大切だと思うんですが、今後、さまざまな形でいろいろな方がこの尖閣に対して上陸する可能性もございます。例えば監視業務、よく密漁監視では無人の監視装置等が今十分に機能しておりますので、何かそういう新しい日本の監視システムをこの尖閣に設置するというような予定、考え方はございませんでしょうか。

前原国務大臣 現状においては考えておりません。

小野寺委員 ぜひ、この問題、国民が注視をしておりますし、これを一つ譲ってしまうと、今後、日本の外交、あるいはあらゆるところの領土の問題に問題が生じますので、しっかりとした対応をしていただきたいと思っております。

 もう一つ、東シナ海のガス田の問題についてお伺いをしたいと思います。

 これは、どうも中国がかなり掘削に関して開始をしていて、その状況がもう明確ではないかというようなさまざまな報道がされておりますが、現在の中国が行っている掘削開始の可能性についてお伺いをしたいと思います。

前原国務大臣 白樺の件でよろしいでしょうか。(小野寺委員「はい」と呼ぶ)

 白樺につきましては、これまでなかった機材の搬入が確認をされておりまして、掘削を行っている可能性はあると思っておりますが、まだ断定できる状況にはございません。引き続き分析し、また確認をしているところでございます。

 中国側には、一方的な活動を控えるように強く申し入れを続けているところでございます。ただ、中国側にこれを申し入れますと、断じてやっていない、こういう答えが返ってまいりますし、信頼をしてもらいたい、こういう返事が返ってきております。我々もしっかりと分析を行って、その現状についてしっかりと把握をさせていただきたいと考えております。

小野寺委員 中止要請を行って、仮に、中国が実際にこれを掘り始めてしまって、既に稼働したということになった場合に、日本としては、これは抗議だけではもう済まない、中止に対する何らかの行為を行わなきゃいけないと思うんです。もし中国が実際に信頼してくれと言っても、それは突然、ごめんなさいということもあり得ます。そのときに日本はどのような対応をとるか、大臣にお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 仮にそういう状況になった場合にはしかるべき措置をとらなくてはいけないと思っておりますが、これは影の外務大臣でいらっしゃる小野寺委員もおわかりだと思いますけれども、今からこんなしかるべき措置ですよということを申し上げることは、むしろ国益にならないということは御理解をいただけると思いますので、この中身については差し控えさせていただきたいと思います。

小野寺委員 これは、では私が勝手に、こういうこともあるのかなということをお話しさせていただきたいのは、例えば、今回向こうが実際に掘削を始めたということであれば、当然、日本が日中間の協議の前に対応を考えていた、例えばその近くで日本側も採掘を始める、お互いに掘りっこしましょうということだって考えられると思うんですが、この試掘の検討は現在どこまで進んでいるのか、今していないのか、そのことについて教えてください。

前原国務大臣 何度もお答えをいたしますが、影の外務大臣、つまりは政権与党になれば外務大臣になられるお立場でありますので御理解をいただけるというふうに思いますけれども、機微に触れる話については、こういう場では差し控えさせていただきたいと思います。

小野寺委員 何か日陰の身みたいで、寂しく思っております。いや、冗談です。

 さて、この東シナ海のガス田問題、これはこれからも我が党の同僚議員が追及されます。これも大事な国益の問題になります。

 もう一つ、恐らく多くの国民が今大変注目をしておりますTPPのことについて、お話を伺いたいと思います。

 私の地元も実は農村部でありまして、農業が主体で生きている地域でもあります。長年、先祖伝来、この農業の問題、大変重要に思ってやってきたところ、そしてまた、幾度かの自由貿易の中で、その荒波をかいくぐって、和牛の生産をしてきたり、あるいはリンゴの品質を高めたり、サクランボでむしろ輸出を図るような状況を努力したり、そういう地域でもあります。

 そういう中、これは大臣の本意ではないとは思うんですが、報道で私ども聞いてちょっとがっかりしたのは、GDPの一・五%の農業が全体の九八・五%の産業の足を引っ張ってはいけない、こういうお話をされたかと思っております。

 きょうは、篠原副大臣に来ていただいております。

 まず初めに、このTPPの交渉あるいは今後の方向について、前原大臣のお考えをお伺いさせていただきたいと思います。

前原国務大臣 今、私の発言を引用して質問をされましたけれども、私は一貫して、農業を切り捨てていいなんということは一度も言ったことはございませんし、これっぽっちも思っておりません。

 これはむしろ、水産業を特に、専門家でいらっしゃいますし、また地元が一次産業が中心の小野寺委員の方がよく御承知だと思いますけれども、今のままの農政を、仮に国を開かなくても開いても続けていって、果たして明るい将来像があるのかというところもあわせて考えていかなくてはいけないと思います。

 つまりは、これも私、よく言及することですけれども、先進国の中でも最低レベルの、カロリーベースでいえば食料自給率四〇%、これはやはり上げていかなきゃいけないし、農業の従事者の方の平均年齢は六十五・八歳でございます。このままいったら、だれが今後しっかりと日本の農業を支えていただくんだという人材の問題が極めて大きな問題になってくる。しかし、その国を開くか開かないかということは別にしても、農業というものはやはり産業として、あるいは地域の雇用の受け皿、経済の柱として再生させるということはやっていかなくてはいけないし、それを国を開くということとあわせて、同時にやっていけないかということを私は申し上げているわけであります。

 他方、国を開くということについては、日本はおくれております。日本の貿易量でいえば一六・五%がFTA、EPAのカバーされている範囲でございまして、韓国は約三六%、ほかの国はもっと高いというところがございまして、そういう意味では、関税のかかる、かからないというところでも競争力に彼我の差が出てきているということも事実でございますし、そういった点を考えれば、国を開くということについては極めて大事なテーマであって、この両立をお互いが知恵を出して今考えていかなきゃいけない転換点にあるのではないか、そういう思いを私は持っているところでございます。

小野寺委員 TPPの問題、これは菅総理の所信表明の中で出てまいりました。もちろん、ことしの春ぐらいからさまざまな議論が行われたことは知っておりますが、私ども、農政を含めた日本の構造改革大転換になるような重大な問題、これをやはり国会で十分時間をかけて、国民が知っている中での議論ということがまず大切かと思っております。ですから、今回のAPECで突然方針が決まる、そういうことではなく、やはり多くの内容について議論を深めて、それで初めてさまざまな対策が出てきてということにもなると思います。

 そこで、私ども、ちょっと衝撃的だったのは、この農業被害、被害という言い方は失礼ですが、農業の中での今回の影響が四・一兆円という数字、これがひとり歩きもしております。

 まず、今回、一番大きな状況、厳しい状況になるだろうと思っている農業の問題について、どのようなお考えを農水省としてお持ちなのか、その対応について、そしてまた影響について、篠原副大臣にお伺いしたいと思います。

篠原副大臣 久しぶりの外務委員会でございます。私、三年、外務委員会で一緒に議論をさせていただきました。ありがとうございました。

 まず、農業への影響の試算でございますけれども、きょう記者発表をすることになっております。十九品目、先ほど小野寺委員が触れられた牛肉もリンゴも入っております、米、小麦ですね。全体で幾らかと。仮定がこういうものには常に伴うわけでございますけれども、TPPだけじゃなくて、全世界に向けて関税をすべてゼロにした場合、これはもう小さな国しかありませんので、ほとんど変わりないと思います。それから、何も対策を講じなかったという仮定、この二つの大前提があります。それで四・一兆円の生産減でございます。

 これは、オーストラリアとのEPA、FTAがいろいろ議論され始めたときに一度計算しております。それから、もっときちんとしたものでは、二〇〇七年に、経済財政諮問会議に出すように求められ、提出しております。それと全く同じ手法で計算いたしました。

 そうすると、自給率は、二〇〇七年は四〇%だったんですが、一二%に減るというのが、今回は一四%にとどまります。これは……(小野寺委員「一四%だけになるということですか」と呼ぶ)一四%に減ってしまう。ですから、前回一二ですから、人口が減ったり、食べる量が少なくなったり、分母が小さくなったのでということですね。

 それから、ほかには、GDPの話をいろいろ前原外務大臣が言っておられるわけですけれども、我々は、農業の多面的機能というのを計算しておりまして、農業が立ち行かなくなると同時に、多面的な機能、景観だとか水資源の涵養とか、そういったものの損失が三・七兆円というふうに計算しております。

 基本的な方針でございますけれども、これは菅総理もいろいろなところで述べておられると思いますけれども、当然のことです。我々は、EPA、FTAを推進していただいて結構だと思います。しかし、それはすべてじゃなくて、日本の国に合わせて、貿易の自由化と同時に、食料自給率の向上、農業、農村の振興、こういうことも同時に達成していかなければいけないんじゃないかと思います。そのためには、最近、民主党の中でも、国会でもよく言われていますけれども、熟議をして決めていくべきことではないかと思っております。

小野寺委員 きのうは、経産大臣の方で、TPPについて慎重な意見が記者会見で出たと思っております。私どもが心配をしているのは、閣内でさまざまな意見が出て、結果的に、総理の方針あるいは一部の閣僚の方針が前向きで、実はほかの閣僚が後ろ向き、結局どこに向かっていいかわからないという状況が一番心配されます。

 特に、今回、農業の問題につきましては、これは水産業も林業もそうですが、今の試算、これは何も対応しなかったらということですけれども、やはり四・一兆円というと、これは農業の総生産額がたしか八兆円ですから、半分になってしまうということ。これは、特に私ども、地方の農業、恐らく砂糖であれば北海道、沖縄が大変な被害を受けることになります。また、牛肉、リンゴ、米、さまざまなものであれば、恐らく東北、四国、九州、さまざまなところが大打撃を受ける。もちろん、御地元長野もそうだと思っております。そして、恐らく残るとすれば、むしろ大都市の、都市近郊の野菜とか生鮮品とか、そういうことになるんだと思うんです。

 こういう農業に関しての話を聞いただけで、私ども、正直言って、本当に足がすくむぐらいの大変な脅威を感じております。ですから、十分な議論がぜひ必要だと思います。

 党内でもさまざまな議論があります。そして、農業関係の皆さんは大変心配をしています。そういう状況の中で、今回のAPECの中で、総理、外務大臣がどのような発言をするかということは大変大きな影響があります。今後の行く方向と、今すぐこれをするのかということ、その両方のはざまで多くの方が悩んでいると思うんです。

 改めて大臣にお伺いします。

 今回、このTPPについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

前原国務大臣 先ほどの篠原農水副大臣の四・一兆円の試算は、副大臣みずからおっしゃっていたように、二つの大きな前提に立って試算がされている。つまりは、TPPのみならず全部の国に対して関税を取っ払うということと、何ら農業に対する対策を講じなかった場合ということでありまして、特に私は後者はあり得ないと思うんですね。

 国を開く場合において、これは韓国も相当、先ほどお話ししたように、EPA、FTAに積極的に、戦略的にかかわってきておりますけれども、韓国の農業に対する支援策というのは、かなりの金額を多年にわたって行ってきているということで、もし国を開くということになれば、何らかの正しい方向の農業支援というものが前提になるだろうと私は思います。

 他方で、私がきのうも記者会見で申し上げたのは、あるいは先般の閣僚集中討議でも申し上げたのは、客観的な事実を申し上げたんです。TPPの議論は今こういうふうに進んでおりますよということで、今九カ国、マレーシアも含めて九カ国になりましたが、九カ国で議論をしていて、今回のAPEC開催時にも関係国が集まられるみたいです、そして来年のアメリカのAPECまでに七、八回の会合を重ねていって、その土台をつくる議論をされる、つまり、ルールメークをされるということになれば、もしルールが決まって入るんだったら、それは後でもいいかもしれないけれども、ルールメークから入ろうとすることになると、だんだん扉が閉まってきていますね、こういう事実の話を私はさせていただいたわけでございます。

 いずれにしても、先ほど、いろいろな閣僚がいろいろな発言をしているということですが、最後にはもちろん閣内一致をして、政府・与党一致をして、議論をして方針を決めるわけでございますし、それまでのいろいろな考え方を客観的な情報を含めて今議論しているところでございますので、決めるときには、どういう結論になれ、政府・与党一体となって決定をするということですので、その点は御心配いただかなくて結構かと思います。

小野寺委員 先日、ワシントン、USTRに行ってまいりました。恐らく、日本の議員では初めてだと思います。アメリカ側にこのTPPの考え方を日本担当者から聞き、そして、どういうスタンスなのかということを伺いました。

 言われたのは、まず、この交渉に入る前にどのような前提も持ってきてくれるな、入るためには素っ裸で来てくれということですので、恐らく、米その他の条件を持って議論に入りたいということはアメリカ側は許さないということ、そういう強い姿勢がございました。ですから、私は、この交渉は相当タフなものになるなという印象があります。

 そして、さまざまな支援ということだと思いますが、今、WTOルールの中で支援ということになりますと、もちろん所得補償ということが中心となると思います。もし四兆円という農業生産の減になるということとなれば、恐らくその規模の所得補償というのを毎年考えなければいけない、多分そのような対応になるんじゃないかと思うんです。

 篠原副大臣にお伺いします。

 実際、今回、アメリカ側は基本的には無税だと言っています。ですから、先ほどの前提の前段階の前提でスタートした場合、残りの対応の後段階、何を日本がするかというときの、これはいろいろな方策があると思いますが、特に所得補償、それに対する財源、予算がどのぐらいになるか、今はまだ詰めていなくても、御所見をお伺いさせていただければと思います。

篠原副大臣 前原外務大臣がもう既に、この外務委員会か、あるいは予算委員会でも触れていただいております。

 日本も所得補償政策を導入、まあ、しているところですね。韓国は一足早く、どういうふうにしているかといいますと、私も韓国に行ってきたわけですけれども、先対策、後開放ということで、着々と手を打っております。いろいろ計算をしてみますと、十年間で九・一兆円の特別の農業予算を組んで、もう既に対策を打ちつつあるわけです。ですから、びっくりいたしましたけれども、韓国の農協中央会の方も非常に落ちついておられました、いらいらしているかと思ったら。その九・一兆円というのはどのくらいの規模かといいますと、日本の農業生産額は韓国の約三倍なんです。それで計算しますと、三倍の二十七兆円、韓国と同じような手当てを講ずるとしたら。

 ですけれども、もう一つありまして、前原さんがよく触れておられますGDP。GDPは五倍なわけです。自由貿易によってほかの産業界が利益を得たら、五倍稼いだ分を農業に回してやろうと。五倍だと四十八兆円になるわけです。一年間四・八兆円。農林水産省の現在の予算が二・五兆円ですから、倍近くを十年間必要になるということになります。それだけの決意でもってやるかどうかという問題になってくるんじゃないかと思います。

 ですから、重ねた答弁になるかと思いますが、私は、これについてはしっかりと議論をして決めていくべきではないかと思っております。

小野寺委員 実は、今おっしゃったように、日本のGDPで換算すれば十年間で四十八兆円。一年間でいうと四・八兆円、約五兆円です。これを毎年農業のために今まで出してきたということで初めて、今回、このような平穏に進むということ。しかも、韓国は米については例外扱いをしています。

 ですから、実は、今回アメリカが要求しているようなすべての関税、TPPの問題になれば、これは米すら同じような状況になりますので、恐らく、ざっと見ると、やはり年間七兆円とか八兆円の戸別所得補償を毎年農家の皆さんにするというような、十年間です。これをして初めて、それだったらということ。これだけの財政を一体出せるのか、そういう状況になると思います。

 米を除外している韓国ですら、日本のGDPに換算すると年間四・八兆円の戸別所得補償プラス農業予算の支出があるということですから、こういう前提を十年やってきて初めてという、このことの重みをぜひ感じていただきたいと思います。

 さらにもう一つ。実は、USTRに行って向こうから言われた話ですが、非関税障壁、さまざまございます、政府調達とか金融サービス部門とか。その中で、向こうが農業の次に挙げてきたのが郵政です。郵政の改革です。

 今、日本の郵政、民主党の方では、政府でしょうか、郵政の改革法案を出していて、むしろ私ども自由化と逆の方の改革法案を出していますが、今後、このTPPに入るに当たって恐らくアメリカ側から出てくる内容というのは、郵政の完全なる自由。恐らく、限度額、政府保証というのも撤廃せよ、保険についても開放せよということだと思います。

 このような厳しい状況も踏まえて、今回、TPPに参加されるというお考えがあるんだと当然思いますが、そのことについて大臣にお伺いいたします。

前原国務大臣 韓国はかなりの予算を農業に費やして自由化を図られた。韓国は、TPPに入るということは言っておりません。これは、いろいろな国とFTA、EPAをやっているということで。

 ただ、その額をGDPに合わせて比較をするというのも、若干乱暴な議論ではないか、こういう思いを私は持っておりますが、いずれにしても、ある程度の農業支援というものをやらないと国を開くことにはならないだろうというのは、そのとおりだと思います。

 TPPの議論にいたしましても、例えば十年間ぐらいかけて完全自由化をやっていく、こういう話で、何も入ったらすぐ全部丸裸になりますよということではありませんし、まさにそのルールメークをこれからやっていきましょうということになるわけであります。今私が知っている限りでも、マレーシアを除く八カ国の中で、除外品目を主張している国は中にも幾つかございます。

 そういう意味においては、何も、入るということになったら全部関税なしですよ、あるいは日本の独自のものは言えませんよということでは、何のためにルールメークの段階から手を挙げるかということになろうかというふうに思いますので、少しそこは整理をして考えるべきではないか、郵政の問題も含めてですね。そう思います。

小野寺委員 これは、USTRの担当者もそうですし、さまざまなアメリカ側の方もおっしゃっていました。今回日本が入るときには、今既に加入を決めている九カ国とそれぞれに交渉をし、それぞれから了解をとらなければいけない。ということは、後から入る私どもは、九カ国に了解をとって初めてこの中に入る、議論に入れていただけるということですので、高い授業料は当然払うことになりますねと。これが、実はアメリカ側を含めた諸外国の見方です。ですから、日本が初めからルールメーキングに入っているわけではなくて、今できている大体のルールメーキングの中に今から入れてもらう、いわゆる入場料を払って入るということになります。

 私は、十年間という期間は決して短い期間ではないと思います。例えば郵政の問題も、今からさらに民営化を進めていくという方向に、このTPPの議論をする場合にはむしろいかなきゃいけない。それには十年かかります。ですから、逆に言えば、今回の郵政の改革の法案について政府が出すなんということは、当然、これは逆行する話ですから、あり得ないということになります。それは政府内で共通の認識を持っていただかないと、言ったはいいけれども後でごめんなさいでは困ります。そういうしっかりとしたスタンスをとっていただきたい。

 それから農業についても、今GDPの比較というお話がありましたが、これは乱暴な意見ではなくて、やはりGDPの比較が正確な範囲だと私は思っています。

 韓国は、TPPには実は入ろうとしていません。アメリカとの二国間、これで米は守ってほかを譲った。それでも、日本のGDPに換算すれば毎年四・八兆円です。農業予算の倍の予算を農業支援と戸別所得補償に回して、それでようやく韓国は落ちついて農家の方が将来に向けて今頑張ろうとしている。そのような状況であれば、むしろ日本は今から、例えば毎年五兆円の農業予算をとって、そのうちのかなりの部分を所得補償に回して、十年間頑張っていくから十年後にはこうなりますよと、今の時点で大きな姿勢を示さなきゃいけない、私はそのように思っています。

 ぜひ、このTPPの問題というのは、これだけ根深い、いろいろな問題をはらむ問題ですから、これから、やはり議論に当たっては相当の時間も必要です。今回のAPECでまさかこんなことはないと思います。ただ、巷間こういうことを言う方もいらっしゃいます。さまざまな外交案件で今の菅総理は手詰まりになっている、その中で、今回、議長をされるというお立場でぜひ何か成果を上げたい、そういう中でこのTPPについて一人前向きになっていると。このような懸念がないように、しっかりわきを固めていただければと思います。

 それからもう一つ。これは前原大臣もよくおわかりだと思うんですが、アメリカという国は、京都議定書のときにこういうことがございました。いろいろな議論があって、日本もそうだと思い、議長国でした、最終的にはかなり高い京都議定書の数値目標というのに日本はコミットいたしました。結果、一番旗振り役だったアメリカが、議会の反対もあり、これに参加をしませんでした。

 今のTPPの問題でも、今度の上院の選挙、下院の選挙、中間選挙で、実はかなりアメリカの中の政界構造も変わってまいります。そのときに、今の時点ではTPPに前向きということで、各国にどんどんハードルを下げさせていっていますが、最終的な段階で実はアメリカ自身が抜けてしまい、日本は多くのものを譲った中で、結局また二国間交渉、FTAに振り出し、こういうようなことになった場合でも私は大変だと思います。

 ですから、やはり、これはよほど戦略的に見ていかないと、アメリカという国のよさ、悪さもございます。そこは大臣にしっかり受けとめていただきたい、そう思っております。

 さて、最後の質問になりますが、実は、今回の中国との案件の中でさまざまなデモが起きて、一部邦人の経営するような企業や日本の進出しているスーパーマーケット等が、かなりの破壊というんでしょうか、そういうものを受けたということが報道されております。この中国における邦人の被害についての対応について、今どのような被害状況なのか、そして、今後どのような対応をしていくのか、大臣にお伺いしたいと思っております。

前原国務大臣 中国の各地で行われている抗議活動について、現時点で在留邦人及び日本人旅行者に対する被害は確認されておりませんが、日系企業が経営するスーパーや在留邦人等が経営される飲食店等においてガラスが割られたり、設備が破壊される等の被害が生じたというのは、委員が御指摘のとおりでございます。

 これを受けまして、在中国大使館及び在重慶総領事館から中国側関係当局に対して、遺憾の意を伝えるとともに、邦人及び日系企業の安全確保を強く要請いたしました。また、十九日の午前には、丹羽大使からヨウケツチ外交部長に対して同様の申し入れを行って、同部長から安全確保を全力で努力するという反応がございました。

 中国国内で生じた日本国民及び日本企業がこうむった損害の救済については、中国側が中国国内法に従って行うべきものでありますが、被害に遭われた日本国民から要望がある場合には、政府としても適切に対応をしていきたいと考えております。

小野寺委員 これは何度も外務省に確認しているんですが、被害の額あるいは状況について、なかなか正確な数字、細かい内容が出てこない。そういう中で、実は私どもに、現地に進出している日本の経営者の方からいろいろな情報が寄せられております。

 きょうは、一つ御紹介をしたいと思います。お手元に写真の資料が配付をされていると思います。三枚紙になっていますが、これは鄭州市における日本料理店での破壊の状況です。この方から私どもに連絡、メールが入っていますので、ちょっと読ませていただきます。

 今月十七日の暴徒によるお店への襲撃で、店の自動ドア、冷蔵庫、さまざまな器材、電気配線等が破壊をされました。領土問題が発生してから今回が二度目の暴徒襲撃ですが、前回は、中国人客、日本人客の面前で、三人の暴徒が押し入り、いすを投げつけて、暴言を吐いて去っていきました。今回のデモについては、日本人教師より教えていただき、デモ何日か前から事前に察知していましたので用心をしていました。公安、これは中国側の警察からですが、これも休業したらという助言があって、十七日は臨時休業にした。かぎもかけていた。そのお店に二台の車に分乗した暴徒十数名が防弾ガラスの自動ドアを粉々にたたき壊し、店に入ってきた。そして、この問題については、もちろん大使館、そして公安に連絡をして対応してもらった。領事館からは電話があって、外事弁公室に連絡しますと言っただけで、その後何のフォローもありません。

 この方がおっしゃるのは、領事館の対応、電話一本で済まし、事件以後何の連絡もしてこない、このことに関して強い憤りを持っている。このお店の方は、ここまで破壊されたら、もう店を再開することはできない、長年、日本の外交のために、日中交流のために努力をしてきたけれども、今回は店を閉めて引き揚げるしかない、こういうことをおっしゃっておりました。

 恐らく、こういう事案が中国にはさまざまあるんだと思います。本来、領事業務というのは、日本人の生命、財産、安全を守るための業務だと思いますが、この店主がおっしゃるように、電話一本かけただけでその後何の対応もしない、そして今回は店を閉めて泣く泣く帰ってくる、こういう現状があることについて、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

前原国務大臣 今、小野寺委員が挙げられた例、これが事実だとすれば、非常に残念なこと、遺憾なことだというふうに思います。具体的な事例を教えていただければ、我々はしっかりと対応させていただきたいというふうに思いますので、またお知らせをいただければと思います。

 なお、他の企業については、むしろ公表してもらいたくないというような日系企業があることも事実でございますので、我々としては、そういうきめ細かな対応もしていかなくてはいけないと思っておりますので、いずれにしても、具体的な事例でお話があれば、真摯に聞かせていただきたいと思います。

小野寺委員 きょうは、伴野副大臣、済みません、登場の機会がなくて申しわけなかったです。

 実際、今お話があったように、本来であれば領事業務が対応する、あるいは、こういう日本人の進出の方は、日本の政府、大使館だけが頼りなんです。そういう場合に、今言った連絡をいただければと。この方は連絡をしたんですが、その後何にもない。恐らく、私は同じような事例がたくさんあるんだと思うんです。

 私は、前回、日本の大使館が襲撃をされたときに、実はすぐに行きました、当時は大臣政務官だったものですから。本来であれば、こういうときは政務三役のうちどなたかがやはり中国の現地に入って、特に現地に行っていらっしゃる日本の企業、企業経営者の皆さんと話をしたり、あるいは現地の被害の視察をするなり、そういうことを本来はすべきではないか、それが政治主導ではないかと私どもは思っております。

 きょうはさまざまな外交案件のお話をさせていただきました。これからさまざま議論が出てまいると思います。大臣は、先ほど冒頭おっしゃっていただいたように、率直に今回の企業・団体献金についての懸念もお話しされました。ぜひ、そのような、とらわれることなく審議を進めていただければと思っています。

 それでは、質疑を終わります。ありがとうございました。

小平委員長 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 まずは、前原大臣に、本当に重要閣僚としての御就任を心からお喜び申し上げたいと思いますし、本当に若きしころから大変外交問題には熱心に勉強もされておりましたし、大臣の個人的な人柄についても私は大変な魅力を感じておりますし、その持ち前の正義感でもって、この国難を乗り切っていただきたいと思っております。

 さて、私も総務委員会が長かったものですから、外交委員会はきょうがいわばデビューのような形になるわけでございますけれども、まず冒頭申し上げたいのは、この外務委員会、調べてみますと、直近で開かれたのが六月の十六日、ちょうど前の国会の閉会の予定日だったと思いますけれども、それ以来、四カ月間にわたって全く開かれなかった。このことは、閉会中審査も委任してできることになっていたわけですけれども、この間、もちろん中国の漁船問題もございました。いろいろな問題があったにもかかわらず、我々も委員会の招集を求めてきたにもかかわらず一度も開かれずに、四カ月ぶりにこうしてきょう、ようやく開かれるということは、甚だ遺憾だと思います。

 開かれなかったことの主要な理由というものが、やはり事実上の外務委員長の不在ではなかったのかなというふうに思っているわけでございます。これは本来、大臣にお伺いするようなことではございませんけれども、民主党として、こうした外務委員長の前任者の選任が行われたということについて、大臣はどのような見識をお持ちか、まず冒頭お尋ねをしたいと思います。

前原国務大臣 院でお決めになったことですので、私が口を挟むべきことではないというふうに思います。

秋葉委員 今度、新しい委員長にもなりまして、適宜、やはり必要に応じてしっかりと議論をさせていただきたいと思いますし、大変重要な人事だと思っておりますので、私は、やはりこの委員会というものが深く国益にもちろん直結しているわけでございますので、精力的に議論をしていければいいなというふうに思っております。

 さて、次に、尖閣問題についてお伺いをしたいと思いますけれども、今回のこの九月七日の事件発生以来、もう二カ月近くたとうとしているわけでございますけれども、なぜこうした問題が起こったのかということを私なりに考えてみれば、もちろん中国のプレゼンスが大きくなってきている。かつて日中間の問題というのは、歴史問題などを中心にぎくしゃくしてきた関係が続いておりましたけれども、まさに今は、もう海洋権益をめぐって、日中間の問題の本質というものが大変大きく変化してきているんだろうということが一つあろうかと思います。

 そして、二つ目には、やはり普天間をめぐる問題等々で日米間の信頼関係というものが大きく揺らぐ中で、そういった状況に中国からいわばつけ込まれたような面もあるのではないかなというふうに私は認識しております。前原大臣が九月の二十三日にクリントン長官とお会いしたときに、この会談の中でわざわざ日米安保条約第五条が尖閣諸島に適用されるということを確認すること自体、日米間の信頼関係というものが揺らいできている証拠じゃないかなというふうにも私は認識しております。

 そういう中で、大臣が前任の国交大臣のときに公務執行妨害での逮捕を御決断されたわけでございまして、この判断は私は正しかったと思っておりますけれども、しかし、その後、これがああいう形で釈放になったということについて、率直に大臣はどのような認識をお持ちか、お伺いをしたいと存じます。

前原国務大臣 国土交通大臣のときに何か私が逮捕をしたような御質問でしたけれども、海上保安庁が判断をして、これについては外交問題になり得るということで、官邸も含めて、外務省も含めて、相当程度相談をしながら決定したことでございます。

 その後については、検察に送致をされて、そして検察が法と証拠に基づいて判断をしたことであるという認識を持っております。

秋葉委員 この時系列を見ますと、九月七日に事案が発生をいたしまして、この日の夕刻に官邸において関係省庁から連絡があって、もちろん海保も出席をして、海保を統括する責任者は国交大臣でございますから、ここで公務執行妨害ということになったんだと思うんですけれども、その際、例えば漁業法違反の適用というのも、水産庁なんかもここに同席をして、そういう話もあったのかどうか、事実関係として。多分、大臣も当時、そこに国交大臣としていらっしゃったと思いますので、伺っておきたいと存じます。

前原国務大臣 私は官邸での会議には出席をしておりませんので、中身については申しわけありませんが承知をしておりません。海上保安庁長官が出席をしておりました。

秋葉委員 きょうは鈴木長官にもおいでをいただいていると思います。この九月七日の夕刻の席で、そうした水産庁との協議もあったのか、少しお披瀝をいただきたいと思いますが。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 当該衝突事案が起きた後、私どもの巡視船「みずき」が強行接舷をして、これを六人の保安官が乗り移って停船させて、それから任意で静穏な海域の方へ連れてきておったわけでありますが、その間に、こういう事態が発生したということにつきまして、官邸なり当時の前原大臣にも御報告をしております。

 ただ、これはあくまで公務執行妨害の事案として御報告をしておりまして、最終的には私どもが判断をして、裁判所の方に……(秋葉委員「水産庁も入っていたのか」と呼ぶ)水産庁は入っていないと思います。済みません、そのときは私どもの次長が出席しておりまして、翌日は私が出席しましたが、官邸の会議は何回か開かれておりまして、いずれにしても私どもが出席して、公務執行妨害の事案として報告しております。

 ただ、最終的な逮捕の判断は私どもがいたしまして、裁判所に逮捕状を請求して、これを執行したということでございます。

秋葉委員 ですから、公務執行妨害の逮捕自体は妥当な判断であったろうと私も評価しているわけですけれども、やはり日本の固有の領土であるということをしっかり担保して、それを強烈に主張するという観点から、これは明らかに外国人漁業法に対する第三条違反の容疑があることは明白でございますので、こうした法の適用というものも今後は視野に入れて対応していくことが大事ではないかなというふうに思っております。

 先ほど小野寺委員の方からもビデオの公開についての言及がございました。大臣も五分間の短縮版でビデオを見たというお披瀝がありまして、あくまでも検察庁が判断することだということの答弁でございましたけれども、今までいわゆる証拠物件の公開というものが、公益上の問題を理由に公開をされた例があるのか、まず事実関係を確認しておきたいと思います。

黒岩大臣政務官 お答えいたします。

 すべての事例を掌握しているわけではありませんが、広く国民に知らしめるという意味の一般にという趣旨でございましたら、公開した例としては、承知しているものは直ちには思い当たりません。

秋葉委員 今回の事例ほど、まさにこの四十七条のただし書きを適用して公に公開する利益にかなう事案はないと私は思っておりますので、これからの、今週に控えているハノイでの会談、あるいは十一月のAPEC等の影響との兼ね合いも考えていかなければいけないと思いますけれども、やはり時期を見て、これは公開といってもいろいろな公開の定義があると思いますけれども、予算委員会あるいは外務委員会、決算委員会だなんという話になっていますが、やはり国民にしっかりと公開をしていくということは国益にもかなうことだと思いますし、再三再四、ビデオを見たことのある大臣初めお話を伺いますと、明らかに、一目瞭然でわかるということでございますので、このことが非常に、国際世論に与える影響、まさに百を語るよりも一枚の絵を見せた方が説得力があるということにもなってまいります。

 いろいろな時期の問題はあろうかと思いますけれども、重ねて大臣としての考え方を伺っておきたいと思います。

前原国務大臣 検察の御判断で、そしてまた四十七条にのっとってどういう御判断をされるかということではないかと思っております。

秋葉委員 相手がある話でもありますし、ある意味でのセンシティブな問題もあろうかと思いますけれども、検察が最終的には決めるとはいいましても、証拠物の第一義的な保管者は海上保安庁、いわば国交省、その大臣の立場にいられたわけでありますので、いろいろな意味での影響力もあるわけでございますから、しっかりと国民にこれを公開していくということが大事だというふうに思っておりますので、時宜を見ながら責任ある対応を求めておきたいと存じます。

 さて、今回、大臣に話を伺っても総理に話を伺っても、あくまでも検察庁が判断をして処分保留で釈放したんだということが繰り返し述べられてきたわけでございますが、民主党政権の特徴というのは、やはり政治主導で官僚に丸投げせずに、政治主導というのはすなわち政治家が責任をとって対応していくということでありますから、私は、今回のようなケースほど、むしろ官僚に丸投げせずに政治家がリーダーシップを発揮して指示していくのにふさわしい事案ではなかったのかなというふうに思っているんですね。

 そういう文脈でいいますと、例えば法務大臣なども指揮権発動のトラウマにとらわれることなく大いに、今回、そういった事案にふさわしいテーマではなかったのかな、こう私は思っているわけでございます。

 そういう文脈の中で、改めて前原大臣にお伺いしたいのは、政治介入がなかったということではあるんですけれども、政治家が検察庁との協議の中でもっとリーダーシップを発揮してこれに積極的にかかわっていくべきではなかったのかという問いに対しては、どんな問題意識を持っておられるか、伺っておきたいと思います。

前原国務大臣 むしろ逆で、それについては関与すべきではないというのが司法の独立だと私は思っております。

 何度も国会で答弁をさせていただいておりますけれども、起きた事案によって、いわゆる刑事的な判断をするのはあくまでも司法手続でやるわけですが、そのことによって外交問題になったり、あるいは戦争になったことなんというのもあるわけですね。それについては政治がまさに責任を持って対応していくということなんだと私は思っております。

秋葉委員 逆のお立場だというお話がありましたけれども、私は、やはり今回の検察庁の判断というものが明らかに刑訴法の二百四十八条のいわゆる起訴便宜主義の解釈を拡大しているんじゃないかと思わざるを得ないんですね。

 私も改めて何十年かぶりでコンメンタールなんかをひもといてみたんですけれども、やはり犯罪後の状況に関する事項の中に外交問題が含まれているという解釈は、どうしても無理がある。どちらかというと、いわゆる被疑者を取り巻く環境の変化ということが専らでございまして、その意味では検察庁の越権行為だというような見方も成り立つわけですね。

 だからこそ、まさに検察庁ののりを越えている問題だからこそ、そこに政治家が責任をとるという形で主体的にかかわっていくべきではなかったのかという問題意識で私は申し上げているんですね。改めて、大臣、どうなんでしょうか。

前原国務大臣 同じ答弁になって恐縮でありますけれども、その点については検察が法と証拠に基づいて判断をするということで、その案件が起きたことによってさまざまな外交問題が起きたことについては、しっかりと、まさに政治主導で解決をしていくということだと思います。

秋葉委員 では、これ以上申し上げても同じ考えがあれだと思いますけれども、政治主導とは何かというのを考えたときに、やはりそれは責任をとる、そして官僚に丸投げせずに進んでやっていくということが大事だと私は思います。

 そういう文脈で、やはり今回のようなケースでの指揮権発動というのは最もふさわしいと私は思っているんですけれども、これまで事実関係として指揮権発動がなされた例というのは、一九五四年のいわゆる造船疑獄のとき一例だけなのかどうか、確認しておきたいと思います。

甲斐政府参考人 お尋ねのような例はその件だけだというふうに承知をいたしております。

秋葉委員 仙谷官房長官が、この指揮権発動のあり方についても、やはりいろいろなケースの適用も含めて研究していかなきゃいけないというようなコメントを発表していますけれども、それは、例えば法務省とかどこかの中でそういう検討委員会を立ち上げて、何かいろいろ事例研究していくというような段取りになっているんでしょうか。

甲斐政府参考人 現在のところ、そういう動きにはなっておりません。

秋葉委員 これは運用の中での話ですから、当然、そういう蓄積をしたからといっても、当事者がどう判断するかということになるわけですけれども、いろいろな研究を積み重ねていくことは非常に大事だと思っておりますので、やはりこれからの日本のこうした検察庁のあり方ということを考えたときにも、私は、いろいろなデータを集めていろいろな研究をしていくことが必要ではないかと思っておりますので、そうした検討会のようなものも今後検討していただきたいというふうに思っておりますので、これは要望しておきたいと思います。

 さて、一方で、官房長官のコメントで、損害を受けた海保、特に「みずき」の被害が大きかったと思いますけれども、いずれかのタイミングになるのかわかりませんけれども、中国に対して、これの損害賠償、それこそ原状回復を求めていきたいという考えが示されております。

 あすから始まるハノイの会談、あるいはAPECということを考えると、なかなかこの問題をすぐ提示するということはしづらい面があろうかと思いますが、しかし風化させないということも一方で大事でございますから、常にこういう認識を持って、けじめをつけていくことが大事だと思いますけれども、外務大臣として、特に前任の国交大臣だったわけでございますから、明らかに被害を受けて、損失を受けて、この原状回復を中国政府側にどのように取り組んでいこうとしているのか。

 なかなか難しい問題だとは思いますけれども、私は、やはりこの事件、いろいろな、再発防止の面もありますし、今後に尾を引きずらないために、しっかりどこかではけじめをつけていかなきゃいけないと思っているんですね。かといって、温家宝さんとの、この二十九日、調整が今行われているということで、会談が実現するかどうか私どもわかりませんが、もし会談が実現してもこの問題から先に論じていくことというのはなかなか難しいわけですけれども、しかし、どこかでこういった要求も織り込んでいくということは大変重要だと思っているんですが、大臣としての考えを伺いたいと思います。

前原国務大臣 この問題につきましては、事件発生直後から、累次、中国側に抗議をして、遺憾の意を伝えてきているところであります。

 ただ、これは一般論で申し上げますと、民間漁船が我が国の公船に対して損害を与えたということであれば、この損害賠償請求というのは当該民間漁船の責任者に対して行われるべきであって、直接相手国政府に対してということではないというふうに我々は理解しております。

秋葉委員 まさに民間の漁船だったわけでございますから、政府に対してということではありませんけれども、現状でどれぐらいの損害額になると想定しているのか、そして、そうした具体的な要求をしていく日程、時期というものも視野に入っているのかどうか、確認しておきたいと存じます。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 巡視船「みずき」と、それから最初に当てられた「よなくに」でございますが、実はまだ損害額が確定しておりません。

 「みずき」の方は、ようやっと最近修理が済みましたが、今、第三者機関でその損害額について鑑定をしていただいております。

 それから、「よなくに」の方は、まだ修理がなされておりませんで、十一月中旬から十二月中旬まで定期修理を予定しておりまして、それに合わせて修理をしないと二度手間になりますし、それから、何より今、尖閣の警備で船が足りないもので、実は手すりや何か壊れたところをロープで固定してまだ使っております。尖閣に行ってもらっております。

 そういう状況でありますので、これが修理を終わりまして、それからまた第三者機関に鑑定を依頼して、鑑定が出てくれば損害額が確定するということでありますので、その後、また関係省庁と御相談して取り扱いを考えていきたいと思っております。

秋葉委員 被害額はこれから精査してというお話でございましたが、どれぐらいの期間を見通しているんでしょうか。

鈴木政府参考人 先ほどお答えしましたように、「よなくに」の方は十二月中旬ぐらいまで修理がかかるようでありまして、その後数週間、鑑定に要すると聞いております。

秋葉委員 そうしますと、その修理のおよその所要額が査定され次第というか、その後、速やかに関係機関と協議をした上で請求に入るという理解でよろしいんですか。

鈴木政府参考人 その段階で、また関係省庁と具体的な方法等も含めまして相談してまいりたいと思っております。

秋葉委員 これは本当にうやむやで終わることなく、しっかりと対応していただきたいと、ここで改めて要望しておきたいと思います。

 さて、本当に、今回のこの東シナ海や尖閣諸島沖合でのつばぜり合いというのは、今後さらに激化してくることが予想されるんじゃないかなと思います。尖閣諸島領域内において、外国船に対して、従来、政府はどのような取り締まりをやってきたのか。現状では、巡視船が二隻出ている、あるいは水産庁のいわば警備艇みたいな漁業取り締まり船が一隻、そしてP3Cがたまに定期的に飛んでいるというふうに伺っておりますけれども、果たしてこういった現状で十分なのかどうか。

 これは、きょうは防衛省からも来ていただいておりますけれども、尖閣諸島沖合の警備状況が現体制で十分なのかどうか、認識を伺っておきたいと思います。

松本大臣政務官 秋葉委員にはもう釈迦に説法だというふうに思いますけれども、今まさにお話しいただきましたとおり、治安維持については一義的には警察機関ということでありまして、海上保安庁、それから警察が対応する。自衛隊については、警戒監視活動で得られた情報を提供する。さらに、状況に応じて護衛艦あるいは航空機を柔軟に運用しまして、即応できる体制をとっている。さらに、警察力で対応できないという場合には、海上警備行動を発令することにしております。

 また、実効性をさらに強めようということで、毎年こういう警察機関と共同の訓練を行っておりますので、我々としては事態に十分対応できるよう努めてまいりたい、このように思っております。

秋葉委員 やはり自衛隊が一番機動力があるわけでございますから、海上警備行動の発令も含めて、本当に機動力があり、柔軟に対応、即応できるように、万全の対策をとっていただきたいと思うんです。

 私が先般出した質問主意書の回答によれば、近年、どれぐらい海上保安庁による立入調査が行われているんだということを伺わせていただきました。平成二十年以降で見ても、平成二十年は二件だったんです。いわゆる発生件数はたくさんあるわけですけれども、実際立ち入った件数ということで伺ったわけでございますけれども、平成二十年が二件、二十一年が六件、二十二年になって九月末現在で二十一件というふうに急増してきているんです。ことしに入って、今まで二件、六件ぐらいしかなかったものが急増しているということは、それだけ押し寄せているということになるわけでありますけれども、こうした現状を海保ではまずどのように認識していますか。

鈴木政府参考人 尖閣諸島周辺海域、特に我が国領海内における外国漁船の操業が大変ふえておるという事情、理由は定かではありませんが、私どもとしては、きちっと巡視船を増強配備するなどして、まずは退去警告を行いまして、領海を出ていけということをやりまして、その上でこれに従わない者については立入検査をして、きちっと対応するということでやってございます。

秋葉委員 今長官からお話があったように、退去警告の件数自体もふえているわけです。それで結局、それにも従わないで居座る船が多くなったものですから、立入検査が結果として五倍、六倍の数字になっているという実情がございます。

 ですから、本当に、現場の海上保安庁の皆さんは実態上丸腰で、命がけでやっているのが実情だと思います。そういう意味で、海上保安庁の取り組みをしっかりとバックアップするためにも、やはりこれから海上自衛隊の役割も非常に重要になってくるわけでございます。

 我が党としても、自衛隊による領海警備を新たな任務に、正式に法的根拠を与えようじゃないかというような議員立法も今議論しているところなんですけれども、防衛省としてはこうした法改正についてどんな認識をお持ちか、伺っておきたいと思います。

松本大臣政務官 先ほど申し上げましたとおり、現行法の枠組みで防衛省としては十分に対応していきたいというふうに思っているんですが、今御指摘いただきました領域警備については、概念もいま一つ定かではありませんので、現行法の枠組みで対応できない、すき間が一体何なのか、具体的に御提案をいただければ、先日、大臣が安保委員会で答弁させていただいたとおり、その必要性について真剣に検討してまいりたいというふうに思います。

秋葉委員 大事なことは、海上保安庁の巡視船あるいは水産庁の漁業取り締まり船、これは一隻しか出ていないわけで、あの広い海域を三隻でもって警戒しパトロールするとなると、おのずと限界がありますし、このエリアの実効支配を確実にしていくためにも、やはり護衛艦がいつでも出動できるんだというようなシチュエーションなり、法の仕組みというものをしっかり整えていくことが本当に大事だと思っておりますので、我々も今後、前向きにこの法案を議論し、提案をしていきたいと思っております。

 さて、この尖閣諸島、先ほど、固定資産税なんかを再評価するために、昭和三十一年以来ですか、上陸を認めてもいいんじゃないかというような質問もあったわけでございますけれども、ちょっと事実関係を確認しておきたいんですが、尖閣諸島はいずれも現在無人島だ、そしてほとんど民間人が所有しているというふうに伺っております。

 手元の資料では、魚釣島、北小島、南小島の三島で年間の賃借料が約二千五百万だということで伺っておりますけれども、事実関係としてちょっと確認しておきたいのでございますけれども、そのほかにも久場島や大正島、大正島は国有地だと伺っておりますが、久場島の賃借料、あるいは沖ノ北岩、沖ノ南岩等々は民有地なのか国有地なのか、そして賃借料というのは年間どれぐらい払っているのか、確認しておきたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島には岩が幾つかと島が五つございまして、岩と、島のうちの大正島というものは国有地で……(秋葉委員「岩も。岩と大正島」と呼ぶ)はい。残りの四つの島のうち、先ほど御指摘いただいたように、魚釣島、北小島、それから南小島につきましては、総務省が年間約二千五百万円で賃借をしております。残る一つの久場島という島も、やはり民間の方が保有しておられて、それは防衛省の方で賃借をしております。

秋葉委員 この久場島については、防衛省は年間幾ら払っているんですか。

松本大臣政務官 突然のお尋ねですので、今手元に資料がございませんので、調べて御回答させていただきたいと思います。

秋葉委員 この賃借料もずっと長年払い続けてきたわけでございますけれども、民間人が所有しているわけでございますので、相手のある話ではございますけれども、基本的に、今この五島の中で国有地は大正島だけだというのが現状でございます。いずれ、この民有地四島につきましては国有化していくという取り組みも私は検討していくべきじゃないかなと思うんですが、これを政府として買い上げることについてはどういうお考えなのか、伺っておきたいと思います。

小平委員長 ちょっとその前に、秋葉君、質問にお答えできるそうなので。

 松本防衛大臣政務官。

松本大臣政務官 済みません、失礼いたしました。

 先ほどのお尋ねですが、賃借料につきましては、相手方のプライバシーの問題がありますので、お答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省が賃借している方の魚釣島、北小島、南小島の三島についてとりあえずお答え申し上げますが、それにつきましては、平成十四年度から、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理を目的として国が賃借しているものでございまして、その必要性は現在も変わっておりませんことから、政府としては、引き続き賃借を継続していきたいというふうに現時点では考えております。

秋葉委員 先ほど、松本政務官から、何かお答えを差し控えたいと言うんですけれども、総務省では久場島よりもさらに一番大きな魚釣島も含めて賃借料を明らかにしているわけですけれども、なぜ防衛省の予算の中で借り上げている久場島については公開できないんですか。

松本大臣政務官 これは、秋葉先輩を初め、自民党政権時代からそのような回答になっているというふうに承知をしております。

秋葉委員 これは、同じ尖閣諸島五島の島で、民有地で大きいところが四つあって、総務省所管のところはそれぞれ公開をしていて、そして防衛省の予算で賃借料を払っている久場島だけ公開できないなんというのは、これは全く理屈にならないし、今後これを公開する考えはないんですか。

松本大臣政務官 相手方のある話でございますので、相手方の了解なく、ここで公開できると直ちにお答えできるものではないというふうに承知をしております。

秋葉委員 いずれ、相手方の人にもよく相談をして、公開できるように環境を整えていただきたいということを、要望にとどめておきたいと思います。

 さて、尖閣諸島の立ち入りも今認めていないということが我々の政権時代から続いているわけですけれども、実効支配というものを強化する観点から、いろいろな国の施設、気象台のようなものを設置したり、いろいろなことを考えていくべきじゃないかなというふうに思っているんですが、防衛省としては、何かそうした施設を建設する予定、計画というのは、ないと思いますけれども、検討する考えはあるんですか。

松本大臣政務官 今現在は検討をいたしておりません。

秋葉委員 私の質問主意書にも、事細かに事例を挙げながら問うたんですが、全く検討する考えがない、こういうことなんですけれども、今後の日中間のこの問題をめぐる推移というのを想定したときに、日中間に領土問題はないんだという一辺倒で波静かという状況では決してないわけでございます。

 やはり実効支配を強めるということは、警備関係を強化するということとあわせて、これだけの三島で、久場島は公開されませんでしたけれども、魚釣島を含めた三島で、少なくとも年間二千五百万を国民の血税から出しているわけですから、使用権はいわば国にあるわけです。ですから、そういった観点からいえば、やはり実効支配を高めていくために、これは防衛省に限らず、気象庁あるいは水産庁も含めて、ヘリポートだけじゃなくて、何かしら国の施設を設置して対応していくということが私は重要なことだと思っておりますので、強く要望しておきたいと思います。

 それから、同時に、我が党の石原幹事長の方からもセンカクモグラの話がございましたけれども、尖閣四島ないし五島の生態調査、あるいは改めての測量調査を初め、いわば調査費をつけて現況をしっかり把握していくということも一方で大事だと思います、その建物云々を検討するためにも。この調査についてはどういうふうに考えていますか。

前原国務大臣 現在、調査をするということを政府の中で検討しているという事実はございません。

古澤政府参考人 ちょっと、センカクモグラの調査という御指摘をいただきまして……(秋葉委員「いや、センカクモグラの調査というか、全体の生態調査という意味です」と呼ぶ)はい。そこを含めて、ちょっとそこは、済みません、御通告をいただいていないのと、基本的には環境省がお答えするお話だと思いますので、大変申しわけございません。

秋葉委員 これもいろいろな立場立場によって、あるいはテーマによって、所管の省庁がまたがるのは確かでございますので、だれが答えるのかということで不明な点があったことはおわびしたいと思いますが、それぞれつかさつかさごとに、本当に実効支配を強化していくという観点から、やはりいろいろなかかわりを持っていくということが極めて大事だと思っておりますので、つかさつかさで、これからしっかり現状の把握ということに努めていただきたいなというふうに思っております。

 さて、次に、東シナ海のガス田開発について伺っておきたいと存じます。

 白樺で四つ目になるんでしょうか。機材の搬入のみならず、掘削が始まった事実があるんじゃないか。特に経済産業省からはそういった疑いがあるということで報道されておりますけれども、きょうは細野長官にもおいでいただいておりますので、事実関係をちょっと伺っておきたいと思います。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 中国側が白樺のガス田におきまして掘削を行っている可能性はあると見られますけれども、現在のところ、これを確実に掘削を行っているというところまで断定できる状況になく、引き続き分析と確認をしているところでございます。

秋葉委員 経済産業省の話は、かなり疑いが濃厚だというようなことで、非常に踏み込んだ認識があるんですけれども、前原大臣の答弁を伺っていますと、もちろん、そういう事実が確認されたらしかるべき措置をとるということでの答弁で、今後のこともあるので内容までは言えないというようなお話が繰り返されているわけでございますけれども、一方で、経産省の現状認識に比べて、外務省の現状認識というのはどうも甘いように私には聞こえてならないんです。

 つまり、かなりの可能性で、もう機材の搬入だけじゃなくて、掘削されている。実際の写真なんかでも、海面が濁っているというようなことまで報道されている現況の中で、もうこれは、今まだ始まったかどうかわからないというようなレベルの状況ではないと思うんです。それこそしかるべき措置をとるべきだと思うんですけれども、大臣の掘削の事実関係の認識、今後の取り組み方、改めて伺っておきたいと思います。

前原国務大臣 エネ庁の細野長官が答弁されたのと全く一緒でありまして、掘削を行っている可能性はあるけれども、これを断定できる状況にはない。引き続き分析をし、確認をしているということでございます。

 エネ庁とも外務省は密接な連携をとっておりますので、政府内で意見が異なるということはございません。

秋葉委員 事実として、かなりの可能性で物事が進行しているだろうと思われますので、注視しながら機敏な対応をとっていただきたい、こう思うわけです。

 きょうの新聞の報道によりますと、政府は、まさに日本近海の排他的経済水域において、外国の資源探査を規制する立法措置を講じることを検討していると報道されておりますが、これは事実ですか。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる資源探査一般の規制につきましては、ことし六月にエネルギー基本計画というのを閣議決定させていただいております。その中で、一般論ではございますけれども、資源探査に係る制度整備を検討し、適切な措置を講ずるというふうにされております。その方向で検討したいと思います。

秋葉委員 私は非常に時宜を得た取り組みだと基本的に思っているんですが、その方向で検討して、実際、来年の通常国会あたりを視野に入れて法案を提出する予定で進めようとしているんですか。その時期だけ最後に確認しておきたいと思います。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げた方向で検討しておりますが、具体的な日程については、まだ確たる方針がございません。

秋葉委員 私どもも、こうした取り組みは非常に有効ではないかと思っておりますので、速やかにこうした点についても前向きに検討していただきたいなというふうに思います。

 きょうは、本当はあとTICAD4のフォローアップの問題や、ほかにもいろいろ取り上げたかったことがございますけれども、時間が参りましたので終了とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、河井克行君。

河井委員 自由民主党の河井克行です。

 まずは、前原誠司さん、外務大臣御就任おめでとう。政経塾出身者がもう四人目ですか、いささか食傷ぎみかもしれませんが、私からも外務大臣就任に当たってのお祝い、そして激励を申し上げたいと存じます。

 まさに今、大臣、国難のときですから、この国難のときに当たって大臣として何をなすべきか、今、日本じゅうがあなたに注目しています。私も野党議員の立場から、しっかりと新大臣を見詰め、また適時適切に質問をさせていただきたいと存じます。

 まず初めに、これは大臣職とは関係ないので通告していなかったんですが、一九九二年十一月十八日、今から十八年前の秋、京都の京都新聞文化ホールにおいて、聴衆二百五十人、三十歳の紅顔の美青年だった京都府議会議員の前原誠司さんがあるシンポジウムに出席をし、パネリストの一人で発言をしています。政経塾のホームページできのうちょっと調べてきたんですけれども、そのときのことを覚えていますか。

前原国務大臣 アジアに関するシンポジウムでしょうか。それなら、かすかに記憶にございます。

河井委員 パネリストが中国社会科学院の日本研究所所長、それから民間企業の副社長、京都府の商工部長、そしてあなた、前原誠司京都府議会議員(当時)ということでありまして、松下政経塾主催の日中シンポジウム「日中国交二十年 回顧と展望」ということであなたが発言をしています。引用されているのが、政経塾の場合は卒業すると塾員というんですが、「前原塾員の率直な中国評に「中国の方の前ではっきりとした中国批判ができるようになったのは、日本と中国が本音で語り合える時代になったということ」という感想も寄せられた。」と書いてありまして、これは褒められたのか褒められていないのかわからない微妙な感想なんですが、何を言ったか覚えていないですね。

前原国務大臣 覚えておりません。

河井委員 ここで論じられているのが、大臣が、本音で話をし合う、そこがやはり、私はこれは評価されているというふうに思うんですね。

 日中間のいろいろな時代時代に、それぞれの先人が貴重な足跡を残していただきました。私たちはその先人の御努力の上に立って、友好、友好と単に言っていればいい時代は済んだというふうにほとんどの日本国民は今、肌身で感じていると思います。必要なことは、日本側が一方的に忍耐をするとか譲歩をするとか泣き寝入りをするとか、そういうことではなくて、お互いに対等の立場で日中双方が意見を言い合う。まさに、あなたがこのときに、十八年前に評されたような、本音で語り合える、それが大事だと思います。

 そして今、日本国の外交の最高責任者の立場におつきになっている。これらを踏まえて、今後の日中関係、どういう考えで当たっていこうとしているのか、御所見を伺いたい。

前原国務大臣 三つのことを申し上げたいと思いますが、一つは、やはり世界第二位の経済大国、世界第三位の経済大国、ことし抜かれる、もう抜かれたのかもしれませんけれども、並ぶ経済大国でありますし、日本からすると中国は貿易量のナンバーワン、輸入のナンバーワン、輸出のナンバーワン、中国からすると輸出はアメリカに次いでナンバーツー、そして輸入は日本がナンバーワンということで、かなり経済面では相互依存関係というのができ上がってきている。やはりこれをしっかりとお互い認識する中で、大局に立ったウイン・ウインの関係というものを、グローバルスタンダードに立ったさまざまなお互いの考え方に基づいて進めていくということが大事だと思います。

 二つ目は、体制が違う国でございます。中国の場合は共産党一党支配ということであります。そういう意味では体制が違いますけれども、体制が違う中で、やはりしっかり議論をしていくことが大事だと思います。

 その大事なポイントというものについて一つ挙げれば、やはり、二十年間で十九倍になっている軍事費、この透明性を上げてもらわなくてはいけない。何のためにこれだけの軍事費の拡大をしているのかということ。イギリスのシンクタンクでは、これの一・数倍あるのではないかとか、国防総省でも、これの二、三倍あるのではないかという話もあります。そういう意味では、軍事費というものの目的、そして透明性を高めていく、説明責任を常に求めていくということも大事なことだと思います。

 あと三つ目は、やはり人的交流というものをこれからより拡大していくということが大事だと思います。これは、国土交通大臣のときに中国へのビザの緩和を行いまして、たくさん来ていただけるような状況をつくりました。

 これも先般、八月、まだ国土交通大臣のときに、北京へ行ったときに李克強副首相とも話をしましたけれども、やはり二国間の関係強化のためには、お互いが訪れて、そしてその国をよく知るということ、これが大事なことだということを私からも申し上げました。それをさらに発展させていくことが、拡大していくことが、大事な両国間の相互認識の礎になる、そういう思いを持っております。

河井委員 今大臣がおっしゃった、二国間の関係を発展、強化していかなくちゃいけない。そのときに、私は、外国と向き合うときに、私たちは正しい現状認識、事実の認識を持たなければならないと考えております。誤った情報に基づいた自己主張ほど厄介なものはない。私は、これは日中双方に言えることだと。

 日本と中国との間で、尖閣諸島をめぐるやりとり、過去、どういうものがあったかということを私なりに調べました。

 お手元に、資料配付をお許しいただきました。一枚目。調べるうちに、一九七八年十月二十五日の、当時の中国の最高実力者、トウショウヘイ副総理が日本を訪れ、日本記者クラブで会見をされたときのこの言葉に行き着いたんです。

 この副総理の見解、後段の、一時棚上げするとか、十年棚上げするとか、我々の世代よりも次の世代が知恵があるというところがよく引用されますけれども、私はむしろこの前段に注目をしたい。三行目、「国交正常化のさい、双方はこれに触れないと約束した。今回、平和友好条約交渉のさいも同じくこの問題にふれないことで一致した。」そう書いています。

 先週、私は、内閣に質問主意書を提出いたしまして、昨日付で答弁書が返ってまいりました。それによりますと、まず、国交正常化交渉の際、双方が尖閣に触れないと約束したという「お尋ねの約束は存在しない。」そして、日中平和友好条約交渉過程において、触れないことで一致した「お尋ねの事実はない。」ここにその答弁書を持ってきておりますけれども、そのようなお答えをいただきました。

 重ねてお尋ねをいたします。外務大臣として、約束はなかったのか、触れないという一致はなかったのか、お答えをいただきたい。

前原国務大臣 双方とも存在をしておりません。

河井委員 となれば、トウショウヘイさんがこの会見で言ったことは、トウショウヘイさんがうそをついたということになりますね。お答えください。

前原国務大臣 つまりは、トウショウヘイさんがおっしゃったことについて合意をしていない、こういうことでございます。

河井委員 合意をしていないとおっしゃいましたが、トウショウヘイさんは、約束をした、一致したと発言をしております。合意していないことについて、約束した、一致したと先方が発言をした場合、それは先方が、会見でもどこでも、うそをついたというふうに普通は解釈するわけですけれども、いかがでしょうか。

前原国務大臣 とにかく、合意をした事実はないということでございます。

河井委員 大臣御就任時に、この約束や一致について引き継ぎ事項があったでしょうか。

前原国務大臣 ございません。

河井委員 今回のこの政府答弁書を受けて、北京発時事通信が、昨日の二十一時十分の配信、ごらんになっていますか。私の質問主意書にのっとった政府答弁書に対して、中国外務省外交部の報道局長が定例会見で触れている。日本政府が約束は存在しないとの見解を示したことについて、「トウショウヘイ氏の提案は日本各界の共鳴を引き起こした」と述べて、合意を否定する日本の姿勢を批判した。さらに、その報道局長は、一九七八年の訪日時に、両国関係の大局からトウショウヘイ氏が提案したと指摘。当時、日本側も支持していたことを強調し、「歴史の事実を否認すれば、何も得ないばかりか、中日関係の改善にも無益だ」と主張した。日本側も当時支持していたことを強調する会見を行っています。

 このことについて、外務大臣として、中国側のこの会見について認識をお尋ねします。

前原国務大臣 そのような報道や、あるいは定例会見でそのような、今、河井委員が触れられたような発言があったことについては承知をしておりますけれども、日本政府の立場としては、そのような合意はないということでございます。

河井委員 つまり、報道局長は、約束は存在しないという日本の見解を批判したわけですね。それに対して、外務大臣として、それは当たらないということですね。もう一度確認させてください。

前原国務大臣 一つ一つの記者会見にお答えをすることは私は妥当ではないと思います。私が申し上げるのは、日本政府として、そのような合意は存在をしないということでございます。

河井委員 次に、この国交正常化交渉におきまして、あるいは日中平和友好条約交渉の過程におきまして、尖閣列島について行われた日中双方のすべてのやりとりを明らかにしていただきたいということも、今回あわせて質問主意書で出しました。

 それに対して、日中国交正常化交渉におきましてお答えがあったのが、ただの一カ所だけなんです。大臣、大丈夫ですか。七二年九月に日中国交正常化交渉におきまして、当時の田中総理大臣と周恩来総理との対話、これが尖閣に触れたただ一つの部分だという政府の答弁書でありました。それが、今、先生方にお配りをしております二枚目の紙でありまして、委員長そして理事の皆さんのお許しをいただいて、これを大きく抜粋してきたんです。

 田中総理が、「尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。」と言ったところ、周恩来さんが、「尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。」と答えております。

 お手元の資料をごらんいただきたいんですけれども、角栄さんは、尖閣諸島について、日本固有の領土ということは発言をしていない。そして、周恩来さんのお答えに対して、直ちにその後、国交正常化の後、大使の交換の話に行っている。つまり、周恩来さんの発言の後、留意ということで言ってもいないし、反論もしていない。

 ひょっとして、大臣、これが、この部分が、トウショウヘイさんが言う、国交正常化交渉で約束したということに当たるのではないかという指摘がありますが、大臣の御認識を伺います。

前原国務大臣 これは河井委員の質問主意書にもお答えをいたしましたけれども、あくまでも、今資料で出されたように、田中角栄さんは「尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。」、周恩来総理は「尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。」云々ということで、別に、棚上げという言葉も出てこないし、それについてのやりとりもありませんし、ましてや、それに同意を与えたような発言もないということですから、これをもっていわゆる棚上げ論になっているということではないと私は思っております。

河井委員 これまで、そして今回の事案において、中国側から、この田中角栄総理と周恩来総理についてのやりとりが持ち出されたことはありますか。

前原国務大臣 これは、今までのすべてのやりとりを調べる作業というのは大変でございますが、私が聞いている限りは、この部分を言及されて何かやりとりが行われたということは承知をしておりません。

河井委員 内閣の答弁書、そして今外務大臣の答弁によって、明確に、いわゆる日中の密約、そして約束、あるいは一致点というものが否定をされたわけでありまして、ここからしっかりと私たちは立脚して、今後いろいろな話し合い、そして対処をしていかなくちゃいけない、そう考えております。

 次に、国交副大臣、そして法務大臣政務官、お見えをいただいております。お尋ねします。

 今回と全く同じ状況が尖閣諸島周辺の日本国の領海で発生した場合、つまり、中国のトロール漁船が二度にわたって日本の巡視船に衝突をするという事案が同じ時刻に同じような形で発生した場合、現場の海上保安庁の諸官は今回と同じように逮捕するかどうか、お尋ねをいたします。

三井副大臣 海上保安庁では、尖閣諸島周辺の領海には、今後とも、これまでどおり、我が国の国内法令にのっとり、しっかりと取り締まりを行うこととしております。

河井委員 つまり、同じ事案が全く同じ状況で起こったときは中国人関係者を逮捕するということですね。

三井副大臣 これは、まさに今、河井委員から通告がございませんので、私としてはお答えを控えさせていただきます。(河井委員「いやいや、ちょっと待ってください、違いますよ」と呼ぶ)

小平委員長 河井克行君、許可を得てから発言してください。

河井委員 はい。

 私はちゃんと通告していますよ。ちゃんときのうやっていますよ。しっかりと答弁しください。

三井副大臣 河井委員の御質問はあくまでも仮定でございますので、仮定の質問についてはお答えしかねます。

河井委員 これは驚くべき答弁でして、というのは、実はきのう、私が国土交通省の担当者、そして海上保安庁の担当者を呼んで話をしたときには、同じ質問をしたんです、私はその場で。そうしたらその場で、全く同じ事案が同じ形で起こったときには逮捕しますと言った。どうして今答弁が変わったんですか、委員長、お答えいただきたい。

小平委員長 河井克行君、私にですか。

河井委員 いや、違う違う。委員長、答弁をということです。あちらです。

三井副大臣 何度も申し上げますけれども、あくまでも仮定のお話でございますので、最初に御答弁申し上げましたように、しっかりと国内法にのっとり取り締まりをいたします。

河井委員 これは、そこの後ろにいる人がきのうちゃんと私に言ったわけですよ。同じことが起こったときにどうするんですかと私が質問したところ、それに対して、全く同じ対応です、逮捕すると言った。何で今それが変わるんですか、答弁が。もう一度お願いします。(発言する者あり)いや、これは大事なことだから、本当に。そんな話じゃないんですよ。大事な話なんですから。

 同じことが起こったときにどういうことをするかということについて、しっかりとお答えいただきたい。

小平委員長 同じ質問ですが、重ねて三井国土交通副大臣、はっきりと答弁願います。

三井副大臣 はっきりと逮捕ということまで言っておりません。

河井委員 はっきりと逮捕とまでだれが言っていないんですか。副大臣、お答えください。だれが、いつ、どこで言ったんですか。

三井副大臣 事案に基づいてしっかりと取り締まるということでございます。

河井委員 そうしたら、副大臣や政務官にちゃんと質問取りに来てくださいという話になりますよ、そういうふうにおっしゃるのなら。私たちは何をもって質問の中身を詰めていくのかということですよ。

 それは、事前にそういうことをちゃんと私の目の前ではっきり言っておいて、それにのっとって副大臣に、僕は三井副大臣にぜひお答えいただきたいと思って、皆まで言うと、政務官でもいいですかと言うから、いや、政務官はだめだと。私は三井さんの顔を見ながら聞きたかったから、三井副大臣に来てもらって、ぜひとも答弁していただきたいと言ったでしょう。

 それは、うちの部屋におけるやりとりが土台となって質問というものは、それは全部の先生方がそうだと思うけれども、それを、その前提を否定されるようなことをされましたら、そうしたら、副大臣、政務官が当初の約束どおりちゃんと来てくださいということになっちゃいますよ。そうじゃなくて、事務方がかわりに来てくれたんだから、ちゃんとした答弁をもう一度お願いしたい。

 だから、では、同じことが起こったときに逮捕するんですねと言ったことについて、どうなんですか。これは質問できなくなるよ、そうしたら。

 ちょっと速記をとめて。

小平委員長 河井君、ちょっとその前に。

 質問取りは、政府の若い職員が来て質問取りをしますけれども、そこでの……(河井委員「速記をとめてください」と呼ぶ)ちょっと今、速記をとめる前に。

 質問取りに来ますけれども、そのやりとりは政府の答弁ではありませんから、そのときの職員の返答は根拠にしないで、この場での答弁が、質疑のやりとりが答弁という形で進めていただきたい。(河井委員「委員長、速記をとめてくださいよ。僕とあなたでやりとりしてもしようがないんだから、ちょっと速記をとめてくださいよ。それはおかしいよ、今の言い方は」と呼ぶ)

 今とめますけれども、その前に、あなたの質問に対して、私は委員長として、いわゆる今のことを説明したのであって、これで今とめますから。

 ただ、私が言いましたことは、もう一度言います。

 質問取りというのは、政府の若い職員が質問者に質問取りに来ますよね。そこでのやりとりがあります、質疑応答が。しかし、そのときの答弁は答弁ではありません。答弁というのは、あくまでも委員会で質問者と答弁者のやりとり、これが答弁ですから、それを念頭に置いていただきたい。

 それで、まだあれでしたら、ちょっと一回、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

小平委員長 速記を起こしてください。

 それでは、今の御質問に政府はきちんと答弁をしてください。三井国土交通副大臣。

三井副大臣 河井委員に、私の顔を見たいということで、せっかくお呼びいただきましたので、御答弁させていただきます。

 河井委員の質問取りのときに海上保安庁として踏み込んだ発言があったことをおわびしなきゃならぬと思っております。

 それと同時に、何度も申し上げますけれども、いずれにしましても、国内法にのっとり、しっかりと取り締まりをしていくということには変わりございませんので、何度も申し上げますけれども、しっかりと取り締まりをしていくということでございます。

河井委員 質問をつくるに当たりまして、やはり事務方とやりとりをしながら質問というのは構築していくわけでありまして、その根幹がなくなるようなときは、もう委員会で質問自体する意味がなくなるわけですね。大変残念でありますけれども、はっきりとした答弁がいただけなかったということで、はっきりと逮捕ということをおっしゃっていただけないということを大変残念に思っております。

 質問がかわりましたので、国交副大臣、法務大臣政務官、もうお帰りいただいて結構でございます。

 次に、また外務大臣に質問を続けたいと思います。

 九月二十日の月曜日、河北省の石家荘市でフジタ株式会社の四名の社員が軍事施設保護法などに違反した疑いで身柄の拘束をされました。大臣、フジタの社員は果たして人質だったんですか、どうですか、お答えください。

前原国務大臣 そのような認識は現時点で持っておりません。

河井委員 この捜査過程において中国側の対応に何か問題はあったでしょうか。

前原国務大臣 私は再三申し上げているところでございますけれども、なぜ四名の方がいわゆる住居監視というものに置かれたのかという説明がまだ明確に中国側から得られていない状況でございますので、今その回答を求めているところでございます。

河井委員 私は、日本政府として今回のこの事案についてきちんと調査をして、そして、もし、中国の国内法を本当に彼らが犯していたとする場合と、しない場合とあるわけですよ。それによって日本政府の対応はこれから全く変わってくるわけですから、きっちりと日本政府として事実関係を調査して、その結果を公表していただきたい。いかがですか、大臣。

前原国務大臣 このフジタの四名の社員の方は記者会見において、軍事管理区域とは気づかなかった、こういう発言をされているわけでありますけれども、中国側からは、先ほど申し上げたように、被疑事実、そして適用条文等の事案の詳細について何ら説明を受けておりません。それを求めているところでございまして、そういったものが示されれば、当然国会なりにお示しをするということはさせていただきたいと思います。

 住居監視と言いましたが、居住監視でした。済みません。

河井委員 もし中国側の言い分と違って国内法を犯していなかったのだとすれば、これは中国側に非があるわけですから、政府として厳重に抗議や対抗措置を打っていくべきだし、逆に、もし法を本当に犯していたのだとすれば、これは日本側がむしろ勝手に慌てふためいた、人質扱いというレベルにまで政府のいろいろな部署の方たちが、一種の危機管理の水準を上げてしまったのは日本政府の方であるということになってしまいますので、きちんとした調査を、さっき国会に提出ということもおっしゃっていただきましたけれども、物事にはめどというものがありますので、いつごろまでに発表していただけるでしょうか。

前原国務大臣 この四人の方が居住監視に置かれているときにも、今委員がおっしゃったような人質というような前提で政府が対応していたことは全くございません。我々は極めてニュートラルに話をしておりました。

 つまりは、例えば、私が程永華大使を外務省に呼んで私から要請したことは三つです。一つは、四人の方の身柄の安全の確保。そして二つ目が、領事の面会。そして三つ目については、問題の円満かつ早期の解決。この三つ目のところには、先ほど申し上げた、どういう案件でいわゆる居住監視に置かれているのかということの情報提供も含まれているわけでございまして、それについて求めていたということで、別に人質とかそういうような前提に立ってではなくて、法を犯したのかどうなのかということの見きわめも含めて情報提供を求めてきたということでございます。

 めどについては、いまだそれについては回答のない状況でございますので、回答を求めていきたい、わかればお知らせをしたい、このように考えております。

河井委員 日本国民の間では、尖閣の今回の事案とフジタの社員がいわば取引されたんじゃないかという疑念が強くあります。これはかえって当事者だった国民の安全を損なうことにもなりますし、日中関係をゆがめてしまう。また、中国からしても、人質をとるような国家なんだという悪評を立てられてしまうということもあり得るわけです。ということで、このフジタの問題と尖閣のあのときの事案、一切何のかかわりもないということについて、改めて御答弁をいただきたい。

前原国務大臣 関係があるとは現時点において承知をしておりません。

河井委員 十月八日から十月九日にかけまして、私は、民主党の原口一博前総務大臣・共同座長と一緒に、超党派の国家主権と国益を守るために行動する国会議員連盟の一員として、尖閣諸島の上空に民間機を借り上げまして視察を行ってきました。

 今大臣は、人質ではない、関係はないというふうにおっしゃいましたが、実は、私たちが尖閣上空を飛ぶ前、詳しく言いますと、十月八日金曜日、羽田に向かってまさに私が自分の議員会館の部屋を出発しようとしているときに、ある自民党の衆議院議員から私の携帯電話に電話がかかってきました。内容は、岡田克也民主党幹事長が、フジタ社員、残っている一人の解放が近い今、あなたたちに尖閣に行かれると中国側を刺激する、視察の取りやめを要求してきたということを、私に人づてに来た。そして、そのことを原口さんにも伝えてくれと。着信が残っていますから、十月八日金曜日の午前九時四十三分でありました。

 私はその電話を聞いて、びっくりびっくり、愕然としたんです。直前まで、あなたのすぐ前の前任者、外務大臣の仕事をしていた、そして今与党の幹事長として、大変国政に、内閣にはいないけれども重要な責務を負っている方が、フジタの社員の解放と私たちの上空視察を結びつけるような電話を、原口さんに直接されたかどうかということは御本人同士の話ですから私はあえて言いません、報道では一部流れておりますが私はこの場では申し上げませんが、自民党の衆議院議員を使ってそういうことを言ってきた。

 私たちの視察は、次の日の九日の土曜日、十一時過ぎから十三時だったんです。石垣空港を十一時過ぎに飛び立って、尖閣上空、すべての島を見て、石垣空港に帰ってきたのが十三時過ぎ。その直後、十五時三十分に、中国政府外交部から日本大使館に居住監視解除の決定が通報されてきました。私たちがまさに石垣空港におり立って、そしていろいろと話し合いを地元の人とやっている最中にその一報が飛び込んできた。恐らくはさまざまな解放までの諸手続があるでしょうから、私たちがもう乗っている最中、あるいは出発する前にいろいろな手続が進んでいたことは容易に推測されます。

 そこで、両者には、私たちが行ったことと人質扱いされたことは何の因果関係もないことが立証されたわけです。岡田さんの言ってきた電話、圧力といいましょうか、それには何の根拠もないということが明らかになったわけですけれども、人質という認識を持った岡田幹事長の考え方に対して、大臣がどのような認識をお持ちか、お尋ねしたい。

前原国務大臣 私がコメントする立場にはありませんが、岡田幹事長も別に人質だという認識は持っておられないのではないかと思いますが、いずれにしても、河井議員とその仲介役の自民党議員との間の話でございますので、政府の立場としてコメントすることはございません。

河井委員 私たちが上空を視察している最中に最後に残った一人が解放されたという事実をもってしても、何のためにそんな電話をしてきたのかと大いに疑問を抱いておりますと同時に、疑問どころか、本当に、これこそまさに決してとるべき態度ではない。中国に対してしっかりとした日本国の主権、そして国益を主張するに当たって、私はこういう姿勢がさまざまな不利益を生んでいるんだというふうに思いました。

 彼が、私たちが行っている日に解放されるということを知って電話してきたのか、知らずに電話してきたのかによってもまた違うわけです。もし知って電話してきたんだったら、国を憂えて国民を愛する私たちの純粋な思いをただ単にもてあそぶ、そして、事実上、自国の領土の上空を国民の代表である国会議員が行けなくなるようにするような発言じゃないかと感じました。もし知らずに言ってきたとすれば、ついこの前まで外務省にいた人がそんな大事な情報すら事前に役所から知らせてもらっていなかった、そういう大臣だったのかなというふうに解釈せざるを得ない。いずれにしても、私は極めて軽率な今回の一件だったというふうに思っております。

 大臣にお尋ねします。

 今回の私たちの超党派の議連で上空から尖閣の実態をしっかりと見てきた、二隻の巡視船を視認いたしましたけれども、海上保安庁の諸官が一生懸命活動していた、そういうことをこの目で見てきた私たちの活動に対して、どのような考えをお持ちでしょうか。

前原国務大臣 それぞれの国会議員はみずからの信念に基づいて行動されることでございますので、それについて私がコメントすることはございません。

河井委員 岡田幹事長はさらに、これはオフでなくてオンで、記者団に対して、私たちがちょうど出発する前の時点でしたけれども、政治家の結果責任についても言及しているんです。あたかも、私たちが尖閣上空に超党派で飛行して、そしてもし最後の一人が解放されなかったら、行った私たちの責任であると受けとめられるような発言までしている。ついこの前まで外務省の最高責任者だった人が何でそういうふうなことを言ってくるのか。

 私は、大変だけれども気をつけて行っていらっしゃいぐらいのねぎらいの電話がかかってくるのかと思っていたところ、それどころか全く反対の、視察を取り下げるような発言があった。極めて残念なことでありますし、これはもう国難の前にあっては、いつも言っていることですが、自民党とか民主党とかあるいはほかの政党、公明党、社民党、共産党、みんなの党、そして無所属の皆さんもいらっしゃいますけれども、全く関係ないと私は考えております。むしろ、決して私たちがとってはいけない姿勢というのは、自分たちの主張を、相手の姿をおもんぱかる、そういうことがいけないことだと考えております。

 最後に、まとめとして、きょうの質疑を通じて、前原大臣の御所見、そして御覚悟、決意をお聞かせいただきたい。

前原国務大臣 最後に河井議員がおっしゃったことは私は非常に大事だと思っていまして、これは我々が長らく野党にいたときも、私自身は、外交や安全保障という国益にかかわるテーマについては与党も野党もない、これはオール・ジャパンで、もちろん、主張すべきことは主張する、追求すべきことは追求するという視点は当然持ちながらも、国というものを考えて、国益を考えて行動する、発言するということは、おっしゃるように大事なことだと思いますので、ぜひそういった視点でも御教唆をいただきたいと思いますし、私自身もそういった視点でこれから活動してまいりたいと思っております。

河井委員 終わります。

小平委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。河野太郎君。

河野委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 外務委員会ではございますが、前原大臣の国交相時代のさまざまな意思決定についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 七月の二十二日でありますか、悪名高き現役出向を認める、つまり退職通算を認める法人が民主党政権によって相当数追加されました。この現役出向を認める法人、追加された数を見ると、圧倒的に国土交通省が多いんですね。大臣、幾つ追加されましたか。

前原国務大臣 済みません。ちょっと数はわかりません。教えていただければと思います。

河野委員 数がわからないぐらいたくさん追加をされたわけでございますが、国土交通省、全部で十五法人を追加されました。その次に多い総務省が八つですから、二位の役所の倍近くの数の現役出向を大臣はお認めになったわけでございます。

 まず、この現役出向先十五について、大臣は閣議前にどういう説明を役所からいつ受けたか、教えていただきたいと思います。

前原国務大臣 まず、お答えする前に、二つのことについてお話をしたいと思います。

 まず一つは、我々は、自民党政権時代の早期勧奨退職、そしてわたりに次ぐわたりの天下りはやめるということで、天下りの廃止、禁止というものを実行してまいりました。そして、国土交通省でも、一番厳格にそれについては取り組んでまいりました。

 しかも、何でこれはいけないのかというと、先ほど現役出向の話をされましたが、いろいろお考えはあると思いますけれども、現役出向というのは、身分を役所に置いてまさに現役出向をする。戻る人もいれば、そこで定年を迎える場合もある。その場合は、役所がもちろん給料も払うし、そして退職金は一回だけ。早期勧奨退職に基づくものについては、一たんそこでやめて退職金をもらって、そして出先で給料をもらい、そしてまた出先で退職金をもらう。悪いケースになると、それを何度も繰り返す。そういった天下りは我々はやめるんだということを申し上げてきましたので、我々はそういう意味で天下り廃止、禁止というものについてしっかりと履行しているということをまず申し上げたいと思います。

 もう一つ申し上げると、現役出向についてなぜ広げたのか、先ほど国土交通省が一番多いじゃないかと言われますけれども、比率でおっしゃっていませんね。数でおっしゃっておりますが、国土交通省関連の公益法人というのは最も多いんです。非常に多いわけで、そういう意味では、分母からすると、二千近くあったと思いますけれども、別にそれが大きいから小さいから、いい悪いではなくて、先ほど申し上げたとおり、現役出向については、我々は、今までの天下りをやめるということの原点に立ち返って、問題はないと思っております。

 ちなみに、政令改正で行ったところで申し上げますと、一番多いのはJR関係、それから高速道路会社、国が株を持っているところで行ったということであります。関空、JR北海道、四国、九州、JR貨物、東京地下鉄、成田空港、それから道路会社、こういったところだと認識をしております。

河野委員 委員長、今大臣は私の質問と無関係のことを二分話をされましたので、私は四十二分まで質問させていただきます。

 大臣、きちっと答えてください。この現役出向先について、いつ、どのような説明を役所から受けましたか。

小平委員長 ちょっとその前に、河野君、質問時間については委員長の私が判断しますので。

 前原外務大臣。

前原国務大臣 お答えはしますけれども、外務委員会でありますし、前職のことだといっても、それは私が国土交通大臣のときのことでございますので、理事会で合意をされてこういう質問というのがもしされているのであれば、私は理事会の決定には従いますけれども、こういう質問を、特に細かな時系列的なことというのは、今、国土交通省で話を私がまた聞いてこないとそれはできませんので、そこは、どういう整理があったのかということを踏まえてやっていただきたい。そうでないと、延々と何か国土交通委員会みたいになっちゃうような気がしますので、その点をお願いいたします。

河野委員 これは前原大臣の国務大臣としての資質を問うているものでございます。

 今、我々が、この民主党政権が天下りを野方図にふやそうとしている、形を変えた天下りを野方図にふやそうとしている一端を担っている国務大臣にその件を質問しているのでありますから、質問に答えてください。

小平委員長 前原大臣、答えることは答えてください。どうぞ。

前原国務大臣 天下りをなくす、つまりは、自民党型の、河野さんがいかに立派なことを言われても、ずっと天下りを野方図に放置してきたのは自民党政権じゃありませんか。そういうわたりとか早期勧奨退職というあしき天下りをやめるということで、天下りを拡大したということは全く当たらないと思っています。

河野委員 委員長、質問に答えさせてください。

小平委員長 何についてですか。

河野委員 いつ、どういう形でこの法人について説明を受けたのかということを答えさせてください。

小平委員長 委員長から申し上げますが、質問者に対しての答弁は、お答えできるものは答弁してください。答えられないことは後ほどということで。

 前原大臣。

前原国務大臣 後で調べてお伝えをいたします。

河野委員 なぜ私がこれにこだわるかといいますと、当時の長妻厚生労働大臣は、すべてこの現役出向を認めないという結論を厚生省で行われております。つまり、この一覧表に、厚生労働省からは、追加された法人は一つもありません。それはなぜか。当時の長妻厚生労働大臣は、これは形を変えた天下りだから、こんなものを認めるわけにはいかぬということをきちっとおっしゃって、厚生省が閣議決定の前日に書類の中に滑り込ませた書類に判を押さずに、それを突き返したわけであります。

 それに対して、当時の前原国土交通大臣は、この案件について問題意識を持っていなかった。つまり、どこかの段階で役所が紛れ込ませた書類にサインをしてしまって、後から、さあ大変ということになっている。だから、いつ、どのような形で説明をされたかということに対して、全く何も答えられないわけであります。

 それでは……(前原国務大臣「ちょっとちょっと、答弁」と呼ぶ)それなら最初から答えてください。

前原国務大臣 いつ、どの時点でということについては調べてお答えをしますが、事実誤認が二つございます。

 一つは、国家公務員退職手当法施行令の一部を改正する政令というのは閣議決定しているんですよ。長妻さんもサインしているんです。私もサインしています。だから、長妻さんだけをいいように言って、そしてほかの大臣はだめだ、それは手法として言われるのは結構ですよ、御自身の主張だから。事実と異なるということをまず申し上げるのが一つ。

 それから、紛れ込ませて、それを気づかなくて、後で大変だと思っているというのは事実と違います。私は、国土交通省でそんなガバナンスはやっていません。当然、事前に相談をして、私が了承したところだけを拡大したということであります。

河野委員 それでは、了承しなかったのはどこの法人ですか。

前原国務大臣 今申し上げることは差し控えたいと思います。

河野委員 なぜ差し控えるんですか。

前原国務大臣 一々、役所の中でいろいろ検討したことをすべてつまびらかに国会で答弁しなきゃいけないんですか。

河野委員 それでは、幾つ認めなかったんですか。

前原国務大臣 それも答弁を差し控えます。

河野委員 一つ以上あるんですね。

前原国務大臣 それも答弁を差し控えます。

河野委員 前原国務大臣は、自分が認めたものだけを認めた。つまり、この中に入れた。普通に日本語で解釈すれば、認めなかったものがあるから認めたものだけを入れた、そういう日本語になるはずであります。

 それでは一つ以上認めなかったんですねということに対して答弁をしないというのは、これは全部認めちゃったからそういう答弁しかできないんじゃないんですか、大臣。

小平委員長 その前に、河野君、きょうの質疑に対しては事前通告しているんですか。それにのっとって質問しているんですね。きょうのこの委員会は、いわゆる一般質疑です。過般の大臣の所信に対する質問も含めて、国際情勢に関する件を中心とした一般質疑ですから、それは御自由ですが、事前の通告はしているんですね。

河野委員 しています。

小平委員長 わかりました。

 では、前原大臣。

前原国務大臣 何度も申し上げますけれども、現役出向が悪いとおっしゃるのは、それは議員の判断ですよ。私どもは、現役出向は悪いということで判断をしていませんから。定年でやめさせる、一回の退職金でオーケー。

 自民党政権はどうだったんですか。早期勧奨退職をさせて、そして天下りを何度も何度もさせて、そしてやめてから給与と退職金、二億、三億もらっていた人がいっぱいいるじゃないですか。そういう天下りをなくすというのが民主党政権で天下りをなくすということなんです。

 現役出向というのは、みんなが定年まで働く、ただ、働く場所についてはいろいろな人事交流というものをやっていく。それはまさに政治主導で、どこまで広げるかということについては、その大臣の判断でやったということです。

河野委員 なぜ、きょう、こういう質問をしているかといえば、前原大臣に国務大臣としての資質があるかどうかということを問うているから、この質問をしているのであります。

 天下りを云々と今、大臣はおっしゃいましたけれども、既に十月十二日の予算委員会で、千五百九十人の肩たたきには、問わず語り、以心伝心、裏下りがあったということを総務大臣も認めたじゃありませんか。民主党は野党のときに、肩たたきするのはおかしい、肩たたきしなきゃいけないのはマネジメントができないからだ、そう言って法案まで出したじゃないですか。民主党政権になってわずか一年で千五百九十人、表立ってはあっせんしていませんよ、肩たたきだけですよ。だけれども、総務大臣は、そんなことがあるわけがないというふうにおっしゃっているじゃないですか。

 天下りをやらないかわりに現役出向、天下りの何が悪いか。退職金の回数ですか、そうじゃないでしょう。天下り先に行ったところが癒着をする、あるいはそのポストを維持するためにいろいろなことを本省がやる。それと現役出向先とどこが違うんですか。民主党がやった事業仕分けの中でも、天下りと現役出向は同じじゃないか、そういう指摘を仕分け人からされているじゃないですか。

 それだけじゃありませんよ、言いましょうか。局部長の高給スタッフ職なんという千三百万円ぐらいするような職をつくろうとしているのも民主党政権じゃありませんか。

 退職管理基本方針を出した後に、八月に人事管理運営方針なるものを出して、いろいろ変えていますね。官民ネットワークのことについて、交流希望情報の交換をやりなさいみたいなことを書いているわけですよ。ということは、天下りのあっせんじゃないかと言われたら、いやいやそうじゃありません、人事管理運営方針にのっとってやっているんですという言いわけができる。それを大臣たちは閣議で認めているわけですよ。つまり、役所にいいように裏口をいっぱいつくられて、それを何一つ気づかずに閣議決定をしている。それはおかしくないですか。そういう話であります。

 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の人事院規則の一部改定というのが、八月十六日、お盆のさなかに行われています。何が行われたか、大臣、御存じですか。

前原国務大臣 今のは存じませんが、少し今、議員がおっしゃったことで答弁してよろしいですか。

河野委員 八月十六日に人事院が何をやったか知らないとおっしゃいましたね。

 もともとこの官民交流というのは、若手の官僚を民間企業に出して人材育成をしよう、そういうことで始められたものであります。つまり、若い官僚を民間に出して、少しそこで民間のトレーニングを積んで帰ってくる。だから、これは本来、幹部が行くものではないわけであります。

 この八月十六日の人事院規則の改正では、本省の部長や審議官、管区機関の長についても、所属局庁と所管関係にない民間企業の間では交流が可能になりました、そういう規則改定をやっているわけですよ。つまり、定年になる直前の人間を官民交流ですといって出しているんですよ。

 つまり、これは、天下りをやっちゃいかぬといろいろ言われているから、官が一生懸命考えて、これは天下りではありませんねといって一生懸命行き先をつくっている。それを民主党政権は全く見抜いていないじゃありませんか。そういうことを一生懸命、官があちこちに根を張って、何とか今までの既得権を守ろう守ろうとしているものを全部しり抜けにして、この八月十六日がいかに大事な規則改正だったかということを国務大臣は全く何も気づいていないというのが、私は今の民主党政権の大きな問題だと思います。

 天下りはいかぬとかなんとか格好いいことは言いますけれども、結局、天下りのかわりにやっているのは千五百八十八人の裏下りじゃありませんか。

前原国務大臣 この天下りのポイントは、いわゆる今までの人事管理ということ中で定員を削減してきたわけですね、国家公務員の総定数を削減してきた。しかし、自民党政権下では、アウトソーシングをして入れてこなかった、そのためにいっぱい公益法人をつくってやってきた。そして、その人たちにいわゆる天下りということで何度も何度もチャンスを与えて、七十や八十になろうという人までいまだに天下りを続けている人たちがいるというのが今までの状況。それを我々は変えていかなきゃいけないということで、まずはこの天下りはなくす、そして定年まで働いてもらって、それ以降についてはないという形をつくったというのがまず基本です。

 それと同時に、現役出向についていえば、広げましたよ。それは私も了解して広げましたけれども、その交流を通じて、では給料の二度取りとか、あるいは退職金の二度取りとか三度取りとか、そういうものはありませんよ。そういう形の中で、いわゆる今までのあしき天下りはやめていく。

 もう一つは、自民党政権でどんどん増殖していった公益法人というものを我々は事業仕分け、自己仕分けでなくしていったんです。河野委員が一生懸命に取り組まれたみたいだけれども、では、道路保全技術センター、自民党政権のときに一つつぶせましたか。おかしな事業をやっているじゃないかといって追及されましたけれども、自民党政権のときにつぶせましたか。つぶせなかったじゃないですか。

 民主党政権になって、道路保全技術センターはつぶす、解散。駐車場整備推進機構も解散。一番大きな建設弘済会、これは各地方整備局にあるもの、これも解散する。あと、空環協。大きなところから我々はなくしていく、天下りの受け皿をなくしていく、民間でできることは民間でやっていく、そういうこともしっかりやってきましたよ。まずは、自民党のときに自分たちがどれだけのことをできたのか、できなかったのか、自己反省をしてから質問していただきたいですね。

河野委員 偉そうに言いますけれども、天下りが裏下りになっただけじゃないですか。天下りをやめて現役出向になっただけじゃないですか。官民交流、定年直前の人まで広げているじゃありませんか。大臣、OBのあっせんは天下りじゃありません、ルールを変えているじゃありませんか。

 民主党も野党時代に賛成した公務員制度改革基本法、強行採決までして変えようとしているのは民主党じゃありませんか。内閣人事局、つくらないのも民主党じゃありませんか。再就職等監視委員会の委員の任命すらやらないのは民主党じゃありませんか。自由民主党が一生懸命、基本法にのっとってやってきたことを全部とめているのは民主党じゃありませんか。何をおっしゃっているんですか。

 もう一つ問題があります。前原大臣が国交大臣のときに、八ツ場ダム、建設をやめるというようなことをおっしゃいました。八ツ場ダムの建設中止、この根拠は何だったんですか。(発言する者あり)いや、質問通告してますよ、これは。

小平委員長 冷静に質疑応答いたしましょう。

 前原大臣。今の質問に対し、まとめてお答えをして、次のことに進んでいかれたらいいと思います。どうぞ答えてください。

前原国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、自民党政権のときに天下りの受け皿をどんどんつくって早期勧奨退職をさせて、そして何度も何度も高い給料、退職金、そういうものをもらって役人がいい思いをした、それをなくすということで我々は取り組んでいるんじゃないですか。(河野委員「なくしてないじゃない」と呼ぶ)なくしましたよ。(河野委員「新手のものをつくっているだけじゃないですか」と呼ぶ)ですから、現役出向について言えば、我々は天下りと思っていませんから。それはあなたの定義であって、自民党さんの定義であって、我々は天下りとは思っていませんから。定年まで働いて定年まででやめてもらう、そして退職金は一回ぽっきり、そういう仕組みをつくるということで我々は取り組んできただけですから。その受け皿も、どんどん事業仕分けを含めて大きなところはつぶしていますよ。

 何度も申し上げますよ。いかに偉そうなことを言ったって、自民党でそういうものをつぶせなかったじゃないですか、受け皿の公益法人。天下りを認める公益法人をどんどん野放しにしてきて、天下りをやり放題にさせたのは自民党政権じゃないですか。それを政権交代で変えていったんですよ。

 あと、八ツ場ダムについては、我々は、いろいろ野党のときに調査をし、そしてマニフェストに八ツ場ダムの中止というものを載せさせていただきました。

河野委員 前原国交大臣は八ツ場ダムを中止する、そういうことをおっしゃいました。しかし、本来ならば、その治水の基本になる基本高水が正当につくられていたかどうかということを調査しなければならないはずであります。大臣は、それを役所にみんな丸投げをしてしまった。大臣は情報を開示するとおっしゃったけれども、とうとう情報は出てきませんでした。つまり、役所に全部頼るから、役所に丸投げをすると役所は、少なくとも飽和雨量の数字を何を使っていたか、前原大臣、これは確認をされましたか。

前原国務大臣 私がお願いをして、できるだけダムに頼らない専門家の会議を、有識者会議をつくったというのは河野委員も御承知のとおりだと思います。京都大学名誉教授の中川博次先生にお願いをして、我々はその議論をやってきました。

 そのときの議論の基本高水、計画高水あるいは飽和水量、すべては会議録に載っておりませんけれども、それを調べた上で質問をされていますか。

河野委員 当時の飽和雨量は四十八ミリということになっていました。しかし、それは真っ赤なうそだったわけであります。本当に大臣がこの問題にやる気になれば、少なくとも飽和雨量がどういう数字だったのか、何をベースに基本高水が計算をされていたのか、きちっと大臣が調べてそれを開示することができたはずであります。しかし、結果としてそれが行われなかった、それは事実じゃありませんか。

前原国務大臣 八ツ場ダムを含めてどのような評価軸をつくるかということの評価軸を有識者会議でまとめていただいたわけです。その議論の中心的な議論は利根川水系でありました。

 では、逆質問はできませんけれども、カスリーン台風のときにいわゆる基準点である八斗島でどのぐらいの水が流れたか。これは河野さんも御承知だと思いますけれども、毎秒約一万六千トンですよ。だけれども、二万二千ですね。なぜその乖離が出てきているか、御存じですか。

河野委員 国交省がそのパラメーターを開示しないのが原因じゃありませんか。少なくとも、本来一万六千の数字であるものを二万二千という数字をつくるためにモデルをつくったのは国交省じゃありませんか。その背景をきちっと公表して、なぜその数字になったのか、再現ができるようにしてくださいというのが、我々がお願いをしていたことであります。

前原国務大臣 どちらが答弁でどちらが質問かわからなくなってきましたが、いずれにしても、はっきり申し上げたいのは、飽和水量の話はかなり問題になりました。つまりは、戦後のあの時期というのは、確かに木がそれほど生えていなかった。しかし、今はかなり植林もされて山の保水能力も上がってきている。したがって、基本高水あるいは計画高水の前提になっているどの地点でも四十八ミリというのは、そこはおかしいだろうという議論は有識者会議でされていたんですよ。されていたし、それについてもっと申し上げれば、基本高水というのを書いてあるのは、まさに利根川水系の基本計画なんですね。だから、そういうものまで変えてくると、まさに憲法まで変える話になる。

 それから、先ほどの私の質問でお答えにならなかったので申し上げると、河川整備が進むと、当然ながら洪水が減るんですね。カスリーン台風の場合、伊勢崎の八斗島の上の方でかなり洪水があるんです。それをどんどん整備していくと、その洪水が流れるものとして基本高水というのが計算されることになるんです。でも、それは河野委員のおっしゃるとおり、その山の保水能力についての前提も違うだろう。

 あるいは、国土交通省河川局というのはどうしても、すべての水をコンクリートで固めた川に入れて流して、そしてすべて無謬性で何とかできるという発想に立っている。そんなもので絶対、百年に一度、二百年に一度、あるいはこのごろのゲリラ豪雨なんかに対応できない。違った治水のあり方を考えて、そして八ツ場ダムについても、あるいは利根川水系の管理のあり方についても、根本的に見直しをしていこうということで、今議論をしている最中なんです。

 そして、その前提において、情報開示は十分でなかったということについてはおわびを申し上げますし、馬淵大臣については、この間質問されたときに答えておられましたね。我々は、私も国土交通大臣のときも含めて、できるだけ情報は公開していましたし、そして、役人の言いなりになっているというのは、そういう型にはめて、枠にはめてお話をされたいんでしょうが、ここは相当なバトルですよ。だって、ダムをつくるといって、あるいは今までの計画高水、基本高水で物事をやっていたところをひっくり返すんですよ。それは河野議員が思っておられるほど簡単な話ではなかったですよ。

 だから、そういう意味においては、そこはむしろ、今の八ツ場ダムの見直しも含めて、利根川水系の治水、利水のあり方を根本的に新たな評価軸で見直していこうということについて御協力をいただきたいし、協力をするには情報公開してくれと言うんだったら、それは情報公開、私もしっかりとバックアップさせていただきます。

河野委員 バトルが大変だったというんだったら、政権交代したって直らないじゃないですか。何をおっしゃっているんですか。ここから先は馬淵大臣とやらせていただかなければならないのかなと思います。ありがとうございました。

 少し外交問題についても大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 アフガニスタン、我が国は巨額の支援を約束しているわけでございます。五年間で五十億ドルでしたか。しかし、今、アフガニスタンの状況は極めて悪い。ほとんど、夜になるとタリバンが七割、八割国道を確保している。かつての南ベトナムのような状況ではないかと私は思っております。同じように、カブールの空港から数十億ドルのお金が数年間に国外に持ち出されているという話もございます。アメリカの国務省も、金額までの確定はできないけれども、相当な金額が流出しているのは間違いないというようなことをおっしゃっております。そういう中で、確かにそれは約束はいたしました。しかし、五年間で最高で五十億ドル、それを今やれる状況に果たしてあるのか。

 私は、ある面、誇りを持って、日本がアフガニスタンの警察の人件費を負担してきたというようなことをいろいろなところで申し上げましたが、そのときに言われるのは、カブールの警官の数がふえた、しかし、横柄な警官ばかりになった。警察官が余り尊敬もされていないし、恨まれている、非難の対象になるような警察官がふえている、そういうことを言われることもございます。

 確かに、我々は、金を払っただけではなくて、トレーニングをやったりというようなこともやりました。しかし、これから先、アフガニスタン、イラクの方はだんだん安定化をしつつある。どっちがいいかといえば、イラクの方が状況的にはいいのかもしれません。

 そうすると、日本政府としてアフガニスタンにどう取り組んでいかれるのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 委員御指摘のように、アフガニスタンの状況というのは、よくならないどころか悪くなっている面もあるのは事実だと思います。だからこそアメリカは、イラクを引き揚げて、そしてアフガニスタンに集中的に投下をするということで、軍隊もふやすということをやられているんだろうと思います。

 我々が野党のときに、いろいろな議論を、このアフガニスタン支援をどうしたらいいかという話をいたしましたけれども、求める姿というのは、これは河野議員とも共有していると思いますけれども、農業国家なんですね。非常に温和な、穏健な農業国家にどうして戻していくのかというところが大きなポイントであります。

 しかし、かんがいをしっかりやらなきゃいけない。でも、かんがいをやろうと思ったら、今もそれについても支援はしていますけれども、マンパワーが要る。マンパワーが入ったらテロに襲われる。なかなか入ることができない。だから、まずはテロを抑えるために、アメリカは軍隊を増強しているけれども、日本は、先ほど委員も御指摘されたように、警察官増強に力を入れていこう。外でのいわゆる訓練と、あと給与を含めた支援をやって、何とかそういった面のバックグラウンドをつくろうということで努力をしているわけでありますけれども、でも、それをやらなかった場合にもっとひどくなっているということを考えれば、やらないよりはやった方がましかもしれません。

 しかし、治安が悪くなる一方であると言われているアフガニスタンにおいて、日本だけがやれることも限られていますし、他国間でどう協力していくのか、そういった会合も幾つかやりながら、日本でやれることについての確認をし、できることについては、国際的にコミットメントしたことでありますので、これはしっかりやっていくしかない、このように考えております。

河野委員 確かに、日本は、五年で五十億コミットをしたといえば最大限五十億というコミットはしたと思いますが、しかし、本当にそれが有効に活用されないのであるならば、コミットはしたけれども状況が変わって出せないということは、当然これはあるんだと思うんですが、大臣、そこはいかがですか。

前原国務大臣 まずは、国際社会にも、またカルザイ大統領に対しても、日本はこういう姿勢で臨みたいということで、それを明らかにしたわけでありますので、それをやっていくということが私は大事なことではないかと思っております。

 また、それを日本がやってくれるという前提で向こう側も期待をしている、あるいはその体制になっている。あるいは、そういうお金を出してもらえるということの前提で向こうも、アフガニスタン側も、あるいはさまざまな協力をされている方々も前提に立っていますので、これを崩すということはいかがなものかという思いを持っております。

河野委員 ここは非常に悩ましいところで、だめだと言ってやらなければもっとだめになるだろう。しかし、五十億ドルを出すと、それがアフガニスタンにとどまるかどうかもはっきり言ってよくわからない。カルザイ大統領御自身はどうかわかりませんが、少なくともカルザイ大統領の家族が余りよくないという話もございます。

 我が国として、このカルザイ政権を支えていくのか、あるいはそれに対して何らかの対処をしなければならないと思っていらっしゃるのか、外務大臣、いかがお考えですか。

前原国務大臣 国際社会でカルザイ大統領を支えていく、その前提でさまざまな協力が構築をされているわけでありまして、基本的にはカルザイ大統領を支えていくという方針は変えるべきではないと思いますけれども、しかし、委員もおっしゃるように、貴重な国民の税金を使って行っていることでありますので、その使い道についてはしっかりと物を言っていくという姿勢は大事だというふうに思います。

河野委員 もう一つ悩ましいのがタリバンの扱いでございます。ある面、タリバンと組んだ政府をつくるのか、あくまでもタリバンを排除していくのか、前原大臣のお考えはいかがでしょうか。

前原国務大臣 よく整理しなくてはいけないのは、アルカイダ、そしてタリバン、こういったものを分けて考えるのか、あるいは重なる部分も当然ながらあるわけでありますけれども、どのように考えるのか。その点において、私は大事なポイントだというふうに思っております。

 部族社会でございますし、そういう意味では、部族の自立性というものをしっかりと尊重しながら、それを前提としてバックアップをしていかなくてはいけないということを考えた場合には、タリバンというものを全否定してかかるということは、アフガニスタンの現状、あるいは部族社会が各地域を支配しているという現状からすると、なじまない面もあるのではないか、私はそう思っております。

河野委員 アフガニスタンに日本としていかに取り組むかということについては、これは与野党はない話だと思っております。なかなか正しい答えというのはないんだろうと思いますし、いろいろなジレンマで悩まなきゃいけないことはあると思います。こういうことについてはしっかり与野党で相談をさせていただかなければいかぬと思いますし、野党としてもサポートできるところは、これはしっかりサポートをしなければいかぬと思います。

 こういう悩ましい問題を議論する場として今あるのが国連の安保理事会でありますが、我が国はずっと、常任理事国入りを目指す、そういう方針でやってきたわけでございますが、先般の尖閣諸島の事件、中国が拒否権を持っていることを考えると、常任理事国入りというのは極めて難しい状況になったのかなというふうに思います。アメリカも、口では安保理常任理事国入りを支持すると、ずっとアメリカ政府は、あるいは関係者はおっしゃいますけれども、実際的に何かそれに向けてアメリカが動いたということは私はないのではないか。

 そうすると、このまま安保理の常任理事国入りを目指していろいろなところにお金を使うのか、あるいは常任理事国入りはひとまず棚上げにして、G8がG20になる時代でもありますから、安保理とは違う枠組みで何か意思決定をするような場をつくる、それに日本が主導的な役割を果たすのか、そのあたりについて、前原大臣も先日、安保理の件については難しいという発言をされたように仄聞をしておりますが、大臣のお考えはどうでしょうか。

前原国務大臣 率直に言って、難しい問題だと思います。

 しかし、他方で、六十五年前にいわゆる戦勝国のグループとしてつくられているわけですね。これは釈迦に説法ですけれども、ユナイテッドネーションというのは戦勝国の集まりですから。そして、中国の入れかわりはありましたけれども、勝ったところがいわゆる常任理事国として拒否権を持った席を持っている。そしてまた、非常任理事国という十の議席がある。しかし、あの当時から比べると、加盟国は大きくさま変わりをして、今百九十二になり、そして拠出金も含めた国連への貢献度というものも全く異なっている状況にあるわけで、だれが考えても、安保理を含めた国連改革はやらなきゃいけないというのは事実だと思うんです。

 ただ、他方で、現状維持を求めている、既得権益を持っているところと、自分が入らないんだったらほかに入る人のことを協力できるかというところと、そしてここはいいけれどもここは嫌よという、さまざまな複雑な利害関係が絡まって、これを解きほぐすというのはなかなか容易ではないと思います。

 しかし、先ほどアフガニスタンのところで申し上げましたように、国民の貴重な税金を使って国連の拠出金も行っているわけでありますので、やはりそれに見合った発言の機会を求めるために行動し続けるということは大事なことだと思っておりますので、この間、九月の国連総会に行きましたときに、G4でもう一度集まって、何とかいろいろ知恵を出し合って、賛同者を募って、国連改革をやろうじゃないか、総会で三分の二以上をとろうじゃないか、こういう心合わせはしたところでございますので、難しい状況だということは各国からも意思表示はございましたけれども、何とか知恵を絞って、しっかりと努力をしていきたいと考えております。応援をしていただければと思います。

河野委員 ありがとうございました。終わります。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄です。

 質問する側もされる側も、気分を変えて取り組みたいと思います。

 きょうは、午前中から、民主党また自民党の皆さんの方から、尖閣諸島をめぐる問題についての非常に示唆に富んだ質問がいろいろございました。私もこの問題を取り上げたいと思います。

 最初に、きょうの私の主張を申し上げておきたいと思います。二つあります。

 一つは、結論的に言えば、尖閣諸島に対する実効支配をどのように強めていくか、この問題意識であります。二つとも最初に言っておきます。二つ目は、この尖閣諸島の問題において、果たして、現時点までで、日本外交、前原外交が本当に発動したのかという観点。

 海上保安庁、先ほどの国土交通大臣時代の前原さんに対する質問、なかなかこれも聞きごたえのある質問並びに答弁だったと思いますけれども、この海保、それから検察、これは非常によく目立っているんだけれども、外交当局、そして政治、この部分が非常に目立たないというか、後でしっかり大臣の持論を聞かせていただければそのなぞが解けるかもしれませんけれども、非常に見えづらいということの問題意識に発して、中国は国境意識がない国である、これは、大臣も関係の深い京都大学の先生の文章を引用した、御存じかもしれませんけれども、後で申し上げたいと思いますが、そういう国境意識が近代国家と全く違った雰囲気を持っている国家とどうやってつき合うのか、その国とどうこれから外交を展開するのか。

 文字どおり、後で申し上げますけれども、前原大臣は、好むと好まざるとにかかわらずというか、意図的かどうかは別にして、明らかに対中の今までの流れを変えた、かじを切られたと私は思います。そういう点で、従来の自民党の一連の外交、公明党も後半十年、一緒にさせていただきましたけれども、従来の対中外交を変える、そういう場面に出くわされて、ある種、先ほど来のお答えを聞いていると、意識を持って従来の流れを変えたという立場に外務大臣はいらっしゃるなという感じがしますので、今申し上げたように、きょうは二つのこと、尖閣の実効支配をどう強めていくか、そしてもう一つは、日中外交の新展開というものを大臣に聞きたい、このように申し上げさせていただきまして、本題に入ります。

 まず、きょうは、海上保安庁長官に来ていただいて、先ほど来、もう既に同僚の委員からも質問があったので重複しますけれども、改めて確認をしたい。

 過去四年間、過去四年というのは数字に意味があって、いわゆる日中の間に戦略という言葉が、今皆さんのお手元に配らせていただいた資料に「戦略的互恵関係」「中国と各国とのパートナーシップ」とありまして、日本が一番上にありますが、二〇〇六年十月、戦略的互恵関係のパートナーシップの関係ができた。今から四年前でありますが、その四年後の今日までの四年間で、尖閣諸島周辺での、長官が指揮するところの、本当に日夜頑張っている海保の皆さんの仕事の中で、先ほどもさまざまお話が出ておりましたけれども、中国あるいは台湾の漁船がやってきて、それに対しての、対中漁船に対する警告の回数、さっき話がありました立入検査、この二つ、両方を、四年間の部分を、数字をまず改めて述べていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島周辺の我が国領海内で違法操業しておる外国漁船に対して退去警告を行いまして領海外に退去させた件数でございますが、平成十九年が二百三十三件、平成二十年が二百一件、平成二十一年が百五十八件、平成二十二年が、九月末現在で四百四十三件となっております。

 さらに、立入検査を行いました件数は、十九年がゼロ、二十年が二件、二十一年が六件、二十二年は、九月末までで二十一件となってございます。

 特に、本年八月中旬以降、多数の中国漁船が我が国の尖閣周辺の領海内で操業しているのが確認されておりまして、これに対し、巡視船艇を増強して退去警告等を行っておりましたところ、今回の衝突事件が発生したというものと承知しております。

赤松(正)委員 ということは、平成二十二年になって特に、非常に多いという数字が、今お聞きして改めてわかったわけですけれども、体制を強めようとしていたやさき、こうおっしゃいました。

 それで、重なるかもしれませんが、今回のようなこういういわゆる公務執行妨害に至るような事態が起きる、そういう事態が起こるという予感は持っておられたでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 これまでにおいては、退去警告を行い、さらに、退去しない者については、立入検査を行った上で退去させておりましたので、いずれも、おとなしくといいますか、出ていった事案ばかりでありまして、今回のように衝突してくるということは全く予想しておりませんでした。

赤松(正)委員 大臣は、国土交通大臣をなさって海上保安庁を指揮しておられたわけですけれども、先ほど来のような、恐らく大臣が任務についておられた国土交通大臣は平成二十一年の夏から平成二十二年の先般まで、だから、かなりふえてきたときに大臣をしておられたわけです。

 先ほどの長官の答弁で尽きているかもしれませんが、そういうことを踏まえて、大臣としては、国土交通大臣時代、何回も海上保安庁の現場に行かれたという話を聞いたわけですけれども、もし、今回のような事態というものを想定してシミュレーションをするとか、長官の受けとめ方はさっき聞きましたけれども、大臣として今回の事態というものを予測する、そういう場面というか思いは頭の中にでもあったでしょうか。

前原国務大臣 海上保安庁という実力組織の内部の決まり、あるいは、どういうものを想定しているのかということについて、つまびらかに申し上げることは差し控えたいというふうに思いますけれども、私は、内部のさまざまな話を聞き、また巡視艦にも何度か行きましたけれども、そういう点から見ても、士気は極めて高いし、そして、まさに仕事を全うする気概に満ちあふれておりますし、と同時に、先ほど委員から御質問のありました、いろいろな想定を前提とした対応策というものが存在をし、またそれの訓練も行っているということは申し上げておきたいと思います。

赤松(正)委員 ということは、それなりの事態を想定しての訓練をしていたということだと理解いたします。

 私がちょっとこだわっていますのは、外務大臣の記者会見の中で、それ以外の、委員会の答弁というのは正確に全部追っかけてないので、そういうことを言われたか、あるいは修正されたかもしれませんが、今回の事案に対して、外務大臣は、いわゆる体当たり、船が丸ごと体当たりしてくる、こういう公務執行妨害ということは一過性のもので、それに対する日本の対応に中国が過剰反応をしたんだ、こういう発言をなさっておりますよね。

 この認識、一過性、過剰反応、これは今もなお変わらないでしょうか。

前原国務大臣 変わっておりません。

赤松(正)委員 これは、仙谷官房長官の柳腰という言葉をここで持ち出すのはなぜかというと、彼は、彼の人となりも私はよく知っていて大いに買っている一人でありますけれども、ただ、柳腰という言葉の使い方、要するに言葉そのものの意味を間違えている。

 大臣も、失礼ながら、そうやって変わっていないとおっしゃる。一過性という言葉は、後に影響を及ぼさない、その場限り、こういうことで私は理解している、辞書を調べてまいりましたけれども。その認識でよろしいでしょうか。

前原国務大臣 私の真意は、これは御党の参議院議員の山本議員から、偶発的ではないのではないか、計画的、意図的に中国が行ってきたことではないかということに対して、私は、海保の現場でいろいろ話を聞いている、あるいは今回の事情というものを聞いている中で、計画的なものであったとは言えない。つまりは、もちろん故意に当たってきたんですけれども、偶発的なものである、こういうことを私なりに判断をしているわけで、そのことを一過性という言葉で申し上げたところでございます。

赤松(正)委員 だから、私風に言わせますと、若干言葉の使い方に正確性を欠いている、偶発的なというふうなことの方がいいんじゃないかと。後に尾を引くという部分は、私は、これは後に尾を引いていくというふうに思っていますので、正確ではないんじゃないかなという気がいたしました。

 私は、この問題について思いますのは、日中間には、先ほど申し上げました、いわゆる戦略的互恵関係という言葉は、さきの自公政権時代の安倍さんのときのことでありますけれども、その少し前から日中間には日中戦略対話という場がありますね。これは、外務事務次官級の方が出られて、日中戦略対話がある。この五年で十回、去年で十回目、ことしは多分、開かれているとは聞いていない。

 大臣、私が聞きたいのは、そんな難しいことは聞きません、つまり、先ほどの海上保安庁長官が申し述べられた数、平成二十二年では四百四十三回、こういうふうな領海内の違法操業を、日中戦略対話の場でこうした警告の経緯を踏まえて注意を促す、率直な意見交換をする、こういうことはあったんでしょうか。

前原国務大臣 直近の日中戦略対話というのは、平成二十一年、去年の六月二十四日でありますので自公政権下であると思いますけれども、これが直近の日中戦略対話でございまして、そのような話がなされたとは承知をしておりません。

赤松(正)委員 つまり、これは、政権が前の政権であるにせよ、外交の主軸をなしてきたのは外務省の役人の皆さんですから、特に官僚、外務事務次官が日中戦略対話の場で、今大臣が言われたように、近過去、この十回目の会合でそういうことをしたことはない。多分、恐らく、さかのぼって全十回もそういうことはほとんどなかったんだろうと思うんですね。

 ということは、つまり、戦略的互恵関係、この言葉をめぐっての質疑も散見されますけれども、私の理解では、戦略的互恵、要するに、日中間には、先ほど来出ていますような尖閣の問題、領土問題はない、これは日本の立場、しかし中国は、先ほど来いろいろ出ていますように、これはおれたちのものだという主張をしております。特に、一九九二年の段階で、国内法で自分たちのものだとしちゃいました。こういう一つのテーマ、問題があります。

 もう一つは、今沈んでいるというか鎮静化しておりますが、やはりこの底流に流れている歴史認識。歴史認識は、日中間で一致させることは難しいと私は思います。それぞれがそれぞれの歴史認識を持つというのはある意味で当然であって、これは難しい。

 こういう二つの、ほかにもあるかもしれませんが、大きな日中間に横たわる根源的な課題というものを、ある種、戦略的互恵という部分では、私は、尖閣あるいは歴史認識のテーマについては、先ほど河井委員が質問でトウショウヘイさんの時代の話あるいは周恩来さんの時代の話を取り上げられましたけれども、確かに、大臣が繰り返されているように、明確な合意ない、約束ないということであろうと思います。

 しかし、暗黙の合意というか、暗黙の了解というか、これは、私の受けとめ方としては、自公政権時代を含めて、過去の自民党政権時代にあったのであろう、こういうふうに私は思います。であるからこそというふうに結びつけるのはちょっと早いかもしれませんが、日中戦略対話のような場面では、そういうことは余り議論しないということにつながっていくんだろうと思うんです。

 つまり、私の理解では、戦略互恵関係というものは、先ほど述べたようなそういうテーマについては言わずもがな、あえて口にしない、ということは、裏打ちされて、セットになって一つのものであったというふうに私は理解をしておるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

前原国務大臣 私がこの職務についてこの事案を調べる中で、過去の経緯というものをかなり詳しく調べましたけれども、その過程において、今赤松委員がおっしゃったような暗黙の了解とか明示的な合意というものはないというふうに私は思っております。

赤松(正)委員 暗黙の了解とか明示的なもの、明示的というとこれは暗黙を超えていますから、言わずもがなというのはそこまで行きませんから、そういうあうんの呼吸というのもありますし、そういう次元のことであろうと私は思います。過去のことはいいです。

 過去のことはいいですが、きょうの、先ほど自由民主党の河井委員の、彼が一つのテーマの最後に、このテーマで言った、言ったと言いながら正確なことは忘れましたけれども、つまり、彼が言おうとしたのは、新しい関係が始まりますよということを彼は確かに言いました。私も全く同感であります。

 前原外務大臣は、なかなか歯切れのいい言葉遣いで、なかなかメッセージ力はおありだと思いますけれども、そういう意味でも、今のこの日中間の尖閣をめぐる問題については、過去の政権と新しい今の政権になって、この間の事案は、大臣おっしゃるところの一過性、そしてその反応に対する過剰な反応ということであったかもしれないけれども、ここから先はそうではなくて、新しい日中間の関係が始まるんだ、こういうふうになる、明確なかじが、かじ取りは違うふうに、前の政権から変えられたというふうに私たちが思っていることは、大臣は、そういうふうに思われているということは御理解されますでしょうか。

前原国務大臣 私が思っておりますのは、主権にかかわることについては、当然、原理原則、貫いていかなくてはなりません。しかし、隣国というのはお互い引っ越しをするわけにはいきませんし、特に日中関係というのは、世界第二位、第三位の経済大国、そしてお互いが相互依存をし合っているわけですね。そういう意味においては、極めて大局に立ってこの二カ国の関係をうまくマネジメントして、より関係を強化していくという外交を行うことが、基本路線として私は大事なことであろうというふうに思っております。

赤松(正)委員 直接的には私の質問には答弁はなかったですが、それはそういうふうに見られていいということだと理解していいですね。

 では、もう時間が大分あれしましたので、一個目の問題の、実効支配をどのように強めていくかということについて少しだけお話をしたいと思います。

 きょう午前中の議論の中でもありましたけれども、重なりを避けて二つのことを言いたいと思います。

 一つは、私が常々思っていたのは、あの海域、尖閣諸島周辺の海域に、中国、台湾の漁船が、意図とかねらいはともかくとして漁をしに来ているという実態がある。それに対して、尖閣の日本の側の領海に我が方の船が余りというかほとんどいない。これっておかしいんじゃないのか。

 中国の側に立てば、おまえたち、自分の国の領土だ、領海だと言うのなら、もっとどんどん来て魚を釣ればいいじゃないか、全然来ないで何で自分の領海なんだという、これは非常に素人考えといいますか、一般的な受けとめ方がある。それを客観的に見ると、確かにそうだよね、何でもっと、両方に船がいっぱい来てお魚をとり合うというのがあるべき姿じゃないのかと。

 このように石垣漁協の皆さんに言うと、行きたいんだけれどもなかなか、いろいろと行くに当たって障害があると。多くを申し上げませんが、一つは、海上保安庁のチェックといいますか、要するに、よかれと思って、その安全を思ってくれて、どこへ行くのというふうなことを含めて検査がある、これがなかなかうっとうしいという話が一つ。

 それともう一つは、島に人が入れる入れないという問題についての議論が先ほどもありましたけれども、あのあたりまで行くのに相当の時間、五時間、六時間かかるといったときに、やはり立ち寄れる船着き場といいますか、そういうものがあってほしい、こういう要望をいただきました。

 今、海上保安庁、政府の実効支配というものの考え方というのは、海上保安庁が頑張って、入ってくるものを押し返すということにより一層、さっき大臣が、懸命にみんな取り組んでくれているという話がありましたけれども、そういう形を強めていくということは当然のこととして、やはり方針が前政権とは変わった、大臣もさっき認められた。ということであるならば、実効的支配の具体的な手だてというものを、一歩グレードを上げるというか進めるというか、そういう行為が必要だと思うんですけれども、長官、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島周辺の我が国領海内で、確かに我が国の漁船の操業というのは中国側あるいは台湾側と比べて少ないという実態がございますが、これにつきましては、私どもは、むしろ漁業者の側から、自分たちが安全に操業するためにもきちっと警備をしてほしい、増強してほしいというような御要望をいただいておりまして、まさに外国漁船の違法操業の排除などに大型巡視船を常時配備して、あるいは定期的に航空機も哨戒させて当たっておるという状況でございます。

 ただ、尖閣に行くのをとめられたというような事案は、多分、遊漁船などをチャーターしてあの海域に行きたいというような、プロの漁業者じゃない方の事例がありまして、それについて私どもがチェックをしますと、大概、あそこまで行けない小さい漁船をチャーターされるもので、それについては航行区域が、あそこまで行くには近海区域が要りますので、達していないので、それはおとめをしているというような実態がございます。

赤松(正)委員 今言われたようなこと、双方に言い分があるんだろうと思いますけれども、私は、今回のこの事案を受けて、先ほど外務大臣は、外務大臣として国土交通大臣時代の海上保安庁の対応というものに対しての満足の意を表明される、今、教訓は何かというふうなことを、どう受けとめておられるかという問いかけに対して、各省庁にまたがる総合調整という問題に若干の検討の余地があるんじゃないかということをおっしゃいました。

 今、外務大臣という立場になられて、さらに今度は、総理大臣を恐らく早晩目指されるというか、もうなられると私は見ておりますけれども、そういうお立場として、言ってみれば、この問題について、総合的な対応、縦割りではなくて政府としてしっかりとこの問題についての取り組みというものを考えるべきだというふうに私は思って、そうすることによって実効支配の実を上げていくということ。つまり、海保だけの段階からより一歩進める段階に来ている、そして具体的な政府の取り組み、ポスト、機関、そういうものが必要だという提案に対して、いかがお答えになられるでしょうか。

前原国務大臣 今、防衛大綱の見直しの中で、どうやって危機管理体制を強化するのかということを、ここにおられる吉良委員を中心に党でも議論していただいておりますし、我々も関係閣僚として議論に加わらせていただいております。

 事実関係で申し上げれば、有事法制のときに、あのときは赤松先生も御一緒だったと思いますけれども、民主党が法律を出しておりまして、そのときの法律の中には、日本版のNSCと日本版のJICというもの、JICというのはジョイント・インテリジェンス・コミッティー、情報統合委員会というイギリスにあるものをセットでつくるべきではないかということを、危機管理能力の強化ということで提言をいたしました。これは民主党として法律を出したものでございます。

 つまりは、大事なことは、これは先ほど赤松委員もおっしゃったように、各省の情報がしっかり集まって、その情報を分析し、総理が政策判断をする、そして、NSCというところが、短期あるいは中長期のさまざまな問題について、まさに国家戦略的な分析を行い、政策立案を行う。だけれども、情報というのは非常に必要で、それは各役所から統合的に集められたものでなきゃいけない、これをどう担保するかというところが私は大事なポイントだと思っておりまして、仕組みをつくるかつくらないかは別にして、私は、先ほど委員のおっしゃったことについては一〇〇%同意でありますし、そういうものをやらないと、最高の立場にいる総理というものが正しい判断をなかなかできないのではないか、そういう思いを私は強く持っております。

赤松(正)委員 ぜひ、今言われた方向で取り組んでいただきたいと思います。

 次に、二つ目のテーマ、もう時間があと十分になりましたけれども、日中外交の新展開。

 先ほど確認をいたしましたように、今回の事案というものは、日本社会全体に与える影響が非常に大きい。今、それこそ、床屋談義からふろ場から、ありとあらゆるところで、居酒屋からいろいろなところで中国をめぐる議論が盛んに行われておりますけれども、その問題を今言うときに当たりまして、私が少し不可解に思うのは、先ほどの大臣の御答弁で、要するに、刑事的な判断あるいは司法手続を必要とするというものが、一歩進んでといいますか、外交の問題あるいは戦争に発展していくということは幾らもあるんだというお話。それで、今回の事案については第一義的に検察が対応したんだ、何か間違っているかというふうなことは言われないけれども、そう言いたげなお話が政府、総理大臣、外務大臣から続いております。

 それはいいとしましょう。いいとして、では、さっきの外務大臣の言葉を私は走り書きしましたら、外交問題が起こったらそこで政治が始動するとおっしゃったのかな、政治が動くという意味のことを言われました。

 それで、今回、ここにあるクロニクルを見ますと、結局、この事案が起こったのが、七日に衝突、八日逮捕で、そして十一日から、中国が条約交渉の東シナ海のガス田開発問題で延期を言うというところに端を発して、ずうっといろいろな出来事が、中国発のさまざまな、彼らの圧力というか何というか、カードというか、次々切られていって、あれよあれよという間に、先ほどのフジタの話もありましたけれども、中国産レアアースの事実上の停止という問題が起こったりして、そうして日本人の目に映ってくるのは、那覇地検が中国人船長を処分保留のまま釈放したのは二十五日で、その後にフジタの社員の四名のうち三名の釈放も入りますけれども、その後、ブリュッセルで菅首相が温家宝さんと懇談をしたというのは四日ですね。

 今言った結節点だけが日本人の目に飛び込んできて、日本外交は何をしておるんやと。その間、外務省、外交はどういうカードを切ったんだというのが見えない。つまり、総理大臣が、廊下で極めて短い時間、温家宝さんと話をした、その結論が、言ってみれば、戦略互恵関係の確認というか、それって非常に見苦しいというか、もう情けないという受けとめ方をみんながしたわけです。すがっているかのようなそういう態度、おかしいじゃないかと。

 こういうふうに思っている私に、こういう外交カードを切ったんだ、外交の責任者としてこのようにやったんだということがあれば、言ってください。

前原国務大臣 釈迦に説法だとは思いますが、外交というのは目に見えるところだけで行われているものではございませんし、日中間での外交ルートでの話し合いというのは、ずっと継続して行っております。その中身の詳細については控えさせていただきたいと思います。

赤松(正)委員 それはちょっと不満ですね。それは、前原外務大臣としては、前の岡田外務大臣を想起させるような、非常にガードのかたいというか、融通性がきかない御答弁で、もうちょっと色のある答弁を前原さんならしてくれるかと思ったのですが。

 結局、今回は、要するに経済カードを中国が切ったということは、識者の間では大変な驚きを持って言われていますよ。

 前原さんは、師匠、弟子の関係でしばしば高坂先生の話を、私は学問上の師匠が中嶋嶺雄先生なもので、中嶋先生がこの間、秋田で、国際教養大学の場でシンポジウムがあった。そのときに行きました。朝日の船橋洋一さんとか袴田茂樹青山学院の教授とか、読売の浜本さんあるいは伊豆見元さんとか、いろいろな人が来てのシンポジウムでしたけれども、その中で、経済カードを切った中国のそういう対応というのは従来と違う、この取り組みというか、彼らの姿勢というものをある種ショックというふうに受けとめておられる。それに対して、目に見えないものはいろいろありますから、やっていますよというのは、ちょっと、余り納得いきません。

 時間がないので、その点に関連して、これは経済カードと言うべきか、経済カードというのは大きい言い方ですが、対抗措置として、例えば、中国人観光客の日本入国手続の簡略化をさせない、中国人観光客の日本入国手続を厳密にするとか、あるいはまた、機内持ち込み荷物の制限の厳格化とか、そういうのがいいとか悪いとかは私は余り言う必要はありませんね、そういうものを、そういうカードも切るべきであったというふうな声がありますが、いかがでしょうか。

前原国務大臣 私は、そこはむしろ日本は泰然としておいた方がいいのではないかと思っております。何か目には目をみたいな、何か応酬が激しくなると、それが連鎖的になるような気がいたしますし、日本は、私は、そこは泰然と構えていたらいいと。

 むしろ、これは国交大臣のときにしたことですけれども、ビザの発給要件の緩和をして、できるだけ中国の方には日本にいらしていただきたいということをやっておりますし、荷物の厳格化というのは、いつも厳格にやっていますので、それ以上に厳格にやるということになると、いつも厳格にやっていないというふうに言っておられる向きもあるかもしれませんが、そうではなくて、しっかりやっておりますし、日本は日本の対応で私はむしろいいんだろうと。それが、さまざまな社会がどう評価をするか、また、中国がその日本の対応を見てどう評価をするか。日本の対応としては、そういった対応の方がむしろいいというふうに私は思っております。

赤松(正)委員 今の大臣の御発言、対中外交というのは、一方に偏するやり方ではなくて、さまざまな発信をしながら、めり張りをつけて、あるときは強く、あるときは優しく、弱くというふうに、いろいろな手法を点検しながらしていくものであるというふうに私も思います。

 冒頭で言いました、中国にはもともと国境という観念がない、なぜなら中国はみずからを世界的帝国となし、すべて世界は中国の領土と心得ている、こういうふうに言ったのが、大正の末年から昭和の初期にかけて京都大学教授で活躍をした矢野仁一という方のお言葉であります。

 その辺のことはまた別の機会に申し上げるといたしまして、きょうは、尖閣をめぐる実効支配を強める、明らかに新しいかじを切られたわけですから、そのかじ切りに応じて、対中外交の新展開というものに期待したいということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、普天間基地問題について質問いたします。

 前原大臣は、当委員会でのあいさつの中で、普天間飛行場の移設については、五月末の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄の負担軽減にも全力を挙げて取り組んでまいりますと述べられました。

 就任当初の九月の会見で、大臣はこう言われました。普天間移設について、少なくとも県外、できれば国外ということを申し上げながら、結果として辺野古への移設になったことについて、おわびと説明をし、沖縄県民の理解を得ていかなければならない、こう言われたと思うんです。

 もう十月も末になりまして、沖縄では県知事選挙間近ということでありますけれども、そこで大臣に、現時点で改めて伺いたいんですが、辺野古へ移設するというこの日米合意について、沖縄県民の理解を得ることが本当に可能だというふうにお考えでしょうか、いかがですか。

前原国務大臣 笠井委員にお答えをいたします。

 今、選挙のときの公約を挙げて私の発言に言及をされました。それはそのとおりであります。ただ、私は、二つの意味でおわびをしなきゃいけないということを申し上げております。

 一つは、一九七二年に沖縄が日本に返還をされて以降、沖縄に過度の基地負担を日本全体が押しつけてきたということに対するおわびと、そして、今回の民主党が政権交代をした総選挙において、当時の鳩山代表が少なくとも県外、できれば国外ということをおっしゃっていながら、結果的には五月二十八日の日米合意というものに、辺野古に戻ってきたということについて、二つの意味での真摯なおわびをしなくてはいけないと思っております。

 そういう意味では、沖縄の皆さん方の怒りというものについては、私はまだまだ大きなものがあるという認識をしておりますけれども、今回のパッケージを進めていけばトータルとして沖縄の負担軽減に必ずつながる、私はそういう確信を持っておりますので、それをしっかり説明することによりまして、粘り強く説明をし、おわびを申し上げながら、御理解を得られるように努力をしていきたい、このように考えております。

笠井委員 トータルとしてと言われましたが、なかなか大変だなと私は思うんです。

 五月の日米合意というのは、普天間基地を辺野古に移設する、いわゆる県内移設であります。これに対して、沖縄県民の総意というのは明確に出されている。幾次の選挙、いろいろなことがありました。普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設反対でありまして、私は、そういう点でいうと、五月の日米合意の実行が不可能であることはもう明らかになっているというふうに思います。

 普天間基地問題の原点は、市街地のど真ん中にある危険きわまる基地は即時に閉鎖し、撤去するしかないということでありまして、移設条件を前提にしたのでは解決しないというのが十五年間の教訓ではないか。大臣も、そのことはそうだなと思いながらも、いろいろなことをおっしゃっているんだろうというふうに思います。

 そこで、もう一つの側面でいいますと、今、名古屋でCOP10が行われて、生物多様性条約の締約国会議、私も昨日参加してまいりまして、森林保全と気候変動に関する閣僚級会合の出席者の皆さんとも懇談する機会がありました。

 我が国でも生態系破壊は深刻でありまして、とりわけ、昨日会場でもNGOの皆さんがシンポジウムをやっていましたが、絶滅危惧種のジュゴンのすみかとか、あるいは豊かな藻場を破壊する辺野古の海への米軍基地建設計画は、この生物多様性条約の視点からも許されるものではないということだと思うんです。

 このCOP10の議長国、開催国として、こういうところに基地をつくるということで責任が果たせるのか、足元が問われるんじゃないかと思うんですが、大臣、この点、端的にいかがでしょうか。

前原国務大臣 委員御指摘のように、辺野古でどのようなものにしていくのかということは、今後日米間で、沖縄の御意見も承りながら決めていくことにはなろうかと思いますけれども、COP10の議長国の名に恥じないように、生物多様性の保全という面をしっかりと認識して取り組むべき課題である、このように認識をしております。

笠井委員 議長国に恥じないと言われましても、あそこにつくるということになりますと、どのような形になるかということですが、私は、生物多様性を保全していくという点では矛盾すると。

 大臣自身がさきの国連総会の生物多様性ハイレベル会合で演説されて、生物多様性の損失によって地球、人類が危機的な状況にある中で、その原因である人間の生活、活動を自然と共生した形に変えていくことが急務です、日本はその先頭に立って実施していくことを約束しますと国際公約されたわけで、辺野古の海を埋め立てるのか、それとも、新基地計画を白紙撤回して生物多様性の保全、継承に本気で取り組むのか、菅政権の有言実行といえば、この点でも鋭く問われているということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、大臣は先ほど、沖縄の負担軽減ということで全力を挙げる、そしてトータルとしてということを言われました。しかし、それと逆行する事態が普天間基地をめぐっても起こっている。私は、さきの予算委員会でも、オスプレーの配備の問題で、新たな配備や施設建設計画が現実であることをただしましたが、北澤大臣、政府の側は、まだ決まっていないんだ、先の話だということでありましたけれども、現に、負担という問題では普天間基地をめぐって進行形の事態があると思うんです。

 それが米軍嘉手納基地の改修工事に伴うダイバート、目的地変更、目的地外着陸とも言われますが、そういう訓練で普天間基地を使い出したという問題だと思います。米軍が九月の二十一日に、このダイバートの訓練をやるということで連絡をしてきた。公表してから、翌二十二日にF15が実際に訓練をやる。

 そして、それから一カ月余りがたちましたけれども、大臣は、沖縄大使の樽井大使を通じて地元からの要請もさまざま聞かれていると思うんですが、普天間基地周辺の住民には、こうした訓練、ダイバートと称してやられたことに端を発して、どんな影響が出て、どんな声が上がっているというふうに承知されているでしょうか。

前原国務大臣 嘉手納の滑走路の修復のために、一本ずつ行うということで、計十八カ月かかるというふうに報告を受けておりますけれども、それに伴うダイバートが行われているということはよく承知をしております。

 まず申し上げたいのは、これはあくまでも一時的なものであって、恒常的なものではないということ。もう一つは、大変大きな騒音被害というものに住民の方々が悩まれて、苦情が寄せられているということについては認識をしております。

 いずれにしても、平成八年に合意をされた普天間飛行場の騒音規制措置、これを遵守するように改めてアメリカに申し入れたところでございますし、この合意を遵守してもらうように、引き続き働きかけを行ってまいりたいと考えております。

笠井委員 一時的と言われましたが、少なくとも十八カ月間は続くということになります。

 そして、地元から大きな苦情ということですが、これも私もいろいろ聞きました。通り一遍の話じゃなくて、赤ちゃんが怖がって泣いてお昼寝もできない、あるいは、心臓が悪くて自宅療養のために自宅で休んでいるけれども、騒音がひっきりなしで命にかかわる問題だ、まるで戦場で、昼はプロペラ機、ヘリコプターの騒音で苦しめられて、夜はジェット機の騒音、たまらないということで、地元である宜野湾市の基地被害一一〇番にも相次いで悲鳴の声が上がっている。

 それで、宜野湾市の調査によりますと、普天間周辺の上大謝名という地区ですけれども、九月二十二日から十月二十六日までの一カ月間に、戦闘機の飛来と見られる百デシベルを超える騒音が四十七回も観測された。電車通過時の高架下に相当する騒音だということで、実施前の九月一日から二十一日までの三回から大幅に増加している。中には、百二十三・六デシベルということで、ジェットエンジンのすぐそばに相当するという、過去五年間で最大の騒音を測定したときもある。九月二十二日のF15のダイバート訓練実施以降、明らかに戦闘機の飛来がふえて騒音が激増したと。

 大臣は、アメリカ側にも申し入れてきたと言われましたが、実際、これは減っているどころか、どんどんやっているわけですね。こういう実態は、そうだということでお認めになりますか。

前原国務大臣 私は、申し入れをしたというのは、平成八年に合意された騒音規制措置を遵守するようにということを申し入れたわけでございます。

 いずれにしても、騒音の被害が続いているということは十分承知をしておりますし、近く安住防衛副大臣が現地に行って、その騒音被害の実態をみずからの耳で聞き、そしてそれを受けて現場の米軍に対してしっかりと申し入れを行うということを計画しているところでございまして、その点についてはできる限りの努力を政府全体として行っていきたいと考えております。

笠井委員 かつてのことをちゃんと遵守してとおっしゃいましたが、遵守して騒音が減らないといけないわけで、実際なくなっていかなきゃいけないわけで、そうなっていない。緊急時に限り実施とか、周辺住民への影響を最小限にするように働きかけるというように総理も本会議で答弁をされましたが、そういうことを言っているだけでは通用しないというか、全然とまらないという事態が起こっているわけであります。

 だから、宜野湾市の当時の伊波市長が抗議声明を上げる、そして那覇市議会や沖縄県議会でも全会一致で決議、意見書を可決しているわけでありまして、安住副大臣が現地に行って実際体験されてきちっと物を言うとおっしゃったのは、大いにやっていただきたいんですけれども、政府として、このダイバート実施について、米政府に対して、沖縄県民の実態はこうだ、負担軽減どころじゃないじゃないかということについて、例えば大臣自身も、今夕か今夜になりますか、ハワイへ行かれてクリントン米国務長官と会談もされるという段取りと伺っていますけれども、こういう問題についてもきちっと、やはり外務大臣が直接、こういう実態は困る、やめてもらいたいというぐらいおっしゃる必要があるんじゃないでしょうか。

前原国務大臣 こういった問題は、現地の米軍の責任者にしっかりと物を言うのは大事だと思っております。

 今度、在日米軍の総司令官がかわりました。フィールド中将という人になったわけでありますけれども、そのことについては、この間は表敬で来られたのでお話をしておりませんけれども、私からもしっかりとフィールドという司令官に話をしたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、安住防衛副大臣が沖縄に行って、実態を見聞きした上で、現地の責任者に対してしっかり申し入れを行うということでございますので、いろいろなチャネルで申し入れを行い続けていきたい、そしてこの騒音の低減が実のある形になるように努力をしていきたい、このように考えております。

笠井委員 現地ということで、そのレベルで当然必要なことはやってもらわなきゃいけないと思うんですが、もともとは、大きな枠組みでいうと、日米間での合意に基づいてどうするかという問題が懸案事項になっている中で起こっていることでありまして、そういう点では、やはり直接、首脳レベルあるいは外務大臣レベルでもそういうことをやるべきだと私は思うんです。

 宜野湾市は、政府、米軍への抗議、要請の中で、普天間飛行場は住宅地域に隣接をし、米軍の安全基準であるクリアゾーンや日本の航空法も適用されない危険な運用が行われていること、七月二十九日の福岡高裁の普天間爆音訴訟の控訴判決で世界一危険な飛行場として認定したことなどを示して、ダイバートとして普天間基地を使用することを一切禁止するように求めております。

 沖縄県議会の意見書では、ダイバートについて、米軍の恣意的かつなし崩し的な基地運用のあり方を示唆するものにほかならず、県民は到底納得できない、こう批判しているわけです。

 だから、一時的にと先ほど大臣はおっしゃったけれども、少なくとも十八カ月間続くのが、そうじゃなくて、今回のことをきっかけに、なし崩しにずっと恒久化するんじゃないかというのが現地の批判であり、危惧なわけです。

 ですから、大臣は、沖縄の負担軽減にも全力を挙げて取り組むとおっしゃるのであれば、それに逆行している、騒音の軽減ということにとどまらず、ダイバートと称して普天間基地を使って激増する戦闘機訓練そのものをやはり中止すべきだと断固言うべきだ、そこまでやるべきだと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

前原国務大臣 アメリカ側からは、この補修期間に限ったものである、もちろん悪天候時なんかは今までもダイバートが行われてきたケースはあるわけでありますけれども、あくまでも嘉手納飛行場の滑走路の修復の期間だけである、こういう報告を受けております。

 沖縄の負担軽減というものはトータルとしてやっていかなくてはいけませんが、一方で、日本の安全保障、あるいはこの地域全体の安定のための公共財としての米軍のプレゼンスというものは必要だと私は考えておりますので、そういう意味では、約束事である騒音規制措置を遵守されるよう、しっかりと求めてまいりたいと考えております。

笠井委員 沖縄県民は、安保のためとか公共財という名のもとに負担を押しつけられてきた、このこと自体に、根本的に、根源的に怒りを持っているわけですから、その点はしっかりと受けとめてもらわなきゃいけないと思います。

 そういう点でいいますと、沖縄の新聞の社説を見ますと、「爆音をまき散らす「良き隣人」。それを容認する日本政府。これでは日米両政府による「沖縄いじめ」だ。」まさにそういう声が上がっております。「街の真ん中で戦闘機を地上すれすれに飛ばす訓練を実施することはできないはずだ。この行為は非人道的と断じざるを得ない。」最近の琉球新報の社説でも、ダイバートと称してF15が発着している、「米軍が勝手放題に運用する可能性があることを政府が知らないはずがない。見て見ぬふりをするのは、県民の生命を軽んじる不作為の罪と言っていいだろう。」と。

 私、ここまできつく言っていることは本当に深刻に政府が受けとめないと、沖縄問題解決と言われて、全然そんなことになっていないということを申し上げたいと思うんです。

 なぜ、宜野湾市民、沖縄県民が米軍の飛行に強く抗議しているか。やはり普天間基地の恐怖を目の当たりにしたのが、二〇〇四年八月十三日に起きたあのヘリの墜落事故でありました。住宅地上空を飛行する米軍の飛行の恐怖と訓練の恐怖とを、身をもって危険性を体験しているのが宜野湾市民でありまして、あのような被害の体験を二度と繰り返させてはならない、世界一危険な基地は無条件撤去しかない、こういう声が上がっている。その思いをしっかり受けとめて行動することこそ、普天間問題の原点じゃないかと思うんですけれども、大臣、その点はどうお考えになりますか。

前原国務大臣 私も、あのヘリが墜落をした後に沖縄国際大学の現場に行って、まあ不幸中の幸いで、人的被害がよくなかったものだと思いましたし、改めて普天間飛行場の返還、危険の除去というものをやっていかなくてはいけないということを感じました。

 そもそも自社さ政権のときでありましたけれども、沖縄の最も要望が強かったのが三事案、十四事案だったと思いますが、そのトップに来ていたのが普天間飛行場の返還でございまして、私も、当時さきがけでございましたけれども、取り組んできた経緯がございますし、いまだにその危険が除去されていないということについては地元の方にも大変申しわけない気持ちでございます。

 何とかこのプロセスを早くに動かさせていただいて、普天間飛行場の返還というものにつなげていきたい、そしてトータルでの沖縄の負担軽減というものにつなげていきたいと考えております。

笠井委員 あの墜落事故に抗議する市民大会の大会決議文というのを最近改めて私は読みましたが、こうありました。

 一九九六年のSACO最終報告による普天間飛行場の返還合意の原点は、危険きわまりない欠陥飛行場を取り除き、県民の基地負担の軽減を図ることであったはずである。今回のヘリ墜落事故は、その原点が改めて問われるものである。日米両政府には今こそヘリ基地としての運用を直ちに中止させ、普天間基地の早期返還を実現すること、このことを求めております。

 私は、今、政府に求められているのは、普天間基地の新たな施設建設を許すことでもなく、ダイバートと称して実施する米軍の訓練を認めることでもない。一刻も早く危険な基地の運用を停止し、閉鎖して、無条件撤去を実現するために、アメリカと本腰を入れて交渉することだということを強く申し上げておきたいと思います。

 残った時間、もう一つ質問したいのは、在日米軍駐留経費負担、いわゆる思いやり予算の見直しをめぐる日米協議に関してであります。

 現行の在日米軍駐留経費負担の特別協定の期限が来年切れることになっておりますけれども、それに伴って日米の協議が続いていると思うんですけれども、現在どういう段階にありますか。

前原国務大臣 この在日米軍駐留経費負担というものは、在日米軍の駐留に必要な経費を実際に負担するという意味で、在日米軍の円滑かつ効果的な運用の維持に不可欠なものだと思っておりますが、同時に、我が国の厳しい財政状況というものを考えたときに、納税者が納得し得る内容とすべく、一層の効率性、透明性を高めていくということが必要だと考えております。

 今まさに日米間の事務当局で、日本側の問題意識もぶつけながら議論をしているところでございます。

笠井委員 米側の方からは、協議の中で増額を要求しているということも報じられたりしておりますが、それは事実でしょうか。事実とすれば、どういう要求が出てきているのか。また、この問題をめぐって、事務レベルでというお話がありましたが、クリントン長官と今度話し合うテーマになっているでしょうか。

前原国務大臣 中身につきましては、今まさに議論をしている最中ですので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 クリントン長官とは、このことについては話をいたします。日本側の中身の要求というものについてはしっかり伝えていきたいと思いますし、同時に、このホスト・ネーション・サポートというものが日米同盟関係の運用に極めて有効的に役立っているということについての確認をお互いしたいと考えております。

笠井委員 交渉中、協議中だから言えないと。言えるときにはもう合意して決まってからだということについては、さんざん民主党も野党時代追及されてきたことだと思うので、そこは今のではなかなか見えてこないと思うんですけれども。

 では、伺いますけれども、今回の駐留経費の見直しの中で、日本側の負担額のふえる、減るという話と同時に、五月二十八日の日米合意に基づいて新たな構成要素が盛り込まれようとしているという点があると思うんです。

 具体的に言いますと、緑の同盟の日米協力ということで、米側が環境対策を新たに提案して、そういうものを取り入れたりして、かなり詰めた段階まで来ている、こういうふうに北澤防衛大臣が十月二十二日の記者会見でそこまで認められております。環境対策を新たに提案して、そういうものを取り入れたりするということで、かなり詰めた段階まで来ていると。

 そこで、伺いますが、米側は環境対策費としてどのような要求、提案をしてきているんでしょうか。

前原国務大臣 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、今まさに議論をしている最中でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 そう言われると思って、先ほど、出てきたときには決まっているとさんざん批判したでしょうということを申し上げたんですが。

 では、伺いますが、同じ答えになるんでしょうか、この環境対策費については、提供設備整備費の中に新たに設けて、数年間にわたり数十億円の規模を想定している、そして米軍基地内の家族住宅や隊舎に適用して、太陽光発電装置のほかに断熱材の改修等も検討されていると言われているんですが、実際にそういう検討がされているんでしょうか。

前原国務大臣 同じ答弁になってまことに恐縮でございますが、今まさに議論をしている最中でございますので、答弁は控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 五月二十八日の日米合意を見ますと、再生可能エネルギーの技術を導入する方法の検討ということで、日本国内及びグアムにおいて整備中の米国の基地というふうにされております。これはどういう意味で書かれて合意したんでしょうか。合意に至る経過があったと思いますし、合意に書かれていますので、その中身について説明してください。

前原国務大臣 いずれにいたしましても、五月二十八日の日米合意というものを踏まえて、これからお互い努力をしていくということになるわけでありますけれども、そこの一つの大きな出発点になっているのが普天間飛行場の返還でございまして、辺野古に移す、そして海兵隊の司令部要員八千名というものをグアムに移す、軍人軍属を入れると一万七千人になるわけでございますけれども、移す。こういうようなことが一連動き出して具体的に詰まっていく問題でございますので、その段階でまた、詳しく詰まった段階でお伝えをさせていただきたいテーマでございます。

笠井委員 いや、私が伺ったのは、五月二十八日の合意で書かれていることの意味はどういうことか説明してくださいと言ったんです。

 再生可能エネルギーの技術を導入する方法の検討については、日本国内及びグアムにおいて整備中の米国の基地とされているわけですけれども、日本国内ということでいうと米軍の基地、これは全体にかかわるのか、グアムにおける整備中というのは例のあそこの件なのか、そこについて再生可能エネルギーの技術を導入するということでは、どんなようなことを念頭に置いて合意したのか。具体的な検討を今やっているということですが、その合意した時点の話を聞いているんです。

前原国務大臣 合意した時点では、一般論として再生可能エネルギーということで合意をしております。実際にそういった施設をつくるということになると、それがどういう再生可能エネルギーなのかということについては、具体的なその段階に入ったときに詰めていくことになろうかと思います。

笠井委員 今度の目玉ということで、緑の同盟を大きく打ち出したということを、オバマ大統領はそう言われて、そしてまた日米合意の中にも入って、そして北澤大臣もかなり詰めた段階まで来ているということで、向こうから新たな提案もあったという話ですね。

 これは、もう具体的に決まったところでぽんと出て、では承認してくださいという話になるんですか。そういう問題を前回の特別協定のときにもさんざん議論を、野党として、ある意味共通する部分は一緒に言ってきた点ですよ。出てきて見たら大変だったということになるんじゃないですか。

 例えば、今、いわゆる思いやり予算で二〇一〇年度までに建設された家族住宅というのは一万一千三百八十三戸、隊舎が二百三十一施設、それから管理棟が百八十九施設ありますが、日本国内の米軍の基地施設といえばこういうところが該当すると思うんですが、これらの既存の施設及びグアムに整備中のものまで日本側の負担で環境対策をやる、エコ対策でそういう設備をやるとなると、かなり膨大な額になりますね。単年度どれぐらいになるかわかりませんが、長期的になっていったら相当な額になる。出てきて見たら、そんな大変なことになるということはないと言えますか。

前原国務大臣 再三同じ答弁になって恐縮でございますが、今まさに詰めている最中でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 環境対策一般は大事なことですが、これは私は米側の負担でやるのが筋だと思うんですよ。新たな項目を入れて、思いやり予算の問題をさらに、ふえるのか、減らすのか、なくすのかという議論をしているときにやるということになりますから、重大な問題だ。米側が今、改定をしようとしている特別協定に環境対策費を盛り込むことを要求してきているとされていますけれども、やはり私は、この問題では今度の外相会談でもきっぱりだめだよということを言うべきだと思います。

 特別協定で負担する経費というのは、日米地位協定の原則に基づいて、本来、米側が負担すべきものであります。これを日本政府はこれまで、地位協定の二十四条の例外規定だ、特例的、暫定的、限定的だと繰り返しながら、改定のたびに負担範囲を追加、拡大、やってきたわけです。

 さんざんこれまでありますから、それを今度、新たに環境対策費、緑の同盟ということで、日本側の負担ということでふえてくるということはとんでもないことになる。そういうことについてはどう思いますか、大臣。

前原国務大臣 これは委員も資料をお持ちだと思いますけれども、この在日米軍駐留経費というものについては、ピークが平成十一年でございまして、二十二年度はそのピーク時に比べると三一・八%減っているということで、減額をされてきているわけでありまして、そういう意味では、先ほどおっしゃったようにどんどんふやしているということではないということでございます。

 いずれにいたしましても、中身については今、日米当局間で議論をしているところでございます。

笠井委員 もう時間が来ましたので終わりますが、米軍再編の経費を含めると、全体はどんどんふえているわけですよ。

 私、額の問題と同時に、新たな項目を加えることについてはちゃんとノーと言わなきゃだめだ、それでなくても財政危機のもとで、そもそも安保条約上も地位協定上も義務でない米軍への思いやり予算ですから、そのものを廃止すべきだということを重ねて申し上げて、質問を終わります。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 前原大臣、大変お疲れだと思いますけれども、関係者の皆さんも、もう最後のバッターですので、よろしくお願いを申し上げます。

 私の方からも、この普天間問題、辺野古の問題ほか、質問をさせていただきたいと思います。

 今、お手元に資料を配付させていただいております。大浦湾という辺野古の建設場所のきれいなリーフレットといいますか、パンフレットがございます。その中に三つの名護の市議会の決議を入れておりますので、これに沿いながら質問をさせていただきたいというふうに思います。

 十月十五日に沖縄県名護市の市議会で三つの決議が上がりました。そのうちの第一番目の決議は「「県内移設の日米合意」の撤回を求める意見書」というものでありまして、これを見ますと、非常に厳しい意見が出ております。県民の頭越しに行われたものだ、民主主義を踏みにじる暴挙だ、沖縄県民を愚弄するものだという非常に強い決議であるわけです。

 きょうの新聞等では、十一月の県知事選、民主党さんは候補を見送られるというような記事があるわけですけれども、名護の市議選の結果というものは私は非常に重要だというふうに思っていまして、県知事の候補はもう既にお二人とも県内はだめだということをおっしゃっているわけですね。

 そもそも、今まで名護の市長も市議会も、苦渋の選択と言いながら受け入れを是認してきた。そして十四年も十五年もできなかった新基地建設が、今回、市長もだめ、市議会もだめだという中で、本当にできると思っておられるのかなというふうに思うんですね。政治的に安定した基地でなければ同盟は不安定になるということをアメリカ自身が言っているわけでありまして、ここは、知事選の結果を待つまでもなく、もう結論が出ているというふうに私は思っております。

 アメリカからは大変信頼の厚い前原大臣というふうに聞いておりますので、前原大臣がアメリカに物を言うたらきっと、そうか、やはり無理かということでアメリカも理解してもらえるというふうに私は思うんですけれども、前原大臣、どうですか、ここで、もう辺野古は無理だということをアメリカにおっしゃいませんか。

前原国務大臣 一九七二年に沖縄が日本に返還されてから、約七五%の施設・区域がたった〇・六%の沖縄県に集中をしてきたということと、また、先般の総選挙において、民主党は、少なくとも県外移設ということを言っていたわけですね。それが、五月の二十八日に結局は辺野古というところに決めることになったということについては、私は、二つの意味で沖縄の皆さん方には心からおわびを申し上げなくてはいけないと思っております。

 最も危険な飛行場と言われている普天間飛行場の返還を実現するために、辺野古を抱える名護の皆さん方には大変申しわけなく思っておりますけれども、しかし、これを進めることによって、普天間飛行場の返還、海兵隊の八千人、軍人軍属を入れると一万七千人がグアムに移る、そして嘉手納以南の施設・区域の返還も進んでいくということになれば、トータルで沖縄の負担軽減に必ずつながるし、つなげていかなくてはいけないという思いを持っておりまして、それをしっかりと沖縄の皆さん方にお願いしていくということが私の立場であると考えております。

服部委員 残念ながら、沖縄側はそれを言葉のとおりは受けとめていないわけですね。

 この名護の決議の中にもあります、ちょうど中段から下の方に、「県民への差別的政策にほかならない。」という言葉があるわけです。これは、ことしの三月の末に外務委員会として沖縄視察に行ったときに、仲井真知事からもこういう同様の発言がありました。

 政策が、この政策はいいとか悪いとかいう話じゃなくて、これはもう沖縄に対する差別ではないのかというような声が上がっているということは大変重たい言葉というふうに思うんですけれども、大臣、どういうふうにお受けとめでしょうか。

前原国務大臣 民主党は、野党のとき、また先般の総選挙の前に、それぞれの候補者が本音で、沖縄の皆さん方の負担軽減を図らなきゃいけないということの中で、少なくとも県外、できれば国外ということを言ったわけです。これは私は、鳩山代表のみならず、すべての民主党の候補者あるいは今議員になっている人間が責任を負わなきゃいけない言葉だ、こう思っております。

 鳩山前総理も、その言葉を実現するために、一生懸命御努力をされたと思います。いろいろなところを当たられて、そして、残念ながら結果的に現時点ではそれができていないという状況の中で、しかし一方で、大変危険な普天間飛行場の返還というもの、危険性除去というものをやらなきゃいけないということの中で、私は、一番苦しくその結論をまとめられたのは鳩山前総理だというふうに思っておりますし、だからこそ、その責任もとられた形でおやめになったんだと思っております。

 沖縄の皆さん方が差別的だというふうにおっしゃることについて、我々は反論する立場にはございません。しかし、とにかく、全体としては沖縄の負担軽減につながる、そして沖縄の皆さん方が一番望まれている普天間飛行場の返還というものにつなげていくためにも、ぜひ御理解をいただきたいということを今後も真摯にお願いしていかなくてはいけないと考えております。

服部委員 私も、与党時代に検討委員会の中に入って、鳩山首相に本当に期待をしました、本当に動かしてくれるんじゃないかと。しかし、期待した分だけ非常に落胆が大きいわけですね。やはり政治は結果ですから、どんなに頑張っても結局は辺野古かということではやはりだめだと私は思うんです。

 お手元に、きょうは大浦湾のリーフレットを配付させていただいております。私も、COP10、世界の国会議員会合に参加をしてまいりましたけれども、きょうの委員会の委員の皆さんに、ぜひこのパンフレットを一回ゆっくり見てほしいと思うんです。

 本当にきれいだと思われませんか。これが、米軍施設が今建設されようとする辺野古の海なんです、大浦湾なんです。ですから、やはり生物多様性そのものなんですよ。ぜひこういう自然を守っていきたいというふうに思うのは、これはだれしも共通の思いではないかと私は思うわけです。

 実際、この名護の決議の中に、前原さんの国連演説に関するさわりがあります。九月二十三日、国連で前原大臣が、生物多様性の損失をとめるべく新たな行動を開始する、あるいは、COP10を契機に開始される世界的な行動を各国の先頭に立って実施していくことを約束するということを演説されているわけです。

 しかし、昨日、名古屋で、日本と海外の七十の環境NGOが共同声明を出しました。その中で、沖縄県の辺野古の米軍基地建設の中止を求めるということで、日本政府が国内で矛盾した政策を進めているということをNGOが指摘しているわけです。

 私は、生物多様性を守るという観点から、この辺野古の大浦湾の自然を守るということも当然入るというふうに思うし、そういう意味での大臣のリーダーシップをとっていただきたいというふうに思いますけれども、その点、所見はいかがでしょうか。

前原国務大臣 今、名古屋で開催されていますCOP10については、世界各国が現下の危機的な生態系や生物の状況を認識して行動していく機運をしっかりつくることが重要だと認識をしております。

 普天間飛行場の移設につきましては、日米合意を踏まえて取り組んでまいりますが、生物多様性の保全の重要性は認識をしておりますので、環境面についても適切に考慮していきたいと考えております。

服部委員 また引き続き議論をさせていただきたいわけですが、次に、名護の市議会決議で、オスプレーの配備、これについては全会一致で決議が上がっているわけです。

 このオスプレーの議論を聞いていますと、私は本当に情けない感じがするわけですけれども、政府は、政権交代前は、具体的には決まっていないということをずっと言い続けてきました。昨年、〇九年四月二十三日に、当時の中曽根外務大臣が将来配備される可能性を初めて国会の答弁で認めた、こういう経過があるわけです。

 最近、糸数慶子議員であるとか、あるいは我が社民党の照屋寛徳議員の方からの質問主意書等でもお尋ねをさせていただきますと、九月二十九日に海兵隊が海兵航空計画というものを発表しているわけですが、その中に二〇一二年から普天間基地にオスプレーを配備するということが明確に書いてあるわけです。質問主意書の答弁は、海兵航空計画の配備は承知している、しかし、それは海兵隊の計画であって国防省が承認したものでないという回答なんです。これは言葉の遊びじゃないですか。

 前原大臣、今現在、オスプレーの配備についてはどういう認識をお持ちでしょうか。

前原国務大臣 計画が記述されている表を私も見たことがございます。二〇一二年ごろというこの計画の記述は見たことがありますけれども、これは、先ほど委員が引用されたように、アメリカとして正式に決まった計画としては我々は聞いておりません。

服部委員 しかし、これはマスコミの報道ですけれども、八月末の日米専門家会議で岡田前外務大臣が、国民に正直であるべきだということで、オスプレーの配備があるということをおっしゃっているわけです。それから、アメリカの国防省の報道官が、もうオスプレーの配備は日本政府に伝えているということを、これはワシントンで九月九日に、我々はオスプレーを日本で運用するつもりで、日本政府にもそう伝えていると国防省は記者会見で言っているわけです。それから、今始まりました沖縄政策協議会、これはきょう付の東京新聞ですけれども、仙谷官房長官がオスプレー問題を米側と交渉するということをおっしゃっているということは、日本政府としてオスプレー配備ということは実務ベースでもう当然のこととして認識されているんじゃないんですか。

前原国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますけれども、マリン・アビエーション・プランの中ではそういうものが書いてあるということは承知をしておりますけれども、このプランが、いまだ国防総省として正式に承認した計画ではない、そして、沖縄への配備については現時点では確定をしていないという回答をアメリカからは得ております。

服部委員 どうも議論がこれ以上前に進みません。

 では、環境アセスについて、前原大臣は前、オスプレーが配備されれば当然環境アセスはやり直しだということを御自身の口から、たしか国土交通省の大臣記者会見か何かでおっしゃったというふうに思いますけれども、そのお気持ちは今もお変わりありませんか。

前原国務大臣 仮に機種が変われば、滑走路の長さとか、あるいは基地の面積というものが変わる可能性がある、その場合においては、ある一定の範囲を超えた場合、長さを超えた場合については、今の沖縄の環境影響評価の仕様書についてはやり直すということが書いてあるということを私は申し上げたわけでございます。

服部委員 本当に、沖縄は非常に不信感を持っているわけですよ。日米政府の間でもうオスプレー配備は決まっているんじゃないか、しかしそれをなかなか言わない。それから、環境アセス、実際、今回飛行経路の変更の問題が出ましたね。あれもやはりオスプレーの配備に絡んでいるんだと思うんです。そのことによって、住民、住宅の近くを飛ぶわけですから、当然騒音も変わるわけですから、こういったことをきちんきちんと対応していただきたいというふうに思います。

 もう時間もありませんので、あと二点ほど質問をさせていただきます。

 一つは、NHKでも報道されました、日本政府が一九六〇年代に核兵器の保有を検討していたということが西ドイツの外務省の機密文書で明らかになったわけですけれども、これについて大臣が松本副大臣の方に調査を指示したということを聞いておるわけですけれども、それが今後どういうスケジュール、あるいはどういう内容で進められるのか、あるいはこれが明らかになった場合には国会に対する報告等があるのか、その辺をお尋ねいたします。

前原国務大臣 今、服部委員おっしゃったように、私、松本副大臣に指示をしましたので、お許しをいただければ、松本副大臣から答弁をさせたいと思います。

松本副大臣 御指摘の件については、私どもも、できるだけ皆様に情報を公開していかなければいけないという視点から、今調査を進めておるところでございます。

 西ドイツ側にも当たりまして、当時の西ドイツ側資料について、ドイツ外務省において保管されていた資料を手に入れて、今、内容を日本語に直して、精査しているところであります。また、日本側の資料についても、当時の、一九六九年前後のファイルなどに対象を広げて調査しているということであります。

 具体的な調査結果というのは本当に速やかに公表したい、こういうふうに思っておりますが、現段階ではまだ調査結果としてまとまっていないというところでございます。

服部委員 大体いつごろというのはないんでしょうか。

松本副大臣 率直に言って、調査を命ぜられた私としても早く終わりたいと思って進めておるんですが、想定以上に資料が膨大でありまして、今のところ、ちょっと、めどというのを申し上げられる状況にはないんです、まことに申しわけないんですが。

服部委員 大変重要な問題なので、また引き続き議論したいと思います。

 それから、済みません、時間が来ましたけれども、もう一点だけ。

 菅談話で発表されました朝鮮王室儀軌の返還について、いつごろ返還になるのか、あるいはそのための手順等で今現在わかっていることがあれば、御回答いただきたいと思います。

前原国務大臣 朝鮮儀軌等の引き渡しにつきまして、今、政府の内部で範囲、手続等を含めて調整しているところでございまして、国有財産を他国に引き渡すものになりますので、協定が必要になってまいります。したがって、国会での御承認というものをいただかなくてはいけませんので、その手続も含めて、今鋭意行っているところでございまして、できるだけ早くという思いを私自身も持って指示をしているところでございます。

服部委員 ありがとうございました。終わります。

小平委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会


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